タレント:ユグドラシル (早見 彼方)
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タレント:ユグドラシル

 カルネ村。リ・エスティーゼ王国領に位置するその小さな開拓村が俺の生まれ故郷だ。これといった特産品はなく、畑仕事によって収穫できる農作物のために汗を流すだけの日々。娯楽と言えば、最近俺と結婚したエンリという同い年の少女との種付けセックスくらいだ。夫婦となった俺たちに与えられた家で、毎日のように肌を重ねている。今日の夜も俺は、十六歳の妻であるエンリと愛を育んだ。

「っ、ぁっ、んんっ……クロノ……」

 寝台で仰向けになった俺に跨がって淫らに腰を振るエンリが、俺の名前を呼んだ。肩まで伸ばした金色の髪を揺らし、素朴だけど可憐さを感じさせる顔を赤く染めている。いつも浮かべている穏やかで優しい微笑みは情欲に濡れ、畑仕事で日焼けをした肌とそうでない部分の白色が映える健康的な体で淫らに踊っていた。

 エンリの好き勝手にさせていた俺は、エンリの胸を鷲掴みにした。前までは程よい大きさだった乳房は俺が毎日揉んだせいか大きく実っていた。手の平に収まりきらないその大きさに満足感を抱きながら、乳房に指を埋没させた。

「あんっ……」

 エンリが甘い声を上げた。エンリの両親や年の離れた幼い妹には聞かせられない声だ。俺だけが聞くことを許された声に欲望が高まり、エンリの膣内をぎっしりと占拠していた肉棒が大きく膨らむ。エンリの腰使いによって根本から亀頭まで膣壁でゴシゴシと扱かれ、快感が増幅する。

 すっかり俺の妻として自覚していたエンリは、体を倒して俺に覆い被さった。鍛えた体の胸板にエンリの柔らかい乳房と桜色の乳首が押し付けられ、トクン、トクンと心臓の鼓動が伝わってくる。そんな状態で伸ばされたエンリの舌を俺は舌で出迎え、わざとらしく大きな水音を立てながら舌を触れ合わせた。

「ぷちゅ、くちゅ、ぬちゅ、ぐちゅ、くちゅっ」

 ぱっちりとした目を細め、蕩けた瞳で俺を見ながら舌を動かすエンリ。同時に腰を動かして、パンッ、パンッという音を立てて小さな尻を俺の股間に叩きつけていた。

 股間を中心に快楽が波打つ。それは俺の忍耐という名の壁に洪水となって押し寄せ、壁を容易く崩壊させた。エンリとの唾液と熱の交換を楽しみながら、膣奥に押し込んだ肉棒から欲望を解き放つ。

 どびゅるるるっ、ぶびゅるるる、ぶびゅーっ、どびゅっ、びゅぶ、どぷっ、ごぷっ、どくっ、どくっ、ぶぴゅっ。

 俺の射精を感じとると、エンリは嬉しそうに微笑みながら尻を左右に振った。大量の粘着質な精液を吹き出す亀頭へと子宮口をぐりぐりと押しつけられる。そんなことをしなくても子宮にはたっぷりと赤子の素が蓄えられるというのに、貪欲な妻だ。毎日俺から搾り取っているにも関わらず、初めて味わったご馳走であるかのように白濁の子種汁を搾り取っていた。

 エンリの膣口が引き締められ、強烈な締め付けを感じながらびゅるびゅると射精を続ける。俺が一回で出す精液の平均の量から考えて、エンリの子宮は今頃俺の精液に占拠されているだろう。愛する妻の大切な場所を支配する光景を思い浮かべ、俺はエンリとの長い口づけと射精をしばらく楽しんだ。

 射精が終わっても、エンリは俺の肉棒を膣で咥え込んだままだ。孕む確率を少しでも上げようとしているのか離れる気配はない。ずっと俺の舌に甘えてくる。

「ねぇ、もっと舌出して?」

 言われるままに舌を伸ばすと、エンリの舌が隅々まで這い上がった。小さな唇から伸びる赤い舌が這い回り、舐め上げ、俺を気持ちよくしてくれる。少し前までの、セックスで恥じらいを見せるエンリの姿はどこにもない。隙あらばエンリを求めて交わった俺のおかげで、どこに出しても恥ずかしくない愛妻が誕生していた。同じ村人から熱すぎると苦笑混じりの文句を口にされるほどには、俺たちの関係は狭い村全体の周知の事実となっていた。

 俺はふと 、こんなエンリの姿をとある少年に見せたらどう思うだろうかと考えを抱いた。カルネ村から半日かけた距離にある城塞都市『エ・ランテル』に住む薬師の大人しい少年、ンフィーレア・バレアレ。俺のことをどこか苦手そうにしていた彼が、エンリに好意を抱いていたのは一目瞭然。長い金色の髪に隠れていたその目元にはいつも、エンリへの恋心を抱いていた。

「なぁ、エンリ」

「なに?」

 俺の問いかけに、エンリは舌の動きを止めて小首を傾げた。その可愛らしい反応に、エンリの中で肉棒がビクビクと震える。

「バレアレのことどう思ってる?」

「ンフィーのこと? えっと、ただの友達?」

 何の躊躇もなくそう言ったエンリの言葉から、バレアレの華奢な体に秘めた想いなどこれっぽっちも伝わっていないのだと理解する。やはりというか、エンリは鈍感だと思った。バレアレが俺のようにしっかりと想いを伝えていれば、もしかしたらエンリは今頃バレアレと結ばれていたかもしれない。

