傭兵日記 (サマシュ)
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人物資料
人物紹介 コードネーム《ジャベリン》とその人物に関係する情報について


アンケートの結果と自分がジャベリンくんを動かしやすくするために作りました。
ネタバレを多く含みます。

3/27 ちょっと更新
4/18 更新


コードネーム《ジャベリン》

 

本名:■■■■■

性別:男性

年齢:26

出身:不明

職業:民間軍事会社「武器庫(armoury)」にて、

『槍部隊』と呼ばれる部隊の隊長を勤める。

特技:機械弄り、データ改変

外見:黒髪黒目の日系人、多少の欧米人の血が入ってるせいか、鼻目立ちは良い。街を歩いていて時々見かけるちょっとイケメンのような外見。

<詳細>

 

元々は難民キャンプで暮らしていた。16歳の時、テロリストの襲撃に難民キャンプごと巻き込まれ瀕死。その時任務を遂行中であった武器庫の経営者、「ジョン・マーカス」に拾われ、一命をとりとめた。彼に助けられた後そのまま着いていくことになり、なし崩しに武器庫へ入社、現在へと至る。

性格は冷静で、大抵のことには驚かない。ただ、あまりにも想定外のことが起きると判断力が鈍ってしまうところがある。なお、たまに適当に物事を決定する癖や、相手のノリに乗り過ぎて過度な行動を起こすことがあるため注意されたし。

女性経験はその生い立ちからあまり無いと推測される。

射撃の腕は良く、銃器は全てそれなりに使える。基本的にARやDMRを好んで使う。また、自らのコードネームと同じ名を持つジャベリンミサイルは好きなようだ。

 

現在は武器庫とグリフィンに二重雇用の状態で居る。

 

 

 

 

民間軍事会社「武器庫(armoury)」について。

 

第三次世界大戦終結直前に、正規軍を退職した「ジョン・マーカス」によって設立。幾つかの部隊が存在しており、『(つるぎ)部隊』,『盾部隊』,

,『弓部隊』と、全て武器にちなんだ名前となっており、それぞれ何かしらの分野を専門としている。ジャベリンが隊長を勤める『槍部隊』は比較的新しく作られた部隊であり、様々な仕事を任される何でも屋のような部隊である。

規模は他のPMCよりも小さいが、隊員たちの練度が高く、PMCどうしで抗争が起きてもすぐに相手を圧倒できる程度には強い。

近年、勢力を増すG&K社と企業提携を行った為、他のPMCに警戒され始めた。

社員は全て人間で構成されており、自律人形は居なかった。だが最近業務形態が見直され始め、遂には自律人形を導入するに至った。

 

 

 

 

 

 

『槍部隊』について。

 

コードネーム《ジャベリン》を筆頭にコードネーム《スピア》、コードネーム《ランス》、コードネーム《トライデント》の四人で形成された部隊。

顧客からの覚えが良く、護衛、暗殺、敵地偵察、強襲、補給線遮断、はたまた路上掃除や子守りまで任されてしまうほど何でもやらされる部隊。四人一組で任務を行うことは稀で、基本二人一組か一人で任務を遂行する。

任務の達成率は九割九分。比較的簡単な任務が多いおかげでもあるが、そのせいで顧客からの人気に拍車がかかって仕事が増えていく。社長が仕事を減らしてやろうといくばくか依頼を突き返したりするがやはり多い。

 

「傭兵、護衛だってよ。」以降からコードネーム≪パルチザン≫、コードネーム≪パイク≫が入隊。彼らはジャベリンと同じく武器庫とグリフィンに二重雇用される形となっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ポチ』というダイナゲートについて。

 

ジャベリンが日記を書き始めて数日後あたりに彼が購入したダイナゲート。始めは仕草が犬っぽいダイナゲートであったが、蝶事件以降、とある科学者によって改造され、装甲が着いてその上喋ることが出来るようになった。搭載されているAI故か、多少単独で行動しても何ら問題ない。性格は元気そのもので、飼い主であるジャベリンに度々癒しを与えている。

 

 

 

 

 

 

『メグ・コーマック』という女性について。

 

現在S10地区の基地にて指揮官を務めている女性。ジャベリンとは旧知の仲である。

身長170cm 年齢19歳、ブロンドの長い髪をポニーテールに纏めている。

未成年ながらグリフィンの指揮官を務めることができている辺り、優秀な人物とも言える。格闘技にも精通しており、対人戦闘なら恐らく負けることはないだろう。

可愛いものが好きで、それは戦術人形だろうとなんだろうと関係は無いらしい。

一度誘拐されかけたものの、誘拐犯を自ら撃退しているので、余程の理由でもなければ彼女を襲う必要性は皆無に等しい。




もっと知りたいことがありましたら、随時更新していくのでメッセージなりコメント欄へ書きこむなりお願いします。


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本編
傭兵、日記始めるってよ。


先に言っておきます、序盤はあんまり戦術人形とか出ません。「そんなもん知らん、早く読ませろ。」という方は是非とも読んでネ!!!!!!







 

 

1日目 雨

同僚に日記を勧められたので始めることにした。母国語を忘れそうだったのでちょうど良かった。

日付をつけるのは何か味気ないのでサバイバル感が出るように1日目、2日目という風につけていくことにする。

 

 

それと、もしも誰かがこれを読むことがあったら、そいつがこんな猛毒でまみれたクソな世界で生きるための娯楽にでもなるよう書いていくつもりだ。

 

 

自分はとあるPMCの隊員であり、コードネームはジャベリンと呼ばれている。国籍は日本だが、日本という国が無くなっている以上、これはあまり意味のない情報でもある。

現在は任務を遂行しており、内容はテロリストの補給路の遮断及びテロリストの物資の強奪を担っている。今は外が酸性雨に見舞われているため休業中だ。拠点で同僚と一緒にトランプをしてる。

そろそろストレートフラッシュが揃いそうなのでここで切り上げるとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

2日目 雨

まだ酸性雨は続いている。いい加減暇になってきた……そして一昨日の俺のストレートフラッシュのせいで同僚がまだ拗ねてる。あとで食料のゼリー(ココア味)を贈呈しておこう。

それにしても、ここまで雨が続くとテロリストも暇だろうに、そろそろ俺たちが攻撃してやらなければ外で裸踊りをしだすだろうな。(因みにこの言い回しを同僚に伝えたら「無理して上手いことを言う必要はない」と言われた。イギリス人め、紅茶の飲み過ぎで頻尿にでもなってしまえ。)

 

 

 

 

 

 

 

 

3日目 晴

やっと仕事ができた。今日はSCARライフルとジャベリンミサイルを持っていったため、すぐに終わった。どうやらテロリスト達は新人だったのか録にこちらへ対応できずにやられていった。だが同僚がヘマをやったのか足を負傷しており本社へ戻ることになった。会社からは人員の補填ができないらしい。

 

 

暫くは一人でやるしかないようだ……。

最近流通し始めた戦術人形なるものを経費でもらおうかな?

 

 

 

 

 

 

 

4日目 雨

今日は仕事の確認である。どうやらテロリストは昨日のことがあっても諦めていないようだ。

また車両の往来が始まったらしい。しかし、彼らはなんで負傷をする危険性のある酸性雨が降る中でも動くつもりなのだろうか?

 

敵ながら天晴れといえる。全ては理想のためなのだろうが、俺は理解に苦しむ。

 

 

 

 

 

 

5日目 晴

朝方と夜間に地雷を設置。

同僚の紅茶が恋しい。彼が淹れる紅茶は今や嗜好品が貴重となった現在では宝と言える。いつか彼の紅茶を巡って争いが起きる可能性もあるぞ。

 

 

 

 

 

 

6日目 曇

小型ドローンから奴らが引っ掛かったのを確認。

そろそろ拠点を移動させよう。

 

 

 

 

 

 

 

7日目 晴

同僚が本社へ戻ってからも難なく仕事を終えた。ただ、一人で仕事というのは案外寂しいようだ。

そして今日は少し驚いたことがある。それはテロリスト達が自律人形を使っていたということだ。だから雨のなか動けたのだろう。

恐らく何処からかサルベージしてそのまま使っていると思われる。

自立人形とは何度か戦闘を交えたことがある。案外しぶといから厄介だった。

 

自律人形は基本的な急所は人間と変わらず、頭やコアのある腹部あたりを撃ち抜けばだいたい殺せる。

ただ、まれに装甲をつけた人形が居て、そいつを倒すのは一苦労だ。何度殺されかけたものか……。

50口径か徹甲弾を使えば楽に倒せるものの、そんなものは持っていないのでロケットランチャーで吹き飛ばしている。

 

そういえば、任務中に自律人形のカタログ(しかも最新刊)を見つけたのでその中から何か注文するつもりだ。

 

 

……出来るなら機動力のあるやつがいいな。

 

 

 

 

 




高評価、感想は励みになります。リクエストが有ればどうぞ。個人的にはもう少し長い方がいいなとか思ったり()
あと投稿は結構不定期だから許して……。

※うちのジャベリンくんはフリー素材です。


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傭兵、機械型買うってよ。

 

 

 

8日目 曇時々雨

 

拠点を移動させた。

こんどは小さなアパートだ。断続的な雨のため、仕事は休み。

久々に何もない日だった為、軽く部屋を片付けた後に銃の整備を行う。今持っている銃は予備を合わせて3挺あるが、SCAR以外はあまり使ってない。

まぁ、1挺はマガジンが割と高いし壊れやすいってのがあるから仕方ないか。もう1挺は単純に使う機会がない。SCARの使い心地が良いのが悪いんだ。

……そろそろ俺の銃、どっかのガンスミスにでも見せた方がいいかな?

ちょっとだけSCARを試し撃ちしたんだが弾が凄いバラけた。

サイドアームは何の問題もなかった。

ちなみにサイドアームはガバメントだけだ。火力は正義、裏切らない。こんどはデザートイーグルでも持っていくか。

 

 

 

 

 

 

 

9日目 雨

 

カタログを読んでみたがどれもこれも高い。とても経費で落としてくれないだろうな。

 

 

予算度外視で買うとしたら、一番魅力的なのは鉄血工造のハイエンドモデルたちだろう。

火力、装甲、演算速度、どれをとってもなかなか良いのだ。あと刀を持ってたり、黒を基調としたデザイン等が俺の少年心を刺激する。もちろんその鉄血工造のライバル社であるI.O.P社の自立人形も捨てたものじゃないが、いかんせん可愛らしいデザインばかりだから一緒に作戦するとなるとドギマギしてしまう。つらい。

 

 

……よし、安いやつを探すか。

 

 

 

 

 

 

 

10日目 曇

 

あまりよい天気ではないが俺にとっては良い転機である、俺はこの日に自費で一台の機械を買った。

 

 

それは鉄血工造という会社の機械であり名称を『ダイナゲート』と呼び、小回りの利く便利そうな機械だ。あと結構安い。(戦術人形は馬鹿みたいに高かったので諦めた)これで酸性雨の中でもそれなりに仕事が出来るようになるだろう。鉄血工造の輸送ヘリがこの機械を運んできてくれた。

後でテロリスト達に撃ち落とされないか心配だったんだが、輸送ヘリ内にカタログで見たハイエンドモデルが座ってたので杞憂に終わる形になった。間近で見たんだけどやっぱカッコいいな。

 

 

 

少し自前のデータプロテクトを勝手に付け加えたあと、小型ドローンから貰った地形情報をもとにテロリストの補給部隊の予測進路に地雷を蒔かせに行かせた。

せっかくだ、あの機械に名前を付けなければな。

 

 

 

 

 

 

 

 

11日目 雨のち曇

 

ダイナゲートが帰って来た。どうやら地雷を設置し終えたようだ。

こいつはとても使えるぞ。

 

 

後で小型ドローンで確認したところ、何ヵ所かで車両が燃えていた。任務が捗るのは喜ばしい。

しかしこのダイナゲート、行動が犬みたいだ。褒めて欲しいのかずっと俺に寄っ掛かってくる。その姿があまりにも可愛らしいので自然と頬が緩んだ。

こいつに尻尾をつけたら千切れんばかりの振りようだっただろうに。

 

 

 

 

 

 

 

12日目 忘れた

 

あのダイナゲートに何か良い名前をつけようか1日中迷っていた。ダイナゲート、働き蟻という名を冠したこの機械に名前をつけるとして、何にすべきなのか全く思い付かなかった。一先ずは、何個か候補を書いてみよう。

 

・キャリー

 

・ジャガー

 

・ジョグ

 

・タロー

 

あまり思い付かないな…。もう本当に安直な名前でいいんじゃね?ポチとか、タマとか。それとも俺のコードネームと同じ槍に関係した名前にするか?

 

 

そうこうしている内に、定期報告を忘れていたため社長からお怒りのお言葉を頂戴した。今度会社に戻ったら彼の顔にハッカをぶちまけよう。(そんな事を考えていると、何かを察知したのかダイナゲートが寄り添ってきた。本当にこの機械はアレだな、犬だな。)

 

 

(ここから先は走り書きがあるものの、ひどく汚れているところもあり、読めなくなっている)

 

 

 




書き貯めって便利だね(小並感)
いつかはコラボとかやってみたいよね(尚早)
高評価、感想は励みになるのでドシドシお願いします。

<どうでもいい補足>
ジャベリンくんの3挺ある銃はそれぞれSCAR-H,G11,AN-94です。
彼がなんでG11とか持ってきたのは不明だけど、恐らくは見た目がカッコいいとかそういう感じで持ってきたのでしょう。


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傭兵、窮地に立たされるってよ。

20日目 晴

 

少し日にちが経ってしまったのは、全てテロリストのせいである。

奴らうちのポチ(ダイナゲートのこと。結局無難な名前になった。)を追跡してたらしく、俺がポチを撫でてた時に襲撃してきやがった。

 

テロリスト達の間ではそこそこ名の知れた人間でもあるせいで向こうの本気度がとんでもない。装甲持ちの人形がちらほらと見えたし、ロケットランチャーを持った集団、HMGを担いだ人形たち、装甲車数十台とどこから持ってきたのかとてつもない規模でやって来た。

 

一人相手にやる規模じゃないだろうが!!!!!!それでも人間か!?!!??

 

散々に悪態を吐き散らした後に、ポチを使って地雷撒き散らしたりスモークグレネードを全て使ったり、とにかく敵を撹乱させて命からがら逃げ延びることができた。もう二度とやりたくない。

 

万が一のために別の拠点へ物資を少しずつ移動させてたから、逃げ延びたあとに困ることは無かったが暫くは行動できそうにもない。

社長に連絡しておくか。

 

 

 

 

 

 

21日目 曇のち晴

 

社長から支援物資が届いた。嬉しいのだが、いま俺が居る場所が敵地のど真ん中(拠点付近が占拠されてた)ということをお忘れなのだろうか?

 

もちろん見つかって現在逃走中である。今回は上手く追っ手から逃れることができた。幸いポチと一週間分の食料、水、武器はあるのでどうにかなる。ポチが最大の癒しだ。

それとこれまた運が良いことに人気のない家屋と自律人形を見つけた。

 

この自律人形は少女の風貌であり、そして結構見かける標準的な自律人形だった。ここの家主に捨てられたようだが、まあこんなご時世だから仕方ないな。

この少女は話し相手としてこの仮拠点に置いておくことにした。

 

 

……一人は案外寂しいからな。

 

 

 

 

 

 

22日目 雨

 

この少女、なんでこんなに寝るのだろうか?話しかけても全く起きない………捨てられた理由が分かるような気がする。声をかけるも生返事、耳に息を吹き掛けても反応なし、寝てる。

埒があかないので最終手段として胸を触ろうとしたらポチにどつかれた。すまない。

 

だが性能のほうはピカイチなのか、拠点はずっと綺麗だったしなんとなく銃の扱い方を教えるとすぐに覚えていった。ただ、人に危害を加えることはプログラムで禁止されてるようだ。やるべきではないのだろうが、この少女を軍用に転用出来るようなら是非ともやりたいと思った。恐らく特殊部隊辺りで活躍出来るんじゃないかな?民間用って案外拡張性高いし。

 

まあそんな事するより巷で有名になってる戦術人形を(出費は度外視で)雇えば済む話だが。

そろそろ救難信号を出しておこう。

 

 

 

 

24日目 曇

 

通信にまったくの反応なし。そして声を大にして言いたい。

レーションが糞みたいに不味い。

正直言ってそこらの木の皮を食ったほうがマシなレベル。くそが。

少女は喋るときはけっこう喋る子ってことが判明した。

それと彼女は俺の昔話や作り話とかによく興味を示してくれるから話していてとても楽しい。話に夢中になりすぎて予定していた周辺探索を忘れてしまったぐらいだ。

 

 

……話し相手に飢えすぎなんじゃないかな、俺って。

 

 

 

 

27日目 晴

 

周辺を探索。今いる拠点から数百メートル下った先に街が見えた。恐らくテロリスト達に占拠されているだろう。今度はあの街へ探索しに行くとしよう。

念のために武器の整備をしておく。今持ってる銃がG11とかいうデリケート過ぎる武器だから余計気をつけなきゃいけない。

 

ちょっと涙出てきた。

何故か止め止めなく流れる涙を拭きながら銃の整備をしていたら少女とポチが静かに寄り添ってきた。

 

ヤバい、お兄さんもっと泣きそう。

 

この子たち健気なんだけど……生き残って仲間に発見して貰わなければ。この子たちは絶対救う。そう思うと気力が出てきた、頑張ろう。

 

 




ジャベリンくんロリコン説。
まだまだ書き貯めがあるのでまだ不定期にはならなそうだね、嬉しいね。
高評価、感想は励みになるのでバンバンお願いします。

あと最近最高に感情を揺さぶってくれる激凄な小説見つけてとても嬉しい。この小説のお陰で筆が進む進む。

……やっぱコラボとかしてもらいたいなぁ(尚早かつ他力本願)

3/13 脱字訂正 一部加筆及びフォントで遊んでみました。


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傭兵、救出されるってよ。

い、いつの間にか1000UA越えてる…!?
これからも頑張るので応援よろしくお願いします!


28日目 晴

 

押し潰されるような重みで目が覚めた。呻きながら腹部を見てみるとポチと少女が俺に乗っかって寝ていた。なんとか押し退けて街へ行った、自律人形用の食料を探すためだ。

ガスマスクを着けて動くというのは未だに慣れない。

 

街に着いたのち、コンビニを見つけた。だが、テロリストが何か物色していたので他をあたることにした。どうやら自律人形は居ないようだ……。

 

この後すぐにスーパーを見つけたので幾ばくか食料を頂戴した後、街から出ようとしたが、テロリストの行動が活発になり、しばらく動くことが出来なくなってしまった。幸い、俺が潜んでいたところに来ることは無かったが少女たちのいる拠点が心配になってきた。

 

急いで拠点へ戻ってみると、別に何の問題もなく胸を撫で下ろした。拠点内に入って救難信号を出していると、少女が起きてきた。

彼女に食料を渡してこっちも食事を始める。ポチが何故か猫を拾ってきた。食費がやばい。

 

そろそろ彼女にも名前を付けるべきか。

 

 

 

 

 

29日目 雪のち曇

 

寒い。自律人形と猫とポチを抱き枕にしてなんとか寒さを凌ぐ。そろそろ日記をつけ始めて1ヶ月となる。あまり感慨深くはないがな。

 

 

 

 

 

30日目 曇

 

最悪なことに雪が積もりやがった。これは動けそうにない。体力を削ってしまう。

仕方なくポチを使って周辺警備をさせ、安全を確保。テロリストたちは他の場所へ移ったようだ。

ポチが拾ってきた猫はと言うと少女に懐いて一緒に寝ている。

少し経ってポチが木材を持ってきてくれた。暖炉に火を灯すことが出来るようになる。薪を少し乾燥させて、早速火をくべてみると、瞬く間に部屋が暖かくなった。

 

本当……ポチって有能……。

カタログにあった装備強化セット買ってあげたくなる。

 

 

 

31日目 晴

 

晴天が広がる気持ちのいい朝となった。これだとどうにか雪は溶けていくだろう。

暖炉の前に座って暖をとっていると、猫が膝の上に乗り、少女とポチが両隣に座ってきた。

 

静かに火を見つめる、現在逃亡中とは思えないくらい穏やかな時間が過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

32日目 晴

 

雪が完全に溶けて暖かくなり、未だ俺が彼女の名前を考えていたら、遠くから多数の発砲音が聞こえてきた。俺が武器を抱えて窓辺から警戒していたら、同僚から通信が入ってきた。どうやら助かったらしい。ブリティッシュジョークをかましながら他の隊員たちとテロリストを掃討していたらたまたま俺の通信を拾ったようだ。なかなか俺の扱いが酷い気がする。

 

ポチと猫と少女と共に回収され、一旦俺は本社へ戻ることになった。久方ぶりの本社だ、社長を殴ろう。

 

 

 

 

 

 

33日目 晴

 

社長を殴って殴り返された翌日、結構とんでもないことを社長から聞かされた。それは他のPMCと業務提携をするということだ。しかもそのPMC、最近戦術人形を使い始めたあのグリフィン&クルーガーとのことだ。社長はどうやらこの会社と協力することは戦術人形を安く利用できる、依頼成功率の向上など、大きなメリットとなると踏んだらしい。他の隊員たちとの同意は得ており、あとは俺が同意すれば正式に結ぶようだ。

 

もちろん二つ返事でOKした。仕事が楽になるのはいいことだし。

 

 

しかしこんな異例のことをして他のPMCに目を付けられることはないのだろうか?

 

そして俺は未だに彼女の名前を思い付けない。猫はオスカーってつけた。

 

 

 




社長殴れる会社ってなんだよとか書きながら思ってた。
まあ、社長が許してるから問題ないよね?(震え声)

高評価及び感想は励みになるのでバンバンください!

あと主人公のプロフィールとかなんやらなど、知りたいことがありましたら設定集とか作ります。

ところで、戦術人形で構成されるギャングとか結構良いよね……(とある小説を読みながら)

3/14 一部修正 業務契約→業務提携


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傭兵、任務やるってよ。

今回は楽しくて夢中になって書いてたので、5000文字ぐらいあります。やっと一人とある人形出せたし戦闘シーンが難しかったけど楽しかったよ……(やりきった顔)
結構重要なこといい忘れてましたが、時代背景はAR小隊とか404小隊が出来る前のことです。しかし404小隊に関しては不明なことが多いからなにも言えない()
やっぱ設定とかプロフィール書くべきだな……。
あと、キャラ崩壊注意です。






34日目 曇

 

同僚と共に任務へ赴くことになった。

今回は人質の救出だ。流石にこの作戦は敵の規模が大きく、複数人でなければ行えないため、俺が所属する部隊の隊員全員が出張ることになった。これはグリフィンの人形部隊との合同作戦でもある。グリフィン隊は陽動、俺たちは救出だ。ポチを連れていこうか迷ったが、同僚たちが居るのでお留守番となった。

ブリーフィングにて同僚……もといスピア(書くのが面倒になってきたので他の隊員も含めコードネームで進める。)とトライデントは援護、俺とランスは突入という役決めになった。

 

そういえば、部隊全員で行く任務は久しぶりだったな。

 

____________________________

 

_________________

 

__________

 

____

 

 

『こちらスピア、配置に着いた』

 

「了解、そのまま周辺を見張っててくれ。地下室に入ったら連絡する」

 

『分かった、幸運を祈る』

 

 

戦術人形の部隊が陽動を行っている中、俺たちは敵が籠っている建物の裏手に忍び込んでいた。多くが迎撃に出払っているのか、建物は静寂に包まれている。スピアからの報告では、窓辺や屋上には誰も居ないらしい。

 

 

「えらい静かだな……もしかしたら人質は移動させられてるんじゃないか?」

 

「いや、そんなはずねぇだろ。前からずっと監視されてんだ、動いたら夜だろうとすぐにバレる」

 

 

ランスとそんな会話を交えながら、建物内を進む。建物内は瓦礫が少々あるぐらいで人の気配が一つもない。本当にテロリストは籠っていたのか?まあいい。

これといった問題もなく俺たちは進み、人質が居るであろう地下室へと向かった。

 

 

「なあ」

 

「なんだよ?」

 

「嫌な予感がするんだが」

 

「そうか」

 

「軽いな!?俺の予知能力舐めるなよジャベリン!」

 

「分かってるよ」

 

 

ランスの軽口を流しながら地下室へ到達。地下室は照明が壊れているのか真っ暗でなにも見えず、足を一歩踏み出すとその足音が暗闇に響いた。恐らくこの部屋はとても広いのだろう。安全を確認するために俺とランスは暗視装置を装備した。

周囲を見渡すと、この部屋は大小さまざまなガラクタが散乱しており、なかには人が隠れられることができるぐらい大きなものもあった。ガラクタをそのままにあとは標的でも置けばキルハウスにでも出来るのではないだろうか。

少し奥の方を見ると、椅子に縛られ袋を被された人間が居り、拘束を解こうと、もぞもぞと動いていた。恐らくあれが人質だろう。

外を監視してるスピアに連絡をする。

 

 

「こちらジャベリン、地下室に到達。そして人質らしき人物を発見した。そっちはどうだ?」

 

『こちらスピア、現在建造物から数百メートル先、こちらの戦術人形とは思えない戦術人形が接近中。どうする?』

 

「なんだと?一応警戒しておけ」

 

『りょうか…っ!!奴らこっちを撃ってきたぞ!!!トライデント!!応戦するぞ!!』

 

 

多数の銃声が聞こえた瞬間、スピアとの通信が途絶えた。向こうは不味い状況になったようだ。まあ、スピアたちなら生き残るだろうから信じておこう。

手早くグリフィンへ支援要請を出した後に、俺はすぐに目の前の人質へ意識を切り替える。まずは安心させるために声をかけることにした。

 

 

「グリフィンの救出部隊だ、君を救出しに来た」

 

「なんだグリフィンか…てっきりテロリストどもが来たのかと思ったよ。早くこの拘束を解いてくれないか?」

 

「わかってる」

 

 

俺は人質を縛り付けている紐をナイフで切り裂く。多少緩いのはこの人質が紐を解こうと四苦八苦していたおかげだろう。

今度は人質に被せてある袋をとろうと手を出したが、人質に「これぐらいは自分でやる。」と手を払われてしまった。

人質が袋に手をかけて外し、その顔が見えたとき、俺は少し驚いた。

 

 

「ふぅ」

 

「なんだアンタ、女だったのか?」

 

「ん、意外だったのか?」

 

「いや……まぁな」

 

「はははは、面白い奴だな」

 

 

「なに!?女!?」と過剰に反応するランスを制止しつつ、改めて人質を見る。

彼女は気の強そうでそして凛々しい顔立ちで、片目には眼帯をつけていた。いくつか修羅場を潜ってきたようなそんな雰囲気も持っている。

呆然としている俺に彼女は少し怪訝としている。

 

 

「ジャベリン、大丈夫か?」

 

「あ…あぁ、大丈夫だ」

 

 

ランスの声で現実に引き戻された。落ち着こう、別に人質が女だからってなにか問題があるわけじゃない。

俺は一先ず彼女を見る。目の前の彼女はいつの間にランスに渡されたのか、俺のHK416を持って……っておい何してんだランス。

俺はランスの襟首を掴んだ。

 

 

「あだだだ!?ジャベリン落ち着け、ここは敵地だ!!そして俺じゃない彼女がやったんだ!!」

 

「嘘をつくんじゃねぇ馬鹿野郎!!なにしやがんだ!!」

 

「まぁまぁ落ち着きなって。彼が言うとおり、私がちょっと借りただけさ」

 

 

彼女の言葉でランスを掴んでいた腕の力が弱まる。彼女は嘘を言っているようには見えないから余計疑わしい。そもそもどうやって奪ったんだ……。

 

 

「……あんた、名前は?」

 

「ん?あぁ、そういえば名乗っていなかったな。私はM16A1、よろしく」

 

「M16A1……ということは戦術人形か?一体なんで捕まったんだよ?」

 

 

そんな俺の問いにM16はばつが悪そうに「酒を飲んでそこらへんをほっつき歩いていたら捕まった。」と答えた。

彼女の答えにランスは吹き出し、俺は額に手をあててため息をついた。流石にうっかりしすぎじゃないかな……何やってんだか。

笑うランスと胡乱な目で見る俺に対し、M16は慌てて弁明を始める。

 

 

「ま、まぁ誰しも失敗はあるんだし、私も油断してたんだ。酒も飲み過ぎたしな」

 

「そうか……まあいい、そろそろ出るぞ。とりあえずあんたにHKは貸しておくから、もしもの時は使ってくれ」

 

「あぁ、任せてくれ。私の愛銃じゃないとはいえ、十分使いこなせる。射撃の腕は良いんだ」

 

「せいぜい期待しておくよ」

 

 

HK416の予備マガジンを彼女に渡して、俺はもう一つ持ってきた武器に手をかける。『AA-12』と呼ばれるそれは、フルオートショットガンとして有名な銃だ。作戦前に火力過多になるから持っていこうかどうか迷ったが、持ってきて正解だった。ただ重かった。

改めて装備を確認する。M1911が1挺、フラッシュバン、フラググレネードがそれぞれ3個、スラッグ弾の入ったマガジンが5つと、十分にあった。

丁度スピアから連絡が入る。

 

 

『ハァ…ハァ…こちらスピア、応答してくれ』

 

「こちらジャベリン。生きてたか、どうした?」

 

『なんとか凌いだがそちらに複数の人形が向かった。排除を頼む。俺は少し休むよ』

 

「了解、支援要請を出したから部隊が来たら案内してやってくれ。それとよくやった、ジャベリンアウト」

 

 

スピア曰く、どうやら人形が建物内に入ってきたらしい。

俺は二人と共に進む。俺を先導に、M16、ランスと続き、地下室を出た。地下室を出た先の曲がり角には誰も居らず、敵はまだこっちには来ていないようだ。

 

 

「ここで待ち伏せするか?」

 

 

ランスが問う。

 

 

「いや、進もう。相手も少人数のはずだ、対処はできる」

 

「おいおい、少人数とはいえ相手は人形だぞ。大丈夫だと思うか?」

 

「…そうか。M16は?」

 

「私は待ち伏せだな。人形は人間よりもはるかに強力だ。防戦に徹して隙を見て進む方が安全だと思う」

 

「分かった。じゃあランスと俺は右に、M16は左の瓦礫へ隠れよう。待ち伏せ、及び可能なら進むぞ」

 

「「了解」」

 

 

俺たちは遮蔽物に隠れ、鉄血人形がやってくるのを待つ。

暫くすると多数の足音が聞こえてきた。俺は二人にハンドサインを出して銃を構える。足音が大きくなってくるにつれて、トリガーに掛けている指の力が強くなっていく。狙うべき場所は頭か腹部だ。

鉄血人形の姿が見えた瞬間、すぐさま俺は引き金を引いた。

 

 

「射撃開始!!」

 

 

一瞬の閃光の後に多数の鉛弾が相手の眉間や胸に吸い込まれてゆく。先頭の鉄血人形は倒れたのを皮切りに複数人が糸の切れた人形のように地に伏せていった。残った鉄血人形が慌てて曲がり角を戻っていく。

ランスが追撃とばかりに曲がり角の向こうへグレネードを投げた。数瞬、大きな爆発とともに鉄血人形のものであろう腕や頭が吹き飛ばされて壁へ叩きつけられた。

 

 

「火薬入れすぎちゃったかな?」

 

「いや、あれぐらいの威力の方が奴らも楽に逝ける。M16、そうだろ?」

 

「フフッ、確かにな」

 

 

曲がり角へ進む。少し顔を出すとすぐ銃撃に襲われた。一瞬だが向こうは瓦礫もなく隠れる場所が有るようではなかったことを確認。一旦隠れ、フラッシュバンを懐から取り出す。ピンを引き抜き向こうへ投げた。

大きな閃光と爆音の後、すぐに突撃する。

 

 

「突撃!!」

 

 

目を潰された人形たちへ発砲、なんとか持ち直した者も居たが、M16がすぐに無力化した。

それにしても射撃上手いな彼女。頭を正確に撃ち抜いてる……射撃の腕は嘘ではないようだ。

 

 

「もう来ないか?」

 

 

「オールクリアだ、上に行こう」

 

 

「了解」

 

 

周囲を確認した後、階段を上っていく。一階に着いた直後にグリフィンから連絡が来た。どうやら陽動部隊が支援としてこちらに向かうらしい。

俺たちは出口のあるエントランスへ向かう。途中、何度か襲撃はあったものの、M16がすぐさま反応して殆どを片付けていた。正確無比な射撃は全て相手の眉間に叩き込まれていく。

 

いや、マジで何で捕まったんだ。というか絶対拘束解くこと出来ただろ……。

 

 

「よく整備されてるな、この銃。吸い込まれるように敵に当たるぞ」

 

「あー…そりゃどうも」

 

「んん?どうしたんだ?」

 

「いや、馬鹿げたレベルの精度で撃つなぁ…って思ってな」

 

「はっはー、惚れたか?」

 

「馬鹿言うな全く……」

 

「おい二人とも、そろそろエントランスに着くぞ」

 

「了解、急ぐぞ……っ!!?ぐおぉっっ!!?」

 

「ジャベリン!!」

 

 

M16と軽口を叩きながらエントランスへ続く道へ差し掛かった時、近くの部屋から突然鉄血人形が俺へ飛びかかってきた。 双方ともに武器が手から離れて床に落ち、互いに組み合う形にになる。俺はすぐさま相手の足を内側から払いのけたものの、鉄血人形側も負けじとすぐに立て直した。暫く力比べとなったものの、流石に人形には勝てない。俺は相手に組伏せられナイフを突き立てられそうになる_____________________

 

 

「今助ける!」

 

 

______が、間一髪でランスとM16が人形を撃ち抜いた。

 

 

「うおぉ……助かった」

 

「大丈夫か、ジャベリン?」

 

「あぁ、問題ない」

 

 

ランスとM16の腕に捕まり立ち上がる。そのままエントランスへ歩を進め、敵と遭遇することなく、丁度やって来たスピア達を含めた支援部隊と合流した。

 

どうやらさっきの奴らで最後だったようだ。どこか呆気ない気もするがいいか。

 

支援部隊の中にM16の知り合いが居たのか、彼女に抱きついている姿もあった。なんとなく俺はその状況を写真に納めた。証拠写真ぐらいには使えるだろう。ランスがその写真を後で送ってくれとか行ってきたが俺はそれを拒否。躍起なったランスと俺の追いかけっこが起きたのは言うまでもない。

いつの間にかM16へ抱きついていた戦術人形も俺を追いかけるようになって久々に必死になって逃げた。

最後は捕まって、俺は渋々写真を二人に渡すことになってしまった。奴ら、目の色がヤバかったぜ?渡さなかったら殺されるような感覚に襲われるというのは中々無い体験だろう。蛇に睨まれた蛙、みたいな。

 

暫くしてうちの会社の回収ヘリがやって来た。戦術人形たちはグリフィンのヘリで帰るようで、各々が別れの言葉を俺たちにくれた。

ヘリに乗る直前、M16が声をかけてくる。

 

 

「ジャベリン」

 

「なんだ?」

 

「また会おうぜ、こんどは仕事じゃなくてオフでな」

 

「…あぁ、構わないとも。いい飲み屋があるんだ、いつか行こう」

 

「フフッ、楽しみにしてるぞ」

 

 

ヘリに乗り込む。ランス、トライデントが「早速女と関係持ったぞこいつ」「フラグ立てやがったし、折ってやろう」だとか話してたが無視を決め込んだ。スピアはどこからともなく取り出したケトルで器用にティーカップへ紅茶を淹れていた。

 

 

「出発する」

 

 

パイロットの声とともにヘリが飛び立つ。戦術人形たちは手を振ったりしてこちらを見送ってくれた。スピアがクッキーをみんなに配ってくれた。そのクッキーは長いような短いような任務での疲労を労うかのように甘く、思わず顔が綻ぶ。

一つ深呼吸、そして窓の外を眺める。いつの間に暗くなっていたのか、満点の星空になっていた。ふと端末で天気予報を見れば何日か雨が振り、そして雨が上がると暫くは晴天が続くらしい。

晴れたら気晴らしで街にでも行こう。

そう考えながら星空を眺める。きらりと、一筋の流れ星が流れたような気がした。

 

 

 

 

 

 

そういえば人質の情報とか事前に貰えなかったのは何でなんだろうな?社長に聞いてみるか。

 




※ただの伝達ミスです。社長も激務だからね、仕方ないね。
M16のキャラがちゃんと掴めてるか不安。

それはそうと、何でしょう、楽しいですね戦闘シーン。
好評なようでしたらまた書くつもりです。

高評価及び感想は励みになるのでゾクゾクとお願いします。

3/15 単語が連続して出ていたので該当部分を修正。
台詞の違和感を一部修正。


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傭兵、休暇を楽しむってよ。

35日目 晴

 

突然現れた鉄血工造製の戦術人形と交戦するも、人質も戦術人形だったため苦戦をすることはなかった。つまり任務は成功というわけだ。証拠写真と人質をクライアントへ送って報酬を貰った。今度休暇をとって街へ出るとしよう。

ちなみに社長に色々と今回の任務について問いただしたところ、単なる伝達ミスだったらしい。とんでもない致命ミスやってやがったこいつ……。

 

 

 

 

 

36日目 雨

 

自律人形の少女がこの会社に来てから、俺の部屋がとんでもなく綺麗になった気がする。なんというか、出入口から綺麗すぎて全身が粟立つレベル。俺の部屋じゃない。

トライデントやランス曰く、「入ったら浄化される」らしい。スピアは今の部屋の状態が好きなようだ。

今俺のベットで寝ている彼女にそこはかとなく恐怖を覚えている。この子の名前、フィアーでいいかな?

 

 

 

 

37日目 雨

 

社長が俺の部屋に入ったとたん咽び泣きながら吐血した。

どうなってるんだ俺の部屋。

頼むからもう少し休んでてくれ少女よ、と思いながら運ばれていく社長を見る1日だった。

ちょっと鼻血が出てきたんだがこれは体が拒否反応でも起こしてると認識していいのだろうか?

……明日は我が身かな。

 

 

 

 

 

38日目 大雨

 

とりあえず部屋を汚す。これは俺の精神衛生を守るためだ。

少女はあまり嫌な顔をしていなかったので何故なのか聞いてみたら、「頑張りすぎて疲れました」なんて言った。

部屋を汚してからちょっと休憩をしていたらスピア達が入ってきた。スピアが部屋に入ったとたん少し顔をしかめたものの、すぐにもとの顔に戻り、ティーセットをテーブルに置いた。

ランスとトライデントは勝手に俺のチェス盤でチェスを始めてる。

これはいつもの風景なんだが、つくづく俺の部屋が私物化されてるのを実感させられる。

スピアが紅茶を淹れ始め、その匂いにつれられて、他部隊の奴らだとか、仕事帰りの社長が入ってきた。狭い。

こんなに狭いのは久しぶりだ、と考えながら少女を見れば、そんな事お構いなしにオスカーとポチを抱いて熟睡してる。

他部隊の奴らがそれを見て写真を撮っていた。

お前らも癒しが必要なんだな……。

 

 

 

 

 

 

 

39日目 晴

 

任務もなく、休暇をとってもいたので、今日はフリーだった。外を見れば、気が遠くなるくらい晴れていたので、前から行こうとしてた街へ出ることにした。

準備をしていると、自律人形の少女が着いていきたそうにしていたので一緒に連れていった。

 

コーラップスが撒き散らされて安全圏が狭まり、なおかつそれを巡って核戦争なんて起きた世の中だが、運良くその影響を免れたり、汚染度が少ない安全地帯はある。うちが管轄しているこの街もその一つだ。街はさまざまな店があり活気に満ち溢れてる。だが目に見える商品はどれもこれも割高。まあ世紀末みたいなものだから仕方ない。割高なせいで値引き交渉で血を見ることもあるが仕方ない。仕方ないのだ。

 

彼女はどうやら服とサメのぬいぐるみに興味があるようで、ある店の前で立ち止まってずっと見つめていた。お金にも余裕があるのでそれらを買ってやった。その服を着た彼女の見た目がそこいらで遊んでいる元気な子供たちとそう大差ない姿に変わった。(店主がカメラで撮ろうとしていたのでカメラを取り上げたのは別のお話)

その店から出たあとは最近懇意にしている喫茶店に行った。

この喫茶店、夜にはBARになるから結構好きなんだよな。

店に入るとマスターが物珍しそうにこちらを見たものの、特に追及はしてこなかった。

少女に何がいいか聞いてみると、彼女は少し考えて、この店で一番高いパフェを選んだ。

ちょっと顔がひきつってしまったが、彼女の嬉しそうな顔を見れたので良しとする。

 

夕暮れの帰り道、彼女は「ありがとう」と言ってくれた。けっこう嬉しい。

 

そういえば、今さら気がついたことなのだが、彼女は案外表情が乏しく、いつも眠たげにしている。ただ街へ言った時には喜んでいたようで会社に着くまでずっと服の裾を掴んでいた。

 

しかし、名前はどうしようか…。

 

 

 

 

 

40日目 晴

 

スピアがあの子に変なこと教えていたため金的を喰らわせた。

彼の日常会話の内容は基本半分真実半分虚実だから少し警戒しなきゃならない。俺は少女によくその事を言い聞かせて部屋に帰らせた。

スピアに軽く説教をした後、彼女から紅茶を頂いた。その味はスピアの作る紅茶と同じ味だった。

俺がその味に驚いて彼女に問うたところ、スピアに教えて貰ったらしい……あいつに詫びの品を用意する必要が出てきたようだ。

 

 

 




オリジナル展開にしようかどうか迷うこの頃。
まぁ、蝶事件までだいぶお時間あるからいくらでも迷えますね。
今後は戦術人形が結構出てきます。楽しみにしててくださいね!!

感想、及び評価付与は励みになるのでどんどんお願いします。それでは!!


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傭兵、お別れだってよ。

「今小説どうなってっかな…?」スマホポチー

お 気 に 入 り 100 件 越 え U A 4000 越 え

((((;゜Д゜)))




ウレシイ……ウレシイ……(浄化)
だけど、自分が更新楽しみにしている作品の作者様から感想が来ていることに今更気がついて不甲斐ない気持ちでいっぱい……。









42日目 晴

 

あの子の名前が決まらないまま季節の境目に差し掛かろうとしているとき、ある女性が訪ねてきた。

彼女はペルシカリアという名前で、研究者、らしい。それと彼女の頭についてる猫耳?が凄く気になった。触りたい。

何故彼女がこちらを訪ねてきたのかというと、どうやら未だ名前が決まらない自律人形の少女に興味があるらしい。

彼女曰く、その自律人形は結構なレア物でなにより高性能なため研究をしたいとかなんとか。

はて、彼女の型はけっこうスタンダードだったはずなのだがと言ったら色々と言いくるめられた。悔しい……。

 

なんやかんやあって結局彼女に自律人形の少女を任せることになってしまった。不安そうにしている少女をしっかり抱き締めて安心させ(この時後ろから「ロリコンでしかも情熱的……」とか聞こえたのは気のせい)ペルシカリアと一緒に彼女の研究所へと行かせた。

 

次に会うまでには名前、考えておかないとな。

 

 

 

 

 

 

43日目 曇

 

またペルシカリアが訪ねてきた。彼女に紅茶を出そうとしたら断られた。

紅茶よりコーヒーのほうがいいらしい。後で部屋にある埃を被ったコーヒーメーカーとコーヒー豆を押し付けとこう。

それはともかく、彼女が訪ねてきた理由は俺のG11を譲ってもらう為、ということだ。

何か隠してるような言い方なので少し詰問をすると、元々喋るつもりだったのか、昨日彼女が引き取ったあの子を戦術人形として改造する為でもあると、平然と言った。

少し俺は面食らったものの、自分もそんな考えは持っていたので、普通に承諾した。というか何で最初言わなかったんだ。G11とかいう馬鹿みたいにデリケートでマガジンも糞高い銃を戦術人形に使わせるんだから、そら拡張性高い民間用から転用した方が安く済むはずだし弄りやすいだろ……。

ペルシカリアは「もう少し嫌そうな顔するかと思った」と言ってきたが、俺はあの子を信頼しているから戦術人形になっても十分働いてくれる筈だと答えた。

「まるであの子の父親のようだね」とおかしそうな口調でいわれたが、それでも構わなかった。信じる者は救われる、なんて言葉があるんだ、人形一体信じたぐらいで悪いことなんかなにもないはずだろう。

 

ペルシカリアを帰すついでに丁度思い付いたあの少女の名前を書いたメモを渡しておいた。多分、呼ぶようなことは無いだろうけど、せっかく考えたものを伝えないなんて、面白くないし勿体無いからな。

 

 

 

 

 

 

 

44日目 晴

 

今日は社長がグリフィン本社へ行くそうなのでついていった。向こうのお偉方と色々話すらしい。会社の外で護衛の戦術人形たちと車が待っていた。

護衛に守られた車に揺られて数時間、グリフィンが管理する都市に到着。社長はそのままグリフィン本社に向かい、俺は特にすることもなかったため市街地を探索することにした。

 

グリフィン本社の管轄であるこの街はうちの街と違って商品の値段が良心的だったし、店員も穏やかな人たちが多かった。どこで差が生まれたんだこれ…?

値段の安さと店員の優しさに感動しながら歩いていると、ふとひっそりと佇む喫茶店を見つけた。興味を惹かれ、店先に行ってみると[open]のかけ看板と、日替わりランチありますと書かれたボードがあり、雰囲気も良さそうであった。早速中へ入ってカウンターへ座り、少し草臥れた雰囲気のマスターにランチを頼んだ。ランチを頼んだ後に店のなかを見回すと、何人かの客がこちらを見ていた。ここ穴場っぽいしこうやって見知らぬ顔が来るのは珍しいのだろう。

 

ランチが来た。オムライスにサラダ、そしてなんと、デザートにプリンがついてきた。この喫茶店、俺の懇意にしてるところに劣らないぞ……!?

なんて思いながら食べた。

あと俺が食べている間に、護衛部隊にいた戦術人形が俺のとなりに座ってきた。名前はたしか……トンプソンだったか。特徴的な銃と見た目がそこらのマフィアみたいだったからすぐに覚えた。あと魅惑の腰つき、悶々とさせられる。

彼女は俺のとなりに座ったあと、マスターにコーヒーを頼んで俺に話しかけてきた。どうやら社長についていかずにそのままふらふらと街へ行った俺に興味を持ったらしい。最初は少し面倒臭いと思いながら話をしていたが、彼女の相づちの上手さと雰囲気の親しみやすさに絆されたのか、饒舌になっている俺が居た。彼女も俺がよく喋るようになったのを皮切りに笑いながら話を聞いたり、ちょっとした冗談を言ったりと、とにかく楽しんで話すようになった。

 

彼女と話し込んでいると、丁度社長から連絡が入り、帰ることになった。トンプソンに帰る旨を伝えて、会計を済ませて喫茶店から出ると、それに続いてトンプソンもついてきた。彼女が言うには、帰り道の護衛も任されてたらしい。

俺たちが社長の待つ車へ到着すると、護衛の戦術人形の一人が怒り心頭の様子だった。どうやらトンプソンはサボりついでで俺のところに来たようだ。

 

怒られるトンプソンを横目に車に乗り込む。先に乗り込んでいた社長が真剣な顔で俺に仕事の話を持ち込んできた。

話を聞くと偵察任務とのこと。誰も管理していない空白地帯で、多くの輸送車両が襲われる出来事が多発したらしい。その原因調査ということだ。

グリフィンからも一体ほど人形を派遣してくれるようで、結構優秀な人形らしく、上手くやっていけるだろうなんて言われた。その人形とは現地で合流するからと合言葉を教えられた。確か、「消えた星までの地図は」と言われたら「地のはての民に届けよ」と言う手筈だったかな。先に現地に着いた者が始めの言葉を言うようだ。

偵察任務は二日後に始まる。それまでにちょっと準備しなきゃな。

 

 




書き貯めがもう無くなりそう(死活問題)
そろそろ不定期更新になるかもしれませんが許して…。

最後の合言葉は某師匠を知っている方なら分かると思います。あの人の歌詞ってなにかしら合言葉っぽいから好きなんですよね。

3/17 一部加筆


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傭兵、偵察だってよ。
そのいち


ちょっとした小話:このお話を書いてて「あ、これ長くなるな」って思った。だいたい2000文字で収まるようにしてるからしかたないね。




_________________________________________________






今日は『HK416』として生まれた私の初任務だ。

上官曰く、どこの誰も管理をしていない空白地帯で何らかの不穏な動きが察知されたため、それの原因調査とのこと。

今までは実戦に出させて貰えず、いつも模擬戦闘ばかりでうんざりとしていたが、今回こそ、正真正銘の実戦なのだ。偵察任務であっても関係ない、実戦であることに意味があるのだ。
そして、これは私だけに課せられた任務。ついに私は認められる機会を得た。あの憎き奴らとは一線を画す人形であることを、そして、奴らよりも遥かに優秀であることをこの任務をもって皆に証明してやろう。

だが、この任務では最近グリフィンと業務提携をした『武器庫』というPMCから一人の人間が派遣されてくるらしい。
まったく忌々しい。

私は完璧なのだ。一人でもこの任務はやれるはずなんだ。

もしその人間が私の足を引っ張るようなら、助けを求めようともすぐに見捨ててやるとしよう。










45日目 曇

 

今日は会社に駐在してるガンスミスに武器の整備をして貰った。今回の任務に持っていくのは『HK417』だ。会社の倉庫を整理していたらたまたま見つけたので持っていくことにしたのだ。状態は良いようで、整備自体はすぐに終わり、今度はアタッチメントを幾つかつける。

偵察任務なのでそこまで拘る必要も無いため、適当に選んで取り付けておいた。

何故かガンスミスの奴からお守り代わりにMP5Kを渡された。

 

いや、荷物重くなるから止めろよ。……とは思ったものの、折角の厚意を無下にも出来ず、渋々受け取ってしまった。彼なりの心配なんだろうと自分に言い聞かせるが、どこか腑に落ちない。

 

 

 

 

 

 

46日目 晴

 

現在輸送ヘリの中に居る。装備を確認しながら今これを書いてる。それと、今回の任務ではポチを連れてきた。見張りに使えるからな。そのポチは未だに慣れてないのか忙しなく動き回ってる。ちょっと不安だし膝に乗せておくか。

今向かっているのはどこのPMCや国も管理をしていない空白地帯だ。あそこは確か人が住むには十分綺麗だったはずなんだが、なんでどこのPMCにも所属していないんだろうな。ましてや国にさえも管理されていない。まぁ恐らくそれだけ僻地で何のうまみもない土地なんだろう。ただ、案外多くの業者やPMCがそこを輸送路として利用するらしく、車両の往来は多い。だからそんな場所で不穏な動き、もとい何者かの企みを察知したからこそ俺が派遣される訳か。……これ偵察というか調査任務じゃないかな。

最近は一定の場所に留まらない無法者集団も現れ始めてたりするし、そんな輩があの空白地帯に居たりするのかもな。出来る限りなら交戦は控えたいものだ、グリフィンから一人来るとはいっても交戦相手はもしかしたら集団かもしれないしな。

……だけどなぁ、社長からはもしもの時には迷わず撃てなんて言われてるし、その時に備えて覚悟しておいたほうが良さそうだ。

そういえば、グリフィンから来る人形って誰なんだろうか?出来る限りなら話しかけやすい奴であってほしい。この前出会ったトンプソンとか。彼女とはまたゆっくりと話をしたい。

 

 

そろそろ現地へ着くらしい。筆を止めて外を見てみれば、大きく開いた平野が視界いっぱいに広がった。ここで西部劇でも撮れそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

47日目 晴

 

グリフィンの人形と無事合流した。コードネームを「ジェロニモ」といい、生糸のような綺麗な銀髪で、冷静そうな瞳、そして左目に赤い涙のタトゥーをいれている少女だった。何故タトゥーをいれているのかは不明だが、恐らく彼女の趣味なんだろう。そして異常に短いスカートだって彼女の趣味なのだろう。……趣味なのだろう。

 

歩く度にパンツがちらついてんだけど……。

 

ともかく、彼女はHK416を所持しており、恐らく『HK416』というのが本来の名前だと予想できる。それを名乗らないあたり、プロ意識がしっかりとしている。もう少し俺を信用してほしかったのだが。

でも、彼女が俺のHK417を見て少し驚いたような顔をしたあとに微笑んで「いいセンスね」と言われたので、多少は信用されたと思える。

 

「これ適当に選んだやつ」なんて言えるわけなかった。

 

この後ポチが足元に寄っていった瞬間、彼女は驚いて銃をポチに撃ってしまった。幸い、ポチは無傷だったが彼女を落ち着かせるのに暫く時間がかかった。

 

 

今はジェロニモと一緒に近くの丘に登って簡易的な地図を作成している。彼女の仕事ぶりは真面目一辺倒で簡易的な地図を作ればいいのに凄く精密なものを作っている。もう少し簡単でいいんだぞ、なんて言っても「もう少しで終わるから待って」って聞く耳を持たない。仕方ない、彼女が書き終わるまで待つしかないようだ。

 

……彼女、戦場は初めてなんだろうか?書き終わったらちょっと色々教えてみるか。

 

 

 

 

 

 

48日目 曇

 

翌日、ジェロニモに色々質問をしたが、予想通り彼女にとってこれが初任務らしい。一体誰なんだ優秀な人形が来るって言ったのは。社長だったな。彼の頭皮に除毛剤をかけてやろう。

流石に彼女の今の状況だと不味かったため、偵察をポチに任せて彼女に講釈を垂れておいた。基本のいろはは分かっていたらしく、それをどう実行したら有効かを教えたらだいたいどうにかなった。

正直、戦術人形というのは飲み込みが早い。演算機能だとか、そういうのが関係しているのだろうが、俺が何日もかけて覚えたことをいとも容易く覚えた。俺は嫉妬を覚えた。

 

丁度ポチから信号が来たが、オールグリーンでとくにめぼしいものはなかったようだ。明日は雨が降るらしいが酸性雨ではないのでそのまま活動する。

 

 




感想……感想をくれぇ……(乞食)
でも、ものの一週間で4000UA、お気に入り100件越えは嬉しすぎる。

というか前書きの416のやつ、ちゃんと未熟なHK416を描けてるか心配。自信はあるけどネ!!!

感想、評価は心の支えと執筆の励みとなるのでどんどんお願いします。それではグッバイ!


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そのに

感想の受付がログインユーザーのみになってたので非ログインユーザーも可能にしときました。








あの男の第一印象といえば、決して良い印象とは言えなかっただろう。

ジャベリンと名乗った男は鉄血工造の下級機械のダイナゲートを連れて私の前に現れた。簡単な自己紹介をやったあと、手を差し出してきたがそれを無視。
この任務は私だけでもできる、ということを伝えてやった。
だがHK416の派生銃であるHK417を装備していることは評価してやろう。

後でこの男のダイナゲートが私の足元にすり寄ってきたため、発砲。決して私が驚いて気が動転してしまったからではない。

私がこの男の隣で地図を書いている時には、あろうことか口出しをしてきた。もう少し簡易でもいいなどとのたまってきたが、正確であることに何ら問題はないだろう。

翌日、彼は戦場は初めてかなんて言ってきた。
私はこいつを今すぐ撃ち殺そうかと思ったものの、それを踏みとどまり、素直にそうだと認めた。
落ち着け、私は飽くまでも任務を完璧にこなすために今此処にいるのだ。目の前の人間に構っている暇なんてない。

だが目の前の男は隣のダイナゲートに何かを伝え、そのまま私へ講釈を垂れてきた。ふざけているのか?と最初は思ったものの、あまりに真面目な顔で話を始めたから大人しく聞くことにした。

正直に言うと、彼は私が知り得なかったことをしっかりと教えてくれた。ここで初めて私の未熟さが分かったと言えるのだろうか?気の急いていた私を客観的な立場で見直すことが出来たのだろう。
彼が教えてくれたことは生き残る上での大事なことやもしもの時の有効な手立てなど、とにかく生存率を上げる方法ばかりであった。彼曰く、生き残ることが任務を遂行する上で大切なことらしい。



…………この出来事によって、少しずつだが、私はジャベリンという男を認め始めてきたのだろう。








49日目 雨

 

ジェロニモの態度が軟化したのは何故だろうか。俺の講義が身に染みたとしたらそれは万々歳だ。

というか寒い。簡易テントで休憩をしながら書いているが、くしゃみがよく出る。少し雨に晒され過ぎたようだ。体が冷えてる。取り急ぎ体を暖めるために紅茶を作ってる。スピア程ではないんだが俺だってそれなりのものは作れるからな。ついでにこの前クライアントから貰った生姜と蜂蜜を持ってきたのでそれを入れてみよう。ジンジャーティーだ。

丁度ジェロニモが帰って来た。彼女にジンジャーティーを淹れてやる。

 

 

結論から言うと、結構好評だった。人形とは言っても体は冷えるようで、何杯か彼女は飲んだ。彼女が茶葉や蜂蜜の入手経路を聞いてきたので富裕層、しかも農園を持ってるクライアントから、任務の報酬ついでに貰ったと言っておいた。

彼女は「私もあなたの部隊に入ってみようかしら」なんて言ってたが、やめておけと忠告した。うちの部隊案外激務だし。

そろそろ休憩をやめて、外に出るとしよう。

彼女の無駄に精密な地図を持ってな。見易いのが逆に腹立たしい。

 

 

 

 

 

 

 

50日目 晴

 

俺が日記を始めてから記念すべき50日目には鉛弾が飛び交った。……原因を説明しよう。

監視地点を変更しようとジェロニモと移動していたら、突然襲われた。幸い近くに大きな岩があったため、すぐに隠れることができたが身動きが出来なくなった。一先ずジェロニモとどうするか考えていた時に、向こうから「抵抗せずに金目のものを出せ」だの「女を置いていけば見逃す」だの三下悪役よろしく言ってきたので、お返しにちょっと身を乗り出して棒立ちで得意気にしてた奴を撃ち殺したら銃撃戦に発展した、ということだ。

銃撃戦の間、ジェロニモが冷ややかな目でこちらを見てきたが無視。まずは生き残るのが優先なんだよ。

とはいえ多勢に無勢もいいところで次第に劣勢になっていく。ポチも弾切れ起こして大変だった。

 

ただ、捨てる神あれば拾う神ありなんて言葉があるように、俺たちは窮地を救われた。

相手方は多いしさあどうしようなんて思いながらリロードしていると、急に銃声が聞こえなくなったのだ。これはおかしいと注意深く岩の向こうを覗いてみたら、メイド姿の女性が佇んでいた。

 

一瞬頭の中がハテナで一杯になった。反射的に隣のジェロニモを見ると、彼女も同じように訳がわからないというような顔をしていた。荒野に佇むメイド服の女性なんてシュール以外の何物でもない。

 

声をかけようかどうか迷っていると、ポチが突然そのメイド服の女性へ近付いていったため、仕方なく彼女へコンタクトをとった。近寄るポチに気付いた彼女はそのまま俺たちに気付く。すぐさま銃を向けてこないあたり、敵対の意思は無さそうだった。

一先ずは自分達を助けてくれたことに感謝の意を伝え、そして何故こんなところに居るのか聞いてみた。

 

 

……なんと彼女は同業者だった。しかも戦術人形だ。その時俺はジェロニモに目配せをしたが、首を振る。どうやら彼女は鉄血工造製でしかもハイエンドモデルなのだろう。

彼女は俺たちにとりあえずは安全な場所へ行こうと提案してきたので、それに従うこととした。移動中はずっと警戒してな。

 

 

 

 

 

 

 

51日目 曇

 

メイド服の女性の拠点で色々話を聞いた。彼女は代理人(エージェント)という名前で、こちらと同じくこの空白地帯で察知された不穏な動きを確認するために別のクライアントから派遣されてきたらしい。何も珍しい話でもないな。仕事場が被ることはよくある。

 

ただその後の彼女の言葉には驚かされた。なんて言ったと思う?

「一緒に協力しませんか」

だなんて言われたんだよ。もちろん丁重にお断りした。メリットは十分に有るんだがいかんせん信用に足らない。助けてくれた恩は感じているがそれとこれとは別。その旨を彼女に伝えたら渋々、といった風に了承した。彼女の様子を見て、人形にしてはえらい人間味のあるやつだなぁと思ったものの、今まで出会った戦術人形たちも結構人間臭いところはあったからここに書き記すだけに留めておく。丁度隣の戦術人形ちゃんも人間味があるしな。クールそうに見えて意外と表情がコロコロ変わる。

 

そういやなんでこんなに人間に近いんだろうな、今時のやつってのは。隣を歩いてるジェロニモに聞いてみたらそれは疑似感情モジュールなるものから作られるらしい。はぇーすっごいなぁなんて呟いてたら彼女が何故か得意気な顔をしていた。

 

代理人と別れた後は予定していた地点まで向かい、到着したらキャンプを設営してまた暫く監視活動を続けた。早く原因を突き止めて帰りたい。

 

 

 

 

 

 

52日目 小雨

 

いつも通り監視を続けていたら、武装集団が俺たちの拠点の近くを移動していた。なんで徒歩なのかは謎。

気配を殺して聞き耳をたててみると、どうやら輸送車両の襲撃を計画しているらしい。不穏な動きってのはこれなのだろうか?

とりあえずはポチに尾行をさせて、ジェロニモに連絡をした。

 

ジェロニモがこちらに到着次第、追跡を開始するとしよう。

 

 

 

 

 

 

53日目 曇

 

集団を追跡していて分かったことといえば、彼らが不穏な動きの正体である可能性が高いということだ。そしてこの前の三下悪役の仲間と思われる。あとジェロニモが優秀であることも判明した。彼女、結構遠いところでもある程度は会話が聞こえるらしく、そのお陰で調査が捗った。

纏めてみると、彼らは俺が参加した人質救出作戦で交戦したテロリストたちの残党で、ここで力を蓄えるべく仲間集めをしたり輸送車両を襲ったりしていた。また俺たちが来たことを認識しており(奴ら俺のことを「黄昏の亡霊」なんて呼んでた。なんか嬉しい)俺たちを抹殺すべく戦力を増強していると、なかなか有益な情報が出てきた。

ポチも結構情報を集めていたようで、俺たちの拠点からおおよそ1km先にその武装集団の拠点があり、規模が大きく自立人形も稼働しているらしい。

 

これは不味いことになってきた。すぐにグリフィンと会社に連絡をしておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

54にちめ あめ

 

奴らおれたちをしゅうげきしてきた。

今からにげる。

 




ジャベリンたちの運命とは!!
とりあえずその3で締める予定です。

というか代理人いいですよね。私好きなんですよ。スカートたくしあげて武装を見せつけるところとかちらりと見える下着とかガーターとか。
あの人には後々何回か登場してもらおうかと思っています。俺の妄想の犠牲者となってもらう。

ちょっとプライベートなお話になりますが、作者が自動車学校の予定を幾ばくかぶちこんでたりするので、更新が数日おきになりそうです。

なんにせよ更新を楽しみに待っていただけると幸いです。あと感想とか高評価とか……ください。(小声)


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そのさん

バーが赤くなってる……!?
ウッソだろお前!!ありがとうございます!!








ジャベリンはとても変わった男だ。
私が偵察から帰って来た時にジンジャーティーというものを淹れてくれた。
生姜と蜂蜜が入ったそれは冷えた私の体を温めてくれる。私がジンジャーティーを飲んでいる間に、様々な質問をされたり、あとは自分の体験談だとかそういうのを話した。
この時、普通では感じることのない感情が私のAIを一時支配した。
それと、彼にどうやってこれを入手したのかを聞いたところ、任務報酬で手に入れたと言った。私は彼の部隊に入ってみようかなんて言ってみたが彼にそれはやめとけと止められた。

この後の出来事と言えば波乱万丈と言っても差し支えはないだろう。例えば、ジャベリンが私たちを襲ってきた集団の一人を撃ち殺したことによってこちらがピンチとなったり、そこをメイド服の鉄血工造製のハイエンドモデルに助けられたり。
最後には私たちが監視しようとしていた武装集団に襲われ、逃げる羽目になった。

こんなことになっても、何処か楽しいと感じてしまった私には一体何が起きたのだろうか?何度演算し直してもその答えは見つからない。





56日目 晴

 

なんとか逃げ延びた。幸い、雨でしかも夜だったため、敵に未だ追跡されているなんてことにはならなかった。今はジェロニモと交代して周囲を見張っている。ポチには悪いんだが奴らの拠点に潜入させた。上手く行くといいんだが。

というか、何故俺たちの居場所がバレたんだろうか?

周囲にドローンが居たとは思えないし、最大限の注意を払ってたんだがな……。

そろそろジェロニモが戻ってくる時間だ。見張りついでに襲撃されたせいでやりそびれたグリフィンと会社への報告をしておこう。

 

 

 

_____________________________

 

___________________

 

_________

 

____

 

 

 

満点の星空。

 

六等星まで見えるほど周りには明かりと言えるものはなく、もしも誰かがこの空を見上げたならば、皆口を揃えて綺麗だなんて言うのだろう。

そんな事を考えていながら俺は周囲を見張っていた。何も異常なし……と。ナイトビジョンのついた双眼鏡を下ろす。

 

「なんでこうなっちまったかなぁ……」

 

俺たちは逃亡中だ。監視をしようとしていた武装集団に襲われてしまったせいである。今は周囲に敵影がないかバディのジェロニモと交代で見張ってる。現在ジェロニモはスリープモードに入っており、暫く動くことはない。実質一人というわけだろうか?

 

「会社に報告しないとな」

 

俺は通信機の電源をオンにした。恐らく繋がる相手は夜勤の奴らだろう。ちゃんと繋がってくれるかどうか心配だったが、数回のコールの後に野太い男の声が聞こえてきた。

 

『こちらスリンガー、どうしたジャベリン』

 

「スリンガーか、ちょっと社長に繋いで欲しいんだが起きてるか?」

 

『ギリギリ起きてる。今から繋ぐよ』

 

「助かる」

 

今日の担当はスリンガーのようだ。こいつは話が早くて助かる。

数秒たった後に聞き慣れた男の声が聞こえてくる。

 

『ふぁ……こちら社長。ジャベリン、やっと定期報告か?』

 

「そうだよクソ社長。一大事だ」

 

『何?』

 

俺の一言に彼の声色が変わる。こういう仕事に対して真面目な部分は好感持てるんだけどな。それ以外でマイナス評価まっしぐらなのが悲しいところ。

一先ず今の現状とどうすればいいのかを聞いた。

 

「今回の騒動の原因と思われる武装集団と交戦した。一応奴らの拠点は割れてる」

 

『ほう。ところでお前は今何してるんだ』

 

「大勢に襲われてな。現在はグリフィンの助っ人と逃げてる」

 

『そうか』

 

「とりあえずどうすればいい?このまま帰るか?」

 

『ふむ……グリフィンと通信をする。少し待ってろ』

 

どうやらグリフィンと意見交換をやるようだ。長くなりそうだし、今のうちにポチからの情報の整理もしておこう。

ポケットから携帯端末を取り出し、起動する。通知には百件以上と表示されており、ポチが想像以上に頑張ってくれてた。バッテリー切れを起こしてなけりゃいいんだが。

まずは必要、不必要なものと分けていく。途中、自律人形やむさい男たちとじゃれあう写真が見えたがまさかポチは自分のポテンシャルを完璧に発揮しているのではないだろうか?

元来ダイナゲートは簡素なAIしか積まれていない下級人形の筈なんだが、あろうことかポチは自分の状況を瞬時に判断してそこから最適な答えを自ら出し、また学習をしているように思える。

まさか俺が購入したのは良い意味で不良品なのではなかろうか?はたまた単なる物好きがダイナゲートに高度なAIでも勝手に積んで俺に送ったのか。

そんなことを考えていると、意見が纏まったのか社長が話しかけてきた。

 

『色々と協議をした結果、お前らを回収することになった。輸送ヘリ派遣するから、今から送る座標へ明日の1600までに行ってくれ』

 

「了解。それと社長」

 

『何だ?』

 

「グリフィンから派遣された人形がルーキーだった訳だが、何か言い訳は?」

 

『あん?珍しい話じゃないだろジャベリン。頭でも打ったか?』

 

こいつ自分が言ったこと忘れてやがる。だから微妙に社員からの人望が薄いんだぞ。ハゲろ。とりあえず怒気を孕ませて強い言葉で言ってみる。

 

「忘れたとは言わせねぇぞクソ社長。一体!!!何処の誰が!!優秀な人形が来るって言ったんだろうな!!!!

 

『いや、実際優秀だったろ。彼女、真面目過ぎるところが玉に瑕だが、グリフィンの模擬作戦じゃ他の人形よりずば抜けて成績が良かったぞ?』

 

「…………」

 

『あと、座学でも成績優秀。何かしらの執念を感じられたがそこはよく分からないらしい』

 

実際そうだったな。俺の出した基礎的な問題は余裕で解いたし、応用的な問題、軽い作戦立案でも少し考えただけで最適解とは言えないがいい線いってたしあの三下とやりあったときだって銃の反動制御やら命中率が凄かった。

 

『んで、他に文句は?』

 

「……除毛剤ぶっかけてやるから待ってろ」

 

『……そうか』

 

通信が切れた。それと同時に座標が送られて、それを確認すると、ここから数百メートル先の地点を指していた。結構余裕がある。何とか帰ることができそうだ。

 

「そうだ、ポチにも帰ってくるように指示出さないとな」

 

ふとそんな事を思い、ポチへ指令を送る…………が、反応がない。

おかしいと思ってポチのAI状況を確認すると、

--------OFFLINE--------

という表示がでかでかと出されていた。

 

「……マジか」

 

案外あっけない最後だった。

 

_________________

 

__________

 

____

 

_

 

 

翌日、俺とジェロニモはLZに向かって歩を進めていた。

ジェロニモは何処かイラついており、逆に俺は沈んでいた。

 

「はぁ…………ポチが死んじまった……」

 

「ジャベリン……あなたいつまでそれを気にしているのかしら?ふざけてるの?」

 

まあ、俺が原因なんだが。まさかここまで精神にくるとは俺だって予想外なんだよ……。

 

「ふざけてなんかないぞジェロニモ……ポチはな……俺の家族みたいなもんだったんだよ……」

 

「あなたねぇ……!」

 

彼女の怒りのボルテージがマックスになりそうだ……というかもうキレてる。彼女が俺の襟首を掴んだ。

 

「戦場で弱気になった奴から死ぬなんて言ったのは何処の誰よ!?あなたの状態は今まさにそれよ!!」

 

「いや、確かにそうなんだが……」

 

「分かってるなら!!!すぐに!!!気持ちを!!!切り替える!!!」

 

「……分かった」

 

彼女の剣幕に気圧されたが、そのお陰で逆に頭が冴えた。先ずは生き残ることが最優先だ。今敵に襲われてしまったら確実に殺される。それを防ぐためにもしっかり気を持たなければ。

 

俺の状態が良くなったことを確認できたのか、ジェロニモが俺の襟首を掴んでいた腕を下ろす。

 

「まったく……」

 

「ジェロニモ」

 

「なによ」

 

「助かった」

 

彼女が少し驚いたような顔をしたが、すぐに表情を柔和なものに変え、誇るように俺に言った。

 

 

「私は完璧よ。これくらい何の造作も無いわ」

 

 

そう言った彼女の顔はこの上なく眩しくて、美しかった。

 

 

 

うわやっべぇクラッと来た。

ジェロニモ……なんて恐ろしい子!!

 

「さ、そろそろLZに着くわよ」

 

「お、おう」

 

「……どうしたの?」

 

「いや、何でもない」

 

ふぅん、と呟いた彼女。あの顔に魅せられた今ではその仕草さえ魅力て…………落ち着こうか。流石にチョロ過ぎない俺?

久々に取り乱しちまったぜ……女性経験が無いのは本当にデメリットでしかない。確実に俺は色仕掛けに負ける。これは確信できる。

俺は知ってるぞ、思わせ振りな態度をとっていざ近付くと距離を取られるんだ。トライデントがそう言ってたから間違いない。あいつの部屋にあった可愛らしい絵が描かれた表紙の小説でもそんな風に書かれてた。

 

何とか自分を落ち着かせていたら、味方と思われる輸送ヘリがこちらへ飛んできた。

手を振ってこちらの居場所を示すと、それに気付いたのか空中で停止し、そのまま高度が下がっていった。

いやはや、なんというか……

 

「襲われはしたけど、呆気なかったな」

 

「そうね、もう少し長引くかと思ってたんだけれど」

 

「とりあえず、会社に着いたらポチのお墓作らないと……」

 

「あなた、そんなにあのダイナゲートが大事なのね」

 

「さっき言ったように、ポチは家族みたいなやつなんだ。俺の窮地を何度か救ってくれた存在なんだ」

 

「ふうん……私もそんな存在が居たらどうなるのかしら?」

 

「さあな?」

 

そうやって話をしながら着陸するヘリへ乗り込もうとした瞬間_____________________________

 

 

 

 

 

________爆発と共に、ヘリが爆散した。

 

「ッッッ!!!??」

 

俺とジェロニモは空中に放り投げられる。何度か回転したあと、地面に激突。一瞬何が起きたのか分からなかったがすぐさま状況を確認する。

周囲は炎に包まれており、恐らくパイロットは死亡しているだろう。ジェロニモの姿を探すと、すぐ隣で銃を構えて臨戦状態だった。俺も武器を構えて警戒していると、目の前から複数の人影が現れた。

 

「これで会うのは二度目ですね、亡霊(ゴースト)、いや、コードネームジャベリン」

 

「お前は__________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_________________代理人(エージェント)……!」

 

 

人影の正体は、にこやかな顔で立つ代理人(エージェント)と俺たちを襲撃した武装集団の奴らであった。

 




ジャベリンくん意外とチョロいね。
というか、まさか代理人が敵になってしまうとはなー悲しいなー(棒)

本当書くの楽しすぎて予定より大幅に字数が増える……。
あと、書き貯めが尽きたので、貯蔵と生成を兼ねて数日おきの投稿に移行します。何かしらの感想をいただければインスピレーションが起きて筆が進むんですけどねぇ(ダイマ)
かくいうこの展開も皆様の感想のお陰。
評価、及び感想は執筆の励みとなるのでどんどんください。そして、私にアイデアをください。
それでは!!

3/20 誤字を修正


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そのよん

数日後に更新っていったな?あれは嘘だ。
書いてて思っちゃったのよ、これは投稿するしかないって。あと先に謝ります、今回では終わりません。次で終わります。あと今回は416視点ないです……許してください!なんでもしますから!!
それではどうぞ。







代理人(エージェント)、なんでお前は俺たちを襲ったんだ!!!」

 

 

 

燃え盛る炎の中で、俺は自らを助けてくれた戦術人形へ銃を向けていた。代理人、鉄血工造製のハイエンドモデルの戦術人形。何故彼女が俺たちを襲撃、しかも監視対象の武装集団と手を組んだのかわからない。

彼女は俺たちを油断させるために助けてくれたのか?

疑問が疑問を呼ぶ。彼女の目的が分からない。

 

 

「何故襲った……?愚問ですね、クライアントの指示ですよ」

 

 

彼女は平然と言う。

やっぱ黒かコイツ。今すぐ鉛弾を眉間へぶちこんでやりたいがいかんせん未だ不利な状況であるため手出しが出来ない。

彼女の周囲には下卑た笑いを浮かべる奴らが五人、改造された自律人形が四人と居て、引き金を引いた瞬間今すぐ蜂の巣にされそうな状況だ。

これは詰みか?

ジェロニモはすぐ隣に居るため彼女の表情は分からない。ただ、俺と同じような考えだろう。

 

 

「もう駄目だ、なんて思っている顔ですねジャベリン」

 

「勝手に人の心を読むんじゃねぇよアバズレが……」

 

「それは失礼。よし、一つチャンスを与えましょう」

 

「は?」

 

 

チャンス?チャンスと言ったかコイツは?こっちが危機的状況とはいえ随分と舐めた態度をとるな。本当に撃ち殺すか?

引き金を引こうとしたらジェロニモに足を踏まれた。落ち着けってことなのだろう。大人しく代理人が言わんとしていることに耳を傾ける。

 

 

「私と手を組みましょう」

 

よし、殺す。

 

俺はすぐさま引き金を引……けなかった。ジェロニモがとっさながら器用に俺の銃のセーフティを有効にしやがった。ジェロニモに批難の視線を向ければ、今はそれどころじゃないという目でこちらを見ていた。……クソったれ。

一度目を閉じて昂りを冷ます。今度は目を開いて正面の代理人を見る。きちんと交渉すべきなのだろう。俺は覚悟を決めた。

 

 

「嫌だ、といったら?」

 

「そうですね……」

 

 

彼女は顎に手をあてて考え始めた。本当、何なんだこいつは?掌の上で踊らされてる気分だ。

十秒ほど経って、何かを思い付いたのか、彼女はにっこりと笑って言った。

 

 

「じゃあ_____________________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドパンッ!と、突然大きな音が聞こえた時には代理人の隣に居た男の頭がまるでそこに無かったかのように消えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_____________________________こうしましょうか」

 

 

瞬間、彼女がスカートの裾を上げる。そこから多数の武装が現れ、火を噴いた。踊るようにくるくると廻る彼女を前に、他の人形や男たちは油断していた為か為す術なく肉塊へと姿を変えていく。たった数秒の出来事で、この場に立っている者は俺たちだけになってしまった。

面食らって棒立ち状態になった俺たちに、彼女は満足そうな笑みを浮かべ、

 

 

「これで、協力してくれる気になりましたか?」

 

 

なんて言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………

 

 

「マジでふざけてる」

 

「マジでふざけてるわね」

 

「大真面目ですよ」

 

 

三者三様。すました顔をした代理人と頭を抱え大きなため息をつく俺、頭痛が痛いという感じなジェロニモが火の鎮まったヘリ墜落現場に居た。

 

 

「せぇーっかく腹を括ったんだけどなぁ」

 

「ジャベリン、敵を騙すなら先ず味方からという言葉がありますが?」

 

「知ってる……はぁぁぁ、まったく馬鹿馬鹿しい……」

 

「理解不能よこれは……」

 

 

代理人から聞く限りはこうだ、俺たちと別れた代理人はクライアントから何としてでも協力させるように仕向けろとの指示を承って、俺たちを追跡。そこへちょうど武装集団へ接触し、その時この悪い悪いとてもわるーーい考えが思い付いたらしい。自身の能力を遺憾なく発揮して俺たちの拠点を突き止め、武装集団をけしかけて危機的状況を作り出したのだ。その上俺たちが脱出しようとすれば動ける奴を動員してすぐさま襲撃、そして交渉を持ちかける。もしも駄目なら連れてきた奴らを皆殺しにして再度持ちかけるという。

 

……本当に掌の上で踊らされてた。というか彼女、武装集団の奴らと手を組む気なんてさらさらなく、本当にクライアントの指示通りに動いていただけだった。優秀だなチクショウ。

 

 

「それで、答えはどうなんですか?」

 

 

彼女が手を差しのべる。まるで答えが分かっているかのように。

 

 

「あぁクソ……組むに決まってるだろ。人為的に作られた窮地とはいえ救われたんだ、文句なんてない。ジェロニモは?」

 

 

差しのべられた手に応じる前にジェロニモに聞く。彼女は最早諦めたように答えた。

 

 

「……私も貴方に同意見よ」

 

「だろうな」

 

 

代理人の手を握る。俺は今日ここで、一時的だがとてつもない協力関係を結んだ。

 

 

「ポチも天国でびっくりしてるだろうなぁ……本当」

 

「そうね……人形に天国とか分かるかどうかは置いといて」

 

「ポチなら此処にいますよ?」

 

「「は!!!???!!!!?」」

 

 

 

彼女のスカートに隠れて申し訳なさそうにこちらを見ていたポチも加えて。

 

 

_____________________

_______________

________

____

 

 

 

 

代理人の本来の目的とは原因調査などではなく、クライアントが欲しがっていた武装集団の莫大な資金や、とある物資を奪うためらしかった。あまり深く聞かないでおこう。

俺たちはそれを遂行するために協力をさせられるのだ。

 

それと、何故ポチが代理人と一緒だった理由は、代理人がポチを利用しようと色々画策してたかららしい。ただ、俺が昔取り付けたデータプロテクトのせいでデータの改変が出来ず、更にポチが自衛の為に強制シャットダウンをしてしまったようだ。彼女はポチを捨てるのも忍びなくずっとスカートの中で保護していたとのこと。……これ交渉決裂してたらポチ人質になってたな。

協力関係を築いた俺たちは先ずヘリパイロットの亡骸を探し出し、丁重に供養しておいた。代理人とジェロニモは興味深そうに見てたが何が面白かったのだろう?

なにはともあれ、供養した後は社長に連絡をする。

ついでに理不尽な怒りもぶつけた。

 

「応答しろクソハゲ!」

 

『聞こえてんぞクソ野郎。どうした?またお前の不幸か?』

 

「その通りだよ。ちょっと状況が変わった」

 

『話してみろ』

 

「別のクライアントから派遣された傭兵と接触。交渉の末、協力関係になった」

 

 

社長へ今回の経緯を話す。今から俺がすることはとんでもなく命令違反だ。

 

 

『何?どうするつもりだ?』

 

「このまま武装集団へ殴り込みだ」

 

『おいおい、そいつは命令違反だぞ?お前らは帰れって言われたんだが』

 

「それをどうにかするためにアンタがいるんだろ?」

 

『チッ……胃に穴が空きそうだ』

 

「いいんじゃないか、そっちの方がアンタの健康にも効果的だ」

 

『言ってろ。まぁいい任せとけ』

 

 

部下の不始末は上司の不始末だ。せいぜいグリフィンのとこにペコペコ頭下げてな。

っと通信を切る前に……

 

 

「それと社長、座標を送るから遺体回収のヘリを回してやってくれ。俺たちの回収用ヘリは2,3時間後でいい」

 

『……死んじまったか』

 

「残念ながらな」

 

『あぁ、了解した』

 

 

遺体の座標を送った後、通信が切れた。また、今度は回収地点の座標も送られてきた。ジェロニモにも送る。

これで仕事ができる。通信機の電源を切った後、代理人へ向き直る。

 

 

「それで、どうする?」

 

「今から敵拠点を奇襲します」

 

「どうやってやるのよ?」

 

 

ジェロニモが質問する。代理人は待ってましたと言わんばかりに答える。

 

 

「先ずは正面から私とジェロニモ、貴女が入ります。これは敵を油断させるためです」

 

「ふぅん、ジャベリンは?」

 

「彼には拠点側面にある建物へ行ってもらいます。ジャベリンの持ってきているHK417(それ)は一応狙撃に向いていますよね?」

 

「あぁ、そうだが」

 

 

ぶら下げているサプレッサーが装着されたHK417(こいつ)を見る。やっとこの銃の本領が発揮できるのだろう。多少の精度を目を瞑っても十分な性能があるからな。

 

 

「よろしい。このやり方は子供だましも良いところですがその分相手が引っ掛かればとてつもなく強い。私たちが情報や資金を確保した後は、ジャベリン、貴方に懸かってますよ」

 

「了解、腕に覚えはあるんだ。任せとけ」

 

「ジェロニモも、しっかりと演技を頼みます」

 

「私は完璧よ、それぐらい任せて頂戴」

 

「それでは、始めましょう。Do you copy?」

 

「「Copy that!!」」

 

 

 

 

 

 

たった三人で行う作戦(とてつもなく馬鹿げたこと)が、今始まる。

 




コメント欄を見ててポチの人気さに困惑。
愛されキャラだったんやなって……。「あれ?俺は?」
主人公補正で我慢して♥️

元々ポチは生存させるつもりだったしこれでいいのかな?
ともあれ、次回はドンパチ行きますよ。といってもジャベリンくんの視点なので代理人やジェロニモの活躍は描写しないので悪しからず()
まぁ、前回と今回で代理人と416の印象は付けられた……はず。どちらにせよ結構出演して貰うつもりですからね。

さて、感想と評価は自分の執筆の養分になるのでしっかりと滞りなくそして遠慮なくどうぞ!!
とりあえずコラボに関してはいつかやりたい(まだ早い)
それではまたこんど!

追記:
コラボとかやりてぇなぁとか思ってるし、そういうの活動報告に投げときました。あとジャベリンの情報に外見の項目を追加しました。

3/21 自分が感じた違和感を修正


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そのごのおわり

通算一万UA越えにお気に入りが300以上で日刊ランキング入り……???これは夢?いや現実かぁ…………ヤバイヤバイヤバイヤバイ!!嬉しい!!!嬉しいよ!!!!!!これからも「傭兵日記」とジャベリン&ポチコンビをよろしくお願いします!!

ちょっと長いですが、それではどうぞ!!!











「ボルゾイ、煙草ねぇか?」

 

「ねぇよゾルディ。キャベツでも食んでろ」

 

 

作戦が開始されて数十分、(代理人に担がれてすぐさま敵拠点に着いた)俺とポチは指定されていた場所に向かっていた。もう二度と代理人に担がれたくない。ジェロニモもグロッキーになってた。

 

目の前の二人はどうやらサボりでここに居るようで、もうしばらくで何処かに行きそうだ。というかゾルディって奴が本当にキャベツ食べ始めた。それ食って大丈夫なやつなの?だいぶ黒ずんでたよ?

…………あー、腹押さえ始めた。連れが何処かに連れていってる……若い奴って本当チャレンジ精神あるよな。

 

一先ずこれは好機と、俺はすぐさま目標の建造物へ急ぐ。敵はこっちが死んだと思っているのか警備が薄い。何の接敵もなく建造物の内部へ入る。ポチに先行させ索敵させる。一階には誰も居らず、二階には三人ほど机で酒盛りをしており武器は持っていなかった。

MP5Kにサプレッサーを取り付ける。壁に身を預け、一呼吸して室内へ突入した。向こうがこちらを視認した時にはもう遅い。引き金を引き、三人もろとも無力化させた。ポチからの信号を受けとる。三階、四階には誰も居らず、後は屋上のみとなった。

 

 

「代理人たちは上手くやってるといいんだが……」

 

 

リロードをしながらそんなことを呟く。多分あいつらは敵拠点正面ゲートで演劇でもやってる最中だろう。

一応、もしものためにさっき倒した奴らからマガジンを頂き、立て掛けてあった何処かのPMCのエンブレムが付いたAK-12を持っていく。

こいつらPMCの輸送車襲ったっぽいな?おぉ怖……どうなっても知らんぞ。

 

屋上に到着。ドアに簡易的なバリケードを作り、適当な柵にロープをくくりつけた。そして正面ゲート方面へ銃を向ける。スコープを覗いた先には複数の人間に囲まれて歩いている代理人とジェロニモの姿があった。

アイツらまんまと引っ掛かってんな。

 

スコープ越しに彼女たちを見ているとふと代理人がこちらに顔を向けて、何か喋っていた。

 

 

「た、の、み、ま、す、よ……か」

 

 

言われなくても分かってる。取り敢えず小さく手を挙げておいた。

さて、彼女たちが行動を起こすまで暇だな。バッグに確かチョコバーがあったはずだしそれを食べよう。

バッグを探りチョコバーを取り出して食べる。ポチが近づいてきたが食べれるものじゃないので手で制止した。空を見上げて、ふとM16と約束したことを思い出す。彼女、何の酒を飲むのだろうか、彼女は酔ったらどうなるのか、なんてとりとめもなく考え耽る。あと、彼女の連絡先知らないな……なんて考えもしたがそれはグリフィンに聞いてみればいいかと自己解決。グリフィンに問い合わせる勇気はないけど。

 

ボーッとしているうちに五分ほど経過した。向こうの様子を確認しようとして身を乗り出した瞬間………………

 

 

目の前の建物の一室が爆発した。

 

 

「何事!?」

 

 

急いで銃を構える。観察していると二階の窓から映画みたいな飛び出し方で代理人とジェロニモが出てきた。怪我はないようでそのまま正面ゲートへ走っていっている。

警報が鳴っている。彼女たちへ敵が集結していっている。さぁさぁ仕事の時間だ。

 

 

「アイツらの意識をこっちに向けないとな!!」

 

 

先ずは蠢いている集団を指揮していた奴へ発砲。鉛弾はそいつのこめかみへ綺麗に入っていった。突然倒れたそいつに気がついた集団がこちらへ制圧射撃をしてくるが、腕が悪いのか使ってる銃の状態が劣悪なのかそこまで効果がない。俺はとにかくその集団へ撃ち続ける。ポチにはドアを警戒させておく。何人かこちらに走ってきたが難なく対応、ふとジェロニモ達を見やれば正面ゲートに到達して車に乗り込んでいた。

俺もそろそろ出るか。

武器やなんやらを仕舞ってポチを背負う。だいぶ重くなったが仕方なし。急いでロープを伝って降りていく。先にポチを指定の座標へ行かせ、俺は走りながらジェロニモに連絡をする。

 

 

「こちらジャベリン、聞こえるか?」

 

『こちらジェロニモ、聞こえてるわ、どうぞ』

 

「俺もそっちへ向かう、お前たちは先に行っててくれ」

 

『了解、絶対生き延びなさいよ。まだ貴方に聞きたいことがあるんだから』

 

「あいよ。駄目だったらそのまま逃げてな」

 

『馬鹿言わないで、その時は引き摺っても連れて帰るわよ?』

 

「そりゃありがたい。ジャベリン、アウト」

 

 

目標地点へ急ぐ。追いかけてくる奴らの数は一歩進むごとに多くなっていき、煙に巻くことも出来なそうだ。敵から鹵獲したAK-12で弾をぶちまける。これだけでも効果はあるようで奴らの動きを少し止めることができた。すぐに腰のグレネードを投げる。敵が逃げたりするものの、人形はそんなことお構いなしに突っ込んでくる。そんな奴には9mmの嵐をくらわせる。これを何度も繰り返して何とか敵との距離を離した。

 

 

俺も俺で随分と映画みたいなことやってるなと焦り始めた頭で考えていたがこれがいけなかった。

 

 

「ぐっ!!?」

 

 

左の太股と腹部を撃たれた。もちろん支点を失った俺は倒れる。幸い弾は貫通していたようで生き残れば助かるはずだがどちらにせよ運が悪すぎる。

敵の声が聞こえてくる。急いでスモークグレネードを正面にありったけばらまいた。これで多少はどうにかできる。近くにあった岩によっかかり、止血をしてHK417を構えて待ち受ける。救難信号をジェロニモに出しておいた。これで俺が死んでも死体は持ち運んでくれるだろう。

 

敵の足音が聞こえる。ちょいと死にかけてるのになんでこんなに神経が研ぎ澄まされているのやら。

 

 

「全く映画じゃねぇんだぞ……勘弁してくれ」

 

 

姿が見えたやつからどんどん撃ち殺していく。人形、人間、蟻の大群が如く湧き出てくる。

なんだこいつら本当。そんなに俺に執心してもなにもでないぞ。精々血が出るぐらいなんだが。

最早意識と動作が解離し始めた。敵が多すぎる。どんどん撃っていくうちに弾も切れて疲労が溜まり始める。血も止血したとはいえ流しすぎた。意識が朦朧としてきた。煙幕も晴れ始める。絶対絶命。

 

 

(こりゃ無理だぜ、全くよ。映画のヒーローでもないのにこんなことやるもんじゃないわ)

 

 

目を閉じる。が、諦めた訳じゃない。

 

 

(とはいえ、このまま敵に捕まりゃ晒し首だな)

 

 

レッグホルスターからガバメントを抜き構える。

 

 

「殺せるだけ殺すぞ……」

 

 

迫り来る奴らに照準を合わせ指をトリガーへ掛けた瞬間、

 

 

敵が、

 

 

爆ぜた。

 

 

黒い影が躍り出て銃をぶっぱなす。

その光景を見て俺は一人ごちた。

 

 

「…………今なら神を信じれる」

 

「そうね、生きてるかしら?」

 

 

聞きなれた声が聞こえた方向を見やれば銀髪の少女が居て、俺に肩を貸す。目の前の戦場ではメイド服の女性は舞台で踊るかのように敵を蹂躙している。強すぎ。一人で軍隊とタメ張れるな。少女に肩を借りながら俺は安堵感に包まれた。ポチが足元に寄り添う。

 

なんとか、生き残ったな……。

 

 

「生きてるよ、ジェロニ「それと」……む」

 

 

彼女の言葉に答えようとしたが、そこに彼女が被せるように言う。

 

 

「今からは"ジェロニモ"じゃなくて、"416"って呼んで」

 

「……分かったよ、"416"」

 

 

ヘリのローター音が聞こえる最中、ジェロニモ……いや優しく微笑む416の言葉に答えた俺の意識は闇へ落ちた。

 

 

 

……俺は、やっと彼女に信頼されたんだな。

 

 

 

 

 

 

 

______________________________________________

 

 

 

side ジェロニモ

 

私たちが代理人と呼ばれる戦術人形と手を組んで敵の拠点へ殴り込みをするとなったときは、心の底から驚いていた。何せあの大集団に対してこちらは三人だ。ファンタジーと言っても差し支えは無かった。彼女の作戦を聞いた後に大それて「Copy that」なんて言ったが、作戦実行直前までは不安でしかなかった。

だが、それ以上に敵側も愚かなもので代理人が捕虜を連れてきたという言葉を鵜呑みにしていた。連行されている間、代理人がジャベリンが居るであろう建物へ唇を動かして何かを伝えていたが、周囲にバレるような事は無かった。

 

そのまま正面の建物へ連れ込まれる。一人の男が私に触ろうとした瞬間に代理人が周囲もろとも殺害。そのまま私の拘束を解き、代理人曰く重要なデータのある二階へ向かう。接敵はあったものの全て対応できた。

二階の部屋へ到着したら代理人がデータをすぐに抜き取った。が、爆発物が自衛に仕掛けられていたのを見つけ急いで部屋から出る。数瞬、大きな爆発が起きた。私と代理人は急いでその場から離れる。窓を突き破り地面へ着地し、走る。敵が追いかけてくるが、ジャベリンが支援を始めたのか直ぐに多くが彼の居る建物の方向へ意識を向け始めた。

正面ゲートにあった車へ乗り込む。ジャベリンから通信が入り、彼が軽い冗談とはいえ洒落にならないことを言ったので叱咤をしておいた。

 

代理人に追手を迎撃させながら車を目的地へ向かわせていると、突然ジャベリンから救難信号を受け取った。

一瞬怒りを覚えたが直ぐ鎮めて反対方向に引き返す。驚く代理人に事情を話しながらアクセルを踏み込んで車を目一杯走らせる。

願うなら早く間に合ってほしい。彼にはもっと聞きたいことがあるんだ。彼の会社の事や彼の持っている技術、好きなもの、休日はどんなことをしているのか、それを共有したい。私がより完璧に近づくために。何か邪な考えが出てきてしまったが関係ない。

 

途中、走っているポチを見つけ、代理人がすれ違い様に掴み上げる。

急ぐ、急ぐ。ふと遠くに不自然な煙が見えた。おそらく彼処にジャベリンが居る。気持ちが逸っていくが、何とかそれを押さえつけて、代理人に敵が居たなら心置きなくやってほしいと伝える。

あと10m、強い衝撃と共に代理人が前方へ大きく飛んでいく。数m、車からポチと飛び出し彼のところへ。

 

 

「…………今なら神を信じれる」

 

 

そう呟いていた彼へ声を掛ける。

 

 

「そうね、生きてる?」

 

 

あぁ、良かった。生きていた。私の中で歓喜が荒れ狂う。彼へ肩を貸す。彼の顔は安心しきった顔だった。

彼が私へ答える。

 

 

「あぁ、生きてるよジェロニ_______」

 

 

でも待ってほしい。私はその名前ではなく、無性に「HK416」として呼ばれたかった。だから彼の言葉に被せる。

 

 

「それと」

 

「む」

 

 

不満げな顔だったが無視。

 

 

「今からは"ジェロニモ"じゃなくて、"416"って呼んで」

 

 

私は、そういった。対して彼はちょっと驚きながら少しはにかんで言う。

 

 

「……分かったよ、"416"」

 

 

そして気絶した。少し焦ったが呼吸は正常だったため、安心した。敵を殲滅した代理人が戻ってきた。彼女も気絶したジャベリンを見て驚いたが直ぐに元に戻った。

 

味方の回収用ヘリの音が聞こえてくる。私たちを丁度見つけたようで、地上に降りてくる。パイロットに重症が一人居ることを伝えて直ぐに病院に行くように仕向けた。飛び立つヘリの中ではポチが心配そうにジャベリンの近くに居る。代理人はいつもの澄まし顔だが心配なのは変わりなくジャベリンの腕に手を置いていた。

私は…………彼の手を握っている。

私のAIがそうした方がいいと判断したからだ。

 

そういえば、私は最近分かったことがある。それはジャベリンに対する感情についてだ。私がジャベリンに向けている感情は、そう、"親愛"だ。一緒に居て楽しい、だとか友人のように接することができるなど、様々な理由が挙げられる。私たち戦術人形は人間に対してある程度の好意を持つように作られていると聞いたが、正にこれのことだろう。

 

 

「"416"……ね、ふふっ」

 

 

一人そう呟く。ただ代理人に聞こえていたのか「そうですよ416、随分と可愛らしいですね416。ええ、とっても可愛らしいです416」と弄られる羽目になった。

その弄りは病院に到着するまで続いた。

 

 

 

ただまぁ、こういうのも悪くないだろう。近付く病院を見ながら、私は思った。

 

 

 

 

 

 




あれ…………おかしいな?416がヒロインみたいになってるぞ……?
当初はG11をジャベリンとよく絡ませようと考えていたのですがどうやら予想外のことになりました。
収集は着くからまだいいかな!!!!
もう、勢いだけでやってたから仕方ない。書き貯め作るの無視してやってるから結構大変()
今度は流石に書き貯め作業入りますので三日後に更新予定です。

ま、何はともあれ、これからも書いていきますよー。
感想、及び高評価は作者の執筆の栄養になります。ですので遠慮なさらずどんどんください!!それでは!!


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始まる日常
傭兵、入院だってよ。


三日後に投稿とかするより思い付きでちょいちょい更新の方が性に合ってたのでそっちに移行します。どうぞよろしくお願いします。
書き貯めは創るけどね!!!推敲は大事!!





 

 

 

何日目だ? 59日目 不明

 

「夜道が怖い!!誰かに狙われてる!!そんな貴方に盾部隊!!二十四時間何処までも、貴方を守って三千里!!詳細は民間軍事会社『武器庫(armoury)』まで!!」

 

そんな意味不明なうちの会社のCMで目が覚めた……気がする。目の前には真っ白な天井があり、首を横に向ければ416がリンゴの皮を剥いていた。

 

まぁ、なんだ、生き延びたな……なんてこの時改めて感じた。

 

この後に目が覚めたことに気がついた416が慌てて医者を呼びにいってた。

彼女が医者を呼びに行っている間に剥かれたリンゴを手にとって食べた。久し振りに果物を食べたせいなのか、その味は忘れられないくらい美味しかった。

 

 

 

 

 

 

60日目 晴

 

医者曰く、俺は2日ほど寝ていたらしい。取り敢えず昨日の日記に日付をつけておいた。

俺が寝ている間は416が付きっきりで居たらしく、ちょっぴり嬉しかった。そういえば、ポチは何処にいるのだろう。そう思って416に聞いてみればポチは代理人に連れられ鉄血工造へメンテナンスに行ったらしい。ポチは別にメンテナンスなんて要らない筈だったんだが何故だろうか?416に聞いてみても首をかしげるばかりで何も分からなかった。

 

 

 

 

 

61日目 曇

 

416はグリフィンに戻った。定期メンテナンスを行うらしい。

ちょっと暇だなと思ってベッドから起きて病院を回ろうとしたらたまたま居た看護師に止められた。もう暫くは安静にしていないといけないとのこと。ベッドの上では特に何もすることが無く、日記を書き記すことのみが自分の退屈を紛らわせる唯一の手段になった。テレビはうちの会社のCMが流れてたりするからあまり見たくない。グリフィンのCMは少し気になるけども。

というか、何で俺は個室なんだよ。何処でもいいから共同部屋にしてほしい。話し相手が居なさすぎて退屈でしかない。

 

クソ、書くこと無くなってきた……寝よう。

 

 

 

 

 

62日目 晴

 

M16がお見舞いに来てくれた。しかも妹分の戦術人形を何人か連れてきた。彼女の妹分たちは個性がなかなか強い。

先ずはSOPMOD-Ⅱ、彼女を一番始めに覚えた。随分と元気な子で、黒い機械の腕が特徴的だった。あと、何処か犬のような雰囲気を持っており、本当人懐っこい。元気一杯の笑顔が眩しかった。それと彼女の全力ダイブは怪我人の俺にはとても効いた。殺す気か。

次に覚えたのはST AR-15だ。彼女は薄い桃色の髪が特徴的で、顔立ちが凛々しい。言動は真面目そのもので416と初めて出会った時を思い出す。M16曰く、暴走したら手が一番つけられない妹分らしい。AR-15は全力で否定していたがその姿が面白かったのでついついからかってしまう。からかい過ぎて顔をがっちりホールドされて「忘れてください」って言われたがな。あの目は怖かった。

最後に覚えたのがM4A1。彼女はおどおどとしており気弱そうな少女だと最初思っていたが、その実しっかりとしており、気弱ながらもクセの強い他の妹分たちを纏めるパイプ役のような少女だった。ちょっと優柔不断な所があるのだがそこを直せばリーダーとして十分なポテンシャルを発揮できる少女だろう。

 

この後はM16がこっそり持ってきたジャック・ダニエルだったか?それを飲まされかけてM4が必死に止めたりAR-15がM16に煽られてジャック・ダニエルを飲んでへべれけになってそれをM4が介抱したりSOPMOD-Ⅱが便乗してジャック・ダニエルを飲んで馬鹿騒ぎするところをM4が止めたり…………M4大変だな。退院したら何か奢ってやろう。

事態が終息する頃には起きてるのがM16とM4と俺だけになった。流石にここままにしておくのは不味いため、二人には帰って貰った。

 

それと、帰る直前にM16から連絡先を貰った。これで好きな時に誘えるな。M4が口を覆って驚いていたが気がつかない振りをしておいた。だって、目が怖かったし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

63にちめ

 

たすけて、えむ16と416がにらみあってる。にげたい。




ジャベリンくん修羅場だぞ走り回れ(鬼畜)
あと、ジャベリンくんの年齢少し弄りました。

ちなみに現在代理人とポチは

「…………ポチ、貴方、私の下着、撮りましたね?」

「!!」左右に振る

「…………本当ですか?真実ですか??嘘偽りはありませんね???」

「!!!!」縦に振る

「あのときは少々際どい下着でしたから危ないところでした……油断大敵ですね」

「……」←実は撮ってしまってた。

ってなってます。代理人の下着?大人だっ(銃声)

感想、及び評価は執筆の励みとなります。どうぞ、遠慮無くお願いします。それでは!!



結構どうでもいい余談:武器庫のCM一覧(設定で出てきた部隊のみ)


剣部隊:「敵を攻め落としたいけど数が足りない!!強襲をしたいけどそんなに戦力がない!!そこを補う部隊こそ、我が『武器庫』の誇る最強部隊、剣部隊である!!痒いところに手が届くエリート部隊!!詳しくは『武器庫』まで!!」

弓部隊:「あぁアイツが邪魔だ殺したい!!あの子の情報知りたいぞ!!そんな欲望を叶えてくれるのは弓部隊だけ!!暗殺諜報お手の物、相手を翻弄してみせます。詳しくは『武器庫』まで!!」

盾部隊:「夜道が怖い!!誰かに狙われてる!!そんな貴方に盾部隊!!二十四時間何処までも、貴方を守って三千里!!鉄壁の盾部隊の詳細は『武器庫』まで!!」

槍部隊:「報酬貰えば何処までも、貴方に付き添い従います。近年のニーズに応えることが可能な『武器庫』の部隊と言えば槍部隊!!槍部隊は多くの任務を取り扱います!!御入り用の方は民間軍事会社『武器庫』まで!!なお、仕事内容によっては突き返します」

社長「あ?過大誇張?それぐらいの方が客は集まるってんだ」



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傭兵、修羅場だってよ。

禁忌の二話連投。二話連投をする際は基本7:30と19:30に分けてやることにします。

それではどーぞ。






64日目 余裕なし

 

修羅場が続いてんだけど……。

昨日からずっと二人は睨みあっている。俺が寝ていても二人は目を開けて寝てた。怖い。

朝起きて、一体何の蟠りがあるんだと二人に問えば、416は無言の圧力、M16は薄ら笑いを返してきた。あ、これM16楽しんでんな。

416が「何であなたがまだここにいるのかしら」と言えば「なぁに、昔馴染みへのお見舞いが終わってないのさ」と気障ったらしくM16。室内の温度がどんどん下がってく。

ヘルプミィィィィ!!!と一縷の望みを賭けてナースコールを連打しても看護師はいつまでも来ず、たまたま見舞いに来たのかうちの社長ともう一人、厳つい髭のおっさんが病室に入ってきたが、この状況を視界に捉えて数秒「邪魔をした」とドアを閉めて何処かに行った。助けろよ。マジでふざけんなよ、見ず知らずの人間に対してでもその立派な髭を毟り取ろうとさえ思ってしまう。

 

じっと睨みあう両名、小鹿のように震える俺。本当、どうしてこうなった。

 

埒があかないなんて思って俺はそろりと病室から抜け出そうとしたら二人に捕まった。心臓が飛び出るくらいビックリしたし怖かった。直ぐにベッドに戻されて、有無を言わさぬ笑顔で「寝てろ」「寝てなさい」とか言われた。理不尽。

しかしこの二人を前に俺は頷くしか出来なかったのも悲しい。だが、何とか収まったようで、M16と416は俺を挟んで対面するように座った。全く収まってなかったんだけど。

だから!!それを!!やめろ!!!!…………本当に、やめて…………。

 

 

 

 

 

 

 

65日目 雨

 

知恵の輪(比喩)が出来てた。原因は知ってる。俺が寒いなと呟いたせいで416が突然添い寝をすると言い出したからだ。その上面白がったM16がそれに便乗して背後から抱きついてきた。俺は今M16と416に挟まれた状態だ。前方の416、後方のM16。袋小路の槍部隊隊長ジャベリン。どうしろってんだ。

416からはシャンプーのいい匂いがして、M16からは力強くそして柔らかい感触がある。理性が蒸発する。禁欲状態から解放されそう。

 

だがしかし、俺はこんなことなんて望んでいなかった!!今も気を紛らわす為にずっとこれを書いてる!!一応寝ることは出来たがな、眠りが浅すぎて変な夢見たわ!!

内容は代理人がポチをふやけた顔で愛でているのを延々と見せられる夢だ。彼女のイメージと解離しすぎてすぐ夢だと分かった。

 

とにかく今はこの知恵の輪から抜け出したい。トイレに行きたいんだが……ナースコールするしかないか……。この状態から抜け出せるなら俺はもう尊厳を捨てる。

グッバイ俺の尊厳ハロー安息の地。

 

 

 

 

 

 

66日目 曇時々雨

 

M16と416が帰ってから入れ替わりで社長とこの前の髭のおじさんが来た。隣に美人さんを侍らせてら。このおじさんの名前、クルーガーといってグリフィンの社長、しかもうちの社長と軍人時代からの知り合いらしい。この人一線を遠退いていてなお、筋肉が凄い。うちの社長とタメ張れるぞ。というかうちの社長の名前マーカスって言うんだな。社長と出会ってからずっと名前が分からなかったから助かった。

 

クルーガー社長とマーカス社長の昔話を聞きながら隣の美人に声をかけてみた。彼女はヘリアントスという名前でグリフィンの上級代行官らしい。俺よりちょっと歳上ということに驚いた。同年代かと間違えるぐらいお綺麗ですねって褒めたら満更でもなさそうだった。あと退院後に食事でもどうかと誘われた。……逆ナン?

ちょっと悪寒がしたので曖昧に誤魔化しておいた。

 

 

 

 

 

ところで、何で今度は四者面談みたいな感じになってんですかね……?

え?俺の雇い先を増やす??どういうこと?武器庫とグリフィンの二重雇用??んな馬鹿な、じゃあ槍部隊はどうなる?もう同意は得たから問題ないだと?仕事早すぎるわ。

雇い先は増えるが仕事内容は変わらない??だといいんだが。

そういえば俺の部屋どうなってんの?

 

えっ、もうグリフィン本社近くのマンションに引っ越しを済ませた??オスカーは?オスカーも!?

 

 

 

 

 

 

 

……嘘だろ?

 

 




ジャベリンまさかの出向。お給料そのまま仕事だけが増えたようなもんです。あとコメント欄死屍累々ですね()
この後はジャベリンくん感動の再会(?)こうご期待を!!
感想、及び評価は執筆の励みなるのでバシバシお願いします!!それでは!!


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傭兵、再会だってよ。

まさか一週間で一万UA越えるとは思わないじゃん?
みんな自分の作品楽しみにしてるんやなって。
ではどうぞ。






今日は、あの人の所へ訪ねる日だ。

私という人形を拾ってくれたあの人の所へ。

確か、今は416と行った任務で怪我をして入院しているそうだ。少し心配。

ペルシカが出掛ける準備をしている。私はちょっとだけおめかしをした。といっても猫のヘアピンを着けてみただけだけど。

416が驚いてた。でもこれはあの人へ会うためなんだから仕方ない。

そうだ、サメのぬいぐるみも持っていこう。あの人が買ってくれたあのぬいぐるみを。

楽しみだ、またあの人に会える。

そう思うと、いつもの眠気なんて全部吹き飛んでいくようだった。







67日目 晴

 

まんまと嵌められた!!!!ええいクルーガー社長もマーカス社長も全身脱毛の刑だ!!!!ラーンス!!!(脱毛剤)!!!(脱毛剤)持ってこーい!!!!

最近グリフィンとの任務多いなーなんて思ってたらこういうことか!!というかアレだな!!恐らく416の報告で俺の処遇が決まったんだな!!!あ、こいつ人形と組むの結構いいんじゃね?ってな!!!こればかりは恨むぞ416ゥーーーーッッ!!!

 

……それはさておき、俺の業務形態がブラックになった。本当どうするんだこれ、俺分裂すればいいの?

そういえば最近知ったことだけど戦術人形はダミーリンクシステムなるものがあるらしい。俺もそのシステム使えないかな……。数人の俺が居るのは気持ち悪いけど。

 

……何となくテレビをつけてみた。番組が放映されていたが、うちの会社が監視指定組織(人権団体)と殺しあってた。まあ、一方的だったけど。奴らと戦ってるのは……剣部隊か?部隊長のクレイモアが銃剣引っ提げて相手刺し殺してるんだけど……あいつらも運がねぇな、よりによって最強部隊が本社に居るときにに攻めてくるとは。あ、映像切れた。消しとこ。

 

テレビを消して、暫く上の空で居ると、何処から噂を聞き付けたのかトンプソンがオレンジを引っ提げ訪ねてきた。同じ顔の人形が出てきたのは突っ込まないでおこう。

トンプソンに話を聞いてみたら自分の最適化率が10%を越えたから増やしてみたらしい。ダミーは比較的簡素なAIながら性格は彼女とそんな変わらない。

というか最適化率ってのもあるんだな。416やM16はどうなんだろうか。

オレンジを噛りながらそう思った。トンプソンのくれたオレンジは甘味と酸味のバランスが絶妙でとても美味しかった。一体何処で手に入れたのか彼女に聞けば、この前補給基地でちょっとちょろまかしたらしい。それって横領じゃ……と言おうとしたらオレンジをまた口に突っ込まれ、「これで共犯だな」と言われた。ダミーもくつくつと笑ってる。こりゃ敵わないな本当。

 

 

この後は槍部隊の奴らがお見舞いに来たのだがトンプソンと俺を交互に見てランスとトライデントが俺に飛びかかり、スピアはトンプソンを口説いていた。お前トンプソンみたいな子タイプだったの……!?軽くあしらわれてたが。

また、何かしら誤解を奴らに与えてしまったようだ。

 

 

 

 

 

 

68日目 曇り

 

医者曰く、あと三日ぐらいで退院出来るくらいは回復したらしい。あと外出許可も貰えた。

明後日あたりにちょっと病院の外を歩こう。

 

 

 

 

 

 

69日目 晴

 

目が覚めたらそこには見知らぬ美少女がサメを抱いて寝ていました。

 

 

いや、懐かしい面と言うべきか……なんというか……。

 

説明すると、あの時ペルシカリアに預けていた少女が寝ていたのだ。俺の腹の上で。変わらないな全く……。

どうしようか悩んでいたら病室のドアが開いてペルシカリアと416が入ってきた。

二人がこの様子を見て416は目を見開いたままフリーズし、ペルシカリアは何を思ったのか写真を撮ってきた。やめろ。

 

取り敢えず何故この子が居るのかをペルシカリアに聞く。

彼女は「習熟訓練が終わったから416と一緒にお見舞いついでで顔出しをね」と言った。

そうか、一人前になったんだな……と未だ寝ている少女、いや、「G11」を撫でる。G11はフリーズから復活した416にすぐさま起こされて立たされたものの、まだ眠いのか船を漕いでいた。というか416もこの子と知り合いなら早く言って欲しかったんだけどな。そっちの方が初対面の時もっと話せたんだが。そう416へ伝えた所、「そんなの知る訳がないじゃない」と言われた。当然か。

G11をもう一度見て、「久し振りだな」と伝えると「うん……久し振り……zzz」と寝ながら言った。あまりの可愛らしさに頬が綻ぶ。これも親バカってやつだろう。

 

何となく彼女たちに明日外出するから一緒に来てくれと伝えると快く承諾してくれたので、俺の外出は随分と楽しいものになりそうだ。

 

 




G11が満を期して(?)登場。ちなみにうちの基地には居ません。始めたての友人が二人出してました(血涙)
この子はちょくちょく出したい子No.1でした。というかこの子をヒロインにしたかったんだよ!!!(豹変)まあいいか!!!416とM16と一緒に出すわ!!!トンプソンとかいうダークホースも居るけど!!!!他に出してほしい子居たらどんどんいれますよ!!!!!

では今日も今日とてARレシピ回してきます……。
感想と評価は作者の栄養となります。監視の意味でくれても喜びます。どうぞ、次回もお楽しみにしてください。またこんど!!


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傭兵、外出だってよ。

禁忌の二話連投(二回目)

あれですよあれ、早く蝶事件まで持っていきたいし、書きたいことが交通渋滞起こしてるんですよ。ただ書きまとめてないから明日の投稿は少し遅れます。
それではどうぞ。


 

70日目 晴

 

病人の服から私服に着替え、俺は病院の門の前で待ち合わせをしていた。外は澄んだ青空で太陽が少し眩しかった。日向ぼっこをしながら待っていると、416、G11、ペルシカリアがやって来た。ペルシカリアは昨日と同じ白衣姿だったが他の二人は違った。416はトライデントの小説の挿し絵で見た女子大生(漢字は合ってるだろうか?)のような服装で、G11は俺が彼女と一緒に街へ出掛けたときに買ってあげた時そのままの服装だった。ただ、前髪に猫のヘアピンがついており、よりいっそう可愛らしくなっている。二人を褒めると416は誇らしく、G11はてれてれとしていた。ペルシカリアに関してはノーコメント。もう少し……こう……あるだろう!美人なのにもったいない。

とりあえず俺たちは出発した。

久し振りの裟場の空気はうまいぜとテンション爆上げで動いていたらすぐに疲れた。流石に一週間ぶりの運動は堪えるな。

近くのベンチで休憩していると、突然ポチが俺に突進してきた。急な出来事に固まっていたら代理人がこちらにやって来た。どうやらポチを返しに訪れていたようだ。

 

隣のペルシカリアが目をギラつかせて代理人を見てた。そういえば君戦術人形の第一人者とか何とか言ってましたね……。小声でペルシカリアに代理人を誘うかどうか提案した所、手を取ってお願いされた。

 

代理人に一緒に何処か行かないかと誘ってみると普通に応じてくれた。ここら辺の店が気になっていたらしい。

 

さあ出発だと立ち上がろうとしたらG11が突然背中に乗ってきた。困惑する俺を横目に彼女は寝始める。……君そんなに寝虫だっけ?昔はもうちょっと起きてたでしょ……説明をペルシカリアに求めると、G11という特異な銃を扱う人形となる以上、どこかしら以前の特徴が強調されるかららしい。416が起こそうとしたがそれを手で制する。もう少し寝かしてやれって彼女に言えば「あなたは甘やかし過ぎよ」なんて言われた。すまんな。

だからペルシカリアは写真を撮るんじゃない。

 

とりあえずそのまま出発をして周辺を歩いていると、俺が初めてグリフィンに行った時に利用した喫茶店があった。ちょうど小腹が空いていたので三人に許可をとり、入ることにした。

 

喫茶店の中はやはり静かで草臥れた風体のマスターが皿を拭いていた。彼は俺のことを覚えており、この大人数を見てちょっと驚いていた。とりあえず席へ座る。代理人とペルシカリアが隣り合い、416と俺が一緒に座った。G11を俺の膝の上へ乗せようとしたら416がそれを止めてG11を真ん中に座らせた。ポチは足元に居る。何か家族連れみたいだな……。

ペルシカリアが早速代理人に色々と質問をしていた。代理人は当たり障りのない受け答えばかりではあったがそれでもペルシカリアは随分と満足そうだ。

ウェイトレスが注文を聞きにくる。俺はトーストと紅茶のセット、416とペルシカリアはコーヒー、代理人は何故かオムライスを頼んでいた。G11はパフェを頼んでた。しかも高いやつ。いくら比較的良心的な値段とはいえ案外財布に来る。丁度給料が出たからまだいいが。…………割り勘頼もうかな。なんて考えていたら見透かされていたのかペルシカリアに「お金、よろしくね?」って言われた。畜生。

ちょっとした雑談をしているうちに料理がくる。各々で食事を始めた。

 

ここの紅茶美味しいな。またいつか淹れ方とか教えてもらおう。そう思いながらふと代理人を見れば彼女の様子がおかしいかった。わなわなと震えており調子が悪そうだ。隣のペルシカリアが声を掛けようとした瞬間に、彼女が突然立ち上がり、つかつかとマスターの方へ歩いていった。静まりかえる店内、固唾を飲んで見守る客たち、気圧されたマスター、無心にパフェを食べるG11。沈黙の中、代理人は口を開いた。

 

「このオムライスの材料及び作り方を教えて下さい」

 

時が止まった。ペルシカリアは噴き出してお腹を押さえている。マスターは「お、おう」とぎこちなく承諾。それを聞いた代理人はスカートからメモとペンを取り出し聞く体勢となった。

え、代理人……?と恐る恐る416が声を掛けると「暫く時間が掛かりそうなのでお先にどうぞ。お金は私が払っておきます」と言ったきり、もう目の前のマスターの講義に夢中だった。俺の財布の窮地が救われた。

 

G11がパフェを食べ終わったあと、代理人と別れ今度は商店街へ行った。相変わらず活気もありお値段良心的……。416がとある店で立ち止まった。店先には猫のぬいぐるみが沢山並べられており、ずっと食い入るように見ていた。俺は無言で財布を取り出したが416が慌ててそれを止めた。「あなたに世話になるつもりは無いわ」と言いながら一番大きな猫のぬいぐるみを買っていた。

俺はなーんかイメージと会わないよなぁとペルシカリアと話していたが彼女の嬉しそうな顔を初めて見ることが出来たのでそれで弄ることはなかった。

この後はG11がまたサメのぬいぐるみを買ったり、416がヘアピンを新しく買ってみたり、ポチに犬のステッカーを張ってどつかれたりと色々あったのだがページが足りないため割愛する。

 

ただひとつ言えることは楽しかったということぐらいだ。帰り道ではG11を416がおぶって居るところを写真に収めたり、何故かペルシカリアにM16たちもよろしく頼むわねって言われたり、書きたいことが溢れでてくる。またいつかこうやって外出をしたいものだ。

 

……いや本当M16達をよろしくってどういうことなのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

71日目 曇

 

晴れて俺は退院した。医者からの簡素な賛辞を貰って病院を後にする。

グリフィンが用意した車に乗って勝手に引っ越しをさせられたマンションへ向かう。グリフィン本社周辺は結構発展しており、高層ビルもちらほらと見える。車に揺られて三十分程でマンションへ着いた。デカイ。あと結構入居人数は少ないらしい。

鍵やら何やらの説明をしてもらい、自分の部屋がある409号室に向かう。たまにすれ違う人々は如何にも金持ちですよといった風貌の人間が多く、俺の場違い感を感じながらも何とか着く。まあ、なんとかなるだろなんて思いながら部屋を開けてみれば、見知らぬ少女が二人いた。

 

 

 

 

 

 

神よ、あなたは私を捨てたもうてか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ジャベリンくん退院ですおめでとう。早速ハプニング起きてるけどおめでとう。
見知らぬ少女って誰なんですかねぇ……?
次回にこうご期待!!

感想、及び評価は執筆の励みとなります。是非ともどうぞ!!それでは!!


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傭兵、待ち伏せだってよ。

お気に入り400越え有難うございます。頑張りますよ。

筆が馬鹿みたいに進む。
やばい。何か間に合った。
今回は前回の二人の少女の正体が判明します。それではどうぞ。

あと、今日ももしかしたら禁忌の二話連投します。書きたいんだよボカァ!!






72日目 晴

 

引っ越し先に到着したら美少女二人が待ち構えていました、まる。セキュリティどこ行った?

 

危険を感じて俺はすぐさまポチを抱えて逃げようとしたら丁度隣の部屋のドアが開いてそれに激突、そしてあえなく捕まった。しかもその隣の部屋の住人がヘリアントスさんだなんて誰が思うか?俺も思わなかったよ。情報の大渋滞だよ。でも部屋着のヘリアントスさんは何か良かった。

 

身なりを整えたヘリアントスさんを加えて二人の少女に俺の部屋だったものに連行された後に、色々聞かされた。曰く、二人はそれぞれ「UMP45」「UMP9」という戦術人形で本来ならマンションのロビーで俺を迎えるだけの予定だったらしい。何を思ったのかサプライズ的なことで部屋に勝手に侵入、そして俺が来るのを待ってたようだ。また、ヘリアントスさんから聞いた事だが彼女たちは416とG11の知り合いらしく仲良くやってほしいとのこと。

俺の部屋に不法侵入したのにぃ?

そうやって胡乱な目で見ていたのに気がついたのか、サイドテールの方、UMP45が「そんな目で見ないでよ~」なんて笑いながら近くに寄ってきたがうすら寒い何かを感じたのでポチでガードした。こういう輩は腹に一物あるから余り信用したくはない。そう思うともう一人のツインテール、UMP9はまだ信用できるだろう。彼女は心の底から笑っている。ただ、急に「今日から君も家族だ!!」なんて言うのは頂けない。お兄さんびっくりする。……訂正しよう。何かしらの狂気を感じたからこの子も駄目っぽいな。

とりあえず、二人には悪いが部屋から出ていってもらった。ついでにヘリアントスさんも丁重に送り返した。後で菓子折もってっとこ。

 

静かになった部屋を見回すと、オスカーがにゃあと俺にすり寄ってポチに鼻をくっつけて挨拶をしていた。オスカーお前が一番の癒しだ。今日はもう疲れたので早めに寝ることにした。オスカーとポチと共にベッドに横になったが快適そのものだった。願うならずっとこれが続いてほしい……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________________________________________

 

 

何処かの場所にて…………

 

「ねぇ、45姉」

 

「ん?どうしたの9?」

 

街灯の照らす夜道にて、二人の少女が歩いている。9と呼ばれたのは明るそうなツインテールの少女、45姉と呼ばれたのは落ち着いている雰囲気のあるサイドテールの少女だ。一見仲良く世間話をしているような雰囲気だが実際はどうなのだろうか。

 

「ジャベリンって人、どう思う?」

 

「そうねぇ……416や11の言う通り、無害そうな人間だと思うけど、私の腹の内を見抜いたりしたし、只者ではなさそうね」

 

9の口から出たジャベリンという人間は、先ほど彼女たちとちょっとした追いかけっこをした人間だ。45曰く、抜け目がありそうでないという人間のようだ。

 

「へー……じゃあさ、あの人と家族になれるかな?」

 

少女は突然そんな事を問う。もちろん45は怪訝になる。

 

「なんでそうなるのよ?」

 

「だってー、ジャベリンってお父さんとか、お兄ちゃんみたいな存在みたいだったし、いいじゃない?」

 

「……そうね、なれるといいわね」

 

「本当!?ふふー♪今日からジャベリンも家族だー!!」

 

9はそうやって両手を上げて喜ぶ。その中にある狂気には気付くはずもなく。45はそんな彼女の様子を優しげに見ながらとあることを考える。

 

(正直、まだあいつはもう少し監視した方が良いわね。私たちに、どれだけの影響を及ぼすのか分からない)

 

「ふふっ、なんだか楽しみね……」

 

少女は妖しく笑う。この先は少し、恐ろしいことになりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おぉっ!?凄い悪寒がしたぞ!?」

 

本当聡いなこいつ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

73日目 晴

 

健やかに起きることが出来た。もう誰も俺を縛らない。グリフィンや武器庫とかいうクソ会社(社長のみ)なんてクソ食らえだ。俺はもっと惰眠を貪るぞ!!自由に生きるんだ!!なんて考えてたらオスカーに耳元で鳴かれて起きるしかなくなった。可愛いから許す。

 

今日は休日というか何も仕事が入っていない。オスカーとポチに餌を与えた後は、武器庫のガンスミスに電話して、自分の銃を何挺か発送してもらった。ちなみにSCAR-HとAA-12とMP5……etc.だ。この部屋馬鹿みたいに広いし後二階建てとかいう贅沢作りだからまだまだスペースあるので拡張性が高い。どうせフリーエージェントみたいになるんだから一人でもある程度なんとかなるような設備は揃えておかないとな。将来的には会社運営なんてな。そう考えながら朝食を食べていると、誰かが訪ねてきた。誰だろうと応対してみると、ヘリアントスさんだった。制服を着ている辺り仕事の話だろう。

 

 

クルーガー社長がお呼びらしいので至急本社へ出社するようにと言われた。

 

 

 

俺の休日は犠牲となった。

グッバイ俺の安息ファッキングリフィン。

 

除毛剤を用意せよ。

 

 

 

 

 

 




UMP姉妹は何かに渇望している故に狂ってて欲しい。45は安息を、9は信じられる家族を。
そんな作者の願望の犠牲となりました。いやセリフとか見てると何というかゾッとするような所あるんですよ……。私はヤンデレ大好きです。
とりあえずこれ伏線っぽくなりましたがぶっちゃけ持て余し案件です。恐らくは依存されるような感じになるかも……?
ちなみにまだ404小隊は結成されていません。

それでは!!感想と評価は執筆の栄養分です!!どんどんお願いします!!


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傭兵、出社だってよ。

ジャベリンくん出社の巻です。
普通に仕事のお話ですがさて、その内容とは……。










 

グリフィン本社、そこは戦術人形たちを指揮する者たちを統べる人間の居る場所。と、社長から聞いた。

俺はそんな所でこの会社の最高責任者と対面していた。もちろん除毛剤は持ってきていない。実際にやったら射殺レベルだろ。

 

 

「よく来てくれた、ジャベリン君」

 

「どうも。それで、話ってのは何ですか?」

 

 

早速切り出してみる。クルーガー社長は含み笑いをしながら仕事の話を始めた。正直この人は何だか食えない人間だ。社長と違ったやりにくさがあるから苦手である。病院でのあの時だって随分と用意周到なゴリ押ししてきたからな。

 

 

「全く、マーカスの部下というだけもある。何、君にはまた任務に行って欲しいんだ」

 

「任務の内容は?」

 

「君の得意分野だ」

 

 

えっ、補給線遮断?確かに得意なんだが最近はテロリストも鳴りを潜めてたはずだ。また動き始めたのか?

疑問に思いながら彼の話に耳を傾けていると、それを察したのか今度はにっかりと笑って内容を説明しだした。

 

 

「はっはっはっ、君にその仕事をさせる訳ではないよ。ちょっとクライアントに頼まれてね、ある場所の偵察だ」

 

「偵察?また追いかけられる羽目になるんですか?」

 

「それは君が命令違反をしたからだろう?」

 

 

うっ……とちょっと詰まってしまった。この人知っていたのか……社長が話したのか?また武器庫に行った時はドロップキックかましておこう。その考えを胸にしまい込んで、もう少し詳しく聞く。

 

 

「クライアントが誰なのかは聞きませんが、それは俺一人でやる任務ですか?あと報酬は?」

 

「そこは安心して欲しい。一人君とバディを組ます予定の人形が居てな。そろそろ来るだろう」

 

 

がちゃりと、彼が言葉を言い切った瞬間にドアが開けられる。来たか……というクルーガー社長の声と共に入ってきたのは、何度か話したことのある戦術人形、シカゴタイプライターことトンプソンであった。

 

 

「ボス、用件ってのは……おお、ジャベリンじゃないか、何してるんだ?」

 

「丁度良かった。ジャベリン君、彼女が君とバディを組むトンプソンだ。と言っても紹介は無用だったかな?」

 

 

……全くその通りだ。何の事だか分からないという顔をしているトンプソンを尻目に俺は思った。

 

まあ、任務中暇になることはないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

74日目 雨

 

今日は任務に向けて装備を整えていた。丁度ガンスミスから武器も届いた(配達人が凄い怪訝な顔になってたがバレてないだろうか?)のでだいぶ捗る。

 

任務内容は、汚染地帯での偵察だ。正体不明の生物を確認したらしく、その詳細を写真などのデータに収めるとのこと。クライアント不明、だが報酬は高い。相場の二倍だ。というかその正体不明の生物って確実にE.L.I.Dだろ。新型でも出たのか?

怪しいことこの上無いがクルーガー社長からの印象を良くする為にちょっとぐらいは頑張るつもりだ。それとトンプソンも一緒に来るからな。

確か、グリフィン本社から数十km先でしかも広範囲だったので、長丁場になりそうな予感ではある。幸い、食料はグリフィン側が用意してくれるらしいので食料の心配は無くなった。一応持っていこうと思ってしまう俺は石橋を踏みしめて渡る人間なのだろう。とりあえず安易テントと寝袋は用意しておかないとな。あと確実にガスマスク着用したままで寝なきゃならない。

 

ちなみに俺がこの任務で持っていくつもりの武器はSCARライフルとAA-12、あとMP-412っていう中折れ式リボルバーだ。このリボルバー、量産化されてないせいで数が少ないレア物だ。かっこいいのにな。あとはナイフとグレネード、フラッシュバンを持っていこう。ナイトビジョンも忘れないようにしないとな。ついでにグレネードランチャーも着けておこう。フラグ弾も一マガジン分は持っておこう、ドラムマガジンでな。

 




始まるエクスペンダブルス(?)

アンケート結果により、バディを組むのはトンプソンとなりました。やっぱり私がトンプソンをダークホース認定したから……?
まぁ、トンプソンは書いてて楽しい人形でもあるのでどんどん書いていきます。
次回はダミー芸とかやってみるかな。

コメント欄とかで大陸版云々とあったりしますが、作者は大陸版未プレイです()ただ先駆者の方々のネタバレを見てたりしてます。


感想、評価は執筆の励みとなります。どうか遠慮なさらずにしっかりと送ってください。それでは!!


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傭兵、化け物と遭遇だってよ。

何を思ったのか三連投稿。

ジャベリンくんがE.L.I.Dに遭遇。なおかつ彼にとって予想外の出来事が発生します。
それではどうぞ。


75日目 晴

 

汚染地帯の癖して馬鹿みたいに晴れてんのは何故なんだ。

 

そう思いながら俺は崩壊液によって汚染された地帯をトンプソンと歩いていた。今の俺はガスマスクを着けて歩いているが、少し息苦しい。こういう時は何も必要としない人形が羨ましいと思ってしまう。俺たち人間は息を吸った瞬間から汚染されて化け物になる可能性あるからな。液体自体に触れればそこから溶けるとか聞いたけど本当なのだろうか?

トンプソンは結構観光気分で周囲を見回してたりダミーを使って廃墟を背景に写真を撮ってたりしていた。お前ら本当楽しんでるな、って二人に言えば「そりゃあ中々街以外の所を歩くことがないんだからな」とか「見てくれよジャベリン、ボスの顔みたいな石見つけたぞ!」とか言われた。ちなみに前者がダミー、後者がメインだ。はしゃぎすぎだぞメイン。確かに似てるけど。

今は比較的汚染の少ない地点でキャンプを張っている。流動食は何だか人間的な何かを失っていく感覚に襲われるようで食べてて楽しくない。インスタント食品を食べているトンプソンたちが少し羨ましい。

 

早く任務を終わらせて家に帰りたい。

 

 

 

 

 

 

 

76日目 曇

 

ターゲットらしき対象を発見した。現在は物陰に隠れて様子を見ている。対象の外見は人型、両肩が大きく肥大化しており、そこから触手のようなものが生えている。肩が肥大化しているのに対して腕が骨ともいえるほど細く、恐らくは触手が腕の役割を担っていると思われる。とりあえず写真を撮ってクライアントへデータを送ってみる。

……ここら辺ではよく見るミュータントらしい(よく見るミュータントって何だよ)。

向こうが求めているのは獣型、とりわけ狼のような外見を持つものらしい。知能が多少見受けられ、言語をある程度理解しているとか。クライアントはE.L.I.Dと交流するつもりなのか?

まあいい、とりあえずは目の前のを排除しよう。クライアント曰く、足を破壊した後に頭を爆薬などで倒せば問題ないらしい。

SCARライフルに取り付けていたグレネードランチャーに弾を装填、トンプソンにはグレネードを投げさせた。グレネードは綺麗に相手の足元に転がって爆発。そのままつんのめりで転倒した化け物にランチャーをお見舞いした。その綺麗な顔を吹っ飛ばしてやるぜ!……なんてな。

 

俺たちはまた汚染の少ない地点を見つけてテントを設営、そのまま寝ることにした。明日にはさっさと対象を見つけないとなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

77日目 晴

 

銃声が聞こえ、急いで飛び起きた。近くで戦闘が行われているのか、音が大きい。トンプソンと急いでその地点に向かう。

 

音がどんどん大きくなってくる。途中、この世の物とは思えない叫び声が聞こえた。何だよアレ……怖いわ。

金属の擦れ合う音も聞こえてくる。この先にはどこかの辺境で獣と呼ばれる人外と殺しあってる狩人でも居るのだろうか。

 

恐らくそれらが居るであろう所に到着した。トンプソンたちに背後を任せて進む。血の臭いがする。そしていつの間にか音がしなくなった。暫く歩いた後壁際に張り付いていると、マガジンをリロードする音が聞こえた。生唾を飲み込みながら壁の大きな亀裂から顔を出してみると_____________________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガスマスクもしていないうちの社長が、血だらけで横たわる巨大な獣に止めを刺していた。

 

冗談キツいぜ。

 

 

 

 

 

 

 

78日目 晴

 

俺が元々勤めているPMC、『武器庫(armoury)』。社員の過半数が人間で誰彼も精鋭。何かしらの得意分野があり、それに特化した部隊が存在する。皆が自分の部隊に誇りを持っており、うちの槍部隊も例に漏れない。そんな奴らを纏め上げて導いているのが、ジョン・マーカス総合責任者。通称、社長。

 

そんな人間の経歴が正規軍崩れの傭兵、もっと詳しく言えば対E.L.I.D撃滅部隊元隊長、コードネーム『討伐者(スレイヤー)』、どんなE.L.I.Dだろうと真正面から間近から、とにかく肉薄してぶち殺す部隊の元隊長だ。ただ通り名の方が有名で、「勇気を与えてくれる男(カーレッジマン)」、「夢見者(ドリーマー)」、「筋肉モリモリマッチョマンの変態(H E N T A I)」……最後のは忘れてくれ。とりあえずは昔ブイブイ言わせてたある程度有名な人間だったということだ。

 

これを社長から聞いてみてどう思う?俺は余りの信じられなさに頭を抱え、トンプソンはダミー共々爆笑して「「冗談だろ!?」」って全く信じていない。属性盛りすぎなんだよいい加減にしろ。誰が極端に切り詰めた対物ライフル片手で撃てるんだ、誰がE.L.I.D殴って気絶させれるんだ、誰がM2HBをバイポッド無しで撃てるんだよ。お前だけだよクソ社長。なんでそんなに真面目な顔をしてんだクソ社長。正規軍時代の部下やら剣部隊は余裕でできた?それはあいつら人間じゃないからな!!!生憎と俺は人間辞めてねぇよ!!!

 

あれか、アンタはさしづめ一人軍隊(ワンマンアーミー)か?というかなんでこんな汚染地帯でガスマスクつけずに生きてられるんだ。え?崩壊液は触れなきゃどうということはない?今現在顔にぶっかかってんだろ。

それは適応したからだぁ?そりゃアンタだけださっさと国の研究機関に被験体として行ってこい。そして世界を救え。とりあえず話を聞け?目の前の化け物について話そう?馬鹿野郎俺たちが探してるのは狼みたいな………………こいつ調査対象じゃん。

 

 

 

 

 

俺のお仕事終わったじゃん!!!

 

 

 

 

 

 

 




良かったねジャベリンくん!ついでに社長の過去も知れたよ!!
というかトンプソンがそこまで書けなかった……でも次はちゃんとやりますよ。

……社長の属性盛り込みすぎましたね。でも後悔はしてない。

感想、評価は執筆の励みとなりますのでジャンジャカお願いします!!それでは!!


3/25 ちょっと誤字修正


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傭兵、任務帰りに飲むってよ。

トンプソンとジャベリンの飲み回だぞ。
それではどうぞー。


 

 

79日目 曇

 

俺たちの仕事が終わった。というかうちの社長によって終わらされた。どうやら社長は俺たちと同じクライアントに頼まれてこの化け物の調査及び排除を頼まれていたらしい。そしてなおかつ俺たちと合流するようにも言われていたようだ。しかもそのクライアントは正規軍と来た。なんだそれマジかよ。

 

……あれ?なんでクルーガー社長その事言わなかった?

社長に聞いてみれば、あいつの事だからサプライズみたいなことでも考えていたんだろうという答えを頂いた。

……すまねぇクルーガー社長、あんたの髭を毟る必要が出てきたようだ。お茶目なのはいいけど限度がありますよ……トンプソン、いいよな?

 

無言でそれを伝えるとメインのトンプソンが「それは止めておけ」と言った。ダミーは「いいぞやってやれ」なんて言ってる。本当正反対だなお前ら。

 

トンプソンに蛮行を諌められ、落ち着いた俺は対象の写真を何枚か撮って送っておいた。これでもういいだろ。

後はクライアントからの連絡を待つだけだ。それまでに社長から色々と聞くとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

80日目 雨

 

……社長って何者なんだ。彼の話は至って普通の昔話だがその登場人物が濃いすぎる。

当時E.L.I.Dの解剖をよくやっていたが、今は鉄血工造で研究者をやっているマッドな同僚だとか、刀一つでE.L.I.Dの集団に突っ込む切り込み隊長だとか……いや、まあ、対E.L.I.D部隊がみんなそう言うわけでは無いらしいがいかんせん色々とな。トンプソンが凄い興味を持って聞いてる。絶対真似するなよ。真似するならさっき社長が話してた生存率が一番高かった部隊の真似をしろよ?万が一でも社長の真似したら死ぬからな。

 

俺がトンプソンの様子をはらはらしながら見ていると、丁度クライアントから任務成功の報を頂いた。社長もそれが届いたようで、そろそろ切り上げるらしい。数分で回収ヘリが来るそうだ。

 

……今日は飲まないとやってられないな。トンプソンも誘っておこう。

 

 

 

 

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_____________________

 

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_____

 

__

 

 

 

 

(トンプソン)という戦術人形がたまに立ち寄る喫茶店は、夜になるとBARになる。いつもはダミーを本社に帰らせて、一人でしっぽりとウィスキーを飲んでは軽く酔っ払って帰るのだが今日は違う。

 

「仕事なんてクソ食らえだ……そうだろトンプソン?」

 

「くくっ、真面目なジャベリンらしくないな?」

 

私は任務でバディを組んだ男、ジャベリンとカウンターで飲んでいた。彼はもう出来上がっており、頬がほんのりと赤くなっている。何度か見た真面目だがさっぱりとした彼ではなくなり、仕事や上司の愚痴を言う、何だかパッとしない平凡な男になっていた。

普段とのギャップがあり、何処か可愛らしい。

 

「ばっきゃろいっ……俺だってな、愚痴の一言や二言は言いたいんだよぅ……急に仕事が増えやがったしよ……クルーガー社長が変なお茶目発揮したりよ……」

 

「おうおう、どんどん吐いてけ。溜め込んだら不味いからなー」

 

「うう……ありがとうなぁトンプソン……」

 

そう言いながら私に寄りかかってくるジャベリン。これじゃどっちが男なのか分からない。というか、手間の掛かる弟を持ったみたいだ。年齢は普通に彼の方が上だけれども。何となく自分の手が彼の頭へ動く。そのままわしゃわしゃと彼の頭を乱暴に撫でてみる。本当、いい歳した男なのに何をしているのやら……そう思いながらも自分の口角が上がっていることに気が付く。

 

「……まるでお前の姉みたいだな、私」

 

「んんー……お前が俺の姉かー……いいかもなー」

 

私の呟きに、彼は突拍子も無いことを言う。まぁ、冗談なのだろう。私の擬似感情モジュールが嬉しさを表示していたが無視をした。彼は未だ私の胸の中で気持ち良さそうに目を閉じていた。酒の力があるとはいえここまで私に気を許すのは意外だ。どれ程気が滅入っていたのやら。

 

「大変だったんだな、ジャベリン」

 

「そうなんだよなぁ……けどトンプソンに色々話したら結構楽になったよ」

 

「……そうか。また一緒に飲むか?」

 

「勿論」

 

彼の答えに、優しく笑いかける。グラスの酒を飲みきった後に、グラスを拭いている相変わらず草臥れた服を着たマスターに代金を渡す。ジャベリンが立ち上がろうとしたが足元が覚束なかったので肩を貸してやった。店から出て夜風にあたる。丁度いい涼しさの夜風は、私の酔いを醒ましてくれた。ジャベリンは酔っ払ったままなのか、ずっと私に体を預けている。

 

「ジャベリン、ちゃんと自分で歩こうぜ?」

 

「えぇ~そりゃねぇぜトンプソンの姉御~」

 

……ちょっとイラッときたから足を踏む。いてっ、と彼は言い、渋々動き始めた。それに合わせて私も動き始める。

 

「……何かさ、不安だったんだよ」

 

「ん?」

 

「急に仕事が増えたり、俺の部隊の奴らからちょっと距離が離れたり、はたまた知らない場所に住居を移されたり」

 

「…………」

 

彼の独白が始まった。

 

「まあ、何だ。期待されてるのは分かってたから頑張ってんだけど、中々ストレスが発散出来なくてな。日記を書くだけじゃ上手くいかないことも分かっちまった」

 

「そう、なんだな」

 

案外、ジャベリンという男は他人の評価を気にしたり、ストレス発散の方法が分からないという不器用な所があるらしい。そして、精神的に脆いところもあるようだ。彼に寄り添うのはちょっと難しそうだ。

 

「……槍部隊の隊長をやってるってのに情けないと思ってしまう」

 

「それは……大丈夫だと思う」

 

「何でさ」

 

「ジャベリンは今までしっかりと仕事をこなして来たんだろ?なら今まで通り、いつも通りでも誰も情けないなんて言わないはずさ」

 

でも、背中を押すぐらいはできる。私の言葉を聞いてジャベリンは驚いたような、そんな顔をした。でもすぐに元に戻って、ちょぴりニヤリとする。

 

「そうか……そうなのか……そうなのかもしれないなぁ」

 

「元気出たか?」

 

「出たよ、出た出た。助かったよ、トンプソン」

 

「お安いご用さ、ジャベリン」

 

二人で笑い合う。こっちの方が気持ちいい、しんみりとした空気なんてクソ食らえだ。ジャベリンが笑っていて、私も釣られて笑う。逆が有ればなお良い。

 

そんなのが、いいんだ。

 

「もう大丈夫」と、ジャベリンが自分から離れる。どうやらここでお別れらしい。

 

「俺はここで別れるよ。付き合ってくれてありがとうな」

 

「ああ。また愚痴が言いたくなったら私を頼ってくれよ?」

 

「そうするよ。今度は他のやつも誘って馬鹿騒ぎでもしよう」

 

「そうだな、それがいい」

 

「ははっ。それじゃあ、また」

 

「おう、またな」

 

後ろ髪を引かれる思いではあるが、仕方ない。どうせまた会える。根拠はないけど、途方もなく信じていられる。彼と別れて夜道を歩く。風はいつの間にか冷たくなり、だけど熱された体を冷やしてくれているようで気持ちがいい。空を見上げてみれば珍しく星が見えた。

 

 

煌々と、光り輝くその星は、いつもより綺麗に見えた気がする。

 

 

 

 




トンプソンちゃんと書けた……かな?ジャッジお願いします。深夜テンション怖い。
なんというか、お姉ちゃんキャラみたいになりましたね、何ででしょう。トンプソンに対する愛が足りないから??そして、この内容朝に出すものじゃないかな??まあいいか。
あ、ジャベリンくん休もうとしている所悪いんだけどまた任務あるんだよね、ちょっといいかな?
あ、電子ロック掛けられた……仕方ない、行け!UMP45!!

