ISよりも暴力ヒドインのほうが怖いです (うっかりウイルス)
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原作前 おりむら日記!いち!

日記形式最高ですね。
やっぱり素振りっていいよね。




  窓から暖かい太陽の光が差す。

 

 カーテンに遮られて少し控えめな暖かい光が少年の顔を照らす。その少年の顔はどこか眠たげにゆったりと起きる。まだ眠気が取れていないのだろう。ベッドから転がり落ちる様に冷たい床に寝転んだ。

 寝転んだ時に冷たい床と太陽の日差しでぼやけた意識がはっきりとしたようだ。

 大きな欠伸をしてふと気がついた。

 自分の机を探す。無い。無い。

 慌てて立ち上がる。少しよろけるがそんなことを気にしている余裕は無い。

 閉じようとしている瞼を擦りながら周りを見渡す。

 そこはいかにも子供部屋と言う感じに見える。

 机の上には日記。その横にはランドセル。ベッドの奥には棚と教科書が綺麗に立てかけられている。

 その事実に慌てたのだろうか嫌な汗をかきながら、ヨタヨタしながらも机の上に立てられていた鏡を見てみる。

 その鏡には童顔ながらも美で象られた顔があった。少なくとも今の段階でも可愛げのある美形と判断できるほどの顔がある。

 その少年は鏡を見るなり尻もちをついた。

 

 その少年の顔は驚愕に染まっていた。再び鏡を見ながら自分の顔を触る。

 目。鼻。耳。髪。口。

 まるで意味が分からないとばかり頭を抱える少年。失意のあまりふと下を見てみた。

 それは日記だった。少し字が汚いものの確かに誰かの日記だとわかるものだった。  

 その名前を見てみるとおりむらいちカと書かれていた。

 

 「何じゃああ!これええええぇ!」

 

 

 

 #月?日 

 

 ぼくのなまえはおりむらいちか、6さいです。

 

 すきなことはしないであいてをなぐってなみだめになるあいてをこころのなかであざわらうことです。

 

 きらいなものはてれびでおんながあいえすでいきがっているのをみてしまうことと、まちなかでおんなにこびるおとこをみることです。

 そういうのをみるとどちらもしないをもってししをけっそんさせてじんせいをおわらせたいですが、あねがこわいのでやめます。

 

 しょうらいのゆめはじぶんのあねをこえることと、

あいえすをもっていきがっているおんなどもをぜつぼうさせながらころしたいです。

 

 しょうらいのゆめをたっせいするために、ぼくはとりあえずすぶりをして、あいえすのぜったいぼうぎょをかんつうさせることをがんばります。

 あいえすでいきがっているおんなどものくつうなひょうじょうをみながらざまあ、っていってやることをそうぞうしてやるきをだします。

 おうえん、よろしくおねがいします。

 

 

 ……………こんなこと言うガキいたら怖いよ。

 

 我輩は小1のショタ。前世は日本人で、今宵の名前は織斑一夏。

 ……これも自己紹介文として却下。

 俺が日本人のときにとても有名な本のぬこのものまねをしたが、そもそもこの世界に夏目漱石いなかった。

 

 俺は、しがない大学生素振り研究科の一般人。 

 日曜日の休暇に設定ガバガバの属性詰め込みすぎ暴力ヒドイン達の二次創作を見ているのに集中していたら…

 

 体から近づいている眠気に気が付かなかった!

 そのまま眠気に身を任せパソコンの前に寝てしまったら…!

 身体が縮んでいた!

 

 まぁ、そういうことだ…?

 最初は麻酔銃でおっちゃん眠らせる小学生かと思った。

 「犯人は、貴方だ!!!!」(なすりつけ)

 

 ………うん、…………ないな……。

 というか推理できんし。小五郎のおっちゃんがさらに無能ドルべになるし。

 ………話を戻そう。

 

 最初起きたときとかめっちゃパニックになったの。

 いつもあるパソコンないし。カレンダーとかそもそも家が違うし。おまけに視線がめっちゃ低いの。

 んでとりあえず鏡見てみたらくっそイケメン。ショタのくせしてイケ面なの。

 机の上にあった日記らしきもので自分の名前見てみたら…

  おりむら  いちカ ろくさい

 

 かのあたりが少し怪しいものの確かに持ち主の日記帳らしきものものだった。

 6歳と書かれていること。織斑一夏の顔を朧気ながら覚えていることと、まるでモブとは思えないこのイケメン面おそらくは自分なのだろうと判断した。

 

 ウッソ〜ん

 

 だって織斑一夏ってあれでしょ!

 無自覚ハーレム生成の女心分からない芸人。

 

 てことはだ…

 

 

 B!B!B!  暴力!暴力!暴力!

 

 事あるごとにくの字キックに木刀天誅殺!

 人に向けるべきでない兵器を平然とイケメンの顔に向けるヒロイン(仮

 たかが少しだけ女性に絡まれただけなのに銃刑殺!

 暴力ヒドイン達の制裁だけは!回避!しなければ!

 

 じゃなきゃ!俺!

 

 「ぷるぷる、ぼくわるいいちかじゃないよ」

 

 無言の抜刀

 無言のビット展開

 無言の衝撃砲

 無言のアサルトライフル展開

 無言のナイフ投擲

 

 nice boat

 あかん(確信) 

 

 

 ハーレム何て冗談じゃない!

 顔は良くても性格アウト!oh…no…

 

 とりあえず原作通りに行ったら俺が逝く。

 なら原作通りではなく、あえて好感度下げにいったら…?まずは箒。タッバいるんで無理。むしろ媚びなきゃ死んじゃう。

 

 ……木刀は覚悟しておこう。

 

 てかラッキースケベに何故か遭遇しやすいとか言う一夏のパッシブアビリティがある。この世界にとっては致命的過ぎる特性である。

 

 oh!待って下さい!私はラッキースケベの被害者ですよ!少しくらい見ただけじゃないか。少しくらい許したって!

 少しぷるんとかしただけですやん!転んで頭に股が当たるだけですやん!

 先っちょだけ!先っちょだけだから!

 

 許されないな!(確信)

 ……前世の顔よく思い出せなくなったけど間違いなくお縄逝き。

 今の時代って確か女尊男卑とかっていう変な世界だったりしたっけ。

 

 ……あかん。

 もうラッキースケベについては諦めよう。

 そこから木刀からの天誅瞬極殺食らっても文句言わない!ラッキースケベ起きないように細心の注意は払うけど。

 とりあえず姉に呼ばれた。窓を見てみたら朝だった。

 

 俺はこの日記を持ってインフィニットストラトスとかいう地雷だらけの世界に勝つ!

 

 

 

 #月!日 晴れ

 

 俺は好感度を無理やり下げなくともいい方法を思いついた。

 この案を閃いたときは自分で天才!束さんを超える天才的な案だと思ったね!

 その答えは…

 

 

 

 レベルをあげてぶつりでなぐれ!

 

 

 そう!単純なことだった。

 相手が暴力で構成されるならこっちも暴力で構成すればいい!

 IS使われようが関係なく制圧すればいい! 

 何で忘れてたんだ。一夏くんはなんちゃら計画で作り出されたクローン人間!

 完璧な人間をコンセプトにするなら身体能力だって素は多分うちの姉ーーーーーー片手でIS用の剣をぶん回すやべー奴と同じくらいのはずだ!

 確か束さんがいて頓挫になったんだっけか?

 

 まあいいや!

 とにかく早速姉に剣道の話を持ちかけよう。

 俺は運命(ヒドイン)に勝つ!

 

 

 え?篠ノ之道場?

 わあい!一人目の暴力ヒドインだあ~い!

 い、!いや、!男織斑!ここで屈しない!

 俺は!地雷だらけのタップダンスに勝ち抜くんだって証明してみせる!

 

 あの、柳韻さん、そんなホモホモしい目で俺を見ないで下さい。ケツの穴がキュって。

 ……背中に寒気が。

 

 

 

 #月@日 晴れ

 

 いや〜織斑君の才能舐めてたわ。

 体の成長が半端ないもん。そら剣道全国で優勝出来る篠ノ之に小学生とはいえ余裕で勝てるわけだ。

 あのヒドイン達のデッドヒート殺意のフルボッコタイムでも次には何事も無かったかのように復帰できるってのはこういうことか。

 

 ……そう。筋肉が成長しやすいのだ。

 人間の体の中にある筋肉というのは負荷を掛けることによって筋肉が鍛えられる。

 何故かと言うと、筋肉とは一本一本が筋繊維でできていて、それが負荷を掛けて切れる。その時、体がもっと強い筋繊維にしようとアミノ酸とか糖質をなんかに変化したりして筋繊維を補強するんだっけ?覚えてない。

 

 んでこの一夏君の肉体。その筋繊維を補強しようとする働きが異様に早いのだ。

 普通は完全に筋繊維が強化復活するまでは2~3日もかかるのだが、一夏君の肉体、一日どころか10分もあれば再生するの。

 

 ………うん。そら家の姉最強になれますわ。

 3日もかかるインターバルがたった10分だもん。

 一日もあればムキムキよ。

 しかも細マッチョ系。

 おまけにこの一夏君。

 とても大食いなのだ。

 

 それもピザとかアイスとかお菓子ではなく、味噌汁とか鶏肉とかそこらへんの体にいい物を求める傾向にあるの。

 一夏君の肉体改めてみるとすごいなあ…

 

 反射神経良いし。他の人がヒイヒイ言ってる素振りもすました顔でぶんぶん触れるし。

 

 ………でもそれだけでISの暴力に勝てるかと言われるとno!白騎士事件もう起きてたし、テレビで見たけど何やあの機動。

 勝てる気がしない。

 ……いや、乗っているのは姉だってわかってるのよ?

 ただそれでも性能的に見ればただのブレオン。

 これから出てくるであろう第3世代機、並びに第4世代機に生身で勝てるかと言われると無理。

 反射神経ギリギリまで駆使したらワンちゃん避けれるけどそのまま撲殺される未来しか見えんぬ。

 

 …………となるともっとハードにするか。

 

 

 

 

 

 

 

 風を切る音。水滴が落ちる音。吐息が漏れる音。

 

 それらの音が少年の身体から飛び出している。少年が一心不乱に振るう木刀は風を切り。

 少年の美しき芸術品の様な顔からは水適が一つ一つ溢れ落ちる。

 少年の少し赤みがかった顔からは熱い吐息が漏れ出る。

 それら全てが一つの自然の様に輝く。

 

 少年の半身はあろうかその木刀を風切り音を吹かして振るう。

 少年の足元には水溜りができている。

 少年の全身から蒸気が漏れる。熱によって蒸されている子供部屋。

 

 それでも愚直なまでに真っ直ぐ振るう。振って振って振って………

 気がつけば千を超える風切り音とともに少年は木刀を落とした。

 

 g月@日

 

 

 あれから一ヶ月が経過した。

 

 今俺がやっているのは重りを全身に付けてからの木刀一万回振りだ。

 …………さすがの一夏君でもこんなハード過ぎるやつは無理やろ?と思っていた。

 

  出来るのだ。

 

 うん、出来るのだ。

 ……まあ流石に最初からできたわけではないけど。

 最初は家で重りを付けて素振りをしていた。

 そしたら素振り300回でダウン。そして、同時にようやくこの一夏君の限界が見れた気がする。

 

 

 流石の一夏君でも10分では再生できずに、

 

 

 

 30分もかかった。

 

 

 おかしいだろ一夏くん。フッツーそこから体バキバキでベッドから動けなくなって筋肉痛で苦しむところだぞ?

 1日から2日かかる筋肉痛があるはずだぞ。

 たった30分たっただけで完全に復活すんな。

 ……まあとりあえず振って見よう。まぁ流石に300回振ったばっかだし、…早々ひどいことには………

 

 

 400回やで!一夏くん! 

 ファ?うせやろ?自分の限界軽々超えやがって!

 ……まぁ流石に再生時間伸びたけど。

 そこから一ヶ月間時間がある時にこういうことしてたら…

 

 重りをつけて素振り1000回を1セット。

 そこから休憩10分挟んでまた1セット。

 最終的に2時間ちょいで素振り10000回軽々達成してしまった。

 …………うん。

 

 やりすぎた。

 だって今の俺まだ小一ショタよ。

 そんなショタが自分の身長の半分くらいある重い木刀1000回を振ってる様を想像してみ?

 ………怖いわ。

 ドーピングとかふつ〜に疑うわ。

 てか心配された。姉に。

 一夏、もう休め。とか言われた。

 しょんぼりーです。

 

 

 g月b日 

 

 姉に木刀没収されてやることがなくなってしまった。

 片手で腕立て伏せしながらこの日記を書いているのだが、あまり成長しない。

 

 ……というよりも木刀素振りやりすぎた。

 あれやりすぎて、腕立て伏せ100回超えてもそこまで疲れなくなった。

 おもり付けてるんだけどなあ

 増やしたところでトレーニングになるとは思えない。

 とりあえず下半身の増強がてらおもりスクワットをだな。

 

 あと普段の学校生活は普通に友達ができた。

 

 てかそもそも前世のこと思い出せんかったけど、

おそらくは前世でもコミュ障では無かったのだろう。

 ふつーに問題無かった。言葉がすらすら出るっていいよね!

 まぁ制服の中に重りとかしてるけど。リストバンド式のやつを手首足首に巻いても特に違和感が無かった。

 ……てか普通じゃね?とすら思った。

 むしろつけなきゃなんか浮つく。

 てことでいつもつけてます。

 あと小学生1年って結構自由なのだ。

 だから隠れてハンドグリップ握っても特に何も言われんかった。

 ちなみにそれは30kgのやつ。

 握れることは握れるけど手が小さすぎる。

 もう少し大きくなってからだな!

 

 ……あと買いに行ったら奇々怪々な物を見るような目で見られた。

 てか何の為に体鍛えたんだっけ?

 

 

 g月c日  雨

 

 

 そういえば暴力ヒロイン達の魔の手を逃れる為に鍛え上げてたんだった。

 ………はっきり言って今の段階でも原作よりも強くはなってるでしょ?

 原作一夏がIS学園に入学したときにバイトばっかりの帰宅部でなまったのはあくまで"一般人"基準で鍛えたからであってこの一夏の体そのものは"逸般人"だ。

 

 そして"逸般人"の基準で鍛え上げた体は、バイトばっかりしてて鍛えるのをやめても断言できる。

 

 原作の一夏くらいなら今でも倒せる。

 

 ………流石に無拍子とかいう変な技使われたのならわからんが。

 

 そもそも今の体は正直言って限界まで鍛えすぎた。

 これ以上素振りしてもこの小学生1年の体ではいくら"逸般人"とはいえもう伸びることはない。 

 

 ならばどうするか?

 

 そう!技を磨くのだ。

 

 原作一夏の使っていた無拍子。

 あれは相手の一拍一拍を刻む呼吸の隙間を"ずらす"技だ。

 

 ……要するに不意打ちに近い速攻で体勢を崩すことだ。

 そもそも剣道ではおそらくは大人にも普通に勝てるだろう。だが剣を持っていなかったら?

 

 ……一応小振りの木刀はいつも持っている。

 だがそれは小学生だからとか、剣道で使うからとかそんな理由があるからだ。

 だが無手ではどうする?

 

 はっきり言って無手だとどうしてもヤグザキックとかテレフォンパンチになるだろう。

 ただそれは技を持つやつにとってはカモもいいところだ。

 体をどれだけ鍛え上げても関節はどうにもならない。

 どれだけ柔らかくしても限界は存在する。

 ならどうするかというと、今の体を維持できる程度に鍛え上げ、平行して自分の切り札になるであろう技をつくるのだ。

 

 原作と同じ無拍子でも良いのだろう。

 

 だがそれは"一般人"である一夏が鍛え上げた技だ。

 よって目標はそれを遥かに超える"無拍子"の技をつくることだ。

 とりあえず練習して見た。

 

 

 g月o日  曇り

 

 

 いや〜きついっす。

 とりあえず20日経過したけど未だ上手くできない。

 体はただ鍛えるだけで良かったのに対して、技はどうにも体全体を理解しなければいけないようだ。

 普通なら自分の体の限界が分かるところなのだが、

普通ではない体と、普通ではない鍛え方をしてしまったため、体が上手く安定しないのだ。

 

 どうにも体の手加減というのがあまり出来ないようだ。剣道とかっていうのは寸止めとか適当に力を緩めて竹刀を当てるだけなのだが、無手となるとそうもいかない。

 要するに弱すぎたり強すぎたりするのだ。俺の体のバランスがどこかよくわかって無かったりした。

 試しに手加減したパンチをした。

 

 一回目は弱く、ニ回目は強すぎた。

 ペチッとフオン!なのだ。

 とりあえずそこらへんの調整から始めていこうと思っている。パンチ!パンチ!

 

 g月p日  晴れ

 

 

 久し振りに道場で素振りしてたら声を掛けられた。

 

 顔は美形。髪は長いポニーテール。目はキリッとしている。スタイルも小学生ながらバランスがいい。

 

 そう、篠ノ之箒だ。

 なんでも一回試合をしないかとの事らしい。

 

 はっきり言って今の状態だと余裕で篠ノ之を倒せる。

 いわゆるラディッツと界王拳を習得したあとの悟空だ。

 手加減のいい練習になると思い、受けることにした。

 

 

 結果?手加減し過ぎて負けた。

 なんか篠ノ之が手加減しただろとか本気でやれとか言ってきたので少し手加減を解いた。

 

 

 結果?余裕の圧勝。手加減は、苦手だな。

 篠ノ之が少し泣いていた。

 

 ………後で謝っておこう。

 

 g月q日  

 前門の虎、肛門の狼とはこの事か。

 

 目の前にいる不思議の国のアリスの様な変な格好した不審者が、

 後ろには昨日の一戦で余計ホモホモしい目線を向けてきた柳韻さんが俺を挟んで口喧嘩してる。

 

 内容はやめて、私の為に喧嘩しないで! だ。

 

 ただ前者の言い分は解体。後者の言い分は私の方で預かるだ。

 ………うん。

 解剖か、…それとも掘られるか。

 俺はいったいどうなるんだろうね?




不定期更新になるかもです。 

良かったら感想下さい!


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おりむら日記!に!

誤字報告あざっすあざっす。 

まじで誤字のチェックがガバガバなので本当に助かります。 

てか感想なんで柳韻さんをホモに仕立て上げるんですか?
彼はただ一夏くんを真剣に見ているだけなのに!




(あと一話での前門の虎、肛門の狼の肛門は誤字じゃ)ないです。


 とりあえず姉さんが来て収拾はついた。

 

 あのコスプレの人は誰?と後で姉さんに聞いてみたらあれは気にしなくていい と言われた。

 正直ヒヤッとした。

 姉さんには黙っていたがあのコスプレイヤーの人が誰なのか知っている。

 あのコスプレイヤーの人の名前は現最警戒候補の篠ノ之束。

 ……はっきり言って現時点で勝ちの目が全くないし、大人になっても勝ち目は薄いだろう。

 

 なにせあのなんちゃら計画の目的、確か完璧な人間を作り上げるとかだったかな?人工的に6v作り出そうと思ったら天然の6vがいたということだ。

 それが原因でなんちゃら計画やる意味が無くなってあの6v捕まえたほうが速いじゃんってなったのかな?

 そこらへんわからんな。

 

 だけどその捕まえにくさが問題で、体力満タン相手の伝説にハイパーボール投げて捕まえる様なもんで、

 それで怒りを買ったトレーナーが伝説(タッバ)の怒りに触れ、哀れトレーナー。目の前が 真っ暗になった。

 まぁこんな感じだったかな?そこらへん全く覚えてないんだよねぇ…

 

 んでそれでここから推測だけど姉さんをインフィニットストラトスのテストパイロットにしたんだっけ?

 それで貰えるお金で何とか今まで食いつなげていたってとこね。

 ……問題はその素のスペックの高さにある。

 

 生身でISを圧倒する身体能力。問答無用でISを無力化する"コード"。

 詳しいことは分からないがその"コード"って言うのはどうやら既存のISすべてに効果がある代物らしい。

 おまけにIS学園のセキュリティぶち抜くハッキング能力。

 それでいて身体能力が下手をすれば家の姉に匹敵どころか超えている可能性すらある…と…。

 

 それでいて性格は最悪。

 興味ないのは は?近づくんじゃね〜よ とか言う対応。興味があっても実験動物くらいにしか考えてないサイコパス。エボルトから人間愛をなくしたウサギって表現が似合う。

 

 ……きっつ!

 

 何あれ?ホントに何だあれ?

 最悪あれと敵対することもあるわけでしょ?

 ………姉さんがいて良かったなこれ。

 一応そこからの縁で何とか箒と友達にはなったよ? 

 というかならざるを得ない。

 でなければエボルラビットに四六時中目あざとく解剖されそうで。

 

 ……一応謝られたよ。 

 とっさに小学生の演技できて良かった。

 少なくとも妹の友達とあればそこまで手は出しにくいはずだし。

 ………暴力ヒドイン回避はできんかったかなこれ。

 

 取り敢えずここから箒との好感度が下がったらエボルラビットに解剖されるとだけ覚えておこう。

 束さんは何を唐突に起こすかわからんからなあ…

 

 姉の抑止力あるとはいえ……な

 ……人生ハードモードすぎるなあ、ルナティックにも程があるなあ!

 さよならスローライフ!こんにちはデッドライフ!

 

 洒落になってねえ

 

 h月a日

 

 秋になる今日この頃。俺は篠ノ之と竹刀を打ち合っているところです。

 あの日以来篠ノ之とよく試合をしてたりする。

 

 最初に何とか友達になったときは篠ノ之の方が謝って来た。

 家の姉が申し訳ないと。

 それを聞いた俺は、それを起点に一夏スマイルで

 いいよいいよ!俺そういうのきにしないからさ!

 とか小学生に通う時とかに何時もする演技をした。

 

 明るい青少年的な感じのスタイルで演じた。

 あとはすらすらと出てくる友達(保身)にするための言葉。取り敢えず何とか押し切って普通に会話できる仲になった。

 え?篠ノ之を恋愛対象に?

 無理。

 ワンちゃん篠ノ之がまともでも父親と姉がね…

 

 だって篠ノ之の父親なんかホモっぽいし。好きあらばショタの穴にめがけてoutなことしそうだし。

 俺は知ってるんだぞ!素振りしてる時に鋭い眼光をしていたことを!小学生のショタに目を向ける中年なんて怪しい以外ないだろ!

 ともかくショタ限定ならまだしも真正のホモならもうアウト。

 篠ノ之の父さんに関して言えば知識ないしな。 

 

 んで姉がもう厄ネタ。

 もう説明するまでもない。

 これ以上厄ネタに突っ込むなんて冗談でも無い。

 

 俺は命の危険にこれ以上突っ込む気力がない。

 

 今回ですら解剖or開発の二択に迫られてるんだ。

 篠ノ之がどれだけアプローチしても俺は鈍感のフリをするしか無いのだ。

 明確な拒絶を示したら解剖が。

 明確な好意を示したら開発が。

 

 全く!インフィニットストラトスはホントに魔境だぜぇ…

 話を戻そう。

 

 とにかく、鈍感(暴力行動誘発行為)は最後の手段として、基本的には師匠兼友達というポジションを何とかキープしていきたい。

 憧れとか、それを目指していきたい!とかの感情になるように努力しよう

 

 だから柳韻さん。微笑ましい顔で俺を見ないでください。だんだん熟してるな とかそこらへんの顔にしか見えません。

 

 

 i月k日

 

 今は冬休みの時間だ。 今俺は原作の一夏がやった無拍子の練習をしている。

 ……とはいえ原作とは違う形なのだが…

 モニターをみながら人の呼吸に合わせたリズムを自分でうち、その正確なリズムそのもの刻む。

 

 一瞬モニターに映る数字。

 

 本来ならこの一瞬映る数字で計算する用途で使われるソレを

 "無拍子"のタイミングと仮定した。

 

 自分の優れた反射神経を研ぎ澄まし、数字がモニターに映ってから消えるその瞬間

、自分で刻んでいたリズムを崩す。

 全身を前に押し出して引き戻す。

 その崩れたリズムを一瞬で直す。

 その繰り返しだ。

 

 

 篠ノ之との竹刀での打ち合いは、一見意味の無い様に見えるが、手加減をする相手には最適なのだ。

 あの前の強すぎた手加減と、弱すぎた手加減の中間。

 

 それを目指すことはこの技の習得にも繋がる。

 加えて、前のやりすぎた試合が効いてるようで、

あの俺の本気だと思っている姿を目指して、篠ノ之は頑張っている。

 ……実際はもう3段階くらいあるのだが…まぁそれは置いておく。

 篠ノ之は、俺の手加減の調整をいい方向に捉えている。

 要するに

 

 ―――お前には、まだ早すぎたな。

 

 

 (つっ!舐められてる!)

 

 って雰囲気で。

 いや〜調整が捗る捗る。

 まだ小学生一年だし顔に出やすい。扱い方もよく分かってきた。

 篠ノ之の師匠兼友達ポジション。

 なおかつ手加減調整機。

 これが篠ノ之の一番最適な扱い方だと思います。

 

 俺は最適な手加減を掴んだことで、どこにどう力を込めれば良いのか分かってきた。

 大切なのは相手の波長そのものを読み取る…

 呼吸ではない。呼吸は不意を付くには少し違う。

 

 ―――対応出来てしまうのだ。

 呼吸の不意をついても体がとっさに動けてしまう。

 

 普通の相手なら良いのだろう。

 

 だが想定する相手はISに乗っているヒドイン達、並びに亡国の連中―――織斑マドカに

 

 篠ノ之束まで想定する必要がある。

 ISそのものにはハイパーセンサーが作動している。

 あのセンサーは優秀だ。

 

 ―――故に生半可な隙では避けられるのだ。

 

 織斑マドカは通路の狭い場所でISと相対し、

 "生身"で勝利しているのだ。

 おまけに俺たち姉弟を恨んでいる。

 相対する可能性は高いのだ。確実に。

 

 ―――故に生半可な攻撃は詰む。

 

 あの天災は碌でもないことを考える。

 そもそもの話、あれさえ居なければ世界はこんな面倒にはならなかった。

 故にこのインフィニットストラトスにおける最凶最悪の敵だ。

 あれの前に機械の類は意味をなさない。

 あれの前に素の身体スペック並びに頭脳、全てにおいて負けている

 

 ―――故に格上殺しの技でなければ

 

 それ故に波長という領域。

 

 呼吸の合間では話にすらならない。その領域。

 似ているようでまるで次元の違う話。

 

 人の脳には波長と呼ばれる物がある。

 

 現在進行形で動く折れ線グラフ、人の思考そのものの"動き"を擬似的な記録で表したもの。 

 

 動揺、怒り、諦め、感動、緊張……等

 そう言った感情の動き、その感情の動揺は脳まで広がる。

 場合によっては感情の動きによって何もさせずに完封することが可能だ。

 どれだけ冷静であろうとしても、どれだけ自分を奮い立たせようと、

 

 感情とは消そうとしても消せないものなのだ。

 そのため感情が大きく変わるその一瞬。

 動揺、怒り、諦め、感動、緊張、…等

 その一瞬、明らかに空白があるのだ。

 波長の動きが急に変動すると、意識そのものがほんの一瞬だけ真っ白になるのだ。

 思考停止とも言い換えていい。

 頭が考えることそのものを拒絶する。

 体が思うように動かすことが出来ない。

 

 ただ隙と言うにはあまりにも小さすぎる隙間。

 一般人どころかメンタリストの様な心理に関わる仕事の持ち主ですら波長の流れそのものの動きに気がつけない。

 それ故に

 

 無拍子の練習をしていた刹那、何故か無拍子が成功し続ける。

 俺、ゾーンに入ったなこれ……とは自分で理解できた。

 ―――だがそもそもゾーンとは何か?

 

 極限に集中力が高まったとき、脳そのものが"勝手"に最適解を導き出し、脳そのものの波長の流れが、その過程に行き着くまでの道のりを計算。

 ゾーンとは脳の波長がベストコンディションで固定され続けることだ。

 

 不思議なくらいに体が動く。

 頭が恐ろしく冷静に、尚かつ思考が安定する。

 まるで上から見下ろしているかの様に、全体が見える。

 これらは本来、自分が持っている最大の能力だ。

 本来の実力であれば無拍子なんぞ当たり前の様に成功する。

 

 それどころか逸般人の体がありとあらゆる可能性を、

 そしてその中で自分の脳が最適解を生み出した。

 その結果

 

 一瞬だがモニターが透けた。

 それどころか自分の体が透け、

 自分の胸に、折れ線グラフができていた。

 その折れ線グラフは一定を保ち続けて―――

 

 「うわぁ!」

 

 最後大きく跳ねて。ゾーンは途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 まるで夢を見ているかのような感覚だった。

 胸に折れ線グラフは見えない。体も透けない。

 だが分かった事は、無拍子のその先の領域があるという事だ。

 そこから波長に気づくまで至った。

 

 

 

 

 ―――篠ノ之道場。

 

 その中で幼い子どもたちが軽めの竹刀を振るう。

 

 その少年たちを優しく見守っている人柄の良さそうな道場主―――篠ノ之柳韻は、その優しそうな顔を一転させた。

 傍から見れば鋭い眼光だ。何かを狙うような鷹のような目。その鋭い眼光で見ている人物は、少年達の中でも特に一際大きい風切り音を吹かしている少年だった。

 

 ―――あの子は剣道に名を残す人材になる

 柳韻はそう確信していた。その少年の名前は織斑一夏。この少年が入って来たのは4月の終わり辺りだ。

 その少年の成長を見ていた。最初は出来が良いし、才能があると見ていたのだが、その成長速度がおかしいのだ。

 教えた1は10どころか50にも100にもする。教えた水が足りないかの様にずっとかわいたスポンジのまま貪欲に成長し続けた。

 今も成長を続けているその少年は、十年に一人の逸材である自分の娘どころか、百年に一人すら超える天才だと確信した。

 

 だからこそ才能を存分に活かしてやりたい。

 篠ノ之家の奥義も教える日は近い。そう思っていた。

 だかその少年は何かを図るかの様に足を刻んだ。そして………

 

 その少年はやろうとしていた事が失敗したとチャレンジしようとした。だが、その挙動を見ていた柳韻はこれを運命と確信した。

 その挙動。その技。確かにそれは篠ノ之家の道場に伝わる無拍子であった。

 拙いながらも確かにそれは無拍子だ。

 柳韻はこの子の才能に変な汗を垂らした。

 可能性を見た。この子は100年に一人じゃない。もはや産まれて来ないかもしれない。

 そう確信した。

 

 ―――絶やしてはならない!この子の才能は!

 

 

 j月l日

 冬休みが終わった。

 ん?冬休みの宿題?一日で終わったよ。

 取り敢えず波長の変な流れを忘れまいと練習したがよく分からずじまいだった。

 やはり原作の無拍子如き出来なければ話にもならんか。

 取り敢えず無拍子のコツは何とか掴めた。成功確率は3割できればいい方…か

 

 だがそれをうっかり道場でやったのがいけなかった。

 

 

 柳韻さんがますますホモホモしい目で俺を見てくるのだ。やめて。何時もホモホモしい目線で見られてたけど今回は特にホモホモしい。

 …え?何?一戦やろうって?

 

 

 掘られるの?俺?(震え声)

 

 どうやら違うらしい。

 "剣道"でって意味かあ…。

 紛らわしいなあ

 "二人っきり"でしかも"音が届かない"場所。

 そんなところに連れて来られても……ねえ?

 念の為に懐に忍ばせてある小木刀。

 それを握りしめたじゃないか。全く。

 取り敢えず始めた。

 

 結果?すごい技術だったけどなんとか強引に勝ったよ。

 ……いやまじで。

 

 何が大人にも勝てるだよ。すごい技術すぎてとっさの反射神経無かったら普通に負けてた。

 流石に手加減はしたけども篠ノ之にやった手加減とは程遠いくらい……

  5割も引き出された。  

 いやほんとあかんなあこれ。相手の方が一歩も二歩も上回ってる。

 反射神経と身体能力のゴリ押しで勝った様なものだしなあ。

 

 ん?柳韻さん?何だ?

 え?ああ、あのうっかり見せた技?ん?手とり足取り教えてあげようだって?

 

 俺掘られるの?(震え声) 

 

 

 i月m日

 

 どうやらあの技、篠ノ之流の奥義って事すっかり忘れてた。

 ……俺のバカチン!まぁ柳韻さん優しかったけど。

 技のコツとか色々教えてもらった。

 おかげで技の安定率が5割になった。

 もっと教えようかと言ってくる柳韻さん。

 乗っかろうとする俺をなんとか止められて良かった。

 だってあの技のコツとか習って成功させる度にホモホモしい目線を感じたもん。

 あのまま教えられていたら無拍子で俺の穴狙ってきそうだもん。

 ……うん。 断っておいて良かった。

 

 取り敢えず篠ノ之とのんびり稽古ついでに柳韻さんがしていたあの剣の技術とか覚えてみる。

 

 k月v日

 

 取り敢えず無事一年目を終えられた。

 篠ノ之とはまたいっしょのクラスになれるといいね!

(一夏スマイル)しておいた。

 

 体は成長したものの大した成果にはならなかった。

 あと篠ノ之が強くなってきた。これは手加減を一段階解かなくちゃいけないようだ。

 ふっふっふっ、私の手加減はあと3回、あと3回手加減を解くことができる…。

 ……まぁ師匠ポジ兼任するから勝たなきゃいけないけどね!

 あと篠ノ之の好感度を上げることによって束さんの好感度も少しだが上がる。

 本当はそこらへんの石ころのような扱いが良かったものの、いきなり怒りを買ってしまった為に好感度を上げることにしているのだ。

 

 ……一応恩恵もある。

 原作の一夏は束さんから専用機を貰っているようなもの。

 要するにこのまま篠ノ之が恋に目覚め無ければ、原作の一夏よりも束さんの好感度は低いが、専用機ぐらいなら見繕ってくれるだろう。多分。メイビー

 

 ……本当は手を出さないで欲しいってのが本音。

 まぁとにかく、篠ノ之の好感度を上げるというよりは、束さんの解剖ルート回避及び、束さんへの好感度を少しでもいいから上げるという意味合いのほうが近い。

 

 取り敢えず一年目は無事に終わった。

 




強化回。

あれ?主人公強すぎたか?

まあ、…うん、…大丈夫でしょ。


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おりむら日記!さん!

受験に受かったので一日遅れの投稿です。


まじで心臓がバクバクでした。


 ?月?日

 

 取り敢えず一年目が終わった。

 ……波乱が巻き起こり過ぎた。一瞬死んだ目になりかけた。この体に憑依して大体一年目。

 

 元の生活に戻る目処もない。元の生活に戻りたい…なんて思わない訳でも無いのだが、前世のことがよくわからんくなってきた。

 本当の自分の名前とかおぼえてない。

 そもそも元の体に戻りたいのかと言われても返答に困る。

 

 だってこの体めっちゃ身体能力ハイスペックなの。

 

 うん。この体、前世っぽい記憶で見た動画の凄技とかやろうと思えば出来ちゃうのよ。

 逆立ちバク転は当然余裕、連続でバク転しても普通にバランスが崩れない。

 てか逆にどうやって失敗するの?てぐらい身体能力高いのだ。

 テレビで見た特撮のライダーキック。驚異の再現率。

 

 サッカーに関しても一回助っ人に呼ばれたのだがオーバーヘッドキックをスタイリッシュに決めてしまった。

 そこからハットトリックまで格好良く決めてしまった。

 相手側が

 そんなんできひんやん普通!

 

 って愚痴ってた。普通の逸般人ですが何か?

 

 取り敢えず2年目以降の方針そのものは決まった。

 篠ノ之の好感度を精々"親友"程度に収める。

 成長していく体に合わせた肉体改造。

 無拍子の完全習得。

 原作の好感度フラグをへし折る。

 

 これくらいかな。方針としては。

 

 篠ノ之の好感度問題は師匠兼友達ポジのキープ

 成長していく体に合わせた肉体改造はそこまで重視しない。

 後からやっても追いつく。

 

 無拍子の完全習得に関しては積極的にやっていくことにする。

 んで、問題は篠ノ之への暴言だ。

 原作では篠ノ之に男女っつう暴言を吐いた奴が一夏くんに説教されて、その姿を見た篠ノ之が好感度上げたんだっけ?

 確かあれって2年生…つまり今年の出来事なのだ。

 

 あれに関して言えばガン無視したら解剖案件入りそうで怖い。でもそれに関わって暴力ヒドインルート歩まれても面倒なだけだし。

 そこで閃いた。そもそも起こさなきゃいい。

 これに関して言えば俺のコミュ能力で何とかする。

 

 ほら、クラスに一人はいるでしょ?ガキ大将的な奴。

 あるいはみんなをぐいぐい引っ張る陽キャ的な奴。

 それになって篠ノ之をついでに引っ張り出す。

 それを機に篠ノ之のコミュ不足を何とかケアしたい。

 ……篠ノ之のコミュ不足はほんと酷いからな…

 今のところまともに話できるの五反田と俺しか居ないってどうなのさ。

 ……まぁ姉と父があれだし、仕方の無いことなのかな?

 俺は少し篠ノ之に同情した。

 

 さあて、方針決まったし!波乱の幕開けだ!

 

 p月^日

 

 すわっ波乱の二年目がと思うじゃん?

