彰とカレンの原作放浪記 (はないちもんめ)
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1 超展開は物語のお約束

勢いで書いちゃった・・・


「…何処よここ」

 

カレンは気が付くと何時もとは違う場所で寝ていた。自分の記憶では、確か昨日はルルーシュの家に泊まったはずなのだが、ここは一体何処なのだろうか。

 

誘拐されたのかとも考えたが全く拘束されていないし、何より自身に全く気付かれずに自分を誘拐するのは不可能だと判断した。

 

しかし、だとすればここは一体何処なのだろうか。周りを見渡すと船の中のようだが、こんな場所を私は知らない。

 

自分だけでは解決するのは難しいと判断したカレンは、こういう時に頼りになる二人に電話をしようとする。なお、その中の一人はこういう時にしか頼りにならないのは余談である。

 

しかし、その中の一人であるルルーシュには電話が繋がらない。そして、残りの一人の彰はそれ以前に

 

(電話帳に登録がない…?履歴もないし…どういうこと?)

 

自身のスマホに全く痕跡がない。カレンはスマホにだけ何か細工でもされたのだろうかと考えたが、そんなことをする意味がわからない。

 

謎が深まるばかりだが、彰の番号は既に暗記していたので疑問には思いながらも電話をかけるが『この番号は使われておりません』というメッセージが響いた。どういうことだ?

 

疑問しか湧かない状況だが、頭を使うのは自分の領分ではないと頭を切り替えて行動を開始することにする。

 

部屋の外に出ると、当然のように知らない設備。ここまでよく分からない状況が続くと頭が麻痺してしまうのか、こういうものなのかと割り切り、迷子になりながらも知っている人はいないかと足を進める。

 

すると、目の前に知っている人を見つけてカレンは顔を明るくする。

 

「扇さん!これどういうことなんですか?」

 

「ああ、カレンか。おはよう。どういうことってどういうことだ?」

 

「この状況ですよ!何ですか、この船?一体何でこんな船の中にいるんですか?」

 

「…カレン何を言ってるんだ?」

 

「そっちこそ、何言ってるんですか!あー、もう良いです!なら、ル、じゃなかったゼロは何処ですか?聞きたいことがあるんですけど」

 

「…カレン、疲れてるんだな。もう少し休め。もう過去は戻ってこないんだ」

 

「は?何の話です?」

 

「いいから休め。これから先はもっと忙しくなる。休めるのは今だけだ」

 

「いや、だから一体何の話なんですかって、あー、行っちゃった…」

 

カレンに強制的に休むように言って扇は何処かに去ってしまった。カレンとしては意味がわからない。一体全体自分は何を言ったのだろうか。

 

しかし休めと言われたってこんな意味がわからない状況でゆっくり休めるわけがない。こうなったら、手当たり次第に聞いてやると決めたカレンは船の中を爆走して、情報収集にひた走った。

 

 

 

 

 

 

 

〜二時間後〜

 

「…何?私以外頭がおかしくなったの?それとも私の頭がおかしいの?」

 

アレから手当たり次第に、この状況のことを聞いて回ったカレンだが誰もまともに自分の話を聞いてくれない。

 

全員が『ゼロは裏切り者だったんだ』とか『彰って誰だ』とか『あんな俺たちを利用してた奴の話なんてするな』とかばかり言う。本当に意味が分からない。トドメとばかりに、ルルーシュがブリタニア皇帝になったと聞いた時は思わず飲んでいたジュースを吹き出してしまった。

 

何がどうなると、あんなブリタニアへの憎しみの塊のような男がブリタニア皇帝になるのだ?しかも、スザクが騎士ってどういうことだ?ルルーシュを守るのは私しかいないだろうに何故私じゃなくてスザクを騎士にしてるのだあのシスコンは。

 

カレンの頭には若干というか、かなりの怒りが湧いたが今は考えるべきことではないと頭を振った。とりあえず会ったら一発ぶん殴ってやろう。それでそのまま私がルルーシュの騎士になればそれで許してやるかと考えた。

 

とにかく、あのまま船にいたら頭がおかしくなりそうだったので、扇さんに今日は休みたいと告げて船から降りたカレンは近くの公園でボーっと座っていた。

 

どうすべきか。彰に連絡を取る方法もないし。こうなったら、ブリタニアに行ってルルーシュに直接会うしかないかなと考えたカレンはどうやって密航しようかと手段を模索していた。しかし、そんな時に

 

「ねぇ、お姉さん。このまま俺とワンナイトラブしない?奢るからさ」

 

「えー、どうしよっかなー」

 

とある男と女の声が聞こえる。聞き覚えがある、というかしょっちゅう聞いてるようなと思いながらカレンはそちらに目を向ける。

 

「今ならさー、俺何やっても問題ないんだよね。スーパータイムって感じ?」

 

「ちょーウケる!何、それ?」

 

「俺のこと知ってる奴が誰もいないってことよ。だから、俺が何しても誰かに咎められることなんて「この異常事態に何をやってんのよ、あんたはー!!!」ランナウェイ!」

 

男は突然蹴飛ばされたことに文句を言おうとするが、殴った人物の般若のような顔を見て青ざめ、カタコトで話し始める。

 

「…オヒサシブリデスネ、カレンサン」

 

「昨日会ってるわよ!ゴメン、迷惑かけたわね。この馬鹿私の知り合いなの!後で私から説教しとくから!」

 

彰と喋っていた女の人にそう言ったカレンは彰の首根っこを掴みながら歩き出す。

 

「いや、ちょ、待て!!後もう少し!一晩待って!そうすれば、俺の昂ぶりも静まるから!」

 

「待てるかあ!その昂ぶりを抱えながら生きていきなさい!」

 

彰の必死の抗議も完全に無視され、悲しくも彰は連れ去られるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で?この状況をあんたはどう思う?」

 

「どうってお前・・・そうだな」

 

場所を移動し、周りに人がいないことを確認したカレンは彰にこの状況について確認をする。

 

「少し派手だが・・・まあ、お前の場合は派手な服の方が似合うからそのままで良いと思うぜ?個人的な好みから言えば、もう少し控えめな色彩の方が俺は好きだが」

 

「誰が私の服の採点をしろって言ったのよ!私は昨日と全く違うこの状況について聞いてんのよ!」

 

「ああ、その話か」

 

なるほどねと彰は一人で納得するが、なぜこいつは頭は良いのにそんなことが分からないのだろうか。

 

「俺も色々考えたが・・・普通に考えたらあり得ない一つの可能性にたどり着いた。というか、消去法でそれしかねえ」

 

「え?どういうこと?」

 

「言ったって信じないだろうから、自分で確認しろ。カレン、今日が何日か覚えてるか?」

 

「そりゃあ、覚えてるわよ」

 

「んじゃ、スマホで確認してみ」

 

そう言われたカレンは自分のスマホで日付を確認する。日付は自分の記憶と同じだったが、年が変わっていることに気付いたカレンは首をかしげる。

 

「あれ?彰。スマホが壊れてるんだけど」

 

「俺も最初はそう思ったが、どうも違うみたいだ。ほかの人に聞いてもスマホの年を言ってたぜ。当たり前みたいにな」

 

「はあ?何よそれ?」

 

「つまりだ。間違ってるのは世界じゃなくて俺たち二人ってことだ」

 

カレンは彰の言葉を反駁して考える。その結果、出した結論は

 

「・・・え?嘘でしょ?私たち二人ともタイムスリップしちゃった?」

 

自分達二人は未来に来てしまったということだった。しかし、カレンの言葉に彰は首を振る。

 

「違うな。正確に言えばこれはタイムスリップじゃない」

 

「いや私だってあり得ないと思うけど、現に未来に来てるじゃない!」

 

「確かに未来ではあるが、この世界は俺たちの未来じゃない・・・恐らく、この世界は

 

 

 

 

 

 

可能性の世界。所謂並行世界だ」

 




さて、この二人の乱入でどうなるのやら


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2 困ったときに頼れる人がいたら嬉しい

主人公よりもカレンの方が主人公してるような…


「はあ!?並行世界!?」

 

彰から聞かされた話にカレンは衝撃を受ける。そんなカレンの反応を予測していたのか、彰は大した反応を見せずに続ける。

 

「恐らくな。未来というには俺たちの記憶と符合していないことが多過ぎる。それにどうやら、俺はこの世界だと存在していないらしいしな」

 

言われてみればカレンには思い当たる節がある。

 

誰に聞いても彰など知らないと言う。こんなキャラが濃い奴を忘れることの方が難しいので知らないわけがないと思っていたが、そもそも存在していないとすれば、まだ納得ができる。まあ、本当にここが並行世界だとしたらの話だが。

 

「てかさ、本当にそんなことあり得るの?私たち皆に騙されてるんじゃないの?」

 

「そうだとありがたいんだが、どうやらそうでもなさそうだ。それに昨日よりカレンの胸が少し大きくなってるから時間の変化は間違いなく起こっているみたいだし「どこ見て、何を喋ってんのよ、変態ぃぃぃぃ!!」ペルソナ!?」

 

彰のセクハラ発言にカレンは顔を赤くし、胸を隠しながら彰を思い切りぶん殴る。

 

カレンに殴られた箇所を抑えながら、彰はやっとの思いで話を続ける。

 

「と、とにかくだ。並行世界かどうかはともかく、ここが俺たちが知ってる世界じゃないのは間違いない」

 

「そうだったとしても、何でそんなことに?私普通に寝てただけよ?」

 

「俺もだよ。まあ、何かのギアスなんじゃね?何でもありだからなアレ」

 

彰の言葉にカレンは何故か凄く納得した。絶対遵守なんてのがあるんだから何でもありなのだろう。

 

「となると、何時元の世界に戻れるか分からん。だからこそ、俺は自由なこの瞬間を大事にするためにタイプの女の子に片っ端から声をかけていたわけだ」

 

「何でその考えから、その結論に至るのよ!あー、もうあんたは本当に!」

 

思わずカレンは髪を掻き毟る。何でコイツはこんなに残念な奴なんだろう。

 

「とにかくナンパは終了!騎士団の皆は良く分からないこと言ってるから、ルルーシュに会いに行くわよ!」

 

「どうやって行くんだよ?アイツブリタニア本国にいるんだろ?」

 

「あんたなら幾らでも方法知ってるでしょ?」

 

人はそれを丸投げと呼ぶ。それを聞いた彰は、んーっと悩むが

 

「やめとこう。どうにも嫌な予感がする」

 

「何でよ?多分C.C.もアイツと一緒にいるだろうし、ギアスのことなら分かるんじゃない?」

 

「そりゃ、そうだが…どうにも気になるんだよなぁ…ルルーシュが裏切ったってセリフが」

 

「何か誤解があるんじゃないの?アイツって誤解されやすいタイプだし」

 

「そんな軽いレベルじゃないだろ。何せお前がルルーシュと一緒にいないんだからな。異常に近いレベルだ」

 

彰の言葉にカレンは首をかしげる。

 

「何でそんなことわかんのよ?こっちの私が私みたいにルルーシュと近しいかどうかなんて分からないじゃない」

 

「いや、近しいはずだ。お前確か扇さんや他の騎士団の人たちと話したって言ってたろ?」

 

「え?うん。話したけど」

 

それが一体何なのだろうかとカレンは思う。

 

「つまりは…だ。この世界も俺たちの世界も基本的な人間関係は変わってないんだ。もし変わってれば、扇さんはカレンのことを知らないはずだ。他の団員もな。それが知ってるということは向こうで仲が良い人は基本的にこっちでも仲が良いと考えて良い。確かにルルーシュとカレンを会わせたのは俺だが、恐らく俺がいなくてもお前らは何らかの事情で出会ったんだよ。そもそも、学園も同じだしな」

 

なるほどとカレンは頷く。確かに私がルルーシュが皇帝やると聞いたら間違いなくついて行くだろう。拒否しようものなら、強引にでも合流する自信がある。

 

そんな自分がルルーシュについて行かずにこんな所にいるということは…

 

「…ねえ。これ凄く大変な状況なんじゃないの?」

 

「そうだな。恐らくトンデモなく面倒な状況になってる」

 

「…どうしよう」

 

「どうすっかなぁ」

 

カレンに頼られた彰もどうすべきかは分かっていないようだ。しょうがなく恐る恐るカレンは自分から提案してみる。

 

「とりあえず…騎士団に戻るのはどう?」

 

「その場合俺の場所はねぇし、そもそもルルーシュと戦うことになりそうだが良いのか?」

 

「嫌よ」

 

「…俺たちはこっちのルルーシュを知らんぞ。アイツが間違ってるのかもしれん。それでもか?」

 

「それでも…よ」

 

カレンは真剣な顔で拳を握り、言い放つ。

 

「私は別にアイツが絶対正しいなんて言う気はない。間違ってるなら命懸けで止めるわ。だけどそれはナイトメアや銃を使った戦争じゃない。止めるなら私が私の拳を使ってぶん殴って止める!絶対にアイツを殺さない。例え殺されたとしてもね。それが私の信念よ」

 

本当にこの娘は生まれてきた性別を間違えたんじゃないのだろうかと彰は本気で思う。格好良すぎなんだけど。男らしさが天元突破してんだけど。

 

「相変わらずのバカだねぇ…まあ、嫌いじゃないけど」

 

そんな彰の言葉にカレンはフンと鼻を鳴らす。

 

「何言ってんのよ。あんたも似たようなもんでしょ?」

 

「俺はお前みたいに熱血はできねぇよ。ただ、納得ができなかったらアイツがやろうとしてることを邪魔しまくって計画を頓挫させるだけだ」

 

「どう考えても私よりもタチが悪いじゃない」

 

「力ずくで止めるよりマシだろ」

 

二人ともお互いをジト目で睨み合う…が、最終的に堪えきれずに笑い出した。

 

「まあ、今の状況じゃあ何もできないけどな。まず、情報がねぇ。仲間もいねぇ。ほとんど詰んでる状況だ」

 

「騎士団の皆を説得できない?」

 

「何も分かってない状況でか?無理言うな。そもそも騎士団の情報だけだと足りねえんだよ。見方が偏るからな。だから中立的な意見が欲しいんだが…ねぇんだよなぁ…」

 

本当に困ったと彰は頭をかく。

 

「それじゃあ、どうすんのよ?私たちルルーシュとも騎士団の皆とも違う道を行くんでしょ?そんなのに付き合ってくれる人なんているの?」

 

「だから、それを考えて…」

 

言葉の途中で彰は何かに気付く。そんな彰の様子を見てカレンは顔を輝かせる。

 

「何?何?誰か心当たりがあるの?」

 

「そんな凄いものじゃないが…一人だけいたな。俺たちに協力してくれそうな奴。正確に言えば、ルルーシュの味方である俺たちに協力してくれそうな奴が」

 

「誰よ?C.C.?」

 

「本当はそれがベストだが…どう考えてもアイツはルルーシュがしたくないことを手伝わんだろ」

 

自分が本当は望んでたとしても。したくなかったとしても。ルルーシュが決めたことなら反対せずに最後まで付き添う。そういう女だ。俺とカレンとは役割が違うんだ。

 

「じゃあ、誰なのよ!」

 

「お前も良く知ってると思うがな。行くぞ。腹が減ったけど…まあ、アイツなら初対面の俺にでもご飯くらい作ってくれるだろ」

 

 

 

 

 

 




次はあの子の登場です


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3 恋する乙女はいつの時代も存在する

結構ご都合主義です


「本当に大丈夫なの?シャーリー。急に体調悪くなったって言ってるのにあんた一人で留守番とか」

 

「私をいくつだと思ってるのよ。大丈夫だよ、お母さん。留守番くらいできるって」

 

実家に様子を見に帰ろうとする自分の母が自分を心配する様子を見てシャーリーは苦笑いする。

 

まあ、無理もない。

 

この間黒の騎士団との侵攻とそれに伴う租界での大爆発があったばかりなのだ。大切な一人娘を残して出かけることに不安を覚えない親などいないだろう。

 

だからこそ本当はシャーリーもついて行くはずだったのだが、諸々の事情で行くわけにはいかなくなってしまったのだ。

 

「ちゃんと戸締りするのよ?後、ご飯も食べること。それと」

 

「はいはい、分かったから!早く行きなよ!」

 

なかなか出ていかない自分の母の背中をグイグイと押して、強引に出発するのをシャーリーは見送った。

 

その後、車の音がして完全に出かけたのを確認してからシャーリーは、ほっと溜息を吐いた。

 

「出かけたから、もう出てきても大丈夫だよカレン」

 

「ほんっとゴメン、シャーリー!無理なお願いして!」

 

階段からヒョコッと降りてきたカレンは本当に申し訳ないという態度を全身から出しながら手を合わせて謝る。

 

カレンが家に来たのは一時間ほど前のこと。シャーリーが部屋へと入ると、いきなり口を塞がれて「お願い静かにして!今から顔を見せるけど…絶対に声を出さないって約束してくれる?」と言われたのだ。

 

突然の展開に恐怖したが、その声には聞き覚えがあった。なので、反射で頷くとその声の主はシャーリーに自身の顔を見せた。

 

その顔は予想通り、シャーリーの見覚えがある顔だった。

 

「カ、カレン!?こんな所で何やってるの!?」

 

「分かるのね!?私のこと知ってるのね!?」

 

「そりゃ、知ってるよ!」

 

「良かった!アイツの予想は当たってた!ありがとうシャーリー!ありがとうこっちの私!でかしたわ!」

 

カレンは、よっしゃーというポーズを取って喜びを表していたがシャーリーには何のことかわからない。カレンは一体何を言っているんだろう。

 

そんなカレンを何となく眺めていると急にカレンは真剣な顔になり、シャーリーの肩を掴む。

 

「って、こんな事してる場合じゃないの!シャーリーお願い!

 

 

 

 

 

 

 

ルルーシュの真実が知りたいの!協力してくれない?」

 

カレンのその言葉はシャーリーの胸に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、カレンに言われてシャーリーは体調が悪くなったと母親に告げて一緒に行くはずだった母親の実家への帰省を断り今に至る。

 

ようやくじっくり話せそうになったので、カレンにルルの真相を聞こうとするがカレンはその前に私の話を聞きたいと言う。それもここ二年くらいの話を。

 

何でそんなことを書きたいのかとも思ったが、必要だと言うので延々と四時間ほど休憩を挟みながら話し続けた。話終わった後、カレンは難しい顔をして唸っている。

 

「やっぱり流れは大分違うかぁ…そりゃあ、彰が居ないんじゃしょうがないかもしれないけど…これじゃあ、何があったか全く予想できないわね…」

 

流れ?彰?予測?何の話だ?

 

「ねぇ、何の話?」

 

「ん?いや、その話はまた後で。ところで、これで全部?言ってないことない?」

 

「え?い、いや、ないけど」

 

カレンの言葉にシャーリーは動揺しつつも否定する。カレンはその言葉を疑いもしなかったようだが、本当はシャーリーには隠していることがあった。

 

とは言え、これは言うわけにはいかないのだ。言えば自分の頭がおかしくなったのかと思われそうだし、何より物凄く怖いことのような気がするからだ。

 

そんなことをシャーリーが考えていると玄関のチャイムが鳴った。誰だろうと思い、玄関を開けたシャーリーは固まった。何故なら

 

「こんばんは、シャーリー。久し振り。こっちでも元気そうで良かったわ」

 

今までリビングで喋っていたはずのカレンがいたからだ。

 

驚きすぎると言葉が出なくなるのかシャーリーは無言で固まるが、そのカレンはシャーリーの脇をすっと通り過ぎてリビングへと向かった。

 

慌てて追いかけると、当然だが二人のカレンがリビングで鉢合わせしていた。

 

何がどうなっているのか分からないシャーリーの頭は疑問符で埋め尽くされるが、先に来ていたカレンは嫌な顔をして話し出す。

 

「相変わらず似過ぎて気持ち悪いわね…早く変装脱ぎなさいよ」

 

「いやあ、彰のことを知らないシャーリーの前で彰として現れるわけにもいかんだろ?」

 

そう言って後から現れたカレンが顔を手で覆うと全く知らない男の人になっていた。

 

「あ…あなた…誰?」

 

「彰ってもんだ。まあ、カレンの戦友だな」

 

「兼腐れ縁ね。心配しなくて良いわよ、シャーリー。コイツは人間性と性格と常識以外は信用も信頼もできる奴だから」

 

「ねぇ、それ俺の大部分を信頼も信用もしてないってことじゃないの?」

 

どうかしらねーと言いながらニシシという言葉が似合いそうに笑うカレンを見ると仲が良いのだということは言われずともシャーリーには感じられた。

 

「ま、そんなことはどうでも良いか。んで?何かシャーリーから聞いて分かったか?」

 

「大筋の流れはね。あんたの方は?」

 

「とりあえず何でルルーシュが騎士団から追い出されたのかは分かったよ」

 

カレンが一人でシャーリーの所に向かっている時に彰は彰でカレンの顔を借りて騎士団の人から情報収集をしていた。

 

だったら私が行くとカレンは言ったが、「お前、言いたくないことを誰かに上手く話させることができるほど口が上手いの?」とか「お前が自分の感情を抑えて当たり前の顔をして座ってることができるとは思えん」とか言われると黙るしかなかった。

 

「本当に!?ねえ、一体何があったの!?」

 

彰の言葉にガタンと席を立って彰の顔を掴むカレンに彰は落ち着くように言ってから話し始める。

 

「俺の話は全員が揃ってからだ。一応、今後の作戦を考えたんだがどう考えても人手が足りないんでな。二人ほど信頼できる奴に声をかけた」

 

「え?それって」

 

そして再びシャーリーの玄関のチャイムが鳴る。するとそこには、久しぶりの顔があった。

 

「か、会長!?どうしてここに!?」

 

「おひさー。リヴァルもいるわよ。カレンに二人とも呼ばれてね」

 

「よう、シャーリー。上がって良いか?」

 

予想外の二人の登場にシャーリーは目を白黒させたが、側に来ていた彰は当たり前のように告げる。

 

「悪いな、シャーリー。俺が呼んだんだ。悪いが上がってもらって良いか?」

 

「う、うん、この二人なら構わないけど」

 

いや、あの人誰!?と二人には聞かれるが誰なのか私の方が知りたい。カレンの知り合いとしか聞いてないし。

 

すると今度はリビングからカレンも顔を出して彰に怒鳴りつける。

 

「あんた私の声を勝手に使うのやめなさいよ!」

 

「この方が話が早いんだよ。我慢してくれ」

 

カレンと彰は普通のように対応しているが、私も含めた三人は何がどうなっているのか分からずに立ち尽くすしかなかった。

 

しかし、そんな中でも流石は会長と言うべきかカオスの空間をまとめて話を進めようとする。

 

「はいはい!とりあえず全員静かに!で?カレン?何の話があって私たちを呼んだの?ルルーシュのことについて話したいって言ってたけど」

 

呼ばれたカレンは無言で彰を見る。おい、お前の何を言ったんだ?とでも言いたげに。

 

その視線を受けた彰は肩をすくめて答える。

 

「わりーな、会長。呼んだのは俺なんだ。そうだな…シャーリーが良いって言ってるし、とりあえずリビングで話さないか?」

 

 

 

 

 




原作の流れなのでもう一個の話とは違って基本シリアスです


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4 ダチを救えるのは同じダチしかいないんだよ!