とりあえずトンプソンのあれこれ書けたので概ね満足です。今度はM16かなぁ……。感想、評価は心の友です。どうぞよろしくお願いします。それでは。


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傭兵、お休みだってよ。

通算UA二万越えありがとうございます!もっと頑張って行けそうです。
明日は投稿を19:30と予定します。もし早く完成したら直ぐに投稿をしようかと。


今回はジャベリンくん念願のお休みの日です。
休日を満喫しようとする彼に降りかかってくる物とは一体……?それではどうぞ。






81日目 晴

 

なんか昨日は随分と恥ずかしい所を見せてしまったような気がする。やっぱ一人で酒を飲んだ方がいいな。トンプソンを相手にすると話しやすいからどんどん口が滑るというか、俺は酔い癖が悪いんだ。朧気に覚えていた記憶を呼び覚ましながら一人悶絶とする。心配に思ったポチがこっちに寄ってきてくれた。可愛い。オスカーは我関せずでソファで寝てる。可愛い。ここは可愛いの空間か。

 

そういえば、この前頼んだ茶葉が今日届くな。届け主は農園をやっているクライアントだ。あそことは割と懇意にしてる(癒着みたいなものだが気にすると負け)のだがやれ跡を継いでくれだのまた手伝ってくれだの、まるで家族のような扱いをしてくる。むず痒いから止めてほしい。もう少しビジネスライクな関係で居たいんだ。無理か。

 

チャイムが鳴ったのでドアに向かう。何だかんだ言って美味しいのは変わらないから楽しみなんだよな。

 

 

そう思いながらドアを開けると

 

 

この前の

 

 

UMP姉妹が

 

 

頼んだ茶葉を持って

 

 

入ってきた。

 

 

ジーザス。

 

 

 

 

 

 

 

ドア越しの攻防戦の末、結局数時間ぐらい居座られた。

流石にそのまま返すのは悪かったので紅茶とスコーンを出してやった。9の方はえらく俺にベタついてきてちょっと戸惑う。45は45で俺を試すような視線を投げ掛けて来たのでとりあえずオスカーとポチをけしかけておいた。今日からお前も仲間だ。

 

とりあえず何故彼女たちが茶葉を届けに来たのか聞いてみる。

45からは「私は電子戦にも特化してるから貴方の動向を把握するのは容易いのよ?」なんて言われた。えぇ……俺のプライベート筒抜け……?ジャマー設置しようかな。

9からは「家族だからどうにかできた!!」と言われた。そりゃわけわからんわ。いつの間に俺は9の家族になったんだろう。多分彼女たちと初めて出会った72日目あたりだなうん。適当に流しとこう。

 

まあ、結論からして彼女たちは随分と俺に執心である。美人に言い寄られて悪い気はしない。でも彼女たちはなんというか、怖い。心の奥底に狂気が眠っているというか、タガが外れたら依存なんて目じゃない、監禁されてゲームオーバーなんてあり得るかもしれない。何かしらの対策が必要か?416やG11を通して色々やってもらうかな?

こんな思いを巡らしていると彼女たちは何か用事を思い出したのか帰っていった。

 

部屋の中が静かになる。オスカーが膝に乗ってきて、ポチは傍らに座った。……そうだよ、これが俺の望んだ最適解なんだよ。ペットを愛でながら外の景色やテレビをボーッと見る。これが俺の理想なんだ。

 

 

 

 

チャイムが爆鳴りしてる上に大声が聞こえるがそれは気がつかない振りをした。

ヘリアントスさん許して……。

 

 

 

 

 

 

 

82日目 雨

 

改めて訪ねてきたヘリアントスさんにこっぴどく怒られた。連絡先を知らないから直接訪ねに来るしかなかったらしい。ひとまず彼女に紅茶を出した。反応は概ね良好。これを見て早速用件を聞いてみた。

 

……ただの社内希望調査書を渡しに来ただけだった。良かった。内容を確認すれば、休暇の必要数だとか今後の営業方針についてどう思うかだとか、色々書かれていた。一応こんなもんとかやってるんですね、とヘリアントスさんに言うと、「まあ、義務だからな」なんて言われた。

幾ばくか世間話をして、ヘリアントスさんは帰った。何故か序でに社内報も貰ったので暇なときに読むとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

83日目 曇

 

気分転換がてらそこら辺のコーヒーチェーン店まで歩いた。俺だってコーヒーを飲みたくなる時はある。それにしても仕事がないのって最高だ。ポチとオスカーは残念ながらお留守番。店内に入って店員からおすすめを聞き、それを注文した。ここのオプションとかつけるとき呪文みたいなこと言わなきゃいけないから大変なんだよな。

 

商品を受け取り窓際の席に座る。外の往来を眺め、コーヒーを啜りながら持ってきたグリフィンの社内報を読む。社内報には新しく出来た基地のことや指揮官試験に合格した人物の名前が掲載されていたり、今まさに話題の○○地区!!といった特集も組まれてた。後ろのページを見れば可愛らしい衣装などを着た戦術人形の写真があったりと、中々面白い。最終ページには次号の内容がかいつまんで掲載されており、その中に『武器庫』が云々といったことも書かれてた。……ちょいとまた社内報貰おうかな。貰うか。

 

そう決めてふと顔を上げると、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SOPMOD-Ⅱが満面の笑みを浮かべながらガラスに顔を張り付けていた。

 

 

 

叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

寿命が数年飛んだ気がする。そうぼやきながら公園で子供と遊んでいるSOPMOD-Ⅱを眺める。あの時叫んだ俺はちょっと居辛くなりそそくさと店を出て、してやったりな顔のSOPMOD-Ⅱと合流して今に至る。今日は非番らしく、彼女はいつもの黒い服装ではなく、デニムパンツに黒いTシャツという簡素な服装であった。戦術人形ってのはなんでこうも武器を持たず服装が違えば人と見分けがつかなくなるのやら。彼女が手を振った。どうやら一緒に遊びたいらしい。いっつもこんな日が続けばいいのに。

 

 

 

 

疲れた。俺はSOPMOD-Ⅱと子供たちの無限に近い体力に翻弄されてベンチで休んでいた。子供たちはもう帰り始め、SOPMOD-Ⅱは俺の隣で社内報を読んでる。なぁSOPMOD-Ⅱ、と彼女を呼んでみたら、「SOPでいいよ。なぁに?」と返された。帰るか、と言ったら「うん!!」と言い、俺を起こして背中を押してきた。無邪気な笑顔が眩しい、癒される。これがアニマルセラピーというやつか……?

 

SOPとの帰り道、そういえば何で俺を驚かせるようなことをしたんだ?と聞いたら、「たまたま見かけたから何となく」とのこと。……子供っぽいな本当。そうやってによによとSOPを見てたら向こうは何故かいたずらっ子のような笑みを浮かべて俺に乗り掛かってきた。彼女は意外と軽く、俺はそのまま彼女を背負って走った。楽しそうにはしゃぐ彼女、何だか俺まで楽しくなってくる。このやり取りは俺の住むマンションまで続いた。

 

彼女はトンプソンとはまた違った親しみやすさがあるというのは、大きな発見だっただろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

84日目 くもり

 

M16が電子ロックこわして入ってきたんだけど。

目がすわってる。死んだわオレ。

 

 

 

 




あぁSOPよ……口は災いの元だぞ。

早速修羅場になりましたジャベリンくん。彼は一体どうなるのか……。

そういえばもうそろそろ学業が始まったりしますね。私も春から学校やバイトが始まるので、更新頻度を4月から少し落とします。三日に一話更新出来れば良いと考えています。

さてさて、感想や評価は作者の心の栄養分です。ですのでどうぞよろしくお願いします。それでは!!

3/27 脱字を修正


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傭兵、ピンチだってよ。

思いの外早く出来たので投稿。
修羅場?ギャグになっちまったよ。

この先、キャラ崩壊に気を付けろ。

それではどうぞー











閑静な住宅街、そこに鎮座する大きなマンション。このマンションは多くの富裕層が住んでおり、入居者が少ないものの、管理人が全身全霊を持って綺麗な状態に保っている。そんなマンションの一室で、異様な光景が発生していた。

 

 

 

 

 

 

「ジャベリン……詳しく」

 

 

「詳しく……話せ……!」

 

 

「今……私は冷静さを欠こうとしている」

 

 

現在俺は死にかけている。目の前に居る女性、いやM16A1と呼ばれる戦術人形は、電子ロックのかかったドアを力業で破り、突然俺の目の前に現れた。殺気がこれでもかと飛ばされているせいで、ポチとオスカーが隠れた。彼女が怒る理由が分からない。とはいえこのまま爆発されると非常に危険であるため、理由を聞く。

 

 

「え、M16」

 

「あ"ぁ"??」

 

「ヒエッ……な、何で怒ってるんだ、理由を話してくれ」

 

「何だと……お前、理由を話せと言ったか?」

 

 

あ、地雷踏んだ。心の中でお経を唱える。室内がどんどん冷えてくる。殺気が更に強くなっていき、M16はわなわなと震えだした。

そろそろ爆発するぞ!!伏せろ!!意味無いか!!グッバイ俺の人生!!!俺は目を閉じた。

 

 

「ジャベリン……お前ってやつはSOPに手を出しておいて何を言ってるんだ!!!?!?」

 

「……は?」

 

 

沈黙が室内を支配する。オスカーとポチが、なんだただの痴話喧嘩か……とのそのそ出てきた。

M16が続けて言う。

 

 

「惚けるなジャベリン!!SOPから聞いたぞ、昨日お前と……お前と……!!!」

 

「待てM16、お前と俺との情報の齟齬が生じてないか?」

 

「うるさいっ!!あんな純粋な妹を汚して……!!!覚悟しろジャベリン!!」

 

「おまっ!!?銃下ろせ馬鹿!!!」

 

「M16姉さん、待ってください!!」

 

 

M16が室内で銃を構えてきてかくやというときに、天使の声が聞こえた。M4A1だ。た、助かった。大股でM16へ近付いていく。だがよく見ると何処か様子がおかしい……まさか。

 

 

「ここは射殺するのではなくしっかりと責任を取ってもらうべきです!!!」

 

「M4、だけど」

 

「だけどじゃありません!!」

 

 

お 前 も か M 4 。

 

彼女の瞳はぐるぐると渦を巻いており、とても正気とは思えない。なんで電脳バグらせてるI.O.P仕事しろ!!!ただM16が狼狽えて銃を下ろしてくれたのは僥倖なんだがどちらにせよ状況は変わってない。マトモなのは俺だけか!!?そしていつの間にやら出入口からこちらを見つめている戸惑いぎみのAR-15の姿もある。頼む、助けてくれ……!!!目線でそう彼女へ伝える。

 

 

「えっと……御愁傷様?」

 

 

天は我を見放した!!!

 

このポンコツゥ!!!!しっかりしろってんだ!!!!!

一人空へ祈りを乞う姿勢になる。M4とM16は未だ話し合っているがそろそろ纏まりそうな雰囲気がある。頼むからそのままずっと話し合っててくれ。だが運命はそれを許さないのか二人が俺に向き直る。

 

 

「その、だな……ジャベリン」

 

「姉さん」

 

「うっ……分かってるよ」

 

 

最早今の俺は死刑宣告間近の罪人だ。俺の味方は一人も居ない。ポチでさえ我関せずで口笛でも吹いているかのようにそっぽを向いている。そこも可愛いよポチィ!!!後で犬のステッカー全身に貼ってやるからな待っとけよバーカバーカ!!!!!!!!!しかもメインカメラにも「いぬ」って書いてやる!!!!!

 

M16が決心をしたのか無駄に良い顔で話を切り出す。

 

 

「ええとな、SOPは純粋で可愛らしい娘だ、そんな娘を汚してしまったお前には多大な恨みがある。だがそれとこれは話が別なんだ。ジャベリン、一つ約束してほしい、あの娘は孤独を嫌がる。だから、いつ如何なる時も離れないでやってくれ。もしもSOPを寂しい思いにさせるような時は覚悟しておけ??とはいえ何もない状態からお前たちをほっぽりだすつもりは毛頭無いんだ。私たち姉妹にはありったけのお金はある。お前たちが上手く生きていけるようにいくらでも支援してやる。お前が傭兵稼業を止めて喫茶店やBARを始めるなら初期投資してやるし店に入り浸ってやることだってできる。ましてやそのまま傭兵稼業を続けるなら私たちはお前に着いていこう。SOPを悲しませないためにもお前を絶対守る。グリフィンや武器庫の相手だって任せてくれ、なあに私は交渉のカードは念のために幾らでも作ってあるし仮に追われる身になったって身分を隠してでもお前たちを守ることが出来るんだ。このM16に任せてくれ。勿論M4やコルトだって反対するわけないさ。あぁ後、もしもSOPが私たちを加えてお前と情事をやりたいんだったら幾らでも相手をしてやる。戦術人形ってのは拡張性が高いんだ。絶対にお前も気持ちよくなるさ。安心してくれさっき秘匿無線で話し合ったからな同意はちゃんと得ている。それとな、どんなときだってお前が食事をしていようと用を足していようとSOPと情事を営んでいようと四六時中24時間365日ずっと見守ってお前たちを外敵に触れさせないからな。だからな、だからな、絶対に約束を守ってくれSOPを護り通すってことをそうでなきゃお前をミンチにして野良犬の餌にしてそれを食べた野良犬を片っ端からまたミンチにしたって満足しないくらいお前を憎んで憎んで憎み尽くすからな本当に本当に頼むよジャベリン絶対にまもっ」

 

「少し落ち着こうな????」

 

 

クルーガーァァァ!!!!M16が壊れたー!!!!!彼女と序でにM4も直してくれ!!!!!!無理だったら有ること無いことばら蒔いてお前の胃腸と毛根ぶっ潰すからなー!!!!!!

 

ええいここに居る奴らは皆壊れてやがる!!!マトモなやつはおらんのか!!!AR-15ォ!!!!

 

 

「その、あの、SOPをよろしく……頼むわね、お義兄さん?」

 

 

だから違うってェェェェ!!!!!!俺は!!!昨日!!!!SOPと!!!!散歩しただけだ!!!!!!

 

 

「「「……えっ?」」」

 

「えっ?」

 

 

何故か空気が凍る。M16は一抹の希望に縋るような目で俺を見て、M4は正気に戻ったような目に戻り、AR-15が信じられないものを見るように口を覆ってる。M16が俺に倒れこみ、俺を見上げるようにして口を開く。

 

 

「ジャベリン……ジャベリン……それは……それは本当なのか……?」

 

「いや、本当だって。SOPから何を聞いたんだ」

 

「SOPは……お前のは大きかったって……激しく動いてもちゃんとそれに反応してくれたって……」

 

「えぇ……」

 

 

それは誰でも勘違いするような……というかM4立ったまま気絶してるけどこれ大丈夫か……?

 

 

「そんな……こんな仕打ちあるのか……?」

 

「いや、だから落ち着けM16。お前らしくないぞ」

 

「そうか、そうだよな。お前に限ってそんなことするはずn」

 

「もー、皆いきなり何処か行ったかと思ったら何でジャベリンの所行ってるのさー?ずるいじゃん!」

 

 

M16が安堵したその矢先、この問題の渦中の人物であるSOPMOD-Ⅱが俺の部屋にひょっこり現れた。これは不味い。M16がフリーズしてる。

 

あっ!!AR-15お前なんで近付く!?やめろ!!!今の君の電脳はポンコツになってるんだぞ!!

 

 

「ねぇSOP」

 

「んー?どうしたのコルト」

 

「貴方、ジャベリンと昨日どんなことしたの?」

 

「えっ?」

 

 

あーあ……M16がまたとんでもない顔になってるぞ……安堵と絶望が同居してる顔。落ち着けー落ち着けよM16ー?

 

 

「どんなことって……まぁ、ジャベリンに抱かれたり?」

 

「フグッ!!」

 

 

間違いでもないけど言い方ァ!!!アッM16がヤバい!!

 

 

「ジャベリンの信じられないくらい硬かったよ?何時までも触っていたいぐらい!」

 

「うぐぁっガハァッッ!!!!!」

 

 

それ胸板な!!!間違っても誤解を招くものじゃない!!ひいっ!!M16が血を吐いた!?

 

 

「それにー後ろから抱きしめたよ!!おっきくてかっこよかった!!」

 

「そ、SOPグフッ」

 

「あとねー、しっかり抱き締められながらこのマンションまで行って遊んじゃったんだ!」

 

「」

 

 

ぷしゅうと、M16からショートする音が聞こえる。白目剥いてる……これ本格的に不味いな。クルーガー社長よりペルシカリアだ。俺は急いで連絡する。

 

それを尻目にふむふむと、AR-15が頷いて俺たちに向き直った。

 

 

 

 

 

「どうやらジャベリンは特に何もしていないようね……ってあれっ?どうしてM16は煙なんて吐いてるのかしら?M4も起きなさいよ」

 

 

 

 

 

AR-15、お前がMVPだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんなさい……」

 

 

揺れる車内でAR-15が謝る。気にする必要は全くないと目で伝える。察した彼女はそれでも居心地悪そうに下に目線を向けた。SOPはどこ吹く風か、外の景色をずっと見ている。今現在ペルシカリアの研究所まで迎えに来てくれた車で向かっている。何せ二人の人形がバグってる。M16は「ウソダ……ウソダ……」とぶつぶつ言ってるしM4は「私……何やってんだろ……本当、何やってんだろ……」と虚な目で空中に何かを描いてる。正直怖い。おいM4ドナドナを歌い始めるんじゃない。SOPどうにかして……。

 

 

「んー、無理!」

 

 

そっかぁ……。君の笑顔には惚れ惚れするよ……。

というかAR-15、何時まで凹んでいるつもりなんだ。何だかんだ言って悪くないんだぞお前。

 

 

「確かにそうですが……」

 

 

ならもう気にするんじゃない。ちょっとだけ失敗をしたがそれで重大な大ポカに繋がった訳じゃないんだから。そんなに気にするならSOP、やってしまいなさい。

 

 

「りょうかーい!ほーらコルト笑って笑って!!」

 

「ちょっSOP!」

 

 

ぐにぐにとSOPがAR-15の頬っぺたを摘まむ。AR-15は口では嫌がっているものの、満更でもなさそうだ。

車が研究所……というよりI.O.P本社か?そこに到着して、車から降りると、ペルシカリアが何人か連れて待っていた。さっそくM16、M4を運ばせる。ペルシカリアに何が起きたのか部屋に案内された後で詳細を話した所、大爆笑された。

 

 

「きっ、君が……ブフッ……そんな勘違いされるなんて……ンフッフ……あぁ、おかしい!!」

 

 

うるさいぞ。こちとらドア破壊されてなおかつ身に覚えのない罪を着せられたんだからたまったもんじゃない。本当なら紅茶でも飲んでのんびりするつもりだったんだがな。

 

 

「グフヘッ……んっん、それについては謝罪するわ。M16は妹のことになったら暴走しちゃうからね。それよりもM4が釣られるなんて予想外なのよ」

 

「はん?そうなのか?」

 

「そそ、結構真面目で彼女たちのブレーキ役だったし」

 

 

そういえば……そうだったな。

彼女と会うのは二度目なんだが、最初出会った時はだいたい事態の収束を図ろうとする人形だった。何があったんだろう。

 

 

「ま、そこは修理がてら解析でもしてみるから、安心して。コーヒー飲む?」

 

「あー、ありがブフッ!!!不味っ!」

 

「やっぱりか……後で拭いてね」

 

 

泥水コーヒー渡された。とりあえず近くにあったティッシュで床を拭く。というかペルシカリアにはちゃんとしたドリッパーや豆を押し付けたはずなんだがどうしたのだろうか?

 

 

「君から貰ったドリッパー?他の研究員にあげたわよ。そもそも一からコーヒー淹れるの面倒なのよね」

 

 

もしかしなくてもズボラだな君?研究に熱心なのはいい研究者の証拠だがそれで日常生活が疎かになるのは不味いだろうに。

最低限度の生活は送ってる?うっそだぁ……。

 

 

「そういえば、俺はどうすればいい?」

 

「んー?ここに泊まれば?ソファー使いなよ」

 

「そう来たかー……じゃあお言葉に甘えるよ」

 

 

急な展開だが仕方あるまい。適当に枕になりそうなものを見繕って接待用ソファに横になる。ペルシカリアは特に文句は言わず、ブランケットを俺にかけて、部屋を出ると共に電気を消してくれた。暫くしてポケットから携帯を取り出し、ポチにドアをある程度修復するように指示を出す。これで懸念はなくなった。あとはM16達の回復を待つのみとなった。今日は色々有りすぎて疲れたのだ。目を閉じて寝ることに集中する。だんだんと意識が遠退いていく。

 

あいつら元に戻っているといいんだがな。

 

 

 

 

 

 




全てのAR小隊ファンの皆様申し訳ありませんでした。
最初は発砲しようとしたM16をM4やコルトが必死に止めてSOPの発言で更に激化する所をなんとか抑えてジャベリンくんが許してもらうように色々計らってお花見に行かせる手筈だったんですがフルーツグラノーラを食べながら構想を練っていたところ怪文書という三文字が頭のなかをぐるぐると回ってそれを急激に書きたくなりこの展開に至った次第でございます。最後に言わせていただきますと、ポンコツ可愛いなコルト、無自覚小悪魔なSOPは最高だと思います。M16とM4には悪いのですがこれを書きたいがためにバグっていただきました。ちなみに怪文書の中に結構な爆弾発言混ぜました(悪魔の顔)

あ、もしかしたらまた別の戦術人形でやるかもしれないのでよろしくお願いします(ダイマ)

それでは、感想及び評価は執筆の励みですのでどんどんお願いします!!それではー!!!


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傭兵、束の間の安息だってよ。

最近気になり始めたドルフロ小説を追いかけ始めたんですがなまら話数が多いので半分も読めていない。
全部読まなきゃ感想送りたくねぇなんていう考えが強すぎる()
それと、この作品の主人公ジャベリンくんがマウントベアー様の作品「狙撃手の少年は」に出張しましたので是非とも見に行ってください。
URL https://syosetu.org/novel/186025/


今回は平和です。それではどうぞー。













85日目 晴

 

7時のアラームの音と共に目が覚めた。ソファーで寝たせいか、眠気が未だ残っている。暫くボーッとしていると、ペルシカリアがコーヒー片手に部屋に入ってきた。丁度修理が終わったようだ。彼女にM16たちの容態を聞けば、あれはただのAIの暴走であったらしい。大きな問題もなく、直ぐに直せたようだ。

 

このまま、AR-15とSOPも加えて定期メンテナンスを序でに行うらしく、結構時間がかかるとのこと。彼女たちを待つことは出来たが、早く家に帰ってドアの修繕をしなければならないので、ペルシカリアにM16たちによろしく伝えるよう言って、I.O.Pを後にした。歩いている途中でタクシーを拾い、マンションまで急ぐ。たまたまポケットに入れていたレーションを食べながら運転手と他愛ない話をして居ると、いつの間にかマンションへ到着した。エレベーターはいささか遅いのでマンションの階段を上り、自分の部屋まで行く。そこに到着すれば、ドアはある程度直っていた。ポチがしっかりと仕事をしたようだった。犬ステッカーは免れないがな。

 

……随分と大きな箱があるものだ。

 

 

 

 

 

 

 

86日目 晴

 

箱の送り主はこの前茶葉を送ってくれた懇ろにしてるクライアントからだった。中身を見ると最近富裕層で密かな人気を誇る家庭菜園キット。種が同封されており、それぞれトマト、ミニダイコン……?まあいい、ピーマン、ミニキャベツと沢山あった。手紙も入っており、中身を見ればまた手伝いに来てね、なんて書かれている。畜生至れり尽くせりなのはやはりそういう魂胆か、行くしかないようだな。

 

一先ずはドアを修理するために修繕業者に電話した。数時間後にはやってくるらしい。その間に野菜の種を蒔いておく。手順通りにやれば上手く行くもので、だいたい一時間で終わった。紅茶を飲んで一服し、オスカーを抱き上げて撫でながらテレビを見る。ポチは犬のステッカーを貼られたせいで拗ねてるので俺の傍らにはいない。相変わらずこれといって面白いような番組もないので、適当にニュースを見ていると、インターホンが鳴った。修繕業者が来たようだ。さっそく通し、色々と見て貰ったが、彼らも驚いているようで、ここまで酷いのは初めてだと言われた。人形に破壊されたからな、驚くのも無理ない。とりあえず見積りを貰い、ついででより強固な電子ロックと防犯性の高い鍵をつけてもらうことにした。

修繕は四時間程で終わった。流石プロと言うべきか、ドアは前と変わり映えなく綺麗な状態だが、その上でEMPが起きようがハッキングして無理やり鍵を開けようとしても専用のカードがない限り絶対に開かない電子ロック、特殊な構造をした頑丈な鍵をつけて貰った。これでもう大丈夫だろう。絶対に破られることはないはずだ。

 

 

大丈夫じゃなかったら一週間ぐらい休みをとって何処かに高飛びする。

 

 

あ、そういえばヘリアントスさんに菓子折送ってないなということでちょっと出掛けようとしたら俺の部屋の前にヘリアントスさんが突っ立ってた。なんか自棄になってる風にも見える。本能的に危機を察知して無言でドアを閉めようとしたらドアの間に足を挟まれた。無駄に良い笑顔だった。ヤクザか何か?

こうされてはもう堪ったものじゃないので渋々部屋に入れた。とりあえずは紅茶を出してヘリアントスさんの気分を落ち着かせ、なぜこんなことをしたのか聞いてみた。

……合コンで失敗したらしい。気分が落ち着いたヘリアントスさんはぽつぽつと喋りだした。曰く、真面目に受け答えをしてたら男性陣にドン引きされたとか、いつもの口調で話してたら男性陣との間に気まずい雰囲気が漂っただとか。何だかいたたまれなくなったおれば静かに秘蔵していたウィスキーの水割りを彼女に渡す。彼女は有無を言わずにそれを飲んで、俺にお礼を言った。ちょっとだけ世間話に付き合い、彼女を隣の部屋に帰す。その後はスピアやスリンガーなど、武器庫の独身社員やたまたま知り合ったクライアント先の独身の奴何人かをヘリアントスさんに興味があるならまた連絡してくださいという文言と共にメールで紹介しておいた。

 

すまねぇお前らにはちょっと犠牲になってくれ。ヘリアントスさん何だかんだ言って良物件だからまぁどうにかなるよ。うん。仕事先の上司ってことが無かったら勇気を出して告白するくらいには。

憧れの美人さんが引っ越し先の隣人だったってどういうギャルゲー?ってトライデントは言うだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

87日目 曇

 

連絡先を教えてもいないのにM16から電話が来た。前の埋め合わせをしたいらしい。ペルシカリアが連絡先教えたのか?あ、俺が教えたんだっけ?

断る理由もない俺は二つ返事で了承した。明日の昼辺りにあの草臥れたマスターのいる店に集合と言われた。

 

もしかしなくてもあそこの喫茶店は人形たちの穴場にでもなってるのか……?

 

ていうか、これデートじゃない??そう思ってポチに聞いてみたら「何を今更言ってるんだご主人」というような反応を貰った。ははは、可愛いなぁポチは。お礼に今度新しいステッカー貼ってやるから待ってろよ。

 

それにしてもM16とのお出掛けかぁ……平穏に終わるといいんだけど。

 

 

 

 

 

 




ヘリアントスさんにフラグ立ちそうで立たないアレ。ジャベリンくん仕事関係に対してはきちんと真面目なのです。
いや、ヘリアントスさんもなかなか良いと思うんですよ、美人だけど仕事一辺倒で不器用、でも人並みに結婚願望はあって合コンに行くぐらいは行動力のある人ですし。ちなみにこの小説のヘリアントスさんはやはり上手くいかないようです。いつかIFルートでも書いてみるか……?

とりあえず、この作品もそろそろ蝶事件、ドルフロ本編に突入できそうです。その前に下準備として任務を二つほど挟みます。一つは護衛任務、もう一つは鉄血工造での警備です。この意味分かるな?一つ言えるならジャベリンくんは指揮官にはなりません。是非とも楽しみにしててください。
あと蝶事件越えたらコラボとかやってみるつもりです。まだ完全に読みきっていない作品もありますので場合に依りけりでコラボをやってみるかどうかを判断することもありますが、興味のある方は是非ともお声掛けお願いします(他力本願)
ジャベリンくん他、『武器庫』の社員は依頼があれば何処へでも駆けつけます!

それでは、感想評価は作者の執筆活動の友です。是非ともお願いします。それではまたこんど!
あ、次回はさすがにジャベリンくんかわいそうなので平和に終わらせます。その分次がハードモードですが……。


3/29 ジャベリンがM16の連絡先を知らない訳ではなかったので加筆。


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傭兵、お出掛けだってよ。

すみません一万文字行きました。加筆やらなんやらしてたら凄く書いてしまった……楽しかった……。

平和ですよ、どうぞ。







88日目 晴

 

気の遠くなるくらい晴れた今日、俺はM16と何処かへ出かける。何かを決めた訳でもなくただのんべんぶらりと。どうせ商店街やら大型ショッピングモールに行って、彼女と初めて会った時に約束した飲みのお誘いの消化がてら小粋なBAR、といってもあの草臥れたマスターの喫茶店にでも行って飲んでちょっと酔っぱらって帰るのだろう。

あ、そうだ。ついでにバイクも買おう。前から気になっていたのがあるからな。

ポチとオスカーには悪いがまたお留守番。お土産買ってやるから我慢してな。

 

_____________________________

 

_________________

 

___________

 

____

 

 

「今日も良い天気なこったな」

 

気分が良くなるほど晴れた昼下がり、俺は草臥れたマスターのいる喫茶店へ向かっている。仕事もなく面倒事もなく、清々しい。上機嫌で最近咲き始めた花、桜だったか、それを眺めながらゆったりと歩いていたら、喫茶店に到着した。さてさて、M16はもう来てるかな。

 

 

「マスター、また来たぜ」

 

「おや、ジャベリンじゃないですか。いらっしゃいませ」

 

「すみません店間違えました」

 

 

俺は店を出る。うんうん、見間違いだろ。俺は決してヴィクトリアンメイドの服装をした代理人が居る喫茶店で待ち合わせをしていた訳じゃない。いつものシワだらけの服を着ている草臥れたおじさんマスターの居る喫茶店で待ち合わせをしてたんだ。これは夢だ。白昼夢でも見てたんだろ、起きろよ俺。寝惚けるなよ俺。しっかりするんだ俺。

一度深呼吸をして外にある狸の置物を見たあとに、再度目の前の喫茶店に入店する。

 

 

「マスター、居るか?」

 

「マスターなら奥で休憩していますよ。それよりなぜ一度出たのですかジャベリン?」

 

「クソォッ!!!」

 

 

……………………………………

………………………

……………

……

 

 

グリフィン本社周辺の商店街の外れ、そこにぽつんとあるレトロな雰囲気の喫茶店。そこを経営するマスターは草臥れたおじさんであり、一見とっつきにくい所があるように思われているが、実のところ人当たりが良く、トーク力も上々で多くの周辺住人の心を惹き付けて止まない。グリフィン本社に勤める戦術人形たちも例外でなく、昼休憩あたりになれば入り浸る人形もちらほらいるくらいだ。ある日の昼下がり、いつもならそのマスターが相変わらず食器を磨いているのだが、今は少し様相が違った。

 

 

「つまりだ、趣味程度に料理を学ぼうとしたら深みに嵌まってしまい、今は時間があるときにここで働いていると?」

 

「そういうことになりますね」

 

「嘘だろ……」

 

 

カウンター席で二人相対するは鉄血工造製のハイエンドモデルの戦術人形、『代理人(エージェント)』、片やグリフィンに雇われている傭兵、また民間軍事会社『武器庫(armoury)』にも雇われているおかしな立場の傭兵、コードネーム『ジャベリン』。ジャベリンという男は最早意味がわからないという風に頭を抱えて代理人を睨むが、どこ吹く風か、代理人は別に何の問題もないように他の客から注文された料理を作っている。彼女の手捌きは華麗で、いつまでも見ていたいほど素晴らしいものだった。

 

 

「それで、ご注文は?」

 

「あん?」

 

「ご注文は?まさか冷やかしで来たわけではないでしょう?」

 

「あー……ミルクティー、牛乳多めで」

 

「承りました」

 

 

料理を一通り終えて、今度は茶葉やケトルを取り出した。ウェイトレスが料理を持っていく。彼女は手慣れた手つきで紅茶を淹れだす。その光景は型に嵌まっていてなお様になっており、まるで大昔の貴族に仕えた優雅なメイドのようで、思わずジャベリンは嘆息する。周りからも同じく感心するようなため息が聞こえたため、皆彼女に見惚れているのだろう。

 

 

「全く……様になってるな」

 

「おや、そうですか?」

 

「そうだとも、戦術人形でもやめてメイド人形でもやったらどうだ?」

 

「ふふ、ご冗談を。どうぞ、ミルクティーです」

 

「何で満更でもなさそうなんだよ……どうも」

 

 

ジャベリンがミルクティーを受け取り、さっそく口をつける。口腔には紅茶の良い香りと、ミルクの滑らかな旨味が広がる。それでいてえぐみもなく、ただただ紅茶の香りと美味しさを堪能できるミルクティーであった。美味しい、とジャベリンは思わず呟く。それを聞いた代理人は静かに微笑む。

 

 

「お気に召されて何よりです」

 

「お前……店でも始めるのか?」

 

「それも吝かではありませんね。戦場を駆ける喫茶店の店主、なかなか面白いとは思いませんか?」

 

「どうだかな……いつかこの紅茶の淹れ方教えてくれ」

 

「構いませんよ、ふふふ」

 

 

二人の間に他を寄せ付けないような雰囲気が漂う。何人かは目を煌めかせ、何人かは黄色い悲鳴を小さく叫び、一人ほど写真を爆撮りしている。おそらく代理人を目当てにこの喫茶店に来ていたであろう男衆は嫉妬の視線をジャベリンに投げ掛ける。

視線を投げ掛けられた本人は悪寒を感じながらも平然としてミルクティーを堪能していた。

 

 

「ジャベリーン?居るかー?」

 

 

そんな中で、突然カランカランというベルの音と共に片目に眼帯を着けた女性、いや戦術人形のM16A1が入店してくる。彼女はどしどしと大股でジャベリンの隣まで歩いて行き、そのままどすんと隣に座る。目の前の代理人を一瞥したあと、彼女にコーヒーを頼んだ。

何だか視線がより強くなった気がする……。ジャベリンはそう思った。実際、ひそひそと話し声が聞こえるしカメラのシャッターを切る音なんてこれでもかと聞こえる。また烈火の如く熱い視線や寒気のする視線も増えた。

代理人とM16はそんな事に気付いていないのか全く気にしていない。代理人の手際のよさにM16が感心するように見入っている。

 

 

「ジャベリン、貴方も罪な男ですね」

 

「え?」

 

 

ふと、代理人からそんな言葉が漏れる。

 

 

「この前は416やペルシカリアさん、はたまたG11ちゃんをこの店に連れ込んでも居ましたが、今度は彼女を毒牙にかけようとは……」

 

「えっ」

 

「おっ?ジャベリンも隅に置けないねぇ、随分とプレイボーイなこったな、ええ?」

 

「いや、お前」

 

「ええ、ええ、あの時は随分とお楽しみでしたからねぇ……フフッ」

 

「その事もっと詳しく」

 

 

ジャベリンは直感する、これは自分を使って遊んでると。恐らく代理人もM16も彼に降り注がれている視線やら何やらに気がついていたのだろう。そうでなければここまであからさまな言い方はしないはずだ。

ひそひそとした声が大きくなってくる。黄色い悲鳴がこれでもかと聞こえてくる。男達の視線がさらに鋭くなる。シャッターを切る音がより多くなりその上メモをとっているのか鉛筆が走る音もしてきた。

 

これはヤバいと、ジャベリンは考えた。急いで自分とM16の分の代金を払い、驚く彼女を尻目にその手を引いて店を出ようとする。そこに代理人が一言。

 

 

 

 

 

 

 

 

「またのお越しをお待ちしております、ご主人様♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

ドアを閉めた瞬間、怒号が聞こえた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「酷い目にあった……」

 

「ははは。楽しかったぜ、ジャベリン」

 

「頼むから二度とやらないでくれ……」

 

 

代理人から爆弾発言を頂いた後、俺はM16の手を引いて一目散に喫茶店から離れた。現在は商店街を歩いており、隣のM16はさっきの事を思い出しては笑っている。やめてほしい……。

というか、代理人は何であんな事を言ったのか全くもって不明だ。お茶目でやったとしたら随分とイイ性格してると言いたくなる。いつか見返してやりてぇな……。どうしてやろうか。

 

そんな拙い復讐計画を考えながら歩いていたら、M16がふと足を止めた。おや、と思って彼女の視線の先を見れば、色々なものが陳列された店、所謂雑貨屋があった。M16は何かを考えるように見つめている。

 

 

「何か、気になるものでもあるのか?」

 

「ん?あぁ、ちょっと妹たちに何か買ってやりたくてな」

 

 

ここに来てまでか、そう思った。でも同時に妹想いということを嫌なほど分かってしまい、思わず苦笑する。

シスコンってのは大変だな……でもそれだけ想う相手が居るのは羨ましい。俺なんてせいぜいポチやオスカー、それとG11ぐらいかな?

槍部隊の奴らまぁ、想っていようとそうでなかろうと強かに生きてる奴らだし問題ない。

 

 

「とりあえず、入るか?」

 

「ん、そうだな」

 

 

とりあえず、お土産でも買ってやるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

所変わってジャベリンたちから後方十メートルほど。電柱の影に三人の影がある。

 

 

「目標、雑貨店に入りました。オーバー」

 

「それ、やる必要あるの?」

 

「雰囲気って大切だよコルト」

 

「そうだけど……というか何でM16の尾行なんてするのよM4」

 

 

影の主はM16の妹分、M4、AR-15、SOPである。なぜこの三人がここに居るのかと言えば、ズバリ、数時間前に遡る。

 

 

 

ーー回想ーー

 

 

「~♪」

 

「随分と機嫌が良いですね、姉さん」

 

「おっ、M4か。聞いてくれ、ジャベリンと街に出ることになったんだ」

 

「……へぇ、そうなんですか」

 

「あぁ、この前の約束と埋め合わせもあるからな。結構楽しみなんだ」

 

「……気をつけてくださいね」

 

「分かってるさ。それじゃ、行ってくる」

 

「行ってらっしゃい、姉さん」

 

(……姉さんの顔、映画でよく見た今から男に会いに行く女の顔だった?何故?まさか、姉さんはジャベリンさんのことを……!?)

 

 

ーー回想終わりーー

 

 

「あの男らしい姉さんが……女の顔をしてたなんて……何なの……ジャベリンさん、答えてくださいよ?」

 

「ねぇ、帰って良いかしら?」

 

「駄目だよコルト、我らが小隊長様きっての願いだし。たとえ下らないことでも従ってあげなきゃ」

 

「SOP、貴方意外と酷いこと言うわね」

 

 

まあ、言うなればM4A1個人の私怨のようなものである。はっきり言って、このM4は微妙にシスコンとヤンデレを併発している。恐らくこの前のメンテナンスが原因なのだろう。

オイ責任者を出せ。単なる好奇心?ギルティ。

ちなみにAR-15とSOPは完全にとばっちり。だがSOPは暇なので拒否することもなく着いてきた。案外ノリノリである。

AR-15は至極面倒といった様子だ。何せ惰眠を貪っていた所を叩き起こされて連れられて来たのだ。無理はない。

 

なお、彼女達の他にもジャベリンたちを追いかける影があった。

 

 

「何で……何でジャベリンはあいつと一緒に……!?」

 

「お、落ち着いてよ416……女の子がしちゃいけない顔になってるよ?」

 

 

416とG11である。彼女たちもたまたま非番で買い出しに出掛けていたのだが、これもたまたまジャベリンとその隣を歩くM16を見かけ、今に至る。修羅の如く歯を噛み締めてジャベリンたちが入った雑貨店を見つめる416、そんな様子を気が気でないとG11。流石のG11もこれには眠気が吹き飛んで、どうにか416を抑えようとしていた。

 

 

「これでも落ち着いているわよ寝坊助……私は完璧よ……!!」

 

「それ鉄ポール握りつぶしながら言うことかなぁ……」

 

 

ギリギリと、阿修羅の如し416。ゆらゆらと、幽鬼の如しM4A1。

偶然にも二人の目が合う。暫しの沈黙。二人は近付き無言の握手。

 

 

悪魔の契約が結ばれた。

 

 

「ジャベリン……強く生きてね」

 

 

G11はそう独りごちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!?」

 

「どうしたジャベリン?」

 

「いや、何でもない」

 

 

殺気を感じた。気のせいであってほしい。

俺は今M16と雑貨屋で物色中だ。M16は案外ぱっぱと決めていたが、俺は結構悩んだ。ポチはステッカーとして、オスカーは首輪かな?槍部隊のやつらは……スピアは確か新しいケトルが欲しいなんて言ってたからそれにするとして、トライデントとランスがわからん。あいつら意外と自分から何かが欲しいなんて言わないからな。とりあえずトライデントには漫画キャラのキーホルダー、ランスにはフライパンでもあげよう。

それと……G11か……あと416、繋がりでUMP姉妹にも買ってやらなきゃなぁ……G11にはサメのステッカー、416には彼女の瞳と同じ色のネックレスあったしこれにしよう。UMP姉妹……何も思い付かない……。45は何だか猫っぽいし猫の置物にしとこう。9……9なぁ……無難に写真立て?これ渡して好きな写真を入れておくといいって言えばいいかな?

 

 

「随分悩んでるな」

 

「あぁ、けどもう決まったよ」

 

「お、そうか。なら早く買おうぜ」

 

「ん」

 

 

早速会計へと急ぐ。そういえばバイク買おうとしてたな、なんて思い出した。大きな袋に詰めて貰ったあと、俺が全部を運ぶ形になって店を出る。結構おもいな……何買ったんだ彼女。なんとなく聞いてみたら、

 

 

「んー……秘密、さ」

 

 

と言われた。ちょっと気になりはしたけど聞かないことにした。俺は彼女にバイク屋へ行っていいか尋ねてみたところ、快く承諾された。やったぜ。

 

俺たちは歩いていく。ふと後ろを見れば、能面のような顔をした女性二人が俺たちを見ていた。

 

…………うん、気のせいだろ、気のせい。

 

 

 

 

 

 

「ターゲット、雑貨屋から退店。何処かに行く模様、オーバー」

 

「こちらジェロニモ、目標はどうやらこの先にあるバイク屋にいくらしいわ。追いかけましょう、オーバー」

 

「了解。貴方の聴力には驚かされます。オーバー」

 

「私は完璧よ。ジェロニモ、アウト」

 

 

修羅が二人いる。ジャベリンのすぐ後ろには異様な雰囲気を放つ戦術人形たちが居た。あまりの凄味に彼女たちをナンパしようとする輩も居らず、そこだけ空白が出来ている。その後ろには呆れ顔のAR-15、最早彼女達に恐怖を覚えるG11、その様子を面白そうに見るSOPが居る。

 

 

「あのやり取り何なの……近くでやる意味あるの……?」

 

「多分無いと思うわ。G11だっけ?貴女別に着いてくる必要無かったと思うのだけれど」

 

「うぇ?確かにそうだけど……ジャベリンが何処にいくのか気になるし……」

 

「ふぅん……」

 

「コルト~、ジャベリンたち何するんだろうね~」

 

「呑気よねSOPは……恐らくまた何処かに行くんじゃないかしら?」

 

「へ~」

 

 

災難の時は近い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これにします」

 

「ありがとうございます」

 

 

俺たちは現在バイク屋に居る。店主と話しながらどのバイクを買うか吟味していた。俺が求めるバイクは、スピードが出て悪路も走行できるものだ。言うなればアドベンチャーバイクというものだろう。スピードを求めてしまうと自然と大型になっていくのだがそれは仕方ない。M16はクルーザータイプのバイクを興味ありげに眺めていた。

ええと、お値段やはり百万は行くよなぁ……一括は無理なので分割月一万でお願いしますね……。

 

 

「そういえばお客さん、いまキャンペーンやってましてね」

 

「キャンペーン?」

 

「そうそう。もう少しお金に色をつけてもらえばオプションを格安で取り付けるものでして……」

 

 

あらこれは商売上手。俺がチョロいなんて言わない。実際値段を確認すれば確かに安いのでそれにした。これにて終了。M16、出るぞ。

 

 

「ん?もう出るのか?」

 

「えらい惜しげだな。まさかお前もバイク気になるクチか?」

 

「まぁなー、昔映画でバイクに乗った人間がレバーアクションの銃で暴れてたやつ見てたからな」

 

「それ未来から主人公助けに来るやつだろ?」

 

「そうそう、なんだジャベリン知ってるんだな。今度一緒に観るか?」

 

「いいぞ」

 

 

そんな会話を交えている内に、空に暗い青色が広がり始める。薄暮の中俺たちは歩き始めた。この前約束していた、一緒に飲むということのために。向かう場所はあの草臥れたマスターの居る喫茶店。今は代理人がお手伝いをしてるし昼に酷い目にあったがもう大丈夫だろう。大丈夫だよな?

心配をしている内に喫茶店に到着して入店する。もうBARの準備は出来ているようで、マスターがグラスを拭いており、その近くで代理人が座ってカクテルを煽っていた。

 

 

「いらっしゃい」

 

「マスター、飲みに来たぜ」

 

「……君も随分な遊び人だねぇ」

 

「そういうわけじゃないから誤解しないでくれよ……」

 

 

とりあえず、俺たちは代理人から一席空けて座る。流石に昼の時のようにはならないようで、他の客は静かに飲んでる。

 

……見知った顔がこっちをずーっと見てるが気にしないでおこう。何でここに416たちが居るんだ……。

 

改めて、俺はマスターにテキーラの水割りを頼んだ。ここはカクテルとか色々有るんだが今一よく分からないので大体水割りを頼んでいる。M16はジャックダニエルをストレートで頼んでいた。

 

 

「相変わらず、そのお酒好きなんだな」

 

「ん、まあな。お前も飲むか?」

 

「止めとく、酔うと大変なんだ俺」

 

「ほほぉ……」

 

「お嬢さん、この人この前も別嬪さんと飲んでたけどまぁ凄い酔い方だったよ」

 

「それ本当か?」

 

 

マスターが余計なことをM16に吹き込む。おいやめろこいつ悪ノリが酷いんだぞ!!M16も興味深く聞くんじゃない、恥ずかしいだろ!あー!あーー!!!

 

何だか顔を抑えたくなる。助けを求めるように代理人に視線を送ればただただ優しく笑うだけで何もしてくれなかった。畜生やっぱりお前も楽しんでんな!!

マスターの口がよく回るようになる、それを聞くたびにM16は爆笑し、俺は突っ伏して出来るだけ赤面した顔を見せないようにするしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「目標、マスターを交えてM16姉さんと談笑中オーバー」

 

「こちらジェロニモ、対象の一席空いた方の女性にも注意されたし。オーバー」

 

「こちらM4、あの男は随分と多くの女性と関係を持ってますね昼ドラですか?オーバー」

 

「こちらジェロニモ、それは否定出来ないわ。そろそろ誰かから刺されるのでは?オーバー」

 

 

ジャベリン達が座っている席から少し離れたテーブル席にて、ブツブツと一時的な同盟を組んだM4と416が話していた。他にもAR-15やSOP、G11も居り、この三人は単純にマスターから出された料理に舌鼓をうっている。彼女たちは先回りをして喫茶店で待ち伏せをしていた。一先ず注文した料理を食べながら待っていたら、ジャベリンたちが入ってきて今に至る、というわけだ。

 

 

「M16じゃなくて私を誘いなさいよ……」

 

「仕方ないと思うんだけどなぁ……もういいや……」

 

 

歯噛みをする416に諦め気味のG11。M4はずっとM16を見ていて何だか恐ろしい。マスターは彼女らのそれに気が付いており、出来るだけ視界に入れないようにせっせと食器の手入れをしながらM16にジャベリンの恥ずかしい話をしている。

 

 

(なんで姉さんはそこまでその男に肩入れするの?何でそんなに楽しそうなの?何でそんな、そんな恋をするような乙女の顔を?なんでなんでなんでなんで……)

 

 

こっちはこっちでとんだ勘違いをしてる。補足をしておくと、別にM16はそういう顔にはなっておらず、純粋に楽しんでいるだけだ。

416やM4が嫉妬のような目線を向こうへ送り続けていると、ふとM16がこちらを向いた。

 

 

「っ!?気付かれた?」

 

「ね、姉さ……」

 

「…………」

 

 

にっかりと、こちらの反応を楽しんでいるような、またちょっと申し訳なさそうな、そんな風にぎこちなく彼女は笑った。

何かが切れる音がする。

 

 

「M4」

 

「行きますか」

 

「ちょ、二人ともどうしたの?」

 

 

AR-15が異変に気付いて二人を止めようとするがもう遅い。ドスドスとジャベリン達の所へ歩いて行き、両隣に座る。ジャベリンはもう勘弁してくれといった様子で、M16は面白そうに笑ってる。

 

 

「マスター、ウォッカ、ストレート」

 

「マスター、私はウィスキーのストレートで」

 

「え、あ、うん」

 

 

二人が酒を注文する。すぐに出されたそれを飲みきり、それぞれ隣の二人に絡み始めた。AR-15はもう面倒になって、あの二人が潰れるまで待っておく事にした。触らぬ神になんとやら、彼女の頭にはそんな言葉が思い浮かんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なぁ416、突然どうしたんだ?」

 

「うるひゃいわよ……黙ってわりゃひに付き合いなひゃい……」

 

「えぇ……」

 

 

突然416達が隣に座ってきた瞬間に酒を頼んでイッキ飲みしたかと思えばもう隣の416は出来上がっていた。ウォッカをストレートで飲むからだ。M4の方はM4の方で、M16に泣きながら絡んでる。酒弱すぎない?

大丈夫?俺今修羅場だね?言われなくても分かるわクソ。

 

 

「ね"ぇ"さ"ぁ"ん"!!な"ん"て"こ"ん"な"お"と"こ"と"い"る"ん"て"す"か"ぁ"!!!」

 

「約束したからだよM4ーよーしよしよし」

 

「ぐすん……」

 

 

M16はもう慣れた手つきで宥めてやがる……マスター助けて。

そうやって視線を投げ掛けるもマスターは申し訳なさそうに食器を拭いている。うーん辛い。

現実逃避をしていればそれを許さんばかりの416が絡んでくる。

 

 

「わりゃひだけをみなしゃい!!!」

 

「うぉおっ!?」

 

「あにゃたはにゃんでぇ……にゃんでわりゃひをさそわないのよ!!!……くぅ」

 

 

彼女が俺の顔をガッチリホールドをして喚いたかと思ったら寝てしまった。嵐だこれは……416に酒を飲ませるわけにはいかないぞ……。丁度M4も潰れている。それを見計らったのか、AR-15とG11がやって来た。彼女達が二人を連れて行こうとするが、M16がそれを止める。

 

 

「丁度いい時間だし、私がM4を運ぶよ。ジャベリンは416を運んでやってくれ」

 

「ん、あぁ、おう……マスター、会計。彼女たちのも頼む」

 

 

俺がマスターにお金を渡した後、416を背負って店を出る。ちょっとだけ代理人のほうを見やれば、ひらひらと手を振っていた。後で覚えておけよ……。

外に出る。春先の風は、まだ冷たい。俺たちは酔いを冷ますように夜道をのんびり帰る。

 

 

「あまり飲めなかったな」

 

「そうだな、だけど私は面白いものを聞けたから楽しかったぜ?」

 

「やめてくれ……」

 

「なになにー?何の話ー?」

 

「お、SOP。実はだな……」

 

「やめろ」

 

 

M16が俺の恥ずかしい話を嬉々として話し始める。俺が止めても止まらないのだろう。早々に諦めた。G11が眠そうだったので起こす意味でも手を繋いでやる。ちょっとだけ驚いたようだがすぐに元に戻る。

AR-15はSOPと一緒にM16の話を聞いている。やめて。

ふと、遠くを見れば桜がライトアップされていた。ここらの桜はここに逃げてきた日本人の末裔が桜を見たいがために品種改良を加えて作った品種だ。綺麗なものだな。そうやってボーッと眺めながら歩いていると、俺のマンションが近づいてくる。そろそろお別れか。

 

 

「M16、俺そろそろ別れる」

 

「ん、そうか」

 

「そそ。416たちを頼めるか?」

 

「んー、いや、お前の部屋に招待したらどうだ?」

 

「へ?」

 

 

M16がにやついてこちらを見ている。こいつ、終始俺で楽しんでるな……G11に聞いてみるか。

……問題ないらしい。仕方ない……連れて帰ろう。最後までM16を楽しませてやらなきゃな……。前の埋め合わせだってのにな、ははっ。

 

 

「……分かったよ。じゃあな」

 

「あぁ、楽しかったよジャベリン。あ、そうだ」

 

「ん?」

 

「“月が綺麗ですね”」

 

「は?月?」

 

「わからないか……反応が気になったんだがなぁ……まぁ冗談さ、じゃあな」

 

「ん?あ、おう。またな」

 

 

M16達と別れて帰路につく。暫くすると、G11が口を開いた。

 

 

「あの言葉、昔の日本での口説き文句だよ」

 

「えっ、そうなの?」

 

「うん。確か、I love youを変に和訳したもの……だったかな」

 

 

へぇ~G11は物知りだなぁ……それにしても何でM16は冗談であんなことを言ったんだろうなぁ……戦術人形とはいえ女性がそうやすやすと貴方を愛していますって言うもんかね?

 

 

「案外、冗談じゃないかもよ」

 

「洒落にならんな……仮にも仕事仲間だしあいつと出会ってそんな時間も経ってない。likeはあれど、loveは無いんじゃないかな?」

 

「だといいけど。そういえばジャベリンのお家って人を駄目にするソファーとかある?」

 

「ねぇよ」

 

「えー」

 

 

416を背負い、G11を連れて部屋に到着。オスカーが腹を空かしたのかこれでもかと鳴いている。ドアを開けて部屋に入り、416をソファーに寝かせて毛布をかける。G11はもう我が物顔でベッドに居るが、風呂に入るよう促す。ポチが近づいてきたのでとりあえずらくだのステッカーを貼った。満更でもなさそうだった。何故だ。

オスカーに餌をやり、その様子をボーッと見てたらもうG11が風呂から出てきた。裸で。急いで俺の服を着させる。ダボダボだが無いよりマシだ。服を着たG11はもうベッドに入り、寝始める。俺はそれに呆れながらも笑う。懐かしいな、そう思いながら風呂に入り、寝巻きに着替えてベッドに入る。添い寝の形になるが別に問題はないだろう。

俺は目を閉じて、そう思った。

明日は晴れやかに起きてぇな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「M16、何故貴方はジャベリンにあんな言葉を?」

 

「ん?あー、まぁ、酒が回っててな、なんとなくさ」

 

「そう……」

 

「ねぇねぇ、さっきの月が綺麗ってどういうこと?」

 

「ええとなー、それはSOPがもう少し大人になってからだなー」

 

「えぇー何でさー、人形に大人も子供も関係ないじゃん!」

 

「肉体的じゃなくて、精神的にな?」

 

「ちぇっ、はーい」

 

(……まぁ、半分冗談、半分本気ってところだな。なんで私もこんな気持ちになってるのかはよく分からない……私らしくもないな、うん)

 

「よし、急いで帰ろう。今日は飲むぞー!」

 

「今日も、でしょう全く……」

 

 

 

 

 

 




416に塩を送る姉さんまじ姉御。
とりあえず言い訳をば……楽しかったんですよ……それだけです。
いや、他に言い様というかなんというか、まあ、いいでしょ!!!!(開き直り)

どうせ次の次がハードになるんでこれくらいふざけても問題ないはず……。

それでは、感想、評価は執筆の励みです。なのでどうぞ、遠慮なさらずください!!それでは!!!

3/30 ルビの入れ忘れがあったので追加


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傭兵、任務準備だってよ。

おっ、お気に入り500行ってる。ありがとうございます!

さあさあ昨日の喧騒を抜けたジャベリンくん。そこはかとなく疲れた彼へ仕事の話が舞い込んでくる!
さてその仕事の内容とは?そして着いてくる人形たちとは?
それではどうぞー。
















89日目 雨

 

先に起きていた416に叩き起こされて自分がここにいる理由とG11が俺の服を着ている理由を話させられた。

俺が416に説明をしているうちに、記憶が呼び覚まされたのか顔が真っ赤に染まって俺を殴った。理不尽だ。暫く彼女はトイレから出てこなかった。

G11はずっと寝ており、全く起きない。どうせ無理矢理起こしても無駄なので416に叩き起こされた拍子にベッドから投げ出されたオスカーをG11の傍らに置いた。オスカーはすぐにG11の上に乗って寝始める。可愛い。可愛過ぎて浄化される。守ってあげなきゃ……。

 

俺はポストに投函された新聞と社内報を取り出して、テーブルへ放り、朝御飯を用意する。内容は買いだめしてたカット済みの野菜とトースト、スクランブルエッグに紅茶だ。ちなみに全部高かった。まぁ俺以外に客人がいるから仕方ない。トイレに籠る416を呼び、眠るG11を起こして紅茶を飲みながら社内報を読む。どうやら臨時で追加された内容もあるようで、この前の物より厚かった。見開きには俺が懇意にしてる農園のクライアント……ここ、グリフィン支援し始めたのか。

そのままゴシップコーナーを見ていて、ふと目に入った記事を読み口に含んでいた紅茶を噴いてしまった。その内容は「騒然!グリフィン社員ご用達喫茶店の看板人形に恋人!?」だった。

昨日写真撮ってたやつだなこの野郎。もう少し読み進めると「さらに驚き!!あの看板人形の恋人はプレイボーイ!?」という見出しと共に俺がM16、416、M4、代理人と居る写真も撮ってやがった。

グリフィンはどれだけゴシップに飢えてるんだか。というかペルシカリアからの着信が数十件あったのはそのせいだったのだろう。誤解だとメールで送っておいた。

ふとまた携帯から着信音がする。誰かと見ればヘリアントスさん。出てみれば、仕事の話らしい。

 

えぇ……この状態で出社するの嫌なんだけど。そう思いながら仕事の準備をした。

 

 

 

 

 

 

……………………………………

 

 

「よく来てくれた」

 

「それで、仕事ってのはなんですか?」

 

 

いつもの社長室といつもの俺のセリフ……いつものなのか?とにかく俺は仕事の内容を聞くためにクルーガー社長の居る部屋に来ていた。途中、グリフィン社員や戦術人形たちの視線やひそひそ話が色々と痛かったが何とかここに来た。心なしかクルーガー社長の隣にいるヘリアントスさんも結構痛い目線を俺に向けてくる。誤解なんだヘリアントスさん、俺は一途な人間なんだ。

 

 

「君に依頼する任務は他でもない、護衛任務だ」

 

「護衛任務?」

 

 

心のなかで言い訳をしている間にクルーガー社長が話を進める。護衛任務なんて久し振りだ。確か最後は盾部隊の一人と旅客機でVIPの護衛だったか。あの時はテロリストが潜伏しててそいつらの対応に追われて大変だったな。しかし、誰を護衛するのやら。

 

 

「社内報は見ただろう?最近グリフィンに食材を卸し始めた農園、あそこからの依頼だ」

 

「えっ!?」

 

 

クルーガー社長の言葉に思わず声が出る。怪訝に思ったクルーガー社長が何か言おうとしたが問題ないと手で伝えた。

しかし、彼処の護衛って何するんだ……。そう考えているとクルーガー社長が話を再開し始めた。

 

 

「あの農園には一人娘が居てな、その一人娘宛に脅迫の手紙が連日届いているらしく、不安に思った農園主が暫くの間護衛を頼みたいということで、依頼が来たんだ」

 

「はぁ……なるほど」

 

 

あーーーーなるほどねぇなるほどなるほど……うんうん、嫌だなぁ。あの農園からは連日お手伝いの催促とか(脅迫状みたいなもの)が届いてるからwin-winだよ、俺が行く必要ねぇよ。

 

 

「それと、依頼主は君が来ることをご所望だ」

 

 

あーーーーーーまっっっっったく計算ずくめだなぁ彼処はよぉ!!!

盛大にため息を吐きたいのを我慢しながら他に誰が来るのかを聞くことにした。

 

 

「それで……誰か一緒にくるんでしょう?」

 

「話が早くて助かる。今は諸任務でここには居ないが、名前だけは教えておこう」

 

 

せめてまともな奴がいいよなぁ……いや、別に今まで出会った戦術人形が頭のイカれた奴らという訳ではないんだけど……最近疲れてるのかな。いや、この前は一応休めたし大丈夫なはず。

 

 

UMP45とUMP9だ

 

 

俺は膝から崩れ落ちた。

 

 

 

 

 

 

もう……海外に高飛びしていいよね……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

90日目 晴

 

俺は今任務のために準備をしている。416とG11はまだ仕事が入ってきてないのか俺の部屋に昨日から居座っている。いや構わないけども。

なんというか、憂鬱だ。何せチームを組むのがあのUMP姉妹だ。俺の動向を逐一把握しているであろう45、まだマシとはいえ俺を突然家族認定してきた9。クセが強すぎる。とはいえ一応俺の運はそれなりに有ったようで、もう一人か二人ほど戦術人形が来るらしい。こいつらはまともであってほしいんだが。

そうやって悶々と考えていても始まらなかったので装備の確認をしていく。

今回はできる限り必要最低限の装備しか持っていかない。どうせ向こうの農園で武器なんて馬鹿みたいにあるからな。

 

武器を並べて悩んでいると、416が興味を持ったのか俺の隣にやって来た。ふと思い立って彼女に必要最低限の威力で、もしもの時にはすぐ即応できる装備を揃えるとしたらどうすると聞いてみたところ、彼女が選んだのはMP7、G17、フラッシュバンとなった。弾の互換性が無いのはまぁ目を瞑っておこう。彼女に礼を言ってこの装備と+αで任務に赴くことにした。

 

明日はきっといい日になるんだ、そう強く願うことで憂鬱をぶっ飛ばそう。

 

 




ジャベリンくんはそろそろ泣いていい。書いている私が言うのもなんですがね。
そして、UMP姉妹の他にやってくる戦術人形とは一体……?そしてジャベリンが今回の仕事を嫌がる理由とは……乞うご期待!!


やっと本編に突入するための下準備に取り掛かれました。次からは私生活が確実に忙しくなるため、三日に一回の更新ペースで行きます。もしかしたら連日投稿もしますが期待はなさらずに……四月に入るまでには本編行きたかったんですけどねぇ……まあ、それはともかく、皆様こんな私の拙作を応援していただき、心の底から感謝しております。私がこうやって続けて行けたのは皆様のお陰とも言えましょう。まだまだ本編にも達していないこの作品ですが、どうぞ今後ともご期待ください。
それではまた三日後に!!


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番外編 傭兵と少女のエイプリルフール

急にピンときて執筆作業中断して書いた。後悔はしていない。
エイプリルフールネタですどーぞ。


4月1日、今は無き日本じゃ入学式だとか入社式だとか、とにかく新しい事が始まる日でもある。俺にとっちゃ何てことのない、たまに早とちりした桜が満開になる日でもある。とはいえ最近何だか部隊内の奴らが嘘をついて良い日だの何だのと騒いでいたから俺もそれに便乗してみるのも良いだろう。

今日は休みの日だし、ちょうどG11が居ることだ、つまらん嘘でもついて遊んでみよう。

 

 

「俺、傭兵辞めようと思うんだ」

 

「ふーん……」

 

「………………」

 

「………………」

 

 

……何か言えよ!!!

 

目の前の彼女は興味無さげに返答を返しただけだった。恐らくだがこれは今日はエイプリルフールだと気付いている。

だがこのままでは面白くないのでちょっと聞いてみる。

 

 

「何だよ、止めないのか?」

 

「んー……まあね」

 

「……理由を聞いても?」

 

「ジャベリンって最近疲れてるように見えてたし、仕方ないかななんて」

 

 

マジ?俺そんなに疲れてた?

G11にまで心配されるレベルってどういうことだ。しっかり休みは取っていたはず……でもないか?休日っていっても基本何らかのハプニングが起きてたし、精神的には休まってても身体的には休まっていなかったのだろうか?

この前は確か、俺がさあ近くの公園で四分咲きの桜でも見ながら紅茶にブランデーを垂らして飲もうなんてしようとしたら何処からともなく現れたUMP9に突撃されて紅茶がおじゃんになった上においかけっこすることになってしまったし、その上SOPも参加して公園中汗だくになるまで走ったし、その後の潜入任務じゃトンプソンのダミーが何を思ったのか敵の集団に殴り込んで行ったからその尻拭いやらされて余計に疲れたし次は次でトンプソンと飲んでたらM16が乱入して死ぬほど飲まされてそのあとは死んだほうがマシなぐらいの頭痛と筋肉痛に見舞われて暫く動けなかったし…………。

思い出せば思い出すほど自分が休めていないことに気付かされる。何だか足元が覚束なくなってきた。

 

 

「……どうしたの?」

 

「あー……すまん、思った以上に疲れてた。寝る」

 

「ふーん、なら一緒に寝ようよ」

 

「おう……」

 

 

ふらふらと倒れ込むようにベッドへ横になる。その横にG11が添い寝する形で入ってくる。覆い被さるようにオスカー、G11の反対側にポチが座る。最早動けない、鎖のような包囲だ。

瞼が重くなり、意識も遠退いていく。少女たちの体温は、俺を包み込むように温めてくれた。

 

 

「ジャベリン」

 

「んぁ……なんだ?」

 

「おやすみ」

 

「おぅ……」

 

 

明日は、きっと疲れが吹き飛んでいるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふふ」

 

 

彼から寝息が聞こえてくる。

オスカーとポチも偉いね。いつか美味しいものでも食べさせてあげなきゃ。

よし、あたしもたまには動くか。

 

するりと、彼を起こさないように抜け出す。食器棚から小さなティーポットとふたつのティーカップ、茶漉しにそして茶葉を取り出す。ティーポットとティーカップは湯通しをして温めた。ティーポットに茶葉を適量入れて、お湯を投入。茶葉を蒸らしている間にお茶請けを探す。彼がたまにお菓子を隠している棚を探ると、豪華なデザインの缶に入ったクッキーを見つけた。多分、彼は文句を言うだろうが問題ない。

適当な皿へ並べてテーブルに置く。そしてティーカップにお茶漉しを設置してどちらも均一になるように淹れた。この時、高めの場所から淹れるのが美味しくなる秘訣らしい。彼の友人であるスピアから昔教えてもらった。…………紅茶を淹れ終えた。彼には悪いが、ちょっと起きて貰う。またあの時に淹れてあげた紅茶を飲んで貰うために。

 

 

「ジャベリン、起きて」

 

「んぁぁ……まだ寝かせてくれ……」

 

 

やっぱり起きてくれないか。仕方ない……。

 

 

「起きてよ、“ご主人様”?」

 

「っ!?」

 

 

がばりと、驚いたような顔で彼が起きる。その顔は何だか可愛らしい。彼はばつの悪そうにして頭をかいている。ちなみに起きた拍子で転げ落ちたオスカーは機嫌が悪そうだった。ごめんね。

 

 

「何だG11か……タイムスリップでもしたかと思ったよ」

 

「何それ?まあいいや、紅茶淹れたからさ、飲も?」

 

「……珍しいな、お前から動くなんて」

 

 

むむ、何だか心外だ。確かにあたしは三度の飯より睡眠が信条だが動くときは動くのだ。主に45からの命令だとかで。

 

彼と共に椅子へ座る。あのクッキーが目に入った彼は苦虫を噛み潰したような顔になったが、あたしの紅茶を飲んだらすぐに機嫌が良くなった。

 

 

「お前……上手くなった?」

 

「そう感じる?うれしいな」

 

 

にへら、と笑ってみせる。彼も柔和な顔になっていた。

 

 

「俺、やっぱ傭兵稼業は続けるよ」

 

「分かってるよ。さっきのはエイプリルフールだったんでしょ?」

 

「やっぱ知ってたかぁ……慣れないことはするもんじゃない」

 

「それに、嘘をついていいのは午前だけ。今はおやつ時だよ」

 

「マジで?あー、やっちまったな」

 

 

紅茶を飲みながら彼と談笑する。別段面白い話をしてるわけでもないけど、楽しい。このやり取りはあたしが戦術人形じゃなかった時からやってたこと。初めて彼と出会ってからずっとやっていたこと。かけがえなく大事なこと。

あたしはまた戦場に立つことがあるだろうけど、願うなら__________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これからもずっと、こんなことをしていたいな。

 

 




UMP45「なんなのこの甘い空間……」←たまたま監視してた

416(私も紅茶の淹れ方勉強しようかしら)←たまたま45と一緒にいた



うん、楽しかった(爽快)

何だかG11単体で書きてぇなぁとか考えてたらこうなりました。いつものことだけどG11のキャラクター掴めてる……??

では、感想及び評価は心の支えです。どうぞ皆さん是非ともください。それでは!!


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☆番外編 傭兵と贈り物

軽いコラボです。コラボ先のマウントベアー様作「狙撃手の少年は」URL:https://syosetu.org/novel/186025/
で、ジャベリンくんがとあるものを貰いました。その事で色々やります。ギャグ回みたいなもんなのでキャラ崩壊注意です。ではどーぞ


「ふむ……」

 

 

俺の目の前にはヘッドセットととあるプログラムの入ったUSBを前にして思考に耽っていた。このヘッドセットとUSBはこの前、任務でグリフィンの即応部隊『E.R.F.T.R』の部隊長、シモガキという青年から頂いたものだ。あの子は俺がやっと戦場を走り始めた時と同じ年齢でグリフィンの即応部隊隊長を勤めてるんだから大したものだよなぁ。そう思いながらまた目の前のブツを見る。

 

 

「しっかし、便利なヘッドセットだったよなぁ……脳波で動くとか何だそれってやつだ」

 

 

正直、社長も早くこれに更新しろとは思う。金はたんまりあるはずだろうに……。これがあれば作業効率上がるはずなんだよね。

今度はUSBの方を見る。こっちはこっちで中々のイロモノというか、シモガキ君が何でこんなものを渡してきたのか謎じゃある。

 

色々と考えていると、インターホンが鳴った。こんな時に誰なのか、そう思いながら出る。

 

 

「おーす、ジャベリン」

 

「M16か、何か用か?」

 

「たまたま通りかかってね、ちょっと寄ってみただけさ」

 

 

訪問してきたのはM16だった。片手にウィスキーの瓶を持っていた。飲むつもりなのだろうか?

M16の持っている瓶を見ていると、それに気付いた彼女がいたずらっぽく笑って、飲むか?と誘ってきた。……まあ今日は何もないし良いだろう。そう考え、彼女を部屋に招き入れる。

 

 

「ジャベリンの部屋って何だか味気ないよな」

 

「そりゃな。たまに花を飾ったりするんだが直ぐに枯らしてしまうんだよなぁ」

 

「花ぁ?ジャベリンらしくないな」

 

「うるせぇ」

 

 

軽口を叩き合いながらグラスを用意する。テーブルに座り酒を注いでいく。俺はロック、彼女はストレートだ。乾杯、とグラスどうしを当てて飲む。……中々度数が高いな。

 

 

「最近はどうだ?」

 

「んー?まぁ上々かな」

 

「そうか」

 

「そういえば、そこにあるUSB、何なんだ?」

 

 

ふと彼女がUSBを指差す。あぁ、これは……と彼女に色々説明していく。彼女は少し興味を持ったらしく、そのUSBにあるプログラムを使ってみたいなんて言い始めた。俺がやめとけと言えば、「なぁに、ジャベリンならどうにかしてくれるだろ?」なんて言われた。随分と信頼されたようである。まあ、俺も少し興味あるし、バグが怖いが使わせてみよう。

 

……………………

……………

……

 

 

「どうしてこうなった!!」

 

「ジャベリ~ン、もっと構ってくれよ~?」

 

「ええいポチと遊べ!!」

 

 

俺は後悔した。何故ならば、彼女がそのプログラム使った瞬間、一時停止をしてしまい焦っていると急に犬耳としっぽが生えて俺に突撃してきた。普段の彼女とは思えないくらい性格の差が酷くて混乱もしてる。ポチは仲間が増えたように見えたのか喜んでた。何なんだ本当。

俺に遊ぶことを拒否をされたM16はショックを受けたのか犬耳が垂れて悲しそうにしている。

 

 

「そっか……お前は私と遊んでくれないんだな……」

 

「うっ……それは」

 

「いいさ、私はポチと遊ぶよ……」

 

 

とぼとぼとポチのところへ歩いていく彼女。オスカーとポチが俺に対して非難の目を送りつけてきている気がした。

俺悪者?……ええいこなくそ!

 

 

「冗談だM16……こっちこい」

 

「本当か!!?」

 

「ほら」

 

 

両手を広げ待ち受ける。大いに喜んだ彼女が俺に飛び込んでくる。それを抱き止めてこれでもかと彼女を撫で上げた。……本当にこれM16だよな??いや、シモガキ君なんでこんなもの俺に渡したんだ……ポチに使わせる為か、ごめんな、お兄さん間違った使い方しちゃったよ……。

 

「~♪」

 

「はぁ……何だかな「何してるのかしらジャベリン」…………ゑ?」

 

 

ギギギ、と油を差していない機械のように後ろを向く。向いた先には仁王立ちで俺を睨み付ける416が居た。俺詰んだわ。

 

 

「な、何でお前……勝手に……」

 

「45から合鍵を借りたのよ」

 

 

よ、45ーーー!!!!お前いつの間に合鍵作ってんだ!!!いや初めて出合ったときからか畜生が!!!!!

 

脳をフル回転させる。この状況をどうにかしなければ……死ぬ!!必死に考える。だが考えても考えても何も浮かばない。流石に不味い。やばい。

 

そうこうしている内にM16が突然俺の懐から飛び出して、416に飛び付いた。416が二重で驚いている。

 

 

「なっ、何するのよ!!?」

 

「416ー!!!遊ぼうぜーーー!!!!」

 

「は、離れなさいぃ……!!」

 

 

彼女たちの攻防戦が始まる。べったりと張り付く彼女とそれを離そうと四苦八苦している416。

 

……何とか助かったかな。椅子に座り、近くにいたオスカーを抱き上げ撫でながら酒を煽る。あぁ、何だかこの味気ない部屋が随分といとおしい気がしてきたな……。

 

 

「た、助けなさいよーーーー!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ……ハァ……」

 

「お疲れ、紅茶いる?」

 

「……貰うわ」

 

 

五分後、M16が突然糸が切れたかのように動かなくなり、寝てしまった。今はソファーに寝かせている。ポチが心配そうに彼女の近くに座っており、また彼女のお腹にオスカーが座ってる。

彼女は気持ち良さそうに寝ており、さっきの騒動が嘘のようだ。

 

416が紅茶を飲んで一息つく。彼女にお酒を飲むか聞いてみると、快く乗ってくれた。

 

 

「何飲むんだ?つっても水割りかロックしかないけど」

 

「じゃあ、ジンのロックとかあるかしら?」

 

「りょーかい」

 

 

棚からジンを取り出して新しく出したグラスに氷とともにいれる。それを彼女に出して対面に座る。彼女が一杯飲み、それに続いて俺も飲む。

 

 

「……本当、アレ何だったのよ」

 

「戦友からの贈り物だ」

 

「ロクな奴じゃないわね」

 

 

すまんな……別に彼が悪いわけではない。変な使い方した俺が悪いんだよ。彼には後でお詫びに何か奢るとしよう。ヘリアントスさん辺りに聞けば連絡先分かるかな……?

 

 

「あー……何だかむしゃくしゃしてきたわ」

 

「おいおい、飲み過ぎるなよ?この前酷かったろ」

 

「あれはウォッカをストレートで飲んだせいよ。今回は大丈夫」

 

「……そうか」

 

 

人はそれをフラグという。まあいいか、飲もう。

 

彼女にまた酒を注いで俺も追加でジンを飲む。アルコールが俺を気持ちよく酔わせてくれる。

今日ばかりは、どんどん飲んでいこう、気持ちよく楽しく酔っていこう。

そう思った俺のグラスは、直ぐに空になっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まあ、途中で起きたM16が乱入して死屍累々になったんだけどな!!!!!クソッタレ!!!!

 

 

 

 




M16が犬っぽくなったら、SOPみたいになるのかな?なんて思いながら書いてました。楽しかったです。

基本コラボは番外編として扱います。

……俺もなーもっと他の作品とコラボしてみたいんだよなぁー社内報だけでもいいしね。ドルフロ本編始まってからだけどな!!!……いつになるんだろうか()
時代背景関係ないならもう好きなようにやりますよ。

それでは、感想及び評価は心の支えです。ですのでどうぞお願いします!!またこんど!!!


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傭兵、護衛だってよ。
そのいち


Gamewithっていうとこのエイプリルフールネタに出てたクルーガー社長のスペックがそのままE.L.I.Dと殴り合いができるレベルについて。なんだクルーガー社長もうちの社長と同レベルじゃないか(?)



ジャベリンくんは仕事先へと向かいます。
はてさて何が待ち受けているのか……。

五話ぐらいを予定しているのでどうぞお楽しみに。
それではどうぞ。


91日目 晴

 

オスカーを家に居る416たちに任せて俺は任務に赴いた。

 

とりあえず俺の胃腸は守られた。UMP姉妹の他に来てくれた戦術人形は二人、MP5とWA2000という戦術人形だ。MP5は銀髪の可愛らしい少女で真面目、WA2000は赤毛の長髪の美人、だいぶ天の邪鬼なところのある人形だった。トライデント的に言えばツンデレか?

そんな二人が来てくれたので俺はUMPサンドにされることなんて無かった…………訳ではない。

 

輸送車両で移動中はずっとUMP姉妹に両隣へ居座られた。ポチも連れてきたんだけどWA2000にずっと抱かれている。ポチは困惑ぎみだったが仕方ない。初対面で性格もよく分からない相手に甘えるからだ。MP5もポチを触りたそうにしているがWA2000はポチを離さない。ははっ、微笑ましいなぁ……。

 

現実逃避をしててもなかなか現実は俺のことを逃がしたくないようで、45が俺に絡み付いてきた。やめて……。「ジャベリ~ン……よろしくね?」と、耳元で囁かれる。彼女の声は無駄に魅惑的だ。精神がゴリゴリ削られていく。それに加えて9も俺に引っ付いて来てさらに削られていく。WA2000とMP5に助けを求めようとも二人はポチに夢中。

最後には運転手に視線を送ったら中指を立てられた。世知辛い。

更に不幸なことに突然MP5から純粋な目で「そういえばジャベリンさんってプレイボーイなんですか?」とか言われた。心が折れた。こんな可愛らしい娘もあの社内報読んでたの……?

色々とこみ上げてきた俺は項垂れか細い声で違います……と言っておいた。UMP姉妹の面白がる声やらMP5の謝罪の声、運転手の笑い声、WA2000の猫なで声と耳に入ってくる。

悲しみにくれる俺はそんな喧騒の中、目的地まで向かうのだった。

 

 

 

 

_________________

___________

_____

_

 

 

 

 

 

「凄い!凄いよジャベリン!!本物の馬!!」

 

「そうだな……」

 

「私……こんな綺麗なところ初めてです!ジャベリンさん凄いですよここ!!」

 

「おう……」

 

 

清々しい青空に視界一杯に広がる草原、そしてのんびりと草を食んでいる馬や牛。今や写真だけの存在としかいえない風景が眼前に広がる。MP5やUMP9がはしゃいでいる。

ここは現代の世界でほぼ唯一の大規模な農場と言って良いかもしれない。奇跡的に崩壊液の被害を免れた地域だ。今や多くの人形や人間が働いており、貴重な人間の働き口にもなっている。この大農場の持ち主であるジャガーソン・コーマック氏は俺が『武器庫』に入ったばかりの時から知り合いで、俺は時たま仕事でここに来る。仕事で行く度に彼から跡を継ぐ気はないかだのまた槍部隊の皆さんを連れてきてくれだのと言われる。

 

アンタには息子が居るだろうが……そいつに手伝わせろ馬鹿野郎。なんて毒づく。未だ車内での出来事を引きずっているためか、口が悪くなっている気がした。

 

 

「むむむ……」

 

 

ふと向こうを見ると、UMP9が馬に近付いて撫でようとしていた。恐る恐る手を出している。MP5が固唾を飲んで見てるが、なんだか微笑ましい。

しかし噛まれなきゃいいんだけどな……。

 

 

「お、おぉ…………あっ」

 

「ジャ、ジャベリンさーん!!」

 

 

あーあ……腕甘噛みされてフリーズしてる……今助けるぞー。

 

 

「ほーらポチちゃんおいで~よーしよしよし」

 

「酷い顔ね」

 

「なっ……何よ、文句ある?」

 

「いぃやぁ?別にぃ?」

 

 

なんで向こうは剣呑になってるんですかねぇ……ポチやってしまいなさい。悪い子にはお仕置きだ。

信号を受け取ったポチは45にダイレクトアタックをして45に馬乗りとなる。驚く45にそのままどすんと彼女の胸に座り込むポチ。WA2000は何だか羨ましそう。とりあえず嫌な雰囲気は霧散したかな?

 

それにしてもこの馬なんで意地になって離さないんだ。駄目だろ人を困らしちゃ。よしよしいい子だ、そのまま9から離れ………………あれっ?なんで目の前が急に真っ暗に?

 

 

「わ、わー!!!ジャベリンさんが食べられてるーっ!!?」

 

「……ハッ!ジャベリン!?」

 

 

おーうお前ら落ち着いてくれ、どうどう。何か痛いけど何も問題ないからなー。

 

とりあえず俺の頭を噛んでいる馬の顎を掴む。そのまま力任せに引き抜こうとするが全く動かない。

 

 

「ぐ、ぬぉぉおぉ……!!」

 

「が、頑張って下さい!」

 

「ねぇ、あれ大丈夫なの?」

 

「さぁ?」

 

 

俺を噛んでいる馬は随分と諦めが悪く、俺がどんなに粘って外そうとしても噛み続けている。いや、なんでこの馬は噛みたがりなんだ?

四苦八苦しているうちに馬もムキになってきたのか噛む力が強くなってくる。そろそろ腕が疲れてきた。俺が根負けしそうであったときに、一人の人物が俺たちに近づいた。

 

 

「来るのが遅いと思ったら……離れなさい、ジェシー」

 

 

女性の鋭い声とともに、ジェシーと呼ばれた馬が離れていく。

視界が元に戻った俺は声のした方向に顔を向ける。そこにはメイド服を着た目付きの悪い女性が佇んでいた。45たちはその女性を見て驚いている。

あー、確か彼女は人形だったかな……?

 

 

「G36がどうしてここに……?」

 

 

WA2000が信じられないといった風に口を開く。G36と呼ばれた女性は、少し訝しげにした。

 

 

「G36……確かに私と同じ外見の戦術人形は存在していますが、私は違いますよWA2000様。私は民間モデルです」

 

「んなっ、なんで私の名前を!?」

 

「客人のお名前を把握するのはメイドの務めですから。ささ、皆さん、どうぞこちらへ」

 

 

そう言い残し、すたすたと彼女は案内を始める。呆然とする面々を見て、俺は思わずため息を吐いて彼女に声をかけた。

 

 

「みんな吃驚して固まってるぞ。自己紹介ぐらいしたらどうだ?」

 

「おや、それは失礼致しました。私はこの農園にある屋敷でメイドを務めております、ローゼ、と申します。どうぞお見知りおきを……おや、まだ固まっていらっしゃいますね。ジャベリン様、後は頼みました」

 

「えぇ……」

 

 

くるりと、こっちを向いてスカートの裾をあげて礼をし、自己紹介をしたかと思えば俺に仕事を丸投げした人形、ローゼはまた歩き始めた。君本当変なところで面倒くさがり屋だよね。とりあえず固まっている面々を起こして移動させる。

 

移動中、未だ納得がいってないのかWA2000が俺に質問してきた。

 

 

「あれ、本当に民間用?何故か私の認識システムがずっと戦術人形だって言ってるんだけど」

 

「民間用だよ。恐らく戦闘能力はないはずだ」

 

「恐らくって何よ恐らくって……」

 

「ローゼさん……でしたっけ、ちょっとお聞きしたいことが」

 

「ロゼでよろしいですよ。なんでしょうかMP5様?」

 

 

俺がWA2000の質問に答えている中、MP5がローゼに何かを聞こうとしていた。

 

そういえばUMP姉妹は……ポチと遊びながら着いてきてる。ポチ、そいつら気に入ってたんだな……。

 

 

「この農園はとても大規模だと聞きました。一体どんなものをご収穫なさってるんですか?」

 

「そうですね……貴女様の言うとおりここは大規模ですので、収穫物は多岐に渡ります。ジャンルで言えば野菜、果物、家畜、穀物にあと材木でしょうか。そのなかでも小麦や野菜全般が収穫量の1/3を占めていますね」

 

「おぉ!凄いですね!」

 

「はい、何せここはヨーロッパの食糧庫とも云われていますからね。貴女様がお勤めになさっているG&K社にもこの農園の名は伝わっているでしょう?ふふっ」

 

「……随分と饒舌ね」

 

「許してやれワルサー、ローゼは自分が仕えているこの農園に誇りを持ってるんだ」

 

「ふぅん……私の知ってるG36とは大違い。とても幸せそうね、彼女」

 

 

まぁ、民間用だからな。というかそんなにWA2000のところのG36って殺伐としてんの?怖っ。

そうこう話しているうちに、大きな屋敷が見えてきた。見た目は最早歴史の教科書にでも乗ってるようなデザインで、彼処だけ中世に戻ったような雰囲気が醸し出されている。まぁ内部は近代的システムの塊だけどな。

 

 

「おぉー!45姉見て、すっごい大きなお屋敷だよ!!」

 

「確かにそうね、タイムスリップでもした気分だわ」

 

 

9がはしゃぎ、45が感慨に浸ってる。MP5は感動するばかりで口を半開きにしながら屋敷を見ている。WA2000は興味無さげに見えるがその視線は屋敷に釘付けだ。素直じゃないなぁと心の中で苦笑する。ポチをけしかけておいた。

 

俺たちはそのまま屋敷に入り、応接間に案内をされる。ローゼがてきぱきと紅茶を用意して高そうな椅子に座らされた皆に配膳した。その後はご主人を呼びに行くということで退室した。

MP5が陶器の花瓶を触ろうとしている

 

 

「これってどのくらいの値段なんでしょうか……」

 

「MP5ー、それ壊したら給料三年飛ぶぞー」

 

「ひぇっ!!き、気をつけましゅっ!」

 

「なーにからかってんのよ馬鹿」

 

「あたっ」

 

 

MP5が目にも止まらぬ早さで手を引っ込める。そしてWA2000に俺は叩かれた。

 

全く、嘘は言ってないんだぞ嘘は。俺もぶっ壊して一緒に居たスピアともども弁償する羽目になって三年半ぐらい給料9割持ってかれたからな。社長からも大目玉くらうし大変だった。

UMPがテーブルの側にあったチェスで遊んでた。確かあのチェス象牙ってやつで作られてたよなぁ……。このご時世、並の富裕層でも手に届かないレベルの代物だったはず。つくづくここが凄いところだと思い知らされる。

 

 

「ご主人様をお連れ致しました」

 

 

ふと、ノックの音と共にローゼの声が聞こえた。すぐにドアが開き、壮年の整えられた金髪で落ち着いた雰囲気の男性、ジャガーソン・コーマック氏その人が現れた。来やがったな催促野郎……。俺はちょっと身構える。

 

 

「ようこそ!グリフィンの皆様、私がここの主、ジャガーソン・コーマックだ、よろしくぅ!」

 

「ご主人様、お声が大きいですよ。お客様方が驚いております」

 

「まあまあいいじゃないかロゼ!!これくらいのほうがいあだぁ!!!?」

 

 

彼が快活そうに喋り始めたかと思えばローゼが綺麗なローキックをくらわせた。そうだよな、皆驚くよな……俺も驚いたよ。

驚き固まっている数名を尻目に、足を痛そうに押さえながらジャガーソンは向かいの椅子に座る。襟をただして再度こちらを向いた。

 

 

「んっん、改めてようこそ。君たちが私の娘を守ってくれる騎士たちだろう?歓迎するよ」

 

「あ、はい……?」

 

「ははっ、まあ変に思うのも仕方ないか。ジャベリン君、君に伝えるから後で彼女たちにもよろしく!」

 

「普通に入ってくればよかったのに……どうぞ」

 

 

本っ当にお茶目だよなぁアンタ……。とりあえず詳しく仕事の話を頼むぜ。

 

 

「実はだな、君たちがグリフィンから聞いた通り、私の最愛の娘が命の危険に晒されている」

 

「……俺が言うのも何ですが、別に“お嬢”なら問題ないと思いますよ?」

 

「まぁまぁ、そう言わずに。娘を心配するのは父親の性だ、私の息子だって彼女を心配してるんだぞ?」

 

「あぁ、そうですか……そういえば脅迫状が届いてるって聞きましたが、どんなもので?」

 

「ロゼ」

 

「承りました」

 

 

ローゼがまた部屋を後にする。固まっていた面々が通常状態に戻り、紅茶を飲みながらジャガーソンの跡継ぎ話(くだらん話)をいなしていると、ローゼが一枚の手紙を持って入ってきた。

 

 

「どうぞ」

 

「えーと、どれどれ」

 

 

45たちと一緒に覗きこむ。

この手紙に書かれていた内容なジャガーソン氏に対する恨み辛み、その娘に対する下品な言葉の羅列やら警告のような文句、そして呪いの言葉ばかりであった。WA2000が顔を歪ませる。

 

 

「鳥肌がたつぐらい気持ち悪いわね……全く何でこうも怪文書が書けるのかしら」

 

「だろう?娘は大丈夫だと言ってたがやはり怖くてな……」

 

「それで、とりあえず俺たちは何をしておけばいいんです?」

 

 

俺の言葉にジャガーソンはそうだったというような顔をして俺たちに話し始める。

 

 

「なに、簡単なことだ。娘を暫く見守っておけばいい」

 

「……それだけ?」

 

「そう、それだけ。君たちの部屋は用意してあるし、好きなように生活して構わないよ。送り主の特定は手伝ってもらうがね」

 

「……了解」

 

 

なんだか拍子抜けをしたがまぁいい。一応仕事がそれなりに楽ということが判明した。俺たちはローゼに宿泊する場所に案内される。なお、俺が扉から出ようとした時、ジャガーソンに一つ頼まれた。

 

 

「ジャベリンくん」

 

「はい?」

 

「明日、餌やり頼むぞ」

 

「……別で給料貰いますからね」

 

「嫌と言わないあたり本当頼りになるよ。やはり跡t」

 

 

バタンと、彼が言い切る前に閉めた。

やっぱりそれが目的だったな畜生。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わぁ……凄い……」

 

「普通にホテルよ、これ……」

 

「これが来客用なんて誰が言うのかしらね」

 

「ジャベリン、ホールの中央に凄い銅像があるよ!!!」

 

 

四者四様と言うべきか、明らかに一流ホテルのような内装に皆驚いていた。俺は何度か来てるから何も驚くことはない。ローゼから鍵を貰った。そうだポチ、お前もオスカーのお土産がわりにここら辺の写真を撮ろう。

 

各々が割り当てられた部屋に行き始めた最中、ドタドタと足音が聞こえてくる。……来たか。身構える、足音がどんどん近付いてくる。何かが飛んできた。

俺はすかさずその物体を背負い投げの要領で向こうへ投げ飛ばす。

 

 

「ジャベリン!かくうおああぁああ!!!???」

 

 

ドンガラガッシャーン!!なんて昔の漫画よろしく彼方へ飛んで大きな音が聞こえた。他の奴らが慌てて出てきた。ローゼは呆れている。

 

 

「な、何事よ!?」

 

「敵襲ですか!?」

 

 

大丈夫だWA2000、MP5。これ俺が来る度に起きることだから……。ローゼが物体の飛んでいった方向に歩いていっている。

 

 

「やっぱり不意討ちも駄目かー……」

 

「お嬢様、毎度の事ですがジャベリン様に決闘を挑む様なことはお止めください。いい加減諦めたらどうですか?」

 

「ロゼ、それは聞き入れたくないなぁ」

 

「お嬢様?」

 

「うっ……分かったよもう」

 

 

あれを不意討ちと申すか。もう少し静かに来てくれよ。

 

お嬢様と呼ばれた物体、いやブロンドの髪をポニーテールに束ねた女性は俺たちに近付いてくる。45が俺に聞く。

 

 

「ジャベリン……あの娘が?」

 

「ああ」

 

 

服に着いた埃を払いながら、目の前の女性は声高らかに自己紹介をする。

 

 

 

「ようこそグリフィンの皆さん!!私は貴方たちが守ろうとしている対象よ!名前はメグ・コーマック!よろしくね!!あとそこの小さな可愛らしい妖精さん、私と遊びましょ?」

 

「えっ、わ、私ですか!?」

 

「お 嬢 様 ? ? ?」

 

 

 

ちなみに彼女は可愛いものが大好きである。

 

 




ここでキャラ紹介。


メグ・コーマック

大農園の主、ジャガーソン・コーマック氏の愛娘。18歳。性格は快活で所謂お転婆。可愛いもの好き。戦闘力が高く、ジャベリンと白兵戦で拮抗するぐらい。頭もよく回り、時たまとんでもないイタズラをやらかす。その度にメイドのローゼにシメられる。ジャベリンとは幼なじみと言える。フラグは立ちません(重要)


ローゼ

この大農園に仕えるメイド人形で愛称はロゼ。数年前からここにおり、多くの農園での仕事を請け負っている働き者。メグのお目付け役でもある、完璧なメイドさん。けっしてスカートからグレネードは撒き散らさない。彼女は民間モデルと自称しているが実は……?


MP5

今回の任務でジャベリンと組んだ戦術人形。このチームの良心そのいち。まだ新米ながら事前の模擬戦闘では優秀な成績を修めている真面目な娘。何にでも好奇心を持っており、見た目相応な可愛さも持ち合わせている。いつか魔改造します。


WA2000

ツンデレわーちゃん。今は鳴りを潜めているが後々発症。何処の例にも漏れず可愛いもの好き。ポチにやられた。良心そのに。彼女はそれなりの場数を踏んでいるベテラン。MP5のお目付け役というか面倒を見るために派遣された、姉みたいな娘。


なんでキャラ紹介したって?メインストーリーで絡ませるからだよ!!
とりあえず続きをどんどん書いていきますよー。
それでは、感想及び評価は作者の執筆の支えです!どうぞどうぞお願いします!!それでは!!


4/3 違和感のあった部分を修正


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そのに

やっはろ。新生活で疲弊しています()
あと、30000UAありがとうございます!!なんとか頑張れそうです。

今回は怪しいやつが出てきます。
それではどうぞ。


あ、ちょっとしたコラボも書いたので……(しつこい)
URL:https://syosetu.org/novel/185223/28.html


「むふふふふうぅへへへへ……」

 

「あの……これは?」

 

 

一人の女性が一人の少女をあすなろ抱き。微笑ましい光景のはずがその少女を抱いている女性、メグ・コーマック……お嬢が犯罪者のような顔をしている為、台無しである。抱かれている少女、MP5は今一状況が掴めていない。現在俺たちは宿舎のロビーで休息中だ。何せ護衛対象がチームの一人を掴んで離さないからな。

 

 

「なーんでこんなに可愛いかなー?グリフィンも罪な企業だよねー?」

 

「ええっと……」

 

 

メグはMP5に首ったけで、ずっと抱き締めている。髪の毛を嗅いだり、埋めたり、セクハラ紛いのことを続けている。多分このままにしていたらずっと続けてるんじゃなかろうか……。彼女の顔が蕩けて来る。そろそろ止めようと俺が声をかけようとしたら、ローゼがお嬢のすぐ隣まで近づいてチョップを食らわせていた。お嬢は頭を押さえる。

 

 

「いぃったぁ……止めてよロゼ!!私は貴重な癒し成分を摂取してたんだよ!!」

 

「それでもです。皆様の前でみっともない姿を見せるのはお止めください」

 

「……はぁい、ごめんねフェンフちゃん?」

 

「い、いえ、全く問題ないです!それよりも、大丈夫ですか?」

 

 

MP5がふと彼女の頭を労るように撫でた。お嬢の目が点になる。だが直ぐ様歓喜に満ち溢れた顔になり叫ぶ。

 

 

「この娘可愛すぎーーーーーーもっと抱き締めちゃう!!!!!!!!!」

 

「きゃあっ!?」

 

「ふんっ!!!!」

 

「グェッ」

 

 

そのままMP5を抱き締めようとしたがローゼが当て身で気絶させた。俺以外が呆然とする最中、手早くMP5を丁寧に下ろしてのびたお嬢を俵担ぎで持ち上げて出入口へ行く。そしてこちらを振り向いて一言。

 

 

「お嬢様がご迷惑をお掛けしました、こちらでよく言っておきます。それと、よい夜をお過ごしになってくださいな。それでは」

 

 

ドアが閉まる。沈黙がこの空間を支配する。暫くして、WA2000が呟くように独り言を言う。

 

 

「本当に彼女民間モデルなの……?」

 

 

……俺も疑問に思うよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ジャベリン』

 

 

……んん、誰だ……?

 

 

『ジャベリン、起きろ』

 

 

何か聞いたことある声だな……?

 

 

『もしも起きなければ……』

 

 

……?

 

 

「君を好き勝手させて貰う」

 

 

 

 

 

 

 

「うおおぉおぉお!!!???!俺の体になにしやがんだぁぁああ!!!?」

 

「…………」

 

「酷い夢だった……」

 

 

水着姿のクルーガー社長が夢に出てきた。疲れてるな。せめてこの前のポチをもみくちゃにするふにゃりとした顔の代理人が出てきた夢にしてほしかった。

未だ眠いが体を起こす。ついでにスリープモードに入っていたポチも起きてきた。顔を洗い荷物からレーションを取り出して食べる。それを食べ終えた後はつなぎに着替えた。……静かにポチを連れて宿舎を出る。朝日が出始めており、目の前の道が照らされている。寒いなと、白い息を吐きながら、屋敷の前を通りすぎ、牛やら馬の居る家畜小屋へ向かう。途中、一輪車……猫車だったか?それと農業用フォークと干し草の塊を回収していった。ポチには持ちきれなかった餌を運ばせた。

 

家畜小屋へ入ると、早速牛の鳴き声が聞こえてきた。餌を御所望らしい。この農場は基本餌やりを人力でやらしている。何故かと言えば人間の仕事を少しでも増やす為だ。非効率なことこの上無いが、ジャガーソンはそれだけ雇用を増やして失業した人間を救おうとしている。

……俺手伝う必要ないよなぁ。確か百数人雇ってたはずだが。なんて思いながら餌を家畜たちにやっている。ある程度やり終えて休憩していると、一人の老人と、二人の若者がやってきた。

 

 

「精が出とりますな、ジャベリンさん」

 

「おー、じいさんか。新人研修か?」

 

「まぁ、そんなところだね。ほら、お前たち」

 

 

目の前の老人はここに仕えている執事だ。名前が分からないのでじいさんと呼んでいる。彼はジャガーソンが若い頃から仕えてる人で、彼からの信頼も高い。そんな彼の後ろにいる青年たちは、何だか何処かで見たことのある二人だった。

 

 

「あっ、はい!ボルゾイといいます、よろしくお願いします」

 

「ゾルディです。どうぞ、よろしく」

 

 

君たちあの時の武装集団の子達じゃないか…………生きてたのね。

これは日記に書くネタが増えたぞ。

 

餌やりも程ほどに、器具を片付けて宿舎に戻る。途中、ローゼと出会い、彼女から朝食を作るから早く戻るようにと言われた。それに手で応え、宿舎へ急ぐ。宿舎の入り口前で、制服を着たUMP45が柱に寄り掛かっており、俺に気づいて手を振ってきた。

 

 

「おはよう、ジャベリン」

 

「おはよう、45」

 

「その格好は?」

 

「仕事帰り」

 

「ふーん」

 

 

興味無さげな彼女を尻目に俺は宿舎に入り部屋に向かう。部屋に入り、つなぎを脱いで風呂場へと直行。そのままシャワーを浴びて、体を拭き、下着を履いて目の前に座っていたポチの汚れをタオルで拭いてやる。そのまま鼻唄を歌いながら脱衣場を出ると、45と9がソファーで寛いでいた。45がこちらに気付く。

 

 

「わお、いい身体」

 

「……何時から居た?」

 

「貴方が部屋に入ってから」

 

「ウッソだろ……」

 

 

気配もなく入ってくるとは油断できんな……というか9はなんでこっちを見て赤面してる。

 

 

「ジャベリン、私たちまだそういう関係じゃないでしょ?」

 

 

……そういや下着一枚だったわ。

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

 

「ふうむ……」

 

 

朝食を終えて戦闘服に着替えた俺は、外のベンチで脅迫状を前に唸っていた。何となく筆跡から特定できないものかと思っての行為だ。とはいえ推理小説みたく上手く行くはずもなかったので途中で投げ出した。ちなみに45たちはメグと一緒に果樹園で果物を収穫している。護衛を兼ねてのことだ。流石に何も起こらないだろう。

 

 

「……ん?」

 

 

ふと屋敷方面に続く道を見ると、じいさんと誰かが話していた。何やら火急の用なのか、ひそひそと話している。

 

 

「ポチ、集音」

 

 

隣に座ってたポチに情報収集をさせる。ポチは静かに接近して盗聴を始める。こういうのは些細なことでも情報は必要だからな。通信機をオンにして耳を傾ける。ただ距離が有るのか少ししか聞き取れない。

 

 

『_______で_______あとは_____』

 

(上手く聞き取れてないな……もう少し近付いてくれ)

 

 

ポチが近づく。

 

 

『そろそろ_____________ですな』

 

『ええ、私たちも_____________』

 

(……世間話か?)

 

『ただ、邪魔者も___________』

 

『たかが人形だ________だろう』

 

 

最初は世間話だと思ったものの、どうにも怪しい。ポチに命じて写真も撮らせておく。ポチも優秀だよなぁ……。

少しして、正面の二人組は別れて何処かへと行った。

ポチから送られてきた写真を確認する。ブレもなく撮れた写真を確認して、武器庫の専用無線を起動させ、とある人物と連絡をする。

 

 

「こちらジャベリン。スリンガー、聞こえるか?」

 

『こちらスリンガー。どうしたんだ?』

 

「今から送る写真の人物を特定してくれないか?」

 

『はぁ……ジャベリン、そういうのはスピアに頼んだらどうだ?』

 

「あいつは今国家保安局で仕事中だよ。それに解析やら何やらはお前が適任じゃないのか?」

 

『馬鹿言え、今は営業時間外なんだよ』

 

「報酬は出すぞ?」

 

『いくら?』

 

「五百」

 

『……仕方ない、やってやる。というかお前そんなにあったのか?』

 

「こちとら仕事に忙殺されて金が貯まりまくってんだよ」

 

『そうかい。スリンガーアウト』

 

 

『弓部隊』のスリンガーに写真を送る。日本のことわざじゃ餅は餅屋って言葉があったな。ポチを撫でながら一息つく。のんびりと草を食む牛を見ながらボーッとしていたら、WA2000がやって来た。お嬢はどうしたのか聞いたら、45に手を出して45とローゼに殴られて気絶したらしい。全く、彼女らしいな。

 

 

「誰かと話していたようだけど、何してたの?」

 

「仕事の話さ。知り合いにその筋のやつが居てね」

 

「ふーん……そういえば、貴方って何でグリフィンに雇われたの?」

 

「……上司が勝手に俺を出向させたんだ」

 

「……大変ね。隣座るわよ」

 

「おう」

 

 

隣にWA2000が座る。彼女の膝の上にポチが乗ってきた。

 

 

「あっ……」

 

「気に入られたな」

 

「……五月蝿いわね」

 

 

そう言いながら彼女は優しい目をしてポチを撫でている。ポチは撫でられて気持ち良さそうだ。本当、素直じゃないよな彼女……。

俺は気持ちのいい日差しと久々の澄んだ空気に微睡み始めた。気持ち良さそうに目を閉じてリラックスしていたら遠くから騒がしい音が聞こえてくる。

 

 

「ジャーベーリーーーーーーン!!!!!」

 

「……ワルサー離れてろ」

 

「え?」

 

「いいから」

 

 

ワルサーがポチを抱えて離れる。お嬢がこっちに向かって走ってきたのだ。俺は腰をあげ身構えて待ち受ける。お嬢が跳び跳ねて俺へと飛んでくる。それを俺は巴投げで更に向こうへ投げた。

 

 

「うひゃぁあぁああぁあ!!!!」

 

 

ゴロゴロと転がるお嬢。数m転がってからぴょんと跳び、綺麗に着地をした。アレ、何処かの競技会なら全て十点ってレベルだな……。若干引きながらこちらに歩いてくるお嬢を見た。隣のWA2000は呆れながらも少し心配をしてた。

 

 

「45たちに殴られて気絶したって聞いたが、随分と早い復活だな?」

 

「あれくらい慣れたものだよ、ジャベリン。それよりも」

 

「?」

 

「私と組手しましょ?」

 

 

……これは面倒なことになりそうだな、オイ。

 

 

 




ジャベリンくん護衛対象に容赦ない気がする……。


非常に申し訳ないのですが、暫く不定期更新にさせていただきます。どうにも身体が新生活に慣れてないせいか、執筆が上手く進まないのです。安定し始めたらまた三日に一回で行こうと思います。何かあったら活動報告にやっておきますので、どうぞよろしくお願いします。

ではでは、感想、評価は作者の心の支えとなります。ぜひともくださいな。それでは!!


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そのさん

不定期だから、出来たこと。
とりあえず出せる内に出しておかないと不味いんですよ。失踪なんてやりたくないんじゃい。


今回はジャベリンくんの身に何かが起きます。どーぞ。


93日目 曇

 

昨日、お嬢、メグ・コーマックと組手をした。なぜ昨日の日記に書けなかったというと、ちょっとサボってしまったからだ。

流石にな、あの元気の塊とやりあったあとは疲れるんだ。お嬢ははっきりいって強い。俺が防戦を強いられるほど格闘技に精通している。柔道空手テコンドー、はたまた薙刀やら棒術と、彼女は生まれる時代を間違えたのではないかとたまに考えたりしてる。

ちなみにお嬢との組手をかいつまんで説明すると、まず俺が彼女の襟を掴もうと手を伸ばせばその手を受け流してカウンターで回し蹴り、それを俺は防御して一旦後ろへ下がるも彼女が追撃で飛び込んでくる。それを俺は横に避けるが、何の冗談か直ぐに地面を蹴って急速に方向転換。お前は人間か。思い切り拳を叩き込もうとしてくるところで俺が腕を掴み一本背負い……しようとしたら体を巻き付けられてそのまま倒された。

ふざけてるよな?でも全くふざけてないし現実なのが辛い。

 

これで220戦中109勝101敗10引き分けとなる。ちなみに記録はローゼだ。彼女もマメなことだ。

これは余談だが周りで見ていた従業員や人形たちはかなり盛り上がっていたらしい。動画も撮られていたが、どれだけ娯楽に飢えてるんだか……。

明日も組手を頼まれたが……どうしようか。

 

 

_____________________

______________

________

___

 

 

「ん?」

 

 

ペンを置いて一息ついていると、外が騒がしい事に気がついた。窓から覗いてみれば、多数の集団が見えた。ローゼとジャガーソンが応対しているが、如何にも一触即発の雰囲気だ。よく見ればWA2000たちが武装をして警戒もしていた。

 

……あぁそういや書いてる途中何か呼ばれてたな、いっけね。

急いで銃をもってポチを連れ彼女たちへ合流する。ジャガーソンは集団の代表らしき男と話し合っている。俺の近くに立っていたMP5に様子を聞いてみる。

 

 

「MP5、どうなってんだこれ」

 

「あ、ジャベリンさん。ええと、人類人権団体の方々が急に押し掛けて来たらしくて、さっきからこの状況が続いてるんです」

 

「おおう……」

 

 

過激派の皆さんかな?場合によっちゃこいつら撃ち殺さないといけないんだけど……。

 

 

「何度も言いますがね、こちらが人間を酷使しているなんて事実無根ですよ。しっかり休日は取らせています」

 

「口では何とでも言えますでしょう?我々はあくまでちゃんとした事を聞きたいのであって、そんなつまらない嘘は聞きたくないのです」

 

「いや、だから……」

 

 

長引きそうだよなぁこれ……ジャガーソンさんだいぶ疲れてるぞ……45もそう思うだろ?

 

 

「人間って愚かね」

 

 

わお、目が笑ってない。というか隣の9も無表情だし怖かった。

9大丈夫?

 

 

「大丈夫だよ、ジャベリン。何時でも撃てるから」

 

 

うーんそうじゃないんだけどなぁ……あ、帰ってったな。ジャガーソンさんお疲れ様です。

 

 

「全く疲れたよ、このまま過労で死にそうだ。ジャベリン君、跡を継いでくれないかい?」

 

「元気みたいですね」

 

 

一先ず、何とかなったようで良かった。45達にはまだ寝ているであろうお嬢のところへ向かわせる。ジャガーソンは執務の為か屋敷の方へ戻り、それにローゼは着いていった。俺はスリンガーへ連絡を入れる。

 

 

「スリンガー、進捗どうだ?」

 

『こちらスリンガー、ちょうど良かったよジャベリン。写真の人物を特定できた』

 

「おっ、流石弓部隊副隊長。お前のところの隊長よりも役に立つな」

 

『トリガーは暗殺専門みたいなもんだろうが……まあいい、今から情報を言うぞ』

 

「おう」

 

『写真の老人だが、あれはとんでもない危険人物だ。お前が入院してるときにウチにカチコミかけてきた団体居ただろ?それを指揮してたやつだった』

 

「……おいおい」

 

『驚くのも無理はない、何せジャガーソンさんとこで仕事やりながらあんな芸当やってのけてんだ。相当な奴だぜ』

 

「スリンガー、俺はどうすりゃいい?」

 

『こればっかりは様子見だ。ああいう手合いはカマかけても平然とするような存在だ。社長に上申しとくか?』

 

「あー……やっといてくれ。こっちでも何とかしておく」

 

『了解、スリンガーアウト』

 

「……なんてこったい」

 

 

無線を切って頭を抱える。まさかあの人畜無害そうなじいさんがやべー奴だったとは……ということはあの脅迫状はなんだったんだろうか?誰かが私怨で送ったのか?

どちらにせよ、じいさんには警戒した方が良さそうだ。あとは社長が本腰入れてくれれば良いだろう。

とりあえずそう考えて出入口の階段に座る。空を見上げて今後の予定を考える。少なからずともお嬢にはじいさんを近付ける訳には行かないしなおかつ彼が連れていた二人組の青年も怪しい。だがそれをローゼやジャガーソンさんに伝えたとしても信じられる訳がないしWA2000や45に伝えておくぐらいに留めて置こう。

 

ふと、俺の目の前に影が差した。顔を上げるとUMP9の顔が眼前に現れた。

 

 

「うぉおぉっ!!?」

 

「やっ、ジャベリン♪」

 

「急に出てくるなよ!?」

 

 

心臓が飛び出るかと思った。未だ近いUMP9は張り付けたような笑みを浮かべている。思わず立ち上がろうとしたら、彼女が肩に手を置いてそれを阻止した。

 

 

「な、9?」

 

「さっきメグから色々聞いたんだ」

 

「な、何を?」

 

「家族ってどんなものなのか」

 

「そ、それで?」

 

「家族ってさ、色々な形があるんだよね」

 

「そ、そうだな。ちょっと俺急用が出来たんだけど」

 

「逃げちゃダメだよ?」

 

 

怖すぎる。何、お嬢何を吹き込んだの??何だか彼女何かを決心したような顔をしてるんだが……。

 

 

「ジャベリンってさ、私たちと家族でしょ?」

 

「何を、急に」

 

「答えて」

 

「……そうだ」

 

 

ここはいいえなんて選んだらバッドエンドルートだ。トライデントの持ってるゲームで見たことあるぞ、選択肢間違えたら死ぬやつだこれ。俺はこのパターンに何度も遭遇してるからな、おれはかしこいんだ。

俺の答えを聞いた9は満足そうに笑う。

 

 

「ふふっ……じゃあさ」

 

「?」

 

「家族としてのスキンシップ、しない?」

 

「は?何言って……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日から本当の家族だ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の視界は真っ暗に染まった。




どうしてこうなった。いや、感想とか見てたら思い付きましてね、色々修正してこうなった所存です。

やはり疲れますね、1日まるまる休みが欲しい()

それでは皆さん、感想及び評価は心の支えです。どうぞよろしくお願いします!!では!!!


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そのよん

UMP9はどこか狂っているが、何故か表だって現れることが少ない……が、今回はどうやらそのタガが外れてしまったようだ。彼女が家族だと言ってやまないジャベリンに、伝家の宝刀「ファミパン」を食らわす。さて、そのジャベリンの運命や如何に……。

それではどーぞ。







 

 

「……んん?」

 

 

気がつけば、見知らぬ天井が目前に広がっていた。体を動かそうとするが全くと言って良いほど動かない。ベッドに拘束されている。どうにかこうにかそれを解こうと四苦八苦していると、ドアの開く音が聞こえた。

 

 

「あ、起きてる」

 

 

入ってきたのはお嬢だった。おい貴様現状を説明しやがれ、それとこの拘束をどうにかしろ。

 

 

「あー、まあ、ごめんね。ちょっと9ちゃんには刺激が強すぎたみたいなの」

 

 

お前本当に何したの?

UMP9は心の奥底に狂気を孕んでるような感じだったけど謎の均衡を保ってたし今日までどうにか出来たのに何をアイツにやらかしてそのタガを外させるような事態を招いたんだ。

 

 

「えっと、トライデントさんの漫画を少し……と、あとは私が家族の形は色々あって、互いに好きなようにできることが大事って言っただけ……かな」

 

「それでこうなるってどうなんだよ……ともかく早く解いてくれよお嬢」

 

 

彼女にそう頼むがなかなか行動に移そうとしない。それどころか悪いことでも思い付いたような顔になっている。悪い予感を俺は感じ取る。

 

 

「……お嬢」

 

「ジャベリンも罪な男だからねぇ……たまには痛い目見たほうが、いいんじゃない?」

 

 

彼女は早口にそう言うと、早々と部屋から退出する。

 

…………痛い目なんて何度も見てるんだけどなぁ。諦観もした気持ちで天井を見ていると、またドアの開く音が聞こえる。恐らくUMP9だろう。

 

 

「おはよう、ジャベリン」

 

「おはよう、9。早速だがこの拘束を解いてくれないか?」

 

「駄目だよ、解放したら逃げるでしょ?」

 

「クソ……それで、何で俺にこんなことをするんだ?」

 

「ジャベリンと家族になるため♪」

 

 

あーヤバイヤバイ、お目目のハイライト仕事してないぞ働け。

一生恨むからなお嬢とついでにトライデントォ!!!

 

ぎしりと、9が俺に跨がってまとわりつくように俺へくっつく。うーんなんだか扇情的、ピンチになればなるほど冷静になる自分に笑ってしまう。

まとわりつく9は嬉しそうにしている。

 

 

「子供は何人がいいかなぁ?名前も何個か決めてるし……あぁでも人形じゃ子供は作れないんだっけ?でもそういう時は孤児とか育てるのもいいかもね。ジャベリンと私の子供、楽しみだなぁ……えへへ。そうだ、お家とかどうする?慎ましやかな家か、それとも45姉とか416、G11も住めるくらい大きな家?あ、ポチとかオスカーも居たね、あの子たちだって家族だし一緒に遊べるくらい広い庭だってほしいよね?子供と目一杯走り回って疲れたらお家で休憩とかさ、そこでジャベリンとか私が飲み物とかお昼とか持ってきて一緒に食べてさ、ジャベリンに私があーんとかしたり、ジャベリンが私にあーんとかしたり、とにかく家族みたいたことしてみたいよね。そういえばお仕事とかどうする?ジャベリンって紅茶淹れるの上手かったよね、喫茶店でもやってみようよきっと上手く行くもん。だってジャベリンと私、あと45姉達だって居るしね。ねぇ、ジャベリンそのためにさ私と家族として大事なことしよ?私、戦術人形だけど、そういうことだって得意なんだ。だから、ヤろう?」

 

落ち着け????

 

 

うーんこれは重傷、この前のM16みてぇだ。てか待て待て待て、股チャック開くな俺のマグナムは正直なんだやめろ、やめっ、やめろ!!!!!!!!!!

 

 

「ジャベリンさん緊急じた…………い…………えっ?」

 

「あ」

 

「お、おおお邪魔しました!!!!!!」

 

「待って!!!!!!!!!!」

 

 

俺の貞操の危機だから!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、何やってたんですかもうっ!!」

 

「ナニされてた……」

 

「ナニしてただけだよ?」

 

「ううぅ……破廉恥です……」

 

 

申し訳ねぇ……。

 

MP5に拘束を解かれた後、俺とUMP9は床に座らされて彼女に説教というか色々聞かれた。包み隠さず言うとまぁ、ナニされたとしか言えない。赤面をするMP5。なんだか先程の事を思い出すと目の前の彼女が天使に見えてくる。ぶっちゃけ今回のチームでWA2000に並ぶ良心だと思う。

 

まあ、それはともかく。

 

 

「そういえば火急の用にみえたけど、どうしたんだ?」

 

「え?あっ!!そうだった!!」

 

「メグちゃんが誘拐されたんですよ!!!!!」

 

「おい嘘だろ!?」

 

 

一瞬MP5のメグちゃん呼びの方にビックリしたがそれよりもっとお嬢が誘拐されたことに驚いた。さっき別れたばかりでしかもあのバトルジャンキーが不意を突かれたとはいえ下手な人間に誘拐されるなんて信じられない。直ぐに動くことにした。

 

 

「MP5はとりあえずお嬢を探せ!9、銃は?」

 

「はい!」

「ポチに持たせてるよ」

 

「了解。ポチ!!」

 

 

名前を呼ぶと待ってましたかのようにポチが俺の銃をもって扉から飛び出てくる。MP5はそのまま早足で部屋を出ていった。

俺は銃を装備して9とポチを連れて走る。一応9も任務に忠実だよなぁ。

 

建物、というかお嬢が寝泊まりしていた離れから外に出て走っている最中9と話す。

 

「9」

 

「何?」

 

「家族ってのは無理矢理なるもんじゃないぜ」

 

「……そうだね。私、ちょっと混乱してたみたい」

 

 

やっぱあれ混乱してたんだな……。

俺は更に彼女へ言い聞かせるように言う。

 

 

「だからさ、またゆっくりと話しながら互いに理解を深めよう」

 

「うん……」

 

「家族になるのはそれからだって遅くないからな、よろしく頼むぞ」

 

「……何だかプロポーズみたいだね」

 

「不味かったか?」

 

「いや……えへへ、むしろ嬉しいよ」

 

 

にへらと笑った彼女。俺はそれにサムズアップで答えて、走り続ける。ポチへ45かWA2000に合流するように信号を出して別れる。そしてローゼに通信を飛ばす。確か彼女は無線を持っていたはずだ。

 

 

「ローゼ、聞こえるか?」

 

『ジャベリン様!大変です!!』

 

「分かってる!お嬢がどこに連れ去られたか監視カメラでも何でも使って突き止めてくれ!!後で情報をくれ!!」

 

『承りました!一応万が一の為に従業員にも武装させておきましょうか!?』

 

「頼んだ!ジャベリンアウト」

 

 

一先ず俺たちは目ぼしいところを探し続ける。この農場は広い分、点々と従業員の宿泊用の施設があるため、ここから近い宿泊施設へ向かった。

 

 

「ジャベリン、9!!」

 

「あ、45姉!!」

 

 

途中、俺たちが走っていたら、UMP45と合流した。たまたま近くに居たようだ。彼女が珍しく真剣な表情をしている。

 

 

「どうしたんだ?」

 

「今朝の奴らが銃をもってこっち来たのよ。何とか農場の人間が応戦して食い止めてるけど、どうなるか分からない。早く来て頂戴」

 

「何だと!?」

 

 

あのじいさんやりやがったな!!というか護衛任務始まってから行動起こすの早すぎだろ!?絶対前から計画してたな!!とはいえ多分あれは陽動だ、あの野郎のことだから裏があるはず。それと恐らくお嬢もじいさんのところに居るはずだし。親しい仲だからこそ騙しやすいってのもあるからな。

その事を二人に伝えて、UMP9を45と共に人権団体のところへ向かわせる。俺はスリンガーに通信を飛ばしておく。

 

 

「応答しろスリンガー!!」

 

『聞こえてる。ずいぶんとしてやられたな、羨ましい』

 

「てめぇ見てたな!?まあいいとりあえず聞け!!」

 

『分かってる。もう剣の連中を送った』

 

「ナイスゥ!!いつか俺ん家近くで見つけた焼き肉奢ってやるからな!!」

 

『言質とったぞ。スリンガーアウト』

 

 

スリンガーとの通信を切り、今度はローゼに連絡をする。

 

 

「ローゼ、どうだ?」

 

『丁度良かった。先程ドローンで確認したところ、お嬢様と執事長さまとボルゾイ、ゾルディとその他諸々が離れの方面へ向かっていました。急いでください!』

 

「行き違いかよ!!分かった、すぐ向かう!!」

 

『私とご主人様も向かいますので!』

 

「は!?」

 

 

えっ、ローゼはともかくジャガーソンさん戦えるのか?

驚く俺を無視して彼女は続けて言う。

 

 

『何を驚かれているのですか!ご主人様は元軍人で貴方ところの社長とは長い付き合いですし、元狙撃兵ですよ?』

 

「長い付き合いって……グリフィン?武器庫?」

 

『どちらもです!!それよりも早く行って下さい!』

 

『そうだぞー私は結構凄いんだぞーだからあだぁ!!?』

 

『ご主人様は黙って動く!!』

 

 

そのままプツンと通信が切れた。とりあえず、彼女たちと合流できりゃ御の字だがなかなか難しいだろう。俺は離れへ走っていく。

 

数分走った後、離れへと到着。離れは不気味なほど静かであった。少し怪しい気がしたがお嬢を一刻も助けるためにも急がなければならないため、ローゼたちと合流もせずに離れへと入る。鍵も掛かっておらず、また誰も居ないため抜けられたかと疑ったものの、声が聞こえて来たため、そちらへ向かう。声は一階の隅の部屋から聞こえており、扉越しに聞いてみると、お嬢とじいさんの話し声が聞こえてきた。たまに笑い声も聞こえてきた。

 

 

(……完全に騙されてるなこいつぁ)

 

 

壁に身を預けて一呼吸を置き、突入の準備をする。残弾を確認、そして思い切り扉を蹴破って中へ入る。

 

 

 

 

 

 

 

……その先には一つのスピーカーが有るだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……騙されたな」

 

 

そう呟いた瞬間に、俺の意識は途切れた。

 

 




ジャベリンくん二度目の暗転。どうなるのだろうか……。


更新のお話なんですが、基本不定期で土日は一話以上更新するという形に落ち着けそうです。土日に行くバイトが楽しくて心に余裕が出来たんですよ。良かった。


さて、次回もどうぞお楽しみにしててくださいね!この作品に対する感想や評価は執筆の支えです!どうぞお願いします!!それでは!!


4/7 違和感を修正


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そのごのおわり

おわりおわり。
事件が終息していきますぞ。さあどーぞ。







俺は生まれてこの方任務の失敗ってのはやってしまったことが何度かある。とはいえそれはただ単純に些細なものだったり、相手方が予想外の行動を起こしたりして対象が死亡と、多少の信頼が落ちるとはいえそれが致命的なこと、とりわけ死にかけることになるという訳では無かった。生きてりゃ儲けとも言える。

 

 

 

今は違うがな。

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

「余り気分が優れていないようですな、ええ?」

 

 

誰のせいだこの野郎。

反抗的な目で睨み付ける先にはあの執事のじいさんと昨日じいさんと話していた男が居る。男の方は余程俺の視線が気に入らないのか殴ってきた。殴られた拍子で口の中が切れたのか鉄の味が口腔に広がる。

 

現状を説明し忘れてたんだけど、俺は今捕まって何もない部屋に監禁されている。縛られるのは今日で二回目だな、ははは。いや笑えないか。貞操の危機の次は生命の危機なんて誰が予想するかよ。というか俺を監禁する理由が見つからない………訳でもないな。じいさんにとっちゃカチコミかけたPMCで返り討ちにされてたし、その会社から定期的に社員、しかも隊長クラスがよく来てる訳だし。そりゃ要注意人物として扱われるか……。

 

 

「どうにも、ジャベリン殿は行動が早すぎるのですよ。私みたいにじっくり計画をして然るときに行動を起こすべきだと思いますがね」

 

「それでカチコミかけた所に返り討ちなんて笑えるな、じいさん」

 

「……はっはっはっ!こりゃ一本取られましたな」

 

 

じいさんは一頻り笑った後、隣の男に命じて、俺を殴らせる。何度も殴られる俺を見ながら満足気に部屋から出ていく。

 

 

「ま、こっちには人質も居ますからね……それでは」

 

 

扉が閉まる。男が殴るのをやめて、椅子へ座った。俺は男に話し掛ける。

 

 

「……なぁあんた」

 

「何だ」

 

「お嬢を人質にした理由って分かるか?」

 

「何をいきなり……まあいい、どうせお前は何も出来ないからな、いいだろう」

 

 

油断してんなぁ……中枢がしっかりしてても末端が駄目ならそこから崩れる可能性もあるのを知らないのかこいつ。俺が情報端末を隠し持っている可能性だってあり得るのに……まぁ持ってきてないけど。これは単純な好奇心とかそういう類。どちらにせよ剣部隊向かってるし直ぐにこの騒動終わるだろうけどな。

それから男が話し始めたが、内容は人類はもっと人形に代わって働くべきだとか、この農園は人形を多用していてけしからんだとか、まあ人権団体らしい事ばかりを言っていた。……そういや、じいさんがウチにカチコミかけた理由って何なんだ?他に思惑があるんだろうか……まあいいか。

 

 

「そもそもだ、人形ごときは人間に媚びておけばよいのだ」

 

「そうね」

 

「ん、誰うぐっ!?」

 

 

バチンッという音と共に男が倒れた。倒れた男の背後からWA2000とポチが現れる。……最高にツイてるぜこりゃ全く。

 

 

「無事?」

 

「何とかな。どうして俺の居場所が分かったんだ?」

 

「ポチが私と合流した後に突然何処か行きだしたのを追いかけただけよ。貴方、本当に愛されてるわね」

 

「そりゃどーも」

 

 

彼女が拘束を解いてくれた。そして、俺の銃を渡してくれる。どうやら探してくれていたらしい。感謝を彼女へ述べる。

 

 

 

「か、勘違いしないでよ!あんた、武器がないと困るから探してあげただけなんだから!!」

 

「いやそこでツンデレ発揮する??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ローゼー……聞こえるかー?」

 

『こちらローゼ、現在執事長をドローンで追跡中です。それより一人で行動しないでください、心配してしまいますから』

 

「そりゃ申し訳ない」

 

 

男を拘束して、離れから出た俺たちはローゼに連絡をした。どうやら現在追跡中らしい。

 

 

『兎に角、生きてて何よりです。今から迎えに行きます』

 

「間に合うのか?」

 

 

俺がそう言った瞬間に、真後ろで大きなブレーキの音がする。

 

 

「間に合いますとも」

 

「……そうだな」

 

 

後ろを振り向けば、装甲車の運転席から身を乗り出したローゼが。しかも肩にG36を引っ提げていた。WA2000がやはり懐疑的に彼女へ問う

 

 

「ロゼって本当に民間モデルなの……?」

 

「再三言いますが、民間モデルです」

 

 

取り急ぎ装甲車へ乗り込んでいく。車内には口笛を吹きながらSV-98にマガジンを入れているジャガーソンが居た。俺たちを一瞥しておどけるように口を開いた。

 

 

「ヒーローは遅れてやってくるとはこの事だね、ジャベリンくん?」

 

「馬鹿言わないでくださいよ……それより、戦えるんです?」

 

「これでも腕は落ちてないつもりさ。隣のワルサーくんにも負けないくらいだ、ん?」

 

 

ジャガーソンの挑発的な言葉に対してWA2000は少し乗り気になったのか、不敵な笑みを彼に返してシートに座る。俺も助手席へ座り、ポチを膝に乗せた。ローゼは全員座ったことを確認して出発する。アクセルを限界にまで踏んだ装甲車はすぐさまトップスピードでじいさんたちが乗っているであろう車両に追い付いていく。

俺たちの接近に気づいたのか、周りに居た車両から何人かが乗り出して撃ってくる。

 

 

「うおぉ……奴さん結構撃ってくるな」

 

「イラつきますね……ご主人様」

 

「任された。ワルサーくんもやるぞ」

 

「了解したわ」

 

 

弾が飛んでくる中、ジャガーソンとWA2000が応戦する。二人の正確な射撃は乗り出していた奴らを次々と仕留めていく。全員を無力化して、今度は運転席を狙ったようだが、防弾仕様であったせいか抜けなかった。

 

 

「随分と用意周到ね全く!」

 

「それだけ本気ということだ!!だが娘を誘拐された今、私にせよロゼにせよどうにかしてみせるぞ!さあロゼ、やってくれ!」

 

「承りました。ジャベリン様、少しハンドルを」

 

「お、了解」

 

 

ローゼに代わり俺がハンドルを握る。彼女は驚くことに装甲車の上へ登り、そのままぶら下げていたG36を構え、目の前の車へ引き金を引く。瞬間、走行中だった車二台が蛇行運転を始めたかと思えばそのまま横転していった。

……彼女まさかガラスに穴空けてそこへ更に弾ぶちこんだのか?WA2000は目を見開いて驚いているしジャガーソンさんも同様に驚いてるんだけど……。

 

 

「有難うございました、ジャベリン様。運転代わります」

 

「ええと、ローゼ。さっきのは一体……」

 

「あのような芸当もメイドの務めですから」

 

「えぇ……」

 

「やっぱり民間モデルじゃないわよ……」

 

 

WA2000が呟く。俺もその通りだと思う。ジャガーソンさんにしても首を捻ってた。まあ、それはともかく……これで邪魔者は居なくなったから距離を詰めることが出来る。ローゼがまたアクセルを踏み、じわじわと近付いていく。

 

 

「このままぶつけますよ!!」

 

「お嬢はどうすんだ!?」

 

「お嬢様ならこのくらい平気です!!」

 

 

このメイド正気か!?というか何でジャガーソンさん止めないの!?え?信じてるぅ!?信頼し過ぎだろオォイ!!ワルサーは!?ワルサーも!?

 

まともなのは俺だけか!!という言葉も置き去りに、車はどんどんスピードを増していく。というかこれどんだけスピード出るんだよ!?エンジン魔改造してんのか!?

装甲車は目の前の車まであと数メートルとなっている。ローゼが叫ぶ。

 

 

「さあ捕まっててくださぁっ!?くぅぅ!!」

 

「どぉっ!?」

 

 

と同時に目の前の車が急ブレーキをして止まったので、慌てて避けた。そしてローゼが巧みなハンドル捌きとブレーキで急停車する。片輪が浮いたものの、横転することなく停車。直ぐに装甲車から降りて向かう。車を包囲するように近づいて銃を構えた。

 

 

「何で急に停まったんだ全く……」

 

「何が起きるか分からないわ、気を付けて」

 

「了かオグッ!?」

 

「ジャベリン!?」

 

 

突然車のドアが開いて何かが俺の腹部に直撃する。俺は数m後ろに下がって倒れてしまった。

皆が駆け寄る中、腹部に直撃してきた物体を見る。

 

 

「なっ!?」

 

「執事長!」

 

 

飛んできたのはじいさんだった。白目を剥いて気絶している。今度は車からお嬢がゾルディくんとボルゾイくんの首根っこを掴んで現れた。彼女はしてやったりな顔をしていた。

 

 

「全く……私を誘拐しようなんて、甘すぎるよ!!!!!!!!!!」

 

 

うわっはっはっはっ!と高笑いするお嬢。その光景にふと俺は呟く。

 

 

「これって俺たちくたびれ儲けじゃ……」

 

「それは言わない約束です」

 

 

 

 

 

 

 

騒動は、それはそれは直ぐにあっけなく終了した。ちゃんちゃん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日談のようなもの。

じいさんやら縛った男は武器庫の治安部隊が連行していった。従業員と衝突していた集団というと、支援に来た剣の奴らと45、9、MP5の活躍のお陰で無力化、そして数人ほど拘束に成功したらしい。じいさんも浮かばれないよな……綿密に計画したはずの作戦がイレギュラーの発生で失敗、あえなくお縄に掛かってしまうってな。

 

あ、そうそう。あのゾルディくんとボルゾイくんに関してなんだが、武器庫とグリフィンの両方に雇われることになった。俺と同じ道を行くということだ。……何でかって?俺の手回しだよ。彼らはあの時の代理人無双を生き残った人間な訳だし、判断力やら何やらはあるはずだからな。正直牢屋に入れておくのは惜しい。一応、槍部隊に配属ということで、ゾルディくんは「パルチザン」、ボルゾイくんは「パイク」というコードネームが与えられた。彼らは暫く研修で各部隊長たちによる訓練をすることになっている。辛いだろうけど槍部隊は何でも屋だから仕方ないよね!

 

それと、ジャガーソンさんが卒倒する様なことが起きた。それはお嬢が騒動がある程度落ち着いて、遅めの夕食を食べている時に突然、

 

「私、グリフィンの指揮官になる!!!」

 

って言ったとのこと。その時俺は戦後処理やら何やらに追われてたからあまり預かり知らない。ただ、その彼女が指揮官になる理由が「こんな可愛い娘達をどこぞの知らん馬の骨みたいな男に指揮なんてさせるものか」っていうことだけは判明している。下心マシマシじゃねえかとか思ったよ。とはいえ彼女は必死に勉強を始めていたので何も言わない。

ジャガーソンさんめっちゃ渋りそうだよなぁ。というかお嬢がグリフィンに就職したら圧力とか掛けていきそうだなぁ……。

 

漸く、事態も終息してこれといった事もなくなった俺たちは、ジャガーソンさん達に見送られて輸送車で帰っている。相変わらず俺の両隣にはUMP姉妹が座り、WA2000とMP5がポチを愛でている。俺が運転手に助けを求めても中指を立てられる。やってられねぇ……けどまあ、疲れたしいいか。なんて思う。UMP9は今回の事があってかよりこっちにくっついてくるし、UMP45はそれに気づいてるのか気づいていないのか、ずっと俺に微笑みかけていた。ポチ……俺もう疲れたから変わって……変わりたくない?そりゃそうだろうな!UMP9が更にくっついてくる。

 

 

「えっへへ~♪」

 

「何があったのか聞かないでおくけど、ジャベリンも随分とたいへ……愉快なものよね」

 

「オイ何で言い換えた」

 

 

いや、俺の責任ってのもあるんだろうけどな……ややぁ……俺もたらしになってしまったのだろうか……。

そう独り考えながら前に広がる外の景色を見た。遠くには大きなビル群が見えており、もう暫くしたら到着するだろう。何とはなしに疲れを抜くように息を吐いた。

 

次の任務ってなんだろうなぁ……。

 

 

 

 

 

 

 




警護ですよ(盛大なネタバレ)
指揮官候補が生まれましたねぇ……彼女はどこの配属になるんでしょうかね(すっとぼけ)

さて、未来の指揮官と、槍部隊に新顔が出てきました。パルチザンくんとパイクくんは槍部隊の面々と同じくちょいちょい出そうかと思ってます。なーんかどんどん風呂敷広げすぎた感ありますねぇ……。まあジャベリンくんが主人公だから大丈夫か!!
次回はようやっと鉄血工造での任務です。閑話を挟んで突入しようかと思っております。

それでは皆さん、感想及び評価は作者の執筆に拍車がかかります!!是非お願いします!!それではまたこんど!!


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閑話
傭兵、大変だったってよ。


閑話です。ジャベリンくんは珍しく平和な日常を過ごしていきます。

それではどーぞ。


94日目 晴

 

今この日記では94日目なんて書いてるが、実際は半年近く経ってる。何でこんなに時間が飛んだのかっていえば、俺のプライベートやら何やらがより忙しくなってたからだ。何せ長期間にかけて新人のパルチザンやパイクをみっちり教育してたし、M16からの便りで『AR小隊』なるものが結成された事を知り、なおかつそのAR小隊と槍部隊でちょっとした合同訓練をしたりしてて大変だった。真面目にブラックだ。過労死寸前でドクターストップが入ったのでこうやって落ち着いて日記が書けている。この半年で本当に色々変わった。グリフィンはより大きな企業となっていて、うちの武器庫を買収でも出来るレベルにでもなってるのではないのだろうか?

それをやられていないあたり、社長がクルーガー社長とうまくやってくれてるのだろう。うちは社員の大半が人間であるため、なかなか規模を拡大できない。やはり戦場を走る分怪我もするし武器も何も消耗してしまうから、医薬品や弾薬その他諸々の補填で予算が持ってかれたりするのだ。あと新人教育でも金はかかるからな。いや、戦術人形を利用出来るようになった分それだけ楽になったしわりかし予算に余裕が出来てもいる。うちの会社もそれなりに規模を広げる準備でもするべきか?

 

そういえば、93日目あたりに出てきたじいさんは人類人権団体の過激派の幹部らしかった。何でジャガーソンさんの農場を襲ったのかと言えば、どうにもあそこを占拠して実効支配をすることにより、食料などを人質に取引先やらに交渉もといおねだりをする魂胆らしかった。中々やべぇことをするもんだな。

 

……明日は休みだし、ゆっくりするとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

95日目 雨

 

オスカーを撫でながらテレビで番組を見ていると、一人の戦術人形が俺を訪ねてきた。UMP40という、名前らしい。恐らく45と9の姉妹なのだろう。俺はちょっとだけ身構えたが、彼女の雰囲気はそれほどヤバいって訳でもなかった為、今すぐに叩き出すような事はしなかった。とりあえず何故ここに来たのか聞いてみれば、45から色々聞いたりして興味を持ったとのこと。ただ単純に俺と交流したいだけであったらしい。

彼女を部屋に入れて、軽く世間話をした。あと紅茶を褒められたので少しだけ高いお菓子を彼女へ出してあげた。

一時間ぐらい話したあとに、彼女は帰っていった。彼女が帰ったあとで、俺はまた紅茶を淹れて社内報を読みながら雨の日を過ごしていく。本当に久々の休日だからより有意義に行こう。

 

 

 

 

 

 

 

 

96日目 曇

 

今日はバイクでオスカーとポチも連れてツーリングをしてきた。目的地は国が管理している自然保護区だ。前方に籠を設置してそこに二匹を入れて出発。安全運転だ。スピードは落としているものの、俺が乗っているバイクはなかなか良い走りをしてくれて、何処の道も過不足なく走ってくれた。途中、バイクライダー達が集まっている所に遭遇し、ちょっと話した。彼らはよくここらへんまで走っているらしい。彼らが乗ってきたバイクは今はもはや珍しい大戦前のバイクやら今時の大型電動バイクまで、色々なバイクがあり、博物館と言っても差し支え無かった。

 

いやはや、たまにはこうやって出るもんだな。一人のライダーがどうせなら一緒にということでツーリングに誘ってきたが、今はオスカーとポチを連れてきているので断った。またの機会に行きたい。ガソリン代が馬鹿にならんがね。

 

ツーリング集団と別れたあと、休憩を挟んでまた出発した。自然保護区に近づくに連れて、視界に緑が増えていく。オスカーとポチは興奮しているのか、身を乗り出して景色を眺めていた。一面が緑に染まり始めたときには、鳥だとか、野生の動物だとかがちらほらと見え始める。道なりに進んで行けば、高台に到着した。バイクを停め、ポチとオスカーを下ろして高台へ歩く。

二匹は全てが新鮮に見えるのかまじまじと周囲を見回している。オスカーに限ってはへっぴり腰で歩いてた。可愛い。オスカーを抱き上げてまた歩く。空気が清々しく気持ちが良い上に、高台から見た景色は疲れていた自分を癒してくれるような絶景だった。今までの疲労感が抜けるようだ……。

 

また今度行きたいものだ。

 

 

 

 

 

 

97日目 晴

 

社内報を見る。今回の特集は猫特集だったのだが俺の思っていたものと違った。猫耳着けた戦術人形なんて聞いてない。俺は猫を見たかったんだ。

とはいえ見目麗しい戦術人形が猫耳としっぽを着けて思い思いのポーズをしているのは眼福と言えば眼福である。特にIDWという戦術人形はより猫らしかった。この子撫でたいとさえ思ったのだがオスカーがそれを察知したのか本気で噛んできた。

 

ちょっと血が出たので手当てをしていると、G11が訪ねてきた。早速彼女を招き入れて紅茶を出した。共に紅茶を飲みながらとりとめのない話をしていたら、今度は416が訪ねてくる。どうやらG11はサボる為にここに来たようで、G11は彼女から逃れるためにトイレへ籠った。だがコインを挿せば開くタイプの鍵だったので直ぐに連行されていった。南無三。

 

テレビを見ながらふと明日の仕事について思い出す。明日はパルチザンとパイクの初任務だったはずだ。仕事内容は長距離輸送トラックの護衛だったと思う。一人か二人別口で傭兵が来るらしいがどんな奴なのだろうか。変に撃ちたがりの奴らじゃなければいいのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

98日目 晴

 

一緒に任務を行う傭兵は代理人とUMP40だった。冗談だろ……。

 

 

 

 

 




代理人とUMP40という組み合わせ……何かあるな??(そうでもない)

次回イベでUMP40出てくるらしいですね、だからちょっと出してみました。次回も日記形式で行きますよ。あとほのぼのですよ、ほのぼの。
さて新人教育をやる上になんだか起こしてきそうな二人組と組まされるジャベリンくん。彼は一体どうなるのか!?