 恐ろしく順調なのよ。

 まず頑張ってコミュの本気を見せた。一夏くんの本気のコミュ能力舐めんな。

 おかげで篠ノ之も皆と仲良く出来ている。

 

 自分に100点どころか150点渡してあげたい。

 できればこのまま篠ノ之が他の誰かに目移ろいして欲しいと考えるが、まぁ最大の鬼門である好感度大幅変動イベントは乗り越えた。

 次に無拍子。

 これに関して言えば精々6割程度になった。

 

 というよりも次の方が重要が重要なのだ。

 ある程度ゾーン状態をコントロールする事ができた。

 

 そう。とあるバスケ漫画ではゾーンに入れば無双できるっていう奴だ。

 しかもゾーン、入ると無拍子がポンポン成功出来るのだ。練習よりも遥かに高い精度で成功させることができる。あの変な波長?も見えるようになって来た。

 

 

 ……だが欠点はある。

 

 まずゾーンの発動が安定しない事。

 ある程度狙えるとは言え、その確率そのものは10%あればいいくらい。

 はっきり言って技と言うには、あまりにも不安過ぎる。

 次に持って3分ぐらいしか維持できないのだ。

 まだ成熟しきってない脳だと、はっきり言ってこれが限界だ。

 次に途切れやすい。

 

 これがおそらく最重要の課題だろう。少しの物音。想定していない音でもうゾーンが途切れてしまう。

 無拍子の呼吸のタイミング及び、脳の波長が見える分、圧倒的に集中力が必要になる為、少しの物音が立つと波長が見えなくなる。

 

 そして最後に、ゾーンが途切れると、その後の技が安定しない。これに関して言えばゾーンとは脳の波長をベストコンディションに固定すること。それによって本来の自分のペースを展開する事ができ、まるで自分の体ではないように動ける。

 ……その分脳の波長が反動によって上に下にブれているから、体そのものは大した影響は無いのだが、脳のコンディションが最悪に近い。

 

 よって今までの自分の実力以上に体が動かなくなる。しばらくしたら落ち着くものの、これだけのデメリットを抱えてまで使おうとは思えないのが本音。

 

 

 

 ……だが確かに成長させれば強くなる。

 

 いずれ戦うであろう織斑マドカに対する力であることには違いのない事である。

 おまけに"波長"という領域そのものに手を出せたのだ。鍛える技としては十分可能性がある。

 

 とはいえ今のままだとただの自爆、もといロマン技だ。せめて奥の手にするにしても、途切れやすい集中力を何とかせねばなるまい。

 

 よってこの技の方針は3分間限定の覚醒として使う。

 

 そのために技の発動率の上昇及び、集中力の上昇を目指す。これを3年目以降の方針に入れる。

 

 基本的に無拍子並びにゾーンの強化。

 身体能力の上昇は追いつけるため維持する程度でいい。

 篠ノ之関連は慢心しなければ特に問題なく終わる。

 最大の爆弾は取り除いたしな!

 さて、3年目は波乱に満ちるかな?

 

 

 

 え?年単位なのに書くことが少ない?

 

 順調に進むってことは目立った熱烈歓迎も無いってことだぞ。嬉しいんだぞ。

 

 @月f日

 

 勝ったな!素振りしてくる。

 そうとしか言えない3年目。まず篠ノ之関連はもはや問題が無いとしか言えない。

 

 剣道とかしても強くなってるのは良くわかる。

 んで話かける時も色恋沙汰では無くどうやったら強くなるとかそんな剣道絡み。

 少なくとも間違いなく色恋には落ちないだろう。安心した。

 

 それじゃ次。

 無拍子の成功率が9割を超えた。

 ゾーンの練習を並行してやったのが功を奏したのか急激に成功率が跳ね上がった。

 これなら実戦においても切り札になれる技と言える。

 柳韻さんにも褒められたよ。

 

 

 寒気が……

 

 

 

 

 まぁとにかく、無拍子が取り敢えず実戦で役に立てる様になったとだけ覚えておけばいいと思う。

 ゾーンに関して言えば"擬似的"なゾーンを閃いた。

 擬似的なゾーンとはゾーンそのものに入る一歩手前。

 

 脳の波長はベストコンディションとは言えないが、それに近いコンディションで挑める。

 そこから波長があってきて完全なゾーンとなる。

 そしてこの擬似的なゾーン。任意で入れるのだ。

 そう。自分で思いさえすれば任意で発動できる。

 

 あとは自然にゾーンに入るという寸法だ。

 しかもこの擬似的なゾーンから派生させたゾーンは2年目の欠点が無くなっているのだ。

 3分間限定であることは変わらないが、それでも集中力は維持できる。発動についても擬似的なゾーンを経由することで時間が経てば完全なゾーンが出来上がる事。

 暴発が起こらないことぐらいか。

 

 欠点に関して言えば精々完全なゾーンとは違い、波長そのものが見えないことと、完全なゾーンに比べ、身体能力の劇的な変化は見られない事。発動したら解くことができないこと、擬似的なゾーンから完全なゾーンに派生するにはタイムラグが多いぐらいか。

 

 とはいえ、波長が見えなくてもそもそもゾーンを発動させるための布石なのでいらない。

 

 体の劇的な変化がないとはいえ、強化されてることには変わらない。特に反射神経。

 ゾーン状態における身体能力の中で、反射神経は恐ろしいぐらいに成長した。

 篠ノ之の剣さばきがスローモーションの様に感じられる。世界そのものを置いていくかのように反射神経は伸びた。

 

 

 要するに擬似的なゾーン状態を経由する必要はあるものの、ゾーン状態が安定する様になった。

 はっきり言って今の状態でこれは好ましいどころでは無い。

 切り札として十分過ぎる可能性を示してくれた。

 

 いずれ相対するであろう確実な敵、織斑マドカに対する決定打としては最高だ。

 

 取り敢えず3年目はこんな形で終わった。 

 

 

 

 ……まぁ、4年目は波乱にしかならん事は確定している。

 束さんが失踪。及び箒の転校。並びに4年目か5年目で

凰鈴音が入学してくる。

 ……ひと目見ただけでは名前が良く分からないヒドインだ。ファン リンインって言うらしい。

 ほう すずね って読んだ人は俺以外にもいるはず。

 

 ……さて、ぶっちゃけた話、鈴の好感度についてはガン無視でいい。そもそも家柄地雷だらけのISのヒドインとしては珍しく地雷が無いのだ。

 

 はっきり言って付き合うにしろ突き放すにしろさほど影響は無いのだ。

 ただ個人的には絶対好意的に接することにする。

 理由はIS学園に万が一入ってしまった場合の保険。

 

 そもそも鈴がIS学園に入ったのは織斑一夏がいるからであって、好意が少なければ入る理由も無い。

 無いのだが、鈴は刃物を無断に人に向けては危険だと注意している場面はあった。尚現状。

 まぁ要するにヒドインになった要因は織斑一夏の鈍感さ具合が原因だ。

 いくら分かりづらすぎるとはいえ、自分の一世一代の告白を酢豚の奢りと勘違いしてしまうのだ。

 

 そら暴力ヒドインになるわな。

 話を戻そう。

 

 刃物を人に向けては危険だと言う描写はあったのだ。

 

 要するにヒドインルートそのものは最初から回避出来ていたのだ。

 ただ鈍感という暴力行為誘発パッシブに負けてしまっただけで。追撃の貧乳発言が入ってしまっただけで。メイビー。

 

 次に何処かのファースト幼馴染とは違い、どっちを選んでも致命的な、という選択肢が無いのだ。

 そのサバサバした性格も良い。

 

 特に酢豚の告白に関して断ったとしても友達として十分に接してくれるであろう。

 

 性格が性格なので面倒臭く無い。

 

 どころか、刃物云々の話を最初だけとはいえ止めてくれたのだ。

 もしかしたらヒドイン回避のための最適な人材なのかもしれないのだ。

 喧嘩というのは1対1では中々解決しない。

 お互いの主張を見極める仲介がいないからだ。

 だが鈴ならその仲介にピッタリなのではないか…?

 

 2組になるのは確実とはいえ、ヒドインの愚痴を安全に言えるポジションであるのは間違いないのだ。

 実は鈴とは、本来はISヒドインズの中で最も良心的な存在なのだ。

 親友といういいポジション。どっかのファースト幼馴染とはまるで違う性格の良さ。

 家柄的なことに関しても特に面倒な事が無い。

 

 おまけに中国政府そのものはこんなスパイには向いてない鈴をIS学園に送り出したことから、男性IS操縦者に関して言えば特に興味が向いてないことも明らか。

 要するに鈴と恋的な付き合いだろうが友人的な付き合いだろうが問題ないのだ。

 なので好感度が上がりすぎても分かりやすい地雷行動をしなければ問題なくヒドインを回避できると踏んでいる。

 

 むしろ好感度を上げてIS学園に行かせるべき人材なのである。

 よって鈴とは確実に絡む。

 クラスの雰囲気もいいことが幸いしている。

 日本語が慣れてない鈴が来ても、クラスの連中なら優しく接するだろう。

 篠ノ之の暴言回避がいい例だ。

 ISヒドインズの中でも唯一好感度オーバーに踏み切っていいと考えられるのは鈴だけなのだ。

 他は家が抱える問題が大きすぎる。

 

 ……勘違いしないで欲しい。俺はISヒドインズが嫌いなのであってISヒロインズであれば好意的に受け取れる。

 その上で現実的に考えて、家柄及び国柄の問題が少ない鈴がいいと判断した。

 また、ヒドイン回避も簡単過ぎる。というよりも原作開始時点ですでに回避できている状態なのだ。

 鈴とは原作よりも少し低い好感度を最低ラインとして好感度オーバーしてもいいのだ。

 維持し続けるなんて面倒な事を起こさなくてもいい。

 これが優しい世界って奴か…

 

 

 まぁ話を戻そう。

 

 四年目、おそらくは一年目と同様どころか最も暴れる年になる可能性が高い。

 自分の体も成長する。篠ノ之がようやく転校する。

 凰鈴音がやってくる可能性。何よりも……

 

 第一回、モンドグロッソの開幕だ。

 

 p月^日

 

 モンドグロッソの告知は前々からされていた。

 というのもアラスカ条約ってのがあって、簡単に言えば

ISを軍事利用するのは謎(現存兵器が鉄くずになる)が多すぎて禁止よ。

スポーツとかそう言う範囲でなら許してあげよう(データを取りながら)。後日本、お前の国IS多すぎるよな?持ってるだろ?いけないなぁ、こういうのは…。みんな平等に…ね?(制裁する準備をしながら)

 

 とかっていう条約。

 一応世界中のISの数は467機、そのうち322機が実戦配備、

 145機が国家間や専用の企業で共有される。

 それが研究機や専用機として改造されるんだっけ?

 

 んでその332機が量産機、残る145機の中からさらに研究機を抜いた数、それが専用機となるわけだ。

 まぁそれが現時点でのIS事情なのだ。

 おまけにこのモンドグロッソというのは、重大な意味を持つ。

 

 まずISとはスポーツであるという世界中へのアピール。

 特に今回は兵器を扱うのは危険だと言う声を無理やり押し切っての第一回開催だ。

 成功させねば意味がない。

 

 次に自国の選手、及び自国の技術力のアピール。

 そして"IS"の所有権の確保…だ。

 

 考えても見ろ。スポーツとはいえISにおいて自国がナンバ−ワンの成績を残したらどうなる。

 ISの配分が偏り、逆に結果を出せなかった国がISを没収される。

 何よりも謎に包まれたISが研究者達に触れられる機会が増えるのだ。

 各国は当然、死に物狂いで人材育成、そして自国の自由に取り回せるISを、国全体がバックアップになり、企業が命懸けでISに技術を押し込める。

 

 モンドグロッソとは、国にとっても最重要の案件なのだ。

 そのために山田先生…もとい山田選手は自分を代表候補止まりだと称しているが、

 実際は国も企業も命懸けだったので求める人材のハードルが上がりすぎただけなのだ。

 そしてそんなハードルを当たり前のようにもっと高く飛べる姉。

 本来の実力であればハードルを飛び越えられるが、緊張しすぎて飛べなくなる山田選手。

 

 どちらを取るかは明白だ。

 ……あえて言うなら時代が悪い。

 

 山田選手は実際緊張さえなければこの高すぎたハードルでの国家代表にすらなれた人材だ。

 原作開始時点では実戦配備よりも研究及び専用機が配備される割合のほうが多い。

 これは、後に専用機持ちが万が一大きなテロや、隕石が迫る事態となったときに対応するという政策をつくったからである。

 その結果、第二世代機と第三世代機には大きな差が広がることになる。

 

 その頃には国家代表及び代表候補生の定員を増やすことに繋がるからである。

 その頃だったらあるいは、国家代表候補として名を馳せたかもしれない…

 

 まぁ、それは置いといて。

 

 ということで姉さんが家から度々いなくなることがあった。

 ちなみに姉さんが選手になるとともに生活の支援が届けられた。(゚д゚)ウマー

 

 ……なにせ今の環境は姉さんが日本の希望だからだ。

 比喩でもなくまじ。

 ISを多く配分されるにはこのモンドグロッソで結果を残さなくてはならない。

 そのために姉さんに対して日本政府はバックアップを怠らないのだ。

 ……そしてそのモンドグロッソが開幕するのは今日なのだ。

 

 この時に篠ノ之はすでに転校している。

 

 取り敢えず転校するときにクラスでお別れ会的なパーティーをした。

 友達も多くなったからだろう。篠ノ之が車に乗るところまでみんな手を振っていた。

 ……これで面倒くさいヒドイン1は回避できたかな…。

 そんな心境で最後を見守っていた。

 

 

 

 ………道場も取り潰しになった。

 

 思う事が無いわけではない。何だかんだ言って四年間通い続けたのだ。

 この地区は後に開校されるであろうIS学園に近い地区だ。

 よってこの道場の土地はIS企業の子会社…ということになるのだ。

 ……別に反対はしない。薄々そうなるだろうなという予感はあった。

 俺は最後の道場に礼をして帰った。

 

 

 

 

 

 モンドグロッソの結果?

 

 窮鼠猫を噛むとは言ったものだが虎には噛めんわな。

 予想通り姉さんの圧倒的な優勝。

 選手以上に開発企業が喜んでら。

 あ、姉さんがこっち見た。

 

 一夏スマイル!(反射)

 

 あ、すぐに目をそらした。だけどその顔、嬉しそうですね。

 

 

 

 取り敢えず第一回モンドグロッソは終わった。

 

 これが4年目の出来事である。あまり波乱の展開にはなり得なかったな。




セカン党大勝利(それでもタグはヒロイン未定)


鈴のシーンあってるかわからん。てか調べても出て来んので朧気ながら覚えていることでカバーしたけど…
間違いがあれば指摘してください。
実際ISってどうなんですかね?
数とか足りてるのかなって。
今回の知恵に関してもwikiさん丸パクリしただけというか…

教えて、偉い人!
良かったら感想お願いします。


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織斑日記!四!

評価に色が付く→フア?→空っぽの頭を叩いて夢ではないことを確信。ファアアアアアー!(発狂)
まじで嬉しいです。本当にありがとうございます!

本編、どうぞ。


 @月$日

 

 とりあえずモンドグロッソが終わった。4年目はとりあえず鈴は来なかったとだけ言っておく。

 体が成長してきた。どうやら俺の身長の伸び方は悟空タイプだった。

 とある期間で急激に伸びるタイプなのだ。

 小学生1〜3年のときは前から数えて3〜4番目くらいの身長だったのだが、今は後ろから数えた方が早いだろう。

 正直自分で鏡を見て伸び過ぎだと思ったぐらい。

 

 五反田にお前、身長伸びすぎだろ…とか言われて気がついた。成長の記録っていう小学生独特の奴があって、それを見てみると、この一年間で11cm伸びててわろえない。

 

 当然体を限界まで鍛え上げた。

 

 今度は逆に技の精度を落とさない程度にやってから体を限界まで鍛えた。

 重りも前より大きくした。とはいえ市販のリストバンド式の奴だと1kg〜2㎏が大半。重い奴でも10㎏くらいしかない。

 仕方がなく重いリストバンド式のやつを4つぐらい買った。店員から心配されたが普通に持ってるところを見て呆然としてた。

 まぁ無理もない。

 

 身長が伸びたとはいえ精々小5〜6くらいにしか見えないのだ。

 そんなガキが合計40㎏のリストバンドが入った箱を軽々と持ち上げるのを見たらそうなる。

 

 ちなみに俺が普段つけているリストバンドは5㎏。新しいリストバンドの重りが買えてホクホクである。

 

 

 ……勘違いしないで欲しいが、うちは貧乏ではない。

 というのも選手として姉さんが稼いだお金があるのだ。姉さんはバイトと言っているのだが、実際は選手としての訓練だろう。

 

 話を戻そう。

 

 んでこのお金。めっちゃあるのだ。モンドグロッソで優勝したこともあり、まぁお金があり余っているのだ。

 とはいえ今までの貧乏性が付いたのかあまりお金を使えない。

 お小遣いがそれでも3〜4万ぐらいまだ残っているのだ。まぁお年玉を全然使わなかったってのもあるけどね。

 

 ともかく、今日からは新しいリストバンドだ。

 このリストバンド買って何をするのかと言えば素振りだ。

 

 実は今まで素振りはしていたのだ。一日1000回の素振りをノルマに色々していたのだ。

 このノルマを引き上げる。一日15000回に。

 なのでワンセット1500回。

 とりあえず春休みはこればっかりしておこう。

 

 

 

 k月*日

 

 

 久しぶりに限界まで疲れた。ノルマは15000回なのだが、ノルマを30000回まで増やせる事が分かった。

 ワンセット3000回。休憩挟んで4時間ちょいで終わる。

 

 これちゃんと平日もやってるからな。

 だから学校は4時に終わる。帰宅するのに10分。

 そこから15000回までやる。すると時刻が6時に!

 ここらへんで休憩がてら夜飯だ。俺が作ってる。

 ……のはいいのだが、どうやら料理の才能は与えてくれなかったようだ。

 一夏くんの補正が入ってまだマシにはなっているものの出来に関して言えば"男飯"とだけ…

 6時30分頃に姉が帰宅する。

 

 その作った飯を姉と二人で食べる。おしゃべりしながらテレビを見て、ごちそうさまをする。

 食器洗いに洗濯、風呂掃除、全て俺がやる。重りをつけながら。

 俺は閃いたのだ。日々の家事は筋トレだと。

 腰を使うやつだってある。主婦達はこれをきついと言う。

 やってみると疲れはしないがかなりめんどい。ただ幸いな事は、姉と俺の二人分しか居なくて洗濯物が少ない。

 というよりそこまで負担にはならなかった。

 

 そら二人しかいないからか。

 

 7時30分に全部終わった。

 7時40分に俺が風呂に入る。

 

 まぁこれがめっちゃ癒やされるのよ。ここで自分の筋肉とかいろいろほぐすときとかすっきりする。

 

 7時55分に再開。

 そこから15000回の素振り。9時55分に終わる。

 ここでノルマを達成。五分だけ休憩して歯磨きをする。

 そして10時10分頃に床に付く。これが俺の一日だ。

 

 え?遊び?んなもん筋トレでしょ? 

 ……何か目的と手段が入れ替わってるとは違うが、ワーカーホリックのような何かを感じる。

 

 ……まぁ良いや。一応寝る前に新聞とか見てるのよ。

 5時に起床。この時に技の精度を落とさない程度に鍛える。

 大体1時間で終わる。5時半に1時間のマラソン。

 殆ど全力疾走に近い走りで21キロを走る。

 

 ……そう。21キロだ。

 

 このタイムを出すために走る一分当たりの距離は350メートル。

 それを30分維持し続ける。

 

 ……普通なら体に規制がかかる。そもそもそんなペースで走れるわけが無いと思うじゃん?

 実際一秒当たり5.5mの速さで走る必要がある。

 

 …だができてしまう。

 俺が全速力で走った時は50m5秒。

 

 一秒当たり大体10mだ。ならこの半分ちょいくらいはできるだろう…?

 

 できてしまった。

 ほぼ全速力を意識しながら42キロのフルマラソン。

 できてしまった。

 これが体に効く。新しく買ったリストバンドも中々のもの。汗をかきながら家に帰宅。

 

 シャワーを5分間浴びる。

 6時10分に明かりを付け、テレビを見ながら料理を作る。テレビの内容は大体IS関連にモンドグロッソでの姉さんの活躍。

 さらに姉さんのIS…暮桜を扱った企業 倉持企業の研究員が取材に応じてら。

 

 …へー、ISってこんな仕組みになってたんか。

 

 一応勉強に関して言えば暇があればISの資料集とかを読み漁っている。IS学園自体は家の姉がモンドグロッソ優勝した記念に、第一号のIS学園として世界中から建設金として寄付が来るようだ。

 建てられるのは1年後だったかな?予想以上に寄付金が来て、さらにボランティアの人が多くきて早く建つことになるんだと。

 実際IS学園自体の構想は世界中であったらしいけど、世界中の実戦整備のISの方からISを出すのが問題で、代表候補育成に使うISを手放したくないってのが現状でね。

 それでIS学園が出来んかったらしい。

 

 それで決定打になったのが日本開催の第一回モンドグロッソでの圧倒的な差を見せつけての優勝をした日本国家代表生…姉さんの存在だ。

 それで仕方なく渋々という形でISを貸し出すという形に落ち着いた。

 そのIS学園が一年後に建てられる。

 

 このニュースを見て改めてインフィニット・ストラトスの世界を実感した。

 ……そして俺が入学する予定の学園だ。

 

 

 本来なら何とか足掻いてでも入学を阻止するところなのだが、織斑マドカの存在がそれを許さない。

 

 具体的な理由を書こう。

 

 まずIS学園に通わない選択肢。 これは最初に選ぼうとしていたルートだ。そのまま隠居して目立たない生活をして織斑マドカを回避しようとしていたルートだ。

 …だがこのルートは没になった。

 理由は第二回モンドグロッソの時。

 

 原作で織斑一夏が亡国機業の手により誘拐された。

 つまりはこの時点ですでに織斑一夏の顔は亡国機業にバレていた。

 第一回の時に顔でも見られたか…?

 その疑惑が出てきた。誰が亡国機業の人間か疑ってしまうが、まぁいい。

 おそらくは第一回モンドグロッソの時点でもう顔バレしているのだ。

 ……やろうと思えば第一回モンドグロッソの時でも出来たはずだ。何故しなかったのか…?

 

 

 

 ともかく亡国機業にはもう顔がバレている。織斑マドカはおそらく見つけ出して来るであろう事は間違いない。

 ……ISの本来の実力が活かせない狭い通路だったとはいえ、ISに勝てる身体能力。

 おまけにISそのものを持っていて、しかも暫定で国家代表未満代表候補生以上の実力者が2人バックについているのだ。それ相手にISの専用機も無しで挑む…?冗談じゃない。ならせめて居場所はバレるだろうがセキュリティも安全で厳重なIS学園に入る方がましだ。

 それなら代表候補生の数の暴力で何とか出来る。

 

 よって非常に嫌だがIS学園に入る。女だけとか何の嫌がらせだよほんと。

 いずれ来るであろう絶対チョロQコロネにあざといの代名詞、そしてとある事情で第二回モンドグロッソで誘拐されに行く為、国が真っ黒系軍人も参戦である。

 さらに暗部系めんどくさい姉妹二人に下僕になれ系束さんバック付きのプリンセス(ガチ)。

 

 ……どれも家柄アウト、性格もめんどくさい。

 

 

 ……辛い。

 暫定味方の鈴、助けてくれ…。

 

 

 そう思いながら死んだ目で料理を淡々と進めていく。

 6時50分に料理を並べ終わる。千冬姉が起きてきた。

 おはようと言っておはようと返して来た。

 そのままテーブルの席についていただきますと言った。

 これが俺の一日である。

 

 書いた意味は特にない。

 

 

 $月"日

 

 とりあえず鈴が転入してきてから2年が経過した。

 

 え?話が飛躍しすぎ…? 

 順調だとほんとに特に無いんだよ、書くこと。

 とりあえず鈴との仲は親友!とだけ言っておく。

 

 身長も伸びた。2年間で21cm伸びた。……伸び過ぎだ。

 というのも小学生6年の男子の平均身長は大体155~157cmなのだ。

 そして俺の身長。小学生3年生の時は135cmなのが、この3年間で32cm、つまりは167cmなのだ。今の身長。

 

 ……大人にしか見えない。

 この身長、大体中学2年生の平均身長とほぼ同じなのだ。小6で。

 尚、鈴の身長は145cm。…小6でだ。

 小学生6年生の女子の平均身長は153〜155cm。

 ちなみに原作の鈴の身長は150cmだ…。

 

 ………うん。未来が無いね…。

 そんな俺達の身長差は22cm。そんな俺達に弾と数馬はやんちゃなガキと苦労している保護者と称した。

 

 鈴はキレる。

 弾と数馬は逃げた。

 俺は追いかける。

 そして鈴をなだめる。

 

 その姿を見てやっぱりガキと保護者だと笑う。

 そして鈴が追いかける。

 弾と数馬は逃げる。

 俺はまた追いかける。

 

 これがいつもの日常だ。

 

 とりあえず体が大幅に成長した事によって1年目以来の筋力の成長を感じる。

 毎日素振りブンブンしてるが、今はノルマ50000回に増えた。

 ワンセット5000回で休憩10分。それで4年目の生活のペースを維持する。よって素振りブンブンする時には恐ろしく速い振りを維持する事が重要になる。

 一振り1秒だとしてもワンセットで83分、休憩含めて93分かかる。

 よって1秒当たりの振りを二回に。41分30秒に、休憩含めて51分30秒。

 

 まだ足りない。

 一秒当たりの振りを三回に。27分ぐらいに短縮。休憩含めて37分ぐらいに。

 

 ……それでも微妙に届かない。

 一秒当たりの振りを三回半に。23分40秒ぐらいに短縮。休憩時間含めて33分40秒くらい。

 ……そう。一秒間に三回半の素振りを23分40秒維持し続けるというノルマになった。

 

 この案なら最後の10分の休憩を潰すことで多少寝る時間は遅くなるが、大まかスケジュール通りに近い。

 誤差のようなものだろう。

 

 このノルマを6年生になった時に毎日行っていた。

 たまに鈴や弾と数馬のところに遊びに行ったりする時はゾーンの練習をしている。

 

 その結果とは言っていいのか。

 波長の空白に剣を打ち込める様になった。

 隙とも言えない隙。人外同士の相手にしかわからない隙。

 ISのハイパーセンサーなら何とか見えるであろうその速さ故の危険度。

 もはやISの代表候補程度なら場合によって生身で勝てるようになってしまったのだ。

 

 それでも姉さんには身体能力で劣る。

 織斑マドカとの戦闘でもおそらくは負けるだろう。

 戦闘経験が少ないのだ。全力の戦闘経験が。

 基本技を使う時はシャドーボクシングの要領で、相手のシャドーをゾーン状態で再現する。

 

 その為、無拍子のタイミングもある程度自分で分かってしまう。

 だからこそフラッシュ式の奴を採用した。

 ……話を戻そう。とにかく実戦での本気が出せる。尚かつメリットにもなるイベントがあるのだ。

 

 ………命懸けだけどな。

 それは来年から始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 $月!日

 

 中学1年。俺は予想通り鈴と同じクラスだった。

 鈴の好感度上げは問題が無い。むしろこのままで良い。技、及び身体能力の上昇もいい感じに仕上がって来ている。

 

 ……さて、俺が今いるところはドイツだ。

 もっと言うならモンドグロッソの会場だ。

 第2回モンドグロッソ。俺はここであえて誘拐されに行く。

 ……誘拐犯は複数人。見張りが何人かいる。

 何よりも肝心なことだが、相手はIS乗りだ。

 

 IS乗りとは言っても所詮織斑千冬を超えたいとかそこらへんの志を持っても代表候補止まりで泣く泣く引退。

 それどころか今の女尊男卑思考が災いし、放漫に振る舞うことしか出来ない実力しか持っていない様な奴だと分かっている。

 何故わかるのかって?織斑千冬の圧倒的な優勝を見て代表候補とかは絶望する訳よ。

 それでも別の分野で頑張っている人もいる。

 

 ……話を戻そう。

 

 このモンドグロッソ開幕までの間で引退した国家代表もとい、代表候補生は結構多かったが、大体は打倒織斑千冬を掲げている。

 その中で日本の中に現在行方が確認されていない代表候補生がいるんだよ。

 

 そして姿を消したのは第一回モンドグロッソ終了時だ。

 当然ISは回収されたものの、相手は亡国機業だ。

 

 おそらくはドイツとも手を組んでいる。

 原作を知っているからこその推測だが、自分のホームグラウンドでのモンドグロッソ。

 当然自分達のアピールが多く回ってくるのだ。

 そんな千載一遇のチャンスを織斑千冬というバグで台無しとなる。

 

 だからこそドイツは織斑千冬を失脚させたいと考える。

 そんなドイツの思惑を知っているのだろう。そこで持ちかけられたのが誘拐作戦。

 

 ……とはいえ、ドイツ全てがそう思っている訳ではない。

 むしろ織斑千冬の強さに触れて世界中からファンがいるのだ。

 織斑千冬を好意的に受け取る人の方が大きいだろう。

 

 ……それが面白く無いと思う奴もいる。

 その一部に、今回の作戦を持ちかけ、対価としてISを貰ったのだろう。ドイツにISを出させるなんて亡国はどんな交渉術をしたんだ…?

 

 そして、その結果は双方の尻尾切りだ。

 

 亡国機業としては織斑一夏を本基地まで回収出来たなら良いや程度に、それが駄目でも織斑千冬を失脚させることが出来ると踏んでいる。

 一部のドイツはこの情報を日本政府に伝えず、ドイツの諜報に伝え、そこからの経由で織斑一夏がいるとされる基地に襲撃する。

 そして織斑千冬にドイツは恩を売れる。そのついでに日本政府に対して信用を失えば万々歳ってところか。おまけに織斑千冬を失脚させることが出来る。

 

 と、こんな感じか。

 話を戻そう。

 

 でだ。重要なのは相手がISを持っていること。

 よってここであのISに生身で勝つのが最重要。

 当然誘拐された振りをしながら…ね。

 俺の目的はそのISの回収だ。

 IS学園に万が一通わなくても良いルート。

 

 その構築をするためにはここでISを回収するしか無いのだ。これが失敗に終わればIS学園に入るしかないのだ。それにたかが代表候補生の一人如き生身で勝てなければ織斑マドカに殺されるのが積の山…だ。

 

 遅かれ早かれと言うやつだ。

 だからこそ腕試しの実戦にも良い。

 最後にもう一つ。

 

 万が一IS学園に入ったときの亡国機業に対する抑止力としてラウラ・ボーデヴィッヒ。ラウラは原作ではIS学園の1年生の中で最強との情報があった。

 実際ドイツの科学力と使用者のセンスが相まって強いと確信できるものだ。

 

 それと姉さんをIS学園に入れる必要がある。

 姉さんは引退するとはいえ、原作が始まってからも必ず必要になる人材で、唯一束さんの抑止力になり得る存在だ。

 ……そして束さんとはおそらくは敵対する。

 

 その為にモンドグロッソの選手を続けてもらっては困る。束さんの攻略の為には姉さんは必要不可欠だ。

 

 話がそれたな。

 

 とにかく俺は今回誘拐されなければいけない。

 ……想定する状況よりも酷かったならばおとなしくしよう。

 

 

 

 さあ、波乱のモンドグロッソの開幕だ。

 

 




う〜ん、第二回モンドグロッソの誘拐される理由が曖昧過ぎる。


…そこらへんは勘弁して下さい…。

ていうか色々ガバガバ過ぎなのは許して…許して…


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死闘

今回、戦闘シーンだけです。


 ―――その女は、生まれついてからの天才だった。

 

 基本的に何でも出来た。他人が苦労することもすまし顔でそつなくこなせる。

 それ故に努力を怠った。鍛えることを辞めた。

 それよりも名声を。ちやほやされる事に最高の喜びを得てしまった。

 もはや努力なんてしなくても何でも出来る。

 努力なんて無駄な行為だ。他のIS操縦者が汗水垂らすのに対して、私はそれを馬鹿馬鹿しく思っている。

 私はお前らとは違うんだよ。

 才能の無いやつが何をしても無駄なんだよ。

 

 私は代表候補生だが、世間は実質上国家代表だと判断している。

 正直ISなんてどうでも良かった。モンドグロッソなんて私の名声を高めるための舞台装置に過ぎない。

 私が手を振るたび歓声が湧き上がる。…これだよ!これ!

 日本中の奴が私に媚びる。期待する!

 

 私はこの瞬間、確かに絶頂を感じていた。

 

 

 ―――織斑千冬が現れるまでは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何時の模擬戦だったか。私と織斑千冬は模擬戦をすることになった。

 私はニッコリと形式上の挨拶をした。相手は無愛想だ。

 ―――馬鹿馬鹿しい。

 

 どうせ私に負けるのだ。

 

 ならいっそのこと光栄ですとか言えないものなのかねぇ…。

 どうせ何時ものように勝つ。こんな無愛想なのだ。私の為に無様に負けろ。

 お前の様な華のないモブは私の為に踏み台になるのがお似合いなんだよ…!

 さて、…試合が始まるな…!どう無様にいじめるか…!楽しみだなあ。

 

 

 

 

 結論から言えば、私は負けた。

 

 何度も銃で撃つ。剣で対抗しようとする。避けようとした。

 だかあいつは弾丸を"当たり前"かの様に剣で全て弾きながら瞬時加速をした。

 咄嗟に出した剣で対抗しようとした。剣そのものを上から叩き斬られた。避けようとした。

 だが剣戟が速すぎた。

 

 恐ろしく速い光。恐ろしく重い斧。恐ろしく強い横薙。

 私はまるで対応出来なかった。

 

 そして私は地面を舐めさせられた。

 生まれてから初めてだった。

 私がいるのに他人が喝采を受けるなんて。

 私に地面を舐めさせられた屈辱が…

 

 何よりも…

 

 私を辱めて尚…他人の喝采を受けてなお嬉しそうにしないあいつが…

 居てはいけない。

 

 私のいたポジションがモブに取られる。

 

 ちやほやされる筈の私の立場が!あの無愛想女に取られる…!

 イライラする。それから私は荒れた。

 暴言を吐いた。ムカつくからありがたく凡人に教えてやった。お前と私は釣り合わね〜んだよと。

 

 日本政府に私の待遇の文句を言いつけた。

 私に専用機を送れと脅してやった。

 そんなことをしていたら、代表候補生の中の底辺に落ちた。

 このモンドグロッソが終わったら降格されると。

 国を代表する候補生に相応しくない言動、暴言に飽きられてしまったのだろう。

 ネット上も人って簡単に落ちぶれるんだねとかそんな声。そうして私が罵っていた凡人の奴が代表候補生になり上がった。

 私とあの無愛想女との間は広がり続ける。

 

 あの無愛想女が名声を手に入れて、私の元には何も無くなった。

 ……許せない…!

 こんなことがあって良いはずが無い。

 私は天才なんだよ…!お前とは違うんだよ!

 たかがモブ風情が私の道を阻むな!

 私が渡るはずだった栄光の道を奪うな!

 

 

 そう思った。

 

 あのモンドグロッソ。私はあの女が無様に負ける様を見たくてここまで来た。

 もう日本政府とは縁を切った。奴らには私の才能が分からないのだ。

 

 だがあの女はモンドグロッソで圧倒的な優勝をした。

 日本中が喝采を挙げる。

 私じゃなくてあいつに。あそこには私がいるべきだ。

 なんでなんであいつが……

 

 

 その矢先に亡国機業の勧誘だ。

 もう私は名声なんてどうでも良かった。ただあの女が私と同じ目にあえばいい。

 私と同じ様にどん底に落ちれば良い。

 

 

 

 「何だ!何なんだよ!お前!」 

 

 今私は一人の男に追い詰められた。

 名前は織斑一夏。誘拐して織斑千冬をモンドグロッソで途中敗退させるという計画だ。

 だか途中敗退させてからは織斑一夏の安否は指示されていない。

 よって私は織斑千冬の目の前で愛する弟を殺そうとした。

 ……したのだ。

 

「………」

 

 今私はその織斑一夏に追い詰められている。周りにいた男どもは気絶している。

 ISを起動しても勝てない。

 銃を男に向かって乱射する。

 スラスターを起動させ、IS用の大型アサルトライフルを男に向かって乱射する。

 大型の剣を振るう。避けられない速さの筈。

 加えてこのISのスラスターを起動させて加速であの男を押し潰そうとした。

 

 

 だが銃は避けられかすり傷程度。

 剣はむしろカウンターされて叩き落とされた。

 全身を砕こうとしたら急に背後に立たれて切り落とされた。

 

「何なんだよ!お前達は!私の邪魔ばかりで!」

 

 激高しながら銃を乱射する。しかし。

 急接近された。銃も叩き落とされた。顔を、奪い取られた剣で殴られた。

 体制を崩した。そのままシールドエネルギーがなくなるまで殴られて…

 

「お前達一家は!私の道を汚した!織斑千冬なんて!なんにも華のない無愛想な人間なんだ!」

「………」

「何なんだよ!私は天才なんだぞ!お前達凡人とは何もかも違うんだぞ!」

「そうか」

 

 首を締められた。

 

「がぁ…ああが……ああ…ぐぅ…」

「恨むなら自分の人生を恨みな。」

 

 そう言う少年の顔は無表情。試合が終わったあとのあいつもこんな顔だッタ!