結構駆け足の話になっちゃいました


「ふーん、なるほどなぁ…こっちの流れは大分違うんだな」

 

先程、シャーリーの家でシャーリーが作ったご飯を食べながら初対面?のお食事会が始まった。

 

彰の世界の話とこっちのシャーリー達の世界の話。加えて、ルルーシュが何故騎士団を離れなければならなくなったのかについての話まで話した。流石に平行世界の世界の住人だという話を信じてくれるとは思わなかったが会長は「私はカレンを信じてるし、何より二人とも嘘をいっているように見えない」という意見から三人とも信じてくれるようになった。

 

会長の心の広さに正直彰は感動していた。あのシスコンに半分でも良いから会長の心の広さが備わっていれば良かったのに。

 

しかし、ロロっていう弟の件は驚いたな…シャーリーの話と会長とリヴァルの話を合わせると記憶を操るギアスか何かを学園の皆にかけたとしか思えんが、そんなギアスまであんのかよ…もうやだ、この世界。

 

それに加えてルルーシュも何考えてるのかわからんし…

 

「困ったな…ルルーシュが何を考えてるのかサッパリ分からん。あのシスコン何をしたくて皇帝なんかやってんだ?」

 

「あ、あのさー、彰?ちょっと良いか?」

 

「何だリヴァル?」

 

「いや…アレを止めた方が良いと思うんだけどさ」

 

話しかけられた彰は何事だと言うようにリヴァルを見る。するとリヴァルは恐る恐ると言うように横を指差す。気付けば会長とシャーリーもポカンとしてそっちを見ている。彰も何だろうと思い、そちらを見ると

 

「何をやってんのよ、こっちの私ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!そんなルルーシュの嘘に騙されてるんじゃないわよぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

カレンが阿修羅のような顔で自らに向けて怒りの声を全力で叫んでいた。近所迷惑だから止めなさい。

 

彰は、ああと返事をすると何事もなかったかのように言う。

 

「気にするな。ただの新手の自己嫌悪だ」

 

「止めないのか!?今にも何か壁とか叩きそうだぞ!?」

 

「大丈夫だ、シャーリーの家でそれをやらないくらいの理性は残ってる。俺の家か自分の家なら間違いなく破壊神と化してただろうがな。良かったよ、壁が無事で」

 

「お前が心配してるの壁の方なのか!?」

 

そうに決まっている。あんな化け物の身体など気にするだけ時間の無駄だ。

 

現在、カレンが自己嫌悪?しているのはルルーシュが何故騎士団から追い出されることになったのかを聞いたからだ。彰としては、放っておけば良いと思うのだが他の皆はそうでもないらしい。実際、会長とシャーリーはカレンを慰めようとしている。無駄だと思うがな。

 

「ま、まあまあ、カレン。落ち着いて。話を聞いた限りだとルルーシュが悪いと思うし、何よりあんた平行世界?から来た別のカレンなんでしょ?完全にあんたのせいじゃないじゃない」

 

「そ、そうそう。捕まって帰ってきてイキナリそんな状況になってたらしょうがないよ!それに…多分私もルルからそんなこと言われたら、動揺しちゃうと思うし」

 

「そういう問題じゃないのよ!」

 

慰めていた会長とシャーリーの言葉をカレンは否定する。確かに客観的に見ればカレンには情状酌量の余地はある、というか普通に責めるべき対象ではないと思う。

 

だが、これはそういう問題ではない。カレンは自身で自身を許せないのだ。だとすれば自分で許してない以上、他人の励ましは何の意味もない。

 

「話を聞いただけだから分からないけど…多分コッチの私はギアスのことも、ルルーシュのことも多少は知っていたんだと思う。だとしたら…私はルルーシュと騎士団の皆の橋渡しをしなきゃいけなかったのよ!ルルーシュを疑うんじゃなくて、ルルーシュのことを信じなきゃいけなかったのよ!それができたのは私しかいないんだから…なのに…なのに…あー、もう!」

 

すると突然カレンは自身の頬を思いきり自身の手でバチーンと叩く。かなり強い衝撃だったのでカレンの頬には手形がついた。

 

カレンの行動に三人は驚いているが、彰は何の感情も抱かずにシャーリーから出されたお茶を飲んでいた。

 

皆の反応を気にも止めずにカレンは、そのまま俺の隣の椅子に着席する。

 

「気が済んだか?」

 

「散々後悔もしたし、弱音も吐いたからこれで良し!後はルルーシュに謝って、今後こそルルーシュを信じれば問題ないわ!」

 

凛とした目で言うカレンを見て彰は吹っ切れたのだと悟ったので、話を進めるぞと皆を再び集めた。

 

だから言ったんだよ、心配いらないって。

 

間違って。後悔して。泣いて。苦しんで。それでも前を向いて歩き続ける。自身が間違ったことを次に生かして。だからこそ誰よりも人間らしくて誰よりも真っ直ぐな人間。それが紅月カレン。そんな人間にこれぐらいのことで、励ましなど不要だ。

 

「行くわよ、彰!会長、シャーリー、リヴァル!色々ありがとね!今から私たちはブリタニアに行ってルルーシュをつれてくるから「おい、待てそこのイノシシ女」ぐぇ!ちょ、何すんのよ!」

 

玄関に行こうとしたら後ろの襟を掴まれて止められたカレンは抗議するが、彰は無視してため息を吐く。

 

真っ直ぐなのもここまで行くと問題かもしれない。

 

彰がそう言うとカレンはフンと鼻を鳴らして答える。

 

「何言ってんのよ。だからアンタがいるんでしょ?」

 

「俺を何だと思ってんの?お助けマンか何かなの?」

 

「違うわよ。私たちはルルーシュの左腕と右腕。アイツを守るのが私たちの役割!私にできないことはアンタがやる!アンタができないことは私がやる!つまり!」

 

カレンは自身に指を向け自信満々に言い放つ。

 

「アンタがいれば私は最強よ!!何があったって絶対アイツを守れるわよ!」

 

カレンから向けられる絶大な信頼に彰も多少恥ずかしくなる。

 

何でこの娘こんな恥ずかしいこと自信満々に言えるんだろう。全く勘弁してほしい。こんな信頼を向けられたら…応えたくなっちゃうじゃないか。熱血は趣味じゃないってのに。

 

側で見ていた会長とシャーリーとリヴァルは笑いながら見てるし。

 

「最強か…そっちのカレンが羨ましいわねー。彰みたいに面白い人と一緒にいられるとかさ。何で彰がコッチの世界にはいないのよ」

 

「俺に言われましても。文句は世界に言ってくださいな」

 

肩を竦めて彰は答えるがそろそろ真面目な話をしなきゃならないと思い、真剣な顔で三人を見た。

 

「会長。シャーリー。リヴァル。聞いてくれ。俺たち二人は今からルルーシュの真意を知るために行動する。できれば三人にも協力して欲しい…がちゃんと考えてから答えを出して欲しい」

 

「な、何で?」

 

少し恐怖を感じながらシャーリーは質問をする。

 

「命がかかっているからだ。俺の今から言う作戦は普通に犯罪だ。バレたら死ぬし、良くても犯罪者の仲間入り。そのリスクを踏まえた上で決断して欲しい。俺のここから先の話を聞くかどうかをな。ここが分水嶺だ。これ以上聞くなら戻れないぞ」

 

三人は真剣な顔で考えているようだ。正直、こんなの手伝う方がおかしい。だから聞かないのが普通なのだ…普通なのだが

 

「わ、私!協力する!だって、このままじゃもう二度とルルに会えない気がするから!もう一度会って話したいから!だから」

 

恐怖を感じながらも迷いなくシャーリーは言い切った。

 

どうやら普通ではない奴等であるらしい。

 

「下手すると死ぬぞ。それでもか?」

 

「そ、それでも!だって私…このままじゃ絶対後悔する!」

 

「私も協力するわ。命はかけないけどね」

 

ニコッと笑って言う会長に疑問符が浮かぶ。話を聞いてないのか?

 

「いや、だったら無理ですよ。この作戦は「彰とカレンがいたら最強なんでしょ?だったら失敗するわけないじゃない」…」

 

会長の言葉に彰は苦笑いする。相変わらず良い性格してるなこの人は。

 

「だったら俺も協力するぜ!絶対負けないんだろ!カレンと彰がいればさ!それにアイツ約束破ろうとしてんだよ!皆で花火を見ようって約束を!その約束を破らせるわけにはいかねぇよ!」

 

リヴァルも少し震えながら返事をする。

 

全く素晴らしい馬鹿どもだな。友達一人のために全員が命をかけるという。

 

本当に恵まれてるよ…あのシスコンは。アイツの思いを知りたい。そんなことのために命をかける馬鹿が五人も周りにいるんだからな。

 

「なら、話を進める…良いか?作戦はな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彰の作戦を聞いて会長は爆笑しているが他の全員はドン引きしてる。まあ、我ながら無茶苦茶な作戦だと思う。

 

「お、お前正気か!?そんなことできんのか!?」

 

「できるかどうかじゃない。やるんだよ」

 

「そんな精神論の話か!?一番危ないのどう考えてもお前だぞ!?」

 

「そんなもん知ってる。だけどなぁ…俺にはアイツの真実を知りたい以上にやりたいことがあるんだよ」

 

「え?何だよそれ?」

 

リヴァルの声を他所に彰はクククと笑い出す。考えてみれば絶好の機会じゃないか。あの自信満々なシスコンの鼻をヘシ折る機会としてはこれ以上ない。

 

「あのスカしたツラをギャフンと言わせたいんだよ。面白れぇ…アイツは何か嘘をついて、皆を騙してる。これは化かし合いだよ。俺とアイツ。どっちの嘘が上か勝負といこうじゃねぇか」

 

一人で燃えている彰を見てシャーリーは心配してカレンを見るが、カレンも両手を挙げる。どうしようもないというポーズだった。

 

笑い終えた会長は眼の涙を拭きながら会話に加わる。

 

「面白い!面白いわよ、彰!あんた最高!報酬として元会長権限としてあなたを生徒会臨時会長に任命します!」

 

「そりゃありがたい。じゃあ、この作戦で進めるってことで良いですか?」

 

「もちろん!」

 

どんどん進む話にシャーリーが本当に大丈夫かカレンに質問をするとカレンは苦笑いで答えた。

 

「無茶苦茶だとは思うけど…これしかないでしょ。それに彰と会長が組むならルルーシュに勝ち目はないわよ」

 

「え?何で?」

 

シャーリーの言葉にカレンはニヤリと悪そうに笑う。

 

「あの二人はね。私たちの世界じゃあ…あのルルーシュが唯一制御できなかった二人なのよ」

 

更に話を進めてテンションが変な方向に上がった会長が宣言する。

 

「良いわね、皆!これは犯罪じゃないわ!これは調子に乗った現会長を臨時会長と一緒に懲らしめる生徒会イベントよ!元生徒会会長!ミレイ・アッシュフォードが命じます。イベント名は『現生徒会長の嘘を暴け!』!異論がある人はいる?」

 

「「「「異議なし!!!」」」」

 

全員が会長の言葉を了承する。全員覚悟は決まった。後は進むだけだ。

 

彰が締めとばかりにニヤリと笑い、言い放つ。

 

「そうだ、俺たちは皇帝ルルーシュなんか知らん。俺たちはアッシュフォード学園の現生徒会長ルルーシュを連れ戻すだけだ。さあ、行くぞお前ら!あのシスコンのスカした面ぶん殴りに行くぞ!」

 

「「「「おおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




無理あるかなーとも思いますが、我慢してください!


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5 出かけるときは晴れでも折り畳み傘を持っていけ!

我ながら無茶苦茶である…


アッシュフォード学園を見てルルーシュは少し懐かしい思いを感じたが、一瞬でその思いを打ち消す。今の自分はそんなことを考える立場にいない。

 

同時に目の前にいる赤毛の彼女を見ても、心を揺るがす訳にはいかない。自分はカレンと初対面を演じなければならないからだ。だがしかし

 

「会場まで案内係を務める紅月カレンです!よろしくお願いします!ルルーシュ皇帝!」

 

カレンの態度には何か引っかかる。ルルーシュはそんなことを感じた。

 

自分は彼女を捨てたはずだ。彼女はそれで傷ついたはずだ。

 

そのはずなのに、彼女の態度からはそんなことを少しも感じない。まるで久し振りに自分に会えて嬉しいといったような感じすら覚える。

 

そんな彼女を見てルルーシュは悟った。彼女は自分を未だに大切に想ってくれているのだと。

 

その考えはルルーシュの心を蝕む。それではダメなのだ。彼女は自分を憎んでくれなくてはならない。彼女は自分の敵で居てくれなくてはならない。彼女が自分と同じ修羅の道を歩むようなことがあってはならない。だからこそ

 

「紅月隊長ですね。お願いします」

 

自分は彼女の思いを完全に断ち切らなくてはならない。ルルーシュは最大限の他人行儀の話し方をした。自分は彼女など知らないと。自分は彼女のことを何とも想っていないと伝えるために。

 

そのルルーシュの反応にカレンは少しムッとした顔をするが、すぐに切り替えてルルーシュを校内へと案内するために先導する。ルルーシュは当然後ろからついて行っている。だから気付かなかった。

 

目の前のカレンが密かに笑っていたことに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私ね。貴方に感謝してる」

 

二人だけの空間。他に聞いているものはいない。だからこその言葉だと思い、ルルーシュは耳を傾ける。

 

「貴方のおかげで私は救われた。貴方のおかげで私は心の底から笑えるようになった。貴方のおかげで私の人生は…華やかになった」

 

振り返って後ろのルルーシュにニコッと笑うカレンの顔からルルーシュは目を背けた。自分はそんな風に感謝される対象ではない。

 

そんなルルーシュを無視してカレンの独白は続く。カレンは更にルルーシュに近寄った。

 

「だから正直…これからすることに若干の罪悪感はあるんだけど…これしか貴方の考えを知る方法はないみたいだから…ごめん我慢して。貴方のやってることが正しかったら後で死ぬほど謝る…だから」

 

そう言うとカレンは拳を強く握り、キッと目つきを鋭くさせる。何かマズイと感じたルルーシュは行動を起こそうとするが一歩遅かった。

 

「痛いだろうけど…我慢してね!」

 

カレンはルルーシュの腹を思いきりぶん殴った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜3日前〜〜

 

「3日後にルルーシュはアッシュフォード学園で合衆国と会議をする。これは間違いない」

 

生徒会の四人を集めて彰は作戦の詳細を説明する。

 

「そこで明日カレンは何としてでも騎士団の皆に自分がルルーシュを一人で会場まで案内すると伝えろ」

 

「私が?」

 

「そうだ。ギアスがあれば人数などいたところで問題にならない。そう言えば多分案内係がお前一人でも問題ないということになるはずだ。操られたら自分を撃てとついでに言っとけ。念のため、案内する時にお前は一応ギアスを防ぐサングラスくらいはかけとけよ」

 

「そんなこと言ったってルルーシュの側から誰か来るかもしれないわよ?」

 

「確かにその可能性はある…だが、その可能性は少ない」

 

「どうして?」

 

「アイツの性格だ。敵地に堂々と一人で乗り込む方がインパクトが大きい。相手の油断も誘えるしな」

 

「そうかもしれないけど、案内に何の意味があるのよ?」

 

「焦るな。ところで、入り口から会場に行くには階段がある広いスペースを通る必要があるでしょ?会長」

 

「ええ、そうね」

 

「ククク…予想通りだ。あそこにルルーシュを連れて行ったらカレンお前は…ルルーシュを思いきりぶん殴れ。そのまま気絶させろ」

 

「は!?いやいや無理でしょ!?皆に監視されてるのよ!?」

 

「それはない。あの場所だけは構造上、外から監視はできないようになってる。だから監視カメラだけになるだろうが…俺がハッキングしてカレンが建物に入ってからの30分は同じ映像を流すようにする」

 

そこまで言ってから彰はニヤリと笑う。

 

「アイツに正攻法で挑んでも勝ち目はねぇ。だから、俺たちは奇襲でいかせてもらう。どう考えても騎士団の幹部であるカレンが国際問題になるようなことをするわけがない。だからこそやる。アイツのシナリオを途中から崩してやるんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「がはっ!?」

 

衝撃でルルーシュの意識が一瞬遠のいた。だが、それでもカレンの攻撃は収まらずそのまま腕でルルーシュの首を極める。

 

呼吸をすることも厳しかったが何とかルルーシュは声を絞り出す。

 

「しょ…正気か!?仮にも国のトップに…こんなことを…国際問題になるぞ」

 

「正気でこんなことができると思う?完全にイかれてると自分でも思うわよ」

 

「俺を…殺す気か…」

 

「そんな訳ないでしょ。アンタを殺すなんてあり得ない。アンタを殺すくらいなら死を選ぶわよ」

 

「このバカ…が」

 

その言葉を最後にルルーシュは意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは…シャーリー!?リヴァル!?」

 

「ルル!目が覚めたんだね!」

 

「良かったぜー、ルルーシュ!目が覚めないから死んだかと思っちゃったぜ!」

 

目が覚めたルルーシュは目の前にシャーリーとリヴァルが居ることに驚く。何をやってるんだと怒鳴ろうとしたが、自らがパンツ一丁になって縛られていることに気付いた。

 

自らの友達のあり得ない行動にルルーシュは皇帝の仮面を外してただのルルーシュとして話してしまう。

 

「な…何を考えてるんだお前ら!?こんなことをして無事で済むと思ってるのか!?」

 

「思ってないわよ。久し振りねー、ルルーシュ。元気そうで何よりだわ」

 

「会長まで…!?今すぐ俺を解放してください!今ならまだ間に合います!」

 

「そうもいかないわねー。これからアンタは私たちに連行されてシャーリーの家まで連れて行かれるんだから。解放されるのはしばらく無理ね。諦めなさい」

 

「な…何を考えてるんですか!?ふざけるのも大概にしてください!会議場に俺が行かなければ俺の身に何かあったのは間違いない!そうすればブリタニア側も黒の騎士団も黙ってない!全員国際法違反で死刑ですよ!?」

 

「そうだろうな。だが逆に言えば会議場にルルーシュ皇帝が現れればお前の身に何かあったなど誰も思わない。もちろんスザク達もな。そうすれば表面上は問題なく進むだろうさ。お前の筋書き通りにな」

 

突然聞こえる声にルルーシュは後ろを振り向く。そこには俺を気絶させたカレンと知らない男が俺の服を着て座っていた。

 

「誰だお前は!?お前か!?お前がカレンや会長達を騙したのか!?コイツらを巻き込むつもりで!」

 

ルルーシュの怒声に彰はやれやれと首を振る。

 

「勝手に勘違いしてんじゃねぇよ。これは皆が自主的にした行動だ。まあ、誘ったのは確かに俺だけど」

 

そう考えればルルーシュの言葉もあながち検討外れでもないなと彰は思った。

 

「ま、そんなことはどうでも良い。じゃあな。俺は今からルルーシュ皇帝として会議場行ってくる」

 

