ザンビ〜生と死の狭間を彷徨う者達への鎮魂歌〜 (ルコル)
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序章
1話


少年「ここがフリージア学園、本当に人っ子一人いないんだな。」

 

 

現在、もぬけの殻となってしまっている女子校、フリージア学園。

 

 

そこへ一人の少年、神村流斗が教会から調査の依頼を受け、足を踏み入れようとしながらそう口走った。

 

 

最もその少年、流斗は特別な力を持つ悪魔祓い師であり、教会側はこのフリージア学園集団失踪事件は、ただの集団失踪事件ではないと考え、何かこの世ならざるモノの仕業でないかと、結論づけ、流斗に調査を依頼した。

 

 

流斗自身もこの事件の背景には、何か不気味なモノを感じていた。

 

 

流斗「やはり、何か空気が張り詰めているな。とりあえず、入ってみるか。」

 

 

流斗はそう言いながら、正門の扉を開け中へ入って行く。

 

 

許可はすでに取ってあるため、扉の鍵は管理人が開けていたので、すんなり入ることが出来た。

 

 

ちなみにこの管理人は、1週間、私用で別の者に管理を任せていたので集団失踪事件に巻き込まれずに済んでいたのだ。

 

 

だが、その管理を任せられていた人物は事件に巻き込まれてしまい、管理人は責任を感じてしまっていた。

 

 

それもあってか、管理人は入ることを快く許可してくれた。

 

 

流斗「これは、嫌な空気だな。かなり重苦しい空気だ。」

 

 

扉を開け中へ進んで行くと、胸を締め付けられるような重苦しい空気に流斗は襲われた。

 

 

だが、管理人の悲痛な顔を思い出すと、流斗は立ち止まってはいられないと思い、持ってきていたライトを点灯し、歩き出した。

 

 

少し進んで行く、左側に真っ暗な闇に包まれている廊下が現れた。

 

 

流斗「この先に何かあるな。」

 

 

何かを感じ取った流斗は、それに導かれるように、ライトを向け真っ暗な廊下進んで行った。

 

 

その廊下はだいたい30メートルくらいありそうな広い廊下で、現在は照明が付いていなく、先は暗闇が濃く全く見えない。

 

 

そのまま進んで行くと、ボイラー室と書かれた扉にたどり着いた。

 

 

流斗「この中か。何か魔なるモノ感じるな。」

 

 

意を決して、扉を開けると、その中には異様な光景が広がっていた。

 

 

流斗「なんだコレは?何か儀式でも行っていたのか?」

 

 

そこには、まるで儀式のための祭壇のような物があった。

 

 

その中央には何かを木製の入れ物があり、それを囲む様にロウソクが何本か建てられていた。

 

 

木製の入れ物のフタの上には、何かの日記のような手記があった。

 

 

流斗「日記か?この学園の関係者の持ち物か何かか?ちょっと読んで見るか。」

 

 

流斗はその手記を手に取って読み始めた。

 

 

そこには、こう書かれていた。

 

 

「誰かの役に立つか分からないが念の為にこの手記を残す。私は守口という男だ。これがは読まれている頃には私はおそらくザンビというバケモノになってしまっているだろう。ザンビというのは生と死の狭間にいる者で、西洋でいうゾンビと似た存在だ。だが、ゾンビとは違う所が一つある。それはザンビは生きながらに死に、死にながらに生きる存在、つまり死んでもいるし生きてもいるという点だ。その点がゾンビとは違う所で、魂はまだその肉体にある。このフリージア学園ではすでに生徒も含め校内関係者全員がザンビとなってしまっているだろう。」

 

 

さらに流斗はその手記を読み進める。

 

 

「さらに彼らを助ける方法として、100年前、残美村という村で生きながらに生き埋めにされた女性の怨念を封印するという方法がある。ザンビはその女性の怨念による呪いによって生まれた存在だ。だから彼女の呪いを封印すれば、ザンビになったもの達は皆、元に戻る。だが、そのために私を一つ過ちを犯してしまった。呪いを封印するためには、女子生徒を一人生け贄にするしかなかった。」

 

 

流斗はその文を読んで驚愕してしまっていた

 

 

流斗(な!?これはもう集団失踪事件どころじゃないぞ!!)

 

 

そして流斗はまた手記を読み進めていく。

 

 

「それが新たな呪いを生むとも知らずに。その女子生徒は女性の呪いを直接受け、ザンビになってしまった。私は辛うじて逃げ出すことに成功したが、おそらくずっとは逃げ切れないだろう。だから私はこの手記を書き残した。」

 

 

そこで1ページが終わり、流斗は次のページをめくった。

 

 

そこにはこう書かれていた。

 

 

「だが、私はもう1つザンビになった者を元に戻す方法を考え着いた。それはそのザンビになった者にかけられた呪いそのものを消滅させてしまえばいいのではないかと。しかし、その方法にもデメリットは一つある。それはザンビの成れの果てについてだ。ザンビはそのまま放って置くと神人とという者になってしまう。そうなってはもう本当に100年前に生き埋めにされた女性の呪いを消滅させない限り、元には戻らない。さらにザンビの習性として、鏡や写真に写すとボヤけたように写る。昼間は人間のフリをして普通の人間と一緒に過ごしたり、人目から見えない所でじっと夜になるのを待っていて、夜になると、仲間を増やすために活動を開始する。さらに昼間のうちは普通に会話をしてくるので見分けがつかない。」

 

 

さらに手記は続く。

 

 

「私は自分がもしザンビになってしまっていて、しばらく何も連絡がなかったら、教会に調査が行くように手を打っておいた。どうか、この手記を読んだ教会の方、事件を解決に導いてくれ。ザンビが近くにいる時は隣に置いてある風車が勝手に回る。どうか活用してくれ。」

 

 

そこで手記は終わっていた。

 

 

流斗「なるほど、だから教会はオレにこのフリージア学園の調査を依頼したのか。確かにオレにしか出来ない内容だな。」

 

 

流斗はそう言いながら、意を決して、この事件の解決に乗り出した。



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ザンビとの遭遇
2話


流斗は手記の隣に置いてある風車を手に取った。

 

 

するとさっそく、その風車が風もなく回り始めた。

 

 

そしてどこからともなく女性の声で、わらべ歌のようなものが聞こえてきた。

 

 

「ドコイッタ?·····カエッタカ?·····ドコイッタ?·····カエッタカ?·····」

 

 

流斗「まさかこれがそうなのか!?」

 

 

ザンビの気配を察知し、急いで流斗はボイラー室から出た。

 

 

外へ出ると、風車がいっそう激しく回り出した。

 

 

それと同時に廊下の置くから足音が聞こえてきた。

 

 

カツ·····カツ·····カツ·····カツ·····

 

 

流斗「ん?なんだ?」

 

 

その足音がする方を見ていると、暗闇から一人の少女が歩いて来た。

 

 

少女「ミツケタァァ」

 

 

その少女はそう声を出したかと思うと、人間とは思えない動きでこちらに向かって来た。

 

 

流斗「クソ、さっそくお出ましか!!」

 

 

流斗はそう言って、手に何か輝く物を具現化させた。

 

 

それは流斗の武器である聖剣「デュランダル」と呼ばれる物だった。

 

 

この聖剣はあらゆる邪なる物を消滅させてしまう能力を持っている。

 

 

故にこの聖剣はそのザンビとなってしまったその少女を元に戻すことができるのだ。

 

 

流斗「聖剣【デュランダル】アストラルモード!!」

 

 

流斗がそう叫ぶと、デュランダルの刀身から光の奔流が溢れ出た。

 

 

この状態はアストラルモードと呼ばれ、肉体を傷付けずに、呪いや幻術そのもの断ち切ることができる。

 

 

少女「ガァァァァァァ!!!!!」

 

 

流斗「呪いよ!消え失せろ!!」

 

 

流斗は構わずにおぞましい動きで向かって来た少女を斬り付けた。

 

 

ザシュッ!!

 

 

アストラルモードで呪いそのものを断ち切ったので出血はせずに少女はそのまま崩れ落ちた。

 

 

流斗「アストラルモードは物質をすり抜けることはできるのはいいけど、結局狭い場所で囲まれた場合とかではやりづらそうだな。」

 

 

流斗はこれからの戦いにおいての分析をし始めた。

 

 

流斗「あまり使いたくはないが、魔法使わなきゃならなくなりそうだな。」

 

 

そんな風に分析していると、先程まで倒れていた少女が目を覚ました。

 

 

少女「う、ううん。」

 

 

流斗「おう、目が覚めた?」

 

 

少女「えっと、あなたは?」

 

 

流斗「オレは神村流斗。君は?」

 

 

楓「私は山室楓。フリージア学園の二年生だよ。よろしく。」

 

 

楓と名乗った少女はどこか不安そう顔でそう自己紹介を返した。

 

 

楓「えっと、あなたが助けてくれたの?」

 

 

流斗「うん、そうだよ。」

 

 

流斗はなるべく楓を不安がらせないように優しくそう言った。

 

 

楓「ありがとう。」

 

 

楓がそう言うと、流斗はこれまでの経緯と自分が何故ここに来たか、説明をして行った。



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3話

楓は流斗の説明を聞いて、流斗の事を最初は少し信じられないという感じだったが、助けられた事とこの状況下が重なり、それも割りとすぐに受け入れる事ができた。

 

 

楓「守口さんが手記にそんな事を。」

 

 

流斗「守口さん自身も本当はどこかでそうなる事を予感していたのかもね。」

 

 

楓「うん、もしかしたらそうかもしれない。」

 

 

流斗はここであることを楓に聞いてみることにした。

 

 

流斗「そう言えば聞きたかったんだけど、学園内に神人はいるのか?」

 

 

流斗が楓にそう訊くと、重苦しい表情を浮かべながらも答えてくれた。

 

 

楓「うん、一人だけいるよ。私のクラスの担任の先生。」

 

 

流斗「それはちょっと厄介だな。そうなってはもうあの女性の呪いそのものを消滅させない限り元には戻せないからね。殺すこともできないし。」

 

 

楓「そうだね。」

 

 

楓も先程の流斗の説明を聞いてその事は、すでに把握済みだ。

 

 

流斗「さて、まずは君の友達を全員元に戻してあげないとね。でも全員助けるには、君の案内が必要だな。」

 

 

楓「うん、わかった。お願い。みんなを助けてあげて。」

 

 

二人はお互いにそう言うと、立ち上がり楓の案内の元、廊下を進んで行った。

 

 

しばらく歩いていると、家庭科室が見えて来た。

 

 

流斗「家庭科室か。」

 

 

楓「うん、ここに亜須未がいる気がしてなんとなくね。」

 

 

そう言って楓が家庭科室のドアを開けた瞬間、流斗が手に持っていた風車が回り出した。

 

 

楓「あ!」

 

 

流斗「お出ましのようだよ。」

 

 

楓「うん!」

 

 

楓がそう返事を返すとすぐさまに流斗は気配を探し始める。

 

 

流斗「上だ!避けろ!」

 

 

楓「うん!」

 

 

二人がその場を飛び退くと同時に上から、ザンビとなった少女が飛び降りてきた。

 

 

少女「ガァァァァァァァァァァァァ!!!!!」

 

 

その少女は先程のザンビだった楓と同じく人間とは思えない動きで流斗に襲い掛かってきた。

 

 

楓「やっぱり亜須未だ!噛まれないように気を付けて!!」

 

 

流斗「この子が!?了解!!止まれ!!【ライトバインド】!!」

 

 

流斗がそう唱えると、光が輪となって彼女を拘束し、動きを封じた。

 

 

流斗「行くぞ!聖剣【デュランダル】アストラルモード!!」

 

 

流斗「呪いよ!消え失せろ!!」

 

 

流斗は動きを封じられた彼女をそのまま縦に斬り付けた。

 

 

すると、先程の楓と同じようにその亜須未と呼ばれた少女はそのまま崩れ落ちた。

 

 

それと同時に二人は亜須未に駆け寄った。

 

 

楓「亜須未!!」

 

 

流斗「良かった。呪いは消滅してるみたいだ。」

 

 

楓「良かった〜」

 

 

楓はホッとした様子でそう言った。

 

 

流斗「それにしても、助けたはいいけどこれからどうするかな·····」

 

 

楓「どうするかって、何が?」

 

 

流斗はある一つの問題が分かり、それにどう対応するか悩んでいた。

 

 

流斗「拠点が一つ必要になったんだ。さすがに助けた全員を連れて行くのは難しい。」

 

 

楓「なるほど、それならいい場所があるよ。」

 

 

楓がそう言うと、学園内のとある場所に案内してくれた。



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4話

神村流斗


年齢:17歳
性別:男性
身長:178cm
体重:65kg


この物語の主人公。キリスト教の神父を父に持ち、その関係で悪魔祓い師となった少年。特別な力を持ち、あらゆる呪い、悪魔、魔物、邪悪なる物を消滅させることができる。さらに魔法も扱える。フリージア学園集団失踪事件の調査を教会から依頼され、フリージア学園を訪れた。




聖剣【デュランダル】


流斗が悪魔祓い師になった時に教会から授けられた聖剣。聖なるオーラだけで辺りを破壊し尽くす凄まじい力を持つ。それを流斗は修行で自在にそのオーラを抑えたり出したりできるようになった。今では、さらにモードチェンジまで行えるようになっている。通常はノーマルモードの状態である。


アストラルモード


聖剣【デュランダル】がの刀身が流斗の力を纏った状態。主に相手にかけられた呪いを断ち切り、消滅させる時にこの状態になる。殺傷力が無くなるため、呪いのみを断ち斬り、殺さずに相手を助ける事ができる。


フィジカルモード


聖剣【デュランダル】のオーラが最大限に高まった状態。主に強力な相手をする時にこの状態になる。この状態になると、破壊力と斬れ味が極限まで高まり、さらにオーラも高まるため、並の魔物などでは近づくだけで斬り刻まれてしまう。


ノーマルモード


聖剣【デュランダル】の通常の状態。普段持ち歩く時は、常にこの状態である。ノーマルモードでも斬れ味は鋭く、ダイヤモンドすらも容易に斬り刻んでしまう。


流斗が案内された場所は学園内にある大きな聖堂だった。

 

 

楓「私たちの学園ではね、決まった時間になると鐘が鳴って、その鐘が鳴るとここに生徒が全員集まってお祈りをするの。」

 

 

楓は亜須未をイスにもたれかかせながそんな事を教えてくれた。

 

 

流斗「へぇ、この学園ってやっぱりキリスト教関係の学校なんだな。だから教会も同胞を助けたいと思って、オレに調査を依頼したのかもな。」

 

 

楓「そうだといいね。」

 

 

そんな話をしていると亜須未が目を覚ました。

 

 

亜須未「う、うーん·····」

 

 

楓「亜須未!目が覚めた!?」

 

 

流斗「良かった。目が覚めたみたいだね。」

 

 

亜須未は流斗を見るなり、不思議そうな表情を浮かべながら楓に流斗のことを訊く。

 

 

亜須未「楓、この人は?」

 

 

楓「この人は、神村流斗さん。今、学園で起こっている事を解決しに来てくれたの。」

 

 

亜須未「学園で起こっている事?」

 

 

楓「ああ、そっか。亜須未は最初にザンビになってしまってたから、知らなかったんだね。」

 

 

楓はこれまで起こったことの経緯と流斗がここに来ることになったまでの経緯を亜須未に全部説明した。

 

 

亜須未「え!?そんな大変なことになってるの!?」

 

 

流斗「うん、残念ながらオレたち以外はみんなザンビになってしまっているみたいなんだ。」

 

 

楓「それに私は一度、守口さんという人に100年前に生き埋めにされた女性の怨念を鎮めるための儀式で、生け贄されたんだ。」

 

 

流斗「けどその儀式は失敗に終わってしまった。山室さんがその女性の怨念によってザンビになってがために。そうなるのを予感して教会に調査依頼が行くように手配し、オレがここに来ることになった。」

 

 

亜須未「そうだったんだ。でも神村くんのこと信じてみるよ。」

 

 

流斗「ありがとう。」

 

 

亜須未は信じられないという表情だったが、助けられた恩もあり、ひとまずは流斗の話を信じてくれた。

 

 

楓「そう言えば、私達がザンビ化してどれくらい経っているの?」

 

 

楓はそう言って、ずっと気になっていた疑問を流斗に投げかけた。

 

 

流斗「全員がいなくなった日から数えると3ヶ月が経っているらしいよ。」

 

 

亜須未&楓「そんなに経っているの!?」

 

 

亜須未と楓は驚愕しながら流斗の答えにそう返した。

 

 

流斗「さてと、オレはちょっとやることがあるから二人は休んでて。」

 

 

楓「やること?」

 

 

亜須未「やることって?」

 

 

流斗「ここを拠点にして、この聖堂の回りに結界を張る。」

 

 

亜須未は分からないような感じだったが、楓には何をやるかすぐに想像出来た。

 

 

亜須未「結界ってあの結界?」

 

 

流斗「その通り、すぐ終わるから、まあ見ててよ。」

 

 

流斗はそう言うと、呪文を唱え始める。

 

 

流斗「光よ、来たれ!我求めるは清浄なる浄化をもたらす白き障壁!!【エンシェントアーク・ブレイヴ】!!!!」

 

 

その瞬間、大聖堂を包み込むようにして、白い結界が張られて行った。



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5話

光属性中級魔法【ライトバインド】


光属性、中級の拘束魔法。相手を光の輪で縛り付け、動きを封じる。




光属性最上級魔法【エンシェントアーク・ブレイヴ】


光属性、最上級の結界魔法。浄化の効果を持つ結界を広範囲に展開する魔法。上達させればさらに範囲を広げられ、さらに極めれば、結界の範囲を自在に操ることもできる。


流斗「これで良し!」

 

 

亜須未「お疲れ様。」

 

 

楓「お疲れ〜」

 

 

結果を張り終わった流斗に二人は労いの言葉を掛けてくれた。

 

 

流斗「さて、ここからは食料と水の調達だな。」

 

 

楓「そうだね。」

 

 

亜須未「確かにこのままじゃ、どっちにしろ餓死しちゃうもんね。」

 

 

流斗はここで一つ疑問が浮かび上がった。

 

 

流斗(そういや、この二人。ザンビになっている間、食事や水分補給は行えなかったはずだ。今現在の二人は、腹を空かせていたり、脱水症状を起こしていたりしないのか?)

 

 

その疑問を流斗は二人にぶつけてみることにした。

 

 

流斗「そう言えば、二人は酷い空腹感や、体の怠さとかないの?」

 

 

亜須未「そう言えば、空腹感とか喉の渇きとかは特にないな〜楓はどう?」

 

 

楓「うーん、私も特にないかな。」

 

 

流斗「そっか。ならいいんだけど。」

 

 

流斗(ザンビになっている間は空腹感とかは表れていなかったのか。これも謎だな。)

 

 

疑問に感じたことだが結局ザンビに関する謎が深まるだけだったので、流斗はそこで考えるのを止めた。

 

 

流斗「それじゃ、食料と水を調達しに行く訳だけども、オレはフリージア学園の構造はほとんど知らない。だからまた案内を山室さんに頼んでもいい?」

 

 

楓「うん、わかった。任せて。」

 

 

亜須未「私はどうすればいい?」

 

 

流斗「結界を張ったとはいえ、まだ完全に安全とは言えないから、オレたちについてきて。」

 

 

そうして、3人はまたザンビたちの蔓延る、校舎内の探索を始めた。

 

 

流斗「あ、一つ聞きたいんだけども。」

 

 

楓「なに?」

 

 

流斗「聖堂から一番遠い所ってどこかな?」

 

 

楓「音楽室だよ。なんで?」

 

 

流斗「いや、そこを第2の拠点にしようかなと思って。」

 

 

その話を聞いていた亜須未が流斗に問い掛ける。

 

 

亜須未「なんでまたそんな遠い所を拠点に?」

 

 

流斗「この今、食料調達の途中助けた人達をそこに集めるためだよ。そうすれば、いちいち聖堂に戻らずに安全を確保できる。安全な場所を増やせば少しは安心できるでしょ?」

 

 

亜須未「なるほど、そういう事ね。」

 

 

流斗の答えに亜須未は感心した様子で返事を返した。

 

 

その時、どこからともなく流斗が最初に聴いたわらべ歌のような歌が聞こえてきた。

 

 

「ドコヘイッタ?·····カエッタカ?·····ドコヘイッタ?·····カエッタカ?·····」

 

 

同時に流斗が持っている風車がまたもや勝手に回り出した。

 

 

流斗「二人とも来るよ!!」

 

 

亜須未&楓「ッ!!」

 

 

流斗は二人にそう声をかけ、ザンビの気配を探りに入る。

 

 

流斗「聖剣【デュランダル】アストラルモード!!」

 

 

流斗「チッ、どうやら今回は複数来るようだよ!二人ともオレの側を離れないで!!!」

 

 

亜須未&楓「うん!わかった!!」

 

 

流斗が二人にそう促した瞬間、ザンビと化したフリージア学園の制服を着た少女が3人現れた。

 

 

流斗「今の所は3人だけのようだね。山室さん、あの子達が誰か分かる?」

 

 

流斗がそう訊くと、楓は必死に答えた。

 

 

楓「あのジャージを来ているのが榊瀬奈、その後ろの子が秋吉凛、その隣の子が一条詩織だよ。」

 

 

凛「キシャァァァァァ!!!!」

 

 

瀬奈「ガァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」

 

 

詩織「グアァァァァァァァァ!!!!!」

 

 

楓が答え終わると同時にその3人は一斉に襲い掛かってきた。

 

 

流斗「まずは動きを止めよう。」

 

 

流斗「痛いけどちょっと我慢してね。【セイントバインド】!!」

 

 

流斗は光属性上級の拘束魔法を唱え、光の輪が三つ現れ、3人の身体を縛り付け動きを封じた。

 

 

その3人はなんとか脱出しようと、もがいてはいるがビクともしない。



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6話

流斗「ごめんね。今、元に戻してあげるから。呪いよ!!消え失せろ!!」

 

 

ザシュッ!!ザシュッ!!ザシュッ!!