 

 フザケルナ!こんなコトアッテイイハズガナイ!

 私がイルベキ席にアイツガイる!

 コンナことあっていいハズがナイ!

 私は!コンナトコロで死んでいい人材ジャない!

 

 ――――力を求めますか?

 

 私は!アイツとは違う!

 

 ―――力を求めますか?

 

 私はあの無愛想な奴の絶望した顔を見なければ納得できない!

 

 ―――力を求めますか?

 

 よこせ!そのすべてを!織斑千冬を絶望させる力を!

 

 

 ―――VTシステム起動――

 

 

「……ん?」

 

 それは違和感だった。誘拐されて、ISに乗りながら大層に語ってくる代表候補もどき。俺はそれを生身でボコボコにしている。

 

 というのも姉さん、及び育成の選手に暴言を吐いたってことで代表候補を取り下げになったらしい。

 一時期は国家代表入り確実と言われた程の腕だったので警戒したのだが…

 一言でいうなら落ちぶれたな。

 

 ……とはいえそれでも代表候補か。

 銃弾がかする。剣が鋭い。ヒステリックだが咄嗟の判断力は高い。

 それ故に努力をしていればあるいは、とは思ってしまう。

 

 だからこそ。

 

 剣を叩き潰し。銃を切り捨て。ISに宙へ飛び立たれる前にスラスターを叩き落とす。ヒステリックに歪んだ顔を殴り、SEを大きく削る。

 

 SEが大きく削れる要因として、絶対防御を発動せざるを得ない場所を殴る。

 SEが発動している限りは絶対防御は発動しない。なのでSEでしか守れない…尚かつ衝撃で脳震盪まで狙える頭部を殺傷武器で殴る。

 するとダイレクトにSEが削れるのだ。

 そうしてSEがなくなり絶対防御を発動せざるを得ない場面にして首を締める。

 

 絶対防御とは薄い膜の様なものだ。これはISが持つ基本性能の皮膚防御と併用して発動している為である。

 ……だがその膜はあくまでも操縦士を最低限守るための機能であり、操縦士の意識までは問われない。

 要するに殺さない程度ならダイレクトに通るのだ。意識を奪う為の手段が。

 

 そのためSEが発動しているISよりも遥かに薄い防御の上から全力で首を締める。

 ……どうやら成功したみたいだ。ダイレクトに首を締められる。

 

「恨むなら自分の人生を恨みな。」

 

 そう言って首を締める力を上げる。

 今の俺の握力は80㎏。それを両手でしっかりと首を締める。

 ……だが…何か違和感を感じる。

 この身体の第六感が告げている。嫌な汗が垂れる。不意にISが軋みを上げて動き出した…!

 

「しまっ」

 

 気づいたときには蹴られた。

 

がは!ゴホ、けホ。」

 服が破れてその下から皮膚が破れる。血が漏れるのを破れた服を巻いて処置する。

 

 内臓が少し逝ったか?アバラも何本か折れてる。

 

 血が混じった咳をしながら冷静に分析する。

 ―――血の匂い。硝煙の香り。目は少しぼやける。頬を叩いて意識をはっきりさせる。

 口は鉄の味がする。吐き出す。聞こえるのは軋みを上げる重厚な機械の音。軋みを上げる自分の体を奮い立たせる。

 俺はあの泥人形を何とかする。

 落ち着いて擬似的なゾーン状態に入る。

 

 

 改めて目の前のISを見てみる。

 それはうちの姉さんの形をした泥だ。

 

 まるで似ても似つかぬ泥人形。確か、それは歴代モンドグロッソ総合部門に置ける最優秀賞ーーーーーーブリュンヒルデのデータを再現するために作られた機能。

 だが操縦士にかかる負担が大きすぎると条約で禁止になったそれは……

 

 

「VTシステム…か、ドイツも抜け目のない…!」

 

 黒い泥人形は重い音を立て起き上がる。スラスターを大きく動かすと、何の前触れもなく目の前の男に突っ込む。

 

「はやっ…!」

 

 すんでの所で回避する。男は顔の頬を少し切った。男の頬に嫌な汗が流れる。

 

 (予想以上に早い!反射神経と相まって何とか避けれるけど……これじゃジリ貧だ…!)

 

 頬に流れる血を舐め取り、口から溢れる血を吐きながら後ろにいるISを見据える。

 次にそのISは振り返り、大型の剣を振るった。

 

「ぐう…!」

 

 重い。速い。鋭い。足がふんばれない…!血が漏れる。意識が風前の灯火の様に消えかかる。匂いが消えて、手から手応えが消えかかる。だが…

 

「なめんな!」

 

 男はそれを咄嗟の判断で切り返し、持っていた剣を今持てる全力で突き抜こうとした。 

 だが…

 

 

 

「ッ!」

 

 何の手応えもなく、ゴムを殴っている感覚に襲われる。腕が反動で後ろに振れて、剣を手放してしまう。剣を落としてしまった時の音で身体が再起動する。

 全身から力が抜ける。ふらついて身体が倒れようとする。一瞬止まった血が再度流れ、口から溢れ落ちる。

 目はぼやけ、鼻は鉄の匂いを嗅ぐ。

 その動揺を見逃さなかったのだろう。黒い泥人形は醜悪な嗤いを見せ、蹴りを入れる。

 

「やばっ!」

 

 咄嗟に左腕を身体の全面に押し出す。

 

 だがそれでもISのフルパワーを軽減するには、あまりにも弱すぎた。

 そのまま血を流しながら、全身を打ちのめされる。その勢いで柱まで身体が持っていかれる。

 

「がはっ!」

 

 その柱の表面に少しのクレーターができ、身体が崩れる。

 

 (左腕は使い物にならねえ…。内臓は何とか無事だが、立ち上がれねえ…!だけどゾーンは維持できてる。)

 

 左腕は完全にズタズタになり、血が流れ続ける。意識も朦朧としながらも目の前のISを見据える。アバラも折れ、ぐったりと倒れながらも思考を止めない。

 

 (原作の知識は当てにならない。VTシステムの欠点は…?)

 ゆっくりとこっちへ近づいている泥人形に、違和感を感じた。それは醜悪に嗤いながらこっちに近づいて来る。

 (何故すぐに殺さない…?スラスターの燃料が切れたわけでは…!)

 

 一夏は気づいた。あれは嘲笑っているのだと。普通なら油断している。そこに何も意味は無いと判断するが、

 

 (そうか、VTシステムは持ち主の願望が主になっている。波長もぶれている。…もしかしたら…!)

 

 一夏はこの状況を打開する方法を思いついた。ただそれは余りの無謀。

 

 (失敗したら死ぬ。)

 

 冷汗が流れる。一瞬走馬灯の様なものが流れ始めた。意識はもはや混濁していて目の前が見えない。

 "死"という現実は、もう目の前にある。

 

 ―――そんなことは解ってる。だがやらないよりは遥かにましだ。

 それに遅かれ早かれこれから先の敵に殺されるかの違いだ。なら…

 

 

「やるしかない…!」

 

 血に濡れた少年は決意した。目は真っ直ぐとISを刺していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 泥人形が近づいてくる。

 その時の泥人形の顔はひどく歪んでいた…。

 

「おい…偽物。」

 

 少年がそう言うと挑発に乗ったのかぐったりと倒れている俺の体を踏みつけた。

 それだけで身体が軋みをあげる。少年から漏れ出る苦悶の声にまた嗤いながら踏みつける力をゆっくりとあげる。

 

「がはっ…おま、えなんぞ、…がはっ!」

 

 踏む力が更に強くなる。しかし少年の目にまるで気に入らないかの様に醜悪な仮面を歪めながら踏みつける。

 

「おま、えなんぞよりも、なあ゛、うちの姉さんの、ほう、がすぐ、れて、る!」

 

 踏む力がもっと強くなる。よりにも寄って自分以外の誰かを褒めるなんて許されない。許さない。

 私は。私は。織斑千冬(エリート)だ。

 

 ……違和感を感じる。無性にイライラする。自分の身体が溶け始める。それでも構わず憎いこの男の身体を踏みつける。

 

 「おま、えなん、て、誰も、

 

   求めて、いな、いんだよ…。

 

 決意に満ちた少年の絶え絶えの一言が。泥人形に空洞を空ける。

 

 その時泥人形は混乱した。

 私が…?いらない存在…?

 織斑千冬がいる存在で私はいらない…? 

 

 嘘だウソダウソだウソ嘘嘘ウソうそ嘘ウソ嘘ウソ嘘ウソ、………………?

 

 ―――がああアアアアァ!アアァ!

 

 音無き声が響き渡る。それはまるで現実を受け止められない子供のように。苦しむ。泥が溶け始める。

 見ている景色が歪む。自分の理想の世界が壊れる。自分の理想が現実に壊される。 

 甘い香りが硝煙の香りに戻される。自分の見ていた理想が。現実に置き換わる。 

 快楽すら思わせる音が。消えかかる。

 

 「Time out」  

 

 無機質の機械が自分の終わりを告げる。

 自分の全てにひびが入る。 

 動揺して踏みつけが緩み、少年を解き放ってしまう。

 

今だ!

 

 少年は根性で足を踏み込んで、自分の腰に仕込んでおいた小木刀を咄嗟に持って波長の乱れている箇所…

 心臓に当たるところを突き刺した。

 全身がアドレナリンを噴出させる。何も考えられなくなった。ただそこに行き着く過程に、軋みを感じる余裕がなくなる。

 世界が遅く感じて、周りが浮かぶ。

  

 ただそこに小木刀を突き刺した。

 

「がぁあああああ!ああああああああ!」

 

 泥人形は理性を失い、暴れだす。

 暴れだしたときに少年は、抵抗することもなく吹き飛ばされた。

 時間が経ち、少年が目を見開くと泥人形が崩れ去っていく。

 泥のようなVTシステムが解かれる。

 中にいた奴は苦悶の顔を浮かべながら意識を失っている。

 

「……終わっ…たか」  

 

 身体が軋みを上げて崩れ落ちる。全身に痛みが走る。目の前はすっきりしたものの、口は血と土が混じった味がした。

 ―――ふと誘拐された目的を思い出した。

 ISは待機形態になっている。

 

「……とら、なくちゃ」

 

 休みたがる体を無理やり引きずる。

 左腕から血がとめどなく溢れる。

 口から血が止まらない。

 身体から滝のように血が流れる。

 眠気が襲いかかる

 

 それでもそれを取る。

 俺はそれを取って…!

 

「がぁあ!あッッッグあ゛あ゛あ!」

 

 頭が痛い!まるで脳に何かを植え付けるかのように。

 

 『―――を受け止めろ』

 『―――を否定するな』

 『―――を捨てるな』

 

 俺は咄嗟にISを解き放った!

 ……頭の痛みは収まった。

 ISを何とか展開して頭の痛みを抑えられた。

 そのままISを待機形態にした。

 ……さっきの頭痛は起らない。だがさっきの頭痛の際に見えた…あれは…?

 再び風景が遡る。

  

 『お前は―――に導かれる。』   『―――なんて!』『お前は―――によって生かされて。』

 

 

 

 わからない…。これが走馬灯ってやつなのか…。

 

 ……眠気が…ここで…寝たら…俺は…死ぬのか?

 ……眠気が限界に達したときに、…ISのスラスター音が…

 

「一夏ああああああ!」

 

 

「ねえ…さん」

 

 俺は意識を失った。




作者「お前の本格的な出番11巻からだから」

白式じゃないほうのIS「え?」



ガバッガバの戦闘シーン。
自分は戦闘シーンくっそ苦手です。 
ついでに短い。
日記無しでスミマセン。


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織斑日記…五。

ランキング入りとかウッソだろお前ww

感動しました。束さんのファン辞めます。

本編どうぞ





 $月ファ日

 

 今、俺は病室暮らしをしている。

 ……とりあえずモンドグロッソがどうなったのか話すか…。

 モンドグロッソ優勝者は織斑千冬。

 うちの姉さんが優勝したんだ。……原作通りに進んだはずなのに、なんで優勝できたんだ…?

 

 そこからがごたごたで、モンドグロッソ優勝後一夏が誘拐されたことを知って表彰式の前に消えたらしい。

 

 何分待っても来なかった為、代理として倉持企業の社長が神話のブリュンヒルデを模した像を受け取り、一時騒然となったらしいが、その弟、つまりは俺が日本で事故にあったと日本が発表。

 

 それで表彰式前に消えたと言われている。

 更に俺が目覚める前に、引退会見を開いたらしい。

 当然世間は大パニック!

 

 ……だが事件性のある事故だと日本が後に発表。

 結局姉の無敗記録は止まらなかったとされ、伝説となっている。

 俺に関して言えば、事故を起こしたのは俺を誘拐した代表候補もどきがやったことになり、逮捕された。

 その上で織斑千冬に恨みがあると動機が明らかになり、

 事件性の事故なのではと落ち着いた。

 

 インターネット上でも同情の声が多く、俺に向けて応援してくれる人が多い。

 そして引退会見後、日本政府がここで一夏誘拐の真実を知り姉さんに謝罪。

 改めてその場でモンドグロッソにおける賞状とブリュンヒルデを模した像が姉さんに渡された。

 そしてドイツに恩を返す為に姉さんが一ヶ月後にドイツへ移る。

 

 てとこだ。俺が意識を取り戻すまでに起きたことをまとめたら。

 話を戻そう。

 姉さんがドイツに行って何をさせるのかと言えばISを使った軍の教官を努めて欲しいってとこだ。 

 

 ……ISの軍事利用はアラスカ条約によって禁止されている…?

 軍事として利用している訳ではなく、災害やテロとかの自警団として活動しているのだ。

 確かそれの総称がIS配備特殊部隊って呼ばれている。

 

 災害時における要救助人に対する迅速な対応や大量の食料の運搬、家の瓦礫の撤去などを主に活動している為、軍でISを持つことが許されているのだ。

 また、テロについては特に迅速な対応を求められる。

 

 その為、ほんの一握りの優秀な人材しか入れない優秀なテロ特化部隊なのだ。

 その名称をシュヴァルツェ・ハーゼと呼ぶらしい。

 

 そしてさっき言ったドイツのIS配備特殊部隊って所で教官を務めるらしい。

 その中でもIS3機を任されている特殊部隊であるシュヴァルツェ・ハーゼって言うところの部隊で指導をするらしい。

 

 シュヴァルツェ・ハーゼ。つまりは黒ウサギ部隊だ。

 

 となるとラウライベントは順調だと言うことだ。

 ……まあ、居ても居なくてもとは思うが。

 確かに戦力にはなるのだが、戦力にすることはかなり骨が折れる。

 まず俺の好感度最低状態をシャルロットのフラグ管理をしながら改善しなければいけない。

 

 更にVTシステムのこともあり、おまけに境遇が境遇の為、周りの人間とも上手く馴染めてない。

 好感度を上げたら上げたで初手キスだ。

 しかもVTシステムを何とかすると好感度が上がってキス確定。

 

 はっきり言って面倒臭い。

 VTシステムはここぞと言うときに起きたら最悪敵が2人に増えるだけだ。

 よって原作のタッグマッチの所を最終ラインとしてそこまでにVTシステムを何とかしなければならない。

 ……俺がやったあの波長の隙をついてVTシステムを解除することは余り現実的では無い。

 

 何故かと言うと、俺がやった方法はVTシステムと操縦者の脳波が一致しなかったからこそ出来た芸当だからだ。 

 あのVTシステムはデータ上でしかない織斑千冬の強さを勝手に操縦者に押し付け、その思考までも洗脳するという、いわゆる偽織斑千冬を量産するというものだ。

 

 その為、VTシステムが起動するためにはある程度条件がある。

 その傾向が"力"だ。

 とにかく貪欲に力を求めるものに対してVTシステムは起動する。

 

 

 操縦者が織斑千冬を恨んでいたのもあるだろう。

 波長があっていなかった。

 

 んでラウラの場合だが…。

 まぁ波長あうだろうなぁ

 だって原作見てるとわかるけど完全に信者だもん。

 まぁ事情が事情だからそういう事に繋がるのは仕方ないのだ。

 だから波長そのものはピッタリなんだろう。

 

 そして原作そのものは当てにならん。何故かって?

 ISの共振、及びその潜在意識の中から呑み込まれそうなラウラを説得して救出する。とか言う不確定要素の塊だ。

 あんなものはVTシステムに置ける解決策では無い。

 ただの奇跡でしかない。

 よって俺は普通に痛めつけて無理やり剥がす。

 ……というよりもこれの方が早いのだ。

 

 あの波長云々の説明は生身でやるには弱点突かなきゃ無理ゲーなだけだ。

 なので波長云々は痛めつけて無理やり剥がす方法となんら変わりのないことだ。

 この方法であればラウラの好感度を大幅に上げずにタッグトーナメント編を終わらすことが出来る。

 

 なのでラウラに関してはこう言う方針を取る。

 

 とりあえず見舞いでもらった寄せ書きを見ながら日記を書いている。

 左腕が包帯でぐるぐる巻になって辛い。早く筋トレしたい。

 

 

 

 $月!日

 

 とりあえず見舞いに鈴と弾と数馬が来ていた。

 お見舞いでフルーツを持ってきてくれたらしい。

 ありがたい。

 

 正直ヘルシー思考でも毎日家庭の味がしない病院食は辛いものがある。

 一応最近の病院食はましになって来てるんだよ。

 

 ただやっぱり家の味が恋しくなるよなあ…

 おまけに筋トレが禁止されて、左腕も動かせない。テレビを見ていても飽きるのだ。

 その暇つぶしとしてこの日記を書いているのだが、

やはり飽きるものは飽きる。

 

 しかも全治1週間。

 医師からはむしろ本来は全治2ヶ月はかかると言われた。

 腕の複雑骨折に内臓の内出血。

 その体どうなってるの?とか本気で言われた。

 

 一応原作の方でも大怪我をしてもすぐ治ると一夏くん本人が言ったことだ。

 それでも長い。一週間はこんな退屈すぎる時間を過ごさなきゃいけないのか…

 そんな事を愚痴ってたら鈴が毎日お見舞いに来てくれるようになった。やっぱり持つべきものは親友だよ。

 

 

 

 $月=日 

 

 地獄の一週間が終わった。ようやく退院だ。

 腕の包帯も取り、少しのリハビリをしたあと問題なく帰れた。

 これでようやく筋トレができる。とはいえ、1ヶ月はあまりキツイトレーニングとかを自粛するようにと言われた。

 ………体戻すの、大変なんだけどなあ…

 

 まぁいい。今回は実験してみたいことがある。

 退院明けで今日は休みなのだ。

 姉は取材にでている。

 

 今回の実験は鹵獲したISを使った様々な仮説が正しいのか検証してみようと思う。

 動かせるのは確認済みだ。何故動かせるのかは原作にすら書かれていないが、おそらくはクローン技術によって何らかの細胞が入ったのだろう。

 

 あるいはこの体に使われた強化遺伝子そのものがISの起動する条件か…?

 ……とにかく片っ端から実験するか。

 

 

 

 

 実験の結果、分からないです。

 

 ……というよりも実験方法何て分かる訳ないだろ!

 エボルタッバがわからないと答えるような問題、俺には解けるわけ無いだろ!

 

 という訳で頓挫。シールドエネルギーも補給している所を見られたら俺は一発あぼんよ。

 あくまでこのISはドイツのものだ。調べ上げられた上で取り上げられたらここまで苦労した意味がない。

 

 実験成果?なんの成果も無かったよ。

 強いていうならISの雑誌にかかれていた仕組みは正解でしたとだけ。

 

 まず稼働してなかなか動けなかった10分でフォーマット(初期化)が始まった。

 その次に最適化処理に5分。

 

 その次、いわゆる1次形態の前の状態のやつで30分経過してようやく1次形態移行。

 最初の30分は鈍かった。このISを起動させているのは家の中なのであまり大きな音は出せない。

 

 幸い今の時間帯はみんな平日で仕事に出ている時間だ。

 大きな音を立てても気が付かんだろうさ。

 

 このISに内蔵されていた武装は大型アサルトライフル、IS用ブレード、それとグレネードが何個かに盾殺しか。

 

 完全に見限るつもり満々の装備じゃねえか。

 ……まぁいい。とにかく俺が今やるべき事はISを使った素振り。

 それと姉が帰ってくるまではこのISを展開し続けてISの稼働時間を増やす必要がある。

 

 …ちなみにこの機体はラファール・リヴァイブだ。

 色は灰色で中々の格好良さ。

 

 ロボットに憧れるお年頃なのです。

 ちなみに今の俺は上半身裸だ。

 

 

 

 

 裸だ。

 

 

 

 

 ……ISスーツがないから仕方ないだろ?

 

 今は秋なのだが全く寒くない。宇宙活動できるだけあって快適なのよ。

 機体はかっこいいのに絵面が台無しだよ。

 

 

 とりあえずISを纏いながらブレードで素振りブンブンしたけどまるで歯ごたえが無い。

 重みというかそんなものが感じられない。

 

 ほんとに軽すぎる。

 とりあえずこの1ヶ月はISの稼働時間を上げつつISに慣れるか。

 

 

 ……え?この機体で織斑マドカに勝てるかって?

 無理。

 

 だって古いもん。他の国が第三世代機開発の目処が経っているってニュースで出る時代よ。

 そもそもIS学園に入らなきゃISを思うがままに動かせん。

 とりあえずどこまでやれるか試して見るか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 クウ~ン月=日

 

 

 とりあえず一ヶ月経って姉がドイツへ移って行った。

 飯を一人で食べるのは寂しいものだ。

 振込をするからと銀行に行って通帳を作ってくれた。

 

 ありがたい。

 原作の一夏くんはバイトしてたらしいけど俺はそんな事知るかとばかりに筋トレ&IS展開し続けた。

 んでISの一ヶ月の成果。部分展開ができるようになった。

 

 そう!絶対防御の展開をな!

 絶対防御を展開するというパワーワードに聞こえがちなあれ。

 初めて聞いた人は痛い人って思われるのでやめようね!

 

 絶対防御とは全身を覆う膜のようなもので、この膜があるから全身装甲タイプはないのだと言われる。

 んでこの膜くっそ強い。衝撃まで何とかするわけではないが、特定の武器種が無いと突破できないレベル。

 

 とはいえ、衝撃まで軽減するわけでもないし、膜の上から締めることが出来てしまう。てのが逸般人の対策方法です。

 とはいえISを展開していることには変わりないため、この展開方法でも稼働とみなされる。

 俺は喜々として素振りした。1ヶ月ぶりよ!1ヶ月。

 ようやくハードなトレーニングが出来る!

 

 ISの絶対防御を展開しながら、素振り50000回久しぶりにやるぞ。

 この鈍った体を何とか戻さなきゃだな。

 あとクラスメイトと久しぶりにあった。

 黄色い歓声とか普通に上がってビビる。

 

 ……そう。一夏くんは中学生の頃めっちゃモテるのだ。

 それ故に1週間も肉の補給がされなかったライオンの目の前には極上の餌がある。

 

 そら仕方ないわ。

 だが飼育員さん、及び番犬である鈴の威嚇で近づけない。

 だがそれでも勇者はいるらしい。

 とりあえずハーレム主人公はほんとに苦労していることは分かった。

 

 あと鈴は病み上がりだからと要らぬ心配をさせたく無かったらしい。やっぱりIS界の良心だわ。

 

 

 

 カン月コーン日

 

 とりあえず中学1年の終わりだと言っておく。

 あれから毎日寝るとき以外、絶対防御を展開し続けている。

 ISの操作もスムーズになった。

 

 とりあえず鈍りきった体を何とか戻した。

 そこまでは良いのだが、鈴の様子がおかしい。

 

 うつむいているのだ。

 鈴の様子がおかしくなる原因…あれか…。

 

 

 両親の離婚だな…。

 ……そっかぁ、そうだったなあ。忘れてた。

 

 鈴の両親自体あまり出てこないのだ。仲も険悪でその板挟みになっているのか。

 そら仕方ないな。

 

 ……それとなく聞いてみるか。

 

 

 

 

 

 

 :月Ḡ日

 

 それとなく聞いてみた。

 

 一夏くんのメンタルヘルスケアなめんなよ!

 その結果まぁ聞き出せた。

 

 両親の仲が悪いのだとかもう色々駄目な方向に向かっていると。

 そしてそれが原因で中国に戻されるかもしれない事。

 ……辛いだろうね。俺からしてみれば好感度上昇イベントだけど。

 そもそも知っていることにどう驚けと。しかもまたすぐに会うだろうし。

 

 そう思いながら脊髄で一夏くんムーブをした。

 

 鈴は最後にっこり顔で帰った。少しだけ涙が出ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「何が大丈夫だ。何が何とかなるだ。」

 

 自分で自分を苦しめている。

 

 鈴の好感度を上げているのは自分の為だ。自分の為だけに親友を利用しようとしている。

 鈴の両親の離婚を止める力もないのに安心させる言葉が出てくるこの口に反吐が出る。

 吐き気がする。自分のそれにムカつく。

 

 自分は"織斑一夏"ではない。そんなことぐらい分かってる。

 割り切れない。積極的に救おうとしない。

 ……きっと織斑一夏なら強引にでも救おうとした事だ。

 でも俺は進めない。

 親友に、本当は泣きたかったであろう親友に無理やり笑いを作らせた自分が憎たらしい。

 

 こんなにも親友を利用しようと考えた俺が嫌になる。

 ……俺は"織斑一夏"じゃない。

 織斑一夏と違って勇気がない。

 

 織斑一夏はきっと勇気のある素晴らしい人間なのだろう。

 だが俺は俺だ。

 俺はヒーローではない。

 俺が織斑一夏の生き方を認められない。

 

 俺は所詮人外クラスの肉体を持ったとしても、コミュ能力があったとしても、ISを動かす才能があったとしても…

 ただの…一般人だ。

 

 

 人を救おうとする勇気の無い人間(自分)が、人を救おうとする勇気ある人間(織斑一夏)の真似なんてするべきではなかった。

 

 

 後悔した。

 聞き出した事に勝手に自分で後悔した。

 ……俺は織斑一夏ではない。

 その事実が苦しめる。

 

 救えると割り切れればよかった。救えないと断言すればよかった。

 曖昧なのが。曖昧のまま安心させている自分が無性に腹が立つ。

 

 今の今まで俺は"現実"を見ていなかった。

 俺は"インフィニット・ストラトス"の世界としてしか見ていなかった。

 ここは紛れもない"現実"だ。

 

 「…はあ…」

 

 疲れた。今の今まであった事に疲れた。

 俺は織斑一夏の様な人間ではない。   

 

 ただの一般人だ。

 そんなことはわかっている。頭でも理解はしていた。

 

 ただ織斑一夏としての生き方が。俺にはどうにも出来ない。

 

 

 

 俺はすぐに寝た。

 

 




…うん、なんでこうなった。


だんだん方向性がおかしくなる。


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織斑日記!六!

え〜前回のあれ。

主人公が疲れ過ぎただけです。

主人公が自分の素を出せなかっただけだし、少しのイベントにするつもりだったのにハードルガガガ…

本編始まります。


 "月*日

 

 昨日はあんなこと思ったけどそもそも当たり前だったわ。

 そら俺は打算でしか考えられんし。

 打算で考えないならむしろ俺を疑うわ。

 まぁまだ自分の心の整理がついてないしね。ちょっと命掛けの攻防が続き過ぎてナイーブになってた。

 

 実際命掛けのデットヒートが多すぎたし、これからも安らぎは無くなる。

 ……精神的な安らぎが無かったのだ。

 人と話す時は最初に織斑一夏の皮をかぶり続けている。

 ……というよりもむしろ織斑一夏の皮をかぶり続けてそっちに精神をもってかれたかな?

 あれから7年間、"織斑一夏"としてしか人と接していない。

 ……そら気の迷いが出るわ。

 今思えばこの7年、遊びのときすら"織斑一夏"を演じすぎていた。

 

 姉にすら素顔を見せた事は無かったな。

 

 要するに精神的にまいってる。

 ……いちいちうだうだするのも自分らしくない。

 一人で抱え込むのは精神的にも波長的にもよろしくない。

 案外スッキリするかもしれない。

 

 

 

 相談しました。

 

 いや〜親友らしい回答だった。

 そんな事気にしなくて良いと言われた。むしろいちいち気にしてたら面倒臭いわよ?と。

 全くもってその通りです。ハイ

 そんな打算こうたら考える暇でもあったら、打算の為に行動したらとも言われた。

 ハイ、全くもってその通りです。

 

 アンタがそんな性格でも別に。何だかんだ言って結構な付き合いでしょうが。

 アッハイ、そうですね

 

 ……次

 

 

 ぶっちゃけそんな事うだうだ気にしてんの?

 同じく。んな面倒臭い事よりも女の子紹介してくれよ。

 

 …うん、スッキリした。

 実に自分の親友らしい回答。

 打算で何が悪い!打算で行動することが罪なら人間みんな罪人じゃい!

 

 俺は織斑一夏にはなれない!

 それでいいじゃないか!

 悩んでた事が馬鹿馬鹿しい。いつも通り突き抜ければいいじゃないか!そもそもそんな事は自分の問題何とかしてから考えるべきだな!

 

 マドカにキチうさに生体IS戦……うっ頭が。

 

 生体IS戦。後に来てしまうであろう襲撃イベント。

 その関連に現れる災厄の敵だ。

 

 これ何がやばいっかって一時的とはいえ、エボルタッバと亡国が協力するレベルなのよ。

 おまけにこれ、原作の一夏くんは死んでるのよ。一時的だけどね。

 

 だから正直関わりたくない。

 ぶっちゃけ原作一夏くんが蘇る方がおかしいってエボルタッバに言われてるレベルなの。

 とりあえずうじうじするくらいなら自分の身を安全にしてから悩もう!

 

 てことで親友に対してのみ"織斑一夏"としてではなく俺として接そう!

 ……でなければ先に心が潰れる。

 ……話を戻そう。

 てことで改めて方針を纏める。

 

 まずは鈴の好感度。ぶっちゃけ充分。てか多分恋仲にはならない。

  …昨日の自分が馬鹿馬鹿しい。

 

 次に新たに増えたISの稼働限界時間。ぶっちゃけ慣れた。

 とりあえず色々試した。

 

 原作にあった遠隔での呼び出し。

 ISのある程度の無人活動化

 ISを利用した脳波の固定化。

 

 成功したのはこれくらいだ。

 

 原作であった遠隔コールは、原作の状況を再現しながら何回か練習するとあっさりできた。

 リムーパーが無いので本当に成功してるか怪しいのだが。

 

 次にISの遠隔コールの応用をしたISの遠隔操作。

 簡単な動作ならこっちが脳で伝えれば何とかなる。

 とはいえ精々5〜6m離れたら途切れる。

 

 そして最後にISを利用した脳波固定ゾーン。

 ベストコンディションに近い状態にISが脳波を固定する。

 そうすることで反動は大きいモノの、ISに乗っている限りゾーンが継続される事が分かった。

 ……休日に一日中ゾーンをしっぱなしで気分悪くなって寝れなかったけど。

 とりあえずISに関してはこんな感じ。固定ゾーンがいい感じに強い。

 

 小6時点の身長は167cmだった。だが俺の身長の伸びは悟空タイプだった。

 中1終わった時点で170cmなのだ。

 ……成長があー!

 

 

 まぁそれでも体つきはかなり成長した。

 だが小6のペースのままで運動をすることにした。

 理由は俺の身長がこれ以上伸びそうに無いのだ。

 ならば小6のペースで運動をしてから技やISの実験に励んだ方がいい。

 それに最重要案件はある。

 

 

 メンタルケアだ。俺の。

 だって心まで逸般人なわけないじゃん。

 俺は型月の逸般人とは違って心が弱いんだよ!

 これから先もっと胃痛が走る出来事があるとわかってるのにこんな精神で挑めるわけがない。

 

 これから先通うであろうIS学園。

 女!女!女! 話をしやすい男誰一人いない!

 フラグ管理を間違えれば鈴はともかく箒がくの字キックマンになるかもしれない。

 セシリアは好感度オーバーしやすいくせしてイベントも飯もまずい!

 シャルロットはもはや俺の胃痛をキリキリ痛める要因しかならない。

 なんやねんデュノア・グループの暗殺って。そんなものに俺を付き会わせるな!

 ラウラに関してももうだめ。国が真っ黒過ぎる。

 ついでに国が亡国ともつるんでる。

 もうやだ。

 

 暗部姉妹

 単刀直入に言うと実にめんどくせー!

 

 妹の方は好感度最低。姉の方はそんな好感度最低状態の奴に何とか仲直りの機会を作ってくれという。

 もう一回言えばめんどくせー!

 

 少し素直になれば終わる話だろうが!

 

 …最後にアイリス。

 これに関して言えば胃痛が半端ない。

 ガチの王女で束さんの本拠地でもある国よ…?

 ガチで辛いの…

 

 

 ……現実逃避したい。

 そら壊れるわ。そら思い詰めるわ。

 

 そこからゴーレムだの福音だの亡国だのエクスカリバーだのエボルタッバだの

 

 ……さようならうじうじ!こんにちはデットライフ!

 それでも生きる。突き抜けてしまえ。

 俺は俺だ。織斑一夏の生き方なんて無理だ。

 てことでメンタルケア。俺の味方は鈴しかいねえ。

 とりあえずゲームでも買おうかな!もう気分転換ってことでさ!

 

  辛い。

 

 

 

 トウ!月ヘアー日

 

 あれから娯楽を手に入れた俺。最近流行りのIS/VSを買ってプレイしてみたらどハマリした。

 何でも実際にIS操縦者がチェックして動作や起動、各機体の特徴が出ているかどうか1つ1つ見ているらしい。

 なるほど、一人称視点にして見ると俺がISに乗った時と同じ感じだ。

 打鉄やラファール・リヴァイブから始まりそこからモンドグロッソに出場した選手のISが出るらしい。

 

 当然1機1機性能も違うし武装もカスタム出来る。

 最近のオンラインの流行りはラファール・リヴァイブ・カスタムIの遠距離特化型の近接は盾殺しっていう構築。 

 ラファールカスタムの機動力と遠距離特化の性能が交じりあって中々接近できないんだよね。

 

 接近したとしても盾殺しで一発逆転を狙われるとか言う危険な構築だ。

 

 俺?当然暮桜一択ですけど?

 さて、ここでIS/VSにおける暮桜の評価は

 

 ・くっそピーキー

 ・耐久クソザコナメクジ

 ・遠距離がないってひどくね?

 ・攻撃性能と機動はトップクラスだけど他が…

 ・ただでさえピーキーなくせしてワンオフまでピーキー。使うだけでSEが飛ぶ。その代わり攻撃性能だけはトップクラス。

 ・こんなん使うやつは勇者か織斑千冬だけ。

 

 

 って評価なのだ。

 まぁ使いこなすけどな!

 

 

 今のところ10戦全勝。恵まれた反射神経と鍛え上げられたコントローラーさばきで相手を翻弄して、

 刃の当たる一瞬にワンオフアビリティを発動&解除。

 その結果、SEは4~5しか減らないのだ。

 んで10勝したので今日はここで打ち止め。

 ん〜いい気分転換にピッタリだ。

 多少荒んだ心も癒やされる。

 ISの起動に近いこともあって勉強になる。実際ISの教育に使われるケースも珍しくないらしい。それくらいまで完成度が高いゲームなのだ。

 俺はゲームの時間を日課に加えた。ついでにイライラも解消出来る。

 

 

 

 

 

 

 '月?*日

 とうとう鈴の帰国が始まった。俺と弾と数馬は見送った。

 寂しくないと言えば嘘になる。

 実際何だかんだ言って3年半は親友として一緒に馬鹿やってた。

 とりあえずお別れは言ったが、鈴の告白イベントは無かった。

 親友ルートのようだ。

 一時の別れはあっさりと終えた。

 連絡先も交換しているのだ。

 俺たちは笑って見送った。

 

 結局俺は鈴のことを救えたのか怪しいのだが。

 俺は織斑一夏じゃないんだから諦めた。

 ……とはいえ、鈴のルートはこれで良かったはず。

 さて、ほんじゃ次の方針をササッと決めますか! 

 うじうじするのは自分の安全が確保されてからうじうじする。

 それまでは打算もりもりで計算しながら何とかしていこう!