また会おうと行ってカレンを連れて歩き出す彰を見てルルーシュは血相を変えた。

 

「馬鹿か!?俺の服を着たくらいで俺になれるはずがないだろうが!」

 

「服だけならな。んじゃ、これならどうだ?」

 

くるっと振り返った彰の顔を見てルルーシュは言葉を失った。その顔は先程までの彰の顔ではなかった。その顔は

 

「俺…だと?」

 

ルルーシュの顔になっていたからだ。

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜再び3日前〜〜〜

「てかさ、ルルーシュを気絶させて何になるんだ?」

 

リヴァルの質問に彰は答える。

 

「ん?拉致る」

 

「おま!?そんな何でもないみたいに!」

 

「それしか方法ないだろ。考えても分からないなら知ってる人に聞くしかねぇ」

 

「いや、彰。悪いけどそれは無理よ」

 

黙って聞いていた会長も彰のあり得ない提案に口を挟む。

 

「ルルーシュが会議場に来なかったら大問題よ。皆黙ってないわ。絶対に学校中を探索されて見つかるわ」

 

「そりゃそうなるでしょーね。だけど、それはルルーシュが行かなかったらの話。ルルーシュ皇帝にはちゃんと会議場に行ってもらいますよ」

 

「え?捕まえるんじゃないの?」

 

話が合ってないのではないかとシャーリーは首を傾げる。

 

「ルルーシュは捕まえる。だが、ルルーシュ皇帝にはちゃんと会議場に行ってもらう」

 

「はあ!?どういうこと!?」

 

彰を信頼しているカレンも流石に彰を問い詰める。

 

皆の言葉を聞いて彰は悪そうに笑う。

 

「人はどうやって人間を認識する?番号があるわけじゃねぇんだぜ?だから…俺がルルーシュ皇帝に化けて会議場に行って、それをルルーシュ皇帝だと全員に認識させれば…俺はルルーシュ皇帝になるんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前のそんな驚いた顔を見るのは初めてだな」

 

自分の声で発せられる言葉にルルーシュは言葉を失う。

 

「そんな訳だ。お前なら説明しなくても分かるだろ?これは俺とお前の勝負だ。俺がお前を演じてスザク達も含めた全員を騙せたら俺の勝ち。バレたらお前の勝ちだ。シンプルだろ?」

 

彰の言葉に呆然としていたルルーシュも我に帰る。

 

「無茶苦茶だ!そんな賭けにカレンやシャーリー達を巻き込むな!お前がバレたら全員死ぬんだぞ!」

 

「へぇ?心配するのか?シャーリー達はともかくカレンは駒なんだろ?その駒が死ぬのが嫌なのか?」

 

ほとんど確定だったが今のでお前の言葉が嘘だったのは確実だなと笑う彰を見てルルーシュは自分の失態を悟る。

 

「ふん。どんなに取り繕ってもそれがお前の本質だ。今度こそ行くぞ、カレン。時間がねぇ」

 

うなづいて歩き出すカレンに付き添って彰も歩きだし、部屋の扉を掴む。だが、同時にシャーリーが声を発する。

 

「彰!彰は…大丈夫なんだよね?彰もちゃんと…帰ってくるんだよね?」

 

「俺はその嘘つきと違って確実じゃない約束はしねぇよ」

 

彰の言葉にシャーリーの瞳に涙が溜まる。それを見た会長とリヴァルは声を出そうとするが、その前に振り返らずに彰が続ける。

 

「だが…女を泣かせるのは趣味じゃない」

 

その言葉と同時に彰とカレンは部屋から出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この格好つけ」

 

「うるせぇ、放っとけ」

 

くすっと笑いながら言うカレンにそっぽを向いて彰は返事を返す。場所は会議場の前。彰の顔も真剣な顔に戻る。

 

「じゃあな。行ってくるわ」

 

扉に手をかける彰の背に向けて彰にしか聞こえないくらい声でカレンは話す。

 

「ルルーシュが作ったシナリオ…ぶち壊して来なさい」

 

「任せろ」

 

同時に扉は開かれる。皆の視線が彰に。ルルーシュ皇帝に集まる。彰としても一世一代の大舞台。にも関わらずこの男は不敵に笑いながら告げた。

 

「さあ、始めようか!民主主義を!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




そろそろストックが尽きてきた…


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6 見知った顔でも本人かどうかは分からない

やってしまった…後悔はしていない!


三ヶ月前ならば思いもしない光景であっただろう。

 

目の前の人を見ながら神楽耶はそんなことを思った。何故なら

 

(ゼロ様…)

 

自分が恋い焦がれ、日本を解放してくれる唯一の希望だと信じて疑わなかったゼロが、いやその正体であったルルーシュ皇帝が恐らく自らの敵として目の前にいるのだ。

 

本心から言えば信じたくなかった。彼を敵だと思いたくなかった。全てこちらの思い過ごしで世界の平和のために彼はここにいるのだと信じたかった。ゼロとしての裏切りもこちらの誤解なのだと思いたかった。

 

しかし、今の神楽耶は日本を代表する立場である。そんな自分が私情で動くことなどあってはならない。

 

その考えに至った神楽耶は気を引き締め直し、目の前のルルーシュ皇帝をしっかりと見つめる。しかし、ルルーシュ皇帝も予想外と言うような顔で私のことを見つめてくる。何かあったのだろうか。

 

「私の顔に何か付いておりますか?ルルーシュ皇帝」

 

「いえ。そんなことはありませんよ」

 

ニコリと笑いながら答えるルルーシュ皇帝に気のせいかと考えた神楽耶は話を進めようとするが、その前にしなければならないことがある。少しの躊躇いを覚えたが神楽耶は目の前のボタンを押した。

 

その瞬間目の前に巨大な壁が出現し、ルルーシュ皇帝を閉じ込めた。目を合わせた相手を操るというギアス対策である。

 

普通に考えたら無礼以外の何者でもないのだが、ギアスという異能を相手にしているのだからしょうがないとも言える。

 

予定通りの展開に神楽耶は内部のモニター越しにルルーシュ皇帝と会話を始めようとしたが、ルルーシュ皇帝は閉じ込められたにも関わらずニヤリと笑っていた。

 

神楽耶に戦慄が走る。まさか自分たちのこの行動を彼は読んでいたと言うのか。

 

「ふ。悪くない考えだが…甘いな。貴方は何も分かっていない」

 

「…何が仰りたいのですか?」

 

強気に見せる神楽耶だが背中には冷や汗が浮かんでいた。自分たちはギアスのことをほとんど知らないからだ。そんな自分たちが小手先で打った対策など彼には効かないというのか。

 

神楽耶のその心情を知ってか知らずか、ルルーシュ皇帝は余裕の表情で告げる。

 

「残念ですね神楽耶様。私は閉じ込められるよりも…

 

 

閉じ込める方が好きなんです」

 

「いや、何の話をしているのですか!?」

 

予想外の話の展開に神楽耶は思わず素で返答してしまう。

 

「何の話?ご謙遜を。私を誘惑したくてここに閉じ込めたのは分かっているんですよ。貴方が使いそうな手だ。此方でも変わらずに安心しました」

 

「何でそんな話になるんですか!私はそんなことを考えてはおりません!」

 

「隠さずとも良いですよ。私は貴方の性癖を知っていますから。貴方も私と同じだ。相手を責めることに興奮を覚えるタイプだ」

 

「私はそんな性癖は持っておりません!勝手に捏造しないでください!」

 

突然始まった自分の性癖の暴露を神楽耶は必死に否定するが、それを見たルルーシュ皇帝は哀れむような目で見つめていた。

 

「可哀想に…忙しすぎて自分の性癖に気付く暇がなかったとは…ですがもう大丈夫ですよ。貴方は今解放された」

 

「解放されていませんし、そんな性癖など眠っておりません!良い加減にしてください!」

 

バンバン机を叩きながら真っ赤な顔で画面に向かって怒鳴っている神楽耶とルルーシュを映像で見ている黒の騎士団の全員はこう思った。

 

これって一体何なんだろう。

 

 

 

 

一方、その頃本物のルルーシュ皇帝は

 

「おい、何をやっているんだアイツは!?完全に俺になる気がないだろうが!」

 

神楽耶との会話を写したテレビに向かって全力で怒鳴っていた。当然の反応である。

 

それを見ていたミレイは腹を抱えて笑っているが、シャーリーとリヴァルは流石に顔を引きつらせていた。

 

「な、なあ…?こんな作戦だったっけ?」

 

「た、多分そうなんじゃないのかなー。ね、ねぇ、カレン?そうなんだよね?」

 

頼むからそうであってくれと希望を込めてシャーリーはカレンに電話で尋ねる。だが

 

『こんな作戦あるわけないでしょうが!』

 

全力で否定された。シャーリーの希望が崩れた瞬間である。

 

「で、ですよねー。じゃ、じゃあ、彰はアレは何やってるの?」

 

『知るわけないでしょうが!』

 

「えええ!?付き合いが長いんじゃないの!?」

 

『神だってアイツが何考えてるのか何て分からないわよ!良いことを教えてあげるわ。アイツは

 

 

 

 

頭が良いけど、バカなのよ』

 

「それって両立するんだ!?」

 

『多分暫くシリアスが続いた反動ね…マズイわ、このままだと流石にバレる』

 

「ど、どうするの?」

 

『大丈夫よ。そのために私がいるんでしょ。ルルーシュの馬鹿も!彰の馬鹿も!私が二人とも止めてやるわ!安心してて!』

 

そう言うとカレンは電話を切った。

 

何をするんだろうとそこはかとなく不安を感じたシャーリーはコントが続いているテレビを凝視する。そのコントの場面で突然、入り口を太い木の幹が粉砕し、その勢いのままルルーシュ皇帝が閉じ込められている壁の中に突き刺さった。

 

「「何かイキナリ木の幹が出てきたんだけどぉぉぉぉぉぉぉ!!??」」

 

衝撃すぎる展開にシャーリーとリヴァルは全力でツッコミを入れ、ルルーシュは言葉もなくし画面を見つめる。何が起こったのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

再び会議場では

 

突然入り口から突き刺さった木の幹に参加者全員が当惑していた。

 

だがその混乱の最中、当たり前のように入り口から紅月カレンが参上した。

 

皆の戸惑いなど気にせずに堂々と歩きルルーシュ皇帝の側まで辿り着いた紅月カレンはニコリと笑いながらルルーシュ皇帝に問いかける。

 

「すいません、ルルーシュ皇帝。手が滑ってしまいました。大丈夫ですか?」

 

「あ、はい、大丈夫です。いや、本当に」

 

頭から血が吹き出しながら答えるルルーシュ皇帝に、いや、何処が大丈夫なのと問いかけたい周りの人達の気持ちは無視されて二人の会話は続いていく。

 

「そうですか。良かったです。ところで当然ですが、これからは真面目に皇帝として会議に参加していただけるんですよね?そうでなかった場合、今度は足が滑って何かを投げてしまうかもしれませんが」

 

カレンはそう言うと笑いながら、石や木の破片を取り出す。阿修羅だって逃げ出すほどの殺気である。

 

「ふーん、心配ない。何故なら…人は平等ではない!」

 

「いや、それ別の皇帝ィィィィィィィィ!!」

 

「べるぜバブ!?」

 

怪我のショックからか別の皇帝を演じ出したルルーシュ皇帝にカレンは全力で石の破片を投げつける。

 

そんなあり得ない展開に呆然としていた神楽耶はようやく正気に戻り、カレンを諌め始めた。

 

「な、何をやっているのですか紅月隊長!仮にも国王陛下ですよ!」

 

「あ、大丈夫ですよ神楽耶様。頑丈なのでオロナインでも塗っとけば治りますから」

 

「そんなわけないですわ!大丈夫ですかルルーシュ皇帝?」

 

流石にというか当たり前だが、神楽耶はルルーシュ皇帝を心配し始めた。普通に国際問題の案件である。

 

そんな神楽耶の視線を受けてルルーシュ皇帝は平気の態度を装う。

 

「ご心配なく。問題ありません。何故なら私はナナリーを愛しているのだから「すいません、神楽耶様。先程のショックで記憶が曖昧になっているようです」ウルグアイ!」

 

アホの言葉を最後まで聞く気がなかったカレンは容赦なく木の破片をルルーシュ皇帝の頭に突き刺して地面に叩きつける。

 

頭から血を流して石と木の破片を刺しながら倒れるルルーシュ皇帝を見て、シャーリーとリヴァルはこれ死んでるんじゃね?と思ったが、その考えを裏切りルルーシュ皇帝はフラつきながら立ち上がる。その顔は邪悪に笑っていた。その笑みのままにルルーシュ皇帝は話し出す。

 

「くくく…こんな茶番など時間の無駄だ。何故なら答えは最初から決まっているのだからな」

 

ポケットからキセルと眼帯を取り出して装着したルルーシュ皇帝は話を続ける。

 

「俺はただ壊すだけだ…ナナリーのいないこの世界を!」

 

「そりゃ、ルル杉晋助でしょうがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

ルル杉晋助に対してこの日最大のカレンのツッコミ(回し蹴り)が炸裂し、ルル杉晋助は宙を舞う。

 

黒の騎士団だけでなく会場中の全員が思った。

 

この会議どうなるんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




何でこんなことしてルルーシュ皇帝じゃないってバレないんだよっていうツッコミは無しでお願いします。


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7 周りの反応を見て自分の反応がおかしいんじゃないかって思うことはあるけど、気にすんな

メチャクチャです…それでも良いなら読んでやってください


「で、では気を取り直しまして…」

 

コホンと咳をしてから神楽耶は今までのやり取りをなかったことにして話を進めようとする。色々と手遅れな気もするが気にしてはいけない。

 

「ルルーシュ皇帝。貴方は合衆国に参加するという考えでよろしいですか?」

 

「そうです皇帝」

 

「…本当にそのつもりなのですか?」

 

「もちろんです皇帝」

 

「…こちらとしては貴方の魂胆は分かっています」

 

「何の話です?皇帝」

 

やり取りを通して神楽耶の頬がピクピクと痙攣する。正直、良く頑張ってると思う。

 

「あの…ルルーシュ皇帝。一つよろしいですか?」

 

「何でしょう?皇帝」

 

「先程から何で語尾に皇帝をつけて喋っているのですか?」

 

「ふっ。そんなことですか皇帝」

 

ルルーシュ皇帝は当たり前のことを答えるかのように堂々と告げる。

 

「私の満ち溢れてる皇帝力が漏れ出しているだけですよ皇帝。私ほどの皇帝力になると、これぐらい朝飯前ですよ皇帝」

 

何故かドヤ顔で告げるルルーシュ皇帝に何と言ったら良いか神楽耶は頭を働かせる。考えたら負けな気もするが、こちらの世界の神楽耶にそれを求めるのは難しい。

 

こんな時に頼りになるカレンはと言えば、先程の騒ぎでルルーシュ皇帝に許されたとはいえ流石に無礼すぎるということで神楽耶に追い出されている。居れば自身の助けになったのだが、そんなことを神楽耶は知る由もない。

 

そんなカレンは外で「皇帝力って何よ!?どんな所で皇帝らしさを表現してんのよ!」と的確なツッコミをしているのだが会場には聞こえない。

 

「そ、そうなんですか皇帝力ですか…そんなものがあったんですね。知りませんでした」

 

「勉強不足ですね神楽耶様皇帝。これからの時代に皇帝力は必須ですよ皇帝。AIに代替できない能力こそ皇帝力ですよ皇帝」

 

「へ…へえー、そうなんですか」

 

「知らなかったです皇帝」

さらに顔を引攣らせる神楽耶とは対照的に天子はそういうものなのかと納得し、使いこなそうとしている。

 

戻ってきなさい、天子様!戻ってこれなくなるよ!

 

「早めに使うべきですよ神楽耶様皇帝。見なさい天使様はもう使い方をマスターしていらっしゃる皇帝。今なら私に先程から刺さりっぱなしの木の棒とセットで教えてあげましょう皇帝」

 

「セットでいくらなのですか?皇帝」

 

「通常なら一万円の所が今なら何と!五千円でお売りしましょう皇帝!」

 

「わぁー、お得ですねぇ皇帝」

 

「電話番号はフリーダイヤルブリタニアバンザイでご応募お待ちしております皇帝」

 

「お、お得かどうかは分かりませんが、分かりました。と、ところでそろそろ本題の方に入らせていただいても?」

 

ボケの嵐の中で必死に話を軌道修正しようとしている神楽耶は賞賛されて良いと思う。

 

そんな神楽耶の頑張りが伝わったのかルルーシュ皇帝も申し訳なさそうな顔をする。

 

「すいません神楽耶様皇帝。本題に入るのが遅れてしまいました皇帝」

 

「い、いえ、お気になさらないで結構です」

 

「では本筋に話を戻しましょう…皇帝力とは何か…という話でしたね」

 

いや、違うだろぉぉぉぉぉ!!??というツッコミがカレン、シャーリー、リヴァル、本物ルルーシュから炸裂する。誰一人として会場にいないのがもどかしい。

 

神楽耶も向こうの神楽耶であれば、『あら、それではこちらも嫁力を見せなければいけませんね妻。扇。布団を敷きなさい妻』と盛大なボケ返しをしたのだが、こちらの神楽耶にその返しは無理である。

 

よって神楽耶の能面のように貼り付けられた笑顔にピシッと亀裂が入ったが、特に何の反応も返せない。普通であるが故の悲劇だ。本当に哀れである。

 

「その皇帝力のおかげで貴方はブリタニア皇帝になれたのですか?皇帝」

 

(何か伝染してませんか!?)

 

幼い天使はともかく、それ以外の自身の味方であるはずの合衆国側からも皇帝力を使用している人間が現れたことに神楽耶は戦慄が走る。

 

「もちろんです皇帝。皇帝力こそ国を統べるための力!しかし皇帝力にはリスクもあるのです皇帝」

 

リスク?と誰かが問いただす前に発言をしたルルーシュ皇帝の膝が突然崩れ落ちる。

 

慌てて警備が駆け寄ろうとすると、それをルルーシュ皇帝は手で制する。

 

「これが…皇帝力のリスクです…皇帝」

 

これが皇帝力のリスクだと!?と会場の人間の何人かが驚きの声を漏らす。

 

「一人の人間の皇帝力には上限があるのです…皇帝…それは使えば使うほどなくなっていく…そして最後には暫く使えなくなってしまうのです…皇帝…だが、ここまでは計画通りです…皇帝」

 

「いや、何の計画です?皇帝力の計画ですか?」

 

「神楽耶様。それをこれからお見せしましょう皇帝。私の殆どの皇帝力を使った結果」

 

ルルーシュ皇帝は神楽耶の隣の天使と皇帝力と口にした全ての合衆国側の人間を指差してから続きを語る。

 

「ボケのラインは整った!」

 

そうルルーシュ皇帝が告げると指さされた人間の体から光が漏れ出す。それだけでなく、ルルーシュ皇帝の体にも謎の光が漏れ出している。他の光っている人間とは比較にならないほどの強さだ。直面している神楽耶と天使は余りの眩しさに目を手で覆う

 

「な…何をするつもりなのですか!?」

 

「ふっ。神楽耶様。覚えておくと良い。皇帝力は使えば使うほど失われていく。それは確かだ。だが逆に!使えば使うほど高まっていく力もある!見るが良い!ギアスではない!だがこれも王になるための力だ!」

 

突然始まった超常現象に神楽耶はルルーシュ皇帝に意図を問う。だがルルーシュ皇帝は、それには答えずニヤリと笑うと何かを始めようとする。警備の人間もそれに気付き取り押さえようとするが、全てが遅かった。

 

ルルーシュ皇帝の口からあの呪文が放たれる。

 

「バオウ・ザケルガァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」

 

「出てたまりますかぁぁぁぁぁ!!いい加減真面目になってください!!」

 

馬鹿すぎるボケに流石の神楽耶からもツッコミが放たれる。

 

だが、それと同時に盛大な爆発音が鳴り響く。

 

え?と神楽耶達だけでなくルルーシュ皇帝までも、キョトンとした顔をするが、それを成した張本人であるバオウ・ザケルガ(ランスロット)は悠然と会場のど真ん中に着陸する。

 

一拍遅れて今の状況に気付いた神楽耶は歯軋りする。

 

やられた…今までの悪ふざけは全てただの時間稼ぎだったのだ。

 

そう考えた神楽耶はキッとルルーシュ皇帝を睨み付ける。

 

「全て計算通りだったのですね…ルルーシュ皇帝」

 

「当たり前だろう。私を誰だと思っている?」

 

ドヤ顔で答えるが、当然嘘である。ルルーシュ皇帝である彰がそんなことを知っているわけがない。

 

それが証拠にルルーシュ皇帝の背中は冷や汗で一杯だった。

 

しかし、そんなことを言えるはずもなく勢いのままにルルーシュ皇帝はルルーシュだったらやりそうなことをアドリブで続けていく。

 

「これで貴方達合衆国側の人間の命は私の意のままだ。さて…では、これより本格的に民主主義を始めようじゃないですか。とりあえず、ここにいる皆様方には私と一緒にブリタニアへとついてきて貰いたいと思っているのですが、よろしいですか?」

 