それでは感想及び評価は作者の執筆の支えです!!どうぞお願いします!!それでは!!


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傭兵、輸送車両の護衛だってよ。

今さらなんですがタイトルは結構適当です。何かそれとなく文章に関係した単語をそれっぽくしてます(((

それではどーぞ。


99日目 曇

 

土煙の舞う荒野、視界が狭まるほど濃く、運転し辛い。俺はとある運送会社の輸送車両の護衛任務に従事していた。この任務は3日かけての任務となる。

四人ほどこの護衛に就いており、二人は俺の部隊の新人パルチザンとパイク、もう二人は代理人という戦術人形とUMP40という戦術人形だ。あとついでにポチも居る。

ちなみに代理人とUMP40は面識があるらしく、驚いた。

 

現在は前方、後方に別れてジープで移動中だ。パルチザンとパイクと俺は後方、代理人とUMP40とポチは前方で見張ってる。これといった障害もなく移動できているものの、ここから進行方向数km先は時たま輸送車両が襲われることがある地帯だ。そろそろ警戒を強めた方が良さそうだ。

 

新人二人はガチガチに緊張しており、昔の俺を思い出すようで面白かった。とはいえこのままにしておくのは駄目なので軽く話しながら緊張を解していく。

途中通信でUMP40も加わり、パルチザンもパイクも段々と話すようになってきた。UMP40には感謝だ。

 

暫くして輸送車両が停まった。何事かと思えば、単純に休憩をとるだけだった。ついでなので、パルチザンとパイクに仮眠を取っておくよう命じて俺は水筒に入れていた紅茶を飲みながら休憩する。今後の予定を考えながら居ると、代理人がこちらにやって来た。彼女の手にはエナジーバーが二本あり、一つ俺に渡してきた。

それを食べながら、代理人に何故UMP40と面識が有るのか聞いてみるが、彼女ははぐらかすだけで肝心の部分は答えてくれない。彼女がこうやって誤魔化すのはいつもの事と思っていたので余り詰め寄るようなことはしない。ふとUMP40がポチを連れて来た。どうやらここまで賢いダイナゲートは珍しいらしい。そりゃそーだ、ポチだし。俺が自慢気にしていたらUMP40が何故か俺を擽ってきた。不意討ちだった為変な声が出てしまい、代理人とUMP40に笑われる。勘弁してくれ。

 

少しして、輸送車両の運転手から今日はこのままここで野営をすると伝えられた。そうと決まれば早速パルチザンとパイクを起こしてテントの設営を行う。設営を終えたら今度は食事の準備だ。代理人がスカートの中から食材と調味料と料理器具を取り出して料理を作り始めた。お前のスカートは四次元ポケットか。

ちなみに彼女の料理は絶品だった。彼女は一体何処に向かってるのだろうか……?

 

 

 

 

 

 

 

100日目 晴

 

テントを片付けて、俺たちは出発した。今度は色々配置換えして、俺と代理人とポチ、パルチザンとパイクとUMP40となった。輸送車両は危険地帯を走っており、油断なく警戒をしていなければならない。

そうやって走り続けていると、早速数百mほど先からジープの集団がこちらに向かっているという報告が来た。全員に戦闘準備をするように伝える。俺は運転手なのでどうにもできない。奴らが100mほどにまで近づいて来たときに、鉛弾が飛んでくる。反撃の合図だ。すぐさまこちらの銃器が火を噴いて身を乗り出していた奴らを蜂の巣にしていく。

運転手以外死亡したためか、襲撃してきた奴らが慌てて帰っていった。撃退は成功したようだ。運転手にはもう少し急ぐように伝えておいて、こちらも車のスピードを上げた。

もう少しで危険地帯は抜けるのだが、この先は道が狭くなっている上に周囲の見通しが悪くなっている。だが他の道はより危険であるためそこを通るしかない。この前ペルシカリアがポチに装備させた(魔改造した)全方位レーダーを起動させる。端末で何処に何があるのか確認するが、特に何かがある訳でも無かった。

一応何かしらのカモフラージュが施されている可能性を考えて通信で周囲警戒を怠らないように伝える。

 

何事もなく過ぎたけどな。

危険地帯を抜けた後はもう走るだけだった。気を抜いて脱力していると、UMP40から緊急通信が入ってきた。嫌な予感を覚えながら内容を聞けば、後方から10台以上の装甲車がこちらを追いかけてきているらしい。

 

……ついてねぇなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

101日目 雨

 

昨日の窮地は何とか脱した。というか代理人の独壇場だった。彼女、スカートからサブアームに取っ付けた20mm機関砲を出して一方的な蹂躙劇をしたからな。鉄血工造ってなんでこんな恐ろしい戦術人形作り出したんだ。訳がわからん。たかだかライフル弾を防ぐだけの装甲車なんて紙も同然に破壊されていったし。I.O.Pも変態だが鉄血工造も大して変わらんな。

蹂躙劇が終わったあと、パルチザンが火力は正義だなんてうわ言のように言ってたのだが、変な方向に向かわないよう願う。槍部隊は変人の巣窟じゃないんだぞ。……多分。

 

輸送車両が目的地に到着したあとは、次の護衛に任命されていたPMCへ任務の引き継ぎをして帰還する。夜通しなので少し大変だが仕方ない。

帰りの車内配置は俺と代理人とUMP40、パルチザンとパイクとポチということになった。帰還途中ということもあってか空気が軽い。UMP40は目を煌めかせながら代理人の蹂躙劇を褒めてたし、満更でもないのか代理人はスカートから馬鹿みたいに高いであろうお菓子を出して、UMP40にあげていた。いや本当に何処から取り出してるんだ?

 

それと通信機がオンになったままなのかオープンチャンネルで、パイクがポチを猫なで声で愛でているのを聞かされる羽目になった。UMP40は爆笑、代理人は吹き出しそうなのを耐えていた。途中でパイクがそれに気付いて急いで通信を切ったがもう遅いだろう。

 

暫くはこのネタで彼を弄ろうと心に決めた。

 

朝日が見えたころに、出発地点に到着。車を片付けて、代理人、UMP40と別れる。ホテルへ向かう途中、軽くパルチザンとパイクと反省会をしておいた。彼らの初任務は成功で、働きも申し分はない。俺も良い新人を掘り出したもんだ。

 

明日も早い、さっさと休むとしよう。そう思いながら個人メールを確認してみると、一通だけ届いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……鉄血工造の警備任務ってどういう事だ?






「これでよし……と」

「どうかなされましたか?」

「いや、ちょっとね」

「何だか楽しみ、というような顔ですね」

「んー、まあね。それにしてもジャベリンって面白そうな人だよねぇ」

「否定はしません」
















ドーモサマシュです。何か不穏だな??
さてさて、ジャベリンくん今度は鉄血工造に出張です。短い間ですが鉄血のハイエンドモデル達とも交流していきますしダイナゲートの集団にも襲われます。そしてその先に起きる蝶事件では……。次回もお楽しみに!
ネタバレ云々集めてたけど、この作品私完結できるのかなぁ……こじつけOKですか!?

感想及び評価は心の支えです。どうかお願いします。それではまたこんど!



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傭兵、警備だってよ。
暇であるのは悪いことでもない……はず。


ジャベリンくんが鉄血工造に派遣されました。
I.O.Pとしのぎを削るこの会社、一体何があるのやら。

それではどーぞ。あとオリキャラまた出ます許して()


102日目 曇時々晴

 

会社への定期報告を終えた俺はポチを連れて鉄血工造本社にある工場の門の前に居た。昨日のメールによればここで待っておけば誰か迎えにくるという。

暫くポチと戯れていると、一人の男が近付いてきた。恐らくここの職員だろう。彼はここの開発部門の一人であり、名前が確かリフィトーフェン……だったか、そんな名前のはず。眼鏡を掛けているものの、鷹のような目はそれでも鋭く、従軍経験があるなんて言ってたら信じただろう。

そんな男に案内をされて、門の近くにある警備室へ連れていかれた。警備員から一枚のカードを渡される。これがあれば何時でも会社内を出入り自由になるらしい。

それを貰い、今度は応接室にリフィトーフェンと行く。ソファーへ対面するように座って、仕事の話を始める…………かと思いきや、直ぐにポチを褒め始めた。何故なのか。賢いダイナゲートだとかまるで意思を持っているようだとか、彼が一頻り褒めちぎった後に、とんでもないことが判明した。彼、リフィトーフェンは、ポチに搭載されているAIを作った人間、言うなれば「ポチ」というダイナゲートの産みの親ということだ。

昔、俺がダイナゲートを注文した時に、こっそり作ったAIを勝手に搭載させてこっちに発送したらしい。リコールってレベルじゃねぇぞ。いや実際優秀だからよかったけど。

とはいえ彼はポチがこうやって犬のような仕草をするようになったのは予想外らしく、過去のログの確認やらメンテナンスをしたいと、有無を言わさずポチを連れていった。

 

 

 

 

 

 

……あの、仕事は?

 

 

 

 

 

 

俺が所在なげにソファーに座っていると、代理人がリフィトーフェンの代理としてやってきた。たまたまメンテナンスで来ていた所をリフィトーフェンに頼まれたらしい。代理の代理人なんてつまらんことを考えながら仕事の続きを話して貰う。仕事内容は暫く鉄血工造の警備をして貰うという内容だ。どうやら昼勤の警備員が一人欠員したらしく、代わりが来るまでの繋ぎとして俺が派遣されることになったらしい。

 

何だ簡単だな。これで金が貰えるのなら儲けもんではある。とか考えながら代理人から仕事の手順を教えて貰い、警備室へ向かった。

 

久しぶりの簡単な仕事をしっかり楽しむとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

103日目 晴

 

くっっっっっっっそ暇!!!!!!!

 

仕事が楽すぎるのも考えものだ。他の警備員は見回りに行っている為何もすることがない。基本俺の仕事はたまに来る来客の身元の確認とかなので、客が来なければ本当に暇なのだ。ポチもまだリフィトーフェンのところだし何もできない。

 

何もすることなく椅子に座ってだらけて居ると、声をかけられた。声のした方向へ顔を向けると、一人のマスクを装着した女性が立っていた。というか昔見たカタログに載っていたハイエンドモデルと同じ姿であり、確かスケアクロウという名前だったか。彼女はどうやら外出ついでに派遣されてきた俺の顔を見に来たようだ。丁度俺も暇だったので、カウンターの下にあったチェス盤を取り出して一緒に遊ぶことにした。

チェスをしながら彼女に質問をしていく。彼女はハイエンドモデルながら下位の存在らしく、やりようによっては複数存在できるらしい。……ハイエンドモデルって一体だけしか存在できないのか。ということはダミー芸みたいなのも出来るのか?と彼女に聞くと、「それなりには」なんて言った。後で見せてもらおう。

1ゲームほどやって彼女は俺に外出届けを出して、門の外へ歩いていった。チェスの結果は俺の負けだ。やはり戦術人形には勝てない。チェス盤と駒を片付けていると、リフィトーフェンがポチを連れてやってきた。

 

 

 

ポチがゴツくなって帰って来た。何故だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

104日目 雨

 

ポチがポチじゃない。リフィトーフェン曰く機動性と防御性能の両立を目指した結果らしい。持ち主の許可無く勝手に魔改造するんじゃねぇ。

今のポチの外見は、ダイナゲートと正規軍向けに作られている装甲付きダイナゲート「タランチュラ」を足して2で割ったような外見で、ダイナゲートの特徴的な丸い目はそのままだった。ポチは普通に喜んでいるから良かったものの、場合によってはリフィトーフェンを殴らざる負えない自体が発生したと思う。

そういえば、なぜポチが犬のような仕草をするようになったのかは判明していない。過去のログを遡ろうにもプロテクトが掛けられて破れないようだ。彼はリコリスという研究員にも手伝って貰ったらしいがそれでも破れなかったらしい。

だから腹いせにこんな改造を施したのかこの男は……。あと小声で何か言っていたが、聞き取ることが出来なかった。

ポチを引き取ったあとは、通常業務へ戻る。ポチは重くなっているせいで、抱き上げるのは一苦労であった。ただまあ、可愛いのは相変わらずなので問題はない。それと後でスケアクロウが渡してきた外出届けの調印をしなければならない。

それにしても最近働き詰めだったせいなのか、暇ってことに何だかむず痒い感覚を覚える。仕事してないと落ち着かないって中々重症だと思うな。

ポチを撫でながら呆けて外を眺める。いや、暇ってのはいいことだ。何もしなくて良い。誰か来るまではずっとこうして居るとしよう。

 

 

 

 

 

……巡回から戻ってきた警備員がポチに驚いたのは別のお話だ。

 




ポチが改造されましたね……何をしやがるんだあの男。

ちょっと独自設定ですが、鉄血工造本社に居るハイエンドモデルたちは外出が制限されています。ハイエンドモデルは破壊されたら結構困るから仕方ないね。

さて次回もまたジャベリンくんは警備任務をやります。この回がどれぐらい続くかは未定です。

それでは、感想及び評価は作者の心の支えです!どうぞ遠慮無く!!それでは!!


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暇潰しだからってやり過ぎてはいけない。

デイリーランキング11位なんて誰が予想したか。
あとお気に入り600到達、通算UA40000越えありがとうございます!この小説が始まってから一ヶ月ですが、まさかこうなるとは思いもしなかったです。
これからも傭兵日記をどうぞよろしくお願いします!


今回はハイエンドモデル多数と出くわします。どーぞ。





105日目 曇

 

大変な目に遭った。

 

俺がポチと会社の外周警備をしていたら何処からともなく現れたダイナゲートの集団に襲われたのだ。勿論俺はポチを担いで逃げたのだが運悪く躓いて転けてしまい、その上にダイナゲートの集団が俺に覆い被さってきたのだ。そのままわちゃわちゃとダイナゲートたちに揉みくちゃにされていると、ポチが蹴散らしてくれた。何かパワーも倍増してないか?

ポチに蹴散らされたダイナゲートたちは、ポチをリーダーと認識でもしたのかポチの合図と共に整列し始めた。そのまま俺が歩き出すとダイナゲートたちも着いてきた。何だこの集団……近くにいたサボりをしている職員達から不可解なものでも見るような目を向けられた。そしてポチはポチで俺に抱っこを要求してきたし何なんだ本当に。ポチは嫉妬でもしていたのだろうか?

どちらにせよこのまま警備を続けるしかないため周りを見回しながら歩き続ける。途中、ハイエンドモデルと出くわした。『処刑人(エクスキューショナー)』という名を持つ彼女は、昔ポチを運んできたヘリに同乗していたハイエンドモデルその人だった。俺が思いがけない再開に驚きながらも、彼女はその事は覚えてはいないらしい。

処刑人がダイナゲートたちに続いて俺の警備に付き合い始める。会社内はどうやら娯楽が少ないらしく、俺のような新顔は珍しい上に、しかもダイナゲートの集団を連れて歩く光景は面白かったようだ。特に何の問題もなく警備を終えて警備室に戻る。処刑人にダイナゲート達を任せてまた暇な業務を始める。

相変わらず暇になってしまうので、明日ちょっと暇潰しになる物を家から持ってくるとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

106日目 雨

 

今日も今日とて巡回をする。合羽を着てポチと警備室から出るとそこには十数体のダイナゲート。どうやら巡回任務に着いてくるつもりのようだった。目は多ければそれで良いため邪険に扱わずに連れていく。今回は工場内を回る手筈だった。案内兼バディとなった『狩人(ハンター)』というハイエンドモデルと行く。狩人はダイナゲートの集団を連れる俺を見て、「まるで羊飼いだな」と言ったのだが、あれは褒めてたのだろうか……?

 

狩人と工場内を歩く。ここでは全ての製造工程を機械で行っており、最低限の機械の監視員以外は人らしき姿はない。というか何故人間に警備をやらしているのか狩人に聞けば、人権団体絡みでこうせざる負えなかったと返ってきた。なら仕方がない。それにしても壮観であった。人形を組み立てる機械が規則正しく動き続けるという光景は心踊る。

俺が食い入るように見ていたら狩人に引っ張られた。仕事に集中しろとのこと。

 

途中、ベンチで休んでいた処刑人と出会った。狩人が結構親しげに処刑人へ声をかけ話していたが、この二人は仲が良いのだろうか?

そして処刑人も巡回に着いてきた。どんだけ暇なんだよ。ダイナゲート一匹抱き上げてたし……ポチもねだってきたが銃を引っ提げている上に合羽だったので狩人に抱っこをさせた。彼女は困惑気味だったが渋々ながらもやってくれるあたり結構優しい。ポチも嬉しがっていた。

一通り巡回を終えてまたいつもの受付業務へと戻る。処刑人もよっぽど暇なのか俺と一緒にやり始めた。彼女にそんなに暇なら外に出たらどうだ、と言ったらこの前出先でトラブルを起こしたから外出禁止になっているとのこと。ドンマイというべきかなんというべきか。仕方ないので彼女とトランプをしながら仕事をすることにした。

 

 

 

 

また他の警備員にびっくりされたがな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

107日目 晴

 

本日もお日柄よくなんて考えながらあくびをしていたら小さな訪問者が現れた。というか例に漏れずハイエンドモデルで、腰に榴弾砲を引っ提げてる。『破壊者(デストロイヤー)』なんて言う名前の割には可愛らしい少女であった。彼女も暇だったのか俺の顔を見に来ただけで特に何かをするつもりでも無かったらしいが、俺が何となくチェスに誘ったら快く乗ってくれた。

 

俺が勝ちまくって彼女を泣かせてしまったけどな。終いには榴弾砲向けられた。ポチが居なかったらこの世から別れを告げることになっていただろう。デストロイヤーも負けず嫌いなのは良いんだが俺が人間ということを忘れないでほしかった。そのあと彼女はポチと遊んでいたが、見た目も相まって其処らに居そうな少女そのものだ。

何だか癒しを感じてずっとその光景を見ていたら、たまたま外出しようと警備室にやって来たスケアクロウに見られてしまい彼女に何とも言えない微妙な表情をされた。

恥ずかしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

108日目 曇時々晴

 

処刑人と追いかけっこする羽目になった。処刑人が鬼で、俺が逃走役。なんで追いかけっこなんてするのかと言えば、単なる娯楽を追い求めた結果みたいなものだ。解せぬ。

因みにリフィトーフェンや代理人など、万が一の為の監視員付きで行う。俺が死ぬなんて事があったら駄目だからな。

 

ルールは制限時間内に処刑人が俺を動けないように拘束したら勝ちで、それに対して俺はどんな抵抗をしても良いというものだ。

追いかけっこが始まる。処刑人は早速全速力で俺に迫り、腕を伸ばして来たがそれを掴んで背負い投げた。突然視界が回転して混乱する処刑人と歓声を上げる警備員たちを尻目に俺は走って逃げる。直ぐ様処刑人が起きて俺を追いかけるのだが、その時にはもう俺はそこら辺の草影に隠れていた。

 

大声で俺を探す処刑人。地味に俺の近くに居るから下手に動けなかった。声が遠くなったのを確認して、また動き出す。周囲を見回しながら動き回り、処刑人の声が聞こえてくる度に隠れる。それを繰り返して何とか制限時間まで逃げ延びた。

 

オチはない。ただ処刑人がまぁ悔しがっていたのは記憶に残っていた。それと、何故かリフィトーフェンとリコリスという男がまた似たようなことをやってくれと頼んできた。二度とやるかこの野郎。








ジャベリンくん大変だよなぁ(他人事)
それにしてもどんどん物語が進んできますね……そろそろ起承転結の転になるかなぁ?

次回はもう少しほのぼのとします。

さて、感想及び評価は作者の心の支えとなります。是非ともお願いしますね。それではまたこんど!


4/13 少し加筆


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嵐の前の静けさとはよく言うものだよな。

日常なんて急に終わりを告げるもんだ。
それにどうやって対応するかが生き残る鍵となる。対応出来なかったら死ぬだけだ、もし死にたくないなら死に物狂いで抵抗することだ。











109日目 晴

 

侵入者(イントゥルーダー)』というハイエンドモデルと今日家から持ってきた戦術ゲームで遊んだ。最近製造された戦闘指揮特化の戦術人形らしく、こういうゲームでは負けなしだろう。実際今やっているゲームでは始めてから初見にも関わらずどんどん敵を撃破していっていた。俺の軍隊だけどな、強すぎるわ。

警備員たちは最早慣れたのかこうやって遊んでいてもなにも言わなくなった。寧ろ暇潰しになるから良いなんて言われる始末だ。

最終的には俺が全敗、彼女が全勝になった。ここまでコテンパンにやられるのは初めてなんだが……。この後は『錬金術師(アルケミスト)』というハイエンドモデルも乱入してきて、侵入者と一騎討ちのような事が起きたのだがどんどん一触即発の雰囲気になってきた。ちょっとここで暴れられるのは困るので代理人に連絡して彼女の監視のもと、ゲームをやらせておいた。というか代理人ってハイエンドモデルの中でもカースト高いんだな……侵入者も錬金術師も大人しく従っていたし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

110日目 晴

 

何か正規軍のお偉いさんがやって来た。門の前に武装した集団が来たときは本当にびっくりしたよ……銃のセーフティ外して何時でも戦える準備をしていたら他の警備員に慌てて止められた。

冷静になった俺が身元確認をしたが、これまた驚いたのがそのお偉いさんが将軍クラスってところだ。名前はちょっとコンプライアンスに引っ掛かる気がするのでここには書かない。

ま、ここに来た理由は書くけどな!!どうせ誰も見ないし。

そのお偉いさんはどうやらとあるAIを持ち込んできたらしい。名前までは聞けなかったが、鉄血工造で開発しているエリザっていうAIを支援するためのAIらしい。なんだそりゃ。

AIを支援するAIを支援するAIってのも出来るのだろうか?

効率悪そうだけど。

 

そういえばポチを今朝から見かけないのだが何処に行ったのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

111日目 曇

 

うーんポチが行方不明!多分、会社内には居るのだろうから大丈夫じゃあるだろう。

仄かにポチの事を心配していたらリフィトーフェンが訪ねてきた。アイデアに詰まったからここに来たらしい。隣には侵入者と処刑人、狩人が居た。彼が取っ捕まえて連れてきたようだ。

警備室狭くなりそう。

 

実際狭くなった。何処からか取り出したラウンドテーブルを囲むように座る四人。俺は仕事があるのでカウンターに座ってる。リフィトーフェンが出したテーマは新しい鉄血の戦術人形についてだ。リフィトーフェンはE.L.I.Dにも対抗できるような人型人形が良いと発案。そこに侵入者が相手の無線を使えなくしたり情報を撹乱させることのできる電子戦向きの戦術人形が良いと対抗。処刑人は何を思ったのか近接特化で彼女の持っている大型ブレードを扱えるような人形が良いなんて言い始める。狩人は犬型の機械型が良いだろうとのこと。

議論が混迷するなか、処刑人がとんでもないことを言い放った。

「全部混ぜればいいんじゃね?」

固まる室内、だが皆それで良いという空気になり始める。

 

いやコスト考えろよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局何も決まらず解散した。各々が帰る中、リフィトーフェンにポチの所在を聞くと「動物は危険を感じたら何処かに隠れるからそれに似たようなものだ」と返された。

 

そうなのか?と半ば納得はするが、同時に疑問も残る。

 

その危険って何なのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

112日目 雨

 

リフィトーフェンが今日もここにやって来た。今度は破壊者と錬金術師と……見たことない少女が一人。同じく鉄血のハイエンドモデルのようだ。名前を聞こうとしたらリフィトーフェンに止められる。結構な機密らしいのだがなんで連れてきたんだこいつ。

子供の発想力に頼りたいなんて宣ってたが、代理人がその少女を迎えに来たのであえなく御用となった……とはいっても新型の鉄血人形を作るのは諦めてないらしく片隅に畳んでいたラウンドテーブルを取り出して会議が始まった。白熱する議論、その上昨日来た面々も参加したので想像以上に部屋が窮屈になったし騒がしくなった。

 

マジで他所でやれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

113日目 曇

 

UMP40が訪ねてきた。何しに来たかと言えば社会見学とかなんとか。俺はどうにもすることが出来なかったので、職員のほうへ回した。

それにしてもポチは何処に行ったのだろうか……端末を確認してもオンラインのままだし生きてるのは確かじゃある。ただこうも見当たらないと不安になってくる。

何となく悶々としていると、代理人が紅茶セットとお茶請けをもってやって来た。突然どうしたのかと聞けば、この前約束していた紅茶の淹れ方を教えに来たらしい。随分と前の事をよく覚えていたものだ。まあどうせなにもすることないし、というわけで早速彼女に色々教えて貰った。

教えて貰ったあとは、早速その通りに紅茶を淹れて飲んでみる。とても美味しかったことが記憶に新しい。

紅茶を楽しんで居ると、‘社会見学’から帰ってきたUMP40が帰ってきた。俺は彼女にも紅茶を淹れてやり、代理人が持ってきたお菓子も出して、ささやかなお茶会を開くことにした。UMP40にも好評で嬉しい限りだ。

 

明日は他のハイエンドモデル達ともお茶会でもするとしよう。

あとポチも探さないとな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

114日目 雨

 

鉄血工造がしゅうげきされた。今から出る。最高にツイてない

 

 

 

 

 

 

 

 

 




絶望が始まる。






ドーモサマシュです。蝶事件が起きちゃいました……ジャベリンくんの運命や如何に。そして行方不明のポチはどうなるのか!?
ただ前書きとかで変にキメてますけど私の今までの傾向からしてギャグにぶっ飛ぶ可能性が大きいです。とはいえこの回は真面目にシリアスはしようかと思ってるので……ね?

さて感想及び評価は作者の心の支えです!!ですのでどうぞお願いします!!それではまたこんど!


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予想外の事態ほど辛いものはない。

蝶事件が起きちゃいました。ジャベリンくんどうなるんですかね……それではどーぞ。
そういえば、アーキテクトとゲーガー出てないやん!!
またいつか出します((






歩けば歩く程に銃声の数が増えてくる。昨日まで平和だったのが嘘のような惨状だ。俺はそんな中を他に人間が居ないか探し歩いている。

 

鉄血工造が襲撃された。理由なんて知ったことじゃない。ただ分かるのは原因を探るために敷地内を歩き回る必要があるってことぐらいだ。雨のせいか仄かに暗いところを歩いていく。時たま叫び声が聞こえてくるが方向が分からない。恐らく職員の声なのだろう。地獄かよ。

 

 

「……ん?」

 

 

暫く歩いていたら、少し先に人が倒れていた。急いで近付いて誰なのか確認すると、警備員の一人であった。腹部から血を流しているように見えた。

抱き上げて息を確認した。微弱だがちゃんと生きてる。

 

 

「おい、しっかりしろ」

 

「ぅあ……あんたか……早く、早く逃げてくれ……」

 

「何言ってやがる、すぐに治療してやるから待ってろ」

 

「い、いやいいんだ……それよりも……戦術人形たちが」

 

「は?戦術人形?それがどうした……っておい!死ぬな!!」

 

 

だらりと、警備員の首が垂れる。息絶えてしまった…………彼の亡骸を地面に置く。後で必ず回収してやるからな。

 

また俺は歩き始めた。ふと多くの足音が聞こえ、咄嗟に物陰へ隠れた。恐る恐る様子を伺うと、そこには複数の鉄血製の戦術人形たちがいた。恐らく、リッパーとヴェスピドって名称だったかな。とはいえ何故こいつらが動いているのか分からなかった。俺の記憶が正しければ、スリープ状態で倉庫に置かれていた筈なのだが…………俺が観察していると、ふと奴等の前に何人かの職員が現れた。彼らは戦術人形達を見ると慌ててその道を引き返して逃げていく。それをリッパーやヴェスピドは銃を撃ちながら追いかけていっていた。

 

……冗談じゃない、こりゃまさか戦術人形たちによる反乱か?

 

持っているSCARのセーフティを外す。どう考えても奴等との戦闘は免れないだろう。適宜戦闘を交えながら生存者を探すことにした。ただ、生存者と出くわす確率なんて無いに等しいと考えた方が楽だろう。というか本当にポチ何処に行った。こんな事態でも起きたら一目散に俺のところへ来る筈なのだが……。いや、こうなるとポチも敵側になってしまったはずだろう……辛いな。

 

 

「考えてても埒があかねぇ……」

 

 

こういう時は取り敢えず動くのが吉である。さあ動こうと歩き始めると同時に誰かの声が聞こえてくる。物陰に隠れて声の主を探る。

 

 

「処刑人、ジャベリンの行方は?」

 

「いや、全く分からねぇ。相変わらず隠れるのが上手いよな、あいつ」

 

(処刑人と狩人か……)

 

 

少しだけ安心するが、すぐにその考えを改める。さっきの光景を頭に描きながら、恐らく彼女たちも反乱を起こしているのだろうと結論付けてやり過ごすことにした。見つかって殺されるなんて事態は避けたい。

処刑人と狩人へ注視しながら動き出す。足元に空き缶なんて有るのを知らずに。

 

 

「やべっ」

 

「あ?」

 

「ん?」

 

 

カランという音が鳴り、処刑人と狩人がこちらを向く。

突発的に俺は走り出した。後ろから呼び声が聞こえるが振り向く余裕なんてない。とにかく走る、方向なんて関係なく無我夢中で足を動かしていく。後ろの声は未だ聞こえるものだからより焦ってしまう。

ふと後ろから刃物を取り出すような音がする。

 

 

「こんの止まりやがれェ!!!」

 

「不味っ、処刑人やめろ!!」

 

 

突然俺の真横に衝撃波が飛んで来た。咄嗟に避けたお陰で被害は免れたが、これじゃ追い付かれてしまう。SCARを構えてやたらめったら彼女達へ発砲しながら曲がり角へ後退していく。

それなりに効いているようで、処刑人と狩人は動けないで居た。曲がり角に到達したらフラッシュバンを彼女らに投げて逃げた。

 

 

「クソッタレ!やっぱあいつらも敵かよ!!!というか何なんだあの衝撃波は!!」

 

 

一人叫びながら走る。こうでもしなきゃやってられないほど切羽詰まっていた。昨日までの事が全て嘘のようだ、何でこんなことになったんだ、お前たちは、お前たちはなんでこんなことをしたんだ。

そうやって叫んで少し冷静になった俺は現在位置の割り出しを始める。会社内に居ることは確かであり、恐らくこのまま進んでいけばリフィトーフェンの研究室があるはずだ。あの男が呑気に研究室に居るとは思えないのだがそこに訪れる価値はあるだろう。足を急がせて研究室へ着くと、そこは扉が開けっ放しだった。そしてそれとなく異臭もする。

 

 

「頼むから誰か居てくれよ……?」

 

 

警戒しながら室内へ入っていく。所々に血の跡があり、うすら寒い感覚に襲われる。だが、奥の方から人の気配がしたのでそのまま進んでいく。

 

どちゃり、という音と共に男が現れた。

 

 

「おや、ジャベリンじゃないか。無事か?」

 

 

その男は、リフィトーフェンその人だった。何時もの白衣ではなく、俺と同じような戦闘服に着替えてショットガンを引っ提げている。彼の後ろには鉄血製の人形の残骸がいくつか転がっていた。呆然とする俺を見て、彼は何かを思い出したように口を開く。

 

 

「言い忘れてたが、一応私は正規軍崩れだぞ?」

 

「……まさかとは思うが対E.L.I.D部隊の人間じゃあるまいな?」

 

「おや、ご名答。そういえば君の会社はマーカスが経営していたな」

 

 

こんな状況なのに思わずため息が出る。この男も片手で対物ライフルを撃てるのだろうか……?

その視線に気がついたのか彼はにっかり笑って「片手で撃てるのはショットガンだけだ」なんて言う。いや出来るのかよ。

 

そんな茶番を経て今現在はリフィトーフェンと共に行動をしている。一応ポチの居場所を聞いてもやはり存ぜぬであった。

俺たちが向かっているのは会社の中央、鉄血工造の人形たちを総括して管理するAIがある場所だ。戦術人形たちをどうにかするためにも彼処を叩くのが手っ取り早い。もちろん道中で人形たちが彷徨いていたが、全て排除して動いていった。あともう少しというところでリフィトーフェンに止まれのサインを出される。

 

 

「ジャベリン、一旦止まれ」

 

「どうした?」

 

「破壊者と錬金術師だ」

 

 

物陰に隠れて二体のハイエンドモデルの様子を伺う。この二人はここを守るように立っており、このまま行けば接触は逃れられないだろう。

どうしようかと考えていると、リフィトーフェンが俺に端末を渡してきた。

 

 

「……これは?」

 

「とっておきのプログラムだ」

 

「何をするつもりなんだお前……?」

 

「悪いことにはならんよ。それの今から私は囮になるから、よろしく。やり方はまあ分かるはずだ」

 

「は?お前何を……おい!」

 

 

端末を渡してきたかと思えば今度は向こうの二人の目の前へ躍り出て注意を引かせた。そのままショットガンを放ちながら反対方向へ走っていく。それを破壊者と錬金術師は追いかけて何処かへ行った。

本当に俺にやらせるつもりらしい。やるしかないと気を引き締めて中央へ向かう。何体かハイエンドモデルと遭遇したが全てやり過ごした。もう暫く歩き続け、ついに到着する。

 

 

「……早急にやろう」

 

 

室内へ侵入する。広い室内には巨大な制御装置のようなものがあり、そこの近くには男性が倒れていた。息は既に絶えており、首に掛けてあったIDカードを確認するとリコリスという名前であることが分かった。どうやらここで撃たれて死んでしまったように考えられる。

 

意識を切り替えて作業を始める。先ずは端末を接続して………………。

 

 

「両手を上げなさい」

 

「……仕事が早すぎるぜ代理人」

 

「それへ手を出されたら困りますからね」

 

 

今から始めようとした矢先に代理人がやってきて、こちらに武装を向けてきた。

大人しく両手を上げて代理人へ向く。どうやら彼女のみがここに居るようで、他の下級人形やハイエンドモデルは見当たらなかった。……どちらにせよ状況は芳しくない。

 

 

「このまま見逃してくれると嬉しいんだがな」

 

「ご冗談を。貴方をここで逃せば後が怖いでしょう?」

 

「随分と警戒されたもんだ。たかが傭兵一人に何が出来ると思う?ポチだって居ないんだぞ」

 

「ふふっ、そうであっても何かしらの影響を与えてくるのが貴方ですから」

 

 

相変わらず武器を下ろしてくれない上に余裕に満ちた笑いをこちらに向けてくる。信頼されてんのか警戒されてんのか分からなくなってきた。

いや、確かに俺が武器庫の連中連れてきたらまた違うのだろうけどな。

 

ふと、代理人がそうだと言わんばかりに両手を合わせた。武器も下ろしてくれよ……。

 

 

「あ、またあの時のように交渉でもしますか?」

 

「は?」

 

 

嫌な予感がする。たとえ反乱を起こそうとも代理人は代理人のままであるようだ。もういつぞやの協力願いのようにはならないんだがな……聞くだけはするつもりじゃあるが。

 

 

「そうですね……貴方を見逃す条件として三つ提示しましょう。どれか一つでも飲み込んで頂ければ結構です」

 

「それは武器をこちらに向けながら言う事か?」

 

「……まあ、脅迫ともいえますね」

 

 

畜生め、何時でも優位に立とうとしやがる。たまには譲ったらどうなんだ。

 

彼女は指を折り曲げながら言い始めた。

 

 

「一つ、貴方はこれ以上こちらに手を出さないこと。一つ、一切の傭兵稼業をやめて他の仕事に就くこと。一つ……………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

貴方がこちらの軍門に下り、スパイとして働くこと。どうですか?私としては最後を飲んで頂けると嬉しいのですが……」

 

「……は??」

 

 

三つ目が色々訳がわからない。何が楽しくてそんなことをやらなきゃならん。彼女なりの慈悲でもあるつもりなのだろうか……生憎ながら人類を裏切るほどの肝っ玉は持ってない。

とはいえ他を選ぶとしてもまた俺は戦場に引き戻されるだろう。グリフィンとの契約もあるし、契約不履行なんざとんでもない面汚しだ。確実に鉄血工造との戦闘は免れないだろう。

俺が無言を貫いていると、代理人は諦めたような態度をとった。

 

 

「私なりの良い提案だったのですが……残念です」

 

 

代理人の武器がこちらを向く。俺は目を閉じて、来る痛みに備えることにした。

 

 

「諦めるのはまだ早いぞ、ジャベリン」

 

「っ!?」

 

 

何も起きず、目を開けてみれば代理人が倒れていた。その後ろにはリフィトーフェンが立っており、嗤っていた。

 

 

「リフィトーフェン……生きてたのか」

 

「ハイエンドモデルなんてE.L.I.Dと比べたら屁でもないね。あとは私に任せておいてくれ」

 

「大丈夫なのか?」

 

「大丈夫だとも。君は先に帰ってグリフィンなり武器庫なりに報告でもしておくといいさ」

 

「……あぁ、任せてくれ」

 

 

リフィトーフェンに背を向けて俺は走り出す。彼なら絶対やり遂げてくれるはずだ。そう信じて門の方向へ向かう。途中下級人形をやり過ごし、あの警備員の亡骸を探したが、見つからなかった。ふと周囲を見渡すと、茂みからよく見慣れたダイナゲートがこちらを見ていた。

 

 

「……ポチ?」

 

 

そう呼んだ途端そのダイナゲートは姿を消した。何故か胸騒ぎがする。俺は敵に見つかるという危険性も考えず、そのダイナゲートが消えた先へ走っていく。

 

 

「お、おいポチ!!何処に行くんだ!!一緒に帰るぞ!!」

 

 

思わず大声で呼んでしまう。

自分の身よりもあのダイナゲートの事が心配で堪らなかった。そしてそれ以上に追いかけなければならないという思いに執着していたのだ。

 

息が切れようとも走り続ける。気がつけば小さな広場に辿り着いていた。

 

 

「ポチ……何処に………………んん?」

 

 

その時、あり得ないような光景が目に入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スピアと……45?」

 

 

そこには、互いに銃を向け合う同僚のスピアと45の姿があった。

 

 

 









「これでよし」

「グ……」

「ん?起きたのか代理人」

「貴方、銃を扱えなかった筈だったのでは……?」

「なんだそんなことか……ちょっとE.L.I.Dの細胞を取り込んでね。古傷なんぞ直ぐに治ったよ」

「私が言うのも何ですが、死にますよ?」

「ハッ、そうなったら旧友に殺してもらうとしよう」

「……化け物にでもなるつもりで?」

「そうなるな。だからこうやってコイツにどうなるか分からない試作のプログラムをインストールさせてるんだ」

「貴方は……何を」

「多弁は銀、沈黙は金だ。ジャベリンには悪いが私はあの世か何処かで楽しませてもらう。お前たちもせいぜい暴れることだ」

「全く食えませんね……」

「君が言うことかね。ハハハハ!」













リフィトーフェンによる命を掛けた悪ふざけが発生しました。このままストーリー通りなのも何なのでちょいちょい改変しながらも頑張って収拾は着くようにしていきます()
というか蝶事件の後のネタが切れてる()
どうしよう……。

さてさて次回で蝶事件が終結します。リフィトーフェンによって謎のプログラムをインストールされた鉄血側はどうなるのでしょう?自分も考えてません(白目)
土日までには必ずどうにかするから!!
そういえばスピアくんなんでこんなところに居るんですかね……(すっとぼけ)
それでは感想及び評価は作者の心の支えです!ですのでどうぞお願いします!!それでは!!



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危険を感じたら即行動を。

今回で終わりそうで終わらなかった。


ポチらしきダイナゲートを追いかけていたジャベリン、気がつけば部下のスピアとUMP45が銃を向けあっていた……。
それではどーぞ。


リフィトーフェンと別れた俺は、ポチらしきダイナゲートを追いかけている内に信じられない光景に出くわしてしまった。

 

 

 

「お、おいお前ら、何してるんだ?」

 

「……ジャベリンか。見れば分かるだろ」

 

 

見れば分かるって……勘弁してくれ。何がどうしてお前らが銃を向け合うような事態に陥ったんだよ。スピア、お前がそんな殺気立てている事なんて初めて見たぞ……45、お前も何か言ってくれ。

 

 

「んー、残念だけどこればかりは無理ね」

 

「ええと、穏便に済ませられないのか?」

 

「無理だな、コイツは殺されるべき理由が存在してるんだ」

 

 

殺されるべき理由なんて穏やかじゃない……それ以前になんでお前たちはここに居る?

 

 

「任務だよ。詳しいことは言えないがとある情報の奪還でな」

 

「はぁ!?」

 

 

そ、それはどう言う……45、本当なのか?おい、不敵な笑み向けないで正直に話してくれよ。

とてつもなく不安になるじゃないか。

 

空気が重くなる、いや既に重いか。スピアと45は銃を下ろす素振りなんて一つも見せてくれない。兎にも角にもスピアに事の詳細を詳しく話すように頼む。

ちゃんと話して貰わなければ正常に判断なんて出来ないからな。

 

 

「…取り敢えずだなスピア、もう少し詳しく話してくれないか?」

 

「チッ……どうしてもか?」

 

「隊長命令だ」

 

「クソッタレ……」

 

 

渋々、といった感じでスピアは銃を下ろした。45も銃を下ろすように目で合図を送れば、すんなりと従ってくれた。

 

スピアは語り出す。先ほど言った鉄血工造にある情報等を奪還するために潜入した事、そして中央制御室で撃ち殺した男が何かを起動させたかと思えば共に来ていた仲間もろともUMP45とUMP40に襲われて何とか撤退したこと、そして暴走した鉄血製の自律人形に襲われてスピア以外が死亡してしまったこと。

そして作戦失敗と判断して早急に帰還しようとしたら、UMP45に遭遇して今に至るという訳らしい。

 

再度スピアの顔と45の顔を交互に見る。嘘をついているような顔じゃなく、余計に信じられない。混乱するばかりだ。

 

ふと、あることに気がつく。

 

 

「そういえば、UMP40はどうしたんだ?スピアの話だと一緒に来ていたようだが……」

 

「撃ち殺したわ」

 

「……は?」

 

「だから、撃ち殺したのよ。下手したらマイドマップを消される可能性があったの、だからそれを防ぐために裏技を使ってこうなっただけ」

 

「…………」

 

 

45が淡々と、それでいて寂しそうな顔をして言う。

 

思わず天を仰いだ。この世界の神様というのは、バッドエンドがお好みらしい……。救いが無い。

スピアが俺に声を掛けた。

 

「ジャベリン、これで分かっただろ」

 

「……そうだな」

 

「それで、話は纏まったようだけど、私の処遇はどうなるのかしら?」

 

「そうだな……取り敢えずは____________________________________」

 

 

ふと、UMP45の背後で銃を構えている鉄血製の人形が見えた。

 

 

「_________________お前ら伏せろォ!!!!!!」

 

 

SCARライフルを構えて撃つ。銃弾はその人形の頭へ命中し、人形は倒れた。

スピアと45は咄嗟の事ながら伏せてくれた上にすぐさま武器を構えて臨戦態勢に移る。

 

周囲から足音が大きく聞こえてきた。非常に不味い。ここに長く居すぎたのだ、鉄血の人形達がここに集結してきているのだろう。

 

 

「スピア、45!!話は後にしよう!!今は生き残るぞ!!!」

 

「邪魔しやがって……了解!!」

 

「分かったわ」

 

 

45がスモークグレネードを周辺に投げていく。煙に覆われ始めたところに俺たちは走っていく。銃弾が飛んでくるが幸いに当たることはなかった。だがその銃弾の数が多すぎる。後ろの追いかけてきている人形は数えるのが億劫になるぐらいの量なのだろう。

 

走りながらスピアに脱出する術は無いのか問う。

 

 

「スピア!!何か乗り物とかないのか!!?」

 

「あぁっぶねぇ!!車ぁ!?もう少し走りゃ脱出用のものを用意してる!!」

 

「ナイス!!フラッシュバン投げるぞ!!45はスモークを前方へ!!!」

 

「了解!!!」

 

 

持ってきていたフラッシュバンを後方へ投げる。大きな音が鳴って、多少は銃撃が止んだようであった。だがそれも束の間、銃撃の嵐はまた始まる。

45の投げたスモークグレネードが煙を吐き出して前方を真っ白に包み込む。そこを迷わず走り抜け、前方にジープがあることを視認した。より足に力を込めて駆ける。あと数m。

 

 

「ぐおっ!!?」

 

「スピア!!」

 

 

そんな時に、スピアが突然転けた。45が彼に駆け寄って様態を確認する。その間に俺はフラッシュバンをありったけ追いかけてきた人形たちに投げつけながら、銃を撃ち続ける。

 

 

「…捻挫してるわね」

 

「はぁっ!?お前なんでそんな大ポカやるんだ馬鹿野郎!!!」

 

「うるせぇ!!!俺だって好きでこうなった訳じゃないんだよ!!」

 

「肝心な時に変なことをやらかす癖は入隊当初から変わってねぇな!!!!えぇおい!!!?」

 

「黙れこの全方位人たらし不幸製造機め!!!!お前は他人を巻き込みすぎなんだよ!!!!」

 

「そのセンスの無い罵倒を言う努力を他に回したらどうだ紅茶狂い!!!!」

 

「言ったなこの対物性愛者!!!ポチでマスでもかいてやがれ!!!」

 

「お前本当にイギリス生まれか!!??生まれた場所アメリカと間違えてんじゃなかろうな!!!あとポチを引き合いに出すんじゃねぇ!!!!!」

 

 

戦場に似つかわない怒鳴り合いが発生する。UMP45は若干引きぎみだ。とはいえもちろんそれどころじゃなく、自分の顔スレスレに鉛弾が飛んで来た瞬間に冷静となってスピアを担ぐ。45に援護されながらジープにスピアを投げ込んで、最後のフラッシュバンを敵が来ている方向へ投げた。45にもスモークを投げてもらい、素早くジープに乗ってエンジンを点ける。幸いにエンジンは正常に始動してくれた。

 

 

「ぶっ飛ばすぞ!!追いかけてきたら頼んだ!!」

 

「任せて!!」

 

「チッ……了解」

 

 

アクセルを踏み込んで発進する。ジープには装甲がついてるのか、乗った瞬間に蜂の巣にされるという悲劇が起きることは無く、みるみるうちに距離が離れていく。

後方を見ていた45が口を開く。

 

 

「ハイエンドモデルが追いかけて来ないわね……どうしてかしら?」

 

「言われてみれば……いや、やってくれたんだな」

 

「どういうこと?」

 

「リフィトーフェンってやつがな……そうだった!!」

 

 

俺は何かを思い出したかのように急ブレーキを踏んだ。後部座席に座っているスピアがつんのめって頭をぶつける。

 

 

「っつぅ……急に止まるなよ!?」

 

「す、すまん。それよりも!!リフィトーフェンとポチを助けないと!!」

 

 

ハンドルを回そうとする……が、それを45に止められる。思い切り彼女を睨んでしまったが、それに怯まず彼女は言う。

 

 

「落ち着いてジャベリン。いま私達が行っても殺されるだけよ」

 

「だけど」

 

「だけど、じゃ済まされない。それにそのリフィトーフェンって男、ハイエンドモデルと渡り合えたのでしょ?なら大丈夫よ。ポチだってどうにかなる筈よ」

 

「……畜生、分かったよ。」

 

 

45の手が離れる。俺はそのまま転回せずに、真っ直ぐ車を走らせる。 先ほどとは違って嘘のように穏やかな道を行く。

静かな車内、スピアが煙草を吸い始めた。

 

 

「……45の処遇はどうする?」

 

「あぁ?…………なんだかどうでもよくなっちまった」

 

「……そうか」

 

 

煙草の香りが充満していく。

肝心の45はずっと窓の景色を眺めていた。彼女も何か思うところがあったのだろう、俺を説得した後は無言を貫いている。

 

会社にどう報告しよう……?

そう無理矢理に意識を切り替えて、ジープを走らせ続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鉄血工造から我が家に帰還した俺は、部屋に入って早々ベッドに沈みこんだ。オスカーが「にゃおん」と鳴いて近寄ってくる。オスカーはヘリアントスさんに任せていたのだがコイツいつの間にこの部屋に入って来たのだろう?

というかヘリアントスさんオスカーの世話ちゃんとしてくれてたんだな……。

オスカーを撫でる。気持ち良さそうに喉を鳴らすこの猫を見て、何だか涙が出てきた。オスカーを抱いて、俺は死んだように寝た。

 

 

 

 

 

翌日、インターホンの音で目が覚める。誰だと思いながらゆっくりとした足取りでドアに向かう。

ガチャリとドアを開けると目の前には髭面の大男。

 

 

「ジャベリン君、任務だ」

 

 

頼むから休ませてくれよクルーガー社長……。

 

 

 




なーんか広げた風呂敷畳みきれてない感ある……()

次で終わりますよ!!流石にやり過ぎるのは宜しくない。
というかシリアス……なりきれませんでした。

さて、ジャベリンくんはまた任務を言い渡されます。その任務の内容とは……?


さあ作者への感想及び評価は執筆の励みとなります。どうぞよろしくお願いいたします!!それでは!!


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誰だって怖いものはある。

50000UA到達ありがとうございます!!とても嬉しい限りです。今後も頑張っていきますよ!!

ジャベリンくんまた任務に赴きます。

あとキャラ崩壊注意!!あと初めての試みもやってみてます。
それではどーぞ。ちょっと長いです。







 

 

「クルーガーさん、何で護衛も無しにここに来るんですか……」

 

「散歩をしてたら偶々通りかかったものでね」

 

「制服着てるのに堂々と言い訳してるこの人……」

 

 

疲労にまみれた俺に待っていたのは髭面の大男から言い渡されたとある任務だった。というかこの人仕事どうしたんだろう……サボり?

取り敢えず紅茶を出して椅子に座る。クルーガー社長は無言で紅茶を飲み、「美味い」と呟いてまた黙った。何か喋ってくれよ……こっちも切り出し辛いじゃないか。

 

 

「ふー……鉄血工造での件は大変だったようだな」

 

「ええと、まあ、そうですね。お陰で報酬金も貰えず仕舞いでしたし」

 

「そうか……」

 

 

また口を閉ざすクルーガー社長。彼なりの配慮なのか、口数が異様に少ない。普段の彼、というか仕事の話をするときのクルーガー社長というは存外おしゃべりだし、何かと冗談を交えて来たりする。少し前のうちの社長と今後の方針を話していた時なんて冗談や笑い声がよく飛び交っていた。

だが今の状況はどうだ、何か言い淀んでいるように見えるし、視線が交わらない。本当に何が起きた。

 

 

「……任務の話をしよう」

 

「あ、はい」

 

「非常に言いにくい事なのだが、また君には鉄血工造の勢力圏まで行ってほしい」

 

「……嘘ですよね?」

 

「嘘ではない」

 

 

何時もと調子が可笑しいのはそういうことだったのか……クルーガー社長も多少は良心が残っているようだ。

…どちらにしても俺はポチとリフィトーフェンを探すつもりだったし、別に構わなかった。ハイエンドモデルと遭遇しようが任務を遂行するぐらいにはな。

 

クルーガー社長に任務を受理することを伝える。それを聞いた彼は苦い顔から一転して、にっこりと笑う。あ、これは……。

 

 

「そうかそうか、それは良かった。ところでジャベリン君」

 

「何ですか?」

 

 

 

 

 

「HALO降下に興味はあるか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソヒゲ滅すべし……」

 

 

いや、確かにHALO降下は潜入にはもってこいだ。それと昔何度かやったしパラシュート訓練も何度もやったから失敗の確率だって低い。だが進んでやりたい訳なんて無いだろ本当に髭毟ってやろうかあの野郎……だがそれほどに俺を信頼してくれてるのだろう。あと報酬金が何時もより多いし何の文句はない。

 

だが未だ治まらない怒りが腹のうちで煮えきっている。あの社長のことだ、俺を体の良い駒としても扱っているのだろう……俺ばかりじゃなくってパルチザンとかパイクのやつも使ってやれよ。

 

数日ほど経ってからの現在、俺はグリフィンの所有する大型輸送機の中に座っており、その近くには俺の装備の入ったバッグがある。あぁ、無性に煙草を吸いたい。

今回の任務は救出兼調査任務だ。所属不明ながら救難信号が出されており、その発信源へ行く。同日にAR小隊による任務もあり、可能ならそちらにも参加して支援するように言われた。

俺に与えられた時間は六時間。その間に任務を終えなければならない。疲れた体に鞭打って頑張らなければ。

 

何となく端末を見る。ポチの信号はオンラインのままで、生きている事が確信できた。もしもその救難信号がポチから出されたものなら儲けものだしリフィトーフェンであっても同様である。何なら二人一緒に居てくれたらその場でシャンパンを開ける勢いだ。持ってきてないけど。

 

 

「そろそろ……か」

 

 

降下ポイントが近い。装備を担ぎ、酸素マスクを作動させる。高度メーターを見れば丁度10,000m。自分が身に付けている物の締まり具合を確認して問題をチェック……問題なし。そういえば、今日は無風であるらしい、随分と運が良いと言える。

 

 

『ジャベリン聞こえるか?』

 

「聞こえますよ」

 

 

クソヒゲ筋肉達磨(クルーガー社長)から通信が入ってくる。内容はただの任務内容の再確認だった。一通り確認しながらハッチを開いた。

瞬間、冷たい外気が俺を襲ってくる。俺がハッチを開いた事に気づいた彼がまた言い出す。

 

 

『そろそろだな』

 

「ええ、行ってきますよ」

 

『健闘を祈る。それとジャベリン』

 

「はい?」

 

『鳥になってこい』

 

 

通信が切れた。……随分と洒落っぽく言うものだ。

再度装備を確認し、俺は一歩踏み出して空中へ飛び込んだ。地平線の彼方では朝日が出始めている。何だか昔遊んだことのある戦場ゲームやらステルスアクションゲームを思い出した。暫くして体を大の字のような形で開く。

それにしても防寒しているのに寒い。やってられないな。

開傘のタイミングを教えてくれるブザーが鳴る。そろそろかと肩の部分にあるワイヤーを引いた。

 

 

「ぐぅっ……っとぉ!」

 

 

パラシュートが開き、衝撃と共に減速し降下していく。予測着地点は森の中で、引っ掛かったら大変そうだ。

 

地上にどんどん近づいていく。どうやら鉄血の人形たちはここいらには居ないようだ。……幸いにも木に引っ掛からずに着地する。パラシュートやらなんやらを脱いでバッグから装備を取り出す。今回持ってきたのはランチャー付きACRと愛しのガバメントだ。最低限ながらも火力はしっかりある。早速端末で救難信号の場所を確認する。

どうやらここから北に1km先が発信源のようだ。

 

 

「よし、頼むから罠なんてことにならないでくれよ……?」

 

 

森の中は不気味なほど静かだ。もしかしたら鉄血の人形はAR小隊の方ばかりに注意が向いているのかも知れない。彼女たちは中々派手にやっているのだろう。

 

警戒しながら足早に目的地へ向かう。本当冗談みたいに鉄血の人形と遭遇しない。有るとしたらもう活動を停止している人形や機械の残骸ばかりだ。他の勢力でも居たのかそれとも別の原因か、それは分からない。

端末を確認すれば、救難信号の発信源との距離がもう200mになっていた。また歩いて森を抜ける。

 

 

「……アレか?」

 

 

開けたところに出ると、一つの小屋が見えた。彼処から救難信号が出ている。俺は小走りで小屋に駆け寄っていく。窓から中を確認しようとしたが、全て何かしらの物で中が見えない状態であった。安全が確認出来ないのは中々危ないが、仕方ない。

 

近くにドアがあったので鍵がかかっていないか確認する。運良く鍵はかかっていないので静かに侵入した。

 

 

「誰も居ない……?」

 

 

小屋の中は人の気配なんて一つもない。ふと床を見ると、ダイナゲート…………いや、ポチが横たわってた。思わず駆け寄る。

 

 

「ポチ!?ポチ!!!どうしたんだ一体!!!!」

 

 

ポチの状態を確認する。何も損傷は無く、どうやら強制的にスリープをさせられているようだった。グリフィンへ報告をするために通信機に手を掛ける。

 

 

「こちらジャベリン、応答してくれ。現在小屋にとうた_____________________________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴッ!!

 

「カハァッ……!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やはり来ると思っていましたよ、ジャベリン……ふふっ」

 

……………………………………

………………………

…………

……

 

 

 

 

 

「……はっ!?」

 

 

突然の暗転が俺を襲った上に椅子に縛られてた。はっきり言ってピンチだ。俺が何をした。

体を揺らしてどうにか俺を縛っているロープを緩ませようとしたが、不幸にもロープが緩むことは無かった。

……お嬢のところで護衛してた時を思い出すなぁ、確かあの時は何度も殴られた記憶がある。それはともかく、現実逃避をしてないでこの状況を何とかしないといけない。腰に提げていたナイフを確認して、それを何とか取ろうとする。ふと脳裏にナイフでイナフというフレーズが過ったがそんなのは関係ない。誰かに座布団をぶんどられそうだ。あと少し、というところでドアの開く音がした。

 

咄嗟に顔を上げると、そこにはメイド服を着た女性……いや、鉄血工造のハイエンドモデル、代理人が立っていた。彼女の瞳は仄かに暗い。

 

 

「目覚めたようですね」

 

「代理人……こりゃどういう風の吹き回しだ……というか何故生きてる?」

 

「それは秘密です。一つ言えるとしたらリフィトーフェンのお陰、ですかね」

 

「……アイツが裏切ったのか?」

 

 

代理人は静かに微笑む。無言は肯定と受け取っていいのだろうか?

彼女が何も言わないだけに様々な憶測が飛び交ってしまう。リフィトーフェンめ……恨むぞ。

 

 

「まあ、そんなことよりはですね」

 

「お、おぉ?」

 

 

代理人の顔が近づいてきた。顔を逸らそうにも彼女の両手が俺の顔をしっかり掴んで離さない。彼女の瞳は間近で見るとより漆黒に近く、まるで吸い込まれそうなくらい深みがあった。

……ちょっと待て、いつぞやのUMP9みたいになってないか?

 

 

「ふふ、ふふふふふ……」

 

「え、代理人……?」

 

「私、気付いたんです」

 

「へ?」

 

「貴方へ向けてしまった想いが」

 

「えーと……」

 

 

リフィトーフェン、お前あの時本当に何のプログラムインストールしたの???

俺ばかりが誰かのお鉢が回ってきてないか?

ここには居ないアイツに文句を垂れても意味は無いが無性に、ただ無性に文句を叫びたくなる。

そんな俺なんてお構い無しで居る代理人、彼女の告白は続く。

 

 

 

「ええ、ええ、知識として知っていた事なのですが……私は恋をしてしまったようです」

 

「へぇ…………は??何時から?」

 

「それは分かりません、貴方と初めて出会った時なのか、ふと気になって貴方の経歴を調べた時なのか、はたまたポチから貴方のことを色々聞いた時なのか、貴方とあの喫茶店で語り合った時なのか、そしてこの前貴方へ紅茶の淹れ方を教えた時なのか皆目検討が着きません。もしかしたら一目惚れ、かも知れませんね、ふふっ……。まあそれはともかく、私は貴方のことが好きで好きで堪らないのです。貴方の黒い瞳が、貴方の逞しい腕が、貴方の髪の毛が、貴方のふとした仕草が、もう貴方の全てを記憶に焼き付けて一生見ていたい程に大好きなのです。もしも願うならジャベリン、貴方をずっと側に置いて見つめていたい。勿論貴方はなにもしなくて結構です。そこに居る、というだけで私はもう満たされてしまいます。もしも貴方が私を……私を求めてくれたとしたら……ふふふ、ふふふふふ……すみませんどうにも暴走してしまいますね。リフィトーフェンも恐ろしいことをやってくれたものです。だけど彼のお陰で燻ることもなくこうやって貴方へしっかり想いを伝えることが出来るのですから、これは感謝するしかありません。それでは話を戻しましょうか。先ほども言ったように私は貴方のことが好き、いや愛しているのです。その全てが愛おしく、もう私の瞳には貴方しか写らないんです。貴方の仕草にときめいて、貴方が向けた笑顔に鼓動が早くなり、貴方の足音が聞こえる度に胸が締め付けられる、それほどまでに、貴方を深く、深く愛しています。それ故に、私は貴方が欲しい。ジャベリンという存在を独占してこの躯に刻み付けたい……ジャベリン、どうですか?」

 

ヒェッ…………

 

代理人が壊れた。

 

何だか予測が付くんだけどリフィトーフェンは色々な意味でAIを暴走させるプログラムをインストールさせたのではなかろうか。恍惚とした表情の代理人が怖い。彼女のこんな顔を見れるなんて運を使い果たしたも同然と言える。嬉しくないけどな畜生。

 

 

「……とは言っても貴方は絶対に私の所へは来てくれませんよね」

 

「よく分かってるじゃないか……あの時と答えは一緒だぜ代理人。だから拘束をだな」

 

「ですので、貴方の一部を頂きます」

 

「……どういうことだ?」

 

「言葉の通り、ですよ」

 

 

嫌な汗が背中を伝う。代理人がひたり、ひたりと俺に近付いた。逃げたくても逃げられない。体を逸らしたがそのまま慣性に従って椅子ごと床に倒れる。

その様子を見ていた彼女はこれまた愛おしそうに俺に笑いかけ、俺の顔に、俺の目に指を近付ける。俺の身に起きる悲劇がまざまざと想像出来てしまい、叫んでしまった。

 

 

「お、おい代理人!!!何するつもりなんだ!!?やめろ!!!その手をすぐに退かすんだ!!!!おい!!!!」

 

「貴方が悪いのですよ……素直に私の所へ来ないから……そういえば貴方の利き目は右でしたね」

 

「代理人!!!クソッ!!!止めるんだ!!!!!」

 

 

彼女の指が俺の左目に触れた。

普通なら反射で瞬きをする筈なのに、出来ない。俺はただただ恐怖にまみれて彼女の不思議な程に美しい指から目が離せなかった。

 

彼女は狂気に満ちた顔で嗤う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「利き目は可哀想ですし、代わりに貴方の左目、貰いますね

 

 

「ギッ……あ"ぁ"あ"あ"ぁ"あ"あ""あ"あ"あ"あ"あ"ぁ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ぁ"あ"!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

ぶちゅりと、俺の左目が引き抜かれる。

その瞬間に、激痛が脳内を跋扈する。

 

痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいぃぃ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

「がぁっはっ!!お、お、おまぁ、お前ぇ!!?!!」

 

「ふふふ、そんな怖がってる顔も可愛らしいものですね。良い顔ですよ、ジャベリン」

 

 

狭くなった視界で、狂った笑顔の代理人を見る。彼女は狂喜しており、俺の、俺の左目を大事そうに撫でていた。

何なんだ、何なんだこれは。こんなの聞いたこともないし見たこともない。というか体験なんてしたくもなかった。

怖い、こわい。かのじょが、かのじょがこわい。だれか、たすけて。

えーじぇんとが、おれをころそうとしてる、またちかづいてきてるんだ、たすけてよ。こわいんだ、こわいんだよ。

えーじぇんとがこっちにきてる!!!

 

 

「く、くるなぁ!!!!こっちにくるんじゃねぇ!!!!!!!」

 

「安心してください、ジャベリン。もうこれ以上は何もしませんよ?」

 

「う、うううるせぇ!!!!ひぃっ!!??」

 

「大丈夫ですから、ジャベリン……落ち着いてください」

 

 

えーじぇんとがおれをだきしめる。あんしんさせるつもりなんだろうけど、あんしんなんて……あんしんなんてできるはずがないよ……。おれは、おれはあんたがおそろしい……。

めのまえがまっくらになってきた、あぁ、ちくしょう……。

 

 

「………………」

 

「……おや、気絶してしまいましたね。まあ、そろそろ邪魔者も来る時間ですし、待っててくださいねジャベリン」

 

「……今度は二人で何処かへ行きましょうね」

 

 

 

バタン……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《ご主人》

 

《ごーしゅーじーん?》

 

《ご主人っ!!》

 

 

ハツラツとした声を持つ誰かが何かを喚いている。うるさい。俺はもうこれ以上何も考えたくないんだ。あんなトラウマもんを体験させられたんだ。このまま精神を殺してしまった方が楽なんだよ。だから、黙っててくれ。

 

 

《なーかなか起きませんね……応急処置は済ませましたし、拘束を解いておきますか》

 

 

ふと、ごそごそと何かが動いたかと思ったら俺の体に巻き付いていたロープが解かれた。

再度謎の声が俺を起こそうとする。

 

 

《いい加減起きないとここ焼かれますよー起きてーごしゅじーん》

 

 

ええい、うるさい奴だなこいつは。仕方ない、起きるか……。

 

 

「んあぁ……クソッタレ、何で現実逃避をさせてくれないんだよ……おま……え」

 

《やっと起きましたなご主人よ。そのまま眠ったままでしたら金的を食らわすところでしたぜ》

 

「ポ、ポチ……なのか?」

 

 

俺は信じられない光景を見ている。目の前には、さっきまでぶっ倒れていた俺の相棒が立っていた。傷なんて一つもなく、そして何故か喋ることが出来るようになっている。

目の前の相棒、いや、ダイナゲートのポチがまた喋る。

 

 

《ポチなのかって……そりゃ見たら分かりましょうに、この丸い瞳にチャーミングなラクダのステッカー。何処からどう見てもご主人の相棒、ポチですよ》

 

「……ポチ!!!!!!」

 

《うわっぷ!?》

 

 

思わずポチを抱き締める。ポチは困ったような、でも嬉しいような反応をしてくれる。これはポチだ、紛れもないポチだ!!!!頬擦りもしてやる!!!!お前、お前本当に生きてたんだな!!!ポチ!!!ポチィィィィ!!!!!!!!!!!!

 

 

「よ"か"っ"た"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!!!う"わ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!!!」

 

《ご主人落ち着いて!!フレームが!!!フレームが曲がっちゃう!!!》

 

「ううっ……グズッ……すまん、余りの嬉しさにだな……」

 

《まあそれはなにより。動けます?》

 

「あぁ、動けるよ。距離感がちょっと掴めないが何とかやれる」

 

《さっすがご主人!武器は裏手のドア付近にありますから早く!!》

 

「了解した」

 

 

ポチに着いていき、小屋の裏手に出る。物陰に銃やらなんやらがあり、それをすぐに装備していく。

 

ふと、ポチが喋れている理由を聞く。

 

 

「そういえば、何でお前喋れるんだ?」

 

《リフィトーフェンさんが私にちょいちょいと魔改造したお陰ですよ。それで喋れる上に時間がかかったけど鉄血の上位権限にも打ち勝てました!》

 

「……リフィトーフェンめ、やってくれたな」

 

 

ナイスと言いたい。ただし代理人をあんな風にしたのは許さない。何時会ったら殴る。

 

現在時間を確認。どうにも六時間以上経っており、任務は失敗している。どうせならこのままAR小隊の支援を行いたいのだが、生憎と通信機がお釈迦になっていた。ということで今後の方針は生き残ることとなる。

 

 

「そういえばポチ、左目の包帯はお前がやってくれたのか?」

 

《ん、そうですよ?》

 

「助かった。またお前を頼ることにもなりそうだからよろしくな」

 

《お!任せてくださいな!!》

 

 

へへん!と誇らしげにするポチ。喋れるようになってたから何だかキャラクター変わってないか?いや元々なのか。

それはともかく、俺は安全地帯がどの方向に行けばあるのか、記憶の中を探る。

確かこのまま南西方面数十kmほど行けばグリフィンの勢力圏内に入るはずだ。足は己の物だけだがこればかりは仕方がない。AR小隊に注意が行っている間に早く逃げなければ。あとついでに彼女たちがきちんと撤退出来るようにタグも幾つか設置しておこう。気づいてくれればいいのだが。

 

軽く食料を胃に収めて、走り出す。随分と長い距離だ、頑張るとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まあ、数km走ってぶっ倒れたがな。

 

 

「ゼヒュー……ゼヒュー……」

 

《ご、ご主人?生きてる?》

 

「い、生きてる。目玉……抉られた……せいなのか、はぁ、体力が戻りきってなかった……うぷ」

 

《もう少し休みますか》

 

「そうだな……うん。あ、やば」

 

 

意識が遠退いて来ている。多分血液も足りないのだろう。これは本格的に不味いぞ。ポチが二匹に見え始めてるから相当だな……。

 

 

《ご主人しっかり!!》

 

「む、無理だこれ……もう」

 

《電気ショック撃ちますよ!!》

 

「落ち着け……それは死ぬ」

 

 

俺が死んだら元も子もないだろうに。……目の前がぼんやりとしか見えなくなってきた。

意識が暗転しかけた時に、近くで車のブレーキ音が聞こえる。ドアが開き閉じる、というところの音も聞こえたが、後色々と混濁している。ただ、四人ほどいるというのは何となく分かった。

俺が意識を完全に手放す瞬間に、ちらりと誰かの姿が見えた。

 

 

「全く……酷いやられようね。助けに来たわよ、ジャベリン」

 

 

その姿は、片目に涙のタトゥーをいれた銀髪の少女だった。

 

 

 

 

 




「やはり、逃げられましたか」

「ですがジャベリン、また必ず貴方の所へ伺いますからね……どんな手を使っても、ね」

「うふ、ふふふ、ふふふふふふ」





はいみなさん、せーの!!


「どうしてこうなった」



ポチが喋った!!!!!???話の幅が広がりますぞ!!あとポチの声優は皆様の妄想で片付けてください←
そしてもうこれヤンデレのタグつけた方が良いですかね?
またどうしてこうなったのかと言いますと、初期段階から決めてたことというわけで(銃声)
許してください!!コラボでも何でもしますから!!!

というかジャベリンくんが代理人恐怖症になりましたね。他作品の代理人と絡ませようかなーってちょっと苦手意識がある程度にしとこうとしたらどうしてこうなった。これじゃジャベリンくん代理人見る度に悲鳴あげますよ。彼のメンタルはボドボドだぁ……。全てはリフィトーフェンのせい(責任転嫁)
変に掻き乱し過ぎなのよ彼は。ちょいだしだったのにこうなるとは……怖いなぁ(こなみ)

さてさて、何とか救出されたジャベリンくん。彼が向かう先は一体何処だ!?そしてそこで待ち受ける人物とは!!

それではこの作品への感想および評価は執筆の支えとなるのでどうぞガンガンお願いします!!それではまたこんど!!


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今日も今日とて傭兵はゆく
傭兵、連れてかれたってよ。


米欄を見ていて分かったこと、みなさんヤンデレ好きなんですね(にっこり)
そして捕捉、そのインストールされたプログラムですが、あくまで何かしらの部分が暴走してしまうだけで、必ずしもヤンデレになるとは限らないです。説明が遅れてしまい、申し訳ありませんでした……。
ところで皆さん今回のピックアップ何が出ました?私はZasM21と79式とSR-3MPが来ました(隙自語)
他の戦術人形たちはまた回してみます。

さて助かったジャベリンの目覚めた場所は何処なのか……それではどーぞ。


124日目 雨

 

目が覚めればそこは知らぬ病室でしたと。運命の神様は俺を見捨ててなかったらしい。出来るなら早めに助けて欲しかったけどな!!!

暫くは代理人とか、他のハイエンドモデルとは遭遇したくない。トラウマを刺激される。そして逆にこれ以下の事が起きても何の障害にもならないだろう。強くなったな、俺。

 

ふとベッドの近くにあった電子時計を見たら、任務開始時から数日ぐらい経っていた。結構寝てたな……前から感じてた慢性的な疲労が抜けた気がする。何とはなしに体を起こして壁の一点を見つめていたら、ドアが開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうやらここはグリフィンの基地のようだ。というか何故ローゼが居る?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

125日目 晴

 

なんと驚いたことにここはお嬢、メグ・コーマックが指揮をしている基地で、場所はS10地区らしい。この地区は確か、出来て間もない地区だったはず。それしても俺は随分とあの小屋から遠い場所に連れてこられたな。

俺が目覚めた後、ローゼと慌ててやって来たお嬢に何で俺がここに居るのか聞いた所、UMP45が率いる小隊が任務の一環でここに連れてきたらしい。やっぱり……助けられたんだな、アイツらと会ったら何か奢ってやろう。

少しお嬢たちと話していると、ポチが突然部屋に入ってきて俺に飛び付いてきた。こいつ、自分が重いってことを忘れてるのだろうか……俺の腰が死んだ。

まだ暫くは病室生活は続きそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

126日目 曇

 

今日はローゼと色々話した。

彼女は、指揮官になったお嬢の事が心配で堪らなくなってジャガーソンさんに頼み込んでグリフィンやI.O.Pに色々手回ししてもらったらしい。なにやってんだこのメイド。ということは目の前の彼女は戦術人形になったということか。因みに彼女、ダミーはもう四人動かせることが出来る。なんなの本当。

 

ローゼに戦々恐々していたら、この基地の医療従事者がやって来た。(彼の名前が分からなかったので医療くんと呼ぶことにした)彼の健診が始まった。簡単な質問から触診まで、一通りやった後、その人から片目が見えない以外は健康体だから一週間リハビリすれば問題ないと伝えられた。腰は無事だったんだな……。

 

なら明日はこの基地を回ってみるとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

127日目 晴

 

ポチと歩きながら基地を探検。時々すれ違う戦術人形たちから珍しいものをみるような目線を向けられる。まあ見も知らぬ隻眼の三十路手前のおっさんが居たらそりゃそうなるわ……。まだ27だけど!!まだ27だけどな!!一人謎の叫びをしてたらポチに白い目で見られた。

 

ただそんな中でも声を掛けてくれる人は居るものでして、何だか全体的にふわふわとした戦術人形が俺に話し掛けてきた。名前は『マカロフ』、青いロシア帽と赤いマフラーを身につけた彼女はお嬢がこの基地に着任直後から居るハンドガンの戦術人形とのこと。お嬢の昔からの知り合いということで興味を持ったらしい。彼女はポチをナチュラルに抱き上げる。ポチが突然の出来事に困惑してて笑った。そしてマカロフは俺と話はじめたが、彼女、話題があっちにいったりこっちにいったりと、中々の自由人だ。そして俺が話している途中でポチに話しかけてるし翻弄されまくった。

 

そんなつかみどころのない自由人なマカロフなんだが、更に驚くことがある。彼女と歩いている時にお嬢がサボりか何かでこちらに走ってきたんだが、マカロフが突然隣から消えて気が付いたらお嬢を組伏せていた。何を言っているか分からないが俺も分かってない。

 

お嬢の首根っこを掴んで「さーて指揮官お仕事しようねー」ってずるずると執務室が有るであろう方向に引っ張っていく彼女は歴戦の兵士のような雰囲気があった。お嬢は俺に助けを求めたが残念、俺はマカロフの味方なんだ。ひらひらとお嬢へ手を振ったら「裏切り者ーっ!!」って言われた。仕事はちゃんとしようなお嬢。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

128日目 曇時々雨

 

昨日のこともあって十分に探検出来なかったのでまたポチとたまたま出会った、あの時の護衛任務でチームを組んだMP5と再開することにした。彼女も運命のいたずらかお嬢のところに着任することになったらしい。それに加えてWA2000もここに居るとのこと。機会があれば会いにいこう。因みにポチがMP5へ喋りかけたら凄い驚かれた。

 

MP5たちと歩いていると、購買に到着した。そこにはこれまた可憐な少女が居り、名前は『カリーナ』。この基地の後方幕僚を担当しているという凄い人だ。ただお金にがめつい。挨拶からのセールストークとなかなか商売上手なところもある。

そしてな、こんな可愛い娘に商品を勧められたら買うしかないだろ!!電子マネーカード有って良かった。

久しぶりに煙草と何故か売られていたジッポライターを買った。中々良いデザインだった。

 

カリーナのショップから離れた後は基地内の施設を見て回る。戦術人形たちに必要な装備を作ったり、戦術人形を発注する機械がある工廠、ここにも人間の職員は居て、何かしら話し合っていたりしていた。ふと、MP5が整備員らしき男性に呼び止められて、荷物運びを頼まれた。それもかなり大きく重そうだ。俺が持つとなったら確実に誰かと一緒にやるほどな。

大丈夫なのかと彼女に聞いたら、「任せてください!私こういうのも得意なんですよ!」と言いながら軽々と持ち上げて軽快な足取りで運び始めた。

 

……お嬢と関係の深い人形たちはどうにも何かしら特異な力が備わってしまうらしい。となるとWA2000も……!?一体どうなるんだ……。

 

結局、MP5が仕事を始めてしまったので、俺とポチは帰ることにした。探検はまた後日だな。

 

帰る途中でお嬢に襲撃されたのはまた別のお話。ポチの電気ショックつおい。

 

まあたまたまその場面を目撃したローゼにこっぴどく怒られたけど。もうこんなことはするまい。

 

 




S10地区にお嬢が着任しました。これよりドルフロ本編が始まります。



暫くはほのぼのさせますよ。前回で色々燃えつきましたから()
あー……やっとここまでこれた……本当にやってやりましたよ。これでジャベリンくんが本格的に戦線復帰したらコラボも心置きなくやっていける。やりたい(願望)
けどメッセージとか送るのは勇気要りますよ(ヘタレ)

さあ、作品への感想および評価は執筆の支えです。ですので心置きなくどーぞ!!それでは!!


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傭兵、後方送りだってよ。

ジャベリンくんだって何時までも前線に置かれたら色々危ないですもんね、仕方ないね。

それではどーぞ!






129日目 雨

 

結構な土砂降りだ。そう思いながら弓部隊のスリンガーと連絡を取っていた。どうにも社長の提案(悪ふざけ)で俺と彼で非正規の暗殺チームを組ませてみたいらしい。ロマンを求めるんじゃねぇよと言いたい。そしてもうコードネームが決まっており、俺は『ゴースト』または『スペクター』で、スリンガーが『フォーゲル』、ドイツ語で鳥という意味のコードネームとなっている。役割は、俺が実行役、スリンガーが情報収集役だ。

俺たちは個人を装って様々な暗殺をこなすというわけだ。もちろん早速お仕事という訳ではなく、俺がリハビリを終えて更に一週間の休み(グリフィンには伝えてあるらしい。やったぜ)を経て初任務ということだ。暗殺対象は最近また勢力を盛り返した人類人権団体過激派の幹部だ。楽に終わるといいんだが。

スリンガーとの連絡を終えて端末をポケットに入れた。その後はカリーナのショップに行き、置かれていた社内報を読んだ。

 

内容は大体鉄血関係だ。……えっ?AR小隊行方不明……マジか。現在はS10地区の指揮官が捜索中……お嬢そんな大役背負ってるのに堂々とサボってたの!?

 

急いでカリーナに色々聞いてみると、彼女、普通に仕事はこなしており、外に逃げるのは基本全てが終わったときだけのようだ。ただ指揮官が指揮所に居ないのは不味いからと戦術人形たちが追いかけているとのこと。なにやってんだか……。

 

何も買わないのも何なので、カリーナからチョコレートと牛乳を買っていった。やはりお嬢の実家が太いということで、天然物の食品が格安で買える。カリーナ曰く、外部の人間や職員もよく買ってくれてるお陰で資金が潤ってるらしい。そりゃなによりだ。

 

今後はちょっと事業拡大をしてみようとか言ってた。失敗しなきゃいいんだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

130日目 晴

 

何だか今日は基地が騒がしかった。俺の健康状態を確認していた医療くんに聞いてみたら、中隊規模の鉄血がここにやってきたらしい。今この基地の第一部隊と第二部隊が対応しているとのこと。

 

ここの部隊は現在四部隊ほどあるらしく、第一部隊はローゼを部隊長にMP5、WA2000、マカロフ、OTs-12で編成されている。彼曰く、バランスの取れた編成であるとのこと。

第二部隊はスコーピオン、ステンMk-Ⅱ、M14、TAR-21、ガリルで組まれている。これ以上書くとキリがない。とにかく一応はこの基地の精鋭ということなのだろう。医療くんにその事を伝えるとこれまた違うらしい。お嬢がローテーションを考えて定期的に変えているそう。だから戦術人形達の技量の差はそこまでないようだ。

おちゃらけてそうで意外と考えてるんだなお嬢……見直したよ。

 

……また指揮所から抜け出してるのは看過出来んがな。まだ作戦途中じゃないか!!は?ちゃんと指揮出してたの!?うっそだぁ。取り敢えずポチ捕獲してきてくれ。無理?そっかぁ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

131日目 晴

 

槍部隊の面々が俺を迎えに来た。スピアとランスが居ないのは別件で任務中だとトライデントから聞いた。アイツらも大変だな、俺は休むけど!俺は休むけどー!!!ガハハハハ!!!!

 

……変なテンションになってしまった。俺の人間性も限界のように見える。

 

それはともかく、俺はお嬢たちと別れを告げてヘリで帰った。道中で何かに襲撃されるなんてことはなく、安全に武器庫へ到着。本当に久し振りの本社だが、何か変わった所はあるのだろうか?

トライデントにそれを聞いてみると、特に変わった所はないらしい。なんだつまらん。

 

この後は社長の所へ行き、挨拶替わりの殴り合いをしてからの軽い世間話をしておいた。社長はどうやら俺の片目が無くなっていることを大変気にかけていたらしい。社長らしくないものだ。俺は利き目は生きてるので問題ないと返して帰った。久し振りの我が家へ戻るとしよう。

 

……ちらりと社長が誰かに電話するところが見えたが、見なかったことにする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

132日目 晴

 

俺とポチが自宅に帰った時にはもう朝日を拝むような時間帯だった。まあ仕方ない、武器庫から遠いし。

玄関から入ったらオスカーが一鳴きして迎えに来てくれた。ヘリアントスさん様様だな……彼女にはまた菓子折でも持っていくことにする。ポチがオスカーに話し掛けていたのだが、オスカーは驚いている様子もなくポチが喋るたびににゃごにゃごと返事をしていた。可愛い。

 

軽くシャワーを浴びたあとは疲れた体を休ませる為にさっさとベッドに入った。

 

 

 

突然ペルシカリアから明日研究所に来いという電話をもらったから変に目が覚めてしまったがな。寝かせろよ。まだ6時だぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

133日目 雨

 

ペルシカリアに義眼を埋め込まれた。いや、何の冗談かとか言うなよ?I.O.Pに到着した瞬間に黒服に囲まれて連行されて、ベッドに寝かされたかと思ったら麻酔ぶちこまれて寝かされて、気が付いたらペルシカリアがタブレット見ながらコーヒー飲んでたし何がなんだか分からないんだ。飛び起きて呂律が十分に回らない中ペルシカリアに何をしたのか聞いてみれば、うちの社長に頼まれてやったとのこと。

後で社長ぶち殺す。

 

社長への報復を心に決めてペルシカリアにこの義眼はどういう機能があるのか聞いてみた。

どうせ彼女のことだから絶対に何かあるだろう。

ペルシカリアは待ってましたと言わんばかりに俺に埋め込んだ義眼の性能について語る。

この義眼は普段は何の変哲もないものだが、自らの脳波でとある機能を起動することが出来て、その機能というのが人形や、機械の類に認識阻害を起こす特殊なジャマーが放たれるというものだ。機械に対して透明人間になるみたいなやつか?

ただちょっとした欠点もあるらしく、ふとした拍子に勝手に起動してしまうため、基本一人行動の時でしか使わない方がいいらしい。これアレだろ、ロマン兵器。

こういった理由もあり、ペルシカリアが思いつきで作ったものの、使おうにも使えず持て余していた所で社長の依頼が入ってこうなったと。

何で俺、体の良い実験台にされたんだ……?

 

ペルシカリアが今度は眼帯を渡してくる。普段これを着けて居たら間違えて起動してしまってもちょっと姿がボヤけるぐらいに抑えることが出来ると彼女は言う。本当何なんだその謎技術は……ポチに認識されないのは少し傷付くぞ。

 

 

……どうやら自身が味方と認識すれば、普通に見えることが可能になるようだ。良かった。

 

そういえば……まさかとは思うのだがこの義眼を着けるためだけに『ゴースト』だか『スペクター』だかのコードネームを与えられたのか?だったら勘弁して欲しいものだ。偶然で有ってほしい。





その後のジャベリンくん家。。。


「ただいま」

≪ご主人おか……なんかボヤけてますよ?≫

「義眼のせいだ、許せポチ」

≪あ、ハッキリしてきた。凄いですねその義眼≫

「ロマン兵器だよ。ペルシカリアもとんでもねぇ奴だった」

≪ですねー。あ、さっきヘリアンさんがお見舞いで紅茶の茶葉と高そうなお茶菓子くれましたよ≫

「お、マジで?というかヘリアントスさんお前が出てきて驚かなかったのか?」

≪腰抜かしてました≫

「えぇ……」

「にゃー(ポチは無駄に不用意なのよなぁ……駄犬乙)」

≪オスカー辛辣ゥ!≫









ポチが魔改造されるならジャベリンくんだって強化フラグを出すべきだ(脳内会議)
ただ逆にこの義眼のせいで窮地に陥るってのもいいですね。アーキテクトに実験台にされたりイントゥルーダーにハッキングされたり……ぐへへ。

さてさて、コラボしようとしている作品が三作品有るわけですが、もう少し待ってください()
ジャベリンくんが前線に復帰してなおかつ暗殺任務が終わったらやります。

さあ作品への感想及び評価は心の支えです!どうぞどうぞよろしくお願いいたします!!それでは次回も乞うご期待!


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傭兵、休んでるってよ。

お気に入り700件越えて嬉しいサマシュです。
今回はジャベリンくん癒しの回。久し振りの休日に彼は何をするのでしょうね。それとも誰かが彼を訪ねるのか……?
それではどーぞ。





134日目 雨後曇

 

G11が俺のところへ訪ねてきた。休日ついででやって来たようだ。勿論俺は彼女を部屋に招き入れる。久し振りに彼女と再会したんだ、しっかりともてなしてあげなければいけない。ある意味G11は俺の妹か、それか娘のような感じだからな。

彼女と会話の花を咲かす。最近はどうなのか、仕事は上手くいっているのかなんて話した。ちょいちょい彼女は言い淀むことがあったのだが、どうしてだろうか?深くは聞かないことにしたが、少々不安になる。

彼女には彼女の事情もあるので気軽に聞けない。うーむ、困ったものだ。これが思春期の娘とよくあるような父親の葛藤だろうか?

何故か二人して悶々としていたら窓際で静観していたオスカーが一鳴きしてG11の膝に乗って寛ぎ始めた。

その様子を見て、俺はG11と理由もなく笑いあった。オスカーが何だか背中を押してくれたような、そんな感じがする。オスカーには後でおやつでもあげるとしよう。

 

今日はG11が泊まることになり、夕食は俺が料理を振る舞うことにした。特にこれといって上手いという訳でもないんだが、俺の出した料理を彼女は美味しいと言ってくれる。夕食を食べ終わったあと、先に彼女にシャワーへ行かせる。

 

改めて思うが、本当、久し振りに精神的にもしっかり休めることが出来た気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

135日目 晴

 

最近銃の整備をやってなかったので武器庫のガンスミスを呼んで診てもらった。ここのところよく使っていたのがSCAR-H、ACR、ガバメントなんだが何れもこれも修理が必要なレベルだった。これらを一通り見た後にガンスミスの奴は俺を問答無用で殴ってきた。

いや仕方ないだろ。俺だって大変だったんだぞ、仕事に次ぐ仕事で整備する時間もなかったし許してほしいもんだ。あと数日ぐらい寝てたし。

結局会社の道具でしか直せなかったのでガンスミスに銃を預けることになった。

暫くは部屋に長らく眠ってたAN-94とかAK-102を使うしかないようだ。折角だしロシア製武器で統一しておこう。

 

色々と今後の装備について考えていると、G11がやっと起きてきた。寝ぼけ眼を擦りながら歩く彼女の隣にはポチがオスカーを乗せてとてとてと着いてきている。うーん可愛い。

 

何となくその光景の写真を撮って槍部隊の面々に送る。ランスとトライデントが直ぐ様反応してドイツ語やらフランス語で俺に罵倒らしき文章を送ってきた。すまねぇその言語はさっぱりだ。パルチザンとパイクは結構まともな反応だった。スピアは何故かE.L.I.Dの死体の写真を送ってきた。お前俺に何の恨みがあるんだ……今度あいつと喫茶店にでも行こう。相当キテるぞあいつ、何せ俺宛にずっとE.L.I.Dやら鉄血人形の残骸を送り続けてるからな……いや本当に勘弁してくれ。通知が200件になってる。

 

 

 

 

 

 

 

 

136日目 曇

 

腕が鈍るのも嫌なのでちょっと会社で射撃訓練をした。

簡単な的撃ちからキルハウスでの模擬訓練、序でに最近導入されたらしいVR訓練もやった。VR訓練は中々面白く、本当に戦場に立っているような感覚だった。でも目の前で敵が爆散した様子が現実に即し過ぎてビックリした。ゲーム感覚じゃできねぇなこれ。一通りの事を終わらせて、VR用のゴーグルを外したら、目の前にトンプソンが立っていたので俺は飛び上がってしまった。何でお前が居る。

 

トンプソン曰く、武器庫の隊員との任務帰りでたまたまここに来ていたらしい。他にも戦術人形がこの会社でに来ているとか。

 

 

トンプソンと軽い近況報告をしたあと、俺はガンスミスの所へ行った。預けた銃がどうなっているのか気になったからだ。

まあでも俺の銃の状態が状態だからアイツの作業場へ入った時でも俺に対する文句を垂れながら修理をしていた。

 

何だか申し訳ないし缶コーヒーでも買って彼の近くに置いておこう……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

137日目 晴

 

天気も良いしスピアが丁度任務から帰って来たので、彼を誘ってあの草臥れたマスターの所へ行く。

久し振りに会ったスピアの顔は痩せこけており、よっぽど酷い所で任務をやっていたと嫌でも分かる。

彼に労いの言葉を掛けてやり、共に歩いて喫茶店まで行った。

喫茶店まで向かっている途中、彼は任務について色々と話してくれた。どうやらE.L.I.Dが蔓延る地帯と鉄血工造の勢力圏が重なる所で偵察を行っていたようで、度重なるそれらとの戦闘で大分疲労したとのこと。その上任務を共にした戦術人形も曲者揃いで、しかもたまたまスピアがその戦術人形たちに紅茶を振る舞ったら毎回ねだられ始めたので余計にその疲労を加速させたらしい。

 

流石に同情した。

今回は俺の奢りということにしてはっちゃけることとなった。

 

喫茶店に到着して、マスターに挨拶をする。マスターは俺が隻眼になっていることに驚いていたがそれ以上に隣のスピアの状態が酷かったので無言で紅茶を淹れ始めた。

マスターが俺に何故そんな状態の人間を連れてきたのかなんて文句を言ったので少し居心地が悪くなる。そりゃ端から見たらそう言われるよなぁ……。

 

カウンター席に座って一息ついた俺たちへマスターが紅茶とサンドイッチが出された。スピアの状態に見兼ねたマスターのサービスらしい。それを食べ始めたスピアが突然咽び泣き始めたので店内がどよめいた。どうしたのかと聞いたら「久し振りに……人の優しさに触れたから……」とか言う始末。

 

追加でスピアの好きなミートスパゲッティを頼んでおいた。ごめんなスピア、俺にはこれぐらいしか出来ない……。

 

 

結局俺はスピアの愚痴を聞きながら夜まで居座ることになってしまった。一応マスターがBARを開くための準備も手伝っておいた。手伝い中に、マスターから代理人の事を聞かれたが曖昧に答える。というか代理人という言葉が出るだけで脂汗が出てきたし少し手が震えたのでまともに答えられなかった。

 

準備を終えたらスピアと飲む。俺は相変わらずウィスキーのロックを頼み、スピアは何を思ったのか『ベルモント』というカクテルを頼んでいた。カクテルには花言葉と同じように言葉があるらしいが、そのカクテルの意味する言葉は{やさしい慰め}だったか?

それをスピアは一気に飲み干した。全く風情のへったくれもない。

 

ふと、テーブル席の方を見たら、トンプソンと二人、戦術人形が飲んでいた。声を掛けようか迷ったが、スピアの絡み酒に対応しなければならなくなったので諦めた。

なおトンプソンに気付かれて三人諸ともやって来た模様。

五人での飲み会が始まった。カウンターに突っ伏して何故か泣いている金髪の女性は『StG-44』。記憶が正しければトンプソンと初めて出合った時に、彼女へ説教をしていた戦術人形だ。もう一人の栗毛色のロングヘアーの女性は『スプリングフィールド』。愚痴を垂れ流し続けるスピアの隣に座ってそれを頷きながら聞いている。母性が凄そうだ。

本来ならこの飲み会の詳細を書くべきなんだが、残念なことに俺の記憶がない。酒に呑まれてしまったようだ。

ただその三人が俺の家で寝ていたことだけは一生をかけても忘れられないだろう。俺は無実だ。スピアが証明してくれるはず。というかスピアお前も道連れだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

138日目 曇

 

今日何もない素晴らしい日だった。

 

嘘ですごめんなさい、突然こちらを訪ねてきた416にあらぬ誤解をかけられました。今は反省のため自主的に416様へご奉仕してます。

416様は少し困惑していますがそんな事は関係ありません。不肖ながらこの槍部隊隊長ジャベリンは今日一日彼女へ尽くすことを誓ったのです。

 

という冗談はさておいて、自宅がちょっと狭くなった。俺にスピアにポチにオスカー、未だ居座るトンプソン以下三名、数日前から居るG11と今日やって来た416。こんなに人が来たのは武器庫の社員寮に居たとき以来か。トンプソンたちは勝手にボードゲーム始めてたしスピアはスピアでまたG11に色々吹き込んでる。ちょっと416さんやっちゃってください。

 

416に〆られるスピアを横目に紅茶を淹れる。途中でG11も参加して思いの外早く用意が出来た。部屋に居る全員を呼んでお茶会を始めた。やはりこういうのは楽しいもので、時間はあっという間に過ぎていく。そろそろお開きということで、皆帰り始めた。

G11が帰る直前に俺に耳打ちしてくる。

「今度はメイド服とか持ってくるね」

と。

 

 

 

 

もしもし416?ちょっとスピアもっかい〆てあげて?

 

 

 

 




ジャベリンくんよりスピアくんの容態がよろしくなかった回でした()
スプリングフィールドに堕ちてそう。

さーて、次はジャベリンくんの暗殺任務です。コードネームをゴースト、もしくはスペクターと変えて、スリンガーもといフォーゲルと共に裏社会へ!

作品への感想及び評価は心の支えです!どうぞよろしくお願いします!!それではまたこんど!


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傭兵、暗殺だってよ。

評価バーがカンスト?しましたね。見たとき「おひょっ!?」って声が出ました()

ジャベリンくん改めてゴーストくんは、初めての暗殺任務をやります。初めての暗殺任務、何も起きないということはなく……?

それではどーぞ。


139日目 雨

 

俺が『ゴースト』としての任務は今回で初めてだ。(ちなみにスペクターという名前は廃止した。俺があまり好きじゃないんだ)

俺が『ゴースト』として活動している間は、ロシア製の武器で統一することにした。そして素顔を知られない為にもたまたま部屋にあったドクロがプリントされたバラクラバに多機能ゴーグルを着けて行動する。これまんまゲームキャラクターみたいになったけどどうしよう。まあ『フォーゲル』にとやかく言われなきゃ何も問題はない。

現在はポチと共にとあるビルの屋上でSV-98を構えて待ち構えていた。ポチは観測手兼周辺警備だ。言葉を交わえることが出来るのはやはり便利だ。

 

暗殺対象は人権団体過激派の幹部だ。フォーゲルからの情報曰く、彼を乗せた車がいまスコープ越しに見ている道路を走るらしい。俺はその車のタイヤを撃ち抜いて、事故に見せ掛けて殺すようにしろと伝えられている。

 

そろそろ対象がやってくる時間だ。筆をここで置く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

140日目 晴

 

任務は達成。対象は事故死扱いだ。

ただ、そのあとのことが宜しくない。俺は今追われている。

 

何に追われてるかって?

はは、言わなきゃダメ?仕方ないなぁ………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スケアクロウだよ糞がァ!!!!!!!!!!!何でてめーが居るんだ!!!!!!!あぁ何か吐き気してきたトラウマこの野郎ォ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

現在は義眼をフルで機能させて物陰でこれを書いている。この状態になって分かったのがこの姿を消せる機能、俺の半径2m以内に居る味方は俺と同じく姿を消すことが出来るらしい。だからポチも感知されずに無事なのだ。こればかりはペルシカリアに感謝しなければ。

とはいえ俺はハイエンドモデルと鬼ごっこしてるわけで、しかもそのハイエンドモデルことスケアクロウさんは何だか宙を浮いている小型ユニットがなんか映画でよくあるような可視化されたレーザーで俺を探してるしその数が10機ほど有るわけで、いやヤバいヤバい。

そしてそのユニットを操作しているスケアクロウさんですが、「ふふ、ジャベリン……余程私と遊びたいのね……いいでしょう、存分にやって差し上げますわ……」って怪しげな笑みを浮かべてたし……絶え間なく来る吐き気を我慢しながら過ごすのは本当に辛いものだった。

 

彼女の足音が遠くなってからまた動き始める。二度とこんなことやりたくない。

俺は安心したためか、もう思い切り吐いた。嬉しゲロだよ畜生。胃の中を空っぽにした後はここから逃げる為にさっさと走り出した。

 

 

またスケアクロウに見つかったけどな!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

141日目 曇

 

何とか逃げ延びた。どうにもスケアクロウ自体には攻撃手段がなく、空中を浮遊している小型ユニットが攻撃を行っているらしいんだが、そのユニットも捜索特化になっていたので助かったのだ。足を撃たれてたら確実に(男として)死んでた気がする。

 

今は合流したフォーゲルと何とかスケアクロウを拘束して尋問中だ。何故こんなところに居るのか、またどういう理由で俺を付け狙ったのか、そういうのを聞いた。ポチを嘘発見器として使いながらな。

だがそんな準備とは裏腹に、彼女は結構素直に答えてくれる。曰く勝手に基地から抜け出しただけ、曰く単純に俺とOHANASHIをしたかっただけと……どちらにせよ録な事でもない。というかそんな事して大丈夫なのかコイツ……遠隔操作で自爆とかされない?

そんな考えを巡らせていたら、スケアクロウが呟くように「それと私、また貴方とチェスでもしたかっただけですもの……」と言った。……なんだそれ。

 

少し馬鹿らしくなったのでフォーゲルの制止を無視して彼女の拘束を解いた。そしてたまたま見つけたトランプを取り出して何枚か彼女に渡す。ババ抜きだ。フォーゲルとポチも参加させた。呆然とするスケアクロウを無視してどんどんババ抜きを進めていった。彼女が正気に戻ったときにはもうフォーゲルとポチはあがってて、俺と彼女の真剣勝負となっていた。

彼女も渋々ながらそれを受けてたち、マスク越しながら笑っているのが分かった。

 

結果は俺がビリッかす。なーんかついてない。そう思いながら頭を掻いていたら、スケアクロウが笑い始めた。

……本当に、なんで鉄血は人類に牙を向けたのだろうか?

 

また何度かトランプで遊んだ後は彼女を帰した。ただし、次に戦場で出会ったら問答無用で撃つということを伝えておいたがな。それを聞いた彼女は静かに微笑むだけだった。そして、強く風が吹いたあと、そこには誰も居なかった。

 

 

可笑しく奇妙な任務からの帰り、フォーゲルから色々とお小言をもらう。正直許してほしい。誰が好き好んで交戦意思のない奴を殺さなきゃならんのだ。戦場で無情に成りきれない者はすぐに死ぬとは言うが、情けは人の為ならずと言うだろ。

俺は生温い人間で良いんだよ。

 

 

 

……ほかの奴等もこんなのであってほしいなぁ。





鉄血勢力圏の何処かにて。。。


代理人「スケアクロウ」

案山子「おや代理人じゃないですか、どうしました?」

代理人「貴女、彼と接触したわね?」

案山子「そうですが……何か問題が?」

代理人「少し貴女の記憶を見せてもらいたいのですが……」

案山子「嫌だと言ったら?」

代理人「……ふふっ」


(じりじりとカバディのようなものを始めた二人)


処刑人(何やってんだアイツら……?)







スケアクロウが登場。そして予想外に可愛らしい子になりました。何故だ。彼女はなんかこう、策士っぽくしたかったのに……まあええか!!

次回はジャベリンくん、D08地区へ向かいます。何でかって?それは次回までお楽しみに!

さあこの作品への評価及び感想は執筆の励みとなりますので、どんどんお願いします!それでは!!






なんとはなしのキャラクター紹介

《スリンガー》

弓部隊副隊長を務める35歳の男。元々は様々な国で工作員として渡り歩いていたので、とある界隈では伝説のような扱いをされている。そのため情報戦に強い。武器庫に入社した理由はたまたま弓部隊隊長の《トリガー》が彼を勧誘したため。
性格は真面目そのもの。ただ駆け引きが上手く、相手に美味い話をちらつかせながらこちらが最大限に有利になるように持っていくぐらいの腕を持つ。
好きなものはコーヒー。紅茶を毛嫌いしているから時たまスピアやジャベリンと取っ組み合いになる。既婚者で子持ち。


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☆傭兵、結婚式の警備だってよ。

UA60000到達早……早くない?これ私もっと頑張れってこと……?よし頑張ろうか。
今回はカカオの錬金術師様作『元はぐれ・現D08基地のHK417ちゃん』URL:https://syosetu.org/novel/179549/
でD08地区基地の結婚式にジャベリンくんが警備へ向かいます。
時系列がおかしいですが、それは悪しからず()
そして更に、HIKUUU!!!様作『IM NOT MAN.I AM A DEAD MAN』URL:https://syosetu.org/novel/176945/
という作品とも軽くコラボしております。どちらも面白いお話なので是非ともどうぞ!

それではどーぞ!

コラボ系統は☆マークつけときます。





「警備任務ぅ?」

 

「そうだ」

 

 

暗殺任務を終えて数日後『武器庫(armoury)』に戻って社長に唐突に呼ばれたかと思ったら仕事の話を彼から伝えられた。

バイクに乗ってまた自然保護区に行こうと思ってた矢先に仕事の話だ。ついてない。

最近はまともに家へ帰ってないせいでベランダで育てている野菜がお化けになってる。ポチに収穫させようにもアイツにそんな事出来るはずもないしヘリアントスさんにでも頼んでおこうか……。

まあそんな事は置いといて仕事の話だ。

 

 

「それで、何処に行けばいいんだ?」

 

「グリフィンのD08地区の基地だ。あそこで結婚式が有ってな、一日のみだが行ってほしい」

 

「結婚式……服装はどうする?正装なんて何処にあるか忘れたぞ」

 

「そこについては問題ない。あそこは結構緩くてな、雰囲気を壊さない程度なら大丈夫だ」

 

「了解、銃は?」

 

「M4でも持ってけ。あとはサイドアームに何かあればいい」

 

「はいよ」

 

「あとお前の他にも傭兵が来るらしいから仲良くな」

 

「分かってる」

 

 

最低限の情報を聞いて社長室から出ようとして、ドアを開けたら、ドアに身を預けて盗み聞きでもしてたのかパイクとパルチザンが部屋に転がり込んだ。

 

 

「何やってんだお前ら……」

 

「いや、へへ……」

 

「結婚式の警備とか羨ましいですね隊長。何か料理とかパック詰めしといてくださいよ」

 

 

パイクはばつが悪そうに、パルチザンはさも当然かのように料理を貰ってくるように要求してきた。

社長に目配せをしたら特に問題ないとでも言いたいのか容器を俺に差し出した。

 

 

「……はぁ、分かったよ。俺ばっかり良い思いなんてできねぇからな」

 

「よっしゃー!!やっぱ隊長最高!!フカヒレ頼みますね!!」

 

「勿論キャビアもですよね??」

 

「お前ら遠慮って言葉知ってる???」

 

「序でにフォアグラも頼むぞジャベリン」

 

「は?????」

 

 

面倒な仕事が増えちまった。

あとそれら絶対無いって。

 

 

 

 

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「ここかぁ……デカいなぁ」

 

 

タクシーのおっさんに怪訝な目で見られながら自宅から数時間。俺はD08地区の基地の門の前に立っていた。ポチは残念ながらお留守番だ。

それにしても凄いなここ……今日が結婚式ってのもあるんだが中々豪勢だ。ドローンが飛び交ってた。

感心してその光景を眺めながら指定された場所まで歩く。世話しなく色んな人が走り回っており、準備は着々と進んでいるのだろう。

 

指定された場所に到着し、端末を弄りながら立っていると、大きな影が俺を覆う。顔をあげてみれば目の前には大男。

 

 

「どおっ!?」

 

「……お前が武器庫のジャベリンって奴か?」

 

「お、おう……PMC武器庫所属のジャベリンだ。すまねぇさっきは驚いて」

 

「いや、慣れてる。俺はデッドマンだ、よろしく頼む」

 

「ああ、よろしくな」

 

 

デッドマンと名乗る目の前の男、身体はサイボーグのようで、雰囲気が中々の“凄み”があった。この男はどれだけの修羅場を駆け抜けたのやら……というか俺居る必要あるの?いや、目は多い方がいいか。それにしてもこの人強そうだよなぁ……うちの社長と同等か?

 

デッドマンを見ながら考えを巡らせていたら、彼は不思議そうに首を傾げた。

 

 

「俺の顔に何か着いてるのか?」

 

「ん、あーいや考え事をしてたんだ。何も着いちゃないよ」

 

「そうか」

 

彼から視線を外し、結婚式準備の喧騒を眺めながら待つ。

暫くして、一人の戦術人形が声を掛けてきた。その戦術人形は『コルトSAA』という西部劇に出てきそうな出で立ちのハンドガンだった。彼女から今回の仕事の詳しい内容を改めて聞いた。

 

 

「改めてご紹介を、コルトSAAです!それじゃあ警備をお願いしますねー!あとコーラいります?」

 

「ん、要請を受けてPMC武器庫からやって来たジャベリンだ、よろしく。あとコーラは結構だ」

 

「右に同じく要請で来たデッドマンだ。報酬分は働く」

 

 

ごめんな、紅茶持ってきちゃったから……。

少し落ち込むSAAに申し訳ない気持ちになりながら仕事に取りかかる。最初のうちは正門に立って見張っていたが、来客が一通り来たら今度は基地周辺を回ることにした。

 

 

「畑が有るとは……S10地区とは大違いだ」

 

 

少し歩いた先で、目に入ったのは森を切り拓いて作ったのであろう畑だった。多くの作物が栽培されており、みんな元気に育っている。

 

 

「畑か……お嬢にちょっと色々相談してみるか?」

 

 

でも前線付近に戻ったらそれはそれで俺が危ない気がするんだよなぁ……まあいっか。

 

 

『ジャベリン、聞こえるか』

 

「おう、どうしたデッドマン?」

 

『この基地の奴らから披露宴に参加するよう言われたんだが、お前は?』

 

「特になにも言われてないが……まあ何も危険はないし、俺も向かう」

 

『了解、デッドマンアウト』

 

 

畑を作ってみようか等と考えていると、デッドマンから披露宴に来るように通信が入る。

そういやタッパー詰め頼まれてたな、とか思い出してそのお誘いに乗って会場まで急ぐ。

 

 

「社長はどうでもいいとして……ちゃんとパイクたちには美味いもの持って帰ってやらねぇとな」

 

 

数分ほど走って、会場に到着する。会場に設置されていたテーブルの上には様々な料理が置かれており、どれもこれも匂いだけで美味しいということが直感出来た。行き交う人々の間を料理をちょいちょいタッパーに詰めながらすり抜けていく。俺結構失礼なことしてるね、うん。

取り敢えずは人一倍目立つデッドマンの所まで行った。

彼は俺が持っている複数のタッパーを見てちょっと顔をしかめるように俺に聞く。

 

 

「ジャベリン……それは?」

 

「ん、あぁ部下に頼まれてな。失礼なのは承知でタッパー詰めしてたんだ」

 

「お前……」

 

「許せ許せ、折角の目出度いことなんだし無礼講だろ?」

 

 

俺が少しおどけて言う。彼は呆れるように額をおさえるが、すぐに持ち直した。

 

 

「……まぁいい、俺もちょっとだけ浮かれてるからな」

 

「そうなのか?」

 

「まあな」

 

「あ、そうだ。これ貰ってくれ」

 

「これは……名刺と、煙草?」

 

「そそ、結構良いやつだ。あと名刺に連絡先書いてあるからさ、金がある時にでも電話するといいさ。それじゃ」

 

 

そういえばと、俺は半ば強引に彼へ武器庫の連絡先の入った名刺とお近づきの印に使ってない煙草を渡す。

困惑する彼を尻目にまた俺は人の波へと入り込んでいった。それにしても色んな人やら人形が居る。複数の人形と話している恐らく未成年であろう指揮官や、雰囲気が何だかうちのとこのガンスミスと似たような男、その男と言葉を交えている指揮官らしき人間と人形。416や45に似ている戦術人形たち、酒を浴びるように飲んでいる戦術人形、トンプソンとイチャついてる指揮官……数えきれん……いやはや、ここの指揮官は顔が広いな。

それはともかく、飯だ飯。こんな美味そうなものを食べない何て損だからな。

偶然目に止まった料理……フランス料理か何か?を摘まんで食べた。

 

 

「おお……めっちゃ美味い……」

 

 

こんなに美味いものを食べたのは久し振りだ。この任務来て良かったとさえ思う。本当に美味い、語彙力が無くなるぐらいに美味いんだけど。

 

無心に料理を食べ続けていたら、ふとこの基地の指揮官と、今回の結婚式の主役だったであろう『HK417』という戦術人形の少女がやって来た。挨拶回りだそうだ。軽く話しながらふと指揮官の後ろを見たら、何だか見たことあるような…………っ!??

 

 

「くぁwせdrftgyふじこlp!!??!????!!!??」

 

「うおっ!?」

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

 

な、何でっ!!何でハイエンドモデル居るの!!!???え????えぇっ!????!?

 

取り乱す俺に驚いた二人から必死の説明を受ける。何とか落ち着いた俺は水筒の紅茶を飲んで一息ついた。指揮官とHK417からこの披露宴を楽しんでもらうように言われ、別れた。

そしてその別れ際、後ろに居たハイエンドモデル……ヴィオラから武器庫が落としたものであろうものを渡された。

……これスピアのライターじゃないか。何やってんだあいつ。

というか、グリフィンって案外ハイエンドモデル鹵獲してるのだろうか……?

 

一応は落ち着いて、改めてまたこの披露宴を楽しむことにした。ふと、足元に何かが当たる。

 

 

「……ダイナゲート?」

 

 

そう、ダイナゲートだ。構って欲しそうに俺を見上げている。

俺はしゃがんでこのダイナゲートを撫でてあげた。気持ち良さそうにしている。……ダイナゲートって可愛いなやっぱり。

 

 

「ポチには内緒だぜ?」

 

 

何となく名も知らぬダイナゲートにそんな事を言う。そいつは言っていることが分かってないのか、小首を傾げるような仕草をしていた。うわぁ、これまでにないほど可愛い。

 

そんなダイナゲートを撫でながら過ごしていると、大きな音と共に花火が上がる。その花火はガトリングで打ち上げているようなレベルで沢山の花を開かせており、とても綺麗だった。どうやらこれが最後の余興らしい。これが終わったら、皆ぞろぞろと帰り始めた。俺も帰ろうかとたまたま近くに居たSAAに帰っていいのか聞いてみたら、特に問題はないらしい。

 

よし、なら帰ろうか。

俺はSAAに別れを告げて歩き始める。式場はまだ熱が冷めきってないのか、少し騒がしい。

 

門を出てすぐ近くでタクシーを拾った。そのまま乗り込んでちょっと武器庫へ直行する。また数時間ほど車に揺られて到着。運転手にお金を払って、足早にパイクたちの部屋に行った。

部屋にはパイクとパルチザンと、何故か社長が居た。

 

 

「隊長が帰った来たぞー……って何で社長が」

 

「任務の打ち合わせだよ」

 

「おっ、おかえりです隊長!フカヒレ有りました?」

 

「ねぇよ全く……でも料理はクソ美味かったぞ。ほれ」

 

「おおっ……」

 

「ボルシチじゃないんですね……」

 

「文句言うなら食べるなよパルチザン?」

 

「食います」

 

 

パイク達にタッパーを渡す。彼らはそれを直ぐに開けて食べ始めた。すっごい顔が幸せそうだった。

社長にもタッパー詰めしたものを渡したが、手で押し返された。何でか理由を聞くと、

 

 

「医者に塩分が多いものを控えるよう言われてな……」

 

 

と寂しそうに言った。流石にそれは……笑う。

 

やることを終えた俺は任務に持っていった銃やら装備をまだ銃整備をしているガンスミスに預け、今度は会社を出て自宅へ向かう。勿論タクシーを拾ってだ。金が吹き飛ぶなぁ……。

 

車内から外を眺めていたら、端末から着信音が鳴る。誰からかと確認すればそれはフォーゲルからだった。……仕事か。

 

 

「もしもし」

 

『おう、ゴースト仕事だぞ』

 

「分かってる。内容は?」

 

『最近カルト宗教の奴らがうるさいらしくてな、そいつらの排除』

 

「あいよ」

 

『それと、もしかしたら他の裏社会の連中がお前と同じ仕事内容でやってくるかもしれないから衝突は避けるように』

 

「分かった」

 

『それだけだ、詳しいことは追って連絡する。じゃあな』

 

 

ぷつりと通話が切れる。

俺はため息を吐いてまた車の外を眺めることにした。

連勤は辛いぜ。

 

……息抜きにちょっと畑の作り方勉強しようかな。

 

 

 




ジャベリンくん帰宅。。。


「ただいま」

≪おかえりなさいご主人。ご飯にしますか?お風呂にしますか?それとも辞世の句を詠みますか?≫

「……ポチ?」

≪ご主人はなかなか迂闊ですよね。私たちグリフィン側のダイナゲートには専用ネットワークが有ることを知らないなんて≫

「えっと……バレてる?」

≪そりゃもうがっつりと。意外と有名ですよご主人って……ダイナゲートを愛する者として巷では人気ですから≫

「なんだそれ……」

≪まあそれはともかく、私が居ながらにしてその狼藉、弁明ぐらいは聞きましょう≫

「いや、落ち着け。お前バグってないか?」

≪そりゃバグってますよ。他のダイナゲート達に煽られまくったらそりゃそうなります≫

「えぇ……いや、すまない」

≪……まぁ許してあげましょう。オスカー、行こう≫

「にゃー(ポチって性別なんだっけ?)」

≪性別はポチですよ≫

「にゃお……(いやわけわかんねぇよ)」

(……今さらなんだがポチってオスカーと話せるのか?)







(ダイナゲート専用ネットワークとかいう数秒で思い付いたオリジナル設定)ごめんなさい()
ちゃんと描写出来たか不安なサマシュですどーも。展開早すぎな気もしました。
コラボは楽しいのですがなかなか動かすのは難しい限りです。そしてジャベリンくん、農家に目覚めるフラグ建ちました。いつもフラグ建ててんなこの傭兵。
また何だかポチの声のイメージがハガレンのアルフォンスの声を演じた時の釘宮さんな感じになってきました(個人的所感)
皆さんは今まで通り妄想で補完を……。

さて、ジャベリンくん今度はまた暗殺任務です。実はS09地区に行くんですよ……ちょっと一波乱あります。頑張れジャベリンくん。負けるなジャベリンくん。足がつくような行為もしないでねジャベリンくん。

この作品への評価及び感想は心の友です。是非ともどうぞ!!それでは!!


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☆傭兵、訪問だってよ。そのいち

今回もコラボでございます。
コラボ元は『それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!』URL:https://syosetu.org/novel/166885/
です。この作品は主人公と戦術人形の日常と非日常が織り混ざったもので、中々面白い作品なのでどうぞ読んでくださいね?読んでね?読め(豹変)

ジャベリンくん、裏のお仕事関係でS09地区へ向かいます。何するつもりなんだ……それではどうぞ。
今回は二話分を分割投稿で予定しております。何でか長くなったんや……。







≪十時の方向から五人≫

 

「了解。今日風強いな」

 

≪そうですね、洗濯物室内に入れた方が良かったのでは?≫

 

「ははっ、違いない」

 

 

冷たい風が吹く真夜中、俺はまた『ゴースト』として任務に従事していた。今回は『SVDM』というかのSVD狙撃銃の改修型のライフルと、『AS Val』というサプレッサー内蔵の銃を持って来た。今は静かに暗殺対象であるカルト宗教集団の幹部がいる建物を監視している。それにしても警備が多いんだよなぁ……。

これじゃ対象が出てきても迂闊に撃てない。まあフォーゲルの奴から確実にこっちの存在を向こうは知ってるから気を付けろとか言われたし、そういうことなんだろう。

 

 

「そういえば、このカルト宗教って何を信仰してんの?」

 

≪確か、E.L.I.Dを神聖視してたような……あと人形やら人間を消すべきとか言ってましたね≫

 

「うわ……あんなの神聖視してんのかよ正気じゃないな」

 

≪E.L.I.Dってデータでしか見たこと無いんですけどそんなに?≫

 

「キモいんだよ、アレ」

 

≪あぁなるほど≫

 

 

取り敢えずまたスコープを覗く。運良く暗殺対象が一人で煙草を吸っており、今がチャンスだった。

 

 

「ポチ、風は?」

 

≪ん、えーと、無風ですよ≫

 

「了解。撃つぞ」

 

 

これまた幸いと、奴の頭に十字を重ねる。引き金に掛けていた指へ力を込めていざ撃たんとした……瞬間に対象が体重を預けていた柵がまるで()()()()()()()()に壊れて対象諸とも落ちていく。アレは死んだな……確かあの下は針山みたいにガラクタが置かれてたような。

俺は直ぐに顔を上げて、ポチはあちゃーといった風に呟く。

 

 

「……同業者か?」

 

≪お仕事横取りされましたね≫

 

「これじゃ金が貰えんぞ。何処に居るんだ横取りした奴……?」

 

≪んー……あ、東の建物の屋上に一人居ますよ≫

 

「お、ナイス。どれどれ……」

 

 

ポチに言われた方向へ双眼鏡を覗かせる。その先には黒髪にパーカーを羽織った制服を着た少女が居た。恐らく戦術人形なのだろう。

 

 

「あの子が横取りしたっぽいな……ポチ、名前分かるか?」

 

≪多分Super SASSって名前だったと思います。ご主人、ナンパでもする気です?≫

 

「いやしねぇよ。というかこっち気付かれてるな俺たち……手振っとこ」

 

 

ひらひらと向こうへ手を振ってみる。レンズ越しのSASSは少し困惑ぎみに手を振り返してくれた。うん、やっぱり気付いてたな。

 

 

「おっ!?」

 

 

少し和んでいたら突然銃弾が飛んできた。方向は宗教団体の施設からだ。なんでバレるかなぁ!?あ、俺が手を振ってたせいか!!!

 

 

「ポチ、撤退するぞ!!」

 

≪了解!ご主人の認識阻害起動します?≫

 

「バッカ相手は人間だっつーの!!ほら走れ!」

 

≪ほいさっさ!≫

 

 

 

 

 

_________________

___________

______

__

 

 

 

 

 

 

「あー、死ぬかと思った」

 

「おかえりゴースト、どうだった?あとポチはどうした」

 

「ポチは家に帰した。それと聞いてくれ、仕事横取りされちまったよ」

 

「お前が?ははっ、珍しい」

 

 

何とか追手から逃れた俺は武器庫のとある一室、フォーゲルが情報収集を行っている部屋に来ていた。彼はモニターから目を離さずずっとキーボードを叩いている。俺は煙草を咥えて彼の隣に座る。

 

 

「……ここは火気厳禁だぞ」

 

「点けてないからセーフ。それより何してんだ?」

 

「あぁこれか?わざと俺たちの情報ばら蒔いてる」

 

「は?」

 

 

フォーゲルはあっけからんと俺の問いに答えた。いや何やってんだこいつは……自ら情報ばら蒔くなんて正気か?

もう少し詳しく彼に聞いてみれば、中々気が狂った回答を頂いた。曰く、フォーゲルは裏社会じゃ伝説のような扱いを受けていて、しかも彼自身が『情報の宝庫(インテリジェンス・トレジャリー)』とかいう長ったらしい名前で呼ばれており、自分がまた活動を始めたとわざと噂を流したら自ずとこちらの経歴やらなんやらを調べようと武器庫のデータベースに侵入してくるらしい。そこを彼が逆探知で発信元を見付けて情報を抜き出すのだそう。彼ならやると確信出来てしてしまうので余計始末が悪い。

というかお前武器庫に入社したことバレてんのかよ俺もジャベリンとしての経歴が知られちまうじゃねーか。

 

 

「それは安心してくれ、お前の正体を知った奴は基本トリガーが殺しに行く」

 

「物騒だなオイ……というかなんで俺そんなに護られてんの?」

 

「お前の義眼がトップシークレットみたいなもんだからだよ。その目は高く売れる、何せペルシカさん謹製だからな」

 

「あ、なるほど。勘弁してくれ……」

 

「恨むなら捕まって目玉くり貫かれたのを恨むんだな」

 

 

そんなの分かってるっつーの。ついでにペルシカリアも恨んどこう。便利なのは良いんだがそれで命を狙われたら辛いもんだ。

何だかなぁと腕を組んでいると、俺の目の前にあったノートパソコンに一通の通知が来る。俺がその内容を確認した。

 

 

「おい、仕事だってよ」

 

「何ぃ?今日は随分と仕事が入ってくるな……それで内容は?」

 

 

フォーゲルがキーボードを叩きながらコーヒーを飲む。全くこいつ溢すかもしれないのによく飲めるな……ええと、どれどれ。

 

 

「S09地区のユノっていう指揮官を誘拐か殺害だとよ」

 

「ブフゥッ!!!!」

 

「どうおっ!!?おまっ!?」

 

 

フォーゲルがユノという言葉を聞いた瞬間俺に向かってコーヒーを噴き出した。パソコンは守られたが勿論俺はそのコーヒーを全身に浴びる。生温い。

咳き込むフォーゲルに非難の目を向けながらポケットに入れていたハンカチで体を拭く。何でこいつ過剰に反応してるのか今一つ分からない。このユノっていう指揮官にトラウマでも持ってるのか?

 

 

「ゲホッ……お前、S09の噂を知らんのか?」

 

「噂ぁ?知らねぇよ、精々一番前線に近いって位しか聞いたことがねぇな」

 

「メグちゃんなら知ってそうなんだがね……いやな、彼処の基地に所属している指揮官へ手を出したら消されるって噂があってな」

 

「何だそれ」

 

 

まあこのご時世そういう黒い噂はよくある事だが、こいつがここまで警戒するのは何でだ?

フォーゲルは俺よりも場数を踏んでるし、元工作員じゃあるし命の危険に晒された事なんて何度もある筈だ。

 

俺がそう疑問に思っていると、彼は呆れたように口を開く。

 

 

「訳が分からないって顔してるな?いや、確かにただのグリフィンの指揮官ぐらいなら何の問題もない、寧ろ片手間で捻ることぐらいできる。ただな、そのユノって指揮官の所の基地は無理だ」

 

「お前がそこまで言うなんて……そんなに切れ者なのか?」

 

「いや、指揮官自体はメグちゃんと同じぐらいの歳の子だし脅威じゃない。ヤバいのは回りだ、戦術人形たちがヤバい」

 

「戦術人形がヤバい」

 

「その通り、俺が色々気になって個人でS09基地の情報を集めてた時があってね、少ししてその基地の戦術人形達に嗅ぎ付けられて追われる羽目になったんだ……マンホールが無かったら確実に捕まってたよ」

 

 

捕まってたら今頃土の中だったね、とフォーゲルはそう言ってまたコーヒーを飲む。まさかこの男を追い詰める奴らが居るなんてな……そしてこの男はそれから普通に逃げ切って痕跡も何もかも残さず今ここに居るっていう事にも畏敬の念を抱く。何だかこの任務を受けるの嫌になってきた。

 

唐突に、フォーゲルがまた口を開いた。

 

 

「それに、手を出したくない理由はまだ他にもある」

 

「まだあるのか……どういうことだ?」

 

「あの基地な……アリババだったかメジェドだったか、裏社会でその名を轟かせていた奴も居るんだよ。それの相手をしたくないってのも理由だ」

 

「あの基地どうなってんの……?」

 

「さあな?ただ一つ分かることは手を出さないのが懸命ってことだ。そういえば依頼主の名前は?」

 

 

あ、そういや確認してなかったわ。ちょっと待ってろ……名前文字化けしてるんだが。

こんなパターン初めてだ。流石に俺じゃどうにも出来ない為、フォーゲルに投げる。彼は俺に文句を言ったがお前にはコーヒーをぶっかけてきた罪があるんだから黙ってやりやがれ。

 

 

「お前にも発信源の特定の仕方とか教えようかな……」

 

 

なんて言いながらまたカタカタとキーボードを叩き始めるフォーゲル。モニターは何かよくわからない場面に切り替わってる。まるで映画のワンシーンだ。彼はモニターを凝視した後に突然ニヤリと笑った。

どうしたのかと聞いたら、

 

 

「いやぁ……例のカルト集団から来てたもんでな、ふっ」

 

 

と、また笑いながら言う。

……マジ?幹部殺そうと狙ってた奴に頼むか普通。あいつら俺たちの存在知ってたはずだろ?それにしても……

 

 

「怪しいな」

 

「あぁ怪しい。何だかんだ言ってあのカルト集団もこちらの情勢を事前に察知するほど情報戦に強い奴らだ。仕事で誘き寄せて消そうとするぐらいには頭は回るだろうに」

 

「フォーゲル、この仕事どうするよ?」

 

「はっ、そんなの決まってる」

 

 

コーヒーカップを置いて彼はとても良い笑顔で言う。

 

 

「奴らに後悔をさせてやるんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だからってこんな馬鹿なことやるか普通……」

 

≪フォーゲルって中々お茶目ですよね≫

 

「アレをお茶目と言ったら世界中がお茶目で溢れるよ」

 

 

後日、真夜中に覆面を被り俺はポチと共にユノ指揮官の居るS09基地周辺でしゃがんで煙草を吸いながら開始時刻まで待っていた。数年ぶりに吸う煙草は、今までのことを思い出すように苦い。

 

 

「彼女の経歴見ちまったから余計にやりたくねぇよ……」

 

 

任務を始める前にフォーゲルからユノ指揮官の過去を教えて貰ったんだが、途中で泣いた。彼女の過去がハード過ぎる。誘拐され人形の目を埋め込まれ、更には親と死に別れた上に監禁されて虐待……だけど今はとある戦術人形と誓約ってのもして基地の人形達に囲まれて幸せに暮らしてるという。

俺はそんな彼女の基地にちょっかいを出して利用するなんて……フォーゲルは俺を罪悪感で殺す気か?非情になりきれない俺に問題はあるが本当に勘弁してくれ。

 

因みに、今回の任務は例のカルト集団がこの基地を襲撃したように見せかけて、基地の人形たちを焚き付けてカルト集団を殲滅させるように仕向けるといったものだ。

勿論俺とポチだけじゃ到底無理なので会社から剣部隊と槍部隊、盾部隊、弓部隊の奴らも出動してる。彼らが派手にドンパチやってる間に俺がユノ指揮官のところまで忍び込んで誘拐未遂を起こすよう言われてる。

ぶっちゃけ思うんだが普通にそのままカルト集団にカチコミかけろよ。社長もなんでGOサイン出した?コストとリターンが釣り合ってないだろうが……道楽も過ぎれば録なものにならんぞ。

 

 

『ゴースト、聞こえるか?』

 

「何だよフォーゲル」

 

 

フォーゲルから通信が入ってくる。今回、彼は後方で指揮を担当するそうだ。こいつなんで安全地帯で指揮なんだよちょっと前線来やがれってんだ。

だが俺の心の叫びなんて通じるはずは無く、彼はそのまま話を続ける。

 

 

『極力義眼は使うなよ?正体がバレる』

 

「分かってるよ、これでバレたらグリフィンに何されるか分からんからな」

 

『よっしゃ、頼んだぞ。あとポチにはナビゲーションをやらせておけ、データを送っておいた。あの基地の中はトラップだらけだからな』

 

「了解。頼んだぞポチ」

 

≪任されました!≫

 

 

心の中で舌打ちをして、ポチをバックパックに入れる。流石にダイナゲート連れてたら確実に俺とバレるのでこうするしかないのだ。

よいしょとバックパックを背負う。重い。そろそろかと空を見上げる。その先には多数のフレア。

……最高に馬鹿な任務が始まった。途端に多方面から銃声や「スベテハカミノタメニー!!」という雄叫びが聞こえてくる。あいつら万歳突撃してないか?特に剣の奴ら。

考えてたらキリが無くなってきたので取り敢えずユノ指揮官の居るであろう所まで走っていく。

 

 

≪ご主人ここ罠ばっかりですね。右です≫

 

「ほいっと。ここの指揮官はよっぽど愛されてるんだろ」

 

≪ですねぇ……5m先に自律ターレット≫

 

「了解」

 

 

フォーゲルの忠告を無視する形になるが、義眼を起動させる。ターレットは俺を見つけることなど叶わず未だ周囲を見渡していた。そのままポチのナビゲーションの通りに進んでいく。途中で戦術人形とすれ違ったりしたが義眼のお陰で銃撃戦ということには成らなかった。最終的にとある部屋の前に到着した。ここにユノ指揮官が居るのだろう。というかここ寝室だな?

義眼の機能をオフにする。

 

 

「今さらだが……こんな非常事態に呑気に寝室に居るかねぇ……?」

 

≪居ないと思いますよ≫

 

「ま、元々焚き付けるためだし関係ないか。入ろう」

 

 

静かにドアを開いて中を見回す。暗い部屋の中、ふと見えたベッドの上にはこんもりと盛り上がっていた。……トラップだろうなぁ……わざと引っ掛かるしかないかなぁ……。

 

 

「たかだかガキ一人誘拐するのにこんなことするもんかよ……まぁ全ては教祖様、もとい神の為だから仕方ないか」

 

 

なんて適当に思い付いたセリフを言いながら、シーツを捲り上げた。……勿論、そのシーツの中はただのマネキンだったがな。

 

背後に気配を感じる。そして、銃を構える音が聞こえた。

 

 

「動くな」

 

「……チッ」

 

 

多分、俺は今多くの銃口を向けられているのだろう。気配が、殺気が、どんどん増えていく。

俺この状況知ってる、詰みってやつだろ?

 

 

「まさかこんな古典的な罠にかかるとはの……お主、相当の馬鹿者じゃな?」

 

「そう言われて実に光栄だよ、貴様らみたいなガラクタに言われるのは腹立たしいが」

 

 

取り敢えず煽っとこう。あ、殺気が殺意になった……泣きそう。

 

 

「減らず口をよく言う……一体何の目的で指揮官を誘拐しようとした?」

 

「盗み聞きなんて随分な事だ。こちとら崇高な思想の元動いているだけさ」

 

「崇高な思考?大それた事を言うでない、お主らの教義なぞ肥溜めよりも穢れたものじゃろうに」

 

 

……もしかしなくても釣れてる?フォーゲル、情報とか流したな?

 

 

「勝手に言ってろ。素晴らしい考えは時として理解されん、そして元よりお前らに理解してもらうつもりなんてない」

 

「……まぁよい、お主にはもっと吐いてもらうつもりじゃ。着いてこい」

 

 

後ろの声の主が命令してくる。圧が凄いって……とはいえここで捕まる気はさらさら無いので奥の手を使う。

 

 

「……残念だがそれは無理な話だ」

 

「お主に選択権があると思っておるのか?」

 

「思ってるさ、寧ろ確信している」

 

 

瞬間、部屋の中を眩い光と爆音が広がった。万が一の為に装備していた大量のフラッシュバンを同時に爆発させたのだ。周りの戦術人形たちが突然のことに驚いている内に義眼を起動させる。

 

 

「っ!?消えた!!?」

 

「探すのじゃ!!まだ近くにいるはずじゃぞ!!」

 

 

ドタドタと戦術人形たちが部屋から飛び出して行った。全員が抜け出した後、襲撃部隊全員に通信を送ろうとしたが通信が繋がらない。どうやらジャマーが発動しているようだ。まあ非常用通信は生きてたので問題はなし。そちらに繋げて全部隊に伝える。

 

 

「全員、応答せよ。こちらパッション1、任務は成功した。繰り返す、任務は成功した。全員撤退せよ」

 

 

通信を切る。一つ深く息を吐いて、最高に馬鹿みたいな任務だったな……と呟いて立ち上がる。

早く逃げるか。見つかったら今度こそ殺される。そして本当に申し訳ない、あんた達を利用してしまって。

騒がしい基地内を、姿を隠して逃走する俺はそう心の中で思った。

 

 

 

 

 

 

 

途中突然義眼の機能が切れてこの基地のWA2000が絶叫してしまったのは別のお話。流石に目の前にドクロのバラクラバ着けた奴居たら叫ぶわな。変な噂が流れそうだ。

 

 

 

 

 

 




面白さだけでS09地区の基地ににちょっかいをだしてしまう危ない橋を渡りたがるPMCがあるらしい。
ジャベリンくんも大変だ、何せ基地内の指揮官親衛隊(?)に殺されかけたのだから……。というか裏でフォーゲルことスリンガーとFMG-9とのネット上での戦い繰り広げられてそう。

そして言い訳をば……コラボのお話が持ち上がって気分が舞い上がっておりました。このお話を書くに当たって逸る気持ちを抑えきれずこのような結果となりました。後悔はしてませんが反省はしています。ですが、どうぞこの「傭兵日記」をよろしくお願いしますね(遠回しのステマ)

さてこの作品への感想及び評価は心の支えです。どうぞ、お願いします!それでは!!


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☆傭兵、訪問だってよ。そのにのおわり

引き続きコラボですよ。
ジャベリンくん、ユノ指揮官と接触、そして彼女の基地へ……。
今日も長いです。だからなんでこんなに長くなるねん……。

それではどーぞ。




数日後、カルト集団は壊滅状態に陥った。S09基地は上手くやってくれたようだ。

因みに、俺たちが行った襲撃任務での死傷者はゼロだ。わざと死体に似せたものをばら蒔いたりはしたものの、基本だーれも死亡してない。怪我といえば剣の奴らが何処かしら一発もらったり、スピアがまた転けたぐらいか?

そして後で知ったことなんだが、そのカルト集団殲滅作戦にはお嬢の基地の部隊も駆り出されたらしい。他基地の部隊も使うってどんな本気度だよ。

 

それにしても平和だよなぁ……ははは。

 

 

「…………」(もぐもぐもぐもぐ)

 

「……なぁ、ユノちゃん」

 

「んぐ……なんですか?」

 

「美味しいかい?」

 

「はい!」

 

 

本当に、平和だなぁ……財布が軽くなるなぁ……。

現在俺はS10地区にあるファミレスで、S09基地のユノ指揮官と食事をしていた。何故かと言うと、お嬢の基地へ向かう途中、連れの戦術人形とはぐれて迷子になっていた彼女に別件で来てた俺が偶然出会ったからだ。暫く何とはなしに話していたらユノちゃんの腹の虫が主張をし始めたのでファミレスに寄って今に至る。一応、ポチも居るんだが、外で待たせてる。理由は後で言おう。

彼女の周りには何枚にも重ねられた皿がある。彼女、そんな小さな体のどこに入ってるんだあんな量……?

今カード持ってきてないからこれ以上彼女が食べるようなら俺の財布に冬が来る。

だが幸運にも彼女は満足したようで、ふう、と一息ついた。

 

 

「それにしても……ジャベリンさんって本当に人形じゃなく人間なんですよね?」

 

「藪から棒にどうしたのさ?俺は人間だよ、左目が義眼なだけさね」

 

「えっと、それじゃあ最初ちょっとボヤけて見えたのは?」

 

「気のせい気のせい。大体可笑しいだろう?人がボヤけるなんてそれこそ幽霊か、目にゴミが入ったか、そんな感じだろうに」

 

「そうなのかなぁ……でも初めから顔がはっきり分かったのは何でなんだろう……?」

 

「ん?」

「あ、何でもないです。ご馳走さまでした」

 

 

そう言って彼女は立ち上がり財布を取り出す。俺はそれを止めて、自分が払う旨を伝えて共にレジへ行く。……財布の中が小銭だけになっちまった。

ファミレスを出て、外でちょこんと座ってるポチに声をかける。

 

 

「ポチ、待たせたな」

 

≪あ、おかえりなさい。ユノさんもどーも≫

 

「……ぷふっ」

 

「ユノちゃん、どうしたんだ突然」

 

「いや、やっぱり柴犬が喋ってるのって面白いなぁ、って思っちゃって。本当にダイナゲートなんですよね?」

 

 

そう言ってまた笑う彼女。

まあ、その、ユノちゃんは特殊な眼を持ってるからか彼女から見える世界は少し変わってる、らしい。何故だか知らんがポチのことはちょっと大きな柴犬に見えるようだ。……あと俺がボヤけて見えてしまったのもそのせいなのだろう。

まだちょっと笑ってる彼女にポチが抗議の声を上げる。

 

 

≪ダイナゲートですよ!ユノさんの眼のことは重々承知してますが、これだけは言わせてください!私はダイナゲートです!!≫

 

「ふふっ……ごめんね、ポチ」

 

≪くぅ~ん……≫

 

「堕ちるの早くないか???」

 

 

ユノちゃんが慣れた手際でポチを撫でる。ポチはよほど気持ち良かったのか犬に成り下がった。下品に腹を見せて転がってる。それをユノちゃんはもっと撫で続ける。なーんか半径2mぐらいにほんわかとした空間出来てないか?この領域に入ったら俺も顔が緩むんだけど。こういうのを魔性と呼ぶんだったか?

 

 

「指揮官!!やっと見つけた!!」

 

「あ、SASSちゃん!」

 

「もう、勝手に何処か行ったら駄目だよ!」

 

「あはは……ごめんね。そういえばおばあちゃんは?」

 

「副官なら先に基地に行ってるよ」

 

 

この状況をどうしようか迷っていると、一人の少女がこちらにやってくる。ユノちゃんにSASSちゃんと呼ばれた彼女はパーカーに制服を着ている。

……あ、この子あの時俺に手を振ってくれた子か?

彼女は俺を見て一礼をする。

 

 

「ありがとうございます、迷子になってた彼女を保護していただいて」

 

「ん、いや別に構わないよ。俺もこの子との会話を楽しんでたところだ。な、ポチ」

 

≪ワン!!≫

 

「ポチ?」

 

 

こいつ、犬になってやがる!?ユノちゃん恐るべし……。

そしてポチがバグったし斜め45度で起こそう……としたけどユノちゃんがスッゴい悲しそうな顔したから止めた。その顔は反則だよ……。

 

ポチを治すのは後回しに、俺は彼女たちとお嬢の基地へ行く。道中で何でお嬢の基地へ行くつもりなのか聞いてみた所、作戦で協力してくれたことについて感謝を伝えるとか何とか、あとお嬢に招待なんてされたらしい。……彼女が招待なんてどんな風の吹き回しだ?明日はジャガーソンさんの農場に牛でも降ってくるかな、それともUFOに連れ去られるのかな。

 

そんな事を考えながらまた歩いていく。S10地区はまだ出来て間もない地区でもあるから、案外狭い。だからこうやって歩いていたらすぐに基地へ到着する。

基地の正門にはお嬢とローゼ、そして白い帽子に金髪の少女が立っており、メグちゃんがその少女を見て「おばあちゃん!」と駆け寄っていっていた。どうやら彼女が副官らしい。

 

お嬢が天を仰いで両手を握りしめている。多分心のなかで「落ち着け……落ち着け私。今あの二人を抱き締めたら今までの信頼が崩れてしまう……というかユノちゃん小さくて可愛いヤバい抱き締めたい……無理……尊い……」とか思ってるんだろうなぁ……。

近くのSASSが若干引いてるな。

 

ふと、副官が俺の方を見る。その瞳に何か薄ら寒い感覚を覚えたのは気のせいだろうか……?

『ゴースト』としてはバレてない事を祈るとしよう。というかポチは早く治れ。お前はダイナゲートだろ。

 

 

≪私はユノさんの犬です≫

 

 

よーし斜め45度な。

 

 

 

 

……………………

…………

 

 

「まさかトントン拍子で畑作れるようになるとはなぁ……」

 

≪傭兵で農家って訳が分かりませんね≫

 

「だな。また今度槍の奴らと畑を耕してみるか」

 

 

ユノちゃんたちと基地で別れた後、俺はローゼに色々と相談、というか畑を作るのに手頃な土地は無いか探してもらった。俺が今日ここに来てやろうとした目的が終わったわけだ。そして野菜の種も融通してもらえた。ホクホクだ。

今は基地の裏手で特に理由もなく座っていた。

 

 

「隣、座るぞジャベリン」

 

「ん?何だ、副官じゃあないですか」

 

「ナガンでよい、それと敬語じゃ無くて結構じゃ」

 

 

ふと、俺の隣にユノちゃんの副官、『M1895』が座ってくる。彼女にユノちゃんとSASSはどうしたのかと質問すると、どうやらお嬢とお茶会を開いているらしい。ユノちゃんお嬢に襲われなきゃいいんだけど。

 

 

「ところでナガン、何で俺のコードネーム知ってるんだ?」

 

「社内報からじゃ。お主、グリフィンじゃ結構有名じゃぞ?蝶事件唯一の生き残り、そしてハイエンドモデルから生き延びた人間としての」

 

「……そうなのか」

 

 

蝶事件。そういやアレはそんな名前で呼ばれてたな。あまり思い出したくない記憶だ。何度も日記とかに書いてるんだが、やはりトラウマは抜けきれてない。夢を見るたびに代理人の狂気的な笑顔が現れる。片手に俺の眼を持ってな。

 

 

「あと数々の女を引っかけてるプレイボーイってやつもの」

 

「それは誤解だからな?すまんが俺は一途な人間だよ」

 

「呵々、404小隊のG11やら本部のトンプソンを部屋に入れておいて何をいうのか」

 

「何で知ってんの!!??!」

 

 

俺のプライベートってやっぱり誰かに監視されてるだろ!!!そしてそれは彼女達が自分の意思で入ってきただけでやましいことはない!!!