 

 

身動きが取れない3人を聖剣【デュランダル】で斬り付け、3人にかけられた呪いを断ち切り、消滅させた。

 

 

呪いから解放された3人はその場に崩れ落ちた。

 

 

楓「瀬奈!!凛!!詩織!!」

 

 

亜須未「す、すごい!!」

 

 

流斗「うん、3人とも大丈夫みたいだ。呪いも消えてる。」

 

 

流斗達はそのまま3人を近くの教室へ連れていき、安全を確保した。

 

 

それから程なくして、3人は目を覚ました。

 

 

瀬奈&凛&詩織「う、うーん·····」

 

 

亜須未「3人とも気がついた?」

 

 

瀬奈「うん。ここは?」

 

 

楓「教室だよ。たまたま私たちの教室だったみたい。」

 

 

凛「あれ?私なにしてたんだろ?」

 

 

詩織「あれ?ここは?」

 

 

流斗「良かった。気がついたみたいだね。」

 

 

流斗は3人の元気な姿を見て、少し安心した様子でそう言った。

 

 

凛「あれ?見たことない顔ですね。」

 

 

瀬奈「確かに見たことない顔だな。」

 

 

詩織「そうですね。」

 

 

流斗「あ、自己紹介がまだだったね。オレは神村流斗。よろしくね。」

 

 

凛「私は秋吉凛だよ。」

 

 

瀬奈「私は榊瀬奈だ。よろしく。」

 

 

詩織「一条詩織です。よろしくお願いします。」

 

 

3人の自己紹介が終わると流斗はこれまでにあった経緯を説明する。

 

 

瀬奈「そんな事になってるのか今は。」

 

 

凛「怖いよぉ〜」

 

 

詩織「状況把握です。」

 

 

流斗の説明は3人にとってにわかに信じられないことだったのだが、現状を目の当たりにし、信じざるを得なかった。

 

 

瀬奈「凛と私を助けてくれて感謝する。できればお礼がしたい。」

 

 

流斗「お礼はこの事件がちゃんと収束してからでいいよ。」

 

 

瀬奈「そっか、わかった。」

 

 

瀬奈のお礼に関して流斗は保留にし、事件が収束するまで待ってもらう事にした。

 

 

楓「あ、神村くん。ここ実は私たちの教室なの。」

 

 

流斗「そうなのか?じゃあ何か荷物持って行く?」

 

 

楓に対して流斗はそう提案した。

 

 

楓「ううん、大丈夫。」

 

 

流斗「そっか、わかった。他の皆は荷物とか大丈夫?」

 

 

他の皆にもそう訊くと全員大丈夫という返事が返ってきた。

 

 

亜須未「そう言えば、まだ食料と水がどこにあるか言ってなかったよね。」

 

 

流斗「そう言えばまだ訊いていなかったね。」

 

 

亜須未「食料と水は確か、食堂と家庭科室にある筈だよ。」

 

 

流斗「食堂と家庭科室か。」

 

 

詩織「ここからなら、食堂の方が近いですよ。」

 

 

詩織がそう提案してくるが、楓は少し渋い顔で言う。

 

 

楓「でも、食堂はザンビの群れで溢れ返ってそうだよ。」

 

 

流斗「そっか。でもそれはチャンスかもしれない。広範囲の拘束魔法で、ザンビたちの動きを止めて、デュランダルで一気に元に戻す。その間に山室さんたちで食料と水を確保する。」

 

 

流斗はそう作戦を立てると、皆は納得した様に頷いた。



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7話

流斗「さて、行動を開始しようか。」

 

 

楓「そうだね」

 

 

亜須未「このままここにいても埒が開かないしね。」

 

 

凛「ちょっとお腹空いてきちゃった。」

 

 

瀬奈「凛、もうちょっとの辛抱だよ。」

 

 

詩織「はい。」

 

 

流斗が行動開始の合図を取ると、全員が各々返事を返して来た。

 

 

流斗「じゃあ行こうか。」

 

 

流斗を先頭に楓たちは教室を後にした。

 

 

教室を出ると楓の案内に従い、食堂に向かい歩き出す。

 

 

その道中、凛たちは流斗にある質問をして来た。

 

 

それは流斗はどういう人物なのかというものだった。

 

 

凛「そう言えば、神村さんはどういう人なの?」

 

 

流斗「そう言えば、秋吉さんたちには話してなかったね。オレはキリスト教の悪魔祓い師なんだ。」

 

 

瀬奈「悪魔祓い師って、あのエクソシストなのか?」

 

 

流斗「うん、それにオレは普通の悪魔祓い師と違って特別な力を持って生まれてきた。その力とはあらゆる呪い、邪なる物を完全に消滅させる力だ。」

 

 

詩織「なるほど。じゃあということは、呪いそのものを消滅させ、ザンビになった私たちを元に戻してくれた。ということですね?」

 

 

流斗「うん、そういう事だよ。」

 

 

詩織の問いかけに流斗は真剣な顔で返した。

 

 

亜須未「そろそろ食堂だよ。」

 

 

亜須未がそう言うと、次第に食堂が見えて来た。

 

 

食堂は暗闇と静寂に包まれ、誰もおらずただ不気味な雰囲気を醸し出していた。

 

 

楓「ザンビたちがいないね。溢れ返ってると思ったのに。」

 

 

流斗「いや、いるよ。かなりの数がね」

 

 

流斗がそう言った瞬間、手に持っている風車が回り出し、ザンビとなった人たちが食堂の奥の廊下から十人くらい現れた。

 

 

だが、向こうはまだこちらに気付いていない様子だった。

 

 

流斗「よし、オレが拘束魔法をかけてヤツらの動きを封じるからその隙に調理室に入って食料を手に入れて来て。動きが止まったらオレも行くから。」

 

 

流斗は楓たちに小声で気付かれないように、作戦を伝えた。

 

 

流斗「よし、じゃあ行くよ!!」

 

 

流斗はそう言うと、ザンビの群れに飛び出して行った。

 

 

「ガァァァァァァ!!!!!」

 

 

「グオオオオオオオオ!!!!」

 

 

流斗が飛び出した瞬間、ザンビの群れが一斉に襲い掛かって来る。

 

 

そのほとんどがフリージア学園の女子生徒だった。

 

 

流斗「今、元に戻してやる!!」

 

 

流斗はそう言って、拘束魔法を発動する。

 

 

流斗「光よ、来たれ!我求めるは聖なる鎖!!【ブライディング・チェーン】!!」

 

 

流斗の魔法が発動され、白く輝く鎖が地面から現れ、ザンビたちの身体を縛り付けた。

 

 

「ガァァァァァァ!?」

 

 

ザンビたちは身動きを封じられ、必死に脱出しようとするが、鎖はビクともしない。

 

 

それと同時に楓たちが調理室の前に到着したの確認した。

 

 

流斗「よし、行くか!」

 

 

とりあえず、ザンビの群れを止めることには成功したので、流斗は楓たちと合流する。



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8話

流斗「とりあえず、足止めには成功した!後は食料と水を確保して、ザンビたちを元に戻すだけ。」

 

 

楓「そっか、良かった。」

 

 

亜須未「あとは、どれだけ食料があるかだよね。」

 

 

瀬奈「ああ、何日分くらいあるかだよな。」

 

 

凛「とりあえず、見てみよ?」

 

 

詩織「そうですね。」

 

 

調理室に入った流斗たちはそんな話し合いをしながら、辺りを警戒しつつ、食料と水を探し始めた。

 

 

流斗「お、水結構あるな。」

 

 

亜須未「楓、食料も結構あるよ。」

 

 

楓「ほんと!?」

 

 

凛「良かった〜」

 

 

瀬奈「これだけ、あればしばらくは持つな。」

 

 

詩織「はい、こんなたくさん見つけられて良かったです。」

 

 

流斗たちかなりの量の水と食料を確保し、ようやく一旦安堵することが出来た。

 

 

流斗「でも、材料のままだから、調理しないと食べられないな。」

 

 

楓「そうだね。誰かこの中で料理作れる人は?」

 

 

亜須未たちは全員、首を横に振った。

 

 

だが、流斗だけは首を縦に振った。

 

 

流斗「え?オレだけ?」

 

 

亜須未「ごめんね。私たち料理の経験がほとんどないの。」

 

 

凛「お米すら炊いたことない。」

 

 

楓「私も。」

 

 

瀬奈「残念ながら私もだ·····」

 

 

詩織「ごめんなさい。」

 

 

流斗はそこで少しため息をつく。

 

 

そして、何かを決心したかのように話始めた。

 

 

流斗「わかった。じゃあ食堂も含めてここも拠点の一つにしよう。」

 

 

楓たち「え!?」

 

 

流斗「材料もこんなに多いんじゃ持ち運びも結構苦労するとも思う。」

 

 

楓「確かに。」

 

 

亜須未「ちょっとこの量は大変かな。」

 

 

凛「全部持ったら重そう。」

 

 

瀬奈「いくらなんでもさすがに全部は持てないよ。」

 

 

詩織「拠点が増えれば安全な所がまた増えますしね。」

 

 

流斗の提案に楓は文句一つ言わず、賛成した。

 

 

流斗「よし、じゃあまずはさっきのザンビになった人達を元に戻しますか!」

 

 

楓「うん、気を付けてね。」

 

 

楓がそう言うと、流斗は調理室を出て、拘束魔法かけたザンビたちの所へ向かった。

 

 

「ガァァァァァァ!!!!ガァァァァァァ!!!!」

 

 

流斗が食堂に出るとザンビたちが必死に拘束から逃れようとしているが、やはり外れない。

 

 

流斗「今、元に戻す!ちょっと待ってて!!」

 

 

流斗「聖剣【デュランダル】アストラルモード&エクステンシヴモード!!」

 

 

流斗はデュランダルを出し、アストラルモードとさらに広範囲に衝撃波を放つエクステンシヴモードを発動する。

 

 

もちろん、アストラルモードなので外傷は与えない。

 

 

流斗「ハァァァァッ!!」

 

 

流斗がデュランダルをひと薙ぎすると、衝撃波が放たれ、ザンビたちに襲い掛かった。

 

 

ズドォォォォォン!!!!

 

 

その衝撃波をもろに受けたザンビたちは、外傷を受けてはいないが、そのまま崩れ落ちた。

 

 

その音に驚いたのか、楓たちが調理室から飛び出して来た。

 

 

亜須未「今のなんの音!?」

 

 

楓「びっくりした·····」

 

 

瀬奈「もしかして、ザンビたちを元に戻せたのか!?」

 

 

凛「え、すごい!!」

 

 

詩織「ええ、すごいです。」

 

 

流斗「ごめん、数が多かったから少し広範囲にわたって能力を使わせてもらった。」

 

 

流斗がそう説明すると、楓たちは納得したかのような表情を浮かべた。

 

 

流斗「さて、今の音で他の所からザンビたちが寄ってくるかもしれない。早めに結界を張ろう。」

 

 

流斗はそう言って、呪文を唱え始めた。

 

 

流斗「光よ、来たれ!我求めるは浄化をもたらす白き障壁!!【エンシェントアーク・ブレイヴ】!!!!」

 

 

その瞬間、食堂全体に白く輝く結界が張られて行った。



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9話

流斗「よし、これで食堂の安全は確保出来た。」

 

 

楓「あれ?でも、さっき聖堂の安全はまだ完全に確保出来たわけじゃないって言ってたけど、なんでここは大丈夫なの?」

 

 

楓は結界を張り終わった流斗にそんな疑問を投げ掛けた。

 

 

流斗「ああ、その事か。その事なら聖堂もどうやら完全に安全が確保出来たみたいだ。」

 

 

亜須未「え?どうして?」

 

 

楓の隣で話を聞いていた亜須未もそう聞き返す。

 

 

流斗「さっき、呪いを解放し終えたあと、聖堂の周りの気配を少し探って見たんだ。そしたら、ザンビたち気配は全く感じられなかった。それに結界の効力が効いて、ザンビたちは結界からみんな遠ざかって行ってた。」

 

 

詩織「なら、もう安心ですね。」

 

 

凛「良かった〜」

 

 

流斗「さっきオレが聖堂の安全を完全には確保出来ていないと言った理由は、結界の効力がザンビに効くかどうか分からなかったからだ。」

 

 

瀬奈「なるほど。ということは、それで聖堂の安全はようやく完全に確保出来たということか。」

 

 

流斗「だが、結界の外はまだザンビたちで溢れ返っているから、油断だけはしないで欲しい。もちろん、オレもこの力を過信しない。」

 

 

そんな話をしていると、呪いから解放されたフリージア学園の生徒の一人が目を覚ました。

 

 

ちなみに流斗が生徒達を呪いから解放した場所は食堂内であり、安全は確保されている。

 

 

生徒達「う、うーん」

 

 

流斗「目が覚めた?」

 

 

流斗がそう訊くと、その生徒は不安げな顔で返事を返して来た。

 

 

生徒「はい、ここは?」

 

 

楓「ここは食堂だよ。彼が助けてくれたの。」

 

 

奥で楓が話を聞いていたみたいで、駆け寄って来て、そう言った。

 

 

流斗「初めまして、オレは神村流斗。君は?」

 

 

恵美「内藤恵美です。」

 

 

楓「ああ、やっぱりあの時の一年生だね。」

 

 

楓は何かを思い出したかのようにそう言った。

 

 

流斗「この娘を知ってるの?」

 

 

楓「うん、その時はザンビになっちゃってて、私たちも襲われたんだけど。」

 

 

恵美「ええ!?す、すみません!!そんな事をしてたなんて!!」

 

 

恵美はその話を聞くと、突然謝りだした。

 

 

楓「しかたないよ。ザンビになっちゃってたら、自分の制御も聞かないし、記憶もないだろうから。」

 

 

謝罪する恵美に対して、楓はそうフォローを返した。

 

 

流斗「さて、まずは内藤さんにはこれまでの状況とオレが何者かを話さないとね。」

 

 

恵美「はい、何も分からないのでお願いします。」

 

 

流斗が言うと、恵美は申し訳なさそうに返事を返した。

 

 

それから流斗は包み隠さずすべてを恵美に話した。

 

 

その話を聞いた恵美は驚愕の表情を浮かべ、ショックを隠せないでいた。

 

 

恵美「そんなことが起こってるなんて。」

 

 

流斗「信じられないことかもしれないけど、本当に起こってることなんだ。それを解決するためにオレはここに来るように教会から依頼された。」

 

 

流斗はショックを受けている恵美になるべく優しくそう声を掛けた。



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10話

亜須未「神村くん、今大丈夫?」

 

 

流斗が恵美を慰めていると、亜須未たちが声を掛けてきた。

 

 

流斗「うん、大丈夫。どうしたの?」

 

 

亜須未「調理室を少し調べてみたんだけど、なんとかガスコンロは使えるみたい。ただ、水はやっぱり出ないみたいなんだ。」

 

 

流斗「そうなると、作れる料理が限られるな。」

 

 

凛「ちょっと残念〜」

 

 

詩織「そうですね。さっき手に入れた水はかなりの量がありますけど、それを使っちゃうと、水分補給のための水が足らなくなっちゃいそうですし。」

 

 

瀬奈「確かにそうだな。」

 

 

食事についての問題が一つ発生してしまい、その話合いをしていると、また一人、呪いから解放された女の子が目を覚ました。

 

 

楓「鈴音!良かった。目が覚めたんだね!」

 

 

すぐ隣でその声を聞き、流斗がそっちへ向くと女の子が一人辺りを見回していた。

 

 

鈴音「楓·····?ここは·····?」

 

 

楓「ここは食堂だよ。」

 

 

鈴音「私は一体何を?」

 

 

流斗「良かった。呪いも完全に消えてるみたいだ。」

 

 

流斗はそう言いながら、彼女に声をかけた。

 

 

鈴音「えっと、あなたは?」

 

 

流斗「オレは神村流斗。今ここで起きてる事件を解決しに来たんだ。」

 

 

鈴音「私は、佐倉鈴音です。今ここでは何が起きてるんですか?」

 

 

流斗は包み隠さずに今起きていること、そして自分の事についてすべて鈴音に説明した。

 

 

鈴音「そんな、みんながそのザンビっていうものに?」

 

 

流斗「ああ、おそらくね。今ここにいる山室さん達は最初にここに来た時はみんなザンビになってて、オレがその能力を使って元に戻したんだ。」

 

 

鈴音も先程の恵美と同様、信じられないという表情だったが、流斗が言っていることは偽りではないという事を感じ、流斗の話を信じた。

 

 

その時、突然食堂の扉を叩く音がした。

 

 

ドンドン!!ドンドン!!

 

 

流斗「ッ!!」

 

 

恵美&鈴音「キャァァァァァ!!!!」

 

 

凛「怖いよぉーー!!!!」

 

 

瀬奈「大丈夫!!私が守るから!!」

 

 

亜須未「ど、どうしよう!!」

 

 

楓「そんな!!神村くんが張った結界が効いてないの!?」

 

 

突然、扉から鳴り響く音に慌てふためく楓たち。

 

 

だが、流斗はみんな落ち着かせまいと、冷静に皆に声をかける。

 

 

 

流斗「いや、みんな大丈夫だ。落ち着いて!!」

 

 

皆「え?」

 

 

流斗「この結界は邪なる存在が触れようとすると、その存在を浄化しようとして、バチバチッ!!って弾くんだ。」

 

 

流斗は冷静に且つ優しい声で、結界の効力を皆に説明した。

 

 

楓「つまりザンビは今、呪いによって邪なる存在になってるから触れられるはずもないってこと?」

 

 

流斗「ああ、そう言う事だよ。」

 

 

瞬時に流斗が言いたい事を理解した楓は、皆を落ち着かせる。

 

 

楓「みんな、落ち着いて。神村さんの言う事を信じてみよう。」

 

 

楓がそう諭すと、亜須未達は流斗を信じ首を縦に振った。

 

 

流斗「もしかして、まだ人間がいるのかもしれない。」

 

 

流斗がそう言って、扉に近づき、開けようとすると、楓が鏡を渡してきた。

 

 

楓「念の為、これで相手を写してみてね。」

 

 

流斗「わかった。」

 

 

流斗は渡された鏡を受け取り、食堂の扉を開けた。

 

 

その瞬間、二人の女の子が流斗に抱き着いてきた。

 

 

流斗「え!?大丈夫!!?」

 

 

女の子「助けて!!」

 

 

女の子「お願い!!」

 

 

流斗は突然の事で状況を把握しきれていないが、先程の楓の言葉思い出し、二人を鏡に写してみた。

 

 

だが、手記に書いてあったように二人の姿が歪んて写ることは無く、なんの異常も見られなかった。

 

 

楓「聖!!実乃梨!!」

 

 

聖「え?楓!?」

 

 

実乃梨「無事だったの!?」

 

 

二人の女の子は楓を見るとすぐさま駆け寄って行った。

 

 

流斗「良かった。無事だった人もいたんだ。」

 

 

流斗は生存者がいると分かり、少しホッとした様子でそう言った。

 

 

聖「えっと、あなたは?」

 

 

実乃梨「学園の生徒ではないですよね?」

 

 

流斗「ああ、ごめん。オレは神村流斗。とある理由でここに来るよう言われたんだ。」

 

 

流斗はここに来ることになった経緯について、二人の女の子に説明した。

 

 

聖「外からの助け!?」

 

 

実乃梨「よ、良かった。」

 

 

二人の女の子は安堵の表情を浮かべながら、そう言った。

 

 

聖「あ、自己紹介がまだでした!私は甲斐聖です。」

 

 

実乃梨「私は諸積実乃梨です。よろしく。」

 

 

二人の自己紹介が終わると、楓が今後の方針について、一つ提案を出てきた。

 

 

楓「神村くん、一つ提案があるんだけどいい?」

 

 

流斗「うん、いいよ。」

 

 

楓「実はこの食堂の近くには女子寮があるの。そこの安全確保ができればと思ってるんだけどどうかな?」

 

 

流斗「なるほどね。まあ確かに、食堂ではなかなか休めないだろうしね。」

 

 

亜須未「私もいいと思うよ。」

 

 

そんな話をしている誰かのお腹がなった。

 

 

グゥゥゥ·····

 

 

恵美「すいません///私です///」

 

 

可愛らしいその音の主は恵美だった。

 

 

流斗「その前に腹ごしらえにしよっか。」

 

 

詩織「そ、そうですね。」

 

 

凛「やったー!ご飯!!」

 

 

瀬奈「アハハ·····良かったな。」

 

 

実乃梨「さすがに私もお腹空いてきちゃった。」

 

 

聖「うん、この所なにも食べれてなかったからね。」

 

 

流斗「そうなの?っていうかよく3ヶ月もの間、無事だったね。」

 

 

実乃梨と聖は3ヶ月もの間どうやって飢えを凌いでいたか、話してくれた。



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11話

エクステンシヴモード


デュランダルの3つ目の状態。この状態になると、流斗がデュランダルに付与した効果が広範囲に及ぶようになる。特に他のモードど同時に使用することで、広範囲に効果及ぼさせることが出来る。



流斗「なるほど、それは大変だったね。」

 

 

話によると実乃梨と聖は学園内を3ヶ月もの間、逃げ回りながら、食料と水を確保し、なんとか生き残れていたものの、その食料がついに底を尽き、1週間前から水のみで飢えを凌いでいたらしい。

 

 

実乃梨「そして、食堂に群れていたザンビたちが急に静かになって、そこから何か話し声がすると思って、聖と咄嗟に駆け込んだの。」

 

 

流斗はなるほどと頷きながら、実乃梨の話を聞いていた。

 

 

流斗「事情はわかった。とりあえず話の続きは食事のあとだね。」

 

 

流斗はそう言うと、調理室に入って行った。

 

 

調理室に入ると、かなりの量の食材がそこにはあった。

 

 

流斗「これはここを拠点の一つにして、正解だったな。それにしてもここは温度管理が徹底されてるな。食材が全く傷んでいない。」

 

 

流斗は一時期、フランスでシェフの勉強をしていたこともあり、食材の傷み具合などにとても詳しい。

 

 

流斗「うわ、これは神戸牛じゃないか。さすがはお嬢様学校。」

 

 

食材の豪華さに驚かされながらも、流斗は手際よく、調理を始めた。

 

 

まずは魔法で精製した水で手を洗い、コンロに火をつけ、フライパンをその上に置き、油を少量入れ、広げて行った。

 

 

次に神戸牛の肉を薄くスライスして行き、にんじん、白菜、玉ねぎを食べやすい大きさに切っていく。

 

 

十分な量を切り終えたら、流斗はそれら全てをフライパンに入れ、慣れた手つきで炒めていく。

 

 

流斗「いやー作りすぎたかな?でも、人数多いし大丈夫だろう。」

 

 

それが炒め終わったら、あとは大きめの皿に盛り付け、神戸牛入りの簡単な野菜炒めが完成した。

 

 

流斗「よし、出来上がり!」

 

 

流斗は出来た料理を持って、調理室を出た。

 

 

楓「あ、もう出来たの?」

 

 

流斗「うん、簡単な野菜炒めにしてみた。」

 

 

凛「美味しそう!!」

 

 

恵美「ホントですね。すごい美味しそうです!」

 

 

実乃梨「やっとまともなご飯を食べれる!」

 

 

瀬奈「これは本当に美味しそうだな!」

 

 

亜須未「これはシェフ顔負けクラスだね。」

 

 

鈴音「す、すごいです·····」

 

 

詩織「ちょっと女の子としては悔しいですね。」

 

 

楓たちは各々、流斗の手料理を褒めながら、その野菜炒めにありついて行った。

 

 

それからしばらくして流斗の野菜炒めを食べ終わり、少し休憩を取っていた。

 

 

その休憩中、流斗はザンビの成れの果て、カミビトの対処法についてと100年前の生き埋めにされた女の呪いをどう消滅させるか、考えていた。

 

 

流斗(やはり、残美村に行くしかないのか?すべての事件の始まりの場所に。だったら、あの手記の持ち主、守口さんを助けるしかない。)

 

 

一度は楓を手に掛け、呪いを封印するための糧としようとした男。

 

 

だが、残美村の場所が分からない以上、守口を助け、その場所を聞くしかない。

 

 

さらに流斗はまだ楓たちには話していないことがある。

 

 

それはこのザンビ化現象による事件はフリージア学園だけに留まらず、他に2ヶ所で起きているという事実だ。

 

 

流斗はまだこの事を楓たちに話せずいた。

 



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神人
12話


流斗はそろそろ行動を開始しようかと、立ち上がり、楓達に声をかけた。

 

 

流斗「次は、女子寮の安全確保だったね。」

 

 

楓「うん、みんなさすがに、シャワーとか浴びたいだろうし、ベットで休みたいだろうからね。」

 

 

流斗「というか、オレ男子だけども、入って大丈夫なの?」

 

 

流斗は特に自分が男子なので、さすがに女子寮に入るのは、気が引けていた。

 

 

亜須未「今は、それどころの状況じゃないもん。しかたないよ。」

 

 

戸惑っている流斗に亜須未がそうフォローを入れてくれる。

 

 

聖「神村さん、どうかお願いします!まだ寮の自分の部屋なら、こんな状況でも少しは落ち着けます!」

 

 

聖の必死な頼みに流斗は、ついに折れた。

 

 

流斗「わかった。そこまで言うなら、オレやるよ。」

 

 

流斗のその言葉に、実乃梨や凛たちも安堵の表情を浮かべていた。

 

 

流斗「今度は西条さん、案内をお願いできるかな?。他のみんなはここで待機でお願い。」

 

 

亜須未「わかった。任せて。」

 

 

流斗「山室さん、みんなの事を任せていいかな?さすがにこの全員を守りながら、ザンビと戦うのは厳しい。ここにいれば、結界が守ってくれて、ザンビも近付いて来れないし、安全だから。」

 

 

楓「うん、わかった。二人とも気を付けてね。」

 

 

流斗と亜須未は楓のその言葉を聞くと、女子寮の安全確保のため、行動を開始した。

 

 

食堂から出ると、外は漆黒の暗闇が広がっていた。

 

 

流斗「西条さん、女子寮に行くにはどっち行けば近い?」

 

 

亜須未「ここからだと、この廊下をまっすぐ行って、左にある階段を上がれば寮に続く、連絡通路があるよ。」

 

 

流斗「わかった。そこから行こう。ザンビの気配はそこら辺は少ないから。」

 

 

流斗は気配を探ぐりながら、亜須未にそう提案した。

 

 

亜須未「わかった。じゃあそのまま進んで行って。」

 

 

暗闇に包まれている廊下を、手に持ったライトをかざしながら、流斗と亜須未は進んでいく。

 

 

しばらく進んでいき、連絡通路に続く階段の前まで来たが、流斗が少し何かの気配を感じていた。

 

 

それはザンビと似ているがそれとは少し異なるモノだった。

 

 

流斗「この気配·····まさか!!」

 

 

亜須未「どうしたの?怖い顔になってるよ?」

 

 

流斗「オレたち、後をつけられている。」

 

 

流斗は怖い顔のまま、亜須未に告げる。

 

 

亜須未「え!?本当に!?まさかザンビたちに!?」

 

 

流斗「いや、ザンビと似ているけど、少し違うモノに。」

 

 

流斗はこのザンビとは少し違う気配、心当たりが一つだけあった。

 

 

それはあの手記に書かれていた、カミビトと呼ばれるモノだ。

 

 

ソイツだけは、100年前の女の呪いを消滅させない限り、元には戻せない。

 

 

しかも、殺すことも出来ないとまで書かれていた。

 

 

流斗「急ごう。あまり悠長にしている時間は無さそうだ。」

 

 

亜須未「何に後をつけられているかわからないけど、わかったよ。」

 

 

二人はそう言って、階段を登って行き、連絡通路に辿り着いた。

 

 

そこに着いた同時に、流斗は呪文を唱え始めた。

 

 

流斗「光よ、来たれ!我求めるは浄化をもたらす白き障壁!!【エンシェントアーク・ブレイヴ】!!」

 

 

流斗が呪文を唱えると、聖堂と食堂にかけた結界と同じ結界が女子寮に張られた。

 

 

亜須未「あれ?もう結界を張っちゃうの?」

 

 

流斗「それについては、この後話すよ。行こう。」

 

 

亜須未「う、うん。」

 

 

流斗はそう言って、亜須未と共に女子寮に入って行った。



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13話

女子寮に入ると、ザンビたちの気配がかなりあるのがわかった。

 

 

だが、結界を張ったおかげか、動きが少し鈍ってるように流斗は感じていた。

 

 

流斗「結構気配があるな。」

 

 

亜須未「やっぱり結構いるの?」

 

 

流斗「ああ、でも結界の効力でザンビたちはこの女子寮からは出られない。結界に触れようとすると浄化されるからね。ザンビたちにはそれが分かってるみたいだ。」

 

 

流斗がその説明をし終わると、亜須未は先程の流斗が言いかけていたことを訊いて来た。

 

 

亜須未「そう言えば、さっき後をつけられているって言ってたよね?一体何につけられていたの?」

 

 

流斗「ああ、そうだったね。」

 

 

流斗はザンビの成れの果て、カミビトについて話し始めた。

 

 

流斗「さっきオレたちをつけていたモノの正体、それはザンビの成れの果て、カミビトというモノだ。」

 

 

亜須未「カミビト·····?」

 

 

流斗「うん、オレがこの学園に来て、最初に見つけた手記に書かれていたものだ。」

 

 

さらに流斗は説明をし続ける。

 

 

流斗「カミビトとは、ザンビの成れの果てで、感情も記憶も失ったザンビを超えた存在。こうなってはもう殺すことできない。さらには100年前の女の呪い消滅させるしか元に戻す方法がない。そういう存在らしいんだ。」

 

 

亜須未「だから、さっきあんなに怖い顔だったんだね。」

 

 

亜須未はそう言って、納得した表情を浮かべた。

 

 

流斗「そうだ、一つ聞きたいんだけどこの建物の中で一番広い場所は?」

 

 

亜須未「多目的ホールと言って少し広い場所があるの。そこが一番広いかな。」

 

 

流斗「今、気配を探ってるんだけど、ザンビたちみんなは広い場所に集まってるようなんだ。」

 

 

亜須未「じゃあ多分そこに行ってるみたいだね。」

 

 

結界の効力のおかげか、ザンビたちを一気に広い場所へ集めることが出来ていた。

 

 

だが、その時奥の部屋から人影が現れた。

 

 

流斗「ッ!お出ましだよ!オレの後ろに隠れて!」

 

 

亜須未「わかった!!」

 

 

ザンビはそのまま流斗たちに襲い掛かって来た。

 

 

ザンビ「ガァァァァァァ!!」

 

 

流斗「くっ!【セイントバインド】!!」

 

 

すかさず流斗は拘束魔法でザンビの動きを止める。

 

 

流斗「聖剣【デュランダル】!!アストラルモード!!呪いよ!消え去れ!!」

 

 

ザシュッ!!