ルルーシュ皇帝は笑顔で確認するが、ランスロットがいる状況で反論などできるはずもなく会議に参加していた合衆国側の人間は一人残らずブリタニアへと連行されることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ルルーシュ」

 

「スザクか。良くやってくれた」

 

人質の収容も終わり、学園を去ろうとするルルーシュ皇帝の前に険しい顔で近寄ってくるスザクにルルーシュ皇帝はお礼を言って去ろうとするが、そんなことが認められるはずもなく肩を掴んで止められる。

 

しかし、ある程度予想していたのか表情も変えずにルルーシュ皇帝は言葉を発する。

 

「何だ?」

 

「どういうつもりだ?あんな悪ふざけを」

 

「何時も言っているだろう。結果が全てだ。結果として予定通りなら問題ないだろう」

 

「それはそうだが…」

 

「それにアレも無意味な訳でもない。計画のためには必要なことだ」

 

嘘だけど。と内心で彰は思う。

 

そもそも計画自体知らない。ルルーシュがあんなことをしたということは何らかの計画があるのだろうという予想で言っただけだ。

 

「ゼロレクイエムのためにか?」

 

「そうだ」

 

ゼロレクイエムって何だよと思いながら彰は肯定する。当たり前のように嘘だが。

 

「どういう意図があるんだ?」

 

「さあな。とりあえずの保険さ。今のところ意味はない」

 

今どころかこれから先未来永劫意味なんかないのだが、そういうことにしておく。それっぽいことを言っておく必要があるからだ。

 

「…そうか」

 

そう言ってランスロットの所に向かうスザクの後ろ姿を見ながら、馬鹿で良かったと彰はしみじみ思う。

 

とりあえず一段階目はクリアしたという実感を得て、彰は内心でホッとため息を吐く。

 

しかし、安心してはいられない。肝心のルルーシュの真意や計画が全く分かっていないのだから。

 

だが、キーワードは分かった。ゼロレクイエム。恐らく、これがルルーシュの計画の肝だ。これが分かればルルーシュの真意もきっと見えてくる。

 

クククと彰は笑う。一歩確実に前へと進めたという実感があるからだ。

 

(取っ掛かりは掴んだぜ…さあ、ルルーシュ。第2ラウンドを始めようか。俺とお前の嘘のどっちが上か。楽しくなってきやがった!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次も月一投稿目指して頑張ります


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8 何処かの常識は何処かの非常識ってことは良くあること

何とか六月に更新できました…


ルルーシュ皇帝がアッシュフォード学園から去って3日が経った。

 

合衆国首脳陣のほとんど全員が誘拐されるという前代未聞の大事件に世間は完全に浮き足立っていた。

 

戦争が始まる

 

とか

 

世界が滅ぶ

 

とか

 

人間が死に絶える

 

とか。まあ、騒いでいる内容は様々だが一つの結論になるであろうことは一致している。

 

黒の騎士団とブリタニア帝国の一騎打ちの天下分け目の決戦が起こるということだ。

 

そのブリタニア帝国のトップであるルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。

 

若くしてブリタニアを手中に収めた彼は世界が注目する大人物。

 

その人物はシャーリーの最愛の人でもある。

 

シャーリーは彼を信じていた。何かあるのではないかと。こんなことをしたのにはきっと理由があると。

 

もう一度会って話したい。ずっとそう思っていた。

 

そしてその夢は叶ったのだ。本来であればどんな姿になったとしても喜ぶべきなのだ。

 

でもだからといって

 

「ほら、ルルーシュ。さっさと歩いて」

 

「…」

 

「何?不機嫌そうじゃない。お腹減ったの?さっき食べたばかりじゃない」

 

「そんな訳ないだろうが!この状況に不服しかないからに決まっている!」

 

パンイチの格好で頭に女物のパンティと首輪を付けられてカレンに引っ張られながら四つん這いで街中を歩くのは間違ってると思う。

 

「どうしてこうなったんだろう…」

 

自分の最愛の人が考えられない姿で外に連れ出されているのを見てシャーリーは遠い目をして呟いた。

 

 

 

 

 

 

〜30分前〜

 

「そろそろシャーリーの家から移動しなきゃいけないわねぇ…」

 

シャーリーの家でルルーシュを含めた生徒会メンバーと食事を食べていたカレンは思い出したように呟いた。

 

最初はルルーシュは断固として食事を摂らないと主張していたのだが、彰の作戦を実行したカレンによりその主張はアッサリと覆ったので今では普通に食事を摂っている。

 

抜け出そうとしたことも度々あったが、そもそも身体能力が低い上にカレンが居ない時はギアスを警戒して目が塞がれた上に手を縛られているので全く抜け出せない。

 

カレンがいる時?逃げられる訳ないだろ。

 

「何で?」

 

カレンの声を聞いていたリヴァルが疑問の声を発する。

 

「シャーリーのお母さんが帰ってくるからよ。こんな所にブリタニア皇帝がいたら一大事でしょ?常識で考えて」

 

「…一国の首脳を国際会議で誘拐するという非常識を働いた女が良く言えるな」

 

「計画を考えたのは私じゃないわよ。彰よ」

 

「ノリノリで実行したのはお前だろうが!」

 

そんなルルーシュの正論は当然のように無視される。

 

「まあ、そんな訳でこれから彰が用意していた隠れ家に移動するわよ。ルルーシュ。準備して」

 

「何か逞しいねそっちのカレンは…ところで、彰はどうやって部屋なんて用意したの?」

 

「さあ?脅しでもしたんじゃない?」

 

「…とんでもないことを普通に言うなよ」

 

「とんでもないこと?何が?」

 

「…いや、もう良いです」

 

リヴァルの質問に疑問符を付けたカレンを見てシャーリーは苦笑いを浮かべる。

 

並行世界とやらから来たのは知ってるが、これでは最早別人ではないだろうか。顔が同じな分、違和感がとんでもない。

 

「まあ、良いわ。私も軽くご飯持ってきたからこれ食べたら行くわよ。ほら、これは男子の分。こっちは私たち女子の分」

 

そう言ってカレンは自身が買ってきたサラダをテーブルに置いて話を進める。

 

文句は色々とあるがルルーシュも渋々と食べ進める。ここから移動するのであれば、その道中に抜け出す隙があるかもしれない。

 

「でもカレン?移動中見つかったら大問題にならない?また気絶でもさせるの?」

 

食事をしていたルルーシュの顔がミレイの発言を聞いて青褪める。

 

アッシュフォード学園からシャーリーの家まで自身を運ぶためにカレンは、再び首を締めて気絶させてから運んだのだ。人権も何もあったものではない。

 

しかしミレイの発言にカレンは静かに首を振る。

 

「いや、あまり乱暴なことはしたくないんですよね。私の良心が痛みますし」

 

「お前にそんなものが残っていたのか、ってグオォォォォ!!」

 

「何か言った?ルルーシュ?」

 

ルルーシュの言葉にカレンはニコリと笑いながら無言でフォークをルルーシュの額に投げつけた。このコントロールは見事なもので見事にルルーシュの額に直撃した。

 

半泣きになりながら呻いているルルーシュを見て「うわぁ」と言いながらシャーリーとリヴァルの顔が引き攣る。

 

「…お前!一体何をする!?」

 

「フォークを投げたのよ」

 

「そんなことを聞いているのではない!」

 

「アンタが悪いんでしょうが。彼女にそんなことを言うもんじゃないわよ」

 

「お前!今まで俺にどんな対応を…待て。今何と言った?」

 

怒り狂っていたルルーシュの心がカレンの言葉を聞いて一時停止する。

 

それはシャーリーやリヴァルどころかミレイも同様である。

 

「そんなことを言うもんじゃないわよ?」

 

「もっと前だ!」

 

ルルーシュは全身から冷や汗を流しながら全員が何を疑問に思っているのか分からないカレンの言葉を待つ。

 

「彼女にそんなことを言うもんじゃないわよってところ?」

 

「…ま、まさかとは思うがその相手は誰だ?」

 

「アンタに決まってるでしょ」

 

何を今更とカレンはため息を吐くが、それ以外のこの場の全員はそれどころではない。

 

「「「「何ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!??」」」」

 

全員が今まで食べたものを吐き出す勢いで絶叫をあげた。それぐらいあり得ないことだったからだ。

 

「何を驚いてるのよ。告ったのアンタの方じゃない」

 

「しかも俺が告白したのか!?」

 

「ど、ど、ど、ど、ど、ど、どういうことよルルぅぅぅぅぅぅ!!」

 

カレンの言葉に半分以上泣きながらシャーリーはルルーシュの肩を掴んで揺さぶる。

 

何とか宥めようとルルーシュだけではなくリヴァルとミレイも加わるが、この二人もかなり戸惑っているためあまり効果がなかったりする。

 

そんな四人の様子を見てカレンはふと思った。

 

「もしかしてこっちの私ってルルーシュと付き合ってないの?」

 

「当たり前だ!」

 

「いや、そんな当たり前知らないけど…ってことは第一回!チキチキ!ルルーシュの本妻は誰なのか!!選手権!もやってないの?」

 

「やってるわけないだろうが!何だそのバカみたいなネーミングは!」

 

「ねぇ、カレン!その選手権について詳しく教えて!」

 

「何、目を輝かせて楽しそうにしてるんてすか会長!?」

 

殆どのメンバーが完全にパニックになっている様を見てカレンは自分の思っていた以上に歴史が違うことに顔をしかめた。

 

「ここまで歴史が違ってるのにはちょっと驚いたわね…このメンバー以外にはバレないようにしないと」

 

下手に昔の話をするのは危険だとカレンが考えていると、テンションが上がったミレイがカレンの肩を掴んで話しかける。

 

「そんなことより、ねぇねぇ!ということはその選手権で優勝したのはカレンってことよね?」

 

「えーと…まあ、一応」

「凄いじゃない!そんな選手権に出るくらいカレンはルルーシュのことが好きだったんだ?」

 

「…ええ」

 

その回答に完全にテンションが上がりきったミレイはカレンの目が死んでいたことに気付かなかった。

 

場の空気的にほとんど彰に嵌められただけだと言えなかったのだ。

 

「ルルーシュには何て告白されたの?」

 

「…確か「決勝の勝者はカレンだ!だから、ゲームを終わらせろ!俺はカレンを愛しているぞ!」だったような…」

 

「ねぇ、聞いた!?ねぇ、ねぇ、聞いた!?どうすんのよルルーシュ!シャーリーという人が居ながら!どうすんのよ?」

 

「ちょ、ちょっと会長!並行世界の話ですから!」

 

「そ、そうですよ!こっちのルルとカレンがそうなるとは限らないじゃないですか!」

 

ルルーシュだけでなく多少は落ち着いたシャーリーも弁護に加わるが、ミレイは顔を赤くしたカレンを見てニヤリと笑う。

 

なお、カレンが顔を赤くしているのはミレイが考えているような理由とは全く違うのだが、選手権を見ていない人間にそんなことが分かるはずもない。

 

「そんなこと言ってる場合じゃないと思うわよシャーリー。向こうのカレンとルルーシュがそんなにラブラブだってことは、こっちでもそうなる可能性は高いんじゃないの?ねぇ、カレン?」

 

「いや、それは知りませんが…ただ基本的に人間関係はそんなに私の世界と変わりませんね」

 

「だってさ。ヤバイわよーシャーリー!何とかしないと!しかも告ったのはルルーシュ何だから!」

 

「こっちの俺にはそんな予定はありませんよ!」

 

「分かんないぜ〜ルルーシュ。好きになるのは突然だって言うからな」

 

そんな風にこちらの生徒会メンバーは騒いでいたが、比較的落ち着いていたカレンが手を叩いて騒ぎを終わらせる。

 

「はいはい。騒ぎは終了よ。別に私とルルーシュが付き合ってることなんて大した問題でもないでしょ」

 

「…私にとっては世界の終わりくらいに大切なことなんだけど」

 

そんなシャーリーの言葉を完全に無視してカレンは続ける。

 

「とりあえず、ルルーシュの変装から始めないとね。この格好だとバレるし」

 

「どうするんだ?」

 

リヴァルの質問にカレンはノートを出して答える。

 

「前にも言ったけど彰から貰ったノートがあるから基本的にはこれで対応ね」

 

「…本当に大丈夫なのか?」

 

顔を蒼褪めさせながらリヴァルは尋ねる。以前にこのノートのせいで酷い目にあったが故の反応だ。

 

「大丈夫よ。効果は保証するわ」

 

「…むしろ効果のことしか考えてないから不安なんだが」

 

 

 

〜10分後〜

 

「さて、こんなもんかしら。さあ、行くわよルルーシュ」

 

「…おい、ちょっと待て」

 

ルルーシュは震えながら声を絞り出す。それは怒りによる震えだった。まあ、カレンに無理やりさせられた格好からすればしょうがないことではあるのだが。

 

その姿を見てシャーリーとリヴァルは言葉を無くし、ミレイは我慢できずに床を手で叩きながら爆笑していた。何せ…

 

「何よ?」

 

「何よ?じゃないだろうが!何だこの格好は!こんな格好で外に出ろと言うのか!?」

 

ルルーシュがパンイチで首輪を付けられた状態でいるのだから当然の反応だろう。

 

「気持ちは分かるわ、ルルーシュ。でもこれは逆転の発想よ。隠そうとするから逆に目立つのよ。なら、逆に目立とうとすれば逆に隠れるはずよ」

 

「馬鹿か!?そんな訳ないだろうが!」

 

「うっさいわね!見つかるのがアンタの目的だからアンタには害はないでしょ!」

 

「あるに決まっている!人としての尊厳の問題だ!」

 

当然のように抗議するルルーシュと揉めているカレンを見て流石にルルーシュが可哀想になったシャーリーが援護に入ろうとする。

 

「あ、あのさー、カレン。ちょっと良い?」

 

「ん?どうしたの?」

 

「あ、彰の狙いは分かるんだけど流石に顔が丸見えだと気付くんじゃないかなー」

 

「それは大丈夫よ。まだ途中だから」

 

ニコリと笑ったカレンはポケットからパンティを取り出し抵抗するルルーシュの頭から無理やり被せた。

 

良しと言ったカレンはシャーリーを見る。

 

「どう?これで完璧よ」

 

「何処も完璧じゃないよカレン!?」

 

とんでもない方向に舵を切った友人にシャーリーは絶叫する。

 

「え?何処が?」

 

「全部だよ!だって不審者だもの!これ完全に不審者だもの!」

 

「ああ、安心して良いわよシャーリー」

 

「だ、だよね流石に冗談だよね!」

 

「これ使用前だから」

 

「誰もそんな心配してないよカレン!」

 

「こんなもの被ってられるかぁ!」

 

当たり前だが納得などカケラもしていないルルーシュは怒りながら被せられたパンティを床に叩きつけた。

 

「あ!何勝手に脱いでるのよ!」

 

「脱ぐに決まっている!何だお前は!常識を向こうに置き忘れてきたんじゃないだろうな!」

 

「ふっ…そんな訳ないじゃない。アンタは勘違いしてるわルルーシュ」

 

ルルーシュの質問にカレンは死んだ目で答えた。

 

「私の世界に常識なんてものはないのよ…」

 

カレンの言葉と迫力にルルーシュは何も言えなくなった。

 

そして抵抗も虚しく強引に外に連れ出されたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




アカン。向こうのツッコミ役のカレンですらコッチに来たらボケになってしまう


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9 夏の食べ物は直ぐに腐るのでちゃんと管理を徹底しよう

分かる人には分かると思いますが、あの話のオマージュです笑


「新しいアジトはここから2キロくらいね。しかし、やっぱり彰の作戦は流石ねぇ。周りの人もカレンとルルーシュをあんまり意識してないわ」

 

「…どうやら会長は気付いていないようなので私から言わせて貰いますけど…」

 

見当外れなことを言いながら一人で頷いているミレイ会長に震えながらシャーリーは指を前方の二人に向けながら言葉を絞り出す。

 

「アレは避けられてるって言うんですよ!そりゃそうですよ!誰だってパンイチで四つん這いになりながらリードで繋がれてる下着仮面とそれをご機嫌で引きずってる女の子に関わりたくないですもん!関わったら最後だと思っちゃいますもん!」

 

「お、落ち着けってシャーリー!気持ちは痛いほど分かるけどさ!俺らも目立っちゃうだろ!」

 

ミレイとシャーリーとリヴァルはカレンに人数が多いと目立つからと言われたので、変装しながら二人の後をつけているのだが人数が多かろうと少なかろうと目立たないことは有り得ない二人にツッコマないことは不可能だった。

 

「絶対におかしいよね!?ここまで警官に捕まらずに来れたことが奇跡だよ!黒の騎士団とブリタニアの残念過ぎる不祥事だよ!!」

 

「だから落ち着けってシャーリー!いちいちツッコミを入れてたらきりがないだろ!?」

 

至極真っ当な理由でツッコミを入れているシャーリーにリヴァルが落ち着くように伝える。そろそろシャーリーも諦めという言葉を覚えた方が良い。

 

そんな風に後ろのメンバーが揉めている声は聞こえているのだが、カレンは別の所に引っかかっていた。

 

「おかしいわね…さっきから自然に過ぎ去った人達に会釈をしてるんだけど誰も目を合わせてもくれない…来ている服がおかしいのかしら?」

 

そんなことを一人で呟きながら、カレンは自分の来ている服をチェックし始める。

 

そんなカレンにルルーシュとシャーリーとリヴァルは思った。

 

(((おかしいのはお前の服じゃなくて頭だよ!!!)))

 

しかし、思っただけではカレンには当然聞こえないのでそのまま自身の服のチェックを続けている。

 

そんなカレンに諦めを覚えたのか、はたまた空気を変えようとしたのかは定かでないがルルーシュはため息を吐いて言い放つ。

 

「…おい、カレン」

 

「何よ、イヌーシュ」

 

「不愉快かつ不適切な名前で呼ぶな!俺の名前はそんな名前ではない!」

 

「あんたの名前をこんな場所で呼ぶわけにはいかないんだから、これで良いでしょ。で?何?」

 

「…何時までこんなことを続けるつもりだ?」

 

「あんたが本当のことを言うまでよ」

 

「何処かで分かっているんだろう?そんな日は永遠に来ない」

 

そもそもこのカレンは分かっていない。自分がどういう存在か。自分がどれだけのことをしてきたのか。

 

「お前の世界での俺がどんな奴かは知らんがな。諦めろ。俺はそいつとは違う。お前が幾ら信じても関係ない。信じているだけ無駄だ」

 

ルルーシュは知っていた。自分が犯してきた罪を。

 

どれだけの人を騙しただろう。どれだけの人を殺しただろう。どれだけの人を傷つけただろう。どれだけの人を泣かせてきただろう。

 

それだけのことをしてきた罪を自分は償わなければならない。だとしたら戻るわけにはいかない。許される訳にはいかないのだ。

 

薄ら笑いを浮かべながら吐き出されたルルーシュの言葉を少し考えながら、意外な言葉をカレンは呟く。

 

「そうね。確かに私が知っているアイツとアンタは違うのかもしれないわね」

 

「分かっているなら、サッサとこんな茶番は止めろ。時間の無駄だ」

 

ふんと鼻を鳴らして答えるルルーシュを見てシャーリーは思った。

 

(どんだけシリアスの言葉と雰囲気でも、下着仮面のパンイチ犬が言ったらシリアスになるの無理だよね…)

 

シャーリーの言葉は隣のリヴァルも同意見だった。変態二人がどれだけシリアスを演じてもシリアスになるのは無理である。絵面が酷いことになっている。

 

そんな悲しい現実を知ってか、知らずか気にせずにカレンは笑顔で答えた。

 

「でも関係ないのよ」

 

「何?」

 

意味が分からないカレンの言葉にルルーシュは顔をしかめる。そんなルルーシュの顔を見て、カレンは肩を竦めた。

 

「私はバカだからさ。彰と違ってアンタの嘘を見抜けない。もう少しアンタが素直だったら助かるんだけど、生憎と向こうのアイツもアンタに負けず劣らずに面倒臭い奴よ…でもね」

 

カレンの脳裏に、過去のルルーシュとの思い出が蘇る。本当に面倒臭い奴だった。我ながら良く付き合ってきたと思う。

 

「本当はただのお人好しなのを私は知ってる。世界の誰が信じなくても私は知ってる。アンタが認めなくても私は知ってる。アンタの言葉なんて私は信じちゃいないのよ。私は」

 

そう言ってカレンは自身の指を自身に向けながら続ける。

 

「私が信じてるアンタを信じてる。私の心にいるアンタを信じてる。良く覚えときなさい。アンタがどんな嘘をついても。アンタがどんなシナリオを描いていたとしても。私と彰がいる限りハッピーエンド以外は認めないって言ってんのよ!」

 

迷いなく、力強い瞳で凛とした言葉を発するカレンを見てルルーシュは思わず目を背けた。カレンのその強さは自身には決して持ち得ない物だったからだ。

 

カレンから目を逸らした状態でルルーシュは何とか反論の言葉を紡ぎ出そうとするが言葉が出てこない。

 

その事実に舌打ちをしながら、捨て台詞を吐くことしかできなかった。

 

「…馬鹿が。どれだけおめでたい思考回路をしているんだ。俺は嘘などついていない。お前が信じてる俺は幻だったんだよ。俺からお前に話すことなど何もない」

 

「あら、そう?私はそれでも良いんだけど…アンタはそれで良いのかしら?」

 

「一体どういう意…味」

 

急に意味深な言葉を言ったカレンを追求しようとするルルーシュの顔から急に脂汗が吹き始める。それだけでなく、腹を抑えて急にその場で動けなくなってしまった。

 

どうしたのだろうかとシャーリーは首を傾けるが、カレンは計画通りと言わんばかりに邪悪な笑みを浮かべている。何やら何時もと立ち位置が違う気がするが、今更だろう。

 

そんなカレンの顔を見てルルーシュは自分が嵌められたのを悟った。

 

「き、貴様!俺に何をした!」

 

「嫌ねぇ、大したことはしてないわよ…ただちょっとね…盛っただけよ」

 

「あの昼飯か!?だ、だが俺だけが限定して食べた物などなかったはずだ!」

 

カレンの言葉からルルーシュは自身の腹痛の原因は大体特定できたが、その推理には穴がある。

 

ルルーシュは万が一のことを考えて自分だけが食べるようなものは出来るだけ口にしないように最大限の注意を払っていた。その自分だけを狙って盛ることなどできるはずが…

 

そこまで考えてルルーシュは自分の思考の違和感に気が付いた。

 

何故俺は自分だけが腹痛になっていると思い込んでいる?