もしもし弓部隊?俺の周辺で怪しい動きしてるやつ探してほしいんだけど!!え、皆仕事でそれどころじゃない!?そんなぁ……。

項垂れる俺の横で笑っていたナガン、今度は真面目な顔になり俺へ予想を裏切る事を言ってきた。

 

 

「ま、それはさておき。少し聞きたいことがあるのじゃ」

 

「あぁ……?なんだよもう……好きなだけ聞け畜生……」

 

「この前、儂らの基地を襲撃したのはお主の会社じゃろ?」

 

「……は?」

 

 

太腿のホルスターに手が伸びる。まさかもう特定されてしまったとは……。

 

 

「だとしたらどうする?」

 

「何、お礼参りという訳ではない。お主らを相手にしてしまうとこちらも少々分が悪いからのう」

 

「バレてるか……それにしても察知が早いな、そっちには優秀な諜報員でも居るのか?」

 

 

優秀な諜報員が居るのはそちらも同じじゃろうて。と、ナガンは言う。おいスリンガーてめぇ迂闊に情報ばら蒔き過ぎだろ。舐めプして足元掬われてんじゃねぇか。

 

 

「それに、襲撃してきた時のお主らの動きが統一され過ぎてるというのも特定できた一つの理由じゃ」

 

「あいつら……好き勝手やれ言ったのに何してんだよ」

 

「染み付いた動作は抜けきらないって事じゃな。あとお主らの置いてった死体も何処かしら不自然な点もあったしこちらの基地の損害がゼロというのも変な話じゃよ」

 

「……うちの会社が迷惑をかけた。お詫びとして社長に除毛剤かけてくる……」

 

 

あー、あいつら本当に何やってんだよ。何か想像出来るぞ、不自然なぐらい明後日の方向に撃ったりとか不自然に動いて結果的に自然な動きになったり……あとは剣の奴らが熱くなりすぎて大暴れとかな。

社長、マジで何でこんなことやったんだ本当。

 

 

「別に謝る必要は無かろうて。こちらも結果的には脅威の排除が出来た訳だしの」

 

「そりゃ何よりだ。とはいえ、こうやって俺の隣に来たってことは仕事の話もするんだろ?」

 

「うむ。お主が隊長を勤める部隊は何でもやると聞いてな、少し基地の掃除を頼みたいのじゃ」

 

「……それだけ?」

 

「とはいっても基地全体じゃぞ?なにせこの前の襲撃事件の事があるからのう……」

 

 

いや結局脅しに使うんかい。

だが仕方ない、特別特価で受けてやろう。一種の罪滅ぼしだ。

ふと、窓の割れる音が聞こえた。

 

 

「我が人生に一片の悔い無しィィィィィィィィィィィィ!!!!!!!!!!!!」

 

「なんじゃ!?」

 

 

そして突然、お嬢の魂の叫びが聞こえてくる。大方想像はつくのだが一応ローゼに通信機で確認を取っておく。

どうやら我慢し切れずユノちゃんを後ろから抱き締めて、驚いたユノちゃんが咄嗟に背負い投げして窓から落としたらしい。

ナガンに何時もの事だと伝える。

 

 

「指揮官が叫ぶのが普通とは一体……」

 

 

気にしたら負けだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「基地外壁全て終了したぞ」

 

「了解。早いな」

 

「ポチが頑張ってくれた」

 

 

数日後、俺は槍部隊を連れて車でS09地区の基地へ向かい、壁の修復と掃除を行った。規模が大きい分一日仕事なはずなんだけど、半日程度で終了した。ポチが正に疲労困憊といった風に地面にノビている。今度しっかり褒めてやろう。

 

 

「おー……もう終わったのですね!」

 

「ああ、一応確認も頼めるか?」

 

「任せてください!」

 

 

ポチを抱き上げて撫でていたら、俺たちの監督を任されていた『ルガーP38』がやって来た。彼女に最終確認を任せる。

他の隊員に休むよう伝えて、腰のポーチから缶コーヒーを取り出して飲む。全て飲み干した後、トライデントがえらく周囲を見回している事に気が付いた。

 

 

「トライデント、お前随分と警戒してるがどうしたんだ?」

 

「……いや、あの襲撃任務の時やべぇ人形とぶち当たってな、そいつがこっちに来てないか見渡してたんだ」

 

「どういうことだそりゃ。やべぇって何処がやべぇんだよ?」

 

「俺の腕食おうとしてきたんだ……マジで怖かった」

 

「そんなの居たの?」

 

「それが居たんだ……あ、すまん逃げる」

 

 

おい、という言葉を置き去りにトライデントは何処かへ走っていった。そのあとすぐに身体中傷だらけで前髪を垂らしたおさげの少女がここにやってきた。

 

 

「逃したか……すみません、ここで偉丈夫の赤毛の男を見ませんでしたか?」

 

「あー、そいつなら工廠に行ったぞ」

 

 

勿論嘘だ。それにしてもこの戦術人形は目がヤバい。なんだ、この、肉食獣のようなギラついた目は……?

俺の言葉を聞いた彼女は残念そうな顔をする。

 

 

「そうですか……ありがとうございます。今度は絶対食ってやるわよ……

 

 

……ん?この子とんでもない事言わなかった?いや考えたら負けか。

 

それでは、とその少女は走り去っていく。取り敢えず十字を切っておいた。トライデントに幸あれ、お前は俺よりまだマシだ。

トライデントに対して祈っていると、ポチがちょうど復帰する。

 

 

≪ポチちゃん復帰です!!≫

 

「うおっ!?」

 

≪ふぅ……荷物運びはやはり疲れますね。ご主人褒めてください≫

 

「あー、おう頑張ったなポチ。流石俺の相棒だ」

 

≪へへへ……≫

 

 

ポチを膝にのせて撫でる。ポチは気持ち良さそうに伸びきっていた。仕事終わりのこれは癒される限りだ。P38がやって来て問題ないことを告げられた。よし帰れる。

 

隊員達が正門まで歩いていく中で、ふと俺の隣に丸っこい猫が居ることに気が付く。撫でようとしたらするりと逃げた。また撫でようと近づいたらするりと。そしてまた近付いたらするり。近付く、するり、近付く、するり、近付く、するり…………。

 

 

「な、なかなかやりやがるこの猫……」

 

≪ご主人無駄ですよー、この子どうにも唯我独尊を地で行ってますから≫

 

「畜生……」

 

 

にゃあと眼の前の猫は鳴く。その姿はまるで俺が天下だとも言っていそうな佇まいであった。くっそ……めっちゃ撫でてやりたい。でも猫って構いすぎると駄目だからなぁ……迂闊に触れない。はあ、なかなかフラストレーションが溜まる……家帰ったらオスカー撫で回してやろう。その前にこいつの写真を一枚……よし、ふてぶてしい様が上手く撮れた。

俺が写真を見ていると、後ろから声を掛けられた。

 

 

「へー……上手く撮れてるね」

 

「ん?そう思うか?」

 

「うん!ただもうちょっと近付いたらいいかな?」

 

「お、アドバイス助かっ……た……」

 

「はぁい♪」

 

 

俺が振り返って後ろへ顔を向けた先には、鉄血工造のハイエンドモデルらしき女性がにっこりといたずらっぽく笑って立っていた。

名前は確か何だったのか、そんなのはどうでもいい。俺は思わず声にならない悲鳴をあげて物凄い勢いで後ろに下がった。勿論ポチを懐に抱いてだ。

 

 

「ーーーーーっ!!!?!ーーーーーーー!!!?!!??!」

 

「おっとと、落ち着いて落ち着いて、スマーイル♪」

 

 

だ、誰が落ち着いていられるか!!!!というか何でここにハイエンドモデルが居るんだよ!!!やっぱりグリフィンの基地は頭のネジ何本か飛んでいってるだろ!!!??

 

恐怖のあまりポチを力強く抱き締め、眼を大きく見開く。義眼を起動しなかったのは焦り過ぎているからだ。

目の前のハイエンドモデルは腕を組み首を捻って唸る。

 

 

「うーん……ハイエンドモデルにトラウマがあるとは聞いてたんだけどまさかここまでだなんてね」

 

≪うごご……ちょ、ちょっとご主人を代弁して聞きますけど、お名前は?≫

 

「え?あ、ごめんね喋るダイナゲートちゃん。私は『建築家(アーキテクト)』、よろしくね!」

 

 

建築家と名乗る彼女は元気に自己紹介をした。

やっと恐怖から脱した俺はポチを下ろして立ち上がる。何とか居住まいを正して彼女に向き直り、一応の自己紹介をする。

 

 

「驚いてすまない、ジャベリンだ。よろしく」

 

「噂には聞いてるよ、代理人から逃げ切ったんだっけ?」

 

「……まあな」

 

「それって結構凄いよね!あ、それよりもさ」

 

 

彼女は唐突にポチを抱き上げる。その顔には何かを思い付いた顔。俺の直感が告げる、これは面倒な事が起きるぞと。

 

 

「この子に搭載されてるAI、気になるからちょっと弄くっていい?」

 

≪えっ!?≫

 

「駄目に決まってんだろ」

 

 

咄嗟にポチを奪って走る。馬鹿野郎俺は逃げるぞ、敵じゃないとはいえそう易々とポチを鉄血のしかもハイエンドモデルに渡せるかこの野郎。

アーキテクトは突然のことで茫然としていたが、すぐに俺を追いかけ始める。

 

 

「何で逃げるの!?ちょっとだけ調べるだけなんだよ!!?」

 

「うるせぇ!!まだこっちはお前を信頼している訳じゃねぇんだよ!!!」

 

「信頼してよー!!!序でにジャベリンの義眼も見てみたいんだからさー!!!」

 

「断る!!!!!!」

 

 

こいつ俺の義眼も知ってやがったな!?なら尚更逃げるぞ!!義眼起動!!!

 

 

「消えたっ!?尚更調べてみなきゃ!!!」

 

 

ははは馬鹿め!!!貴様ごときに捕まる気など毛頭ないわ!!!

 

高笑いをしたくなる気持ちを抑えて走る。ただ足元に他の隊員が置き忘れてたのだろう缶コーヒーの空き缶を思い切り踏んで転がる。

 

 

「へぶっ!!?!?」

 

≪ご主人!?≫

 

「あっ、見つけた!!」

 

 

そのまま思い切り地面に顔を打ち付ける。その拍子で義眼の機能が途切れてアーキテクトの目の前で姿を見せてしまった。鼻を押さえながらまた動こうとしたら、それを逃すまいとアーキテクトは俺にタックルをしてホールドする。見つめ合う形になり、彼女が自らの手を俺の義眼へ伸ばす。「隅々まで調べるからね……」と言う彼女ははっきり言ってホラーだ。おい止めろ誰が代理人の真似をしろと言った。その手を止めろ義眼に触るなおい!!!おーい!!!!!

 

 

 

 

 

「何しとんじゃ、お主ら」

 

 

 

 

 

底冷えするような声が聞こえた。アーキテクトと共にそちらへ顔を向けると、目が据わったナガンが居た。これ怒ってる……よな?

 

 

「な、ナガンか」

 

「スピアから来るのが遅いから見に行ってくれと言われて来たのはいいんじゃが……本当に何をしとるんじゃ、特にアーキテクトよ」

 

「え、は、あはは……」

 

 

アーキテクトが俺から飛び退く。そのままソロソロと逃げようとしたが、ナガンに睨まれて縮こまって固まった。

 

 

「ふむ……まあジャベリンは被害者のようであるかの?もう帰ってよいぞ」

 

「お、おう。ポチ、行こう」

 

≪あ、はーい≫

 

 

さてアーキテクト、OHANASHIでもしようぞ。というナガンの声とアーキテクトの叫び声を聞きながら正門まで向かう。

今日は楽かなって思ってた俺が馬鹿だったよ。誰が予想するかねハイエンドモデルが居るなんて。

文句を垂れたい気分になりながら正門に到着した。そこにはトライデントを除いた全員が居て、各々が好きなようにしていた。トライデントは何処に居るのか聞いてみたら、まだ逃げているらしい。あいつ大変だな。

取り敢えず彼を待とうということでスピアと紅茶を飲む。

暫くして、トライデントがユノちゃんとナガンと共にやって来た。トライデントはユノちゃんに助けられたのかな?

トライデントは顔に疲労が滲み出ている。

 

 

「死ぬかと思った……」

 

「お疲れ。ナガン、アーキテクトは?」

 

「懲罰房じゃ」

 

 

……中々厳しいねぇ。

それはともかく、何でユノちゃんがここに居るのか俺は彼女へ聞く。

 

どうやら見送りの為に来たらしい。なんだこの子天使?俺たちみたいな汚いおっさんたちまで見送ってくれるの?

お嬢が彼女を抱き締めたくなる理由も分かる気がする。

ユノちゃんはぺこりと頭を下げた。

 

 

「槍部隊の皆さん、壁の修復及び清掃をしてくれてありがとうございました」

 

「ああ、構わないよ。俺たちも仕事あってのことだからな。また何かあったら連絡でもしてくれ」

 

≪槍部隊は何処でもいきますよ!≫

 

 

そう言って彼女に連絡先を書いた名刺を渡しておく。多分、既に知っているだろうけどこれは雰囲気だ雰囲気。

彼女たちへ別れを告げて近くに止めていた車へ乗り込んでエンジンをかける。窓の外ではユノちゃんとナガンが手を振っていた。

車を発進させてS10地区に向かう。流石に武器庫までは遠いのでS10地区で一泊するのだ。他の隊員が爆睡をかましている中で俺は運転を続ける。ただ一人トライデントは起きてるが何でだろうか?まあいい。

 

S09地区、彼処は激戦地じゃあるが、あそこの基地はなんだかのんびりとしていた。

 

またいつか行くとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえばトライデント、あのおさげの彼女とはどうなったんだ?」

 

「指をちょっと噛まれた」

 

「えぇ……」




あちらもこちらも損害ゼロって武器庫にせよS09地区の戦術人形も恐ろしいです()
それにしてもトライデントくんなんか大変なことになってましたね……どうしてこうなった。

コラボってやっぱり楽しいんですけどキャラを掴むのは難しいです。
ちょいとしたやつなんですが、あちらの世界線でのジャベリンくんは経歴は同じですが、AR小隊や404小隊とは親しくこそあれこちらの世界線ほど関係は深くないです。ちょっとした飲み仲間とか……。

さてさて、作品への感想および評価は心の支えです!どうぞお願いします!!それでは!




補足。トライデントくんがそちらのイングラムと殺りあったので一応キャラ紹介しますね……。


《トライデント》

年齢:28
好物:アニメとか
出身:フランス
職業:槍部隊所属

詳細:槍部隊の支援担当。身長が198cmとあり、槍部隊の中では一番大きい。口数の少ない男で、基本必要最低限しか喋らない。とはいえ好きなものになると結構喋るようになり、そしてことある毎にジャベリンに色々勧めてくる。LMGを好んで使う。室内だろうがどこだろうが軽々と振り回すぐらい腕っぷしがある。
この前の襲撃任務ではイングラムと交戦、少しトラウマになった。


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傭兵、道楽だってよ。

平成最後の投稿。そういえば皆さんGWは如何に過ごしてます?私はバイトです()

さてS09基地より帰ったジャベリンくんは畑へ向かいます。彼も農家として覚醒するのでしょうか?それではどーぞ。


157日目 晴

 

S09基地から帰ってS10地区のホテルで一泊。疲れを癒したら槍部隊の奴らをまた連れてローゼから聞かされた畑の場所まで車を走らせた。メンバーは不満たらたらだったが後で何か奢ると言ったらすぐに俺をおだて始めた。現金な奴らめ。

畑の近くに少し大きめの小屋と小さな納屋があったので其処に車を駐車して小屋の中を確認する。中には古びた暖炉やソファー、テーブルが置かれていた。ここは昔誰かが住んでいたのだろう。隊員達に部屋の掃除を任せて、俺はポチを連れて納屋の中を見に行く。納屋には真新しい農具があった。誰が補充したのかと考えても答えは出ないのでそのまま畑へ向かう。畑は案の定雑草だらけで荒れ放題だ。ましてや最早木と言って差し支えないほど大きな雑草もある。

 

今日一日は草刈りだけで潰れてしまうかな?

隊員達は帰らせとこう。奢るのが面倒だからって訳じゃないぞ?

 

 

 

 

 

 

 

158日目 曇

 

雑草厄介すぎる。というのが今日の俺の感想だ。一旦小屋に寝泊まりした後で草刈りを始めたものの、雑草が育ちすぎてるのか、納屋にあった鎌では上手く刈ることが出来なかった。木を伐ってる感覚に近い。というかこの仕事をポチが出来ないというのもこの仕事が滞っている理由でもある。ポチに補助アームとか有ればまた話は違ったのだが。まあ贅沢は言うまい。ポチには小屋の細かい掃除を任せておいた。

 

一応この畑はお嬢の基地から歩いて30分の距離ではあるのでお嬢に頼んで草刈り機でも借りることは出来るんだが、せっかく自分の畑を持つ訳だからもう少し手作業で頑張りたい。

気を取り直していざやらんとしたら、一人の戦術人形がやって来た。俺と同じ左目に眼帯を付けたツインテールの少女で、名前は『スコーピオン』。SMGの戦術人形らしい。何をしに来たのかなんて聞かない、どうせサボりだ。現に遠くから他の声が聞こえてきた。

スコーピオンは慌てて小屋に隠れたがそれ見つかるだろ……。

まあやって来たのは同じくサボりのお嬢だが。何してんだおい。

 

俺はこいつらをこのまま遊ばすのも嫌だったので、草刈りを手伝わせた。流石に三人でやれば仕事はスイスイと進んで行くので中々良い。

でもやっぱり雑草はしつこいもので、しびれを切らしたスコーピオンが焼夷手榴弾で焼こうとしたから全力で止めた。馬鹿野郎山を焼く気か。

彼女を必死で止めてまた作業を再開する。もう一時間ほど草を刈り、遂に終わらせた。疲れて彼女たちと畑のへりで座っていたらローゼとポチが飲み物を持ってきてくれた。お嬢達がサボっていたのは承知だったようだ。

冷たい麦茶が渇いた喉を癒してくれる。一息つく俺の傍らで、もう体力が回復したのかスコーピオンがポチと遊び始めた。元気なのは何よりだ。その様子を見ながら俺はお嬢のサボりを見逃したのは何故か聞く。

どうやら最近鉄血の勢力圏へ大規模な攻勢を終えたばかりで、なおかつ鉄血側とは小康状態になったからお嬢の休日を兼ねてサボりを見逃す形になったらしい。いいなぁおれもそういうところではたらきたい。

 

届かぬ想いはさておき、スコーピオンが帰ってきた時にはもう日が沈み始めて居たので、俺はまた小屋で寝ようとした。

お嬢に止められて基地の宿舎で寝ることになったけどな。

 

……暫くオスカーをヘリアントスさんに任せよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

159日目 曇

 

お嬢の基地の宿舎で寝泊まりをしたのだが、色々驚かされた。この宿舎凄い。

外見は普通のアパートみたいなのだけどいざ中へ入ってみたらもう目の前には何処かのホテル。俺が何度か任務で行ったことのある高級ホテルみたいなとこだ。いやぁ凄い。お嬢が私財を投じて宿舎を勝手に改造とかしたらしいが大丈夫なのだろうか?しかも同じような宿舎がまだ何棟かあったし……大富豪の娘恐るべし。この宿舎見たあとじゃ戦術人形達もなかなか他のところ行きたがらないだろうに。

 

宿舎を出た後は久しぶりにカリーナのショップへ行った。

カリーナに挨拶をしようと奥へ行ったのだが、彼女はまるで“FXで有り金を全て溶かしたような”顔をして虚空を見つめていた。理由を聞こうにも状態が状態なので困難であった。取り敢えずは適当にインスタント食品やら色々と、いつもより多めに買ってお金を置いてショップを出た。彼女に幸あれ。

 

ショップを出た後は途中でポチを拾い、また畑へ歩いて行く。

今日は何をしようか、なんて考えながら扉を開けた先には、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スケアクロウが暖炉の前で微睡んでいた。

 

 

神よ貴方は試練をお求めか。

 

 

 

 

 

 




草刈りは放置してたら死ぬ(農家並み感)

さて、スケアクロウが現れました。彼女、一応お嬢の部隊に撃破されてるんですけど何でここに居るんですかね(すっとぼけ)

ジャベリンくんの明日はどっちだ。


あとバイト中に思い付いたやつなんですけど、完全暗部堕ちのジャベリンくんというやつ、どうですか?
経歴としては、AR小隊や404小隊と親しくならないまま蝶事件→ジャベリンくん生き残る→なお武器庫はハイエンドモデル達によって壊滅状態→ジャベリンくん路頭に迷う→仕方ないので汚れ仕事やら何やらやっていく内に精神的に荒んでいく→グリフィンから404小隊と行動するように言われる→404の面々とズブズブの関係となった上にハイエンドモデルとも中々ヤバい関係になる

とか、どうです?思い付いただけで書くとはかぎりませんが()

それはさておき、この作品への感想および評価は執筆の励みです!!どうぞよろしくお願いします!!それではまたこんど!


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傭兵、土いじりだってよ。

ジャベリンくんスケアクロウと遭遇。はたして彼女は何故ここに居るのか……?
それではどーぞ。


160日目 晴

 

何でスケアクロウが居るんだ。微睡む彼女を揺り起こして理由を聞こうとしたんだが中々起きてくれない。完全にスリープへ入ってる。これじゃ微睡むじゃなくて爆睡だよ畜生……こいつ勝手に暖炉も使ってるし本当勘弁してくれ。

 

彼女に関してはもう考えるだけ無駄なので放置することにした。どうせ俺のどこかに発信器でも付けてたんだろ?

一先ず薪を暖炉に追加して彼女にジャケットをかけておいて、小屋から出る。途中で前の壁修復任務で使ったつなぎと長靴に着替えて、納屋にしまってある鍬を担いで畑へ行く。一応耕運機はあるんだけどガソリンが無いので使えない。代わりにポチの体に本とかでよく見る牛に繋いで運用する畑を耕すやつをくくりつけて利用することにした。ポチも役に立てるのは嬉しいようだ。

畑に立ち鍬を振るう。意外と力の必要なこの作業は大変なものだ。慣れれば平気なものだけど、慣れてなかったらすぐに疲れてしまう。俺はジャガーソンさんの農場で何度か経験はあったのでまだマシな部類だ。

そしてポチはというと、そりゃもう軽々と器具を曳いて畑をどんどん耕している。全部こいつに任せようかな?

 

そんなポチの仕事ぶりを眺めていたら、スコーピオンがやって来る。今回はサボりじゃなくきちんとお嬢に頼まれてここに来たらしい。だが彼女に仕事はない。ポチが凄い頑張ってるからな。でも折角なので隣に座らせてポチの仕事を一緒に見る。ポチがなんだか輝いて見えるのは気のせいだろう。……気のせいだよな?

 

ポチが仕事を終えた頃に、ローゼが軽食と紅茶を持ってやって来た。それを頂き、道具を片付けてきたポチにもモバイルバッテリーで充電をさせる。ローゼにまた小屋で寝る事を伝えてスコーピオンと共に帰らせた。

充電中のポチと鍬を担いで小屋へ向かう。鍬を納屋に片付けて小屋に入る。スケアクロウは未だに寝ており、起きる気配はない。無理に起こすのも悪いので、俺はそのまま寝ることにした。……と、そのまえに端末で依頼の確認をする。何もメールボックスには入っていなかった。うむ、暫く土いじりが捗りそうだ。

明日は家具やら何やらの調達をしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

161日目 曇時々晴

 

スケアクロウに起こされた。しかもご丁寧に食事を用意してくれている。俺が買ってきたやつ勝手に使ったな?微妙に高かったんだぞアレ。

とはいえここで騒ぎ立てるのも賢い選択とは言えず、大人しく彼女と食事を始める。普通に美味しい。食事中に、何故俺の居場所が分かったのか彼女に問うと、前に追いかけっこした際発信器を付けたからだそう。え、俺の居場所ずっとバレてた……?代理人近々ここに来るのかな……逃げないと。

ふと、考えていることが俺の顔に出てたのかスケアクロウは安心させるように微笑む。俺の居場所はスケアクロウ自身しか知らないらしい。信じられねぇ……。

こんな少し可笑しな食事を終えて、俺は仕方なくスケアクロウに暫くの留守番を頼み未だ寝ているポチを担いで自宅へタクシーを走らせる。あと絶対見つからないように伝えた。

今さらなんだが俺結構金使ってるよな?そろそろ口座の状況確認しないと。

 

タクシーで数時間、昼過ぎに自宅へ到着。一応ヘリアントスさんに連絡したが反応は無し。仕事中なのだろう。待ってても時間が過ぎていくばかりなので早く自宅へ戻る。自宅のドアを開けて中を見回す。オスカーは隣のヘリアントスさんの所に預けてるので勿論居ない。何だか寂しいものだ。ポチを起こして部屋に置いてあるノートPCのメールボックスを確認する。そこには一通のメッセージが入っていた。

 

 

 

 

 

 

敵地偵察任務……?しかも俺とトライデントとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

162日目 雨

 

予定が大幅に狂った。やっぱ仕事が無い前提でスケジュール立てたら駄目だな。今日俺はポチとトライデントと共に装備の確認をしていた。俺はガンスミスから修理してもらったSCAR-Hにロングバレルを着けたものを使う。トライデントはMG4、ポチは地雷を装備させ上部にある機銃をグレネードランチャーに取り替えておいた。万が一の火力を増やすためだ。

俺たちの任務は鉄血の勢力圏偵察の他に鉄血の人形の警備進路予想図の作成、そして可能であればハイエンドモデルの調査だ。帰っていい?駄目だよな……。スケアクロウは比較的まともであったし他の奴らもどうにかならないかな。

ちなみに、この仕事を依頼してきたのはお嬢だ。前はドローンで済ましてたのだが、最近は悉くドローンが撃ち落とされてどうにもならないらしい。だから俺たちに白羽の矢が立った訳だ。報酬もたんまりだし大人しく遂行していく。頑張ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

163日目 雨

 

偵察任務一日目、S10地区最前線付近でキャンプを設営しその近くで双眼鏡を覗いていた。双眼鏡の先には人形のリッパーや機械型のプラウラーとスカウトの集団が走っている。恐らく警備だろう。集団と言えど数は少ない。一先ず地図に書き記していく。こういう偵察任務というのは楽ではあるが暇でもある。何も起きないのが一番良いけども、暇で暇で思わず欠伸が出てしまう。

眠気を覚ます為にも隣でMG4に取り付けたACOGを覗くトライデントと喋る。こいつが最近ハマってるのがクソ不味い合成食品を探すことらしい。これを話すというだけでもトライデントは何時もの寡黙な男とは打って変わって饒舌になる。こういうのを聞くだけでも眠気は覚めるからありがたいものだ。

あと、トライデントが言うには案外不味い合成食品は富裕層が利用する店に多いらしい。健康食品として売られてるんだとか。中々滑稽。

 

もう少し見張ったもののあの集団以降何も通らなかったため、早めに仕事を切り上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

164にちめ あめ

 

しょけいにんにみつかったやばいにげる

 

 

 

 

 

 




展開早いな(やった本人)
そしてジャベリンくん農家の道が拓けて来ました。何作るんだろ……?そして突然の処刑人登場。さあどうなるか!?

ところで、皆さんにとってのヤンデレってどんなものですか?少し厳しい意見を頂いたので代理人のヤンデレを修正出来る内にやっておきたいので、どうぞ遠慮なくお願いします。

さてこの作品への感想及び評価は心の支えです!!是非ともお願いしますね!それでは!!


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傭兵、追いかけっこだってよ。

70000UA越えるの早くない……?この前60000いったばかりだよ……?頑張ります。

さて今度は処刑人と遭遇したジャベリンくん。今回の相棒のトライデントくんとポチで少しの逃亡生活が始まります。さてさて彼らに待ち受けるものとは……?
それではどーぞ。


166日目 雨

 

処刑人との地獄のマラソンが始まって早2日、何とか彼女を撒いた。昨日は録に日記なんて書ける状況じゃなかった。追跡特化の彼女から逃げるなんて正直、ポチの援護が無かったら捕まっていた状況だ。とはいえ俺とポチとトライデントが居る所は敵地のど真ん中、まあ端的にいえばそこかしこに鉄血の人形が徘徊してる所に隠れてる。詰んでるわこれ、ふざけるな。

食料はまだ十分に有るものの、それも何日持つのか分からない。ポチは最高1ヶ月は充電無しで動くが戦闘も行うとなると話は別になる。今回はモバイルバッテリー、容量少ないやつ持ってきてしてしまったからな、戦える回数なんて制限されてる。だから出来る限り交戦は控えてゆっくりとS10基地まで移動していく。

というか俺たちが狙われる理由ってなに?やっぱり代理人の差し金?まあいいか。

 

ところで、処刑人がM4A1も探してるってのは本当なのだろうか……だとしたら、

 

 

 

 

 

 

 

 

今俺たちと行動してるの結構不味くない???

 

 

 

 

 

 

 

 

まさかしなくても俺たちは処刑人に見つかる可能性が増えた訳だな。社長にシュールストレミングでも送りつけるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

167日目 曇

 

正に俺の心境を表すような天気。現実逃避というかもはや解脱したい。そこまで徳は無いけれども。

逃亡生活3日目。ゆっくりながら確実にS10基地へ向かう事が出来ている。救難信号出せば余程楽じゃあるが生憎ここいら周辺にジャマーがかかってる。随分と用意周到なものだ。

時たま処刑人が間近にやって来るときもあったものの、義眼の認識阻害でやり過ごせた。アイツ怖いよ、だって「ジャベリーン、どこだー?」って手に持ってるブレードでそこかしこの建物切り刻んでるし。トライデントが呟いてたよ、「何か玩具を探す子供みたいだ」なんて。俺もそう思ったよ本当……処刑人の顔、とても無邪気だった。

そして、もう一つの厄ネタM4。彼女、俺の悪夢(救出任務)以降に他のAR小隊とはぐれて一人逃亡を続けていたらしい。しかもとある重要な情報も持っているらしく、それを狙われて鉄血に追い掛けられてるのだ。俺も大概だがAR小隊も大変だよなぁ……。他の隊員の居場所も不明らしいし、M4は平気なのだろうか?

……いや、心配する必要は無いのだろう、彼女だって小隊の隊長だ。そこはしっかり割り切ってくれる筈だ。それはともかく、他の隊員見つかるといいな。

 

……俺はまだ隊員を失ったことはない。というか居なくなったら負担が馬鹿みたいに増えるから死なせない。不純な理由だが部下を殺すつもりなんて毛頭ないからな。俺が死んででも隊員を生存させる。アレ、矛盾したわ……何でだ?まあいいか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

168日目 雨

 

逃亡生活4日目。基地に近づくにつれて鉄血人形多くなってきているのは気のせいであってほしい。何なの、また攻勢始まった?タイミング悪すぎだっつーの。

どうにも下手に動けなくなった。義眼の認識阻害を使えば良いのだが、処刑人との追いかけっこの時に使いすぎて脳味噌が湯だったのであまり使いたくない。どうにもこれ負担が大きい。ペルシカリアこれ直しておけよ……。生きて帰れたら行くか……。

本当にどうしようか。俺たちは色々と意見を出し合って、M4の迂回をして基地に向かうという案で決まった。ちなみに他の案、俺はこのまま静かに進んでいく、トライデントは派手にドンパチしながら逃げる、ポチも地雷やら榴弾ばら蒔きながら逃走という感じである。あらやだうちの部隊意外と脳筋……?

まあそんなこんなで今は横方向へ移動中だ。移動していくに連れて鉄血人形の数も減ってきたのでM4の判断はベストと言えただろう。二人と一匹でM4を囃し立てておいた。囃し立てられま彼女は赤面した。その姿も中々乙なものでポチの内蔵カメラのシャッターが連続で切られてた。後で見せてもらおう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

169日目 晴

 

逃亡生活5日目。処刑人が何でここにいるのかなぁ!!??!?

 

 

 

 




ジャベリンくんが逃げてる時のスケアクロウ。。。



案山子「……」

スコーピオン「……」

案山子「…………」

スコーピオン「…………」

スコーピオン「こんな綺麗な顔の案山子あったっけ?まあいいや、畑に種でも蒔いとこ」

案山子(少し危うかったわね……)←磔にされたキリストのようなポーズ

スコーピオン「あ、そうだ!」

案山子「……?」

スコーピオン「案山子といったら麦わら帽子だよね!はい!」←被っていた帽子をスケアクロウへ被せた。

案山子(……随分と可愛らしい娘だこと。というか私の事覚えてないのかしら?)

スコーピオン「やっぱり畑には米だねー」

案山子「えっ?」

スコーピオン「えっ?」

案山子「あ」


「「………………………………」」


スコーピオン「ス、スクランブルーッ!!!!」←基地方面へ走り出す

案山子「…………大人しく隠れた方が賢明ね」←茂みへ向かう








ジャベリンくんの苦難は続く。されど同時に幸せもよってきてくれるはずさ……多分。
ちょっと畑で一騒動起きましたがそれはさておきジャベリンくんです。ピンチですね。しっかりと生き残って頂きたい。

さてさてこの作品への感想及び評価は心の支えです!どうぞ、どうぞよろしくお願いいたします!それではまたこんど!

5/4 一部ルビ振り忘れてました。ガバッてる。


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傭兵、隠れられないってよ。

処刑人との追いかけっこ、決着。

それではどーぞ。







170日目 曇

 

逃亡生活6日目、また処刑人との追いかけっこだ。そろそろ足に限界が来た。一旦義眼を起動させてM4たちと隠れる。

処刑人が俺達を探している間に作戦会議を始めた。今のところ二択に別れている。処刑人と戦うかこのまま逃げるか、だ。

どっちにしても処刑人からは逃げ切れないしリスクは変わらない。

まあまだ見つかってないしもう少し考えるとしよう。

 

 

 

_________________

 

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____

 

__

 

 

 

「もう少し考えるとしよう……ってな」

 

「あの……何をなされてるんですか?」

 

「え?日記だけど」

 

「なんでこんな時に……」

 

「M4、気にするな。ウチの隊長はこうしないと精神的に死ぬんだ」

 

「何だとトライデント」

 

 

馬鹿野郎、日記書くのは最早趣味になってんだよ。お前だって暇があるときは凄く上手い絵を描いてたりするだろ?

それとこれとは話が違う?似たようなものだって。

 

今、俺達は処刑人が作り出した瓦礫の影に隠れて作戦会議中だ。だが途中で俺が日記を書き始めたから一旦打ち止めになっている。ただまあ、もう逃げるって事で固まり始めてるから問題はない。

 

 

「……何というか、逞しい人ですね。姉さんも気に入る訳です」

 

「そうでもなきゃ傭兵、しかも隊長なんてやってられんさ。君も見習え」

 

「ええっと……はい」

 

≪ご主人褒められて舞い上がってますね≫

 

「こいつ調子に乗ったらすぐ偉そうにするからな」

 

「お前ら……」

 

 

まあいい。大方の方針は決まったんだ。早く逃げるぞ。

 

そうやって俺達がいざ動こうと立ち上がった瞬間_______________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真後ろの瓦礫が吹き飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やーーーっっと見つけたぜジャベリン、それとM4ォ。お前達が一緒に居てくれて本当に助かった」

 

 

土埃の中から見慣れた顔、処刑人が現れた。その顔は台詞とは裏腹にとても歓喜に満ち溢れた顔であった。彼女はまた手に持っているブレードを構えて切り振ろうとする……がその瞬間。

 

 

「早く逃げるぞ隊長!!!!」

 

「っ、おう!!ポチ、煙幕!!」

 

≪分かりました!!≫

 

 

トライデントが何の迷いもなくMG4の引き金を引き、処刑人へ銃弾の嵐を浴びせた。俺とM4もトライデントに続いて発砲しながらポチの蒔いた煙幕の中へ入っていく。一先ずは基地の方面へ。とにかくジャマーの範囲外に出て救難を出しておかなければならない。最悪M4とトライデントを帰らすのだ。ポチは悪いが地獄まで付き合ってもらう。

トライデントが下がった後で今度は俺が煙の中から矢鱈めったらに処刑人の居る方向へ撃ち続ける。

 

 

「くっ……ふ……ケヒッ……良いねぇ!!それでこそジャベリンだ!!!やっと!!やっと俺の渇望していたモノが満たされる!!さあ、俺と遊ぼうぜ!!!!!」

 

 

こいつも狂ってやがる!!!!というか俺が撃ったこと分かったのか!?あ、俺だけ7.62だったわ!!!抜かった!!!でも変態染みてるわ!!!

 

一マガジンほど撃ちきってトライデント達の後へ続く。処刑人はまだ高笑いをしており、追いかけてくる様子は無い。もう一生笑ってろ頼むから。

M4と、走りながらリロードしているトライデントに追い付いた。

 

 

「弾の余裕は!?」

 

「後三マガジンほどです!!」

 

「こっちは今装填したので最後だ!!」

 

「トライデントなんでお前それで派手にドンパチしようとしたの!!??」

 

「油断さ!」

 

「一生嫁さんにケツ蹴られてろ!!!」

 

 

凄いどうでもいいことなのだけど、トライデントは最近事実婚に近いことをした。しかも結婚式を挙げる予定だったのが今回の任務で延期になってしまっていた。だからこそ俺はこいつを生きて帰すつもりだ。フラグじゃねえぞ?フラグじゃねえからな!?

 

いや、軽口なんて叩いてる余裕なんて有るわけないな。真後ろから獰猛な笑みを浮かべる処刑人がやって来ている。

 

 

「ジャベリィィィィン!!!俺は楽しい!!楽しいぜ!!!!確かお前が鉄血工造に来てた時も同じようなことしてたな!!あの時よりも楽しいぞ!!!ケヒャヒャヒャヒャヒャ!!!!」

 

「そりゃ何よりだ!!!頼むから早くどっか行け!!!」

 

「断るゥ!!!!!折角満たされてるんだからいいだろォ!!!!」

 

「ジャベリンさん援護します!!」

 

 

M4が処刑人に向かって的確な射撃をする。流石AR小隊だ、関節部分や頭など、凡そ十分にダメージの見込めるところを撃っていた。だが処刑人はそれをものともせずに肉薄してくる。大きく跳躍したかと思ったら直ぐに目の前だ。不味いと思って反射的にSCARを盾にした。処刑人が拳を突き出す。

 

とんでもない衝撃が俺を襲ったが何とか耐えて彼女の腹を蹴る。処刑人は後ろに飛び退いてまた近付こうとしたがそれをトライデントのMG4が阻む。

ってSCARの側面歪んでる!?なんて力だこいつ!?

 

 

「クヒヒヒヒヒ!!!隣の大男も随分と俺を楽しませてくれるなぁ!!!!」

 

「そりゃどうも」

 

≪グレネード行きますよ!!≫

 

 

ポチが榴弾をしっちゃかめっちゃかに撃つ。それを処刑人は避けたり時には榴弾を切っていた。ポチがぶっぱなしている間に彼女へまた鉛弾のプレゼントを送るが、あまり効いてないように見える。ヤバいって。ハイエンドモデルってこんなに硬いの?それとも処刑人が痛覚でも切ってるのか?

そんなどうでもいい事を考えていたせいで、突然の地面を抉って煙幕を張った処刑人を見失う。

何処だと周辺を見渡しても何も居なかった。

 

ふと俺達を覆うように黒い影が現れる。

見上げるとそこにはブレードを振り上げた処刑人の姿があった。

 

 

「ッッ!上だ散開ィ!!!」

 

「了解!!」

 

「何てヤツ……!」

 

 

俺達が散らばった瞬間にその場へクレーターが出来る。土埃が舞うそこを銃を構えて睨み付けていたら、斬撃を飛ばしたような衝撃波が俺へ飛んできた。咄嗟に真横へ避ける。そして直ぐに起き上がったら処刑人が突進してきているのが見えた。両手でブレードを構えてる。

 

 

「くらいやがれェェェ!!!!!!!!!!」

 

「こいつマジかよッ!!!!」

 

≪ご主人!!!≫

 

「ガッ!!?」

 

「ナイスだポチ!!」

 

 

突進してきた処刑人をポチが榴弾を撃って彼女を迎撃する。直撃した処刑人は吹き飛んで地面に倒れた。瞬間彼女をまた銃弾の嵐が襲う。一頻り撃ち終わった後、様子を見る。もうM4以外は弾が残っていない。もしもまた彼女が動き出したらそれこそ詰みだ。

息を整えながら処刑人に近付いてみる。顔を覗きこんでみたら、まだ意識があった。M4に指示を出して何時でも撃てるようにさせる。

 

 

「……クソ、負けちまったか」

 

 

処刑人は残念そうに呟く。その顔は悲しそうな、だけど満足してそうな顔をしていた。

俺は何を思ったのか彼女の側に座る。トライデントとポチが少し不安そうだ。

 

 

「……警備任務の時のよしみだ。最後くらい何か言え」

 

「はっ……お前、随分と余裕だな?」

 

「そうさな、お前達がトラウマになってるとしてもやはり心の何処かで思うところがあるんだろうて」

 

 

その言葉を聞いた処刑人は、ちょっとだけ嬉しそうな顔をする。だけど直ぐに小馬鹿にしたような顔になった。

 

 

「は、はは、は……お前、そういうこと思うからいつも油断するんだな」

 

「言ってろ。俺は何時までも甘ちゃんでいいんだよ」

 

 

今度は呆れたような顔をする処刑人。

 

 

「いつか、何か失うぜそりゃ」

 

「片目が無くなってるから問題ねぇよ。あとこれ以上失うつもりなんて全くないからな」

 

「そうか……なあジャベリン」

 

「?」

 

 

何か納得をしたような彼女は輝くような笑顔で笑う。

 

 

「楽しかったぜ」

 

「……」

 

 

何も言えない。

M4に彼女の頭を撃ち抜いてもらう。もう完全に動くことはないだろう。トライデントは何故か薬莢を彼女に掛けてた。……三途の川の料金代わりになのかな?

 

それにしても……嫌な予感がする。

こういうのはよく当たるもので隣のM4が遠くを見て渋い顔をしていた。

 

 

「ジャベリンさん、悪い知らせです」

 

「だろうなぁ……」

 

「鉄血の軍団が接近してます。逃げましょう」

 

「うん」

 

≪煙幕まだ残ってますよ≫

 

「いい子だポチ。後で沢山愛でるからな」

 

 

さあ逃走だ。疲労の溜まった足を見てため息混じりに走り出そうと後ろを向く。

その瞬間、何機ものヘリコプターが俺達の上を通り過ぎた。

 

 

だが神は俺達を見捨ててないらしい。

通信機から元気な声が聞こえてくる。

 

 

『ハァーイ、ポチとジャベリンにトライデントさんと黒髪の女神様。助けに来たよ!!』

 

「へ?女神……様……私ですか?」

 

『そそ!帰ったら私とお茶しよ!!』

 

「え、えっと……」

 

「M4、ナンパだから気にするなよ?」

 

 

お嬢の守備範囲って何処まで何だろうか……?




何処かの丘。。。

狩人「……処刑人、殺られたか」

狩人「この借りは必ず返すぞ、ジャベリン、そしてM4A1……」









ちょっとした裏話。このお話、処刑人がトライデントくんの片腕切り飛ばしてしまいジャベリンくんが責任を感じて精神的に参る、もしくは鉄血に対して冷徹になる予定だったんですけど思いの外ダークに成りすぎて作者の能力の限界を越えてしまいました。あとほのぼのさせたいからね(ぇ

次回はジャベリンくん、トライデントくんの結婚式とか行ったりします。……の前にジャベリンくんのSCAR、直して貰わないとね!武器庫のガンスミスは激おこでジャベリンくんのSCAR直してくれなかったよ(?)

さてこの作品への感想及び評価は執筆の栄養源です。どうぞ、よろしくお願いいたします!!それではまたこんど!


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傭兵、帰還だってよ。

遅ればせながら誤字報告ありがとうございます。

処刑人との決着が着き、そしてお嬢ことメグ・コーマック指揮官の部隊に救出されたジャベリンくんたち。
ジャベリンくんはまた畑へ向かいます。彼の農家化が止まりませんね。
それではどーぞ。






171日目 晴

 

逃亡生活からやっと解放された。今はお嬢の基地で休憩を取ってる。M4はお嬢とお茶会だ。

トライデントとポチは寝ている。因みにM4はこの基地の配属になった。癖の強い奴らが多いが頑張って欲しい。

 

……お嬢ってスピアと同じく誰かに色んな事を吹き込む癖があるから不安だ。M4って芯はしっかりしてるけど土台が不安定のようにも見えるからなぁ……変な影響を受けないように願っておく。

 

 

 

そう思ってた矢先にM4が突然やって来て、

 

「ジャベリンさん!!人間の子供ってコウノトリが運んでくるんですか!!?!?」

 

とか言ってきた。彼女のお目目がぐーるぐる。

 

もしもしローゼ?お嬢〆て??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

172日目 曇

 

ヒャッハー!!畑へ行くぞーッ!!!

俺は作業着と長靴を履き、暇そうにしていたスコーピオンとMP5を連れて畑へ向かう。この二人も一応汚れてもいい服装にさせたので随分と牧歌的な三人組になった。歩いている途中、スコーピオンに畑の状態を聞いてみた。俺が居ない間に大根やら白菜、人参を植えたらしい。まだまだ他にも種を蒔くつもりじゃあるようだ。アレ季節は?

あ、ジャガーソンさん同時期に収穫できる品種作ったのね……。

 

そして聞き捨てならないことも聞いてしまった。この二日前ぐらいに俺のお手伝いとして一人の女性が来たらしい。思わず天を仰ぎたくなったがそれを我慢する。スケアクロウ……お前見つかったから開き直ったな?

まあ正体バレてないのならいいか。

 

少し歩いて十五分、畑が見えてきた。

そして俺は目を疑った。何故なのかっていえば、

 

農作業帽子ともんぺと作業着を着て畑を眺めるスケアクロウと、その隣で猪にヘッドロックを掛けてるオーバーオールの処刑人が居たからだ。

 

 

 

 

なんでお前が居る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

173日目 曇後晴

 

マジで何で処刑人が居るんだ。しかも猪を家畜にしようと柵作ってたし……俺より作業効率良いし……というか何の文句も言わずに畑仕事やってくれてるし……あ、やっぱりここにいていいです。スコーピオンやMP5にもバレてないからセーフ!!セーフだ!!

 

いや、それにしても有能過ぎる。スケアクロウも的確に処刑人へ指示出してたし本当にありがたい。元々は俺だけでやろうなんて思ってたがそんな考え吹き飛んだわ。

取り敢えず今回の畑仕事は電柵作りだ。ここいら周辺は珍しく野性動物が現れる。ここはグリーンゾーンとも言えるのだろうか?

とにかくそいつらに畑を荒らされたらやってられないからな。

 

先ずは畑を囲むように電線を繋げるための棒を立てていく。ここはスコーピオンとMP5が活躍してくれた。流石身軽なSMGと言える。次に電線を張っていく。途中でポチが電線でがんじがらめになって大変になってしまったが何とか張れた。

最後は電気を通す。ちょうどお嬢の基地に埃を被った小さな発電機があったのでそれを使った。MP5が軽々と発電機を担いでいたので周りが若干引いた。いや、まあ力がある子は嫌いじゃないよ。

 

さあ電気を流したら完了だ。ついでに猪を囲った柵にも電柵をかけておいた。柵壊されたら困るからな。あと処刑人が捕まえた猪には『猪之吉』と名付けておいた。もちろん何時か食べるけど。どういう風に食おうかなんて考えてたら凄い悲しそうな顔をしてた。

 

一通り終えたら休憩をとる。紅茶とか買いだめしてたお菓子を食べた。暫くしてスコーピオンとMP5が帰ったら、スケアクロウと処刑人に今後どうするか聞いてみた。

スケアクロウはもうこのまま此処に居るつもりであるようだ。どうにも一度撃破されて(このことは俺は知らなかった)グリフィンと戦う気が起きなくなったらしく、鉄血との繋がり、言うなれば情報共有システムだとか色々と接続を切ったとのこと。というか彼女自身複数存在できるハイエンドモデルで、たまたま彼女がこうなってしまっただけのようだ。新手のバグか?

処刑人は……アイツまだグリフィンと戦うつもりらしい。場合に依っちゃ再度俺との戦闘も吝かじゃないようだ。わあいとても迷惑。というかそれならここに居たら不味いじゃねぇか!何?この小屋に居る内はちゃんとおとなしくする?なんだそれ……。

 

というか鉄血ハイエンドってバックアップ取れるんだな……やっぱ拠点を直接叩くしか効果はないのね……。

流石に単身は無謀だよなぁ。

 

俺は取り敢えずこの二人の意思確認をしたので、彼女達に絶対正体がバレないように伝えて自宅に帰る事にした。

 

SCAR直さないとな……。

 

 

 

 

 

 




処刑人が復活しました。なおここで戦うつもりはない模様。ジャベリンくんの負担は増える模様。
スケアクロウの容姿に関しては畑で農作業してる田舎のおばあちゃんみたいなのを想像していただければ問題ないです。あと処刑人は昔のウェスタン娘みたいなのを。
スコーピオンとMP5は……ご想像にお任せします←

さて次回はコラボ回です。ジャベリンくん、愛銃のSCARを直して貰います。

この作品への感想及び評価は心の支えです!是非ともバンバシお願いします!!それでは!!


5/6 加筆修正


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☆傭兵、修理だってよ。

コラボ回ですぞ。
今回は無課金系指揮官様作『何でも屋アクロス』
URL:https://syosetu.org/novel/187328/
とのコラボです。この作品、謎多き店長と、そんな彼を支える戦術人形たちとの日常が描かれております。ほのぼのして時にひやりと、そんな感覚が味わえる作品です。是非ともどうぞ。

さてジャベリンくんは自らの愛銃を修理してもらいます。それではどーぞ。


174日目 晴

 

ガンスミスがストライキ起こしていたのだが、何故なのか。

社長に詳しく聞いてみたら休日返上でずっと仕事をしていたせいでぶちギレたからだそうだ。

ガンスミス……分かるよ、その気持ち。俺も何度かそんな事あったし、仕事突然押し付けられた時あったし……まあガンスミスの休日消し去ってしまったの俺を含めた槍部隊の奴らのせいだけどな。

槍部隊は会社での扱い上、どうしても何度も何度も戦場やらなんやらに向かわされる。だから武器の損耗率が他部隊をぶっちぎって一番なのだ。特にランスとパルチザンが特に銃やらなんやら壊してる。

……俺のSCARの状態見せたら問答無用でレンチで殴られるな。うん。だってフレーム歪んでるし動作不良起こしてるし。あ、これ殴られるんじゃなくて殺されるわ。

あとポチの武装のこともあるからなぁ。

 

どうしよう。

 

 

 

 

 

 

………………………………

…………………

………

 

 

「ということで助けてスリえもん」

 

「そこらへんで盗み働いてるような名前で呼ぶな馬鹿野郎」

 

 

銃を直すことが出来ないというのも何だかもどかしいので他に腕の良い整備士が居ないか、自室でグリフィンの社内報を読んでいたスリンガーのところへ俺は行った。彼は心底面倒そう、もとい俺の数秒で思い付いたあだ名に少しイラッとしている様子だった。

 

 

「いいじゃねぇかお前大体どっかの情報とか盗んでるんだし」

 

「……」

 

 

顎に手をあてて考える仕草。よし勝った。

という茶番はさておき本題に入る。SCARは俺が入隊した時からずっと使ってる銃なんだ。早く直したい。

 

 

「それで、ここいら周辺で腕の良い奴って居るのか?」

 

「全く……自分で探せよお前。ま、軽くは調べるよ」

 

 

そう言ってスリンガーはノートPCを取り出してキーボードを叩き始める。スリンガーって口では文句言うけどちゃんと手伝ってくれるよな。

俺はスリンガーが探している間にグリフィンの社内報を開いた。

グラビアじゃん……モデルは俺がこの前警備任務でお世話になったD08地区基地の人形達か……んん?UMP45の胸が……デカい!?ここのUMP45豊胸にでも手を出したのか?404の隊長様にも見せてやりたいぜ。

 

 

『ジャベリ~ン?』

 

「ひょっ!?」

 

 

突然UMP45の声が聞こえた。え、もしかして盗聴されて……というか何処から!?怖いわ!

ひ、ひとまず落ち着こう。

 

ええと次は……D08基地の農場か。いいな、俺もこのぐらいの畑とかやってみたいものだ。お嬢に許可貰って広げてみるか。

ちょっと牧場に興味があるし。

 

 

「お、丁度良いのがあったぞ」

 

「早いな?どれどれ」

 

 

今後畑で何をするか考えていたら、スリンガーが探しだしてくれた。俺はそのノートPCに表示されているものを見る。

 

 

 

「アイテムショップ……アクロス?」

 

 

 

_____________________________

 

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___

 

_

 

 

 

「よーしそこで降ろしてくれ」

 

「おう。というかお前何で自分の車で行かなかったんだ?」

 

 

SCARを担ぎ、会社からバイクで走って一時間と三十分。俺はとある地区に来ていた。スリンガーも他の用事で俺に着いてきており、丁度今から別れる所だ。

彼は自分の車を持っていた筈なのだが、何故か今日は俺のバイクに乗ってきた。その理由を聞いてみたのだが、随分と歯切れの悪い感じで答えてくれた。

 

 

「ええと……まあ、うちの娘が思春期に入ってね……ちょっと、自宅に帰るのが気まずいんだ」

 

「あぁ……そういう」

 

 

お疲れ様です、お父さん。

 

 

「それはともかく、住所ちゃんと覚えてるよな?ちゃんと安全運転しろよ?」

 

「覚えてるって、俺の心配しなくていいからそっちの用事を済ませてろ。どうせ俺がまた拾わなきゃいけないんだろ?」

 

「……すまないな」

 

「お互い様だ」

 

 

スリンガーと別れて俺は教えられた住所までバイクを走らせる。途中、バイクのトップケースがぱかりと開いた。

 

 

≪……ふう、やっぱり狭いですね≫

 

「起きたか、ポチ」

 

≪おはようです、ご主人≫

 

 

トップケースから現れたのは微妙にゴツいダイナゲート、ポチである。実は俺が会社に居た時からずっとトップケースの中で寝ていた。何を思ってギリギリ入るか入らないかぐらいの狭さの中で寝ようと思ったのか、俺は知らない。

ぬおぉ……という声が聞こえてきたあたり、伸びでもしているのだろう。

俺は街中を走り続ける。なるべく揺らさずポチが落ちないように気をつけて安全運転である。

 

 

≪そういえば、そのアクロスってお店、どんなお店なんです?≫

 

「うーん、口コミ情報じゃ物品の修理とか売買をするお店って感じかな?」

 

≪おお……ラクダのステッカー有りますかね?≫

 

「何を突然……まあ有ったら買ってやるよ」

 

≪おひょー!!ご主人最高です!!≫

 

 

ポチの歓喜の声を聞きながら引き続き走る。三度ぐらい角を曲がっただろうか、その先に人が出入りしている建物を発見した。徐行をしながらその建物を見ると、看板がある。それには『アイテムショップ アクロス』という文字があった。

 

俺はバイクをその店の前に停めて降りる。ヘルメットをかけてポチをケースから降ろした。SCARの入ったケースを担ぎ直し、キーを指で回しながら入り口へ向かう。取っ手に手を掛け、そして押してドアを開いた。

 

 

「いらっしゃいま……せ?」

 

「……何か?」

 

 

俺が入り口から店へ入ったら目の前のカウンターに居たツインテールの女性が目を擦りながらこちらを見ている。

あ、やっべ義眼の認識阻害勝手に起動されてんじゃん。ごめんなボヤけて見えちゃったな。今から切るからね。

 

 

「い、いえ、何でもないです!それより、今日はどのようなご用件ですか?」

 

 

俺の姿が鮮明に見え始めたのか、目の前の女性は気を取り直して俺に用件を聞いてきた。

俺はカウンターにSCARの入ったケースを置く。

 

 

「ここには腕の良い修理屋が居ると聞いてね、銃の修理を頼みたいんだ」

 

「そうですか!では少々お待ち下さい。店長ー!!お客さんでーす!!」

 

 

彼女が後ろへ向かって店長を呼び出した。少しして、黒髪の青年が現れた。俺の顔を見るなりちょっとギョッとしてたが仕方ないよな、厳つい眼帯のおっさん来たら驚くよそりゃ。俺まだ27だけど。

 

……それにしても珍しい、純血の日本人か?

っとと、それよりもSCARだ。

 

 

「ええと、修理ですよね?」

 

「ああ。こいつを見てくれ」

 

 

カウンターに置いたケースを開く。そのケースの中身を見た目の前の二人は目を見開いて驚いていた。店長と呼ばれた青年が俺に質問してくる。

 

 

「あの、どう使ったらこうなったんですか?」

 

「いやぁ、戦場で少しとんでもない奴に遭遇してね……詳しくは聞かないでくれ」

 

「そう……ですか」

 

 

ハイエンドモデルに襲われたとか口が裂けても言えない。絶対信じてもらえないし。

店長はまじまじと見ながら俺のSCARを手に持った。少しの間SCARを触ったり角度を変えて見たりと色々した後に、再度此方を向いた。

別に渋い顔をしているという訳ではなく、寧ろ普通に出来ますという顔をしている。これは頼もしいぞ。

 

 

「2、3時間ほどかかりますが、問題ないですか?」

 

「ああ、問題ないよ。俺の愛銃が直るなら待ち続けるさ」

 

 

じゃあ、少し待っててくださいね。というセリフと共に彼はまた奥へ行く。俺はその間に陳列された商品を見ることにした。

この店では電化製品とか、あと照準器が売られている。おそらくジャンク品やらを直したものなのだろう。

 

結構綺麗だなこのスコープ……買おうかな?

 

 

≪ご主人ー、ラクダのステッカー見つかりました~?≫

 

「残念ながらお前の求めるものは無かったよ」

 

≪嘘……≫

 

 

しくしくと泣くような仕草を見せてポチが店の床に横たわる。いやどれだけ期待してたんだお前……。

 

ふと、カウンターに居るであろうツインテールの女性が俺に声をかけてくる。

 

 

「可愛らしいダイナゲートですね」

 

「あー……まあな。ほらポチ起きるんだ」

 

≪嫌ですぅ……ステッカー期待してたから嫌なのですぅ……≫

 

「お前な……」

 

「あはは。ところで、この子何で喋ることが出来るんですか?」

 

 

俺の知り合いの科学者のお陰だよ。

そう彼女に伝えておく。彼女は俺にはぐらかされたのに気がついたのか、少し腑に落ちない顔をしていた。何だか追及されるのも嫌なので、一目見てからずっと気になっていたスコープを手にとってカウンターに置いた。

 

 

「このスコープを買いたいのだが」

 

「はい!それですと、五万クレジットですね!」

 

「カードで」

 

 

カードを彼女へ手渡す。彼女はそれをレジへ滑らせて会計を終えた。

スコープを手に持つ。新品と間違えるようなほど綺麗なスコープ……いや、これ新品なのかな?まあいいや。

 

 

「お客様ってバトルライフルをよく使うのですか?」

 

「いや、そうでもない……訳でもないか。うん、使うね」

 

「おおっ!ならそのスコープの他にバイポッドもどうです?先程のSCAR-Hに是非とも!」

 

 

商売上手だな君ィ……俺思わず君にお勧めされたバイポッド買っちゃうよ?あとついでにレーザーサイトも買っちゃうぞ!

 

 

「ありがとうございます!お会計十万クレジットです!!」

 

「カードで!」

 

「はい!」

 

 

衝動買いって怖いね。修理費に幾ら掛かるのか分からないのに十五万も使っちまった。いつの間にか復活したポチがこっちをじっと見てる。何か言いたげだな?

 

 

≪ご主人って結構チョロいですよね……詐欺に引っ掛からないか心配です≫

 

 

うるせぇやい。いいんだよ仕事ばっかりで貯まる一方なんだ。こんなに使っても文句は言われないさ。

 

 

「ただいま帰りました……と、お客様ですね、いらっしゃいませ」

 

「あ、ウェルおかえりー」

 

「ただいまです、ヒトヨ」

 

 

一応口座の残高を確認していたら、後ろのドアが開いた。そこには金髪で少しだけ髪を結んだスーツのような服装の女性、ウェルと呼ばれた子がいた。あとついでにカウンターの女性の名前も判明した。流れで俺も名乗ろうかな?というか義眼ちゃんと静まってたな、偉いぞ。

 

 

「それで、そちらの方はどのよ…………んん??」

 

 

いやここで起動するんかい。ごめんなすぐ切るから。

はあ、いい加減ペルシカリアのところ行かないとなぁ……。

 

一先ずは俺の用件と、まだ店長が修理中であることを伝えた。

ウェルは「ふむ」と頷いて時計を見た。俺も時計をみたら、修理を頼んで丁度一時間と五十分ほど経っていた。

もう暫くかな?と俺が思っていたら、ウェルがまた外へ出て行った。どうしたのだろうとドアを見ていたらすぐに入ってくる。そしてヒトヨにテーブルと人数分の椅子を用意するように指示を出した。

 

 

「時間が時間ですし、それに店長のことです。もう少し掛かると思いますから、クローズにしておきました。お茶でもどうですか?」

 

 

えっ?マジで?なんか怪しい物品お勧めされないよな?

まあお言葉に甘えますけども……。

まあ、のんびり待ちますか。

 

 

…………………………

………………

………

 

 

「お客様ー、修理終わりま……って凄い寛いでる」

 

「おっ、待ちくたびれたよ。丁度ウェルと紅茶論争が終わった所だ」

 

「やはりミルクが先でしょう……うーん」

 

「えっと、ウェル大丈夫?」

 

 

あれからまた二時間後、思いの外手間取ったのだろう店長が戻ってきた。彼の手には綺麗になった俺の愛銃がある。彼に手渡され、早速構えたり触ったりとしてみた。

 

………………これは。

 

 

「そういえば、お客さぁっ!?」

 

「店長!?」

 

「な、なぁ店長くん」

 

「は、はい……?」

 

 

俺は彼の肩をがっしりと掴む。驚く彼を無視して話を始める。

というか今の俺、目がギラついてるんだろうな。あと息も荒いんだろうな。現に目の前の彼が引き気味である。

だがそんな事どうでもいい。

 

 

「うち、今人手不足なんだ」

 

「あ、結構です」

 

「NOOOOOOOOOOOOOOOOッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

駄目だったかー!!!駄目だったのかー!!!!!

 

彼の回答を聞いた瞬間俺は膝から崩れ落ちた。周囲が鳩が豆鉄砲をくらったような顔をしている。

いや、それよりも彼の技術が欲しい。何なんだ、俺がSCARを持った瞬間に体に馴染んだんだぞ!!?それに軽かった!!!何でだ!!!何をどうやったらこんな事が実現出来るんだ!!?まるで俺の体の一部みたいだったんだぞ!!!

うちのガンスミスだって負けちゃいないがこの青年は想像を遥かに越えていたのだぞ!!!ぐぬぉおおぉおおお!!!!!

 

こんな風に悶える俺の様子を見るに見かねたのか、ヒトヨが声をかけてくれた。

 

 

「あの……大丈夫ですか?」

 

≪大丈夫ですよ、ご主人はいつもこんななので≫

 

「は、はあ……」

 

 

それは誤解だぞポチィ!!これはアレだ!!最近パイクが使い始めた言葉、“エモい”だ!!

クソッ!!こんな人材をみすみす捨て置く訳には行かない……せめて俺達の存在を知らせておかなければ……!!

 

 

「む、無理なら仕方ない。だが、せめてこの名刺だけは貰っておいてくれ!!頼む!!」

 

「え、えぇ、構わない、ですけど……?」

 

 

最早押し付けるように彼へ武器庫と槍部隊の名刺を渡す。そして彼に修理費を聞いた。

 

 

「ええと、あの状態からですし、十万……ぐらいかな?」

 

「カードで」

 

「即決!?」

 

 

さっさと会計を通してもらう。ええい、料金に色をつけられないのがもどかしい……。

会計を通した後に、ポチを抱き上げて入り口へ向かう。ドアを開く前にまた俺は向き直った。

 

 

「いやはや、本当に助かった!もしかしたらうちの仲間もそちらに行くかもしれないからよろしく!!それじゃ!!」

 

≪ご主人焦りすぎです?あ、それでは~≫

 

「えっ、あっ、ありがとうございました!またのご来店をお待ちしています!」

 

 

店長の言葉も置き去りに俺は店を出た。ポチをケースに入れてバイクに跨がりキーを回す。小気味良い音と共にエンジンが起動して準備が完了した。ギアをニュートラルから一速へ。アクセルを回して走り出す。何だか歌いたい気分だ!

そしてスリンガーを迎えにいかなければな!!

 

 

「これは良い出会いだ!」

 

≪ですねぇ≫

 

 

ポチが呆れ気味なのは無視しておこう。俺はもと来た道を走り、スリンガーと落ち合う。上機嫌な俺を見た彼は少しだけ笑いながら後ろのシートに乗った。俺はそのまま発進する。

 

暫く、冷ややかな風が俺を醒ましてくれた後にスリンガーの用事について聞いてみた。

 

 

「そういえばよ、お前の用事って何だったんだ?」

 

「ん?あぁ、この前の社内報で猟奇殺人の見出しがあってな。それの情報収集」

 

「探偵の真似事かぁ?というかそれ別の地区だったろ」

 

 

暇なのだろうかこの男。

スリンガーは別段気にする事なく話を続ける。

 

 

「まあなー、ただ単に痕跡探しさ。ちなみに犯人はもう分かってるよ」

 

「早くないか?」

 

「仕方ないさ。犯人が名前残してたらしいし」

 

「なんだそれ迂闊だな。名前は?」

 

「ヘルメス……何とかだったかな」

 

 

覚えてないのかよ。

俺はそう思いながら運転を続けた。それにしても猟奇殺人にしかも名前を残すとは……売名行為みたいなものだろうか?

一つ分かることといえば随分と大胆な人間ということだけだろう。

 

そんな考えも一区切り、俺はバイクのアクセルを全開にして道路を走り抜ける。スリンガーがスピードを落とせと五月蝿かったが無視をした。

 

だって、今日は良い出会いがあったんだから。

そう頭のなかで言った俺は、また更に明かりの点き始めた道を走るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

槍部隊の奴らがアクロスへ一挙に押し寄せたのは別のお話。ごめん店長俺も予想外。





向こうも大変になっちまったなぁ……(焼き土下座)

コラボってなんでこうも舞い上がってしまうのだろうか。自分の技量なんて気にしなくなってしまう。端的に言えば楽しいということです。
少し言及していた他作品ですが、一つは「元はぐれ・現D08基地のHK417ちゃん」、もう一つは「ヘルメス姉妹の幸福論」という作品です。どっちも面白いから読んで!!


さて、ジャベリンくんは愛銃を直してもらいました。次の任務ははてさて何なのか……その前にトライデントくんが結婚式上げます。日記形式で書ききれるかな……?

この作品への感想及び評価は心の友となり私の血肉となります。どうぞ、ばんばんお願いします!それではまたこんど!!


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傭兵、ショッピングだってよ。

ジャベリンくん、SCARの修理も終えて今度はトライデントくんの結婚式へ参加する為に色々準備していきます。といっても礼服を買うぐらいですがね。
そして、久し振りにとある戦術人形が出てきます。さて誰でしょう。
それではどうぞ!





175日目 晴

 

自宅で飲む紅茶は最高だぜ。

銃も直せたし、良いつながりが出来たし、ここ最近一番運が良いのではなかろうか?

そう考えながらノートパソコンを開き、メッセージボックスを確認する。中には宝箱のようなアイコンの人物からメッセージが届いていた。このアイコンの主はスリンガーである。意外とアイツは『情報の宝庫(インテリジェンス・トレジャリー)』という名前が気に入ってるらしい。

 

内容を確認すると、昨日のガソリン代を口座に振り込んでおくという文言があった。

別に払う必要なんてないのにな。そこのところ義理堅いというか真面目というか。そういうところは俺は好きじゃある。

 

彼に返信をした後に、今度はとなりのヘリアントスさんのところへ行く。彼女の部屋の入り口立ったらもうガリガリと音が聞こえた。……オスカー寂しかったか。

インターホンを押して俺が来たことを伝える。ドタバタと音が聞こえたかと思ったら扉が勢いよく開いた。中からモノクルを掛けていない、部屋着のヘリアントスさんが出てきた。どうやら寝起きらしい。寝癖があった。

足元には行儀よくオスカーが座っている。彼女へ突然の訪問を謝罪して、それと同時にオスカーを預かってくれた事に感謝を伝える。お礼は後でする事を約束してオスカーを抱き上げた。

俺は少しだけ彼女と話して、自分の部屋に戻った。

 

 

 

俺の部屋にUMP姉妹が居るなんて夢に決まってる。また不法侵入しやがったな。

 

えっ、ポチが入れたの?何で??

 

 

 

 

 

 

 

176日目 晴

 

何だかんだ言って彼女らの行動に慣れてきた自分が居る。UMP45は勝手にインスタントコーヒー飲んでるし、UMP9はテレビを観て笑ってる。最早自宅じゃねぇか。というかこの二人が居るのは何故なのだろうか?

任務はどうしたのかと聞いたら「一仕事終えたから暫く休みよ」なんて言った。どうにもここに居座るつもりらしい。ご丁寧にお泊まりセットも持っている。

 

……客人用にマットレスとか布団とか買っておこうかな?

そういえばトライデントの結婚式に着ていくスーツも買わなきゃな。明日ショッピングに行こう。

 

 

 

 

 

 

177日目 晴

 

今日はショッピングだ。ポチとオスカーに留守番を任せて近場のショッピングモールへ向かう。

UMP姉妹?言わずもがなだよ。俺に彼女達を止める術なんぞ無い。それに9の楽しそうな顔を見てしまった以上中止という選択肢は失った。下手したら45に刺されそうだし。というか言われた。

「ジャベリン、流石に今から中止なんて……無いよね?」

上記のセリフを聞いた日にはもう恐ろしかったね。

 

まあそれはさておき、所変わってショッピングモール。商店街という手もあったんだが俺が目移りしそうでな。ここも変わらないとか言わない。

早速だが家具のお店へ行った。UMP姉妹がここに来た理由を聞いてきたが、客人の為だと伝えておいた。

まあ9には曲解されたけど。

澄みきった瞳で「家族って認めてくれたんだね……」とか落ち着けお前。45は45でわざとなのか薄ら笑いで冗談めかしてからかってきたし。彼女達とのやり取りも済まして、さっさと必要分の布団とかマットレスとか枕とかを買う。部屋が狭くなるってこともない。俺の家何もないし。いやマジでいい加減何か置こう。1LDKが勿体無い。それとも他の奴とルームシェアするか?

 

家具の発送を頼み、今度は礼服を買おうとスーツ専門店に向かおうとしたら9に引き留められた。何処かへ指を指しており、何事かと思ってその先を見れば服屋がある。彼女は服を買いたいそうだ。俺に拒否権なぞない。取り敢えず服屋へ向かう。

彼女が服を選んでいる間、手持ちぶさたになってしまったため携帯を弄る事にした。すぐに45に止められたけど。彼女曰く初デートでつまらなそうにしてる彼氏みたいに見える、とのこと。

 

……45なりに9を気に掛けてでもいるのだろうか? そう思いながら携帯をポケットに入れ、45と雑談をする。

少しして9が帰って来た。結構な手荷物だ。ちゃんと試着はしたのかと聞いてみたらVサインが返ってきたので、普通に試着はしたらしい。また今度着るつもりのようだ、何だか楽しみに感じてしまう。何故だろうか?

 

次は礼服と、荷物を持って9と会話をしながら店までまで向かう。それにしても45が静かだった。チラ見で彼女の様子を伺ったのだが、彼女の顔は物凄く穏やかだった。

彼女に何があったのかはよく分からないが、幸せそうで何よりだ。

 

この後は特にこれといったこともなく礼服を買った。そして帰り道、バーガーショップで食事を済ませる。9とは楽しかっただの、また行こうだのと会話を弾ませる。

彼女、本当に楽しんでたんだなぁ……やっぱ家族とか絡まなきゃ普通に可愛らしい子だよ。是非ともこのままでお願いしたい。

 

それより、45とは言うと相変わらず上機嫌に微笑んでるままで何も言わない。そろそろ不気味に思えてきたのでどうして笑うばかりで何も言わないのか質問した。

彼女が言うには9が幸せそうだから自分も釣られていただけ、だそうだ。

 

なーんか、UMP姉妹って出会った時よりも丸くなったような、お行儀がよくなったような、そんな気がする。どうしてなんだろうなぁ……。まあ気にしても何も解決することもない。

食事を終えたら、彼女達にまだ俺の家に泊まるつもりなのか聞く。勿論即答で泊まると言った。だろうな。

 

久し振りに夕食が多くなりそうだ。冷蔵庫に食材はあっただろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 




色々諦めてUMP姉妹を家に泊めることになったジャベリンくん。勿論何も起こらないはずはなく……?(盛大に何も始まらない)
はい、久しぶりのUMP姉妹でした。幸せそうで良かった良かった……。

次回、トライデントくんの結婚式です。戦術人形出そうかどうかは迷ってますね。武器庫でやることですし。


この作品への感想及び評価は心の栄養です。どうぞ、よろしくお願いいたします!!それではアデュー!!


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傭兵、取り止めだってよ。

80000UA早くない……!?あとお気に入り800越えありがとうございます!これからもこの作品をどうぞよろしくお願いします!


さて、タイトルの通り、ジャベリンに少し想定外のことが起きます。それではどーぞ。


178日目 曇

 

どんよりとした曇りの朝、ポチとオスカーに起こされた俺は昨日注文した布団等を積んだトラックがやってくるのを待っていた。UMP姉妹は仲良く俺のベッドで寝ているから今ここには居ない。

いや、G11みたく俺のところに入り込んでくるってことは無かったからな?彼女なら兎も角UMP姉妹が俺のところに入ってきたらもうそれは俺が危ない訳でして……理性と貞操が危ない訳でして……それに相手はグリフィンの戦術人形だ。おいそれと手を出したら録な事にならん。クルーガー社長がスキャンダルを利用して俺に揺さぶりかけてきたりしそうだ。

その上俺にはスケアクロウと処刑人という爆弾もいるから余計に慎重に行動しなければならない。そして彼女達が向こう側に存在を知られるっていう失敗は起きないと願いたい。そういえばあの二体は鉄血側に居場所はバレているということはないよな?

人形には恐らく脱走とか行方不明になったときの為に絶対そういったGPSのようなものはあるはずだ。鉄血のハイエンドモデル達は家族意識というのも高そうだし有り得なくもない。

……でも人形というものは使い捨ての一面もあるからなぁ。そこのところよく分からない。

いや、でもそうだな。グリフィンの虎の子AR小隊が未だ居場所が分からないってことはつまりGPS機能とかはないのだろう。何やってんだか。

そうやってただ思考の海に浸っていたらトラックがやって来たので早速業者と共に部屋へ運んでいく。UMP姉妹も起きていたので手伝って貰った。

俺はちょっと狭くなったこの部屋を見て少し満足感を感じた……部屋が狭くなるのって嬉しいことかな?

 

 

【家族が増えたってことで喜んでいいんじゃない?あとハイエンドモデル達のことは黙っておいてあげるわ】45

 

 

 

 

 

 

179日目 晴 ビックリした。

 

ヒエッ……45に日記見られた……そして何で日本語読めるの……君たちの第一言語英語とかでしょ……というかこれは不味いぞ。恐らくというか確実に俺の近況がバレた。この日記、何処かの荒廃した地域で誰かに拾われて中身を見られるってのは大歓迎なんだがこうやって知り合いに見られるのはあまり精神衛生上よろしくない。例えるなら自分の感情を書きなぐった日記を親に見られるようなものだ。今さら過ぎるがこの日記普通の日記にしておけば良かったな。

ううむ、45にこれを種に色々おねだりとかされそうだ。

 

そんなことより、俺の休日、もといトライデントの結婚式への参加が取り止めになってしまった。何でかって言うとクルーガー社長からお呼ばれされたからだ。連絡が入った当初は結婚式に出るから無理だと伝えたのだが、どうにも向こうが急いでいる様子だったので断ろうにもゴリ押しされて断りきれなかった。

傭兵稼業もやってられんな全く。いや覚悟の上でやってることじゃあるから不満はあれどもそれを表へ出すことはあるまい。許せトライデント、お前の隊長は仕事になっちまった。

 

 

【ジャベリンも大変だよね。辛くなったら私達家族を頼ってね?416がああ見えて結構包容力あるよ!】9

 

 

 

 

 

 

180日目 雨 ジャベリンは混乱中

 

どうして9もこの日記読んでるの……?ご丁寧に日本語だしさ。不味いな、俺の日記不用意に机に置いておけないぞ。

それにしても家族か。この際だから笑い話として読んで欲しいのだが、俺には家族との記憶が無い。父の頼もしさや母の優しさ、もしかしたら居たかも知れない妹、弟への愛しさ、兄か姉への尊敬、そういう事が記憶の中からすっぽぬけてる。PTSDか何だったか、とにかく相当なショックで記憶が無くなったのだろう。だから必然的なのか俺の本来の名前だって知らない。だから俺は『ジャベリン』というコードネームが本名だ。こんなご時世だ、偽名を使おうと使うまいと何も問題はないし俺がジャベリンのままでもいいだろう。

 

さて仕事の話に戻るが、俺はグリフィンでクルーガー社長から敵地の潜入任務を言い渡された。最近、鉄血のハイエンドモデル『狩人(ハンター)』の動きが活発になってきたらしい。お嬢の基地が現在対応中らしいが、状況は芳しくない。どうにも相手の策略がこっちより上手のようだ。だから俺が何かしら決定打になるものを見つける為に戦場へ向かうことになったのだろう。

つくづく思うんだけれどこれ俺一人でやらせる任務じゃないって。せめてパルチザンとパイク連れてこい。まあアイツら今他の戦場で苦労してるんだろうけど。

 

任務遂行は明後日からだ。それまでに義眼の調整と装備の選択だな。

 

 

 

 

 

 

181日目 雨

 

雨の日はどうにも片眼が痛くなる。あの日は随分と晴れた日だったのに。

降り続ける雨を忌々しく思いながらペルシカリアに義眼のメンテナンスをして貰った。どうにも熱を持ったり勝手に起動したりしてしまうのは直せなかったらしく、まだ原因を解明中だ。まさか彼女でも分からないことがあるとは思いもしなかった。猿も木から落ちる、いやペルシカリアは猫耳っぽいの着けてるし、ここは“猫の歯に蚤”だろう。ちょっと使い方が違うかな?

そんな事思ってたら彼女に察知でもされたのか余計な機能までつけられそうになった。誰得だよ人形から俺がメイド服着た姿に見えるようになるって。

 

その機能を搭載されるのを全力で防いだ後は自宅に帰り、任務への準備をした。UMP姉妹が暇潰しなのか俺が準備している間に勝手に銃を弄り始めたので集中するためにもちょっとご退室してもらう。

今回の任務、狩人と遭遇する可能性も視野に入れて準備をしなければならない。処刑人やスケアクロウとの経験を踏まえてスモークは絶対持っていく。そして火力の確保も必要だしSCAR-HにAP弾、その上で前に買ったバイポッドにACOGを装着。サイドアームはMP412REXを持っていく。ショットガン……も必要か?Super-Shortyでも持っていこう。

少し重装備とはいえ潜入任務でもあるのでまだ軽い方だ。後はギリースーツか光学迷彩マントを持っていこう。

 

 

 

【気を付けてくださいねご主人】ポチ 代筆45

 

 

 

 

 

181日目 続き

 

ポチ……お前もか、お前もなのか……。

 

 

 

 

 

 

 




突然主人公のほの暗い過去を書く作者は私です()
さあ急にジャベリンくんの日記が第三者に見られましたね。ナンテコッタイ。
次は狩人の勢力圏への潜入任務です。彼は無事に任務を遂行出来るのでしょうか?

この作品への感想及び評価は心の栄養です。遠慮も要りません、質問でもなんでもお願いします!!それではまた次回!!


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傭兵、潜むってよ。

ジャベリンくんお仕事へ。
狩人の勢力圏へいざ行かん!

それではどーぞ。


182日目 晴 困惑中

 

ポチお前もか、お前もなのか。健気な分まだいいんだけども。

いや、確かに一人で任務に行くから心配する気持ちは分からんでもない。というか待て、どうやって俺の日記見つけたんだ?一応本に偽装して片付けたはずなんだけど。次はもうちょっと考えて片付けよう。

 

まあそれは置いといて、現在は鉄血の勢力圏に俺は潜入している。この任務、非公式でもあるから俺が捕まったら終わりだ、助けなんて来ないからな。それにここの支配をしてるのが狩人だ。処刑人のこともある、俺を見つけ次第殺しにかかることだってあり得るからな。

ちゃんと生き残るって肝に命じておこう。

 

遠方から鉄血人形の集団がやって来たのでここで筆を置くとする。

 

 

 

 

 

 

183日目 曇

 

潜入二日目。鉄血へ決定打を打つことが出来るであろう場所を探す。

今回は一人のため、久しぶりに小型ドローンを使った。ここではジャマーが張られていなかったので安心だ。

周辺を偵察したところ、敵の補給地点を発見した。ふむ、補給を断つというのも一つの手だ。

夜に行動を起こそう。爆発物は補給地点にあるだろう。

 

 

 

 

 

 

184日目 曇

 

危うく爆発に巻き込まれそうだったが敵の補給地点を破壊した。ついでに軽く巡回の人形も破壊しておいた。……鉄血の下級人形も一応喋る事は出来るんだな。一体ほど急所を外してしまったがその人形の口から出たのは随分と悲痛な叫び声だった。

全く、鉄血工造にしてもI.O.Pにしても人形を人間に寄せすぎなんだ。昔の俺なら人間相手ばかりだったから慣れてたものの、久しぶりのそれは少しキツい。慣れなければ恐らく窮地に陥るだろう。

 

多数の足音が聞こえてきたので隠れる。もし鉄血の人形なら早急に破壊していこう。

 

 

 

 

 

 

185日目 雨

 

少しずつだが鉄血の人形達を破壊して行くことが出来た。何となく人形、リッパーやヴェスピド、イェーガーの持っていた銃を使ってみたが、反動がどうにも強かったのでとても使えるものとは言えなかった。うーむ、使えるなら使っておきたいのだがなぁ……こういうのはトライデントの畑だな。アイツなら使いこなせるだろう。

そういえば、アイツの結婚式なんだが無事に終えたらしい。盾の奴らや剣の奴らが交代で警護を行っていたと聞く。いや凄い警備態勢だな?誰も襲えんぞ。

因みに写真を送って貰ったのだがその写真のトライデントの顔は幸せそうな顔だった。うん、俺は嬉しいよ。部下の幸せは上司の幸せだ。

 

それにしても結婚か。俺は結婚というのはあまりよく分からない。ただでさえ家族の記憶も無いんだ、結婚を考えるよりも記憶を取り戻す方が先だろうに。

でもそうだな、記憶を取り戻したら逆に危ないのかもしれない。錯乱しそうだ。

 

……もし結婚するなら誰とだろうか。

 

 

 

 

 

 

186日目 晴

 

本日は晴天なり。潜入してから今日で五日目だな。今は欠伸を噛み殺しながら鉄血の基地を探している。いや、電波塔でもいいんだがな。通信を断絶出来るというのは大きい。

それにしても鉄血人形の動きが統一されているな。見てて惚れ惚れする。

いや見惚れてる場合じゃないな。目の前の集団は狩人が直接指揮をしているようだ。彼女の姿を見つけた。狩人は忙しなく下級人形達に指示を出しており、隙だらけだった。だが俺の持ってる銃では一発で殺しきれない。なので影に隠れてこの集団が居なくなるまで遣り過ごすつもりだ。

ふと一体の人形が狩人に何かを伝える。それを聞いた彼女は不敵な笑みを浮かべてこんなことを言い放つ。

「来たかジャベリン……処刑人の仇、取らせてもらうぞ」

 

これを言った後の彼女はまた人形達の指示に戻った。

おいおい、あの補給地点でのこともう見つかったのか?そうなると俺迂闊に動けなくなるぞ?というか狩人はまともそうだ、良かった。違う違う良くねぇよ敵なのは変わらないんだから。

 

倒せる内に倒したほうが良さそうだなこれは。

 

 

 

 

 

 

 

 





ジャベリンくん、ちょっとだけ結婚について考える回でした。

ヘリアン「!」ガタッ

落ち着いて。確かにジャベリンくん君の事好みとか言ってたけど結婚するかは別のはな(ダーンッ
あ、もう少し彼は潜入してます。

ところで、コメント眺めてたらある人のコメントにジャベリンくんのショタ化なんてものがありまして……二ヶ月記念でやってみようかななんて思っております。

というか今日で『傭兵日記』が始まって二ヶ月ですね。まさかここまで行くとは私は思いもしませんでした。これからもこの作品を応援よろしくお願いします!

さてこの作品への感想及び評価は心の支えです!どうぞ宜しくお願いします。それでは!


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傭兵、動くってよ。

待てども待てども敵は去らず、暫く動けず幾数日。
はてさてジャベリンくんの潜入の行き先は?
それではどーぞ。


187日目 曇時々晴

 

潜入……何日目だコレ、分からん。なかなか狩人配下の人形達が居なくならなかったから軽く三日は隠れてた気がする。体の節々が痛い。まあ有益な情報も手に入れたから良かったのだが。これは後で記そう。

人形の集団が過ぎ去った後はまた探索を始めた。途中で廃墟と化した家屋を発見したのでそこを拠点にしておいた。雨風を防げる所があるのは大きいからな。

俺は壊れ欠けた椅子に座って集めた情報を纏めた。それは以下の通りである。

 

・狩人がここから東にある建物へ向かったこと。もしかしたら拠点の可能性アリ。

 

・狩人は俺の他にAR小隊の一員『M4 SOPMOD-Ⅱ』、『ST AR-15』を追いかけていること。どうやらM4A1を釣る為のようだ。

 

・お嬢の基地部隊が何とか鉄血軍を押し返して攻勢を仕掛ける気配があること。場合によっては協力もアリだろう。というか優勢なら俺の出番必要ないような……というわけでもない。

 

・クルーガー社長から万が一に備えて任務は続行するように言われたこと。

 

 

上記の通り、引き続き俺の任務はある訳だ。一先ずは狩人が向かったであろう建物へ行く。あわよくば狩人諸とも建物を破壊というのもアリなんだがはてさて……。

 

 

 

 

 

 

 

 

突然SOPに襲われた。コイツ俺を敵だと思ってやがる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

188日目 晴

 

SOPとの追いかけっこが始まった。今は隠れてこれを書いてる。

彼女、昔模擬戦やった時よりも強くなってるし獰猛にもなってる。というか何で俺を追いかけるんだ?

あ、IFF着けてなかったね俺。しかも義眼の事もある。ちょっと格好いいとかそういう理由で眼帯を着けて来たのだがそれが却って悪い結果を招いたようだ。彼女は確か俺の状況はあまり知らなかったはず……というか俺が何も言わずに逃げたのも原因の一つか。

一先ずは眼帯を外して武器を置き彼女の目の前に出てみよう。

死んだらこの日記も終わりだな、うん。

 

 

 

188日目 続き

 

腰が死んだ。というかSOPに死人を見るような目で見られたんだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

189日目 晴

 

任務中に腰が死ぬとかやってられんぞ。今は拠点の家屋で体を休めている。一日で治る筈だろう。というか治す。

それよりも肝心のSOPだが、ちゃんと誤解は解けた。俺は何故か死人扱いされてたようだ。仕方ないっちゃ仕方ない。

俺は彼女からまた情報を貰う。

現時点でSOPとAR-15は別行動をしており、AR-15は狩人の所へ、SOPはグリフィンの基地、お嬢の所だな。そこへ行く途中だったようだ。

因みに彼女が俺を襲った理由、『鉄血の臭いがしたから』らしい。犬かお前。

 

……頼むから基地に帰ったとき絶対バレてくれるなよ?

 

 

しかし……ちょっと早めに狩人の所へ行かなければな。AR-15だけじゃ荷が重いだろうに。

 

 

 

 

 

 

 

190日目 曇

 

腰が治り、SOPと別れた後に俺は東へ向かった。結構な道のりだ、歩いて一時間半は掛かる。

AR-15は何を思って一人で向かうなんて事をやったのかよく分からない。俺みたいに潜入任務ならともかく彼女は逃走中であるし早く逃げればよいものを……そこのところSOPにもう少し聞けば良かった。

それにしても遠い。歩いて行くなんて正気の沙汰じゃないよ全く。だがAR-15の事もある、頑張らなければ。

 

もう少し歩いていると、途中でオフロードバイクを見つけた。コイツ、動くぞ……!?

無いよりマシだ、コレに乗って行く。

 

 

 

 

 






二ヶ月記念はまだ構想中…………ショタリンくん動かすの難しいでござる。

さてジャベリンくんはAR-15を追いかけて狩人の基地へ……次回、彼女との戦闘です。さあ狩人は一体どうなっているのか、お楽しみに。

さてこの作品への感想及び評価は執筆の栄養剤です。どうぞよろしくお願いいたします!それでは!


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傭兵、頑張るってよ。

狩人戦です。
確実に可笑しくなっているであろう彼女との戦闘シーン、個人的に楽しく書けました。
それではどーぞ。


191日目 晴

 

チャリで来た。そんなフレーズが大昔の日本であったような気がする。仮にそうだとしたら、俺はWWⅢ以降初めてこの言葉を使った人間になるのだろう。

 

そんなことはどうでもいいとして、今丁度狩人の居る拠点に到着した。道中は義眼と光学迷彩マントをフル活用したので見つかることは無かった。ただ自転車が一台ひとりでに動いてる光景は少々シュールかホラーなところがある。

警備もそれなりに居るのであまり呑気にしてられない。今から建物の中へ入っていこう。

 

AR-15は無事だといいのだが。

 

 

 

 

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不気味なほど静かな屋内、俺は銃を構えて進んでいく。外の警備は随分と多かったが内部は違った、少なすぎる。何かの罠なのだろうかと疑うぐらいに鉄血の人形に会うことが無い。

これじゃ何処かで見たホラー映画よろしく何かしらのホラーイベント染みた事になりそうな気がする。ホラー映画と言えば、G11は確かゾンビ映画が好きだったな。俺が彼女を拾ってからというもの、いつの間にかゾンビ映画のディスクやら録画データが増えていた。俺が知らぬ内にお小遣いで勝手に買ってたりしていたのだろう。因みに俺も結構見てる。その作品たちの中には面白いものだとか、訳のわからないハチャメチャなものが沢山あった。変わり種にゾンビシャークとかあったな。

今の時代、ちょっと汚染区域にでも行けばE.L.I.Dとかいうゾンビみたいなのは幾らでも見ることが出来るのに、そんな事は関係無しにゾンビ映画は増えている。それは監督の執念なのか何なのかはわからない。というか分かっても理解しきれないだろう。

 

閑話休題。俺は思考を切り替えて奥へ進んでいく。時たま頭を潰されたリッパーや体内の配線をぶちまけられたスカウトやらプラウラーが居たのだが何があったのだろうか?

本当にゾンビというかミュータントでもこの奥に居るのかね。

だとしたら勘弁して欲しい限りだ。AP弾が有るにしても分が悪い。Super-Shortyもあまり役に立たないだろう。E.L.I.Dとは得てしてそうだ、人間がちょっと変容したゾンビならともかく、異常進化したミュータントを相手にした時にはもうやってられない。爆弾か大口径の銃を持ってこないと死ぬ。よくもまあ正規軍はあの化け物とずっと戦っていられるものだ……いや、うちの社長も正規軍のE.L.I.D撃滅部隊に居た訳だし、それを考えたら正規軍もE.L.I.Dと連日戦えるんだろうな。

 

また思考が逸れたな。落ち着け、俺が今やるべきは狩人の居場所を突き止める、そしてAR-15と合流することだ。最悪の事態は避けたい。AR-15が破壊されてしまうとかな。SOPやM4、ペルシカリア、何処にいるか分からないM16に地獄のはてまで追いかけられて殺されちまう。

 

 

「……ここか」

 

 

ふと、一番奥の行き止まりに扉が有ることに気が付く。それは半開きになっており、床には血を流しながら何かを運んだのか引き摺った跡が出来ていた。まんまホラーじゃねぇか、狩人は一体何をしてたんだコレ……。

 

勇気を出してその内部へと入る。中は薄暗くどうなっているかまでは見ることが出来ない。だが、血の臭いがする。鼻が捻切れそうな位臭い立っている。流石にこの中にAR-15は居ないよな?

ううむ、想像したくはないが、随分と趣味の悪いことをしてる。

とはいえこのまま引き返すのも駄目だろう。任務の放棄はするべきでない。もう少し進むとしよう。

 

 

 

 

「人の部屋を漁るとは感心しないな」

 

 

 

 

ぞわりと、身の毛がよだつ。

 

反射的に後ろを振り向けば、そこには白髪長身の女、狩人が立っていた。その顔は薄暗い部屋から彼女を見ているせいか、逆光で見えない。

だが直感的にこの女は怒りに満ちた顔をしていることが分かった。

 

 

「まあいいさ、少々予定は早まるがやっとお前を殺せる」

 

 

彼女は俺に近付いてきた。俺は彼女から一切目を離さずに銃を構えた。

 

 

「この部屋で暴れるのは少し憚ってしまうが、まあいい」

 

 

突然、照明が着いた。明るくなった部屋は存外広く、そして目に入った光景はどう考えても尋常な風景じゃない。

 

数多くの髑髏が、人形の頭が飾られるように並べられていた。中には脊髄ごと引っこ抜かれたものもあり、思わず目を背けたくなる。正気の沙汰じゃないぞ。

この壮絶な光景に思わず俺は言葉を失った。

 

狩人が両手でハンドガンを構えて底冷えするような声色で言う。

 

 

「処刑人の仇、討たせてもらうぞジャベリン」

 

 

 

 

 

……どうやら俺はとんでもない化け物の腹の中に居たようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_________________________________________________

 

 

 

 

 

 

だだっ広い室内、だが見渡す限りの頭蓋や人形の頭部が散乱している上に血の臭いが充満して決してなんの変哲もないとは口が裂けても言えない。そんな所で激闘は起きている。

そこでは一人の眼帯を着けたタクティカルベストの男を白髪で背の高い女が追いかけていた。その手には日本刀のようなものがあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「死ねッッッッ!!!!」

 

「断る!!!」

 

 

俺は此処彼処を駆け回りながら、襲いかかってきた狩人にAP弾をぶちこむ。それを狩人は避けては此方に急接近してくる。

 

不味い状況だ。

俺の目の前に居る狩人はとんでもない奴でしかない。

俺が発砲したのを見てから回避なんて何処の某狩ゲームだ。まさか『狩人』にあやかって身体改造でも施したのか?

そうでもなきゃ華麗なステップで銃弾を避けてるのに説明がつかないぞ?それに加えてこのハイエンドモデルは何処から取り出したのか日本刀のようなもの振り回してきてるしこれはもう黒だ。

兎に角、コイツを俺の近くに近付けたら即上半身と下半身がオサラバするだろうから絶対に寄せ付けない。

だからといって残弾の関係上矢鱈に撃つわけにもいかないから牽制と攻撃も兼ねて単発撃ちをしているが、それも何時まで続くかわからない。というか弾切れ起こしたら狩人への決定打が無くなってしまう。サイドアームのMP412REXはワンチャン、Super-Shortyは散弾だから牽制程度にしか使えない。

 

というか何で狩人が刃物持ってるんだ。君処刑人とは違って集団戦法特化だろ!!というか寧ろそっちのほうが俺としてはやり易かったぞ!?

 

心の中で叫びながら此方に向かってきた狩人へ引き金を引いた……が、何時までたっても弾が出ない。

 

 

「っ!!クソッ、弾切れかよ!!!」

 

「もらったァ!!!!!!!」

 

「やらせるか!!!」

 

 

ここぞとばかりに狩人が斬り込んで来たが、俺は咄嗟に腰のSuper-Shortyを構えて撃った。

無理な体勢で撃ったせいでバランスを崩して倒れてしまったものの、散弾をモロに受けた狩人は吹き飛ばされたので御の字だろう。

 

何とか距離を離すことが出来た上に彼女へダメージを与えることが出来た。Super-Shorty、お前の事を舐めていたよ。

SCARのリロードを行う。その間に狩人が起き上がりこちらを睨んでいた。

 

……少し大人しいな。ちょっと気になることを聞いてみよう。

 

 

「狩人、お前何で俺に執着するんだ?」

 

「何を分かりきったことを聞く?処刑人の為に決まっているだろう」

 

 

狩人はさも当然のように話す。

いや、確かに敵討ちなのは分かるんだが、そうじゃない。

鉄血のハイエンドモデルは素体のバックアップがあるだろうに、たかだか一回破壊されるだけでここまで怒る理由が分からないんだ。俺はそこを聞きたい。何でバックアップがあるのに復讐なんて事をしてくるのか。

狩人は俺の質問に対して驚きと呆れが混じったような顔をした。

 

 

「お前……いや、知らないのなら教えておこう。確かに体のバックアップはある。だがな、その記憶のバックアップはないんだ」

 

「オイ……本当に言ってんのか?」

 

 

じゃあ今恐らく畑で野菜の世話やら猪の世話をしているアイツらは全くの別人ということになるのか?

でも俺の事を知ってたし、しかも小屋の場所も特定なんてしてた。もし俺の事を知らなかったら説明がつかない。

どう言うことだこれは……少し確かめてみる必要がありそうだ。

 

狩人は俺を嘲笑する。

 

 

「本当だとも。もうこの“私”を覚えている処刑人は居ない。これを死んだも同然と言って何が可笑しい?」

 

「お前……」

 

 

確かに、そうだろう。何処かで聞いたことが有るが、人が本当に死ぬ瞬間とは誰の記憶からも忘れ去られた時とも聞く。今の処刑人は目の前の狩人にとって赤の他人、つまり死んだ友に良く似た何かということか。

 

狩人はその手に持った刀を構える。覚悟を決めたように。

 

 

「これはあの時の“処刑人”のためだ。間違っても今の処刑人のためじゃあない」

 

 

彼女の顔は、悲しみに耐えるような、そんな顔だった。

 

 

「だから、だからこそ、ジャベリン。お前を殺す」

 

「……そうかよ」

 

 

俺は眼帯を外した。俺も覚悟を決めてやってやる。

死ぬわけにもいかない、あと知りたいこともある。

義眼を起動させて俺は彼女を見据えた。

 

 

「大盤振る舞いだ。脳味噌溶けようがお前を破壊してやる、狩人」

 

 

瞬間、狩人の視界から俺は掻き消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






この狩人なんか時計塔の狩人と宇宙人の狩人が混ざってますね……どうしてこうなった。
因みに真面目な終わり方してますけどこの後はシリアスがシリアルになります。AR-15登場しますから……あの子この作品じゃポンコツな所ありますし。

さて……狩人との決着、次回で終了です。どうぞご期待ください。(狩人戦の後どうしようかという顔)

この作品への感想及び評価は心の支えです。バンバンどうぞ!それではまた今度!


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傭兵、決着だってよ。

深層映写はUMP40を無心に掘るだけ(レベル足りないから完走できない男)


ハンター戦、終了。
彼に一つの疑問が出てきます。それではどーぞ。


side AR-15

 

 

 

「……ここね」

 

 

SOPと別れてから一時間ほど、私は狩人が居る筈である指令部に到着した。時折警備の鉄血人形が歩いていたが、指揮系統が混乱していたのか奴らの動きが鈍く、破壊するまでも無く歩を進めることが出来た。

 

建物内を進んでいく。鉄血人形の無惨な姿を道中見かけたが一体何が起きたのだろう?

もしかしたら先行者でも居るのだろうか……そうだとしたら急がなければならない。

だがそれと同時に慎重に行くべきでもある。その先行者が敵という可能性も捨てきれない。そして狩人と結託して此方を襲ってくるかもしれない。電脳で予測結果を弾き出せば出すほど緊張感も増してくる。

だが、私は進む。私には片を着けるべくここに来たのだから。

 

 

「っ……銃声?」

 

 

ふと発砲音が聞こえてくる。その音は奥へ進むにつれて徐々に大きく、そして数も多くなってきた。さらには誰かの怒鳴り声も聞こえて来た。悲鳴も混じってる。

私は今すぐ走り出したい衝動を押さえながら早足で急いだ。

 

曲がり角を過ぎた先に半開きの扉が目に入る。発砲音や怒声、悲鳴はここから聞こえており、確実に誰かが居るのだろう。

自らの半身を構えて中へ入る。

そこでは勿論激しい戦闘が起き………………

 

 

 

 

 

「何処だジャベリンッッッッ!!!!!!!!!!!!!!」

 

「教えるかバーーッッッッカ!!!!!!!!!!!!!!」

 

「其処かァァ!!!!!!!!!!!!!!」

 

「ウオオッ!!??!はー!!!当たってねーぞオメーよっひょおおおお!!?」

 

「ちょこまかと……!!!」

 

 

 

 

 

「……何これ」

 

 

…………てはいるのだが随分と愉快な事になっていた。両手にハンドガンを構えた狩人が、何処からか聞こえるジャベリンという男の懐かしいあの声に反応しながらぐるぐると回っていた。

 

本当に、シュールだ。

 

ふと、狩人の真後ろにジャベリンが立っているのが見えた。彼が私に声をかける。

 

 

「あ!AR-15!!丁度良かった!!!」

 

「なっ!?ジャベリンなんで後ろに張り付いてるの!?」

 

「後ろかッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

私が驚きの声をあげた瞬間に、狩人が真後ろに銃を向けて撃った。ジャベリンはすんでのところで避ける。そして私に向かって彼は怒鳴ってきた。

 

 

「おまこのポンコツゥーっ!!!!何敵に俺の居場所教えてんだァ!!!!!!!」

 

「あっ」

 

 

えっと……ごめんなさいね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_______________________________________________

 

 

 

side ジャベリン

 

 

 

大口叩いて狩人と戦闘を始めたものの、狩人は予想外に強かった。彼女は俺の僅かな声さえ聞き取って撃ってくる。なんだこの変態め、卑しいぞ!!

 

必死に避けていく内にいつの間にか彼女の真後ろに立つことになったのだがこれがいけない。

俺を探す狩人に合わせて俺も彼女の真後ろにぴったりとくっついていなければならなくなったんだ。

 

俺を探して怒鳴り散らす狩人と何も言わずにただ延々と彼女の後ろにくっつく俺、これを第三者が見たらそりゃあもうシュールでしかない。因みに何度か俺も叫んでるので見付かりかけてたりはする。

 

それはそうとこの現状、実はもう一人に見られてる訳である。

それが誰なのかは感の良い人間なら確実に分かるだろう。

 

 

「……なにこれ」

 

 

そう、AR-15だ。彼女、俺よりも遅く此処に到着をしたのだ。案外無事なようで何よりだ。

彼女は俺に声をかけたのだがそれが却って俺の居場所を狩人に知らせる事になってしまい、思わず彼女に罵声をあげてしまったのだが当のAR-15は何だか申し訳なさそうに「ごめんなさいね?」って言ってた。

 

そんな事言う暇があるなら早く助けて!!!!!!!!!!!

そろそろ意識が飛びそうなんだよ!!!

 

 

「あっ、援護するわ!!」

 

「っ!!AR-15ォ……!!」

 

 

俺の気持ちが伝わったのかAR-15が慌てて狩人へ攻撃を加えた。

狩人の意識がAR-15へ向いている隙に義眼の認識阻害を切って距離を取り狩人へ弾を撃ち込んでゆく。

それへ直ぐ反応した狩人は銃弾を避けながら俺とAR-15から離れた。熱された頭を冷やしながら暫しのにらみ合いが始まる。

 

 

「ふん……少々分が悪いな」

 

「絶対に嘘だろ狩人……」

 

 

狩人は刀を再度構えてこちらを見据える。その目は俺だけを見ており、あからさまにAR-15は眼中に無いということがひしひしと伝わった。

 

コイツの状況、上手く利用出来ないものか……。

俺は小声で隣のAR-15と手短に作戦会議をする。

 

 

「AR-15、今の狩人の状況、どう思う?」

 

「少し……余裕が無さそうに見えるわ」

 

「了解、それだけ分かれば十分だ」

 

 

俺の返答にAR-15は怪訝な顔をする。俺がやらんとしていることに今一想像がつかないようだ。尤も、あまり良い作戦とも言えないから仕方ないのだが。

 

 

「……何をするつもり?」

 

「囮。もしもアイツが体勢崩したら撃ちまくれ」

 

「はっ!?」

 

 

AR-15が驚く。まあ無理もない、俺もほぼ思いつきでやるような物だし。

ただ俺を止める暇なんてないぞ。目の前の狩人を見てみろ、もう飛び出そうとしてるからな?

 

 

「何をこそこそと話しているお前ら……まあいい、次で決めてやる」

 

「ほら来るぞAR-15!射撃開始だ!!」

 

「ちょっと、ああもう!了解!!」

 

 

飛び込んできた狩人に向かって引き金を目一杯引く。銃口から射出された多数の弾丸は狩人を撃ち殺さんと彼女へ殺到する。

それを狩人は少しだけ身を捻って回避し、またこちらへ走ってくる。

 

いやいやいや冗談じゃない、なんつー反射神経してるんだ狩人。

 

狩人はそのまま刀の切っ先を俺の腹部へ刺そうとするが、それは隣のAR-15の銃撃によって防がれた。

狩人はまた後方へ下がる。銃弾が掠りでもしたのか、彼女の額からたらりと血が流れていた。

彼女は苦悶の声を漏らす。

 

 

「くっ……」

 

「た、助かったぜAR-15」

 

「あまり馬鹿な事はしようとしないで欲しいものね、ジャベリン?」

 

「まだやってないからセーフだ」

 

 

AR-15が呆れたような眼でこちらを見てくる。俺はちょっと笑って誤魔化しながら、目の前の息を整えている狩人に視線を移した。

少しずつだが確実に彼女へダメージを与える事が出来ている。甘い見積りだがこのまま行けば十分に破壊できる可能性は出てきた。

 

だが、少し違和感を感じる。

狩人は焦るような素振りもなく、むしろ気分が高揚しているようにも見えたからだ。

 

 

「ふ、ふふ。ああ、やはり私を導いてくれるか」

 

「……AR-15」

 

「分かってる。何か隠し種がありそうね」

 

 

狩人はまた構えていたが、その構えは何処かで見たことがあるような……いや、この構えは……

 

 

「処刑人よ、お前は死して尚私を見守ってくれたのか……」

 

「今一度、私に力を」

 

 

……この構えは、衝撃波を放つときの処刑人と同じ構えじゃねぇか。不味いぞ!!

 

 

「避けろAR-15!!」

 

「っ!了解!!」

 

 

即座に俺たちが横に転がった瞬間、元居た場所に光波のような衝撃波が通った。通過した所を見ると、床が抉れており、丁度真後ろの壁は裂けたように左右へ分かれていた。

 

狩人のやつ、まさか処刑人のブレードを使ってるのか……?

 

 

「また来るわ!!」

 

「またぁ!?!?絶対止めろ!!!」

 

 

唖然としていた所にAR-15の警告が耳に入り、意識が狩人へ向く。彼女はまた衝撃波を撃ち出そうとしていたので、それを防ぐべく銃弾の嵐を食らわせた。

 

 

「ぐぅっ……嘗めるなァ!!!!!!!」

 

「おおっ!?」

 

「ジャベリン!!」

 

 

狩人が怯んで構えを解いた。が、彼女は直ぐ様復帰して刀を俺に向けて飛び込んでくる。

 

AR-15が叫ぶ。その間はスローモーションのように感じられた。

 

そのまま刺されるのは嫌じゃある。SCARで防ぐか?いや、確実に貫通する。じゃあ避けるべきか?でも出来ないだろう、間に合わない。ならば、俺が出来ることは一つだけだ、迎え撃ってやる。

 

一つの結論に至った俺が、腰の散弾銃へ手をかけるのに躊躇なぞあるはずは無かった。

 

響くような発砲音と共に狩人が仰け反る。その一瞬の隙を逃す俺とAR-15ではない。

 

 

「さよならだ、狩人」

 

 

彼女が最後に見た光景は、銃口を向ける俺たちだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………………………………

 

 

 

 

「何とか破壊出来たな」

 

「そうね」

 

 

狩人が機能停止してから数分、基地を出て俺たちは帰っている。二人とも疲れが出ているのか、足取りは重い。

 

遠くから多数の銃声が聞こえてくる。まだ気を引き締めておく必要があるようだ。

 

 

「光学迷彩マント着るか?」

 

「必要ないわ。貴方が着てなさい」

 

「いや、暑い」

 

「バカなの?」

 

 

地味に傷付くなぁ……。

 

半目のAR-15を横目にマントを畳む。「結局着ないのね……」というセリフも聞こえてきたが黙っておく。俺は暑がりなんだ、出来るだけ涼しい状態で在りたい。

それにしても……狩人には結構悪いことをしたような気がする。最終的に俺は“今の”狩人を殺した訳だ。破壊される前の処刑人を知る彼女を破壊したのだ。

今後出会う可能性があってもそれは別人であって俺の知る狩人ということでは無いのだろう。

いや、だが俺も少々疑問に残る所がある。

小屋に住み着いたスケアクロウ達の事だ。彼女達だって一度破壊されてる、だけど俺の事は覚えている。何故なのかわからない。この真相を探るために鉄血の本拠地に向かったなんて事はしないが彼女たちに色々聞く必要が出てきた。

 

 

「ちょっと、ジャベリン」

 

「ん?ぐえっ」

 

 

俺が思考の海を漂っている時に、AR-15が俺へ声をかけてきた。意識が切り替わる。そして突然腹部に衝撃が走った。思わず潰れたような声が出た。倒れることは無かったが、痛い。

視線を下に向けると、そこには見慣れた頭があった。そいつはSOPのものであることに間違いはない。SOPは顔を上げてこちらを眩いばかりの笑みで見てきた。

 

 

「おかえりジャベリン、それにコルトも!!」

 

 

SOPはそう言う。

俺とAR-15は、ハモるように答えた。

 

 

「「ただいま」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

因みにこの後回収にやって来たお嬢に案の定AR-15は口説かれた。君本当に好色だな???M4もちゃんと止めてあげなさい。

 

そういえば、俺のSuper-Shorty狩人の所に忘れちまったんだけど……どうしよう。

 

 

 

 

 

 




「……酷いやられようだな」

「たかが狩人とはいえハイエンドモデルを殺した……」

「ふ、ジャベリン……か。一体どんな男なのか気になるな」

「このショットガンも暫く貰っておくとしようか」




誰だコイツ……。登場はもう少し後ですよ。

はてさて時計塔のみならず醜い獣まで混ざり始めた狩人ってなんだこれ()
混ぜすぎて最早訳のわからないことになりましたね、ごめんなさい。
次回はほのぼのです。また暫くは大人しくなります。

そして二話かそこら更新したらまたコラボ入っていきますよよよ。

さて作品への感想及び評価は作者の心の支えです。どうぞ、よろしくお願いいたします。それでは!!


5/17 タイトルと前書き書き忘れてたので追加。申し訳ない()


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傭兵、驚くってよ。

UMP40がイベント初日で取れたせいで当分の目標が消え去った男、サマシュです。多分今年の運全て使った。

ジャベリンくん、狩人との戦闘を終えて一時的にお嬢の基地へ戻ります。彼を待ち受ける更なる騒動とは一体……?
それではどーぞ。


192日目 晴

 

任務を終えて、俺が疲れて寝ている時にとある夢を見た。

その夢はそんな悪夢とか熱に浮かされて見る変な夢というわけではなく、ただ俺の記憶をなぞったような夢だ。

その夢の中では、俺とUMP40と代理人が居た。確か蝶事件の前日に代理人とUMP40とで紅茶を飲んでいた時のような夢だったかな。あと代理人が居たのに不思議とこの夢を見た後の気分というのは良かった。

まあそれは置いて、夢の中のUMP40がふと俺に色んな事を話しかけてきたが、その話終わりに「あたしが居なくなったら45のこと、よろしくね?あの子どーしても一人で気張りがちだからさ」なんて言われた。そこで夢は終わったのだが……あの時40のやつはそんな事言ってたっけな?記憶が曖昧じゃある。彼女に聞こうにも……まあ、40は多分蝶事件の時に死亡してるはずだから聞けない。

とはいえこれは夢だから俺の思い違いかもしれない。俺の中のUMP45への何かしらの思いが夢に出てきただけの可能性だってある。

考えても仕方ない。先ずは目先の事だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

なんでSOPが俺の隣で寝てるの……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

193日目 曇 修羅場

 

SOPは他人を勘違いさせることが上手いなあ……。

という現実逃避はさておき、結構不味い。なんか組み手でもやりたかったのであろうお嬢が俺の状況を見てあろうことかM4とAR-15を呼んできやがった。

嘘みたいに早くこの部屋にやって来たこの二人はどちらともその視線だけで人を殺せるような目付きになってる。この時SOPは呑気に寝ていた。

一応彼女達は俺の弁明を聞いてくれたのだが余り効果は無いだろう。何せお嬢か彼女らを煽ってる。ローゼを呼んでおいた。馬鹿め俺は万が一の為にローゼと何時でも連絡が取れるようにしているのだガハハハ。まあそれで解決するかどうかは別の話なんだけどな畜生!!

 

ふとM4が口を開き「ジャベリンさん、やはり貴方はSOPと……SOPと結ばれたいのですね?」と言う。彼女よく見たら目が正気じゃなかった。またかこれ……。隣のAR-15とは言うと、目は正気だが完璧に俺に失望してる顔だ。

ステイステイ、とりあえず落ち着け、いーじーぴーじーだ。そう二人に伝えたら失笑された。辛い。

それに加えて今度はSOPが起きたのだが、彼女は何がなんやらという顔だった。この時直感でもっと話が拗れることが分かった。

 

SOPが起きたのを機に詰め寄って質問攻めをする二人に対して、SOPは一言。

 

「ジャベリンって意外と暖かったよ?なあに、二人も一緒に寝たかったの?」

 

 

 

 

おっ、余計に誤解を生ませやがったな??

 

ローゼたすけて

 

 

 

 

 

 

 

 

194日目 晴時々曇

 

最早弁明も聞かなかった二人にはローゼの説得(折檻)のお陰で何とか落ち着いた。(即座に気絶させた)

ローゼって本当に強いよな……まさかエリート部隊二人を一瞬で無力化させてるし……お嬢の相手をしてたせいだろうか。

 

SOP含めた三人組をローゼに任せて俺は畑に向かった。途中で掲示板の近くを通ったのだが、最近畑当番というものが出来たらしく(恐らくスコーピオンかそこら辺りの発案)その今日の当番が誰なのかを示す紙が張り出されていた。どうやら今日はWA2000とMP5が担当らしい。

久し振りにWA2000と会うが、彼女は変わらずのままだろうか……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

WA2000はWA2000のままだった。彼女、瓜坊やら子羊やら子山羊に囲まれて幸せそうだった。MP5は猪を俵担ぎしてた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

195日目 晴

 

幸せそうなWA2000を眺めていたら一日が過ぎていた。わーちゃんすげぇ。

というか、俺の畑がいつの間にか大改装されてる。猪を囲った区画は広くなっており、その上増えてる。誰か繁殖成功させたのか?

そして羊と山羊が農場に追加された。俺の任務中に何があったんだ……。因みに家畜の飼育は処刑人が担当してるらしい。何故か牧羊犬も飼い始めたようだ。

続いて畑、ここは果樹園が出来てた。葡萄やら林檎が栽培されてる。

家畜の管理が処刑人なら畑の管理はスケアクロウだ。本当何なのこれ。

 

ざっと前の畑より3倍は広くなってるんだがここまで広げるのに一体幾ら懸けたんだ……え?お嬢が私財を投じた!?自分も久々に土いじりとかしたいから!?

それにしてもアイツ金銭感覚狂ってるって……大農園の娘は伊達じゃないぞ。

あぁ、俺の農耕計画が色々台無しになっちまった……のんびりと本でも読みながら畑を耕す計画が……なんかこう、俺の理想ってのはな、不便を楽しみながらポチとかオスカーを愛でて畑の管理をして、時たま友人がここを訪ねてくるのを楽しみに待つみたいなのが良かったんだよ……おお、すべては遠き理想郷よ……。

 

……もう少し休んでからスケアクロウ達に色々聞こう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

196日目 曇

 

メンタルケアを済ませた後に、朝の食卓にてスケアクロウ達に尋ねた。

お前たちは破壊される前の記憶は有るのかということを。

 

結果は普通に有ると返ってきた。スケアクロウは明確に俺とチェスをしたことを覚えているし、蝶事件の時のこと、S10地区の基地へ攻撃をしたこと、その他多くが記憶モジュールの中にあるらしい。処刑人も同じく、狩人との記憶や俺を襲撃したこと、ダイナゲートの集団に押し倒されてる俺を見たこと、俺に楽しかったと伝えた時のこと、全て覚えている。

 

と、すれば何故狩人は記憶が残らないと言ったのか……それを彼女達に聞いてみれば、先に狩人を撃破したことに驚かれた。処刑人は「あの狩人を破壊できたのかー……またお前と戦いてぇな」なんて言ってくる。鬼ごっこで許して。

それはともかく、これについてはスケアクロウが詳しく説明してくれた。曰く、素体を替えたら記憶が残らないのは本当である。だから逆に私達の記憶データが残っていること事態イレギュラーであり、原因は不明らしい。

一つの分かることというのが、彼女達は破壊されて暴走状態からまともになったこと、そして、何故かジャベリンの所へ向かえという出所不明の命令が出てきたということだけだ。

 

え?ということは狩人もここにやって来るの???止めてほしいんだけど。アイツ何か怖かったし。

そう思ってたら処刑人に結構神妙な顔で「実は狩人、まだ鉄血の本拠地に居るんだよな。その理由は分からねぇけど俺も近々呼ばれそうな気がする」とか言われた。

 

うーん嫌な予感しかしねぇ。

頼むから変なことになるんじゃねぇぞ……。

 

……ん?そういえばどうして処刑人は狩人の居場所が分かるんだ……あ、物凄く怖くなってきた。一応お嬢に基地警備の強化を具申しておこう

 

 

 




出所不明の命令なんて一体どこの誰トーフェンの仕業だ……あの男はまた登場します。社長の戦友なんだから蝶事件程度じゃ死にませんよ(尚どうなってるかは不明)

一仕事終えたジャベリンくん、暫くは後方へ戻るかと思いきや、ちょっとだけお嬢と共に行動します。
ですが、その前にポチとオスカーへフォーカスしましょう。ジャベリンくんの居ない間、この子たちはちょっと冒険いたします。どうぞご期待くださいませ。それでは!



5/18 加筆修正


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ポチとオスカー、外へ出る。

ジャベリンが任務で居ない間、彼の自宅で留守番をしていた相棒のポチ。ポチはとある目的のために外出を行おうとしていた。

※ちょっとだけ無課金系指揮官様作『何でも屋アクロス』が登場してます。




ジャベリンが任務で居ない日にて、彼の自宅にある銃の整備室で、彼のペット兼相棒であるダイナゲート『ポチ』とたまたま休日で彼の自宅へ来ていた戦術人形『G11』が何かを取り付ける作業をしていた。

普段ならこの部屋には入らない二人(一人と一匹?)だが、今日は何やら様子が違う。ポチのみとはいえ随分とテンションが上がっていた。

 

 

≪あー……めっちゃ手際良いですね≫

 

「うぇぇ……面倒でしかないのに何でこんなことやらせるのさ……」

 

≪良いじゃないですか、ご主人が喜びますよ?≫

 

「そうだけどさぁ……」

 

 

今G11がポチに取り付けているのは小さなソーラーパネルだ。実はジャベリンがいつか着けよういつか着けようと考えていたらいつの間にか忘れ去られた代物で、それを見つけたポチが惰眠を貪っていた彼女を叩き起こして取り付けさせている次第である。

G11は最初、死んでもやるものかというような気迫で寝ていたが、ポチのとあるセリフで動き出した。それというが、

 

≪これ、ご主人がいつか着けようかとしてたものなんですけどね……残念です。あー、残念だなー、ここで11が私にこれ取り付けてくれたらご主人に言って色々させてもらえるように出来るんですけどねー、ザンネンダナー、アーザンネンザンネン≫

 

とのことだ。G11は我ながら結構簡単に騙されたな、なんて思いながらポチへの取り付け作業を行っている。ポチは気持ち良さそうにしてるので何だか憎たらしい。ちょっとポチを小突いて作業を完遂させる。

 

 

「ほら、終わったよ……はぁ、まさか前職で学んだ技術が役に立つなんて思いもしなかった……」

 

≪あはは、11は武器庫に居るとき沢山のこと皆に教えてもらってましたもんね≫

 

「まあね。それじゃあたし寝るから」

 

≪まあまあ、ちょっと待ってください≫

 

「……何?」

 

 

さあ寝ようとするG11を止めるポチ。露骨に嫌そうな顔をする彼女を引き留めたのは何か面倒なことでも頼むつもりなのだろう、ポチの雰囲気はどうにも悪巧みをしているようにしか感じられない。

そんなポチの様子を感じとったG11は無視をして部屋を出ようとするが、ポチの一言で立ち止まる。

 

 

≪ご主人の大好物、知りたくないですか?≫

 

「……あたしがジャベリンの好物を知らないと思う?」

 

≪それでも貴女は知りたいから立ち止まった。つまりこの取引は成立してます≫

 

「ふぅん……」

 

 

剣呑な雰囲気に部屋が包まれる。だがそれもすぐ霧散してゆき、G11はやれやれといった顔で頭を左右に振る。

 

 

「ポチも随分と強かになったよね」

 

≪へへ、私はご主人と出会った時から強かですよ?喋れるようになってからそれが目立ってきただけですから≫

 

「あっそ……まあいいや、それであたしは何をすればいいの?」

 

≪えっとですね__________________________≫

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何でせっかくの休日を運転手として潰さなきゃいけないのかしらね……」

 

「いーじゃん416だってジャベリンの大好物とか知りたいでしょー……むにゃ」

 

「確かにそうだけど……って寝るなこの寝虫」

 

 

所変わってここは車の中。運転席にはポチに餌でもちらつかされたのであろう『HK416』が座って運転しており、隣で寝ようとしていたG11を小突いていた。その二人の後ろの座席には、ポチと何故か着いてきたオスカーが居る。

 

彼女達は今とある地区へ向かっている。何故なのかといえば、これはポチがとあるものを買う為である。

 

 

「にゃあ」

 

≪んー?まあ風の噂ですよ風の噂≫

 

「にゃ……」

 

「後ろのコイツらはよく分からない事話してるし……ちょっとポチ、あとどれくらい行けばいいのよ?」

 

≪あ、ここでいいですよー≫

 

 

車が停車する。ポチは器用にドアを開けて、オスカーと車から降りた。416が車の窓を開けて、連絡をしてくれれば迎えにくると言い、そのまま発進していく。

オスカーとポチは伸びをして、がま口をぶら下げて歩き始めた。

 

 

「にゃー」

 

≪んー、お金は大丈夫です。この前ご主人がカードくれましたし≫

 

「にゃん?」

 

≪使えますよ?≫

 

 

ポチとオスカーどうしでしかわからない会話をしながら数分後、二匹は住宅街の一角にある店へ到着した。その店の看板には『アイテムショップ アクロス』と書かれていた。

 

ここはこの前ジャベリンが銃の修理のために立ち寄った場所である。何故またここに来たのかと言えば、ポチにとって喉から手が出るほどに欲しいものが入荷されたからだ。

 

 

≪ラクダのステッカー……今度こそは!≫

 

 

そう、ラクダのステッカーだ。入荷されたことをポチが知っている理由としては、グリフィンに保護されているダイナゲート達が秘密裏に開設したダイナゲートネットワークでそれを知ったからだ。

因みに、ポチがラクダを好きな理由、それは荒野をぶっ通しで歩いても大丈夫なその持久力に惚れているからである。

 

 

≪いざ行かん!≫

 

「にゃあお」

 

 

さあ行こう、とポチはドアの前に立ち、ドアを開…………

 

 

≪…………≫

 

 

けない。ゴツリとドアにぶつかる。今度は後ろ足で立って開…………

 

 

≪…………≫

 

 

けない。隣のオスカーが哀れみの目で見ている。

ぺたんとドアの前に座るポチ。

 

 

≪ふええ…………≫

 

 

ポチの夢は潰えそうであった。南無。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………………………………

 

 

 

「流石に驚いちゃったよ本当」

 

≪うぅ……助かりました≫

 

 

『アイテムショップ アクロス』内にて、オスカーとポチと『M14』、この店では『ヒトヨ』と呼ばれている戦術人形が居た。

 

どうやってポチが店内に入れたのかと言えば、ヒトヨがたまたま所用で外に出ようとしたときにへこたれているポチを見つけたからである。

 

ポチの目の前には数枚のステッカーが並べられており、どれもこれもラクダが何処かしらにデザインされていた。

ヒトヨはこのダイナゲート、何でこんなにラクダが好きなのかなぁなんて思いながらステッカーを吟味しているポチを眺める。ふと、その隣に居るオスカーがまじまじとこちらを見ているのに気がついた。

ヒトヨはオスカーを撫でようと手を出すが、するりと逃げられる。

 

 

「……意外と警戒されてるのかな?」

 

≪オスカーは人見知りですからねぇ……ヒトヨさん、これ買います≫

 

「あ、お買い上げありがとうございます、500クレジットですね」

 

≪了解です≫

 

 

器用にがま口を開けてカードを渡すポチ。それをヒトヨは受け取ってレジで読み込ませて会計を済ます。

彼女は何となくなんでカードを持たされてるのだろうか、なんて考えながらも店の利益になるのは変わらないのでそこで思考を止めた。

ステッカーを受け取った後のポチはとても嬉しさに満ちた足取りで店を出ようとするが、やはりドアが動かない。ポチは気まずそうにヒトヨへ振り向く。

それに気付いたヒトヨは笑いながらドアを開けてくれた。

 

 

「お買い上げありがとうございました~」

 

≪一笑の不覚……≫

 

「にゃむ……」

 

 

アクロスから出た後、ポチとオスカーはまた歩いてゆく。

暫く歩いていたのたが、ふとポチは何だか気持ちが落ち着かないようで、そわそわとし始めた。。

 

≪うーん……≫

 

「どうかなされましたか?」

 

≪え、いやぁ、誰かにつけられてるな…………と≫

 

 

突然誰かに話しかけられ、それに応じたポチだが、そのメインカメラに映った姿を見て一瞬フリーズする。

 

 

 

 

 

「久しぶりですね、ポチ」

 

≪え、いや、なんで代理人が……!?≫

 

 

 

 

 

 

ポチの目の前には、髪を団子のように纏めて白のワンピースを着た女性、『代理人』が立っていた。ポチは正に信じられないという顔で彼女を見つめている。隣のオスカーはなんだこいつという顔をしていた。

驚くポチを置き去りに、代理人は話を続ける。

 

 

「彼の痕跡を辿ってやって来たのが幸いしましたね……まさか貴方に出会うとは」

 

≪っ!!!≫

 

 

正気に戻ったポチはすぐに逃げ出そうとするが、悲しきかな相手はハイエンドモデル。多少の強化を施されているダイナゲートとはいえ逃れる事なぞ出来るはずもなく、すぐに捕まった。

ジタバタするポチを落ち着かせるように声を掛ける代理人。

 

 

「ポチ、落ち着きなさい」

 

≪お、落ち着いていられますか!!?私まだ覚えてるんですよ!!!何をとち狂ったのか私に変なフリフリつけたりとか犬耳のカチューシャ着けて『これが本当のポチ……ふふっ』って笑いながら私で遊んだり何故か延々と私にドッグショーの動画見せて実際にやらせようとしたりして!!!貴女に捕まったら禄なことにならないじゃないですか!!それとご主人の事がありますから離しなさーい!!!!≫

 

「なっ!?貴方いちいち録音したものを流すことは無いでしょう!?今すぐ消しなさい!!あと私は別に危害を加えるために貴方に声を掛けた訳ではありません!!!」

 

 

普段ならあり得ないぐらい取り乱しながらポチをホールドする代理人と最早必死を通り越して決死の思いで暴れるポチ。その様子をオスカーは興味無さげに見ながらあくびをして、毛繕いを始めていた。

 

五分ほどの攻防戦の後、息も絶え絶えな代理人とポチが出来上がった。

 

 

≪はぁ……はぁ……本当に私にもご主人にも何もしないのですね?≫

 

「当たり前……じゃないですか……ふう」

 

 

オスカーとポチと代理人は、近くにたまたまあったベンチへ座る。

息を整えた後に、代理人が先に口を開いた。

 

 

「……ジャベリンについて相談があるのですが」

 

≪帰って良いですか?≫

 

「待ちなさい」

 

 

立ち上がろうとするポチをがっしりと掴んで止める代理人。ポチはあからさまに嫌そうな雰囲気を醸し出したが代理人にそれは通じていなかった。寧ろポチへ絶対逃げるなというオーラを送り返して、ポチを座らせた。

 

 

「結構死活問題なのですよ……私が彼にあんなことをやった手前、どうやっても彼は私から逃げる筈です。それを……それをどうにかしたいんです」

 

≪いや……自業自得……というか何でご主人に酷いことしたんですか?≫

 

 

ポチのもっともな質問に代理人は少したじろいだが、それも束の間。また話を続けた。

 

 

「あれは……リフィトーフェンのプログラムのせいです」

 

≪……お父さんの?≫

 

「そんな呼び方してるんですね貴方。まあそれはともかく、彼が私たちハイエンドモデルに挟み込んだプログラムは、何かしらの感情を暴走させる代物でして……私はたまたま彼への好意が溢れてしまったということです」

 

 

代理人の話は続く。

 

 

「あの時、最初はただ彼を連れて何処かへ行きたかっただけだったのに、暴走してしまって彼を傷付けた。ですが何故か彼への罪悪感なんて無く、いとおしい気持ちばかりが募っていく……彼を見てしまうと胸が高鳴ってしまう。彼を手に入れて何処か安全な所へ保護をしてずっと一緒に暮らしていたいとさえ考えています。可笑しい話です、彼を傷付けたのに何も思うところはなく、それどころか彼への渇望が日に日に増していく訳ですから」

 

≪な、難儀ですね……≫

 

「ポチ、私はどうすれば良いのでしょうか?」

 

≪そう言われましても……ねぇ?≫

 

「にゃーご」

 

 

結構危ない話を聞いたポチはオスカーに目配せをするが、知らんがなと返される。

どうしたものか……とポチは考える。正直な所、代理人は一見まともそうに見えてやはり何処かがおかしくなっている。監禁をしたいと遠回しに言ってる時点で危険だ。しかしこういうのは自らの主人であるジャベリンと引き合わせれば済む話なのだろうが、それは無理だ。肝心のジャベリンは時折悪夢に魘されており、それから起きた時はだいたい代理人に対して怨み辛みを呟きながらまた二度寝に入っていたりする。

詰まるところ今のジャベリンと代理人を会わせても確実に殺し合いが始まるだけだ。それは余り喜ばしい事じゃ無いのだろう。

 

ならばどうするか……一先ずは彼女にそのプログラムを何とかするように伝えるしか出来ない。

 

 

≪うーん……取り敢えずは自分でそれを制御できるようにするべきじゃないんですかねぇ……≫

 

「……まあそんな気はしていました」

 

 

代理人は立ち上がる。どうやら帰るようだ。ポチが何かを言おうとしたが、それに重なるように彼女が別れを告げたので、言わずに終わった。

 

 

「私もそれなりに頑張ってみます。でも、やはり彼と私が会ってしまえば……大変なことになるでしょうね。ふふっ」

 

≪……ご主人をまた傷付けたら許しませんからね≫

 

「分かっています。ですが努力をするとはいえ私も機械です、書き換えられたものを自ら直す手立てなんてありませんもの。それではごきげんよう」

 

 

代理人は何処かへ歩いていく。ポチは彼女を呼び止める事もなく、ただその姿を見ているだけだった。

 

 

≪……あ、416に連絡いれなきゃ≫

 

「にゃーお」

 

 

なんとはなし、オスカーの鳴き声がよく響いた瞬間だった。

 

果たして代理人はどうなるであろうか、それを知るのは未来の彼女だけである。

 

 

 

 

 




代理人のヒロインムーヴが著しいような気がしますね……何でだろうか……。
いやぁ、真面目に考えてると、ジャベリンくんが誰かと結ばれるのって何だか想像がつかないんですよねぇ……。まあいいか。

次回はジャベリンくん、とある補給基地へ向かいます。とどのつまりコラボです。どうぞご期待くださいませ。

さてこの作品への評価及び感想は執筆の支えとなります。どうぞお願いします。それではまた次回!


5/21 違和感のあった部分と誤字を修正


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☆お嬢、人脈形成だってよ。

90000UAを越えるとは夢のような話です……この調子でどんどんいきますよ。

さて、今回はお嬢メインでコラボ回です。
コラボ先はと言いますと、ソルジャーODST様作『G&K補給基地の日常』URL:https://syosetu.org/novel/185352/
です。二話構成を予定しております。
このお話では余りコラボ先は登場しませんが悪しからず……次回が長くなりそうですね。
それではどーぞ!




「うーむ……うーむ……」

 

「どうかなされましたか、お嬢様?」

 

 

S10地区を管轄するとある基地の執務室にて、この基地の指揮官『メグ・コーマック』は悩んでいた。何時もなら即決で物事を進める彼女は、珍しく判断を先延ばしにして居る。

そんな何時もの彼女とは違う様子に心配となったのか、今日の副官を務めている戦術人形、『G36』、またの名を『ローゼ』が彼女へ声をかけた。

それに気がついたメグは、正に困ったという顔でローゼへ体を向ける。

 

 

「あ、ロゼ。実はさ、新しく輸送路とか開拓してみようと思ってさ」

 

「輸送路の開拓……といいますと?」

 

「ええと……」

 

 

メグは自身の言わんとしていることをローゼへ話す。

最近、この基地の近くにある畑、今はジャベリンという男が管理している畑へ勝手に私財を投じたせいで、基地で扱う資源が買えなくなったことをどうにかしたいからということ、そして他の基地と関係を持ちたいということ。さらにこの二つを同時一緒にまとめてやりたいということ。

 

これを聞いたローゼはため息混じりにメグを見る。

 

 

「お嬢様……一つ聞きたいのですがなぜ無計画にもジャベリン様の畑へ勝手にそのようなことを為されたのですか?」

 

「え、いや……ちょっとね、実家の空気が恋しくなっちゃったというか……なんというか、えへへ」

 

「はぁ……」

 

 

ため息を一つ。本当に手のかかるご主人様だこと、とローゼは思いながら、とある人形へ秘匿無線を飛ばす。

数回のコールの後に、その人形は反応する。

 

 

『こちらマカロフ。どうかしたのロゼ?』

 

「少しお伺いしたいことが」

 

 

反応した人形は、ハンドガンの戦術人形『マカロフ』だった。

ローゼとマカロフはメグがこの基地に着任してからの仲であり、時折こうやってメグ関連で相談をしたり、時たま食堂で共に食事をするぐらいには仲が良い。

そんな彼女に連絡をするのは当然、目の前で悩んでいるメグの為である。

 

 

「お嬢様が輸送経路の開拓と、他基地と関係を持ちたいと言っておりまして、貴女にも少しご意見が欲しいのですが」

 

『んー、なるほどねぇ……S09基地の所じゃ駄目なの?あそこ確かスチェッキンっていう戦術人形が移動屋台とかそういうのやってるらしいし手っ取り早いと思うけど』

 

「いえ、どうにもS09地区のみではなく他の地区の基地と関係を持ちたいようでして」

 

『はぁ……なるほどね、じゃあ十五分頂戴、丁度良さそうなの探してみるから』

 

「助かります」

 

 

良いのよ、という言葉と共に通信が切れる。ローゼは未だ悩んでいるメグを尻目に紅茶を淹れる準備を始めた。

 

 

「うーん……ユノちゃんのところでも良いんだけど、というか寧ろウェルカムなんだけど……やっぱり他の基地……出来るなら補給基地が良いんだよねえ」

 

「余り根を詰めないようにしてくださいませ。そろそろ休憩時間ですよ」

 

 

コトリと、ローゼはメグの目の前に淹れたての紅茶を置く。湯気の立つ紅茶からのよい香りが鼻孔を擽り、メグの疲労を癒してくれる。メグはその紅茶を飲み、一息ついた。

 

 

「ん……ふう、ありがとロゼ」

 

「メイドの務めですから」

 

 

メグの謝辞に微笑みで返すローゼ。

 

彼女は副官用の椅子へ座り、メグの纏めた書類を整理を始めた。書類の中にはこの前の狩人討伐作戦時の報告書もある。

蛇足ながらそれに記されている内容はと言うと、

{作戦は概ね成功、対象のハイエンドモデル『狩人』はAR小隊の『AR-15』とG&K社と業務提携中のPMC『武器庫』の『槍部隊』隊長『ジャベリン』両名によって撃破された模様。個人的所感としては人間であるジャベリンを余り前線へ出すべきではないと考えている。上記のような事が何度も起きてしまえば彼の負担は大きいだろう。精々はぐれ人形の救出と偵察任務に行かせるぐらいで良いはずだ。}

などと記されている。

 

それはさておき、彼女が書類を整理していると秘匿無線から通信が来る。どうやらマカロフが見つけてくれたようだ。ローゼは早速通信を繋げた。

 

 

「こちらローゼ、見つかりましたか?」

 

『丁度良いのがヒットしたわ。グリフィン本社とこの基地の中間辺りにある『HUB』っていう補給基地なんだけど、結構規模が大きいみたい。データをそっちへ送るわね』

 

「ありがとうございます、お礼はまた今度」

 

『貴女の作るケーキ、お願いね』

 

「承りました。ローゼ、アウト」

 

 

マカロフとの通信が切れ、同時にローゼの通信端末へデータが送られてくる。それに目を通して、また書類へ目を通していたメグへ声を掛けた。

 

 

「お嬢様、よい場所が見つかりました」

 

「んぁ、本当?どこ?」

 

 

ローゼの報告を受けたメグは机から身を乗り出す。その目はずいぶんと喜色に富んだ目であった。ローゼは何処からともなく大きな地図を出して、指で指し示しながら説明を始めた。

 

 

「私達の基地とグリフィン本社の丁度真ん中辺り、そこに規模の大きな補給基地があります。そこは『HUB』と呼ばれておりどうやら相当な規模のようです。交渉次第ではこの基地の資源の半数は補えるでしょう」

 

「おお……凄いところだね。連絡先は?」

 

「控えております」

 

「よっしロゼ万年無税」

 

「勿体ないお言葉です」

 

 

そうと決まればもう早い。メグは急遽その補給基地へと連絡を入れてアポイントメントを取る。

ローゼはその様子を見ながらまだ確認していない書類へ目を通し始めた。

 

 

「ジャベリンも呼ぼっかな」

 

 

……あの男も大変である。

 

 





ジャベ「……何か嫌な予感する」

スコ「どったのジャベリン?」

ジャベ「いや、まあな」

スコ「?」


メグ「ジャベリーーーーン!!!お金出すから付き合ってぇーーーーー!!!!」


ジャベ「……ほらな」

スコ「え、ジャベリンって指揮官と付き合ってるの?」

ジャベ「何を誤解したんだスコーピオン!?」






焔薙様作 『それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!』より、少しだけユノちゃんとスチェッキンをお借り致しました。この場をもって、謝罪と感謝を申し上げます。


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☆お嬢、交渉だってよ。

コラボ回、続きです。
実はこの回にはポチが出てきません()
ポチの登場を楽しみにしていた方々、申し訳ない……日常回になったらまた出してくから……。

それではどーぞ!