 

 

 

 ―――気がついたら、何時も近くにいた。

 

 小学5年生の時から、近くに私の親友はいた。私は日本語が上手く喋れないから不安になっていたのだが、クラスメイトと私の腐れ縁の親友が暖かく教えてくれた。

 

 そこからだろうか。

 私の一番の親友。織斑一夏。  

 一夏は何時も私の隣にいた。私が困っている時に助けてくれた。

 何時も遊んでくれた。何時も同じクラスだった。

 

 気がついたら、何時も一緒の腐れ縁ってね。

 小学生を過ぎて尚ずっと親友だった。かれこれ3年ちょっとかな?長い腐れ縁だったわ。

 中学一年を過ぎた時に、私は中国に帰国することが決まった。

 何の事はない。両親の不仲だ。 

 ただでさえ両親が不仲の時に女尊男卑の風潮が広まったのだ。   

 余計両親の衝突は激しくなり、エスカレート。

 

 気がついたら、母親についていって中国に帰国することが決まった。

 そこには私の意見は無かった。

 両親に私の人生が決められる。両親の敷き詰めたレールにただ従うだけの人生。

 今回もそれだ。ただ両親に従う。それで良いじゃないかと自分を納得させようとした。

 

 そんな私に声をかけたのは。一夏だった。

 一夏はまた相談に乗ってくれた。両親の不仲で会えないことを。中国に帰国することを伝えた。

 

 ……何でなんだろ…?話しているたびに音が消えて頭がぐるぐる回る。無理に納得させようとした自分が不満を訴え掛ける。

 ふらふらとしていた足を何とか立たせ、目頭が熱くなってくる。

 一夏が言葉をかける度に。両親への不満が膨れる。

 

 ―――そうだ。私は。私には私の人生がある。

 

 私は両親の奴隷じゃない。私には大切な物がある。大切な親友がいる。大切な思い出がある。

 もう決まった事に何も出来ない。帰国するのも止められなかった。

 ならせめて自分の意見だけ通してやろう。私はとめどなく溢れそうになる熱い筋を止めて、相談に乗ってくれた一夏と別れ、その日のうちに両親とケンカをした。

 言いたい事は言ってやった。ムカつく所は何もかも言ってやった。

 反抗期だ。これは反抗期なのだ。だからこそ精一杯自分の意見を言ってやる。

 

 すっきりした。自分の溜まっていた膿が溶けていく様に感じた。

 清々しいとはまた違う。どちらかと言えば吹っ切れた。それを見越してかは知らなかったけど一夏が相談してきた。

 そんな一夏の姿はまるで昨日の私を思いだすようでーー

 馬鹿馬鹿しかった。

 

 そんなことにうじうじと悩んでいたことにまずは驚いた。

 昨日のあれが私に響いたのかすらすらと言葉が出てくる。

 

 

 それからだろうか。一夏の素が出てきたのは。

 

 普段の一夏とは違う姿に、私は笑った。アンタらしくない。そんな感じだったのかと笑った。

 だけど何よりも。親友の素が見れて本当に嬉しかった。

 そこからはとにかく吹っ切れた。うじうじした悩みなんて忘れたかのように過ごした半年。

 

 本当の自分を見つめ直せた。

 だからこそ一夏と私は永遠に"親友"だ。

 それ以上もそれ以下もいらない。別れるとしてもまた会えると確信めいたそれを感じ取った。

 だからこそ別れは敢えてさっぱりと終わらせた。

 

 これでいいのよ。私と一夏は。あと腐れ縁の弾と数馬。

 ……だからといって、納得している訳じゃない。

 吹っ切れてはいるけどそれとこれとは別だ。

 

 ……ああ!そうよ!もっと遊んでいたかったわよ!

 もっと親友と遊んでいたかったわよ!もっと思い出を作りたかったわよ!

 これからもずっと親友として隣にいて笑いたかったわよ!

 

 中国に向かっている途中の飛行機で、そんな事を考えて、私は静かに頬から熱い筋を流した。 

 

 「……楽しかったわよ。一夏。」

 

 そう呟きながら、中国に向かうのであった。

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 #月^日

 

 ……来てしまった。運命の日。そう、藍越学園の受験日だ。

 俺はこの日、敢えて盛大に受験会場を間違える。

 この日はIS学園の受験日なのだ。

 よって俺は敢えてIS学園の受験会場に駆ける。

 当然、50m3秒の人外的な速さを見せる。

 IS学園の見張りの女は疲れていてこっちを見れなかったようだ。

 

 結果?予想通りまんまと侵入成功。

 ……しかし本当に解りづらい道だなこれ。

 事前に見取り図を用意してなかったらISのところまでたどり着けなかったかもしれない。

 誰とも会うこともなくISが置かれている格納庫に到達。

 そしてこれが運命のボタンか。

 

 「………」

 

 ……改めて自分に聞こう。本当にいいんだな?

 これに触れれば自分の人生は波乱万丈のものになる。 

 これに触れなければ自分はつかの間だが平穏を手に入れられるだろう。

 これに触れなければ自分は苦労する必要はない。

 これに触れなかったほうが幸せなのかもしれない。

 

 「……答えはノーだ。」

 

 それでも俺は、そのISに触れた。平穏を得るために。

 ただ怯えて暮らすだけの人生なんて平穏とは言わない!

 

 ただ幸せに生きていたい。安心して生きていたい。

 それだけだ。

 だからこそ俺は自分から嵐に突っ込むことを決めた。

 

 

 瞬間、脳裏に多くの情報量の海が流れる。

 同時に自分の体が情報の海に流される。

 俺はそれに…抗おうとはせず、

 流れ行く情報の海に流された。

 流れ行く遠くの海が、まるで遥か彼方に追いやった幸せのように恋しくなる。

 だからこそそれらを捨て去ってでもやるべき事はある。

 俺は目を開けた。

 

 

 全てが嵐のような未来に、穏やかな波はどこにもないと確信した。

 だからこそ嵐の前でうじうじはしない。

 抵抗するために、その嵐に打ち勝つ為に一歩。

 前に進んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ISは光り輝き、大きな光が格納庫から漏れる。何事かと慌てて女が一人来てみると女は大そう驚いたそうな、

大声を上げた。

 その騒ぎにIS受験中の教員が慌てて駆けつけた。

 こうして、男性IS操縦者の情報は、またたく間に世界中に広がる事態に。

 その時の男性操縦者は、これから先に起こることに頭を悩ませる。

 

 

 

 

 

 

 =月?日

 

 とりあえずISを動かしたことを公開してから3日間。

 俺はとあるホテルの一室で監視されている。

 とてつもなく豪華だ。すっげえ(語彙力不足)

 

 とりあえず呼び出された。

 一体何だと思ったら姉さんが入って来た。

 うちの姉さんは一応ドイツの雇用期間を終えた後連絡をとってIS学園の教師になることをメールで伝えてきた。

 何でも泊まり込みの為、しばらくは戻ってこれないらしい。と聞いていた。

 一応夏休みとか大きい休みのときにはちょくちょく戻って来てくれたのだ。

 

 

 俺はとりあえず姉さん!と言ってみた。

 とりあえず久しぶりだなと言ってくれた。

 ……後、織斑先生と呼べと言われた。

 

 

 まぁ簡単に言えば今からISを動かして模擬戦を行って貰う。

 あくまで適正とかそこらへんを知るためのテストなので気楽にやれと言われた。

 

 とりあえず姉さんの隣にいた人…山田先生が案内してくれた。

 ……しかしデカイな。どこがとは言わないが。

 とりあえずついたところにはIS…打鉄があった。

 

 

 とりあえず動かして見て下さいねと言われたので動かして見る。

 ISに身を任せるように、座るように…とっ

 

 とりあえず10分経過して、簡単なテストをしてから模擬戦を行なうようだ。

 ……まぁ模擬戦は山田先生だろう。

 そして山田先生がおっ転げてその間に攻撃をして終わりだな!

 ……そう、思っていたんです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……あれ、何で姉さんが…?

 

 おいおい人選ミスだよこれ。 

 冗談はよしてね。

 名字がやからはじまってだで終わる。 

 それでいて上から読んでも下から読んでも名前が同じ人だよ。

 え?ほんとに…?

 

 

 

 

 

 おいおい、死んだわ俺。

 

 

 

 




まさかのちっふー。




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世界最強

誤字報告ありがとうございます!(挨拶)
後投稿のペースが落ちます。

原因はエボルタッバどうすりゃ良いの問題。
まじで思いつかない定期。
ついでに少し疲れた。
後他の作者様の凄い描写を勉強して来ます。

なのでプロット固めるついでにペースを落とします。
そこらへんをご了承していただけたらと思います。

勝手ながら申し訳ない所存です。
本編、どうぞ。


 ―――気がついていたら…弟が自分の手の中から零れ落ちる。

 

 自分の知らないところで。自分の気がついていない所で。成長している。

 実際ISの模擬戦で、モンドグロッソの試合に近い実力に調整している私と互角に打ち合っている。

 そのことに本当は喜ぶべきなのだろう。

 姉として本望なのだろう。

 一人の大人として自立していく。一人の誇らしい男として成長していく。

 素晴らしいことだ。

 ただ弟は………私を"見て"はいない。

 

 ―――いや、"誰"も見ていない。

 解るのだ。目線で見ていても、何処か上の空の様に別の事を考えている。

 何処か遠くを見ているようだ。私をすり抜けて遠くへ何かをじっと見ている。

 何処か遠く遥かに遠い全てを見て…。尚平然と振る舞うのだ。

 何も心配はいらないとばかりに…いかにも少年らしい笑顔を見せるのだ。

 

 だが…。―――何かに怯えている。

 

 何にお前は怯えているのだ。何が怖くて切羽詰まっているのだ。

 何でそんな無茶ばっかりするのだ。自分を痛めつけて。自分を追い詰めて。誰にも相談せずに。

 

 たった一人の家族だろう。

 友達もいるだろう。

 ―――何で、仮面を付け続けるんだ。

 

 今も、昔も、お前の仮面を脱いだ所を見たことがない。お前の素顔を見たことがない。

 

 そのことに、私はもどかしくなる。

 

 

 

 ………小学1年生の時…あれからだろうか…。

 本当の意味で笑いを見せなくなったのは…。

 仮面を被り続けている。学校に行くときでさえ、友達と遊ぶときですら仮面を被り続けている。

 

 ――――――危なっかしい。

 それくらいは分かる。ずっと、何が原因か分からずじまいのままで宙ぶらりんのままで。

 何事も無かったかのように振る舞う弟に。

 私は何もできない。わからない。お前は何に悩んでいる。身体的にも無茶をする弟に。まるで自分を痛めつけて尚先へ進み続ける弟に。

 

 

 ―――私は何も出来ない。

 弟が何に悩んでいるのかまるでわからない。

 弟が何に怯えているのかわからない。

 

 ―――私は、無力だ。

 何が世界最強だ。何がブリュンヒルデだ。

 世界中の人々を笑顔にしたって。日本中の期待に応えたって。

 …………たった一人の弟を、笑わせられない。

 

 あの日、第ニ回モンドグロッソ。弟が誘拐された。

 だが、誘拐された事実を知ったのは、モンドグロッソを優勝してからだ。

 私はその事実を知った時、誘拐されているという施設に迷いなく向かった。

 

 ―――考えて見ればそれは当然の結果だ。

 

 私に恨みを持っている人物は多い。他の国の国家代表も同じように国の期待を背負っているのだ。

 それを台無しにしたのだ。それはそのはずだ。

 だが蓋を開けてみれば…。

 私の国の代表候補生"だった"ものが倒れている。

 …考えて見ればそいつから国家代表を奪ったのだ。それは恨みを買っても仕方が、ないか…。…残念だ。

 その目の前には、弟がいた。

 ………全身が、ボロボロで佇んでいた。

 

 

 口からは血が滝のように吹き出ている。

 左腕はまるで車に轢かれたカエルのようにズタズタで。骨が、筋肉が剥き出しになっていた。

 それでいて血がまるで濁流のように止まらない。

 服は破れているのか。身体の半身が丸見えだった。

 だがその半身のアバラの骨は折れて、骨が一部見えてしまった。

 もはや生きているか怪しいものだ。

 同じようにドイツ軍の調査団が見ていたが、眉をひそめている。

 私は、発狂気味に一夏に声をかけた。

 そこから後の事は覚えていない。

 

 ……ただ自分のやったことが、弟にこんな惨状を生み出した事が、自分の無力さを知った。

 それからもう、ISに乗ることは辞めた。弟に迷惑は掛けまいと家を離れる事にした。

 ………もう弟は自立している。今更無力の姉が迷惑を掛けることも無いだろう。

 何よりも、自分の尻拭いを弟に払わせたのが……

もう私の中では辛くなった。

 

 …だが久しぶりに家に帰って見ると、私は後悔した。

 自分の選択に、殴ってやりたい程に。

 切羽詰まったそれは中学になっても変わらず。むしろもっと痛めつけている。

 怯えを見せるそれはもっと酷くなり。

 仮面はもっと、染みつくように。

 それでも尚、人に頼らず自分から傷付きに行く弟が。

 

 自分の選択がことごとく間違いを生む。弟に迷惑を掛けまいと家を出たのがそれを生んだ。

 酷く…酷く後悔をした。

 ………一夏。お前の悩みは私にも分からない。だけど。

 

 少し位、立ち止まって欲しい。少し位、休んだっていいじゃないか。何をそんなにお前を駆り立てる。

 少し位楽しんだっていいじゃないか。お前が、何をしたというのだ。

 少しくらい………姉に仮面を、外したっていいじゃないか。

 

 今も同じ打鉄同士で打ち合っている。一夏は私の事をまた上の空で見ている。剣術も大したものだ。

 下手をすれば国家代表の上層にすら勝てるかもしれない。

 ああ、立派になった。お前は努力した。頑張った。

今も必死になって頑張っている。誰にも甘えることなく自分を貫いている。もう迷ってない。もう振り切った。

 お前の目を見れば分かる。怯えているのではなく、切羽詰まったわけでもない。先を見据えてどっしりと構えている。自分でもう決意したのだろう。

 

 真っ直ぐした瞳だ。

 だからさ。 

 少しくらい。弟が報われてもいいじゃないか。

 もう思った事を口にしよう。姉として。教師として。

 お前の努力は決して無駄ではないと。お前の苦悩は無駄ではないと。

 

 ―――ただ、少しくらい楽しんだっていいじゃないか。少しくらい休んだっていいじゃないか。少しくらい。こんな頼りない姉だけど。

 

 仮面を外してくれたって…いいじゃないか。

 

「織斑、お前は先を急ぎ過ぎだ。」

 

 穏やかな顔でそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 (きっつっい!)

 

 薄々分かっていた事だ。模擬戦とはいえ相手は無敗の伝説を創り上げたブリュンヒルデ(最強)

 ゾーンを発動させ、固定する。脳波そのものの固定はうまく成功している。

 

 なのに届かない。打ち合っていた剣が、次の瞬間不規則に変化する。

 鋭くレイピアを思わせる閃光のような突きが、巨大な斧のように重い叩きつけに。

 かと思えばまるでISごと袈裟斬りにするかのような鋭い斜め切り。

 おまけにスラスターを最小限動かして後ろに回られる。

 目の前の最強が消えて。現れて。また消える。

 

 ―――まるで化かされてる様だ

 

 剣は一本なのに、複数の武器に。

 姿が消えて、見えて。

 あながち間違いではないのかも知れない。

 

 ―――無拍子では反応し切れない 

 

 限界ギリギリまで思考を回転させる。回る視点をはっきりとさせる。スラスターの音が少しでも聞こえたら自分の勘と反射神経を全力で動かす。

 相手は一人の筈なのに。まるで四方八方から複数人に殴られているように斬撃が飛んでくる。

 閃光はブレードを盾にするように受け、斧はとっさに左に避ける。袈裟斬りは斜めに沿うように受け流し、カウンターを…… 

 既に後ろに回られている!

 俺はそれに全力で防いだ。いや、防ぐ事しか出来ない。

 左からレイピアが。上から斧が。斜めから刀が。横から薙刀が。イメージのように飛び交う。

 見えてしまうのはその連撃に落とされる自分。

 

「う!うおおおおお!」

 

 全て捌く。空振ったカウンターを起点に回転する。最初に来たのは斧だ。回転する機体のスラスターをとっさに動かし、全速力にする。

 キリモミ回転をしながらも何とか戦線を離脱し、慌てて姿勢を制御する。

 無茶な機動のせいでGが発生。身体の負担になるがそんな事を気にしている余裕は無い。

 意識をはっきりとさせ、目の前を見据える。

 

 目の前に迫ってくる光速の突きをいなして振り抜く。

 

 避けられて頭に蹴りを入れられそうになる。頭を横にずらして体制を崩し、膝を入れる。

 下に入られ、上に向けて斬撃が飛ぶ。ブレードを盾に。その時、不自然にスラスターの音が。姉の身体がぶれて…!

 

「やっば…」 

 

 反射がほんのコンマ0.2秒遅れた。ただそれだけ。

 それだけで後ろに回られ、斧のように重い一撃が。

 それだけで宙に浮いていた俺の身体が落ちた。

 

 機体が墜落を始めた。

 

 ―――何とか、立て直せる

 それでも、"本来の実力"であれば。ゾーン状態であればあるいは復帰してそのまま反撃出来ていたであろう

ビジョン。

 脳が浮かべる最高峰の結果。

 だが"切れた"

 

「な…んで…?」

 

 途端に脳のビジョンが何も移さなくなった。意識が空に浮く。目の前が真っ白にきえていく。

 本来の迎撃の思考が、停止した。

 脳に空白が生まれた。切らさぬようにと張り詰めた集中力が消えた。   

 

 ―――ゾーンが!

 

 ゾーンが途切れた。一瞬途切れてしまった。それだけで最善の結果は最悪の結果に。

 ISの脳波固定での固定ゾーン。なるほど。確かにゾーンがいつまでもキープ出来るのは強い。

 だが、それ故に気がつけなかった。

 ISに衝撃が入ると容易くその脳波の固定は崩れてしまう。これは、ISを動かすには適していない所で練習していたからこそ気がつけなかった欠点だ。

 追撃が容赦なく入る。頭が空白になった隙間を逃さない。  

 迎撃しようにも、身体が動いても脳が動かない。

 結果そんな反射神経任せな技が世界最強に通じることは無く。

 織斑一夏は墜落した。

 

 

 

 

 (一夏、もう限界だろう?) 

 

 千冬は確信していた。もうあれが決定的だと。感覚派だともうわかってしまうのだ。限界が。

 

 ―――あれで切れたと。

 

 (お前は頑張ったさ。極限に近い集中力を維持し続けた。)

 

 呆気なく墜落していく弟を見ながら、そう思った。

 脳が動いても身体が動かない事はよく見る事だ。

 だが、織斑の場合は身体が動いても脳が動かない。

 どちらが致命的かと言うと後者だ。 

 

 (一夏の限界だ。これ以上は戦えない。)

 

 もう脳がオーバーヒートを起こした。これ以上動けない。一度切れた集中力を戻すのは難しい。少なくともこの模擬戦に置いて、そう判断した。

 

 だが、一夏は立ち上がった。

 一夏の目はまだ闘志を失っていない。目はギラギラしている。

 だが、だからこそ分かる。

 

 もう一夏は、さっきの動きは出来ない。

 そしてスラスターを動かし、突撃してくる。

 予想通りさっきのような鋭い動きは消えた。

 だがそれでも、尚闘志を失わない一夏に、千冬は何処か痛々しいものを感じた。

 

 だからこそ本心を一夏に言った。

 

「織斑、お前は先を急ぎ過ぎだ。」

 

 

 (駄目だ。脳が全く動かない。)

 

 ぐったりと寝ていたい。今は何も考えれない。目が混濁していて、身体が重い。

 

 (脳の!波長…が!)

 

 脳の波長が纏まらない。思考が安定しない。最善策が思い浮かばない。

 そんな状態に陥ってすら尚、目の前の敵に喰らいつこうとスラスターを動かす。

 

 当然そんな勢い任せの攻撃が通じるわけもない。

 それでも何回も振るう。何回も何回も。愚直に。

 

 だが止められて。姉さんが話を始めた。

 

「織斑、お前は先を急ぎ過ぎだ」 

 

 一瞬、身体が止まる。

 

「お前は先を急ぐあまりに無茶をし過ぎている」

 

 そう言う姉さんの顔は、

 

「前を見るのは良いが、少しくらい止まったって誰も文句は言わないさ。」

 

 とても穏やかで

 

「止まった方が見える景色だってある」 

 

 でも何処か今にも泣き出しそうで

 

       

「お前はまだ"将来(みらい)"がある。だからさ…。」

 

 凛としている。

 

 「少し止まって欲しいんだ」

 

 ……不思議と頭が冴える。身体が軽くなる。

 嗚呼そうだよ。姉の言っている事は正しい。

 俺には将来があるんだろう。少し止まっても許してくれるだろう。

 ……だけどさ。

 

 「将来(みらい)って何時だよ。」

 

 

 口から俺の言葉が出てきた。

 織斑一夏の言葉ではない。俺の言葉が。

   

 俺には将来(みらい)があるかも怪しいのだ。いつか現れるであろう難敵達。

 それの前に俺の将来(みらい)は消えるかも知れない。

 

 「将来(みらい)じゃない。今進まないと意味が無い!

 

 「………ッ」

 

 将来(みらい)、おそらくは超えられるのだろう。難敵。

 だけどさ、そいつ等が来るのは今なんだよ。

 大きな嵐が来ると分かっていて止まれる程に俺は!利口じゃない!

 

 「俺は止まらない…!例え前が視えなくても…!

 

 『―――限定解除―――』

 

 

 

 「俺は止まるわけには行かない……!

 

 『―――∑mode起動―――』

 

 

 

 「今を…!生きたいから…!

 

 『―――BURST MODE―――』

 

 俺の本音が出る。織斑一夏ではないそれは。

 織斑一夏ではない境地に追いつく。

 ただ人を救うという理想の信念でもない。

 ただ生きていたいだけ。

 それは織斑一夏の生き方ではなく、俺の生き方だ!

 

 その瞬間、スラスターが爆発するように火花が舞う。

 装甲のあらゆる隙間からエネルギーが火花を散らす。

 装甲は深い緑色から赤い真紅色に輝き、エネルギーの過剰粒子が舞う。

 

 「俺は…!今前に進むんだよ…!織斑先生!

 「そう……か…。」

 

 そう言う姉の顔は何処か寂しそうだった。

 

「なら来い!お前の全力で!」

 

 それでも決意したようだ。

 

「うおおおお!!!!」

 

 全身が燃えるように熱い。いや、実際燃えている。身体全身からアドレナリンが噴出している!

 空白だった景色が鮮明に色を移す。スラスターの金切り音が聞こえる。まるで機体が悲鳴をあげている。

 だがそんなものは気にしない。

 

 脳の波長は絶好調に!心は熱く!

 とにかく目の前の"最強"に勝つための演算を!

 避ける。避ける、避けれる!

 自分の限界を塗り替えられる!自分はまだやれる!俺は…まだ行けるだろ…?

 

 軋みをあげるスラスターを爆発させるイメージで!普通の加速では駄目だ。瞬時加速すら上回るイメージで!

 エンジンをかけたイメージでは届かない。エンジンを爆発させる!

 

 「BURST(バースト)!ブーストおおおお!

 

 

 

 

 

 

 その瞬間、スラスターが火を上げた。傍から見ればそれは幻想の火の鳥の如く。しかしそれは異次元の速さを誇った。

 少なくとも元最強が驚く程に。

 

 ―――まだ成長するのか。お前は。

 

 明らかに鋭さを増した火の鳥。

 さっきの散々な斬撃とは比べ物にならないそれは。

 追い詰めて居るはずなのに。

 むしろ最初のそれを超えている。 

 

 嫌な汗が流れる。余りの成長の速さに身体が警鐘を鳴らす。目を見開いて目の前のそれに末恐ろしい物を感じる。

 

 「BURST(バースト)!ブーストおおおお!

 

 それは火の鳥が…最強を真っ向から叩き落とした。

 

 小細工でもなく。ただ真っ直ぐ前から叩き落とした。異次元の速さに対応できないその一撃を。

 肩から腰にかけて斜め一直線にかけた。

 

 その瞬間。織斑千冬は。

 初めて大きなダメージを負った。

 

瞬時加速(イグニッションブースト)が、さらに加速するだと…!」

 

 瞬時加速(イグニッションブースト)を加速させよう…。なんてやつは織斑千冬を入れても誰一人思い浮かばない事だ。

 理由は簡単。瞬時加速(イグニッションブースト)ですら制御出来ないからだ。

 そのための制御を編み出した技はあっても、誰も瞬時加速(イグニッションブースト)を速くするなんて思い浮かばない。

 

 ―――何処まで、お前は!

 その火の鳥は、全てを飲み込まんとするかの様に燃え続ける。衰える事を知らぬかの如く。むしろ勢いがさらに強くなる。

 

 「そこ、だああああああ!」

 

 その日、少年は知ることになる。

 最強を。

 その瞬間、火の鳥は落ちた。

 

 「…………」

 

 否、…叩き落とされた。

 異次元の加速に近い速度の上から螺旋瞬時加速(スパイラルイグニッションブースト)で回転しながらブレードで叩き落とした。

 

 (本気でやらねば…!負ける!

 

 

 

 ―――絶対に入ったと確信した。

 意識ははっきりとしている。思考も安定した。そこから導き出す姉の全力。

 目で見開いた。身体がわかった。入ると踏んだ全力。

 

 なのに落とされた(・・・・・・・・)

 

 少なくともモンドグロッソの時の実力なら確実に当たると踏んだ攻撃。

 だが当たらない…!それどころか叩き落とされた。

 つまり

 

「まだ、上があんの、かよ…!」

 

 モンドグロッソの時ですら最強。

 なのにその上がある。絶望的だ。

 いずれ敵対するであろう敵は、これに準じる強さを持つということなのだから。

 

 「―――だからこそ勝つんだろ…!

 

 その絶望に対して今も燃える機体が更に火花を散らす。目はむしろ燃え盛り、その大きな壁に生きがいを見出す。

 

 ―――本来これは模擬戦だ。

 

 こんな命を掛けなくても良いところだ。

 だからこそ。たったちっぽけのプライドが全力を引き出す。

 これに勝てないならこの先に勝てない。この先の敵はこれ以上かもしれないからここで負けたら全てが終わると言い訳をする少年は。

 

 今は男の子だった。

 ただ負けたくない。それだけだ。それだけで身体がアドレナリンを噴出させる。   

 

 

BURST(バースト)!ブーストおおお!

 

 スラスターが燃える。今まで経験した瞬間加速(イグニッションブースト)なんて参考にならないレベルで速いそれを。

 

 最強はただ受け止める。

 全力で振る。何も考えられない。

 最強に通じる。SEが削れる。だが殴られている。

 

 相手も螺旋瞬時加速(スパイラルイグニッションブースト)で対抗してきている。

 だがこっちの方が速い。

 

 俺はそれを叩き潰そうとした。

 だが…!

 

「甘い!」

 

 避けられた。見事に空振って…!壁に激突する…!

 

「まっがれええええ!」

 

 その瞬間、

 スラスターが金切り声を上げながら曲がり…!爆発して!姉の方に突撃していく。

 

「なあ…!?」

 

 とっさにブレードで防御された。だがその上からねじ伏せる…。 

 

「おっラアアア!」

 

 姉の持っていたブレードは砕け散り、俺のブレードが脳天に…?

 

 だが俺のブレードも砕け散っていた。

 その瞬間…!

 

 姉はとあるものを"切り札"にしていた事を初めて分かった。

 よくよく考えて見れば当然だった。

 

 「雪片…だと…。」

 

 姉は葵を左手で防御に回し。

 右手で雪片を俺に突きつけていた。

 

 「―――零落白夜

 

 白い粒子が、火の鳥を包んだ。

 最後の一撃は、あまりにも切ない。

 打鉄は真紅色から元の深緑色に戻り。火花はさっきの戦いが嘘の様に消え。

 

 試合終了のホイッスルがなった。

 

 

 

 

「……立てるか…?」

 

 ふと地面に倒れた自分に手を差し延べる。

 俺はその手を取った。

 そして…。

 

「次は絶対に勝つ。」

 

 そう、俺が姉に宣言した。

 そう言うと姉は

              

「……次も負けんぞ。私はブリュンヒルデ(世界最強)だからな。」

 

 元気な姉弟の姿が見られた。

 私は初めてこの称号を、弟に誇れた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とある行きつけのbar

 

 今日は特に疲れた。一夏め。どこまで成長する。

 

 おかげで引退して鈍ってた身体が軋んでいる。

 こちとらISを本格的に動かしたのは1、2年ぶりだぞ。

 

 明日には一夏が起こした変な現象の書類をまとめる必要がある。

 ……憂鬱になるな。こういう時は明日の自分が何とかしてくれるだろう。

 行きつけのbarで私は酒を飲む。疲れ切った身体が癒やしを求めて、椅子に持たれる。隣で同僚の真耶がグラスを開けていく様を見ている度に私も気分が良く頼んでしまう。

 どうせ明日は書類地獄なのだ。もう少し飲んでしまっても良いだろう。

 

「そういえば織斑先生、今日は気分が良いですね。」

「ん?ああ、そう見えるか…?」

「そりゃそうですよ。いつもと違って少しにやけてますもん。……あ、もしかして弟さんと仲直りできたんですか!」

「……弟…か。」

「…?もしかして何かまずいことでも…?」

「ああ、…いや、…。いつまでも子供だと思ってたんだがなあ…。大人になっていくって。」

「ああ、…そう言うことってありますよ!子供って目に見えない所で成長するんですよ!」

「目に見えない所で……か。」

 

「?織斑先生、どうしたんですか?」

「……真耶、少し愚痴を聞いてくれるか…?」

「ええ、どうぞ。」

 

 それから私は愚痴を溢した。

 

 弟とようやく本音で話せる様になったこと。

 だけど弟はそれでも前と同じように無茶をすること。

 それでも私は無茶をしてほしくないが、そこらへんでまごついていること。

 

「真耶、私はどうしたら良いんだろう。」

「織斑先生。私なら弟さんを応援しますよ。」

「そうか」

「でも、本当に無茶をしすぎたら力尽くでも止めることって大切だと思うんです」

 

「…?」

 

「無茶をしすぎたら人に迷惑をかけます。周りの人を心配させます。ならそんなことは力尽くでも止めます。」

 

「…そう…か。」

「あ、でもこれ私の意見ですからね?織斑先生のことは織斑先生が決めるべきだと思います。」

「そうか…私が…。」

 

 

 

「……山田先生、飲もう。」

「え?織斑先生?明日ってあの書類地獄があるんじゃ」

「良いんだよ。そんなのは。明日の自分にまかせておけば」

「ええ…そんなものなんですかね…?」

「それに、今日は奢るぞ。」

「飲みます!」

 

 夜はまだ長い。

 




あれ以上の戦闘シーンは出せない!(断言)

疲れた。まじで。どうせなら面白おかしく覚醒とか入れようぜってなった結果だよ!
どうしてちっふーと打ち合えているんだろ。(震え声) 
もう戦闘シーンについては尊敬する他の作品の方を参考に作り上げたのでこのクオリティ維持したままできません。
……こんだけ覚醒詰め込んでも倒せそうにないエボルタッバは何者…?
 後コメントで主人公一人称だけではつまらないと言う意見を貰ったので試しに他のサイドを入れて見ました。
良かったら意見ください。
……まぁ更新ペース落ちるし、感想も返せないかもですが。
次はようやく原作です。
つかの間のチートを楽しんでください。
(その後ボスラッシュだけどな!)

 追記

 まるでルビ機能なんて物を全然知らなかったうっかり野郎がいるらしい。
 うん、…まじで指摘されるまで知らなかった。
 とりあえずルビつけ直して見ました。
 違和感があるかもですが、これからもよろしくお願いします。


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原作開始 織斑日記!七!

投稿遅れて申し訳ございませんでした。(土下座)

これには海よりも深い理由が結構ありまして。

束さん無理じゃねとか本気で思い始めたり
束さんにエボルト混ぜたけど何かあれだなってことで書き直したり
束さんの表現があれだったりしたのだ。

何とか束さんをどうにかする方向は決まったので5日目に筆が何とか進みました。

だからモンハン4Gとかダブルクロスとかにハマってたとか、
かぐ告とかビルドとかにどハマリしたとか、

なろうで虚無の時間を過ごしたとかそんな訳無いんだからね!

ごめんなさい。

本編始まります。


 「ーーーーあは♪」

 

 機械の部品らしきものが無造作に散らばる一室で不思議な格好をした少女が嘲笑う。

 目は隈だらけ。まるで何日も寝ていないかの様に黒く。それでいながら健康的という調子の少女の姿。

 

 金属の床には至るところに金属の部品が散らばっている。

 意味があって置かれている機材も有れば、何の意味もない機材まで置かれている。

 その中で少女が暗闇の中、空中投影されたディスプレイの表示されたデータを確認しながらキーボードを叩く。

 片手で7つのディスプレイ毎にセットされているキーボードを片手で全てカタカタと叩きながら、片手でコップを傾ける。

 

 中身は真っ黒のコーヒーだ。少なくともまともな人間が飲めたものではない。

 

「あは♪あははははは♪」

 

 どこかタガの外れた様に嘲笑う。傍から見れば異質過ぎたその少女。そこには深緑色に染まる2つの打鉄のうち、一機が紅く変化していく映像が流れた。

 

「∑モードの限定解除、それに伴うISの限定制限解除!最高だよいっくん!」

 

 ソレは待ち望んでいたかの様に嘲笑う。

 

「あのドイツの不細工なアホシステムが発動していっくんが死にかけた時は慌てたけどさあ…まさかいっくんが自分で何とかするとは…」

 

  いくら搭乗者が弱いとはいえVTシステム。少なくとも代表候補以上国家代表未満と見ていたんだけどね。

 

「しかし、だからこそ何でいっくんのことが"一般人"にしか見えなかったんだろ?」

 

 しかし何処か腑に落ちなかった様に思う。

 

「う〜ん、まあ良いや!」

 

 しかし気にしなかった様だ。

 その少女は一つのコンソールを動かし、格納庫においてあるISをモニターに移す。

 ソレは深い灰色のISだった。

 異常なまでに手が長いそのIS。それだけではなく今のISでは珍しい全身装甲型(フルフェイス)のISだった。

 

「ゴーレムⅠ号機に、それと」

 

 少女はもう一つのコンソールを動かし、もう一つ目のモニターを見てみる。ソレは何処かのISの格納庫だろうか?

 そこにある黒い色と赤で縁取られたISがある。少女から向かって左にはそのISの全身の様な大きさも有る巨大な砲台。

 

「それなりに改良したVTシステムか。まぁ凡人にしてはよくやった方だよね。不細工には変わりないけどさ。」

 

 辛口な評価を下した少女。しかしその一見何もなさそうなIS。そのモニターに映るISを見て少女は嘲笑う。

 

「やっぱりさ。いっくんの為にも不細工でも"メイク"は大切だよね!」

 

 そう言うと何処から取り出したのかとあるデータを持ち出して、キーボードを叩く。

 

 『OPEN CODE Genius』

 

 

 無機質な機械音声が聞こえる。途端に宙に地球儀が映る。

 地球を模したそれに、一つ一つ点が映る。その一つ一つがISコアを表している。

 その中でも遥か西側の地区を拡大する。

 そこは西ヨーロッパに位置する国……ドイツのとある施設だった。

 

 その中にある複数のISコアの反応の中に一つだけ、黒く変色している反応がある。

 

「OPEN CODE Geniusってね!」

 

 少女は迷いなくその反応を押して、そのISコアに干渉する。

 すると地球儀を模した模型は消え、代わりにモニターに映像が映し出される。

 そのモニターには本来、幻想的な風景が描かれるはずのソレは黒く変色しており、ひび割れた硝子の様に風景そのものが割れていた。

 

 その中にいる少女はブリュンヒルデ……織斑千冬を模した泥人形に成り果てて蠢いていた。

  だが織斑千冬本人とは似ても似つかない泥人形であった。

 

「ん〜〜、やっぱりいつ見ても気分の良いものでは無いね。やっぱりちゃんと"メイク"しなくちゃね!」

 

 少女が笑うような口調でそう言うと、片手に持っているそのデータを見ながらキーボードを打ち込んでいる。

 そのデータはとあるIS操縦士(織斑千冬)のもので、その精密なデータを高速でそのISコアに送り込む。

 

 すると織斑千冬を模した泥人形は姿を変え、顔と身体が織斑千冬本人に似ついてきた。

 それだけでは無く、織斑千冬本人が現役当時身につけていたIS……暮桜まで模した泥の人形が完成した。

 

「これでいっくんのお膳立ては完成!っと♪後はゴーレムⅢと時期を見計らって福音も動かすかぁ♪」

 

 何処までも陽気に振る舞い。狂ったかのように楽しんで嘲笑う。

 だが急に氷を浴びされたかのように落ち着いて一人言を呟く。

 

「∑モードの限定解除。あのいっくんが持ってるISが解除したのか。」

 

 何かを分析するかのように語りだす。

 

「あの機体は何か特別な機体でも無い。コアも従来のものと同じだ。となるといっくんの方に……とにかく、現状は∑モードの観察及び、いっくんの成長が最優先だ。

 ……∑モードはISを通じて人の可能性を覚醒させる為の機能だ。私ですら見えなかった可能性をいっくんは見せた」

 

 その少女は冷静な目で一つのモニターを見ている。

 

「あの∑モードのおかげで紅椿用のデータは集まった。とりあえず∑モードを発動させれば倒せる範囲の性能にゴーレム達は仕上げた。後は適当に作った白式をあげてそれで終わりだ。それからはいっくんの可能性次第だ。」

 

 そう言うと少女はコップを再び傾けた。

 

人々と解り合う"可能性"(本来の織斑一夏)でも無く、人々を拒絶する"可能性"(篠ノ之束)でも無い新たな"可能性"(織斑一夏)…か。」

 

 そのコップの中身は何処までも黒かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 (^^)月(^o^)日

 

 久しぶりの日記。本当に久しぶりだったなこの日記。かれこれだいたい3〜4ヶ月振りくらいだろうな。  

 

 とりあえず3ヶ月くらいの間普通に学校に通えた。

 

 というのも第一男性IS操縦士は出たとは言ったが、俺の場合前例もある為、顔写真とかはなくなった。

 ちなみに親友にはちゃんと言った。

 

 俺の親友たちからは、

 

 おいハーレム王―――近藤の貯蔵は十分か

 

 とか

 

 ウソダドンドコドーン!オンドゥルルラギッタンディスカー!