 

 

流斗はそのままザンビを、アストラルモードで斬り裂いた。

 

 

斬り裂かれたザンビは外傷を負うことなくそのまま崩れ落ちた。

 

 

だが、まだ奥から二人のザンビが湧いて来た。

 

 

流斗「まだいたのか!!このままいくしかないか!」

 

 

流斗はさらに襲い掛かって来たザンビ二人をそのままアストラルモードで、斬り裂いた。

 

 

ザシュッ!!ズシャッ!!

 

 

斬り裂かれた二人のザンビも外傷を負うことなく、そのまま崩れ落ちた。

 

 

流斗「ふぅ、これで終わりみたいだな。」

 

 

亜須未「大丈夫?ケガはない?」

 

 

流斗「オレの方は大丈夫。この3人も外傷はないよ。」

 

 

亜須未「良かった。」

 

 

流斗と亜須未は呪いから解放した3人を近くの部屋まで運んで寝かせた。



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14話

しばらくすると、呪いから解放した3人が目を覚ました。

 

 

この3人もフリージア学園の制服を着ている女の子だ。

 

 

女の子「うーん、あれ?こ、ここは?」

 

 

女の子「う、うぅ、あれ?どこ?」

 

 

女の子「うぅぅぅぅ、あれ?なんで私こんな所に?」

 

 

亜須未「あ、3人とも目が覚めた?」

 

 

女の子「亜須未?え?私、どうして?」

 

 

流斗「良かった。呪いも完全に消えてるみたいだ。」

 

 

女の子「あのーあなたは?」

 

 

流斗はそう聞かれて、3人の女の子に自己紹介をする。

 

 

流斗「オレは神村流斗。とある理由でここフリージア学園に来るように言われて来たんだ。年齢は17歳。だいたいみんなと一緒だよ。」

 

 

流斗が自己紹介すると、3人も自己紹介を返して来た。

 

 

優衣「私は金村優衣。よろしく。」

 

 

麗奈「私は五十嵐麗奈です。よろしく。」

 

 

穂花「私は花村穂花です。あの、よろしくお願いします。」

 

 

3人の自己紹介が終わると、流斗は今のフリージア学園の状況とこれまでの経緯、そして自分がここの理由と守口の残した手記について、説明した。

 

 

優衣「そ、そんな!!」

 

 

穂花「そんなことになってたなんて·····」

 

 

麗奈「にわかには信じ難いけど。」

 

 

亜須未「でも、この人が今、解決するために一生懸命に動いてくれている。ザンビに人たちを元に戻してくれているの。優衣たちもこの人が元に戻してくれたんだよ?」

 

 

3人は亜須未のその言葉を聞いて、少しではあるが、流斗の事を信じようと心を開いてくれた。

 

 

優衣「わかった。神村さんの事、信じます。」

 

 

穂花「私も。謝らなければいけない友達がいるので。」

 

 

麗奈「私も信じる!」

 

 

流斗「ありがとう、信じてくれて。みんなの事は絶対にオレが助ける。」

 

 

そう言って流斗は気合いを入れ直し、行動を開始する。

 

 

だが、その前に優衣が一つ頼みを聞いてきた。

 

 

優衣「あの、行動を開始する前に、ちょっとだけ悩みを聞いてもらえませんか?」

 

 

流斗「うん、いいよ。」

 

 

優衣「実は私。イジメグループのリーダーなんです。でも、本当はそんな事したくなくて。嫌なことがあるとつい、ある子をイジメてしまうんです。」

 

 

流斗「なるほど。俗に言うスクールカーストの上位っていう訳だね。」

 

 

優衣「はい、そうです。」

 

 

優衣の悩みを聞かされ、神妙な顔で流斗はこう言葉を掛けた。

 

 

流斗「実はオレ、いじめられる側だったんだけど、イジメてくる相手の心境も考えたことがあるんだ。なんでこんな事すんだよ!ってね。」

 

 

優衣「はい。」

 

 

流斗「そして一つわかったことがあるんだ。ソイツは本当は他のみんな仲間外れにされたくない。一人になりたくないって思ってたんだってことがね。」

 

 

優衣「はい、なんとなくわかります。私も仲間外れにされるのは嫌です。」

 

 

流斗「でも、罪の意識はあるんでしょ?だったら心を込めて謝ればいいよ。たとえあっちが許してくれなくてもね。許す許さないの前に、謝る事が大事。許してくれなければ、謝り続けるしかないんだよ。」

 

 

流斗の言葉を聞いて、優衣は涙を浮かべながら、頷いていた。

 

 

亜須未「神村さん、そろそろ行動開始しようか。」

 

 

亜須未に諭され、流斗は行動を開始した。



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15話

流斗「さて、行動を開始するよ。みんな。」

 

 

麗奈「これからどうするんですか?」

 

 

穂花「そう言えば、まだ聞いてませんでしたね。」

 

 

優衣「あ、確かに聞いてなかった。」

 

 

その話を聞いていた亜須未はザンビたちの様子について、流斗に訊いてきた。

 

 

亜須未「そう言えば、今、ザンビたちはどうしているの?」

 

 

流斗「今、ザンビたちは多目的ホールに集まってるよ。どうやら、一人残らずそこにいるみたいだ。多分結界そのものから一番遠いからだと思う。」

 

 

優衣「悪魔祓い師なのに結界とかも張れるんですか?」

 

 

麗奈「未だに信じられないけど、本当みたいなんですね。」

 

 

穂花「す、すごいです。」

 

 

流斗は褒められ慣れてないせいか、ちょっと照れてしまっていた。

 

 

流斗「ま、まあ、そこにいるザンビを全員元に戻せば、この女子寮の安全は確保出来る。」

 

 

穂花「そう言えば、安全確保出来たのって他にあったりするんですか?」

 

 

穂花は少し期待を込めて流斗にそう訊いてきた。

 

 

流斗「今のところ、聖堂と食堂は安全確保出来ているよ。結界を張っておいたから、今は安全だ。ちなみに、呪いから解放した人たちはみんな食堂にいるよ。」

 

 

穂花「そうなんですか。良かった。」

 

 

穂花は少しホッとした様子でそう言った。

 

 

流斗「さて、そろそろ多目的ホールに向かおうか。3人はここに残る?それとも一緒に来る?」

 

 

3人「一緒に行きます!」

 

 

やはりこの状況がとても怖い様で、即答で答えた。

 

 

流斗「じゃあ、西条さん案内を頼んでいいかな?」

 

 

亜須未「うん、任せて。」

 

 

亜須未の返事を聞くと、流斗たちはまた行動を開始した。

 

 

部屋を出ると廊下はゴミなどが散乱してはいるが、ザンビたちが徘徊している様子はない。

 

 

亜須未「この廊下まっすぐ行って、突き当たり右に曲がれば、多目的ホールだよ。」

 

 

流斗はその亜須未の案内に従い、廊下を進んでいく。

 

 

慎重に進んでいくが、ザンビたちの気配はその多目的ホールからの動きはない。

 

 

穂花「本当にザンビたちがいませんね。」

 

 

優衣「私はまだザンビというのが本当にいるとは思えないけど。」

 

 

麗奈「まあ、見れば信じざるを得ない。」

 

 

亜須未「私も最初は信じられなかってけど、ホンモノを見ちゃったらね。」

 

 

流斗「オレもフリージア学園集団失踪事件の中身がこんな事になってるなんて思わなかったよ。」

 

 

流斗がこの事件が外でどう扱われているか、言うと、亜須未は少し怪訝な表情を浮かべた。

 

 

亜須未「え?外ではそんな風に扱われているの?」

 

 

流斗「うん、たった1週間で生徒も含め学園関係者が謎の失踪ってニュースになってたよ。」

 

 

麗奈「とにかく、一刻も早くこの事を外に伝えないと。信じてはもらえないかもだけど。」

 

 

流斗たちはそんな話をしながら、進んでいくと突き当たりが見えてきた。



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16話

亜須未「突き当たりが見えてきたよ。右に曲がればすぐ多目的ホールだから。」

 

 

流斗「わかった。」

 

 

優衣「何か怖くなってきました。」

 

 

麗奈「もう一度アレを見るのか·····」

 

 

穂花「ゾクゾクしてきました。」

 

 

優衣たちはやはり怖いのか、ブルブル震えていた。

 

 

それも無理はない。

 

 

ザンビとは本当に得体の知れないバケモノなのだから。

 

 

流斗「やっぱり怖いなら、戻って三人だけで待ってる?」

 

 

三人「それはもっとイヤです!!」

 

 

流斗が三人に戻る様に勧めたのだが、すぐ却下された。

 

 

亜須未「全くしょうがないんだから。」

 

 

亜須未はそう言って、優衣の手を握ってあげた。

 

 

優衣「え?」

 

 

亜須未「これで少しは怖くないでしょう?」

 

 

優衣「あ、ありがとう。」

 

 

優衣は少し戸惑いながらも、亜須未にお礼を言った。

 

 

流斗「なんか微笑ましいな。」

 

 

そんな二人の様子を見ていると、服の裾を誰かに引っ張られていた。

 

 

それも二人に。

 

 

流斗「どうしたの?」

 

 

麗奈「少しの間だけ手を繋いでいいかな?」

 

 

穂花「私達も怖いんです。」

 

 

二人にそう言われ、流斗は少しためらったが、こんな状況なので、しかたなく繋いであげた。

 

 

流斗「わかった、いいよ。ただ、多目的ホールに入るまでね。」

 

 

二人「ありがとうございます!」

 

 

二人は笑顔でそうお礼をしてくれた。

 

 

二人の笑顔を見て、流斗は少し顔がほころび、同時に士気が上がる気がした。

 

 

そして、ついに廊下の突き当たりまで来たのだった。

 

 

亜須未「すぐそこが多目的ホールだよ。」

 

 

流斗「少し様子を見てくる。」

 

 

流斗はそう言って、繋いでいた二人の手を離し、多目的ホールにギリギリ彼らに気づかれないくらいまで、近付き、中の様子を観察した。

 

 

多目的ホールの中は薄暗く月明かりが少し入っていた。

 

 

その光がザンビたちを妖しく照らしていた。

 

 

流斗「ここも10人くらいか。やっぱり多いな。」

 

 

亜須未「どう?大丈夫そう?」

 

 

亜須未が流斗の後ろに近付き、そう訊いてくる。

 

 

流斗「ざっと、10人くらいいた。でも、やれない訳じゃない。それなりに広くて助かった。」

 

 

優衣「それなら良かったです。」

 

 

麗奈「そっか。これでここの安全は確保出来るんだね。」

 

 

穂花「安心です。」

 

 

流斗もなんとか安全確保が出来そうで少し、ホッとしていた

 

 

だが、まだ油断は出来ない。

 

 

流斗はおそらくこの後、カミビトと遭遇する気がしてならないでいた。

 

 

流斗「それじゃ、行ってくる。みんなはここにいてね。」

 

 

流斗がそう言うと、亜須未たちは心配そうな顔をして見てきた。

 

 

亜須未「気を付けてね。」

 

 

優衣「健闘を祈ってます。」

 

 

麗奈「頑張って。」

 

 

穂花「無理はしないでくださいね。」

 

 

流斗は亜須未達の言葉に頷き、多目的ホールの中に突入する。

 

 

流斗「さぁ、来い!!餌はここだぞ!!」

 

 

流斗は突入すると同時に、そう叫び声を上げた。

 

 

その叫び声に気づいたザンビたちは一斉に襲い掛かって来た

 

 

「ガァァァァァァ!!!!」

 

 

流斗「悪いがちょっと大人しくしててくれ!光よ、来たれ!浄化をもたらす白き鎖!!【ブライディング・チェーン】!!」

 

 

流斗はすぐ様、拘束魔法でザンビたちの動きを封じる。

 

 

流斗「聖剣【デュランダル】アストラルモード!!そして、エクステンシヴモード!!」

 

 

流斗「ハァァァァァ!!!!」

 

 

ズドォォォォン!!!!

 

 

流斗はアストラルモードとエクステンシヴモードを駆使し、ザンビたちを薙ぎ払った。

 

 

もちろんアストラルモードであるため、外傷は無く、ザンビたちは呪いから解放され、その場に崩れ落ちた。



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17話

流斗は崩れ落ちた人達から呪いが消滅したことを確認すると、亜須未達を中に入っても大丈夫だと呼びかけた。

 

 

亜須未「良かった。みんな元に戻ってる。」

 

 

亜須未は胸をなで下ろしながら、そう言った。

 

 

流斗「この中で誰か知ってる人はいるかな?」

 

 

流斗は呪いから解放した人達を指しながら、亜須未達に問い掛けた。

 

 

優衣「いえ、おそらくみんな一年生だと思います。顔は何度か見かけた子もいますけど。」

 

 

穂花「はい、優衣の言う通りです。」

 

 

麗奈「確かに、顔は見た事あるけどね。」

 

 

亜須未「私も同じだよ。」

 

 

流斗「そっか、わかった。」

 

 

流斗は亜須未達のその言葉を聞くと、これで女子寮の安全は確保されたと伝える。

 

 

流斗「これで女子寮の安全は確保されたよ。もう大丈夫。」

 

 

それを聞いた亜須未以外の3人は安堵した表情を浮かべた。

 

 

優衣「これで少しは落ち着けます。」

 

 

麗奈「ほんと、良かったよぉ。」

 

 

穂花「はい、少しは安心できます。」

 

 

亜須未「それでこの後は、食堂のみんなを連れてくるの?」

 

 

流斗は亜須未のその言葉を聞くと、首を横に振った。

 

 

流斗「いや、まずはカミビトをどうするかが先だね。」

 

 

流斗は女子寮に来る途中、後をつけてきていたカミビトの対処を提案した。

 

 

優衣「カミビトってなんですか?」

 

 

流斗は優衣にそう聞かれ、麗奈と穂花にもカミビトについて説明した。

 

 

麗奈「ザンビを超えた存在ですか·····」

 

 

穂花「殺すこともできないなんて·····」

 

 

優衣「私達もあのままザンビのままだったら、そのカミビトに·····」

 

 

優衣達はもし自分達があのままザンビのままだったら、そう考えると戦慄を禁じ得なかった。

 

 

亜須未「元に戻すには100年前のあの女の呪いを消滅させなきゃだよね?」

 

 

流斗は亜須未の言葉に頷いた。

 

 

流斗「だけど、少しの間だけ封印する事はできる。」

 

 

流斗のその言葉に亜須未達は少し安堵の表情浮かべた。

 

 

流斗「それでも封印できる時間は10分くらいまでだ。」

 

 

亜須未「え?そうなの?」

 

 

流斗「ああ、あまりにもカミビトにかけられた怨念が強くてね。」

 

 

流斗は少し焦りに表情を見せながら、そう言った。

 

 

流斗「だから、食堂まではオレ一人で行く。」

 

 

亜須未「大丈夫なの?」

 

 

流斗「ああ、一人なら少し本気を出して戦える。」

 

 

亜須未「わかった。楓達をちゃんとここまで連れて来てね。」

 

 

流斗「わかった。みんなはここにいて。今、女子寮には結界を張ってあるから、女子寮から出なければ移動しても大丈夫だよ。」

 

 

流斗のその言葉に亜須未達は、安心した顔で頷いた。

 

 

その後、流斗は多目的ホールから外に出て、食堂を目指した。



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18話

多目的ホールを出た流斗はまず、亜須未に案内してもらった、連絡通路を目指した。

 

 

流斗「やはり、カミビトの気配がする。どうにかしてヤツを止めなければな。」

 

 

カミビトの気配を探りながら、流斗は連絡通路を目指し歩いて行く。

 

 

その時、流斗の持つスマホが鳴り響く。

 

 

プルルルッ!プルルルッ!

 

 

流斗「なんだ?」

 

 

流斗はとりあえず、電話に出ることにした。

 

 

流斗「もしもし?」

 

 

?「もしもし!神村くん!?」

 

 

流斗「あ、岩村さんですか?何かあったんですか?」

 

 

電話の主は流斗が働いてる教会の上司の岩村真二という男性だった。

 

 

岩村「実はかなり大変なことが起きたんだよ。」

 

 

流斗「え?一体何が起きたんですか?」

 

 

岩村「とある収容施設が空爆された。」

 

 

岩村から聞かされた内容は想像を絶する物だった。

 

 

流斗「その施設ってまさか!」

 

 

岩村「ああ、君も話を聞いた事があるだろう?女性医師が人体実験をしている噂の施設だ。」

 

 

流斗「またなんでそんな事が!?」

 

 

流斗は衝撃の出来事に驚愕しながらも、そう聞き返した。

 

 

岩村「理由はわからない。だが、国の存亡に関わる恐ろしいモノがあるという理由でその施設が空爆されたんだ。」

 

 

流斗「まさか、その施設の集団失踪事件との何か関係が?」

 

 

岩村「おそらくはな。」

 

 

次に岩村はフリージア学園の調査の進行状況を訊いてきた。

 

 

岩村「そう言えば、フリージア学園の調査の方はどうだ?何かわかったのか?」

 

 

流斗はその事を聞かれ、フリージア学園の調査のわかった事をすべて、報告した。

 

 

岩村「そんな事になっていたのか·····」

 

 

岩村は流斗の報告を聞いて、言葉を失っていた。

 

 

流斗「岩村さんはザンビについて、何か知っているんですか?」

 

 

岩村「噂程度にはね。ある村で女性が生きながらに埋められたという話は聞いた事はあったが、まさか、それが本当にあったとは思わなくてな。」

 

 

流斗「そうだったんですね。」

 

 

岩村「神村くんも、くれぐれも気を付けて調査に当たってくれ。」

 

 

流斗「はい、わかりました。」

 

 

岩村「頼んだぞ。」

 

 

そこで電話は切れたのだった。

 

 

流斗「さて、行動再開と行きますか。」

 

 

流斗はそう言って、再び歩き出した。

 

 

それからしばらく歩き、先程の連絡通路に辿り着いた。

 

 

するとそこには、3人の女の子らしき人物が座り込んでいた。

 

 

流斗(警戒しながら、声を掛けて見るか)

 

 

流斗はその3人に警戒しながら、声を掛けてみることにした。

 

 

流斗「そこの3人組。そんな所でどうしたの?」

 

 

流斗が声を掛けると、泣きながらこちらに走って来たんだ。



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19話

女の子「助けてください!!!!」

 

 

女の子「ザンビが!!!!ザンビが!!!!」

 

 

女の子「お願いします!!なんでもしますから!!」

 

 

流斗「とりあえず、落ち着いて!!」

 

 

流斗はなんとかその3人を落ち着かせると、話を聞いてみる事にした。

 

 

その3人はフリージア学園の制服着ていて、ここの生徒だということがすぐにわかった。

 

 

流斗「もしかして追いかけられたりした??」

 

 

女の子「は、はい。」

 

 

女の子「でも、途中でザンビが何かに阻まれたみたいで。」

 

 

女の子「そこから、追いかけて来れなくなったみたいなんです。」

 

 

流斗はその話を聞いて、おそらく結界に直接触れたんだろうと予測した。

 

 

流斗「そのザンビはまだそこにいる?」

 

 

女の子「多分いると思います。でもなんだか、他のザンビと少し違うようで。」

 

 

流斗「どんな風に。」

 

 

女の子「よく分からないんですけど、普通のザンビとはまた違うモノのような気がします。」

 

 

流斗はそのモノに対して、それが何なのか確信した。

 

 

流斗「カミビトか。」

 

 

流斗はその3人にこれまでの経緯と自分が何者でなぜここに来たのか、すべて話した。

 

 

その時にその3人は、名前を教えてくれた。

 

 

身長が高くスラッとした女の子は、木内加奈

 

 

どこか、ハーフのような顔立ちの女の子は、本多恭子

 

 

ほんわかとした口調と、とても優しそうな印象の女の子は、関あずさ

 

 

その3人は優衣と仲良しのグループらしい。

 

 

流斗「その金村さんなら、今、多目的ホールにいるよ。無事を知らせてあげれば安心すると思う。」

 

 

加奈「本当ですか!?」

 

 

あずさ「ありがとうございました。」

 

 

恭子「これで少しは落ち着けます。」

 

 

3人はそう言って、多目的ホールに走って行った。

 

 

流斗「さて、カミビトよ。ようやく会えたな。」

 

 

カミビト「キシャァァァァァ!!!!」

 

 

流斗は今にも、結界の膜を突き破ろうとするカミビトと対峙した。

 

 

だが、やはり浄化の力を受け、こちら入って来ることが出来ない。

 

 

流斗「光よ、来たれ!我求めるは邪なる者を断罪する十字架!!【セイント・クロス】!!」

 

 

すかさず、流斗は拘束魔法を発動した。

 

 

魔法を受けたカミビトは、イエス・キリストが処刑される時の様な聖なる十字架に磔にされた。

 

 

流斗「聖槍【ロンギヌス】シエルモード!!」

 

 

カミビト「ガァァァァァァ!?!?」

 

 

流斗「悪いがしばらく大人しくしててもらうぞ!!」

 

 

流斗はそう言って、手にした聖なる槍をカミビトに向けて投げ放った。

 

 

ズシャァァァァ!!