数日後、メグはローゼとたまたま彼女の基地に居た『ジャベリン』を連れて目的地であるHUBへヘリを向かわせていた。

専用の自律人形が運転する車内ではメグは楽しそうに、ローゼは静かに、ジャベリンは他人に分からない程度には不満げにしている。メグとローゼは兎も角、ジャベリンが不満げにしている理由は単純で、彼は元々このまま後方へ帰る予定だったのをメグに止められてしまったからだ。とはいえちゃんと報酬はしっかり貰えるので文句は言わずに着いてきている。

 

 

「それで、俺はお嬢の護衛でもしておけばいいのか?」

 

「んー?別に大丈夫だよ、ローゼが居るし」

 

「俺が来る意味ないのでは……?」

 

 

メグの回答に頭を抱えるジャベリン。その様子を見て、メグは笑いながら休日だと思って過ごしたら良いと伝える。それに対してジャベリンがより一層頭を抱えたのは仕方のない事だろう。

 

またヘリで飛んで行き数十分、目の前には大きな基地が見えてきた。目的地の補給基地だ。強固な壁に囲まれており、防衛能力がとても高いように見える。ヘリポートには何人かの人影が見えた、恐らくこの基地の指揮官と副官だろう。

それを見てジャベリンは一つ呟いた。

 

 

「ここの指揮官は二人いるのか?」

 

「情報によれば、一人が物資管理、もう一人が戦闘指揮を担当しているとのことです」

 

「なるほど」

 

 

三人を乗せたヘリが着陸する。ジャベリンがドアを開けて、二人を先に行かせてからまた自分も降りる。

メグがヘリを帰らせようとしたが、目の前のトンプソンと居る指揮官らしき男性にそのまま置いておけば良いと言われた。

 

 

「はるばるようこそ、コーマック指揮官。この基地の司令官、主に物資管理の方を務めているハワード・エーカーだ。気軽にハワード司令とでも呼んでくれ。それと、副官のトンプソンだ」

 

「トンプソンだ、よろしくな」

 

 

ハワード・エーカーと名乗った男性は如何にも前線で指揮を執っているような風貌だが、実際得意なのは物資管理というギャップのある指揮官で、メグは不思議な事もあるよねなんて思っていた。隣のトンプソンという戦術人形には、何だか強そうと勝手にイメージした。

彼と握手を終えた後に、今度はそのそばに居たグリフィンの制服とは大きく違った和服によく似た制服を着ている男性が自己紹介を始める。

 

 

「この基地の戦闘指揮を担当しているカズト・ナカムラです。気軽にカズト指揮官とでもお呼び下さい、コーマック指揮官。隣の戦術人形は俺の副官のSPAS-12です」

 

「よろしくね~」

 

 

カズト・ナカムラと名乗った男性には……少し失礼ながら奇抜だとメグは思ってしまった。

その視線に気がついたのか、カズト指揮官は苦笑する。

 

 

「やっぱりこの服装気になりますよね」

 

「え、あぁすみません!結構失礼なこと考えちゃって!」

 

「いやいや、良いんです。元々は祖父母の暴走でこうなってしまっただけですからね」

 

 

謝るメグに、ははは、と笑うカズト指揮官。ちょっと気まずい空気が流れるも、それを掻き消すようにハワード司令が喋り出す。

 

 

「まぁ立ち話も何だし、応接間まで案内しよう。トンプソン、行こう」

 

「了解だ、ボス」

 

 

すたすたと、副官であろうトンプソンと屋内へ行くハワード司令。カズト指揮官とSPAS-12、そしてメグたちは慌てて彼らに着いていった。

 

暫く歩いたら、応接間へ到着する。カズト指揮官は他の仕事が有るため副官のSPASと共に何処かへ行った。メグは何となくジャベリンの方を見て、そちらはどうするのかを目で伝えたところ、自分は残ると彼は行った。

今度はハワード司令へジャベリンも居ても良いかと聞けば、快く承諾してくれた。

 

応接間へ入り、メグとハワード司令は机を挟んで向かい合うようにソファーへ座る。そして同時に目の前の彼へと話を切り出した。

 

 

「早速なんですがハワード司令、私の基地へも物資を融通してくれませんか?」

 

「……おい、お嬢」

 

 

超弩ストレートである。

ハワード司令はそれを聞き少し考える素振りをしていた。ジャベリンが彼女へ苦言を呈しようとしたが、ハワード司令に手で制されて、渋々引き下がった。

彼は再びメグを見つめる。

 

 

「ふむ、まあ結論から言うとそれは問題ないよ」

 

「ということは?」

 

「ということは……って言われても単なる疑問なんだけどね。コーマック指揮官、君は確か親御さんが経営している農園から支援をしてもらっているだろう?そっちに頼めば簡単に物資なんていくらでも貰えると思うのだけれど」

 

「あー………それはですね」

 

 

ハワード司令の疑問に言葉が詰まるメグ。

随分と意地の悪い質問である。確かにメグの父親は大農園の主だ。彼女を溺愛している彼へ頼めばいくらでも物資は貰える。だがメグはそういうわけにも行かないと考えていた。

 

 

「ええと、まあ父に頼めば沢山貰えますけど、それじゃ駄目なんです。一つの手段に頼らず多くの手段を頼る、それが普通だと思います。それに輸送トラックを動かす費用も高いですからね、コストカットだってしたいのです」

 

「つまり?」

 

「私が指揮を執っている基地は最前線と言っても過言ではありません。日に日に戦闘は激しくなり消耗率も大きくなっていきます。それなのに物資の輸送費へ費用を費やしていたら本末転倒でしょう。それ故にハワード司令、貴方の支援が欲しいのです」

 

 

メグの弁舌を聞いたハワード司令はニッと微笑みで返す。

 

 

「……ふふ、そうか。すまないね、意地悪な事をしてしまって」

 

「いえ、大丈夫です。私だって烏滸がましいのは分かってましたから」

 

「烏滸がましいなんてとんでもない、君はよく頑張ってくれてるのだろう?」

 

 

そう言いながらハワード司令は右腕を差し出す。

メグはそれに確りと応じた。

 

 

「交渉成立、とここでは言えばいいのかな?」

 

「ですね、はい」

 

 

じゃあそろそろ解散……というところで誰かの腹の虫がなる。全員が見回したがそれが誰なのか分からない。だがお腹が空いているというのは確かだ。ハワード司令は笑って、「折角だからうちのカフェにでも来てくれ、ご馳走しよう」などと言ってカフェへと案内してくれた。

 

道中、ハワード司令がジャベリンと言葉を交えた。

 

 

「そういえば後ろの君、D08での結婚式の時警備として居たね?」

 

「ん、あぁ居ましたよ。あの時ハワード司令は隣のトンプソンとイチャついてましたよね?」

 

「なっ!?」

 

「ははっ」

 

 

ジャベリンの言葉に、今まで黙っていたトンプソンは顔を真っ赤にさせ、ハワード司令は見られてたか……といった風に乾いた笑いをしていた。

トンプソンは慌てて弁明を図る。

 

 

「いやいやいやいや、誤解だぞアンタ!?ボスと私はただちょっと楽しんでただけでイチャついてなんてないぞ!!?いや少しボスが彼処の戦術人形と話してたりして嫉妬とかしちゃったけど別にそういうことでも無くて……あれっ?」

 

「トンプソン、自爆してるよ、自爆」

 

「俺の知ってるトンプソンと大いに違うなぁ……」

 

 

顔を覆ってその場にへたりこむトンプソン。それを見ているハワード司令はとても優しそうな顔をしており、しかと二人の親密な関係が垣間見える。

ジャベリンはふと自分が知っているトンプソンがああいう感じになったらどうなるだろうかなんて考えてた。

メグはと言うと、自分もMP5とかわーちゃんとか、基地の皆とこういう風になりたいなぁなんて思っていた。

 

 

「まあ、トンプソンは置いといて、君も結構遊び人な所もあるだろうジャベリンくん?」

 

「……まさか半年前の社内報とか読んでたりします?」

 

「読んでるとも。まだ本部勤めの頃に随分と大胆な男が居たものだなんて思ってたさ」

 

 

顔を覆って蹲るジャベリン。謎の光景が発生してしまったが、メグとローゼがジャベリンをどやし、ハワード司令がトンプソンを落ち着かせてまた動き始めた。

 

五人はカフェに到着する。そこでは戦術人形の『スプリングフィールド』が食器を拭いており、そしてそのカウンター席ではカズト指揮官が一人でコーヒーを飲んでいた。彼がこちらへ気が付くと、手を振ってくれた。

 

 

「司令、お疲れ様です」

 

「あぁお疲れ様。SPASちゃんはどうしたんだい?」

 

「珍しく射撃場に行ってます」

 

「なるほどね。さ、皆も座って」

 

 

ハワード司令に促されるままに座る四人……いや、何故かローゼが居ない。メグが彼女の居場所を聞くと、トンプソンが答えてくれた。

 

 

「そっちのG36ならうちのG36のダミーが連れていったぜ?」

 

 

メグは何となく嫌な予感がしたものの、まあローゼなら大丈夫だろうと、そこで考えるのを止めた。

 

彼女が思考を切り替えて手元に視線を落としたとき、目の前にカフェのメニュー表が置かれているのに気がついた。どうやらハワード司令が置いてくれたらしい。彼に視線を向けると、私のおごりだから自由に選んで欲しいと言われた。

早速メニューを眺めて、オムレツとトーストのセットを頼んだ。

 

ところで隣のジャベリンはと言うと、カズト指揮官に日本の色々を聞いていた。

 

 

「ところでカズト指揮官、当時の日本じゃニンジャが居てビル群を飛び交ってたなんて聞いたがそれって本当なのか?」

 

「いやいや、それはないですって。せいぜいブシがハラキリしてカイシャクしてただけですから」

 

「ハラキリ?カイシャク?」

 

「お腹をかっ切ったり、首を切ってもらったりって感じですね」

 

「狂ってる……」

 

 

当然だが彼が教えているのは全て嘘である。ジャベリンはそれを嘘だとは知らずにちゃっかり信じている。カズト指揮官はそれが何だか面白いのでそのままジャベリンで遊んでいた。

 

……暫くして料理が運ばれてくる。メグはそれに舌鼓を打っていた。

 

 

「美味しい……」

 

「だろう?うちの自慢のカフェだからね」

 

「あら、司令ったら……ふふっ」

 

 

メグが食べ終えたら、もう帰る時間だ。

メグがローゼを呼び、ジャベリンがカズト指揮官に名刺を渡していた。席を立ちカフェからヘリポートまで歩いていく。

 

途中でローゼと合流した。

彼女のスカートの内にグレネードやC4爆弾が見えたのは気のせいだろう。

 

 

「今日はありがとうございました、ハワード司令、そしてカズト指揮官」

 

「構わないよ。前線で戦ってくれているお礼とでも思っててくれ」

 

 

ハワード司令は破顔してそう答える。

ちょうどヘリのローターが回りだした。メグたちはヘリに乗り込もうとするが、ふとメグがハワード司令たちへ振り向く。

 

 

「こっちもお礼としてHUBへ父の農場の作物とか沢山送りますねーーーーー!!!!」

 

 

彼女は返答を待たずにヘリへ乗り込んだ。今度はジャベリンが声を張り上げる。

 

 

「何か困ったことあったらカズト指揮官に渡した名刺の連絡先にお願いしますね!!!うち何時でも仕事受注してるんで!!!それじゃ!!」

 

 

ちゃっかり宣伝した後にジャベリンもすぐに乗り込んで行った。最後にローゼがぺこりと一礼して乗った後に、ヘリが離陸を始めた。ハワード司令とカズト指揮官は、ヘリが見えなくなるまで見届けた後に、通常業務へと戻っていく。

 

 

 

 

それから一時間後、空を飛ぶヘリの内部では雑談が展開されていた。

皆が皆何だか満足そうである。

 

「そういえばロゼ、なんだか嬉しそうだけど何かあったの?」

 

「いえ、少し面白いことを学んだものでして」

 

「ふーん……そうなんだ」

 

(……ローゼのスカートから時折グレネードが見えるのは言わないでおこう)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この後にあの補給基地へ大量の農作物や嗜好品が送られて処理に困ってしまったのは別のお話。

 

…………ローゼが鉄血人形の集団に向かって踊るようにグレネードを蒔いてゆき、メグを困らせたのも、別のお話だ。




ロゼ「爆発は芸術です」

メグ「ロゼちょっと病院行く?」




ローゼにスキル爆弾魔がインストールされました。

コラボ回、これにて終了。ちょっとキャラの動かし方に不安が残ってしまいましたが、ソルジャーODST様、コラボの許可をしていただきありがとうございます。これを機に皆さんも『G&K補給基地の日常』見てってくださいね?

さて次回は……多分日常回です。武器庫の面々の掘り下げやら久方ぶりのトンプソンや416との絡みを長めにやっていこうかと。

この作品への感想及び評価は心の支えです。どうぞよろしくお願いします!それでは!


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傭兵、会議だってよ。

楽しい楽しい会議の始まりだ。






197日目 晴

 

ちょっと急用で日記が書けなかったがそこは仕方ない。何せお嬢に連れられて補給基地に行ってたからな。それに面白い事を学ぶことが出来た。日本も奥が深い。そういえば武器庫にも日本出身の奴がいたがそいつにも色々を聞いてみよう。

という事で、俺は畑をスケアクロウ達に任せて自宅へ戻った。

にしてもハイエンドモデル組、未だにバレてないのは正直ビックリする。優秀なんだろうなぁ。

 

自宅に帰ると何だか懐かしい匂いがした。正に家に帰って来た!というような気持ちだ。部屋にはポチとオスカー、そしてG11が居た。昔を思い出させるような光景だった。しかも珍しくG11が料理をしており、更にそれは俺の大好物のピーマンの肉詰めだった。ピーマンは俺の家庭菜園からのものだが、今時天然物の肉なんて手に入りにくいだろうに、何処で手に入れたのか。それとなくG11に肉の入手経路聞いてみたら口をつぐまれた。…………いや、考えすぎると駄目だろう。まだブラックマーケットで手に入れたなら許せるからな。うん。腹を壊さなければいいんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

198日目 曇

 

久方ぶりの気持ちのいい朝だ。ただしその後の社長からの電話で何もかもが台無しになっちまったがな。ファッキンシャッチョー。

どうやら各部隊隊長による定例会議があるらしい。あれ二年ぐらいやってなかったけど一体何かあったのか?

それとも最近待遇が改善したらしいガンスミス達の業務報告でもするつもりなのか、行ってみなきゃ分からんな。

 

俺が外出の準備をして居ると、G11やポチが着いてきたげな雰囲気を出していた。勿論連れていく。オスカーは例には漏れずヘリアントスさんの所に預けるけど。……いい加減合鍵とか彼女に渡した方が効率いいかなぁ?

 

【逆送り狼になるからやめといた方がいいよ、ジャベリン】G11

 

 

 

 

 

 

 

 

199日目 辛き雨

 

G11に日記見られた……死にたい……。

しかも何気に上司に対して辛辣な事を書いてて俺は悲しい。戦術人形になる前はあんなに可愛らしかったのに……今も可愛いけどさ。

それはさておき、今日は武器庫の各部隊隊長が集まっての定例会議だ。でもこれ定例会議って言っても毎年やってた訳でもないから定例と言うのは怪しいと思う。

で、今回の議題なんだが会社の防衛設備と新造部隊と会社のイメージアップのための雑誌取材の受け入れについてだ。

先ずは会社の防衛設備、元より固定機銃や見張り台、監視カメラやセンサーと色々あるのだが如何せんそれを管理する人員が少ないため整備されず野晒しのままになっている区画があるのだ。

この会社は他のPMCと比べて規模は小さいため、戦闘員が居てもそれをバックアップする体制が完全に出来上がっていない。今までは比較的暇な弓部隊の諜報部や盾部隊の救護部、そして何でも屋の槍部隊の俺達が整備を行っていたがそれも限界があった。皆休みが必要だし、他の仕事もある上に中には家族を養っていく必要がある奴だっている。

そこで次の議題として出てきた新しく創設する部隊だ。部隊名は決まっていないものの、仕事内容としては軍隊でいう工兵に近い。しかもこの部隊は自律人形で構成する予定で、武器庫では初めての試みだ。しかしこの議題は難なく可決した。お前らも楽したいんだろうなぁ……。

人形の発注はI.O.Pとは違う所に頼むようだ。社長曰くI.O.Pの下請けのような所らしい。金が安く済むんだとよ。信頼出来なさそうとはいえ弓部隊の諜報部がゴーサインを出した辺り問題はないようだ。

因みにこういう外部発注を頼む時は諜報部が事前に下調べをした上で行う。下手に危ないもの持たされたら不味いからな。

 

で、最後の議題なんだが、これは明日へ持ち越しだ。もうしばらく本社に居なければならないようだ。

 

寝袋とか持ってくれば良かったぜ。








ジャベリンが会議中の時のG11たち。。。


11「……ポチ」

ポチ≪何ですか?≫

11「ゾンビ映画観ない?」

ポチ≪……遠慮しときます≫

11「あ、まさか怖いの?」

ポチ≪急用を思い出しました≫

11「逃がさないよ」

ポチ≪ウッ!!!離しなさい!!≫

11「無理」←そのまま引きずるようにポチを運ぶ

ポチ≪う、うわああああ!!!≫



隊員達((((……癒しが帰って来たな))))






あとがき劇場楽しい。
アンケート結果より、同率だったので武器庫の掘り下げから入っていきます。ついでに武器庫へ所属する戦術人形も出てきますからどうぞお楽しみに!

作品への感想及び評価は執筆の燃料となります。どうぞよろしくお願いします!それでは!


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傭兵、対策立てるってよ。

久しぶりの連続投稿!俺は乗ってるぜ!(?)



ジャベリン「俺だってちゃんとしっかり対策を立てることだってあるんだぞ」

社長「ほう?」








200日目 曇

 

流石に雑魚寝は不味かったので社長に頼んで部屋を融通して貰った。まあ俺が引っ越す前に使ってた部屋なんだが。未だに空き部屋なのに驚いた。

ついでに武器庫の兵站部に頼んで寝袋も貸してもらい、それで睡眠を取ったのだが、その時G11が何を思ったのか俺の寝袋の中に入ってきた。ミッチミチだよミッチミチ。破れるから止めて欲しい。寝れるには寝れたのだが寝返りがうてないのは負担が大きい。寝不足になるやもしれぬ。

でも誰が予想する?八時間ぐっすりだよこの野郎。G11セラピー凄かったわ。

 

 

んで、起きた後なんだけど、シャワーを浴びてさっさと会議に参加した。今回の議題は昨日の続きで会社のイメージアップのための取材受け入れだ。これの発案者は社長なんだが彼曰くこの前決算をしたところ、赤字間近だったのが判明したらしい。

下手すりゃ俺達の給料やらボーナスが減るのだ。それを聞いた瞬間皆目の色変えたね、即通ったよ。特に剣部隊の隊長『クレイモア』が一番猛プッシュしてたね。こいつ最近何をとち狂ったかE.L.I.D討伐任務で使うために正規軍が使ってた旧世代のパワードスーツを買ったんだ。だから今日の飯も食えないぐらい金欠らしい。副隊長しっかりしろ、お前の隊長バカだぞ。

 

……とりあえず会議は終わったため解散となった。あとメモも兼ねて追記をしておくが取材が来るのは五日後だ。武器庫の隊員や職員が全員揃うのがその五日後の時だけらしい。こりゃ取材する側もされる側も大変そうだ。

 

 

 

 

 

 

 

201日目 晴

 

久方ぶりにスピアとランスに会った。ランスは相変わらず元気なんだがスピアの様子がおかしい。げっそりしてる。さてはまたお前に紅茶をタカった戦術人形たちだな?なんて冗談混じりに言ってみたら当たってた。最近その戦術人形たちがスピアの自宅に転がり込んで来たらしい。……それほどまでか、何て思ったが彼の紅茶はこの世のものとは思えないほど美味しいから分からないわけでもなかった。

スピアの紅茶を飲んでみろ、宮廷で紅茶を嗜むイギリス王族が見えるぞ。軽い歴史勉強だ。

 

何となくスピアにその戦術人形の特徴を聞いてみたところ、一人は何時も目を閉じててなに考えているか分からない奴で、もう一人はその戦術人形に引っ付きもっつきな人形らしい。

そういやスピアって本部のトンプソンと仲の良いスプリングフィールドとも親密だったような……これは一波乱ありそうだ。一応スピアに暫く武器庫に居るよう伝えておいた。

 

彼に幸あれ。多分俺より酷いことになりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

202日目 晴

 

なんだか最近俺の日記が何度も誰かに閲覧されてきたので対策を立ててみた。

まあ単純に暗号キーのある小さなケースに入れてみただけだが。でもパスワードは絶対破られないだろう。何せ俺しか知らない番号だ、誰にも破られることはきっとあるまい。そしてそれに重ねて万が一の為にスリンガーに頼んで俺の指紋認証を通さなければ開かないようにして貰った。これで俺は安心して日記へ好き勝手に書ける。ポエムだろうが妄想マシマシの変な文章だとか沢山書けるぞガハハハハ!!

 

さて、一安心したところでまた今日の事を書いて行こう。

社長が防衛設備強化とか言って余ってた予算でもはや骨董品と言っても差し支えないぐらいの対空砲やら戦車、戦闘ヘリを追加購入しやがった。いや買うのは分からんでもないでもそれ維持費バカにならないだろ。やっぱロマンか、ロマンなのか。いつかかの日本のトヨタトラックにミサイルランチャーとか対空砲積み込んだものでも作るのか。

つーか兵站部が悲鳴上げてたぞ。金が無くなるとかどうとか言ってやがった。ふと思うのだがこういう無駄遣いしてるから駄目なのでは?

逆に整備士組が喜んでいた。

 

……そう言えば説明し忘れてたな。うちにも一応主計課みたいな役割を持つ兵站部ってところがある。コードネームは持っていないものの、こいつらが居るお陰で武器庫はちゃんと運営出来てるからな。こいつらが裏の社長なのでは?とかたまに思ってる。

それと、整備士たちなんだが、こいつらはただの変態。ガンスミス達とは独立した集団……言っても二人ほど。基本武器庫の輸送車やらヘリやらと色々整備してる。一応は弓部隊所属なんだが完全に畑が違うのかコードネームも貰ってない。多分持ってても自ら捨てたのだろう。

 

一先ず、社長はもう少し金の使い方を考えて欲しい。うん。

 

 

 

【すまんな】マーカス

 

【ジャベリン、流石にあたしと出会った日にちと11を入れるなんて迂闊だと思うけど……あとごめん、社長が力業で壊すの止められなかった】G11

 

 

 

 

 

 

 

 

 

202日目 続き

 

は?????これ夢見てるな俺??????

 

 

 

 






ジャベリン睡眠中。。。


社長「……これか」

G11「パスワードは何となく想像つくね」

社長「ふむ?やってみてくれ」

G11「はいはい。えーと、2111っと」

社長「お、開いたな。でも指紋が必要か……」

G11「どうするの?」

社長「こうする」バキッ!!

G11「!?」





あとがき劇場がマイブーム。
まだ暫くジャベリンは武器庫へ居ます。まだまだ騒動は続きますぞ……!お楽しみに!

作品への感想及び評価は泣いて喜びます。どうぞよろしくお願いします。それでは!!


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傭兵、意志表明だってよ。

ジャベリンは考えた、日記を勝手に見るのはおかしいと、社長は後で殴るとして、他の奴は厳重注意をしておこうと。

それではどーぞ。








203日目 雨

 

冷静に考えて何で皆勝手に人の日記を読んでるんだろうか。確かに誰かの秘密を垣間見るのはとても面白いとは俺も思う。だがね、やはりやり過ぎればそれはもう嫌がらせの部類に入るんだ。もう怒ったからな。一先ず今書いてる日記帳は封印しよう。名残惜しい限りだが如何せんこれ以上勝手に見られるとやってられん。俺の精神が危うい。頑張ったぞ俺。今度は持ち運びやすいものでなおかつ見つかりにくいものを選ぼう。兵站部へ直行だ。

 

兵站部の一人に電子手帳をおすすめされた。有難い。腕に巻いて使うものなのだが、これは持ち運びも便利だし何より秘匿性が高い。入力は手動か視線でキーボード入力が出来る優れものだった。これならリアルタイムで日記を書け……るわけでもないか。戦場で悠長に書いてられんな。

 

……うーん、俺は元々この日記を名も知らない誰かに見せる為に態々紙媒体でやってたからなぁ……。

とか何とか考えてたらそれを見抜かれたのか懐に丁度よく入るような大きさの手帳もおすすめされた。いやそれ買うならあの日記帳使うわ。え?この電子手帳と同期させて書くことが出来る?なんだその変な機能。買うわ。

 

 

 

 

 

 

 

204日目 晴

 

色々思い直して普通に紙媒体でやろうと思う。始めに決めたことを曲げてしまうってのも味気ないからな。但し、プライバシー保護の為にこの日記は誰も知らない所に隠しておくか、肌身離さず持ち歩く事にする。あの電子手帳と付属の紙の手帳は今の日記帳を書き終えてから使うとしよう。

 

それじゃあ今日の事を書いていこう。俺は社長に呼ばれた。何事かと思ったけどハイエンドモデルの事についてだと言われて納得した。そりゃ戦意は無いにせよ人類に敵対してる奴ら匿ってる訳だし社長も思うところがあるのだろう、いや実際に色々言われたがな。

何故ハイエンドモデルを匿ってるのか、そして奴らに戦意は無いのか、S10地区の基地への脅威は無いのか、万が一に責任はとれるのか、なんて聞かれた。

……どちらかといえば問題はない。簡単な事だよ、俺に注意を引かせとけばいいだけだ。スケアクロウにしても処刑人にしても出所不明の「ジャベリンのもとへ行け」なんて言われてるんだ。信憑性はともかく大人しく従ってる辺り大丈夫だろう。

それを社長に伝えたら、何かを察したのか「そうか」とだけ言って後は何も言わなかった。

 

この問題はこうして解決となったので、俺はとりあえず後ろを向いて黄昏れ始めた社長にドロップキックを食らわせた。

 

馬鹿め!!俺が電子ロックを壊して日記を勝手に見られたことに対してもう怒ってないと思うてか!!

ま、後でステゴロ対決になって手痛くやられたけどな!!あれで手加減とか常識はずれだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

205日目 晴

 

俺が社長への意志表明をしたその翌日、会社へ記者やらなんやらと沢山やってきた。有名雑詩から小さなゴシップ詩に民間テレビ局まで来てたが武器庫ってそんなに有名か?それとも単純に偶然なだけなのか。それと取材期間が大幅に増えた。今日を合わせて五日ぐらいは取材をやるらしい。

それに合わせてスケジュールが作られた。

一日目は武器庫の施設や部隊のバックアップを行う一般職員への取材。

二日目は武器庫の最強集団、剣部隊の様子と隊長、副隊長への取材。

三日目は武器庫の防壁、盾部隊の作戦立案の様子やら警備の様子、そして隊長と副隊長への取材。

四日目は武器庫の要、弓部隊の諜報部の作業風景……狙撃兵組は結構黒いところがあるので見せられない。で、隊長と副隊長への取材。

最後の五日目は武器庫の何でも屋、槍部隊の業務風景だ。一応は地域清掃と地域警備をかねてやることにしてる。一応庶民的(?)なところもあるんだぞ、って伝えたいらしい。それで最後に俺とスピアへの取材だ。

それにしても武器庫の戦闘員ってのは案外持ちつ持たれつの関係なような気がする。互いに手の届かない痒いところを掻いてくれるような感じかな?

 

それはともかく、一日目の一般職員たちなんだが、これは特に言及することはない。だってガンスミス達のこととか整備士二人組のこととか、あとは最近出来た食堂で働いてるおばちゃんたちとかそれぐらいしかないからな。

でも施設に関しては結構書いていく。うちの主要な施設は三棟あるぞ。

まずは演習場、あそこは武器庫の敷地の三分の一を占めており、様々なことが出来る。座学なり模擬戦闘訓練なり、VRを使った仮想空間での訓練なり……とりあえず広い。昔民間に解放して武器庫も総出で運動会やったよ。その位広い。

次に社員達が仕事をする第一号館、ここは兵站部とか諜報部、整備士組やガンスミス達が主に利用してる。時折任務報告の書類作成の為に部隊の奴らがここを利用してるがそれぐらいだな。

で、第二号館だがここは社宅だ。独身組とか家族連れでここに住んでるやつとかがいる。因みに第二号館の真横には食堂がある。基本合成食品の塊ばっかりだが美味いぞ。あと安いから財布にも優しい。

 

 

ところで、記者達がそぞろと歩く中で整備士のやつらが敷地内で戦車乗り回してるところに遭遇したんだがどうしよう。というか確実に社長怒るぞ……。

ちょっとカメラ向けてる奴らにも注意をしておこう。

 





武器庫の施設について。。。

PMC『武器庫(armoury)』には社員をバックアップするための施設が存在する。まずは主に戦闘員が利用している演習場、そこではキルハウスや射撃場、ジムにプール、VR訓練場などの設備がある。会社の敷地内の三分の一を占めており、かなり広い。
次に第一号館、ここでは一般職員や技術職の面々の仕事場があり、車両のメンテナンスや戦闘員の武器の整備や任務結果の報告のための書類作成などの事務作業が行われてる。
最後に第二号館。ここは社員の為の社宅であり、娯楽施設もある。最近、食堂が隣接された。近々戦術人形で構成される新造部隊も結成されるので増設予定。



掘り下げが長くなりそうな予感……。
まあこの後も色々書きたいし問題はないかな←

次回も引き続き武器庫について掘り下げていきます。それでは!

作品への感想及び評価は執筆の支えです。どうぞよろしくお願いします!


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傭兵、取材だってよ。

取材ですぞ。でもジャベリンくん視点だからそこまで詳しくは出来ません()
それではどーぞ。


206日目 曇

 

流石に社長が戦車蹴りあげてエンスト起こさせて止めるとか想像出来なかった。アンタ膂力がおかしいって、自然の摂理から逸脱してんだろ。少しは自重して欲しい。記者とかカメラマンが唖然としてたぞ。しかも社長はその後戦車牽引して倉庫まで持っていってたし……。

 

社長の化け物っぷりは置いておき、今日はうちの最強部隊『剣部隊』の取材だ。主に強襲任務や陽動、撤退時の殿を担当するこの部隊は会社が設立されるのと同時に創られた部隊である。正規軍時代、社長の部下だった奴らばかりで形成されてて、しかも社長自ら叩き上げた世代だ。だからみっちりと社長の持つ技術や戦術眼を受け継いでるぞ。正直に言ってアイツらは社長と同じく人間ではない。社長みたいに素手でE.L.I.Dを殴り殺せるようなのではないが、生命力がとんでもない。腹に風穴空けようが片腕片足が吹き飛ぼうが平気らしい。怖い。

勿論、射撃にしても体術にしても会社内じゃトップクラスだ。社長が会社運営をメインにしてからというものの、新人への体術や射撃の教育は剣部隊が担ってきた。俺も教育されたよ。クレイモア隊長直々に……元々俺が隊長候補だったからだけども、二度とやりたくない。

 

さて、今日はその剣部隊の戦闘訓練の様子が取材される。俺は暇だったから見に行ってみたんだが、凄かったよ。紅白戦で別れての近接戦闘の様は……太古の戦場を彷彿させるような壮絶さだった。

実戦形式の殴り合い、化け物揃いの剣部隊が普通であるはずもなく。相手を殴った時の音、爆発かよと思ってしまった。最後は隊長のクレイモアと副隊長の『ツヴァイヘンダー』、愛称『ツヴァイ』とのサシになってクレイモアが勝利した。

ふと周囲の記者を見てみると、皆その戦いに魅入ってメモを取ったり写真を撮るのを忘れていた。闘争の精神が呼び覚まされたのだろうか。まぁいい、次だ。

最後に取材が始まった。隊長のクレイモア……一応明記しておくが女性だ。男所帯だと思ったろ?残念、女性もいるんだよな。美人で強くてリーダーシップがある、字面じゃ完璧だな!

まあ剣の隊長勤めてる時点でお察

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちょっと記憶が飛んでしまってた。何故だ。

このままツヴァイの取材内容とか書こうとしたけどどうにも思い出せないのでここで筆を置く。あ、一応言っておくけどクレイモアってヘリアントスさんと同じ臭いがするんだよね、不思議だよな。

 

もしかして生きお(ここから先は文字が掠れて読めない)

 

 

 

 

 

 

 

207日目 晴

 

スケジュール確認したら三週間位仕事が無いことが判明した。暇になったぞ。あと頭が痛い。

 

さて、今日は盾部隊だ。この部隊は護衛や基地防衛、警備、救護を専門としている。剣部隊の次に古い部隊で、ここの隊員の多くは他のPMCから引き抜かれた奴等ばっかりである。一応この会社唯一の衛生兵たちも所属しているので、武器庫の“治療箱”なんて言われてたり。

今回は護衛任務と警備任務の模擬訓練の様子を一般公開していた。盾部隊の仕事ぶりは四角四面真面目そのもので、堅実なところがある。でも今回の訓練では違った。何を思ったのかドラマみたいなことやってる。護衛役、護衛対象役、暴漢役に別れて迫真の演技でやっていた。君たちのそういうノリが良い所嫌いじゃないよ。

 

で、次は盾部隊の隊長『スクトゥム』と副隊長の『ライオットシールド』、愛称『ライオット』への取材だ。この二人の前職は旧中国で要人の警護をしていたらしく、そこで社長へスカウトされたらしい。俺は初めてそれを聞いた。あそこ崩壊液の汚染が酷かったはずなんだがグリーンゾーンなんてあったのか。……つくづく思うのだが、社長の行動範囲広すぎるだろうに。退役直後とか会社設立時の社長がどんなのだったか気になってきた。

 

話が逸れた、続きを書こう。彼らはこの仕事に対する意気込みだとかちょっとした過去話を話してた。……俺もこういうの聞かれるのだろうか?

 

まあどうせ地域清掃しながら聞かれるんだろうし適当に行こう。

 

 

 

 

 

 

 

208日目 雨

 

弓部隊、暗殺や諜報、潜入と偵察を専門とするこの部隊はある意味武器庫の要とも言える。脅威の事前排除、情報収集、セキュリティ整備、凡そこちらが有利に動くための材料を集めている。

その部隊の隊長『トリガー』と副隊長『スリンガー』はWWⅢ中やそれ以降、多くのPMCや国を恐れさせた工作員で今や伝説みたいな扱いをされている。この二人は正規軍時代は特殊部隊でバディを組んでいたが、退役後は離散、各地を点々としているうちにトリガーは社長にスカウト、スリンガーはトリガーに呼ばれて参入という形で今に至る。

今日はその弓部隊の取材なんだが、俺は別件でスリンガーと行動中だ。と言ってもスリンガーの暇潰しに付き合わされてるだけだが。こいつ仕事の一環と称して色んな所のサーバーに侵入してデータを盗み見してる。社長も苦言を呈しようかとしたら大体有益な情報を社長に進呈してるから怒るに怒れないらしい。なんか其処のところ世渡りが上手というかなんというか……他は真面目なやつなんだけどなぁ……でもそれぐらい出来なきゃ工作員なんてやってられんか。

 

スリンガーは案外保身に走る奴だ。俺が槍部隊の隊長になりたての頃、一度こいつと行動することがあったんだが、突然テロリストに襲撃された時に俺を囮にしていの一番に逃げた。その癖後で拷問されるところだった俺を助け、テロリストを嵌めて全滅させたりするし憎むに憎めない。

さて、スリンガーの紹介はさておき次はトリガーだ。スリンガーが諜報向きなら彼は暗殺向きと言える。この男、過去に警備が大量に居るなか一国の大統領を痕跡も無く暗殺したことがあるとのこと。書類上、その暗殺事件は迷宮入り、というか暗殺ではなく事故として扱われてるらしい。

 

社長、なんでアンタこんなに有能な社員ばっかり集めることが出来てるんだ。俺はそれが謎だよ。

 

そろそろ記者たちが取材にくるということで俺はスリンガーと別れた。別れ際にデータの入ったUSBを渡されたので時間があればまた見るとする。変なもの入ってなきゃいいんだが。




あとがき劇場 ~『各隊長の色々』~

剣部隊
Q.生き遅れですか?

クレイモア『ほう、貴様死にたいようだな?』

ツヴァイ『落ち着け』

クレイモア『離せツヴァイ!私だってチャンスはあるはずだ!!グリフィンの上級代行官にも春が来かけてるのだぞ!?』

ツヴァイ『ジャベリンは生憎だが脈無しっぽいぞ』

クレイモア『あのヘタレめ……!!』



盾部隊
Q.何故あんな劇を?

スクトゥム『隊員達との会議の結果ですよ。私達の仕事ぶりが分かりやすく伝わったでしょう?』

ライオット『あんなノリノリの隊員達が見たこと無かったよ』

スクトゥム『彼らも溜まってたんでしょうに。この前密造酒も作ってましたね』

ライオット『えっ?』



弓部隊
Q.前職は随分と有名だったらしいですね?

トリガー『まあな。お陰でここに入社しても時折変な奴に付きまとわれちまう』

スリンガー『お前この前グリフィンの戦術人形に付け狙われてなかったっけ?』

トリガー『んー、確かStGだったかな?というかベル、お前だって……おっと』

スリンガー『それは機密情報だぜトリガー?』





クレイモアの姉御は影の女王とかヘルシングのインテグラをご想像して頂ければ……。
掘り下げになったのかなこれは……まあいいや楽しいし。←

槍部隊は次回へ持ち越しです。スピアくんにちょっとした悲劇が……。そして新造部隊の紹介も入ります。

作品への感想及び評価は執筆の栄養です!どうぞ、どうぞお願いします!それではまた今度!


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傭兵、確認だってよ。

雑誌の取材も終盤へ差し掛かります。そして新造部隊の名前も決定、さらにその部隊へ所属する戦術人形たちもやって来ます。
それではどーぞ。


 

 

 

 

209日目 晴

 

さて今日は俺が隊長を務める部隊、『槍部隊』への取材だな。

ご存知の通り、うちの部隊は何でも屋な所がある。護衛、強襲、偵察、潜入、支援と色々出来る部隊だ。しかも地域清掃やら子供の相手、時には派遣社員として働くなんてしている。お陰で民間からの覚えが良い。多分武器庫の中じゃ一番民間との繋がりが強い部隊だと思う。昨日近所のおばちゃんに飴玉貰ったよ、最近若い子も入ってきたんだし気張りなさいよってね。

嬉しい限りだ、パイクとパルチザン様々だな。アイツらに何か奢ってやろう。なんて思った。

 

今回の地域清掃なんだが実は警備も兼ねてる。丁度地域巡回の役が俺達槍部隊だったからだ。

だから箒とかポリ袋片手に銃を引っ提げて歩く野郎共という大変シュールな状況となっていた。でも案外その姿が人気なようで俺達がゴミを拾ってる最中でも子供とかミリタリー好きな人が寄ってきて、ゴミ拾いを手伝ってくれたり撮影をお願いされたり、邪険に扱われることは無かった。

あ、そうそう。うちの部隊にパルチザンって奴が居るだろ?アイツ何に影響されたのか改造されたミニガン担いでたんだよね。ぶっちゃけ過剰火力。でも子供達には大人気でパルチザンがミニガンを構える度に歓声が上がっていた。……まあイメージアップにはなってるのかな?

 

そんなパルチザンは置いておき、また清掃を続けていたら見知らぬ二人組に声を掛けられた。一人は目を閉じててこっちが見えてるのか分からん銀髪の女性ともう一人は目を開けててまだまともそうに見える女性だった。この二人、どうにもスピアに用があるようだったので後ろに居たスピアを呼ぼうとしたら…………もう既に100m位離れた所に居た。

 

スピア!?と俺が呼ぼうとするよりも早くさっきの二人が走り出してスピアを追いかける。彼女ら

 

「AN-94、追いかけるわよ。彼を何としても捕まえてティータイムと洒落こみましょ」

 

「了解、AK-12」

 

なんて言ってた。AK-12と呼ばれていたほうは目をかっぴらいていたがなんだったのだろうか……というか、あの二人戦術人形だったのか。

とりあえずスピアの幸運を祈り、また通常業務へ戻る。トライデントやランスは修羅場だ修羅場だと騒いでたので叱っておいた。

 

……近くの警備ドローンとか清掃用ロボットが急にスピアを追いかけ始めたのは気のせいだろう。うん。

 

 

最後に清掃と警備を終えて、休憩をしながら取材を受けた。取材を受けてる間にスピアに連絡を入れて、暫く記者と雑談していると、正に満身創痍なスピアが帰って来た。どうやら彼女たちから逃げおおせれたらしい。さっすが槍部隊副隊長!未だにドローンがお前の近く飛んでることは言わないでおこう!

 

……取材を再開しよう。まあ聞かれた事といえば俺のグリフィンとの繋がりだとか今の仕事に対しての楽しさとか……色々聞かれたよ。

 

流石に女性関係の事を聞かれた時は閉口した。ランスが余計な事を言おうとしたのでアームロックをかけて黙らせておいた。

だーれが女性をいとも容易く口説く男だこの野郎。それはスピアのことだろうが。

 

 

 

 

 

 

 

210日目 晴

 

社長宛にとある雑誌の見本誌が届けられた。俺とスリンガーはちょっと任務の話で社長と共に居たので見せてもらった。内容は長いので見出しでもここに記しておこう。

先ず表紙なんだが社長のキメ顔と共に『突撃!あなたの街のPMC!~PMC“武器庫”編~』という見出しが書かれてた。この雑誌発行してる会社って結構有名だったはずなんだがこんな変な見出しで売れるのだろうか……?まあいい次だ。武器庫の施設紹介や一般職員の紹介のページ、武器庫の日常風景の写真を読み進めた後に、『隊長達へのインタビュー』っていう見出しと共に各部隊の隊長副隊長の写真と共に文章がつらつらと記されていた。

スピアの写真だけ前にテレビで見た疲労困憊してそうな黄色い電気鼠みたいな顔してたけどこれは狙ってるのだろうか……。

ただ内容自体は何の問題も無く、社長はOKサインを出してそれで終わった。

 

ふと、社長の机にウェディングドレスを着た女性が表紙となっている雑誌があることに気がついた。何となくそれを手にとって眺めていると、社長とスリンガーが両隣からその雑誌を覗いてきた。

……どうやら顔見知りみたいなやつらしい。社長は正規軍時代、スリンガーは裏社会で活躍していた時代とそれぞれで名前……通り名だな、それを知っているようだ。『スイートキャンディ』だの『伝言屋』だの言ってたが俺にはよくわからなかった。社長曰く軍の清涼剤、スリンガー曰く優秀な運び屋とかなんとか。

 

今、この表紙の女性はR06地区の指揮官をやっているらしい。幸せそうに戦術人形たちと写る写真を見る限り、彼女は随分と幸せなのだろう。俺は少しだけ羨ましいと感じた……いやあの笑顔見たら誰でも思っちまうよ、“羨ましい”って。

 

社長やスリンガーに結婚に興味が出てきたか?なんて冗談半分で言われたが、俺は興味無いと言っておいた。好きな人も居ないのにどうやって結婚できようか……あーいや、代理人とかは無しの方向で……。

 

そういえば盾部隊の演劇がテレビ局に好評だったらしいからドラマ化が決定されたらしい。もちろん出演は盾部隊の皆様です。やったね、収入が増えるぞ!

 

 

 

 

 

211日目 曇時々雨

 

新造部隊の名前が正式に決まった。その名前というのが『鎚部隊』だ。この部隊は軍で言う工兵のようなことをやったり、基地の防衛設備の点検やガンスミスや整備士たちの補助をやるらしい。まるで設立当初の槍部隊みたいだな。俺達みたいに何でも屋の道を行かなければ良いのだが。

 

その鎚部隊のメンバー、前に言った通り戦術人形だ。始めからそういう専用の民間人形でも導入すればいいと思うが、社長曰く、万が一でも戦えるようにはするべきとのこと。妥当っちゃ妥当。

さてその戦術人形達だが、四人ぐらい来るらしい。リストを見てみれば、

・64式小銃

・M500

・LWMMG

・ウェルロッドMk-Ⅱ

と書かれていた。

 

これで楽が出来るのかといえばそれは嘘であり、暫くは俺達槍部隊や整備士、ガンスミスの奴らが面倒をみなきゃいけないらしい。技術のインストール?が必要なようだ。俺が彼女たちを世話するのは明日のことじゃあるが、頼むから普通の子であって欲しい限りだ。

 

ちなみに明日はパイクも俺と行動するらしい。変なことあったらパイクに擦り付けるか……。

 

 

 

 

 

 

 

212日目 晴

 

鎚部隊の隊員たちがやって来た。俺とパイクで彼女たちを出迎えたのだが、なんだか白いリボンが特徴的な女性『64式小銃』の様子がおかしい。パイクに熱視線を送っていた。

オッ、これは厄介事だな??とか思いながら彼女たちの案内を始めた。パイクが64式の距離感にタジタジとしている。一先ず俺は自分の隣を歩いていた金髪に小さな可愛らしいツインテールの少女、『ウェルロッドMk-Ⅱ』に彼女がああなった理由を聞いてみたがわからないとのこと。まあ当たり前だよな。

この後は『M500』が整備士たちと意気投合して何か画策しているのを阻止したり、『LWMMG』がガンスミスに色々講習を受けたりとして、時間を潰していった。

 

一通り案内を終えたら、彼女たちを第二号館、社宅へ向かわせて一日を終える。パイクは随分と疲れていたので食堂で飯を奢ってあげた。

 

それにしても、新たな新入り達は随分とクセが強そうだった……社長がどんなコードネームを与えるのか楽しみだ。

 

 

 

 

 




あとがき劇場 槍部隊


Q.何でも屋というのは本当ですか?

ジャベリン『本当だよ。下手したら子守りとか店番とかやらされるぞ』

スピア『商売敵には家政婦部隊なんて呼ばれてたかな?』

ジャベリン『強ち間違いじゃないから辛い』

スピア『楽しいんだけどね……』


Q.最近はグリフィンとの任務も多いそうですね?

スピア『お陰でね。ボロ儲けだよ』

ジャベリン『その代わり休みなんて無いに等しいけどな』

スピア『そうは言うけどジャベリン、君あと二週間は休めるだろ?本当に大変なのはパイクとパルチザンだ』

ジャベリン『あー……確か住み込みだったか?』

スピア『そうそう、グリフィン管理地区の辺境でE.L.I.D狩り。この前の私みたいだ』

ジャベリン『……お前口調どうにかならない?』

スピア『公私は分ける主義でね』


Q.お好きなものは?

スピ&ジャベ『『紅茶』』

(互いにハイタッチ)

スピア『でもロシアンティーが苦手になってきたかな?』

ジャベリン『なんで?』

スピア『察してくれ』

ジャベリン『あ…すまん』


Q.隊長副隊長共々女性関係で困ってるとのことですが…

ジャベリン『おい誰情報だ?』

スピア『ランスが逃げた!追うぞ!!』

ジャベリン『逃すな!!捕まえてゲロらせろ!』

スピア『了解!!』






210日目の雑誌について。このR06地区の指揮官というのは、笹の船様作『女性指揮官と戦術人形達のかしましおぺれーしょん』のシーラ=コリンズという女性です。
この作品、そのシーラさんと戦術人形たちのほのぼの、時々しんみりなお話を読めるのでどうぞ。


さて次回はジャベリンくん、トンプソンと再開します。はてさて何が起きるのか……。
この作品への感想及び評価は心のささえです。どうぞよろしくお願いします!それでは!



※ちょっと軽く社長と裏社会時代のスリンガーについて

社長(ジョン・マーカス)

元正規軍対E.L.I.D撃滅部隊隊長、コードネームは≪討伐者(スレイヤー)≫。WWⅢの終戦間近に退役して暫くの放浪の後、PMC『武器庫(armoury)』を設立した人物。正規軍との繋がりは未だにあるらしく、時折E.L.I.Dの討伐依頼を受注している。そのお陰なのか彼のコードネームは今も正規軍内で有名。彼の化け物さ加減は記述しきれないので本作の『傭兵、化け物と遭遇だってよ。』を読むことを推奨する。


情報の宝箱(インテリジェンス・トレジャリー)(スリンガー)

かつて裏社会に存在した工作員もといハッカー。裏社会の人間には呼び名が長いので『インティ』や絶対に人相が判明しなかったので『顔無し(ノーフェイス)』と呼ばれていた。
この人物の手に掛かればどの強固なセキュリティさえ突破されてデータを引き抜かれてしまう。仮に捕まえようと居場所を突き止めてもそこはもぬけの殻であったなどと、煙のような存在であった。そんな人物であったが数年前に突如としてどこかへ消え去った。その原因は謎に包まれている……だが最近になって名前を変えて活動を再開しただとか、武器庫へ入社しただのまことしやかに噂されている。


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番外編 傭兵と悪夢と

100000UA到達、お気に入り900件越え、感謝します。
まさかここまで行けるなんて思いもしませんでした。今後とも傭兵日記を、ジャベリンくんとポチをよろしくお願いいたします。

今回は番外編……?みたいなものです。トンプソン姉貴とは次回です。オチなし山ナシですがのんびりとどーぞ。


 

 

 

 

 

 

「はっ…はっ…はっ…」

 

 

全てが寝静まった真夜中、日本じゃ草木も眠る丑三つ時とも言うのだろうか、そんな時間帯に俺は目一杯両腕を振りながら路地裏を駆けていた。今の俺の走る姿なんて端から見れば随分と無様で、腰抜けで、滑稽な光景だっただろう。だけどそんな事を気にしていられるほど余裕は無かった。

 

俺は逃げている。ゴミ箱を倒し、壁にぶつかり、何度も転けながら俺は逃げている。もうどのくらい走っているのかわからない、この逃走がどれほど続くのか考えてはいられない。でも考えれば考えるだけその動かしている自らの足が止まりそうになってしまう。

「このまま止まれば楽になる」「いっそのこと諦めればこの苦しみから解放される」そんな甘い蠱惑的な言葉が脳内を支配していく。ふと足の回転が遅くなって行き、そこで立ち止まってしまいそうになった。

 

 

「クソがぁ……!!」

 

 

だけど俺は誰とはなしに悪態をついて歯を食い縛り、己の足をまた動かしていく。角を曲がり直線を走り暗い路地裏を駆け抜ける。息が荒くなろうと筋肉が悲鳴をあげようとバランスを崩して転けてしまおうと、泥水啜って拳を握りしめてまた走る。

まだ止まれない、止まりたくない。俺の背後から恐ろしいものが来てしまうから。走り続けないと捕まってしまう。もしも止まってしまえば、俺は……おれは……

 

 

 

 

 

 

あいつにころされる

 

 

 

 

 

 

「見つけましたよ、ジャベリン」

 

「あっ…」

 

突然、あの女が現れた。思わず俺は立ち止まってしまう。

 

 

「私から逃げるなんて、随分と悲しい事をしてくれますね……」

 

「あ、あぁぁ……」

 

 

俺は恐怖のあまりその場にへたりこんでしまった。情けない声が出てしまう、体が石のように固まってしまう。彼女が近付いてくるのに動けない。

いつの間にか彼女が俺へ馬乗りの状態へなっていた。

 

彼女の細く白い指が俺の左目へ伸びてきた。

 

 

「それに加えてこんないけないものをつけてしまって……これはお仕置きが必要ですね?」

 

「ひ……や、やめ……」

 

 

目の前の彼女は随分と愉しそうだった。

 

 

「こんなもの、抜いてあげましょう」

 

「ひっ……!!?!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぐちゃり。

めのまえがまっかにそまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーーーーーッ!!!!」

 

 

暗闇の中、俺はがばりと起き上がり、急いで左目を確認する。良かった、無くなってない。

 

 

「……あー…クソッタレ」

 

 

最悪な目覚めだ。また代理人に追いかけられる夢を見た。

 

俺は額を流れる嫌な汗を拭い、近くで寝ていたポチやオスカーを起こさないようにベッドから降りる。何時もならさっさと二度寝に入るのだが今日はどうにも眠れなさそうだった。あの悪夢が変に現実味を帯びていて、未だ脳内にこびりついている。もしもまた寝てしまったらその夢に縛られそうで怖かった。

無音に支配された室内、壁にかけてある時計を見てみると、針はまだ深夜としか言えない時間帯を指していた。俺はキッチンへ向かい冷蔵庫を開けて、中から水の入ったペットボトルを取り出す。コップに水を入れてそれを飲み、一息ついた。

 

 

「……トラウマってのは辛いな」

 

 

ふと、そう呟く。特に意味があって言ったわけでもないが、言うだけなら何も減るわけでもないから言った。気分が晴れる訳でもなく、いっそのことこのままシャワーでも浴びようかと思ったがそれはそれで気分が乗らない。

何とかあの悪夢への恐怖は治まったが完全に目が覚めてしまった。無理矢理にでも寝ないと明日に響くのだがどうにも駄目そうだ。洗面所の奥へしまっている睡眠薬でも飲もうかとも思ったが、あの薬は確か六年ぐらい前ものだ。効くのかどうか分かったものじゃなかった。

ただ朝までじっと待つというのも何となく嫌だ。さて、どうしよう。

 

 

「……散歩だな」

 

 

そうだ、散歩をしよう。幸い外は雨が降ってないように見える。気分転換に周辺を歩き回るのは最適と言えるだろう。

目的が決まればもう早い。俺はジーンズ生地のジャケットを羽織り、靴をスニーカーに履き替えて、ポチ達を起こさないよう静かに外へ出た。季節は初夏に入ったとはいえ風は冷たく、自分がジャケットを着てきた事に感謝をしながら、全てが静寂に包まれた住宅街へふらりと歩いていった。

 

真夜中の住宅街には街灯以外の明かりは無く、まるで人の気配がない。自分だけ誰もいない世界に置き去りにされてしまったのかと錯覚するほどだ。暫くブラブラと歩いていたら小さな公園を発見した。そこにはベンチとブランコ、滑り台があって、正にテンプレートな公園だ。

 

俺はその公園の街灯に照らされているベンチへ腰掛けて夜空を見上げる。軽く雲がかかっていたが、星が点々と見えた。

 

 

「……はぁ」

 

 

思わずため息をつく。それは星の美しさへの感嘆なのか、悪夢のせいで疲れていたから出てきたのか、それはわからない。俺は何だかもう少しだけ空を見上げていたかった。

 

 

「あら、ジャベリンじゃない」

 

「……416、どうしてここに居るんだ?」

 

 

ふと、久し振りに聞いた声が聞こえてきた。声のした方を向けば、ベレー帽を被り絹のような銀髪で涙のタトゥーを入れた女性、『HK416』がそこにいた。

彼女は俺の質問に「任務帰りよ」とだけ答えて俺の隣へ座る。任務帰りにしたって随分と遅いじゃないかなんて彼女へ意地の悪いことを聞いたが、

 

 

「何時もなら寝てるんだけど、今日はちょっと眠れないからそこら辺彷徨いていただけよ」

 

 

と返された。どうやら偶然彼女も寝ることが出来ずにいたらしい。…………そういえば人形はデータ整理の為にスリープ状態に確実になると聞いたのだが彼女の場合どうなるのだろうか……深くは考えないでおこう。

 

 

「そういえば、何で貴方こんなところで黄昏てたの?」

 

 

突然彼女がそんな事を聞いてくる。はて、どう答えたら良いものか……まあただ夢見が悪かっただけと伝えておこう。余計な心配をする必要はないさ。

 

 

「そう」

 

「……なんだよ」

 

 

416が半目で俺を見る。どうにも見透かされているような感覚に陥ってしまい、居心地が悪い。少しの間見つめられたが、彼女はため息をついて前を向いた。

 

 

「貴方は……そうね、他人を心配させたくない人間だったわね」

 

「よく分かってるじゃないか」

 

 

俺はそう皮肉げに返したが、彼女はどうにも快く思わなかったようで、肘で俺を突いてきた。

鈍い痛みが脇腹に走る。416へ抗議の目線を送るものの、彼女はそれを意に介していない。

地味に痛かったんだけどな。

 

 

「私だって、貴方のことが心配なのよ」

 

「えっ?」

 

「何?友人の体調を気にするのが可笑しいのかしら?」

 

「あ、いやそういうわけじゃないんだ……」

 

 

416が睨んでくる。

俺はあの何事にもストイックそうな416に友人扱いされている事にも驚いたが、それよりも俺が416にまで心配されている事に驚いている。俺はこれでも自己管理ぐらいはしっかりしている…………訳でもないか?あー、どうなんだこれは。というか今回の悪夢のせいで顔色悪くなってたかな。

 

俺がそうやって考え込み始めたところで、416が急に立ち上がった。帰るのか?と彼女へ聞けば「そうよ」と返される。

じゃあ俺も帰るかと腰を上げると、416が途中まで一緒に帰るかどうか聞いてきた。俺はそれを快諾して夜道を並んで歩いて行った。

 

未だ静寂に包まれている住宅街を歩いていく俺と416。特に話すこともなく歩いていたが、偶さかに416が呟いた。

 

 

「……たまには私を頼りなさいよ」

 

「……おう」

 

「貴方が倒れたら11や9が悲しむわ。だから本当にもしもの時は頼りなさい」

 

「分かったよ」

 

 

45は?という思考は記憶の片隅に。416の言った言葉を反芻させながら共に歩いていく。気がつけばもう俺の自宅があるマンションへ到着していた。

 

 

………………あれっ?

 

 

 

「あら?言い忘れてたかしら。私、といっても45も9も11も居るけどこのマンションに引っ越して来たのよ?」

 

「……は?」

 

 

思考が追い付かない。なんか最近G11が俺の家来る回数増えたなとかなんとか思ってたけど、そういうことだったの……?いや確かにこのマンション人が少ないから増えるのは嬉しいのだがお前達が来るのは予想外極まりないんだけど……えぇ?

 

呆然とする俺を尻目に416は手馴れた手つきでオートロックの暗証番号を入力して中へ入っていく。俺はそれに慌てて着いて行き、一緒にエレベーターへ乗った。俺は四階、416は六階のボタンを押していた。上の階の方でしたか……。

少ししてエレベーターが四階に到達。ドアが開き俺が出ようとしたら、416は、

 

 

「606号室、そこが私達の部屋よ。何かあったらそこに来なさい」

 

 

と言った。俺はそれに分かったとだけ言って彼女と別れた。

自分の部屋へ向かう途中、空が明るくなり始めていたことに気がつく。どうやら結構時間が潰せたようだ。意外と散歩というのも悪くなさそうだ。それに416と偶然会えたからな。面倒な事が増えそうな気もするが。

 

……また悪夢を見てしまった時は外に出てみるとしようか。

 

 

≪ご主人!!!何処行ってたんですか!!??!≫

 

 

あ、すまんポチ。

 

 

 

 

 

 





鉄血勢力圏のどこか。。。

「……良い夢を見ることができました」

「はぁ?代理人、お前何処かバグでも起きたのか?」

「そうかもしれませんね。夢想家、貴方には一生わからないでしょう」

「はっ!随分と気持ち悪いことを言うわねぇ?それで、その夢ってなんなのよ?」

「それは秘密、ですね」

「はぁ?訳がわからないわ」

「時には隠し事も必要ですので」

「あっそ。じゃあいいわ」

「……またいつか会いに行きますから、待っててください。ジャベリン」









オチなし山ナシだから……(?)
今回はジャベリンくん散歩をする回でした。彼の悪夢の描写とかしてなかったので書いた所存でございます。

さてここからは雑談。最近傭兵日記とは直接関係ないネタがポロポロと出てきてるんですよね。ダイナゲート視点のハイエンドモデル達の日常とかスピアくん視点の傭兵日記とか。でも同時進行となると昔それで失敗したからなかなか出来ない。
次に404小隊が引っ越した部屋、あれは忌み数字からやってます。存在しない部隊→無→6という感じですね。

この作品への感想及び評価は執筆の栄養分です。どうぞよろしくお願いいたします!それでは!


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傭兵、テスターだってよ。

トンプソン出ません(土下座)
次回出るから!次回でるからさ!!








213日目 晴

 

何故か今日はポチと俺とG11でホラー映画を見ることになった。映画の内容はよくあるパニックホラー……ゾンビだなゾンビ。社宅の娯楽施設にあったやつをG11が適当に見繕ってきたらしい。

あらすじはとある青年の集団が立ち入り禁止の廃炭鉱を探検。そこの廃炭鉱にはゾンビになってしまうウイルスがあって、集団の1人が感染、そこからパンデミックが起きるってお話。

何のこともない、よくある導入だ。俺がボーッと見てたら隣のポチが黒い影が動いた場面で馬鹿みたいに驚いていた。随分と怖がってるなとポチへ言ったら映画に釘付けになっているのか聞こえてないようで、ことある事にビビってメトロノームのような状態になっていた。

 

ぶっちゃけこの状況を見るのは面白い。ゾンビ映画なんてそっちのけで生まれたての小鹿のように震えるポチを観察していた。マジで可愛い。お前は他人を癒す天才か?

ポチが可愛すぎてニヤつく俺を見たG11が少し引いていたがこれは所謂コラテラル・ダメージというものだ。傷付いてる訳じゃないからな?

 

 

 

 

 

 

 

214日目 晴

 

クソ!!整備士どもとM500の悪巧みを防げなかった!!!あいつらとんでもねぇ銃作りやがったぞ!!!

レールガンだぞレールガン!!!単発元込め式だが個人で携行できる大きさにしてやがった。しかもその貫通力が馬鹿げてて鉄板なら300mm、分厚いコンクリートもパスパスと抜く。反動も無くて軽い。少し嵩張るが気にならないレベルだ。弾は小さく多く持ち運べる。その上弾も種類があって、徹甲弾、榴弾とある。まあ通常弾で的が爆散するから持つ意味はないと思うけどな。後コストがかかり過ぎてるのがネックだ。プロトタイプだから各々好きなように機能着けてるんだろうけど。心音センサーとか着いてる。え、これ人間に撃つんですか……?

 

……なんでこんなに詳しく書けるのか?俺がテスターだったからだよ畜生。朝いきなり拉致されてやらされたんだ。パイクにやらせろと言ったらM500が「パイクなら64式に拉致られてたよ」って……それはお疲れ様です……パイク、強く生きてくれ。

 

 

 

 

 

 

 

215日目 晴後雨

 

クルーガー社長から突然の御呼び出しをくらったので急遽本社へ急行した。武器庫からの帰り際に整備士にレールガン押し付けられた。オメー俺が仕事多いからって実戦のデータも取らせようとしてるな。ちなみに拒否権は無かった。

 

G11とポチを自宅のマンションで降ろした後に本社へ向かう。

余り変な任務じゃなきゃいいんだが。

 

 

 

 

 

 

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「久し振りだな、ジャベリン君」

 

「どうも、クルーガー社長」

 

 

久しぶりに来た気がするグリフィン本社、そして社長室。道中は特に痛い視線を向けられる事もなく行く事が出来た。

今日の目的といえば、まあ仕事のお話だ。この前みたいな敵地への潜入をするようなことじゃ無くて欲しいものだが……こういう時ってのは“ところがぎっちょん”何ていう事が起きそうだから怖い。

 

で、目の前のクルーガー社長は相変わらず余裕のある表情で、話を始める。

 

 

「今日の任務は調査任務だ」

 

「フラグですか?」

 

「フラグ……?どういう意味かはわからないが、この前みたいにハイエンドモデルと遭遇するような所でやるわけではないぞ」

 

 

やったぜ、もうこの任務終わったわ。さっさと酒の準備でもしよう。

 

なんて考えていたが彼の次の言葉で俺はその考えを殴り捨てた。

 

 

「クライアントは正規軍だ」

 

「拒否権は?」

 

「そんなものない、というよりマーカスが君にやらせろとこの依頼を斡旋してきたんだ」

 

「あの野郎……そういうのは剣部隊にやらせろよ」

 

 

確かあいつらも正規軍絡みで何処かに言ってたはずなんだがそのついでじゃ駄目なのだろうか……?

 

 

「いや、そちらの部隊が向かった先とはまた別の所でな」

 

「勘弁してくださいよ……」

 

 

社長への愚痴が爆発しそう。

とはいえ、俺が愚痴を言ったところで上司の命令には逆らえないもので、早々に諦めることにした。というか俺だけにこうやって仕事の依頼が来たってことは勿論グリフィンから誰か来るのだろう。ねぇ、クルーガー社長?

 

 

「まあな。君とバディを組むのはトンプソンだ、確か親しい間柄ではあっただろ?」

 

「トンプソンと…いやまあ彼女とは親しいですが、何故?」

 

 

ふむ……と考える姿勢になったクルーガー社長。

にしてもトンプソンか……彼女とは時折連絡を取ってたりはしたがまた任務で一緒になるのは一年ぶり……なのかな?長らく会えてない彼女だが、確か今はもうダミーを5体扱えるようになっていた筈だ。恐らく今回の任務では十分過ぎるほどに頼れる相棒となるだろう。

 

言いたいことが纏まったのかクルーガー社長が口を開いた。

 

 

「実のところ、あの半年前の任務結果が正規軍側に何故か評価されてな。君達がまた指名されていたらしい。マーカスもそれを見越しての斡旋だったようだ」

 

「それ先に言ってくれません?」

 

 

というか待てそれもう絶対E.L.I.D関係の奴だろ!!評価されるのは嬉しいがそれとこれとは別だぞ!?

 

 

「詳細は追って伝える。ジャベリン君、それまでに準備をしておけ」

 

「……copy」

 

 

ファッキン正規軍、貴様ら絶対許さんからな。

 

 

 

 

 

 




そろそろハイエンドと戦わせたい欲あります。でもまだ我慢。だってトンプソンネキとの絡みとかゴーストくんの濡れ衣ありますし……。

さてジャベリンくんに新たな武器が追加されました。このレールガン、BF4のレールガンを想像して頂ければと……。

ここから雑談。
ジャベリンくんって結局誰と結ばれるのか。俺は知らん()
多分このままのペースで行くと百話越えそうな気がしますね。そしてまた仄かに出てきたコラボ欲。上手く書けるのかはさておきって感じですね、ええ。

感想及び評価は心の栄養です。どうぞよろしくバンバンくださいな。それでは!


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傭兵、合流だってよ。

ちょっと今日は少なめ。ジャベリンくんはトンプソンと任務へ向かいます。それではどーぞ。







216日目 曇

 

任務前恒例の武器選択だ。今回は中国とロシアの国境付近のE.L.I.Dが跋扈する汚染区域での調査である。どうにもその付近でE.L.I.Dが増加傾向にあるので、その原因調査をしろという訳だ。

さて、スリンガーにちょっとだけその汚染区域の事を調べて貰ったのだが、どうにもE.L.I.Dのコロニーが形成されているらしく、正規軍の調査部隊が何度もそこで行方不明になっている場所のようだ。初めからさっさとぶち壊せばいいのにな、まあ何かあるから壊さないのだろうがね。どちらにせよ俺はただ“調査”をするだけなので関係ないだろう。ただ念には念を入れておいたほうが良さそうだ。ポチでも連れていこうかな?

 

よし、任務で持っていくのはAA-12とSCAR-H CQCだな。こういう調査任務であるからこそ使い慣れたものを使用した方が良いのだろう。……後整備士達に頼まれたのであのレールガンも持っていくことにする。弾薬は……まあ適当に全部持っていってしまえ。

 

 

 

 

 

 

 

217日目 晴

 

移動は武器庫の輸送ヘリ……まあ知ってる奴は知っているであろうオスプレイなるものに乗って行くらしい。格好いいよなこの機体、高速で移動出来る上に垂直着陸も出来る優れものだ。

それにしても、何でオスプレイがここにあるんだろうな?

俺の記憶が正しければこんなもの無かったような気がするんだが……整備士たちが作ったなこりゃあ。この前大量のパーツが武器庫に来てたしな。うちの整備士どもはなんで整備のみならずこうやってモノを作ったりしてるのやら……ガンスミスを見習え、アイツら銃の整備一筋だぞ。

 

ま、どうせアイツらの事だ、あのオスプレイに変な改造を施してるんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガンシップにもなれるってマジ?しかも航続距離10000kmとか可笑しいだろ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

218日目 晴

 

トンプソンと合流。彼女は昔から変わっておらず、相変わらず陽気で頼り甲斐があった。その上ダミー達も増えてより一層頼もしさに磨きが掛かってる。

で、ダミー達もなかなか癖の強い奴らで十人十色だ。……五等分のトンプソン。

 

最近は彼女、本部で暇してたらしく、今回の任務は随分と気合いが入っていた。そして俺の持っているレールガンに興味津々なようで、彼女、あとダミー達にも撃たせてみた。

 

皆反動で吹っ飛ばされたけどな。……何で俺だけ反動感じなかったんだ?

 

 

 

 

 

 

 

219日目 曇

 

オスプレイで国境付近まで飛んでいる。ポチ(結局連れてきた。こいつの武装は何時ものマシンガンだ)と俺以外の乗員はトンプソンなので中々姦しい。皆が皆色々会話してる。ポチ、お前も混ざってこい、無理か、そうか。

因みにオスプレイの操縦士は整備士たちだ。こいつら自分で作ったコレを動かしたかったらしい。このオスプレイは確か装甲が施されており、50口径ぐらいは耐え、しかも反撃用に遠隔操作出来るガンランチャーやミサイルがある。強い。多分安心かな?うん。

 

まだ目的地へ到着するのは時間が掛かりそうだ。もう暫くこの騒がしさを楽しもう。

 

お、ポチがトンプソンダミー達に揉みくちゃにされてるぞ、写真撮っとこ。

 

 

 

 

 

220日目 雨

 

目的地に到着したので早速……という事にはならず、雨の為オスプレイの中で雨がやむのを待つ。ここは汚染区域だ、トンプソンたちはともかく俺が少し不安なのだ。一応ポチとトンプソンのダミーに頼んで周辺の探索を頼んでいるが、あまり目ぼしいものはないようだ。

 

E.L.I.Dのコロニーはここから南西に5km離れたところにある。さっさとそこへ行けばよいのだが、俺たちの仕事は飽くまで調査なのだ。死に急ぐ理由もない。

それにしても雨はやむ気配がない。これは1日中オスプレイの中だな。

 

ちょっと整備士たちと暇潰ししてくるとしよう。

確かアイツらはトランプを持っていたはずだ。

 

 






整備士's「やっぱあのレールガン、ジャベリンの身体にフィットさせ過ぎたな」




何かやっと日記らしい日記が書けたような気がするサマシュです()
整備士が作ったオスプレイ、今回の任務で活躍しますからお楽しみに。
さーてトンプソンとのやりとりもちゃんと書かないとなぁ……今のところはトンプソンとの雑談とか色々予定しています。

作品への感想及び評価は心の支えです。どうぞ遠慮なさらずバンバンください!それではまた今度!


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傭兵、観察中だってよ。

ジャベリンくんの持つレールガンについて。

≪グングニル≫

武器庫の整備士達とM500がジャベリンの身体に合わせて作ったレールガン。威力はとてつもなく、弾の当たった的が爆散したり、厚いコンクリートも易々と貫く。弾薬は通常弾、徹甲弾、榴弾とある。
ジャベリンの身体に合わせて作り出したものだからなのか、反動が彼の身体を伝って逃げるという謎の現象が起こっている。もしも他の者が使ってしまえば、その反動は計り知れないだろう。
なお完全オーダーメイドなので製造コストが非常に高い。



魔改造されたオスプレイ

≪グリフォン≫
重装甲化、燃料タンク増設、ペイロード追加、エンジンを大型化させて燃料効率を上昇させてその上航続距離10000kmというオスプレイの皮を被った何か。
流石にランニングコストやら何やらが高すぎるので後々元に戻す予定らしい。



221日目 曇

 

ここいらのE.L.I.Dはどうにも特殊だ。習性で言えば蟻に近い。

外見は人の身体から6本の脚が生えて頭には複眼があるという何とも気持ち悪い見た目で、人間の腕に当たるところにノコギリのようなギザギザがあり、多分あれでモノを掴んだりするのだろう。正直アレが動く姿を直視するのはキツいと思う。

コイツらは基本的に一定のルートを通っており、その周辺をちょっとだけ探索して餌になるものやコロニーを補強するために使う瓦礫等を見つけていた。

そしてこのE.L.I.D、自律人形を食う。不幸にも捕まって解体でもされたのだろう、バラバラになったリッパーやヴェスピド、ジャガーが運ばれていた。一応トンプソンに此処等にグリフィンから戦術人形は派遣されてないのか聞いてみたが、幸いにも俺達以外は派遣されていないらしい。

 

もう少しこのE.L.I.Dの観察を続けよう。

 

 

 

 

 

 

 

222日目 曇時々晴

 

観察中のE.L.I.Dにはどうやら警備役の役割を持った奴も居るようだ。性格は獰猛、羽を持ち鋭い顎があり、運搬役のE.L.I.Dよりも一回り大きい。そんなのに襲われたらひとたまりもない。

実際襲われた俺が言うんだ、間違いない。ライフル弾が効いて無かったら今頃肉団子だった。

あとこの兵隊蟻(仮称)は通常の運搬役よりも複眼が大きく、そこを狙えば簡単に無力化が可能だ。トンプソン達でも対処できたので、たとえ一人で戦う時でも大丈夫だろう。

 

E.L.I.Dのコロニーが近付いてきている。ここまで来るとコロニーがくっきりと見えてくるが、何というか、映像で見たことあるぞ、確かシロアリの巣だったかな?それに近かった。所々に瓦礫が見えてるし、ガラクタの城とでも形容できるな。

 

丁度雨風を避けることが出来そうな建物を見つけた為、そこを一時的な拠点とすることにした。俺が設営している間にポチとトンプソンのダミー達に建物の中に使えそうなものがないか探索してもらう。

途中、トンプソンがチョコのついたプレッツェルを食べ始めたので俺も貰う。

因みにこの時彼女がプレッツェルを食べている姿を見て少し違和感をもっていた。というのも、俺としてはトンプソンは見た目も相まって葉巻を吸っているイメージがあったからな。

何となく彼女に煙草を勧めてみると、あっさりと断られた。どうにも煙たいのが苦手らしい。

 

……あまり彼女の前で煙草は吸わない方が良さようだ。

 

 

 

 

 

 

 

223日目 晴

 

不味いことになった。俺達が居る建物にE.L.I.D達が集まっている。理由は分からんがとりあえずヤバい。今は整備士達に連絡した上で逃走の準備を終えて動く所だが外には大量のE.L.I.D……少しレールガン使ってみることにした。

使用する弾薬は榴弾、何かに当たれば爆発するらしい。さあ撃つぞ。

 

…………半径50mぐらいの範囲に居たE.L.I.Dが消し飛んだ。整備士達本当に何てもの作ってやがる。

だがこれで好都合だ。丁度オスプレイも飛んできていた。このオスプレイも凄いもので、チェーンガンやロケットでE.L.I.Dを蹴散らしていた。

暫くして掃討を終えたのか、オスプレイが着陸した。

 

一旦体勢を立て直す。早く乗ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

223にちめ つづき

 

クソクソクソクソクソ!!!!!なんでおれだけこんなことになるんだ!!!!!

えりっどにおいかけられてしまっ

 

 

 

 

 

 

 








奴に気を付けろ、奴は何時もこっちを見ている。あの大きな城のようなものの中で、誰かを見ている。ほら、お前も見られてるぞ、お前がほしくてほしくてたまらないんだ、だから、たのむから、





おれからはなれてくれ





________正規軍兵士の死体の傍らにあった手帳より抜粋


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傭兵、視線を感じたってよ。

強大な力には強大な暴力が有効だ。そうだろう、ジャベリン?

____剣部隊隊長語録より














224日目 曇

 

最高に気分が悪い。常に頭を揺らされているような気持ち悪さだ。

俺が何をした、何をしたってんだ。何が悲しくてあの蟻共に追い掛けられなきゃならん。本当に最悪だ、トンプソン達やポチともはぐれてしまった。オスプレイに乗り込もうとした瞬間に突然現れたあのE.L.I.Dの大群に襲われたんだ。お陰で俺だけ彼女達と分断されて死に物狂いで逃げる羽目になっちまった。

想像してほしい、あの人間の身体に複眼と六本の脚がついている化け物が大群で追いかけてくる場面を。パニックホラーだ。何とか逃げ切れたのは良かったんだが完全に迷子になってしまった。通信機や弾薬の半分はロスト、場所も分からずただ歩き回るしかないような状態。仲間の安否も確認できないし、これから襲われないように常に気を張っておかなければならなくなっちまった。

 

あぁ最悪だ。昔に戻ってしまった気分だクソッタレ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

225日目 雨

 

電子手帳を持ってきていた事を思い出したのでこいつを使うことにする。紙だと書くのに時間が掛かるんだ。

こいつは結構便利なもので、俺の視線を感知して入力が出来るのは便利だろう。

 

どうやら俺が今居るところはあの蟻E.L.I.Dのコロニーの近くであるらしい。蟻の数が多く、しかも死臭がしていた。……人間の死体があったんだ。装備から見て正規軍の奴らのようだ。近くに手帳が落ちていた為、蟻が居なくなった事を見計らって回収、そして中身を確認した。

 

手帳には以下のことが書かれていた。

 

 

N月=日 晴

 

アントマンどもに追い詰められてしまった。アイツらはどうにも知能があるらしい。俺達が逃げる道を羽持ちに予測させてそこから数にモノを言わせて回り込んでくるんだ。俺達はまんまとそれに嵌められて場所もわからない建物の中に居る。

もう限界だ、マカロフはアイツらにバラされちまったしショーンは気が触れて脳天をぶち抜いてしまった。今まともなのは俺とステファンとリュドーだけだ。弾も無いし通信機もぶっ壊れちまって使えねぇ。

 

あぁ、アイツらがバリケードを破ってくる。もうおしまいだ。やめてくれ、おれをみるな、とめろ、あのめをかくしてくれ。たぶんあれはがらくたのしろのなかにあるんだ、たのむだれか

 

 

 

ここから先は血で汚れて読めなかった。一先ずは危険なものがあのコロニーの中にあるようだ。……クソッタレ、もし今逃げることが出来る状況なら今すぐにでも逃げたいがそれは無理だ。

 

 

 

俺も視線を感じてる。俺がやるしかないのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

226日目 晴

俺は決して気が狂った訳ではない、訳ではないんだが……端から見れば狂人だろう。

 

蟻共……アントマンだな、そいつらのコロニーに侵入した。内部は赤土のようなもので出来ており、何故か微妙に明るい。そして蟻の巣だからなのか、やはり色々な部屋に分かれており、それぞれ卵や蛹があるようだ。

一応色々覗いてみたのだが、あまり直視出来るものじゃ無かった。奴ら、人間や人形に卵を産みつけてやがる。

可哀想だとか、そういう感情もあるが、コイツらを繁殖させないためにも卵は潰しておいた。本当に時間が掛かっちまったよ。

 

あぁクソ、またアントマンが来やがった。また隠れるとしよう。

 

あの視線をまだ感じる。そしてその上少女の叫び声も…………少女の叫び声?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

227日目 わからない

 

戦術人形を保護した。カウボーイハットに金髪の少女だ。確かコルトSAAだったか?D08でも同じようなのと出会ったことがある。

彼女は重度のパニック状態だった。服装がボロボロでその……股がな。想像に難くない。E.L.I.Dは時折生きた人間を生殖目的で襲う奴もいるらしい。それは戦術人形だろうと対象になる。彼女は運悪くこうなってしまったようだ。しかも何度もやられてる可能性がある。

取り敢えず彼女を落ち着かせておいた。抱き締めてやったり撫でてやったり。まさかここで子守りの任務のときの経験が役立つとは思わなかった。彼女はちゃんと落ち着いたのかそのままスリープ状態へ。

移動しようと思ったら彼女が服の裾を掴んでいた。

 

 

……危険だが彼女を連れていこう。守ってやらなければ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

228日目 わからない

 

巣の奥へ行くに連れて兵隊蟻の数も増えてきた。そしてコイツら、どうにも騒がしくなっている。何かがここを攻撃し始めたのだろう。これは好都合だった。SAAを背負い、俺はさらに奥へ向かう。視線は強くなるばかりで頭がおかしくなりそうだが何とか耐える。終わらせてやる、レールガンに弾を込めながら俺は決意した。

背中のSAAはこれでもかと俺にしがみついていた。絶対離すなよ、離してくれたらお前を守れるかわからない。

 

あぁ最早間近で見られているような気分だ。どうやら親玉が近いらしい、恐ろしいものだ全く。

 

ただ、どうにも意識が遠退いていく。何故だ、わからない……起きろよ、俺……絶対におき

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

229日目 晴

 

覚悟決めたのに気絶してしまうとかカッコ悪いな俺????

結局たまたまやって来た剣部隊に助けられたんだけど……ええ……頑張り損じゃねーかクソッタレ。











弱き者を守るとき、一番守るべきは己の身体である。

____盾部隊標語集より






トラウマ持ちSAAちゃんが追加されました。もともと予定には無かったんだけどなぁ……まあえっか!!
というか結局助けられましたジャベリンくん。こういうところで悪運が強いのよ彼は。
次回、トンプソンと飲みます。

作品への感想及び評価は心の栄養です。どうぞ、よろしくお願いいたします!それではまた今度!!


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傭兵、擦り付けだってよ。

110000UAありがとうございます。いつ頃終わるかもわからない傭兵日記ですが、どうぞ、よろしくお願いします。

今回はトンプソン目線です。どーぞ。







今日はジャベリンの生還祝いだ、思いっきり飲むとしよう。


 

 

 

 

229日目 続き

 

まあ、俺は助かった。剣部隊の隊長、クレイモアが気絶して倒れている俺と傍らで呆然としているSAAを見つけて保護したらしい。クレイモアが愚痴ってたよ、子供の守りは苦手だとかなんとか。そーやって子守りが苦手とか言ってるから好い人がみつ

 

 

 

 

 

 

失礼、アクシデントが起きた。

迂闊に変なことが書けない。

話を戻すが、アントマンのコロニーは剣部隊が破壊した。その上でアントマンの親玉を生け捕りにして正規軍の研究機関に売り渡したらしい。ちゃっかりしてんなぁ……。

それで、俺の任務なんだが、書類上としては成功扱いである。何故なのかっていったらアントマンの生態やら何やらが詳しく判明したからだ。ちゃんと定期的にやってて良かったぜ。

 

最後に保護したコルトSAAについて。彼女はPTSDにかかっていた。ペルシカに相談を持ちかけたが、彼女曰くトラウマが電脳への負荷が大きすぎる為、無理に記憶の消去をしてしまうと一気に廃人のようになるとのこと。なのでゆっくりそのトラウマを無くしていかなければならないらしい。その上周囲の人間や人形に対して極度に怯えている。幸いとして俺だけ平気であるものの、彼女をうちに連れていくとなったらその……うちに来る奴らが厄介なのばかりだからなぁ……。他に預けたい。

 

 

それにしても、何で俺は気絶してしまったのかわからない。今も隣でくっついているSAAに聞いたってただただ謝るばかりだった。……この子に絞め落とされたかな?

まあいい。今日はトンプソンと生還祝いで飲むんだ。嫌なことなんて忘れちまえばいいのさ。ポチはちょっと自宅で休ませておこう。アイツも疲れている筈だからな。

 

 

 

 

 

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「乾杯」

 

 

カチンと、小気味良い音が響いた。雰囲気の良いBAR……といっても何時もの草臥れたマスターが居る喫茶店だけれども、そこで(トンプソン)とジャベリンは飲んでいた。隣の彼はウィスキーのロックを一気に飲み干した後、疲れを吐き出すようなため息を吐いて椅子に身体を預けていた。

 

 

「本当、酷い目にあっちまったよ」

 

「だな、でもジャベリンが生きてて良かったぜ」

 

 

確かに、儲けもんだな。と彼は笑いながらマスターにお代わりを頼んでいた。私は何となく酒の入ったグラスを眺めてジャベリンとはぐれてしまった時を思い出す。

 

あの時の私は随分と取り乱していた。ダミー達が必死になって私を止める中、それを振り切ってまででもE.L.I.Dに追いかけられている彼を助けようとしたのだ。正しい行為といえばそうでもないが、まあやっぱり彼の事を大切に思っていたのだろう。

あの五日間はどうにも不安だった。もしも武器庫の剣部隊が来なかったら私一人ででも行ってたのだろう。あぁ、でもポチもついて来てくれたかな?

 

 

「……柄じゃないな」

 

 

そう呟いて、その思考を掻き消すようにグラスの酒を飲み干した。喉を焼くようなそれは、少しの酩酊感と芳醇な香りを与えてくれる。

 

……それにしても、

 

 

「今日何だか騒がしくないか?」

 

 

それを聞いた目の前のマスターが首肯した。

今日のBARは騒がしい。私が回りを見渡してみたら、見慣れた顔がちらほらと。

 

 

「やはりだなヘリアン、こういう時こそ積極的に行くべきだろう」

 

「むぅ、確かに貴様の言葉も一理あるが……それで成功はしたのか?」

 

「うっ……そ、それはだな……」

 

 

テーブル席にはヘリアンさんとクレイモアさん。あの二人仲が良かったんだな……二人の側にはビールの入った大きなジョッキに、いかにも塩分が多そうな合成食品のおつまみがあった。女子会にしては随分と親父臭いような……。

 

 

「むっ、不届きものの気配がしたぞ!」

 

 

よし、黙っておこう。

彼女たちのテーブルのもう一つ隣ではちょっとした修羅場が起きていた。

 

 

「……なぁスプリングさん」

 

「はい、何ですかスピア?」

 

「目の前の二人が怖いから離れてくれないか?」

 

「……ふふっ」

 

「……AK-12」

 

「耐えなさいAN-94。ここで騒ぎを起こすべきではないわ」

 

 

私の同僚のスプリングフィールドが同じく戦術人形であろう二人に対して、ジャベリンの同僚スピアにこれでもかと腕を絡ませて妖艶な笑みを浮かべていた。スプリング、アンタそんなキャラクターだったか?

触らぬ神に祟りなしだな、余り気にしないでおこう。

 

 

「ふぎゅぅ……」

 

 

おっと、そういえばStGの奴が居た。コイツ相変わらず飲んでは潰れを繰り返している。確か私達がこのBARに来た時から飲んでたな。最近仕事で忙殺でもされ続けたのだろうか……どちらにせよ後で労っておこう。

 

 

「……ふぅー」

 

「なんだ、もう酔ったのかジャベリン?」

 

「いいや?まだ飲めるさ……でも前みたいにお前に頼るのも申し訳なくてな」

 

そう言って笑うジャベリン。

別に頼ってもいいんだけどな、と声には出さないが口の中で呟いた。というかこれはジャベリンの生還祝いな訳だし彼が甘えて来たって私は平気なんだけどな……。

 

 

「なぁジャベリン」

 

「んー?」

 

「隣のSAA、どうするんだ?」

 

「あー……」

 

 

私は唐突にそんな事を聞いてみる。彼はちょっと困った風に隣へ視線を落とした。彼の隣では、ちょこんと黙りこくってコーラを飲んでいる『コルト SAA』が居る。

普通、この戦術人形というのは本来であれば元気で活発な少女だ。だがこの子はE.L.I.Dに襲われたせいで大きなトラウマを持ってしまった為に、とても静かである。しかもとても臆病になっているようで、私がこの子を撫でようと手を伸ばしたら直ぐにジャベリンの後ろに隠れられた。

私は子供に好かれやすいって自信はあったのだが、この子は一筋縄で行けるようなものではないのだろう。

 

ふと彼女と視線が交わったが、すぐに反らされた。こうもあからさまだとやっぱり傷付く。

 

その様子を見ていたのか、ジャベリンが彼女を撫でながら言い聞かせるように言う。

 

 

「はぁ……SAA、余りそんな怯えてやるなよ。トンプソンは安全だぞ?」

 

「……ほんと?」

 

「ほんとほんと。お前のキライキライなものぜーんぶ守ってくれるぞ?」

 

 

…………ん?ジャベリン、なんでそんな顔を……あっ!!

 

 

「ジャベッ!!」

 

「静かに、SAAはまだ大声は苦手なんだぞ?」

 

「ぐぅッ……!!」

 

 

いや確かに子供の相手は得意だけどさ!いきなりそれを押し付けられるなんて聞いちゃあいないぞ!?してやったりな顔をしやがって!!

 

私がそう歯噛みしていると、いつの間に近付いてきたのか、SAAが私に恐る恐る手を伸ばして来ていた。私はそれを拒む理由もなく、ちょっと笑って彼女の手をとる。彼女はそれに驚いたものの、そのまま私の手を大切に扱うように何度も握り、そしてこちらを向いてえへりと笑った。

 

 

「よろしくね、トンプソン」

 

「ヴッッッ!!!?」

 

「……トンプソン、どうした?」

 

「いや、大丈夫だ」

 

 

母性に目覚めそうだった。危ない危ない……本来は元気な子がしおらしくなってぎこちなく笑う姿……ギャップってやつだな。破壊力が凄い。なんでジャベリンは平気なんだ……。

 

私が考え込んでいたらくつくつとジャベリンが笑い、私の肩に手を置いた。

 

 

「交渉成立だな?」

 

「……あぁもう、後で何か買ってくれよ?」

 

「勿論。じゃあちょっと外の空気吸ってくる、SAAの面倒頼んだぞ」

 

「おう。SAA、私の隣座るか?」

 

「うん」

 

 

BARの外へ行くジャベリンを横目に、隣に座ったSAAとまた飲み始める。SAAはやはりコーラを頼み、私はマスターがちょうど手に持っていた梅酒なるものを貰った。香り高いそれは、甘酸っぱく何だか落ち着くような味だった。隣のSAAはちびちびとコーラを飲んで可愛らしい。

 

何となく彼女の頭を撫でながら、私は酒を飲み続けていった。

 

ジャベリンもとんでもないものを押し付けて来たものだ、今回ばかりは仕方ないが……うん、SAAの可愛さに免じて一応は許しておこう。

 

 

「な、SAA?」

 

「?」

 

 

あ、かわ……可愛い……。









BARの外にて。。。。


ジャベ「……ふう」

スピア「なあ」

ジャベ「なんだよスピア。修羅場ってなかったのか?」

スピア「あの三人には悪いが睡眠薬を飲ませた。暫く起きないよ」

ジャベ「えぇ……」

スピア「それよりもだ、君、あの少女はトンプソンに預けるのかい?」

ジャベ「まぁな。アイツなら何とかしてくれるよ」

スピア「随分と信頼してるねぇ……?」

ジャベ「アイツとも古い付き合いだしな。あと、俺のマンション結構ヤバい奴ら多いだろ?」

スピア「あー……そうだったね」

ジャベ「だからさ、まあ悪影響もあるだろうしトンプソンのところが最適なのさ」

スピア「成る程ね……あ、ジャベリン、私も君のマンションに引っ越すから」

ジャベ「は?」

スピア「流石にあの二人の相手は大変なのさ……なあに、上手くやってやる」

ジャベ「いやそれフラ…」

スピア「それ以上いけない」






次回、何も考えてねぇなぁ……侵入者戦をしようか他をしようか……まあ土日までに更新出来ればいいというスタンスで行きます。

作品への感想及び評価は執筆の栄養です。どうぞ、よろしくお願いいたします!!それでは!


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番外編 武器庫のとある1日

ちょっと本編で執筆が詰まったので手慰み程度に番外編をば。それではどーぞ。


番外編1 クレイモア隊長の目覚め

 

 

「貴様らァ!!!!!また目標を逃すとは何事だァ!!!!!」

 

「「「すみませんでした隊長!!」」」

 

「もし次も逃したときは貴様らの尻穴を更に増やすから覚悟しておけェ!!!!会社内部一時間全力で走り続けろォ!!!!」

 

「「「イエッサー!!!!」」」

 

ある日の剣部隊。いつもの如く隊長の『クレイモア』と隊員達が演習場で訓練を行っていた。隊員達は何度も失敗していたようで、彼女からとんでもない事を言い渡されていた。そんな彼女を見守る男が二人。

 

 

「相変わらず隊長は容赦ないよなぁ……」

 

「社長が俺ら絞ってた時よりまだマシさね。ウッ」

 

「おいツヴァイ自分で傷口を広げんなよ」

 

 

彼女を見ていたのは剣部隊副隊長『ツヴァイヘンダー』と同じく剣部隊の『ムラマサ』だ。ツヴァイは昔の事を思い出したのか頭を抱え、ムラマサはそんな彼を心配している。

 

 

「すまんね……まあクレイモアが丸くなったのは事実だよ。この前も面白いものを見かけてな」

 

「面白いもの?」

 

「あぁ、これを見てくれ」

 

ツヴァイが懐から一つの薄い本を渡してくる。ムラマサはその中身を見て驚愕した。

 

 

「おい……これって」

 

「お前の故郷じゃ衆道なんていうやつだよ」

 

「あの筋肉メスゴリラがこんな綺麗な絵を……」

 

 

その本の中身はというと、俗にいうBLというものであった。ムラマサはその絵柄を見て感動して、ツヴァイはなんだか感慨深いという顔をしていた。

 

 

「あのクレイモアがな……戦いにしか目が向かなかったアイツがこういうのに興味を持ってくれて嬉しいよ」

 

「そうかぁ?まあ人間らしいっちゃ人げ…………ツヴァイ、後ろ」

 

「ん?あっ」

 

 

二人がちょっとだけ談義をしていたらツヴァイの背後にてとてつもないオーラを出している女性、クレイモアが立っていた。それもとても良い笑顔で。二人は直感する、これは死んだと。

 

 

「ツヴァイ、ムラマサ」

 

「ハイ」

 

「私は悲しいよ。悲しい」

 

「ソウデスネ」

 

「ふ、分かればよいのだ…………覚悟しろ」

 

 

瞬間、爆発でも起きたような音がなる。他の職員や隊員が何事かとやって来るが、倒れ伏しているツヴァイとムラマサを見て何時ものことかとまた職務へと戻っていった。

クレイモアは嘆息して自分の携帯を起動した。

 

 

「ふ、ヘリアンめ、トンプソン×スプリングフィールドとは変わった事をしてくれる。私からはスピア×ジャベリンを送ってやろう」

 

 

と呟きながら微笑んでいた。

 

……まさかのクレイモアの性癖が暴露した瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

番外編2 スリンガーとウェルロッド

 

 

「……久しぶりですね、ベル」

 

「お、そんな呼び方する奴なんて一人しか知らないぞ、ヘレナ。お前グリフィンに徴用されたんだな」

 

 

スリンガーがよく利用する武器庫のとある一室、そこに彼と『ウェルロッドMkⅡ』が対面して座っていた。彼と彼女の醸し出す空気は、何やら古き友と久々の談笑を楽しんでいる、そんな風であった。

ウェルロッドは紅茶を一口飲む。

 

 

「元より戦場に戻るつもりでしたからね。お陰で民間モデルの時よりかは随分と動きやすくなりました」

 

「そりゃ結構。つーこたデータだけ持ち越しってことか?」

 

「そうなりますね。ですが貴方のことは忘れていませんよ」

 

 

嬉しい限りだ。スリンガーはコーヒーを飲んでウェルロッドに向き直った。優しそうに微笑む彼女を見つめて、ため息をつく。

 

 

「はぁ……にしても、もう結婚したとはいえど、一度惚れちまった奴は忘れられないな」

 

「結構な愛妻家だとは聞きましたが意外と浮気性ですね、ふふっ」

 

「それとこれとは話が別さ。まあでも良かったよ、昔の姿でここに来なくてさ」

 

「ベルは昔の方が良かったのですか?」

 

「いや、今の方がいいよ。俺の娘に似てる」

 

「何ですか、それ」

 

 

あははと笑うウェルロッド。スリンガーもそれに釣られて笑った。もしも他の人間がこの様子を見たら大体の人間がこう言うだろう。

「まるで熟年夫婦」

だと。それだけこの二人の間には何かしらの切れない関係があるようだ。

 

それが何なのか分かるのは、スリンガーとウェルロッドだけである。

 

 

 

 

 

 

 

番外編3 M500と整備士達の悪ふざけ

 

 

「パワードスーツにAIをぶちこめば面白いのでは?」

 

「いいね」

 

「採用」

 

 

整備士の溜まり場、といっても作業場の片隅なのだが、そこで整備士二人組と最近入ってきた戦術人形の『M500』が新兵器構想…という名の悪ふざけをしていた。今回はパワードスーツにAIを積むかどうかだ。

 

 

「じゃあAIはどのくらい有能に?」

 

「ポチちゃんと同じくらいがいいんじゃない?」

 

「おっほ、M500、そこまでやるか」

 

「だって、ロマンじゃん?」

 

「「最高」」

 

 

三人でハイタッチ。早速弓部隊の隊員一人を拉致…じゃなく連れてきてAIとパワードスーツの開発へと着手し始めた。

 

 

「ここはパターンをもうちょっと人間らしく出来ないのか?例えばサムズアップとか」

 

「馬鹿言うな、始めは骨組み作らなきゃ筋肉もつけられんだろ」

 

「M500、デザインどうするんだ?」

 

「鉄血のドラグーン参考にしようよ」

 

 

着々と開発が進んでいくAIとパワードスーツ。数時間後、AIの骨組みがある程度出来上がり、スーツもいざ組み立てだとなったところで、M500の一言で作業が止まった。

 

 

「そういえばテスターって誰がやるの?」

 

「「ジャベリン」」

 

「ジャベリン隊長が!?」

 

「りょーかい」

 

「ええっ!?」

 

 

また作業へと戻る三人。一人呆然とした弓部隊の隊員は、ジャベリンの幸運をただ祈るばかりであった。





ネタが詰まったら武器庫を使えばいいのでは(迷推理)
もし需要があればまた番外編で取り扱っていきます。

さてここで登場人物紹介。


クレイモア

性癖暴露おねーさん。ヘリアンの影響で腐り始めた。最近は武器庫の人間で色々妄想するのが趣味になってる。

ツヴァイヘンダー

被害者その1。クレイモアを支える有能な副隊長。彼女の趣味については、作中でも言った通り人間らしくなったなとか思ってる程度。最近DIYに嵌まった。

ムラマサ

被害者その2。一応剣部隊の古参。クレイモアの趣味に対しては後で似顔絵描いてもらおうかなとか思ってる程度。最近は戦場と会社での性格の落差が酷いので他の隊員から薬物キメてる疑惑が出てる。




スリンガー

既婚者おじさん。どうやら過去に“別の肉体”だったウェルロッドに惚れていた模様。でも相手は人形という認識だったので諦めた。最近娘にコーヒー臭いとか言われて凹んだ。

ウェルロッド

変わった過去持ちが判明した子。昔のスリンガーの事を知っていたようだ。彼女は何度も体を変えて自身を高性能化させていたようで、実質20年は生きてる。最近はロシアンティーに嵌まった。



整備士's

大体武器庫の作業場で何か作ってる二人組。整備士なのかこいつらとか言ったら負け。彼らのアイデアは留まることを知らずに日々多くのものが作られてはボツにされてる。最近社長に怒られて自粛中。

M500

整備士'sに毒された戦術人形。彼女も何か作るのは好きであるのでいつの間にか整備士たちの所へ入り浸るようになった。最近は鎚部隊の『LWMMG』を此方に引き込もうと画策中。

拉致された弓部隊隊員

コードネーム≪クロスボウ≫。皆からクロウとか呼ばれてる、整備士'sに拉致された被害者。最近はクレー射撃に嵌まった。


何だか最近Twitterのアカウントがss関係者に見つかったりしてるのでここにID置いときます。妄想垂れ流しアカウントです。 @samasiyu


6/10 言い回しを修正


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傭兵、ダミーだってよ。

230日目 雨

 

頭が痛い。どうにも飲み過ぎたようだ。

今日丸一日が休みじゃなかったら俺は恐らく死にかけながら仕事をやっていただろう。俺はもう少し寝ようか、なんて思ってベッドに入り込んだんだが、ポチに叩き起こされた。いや悪かったってお前をそのまま家に返しちゃったことはさ。だからやめろ、脛を執拗に蹴るな。いや膝もやめろって、脇に関しては最早意味がわからんぞポチィ!?どこぞの新喜劇みたいなことをするな!!

 

そうやって俺がポチに蹴られていたらインターホンが鳴った。誰なのか確認をすると、45が立っていた。突然の訪問に少々面食らったが、まあどうせ通さなかったところでセキュリティ破られるので部屋に通す。

 

正直この時に気がつけば良かったんだ。彼女は彼女ではなかったということを。

 

45を通して俺がお茶を出そうと準備をしていたら突然45が俺に抱き着いてきたのだ。困惑する俺と驚きすぎてフリーズしたポチ、そして抱き着いてずっと頭をぐりぐりと押し付けてくる45。なんだこれ。

俺は彼女を止めようと手を伸ばしたが45はそれを巧みに避けていく。困ったななんて思ったものの、早々に諦めた。一先ずはお茶の準備である。

 

一言言っておこう、凄く動きづらい。

 

何だろうな本当に、彼女はなんでこんなに俺にくっつくんだろうな。それがわからないままテーブルに茶器をおいて彼女と座る。流石に一緒に座るのは嫌だったのか彼女は隣に座ってきた。それでも凄く密着されたけど。

 

暫くの沈黙が続いたのだが、突然45が口を開いた。俺はその言葉に大いに驚いたさ、うん。

 

「実は私、ダミーなんですよ。ふふっ」

 

って。俺も驚いたがさっきまで寝てたオスカーがマジで!?っていう風に驚いてもいた。いや口調が45とのイメージとえらいかけ離れてる。いや、それにしてもダミーだと?メインはどうしたんだ?

そう俺が彼女…ダミーに聞いてみたら、メインがよくやるような意地悪そうな笑顔で、

 

「メインはメンテナンス中でしたので、こっそり抜け出してみました」

 

と言った。うーん嫌な予感!

でも邪険には扱えないのでお茶を出してとりあえず何しに来たのかを聞いた。彼女はちょっとだけ迷う素振りをしていたがすぐに話し始める。

 

彼女曰く、メインフレームの本音を話しに来たらしい。

……俺殺されない?とか何とか思いながらも彼女の話を聞いていく。

どうやら45は俺に対して気まずさというのがあったらしい。俺としては余りそういうのは感じられなかったのだがダミーはその事を感じていたらしい。

彼女に何があったのかはよく分からないが俺に対してそういった感情を持つのは間違いじゃないだろうか。俺アイツに何もしてないし。

まあそれよりも、ダミーの奇行についてだ。俺は彼女に何故いきなり抱きついて来たのか聞いてみた。彼女はまた意地の悪い笑顔をして

 

「あら、私はメインが伝えられない事を伝えに来ただけですから」

 

と返された。その真意を計りかねたが、それを聞き返す前にダミーは帰ってしまった。

 

……本当に変な体験だった。この後フリーズしたポチを直していたらメインのUMP45が現れたのは別のお話。

 

 

 

 

 

 

 

231日目 晴

 

昨日のダミー事件で面倒なことは済んだかと思ったら実は違う。

 

G11が増えた。厳密にはダミーがやって来た。四人仲良く俺のベッドの中で夢の中に居る。可愛いな畜生!!!ここにオスカーを置けばもう天国だ!!オスカー!!こっちにこい!!あぁ逃げられた!!

 

……とまぁ、茶番は置いておきこの状況をどうするか、だ。現在こうして日記を書いている訳だが、今の時刻はPM23:45。もうすぐ日が変わる。ソファーではポチとオスカーが一緒に寝ているので、このままで行くと俺は床で寝ることになる。流石に嫌だし、仕方ないのでG11を起こすことにした。さてこの眠り姫達は起きてくれるかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベッドせまい

 

 

 

 

 

 

 

232日目 曇

 

地味にG11達の体温が高くて少々寝苦しかった。

 

その、日記だから詳細を記すが、俺は彼女達を起こそうとしたら逆にベッドに引きずり込まれた。これは所謂、ミイラとりがミイラになったってやつか?

まあそんな事はさておき、俺は今日仕事が入った。久々に社長直々にお呼びだしなもんだから結構重要なやつか若しくはくだらないお使いだろう。あの社長だしどちらの可能性だってあり得る。精々、真面目なものであることを祈るばかりである。

 

OK、今さっき社長から仕事内容を聞いてきた。お嬢の護衛だ。どうやら彼女が前線に設置した拠点で指揮を行うらしい。戦術人形を置けば良いとは言われるがまあ、その、ジャガーソンさんの圧力でな……こういう時に権力者というのは面倒じゃある。娘を溺愛し過ぎなのだ彼は。ちゃんと卒業しろ。

 

で、今回のメンバーだが……槍から俺とスピア、弓からクロスボウ、そして盾部隊全員だ。訳がわからん、さてはジャガーソンさんの自腹だな??

最早大統領の警護だ。因みにお嬢には俺とスピアとクロスボウが来るとだけ伝えられている。盾部隊は拠点周辺で光学迷彩着て警護のようだ。

 

負ける気がしないなクソッタレ。武器はSCARとガバメントで良いだろう。

 

……一応レールガンも持っていこう。














「……やはりジャベリンは来るのね」

「ふふ、楽しみ。ジャベリンは一体どんなものを演じてみせるのかしら」

「またあの時一緒にゲームをした時みたいに楽しみましょ、ジャベリン」







どーも。モチベーション死んでましたサマシュです。最近Twitterで色々なネタを見ていくうちに他のドルフロ二次創作執筆に手を出し始めちゃったんですよね()
まあ向こうはこっちが詰まったらやるだけに留めておきましょう。

さて最後の人物とは一体誰なのか……そしてジャベリンくんは安定のピンチに陥りそうですね(諦)

この作品への感想及び評価は心の支えです!どうぞよろしくお願いいたします!それでは!


6/11 あとがき、三人称が違うということで統一させました。全て同一人物です。


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傭兵、焦るってよ。
迂闊な行動ダメ絶対!


さて前線で指揮をすることになったお嬢を護衛するジャベリンくん。何やら戦場ではジャマーが張られて上手く連携が出来ない模様……。

今回は3、4話ぐらいでやっていきます。それではどーぞ。






233日目 雨

 

昨日の日記書き忘れてたけどポチも着いてきてるから安心しろ。

 

随分と嫌な雨だ。雨と言えば、日本では雨は穢れを落とす清らかなものとは言うが今降っている雨は如何にも穢れを塗ったくって来そうな雨だ。どんよりとした空気が漂うも、お嬢達の司令部はそれを掻き消すような緊張感があった。

 

あぁ、久しぶりの戦場だ。といっても後方ではあるがな。俺は忙しなく足を組み替えてはため息をつくお嬢を護衛しながら電子手帳で日記を書いている……職務怠慢ではない。

それにしてもお嬢、えらく落ち着きがない。前述したとおり何度も足を組み替えているし連絡用のタブレットを覗いては下ろしを繰り返していた。俺は隣の待機中のMP5にどうしてこうなっているのか聞いてみたところ、彼女曰くジャマーが張られているせいで、識別信号も僅かにしか確認出来ないらしい。

 

あー、確か今回の作戦は結構連携が大事なものだったのかな?

SMGを主体とした部隊で陽動、LMG、RF部隊はそれを支援、そして横からM4が指揮する主力部隊で司令部を占領する算段だったか。

まあ、不安になるのは分かる。ただ気負いすぎじゃあるのでは無かろうか……。

 

 

 

 

仕方ねぇ、ポチとスピア連れてちょっくら伝令の真似事でもしよう。クロスボウはお嬢の補助な。

 

 

 

 

 

 

 

234日目 晴

 

お嬢からあんな不安そうな顔を見せられるとは思いもしなかった。死地に送られる訳じゃないんだから安心してほしいもんだ。

 

それにしても移動にここまで掛かるとは思わなかった。乗り物でも借りておけば良かったな。しかしまぁ、鉄血人形の数が多い。迂闊に動けないのでどうしたものかと困っている。

お嬢からの情報だと、もう少し先で戦闘は行われている……らしい。一応銃声らしきものはよく聞こえる。

 

俺たちは隠れながらゆっくりと進んでいっているが、進めば進むほど鉄血人形は増えていき、余計に動きにくくなる。いや、本当にこれ陽動成功してる? ちょっと不安になってきたな。

もしかしたらこちらの動きが察知されている可能性がある。一応通信が繋がったので念のためにお嬢にその事を伝えておき、俺たちは戦闘が行われている所を目指す。ちょっとスピアが変な音出して鉄血人形にバレかけたものの、無力化したあとにまた進む。

 

頼むからスピア、うっかりを発動させるなよ……。

 

 

 

 

 

 

 

235日目 曇

 

大変不味いことが起きている。侵入者が現れた。何処から来やがったんだこいつ……あぁそういえばお嬢が今回の目標は侵入者の討伐とここらに居るであろうM16の救出とかなんとか言ってたな。

 

…………。

 

もしかしなくても俺達は今窮地に立たされてる?

 

 

いつの間にかジャマーで通信は出来ず、目の前にハイエンドモデル、そしてそれなりに居る下級の鉄血人形。囲まれてね?

あぁクソッタレ、義眼使うしかねぇな。見つからないことを祈ってここから抜け出そう。

 

 

 



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油断はダメだよジャベリンくん!

あ、ちょっと別作品も投稿したから見てね(露骨)
ダイナゲート主人公のお話です。
https://syosetu.org/novel/194068/







鉄血の奴らは数を増やすばかりだ。見つかるのも時間の問題だろう。そんな中でうちの隊長は呑気に日記を書いている。こいつに日記を勧めたのは確かに俺なのだがここまでのめり込むことは予想外だった。
まあそれは仕方ない。隊長を補助するのが副隊長の務めだ。それに日記を書いている隊長は随分と楽しそうだ。こんな極限状態でもこうやって精神を安定させることか出来るのは凄いものだろう。これを止めるというのは野暮というものだ。


……紅茶が飲みたいな。






236日目 雨

 

おかしい、一向に鉄血の集団から逃れることが出来ない。そして不幸な事に俺たちが進むとアイツらも動いていく。非常によろしくない。まるで尾行されているようなくらいに鉄血から逃れられない。地獄かよ……頼むから早く何処かへ行ってくれ。そろそろ脳味噌が湯だってきた。

 

これ以上の義眼の使用は負担が大きいのでさっき岩影に隠れた。未だに居なくならないコイツらに悪態をつきたい気分だが見つかったら危ないのでやらない。

 

……松明は焚かないぞ。

 

 

クソ、いっそのこと方向を変えるしかないのか?

 

 

 

 

 

_________________________________

 

______________________

 

____________

 

_____

 

_

 

 

 

曇天の空。

降り頻る雨を眺めながら、俺達は岩影に隠れ息を潜めていた。俺たちが隠れている場所の周囲は、大量の鉄血の人形が闊歩しており、もし見つかればすぐに蜂の巣になるだろう。

 

俺は隣にいるポチを撫でながら、外の様子を伺っているスピアに今の状況を聞く。

 

 

「スピア、アイツらどっか行ったか?」

 

「全然。俺たちを囲むように巡回してやがる。コイツら実は居場所分かってんじゃないのか?」

 

 

縁起の悪いことを言うんじゃねぇ。

 

はぁ。とため息をつきながら頭を抱えていると、ポチが一つの提案をしてきた。

 

 

≪私が注意引きましょうか?≫

 

「出来るのか?」

 

≪一応鉄血側のIFF発することは出来るんですよ私≫

 

 

えぇ……ポチ、君随分と多機能なもんだなぁ……。でもそれバレた時が怖いぞ? お前今の外見だとどうやってもバレるというかなんというか。

 

が、俺の心配は杞憂に終わったようで、ポチが一度身震いをしたあとにポチの体に装着された装甲が一気に外れて地面へと落ちた。久しぶりのノーマルなポチへと戻ったのだ。突然の出来事に固まる俺とスピア。ポチは如何にも得意そうな素振りでいる。

 

 

≪これでなら文句はないでしょう?≫

 

「リフィトーフェン、何で俺に説明書をくれなかったんだ……」

 

 

俺は頭を抱えてポチの生みの親(リフィトーフェン)へ文句を垂れる。

とはいえこれは好機だ。ポチはリフィトーフェンによる改装以降、他のダイナゲートよりも俊敏に動けるように機関部が改造されている。その為囮になったとしても多少は大丈夫だろう。

 

取り敢えずポチを信じて送り出す。

岩影から出たポチはそのまま何処かへ走っていき、続いて暫く経ってから鉄血人形が走っていった。俺とスピアは互いにクリアリングをしながら岩影から移動する。

 

 

「……クリア」

 

「こっちもクリアだ」

 

 

さて、どうしようか。一先ずはお嬢のところへ向かうにしても遠い。一応川を渡れば大分短縮出来るのだがこの雨のせいで増水してしまっている。つまり渡れない。ここは進むべきだろうか?

 

 

「スピア、相談だがこの後どうするべきだと思う?お嬢の部隊と合流すべきか迷ってるんだ」

 

 

俺は隣で双眼鏡を覗いてるスピアに相談を持ちかけた。

 

 

「そうだな……通信は?」

 

「短距離のみ使える。あぁ、それとIFFも微弱ながら確認できるぞ。ここから北東に1kmだ」

 

「そうか……」

 

 

彼は顎に手を当てて考え始めた。俺はその間周辺を見渡してみる。今のところは特に問題は無さそうだ。しかし何故侵入者は俺の目の前に現れたのだろうか。情報が正しければ侵入者はもう少し先に居るはずなのだが……情報に誤りがあったのだろうか? もしそうだとしたらこれは早く帰るべき案件ではあるのだがしかしM4たちも気になってしまう。嘘の情報というのはそれだけ危険なものであり、下手をすれば味方が全滅する可能性もある。

だが……ええいしっかりしろジャベリン。迷ってしまえばそれだけ手遅れになる可能性もあるのだぞ。

 

 

「ジャベリン」

 

「っと、何だ?」

 

「一応進もう」

 

 

俺が少しだけ考え込んでいると、スピアがそう提案してくる。俺はにべもなくそれを承諾して走り始めた。

 

俺は遠くを見据える。すると、遠く、大体500mほど先の丘になっているところに誰かが見えた。俺は隣のスピアにハンドサインを送り止める。近くの木へ隠れて自分の双眼鏡で確認する。

 

 

「……侵入者?」

 

「なんだと?」

 

 

そこには侵入者が居た。こちらには気付いて居ないようだがずっと立っている。

 

……中々やれないな。彼処に立たれると向こうへ進めない。

 

「スピア、こっちに来てくれ。義眼を使う」

 

「おい、大丈夫なのか?」

 

「あぁ、少しマシにはなってる」

 

 

仕方がないので彼女を避ける為にも俺は義眼を起動させて動くことにした。

 

草木をかき分け静かに警戒しながら歩く。だが侵入者には視線を外さず常に見ておいた。

侵入者は相変わらず気づいていない……が、彼女はあの武骨なライフルとガトリングが合体したような武器を持ち上げていた。

 

 

「……ジャベリン」

 

「あぁ、少し怖いな……ん?」

 

 

侵入者は武器を構える。そして俺の居る方向を向いた。あぁクソが、彼女が俺達の目の前に現れたのは()()()()()()かよ。

 

 

「……スピアァ!!!隠れろォー!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は叫んでスピアを押した。

 

 

 

瞬間、俺の腹部に異物が入り込んだ感触があった。








前線指揮拠点にて。。。


いつまで経ってもジャベリンたちとの通信が繋がらなくなった。これは非常に不味い。あの時殴り倒しても止めるべきだったのだろうか。だがあの男はどうやっても頑固に動く男だ。一度ロゼとフェンフちゃんとジャベリンの頑固さをどうしようか議論したぐらいである。

落ち着かない。そう思いながら居ると、隣のフェンフちゃんが私の背中を擦りながら大丈夫だと励ましてくれた。あぁ、なんというか彼女には意外と救われている所がある。私もしっかりしなければ。メグ・コーマックはいつでも元気な女なのだ。このくらいでクヨクヨしてしまうのは恥ずかしい。

……暫くしてM4ちゃん達がやって来た。ジャベリン達は居ない。私はすかさず彼らと出会っていないか問うたが、彼女たちは知らぬ存ぜぬであった。


あの馬鹿野郎は何をして居るんだ。今すぐ捜索隊を向かわせよう。


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戦闘開始だジャベリンくん!

モチベーション死んでたというか、Twitterで整備士ネタを垂れ流してたら時間経ってましたね、すみません。
そして120000UA突破有難うございます。ここまで来たらもう行くところまで行ってやりますよ。

さて、ジャベリンくんまたもや窮地。だが今は副隊長のスピアくんもいます。だからまあ、どうにかなる。それではどーぞ。













 

「……リン!ジャベリン!!!」

 

 

…………誰かの怒鳴り声が聞こえる。体を動かそうにも動けない。どうやら引き摺られているようだ。ぼやけた視界を眺めていると、俺の体に何かが打ち込まれた。

 

突然俺の視界が一気に開ける。目の前には必死の形相をしたスピアの顔と、少し遠くに鉄血人形の集団が見えた。俺は直ぐ様意識を覚醒させた。

 

 

「だぁっ!スピア現状報告!!!」

 

「現在敵がこちらに前進中!!数は20以上!!そしてお前に止血処置して鎮痛剤を打った!!!」

 

「了解!!!愛してるぜ副隊長!!!」

 

 

鎮痛剤のお陰で今は微かな鈍痛だけで済んでいる腹を抑え、俺は立ち上がる。あまり傷は見ないでおこう、多分パニックになる。銃弾が飛んでくる中で俺は前を見据える。そこにはスピアが言った通り鉄血の集団が居り、その奥には侵入者が見えた。

俺は担いでいたレールガンを構えて、上部にあるレバーを引き給弾口へ弾を装填する。弾種は急いでいて分かったもんじゃない。そしてレールガンを構え集団に向けて撃ち放った。

 

数瞬、鉄血の集団を中心に大爆発が起きた。どうやら俺が撃ったのは榴弾だったらしい。パラパラと土煙が舞う中で、俺たちは警戒しながら後ろへ後退していく。微かながら他の足音が聞こえてくるのだ。敵は確実に近付いて来ている。

俺はまたレールガンに弾を装填しておいた。今度は通常弾だ。

 

土煙の中から人影が見えた。

 

 

「あぁ全く、折角の人形たちが皆やられてしまったわ。本当に、シナリオとは予想外の事をしてくれるわね、ジャベリン?」

 

「侵入者……!」

 

 

人影の正体は侵入者だ。彼女は飄々とした顔でこちらへ歩み寄ってくる。俺たちが銃を構えようとも焦ることもなく、寧ろ楽しそうな笑みさえも浮かべていた。

 

 

「だからこそ楽しいのだけれどね」

 

「お前……何しに来たんだ? 俺たちを追いかけたって何も得るものなんてないぞ」

 

「あら、そんなの分かりきってるけど?」

 

 

侵入者はこちらへ笑いかけてくる。やはりこいつもリフィトーフェンの置き土産を貰っているのだろう、狂気的なぐらい楽しそうだ。

 

 

「こっちの方が面白そうだからよ」

 

「……」

 

「それに、元々の計画は進行済み。今頃大変なことにでもなってるのではないかしら?」

 

 

うふふ、と笑う侵入者。

元々の計画……? いやそれよりも目の前のこのあんちくしょうをどうにかしないと俺もスピアも危ない。

彼女は電子戦に強いとはいえ持っている武装が武装だ。デッドウェイトがあるがミニガンを持っている。あれを撃たれたらひとたまりもない……また恐らくだが義眼の認識阻害も無効化されてしまってるだろう。現に見つかって撃たれた訳だし。

 

 

「……っ」

 

 

少し、腹部の痛みが強くなってきた。思わず患部を押さえる。どうにも鎮痛剤が切れ始めたようだ。

 

 

「……スピア、鎮痛剤は?」

 

「あと二本だ」

 

「出せるか?」

 

「この状況で?」

 

 

そうだったな畜生。痛すぎて冷静じゃなかったな。

 

改めて侵入者をにらむ。彼女は俺が腹を押さえている様子を見て笑みを深めていた。コイツはどうしてこんなに楽しそうなんだ……この状況を楽しんでるとかまるで剣部隊の奴らみたいだ。

 

 

「あ、面白いものでも見せてあげましょうか?」

 

「何を言って……っ!?」

 

 

侵入者が銃を下ろし、笑いかけてきた。瞬間、俺の義眼が熱くなり、思わず手で押さえた。

それに驚いたスピアが俺に駆け寄ってくる。

 

 

「ジャベリン!?」

 

「ガアッ……侵入者、てめぇ……」

 

「ご安心を。ちょっと貴方の義眼に侵入させて貰っただけですもの」

 

「クソッ!!」

 

「おっとスピアさん、変な真似なんてしたら……ジャベリンはどうなるんでしょうねぇ?」

 

 

スピアが歯噛みをしている。あぁいやそれどころじゃない。

 

熱い。

 

俺の義眼に沢山の映像が流れ込んできた。多分これは鉄血人形のやつだろう。何処かの拠点らしき所を襲撃中のようで、多数のグリフィン所属の人形がこちらに向かって撃ってきている。その人形の集団の中にはM4やSOP、そしてMP5とG36、いやローゼか。その二人に守られるように指揮をしているお嬢がいた。

 

視界が暗転した。気がつけば先程の戦場ではなく、俺とスピアと侵入者がいるだけの場所に戻っていた。

俺はご満悦な侵入者に対して舌打ちをする。

 

 

「……お前、本っ当にいい性格してやがるな」

 

「お気に召して何よりです。あぁ、本当に貴方は色々な表情を見せてくれるわね、まるで葛藤する物語の主人公のよう」

 

 

何処までも愉悦に満ちた顔をする侵入者。俺はスピアに鎮痛剤を出すように指示を出す。一瞬彼は大丈夫かとこちらに視線を投げ掛けてきたが、俺はそんな事お構いなしに強く命令を出した。

 

どうせ侵入者は手を出してこない。それだけは分かる。何故か分かる。さっきのセリフで予想できるのは……コイツは多分演じてるんだ。悪役としての自分を、まるでヒーローが変身するときに律儀に待つような悪役を。

 

 

「何なんだよ本当……ほら、鎮痛剤」

 

「助かる……っふぅ」

 

「準備は出来ましたか、両名?」

 

 

俺が鎮痛剤を打ったと同時に彼女が銃を構えた。

俺たちも続いて構える。侵入者はにっこりとまた笑った。こいつ笑いすぎだろ。

 

 

「倒れるのはどっちでしょうねぇ? うふふ……」

 

「ほざいてろ性悪め」

 

「あら手厳しい、けど口の悪いヒーローも良いわね」

 

 

今度はくひひ、と笑う侵入者。スピアはそれに若干引きぎみだ。

……締まらねぇなぁ。

 

 

「ジャベリン……こいつ変態だろ」

 

「知らんわ。スピア、援護頼んだぞ」

 

「了解」

 

 

ちょっとだけ緩んだが、侵入者との戦闘が再開する。

早速襲いかかってくる銃弾の嵐、俺とスピアは物陰へ隠れて様子を伺う。

暫くして嵐が止んだ後に、俺はレールガンを、彼女へと撃ち放った。

 

絶対にコイツをぶっ殺して、お嬢たちのところに戻らなければ。

 

 

 

 

 

 








前線指揮拠点にて。。。。


「MG隊は制圧射撃を続けて!!!RF、AR隊は確実に敵を倒して!!!SMG隊は敵のヘイトをありったけ集めて!!!そして……盾部隊だっけ?ええい!とりあえず人形たちの援護して!!!」


何て事だ、まさか鉄血の軍団がこちらにやってきているのを察知出来なかったとは。捜索隊を出す前に襲われた。今は何とか持ちこたえてるけども、それが何時まで持つのかはわからない。だがここを放棄するのも得策でもないだろう。数が多すぎるのだ。あちらは一大隊ほどの数で来ている。何処に隠れてたのか不思議なくらいだ。

『お嬢ちゃん不味いぞ!ジャガーの集団も来やがった!!』

「はぁ!?RF隊!!動ける人は早くそっちの処理に向かって!!」

前衛に居るクロスボウさんからそんな連絡が入ってくる。
更に大変なことになった。あの迫撃砲を引っ張ってくるなんて……余程こちらを落としたいらしい。


『不味い!!奴ら撃ってきやがった!!お嬢ちゃん逃げろ!!!』


えっ


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後始末は確実に!

モチベーションの死亡とバイク事故が重なって色々更新遅れました()
やっと決着入ります。それではどーぞ。







…………




「指揮官!!無事ですか!?」

「ぶ、無事みたい……だね?」

「良かった!!!」


爆発に巻き込まれたかと思ったが、私は助かったようだ。目の前のフェンフちゃんが持つフォースフィールドで守ってくれたようだ。周囲を見てもこれといって損害がない。フェンフちゃん凄い……あっ。


「鉄血の軍勢は!!?!」

「どうやら殲滅されたようです」


私が慌てて状況確認をしたら、ロゼが私に教えてくれた。何とか危機は脱したようだ。なら話は早い、早く戦場で孤立しているであろうあの二人と一匹を助けなければ。
私はすぐに指示を出す。


「皆、戦闘明けで悪いけどまだ仕事が残ってるよ!!損傷が少ない人形たちでジャベリンたちを捜索しないとね!!」


早くあの馬鹿野郎を助けるんだ。絶対に。











 

 

 

 

 

≪……何でいつの間に鉄血人形居なくなったんだろ≫

 

 

ジャベリン達が戦っている最中、囮として動いていたポチは一人(一機?)ぽつんと歩いていた。ポチはできる限りジャベリン達から鉄血人形を引き離そうと、必死に走り回っていたが為に人形達が何処かに行ってしまったことに気がつけなかったようだ。

 

 

≪一生の不覚……さてどうしましょ≫

 

 

ポチは一先ず近くに何かの信号が無いか探してみる。無かったらさっさとジャベリンの元へ帰ろうと決めて。

 

 

≪200m先に……二人か三人居ますね≫

 

 

どうやら目の前に見える建造物の中に誰かが居るようだ。

ポチは早速その建物へ向かうが、その途中で突然反応が幾つか減り、一つだけとなった。ポチは少し怪訝に思いながら、警戒を強めて中へ入っていく。

少し進めば鉄血人形の残骸が転がっていたりと随分と恐ろしい様相であった。ポチは何も出ないことを祈りながら進んでいく。

 

 

≪お邪魔しますよ……?≫

 

 

ポチはたまたま扉が開いていた部屋へと入ってみる。というより、その部屋から信号が出ていたから入っただけではある。

ポチは部屋の中をを見渡す。鉄血人形の残骸があるだけで特にこれといったものも無かった。ポチは安堵をして奥へと進む。

 

 

≪何でこんなに散らかってるんですかね本当。整理整頓は大事なのに……≫

 

「そりゃ悪かったな」

 

≪!??!≫

 

 

突然、ポチはがっしりと何者かに掴み上げられる。背中の機銃を使おうにも相手が真後ろに居るためそれは不可能であった。

 

 

≪ちょっ!!?誰ですか!?誰!!?≫

 

「おー、このダイナゲート喋るんだな……ん?」

 

 

ポチがじたばたと抵抗していると、その掴み上げてきた人物は何かに気が付いたのかまたポチを降ろした。ポチはすぐに後ろを振り向き機銃を構える……が、ポチはすぐにそれを下ろした。

何故なら、ポチのアイカメラの中には、ポチにとって、とても見覚えのある人が映ったからだ。

 

 

≪……M16?≫

 

「やっぱりか……久しぶりだな、ポチ」

 

 

その人物とは、未だ見つからなかった戦術人形、AR小隊隊員『M16A1』であった。

 

 

≪久しぶり……何ですかね? 最後に会ったのは3ヶ月か4ヶ月だったような≫

 

「人はそれを久しぶりっていうんだぞ。ジャベリンはどうしたんだ?」

 

≪あっ!!≫

 

 

ポチはM16の問を聞き、ジャベリン達の状況を思い出す。ポチは彼女に状況を説明をした。M16は少し眉をひそめたものの、元の表情に戻り、部屋の外へ出ていった。ポチは慌てて着いていく。

 

 

「あいつも変な事に巻き込まれてるな……」

 

≪それは仕方がないというかなんというか……≫

 

「女難ここに極めれり、だな。仕方ない……仕事は大体終えたし、ポチ、案内してくれ」

 

≪了解です≫

 

 

ポチとM16は走り出す。途中、思い出したかのようにM16がポチが喋ることの出来る理由を聞いてきたが、ポチは曖昧に答えておいた。口は災いの元である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「M16、見つけたわよ!!!」

 

「………………」

 

「居ないじゃない!!?」

 

 

 

__________________________________________________

 

 

 

 

 

 

 

「アッハハハハハハ!!!!!」

 

「あの大根役者片腕吹き飛んでるのに笑ってやがるぞ!!!」

 

「処刑人より質わりーなオォイ!!!」

 

「トライデントと一緒に戦った奴かぁ!?全くモテモテだねジャベリンは!!」

 

「うっせぇ!!!てめぇもモテてるだろスピアァ!!」

 

 

未だ銃弾の嵐が襲い掛かってきている中、岩影に隠れてやり過ごしている。戦闘を始めたときに侵入者の腕を吹き飛ばしたのはいいものの、急に何があったのか、彼女は高笑いを始めて弾幕をより濃くしてきやがった。覗き込もうにも頭を出す度に弾が飛んでくる。

 

あぁクソッ!!ヘルメット飛んでいきやがった!!

 

 

「楽しいものねジャベリン、スピア!!追い詰められた悪役の必死の抗戦に驚き戦きそして苦戦する!!まるで昔の映画みたいね!!!!アッハハハハハハ!!!!」

 

 

侵入者は笑い続け、ガトリングを撃ち続けてる。よくオーバーヒートしないよなぁ……。

 

 

「狂人め!!!スピア、グレネードは!?」

 

M26手榴弾(レモン)が一つあるぞ!!」

 

「なんでそんな骨董品有るんだよ!?使えるのか!!?」

 

「ガンスミスと整備士の趣味だ!!そぉれ!!!」

 

 

スピアが侵入者にグレネードを投げる。少しして大きな爆発が起きた。一応銃撃が止まったものの、全く安心できない。

俺とスピアはゆっくりと向こうを見てみる。

 

 

「まだ土煙が酷いな…スピア、火薬多すぎたんじゃあないか?」

 

「多分ね。あの整備士たちの事だ、威力も高くしたいからって詰め込んだ可能性もある」

 

 

ありえんでもない。まあ今回はそれに助けられている面もあるだろうがな。

……そろそろ晴れてきた。

 

 

「……スピア、何か見えるか?」

 

「俺の目が可笑しくなかったら誰も居ないことが分かる」

 

「最悪だなクソッタレ」

 

 

俺たちは目を凝らす。

最悪なことに土煙が晴れた先には誰も居なかった。思わず悪態をつきながら侵入者がどこに行ったのか探す。左右を見渡しても誰も居ない。ため息を吐きたくなるがここはグッと我慢。デジャブだ、このシチュエーション何処かで遭遇したことあるぞ。

 

 

「ジャベリン!上だ!!」

 

 

スピアが叫ぶ。

ざりっ……と音が聞こえた。俺は咄嗟にレールガンを上に向け標準を定める。その先には所々人口皮膚が剥げて機械部分が剥き出しになっている侵入者がいた。まだこいつ笑ってやがる…が、これで終わりだ。

 

俺はレールガンのトリガーを引く。銃口から射出された鉄芯は真っ直ぐと侵入者の腹部へと突き進み_____________________

 

 

 

 

 

 

 

当たらなかった。

 

 

「は!!?」

 

「ざーんねん、ハズレ」

 

 

侵入者は着地する、そして同時に俺とスピアを別方向へと蹴り飛ばした。ボディアーマーを通じてとてつもない衝撃に襲われる。俺は肺の中の空気を全て出され、地面へと転がった。

 

辛うじて顔を侵入者へ向けると、彼女が呆れながらこちらへ歩いてきていた。

 

 

「油断大敵、っていう言葉があったわね。私が電子戦に強いこと、忘れちゃったの?」

 

「ケホッ……お前、義眼にハッキングして虚像作りやがったな……」

 

「ご名答。本当に悔しそうな顔をして……良い顔ね、私の悪戯が成功したようで嬉しいわ」

 

 

侵入者は心底嬉しそうな顔で笑う。

頼むからこんな悪戯じゃなくて誕生日パーティーでのサプライズ程度にして欲しい……ふざけてる場合じゃないか。鎮痛剤の効果が切れてきた、痛い。

 

侵入者が俺の近くまでやって来た。……レールガンは5m先に落ちてる、ガバメントは直ぐに抜けない、SCARは尚更だ。あと意外に血を失いすぎたらしい、視界がぼやけてる。

彼女はしゃがみこみ、俺を見つめた。

 

 

「……何だよ」

 

「本当、随分と顔が変わったものね。あの時はもう少し柔和な顔をしてたわ」

 

 

侵入者は突然そんな事を言う。というか柔和な顔って何だよ、俺は昔から変わってないぞ。

 

 

「嘘ね、何かに怯えるような顔をしてる。余裕が無いわ。どうせ代理人に片目引っこ抜かれたからだろうけど」

 

「……」

 

 

私、人間観察は得意なのよ?とか彼女は言う。

 

図星だけどこいつなんでこんなに余裕そうなんだ? …だが好都合だ。45ACP弾を食らわせてやる。

 

 

「あら、駄目よ」

 

 

まあ侵入者に腕捕まれて失敗したんですけどね。

 

 

「悪い人ね、なにもしてないのに銃を向けるなんて……」

 

「それ俺の土手っ腹に風穴空けたやつが言うか?」

 

「それもそうね。ところでジャベリン」

 

「あん?」

 

「このシチュエーション、なかなか面白いと思わない?」

 

 

また始まった。思い切り殴ってやりたいが動けない。

 

 

「ピンチになった主人公は悪役に押さえ付けられ完全に形成を逆転されてしまった。主人公はどうにかしたいのだけれど体を押さえ付けられてなにも出来ない。そして悪役は主人公に今までの恨みをぶつけるように主人公へと酷いことをする」

 

「……つまり?」

 

 

俺の問いに侵入者は微笑むだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういうことです」

 

「え"う"っ"!?」

 

 

ぐちゃり。

突然激痛が俺を襲う。

 

あぁクソッタレ!こいつ、俺の傷口に手を突っ込みやがった!!

 

 

「ギッ……おま、ぐっ……」

 

「あら、あまり叫ばないのね。まだ鎮痛剤が切れてないのかしら?」

 

「はっ……そんなもんとっくに切れてるよ馬鹿が……お前のが甘っちょろいだけだよ……!!」

 

「そう……まあそういう反応のほうが面白いから良いのだけれど」

 

 

侵入者はそう言いながら傷口をかき混ぜている。彼女が手を動かす度に俺の全身が痛覚に支配されていく。思わず叫びたくなるが、ぐっと耐えて俺はただ侵入者を睨み付けるだけしか出来なかった。

 

 

「さあ貴方は何処まで耐えてくれるのかしら?どうやったら泣き叫んでくれるのかしら?」

 

「ぐっ……お前が…そんなことやってる限りやるわけねぇよ…」

 

「そう」

 

「ヴゥ!?」

 

 

ずぽりと、侵入者が傷口から手を抜く。痛みはまだ続いており、多分だが血も結構流れてる……こんなに血を流しながら死なない自分に驚きながらも体を動かそうとするが、それも出来ない。意識だけがはっきりしてるようだ。

 

 

「だとしたら……スピアをどうにかしてやりましょうかね」

 

 

にたり。侵入者は笑う。そしてスピアが飛ばされた方向へと歩いていった。

 

スピア、なぜお前は起きない。頼むから起きてくれ、ピンチだぞ、おい。

 

 

「目の前で大切な仲間が殺される、絶望の最高潮というものですね。滾ります」

 

「おい……やめろ、侵入者」

 

「おや、こんなにも面白い事が出来るのに止めるとお思いで?」

 

 

そんなこと分かってる。

 

俺は彼女を止めるために何とか這いずって行くが、そんなことで追い付く筈もなく、どんどん引き離されて行く。侵入者が立ち止まる、どうやらそこにスピアが居るらしい。俺はガバメントを構えて撃とうとしたが、標準が定まってくれない。

侵入者がこちらを振り向いた。

 

 

「あぁ、良い顔。私がこれからやろうとすることにどんな表情を見せてくれるのかしら?」

 

「クソッ!!」

 

 

ガバメントの引き金を引く。だが弾は何処かへ飛んでいき、侵入者へ当たることも無かった。

侵入者はますます口角を上げる。

 

 

「ああ本当に楽しみで楽しみで仕方ない!!ジャベリン、私は宣言します!!貴方のご友人であろうスピアを今!!目の前で!!無垢な子供が蟻を引き千切るように殺して差し上げましょう!!!最高のショーですよ!!!あはっ!あっはははははは!!!!」

 

 

侵入者は腕を振り上げた。そしてそれをスピアへ振り下ろそうとする。俺はただそれを傍観するしか出来ない。

 

俺は思わず目を閉じてしまう。

 

 

「…………?」

 

「……はぁ、まさか邪魔が入ってしまうとは」

 

 

俺は目を開く。目の前の侵入者はさっきまでの歓喜に満ちた表情とはうって変わって心底つまらなそうな顔をしている。

よく見てみれば、彼女の腕がだらんと垂れ下がっていた。

 

 

「まあ、主人公のピンチに颯爽と駆けつけてくる存在が居るというのも悪くありませんね」

 

 

彼女は笑った。瞬間、何処からか銃声が聞こえ、彼女の頭が貫かれて倒れた。

 

…………機能停止してるな。

 

 

「今の気分はどんなだ、ジャベリン?」

 

 

後ろから懐かしい声がする。俺は笑ってその質問に答えた。

 

 

「最高で最悪な気分だよ、M16」

 

 

俺は案外運が良かったらしい。未だに行方不明だったAR小隊の『M16A1』と合流出来たのだから。

 

 

「だろうな。立てるか?」

 

「何とか。取り敢えずそれよりもスピアを起こしてくれ」

 

「ああ」

 

 

M16がスピアの元へ向かう。俺はそれを眺めていると、とんでもない衝撃が俺を襲った。

 

 

≪ご主人ー!!!!!生きてますかァーー!!!!!??!≫

 

 

ポチも無事だったようだ。今すぐ抱き締めてやりたいが激痛が走ってるためなにも出来ない。

 

 

「ポ、ポチ!!やめろ!!俺今風穴空いてんだぞ!!?」

 

≪生きてるゥーッ!!ご主人生きてるヨォ!!!!≫

 

「ちょっ!!おまっ………………」

 

≪アレッ!?ご主人!!??ご主人ーー!!!!!??!≫

 

 

と、取り敢えず、生きてて何より……だ、ガクッ…………。








「ポチ、やりすぎだ」

≪ごめんなさいスピア……≫

「はっはっは、許してやれってスピア。ポチも嬉しかったんだからさ」

「それもそうだがな……」


あの後、スピアと私で気絶したジャベリンに一応の応急処置を行った。彼の傷は酷いもので、治るのに大分時間が掛かるだろう。それにしてもよくこの傷で生きていたものだ。何か裏でもあるのだろうか? まあ考えても仕方がない。


「さて……スピア、こいつを運ぼう」

「ん、そうだね。担架使う?」

「そりゃ使った方がいいけども……あるのか?」

「作れば良いのさ」


スピアはそう言ってバッグから大きな布と折り畳んであった鉄棒を取り出して、器用に担架を作っていく。
そしてそれを完成させると私にジャベリンの足を持つように指示を出してきた。


「よーし、行くぞ。せーのっ!」


ジャベリンを担架に乗せる。そして私たちは担架を持ち上げた。
私はスピアに何処へ行けばいいのか聞いたところ、グリフィンの前線指揮所があるので、そこに向かうと言われた。

私たちは歩き始める。ポチがレーダーを展開しながら警戒してくれた。


≪む、正面1km先に味方反応アリ≫

「了解。見えるか?」

≪…………どうやらM4達のようです≫


おっと、どうやら助けが来ていたらしい。それにしてもM4か……怒られる未来しか見えないな。どうしようか。


「……まあいいか」

「どうしたM16?」

「いや、何でもないさ。早く合流しよう、ジャベリンも危ないしな」


また私たちは歩いていく。一先ず私は任務を終えた後のジャック・ダニエルをどれくらい飲もうか、ただそれだけを考えていた。










ここから雑談タイム

誠に申し訳ない……まさかここまで詰まるとは思わなんだ。言い訳として私生活が急に忙しくなったのと、文章が書けなくなったのがあります()
次回は多分いつも通りになるのでご安心を。

この作品への感想及び評価は心の支えです!どうぞ宜しくお願いします!それでは!!


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傭兵はまた動き出す。
傭兵、勘違いかもだってよ。


やはり慣れないことはするもんじゃなかった()
モチベーション回復したのでどんどん行きます。それではどーぞ。








 

 

不明 多分晴れ

 

侵入者との激戦を終えた。

その激戦の後、ポチの追撃のお陰で気絶してしまった俺は、今度は病室で目が覚めた。何かこれ前にもあったぞ。

 

天井から視線を横に動かせば、そこにはM16とスピアがトランプをしていた。確かスピアも怪我をしてなかったか? と思いながら体を起こそうとするが、ここで自身の状態に気が付いた。

 

体が拘束されてる。何でやねん。

 

俺が四苦八苦して拘束を解こうとしていたら、その音に気が付いたM16とスピアが慌てて俺を止めに入ってきた。どうにも治るまで1ヶ月は掛かるらしい。そしてまたリハビリに1ヶ月とな……体力も腕も落ちそうだ。まあ長い休暇だと思っておこう。

 

ただ腕も固定されているのは嫌だったのでスピアに外して貰った。本当なんでこんなに罪人みたいな格好されたのだろうか?

 

え?お前は動けるってなったらすぐに動く人間だから?まさか。

 

 

 

 

 

 

 

240日目 雨

 

どうやら俺は3日ほど寝ていたようだ。M16から色々と教えて貰った。

 

鉄血は暫くは小康状態に入ると予測され、またお嬢の基地は少しだけ休暇に入って、お嬢とロゼは里帰りをするようだ。基地防衛は盾部隊が担当するとのこと。頑張るよなあいつら……休めばいいのに。

 

それにしても困った。最近畑に行けてない。スケアクロウや処刑人はちゃんと畑仕事をしてくれているのだろうか。というかもしかしたら侵入者も畑にやってくる可能性がある。流石にリフィトーフェンのプログラムによる影響は抜けているだろうがいかんせん怖い。

リフィトーフェンのプログラムは一部の感情を暴走させてしまう代物なだけで、何かを書き換えるような事は起きないとかだったはずだ。ということはだ、あの時の侵入者は人間で言う酒に酔った状態とも言える。

 

……何かそう考えると俺は泥酔した奴を相手にして死にかけたってことになるな。ちょっとムカついてきたぞ。

 

だがそれも束の間、何かモヤモヤとしていたらいきなりM16にカットされた林檎を口へ突っ込まれた。お嬢からの差し入れらしい。美味かった。

 

 

 

 

 

 

 

241日目 晴

 

そういえばM16はなんで此処に居るのだろうか? と朝起きてそう思った。考えてみて欲しい、彼女はAR小隊の一員だ。俺を心配する気持ちは分かるのだが本来ならさっさと部隊のところに戻るべきなのでは?

 

思い立ったが吉日、早速彼女が目覚めるのを見計らってその事を聞いてみる。というか君寝袋持ってきてたのね……。

 

因みに彼女は俺の質問にこう答えた。

 

「大切な人間を心配するのは当たり前だろ? M4たちにも分かって貰ってるさ」

 

って。

 

……この時の俺は何か物凄いことを言われたような気がした。え、えぇ……? いや、えぇ?

 

こころがなんだかみだれたようなきがする

 

 

 

 

 








エンダァァァァ(ry

※ただの勘違いでした。ただ一定の好意は持たれているので悪しからず。彼女も答えは出ていませんからね。

さてジャベリンは暫く入院生活です。彼のもとには色々な人が来ますので、どうぞお楽しみに。

この作品への感想及び評価は心の支えです。皆さん、どうぞよろしくお願いいたします。それでは!