 あくまで可能性の話であって、もう手遅れだけどな。俺は自分の妻にしたエンリの体を抱き締めると、体位を変えた。今度はエンリが寝台に背を預け、その上から俺が覆い被さる。上から押し潰すような形でエンリの体を寝床に固定し、上下に尻を揺する。

「あっ、あっ、あんっ、ああっ……!」

 エンリはこの体位が好きで、両手と両足で俺に抱きついてくる。そのおかげでエンリの膣奥まで肉棒が押し込まれ、エンリの好きな口づけをしながらエンリを征服できる。

 エンリは俺の物。

 そう思ったとき、俺の頭に『NTR』という聞き覚えのない言葉が浮かんだ。それは『寝取られ』という意味らしい。俺にエンリをNTRされた、といった形で使える言葉のようだが、俺たちの場合には一致しないと思った。エンリとバレアレはただの幼馴染みであって恋人ではない。俺はエンリに正々堂々と告白をして妻に迎えたのであって、性行為で自分の物にしたわけではない。

 俺はその言葉を忘れようとするが、一度覚えた言葉は忘れることはできなかった。それは、今までふとした瞬間に思い浮かんだ言葉と同じで、俺の脳に知識として植え付けられてしまったのだった。

 この奇妙な現象は、俺が有する『生まれながらの異能(タレント)』によるものだ。この世界にはそのタレントという不思議な力を有する者が生まれることがあり、俺もその一人。

 俺のタレント名は、『ユグドラシル』。ユグドラシルという世界にあるらしい知識を習得し、それが魔法やスキルであれば自在に扱えるという代物だ。習得できる枠としては第一位階から第十位階、そしてその上に存在する超位魔法までであることを認識している。俺は既にこのタレントによって幾つかの魔法を習得し、扱えるようになっていた。たまに行う狩りでは重宝している。

 俺は畑仕事以外にも、村の近くに広がっているトブの大森林という森の中で狩りを行っているのだ。誰かに任されたわけではなく、自分から名乗り出た仕事だ。森の中にいる動物を魔法で狩っては村に持ち帰っていることから、危ないという理由で俺を止めようとしていたエンリや村の人々は今では不承不承ながらも承認してくれている。

 その狩りでよく使うのが、『飛行(フライ)』や『雷撃(ライトニング)』などといった魔法。あとはたまにモンスターに襲われそうになったときには『(デス)』なども使っているが、そこまで使用したい魔法ではなかったために控えている。

 このタレントは便利だが、それ以上に恐ろしかった。中でも、まだ習得はしてはいない超位魔法をいつ覚えてしまうのかと不安だった。場合によってはそれ一つで数えきれないほどの命を一瞬にして奪ってしまいかねない威力を宿しているのだと理解していた。

 俺の魔法が暴発して、村人たちが死に絶える。そんな光景を思わず想像してしまい、俺は感じた恐怖を拭い去ろうとエンリとのセックスに集中した。尻を振って肉棒でエンリの膣内を掻き回す。寝台がギシギシと軋み、エンリの甘い声が漏れる。俺の子を孕む気満々の妻の淫らな顔を見ながら、好きなときに遠慮のない大量射精。

「クロノぉ……」

 甘えてくるエンリに、俺は何度も種付けを繰り返した。膣壁と肉棒を擦り合わせ、中出し。射精を楽しんだ後は抜かずに結合したまま唾液まみれの口づけを交わし、また欲望が高まったら腰を振る。

 それを十回ほど繰り返したときには、エンリは気持ち良さそうに痙攣しながら呆然自失としていた。俺はそれを見て一度体を起こし、膣から肉棒を取り出した。

 ごぼぼっ、ぶびゅ、ごびゅっ、どろぉ。

 俺が出しに出した精液がエンリの開かれた股の中心から吹き出した。それはシーツを汚し、広がっていく。このエンリをバレアレが見たら、どういう反応を示してくれるだろうか。NTRという言葉に込められていた黒い感情に知らず知らずのうちに当てられていた俺はバレアレへの優越感を抱いて冷笑を浮かべるが、すぐに正気に戻って頭を左右に振った。

 俺のタレントは、本当に恐ろしい。いつか、このタレントを通じて得た知識によって自分が自分ではなくなってしまうのではないか。そう感じると、目の前にいるはずのエンリが遠くなったように感じて、俺はまたエンリの温もりを求めて結合した。

 結局、俺はエンリに二十発以上の種付けを行ってから眠りについた。我ながら化物染みた精力だ。森でモンスターや動物を倒す度に、異常とも呼べる速度で身体能力が向上し続けるこの体はもはやただの村人ではなかった。

 そんな俺だけど、エンリには頭が上がらない。翌朝になって腰を痛そうにしていたエンリから文句を口にされ、夜になって治癒魔法を行使しながらマッサージをしてあげたことでようやく機嫌を取り戻すことに成功した。

 愛する妻との代わり映えのしない日常。こんな日がずっと続けばいい。俺は、心からそう願っていた。



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