 

 

カミビト「ギャアアアアアア!!!!!!!!」

 

 

そのカミビトは槍に腹を貫かれ、断末魔の声をあげた。

 

 

その腹から鮮血が飛び散り、地面を赤く染め上げた。

 

 

そこでカミビトは動き止めて、大人しくなった。

 

 

流斗「大人しくはなったか。だが、これで死んだわけでじゃないからな。異空間にでも閉じ込めて置くか。」

 

 

流斗「【ディメンション・ルーム】!!」

 

 

流斗はそこで空間魔法を発動させ、カミビトを異空間の中に閉じ込めた。



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20話

流斗「ハァ、ハァ。く、クソ。なんとかなったか。」

 

 

流斗は辛うじて、カミビトを異空間に封印することに成功した。

 

 

流斗「とりあえず、食堂に戻るか。」

 

 

流斗は息を切らしながら、楓達の待つ食堂に向かった。

 

 

流斗は来た道をそのまま戻り、途中で遭遇したザンビを元に戻しながらも、食堂に辿り着いた。

 

 

流斗「ごめん!待たせた!!」

 

 

楓「神村さん!良かった無事で!!」

 

 

楓達は安堵した様子で、流斗を迎え入れた。

 

 

流斗「女子寮の安全は確保した。それとカミビトの封印にも成功した。だが、封印はそんな長くは持たないから、今すぐに女子寮に移動しよう。」

 

 

流斗のその提案にその場にいた全員は、賛成の意を示した。

 

 

楓「それじゃ、すぐに移動しよう。」

 

 

詩織「早くそうした方が良さそうですね。」

 

 

その二人の言葉を聞いて、すぐ移動の準備をした。

 

 

しばらくして、流斗は移動の準備が全員終えたの確認すると、流斗を先頭に移動を開始した。

 

 

食堂が遠くなると、すぐにザンビの気配がしてきた。

 

 

流斗「クソ、来やがったか!」

 

 

流斗がそう言った瞬間、三人のザンビが飛び出して来た飛び出して来た。

 

 

ザンビ「ガァァァァァァ!!」

 

 

ザンビ「グオアアアアアア!!!!」

 

 

ザンビ「グルルアァァァァァ!!!!」

 

 

流斗「チッ!少し殺気を出すか。」

 

 

流斗は魔法は使わず、ザンビに向けて、強力な殺気を放った。

 

 

ザンビたちは流斗の殺気を受け、怯えたかのように、震え出した。

 

 

楓「神村さん!」

 

 

流斗「みんなは先に女子寮に行って。」

 

 

詩織「え?」

 

 

流斗「オレは大丈夫。」

 

 

聖「で、でも·····」

 

 

流斗「いいから、早く行け!!」

 

 

流斗は少し怒るような感じで、楓達にそう言った。

 

 

楓「うん、わかった。みんな、行こう!!」

 

 

楓にそう促され、実乃梨たちは女子寮に走って行った。

 

 

流斗「魔力が少なくなって来たな。少し、封印を解くか。」

 

 

流斗は指にはめてる魔力を抑える道具の指輪を一つ外した。

 

 

ズン!!!!

 

 

その瞬間、流斗の内側から魔力を溢れ出た。

 

 

流斗「ふぅー少し戻ったな。」

 

 

流斗は全身に魔力が行き渡る感じると、そのままデュランダルを抜き放った。

 

 

ザンビ「グオアアアアア!!!!」

 

 

流斗「さぁ、行くぞ!聖剣【デュランダル】アストラルモード!!さらに、エクステンシヴモード!!」

 

 

そして、そのままデュランダルを縦に振り下ろす。

 

 

ズドォォォォン!!!!

 

 

激しい音と共に光の奔流がザンビを包み込んだ。

 

 

そして、ザンビたちはそのまま崩れ落ちた。

 

 

流斗「よし、今のウチだ!」

 

 

流斗はザンビから元に戻ったその3人を抱えて、女子寮に転移魔法を使い、女子寮の多目的ホールの入り口に転移した。

 

 

流斗「ふぅ、なんとか間に合ったか。」

 

 

流斗はそう言って、魔力封印の指輪を付けて、多目的ホールに助けた3人を抱えて入って行った。



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21話

セイント・バインド


光属性上級の拘束魔法。ライトバインドと同系統の拘束魔法で、強化版みたいな物。だが、持続時間はこちらの方が断然上である。


ブライディング・チェーン


光属性最上級の拘束魔法。地面から鎖が飛び出して、相手の動きを封じる魔法。主に多数の敵を相手の動きを封じる時に効果的である。上達させれば、さらに多くの敵を止めることも可能。極めれば、鎖を操って攻撃することも可能になる。


セイント・クロス


光属性最上級の拘束魔法。相手を聖なる十字架に磔にして、動きを封じる魔法。特に何かを一時的に封印する時に使う。


流斗が多目的ホールに入ると、楓達が出迎えてくれた。

 

 

楓「神村さん!無事で良かった。」

 

 

聖「はい、ザンビに噛まれちゃったかと思いました〜!!」

 

 

流斗「この通り無事だよ。どこも噛まれてない。」

 

 

流斗はそう言って、首筋や足、腕などを見せた。

 

 

楓「そう言えば、さっき連れてきた3人は?」

 

 

流斗「ああ、あの3人なら、そこで寝かせてるよ。」

 

 

楓に聞かれ、流斗は窓際に寝かせてる3人を指してそう言った。

 

 

その時、その3人は同時に目を覚ました。

 

 

流斗「お、起きたみたいだ。」

 

 

楓「ホントだ。ちょっと様子を見に行って見ようか。」

 

 

流斗と楓はそう言って、目を覚ました3人の様子を窺った。

 

 

その3人も楓達と同じ、フリージア学園の制服を着ていたのですぐにここの生徒だとわかった。

 

 

女の子「う、ぅぅぅ。」

 

 

女の子「あ、あれ?ここは?」

 

 

女の子「イタタ····」

 

 

楓「三人とも起きた?」

 

 

女の子「楓?楓なの?」

 

 

楓「うん、私だよ。」

 

 

女の子「無事だったんだ。」

 

 

楓「うん、この通り。」

 

 

三人のうち二人の女の子はどうやら、楓と同級生だったらしく、目が合うと、すぐに話し始めた。

 

 

女の子「あの、ここはどこですか?」

 

 

楓「君は、一年生だね?」

 

 

女の子「あ、はい。そ、そうです。」

 

 

もう一人の女の子は一年生だったみたいで、少し緊張しながら、楓に話し掛けた。

 

 

流斗「三人とも、呪いが解けてて良かったよ。」

 

 

流斗がそう話し掛けると、三人は少し怪訝な顔して見てきた。

 

 

女の子「あのー、どなたですか?」

 

 

流斗「ああ、ごめん。オレは神村流斗。この事件の調査に来たんだ。」

 

 

三人はその言葉を聞いて、安堵した表情を浮かべた。

 

 

柚月「私は先川柚月です。フリージア学園の二年生です。」

 

 

砂羽「同じく上杉砂羽。よろしく…」

 

 

美琴「し、椎名美琴です。一年生です。よろしくお願いします。」

 

 

三人がそれぞれ自己紹介をし終わると、流斗はこれまでの経緯と自分が何者なのかを包み隠さず、説明した。

 

 

柚月「もうそんな事になってたんですか!?」

 

 

砂羽「あんたの言う事、にわかに信じられないけど、真実みたいだから、信じる。」

 

 

美琴「た、助けに来てくれてありがとうございます!!」

 

 

流斗たちがそんな話をしていると、聖がこちらに近寄って来た。

 

 

その時、砂羽は聖を睨み付けていた。

 

 

砂羽「聖ッ·····あんたも生きてたのね。」

 

 

聖「砂羽こそ、元に戻してもらえて良かったわね。麗奈に裏切られて本当にざまぁ無いよ。」

 

 

流斗は何か二人の間に険悪なムードを感じ取っていた。

 

 

流斗(おいおい、まさかこの二人仲が悪いのか?)

 

 

砂羽「なんですって!!!」

 

 

その騒ぎを聞き付けた楓が二人を止めようとする。

 

 

楓「ほら、二人ともやめなって!」

 

 

聖「だって砂羽が!」

 

 

砂羽「楓もなんでこんなヤツと仲良くするのよ!?」

 

 

楓「なんでって困ってるなら、気に掛けるのが普通じゃない?」

 

 

砂羽と聖の言い争いがさらに、ヒートアップして行く。

 

 

流斗「おい、その辺にしとけよ。」

 

 

砂羽「あんたは黙ってて!!よそ者のクセに!」

 

 

流斗はそこでカチンと来て、ドスの効いた声で怒鳴り声を放った。

 

 

流斗「いい加減しろ!!」

 

 

流斗「今は協力し合うべき状況だ!!そんな状況下で喧嘩なんて二人とも死にたいのか!!!」

 

 

だが、構わず砂羽は聖を罵倒し続ける。

 

 

砂羽「聖なんて死ねば良かったのに!!」

 

 

流斗はその言葉で何かが自分の中で切れたのがわかった。

 

 

流斗「そうか、そんなに死にたいのか?だったら、殺してやるよ。」

 

 

流斗は殺気を放ちながら、デュランダルをノーマルモードで顕現させ、砂羽に突き付ける。

 

 

流斗「いいか、よく聞け。今、この協力し合わなきゃ状況下でそんな人を貶すような発言が許されると思うか?」

 

 

砂羽「ヒッ!」

 

 

流斗「今は、協力しわなければすぐに全滅だ。それを乱すようなヤツを守ってやるほどオレは甘い人間じゃない!!」

 

 

流斗はそう言い放つと、今度は聖に向き直る。

 

 

聖「や、やめて·····」

 

 

流斗「甲斐さん、君もだ。次やったら、お前ら二人は見捨てる。いいな?」

 

 

流斗は釘を刺すように二人に向けてそう言い、デュランダルをしまった。

 

 

楓「ちょっと、やりすぎじゃない?」

 

 

流斗「ごめん、こうでもしないと二人は協力し合ってくれないと思ったからさ。」

 

 

楓「あまり、みんなを怖がらせないようにしてね?みんな不安なんだから。私だって本当は怖かったんだからね?」

 

 

流斗「わかったよ。ごめん。」

 

 

流斗はそう言いながら、あくびをしてしまった。

 

 

流斗「やべ、そろそろ眠くなって来たな。」

 

 

楓「そうだね。そろそろ休もっか。」

 

 

流斗「そうだな。」

 

 

流斗は全員に部屋に戻って休んでいいと促した。

 

 

流斗「それとさっきはごめん!みんなを怖がらせてしまって。オレもカッとなってついあんな風にやってしまったから。」

 

 

流斗はそう言って謝ったが、みんなはあまり気にしていない様子だった。

 

 

実乃梨「いいよ。今は協力し合わなきゃいけない時だもん。」

 

 

優衣「そうそう、その二人はいいお灸になったと思いますよ。」

 

 

瀬奈「ああ、私もそう思う。」

 

 

詩織「みんな疲れてそうだし、そろそろ休みましょう。」

 

 

詩織のその言葉で、みんなはそれぞれ自分の部屋に向かった。

 

 

楓「はい、これ使って。」

 

 

楓はそう言って、毛布を持ってきてくれた。

 

 

流斗「ありがとう。」

 

 

楓「それじゃ、おやすみ。」

 

 

流斗「うん、おやすみ。」

 

 

楓もそこで自分の部屋に戻って行った。

 

 

流斗「さて、俺も寝るか。」

 

 

流斗も楓を見送ると、その場で横になり、眠りに就いた。



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22話

次の日、朝日の光が多目的ホールを包み込む。

 

 

流斗はその光が差し込むの感じて、目を覚ますのだった。

 

 

流斗「よし、魔力も戻ってる。これでまたちゃんと戦えるな。」

 

 

魔力の回復を感じた流斗は、一度気を引き締め、起き上がった。

 

 

その時、多目的ホールの扉が開き、楓と聖が入って来た。

 

 

楓「おはよう。昨日はよく眠れた?」

 

 

流斗「うん、バッチリだよ。」

 

 

楓「ごめんね、本当はちゃんと部屋のベッド寝かせてあげたかったんだけど、さすがに女子の部屋に入らせるわけにいかないから。」

 

 

流斗「いやいや、それはさすがにしょうがないよ。」

 

 

聖は二人の話を不安そうに聞いていた。

 

 

おそらく昨日の事がショックだったのだろう。

 

 

そんな聖を楓が小突きながら、言う。

 

 

楓「ほら、聖。昨日の事謝るんでしょ?」

 

 

聖「う、うん。」

 

 

聖は俯きながら、そう返事した。

 

 

聖「昨日はごめんなさい!あんなんじゃ見捨てられても文句は言えないですよね·····」

 

 

聖は泣きながら、そう言って来た。

 

 

聖「でも、お願いします。見捨てないでください。ちゃんとみんなと協力し合いますから!」

 

 

流斗は聖の言葉を聞いて、少しホッとした。

 

 

流斗「もういいよ、わかってくれれば。オレも昨日はやりすぎた。ごめんね。」

 

 

楓「ほらね。ちゃんと謝れば許してもらえたでしょ?」

 

 

聖「楓、ありがとう。」

 

 

そこで昨日の揉めた件は一旦、収まった。

 

 

楓「さてっと、この後はどうしよっか。」

 

 

流斗「まずは、食堂に集まって朝食にしようか。」

 

 

楓「ザンビたちの気配は?」

 

 

流斗「あるのはあるけど、活動はしてないみたいだ。」

 

 

流斗はそう言って、気配を探ったが活動している様子は感じられなかった。

 

 

その後、楓たちはみんなを連れて来て、食堂に案内した。

 

 

もちろん、朝食は流斗一人で全員分作ることになった。

 

 

流斗「クソォ、なんでオレだけで·····」

 

 

流斗は奮闘しながらも、なんとか朝食を作り終えて行った。

 

 

流斗「みんな、お待たせ。」

 

 

全員「わぁー!!」

 

 

流斗の作った豪華すぎる朝食にみんなは感激していた。

 

 

優衣「ま、負けた·····」

 

 

加奈「な、なんて女子力!!」

 

 

恭子「本当だよ·····」

 

 

あずさ「これを一人でなんて凄すぎる!」

 

 

流斗の料理を食べた事のない女の子たちは言葉を失っていた。

 

 

楓「そう言えば、これからどうするの?」

 

 

そんな様子を見ていた楓が、そう訊いてくる。

 

 

流斗「まずは、守口さんを元に戻して、他に残ったザンビもすべて元に戻す。そして残美村に連れて行ってもらう。」

 

 

実乃梨「守口さんを?でもまた楓を生贄しようとするンじゃない?」

 

 

その話を聞いていた実乃梨がそう訊いてくる。

 

 

流斗「大丈夫。そんな事をしようとしたら、オレが止める。」

 

 

流斗は真剣な顔をしながら、そう返した。



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23話

流斗「それにあの人はもう、その過ちに気付いてる。」

 

 

実乃梨「そっか、わかった。」

 

 

話はそこで纏まったようだった。

 

 

それからしばらくして、全員朝食を食べ終え、ほとんどが部屋に戻って行った。

 

 

その食堂に残った内の柚月と穂花の二人がこちらにやって来た。

 

 

流斗「どうしたの?」

 

 

穂花「あの、実は謝らなければいけない相手がいるって言ったのを覚えてますか?」

 

 

流斗「うん、覚えてるよ。」

 

 

穂花「その相手がこの柚月なんです。」

 

 

流斗「そうだったんだ。」

 

 

流斗はそう言って、柚月の顔を見た。

 

 

すると柚月はちょっとむくれていた。

 

 

流斗「よければ何があったか教えてくれない。」

 

 

流斗がそう言うと、穂花は自分たち二人にあった事を教えてくれた。

 

 

話によると、ザンビ騒動が起こり始めた頃、穂花は逃げ込んだ家庭科室で、持病の喘息の発作が起こり、柚月と共に部屋に薬を取りに行った。

 

 

その途中、ザンビの群れに襲われ、柚月を身代わりに穂花は自分だけ逃げて行ってしまった。

 

 

そして穂花自身も逃げて行った先でザンビとなった先生に襲われ、ザンビ化してしまったという話だった。

 

 

柚月「最初、見かけた時は本当に怒りましたよ。でも昨日、神村さんが怒っていたの聞いて、気持ちを切り替えて今は、協力し合わなければならないと思っています。もちろん、私を身代わりにした事は許せませんけど。」

 

 

流斗「そっか、そんな事があったんだ。」

 

 

流斗「確かに、それは許されることではないと思うけど、場合によっては何かを犠牲にしなければいけないこともある。だけど、本当は犠牲にしなくてもいいんじゃないかとここ最近オレも思うよ。」

 

 

穂花「そうですね。ありがとうございます。話を聞いてもらって。」

 

 

流斗「キミもちゃんと自分のした事受け止めて、これからを生きていってね。」

 

 

そこでその話は終了した。

 

 

流斗(フリージア学園の生徒の間にも、いろいろな人間関係があるよな。言うなれば、このザンビの始まりも村の人間が絡んでるし。人間って言うのは本当に恐ろしい生き物だ。)

 

 

そんな考えをしていると、楓が話し掛けて来た。

 

 

楓「神村さん、今なら、日が昇ってる内だし、校内にザンビを探し回ってみない?」

 

 

流斗「そうだね。そうしてみようか。まず村に行くにも校内にザンビは一体も残したくないし。」

 

 

流斗はその楓の提案に乗ってみることにした。

 

 

なぜなら、ザンビが一体でもいれば、せっかく助けた人がまた襲われ、ザンビが増えて行ってしまうからだ。

 

 

それを防ぐには校内にいるザンビはすべて、元に戻さなければならない。

 

 

流斗はすぐさま行動を開始した。

 

 

流斗「まずは、音楽室行ってみようか。」

 

 

楓「最初に二つ目の拠点をしようとしてた所ね。いいよ。案内するから、着いてきて。」

 

 

楓はそう言って先頭に立ち、案内をしてくれる。

 

 

音楽室は食堂の扉から出て左に進んで行き、突き当たりの右にある階段を、3階まで登って行き、右に曲がると長い廊下がある。

 

 

そこを真っ直ぐ進んで一番奥の教室が音楽室だ。

 

 

流斗「気配が音楽室に結構あるな。おそらくそこに残ってるザンビが集まってる。活動はしてないけどね。」

 

 

楓「なるほどね。」

 

 

流斗「うーん」

 

 

楓「どうしたの?」

 

 

楓は急に考え事をし始めた流斗に、そう訊いてきた。

 

 

流斗「いやー西条さんから話を聞いたんだけど、修学旅行に行ったんだよね。」

 

 

楓「うん、その途中でバスが故障かなにかして、たまたま立ち寄った村が残美村だった。」

 

 

そんな話を続けながら、廊下を進んで行く。

 

 

流斗「そんな田舎の辺境にある村に偶然辿り着いたっていうのも変だよな。」

 

 

流斗はそう言いながら、一つ可能性を見出していた。

 

 

流斗「まさか、先生は残美村出身でザンビの呪いを日本中に広めようとした?」

 

 

楓「そんな!そうなってくると、あのバスの運転手も怪しいかも!!」

 

 

流斗「なんで?」

 

 

楓「だって、あの運転手。先生の親戚の人だもん。」

 

 

流斗は浮かび上がって来た真実に驚愕の表情を隠せないでいた。

 

 

流斗「まあとにかく、今はザンビをすべて元に戻すことだけを考えよう。その事を今考えてもしかたない。」

 

 

楓「そうだね。」

 

 

そのまましばらく話しながら、歩いて行くと、音楽室の前に着いたのだった。



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残美村へ
24話


聖槍【ロンギヌス】


流斗が教会の悪魔祓い師になった時に、授けられた武器の一つ。遥か昔、イエス・キリストが処刑された際に死を確認するために彼の脇腹に刺し込まれた槍そのものと言われてる。流斗自身は主に何かを封印する時に使用する。もちろん、武器としてもかなりの性能を誇る。下手をすれば、神をも滅ぼす力を秘めている。


シエルモード


聖槍【ロンギヌス】の封印の力に特化した状態。よく拘束魔法とペアでこの状態が使われる事が多い。


流斗と楓は音楽室の扉の前に着くと、ゆっくり扉を開けた。

 

 

中に入ってみると、そこには何人かのフリージア学園の生徒と一人の男性が立っていた。

 

 

だが、どこか全員目が虚ろで、肌は死人の様に白みがかっていた。

 

 

楓「守口さん·····」

 

 

楓は、女子生徒たちの中心に立っている人を指してそう呼んだ。

 

 

流斗「まさか、この人が?」

 

 

楓「うん、この人が守口さんだよ。」

 

 

楓のその言葉に流斗は息を飲み込んだ。

 

 

楓を生け贄に捧げようとした人物が今、目の前にいる。

 

 

だが、残美村の場所を知ってるのもまたこの守口という男である。

 

 

流斗「山室さん。悪いけど少し外に出ててもらえるかな?こいつらの今現在の本性を暴き出す。」

 

 

楓「え?う、うん。わかった。気を付けてね」

 

 

楓はそう言って、流斗の指示に従い外に出て行った。

 

 

流斗「さて、始めるか。」

 

 

流斗はそう言って、ある魔法の呪文を唱え始めた。

 

 

流斗「真実よ来たれ!我求めるは偽りを見抜く眼!!【ミラージング・ブレイク】!!」

 

 

流斗が唱えたのは、幻属性の魔法であり、いくつもの鏡と無数の目が現れ、相手の正体を暴き出す魔法である。

 

 

流斗がこの魔法を唱えたのはこの中に通常の人間がいないか、確かめる為である。

 

 

だが、その瞬間、流斗を除くその場にいた全員が本性を現し、ザンビとなって行った。

 

 

流斗「やはり全員ザンビだったか。ならしかたない。」

 

 

流斗はそう言うと、すかさずデュランダルを手に出し、構えを取った。

 

 

流斗「聖剣【デュランダル】アストラルモード!!さらにエクステンシヴモード!!」

 

 

流斗はアストラルモードとエクステンシヴモードを重ねがけで発動し、ザンビ達を一刀両断して行った。

 

 

ズドォォォォン!!!!

 

 

迫力は凄まじいが、もちろん外傷はなく、その場にザンビたちは崩れ落ちた。

 

 

流斗「ふぅ、山室さん、もう入って来ていいよ。」

 

 

楓「終わったの?相変わらず凄いね。」

 

 

流斗「そんな事ないよ。守口さんと他全員を元に戻す事が出来たよ。呪いももう消えてる。」

 

 

そんな事を話していると、守口が目を覚ました。

 

 

守口「ウッ、ア、ハァハァ、ここはどこだ?」

 

 

楓「目が覚めましたか?」

 

 

守口「なっ!?き、君はザンビになったはずじゃ!!!!」

 

 

楓「実は彼が元に戻してくれたんです。」

 

 

楓はそう言って、流斗の方を向いた。

 

 

流斗「はじめまして、オレは神村流斗です。守口さんの手記を読みました。」

 

 

流斗はそう言って、守口の依頼がしっかり教会まで届いて来たという事を報告した。

 

 

守口「そうか、オレの残したあの手記。無駄にならなかったようだな。」

 

 

守口はそう言うと、楓の方に向き直り、頭を下げて来た。

 

 

守口「キミには、本当にすまないことをした。オレのことを殺しくれても構わない。それだけの事をしてしまった。」

 

 

楓「何言ってるんですか!私はあなたを憎んではいません!それに私だって同じ事をしたと思います。増してや、自分の娘のためだったら。」

 

 

流斗「娘?守口さんは娘さんがいたんですか?」

 

 

守口「ああ、まだ小学生の娘がな。今は残念ながら、ザンビとなってしまっている。」

 

 

そこで流斗は自分の持つ力の説明をし、その守口の娘を救うという提案を出した。



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25話

守口「本当か!?娘を助けてくれるのか!?」

 

 

流斗「ただし、条件があります。」

 

 

流斗はそこで条件を二つ提示した。

 

 

流斗「条件は二つあります。一つ目はここの生徒を生け贄にしようとしない事。二つ目はオレを残美村に案内する事。この二つです。」

 

 

守口「ああ、わかった。約束しよう。」

 

 

守口はこの条件を娘のためならと、二つ返事で飲んだ。

 

 

流斗「もし、誰かを生け贄にしようとする素振りを見せたら、その時点でオレはあなたを殺します。そんな事しようとするヤツを生かしておく程オレは甘くありません。」

 

 

流斗は言葉に殺気を乗せながら、そう言った。

 

 

守口「わ、わかった。」

 

 

流斗「その返事を聞けて安心です。これで交渉は成立ですね。」

 

 

こうして流斗は残美村へ行く術を手に入れる事が出来た。

 

 

楓「これで残美村に行くことが出来るね。そう言えば、あと残ってるザンビはもういない?」

 

 

流斗「ああ、もう学園内に残ってるザンビはもう居ないよ。ただし、問題のカミビトだ。」

 

 

守口「ザンビの成れの果て、カミビト。こうなっては残念ながら、殺してやる事も出来ない。助ける方法は100年前に生き埋めにされた女性の怨念を晴らす方法に他ない。」

 

 

流斗が施した封印魔法はすでにタイムリミットを過ぎている。

 

 

今現在は、この学園内に戻って来てしまっている。

 

 

まずは、そのカミビトを見つけ、拘束魔法を何重にも施し、残美村に連れて行くしかない。

 

 

そうしなければ、また生徒が襲われ、再びザンビ達が蔓延してしまうだろう。

 

 

その時、学園の鐘が鳴り響いた。

 

 

カーンカーンカーンカーン

 

 

?「お祈りの時間ですよ。」

 

 

それと同時に扉の方で女性の声でそう聞こえた。

 

 

流斗「ッ!!」

 

 

楓「ヒッ!」

 

 

守口「クッ!!」

 

 

三人が一斉に扉の方へ振り向くと、そこには一人の女性教師が立っていた。

 

 

それと同時に女性教師が豹変して行った。

 

 

流斗「二人共、後ろに下がってて!!」

 

 

流斗は二人を守るような形で、そう促した。

 

 

守口「どうするつもりだ?そいつはあの時のカミビトだ。心臓を貫いても死なないぞ!?」

 

 

流斗「何重にも拘束魔法をかけて、異空間にもう一度封印します!!」

 

 

楓「そんな事が出来るの!?」

 

 

流斗「ああ、今なら魔力も十分ある。行けるよ!」

 

 

流斗はそう言って、拘束魔法の呪文を唱え始める

 

 

同時に、女性教師もカミビトとなって、流斗に襲い掛かる。

 

 

カミビト「ガァルルァァァァァァァァァ!!!!」

 

 

流斗「光よ来たれ!我求めるは罪人を磔にせしめる十字架!!【ディバイド・クロス】」

 

 

カァァァァァァッ!!!!