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傭兵、困るってよ。

入院するというのは随分と暇になるということだ。
ただ傷が癒えるのを待つだけで退屈でしかない、とはいえ時折知り合いがお見舞いに来てくれるためそうでもないなと思うときがある。

早く傷が治って欲しい限りだ。






242日目 曇

 

どうやら俺はM16の答えの意味を履き違えていたらしい。M16と雑談をしながら小一時間ほど考えていたら床で寝ていたポチに指摘されて気が付いたのだ。俺の様子をよく観察しているなこいつ本当。あー可愛い。そして恥ずかしい。

 

それはさておき、今日は看護師さんがやって来た。定期検査のようで、手慣れた手つきでやってくれる。

結果は怪我以外は健康体、どちらにせよ安静にしろとのこと。まあ仕方なし。まだ俺は大人しくしておく必要があるようだ。

でも看護師さんは驚いていたようで、傷の治りが早いとかなんとか言っていた。

 

早く治ると良いのだが。

 

 

 

 

 

 

 

243日目 曇

 

M16がM4達に戻ってくるよう言われたらしく、早朝辺りに帰っていった。話し相手が居なくなった以上、ポチとしか会話できないし暇になるな。なんて思っていたが、トンプソンとSAAがお見舞いに来たことによりそれは杞憂に終わった。

 

久し振りに見るSAAは、初めて出会った時より幾分かは明るくなったものの、やはり何処か陰がある。それに人見知りもまだ治っていない。看護師が来たとき一目散にトンプソンの後ろへと隠れた。トンプソンは困ったような顔をしていたが、こればかりは仕方ないだろうに。因みにポチもSAAに近づいてみたのだが、それも失敗に終わる。ポチは見るからに落ち込んでいた。

俺はこの後、検査を終えてトンプソンとSAAとで色々と世間話をした。トンプソンの同僚、スプリングフィールドが怯えるSAAに対して母性を爆発させたり、StGがコーラと称してお酒を飲ませようとしたり、SAAがそれで号泣して皆であやしたりとか……途中からトンプソンの子育てを延々と聞かされることになった。

一瞬だけそれに突っ込もうかと思っていたのだが、SAAが口に指を当てて静かにするようにサインを出してくれた事と、トンプソンが完全にお母さんみたいな顔をしていたので、黙っておいた。面白そうだったし。

 

にしても、トンプソンもああいう母性に満ちた顔をするもんなんだなぁ……。

 

 

 

 

 

 

 

245日目 晴

 

あー外に出たい!やっぱり寝っぱなしってのは辛いな!!そうだ、脱走しよう。

 

というのは冗談で(ポチにドスの聞いた声で脅されたため)そんなことはしなかった。でも本当に外に出て日向ぼっこでもしたいような気分だった。出来るなら看護師さんに頼み込んで外に出たかったぐらいだ。

 

 

 

 

 

目の前にM16と416が居なかったらな。くそう。

 

 

 

 

 

なんでこいつらが居るのかと言うとこれは大体数分前に遡る。

 

俺が外をボーッと眺めていたらいきなり病室のドアが開いて416が入ってきたんだ。416がそりゃもう真っ直ぐな瞳で

 

「看病するわ!!」

 

って言ってきたんだよ。思わずポカンとしてしまった。そしてその背後に45と9と11が立ってたんだよ。焚き付けやがったなアイツら。

45達に文句を言おうとしたらそれを416に防がれて強制的に寝かされてしまった。416が心配する気持ちは分からんでもないが強制的なのは如何なものか。そんな思いも束の間に、あれよあれよと彼女が近くの椅子に座り俺がちょっと上体を起こして、如何にも看病されていますよみたいな構図になった。ご丁寧にお高い果物つきだ。うめぇじゃねぇかオイ。

 

 

まぁそうやって甲斐甲斐しくされてたらね、今度はM16がやって来たわけです。彼女は416を一瞥して「久し振りだな」と言って俺の足がある方の椅子に座ったわけだ。416は勿論彼女を睨み付ける。それに対してM16はどこ吹く風である。

 

こうして暫くの沈黙が続いた後に、今に至るというわけだ。たすけて。

 

416は見せつけるように俺へと果物を食べさせてくるし、M16はM16でのらりくらりと416のアピールを避けながら俺と話すし……ポチに助けを求めようとしてもポチはポチで我関せずだ。

くそう!!退院したら犬のステッカー張ってやるぅ!!!

 

そんな事を考えていると、看護師さんがまた定期検査に来てくれたのだが、M16と416を見て、全てを察したような顔をしながら物凄く手早くやられた。そして帰り際に「頑張りなさいよ、プレイボーイ」とか言われた。

だから俺はプレイボーイじゃないと何度……はぁ、コーヒーが飲みたくなってきたぜ……。思い切り苦い泥水のような、昔飲んだペルシカリアのコーヒーが飲みたい。

で、まあそのあとも彼女達のやり取りは続いていたんだけど、そろそろ風呂に入る時間になったときに事件がまた起こる。

 

416が洗ってあげるとか言い始めた。ポチも俺もビックリした。M16だけが口笛を吹いて416を煽ったけどマジで止めて欲しかった。そして俺が止めろと言っても彼女は聞かなかったし、今度はM16が私もお前を洗ってやるよとか言い始めて誠にカオスな状況へと陥った。

 

……結局男の看護師さんが来てくれたお陰で窮地を脱したのだが、いささか心臓に悪かった。

まぁ俺が寝るときにいきなり二人がベッドに入ってきたんですけどね!!!

 

寝れない!!こいつらなんでこんなに女性特有の良い香りがムンムンなんだよ畜生!!!寝れないからこうやって日記書いてるが本当にやめていただきたく。ポチは助けてくれないしどうすりゃいいんだ。

 

 

 

……本当にどうすりゃいいんだ。









ジャベリンくん……修羅場?
まだほのぼのは続きます。彼が退院した暁にはまた大変になっていきますがね()
次回は未だ行方不明だったあの男が現れる……?

この作品への感想及び評価は心の支えです。どうぞ、よろしくお願いいたします!それでは!!


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番外編 武器庫の日常 その2

例えジャベリンが入院していようと武器庫は動く、仕事なくして会社は成り立たないのだ。
とはいえ任務ばかりであるわけではない。隊員たちにも日常はあるのだ……。





1.盾部隊の狂信者

 

 

「今日も健やかな日常を……エイメン」

 

 

武器庫の社宅の一室、質素な祭壇の前で修道女のような服装をした長い赤髪の女性が一人祈っている。彼女のコードネームは『イージス』。盾部隊の隊員だ。彼女はいつも決まった時間に何かへと祈っている。その祈る姿は他隊員曰く、“とてつもなく美しく神々しい”とのこと。

 

それだけ彼女が熱心に祈っている“神”というのは随分と素晴らしい神様であるのだろう。

 

 

「全ては貴方に捧げます……マーカス社長、スクトゥム隊長」

 

 

彼女がふとそんな事を言う。彼女の前の祭壇には、二人の男の肖像画と、そして、供物と思われるナニカがあった。

……どうやら彼女の言う“神”とはこの二人のようだ。

 

 

「孤児であった私をここまで育て上げて頂き、感謝いたします……そして貴方方を害する者達を我が身体で絶対に御守りいたします事を誓います……」

 

 

イージスは立ち上がり部屋を後にする。

 

誰かとすれ違う度に挨拶をしていく。柔和な笑みを浮かべた彼女の顔は、まるで聖母のようだった。例えその裏に狂気が宿っていようとも、それを暴ける存在は誰も居ない。この秘密は、彼女のみが持ちうるものである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2.武器庫の日本人達

 

 

「皆集まったな」

 

「おう」

 

「ああ」

 

「じゃあ今から第45回日本会議を始める」

 

 

ここは武器庫の1号館にある会議室。何故か用意されているちゃぶ台にて、三人の隊員、「ムラマサ」「シラカバ」「シゲドウ」の日本出身の隊員達が集まっていた。彼らは不定期に『日本会議』なるものを開いており、会議と言う名の雑談を行っている。ただ今回は随分と切迫しているようで、皆真面目な顔をしていた。

本日の司会役であるムラマサが口を開く。

 

 

「今回の議題は“米の調達方法”だ」

 

「やっぱりか……そろそろジャポニカ米が無くなってきてるからな……あと一週間持てば良い方だ」

 

「タイ米はいやじゃ……タイ米はいやなんじゃ……」

 

「1年前の悪夢のような事はもうしないぞシゲドウ。二度と兵站部に調達は頼まんからな」

 

 

彼らは深刻な顔でそんな事を言う。

 

……彼らは日本人であるのか米に対する執着が恐ろしい。何せ任務中米を食べるために即席で炊飯器を作ったりどこぞの大昔の帝国軍のような事を仕出かすぐらいだ。

会議が始まる。まず始めにシラカバが提案をした。

 

「俺達が調達すれば良いんじゃないか?」

 

「何ヵ月分?」

 

「3ヶ月」

 

「…………俺達の給料半年は吹き飛ぶぞ」

 

 

却下された。因みにこの時代の米というのは随分と貴重、というか米、しかもジャポニカ米を食べる文化圏となると最早無くなっても久しく、生産者は皆無に等しい。それ故に希少価値が爆上がりして中々手を出せないぐらいの値段となっている。

 

ダメかぁ……と落ち込むシラカバ。今度はシゲドウが提案をする。

 

 

「整備士たちに遺伝子云々でやらせてみては?」

 

「アイツらそれやってE.L.I.D産み出してただろうが却下ァ!!」

 

 

やはり却下される。

シゲドウも見るからに落胆した。どんよりとした空気が漂い始め、議論は平行線へと行くかと思いきや、司会役のムラマサの天才的な閃きによって終止符が打たれた。

 

 

「……俺達が作れば良いんじゃね?」

 

「……」

 

「……」

 

 

皆その発想はなかったという顔をする。一先ずの方針が決まった3人は早速どうするかと話し合うことにした。

 

 

「土地はどうする?」

 

「ジャガーソンさんの所使うか?」

 

「あの人案外ちゃっかりしてるからお金は取られるんじゃね?というかそれ以前に種籾はどうするのさ」

 

「安心しろもう注文した。そして俺の貯金を犠牲に補充分のジャポニカ米を買っておいた」

 

「「ムラマサ有能」」

 

 

こうしてトントン拍子で話は片付いていく。

 

 

後に彼らが武器庫産の農作物を売り出すのは別のお話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3.整備士たちの発明品

 

 

「~♪」

 

 

早朝、静かな物置。誰も居ないそこに、武器庫へ所属している戦術人形、『M500』が一人掃除を行っていた。どうにも整備士たちに頼まれたようで、はたきと雑巾を持ってぱたぱたとしている。

 

 

「まっさかこんなところがあるとはねぇ~」

 

 

彼女が掃除をしている物置、ここは整備士たちが作った試作品で一杯であり、彼らに毒された(?)M500にとっては宝の山と言っても等しいぐらいだ。

彼女は早速その試作品を触ってみたりしている。

 

 

「これは……テーザーガン? 電池とかは入ってないから使えないけど……こんなものも作ってたりしてたのかぁ……」

 

「それにこれは…外骨格ね。武器庫の人達が使えるようにしてたのかな? へし折れてたりするし…廃棄品?」

 

「あ、ドローンもある! 機銃みたいなのが着いてるし火力支援用ね!」

 

 

ガサガサと掃除そっちのけで物置を漁り始めたM500、遂には奥の奥まで到達し、とあるものを見つけた。

 

 

「これは……人形?」

 

 

一体の人形である。大事そうに保管されているそれはまるで彫刻のような美しいものであった。

 

彼女はそれに触れようとする。

 

 

「M500、待て」

 

「ひゃっ!?」

 

 

が、いつの間に起きたのだろうか、整備士の一人が彼女のすぐ後ろに立っていた。

 

 

「なんだアーノルドかぁ……もう、ビックリさせないでよ」

 

「それについては謝る。でもその人形からは離れてくれ」

 

「はーい……ところで、この人形ってなんなの?」

 

 

M500は人形へ指を差す。

アーノルドと呼ばれた整備士は、それを無視するかのようにその人形へ大きな布をかけていた。M500はそれを見て思わず口を尖らせた。

 

 

「教えてくれたっていいじゃない?」

 

「……こいつは俺の娘みたいなもんだ。余り触れないでくれ」

 

「……ごめんなさい」

 

 

彼の声色に思わず謝るM500。アーノルドは別に構わないとだけ伝えて物置を出ていった。

M500は一人ぽつんと取り残される。

 

 

「まあいっか。掃除の続きしよっと」

 

 

だがM500は別段気にしていたような様子もなく、またはたきと雑巾をもって掃除を再開する。

とはいえやはりあの人形が気になって仕方がない……が、アーノルドを怒らせてしまうのも嫌なのでやめておいた。

 

 

(いつか分かるときが来るだろうし、我慢我慢。好奇心を働かせ過ぎたら危ないもの)

 

 

M500はまたぱたぱたとはたきを振るう。掃除が終われば、また何かを作ってみようと予定を決めたのだった。

 

 

 








今回の登場人物。

1.盾部隊の狂信者

コードネーム≪イージス≫

盾部隊のやべーやつ。何時も修道女のような服装をしており、仲間からは“戦うシスター”とか呼ばれてる。
社長と盾部隊隊長を盲信しており、彼らに死ねと言われたら喜んで死ぬぐらい。
最近同じ部隊の≪アイギス≫という隊員へ布教しようか迷ってる。



2.武器庫の日本人達

コードネーム≪ムラマサ≫

剣部隊の戦場に立つとやべーやつ。米に対して異常な執着心を持っており、レーションに米がなかったらぶちギレるぐらい。最近というかさっき米のために貯金の半分が無くなった。因みに漢字表記にすると村正。


コードネーム≪シラカバ≫

盾部隊の密造酒作ったやべーやつ。こいつも米に対して異常な執着心がある。即席で炊飯器を作った人間で、盾部隊の奴らがドン引きした。最近は米がプリントされたシャツを作ろうか迷ってる。因みに漢字表記にすると白樺。


コードネーム≪シゲドウ≫

弓部隊の変態的狙撃を達成したやべーやつ。跳弾によって1km先の目標を殺してる。例に漏れず米キチ。自分の身体は米でできてるとか言ってる。最近自分が米を食べるには自分自身が米に成れば良いとかいって整備士'sに突撃したのをスリンガーに全力で止められた。因みに漢字表記にすると重藤。


3.整備士たちの発明品

M500

整備士に毒されて発明ジャンキーになってる戦術人形。未だにコードネームを貰えてないことに少し不満げ。
最近LWMMGが沼に入りかけてるので歓喜している。


アーノルド

この基地にいる二人の整備士のうち一人。何か闇がありそうなそうでなさそうな男。元々は人形の製造工場で働いていたとか噂されている。最近相方が面白いことを思い付いたようなのでそれを楽しみにしてる。







武器庫は変態が多い(確信)
いやー、マーカス社長の人望って凄いなー……すごいよな~(棒)

一先ず次回はちゃんとジャベリンくんのところに戻ります。それでは!!


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傭兵、あの男だってよ。

。。。。

やっと面倒事を終わらせた。グリフィンにせよ鉄血にせよ、随分私にご執心のようだ。
まぁいい、マーカスとの約束もある、早くジャベリンのところへ向かうとしよう。






 

246日目 晴

 

昨日の事もあってか俺は寝不足である。結局眠ることが出来たのは朝の4時ぐらいで、正直に言っても寝たという感覚がない。M16と416には悪いが俺の健やかなる療養をするためにも帰って貰うことにした。これ以上あの二人に暴れられると、肉体的にも精神的にも中々クるものがある。今の精神安定剤はポチだけだ。

こいつはマジで癒しなのだ。疲れた時にいつの間にか寄り添ってくれている……犬かな?犬だな。しかも今は装甲が着いてないノーマルな状態だからな……これにオスカーも付いてくればそこには楽園(エデン)が形成される。後はG11にSOPという存在も有れば俺は土に還るのだろう。浄化され過ぎて存在が消える。

 

それはそうとして、今日は誰かが来るという訳でもなく、何時もの如く看護師さんが検査に来てくれた。てきぱきと手慣れた手付きで作業を進めてくれる彼女。こういう人がうちの会社に来てくれると案外士気も上がったりするんだよなぁ……美人さんだし。

 

 

 

…………ちょっと恥ずかしい話なのだが上記に記した言葉を無意識に俺は言っていたらしい。幸い、彼女は気にしていない素振りだったので大事になるなんて事は無かったが……気を付けるとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

247日目 曇

 

じっとりとした暑さを感じながら過ごす病院の一室、俺の目の前には一番会いたくてぶん殴りたくて堪らなかったあの野郎が来ていた。

 

リフィトーフェンだ。

 

ある意味俺が片目を失った原因だしハイエンドモデルに目をつけられる原因でもある。蝶事件以降何処をほっつき歩いていたんだと小一時間ぐらい詰問してやりたいところだったが、その前にポチがリフィトーフェンを上部アームで張り倒して、

 

「何処をほっつき歩いてたんですかこの馬鹿ーーーーッッッ!!!!!ご主人の無茶もありますけどこんなことになったのは八割がたお父さんのせいなんですからねーーーッッ!!!もーーーーー!!!!」

 

って今までに類を見ないぐらい怒って、ゲシゲシとアイツを踏みつけてた。

 

……まあなんだ、ポチもやっぱり思うところがあるんだろう。ここまで声を荒げるポチを見たのは初めてだ。まあリフィトーフェンは笑って謝ってたけど。こいつ反省の色全くないな?

そんなリフィトーフェンはポチを小脇に抱えたかと思ったらそのまま椅子に座って、俺に改めて謝ってきた。

まさかここまで酷いことになるとは思わなかった、許してくれ。ってさ。許したよ、非があるとはいえ一応事態の収束に尽力してたわけだし……。

 

まぁ、

 

「それはそうとジャベリン、代理人に片目を抉られた時にどれぐらい興奮したんだ? ちょっとそういうデータが欲しくてね」

 

とか宣ったので思い切り殴ってポチにも渾身のタックルやらせたんですけどね。

頼むからもうちょっと慮れマッドサイエンティスト。そして何でそれを知ってる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

248日目 晴

 

リフィトーフェンはまだ病室に居る。まあ別にいいんだが……。

 

一応こいつがお見舞いに来てくれたってのは事実な訳で、ご丁寧にもジャガーソンさんとこの梨を持ってきていた。しかも手際よく剥いていくからちょっとムカついた。ムカつくけど物凄く美味い。

……梨を食い終わったのを皮切りに、リフィトーフェンは怪しい機械を取り出した。義眼をアップグレードするつもりのようで、早速俺の義眼に接続しようとしてきた。ちょっといきなり過ぎて彼の行為を止めて、先ずは何故俺が目を抉られて義眼を埋め込まれていることを知ってるのか聞いた。

彼はさも当然のように「マーカスから聞いた」と言う。よし社長退院したらぶん殴ってやる……と思ってたら、それに続いてリフィトーフェンは

「アイツが私に“ジャベリンの義眼は確実に何かしら手を加えられてしまうだろうからアイツが入院した時に義眼の強化でもしてやってくれ”とも言ってたぞ。愛されてるな君は」

と言ったもんだからその考えはたち消えた。そうか、あの社長にも思いやりはあるんだなって。

気を取り直して、俺は大人しく義眼のアップグレードをしてもらった。リフィトーフェンは俺の義眼を弄りながら、蝶事件以降何をしていたのか話してくれた。元々は死ぬつもりだったらしいのだが、死のうにも死ねず、仕方がないのでそのまま各地を放浪なんてしてたらしい。いや俺のところ来てくれれば良かったのでは?と聞いてみたら

 

「君はE.L.I.Dやら鉄血やらグリフィンに追いかけられていた状態でこんなところに行けると思うかね?」

 

……思わないです。何でグリフィンに追いかけられてるのかはさておき、中々大変だな本当。

 

さて雑談もさておき義眼の強化が終わった。リフィトーフェンが言うには認識阻害はそのまま、追加機能に暗視装置。そして対ハッキングに対する強固なファイアウォール、あと勝手に起動してしまう不具合の修正を行ったらしい。じゃあ眼帯要らないのでは?ってなったのだが眼帯にもある程度のセキュリティを掛けたので着けろと言われた。いやはや、精々30分位しか話してなかったのにその間にそんな機能をつける辺り、とんだ天才だと思う。ペルシカリアと同等なんじゃないかな。

 

義眼の強化を終えたリフィトーフェンはまた来るとだけ言って帰っていった。ちょっと急いでいるような顔をしていたがそれがどうしてなのか、俺には分からない。

 

ポチももう少し喋りたそうにしてたのに何なんだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

248日目 続き

 

リフィトーフェンの野郎グリフィンに指名手配されてやがった。マジでなにしてんだこいつ。

 

 

 





246日目の一幕

「こんな美人さんが居たら会社も元気になりそうだよなぁ……」

「あら、嬉しいことを言うわね?」

「あっ……聞こえてました?」

「全部ね。無意識に口説くってのもプレイボーイらしいわ」

「いや…だから」

「ふふっ、冗談よ」

「……ははは」

「でも、私も案外まんざらでもないのよね」

「はっ!?」

≪はぁ!?≫

「それじゃあね、ジャベリンさん?」

「え、えぇ……?」

≪ご主人、メモが≫

「おう? ……オイゲンさんか」

≪モテモテですねぇ≫

「嫌だよ俺こんなエロゲみたいな主人公…」










看護師さん口説かないの?とか言われたのでやりました(清々した顔)

次回はちょいとスリンガーくん視点に入ります。それでは!


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傭兵、むさいってよ。

249日目 晴

 

昨日の詳細を語ろう。リフィトーフェンが足早に帰っていって数分後、いきなりグリフィンの戦術人形達が突入してきたのだ。俺とポチは何事かと思っていたらターゲットをロストだの病室の人間は無事だのと誰かと通信したかと思いきやすぐに外へ出ていった。

 

俺は何だったんだろうかとポチと話していたら、今度は複数の護衛を連れたヘリアントスさんがやって来た。俺は随分と大仰なお見舞いですねぇ、と皮肉気味にヘリアントスさんへと声を掛けたのだが、今はそれどころじゃないと怒られた。まあ仕方なし。

気を取り直して何があったのか彼女に聞いてみたら、「貴様には関係無いことだ」と返された。

確かにそうだったな、けど気になるんだよなぁ……。

俺はそう思いながらトンプソン経由で聞いてみようと心に決めておいた。

とはいえ俺も一応リフィトーフェンと接触したということで事情聴取はされた。ちゃんと包み隠さず言ったよ俺は。義眼の事は誤魔化したけど。ヘリアントスさんに話したら絶対ペルシカリアにバレるだろうし……。

 

まあこういうわけでリフィトーフェンが指名手配されているってことが分かってしまった。アイツの帰り際のセリフから鑑みるに絶対また来るのは確定なんだが面倒な事は持ってこないよな……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

250日目 晴

 

今日は何もない1日だった。誰かがお見舞いに来てくれた訳でもなく、トラブルが起きてしまった訳でもない。ちょっとだけ暇なこの昼下がりには紅茶を一杯飲んでいたいのだけれども生憎とティーカップも茶葉も何もない。唯一飲めるのはコップに入った水だけだ。あとは時間通りにやってくる健康的な食事と冷蔵庫の中にある果物があるぐらいか。

なんとなく蜜柑を食べながらポチと話していても、何かしらのイベントも起きることが無かった。オイゲンさんが何時もより丁寧に検査してくれたぐらいか……。

 

嵐の前の静けさとは言うが、何もないと良いもんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

251日目 曇

 

やあジャベリンだ。今日はどんよりとした雲を眺めながらポチと談笑して過ごしてたんだけどあまり気分が晴れないね。やはり天気というのは晴れ渡った青空を眺めるか、雨粒が植物に当たって跳ねる様(あまり見ることは出来ない光景だが)を眺めるのが一番良いと思うんだ。

いっそのこと外に出たい。今なら何もかも平気な気がする。

 

 

 

面倒臭い野郎三人組が居るからな!!!お前らのことだぞ社長リフィトーフェンジャガーソンさん!!!

 

 

 

後でクルーガー社長も来るの!?はぁっ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

251日目 続き つらい

 

部屋の中がむさ苦しい。野郎五人も居るからな。何が悲しくて筋肉ムキムキのおっさん二人と痩せてるけど生命力凄そうなおっさん二人に囲まれてなきゃならんのだ……。

それとグリフィンに指名手配されている筈のリフィトーフェンがクルーガー社長と仲良く談笑してるのが大いに解せない。というかクルーガー社長が珍しく私服で来てるもんだからとっても驚いた。

 

しかし暑苦しい。ポチは避難するようにベッドの下に逃げてるしなんだこれは……右を向けば筋肉、左を向けば筋肉。なんで社長とクルーガー社長が俺を挟んでるんですかね。筋肉祭りだよこの野郎。そしてジャガーソンさん、その後ろに置いている大量の農機具とかは何ですか。リフィトーフェン監修のハイテク農具? 要らないです。リフィトーフェン本当にこいつ自由にやってやがるなオイコラ。

一先ずクルーガー社長になんでリフィトーフェンを捕まえないのか聞いたのだが、クルーガー社長は悪い顔をしながら

「私は今オフだ。ただ昔の知り合いと再会しただけでありそいつが指名手配されていることなんて知らんよ」

と言った。

 

正直に言ってこの人よく社長やってられるな……バレたら怖いぞ……。

 

そして社長は社長で物凄い速度でリンゴを剥いては食べてるしアンタお見舞いに来たんじゃないかと問い詰めたいところだが直ぐにジャガーソンさんと話し始めたもんでそんなことは出来なかった。

結局このむさ苦しい空間は五時間ぐらい続いたし、その上オイゲンさんが何とも言えないような微妙な顔をして検査をしてくれた。

 

で……この野郎共は帰るのかと思ったら、まだここに居るつもりらしく、寝袋もご丁寧に用意をしていた。頼むからお前らどっかでテント張ってやっててくれ。

 

頼むから……おっさんに囲まれるのは……勘弁してくれ……!!

 







やっぱりやって来ちゃうんですよこいつら……たまたま休日が重なったからってさ、集まって部下のお見舞いに行っちゃうんだよな……ノリが男友達なのよ……というかそういうノリが書きたくなっただけなんや……許して。

とまぁほのぼの(?)なお話でした。
なんかクルーガーさんお茶目なところ似合いそうですよねぇ……。

この作品への感想及び評価は心の支えです。是非ともよろしくお願いします!それではまた今度!


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番外編 案山子と時々その他と。前半

130000UA、お気に入り1000件、総合評価2000超えありがとうございます!!今後とも傭兵日記をよろしいお願いします!!!

さて、ジャベリンくんが入院中だっていってもやっぱり他の日常は続くわけで……ということで最近描写してなかったジャベリンくんの畑の描写をば……それはともかくスケアクロウを愛でたい……分かるよね……分かって……。


鉄血工造ハイエンドモデル、『スケアクロウ』の朝は早い。毎日午前5時にぱっちりと目が覚めて、きっちり15分で寝間着から着替え、15分丁度でエプロンを着けて朝食を作る。その間に彼女は頭の中で今日のスケジュールを立てていた。

 

(今日は確か……何時もの家畜の世話に野菜へ農薬散布、そして雑草の除去だったかしら)

 

スケアクロウはそう順序だてながら料理……変装をしてS10地区の居住区まで買いに行った合成肉と、高価ながらも何とか買えた卵を一緒に焼いた“ハムエッグ”に近いもの、そしてジャベリンが置いていった固形の某総合栄養食を彷彿とさせるレーションを皿へと盛り付けていく。

スケアクロウは彩りの無い食事だ、と思いながらエプロンを脱ぎ、そのまま最近増築した時に作った別の寝室へと向かう。

 

「ちゃんと起きてるといいのだけれど……」

 

ぎしぎしと、少しだけ軋む床板を踏みしめて歩く。これは直す必要があるかな、と呟きながら『Executioner』と書かれたネームプレートがぶら下がったドアの前に彼女はたどり着いた。

 

「処刑人、処刑人、朝食の用意が出来ましたよ」

 

スケアクロウはドアを三回ノックする。返事は返されない。スケアクロウはため息を付いて、もう一度ノックをする。

 

「処刑人、起きてますか?」

 

『うあー…』

 

返ってきたのは唸り声のみ。スケアクロウは再度ため息を付き、直接彼女を起こそうとしてドアを開けた。

 

「処刑人、夜更かしは駄目だとあれほと言ったのに何をして………………」

 

「うぇ…あっちぃ…」

 

「あら、おはようスケアクロウ」

 

スケアクロウは突然眼前に広がった光景に思わず固まってしまう。何せ汗だくの処刑人と昨日ここにやって来たばかりの『侵入者(イントゥルーダー)』が一緒のベッドで寝ていたからだ。未だ眠る処刑人はいかにも寝苦しそうに、侵入者は随分と満足げにしながらベッドの端に座っていた。

 

「…………おはようございます、侵入者。何故貴女が処刑人と一緒に寝ているのか全くもって理解不能ではありますが、朝食です。早く来て下さい」

 

「分かったわ。さぁ処刑人ちゃん、起きましょ?」

 

「うぁい……」

 

スケアクロウは背後で起こる秘め事のような光景を想像しながら、三度目のため息を吐いた。

 

(侵入者には何をやらせましょうか……)

 

彼女はそう思いながら、少し軋んだ音の鳴る廊下を歩くのだった。

 

 

 

 

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___

 

 

 

「「「いただきます」」」

 

所変わってダイニング。スケアクロウ、処刑人、侵入者の三名がそれぞれテーブルへと座り、各自好きなように食事を始めていた。静かな時間が過ぎていく中、ふと処刑人が食事の手を止めてスケアクロウを見る。

 

「そういえばスケアクロウ、今日は何をするんだ?」

 

「今日は何時も通り家畜の世話と草刈り、あとは農薬散布ですね」

 

「りょうかーい」

 

それを聞いた処刑人は早々に食事を食べ終えて、食器を流し台へと置いた後に飛び出すように外へと出ていった。残された侵入者とスケアクロウはまた静かに食べ始める。

 

「……それで、私は何をすればいいのかしら?」

 

「侵入者は取り敢えず服を見繕いましょうか」

 

「あら楽しみ。どんなものが着せられるのでしょうね?」

 

楽しそうに笑う侵入者。スケアクロウはそれを横目で見ながら朝食を食べ終えて、食器を片付けていく。侵入者も丁度食べ終えたようなのか、彼女も食器を片付けるために、スケアクロウの皿の上に置いていった。スケアクロウは思わず彼女を見る。

 

「……侵入者」

 

「だって、そっちの方が効率的ではなくて?」

 

「はぁ……分かりました」

 

が、侵入者はただ悠然とした顔で居るだけだったので、スケアクロウは直ぐに考えても無駄かと思った。そして渋々と流し台へと持っていく。

次にスケアクロウは侵入者に着いてくるように伝え、自分の寝室へと向かった。侵入者は「これから襲われるのね」と茶化していたが、彼女はそれを無視。

 

「あら、つれないのね」

 

くすくすと侵入者は笑う。スケアクロウは何となく頭痛を感じながらも自身のクローゼットを開き、使えそうな服を彼女へと渡しておいた。

 

「侵入者、一先ずそれに着替えてください。私は先に畑の方へ向かいます、ちゃんと来てくださいね?」

 

「はいはい」

 

侵入者の返事を聞き流してスケアクロウは部屋から出る。今度は台所へ行き、そして食器棚から水筒を取り出す。処刑人が忘れていった分と彼女と侵入者の飲み物を用意するためだ。

彼女は早急に水筒へメグ指揮官から貰った麦茶を入れる。

 

「あの指揮官には困ったものよね、何者かも分からないこっちに随分と手厚くしてくれるなんて……」

 

彼女はそうひとりごちる。

かくいうこの水筒だってメグ指揮官から貰ったものだ。何となく彼女はそれを見つめて笑みを溢す。

 

「さてと、処刑人にも水筒を渡さないと」

 

スケアクロウは外へ出る。さんさんと降りそそぐ太陽の光を眩しく思いながら麦わら帽子を被り、先ずは処刑人の居る家畜小屋まで向かう。

 

「処刑人、居ますか?」

 

「居るぞ~……おぉっ!?暴れるなって!!」

 

処刑人の声が奥で聞こえる。それと同時に鶏が数羽ほどこちらへ飛び出してきた。スケアクロウはそれを難なく避けて声のした方向へ向かう。そこには暴れる鶏を掴んでいる処刑人の姿があった。スケアクロウはちょっとだけ笑い、水筒を差し出した。

 

「今日は唐揚げをご所望ですか、処刑人?」

 

「おっ、サンキュ。いや、そうでもないんだよなぁ……ちょっと何となく捕まえてただけだよ」

 

「そうですか……最近気温が上がりつつあります。家畜たちにせよ貴女にせよしっかり涼んでおいてください」

 

「了解」

 

スケアクロウはそう言い残し、そのまま畑へと向かう。恐らく畑には侵入者が待っているだろう。スケアクロウは歩く。歩いている間に、侵入者に何をやらせようかと考えていく。

 

「一先ずは草刈りでもやらしておきますか……」

 

そうと決まればもう早い。スケアクロウは一度物置まで向かい、草刈り機を回収し、そして再度畑へと向かうのであった。





その頃のジャベリンくん。。。

「筋肉祭り怖い…」



なんかこう、スケアクロウって仕事ができて面倒見の良いおねーさんみたいな感じなんですよ……皆分かってくれないか……?分かって……。いつか彼女メインで書いてみたい。でも先行者の方か居た……嬉しい。

作品への感想及び評価は執筆の友です。どうぞ、よろしくお願いします!それでは!

7/5 ルビの振り忘れを修正、そして誤字報告ありがとうございます。


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案山子と時々その他と 後半

寝落ち太郎で更新遅れちまった……。アカンて……。
あ、暫く更新三日に一回のペースに落とします()
一先ずジャベリン農園のお話は終わりへ行きます。それではどーぞ。


「待ちくたびれたわ、スケアクロウ」

 

「それは申し訳ない限りです。そこに立たれると感電しますよ?」

 

「おっとっと」

 

前回と場所が変わって野菜畑。スケアクロウが草刈り機片手にそこへ向かえば、獣避けの電柵の傍らに侵入者が立っていた。今の彼女の姿は、デニム生地のホットパンツに黒い長袖のシンプルな姿。見るものによっては何処かのモデルのようにも見えるだろう。

 

「お気をつけ下さいませ。下手をすれば一瞬で機能停止してしまいますから」

 

「あら、この電柵は随分と殺意が高いのねぇ」

 

侵入者は薄ら笑いを浮かべながらスケアクロウへと近付く。スケアクロウは草刈り機を置いた後に、彼女へ防護眼鏡と軍手と水筒を渡す。勿論侵入者は怪訝な顔をするが、すぐにその意図を察した。

 

「手伝えってことね、何をすればいいの?」

 

「一先ずは先ほど歩いてきたであろう道の草刈りをお願いします」

 

はいはい。と侵入者はスケアクロウから草刈り機を受け取る。それを見届けたスケアクロウは農薬を蒔こうと畑の中へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

「……スケアクロウ」

 

「ん、何でしょうか?」

 

「草刈り機、どうやってエンジンを点けるのかしら?」

 

「…………」

 

スケアクロウは頭を抱えた。

 

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___________

_____

__

 

 

 

 

「じゃあ、頼みましたよ」

 

「ええ、任せなさい」

 

耳に響く小さな駆動音と共に草の刈られる音が聞こえる。スケアクロウはそれをBGMとしながら農薬を用意する。この農薬はメグ指揮官から頂いたもので、年に二回、ドローンで薄く散布するように言われている。

 

さて、今から彼女はその農薬を撒いていく訳なのだが、ドローンが見当たらない。一体どうやって撒くのだろうか、わからない。だがそこはスケアクロウ。彼女が今からやらんとすることは、感の良い諸氏は何となく分かるだろう。

 

「さて、やりましょうか」

 

彼女の付近を何かが飛ぶ。黒光りするそれは、スケアクロウが戦闘時に使用する小型ビットだ。ひゅんひゅんと飛ぶそれと共にスケアクロウも宙へと浮かぶ。彼女がどうやって宙へと浮かべているのか不明ではあるが、彼女にとってはこっちの方が随分と楽であるらしい。

スケアクロウはそのまま畑の上空、大体自身は2、3m上空へ、小型ビットは後方のそれより高く浮かぶ。

 

「こういう時は本当に楽ですわね…」

 

ふよふよと進み始める彼女。小型ビットはそれに追従し、農薬を散布していく。万が一にでも吸引してしまえば大変なことになってしまうがそこはスケアクロウ、いつの間にかマスクを着けていた。

 

「二番機はもう少し左へ、三番機はそのまま、一番、四番は右に」

 

小型ビットへと的確に指示を出して行きながら着実に仕事を進めていく。

 

「……中々暑いですね」

 

汗を一筋垂らしながら飛ぶスケアクロウ。帽子を被っているとはいえ、天高く地上を照らし暖める太陽には中々耐えられないようだ。彼女は服の袖で汗を拭う。S10地区は比較的自然が多く、そしてそれなりに湿度も高い。

 

「そろそろ休憩を……ん?」

 

大方の散布を終えて、スケアクロウが汗を拭いながら地面に降り立つ。ふと、後ろから何かが走ってくる音が聞こえてきた。彼女はすぐに振り向くと、そこには、金髪のツインテール、そして眼帯を着けた特徴的な少女がこちらへ駆け寄ってきていた。

 

「スーさーん!!お手伝いにきたよー!!」

 

「あら、スコーピオン。基地のお仕事はよろしくて?」

 

「指揮官に許可貰ったから大丈夫!」

 

スケアクロウの事を『スーさん』と呼ぶこの少女は、『スコーピオン』。近くのS10地区基地へ所属する戦術人形だ。見るからにわんぱくな彼女はスケアクロウの隣へとやってくる。

 

「最近の畑はどう?」

 

「ようやく野菜が元気になり始めたぐらいですわ。一時期萎びててどうなるかと肝を冷やしたのは良い思い出です」

 

「人形に肝なんてあるかなぁ?」

 

「便宜上は、ですよ」

 

なにそれー。と笑うスコーピオン。一先ずは、一緒に木陰へと座り込み、水筒の麦茶を飲む。キンキンに冷えた麦茶は彼女の喉を潤し、心身共にリラックスをさせてくれる。

 

「あ、スーさんスーさん」

 

「はい?」

 

「うちの基地、フェンフちゃん居るじゃん。あの子最近おめかしするようになったんだけど何か知らない?」

 

「いえ……私は基本そちらには寄らないものでして」

 

「ふーん、そっかー」

 

蝉の声に耳を傾けながら畑を眺める二人。スケアクロウは帽子を脱いだ。しかし、なぜこんなにも暑いのか、スケアクロウはそう思う。ここS10地区は崩壊液の影響をそこまで受けていないグリーンゾーンとはいえ、気候自体は熱帯とかそういうものでも無かった気がしてならない。

彼女は、自分の思い違いなのだろうかと考えつつ、農薬散布を終えた後は何をしようかと考える。

 

「そういえばスーさん」

 

「なんでしょう」

 

スケアクロウはスコーピオンに声を掛けられて一旦思考を止める。

 

「また新しい人来たんだね」

 

「あぁ…侵入…インティのことですか」

 

どうやらスコーピオンはもう侵入者と遭遇してしまっていたようだ。スケアクロウは適当に彼女の名前を作りそれをスコーピオンへと伝えておく。

スコーピオンは特に気にすることもなくそれを受け入れた。いや、流石にもう少し疑えとスケアクロウは心の中で苦笑する。まぁ、それはとにかくもう暫く休憩を取ろうかとスケアクロウがまた畑を眺め始めたら、今度はスコーピオンが思い出したかのように言う。

 

「それにしてもその、インティさんだっけ? あの人結構凄いよ」

 

「と、言いますと?」

 

「地面の上で俯せで寝てたもん」

 

「なんでそれを早く言わないんですか?」

 

スケアクロウは走り出した。

 

 

…………………………………………

……………………………

…………………

………

 

 

「あー……まさかこんな些細なことで倒れちゃうなんて……」

 

「ご自愛くださいませ、侵入者」

 

所変わってスケアクロウ達が寝泊まりしている小屋。ソファーに濡れタオルを乗せた侵入者と、その隣で椅子に座って氷嚢を作っているスケアクロウが居た。因みにスコーピオンは基地へと帰らせた。

侵入者が倒れてしまった理由、それは単純に仕事に熱中しすぎて自身の排熱を忘れていたという、普段の彼女なら有り得ない事を仕出かした結果である。

「何をどうしたら自分の排熱を忘れるなんてことが出来るのでしょうね」

 

「そんな皮肉っぽく言わないで頂戴、スケアクロウ。誰にだって失敗はあるって本に書いてあったわ」

 

「何ですのその自己啓発を促すような本は……」

 

スケアクロウは呆れ気味に氷嚢を侵入者へと渡した。侵入者はそれを受け取って額へと当てる。

 

「ふぅ……助かるわ」

 

「それは何よりですわ」

 

スケアクロウは立ち上がる。そしてそれと同時に扉が勢いよく開いた。

 

「スケアクロウ!!飯にしようぜ!!!」

 

「処刑人……ジャベリンにも言われたでしょう、扉はゆっくりと開くように」

 

「おっと、すまんすまん」

 

処刑人だ。どうやら作業を終えて帰って来たらしい。スケアクロウは随分と早いようなと考えながら時計を見ると、もう短針が7の数字を指していた。意外に時間が経過していたらしい。スケアクロウは仕方ないと台所まで行き、食材やら食器やらを用意していく。

 

「スケアクロウ、今日のご飯は?」

 

「最近あの基地から野菜を貰ったので、野菜炒めですわ」

 

「おいおい、肉はねぇのかよ?」

 

そう言ってゴネる処刑人。まあゴネたところで何か変わるということでもない訳であり、スケアクロウはそれを右から左へと聞き流しておいた。

 

「処刑人ちゃん~」

 

「んぁ、どうしたんだ侵入者?」

 

「今日も一緒に寝ましょ?」

 

「えぇ……嫌だよ、暑いし」

 

料理を始めたスケアクロウの後ろでは夜のお誘いのようなものが始まっている。昔の侵入者はこんなことするはずも無かったような気がするが……まああの男(リフィトーフェン)のプログラムの残滓が残っているのだろう。

 

「いいじゃないの、暑いのはお互い様よ?」

 

「お前が良くても俺が嫌なんだよ!侵入者、お前絶対何かの本の影響受けてんじゃん!」

 

「大丈夫よ処刑人ちゃん、私が読んだのは女の子が絡み合う本だから」

 

「何読んでんだお前!?」

 

……そういうわけでも無かったようだ。

侵入者、彼女はどうにも本からの影響を受けやすい。記憶に新しいのはとある漫画を読んで爆破趣味に一度目覚めた時だ。あの時は代理人が居なければ危うく弾薬庫が大爆発するところであった。

 

「あ、スケアクロウでもいいのよ?」

 

「突然私に話を振らないでくださいまし!?」

 

侵入者の突然の発言にわちゃわちゃと騒がしくなっていくこの小屋。侵入者はスケアクロウに絡み付こうとしてくるし、処刑人は処刑人で飯はまだかと催促し続けている。

スケアクロウは、どうにも平和に終わりそうじゃないなと考えつつ侵入者の追撃を避けながら、料理を作り続けるのであった。







侵入者って本に凄く影響受けそうなんですよね。特にうちの侵入者は……だよな?
さてさて次回はまたもやジャベリンくんの病室へ……。
筋肉式治療をば(?)

この作品への感想及び評価は心の支えです!!!どうぞよろしくお願いします!!それでは!!


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傭兵、暇を出すってよ

また、同好の志が一人消えてしまった……。
悲しきことかな。

さて、ジャベリンくんの入院生活は続く。彼を心配する人は案外多いようです。それではどーぞ!







252日目 曇

 

やっと筋肉の圧力から抜け出すことが出来た。今はリフィトーフェンだけが残っている。帰れ。こいつ俺の病室に来てからはポチをこれでもかと可愛がるわ、俺の義眼について色々褒め倒したりちょっとした調整をしてくれるわで害なんて一つもないんだけど、考えて欲しい。まだ2日目とはいえ40代ぐらいのおっさんが同室で寝泊まりだぞ?

そりゃM16とか416が居たときはそれはそれで大変だったけど、眼福じゃあった。だが相手はリフィトーフェンだ、鷹のような鋭い目付き、何時も薄ら笑いを浮かべてて考えていることは理解できない……そんなのと一緒に居るのは果たして心地好いと言えたものだろうか、わからない。

とはいうものの明日にはアイツは所用で帰るらしい。というかこれ以上ここに居るとグリフィンに見つかりかねないようだ。一回見つかってるからな。

 

そう考えると何だか名残惜しい。また暇な入院生活が待っているのかもしれない。まあ、元々は怪我を治すためにここにいるのだ。大人しくしておこう。

 

 

P.S.リフィトーフェンが俺の義眼とポチとの視点共有機能を着けてくれた。戦術の幅が広がるなこりゃ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

253日目 雨

 

今日はスピアとトライデントがお見舞いに来てくれた。ランスは保護区での護衛、パイクとトライデントはI.O.Pの下請け工場で現場指揮兼警備をしているようだ。あの二人はちゃんと教え込まれたことを出来てるのかな?

それにしても…………二人の顔の対比が凄い。トライデントはまあ新婚ホヤホヤって感じで生気に満ちている一方で、スピアは疲れてるような顔というか…隈酷くなってないか? そんな感じだった。お前が入院したほうが良いのではとさえ思う。それを冗談めかして言ってみたが、アイツ真面目な顔して、

 

「武器庫の社宅に戻りたい」

 

なんて言った。そんなにひどいのかとアイツに聞いてみたら、正直なところトライデントと一緒じゃなかったら絶対にここに来たくなかったとか昔のただ女性を口説いて楽しく暮らす生活に戻りたいだとか、ちゃんとイエスを信じるから助けて欲しいと、どんどん愚痴が出てくる。

 

あぁ地雷踏んだなって思いながら居たら、病室のドアが半分開いてる事に気がついた。ポチを使ってそこをズームしてもらうと、そこには小さく手を振るスプリングフィールドが立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スピア、隊長命令だ。何ヵ月か何処かに高飛びしてくれ。弓部隊にも事情を話して全面協力させてやる、絶対に足がつかないようにするからお前の精神を回復させろォ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

254日目 晴

 

社長とスリンガー以下弓部隊諜報部による全面協力の下、スピアは武器庫が管理する小さな自然保護区の管理部隊に所属となった。因みにこれオフレコな!正規軍とか国に見つかったらとんでもないことになるし!!昨日居たスプリングフィールド??心配するなチャットで決めた事だから。

……まあ兎も角、スピアには休息が必要だ。アイツは些か周りの奴等が厄介なのだ。会社の取材の時にだってその片鱗は見たし絶対に関わると碌なことにもならない案件だ。それにスピアがダウンしてしまえばそれこそどうなるか分かったものじゃない、部隊への負担が増える上にスピア親衛隊(スピア監視部隊)がどうなるか分からないので怖い。だから結局暫くアイツには2、3ヶ月の暇を渡しておくのだ。しっかり休んでまた俺に美味い紅茶でも淹れてくれってな。

 

さて、スピアが居なくなった以上、今この病室に居るのはトライデントじゃあるが……まあ暇しないね。トライデントに好きなことを喋らせておけば時間なんてあっという間に過ぎる。しかもこいつ結婚したばかりな訳で、惚け話も沢山聞けるからな。こいつの話を聞いてると結婚も悪くないのかもしれないって思ってしまう。家に誰かが待ってくれるっていうのはとても心強いらしい。とてもいいな。

 

……待てよ? その理論で行けば、俺の家にはオスカーやポチ、時々G11が俺の帰りを待ってるわけだ。つまり俺はもう既に結婚していた……?? やったぜトライデント、俺はもう結婚してたようだ。だからそんな悲しい目で見ないでくれよ、冗談だから。お前に同情されたらより悲しくなっちゃうから。やめて。

 

そんな茶番劇をかましていたらトライデントが電話で嫁さんに呼ばれた。どうやら買い物に付き合って貰いたいらしい。ひゅうっアツいねぇ~?

そういうことで俺の病室はまた暇になった。明日もアイツは来ると言ったからまぁ平気じゃある。

 

明日も善き日和でありますようにってね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

255日目 雨

 

やぁジャベリンだ。たすけて、トライデントとリフィトーフェンと45達とスケアクロウたちが鉢合わせしてしまった。






い つ も の
あと三日後に投稿と言ったな?あれは嘘だ。書けたら更新していきます()

そしてジャベリン、やはり君は自ら戦場へ首を突っ込むしかないようだね!!まぁスピアくんを守るっていう目的自体は達成された、良かった良かった……。
あとは彼の精神が戻るのを待つだけさ!

この作品への感想及び評価は心の支えです!どうぞよろしくお願いいたします!それでは!



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傭兵、退院への道が近づくってよ。

ジャベリンくん、君の修羅場はただの前座に過ぎないのだ……。









256日目 晴

 

毎回毎回思うのだが、俺ってまさかしなくてもトラブルに巻き込まれやすい? だとすればこの大昔の冷戦さながらの状態に頷けるぞ。

 

状況を説明するとすれば、俺の病室にはより一層笑みを深めて座るリフィトーフェン、表情には出てないけど確実に臨戦体勢であろう45、9、416、11。変装しててよく見なきゃ気付かれない外見のスケアクロウ、処刑人、侵入者……こいつら見た目が何処かの女子会に来た女性集団みたいだったが何処でそんな服手に入れたのか謎な所である。

 

そしてこんな闇鍋状態のところに状況を把握出来てない我らが槍部隊隊員トライデント。彼の両手には俺の暇潰し用に持ってきた漫画が入った紙袋、あと俺が好きな果物が沢山入った紙袋も持っていた。

 

謎の沈黙の最中、トライデントは静かに俺に寄ってきて、何事かと俺に聞いてきたのだが、正直どうしてこうなったのか全くわからない。

最初にリフィトーフェンがこの病室にやって来て俺の義眼とポチのメンテナンスをしていたところに突然45達がやって来て(しかも大きなメロンを持ってきてた)、リフィトーフェンと鉢合わせをしたもんだから一触即発の状態になった。さらにコンボでトライデントがスケアクロウ達と世間話をしながら登場という。誰が望んだんだこの状況。

 

……誰も望んでないな。リフィトーフェンは嬉しそうだったけど。だってアイツ45達を見て「ほう、いつぞやの存在しない小隊(404小隊)じゃないか」とかスケアクロウ達を見て「あのプログラムは上手くいっているようだな」とか言ってたし……本当、このマッド研究者め……。というか404小隊って何だよもう。45達何時の間にそんなもの作ってたの?お兄さん知らないよそんな格好いい部隊。

 

話を戻そう。兎に角、色々大変なことになった。45、9、416はリフィトーフェン睨み付けてるし、G11は普通に俺の所来てメロン切り分けてるし俺の前だからなのか知らないけどブレないね君。メロンはとても美味しかった。

それでハイエンド組だが、状況を察したのかトライデントと一緒に漫画を静かに読んで我関せずだった。助けろよ。特にトライデントお前が一番の良心なんだぞ隊長を助けてくれよ処刑人の時みたいにさ!!

そんな助けを求める俺の視線に気がついたのかトライデントは俺をチラ見して、読んでいた漫画を閉じた。

そして睨みあっている奴等に対して、「一先ず、果物でも食べましょう」と提案した。これのお陰で何とか場が収まりそうになったのかと思いきやそうではない。

 

リフィトーフェンが「そうだな。こんな下らない事をしてしまえばジャベリンの身体に悪いからな。君たちも自重したまえよ、404」と煽り気味に言ったのを皮切りに、今度は45が「あら、そうやって私達だけが悪いように仕立てあげるのね。こうなってしまったのは貴方のせいでもあるでしょう?マッドな研究者様?」と返す。

 

売り言葉に買い言葉だ。トライデントは予想外の展開にまた漫画を読み始めた。逃げるなよ。頼みのハイエンド組は沈黙、G11はポチとお話し中。途中、オイゲンさんがやって来たが状況を察して直ぐに逃げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もうお前ら帰れ!!!!帰ってください!!!!お願いします!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

257日目 晴

 

何とかリフィトーフェンと404小隊……だったか?そいつらとトライデントは帰らせた。ハイエンド組を残らせたのは一つ理由がある。というのも、ちょっと畑の状況が気になるし何より侵入者について色々と確認を取りたかったのだ。

というのも侵入者、こいつは俺が入院する羽目になった原因である。今も俺に危害を加えるつもりなのか、そうでないのか気になっているのだ。まぁ、のこのこと俺の畑に来てる時点で白であることは変わりようもないのだが……実際その通りだったし。スケアクロウ曰くポンコツになったらしい。何でだよ。

 

それは置いておき、今度は畑だ。ここいら最近畑に行けてない。ちゃんと作物は育ってるのかは気になる。

スケアクロウが言うにはそれなりに、処刑人が言うには家畜は鶏や羊を追加出来たらしい。何処から手に入れたの……?

でもちゃんと上手く行ってるようで何よりだ。一応はコイツらに任せておいてもいいか……俺まだ1ヶ月近くは動けないからな。

 

取り敢えずの状況は聞くことが出来た。唯一不安なのはコイツらの素性がバレてないかどうかじゃある。お嬢の基地にはバレて欲しくない。だが結構密接に関わってるだろうからそれは難しい注文ではある。とはいえどもやはり見つかってしまえば、お嬢の基地が立場的に危うくなる可能性が高い。上層部の許可無しに敵、しかもハイエンドモデルを鹵獲してるのだ。これで反逆を疑われない訳がないんだ。

 

スケアクロウ達が帰る際、その事をちゃんと伝えておく。彼女らは笑って聞き入れてくれたが……どちらにせよ信じるしかないだろう。

 

……そろそろ寝よう。これ以上起きていたら夜勤の看護師さんに怒られるからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

258日目 晴

 

さて、果物の処理をどうしようか。リフィトーフェンやらスケアクロウたちやらトライデントやら、色んな奴等から果物を貰ったわけで……軽く1ヶ月分はある。なんでこんなに持ってきたんですかね……まあ美味しいからいいんだけどさ。兎に角量が多い。看護師さんたちにもあげたりしたものの、減らないのは何故なんだ。うーむ。

 

俺がそうやって悩んでいたら、社長がやって来た。真面目にお見舞いへやって来たらしい。やる時はやるんだな社長……。

社長は果物を食べながら俺の退院後について色々と話してくれた。一応は通常通り、グリフィンと行動したり一人で任務をしたりと……退院後は相変わらず忙しくなりそうだ。

 

ふと、その時俺は違和感を覚えた。社長はどうにも、俺が退院して直ぐに動けることを前提としているように見受けられる。俺が恐る恐るその疑問をぶつけてみたら、社長はさも当然の如く、

 

「当たり前だ。傷が治り次第1ヶ月全部隊ブートキャンプだぞ。心配するな、ちゃんと医師は付いている」

 

と宣った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

拝啓、槍部隊一同。

 

どうやら隊長さんは地獄の片道切符を持ってしまったようです。

 








ジャベリン は リハビリ を はじめる こと に なった !


ここから少し時間がキンクリします。次回はジャベリンくんのブートキャンプ!!さぁどうなるのか!?

感想及び評価は心の支えです!どうぞ!よろしく!お願いします!!それでは!!

7/16 誤字とルビの振りわすれを修正


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傭兵、療養だってよ。そのいち


416「……ジャベリンがブートキャンプに行ってしまったわ」

416「こっちはあの一件以来仕事ずくめでだったから会えなかった訳だけど」

416「…………」

…………

416「45、少し休暇を貰いたいのだけれど」

45「貴女が? 珍しいわね、何か変なものでも食べたのかしら」

416「うっさいわよ。完璧なポテンシャルを発揮するには適度な休息も必要なんだから」

45「ふぅん?」

416「……何よ」

45「何でも。まぁ、暫く私達も休むつもりだったから、貴女も好きにしてちょうだい」

416「了解」













45「…はぁ、ジャベリンも難儀なものね。私も会いに行こうかしら?」


270日目 曇

 

腹部の傷が動いても問題ない程度にまで治り、俺の気持ちもそれなりに落ち着いてきた。

 

ブートキャンプの始まりだ。いやはや……正直、このブートキャンプは俺が入社した時以来一度もやったことがない……いやパイクとパルチザンの訓練でやったな。あの時の俺は体力も万全だったので何の気兼ねなくノリで参加出来たが……今は違う。

 

何せ1ヶ月寝たきりだ。体力なんて当の昔に落ちてる。だがそれを加味してトレーニング内容を軽くするほど武器庫は優しくない、なんだよ基礎体力をつけるために10kgの重り担いでフルマラソンとか。正気の沙汰じゃねぇって、もう少し医学的根拠を基にしやがれ。だけどこれで体力つくからマジで訳がわからない。出される食べ物に何か含まれてる疑いがある。

 

それとな、俺にとって一番訳がわからないことがある。このブートキャンプ、ジャガーソン農園協賛のもと、グリフィンも参加してるんだよね。

 

これはなにかのぼうりゃくをかんじる……。

 

ポチたすけて。

 

 

 

 

 

 

 

271日目 雨

 

人生楽ありゃ苦もあるさ、という言葉がある。そんな言葉を考えた人間には感謝を送りたいもんだ。ちょっと口ずさむだけで何となく楽になるからな。なんでこんなことを言うのかって言ったら、俺は今日ずいぶんと苦しかったということだ。

というのもね、俺が一人でストレッチしてたときに突然416がやって来たのだ。ご丁寧に運動用の服に着替えて。なんでここに来たのかっていったらそりゃグリフィンとの合同でもあるからだ。彼女も何処かの基地に所属していたのだろう。

 

あぁ、一つ言っておこう、416という人形はあの分厚そうな服の上から分かるぐらいにはグラマラスな体型をしている。そんな彼女がピッチリとした服を着てしまえばどうなると思う?

 

答えは俺が死ぬ。やはり俺も男な訳だ、チラチラと見てしまうし下半身的な方で反応しちまうんだよ。目に毒だよ!!

しかもだ、こいつ俺の柔軟運動の時に凄く密着してきたのだ、彼女のたわわなメロンが俺の背中にむにっと……普段の俺であるのなら何とか耐えきれたが今回ばかりは違う。俺は1ヶ月禁欲生活だったのだ、睡眠、食はともかく性欲が溜まりに溜まってて大変なのだ。だから彼女のそれが背中に当たった時は……まぁそれはいい。俺は彼女に当たってると伝えた、だけど416の奴、

 

「当ててるのよ」

 

って言い放ちやがった。確信犯とかやべーよ。

 

この場はなんとか頭の中で銃器の組み立てをしまくって切り抜けたが……漫画で見かけるようなシーンは、実際にやられると疲れるという事を学べた。俺が女慣れしていないというのも有るのだろうが…取り敢えず今の今までが清らか(?)な男女交際を行っていた奴としては刺激が強すぎた。

 

という訳で、今日1日はずっと悶々と過ごす1日でした、まる。

 

心を落ち着かせる為にもオスカーのお腹を吸いたい……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

272日目 晴

 

今日は筋肉トレーニング。インストラクターはクレイモア隊長と盾部隊隊長スクトゥムさんだ!

因みに阿鼻叫喚が広がってる。これ、グリフィンの比較的暇な指揮官達やら人形も参加してるんだが大体がぶっ倒れてる。やらせてることがえげつないんだようちの隊長格は。基礎的な筋トレから筋肉を限界まで負荷をかけた状態でやるものまで、それを休憩を挟みながら五時間ぶっ通し。正規軍でも自重するぞ。本当、よく病み上がりで頑張れたな俺。明日も明後日も有るようだからこの調子で頑張りたいもんだ。

 

この後、人形達が凄い頑張り始めたけど何があったんだろうね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

277日目 雨

 

日記を書くのを忘れていた。まあ別段面白いことがあった訳じゃなく、ただ筋トレマラソン格闘訓練を行っていただけだからな。平和なのは良いことだ、うん。今日は雨なので平和に一人でテントを設営して雨音をBGMに紅茶を飲んでいる。トライデント、ランス、一旦自然保護区から帰って来たスピアが一緒だ。めっちゃ狭い。でも楽しい。久し振りに昔馴染みが揃ったのだ、一体何時ぶりか、取材の時以来だったかな?

 

ランスとトライデントは漫画を静かに読んでるし、スピアは穏やかな顔で紅茶を優雅に飲んでいる。昔の余裕に満ち溢れたスピアに戻ってきたな、ヨシヨシ。スピアを自然保護区に行かせて正解だったようだ。今のところ何の事件も起きていない。諜報部様々だ。ありがてぇ。

 

それはそうと、他の槍部隊隊員、パイクとパルチザンなんだが、あいつらは鎚部隊と整備士の奴等と何やらやっている。変なことをしなけりゃいいんだがね。時折パルチザンの高笑いが聞こえてきたりとかしてるけどまあ気のせいだ。取り敢えず目の前のスピアと紅茶を楽しもう。あとついでに漫画も読んでいこう。

 

これほどにまでない平和なんだ。いま噛み締めておかないとな。うん。

 

 

 

だから416、君も変にくっつかないで、ちょっと離れて紅茶飲もう??

 

 

 





ランス「ジャベリンって女難だよなぁ」

トライ「スピアも負けてないぞ?」

ランス「あいつのところは楽しそうだしいいじゃん?」

スピア「ランス、君は俺の辛さを分からないからそんな事が言えるんだ……う、胃が…」

トライ「ランス…お前な」

ランス「正直すまんかった」


ジャベ「ねぇ君ら助けてくれないの??」

416「意外と美味しいわね、貴方の紅茶」


槍部隊一同「「「お前はレベルが違うから」」」

ジャベ「えぇ……」








ドーモ、今月は普通に忙しいサマシュです。多分8月には通常通りのペースで行けますが、今月は厳しいです。
なので遅くなるけど許してね……。

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傭兵、療養だってよ。そのに

140000UA有難うございます。のんびりゆるりと、傭兵日記をどうぞ宜しくお願いしますね。

さて今回はブートキャンプ中間です。ジャベリンくんは着実に体力を回復させていきますぞ。補足として一つ。一応このブートキャンプにはポチは参加しておりませぬ。自宅でオスカーの世話をしております。

今回は5000字ほど、そしてギャグ回みたいなものです。


288日目 晴

 

結構体力とか戻ってきた気がする。あと原理は分からないが筋肉もしっかりついてきた。普通こういうのって2,3ヵ月は掛かるもんだと思うんだがやっぱり食べ物の中に何か入ってるだろ。

 

思えば俺が入社したての頃だって不思議なぐらい筋肉がモリモリついてったし何なんだろうな。何となく気になって木に寄っ掛かりながら葉巻吹かしてた社長に聞いたんだが、社長曰く、「お前、そりゃあれだ。人間誰しも健康的な生活をしながら牛乳飲んだり筋トレしてたらつくもんだ。俺はそれで筋肉がついた」 らしい。脳内にハテナマークが沢山出てきた。

 

やっぱ常軌を逸してるよこのおっさん……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

289日目 晴

 

トンプソンと会った。あいつは相変わらずよろしくやってるようで、SAAとの関係も良好だ。というかSAAがトンプソンにべったりしている。でも俺にもべったりされて他の隊員達から物凄く生暖かい目で見られちまったがな。

 

因みに今日は射撃訓練である。武器庫から支給された銃器を使っての的当て、そしてクレー射撃を軽くだな。これらに関しては流石人形と言うべきか、皆難なくこなしていた。指揮官達はまちまち。まぁ人間だしな。動く的の大半をボルトアクションライフルで撃ち落とす弓部隊の奴等みたいじゃないもんな。いや本当につくづく思うんだがうちの会社は正直いってイロモノだと思う。業務の殆どを人間で補って、そしてその人間達のレベルがとてつもなく高い。最近耳に入った噂じゃ「武器庫に入社するときは何かしら秀でた能力を持っておくか、女難の相を持っていなければならない」とか言われてるし。最後何なんだよ本当。

 

因みに俺は感が鈍ってたのでまずまずの結果だった。

それと判明したことがある。SAAについてだ。この子、どうにもまだトラウマを払拭仕切れてないのか、自身の武器を持つときの手がひどく震え、そして動悸も出てきていた。これは不味い、と俺が彼女へ声をかけながら肩に手を置いてやったらだいぶマシになったから良かったものの、これはまだこの子のリハビリが必要そうだ。

この件に関してはトンプソンに投げるしかない。許せ。

 

ただ俺もどうにかしないといけないってのはよく理解してる。なのでまた今度この子と色々やっていくしかないだろう。

 

 

そういえば明日は武器庫ボディビル大会らしいが、何が起きるのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

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「23番ー!!筋肉切れてるよー!!」

 

「25番!!カーフくそでけぇなオォイ!!お前のふくらはぎは太腿かぁー!?!」

 

「19番ナイスカットォ!!!」

 

「皆仕上がってるよ!仕上がってるよォォォォ!!!」

 

訳のわからない掛け声が聞こえる特設会場。俺はSAAといつの間にか居たG11と共に立ち見席で武器庫主催のボディビル大会を傍観していた。会場の気温が上がってるのか熱気がとてつもない。なんだろうな、筋肉すげぇわ。

G11は余り興味無さげにしているが、SAAは案外見入ってる。

 

「凄い眺めだね、ジャベリン」

 

「……そうだな11。まさかここまで濃いってのは予想外だよ」

 

「ジャベリン……トンプソンは?」

 

「アイツなんか予定があるからって何処か行っちゃったよ、SAA」

 

そうなんだ…とコーラを飲みながら上半身裸の筋肉モリモリマッチョマンどもを見ているSAA。この子意外に好きなのかな筋肉。

いやそれにしても筋肉が凄い。確かこのボディビル大会は強さの部としなやかさの部に分かれていたが……今は強さの部だな。俺としては戦闘狂の集まりの剣部隊がぶっちぎりかと思ったらそうでもないんだわ。

 

「21番ー!!お前は盾部隊の誇りだぁ!!背中に鬼神が宿ってやがるぜェェェェ!!!!」

 

「18ばーん!!!お前そこまで絞るには眠れない夜もあっただろ!!!」

 

……な?盾部隊とか弓部隊も負けてないんだよ。中には余り動く必要もない諜報部からも出てる。どんだけ筋肉鍛えるの好きだったんだ……

 

んん?…………トライデントいるじゃねぇか!!!

 

「30番!!!!二頭がいいぞ!!チョモランマァァ!!!!」

 

「ひっ!」

 

「ジャベリン?」

 

……ハッ!?俺は何を……ってSAA怯えさせちまった。ごめんなー驚かせちまって、よーしよしよし。

俺はSAAを優しく抱き締めながら撫でてやる。G11は本当に驚いたような顔で俺を見ていた。

 

「うぅ……」

 

「ジャベリン、本当に何かあったの?」

 

いや、これはだな…ちょっとうちの部下が居たからさ……は、はは。だって見てみろよ、30番の筋肉やべぇって。肩にちっちゃい重機乗せてる疑惑あるから。な?

 

「ふぅん……?」

 

言い訳っぽく聞こえたのか胡乱な目で見てくるG11。その視線は俺に効くのでやめて欲しい。

ただ直ぐにG11はその視線を切ってくれたので助かったが……あたしも筋肉つければいいのかな?って呟いたので全力でそれをやる必要は一つもないと伝えておいた。

 

お、今度は全員揃って両腕を曲げて上半身を強調するようなポーズ、モストマキュラーだったか……そんなポーズをやってる。しかもじわじわとステージ際まで近づいていってる。

 

「巨乳ーっ!!!!」

 

「大胸筋が歩いてるゥ!!!!」

 

「マッチョのインベーダーゲームかよォ!!!」

 

「マッチョの満員電車だな!!!いいぞ!!17番なんだそのセパレーション多過ぎて数えられねぇよ!!!」

 

 

 

 

 

「グスッ……ジャベリンはこれ参加しないの?」

 

「SAA、病み上がりに無理を言わすんじゃない」

 

なんとか落ち着いたSAAに爆弾発言染みたことを言われてしまう。いや筋肉元に戻ってもやらないけどさ。なんかこう、なんだろうなぁ……俺の身体って脂肪と筋肉が程よくついてるからそんな見映えがあるというわけでもないんだよ……。

 

「え、でもジャベリンって細マッチョってやつだし、しなやかさの部に出てもいいんじゃない?」

 

……11、余計なこと言わないの。SAAが凄い期待した目で見てくるじゃん。な、SAA。俺は自分の肉体を見せたくて身体鍛えてる訳じゃないからね?

 

「じゃ、じゃあジャベリン、後で見せてよ!!触りたい!」

 

「!?」

 

ヤバイぞ、SAAが何かに目覚めた。G11が何かを察した顔してやがる……逃げるんじゃないぞ!

 

「あ、いや。あたしは悪くないからさ…?」

 

そんなこと言って許されるわけないだろ!G11、お前が説得してくれ!

 

「う、うぅ、仕方ないなぁ……」

 

ヨシッ。

G11が目を煌めかせているSAAへ近付く。幾ばくか躊躇する素振りを見せたが、そこはG11。やる時はやってくれるのだ。

 

「ねぇ、SAA」

 

「何、11さん?」

 

「まぶしっ……じゃなくて、別にジャベリンの筋肉とか見なくたって今目の前に筋肉の塊があるんだしそれを見たら?」

 

「え……」

 

SAAが考え始める。いいぞ、そのまま何とかしていけよ……?

 

「でもさ」

 

そう俺が願いながらSAAか元に戻ることを祈る。

ところがぎっちょんそんな上手く行く筈もなく、SAAはさも当然のごとくG11の提案に答えた。

 

 

「憧れの人とか、気になる人の知らない姿を見たらドキッとしないの?」

 

「する」

 

「11!?!??!」

 

 

SAAェ!!!お前なんでそんな真理を突いてきてそうな事を平然とっ……!? 子供故の感性か!? その感性がその答えを導いたのか!!??

 

「ジャベリン、あたしには無理だったよ」

 

「諦めたらそこで試合終了だぞ!?」

 

「ねぇ~ジャベリンいいでしょ~見せてよ~」

 

「SAA、元気になってくれるのはいいんだが君はそんなキャラクターじゃなかった筈だ。大人しくママの所へ戻りなさい……」

 

こんな予想外の展開に俺は思わず嘆きたくなってしまう。

というか頭を抱えた。そしてそれと同時に次の部、しなやかさの部へと移る旨を伝えるアナウンスが聞こえてくる。

 

そぞろそぞろと筋肉達磨達がステージから抜けていき、今度は武器庫の女性陣やグリフィンの人形たち、後は細マッチョの野郎どもがぞろぞろと。

因みに武器庫の女性陣だがクレイモアは勿論居る。……あんた強さの部だろ。

 

「アレ、416が居る」

 

「あっ、トンプソンも」

 

「はい??」

 

なんて邪推をしていたらG11達がそんな事を言った。それを聞いて俺はステージの方を見た瞬間、思わず目を疑った。

確かにトンプソンと416が居る。ついでに鎚部隊のLWMMGとウェルロッドも居た。この二人は心なしか頬を赤く染めているように見えた。

俺が驚きつつその光景を見ていると、ポージングが始まる。

 

 

 

「ーーーーーーーーーー………」

 

 

 

その光景は、一つの絵画のようだった。観衆はただ息を呑みじっと見つめるだけで掛け声も何もない。静寂に包まれている。

ステージに居る各々はキメ顔をしていたりと様々だが……なんだこの、見入ってるぞ皆。

 

トンプソンと416は己の肉体をこれでもかと見せるような感じである。ウェルロッドとLWMMGは恥ずかしそうであるものの、それでも人形の矜持があるのか堂々とポーズしていた。

武器庫女性陣のクレイモア、イージス、アイギス、その他諸々も負けてないし何なら男たちもだ。

 

ごくり。

 

誰かの固唾を飲み込む音が聞こえた。それほどまでに皆見ている。強さの部とは打って代わって雰囲気が違う。SAAやG11もそうだ。なんだこれ……。

 

『……っは!? つ、次のポーズを!!』

 

ナレーターが我に帰ったのか、指示を出す。それを皮切りにこの会場へ音が戻ってきた。

 

「……なんだったのアレ」

 

「きれい……」

 

SAAとG11が先ほどの光景を噛み締めるように言う。

本当になんだったんだろうか。訳がわからない。あの静寂とは……ウーム。

 

 

 

 

暫くボディビル大会そっちのけで考えこんでいたら、いつの間にかしなやかさの部は終了していた。

はてさて、次は確か表彰式だったか……。

 

『えー、次はPMC武器庫取締役社長、ジョン・マーカス氏と、PMCG&K取締役社長、ベレゾウィッチ・クルーガー氏による……マッスル公演?です!』

 

 

 

 

 

やめろ。

 

 

 

 

 

 

……………………………………………………

…………………………………

………………

……

 

 

「結局しなやかさの部で優勝したのはLWMMGか……」

 

「強さの部の優勝はツヴァイだ。悔しいな……」

 

「お前はよく頑張ったよトライデント」

 

ボディビル大会が終わって一時間後、結局俺は社長とクルーガー社長のマッスル公演なるものは見ずに帰った為、結果を知ることが出来なかった。なので、トライデントを捕まえて結果を聞いた。まぁ想定通りというか想定外というか。俺としてはLWのやつが優勝するとは思ってなかった。まぁ素人にはわからない何かがあったんだろ。

 

「完璧なポーズをとっていた筈なのに……」

 

「416、ポーズ関係ないから。設計者を恨まないと」

 

「くっ……」

 

ふと、俺の隣で突っ伏してる416と慰めてるのかそうでないのか微妙なセリフを416へ掛けるG11が居た。そうだよなー……416はなんというか、むっちりしてるもん。それこそ出場してたイージスさんと同じくさ。言葉に表すとしたらボンむにっボン(?)だから。筋肉と脂肪が程よくついてるような感じ。だから元気出せ、お前は十分魅力的だ。

 

「な……何よ。もう…」

 

「チョロい」

 

「五月蝿いわよ!」

 

俺の言葉に嬉しそうな反応を示す416。良かった良かった……。一先ずG11のほっぺ伸ばすの止めてやれ。凄い伸びてる。

 

「トンプソン、かっこ良かったよ!」

 

「おっ、嬉しいこと言うねぇSAA!何か欲しいものは無いか?」

 

「コーラ!」

 

「1ダース買ってやるよ!」

 

さて今度は俺の向かいに居る親子。トンプソンはな……彼女は身体が締まっていた。筋肉質というか、陸上部の身体だな。それに筋肉がしっかりとついてるようなイメージ。

 

そしてトンプソン、余りSAAを甘やかしてくれるなよ? 可愛らしいのは分かるがやはりビシッとな?

 

「ジャベリンは……私のこと嫌いなの?」

 

ごめん嘘ちゃんと甘やかしちゃう。コーラのグミもあげちゃう。

 

「わーい!」

 

「ジャベリン……お前本当に骨抜きだな」

 

五月蝿いぞトライデント。俺だってこうなっちまうときは有るんだよ。お前も嫁さんの前じゃふにゃっとしちまうんだろ?

 

「いやそれはない」

 

なんだよつまらねぇな。

 

「それはそうとジャベリン、お前体力とか筋肉はちゃんと元に戻ってるのか?」

 

「ん?あぁ、抜かりなくな」

 

俺はトライデントへ二の腕を見せながら答える。それを彼はまじまじと見つめ、一人納得したような顔をする。

 

「チョモランマか、成る程」

 

「何て??」

 

「何でもない。お前の今の筋肉だとあのレールガン担いで走り回るのはキツそうだな」

 

「そりゃ分かってるさ。だから明日もしっかり追い込んでいくつもりだよ」

 

因みにこのブートキャンプはあと10日ぐらいで終わる。ブートキャンプが終われば次はいつものお仕事(日常)だ。2ヶ月も仕事から離れてると却って何だか落ち着かなくなってしまってる。戦場なくして仕事(日常)なし。傭兵家業は仕事仕事の仕事づくし。

これが俗にいう社畜精神だな。悲しいことだ。まぁ俺はこういう生き方しか知らないってのもあるがね。

ウーン、バイクで走りに行きたいぜ。

 

そんな事を考えていたら、トライデントが何かを思い出したかのように口を開いた。

 

「そういえば、スピアが向こうでスプリングフィールドっていう人形に詰め寄られてたぞ」

 

…………神様っていうのは騒動が大好きで平穏ってのを毛嫌いしてるようだ。

俺は椅子から立ち上がり、416達に席を外すことを伝える。そして軽く準備運動をする。

 

「さァて、愛する友人の救出と行こうか」

 

「相手はへべれげだぞ、気を付けたほうがいい」

 

「そんなの分かってるさ。酔っ払いの相手なんざ幾らでもしてるだろ?」

 

「そりゃ違いない。それが槍部隊の仕事だもんな」

 

トライデントのセリフに俺はサムズアップで応える。そしてそのままスピアが居る場所まで小走りで向かう。

 

明日もしっかり追い込んでいく為にも、今日頑張っていこう。

 

そんな気持ちで動く。心なしか、スピアのもとへ向かう俺の足取りは軽いようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なお、スプリングフィールドの酔拳によって全滅した模様。社長が出てくる事態になってしまった。スプリングフィールドが強すぎる。こいつバトルフィールドかよ。








LW「……なんで私が優勝したんだろ」

ウェル「おめでとうございます」

LW「あんまり嬉しくない…」








戦うスプリングフィールドさん、略してバトルフィールドさん。漢字に直せば戦場さん(?)
彼女は様々な戦いを見せてくれる面白い存在なのです……。

さて、今回は突然のマッスルタイムでした。どうしてこうなったのかって?俺が聞きたい。
ギャグ回なのかは不明なところ。だが、それでもいいのです。楽しく書けたから……(ダンベル何キロ持てるのOPを聴きながら)

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傭兵、療養だってよ。そのさんのおわり

療養、終わります。ジャベリンくん復活です!
それではどーぞ。







291日目 晴

 

筋肉祭りの翌日、俺は脳内にこびりついた筋肉の山から逃げる為にも久し振りにパイクとパルチザン以外の槍部隊の奴等と組手をしてきた。

 

軽い実戦形式の組手で、想定シーンは遭遇戦。キャンプ地の大きなログハウスを借りて行った。

槍部隊ってある意味色んな奴等が集まってるから自ずと戦闘スタイルは変わってくる。

 

俺は基本的にちょっとずつ手を出して相手を焦らしてみたりとか勢いを利用した投げ技、まぁ柔道ってやつだな。いや合気道か? まあいい、兎に角隙を突いたりとか、受け身の戦い方がスタンダードである。

 

続いてスピアは蹴りを主軸にしたスタイルである。アイツ曰く、両手が塞がってる時の対応が大事だとかなんとか。

でも足捕まれたら終わりじゃね? って俺がそれ指摘したら突然蹴りを入れてきた。勿論掴んで防いだけど、驚くことにそのままアイツ俺の腕に足を絡ませてきて投げやがった。

俺の語彙力じゃ余りよく分からないだろうが、本当に凄いことをアイツは仕出かしていた。こえーよ。

 

次にランスだが、結構トリッキー。動きが読めないし何れにしてもブラフが必ず挟まれてる。初見じゃ確実に手強い男だ。だけどこいつ短期決戦型なんだよな。集中力が余り無い。馬鹿みたいに動いてる方が却ってやりづらいタイプ。こいつが元々剣部隊の出身ってのも有るんだろうけどもうちょい冷静であれとは思う。

 

最後はトライデントだな。

トライデントは力でゴリ押し。挙動は単純だが類稀なスタミナとタフネスで相手を徹底的に潰すやつ。一番相手にしたくない。ある意味処刑人と似てるんだよ、ゴリ押ししてくるやつは大体嫌いだ。気圧されてしまう、気迫が違うんだ。例えるなら中型E.L.I.Dに追いかけられてた時と同じである。

 

さて、この組手の結果だが……ランスが勝った。途中、こいつ吹っ切れたのか知らないが明らかに動きが変わった。本能で動いてるというか、野生児。

いやはや、ランスってなんでうちの部隊に来たんだろうなぁ……とっても不思議。剣の方に居れば十分副隊長を務めることぐらい出来ただろうに。

 

まぁ、アイツなりの理由があるんだろうから余り聞かないでおこう。今日はもう遅いしここで筆を置く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

295日目 曇

 

俺達の組手を見てた奴等が感化でもされたのか、組手が急に流行り出した。左を見ても右を見ても組手をやってるのが居る。中には人形たちも見よう見まねでやってたり。

その中には、トンプソンや416達も混じっていた。トンプソンはSAAに体術を教えて、416はG11と組手をしていた。

 

G11、あまりこういうの得意そうでもないイメージだったのだが、意外と動きが機敏だ。それに加えて相手の動きを誘導してカウンターを繰り出せる状況を作り出したり…………動きがランスに似ている。まさかしなくてもランスが教えたようにしか見えなかった。後でアイツに聞いてみたらあっけからんと教えたと言いやがった。まあいいんだけど。

416の動きは完全に我流だな。粗が見えるが、十分に手強いのがひしひしと伝わってくる。

416……お前は努力してくれてるんだな……出会った当初は本当にぺーぺーも良いところだったのに……。そう思いながら416を生暖かい目で眺めてたら、それに気付いたのか睨まれた。悲しい。

 

今度はトンプソン達だが……トンプソン、遠くから見ても分かるぐらい男の無力化の仕方を教えてる。思わずタマヒュンしちまったよ……というかいつの間にかスプリングフィールドとぐったりしてるスピアも居た。アイツまた捕まってやがる。

仕方ないので助けに行ったのだがそれよりも先に俺がSAAに捕まった。まぁ腰に抱きつくとかそういう可愛らしいレベルの奴だけどな。

 

俺はSAAを肩車しながらスプリングフィールドを説得。一応聞き入れてくれた。良かった。

弱々しく唸るスピアをトンプソンに運ばせてテントまで戻る。SAAも一応下ろして歩いたのだが、結構不満げだった。またいつかやってやるから許して欲しい。

 

今日のテントはまた鬱屈としている。スピアがスコッチウィスキーを飲んで愚痴を言いまくってるからだ。今もずっと呂律の回らぬ口で何か言ってる。暫くは止まりそうにもない。

 

 

…………スピアの介抱も大変だな畜生。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

298日目 晴

 

完全に体力が戻った。フル装備で走り続けても息切れをしにくくなったし、射撃の精度も中々だ。寧ろこの前よりも良くなったんじゃないかと思うぐらい。心踊るぞ、今なら空も飛べるかもしれない。ヒャッホウッ!

 

いかんいかん。どうやら俺は仕事に戻れるのがそれだけ嬉しいようだ。確か社長が言うにはまだ武器庫の方に居るよう言われていた筈だ。VR訓練をやったりするなんて聞いた。まあ確かに2ヶ月も戦場から離れていたからな。感を取り戻すには丁度良い。

 

それにしても1ヶ月、長いようで短かった。まぁ概ね筋肉どもに全てを持ってかれただけなんだが。……あと2日でこのキャンプも終わる。何だかんだ言って楽しかった。初心を思い出せたというか何というか。

 

よし、明日も頑張るぞ。

 

そういえば最終日には何かあるとか言ってたが何だろうな。表彰式か?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

300日目 雨

 

さすがに武器庫総当たり戦は馬鹿だと思う。グリフィン側顔がひきつってた。南無。








社長「記念に総当たり戦だ!」





最近佳境を超えたサマシュです。まぁ来週もまた大変ですが……。八月に入ればなんとかなりそうなんですよねぇ……うーむ。
さて次回はいい加減溜まりに溜まったコラボ回を消化していきます。そして次はやっと新たなハイエンドモデルとの迎合!お楽しみに!

この作品への感想及び評価は心の支えです!どうぞよろしくお願いいたします!それでは!!


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傭兵、キャンプ明けだってよ。

キャンプ明けはのんびりと……。どうぞ。





あ、発狂注意です。







301日目 晴

 

いきなりの総当たり戦というのも中々やべーと思うんですよ、私。

結果としては武器庫が圧勝……とはならず、意外や意外、グリフィンも中々頑張ってくれていた。まぁ組手だったってのもあるんだろうけどね。

いやはや中々の見所ある戦いだった。特にトンプソンとクレイモアのステゴロ、あれほど激しい戦いは無かった。クレイモアは手加減してる可能性が捨てきれなかったが、それでもだ。久し振りに良いものを見せてもらったぜ。

 

さて、今日は特に何もない日だ。なので久し振りに紅茶を飲みながらのんびりと寛いでいる。暫くは武器庫に留まるつもりなので、ちょっとG11に頼んでオスカーとポチを連れてきてもらうことにした。俺はその間部屋を工面して色々とな。

 

……当たり前のようにG11が居るのは何故かと突っ込んだらいけない。アイツは家族だからセーフ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

302日目 晴時々夕立

 

こんなところでも夕立なんて降るもんなんだな、なんて思いながら夕方を過ごした。局地的に雷が鳴り、積乱雲から大量に降ってくる雨。人によってはゲリラ豪雨なんて言うが、俺としては夕立という言葉の方が好きだ。剣部隊のムラマサがよく一人で、あの雨のなか刀片手に呪文を叫んでる。確かエクスペクトなんとか……だったか? それで雷呼び込んできた時は本当にビックリしたな。

 

ただ今日はその気もないようで、煙草片手にお茶を飲んでる。それが合うのかどうかはさておき、結構のんびりとしている。なんというか、緩いな今日は。武器庫全体が緩くなってる気がする。

 

基本、武器庫は土砂降りになると作業を一旦中止する。というのもやっぱり放射能の感染とか崩壊液が怖いからだ。一応防護服なり何なり着れば出来ないこともない、だが動きにくいんだ。とっても。

それならやりたいやつだけやらせて他は休んどけってことになってる。だから今は確か、盾部隊の奴等がなんか外でやってたな。

 

 

 

…………ドラマの撮影ですか、お兄さん。やっぱり人気なんだな、盾部隊のドラマ。君たち感染しないように気を付けておくれよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

303日目 曇

 

どんよりとした曇りの中で俺も武器庫の設備メンテナンス。といっても防衛火器に油さしに行くだけだが……ついでにポチとG11も連れていった。ポチはともかく、G11は結構面倒臭そうにしてたがラムレーズンアイスをちらつかせたら普通に着いてきてくれた。

 

武器庫の防衛設備ってのは案外旧式というか、人力を必要とするものが多い。大体は整備士達がロマンを求めてWWⅡの機関砲を作りまくったせいなんだけど。

まぁ、普通に威力は強いので問題ないしこういう防衛火器を使うのは盾や弓の奴等だ。確かこれを動かす為に人形を社長に内緒で買ってたりする。重いもんな、動かしにくいのは分かる。とはいえ油は必要だ。油が有るからこそこの機関砲も動くんだ。こうチューっと、油をさしていく。これを同じく数回、何ヵ所かにやっていく。

 

数時間もすりゃはい終わり、という事でポチとG11を連れて食堂へ。約束通りG11へラムレーズンアイスをあげて、俺は地味に熱を放つポチを撫でながら冷たい紅茶を楽しんでいた。

 

紅茶と言えば、スピアが何か企んでたな。あいつが保護区から帰って来た時に何かをするつもりらしい……というより、昔からやってた事をまた再開するつもりのようだ。

 

楽しみなもんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

304日目 晴

 

オスカー!!可愛い!!!オスカー可愛いよ!!!オスカーァ!!!お腹が良い匂い!!香ばしい香り!!いつでも吸っていたい!!!嫌がらずに俺に吸わせてくれてる君が可愛いよ!!オスカーちゃん綺麗にブラッシングしてあげるねほーらほらほらほらほら!!!!カリカリもち○ーるも鰹節を模したものもあるぞどんどん食べろ!!可愛い!!!ごはん食べる姿可愛いよ!!!思わず百連写して写真フォルダマックスにしちゃうぐらい!!!可愛いよ!!!可愛いよ~~!!!ンフゥ!!!!

ああっ!?ポチもそんな不貞腐れるなって、ほら!!お前だって可愛いに決まってんだろ!!いくらでも撫でてあげるからこっちおいで!!!よーしいい子だよーしよしよし!!!固くても小さく可愛らしいお前が愛しいよ!!!表情だって豊かさ!!!こんなダイナゲート見たことねぇ!!!宇宙一可愛いダイナゲートだ!!!あー!!皆損してるよなぁ!!!こんな可愛いもんをみのがしてるなんてさぁ!!?どうしてこんなに可愛いのに皆見向きもしないの!??この二匹可愛いだろ!!?可愛いに決まってるだろ!?わかってくれ!!本当に可愛いにから!!!な!?!!なぁ!?!!可愛くないとかいったらぶっ殺す!!!!可愛いって言いやがれ!!!!!

 

 

 

 

 

……ふう、たまには怪文書があった方が面白いだろ?ビックリするなよ、ちょっとだけ発狂しただけだから。別にG11にポチとオスカーをモフッてる所目撃されて凹んでる訳じゃないんだ。こうやってちょっとだけ距離をとられて凹んでる訳でもないんだ……信じてくれ……うぅ……。

 

 








ジャベリンくんは強く生きるのです……。

やっと来週辺りから通常通りの更新速度で行けそうです。だからコラボ消化ホイホイとしていくんだ……。

作品への感想及び評価は心の支えです。どうぞ、よろしくお願いいたします!!それでは!


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オスカーは見た。

ジャベリンは猫を飼っている。その猫はオスカー、ジャベリンの癒しだ。今日はそんな猫の視点で始まるお話である。







 

私はオスカーだ。気高きくろぶちの猫である。あれはいつ頃だったか、極寒の雪原のど真ん中を歩いていたらポチという鉄の犬に導かれた。そして今はジャベリンという人間と出会い、オスカーという名を授けられ、その人間の棲み家を私の活動拠点としている。

あそこは良いものだ。ヘリアントスという人間が私に良くしてくれてるし、何より其処らを出歩いても何にも襲われず、何も言われない。私が好きなようにしていられる。

だが、昨日一昨日辺りに、ジャベリンはもう一人の“11”と呼ばれる、鉄の匂いがする人間を使ってポチと私をジャベリンが勤めているという会社の一部屋まで連れてこられた。昔居たところというわけだから、別に嫌という訳ではないが、私は猫だ。自分の匂いがしない場所というのは慣れぬ。

さて、今日はそのジャベリンが会社の社宅なるものにて私を抱いて寝ていた。

 

「スゥ……フゥ……」

 

ちなみに私の頭を嗅いでいる。なんとも“ていすてぃ”な匂いがするらしい。何故そんな匂いがするのか、私にはよくわからない。ただジャベリンには分かるらしい。人間とは不思議なものよな。そう思いながら顔を洗う。しかしジャベリンの鼻が邪魔で中々やりにくい。少し文句を言ってやろう。

 

「にゃー」

 

「ん?あぁすまんオスカー、邪魔だったか」

 

私の抗議が伝わってくれたのか、ジャベリンの鼻は私の頭から離れた。これでのんびりと顔を洗える。

 

「んふぅ……」

 

…………今度は私の背中に移動した。ポチ、この阿呆をどうにか出来ぬか?

 

≪ご主人は疲れてるんでそこは我慢してください≫

 

このジャベリン至高主義者め。よくわからん人形になってジャベリンに殴られてしまえ。

 

≪あっ、それも中々良いですね≫

 

変態か?お前、変態なのか?

普通、殴られて喜ぶものがあるか。私なら御免だね、ポチ、お前は殴られるのも構わないのか?

 

≪そりゃもう。私はご主人を守るための存在です、ご主人が望むならその通りに≫

 

まるで狂信者だな、ポチ。まぁそれで構わないのであれば何も言うまい。私は顔を洗うので忙しいのだ、あまり相手をする暇もないのでな。

 

「なーににゃごにゃごとポチと喋ってんだよオスカー……俺にもにゃごにゃご鳴いてくれよぉ……」

 

「みゃーお」

 

「ンッフッフッフッフッフッ……可愛い」

 

変な笑いを出しながら私の背中をまた匂い始めるジャベリン。これは私がいくら文句を言っても駄目だな、置いておこう。何、私の心は寛大だ、時には諦めてやるぐらいの器量はあるのである。

 

≪…………≫

 

ポチ、なんだその疑問に満ち溢れたような目は。

 

≪ただ面倒臭くなっただけなのでは……?≫

 

ほう、私の刃に倒れたいのか貴様。私は強いぞ、何せお前に導かれる前はどの猫、どの化け物どもよりも強かったのだ。舐めるでない。

 

≪E.L.I.Dかな?≫

 

知らぬ。ただ奴等は厄介だった、私をその汚い手で触ってこようとしていたからな。この自慢の爪……今は切られてなまくらになってはいるが……まぁとにかくバッタバッタと倒してやったとも。

 

≪へー……≫

 

どうだ、凄いだろう?

 

≪スゴイデスネ、ハイ≫

 

カタコトで私を誉めるポチ。

ポチめ、信じておらんな……まぁ無理もない、私の戦う姿をお前は知らぬからな!

 

「ジャベリン、居る?」

 

≪あ、11≫

 

ふと私が自慢げにしていると、銀髪の気だるそうな人間、“11”がやって来た。どうやらジャベリンに用があるらしい。ビニール袋片手に部屋の入り口近くに立っている。

 

ほら、ジャベリン来客だぞ。

私はそう伝えるために後ろを向いた。

 

「スゥ………」

 

寝ている。

折角の来客だというのに、何をしているのだこやつは。そんな奴には一緒に寝てやらんぞ、私は抜ける!

 

「にゃあーお」

 

「あ、オスカー、そこにジャベリンが………………」

 

私が声高らかに美声を響かせながらジャベリンの腕からすり抜ける。それに気が付いた11が私たちの方を見たが、言葉途中に食い入るように私……否、丁度抜け出たジャベリンの腕の部分を見つめてきた。

どうにもこれは、何かあるぞ。ポチもそれに気が付いたのか、何も言わずに外へ出ていった。気遣いでもしているのかあの鉄の犬は。

 

「…………まぁ、別にいいよね」

 

11はビニール袋を近くの机へ置き、するすると液体が如くジャベリンの腕の中へ入っていく。そしてそのままご満悦な顔でジャベリンの顔辺りまで行く。

 

「さぁて、寝よ……」

 

すぐに微睡みへ向かう11。早いなこいつ、私よりも寝るのが早いぞ。

 

「ん……オスカー……」

 

「ひゃっ……ジャベリン?」

 

「んー、オスカー……」

 

さて、少し面白いことになったぞ。ジャベリンが私と間違えて11を抱き締めている。それに加えてあれは匂いを嗅いでるな?

ジャベリンの勢いは凄いぞ、私を脅かす掃除機に負けぬ劣らぬ強さだ。そんな勢いで吸われたらどうなるだろうか……。

 

「あー……いい匂いだ……」

 

「……寝惚けてるのかな、まぁいいけど」

 

「んへへへへ……オスカーは可愛いなぁ……」

 

……あまり11には効果が無さそうだな。寧ろ幾分か嬉しそうである。お前もポチの仲間か? いやどうなのだ11よ。

 

「違うけどね…えへへ……でもたまにはこんな日もいいのかな……?」

 

ついでに頭も撫でられているぞ、11。その、お前の顔はこれまでにない程にふにゃけている。なんだその顔は、あらゆるパーツがほんやりとしているぞ。

何なのだこれは。ジャベリンが寝ぼけ眼で11を撫でながら匂いを嗅ぎ、その11はふにゃけた顔でそれを受け入れている。もしこの会社にいる人間がそれを見たら、確実に困惑するだろう。というかしている。入り口で赤毛の偉丈夫、“トライデント”だったか? そいつと黒髪の短髪で青目の軽薄そうな“パルチザン”が二人覗いていた。

トライデントは咽び泣いている。

 

「てぇてぇ……てぇてぇよぉ……」

 

「隊長……まさかそっちの気が……?」

 

……何かしら勘違いをしているようだ。まぁ私には関係ない。とりあえずはこの状況を静観するとしよう。私は気高きくろぶちの猫だ。時には何も言わず、ただ見守ってやるのも務めであろうて。

私は箪笥の上に登り、11を抱くジャベリンと静かに見守るトライデントとパルチザンを眺める。

 

「うひ…………んぁ……11……?」

 

「あ、おはようジャベリン」

 

……私はオスカー、どんなときでも同じぬ気高きくろぶちの猫である。例えこの先起きるであろう事にも動じることはないであろう……。






「まぁいいか……」

「……はぁ、また寝ちゃうんだねジャベリン」

「んー11ー……」

「なに?」

「大好きだぞ……くぅ」

「……そっか。おやすみ、ジャベリン」



「てぇてぇよぉ……パルチザンわかるか……このてぇてぇさ……わかるだろ」

「いやわかりませんってトライデントさん……」

≪……眼福≫




※小一時間は続きました。



いやはや、まさか燃え尽き症候群がでるとは思わなんだ。サマシュです。夏は色んな予定があるから中々忙しいものです。まぁどちらにせよ頑張りますがね。

さて、次回こそコラボ消化!楽しみにどうぞ。

この作品への感想及び評価は心の支えです。どうぞよろしくお願いします!それではまた今度!!


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☆傭兵、申し込みだってよ。

やって来ましたコラボ消化。それはその下準備的なものです。どーぞ。





305日目 晴

 

気が付いたらG11が俺の腕の中で寝ていた。可笑しいな、俺はオスカーを抱いていつの間にか寝ていた筈なんだが……作為的なものを感じる。ただ抱き心地は良かった。

あとG11も結構満更でも無かったしセーフだ、確実にセーフなのだ。トライデントがずっと限界オタクみたいなものになっていたがあれと俺のそれとは関係ない。パルチザンが俺を蔑むような目で見てくるのだって関係ない。盾部隊のイージスさんが「安心してくださいジャベリンさん。この会社はそんな貴方でも迎え入れてくれますから」と慈愛の目で言われたのだって関係ない。

ただ家族との仲を深めてただけなんだよ、あの後オスカーもポチも来たからさ……というかもう見慣れてる光景だろ。今さら過ぎやしないか?それとも皆暇だったから乗ったんだなそうだな??

 

そうじゃなきゃ社長とクレイモアが俺の所に来る筈がないのだ。あとスリンガーもな。あれだろ、ドッキリの看板出すんだろ?

 

え、違う? じゃあ何の話なんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

306日目 曇

 

レモネードが飲みたい。あの喉を通った時の爽快さ、あれは中々良いものだ。他のPMCが管理する都市での任務中、こっそりレモネードを飲んだことがあるが、本当に美味しかった。また今度行こうかな……。

 

そんな現実逃避はさておき、昨日の社長とクレイモアによる圧迫面接について話そう。ものものしい雰囲気を醸し出しながらの俺の部屋への入室だったから何事かと思ったのだが、何て事はない、ただグリフィンの指揮官が武器庫に格闘戦の模擬演習を申し込んで来たからその相手をして欲しいんだとよ。

別に構わないんだが、ぶっちゃけ体術云々は盾部隊が適任だと思うのだが、社長曰く丁度盾部隊がドラマ撮影とか任務とかで忙しく、空いてるのが俺達だけらしい。

後は、何度も実戦に出てて技術もそれなりにある槍部隊が適任だろという独断らしい。

 

なんとなーく俺は渋ったが、社長はもう他の隊員には許諾を得たらしい。その外堀を埋めてから本丸へ向かうスタンスを止めろこの野郎。

報酬を弾むとは言ったからいいんだけどさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

308日目 晴

 

スリンガーから模擬演習にやって来る指揮官の詳細を教えてもらった。

確か、R06地区の指揮官で名前が『シーラ=コリンズ』って人だったな。グリフィンの顔写真を見るに、女性だった。というか昔見たあのブライダル系統の雑誌だったか、何かの雑誌の表紙に載っていたその人だ。随分と数奇な運命なもんだな。向こうも武器庫が載っている雑誌は見たのだろうか、見てくれてると嬉しいもんだ。

しっかしこの人、正規軍の出身なんだよな……一体どんな女傑なのか気になるね。なんで『スイートキャンディ』って呼ばれてるのかは分からないが、まぁ少なくともクレイモアみたいな女性ではない事を祈る。

いや、でも待てよ? スリンガーから聞いたんだが、そのコリンズ指揮官は正規軍、しかもE.L.I.Dを倒す部隊に居たらしい。どうにも俺の脳内では対E.L.I.D部隊=脳筋集団の集まりという形式図が生まれてしまっているせいで、どうにも身構えてしまう。まあ、うん、外見通りのおしとやかな女性であるように祈っておこう。

 

だから、その、なんだ、クレイモア、頼むからその手に持っているモーニングスターを戻して欲しい。というか別にお前を貶してた訳じゃないだろ!?

おいまてやめ

 

 






「私は脳筋じゃあない」

「嘘……つくんじゃねぇ……グフッ」




さて次回は笹の船様作『女性指揮官と戦術人形達のかしましおぺれーしょん』(URL: https://syosetu.org/novel/184136/ )
とのコラボです!この作品は主人公『シーラ=コリンズ』という女性指揮官と、UMP45を中心とした戦術人形達との涙あり笑いありの作品でございます!是非ともご一読を!!

それでは皆さんごきげんよう!


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☆傭兵、苦労するってよ。

メンタル死んでた間に150000UA、ありがとうございます。これからも頑張りますぜ、皆さん。

さて、ようやっとシーラさんがやって来ます。どうぞ!


309日目 晴

 

昨日の記憶がない。日記を読み直したら大体を察したが……なんだろうな、剣の奴がハンマー持って恥ずかしくないの??

 

そんな冗談はいいとして(悪寒がしたから)別の話題へ移るとしよう。流石にこれ以上殴られると記憶喪失起こしちまう。

今日は確かグリフィンの指揮官が模擬演習の為に武器庫へやってくる日だ。その人の名前は『シーラ=コリンズ』だったな。

R06地区に配属されている指揮官で、意外に珍しい女性の指揮官だ。ブートキャンプの時は男性の指揮官しか居なかったし……まぁたまたま暇な奴が野郎ばっかりだったってのもありそうだが、そんなに指揮官にならないものだろうか。

割かしグリフィンは待遇は他と比べりゃまだ良い方なんだが……いやこれは俺の主観か。武器庫と比べるな、あそこは元より可笑しいんだ。人間が戦場に立ち、人形が後方支援する。世間一般じゃあ普通は逆、というか前線も後方も人形が担当してるってのに、随分と前時代、懐古的、伊達と酔狂でやってるPMC、なんて周りから言われてんだぜ。

 

まぁそんな事はどうでも良い。丁度警備の奴らからコリンズ指揮官が来たと連絡が入った。社長とコリンズ指揮官に興味を持ったクレイモアと一緒に迎えるとしよう。ポチとオスカーはお留守番だ。

 

 

 

……………………………………………………

 

……………………………………

 

……………………

 

…………

 

 

 

 

 

「なぁクレイモア」

 

「なんだボス」

 

「目玉焼きは好きか?」

 

「好きだが?」

 

いやなに変な話始めてるんですかねお二方。お客さん出迎えるんでしょ?ちゃんとしっかりしてなきゃいけないだろうに。

 

早朝、といっても8時ぐらい。武器庫の駐車場にて三人で来客を待つ。今回のお客様は『シーラ=コリンズ』。R06地区の女性指揮官、元正規軍、暫くの空白期間を経てグリフィンに入社したらしい。その空白期間がどんなものなのか、そこはスリンガーも調べられなかったらしい。そんな彼女がここやって来る理由は、人形たちへの格闘技術をインストールするための共同模擬演習だ。戦術人形って銃の扱いを上手くするほうがよっぽど良いらしいが、そこのところはどうなのだろうか。

 

「使える手は多いほうがいいだろう、ジャベリン?」

 

突然、社長がそんなことを言う。確かにそうなのだが、基本的に戦術人形というのは銃さえ扱えれば十分である筈だ……あぁ待て、そういえばブートキャンプで人形達が俺達の組手とか見よう見まねでやってたりしてたな。それと似たようなものか?

それなら分かる。

でもそうであるとしてもまぁ、普通に手数を増やすためにこっちに申し入れをしてきたのだろう。

社長は俺に向かってにかりと笑う。

 

「まぁ、盛大に歓迎してやろうじゃあないか」

 

「それもそうだな……ところで社長」

 

「なんだ?」

 

「なんでクレイモアと取っ組み合ってんの?」

 

アホらしいことに、目の前で社長がクレイモアと殴りあっていた。それもとんでもねぇ音を出しながら。天を裂き地を割るような音が彼らから出ている。なんだこのワンマンアーミー同士の殴り合いは……と思いながら突然始まった大怪獣決戦を見る。コイツら何を思ってこんなことをしているのか訳が分からない。殴り合いが激しすぎてコンクリートが抉れてる待てお前らマジで待ってくれ。

 

「社長、クレイモア!!何があってこんなことになったんだよ!?」

 

俺が止めに入る。すると、ピタリと止まりこちらを見てくる。その顔は有り得ないものを見るような表情を浮かべていた。

クレイモアが口を開く。

 

「ジャベリン、これはとてもとても譲れない事があるのさ」

 

「そうだぞジャベリン。クレイモアは俺にとって絶対に譲れない所を易々と踏み越えやがったんだ……」

 

また殴り合いを再開する両名。いやその理由を教えろよと。その譲れない物が何なのか教えろお前ら!!

 

「「目玉焼きに何をかけるか」」

 

お前らバカなの?

ってまた殴り合いを始めるんじゃねぇ!!客が来るのに何て下らないことしてんだお前らは!!!!

 

「下らない訳がないだろう!?クレイモアの大馬鹿は目玉焼きにケチャップをかけるとか言っているんだぞ!?」

 

「ケチャップを愚弄するか、ボス!!!私はボスが目玉焼きにマヨネーズをかけることが理解できない!!というかボス!!アンタはイージスに高カロリーの食事は止められているだろう!!?」

 

「お前らなんでそんなイロモノかけてるの!!??」

 

目玉焼きには塩コショウじゃないのか!!?シンプルイズベストじゃないか!!!

 

ある意味ハラハラドキドキしながら二人の下らない喧嘩を見つめる俺。二人の破壊神は、留まることを知らない。殴り殴られ蹴り蹴られ。ノーガードで打ち合う度に爆音が鳴る。だが、その殴り合いも長く続く事はなく二人が何かに気がついて、急に向こう、車と複数人立っている地点まで動き出した。また何かするんじゃねぇかなコイツら。

いやまて何か悪い顔してるぞオイオイオイ!!

 

「社長ォ!!客が来るってのに何しようとしてんだオイィ!!!」

 

「いいじゃないか、ジャベリン。パフォーマンスには最適だぞ?」

 

さも当然のように言う社長。

いやそれ向こうの顔見て言えるのか!?

 

「まぁまぁ、問題ないさ。さぁようこそ武器庫へ、総合責任者のジョン・マーカスだ」

 

「わざわざお迎えありがとうございます。グリフィン管理R06地区全線基地のシーラ=コリンズです」

 

社長は俺のツッコミをガン無視。ちょっと本気で殴ろうかなこの野郎。

てか目の前の黒髪黒目のコリンズ指揮官が若干引き気味じゃないか?

 

「そんなに固くならなくてもいい。もっと楽でも構わないぞ、スイートキャンディ」

 

「…………」

 

社長が信愛の意味を込めてか、右手を差し出してコリンズ指揮官へ握手を求めた。それと同時に彼女の顔が強ばった瞬間を見た。

……社長、一応アンタはスリンガーを通して彼女の事は知っているはずなんだが。デリカシーっていうものがないのか?

 

「おっと…いや済まない。初対面の奴との挨拶での癖でな。クルーガーからお前の事は聞いていたんだが……安心してくれ、少なくともウチの野郎共はコナ掛けてくるような奴はいない」

 

「……お気遣い感謝するわ。お会いできて光栄よ、討伐者」

 

だが、彼女の反応に気が付いたのか社長が多少の嘘を混ぜながらも彼女へ謝罪する。偉いぞ社長、ちゃんと謝れたな。

それにしても社長のコードネーム知っていたんだな、コリンズ指揮官。社長、案外名前知られてるんだな……。あぁでも、コリンズ指揮官が正規軍に居た時に社長の活躍ぶりとかが伝わってても可笑しくはないよな。

 

「噂は前から聞いていたよ。色々と大変だったみたいだねスイートキャンディ」

 

「……ええ、お陰様で今はよろしくやれていますよ」

 

今度はクレイモアが彼女へ声を掛けた。だが未だに顔は固いままのコリンズ指揮官。

彼女、良い気はしないだろうなぁ……何せ元正規軍の奴らが目の前に二人も居るわけだし、やりにくいったらありゃしないだろう。

 

「社長も言っていたけど、そんな提携先だからって固くなる必要なんてないよ。あぁ補足するけど、あんたについて知ってるのは私とボスだけだ、安心しな」

 

すると、コリンズ指揮官の様子を見てなのか、クレイモアが微笑みながら彼女の肩へと手を置いた。クレイモアの言葉に、コリンズ指揮官も吹っ切れたような表情を浮かべていた。

 

珍しいな、クレイモアがあそこまで気を遣えるなんて。いつもあんな風に気を遣えるんだったら靡く男だって一人や二人出てくるだろうに。

 

コリンズ指揮官の変化を見たのと同時に社長が口を開いた。

 

「クレイモア、立ち話も結構だが、そろそろ彼女達を案内してやったほうがいいだろう?」

 

「了解、ボス。着いてきなアンタ達!」

 

そしてそれを皮切りにぞろぞろと皆動き出す。

俺は何とはなしに首に手を置き、独り言のように呟いた。

 

 

「……最初からそうして欲しかったんだけどなぁ」

 

 

偶々隣に居たコリンズ指揮官から憐れみのような目を向けられたのは気のせいだろう。

 

クレイモアから向けられた絶対零度の視線も気のせいなのだろう。馬鹿野郎俺は生きるぞ。

 

 

 





目玉焼きには塩コショウ。シンプルイズベスト。

因みに戦闘シーンは技量不足よりできません()
戦闘シーン見たい人は下記URLの『指揮官、傭兵と組手するってよ』で見てね!
URL: https://syosetu.org/novel/184136/

感想、及び評価は心の支えです。メンタルがやられない限りは執筆の糧となります。どうぞ、よろしくお願いいたします!それでは!!


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☆傭兵、演習終わりだってよ。

さぁ、コラボも終盤。ただ戦闘描写はキンクリします()
それではどーぞ。


 

 

 

 

「あだだだだだ!!? おいクソ社長! これから模擬戦なんだぞなにしやがあ"あ"ぁ"あ"!!?!!!!?」

 

「ほーらまだ行くぞよしいちにー、さんしー、ごーろーしーはー」

 

突然だが俺は社長にコブラツイストをかけられている。というのも、一通り自己紹介を終えたあとに社長とクレイモアの喧嘩についてちょっと指摘したら急に技をかけられたんだ。痛い。

やめろやめろと叫べどもどうにもこうにも止める気がない。

助けを求めようと向こうを見ても笑ってるだけで何もやってきてくれない。多分仲がいいんだろうなぁって思ってる。クソッタレ!!!

 

ただその拷問も長く続くわけではなかった。時間は大事だからな。

首を擦りながら模擬戦の準備をする。にしてもコリンズ指揮官、何故彼女も模擬戦に参加するのだろうか? そんな疑問を彼女へ投げ掛けた。

 

「人形に頼りっぱなしてのも性に合わないのよ。最近ちょっと鍛えなきゃなって思ってて」

 

「なるほど? まぁ守られっぱなしなのは確かに嫌だな」

 

ちょっと嘘っぽかったが、それはスルー。彼女にも話したくないことの一つや二つはあるだろうしな。

 

1号館から少し歩いて数分ほど。訓練所までやって来た。この訓練所は剣部隊がよく利用している所で、大分広い。

コリンズ指揮官がその広さに驚いていたが、まぁ無理もない。それとなんでこんな所を選んだのかといえば、もしかしたら社長とクレイモアが模擬戦に乱入してきそうな気がしてならなかったんだ。

 

「じゃあ怪我しない程度にやろうか」

 

「怪我しない程度? そんな甘っちょろいこと言ってて訓練になるの?」

 

今、俺はコリンズ指揮官と向き合っている。彼女は今タンクトップにミリタリーパンツと動きやすそうだ。俺もそんな感じではあるものの、向こうが身軽に見えてしまうのは何故だろうか。

 

「いや、客人に怪我させるのはな……」

 

目の前のコリンズ指揮官は割と滾っているのか、結構挑発的な事を言ってくる。なんでそんな事を言うのか聞いてみれば、

 

「溜まってるのよ」

 

とかなんとか。いや、言い方ァ!

どうやら存外に彼女は血の気が多い人間のようだ。ならそれに応えてやらなきゃならんよな。

渋い顔をしてしまうのを自覚しながら俺は構えた。コリンズ指揮官は不敵に笑っている。

 

「それじゃあ両者、準備はよろしいですか?」

 

審判役のコリンズ指揮官配下であるスプリングフィールドが手を上げる。そういえばスピアが彼女とやりあうらしいな。アイツの何とも言えない微妙な顔を忘れられない。ありゃ何か作為的なものを感じるって顔だった。

 

「勝って笑うか、負けて泣くか。どっちにしても大怪我は避けてくださいね?」

 

“勝って笑うか負けて泣くか”……ね。出来るなら盛大に笑い飛ばして勝ちたいもんだ。

 

「では、用意……」

 

気を引き締めてスプリングフィールドの腕が下がるのを待つ。

あれが下がった瞬間が勝負開始だ。少し足に力が入った。

 

「始めッ!!」

 

彼女の腕が振り下ろされ、戦いの火蓋が切られる。

俺とコリンズ指揮官は、互いに地を蹴った。

 

さぁ、俺も楽しんでいこう。

 

 

 

……………………………………………………

……………………………………

………………………

……………

……

 

 

 

 

 

 

疲れた。

対戦結果は俺が勝ったのだが……危ういところが目立ってたな。特にコリンズ指揮官が渾身のカウンター……『外門頂肘』だったか? あれをマトモに食らってたら俺がやられてたと確信出来る。コリンズ指揮官はそれだけやり手だったのだ。元正規軍は伊達じゃあない。

にしても楽しかった。戦術人形との組手も良いもんだ。スプリングフィールドとスピアの戦いは見ものだった。スピアが彼女のカウンターを誘発させつつ蹴りを食らわせたり、逆にそのフェイントをスプリングフィールドが見切ったり……うん、ベストバウトじゃないかな。あとはパルチザンとトンプソンのステゴロかな?

 

因みに、この模擬戦が終わった後はまた軽い組手をしつつ、相手の良いところとか、癖とかを指摘する。なんてことをしてみた。互いにいい刺激になっただろうな。

俺はコリンズ指揮官へ投げ技をレクチャーしつつ、実戦形式でやってみた。

まぁ投げさせなかったけど。

 

「私は遺憾の意を表明するわ」

 

「何でだよ」

 

俺は悪くない。実戦形式なんだから投げさせる道理も無いだろうに。

 

組手も終わって、俺たちは武器庫の食堂で休憩をとっていた。目の前のコリンズ指揮官は……膨れっ面かなこりゃあ。如何にも私は不満がありますと顔に出ている。ここに来た時は結構キリッとしてたんだけどなんだこの……安心でもしたのかな。

初めはしっかりとしたキャリアウーマンのイメージだったのだが、今の状況を見るとどうにもそのイメージは間違いであったらしい。

 

「それに、俺が手加減してても訓練にならないだろ?」

 

「成功体験が無かったら人間モチベーション維持できないこと分かっててそれ言ってる!?」

 

ぐぬぬ……という台詞が似合いそうなくらいの顔になっているコリンズ指揮官。

これもう何言っても聞かなそうな気がするんだが……彼女は多分負けず嫌いなのだろう。

 

「まぁまぁ指揮官。また今度挑戦すればいいじゃないですか」

 

さてどうしたものかと考えていると、スプリングフィールドがコップをコリンズ指揮官の前に置きながら彼女を宥めていた。

コップの中にはアイスココアが入っている。

コリンズ指揮官は頬を膨らませながらもそれを口に含んだ。

 

瞬間、花が咲いたかと錯覚してしまうぐらいの顔に変わった。

 

……そういえば彼女の昔のあだ名は『スイートキャンディ』だったな。

 

「……なるほどね」

 

「……? 何、どうしたのよ」

 

「いや、なんでアンタが『スイートキャンディ』って呼ばれてるのか合点がいってな」

 

「ちょっと! それ私が子供っぽいとでも言いたい訳!?」

 

何というか、彼女はとびきり甘いお菓子が似合う女性だ。そんな気がしてならない。さっきの不機嫌顔が一転して年不相応の……まぁ失礼ながらそう思ってしまった。

 

「あ……スプリング?」

 

「お気付きでなかったんですか?」

 

今更気が付いたコリンズ指揮官。それを見てクスクスと笑うスプリングフィールド。仲がいいな、本当に。

ただ、コリンズ指揮官が頭を抱えてしまったので、ちょっとだけ助け船をいれてあげた……のだが、余り効果は無かったようだ。まだちょっとだけ膨れっ面になってる。

 

……そうだ、また今度会ったらとびきりの甘いロイヤルミルクティーでも振る舞ってみるかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで、食堂で時間を潰していたらもう彼女達が帰る時間となった。彼女達を駐車場へ案内していく途中、訓練場から爆発音が聞こえてきたので一応パイクとパルチザンに現場確認へと向かわせた。十中八九社長とクレイモアが暴れてるのだろうけど確認は大事だ。

 

「じゃあ、今日はありがとう。お陰で有意義な時間が過ごせたわ」

 

「こちらこそ。また機会があったら頼むよコリンズ指揮官」

 

「ええ。次は絶対にボコるから」

 

「ははっ」

 

その時はしっかりとガードでも固めておこう。

 

 

そんな軽口を交えつつ彼女達が車へ乗り込んでいくのを見守った。車が動き出し、みるみるうちに遠ざかっていく。

 

「……疲れたな」

 

ぽつりと、スピアがそんな事を言った。

確かにな。お前一番頑張ってたろうに。だけど安心するのはまだ早い。とんだ大仕事が残ってるぞ。

 

『隊長ー!!!社長とクレイモア隊長が大怪獣空中大決戦してます!!』

 

「……ほらな」

 

なんで空を飛んでいるんだあいつらは。亀の怪獣ごっこでもしてるのか。

車が見えなくなったのを確認して早足に訓練場へと急ぐ。時々叫び声聞こえるけどこれ本当にやばそうだぞ。

 

『アッ!社長が火を吹いた!?隊長!!現在鎚部隊と協力してますが止められません!!』

 

「剣部隊へ連絡しろ!!あと鎚部隊には下がらせろ!お前らもだ!!」

 

『copy!』

 

心の中で敬礼をコリンズ指揮官達の方へやる。もしも彼女たちとまた演習をするようなことが有れば今度は銃撃戦でもやってみたいもんだ。そして演習終わりにとびきりのティータイムでも提供してやろう。

 

『隊長ォ!!!クレイモア隊長が飛鳥文化アタックやってます!!』

 

「落ち着けパイク!!」

 

……まぁ、先にこっちを片付けないとな。頼むからここで暴れるんじゃなくてE.L.I.D討伐にでも行ってて欲しいもんだ。





笹の船様、そちらの作品とのコラボありがとうございました。ちゃんと描写出来ているのかは不安ですが、楽しんでくれたのでしたら幸いです。

さて、話を進める度に社長のギャグ度合いがおかしくなってくるのは何故だろう。
次回……どうしようかなあ。書きたいことが多過ぎて逆に何もできないやーつ。
ただ百話記念に何かはしたいですね……。

この作品への感想及び評価は心の支えです。どうぞ、よろしくお願いいたします!!それでは!!



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傭兵、整備だってよ。

交流会(?)と大決戦(?)を抜けた翌日。
ジャベリンくんはお家に帰ります。はてさて彼を待つものとは……。







 

310日目 曇

 

俺の部屋に突然整備士達がやって来て瞬く間に俺を拉致っていった。レールガンも携えて。

いきなりのことなもんだから驚いたけど、どうにも俺のレールガン……グングニルだっけか、正規軍の定期調査に引っ掛かった。

 

……武器庫ってのは結構特殊なPMCなんだ。本来は正規軍が担当すべき仕事を請け負っていたりする。E.L.I.Dの処理とかだな。

その任務には機密情報が勿論あったりするし、はたまた正規軍の装備を使わせてもらったりとまぁ下手したら癒着を疑われてしまう所もあったり。その疑惑を払拭する為か、時々思い出したかのように正規軍から調査官が派遣される。名目上は武器庫がPMCとしては過剰な火力を所持していないかどうかの調査らしい。

 

まぁつまりだ、その名目に引っ掛かっただけである。いや仕方ないよな。前に戦ったE.L.I.D…アントマンで使った弾も威力が可笑しかった。俺の記憶が正しかったら正規軍もあんなもの持ってない。

 

いや待て。何だかんだ言ってうち戦車とかジャベリンミサイル、ミニガン、20mm対空砲とかあるぞ。あれはセーフだったのか?

あ、レールガンがヤバすぎるのねクソッ!

 

ひとまず調査官からの提案によると、

 

・誰でも使えるようにする

 

・榴弾の殺傷有効範囲を三分の一に狭める

 

・レールガンの実戦データと設計図をこちらに譲る

 

ということになった。

整備士達が物凄く名残惜しそうにしていたがこればっかりは仕方がない。命令に背いたらすぐに正規軍がやってくるからな。

 

さぁ整備士達、お前たちは徹夜だ…………俺も?

 

あっテスター……マジかよ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

311日目 晴

 

眠い。寝かせて欲しい。

整備士達の作業に付き合わされるとは思っていなかった。今は眠い頭でこうやって日記を書いている。何してんだろうな俺は。

いつの間にか眠い頭でオスカー撫でては吸ってを繰り返しつつ一日を過ごしていた。俺は眠い。G11抱き枕にしてみるか……いや、けどそんな事を彼女は許すのだろうか? 最近俺が寝るときに彼女はベッドに入ってきてくれなくなってる。何でだろう。まさか反抗期か……? いやでも朝起きたら普通にベッドの中に居たし何でだろうか。

ちょっと気になったので俺は今日俺が寝てる間の彼女が何をしているのか観察しておこうと思う。

 

 

 

 

 

 

 

……G11が俺の寝顔の観察日記なんてつけてたんだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

312日目 雨

 

G11、お前は一体何が起きたんだ。

 

そんな事を考えつつオスカーとポチとG11を連れて自宅へ帰って来た。帰宅中の車内では終始無言というか、俺が生返事しか出来なかったから個人的に気まずかった。

なぜ彼女は俺の寝顔を記録するなんてやったのだろうか……あれか、俺を食べるのか? そんな事はないか。

 

疑問が増えるばかりだったが、考えても埒が明かないのでもう考えるのを止めた。折角の休日なんだ。何もG11の趣味を追及する必要なんてひとつもないからな。

G11を家に帰した後は、とびきり甘いロイヤルミルクティーを飲みながらテレビでも見てボーッとしておこう。そして銃の整備もな。久方ぶりに弄りたくなったんだ。それに愛銃のSCARが泣いている。ちゃんと愛でるんだ。

 

あぁそうだ、AN-94やらAA-12もちゃんと手入れしてやらないと……。ちょっと大変だな。416達呼んだら来るだろうか? こう、指パッチンしてさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

実際にやったら

「ジャベリン、今日は暇……そうではないわね?」

って言いながら鍵を掛けてた筈の玄関から入ってきたんだけどこいつら絶対盗聴機仕掛けてやがるな? とことん手伝わせて合鍵没収して、こいつら帰ったら大掃除だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

313日目 晴

 

6つぐらい出てきた。ふざけんな。俺はあんたらに監視される筋合いはねーぞ。

 

そんな文句を垂れながら、久々にノートパソコンを開いて仕事のメールが来てないか確認する。すると、子守りの任務が入ってた。グリフィン本社の管理区域にある保育園……あったんだなそんなもの。それはともかく、そこの警備を任された。

というのも、そこの保育園はなにかとやんごとなき人々のお子様が通っているようで、最近脅迫状が来たらしい。ちょっと危ないからって俺が呼ばれた。何でだよ……人形で済む話じゃありそうなんだがな。あぁまさか依頼主が人形嫌いとか?

 

いや無駄な詮索はやめとこう。折角こうやって依頼されたんだ。ただの傭兵が仕事内容にとやかく言い過ぎるのも駄目だろうて。仕事は真面目にそつなくこなして、例えとんでもないことになろうとも仕事を完遂させる。

傭兵は信頼が大事だ。もしその信頼を損なうとなると武器庫自体に損害が出てしまう。ましてや今は人形が主流だ。いつシェアを奪われるか分かったもんじゃない人間様は細々と、真面目に、コツコツやっていくしかないんだよ。

 

一先ず任務に使う装備確認をするとしよう……相手を警戒させないためにもあまりガチガチの装備にするもんじゃないな。

とりあえずガバメントにUMP45ぐらいか。こいつらは威力もあって中々だし。後はポチつれて……防弾チョッキ服の下に着て……こんなものだろう。アレこれ不審者になってねぇか?大丈夫?

 

一回鏡を見てみたら着膨れしてるように見えたのだが……うん、ポチおめかししてバランス取ろうかな。そうしよう。

 





ポチは決意した。かの自分自身を愛する飼い主を諌めなければと。ポチは頭がよい。それこそそこらへんのダイナゲートよりかはだ。だからこそこの状況はどうにかしなければならないと確信した。ポチは今飼い主であるジャベリンに押さえ込まれて(抱っこされてるだけ)ナニカよくわからないものをつけられている。ジャベリンは満足げだ。それはよい。主人が喜ぶのが最上の幸せである。だが状況が状況だ。ポチはどうにかするしかなかった。だが何も出来なかった。ジャベリンがとんでもなく幸せそうだったからだ……。





ドーモサマシュです。今後は色々ネタがあるのでどうにかできそうですね……よろしくお願いいたします。

この作品への感想及び評価は心の支えです。どうぞ、よろしくお願いいたします!!それではまたこんど!


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槍部隊副隊長の受難…………??

100話記念のようなもの。



この作品の主人公、ジャベリンが所属するPMC『武器庫』は、一つの小さな自然保護区を持っている。そこには今時珍しい野生動物や比較的綺麗な湖、森林が存在する。武器庫はそんな自然保護区を極秘裏に管理していたりする。
というのも、あまりそこが知られてしまうと正規軍に手を出されかねないからだ。
今回の物語はその自然保護区に療養と称して配属された槍部隊副隊長『スピア』という男の一日から始まる。


 

 

 

俺の朝は早い。早朝五時には目を覚まし、欠伸を噛み殺しながら眠気覚ましのアーリーモーニング・ティーを飲むことから一日が始まる。今日は同じくこの自然保護区に勤めているジャパニーズから貰った茶葉で緑茶を作った。しっかりとした苦味が俺の意識を冴え渡らせてくれる。

 

「……これはジャベリンに送ろう」

 

緑茶を飲み干しつつ、洗面所で身だしなみを整えて今度は朝食の準備を行った。ここで外せないのがブレックファスト・ティー。茶葉はアッサム、ミルクティーで飲むつもりだ。今は急いでる訳でもないためパックではなく茶葉から淹れて飲むとしよう。

 

「今日は……サンドイッチだね」

 

茶葉を蒸らしている間に手早く朝食を作っていく。序でに昼食分のためにも多目に作っておく。手間を省くのは大事だ。

サンドイッチを作ったら今度は紅茶を淹れる。ちょっと高い所から淹れるのが美味しさの秘訣。俺の育ての親から教えて貰ったものだ。あまり意味を成さない行為じゃあるが、これは一種のおまじないに近い行為だ。

よい一日を過ごす為にってな。

これにミルクをたっぷり加えてミルクティーを作った。

 

「ふぅ……これが俺の求めていた日常だよ。ジャベリンと諜報部には感謝しないとな」

 

小鳥のさえずりが聞こえてくる。のんびりと紅茶を飲みつつサンドイッチを食み、最近弓部隊の奴等が作り始めた社内報を読んだ。今日は晴れが続くようだ。ニュースは別段面白い物でもなかった。ジャガーソン氏が延々とグリフィンで指揮官やってる娘の可愛さ自慢を語るコーナーは面白かったがな。主に暴走具合が。

社内報を読みながらサンドイッチを完食し、今度は仕事着へと着替えていく。といっても、私服の上から防弾ベストやらプロテクターやらを着けるだけではあるが。

装備を装着したら今度はガンラックに掛けてあるAK-12とMP412 REXを手に取った。MP412はレッグホルスターに、AK-12は肩に引っ提げて外へ出る。

 

目の前には一面の緑が広がった。空気は澄んで、水のせせらぎが聞こえてくる。とても綺麗だ。

 

「今日も一日、頑張るか」

 

一人、気合いを入れて歩き出した。

この自然保護区での任務は基本的に幾つかのルートを使って哨戒をするぐらいだ。今日俺が通るルートは川沿い、小さな池へと繋がるルートを上って行く。

俺の寝泊まりしている小屋から100m先にその川沿いのルートがある。

ちなみにこの川、とても綺麗ではあるのだが余り入りたいとは思っていない。何せ放射能による汚染が未だに残ってる。崩壊液じゃないことが唯一の救いじゃあるが、それでも気持ちのいいものとは言えない。

暫く歩けば池が見える。そこには絶滅危惧種となっている水鳥がちらほら。彼処に居る魚でも獲ってるのだろう。

 

「今日も怪しい影は無し……か」

 

周囲を見回して誰もいないことを確認する。そして腕時計を見て、そろそろお昼時であることが分かった。このまま川を下れば丁度いい時間になるだろう。

俺は通信機で異常がないことをHQへ伝えることにした。

 

「HQ、こちらスピア。異常なし、帰還する」

 

『了解、ご苦労だった。この後はのんびりと紅茶でも楽しんでこい、スピア』

 

通信機を切り、川の流れを眺めつつ小屋へと向かう。

さて、小屋に帰ったら残りのサンドイッチを食べながら作り置きのアイスティーでも飲んでゆっくりとしよう。

 

そんな事を考えながら少し湿った道を歩く。時折名前も分からないバッタが横切ったり、小鳥が俺を先導するように前を歩いたりと、自然の中だからこそ出来る体験を楽しんだ。

本当に、ジャベリン達は随分と良い場所へと俺を送ってくれた。今度は武器庫でお茶会でも開いて飛びきり美味い紅茶を飲ませてやろう。

 

「茶葉は何が良いかなぁ……」

 

お茶会で使う茶葉を考えていたら、もう小屋へとたどり着いた。俺はそのまま小屋の中へと入る。鍵を閉めていたことを忘れて。

 

「ただいま……ってまぁ誰も居ないよな」

 

「おかえりなさい、ちょっと勝手に冷蔵庫の紅茶頂いているわよ」

 

「あぁ、構わな………………」

 

数十秒。それが俺の固まった時間。何故彼女が居るのか、何故バレたのか、皆目検討がつかない。

俺の目の前に居るのは、白髪で目を閉じている戦術人形、『AK-12』。昔、とある調査任務で一緒に行動して以来、ずっっっっっっと目を付けられている。目的は分かりきっているのだけれども、一応彼女に何をしに来たのか聞いてみた。

 

「AK-12、なんで君が……」

 

「風の噂で貴方がここに居ることを聞いたのよ。持つべきは良い友人とも言うわね」

 

「………………」

 

これ確実に自分で調べたやつだ。どうせ「最近スピアを見掛けないわね……ちょっと何処に居るか調べてみましょう」とか言って探したんだろ。分かってるんだからな。

というか待てよ? 彼女が居るということはもう一人居るはずだ。もしかしなくてもあのAK-12信者が居ない筈がないだろう。あの戦術人形はくっつき虫っていうレベルで必ず彼女の隣に立っていた。

 

俺は思わず周囲を見渡す。何処に居るのかと。だが何処を見ても誰も居ない。ただAK-12が紅茶を澄まし顔で飲んでいるのみだ。あの紅茶は俺が一番好きな味の紅茶なのになんの躊躇いもなく飲んでいる。なんならスコーンも食べていた。

 

一先ずAK-12に彼女が何処に居るのか尋ねる。

 

「なぁAK-12、彼女が見当たらないのだが……」

 

「あら、AN-94なら貴方のすぐ近くに居るわよ。話し掛けようかどうか迷っているわ」

 

「!?」

 

AK-12の答えに俺は咄嗟に後ろを向いた。その瞬間、

 

「痛っ」

「づっ!?」

 

思い切り頭が当たった。

何で、こんな近くに……? 頭をさすりながら目の前の戦術人形、『AN-94』を見据える。彼女自身はそこまでダメージを受けてないようで、少し呆けているだけだった。

 

「えーっと……大丈夫か、スピア?」

 

「……あぁ大丈夫だとも。君たちが私の絶対防衛圏に入ってきたこと以外は」

 

この日ほど自分が信じる神を恨んだ事はない。

良い一日を過ごせるようにおまじないもしたのだがな……勘弁して欲しいものだ。

 

「あら非道いものね、昔は何の嫌味も無しに紅茶を振る舞ってくれたのに。ねぇ、AN-94?」

 

「いや、私は……別に」

 

「……はぁ、まぁいいさ。AN-94、とりあえず座ってくれ。何か出そう」

 

ただ、女性を邪険に扱う程俺も男は廃れてない。AN-94をAK-12の隣に座らせて、サンドイッチと濃いめの紅茶を作る。それに加えて、ストロベリージャムやブルーベリージャムも冷蔵庫から取り出し、人数分のスプーンを用意した。

 

「あら、それは?」

 

「ロシアン・ティーだよ、AK-12」

 

後ろからAK-12が覗き込んでくる。ちょっと顔が近いがそれでドギマギするほど俺はウブではない。うちの隊長と違ってな。

AK-12を軽くあしらいつつまた座らせて作った品々を目の前に出す。

 

「ロシアン・ティー……ね、そのジャム混ぜるのかしら?」

 

「ん?あぁ、それは自由だよ。聞く限りじゃ、ロシアン・ティーは元々濃いめの紅茶を飲みつつジャムを舐めるらしい。君らもどうだい?」

 

俺がそう提案すると、AK-12は手で拒否のサインを出し、AN-94は少し迷っていた。どうやら気になるようだ。

俺は少し見せ付けるように紅茶を飲み、ジャムを舐める。少し恥ずかしいが、俺としてもAN-94が舐めるところを見てみたいのだ。

 

「……私もやってみよう」

 

「お、そうか。ほら、やってみなさい」

 

「ん……」

 

スプーンを手に取ってストロベリージャムをひとすくい。AN-94はティーカップを手に取って、ふーふーと息を吹き掛けて紅茶を冷やす。

 

……彼女は猫舌なのだろうか?

 

そんな事を考えながら、彼女が紅茶を飲むのを眺めている。AK-12も興味深い様子で、まじまじとAN-94の方を見ていた。

 

「……んく」

 

彼女が紅茶を飲んだ。ちょっと顔をしかめてジャムをチロチロと舐めている。

 

……何だこの光景は。いや、その光景自体はいい。普通にロシアン・ティーを楽しんでいる光景である。ただ……ふむ、AN-94がそのジャムを舐めている様が危ない。色っぽいのだ。隣のAK-12が面白いものを見たような顔をしている。目は閉じたままだが。

 

少し、このままだと危ないか?

 

「あー、AN-94。そんな一寸ずつ舐める必要なんて無いぞ?」

 

「ん、そうなのか? なら遠慮なく……」

 

俺の言葉をAN-94は素直に受け入れてジャムをそのまま一口で食べた。どうやら相当甘いものをご所望だったようだ。

AK-12が何かつまらなそうな顔をしているが俺はそんな事知らない。

 

「相変わらず、貴方の紅茶は美味しいわね。持って帰りたいぐらい」

 

「そりゃどっちの意味だい? 場合によっては逃走の準備をしなきゃならないんだが……」

 

「あら、貴方なら分かりきってることじゃないのかしら?」

 

ふと、AK-12が意味深な事を言ってくる。俺は静かにレッグホルスターに手を掛けた。

目の前の彼女はティーカップ片手に余裕綽々としておりその手の内は見えない。隣で幸せそうにサンドイッチを食べているAN-94は兎も角、AK-12は……電子戦特化の戦術人形であるために、ちょっと尻尾を出せば直ぐに掴んでくる輩だ。油断なんて出来る訳がない。

俺は彼女を見据える。

 

「分かりきってる?」

 

「ええ」

 

「……どういうことだ」

 

「分からないのね、残念」

 

紅茶を一口飲み、そしてサンドイッチを食べるAK-12。彼女の意図が読めない。相変わらず俺を手玉に取ってくる人形だ。初めて出会った時、余りの美しさに口説いて紅茶をご馳走した時からこれだ。やってられない。

 

「仕方がないだろう、私がエスパーに見えるか?」

 

「いいえ全く。貴方は虫籠のなかに居る哀れなバッタのよう。そうでしょAN-94?」

 

「ん……あ、いや私は別に」

 

「ふぅん、意外ね」

 

変な例えをしないで頂きたい。AN-94も困惑してるだろ。

 

「そんなに分からないなら教えてあげましょう」

 

仕方なさそうに、そしてつまらないとでも思ったのか、AK-12がそう言う。

俺は再びMP412へと手を掛ける。彼女の返答次第では本当にここを放棄して外の車で逃げなければならなくなる。

汗が一粒頬を伝った。俺とAK-12の間には緊張感が漂っている。

 

「私達がここに来た理由、それは……」

 

「それは……?」

 

グリップを握る手に力が入ってきた。唇が乾いてくる。

あぁ、何というか。この二人に追いかけられるというのはとてつもなく怖いんだな。春田さんの方がよほど可愛らしいのだろう……。

AK-12は人差し指を口にあて、微笑みながら口を開く。

 

「それは…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴方の紅茶が飲みたかっただけよ」

 

 

 

 

 

 

 

ガタッ!

 

そんな音を出しながら俺はよろめいた。

 

そんなふざけた理由でここまでくるのか……。

念のため、本当なのかどうか再度確認を取っても、人形が嘘をつく事なんてないと言われて否定をされた。なまじ信憑性もあるから何も言えない。

 

「……はぁぁぁぁ、心配した俺が馬鹿だった」

 

「口調崩れてるわよ」

 

「おっとっと……いやそれはいいんだ。君達は本当に本当に紅茶を飲みに来ただけか?」

 

「そうよ。ねぇAN-94?」

 

「むぐ、そうですね」

 

サンドイッチを頬張るAN-94のセリフを聞いてより一層脱力する。

なんだ、ただのくたびれ儲けか……俺の緊張感を返せ。

 

「それとも、ソッチの方が良かったの?」

 

「いいや、俺は拐われるより拐う方だよ……」

 

「じゃあそうする?」

 

「勘弁してくれ……」

 

AK-12がからかうようにそう言うが、俺にそのセリフを返せる程の体力は残っていない。AN-94がちょっと顔を赤らめていたが宜しくない妄想をしているようだ。突っ込まないけど。

 

「それはそうとスピア、少しいいかしら?」

 

「今度はなんだよ全く……それ食べたら帰るのだろう? 俺は仕事があるんだ、これ以上居座られても困る」

 

突然の確認に何だか凄く危機感を感じたので一応釘を刺しておく。勿論これは嘘だ。仕事はもう終わってる。今日は半休なのだ。のんびりしたいんだ。タブレットで推理小説を読みながら優雅な午後を過ごしたいのである。

 

「今日、貴方のところに泊めさせて貰うわね」

 

「少し急用が」

 

「AN-94」

 

「了解。AK-12」

 

俺は逃げた。捕まった。

AN-94が羽交い締めしている。

 

俺は逃げたくて身体をよじるもAN-94の力が強くて逃げられない。

スピア は うごけない !

 

「クソッ!!こういう時だけちゃっかりと待機して!!何なんだAN-94!!」

 

「ごめんなさい、スピア。私はAK-12の命令が第一だから……」

 

「そんな申し訳ないような顔をしたら抵抗する気無くなるだろ!?もう少し冷徹になれないのか!!?」

 

AN-94によってずるずるとAK-12の下へと引き摺られて行く。

 

俺は一体どうなるだ、本当に、どうなるんだ……。

ドアが遠く感じる。俺の平穏が消え去る音がした。そして何故か神様の申し訳なさそうな顔が見えた。相当キているようだ。

 

「まだ一日は長いわよ、スピア。安心しなさい、紅茶のお礼は幾らでもするから」

 

「やめろ!!俺は、俺は自分で選んだ女性と一夜を共にしたいんだ!!」

 

「あら、初めて出会った時に私を口説いたじゃない。それが答えじゃなくて?」

 

「ヌ"ゥ"ッ!?」

 

「スピア、諦めよう」

 

「い、嫌だァァァァァアァア!!!!!!!許してくれ!!!後生だからァ!!!!!」

 

痛いところを突かれた上にみるみるうちに拘束される。

何で!?何でなんだ!!?

 

聞けども考えども答えは出ない。俺は何とも言えない気持ちで考えるのをやめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………親愛なる槍部隊隊長と弓部隊諜報部へ。

お前達には後でスターゲイザーパイとウナギパイ、極めつけの油で煮たフィッシュアンドチップスを食わせてやるから待っていてくれ。

 

 

 





「そういえば貴方、AK-12を使ってるわね」

「あぁそうだが……」

「……ふふっ」

「その笑いは何なんだ……」

「そういえば戦術人形の半身である銃は、感覚共有が出来るそうよ」

「…………?」




この後は普通に何事もなく終わりました。何事もなく終わりました(大事なry

割と時間が掛かりました……仕方ないね……。
次回はジャベリンくんが保育園へ!彼に待ち受けるトラブルとは!?次回もお楽しみに!!

この作品への感想及び評価は執筆の糧になります。どうぞ、よろしくお願いいたします!!それではまたこんど!


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傭兵、子守りだってよ。
子供に人気なのは嬉しいのだろうか。


遂に始まりました。ジャベリンくんは保育園へ向かいます。
この保育園、少々不思議な所もありますがさてそれは一体……。


314日目 晴

 

今日は保育園警備一日目。黒いジャケットにジーパンサングラスのキャップ、そしてガンケース担いでいるという不審者然とした俺は、ゴスロリ風の犬用パジャマを着てモッコモコのファーを首に巻いて、ラクダのステッカーを背中の機銃に貼っているポチと一緒にバイクで保育園へと来園した。

何故か保護者の方々に白い目で見られ怒られた。解せぬ。可愛いだろポチ……。

因みにバイクは園児達に大人気。タイヤの空気抜かれたけどな畜生クソガキめ!!!可愛いなオイ!!!その眩しい笑顔が憎らしかったぜ!!!

 

この後はバイクの被害を抑える為にもポチを園児達に捧げ、ポチの叫び声を聞きながら保育園の園長と仕事の話をした。

何処か歴戦の雰囲気を醸し出す彼から一通の手紙が渡される。これが脅迫状らしい。

内容をかいつまんで解説すると、何てことはない。何処かのドラマよろしくテンプレート通りの脅迫状だ。

取り敢えずは一週間、場合を見て四週間。それぐらいの期間で俺がここに駐在することになった。

それにしても俺だけで大丈夫だったのだろうか? 軽く見渡してみたのだが、この保育園は案外広い。だから侵入できる経路が多いのである。

流石に俺一人でカバー出来る範囲ではなかったのだが……。

まぁ向こうにも考えはあるのだろう。園長の真後ろにショットガンが立て掛けられてたし。

 

さて、園長と話がついた後に、今度は俺が泊まるアパートへと行くことになった。空気の抜けたバイクを押しつつポチを宥めるのは誠に大変でござった。いやぁ乱世乱世。

 

……閑話休題。このアパートは一昔前のアパートで、何だか味のある見た目だ。ボロいとは言わないお約束。でも水道設備完備でお湯も出るんだから文句なんてないだろうて。

因みに住人は俺を抜いて大家さんのみ。“静かにしろ”それが大家さんの求める条件だった。

まぁそれぐらいは守れるので問題ない。

バイクのタイヤを直して明日へと備えよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

315日目 晴

 

幼児の相手なんて久し振りだ。記憶が正しければこういう子守り任務は武器庫がグリフィンと業務提携して以降一つもやっていない。基本死にかける任務が多かった。E.L.I.D調査しかり敵地偵察しかり。自ら死地に赴いてるなんて言われても何も文句は言えない。くそう。

 

それは兎も角。存外に子供達に受け入れられていて俺は安心した。昨日のポチ効果が効いたのだろうて。

悪戯っつーか、男の子に飛び蹴りかまされたけどな……愛されてるなぁ、俺。

けど俺外回りなんだよなぁ……あの子達はサボりか何かかな?