 

確かに目の前にいるカレンは腹痛にはなっていないようだ。

 

だが、それだけではまだ確信できない。

 

あの場には後三人いた。

 

会長とシャーリーと、そして…

 

そこに思考が至った時ルルーシュの脳裏にカレンの言葉が蘇った。

 

『まあ、良いわ。私も軽くご飯持ってきたからこれ食べたら行くわよ。ほら、これは男子の分。こっちは私たち女子の分』

 

その言葉からルルーシュはカレンが何に盛っていたのか確信した。そのルルーシュの表情から、カレンもルルーシュが何に盛られていたのか見当がついたと悟ったのか、首を振りながら言葉を発した。

 

「仕方なかったのよ。何かを成し遂げるには何かを失う覚悟が必要なのよ」

 

そのカレンの言葉の真意はルルーシュだけでなく、少し離れた所で聞いていたシャーリーにも分かった。何故なら

 

先程から恐ろしい腹痛に苦しんでいるリヴァルが視界に入っているからだ。

 

((な、仲間(リヴァル)ごと、まとめて盛りやがったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!))

 

目的のためなら手段を選ばないカレンに盛られていないシャーリーですら冷や汗を浮かべる。ましてや、盛られたルルーシュは尚更である。

 

「き、貴様鬼か!」

 

「アンタに言われたくないわよ魔王。で?どうすんの?別に秘密を漏らさないなら漏らさないで良いけど…その場合アンタは四つん這いで歩き続けるのよ」

 

そこまで言ってカレンは口を広げて邪悪に笑う。

 

「公衆の面前で糞尿を垂れ流しながらね!」

 

普通であれば馬鹿なことを言うなと一笑に付すカレンの発言だが、カレンの顔を見たルルーシュにはそんな余裕など全くなかった。分かったからだ。この女は本気だと。このままだと本気でこの女は自分を公衆の面前で脱糞させるつもりだと。

 

そんなことになれば悪逆皇帝ではなく、お漏らし皇帝になってしまう。どんな悪逆を尽くしても、「あいつ、この間ウンコ漏らしてたんだぜ笑」という噂は消えることはないだろう。

 

そんなことになれば自分は精神的に死ぬ。ゼロレクイエムまで生き長らえることはできないだろう。

 

「ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

そんなことでゼロレクイエムを終わらしてたまるかと思ったルルーシュは必死に全力疾走でトイレに向かう。恐らく人生でルルーシュが出した最速のスピードだろう。だが

 

「あら、何処に行くのイヌーシュ?」

 

カレンにとっては大したことのないスピードであった。笑顔のままのカレンがリードを軽く引っ張るだけで、ルルーシュは再びカレンの足元まで引きづり戻された。

 

「ま、待て!頼むカレン!本当に限界なんだ!」

 

引きづり戻されたことでケツにダメージがいったルルーシュは本当に余裕がなくなったのか、背に腹は変えられないとカレンに頼み込む。そのルルーシュの声を聞いたカレンは更に笑顔を深めて答えた。だが

 

「あら、そうなの?でも大丈夫よ。ちゃんとビニール袋は持ってきたから」

 

楽しそうにビニール袋を取り出して手に装着しながら話すカレンを見て、ルルーシュは絶望に顔を青くさせた。

 

だが諦める訳にはいかない!自分にはゼロレクイエムが待っているのだから!

 

その意地だけを味方にルルーシュは便意を必死に抑え込む。

 

だが、残された時間は長くない。

 

ルルーシュの明日はどちらだ!

 

 

 

 

 

 

 

 




ルルーシュは漏らさずに済むのだろうか!

ルルーシュの戦いはこれからだ!

エンド(嘘)


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10 どんなにふざけてるように見えたって本人は至って真剣な時ってある

こっちは久し振りの投稿です。


「カレン。一つ聞こう。私を信じているか?」

 

「信じてないわよ。決まってるじゃない」

 

ニコリと笑って言うカレンにルルーシュの心は折れそうになるが、何とか踏み止まって話を続ける。

 

「そうか…だが、安心して欲しい。本当に少しだけだ。少しだけ…俺に自由な時間をくれないか?」

 

「絶対に嫌よ。諦めて」

 

「お願いだカレン…今度こそ、本当なんだ…」

 

人生で初めてと言うほどに真摯な目と正直な心でルルーシュは自身を引きずって歩くカレンに必死に懇願する。

 

「俺は…俺はただ…トイレに行きたいだけなんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「大丈夫よ。そのためのビニール袋だから。行くわよ、イヌーシュ」

 

 

 

 

 

 

 

ゼロレクイエム。

 

ルルーシュとスザクが二人で立てたものであり、ルルーシュの罪を償い、世界を平和にするための計画だ。

 

これのために二人は行動してきた。人々を裏切り、悲しませ、多くの人々の憎悪を駆り立ててきたのも全てこのためだ。

 

ルルーシュの全てはこのためにあったのだと言っても過言ではない。

 

だから…だからこそ

 

「ぐぅおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!こんな…こんなことぐらいでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

便意に負けてゼロレクイエムのネタバレをするなんてことはあってはならないのである。

 

(くそ!何故俺はカレンにギアスを使ってしまったんだ!)

 

過去の自身の選択をルルーシュは悔やむ。あそこでカレンにギアスを使いさえしなければ簡単にトイレに行くことができた。しかし、今となってはルルーシュにとって、トイレに行くというミッションはゼロレクイエムを実現するのと同じくらい難しいことに感じた。大袈裟である。

 

(考えろ!まともにやってカレンに勝てるはずがない!何とかして導き出せ!俺がトイレに行くためのルートを!)

 

ルルーシュは自身の世界一と言っても言い過ぎではない頭脳をトイレに行くためにフル回転させた。アホみたいに聞こえるかもしれないが、ルルーシュは至って真剣である。完全にガチである。

 

そこでふとルルーシュの目に屈強な3人組の男が映った。

 

その姿を見てルルーシュはニヤリと笑う。確かにパンツは被っているが、目の部分は隠れていない。今なら自身の超常の力であるギアスを使用することが可能だったからだ。

 

「ククク…悪いな、カレン。ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる。カレンを取り押さえろ!」

 

ギアスの力は素晴らしく、ギアスにかかった男たちはすぐさまカレンへ飛びかかった。しかし、相手が化け物なのであっという間に意識が刈り取られていく。だが、流石にその隙に多少の隙が生まれたらしくイヌーシュもとい、ルルーシュは何とかカレンから脱出を図り全速力でトイレへと進んでいく。

 

店へと入り、トイレの入り口が見えたルルーシュは思わず泣きそうになった。そう。まだゼロレクイエムは終わっていなかったのだ。

 

だが、ルルーシュが油断をした隙にルルーシュの脇を通り抜けトイレへと向かう人影があった。ルルーシュはその人影の肩を掴み、必死の形相で叫んだ。

 

「リヴァル!何をするつもりだ!」

 

「トイレに決まってるだろうがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!俺も限界が近いんだよ!」

 

「良いか、リヴァル!キャラというものがある。お前が漏らしても問題はないが俺はあるんだ!」

 

「俺だってあるに決まってんだろうがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!うんこ漏らして良いキャラってどんなキャラだ!?」

 

何やら喚いているが、ルルーシュには本当に余裕がない。背に腹は変えられないと言わんばかりにルルーシュの目は輝き始める。

 

「悪いなリヴァル。ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる!『今すぐ外で漏らしてこい!』」

 

そんな文字通りクソみたいなギアスの使い方でも、ギアスはギアスなのできちんと効果は発動したようでリヴァルは迷いもなく外に飛び出していく。すると同時に、外で大きな騒ぎが起こるがそんなことには関心も寄せずにルルーシュはトイレへと向かう。クズである。

 

しかし、ルルーシュが入ろうとすると誰かが入っていたようで鍵がかかっていた。思わず舌打ちをして、中にいた人物に呼びかける。

 

「おい!次が控えているんだ!早くしてくれ!」

 

「いきなり何だよ!俺だって入ったばっかりなんだ!無理に決まってんだろうが!」

 

その品性のない声にルルーシュは思わず膝をつく。何故なら、思いっきりルルーシュの知人の声だったからだ。

 

(何でお前がここにいるんだ玉城ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!)

 

ここにいる理由など聞きたいことは山ほどあったが、そんなことなど今のルルーシュにはどうでも良かった。トイレの中にいてはギアスはかけられない。ならば、残された道は何とか外に引っ張り出すしかない。そうなのだが

 

「くっそー。何で俺が個々に入ってなきゃいけねぇんだよ。カレンの頼みがなきゃこんな面倒なことはしねぇのに…って…確か、とんでもなくトイレを急かす男の声がしたら電話しろって言ってたな。おい、カレン?聞こえるか?」

 

鬼が来る気配がしたので、わき目も振らずにルルーシュは全速力で店を出た。次にアイツに捕まったらルルーシュは色々終わってしまう。イヌーシュどころではなく、クソーシュになってしまう。仮にもブリタニア皇帝として、そんなことになるわけにはいかないのだ。

 

パンツ一丁で頭に女物のパンティを被って首輪に繋がれてる男がブリタニア皇帝で良いのかどうかは疑問だが、気にしちゃいけない。

 

最後の力を振り絞ってルルーシュは今度は服屋のトイレに入ろうとする。だが、そこにも人が入っていた。

 

「あ、ああ、すまない。使用中だ」

 

(今度はお前か扇ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!)

 

ルルーシュは戦慄する。この様子だとこの付近のトイレは全て封鎖されていることになる。全てが罠だったのだ。ここで自分が漏らすように仕組まれたことだったのだ。

 

(ここまでして…ここまでしてゼロレクイエムを防ぎたいと言うのかカレン!)

 

何故、それとゼロレクイエムが繋がっているのかは常人には理解不能だがルルーシュの中では繋がっているのだろう。

 

だが、まだだ。まだ終わらんと瞳を輝かせたルルーシュはゼロの声で話しかけた。

 

「扇か?私だ!話したいことがある!今すぐここを出てくれないか?」

 

「その声…もしかしてゼロか!?な、何でこんな所に?」

 

「ああ、そうだ。可及的速やかに必要なことだ!急いでくれ!」

 

「わ、分かった。しかし、すまないゼロ…あの時はあんなことになってしまったが俺たちとしてはとても不本意なことだったんだ。もう一度話す機会があったら何て思ってる内になし崩し的にここまで事態は悪化してしまって…」

 

「気にするな!終わったことだ!それよりも早くお前はそこから出てくれ!」

 

「やはり、俺には副リーダーには向いてなかったんだ。情に流されて千種のことを皆に報告もしなかったし、そのせいで千草に撃たれもした。皆はゼロが俺のことを見捨てたとか言ってたけど、違うんだよ。裏切ったのは俺の方だったんだ。大人しく教師でもやっていれば良かったのにナオトに惹かれてテロリストを始めたのが問題だったのさ。俺には皆が持ってるような信念なんか無かったんだ。だから髪の毛もワカメみたいだし、視聴者には嫌われるし。やっぱり俺が副リーダーになんてならなければ」

 

「おいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!良い加減にしろ扇!!何時までぐちゃぐちゃ喋ってるつもりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!早く出ろと言ってるだろうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

しかしそこまでルルーシュが叫んでいるにも関わらず変な風にスイッチが入ったらしく、扇は呪詛のように何かを言い続けている。それを聞いたルルーシュは扇の説得は諦めて、別の建物のトイレへと向かおうとした。だが

 

「くっ…ここまで…か」

 

強烈な便意に襲われたルルーシュはその場に蹲る。最早、一歩も動くことができない。動けば、一瞬で堤防は崩壊してしまうだろう。

 

(ここで…終わりだと?スザクとここまで練ってきたゼロレクイエムがここで潰えると言うのか!?)

 

ルルーシュの脳裏に走馬灯のように蘇る。自分がこれまでしてきた罪が。その罪を清算するために為してきたことが。

 

そう。ルルーシュは既に後戻りできる状況ではなかった。ゼロレクイエムだけが自分の罪を清算する唯一の方法だと信じて行動してきたのだ。そのために悪を成すと決めたのだ。こんな所で立ち止まってはいられない。

 

押し寄せる便意を執念で押さえ込んだルルーシュの目に諦めの気持ちが消えた。残された限りない希望を探すことを決意したのだ。

 

「ねぇ、ママ。あの人、パンツ被って何やってるの?」

 

「しっ!見ちゃいけません!」

 

「おい。あの男、ルルーシュ皇帝に似てないか?」

 

「まさか。何で皇帝があんな変態の格好してるのよ。きっと、そういうプレイよ」

 

そんな言葉が飛び交う中、ルルーシュは再び戦略を練りはじめた。自身が漏らさないで済むルートを。

 

残された時間はほとんどない。その僅かな時間を使ってルルーシュは答えに行き着くのだろうか。はたまた、答えなどあるのだろうか。

 

ルルーシュの運命は如何に!

 

 




彰ノートの使い方

ルルーシュがシャーリーの家に着いた直後

ルルーシュ「絶対に飯など食わん!」

カレン「予想通りの反応ね…食べた方がお互い楽なんだけど、どうしても嫌?」

ルルーシュ「ふん、当たり前だ。敵の家で飯など食えるか」

カレン「そう。なら仕方ないわね」スッとノートを取り出す

シャーリー「何それ?」

カレン「ルルーシュへの対処法を色々書いて貰ったのよ。その中に飯を食べない時の対処法も…あ、あった」

リヴァル「何でそんなこと書いてんだよ…」 

カレン「アイツだからね。さあ、行くわよ」ルルーシュを掴む

ルルーシュ「お、おい!何処に行く気だ?」

カレン「さてね。行ってからのお楽しみよ」


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11 どんな人でも持ってるのが黒歴史。だから触れないであげてくれ

前回の続き ルルーシュが普通にご飯を食べてる理由

ルル「な、何だここは?こんな所で何をするつもりだ?」目の前にあるプレハブ小屋を見て疑問の声を上げる

カレン「…正直、私も流石にやりたくないから、もう一度チャンスをあげるわルルーシュ。大人しくご飯を食べてくれない?」彰ノートを見ながらため息を吐く

ルル「断固として断る。貴様らの言うことに従うくらいなら死んだ方がマシだ!」

カレン「そう…なら、仕方ないわね」グイッとルルーシュを掴むと目隠しをして、後ろ手に縛りプレハブ小屋に放り投げる

ルル「ぐはっ。ククク…拷問でもするつもりか?舐めるな!拷問程度で意志を曲げるか!」

カレン「拷問じゃないわよ。強いて言えば…奉仕?」

ルル「何?」

謎の声の集団「あらん。可愛い子じゃない」プレハブ小屋の奥から声

ルル、シャリ、リヴァ、ミレ「「「「え?」」」」

カレン「さて、特別ゲストの青髭海賊団の皆様です」

ルル「待てぇぇぇぇぇ!!原作が違うだろ!」

カレン「番外編の番外編みたいなもんなんだから気にしちゃダメよ。あ、後アンタがご飯を食べるように言ったら出してあげるから頑張って」扉を閉める

ルル「ちょ、ま、待て!や、止めろ!何処を触っている!!俺を誰だと思って、い、いやぁぁぁぁァァァァァァァァ!!!」

オカマA「抵抗しちゃダメよう。お楽しみはここからなんだから」

ルル「ま、待て!ご飯は食べる!だ、だからカレン!ここから出してくれ!お、おい!返事を…返事をしろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

後半に続く


(ルル…ダメなの…!?もう…限界だって言うの!?)

 

自身の目の前で悶えながら地面に伏しているルルーシュを見ながら、何もできないシャーリーは人知れず涙を流す。

 

彼はプライドが高い人だから、自身が助けに行くことは望まないだろう。敗北する(漏らす)としたら、誰にも気付かれたくはないだろう。彼はそういう人なのだ。

 

シャーリーはそんなルルーシュの性格を良く知っていた。だからこそ、シャーリーはルルーシュの側に近寄らなかった。決して、好きな人がうんこを漏らす瞬間を見たくなかったわけではない。そんなことはないのだ。

 

しかしシャーリーが如何に悲しもうと、ルルーシュの便意は止まらない。刻一刻とタイムリミットは近づいていた。

 

思わずシャーリーが目を逸らそうと決意した次の瞬間、ルルーシュの目にギアスの光が宿った。

 

「最早、移動は不可能…ならば!これしか方法がない!」

 

そう言うとルルーシュは近くに立っていた通行人にギアスを使った。

 

「今すぐおまるを買ってこい!」

 

(何とんでもない命令をしてるのルル!?)

 

ルルーシュの使ったギアスの内容に思わず悲鳴を上げそうになったシャーリー。おまるとはシャーリーが知っているあのおまるだろうか?そんな訳がないと思いたかったが、シャーリーにはそれ以外のおまるが思い至らなかった。

 

そしてあのおまるだった場合、ルルーシュがしようとしていることなど一つしかない。おまるで用を足すつもりだ。

 

何が悲しくて最愛の人がおまるでう○こをする瞬間を見なくてはいけないのだろうか。

 

止めようとしたシャーリーだが、飛び出すわけことも出来なかったのでことの成り行きを見守るしかなかった。

 

シャーリーから見ればルルーシュの行為は色々終わるものでしかなかったのだが、余裕が全くと言って良いほどないルルーシュにとっては消去法で残された唯一の手段だった。ぶっちゃけ、それは手段ではなくただの敗北行為たと思う。

 

しかし、それ以前に本当におまるが届くまでルルーシュが持つのかどうかすら不透明だった。どう見てもルルーシュのケツは崩壊寸前のようにしか見えないからだ。

 

だが、そのルルーシュは震える体で何とか座る体制までもっていくと、自らのカカトをケツの穴に丁度当たる位置に移動させた。

 

そう、そのポーズは今にも溢れ出んとするう○こを押さえ込むためのもの。ルルーシュは全神経と力を自らのカカトに集中させた。いや、自らの力だけではない。生きている生命。それは人間や動物に限らず植物からも少しずつ力を貸してもらい、自らのう○こを封じるためのものだ。

 

どっかのサイヤ人も使っていたことからこのポーズはこう呼ばれるようになった。

 

カカロットポーズと。

 

(いや、そんなポーズ名ないから!!!)

 

そんなシャーリーの真っ当なツッコミは完全に無視された。

 

その後もルルーシュは目をつぶってカカロットポーズを続けている。様々な者たちの力を借りたとしても、勝てるかどうか分からない限界の勝負だからだ。

 

便意か?ルルーシュか?

 

息もつかせぬデッドヒートを見るものは固唾を飲んで見守った。ボソッと呟かれた「終わらないで欲しいな」という呟きはルルーシュにとっては悪魔そのものなので勘弁してあげて欲しい。

 

そんなデッドヒートにも終わりというものが近付いていた。ルルーシュがギアスで命令した通行人がおまるを買ってきたからだ。その姿を見てルルーシュはフッと笑った。自身の勝利を悟ったからだ。ルルーシュは立ち上がり、おまるへと移動しようとした。だが、考えが甘かった。ルルーシュの詰めの甘さは原作でも度々見られたがそれはここでも変わらなかった。

 

カカロットポーズには弱点がある。

 

自身のカカトを妙な状態で固定させる必要があるので、急に立ち上がると足が痺れてよろけることがあるのだ。

 

余裕がなかったルルーシュはこのことを完全に忘れていた。更に不運なことに、便意が限界に迫っていたルルーシュには足の踏ん張りが奪われていた。これらのことが重なるとどうなるのかというと答えは単純だ。

 

とっさの痺れで足元が不安定になったルルーシュは少しよろけるが、問題なく踏ん張ろうとするが踏ん張りが効かずに体勢を崩してしまった。ルルーシュの視界がスローモーションでゆっくりと動く。走馬灯というものをルルーシュは初めて体感した、

 

体勢を崩して倒れゆくルルーシュの体。ギアスを使おうとも、最早取り返しが効く段階ではない。そんなルルーシュに自らの命令で野糞をしたリヴァルの姿を思い出された。

 

(ふっ…漏らさせて良いのは)

 

ルルーシュの体がゆっくりと地面へと落ちていく。

 

(漏らす覚悟があるやつだけだ)

 

ズダァンと大きな音が響いた。シンと辺りの音が消えた。シャーリー以外の人も突然崩れ落ちたルルーシュの姿を心配そうに見つめていた。そんな中でルルーシュはむくりと立ち上がるとおまるを買ってきた人物にこう告げた。

 

「良くやってくれた…もうおまるは必要ないから返してこい。替わりに…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パンツとズボンを買ってきてください」

 

(ルルぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!)