 オリムラサン!ナゼミテルンディス!ドウテイヲ!ドウテイヲステタンディスカー!

 

 とか抜かしてたので軽めのげんこつを入れておいた。

 後一応言っておくが俺はモテる。

 顔とかもあるが、積極的にみんなとコミュをしながら鈴と絡んでいたのでめっちゃモテる。

 ラブレターが来るけど稀にイタズラ。9.5割くらいまで本命だった。

 特にバレンタイン。俺だけ丁寧にラッピングされたハート型のチョコタワーが出来てた。

 

 ……そういえば毎回鈴からの義理チョコを弾の部屋で食べてたなあ。

 告白がある度に断ってフォローを入れているけどね。

 その度に弾がモテる奴っていいよなあ゛あ!モテたいなあ゛!

 とか抜かしてた。

 

 一応モテるためのフォローは入れているのよ。

 

 コミュ力とかそこらへんさえあれば問題無いのよ。弾も顔とかはまぁまぁイケメンなのだ。ただ少しヘタレなだけなのだ。

 ……まぁぶっちゃけ近くに俺がいるのが悪いっぽいな。うん。

 そらapp13のヘタレとapp18のみんな友達!コミュ力の暴力を比べて前者なんて物好きが少ないのは当然だけどね…。

 

 数馬に関してはそこまで気にしなかった様子ではあった。

 後は毎回訪れる全ボタン事件。一年ながら毎年俺の中心で起こる竜巻なのだ。

 ちなみに中学2年目までは鈴が助けてくれていたが、3年目になるとそうも行かない。

 とにかく同級生と後輩の目が血走っているのだ。この鍛え上げた俊足がなければ即死だった。

 ボタンは全部死守して終わった。弾の妹さんが欲しそうに見ていたのでまぁ使わないしと制服のボタンを外して渡した。

 

 めっちゃ喜んでくれた。

 

 とまあ3年目は最後のエンジョイをして終わった。

 本当にはしゃいだ。本当に大切な思い出だったなあ…

 

 さよならグッドライフ……こんにちはデッドライフ。

 

 ………やっぱり青春っていいよな!

 

 

 

 

 

 とこんな感じで中学最後にして平穏は死んだ。

 とりあえずハンドグリップとリストバンド、それと木刀にこの日記を持ってIS学園に向かおう。

 

 ……さよなら平穏。こんにちは波乱。

 

 

 

 

 

 (^o^)月(^o^)日

 

 

 念願のIS学園だ!わーい!

 

 うん、…現実逃避している場合では無かった。

 

 今の俺は餌だ。周りは飢えた狼だ。 だいたいこんな感じである。

 というのもきついのだ。視線が。左も女。右も女。胃が早速キリキリする。

 考えて欲しい。他が制服を着ている中で、自分だけが私服で来たときの恥ずかしさを。

 そんな中で不安を感じないなんて出来ないのだ。

 

 ましてや俺の席は最前列ど真ん中。迂闊に周りを見渡せない。

 そしてざわつく周り。

 

 はっきり言って辛いです。胃がキリキリする。そんな恥ずかしさを覚えながらチラッと篠ノ之の方向を見てみる。

 プイっと横を向かれた。何でさ。

 

 そんな中で山田先生の挨拶が始まったが…まあ反応はない。無理も無い。俺は周りの視線が死線になっていて喋れない。他の女子も俺を血走った目線で見るのだ。

 

 ぶっちゃけこの状況で挨拶を返せるのは勇者だけだろう。そう確信出来るこのビミョーな空気。

 あっ少し泣きそうになってる。それでも自己紹介に漕ぎ着けた山田先生には敬意しかないわ。

 

 俺の名字は織斑一夏。つまりは"お"だ。

 

 ……早いのだ。自己紹介の番が。今の俺の心臓はバックバク。はっきり言って緊張しまくりで俺の脳がやばい。何も考えられない。頭の中真っ白とはこの事か。

 

 

 そんな中で呼ばれた俺の名前。

 

 こんな頭真っ白の中で自己紹介が事故紹介になるのも仕方ないよね!

 もうめっちゃ恥かくくらいなら切ったほうがいいよね!もう原作ですら無理何だからチキンにできるわけ無いじゃん!

 

 

 

 

 

 

 

 てことで原作と同様にムリ―――

 

 

 

 ―――なんてことは無い。

 

 確かに頭の中は空っぽだが、あらかじめカンペを用意しておけばどうってことはないのだ。

 あらかじめカンペを机の上にセットしておいてたまにチラチラ覗くだけだ。

 

 さす俺。少なくとも原作の中の難関を乗り越えたぞ!

 

 てことで最初の難関。姉さんの出席簿アタックを避ける事に成功した。千冬姉なんて呼ぶ初歩的ミスなんて犯すわけ無いだろ。

 姉さんも俺を叱ること無くそのまま普通に自己紹介が終わった。

 

 

 ……ティガレックス亜種並のバインドボイスはあったが。

 一応補足しておくが、原作の姉さんは不戦敗になっているのにも関わらずヤベー声援が来る。

 

 ましてや何が原因だったか姉さんが優勝だったのだ。本当に無敗のまま引退した文字通りのレジェンドなのだ。 

 ちなみにその時の俺は誘拐されたがって人目の無いところを渡り歩いて居たのだが何故か誘拐されなかった。

 姉さんの準決勝が終わってからようやく誘拐されたのが原因ではないだろう。多分。メイビー。

 

 話を戻そう。

 

 G級ティガレックス亜種の咆哮がギルクエ140のティガレックス亜種の咆哮になっているのだ。ど根性をつけていなかったら完全に即死です。

 ISの機能を活かして耳栓して無かったら本当に即死だった。

 とりあえず自己紹介が終わって休み時間だ。

 

 

 休み時間中に篠ノ之が来た。この視線から逃れる為に篠ノ之と一緒に屋上に行くことにした。

 ……なんて事は無い。剣道がどうたらとかそこらへんの話だ。だからそこの集団さん。そんなに期待された様な目で俺を見られても何もできない。

 

 そんなこんなで2時限目が始まった。

 

 

 結果?うん、…分からん。

 

 ちょびちょび読んでたし、参考書も見てたのよ?あのくっそ分厚い奴。

 ただ中身はしがない大学生。ましてや前世の様な所とはまるで違う常識と知識なのだ。身体を鍛えることを重視してたし。

 おまけにこのIS学園ってめっちゃ倍率高いのだ。 

 

 例えるならスマホ文化についていけないうっかり遠坂。

 コンマイ語がわからない一般人。

 某神座万象シリーズの理論に????でしか返せない一般人なのだ。

 

 そんな一般人にこのIS学園の授業が付いていけるかと言われてもぶっちゃけワケワカメ。

 一応ISの技とかISの謎とか条約がうんたらとかは原作知識とちょびちょびやってきた勉強で何とかなるのよ?

 

 ただIS整備問題。テメーは駄目だ。

 

 というのもIS学園の本来の創立目的はISを整備出来る人材を育成するというコンセプトなのだ。

 普通のIS学園とは整備を習うための学園であって、操縦士とかそこらへんは国の行うテストによって適正があるものが選ばれて、国が建てた施設でISを操縦するようだ。なので操縦士と整備士というのは明確に言えば違うカテゴリなのだ。

 一応このIS学園は世界一の規模を誇る学園なので、IS操縦士の育成及びISの整備士関連を両立出来るというのもある。だが言ってしまえば国から建てられる施設の方が練習はできる。

 基本的には大体整備関連の授業が多いのだ。

 

 では何故その施設に俺を入れずにこうなってるかと言えば、IS学園はセキュリティ面では本当に素晴らしいのだ。セキュリティ面と人材。それと入学難度の高さから本格的に女尊男卑になっている人材が施設に比べて遥かに少ないというのもある。

 ……というよりも施設もIS学園も対して変わらないからまともなIS学園に入れたってのが本音だ。

 

 んでそんな整備重視のIS学園だけど…

 

 何が何やら単語が多すぎて付いて行けないです。もう分からん。整備についての順序とかまるで理解出来ない!山田先生が聞いてくるのだがとりあえず整備関連がまるで分からないと言っておいた。

 めっちゃ分かりやすく教えてくれた。本当に分かりやすい。それと教室の中で5人くらいがああ〜って顔してたのは見逃して無いからな!お前ら分かって無かったじゃん!

 

 まあそんなこともあって2時限目は終わった。

 めっちゃスッキリした。わからない所がわかるって素晴らしい。

 

 

 

 

 そんなこんなの考えていたらいかにもお嬢様らしい声。声がする方向を見てみたら金髪縦ロールのくるくるっとした特徴的な髪。

 目つきは鋭く、忌々しい物を見るかの様な目だ。

 そして話した言葉はまあ!何ですのとかそこらへんの言葉。誰もが解る面倒くさい人だ。

 

 ……それでも代表候補生なんだけどね。

 

 この面倒くさい人は代表候補生にして一夏君の暴力ヒドイン。

 名前はセシリア・オルコット。そしてちょろい

 うん。とにかくちょろいのだ。こんな最初まじでツンツンしてるかと思えばISで一回勝った程度でさす一だ。さす一。

 どんだけちょろいのだアンタ。ツンデレを超えていってツンチョロだよツンチョロ。

 そんな好感度がオーバーしやすいチョロリア・チョロコットなのだが。

 

 いろいろな意味で不味いのだ。この人。

 

 まずは好感度オーバーしたら暴力ヒドインを回避出来ない癖してチョロ過ぎて好感度オーバーしやすい。

 おまけにその暴力がビット兵器使ってレーザー攻撃だ。

 本当に俺を殺す気満々じゃないか…。

 

 しかも食べて下さいと言う飯はクソ不味いらしい。

 

 家柄も財産狙われている没落寸前の貴族家庭とかもうアカン。

 こんだけデメリット抱えても戦力的には初心者のときの一夏君に負けそうになる始末!

 

 ……一応フォローしておくけどサポートとかに徹していれば確かに戦力には繋がるのよ。戦況を離れた場所で見れる指揮官ってのは大切だし。 

 ただアリーナとの相性とか云々込みでも初心者の一夏君に負けそうになるのは流石に…

 どのイベントもとにかく不味い。殺意は高いわそのくせ戦力にはならんのでね。

 だからといって絡まなければそれはそれで面倒くさい奴なのだ。

 ほら、現に今絡んできてる。こんな調子で毎回絡まれると本気でうっとおしく思うのだ。精神的に。

 

 ―――このIS学園の最初の超難関、そいつは

 

 

  チョロリア・チョロコットなのだ。

 

 

 そこで俺は対策を思いついたのだ。

 

 ……それはめっちゃ煽り倒す。とにかく煽る。好感度上がってもオーバーしない程度に煽る。

 

 まあクラスの俺に対しての印象が悪くならないように煽るけどさ。ただでさえこの針のような視線が辛いのに敵を作ってどうすんの?って話さ。

 媚びるのもストレスが溜まるのでNG。というよりも姉の顔に泥を塗りたくはない。

 て事でそれなりに言葉を選んでこの場は穏便に終わらせる。

 

 え?唯一教官を倒したエリート?

 

 ……逆にあれ相手に勝てる奴なんぞいるのか…?

 ブリュンヒルデだぞ。しかも体感モンドグロッソ出たときくらいの強さの。

 

 まぁ無いな!

 どうせ手加減した山田先生だろう。おまけに専用機を使って。

 

 当然俺は本当のことを言った。

 

 (本気の織斑)教官を倒せるなんてすごいな!俺なんてSEを5割削った程度だぞ。

 

 ええ!何せ私、(手加減した山田)教官を倒したエリートなのですわよ!

 

 ……?5割…?初心者が?(手加減した山田)教官のSEを5割も削った…?専用機も無しで!?

 

 こんなアンジャッシュが恐らくはあった。

 それについて問い詰めようとしていたセシリアだが、チャイムがなって打ち止めになった。

 

 

 ……もしも、

 

 セシリアが、本当に本気の織斑先生を倒していたら…?

 もしかしたらこの女尊男卑の言動のせいで代表候補止まりなのかもしれなかったら…?

 ……無いよね…?

 

 俺は少し不安になった。

 

 

 

 

 

 

 

 3時限目だ。

 

 クラス代表者を決めるらしい。

 

 クラス代表とは文字通りクラスの顔だ。クラス対抗戦、生徒会のクラス毎の代表者出席等、そこらへんの行事に出席する代表のことだ。

 

 クラス対抗戦は入学時点での各クラスの実力を

 そのため、クラス対抗戦はとても人気が出る。

 生徒会のクラス毎の代表者出席は、行事のプリントとかそこらへんを配布したりするだけというまぁ雑用の仕事だ。

 真面目にそんなもの金髪縦ロールに任せておけば良いものを面白がって俺に投票するのだ。

 当然それを良しとしない縦ロール金髪さんが一人。演説会の始まりですね。

 

 

 

 

 

 

 うん、…良くもまああそこまで煽れるなあと素直に尊敬したよ。

 俺ですら学校内に敵作るの怖いのに生徒どころかうちの姉を敵に回すとか本当に死にたいのかな?(震え声)

 

 うん、…まあ一夏君はイギリスの悪口程度で済ませたがこの俺は原作より甘くはない。

 てことで辛口行こうか!

 

 

 

 原作セッシーめっちゃ切れてるわ。

 うん。これ俺煽るの専門分野だわ。

 比較対象にだしたお縄になった代表候補生出したのが吉と出たっぽいな。

 とりあえず煽ってから気付いた。

 煽って見たが結局は原作の様なものだわ。

 

 

 

 ………これセッシー回避出来ないのでは?

 

 織斑先生に実力見せてしまったので手加減したら出席簿飛ばした後クラス全員に模擬戦の内容ばらすの目に見えてるし。

 あっ

 これ俺死んだんじゃ…?

 

 

 良し。セッシーがチョロインになる前に叩き潰す。

 

 瞬時加速でぶっ潰す。

 ビットも煽りながらぶっ潰す。

 そして圧倒的な実力でぶっ倒す。

 

 

 多分セシリアはチョロイン回避できないんじゃね?

 煽るのを失敗して決闘に持ち込んでしまった。

 

 ……しゃあないねん。間接的に姉を馬鹿にされてるって知ったら切れるお年頃やねん。

 ていうかこの時点で原作沿いならもうアカンくないか?無様な姿を見せるのは色々な人の顔に泥を塗る行為だ。

 ていうか俺がやりたくない。よって媚びるのも無し。

 

 

 あれ?詰んでね?




バナージで閃いてしまった。
一夏君の中の人で解決策が思いついたぞ!

てことで何とか筆が進みました。

ぶっちゃけはじめはエボルトにしようとしてたし、事実エボルトの案はまだ生きてます。もしかしたら本編中にエボルト出るかもしれません。

ペースは相変わらず落ちますが許してください!

次にセシリアSide書きますから!





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織斑日記!八!

指摘とかが多かったのでこの話を自分なりに直してリメイクしてみました。
話の本筋は変えていないので問題無いと思います。

本編どうぞ


 ―――初めはその男を見て、まぁ普通の媚びへつらっている弱い男としか見えなかった。

 

 自己紹介の時は堂々と発表していたのは評価するが、周りの視線にビクビクしている様に見えて、情けないと思ってしまう。

 ……まぁこんな女だらけの所にか弱い男一人。こんなものでしょう。とはいえ男といえど世界最強の弟。少しは期待を持っていたのに、落胆してしまう。

 

 ISの知識も所詮程度が低い。

 

 ……はっきり言ってイライラする。IS学園の中でも世界最大の規模を誇るこの学園。エリート中のエリートが集まる学園に、ただ唯一"男でISを乗れるから"と言った理由で入学するなんて馬鹿馬鹿しい。

 このIS学園は皆が皆苦労して入学しているというのに、その男はただISが乗れるからと言って軽々しく入学したかのようにしか思えない。

 

 ……まぁ、その怒りは一旦置いておこう。

 

 だけど本人にせめて意識は持って貰いたい。か弱い男風情だが、エリート中のエリートの集団にいるということ。そして国家代表候補生と同じ学園にいるのだ。

 せめてそういう意識を持って貰う為に、私は椅子から立ち上がり、その男の方に向かった。

 

「ちょっと、よろしくて?」

「ん?」

「訊いてます?お返事は?」

「うん。訊いてるけど、それがどうしたんだ?」

 

 その男は困ったような顔を浮かべている。……私を国家代表候補生だと知っての態度かと不安になる。

 

「まあ!何ですの、そのお返事は!私に話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度というものがあるのではないかしら?」

「ええっと、悪い…?」

 

 ……もしかして本当に私を誰だか知らないのでは?見下した様な目で質問をする。

 

「一応聞いておきますけど。私の名前。知っているんでしょうね?」

「確か、セシリア・オルコット。イギリスの代表候補生…だったよな?」

 

 流石に私の名前ぐらいは知っていたかと安心する。ISに対して向き合うことそのものへの意欲はあるようでほっとした。

 

「ええ!付け加えるなら私は入試首席ですわ!…しかし、そのISに対する勤勉さは褒めて差し上げてもよろしくてよ?」

「はあ……」

「ISの事で分からない事があればまあ……頭を下げて頼みこんで下さったら教えて差し上げてもよろしくてよ。何せ私、入試で唯一教官を倒したエリートですから!」

  

 私はエリートだ。弱い男とはいえ、先生に質問をする所や、休憩時間中に復習をする等、ISにしっかりと向き合うことは評価できる。そう判断して提案する。

 

「へえ!教官を倒せるなんて凄いな!俺なんて教官のSEを5割削った程度だぞ」

「ええ!何せ私は唯一教官を倒したエリートなのですわよ!貴方はその事実をもっと重く受け止めるべき…?」

 

 5割?5割と言ったか?この男。弱い男が?専用機も無しで?ISの経験も少ないままで?

 頭が回る。その事実を認めたがらない自分がいる。たかが弱い男。ISに乗れるだけ。そんな事実をかき消すかの様な一言に自尊心が崩れかける。

 頭の中の血管が千切れそうになる。怒りが沸騰してくる。聞き耳を立てていた周りがざわめきだすが、そんな事を気にする余裕は無かった。

 

「貴方!それはどういうことですの!」

 

 聞かずにはいられなかった。何故弱い男が教官を倒すとはいかないまでもSEを5割まで削れたのか。

 何故こんな男が…!

 

「いや……どういうことって言われても。結局は勝てなかった訳だしさ、とりあえず少し落ち着いたら……」

「これが落ち着いていられ―――」

 

 言葉を遮る様にチャイムが鳴る。やり場を失った怒りが頭の血管の中をぐるぐるしてムカついてくる。

 それを何とか遮る様に捨て台詞を吐く。

 

「っ…!また来ますわ!逃げないことね!よろしくて!」

「ああ、うん」

 

 ツカツカと腹立たしそうに自分の席に戻る。その背景には怒りが一歩一歩刻まれていた。

 周りはさっきのやり取りでとてもざわめいているが、それどころではない。やり場のない怒りが全身に現れ、歯を食いしばって男を睨みつける。

 

 そんな中で一夏はただ苦笑しながらため息をついた。

 

 そんな中で3時限目は始まった。

 

 

 

 

 

「それでは、クラス対抗戦に出る代表者を決めたいと思う。」

 

 凛とした声が響く。さっきのざわめきが嘘の様に消え、織斑先生の声に集中していた。

 

「クラス対抗戦に出る代表者だが…これはクラスの代表としても活動してもらう。

 ……活動とは言っても生徒会への出席及び書類の配布、それとクラスの対抗戦の出場が主な活動内容になっている。それと一度決まると変更はないのでそのつもりで。期限は4月末までだが…都合が良いため今決めることにする。代表の決め方は推薦で決めることにする。自薦と他薦は問わない。では誰か推薦するものはいるか?」

 

 当然、目ざとくそれを気にする代表候補生。だが自薦するのは何処か違うと確信していた。自分の実力に自信があったから自分が推薦されると確信めいた物を感じたのだ。なのに自分から自薦するのは違うと判断した。

 そんなセシリアの思考をすくい取ったかのように一人の生徒がセシリアを―――

 

「はい!私は織斑くんを推薦します!」

 

 否。その名前を呼ばれたのはよりにもよって織斑一夏であった。

 

「はい!私も!」

「私も織斑くんが良いと思います!」

 

 湧き上がってくるのはあの男を推薦する声ばかり。

 

 よりにもよってあの男に私の座が奪われかねるなど!そういう思いが湧き上がってくる。

 その肝心の男の姿を見てみると苦笑しながらも受け入れる様子が映っていた。

 

「織斑。推薦されたのはお前だけだが良いのか?」

「……どうせそう言っても変えるつもりは無いんだろ?織斑先生」

「教師には敬語を…。まぁいい。確かに変えるつもりは無い」 

「なら俺は俺に自薦をする」

「そうか。ではクラス代表者は織斑に決定するが。他にはいないか?」

 

 最後に声がする。このままではあの男がクラスの代表に!それだけはいけないと大声を張り上げた。

 

「待ってください!納得できませんわ!」

 

 怒りのままに言いたい事をヒステリック気味に叫ぶ。

 

「クラス代表という大事な役目を…それも男が!認められる訳が無いですわ!」

「何だオルコット?そんなに認められないなら自薦すれば良いじゃないか。」

「ええ!自薦はしますわ!だけどそれを踏まえてもこんな悪手を見逃すわけにはいきませんわ。」

 

 余りの怒りに頭から血管が千切れているのか。自分でも思ってもいないことを口にする。

 

「そのような選出は認められません!だいたい、少しはISに対して勤勉さはあるようですけど、それにしたって男がこのクラスの代表だなんていい恥晒しですわ!私にそのような屈辱を一年間も味わえと?」

 

「実力的に言えばこの私がクラス代表になるのは必然!それを、ただISが動かせる男だからと興味本位でされては困りますわ!私はこのような島国までISの修練に来ているのであって物見雄山に来ている訳ではありませんわ!」

 

「いいですか!クラス代表は実力あるものがなるべき!そしてそれは私ですわ。だいたい、モンドグロッソ優勝国とはいえ、文化としても後進的な国で暮らさなくてはいけない事自体、私にとっては屈辱的で―――」

 

 思ってもいない言葉がすらすらと出てくる。

 その瞬間。大きく手を叩く音が二回。

 言葉を止め、そこを見ると。

 

「とりあえずその辺にしたらどうだ?オルコット代表候補生」

 

 忌々しい男だった。すっと立ち上がり、少しすればいつもの苦笑するような顔に戻ってそうな男は。

 堂々と私を見据えていた。

 

 

 

「まずはクラス代表がなんだの言っていたけど、お前の言うとおり興味本位でやったって言う推薦者は確かにいるんだろう。」

「ええ!その通りですわ!だからこの私に―――」

「でも興味本位でも皆俺に推薦してくれているんだ。ならその期待に応えなきゃ駄目だろ?」

「っ!ふん!だとしてもふさわしくないのは事実でしょう!」

 

 セシリアは怒りを隠さずに怒鳴るように吐く。だが一夏はそれに苦笑をしながら

 

「あ〜っとセシリアさん?あんた代表候補生だっけ?」

「ふん!何を言うかと思えばそんな事を忘れるなんて。やっぱり男というのは―――」

「あ〜っと違う違う。そうじゃなくて代表候補生なら言葉の使い方に気をつけた方がいいよ。暴言で代表候補生そのものが降格になってお縄についたやつもいるからね。確か―――そいつは」

 

 「織斑」

 

 一夏がその代表候補生の名前を口にしようとした途端、織斑先生が一言で制し、ばつが悪そうに首を振った。

 すると一夏は流石に不味かったかと反省をしながらも言葉を紡ぐ。

 

「…まぁ兎に角暴言で国家代表候補にふさわしくないと判断して降ろされた奴もいるからな。発言には気をつけた方がいいよ。

 ―――それとも、まさかイギリスはこういった暴言をしても許される国なのかな?だとしたらこの"文化が後進的なこの国"では暴言だらけのイギリスとは違って許されないから気をつけた方がいいよ。」 

 

 多少皮肉を混ぜて一夏がセシリアの祖国を馬鹿にする。愛国心のあるセシリアは、当然祖国を馬鹿にされて怒らない訳が無く、怒気を膨らまして一夏に怒鳴る。

 

「貴方!私の祖国を侮辱していますの!?」

 

 すると一夏はそんな煽りにムッとした表情で語りかける。 

 

「先に後進的な国と言ったのはそっちだろうに。それにセシリアさんはイギリスの国家代表候補生なんだろ?なら国家代表候補生がそんな態度とっていたらイギリスそのものまでそんな国だと思われても仕方が無いんじゃないかな?」

「っ!だとしても!」

 

「それにさ。」

「?」

「ここにセシリアさんが侮辱した文化が後進的な国の生まれがどれ程いるのか考えてから発言をして欲しかったな。」

 

 するとセシリアは周りを見渡した。

 

 辺りには自分に敵意や、ばつの悪そうにセシリアを睨む生徒の皆が。

 そこでようやく気がついたのだろう。自分は何と取り返しの付かない事をしたのだと。

 

「別に俺は良いんだけどさ。この日本にも愛国者はいる訳だし、そういうことを言うのは時と場合を考えてからにしたほうが良いと思うよ。それにさ…?」

「……?」

 

 一夏はセシリアの目を見て堂々と宣言する。

 

「代表になるのは実力的に言えば……と言ったな?ならお前よりも俺の方が実力的に言えば上だ。」

「んな…!」

 

 一瞬青い顔をしかけたセシリアだったが、その言葉で火がつく。

 思い描いたのは血が滲むほどの努力を得て手に入れたイギリス国家代表候補生の席。

 天才では無いにしろ努力して努力して努力で天才を抜いて国家代表候補生に上り詰めた秀才だ。

 そこまでの過程に何度も挫折をした。何度も血が滲んだ。何度も膝を曲げた。

 

 先に行く1を知って10を覚える天才達に、何度も挫折を覚えた。

 だからこそ1を知って1しか覚えられないからこそ100を知って100を慣らしてきたその過程と自信を、嘲笑うその行為に。

 激怒するのは仕方の無いことだった。

 

「ふざけないで下さい…!ふざけないで下さいまし!」

 

 一瞬冷静になった頭がまた火を付けた。

 

「吐いた唾は飲めませんわよ!決闘ですわ!」

 

 机を大きく叩きながら怒気を思わせるその言葉に、誰も何も言えない。そんな中でただ一人。

 

「日本の事を侮辱した割にはそんな言葉を知ってるんだな。ああいいぜ、四の五の言うより分かりやすい。」

 

 真剣な目でセシリアを刺しながらはっきりと返した。

 

「言っておきますが、わざと負けようものなら小間使い、いえ、奴隷にしますわよ?」

「侮るなよ。真剣勝負で手を抜くほど腐ってはない。」

「そう。何にせよいい機会ですわ。貴方がそんな減らす口を叩けないように徹底的に叩き潰してあげますわよ!」

 

 セシリアが机を叩きながら怒鳴る様に叫ぶ。一夏はそれを見ながら少し考えるそぶりを見せ、口を開く。

「そうかよ?だったらハンデはどのくらい付ける?」

 

 その言葉にセシリアは嘲笑った。やっぱり男なんてこんなものだと落胆を覚えて、見下した様な目で一夏を見る。

「あら?早速お願いですか?やっぱり減らず口ではありませんか。」

「いや?俺がどのくらいハンデをあげようかなってさ?」

 

 一夏がそう言った途端。クラスからどっと笑いが起きた。

 

「お、織斑くん、それ本気で言ってるの?」

「男が女よりも強かった時代は終わったんだよ?」 

「だ、代表候補生相手に初心者がハンデを付けるなんて、無茶だよ。」

 

 一夏の周りから嘲笑するような声が周りから聞こえる。だが一夏はその周りを見渡すと、ニヤリと笑いながら再びセシリアの方を向く。

 

「ああ。俺はそう言った。」 

 

 声のトーンを下げて重い声で放つ。

 

「国家代表候補生相手にハンデを付けると言った。それとも耳が遠くなったのかな?"オルコット国家代表候補生"?俺はハンデを付けてやると言った。」

「…っ!どこまでもコケにしてえええ!ハンデなんていりませんわ!貴方は!絶対に叩き潰す!」

 

 

「良し。話は纏まったな。」

 

 話を終わらせようとする織斑先生。

 

「では勝負は一週間後の月曜日、放課後のアリーナで行う。詳しい時間帯は後に知らせる。各自準備をしておくように。後、織斑は放課後教室に残る事。では授業を再開する。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな煽りもあって3時限目が終わって4時限目。

 

 4時限目の初めに専用機を学園から見繕うとか何とか。周りはめっちゃ驚いて羨ましそうにしてたり。

 

 後はセシリアが何か煽って来たけど逆に煽り返した。

 

 専用機じゃなくても俺は別に良いんだけどさ。ていうかむしろ訓練機の方がいいハンデになるんじゃないか?

 

 って煽り。

 

 当然チョロコットは怒るわ怒るわ。

 ……何か楽しくなってきたな…。

 潜在ドSだったのか…?俺…?

 

 まあいいや。  

 

 んでこの後篠ノ之が例のやべー奴の妹だと判明。教室はざわめくわな。

 ……流石にあのやべー奴の妹なんてレッテル。本当に不憫極まりないので、助け舟を出すことにした。

 

 いくら姉が姉だからってそれを無条件に本人に求めるのは酷だぜ。比べたがる気持ちは分かるし、俺も何度も比べられたけどね、本人にだって意思ぐらいあるんだぞ。

 それにさ、俺は気にしてないけどさ、もしかしたら本人は比べられるのは嫌だと思ってるかもだしさ、そういう事はあんまりしない方が良いよ。

 

 てことを言ったはず。

 

 何とか静まり返って授業が再開した。

 

 ……ぶっちゃけこういうことは慣れっこだからね。小学生の演技を無くしただけでこういうことは何度もやってるからね。

 まあそんなこともあって4時限目が終わり、昼休みに篠ノ之を誘って飯にした。

 

 今日の昼飯はご飯に味噌汁、それにサバの塩焼きかな?実に庶民的でいい感じだ。

 ヘルシー思考を言い換えてしまえば貧乏思考だからな。

 油の乗ったトロとか極上のサーロインとかは苦手なのだ。

 逆にヘルシー…地味な日本食を好むのだ。というか洋食の一部が駄目な珍しい体質なのかな?

 

 よってこれくらいの庶民食がいい。……というか何か俺よりも格段に料理上手くね?IS学園?

 若干の敗北感を胸に篠ノ之と話をしていたらそこへ話しかけてくる3年生。

 何でもあの決闘騒ぎ。結構騒ぎになってるらしい。んでISについて教えてくれるってことらしいが…まぁ断る。

 

 ああ、いえ、心配してくださるのは嬉しいのですが、これは自分の撒いた種。なので自分で回収しようと思っています。

 ……それに、俺は世界最強の弟。あれくらいに勝てないようでは姉に笑われてしまいますよ。

 

 と、冗談混じりで話した。

 まあ、どうやら普通に諦めたようだ。あの3年生の人が帰った後は篠ノ之が何か聞いてきた。

 

 お前は"千冬さんの弟"ってレッテルで見られて文句はないのか?

 

 とかそんな感じだったかな?……これ十中八九自分の事を重ねて質問してるよね。一見したら分かりづらいしなあ。

 まあ察してそんな感じで答えた。

 

 姉さんは姉さんだし、俺は俺だよ。たとえそんな目で見られたとしても、俺は俺だと自分で認めてるから特に文句は無いぞ。

 ……まあ比べられるのはいい気はしないけどね。

 

 と答えた。

 

 そしたら感じることがあったのか。下を向いて何か考えて。

 気がついたら道場に居たんですけど。

 

 いや、本当に。何でいつの間に道着を着て竹刀を持って立ち会ってるんだろうね。

 そこから普通に剣道をした。   

 

 結果?まぁまぁ篠ノ之は強くなったんじゃないか?全国で優勝することはあるなと思った。

 小学生一年生の時の俺でも手加減抜きで何とか勝つぐらいだぞ。

 ……うん。小学生一年生で勝てる腕なのだ。そこから休むことなく素振りとか色々やりすぎて人外の領域まで達した俺にとって篠ノ之の太刀筋とかまじでスローなの。スロー。疑似ゾーンを発動して反射神経がおかしくなったからかな?これは。

 

 確かに小学生の手加減は超えたけど、そこからさらに6段階の手加減が増えただけだって言うね。

 後6回。後6回。俺は小学生の自分の時よりも多く手加減を解くことができる。

 ……こんなクウラがいたらメタルの方よりも怖いよ。

 

 まぁそんな感じで昼食及び昼休憩は終わり、一旦教室に集まって解散。

 

 んで放課後、山田先生から部屋の鍵やら風呂がどうこうとか後は姉さんが荷物を届けてくれたらしい。…まぁ別にガラケーとかしか無いし、別にいいや。

 部屋の番号は1025番。原作の通りだな。……もはや乖離している気がするけどまだ原作沿いのはず。

 

 ……後俺が誘拐された時にISを奪ったのは知ってたみたい。その上で模擬戦でテストをした結果所持を黙認したらしい。

 ていうか模擬戦で姉が出たのはそういうことなのか…?んで万が一専用ISが届きそうにないならそっちを使ってくれとのこと。

 

 ……てか専用ISを2つも持ち込むのはありなんですかね?

 そう聞いてみたら事情が事情の為、知っているのは姉さんとあのドイツの諜報部隊、それとごく一部の日本政府側の人間と暗部しか知らないらしい。

 その為、そこらへんでアンジャッシュが起きた結果、企業側がISを送ることを止められなかったらしい。

 

 なので世界ではじめての男性IS搭乗者とともにISを唯一2つ保有することを認められた人間らしい。

 その上で黙認すると言われた。

 

 ……正直有り難い。

 

 姉さん経由とはいえ、これで心置きなくこの専用ISを整備することができる。

 SEも大分減ってるし、少しボロついてきた。

 

 とりあえず早速整備に出しておいた。それと同時にいつも展開させていた絶対防御を解く。

 ……なんだか少しだけ寂しくなる。何時もあるものが消える。……なんだかんだ言ってしんみりするな。

 

 そんな事を考えながら1025の鍵を開けたとき、失念していたことがあった。

 

 この体はラッキースケベに遭遇しやすいというはた迷惑な体質だったのを忘れてしまっていたのだ。 

 織斑一夏に転生してから9年近く経っても音沙汰のないラッキースケベ。

 おまけに、命がけな誘拐事件にまさかの姉さんが模擬戦のテストとか、原作乖離しているのを気にしてまとめ直していたのだ。

 

 このラッキースケベイベントそのものを失念していた。

 鍵を開けてドアを開くと、そこには篠ノ之がいた。

 

 バスタオル一枚の姿で。

 

 おいおい、俺死んだわ。社会的に。

 

 

 




とりあえず指摘された所は何となく直したと思います。
……まぁ作者の文才があれなので違和感があるかもしれません。
こういう風に読者の皆様には度々迷惑をかけると思いますが、なにとぞよろしくお願いします。


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クラス代表候補戦

投稿遅れて申し訳ございませんでした。

ようやく充電が終わったので新年号発表から初投稿です。 

本編どうぞ。


 シャワーが雨の様に降り注ぐ。少しぼさついた髪と少し汗のついた身体に潤いを与えるかのように、全身に流水が流れる。

 

 暖かい。

 

 髪から全身に流れる水が身体の疲れを流してくれる。少しぼさついた髪は艶めく黒色に変わる。

 少し汗が染み付いた身体が嘘の様に、美しく綺麗で艶やかな肌に変わる。

 

 私はシャワーを止めてバスチェアに腰掛ける。シャンプーに手をかけ、泡立たせる。

 その後、後ろ髪を下から上に持ち上げる様に指を滑らす。髪の頭頂部まで持ち上げたら、円を描くように側頭部の髪を洗う。

 それを何回も繰り返しながら、私は今日の事を振り返る。

 (一夏…か)

 

 あの小学4年生までの間、剣道で一夏に勝ったことはない。どころか手加減されていたのだ。

 

 ……悔しかった。結局最後の最後まで全力を出させられなかった自分の弱さが悔しかった。

 たとえ負けても手加減をせめて解いて欲しかった思いがあった。

 

 それから転校させられた後の事だ。

 

 私はとにかく剣を振った。もう会えないと思っていた一夏に勝つために。

 剣を振って振って振りまくった。

 

 その結果、全国大会にて優勝できる腕前を手に入れた。

 なるほど、全国で優勝できるように成長したと確かに実感した。中学校の剣道部の顧問の教師も手放しで喜んでくれている。

 ―――だけど何か違う。

 

 違和感を感じる。これが本当に強くなっているのか…?これで私は喜べるのか…?

 

 ―――一度も負けたことのない一夏に誇れるものなのか? 

 今一夏に勝てるのか?今も尚成長し続けている一夏に誇れる勝利だったのか?

 今の私は今も強くなり続けている一夏に勝てるのか?私は本当に強くなっているのか?私は……一夏にもう勝てないのではないのか…?