 

 

カミビト「ガァルルァァァ!?」

 

 

魔法が発動されると、カミビトは聖なる光を放つ十字架に磔にされた。

 

 

流斗「まだだ!!」

 

 

流斗「聖槍【ロンギヌス】!!シエルモード!!」

 

 

楓と守口はその槍を見て、驚いた表情を浮かべていた。

 

 

守口「あれはキリスト教の聖遺物の一つ。聖槍【ロンギヌス】か!?実在していたのか。」

 

 

楓「はい、私も聖書でしか読んだことないです。」

 

 

流斗はそんな二人には目もくれず、その槍をカミビトに向かって投げ放った。



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26話

流斗「行っけぇぇぇ!!!!」

 

 

流斗の投げ放った槍は正確にカミビトの心臓を貫いた。

 

 

ズシャァァァァァァァァ!!!!

 

 

カミビト「ギャアアアアアアア!!!!!!!!」

 

 

流斗「さらにもう一丁!!」

 

 

流斗「光よ来たれ!我求めるは白き聖なる鎖!!【ブライディング・チェーン】!!」

 

 

次に流斗はさらに拘束魔法を重ねがけした。

 

 

白く輝く鎖がカミビトのの身体に巻き付き自由を奪った。

 

 

流斗「しばらく大人しくててくれよ。【ディメンション・ルーム】!!」

 

 

そして空間魔法を使い、カミビトを異空間に閉じ込めた。

 

 

その様子を見ていた守口は信じられないという顔をしていた。

 

 

守口「凄いな君は。こんな事が出来るなんて。」

 

 

流斗「いや、まだまだですよ。それより、いいですか?そろそろ残美村に案内してもらっても。」

 

 

流斗がそう言うと、守口は慌てて頷いた。

 

 

楓「ねぇ、私も連れて行ってもらってもいいかな?」

 

 

流斗「それはダメだ。」

 

 

楓「なんで?」

 

 

流斗「残美村はおそらくザンビの巣窟になっしまっているよ。そんな危険な所にキミは連れて行けない。」

 

 

楓「私も事件の当事者なんだよ。この事件を最後まで見届けたい。」

 

 

楓は流斗の目を真っ直ぐ見ながら、そう訴えた。

 

 

守口「キミが守ってやれば問題はないだろう。彼女には事の行く末を見届ける権利がある。」

 

 

守口にそう言われ、流斗はそこで折れた。

 

 

流斗「わかった。そこまで言うなら、連れて行くよ。」

 

 

流斗がそう承諾すると楓は笑顔で礼を言ってきた。

 

 

だが流斗は、一つそこで付け加える。

 

 

流斗「ただし、本当に最悪の事態に陥ったら、オレを置いて守口さんと二人で逃げてくれ。」

 

 

楓「え?」

 

 

流斗「残美村に行ったら何が起こるかわからない。それだけは守ってくれ。オレはキミたち誰一人もを死なせたくない。」

 

 

楓「わかったよ。」

 

 

流斗「守口さんもいいですね?」

 

 

守口「わかった。もしもの時は彼女を連れて逃げるよ。」

 

 

流斗はそこで一つ聞き忘れた事に気付いた。

 

 

流斗「そう言えば、守口さんの娘さんは今どこに?」

 

 

守口「おそらく、残美村にいるだろう。」

 

 

流斗「残美村に?また何故そこに?」

 

 

流斗は何故守口の娘が残美村にいるのか、そこで疑問に思う。

 

 

守口「彼女がザンビの封印を解いた事はもう聞いただろう?」

 

 

流斗「はい、聞きましたけど。」

 

 

守口「その封印が解かれたせいで、村で祀っていた物がなくなってしまった。」

 

 

流斗はそこで一つの真実に気づく。

 

 

流斗「まさか、守口さんの娘さんは!?」

 

 

守口「ああ、今は残美村で祀られていた物の変わりに祀られている。」

 

 

流斗は驚愕の真実を知り、言葉を失ってしまった。



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27話

流斗「そんな事になっているなんて·····」

 

 

守口はそこで気になっている事を話して来た。

 

 

守口「そもそもなぜ、フリージア学園の生徒達がが残美村なんか来たのか。その理由がわからない。」

 

 

楓「それについては少し心当たりというか仮説があります。」

 

 

守口「なんだそれは?」

 

 

楓はそう訊かれると、残美村に行った理由の一つの仮説を話した。

 

 

楓の立てた仮説は、自分達の担任が残美村出身で、そこに祀られている100年前のあの女性の怨念を封じるための生け贄に捧げようと連れて行った。

 

 

というものであると、守口に話した。

 

 

守口「確かに、それだったら、君達が残美村に来た理由がわかるな。」

 

 

流斗「なるほどね。」

 

 

二人はそう言って、楓の立てた仮説に納得した。

 

 

そこで流斗のスマホが鳴る。

 

 

プルルルッ!プルルルッ!

 

 

流斗「はい、もしもし!」

 

 

?「もしもし!流斗か!?父さんだ!」

 

 

電話の主は父親だった。

 

 

流斗「父さん!?ど、どうしたの!?」

 

 

父「実はな、教会の上層部からある村の破壊命令が下された。」

 

 

流斗「ある村の破壊命令?なんでまたそんな急に?」

 

 

父「理由は詳しくは分からない。だが、その村ではカルト宗教的な、信仰があるらしいんだ。」

 

 

流斗はその話を聞いて、まさかと思っていたが、父の次の言葉を待った。

 

 

父「そのある村の破壊命令の内容だが、残美村という村の完全破壊という内容だ。」

 

 

流斗「え!?」

 

 

父のその命令の内容を聞いて、流斗は愕然としていた。

 

 

父「それをお前にやって欲しいと上層部は言ってる。どうだ?引き受けてくれるか?」

 

 

その内容を聞いて、流斗は言葉を失っていたが、楓と守口はやってくれと目で訴えて来た。

 

 

守口「やってくれ。」

 

 

楓「神村さんの手でもう二度とこんな事を起こらないように、終わらせて!」

 

 

流斗は二人のその言葉にに決心が着いた。

 

 

流斗「わかった。」

 

 

父「すまないな。こんな事をやらせてしまって。本当ならオレが行くべきなんだが、立場上オレは簡単に動けない。」

 

 

流斗「わかってるよ。」

 

 

父「あと、村人についてだが、今は全員行方不明という情報が入っている。だがもし、見つけたら、殺さず、そのまま拘束して、教会の者に引き渡してくれ。上層部いわく、あくまで村の破壊だけに集中して無駄な殺生はしないでくれとの事だ。」

 

 

流斗はその言葉が聞けて、安心していた。

 

 

村人達に関しては殺さず、教会に拘束されることになった。

 

 

流斗「わかった。」

 

 

父「それじゃ、くれぐれも気をつけてな。あと、同時に三ヵ所で起きている集団失踪事件についても引き続き調査頼む。」

 

 

流斗「わかってるよ。」

 

 

父「ではな。」

 

 

そこで電話が切れたのだった。



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28話

流斗「それじゃ、守口さん。残美村までの案内をお願いします。」

 

 

守口「わかった。」

 

 

楓「行きましょう。」

 

 

三人はそう言って、フリージア学園の正面玄関に向かった。

 

 

楓「出発する前に実乃梨と聖と亜須未の三人に挨拶だけいいかな?」

 

 

流斗「少しだけなら、いいよ。」

 

 

守口「ああ。少しだけなら大丈夫だ。」

 

 

楓「ありがとう。」

 

 

三人は正面玄関に向かう途中、亜須未、実乃梨、聖の部屋による事にした。

 

 

楓にとって、亜須未は親友であり、実乃梨と聖に至っては楓とザンビ騒動が始まった時、一緒に行動を共にしていたため、せめてこの三人にだけは残美村に行く事を伝えたいと、この時楓は思っていた。

 

 

最初に訪れたのは亜須未の部屋だった。

 

 

楓は扉の前まで来ると、亜須未の部屋のドアをノックした。

 

 

コンコン·····

 

 

亜須未「はーい!」

 

 

すぐに中から応答があり、亜須未が部屋から出て来た。

 

 

亜須未「楓?どうしたの?」

 

 

楓「実は話があってね。」

 

 

亜須未「話?」

 

 

楓「神村さんと守口さんって人も一緒でいいかな?」

 

 

亜須未「別にいいけど·····」

 

 

そこで楓は流斗を呼びかけた。

 

 

流斗「オレも一緒でいいの?」

 

 

守口「大丈夫なのか?」

 

 

楓「うん。」

 

 

亜須未「結構大事な話っぽいね。どうぞ中に入って。」

 

 

亜須未はそう言って、流斗達を部屋に招き入れた。

 

 

楓は部屋に入ると、さっそくこれからの事について亜須未に伝え始めた。

 

 

楓「私、これから残美村に行く。」

 

 

亜須未「え!?なんでよ!?」

 

 

楓「元はと言えば、私がザンビの封印を解いてしまったから、あんなことになったの。」

 

 

楓は自分の気持ちを全部、亜須未に打ち明けた。

 

 

亜須未「楓、ちょっと変わったね。」

 

 

楓「え?」

 

 

亜須未「ここ最近の楓、前より明るくなった気がする。」

 

 

楓「そう?あまり自覚ないけど。」

 

 

二人はそんな話をしながら、互いに笑い合った。

 

 

流斗はそんな二人を見て、意を決して話し始めた。

 

 

流斗「山室さんの事は責任を持ってオレが守るよ。」

 

 

守口「ああ、絶対にな。」

 

 

そこで亜須未は守口を見て、残美村にいたあの記者だと気づく。

 

 

亜須未「もしかして、あの時残美村の神社にいた記者みたいな人ですか?」

 

 

守口「ああ、その通りだ。実は残美村を取材してたんだよ。」

 

 

守口は自分に降り掛かって来た出来事とその後の経緯を亜須未に教えた。

 

 

亜須未「そんな事があったんですね·····」

 

 

守口「山室さんの事は絶対にザンビになんかさせない。オレはそう主に誓う。」

 

 

守口のその言葉を聞いて、亜須未は少し安心した表情を見せた。

 

 

流斗「山室さん、守口さん、そろそろ行こう。」

 

 

流斗がそう促すと、二人は真剣な顔で頷いた。

 

 

亜須未「神村くん、楓をお願いね。神村くんもどうか無事で。」

 

 

流斗「もちろん!」

 

 

流斗はそう笑顔で返すと、楓達と一緒に、亜須未の部屋を後にした。



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29話

亜須未の部屋を出て、次に向かうのは実乃梨の部屋だった。

 

 

実乃梨の部屋に向かって進んでいると、廊下の奥から三人のフリージア学園の女子生徒が歩いて来た。

 

 

その三人は先程、守口と共に呪いから解放した女子生徒のうちの三人だった。

 

 

?「あっ!」

 

 

?「さっきはありがとうございました!!」

 

 

?「本当に助かりました。」

 

 

流斗「あ、三人とも目を覚ましたんだね!」

 

 

その三人は流斗を見つけるやいなや、駆け寄ってきてお礼の言葉をくれた。

 

 

麻里奈「私、藤崎麻里奈って言います。」

 

 

美緒「庄司美緒です。」

 

 

弥生「小島弥生です。」

 

 

流斗「オレは神村流斗。よろしくね。」

 

 

互いに自己紹介をし、流斗はこれまでの経緯を話した。

 

 

麻里奈「なるほど。そんな事になってたんですね。」

 

 

美緒「本当にびっくりだよ。」

 

 

弥生「はい。」

 

 

そこで三人のうちの一人、弥生が聞かがかりがあると言ってきた。

 

 

弥生「ちょっと訊きたい事があるんですけど、美琴は、美琴は無事ですか!?」

 

 

流斗「ああ、その子もオレが元に戻した。今は自分の部屋にいるよ。」

 

 

その言葉を訊いて弥生は安心した表情を浮かべていた。

 

 

話によると、麻里奈と弥生は他の女子生徒と共に行動を共にしていたらしい。

 

 

だが、弥生はザンビ化した美琴からのささやきによって、ザンビに襲われないように、閉めていた窓を開けてしまい、そこで全員がザンビ化してしまったのだと言う。

 

 

その時に麻里奈は楓がザンビの封印を解いてしまったという事を知っており、楓は最初、この学園を燃やそうとしていたため、灯油を麻里奈たちの隠れていた倉庫に取りに来た。

 

 

そこでその時に楓と共に行動を共にしていた実乃梨に楓を殺してくれと頼んだらしい。

 

 

 

流斗「そっか、わかった。君たちを責めるつもりはないし、どうこう言う気もないけど。山室さんだって知ってて封印を解いたわけじゃないんだ。それだけは分かってあげてね。」

 

 

麻里奈「グスッ·····は、はい、すみませんでした。」

 

 

楓「いいよ。もう部屋に戻って休んでて。疲れたでしょ?」

 

 

楓がそう言うと、麻里奈達はそれぞれ自分の部屋に戻って行った。

 

 

そこからまた少し歩き、実乃梨の部屋の前に着いた。

 

 

楓は扉の前に立ち、ノックした。

 

 

実乃梨「はーい」

 

 

すぐに返事が来て、中から実乃梨が出て来た。

 

 

実乃梨「楓?それと、う、ウソ。守口さん·····?」

 

 

流斗はそこで守口がここにいる理由をすべて話した。

 

 

実乃梨「じゃあ神村さんはこれから残美村に行くんだね。」

 

 

流斗「ああ。」

 

 

実乃梨「ここで立ち話もなんだから入ってよ。」

 

 

実乃梨はそう言って、部屋に招き入れた。

 

 

ちょうどそこに聖もいた。

 

 

守口「キミの事も生け贄に捧げようとしてしまったね。あの時は本当にすまなかった。」

 

 

まず第一声の声がそれだった。

 

 

実乃梨「もういいですよ。今日は楓が話があるってことなんでしょ?」

 

 

聖「え?話ってなんですか?」

 

 

楓は流斗たちと共に、残美村に行くとそこで報告した。

 

 

聖「ダメだよ!楓!!」

 

 

実乃梨「そうだよ!!なんでせっかく助かった命をまた危険に!!」

 

 

楓「ごめん。でも、この事件の行く末を、ザンビの封印を解いてしまった私には見届ける義務がある。そう思うの!!」

 

 

楓の決意は頑なだった。

 

 

自分が原因で起こってしまったこの事件。

 

 

楓は自分の目で行く末を見届けることに頑なであった。

 

 

実乃梨「そこまで言うなら、わかったよ。」

 

 

聖「楓、無事で戻って来てね。」

 

 

楓「ありがとう。」

 

 

そこで話はまとまったようだった。

 

 

流斗「諸積さん、聖さん。山室さんの事はオレが守る!安心してくれ。」

 

 

実乃梨「お願いします。」

 

 

聖「どうか、楓を守ってあげてください。」

 

 

流斗「任せて!!」

 

 

その時、実乃梨は守口に向き直り、彼にも励ましの言葉を伝える。

 

 

実乃梨「守口さんもどうかご無事で。」

 

 

守口「ありがとう。」

 

 

その後は、実乃梨達に見送られ、部屋を後にしたのだった。



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30話

実乃梨の部屋を後にしたあと、流斗達は急いで正面玄関に向かっていた。

 

 

守口「急ごう。あまり時間かけたくはないからな。」

 

 

流斗「ええ、そうですね。」

 

 

楓「はい。」

 

 

それからしばらくして、流斗達は守口の車が止めてある、正面玄関に到着した。

 

 

すぐ様に正面玄関を出ようとするが、なぜか鍵がかかっていて、ドアが開かなかった。

 

 

流斗「クソっ!マジかよ!」

 

 

楓「おそらく先生の仕業だ。」

 

 

守口「あのカミビトめ。こんな事までしていたのか。」

 

 

そこで流斗はもうしかたないので、このドアを破壊しようと提案する。

 

 

流斗「ダメだ。破壊しよう。」

 

 

楓「え?」

 

 

守口「そんな事して大丈夫なのか?」

 

 

流斗「魔法で修繕すれば大丈夫ですよ。」

 

 

流斗はそう言ってニヤつきながら、デュランダルを抜き放った。

 

 

流斗「二人共少しオレから離れてて。」

 

 

流斗がそう促すと、二人は流斗から距離を取った。

 

 

流斗「聖剣【デュランダル】!!フィジカルモード!!」

 

 

その瞬間、デュランダルから光の奔流が眩いほど、出てきた。

 

 

流斗「このまま行くぞ!!」

 

 

流斗はその勢いのまま、正面玄関のドアを斬り裂いた。

 

 

ザン!!ズドォォォォン!!!!

 

 

流斗の一撃により、ドアはあとかたくもなく吹き飛んだ。

 

 

楓「うわぁ·····」

 

 

守口「派手だな。」

 

 

流斗は何も言わずそのまま外に出た。

 

 

流斗「行きましょう。」

 

 

楓「うん。」

 

 

守口「ああ、わかった。」

 

 

流斗は二人が出たのを確認した後、修復魔法をかけた。

 

 

流斗「力よ来たれ!我求めるはあるべき形!!【リペア】!!」

 

 

流斗が魔法をかけると、壊れたドアは瞬く間に作り直されて行った。

 

 

流斗「これでよしと。」

 

 

守口「すごいな本当に。」

 

 

楓「もう直っちゃった。」

 

 

楓と守口は改めて、流斗の魔法を賞賛していた。

 

 

流斗「さて、守口さん。それでは運転をお願いしますね。」

 

 

守口「ああ、わかった。車はこっちだ。」

 

 

守口はそう言って、車の方へ案内した。

 

 

車の方へ辿り着くと、すぐさま乗り込んだ。

 

 

乗り順は、運転席に守口、助手席に流斗、後部座席に楓という形になった。

 

 

守口は全員が乗り込んだのを確認すると、エンジンをかけて発進した。

 

 

守口「残美村には高速で三時間かけて行く。着くのは午後3時くらいだな。」

 

 

流斗「結構かかりますね。」

 

 

楓「もしかして、泊まりになるかもしれない?」

 

 

守口「まあ、一泊はすることになるだろう。」

 

 

流斗達はおそらく一泊することになるだろうと最初から、踏んでいたがどうやら、そうなる様だ。

 

 

流斗はその時、助手席の前の収納スペースに一枚の写真を見つけた。

 

 

流斗「守口さん、この写真って·····」

 

 

守口「ああ、娘だ。」

 

 

流斗はその写真を手に取って見てみる。

 

 

だが、その写真は守口の娘の顔が歪んで写っている物だった。

 

 

守口「私はなんとしてもこの事件を終わらせたい。神村くん、どうか頼む!」

 

 

流斗「もちろん、わかってます。オレの仕事でもありますし。」

 

 

楓「私からもお願い。どうかあんなことが二度と起こらないようにして。もうあんな思いをするのは嫌だ。」

 

 

流斗「ああ、もちろんだとも。」

 

 

流斗はそう言いながら、もしもの時の最終手段について考えていた。

 

 

流斗(もしもの時は、100年前の女性の怨念と運命を共にすることになるのか。まあ、そうなったらしかたないか。)

 

 

その最終手段とは、自分を犠牲にその怨念を完全に消し去るというものだった。

 

 

それを楓と守口はその時、知る由もなかった。



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31話

その後流斗達は守口の車で、守口が運転の下、高速道路を三時間かけて走り、とうとう残美村に到着したのだった。

 

 

残美村に到着した流斗達がまず最初に感じたのは、重苦しい空気と、村の寂れた雰囲気だった。

 

 

流斗「これは·····」

 

 

守口「やはり、村人が全員消えているな。」

 

 

楓「どうして村人は消えたんだろう。」

 

 

村人の気配は全くないが、ザンビ達が潜んでいる気配はゾクゾクと流斗は感じていた。

 

 

流斗「まず、守口さんの娘さんを探しましょう。」

 

 

楓「そうだね。第一の目標を達成させましょう。」

 

 

守口「すまないな、頼む。」

 

 

三人はそう言って、村の中に入って行った。

 

 

流斗「まるでゴーストタウンだな。」

 

 

楓「そうだね。この寂れた雰囲気といい重苦しい空気といい。これじゃ心霊スポットだよ。」

 

 

守口「まあ、いわくつきの村ではあったからな。そう感じるのは、何ら不思議ではないよ。」

 

 

三人はそんな話をしながら、さらに村の奥へと進んで行く。

 

 

流斗「それで守口さん、もし泊まることになったら、何処に泊まるんですか。」

 

 

守口「この村に、オレの隠れ家があるんだ。そこなら、食料もあるし、入浴、就寝も出来る。」

 

 

楓「もしかして、記者の仕事で取材の拠点か何かですか?」

 

 

流斗「まあ、そんなところだ。」

 

 

ある程度進んで行くと、湖とその中心鳥居が見えて来た。

 

 

だが、その鳥居は誰がどう見ても異質なモノだった。

 

 

なんと、その鳥居は上下逆さまに建っているのだ。

 

 

流斗「なんで逆さまなんだ。」

 

 

守口「見張っているんだ。」

 

 

守口はそこでこの鳥居について、教えてくれた。

 

 

守口「この鳥居はおよそ100年前からあるものだ。」

 

 

楓「まさかそれって·····」

 

 

守口「ああ、生き埋めにされた女性はザンビとなって、地上に戻ってきて、次々と村人を襲って行った。その時に陰陽師に怨念ごと封印され、この鳥居が立てられたんだ。」

 

 

守口「この先に神社がある。行こう。」

 

 

守口にその先を案内され、楓と流斗はそれについて行く。

 

 

そのまま進んで行くと、古びた神社が見えて来た。

 

 

その神社には、何かを封印していたのような物があった。

 

 

流斗「これは封印の後ですね。」

 

 

楓「あの時、私が封印を解いてしまった。」

 

 

守口「気にするな。キミも知らなかったんだ。私もあそこできちんと止めていれば娘がザンビになることも無く、キミもこんな目に遭わずに済んだんだ。」

 

 

流斗「二人とも悔やむは後ですよ。まずは、娘さんを探しましょう。」

 

 

流斗がそう言うと、二人は我に返り、守口の娘を捜しに入った。

 

 

しかし、その時に神社の奥から小さな人影が出て来た。

 

 

流斗「チッ!出て来たか!」

 

 

守口「ザンビだ!!」

 

 

楓「ッ!!」

 

 

出て来たザンビは楓に狙いを定め、襲い掛かる。

 

 

ザンビ「ガァァァァァァァ!!!!」

 

 

楓「ッ!!?」

 

 

楓は既の所で、なんとかザンビの攻撃を避けた。

 

 

流斗「光よ来たれ!我求めるは彼の者を縛る鎖!!【ライトバインド】!!」

 

 

流斗は一瞬の隙を突き、拘束魔法でザンビの動きを封じた。

 

 

ザンビ「ガァァァ!!??」

 

 

動きを止められたザンビは暴れ出すが、その拘束は破れない。

 

 

流斗「聖剣【デュランダル】!アストラルモード!!」

 

 

そのまま流斗はデュランダルのアストラルモードでザンビを斬り裂いた。

 

 

ザン!!