とりあえず首根っこ掴んで保育士さんところに戻しといた。まぁ勿論その後遊びましたよ。積み木で城を作ってやりましたからね。ええ、ええ。

UMP45触られた時はヒヤッとしたけどな。セーフティ外してなくて良かったぜ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

316日目 曇

 

今日も楽しく警備任務。

この保育園にはどうやら自律人形が保育士をやっているらしく、人間である俺が珍しがられたのもそれが理由らしい。

いやはや、事前に調べたほうが良かったな。武器庫を通しての依頼だったから何の疑問も無しに受領しちまったのは宜しくない。これが何処かのロボット駆り出して仕事する会社だったら殺されかけたりしてたかもな。ハハハ。

 

因みにこの保育園に居る自律人形は、元戦術人形という立ち位置の人形も居るらしい。俺が昨日ちょっかいかけてきた子供達を届けた組を担当する保育士は、『S.A.T.8』なんていう戦術人形だったとかなんとか。まだ鉄血との戦闘は続いているから何時また徴用されるのかわからないようだ。

……まぁ俺は勝手ながら徴用されないのを願うばかりだ。

 

そういえば、今日もその元戦術人形の保育士に出会った。俺が子供達と遊んでいたら二人の元戦術人形がやって来た。二人ともショットガンの戦術人形だったようで、それぞれ『M590』、『AA-12』という戦術人形だったらしい。何か二人とも性癖ねじ曲げてきそうな面子ではある。何せ、M590は褐色白髪美人で、AA-12はダウナー系美人だ。トライデントが悶絶する。あー、待て待て、別に子供達はそんなことにならないか。分からないし。一番性癖が曲がるのは思春期の子供とか、あとは俺たち大人の野郎どもだよ。あんなのに迫られてみろ、色々危ないぞ?

 

にしても楽しいな本当に……ポチが凄い揉みくちゃにされてっから何ともだが、ポチ自身満更でもないようだ。現にこれまた元ショットガンの戦術人形『KSG』がポチに魅了されていた。全くうちのポチは素晴らしいな!!

この後園長に怒られたけど!!!怖いわあの園長。下手すりゃヤクザだ……。

 

ショットガン片手にやって来るとか思いもしなかったよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

317日目 晴

 

ちょっとした下手人を捕まえた。どうやら盗撮が目的のようだ。こんな子供撮って何が楽しいのやら…………と思ってたらまさかの盗撮対象が園児たちかと思いきや、そうではなくてとある自律人形であった。勿論園長ご立腹。危うく殺傷事件になりかけたが保育士達がなんとか宥めてくれた。

しかし物好きだったなあの盗撮犯。アイツが撮ろうとしていたのは、元『Super-Shortry』という自律人形だった。この人形、所謂ロリ体型である。金髪ロリとはこれまた……トライデントが満面の笑みを浮かべるぞ変態め。アイツ結婚してからもそういう趣味は持ち続けてるからな。それを許してくれる奥さんが凄すぎる。俺も別に何とも思わんがね。

 

盗撮犯をこの地区の治安部隊に引き渡したあとは相変わらずの警備である。監視カメラを見る限り、これといって怪しい人影は見かけないが……まだ警備に入って3日ぐらいだし相手方も警戒してるのだろうて。

この状態がもう暫く続けば良いもんなんだが……そういうわけにもいかないか。

兎に角、脅迫状送ってきた犯人が捕まらない限り、安寧が訪れることなんて無いのだろう。

 

精々、誠心誠意精一杯仕事を遂行してやりますよ。

明日は何が起こるのやら……。






ショットガンの戦術人形が保母さんとか性癖曲がりまくりますよ。俺には分かる。M590に可愛がられたい。

さてさて、この章は色々とカオスになるかもしれません。でも楽しく行こうと思ってます。楽しみにしててください!

さてこの作品への感想及び評価は心の支えです。どうぞよろしくお願いいたします!それではまたこんど!


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仕事内容が何か違うのは日常茶飯事。

性癖歪曲保育園という言葉は流行ってくれないだろうか。

保育園編、続きです。どうぞ。






317日目 晴

 

今日も俺は警備任……務なのかな?

何故かポチと共に園児達に混じって、俺は保育士の自律人形……ええい面倒だ、AA-12だAA-12! 彼女の担当する組で園児達と歌うことになった。どうしてこうなったのか、俺は分からない。

 

彼女の弾くピアノが奏でる音楽と一緒に歌うのはとある民謡。日本の昔話によく出てくる怪物、“鬼”に関する民謡だった。

 

にしても鬼か……懐かしいもんだ。俺が武器庫に入ってから間もないころに、よく先輩の隊員にそういう系統の話を聞かされた。気色は違うけどな。

「戦いに意味を見いだし始めたら人間は鬼になる」とか「戦いに快楽を求めると鬼に堕ちてしまう」とか……とにかく戒めの話が多かった。

過去にそんな奴が出てきたのかはてんで謎じゃある。あんまり首を突っ込む気も起きないけどな。

 

それはいいとして、AA-12のピアノ演奏が終われば、今度はお昼御飯が始まった。俺はそそくさと外に出て適当な場所で飯を食おうとしていたのだが、AA-12と園児に引き留められて一緒に食べることになった。

この時、警備任務があるのに……と言いかけたらAA-12に口を人差し指で塞がれて、

「変な輩は園長が大体どうにかするから、安心しなよ」

とか言われた。園長、アンタ何者なんだよ。というか人形達が全幅の信頼を寄せる園長が居るってのに、この保育園に脅迫状送った奴は命知らずかそれとも人権団体過激派なのか……それが分かれば苦労はしないか。

そうやって脅迫状の犯人を推理しつつ、園児達の寝かしつけを手伝って、また俺は任務へ赴いていった。今日も園児達が全員帰るまで見回りはしたのだが、爆薬やら潜んでる奴やらそういうのを発見するような事態は無かった。こりゃあ一週間で帰れるな全く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

318日目 曇

 

何の問題も起きなかった今日の帰り道、トンプソンと出会った。SAAも連れていた辺り、どうやら休日のようだ。早速抱きついてきたSAAを撫でつつ近況報告をすることなり、近くのカフェで一服することになった。

 

紅茶を飲みながらトンプソン色々聞いたところ、ここ最近はSAAのメンタルも安定し始めてるらしい。ちゃんと銃も撃てるようになったとか。まだ怖いらしいが。

勿論これは物凄く喜ばしいことであるのでしっかり祝ってやった。SAAに好きなものを選ばせてやった。一番高いもの選ばれた。別に構わなかったけども…………思えば、俺は基本後輩に奢る時はよく一番高いものを頼まれる。何でなんだろうな、本当に。誰かが俺に浪費するように仕向けている……? そんな馬鹿な。

 

そんな変な茶番劇を頭の中でやりつつ今度はこっちの事を色々話した。保育園の警備任務の事を話したら有り得なさそうな顔をされたのだが、これでも俺は子守りは得意な方だ。SAAの懐き具合を見てみろ。一目瞭然だ。

それをトンプソンに言ったら呆れられたのだが何が悪かったのだろう。そしてポチもなんで嫉妬をしているんだろうか、それが理解出来なかった。お前SAAによく可愛がられてるだろうに……。

 

そうやって弾んだ会話も終わり、トンプソン達と別れ下宿先に帰った。下宿先じゃ大家さんが庭掃除をしており、俺とポチも手伝った。ポチはこういう時も活躍してくれるとても良いダイナゲートだ。ゴミ収集ならコイツに任せるのも良い。大家さんも舌を巻いていた。

掃除が終わった後、大家さんが手伝いのお礼に作り置きしていたらしい漬物を貰った。“奈良漬け”というものらしい。何とも言えない匂いだった。

 

大家さんへお礼を伝えて、部屋に帰れば、それと同時にスピアからメールがやって来た。その内容なんだが……アイツ、この前言ってた戦術人形達に見つかったらしい。ほぼ諦めてるような文章だったが、最後の最後でとんでもない呪詛が入っていた辺り、まだ大丈夫だと思う。

いや、何だかんだ言ってな、スターゲイザーパイは好きっちゃ好きなんだぜ? 武器庫の日本人組がたまに目玉焼きに垂らしてる醤油っていうものがあれに合うもんでな。流石にそのままは無理だ。うなぎゼリー?知らん。あれは人の食うもんじゃねぇだろ。

 

 

にしても、スピアの奴は大変だよなぁ……あんな厄介なのは俺でも御免だ。

 

待てよ……? スピアに付きまとってる戦術人形二人組って正規軍出身だよな……大丈夫か?

 

 

…………まぁいいか、寝よう。アイツなら何とかしてくれるさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

319日目 雨

 

カッパを着て警備任務。俺の後ろをこれまた可愛らしいカッパを着た園児が着いてきてた。休み時間と俺の巡回が重なったらしい。

ばちゃりばちゃりと俺とポチが歩き、ぴちゃりぴちゃりと園児達が着いてくる。端から見ればそれは随分と微笑ましい光景なのだろうが、俺としては大人しく屋内に居て欲しいものなのだが。やっぱり暇なのだろうか? 何気にM590やらKSGも着いてきている。写真も撮っていた。広報に使うそうだ。

イメージアップは大事だよな。でもなんで銃引っ提げた野郎とダイナゲートが子供達と歩いている写真を撮ろうと思ったのだろう。それを聞こうとしたが、結局聞けず終いであった。残念だ。

 

任務が終われば、今度は下宿先で静かな時間を過ごした。雨音を聞きながら紅茶を飲み、そして食事を済ます。

 

スピアからヘルプのメールが数百件来てるが、俺は知らない。

一応諜報部にも伝えておくが。

 

 

 

 

 

 

 

 

320日目 曇

 

何てこった! 保育園が人類人権団体過激派数人に襲われちまった!! まあ普通に撃退出来たけどな!! 序でに捕縛も出来た。

どうやらコイツら、脅迫状の犯人の可能性がある。という事で、治安部隊に身柄を引き渡して何が目的なのかを聞き出して貰った。今はその連絡待ちである。

待っている間、園児達は一応この保育園の自律人形達による強固な守りの下、保護させておいた。

…………コアを抜かれてるのにショットガン使いこなせてる自律人形達に関してはこの際突っ込むのは無しにしよう。多分突っ込んだら俺がブタ箱か、あの世行きだ。

 

とりあえず園長と今後について話した。彼曰く、俺の警備任務の期間を延長させるらしい。どうにも、治安部隊がその過激派の拠点を摘発するまでここに居て欲しいそうだ。

一週間で帰れそうだったんだけどなぁ……まぁ追加で報酬が入るし文句は言えない。金が貰えりゃ働くのが傭兵だからな。料金分はしっかり働かないと。

 

さぁ明日も頑張るぞ。







スピア「たすけて」メルメル

ジャベリン「無理」メルメル

スピア「お前に面倒事がやってくるようにおまじないでもしてやるか……」メルメル

ジャベリン「は?」メルメル


さて、次回からとあるキャラが登場します。どれだけ引っ掻き回してくれるのでしょうかねぇ……。

この作品への感想及び評価は心の支えです。どうぞ、よろしくお願いいたします!!また今度!!


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絵本を読むときは優しい声色で。

いつのまにやら160000UA、お気に入り1100件とな……本当に行くところまで来ましたね……ありがとうございます。今年中には終わらせたいけど書きたいネタも多い限りです。今後とも、ジャベリン&ポチをどうぞよろしく!

さて保育園警備任務、ジャベリンくんは仕事帰りに一人の少女と出会いました。さてさて彼女の正体とは……?







321日目 晴

 

仕事帰りの公園にて、一人の少女と出会った。というよりかは声を掛けられたといった方が正しいだろう。ポチと多分胃がやられてそうなスピアへの労いの品をどうするかについて話していたら、ひょっこりと彼女が目の前に現れたのである。

少女の外見は、12歳から15歳ぐらいで、長い黒髪にこれまた黒いワンピース、極めつけに肌が人形のように白かった。それでいて、鋭い目付き……というよりは見透かしたような目か?

とにかく余り見つめられたくない目である。そんな少女だった。

彼女、出会って数秒で俺の名前を口に出してきたもんだから警戒してしまったが、それは杞憂に終わった。どうやら彼女は大家さんの娘さんらしい。今時珍しくあのアパートに入居してきた俺の事が気になったそうだ。

どれだけ閑古鳥が鳴いてるんだあそこのアパート……。

この少女とは軽く自己紹介を終わらせた後、すぐに帰っていった。……名前が少々覚えにくかったので忘れてしまった。

確か……サムニム……だったか?

 

しかし、あの少女と話してる間、ポチが珍しく黙りこくってた。一体何だったのだろうか、まるで誰かに静かにさせられたみたいな……ポチにその事を聞いてもただ言葉を濁すばかりだった。

なーんか怖いなぁ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

322日目 曇

 

仕事帰り、またあの少女と出会った。

この子、俺と出会うや否や突然

「ちょっと絵本を読んでくださらない?」

とか言ってきて絵本を渡して来たんだ。思わずビックリしたよ。まぁ、その時公園のベンチで何となく買ったチョコミントフレーバーの電子煙草を吹かしてたぐらいには暇だったから何の問題もなかったのだけれど。因みにこの電子煙草、ニコチン、タールゼロのカフェインマシマシの電子煙草だ。目がギンギラギンになる。

 

それは関係ないとして、彼女が持ってきた絵本は、円卓の騎士。大昔に実在したとされるアーサー王を主人公とした物語だ。聖剣エクスカリバーを片手に悪党を倒していく、まぁテンプレートの騎士道物語かな?

なんでこんな渋いもの読ませてきたのだろう。こっちも読んでて楽しかったからいいけれども。

それにしてもこの子、随分と辛辣である。ランスロットと愛し合ったグィネヴィアに怒ったアーサー王が軍を差し向けたお話で、彼女はアーサー王の事を「なんて魅力のない男」だと評した。戦いばかりに明け暮れて女のことは一つも見ていないとか何とか……辛辣というより理想主義、ロマンチスト?

まぁいいか。でもそう言う割には機嫌良く朗読に耳を傾けてくれるし、中々楽しかった。後で理由を聞いてみれば、余り他人に読んでもらったことが無かったらしい。

そうか、そうでもなきゃ絵本なんて渡してこないか。それに加えて、あんな物欲しそうな顔は反則すぎる。俺はあぁいうのに弱いんだ。現にG11やらSAAやら、あの子達にも色々買ってあげた事が何度かあるし。

 

……たまにはこういうのも悪くないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

323日目 曇

 

保育園で読み聞かせをやらせてもらった。結果は割と好評。でも何故か居合わせていた園長から、筋は良いが荒が目立つとか辛口の評価をいただいてしまった。仕事ほっぽってないで働けと言わない辺り優しさを感じる。

そんな優しさを噛み締めながら今日の警備を終わらせて、ポチと他のダイナゲートについて話しながら帰路へとついた。今回も問題なし。まだ暫くは平和で有って欲しいもんである。

ポチがダイナゲートを統率出来るのかどうかで議論がヒートアップしていたところで、またあの少女、サムニムと出会った。彼女の手には白雪姫の絵本。俺を見つけるやいなや読んでほしいとせがんできた。

俺は二つ返事で承諾して、ベンチで右にポチ左にサムニムという形で絵本を読んであげた。

絵本を読んだ後は、このまま解散ということになったが、この時彼女へ一緒に帰らないかと提案すると、用事が有るから少し難しいとだけ返された。

なら仕方ないか。そう心のなかで諦めながらまたポチと帰る。またあの子と明日会ってしまったりするのだろうか、ちょっと期待を胸に膨らませながらもポチと話していたら、ふとポチがあの少女の事をもう少し警戒してほしいなんて言ってきた。

 

俺はそれに対して問題ない、何とかやるさと答えたのだが、ポチは何だか不服そうだったので、腹いせに抱き上げてこれでもかと撫でてやった。

 

大丈夫さ、きっと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

324日目 晴

 

トンプソンとまた出会った。今日は任務帰りのようで、SAAはお留守番。

その代わりなのか、彼女が率いる部隊に所属する『イングラム』という戦術人形が着いていた。

……イングラム、イングラムかぁ……ユノちゃんとこのイングラムは元気にしてっかなぁ……間違ってもトライデントのやつ食べようと未だに狙ってなんかないよなぁ……?

そういう心配をしながら公園でちょっとした世間話。どうやらトンプソンはこの前保育園を襲撃した人権団体の居場所を捜査しているらしい。今はその仕事途中のようだ。ここいらで良く不審者の目撃情報があるそうで、それをアテにしつつ怪しい奴を付け回したりしてるとかなんとか。

……これもしかしなくても俺じゃなかろうか。という考えが脳裏を過って口から出かかったものの、何とかそれを抑えることが出来た。今の俺は不審者じゃないぞ。絶対に。

 

まぁとにかく、トンプソン達は忙しいのでイングラムに追っ掛けられてるポチを助けつつ別れることにした。

 

そういえば、今日はサムニムちゃんと会えなかったな。まぁ彼女も学校とかそういうの有るんだろうて……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

325日目 曇

 

圧倒的胸囲の暴力。俺は今日それに晒されていた。今回は元『イサカ M37』と元『SPAS-12』の自律人形が担当する組にお邪魔したのだが、まぁ酷い。園児達が何の躊躇いもなく先生達に突撃するもん。まぁバルンバルンと……俺は足早に去ろうとしたら先生達に捕まってお歌のお付き合いをされた。皆元気だなー……本当になー……俺の性癖が歪むわ。何だってんだ。

これは不味いと急いでSAAとかG11の写真を見て精神バランスを保たなければ……なんでこの写真を持ってるかって?

俺が撮ったんだよ。記念撮影だ。G11は戦術人形になって俺と始めて出会った時に、SAAはブートキャンプのとき何となくトンプソンと一緒に並んで。子供は可愛いよ本当に……G11は何処か大人びているがそれもまた子供らしさよ。

 

何とかお胸の暴風雨を切り抜けてまた警備任務を再開すれば、一人の不審者が。勿論捕まえた。リフィトーフェンだった。UMP45の銃床で殴っておいた。

 

 

何でコイツが居るんだよ!!!!!!!!!!!!







「夢を見ながら、私は貴方と過ごしたい」

もし私が本を作るなら、そんな台詞を書くだろう。
だけれども、我ながらバカらしいと思ってしまった。変な感じだ。
私はビルの屋上で夜景を眺めながら手元にある絵本を読み進めた。絵本の題名は『ラプンツェル』。魔女に塔へ囚われた姫がとある王子と逢瀬を重ねていくお話だった。私はこの話をありきたりのように感じながら読んでいる。
とはいえ……もしこのビルがその塔だとしたら、私はそのお姫様で、逢瀬を重ねるのは一体誰なのだろうか。もしかしたらジャベリンという男なのかもしれない。
この話は、終盤で王子が魔女によって盲目にされて世界をさ迷うという展開がある。結局はお姫様と出会うのだが、まぁある意味救いもないものだ。

さて、ジャベリンは何時になったら私の正体に気が付くのだろうか。どんな驚き方をしてくれるのだろうか、私は楽しみだ。おとうさ……リフィトーフェンはジャベリンのことを面白い男だと言った。早く、私を楽しませてほしいものだ。







ドーモ、サマシュです。ジャベリンくんの絵を描いてたら気力が抜けてました。でも頑張ってます。
さて次回はまたのんびりとやる予定です(未定)

この作品への感想及び評価は心の支えです。ぜひともよろしくお願いいたします!それでは!!


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任務の完遂は突然に。

リフィトーフェンと出会ったジャベリンくん。
出会って早速殴り倒して捕縛しました。はてさてリフィトーフェンがやって来た理由とは……。


326日目 晴

 

リフィトーフェンという名の不審者を確保。こいつをグリフィンに引き渡そうとしたら突然、

「君の義眼には爆弾が仕込んである。ポチにもだ」

とかこの男ならやりかねないような台詞を吐いて来たのでそれを断念した。流石に怖いわ。

それにしても、こいつが来たということは確実に厄ネタを持ってこられた事と同義なので、何の用なのか尋ねてみる。すると、リフィトーフェンはちょっと困ったような顔をして、とある人形を探していると言ってきた。

俺がどんな人形か聞くと、彼はさらりとその探してる人形が鉄血のハイエンドモデルということ教えてくれた。やっぱりこいつが厄ネタ持ってきやがった。

リフィトーフェンはそれに加えてそのハイエンドモデルは俺が鉄血工造で見た、あの制御装置のような機械を守る役割を持っているらしい。

一応ハイエンドモデルの名前を聞いてみると、『夢想家(ドリーマー)』というらしい。ドリーマーは蝶事件以降に作られたハイエンドモデルで、彼女の他にも『裁判官(ジャッジ)』というハイエンドモデルも居るらしい。

どうしてリフィトーフェンがこの二体のハイエンドモデルを知っているのかというと、どうやらドリーマーもジャッジもリフィトーフェンが設計図を作成したかららしい。

俺は本気で驚いた。こいつ、窓際社員じゃなかったのか? とか思った。

俺が驚いていると、その思考を見透かしてなのか、リフィトーフェンは、

「リコリスに頼まれてやったんだ。“お前、技術ある割にはサボってるからたまには働け”とな。あの時私はポチのAIを作るのに忙しかったのに酷い男だった……」

とか朗らかな笑顔で言われた。もしかしなくても、そのドリーマーやらジャッジはリフィトーフェンの片手間で作られたのだろうか……だとしたらやるせないな。

まだ見ぬハイエンドモデル達を気の毒に思いながら、今回一番聞きたかったこと、彼があの保育園に現れたのか尋ねてみた。

 

どうやらドリーマーを探してのことらしい。それほどまでに幼い子供だったりするのだろうか。だとしたらリフィトーフェンという男はただの変態と言うことが判明してしまうな。おぉ怖い。

 

まぁその直後リフィトーフェンが唐突に子供の身体というのは実験に使いやすいぞ、とか至極真面目な顔で言いやがったんですけどね。口に含んでた紅茶吹いたわ。

何こいつ怖いこと言ってんの……いや本当に怖……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

327日目 晴

 

朝起きたらリフィトーフェンは居なくなっていた。しかもよりにもよって俺の楽しみだった高級なお菓子も持ち出してやがった。今度会ったらハグをすると見せかけてラリアット食らわせるとしよう。

 

しかし今日も暇な警備なものだ。不審者は見つからず、ポチも心無しか気が抜けているように見えた。

今は外で遊ぶ園児達を眺めながらこの日記を書いている。改めてこの保育園のグラウンドを見ると、遊具が沢山あった。ブランコやら滑り台やら、はたまた芝生の敷かれた山に大きな土管を入れてトンネルのようにしているものと、沢山ある。流石富裕層の子供が通っているだけはあるぞこれは。でも安全管理は大丈夫なのだろうか?

いや、人形達がちゃんと見てるからまだ大丈夫……なのか?

まぁ、深く考えすぎるのも良くないか。俺もこうやってのんびり出来てるってことはそれだけ安全だっていうことが証明されてるのさ。

 

おっと、園児達に呼ばれた。キリも良いしここで筆を置くとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

328日目 曇

 

トンプソンから人権団体の拠点を摘発したとの連絡があった。どうやらその拠点、保育園の近くだったらしい。だから外がちょっと騒がしかったのか。

因みに俺はその時屋内で園児たちと一緒に粘土をこねて猫と形容して良いのかどうかわからない代物を作っていた。この猫、園児達に怖がられてしまった。眼力が凄いとかなんとか……オスカーのつもりで作ったんだけどな……。

 

しかし、拠点が摘発されたってことは俺の仕事も終わりか。たった2週間ほどしかここで任務を遂行してないが、色んな出来事が有りすぎた。謎の少女しかりリフィトーフェンしかり……。

結局リフィトーフェンはハイエンドモデルを見つけたのだろうか。出来るならさっさと見つけてどうにかこうにか無力化して欲しいもんだ。どうせアイツのプログラムの影響受けてるんだし……。

 

ま、面倒ごとにならないことを祈るばっかりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

329日目 晴

 

保育園へ到着してすぐに園長に呼ばれた。何事かと思えば、ただ単に報酬の支払いをするだけだったし、その報酬が中々の量だったよ。具体的に言えばこの頃欲しかったキャットタワーが沢山買えるぐらい。あとは武器庫から支給される給料数ヵ月分。

普通に振り込みで良かったのに……とか思ってたら、保育士に興味無いかとスカウトに近い事を聞かれた。無論、断った。

もし俺が所帯とか持ってたら迷っただろうが、それ以前に傭兵稼業は好きだからな。危険が多い分発見やら出会いやら沢山あるし。とはいってもビジネスライクだけど。

 

園長は結構残念そうな顔をしていたが、仕方ない。人形で事足りてるのならそれでいいだろうに。

でも盛大にお別れ会されたのは卑怯だった。ちょっと思い止まったし。なんとか踏ん張ったけど。

 

さて、俺は晴れて任務を完遂出来た訳だが……まぁ一先ずあのアパートから出るのは明後日だな。明日は軽くここいらをバイクで走り回ってみよう。何だかんだ言ってグリフィン本社が管理している区域では俺の家付近ぐらいしか彷徨いてなかったりするから気になってたんだ。

面白いものがないか探してみるとしよう。

 







そろそろ頃合いだろうか。私は公園のベンチで絵本を読みながらそう感じ取った。
リフィトーフェンも私を探している。ましてやそれ以上に面白……厄介な存在も来ていた。十中八九ジャベリンが目的だろう。

「おーい、サムニムー」

ふと、仕事終わりなのか、少し疲れを孕んだ声色のジャベリンが私に声を掛けてきた。私は立ち上がり、すぐに彼へと駆け寄る。

「お疲れ様、ジャベリン!今日はどんなお話を聞かせてくれるの?」

「お前が持ってるその絵本を読むだけだよ。なぁ、ポチ」

≪えっ……あぁはい≫

何の躊躇いもなく座る彼とちょっとたじろいだダイナゲート、ポチ。このダイナゲートは私の正体をすぐに見破ったが、即座に私が上位権限で黙っておくようにしておいた。バレたらつまらないもの。

「えーと、今日の絵本は……赤ずきんか」

絵本を朗読しはじめるジャベリン。私は目を閉じてその声に耳を傾けた。

あぁ、それにしても楽しみだ。もしもこの男に執着しているあのメイドがこれを見たらどうなるのだろうか。楽しみで楽しみで仕方がない。あのメイドは私が流した情報を基にそろそろこの区域にやって来るのだろう。この男へ会いに。

あまりの愉悦感に私は心が踊る。足が自然と振り子のように振れ出した。

ジャベリン、早く私を楽しませて欲しい。一抹の夢が消え去る前に。







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望まぬ出会いはくそくらえ。

サマシュ復活の儀。
ようやく更新です。ジャベリンくん、ついに見つかります。

サムニム「愉悦がヤバイ」








330日目 晴

 

ツーリングをするにはとても良い天気だ。雲は一つもなく真っ青な青空が広がっていて、俺が部屋の窓を開けてみれば、肌を撫でるように冷たいそよ風が吹いた。気持ちがいい。

こんな晴れ模様を、武器庫でやけに色んな事を知っている奴によれば、この少し肌寒くて空がしっかり晴れている状況は“秋晴れ”といわれているということを教えてもらったのを覚えている。こんな天気の中でバイクを走らせるのは、さぞかし気分の良いものだろう。

俺が出掛ける用意をしつつ、部屋の片付けをしていると、大家さんがやって来た。少し上機嫌だったので、何があったのかと聞いてみると、このアパートに新しく入居者がやってくるそうだ。新たな収入源になることと、話し相手も増えるから楽しみであるとのこと。

そういえば、大家さんへ俺が暫くの家賃やら諸々を支払ってからアパートが小綺麗になっていたな。そのお陰で、こうして新たな住人がやってくる訳か。良いことだ。

 

それはそうと、ちょっと不可思議な事が起きた。俺がなんとなく気になって大家さんに娘は居るのかどうか聞いてみたのだが、大家さんは首を傾げて自分には子供なんて居ないと言ったのだ。

俺は思わず、あの黒髪の少女、サムニムの事を話してみても知らぬ存ぜぬの一点張り。

一体どういうことだろうか。あの絵本の読み聞かせをせがんできた可愛らしい少女は一体……幽霊だったのか? でも触ることは出来たからその線は薄い。それに加えて、サムニムが大家さんの娘を騙って俺に近付く理由が分からない。

 

だけど、これはもう過ぎた事か。

どうせ俺は明日ここを出る。多少の謎を知らないままでもバチは当たらないし、大丈夫だ。

ただ……もしも今日彼女と出会えたらその謎について質問してみよう。鬼が出るか蛇が出るか……知ったこっちゃないが、悪い結果は出ないで欲しいもんである。

 

……一応武器も携帯しておこう。

 

 

 

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 人類というのは何時からバイクを使い始めたのだろうか。俺はあまり歴史というモノを学んでこなかったため、そういうのには疎い。ポチに聞くにしても、ポチはポチでそういうインターネットを介した検索エンジンは備わってないので終始分からず終いであった。ダイナゲートネットワークとは一体何だったんだろうか……。

 

 未だに疑問に思っているダイナゲートネットワークは頭の隅に追いやって、俺はコンクリートジャングルを駆けていく。右に曲がったりまっすぐ行ったり左に行ったり。面白そうな場所が無いか一時間ほど前からゆったりとした速さでこの管理区の街を走っていた。意外とグリフィン本社が管理するこの地区は殺風景で、閑静な住宅街かどこかのエリート会社員が働いてそうな高層ビル群ばかり。どこかにスーパーやら商店街やら無いのかと探しても見つからない。一体、ここいらの住人は何処で食料を手に入れてるんだと思ってしまった。

 恐らく何かしらの宅配サービスか、それとも俺がたまたまそういう店などを見つけてないのかだろうけれども、やはり殺風景なのは変わらない。

 だがその割には車が多い。すれ違う車、全て電気で動く静かな車だ。低燃費でとても静か、化石燃料が貴重で技術も大いに進んだ今現在では、結構安価で金持ちにも貧乏人にも人気の車両だ。武器庫でも何台か導入してる。主に取引先に行くときに使っていたな……案外こういうものを使うと取引先との契約もうまく取れるようになるとか社長が言っていた。

 

 本当に、俺の乗っているバイクとは大違いである。

 

≪ご主人、何か面白いものとかあります?≫

 

「いーや、どこに行っても俺たちが住んでるマンション近辺とそんな変わらんな。あとは俯いてる社会人か?」

 

≪人を見世物に例えるとか結構怖いことしますねご主人。ところで燃料は大丈夫なんですか?≫

 

「問題ないよ。そんな常に100キロも出してる訳じゃないんだぜ? 今日1日ぐらいは持ってくれるさ」

 

 ひょっこりと、ポチがバイクのトップケースから頭を出してきてそんなことを聞いてくる。俺は適当に問題ないと言いつつもアクセルを緩めてスピードを落とした。

 俺が乗っているバイクは随分な代物だ。排気量は750ccで2気筒のエンジンを積み、パワーもスピードも出るバイクで、今どきじゃ案外珍しくガソリンを燃料としている。それ故に排ガスも出るわ大きな音も出るわ燃費は(良いとは言われてるがやはり)クソほどに悪く感じるわと、どこかの環境保護団体が見たら卒倒しそうなものである。このバイクは大昔のまだ隣国との関係の改善に四苦八苦していた日本で製造されたバイクを一部再設計、他は踏襲して新たに作り出したものであるらしい。アドベンチャーバイクというもので、舗装済みの道は勿論、行こうと思えば未舗装の道もどちらとも走ることが出来るバイクだ。

 一体リッター何キロだったのやら……なんだかんだ言ってこのバイクを買ったのはほぼ1年前だ。流石に忘れてしまった。まぁ、燃費が悪くとも燃料タンクに40Lほど入るから何とか持ったりしてくれる。その代り燃料費は馬鹿にならないが。燃料タンクも何気に嵩張るし。

 

 今やガソリンはとても貴重なものになってる。崩壊液汚染によって採掘できる場所が減ったせいで一時期嗜好品になったぐらいだ。俺はあまりよく分かってないが、ガソリンを気化させて吸う遊びが一時期流行ったらしい。何とも言えない気持ち良さがあるようで、昔、暇を持て余した盾部隊の一人がそれをやって衛生班に連行されていた。

 懐かしいな、「俺はテオートマトンへ行くんだ!!磁場を走って八百万の谷を越えるんだ!!!」って叫んでる隊員を班長のイージスが張り倒して、医務室まで引きずって行ったのが記憶に新しい。

 また暫くバイクを走らせていると、トップケースに収まっているポチが変わり映えのない住宅群を眺めつつ話しかけてきた。

 

≪ご主人、何か変わったもの有りますかー?≫

 

「まだ見つかってないなぁ……ん?」

 

 ポチも相当暇らしい。だが幸いなことに、俺も何かないか目を凝らしてみれば、数百メートル先に案内板のようなものを見つけた。もう少し近づいて何が書いてあるのか見てみると、展望台への案内が記されていた。

 一旦バイクを停めて、案内板の矢印が指す先を見てみれば少し大きな山が見えた。こんなところに山なんてあったのかと思いながらバイクを発進させる。アクセルを回し、エンジンをフルスロットルで回転させて、閑静な住宅街であるためかえらく響く爆音を鳴らして緩やかな坂道を瞬く間に駆け上がっていった。

 この時予想外にうるさくてポチに文句を言われてしまったのは内緒だ。このバイクが悪い。

 

 展望台へ続く道はこの山へ巻き付くように走っている。そうであるためか、進む度に景色の様相は何度も何度も変わって飽きることが無かった。こういうところは暇さえあれば行ってみるのもいいかもしれない。木陰から陽が差してまだら模様になっている道を走り続けて5分ほど、頂上へと到着した。展望台は広く開けていて、ちょうど広場の真ん中辺りに展望台がぽつんと天を指すように建っている。

俺は駐車場にバイクを停めてポチを降ろし、展望台まで向かう。今日は平日であるせいか人は全く居らず、静寂がこの広場を支配していた。鳥の一羽ぐらいは居るかと思っていたのだが、不思議と誰も居ない。少し不気味に思ってしまったのか、俺は無意識にレッグホルスターのガバメントのセーフティを外していた。嫌に響く階段を上る音に不安を感じながら屋上へと向かう。

 

≪んー……ご主人、私を肩に乗せてください≫

 

「なんだよいきなり……ほら」

 

 ポチが突然抱き上げろと要求してきた。どうやら景色が見えなかったようだ。

 俺は直ぐに抱き上げて肩へと乗せる。そしてそのまま目の前に広がる景色を眺めることにした。高層ビルと高層マンションがちらほらと、後は住宅街が見えたぐらいで、他は面白そうなものは見つからない。そう思った矢先に遠方に鳥の群れが飛んでいたのを見つけたが、それだけだった。

 

≪何もありませんねぇ……≫

 

「多分これ、夜なら大分綺麗になりそうだ」

 

「そうね」

 

 …………。

 

 俺は振り向き様に何の躊躇いもなくガバメントを引き抜いて背後の人物へと銃口を向けた……が、すぐに下ろした。

 俺の目の前には(小さな鞄を背負っていたが)最早見慣れた姿の少女、サムニムが立っていたからだ。彼女はお道化た様子で「レディに銃口を向けるなんて随分と乱暴な男ねぇ」と笑いながらそう言っていた。そんな態度にちょっと毒気を抜かれ、ガバメントをホルスター戻しつつ、ため息を吐いた。

 

「サムニム……学校はどうしたんだ?」

 

「学校なんて行ってないわよ?それと、別にサムって呼んでくれてもいいのに」

 

「サムは男性名の愛称だぞ」

 

「女性名でも使うけど」

 

「…そうだったな。ところで学校に行ってないってどういう事だ?」

 

 さて、どうしてでしょうね?とこれまたお道化てサムニムは言う。

 カツカツと足音を立てながら隣に来る彼女をみて、ふと大家さんが言っていたことが頭を過る。あの人が言っていたのは本当のことなのだろうか?目の前に居るサムニムへ聞いてみたいところだが……勇気が出ない。日記では聞いてみようということを書いていたが、なんと情けない。ポチが聞いてくれねぇかなと願ったが、ポチは不思議とサムニムの前に居ると黙りこくってしまう。

 当のサムニムは柵に手をかけて楽しそうな表情を浮かべて景色を眺めていた。本当、不思議な少女である。

 さてはてどうしたものか……というかいつの間に彼女はここに居たのか。気配も何もなかったのに、まさかどこかの特殊潜入員か?そんな訳無いか。

 

「ねぇ」

 

「おぉっ?なんだよ」

 

「駐車場にあったバイク、ジャベリンの?」

 

「…そうだけど?」

 

 隣で景色を眺めていたサムニムが俺のバイクの事について尋ねてきた。俺が自分のバイクだと肯定すれば、今度はどんなバイクなのか、いくら掛かったのか矢継ぎ早に質問してくる。

 俺は少々たじろいだが、彼女がバイクに興味を持っているということがちょっと嬉しくて色々と話してあげた。こうやって自分の好きなことを話すというのは楽しいものだ。トライデントの気持ちがよくわかる。あいつは暇なときは大体何かやってて、何してるのか聞いてみたら嬉々として話していた。

 景色もそっちのけでサムニムへバイクのうんちくを話して数分、俺が次の豆知識を話そうかと口を開いた瞬間にサムニムの小さな手のひらが俺の口を塞いだ。なんだと彼女の方を見たら、それはそれはいい笑顔を浮かべた彼女が居た。

 

「ジャベリン、そんなクソ面倒な話しなくていいから。バイク、乗せて」

 

「お、おう……」

 

 彼女の眩しいばかりの笑顔から感じられる威圧感が凄い。気圧された俺は、渋々ポチを担いで駐車場へと向かった。

 階段を下りる途中でポチに小声で、何処が彼女の気に障ったのだろうか聞くと、素っ気なく≪ご主人のお話がウザかっただけなのでは?≫と言われた。ポチが反抗期である、お兄さん泣きたくなるよ。

 本当、まるで借りてきた猫みたいだ。反応全てが淡白である。サムニムとの間に何があったのやら。

 ポチの態度に悲しさを覚えつつ駐車場に停めたバイクへとたどり着いた。ポチをトップケースへ乗せて(サムニムが吹いていた)、サイドケースから別のヘルメットを取り出して彼女へと渡した。今のご時世、ヘルメット被ってなくとも何も言われないが、安全対策をするに越したことはない。でも彼女がヘルメットを被っておくべきということを知らなかったのか、不思議そうにヘルメットを見つめるもんだから俺が無理矢理被せた。多少の抗議は無視をしておく。

 

 俺は自分のヘルメットを装着してバイクに跨り、サムニムへ後ろに乗るように促す。彼女にとっては多少高いだろうが、まぁ大丈夫なはずだ。

 

「……意外と高いのね」

 

「シート高は810ミリだったかな。サイドステップに足かけて乗ればなんとかなるよ」

 

「ふうん。ま、そうさせてもらうわね」

 

 ふわりと、羽が地面に落ちた時のような軽やかさでタンデムシートへ乗るサムニム。重さを一つも感じられなかった。

 彼女が後ろに乗った事を確認した後、クラッチを握りエンジンを始動させる。ニュートラルに入っているギアを一速へ。アクセルを少し開きつつ、ゆっくりと発進する。低温奏でるエンジンは、空気を震わせてホイールを動かした。そのままアクセルを回してギアをまた変えていく。三速にギアを変えた辺りで、坂道に到達した。少し日が暮れ始めたせいか、上って来たときの光景とはうって変わって薄暗くなっており、何だか気味が悪かった。

 俺はその気味悪さをかき消すようにエンジンを吹かして坂を駆け下りて行った。俺の背後ではサムニムが楽しそうな声をあげている。

 

「いいわねぇジャベリン!!もっと飛ばしてもいいのよ!!!」

 

「これ以上飛ばしたらカーブ曲がり切れなくなるからそりゃ無理だサムニム!!」

 

「あらぁ?随分とつまらないことを言うのねぇ!」

 

「悪かったな!」

 

 薄暗い坂道を駆け下りて住宅街へと出た。夕方になりかけている時間帯であるせいか、学校から帰っている学生や社会人がちらほらと見えていて昼頃の閑静な住宅街とは違う様相を見せていた。

 俺はそんな中を爆音鳴らしてスピードもそれなりに出しているので、まぁ周囲から凄く注目される。おまけにサムニムを後ろに乗せているのが何とも。当の本人は何も気にしてないし何なら凄く楽しそうにしている。

 

「気持ちがいいわね本当!!」

 

「そりゃ結構だ!どこまで走るサムニム!?」

 

「どこまでも!!!!!」

 

「了解!!」

 

 ギアを六速へ上げる。限界を開放されたエンジンは唸りを上げてスピードをどこまでも上昇させていった。

 風がこれでもかと俺の体へと吹き付けてくる。でもそんなのお構いなしに速度を上げて走り続けた。人目が気になるというのもあるが……一番は気持ちの整理をつけるためだ。

 

 ……サムニムに聞きたいことが幾らかあるからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一通り回ったかな」

 

「もう終わりなのかしら、ジャベリン。これじゃつまらないんだけど」

 

「そんな事言わないでくれよサムニム」

 

 バイクを走らせ二時間ぐらい。ある程度の気持ちの整理が着いた俺は、いつの間にかサムニムと出会ったあの公園へと辿り着いていた。バイクのエンジンを止めてサムニムが降りるのを確認し、俺もバイクから降りてサイドスタンドを立てた。ポチも下ろして、彼女に休憩と称して一緒にベンチへと座った。途中で買っておいた合成飲料マシマシのドリンクを飲みつつ隣のサムニムを見た。彼女はそれはもう暇そうに足を投げ出して遠くの景色を眺めている。

 …聞くなら今か?

 

「なぁ、サムニム―――」

 

「ジャベリン」

 

「―――なんだよ」

 

 出鼻を挫かれた。隣のサムニムは何処から取り出したのか小さな絵本があり、それを差し出してきた。

 

「これ、読んでくれる?」

 

「……おう」

 

 俺は彼女から絵本を受け取ってその本の題名を見ようとした……が、題名は書かれておらず、作者も不明。少し不安に思いながら中身を開けば、幸いなことに俺が読める言語だった。彼女は何を思ってこんな本を渡してきたのやら。些かよく分からない点があるものの、やはり読むしかないのだろう。

 

「えぇと、昔々―――」

 

 この絵本はどうやらとある男女の物語を描いているようだった。男は優しく、女は強く頼りがいがあるようで、二人は偶然の出会いから恋に落ちその仲を深めていくが……二人の関係は突如として引き裂かれた。女の方が悪い魔法で発狂したからだ。

 俺はこの先を読もうと次のページを開いたが、そこには男が逃げる姿が描かれているだけで後は文字もなく空白で埋められていた。怪訝に思った俺は隣のサムニムに聞こうとするが、そこに彼女の姿は無く、慌てて周囲を見回せば目の前に立っていた。

 

「おい、サムニム…この絵本は」

 

「ねぇジャベリン。その絵本のお話、とっても悲しい話だと思わない?」

 

 彼女は俺の質問を無視してそんな事を言ってくる。

 確かに悲しい話だ。仲睦まじく過ごしていた男女が誰かの悪意に晒されて酷い目に遭ってしまう。ましてやその愛する人から襲われるなんて堪ったもんじゃない。しかし何故突然そんなことを彼女が聞いてきたのだろうか?

 

「あ、その顔、少し疑問に思ってる。って考えてるわね」

 

「思考を読むんじゃない……サムニム、どうしてそんなことを聞いてくるんだ?」

 

「どうしてか?そんなの簡単よ、だってこのお話―――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――今も続いてるもの」

 

「?」

 

 俺は彼女の言っていることが理解できなかった。余りにも唐突過ぎるその答えに疑問符を浮かべるばかりで、何一つ判明しちゃいない。サムニムはただ薄笑いを浮かべるだけでそれ以上は何も答えてくれはしないし隣のポチは静かなままだ。

 暫しの沈黙が訪れる。サムニムは次第に無表情となり、ついにはため息を吐いた。

 

「はぁ……お父様が言うには聡い人間だと聞いてたのだけれど…これ以上は私がキレそうだし特別にヒントを教えてあげる」

 

「はぁ?」

 

「むかーしむかし、一人の傭兵と一人の人形が居ましたとさ。二人は戦場で出会い、そして何時しか恋仲へ…というわけでもないわね。もう一人の人形と仲良くなってるだけか。ま、とにかくそれなりには仲良くなったけど、ある事件によって二人の仲は引き裂かれました。人形は狂気へと堕ち、傭兵は片目を失ってしまいました」

 

「…おい」

 

 これは……一体、どういう事だ。サムニム、どうしてお前がそんな事を知っている?

 思わず俺はサムニムを睨んだ。

 

「サムニム、お前は……何者なんだ?いや……何なんだ?」

 

「さぁ?誰でしょう?少なくとも蝶事件なんて経験したことなんてない……おっと口が滑った」

 

 道化師のように、口を三日月の如く口角を上げて笑うサムニム。

 俺はホルスターからガバメントを抜き、そして立ち上がって彼女へと近づいた。さっきまではえらく小さく感じられたその体躯が、今は冗談みたいに大きく見えた。まるで全てを包み込む夢のように。

 

「ねぇジャベリン。あの絵本にはまだ続きがあるの」

 

「続き…?」

 

「そう、続き。あの後、男は一人の女性に会うの。その女性はね……」

 

 あの気が狂った女なのよ。

 確かに彼女はそう言った。

 

 瞬間、背筋も凍るような気配がした。俺の全てを絡めとって呑み込んでしまうような粘着きのある気配でもあった。その気配は……サムニムの背後から感じられる。

 

「あはっ。やっとこのお話の続きが書けるのね。なぁ、随分と遅かったじゃねえか、オイ?」

 

「えぇ、貴女がジャベリンを連れまわした事に加えて少々邪魔が入りましてね」

 

「お、おまっ、おまえ……」

 

 身体が震える。今までで一番会いたくなかった奴が俺の目の前にいるのだ。恐怖に支配されたその手は震えるばかりだが、何とかガバメントは持てている。

 コツコツと、足音が聞こえる。歩く度に揺れる漆黒のスカートがちらつく。相手を射殺さんばかりの視線が向けられてくる。声を引き絞るように俺は、こちらに微笑みかけてくるあの女の名前を言った。

 

 

 

 

 

 

 

「代、理人…っ!!」

 

「久しぶりですね、私の愛しき人(ジャベリン)

 

 

 

 

 

 

 代理人(エージェント)、俺にとっての最大の悪夢がやって来た。




見つかってしまった。

見つけてしまった。

狂った愛は増幅し傭兵を襲う。果たして傭兵は、何を思うのか。


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出会いは唐突に、別れは後ろ髪を引くように。

モチベがやっと復活。
人間、忙しいのはよろしくないんですよ……本当に待たせてしまって申し訳なかった。そして、170000UA、お気に入り1150件越えありがとうございます。今後とも傭兵日記をよろしくお願いします。


 

「やっと、やっと出会えましたね」

 

 薄暮の公園に三人の人影。一人は焦燥した顔を浮かべ、一人は愉悦に満ち、最後の一人は恍惚とした表情をしている。動くことは無くただただにらみ合うのみ。

 

 小説風にいうならこんな感じでいいだろうか? これじゃ俺が呑気に日記を書いてるみたいに見えるが、実はそういう訳じゃ無い。寧ろピンチだ。目の前に俺の天敵といっていいほどの存在が此方を見つめてきている。ただその再開を噛みしめるように、喜ぶように。

 

 代理人(エージェント)、恐らく鉄血ハイエンドモデルの中でも上位に位置するその人形は、静かに佇んでいた。彼女の一歩前には、今の今まで正体が不明の少女、『サムニム』が居る。サムニムは後ろの彼女に臆することは無く、むしろ楽しそうにしていた。

 …非常に信じたくはないが、もしかしたらサムニムも代理人の事を知っているのかもしれない。先ほどの意味深なセリフを思い出せば、ほぼ事実と言っても間違いない。

 

「全く、夢想家(ドリーマー)。貴女は何故彼の近くに居たのに何も連絡を寄越さなかったのですか?」

 

「あら、ごめんなさいね。通信モジュールが壊れちゃってたのよ」

 

「見え透いた嘘を……」

 

 サムニム…いや、夢想家(ドリーマー)と呼ばれた彼女はケタケタ笑いながら代理人と話す。彼女もまた地位の高い人形なのかはたまた単純に図太いだけか、代理人の発するプレッシャーに全く気圧されていない。それどころか挑発染みた行為さえしている。

 今、お前の目の前にいるのは暴走激重感情拗らせ人形なんだぞ。怒らせたらどうしてくれるんだ。

 

「……まぁ、良いでしょう。今回は不問とします。今は目的を完遂させることが第一ですから」

 

「ふぅん、あの代理人が珍しい事」

 

 二人のやり取りに目を離さず、俺は後ろのポチにハンドサインを送る。今この状態でポチがそのハンドサインを見てくれたかは不明だが、ここはポチを信じる他ない。

 代理人が一歩前に此方へと近づいてくる。俺は後ろへと一歩下がり、トリガーへと指をかけた。彼女は嬉しさと何か得体の知れない感情が混ざった顔でこちらを見ている。挙動一つ一つが随分と恐ろしく見えて仕方がなかった。

 

「ふぅ……待たせてしまって申し訳ありません、ジャベリン。今日はただ単純に貴方と話し合いをしに来ただけですから、ご安心を」

 

「へ、へっ、あんな重い感情ぶつけてきたうえに片目を抉りやがった奴のどこに安心すりゃいいんだよクソッタレ」

 

「ブフッ」

 

「……随分と嫌われてしまったものです」

 

 サムニムが吹き出したのは無視しておこう。

 俺の精一杯虚勢を張ったそのセリフに代理人は眉を顰めながら首を左右に振る。彼女は話し合いをしに来た、とは言うが本当なのか? 正直な所、見え透いたような嘘しか感じられない。感覚がマヒでもしてるのか正常な判断が出来ないのか、目の前の彼女にしか意識を集中出来ていない俺には、正しい判断なぞ出来るはずもなかった。

 

 代理人は何を求めている? まさか新たに俺のどこかを奪ってこようとは思ってはいまい。むしろそうであってほしい。

 俺は恐る恐る口を開いた。

 

「…代理人、お前が求めているのは一体何だ?」

 

「何…とは、随分な愚問を。私が求めているのは貴方だけですよ、ジャベリン。本来の目的も大事ですが、それと同時に貴方が欲しい」

 

「クソ、熱烈なアピールだこった……残念だがお前の物になる気は更々ないぞ」

 

 代理人は俺のその言葉に微笑みで返す。

 

「えぇ、それは百も承知です。私がやってしまったことは大いに罪深いものですから」

 

 また一歩彼女は近づいてくる。それと同時に彼女は少し目を細めて、ため息を吐いた。

 何だと思った矢先に、彼女の視線が鋭くなり目のハイライトが消えた……気がした。俺はトリガーへ掛けていた指の力をより一層込める。

 

「それにしても、ジャベリン」

 

「…何だよ」

 

「貴方は大層な義眼をお持ちのようですね?」

 

 ……義眼の事がバレてる。まさかとは思うが、侵入者との戦闘でデータでも取られていたのか?

 その可能性は十分に有り得る。俺とスピア、そして侵入者率いる鉄血下級人形との戦闘が向こうのドローンに監視されているとか、侵入者が戦闘中に鉄血のデータサーバーへ情報を送信している事もあるかもしれない。下手に義眼を使えなくなるのかもしれないが……不味いな。俺はこの義眼があるからこそ鉄血ハイエンドモデルと渡り合えている。

 義眼の機能が無くなった状態で戦うなんて場合の気持ちは、侵入者の時との戦闘で嫌でも身に染みている。

 

「あぁ、全く以って不快ですね。貴方が目の前から消えるなんてことは。貴方の事を感じたいのに、貴方と触れたいのに……本当に不快。…それと―――――――――」

 

「?」

 

 代理人は一度目を閉じ、直ぐ薄く目を開けてこちらを射殺さんばかりの視線を向けてくる。

 

 

「――――――—何より、何処かの女が作ったようなそのゴミは……非常に邪魔ですね」

 

「ッ!!!ポチ!!!!!!!!」

 

≪承知しました!!代理人、許してください!!!≫

 

 

 俺の斜め後ろで大きな爆発音と眩い光が広がる。ポチに用意させていたフラッシュバンだ。

 完全に油断していたであろう代理人は目でも眩んだのだろうか、一時的に怯んでいる。俺はその隙を突いて義眼をすぐさま発動させてバイクを停めている所まで走り出す。出来る限り彼女からより遠く逃げなければならない。

 バイクについてキーを差し込んだ後、ポチをトップケースに入れ、俺は状況を確認するために後ろを振りむいた。そこには、代理人が未だ顔を覆っているが…サムニムの姿が無い。

 

「ハァイ、ジャベリン」

 

「!?」

 

 いつの間に彼女は俺のバイクのシートへと座っていた。随分と悪戯心溢れた表情でこちらを見ている。

 どうやら彼女は事前に察知でもしていたようだ。

 

「逃げるんでしょ?後ろに乗せてよ」

 

「はぁっ!?お前何を言って――――—」

 

「面白いもの。ほら、早くしないと愛しのメイド様が追いかけてくるわよ?」

 

「っ…ああもう!掴まってろよ!!!」

 

 サムニムへの文句は後回しに。すぐにバイクへ跨りエンジンを点火させ薄暗くなった夕暮れの道を俺達は走り出した。

 絶対に捕まって堪るか畜生!!!

 

 

 

 

「逃しましたか……ですが、絶対に見つけますからねジャベリン」

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

――――――――――――――――――

 

―――――――――――

 

―――――

 

――

 

 

 

「はぁっ……はぁっ……」

 

 胸の動悸が一向に収まる気配がない。思ったよりも精神的にキていたようで、全身から冷や汗が大量に吹き出していた。

 今、俺は夜の街をこれでもかという速さで走り抜けていた。アクセルは決して緩める事はなく、ただただ出来るだけ遠くへ早く行けるように走る。

 

“逃げないと”

 

 その言葉だけが頭を駆け巡り、それに呼応するように俺のバイクは唸りをあげて街灯に照らされる道路を走り抜けた。地を縫うように走るこの鉄馬はカーブに差し掛かろうとスピードは緩まることもなく突っ込み、車体から火花が散ることを気にも留めず抜けた。

 バイクへの負担なんて知ったことか、先ずは逃げることが大事なんだ。生き残りさえすれば後でいくらでも直せる。

 

「まだ息が荒いようだけど、そんなに代理人の事がトラウマだったのかしらぁ?」

 

「……黙っててくれ」

 

「あら、酷い人。でも正直に話した方が楽よぉ?」

 

「チッ……」

 

 真っ直ぐな直線を走っている最中、俺の真後ろから神経を逆撫でするような言葉を放ってくる少女が居た。

 サムニム……いや、夢想家だ。俺の感情とは反対に彼女は随分とのんびりしていた。恐らく彼女にとっては、俺のこの代理人に対する気持ちなんて気にも留めていないのだろう。寧ろ楽しんでいることは間違いない。

 

「ポチ、誰か見えるか?」

 

≪いえ、今のところは問題ありません≫

 

 どうでもいい思考を切り替えて俺はポチに状況を報告させる。幸い、背後からは誰も来ていないようだった。相当効いてくれたらしい。

 ……そうであると願いたい。何せ相手はハイエンドモデル、生半可な事じゃ中々やられてくれない。処刑人や狩人との戦闘で嫌でも身に染みている。

 

 さて、どうしたものか……。

 

≪ご主人!!右に逸れてください!!!≫

 

「おぉっ!!?」

 

 ポチの指示が聞こえた瞬間、俺の左頬スレスレに熱い何かが横切る。

 それは恐らくビーム兵器のようで、俺が一番恐れている事が発生したことを示唆していた。もう見つかってしまったか。

 そう思った矢先に背後から何かが”着弾”したような音が聞こえた。サイドミラーで後ろを見ても、土煙ばかりで誰がいるのか判明しない。

 いや、誰なのかは分かり切っていた。

 

「見つけました」

 

「っ!!制圧射撃ィ!!」

 

≪了解!!!≫

 

 奴の声が聞こえた瞬間、俺は咄嗟にポチへ指示を出す。直ぐ様銃弾の雨が煙へ吸い込まれるが、その弾丸をものともせずに人影が飛び出して来た。

 

「相変わらず、往生際の悪いお人ですね。貴方はどうして諦めてくれないのか少々疑問に残ります」

 

「うっせぇぞこの野郎!!今止まれば確実にお前に殺されるからに決まってるだろ!!?」

 

「そんな、誤解です」

 

「ビーム撃ってきた奴が言うか普通!!?」

 

 代理人だ。俺の背後から代理人が迫って来ている!

 彼女は俺を止めたいが如く、スカートの内から光線を放ち、このバイクに追い付きそうな速度で近付いて来ていた。

 とにかく俺は当たるまいと光線を避け、ポチに撃たせ続けた。だが代理人は体に当たる弾丸をものともしない。じわりじわりと此方に追い付いてくる。

 

「頑張るわねぇ、貴方」

 

「黙ってろ夢想家!!!舌噛むぞ!!」

 

「酷い言い様。そんな奴にはこうしちゃうわよ?」

 

「は?」

 

 ぎゅむと、俺の背中に夢想家が抱き付いて来た。

 ポチの≪あっ……≫という声が聞こえると共にみるみる内に後ろの殺気が強くなってくる。

 恐る恐る俺が後ろを振り向くと…………。

 

「殺します」

 

 表情を捨て去った代理人の顔があった。

 

「クソッ!!!」

 

 俺は直感で危険を悟り思い切りバイクを横滑りさせた。

 その刹那、眩いばかりの光が真上を通り抜け如何にとんでもないモノを放たれたのかを実感する。

 その光線が飛んでいった先をちらりと見た後に、止まってしまったバイクのスタンドを立てて代理人の方を見据えた。彼女は相変わらずの無表情、いつの間にかそのちょっと後ろに夢想家が立っている。

 ……ポチはトップケースの中で目を回していた。

 

「……やっと追い付けました。とはいえ夢想家、あまり私の感情を揺さぶらないようにお願いします。間違って彼を殺してしまうのは不味いので」

 

「コイツならどうせしぶとく生きるし問題ないでしょ。狩人とか侵入者の時とか、今まで人間で彼処まで食らい付いた奴居る?」

 

「万が一です。ジャベリンは油断する事が多い男ですもの」

 

「あっそ。よく見てるわね、コイツのこと」

 

 目の前で三日月のように口角を上げて笑う代理人。

 あぁ全く、蝶事件前の俺ならその笑みは彫刻のような美しさとでも言うんだろうが、今じゃどう見たって獲物を見つけた猛獣にしか見えなかった。

 一応片手にガバメントは持っている。直ぐにでも撃てる筈だ。

 

 俺はガバメントを構えようとした。

 

「駄目ですよ、そんなものを構えるなんて」

 

「!?」

 

 だが駄目だった。突然代理人が目の前に現れたからだ。腕を押さえられていて動けない。

 

「あぁ、やっと貴方に触れられた」

 

 喜色を浮かべた彼女が、片手で俺の顔を撫でてくる。

 

「今までどれだけ恋い焦がれたか」

 

 ふと、“あの時”を思い出してしまう。駄目だ、考えるな。思い出すな。今この状況を脱け出すことだけを考えろ。

 

「でも、こんな感動的な場面でもやはり……邪魔なモノはあるものです」

 

 それはお前だけだ。

 精神を落ち着かせる為にそんなツッコミを入れる。だが意味を成すことは無かった。

 

 恐怖が俺の脳内を支配する。

 

「貴方の義眼は……何処の馬の骨ともしれない女によって作られた物。そんなの、許されるのでしょうか?」

 

「ひっ……」

 

「いいえ、許される筈がありません。私が貴方を支えてみせる。貴方の片目に、片腕になってみせる。貴方の隣に立ちたい。貴方の隣で笑いたい。絶対に、絶対に絶対に絶対に――――」

 

 

 

 

―――貴方を、救う。

 

 

 

 

彼女の手が俺の義眼を触った。

 

そして、潰した。

 

「ァ…」

 

 俺が声を発する事が出来たのはそれだけだ。

 痛みを感じる事はなく、かつての光景が頭を駆け巡った。後は何も覚えちゃいない。ただ、乾いた発砲音と彼女の苦悶の声が聞こえただけだ。

 

「くぅっ……!?」

 

≪代理人、そこまでです≫

 

「あ……え…ポチ?」

 

 気がつけば俺は地面に倒れ、目の前にいつの間にか復活したポチと片目……左目を押さえている代理人が立っていた。

 ポチは心無しか怒っているように見えた。どうしてだろう。

 

≪ご主人は休んでて……代理人、貴女は以前ご主人に謝りたいと言ってましたね。それがこの有り様ですか? あの時と同じように感情を暴走させ、自身の制御を怠り、あまつさえあの時と同じように目を潰した。何やってるんですか?≫

 

「……」

 

≪だんまりですか、そうですか。ならば貴女に謝る権利なんてありませんね?≫

 

「で、ですが」

 

≪……ですが?≫

 

「えぇと……」

 

 代理人が突然のことにしどろもどろになっている?

 あまりの出来事に俺も困惑せざる負えなかった。後ろの夢想家も目を真ん丸にして驚いていた。

 ポチはただ代理人を睨み付けて彼女の弁明を待っているようだ。

 

「わ、私は……私は、ただ……ジャベリンに会えた事が嬉しくて」

 

≪だから?≫

 

「だから……」

 

 代理人は言葉に詰まっているようだった。

 恐らく、罪悪感に苛まれてきたのだろうか。それともまた別の理由か。

少なくとも混乱しているのは確かか。

 

「だから…私はこんなことを…やるべきじゃなかった。どうして……」

 

≪……はぁ、代理――――

 

 

 

 

「そこまでにしておけ、ポチ。あまりやり過ぎるな、メンタルへの負荷が酷くなってるぞ」

 

 

 

 

―――お父さん、何故ここに?」

 

「其処に居る夢想家を探しててね。あんな派手にいかれるとね、やはり場所は自ずと分かるものだ。ククッ」

 

 聞き慣れた声とカツカツと足音が聞こえる。音がする方向へ視線を向けたら、この前見た……というよりぶん殴った白衣の男、リフィトーフェンが立っていた。

 彼は代理人へ近付き、労るように彼女を立ち上がらせた。そして今度は夢想家へ顔を向けた。

 

「全く、君はどうしてそんな私から逃げたがるのだ。メンテナンスをするだけだぞ?」

 

「御免なさいねお父様、娘は今反抗期なのよ?」

 

「一々気に障るなぁ、本当に。ジャッジの爪の垢を煎じて飲ませてやりたい!」

 

「ジャッジちゃんはお父様の“お仕置き”が怖くて渋々従ってるだけじゃないのかしらぁ」

 

 暫しの言葉の応酬。

 リフィトーフェンはこの行為を無意味と見たのか直ぐ切り上げて今度は俺の方を見てきた。

 

「まぁ見ての通りだ。私が夢想家を探してたのはメンテナンスの為だし、代理人はそこの愛しいポチのせいと君の拒絶によりこの通り。どうだ、ここは一つ休戦と行こうじゃないか」

 

「えっ、は?」

 

「む、理解が及んでないな君ィ? ちょっと今向いているとこから右手を見たまえ、グリフィンの治安維持部隊が来ているぞ」

 

 彼の言うとおりに俺は右に顔を向けると、なるほど、確かに装甲車が何台かやって来ていた。つまり我々を逃がせということか。

 聞きたいことが沢山あるのは山々だが、こればかりは仕方がなかった。俺はただ首を縦に振って肯定の意を伝えた。

 

「助かるよ。ほら夢想家、早く私の秘密基地へ来たまえよ。また逃げられるとこちらとて下手に動けなくなる」

 

「はいはい。別にお父様がやる必要も無いのにねぇ……それじゃあねジャベリン。またいつか会いましょう」

 

「……」

 

 離れ行く三人。

 ふと、代理人がこっちを向いた。

 

「っ……?」

 

 アイツは、酷く悲しい顔……怯えているとも取れたそんな表情をしていた。

 

「……どうして」

 

 

…どうして、お前がそんな顔するんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 その呟きは、迫りくる装甲車のエンジン音に掻き消されて誰にも聞こえることは無く虚空へと混ざっただけであった。

 

 

 

 

 






彼女は彼を求め、彼は彼女を拒む。
未練は残り心の奥底へ。


さて、ようやっと物語がまた進みましたが……ぶっちゃけこの先どうなるんですかね、一応決めてはいるんですが……うむ、難しい。正直なところ、ギャグにしようかなって思ってたんですよね。でもそれは何か違うかなと四苦八苦してたらこんな時期まで……でも割と納得いく書き方でした。あとは誤字の問題やな!!()
そういえば代理人ってテレポート出来るんですってね。

さてこの作品への感想及び評価は心の支えです。どうぞ、よろしくお願いいたします!それでは!!


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傭兵は進む。
傭兵、事情聴取だってよ。


新たなる章へ突入しました。
ジャベリンくん、君は一体どうするのかね……。


 

 

 

331日目 天気不明

 

冷えた硬いベッドの上で目が覚めた。

始めは何処だここと少し焦ったが、そういえば昨日グリフィンの治安維持部隊にグリフィン本部の独房に連れていかれた事を思い出した。

あの時は大変だったな……急に銃を突き付けられるわ直ぐに拘束されるわ……ボディチェックも入ったが幸いにもこの日記は取られることは無かったので良かった。ポチは念のためと別室へ送られてしまったが。

……ポチは大丈夫だろうか。ダイナゲートだからって変なことされてなきゃいいんだけれども……まぁ、連れていったのがトンプソンだったので問題は無さそうだったけれど。

さて、俺はこのままどうなるのだろうか。考えられるのは事情聴取だとは思うが、もしかしたら一時的な保護かもしれないし……どちらにせよ暫くはこの硬いベッドと鉄格子の世話になりそうだ。

 

しかし……アイツに義眼が潰された。あの夜、あの時…不味いな、あまり思い出さないでおこう。

俺の義眼が使い物にならなくなった以上、ペルシカリアの所に行かなきゃならない。そこまで急な事では無いにせよ、片目が見えないのは少々不便だ。ここから解放され次第、連絡を入れて向かうとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

332日目 晴

 

まさか昨日から朝までぶっ通しで根掘り葉掘り色々話す羽目になるとは思いもしなかった。

こんな事態になった理由として、鉄血ハイエンドモデルが目撃された上にグリフィンの管理地区全域で指名手配されているリフィトーフェン“が”通報したからである。ご丁寧に挑発もしたらしい。何考えてんだか。

それは兎も角、いざ大仰 (それでも鉄血ハイエンドモデル2体相手にはまだ足りないようなレベルだろうが) な部隊編成で現場に到着したら、そこは既にもぬけの殻で一人の男とダイナゲートがぽつんと佇んでいただけ。そりゃ聞きたくなるな。グリフィンの警備体制を揺るがす事態だ。鉄血ハイエンドモデルに侵入されるわ指名手配の男には逃げられるわで散々だろうて。

しかし、少しでも尻尾を掴もうと躍起になるのはいいんだけど……悲しいかな、俺は何も知らない。俺が出来たのは多少のぼやかしをしながら状況をこと細やかに話すことだけだった。

尋問官もガッカリだったろうに。何にせよ、俺は無実で多少の監視期間を設けてからの解放である。一応武器庫やら取引先には事情を伝えてあるようだ。良かった。

取り敢えず、今日はもう寝るとしよう。色々有りすぎて疲れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

333日目 雨

 

変な夢を見た。代理人と暮らす夢だ。不思議と恐怖を感じることもなく、寧ろ安心感さえ感じられた夢だった。夢の中の彼女の姿はボヤけていて、普通なら誰なのかわからない筈なのに、それでも代理人と直感出来たのである。

夢の中での俺は小さな子供で、何をするにも大変そうだった。そんな俺に対して代理人は仕方なさそうに俺を助けてくれていた。これでもかという慈愛を以て。

 

……ここまで書いてて思うが、もしかしなくてもあの時代理人が浮かべていた怯えているとも受け取れる表情を見たことに引っ張られていてはなかろうか。

我ながら馬鹿らしい事が起きてるもんだ。少なくとも、俺はアイツに特別な思い入れはない。あの時彼女の浮かべた表情がよほど衝撃的なだけだったのだろう。

俺の記憶……といっても16歳からの記憶しかないが、その記憶の中には代理人と類似した存在なんてお嬢のとこで仕えてるローゼという民間人形……今は戦術人形か。そいつ位しか居ない。

いや、待てよ? 16歳以前の記憶だとどうなるんだろうか? 人間、何かしらの衝撃的な出来事は案外覚えてて、ふとした拍子にその記憶が呼び覚まされることがあると聞いた。もしかしたらそのような事が俺に起きたからかもしれない。

 

いや、あまり考え過ぎるのも駄目だな。余計な邪推してしまうから、ここで筆を止めよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

334日目 雨

 

監視期間……といっても案外緩いもので、外出する旨を伝えれば監視として一人付くだけで社内限定ながら歩き回る事は可能であった。まぁその監視役がスプリングフィールドという戦術人形だったのが運のツキだが。

この戦術人形、トンプソンと同僚であるのと同時に……まぁ、なんだ、我が槍部隊副隊長スピアとも仲が良い人形である。たまにお茶に誘うんだとか。アイツは攻められるのに弱いらしい。ちょっとつついてやると可愛い反応をするようだ。

意外な一面である。スピアは結構遊ぶ男だ。それ故女関係なら能動的にも受動的にも対応出来る男だと思ってた。いや、単純に彼女を恐れているのかもしれないが。

 

閑話休題。

 

彼女、結構人を誘導するのが上手いもので、話している内に、気が付けばカフェに誘導され気が付けばコーヒーを飲み気が付けばポチとマフィン片手に独房へ戻されていた。油断していた俺が悪いが、幾らなんでも話術が達者過ぎやしないか? 戦術人形でもここまで話の上手い奴なんて見たこともないぞ。

 

とはいえポチが戻ってきたのでそれは水に流すとしよう。久しぶりの再会なんだし。

一応ポチに異常がないかどうか調べても特に問題は無かった。

……久々にポチの体を磨いてやるかな。

 

 

 

 

 







スプリングフィールドという戦術人形。スピアくんを狙っているようです。詳細はまた描くであろう槍部隊副隊長の受難にて。

感想、及び評価はブーストになってくれるので、是非ともよろしくお願いします。それでは!!


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傭兵、面会だってよ。

ジャベリンくん、まさかの人物と出会います。
どーぞ。


335日目 晴

 

今日、俺の養父がやって来た。

ポチのボディをこれでもかと磨いていた最中にだ。全く時間を考えてほしかったもんだ。

 

…ちょっと説明が足りないな。彼は『ハワード』と言う名前 (苗字は忘れた) で、一応元正規軍で武器庫の職員。死体回収班に所属する男だ。武器庫内では古参の人間であるものの、かといって会議やら行事にはあまり表には出てこない。

何なら俺が進んで会いに行く人間でもない。実際この日記では全くもって書いていなかった。

彼は基本的に武器庫の裏手にある霊園で過ごしている。その為か皆から『墓守』と呼ばれているようだ。俺も墓守って呼んだり親父って呼んだりしてる。

墓守が俺の養父になった経緯は、どうにも社長が俺を拾った時にたまたま同伴していた墓守に有無を言わさず押し付けて、なし崩しに養父となった……らしい。実際の事はよく分からん。

そんな彼だが、俺は墓守に色々な事を教えて貰ってはいる。言語、基礎的な教養、物事に対する考え方……武器庫の隊員が戦闘技術の師匠なら、墓守は人生の先生である。

 

さて、何故墓守が連絡もなしに態々俺のところに来たのかといえば……墓参りのお誘いだ。俺の本当の家族の墓をやっと作ったからであるとのこと。ということは……俺の苗字が判明するのか。嬉しいとか悲しいとか、そういうのはない。記憶が無いんだ。喜べってのが土台無理である。

とはいえ俺の苗字は一体何なのか……楽しみだ。

 

しかし墓守も罪な男だ。アイツ物凄く綺麗な、それこそ彼には全く似合わないような女性を侍らせていた。一体誰なのかは敢えて聞かなかったが、まぁ特別な関係であるのは違いないだろう。

……葬儀屋とか言ってたのは気にしないでおく。思いの外物騒な通り名だった。

 

ポチ? そりゃもう鏡みたいにピカピカにしたよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

336日目 晴

 

今回はお嬢御一行がやって来た。

メンバーはお嬢に、ローゼに、M16とSOPだ。どうやら今後行われる大規模作戦のブリーフィングでグリフィン本社にやって来ていたようだ。クルーガー社長から俺の事を聞いたので折角だから来たって感じだろうか?

お嬢とM16は俺の状態を見て笑い、ローゼは複雑な表情。SOPは後でお土産あげると言ってきた。お前だけが天使だよSOP……。

それにしてもお嬢も出世したもんだ。大規模作戦の主力部隊とか言われてたんだぜ、いやぁお目出度い。

どんな作戦なのかは俺は聞かされることは無かったが、M16が言うにはかなり派手にやる作戦らしい。もしかしたら武器庫が出張る可能性もあるとか。実行は1ヶ月がそれ以上先……相当な準備でもするのだろうか?

武器庫じゃ基本的に大規模作戦の主力やら作戦立案を担当するのは剣部隊だし、よく分からない。

あぁそういえば、お嬢から俺宛の手紙を貰った。送り主は……リフィトーフェンだ。アイツマジで何やってんだ。何処で貰ったのかとお嬢から聞くと、グリフィン本社の正門付近で貰ったらしい。

リフィトーフェン、本当にグリフィンを舐めてやがる……。お嬢も多少は疑って欲しい。あの野郎は変装しようと一目で不審者って分かるような言動するんだぞ……。

さて、手紙の内容だが。

 

『義眼を直すからこの住所の場所まで来てくれ。合言葉はシュトゥルム・ウント・ドラングだ。いいか?絶対に早口で言うんだぞ?早口で言わなかったら直してやらないからな!』

 

と、随分とふざけた内容だった。しかし義眼を直してくれるのか……元々ペルシカリアの所に行くつもりだったけど、リフィトーフェンでも良いかもしれない。どちらにせよ状況次第だ。ペルシカリアに連絡出来そうに無かったらリフィトーフェンの所へ向かおう。

アイツが何をしてくるのか分かったもんじゃないが、それでも片目が見えないってのは不便極まりないし何よりリフィトーフェンは腐っても技術者、相当なモノは作ってくれるだろうと信じたい。

 

しかし何故リフィトーフェン、お前は武器庫の管理地区の所に拠点を置いてるんだ。どうやって移動してやがるコイツ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

337日目 晴

 

独房でグリフィンの休憩室から拝借した小説を読んでいたら、我ら武器庫の偉大なる社長『ジョン・マーカス』総合責任者サマが面会にやってきた。何故かスピアとイージスを連れてきていた。

……正直不安でしかなかったんだよな、上記のメンツ。イージスは基本的にぼんやりしてるから何処行くか分からないし、スピアに関しては……うむ。アイツの斜め後ろから栗色の髪がちらりと見えたし……お幸せに?

さぁいつの間にか日の差す所に移動してしまったイージスとスプリングフィールドに連れていかれた(社長が連れていくのを許した)スピアは置いといて、社長はただの世間話をしに来ただけだった。(社長が「事務員からの催促から逃げてきたんだよ」って言っていたのは聞かなかったことにしておこう。)

ここ暫くは暇になるらしく、武器庫は束の間の休暇に入るそうだ。といっても戦闘員のみが休みで事務職やら社長は休みじゃないらしいが。それに加えて隊長や副隊長ももしもの時に備えておかなければならない。

 

結局お仕事あるのね……。まあいいけど。

しかしまぁ、武器庫って案外呑気だよなぁ……うちの会社、不規則で何故か仕事が来なくなる時期がある。期間はこれまた不規則で、短かったり長かったり。この時期になると、人によっては実家に帰ったり、何処か別の地区に行ったり、皆好きなようにやっている。

どうせ俺は会社で待機だが、さて……あぁそうか、だから墓守に墓参りをするように言われたのか。先に言って欲しかったもんだぜ、全く。

 

……線香ぐらいは出しておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

338日目 曇

 

トンプソンとSAAと416とG11がやって来た。偶然らしい。

大勢による面会で少々面食らったが、特に何かトラブルが起きたということは無い。因みにトンプソンコンビは俺の様子を見に、416コンビは任務報告ついでらしい。

任務報告ついでということはUMP姉妹が居るはずだったのだが、何故か居なかった。彼女たちは何処に居るのか416に聞いた所、「道草でも食ってるんでしょ」と素っ気なく返された。まあ、あの姉妹だしなぁと何となく理解はしたものの……また次の任務について話して居るのだろうか?

考えても仕方がないか。

さて今度はトンプソン達だが……相変わらずだった。SAAはトンプソンにべったりで、彼女はそれを許している。本当に様になったものだ。

SAAはちゃんと銃を扱えるようになり、そして喜ばしい事に実戦に出ることが出来たに加えて鉄血人形を何体か撃破したらしい。

思わず俺は喜びのあまりSAAの事を高い高いしてあげた。SAAは喜んだが隣のG11が心なしか不服そうであった。

なのでついでにG11も抱き上げた。416に蹴られた。理不尽である。

そんな茶番は差し置いて、トンプソンから俺の釈放される日について教えてもらった。明後日だそうだ。

……早くない? いやまぁいいか、早めに墓参りが出来る。帰りついでに線香とか探してみるとしよう。






養父、なんとなく出したくなっただけでございます。ただ、もしかしたら何度か登場する……かも?
どちらにせよ今後書く墓参り回にて。

…さて、コラボ消化やらなんやらやることはたくさんですが物語的には終盤へ順調に進んでおります。何時頃終わるんだろうなぁ……あとまたコラボとかしたい()

あ、次回は武器庫の日常やります。怪文書生まれるかも……?

それでは、またこんど!!!


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武器庫の日常―とある事務員の直談判―

振って湧いたネタです。
怪文書入りまーす!ふるい落とされるなよ!!!



 

「社長おおおおおぉおおおおおお!!!!!!この前えええええええええ!!!鎚部隊のおおおおおぉおおおおおお!!!!!!戦力うううううううううううううううう!!!!!!!!!!!!!!!!増強おおおおおぉおおおおおお!!!!!!!するって言ってましたねえええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!本当ですかああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!もしよかったらああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!KSGっていう戦術人形とかああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!MG4っていう戦術人形とかどうですかああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!?!!!??!!???!!??」

 

 

「うるさいぞ」

 

 武器庫のある日の昼下がり、社長の執務室にて魂の叫びが響いた。何事かと事務員やら隊員やらがぞろぞろと集まってきたが、社長の机に身を乗り出している一人の事務員を一目見て、あぁついに爆発したか。とだけ思った後に各々の業務へと戻っていった。

 

「どうしてですか!?!!!??!!???!!??!?!!!??!!???!!??そんな事したらこの胸中に募る熱い想いは!?!!!??!!???!!??!?!!!??!!???!!??何処で発散すれば!?!!!??!!???!!??!?!!!??!!???!!??」

 

「今グリフィンの社内報読んでるんだ。静かにしてくれ、マカロヴァくん」

 

「それにKSGとMG4は載ってますか!?!!!??!!???!!??!?!!!??!!???!!??!?!!!??!!???!!??!?!!!??!!???!!??」

 

「ない」

 

「オォン…」

 

 片耳を指で塞いでグリフィンの社内報を読む社長の無慈悲な宣言と共にみるみるうちに萎んだその事務員の名は、『エーリカ・マカロヴァ』。

 少し色の暗い金髪を携えた二十代前半の女性。最近ウィスキーの味と、塩辛いおつまみの美味さが分かり始めた武器庫の事務職である。仕事はそつなくこなし、可もなく不可もなく。武器庫の隊員達にはありがたられている事務員だ。

 

「マカロヴァくん、確かに戦力増強はこの前の会議で暫定的に決めはした。だがな、予算も何の人形を追加するのも未定だ。それ以前の話としてこの戦力増強の話はたまたま去年の予算が残ったから持ち上がった話だ。もしかしたらこの話は無しになるかもしれない案件なんだぞ? 少し落ち着いてくれ」

 

「そうですか……ウォォン…」

 

「そこまで落ち込むかマカロヴァくん……一応理由を話してくれ」

 

 社長の目の前であからさまに萎んでいる彼女の仕事ぶりは、評価が高くこの前武器庫が雀の涙ながらも出しているボーナスを更に上乗せして貰えたほどだ。

 そんな彼女は執務室全体を湿っぽくなるようなレベルのオーラを放ちつつ、突っ伏している。社長はあまりの変わりように見るに見かねて何故そこまで息巻いているのか、理由を聞くことにした。

 

「いいですよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

「静かに話してくれ」

 

 エーリカはその言葉を待ってましたと言わんばかりの元気はつらつな声を張り上げる。

 あぁ、一つ付け加えておこう。 

 

「えーとですね、何から話したものか……あっ、そうだ始めにその子達の魅力について話しましょう。まずはKSGっていう戦術人形なんですけどね、彼女はショットガンの戦術人形でとてもとても高性能な戦術人形でして彼女の性格は真面目で実直、とても素直な“THE 仕事人”というようなものでして、社長が欲しいであろう仕事に忠実な人材というお眼鏡に掛かった戦術人形だと思われます。でもやはり多少のジョークも分かってくれるでしょう。社長はたまによく分からない冗談を言いますから適任ですよ。え?仕事を覚えるのが遅いかもしれない?それは丁度良かった、彼女はI.O.P.屈指の高性能な電脳をもっております。故に…というよりか人形は基本皆仕事なんて覚えるのは直ぐですよ大丈夫ですご安心ください。それとKSGという戦術人形はトレーニングも好んでやるそうで、隊員達とも直ぐに仲良くなってくれるはずです。さて次はMG4という戦術人形の魅力について話していきますが、彼女もKSGと同じく高性能な電脳を持ち合わせている戦術人形なので仕事面に関しては何の文句もありません。彼女はLMGの戦術人形でして、真面目で控えめ、悪くいえば卑屈ですが其処のところは武器庫の職員達は気にすることはないので問題ないでしょう。というかそんなハブられる事があったら私が守ります。絶対に。いやしかし彼女は本当に良い人形ですよ、MG4もI.O.P.が誇る高性能な戦術人形ですからね。絶対にがっかりさせる様なことはありませんからね。そして彼女はLMG、つまり防衛戦であっても役に立ってくれる戦術人形です。是非ともよろしくお願いします。あぁそうそう、LMGとSGの戦術人形って相性が良いらしいですよ?何だかよく分かりませんが性能が上がるそうです。おや、気付きましたね?そうですその通りですつまりあの二人は互いに補い合える!後方でMG4が支援をしつつKSGが肉薄、何という素晴らしさ!社長も分かってくれるはずですもの。防衛戦では必ず役に立ちます断言出来ます信じてください。あ!!!言い忘れていましたね!!!この二人の一番のチャーミングポイント何ですけどね、何かと言いますとね、顔 が 良 い 。最早国宝レベル。二人とも白に近い銀髪ですがそれに映えるほどきめ細やかな肌で凛とした瞳に程よく膨らんでいる唇ですよ!まるでその姿は絵本から出てきたお姫様のようでもう尊いレベルですからね、もしそんな二人が一緒に並んでご飯とか食べてたり寝てたりしてたらもう死にますよ私。この世に未練なんて無くなりますよ。しこたま酒飲んで急性アルコール中毒で GO TO HEAVEN ですからねそれほどまでにあの二人は最高なんですよ是非とも社長!!鎚部隊の為にも!!お願いします!!!ご検討を!!!」

 

「何だって?」

 

 彼女は、俗に言う“オタク”というのに属する人間である。好きなものにはとことん嵌まり込む典型的なオタクなのである。

 現にさっき怪文書もかくやというような語りを披露して社長が聞き直すような事態を引き起こした。

 エーリカは社長のその台詞をそのまま受け取ったのか、またもや顔を輝かせた。

 

「もう一度話したほうが良いんですね!?じゃあ遠慮なくはーーーーー」

 

「いやいい分かった。君がそこまで熱意を持っているのはよーく分かった。だからもう話さなくていい」

 

 社長がこれ以上は駄目だと話を遮ると、エーリカは不満げな表情を浮かべて椅子に座ってくれた。取り敢えずは落ち着かせることに成功出来たようだ。

 社長は内心驚いていた。ここまで熱く語ることをエーリカがやってのけた事に対して。

 

「折角彼女達が如何にして可愛いのかみっちり教えていこうとしたのに……」

 

「さっきの語りで十分に伝わったよ。これ以上話されると何時解放されるか分かったもんじゃない」

 

「フルコースをお求めですか?」

 

「時間があればな」

 

 彼のエーリカへの印象というのは、真面目で仕事人間、必要以上のことは話さないというのであった。それがよもや剣部隊隊長(クレイモア)の延々に続く愚痴よりも気圧されるような語り口をするとは思いもしなかったようだ。

 

「ふぅ…まぁ、何だマカロヴァくん」

 

「はい!」

 

 社長はエーリカに向き合う。

 社長は思う。可愛い部下の為にも要望には出来る限り応えてやらなければいけない。それが社内で評価の高い社員なら尚更だ。と。

 

「マカロヴァ君の働きには大いに感謝している。他の隊員達だって君の仕事は評価しているからな。こうやって君が直談判してきたのは少々面食らったが、それがどうした。改めて考えてみれば、そろそろ君にも相当の報酬は必要だったのだろう」

 

「しゃ、社長、ということは!?」

 

 社長は言葉を一旦切って、にっかりと笑う。

 その笑顔は、最早決まったも同然だ。

 

「あぁ、俺が何とかしよう」

 

「……ヨシ!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 エーリカはこれでもかと喜び飛び跳ねている。

 彼女が狂喜乱舞している傍ら、社長は内線で兵站部へと繋ぎ、とある事を伝えていた。

 

「おう、この前の人形教育係についての話なんだが……適任者が出てきた。後で情報を送るからよろしくな」

 

「これで彼女達のあんな姿とかこんな姿とか……グヘヘヘ……」

 

 欲望に目の眩むエーリカはまだ知らない。

 彼女が天国と地獄の両方を体験し、尚且つ何度も天に召されるような事態を引き起こす事を。

 

 余談として社長は後に語った。

「俺は悪くない」

 とだけ。さて一体彼女は目的の戦術人形に出会い、何を思い何を感じ……そして尊さのあまり死ぬのか。

 それが分かるのはまた何時かの事である。

 

 

 







このお話の裏話。
実はスピア君の受難もついでに書こうとしたけど思いのほか怪文書が長くなったのでまた次回となりました。
久しぶりにフォントで遊びました。楽しかった……。

次回は墓参りとなります。それでは!


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傭兵、解放だってよ。

墓参り書こうとしたら思いのほかなんか前置きが長くなったのでこうなりました。
それじゃどーぞ。
短めです。





 

 

 

 

 

 

339日目 晴

 

明日で解放される……のは良いけどまた何だかグリフィンが騒がしくなっていた。一応その時は監視役のイングラムと共にレクリエーションルームに居たので彼女に聞いてみれば、どうやら鹵獲された鉄血ハイエンドモデルが逃げたらしい。一大事過ぎるんだが何故か彼女は特に動じる事も無かった。

どうにも相当ボロボロの状態で鹵獲されていたらしく、仮に何処かに逃げたとしても武器を持っていないので何も出来ず人形狩りに殺られるだけだからのようだ。

いやそうだとしてものんびりしながら退屈そうに俺とのチェスで圧勝してくるの何なの。俺もそこまでチェスが強いっていう訳でもないけどここまで淡々と詰められるのは凄く悔しかった。

再戦するのも良かったが、丁度イングラムがトンプソンに呼ばれてしまったのでこれっきりとした。

ちょっと真面目にチェスを勉強してみるかなぁ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

340日目 曇

 

すっごくあっさりと解放された。

何かこう、厳格な空気の中書類の処理が行われて、お偉い人が改まった態度で「君との関係もこれまでだ」とか言って外に出されるのかと思ったら、いきなり独房の扉が開いてSAAが「ジャベリン!!遊びにいこ!!!」って腕をむんずと捕まれて外に出されるなんて思いもしなかった。

まぁトンプソンがSAAを引き留めていたので未遂に終わったけれども。SAAが物凄く不服そうだったので一応暫く武器庫が休みに入る旨を教えておいた。今度遊びにくるようだ。アイツらが来たら武器庫周辺でショッピングでもするか。

 

ところで、俺のバイクが走らなくなったんだけどどうしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

341日目 晴

 

バイクが壊れた。原因はエンジンの破損。グリフィンのバイク好きな誰かが勝手に弄った結果壊したようだ。取り敢えず賠償請求はしておいた。

あのバイク高かったしマジでお気に入りだったんだぞ。惜しむらくは仕事が多くて乗れなかったことだが。

……新しいバイクなに買おうかな。ちょっと奮発してクルーザーかフルカウル買おっかな。

 

それはいいとして……俺の移動手段が無くなった。困ったな。武器庫に帰ろうにも帰られない。公共交通機関なんてグリフィンの管理区でしか動かないし……バイク買うにしても納車がどうなるのかわからん。というかバイク販売店とかあるのここ?

……いっそのこと誰かに頼んでおいた方が懸命かなこれは。

一先ず家に帰って荷物をまとめておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

342日目 雨

 

何故かスリンガーが俺の事を迎えに来た。こいつまたグリフィンのサーバーか何かハッキングして俺の状態を確認しやがったな。スリンガーから接触してくる場合は基本そういうことしてくる。

久し振りにコイツと会ったが、相変わらずのようで日々会社に仇なす輩にとって不利な情報を抜き取ってはばら蒔く事をやっているようだ。弓部隊副隊長は伊達じゃねぇ。

しかし、スリンガーが来てくれて良かった。荷物を楽々積めるしポチやオスカーも快適だろうし。助かった。

あぁそういえば、揺れる車中で色々と話していたのだが、その中で口に含んでいた紅茶を噴き出すような事を聞かされた。

 

珍しく外出していた墓守が鉄血の人形を鹵獲したらしい。その人形の詳細は分からんが兎に角拾ったとのこと。グリフィンに連絡をしていない辺り何処か確信犯めいたような感じがしてならない。

杞憂で終わればいいが、墓守が何か仕出かさないように気を付けておかないとな……鉄血人形が誰なのかも気になるしな。

 

 

 






久しぶりにスリンガー君。
さて墓守が鹵獲した鉄血人形とは……。

また今度!


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傭兵、墓参りだってよ。


家族とは特別な存在だが、いかんせん俺にはその家族の記憶がないが故に今一つ分からない。今回の墓参りで何かわかるのだろうか?






343日目 晴

 

俺の勤めるPMC『武器庫』裏手の丘には、戦死者や無縁仏を弔う霊園が存在する。いくら人外魔境なこの会社だって死人が出ることはある。剣しかり盾しかり。鎚は戦術人形のみだし、弓は仕事の性質上死人が出ることは少ない。槍は最近作られたから今のところは関係無い。いや隊員を死なせないつもりではあるけれど。

この霊園には様々な文化や宗教に合わせた様式の墓がある。キリスト教やイスラム教、仏教、神道……はたまた何処かの土着信仰まで。色々な形の墓が集まっているので、社員の誰かが墓の博物館なんて言っていたな。

そんな霊園を管理するのが俺の養父、墓守である。元正規軍特殊部隊隊員だとか同僚だった社長から話を聞いた。E.L.I.D関連のかなと思ってたけどそうでもなく、人を相手とする特殊部隊とかなんとか。

 

今日はそこの霊園に新しく建てられた“家族”の墓へ墓参りをした。何の変哲もないキリスト教式の墓だ。その墓には「リン・ナトリ」だの「フレデリック・ナトリ」だのと四人ほど記されていた。どうやら俺の本当の親父は婿入りだったようだ。

これと言って特別な感情が合ったわけではない。記憶もないからな。そして意外な事に俺は長男坊だった。弟と妹が一人ずつだ。

墓守が教えてくれた。彼はこの家族について色々調べていたようだ。“親父”は何処かの軍属、俺の“母”とたまたま出会って恋に落ちて結婚、子供を三人授かった……っていうのを教えられた。何が起きて死んだのかは不明らしい。調べようにも何故か情報が秘匿されていた。まぁこの御時世良くあることだ。キナ臭いことこの上ないが元々興味もない。

 

それにしても……ナトリか。ジャベリン・ナトリー……響きが悪い。

墓守が言うには、日本の苗字というのは基本地名が語源となることが多かったらしい。俺のそのナトリも何処かの土地の名前なのだろうか。出来るなら行ってみたい。

墓守はなんとも微妙な顔をしていたがどうでもいい。

取り敢えずは花束と線香を供えておいた。暇があればここに来て手入れやら近況報告でもしてやろう。記憶は有らずとも家族は家族だ。俺の事を話してやるのもある程度の供養にはなるだろうて。

 

あ、そうそう。墓守がこの前連れていた女性……『葬儀屋』と呼ばれていた彼女だが……戦術人形だった。道理で随分な美人な訳だ。『AUG』という戦術人形で、墓守の友人の忘れ形見。友人の遺言に従い引き取ったとのこと。

何故AUGが『葬儀屋』と呼ばれているのかと言えば、彼女は実際にそういう埋葬やら葬儀の仕事に関わっていたからである。戦術人形であるはずなのに、戦うというよりは弔うという、随分と特殊な立ち位置に居たようだ。

彼女が来たお陰で墓守も仕事の効率化と丁寧さが上がったらしい。

葬儀屋は物腰柔らかな暗殺者……というのが第一印象だ。一体何年稼働して何年戦っているのやら。そんじょそこらの戦術人形よりよっぽど強いような気がしてならない。墓守は葬儀屋には喧嘩を売らないようにと俺に言ってきた。やるわけないだろうに。

 

……暫くは会社泊まりか。暇潰しになるものがあればいいんだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

344日目 曇

 

何か会社に居るのも何なので墓守の住んでいる所にポチとオスカーを担いでお邪魔した。彼の住む家は霊園の丁度隣に位置しており、案外デカい。一人で過ごすには大きすぎる位だ。

そうであるが故なのか、葬儀屋や……彼は他の戦術人形も引き取っていたらしい、『G41』という狐のような犬のような猫のような戦術人形も住んでいた。墓守が言うには、何処かのグリフィンの指揮官の埋葬を行っていた時、ひょっこりと現れてその指揮官の墓を守るようになったようだ。初めは警戒心マシマシだったが時間を掛けて何とかこの家に住まわせるように出来たとか。

彼女はオスカーとポチを一目見て「おじ様!この子達よしよししていいですか!?」って目を輝かせてポチとオスカーをぶんどっていった。南無。

それにしても、懐かしいな。俺が武器庫に引き取られた時はよくこの家で色々と教えてもらってたもんだ。しかし俺は一体何処で墓守に勉強を教えて貰ったのやら……記憶が正しければ西側一階の使われていなかった部屋か……探しにいこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

344日目 続き

 

鉄血ハイエンドモデルが出てきたので殴って投げた。

オスカーとポチは帰ってきた。すっげぇテカテカしてた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

345日目 晴

 

墓守は絶対に許さない。頼むから一言言ってて欲しかった。だっていきなり襲ってきたし。

俺が昨日投げ飛ばした鉄血ハイエンドモデルは、『ウロボロス』というヤツで、えらい自信に満ち溢れた人形だった。まぁボロボロなんだけど。恐らく彼女がグリフィンに鹵獲されたっていう鉄血ハイエンドモデルだろう。

ウロボロスはグリフィンから命辛々逃げ延びて、どうやってグリフィンの警備を潜り抜けたのか分からんがこの霊園まで辿り着いたようだ。

墓守は何を考えて彼女を拾ったのか分からなかったが、それはすぐに判明した。何せ墓守と葬儀屋がウロボロスを訪ね、墓掃除に連れていったからだ。

多分、丁度いい労働力だったんだろうなぁ……社長が何を言うのか分からんが、グリフィンやら社員達との折衝でてんてこ舞いになるのは確実だろう。ざまぁねぇ。

 

しっかし鉄血ハイエンドモデルか……アイツら今何してるんだろ……。何時か顔を出しに行くとしよう。

まぁ呑気に畑弄りとか猪〆たりしてるんだろうなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

346日目 曇

 

何か墓掃除にアルケミスト居るんだけど。

 

 

 

 







「墓守……彼は」
「ん?」
「彼からは少し嫌な臭いがします」
「どういうことだ」
「死と生が混ざったような…中途半端ですね」
「ほう、お前がそんな事言うなんて珍しいな。そうさ、あいつは少し揺らいでる。自分の事で精いっぱいなのに他人へと構おうとするから何もかも中途半端。見てて不安になっちまう」
「……よく彼の事を見ていますね」
「親だからな。いくら十年ぐらい会ってなくともなんとなくは分かる」
「社長もそう言うでしょうか?」
「マーカスはなぁ……というよりあいつに近しい奴らは絶対気づくだろうて。問題は……」
「その周りがどうするか…でしょうか」
「だな。もどかしいもんだ」
「……私が母になれば…?」
「葬儀屋???」
「冗談ですわ」






どうもサマシュです。なんか出来ました。ウロボロスとアルケミストが出ました。どうなるんだコレ……いや元々予定に有ったのでどうにかなります。します()

じゃあ次回はですね、ジャベリンくんの義眼を直しに行きますよ。それではまた今度!


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傭兵、交換だってよ。

ジャベリン君、義眼を交換致します。
さて、リフィトーフェンの隠れ家とは一体……?





 

 

347日目 雨

 

今日は俺の厄日だろうか。鉄血ハイエンドモデル二体と遭遇するなんて。いや大人しかったけども。

ウロボロスは兎も角……問題はアルケミストだ。リフィトーフェンのウイルスがどう作用しているのか分かったもんじゃない。

彼女は何の問題もなく墓守と葬儀屋に見守られながら落ち葉を掃いたりしていたが、果たして一体何が目的というのだろうか。

一先ずは墓守に理由を聞いてみたところ、突然ここにふらりと現れて以来たまに来るようになったらしい。おっとこれ確実にリフィトーフェンの隠れ家に住んでるなアルケミスト?

出来る限りなら俺は彼女を避けたかったが (見るからに分かるサディスト感があるし)、残念なことに彼女の方から接近してきたのでそれを断念せざるを得なかった。

ひっでぇよなぁ本当に……久し振りに顔を合わせたかと思えば、

「久し振りだねマヌケ面。眼帯着けて多少はマシになったけどやっぱりマヌケ面は全く変わりゃしない。そんなのだから代理人に片目取られるんだよ全く」

とか言ってくるし……代理人関係ないだろ!?

俺だって好きでこうなった訳でもないんだよ……気分転換にオスカーでも愛でるか……。

 

にしても……アルケミストは何故彼処まで大人しかったのか。口が悪いのは相変わらずだったけれど……やはりリフィトーフェンがテコ入れでもしたのだろうか……明日アイツの所へ行ってみよう。外出届も忘れないようにな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

348日目 曇

 

リフィトーフェン、改めて考えてみれば謎の多い男である。

元正規軍、恐らくは社長と同期でE.L.I.D撃滅部隊所属、鉄血工造でも研究員として勤めポチを作ったやつ……後朧気な記憶を手繰ればもしかしたらドリーマーも設計したのであろう男。そして俺が鉄血ハイエンドモデルに襲われる元凶を作った諸悪の根源。それに加えてリフィトーフェンはグリフィンにもちょっかいを出したりしている。勘弁して欲しい。

俺が分かってるのはこれぐらい。何で彼が正規軍を抜けたのか、鉄血工造に入社したのか、そこはよく分からない。あとはあの技術力の高さもだな。

 

 

俺はグリフィンとは関係が深い……もしもリフィトーフェンと交流があることが露見したら大変なことになるぞ。俺の今の状態は綱渡りみたいなもんだぜクソッタレ。

 

まぁ今日はそのリフィトーフェンの隠れ家にポチといる訳だが。こいつの隠れ家、商店街のど真ん中にあった。木を隠すなら森の中ってことだな。

この前アイツに教えてもらった「シュトゥルム・ウント・ドラング」っていう合言葉は使わずに済んだ。何せ隠れ家の前に立った瞬間にデストロイヤーがドアを開けて出てきたからな。えらく緩いセキュリティだなリフィトーフェン。デストロイヤーも何の迷いもなく中に入れてくれたし。ポチも言葉を失っていたから余計に笑えた。

俺を襲ってこない辺りやはり何かあるな? リフィトーフェンに聞くか。

 

さて彼の隠れ家の内装だが……どこにでも有りそうな、質素な部屋だった。複数のソファーにテーブル、小さなキッチン、少し大きなテレビ……奥の方でリフィトーフェンの叫び声が聞こえたが気にしないでおこう。

一先ず今はテーブルで日記を書いている。ソファーには俺とドリーマー、後は見知らぬ少女(ジャッジと名乗っていた気がする)が居た。多分この少女も鉄血ハイエンドモデルなのだろう。デストロイヤーはテレビを見ている。

いや本当にリフィトーフェンはこのハイエンドモデルどもに何をしたのだろうか。恐ろしい事この上ない。

 

あ、リフィトーフェンに呼ばれた。ここで一旦筆を止めよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

349日目 晴

 

昨日の続き。

アイツの作業場……なんかホルマリン漬けと何かの機械パーツあったし研究所の方が正しいなこれは。そこに連れて行かれ、義眼の交換となった。

因みに俺の義眼なんだが、幸いにも眼球としての機能が死んでいるで他の部分に怪我をしているなんてことは無かった。なので、義眼を取り出して新しいものに変えるだけで済んだ。

義眼を取り換えている最中、リフィトーフェンは自分の作った義眼の性能についてペラペラと長ったらしく話してきた。余りの長さにここへ全文を乗せるのは少々骨が折れるので、要点だけ書いておく。

今、俺が取り付けている義眼には、前の義眼と同じく、人形や機械の“目”から消える事の出来る機能が付いている。

そして対電子戦を想定してハッキングに対して強く、また接続ケーブルさえあれば電子空間にも侵入出来るようになった。でも機能を盛ってしまった結果なのか、使用制限が掛かっている。半日ぶっ通しは可能なものの、それを越えると義眼に繋げている神経が焼ききれるらしい。

デメリットはこれぐらい。この程度に抑えられる技術は正直凄いと思う。

 

義眼の話はさておいて、今度は代理人の話に移り変わった。俺と別れた後、代理人は何も言わずに本拠地へと帰ったらしい。リフィトーフェンが言うには、彼女はまたお前に会いに行くつもりだとのこと。

嫌だなぁって思ってたら、リフィトーフェンは突然「君も逃げるばかりじゃなくて向き合ってみたらどうだ?」なんて言われた。

そこを突かれるのは正直痛い。でも分かってる。理解している。俺という男は代理人という人形に向き合わなければならない。そして、解放してやらなければならない。まぁ、代理人がああなった元凶は今目の前で爆睡しているやせぎす野郎なんだが……やはり何かしらの解決は試みようとしているらしい。

少なくとも当面の目標は代理人の破壊だ。下手な動きは仕事やらグリフィン関係で出来ないし、焦らず行こう。

 

というかリフィトーフェンにデストロイヤーとアルケミストのこと聞けてないじゃねぇか畜生。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

350日目 晴

 

リフィトーフェンに色々聞いた。

どうやらデストロイヤーとアルケミストに関してはあの蝶事件の時、強制スリープさせた後にその感情が暴走するプログラムに対するプロテクトをインストールさせたらしい。うちのポチに使ってたのと同じか。コイツ本当に前から根回ししてたな……?

 

さて、問題はもう二人のハイエンドモデル、ドリーマーとジャッジについてだ……。

この二体は何と驚くことにリフィトーフェンが設計を担当した。見た目が少女であるのに彼の変態性が窺える。別の理由があるのだろうけれど。彼女達もこちらに対して友好的ではあった (ドリーマーは相変わらずだったが)。

彼女達は予備素体を使ってここに居るらしい。本拠地で防衛しているのだとか……ということはアルケミストとデストロイヤーも……?ってなったがその通りだった。

予備故に余り力もないらしい。それこそ大の大人と同等程度だったか? だからアルケミストは霊園で何もしなかったのだろう。

 

そういえば今日、アルケミストがウロボロスを連れてきていた。リフィトーフェンに服を身繕わせるつもりだったらしい。

……はて?確か墓守は服を作るぐらい造作もなかったような気がするが……まぁいいか。墓守だって女性の服を作るなんてことはしたくないのだろう。

 

さぁて、義眼も直ったし会社に戻るか。スピアの小言が待ってるぞ……。

 

 

 







さらりと流しましたが、ジャベリン君覚悟を決めたっぽいです。さぁどうなるのやら……。
次回は社長の過去話をちょろっとやったり……?





―雑談―
やっとコラボ消化とかコラボとかやれる…(自分がやりたいだけ)
いややはり、何といいますか、カロリーは高くとも面白いんですよねぇコラボ。
まぁ先に消化しなきゃならんですが。

それではまた今度!!


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☆武器庫の日常―社長はかく語りき―

彼は、ちょっとだけ過去の話を話してくれるようだ。

※今回はドルフロ要素ほぼ有りません。社長の過去話を知ってみたい人はどうぞ。そして星が付いている通り、他ドルフロ二次作品のオリキャラも出ます。


 

「ジャベリン、武器庫の管理してるこの土地がなんて呼ばれてるか知ってるか?」

 

「ん?」

 

 

 

 とある日、弓部隊副隊長『スリンガー』からそんな質問が飛んできた。

 今日はちょっとした日課となりつつある“家族”の墓への近況報告をしていたので、何を突然……と思いつつ記憶の中で思い当たる言葉を口に出してみる。

 

 

「“人間の楽園”……だったか?」

 

「正解。人形よりも人間が社会で活躍して、殆どの成人が職に就いているからそう呼ばれてるらしいぜ」

 

「何処の情報だ、それ」

 

「俺情報」

 

 

 さも当たり前の如く、私が調べた情報ですと宣うスリンガー。

 多少の呆れは入ってしまうものの、彼は一応武器庫諜報部の長である。そんな下らない噂の信頼性ですら高いと言っても過言じゃないくらいこの男の情報収集能力は高い。

 

 しかし何故突然そんな事を聞いてくるのか。

 

 

「そりゃなジャベリン。気になるだろ、社長が正規軍を辞めて武器庫を設立した理由」

 

「それお前が調べれば済む話だろ」

 

「そうしたいのは山々だけど、正規軍のサーバーのプロテクトが強固だったもんで。真面目に突破しようとしたら常備してるコーヒー粉が無くなっちまうよ。ならさっさと社長から聞いた方が早いだろ?」

 

「あー……そうか」

 

 

 社長は正規軍時代、対E.L.I.D撃滅部隊で陣頭指揮を行いながら多大な戦果を上げていたと聞く。当時、彼の指揮下に居たクレイモアの話では、部隊の誰よりも多く迫り来るE.L.I.Dを徹底的に鏖殺せしめたと言う。流石に武器を使ってるけれど。

 本当に人間を辞めている感じが拭えないが、軍にとっては重要な存在だっただろう。

 

 

「社長ってやっぱり謎が多いな、スリンガー」

 

「剣の奴らよりも人間辞めてるって言われてる位だ。過去に肉体改造でもされてそうだぜ、社長は」

 

「そりゃ違いねぇ」

 

 

 スリンガーが本当に有り得そうな事を言ったので、ちょっと笑った。

 一先ず、墓へ花を供えておいて武器庫へと戻る。スリンガーが言うには、社長は武器庫社内のカフェで暇を潰しているはずだと。

 カフェか……あの社長が珍しいこともある。早速聞きに行くとしよう。

 

 

 

――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――

―――――――――

―――――

――

 

 

 

 

 

 

 

「社長!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!KSGとMG4を採用してくれてありがとうございます!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

「もう少し声を抑えてくれないかマカロヴァくん。スピアに摘まみだされるぞ」

 

「失礼しました。このエーリカ・マカロヴァ、彼女達の美しさに感極まりまして……本当に真面目でかわいくて守ってあげたくて……ヘヘヘヘ」

 

「……そうか。KSGとMG4達の所へ戻ったらどうだ?」

 

「はい。失礼しました、社長」

 

 

 武器庫には、有志によって作られたカフェがある。

 そこでは紅茶が出されたりコーヒーが出されたり……店番を誰がするかによってメニューが度々入れ替わる。

 今日は我らが槍部隊副隊長スピアが店番のようだ。スコーンとサンドイッチとアールグレイを注文しておいた。

 

 肝心の社長はカウンター席で事務員のマカロヴァと話していた。が、ちょうど会話が終わったのか、マカロヴァがその場を後にした。

 

 

「社長、おはっさん」

 

「ん、スリンガーか。それにジャベリンも。今日は何か企んでもいるのか?」

 

「そんな訳ないさ社長、ジャベリンはただの巻き添え。ちょいと聞きたい事があってね。時間空いてる?」

 

「E.L.I.Dを殴り殺せるぐらいはな」

 

 

 意味の分からない……まぁ社長なりの冗談を聞き流してスリンガーと共に彼の隣へと座った。

 丁度目の前に注文した品が出されたので紅茶を一口飲んで、サンドイッチを食べる。カラシがいいアクセントになっていてとても美味しかった。

 

 

「それで、聞きたいことってのは?」

 

「社長が正規軍を辞めた理由」

 

「ふむ」

 

 

 スピアのサンドイッチに舌鼓を打つ俺を横目に話を始めるスリンガー。

 カフェ内は静まり、心なしかここにいる全員が社長の言わんとしてることに耳を傾けているように感じられた。

 社長は 、別に隠してる訳じゃあないんだがなぁと呟き、話を始める。

 

 

「彼処を辞めた理由なんて、ただ勢力争いに負けただけだぞ?」

 

「……アンタが?」

 

「あの時……第三次世界大戦中に色々あってな」

 

 

 恐らく、カフェ内に居る全員が疑問符を浮かべたと思う。社長を決して買い被ってる訳じゃないが、彼が権力闘争に負けるビジョンが想像出来なかった。

 固まっていたスリンガーが正気に戻り、続いて質問をする。

 

 

「その勢力争いって……」

 

「E.L.I.Dを技術的に使用するか、根こそぎE.L.I.Dを殺し尽くすかだな。あの時……2050年初め辺りだったな。正規軍もかなり消耗してたんだ、藁にもすがる思いで居たんだろ」

 

「その話なら俺も噂程度には聞いたことがある。自然に立ち消えしたと思ってたけど、違うのか社長?」

 

「立ち消えしてなかったら俺は未だに正規軍だろうよ」

 

 

 社長は皮肉を言ってコップに入っていた水を飲んで一息ついた。

 E.L.I.Dを技術的に利用って中々狂ってる気がしてならないが、それほどまでに追い詰められてたのだろうか? 俺としちゃこのおっさん一人居れば何とかなりそうだと思うけど。

 

 

「俺はその時断固として技術利用は反対したよ。飼い慣らすにしてもE.L.I.Dの細胞を体内に打ち込むにしても、絶対に何処かで綻びが発生するってな」

 

「でも賛同する奴は少なかった」

 

「そうさな。俺の部下は兎も角、お上は其処のところは理解してくれなかったもんで……あいつらも何思ったんだか、俺を辺境に飛ばしやがった」

 

「ん?ということは、社長って昔は過激的だったのか?」

 

「まぁな。行き急いでたんだろ、昔の俺は」

 

 

 いや今も過激じゃね? という言葉はスコーンと共に飲み込んで、俺は社長を見た。彼の顔は別に過去の事を気にしているような表情を浮かべている訳でもなく、寧ろ自ら笑いの種にしているようだった。

 

 

「ま、その後は正規軍に愛想尽かせて退役しただけだよ。それに俺が居なくとも問題は無さそうだったしな」

 

「というと?」

 

「何、優秀な同僚後輩先達が沢山居たのさ。多少俺程度が居なくなってもE.L.I.D共は殺せる」

 

 

 程度……程度って何だ。社長レベルが何人も居たらE.L.I.Dなんてすぐに全滅しそうな気がしてならないが。社長が現役時代の正規軍どうなってんだ。

 

 

「俺が居た頃はなぁ……同僚に紫電の梟(ブリッツオウル)って呼ばれてる奴が居たりとかしたなぁ……アイツの戦い方は用意周到でテクニカル、生き残ることを目的とした戦法……力押しな俺とは正反対だけどああいうのは大好きなんだ。見習いたいぐらいにな」

 

「ブリッツオウルか、そいつなら俺も聞いたことがある。戦果は兎も角、損耗率が限りなく低い部隊を率いてた敏腕軍人だろ?」

 

「そうそう。羨ましい限りだった。何せ部下が死ぬことが少ない。俺の部隊は決死隊みたいな側面もあったし一回出撃する度に何人か死んだりE.L.I.Dになっちまう事が多かった……詳しいことはクレイモアなり他の剣の奴らに聞いてくれ。俺が話すとちと長くなる」

 

「了解。しかし面白いな、正規軍……ところで社長、重大犯罪特務分室は知ってるか?」

 

 

 どうやら社長の昔話は退役した理由から他の同僚やらの話に移ったらしい。

 お代わりの紅茶を飲み、スリンガーの言った重大犯罪特務分室について聞き耳を立てた。

 社長はその言葉を聞いて、腕を組んで考え始めていた。

 

 

「はて……あー、又聞き程度だな。宗教関連だったかオカルト関連だったか、警察みたいな事をする所だろ?正規軍も変わった組織を作ったもんだ」

 

「彼処は面白い組織だったよ。社長が言った通り、宗教関連とかで政府や正規軍の足を引っ張る輩を消していくのを生業にしてたらしい。実際にメンバーとは会った事が無いが、その組織のリーダーのカプリチオって呼ばれてる奴がえらく顔の良いって事は知ってる……興味本位だが会ってみたいもんだ。なぁジャベリン?」

 

「は?」

 

 

 いや俺に話を振るなよスリンガー……そうさな、そのカプリチオって呼ばれてる奴は強いのか?

 

 

「強いよ。変わった体術を使ってる……あぁでも、見たいのは山々なんだけど、そういえばあの組織無くなってたし皆行方が分かってないんだったな……残念」

 

「いや勝手に話を終わらせるなよお前……」

 

「まぁまぁお前ら、取り敢えず話の本筋に戻ろう」

 

 

 スリンガーの物言いに少々ムッとしたものの、社長の一言で鎮まった。

 危ない危ない。喧嘩でも始めたらスピアに足蹴にされてカフェを出禁にさせられる。スピアの作る紅茶は美味いんだからそんな事されたらひとたまりもない。

 

 

「後進……といっても俺が退役した後だが、意外にも俺のコードネームは知られていたらしいな。この前ウチと演習をしたスイートキャンディ……コリンズ指揮官は元正規軍だった彼女も俺の事を知ってたし。あぁ……コリンズ指揮官といえば、彼女とジャベリンの格闘戦は見てて滾るものがあったな」

 

「社長の退役後か……そういや女たらしの借金王なんて呼ばれてた隊員居たな」

 

「ん?女たらしの借金王……俺が退役する前も似たようなあだ名の奴が居たぞ。もしかしたら同一人物だったりして」

 

「そんなまさか、ハハハ」

 

 

 借金王……凄い聞き覚えがあるぞ。 絶対お前だろ、ジョージ・ベルロック。今度会ったときは話の種にこの事話すかな…。

 アイツとは昔よく飲んだ仲だが最近会えてない。さてさてアイツは人形と結婚したなんて言ってたが……どうなっているのやら。後でメールするか。

 そしてコリンズ指揮官……彼女は結局投げ技を会得出来たのかな。今思えば随分な意地悪をしてしまった気がする。

 リベンジマッチ……とは行かないが、お詫びにとびきり甘いロイヤルミルクティーでも何時かご馳走しようかな。

 

 

「後進といえば、正規軍の情報筋から俺と同じような戦い方をする機械義肢の男がいるって聞いたなぁ…いつか会いたいもんだ」

 

「ほー……そんな奴もいるんだな」

 

「優秀な隊員がいるようで何よりだ……っと、そろそろ席を外す。書類整理の続きをしないとな」

 

 

 社長がお金をカウンターへ置いて席を立つ社長。暇つぶしじゃなくて休憩だったのかよ……。

 社長が歩いていく際に、すれ違いざまにスリンガーがまた質問を投げかけた。

 

 

「そういえば社長、何で貴方は未だに正規軍の委託業務を受領しているんだ?」

 

 

 スリンガーのその問いに社長は笑った。

 

 

「金は多く貰えた方が良いだろ?会社を存続させるため、社員の食い扶持を稼ぐため。お前らの為なら泥水啜ろうと地面を舐めさせられようと喜んでこの身を犠牲にすることを厭わないつもりだ」

 

「……全く素晴らしいな貴方は」

 

「見習ってもいいぞ?」

 

「だってよジャベリン」

 

 

 俺に話を振るんじゃねぇ。まだサンドイッチ食ってるんだぞ。

 しかし……いや、俺はすでに社長の事は見習ってる。己を顧みない、それは諸刃も同然だが、同時にそれだけ多くを守ることが出来ると考えている。彼はそれをやってのけてる……と思ってるさ。

 社長はその言葉残した後にカフェの出入り口まで向かう。

 彼の背後に対し、スリンガーはまた言葉をかける。

 

 

「あぁ社長、お礼にいいことを教えとこう」

 

「なんだ?」

 

「ブリッツオウル、どうやら何処かでグリフィン指揮官やってるらしいぞ」

 

「………本当か?」

 

「飽くまで噂程度だけどな、探してみるのもアリなんじゃないか?」

 

 

 社長はその言葉に、ちょっと目を見開いて、みるみるうちに喜色に富んだ顔に変わっていった。

 

 

「そうか…そうか、アイツにはおあつらえ向きだな……そうか…ふむ……今度会いに行こう、積もる話もあるだろう。クルーガーなら知ってそうだ」

 

「社長秘蔵のスコッチウイスキーも持ってか?」

 

「俺の秘蔵コレクションを知ってることにはこの際言及はしないがそうする。待っててくれ、戦友(とも)よ」

 

 

 社長はそう言ってカフェを後にする。

 ……何も一悶着無いように願いたいが。何しでかすか分からんな……場合によっちゃ俺も社長に着いて行くか。

 

 ま、そんな事より飯だ飯。サンドイッチ追加注文だ。

 

 

「社長はどこですか!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!いやこの際スピアでもジャベリンでもスリンガーさんでもいいや!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!KSGちゃんとMG4ちゃんが可愛い過ぎるんですが!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 誰かあのKSG&MG4スキーをどうにかしろ。

 嫌だぞ俺は静かにこっち来るな待て待ってヘルプ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 助けて!!!!!!

 

 

 

 

 

 





この後マカロヴァ氏による語りが延々と続いたらしい。


≪今回出させていただけたドルフロオリキャラ組の出典≫

佐賀茂様
タクティス・コピー(紫電の梟(ブリッツオウル)
『戦術人形と指揮官と』: https://syosetu.org/novel/178032/

あだぐるま様
ノア・クランプス(カプリチオ)
『冬のお化けと人形のお話』: https://syosetu.org/novel/204895/

笹の船様
シーラ・コリンズ(スイートキャンディ)
『女性指揮官と戦術人形達のかしましおぺれーしょん』:https://syosetu.org/novel/184136/

塊ロック様(両作品とも現在非公開中)
ジョージ・ベルロック
『借金から始まる前線生活』: https://syosetu.org/novel/182529/
パトリック・エールシュタイアー
『水没から始まる前線生活』: https://syosetu.org/novel/194486/

皆さま、以上のキャラクターを快く貸していただいて本当にありがとうございました!
コラボフラグをバラまいてしまったよう書いてしまって本当に申し訳ない……煮るなり焼くなり好きにしてください。

さて、次回からコラボ消化していくぞ……。
感想、および評価は心の支えとなります、どうぞよろしくお願いします!それではまた今度!!


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☆傭兵、売り込みだってよ。

コラボ回。今回はoldsnake様作『破壊の嵐を巻き起こせ!』
( https://syosetu.org/novel/180532/ )より、リホーマーとアサルターが武器庫へ売り込みにやってきます。愉快?な二人組に武器庫は一体どうなるか!!それはどうぞ!!





 

 

『全隊員に告ぐ、今すぐ装備を整えて基地防衛へ努めろ。これは演習じゃない。繰り返す、これは演習じゃない』

 

 

 嫌な社内放送で目を覚ました。

 小雨の降る少し湿った空気の中でボディアーマーを着込み、銃を提げ、ヘルメットを被りポチを抱えて武器庫正面ゲートまで走る。

 周囲は騒然としており、会社の防衛用砲台や銃座にも人が集まっていた。

 

 

「ジャベリン!」

 

「スピア!ランス達は!?」

 

「槍部隊は弓と鎚で会社周辺の防衛だ!検問所に剣と盾が迎撃に向かってる!」

 

「了解!民間人の避難は!!」

 

「四割は避難させた!!」

 

 

 正面ゲートまで走っていると、スピアが声を掛けてきた。彼も急に起こされたのだろう、寝巻きに使っているジャージにプロテクターとボディアーマーを着ていた。

 一体全体何が来てしまうのか。剣や盾が向かうレベルだ。相当の脅威じゃなかろうか。

 全く剣の奴等が会社に残ってなかったらてんてこ舞いになってたぞ。

 

 

「隊長!」

 

「パイク!現状報告!!」

 

 

 正面ゲートには既に部隊が展開されており、其処にはトライデント、パイク、鎚部隊のMG4とKSGが居た。既に土嚢やセントリーガンが置かれている。

 

 

「今のところは誰も来てないんすけど、どうやら検問所付近で剣と盾が包囲したそうです!一応相手は抵抗はしてません!!」

 

「OK!!MG4とパイク、トライデントは援護射撃。KSGはスピアと俺とで敵がやって来たときに前に出ておくぞ、いいな?」

 

「「「了解!!」」」

 

 

 幸いなことに脅威はまだこちらへと来ていなかった。だがどちらにせよ警戒は続けるべきである。

 

 

(頼むから、さっさと投降してくれよ……)

 

 

 俺はそう願いながら余念なく銃を構えて正面を見据えるのだった。

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――

―――――――――――――

――――――――

―――

 

 

 

 

「ややぁ……突然驚かせて堪忍なぁ。最近物騒なもんですけん、ウチも割かし過激な護衛も必要だったんですわ!」

 

「全くだ、ワイルダーさん。あんなものを連れてこられてしまえばこちらもおちおちと眠っていられない。今度来るときはあのロボットは座らせて置いてくれ」

 

「ホンマ堪忍なぁ」

 

 

 ここは社長室。俺は盾部隊のイージスと共に目の前でのやり取りを見守っていた。

 今回の騒動はただこちら側の勘違いに終わってしまった。ただのくたびれ儲けだったもんだから、やっと活躍できると息巻いていた鎚部隊は意気消沈していて何とも可哀想だった。

 

 現在、俺の丁度右斜め前に居る女性は随分と聞き慣れないような方言?で社長と会話をしている。

 彼女は『リホ・ワイルダー』氏、Hermes&Reform社という会社の社長を務めており、今回の騒動を起こした張本人だ。どうやらうちへ商談に来たらしい。

 

 

「しかしここに商談に来るとは…一体何を売りに?」

 

「よくぞ聞いてくれました!今日ここにもってきたんのはな、その名も『インビシブル型ゴリアテ』や!こいつはなぁ、すっごい機能を持っとるんやで!!」

 

 

 水を得た魚の様にさっきまでとは打って変わって随分と明るい口調になるワイルダー氏。

 まぁ商売しに来てる訳だしそりゃ明るくなるよね。社長は随分と興味深そうに身を乗り出していた。

 

 

「ゴリアテ……かの旧約聖書に出てきた巨人の名を冠する物を売り込みに来るとは素晴らしいな。その機能は一体?」

 

「社長さんも乗り気やね、よぉくその耳の穴かっぽじって聞き!このゴリアテ、全面に熱光学迷彩を装備してるんやで!!!そして静穏性、並のライフル弾でも弾くその堅牢さもウリや!!」

 

「ふむ…続けてくれ」

 

「任せとき!」

 

 

 ふと、社長が手で“下がれ”と自分たちに合図をしていたことに気が付いた。彼女の事を安全と判断したらしい。

 俺は隣のイージスと顔を合わせて社長室から出ることにした。社長室を出てから暫くして、イージスが口を開き、こんなことを言ってきた。

 

 

「リホ・ワイルダー……あの方、人形ですね」

 

「藪から棒にどうしたんだイージス、確かにあの人は人形みたいに綺麗だったけど」

 

「そういう意味では有りませんよジャベリンさん。そんな事言うから偶に人を勘違いさせるんですから……それは兎も角、あの方、所作は人間そのものですが……何かが違うんですよね」

 

「アンタらしいな。流石医療班の長だ」

 

 

 彼女は、ワイルダー氏の事を人形と判断した。

 それは恐らく長年の感というものだろうが、俺にはよくわからん。いや待て、イージスって俺より年下だったよな……まぁいいか、話が脱線する。

 さて、今度は少し整備士たちの所へと向かおう。確かワイルダー氏の護衛を務めていたというロボットが居ると聞く。解析をされているそうだが、大丈夫だろうか。

 ちょっと急ごう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……見れば見るほど変態染みてるなぁこの構造」

 

「誰が作ったんでしょうね?」

 

「さあなウェルロッド。少なくとも、技術力が並じゃないのはよく分かるぜ」

 

 

 所変わってここは整備士たちの作業場。今は鎚部隊と整備士二人組が、中央に鎮座している大きな人型の機械……昔本で見た日本の鎧のような物を着こんだような外見のロボットを見て何やら色々としていた。

 このロボットの名前は『突撃者』というそうで、見た目も相まって強そうだ。

 

 

「…………」

 

「……イージス、あのロボットって喋れるのかな?」

 

「私に聞かれましても……話し掛けてみますか?」

 

「そうしよう。えーと、突撃者?」

 

「……?」

 

 

 ガゴーッ、ガシューガシューと如何にもロボットのような音を立てて此方を向いた突撃者。

 身ぶり手振りで「何だ?」とでも言いたそうな所作をしている。声は出ておらず、喋れない事がよく分かった。

 

 

「少し呼んでみただけだ、許してくれ。アンタ、ワイルダー氏の護衛務めてたそうだな」

 

「……!」

 

 

 そうだ、と肯定の意を示すように首を縦に振る……彼? あー、便宜的に彼と称しよう。見た目的にもそれっぽいし。

 彼は色々とジェスチャーをしてくれているのだが、何を伝えようとしているのかは分からない。

 はぁ、ポチを連れてくれば良かった。ポチならこういう意志疎通は得意そうだし……。

 

 

「ふむふむ……少し聞きたいんだが、いいか?」

 

「……!!…」

 

(ジャベリンさん……相手が何言ってるのか分かってませんね……)

 

 

 相手が何言ってるのか分からない以上、取り敢えず話を別の話題へと向けるのも一つの手だろう。

 俺はイージスが先程言っていた疑問に付いて聞くことにした。

 

 

「アンタの雇い主のワイルダー氏、彼女の正体に付いて教えてくれないか?」

 

「ちょっ、ジャベリンさん?」

 

「まぁまぁ…別に疚しいことは無いって」

 

「…………!」

 

 

 俺の質問に対して突撃者はバッテン印を作る。あまり聞かれたくないモノらしい。

 イージスがほらみろと肘で俺を小突いた。

 

 

「いてっ……あー、嫌ならそれでいい。失礼した」

 

「……!」

 

 

 サムズアップで答えた突撃者。結構感情豊かだな……。

 もう他には特に聞くことも無い為、イージス達と別れて武器庫の中庭へと出た。緊急事態では無くなった今、特にすることもない。確か今日もスピアはカフェで紅茶を淹れてる筈だし、そこに行こうかな。

 

 

≪あ、ご主人≫

 

「ん?ポチ、散歩でもしてたのか?」

 

≪はい。部屋に居るのも何ですから……ご主人は?≫

 

「俺は暇つぶしさ。今からカフェにでも行こうと思ってな」

 

 

 いざ俺が歩きだそうとした時に、ポチが近づいてきた。ポチもどうやら暇なようで、俺に付いてきた。とてとてと歩いてくるポチを見ていると何だか心が癒される。やはりポチは可愛いの塊だ……。

 っと、それはさて置き、大きなトラックが整備士たちの作業場へ向かっているのが見えた。あれは恐らくHermes&Reform社の物だろう。運転席にホクホク顔のワイルダー氏が見えた。商談は上手く行ったようだ。

 

 

≪……うん?≫

 

「どうかしたか、ポチ?」

 

≪いえ、あのトラックに積んである物に見覚えが……≫

 

 ポチがとあることに気が付く。

 トラックの荷台から見える……なんだアレは?団子?

 

「何だアレ」

 

≪ゴリアテ……ですね。鉄血の兵器ですよ≫

 

「はい?」

 

 

 少々聞き捨てならないことを聞いてしまった。

 鉄血の兵器だと? あの人何をしようとしてるんだ……。

 

 

≪あぁでも、あのゴリアテ少々特殊なようです。多分よっぽどの事がない限りは自爆しないと思われます≫

 

「えっ……そういやそれっぽい事言ってたな。ならいいか」

 

 

 少し眺めていると、作業場から突撃者が現れてゴリアテを運び始めた。ワイルダー氏がやり切ったような顔をしている。

 俺とポチがその様子を見ていたら、彼女が此方へと気がついた。

 

 

「お、社長室んとこにおったにーちゃんやないか!ほんまおーきになぁ!あの社長結構ノリノリやったさかい、商談ポンポン進んでったわ!取り敢えずはインビシブル型ゴリアテ買うてもろうたで!!正価で!!感謝感激雨あられや!!!」

 

「そ、そうですか……」

 

 

 相当嬉しかったのかどうかは分からないが、矢継ぎ早に俺へと謝辞を送ってきた。特に何もしてないのに……。

 彼女の勢いに気圧されて視線を遠くへと向けると、其処には搬入を終えたのであろう突撃者がワイルダー氏に向かって何かを伝えていた。

 

 

「っとと、突撃者も搬入終わったっぽいな。そんじゃにーちゃん、あのシスターのねーちゃんにもよろしくなぁ!」

 

「あー、はい。お気をつけて」

 

≪あの女性にも何か見覚えが……≫

 

 

 トラックへ乗り行くワイルダー氏を眺めていると、ポチがそんな事を口走る。俺は他人の空似じゃないのかとだけ返したが、あまり腑に落ちていないようだった。

 突撃者が飛び立つ音と共に、トラックも動き出して武器庫正面ゲートへと向かう

 

 

≪あーーーーー!!!!!!!!!思い出しました!!!!!!!!!≫

 

「どおっ……どうしたんだポチ」

 

≪あの人、いやあの人形!!!!!!ハイエンドモデルの改造者(リホーマー)ですよ!!!!試作機どころか作られても無かったのに何で!!?≫

 

「なんだって?」

 

≪いや、あの、お父さん……リフィトーフェンさんがですね!?私を改造するときに見せびらかしてたりしてたんですよ!!!設計者の分からない設計図!!あれに確か載ってたような……?≫

 

「そこで疑問系になるか」

 

 

 いやしかし……リフィトーフェンは流石に作ってないな。恐らく蝶事件後に作られたのだろうか? 少なくとも俺が鉄血工造に居た時は彼女のような存在は居なかった。というか居たらあんなにキャラの濃い人形なんて忘れはしないだろうて。

 真相を調べるにしても肝心のワイルダー氏が乗ったトラックはもはや遠くへ行っている。

 

 

「ポチ、あまり考えすぎるのも駄目なんじゃないかな?」

 

≪ですが……≫

 

「相手は飽くまでこちらに害意もなくただ商品を売りに来ただけだ。あの社長が彼女と交渉を成立させた。それ以上でもそれ以下でもない、何かあったらその時だ」

 

≪……了解しました≫

 

「それに、俺のこと知らなかったし何かしらの理由で鉄血を離反したのかもなぁ」

 

 

 彼女は少なくともこちらへ危害を加えようとはしなかった。これが答えではなかろうか。

 ……さて、何もやることが無くなった。スピアのカフェにでも行こう。

 

 

「誰か整備士共を止めろー!!!!あいつ等ゴリアテの中に入ろうとしてやがるぞーーーー!!!!」

 

 

 ……これを片付けたらな。

 

 あぁ全く、本当に今日は色んな事が起きやがる。明日は平和であってくれよ!!

 

 

「行くぞポチ!」

 

≪ほいさっさ!!≫

 

 

 





緊急放送裏話

イージス「社長!!!!!」
社長「イージス、どうしたんだ」
イージス「私が貴方様を守る盾となります!!!!!!!」
社長「お、おう?そうか、頼む」
イージス「はい!!!」

以下、ジャベリンも連れられてリホーマーとの商談シーンへ。



.
.
.
.
関西弁これで大丈夫か……?
実はリホーマーの試作機云々、偶々生まれてしまったオリジナル設定です。傭兵日記の世界線に合わせていたら生まれてしまいました。ジャベリンくんとポチ鉄血工造一回行ってるからね……。
リホーマー、アサルターをお貸しいただいた上にこのオリジナル設定も認めてくれたoldsnake様に最大限の感謝を。本当にありがとうございました。

コメント及び評価は心の支えです。どうぞ、よろしくお願いします!!それではまた今度!!!

次、季節ネタです。


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番外編 傭兵と少女とクリスマス ― Please give me my name !!! ―  

今はクリスマス…今はクリスマスだ……。
ということで季節ネタ。内容はタイトルの通りです、どうぞ!





 

「……寒いな」

 

「だね」

 

 武器庫へと繋がる大通り、クリスマス一色に彩られた商店街。寒空の中を俺はG11と二人、白い息を吐きながら歩いていた。

 商店街では何処か異国情緒溢れるようなクリスマスソングが流れていた。何処の店にも店頭にはクリスマスツリーやらサンタクロースの売り子やらと、皆この日を楽しんでいるようだった。

 

「プレゼント、どーすっかなぁ」

 

「一応メモ貰ったんでしょ、それ見たら?」

 

「そうだな…」

 

 俺は懐からメモを取り出した。

 実は俺はおつかいを親父…墓守に頼まれている。と言うのもあの男は墓園の管理のみならず、孤児院を運営している。だからそこの子供達のためにプレゼントを買わなければいけないのだ。不幸にも彼は腰を痛めたらしく動けない。更に葬儀屋は葬儀屋で子供達の相手をしなければなくて手が空いていなかった。

 そこでたまたま墓参りに来ていた俺に白羽の矢が立った訳だ。ポチ? アイツは良い奴だったよ、多分子供にもみくちゃにされてるだろうよ。

 因みに隣を歩くG11は休日だからと俺のところに顔を出しに来たからご同伴を願った。嫌な顔をしなかったのは結構嬉しかった。

 

「えーと…やっぱ今年も多いなぁ」

 

「やっぱりこの地区でも孤児って多いんだね」

 

「まぁな。うちが比較的豊かとはいえ親に捨てられる子ってのはやっぱり出てくる。その不幸な子を一人でも多く育ててやるのが墓守の孤児院さ」

 

「グリフィンじゃあんまり見ないよそんなの」

 

「そりゃなG11、武器庫管理区にとっちゃ人間ってのは資源に等しいんだよ。だから教育とか社会福祉をちゃんとしてやって働いてくれなきゃ困るんだよ」

 

「ふぅん、そっか」

 

 メモの中には沢山の品物の名前が並んでいた。この品目なら確か商店街の雑貨屋で全部揃うな。さっさと揃えて墓守の所へと帰ろう。

 

――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――

――――――――――

―――――

――

 

「親……墓守、買ってきたぜ」

 

「ん、ご苦労さん。別に親父って呼んでもいいんだぞ」

 

「うっせ。何処に置いとけば?」

 

「あー、俺の書斎に頼む」

 

「了解」

 

 買い物を終えた俺とG11は墓守の居る墓園の小屋へと来ていた。

 彼は暖炉の前でコーヒー片手に雑誌を読んでいた。俺は彼の指示通りにG11と一緒に書斎へと荷物を置いた。

 荷物を置いた後はそのまま腰痛に呻いている墓守の下を去って社員寮へと向かった。途中、ポチが満身創痍で近づいて来ていた。

 

≪ご”主”人”~”~”~”何”で”私”を”あ”ん”な”地”獄”に”ぶ”ち”込”ん”だ”ん”で”ず”が”ぁ”あ”ぁ”ぁ”あ”!!!!?!?!??≫

 

「いや、ポチ……アレは必要な犠牲だったんだ。お詫びにラクダステッカーあげるから」

 

≪わぁい≫

 

「即落ち……」

 

 心の底から唸るポチを宥めた後、抱き上げてまた歩く。

 社員寮が見え始めたころに、ふと隣のG11が口を開いた。

 

「そういえばさ」

 

「ん?」

 

「ジャベリンの本名って何て言うの?」

 

「えっ」

 

≪あ、それ私も気になります≫

 

 突然何を言い出すかと思えば、俺の本名について聞いてきやがった。しかし困ったものである。俺の本名……一応名字は分かっているのだが、肝心の名前は全くもって分からん。

 それに仕事柄、互いにコードネームで呼びあってるので別に名前が無くとも何の問題も無かった。ある意味これが俺の本名が未だに無いという原因の一つじゃある。あと偽名もあったし。

 ……仕方ない、別に隠している話でもないし正直に話すとしよう。

 

「俺の本名なぁ……名字は分かってるんだ名字は。ナトリっていうんだけどね」

 

「ナトリ……何で名前は分かってないの?」

 

「名前が無くとも“ジャベリン”っていうのがあるから、困らなかったんだ」

 

「そっか」

 

 俺の言葉を聞き顎に手を当てて考え始めるG11。

 どうしたんだろうと彼女を見ていたら、思い出したかのように顔をこちらに向けた。

 何を言いだすのやら。

 

「一緒に考えようよ、名前」

 

「……んん?」

 

「ほら、ちょっとスピアのカフェまで行こ」

 

「お、おう?」

 

 これは何だか変な方向へ行きはじめたぞ……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「むむむ……」

 

≪なかなか決まりませんねぇ……≫

 

「……」

 

「ジャベリン、お前未だに考えてなかったんだな」

 

「五月蠅いぞスピア。俺だって予想外なんだよこういうの」

 

 

 またまた場所が変わって武器庫社内のカフェ。一人と一匹が紙の辞書を開いて唸っている。このご時世別に紙媒体である必要は一つもないが、まぁ偶々目に付いたからあんな風に悩んでいるのだろう。

 その様子を見ていたスピアが面白がって茶化すように俺に向かって言った。

 

 

「俺もお前の名前考えてやろうか?」

 

「お前は大人しくおかわりの紅茶を作ってくれ。丁度“愛しの”スプリングフィールドも居るんだからそっちと仲良くしたらどうだ?」

 

「…………」

 

スピアさん、三番席にサンドイッチとアールグレイを

 

「……分かったよスプリング。後で覚えとけよジャベリン

 

「あの女性に惚れられたのが運の尽きだ、諦めろ」

 

 

 困ったもんだなぁと呟きつつサンドイッチを作り始めたスピア。

 因みにこの副隊長、見て分かる通り俺もお世話になったあのスプリングフィールドにこのカフェを手伝って貰っている……というよりは押しかけられて有無を言わさず一時雇用の形になったと言った方が正しいだろう。

 本人は案外満更でもないようだ。さて、確かスピアはもう一組正規軍関係者にも追いかけられていた筈だが……どうなるんだろうなぁ。

 

 

「うーん、眠くなってきた……」

 

≪早くないですか!?≫

 

「だって今日外出したし疲れたんだもん……ぐぅ」

 

≪ちょっ、G11!?≫

 

 

 ……G11が寝始めた。

 どうせ起きないので俺はカウンターにお代を置いておき、彼女を抱き上げてカフェを出る。

 結局名前決まってないなぁと思いながら背中の彼女へと思いを馳せる。ここ最近、彼女とはあまり会うことが無かった。仕事の都合もあるが……こうやって集まるというのは久々だった。

 

 

「そういえばポチ、どんな名前が出てきたんだ?」

 

≪それいきなり聞いてきますか?≫

 

「そりゃお前、折角考えて貰ったんだ。気になるだろ?」

 

≪そうだとしても教えてあげませんよ!だってこれご主人に対するクリスマスプレゼントなんですから!≫

 

「嬉しいことを言ってくれるなポチ。まぁその名前が書いてあるメモは拝借してるんだがな」

 

≪ご主人!?≫

 

 

 ひらひらと一枚の紙をポチへ見せつつ、何としてでもその紙を取ろうとしてくるのを悠々と避けて部屋に着いた。ドアを開ければ「にゃおん」とオスカーが足へと纏わりつき、そして俺達を誘導するようにソファー付近へと歩いていく。俺はG11をソファーに寝かせてジャケットを掛けてやった。

 G11が未だ起きないのを確認しつつ、椅子に腰かけてメモを確認する。

 

 

≪ごーしゅーじーんー、返してくださいよー≫

 

「別に減るもんじゃないだろ?えーと……なるほどな」

 

 

 膝に乗って来たオスカーを撫でつつメモを読む。

 そこには様々な名前が記されていた。存外に多くのアイデアを出していたらしい。

 アルフレート、アドルフ、クラウス、ダニエル……響き的にはドイツ語圏辺りの名前か……ふむ、これにしておこう。

 

 

「よし、決まった」

 

≪……結局名前自分で決めちゃうんですね≫

 

「お前らが考えてくれたんだからそれでイーブンだ。ポチ、俺ちょっとカフェ行ってくるから、オスカーとそこの眠り姫をよろしくな」

 

≪…了解です≫

 

 

 とある名前に丸を付けて、序でに一つ書き加えておいた。

 これはある意味ささやかなクリスマスプレゼントにもなってくれるだろう。あいつが喜んでくれるのかは別としてな。

 

 さて、カフェでティータイムと洒落込もうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――

 

 

 

 

 

「ん……」

 

 

 落ち着く香りに包まれてあたしは目が覚めた。

 上半身を起こして周囲を見渡してみたら、見慣れた景色が目に入ってきた。どうやらあたしはジャベリンにここまで連れてこられたみたいだね。ご丁寧に彼のジャケットがあたしに掛けられていた。

 

 

「んー……ポチ居る?」

 

≪んぇ…いますよ?≫

 

「ジャベリンは?」

 

≪カフェです。多分紅茶でも飲んでるんじゃないですかね≫

 

 

 足元に横たわってるポチが言うように、ジャベリンはあたしを寝かしつけた後にまたカフェに向かったようだ。

 むぅ……途中で寝てたとはいえ頑張って名前考えてたんだけどなぁ…ジャベリンも起こしてくれたら良かったのに。一緒に考えるのも吝かじゃなかったんだけどね。

 

 ぐぐいっと伸びをしてあたしは立ち上がる。ちょっとだけ肌寒いのでジャベリンのジャケットを羽織ることにした。勿論ぶかぶかだけど暖かいのは変わりない。

 

 

「……あ、メモ」

 

≪あぁ…ご主人が勝手に名前決めてましたよ?≫

 

 

 何だって? ジャベリンも中々酷いことをするね……後で文句でも言ってやろう。

 さてさて…メモにはなんて書いてあったっけ……あれっ?