  

 

 ―――私には、何があった?

 

 一夏は私に、自分の可能性を信じてみる事だと教えてもらった。

 ただ貪欲に自分の可能性を求める。自分ならもっとやれると信じていたから強くなれたのだと一夏は言った。

 

 ―――私は……自分の可能性を信じていたのか?

 

 そう自分で思ってしまうほどには信じていなかった。

 

 

 

 だからこそ私は―――自分を信じる。

 

 自分を信じて見る。他の誰かを、姉を信じなくても良い。

 自分さえ信じられていなかった迷う弱さを、自分を信じて迷いなく進んでみる強さに変える。

 

 私はそう決めた。そう決めて剣を振り続けた。私は一夏に勝てる。勝ってみせる。私は自分の可能性を信じる。もっとできる。もっとやれると自分の可能性を信じ続けた。

 

 (そして気がついたらIS学園で一夏と同じクラスメイトになってた…と言う訳か。)

 

 泡立てた髪をシャワーで洗い流しながら物思いにふける。……それとも。一夏の今日の啖呵が原因だったのか?

 ―――今日。一夏は代表候補生相手に啖呵を切った。最初それを嘲笑う者もいたが、一夏のその啖呵に皆何も言えなかった。

 それ程までに迫力があった。それ程までに凄みがあった。

 何よりも。―――格好良かったのだ。

 

 堂々と啖呵を切るあの姿。とても格好良かった。あの姿だけで一夏を尊敬し直す程に。

 堂々と代表候補生相手に啖呵を切り、クラスメイトに対して私を庇う様な言葉。更に上級生が一夏に対してISを教えようと誘った時は大胆不敵に返した時。

 

 その全てに一夏の強さがあるように思えた。一夏のプライドが光るように思えた。

 

 だからこそ気になった。

 

 私は"篠ノ之束の妹"というレッテルを貼られて自分を見失った時があった。自分を信じる事が出来なくなってしまった時があった。

 

 ……一夏はどうなのか?一夏には迷いがあるのか気になった。

 だからこそ一夏に聞いて見た。

 

 お前は、千冬さんの弟としか見られなかったとしても文句は無いのか?

 

 と聞いて見た。実際あの上級生は一夏の事を千冬さんの弟としか見ていなかったと思う。

 

 それに対して一夏の答えは…。

 

 姉さんは姉さんだし、俺は俺だよ。

 

 その言葉に、一夏の強さが見えた。一夏はもう芯をもっている。一夏は自分を信じている。一夏は目の前を見据えている。代表候補生を相手にすることがどれほど無謀なのかと問い詰める気にもならない。

 むしろ代表候補生を当たり前の様に倒す一夏の姿すら思い浮かぶ。

 

 (一夏…お前は何処まで先に行くんだろうなあ…)

 

 今日の剣道の試合を思い出す。

 

 なるほど、確かに私は強くなった。自分を信じ続けて誇れる真っ直ぐとした剣道を歩んできたと自覚するくらいには。

 だが一夏はその上を行く。

 

 一夏の剣は恐ろしいほど迷いが無い。あの小学生の頃よりも更に強くなっている。

 

 私は負けた。

 

 だが悔いはない。もう清々しい程負けたからか、それとも目標がたどり着けるか怪しいくらい大きいからか? わからなかった。

 

 私は不思議と笑っていた。

 

 (やっぱり、一夏は凄いな)

 

 幼き日の色褪せぬ思い出は。今も強く大きく成長している。

 そのことに私は心臓を揺さぶられていた。鏡を見てみると何故か顔が赤くなっていた。

 

 (……のぼせたか?)

 

 そう判断して、シャワーを止める。シャワーブースからバスルームに。全身をバスタオルで拭く。

 全身を拭いたタオルを身体に巻き、服を取り出そうとバスルームを出た。

 そして服を見つけて取ってきてバスルームで着替えようと戻ろうとしたらドアを開ける音がして一夏がいた。

 

 一夏がいた。 

 

 一夏が何故かいた。

 

 唖然とした私。 ポカーンとした。だが一夏が先に動く。

 

 ―――それは見事な後方伸身宙返り4回ひねりから生み出される土下座だった。

 美しすぎて一瞬見惚れるくらいには素晴らしいスパイラル土下座だった。

 額から血が流れているとか大声ですみませんでしたぁ!と叫んで謝罪している一夏がどうでもよく。

 

 

 「きゃああああ!」

 

 絹を裂く様な悲鳴をあげて私はバスルームに引きこもった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気がついたら土下座をしていた。

 

 まじですみませんでした。許されないと思うし、木刀で殴られるのは小学生の時に覚悟してました。

 たとえこのスパイラル土下座の着地の時に額から血が流れてもそんな事を考えられないくらいには罪悪感を感じているつもりです。

 

 そんな事を考えながら5分間血を流しながら土下座をしていたら篠ノ之が顔をあげて欲しいと言ってきた。

 

 ……説教をしながら包帯を取ってきて頭に巻いてくれた。もう治ってるけどありがとう篠ノ之。

 なんか顔がめっちゃ赤くなってるのはラッキースケベが起きたからだと思っておくね篠ノ之。

 まさかとは思うが今日篠ノ之が俺に惚れたとかそんなわけないよなとか思っておきたいよ篠ノ之。

 

 ……うん。顔、赤いね。

 

 ……ここはポジティブにいこう!今日この日までに鍛え上げたこの身体能力!見よ!さっきの素晴らしいスパイラル土下座を!

 その身体能力をもってして篠ノ之の木刀クラッシュを避けて見せるのだ。俺は。

 

 ………まだそうだと決まったわけじゃない。もしかしたら本当にのぼせたりしてたりさあ!ラッキースケベがあって恥ずかしいと思って顔を赤くしてるだけかもしれないこととかさあ!

 

 ……そうであって欲しい。

 

 そう思いながら寝て、波乱過ぎる一日は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから7日。一週間経ってしまった。早起きして日課でグラウンド50周したり整備室に1つ目のISを受け取ろうとしたら暗部の地味な方にエンカウントして一悶着あったり。

 3ヶ月前に予め姉さんに頼んでおいたアリーナの訓練時間帯と訓練機の貸し出し許可を活かして動作の確認や、銃と剣の兼ね合いやらを調整して両方使えるようにしたり。

 篠ノ之と剣道をして遊んだりしたり、まだ篠ノ之が暴力恋愛フェイズに入ってないことを確認して安心したり。

 

 俺は今ピットにいる。その中で俺の2つ目の専用機にしてメインの専用機。白式が今目の前にある。

 その白式は銀に近い機械装甲だった。

 

 さっそくそのISに身体を預けてみる。機械が俺の身体に合わせるかのようにセットされる。

 

 試しに動いてみた。

 

 ……はっきり言って鈍い。初期化はされているようだが最適化処理が行われていない。

 訓練機の打鉄よりも酷いかもしれない。それくらいのレベルでひどすぎた。

 んでおまけにそれを見て管制塔に戻ろうとする姉から

 

 "最適化はいらん。お前の実力ならオルコット程度倒せるだろう"

 

 て言われた。こんなポンコツ機体で無茶な。

 

 ……だけど篠ノ之が応援してくれたのが嬉しかった。

 

 何だろう、これ。同じ意味でもお前ならできるだろ?(にっこり)と純度100%の頑張ってじゃモチベーションが圧倒的に違うんですけど。

 

 その応援を背に俺はアリーナに飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、ここまで逃げずに来ましたのね」

 

 アリーナの空中にはすでに青い装甲が特徴のIS……ブルーティアーズを纏ったセシリア・オルコットが両手でライフルを構えながら待ち構えていた。

 

「最後のチャンスをあげますわ」

 

 セシリアは両手で持っていたライフルを右手で持ちながら左手で一夏に向けて指を指した。

 

「……一応聞いておくよ。チャンスって?」

「貴方が代表候補生という立場の者を侮辱した事に対しての謝罪のチャンスですわ。」

 

 セシリアはそう言うと両手で再びライフルを構えながら嘲笑う様に話す。

  

「私が一方的な勝利を得るのは自明の理。ボロボロの惨めな姿で見苦しく命乞いをする事になることは明らか。なら今ここで惨めに喚きながら土下座をする……と言うなら考えて差し上げてもよろしくてよ?」

「そうか。」

 

 一夏は冷たく返答すると背中にセットされているブレードを取り出し、セシリアに向けて無造作に投げた。

 

「んな!」

 

 セシリアは慌ててライフルで無造作に投げられた剣を弾き、怒りをあらわにした。

 

「あ、貴方!どういうつもりですの!」

 

 怒りをあらわにするセシリア。一方、一夏の方は真逆に冷たかった。

 

「セシリア・オルコット代表候補。お前はそんなくだらないことしか言えないのか?」

「くだらないとはなんですの!私がチャンスをあげたというのに?」

 

 そうセシリアが言うと一夏はそれを鼻で嘲笑い。

 

「そんなくだらない世迷い言をガタガタ抜かすくらいならさっさとかかってこいよ。それとも何だ?ハンデが今更欲しくなったのか?悪いが7日前に売り切れたんだ。諦めてくれ。」

「ッ!貴方という人間は何処までも馬鹿にして!お別れですわね!」

 

 セシリアが激怒したままライフルを再び両手で持ち、銃口から閃光が一夏に向かって放たれる。

 

 その閃光を一夏は身体を少しずらすだけで避ける。

 

 

「さあ!惨めに踊りなさい!私の奏でるブルーティアーズの円舞曲(ワルツ)で!」

 

 飛び交うレーザーは、独特の音を流しながら四方から一夏に襲いかかる。

 セシリアは激怒の余り、一切の慢心は抜きで一夏を落とそうとしている。

 

 最初から4つのBT兵器を分離させて一夏の四方に潜り込ませて、自分は後退した。

 そのまま自分の距離を形成しつつ、BT兵器を稼働させて包囲網をつくる。

 そのままなぶり殺しにして一夏を追い詰めた……はずだった。

 

「何なんですの!貴方は!」

 

 死角から放たれる光線。避ける事を読んだ光線。全て計算して撃っているはずなのに当たらない。

 同時に四方から撃たれる光線。

 

 その全てが全て当たり前の様に避けられる。

 

「こんな男一人落とせないなんて、代表候補生ってのは随分ハードルが低いんだな。」

 

 今も四方から放たれている光線を軽々と避けながら軽口を叩く。

 そんな軽口にセシリアはただ歯ぎしりをするしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「す、凄い!」

 

 山田先生が素直にこぼした感嘆の言葉。それは彼女だけではなく、アリーナの観客席で試合を見守る生徒が思っていることの代弁だろう。

 

「凄い!凄いですよ!織斑君、代表候補生相手にここまで避けられるとは!」

 

 まだダメージこそ与えられてはいないものの、セシリアの過激ともいえる光線の包囲網を無傷で掻い潜っている。

 ダメージ自体も機体の武装そのものが武装そのものな為、近距離に詰め寄る必要がある。

 セシリアの包囲網を抜ければあるいは本当に勝ちが見えてくるまである男の様子は、全観客が固唾を飲んで見守っている。

 

「……あのバカめ。」

 

 しかし、織斑千冬はむしろ少し苛ついていた。

 

「……?織斑先生?どうしたんですか?」

「どうしたもこうしたもない。あのバカは手加減している。」

「……え?」

 

 それは驚愕であった。代表候補生相手に手加減をする?あの光線の中で手加減?

 

「織斑先生?何故織斑君は手加減していると…?」

 

 山田先生は信じられないと織斑千冬を見ながら言った。すると織斑千冬はため息をつくかのように答えた。

 

「山田先生。あのバカは最初の位置から一歩たりとも動いてませんよ。」

「……え?」

 

 山田先生は慌てて試合の運びを見てみた。光線を回避した一夏をよく見てみると

 

「……ほ、本当に動いて無い…?」

 

 光線の包囲網を軽々と避けながらも最初の位置から一歩たりとも動いて無い。

 それがどれだけ難度の高い芸当か。山田先生は冷や汗をかいた。

 

「あのバカがその気になれば一瞬で終わる茶番だ。こんな出来レースなど面白くもない。」

 

 織斑千冬はそう言うと気分を落ち着かせるために珈琲を入れて、ゆっくりと飲む。

 

「お、織斑先生!織斑君が代表候補生相手に勝てると分かっていたんですか?」

「ん?ああ、模擬戦でテストをしたときから分かっていた結果だがな。」

「模擬戦のテストって……ああ、織斑先生が珍しく試験官をした時ですか?……それがどうしたんです?織斑先生?」

「ああ、第二回のモンドグロッソの時の実力でやったが。」

「え゛?」

 

 何か今、とんでもない事を聞いた様な…?

 

「え〜〜っと聞き間違い…?ですかね?モンドグロッソの時の実力でやったと聞こえました…?」

「安心しろ。山田先生。まだ耳はボケて無いぞ。」

「も、モンドグロッソ時の実力って!そんなものテストにならな…」

 

 ふと思い出した。たしか模擬戦で織斑先生のISのSEが5割削られたとか。その時は手加減していると思ったがまさかあれって…。

 

「お、織斑君はモンドグロッソ時の実力の織斑先生のSEを5割削ったってことですか!」

「そうだが?」

 

 世界をひっくり返しかねないやべー言葉が脳に入った気がした。

 

 ISを動かしたのははじめてなのに元世界最強レベルの実力のIS操縦士のSEを5割削った。

 

 いくら織斑先生が引退して鈍っているとはいえ元世界最強。それと同じ打鉄でSE5割を削る。

 ……少なくとも国家代表クラスの上位すらできるか怪しいのに、それをISに乗ってまだ一時間とも経たない初心者がやってのけた。

 

「そ、それじゃ織斑君って国家代表クラスすら超えているかもしれないと…?」

「ああ、だからこんなものは茶番に過ぎん。」

 

 おまけに元世界最強からのお墨付き。山田先生は倒れそうになった。

 

 (わ、私よりも遥かに上の実力者にISの事をこれから教えるって。整備の事を聞かれたときとか私って生意気だったのかな?あ、でもでも私の生徒だし、特別扱いは良くないけど……う〜ん。)

 

「山田先生。あのバカに特別扱いはしなくて良いですよ。」

「え?で、でも私よりも遥かに実力が上じゃないですか。そんな人にISを教えるなんて腰がひけますよ。」

「あのバカに特別扱いはいらん。むしろ整備の方はダメダメだ。特別扱いせずにちゃんと教えてやる方があのバカは喜ぶ。」

「そ、そうなんですか。」

 

 世界をひっくり返しかねないやべー言葉を前に山田先生はもはや頭が痛くなってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴方!手加減してましたわね!」

 

 BT兵器の光線の包囲網を未だに展開しながらもその場からまるで動くつもりのない一夏に向かって怒声をあげる。

 

 初めは違和感を感じた。

 まるで攻撃する様子が無く、いつもなら状況に応じて動かすはずのBT兵器があまり動いていない。

 

 BT兵器の位置も完璧なのに当たらない。そこで男の動きを観察したところ、まるで一箇所から動いていないことが判明した。

 

「何故ですの!何故手加減をしますの!そんなに私を侮辱したいんですの!」

 

 激怒の余りにセシリアはヒステリックになりながら自らもライフルを撃ちながら狙い撃つ。

 それを当たり前の様に避けながら一夏は話す。

 

「いや?俺は最初に言ったようにハンデを付けてやると言った。」

「まさかあのハンデを付けてやるって……。」

「ああ、俺はここから一歩たりとも動いていない。そしてそんな奴相手に一発も当てられないお前は何なんだろうね?」

 

 一夏は何処までもセシリアを煽り倒す。

 

「貴方は!何処までも!」

  

 セシリアがもはや激怒に駆られ、BT兵器とライフルとの連携で一夏を追い詰めようとする。

 だが当たらない。

 

「まず一つ。何故当たらないのか。」

 

 光線の包囲網を当たり前の様に避けながら一夏は話し出す。

 

「それはお前がBT兵器と狙撃手としての両立ができていないことだ。」

「な!」

 

 見破られていた。本来のブルー・ティアーズのコンセプトであるビット兵器とライフルの同時攻撃。だがそれには天性的な感覚が必要であり、未だに同時運用はできないままなのだ。

 セシリアはその事実に何も言えなかった。

 

「なるほど。BT兵器を撃ちきった後避け先に自分のライフルの狙撃を当てる。確かに凄い連携だ。

 ……だがそれだけだ。おかげで包囲網にも空きができてるぜ。ついでに死角ばっかりにBT兵器を置くもんだから回避しやすかったぜ。」

「くっ!」

「そして同時に………」

 

 ゾワッ

 

 恐ろしい程の殺気がセシリアを包む。全身を突き刺すような寒気に、口が震えて、歯を鳴らす。

 飄々として侮辱していたその顔とはまるで似ても似つかぬ顔に、セシリアは恐怖を覚えた。

 

時間切れ(手加減終了)……だ。これから俺は動く。」

 

 一夏の腕にブレードが展開される。

 その瞬間、恐怖が膨れ上がる。

 

 恐怖に呑み込まれないように、セシリアは震える口を噛み締め、怒声を張り上げる。

 

「は!この私とブルーティアーズが奏でる円舞曲(ワルツ)!突破できるものならして見せなさい!」

 

 声を張り上げBT兵器の位置を動かす。再び四方に配置されたBT兵器が光線の包囲網を描く―――!

 

 

 「一つ目

 

 ―――筈だった。

 

 囲んでいたはずの包囲網から消えた銀の化物。誰もいない場所を虚しく空振る閃光。

 本来四方に設置されている筈のBT兵器は三方にしか設置されていない。閃光が光るよりも速く一つ目のBTを真っ二つにされた。

 やったことはただの瞬時加速(イグニッションブースト)だ。

 

 ただ無拍子を超えて波長という領域まで至ったそれは、ISが持つ瞬時加速(イグニッションブースト)と併せた結果。

 過程を消し、結果だけを生む。

 

「ッ!」

 

 もはや捉えられない化物相手にセシリアはライフルを撃つ。

 それと同時にBT兵器を三方に配置しようとして―――

 

 「二つ目

 

 反射的に撃った筈の閃光がすり抜け、平面三角形に形成したはずの包囲網。その下側の二つ目のBT兵器がすり抜け様に切られて、残骸に成り果てる。

 

 ―――捉えきれない!

 

 そう判断して包囲網を形成するのは諦め、その場で下方と上方の位置から閃光を放つ。

 

 ―――これなら!横にしか逃げられない!

 

 そう判断して横にライフルをセットして―――

 

三つ目」 

 

 否。上の方向の閃光に対して、横スレスレに突撃したままBT兵器が真っ二つにされる。

 横に標準をあわせたライフルはガタガタと震えている。嫌な汗が落ちる。戦意が恐怖に呑み込まれそうになる。いっそのことこのまま呑み込まれた方がどれだけ楽なことか。

 

 ……それでも意地がある。血反吐を吐いてまで手に入れた確かな誇り。

 代表候補生としての本来の気高き誇りが、膝を屈する事を許さない。

 

 ―――私には!意地がある!

 

 恐怖を乗り越え、ライフルの震えを止めて構える。もはや先程までの激怒した醜い姿とは違い、極限までに集中されたその姿は。

 気高き誇りを持つ代表候補生に相応しい姿だった。 

 

 上にいる銀の化物……否。織斑一夏に向かって最後のBT兵器を輝かして

 

 「四つ目

 

 閃光をスレスレに避けてBT兵器を突きで貫く。最後のBT兵器が嫌な音を立てて爆発する。

 だがそれにセシリアはライフルの標準を一夏にあわせていた。

 ライフルの引き金に指を添えて、トリガーをひく。

 

 一夏に一筋の閃光が襲いかかる。

 

 だがそれを当たり前の様に避けてセシリアに向かって瞬時加速をする。

 それに対してセシリアは―――

 

 ニヤリと笑った。

 

「ブルーティアーズは!六機ありましてよ!」

 

 脚部装甲から放たれるセシリア・オルコットの切り札。

 それはミサイルビットだった。

 

 ミサイルが描く放射線は確かに一夏に直撃するコースだ。加えてその速度では気づいた所でもはや避けられない!

 ―――貰った。

 

 そうセシリアが確信した

 

 「五つ目

 

 筈であった。

 

 それは急に回転した。螺旋を描くかのように加速をしながら、直撃する筈だった二つのビットの上を進みながら、二つのビットを真っ二つに切り裂いた。

 

「す、螺旋瞬時加速(スパイラルイグニッションブースト)……?」

 

 切り札であった筈のそれが無残に切られ、爆発する。

 

 それは、瞬時加速(イグニッションブースト)の改良技。真っ直ぐに進むことしか出来ない瞬時加速の方向を変える横にも縦にも動かす技だ。

 螺旋を描く様に機体を回転するのが特徴的な技だ。 

 

 だが、ただでさえ制御の難しい瞬時加速をそこから螺旋を描くかのように動くこの技は、世界にも何人やれるかも分からない高等テクニック。

 そんな技術をさも平然と成功させながらも尚勢いの止まらぬ流星に。

 セシリアは愚策をしてしまった。

 

「い、インターセプ」

 

「―――遅いな

 

 咄嗟の判断でブレードを展開したものの、その上からブレードを叩き折られて、脳天を砕かれる様な衝撃が響く。

 頭がぐらつき、自分が叩き落とされている錯覚に陥る

………否。既に青い装甲は墜落している。

 その最中、銀色の流星が更に追撃を加えようと瞬時加速をしながら叩き落とそうとする。

 

 私が―――負ける?

 

 ………だがそこで。セシリアの意地が目を覚ます。

 

 ―――このまま一矢報いれず!何が代表候補生だ!

 

 叩き落とされる最中に。セシリアはライフルを構える。逆さまになりながらも勝利を掴み取ろうとするその執念に。

 青い涙(ブルーティアーズ)は静かに応えた。

 

 一分の狂いもなく。銀の流星に向けて銃口が動く。

 

 「この距離なら!避けられませんわね!

 

 片手でライフルを確かに織斑一夏に向けて撃った。閃光は避けられるものではなかった筈だ。

 事実閃光そのものは織斑一夏に避ける術は無く。なす術もなく閃光に呑み込まれて

 

 「六つ目

 

 否。その閃光が切られた。

 

 閃光はもはや粒子と化し、過剰エネルギーがブレードに収束され、輝く。

 

「あ、」

 

 その輝く刀身をセシリアに全力で突き。

 

 「七つ目(ファーストシフト)

 

 その瞬間。銀色の機体が白く輝き、刀身が閃光を纏い、輝き、爆発した。

 セシリアはその閃光に心を奪われ、ただただ呑み込まれた。

 青い装甲が地に倒れ伏したことによって試合終了のブザーが鳴った。

 

 

 

 

「は、ははは。」

 

 地に倒れ伏したセシリアはただ笑っていた。

 セシリアは自分の弱さを恥じた。その時、セシリアの目の前には手が差し伸べられた。

 

「……立てるか?」

 

 それはさっきまで私が見下していた男だった。

 私はその手を払い除けた。

 

「……自分で立てますわ。」

 

 そう言って自分で立ち上がろうとして力が入らない事に気がついた。

 

「それ見ろ。やっぱり立てないじゃないか。」

「……貴方。私を嘲笑いに来たのでしょう。」

 

 私は少し捻くれた。大方こんな無様な私を嗤いにきたのだろうし、そうされても文句の言えない程の暴言を吐いた。

 ならそれくらい甘んじて受け入れようとして……次の言葉に絶句した。

 

「それは違うぞ、セシリア国家代表候補。俺はお前を見くびっていた。その代表候補生としての在り方に誇りを感じた。………謝罪しよう。貴方の国は誇り高い国であったと。貴方のその代表候補生としての称号は正しきものであったと。」

「は、はは。言うのが……遅すぎたんじゃなくて…。」

 

 私は私を恥じた。ああ、そうだ。この男は。信念を持って行動しているのだと。

 人を嘲笑う様な低俗な人間では無いと。

 

 私はその男の手を取り

 

「わ、私も謝罪をさせて下さいまし。私は貴方という人間を、誤解してましたわ。それと、私のクラスメイトの人達も、国を侮辱してしまい、本当に申し訳ありませんでした。」 

 

 そう言うと私はその男と二人で立ち上がった。

 

 すると周りから惜しみない拍手が送られた。

  

 

「それと……一夏さん。」

「どうした?」

「次は……負けませんわよ!」

「……ああ!」

 

 そう言うと私達は握りしめながら各々のビットに戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 (無敵艦隊セシリアルートには勝てなかったよ。)

 

 少年はその場のノリで動いたことをめっちゃ後悔したそうな。

 




ちゃうねん。9000文字超えてどうすんねん。だんだん文字数が多くなってくるねん。

セシリアどうしてこうなった?

いやほんとに。本来はこういう展開にする予定は無くてですね。
……これ鈴以外ヒロインルートあるんじゃね…?

そこらへんはいきあたりばったりやっていきます。

それとまた投稿が遅れるかもですがよろしくお願いします。


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織斑日記!九!

何時もの遅刻

いや本当にキツイ。最近感想を見るのが何か怖くなったうっかりです。(でもやっぱり感想来てないか楽しみになる)
セシリア優遇回です。

本編どうぞ



 シャワーノズルから溢れる暖かい雨は、肌に当たっては流れ、身体のボディラインをなぞってゆく。金に輝く麗しい髪は色よく輝いて見える。身体はとても均等であり、麗しい髪も相まって芸術的な美をさらけ出す。

 シャワールームにてセシリア・オルコットはシャワーを浴びながら今日の模擬戦の内容を振り返る。

 

 (今日の試合、私は負けた)

 

 IS稼働期間が多く見積もってもたった3ヶ月間しかない初心者が稼働時間300時間を超える国家代表候補生に勝つ。はっきり言っておかしいのだ。たとえこの専用ISが試験段階で、私が上手く扱えてないのにも原因があるとしてもだ。しかも卑怯な手を使われた訳でもなく。ただ純粋に負けた。おまけに相手はブレード一本。それだけで私の全ての策が潰された。

 

 (織斑一夏……)

 

 その強さは本物だった。私の全力をブレード一本で歯牙にもかけずにあっさりと叩き落とされた。その強さは"世界最強の弟"という色眼鏡で見ても姉の七光の一言ですまして良いものではない。

 

 ―――あの強さに至るまで何処まで修練を積み重ねた?

 

 あの強さはもはや"才能"という言葉で表すには見当違いだ。あれは才能なんかじゃない。あれは修練の果てに手に入れた誇るべき強さだ。そんな強さを見た。修練の果てにある極地。それでも尚満足しない姿に

 

 ―――私は惚れたのだろう

 

 その堂々たる強さに。何事にも揺れぬ芯を持つ誇りに。その積み重ねた修練の果てに見えてくる本当の強さに。何よりもそんな人が私のちっぽけな誇りを。私の積み重ねた努力を。私の全てを。

 正しきものだと言ってくれたあの人に。

 

 私の人生は苦難という言葉が似合っている。

 何のこともない。ただ父と母が仲直りしないまま列車の事故で死んだだけだ。

 ……昔は仲が良かった筈なのだ。私の家系は貴族家系で、父は婿養子という立場なので、居場所がなく卑屈に成り果てた。母はオルコット家の財産を守っていた為に、卑屈になる父にだんだんとストレスをぶちまけ、仲は険悪になっていった。

 

 その二人が、ある日を境に列車の事故で死んだ。

 

 私はその事実を知ってどんな気持ちだっただろう?悲しみ?絶望?そんな感情は無く。 

 ただ呆然とした顔で葬式を開き、墓を建てた。

 私は葬式に涙を流せなかった。両親にもはや何と言えば良いのか分からないのもあるが、それ以前に財産目当てで葬式に来る輩までいたせいだろう。

 オルコット家の財産を守る為の戦い。そしてこれからも家の当主としての覚悟。それを当時小学生の私に求めるのは、余りにも酷い話だ。メイドの助けもあって何とかオルコット家の財産を守れた私は、人を信用出来なくなった。

 家を、オルコット家の当主としての誇りを守る代わりに人を拒絶する事を覚えた。男は死んだ父の様に弱い男ばかりだ。女は死んだ母の様に気高き人でなければ認めない。 

 そんな考え方をした為、ISに乗れないくせに女尊男卑を訴える弱い女が嫌いになった。そんな筋違いの事をのたまう輩に媚びる弱い男が嫌いになった。そんな輩に成り果ててたまるかという思いで中学時代はISの訓練に没頭し続けた。

 

 ―――だがそこで立ちはだかる壁は才能だった

 

 ISの適性自体はA評価。なのでISを動かすことは問題無かった。

 だがその適性とは裏腹に、私には才能が無かった。私はISの理解度やペーパーテストは得意ではあってもISでの模擬戦では良いところが無かった。

 理論づくめの考え方と武器の展開が遅いこと。更にイレギュラーに対応出来ないことも挙げられ、結果としてそういった才能ある者が期待され、私には何の期待も無かった。

 

 ―――だからこそ。

 

 才能が無いなら無いなりに頭に叩き込む事にした。

 1を経験して10を他人が覚えるなら私は10を経験して10を覚えた。短所を補う事を考えたが、むしろその逆を考えついた。

 短所を補うのでは無く長所を磨く。

 そう思いついた。理論づくめの考え方しか出来ないならその考え方で相手を封殺する。武器の展開が遅いならそもそも速い展開が求められる場面にしなければいい。イレギュラーに対応出来ないならイレギュラーになる場面を無くせばいい。

 そうやって磨き上げた自分の今のIS戦闘術。

 負けの要因となる可能性を徹底的に排除して勝利という結果だけを求める封殺の理論。

 その理論を完成させるまでに何度も血反吐を吐いた。

 才能という壁の前にひれ伏しそうになることさえあった。

 

 ―――だがそれでもセシリアは諦めなかった。

 

 それはセシリアのプライドだ。自分の知る弱い男の様に、弱い女の様になりたくないというプライドが、膝を折ることを許さなかった。何よりも、セシリア自身が認めなかった。

 セシリア自身が才能の言葉を否定した。

 

 ―――才能が全てではない

 

 才能がなくともそれを補う努力をした。完成された勝利へのパターンを頭の中に全て叩き込んだ。ISの知識について覚えられることなら何でも貪欲に頭に入れた。

 そうして生まれた努力の天才がセシリア・オルコットなのだ。

 

 ―――そんな努力の天才ですら自分で修練が足りないと思ってしまうのが織斑一夏なのだ。

 

 なるほど、私とは比べ物にならないくらいにISに対しての才能はあるのだろう。流石は世界最強の弟と見てもいいだろう。だが、そんな言葉であの強さを語るのは侮辱に等しい。

 努力をひたむきにしたからこそわかるのだ。

 あの人は私とは比べ物にならないくらいに修練を重ね、何度も血反吐を吐き捨て、それでも尚膝を折ることをしなかった人だ。その積み重ねた物があったからこその誇り。

 

 ―――その姿に私は。子供の様に恋い焦がれた。

 

 (私の……目指すべき姿)

 

 少女は、ただその恋い焦がれた背中を思い浮かべる。

 

 

 

 

 

 

 

 (^o^)月@日

 

 あのクラス代表を決める戦いから一日。日課のグラウンド50週をしながら銀色のガントレットを見てみた。

 なんでもあの最後の武装。あれって零落白夜では無いのだ。確かに雪片弐型ではあるが、能力そのものは零落白夜では無いのだ。

 ……なんでも周りの過剰エネルギーを集めて放出するのが基本的な能力らしい。

 あの時の大きな閃光は唯一仕様(ワンオフアビリティ)の影響だ。

 

 ビームが霧散した時のエネルギーを吸収して放ったってことなのか?実験してみたいと思うがそれとこれとは別。重要なのは原作乖離が起きている事実だ。

 ……もうここまで来ると言い逃れは出来ないだろう。

 モンドグロッソにおける優勝。IS学園の試験官。そこで起きた謎の現象。専用機2機持ち。何よりも単一仕様(ワンオフアビリティ)が零落白夜では無いこと。これらが原作に対してどれだけの影響を及ぼすかは分からない。

 特に単一仕様(ワンオフアビリティ)とあの謎の現象。零落白夜が有無の差ではどれほどの影響がでるか分からない。謎の現象に関してはもう原作乖離が起きている証拠として充分だろう。

 

 原作乖離が起きているのは俺が原因だろう。

 

 事実幸せに生きようとして原作と違う展開を起こそうとした。身体も人外になっているし、誘拐された時にISを強奪している。単一仕様(ワンオフアビリティ)一次移行(ファースト・シフト)からできているのは……原作通りだが内容そのものが違う。ヒドインの性格を改変したことも挙げられる。そもそもあの試験時の謎の現象が起きた時点で原作とは違う展開になっているのは明白だ。

 

 とにかく。行動が迂闊になって色々な所が乖離している。これ以上乖離を起こすと原作の知識が使えなくなる。 

 ……はっきり言って原作知識はこの先必要だ。

 過程は違えど現状は原作通りなのだ。これ以上原作乖離を引き起こす事態にでもなれば予想不可能の事態についていけなくなる可能性がある。

 だからこそクラス代表に名乗りをあげたし、セシリアとも代表戦をした。

 ここまでは原作通りに進行できている。大まかな所以外は原作乖離を起こしてもいい。大切なのは本筋そのものは原作通りにするという事だ。

 ……まぁ原作通りを意識したからこそポカをしたことも否定できないが。

 俺はグラウンド50週を終え、寮に戻ってシャワーを浴びた。ちなみにグラウンドは一周1000m。俺の中学校の頃のグラウンド一周は250mだ。

 

 

 

 

 

 

 

 授業が始まった。今日の授業は基本的な飛行操縦の実践らしい。みんなISスーツを身につけている。

 ……しかしこうして見るとISスーツってなんかエロいな。俺は一番後ろの方なのだが、何というか、女子高校生がみんなスク水を着ていて整列している中で、一人男がそんな姿を見るというのは何というか、嬉しい気持ちよりもここにいることが場違いじゃないかと冷や汗が流れる。

 

 そんな変な事を考えながら意識を逸らしているとジャージ姿の姉さんと山田先生が来た。

 それから授業が始まった。

 

 まず最初にISの展開をするらしい。セシリアは展開速度コンマ6秒。流石は代表候補生ってとこか。それから俺も展開を始めた。……展開速度は1.1秒だ。

 オルコットと比べてコンマ5秒程遅れた。……言い訳しておくと1つ目の専用機であるラファール自体はオルコットと同じかそれよりも速く展開できるのだ。

 ただ二つ目の専用機である白式は昨日受け取ったばかり。おまけに一次移行しただけなのにワンオフアビリティがあるってことで検査だのなんだのあって白式を受け取ったのはクラス代表戦の夜なのだ。

 なので隠れて展開の練習をする時間が30分程度しかなかった為に展開に一秒かかるのだ。

 ……まぁ褒められたけどさ。ていうかコンマレベルの差をIS無しで正確にタイムを言える家の姉はやはり人外だと思い知らされる。

 

 そのまま飛行に移る。

 流石に飛行じゃセシリアには負けない。スペック上の出力がこの白式の方が上ってのもあるが、飛行そのものはイメージしやすく、得意分野だ。

 俺は先に飛んだセシリアに容易く追いつく。適当にISの事について話していたら今度は急降下と完全停止の指示が飛んできた。何でも地表10cmジャストを目標に急降下しながら完全停止してみろとお達しが。

 

 先にセシリアが急降下と完全停止をするみたいだ。急降下していくセシリア。そのまま難なく地表10cmに完全停止する。お手本の様な急降下→完全停止だ。

 その次に俺の手番が回ってきた。

 

 まず機体を逆さまに向けて瞬時加速(イグニッションブースト)をします。周りがその惨状を予想して目を逸らしますがそんなもの関係無いです。

 次に機体を無理やり回転させてスラスターを全力で動かし、姿勢を整えます。その時発生するGによって発生する身体の負担は考慮しません。

 あとは勝手に地表10cmに辿り着くのでそのままスラスターを動かし続ければ止まります。

 ね?簡単でしょう?

 

 そんなことをしていたら出席簿がブーメランの様に飛んできた。何故だ?