 

 

ザンビ「ギャァァァ!!」

 

 

ザンビは悲鳴を上げながら、受けていた呪いを消し去られ、その場で崩れ落ちた。



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32話

呪いから解放されたのは小学生くらいの小さな女の子であった。

 

 

その時守口は、その女の子に駆け寄って行った。

 

 

守口「美玖!!!!」

 

 

流斗は咄嗟にその子を見てみたら、さっき守口の車の中で見た、あの写真の女の子であった。

 

 

楓「守口さん、その子ってもしかして·····」

 

 

守口「ああ、私の娘だ·····ッ!!」

 

 

守口はその娘を抱きしめながら、涙を流していた。

 

 

流斗「良かった。これで一つの目標は達成できましたね。」

 

 

守口「ああ、ありがとう·····グスッ」

 

 

守口は娘を抱きしめながら、流斗にそうお礼を言った。

 

 

楓「守口さん、これからどうするんですか?」

 

 

守口「これからだが、まずはこの祠にカミビトを一時的に封印しようと思う。神村くんは封印魔法を使えるんだったよね?」

 

 

流斗「ええ、使えますよ。」

 

 

守口「ここの封印はまだ生きているみたいだ。それにこの風車をここに戻す。」

 

 

守口は持ってきておいた風車を元あったであろう場所に設置した。

 

 

流斗「なるほど、ここならば破られること無く封印して置けます。」

 

 

楓「え?大丈夫なの?」

 

 

流斗「ああ、封印の術式は既に完成されているから、大丈夫だよ。その風車によってね。」

 

 

流斗は守口が設置した風車を指してそう言った。

 

 

守口「よし、準備が出来次第、始めよう。」

 

 

流斗「わかりました。」

 

 

流斗はそう言って、さっそく準備に取り掛かった。

 

 

それから少し経って、流斗は準備を終えて、再封印のため、空間魔法で閉じ込めて置いたカミビトを再び祠の前に呼び出した。

 

 

カミビト「··········」

 

 

カミビトはまだ封印魔法の効果が切れていないのか、十字架に磔にされたままビクともしなかった。

 

 

流斗「顕現せよ、我求めるは、神の御本に鎮座せし四大天使が1柱!!【ミカエル】!!!」

 

 

その瞬間、天から光を纏う何かが、そこに降り立った。

 

 

楓「え!?」

 

 

守口「て、天使·····だと?」

 

 

そこには、聖書で名が知られている、あの大天使ミカエルの姿があった。

 

 

そのミカエルの姿は、純白の6対の翼に黄金の甲冑、光り輝く剣を携えていた。

 

 

ミカエル「何事ですか?流斗。私を呼び出すなんて。」

 

 

流斗「ごめん、ミカエル。少しだけ力を貸してくれないか?」

 

 

ミカエルはその場を見渡し、すぐさま状況を理解した。

 

 

ミカエル「ここには邪なる存在が多く存在しますね。わかりました。そこの信徒の少女に免じて、力を貸してあげましょう。」

 

 

ミカエルな楓を見ながら、流斗の申し出に承諾した。

 

 

楓「わ、私を知っているんですか?」

 

 

ミカエル「ええ、もちろんですよ。いつも祈りを捧げてくれてありがとうございます。」

 

 

ミカエルはそう言って、いつも祈りを捧げてくれる、楓に微笑んだ。

 

 

守口「全く、神村くんには驚かされてばかりだな。」

 

 

流斗「オレも最初はまさか天使が実在するなんて、思いませんでしたよ。あ、このことはあまり口外しないと助かるんですが·····」

 

 

守口「わかっているよ。キミは娘を救ってくれた恩人だ。そのくらい安いものさ。」

 

 

流斗「ありがとうございます。」

 

 

その瞬間、カミビトが目を覚まし、封印を破ろうと暴れ始めた。

 

 

カミビト「ガァルルァァァァァァァァァ!!!!」

 

 

ミカエル「おっと、まずいですね。ハァァァッ!!!!!!」

 

 

ミカエルは暴れ始めたカミビトに向かい、聖なる輝きを放った。

 

 

ミカエル「今です!流斗!!」

 

 

流斗「了解!!聖槍【ロンギヌス】!!シエルモード!!」

 

 

流斗はロンギヌスを手に持ち、それをカミビトに向かって投げ放った。



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33話

流斗が投げ放ったロンギヌスは、またもや、カミビトの胸に突き刺さった。

 

 

カミビト「ギャァァァ!!!!」

 

 

そしてカミビトは聖なる光に包まれながら、祠の中に吸い込まれて行った。

 

 

ミカエル「これでもう大丈夫なはずです。」

 

 

流斗「ミカエル、本当に助かったよ。」

 

 

ミカエル「今度お礼にパンケーキを作ってください。」

 

 

流斗「分かったよ。」

 

 

ミカエルはそこで少しお茶目な一面を見せた。

 

 

そしてミカエルは流斗の返事を聞くと、天へと帰って行った。

 

 

流斗「これでもう大丈夫です。」

 

 

楓「私、天使様とお話しちゃった。」

 

 

守口「そうか、ならこれで次の目標も問題なく達成出来そうだな。」

 

 

流斗「山室さん、このことはあまり口外しないでくれると助かるよ。」

 

 

三人はそう言い合うと、守口の隠れ家に向かうため、再び歩き出した。

 

 

それから大体20分歩くと、守口が言っていた隠れ家が見えて来た。

 

 

守口「あれが、私の隠れ家だ。」

 

 

守口が指さす先には、それなりに立派な家があった。

 

 

流斗「いい隠れ家じゃないですか。」

 

 

守口「たまたま運良く手に入っただけだよ。さあ、二人とも入ってくれ。」

 

 

守口はそう言って、楓と流斗を隠れ家に招き入れた。

 

 

守口「私は娘を寝かせて来るから、キミたちはそれぞれ二階に部屋が余ってるからそこを使ってくれ。」

 

 

二人「わかりました。」

 

 

流斗と楓はそう言って、二階に上がって行った。

 

 

二階に上がると、流斗と楓はどの部屋を使うか、すぐさま決めた。

 

 

楓「じゃあまた後でね。」

 

 

流斗「うん、後でね。」

 

 

部屋を決め終えたら、一旦そこで解散となった。

 

 

流斗は部屋に入ると、まず結界魔法を発動させた。

 

 

流斗「【エンシェントアーク・ブレイヴ】!!!!」

 

 

その瞬間、隠れ家全体を白い結界が包み込んだ。

 

 

流斗「ふぅーこれでザンビは近寄って来れないだろう。」

 

 

幸い守口の隠れ家にはザンビの気配は無く、その結界を張ると、隠れ家の中は安全地帯となった。

 

 

流斗「だいぶ日が暮れてきたな。」

 

 

明日はいよいよ、100年前の生き埋めにされた女性と対面することになり、その呪いを浄化した後、村を破壊するという任務を遂行する。

 

 

流斗「明日はいよいよ決戦か。」

 

 

流斗はその時、100年前の女性の事を考えていた。

 

 

その女性も元は人間で、幸せに暮らしていた。

 

 

なのになぜ、生き埋めにまでされなければ無かったのか。

 

 

そこには、嫉妬という人間の醜い感情が見え隠れしているのが、流斗にはわかった。

 

 

流斗「嫉妬か。キリスト教じゃ七つの大罪とまで言われる感情だな。」

 

 

流斗は女性の想いををどうにか受け止めてやろうと、決意しながら、そう思っていた。



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34話

それからしばらくすると、夕食の用意が出来たと、守口から声がかかった。

 

 

守口「神村くん、夕食の準備が出来たから、食べないか?」

 

 

流斗「はい、今行きます!」

 

 

守口に呼ばれ、流斗はそう返事をして、部屋を出て、下に向かった。

 

 

楓「あ、来た。」

 

 

下に降りて行くと既に楓が夕食の席に着いていた。

 

 

流斗「お、早いね。」

 

 

楓「お腹空いちゃってね。早く来ちゃったよ。」

 

 

そんな話をしていると、守口が作り終わった夕食を持って来た。

 

 

守口「待たせたな。それじゃ食べてくれ。」

 

全員「いただきます!!」

 

 

こうしてささやかな夕食に流斗達は、舌鼓を始めた。

 

 

夕食中、守口はフリージア学園以外でザンビ化現象が起こっているかどうか、流斗に訊いてきた。

 

 

守口「そういえば神村くん、フリージア学園以外の様子はどうなんだ?」

 

 

流斗「その事ですか·····」

 

 

流斗はしばらく考え、重く口を開いた。

 

 

流斗「実は、あのザンビ化現象は今は日本各地で確認されています。最初はザンビなんてものは知らずに、集団失踪事件として調査していましたけど。」

 

 

守口と楓は、その事実に言葉を失っていた。

 

 

守口「外も同じ状況だったのか。」

 

 

流斗「幸いフリージア学園周辺と神奈川から南の地域は、事件は起こっていないようなので、ここまで安全に来れましたが、東京などの主要都市と北関東はほぼ全域が壊滅状態になっています。まあ、オレ自身も学園の調査中に、連絡が来て初めて知った訳ですけども。」

 

 

楓「そんな·····」

 

 

流斗「ザンビ化現象は3ヶ月前から東京で発生していて、特にひどい東京23区は現在政府が壁を建設して、隔離されています。」

 

 

さらなる驚愕の事実に守口と楓はさらに言葉を失う。

 

 

流斗「でも、女性の怨念さえ浄化させてしまえば、みんな元に戻ります。」

 

 

守口「そうか、そうだな。」

 

 

楓「うん。」

 

 

守口「改めて頼む。神村くん。」

 

 

流斗「はい!」

 

 

守口はその返事を聞くと、既に食べ終わっている食器を片付け始めた。

 

 

楓「それじゃ、私は先にお風呂入って来るね。もう守口さんが沸かしていてくれたみたいたがら。」

 

 

流斗「わかった。ゆっくり疲れを取ってきてね。」

 

 

流斗がそう言うと、楓はそそくさと浴室に向かった。

 

 

流斗「さて、オレは部屋に戻って明日の準備をしよう。」

 

 

流斗はそう言って、部屋に戻り、明日の準備を始めた。

 

 

準備の途中、流斗は実家のある東京が気になり、東京の調査に当たっている同僚に電話をしてみることにした。

 

 

プルルルルッ!プルルルルッ!

 

 

ガチャ!

 

 

?「もしもし?流斗か、急にどうした?」

 

 

流斗「ああ、悪い剣斗。急に電話なんかして。」

 

 

電話の相手は篠崎剣斗。

 

 

流斗と同時期に教会から悪魔祓い師に任命された。

 

 

流斗にとって教会内で数少ない信頼出来る人物だ。

 

 

年齢は流斗と同級生で17歳。

 

 

彼もあらゆる物の正体を見破るという特殊な能力を持っていて、光の上位属性の聖属性の魔法全般と浄化魔法を得意とする。



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決戦
35話


剣斗「こっちか。ひどいものだったよ。23区内は化け物だらけだ。」

 

 

流斗「そうか。家族とかは大丈夫だったの?」

 

 

剣斗「ああ、なんとかな。流斗の家族も無事だったみたいだぞ。親父さんがいち早く駆け付けて、教会本部に連れて行ったみたいだ。」

 

 

流斗はその剣斗の言葉を聞いて、安心していた。

 

 

剣斗「だけど、邪悪な呪いに惹かれて低級悪魔どもがわんさか沸いてるって噂だぜ?」

 

 

流斗「それホントか!?」

 

 

剣斗「ああ、オレも何体か討伐したよ。」

 

 

低級悪魔とは72柱の上級悪魔に仕える、従者たちのことだ。

 

 

魔物より知能は高いが、言葉は話せない。

 

 

ほぼ本能で動く存在だが、仕えてる主人の上級悪魔たちには絶対服従しているため、必ず命令は従う。

 

 

魔なるモノに惹かれやすく、あの女性の呪いを嗅ぎつけて、出てきたのだろう。

 

 

剣斗「お前も気を付けろよ?」

 

 

流斗「ああ。」

 

 

剣斗はその流斗の返事を聞くと、今度はフリージア学園の集団失踪事件について訊いてきた。

 

 

剣斗「そういや、フリージア学園の方の調査はどうなんだ?」

 

 

流斗は事の真相について、すべて剣斗に打ち明けた。

 

 

剣斗「そんな事になってたのかよ!?」

 

 

流斗「ああ、オレも初めて知った時は驚いたよ。」

 

 

剣斗「100年前に生き埋めにされた女性の怨念か。」

 

 

流斗「これからその女性の怨念を浄化しに行く所だよ。」

 

流斗はそう言って現在の居場所を剣斗に教えた。

 

 

剣斗「なるほど。これから最終決戦ってわけか。」

 

 

流斗「ああ、そこで全てを終わらせる。」

 

 

剣斗「そっか。死ぬなよ?流斗。」

 

 

流斗「剣斗もね。」

 

 

剣斗「もちろんだ。じゃあそろそろ戻るな。」

 

 

流斗「うん、またね。」

 

 

そこで電話は切れたのだった。

 

 

それと同時に部屋のドアがノックされた。

 

 

コンコン·····

 

 

楓「お風呂次いいよー」

 

 

流斗「わかった!」

 

 

それは楓からの入浴の順番が自分に回ってきた合図だった。

 

 

流斗は着替えとタオルを持ち、部屋を出た。

 

 

この着替えとタオルは守口が用意してくれていた物だった。

 

 

普段流斗は任務の時は、自分の通っているキリスト教関係の高校の制服を着ている。

 

 

この着替えは守口が気を利かせて守口が用意してくれていたのだろうと流斗はその時、そう思った。

 

 

部屋を出たあと流斗は入浴に向かう途中、守口に風呂の場所を聞き、そこへ向かった。

 

 

そして浴室に着き、中に入ると、一人で入るくらいには十分な広さの浴槽があり、その左側にシャワーやシャンプーなどの入浴グッズが置いてあった。

 

 

流斗「結構広いな。ゆっくり疲れが取れそうだな。」

 

 

流斗はそう言いながら、脱衣場で服を脱ぎ、まず体と頭を洗い、シャワーで洗い流すと、ゆっくり浴槽に入り、羽を伸ばした。

 

 

流斗「ふぃー温まるな〜」

 

 

お湯の心地よい温かさが流斗のこれまで戦いで溜まった疲れを癒してくれる。

 

 

それからしばらく流斗は風呂の温かさを堪能すると、浴槽から出て、脱衣場で身体を拭き、守口が用意してくれていた服に着替えて、自分の部屋に戻って行った。



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36話

部屋に戻ってくると、ドアの前に楓が立っていた。

 

 

流斗「山室さん?どうしたの?」

 

 

楓「あ、神村さん。守口さんに呼びに行ってくれって頼まれてね。なんでも教会の人が来たみたい。」

 

 

流斗「わかった。ありがとう。山室さんはゆっくり休んでてね。」

 

 

楓「うん、ありがとう。おやすみなさい。」

 

 

流斗は楓のその言葉を聞くと、守口の部屋に向かった。

 

 

守口の部屋は玄関から入ってすぐ左の所にあるので、わかりやすく、ほんの数秒でたどり着くことが出来た。

 

 

守口の部屋に入ると、そこには守口と一人のシスターの格好をした女性がいた。

 

 

守口「悪いね。急に呼び出してしまって。彼女が君と話したいと言っていてね。」

 

 

流斗「いえ、大丈夫です。それに、シスター・エリーゼもお久しぶりです。」

 

 

エリーゼ「お久しぶりですね。流斗。ずいぶんと大きくなられましたね。」

 

 

彼女はシスター・エリーゼ。

 

 

流斗が幼少時に修道院でお世話になった人物だ。

 

 

その時に魔法も教えてもらっていたので、流斗の魔法の師匠でもある。

 

 

守口「二人は知り合いだったのか?」

 

 

エリーゼ「ええ、流斗とは幼少時に修道院で勉強を教えていたので、知っております。」

 

 

流斗「はい、すごくお世話になりました。」

 

 

シスター・エリーゼは光属性の他に、火、水、土、風、雷、氷、闇の全属性の魔法を使えるという極めて稀有な存在で、教会では女神の生まれ変わりとまで称される女性である。

 

 

さらには、流斗と剣斗の特殊能力にいち早く感づいたのも彼女である。

 

 

守口「そうだったのか。それでシスター・エリーゼ。話というのこの残美村の破壊についてですか?」

 

 

エリーゼ「その通りです。」

 

 

流斗「やはりそうですか。」

 

 

エリーゼ「私はこの残美村破壊の作戦を流斗に伝えるように、流斗のお父様から仰せつかって参りました。」

 

 

エリーゼはそう言うと、明日の作戦について、話し始めた。

 

 

作戦の手順についてはこうだ。

 

 

まず村人たち全員を1ヶ所に集め、そこで全員にかけられている呪いを流斗が消滅させる。

 

 

次に、呪いから解放された村人たちを教会の人達が教会本部へ連行する。

 

 

次に、100年前に女性が生き埋めにされたとされる場所に行き、その女性の怨念を浄化させ、眠りにつかせ、その魂を冥界へ送り届ける。

 

 

最後に流斗とシスター・エリーゼの魔法でこの残美村を破壊し、地図上から抹消させる。

 

 

という物だった。

 

 

流斗「わかりました。村人を殺さずに連行する。教会らしいやり方ですね。」

 

 

守口「ザンビ達は音に反応し、寄ってくる。特に鐘の音に寄ってくるみたいだ。それを利用して1ヶ所に集めよう。」

 

 

エリーゼ「音に寄ってくるのですね。その役目は私が承りましょう。」

 

 

流斗「お願いします。」

 

 

その作戦会議が終わると、夜も遅いため、そこで解散となった。

 

 

その後はシスター・エリーゼは守口に案内されたであろう部屋に戻り、流斗は自分の部屋に戻り、明日の為に眠りに着くのであった。



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37話

次の日、流斗はゆっくりと目を覚ました。

 

 

ついに作戦決行の日となった。

 

 

流斗は気を引き締め、制服に着替え、下へと降りて行った。

 

 

下に降りて行くと、すでに守口とシスター・エリーゼ、そして楓が朝食の席に着いていた。

 

 

守口「よく眠れたようだね。」

 

 

流斗「はい、わりとぐっすり眠れましたよ。」

 

 

エリーゼ「それはいい事です。」

 

 

楓「休めたようで私も安心だよ。」

 

 

流斗「山室さんも休めたようでよかったよ。」

 

 

そんな話をしていると、守口が朝食の合図を出す。

 

 

守口「さて、朝食にしようか。」

 

 

エリーゼ「ええ、いただきましょう。今日は私もお手伝いしたんですよ。」

 

 

流斗と楓はそれは楽しみだと、喜びながら、朝食にありついた。

 

 

それからしばらく朝食にありつき、それが終わると、少し休憩を挟み、各々部屋に出発の準備に入った。

 

 

シスター・エリーゼによると、作戦開始は9時で教会の人達には連絡を取ってあるため、既にそこに集まっているらしい。

 

 

また作戦確認のために、集合場所には8時半にはそこに集まらなければならない。

 

 

そして各々の準備が完了し、玄関に集まった。

 

 

全員集まると、そこにはもう一人、教会の関係者らしき男性がいた。

 

 

男性「お疲れ様です。シスター・エリーゼ。」

 

 

エリーゼ「お疲れ様です。雷斗さん。」

 

 

その男性の名は、神咲雷斗。

 

 

流斗の剣術の師匠でもある。

 

 

流斗「お久しぶりです、雷斗さん。」

 

 

雷斗「おおー!流斗か!元気そうで何よりだ。」

 

 

流斗「雷斗さんこそお変わりなくて何よりですよ。」

 

 

そこで守口が割って入って話をして来た。

 

 

守口「彼には、娘の護衛を依頼している。神村くんの魔法を信用していない訳ではないが、念の為にな。」

 

 

流斗「いいですよ。オレだってまだまだ修行中の身ですし。」

 

 

守口「そう言ってくれると助かるよ。」

 

 

そんな話をしていると、楓から声がかかった。

 

 

楓「神村さん。そろそろ出発の時間だよ。」

 

 

流斗「わかった!では雷斗さん。あとをお願いします。」

 

 

雷斗「任せとけよ。全部終わったら、またお前を鍛え直してやるから、俺の所に来いよ。」

 

 

流斗「もちろんです!その時はよろしくお願いします!」

 

 

流斗はそう言うと、楓たちと共に守口の車へと乗り込んだ。

 

 

そして守口は全員が乗るのを確認すると、車を発進させ、集合場所に向かった。

 

 

車を走らせていると、その途中、何者かが進行方向の先に歩いているのが見えた。

 

 

守口はそこで一旦車を停車させた。

 

 

守口「誰だ、あれは?」

 

 

流斗「ザンビかもしれません。でもそれにしては着ている服が古いですね。」

 

 

楓「もしかして、あの人が100年前に生き埋めされた女性で、オリジナルのザンビじゃないの!?」

 

 

守口「なんだって!?」

 

 

エリーゼ「それは本当ですか!?」

 

 

楓はそう詰め寄られ、一瞬体を竦ませたが、はっきりと答えた。

 

 

楓「間違いないよ。私の頭にあの女性のイメージが残ってる。間違いなくあの人が100年前に生き埋めされた女性だよ。」

 

 

流斗「クソ!村人達より先に出くわしちまったって訳か!!!!」

 

 

エリーゼ「とにかく、流斗。彼女を一時的に封印してください。私も手伝いますので」

 

 

流斗「わかりました。」

 

 

流斗とシスター・エリーゼは車を降りて行き、その女性と対峙した。



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38話

車から降りた流斗とシスター・エリーゼはついに100年前に生き埋めにされたと言われている女性と対面することになった。

 

 

女性「タスケテクレヤ·····タスケテクレヤ·····」

 

 

流斗「シスター・エリーゼ。拘束魔法をお願いします。」

 

 

エリーゼ「わかりました。」

 

 

流斗の指示に従い、シスター・エリーゼは拘束魔法を唱える。

 

 

エリーゼ「【セイント・クロス】!!!」

 

 

魔法が発動されると聖なる十字架から現れ、その女性はその十字架に磔にされた。

 

 

女性「ガァァァ!!!ガァァァ!!!!グキャア!!!」

 

 

その瞬間、その女性は拘束を振りほどこうと暴れだした。

 

 

流斗「クッ!大人しくしろ!今さら怨念を振り撒いたところで何の意味もないんだぞ!!」

 

 

流斗は女性に対し、そう叫びながら、聖槍【ロンギヌス】を構える。

 

 

流斗「聖槍【ロンギヌス】シエルモード!!」

 

 

流斗はロンギヌスを封印特化状態にすると、そのまま女性に投げ付けた。

 

 

投げ付けたロンギヌスはそのまま女性の腹部を貫いた。

 

 

ズシャァァ

 

 

女性「ギャァァァァァァァ!!!!!!!!!」

 

 

女性は腹部から鮮血を噴き出しながら、断末魔の如く、叫び声を上げた。

 

 

流斗はすかさず、空間魔法を唱える。

 

 

流斗「彼の者を閉じ込めよ!【ディメンションルーム】!!!」

 

 

魔法が発動され、女性は異空間へと閉じ込められた。

 

 

エリーゼ「さすがですね。流斗。」

 

 

流斗「いえ、まだまだです。ですが、ありがとうございます。」

 

 

どうにか女性を封印することに成功した流斗とシスター・エリーゼは守口の車まで戻り、その事を伝えた。

 

 

守口「二人とも無事で何よりだ。」

 

 

楓「良かった無事で。」

 

 

流斗「女性の封印には成功しました。ですが、まだ安心は出来ません。」

 

 

エリーゼ「そろそろ集合場所に集まる時間です。急ぎましょう。」

 

 

シスター・エリーゼがそう言うと、二人を車に乗せて、守口は再び車を走らせた。

 

 

その後は何事も無く無事に集合場所にたどり着くことが出来た。

 

 

集合場所にはすでに何人かの教会関係者が来ていた。

 

 

エリーゼ「皆さん、早いですね。」

 

 

シスター・エリーゼはそう言って、教会関係者に話し掛けた。

 

 

すると、一人の教会関係者の男性がこちらに気付いて駆け寄って来た。

 

 

男性「シスター・エリーゼ、どうもお疲れ様です。」

 

 

エリーゼ「お疲れ様です。元村さん。」

 

 

その男性はなんと、流斗の直属の上司である元村真二だった。

 