 

 

「……アレクシス・ナトリ?」

 

≪えっ、ご主人そんなもの書いてたんですか?≫

 

「うん…ほら、ここ」

 

≪あっ、本当だ……おや、もう一つ書かれてますよ≫

 

 

 彼はこの名前を選んでくれたようだ。シンプルなのが好きなのかな?

 それはそうと、ジャベリンはまだ書置きをしていたらしい。丁度ジャベリンが選んだ名前の真下辺り、そこには『エルフィン(小妖精)』という走り書きと共に、あたしに向けたのであろう一つのメッセージが残されていた。

 

 

「『親愛なる家族へ、これは君が戦術人形になる前に送られるはずだった名前だ。あの時を覚えているだろうか、初めて出会った時を。あの小屋で見つけた君はまるで一人ぼっちの妖精の様だった。だからこの名前を送る。メリークリスマス、良い夢を』……か。ジャベリンも中々クサいことしてくれるね……」

 

≪そんなものが…あの人変にロマンチストですからねぇ……それで、どうするんですか“エル”≫

 

「…取り敢えずは”アル”の所かな」

 

 

 エルフィン……それがあたしの名前。G11という戦術人形に贈られた唯一無二の名前……か。

 流石に404小隊では迂闊に公言出来ないよね。416とか45とか……。これはあたしとジャベリンとポチとオスカーだけの秘密。家族だけしか知らない秘密……いいね。

 

 

≪じゃあさっそく行きましょうか≫

 

「うん」

 

 

 あたしは早速ポチ達とカフェへ向かう。ジャベリン……アルにあたしの名前を呼んでもらいたいから。

 きっと彼はカフェで待ってる。早く行こう。

 

 

 

 

 

 

 

 親愛なる家族へ。あたしに名前をくれてありがとう。

 

 

 

 

 

 

 






なんやこのヒロイン。
とか思った貴方。実は私も思ったのよねクシシシシシシシ(インド人)

というのはさて置き、はい、G11が出したかったのでやりました。この子ジャベリン君との関係的にこういうの有ってもおかしくないと思いましてね……。
次回は武器庫訓練兵による各部隊長記録を書くか、やべーいゴリラの所へ行こうかで迷っております。しかし私はコミケへ行くので更新どうなるのかわかりません!!
まぁのんびりゆるりとお待ちくださいませ。

感想及び評価は心の支えです。どうぞ、よろしくお願いします!!それでは!!!




目安箱的なサムシング作りました。こんな話が見たいとかありましたらどうぞ。ネタ詰まりが起きたらどれかを採用します。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=228986&uid=267431


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☆傭兵、ゴリラだってよ。

あけましておめでとうございます。(激遅)
今回はコラボ回、お相手はおじぎり様作『ミリタリー終末世界にやべーいゴリラをぶち込んでみた』: https://syosetu.org/novel/186491/
とのコラボとなります。この作品は色々ぶっ飛んでて思考を放棄してもなお楽しく読めるものなので気になる方は是非。

それではどうぞ。


353日目 晴

 

今日は何もない素晴らしい1日だった……ってなれば良かったんだがな。俺のレールガンを持った社長がカフェで朝食を取る俺を引き摺り出して車にぶちこんだかと思えば指定の場所まで運転するように言いやがった。クソみたいに遠い。泊まり掛けかよ。

 

ふざけてる、これはパワハラでしかねぇ!しかも助手席には、軍の払い下げ品の対E.L.I.D装備手入れしてるクレイモア居やがったし!!!!!明らかにE.L.I.D関係の仕事だなオォイ!!!!!

 

それはいいとして、社長に仕事はどうしたんだと運転しながら聞いたが剣の副隊長ツヴァイヘンダーが代理をしてくれているらしい。だから心配は無いそうだ。

 

……助けてくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

354日目 曇

 

昨日の夜はずっと酔っ払ったクレイモアの愚痴を聞きながら、仕事内容を社長から聞いていた。

曰く、E.L.I.DがS10地区の外れに現れたからその討伐。というのが今回の仕事だ。そのE.L.I.Dは相当厄介な手合いなもののようで、毒ガスをばらまきながらとんでもない俊敏さもあるようだ。

因みに依頼主はヘリアントスさん、極秘裏に済ますようにと言われたとのこと。

本来なら正規軍案件だったのだろう。しかし余り突っ込むのは無しだ。

金は貰えるので文句はないのだ。

 

そういえばグリフィンからも秘密兵器を出してくるらしい。はたしてどんなものなのだろうか。何かオーパーツみたいなのを持って常に闘争を求めるようなロボットかそれとも社長がたまに使うパイルバンカーみたいなものを持ってきたりするのだろうか。何かワクワクするな。相手と合流したら触らして貰おう……へへ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

355日目 晴

 

秘密兵器……確かにグリフィンは秘密兵器を持ってきてくれた。俺は想像してたよ、ゴツい装甲を身に付けて数多の武器を使い分け尚且つ高度なAIを積んでる搭乗可能ロボットとか、ビーム兵器を連発しまくって敵を蹴散らす戦車とか、何処かの宇宙を駆ける戦士が使ってそうなビームセイバーとかさ……だってロマンじゃん。かっこいいじゃん。何だかんだ言って実用的じゃん。E.L.I.D相手だし一番効果的じゃん。

 

だけど何で……何で…………何で……

 

何 で ゴ リ ラ な ん だ よ ! !

 

とんでもない位にビックリしたわ。流石に相手方に悟られるのは防げたけど!!!!

正直に白状すると、どんなのかなぁ、どんなのかなぁって目を煌めかせてた俺が間抜けに見えた。

というかこの面子全員驚いたんじゃないかな。クレイモアは向こうの奴等が見えた瞬間に銃を撃とうとしてたし社長は眉をひそめてたし。

 

しっかしグリフィンも凄いものを連れてくるな……恐らくE.L.I.Dだよな? 通訳の人形だって大変そうだ。

 

ところで指揮官は…………えっゴリラなの、そのゴリラだったの?

 

…………頭が痛い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

356日目 曇

 

やべぇゴリラかと思えば社長やクレイモアよりも随分と理知的だった。

『ラージャン』と呼ばれた彼?は通訳が必要なのが不便ではあるが、社長とクレイモアの相手をするよりかはよっぽど楽しいゴリラだった。ゴリラが聖人に見えたのは後にも先にもこの時だけだろう。

 

交流はさておき……実はこのラージャン指揮官、余り出番はない。本当に最終兵器みたいなもんで、俺たちが仕留め切れなかった時に出てきてもらうという奴だ。

俺たちは俺たちで、E.L.I.Dを仕留めるために色々と用意している。基本は罠にかけた所を攻撃し、それで駄目なら装備を着込んだ社長とクレイモアが肉薄するという。社長が好んでやりそうな戦術である。

俺は援護射撃しかしない。E.L.I.Dと正面切って戦う方が可笑しいのだ。

 

で……社長達、ガスマスクとかは? 一応着けてる?本当に?いまいち信じられんなぁ……。

 

……仕事頑張るか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

357日目 晴

 

任務は無事遂行完了。

皆無傷で終わったのは上々だろう。しかしあのE.L.I.Dは恐ろしかった。瀕死にまで追い込んだ瞬間に暴れだしたから手の出し様が無かったんだ。

これは撤退もかくやと思った矢先に、ラージャン指揮官が全身金色に輝かせながらそのE.L.I.Dを殴り殺してた。

うん……うん。凄い格好良かった。ゴリラすげぇよ……一発で沈めたし……。今回の任務はラージャン指揮官の雄姿が一番記憶に残ったかもしれない。それと、クレイモアが彼のその姿を見て「……ゴリラでもいいかもしれない」と随分と行きお……みたいなことを言ってた。流石に人間を選べよクレイモア。

 

そんな与太話はいいとして、この仕事は案外楽なもんだった。 予想外のことが起きたとはいえ、それでも大きな怪我は無く終わって何よりだ。

それと……まぁ、なんだ。ゴリラも悪くねぇなって思ったよ。あんな姿見せられたらそりゃそう思っちまう。ポチに話すネタが出来たな。

 

彼らと別れた後は普通に帰った。また俺が運転手だけど。相変わらずクレイモアは武器の手入れをしてたし社長は寝てた。運転代われ。

しかしラージャン指揮官……彼は何があってあぁなったのかは分からないが、元気にやってて欲しいものである。

 

さぁ食堂で日記書いてないでさっさと部屋に戻ろう。ポチにオスカー……エルが待ってるから。

 

 






こんなので良かったかな…?
おじぎり様、コラボありがとうございました。また機会があればよろしくお願いいたします。
次回は……正月ネタか何かか…今のところは416との雨宿り、武器庫訓練兵各部隊長記録を書こうかと思ってる次第です。
それでは皆さんまた今度!コメントやら評価は心の支えです!!


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傭兵、雨宿りだってよ。

そういえばデイリーランキング入ってたりしてましたねついでに180000UAも……ありがとうございます。

さて今回は雨に追われて雨宿りをすることになった彼が、ある意味関係も深い戦術人形と出会います。さてそれは誰なのか……。

それではどうぞ!





 

 

 

358日目 曇のち雨

 

任務疲れで眠る朝。目覚ましを止めて二度寝を決めようとした時に、墓守が俺のところへやって来た。こんな朝早くに、そして態々こんな場所まで来るなんて珍しいなと思いながら用件を聞いた。

その用件ってのは単なるお使い、メモに書かれた物を集めてきて欲しいそうだ。自分で行けよとは思ってしまったが、彼曰く孤児院の子供の誕生日パーティーの準備をするようで自由に動けないんだとか。

流石にそれを言われたら俺も動かざるを得ないので大人しくそのお使いをする事にした。

 

そういえば今日は雨が降るらしい。ポチとG11…じゃなくてエルに洗濯物の取り込みを頼んでおこう。ついでに留守番もな。

 

しかし名前を付けたといえどもやはり染み付いた呼び方ってのは中々直らんな……日記の中ぐらいは名前で記すほうがいいのに。

 

 

 

―――――――――――――

―――――――――

―――――

――

 

 

「…しくじったな」

 

 

 どしゃ降りの商店街、荷物を両手に雨宿り。まさか傘を店に忘れるなんて思わなんだ。もしくは盗まれた疑惑もある。

 しかしそんな事考えたって傘は帰ってこないので大人しく雨が上がるのを待つことにした。バケツをひっくり返したようなその雨は、恐らく二時間ぐらいもすれば小雨になるだろう。

 

 

「荷物置いとくか」

 

 

 一先ず荷物を脇に置いた。幸い、屋根はそれなりに広くて、もう何人か入れる事は出来そうなぐらいである。

 俺はおもむろに懐からライターと煙草を取り出し火を点けて、目一杯に吸った。果たして銘柄は何だったか、少なくともこの独特な味と吸い心地は、雨の日に吸うのならとても最適と言えたかも知れない。息苦しいこのじめついた空気、そして疼く左目の痛みを忘れることが出来そうだから。

 

 

「ふぅ……っ……」

 

 

 とはいえやはり痛いものは痛い。我慢出来る程では有るけれど、たまに突き刺すような痛みがある。トラウマによる幻肢痛なのだろうが、治ってくれないものか。

 ……代理人。アイツは相当に俺の人生を狂わせた。いや、代理人ではないか? 蝶事件? いやそうなると全部これリフィトーフェンの仕業になるんだが。でもそれ以上に事件前にやって来た正規軍のお偉いさんも怪しいな……。名前何だったっけ、カーター? 覚えてねぇや。

 

 

「すぅ…………何だかなぁ」

 

 

 思考がちょっと明後日の方向に飛んでいた。今あのお偉いさんは関係無いだろうに。俺のするべき事は代理人の破壊だ。

 この前の任務で遭遇して以来、何となくだが、今なら面と向かって会話ぐらいは出来そうな気がする。その前に撃つがな。

 しかし、一回リフィトーフェンを通して何かしらのアクションは起こした方が良さそうだ。うん、そうしよう。

 

 

「あら、ジャベリンじゃない」

 

「おや、416…久しぶりだな」

 

 

 煙を燻らせながら行き交う人々を眺めていると、久しぶりに聞く声が耳に入ってきた。そちらへ顔を向ければ、水色のストレートヘアーにベレー帽、特徴的な涙のタトゥー。『HK416』が其処に居た。彼女は傘をさしてビニール袋を片手に持っている。

 

 

「久しぶり、貴方のお見舞い以来ね。雨宿りでもしてるの?」

 

「そうだな。傘を何処かに忘れたから、雨が止むまで待ってる」

 

「そう。隣、いい?」

 

「勿論」

 

 

 隣に416が来るからと煙草の火を消そうとしたが、彼女は別に気にしないと言ったのでそのまま吸い続ける事にした。

 

 

「……」

 

「……」

 

 

 雨の降る音だけが聞こえてくる。

 隣の416は携帯で誰かに連絡を送り、また何事も無かったかのように雨が降り行く光景を眺め始めていた。その時、丁度煙草も吸い終わり、俺も彼女と同じようにする。

 暫くの時間を過ごしていく内に、とある疑問が俺の頭を過った。何故416はここに居るんだ。

 早速聞くことにしよう。

 

 

「なぁ416」

 

「何かしら」

 

「何で武器庫のとこに来てるんだ?」

 

「………45にG11の様子を見てこいって言われたのよ」

 

 

 なるほどな。この際地味に間があったことは突っ込まないでおこう。しかしまぁ、45にせよ416にせよ世話焼きなものだ。少し位俺の事信用したっていいんじゃないか? 俺の部屋で未だ寝てるだろう眠り姫はちゃんと無事なんだけどな。

 

 

「貴方は時々一人で無茶しててんてこ舞いになってるでしょ」

 

「……心の声、漏れてた?」

 

「漏れてたわね」

 

「あー……気が抜けちまってるな」

 

 

 あら、何時ものことじゃない。とからかう彼女。

 俺は困ったもんだとそっぽを向いて、また雨に追われる人々を眺める。

 行き交う人々の中には、ずぶ濡れで歩く人、相合い傘で歩くカップル、俺たちと同じように雨宿りをする人と、沢山居る。なまじ今日は休日だったせいで人も多かったようだ。

 

 

「……それにしても嫌な雨ね」

 

「だな」

 

「余り思い出したくないような記憶が蘇りそう」

 

「……そうだな」

 

 

 隣の416がそんな事を言う。

 俺は彼女の言葉を受けて、また代理人のことを思い出してしまった。あの夜の彼女の顔を。

 一瞬苦虫を噛み潰しそうになったので、誤魔化すように2本目の煙草を吸おうと懐を探った。

 

 

「M16……アイツとの事だとか、この前の大規模作戦でのG11…ジャベリン、貴方とのことも」

 

「俺も?」

 

 

 一旦懐を探る手を止める。

 416は俺に対しても苦言を呈したいようだ……。

 

 

「貴方もよ。独り善がりで無茶をして命を落としかける、自分でどうにか出来るからって相談もなく馬鹿をする。全く馬鹿らしいものね」

 

「……耳が痛いな」

 

「あら、自覚はあるの? G11が時々文句言ってたわよ、“ジャベリンは任務から帰ってくる度に怪我をしてる。いい加減無茶はしないで欲しい”って」

 

「ぐっ……」

 

 

 卑怯だ。ここでG11の事を出してくるなんて……いやアイツが心配するレベルって相当だな。

 しかし自制するにしたって難しいというか……出来るなら俺だってG11やオスカー、ポチともうちょっと会話だってしたい。だけどやらないといけないことが多い。グリフィン関連の任務や武器庫を通じての依頼、後は……代理人関係。

 ……自分で言っておいて馬鹿らしい。まるで仕事を言い訳にするクソ野郎じゃないか。

 

 俺は申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

 

 

「……すまん」

 

「はぁ……ジャベリン、こっちを向きなさい」

 

「はい」

 

 

 416の言われるがままに従ってそちらを見れば、其処にはきりりと真面目な顔をした彼女が居た。

 

 

「貴方が隊長をやってるからって、自分しか出来ない仕事だからって、何もかも背負う必要なんてないのよ。何時でも誰かに頼っていいの」

 

「まぁ…その通りだな」

 

「私やポチは勿論、G11や貴方の同僚達だってそうだし…あとはトンプソンに、不本意だけどM16。頼れるというのは事実だから。一人で無理をするなんて本当に止めて」

 

「っ…………」

 

 

 彼女は厳しくとも優しく語りかけるように俺へ言う。

 きっと雨が降ってるせいなのだろう、その一言一句、自らの胸に突き刺さってしまってとてもじゃないが苦しいものだった。

 自覚があるというのも考えもので、俺は何も答えられずにただ無言で416の言葉に耳を傾けるしかなかった。

 

 

「俺は……俺はどうすれば?」

 

「……別に今すぐ答えを出す必要はないのだけれど」

 

 

 彼女は俺へ微笑みかける。

 

 

「ただ、誰かに頼れば良いだけ。進み続けるんじゃなくて、一回立ち止まって仲間に頼ればいいのよ」

 

「一回……立ち止まる、か」

 

「そう、立ち止まる。貴方、詰まってようが窮地に立たされてようが逃げずに居続けてるじゃない」

 

「確かにな。いや、でも大体相手から来るというか……」

 

「例えそうだとしても、何時か折れる日が来てしまうわ」

 

「……」

 

 

 脅しにも似た彼女の言葉に思わず閉口する。

 416の言っていることは尤もだ。向かい来る風や水流に逆らってしまえば、どんな頑丈な木だろうと何時かは耐えきれなくなって折れる。しなって受け流すというのが最善とも言えるのかもしれない。何かで、誰かに補強してもらうのがいいのかもしれない。

 

 

「別に…一人で行き続ける必要なんてないんだな」

 

「頼れる存在は身近にいるもの。というか、貴方の隣にはポチが居るじゃない」

 

「あー、身近過ぎて逆に気づかなかった」

 

「ポチに怒られるわよ……」

 

 

 そりゃ違いないと俺は笑った。

 ふと、大通りを見れば雨は降っておらず、雲の合間から青空がちらりと見えた。どうやらそろそろ帰ることが出来るらしい。

 荷物を持って416と共に武器庫へと向かう。そういえば墓守辺りに迎えを頼むことぐらいは出来たな。抜かった。

 

 

「ジャベリン」

 

「ん?」

 

「貴方にはまだ時間がある。だから、あまり急ぎすぎては駄目よ」

 

「……あぁ、お前も心配してくれてるからな。それに従うよ」

 

「そう、それでよろしい」

 

 

 雨上がりの空気は何だか落ち着く香りがする。何もかもを洗い去ったような感じがして好きだ。雨は好きじゃないが雨上がりは好き、何とも天邪鬼のようでならないが、そこに突っ込みを入れるのは野暮だろう。

 そういえば、416と話している最中は目の痛みは無かった。理由は知らない。偶然なのかもしれないが。

 

 ……案外、誰かと話すことが出来るのであれば、どんな雨だって悪くは無いのかもな。

 

 

「どうかしたかしら、ジャベリン」

 

「いんや、何にも」

 

「何よそれ」

 

 

 空を見上げていた416を見て、そう思った。

 

 しかし…俺も何時かこの雨を克服できる日が来るのだろうか?

 その先は未だ見えることはない。だけど、今は誰かに支えて貰うことにしよう。

 きっと答えは見つかるから。

 

 

 

 

 

 







416ヒロインだな……。なぁ代理人?

ここしばらくの予定としてはジャベリン君と関係のある戦術人形との仲を発展させていきたい所存。勿論代理人も。
さてさてやることはたくさんですがやっと話も中盤の終わりぐらい?見切り発車でやってたから中々風呂敷がたたみ難いものです。

感想及び評価は心の支えです。どうぞ、よろしくお願いします!それではまた今度!!


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☆番外編 傭兵、異世界へ飛ぶってよ。

はい、今回はですね、いろいろ様作『喫茶鉄血』(https://syosetu.org/novel/178267/)とのコラボとなります。

番外編ですが、時間軸は雨宿り回の後となります。

さて、ジャベリンくんと因縁深い人形、代理人が営む喫茶店へと誘われた彼は何を思うのか……必見!
あ、今回九千文字あるのでご注意を…。




 

 

「ジャベリン、匿ってくれ」

 

「帰れ」

 

 

 ある日の昼下がり、俺は一人の男と対峙した。奴の名前はスピア。俺が率いる槍部隊の副隊長だ。

 その姿は酷く焦燥としており、明らかにトラブルを持ってきたことを理解させられた。

 だから俺は帰れと言う。理由なんて聞く訳ないだろ。ポチ、塩撒いとけ。塩。

 

 

≪はい≫

 

「そんな殺生なこと言わないでくれるか君達!!?俺は今世紀最大のピンチに襲われてるんだぞ!!?友人を見捨てるのか!!??」

 

「お前の今世紀なんて高々二週間程度じゃねぇか……はぁ、話だけ聞いてやる。入れ」

 

「恩に着る!!」

 

 

 しかし何時もの余裕のある口調とは打って変わって崩れた口調になっているのも引っ掛かった為、部屋に入れることにした。

 彼を椅子に座らせて紅茶を出す。

 

 

「んぐ……はあっ……ありがとうジャベリン」

 

「それで、何があった?」

 

「いや実は……とある少女に追いかけられてね…」

 

「よし話は終わりだ。帰れ」

 

「待て待て待て待て!!!詳しく話すから!!!後生だ!!!」

 

 

 席を立とうとした瞬間、すぐに肩を掴まれた。

 これ程までに彼を必死にさせる案件って一体何なのだろうか、より興味が沸いてきた。同時にかなりのトラブルの匂いも感じたがな!

 

「しゃあねぇな…」

 

「良かった……実はだね―――」

 

 

 スピアの長ったらしい話が始まった。

 彼の話を聞いた俺としては…結論から言うと心底下らない内容というか……かいつまんで話を纏めよう。

 

 まず初めに、どうやらスピアは買い物途中に道に迷った少女に出会ったそうだ。彼は親切心(えらく強調していた)で道案内をしてあげたという。行き先はグリフィンだったらしく、彼女が人形であって、その名前が『M200』ということも判明した。

 道中、色々と話しているうちにふとうちの会社の話になったそうだ。そこからM200の態度が一変。突然早口で何かを語りだしたかと思えば挙動不審になって、何を血迷ったか彼女はスピアを何処かへ連れていこうとしたようだ。

 流石にこれは危険だと感じたスピアはすぐに逃亡。勿論向こうは追い掛けて来たので必死になって逃げて今に至るという。

 

 まぁ、何だ、コイツらしいよなとしか感想は出ない。

 しかし目の前の野郎は実に深刻そうだ。

 

 

「なぁジャベリン、頼むから本当に助けてくれ……私は初めてなんだ……ここまでやられたのは」

 

「いやお前あの正規軍の人形二人組とかスプリングフィールドにもやられてんじゃん」

 

「……あれはノーカウントだ」

 

 

 いやカウントしろよ……という言葉が出るよりも先に、ドアのノック音が鳴り響く。

 スピアは「クソッ!!嗅ぎ付けられたか!!」ってクローゼットの中に潜り込んでしまった。一応俺はG17を尻ポケットに入れて、ポチと共に玄関へと近付き扉を開けた。

 

 

「こ、こんにちは……」

 

「……えーと、君は?」

 

 

 目の前に現れたのは一人の少女。恐らく彼女がM200だろう。

 …………はて、確かうちのマンションは一階ロビーで一度インターホンを鳴らさなければならなかったのだが。OKOK、この子不法侵入したな。丁重にお帰り頂こう。

 

 

「あの、その、M200……って言います。この部屋の真下の階の者でして……えぇっと、そちらのお部屋にスピ……クーパーさん……居ますか?」

 

 

 一瞬スピアって言い掛けたなこの子……しかしまさか同じマンションの住民だったか。うちのマンション人形率多くないか?

 これは困った、住民となれば話は別だ。あまり邪険に扱うのもよろしくないだろう。だが部屋に通すのはやるべきじゃない。

 

 

「住民の方でしたか…しかしクーパー……そのような方は居ませんね……うちは猫とこのダイナゲートと暮らしてるだけですので」

 

「そう……ですか。失礼しました」

 

 

 見るからに落ち込んでとぼとぼと帰る彼女。可哀想に見えてしまったがあの少女はスピアのストーカーみたいなモノなので同情はしない。一先ず扉の施錠とチェーンを掛けて部屋に戻る。

 部屋にはひょっこりと顔だけ出したスピアが待っていた。

 

 

「……居なくなったか?」

 

「何とかな。ただ暫くはお前、警戒したほうがいいんじゃないか?」

 

≪お引っ越しをお勧めします、スピアさん≫

 

「そうだね、引っ越すよ」

 

「そうしたほうがいいな、スピア」

 

「あぁ、こんな危険な所居『ガチャリ』……ジャベリン」

 

 

 ガチャリと、ドアの鍵が開く。勿論俺とポチは何もしていない。

 そう、勝手に開いてるんだ。外から誰かが開いている。

 

 

「やっぱり……居たんだ……へ、へへへ」

 

 

 そんな声が聞こえる。

 取り急ぎ装備を整え外に出る準備をした。

 

 

「窓からベランダ伝いで非常階段から逃げよう。ハンドガンは?」

 

「M9で頼む」

 

「了解、逃げるぞ。ポチ、お前も着いてきてくれ。オスカーは留守番」

 

≪ほ、ほいさっさ!≫

 

 

 にゃおんと言うオスカーの鳴き声と同時にベランダの窓を開いて俺たちは逃げ出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「迷ったな」

 

≪路地裏なんて走るからですよご主人≫

 

「いや、ポチ、ここは彼女から逃げおおせる事が出来たことに祝福をだね」

 

≪この状況作った元凶が何寝言言ってるんですか≫

 

「……辛辣だねポチは」

 

 

 恐ろしい人形から逃走を開始して一時間。俺達は街の路地裏を歩いていた。幸いにも新たな追跡者も現れず、暫しの休憩へと移ることに。

 ただ、新たなる問題として道に迷う事態が発生した。()()()携帯端末の電波は繋がらず、今俺達が何処に居るのかさえ全く分からない。

 

 

「兎に角、大通りに出よう」

 

≪了解です≫

 

「承った」

 

 

 まぁ、大通りに出れば何かと情報は手に入る。ここが何処なのかも、どの道を通ればマンションに戻れるのかも。

 二人と一匹揃って路地裏を抜ける。さっきまで暗い場所に居たせいか、とても眩しくて思わず目を瞑った。

 

 そろそろ慣れたかと思って薄目を開けると…………

 

 

「何処だここ?」

 

≪また迷子ですか≫

 

「ジーザス…」

 

 

 …………見慣れない風景が広がっていた。そこはこれでもかと人の往来があり、スーツ姿、学生服、私服と多種多様の人々が忙しなく歩いている。

 俺が一番に感じた違和感は、活気が有りすぎるというところだった。

 

 

「……まさか長距離のワープ?」

 

≪そんな訳無いじゃないですか。短距離ならともかく、そんな事起きたらきっと私達皆岩の中ですよ≫

 

「そうだぞジャベリン。そんな未だに実現も出来てない現象が起きるわけないだろうに」

 

 

 散々に言われるのを無視して取り敢えず進んで行く。服装がジーパンにジャケットという格好であるため他人の目を気にする必要は無いが、それでも俺達は異物であるという感覚が拭えなかった。

 空気が余りにも違い過ぎるし、見るもの耳に入るもの全てが知らないものばかりだった。

 

 

「スピア」

 

「何だい?」

 

「やっぱりここグリフィン本部近くの街じゃないぞ」

 

「……まぁ確かに。ただ人形達は歩いてたりしてるから少なくともグリフィンの管理区なのは間違いないと思うがね」

 

 

 彼の言葉を聞いてちょっとだけ辺りを見回してみた。確かに自分も見慣れてる姿の女性達がちらほらと見える。

 

 

「あぁ全く、頭が痛くなってきたぞ……」

 

≪一旦大通りから抜けますか?≫

 

「そうする。スピア、行こう」

 

「あっ」

 

「どうした?」

 

「いや何、凄く好みの女性が居てね……」

 

「……」

 

 

 コイツ逃げ切れたからって調子乗ってんな?

 

 

……………………………………

…………………………

……………

……

 

 

「ふぅ……」

 

「声掛ければ良かったな……」

 

「ポチ、電気ショック」

 

≪ほいさ≫

 

「ヒョッ!?」

 

 

 場所は変わって大通り外れの公園。何時もの軟派加減をより増幅させていたスピアにお仕置きをしつつ、この後どうしようかと悩み中。

 ベンチに座って公園を眺めているが、やはり、俺の知ってるモノと違うのだ。まず子供が多い、そして服も綺麗だ。うちの近くの公園じゃ子供なんてちらほら居る程度だし……本当に何処へ来てしまったのだろうか?

 

 

「ジャベリン、向こうに喫茶店があったよ。ティータイムと洒落込むかい?」

 

「……そうするか」

 

 

 いや、考えても仕方がない。

 電気ショックからもう復活したスピアの言うとおり、一旦頭を休めておくべきだろう。

 俺はベンチから立ち上がり、目の前に見えた喫茶店へと向かう。その喫茶店の看板には、『喫茶 鉄血』と記されていた。

 

 

「…………鉄血?」

 

≪どうかしましたかご主人≫

 

「いや、何でも…ない」

 

≪?≫

 

 

 胸がざわつく。変に不安な気持ちになる。

 いや、きっと気のせいだろう。ほら、前にイージス辺りが何かこういう心理的症状あるとか言ってたし。

 そうやって自分に言い聞かせながら、スピアが開けた扉をくぐって行った。ちらりと見回した店内は一人二人と客が居るが、随分と静かで落ち着けるような雰囲気だった。しかし未だに胸のざわつきが収まらない。それどころか一層強くなる。

 俺はカウンターへ視線を向けた。そこには…………。

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませ、ようこそ喫茶鉄血へ。お好きな席にお掛けください」

 

 

 

 

「―――ッ!!!!」

 

「ジャベリン!?」

 

 

 考えるよりも先に手が出てしまった。

 懐に入れていたG17を、目の前の女性――――『代理人(エージェント)』へと、俺が…俺が“壊す”と決めた存在へ向けていた。

 店内が騒然とする中で、代理人はただ毅然とこちらに対応する。

 

 

「……お客様、店内での暴力行為はお控えくださいませ」

 

「代理人…()()()()()()()()()()()()。答えろ」

 

「お、おい、ジャベリン落ち着けって」

 

「スピア、隊長命令だ。黙れ」

 

「そんな横暴な……」

 

 

 淀みなく彼女の額へと銃口を向ける。

 当の本人は、まるでこの状況に慣れているように見えた。

 

 

「あぁ、成る程。そういう事でしたか」

 

「……何だと?」

 

「お客様、詳しいことはあちらのテーブル席でお話致しましょう。先ずはその拳銃をお下げくださいませ」

 

 

 彼女はいけしゃあしゃあと宣う。

 その言葉だけでも、俺がトリガーに掛けた指へ力を込める動機としては十分だった。

 

 

「ふざけっ……!」

 

≪ご主人!!!!≫

 

「っ…………ポチ」

 

≪貴方が冷静にならなくてどうするんですか?≫

 

「……あぁ分かったよ」

 

 

 しかし寸での所でポチに止められた。

 俺は銃を懐へしまい、代理人の言う通りにテーブル席へと座った。

 切迫した表情であろう俺とは対照的に、真正面に座るスピアはメニュー表を見ながらも、物珍しそうに辺りを見回している。相当目に入るもの全てが目新しいのだろう。

 

 俺達の座る席へ、代理人が寄ってきた。

 

 

「何かご注文は?」

 

「私は紅茶のホットで。ジャベリン、君は?」

 

「……ホットコーヒーを頼む」

 

「承りました」

 

「全く……一体どうしたんだジャベリン。君らしくない」

 

 

 カウンターへと戻っていく代理人を睨みつつ、スピアの疑問に耳を傾ける。

 そういえばコイツは俺がここまで彼女へと敵意を剥き出しにする理由を知らなかった筈だ。

 

 

「いや……何、俺の義眼関係だよ」

 

「おや、そういう事か。何だい、麗しのメイド様に片目を抉られたのかい?」

 

「……」

 

≪……ご主人≫

 

「ヴッ!」

 

 

 一先ず足を蹴っといた。

 コイツ理解するのは早いんだがたまにデリカシーの無いことを言いやがるからよろしくない。

 

 しかし……何故代理人はこんな喫茶店に居るのか。頭を悩ませども答えは出ない。もしかして俺達は異世界へ来てしまったのか? 代理人が……恐らく他の鉄血の奴らも平和に暮らす事が出来ている世界に。

 リフィトーフェンが聞いたらきっと大笑いするぞ。

 

 

「失礼します。ご注文のホットティーとホットコーヒーです」

 

「いたた……あぁ有り難うマスター」

 

「……なぁ代理人」

 

「言いたい事は理解しております。少々お待ちくださいませ」

 

 

 俺の言わんとしてることを知っているかのように遮った彼女は、またカウンターへと戻っていく。

 言葉を出せなかった俺は足元に居るポチが何故か居るダイナゲートと会話らしきことをしている様子を眺めながら待つことに。

 暫くすると、一束の新聞を持った代理人が戻ってきた。

 

 

「お待たせしました。少し、こちらの新聞をお読みください」

 

 

 彼女から新聞を受け取り、内容を読む。日付を見ると、ちょうど俺が鉄血工造から脱出後、蝶事件の翌日を記していた。勿論、蝶事件の事が書かれている筈なのだが……。

 

 

「…………何だこりゃあ」

 

「凄いな、蝶事件の記事が一つも見つからないぞ。ついでにE.L.I.D関連も」

 

≪ご主人!ここ私達の住んでる世界じゃ無さそうです!!≫

 

 

 その新聞のページを捲れども捲れども、記載されているのは天気予報やらローカルニュース、各界隈でのスキャンダルばかり。俺達にとって因縁深い、かの事件は一文字も無かった。

 

 

「は、ははは……マジかよ」

 

 

 頭の中で散らばっていたパズルのピースが急速に組み上がる。余りにも荒唐無稽で馬鹿馬鹿しい、そんな事態が発生してしまった。

 

 身体の力がずるずると抜けてきた。

 

 

「代理人……」

 

「はい」

 

「エスプレッソ……物凄く濃いめのやつ……追加注文で」

 

「承りました」

 

 

 何だか……何だか何もかも忘れてしまいたい気分だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「平行世界か……」

 

≪アインシュタインか誰かが平行世界の可能性を唱えてたと思われますが≫

 

「そうだな……うん」

 

「まぁまぁジャベリン。珍しい体験が出来たと思えば儲けモノじゃないか?」

 

「これ程までにお前のポジティブさを有り難いと思ったことがないんだが」

 

 

 多少の自己紹介後、コーヒーを飲み、心機一転して休憩中。

 今カウンターでコーヒーを淹れている代理人が言うには、俺達のような異世界からの来訪者というのはよく来るらしい。何処のSFだ。

 大体の来客はこの世界の平和加減には驚いているようで、俺達が特別……という訳でも無さそうだ。

 

 

「…………」

 

 

 俺は代理人を眺めた。

 手際よくコーヒーを淹れる彼女。その姿は俺の知っている、蝶事件前の代理人と重なって仕方がなかった。

 

 ……アイツの淹れた紅茶が飲みたいなんて思ってしまうほどに。

 

 

「……ジャベリンさん、どうかしましたか?」

 

「ん、あぁいや。ちょっとさっきのことを謝りたくて……」

 

「その事についてはお気になさらず。まぁ、変わりと言っては何ですが…あなた方の世界のお話をしてくれませんか?」

 

「それでいいなら喜んで」

 

 

 代理人の提案に従って、俺達は話を始める。

 蝶事件の事だとかポチが喋れる理由だとか。後はリフィトーフェンに武器庫の話、俺の世界の鉄血ハイエンドモデル達のこと。

 代理人も聞いてるうちに少々渋い顔になってきた。その気持ちは分かる。

 

 

「何といいますか……ジャベリンさん、貴方は随分と鉄血関係で苦労をしていますね」

 

「何せ現場に居たし現場に連れてかれたからな」

 

「そちらの私が随分と迷惑を掛けてしまい申し訳ありません。まさかそこまでバイオレンスな事を仕出かしてるとは」

 

「代理人が謝ることじゃない。これはうちの問題だし……」

 

 

 異世界の代理人に謝られるのも不思議な気分なもので、やっぱりアイツのやった事は相当なモノなのだろう。片目を抉り義眼を潰す。あぁそういえば、侵入者の時は腹に風穴を開けられたな……。

 

 そんな痛々しい思い出に浸っていると、喫茶店のドアが開いた。

 

 

「ただいまOちゃん。頼まれたもの買ってきたよ~」

 

「おや、おかえりなさいD」

 

「…………は?」

≪あれっ……代理人が二人?≫

 

 

 俺たちの目の前に現れたのはもう一人の代理人。隣の代理人とは違って雰囲気が明らかに違う。こう、ふわっとしたような。心なしか目つきも柔らかい。

 思わず俺とポチが固まった。

 

 

「あぁ、ジャベリンさんにポチさん。彼女は私のダミーですよ」

 

「えっ」

≪えっ≫

 

「あなた方の知っている“代理人”と比べてしまえば違和感を感じてしまうのも無理はないでしょう。D、この方達に自己紹介をお願いします」

 

「ん、いいよー」

 

 

 すたすたとこちらの席までやってくるDと呼ばれた代理人。その所作でさえ雰囲気が違う。

 彼女は、俺達の前に立つとにっこりと笑った。

 

 

「初めまして、私はOちゃん……じゃなくて、隣の彼女のダミーフレームです。Dって呼ばれてるので、どうぞよろしくお願いします」

 

「……ジャベリンだ。このダイナゲートはポチ、もう一人の野郎はスピアだ」

 

「よろしくお願いしますね、ジャベリンさん、スピアさん、ポチちゃん」

 

「ありがとうございます、D。休憩してていいですよ」

 

「はーい」

 

 

 何というか、眩しいぞこの代理人。ちょっとうちの世界の奴と交換してくれ。この代理人となら幾らでも和解出来る。

 そう思いながら休憩へ向かうDを見送る。

 スピアは何だか呆気に取られてるしポチは何故だか“わん”とか“くぅーん”としか言わなくなってる。バグってるな。それだけ衝撃的だったのだろう。

 

 本当、何でもアリとしか思えなくなったぞこの世界。

 

 

「あー、O……さん?」

 

「今は代理人で問題ありませんよ。どうかしましたか?」

 

「もしかしなくとも……さっきのDみたいな鉄血ハイエンドモデルも居るのか?」

 

「いえ、彼女のような事例は私のみです。ですが……貴方の知らない鉄血ハイエンドモデルは沢山居ますね」

 

 

 彼女の言葉を聞いて頭を抱えた。

 

 

「……嘘じゃないな?」

 

「嘘ではありません。因みに……今日はお休みなので出勤をしていませんが、この喫茶店でも何人か居ますね」

 

「マジかぁ……」

≪わん……≫

 

 

 相当平和なんだろうな。そうやって喫茶店で働けるぐらいには。俺はバグったポチを斜め45度で叩きつつぼやく。

 

 そんな時、俺は一つの疑問に至る。

 

 

「……うちの会社は?」

 

 

 そう、武器庫のことだ。武器庫は元の世界じゃそこそこ名の知れたPMCだった。もしかしたらこの世界にも在るかもしれないし、無いかもしれない。至急、目の前のスピアに調べるよう頼んでみる。

 

 

「スピア」

 

「君がそう言うと思って調べてたよ。ちょっと他人の電波タダ乗りしたけど

 

「ナイスだ、見せてくれ」

 

「良いよ。ほら」

 

 

 早速彼の携帯を見せてもらう。

 そこには、俺達の見知った会社があった。偶然にも電話番号住所も同じで。この世界の武器庫は警備に護衛、物資運送、諜報、軍事支援……軍事支援!?

 

 多少の突っ込み所はあったものの、何ら変わった点は無かった。多少規模が小さいがな。

 一先ず会社紹介を見てみるば、部隊は剣盾弓槍と、鎚部隊を除き存在していた。どうやら本当に人間だけの部隊として動いているようで、相変わらずこの世界でも異色染みてる。

 

 

「……俺達は居るんだろうか」

 

「居るだろうね。ほら、口コミにダイナゲートを連れたジャベリンっていう日系が率いる部隊は何でも引き受けてくれるからオススメなんて書かれてるぞ」

 

「激務具合は変わらないようだな、こりゃ」

 

「君や私は相変わらず女難でも起きてるんじゃないか?」

 

「勘弁してくれ」

 

 

 スピアの自虐とも取れるジョークに苦笑で返す。コイツは多分この世界でもAK-12とAN-94に追いかけ回されてる……かもしれない。スプリングフィールドは分からない。

 

 そうだな、余り口外したくはないがこんな平和な世界の俺はきっと家族も居て誰かに恋をしたりしてるのだろう……その惚れる相手は別として。

 もしかしたら人間かもしれない。もしかしたら人形かもしれない。仮に人形に惚れるなら、俺の知り合いで例を挙げると416とかトンプソンとかM16とか……そこら辺だ。

 G11……はもしかしてかもだろうし、代理人……認めたくはないが確実に惚れる。

 だって外見性格大体好みで、それにあのDって子だって中々……この話は止めておこう。時間もそろそろだし。

 

 

「スピア、そろそろ出よう」

 

「ん、あぁ了解……お金はどうする?」

 

「俺が払うよ。代理人、お会計頼めないか?」

 

「あぁその件ならお構い無く」

 

 

 俺は彼女へとそう言う。

 俺の台詞に対して代理人は微笑んだ。

 

 

「?」

 

「うちの慣例でして、異世界からのお客様は基本的にそちらの世界のお話をお代替わりとしております」

 

「そうか……随分と洒落てる事をしてくれるな、代理人。ありがとう」

 

「お気遣いなく」

 

 

 ただ何も残さないのは少しよろしくない。俺は財布を探って一枚の名刺をカウンターに置いた。

 

 

「これは?」

 

「うちの会社の名刺。何か困ったら槍部隊って所を頼ってくれ、幸いにも電話番号も何もかも同じさ」

 

「なるほど……そうですね、また機会があれば頼らせて頂きます」

 

「まぁここでやれるのは食品や備品の運送、後はお客としてくるしか出来なさそうだが……我が武器庫の誇る槍部隊をどうぞご贔屓に」

 

「ええ。ご来店ありがとうございました……それとジャベリンさん、これを」

 

「ん、コーヒー豆?」

 

「当店のオリジナルブレンドです。元の世界でも是非」

 

「あぁ、ありがとう」

 

 

 別れの言葉も良い具合に(そして宣伝も良い具合に)喫茶店を出た。

さて、どうやって帰ろうか。取り敢えずの方針をどうしようかとスピアたちと相談を始める。

 おおまかな目標としては元の世界に帰ること。別に此処に暫く居ても問題は無さそうだが、何処かの漫画よろしくこの世界の俺達に遭遇してパラドックス的な物が起きる可能性だってある。なので俺達は帰る。仕事もあるし。

問題はどうやって帰るのか、だ。

 

 

「うーむ、どうするスピア?」

 

「どうしたもこうしたも……まぁ始めに居たあの路地裏に向かうべきでは?」

 

「そうか……ポチは?」

 

≪私も同意見です≫

 

 

 案外早くやることが決まった。早速大通りへと歩を進める。

 暫く歩いていると、とある二人組と一匹のダイナゲートが目に留まる。地図を見ながらうんうんと唸っていた。

 

 ……あぁ、成る程な。俺達は静かに抜けるとしよう。

 

 

「おいスピア、お前のうっかりも此処に極めれりか?久々にここまで迷ったぞ?」

 

「ジャベリン、煽らないでくれるか!?僕はちゃんとしたルートで動いてるんだぞ!この荷物はあの公園近くの家に届ければいいんだからな!」

 

「本当にか?本当なのかぁ!?信じられるかポチ?」

 

≪キュイ…≫

 

「だろ~??」

 

 

 とんだ馬鹿騒ぎぶりというか、見た目は精悍な大人なんだが…この世界の平和さを染々と感じる。立ち振舞い的には実力は俺と堂々だろうけど落ち着きは余り無い。何処か社長を彷彿させる性格のように思える。

 

 この世界の“ジャベリン”は、目なんて抉られる事もなく、平和に生きていて安心した。ポチは喋れなくなってるが。

ふと、向こうの俺がこちらを向いたので、そそくさと退散する。

 

 

「……ん?」

 

「どうしたんだいジャベリン?」

 

「いや、さっき彼処の男に見られてたような……」

 

「おや、薔薇の香りかな?」

 

「うっせ……まぁいいか、さっさと行くぞ」

 

 

 ……幸いにもバレなかった。願うなら、何時までも幸せにしててくれ。きっとお前は答えを見つけてる。

 

 心の中で呟いて大通りに入り、路地裏へ向かう。幸運な事に場所は覚えていた。恐らくだが、俺達が通ったルートをまた通れば問題は無さそうだ。

 

 

「次は?」

 

≪右です≫

 

「OK……おっ、着いたぞ」

 

「やっとかい……疲れたよ全く」

 

 

 路地裏を抜けると、そこには見慣れた風景があった。少し寂れた住宅街、ちょっとだけ聞こえる子供の声。

 何となくノスタルジーに浸りながら隣のスピアに声を掛けた。

 

 

「……スピア」

 

「ん?」

 

「変な体験だったな」

 

「そうだね」

 

「ちょっと一本吸っていいか?」

 

「構わないよ」

 

 

 何となく煙草を吸いたくなったので、懐を探る……が、肝心の煙草とジッポライターがない。どうやらあの喫茶店に忘れてしまったようだ。

 しくじったな。あの高い煙草、最後のラスト一本だったのに。

 

 

「煙草……忘れちまった」

 

「ほう、私のうっかりが移ったかな?」

 

「うるせぇ」

 

 

 まぁ、いいか。良いものは見れたんだ、そこに何の未練もない。

 特にする事もないし、のんびりと帰るとしよう。

 

 

「スピアさぁ~ん何処ですかー?というか、ジャベリンさんも何処ですかー」

 

「……」

「……」

≪……≫

 

 

 予定変更。取り急ぎさっさと逃げるとしよう。

 

 俺達は走り出す。その最中、手に持っていたコーヒー豆入りの瓶を見る。あの世界は本当に幸せに満ち溢れていた。人々が前を向き、希望を見据えている。何とも眩しい、素晴らしい世界。

 

 俺があの世界へ行くことはもう無いのかもしれない。しかし衝撃的な体験だった。また突拍子もなく連れてかれたりとかされそう。

 

 まぁそれよりも早く逃げていこう。何処へ逃げようか。いや割とマジで。

 

 

「あっ!見つけました!!!」

 

「やべぇ!!!」

 

「ポチ!!!!スモーク!!!!」

 

≪承知!!≫

 

 

 ……この後、俺達がグリフィン本部に逃げ込むまで追いかけっこが終わらなかったのは言うまでもないし、この事件を経てM200がメンタルモデルの調整を行われたのは確約された運命だった。

 

 

 

 本当に、変な1日だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 








いろいろ様、そちらの作品へお邪魔させていただきこの場を以って感謝を申し上げます。どうぞ煮るなり焼くなり好きにしてください。

大陸版で色々と情報が公開されましたが、私は鉄血が動かせるというのに大変感動しております。皆も興奮していこうぜ(?)

それと補足ですが喫茶鉄血時空のジャベリンくんは傭兵日記時空とは違って片目を抉られてませんので、ある意味一番幸せなのでしょう。とはいえ基本的な部分は変わっていません。ですので好みも何も同じって感じですね。本名も『アレクシス・ナトリ』となっております。
傭兵日記蝶事件以前の彼を想像していただければ分かり易いかも…。

スピアくんも基本的なことは変わらず、一人称が『僕』となっているだけです。

外見はジャベリンくんは刈り上げの黒髪黒目の日系、スピアくんはオールバックの金髪に碧眼な感じと……。


この作品への感想および評価は心の支えです。どうぞ、よろしくお願いします。それでは!!



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傭兵、散策だってよ。

今日も元気にジャベリン君の日常を!
久々の平和なお話です。どうぞ!





 

 

360日目 晴

 

今日も今日とて仕事は休み。416とエルが未だに俺の部屋に居たもんだから暫く一人で動くことにした。たまにはアイツらもちゃんとのんびり二人で話したいだろうし。

 

さて一人でぶらつくにしても暇潰しになるものはそこまでない。そりゃ会社にあるレクリエーションルーム行ったり演習場で誰かひっ捕まえてトレーニングに付き合ってもらえれば暇は潰せる。しかしだ……何か違うんだ。何かが。

だから俺は商店街へと出た。ショッピングをすることにしたんだ。うちの会社の周辺も中々発展し始めてるようで、様々な店が出来ている。雑貨屋やらカフェやら服屋やら。俺がこの日記を始めた頃はそこまでこういった店は少なかった。目に入るものの殆どがここ最近で開業された店ばかりだ。

少し歩いてみれば、鼻腔をくすぐる良い匂いもする。どうやらここはカフェやレストランが多いエリアのようだった。俺は取り敢えず適当なレストランへと入って、オムライスやデザートを堪能した。

腹ごしらえもちゃんとして次に向かうのはバイク販売店。レストランに入る前にちらりと見えたから気になっていた。

店頭に並んでいるのは大体電動バイクやらばかり。流石にガソリンで動く代物は見付からなかった。しかし店内に入るとあら不思議。目に入ってくるのは今や貴重となったガソリンで動くバイクばかり。分かってるな店主。

思わず財布の紐が緩くなってしまったが、まだ買うとは決めてなかった。というのも、俺のバイク……まぁ壊れたけど、それでも直せるかもしれないのだ。あの時以降、一応グリフィン本部から武器庫の所まで輸送はして貰った。なのでどうにかこうにか整備士達に手伝わせて修理しようと思う。

しかし突然一つの考えが閃いてしまった。

 

…………いや、スクーター位は大丈夫かな?ほら、通勤とかさ、便利じゃん?

 

って。今も悩んでいるものの、答えは出ない。近くのカフェで向かいのバイク販売店を眺めながらこの日記を書いているが、うーむ……迷うなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

361日目 晴

 

結局電動スクーターを1台買ってしまった。丸目の可愛いやつだ。確か昔の映画である『ローマの休日』ってので出てきたスクーターのデザインを近代化させたようなものだったか。航続距離は一回の充電で250キロ程。結構走ってくれるのがありがたい。

そんなスクーターで走りに行くのは武器庫の裏手、墓守の霊園だ。ポチも一緒に足元に乗せて行った。

珍しい事に墓守と葬儀屋は出掛けており、そこに居たのはウロボロスとG41だけ。折角なのでG41にポチを預けて、ウロボロスとじっくり話すことにした。

 

彼女はどうやらとある大規模作戦にて指揮を執っていたようで、時に前線に出てはグリフィンを苦しめていたらしい。だがその作戦中、404小隊……416やエルが所属する部隊に滅茶苦茶にされて、挙げ句のはてには仲間にも裏切られてしまったという壮絶な体験をしていた。

多少の誇張があったことも否めないが(かなり尊大な言い方だった)嘘は言っていないのだろう。

しかし仲間に裏切られたとは一体……とウロボロスにそれとなく聞いてみれば、物凄くバツの悪そうな顔をして処刑人や狩人の事、そして代理人のことをポツポツと話始めた。

 

……何と驚くことに、代理人やら処刑人、狩人は俺のことも狙ってたようだ。代理人の目的はよく分かる。処刑人は恐らく俺との再戦、狩人は……諦めてないのかな……いや、でもこの目で彼女が機能停止したのは見届けた。きっと復讐の呪縛から抜けてるだろう。

まぁそれは兎も角、時期的な事を考えると、その作戦は俺が保育園での子守りしてる時にやってたんだろうて。だから代理人は直に俺を“訪ねた”んだなクソッタレ。

 

ウロボロスも随分大変のようだ。仲間に見捨てられて無様にも捕虜となり、だけれども辛うじて残っていたプライドで命からがら脱走してきたのだろう。

 

にしても……何故彼女はここに居るのか?

逃げることが出来たのならさっさと鉄血に戻れば良いだろうに。

 

そんな素朴な疑問を彼女へぶつけたら、「……なぁジャベリン殿。私は鉄血のネットワークでさえ弾かれているんだ。どうしろというのだ、私にとってはこのハワード殿の家しか居場所がないんだぞ」と、とてつもなく哀愁に満ちた顔で言われた。

 

何かすまない。

 

そんなウロボロスにはポチとG41セットをぶつけておいた。癒されて欲しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

362日目 晴

 

俺の壊されたバイクが来たので、今日は整備士達と一緒に修理を行った。といっても俺はあんまり出番はないが。それこそアイツらが変な改造をしないように見張るぐらいだ。

うちの整備士達はロマンに拘ることさえしなければ仕事を手早く済ます優秀な奴らなんだが一度拘りだすともう止まらない。何度会社の車や兵器が犠牲になりかけたか。

そんな話は兎も角、三時間もしないうちに修理が終わった。パーツがちゃんとあったのと、整備士達の作業の早さの賜物だ。

 

さぁ早速と俺はバイクに跨って軽く走ることにした。中々良い感じで加速もしてくれてるし、乗り心地は最高だ。一先ずは郊外を回ることにして、景色を眺めに行った。といっても武器庫管理の自然保護区だが。

中々の楽しさだった。

 

そういえば、そろそろ武器庫の休業期間も終わりだ。荷物もそろそろマンションへ移動させないとな。416とかエルにも手伝ってもらうかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

363日目 晴

 

荷物を纏めてたら社長に荷物ごと拉致られた。

えっ?ブリッツオウルのところに行くって!?何で俺も!?秘密!?

 

助けて!!!!!!






平和って何だろう(哲学)
そしてウロボロスの居場所が決まった?感じとなりました。

さてジャベリン君はまたとある場所へ連れて行かれる模様……。つまりコラボ回……の前に、ちょっと別のお話を挟む予定です。

感想および評価は執筆への燃料です。どうぞよろしくお願いします!それではまた!!


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思惑は動き出す?

ちょっとした物語の展開を進めようとする悪あがきです()
墓守の下に一人のとある女性が訪ねてきます。果たして……それではどうぞ。







静かなとある朝、灰色のロングコートを着た男性、『墓守』が箒を片手に霊園の入り口へと向かっていた。空はどんよりとした曇り模様でそろそろ雨も降りそうな雰囲気だった。

 

 

「……傘でも持ってくれば良かったか」

 

 

 墓守は独りごちながら入り口の掃除を始める。そこまで汚れているようには見えないが、墓守にとって其処は重要ではなかった。

 というのも彼は“寝惚けた頭を覚ます為”にこの掃除をやっている。一見意味の無いように思えて、その実彼は今日やることの整理だとか、来客の予定を思い出したりだとか、スケジュールの組み立ても行っているようだ。

 

「はてさて今日の来客は誰だったか…あぁそういえば自然保護区から一人墓参りにくるな。アイツは確か浄土真宗の墓だったか……緑茶の茶葉はあっただろうか」

 

 文字を描くように道端を掃きつつ、独り言を呟く墓守。

 頭の整理もついたところでそろそろ掃除も切り上げようかというところに、一人の女性が歩いてきた。墓守は彼女を一目見て、少し驚いたような顔を浮かべた。

 

 

「ほう、珍しい来客があったもんだ」

 

「久しいねハワード。最後に会ったのは何時かしら」

 

「俺が国家保安局に辞表叩きつけた時以来だったかなぁ、『アンジェリア』?」

 

 

 墓守に『アンジェリア』と呼ばれた女性は、青のかかった黒髪のアジア人であった。アンジェリアは墓守と面識があるようで、彼に対して砕けた口調で話しかけてきた。

 墓守は空の様子を見ながら彼女へ着いてくるよう促す。

 

 

「まぁ立ち話も何だ、お前さんにゃ積もる話もあるだろうて。雨も降りそうだ、屋敷に来てくれよ」

 

「言われなくとも。私は貴方に用があって来たのだから」

 

「プロポーズならお断りだぜい」

 

「分かってるよ、愛妻家め」

 

 

 整然と並ぶ墓群を抜けて、屋敷の裏庭へ入る両名。

 勝手口から墓守は屋敷の中へ、アンジェリアもそれに続く。勝手口はちょうどダイニングに続いており、そこでは葬儀屋とG41が食事を取っていた。

 葬儀屋が墓守達に気付き、会釈をする。その姿を見てアンジェリアは驚いた。

 

 

「へぇ…ハワード、人形嫌いの貴方がついに人形を雇ったの?しかも二人も!」

 

「馬鹿いうな、友人の忘れ形見だよ。葬儀屋、応接室を使うから紅茶でも用意しといてくれ」

 

「分かりました」

 

 

 葬儀屋はそう言ってまた食事に戻り、そのついでで口周りを汚していたG41を拭いてやる。アンジェリアはその光景に一種の微笑ましさを感じつつ、墓守の後を着いて行った。

 応接室はダイニングを抜けた先、玄関の右方近くにあって、防音もしっかりされているというのは墓守の談だ。重苦しい音を立てるドアを開き、対面する形に設置された少し色あせているソファへと二人は座った。

 その直ぐ後に葬儀屋が入ってきて、お茶とお茶請けを出して退室した所で話が始まった。

 

 

「それで、何の用だ。態々一人でこんな所まで来たってことはそれなりに理由があるんだろう?」

 

「話が早いね。もう少し知り合いと話そうとは思わないの?」

 

「午後から来客があるんだ。そんな勿体ぶっても無駄に時間を浪費するだけだぜ」

 

 

 墓守はティーカップに口を付けながらアンジェリアを見る。彼女はその軽薄な口調とは裏腹に、至極真面目な表情を浮かべている。

 墓守は、少し面倒な案件であることを直感した。

 

 

「ふふっ、貴方らしい。いいよ、さっさと話そう……ジャベリンって男は知ってる?」

 

「……知ってるも何も、俺の息子だぞ…詳しく言えば養子だが」

 

「あら、人形だけでなく息子まで貰っちゃって……随分と幸せそうね」

 

「皮肉かアンジェリア?」

 

「まさか。心の底から羨ましいよ」

 

 

 そう言って笑うアンジェリアに墓守は鼻を鳴らし、また紅茶を一口含んだ。

 

 

「それで、ジャベリンに何の用があるんだ?あいつぁ今マーカスに拉致されてどっかに行ってるぞ」

 

「別に急ぎの用事でも無いんだけれどね、少し重要参考人として身柄を引き渡して欲しいの」

 

「何?」

 

 

 墓守がお茶請けに伸ばした手を止め、驚いたような顔でアンジェリアを見る。そして同時にジャベリンがまた何かやらかしてしまったのかと考えた。

 真正面に座るアンジェリアはその墓守の様子を気に留めることなく話を続ける。

 

 

「はっきり言っておきましょう。武器庫所属、槍部隊隊長ジャベリンには蝶事件首謀者とされるフリッツ・リフィトーフェンの協力者という疑いが掛けられてるの」

 

「ジャベリンが?アンジェ、冗談も休み休みで言ってくれよ」

 

「私が冗談を言う人間に見える?」

 

 

 アンジェリアは相手を射貫くように墓守を見る。

 墓守は困惑していた。彼は掛け値無しにジャベリンの事を信頼していた故に余計に信じられない様子である。かといってアンジェリアが嘘を言っているようにも感じられない。

 

 

「そうだな…いや、だがねアンジェ。何故ジャベリンを召喚したいために俺の所に来たんだ?リフィトーフェンのバカの捜索はグリフィンも正規軍も国家保安局もやってる案件だ。武器庫に直接頼めばいいじゃないか」

 

 

 墓守の言葉にアンジェリアは少し呆れた風に首を振る。

 

 

「はぁ……出来るなら最初からそうやってるわよ。何故かは知らないけどね、武器庫に色々根回ししようとしたら、それを感知したかのようにリフィトーフェンが邪魔してくるのよ。あの男は自分の立場を理解してなのかちょっとだけ尻尾を出してはこっちを釣ってくるの。対象の確保が最優先な分、そっちの槍部隊隊長様のことは後回しになる訳」

 

「おいおい……それならスピアを通してみたらどうなんだ?」

 

「アイツはアイツでこっち案件の事は大体理由をつけて断ってくるのよ。あいつの監視代わりに置いたウチの戦術人形に感知されるのを嫌ってね」

 

 

 どうやらアンジェリアは相当苦労しているようだった。

 少し不憫に思ったのか、墓守は慰め程度にお茶請けのチョコレートを差し出すが、アンジェリアはそれを手で制して要らないという意思表示をする。

 

 

「私は貴方の孫じゃないんだから。大丈夫よ」

 

「そりゃ失敬……まぁ何だ。アンジェリア、俺が一つ言えることと言えば、ジャベリンを引き渡すのは無理ってことだけだな」

 

 

 その様子を見て問題なさそうだと判断した墓守は、はっきりとそう言う。

アンジェリアはそれを聞き、まるで最初から知っていたと言わんばかりに驚くことはなく、平然としていた。

 

 

「だと思った。貴方、身内には優しいし」

 

「んな訳ないだろ。こりゃ俺にはどうにも出来ないからそう言ってるだけだ。マーカスに報告ぐらいする」

 

「そう。ならいいわ、貴方の所の社長がいい反応を示してくれればいいんだけど」

 

「どうだか。期待はしておくなよ?」

 

 

 そう言って墓守は紅茶を飲み干し、そしてもうこの話は終わりだと言わんばかりに立ち上がりドアへと向かう。対してアンジェリアも特に何も言う事も無いのか、墓守へと着いて行く。すぐそばの玄関から外に出て、彼女を見送ることとなった。

 

 

「あんまり無理はすんなよ。お前、ジャベリンと似たもの同士だからな」

 

「またそんなことを言う。だから、私は貴方の孫じゃないんだから心配しなくていいのよ」

 

「ひでぇなぁ…身内には優しいんだぜ俺ぁよ。そんぐらい許したらどうだアンジェ」

 

「お気遣いどうも。何かあったら連絡頂戴、どうせそっちの諜報部通してくるでしょ」

 

「あい分かった」

 

 

 それじゃあ、と踵を返して帰路につくアンジェリア。

 墓守は彼女の姿を見えなくなった後に、懐からマッチと煙草、携帯灰皿を取り出した。

 すぐさま煙草に火を点けて、それを目いっぱい吸い込む。

 

 

「……ふぅ、面倒なことになりそうだ」

 

 

 墓守は小雨の降る空を見上げる。もう少しすれば本降りとなりそうだろうかと墓守は独り思う。

 

 

「ジャベリンよう……お前、本当碌な目に遭ってねぇよなぁ。もう少し平穏に生きていられねぇのかよ全く」

 

 

 墓守の呟きは吐き出された煙と共に消えた。

 それから打って変わって彼はスケジュールを思い出して次の来客の準備を行う。ジャベリンの事を心配するのは良いが、それよりも来客の相手が優先ということだろう。

 墓守はせっせとお茶請けの準備や未だ寝ているウロボロスを起こしたりと少し忙しい一日を過ごしていく。

 

 しかし、果たして先ほど彼の言った願いのような呟きは実現されるのだろうか。それを知る時は、まだ遠い。







ここでリフィトーフェンのフルネームと墓守おじさんの過去がちょっとだけ判明しちゃいましたねぇ……。なんか墓守もキーキャラになってない???
あと武器庫魔境すぎない?俺もそう思う。(セルフ問答)

さぁ出て来ましたアンジェリア。やはり蝶事件の事が絡んでいる分、外せない存在でしょう。
それにジャベリン君はやはりあの事件の渦中に居た訳ですから疑われてしまいますねそりゃ。
さて次回はコラボ回。とある義足おじさんのところへ……お楽しみに!!

それではまた今度!!


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☆傭兵、乗り込みだってよ。

お絵描きとゲームしてたら時間が飛んでました(創作者のクズ)

まぁそれはそれとしてお待たせしました。今回は佐賀茂様作『戦術人形とおじさんと』( https://syosetu.org/novel/204435/ )とのコラボとなっております。
社長に連れられたジャベリン君を待つ者は…?

それではどうぞ!


363日目 続き

 

気が付けばそこは見知らぬ異国の地でした……という訳ではなく、社長に連れられて荒野の中を走り抜けていた。周りには岩やらなんやらと自然が一つも見えない。何なんだここはと思いながら眺めていると、社長がブリッツオウルという人物について詳しく話し始めた。

聞けば、かのブリッツオウルという男は対E.L.I.D部隊の中で一番被害を最小限にした上で多くの化け物を屠って来た部隊だという。人的損失が目立った社長の率いていた部隊とは大違いと社長自身が言っていた。

性格は冷静で寡黙、どんな状況でも柔軟に対応できる人物らしい。社長とは大違いだ。

 

そういえばうちの剣部隊はその殆どが元々社長の部隊員だったな。クレイモアにツヴァイ、ムラマサと色々居たのを記憶している。となると、剣部隊の奴らって相当な修羅場を潜り抜けてきたのだろうか?あいつ等やべぇな。

まぁそんなことは置いておき、社長はこの前話した通り、ブリッツオウルとは戦友であったらしい。軍に居た頃は仕事の都合も相まってそんな話すことは無かったというが、仲は良かったとかなんとか。

久々の訪問にそのブリッツオウルはなんと思うのだろうか。ちょっとだけ気になる。まぁ社長の事だしどうせ何かしらやっちまうんだろうなぁ……俺が巻き込まれないことを祈るばかりだ。

 

そういえばどうやって彼を見つけたのだろう?スリンガーからの情報だけじゃ見つけるの大変そうだけど……えっ?クルーガー社長に業務提携を楯に聞き出した?

なにやってんだこの脳筋。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

364日目 晴

 

本当にやらかしやがったなあの野郎。いきなりブリッツオウル……コピー指揮官とのマンツーマン教育なんて聞いてねぇぞ。しかも後で酒も持ってこさせるなんてひでぇ話だよ。その上俺が来ること自体忘れてる始末だし。

報連相をちゃんとしてくれ……本当、有能なのかそうじゃないのか分からんなこのおっさん。

 

しかし……あのブリッツオウルとの特訓か。彼、酒も入ってるし義足だしで大変そうに見えたが……大丈夫なのかな?

もしもの時は即刻止めるか。

 

 

 

―――――――――――――

―――――――――

―――――

―――

 

 

「……」

 

 

 周囲を壁に囲まれた室内、一般的にキルハウスと呼ばれる場所にて俺は拳銃片手に息を潜めていた。拳銃のマガジンにはペイント弾が入っており、殺傷性は皆無である。

 俺は今、コピー指揮官との遭遇戦をしている。ルールは簡単、先に撃たれた方の負け。これは突然社長に稽古付けをしろと言われたコピー指揮官がじゃあ実力を図るために模擬戦でということで始まった。

 しかしまぁ……普通酒飲ませた後やるもんじゃないだろうに。

 

 

「っと…集中」

 

 

 まぁそんなくだらない事を考えるのは良いとして、周囲を警戒しないとな。

 流石元正規軍の人間、しかも隊長であっただけに気配も物音も何一つ感じられない。こういう手合いというのは武器庫にはほぼ居なかった存在だ。何せそういった気配を消すことを得意としている奴が弓部隊の隊長副隊長、後は剣のムラマサぐらいだからな。

 久しぶりに滾ってきた……が熱くなりすぎると隙を突かれる可能性があるから落ち着いていこう。

 

 

「……クリア」

 

 

 部屋を抜けて開けた場所へ出てきた。ここを迂闊に出るのは悪手だろうと、脇に他のルートもあったのでそちらへと進んだ。

 相変わらず物音一つ聞こえない、とても不気味という感じで、少し気持ちが張り詰めてしまう。だがここで緊張に呑まれてしまえば一瞬で終わってしまう。

 俺が対峙している相手はそれだけ手練れということだ、油断も緊張のし過ぎも命取り。一先ず、安全は確保した。

 

 

「ふぅ…」

 

「えらい余裕そうだな、ジャベリン君」

 

「っ!?」

 

 

 一息つこうとした瞬間、コピー指揮官の声が間近に聞こえた。俺は直ぐに身を隠して周囲を窺ったが誰も見えなかった。

 

 

「勘弁してくれ…」

 

 

 一人ごちてまた物陰へと移動する。

 声がした方向へと向かうにしても恐らく相手はもう何処かへ行った後だろう。ならばどうするべきだろうか。

 大人しく相手の出方を待つ?いや流石に向こうから仕掛けてくることは考えられない。やるにしても陽動しかない。このまま向かえば攪乱も考えられる。だがしかし攻めるしかこちらに手は無さそうだ。

 苦手なんだがな……仕方ない。

 

 

「よっと!」

 

 

 俺はわざと身を乗り出して牽制射撃をしながら走り出した。

 自らを餌にして相手を釣るという作戦だ。捨て身の戦法と言えばそれまでだが、相手は一人なのでどうとでもなる。

 そして幸いにターゲットはこちらへと拳銃を構えていた。

 

 

「フッ!!」

 

「おぉ、そう来るか?」

 

 

 奇跡的にというか、直感で弾を避けて応戦する。勿論当たる筈がないが、それでも相手の位置を割れたのは大儲けだ。

 地面にヘッドスライディングをして横へ転がり、相手の方へ走り出す。向こうが撃ってこない辺り、すぐに撤退したのだろう。彼の居た所は案の定誰も居なかったが、左に曲がる道が続いている。

 俺は警戒して中を覗かず、その道の出口へと先回りすることにした。

 

 

「しっかし…コピー指揮官凄いよなぁ」

 

 

 残弾を確認して静かに先回りをする中、そうぼやいた。

 あの人は確実に人を誘導させるのが上手いと断言できる。色々な場面を想定して様々な戦術を立案する。流石指揮官というかなんというか、もしかしたら俺のさっきの行動だって織り込み済みかもしれない。

 なら余計に注意しないといけないかもな。

 

 

「にしても……また逃したな」

 

 

 ……非常に困ったことにまた見失った。

 いやぁ不味い。とても不味い。ちょっと突撃しすぎたのは駄目だったか。足音が聞こえるが…姿は見えず。まんまと誘導に乗ってしまった。

 コピー指揮官にとっては俺のようなタイプは御し易いに違いない。模擬戦だからって調子に乗りすぎた。後で怒られるぞこりゃあ……。

 

 

「……っ!!!」

 

 

 どうしたものかと考えている矢先、丁度真後ろで音が聞こえた。

 反射で構えるも誰も居らず、だが俺の真横に確かな影が見えたのでそっちへまた構えた。

 

 

「チェックメイトだ」

 

「!!」

 

 

 目の前には、銃を構えたコピー指揮官が。この距離は確実に俺の体へと弾が直撃する。避けられない。

 

 俺は迷わず引き金を引いた。そして、ほぼ同時に銃声が鳴り響いた。

 

 

 

 

…………………………………………………………

 

 

 

 

「よーし、じゃあ反省会始めるぞー」

 

「うむ」

 

「はい」

 

 

 所変わってここは応接室。さっきの模擬戦からコピー指揮官の指導が始まった。因みに勝負結果はコピー指揮官の勝ち。俺の弾丸はギリギリの所を逸れてしまった。

 ブリーフィングルーム等は機密保持と諸事情のため使えなかったので、仕方なく応接室でやることになり、俺は手帳を持ってメモを取る態勢に入った。隣の社長は酒を煽っていた。なんかムカつくなぁ……。

 目の前のコピー指揮官は社長を一瞥した後に、俺に向き合う。

 

 

「まず…ジャベリン君の動き方なんだが……ビックリするぐらい突っ込んで行くな君は?」

 

「あー…まぁ職業柄自分が先陣切ってるからだと思う」

 

「君は隊長だろ?何故そうするんだ、現場指揮をする人間が先陣を切ったがために負傷して現場に混乱が生じてしまうのは駄目なんじゃないか?」

 

 

 彼の言葉に少し返答に困った。

 というのも、俺の部隊は基本単独か二人で行動するものだからこれと言って指揮系統がどうこうという問題が出てこないのである。二人で話して決める、一人で考えて決める。というのが多くて、部隊全員で行動することが無い。

 

 

「あぁブリッツオウル、言い忘れてたが…そいつの部隊は基本単独での任務が多いから指揮云々はあんまり意識出来てないと思うぞ」

 

「………マーカス、それを先に言え」

 

「ははは、年代物のワインで許せ」

 

 

 なんて言おうか迷う俺に、社長の助け舟が入る。

 社長…こういうところがあるから本当憎めないよなぁ。俺の仕事量を増やすのは許せんが。

 目の前のコピー指揮官は社長のセリフに若干の呆れを示しつつ、俺へのアドバイスを続ける。

 

 

「兎に角、単独行動が多いとはいえ部隊全体で動くこともあるだろ。そして君は隊長だ、指揮を執る人間が先陣切ったがために死ぬなんて飛んだお笑い種だぞ。マーカスじゃないんだからそこはちゃんと考えてくれ」

 

「……」

 

「俺だって考えるぞ?」

 

「お前の場合は“殺してから考える”だろ」

 

 

 彼の言っている事はよく分かる。指揮官が倒れたら、代わりに誰が現場を乱さず直ぐに指揮を執れるのか。それは人数が増えれば増えるほどにその問題は目立っていく。

 例え訓練された部隊であろうとも混乱は伝播していくものだ。それが広がるほど部隊の動きは鈍り、ついには隊員の命を落としかねない。

 コピー指揮官はその事を伝えたいのだろうか。

 

 彼は話を続ける。

 

 

「何度も言うが猪突猛進は厳禁だぞ、ジャベリン君。相手が一人だろうと、もしかしたら罠を張っているかもしれない、仲間が待ち構えているかもしれない。そんな風に油断をせず色々な可能性を瞬時に模索するよう心掛けてみてくれ。いいな?」

 

「……了解」

 

「全てを運だけで乗り切るのには無理がある。戦略で機を制して、戦術で優位に立ち、技術で勝つ…戦いってのは如何に不利にならずに勝つか、不利になってもどうやって逆転させるのかが大切だと俺は思ってる。マーカスみたいに直情馬鹿やってると戦場じゃ生き残れないぞ」

 

 

 コピー指揮官はそう言ってグラスに残っていたスコッチウィスキーを飲み干した。一旦この話は終わりにするようだ。

 俺は社長の『別にいつも直情じゃないんだが…』というような顔を尻目にノートをまとめる。

 この模擬戦においての反省すべきところと言えば、彼の言っていた通り突っ込みすぎているというところだろう。相手を釣るためにやった行為とは言え、迂闊過ぎた。しかもコピー指揮官は中々の手練れである訳で、選択を間違えた。 

 

 

「……」

 

 

 この前416から言われた、『一人で無茶をしてしまうのはやめろ』という言葉が脳裏を過る。今回ばかりはこの言葉が一番胸に刺さる。

 考えてみれば俺も他人に心配をさせ過ぎてるのかもな。情けないもんだ。

 

 

「ジャベリン、いい勉強になったか?」

 

「お陰様で。いきなりとんでもない事しやがって」

 

「すまんすまん」

 

 

 内容をまとめていると、社長が声を掛けてきた。

 俺は彼へと悪態をつきつつも、まぁ、と一旦区切る。

 

 

「……アンタが俺のことを相当心配していることはよく分かった。ありがとう、ボス」

 

「……ほう」

 

 

 社長が珍しいものでも見たような顔で俺を見る。そして俺が何だと言い切る前に、こちらのグラスへとなみなみスコッチウィスキーを注いできた。

 おいこれコピー指揮官のだろ。目の前の彼が困惑してるっぽいぞ、待て。

 

 

「いつもは俺に悪態ばっかりついてるお前が珍しいもんでな!!ブリッツオウル!!!お前もグラスを出せ!!!もっと飲むぞ!!!」

 

「おいおい、そんなに飲んでいいのかマーカス」

 

「俺がこの程度で酔うと思うか?」

 

 

 そう言ってコピー指揮官のグラスにも目いっぱい注ぐ社長。よく見れば手元にはもう一つの高そうなウィスキーが握られていた。

 これはまさかかなり飲むことになるのでは……?という懸念は現実となるもので、現に社長はそのボトルも開けて飲み始めていた。

 

 

「いい飲みっぷりだな」

 

「あー…コピー指揮官…なんというか、すまない」

 

「いや、いつものマーカスで安心したよ」

 

 

 ウィスキーを飲み干す勢いの社長を見ながらも、コピー指揮官は平然としており、静かにグラスを傾けていた。

 流石社長の同期というか、慣れてる。ここにクルーガー社長も居たらさぞかしにぎやかになってそうだ。

 俺は感慨深く思いながら少し氷の少ないスコッチを飲む。芳醇な香りとしっかりと感じる味を楽しんだ。

 

 

「ジャベリン、もっと飲んだらどうだ?」

 

 

 そんな中で社長がまたどんどんグラスへと注いでくる。俺はやめろと手で制したが、そんな事どこ吹く風か、お構いなしに入れてくる。

 いやちょっ…多っ。

 

 

「やめてくれないかボス!?」

 

「普段から飲まないんだろ?こういう時は飲むもんだ!!」

 

 

 嫌な上司みたいなセリフ言いやがったぞこのおっさん!!!!

 流石に身の危険を感じたので、俺はコピー指揮官へと助けを求めたが……。

 

 

「頼んだぞ、ジャベリン君」

 

 

 死刑宣告にも似たことを言い渡された。

 あっこの人面倒だからって俺に全部押し付けようとしてるな!!?

 

 

「後始末は俺がするよ」

 

「いやそういう話じゃ無くてですね!?」

 

 

 俺のグラスには馬鹿みたいにウィスキーが注がれている。

 社長の手は止まらない。俺が止めようとも止まらない。酒が次から次へと増えていく。

 

 最終的に、俺はどうにもならないので考えるのを止めた。コピー指揮官には感謝するのと同時に、恨むこともすることにしよう。

 

 

 

 

 たすけて。

 






私の頭が悪すぎて上手く動かせなかった悲しみ……。

何はともあれ、佐賀茂さんコピーおじさんを快く貸していただき、この場を以って感謝申し上げます!本当にありがとうございました!!!

それでは皆さん、感想および評価は心の支えです!どうぞよろしくお願いいたします。また今度!


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それいけ!あなたとわたしのランデヴー! 前編!

お久しぶりです…仁王2の体験版が面白すぎて執筆がままならない状態でした…。

さて今日は…ついに代理人が出て来ます。しかし今回は少し様子がおかしいようで?
それではどうぞ!






 ここはリフィトーフェンの隠れ家。薪を燃やす暖炉の前で、この隠れ家の主“リフィトーフェン”がしかめっ面をして、通信機のホログラムへ映されたメイド服の女性と対峙していた。

 

「代理人……君は随分と私のシナリオ通りに動きたくないようだね?」

 

『えぇ、どうしても。というより、貴方のシナリオ何て知る訳ないではありませんか』

 

 ホログラムに映されているメイド服の女性は『代理人(エージェント)』。表情を感じさせない、無機質な声でリフィトーフェンにとあるお願いをしていた。

 そのお願いとは…………

 

「私に特注の素体を作らせろと言うのは正気か?」

 

『貴方が私を正気と言うのは些か首を傾げてしまう案件ですね』

 

「皮肉を言うんじゃなぁい!ええい全く、君はジャベリンの事となると何時もこうだ。どうしてこうなったのか君の電脳を一度確認してやりたいところだ!」

 

『一体誰のせいでしょう』

 

 “自分用の特注ダミーを作って欲しい”

 というものである。リフィトーフェンにとってダミー素体を作る事自体は容易だ。しかし代理人から提示された条件が、彼が決断を渋る要因となっていた。

 

「はぁ…何故私がジャベリンが十分制圧可能な義体を作った上であのプログラムが作動しないように細工をしなければならんのだ。全く面白みが無くなるじゃないか!!!」

 

『貴方のおふざけに付き合うつもりは一切ありません。それで、出来るのですか?』

 

「出来るとも!私は人形を愛するものだぞ?これぐらい何の造作もない!」

 

 それは、義体の性能をわざと落とし、そして自身の技術の結晶とも呼べるモノを封じるという条件であった。

 自身の研究物を愛し、そして出来る限り強くさせるのが大好きなリフィトーフェンにとってはなんとも度し難いものである。彼のように言うなら、『私の技術を有らん限りに詰め込んで何事にも対応可能で、あらゆる環境に適応できるものが作れないなんてこの世界を一度滅ぼさなければならない』ということだ。

 本来なら代理人が提示した条件を突っぱねる事は出来るのだが、今の彼にはそれが出来ない。

 

『ならば作ってください。貴方はその隠れ家の場所がグリフィンや国家保安局に知れてしまうのは不都合でしょう?』

 

「迂闊に君をここに招き入れたのと隠れ家を複数用意しなかったのが失敗だったな。こんなもの作るのは非常に不愉快だが……私の生活が脅かされるのはもっと不愉快だ。やってやる」

 

 リフィトーフェンは代理人に居場所を知られており、しかも彼女はその情報をグリフィンなり何なりと渡す手段を持っているのだ。

 彼にとってこれは都合が悪すぎる。故に従わざるを得ないのである。

 

『ではそのように。明後日、そちらへ伺います』

 

 代理人はそう言ったきり通信を切った。

 リフィトーフェンは静寂に包まれた部屋に一人残される。暫く何もせずに暖炉で燃え盛る炎を眺めていたが、ふとした拍子に立ち上がった。

 

「…代理人め、無理難題を押し付けてきたものだな。仕方がないが、ジャベリンには少し苦労をして貰おう」

 

 リフィトーフェンは珍しく困った顔を浮かべながら自身の作業室へと入っていく。

 

 これは、少し騒動が起きそうだ。

 

 

 

 

――――――――――――――

―――――――――

―――――

――

 

 

 

 

「久しぶりだなジャベリン」

 

「一体どうしたんだよ俺一人で会いに来いなんて。嫌な予感しかしねぇぞ?」

 

「安心したまえよ君。少なくとも、その予感は杞憂に終わるさ」

 

 二日後、武器庫管理区にて、ここはとある喫茶店。そこにリフィトーフェンとジャベリンが二人向かい合っていた。ジャベリンは突然の呼び出しで、しかもリフィトーフェンがいつもの白衣姿でなく何処かの会社員を思わせるようなスーツ姿で現れたため、警戒していた。

 だがリフィトーフェンはそんな事お構いなしのようである。

 

「安心しろって言われてもなぁ」

 

「君に会わせたい奴が居てね。そろそろ来そうだが」

 

 ジャベリンが話を聞けと口を開こうとした丁度その時、喫茶店のドアが開いた。

 ジャベリンはその時、リフィトーフェンの口角が上がるのを目撃し怪訝に思ったが、直ぐにどうしてこの男が笑っているかを理解する。

 喫茶店のマスターがいらっしゃいと声を掛けた先に一人の女性が立っていたのだ。その女性はシニヨンの黒髪で、黒を基調としたパンツルックにグレーのロングコートを羽織っていた。

 

「……あの人か?」

 

「そうだとも」

 

 ジャベリンは彼女に目を奪われてしまった。そして同時にその女性が此方へと歩いてきた為か緊張し始める。

 リフィトーフェンはそんなジャベリンの様子を笑っていたが、隣に彼女が座って来た事を契機に真面目な顔に変わった。

 

「久しぶりですね、ジャベリン」

 

「……何処かで会いました?」

 

「ふふっ、忘れてしまったのですか?貴方はあんなにも私と愛を語り合ったではないですか」

 

「えっ?」

 

 ジャベリンは混乱する。何せ見も知らぬ美女が自分のことを知っている上に愛していたというではないか。

 ジャベリンは咄嗟に記憶を探り始める。

 

「マトモな状態になったからといって変にテンションを上げるなよ代理人」

 

「えっ!?」

 

 ジャベリンが微笑む謎の美女を前に自身の記憶を掘り返していると、リフィトーフェンが呆れたように衝撃の事実を吐き出した。

 目の前に居る謎の美女が代理人?そんな訳あるまいとジャベリンは考えたが、リフィトーフェンの今までに見たことも無いような表情と、隣の女性がよくよく見たら何処か見覚えのある面影があったのでその考えが揺らぐ。

 

「リフィトーフェン…お前薬でもやったのか?場合によっちゃうちの医療班紹介するけど」

 

「現実を直視したまえよ。私の隣に居るのはまごうことなき代理人だ。こいつがどうしても君に会いたいというのでね、特注品の義体を作らせた」

 

「……」

 

 思わず頭を抱えるジャベリン。

 お前それが有れば今までの俺が被った被害全て無くせたじゃないか…という言葉が喉から出かかったが、リフィトーフェンはそれを予期していたかのように補足する。

 

「一応言っておくが、この義体を作るよりかは本体を破壊したほうがコストも掛からず断然早い。それにこいつは今夜を以って廃棄予定のモノだ。量産なんてやらないしやりたくもない」

 

「そうかよ……で、そこの代理人は一体何の用なんだ?」

 

 リフィトーフェンの言葉に心底呆れ、そして胡乱な目で代理人を睨むジャベリン。

 当の謎の美女もとい代理人はその視線に臆することなく、平然としていた。

 

「貴方に会いたかっただけ。という理由じゃダメでしょうか?」

 

「随分とロマンチックな理由だなオイ。俺はお前とはまだ会いたくなかったよ」

 

「おや、告白の準備ですか?嬉しいですね」

 

「黙ってろ」

 

 剣呑な空気が漂い始める中、カフェのマスターから紅茶とコーヒーが出される。取り敢えずは落ち着いてくれということだろう。リフィトーフェンは隣の微笑む代理人と目の前ですぐにでも拳銃を抜き出しそうな雰囲気のジャベリンへそれぞれ飲み物をすすめる。

 

「話が進まんぞ二人とも、少しは落ち着き給え。ジャベリン、残念だがこれは本当の話だ。こいつは君に会いに来た。理由は与り知らん」

 

「何でだよ。お前がこの義体作ったんだろ、目的は聞いてるんじゃないのか?」

 

「脅されて作られたんだ」

 

 問いにお道化て答えるリフィトーフェン。ジャベリンは紅茶をぶっかけてやろうかというのをグッと堪えて、代理人の方を向き、不本意ながら質問を投げかけた。

 

「代理人……何で、お前はそんな事を」

 

「貴方に会うのに理由は必要でしょうか?」

 

「お前な……」

 

「すまないがジャベリン、一先ずは代理人の相手をしててくれ」

 

「はぁ!?」

 

 更なる衝撃がジャベリンを襲う。

 彼にとって、代理人というのは所謂天敵というものだ。そういった存在と今日一日過ごせと言われたジャベリンの心中は荒れるどころの話では無いだろう。

 絶対にやりたくないというのが彼の本音であるが、それと同時にこのまま放置しておけば向こうが何を仕出かしてしまうのか未知数であった。その上危害を加えてくるという可能性も否めない。

 

「で、どうなんだ?」

 

「………………分かった」

 

「ふふっ、それでは行きましょう?」

 

 だからなのか、ジャベリンは後に起こるであろう最悪なケースを防ぐためにも渋々といった態度で了承をした。

 それを聞いた代理人は待ってましたと言わんばかりに彼の手を取って喫茶店の外へ出る。

 残されたリフィトーフェンは会計を手早く済ませて彼女達へ続いた。

 

「……クソッ」

 

「ジャベリン、これも世界平和の為だ。それに今の彼女の身体は特殊だ。あのプログラムは発動してない」

 

「リフィトーフェン……お前マジで俺の苦労を全て水の泡にするの好きだな?」

 

「大丈夫だ、君の苦労が報われるよう私も調整する。それじゃあ楽しんでいってくれ、私は遠くから見守るよ」

 

 リフィトーフェンはそう言って人混みへと消え去った。

 ジャベリンはいつか彼を殴り飛ばすということを胸に抱きながらこちらの手をがっしりと掴む代理人を見る。

 彼女の横顔は、とても嬉しそうだ。

 

「どうしてこうなったんだろうな……はぁ」

 

「これも全て私のお陰ですね」

 

「うるせぇ」

 

 喜ぶ代理人と不服なジャベリン。二人の男女は街へ出る。

 

 こうして世界を守るため(?)の奇妙なデートが始まったのだった。

 

 






代理人のデート回、始まります…さぁここからどうなるのか、楽しみですね!

これでやっと代理人のフラグも建築できます。私も本腰を入れないとですね。
コメント及び評価は心の支えです。ぜひともお願いします!それではまた今度!!


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それいけ!あなたとわたしのランデヴー! 後編!

後編です。

ジャベリンと代理人はデートへ!!それではどうぞ!


 

 

「ジャベリン、似合いますか?」

 

「……似合ってるよ」

 

「そうですか、ありがとうございます」

 

 武器庫管理区の商店街、その中にあるアパレルショップにジャベリンと代理人(エージェント)は居た。

 代理人は喫茶店に居た時の服装とはうって変わって、プリーツスカートにゆったりとしたニットという服装だった。

 彼女は嬉しそうにくるりとその場で一回転をして、ジャベリンへ微笑んだ。

 

「……はぁ」

 

「たまにはこういう人間の真似事も良いものです。今度はアルケミストさんやドリーマーを連れて来てみましょうか」

 

「何でその面子なんだ?」

 

「あの二人は基本暇ですから」

 

 ジャベリンは、彼女の様子を見て少し調子が狂っていた。蝶事件以前であれば兎も角、事件以降の代理人というのはこちらを愛すという名目の上で襲ってきた相手だ。

 そんな彼女が今は自分の目の前で何もせずあまつさえ自身に似合いそうな服を物色している。それはジャベリンにとって奇妙な光景であった。

 

(代理人……本当に楽しそうだな。この前の時とは大違いだ)

 

 彼は鼻歌でも歌い始めそうなほどな代理人を眺めながらそう思った。いつも澄ました顔をしてそうな彼女があんなに喜色に富んだ顔をするということはよほど嬉しいのか、そこはジャベリンは分からなかった。

 暫くして、服を選び終えたのか代理人が数着の衣服を片手にこちらへ歩み寄った。

 

「……よし、そろそろ出ましょう。ジャベリン」

 

「決まったのか?」

 

「ええ。次はこの商店街を色々と散策していきますよ」

 

「はいはい。荷物は持とう」

 

「おや、優しいのですね」

 

「世界平和のためだ」

 

 会計を済ませて外へ出る二人。

 ジャベリンは彼女の荷物を持ち、代理人は隣に並んで歩く。その姿は傍から見ればカップルそのもので、ジャベリンはそれに対して一種のむずがゆさを感じていた。

 その時、代理人は何を思ったのか彼の腕へと絡みついてくる。

 

「……おい」

 

「世界平和のためですよ。私の機嫌を損ねてしまうとどうなってしまうでしょうか?」

 

「ここで脅してくるの本当にお前らしいなクソッタレ……少しだけだぞ」

 

「ふふっ」

 

 ジャベリンはこれを拒むことはなく、ただ彼女のなすがままにさせておいた。

 人々が行き交う大通り。あれもいいこれも気になると色々な店を周るジャベリン達。楽しそうにデートを満喫する代理人を見て、ジャベリンはなんとも言えない気持ちになる。

 

(……蝶事件さえ起きなきゃ、もしかしたらこういう光景を何度も見れたんだろうか)

 

 有り得もしない可能性に思いを馳せる。

 これはある意味、ジャベリンの望んだ世界だったのかもしれない。

 

「どうしました?」

 

「いんや。次はどこに行く?」

 

「雑貨屋を探しましょう。小物が欲しいので」

 

「ん。良い所知ってるから案内しよう」

 

 しかし考えても仕方がない。それは彼自身がよくわかってる。ならば今は目の前の彼女に集中しておいた方が得策だろう。

 代理人は当たり前のように腕を絡めて共に歩く。ジャベリンはもう気にすることは無くそのまま雑貨屋へと向かった。

 

 

 

 

「………ジャベリン?」

 

「んぁ、何処だ?」

 

「彼処よ。知らない女と歩いてる」

 

「416、そりゃ本当か?」

 

「本当よ。M16」

 

「……つけるぞ」

 

「は?ちょっと……あぁもう!!」

 

 

 

 

―――――とある人形たちが二人を目撃していたことを知らずに。

 

 

 

 

 

 

 

「この猫の置物、可愛いですね」

 

「こっちのしかめっ面の……なんだこの丸っこい猫……まぁ可愛いぞ」

 

「その猫はこちらの支配領域で見たことあります」

 

「マジで?」

 

 場所は変わって雑貨屋。暇そうに欠伸する店主が切り盛りするここは、時折ジャベリンが休日になると訪れる所だ。

 そこにて、代理人とジャベリンは二人様々な日用雑貨を物色していた。こんなものを買って意味があるのかとジャベリンは心の中で思ったが、それを指摘すれば彼女が何をしてくるかわからないので様子を眺めるだけに留める。

 

 

「置物は私室にでも飾っておきましょう」

 

「持って帰る事出来るのか?」

 

「手立てはあります。おや、このペアマグカップもいいですね」

 

 黒ぶちの猫の置物を購入することを決めた代理人。今度は棚に並べられていたシンプルな白と黒のマグカップを手に取った。

 

「誰かとペアルックでもするのか?」

 

「貴方とに決まってるじゃないですか」

 

 この女、ジャベリンへの好意を全く以って隠そうとしていない。

 ジャベリンは今までの彼女の言動からうすら寒いものを感じるが、代理人の楽しそうな様子と邪気を感じられない表情に考えを引っ込めた。

 今の彼女は何もしてこない。ならばもう少し付き合ってもいいじゃないか。ジャベリンはそう思い、他の商品を見比べて悩む代理人を眺めるに留めることにした。

 

 

 

 

 

 

 

「仲良さそうだな」

 

「あんな女が居るなんて聞いてないわよ…」

 

 ジャベリンと代理人から少し離れた、丁度物陰となる場所。そこから『HK416』と『M16A1』が二人並んで彼らを見ていた。

 

「ジャベリンも隅に置けない男だ。いつの間に引っ掛けたのやら」

 

「私が知ってる限りだとジャベリンに女っ気なんて一つも無かったわよ」

 

「案外お前が気付いて無かったのかもな」

 

「うるさい…はぁ、アイツも居るなら居るで紹介ぐらいしてもいいのに」

 

 やり取りもほどほどにまた監視が始まる。

 どこか羨望の眼差しでジャベリン達を見る416。M16はそれに苦笑しながらも自分自身の靄が掛かったような感覚に首を傾げた。それはジャベリンへの感情ではなく隣で彼と親しそうに話す代理人への感情で、M16はそれが何だか分からなかった。

 思えばジャベリン達を尾行する理由だって明確ではなかった。酒の席でのネタになるだろうという理由とは別、だが感じたことも無いもの。M16を支配する謎の感情が彼女を動かしているようだ。

 

「……」

 

「あ、外に出ようとしてるわね…追いかけましょう」

 

「ん、あぁ分かった」

 

 ただ、気にしていても仕方がない。M16は思考を振り払って416と尾行を再開した。

 

 

 

 

 

 

 

「……綺麗ですね」

 

「ここいら周辺じゃ一番景色の良いところだからな」

 

「“君の方が綺麗だよ、代理人”とは言わないのですか?」

 

「言う訳ないだろ…柄じゃねぇし」

 

 商店街を回り終えた代理人とジャベリン。彼らは近くの小さな高台へと足を運んでいた。初めは行く予定は無かったのだが、代理人が急に高台へ行きたいと言い始めた為、荷物を持ってここへ来た。

 ジャベリンは彼女の冗談に少し動揺し、それを誤魔化すように前面に広がる武器庫管理区を眺める。夕日に照らされる町並みは彼の心を落ち着かせた。

 二人はただ静かに景色を眺める。

 

「……今日はありがとうございました」

 

 少しして、代理人が思い出したかのように口を開いた。ジャベリンはそれに笑って返答する。

 

「ああ。相手してやるだけで済んで本当に良かったよ」

 

「刺激が必要ですか?」

 

「まさか」

 

「ふふ、冗談ですよ」

 

 この時ジャベリンは内心安心していたのと同時に、迷っていた。

 このまま彼女を帰してしまっていいのか、それとも見過ごすべきなのか。今の代理人はいわば無力化され何も出来ない状態だ。それをみすみす見逃すとなれば後々被害も出かねない。

 しかしジャベリンは何故かそれをやるべきでないという感情があった。リフィトーフェンがいるからか、もしくは別の理由か。彼自身も理解できていない。

 

「ジャベリン、少しいいですか?」

 

「ん?なん……いや、何でいきなり身を」

 

「…このままでお願いします」

 

 ジャベリンが葛藤している時、代理人が突然身を寄せてきた。

 もちろん彼はそれを拒もうとするが、いつもよりしおらしく弱弱しい声色の彼女を前に出来なかった。

 

「……」

 

「……貴方にまた拒まれるかもしれないと不安でした」

 

「そうか」

 

「ですが貴方は私に臆することなく、昔と同じように相手をしてくれた。これが私にとってどれだけ嬉しかったことか」

 

 彼女はぽつりぽつりと自身の心情を吐露する。その表情は夕日に照らされて分からない。

 

「この感情を幸せと言うのでしょうか。願うならこれが一生続いて欲しいと思うほどです」

 

「それは概ね俺も賛成だよ」

 

「プロポーズですか?」

 

「違ぇよ。俺の犠牲だけで済むなら安いもんだってこと」

 

「ふふっ、そうですか」

 

 代理人はジャベリンに向き合って微笑する。

 彼女の心情は窺い知れないが、ジャベリンはその微笑みに一抹の美しさを感じ取り、慌てて顔を逸らした。代理人の顔は綺麗だ。ジャベリンはよく分かっている。それ故に先ほどの笑顔というのは不意打ちにも近かっただろう。

 そんな彼の心情を知ってか知らずか、代理人はとんでもない事を言い放った。

 

「……いっその事、今から私とどこか知らない遠い所まで行きますか?」

 

「何だって?」

 

 駆け落ちをしようと、彼女は提案してきたのだ。ジャベリンは思わず聞き返してしまう。

 

「貴方が一緒に居るからこそ私は大人しく居られる。そして私は貴方がいるだけで後は何も要りません。だから……私と一緒にどこかへ逃げましょう」

 

「いやお前……他のハイエンドモデル達はどうするつもりなんだ」

 

「例え今の状態であれ指示は可能です。それにリフィトーフェンがどうにかします。どうですか?」

 

「……」

 

 ジャベリンは閉口した。

 彼女の言わんとしていることは分かるが、それは出来ない。彼にはグリフィンや武器庫の仲間やポチ、G11が居る。天涯孤独でフリーランスなら彼女と一緒に行動するという道を選んだだろう。ある意味、代理人の言っていることは私欲の塊だった。

 返答を待つ代理人に、ジャベリンは重々しく口を開いた。

 

「それは……出来ない」

 

「……知っていました。貴方は色々背負っていますもの」

 

 ジャベリンの答えに、代理人は諦めが付いたのか特に何もしてこなかった。

 少し拍子抜けしたジャベリンだったが、改めて気を引き締める。

 

「…俺は被害者とはいえ蝶事件に関わってしまったんだ。俺には逃げる権利なんて一つもない、あるとすれば…リフィトーフェンに押し付けられたお前たちハイエンドモデルを破壊することぐらいだ」

 

「義理堅いのですね。だから貴方を好きになったのでしょうか」

 

 ジャベリンは覚悟を決めたように彼女へと向き合った。そして言葉を紡ごうとした瞬間、彼女の後ろにリフィトーフェンが立っていることに気が付いた。

 大事な時に…とジャベリンは口の中で悪態をつき、代理人へリフィトーフェンが居ることを伝えた。

 

「言ってろ。代理人、お前そろそろ時間じゃないのか?リフィトーフェンが向こうで待ってるぞ」

 

「おや、いつの間に……まぁ、それは別として、私は待ってます。貴方が来てくれることを」

 

 代理人はリフィトーフェンを確認した後、そう言ってジャベリンから必要な荷物を貰って踵を返した。

 ジャベリンは彼女の後ろ姿を眺め、拳を握りしめた。

 

「代理人、待っててくれよ」

 

 彼女に聞こえないように呟く。何時かまた平穏を手に入れるために、傭兵は心に固く誓った。

 

 

――――絶対にお前を救う。

 

 






~高台の物陰にて~

「……」

「M16…あれって」

「アイツは…いや、いいか。今日は酒に付き合ってくれよ416」

「は?」

「何だよその顔は。私が酒に誘うのが珍しいか?」

「違うけど…アンタ、ジャベリンに用があったんじゃないの?」

「そりゃ明日にも出来るさ。指揮官も急がなくていいって言ってたからね。ほら今日は飲むぞ!」

「ちょっと!!!もう!!!」

「ハハハ!」
(……何なんだろうなこの感覚。私も少しヤキが回ったのだろうか)
(いや…だけど……分からないな。後でペルシカ辺りに相談でもするか)








フラグが立ちました。
さて、どうなるか……。


それはそうと傭兵日記を書き始めてから一年が経ちました。まさかここまで続くとは思いもしていなかったもので、夢のようです。これからも皆様、私サマシュと拙作『傭兵日記』『ダイナゲートは何を見た。』をよろしくお願いいたします。

それでは皆さんご機嫌よう!!


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☆傭兵、再会(?)だってよ。

コラボなお話。今回は焔薙様作『それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!』(https://syosetu.org/novel/166885/489.html)とのコラボとなります。皆さんにとってはよくご存知の毎日更新作品ですね!
どうやら武器庫管理区にとある少女が迷い込んできたみたいです。それではどうぞ!!





367日目 晴

 

代理人との……デート?を終えた。あの時の彼女は、どうにも別人のように見えて調子が狂ってしまった。服がメイド服じゃなかったというのもあるだろうけど、あまりにも違いが有りすぎた。

何だったんだあの美人は……リフィトーフェンに言われなかったら気付かなかった。

それにしても、代理人はつくづく俺の事が好きなんだと思う。自惚れとかそういうのは無しで感じてしまう。別れ際の言葉だって……はぁ。

 

考えても仕方がないな。別の話題へ移ろう。

俺は代理人と別れた後、どうにも気分が冴えなくて近場のBARで飲んだくれてたのだが気がつけば家に居た。

何が起きたのか俺も分かってないが、少なくとも誰かが運んでくれたのは確かだ。でも武器庫のやつらじゃない。どうしてかって言うと、武器庫へ続く正門の警備担当から女に連れてこられてたなんて茶化して来たからだ。

誰だったのか聞いても相手から頼まれたのか、何も教えてくれない。

 

お礼とかしたいんだけどなぁ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

368日目 曇

 

諜報部から管理区郊外の偵察を頼まれた。最近盗賊が目撃され始めたらしい。万が一こちらの物流網への危害を確認した場合は即刻発砲しても問題はないそうだ。

流石に俺一人じゃ不安なので、ポチとスナイパー兼警戒役として弓部隊のクロスボウって奴を連れていくことにした。

 

武器庫の郊外には第三次世界大戦時に放棄された都市があるんだが、未だに活用の目処が立ってない。

というのも彼処、一部高濃度の放射線汚染区域があって手出し出来てないからである。

そのせいで人も居ないから時々流れ者や盗賊が住み着いてしまう事が度々発生するんだよな。

流れ者についてはこっちで受け入れるだの何だの出来るが盗賊は殺すか見逃すかしか出来ない。

 

大人しくしてるといいんだが……。

 

 

 

 

 

 

 

368日目 続き

 

めっちゃ知り合いのグリフィン指揮官によく似た女の子保護してしまった。

 

とりあえず武器庫で保護しよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

369日目 晴

 

昨日保護した少女なんだが、『キャロル・エストレーヤ』って名乗った。

どうやらテレポート装置なるものを使って旅をしていたそうなのだが、途中で装置が壊れてこの管理区へと来てしまったようだ。

見た目によらず随分と大人びた子で、話してて本当に子供か?と思ったほど。しかし彼女、あんな所で野宿をすると言い出したもんだから慌てて引き留めてうちへ連れて来た。

武器庫に連れてきた時、門番やらすれ違う社員やらに『とうとうコイツ子供を……』とか『いやいやG11ちゃんも引っかけてるし今更だろ』とか言われて誠に遺憾であった。

一旦は俺の部屋に泊めようかと思ったのだが、明らかに犯罪臭がしてしまったので墓守の所へ連れていくことに。

墓守は何も言わずに使われていない部屋に通してくれたので助かった。

そういえばキャロルちゃん、墓守とこのG41を見て複雑そうな顔をしていたが何かあったのだろうか……いや、聞くのは止めておこう。今の彼女はそれどころじゃなさそうだし。何せキャロルちゃんは墓守がたまたま連れてきた孤児院の子たちに揉みくちゃにされてるからね。

いやー楽しそうだ。めっちゃこっちに助けを求めてそうな視線を飛ばしてきているが楽しそうだ。ついでにポチも行かせてあげよう。

G41も加わったし、より面白おかしくなるぞ。

 

さぁて、今日は俺もここに泊まろうかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

370日目 晴

 

朝早くに墓守から一通の手紙を貰った。差出人はメグ・コーマック……お嬢だ。どうやら久し振りにお茶会をするから来てほしいとのこと。

わざわざ手紙の封に蝋を使う辺り、相当暇と見える。それともただ小洒落てるだけか?どちらにせよ俺もあのハイエンド達が集まる農園の様子を見に行かなきゃいけないのでキャロルちゃんを連れていくついでに行くか。

 

それにしてもキャロルちゃんは人気である。物珍しさに武器庫の奴等が何人かこっちに来たし、孤児院の子供たちは彼女が相手をしているぐらいには懐かれてる。

そのお陰で墓守も助かってるのか、彼女が子供と遊んでいる間に俺とポチを連れて孤児院の外装を修理することが出来た。

墓守は作業中、『キャロルくんがうちに残ってくれりゃあ滞った作業も進むんだがな』なんてぼやいてたが……それは難しいと思う。彼女はのっぴきならない理由でS09地区に行きたそうであったので、その気持ちが揺らぐことはないだろうから。

 

その事を墓守に伝えたら、『そうかい。なら新しく子守り人形でも雇おうかね』なんて言った。

割と残るか残らないかは気にしてなかったようだ。

 

……そろそろ荷造りを始めよう。夜通しで走るしちょいと大変だな。ポチに運転任せてみようかしら。

 

 

 






思いのほかほのぼのとした空間へとなってしまいました。そしてここだけのお話、私はキャロルちゃんが好きです。俺っ娘はいいぞ…。
焔薙様、今回もそちらの作品とコラボさせていただきありがとうございました。そしてコラボ返しが遅れてしまい申し訳ありません。



さて次回はジャベリンくんS10地区へ。果たしてこの先に何が待っているのでしょうか……それではまたこんど!!


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傭兵、再会だってよ。

今日はのんびりゆるりとほのぼの(かもしれない)お話です。
ジャベリンくんはS10地区へ……。





 

371日目 曇

 

武器庫のジープ結構快適だな。

 

キャロルちゃんをS09地区付近に降ろした後にS10地区へ向かった。案外別れはあっけなかったもので、彼女は軽く感謝の意を伝えた程度だった。無事に到着すればいいんだが。

 

あぁそうそう、道中でとある戦術人形を拾った。名前は『M200』……まぁその、ちょっとある意味俺とスピアに因縁がある人形の個体だった。詳しく語ろうにも、内容があまりにもふざけてるので何と形容したものか。

ひとまず言えることは、ストーカー気質のM200にスピアとポチ共々追いかけられていたら物凄く平和な異世界へと迷い混んでしまったということだけだ。信じなくてもいい。俺もあまり信じられない。

 

さて肝心のM200は俺達の事を覚えてない。というのも、あからさまに致命的なバグが起きていたので一度初期化されて修理をされたらしい。願わくばまた目覚めないことを願う。執念は怖いぞ。

 

……それでまぁ、M200案件でまた厄介事があるんだ。何で俺がM200を拾ったのかと言うとな、彼女を輸送していたキャラバンが人類人権団体の小規模集団に壊滅一歩手前のところをギリギリで救出したのである。生存者は……M200のみだ。一応I.O.Pへ連絡をしたところ、そのまま彼女をS10地区の基地へ送ってくれと言われてしまった。何か杜撰じゃねぇかお前ら……ついでだから問題ないけど。

それは兎も角、さっきM200は初期化されていると言ったな?

 

俺、間違えて起動しちゃったんだよね。彼女を。

戦術人形ってさ、確か起動前に誰が指揮官か、ご主人かを設定するらしいんだけどその過程を吹っ飛ばしたらどうなると思う?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正解は目の前の人間がご主人様になるってわけ。

……どうしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

372日目 晴

 

とりあえずお嬢に連絡してM200のことを相談した。

爆笑された。彼女の気持ちは分かるから怒る気にもなれなかった。

お嬢曰く、M200の状態は基地でまた調整は可能であるから問題ないそうだ。だからそのままこっちに来ても大丈夫みたいだ。

とりあえず急いで向かおう。

 

ポチとM200が謎の火花を散らしてるからな!!!知らねぇよ誰が俺の従者として相応しいかとか!!!

 

俺にとっちゃポチの方が大切だけどさ……でも迂闊に言うと危ない。ここは適当に流しておこう。うん。俺は学習したからな。

だから変な笑いをするんじゃあない!ポチ!!電気ショックだ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

373日目 雨時々曇

 

少々盗賊との小競り合いがあったものの、何とかS10地区へ到着。M200を基地の人形へ預けて応接室でコーマック指揮官…お嬢を待った。

5分程して彼女とその副官G36…『ローゼ』がやって来た。久し振りに会う彼女たちは、戦場に揉まれたのか若干顔付きが逞しくなっている。

適当な雑談を交え、お茶会を何時やるのかと話を振ったら明日やると教えてくれた。

 

じゃあ仕方ない……ということで俺は宿舎の一室を借りて日記を書いている。夜風が何だか気持ちが良かった。

それに今日は満月だ。ちょっとぐらい酒を拝借しても文句は言われないはずだ。

 

ということで食料庫にやって来た。M16に捕まった。酒盛りに付き合うことになってしまった。

いや、軽く飲む程度かなーって思ってたんだけどさ、向こうが凄い勢いで飲ませてくるのよ。やれ久々なんだから飲もうぜだの満月が綺麗なんだしいいだろだの。全くアイツらしいんだが、明日に響く事を考えて欲しかった。お陰で視界が揺れてる。

あの飲兵衛は現在この部屋の窓辺で飲んでるんだが……俺そろそろ寝たい。

 

まぁいいか。ポチは先にスリープ入ってるし俺も寝よ。

二日酔いにはならないで欲しいもんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

374日目 晴

 

何かお茶会のお客様にめっちゃ見覚えある褐色の女の子居るんだけど。

詳しく言ったら鉄血工造で見た子なんだけど。えっ?

 

ついでに他のハイエンド達も居るんですが……。

 







M200はちゃんと調整されました。多分、きっと。メイビー。

しかし今回のお茶会は随分と(ジャベリンくんの心境が)大変なことになりそうな予感……なんとかなるやろ!!
次回もお楽しみに!それではまた今度!


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傭兵、お茶会だってよ。

コミケ用の原稿やってたら時間が過ぎてしまいました……まぁ肝心のコミケもコロナで中止となりましたが。
手洗いうがいしっかりね!

それはそうと200,000UAありがとうございます!ここまで続けることが出来たのも皆様のお陰です。これからもよろしくお願いします。

では今回はお茶会…?となっております、どうぞ!


374日目 つづき

 

非常に、非常に気が気でないお茶会だった。

お茶会に現れた『エリザ』という少女は、俺があの時……鉄血工造に居た時に出会った謎の少女その人で、最近ここいら周辺に引っ越してきたそうだ…………うん、落ち着こう。端的に言ってこれは恐らくあのバ科学者が何か仕出かして来たのだろう。

俺は彼女がどんな存在なのかは分からないが非常に面倒臭い案件なのは確かだ。

 

そんな彼女をお嬢は膝に乗せて可愛がってたからろくに紅茶も楽しめねぇ。お前が今撫でてるのは(多分)核爆弾だぞ!!!

しかもだ、ハイエンドモデルも居やがる。スケアクロウと……狩人だ。狩人はどうやら俺が代理人に追っかけ回されてる時期辺りに農園へやって来たようだ。

二人は大人しく他の人形と談笑しているが、気付かれてないのだろうか……いや、大丈夫だった。相変わらず変装が上手なお陰で俺も一瞬誰なのか分からなかったし。

 

何とか今日は乗り切れたものの、あのエリザって子は何しに来たのやら……考えても仕方がないか。どうせリフィトーフェンの仕業だ。知らん知らん。

明日は農園の様子でも見に行こう。

 

あぁそうだ、武器庫にも少しの間こっちに居る事を伝えておかなければ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

375日目 曇

 

今日は農園にやって来た。農作物は順調に育っており、この前は収穫もしたそうだ。

今現在この農園に居るのは、スケアクロウ、処刑人、狩人、侵入者だ。こいつら鉄血工造のほうでも任務があると思うんだが何時もここに居るんだろうか?

 

……どうやらお嬢の基地の人形へ頼んでるみたいだ。敵同士じゃね?とか思ったけど、スケアクロウ曰くこれはこれ、それはそれであるらしい。ドライだね君たち。

それはいいとして……やはり農園は相変わらずだった。広いとも狭いとも言えない微妙な農園だが、畜産をしたり野菜を作ったり……というか始めて間もないのに色んな事に手を出してるよね。今のところはこれ以上拡張しないとは言っていたが俺は本気でそうして欲しいと思ってる。

元は俺の趣味で始めた畑だからな。もっと広くなったら俺一人じゃどうにも出来ねぇよ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

376日目 晴

 

何となくそこら辺を歩いていたら桜を見つけた。野生かそれとも誰かが植えたのか。ただかなり立派な桜だったから恐らくかなり前からあったのだろう。

ちょうど満開であったので暫くポチと一緒に眺めていたら、訓練のサボりなのかM16がジャック・ダニエル片手にやって来た。

どうせ俺もすることが無いので一緒に花見酒と洒落こむことになった。

そういえば、こうやって彼女とゆっくり酒を飲みながらくだらない話をするのは久し振りだ。互いに距離的な問題と任務があったせいで連絡を一つも出来なかったし。

こうやって酒を飲みながら終始平穏無事に行くのかと思えばところがどっこいそんな上手く行くはずは無かった。何故かと言えば、彼女が突然この前の代理人とのアレを話題に出して来たからだ。

本当にビックリした。口に含んでた酒をポチに吹いてしまったレベルで。

いきなり酒を吹き掛けられて転がるポチを横目に咳き込む俺が何でそれを知ってるんだって聞くと、さらりと尾行をしてたなんて言われた。

流石に天を仰いでしまったわこの野郎。

 

『あの女性は誰だったんだ?』って聞かれるもんだから、俺は適当に腐れ縁の知り合いだって濁した。間違った事は言っちゃいない。

それを聞いたM16は何処か安心したような顔をして酒を注いでくれた。

今思えば確実に危なかった……もしバレてたらどうなってたことやら。俺の推測じゃ代理人は多分AR小隊を壊滅の危機まで追い込んだ張本人だと睨んでる。

 

何処まで嘘を突き通せるかなぁ……不安だぜ。そして今日は農園のほうで寝る。明日は何をしようか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

377日目 雨

 

リフィトーフェンがやって来やがった。だが何時もの余裕綽々な態度とは打って変わって随分と焦り気味。何事かと聞けばエリザを探しているとか。あっれー?

どうやらエリザがここへ来たのはリフィトーフェンの手引きでは無いらしい。彼曰く本来なら鉄血工造本拠地に引きこもってるはずだったのだが、予想外に彼女が動いてしまったようだ。

状況が少々読めなくなってきた。エリザは一体何をしに……今日はリフィトーフェンと一緒に彼女を探しに出掛ける。

 

面倒事は起きてくれるなよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

377日目 つづき

 

エリザを見つけた。ただし面倒事付きで。

何でこの地区に武器庫でもマークしてた要注意団体が居るんだよ!?

 

 

 

 

 

 

 

 







厄介事が次から次へと……。
まぁジャベリンくんならどうにか出来るやろ!リフィトーフェンもおるしな!!!

コメント及び評価は執筆の支えになります。どうぞよろしくお願いします!それではまた今度!!


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傭兵、七難八苦だってよ。

378日目 雨

 

最近嫌なことが立て続けに起きている気がする。いや、気がするという言葉で済むような状態ではない。

一先ず昨日の輩どもを取っ捕まえて色々吐かせたんだが、この地区の下見として派遣されてきたようだ。どうやらS10地区は人も少なく尚且つ自然が豊富であるため拠点作りに最適だとかなんとか。かなり不味い状況かなこりゃあ……お嬢とグリフィン、武器庫にも報告しておこう。

因みにだ、この野郎共が所属するその団体なんだが、かなりの規模を誇っていた。何で過去形かと言うと……結構前に武器庫へ襲撃を仕掛けてきた際にこっちの全力を込めて壊滅状態へ持ち込んだからである。えーと……確か俺が67日目に書いてた団体だったかな。

つまりコイツらは残党ということか。連行しないとな。

 

さて、悪漢の処遇は良いとして……エリザは何故こんなところに来たのか。事情を詳しく聞いてみる。

彼女曰く、ずっと引きこもって暇だったから時々ハイエンドモデルの信号が出ているこの地区へやって来たそうだ。代理人に内緒で。

大事な事だからもう一回言うぞ?代理人に内緒でだ。これ不味くないか?しかもエリザは代理人も来るかもとか言いやがった!!

アイツと対峙するには早すぎると思った俺はこれ聞いた瞬間帰る決意しちゃったよ。

 

お嬢やスケアクロウたちには悪いが俺は帰らせて貰う!!こんなところに居られるか!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

379日目 曇

 

昨日は逃げる逃げると息巻いてたが結局駄目だった。

不幸というのは連続してしまうもので、いきなりあの要注意団体が武装してやって来たのである。どうやら捕まえてた奴等が救難信号を出していたらしく、それを受信して救出しに来たようだ。

勿論お嬢の所に連絡を寄越し、こっちも応戦していたのだが……被弾してしまった。肩と足に一発ずつな。幸いにして撃退出来たし致命傷は免れたものの、治療にやって来たS10地区基地の看護用人形から暫く安静にしておくようにと言われてしまった。

 

つまり俺は入院中となる。お嬢に思い切り殴られて怒られるわローゼに説教されるわこっそり様子を見に来たリフィトーフェンにさえも心配されるわで散々だった。

今はお見舞いに来てくれたM16と共に居るが、彼女も彼女で相当俺のことを心配している。

いやはや……まさか彼女の口から『お前が傷付く姿を見たくない。頼むから無理をしないでくれ』なんて台詞が吐き出される日が来るとはなぁ。M16には失礼だが、どちらかというと豪快に笑って災難だったな!って言いそうなタイプだと思ってた。

あんな真剣な顔してそんな台詞言われちゃ首を縦に振るしかない。

 

これ416にも言われた台詞だしなぁ……いやでも、あの時動けたのリフィトーフェンと俺だけだったし……つまらん言い訳になるなこれ。

無理をしない努力をしよう。うん。女を泣かすのは俺の性分じゃあない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

380日目 雨

 

入院二日目。侵入者と狩人がお見舞いにやって来た。仕事も無く暇だったらしい。

お前ら何の気兼ね無しに堂々とここ来るよね。確かにこの基地は攻略における重要拠点とも言えないけども。AR小隊が居るんだぞ?バレたらやばいだろ。

しかしコイツらも大人しくなったよな。戦場で出会った時は非常に好戦的だったのに……あのプログラムのせいじゃあるけれど。鉄血工造で初めて出会った時と同じだなこれは。辛うじて違うのは俺が入院してることとポチが喋れることぐらいか。

一先ず、侵入者がどこで見つけたのか古い人生ゲームをもってきたので遊んだ。

 

因みに結果はポチの全勝。ゲームとはいえハイエンドモデルを下すダイナゲートって何者だよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

381日目 晴

 

リフィトーフェンがまたお見舞いにやって来た。エリザを連れて。やめろ。

 

アイツご丁寧に変装もしてたけど付け髭だけじゃアウトだろ……エリザも何か真似してたし。

幸いにして今日は彼ら以外来なかったから大丈夫だったものの、迂闊じゃないか?リフィトーフェンは確かに逃げ足が早いし引き際も分かってる男だが、何時しか相手を舐めてしまったがために墓穴を掘りそうだ。そして今はエリザだって居る。その存在をグリフィンに知られちゃ一大事だし何より俺が第一接触者となって取り調べされる未来が目に見えてる。

だからお見舞いするならちゃんと変装して欲しかった。

 

だって俺が今ヤバイことになってんだよ!!!!!!!!!!!!

どうして俺は国家保安局に連行されて独房に入れられてるんだ!?リフィトーフェンとエリザと接触した可能性があるから!?だろうな!!!

 

いやマジで勘弁してくれ……。

 

 

 

 

 

 

 

 







愛猫が死んでしまったりとメンタル面で多大なダメージ受けつつ復活しましたサマシュです()
ジャベリンくん、とうとう国家保安局に連行です。恨むならリフィトーフェンを恨みましょう…。

それはそうと最近なんとなくコラボのお話とかまた書きたいなぁと思いながら執筆をしております。しかし恐れ多く感じることも多々あるのでずるずると更新を続けていってしまう次第な日々です。どうしたものか。

さぁ次回は取り調べを受けるジャベリンくんです。ついでにあのキャラクターも出てくるかも?
次回もお楽しみに!また今度!!


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傭兵、連行だってよ。

Q.どうしてこんなに嫌なことが続くんですか?

A.君が自ら蝶事件の首謀者や鉄血の首魁と接触するからだよ。






382日目 天気不明

 

たのしいたのしい独房生活二日目。運良くポチとこの日記帳は没収されなかったので監視に見つからないように日記を書くことにする。

今回行われた取り調べなんだが、俺は何と言われようともシラを切った。

リフィトーフェンに対して言いたい文句は沢山あるが、彼の情報は絶対に言わない。今、白状してしまえば損になることは明らかなんだ。代理人しかり、義眼のことしかり。

アイツも悪い野郎だよ。俺が協力する代わりに色々と手助けをしてくれるもんだから裏切れない。傭兵稼業をやってると信用と報酬は大事だって分かってくるから尚更だ。

 

取り調べをしていた奴もそれを分かってか、今度はポチの解析を始めたものの……あまり芳しい成果は出なかったようだ。自慢じゃないがポチにかけてるセキュリティはかなりのものだ。重要な情報を自然な形で空白として見えなくしてる上にもしも無理に開けようものなら直ぐ様削除される仕様だ。

解除キーは俺とリフィトーフェンしか知らない。

拷問されても吐かないつもりだ。

 

早く解放されるといいんだが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

383日目 天気不明

 

何故か取調官がスピアになったんだけど。アイツ曰くアンジェリアというスピアの雇い主が突然俺の相手をしろと命令してきたらしい。人使いの荒いこったな。

お互い大変だなと慰め合いながらのんびりとした取り調べをした。勿論スピアには悪いが本当のことは言っていない。ポチにも言わせていない。スピアは俺やポチの嘘に気付いていたが、アイコンタクトで絶対に口外しないように伝えておいた。ちゃんと頷いていたあたり、分かってくれたようだ。

 

取り敢えずスピアには早めに俺を解放してもらうように頼み、ついでに今度飲もうと約束を取り付けた。

 

変なことは言ってないだろうな……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

384日目 晴

 

確かに早く解放してくれとは頼んだが……翌日解放されるなんて思いもしなかったし、怪我したことがバレて武器庫の衛生班に連行されてまた病院の世話になることになった。

ということで入院生活の再会だ。今回ばかりは面会を基本的に断って貰うことにした。ここ最近知り合い絡みで碌なことが無かったからな。ここに来るのは健診で来る衛生班か俺と関係の深い奴ら……墓守とか槍部隊の面々だけだ。ちなみに、墓守から結構お小言を頂いた。傭兵は体が資本なんだから怪我をしすぎるなとか少々耳が痛くなる内容ばかりだったよ。

隊員からもとうとう心配され始めてたし俺には悪霊でも憑いているのかもしれん……墓守に除霊でも頼もうかな。確かあの人はオカルト方面でも色々知ってるしやってくれるだろ。

 

 

 

しかし暇である。仕方がないけれど。どうやって暇つぶしをしようか、ポチと何かして遊ぼうかね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

385日目 曇

 

持って来たラップトップでネットサーフィンをしていたら、グリフィンから俺宛てに依頼が来ていた。

仕事の内容は北方の鉄血勢力圏に取り残されたグリフィン職員の救出だった。人形も何人か出動するそうだが別行動で、俺だけ単独行動だそうだ。なんかのいじめか?まぁ単独任務は慣れっこだし、人形の指揮は余り得意じゃない。

問題はここからだ。どうにもその鉄血勢力圏、『ジュピター』とかいうでっかい大砲が沢山あるらしい。なので俺は何故かHALO降下をするということが決まってしまった。

 

任務決行は再来週らしい。俺が必要だからそれまでに傷を治せだとさ。

 

 

 

 

誰か傷が何でも治る豆を食わせてくれ。最高に最悪な気分だ。

 

 

 

 





「スピア」

「ん、なんだいボス?」

「あの男は本当に何も知らないのかしら?」

「あー……実際の所私も分からんよ。少なくとも今は泳がせておけばいいんじゃないかな」

「へぇ…ならそうするわ」

「了解」

「あぁ、それと……余り変に友人を庇わないほうがいいわよ」

「分かってる。私とて引き際は理解しているさ」









ドーモ、サマシュです。
遂にジャベリン君は低体温症作戦へと向かいます。とはいえどうやらまた高高度からの侵入をやらされる模様……果たしてどうなるか、お楽しみに!!

それではまた次回!!!コメント、評価お願いしますね!!!


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傭兵、救出作戦だってよ。
準備は確実に、治療は誤魔化して。


今回の分です。ジャベリンくんは何かを画策するようで……?







 

 

386日目 晴

 

衛生班長のイージスに任務依頼のことについて相談したが、すぐに突っぱねられた。残念だが当然である。そりゃ誰でも怪我人がいきなり危険な任務へ赴こうとすれば止めるに決まってる。

とはいえ仕事がなければ俺の生活費はどんどん削られていってしまう訳で、体も鈍りに鈍る訳で。どうしてもと俺は彼女へと食い下がった。されど彼女も強情なもので全く折れてくれない。正論に正論を重ねて俺を無理矢理ベッドへ連れ戻した。やってらんねぇ。

 

こうなってしまえば彼女を相手にどうにもならないのは最早仕方ない。確か昔、剣部隊のクレイモアもイージスに早く退院させてくれと迫ったら即刻鎮静剤打ち込まれてベッドに拘束されたかな。

……俺も下手すりゃこうなる可能性あるな。今日は大人しく従おう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

387日目 晴

 

一先ず、任務でどんな武器を使うか考えてる。

救出作戦といっても俺は一人でしかも空から侵入だ。装備は必要最低限のほうが良さそうだが……かといって軽装で居るのもダメか。どうせ一週間以上は敵地に居なきゃならんだろうし。弾は出来る限り威力の高く数発で無力化出来るもの……SCARでいいや。非常時に備えてグレネードランチャーも持っとこう。サイドアームはM9、そして万が一大集団との戦闘となった時のために……レールガンを持っていく。

……やっぱ重くなりそうだ。いや、でもどうせ食料とかテントも持っていくし変わらねぇな。最悪ポチに運ばせるか。

 

なお、ポチにそう言ってみたら結構喜ばれた。いやそこ喜ぶのかよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

388日目 曇

 

墓守が葬儀屋を連れてお見舞いにやって来た。

別に何回も来る必要もないんだけどな。

 

しかし邪険に扱う必要もないし普通に適当な雑談をした。俺の好きな林檎も持ってきてくれたからな……美味かった。

それはそうと雑談しているうちに依頼の話へと移ったんだが、墓守が随分と魅力的な提案を出してくれた。それは“社長から静養をしろと言われたという嘘をつき、その事実確認の間に夜逃げする”というヤツである。

勿論それには準備が必要だ。幸い社長は珍しく長期任務に従事する予定だ。彼が任務へ出た直前に作戦を決行しよう。

 

それにしても墓守、意外と甘いというか……俺が神妙な顔で頼んだら快く引き受けてくれた。こりゃ後でお礼をしなきゃいけないな。

紅茶でもご馳走しよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

389日目 晴

 

準備開始。何とかバレずにやっていくとしよう。

一先ずは弓の諜報部の奴を懐柔して、書類の偽造だ。イージスは疑り深いが、社長のこととなると案外緩くなる。それが何故なのかは知らないが、これを上手く使うのは大事だろうて。

そして装備の調達……これは武器庫のガンスミス達を頼ればいい。俺の愛銃も一応預けてたし、向こうで過ごすために必要なものだって直ぐ支給してくれる。念のためにここらへんはトライデントかパルチザンに頼んでおこう。

あと夜逃げの方法だが……この病院は武器庫本社伝いになっている。つまりすぐに逃げることが出来るのだ。

 

よし、ビジョンが浮かんできたぞ。作戦決行は五日後だ。日記も少し控えて準備に専念するとしよう。

 

 

 

 

 









ここ最近書いてて思ったこと。

ジャベリンくん、割とワーカーホリック気味では??

ということでドーモサマシュです。コロナウィルス感染爆発防止のあおりを受けてバイト先が閉鎖してしまいお賃金の危機です。仕事探さないと……。
まぁそれ以上に傭兵日記の更新速度も上がりそうです。暇ですからね。

では次回、ジャベリンくんは病院からの脱出を試みます!さぁどうなるか!!

またこんど!!


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任務は順調、不測は常々。

救出作戦、始まります。


395日目 雨

 

作戦は成功。武器と装備その他諸々をトライデントから受け取ってさっさと逃げることが出来た。

後は嘘がどれだけ効力を発揮してくれるかのみである。

 

ということで今俺はグリフィンのとある場所にてブリーフィングをしている。今回はヘリアントスさんによるものだった。まぁ基本的に人形達に向けて話してたんですがね。

因みに救助対象の名前は『アルバート・スミス』。珍しいことにグリフィンで整備士をやってる男だそうだ。物好きかそれとも類い稀な技術を持ってるからなのやら……。

俺に対する作戦内容云々はブリーフィング後に伝えられた。どうやら人形達は陽動で、俺とポチが救難信号が最後に確認された場所に潜入、そして対象を発見したら救助という手筈だそうだ。

敵の戦力は相当だそうだ。まぁ何せ砲台があるもんな。戦略的位置としては相当重要な場所だろう。鉄血側もかなり強固な防衛拠点を築いていると聞く。

正面突破はどう考えても難しい。だから俺が必要だったわけだな。

人形達がどうにかこうにかやってる間にさっさと救助しちまえばいいんだな。

 

せいぜい見つからないように動かないとなぁこりゃ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

396日目 曇

 

作戦当日。エンジンの音が響く機内で日記を書いている。ふと通信端末を見れば見慣れた電話番号から大量の着信履歴。これはバレちまったなと……まぁ傷もそれなりに治ってるし作戦行動には何ら障害はない。

それにしても……途中でヘリアントスさんから連絡が入った。それはどうにも同じ戦域内でAR小隊が雪山で遭難したそうだ。流石に他の部隊を行かせるそうだが、可能であれば対象を回収させたあとに支援に向かってくれと言われた。

追加報酬を貰えるから一応頭の隅っこに置いておこう。

とはいえ俺の今までのハードラックさを考えるとあんまり期待は出来ない。また腹を抉られたり武器が壊されたりするのは御免だ。

 

ふと外を眺めてみたのだが、見えるのは雲ばかり。潜入にはもってこいだが旅行としちゃ幾分か物足りない。でっかい花火でも来ないかなんて思ったが縁起でもないので直ぐに考えるのをやめた。

ジュピターって対空も出来るとか聞いたからな。おぉ怖い。

 

……そろそろ降下の時間だ。気合い入れて頑張るとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

396日目 続き

 

予定の地点より五キロほど離れて着地してしまった。幸い装備その他諸々は無事だが……俺の降りた場所はどうやら敵地ど真ん中だったようで、降りて直ぐに鉄血人形達が集まってきた。

ちょっと不味かったので義眼のジャミングを使い目を眩まして何とか逃げ延びたものの、追跡はまだ続いているだろう。全くついてないぜ。

取り敢えず少し予定着地点よりズレてしまったから少々遅れると司令部に連絡をしておいた。

 

安全を確保するためにポチを先行させてるが、今のところ脅威は発見されていない。

早くポチの残した印に沿って合流するとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

397日目 雪

 

対象を発見……アルバート・スミスという男は俺よりも年下の青年だった。彼曰く二十歳を過ぎたぐらいだとかなんとか。年相応におちゃらけた奴だが、自前の爆弾を作ってる辺り、かなり技術を持った野郎だ。あと一目で俺が義眼を付けてることを見抜いてきた。何者なんだ。

俺を一目見た瞬間『な、なぁ、救出に来てくれたことは嬉しいんだけど取り敢えずその義眼触らせてくれない?』ってさ。びっくりしたよ本当。しかもポチだって喋れるのが分かった瞬間レンチ片手に迫って来たし。

 

さっさとこの変人を連れて回収地点まで向かいたいのは山々なんだけれど、困ったことに敵の大群がやって来た。

今は呑気に日記なんぞ書いてないで防衛しろとか言われそうなんだがね、アルバートがどうやら何か策があるらしく、のんびりしててくれと言われたからこうやって書いてる。

 

……いや、うん。正確に言うと強制されてんだよ。何でだよ。

 

……凄く不安だ。

 

 

 

 

 







【ただの茶番】


≪この人怖いですご主人。ずっと私の体を嘗め回すように見てますキモいです≫

「まぁまぁそんな事言うなよポチちゃん。俺はただ君の中身を知りたいんだぐっふっふっふ……」

「うわ」





ドーモサマシュです。ジャベリンくんの救出作戦が始まりましたね……そしてもちろんあの鉄血JKやらなんやらが出て来ます。楽しみですね()

次回、整備士くんアーキテクトに目を付けられるの巻。お楽しみに!


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不測は乗り越え、爆破は巻き込まれ。

「アーキテクト、私はAR小隊を狩ってくる」

「んー、いってらー」

「くれぐれも勝手に動くなよ?それで一昨日手ひどくやられたんだからな」

「分かってるって。あたしだって馬鹿じゃないし」

「……行ってくる」




「さぁてここにダミーちゃん置いていってやろっと……絶対リベンジするんだから」


 

 

「…………」

 

 

 水滴の滴る室内。アルバートにゆっくりしててくれと言われた俺は、少し落ち着きなく銃を弄っている。勿論先日メンテナンスしたばかりのSCARやM9はピカピカの新品さながらで今さら何か手を着けても意味をなさない。

 つまりそれほど自分自身が不安に迫られているということだ。正直なところ、今すぐにでも窓に張り付いて油断なく外を見ていたい。

 

 

『ご主人、敵が向かってきています……数は一個小隊ほどですね』

 

「おっおっ、来たか来たか~?」

 

 

 外に偵察へ出していたポチから連絡が入った。鉄血はどうやらこちらを潰しに来る気満々だそうだ。

 一粒の汗が頬を伝う。何とも言い難い不安な気持ちに包まれた。

 そんな俺とは正反対に楽観的なアルバートは、起爆スイッチらしきリモコンを片手に今か今かと窓を覗いていた。どうやら地雷か何かでも仕掛けていると見た。

 俺は銃を担ぎ、彼と同じく窓から外を見てみることにした。

 

 

「……おいおい、マンティコアまで居やがるぞ。ポチ、そろそろこっちに戻ってきてくれ」

 

『分かりました』

 

「はっはー、それだけ爆破しがいがあるってことよ」

 

「そうかい」

 

 

 銃のセーフティを外して何時でも撃てるようにしておく。

 窓の先で草木を踏みしめながら歩く鉄血の集団は、こちらへと真っ直ぐ近付いてきていた。

 俺はアルバートに視線を送る。

 

 

「まだだぜジャベリン」

 

「どのくらいまで近付かせるんだ?」

 

「この家から20メートルほどだよ」

 

「大丈夫か?全く不安だぜクソッタレ」

 

 

 俺の心配に親指を立てて応答するアルバート。

 任せとけということだろう。俺は肩を竦めてまた窓から外を見据える。鉄血の集団は目標地点まであと数メートルとなっていた。

 

 

「5メートル……」

 

 

 徐々に、徐々に奴らは近づいてくる。この先に罠があるなんて知らずに。

 念のために俺はトリガーに指を掛けて何時でも撃てるようにしておく。

 

 

「3……2……いぃち……ゼロ」

 

 

 かちりと音がした。その刹那、目の前が真っ白になった。

 

 

「うおっ!?!」

 

「ヒューッ!!良い威力だぜ!!!」

 

 

 爆風で窓が酷く揺れる。俺は耳をつんざく音に辟易しながら爆発地点に視線を向けた。

 そこはまだ土煙に覆われていたが、あの威力だ。せいぜい生きててもボロボロの状態だろう。一応状況確認のためにポチに通信を飛ばした。

 

 

「ポチ、お前の居るところから何か反応は感じられるか?」

 

『……今のところは何も。レーダーに影も形もありません』

 

「了解。この家屋の裏手から出るぞ」

 

 

 ポチの報告から脅威を排除できたことに胸をなでおろし、ポチとアルバートと共に外へ出た。

 確か回収地点はここから東へ5キロほど……遠いものだ。流石にジュピターが居るから仕方ないとはいえもう少しマシな位置に指定出来なかったのか。

 だが今更である。俺は目の前で雪だるまを作りだした呑気な救助対象に呆れながら司令部へと通信を繋げた。

 

 

「こちらジャベリン。対象を発見、保護した。これより回収地点へ向かうオーバー」

 

『分かった。今すぐ回収ヘリを向かわせる、急いで動いてくれ』

 

「了解。ジャベリンアウト」

 

 

 通信を切りアルバートを連れて回収地点へと急ぐ。今から歩いて一時間ほどか、多少の遭遇戦はあるだろうが出来る限り戦闘は避けておきたい。アルバートも多少の戦闘行為は出来るだろうが、今は非戦闘員として考えておいた方が良いだろう。

 

 

「ジャベリン、なんかハンドガンとかねぇの?護身用に持っときたいんだけど」

 

「撃てるのか?」

 

「俺だってグリフィンの職員だぜ?あんたほどじゃないが、使えるよ」

 

 

 そう言って片手をこちらへ差し出すアルバート。俺は少し不安に思ったが、無いよりはマシだろうということでレッグホルスターに収めていたM9を彼へ渡した。アルバートは早速M9をくるくると回したり撃つマネをしたりと、かなり自信ありげに遊んでいる。

 そんなアルバートを横目に、俺たちは廃村の中へと歩を進めて行った。

 

 

「ここまだ放棄されてから時間経って無さそうだな」

 

≪そうですね。足跡も幾らか残ってます≫

 

 

 ふとアルバートが何か引っかかるような物言いをして、ポチがそれを裏付けるような証拠を見つけた。

 確かに車輪の跡や丁度ポチと同じような足跡も見える。

 

 空気が途端に張り詰めた。

 

 

「……俺から離れるなよ?」

 

 

 俺はトリガーに指を掛けて何時でも撃てるように準備をした。そうして足を一歩進もうとした途端―――――――――――――

 

 

「伏せろジャベリン!!!!!」

「なっ!!?」

 

 

――――アルバートに体を抑え込まれた。何事かと状況を判断する間もなく爆音が聴覚を支配する。

 

 抜かった。敵はどうやら待ち構えていたらしい。それが俺達に対してなのか他の人形部隊に対してなのかは分からないが相当に殺す気であるらしい。

 兎に角ここを離れるのが最優先だ。確か左手方向に森があったはずなのでそこまで向かうしかない。

 

 

「アルバート!!ポチ!!!森へ向かうぞ着いてこい!!!」

 

「了解!!」

 

≪はい!!≫

 

 

 義眼の機能をアクティブにして森へ一直線に走る。廃村はすでに迫撃砲の嵐に蹂躙されており、爆炎や木材の破片が舞っていた。

 それを確認したのも束の間、森の中へ入る。今度こそは大丈夫だろうと思って俺は義眼の欺瞞機能を停止させた。そしてポチに周辺警戒をさせておき、司令部へと通信を繋げた。

 

 

「こちらジャベリン。応答してくれ、敵の待ち伏せにあって現在逃亡中。回収地点から2、3キロ離れた地点で攻撃に遭った。回収地点の変更は可能か?オーバー」

 

『こちら司令部、無人機の情報からそちらを確認。その森を北へ抜けた先に回収地点を再設定した。くれぐれも敵に見つからないようにしてくれ』

 

「了解。ジャベリンアウト…聞いてたな?行くぞ」

 

 

 俺たちはまた歩き出した。アルバートが多少文句を垂れていたがこればかりは仕方ない。

 暫く北へ進んでいると、アルバートがまた口を開いた。

 

 

「……なぁジャベリン」

 

「今度は何だよ」

 

「何か聞こえね?」

 

 

 ……言われてみれば聞こえる。

 もう少し耳を澄ますと、誰かが鼻歌を歌っているように聞こえた。

 

 

「……ポチ」

 

≪…鉄血ハイエンドモデルです。下級人形も何体か居ますね≫

 

「げぇっ…まさか」

 

「何か知ってるのかアルバート?」

 

 

 彼が何やら知っている様子。だがいかにも嫌そうな顔をしている辺り、余りいい思い出ではなさそうだ。

 だが今は情報が欲しい。俺は彼に話してくれるように促した。

 

 

「あー…実は「どっかーーーーーーーーーーん!!!!!!!!!!!!

 

 

 しかし彼が口を開いた瞬間、戦場には不似合いな元気いっぱいの声と爆発と共に煙に包まれた。

 これまた俺たちが何事かと混乱している内に、さっきの声がまた聞こえてくる。

 

 

爆発とは芸術だ!!!爆発とはロマンだ!!!爆発とは人生だ!!!私がやらずに誰がする!!!

 

 

 随分と愉快な語り口上が聞こえてくる。

 

 

あれは誰だ!?鳥か!?無人機か!?いーや、あたしだよ!!!!

 

 

 更なる爆発音が聞こえた。そして土煙も晴れてきた。

 

 

全てを破壊し全てを創る!!!!その身はまさしく建築士!!!!

 

 

 ドン!という効果音でも聞こえて来そうな決めポーズで彼女は現れた!

 

 

夢見てまじかるキルゼムオール!!!!粉砕爆砕大喝采!!!!!みんなのアーキテクトちゃんが華麗に登場ぉ!!!!!!!……なぁーんちゃってネ?」

 

「……なんだこれ」

 

≪いつにも増してまぁ……≫

 

 

 鉄血ハイエンドモデル『アーキテクト』。

 彼女は非常にハイテンションな状態で俺達の前に立ちふさがったのだった。

 

 

 

 







Twitterで落書き投稿してたらこんなに時間が……それはそうと私の推し人形を出すことが出来ました。とても嬉しい……。

さて次回はアーキテクトとの戦闘となります。割とこのお話は長くなりそうですが、のんびりゆるりとお付き合いしてくださいませ。

それではまた今度!!コメント、評価待ってます!!!


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