 

 

 どうやら少しやりすぎた様だ。周りを見てみると腰が抜けた奴までいた模様。あらら。血の気が引いた様な顔でこっちを見てら。

 でも10cmピッタリだからそこまで叱られなかったが次からそれ禁止と言われた。しょんぼりーです。

 次は武装展開の指示だ―――

 

 

 

 

 

「と言う訳で織斑君、クラス代表就任おめでとー!」

「おめでとー!」

 

 

 クラス代表就任パーティーなるものが夜に行われた。パンパンっと小気味の良い火薬の炸裂音でクラッカーが多く鳴り響く。

 紙テープが飛び交いながらパーティー開始を告げた。

 食堂の壁には『織斑一夏クラス代表就任パーティー』

 と書かれた横断幕がでかでかと貼られていた。

 今日は事前に一年一組が食堂を貸し切るように申請して、夕食の時間を少しだけ貸し切り状態にしてもらったのだ。

 その当の本人はオレンジジュース片手にヘルシーな飯を大量に食べていた。

 

「うわ!織斑くんガツガツ食べるねえ!」

「そんなに食べっぷりが良いと何か渡したくなるよねえ。」

 

 それがずっと続いているのだ。

 その漢らしい食べっぷりに一組の生徒も噂を聞きつけた他の生徒も食べ物を一つずつ分けた結果。とんでもない量になって一夏の座っているテーブルに大量の皿と食べ物が置かれるのだ。

 だがそれでも一夏がずっと食べ続けるもんだから調子に乗ってどんどん置いていく。

 

「織斑くん、こんなに食べても太らないの?」

「食べた分だけ脂肪が燃焼されて身体が勝手に筋肉に変えるからな。最近全く太ってないんだよ」

「うわ。何その羨ましい身体」

  

 冗談半々和気あいあいとした雰囲気のまま進行するパーティー。そんな中一夏の隣にいた篠ノ之が苦笑気味に話しかけてきた。

 

「に、人気者だな。一夏」

「あはは。……流石に多いや。食うか?魚の味噌煮?これ美味いぞ」

「……貰おう」

 

 一夏が魚の味噌煮が入った皿を渡そうとした時、写真のシャッターが切られた。

 

 「はいは〜い新聞部の黛 薫子で〜す!期待の大型新人!織斑一夏君に特別インタビューをしに来ましたー!あっこれ名刺ね!」

 「あっはい」

 

 大きな声で挨拶をしながらカメラを向けて笑顔で一夏にマイクを向けてくる。

 名刺を渡し終わったら目を鋭く光らせて質問をする。

 

「では織斑一夏くん!クラス代表になった感想をどうぞ!」

「え〜っと……ここにいるクラスメイトの代表に相応しくなれるように頑張ります」

「う〜ん、悪くは無いけどちょ〜っとインパクトに欠けるかな?少しいい感じに捏造しとくね」

「それ聞いた意味ってあります?」

「………はい次!」

 

 話を無理やり変えられた。

 

「それじゃ次は、代表候補生相手に無傷で勝ったってことだけど、その強さの秘訣は?」

 

 その瞬間、みんなが、特にセシリアが鋭く目を光らせた。

 

「そりゃ努力です」

「ほほう?その理由は?」

 

「これは俺の持論?というか他人から勝手に借りた言葉なんですがね、努力したものが必ず報われるとは限らない。しかし、成功したものはみんな何かしらの努力をしているって奴です」

 

「?努力したものが報われるとは限らないってあるのに努力を怠らないのは?やっぱり自分が成功するって思ってるの?」

 

 その瞬間。織斑一夏の風が変わった(・・・・・・・・・・・)

 いつもの様な苦笑顔に戻りそうな少年が。何処か大物、あるいは絶対的強者のもつ雰囲気に変わった。

 

「ええ。自分の積み重ねた物を。自分のやってきた努力を自分が信じないで前に進めるとは思えませんからね。常に自分ならやれる。自分ならもっといける。そうやって自分の積み重ねた努力を信じてきたからこその結果だと思っています」

 

 普通にニッコリと答えたその回答。しかし記者の勘が言っている。あれは見逃してはいけない才能だと。

 

 (大型新人だとは確信していたけど…これはあれだ。時代を変えること間違い無しのオーラだ。)

 

 あれは間違いの無くハッタリでも無い自信だ。裏付けから見えてくる圧倒的強者。

 

 (こういう奴には必ずと言っていいほど"何か"がある!理屈じゃないけど……絶対に"何か"あるんだよ!)

 

 もはやお宝どころか一攫千金だ。余りのオーラに呑み込まれそうになった。

 

 (これはもうあれだ。絶対スクープの嵐を巻き起こす大物だ)

 

 そう確信して写真を取ることにした。

 

 

 この時に、セシリア・オルコットは頭を雷で撃たれた気分になった。

 

 (自分を……信じる…?)

 

 心の何処かで思ってるんじゃないのか?あの憧れの背中には勝てないと。あの強さには追いつけないんじゃないかと。

 

 (嗚呼そうなのですか。貴方は。だからそこまで強く)  

 

 織斑一夏の強さは愚直なまでに自分を信じている事だと分かった。あの強さも、あの誇りも全部自分を信じているからこそ出来た事だと理解出来た。

 

 (才能がなんだ!勝てないから何だ!)

 

 もはや自分に才能が無いなんて甘えた言い訳だと確信した。才能がどうした?私の努力でそんなもの補えばいい!いつもやってきた事だ!

 

 (私は!貴方に勝ちたい!)

 

 そう思った。憧れだから。素晴らしいから。だからそれをどこまでも超えたい!

 

「……待ってくださいまし」

「ん?セシリアちゃんどうしたの?」

「少しだけいいですか?」

「お?これは特ダネかな!?はい!どうぞ!」

 

 そうセシリアが言うと一夏に向かって宣言した。

 

「織斑一夏さん。私は貴方に負けました。」

 そう言ったセシリア・オルコットは拳を握りしめ

 

「だからもっと努力して、それでですわね、」

 それでいて目はしっかりと一夏を見据えて

 

「貴方に勝って見せますわ!」

 堂々と一夏に宣言した。

 それに一夏は笑みを浮かべ

 

「やって見ろよセシリア・オルコット。次も無傷で勝ってやる」

 

 そう言いながら握手を交わした。

 その思い出に残る写真は。色褪せないことだろう。

 

 その一方。

 

「IS学園。来たはいいけど迷った」

 

 一人の転校生が道に迷っていた。

 

 

 




うん。全然進まないな。
てか文才落ちてね?
福音編まで速く進めたかったのでクオリティについては気にしないで下さい
チョロリアがセシリアに進化しました。
次も遅れるかもですが、暖かく見守ってやってください。


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クラス対抗戦

投稿遅刻勢です。(土下座)
言い訳をさせてもらうと小説を書く時間が無かったり、指摘された所を修正するのに手間取って2日くらいかかったりしてたんです。
本当に申し訳無い(何処から見てもパクリでは無い神映画)
それはそうと最近ISの二次創作が日間ランキングに載ってて嬉しい。いいぞもっとやれ(過激派)
本編どうぞ


 今は六時を過ぎた辺り、学園から寮に戻ろうとしたら右肩にボストンバッグ掛けてる小柄な少女が涙目になってる。

 そうとしか言えないこの状況をどうすれば良いのだろう?グーグル先生に聞いても変な小説しか紹介されない。

 ……何かグーグル先生から馬鹿にされてないか?

 そんな事を考えながら迷子になったのかなと近づこうとしたら何か既視感のあるような背中が。

 既視感のある背中に既視感のあるようなボストンバッグ。それに既視感のあるような髪型に既視感のあるリボン。

 

 ―――お前、これ鈴じゃねえか。

 そう叫んでしまったのが運の尽きだったか。親友の鈴が飛びついてきた。

 

 やめろ!鼻水をつけるな!袖をティッシュ代わりに使うな!鼻をすするな!目を裾でこするなぁ!

 

 

 

 

 

 

 どうやら1時間くらい迷っていたらしい。何やってんだお前。まぁ確かに今は暗いけどさあ。この学園無駄に広いけどさあ。

 てかよくよく考えたらお前何で此処にいるんだよ?

 そう聞いてみたらどうやらこのIS学園に転入するらしい。それで早速寮に行こうとしたら無駄に広いIS学園で迷子になって涙目に。そんな中で俺が来た……と。

 ……てか転入早くね?そう思った。

 確か原作は5月に転入してきた筈だけど今はまだ4月の下旬くらいの筈だろう?

 何でこんな中途半端な所で転入になったんだと聞いてみたら、俺がIS学園に入学するってメールがあったから転入について中国のお偉方に聞いてみたらOKくれたみたい。 

 ……そういえばメールで送ってたな。俺。それで多少原作よりも早く転入出来たって訳か。

 ……てかよくそんなに早く許可下りたな?て聞いてみたら代表候補くらいにもなればそれくらいの許可は普通にパスして下りるらしい。実績そのものもあるし、簡単なペーパーテストして大体転入出来ちゃうらしい。

 尤も4/1以降での転入は多少面倒くさくなってるらしい。鈴はそれ以前に申し込んでいたから多少遅れるくらいで転入が決まったらしいが、それ以降だとある程度過去の実績等を調べる必要があるらしい。原因は俺。

 話を戻そう。

 IS学園に入ったは良いが、寮が何処にあるのか分からなくなってしまい、寮とIS学園を繋ぐ道の道中で迷っていたらしい。幸い待ち時間にはまだ遅れていないっぽい。

 俺は無事に鈴を寮に送り届けた。何でも寮と寮長はクラス毎に分けられていて、鈴は二組に転入するらしいので此処でお別れらしい。

 だから周りの人たちよ。鈴と俺に何かを求められても困る。おいセシリア。お前大好きだったアイドルが結婚をしてショックを受けた様な顔をするな。 

 このまま集団に囲まれるのはうんざりだ。俺は追いかけて来る集団を尻目に走って自分の寮室へと戻った。

 ……だから篠ノ之さん。そんなジト目で見られても困るんですが。

 

 

 

 

 (^^)月ß日

 

 何とか篠ノ之の誤解は解けた。食堂で席に座ったときも鈴との関係を聞かれてうんざりしてたら織斑先生からの一喝が。

 うへ〜。あれは絶対に阿修羅の一喝だよ。怖いなと思いながら静かになった食堂で針の刺すような視線に耐えながら何とか食べ切った。

 

 ホームルームはもっとひっどい。鈴と俺との関係を洗いざらい聞こうとしてくる。俺は聖徳太子じゃないんだから。誤解を。特にセシリアからの追求に答えようとしたら問題があっちからやってきた。

 原作にあった前口上をした鈴。……昨日あんな事があったのによくもまあそんなにカッコつけれるなあと口から漏れたのが悪かったのか。

 鈴が何か突っかかってクラスメイトは痴話喧嘩だの昨日もしかしてチョメチョメな事がとか勝手に妄想するし、セシリアは絶望したような顔になってもう阿鼻叫喚。

 そしてみんな魔の出席簿ブーメランを食らって悶絶。

 ……やっぱりすげぇよ姉さん。あんなに阿鼻叫喚な教室が一瞬で静まり返ったもん。

 それでも、この入学当初よりも鋭い針の視線は何ともならないようだ。ため息を吐いて前を向いた。

 

 午前の授業が終わり、昼休み。その間に俺はしっかりと誤解を解いた。セシリアは希望に満ち溢れた顔をしていた。

 んでいつから待ってたのか鈴がいた。何故かお盆の上にラーメンを乗せながら。……とりあえずまぁ、ラーメン伸びるぞ?

 

 

 

 

 

 

「それにしても久しぶりだなあ。かれこれ一年半ちょっと位か?」

「多分そのくらいよ。あんたこそ元気そうで何よりだわ。たまには病気くらいしたら?」

「どんな願いだよそれ」

 

 あっははは!と笑いながら鈴はラーメンをすすり、一夏はアジフライを齧る。

 

「にしても鈴。お前相変わらずラーメン好きなんだな。そこらへんちっとも変わってないな」

「一夏。あんたこそちっとも変わって無いじゃない。女とかに囲まれるのも何時もの事だし」

「……背も全く変わってないな」

「うっさい!」

 

 鈴が軽く一夏の事をがるると睨みつけるが、一夏は笑って誤魔化す。此処でリアルファイトに持っていかないのは二人が親友だからだろう。

 そんな親友同士の二人にドンッとテーブルを叩きながら横槍を入れる者が一人。

 

「一夏さん!そろそろこの方との関係を教えてほしいのですが!」

 

 セシリアだった。実はこのホームルームから昼休みまでの間、まるで集中できていなかったのだ。一応誤解は解いたとはいえやっぱり気になってしまうのが女の子なのだ。

 関係って何だよと突っ込みたくなる一夏を差し置いて鈴が話す。

 

「ふ〜ん?もしもそういう関係(・・・・・・)……だったとしたら?」

 

 おい鈴。待てこら鈴てめえ。そんな一夏の思いはどうやら届く事はなかったようだ。何故か腕を絡ませてくる。

 そしてそれに対してセシリアが崩れ落ちた。

 

「こ、これがジャパニーズ失恋……!悲しい。私は悲しいですわ!」

「一夏!ただの親友だと言っていたではないか!」 

 

 セシリア達が騒ぎまくったおかげで根も葉も無い噂が食堂に飛び回る。挙げ句の果てには上級生にも広がってしまった。

 

「……鈴てめえ!」

「さっきの仕返しよ!誰が背が低いよ!こっちだって好きで身長が伸びないんじゃないわよ!」

 

「織斑君付き合ってるの!?」

「いやいや、むしろ突き合ってる関係だったりして!」

「お、織斑君付き合ってたの。し、ショック」

「すみません。新聞部ですが、織斑君と転入生が付き合ってると」

 

 周りはもう一夏を中心とした包囲網が出来上がっていた。一夏は歯を食いしばったまま鈴の方を向く。

 

 「あは、あはは。ちょっとしたジョークのつもりだったんだけどなあ。ちょっぴり舐めてた」

 

 てへ♪と猫なで声で返す鈴に後でジュースを奢ってもらうぞと呪詛を吐いた。

 

「一夏!」

「一夏さん!」

「「「織斑君!」」」

「取材です!」

 

「あ゛あ゛あ゛!も゛う゛!」

 

 一夏は半ば発狂した。

 

 

 

 

 

 

 

 鈴あの野郎。そうとしか言えない一日だった。とにかくクラス違いに名前の知らない上級生にセシリアに新聞部全員に関係を聞かれる羽目になった。

 今俺はアリーナでセシリアと篠ノ之を相手取っている。軽くBT兵器の包囲網を避けながら篠ノ之のブレードを受ける。

 ……うん、まぁ楽だ。

 少なくともあの姉に比べれば余裕すらある。……ちょうどいい機会だ。単一仕様であるあれの実験の機会だ。

 確か名前はcollect&release(コレクト&リリース)って名前だった筈。……何で英語なんだろ?とりあえずセシリアのBT兵器の光線を切り払いながらエネルギーを集めてみる。

 一つ。二つ。三つ光線を切り払ってと。集めて近づいてくる篠ノ之に剣先向けてっと!

 あれ?何か出力が!?

 ……やりすぎた。何だこれ。雪片弍型から極太レーザーが飛んだんだけど?

 どうやら本来は過剰エネルギーをちまちま集めて一気に放出する武器なのだが、俺がレーザーそのものを切り払ったせいで、霧散したレーザーの大体九十%のエネルギーそのものがこの剣に吸収されたらしい。

 それで三つ分のレーザーのエネルギーが収束されてあんな極太ビームが出た……と。

 ……強すぎワロタ。

 何だあれ。篠ノ之の乗ってる防御型の打鉄ですら3割くらい削ってるんだけど。

 他にもエネルギーを乗せて斬撃を飛ばすとか雪片弍型の刀身にエネルギーを纏わせておいて威力の上がった刀身で斬りつけるとかも出来た。

 個人的には凄い満足。だって斬撃が飛ぶんだよ?こうビシュンって感じで。遠距離の課題すら何とかなるんだよ?おまけに必殺技すら思いついたし。名前の割には男のロマンくすぐる事ができてとても満足。

 一応欠点もある。相手がレーザーライフルとかそういう非実体の武器なんかを使ってくれないとそこまで強くない事。その場合の対処はあるにはあるのだが自分のSEを零落白夜の様にバカスカ使う癖して零落白夜の様なエネルギー無効化なんて無かったりする。

 精々遠距離の斬撃五〜六発程度が限界だったり。

 なので非実体の武器を使ってくれないと大体ただのブレードと化す。

 それでも使いやすい武器だし、本当に面白いと感じた武器だ。是非ともこれからも使いたい。

 ……それはそうと二人して撃墜してしまった。本当に面白かったから仕方ないのだ。

 

 疲れを取ろうとアリーナの玄関にあるベンチで座ってたら鈴がスポーツドリンクを持ってきた。

 充実感に満ちていた俺はスポーツドリンクで許した。

 ……さり気なく冷えてるのもいいポイントだ。

 そこからは他愛の無い話をした。何故か鈴はセシリアと篠ノ之の話を聞きたがる。なんでだ?

 篠ノ之が同室だと知った鈴は何やらあくどい顔をしてうきうきで戻っていった。……何なんだあいつ。

 

 

 p月Z日

 

 そんな中で2週間くらい経過した。 

 その間に暗部の地味な方にまたエンカウントしたり、暗部の目立つ方に何故か感謝されたり、新しい瞬時加速を覚えたり、collect&release(コレクト&リリース)……長いからコレクトでいいや。それの扱い方を変えてみたり、何故か鈴がアリーナで待ち構えてたり。

 まあ色々あったが待ち望んだ?というか来ないで欲しかったクラス対抗戦。

 此処でゴーレムとかいう無人機が乱入するのが原作なのだ。原作通りのゴーレムの強さ程度なら確かに瞬殺出来るだろう。だが既に原作乖離は始まっている。

 俺は一抹の不安を抱えながらアリーナに飛んだ。

 

 

 

 

 

 会場は既に歓声に包まれている。その中心には、白いISを纏う一夏と、赤銅色のISを纏う鈴の姿があった。

 だが肝心の二人は、戦う雰囲気を見せずに談笑していた。

 

「あ〜あ、初戦から一夏からとか。私ってば運が無いのかな?そこらへんどう思う?一夏?」

 

 鈴は少しため息をついた様に話す。一夏はそれに対して少し皮肉る。

 

「代表候補生様とやらが随分弱気じゃないか。何時もの自信は何処に行ったのやら」

 

 そう言うと、鈴は笑った。

 

「あ、あんたがそれ言うか。聞いたわよ、初日で代表候補生相手に喧嘩売って無傷で勝ったらしいじゃない。そんな相手に勝てる方がおかしいっての」

 

 まるで此処が何時もの教室かのように二人は笑いながら談笑していた。

 

「まぁ、あれよ」

 

 途端に鈴は二振りの巨大な青竜刀―――双天牙月(そうてんがげつ)を構えて一夏に向ける。

 

「精々私の一年間の努力を味わっていきなさい」

 

 そう言った鈴の顔は大胆不敵に笑っていた。

 

「何だ、何時も通りで安心したよ」

 

 その顔を見た一夏は、右手に雪片弍型を展開してそれを鈴に向けた。

 

「来いよ」

「言われずもがな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 (何処までやばい奴なのかね。私の親友って)

 

 両手に展開した青竜刀で一振りの重い剣を受ける。

 金切り声の悲鳴を青竜刀があげるが、そんなことは気にしてはいられない。

 一夏は既に次の攻撃に入っている。

 

 速い!

 

 恐ろしく速い蹴り。青竜刀を盾にして何とか頭への蹴りを避けるが、その蹴りが強すぎて体勢を崩しかける。

 当然それを見逃すほど目の前の一夏は甘くない。スラスターが不規則にテンポを変える音がした!

 

 後ろ!

 

 あの一瞬だけで後ろに回られる。一秒すら無い時間だけで既に攻撃されている。

 

「一夏!あんた改めて言うけどいつも可笑しいわね!」

「それは褒め言葉と受け取っておくよ」

 

 咄嗟に反射で衝撃砲を撃つ。それは砲身も砲弾も何も見えないステルス砲撃。普通の相手なら確かに衝撃砲が当たる絶好の位置。

 

 だが一夏は。

 

 「そんなもの。()()()()()

 

 ―――簡単に霧散させて見せた。

 

 空間を圧縮してそれを射出する龍咆(りゅうほう)。その性質上ISのハイパーセンサーありきでも僅かにしか見えない、まさしく驚異の強さとも言える武装。

 

 だが

 

「あんたって奴は!何処まで規格外なのよ!」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「それが出来たら苦労しないっての!」

 

 一夏は何故か対応してくる。見えないが特徴の武器が何も対策もせずに見えるらしいのだ。

 馬鹿げてる。

 その片鱗は度々中学時代とこの二週間の間の模擬戦で分かってはいたけど。

  

「いくら何でも規格外過ぎるわよ!」

 

 もはやそう叫ぶしか出来ない。  

 

 ―――凰鈴音は紛れもない天才だ。

 たった一年のキャリアしか持たないのにも関わらず国家代表候補生に成り上がった紛れもない天才である。

 その理由は天才的な感覚と努力があったからだと言われている。

 その天才的なセンスは難度の高い技をスポンジの様に吸収してゆき、どんな相手でも的確に対処出来る冷静さを持ち、何よりも常に自分のペースに相手を乗せていくことが上手かったのだ。 

 さらに鈴は努力家であった。

 自分が天才だと驕り高ぶることすらなく、ひたむきに練習をする。まさしく本物の天才であった。おまけに難度の高い技を同期よりも先に先にと努力して覚えるもんだから一年足らずで国家代表候補生になれてしまう。

 

 ―――そんな本物の天才ですら規格外と溢してしまうのが織斑一夏なのだ。

 

 (何だあれ!初見であるはずの衝撃砲を避けて!次には切ってしまう!おまけに私よりもキャリアが少ない筈なのに経験で負けてるってどういうことなのよ!)

 

 鈴は紛れもない天才だ。

 

 ―――ただ、相手は規格外(バグ)だっただけだ。

 

 (今、私が対応できているのは!殆ど反射で動いているからだ!ペースは完全に、持ってかれてる!)

  

 それでも努力で培ったキャリアが簡単に撃墜されるのを良しとしない。

 ダメージを受けながらも何とか右手に持った青竜刀の突きでカウンターを狙う。

 だが。

 

「反射神経任せなカウンターが通じるとでも?」

 

 当然そんなものは通じる訳もなく。双天牙月の横を滑らせるように剣がこっちに向かってくる。

 

 しまった!

 

 そう思うのも束の間。剣は既に肩から斜めに綺麗な袈裟斬りを描き、機体が傾く。

 慌てて姿勢を直そうとするものの蹴りで妨害され、姿勢を崩されたまま墜落する―――

 

 (このままじゃ!終われないのよ!)

 

 否。墜落しそうになるときに咄嗟の判断で衝撃砲を自分の真横に出力を気持ち多めに撃つ。

 その反動で機体が横に動き、追撃を避ける。

 その後も追撃されないように衝撃砲を乱射する。

 

「そう簡単に行かないか」

「少し冷や汗かいたけどね!っと!」

 

 姿勢を急いで立て直しながらも思考を止めない。

 

 (衝撃砲も見切られて、攻撃も全て避けられる)

 

 なんて悪夢だ。こっちのSEは半分切ったのにあっちはまだ無傷。切り札の衝撃砲もことごとく避けられてしまう。

 

 (私はおそらく負ける) 

 

 鈴は天才だ。それ故に分かってしまうのだ。天才的感覚を持つからこそ分かる絶対に勝てない相手が。

 私が一歩進む間に一夏は十歩程進んでいる。その絶対に追いつけない差が鈴には分かってしまうのだ。

 

 (だからこそ私は、爪痕は残す)

 

 ―――それがどうした?

 勝てないからって何もしないのは言い訳だ。勝てないと分かるからこそ何かを残す。その爪痕を残す。

 ―――今勝てなくても良い。

 いずれそのチャンスは訪れる。勝てないなら勝てないとすんなりと認めて次に移す。

 だが、その間に何もしないのは諦めと同意義だ。

 そこに勝つための足掻きをしてこそ意味がある敗北だと鈴は思っていた。

 

 ―――そのために一か八かの賭けをしてみることにした。

 

 (成功してもアンタの事だ。すぐに対応する!そもそも失敗する可能性の方が高い!)

 

 そう思って鈴は―――笑った。大胆に、それこそ不敵に笑ってみせた。

 

「そんなに笑って見せて、何か考えでもあるのか?」

「考え……ねえ」

 

 そう言って鈴は再び双天牙月の剣先を一夏に向けて

 

 「無いわよ!

 

 そう言いながら鈴は距離を取り始める。当然一夏は距離を詰めてくるが。

 

「衝撃砲か」

「ええ、そうよ」

 

 一夏が詰めて来るルートに衝撃砲を乱射して置く。それは近接しか無い一夏にとってとてつもなく嫌な布陣だった。

 だが。

 

「時間稼ぎなら間に合ってるぜ」

 

 その衝撃砲ごと全て切り刻む。空間を圧縮した砲弾が霧散していく。たった一瞬で、一夏の周辺の衝撃砲が全て霧散していった。

 

 (あくまで衝撃砲は囮!本命は!)

 

 それでも鈴はアリーナを後方に移動し続ける。衝撃砲を乱射し続けながら、何時もとは違って距離を詰めない。

 

「鈴!そんなに逃げてばっかりじゃ俺には勝てないぜ!」

 

 一夏は乱射している衝撃砲の中から的確に自分に当たるものとルートの進行の邪魔になるものだけを霧散させている。

 一夏と鈴の距離はだんだん縮まって来る。

 

 (後もう少し!)

 

 一夏は乱射の密度が少なくなったのをいい事にスラスターを吹かす。

 

「行くぞ!鈴!」

 

 一夏は姿勢を前傾姿勢に変えて、加速しながら鈴に向かっていく。だが鈴はむしろニヤリと笑っていた。

 鈴はアリーナの壁に密着していた。

 

 「一か八かの…大勝負よ!

 

 途端に鈴は衝撃砲を出力最大にして背後のアリーナの壁にぶつけた。

 今の鈴はアリーナの壁に密着している。そんな中で衝撃砲を撃つとどうなるか。

 

「なっ!」

 

 結果。衝撃砲の大幅な反動と衝撃が加わって鈴はとてつもない加速を生んだ。そこからさらに鈴は加速した。

 

 「瞬間加速(イグニッションブースト)

 

 そこからさらに瞬時加速を上乗せして一夏に突っ込む。鈴の機体が悲鳴をあげている。スラスターが金切り声をあげている。機体の制御のバランスがきつすぎる!

 ―――だが鈴のセンスがそれを成した。

 

 「届けえ!

 

 だが一夏は反射的に剣を押し出していた。

 

「その加速じゃあ!避けられないだろ!」

 

 ―――このままでは直撃する!

 

 (止まれええ!

 

 その無茶な司令に、甲龍(シェンロン)は悲鳴をあげながら応えた。

 

 ―――剣の切っ先の前で、瞬間的に止まった(・・・・・・・・)

 

「何!」

 

 一夏はそのまま剣を突き刺そうとするが、鈴は止まった反動で上に浮き上がりながら突きを避ける。

 

 「此処だあああ!

 

 千載一遇のチャンスが訪れた。

 一夏は空振っていて大きな隙が出来ている。

 両手に持っている双天牙月を頭上に大きく振り下ろす!

 ―――貰った!

 そう確信した。

 

 「―――release(開放)

 

 一夏がそう発言すると、振り下ろした双天牙月を阻むように膜が展開された。

 それに阻まれ、振り下ろした両腕が反動で揺れてしまう。機体が眠そうに倒れ込むが、PICの作用でふわりと浮く。鈴は万策無しと双天牙月をしまいながら一夏に話しかけた。

 

「ねぇ……一夏。私の最後の賭けすら読んでたの?」

「それに対しては違うと言わせてもらう」

 

 その言葉に驚愕した。

 

「アンタは私の最後の足掻きに完璧に対応していたじゃない」

「それはそうだが、あれは半ば保険と反射の様なものだ」

「……どういうこと?」

「お前が何か考えを持って行動しているのは分かっていた。だから念の為に単一仕様(ワンオフアビリティ)の防御機能をいつでも発動できる様に準備はしていた」

「ああ……。単一仕様(ワンオフアビリティ)、アンタそういえば一次移行(ファーストシフト)時点で使えたんだっけ。しかもあれってそんな事にも使えるのか。規格外にも程があるわよ」

「だけどあれじゃあ最初の突撃は防御し切れない。だからカウンターを決めようとしたんだが、まさかあそこから停止できるとは思わなかった。反射で動けていなかったらおそらくは相当SEを削られていたと思う」

 

 一夏は素直に称賛する。それに鈴は恥ずかしそうに頭をかいた。

 

「やめてよ。結果的に負けたしさあ。はあ……これでも結構キテるのよ。あれ通じなかったの」

「それで?この試合まだ続けるか?」

「流石に降参するわよ。もう機体がボロボロだし、SEも3割だけ。これでアンタに勝つなんて流石に無理よ」

 

 鈴が降参の旨を審判に言うと会場全体が大きく歓声に震えた。両者ともに実力が認められてどちらにも歓声が湧く。

 そのままピットに鈴と一夏は戻ろうとして―――

 

 一夏は動いた。

 

「危ない!鈴!」

 

 一夏は咄嗟にスラスターを動かし、鈴を蹴飛ばした。

 

「痛った!一夏!何すんの……」

 

 言葉は途中で止まった。何故なら自分がさっきいた所に大きな大穴が空いていたからだ。上を見てみると()()()()()()()()()()()()()()()()()

 その上からナニカが墜落してきた。

 

 ソレは真っ黒なISだった。

 丸太の様に太い腕とは対象的にひょろ長い脚。

 頭部と思わしき部分は装甲で隠されており、赤い複眼が蠢いている。

 

 『―――start up(起動)』  

 

 その複眼はこっちを見据えて。

 両腕を構えた。

 

 (やばい!)

 

 それは第六感だったか。あるいは経験から来るやばい予感か。咄嗟に鈴はスラスターを動かした。一夏は上に避けた。

 

 その一瞬の後、赤い閃光が視界を消し飛ばした。




疲れた。
何時もの様に次の投稿遅れるかもしれません。
そこらへん分かっていただけると幸いです。
ちなみにゴーレムは多少強化(タッバ基準)されてます。


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ゴーレム戦 前編

俺に足りない物ッ!

それはあぁぁ!

情熱・思想・理念・頭脳・文才・センス・文章力!

そして何よりもォォォオオオオッ!

(投稿する)速さが足りない!

珍しく投稿遅刻しませんでした。(その分クオリティは落ちる)
本編どうぞ。


 その赤い閃光は未確認ISを中心にして地面に大きな線状のクレーターを生み出した。着弾地点であるアリーナの壁には巨大な穴が出来ていた。

 その未確認ISはそれに反応すること無く。ただただ不気味な複眼で織斑一夏を睨みつける。

 

「どうやらあの黒いISは俺にご執着のようだ」

 

 余裕ぶって見るが冷や汗が流れる。あんな威力のビーム食らったら絶対防御なんて貫通しかねん。

 ましてや……

 

「一夏!アンタは先にピットに戻っていなさい!」

「……そう言うけど鈴。どうやら敵は本気で殺る気だ。見ろ、そのピットすら閉鎖されている」

 

 近くで逃げるよう警告をする鈴。だが残念な事にピットに周りの遮断シールドがさらに二重に。おまけに電子ドアに至るまで全て遮断されているのだ。

 

「要するにもう逃げ場は無いし、此処で破壊するしかないって訳だ」

「状況は最悪って事ね。分かった。私も手伝うわ!」

「いや、鈴。お前はサポートに徹してくれ」

「ッ!なんでよ!」

 

 そう言っている鈴のISはボロボロだった。スラスターや武装はまだ大丈夫そうではあるが、装甲が傷だらけだ。

 

「そんな装甲がボロボロの奴があのビームを食らって見ろ。そのまま全身大火傷だぞ?」

「うぐっ」

「絶対防御だって完璧じゃない。こういう時こそ落ち着いて行動する事が大切だ」

「……分かったわよ」

「あとは……そうだな」

「……?」

 

 「俺を信じろ」

 

 そんなクサイセリフを吐いたのがいけなかったのか鈴はこんな状況になっても笑っていた。

 

「あは、あはは!何よそれ!そこまで引っ張ってそんなことか!」

 

 鈴はひとしきり笑ったあと俺の背中を手で叩く。

 

「信じてあげるから、さっさと戻りなさいよ!」

 

 そして思いっきり押された。

 

 その声を背に一夏は未確認ISに近づく。

 

 ……改めて見ると不気味な姿をしている。

 紅い複眼がこっちをギョロリと見ている。腕は異常に発達している癖にボディ部分と脚部は弱そうだ。

 全身は塗りつぶしたかのように黒い。

 

 その黒いIS相手に一夏は―――破壊しにいった。

 

「こっちだ!デクの棒!」

 

 一夏は初めから教師陣の援護を待つつもりは無かった。アリーナの遮断シールドを破る破壊力がある相手をそのままにしておく訳にはいかない。

 加えてIS学園の電子系統すべてがハッキングをくらっている現状だと生徒の安全が最優先される。

 少なくともたった二人とほぼ全校生徒―――さらに言えばこの場に来ている重要人物を天秤に掛ければどっちが重要かなんて分かりきっている。

 

 援護は期待できない。

 

 そう判断して一夏は―――短期決戦を仕掛けた。

 

 (あれは無人機だ。エネルギーの残量もわからない。あんな出力のレーザー、相手は何回撃てる?そもそも何が目的だ?何故俺に執着している?)

 

 分からない。分からないことだらけだ。一夏は熱線を避けながら結論を叩き出す。

 

「とりあえず!終わった後で考える!」

 

 黒いISは右肩を紅く燃やしながらレーザーを一夏に向けて放つ。だが当たらない。  

 もとより一夏はセシリアのBT兵器を全て避けているのだ。予備動作があると分かっているレーザーに警戒する必要は無いと判断した。

 そのまま空にレーザーを置くように誘導しながら強襲を仕掛ける。

 スラスターを大きく動かし、瞬時加速。そのままの勢いで黒いISの腕から斜めに袈裟斬りを仕掛ける―――!

 

 (ッ!手応えが無い!)

 

 だがまるで鉄を殴っているかのように手応えが無い。装甲に傷をつけた訳でも無く、ただ甲高い音を鳴らすだけであった。

 同時に、右腕から紅く発光!

 

「チッ!」

 

 そのレーザーを回避。そのまま一旦上に距離を離す。追撃するレーザーを霧散させて剣に吸収させる。

 その黒いISは紅く光る複眼を不気味に動かしチカチカと音を立てている。

 かと思えば再び右肩が輝き始める。 

 それを見た一夏は心の中で悪態をつく。

 

 (あのエネルギーは無尽蔵かよ!バカスカ撃ちやがって!おまけに手応えが無い!)

 

 レーザーを再び回避しながら改めて自分の愛機を見てみた。

 

 (今はまだ問題じゃないが、あのペースを維持したままレーザーを撃たれるとジリ貧だ!)

 

 レーザーの雨をくぐり抜け、何度も装甲を斬りつける!巨大な腕が機体ごと潰そうとしてくるが、遅い。

 それを簡単に避けて、カウンター気味に頭部を叩く。

 よろめく様子は無い。それに舌打ちをしながらもスラスターを動かし、そのまま頭部に膝打ち!そこからサマーソルトを入れるが、まるで手応えが無い。

 

『―――』

「何言ってんのか分かんねえ、よ!」

 

 紅い複眼が不気味に動いたかと思えば、巨大な爪が向かって来る。

 それを雪片の側面で受け、そのまま関節部へと滑らす。

 

「これならどうだ!」

 

 巨大な腕の関節部。そこなら多少ダメージを与えられると踏んで突き刺す。

 だが突き刺しても手応えが無い。

 

release(リリース)!」  

 

 吸収した熱線を関節部に浴びせる。

 だが、まるで手応えが無い。

 それに舌打ちをしながらも、ヒット・アンド・アウェイで上に距離を置く。

 一瞬の隙の内に周りをよく見渡してみる。観客が混乱に満ちていた。既に電子ドアを破壊して避難を呼びかける代表候補生や教師がいるが、それでも避難を終えられていない様だった。

 

「観客に被害は当然出さない。その上でこの無人機を迅速に処理する。二つ同時にやらなきゃいけないってのが俺の辛い所だな」

   

 とある漫画の名言を冗談交じりに口にして気分を何とか落ち着かせる。

 だが、僅かに一夏の頬には一筋の冷や汗が流れていた。

 

 (今取るべき行動は迅速に行動しながら観客を避難させることだ。今の俺ではあれ相手に打開策を思いつきそうにない。だがこのままモタモタしていてはいずれエネルギーが底をつく…。)

 

 今の一夏の心境は、まさしく八方塞がりであった。

 剣は装甲で効かない。単一仕様も大して手応えが無い。

 攻撃は届くがこっちが先に尽きる。そうなればあの出力から放たれる熱線だ。絶対防御があるとはいえ、ただではすまない。 

 おまけに 

 

 (動きを学習しているのか…。)

 

 動きを学習して変則的に軌道を変えてくる。それでも避けられるが、いずれはジリ貧になり、撃ち落とされる。

 その事実に、歯ぎしりしながら下の未確認ISを睨む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「山田先生!生徒の避難は!」

「今ようやく終わりました!」

 

 管制室は、怒号が飛び交う現場になっていた。IS学園に現れた未確認IS。IS学園そのものすべてのハッキング。それに伴うシールドの誤作動によって観客は会場に閉じ込められる事になった。

 IS学園はこれをテロだと判断して、その上で行動を開始した。

 最優先は観客の避難。その次にシステムの復旧及びハッキングの解除。その後で未確認ISの対処という優先事項はあるものの、それらを並行してやっている為、すべての情報を見れる管制室が指示を飛ばす。

 IS突入班の準備にカウンタークラッキング。それに観客の避難。

 

 (持ち場を離れられない…!) 