 

流斗「え、元村さん!?」

 

 

真二「神村くん、お疲れ。しかし大変な事になったな。」

 

 

流斗「お疲れ様です。はい、本当に·····というか元村さんまでこの村に駆り出されてたんですね。」

 

 

真二「全く上層部も無茶を言うよ。」

 

 

真二はそう言いながら、さらに話を続ける。

 

 

真二「そう言えば、フリージア学園の女子生徒が一人、教会に保護されてきたぞ。なんでも空爆されたというあの施設から逃げ出して来たそうだ。」

 

 

流斗「え!?そうなんですか!?」

 

 

真二「ああ、彼女によるとあの施設の管理者に誘拐されたらしい。」

 

 

流斗「ああ、例の女医師にですか?」

 

 

真二「そうだ。しかもそこでもフリージア学園と同じようにザンビが現れたらしい。」

 

 

流斗「やっぱりそうですか。」

 

 

真二の話を聞き、自分の予想は当たっていたとそこで流斗は確認した。



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39話

そんな話をしていると、楓が真二と流斗の話を聞き付け、こちらに歩いて来る。

 

 

楓「その話本当ですか?」

 

 

真二に楓はそう問い掛けた。

 

 

真二「え?ああ、本当だが君は?」

 

 

流斗はそこで楓についてと、フリージア学園での経緯を説明した。

 

 

真二「なるほど。ということはフリージア学園の集団失踪事件はほぼ解決したと。」

 

 

流斗「はい、そうなりますね。あとはカミビトとなったこの子の担任教師だけです。」

 

 

真二「そうだったのか。この子が封印を。まあでも知らなかったのなら無理もないな。」

 

 

真二は楓が封印を誤って解いてしまったことには追及も咎めもしなかった。

 

 

むしろ、同情していた。

 

 

真二「さて、教会に保護されたフリージア学園の女子生徒のことだったね。」

 

 

楓「はい、よかったら教えてくれませんか?」

 

 

真二「わかった。いいだろう。まだ作戦開始まで時間があるしね。」

 

 

真二はそう言って、教会に保護されたフリージア学園の女子生徒について、簡潔だが事細かく、説明を始めた。

 

 

真二曰く、彼女が何があったかを教えくれたと最初に付け加え、話し始めた。

 

 

その女子生徒は修学旅行の帰り、バスのエンジンの故障か何かで、しばらく帰れなくなっていた。

 

 

そこで引率の先生が付近の集落を探し、電話を貸してもらう様に、生徒達に指示したらしい。

 

 

そして集落を探している途中に何者かによって、誘拐されてしまった。

 

 

その誘拐した犯人というのが、後に空爆された言われる施設の管理者の女医師だと言うのだ。

 

 

その女医師は人体実験を繰り返す、マッドサイエンティストだった。

 

 

ある時、その施設に幽閉されている者の中に、ザンビがいると、その女医師は言い出した。

 

 

その後、ザンビ検査というものが行われた。

 

 

ザンビと判断された者は否応なくそこで、武装された兵士に殺されてしまった。

 

 

そしてまたある時、その女子生徒と同じもう一人のフリージア学園の女子生徒が兵士の無線からこの施設はもうすぐ空爆されるという情報を得る。

 

 

その時はすでにその二人以外は全員ザンビとなってしまっていたと語る。

 

 

その二人はその情報を知り、施設からの脱出を試みた。

 

 

だが、そのもう一人の女子生徒はザンビの襲撃にあってしまい、ザンビ化してしまった。

 

 

そのもう一人の女子生徒は意識のあるうちに、あなただけでも逃げてと言ってきた。

 

 

女子生徒は最初は躊躇ったが、もう一人の女子生徒の強い眼差しを受け、意を決して、そこから脱出して行った。

 

 

脱出してしばらくすると、その施設は空爆されてしまった。

 

 

そう保護した女子生徒は、教えてくれたと真二は言った。

 

 

流斗「そんな事が·····」

 

 

楓「フリージア学園以外にもザンビが蔓延していなんて。」

 

 

真二「実はその二人以外にももう一人、フリージア学園の女子生徒がいたんだが、その子もザンビに襲われザンビ化してしまったらしい。」

 

 

真二はそう言って、顔を下に落とした。



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40話

真二の話が終わると、一人の教会関係者の男性がそろそろ時間だと、呼びに来た。

 

 

男性「元村さん、そろそろ作戦開始のお時間です。」

 

 

真二「わかった。みんなに配置に着くように伝えてくれ。」

 

 

男性「わかりました。」

 

 

その男性は真二の指示を聞くと、それを教会関係者達に伝えて回っていった。

 

 

真二「神村くんもそろそろ準備を。」

 

 

流斗「わかりました。守口さんと山室さんはオレから離れないで。」

 

 

守口「わかった。」

 

 

楓「わかったよ。」

 

 

真二「全員準備は出来たな?」

 

 

真二はそう念話で、全員に確認を取った。

 

 

全員「準備完了しました。」

 

 

真二「よし、シスター・エリーゼ。お願いします。」

 

 

エリーゼ「わかりました。」

 

 

シスター・エリーゼは真二の指示に従い、魔法で鐘の音を発生させた。

 

 

真二「どうだ?神村くん。」

 

 

流斗「かなりの数のザンビが近付いて来ています。」

 

 

流斗は多くのザンビ達が音につられ、近づいて来てる気配を感じ取っていた。

 

 

流斗「来ます!!」

 

 

その瞬間、辺りの雑木林からかなりの数のザンビの群れが飛び出して来た。

 

 

ザンビ「ガァァァァァァァァァァァァ!!!!」

 

 

ザンビ「グキャアァァァァァァァァァ!!!!」

 

 

そのザンビ達はその鐘の音の方へ、集まって行く。

 

 

シスター・エリーゼはその場から離れ、ザンビ達と距離を取った。

 

 

エリーゼ「流斗、今です!!」

 

 

流斗「はい!!」

 

 

シスター・エリーゼに促され、すかさず流斗はデュランダルを構えた。

 

 

流斗「聖剣【デュランダル】!!!アストラルモード!!さらにエクステンシヴモード!!!!」

 

 

流斗(このザンビはおそらく村人たちだ。だがまだ、カミビトとはなっていないようだな。)

 

 

流斗はこの時、このザンビの群れの中にカミビトがいないか探してみたが、どうやらまだ全員通常のザンビだった。

 

 

まだザンビの状態のなら、元に戻すことができる。

 

 

流斗「行っけえええぇぇええええ!!!!!!!」

 

 

流斗は光の奔流を放つデュランダルをザンビの群れ相手に振りかざした。

 

 

光の奔流がザンビ達を包み込む。

 

 

ズドドドォォォォォン!!!!!!!!

 

 

その光の奔流に呑まれたザンビ達は断末魔の声を上げることなくその場に崩れ落ちた。

 

 

当然アストラルモードで攻撃した為、肉体には一切傷が無く、呪いだけを破壊したため、その場にただ崩れ落ちるだけだった。

 

 

真二「その人たちは全員無事なようだな?」

 

 

流斗「はい、アストラルモードで攻撃したので、外傷はありません。呪いの方も完全に無くなってます。」

 

 

こうして、村人達は流斗によって呪いを断ち切られ、元に戻った。

 

 

その場にいた全員はひとまず、作戦の第一関門突破に安堵した。



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41話

その時だった。

 

 

流斗はザンビとはまた別のモノの気配を感じ取っていた。

 

 

流斗(この気配、まさか!!)

 

 

教会関係者「うわぁぁぁ!!!」

 

 

グシャァッ!

 

 

教会関係者の一人がそのザンビとは別のモノによって顔を握り潰されていた。

 

 

真二「なっ!?」

 

 

流斗「クソッ!」

 

 

その光景にその場に全員は凍り付いていた。

 

 

楓「な、何!?」

 

 

流斗「見ちゃダメだ!!」

 

 

すかさず流斗は楓の目を塞ぐ。

 

 

守口「あれは何だ!?」

 

 

流斗「あれはおそらく低級悪魔です。」

 

 

守口「低級悪魔だって!?」

 

 

流斗はその低級悪魔について守口に説明した。

 

 

低級悪魔とはキリスト教における悪魔において、主である上級悪魔に仕える下僕であり、主に対しては絶対の忠誠を誓っている。

 

 

だが、その主人たちは放任主義で、基本低級悪魔達を好き勝手に暴れさせているのだ。

 

 

低級悪魔は呪いや魔法や魔なるモノに惹かれやすく、今回の低級悪魔の出現は100年前の女性の怨念に惹かれて現れたのだろうと、流斗は守口に説明した。

 

 

真二「なんという事だ!これではザンビ騒動どころの話ではないぞ!!」

 

 

エリーゼ「まさか低級悪魔が現れるなんて。」

 

 

流斗「仕方ありません。ここは悪魔払い師の仕事しましょう。」

 

 

真二「わかった。頼めるか?」

 

 

流斗はそう言って、デュランダルを構える。

 

 

低級悪魔「グォォォォ!!!!」

 

 

流斗「来いよ。地に落ちた悪魔野郎!!」

 

 

流斗はそう叫びながら、デュランダルのフィジカルモードを発動させる。

 

 

低級悪魔「グルァァァァァ!!!」

 

 

低級悪魔は流斗に臆することも無く、襲い掛かった。

 

 

流斗「ハァァァァッ!!」

 

 

流斗も低級悪魔に向かって、突進しながら斬り掛かった。

 

 

ザシュッ!!ズシャァッ!!

 

 

低級悪魔「ギャァァァァァァァ!!!!」

 

 

流斗の攻撃によって低級悪魔はそのままデュランダルに斬られ、消滅して行った。

 

 

デュランダルは聖剣であり、悪魔にとっては光と同じ、最大の弱点である。

 

 

聖なる力を宿す聖剣に斬られれば、否応なく消滅させられてしまうのだ。

 

 

エリーゼ「終わりましたね。」

 

 

真二「ええ、ですが·····」

 

 

真二は犠牲となった教会関係者の男性を見やった。

 

 

真二はどこからともなく、白い布を出し、その潰された顔を治癒魔法で元の状態に戻した。

 

 

だが、一度喪われた生命は決して戻らない。

 

 

その事を痛感しながら、彼の顔に白い布を被せた。

 

 

真二「みんな、彼を弔ってやってくれ。」

 

 

その場にいた全員は楓も含め、彼の冥福を祈って、十字を切った。

 

 

楓「まさかこんな事になるなんて。」

 

 

楓もその教会関係者の男性の死を聞かされ、気持ち的にもショック受けていた。

 

 

流斗「山室さん、守口さん行こう·····まだ作戦は終わっていない。」

 

 

守口「ああ·····」

 

 

楓「うん·····」

 

 

流斗達はショック受けていたが、まだ作戦は終わってはおらず、彼の死を悼みながら、この奥にある女性がかつて生き埋めにされたとされる現場へと向かって行った。



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42話

低級悪魔の襲撃に遭い、教会関係者の一人の男性が犠牲となってしまった流斗達であったが、まだ作戦は終わっておらず、一旦は気持ちを切り替え、100年前に女性が生き埋めにされたと言われている、森の中に向かっていた。

 

 

流斗「こ、これはかなりヤバいですね。」

 

 

真二「ああ、私も感じ取っているよ。凄まじい怨念だな。」

 

 

エリーゼ「私でも、かなり感じ取っています。」

 

 

楓「気持ち悪い·····」

 

 

守口「この怨念が彼女をザンビへと変貌させてしまったのか。」

 

 

まだ、生き埋めされた現場まではそれなりの距離があるのに、辺りには、彼女の怨念が渦巻いていた。

 

 

それに当てられているというだけで、楓は言い様のない気持ち悪さを感じていた。

 

 

流斗「山室さん大丈夫?」

 

 

楓「な、なんとかね。」

 

 

守口「少し休憩するか?」

 

 

守口が楓を気遣いそう提案するが、楓は首を横に振った。

 

 

流斗「気休めにしかならないけど。」

 

 

流斗「【リカバリーキュア】」

 

 

流斗は一種の治癒魔法を楓にかけた。

 

 

流斗「これでちょっとは楽になった?」

 

 

楓「うん、ありがとう。」

 

 

楓は流斗の治癒魔法をかけてもらい、少しではあるが顔色が良くなった。

 

 

真二「彼女のためにも早くこの事件を終わらせよう。」

 

 

エリーゼ「そうですね。」

 

 

楓「シスター・エリーゼ、元村さん·····」

 

 

三人はそう顔を見合わせながら、生き埋めにされた現場に歩いていく。

 

 

流斗「うん?この感覚は·····」

 

 

守口「どうした?神村くん。」

 

 

流斗「ちょっと不思議な気配を感じていて。」

 

 

真二「不思議な気配?」

 

 

流斗はその不思議な気配について話し始めた。

 

 

なんでもその気配は、ザンビやカミビト、低級悪魔などの魔なるモノではなく、聖域や神域などで感じる清浄な気配と似ていると、流斗は言った。

 

 

そう話しながら、流斗達は進んで行くと、その途中、祠があるのに気付いた。

 

 

楓「もしかして、これじゃない?」

 

 

楓に指摘されて、その祠に近づくと、流斗はその不思議な気配をさらに強く感じ取る。

 

 

流斗「不思議な気配はこの祠から強く感じますね。」

 

 

真二「そうか。私は何も感じないが。」

 

 

エリーゼ「私も全く感じられませんね。」

 

 

だが流斗の言ってる事に嘘偽りがないことにその場にいる教会関係者は全員分かっていた。

 

 

何故なら流斗はその手の類いの気配に非常に敏感だからだ。

 

 

その流斗の特異体質を、教会関係者は全員知っている。

 

 

楓「神村くんが言っていることは嘘ではないみたいだね。」

 

 

守口「ああ、彼をこの数日間で全部が全部を知れた訳じゃないが、私にも分かるよ。」

 

 

流斗はその祠にさらに近づくと、天から何やら光が降り注いだ。

 

 

全員「うっ!」

 

 

流斗(な、なんだ!?)

 

 

流斗は少し目を開け、降り注ぐ光の中に何かがいるのを見つけた。

 

 

それは一人の女性だった。

 

 

その女性は日本書紀に描かれている神と同じような格好をしていた。

 

 

女性「よくぞ、ここまで来てくれました。」

 

 

流斗「あ、あなたは一体!?」

 

 

イザナミ「私は死を司る黄泉の女神、イザナミです。」

 

 

突然の日本神話の女神、イザナミの登場により、流斗達は驚愕する。



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43話

流斗「い、イザナミ!?なんでまたあなたのような存在がここに·····」

 

 

イザナミ「その話はまたおいおいするとしましょう。私はあなた方にお願いがあるのです。」

 

 

楓「お、お願いですか?」

 

 

イザナミは流斗達を見回し、その自身について話し始めた。

 

 

イザナミ「私は100年もの間、彼女のことを見守って来たのです。」

 

 

流斗はイザナミの言うその彼女とは誰か、この時すぐに気付いた。

 

 

流斗「まさかその彼女って·····」

 

 

イザナミ「ええ、100年前。この地で生き埋めにされた女性の事です。」

 

 

そのままイザナミは話を続ける。

 

 

イザナミ「彼女は神楽もみじという名前の美しい女性でした。」

 

 

そう言いながら、イザナミはこの祠に祀られていたと教えてくれた。

 

 

それ故に、彼女が生き埋めにされてから、彼女の死を確信し、黄泉の世界に彼女の魂を導こうとしていた。

 

 

だが、その時に異変は起きた。

 

 

彼女の魂が肉体から離れて来ないのだ。

 

 

異変に気付いたイザナミは、生き埋めにされている場所に確認をしに行った。

 

 

イザナミがそこで見たものは、おぞましい怨念を振り撒き、ザンビとなってしまった彼女だった。

 

 

イザナミはこの時初めて、彼女が死んでいないことに気付き、このままでは魂を黄泉の世界に連れて行けないため、為す術なく祠に戻った。

 

 

それから100年ものの間、彼女のことを見守り続けていたと、イザナミは語った。

 

 

流斗「神は直接この世に鑑賞はできないからですか。」

 

 

イザナミ「ええ。この世界に直接神が干渉する事は出来ません。私は死を司る黄泉の女神ですが、私に出来るのは死者の魂を冥界に送り届けることだけです。」

 

 

守口「なるほどな。」

 

 

真二「それで私たちみたいな人間が現れるのを待っていたという訳か。」

 

 

イザナミ「はい、どうか彼女を救ってあげてはくれませんか?このままでは、この世界は、生きるも死ぬもなく、ただそこに存在するだけの人間で溢れかえってしまいます。」

 

 

イザナミのその思いを聴いた流斗達は、当然と言わんばかりに頷いた。

 

 

流斗「もちろんそのつもりです。イザナミ様。」

 

 

エリーゼ「ええ。私共々、そのつもりでこの地に参ったのです。」

 

 

もちろん楓達も、流斗と同意見だった。

 

 

イザナミ「ありがとう。それと名を神村流斗でしたか?」

 

 

流斗「ええ、そうですが。何故オレの名前を?」

 

 

イザナミ「あなたの記憶を少しのぞかせてもらいました。」

 

 

流斗「なるほど、そうですか。」

 

 

イザナミ「あなたに授けたい物があるのです。」

 

 

イザナミはそう言って、一振りの日本刀らしき刀を流斗に手渡した。

 

 

流斗「これは?」

 

 

イザナミ「それは、神刀【カグツチ】です。」

 

 

流斗「神刀【カグツチ】?」

 

 

この神刀【カグツチ】はイザナミによると、火の神【ヒノカグツチ】の炎とその力の一部が宿ってる刀らしき。

 

 

イザナミ「その刀には、私の息子のヒノカグツチの力の一部とあらゆる物を浄化する炎が宿っています。」

 

 

流斗「その刀で彼女の怨念を魂ごと浄化してください。そうすればあとは彼女の魂を私が冥界へと連れていきます。」

 

 

イザナミの提案に流斗はなんの躊躇もせず、了承した。

 

 

実は言うと、誰にも言ってはいなかったが、もし最悪彼女を浄化出来なかった場合、四大天使全員の力を借りて、自分を犠牲にあの世に彼女の魂を連れて行こうとしていた。

 

 

それを使わずに済む確率が高まるのなら、流斗はその提案に乗ろうと決めた。



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44話

イザナミ「ではどうか、よろしくお願いします。ちなみに、カミビトと呼ばれているモノもその刀があれば、元に戻せますので、もし遭遇したら活用してください。」

 

 

イザナミはそう言って、神刀【カグツチ】を流斗に渡すと淡い光を放ち、その場から消え去った。

 

 

真二「まさかイザナミ様が現れるとはな。」

 

 

流斗「ええ、でもこれで、すべてを終わらせられます。」

 

 

守口「そうだな。」

 

 

楓「うん、ようやくだね。」

 

 

エリーゼ「それでは、行きましょうか。」

 

 

シスター・エリーゼがそう言うと、流斗達一行は、奥へと進んで行った。

 

 

そこから数分程奥へと進んで行くと、ようやく女性が生き埋めにされた言われる現場に到着した。

 

 

流斗「ここですね。」

 

 

真二「ああ、ここだな。」

 

 

楓「見て、中央に木桶がある。」

 

 

楓が指を指す先には、流斗がフリージア学園のボイラー室で見た、人が一人入れるくらいの大きさの木桶があった。

 

 

その時、どこからともなく、女性の声が聞こえてきた。

 

 

?「イキテオラレルカ·····シンデオラレルカ·····」

 

 

?「ノロエ·····ノロエェェ!!ノロイコロシテクレルゥゥゥ!!!!」

 

 

流斗はその声を聴き、あの時一時的に封印した100年前の女性が封印を破り、出て来ようとしてるのがわかった。

 

 

流斗「やっぱり、あの封印だけじゃ持たなかったか!!」

 

 

楓「まさか、もう出てきたの!?」

 

 

流斗「ああ、どうやらお出ましのようだよ。」

 

 

流斗がそう言うと、木桶から女性が這い出てきた。

 

 

流斗「もみじさん·····今、あなたを救います!!!!」

 

 

流斗がそう言うが、その女性、もみじは容赦なく襲い掛かって来る。

 

 

もみじ「グォォォォ!!!!」

 

 

流斗はそれに合わせて、神刀【カグツチ】を鞘から引き抜き、刀身に力を込めた。

 

 

ボォォォッ!!

 

 

すると、刀身は紅い炎に包まれた。

 

 

流斗「これがカグツチの浄化の炎·····」

 

 

もみじ「ガァァァァァァァァァ!!!!」

 

 

流斗「ハァァァァッ!!」

 

 

流斗はそのままもみじに斬り掛かった。

 

 

だが、寸でのところで、かわされてしまった。

 

 

流斗「コイツ、今までのザンビと違う!!」

 

 

守口「気を付けろ!そいつは今までのザンビの始まりとなった存在だ!!おそらく、知能を持っている。」

 

 

守口はそう流斗に教えるが、流斗の攻撃はことごとく避けられて行ってしまう。

 

 

真二「しかたない。シスター・エリーゼと一緒にオレも加勢する!シスター・エリーゼ、お願い出来ますか?」

 

 

エリーゼ「ええ、もちろんです。」

 

 

流斗「すいません、お願いします!」

 

 

そこでシスター・エリーゼと真二が流斗の加勢に入った。

 

 

だがそこで予想外のことに、二人は巻き込まれてしまう。

 

 

辺りの林から、ザンビらしき雄叫びが聞こえてきたのだ。

 

 

二人がその声の方へ向くと、ザンビ·····いや、カミビトの群れが這い出てきたのだ。

 

 

守口「何!?カミビトの群れだと!?」

 

 

楓「嘘、なんで!?」

 

 

カミビトの群れは容赦なく、楓たちとその二人に襲い掛かって来た。



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45話

エリーゼ「クッ!【エンシェントアーク・ブレイヴ】!!」

 

 

すかさずシスター・エリーゼは、結界魔法を発動させ、カミビトの侵攻を押し留めた。

 

 

真二「雷よ来たれ!我求めるは稲妻の鎖!!【サンダーバインド】!!」

 

 

真二もシスター・エリーゼに合わせ、雷属性の拘束魔法を発動させ、カミビト達の動きを止めた。

 

 

流斗「大丈夫ですか!?」

 

 

流斗はもみじの攻撃を凌ぎながら、そう聞くが二人は余裕そうな表情で頷いた。

 

 

エリーゼ「当たり前です。私はあなたの魔法の師匠ですよ?遅れをとるはずがありません。」

 

 

真二「私だってキミの上司だぞ?まだまだ部下に負ける訳には行かないさ。」

 

 

二人はそう言いながら、不敵な笑みを浮かべる。

 

 

流斗もその二人の表情を見ると、安堵したような表情を浮かべ、再びもみじと対峙した。

 

 

流斗「しかたない。少し本気を出そう。」

 

 

エリーゼ「ええ、どうやらそうするしかないようですね。」

 

 

真二「やむを得ないか。神村くん、魔力制御の指輪を一つ外すんだ。」

 

 

流斗は真二の指示に従い、魔力制御の指輪を外した。

 

 

ゴォォォッ!!!!

 

 

もみじ「!?」

 

 

カミビト「ガァァァ!?」

 

 

指輪が外され魔力が少し解放されると、もみじとカミビト達は、流斗から溢れ出る魔力に怯え出した。

 

 

流斗「行くぞ!!」

 

 

これまでを動きと変わって、流斗は俊敏な動きでもみじとカミビト達を翻弄して行く。

 

 

もみじ「ガァァァァァァ!!!!」

 

 

カミビト「グォォォォァァァ!!!!」

 

 

同時にもみじとカミビト達も、流斗にさらに襲い掛かった。

 

 

流斗「遅い·····」

 

 

流斗「光臨御影流、壱ノ型【竜頭蛇尾】」

 

 

だが、魔力が一部解放された流斗は、目にも止まらぬ速さで、カミビト達を一刀両断して行った。

 

 

カミビト達「ギャァァァァァァァ!!!!!」

 

 

カミビト達は、そのまま呪いを浄化され、その場に倒れ伏した。

 

 

もみじ「ガァァァ!?」

 

 

流斗「さて、次はもみじさんの番です。いい加減に呪いを振りまくのはやめてもらう!!!!」

 

 

その時、流斗に彼女からの訴える声が頭の中に流れ込んで来た。

 

 

流斗「!?」

 

 

流斗はその声に耳を傾けた。

 

 

もみじ(お願いじゃ、私を止めてはくれんか?)