 

ルルーシュの言葉にシャーリーはこの日最大の絶叫を内心で上げた。

 

(嘘だよねルル!終わってなんかいないよねルル!真っ白な灰になってるけどしてないよねルル!変な体勢で立ってるのはそういうことじゃないんだよねルル!何か少し臭う気もするけどこれは無関係なんだよねルル!!買ってきてもらったパンツとズボンを貰ったのによちよち歩きしてるけど、まだ足が痺れてるだけなんたよねルル!折角着替えたのに何故かビニール袋を持ってるけど、さっき着てたズボンが入ってるわけじゃないよねルル!何とか言ってよルルぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!)

 

シャーリーがそんなことを考えているなど知る由もないルルーシュは更衣室で服を着替えると、そのまま走り出した。何故かパンツを頭に被ったままなので精神的なショックはなくなっていないのだろう。しかし、これはカレンから逃げるチャンスだと考えて足だけ動いてしまったのだ。決して、自分がやらかした現場に止まっているのが精神的に無理だったわけじゃない。断じて違うのだ。

 

そんなルルーシュの後ろ姿を見ながらシャーリーは慌てて走り出した。先に走り出したのはルルーシュなのだが、何故か女性のシャーリーは簡単に追いつけた。理由なんて聞いてはいけない。

 

本来であれば隠れて見守るはずだったのだが、ルルーシュが入り口に近づくと隠れているわけにもいかずに飛び出してしまった。最愛の人のこんな姿を見ていたくなかったからだ。

 

「待ってルル!」

 

「!?シャーリーか!悪いが俺は止まるわけにはいかないんだ!」

 

「止まってよルル…しちゃったことは仕方ないよ!生きてれば取り返せるよ!」

 

ルルーシュはシャーリーの言葉を聞いて感謝の念が湧くが今更手遅れだった。自分の罪は取り返せるものではない。ゼロレクイエムをもって償うしかないのだ。

 

「ありがとうシャーリー…だが最早俺は止まるわけにはいかないんだ」

 

シャーリーはルルーシュの手にあるビニール袋を目にすると、そっと俯く。

 

「気持ちは分かるよ…私だったらどんなに絶望的な気持ちになるか分からない…だけどこれだけは言える。私はどんなになってもルルのことが大好きだよ」

 

二人の話が微妙に噛み合っていない気もするが、きっと気のせいなのだろう。

 

「これ以上の問答は無意味だ…言葉では俺は止められないんだよシャーリー」

 

どうしても止める様子を見せないシャーリーにルルーシュは悲しげに微笑むと、目にギアスを宿した。しかし、その瞬間

 

「あら?じゃあ、暴力で止めれば良いのね。簡単で助かるわ」

 

「ぐえ!」

 

突如として後ろから現れたカレンがルルーシュの首輪を掴んで無理やり地面へと叩きつけた。

 

相当痛いようで悶えているが、何も気にしていないカレンはニコリと笑って言い放つ。

 

「ダメじゃないイヌーシュ。勝手に主人から離れちゃ」

 

「き、貴様!何故、ここが!」

 

「アンタの首輪には発信器を埋め込んでたのよね。こう言う場合に備えて」

 

「な!?じゃ、じゃあ貴様もしかして最初から…」

 

「ええ。最初から最後まで一部始終を見ていたし、ちゃんと携帯で録画もしたわ。それと」

 

そこまで言うと、カレンはルルーシュが手に持っていたビニール袋を奪い取る。

 

「ペットの汚物は私がしっかりと持ち歩くから安心してね。ああ、そうそう。万が一なんだけどこれからは逃げようなんて考えないわよねイヌーシュ?そんなことをしたら私ショックで録画した画像とセットでこのビニール袋の中身を全世界に公開しちゃうかもしれないんだけど」

 

カレンは本日で最高の笑顔を見せた。何も知らなければ殆どの男性が見惚れる笑顔だったがルルーシュには鬼の笑みにしか映らなかった。

 

「…はい」

 

ルルーシュに拒否などできようはずもなかった。

 

その後、無言でカレンに引きづられていくルルーシュを見てシャーリーは思った。

 

今日の出来事は一生心に秘めておこうと。

 

 

 

 

 

 

 




ミレ「」笑いすぎて声が出ない

シャリ「ルルぅぅぅぅぅぅ!!カ、カレン!ルルはご飯食べるって言ってるよ!早く出してあげてよ!」半泣き

カレン「それがダメなのよ。60分制で来てもらったから少なくとも60分は出てこられないわ」首を振る

リヴァ「60分!?お、お前そんなにあったらルルーシュの大切なものは完全に奪われるぞ!?」

カレン「だから言ったでしょ?私もやりたくないって。流石はアイツね…凄まじいドS精神だわ」彰ノートを見ながらドン引きして呟く

シャリ「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!?私のルルが汚されちゃう寸前だよ!?」

ミレ「もう汚されてるかもしれないわねぇ」

シャリ「止めてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

リヴァ「くそっ。俺は親友なのに何もできないのかよ!!俺は何だってしてやるのに!」

カレン「あら、できることあるわよ?」ガシッとリヴァルを掴む

リヴァ「え?」

カレン「さっきの60分だけど、向こう曰く二人なら30分で良いって言ってたわ。入れるつもりもなかったんだけど、本人がここまで言うならやぶさかではないわね。いってらっしゃい!」プレハブ小屋にリヴァルを放り投げる。 

オカマB「あら、この子も可愛いじゃない?」

リヴァ「ま、待って!前言撤回する。だから!」

ルル、リヴァ「助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

カレン「良い声出てるわね」

ミレ「そうね」

シャリ「」黙って涙を流している




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if〜もし、彰がガンダム00の世界に居たら

今更ですけど、このSS書く前に3パターン考えてたんですよね
①コードギアスの世界で彰が解放戦線にいる
②コードギアスの世界で彰がユーフェミアの側近
③ ガンダム00の世界で彰が王 留美の側近

それで結局①のパターンで書いてる訳です。

②はその時に考えた話を結構使ってるんですけど③に関しては出しようがなかったので折角だから書こう!と思って何となく書きました笑

続く予定もなく、本編と何の関係もないので興味なければ読み飛ばしてください

ちなみに場面はアニメ1話のちょい前です。


「世界が灰色ねぇ…そりゃ、世界じゃなくてお前の問題だろ」

 

そう。その男は確かにそう言った。

 

「生き方が決められた?お前、何歳だよ。今まで決められてたなら、これからはテメェで決めれば良いだけだろ。顔もスタイルも頭も良いんだからいくらでもできるっつーの。悪いのは性格だけだ」

 

その男との出会いで私の世界には

 

「この借りは忘れねぇ。そうだな、一つ約束してやる。お前が自分の人生を歩めるまでは俺がお前のことを守ってやるよ」

 

光が灯ったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ミス・スメラギ。今後はそのようなプランで進めてくださいね」

 

「ええ、了解したわ。王留美」

 

行動開始前の最終チェックとしてソレスタルビーイングと王留美達は確認の会話をしていたが、それも終わったのか主に話していたスメラギと王留美は笑顔で握手を交わす。

 

それを王留美の背後で見ていた桐島彰はスッと前に出てきてスメラギの手を握り、話しかけようとしたが寸前に笑顔の王留美に手を掴まれて阻止された。それを見て笑顔で彰は王留美に問いただすが、王留美も笑顔で返した。それを見たスメラギは苦笑しているが、紅龍はため息を吐きながら黙っている。

 

「お嬢様。何をなさってるんです?」

 

「もう用事は終わったわ。帰るわよ」

 

「いえ、私の用事は終わってないので私を置いてお嬢様は紅龍とお帰りください」

 

「あら、貴方は私の下僕でしょう?下僕が主人の命令に逆らって良いと思ってるのかしら?」

 

笑顔で会話を交わす2人だが、背後に阿修羅が見えるのは気のせいではあるまい。とは言え、ぶっちゃけよく見る光景なのでこの場の全員、全く気にしていない。ガンダムマイスター達に至ってはロックオンとアレルヤを除いて部屋から退出しようとしている。

 

「分かった、分かりましたよ、帰ります。帰りますからスメラギさん。その前に結婚しましょう」

 

「5年後にまた言ってくれたら考えるわ彰君」

 

「お前もこりねぇなぁ、彰」

 

ロックオンはクククとスメラギと彰のやり取りを聞いて笑う。ちなみに、彰とロックオンは何故か仲が良い。本人たち曰く、不思議と波長が合うらしい。

 

「そんな!?じゃあ、せめてベッドインだけでも!!」

 

「貴方のせめての基準が分からないんだけど…」

 

「というか、言ってること最低だって気付いてますか彰さん」

 

「女の敵…」

 

彰の発言を聞いてクリスはジト目で彰を見遣る程度だが、フェルトに至っては完全にゴミを見る目で見つめてくる。思わず変な性癖に目覚めてしまいそうだった。

 

そんな彰の反応を見て王留美は手で頭を押さえる。今となってはお約束のポーズとなっている。

 

「いい加減に気付きなさい。貴方はミス・スメラギから嫌われてるのよ。分かったら、これ以上無様な姿を晒さないことね」

 

「誰が無様ですか。一縷の希望を諦めない男の姿を馬鹿にしないでください。諦めたらそこで試合終了なんですよ!」

 

「残念だけど、貴方の試合は終了してるの。安西先生だって、もうどうしようもないの」

 

「試合が終了してる何て誰が決めたんです?私が諦めなければ試合は終了しないんです。まあ、恋愛経験もなければ友達もいないお子ちゃまなお嬢様には分からないかもしれませんが」

 

半分馬鹿にしたような彰の物言いに王留美の額に青筋が浮かぶ。

 

「私は恋愛経験がないんじゃなくて敢えてしてないだけなの。私に釣り合う男性が現れないだけなの。貴方みたいに分別も誇りもなく、盛ってる猿みたいに女ならば手当たり次第にアタックする人とは人種が違うのよ」

 

「高望みって知ってますか?そうやって自分のこと高く見積もっちゃてるから、何時迄経っても経験積めないボッチなんですよ。世界の変革をするとか中二病みたいなこと言い出すんですよ。世界を変革する前に自分を変革したらどうですかお嬢様」

 

「そうね、確かに世界の変革の前に私の変革は必要ね。正確には私の下僕の性格とか口調とか私への態度とかその他諸々ですけれどね!」

 

色々限界だったのか顔中に青筋を浮かべた王留美はそこまで言うと、彰のことを思いっきり蹴り付けながら言葉にするのが憚られるレベルの悪口を言い続けているが、最早慣れているのか紅龍はそれに全く構うことなくソレスタルビーイングの一同に頭を下げる。

 

「お嬢様と私の同僚が申し訳ない」

 

「いえ、お二人のお陰で助かっていますし、何より…何時ものことじゃないですか」

 

「…本当に申し訳ない」

 

スメラギの寛大な態度に心からのお詫びを紅龍は告げる。そんなやり取りを耳の端で聞いていた王留美は、彰を蹴りつけるのを止めてコホンと咳払いをしてから帰り支度を始める。ちなみに彰はボロ雑巾のようになっているが無視されている。日頃の態度の問題だろう。

 

「私は貴方達ガンダムマイスターの実力を信じていますわ。では、失礼します。紅龍。それを運ぶのは任せたわ」

 

ニコリと笑ってスマートに帰ろうとする王留美だが、彰の返り血を浴びながらの笑顔なので全くスマートではない。ただの狂気的殺人犯である。紅龍が血だらけの彰を抱えながら着いて行くのが尚更そのイメージを加速させている。流石のスメラギ達も顔を引きつらせながら見送った。

 

「…不思議なんだけど、何で王留美は桐島に支えさせてるんだろう」

 

「そりゃ、優秀だからじゃないんですか?彰さんやる時はやりますから」

 

アレルヤは首を傾げながら、日頃から良く思っている疑問を独り言のように呟きそれにクリスが答える。

 

しかし、その答えに思うことがあったのかスメラギとロックオンは苦笑する。

 

「それもあると思うけど、それだけじゃないと思うわ」

 

「ああ。俺もそう思うな」

 

「え?お二人は何でだと思うんです?」

 

そんなクリスの純粋な問いにスメラギが少し楽しそうに笑いながら答えた。

 

「多分だけど…彰君と話している時だけは17歳のただの留美になれるからじゃないかしら」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お嬢様…いよいよ始まりますが…本当によろしいのですか?」

 

「その質問の意味が分からないわ。良いに決まってるじゃない」

 

当たり前のことを言うなと言わんばかりに留美は振り返ることもなく答えるが、紅龍はそれに言い返すことなく押し黙る。それを担がれながら聞いていた彰はため息を吐きながら付け加える。

 

「本当にそれで良いのかって聞いてんだよこのシスコンは。今ならまだ戻れるからな。戦争の根絶なんて夢物語の実現自体に興味なんて無いお前がそれに参加するのが兄貴として不安なんだろうよ」

 

普通に聞いたら彰の発言は従者として無礼以外の何物でもないが、自分と紅龍しか居ない所では敬語は不要としているので王留美はそれ自体に思うことはない。まあ、内容は別だが。

 

「私の目的が世界の変革なのは承知のはず…それに対する反論は受け付けないわ。同時にそれへの命令の拒絶もね」

 

「知ってるよ。だから、兄貴は聞いたんだろ?本当に良いのかってな。お前がそれで良いなら構わねぇさ。俺もこいつもな。だがな。前にも言ったが改めてもう一回言っておく。戦争の根絶が仮にされても。世界の変革が実現できても。お前が本当に欲しいものは手には入らねぇよ。まあ、本当に欲しいものが何かすら分かってねぇんじゃそれ以前の問題だがな。それまでは付き合ってやるさ」

 

そこまで言うと、彰はよっと言いながら紅龍の手から降りて着地する。すると、そのまま一人で何処かに行こうとするので慌てた紅龍は何処に行くのか尋ねるが彰は事前準備とだけ伝えてそのまま何処かへと消える。

 

一瞬、紅龍は追いかけようとしたが王留美に止められた。様子を見ても全く動じていない。どうやら、この行動も二人の予定の範疇のようだ。自分を差し置いて勝手なことをしている彰に思うことがないわけではないが、彰のことは信頼しているし、何より後で聞けば済む話なのでとりあえず良しとする。

 

「気に食わないわね…」

 

「留美?」

 

珍しく額にシワを寄せている妹の様子に紅龍は意外という気持ちで声をかけるが、留美は返事もせずに何やら考え込んでいる。

 

妹がここまで考えるというのは極めて珍しい。兄からの目線というものを除いてもかけねなしで王留美は優秀だ。殆どのことであれば、即座に答えを出せる。その留美がここまで考えなければ答えを出せない問題というのが紅龍には分からなかった。

 

今までの会話の中で留美が考えていると思われることを紅龍なりに考えた。そして、一つの結論に辿り着いた。確かに、これは留美には案外難しいかもしれない。でも、留美ならできる。そう考えた紅龍は留美の肩にそっと手を置いた。

 

流石に現実に戻った留美は何のようだと言わんばかりに紅龍を睨み付けるが、紅龍は気にせずに笑顔で告げた。

 

「友達や彼氏がいないぼっちだからって気にすることないさ。留美なら、きっと頑張れば作れる」

 

「殺すわよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ちなみに王留美の付き人にしたのは色々ツッコミたいことが多すぎるキャラだったからです。もちろん、ルルーシュやスザクとかのギアスキャラも同様にツッコミたいことが多い笑


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12 人の日記は勝手に見るな!後悔するぞ!

もしかしたらだけど、ふざけ過ぎたかもしれない…


全てはこの一言から始まった。

 

「そう言えば、彰って今何をしてるのかしら」

 

食事をしながらミレイが思い出したように呟く。

 

周りの面々もそれを受けて、それぞれの考えを漏らす。

 

「そりゃ、皇帝やってんじゃないすか?」

 

「だよね。ルルの代わりをやってるんだから皇帝をやらないわけにはいかないもんね」

 

「…俺のイメージは大丈夫なんだろうな?」

 

「イメージどころか今後、人として生きていくことができるのかどうかってレベルで心配した方が良いと思うわよ」

 

「ふざけるな!何とかしろ!」

 

「無理ね。言っとくけど、私がアイツを何とかできたことなんてほとんどないのよ!」

 

「何を威張っている!お前の相棒だろうが!」

 

「まあまあ、2人とも落ち着いて。と言うかカレンは連絡とか取れないの?」

 

「取ろうと思えば取れますが、緊急時以外は連絡するなって言われてるんですよね」

 

「まあ、そりゃそうか。ブリタニアの皇帝が黒の騎士団のエースと頻繁に連絡するわけにはいかないもんな」

 

「でも、そうなると気になるよね。無事にやってるのかな?」

 

「ちょっとググってみる?もしかしたら、情報が出てくるかもしれないわよ?」

 

「馬鹿なことを。仮にも皇帝の情報が簡単にネットで分かるわけないでしょう」

 

「あ、出たわよ」

 

「何でだ!?」

 

ミレイの発言を鼻で笑って否定していたルルーシュだが、情報が出てきたことに立ち上がってツッコミを入れる。

 

「何かTwitterやってるみたい。ほら、悪逆皇帝日記だって」

 

「自分で言っちゃうんだ!?」

 

「何でそんなもの作ってるんだアイツは!?」

 

「と言うか、そんなことやってる時点で悪逆皇帝じゃなくないか!?」

 

(ツッコまない…ツッコまないわよ私は…)

 

悪逆皇帝日記という訳の分からないTwitterに各々が感想を述べるが、ミレイは反応を返すことなくその日記を開いた。

 

「何かあの後、ブリタニアに帰ってからすぐに始めたみたいね…せっかくだし、見てみる?」

 

ミレイの質問に何をやっているか知りたかった一同は賛同の意を述べるが、カレンだけは違っていた。

 

「それじゃ、皆で確認して。私は別の部屋で終わるの待ってるから」

 

「え?カレンは見ないの?」

 

自身の相棒の情報を見ないというカレンに不思議な顔をするシャーリーだが、カレンに言わせると考えが甘いと言う他ない。

 

ふふふと笑いながら上を見上げてカレンは答える。

 

「ええ、見ないわ…そんなことやってるなら生きてるんだろうしそれ以上の情報は要らないわ…というより無理だから。本当、こっちでくらい休ませて。そんな二重にツッコんでたらマジで体力持たないから」

 

「な、何を言ってるのか半分以上分からないけど見ないことは分かったよ…」

 

「というより、これ見ない方が良くないか?これってカレンですら危険だと感じる代物なんだろ?」

 

「…カレンでさえ振り回されるのか。彰とやらのレベルはどうなってるんだ?」

 

「私でさえ…?ははは、分かってないわね。何も知らないのよアンタは。キャハハハハハハハ!!」

 

突然、狂ったように笑い始めたカレンを見て全員ドン引きした。しかし、カレンはそんなことは関係ないと言わんばかりに怖すぎる笑みを浮かべながら続けた。

 

「所詮私なんて元々の世界じゃあスライム以下よ。そしてアイツはオルゴデミーラ。それを見て感じると良いわ。アイツのヤバさを!そして、私が一体何と戦っているかってことをね!」

 

いや、ブリタニアじゃねぇの?というツッコみを一同がする前にカレンは部屋から出て行った。

 

一同の前に微妙な沈黙が起きる。

 

「な、なあ?これ見ない方が良いんじゃないか?」

 

「で、でも、ここまで知って見ないって言うのも…」  

 

「止めよう。知らない方が幸せなこともある」

 

「さあ、見るわよー」

 

「「話を聞いてください会長!!」」

 

色々と酷い目に遭ってるルルーシュとリヴァルは何とか止めようとするが、この二人でミレイを止められるはずもなくミレイの作業は着々と進められ『悪逆皇帝日記』はスクリーンに映された。

 

暫くは会話のみお楽しみください。

 

1日目

 

『これはポンコツシスコンの僕が最高の悪逆皇帝になるまでの物語だ』

 

「まずはこの日記のコンセプトの説明ね」

 

「…どっかで聞いたセリフだな」

 

「というか最高の悪逆皇帝って何?」

 

「その前に誰がポンコツシスコンだ!」

 

2日目

 

『ブリタニアに着いたのにまだ天子様が泣き止まない。色々お菓子をあげてもダメなようだ。何か子供が喜ぶ食べ物書き込んでくれ』

 

「知らない場所に着いて不安なのね」

 

「と言うか、やってること悪逆皇帝か?これ?」

 

「ただの子供の扱いに困ってる人だよね」

 

「何をやっているんだアイツは…」

 

3日目

 

『良く考えたら俺は悪逆皇帝を目指していることに気付いた。泣いているならば更に泣かせてやろう。飯にピーマンを混ぜてやろう。ふはははは』

 

「あら、ピーマンが嫌いなのね」

 

「というかやってることしょぼくね!?」

 

「小さすぎる!」

 

「最悪だ…」

 

4日目

 

『しょうもないことをするなと周りに怒られた。しょうがないので別の方法で泣き止ませよう。トトロとか見るかな』

 

「あらら。怒られちゃった」

 

「まあ、そりゃそーだろ」

 

「やってることショボすぎるもんね」

 

「…アイツを見てるとスザクとかがまともに感じるな」

 

5日目

 

『トトロを見たら泣き止んだ。どうやら、お気に召したようだ。トトロはやっぱり偉大だ』

 

「万国共通ね」

 

「そりゃ、子供は好きだよ」

 

「まあ、否定はしないな」

 

6日目

 

『きゅうりを食べたくなったので天子様と畑を耕した。土に触れるのはやはり良いものだ』

 

「分かるわぁ…食べたくなるのよねあの味」

 

「漬物って美味いよな。日本に来て知ったよ」

 

「癖になるよね、あの味」

 

「あの味を出すには時間がかかったな」

 

7日目

 

『バス停で天子様とバスを待っていた。何時になると来るんだろう。来るといいな』

 

「どっか行くのかしら?」

 

「いや…あれじゃね?あれ待ってるんじゃね?」

 

「幾ら待っても来ないよねあれ」

 

「世界線を間違えている…」

 

8日目

 

『暗い場所で天子様とアレを探してみたが、現れない。何処に隠れているんだろうか』

 

「今度は何か探してるみたい」

 

「いや、あれっきゃないでしょ!?間違いなくあれ探してるでしょ!?」

 

「完全にトトロの影響受けまくってるよねこの人!!だってこの3日間トトロのことしかやってないもん!」

 

「何処が悪逆皇帝日記だ!?」

 

9日目

 

『また天子様が泣き始めたのでラピュタを見せたら泣き止んだ。今度から泣いたらこれを見せよう』

 

「面白いものねラピュタ」

 

「そういう問題ですか!?」

 

「もう、ただのジブリ日記だよねこれ!?」

 

「仕事しろ!」

 

10日目

 

『龍の巣って何処にあるんだろう』

 

「一度は探すわね」

 

「遂に隠す気なくなったぞこいつ!?」

 

「思いっきり宣言しだしたよこの人!?」

 

「だから、仕事しろ!」

 

11日目

 

『竜の巣…何処だ』

 

「諦めないのね」

 

「2日続けたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!間違いなく徹夜で探してたよこいつ!!」

 

「凄いけど凄くない!!頑張る場所は他にあるよ絶対!!」

 

「おい、誰かこいつを止めろ!悪逆皇帝どころか皇帝すらやる気ないぞこいつ!」

 

12日目

 

『流石にそろそろ仕事をしようと思う。その前にカントリーロード聴きながら悪逆開始だ』

 

「あ、仕事始めた」

 

「曲のチョイスはジブリなんだな」

 

「ま、まあ、そのくらいは良いんじゃない?」

 

「欠片も悪逆っぽくないだろ…」

 

13日目

 

『今やるのは悪逆じゃないことに気付いた。そうだ、私は小説を書きたいんだ。見せたい人がいるんだ』

 

「あら、新しいことに挑戦を始めたわ」

 

「飽きるの早くね!?」

 

「と言うか、耳をすませてるよねこの人!!」

 

「今やるのは間違いなく小説を書くことじゃない!!現実を見ろ!」

 

14日目

 

『私気付いたの!ただ書きたいだけじゃダメなんだって!思いだけじゃダメなんだって!』

 

「成長ね…」

 

「知らんがな!」

 

「だから耳をすませてるよね!!」

 

「書きたい思い以前に、お前は悪逆皇帝じゃないのか!?」

 

15日目

 

『雫!大好きだ!』

 

「雫って誰だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「あら、リヴァル見てないの?」

 

「どんだけ耳をすませてるのこの人!?どんだけ遠くの音を聞こうとしてるの!?」

 

「おい、こいつ確実にハマってるぞ!!気持ちが完全に誠司君だぞ!!」

 

16日目

 

『ギター作りに行ってきます。探さないでください』

 

「敢えてのギターね」

 

「と言うか探すに決まってんだろ!!」

 

「仮にも貴方皇帝だよ!?」

 

「お前は何をしにブリタニアに行ったんだ!?」

 

 

 

 

 

「もういい、止めろ!何だこれは!?こんなクソみたいな日記を公開して何がしたいんだアイツは!?」

 

スクリーンを停止させて、ルルーシュが至極真っ当な言葉を述べる。異論の余地がない言葉に、一人を除いて全員が肯定する。

 

「何処も悪逆皇帝らしくないしな…」

 

「と言うか、このまま進んだってもののけったり、ハウルったりするだけだよね…」

 

「私は見ても良いけど」

 

「貴方はそうでしょうね!だが、俺は嫌です!昨日まで投稿してるらしいので昨日の日記だけ見ましょう。どうせ、ジブリ見てるだけでしょうし。ある程度は展開が読めますよ」

 

そう言うとルルーシュは一気に日記を読み飛ばし、昨日の日記をスクリーンに映した。

 

『腐海の進行は予想以上に早い。しかし、そのためにアレを動かすべきではなかった…このままではブリタニアが滅ぼされるのは時間の問題だろう。私は悪逆皇帝である前に一人の皇帝として迫り来る脅威と戦わなくてはならない』

 

「「「いや、急展開過ぎるだろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」

 

あり得ない展開にルルーシュだけでなく、リヴァルとシャーリーも全力で叫ぶ。

 

「何故、ここまで来て始まりに戻っている!?」

 

「ツッコミどころはそこじゃねぇよ!?」

 

「そうだよ!何で突然現実にナウシカが押し寄せてるの!?おかしいよね!?原作違うよね!?」

 

「嘘に決まっているだろうが!何処の世界に突然腐海が現れる!?フェイクニュースにも程があるだろう!」

 

「いや、嘘でもないみたいよ」

 

「「「え?」」」

 

何故か普通に受け入れているミレイが指差す方向ではテレビが映っていた。ニュース番組が始まっているようだが、険しい表情でニュースキャスターが言葉を発している。

 

『ご覧ください。信じられない光景です。ブリタニアの首都に大量の王蟲が迫ってきています。大変危険ですので、周囲の人は慌てずに避難してください。繰り返します』

 

その言葉通り、ニュースキャスターの後ろでは王蟲の大群が刻一刻とブリタニアの首都に迫っているのが見えていた。

 

それを見た三人は暫く呆然としていたが、思い出したように再び叫んだ。

 

「「「だから、原作が違うだろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




彰「次回から『風の谷のルルーシュ』が始まるよ」

ルル・リヴァ「「おい、馬鹿止めろ!!」」

シャリ「カレン!出てきて!お願い!止められるのはカレンだけなの!」必死で扉を叩く

カレン「私は見てないし、聞いてないし、動かないの。お願いだからこっちの私まで巻き込まないで…私にも休息を頂戴…」

ミレイ(これがカオスって言うのかしら…)


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13 意外な組み合わせは時としてとんでもない科学変化を巻き起こす

世にも珍しいジブリとコードギアスのクロスオーバー笑


「遂に、この時が来たか…」

 

ルルーシュは空を見上げた。

 

空は暗い雲に覆われており、太陽は完全に姿を隠している。まさに今のブリタニアの、いや、人類の未来を暗示しているかのようだ。

 

「殿下!これは殿下のせいではありませぬ!」

 

「ジェレミア…気は使わなくて良い。こうなるまで不毛の戦いを止められなかった私の責任だ」

 

思えば急ぎすぎていたのかもしれない。急速な文明の発展と支配欲の向上は止まるところを知らなかった。

 

「今となっては全てが遅いのかもしれないが…思うんだよ。人類はもっと早くに平和への道を共に考えるべきだったのだ」

 

「殿下…」

 

沈痛な面持ちのルルーシュ(偽)に、ジェレミアは涙を禁じ得ない。

 

どうしてこうなってしまったのだ。何故、自分はこうなる前に止めることができなかったのか。

 

無言が支配する空間に一人の声が響いた。

 

「随分と辛気臭いな。葬式でもやっているのか?」

 

「「大ババ様!」」

 

「誰が大ババ様だ。C.C.様と呼べ」

 

無礼極まりない言葉を投げかける二人にC.C.は拳を振り下ろす。こんな若い娘に対して大ババ様呼ばわりする奴らなど殴られて当然だとC.C.は思っている。実年齢など気にしてはいけない。女性に歳の話などしてはならないのだ。

 

「こ、これは失礼を…では、C.C.様!子供たちの避難は完了しておりますか?」

 

「当然だ。とは言え、相手が怒る王蟲の集団ともなれば焼け石に水だがな。何処に逃げても結果は同じだ」

 

王蟲を怒らせた段階でこの結末は見えていた。王蟲の怒りは大地の怒り。ブリタニアは大地を怒らせたのだ。

 

大地の怒りを体現した王蟲の群れは凄まじい勢力となり、今やルルーシュ達の目前にまで迫っていた。

 

しかし、それでも諦めない者たちはいる。人類の歴史とは苦難と革命で構成されている。

 

「確かにこのままいけばその通りだ…が、俺たちには最後の切り札がある。そうだろう?ロイド」

 

「もちろんですよぉ、殿下。僕はそのためにいるんですから」

 

何時の間にか側にきていたロイドはルルーシュの言葉にふっと笑う。その姿を見てC.C.は眉を顰めた。

 

「まさか…ルルーシュ。お前、あれを使うつもりか?」

 

「今、使わずに何時使うんだ。セシル。準備は良いか?」

 

『はい、ルルーシュ皇帝。王蟲は充分に近づいてきています。今ならば問題ないかと」

 

途中で電話に切り替えたルルーシュは、セシルからの報告を聞き、こくりと僅かに首を縦に振った。それを見て周りの全員はいよいよ始まるのかと身構えるがその瞬間に頭上から声が響いた。

 

「やめろ!そんな方法は間違っている!」

 

「スザク…か。遅かったじゃないか。貴様のいう平和的手法でこの戦いを収める方法でも見つけたのか?」

 

メーヴェに乗って文字通り飛んできたスザクは降りるや否や、ルルーシュの前に立ち塞がった。

 

「あの王蟲達は怒りの余り、我を失っているだけだ!落ち着かせることができれば事態を鎮静化できるはずだ」

 

「それができないから問題なんだろう?あれだけの王蟲の怒りをお前はどうやって鎮めるというんだ?」

 

スザクの言っていることは正しい。しかし、正しさに方法がついてきていない。方法を伴わない口だけの正義など、この場においては何の役にも立たない。

 

「僕が止める。誠心誠意向き合えば気持ちは伝わるはずだ」

 

「理想論だねぇ、スザク君。君の正しさはいずれ君を殺すと僕は以前言ったけど、その通りになったみたいだねぇ。今必要なのは言葉じゃないよ。為せる力さ」

 

話終わるとロイドの身体が光を放ち始めた。しかし、その光は決して見るものを安心させる光ではない。むしろ、不安に貶める闇の光だ。

 

「ついに僕の研究の成果を見せる日が来たねぇ…この世で最も邪悪な一族の末裔の力を遺伝子に組み込んだ僕の力を」

 

話しながらも光はどんどん膨張していき、ロイドの身体を完全に包み込んでしまった。その光が取り払われると、そこにはロイドの姿はなく巨大な謎の生命体が誕生していた。

 

「で、殿下!な、何なのですかあれは」

 

「巨神兵だ」

 

「巨、巨神兵!?あの火の7日間を引き起こしたという伝説の…!?し、しかし、ロイドが何故そんなものに?」

 

「セシルの卵焼きを食べ続けた弊害のようだ。その中に含まれていたダークマターとロイドの血が奇跡的な科学融合を成し遂げたらしい」

 

「卵焼き恐るべし!!」

 

ジェレミアの顔が驚愕に歪むのを尻目にルルーシュはロイドに命令をくだそうと口を開いた。

 

「焼き払え!」

 

そのルルーシュの言葉が聞こえたのか巨神兵となったロイドは口を開くと迫り来る王蟲を殲滅せんと、口から光線を発した。

 

しかし…

 

「殿下…あの光線は私には卵焼きに見えるのですが…」

 

「卵焼きだからな」

 

「何故、そんなものを吐き出してるんですか?」

 

「人が食べられる許容範囲を超えていたんだろう。人の身体に収まらないダークマターをああやって吐き出してるんだ」

 

「なるほど…流石です、殿下。地上が火に覆われた理由がはっきりと分かりました」

 

「いや、汚いだけだろアレ。光線という名のゲロだぞ」

 

「大した違いはない。見ろ。王蟲にも効いてるようだぞ?侵攻のスピードが鈍ったようだ」

 

「流石は巨神兵ですな」

 

「流石なのはセシルだ。もう、アイツに料理作らせとけば色々解決するんじゃないか?」

 

現状を冷静に分析しているルルーシュとジェレミアにC.C.は、淡々と疑問を投げかけるが、王蟲に効果がある以上、文句を言うわけにはいかない。まあ、言ったって良いと思うが。

 

だが、その状況にも徐々に変化が訪れる。

 

「殿下!ロイドの身体が溶け始めています!」

 

「急速に摂取したダークマターの反動に身体が耐えきれなかったか…!!くそっ!やはり、1週間セシルの卵焼きしか食わせない生活をさせたのは無理があったのか!」

 

「悪魔かお前は」

 

溶け始めたロイドの光線では、王蟲の行進を止めるには至らない。皆が絶望感に包まれる中、スザクは一人スッと前に出た。

 

「いや、これで良かったんだ。王蟲の怒りは大地の怒りだ。あんなものにすがって生き延びて何になる」

 

「これが皆が生き延びる最善の手段だった…大事なのは結果だ。結果を伴わない綺麗事こそ一体何の役に立つ?」

 

「確かに綺麗事だけじゃ意味がないかもしれない…だからこそ!僕は自分の言葉に責任を持たせる!」

 

スザクはそう言うと、青い衣を見に纏い、メーヴェに乗ったかと思うと直ちに王蟲の戦闘集団の方へと向かっていく。

 

その姿にほとんど全員が無謀だとか、馬鹿だとか騒ぎ立てていたがC.C.だけは違っていた。

 

「その者青き衣をまといて金色の野に降り立つべし…まさか、奴こそが予言の…?」

 

「何の話だ、C.C.?」

 

「古い話さ。今のスザクの姿を伝承で聞いたことがある。本当に奴なら王蟲と会話が出来るかもしれんな」

 

そのC.C.の言葉を裏付けるかのように王蟲の行進は少しだけゆっくりになっていった。それと同時に王蟲の攻撃色が消え始めた。スザクの無謀とも言える行動は成果をあげたのだ。おもえば人間の歴史は不可能への挑戦でもあった。スザクの行動は人間の価値観すら変容する勇気ある行動だった

 

ラン ラン ラ ラ

ラン ラン ラン

ラン ラン ラ ラ ラン

 

ラン ラン ラン ラ ラ

ラン ラン ラン

ラ ラ ラ ラ ラン ラン ラン

 

ラン ラン ラ ラ

ラン ラン ラン

ラン ラン ラ ラ ラン

 

ラン ラン ラン ラ ラ

ラン ラン ラン

ラ ラ ラ ラ ラ ラン ラン ラン

 

ラン ラン ラン ラン

ラ ラ ラ ラ ラ

ラン ラン ラン ラン

ラ ラ ラ ラ ラ

 

ラン ラン ラン ラ ラ

ラン ラン ぐしゃ

 

ぐしゃ?

 

訳がなかった。

 

『ルルーシュ皇帝。スザク君が王蟲に踏み潰されました』

 

「だろうな。ところで何か言ったかC.C.?」

 

「気のせいだろう」

 

少しだけ行進の速度が遅れたかに見えた王蟲の軍勢の姿はどうやら気のせいだったらしい。木っ端微塵という言葉通りに、立ち塞がったスザクを踏み潰した王蟲の軍勢はもうすぐ側まで迫っていた。

 

「殿下!お逃げください!ここは私が!」

 

「無理するな。お前一人が頑張って何とかなる相手ではない。お前の方こそ下がっていろ」

 

「殿下!?一体何を!?」

 

庇うように前に出たジェレミアを押しのけたルルーシュは皆の前に出た。勝算があるのか口元には不適な笑顔が見えた。

 

「覚悟はできているのだろうな、王蟲。撃って良いのは撃たれる覚悟がある奴だけだ。お前らにはその覚悟があるのか?」

 

ルルーシュは王蟲に向かって何やら話しかけているが、当然会話が成立するはずもなく、無視してルルーシュに迫っていく。その姿に気付かないはずがないのだが、ルルーシュは話し続ける。

 

「あるようだな?ならば良い。ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる!貴様らは」

 

その言葉と同時にルルーシュの目が赤く光る

 

「死ね!」

 

プシュー

 

こともなく、隠し持っていた殺虫スプレーを王蟲に振りかけた。その効果たるや凄まじく、王蟲達の軍勢はあっという間に地に伏していった。

 

その姿を確認したルルーシュは満足げに頷くと、振り返り笑顔で告げた。

 

「どんな蟲もこれ一本で全て解決!蟲に困った人たちはすぐに購入してくれ!」

 

『明日を笑顔に。ブリタニア製薬がお届けしました。』

 

それと、同時に画面が切り替わる。

 

その映像をずっとTVで見ていたルルーシュ(本物)とシャーリーとリヴァルは行動を完全に停止するが、暫くしてから同時に声を発した。

 

「「「いや、CMぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!????」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




そろそろツッコミ役入れないとなぁ…だって、話が進まないから笑


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IF〜もし彰がユーフェミアの側近だったら〜

前に少し書いた彰がユーフェミアの側近だったとしての話です。

例によって続きの予定はありませんが、気分転換に投稿します!
良ければ見てやってください。


周りには死の匂いしか感じない戦場の跡地。

 

空腹や疲労で動く元気もない。

 

そもそも、両親も友達も居なくなった自分には生きる目的がない。

 

このまま死んでもいいんじゃないかと思っていたその時のことは今でも覚えている。

 

「あの…大丈夫ですか?」

 

それが出会いだったのだ。

 

「私が貴方と居たいんです。ですから嫌でも何でも居てもらいますよ」

 

会いたかったような気もするし、それから苦労する事を考えれば会わない方が良かったのではないかとも思うがこれだけは言える。

 

「あ、明日から私と一緒の学校に行ってもらいますからね!これは決定事項です」

 

その出会いは始まりの合図だった。

 

「私、思うんです。彰と一緒なら何でもできるんじゃないかって」

 

世界を愛する頭の中身も外側もピンク色の大馬鹿野郎の夢物語に付き合わされる男の物語の。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ね、彰。お願いがあるんですけど」

 

「何でしょうか、ユーフェミア殿下」

 

「二人っきりの時はユフィと呼んでくれる約束です。それと敬語も無しです」

 

ユーフェミアの自室で彰に笑顔で話しかけていたユーフェミアは不満そうに頬を膨らませる。

 

それを見て彰は肩をすくめる。敬語が嫌いな主人の性質は知っているので今更驚くことはない。

 

「はいはい、で?何?」

 

「実は最近、私の騎士になりたいという方々からの連絡が多数来ているんですよ」

 

「へー」

 

「もう少し興味を持ってくださいよう…」

 

「敬語止めろって言ったじゃん」

 

「何で敬語と一緒に興味も無くなっちゃうんですか!」

 

「お前の話長いんだもん」

 

「酷い!?」

 

悲しんでいるが彰としては紛れもない本心だ。何をそんなに話す内容があるのか意味不明だが、一度二人きりでユーフェミアが話し始めると軽くニ、三時間は止まらない。最初から真剣に聞いていては彰の集中力がもたない。

 

「もう、彰は何時も意地悪を言うんですから!とにかく!今、多数の人からの連絡を受けて困っているんですよ」

 

「何で?そろそろ良い年なんだし騎士がいたって悪くないだろ」

 

選ぶのは面倒臭いかもしれないが、身を狙われる可能性が高い家柄だ。専属のボディーガードはいるが騎士も居た方が好ましいのは言うまでもない。

 

「そんな良く知らない人を騎士にしたくないんです」

 

「別にとりあえず候補絞っといて後はそいつの人となりを見て決めれば良いだろ」

 

「そんな面接みたいなことしたくありません!」

 

「じゃあ、断れば?」

 

「中々諦めてくれないんです…」

 

「だろうなぁ」

 

断る理由が無さすぎるのだ。特に候補がいるわけでもないのだからとりあえず会うだけでもと言う話になるのは理解できる。何かお見合いみたいだな。

 

「ですから彰にお願いがあるんです!」

 

「…どんな?」

 

この展開からすると嫌な予感しかしない。

 

「彰が私の騎士になってください!」

 

「嫌だ」

 