 

 

もみじ(もうこれ以上苦しみたこうはない。早くあの世へ送ってくれ。)

 

 

その声は楓にも届いていた。

 

 

楓「この声は、もみじさんの声?」

 

 

守口「どうした?」

 

 

楓「あのもみじさんが頭の中に訴えて来ているんです。私を止めてくれって。」

 

 

守口「そうか。彼女ももう十分苦しんだ。そろそろ解放してやろう、神村くん。」

 

 

守口のその言葉を聞き、流斗は精一杯、神刀【カグツチ】に力を込めた。

 

 



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46話

流斗「ハァァァァッ!!」

 

 

そして流斗はそのままもみじに突進して行った。

 

 

もみじ「ガァァァ!?」

 

 

もみじはそのまま避けることもできず、神刀【カグツチ】によって腹を貫かれた。

 

 

ズシャァッ!!

 

 

もみじ「ギャァァァァァァァ!!!!」

 

 

すると、もみじの姿はみるみると元の姿であろう美しい女性へと変わって行った。

 

 

もみじ「あ、ァァァ·····ァァァ·····」

 

 

それと同時に、日本中に溢れ出たザンビ達は、皆、元の姿に戻っていくのを流斗は感じ取っていた。

 

 

そしてもみじはその場に倒れそうになった。

 

 

それを流斗はすぐさま、抱き抱えた。

 

 

流斗「大丈夫ですか?」

 

 

もみじ「あ、ああ私は大丈夫だ。」

 

 

もみじは少し戸惑いながらも、流斗の問いにそう答えた。

 

 

守口「彼女は元に戻ったのか?」

 

 

流斗「ええ、どうやら元に戻ったようですよ。」

 

 

楓「でも、不思議ですね。何故、歳を取らないままの状態のまま元に戻ったんだろう?」

 

 

イザナミ「それは、神刀【カグツチ】の能力ですよ。」

 

 

突然イザナミが流斗達の前に現れそう言った。

 

 

流斗「イザナミ様!?それはどういう事ですか!?」

 

 

イザナミ「神刀【カグツチ】の能力の一つに、対象者が刻んた時を戻す能力があるのです。簡単に言えば、斬った者を若返らせる能力ですね。」

 

 

流斗「そんな能力があったんですね。でも何故それを言わなかったんですか?」

 

 

イザナミ「実は·····」

 

 

流斗はイザナミの真剣な表情に息を呑みながら、次の言葉を待った。

 

 

イザナミ「単に忘れていました。」

 

 

イザナミのその言葉に、全員ズッコケてしまった。

 

 

流斗「あ、アハハ(苦笑)」

 

 

守口「ま、まあ神様にもミスくらいはあるだろう。」

 

 

真二「そ、そうだな·····」

 

 

エリーゼ「え、ええ」

 

 

楓「アハハ(苦笑)」

 

 

そんな変な状況にも関わらず、イザナミは真剣な表情でもみじに問い掛ける。

 

 

イザナミ「もみじ。」

 

 

もみじ「は、はい。」

 

 

イザナミ「あなたにはもう一度、未来をやり直す機会が与えられました。どうしますか?」

 

 

もみじ「··········私は、犯してしまった過ちを生きて償いたいです。」

 

 

イザナミ「それは何故ですか?」

 

 

もみじ「私は詫びをしたい。私の呪いによって人生を狂わされた者達に。」

 

 

もみじは震えながらもしっかりとイザナミの問い掛けに答えた。

 

 

イザナミ「わかりました。あなたがそこまで思っているのなら、私は何も言いません。」

 

 

イザナミはそう言うと、もみじに微笑みかけ、その場から消えて行った。

 

 

真二「さて、あとはこの村の破壊任務だな。」

 

 

流斗「ええ、そうですね。」

 

 

もみじ「そうか、ここは破壊されてしまうのじゃな。」

 

 

エリーゼ「ええ、残念ですが。あれだけの騒動の発端となった村ですからね。」

 

 

守口「これでようやく、ザンビの恐怖から解放されるんだな。」

 

 

楓「いろいろ大変だったけど、こうして最後を見届けることが出来て良かったです。」

 

 

もみじ「この先に開けた場所がある。この村を破壊するだけと力があるのだろう?そこまで案内しよう。」

 

 

もみじはそう言って、着いてくる様に流斗達に促した。



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47話

もみじに案内されて、流斗達はは開けた場所で残美村が一望出来る高台の上に来ていた。

 

 

楓「す、すごい。」

 

 

真二「ああ、ここなら破壊魔法を発動出来るな。」

 

 

エリーゼ「ええ、終わらせましょう。」

 

 

流斗「はい!」

 

 

もみじ「頼む。もう私のような者が生まれぬように、この村を徹底的に破壊してくれ。」

 

 

もみじは残美村にはもう何も未練がなくそう言った。

 

 

流斗「わかりました。」

 

 

真二「ああ。」

 

 

エリーゼ「それでは、行きますよ!!」

 

 

シスター・エリーゼの合図に合わせ、流斗と真二は一斉に魔法を発動した。

 

 

エリーゼ「光よ来たれ!我求めるは終焉に導く聖なる裁き!!!【ノヴァジャッジメント】!!!!」

 

 

真二「風よ来たれ!我求めるは終焉に導く最期の暴風!!!【ノヴァサイクロン】!!!」

 

 

流斗「あらゆる元素よ来たれ!我求めるはすべてに終焉をもたらす神の如き怒り!!!!【ノヴァ・ストーリア・ファンタズム】!!!」

 

 

ズドオオオオオオオオオオオン!!!!!!!!

 

 

ビュオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!

 

 

ドガアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!

 

 

三人の魔法は、村の家屋全てを破壊し、あらゆる物を吹き飛ばし、そして最後には跡形もなく消滅させた。

 

 

そしてあとに残ったのは、何も無い更地だけだった。

 

 

こうして、残美村は地図上だけでなく、この地球上からも跡形もなく消滅したのだった。

 

 

守口「これで終わったんだな。」

 

 

楓「はい。私が封印を解かなければこの村も無くなることはなかったのに·····」

 

 

もみじ「いや、それは違うぞ。すべてはこの村のヤツらの自業自得じゃ。ヤツらは自分たちのやった事の報いが帰ってきただけの事じゃ。」

 

 

もみじはそう言いながら、楓の頭を優しく撫でた。

 

 

真二「これで任務完了だな。」

 

 

エリーゼ「はい。この後は教会本部に報告ですか?」

 

 

真二「はい、この後はそうなりますね。神村くんはどうする?」

 

 

流斗「オレはフリージア学園に戻って事の顛末をすべて話して来ます。」

 

 

真二「わかった。教会本部に報告は私だけで行こう。」

 

 

流斗「すいません、お願いします。」

 

 

流斗はそう言いながら、真二に頭を下げた。

 

 

守口「フリージア学園までは私が送って行こう。」

 

 

流斗「よろしくお願いします。」

 

 

楓「またお願いします。」

 

 

そこで、シスター・エリーゼはもみじに一つの提案する。

 

 

エリーゼ「もみじさんは私の方で保護しますが、大丈夫でしょうか?」

 

 

もみじ「ああ、よろしく頼む。」

 

 

もみじはその提案を飲み、シスター・エリーゼに保護されることになった。

 

 

真二「では、今回の任務はこれにて終了だ。みんなお疲れ様でした。」

 

 

全員「お疲れ様でした!!!!」

 

 

こうして、一人の女性の悲劇から始まり、フリージア学園と東京全土を巻き込んだザンビ騒動はその幕を下ろした。

 

 

結果として、一人の尊い命が失われてしまった。

 

 

各々、その犠牲となった者の冥福を祈りながら、流斗達と教会関係者は残美村跡地から、撤収して行った。



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48話

その後の顛末について、まず楓達の先生だが、神社に封印されていたのだが、あの破壊魔法発動の際、神社だけを避けて、発動していたため、無事であった。

 

 

任務完了後、彼女の封印を解き、楓にザンビの封印を解くように仕向けた疑いがあった為、教会本部の者に連行されて行った。

 

 

次にザンビの始まりでもある、もみじだが、シスターエリーゼの方で保護され、今は怨念の方は完全に浄化されており、落ち着いているそうだ。

 

 

彼女自身、フリージア学園の生徒達と東京全土を巻き込んでしまったことを酷く責任を感じていて、近々、謝罪の言葉を被害にあった者達に、送りたいと言っている。

 

 

次にザンビの蔓延していた首都東京だが、一時は戦争でもしているかのような酷い状況だったものの、死者は奇跡的におらず、もみじの怨念が消滅した後、ザンビ化した人や動物は、元に戻ったそうだ。

 

 

次に守口だが、残美村の記事を書こうとしていたが、結局その記事をすべて抹消し、記者の仕事も辞めてしまった。

 

 

これからは娘のためにと、必死に次の仕事を探している。

 

 

真二とシスターエリーゼと教会関係者達は、教会本部に戻り、今回の任務完了の報告をしている。

 

 

また近日中、犠牲となった男性の教会関係者の葬儀を執り行う計画を立てている。

 

 

そして流斗は、守口の送迎で、楓と共にフリージア学園に戻ってきていた。

 

 

流斗もフリージア学園の生徒達に心配されていたようで、帰ってきた瞬間、亜須未達に大泣きされた。

 

 

ちなみに現在はザンビから元に戻った人達は全員体育館にいる。

 

 

実乃梨「グスッ·····二人ともよく無事で戻って来てくれたねッ!!」

 

 

聖「うわああああああん!!!!」

 

 

亜須未「良かったッ!!ホントに良かったッ!!」

 

 

楓「ちょっと三人とも泣き過ぎだよ(笑)」

 

 

流斗「あ、アハハ(苦笑)」

 

 

泣き叫ぶ亜須未達に、どうしたらいいか流斗も楓も分からずあたふたしていた。

 

 

優衣「神村さん、ありがとうございました。」

 

 

加奈「これで私達も、元の生活に戻れます。」

 

 

恭子「結末は楓から聞きました。本当にありがとうございました。」

 

 

あずさ「それと楓にも謝りました。何も知らずに酷いこと言っちゃって。」

 

 

流斗「そっか。でも知らなかったんじゃ仕方ないよ。山室さん自身もそれがザンビの封印だったって知らなかったわけだし。自分の間違いを認めて謝れるのはいい事だよ。」

 

 

流斗はそう言って、あずさを励ましてあげた。

 

 

あずさ「ありがとうございます。」

 

 

流斗は次に一年生が集まってる所に向かった。



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49話

弥生「あ、神村さん!」

 

 

美琴「楓先輩から聞きました。本当にありがとうございました。」

 

 

恵美「本当に終わったんですね。」

 

 

流斗「うん、これからは普通の生活に戻れるよ。」

 

 

麻里奈「いろいろ大変だったけど、元に戻って良かったです。」

 

 

流斗は一年生のその元気な姿を見れて、ここまで奮闘してきて良かったと改めてそう思った。

 

 

麻里奈「そう言えば、弥生と美琴、やけに神村さんに懐いてるね。」

 

 

恵美「そう言えば、そうだね。いつもは二人だけの世界に入っちゃってるのに。」

 

 

流斗「え、そうなの?」

 

 

弥生「そうかな?」

 

 

美琴「別にそんな事はないと思うけど。」

 

 

そんな一年生のやりとりを見ながら、次は鈴音の元に行った

 

 

鈴音「あ、神村さん。本当にありがとうございました。」

 

 

流斗「いや、オレは仕事をしただけだよ。でも君らを助けられて本当に良かった。」

 

 

鈴音「はい。」

 

 

流斗「そう言えば、金村さん達とはどう?」

 

 

鈴音「はい、打ち解けては来ていますが、まだ時間がかかりそうです。」

 

 

流斗「そっか。それじゃ他の人の所に様子を見に行くから、また後でね。」

 

 

流斗はそう言って、次は麗奈達とのところへ向かった。

 

 

流斗「やあ。全部終わったよ。」

 

 

麗奈「神村さん、本当にありがとうございました。」

 

 

砂羽「感謝してるよ。」

 

 

そこで剣斗は、残美村に向かう前には、見た事のない女子生徒が二人いるのに気付く。

 

 

剣斗「あれ?そこの二人は?」

 

 

麗奈「ああ、神村さんは二人が目を覚ます前に残美村に行っちゃったから、知らないですよね。あの二人は、倉田友里恵と山中莉子です。」

 

 

剣斗は二人の元へ近づき、話しかけた。

 

 

剣斗「どうも。」

 

 

莉子「あ、どうも。」

 

 

友里恵「あの、神村さんですよね?」

 

 

剣斗「初めまして。神村流斗です。ごめんね、挨拶が遅れて。」

 

 

莉子「いえいえ、大丈夫です。」

 

 

友里恵「そして今回は本当にありがとうございました。話は麗奈達に聞きました。」

 

 

二人にお礼を言われ、流斗は少し照れていた。

 

 

その後、剣斗はフリージア学園の生徒と先生全員と、挨拶を交わして行った。

 

 

その全員が安堵しきった様子をしていた。

 

 

フリージア学園の人達と、挨拶を交わし終えた剣斗は、楓に呼ばれ、屋上に来ていた。

 

 

楓「神村さん、本当にありがとう。これでまたみんなと一緒に学園生活を送れるよ。」

 

 

流斗「オレもみんなを助けられて良かった。」

 

 

流斗がそう言うと、楓は剣斗に抱きついて来た。

 

 

流斗「山室さん!?急にどうしたの?」

 

 

流斗がそう聞くと、楓は肩を震わせていた。

 

 

楓は声を押し殺して、剣斗の胸の中で泣いていた。

 

 

楓「グスッ・・・」

 

 

流斗「山室さん・・・」

 

 

流斗は何も言わず、楓を優しく抱き締め、頭を撫でてあげた。

 

 

そうすると、楓は今までの辛い思いを流すかのように、号泣した。

 

 

それから数分後、落ち着いた楓と共に、生徒と先生達がいる、体育館へ戻った。



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50話

体育館戻ると、そこには、剣斗を迎えに来たのか、父がいた。

 

 

流斗「父さん!」

 

 

父「流斗!良く無事だったな!それに今回の任務、本当にご苦労だったな。」

 

 

流斗「うん。かなり大変だったけどね。」

 

 

流斗「ここの人達にも、話を聞いた。大変だったそうだな。」

 

 

剣斗「そうだったみたい。それで、父さんはなんでここに?」

 

 

父「本部からお前を迎えに行くように頼まれてな。迎えに来たんだよ。」

 

 

流斗「そっか。」

 

 

父「まだ、少し時間があるから、みんなと挨拶して来たら、どうだ?」

 

 

剣斗「わかった。」

 

 

剣斗はそう言って、みんなの元へ向かい、一人ずつ挨拶をした。

 

 

楓「本当にありがとうね。」

 

 

亜須未「元気でね。」

 

 

聖「ありがとうございました。」

 

 

実乃梨「手紙書くね。」

 

 

優衣「お世話になりました。」

 

 

加奈「ありがとうございました。」

 

 

恭子「本当に助けてくれてありがとう。」

 

 

あずさ「これからもお仕事頑張って下さい。」

 

 

麗奈「いろいろあったけど、みんなとこうして、元に生活に戻れるのが、嬉しいです。」

 

 

瀬奈「世話になったな。」

 

 

凛「ありがとうございました。」

 

 

詩織「本当にお世話になりました。」

 

 

美緒「なかなか、スリルのあった体験でした。」

 

 

友里恵「みんなが助かったのはあなたのおかげです。」

 

 

莉子「本当にありがとうございました。」

 

 

次に一年生の元へ向かい、またも一人一人に挨拶をする。

 

 

恵美「ありがとうございました。」

 

 

麻里奈「私たちも、これから頑張りますので、神村さんもお仕事頑張って下さいね。」

 

 

弥生「また会えますよね?」

 

 

美琴「また会いたいです。」

 

 

流斗「もちろん。」

 

 

一年生達との挨拶が終わると、最後に流斗は全員に手を振り、父の車に乗り込んだ。

 

 

フリージア学園の生徒と先生達も、全員が流斗に手を振っていた。

 

 

父「良かったな。」

 

 

流斗「そうだね。」

 

 

父は流斗のその言葉を聞くと、発進させた。

 

 

こうして流斗は、フリージア学園の生徒と先生達に別れを告げ、去っていったのだった。

 

 

車中、剣斗は今回の騒動を決して忘れないように、心に決めた。

 

 

また今回の騒動で犠牲となった教会関係者の一人の男性の冥福を祈り、十字架を切った。

 

 

その後、流斗は教会本部に到着すると、全ての騒動について見聞きした事を、本部長に報告した。

 

 

それから、三日後に、亡くなった教会関係者の葬儀が行われ、その教会関係者の死を悼み、その感情をその家族と共に、分かち合った。

 

 

流斗は悲しみにくれ、泣き崩れるその家族を見て、流斗も我慢出来ず、その場で泣き崩れた。

 

 

ザンビ騒動は解決したが、犠牲となった者は二度と戻らない。

 

 

流斗はその後悔に苛まれそうになったが、それではダメだと、自分を鼓舞し、これからの任務に全力を尽くすと改めて心に決めたのだった。



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エピローグ
51話


ザンビ騒動から、一年がたった頃。

 

 

フリージア学園の生徒達はみんな復学し、普通に授業を受けている。

 

 

教師達も全員復帰し、仕事に勤しんでいた。

 

 

楓たちの担任はとんでもない事をしたと反省しており、シスター・エリーゼと共に、学園に行き、楓たち全員に謝罪をした。

 

 

最初は受け入れてもらえなかったが、楓の説得により、最終的にはなんとか受け入れてもらえた。

 

 

その数日後、もみじも同じように学園に趣き、全員に謝罪した。

 

 

もみじに関しては、フリージア学園の関係者は真相を知っている為、すぐに受け入れてもらえた。

 

 

それどころか、彼女を同情する声さえ上がっていた。

 

 

東京の方は、教会関係者達の協力により、復興が今も進んでいる。

 

 

このまま復興が進んでいけば、あと一年くらいで東京は日本の首都として、完全に復活するであろうと言われている。

 

 

元残美村の住人たちは、教会本部に保護され、自分達のしてきた行いが、いかに惨たらしく、残虐な行為だったか、教会関係者に教えられた。

 

 

今では、それぞれ社会復帰するか、そのまま教会関係者になる者がいた。

 

 

今回、日本全土を恐怖に陥れたこの事件を教会は「ザンビ惨禍」と名付けた。

 

 

さらに教会の調べによると、ザンビ惨禍が始まってフリージア学園に被害が出始めた頃、他の場所でもいくつか、同じタイミングで被害があったことがわかった。

 

 

まず一つ目は、教会が調べていた女性医師による人体実験が行われていた医療施設である。

 

 

この場所は、ザンビであると疑いをかけられた人たちが収容される収容施設であった。

 

 

女性医師の天津圭によって、ザンビにここの収容されている人を一人ずつ、噛ませていたことがこの施設から逃げ出し、一人生き残った一ノ瀬杏奈という女の子からの話でわかった。

 

 

また、彼女からの話で衝撃的だったのは、天津自身もザンビとなっていた事だった。

 

 

天津は人間を憎んでおり、自分自身をザンビに噛ませ、望んでザンビになったと言っていたそうだ。

 

 

だが、その天津も彼女の親友である鳴沢摩耶によって倒された。

 

 

ここにも、何人かフリージア学園の生徒がいたらしいが、ザンビ惨禍の間は他の収容者も含め全員ザンビまたは神人となってしまっていた。

 

 

鳴沢摩耶自身も空爆に巻き込まれる前に、ザンビに噛まれ、ザンビ化していたのだが、もみじの呪いが消滅した事で元に戻っていた。

 

 

今は、杏奈と共に教会に保護されている。

 

 

だが、残念な事にここに収容されていたフリージア学園の女子生徒一人と男性一人が、犠牲となってしまっていた。

 

 

同じく収容、そして収容者達の監督をしていたフリージア学園の女性教師、本庄美奈子によって殺されてしまった事が原因で。

 

 

理由は食料が底を着きかけ、おそらく生き延びられないだろうと悟ったためと杏奈は言っていた。

 

 

本庄は、ザンビ襲撃の際に追い詰められ、自分の頭を銃で撃ち抜き、自ら命を絶ったことがその後の調査で明らかになった。

 

 

また、施設は日本の防衛省から派遣された自衛官によって、厳しい監視が行われていた。

 

 

ザンビの疑いがある者、施設から逃げ出そうとする者は容赦なく射殺するとその自衛官は言っていたそうだ。

 

 

その収容施設がザンビの襲撃に遭うと、その自衛官は無差別にザンビであろうと人間であろうと関係無く銃を発砲した。

 

 

だが、その自衛官も神人に襲われ、ザンビ化した。

 

 

その自衛官自身、ザンビのことは知っていても、神人のことは知らなかったそうだ。

 

 

今は元に戻り、その時の所業を問い詰められ、教会本部に拘束されている。

 

 

そこに同じく収容されていたフリージア学園の生徒である、一色彩菜と桂雪穂はザンビ襲撃の際は摩耶達と校庭裏から逃げ出そうとしたが、彩菜はザンビの大群に襲われ、ザンビ化し、雪穂は知らぬ内にザンビに噛まれていたらしく、同じくザンビ化してしまった。

 

 

その後は、神人ととなり、東京をさまよっているのを何回か見たと調査していた剣斗が言っていた。

 

 

またこの二人には、同じフリージア学園に通う後輩も二人いて、名前を本宮佳蓮、飯野ゆかりというらしい。

 

 

ザンビ襲撃の際に、佳蓮は摩耶達の目の前でザンビ化し、摩耶や杏奈を襲った。

 

 

その後佳蓮は、摩耶によって頭部をフェンシングの剣に貫かれ、絶命したかに思われたが、東京にて、神人となった姿でさまよっていたと剣斗の報告にあった。

 

 

ゆかりは同じくザンビ襲撃の際、施設の最上階に逃げ込んだが、ザンビの大群に襲われ、ザンビ化した。

 

 

ゆかりも同じく神人の状態で、東京をさまよっていたと剣斗からの報告が上がっている。

 

 

現在は、彩菜と雪穂、佳蓮とゆかりは元に戻り、フリージア学園に復学している。



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52話

そしてザンビ惨禍を終わらせた流斗は、今回の功績により教会の悪魔祓い師達のリーダーを務めることになった。

 

 

 

今回のこの事件を踏まえ、流斗の力は一層必要になっていくことになるだろうと、就任式の際にローマ法王に言われていた。

 

 

 

そして日本政府の文部科学省により、ザンビ惨禍のことは、一人の女性の怨念により、起こった事だと世界中に公表した。

 

 

この事により、世界中の人々は自分達の行ないにより、このような禍を起こしてしまう原因になると思い知らされた。

 

 

そして、この禍が起こった本当の理由も文部科学省ににより、公表された。

 

 

その事で呪いを広めたもみじ自身も、ある意味被害者であったと、同情する声が世界中の人々から上がっていた。

 

 

残念ながら、このザンビ惨禍により、三人の尊い命が失われてしまった。

 

 

近々、この三人の追悼式が文部科学省の下、執り行われる。

 

 

考えによれば死者は三人だけと、ポジティブに捉えることも出来るが、到底そんな事は誰にも思えなかった。

 

 

この失われてしまった三人の命は決して、蘇ることは無い。

 

 

これから先、世界中の人々は、この事件を忘れる事はなく、後世に伝えて行く事だろう。

 

 

そしてザンビの封印を解いてしまった楓とザンビの呪いを広めてしまったもみじは、これから先、自分のしてしまった事に、罪の意識を背負って行かなければいけなくなってしまった。

 

 

全ての始まりは、単なる女の醜い嫉妬から始まった。

 

 

結局の所、本当に恐ろしいのは、ザンビでも神人でも呪いでも無く、人間の心の闇、負の感情ということを世界中の人々は今回のこの事件で思い知らされた。

 

 

嫉妬はキリスト教において、七つの大罪として最大級に嫌悪されている。

 

 

今回のこの事件をキリスト教信者達は、旧約聖書、創世記第4章のカインとアベルを連想していて、人間の嫉妬というのは、こんなにも恐ろしいものだと、恐怖していた。

 

 

これから先、東京の人々とフリージア学園の生徒達は、この事件を永遠に忘れる事はないだろう。

 

 

ザンビに襲われたその恐怖、痛み、苦しみはその身に刻まれてしまった。

 

 

時折、夢で出てくる事もあるかもしれない。

 

 

だが、この事件を通して、フリージア学園の生徒達は、皆それぞれ絆を深めて行った。

 

 

流斗は、フリージア学園を去る時にそう感じていた。

 

 

また一度は壊滅してしまった東京も新たに、1歩ずつではあるが、復興へと歩み出して行っている。

 

 

教会関係者の支援もあり、徐々に少しずつ良くなって行く事だろう。

 

 

一人の女性の悲劇から始まったザンビ惨禍。

 

 

この事件を人々は永遠に忘れる事はないだろう。



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