「…もう少し考えてくださいよう」

 

「時間の無駄だろ。このやり取り何度目だ」

 

もう数えるのも面倒くさかった。二、三日に一回は行われてる気がする。

 

「彰が受けてくれないからですよ!」

 

「だって命令は嫌なんだろ?」

 

「彰に命令はしたくないんです」

 

「じゃあ、断る」

 

「だから何でですか!私のこと嫌いなんですか!?」

 

「いや、別に。普通かな」

 

「10年以上、一緒に居るのに普通って…」

 

ズーンと音がするかのように目に見えてユーフェミアが落ち込むのを見て彰はずずっとコーヒーを啜る。この娘は落ち込むのは早いが復活するのも早いのだ。それを知っているからこそ、彰は何も言わず放置する。

 

「あ、じゃあ、こうしましょう!私が彰の頼みを何でも聞きます!ですから彰も私のお願いのこともう少し真剣に考えてください」

 

では、お願いは聞いてもらった上で真剣に考えて断ろうと彰は思った。

 

「じゃあ、お手」

 

彰は手を出してそう言うとユーフェミアは「え!?」と言いながらおずおずと彰の手の上に自身の手を置く。

 

それを見て満足そうに笑みを浮かべる彰。ドS精神が滲み出ている。

 

「3回回ってワンと言え」

 

「人の妹に何をさせてるんだお前はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

主人を人として扱わない人でなしが突然部屋に乱入してきたシスコンに吹き飛ばされる。結構、衝撃的な映像のような気がするが、ユーフェミアは入ってきた人の顔を見て笑顔で迎える。

 

「あ、お姉さま!お久しぶりです!」

 

「ああ、ただいまだユフィ。少し待ってくれ今から地球のゴミをこの世から消し去るから」

 

そう言うとシスコンもといコーネリアはユフィに笑顔を向けたまま彰に銃口を向ける。酷い気もするが、やっていることを考えれば完全に自業自得である。

 

「お、お久しぶりじゃないですか。や、やだなぁ、お姉さま。帰ってきてるなら帰ってきてると言ってくださいよ」

 

「帰ってきてなかったらお前はどこまでやるつもりだったんだ?ああん?」

 

「姫様、気持ちはわかりますが冷静に。言葉遣いが乱れております」

 

コーネリアに吹き飛ばされた影響で顔中を血だらけにしながら彰は引き攣った笑顔で答えるが、その笑顔に向けてコーネリアは人前でしてはいけないレベルのキレ顔を向ける。後ろから着いてきていたギルフォードが思わず引き留めてしまうレベルだ。

 

「大丈夫だ我が騎士ギルフォードよ。このクズがこの世から消え去れば、私の言葉遣いも通常に戻るだろう」

 

「落ち着いてください。ここで手を下せばユーフェミア様の部屋の床が汚れます」

 

「おい、ドM騎士。お前俺の心配してなくね?俺が殺されることより汚れた床の心配してね?」

 

「何故私がお前の心配などしなくてはいけないんだ?」

 

「はっ倒すぞテメェ!」

 

色々収拾がつかなくなった現場を更に後ろから着いてきていたダールトンが何とか宥める。なお、その間も仲が良いいなぁと思いながらユーフェミアはニコニコ笑いながら見ている。割と本気で戦いが始まりそうだったことなど知る由もない。

 

「いやあ、ダールトンのおっさんのお陰で命拾いしましたよ。どうも、どうも」

 

「礼を言うくらいなら少しは自重して欲しいのだがな」

 

全くと言いながらダールトンは彰を見て苦笑する。幼い頃から面倒をかけられているので手慣れた感がある。

 

「流石にダールトンさんは人間ができてますねぇ。俺みたいな日本人に対しても優しくしてくれるなんて…何時も日本人だから色んな人から差別を受けて…」

 

悲しげに泣いているかのようにハンカチを目に当てて自分の苦難をアピールするがコーネリア達はその様子を白けた目で見つめる。

 

「いや、貴様の場合は完全に自業自得だろ」

 

「お前みたいなのが日本人のデフォルトなら今頃世界は滅びている」

 

「この間、彰のこと見ただけで泣いてる貴族の方がいましたよ」

 

「お前は一体何をやってるんだ…」

 

「人種差別はいけないということを実例を交えながら教えただけですよ」

 

人間は自分が相手の立場になることで相手のことを理解できる可能性が高まる。それを知っているからこそ、彰は未来あるブリタニアの若い貴族に差別される側の気持ちを理解していただこうとした。誰にでも誇れる正当な理由だった。ただ、内容が誰にも言えない酷いものだっただけだ。

 

ユーフェミア以外の三人は頭を抱え、ユーフェミアは流石は彰だと目を輝かせていた。

 

「流石は彰です。偏った価値観を持つ人にも丁寧に教えてあげるなんて」

 

「人として当然のことをしただけですよ」

 

一体何をしたのかとコーネリアは未知への恐怖を抱いたが、追及すると胃が痛くなりそうなので考えることを放棄した。彰と付き合う上で身につけたコーネリアなりの処世術だった。

 

「まあ良い。ところで何の話をしていたのだ?」

 

「私の騎士になりたいと仰っている方への断り方を彰と考えていたところです」

 

「私に勝てない奴は諦めろと言え」

 

「頭おかしいんですか?」

 

余りのイかれた返答に彰は思わず素で返答してしまった。この姉上に勝つとなると最低でもナイトオブラウンズクラスの実力が必要となる。つまり、殆どの者は不可能だった。

 

「ユフィの騎士になりたいのなら私の壁くらい超えて行け」

 

「壁が高すぎませんかねぇ…じゃあ、ジノとか?」

 

「あんな頭のネジどころか頭そのものが飛んでるような奴がユフィの騎士になど絶対にさせん!」

 

「ナイトオブラウンズの合格条件って変人であることじゃありませんでしたっけ?」

 

「そんな訳がない…はずだ」

 

「私の顔を見てそう答えてください」

 

ナイトオブヘンジンズと改名しても何ら問題はない一同の姿を脳裏に思い浮かべた彰はコーネリアを見つめるが、コーネリアは全く目を合わそうとしない。コーネリアがどう考えているか明白の瞬間だった。

 

「まあ、そう急いで決める問題でもないでしょう。とりあえず、それらしい理由をつけてコーネリア様からお断りしては?」

 

コーネリアから言われれば向こうも諦めざるを得ないだろうという意を込めてのダールトンの発言だったが、コーネリアも同じ考えだったらしく即座に肯定した。

 

「うむ。それがベストだろうな。では、ダールトンにギルフォード。この馬鹿を連れて席を外してくれ。私はユフィと二人で話がある」

 

話っていうか、アンタがデレる姿を見せたくないだけでしょ?と彰は思ったが口に出す前にダールトンとギルフォードによって強制的に部屋の外へと連れ出された。揉めることを事前に措置した素晴らしい行動である。

 

「全く…お前は何故そうなのだ?」

 

「俺が何をした?」

 

「何故、姫様の機嫌を損ねるような発言をするのかと聞いているのだ」

 

「別に好かれたくないですし」

 

彰の返答にギルフォードは微妙な顔を浮かべる。騎士としては許せない発言ではあるのだがコーネリアとの付き合いの長さで言えばギルフォードよりも彰の方が数倍長い。公式の場では勿論丁寧な態度で接していることに加えて、コーネリアもそれを許している節があるのでギルフォードが口を挟むのはギリギリで躊躇われる問題だった。

 

そんなギルフォードの心中を察しているのかダールトンは苦笑いしながら彰の頭をくしゃっと掴む。

 

「悪ガキもほどほどにしておけよ?姫様の気持ちが分からないお前ではあるまい」

 

「何のことですかねぇ」

 

「姫様は決してお認めにならないだろうが、心中ではお前をユーフェミア様の騎士へと考えておいでだ。お前であればどんな状況でもユーフェミア様をお守りできると思っている。私も含めてな」

 

「買い被りですよ」

 

頭を掴むダールトンの腕を乱暴に振り払うと彰は鼻を鳴らす。

 

「俺が騎士なんて柄に見えますか?俺の職業は「遊び人」に決まってんですよ。そんな称号は俺には重すぎます」

 

「称号が人を作ることもある。お前が自分の可能性を信じずにどうする?少なくとも私はお前の可能性を信じているぞ」

 

圧倒的な信頼を滲ませたダールトンの言葉に彰は何も答えず、ヒラヒラと腕を振ったかと思うとその場を去っていった。

 

残されたダールトンは深く息を吐くと首を回した。

 

「やはり無理だな。脈は無さそうだ」

 

「何故、あそこまで騎士になることを拒むのでしょう…?奴がユーフェミア様のことを守りたくないはずがないのですが」

 

「私も知らんがどうやら『約束』らしい。ユーフェミア様とのな」

 

「約束?」

 

ギルフォードも初耳の話だった。どうやら、その『約束』の中身はダールトンも知らないらしい。

 

「恐らくその『約束』を守るにはユーフェミア様を守るだけでは足りないのだろう。騎士になると色々制約も増える。それを嫌ったのだ。飽くまでも想像だがな」

 

想像とは言いながらもそれは恐らく限りなく真実に近いのだろう。幼い頃から彰を見てきたダールトンの言葉だ。見当違いのはずがない。

 

そうは考える。そうは考えるのだが…

 

「単純に面倒だからって可能性はないでしょうか?業務が増えることを嫌ったという可能性もありそうな…」

 

ギルフォードのぶっちゃけた疑問にダールトンは返答できなかったらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




この後の展開としては世にも珍しいシャーリーヒロインルートで進む予定でした。

中学時代のルルーシュと出会い、ブリタニア打倒という共通の目的もなくお互い幼いことから「ちょい変わ」以上に仲の悪い二人を中心にクロヴィスを虐めたり、ジノとふざけたり、コーネリアの胃を破壊したり…とまで考えていたのですが結局「ちょい変わ」の方にしました。


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14 絶対に倒したいライバルがいるのは少年漫画の王道

久しぶり更新です。


「ほう、起きたのか」

 

「C.C.か…すまないな、世話をかけた」

 

「一声でもうめき声をあげればトラウマで殺してやろうと思っていたのに…惜しいことをした」

 

クスクスと怪しげに笑うC.C.を見てルルーシュ(偽)は顔を顰める。そんなに余裕がある状況だとは思えなかったからだ。

 

「黒の騎士団は何処まで来ているんだろうな」

 

「近くに来ているさ。お前には聞こえまい。奴等に食い荒らされる森の泣き声がな」

 

近くに来ている…ということは戦いは近いということか。

 

「C.C.…戦いを止める術はないのだろうか…本当にもう止められないのか!?」

 

「此処まで来てしまっては止められないさ。なるようになるしかない」

 

「あの子はどうする気だ!!あの子は無関係だ!」

 

「黙れ小僧!お前にあの娘の傷が癒せるのか!?お前にあの娘が救えるのか!?」

 

C.C.の言葉にルルーシュは声を上げられない。助けられる補償などない。しかし、ひとつだけ断言できた。

 

「分からない…だが、共に生きることは「何やってんのぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」へぶっ!?」

 

キメ顔で名台詞を述べようとしたルルーシュの頭にシャーリーのハリセンが突き刺さった。

 

「痛いだろが!はい、カット、カット。撮り直しだよ全く…何やってんの?」

 

「何やってんのは私のセリフ!何やってんのよ、さっきから!?」

 

「CM撮影第二弾だけど?」

 

「だけど?じゃないよ、このおバカ!何をしにブリタニアまで来たのよ!」

 

「ジブリの魅力を世界に広めに来たに決まってんだろ」

 

「絶対に違うぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!ルルを止めるために此処に来たんだよ!!」

 

「え?何で俺がそんなことやらないといけないんだ?」

 

「本気で言ってるよこの人!本気でジブリを伝えるために皇帝やっちゃってるよ!」

 

信じられない者を見る顔でシャーリーは彰を見る。日本では少しばかり真面目に活動していたのでシャーリーは勘違いしているようだが、元々コイツはこんなもんである。

 

更に言ってしまえば、元々そこまでルルーシュを助ける気持ちもカレンに比べれば遥かに薄かった。基本的にテメェで何とかしろのスタンスだ。ちなみに、立場が逆の場合向こうのルルーシュも同じ反応を示していただろう。

 

「全く細かいことを気にしやがって。ほら、見ろ。あの娘も楽しそうだろ?」

 

そう言って彰が指差した方向にいた少女は帽子を被ったまま笑顔でコチラに近寄ってきた。というかこの少女はもしかして…

 

「トトロ!貴方、トトロって言うのね!」

 

「天使様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??何で天使様にこんなことやらせてんのぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!??」

 

「違うよメイ。この人はカンタのお婆ちゃんだ。トトロじゃない」

 

「あ、ごめんなさい」

 

「間違えることは誰でもあるさ。気にしなくて良い」

 

「いや、貴方は別の所を全力で気にするべきだよね!?気にする所が山ほどあるよね!?」

 

「いやー、やっぱりジブリならトトロは外せないだろ?俺はもののけ派だけど」

 

「知らないよ!聞いてないし!」

 

「子供はトトロのほうが好きなんだよな。ほら、アイツもトトロの方が好きみたいだぞ」

 

「え?」

 

疑問の声をあげてシャーリーが振り返ると、確かに別の女の子も天使様の方に近づいていく。トトロの登場人物の服を着ているところからトトロが好きな女の子にしか見えないだろう。ただし

 

「何処にもいないですよメイ。トトロも希望も常識も…ふふふ」

 

目が完全に死んでいる点を除けばである。

 

(全力で闇堕ちしてるさつきちゃんが来たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!??)

 

完全にダークサイドに墜ちているかぐやもとい、さつきを見てシャーリーは自分がとんでもない任務を負って此処にいることを改めて悟った。

 

このままではマズイ。ゼロレクイエムとか言っている場合ではない。

 

「かぐや様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!お願い戻ってきて!私を一人にしないでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

自分と同じ常識人であったはずであるかぐやの変わり果てた姿を見て戦慄を覚えたシャーリーは何とか正気を取り戻して貰おうと身体を前後に振り続ける。しかし、それでもかぐやの口から漏れるのは乾いた笑いだけだった。

 

「私もね…最初は争っていたんですよ。ですけど、1人、また1人とおかしくなる人達を見て思ったんです」

 

かぐやは漆黒の瞳でシャーリーを見つめた。

 

「私もおかしくなった方が楽なんだって」

 

「この外道ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」

 

シャーリーは全てを彰のせいだと判断した。根拠などない。しかし、自分は絶対に間違っていないという謎の確信があった。

 

「何を騒いでんだよ。かぐや様って元からそんなだったろ?」

 

「いや、そんな訳ないよね!?こんな何もかも諦めたみたいな目をしてなかったよね!?」

 

「気のせいだろ。なあ、C.C.?」

 

「まあ、そうだな」

 

「絶対に貴方はおかしいことに気付いてるよねC.C.さん!ちょっとは協力してよ!本物のルルが心配じゃないの!?」

 

「そんな訳ないだろう。私の契約者だぞ?夜も寝られないくらいに心配している」

 

「その割には顔色良いですけど!?先程もたっぷりと昼寝をしていらっしゃいましたけどそのせいで夜寝られないだけじゃないですか!?」

 

「アイツが人質に取られているからな。やりたくないが仕方なく協力しているんだ」

 

「随分と楽しそうに見えましたけどね!?一番イキイキしているように感じましたけどね!!」

 

ギアスでルルーシュのことが分かるC.C.に彰の変装が通じるわけもなく、出会った瞬間にニセルルーシュであることは看破されていた。

 

しかし、そんなことは彰にも分かっていたため、即座に事情を説明。ルルーシュの安否を保証した上で、ルルーシュの命が大切ならば協力しろとC.C.が協力しやすい理由を作ったことで少なくともある程度の協力は保障された。なので、C.C.の言葉は間違いではない。ノリノリの気がしないでもないが飽くまでもルルーシュのためなのだ。多分。

 

(カレンが心配してた通りだ…)

 

この惨状を目にして、シャーリーの脳裏に1週間前の光景が蘇る。

 

 

 

 

 

 

 

〜1週間前の日本〜

 

「火急である」

 

「山本元柳斎重國以外でそのセリフ使ってる奴初めて見たわ…」

 

「何が火急なの?」

 

所謂、ゲンドウポーズを取りながら真剣な表情で全員を見ているカレンにシャーリーは首を傾げる。特に何も起きていないと思うが、一体何があったのだろうか?

 

「決まってるでしょ?彰への対応よ」

 

「ああ…」

 

この間の騒ぎがシャーリーの脳裏に蘇る。確かにこのまま放っておけばルルーシュと違う意味で取り返しのつかないことになるような気がしてはいた。

 

「お前が行くしかないだろう。お前以外に止められる奴などいない」

 

「そうしたら早いんだけどね。生憎と私はアンタを見張らなきゃいけないから無理よ」

 

「だとしたら放っておくしかないぜ?」

 

リヴァルの答えが総意だった。カレン以外に彰を止められるとは誰にも想像できない。

 

「放っておいたら大変なことになるわよ」

 

「どうなっちゃうの?」

 

「この世もボケに支配されるわ」

 

「「「「は?」」」」

 

意味が分からないカレンの発言だが、本人からすれば至って大真面目である。 

 

「アイツは変な所で影響力があってね…関わると必然的に頭がおかしくなるわ」

 

「悪影響あり過ぎじゃない!?」

 

「だから、誰かが行かなきゃいけないのよ…まあ、この中で私以外に止められる可能性があるとしたら…」

 

真剣な表情で暫く悩んだカレンはくるりと振り返ると、シャーリーの肩に手を置いた。

 

「頑張ってね、シャーリー。アンタだけが頼りよ」

 

「無理だよ!?」

 

急に世界の命運が自分の肩にのしかかった気がした。あんな騒ぎを引き起こす人間を止めるなど、どう考えても無理である。

 

「大丈夫よ、私の世界だとアンタは結構彰と一緒にいたから」

 

「いるだけじゃ何の意味もないよね!?止められてたの!?私は彰を止められてたの!?引き摺られてなかった!?」

 

「いや、逆に考えれば引き摺られてるってことは相手の速度は落ちるわよね」

 

「会長!?」

 

とんでもないところから矢が飛んで来た。味方からいきなり背中を斬りつけられた気分だった。

 

「そうだな…少なくとも俺が行くよりは効果あるだろ…」

 

「リヴァルまで!?」

 

「決定ね。30秒で支度しな」

 

「何かカレンも影響受けてない!?」

 

 

 

 

頭が痛くなるやり取りを思い出したシャーリーは頭を抱えた。

 

まさか、こんな形で世界の命運を背負うことになるとは思わなかった。勝ち目など全く感じない戦いの上に、謎の疲労感だけ募っていく。今すぐ日本に帰って全てを忘れた観客に戻りたかった。無理なのだが。

 

「それにな、シャーリー。俺が本当にふざけているだけだと思っているのか?」

 

「思ってるよ!そうとしか見えないよ!」

 

「違うな。間違っているぞシャーリー。アイツを止めたらそれで終わると思っていたら大間違いだ」

 

「え…どういうこと…?ルルを止めればそれで終わりなんじゃないの?」

 

「違うに決まっているだろう。世界はそんなに単純じゃない。本当の敵は別にいる」

 

「じゃあ…本当の敵って…」

 

「原点にして王者…ディズニーだ」

 

「少しくらいは真面目になってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

悲鳴のようなシャーリーの叫び声を無視して彰は続ける。

 

「確かにな…真面目に考えれば戦力差は埋め難い。何よりもランドとシーが強過ぎる」

 

「違うから!そんな所真面目に考えなくて良いから!」

 

「その戦力差を埋めるために始めるのさ!ジブリパークをな!」

 

「ねぇ、貴方良い加減にしてよね!?何なのこの話!宣伝!?」

 

「そうだ!一刻も早く知名度を上げねばならん!水際対策をしている場合ではない!」

 

「私はボケの水際対策を今すぐしたいよ!感染状況が酷いことになってるよ!」

 

「そのためにあるのだろう?ワクチンがな!」

 

「この場合のワクチンって何!?ツッコミ!?」

 

「陛下!シュナイゼル殿下より緊急入電です!」

 

シャーリーのツッコミが響く中、部下の一人から緊急を知らせる連絡が届く。

 

流石に多少気持ちを切り替えたルルーシュ(笑)は、素早くシャーリーを隠すと余裕たっぷりな表情で映像を繋げようとする。

 

しかし、そこにいたのはシュナイゼルではなかった。

 

「お久しぶりですね、お兄様…」

 

死んだはずの妹。ルルーシュにとってはかけがえのない、文字通り命よりも大切な存在である

 

「私はお兄様の…敵です」

 

ナナリーが今まで閉じられた目を開いてそこにいた。

 

「そうか…ナナリー…お前か…お前が!」

 

まあ、とは言え

 

「ディズニーだっだんだな!」

 

(何時までジブリワールドにいるのあの人!?)

 

シリアスになる訳でもないのだが。

 

微妙な空気の中、飛び出すわけにもいかないシャーリーのツッコミが脳内に響いた。

 

 

 

 

 

 

 




次の更新も未定です。よろしければ気長に待っててください。


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