 

 本当は今すぐにでもISに乗って未確認のISを対処するべきだと自分の心の中では感じている。

 ―――だが

 

「システムの復旧はどうなっている!」

「だ、駄目です!ゲートは教師が開けて回っていますが、シールドはそうもいきません!これじゃISも突入できない!通信も織斑君とも凰さんとも通じません!」

「くそっ!」

 

 シールドは対ISを意識した強固な物だ。それが今ハッキングされて最大レベルで固定されてしまっている。

 それクラスになると今学園内にある量産機では突破出来ない。専用機ですら傷を少しだけつける程度だ。

 少しずつ削っていたら確かにいずれ何とか突破は出来るだろうが、そんなことをしている間に織斑達はどんどん危険に晒される。

 管制室のモニターには未確認ISを相手に白式が攻めあぐねている映像が流れる。現状は有利だが、このままでは未確認ISが白式を追い詰めることが分かってしまう。

 そんな現状に対して何も出来ないことに拳を固く握りしめて壁を叩く。その拳には、無力の証明の様に血が流れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 (どうする?どうすれば良い?)

 

 目の前で未確認ISと一夏が戦っている。一夏は未確認IS相手に決定打は与えられてない。どころかあのISは一夏の動きを学習し始め、逆に一夏の方はエネルギー切れを警戒して動きが鈍くなっている。

 最初はかすりもしなかったレーザーが、機体に少しだけだがかすり始めた。

 

 (こっちはまだ決定打を与えられる攻撃を見つけられてはいないのに、あっちはあのレーザー一つ当てるだけで決定打。何てクソゲーなのよ)

 

 その事実に苛立ちを隠せないものの、一夏に言われた事を思い出し、頭を落ち着かせる。

 

 ―――落ち着け。今私がやるべきことはあのISの弱点を見つける事だ。 

 衝撃咆のサポートは一夏程の機動力だとかえって邪魔になる。そもそもこのボロボロの機体じゃ本当に邪魔になるだけだ。

 一回大きく息を吐いてから改めてあの未確認ISを観察する。

 

 (両肩に大きな砲台。両腕にもある。その巨大な腕とは裏腹にボディ部分と脚部は細い。そして挙動と反応からして機械的なものの筈よ)

 

 鈴はあのバランスが取れていない機体と、自分の感覚から明らかに外れた挙動、それに反動なんて物を考えていない攻撃から、おそらくは無人機と踏んだ。

 

 (普通ならありえない―――と笑い飛ばすけど、()()()()()()()()()()。一夏の攻撃そのものに対して違和感を感じるほど()()()()()()()。何よりも動きそのものが()()()()()()()()()。そんな技術があるなら無人で動くISなんてものもありえなくは無いかもしれないわね)

 

 そう判断した上で策を練る。

 

 (あれが無人機だと仮定するなら、あのISは機械的な構造になる筈)

 

 人が乗っているという視点から離れて、機械が動いているという視点に切り替える。

 あの不自然なエネルギー量。関節部にすらダメージを通さない装甲。何処かに弱点がある筈だ。

 

 (そもそも何故あれはそこまで簡単にあんな出力のレーザーを撃てる?)

 

 レーザーの発射速度に違和感を感じる。いくら何でも速すぎる。ISの絶対防御を貫通しうるそれを何発も連射なんて、一旦冷却を挟まないと……?

 

 ―――()()

 

 慌てて未確認ISの行動を見る。未確認ISはレーザーを一夏に向かって撃ち続けている。

 ―――()()()()()()()()()()()()

 

 (一発ずつ撃っている?)

 

 砲台は両腕と両肩の合計四つ。四つある筈なのに何故一発ずつしか撃っていない…?

 しかもそれは右肩から反時計回りを描く様に規則正しく撃たれている。   

 

 (冷却はある!むしろ冷却しながら熱線を撃っている!ならそこに決定打はある!)

 

 ―――謎が解けていく。

 閃光が頭を駆け巡る。極限まで回した思考が、決定打への道筋を照らし出した。

 

「一夏ァ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほんっと決定打が見当たらないなあ!」

 

 未確認ISから放たれる熱線を紙一重で避けながら文句を口にする。

 あれから何回も同じ部位にコレクトのエネルギーをピンポイントで当てている。

 ―――だというのに  

 

「――――――」

「ハッ!まるで効いて無さそうで何より!」

 

 まるで堪えた様子も無いし、動きが鈍る様子も見せないそれにうんざりしていた。

 

(機体が鈍いし、頭も回らない)

 

 ただでさえ絶対防御を貫通しうる程の熱量をもつ熱線。そんなものを何回も紙一重で避けていたら機体そのものがオーバーヒートを起こす。

 おまけに皮膚防御(スキンバリア)があるとはいえ、あんなレーザーをシールドで閉じ込められた場所でたくさん放っている。その為に熱が逃げられずにアリーナ中に籠もってしまっている。

 

「ハアッ……ハアッ……!」

 

 いくら強靭なスタミナの持ち主だとしても、機体がオーバーヒートを起こし、皮膚防御(スキンバリア)もあまり機能していない現状で、精度の良くなるレーザーを無呼吸のままに動き続けながら避ける。結果として、最初に熱で脳がダウン。その後だんだん体がダウンし始めた。

 だが、そんな一夏に対してまるで堪えた様子も無く、むしろ動きが良くなる未確認ISに嫌な汗がだらだら流れる。

 

 (意識が朦朧としてきた。匂いも分からない。耳も遠くなって…。何か……。眠くなって)

 

 目の前がボヤけ始めた。機体がふらついて落ちそうになる。

 当然それを見逃す訳もない。

 未確認ISは右腕を一夏に向けて発射をした。

 だが一夏は動けない。反応が遅れた。

 

 (あっ。これ、避けられない)   

 

 

 

 

「一夏ァ!」

 

 その時、眠気を覚ます大声が響き渡る。

 ハッと目覚めて目の前に来ていたレーザーを体を反らして何とか避ける。

 多少機体に掠ったものの、致命的なダメージではない。

 

「鈴。助かった」

「危ないわよ!私が信じたんだから、あんなデクの棒に負けんな!」

「ははっ!手厳しい」

 

 親友の言葉で目が覚めた。雪片の柄を握って手の感触を認識する。

 

「それより一夏!アレの弱点を見つけた!」

 

 その一言で目が覚める。

 

「弱点?あれに弱点ってあんのか?」

「いい?一夏。あいつのレーザーは一発一発に冷却が必要なのよ!」

「冷却?そんな事をする隙なんてあったか?」

「あいつの砲台をよく見なさい!」

 

 一夏は熱線を避けながら砲台を確認する。

 

「右肩から一発ずつ……!なるほど!」

「あれは冷却速度が異常に速い。アンタの単一仕様が効かなかったのもすぐに冷却をしていたからだと思う」

「要するにどうすれば良い?」

 

 そう聞くと鈴はニヤリと笑いながら打開策を口にする。

 

「私の考えが正しかった場合、あれが熱線を撃った後の砲台は他の装甲と比べて遥かにダメージが通りやすい!ただし」

「ただし冷却速度が異常に速いから熱線を撃った直後に攻撃を仕掛けろ…て事か?」

「そういうことよ!」

「ハッ!無理難題をよく言ってくれる!」

 

 実際それはとても難しい難題であった。

 ただでさえ精度が上がっているレーザーの連射相手にただの一瞬しかないタイミングを狙う。おまけに考えが正しくなければそれは大惨事に繋がる事だった。

 

「でもアンタなら出来るって私は信じた!」

 

 それでも一夏は不敵に笑った。

 

「だからアンタも!」

 

 一瞬しか無いタイミング。確証の無い弱点。とてつもなく難度の高い難題。それら全てが―――

 

 「私を信じなさい!」

 

 「―――そうだな!」

 

 ―――とても簡単に思えた。

 

 

 黒いISの右肩が発光する。

 

 それを避けながら前進する。

 

 (頭が冴える!目も視える!体が軽い!)

 

 さっきまでの不調が嘘の様に軽やかに熱線を避ける。

 続けて右腕。左腕。左肩。右肩。

 鈴の仮説が正しい事を証明するかのように順番に発光。

 

 「そんなもん!当たるかぁ!」

 

 精度が上がっているとはいえ、エネルギーの節約をする必要が無くなった一夏に当たるわけもなく。

 

 スラスターを大きく動かし、熱線を軽やかに避ける。

 

 (今避けたのが左肩!なら次は右肩!)

 

 黒いISは予想通り右肩を紅く発光させる。その瞬間、一夏は爆発的に加速した。

 そのルートに黒いISは熱線を置いた。

 

 (熱線を切り払ってる場合じゃない!その時間すら惜しい!)

 

 一夏はそう判断して左腕を全面に、右腕に雪片を構えた。

 左腕の装甲が悲鳴をあげて吹き飛ばされる。だがその熱線の下をくぐり抜ける様に突進!

 左腕の装甲を犠牲に、そのまま熱線を放出し続けている右肩の砲台に雪片を突き刺す!

 

「―――――?――――!――――!」

「ようやく手応えを感じた!」

 

 黒いISの右腕が金切り声を上げる。熱線が逆流して暴発している!バチバチと火花をあげながら右腕全体が紅く発光している。

 未確認ISは声なき悲鳴を上げながらも左腕を一夏に向けて発光させる。自分の右腕ごとレーザーを浴びせるらしい。

 だがそれに対して一夏は不敵に笑う。

 

「誰か忘れてるよなあ!」

「ええ!誰かを無視して親友に傷を負わせるほど私は甘く無いわよ!」

 

 鈴は連結した双天牙月を黒いISの左腕に向かって投げ飛ばす。当然、高過ぎる熱によって柔らかくなっている装甲の上から青龍刀は貫く。

 そこからさらに左腕も逆流。火花を上げながら左腕も紅く発光する。

 

 「決めろ!一夏ァ!

 

 一夏は右肩に雪片を突き刺しながら雪片を白く発光させる。

 

 「release(リリース)

 

 刀身が白く輝き、音を鳴らす。その輝きは剣になり、未確認ISを貫く。

 

「―――――!―――!――!――――!

 黒いISは逆流する自分のエネルギーと、コレクトの生み出すエネルギーに金切り声を上げる。

 その未確認ISに秘められたエネルギーが爆発。

 アリーナ全体が揺れる爆発。

 もはやその爆発にシールドが意味をなさずに砕け散る。叫び声の様な轟音が響き渡る。

 嵐の様な風圧が。アリーナ全てを揺らすかのような地響きが。

 結果としてアリーナの中央に隕石が落ちた様なクレーターを生み出す結果となる。

 

 

 そんなエネルギーの暴力に、一夏はアリーナの壁まで吹き飛ばされた。

 

「一夏!」

 

 鈴が涙目でこっちに近づいて来る。

 自分の機体を見てみた。

 それはもう酷くボロボロだった。

 ほぼ全ての装甲が損傷。腰のスラスターは無事なものの、非固定浮遊部位(アンロックユニット)のスラスターは使い物にならない。

 こんな状態でよく生きてたなと思い、聞いてみる。

 

「鈴?あの未確認ISは?」

「あのIS?あんな爆発で機動してる訳が無……!?」

 

 鈴が驚愕した顔を浮かべた。そして同時に絶望した顔を浮かべた。

 

「う、嘘よ。あんな爆発が起こったのに、なんで動いているの…!?」

 

 その言葉に慌てて体を立たせる。体が少し安定せずにふらつくが、それでも前を向く。

 それはクレーターの中からこっちに歩いて来ていた。

 紅い複眼をチカチカ鳴らして相も変わらずこっちを睨む。特徴的な巨大な腕は千切れていて、コードがむき出しになっていた。

 一夏はそれに対して何も言えなかった。

 もうボロボロだった。

 何もかも使い切った。

 体が勝手に尻もちを付く。

 

 (うご、かなきゃ…)

 

 それでも尚倒さなきゃいけないと立ち上がる。

 ―――そんな少年にとって最悪の事態が起こる。

 

 「―――BURST MODE(擬似バーストモード)

 

 それは静かに紅く燃えた。

 

 それはゴーレムの―――復活を告げた。




真面目に疲れた。
てかゴーレム先輩、ちょっと強すぎませんか?
タッバ本気出しすぎな件。


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ゴーレム戦 後半

「小説を書く」と心の中で思ったならッ!
その時すでに行動は終わっているんだッ!

珍しく一日で投稿出来ました。(その代わりに少し短い)

本編どうぞ


 不死鳥の如く蘇るゴーレム。

 巨大な両腕は千切れているものの、紅い複眼は戦意を失って無いかのようにカチカチと一夏を睨む。

 全身の装甲がスライドすることによって、隠された無数の砲台が姿を表す。装甲の隙間から過剰エネルギーが火花を散らす。それによって本来の黒い装甲全てが焔の如く燃えていた。

 そのISはエネルギーを収束させていた。

 無数の砲台にエネルギーが集まっていく。全身が紅いスパークで包まれる。

 

 それを目の前にして一夏は―――立ち上がり、極限まで思考を回した。

 

 ―――何故最初からそれを使わなかった?   

 

 さっきの様な大きな砲台は胸部にしか無く、他は小さな砲台ばかりだ。加えて装甲そのものが燃えている。過剰エネルギーが噴き出しているのもある。

 それではさっきの様な冷却が出来ない。

 その代わりに、レーザーの出力は前の比ではない事が容易に想像出来る。

 

(つまりは一発限りの最大火力!)

 

 そう判断した。その上でどうすれば良いのか。

 

(全身の装甲はひび割れて使い物にならない。非固定浮遊部位のスラスターも駄目。腰のスラスターは問題無い。あの最大火力は絶対に受けられない。だから発動前に叩くしか方法は無い)

 

 冷静に、それでいて正確に未確認ISの危険性と対処を見極める。

 

 ―――これは賭けだ。

 

(スラスターだけの加速じゃ間違いなく足りない!大幅な加速が必要だ。今逃げるのも間に合わない。避けようとしてもあれのエネルギー量からおそらくは広範囲爆撃。そしてそれをくらえば俺たちは容易く死ねる)

 

 再び死への恐怖を感じたのか汗が流れる。

 手は震えるし、足も震える。 

 

(それでも命を賭けなければ―――俺たちは死ぬ!)

 

 目の前で全身が紅く輝き始めたそれを見据えて。  

 

 ―――生きる為の選択肢を取った。

 

「鈴!時間が無い!あの未確認ISに向かって俺の背中に衝撃砲を最大出力で撃て!」

「なっ!何言ってんのよアンタ!アンタに向かって攻撃しろって言ってんの!?」

 

 鈴は当然焦ったかのようにそれを拒否する。だけど今はそれどころじゃない!

 

「あれはおそらく瀕死だ!だけどあの出力で攻撃されたら俺たちは死ぬぞ!俺を信じてくれ!」

「ッ!―――分かったわよ!その代わりに失敗したらただじゃ置かないからね!」

 

 鈴が俺の背中に衝撃砲を最大出力で撃つ。

 その強い衝撃で背中の装甲は吹き飛ぶが、そんなの関係無い。

 機体が爆発的に加速しながら目の前の紅いISに突撃していく。

 それをみすみす見逃すISではなく、全身にある無数のビームを一夏に向けて発射する。その一つ一つが絶対防御を貫通しうる出力で放たれる。

 

 それを一夏はスラスターを爆発させながら避ける。

 

(小型はまだ撃たせてもいい!だがあの胸部にある砲台だけは撃たせてはいけない!) 

 

 腕の装甲。足の装甲。それら全てが吹き飛ぶ。それでも一夏は前を向いた。

 

(致命的な傷にならないなら十分!)

 

 絶対防御が貫通して皮膚の表面が焦げる。嫌な匂いがする。それでも致命的な傷にならないと判断して突撃する。

 

(とにかくスラスターを動かす!)

 

 スラスターが黒い黒煙を上げる。火花も散る音が聞こえてくる。

 身体が痛い!爆発的な加速の負担と全身が焼ける様な錯覚に歯を食いしばる。

 

「見えたぞ!」

 

 クレーターの中央に紅いISが見えた。

 

 ―――ソレはまばゆい輝きを見せていた。

 

 秘められたエネルギーがどれほどのものか考えたくもない。余りのエネルギー量に、周りは嵐の様に吹き荒れ、景色が歪んでいる。

 エネルギーが荒れ狂い、紅い雷を作り出す。

 

 そのエネルギーの質量の暴力に。

 

 ―――加速を緩めずに突っ込んで行った。

 

(スラスターが持たねえ!エネルギーの質量そのものに壊れそうになってる!)

 

 極限まで高められた集中が、時間を停滞させる。

 息が出来ない。身体から痛みが消える。押しつぶされそうになる。脳からアドレナリンが噴出する。

 

 それでも命を燃やし続けた。

 

 (届け!届け!届けえええ!)

 

 何もかもを懸けてその破壊の閃光を止めようとした。

 自らの全てを払ってまでも止めようとした。

 

 ―――だが

 

 スラスターが切れた。

 

 (あ……れ…。届か……ない?)

 

 スラスターが切れて、軌道がずれる。一直線に向かう筈だったその軌道が地に落ちる。

 不運だった。もしも。もう少しだけスラスターが活きていれば。

 それだけで結果は変わったのかもしれない。

 

 収束されたエネルギーは止まる事を知らない。

 紅い極光は既に一夏を狙っている。

 無尽蔵に近いエネルギーが唸りを上げる。収束されたエネルギーが極光になり、ソレは放たれてしまった。

 

 破滅の極光が一夏を消し飛ばす―――

 

 「―――ソレがああ!どうしたあああッ!」

 

 否。地に足をつけて耐える。

 

 ソレは限界までエネルギーを収束した雪片弐式だった。

 周囲に多く散らばった過剰エネルギーを限界まで吸収しながら収束して放つ―――!

 

 「があああああっ!」

 

 体が軋む。腕が焦げる!息ができない!景色が眩む!口から血がでて蒸発する!刀身が溶ける!

 拮抗が崩れそうになる!

 

 それでも……それでも!

 

 「諦めたら死ぬ!」

 

 そう自分に言い聞かせる。でなければ折れそうになる。

 腕に力が入る!歯を食いしばる!意志が前を向かせる!積み重ねた物が俺を奮い立たせる!

 

 「全てを賭ける!」

 

 刀身が溶ける前に白式とラファールのSEを全て刀身に注ぎ込む!

 再び雪片は白く輝き始める。

 

 「貫けええええぇ!

 

 ソレは輝きだった。

 ソレは白銀の剣だった。

 命の輝きだった。

 

 「あああああああ!」

 

 "――――――――――!"

 

 ―――ソレは破滅の極光を切り裂き。紅く燃えるISを貫いた。先程の嵐は嘘の様に静まり返る。

 

 

「―――っは!ハアッ、ハアッ、げホッ、ゴホッ」

 

 それと同時に一夏は地面に崩れ落ちる。

 身体が酸素を求めてむせる。さっきまでの力が夢の様に崩れ落ちる。足も手も力が抜けて動かせない。

 手にはさっきの感覚が。足にはまだ痺れが残っている。それが夢では無いことを証明してくれた。

 

「俺……は。勝った……ぞ」

 

 そう一夏は確信してしまった。

 

「一夏ァァ!」

 

 鈴の悲壮な叫びが耳に聞こえる。

 その声にぼやけた視界が多少はっきりとする。

 

 

 

 

 

"―――――――――――――――――――――!"

 

 

 

 

「あ、ああ……!」

「――――――――――――。」

 

 ソレは絶望だった。その複眼はこっちをまだ見ている。紅い筈だった装甲は全て壊れて中身まで見える。砲台なんて一つ残らず潰れている。

 ―――確かに貫いた筈だ。

 事実ソレの胸部は大きな風穴が空いている。

 なのに―――

 

(軽減……された)

 

 放たれた極光のせいで、本来ゴーレムそのものを完全に機能停止に追い込むことが出来たはずのソレが軽減された。

 ―――その結果としてゴーレ厶は稼働した。

 

「―――、――――――」

「ば、…ばけもの……め」

 

 ゴーレムは立ち上がった。新しく出来たクレーターの中央。その近くで力無く伏せる一夏と立ち上がったゴーレム。

 ゴーレムは複眼を紅く輝かせてた。それと同時に周囲に散らばる過剰エネルギーを複眼に集中させていた。

 

 

「何でぇ!何で動かないのよ!」

 

 鈴が悲壮な叫びを上げながら倒れ伏している。

 鈴の甲龍は半壊。目に見えない筈の龍咆はステルス機能を失って転がっている。

 ―――無理もない。

 ただでさえ一夏との戦いで無茶な機動をして機体そのものに負担を掛けていたのだ。

 そこから膨大なエネルギーの衝撃波をくらえばISは一時的に機能を失う。

 

 ―――離れていた鈴ですらここまで負担になるのだ。

 当然それを真正面で食らっていた一夏は動く事が出来ない。

 

(手も……足も動かない……。)

 

 自分の目の前でエネルギーを収束しているゴーレムを見ることは出来ても立ち上がる事が出来なかった。、

 

(おれは……死ぬのかなあ)

 

 もう装甲なんてほとんど吹き飛ばされた。ISそのものは強制的に解除された。絶対防御すら発動していない。

 そんな状況でそのビームを食らえば死ぬ。

 

(嫌だなあ。……ここまで頑張って。報われないままに死ぬのは)

 

 ここまで生きる為に努力をした。その走馬灯がゆっくりと流れる。

 エネルギーを収束している時間が長く感じる。

 世界が遅く感じる。死を間近に感じてゆっくりと流れている。

 他人事の様に思いながらただその放たれるビームをゆっくりと待つ。

 

(ここまで……かな…。)

 

 死が視界を覆い尽くす。

 ―――収束されたエネルギーは一夏の心臓を貫いて

 

 「チェックメイトですわ!

 

 否。貫かれたのはゴーレムの方だ。

 レーザーライフルから放たれる青い閃光は、一分の狂いも無くゴーレムの頭部を貫く。頭部に収束されたエネルギーは放たれる事は無く、そのまま霧散する。

 

「―――――――――――――――」  

 

 紅く光る複眼は眠る様に光を失った。 

 そのままゴーレムは後ろに倒れ、完全に停止した。

 

「ようやく……終わったか……」

 

「一夏ァ!」 

「一夏さん!」

 

 (ああ……。おれは……まだ生きている)

 

 一夏は意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……何故∑モードは発動しなかったんだろ?」

 

 機械の部品らしきものが散らばる一室。その中で空中投影されたディスプレイに表示されたデータを確認しながらキーボードを叩く。

 その空中投影されたディスプレイには黒いゴーレムのデータ。それに紅いゴーレムのデータが浮かんでいた。

 

「本来これらは零落白夜があれば簡単に勝てる予定だった。それに∑モードの発動が確認されたらゴーレムを撤退させる予定だった。なのに何も発動せずに勝ってしまった」

 

 その一つのモニターには黒いゴーレムだったものの残骸を回収しているIS教職員の姿が映っている。

 それをどうでもいいとばかりに一人言を呟く。

 

「∑モードが起動しなかっただけ?それともいっくんの強さを見誤っていた?そもそも零落白夜が目覚める筈なのに何故か違う武装だった。いっくんそのものが、それと違う可能性だと示しているのか…?」

 

 少女はモニターを見つめる。それは一夏が∑モードを初めて発動させた時の映像だった。

 

「とにかく情報が少なすぎる。発動する条件。いっくんの実力から検証するための材料が少なすぎる」

 

 少女は苦虫を潰した顔になりながらもモニターを睨んでいた。

 

 

 

 p月!日

 

 あれからまる一日ぶっ倒れてたらしい。身体を見ると包帯で全身ぐるぐる巻にされてた。ミイラ人間になってた。

 鈴から聞くと、全身に軽い火傷があって、それで全身に包帯を巻いたらしい。

 幸い水ぶくれとか皮膚がただれるとかそんなことは無かったらしい。

 それと俺の白式はダメージが余りにも酷い為、整備室に直行。ラファールもラファールで被害を受けたらしい。

 ぶっちゃけ火傷の痛みはそれ程でもない。

 嫌、普通に痛いんだけど、はっきり言って起きた事が起きた事だからそこまで痛くはない。

 それにクローン人間特有の再生能力でなんともなる。

 嫌なのは入院生活だ。まあここ保健室だけども色々と面倒な事情も相まって一週間は保健室暮らしらしい。

 ……病院食かぁ。

 

 ……早く学食食いたい。

 

 そういえば疑問を持った事がある。

 何であんなゴーレムくそ強かった?確かあのゴーレムって原作一夏くんでも勝てたレベルだよな?

 なしてあんなに強くなった?

 おまけに変な覚醒機能まであったし。

 

 てことはあのゴーレムってこっちのレベルに合わせて強くなってるってことじゃ……?

 

 

 

 

 

 あれ?もしかしなくとも鍛えれば鍛えるほど無理ゲーになってる?

 何だよこのインフィニット・ストラトスってクソゲー。始まる前から詰んでるよ。




いや〜〜。ゴーレムは強敵でしたね(ガチ)

……ISってやっぱクソゲーだわ。



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織斑日記!十!

日常パートになると凄く速く書ける。

今回日常パートだけです。

本編どうぞ


 p月v日

 

 あれから一週間。色々検査とか入ってようやく授業に復帰出来た。

 毎日見舞いに来てくれたのは鈴と箒とセシリア。

 度々来てくれるのは布仏さんとか暗部の地味な方……もとい簪さんとか暗部の派手な方……もとい楯無さんとかだ。

 他にも来てくれて案外暇にならなくて助かった。

 それとみんなが見舞いのフルーツとか持ってきてくれるから本当に有り難く頂いてる。

 そんな中で思うに思った事がある。

 

 あのゴーレム戦。めっちゃ苦戦した挙げ句に死にそうになった。

 原作の一夏くんが勝った要因は零落白夜とかいう燃費悪い使いづらいくせに危険すぎるあれッ……

 じゃなくて世界最強が使う最強の武器だ。

 

 その特徴はなんと言っても燃費の悪ッ………

 エネルギー無効化という危険極まり無ッ……

 

 そう!エネルギー無効化という強さにある。

 簡単に言ってしまえばそんな強い零落くんがワンオフとして出なかった為にゴーレム戦でとにかく苦労する羽目になった。

 一応このコレクトもアンチエネルギー系の単一仕様なんだけど、零落白夜とかいう火力全振りに比べるとどうしても火力が出ない。

 そこで零落白夜に変わる新たな必殺技を既に考案している。

 それがゴーレム戦で見せた必殺技だ。 

 

 具体的にはラファールのSEを全部消費してエネルギーを放出する。その集めたエネルギーを極太ビームにして相手にブッパするという単純なもの。

 あれはとにかく強い。火力もあるしある程度距離が空いても使える。 

 何よりもかっこいい。

 

 欠点?燃費が零落白夜以上に悪いことと、一回外したらラファールのSE全部空っぽになることによって実質上ただの剣になることと、ラファールのSEに大きく依存することだ。

 

 まずはコレクトの性質上どうしても相手が光学兵器を使ってくれないと微妙になる。

 それをどうにかするためにもう一つ目のISであるラファールのSEを使ってコレクトを発動している。

 とにかく光学兵器を使われないとラファールのSEがガンガン削れるのだ。

 コレクトの燃費は下手すると零落白夜よりも悪い。その為にラファールのSEに依存して威力が減衰したらかなりきついのだ。 

 ……要するにあれはよっぽどの状況がない限りはただのロマン技なのだ。

 

 いざと言うときの切り札が俺には足りない。

 

 結局突き当たった問題はそこなのだ。確かにあのエクスカリバーもどきのあれでも良いとは思うが、あれはどちかといえば最後の手段に近い。

 ……でもISが戻って来るのは一週間後なんだよなあ。

 んでそのニ週間後には転校生組が。そこから一週間後にはもはやトラブルしかないタッグトーナメント。

 

 ……クソゲー・オブ・ストラトス。

 ただ俺は幸せに生きたいだけなのに辛い……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 p月c日

 

 専用のISも無いもんだから訓練機を借りられなかったし辛い。

 今はまたグラウンド50週をしているけど、ISの訓練が出来ないって辛い。あんな事があった矢先だから余計に頑張らなくてはと思う。

 恵まれた再生能力はまるで何も無かったかのように火傷を消してくれる。

 ……やっぱりというか便利だ。

 成長は緩やかになったものの、今も尚身体能力は成長し続けている。

 むしろIS学園に入って成長した。

 というのも検査の結果ISの補助が生身にも影響されているらしい。  

 何でも俺はISの適合率がおかしいらしい。

 IS適正は出なかったものの、推定で姉すら超えるかもしれないとか何とか。

 研究者達はまるで発狂するように喜んでいたが、一般人ピーポーにはまるで分からない。

 とりあえずこれと言って影響は無いらしいし、むしろいい事尽くめだとか何とか。

 そんな事実を胸に走って行く。

 

 

 p月q日

 

 最近幸せな生活を得るために命を投げ捨てている気しかしない今日この頃。

 ようやくISが直ったらしいので整備室に向かうとまた地味な方……もとい簪さんにエンカウント。

 またビンタかなと内心諦めていたらそうでも無かった。どうやらビンタされてきた俺の苦労は無駄では無かったらしい。

 というか苦手な整備については大体簪さんに聞いてる。言葉足らずだけども分かりやすい。

 ……一応他に聞いたのよ?

 ただセシリアは理論的過ぎてわからない。

 箒は箒でむしろ感覚的過ぎてわからない。

 鈴はそもそも同類だった。

 山田先生はアリーナとかの処理に追われている。

 姉さんも同上。

 ……てことで全滅なのだ。俺の友人ってもしかしなくともキワモノ?

 

 簪さんとはしがらみは消えて普通に話せる様になった。ていうかアレだ。何か波長が合う。

 もしかして男のロマンとかが好きなんだろうか。

 いざ話してみれば盛り上がってしまう。

 てことで整備関連に関して見れば頼りになる。

 ……まあ姉に関して言えばまだしがらみは取れ無さそうだが。

 一応この前ビンタされてきた原因が姉関連だったのだ。その時の事は保健室で寝てた時に謝られた。

 そこから今までのビンタは水に流して仲直りしたのだが、姉に関してだけはどうしても触れられたくないらしい。

 なのでそれに関しては触れないし、今も自分のISを作り上げようと奮闘している友人に、俺は応援を送った。

 

 いずれはしがらみも消える機会は訪れる。隠れながら簪さんを複雑な顔で見ている生徒会長も仲良くなれると心の中でエールを送った。

 

 ……つかの間の平穏ってこういう事を言うんだなあ。

 

 俺はほっこりとした。

 

 

 p月k日

 

 とあるIS訓練の一幕。

 そこでは一組と2組の合同訓練が行われていた。

 とはいえ運用するISの数が数なので専用機持ちが特別に教える立場になって訓練をしていくらしい。他にも希望したなら教える立場とかになってもいいらしい。

 この合同IS訓練は大まかに十五機の訓練機を二十五分おきに使い回す。

 その効率化を測る為に複数人に分けて教えて行く……のだが。

 

 俺の方に集まりすぎじゃろ?君たち。

 

 ただでさえ面食いな感じのある女子生徒。そこから代表候補生相手に無傷で勝利する光景を見たのだ。

 実績もあるし、興味もある。

 

 結果偏ってしまった。

  

 そしたら織斑先生の一喝。その中でじゃんけんで決めたそうな。

 今回のお題は飛行訓練。

 イメージとか難しい感じもあるし、おそらくはここらへんが難題という印象はある。

 事実原作の一夏くんも最初は苦戦を強いられていた。

 俺?俺はむしろイメージしやすかった。

 多分ここらへんが感覚派と理論派の明確的な差が出る所だろう。

 

 早速一人がイメージで苦戦をしている。

 何でも前方に円錐を描く様なイメージが良く分からないらしい。

 とりあえずそういうのはあくまでイメージ。自分の思い浮かべるイメージの方が遥かにやりやすいよとおしえた。

 とりあえず自信がついたらしくてほっとする。

 それからめっちゃ聞かれるのだが、どうやればあんなふうに軽やかに飛べるの?とか聞かれる。

 

 それに対して俺は理想的な回答をした。

 きっと同士である鈴にも分かってもらえたのだ。

 俺についてきてくれる人にも分かるだろう。

  

 

 こう!スラスターをバッ!て動かしてボン!て爆発するようなイメージでキュウウウ!て操作してヒュウウウて感じだ。   

 

 

 

 

 わかるやろ?

 

 

 

 

 

 

 

 ………何故か???って感じの顔をされた?何故だ?

 

 すると横から鈴が割り込んで来た。

 

 何でも俺は教え方がわかりづらいとか。

 なので代わりに鈴がお手本を見せるらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 "こう!バッってしてからヒュウウウって感じからのボンッ!よ!

 まったく!アンタは少し小難し過ぎるのよ!"

 

 

 

 

 ますますみんな???って顔を浮かべてる。

 

 

 

 

 

 

 うんうん。それは少し間違ってる。

 最初にバッってするまではいいけどそこからボンッ!だろ?そこからヒュウウウってするんだ。 

 

 そう答えたら鈴が

 

 "いやいや、それはアンタの天才肌があってからこそ参考になるものでしょうが。

 初心者にはバッって動かしてからヒュウウウって慣らした方が良いわよ。そこから慣れてきたらボンッ!て動かした方がいいでしょ?"

 

 なるほど。とても参考になる。自分の感性で話していたからそこらへんが良く分からなかった。

 

 周りは意味が分からないと口を開けている様に見えるが気のせいだ。

 何かセシリアが周りの人に向かって

 "天才肌の感覚派は何処か変な感性を持ってますからね。

 独自の感覚で覚えまくったから人に教えるのにはまるで向いて無いのですわ。"

 

 とか言ってた。

 う〜ん?何で伝わらないのかまるで分からない。 

 擬音まみれの方がイメージしやすくて分かりやすいと思うんだけどなあ…。

 そんな事を考えてたら減点された。何故だ?

 ついでに次から集まってくる人が少なくなった。何故だ?

 

 p月*日

 

 どうやらセシリアが言うにゴリゴリの感覚派らしい。

 類は友を呼ぶらしいが、鈴と俺は同じタイプのカテゴリ―――天才肌系の感覚派らしい。

 何でもそんなタイプに見られる傾向として独自の感性を持ち合わせていたり、人と比べて何処か達観してたりする珍種のカテゴリらしい。

 そういう感覚派は一番伸びやすいのだか、いかんせんそういう感覚派はだいたい慢心するらしい。

 だからこそ鈴とか俺とかは本当に珍種らしい。

 

 ……まぁそれを知った所でどうとか無いけど、なるほど。

 伝わり難かったのってそういうことなのか……。

 そうか……。一般人ぶってたけど実際は色物なのか、俺って。

 俺はそれにショックを隠せなかった。

 

 鈴とは普通にわかり合えたからこれが普通なのかと。

 少ししょんぼりーです。

 

 

 o月あ日

 

 そんな中で6月の頭に入って久々に弾の家に遊びに来ている。度々外出の許可は取っていたのだが、そこに全身火傷が入った所が重なって無意味になってしまった。

 今俺は小型の監視カメラらしきものをリストバンドに巻き付けながら外出している。

 さらにどこから嗅ぎつけたのか。鈴が護衛として付くとか何とか言って姉さんを言いくるめていた。 

 

 ……すげえよ……鈴は。

 

 弾の家に遊びに来てやるゲームは少し古いロボットゲームだ。

 コントロールとかも少し形式の違うものだし、ISがロボットとして出てきているが、ラインナップは第二世代機ばっかりだ。

 

 俺は当然暮桜を選択する。

 

 誰が何と言おうと俺は暮桜を選択する。

 

 当然反射神経フルに使った俺に一般人の弾が勝てる訳もなく。

 余裕の圧勝で幕を下ろした。

 

 そんな事をしていたら弾の妹である蘭ちゃんが入ってきた。

 そして俺を見てとても驚いた顔をした。

 そしてその後自分の服装を見て脱兎の様に着替えてきます!っと言いながら離れていった。

 

 しまったなあ。言ってなかった。久しぶりなのに挨拶しそこねた。

 そんな脳天気な事を考えてたら鈴が聞いてくる。

 何でも私がいない間に何かフラグを立ててた?

 とか。

  

 ……失敬な。俺は原作の様な鈍感じゃない。

 ただ最後に使わないボタンを渡しただけだと答えたら納得の行った顔をした。

 ……何処に納得出来る要素があったのだ?

 もしかして蘭ちゃんってボタンフェチなのか?

 そう思って少し悲しみに明け暮れた。

 

 その後も料理対決で見事に最下位を取ったりIS学園について愚痴ったりして終わった。

 何か弾が"お前っていつも何か巻き込まれてるよな"とか呆れた様に言ってくる。

 失敬な。望んでこんな体質に生まれたんじゃない。

 ただこのハードモードなISの世界を生き抜くために命を掛けて戦ってるだけだ。

 

 ただ誘拐されて命を落としかけたりいきな代表候補生に喧嘩ふっかけられたりなんか変なクソ強ゴーレム君に危うく死にかけただけじゃないか。

 

 ……本当になんでやることなす事全て命懸けなんだろうね。

 

 俺は悲しみに溢れた。




次からは投稿ペース落ちます(保険)

ストックなんて無い。



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織斑日記!十一!

令和初投稿です。

そして遅刻し過ぎて本当に申し訳無い。
こいつ何日ぐらい遅刻してんだ?本当に申し訳無い。

本編どうぞ


 p月S日

 

 ゴーレムの事は有耶無耶になって当事者しか知らないのでそこまで騒がれなかった今日この頃。

 朝のSHRで転校生が来た。

 目の前には転校生にして二人目の男性IS操縦士であるシャルル・デュノアが自己紹介をしている。

 容姿はさながら金髪の美男子。中性的な顔立ちに細い身体。手は白くて可憐な……。それこそ女の子の手という感じだ。

 

 まぁ実際女の子な訳だが。

 この美男子の正体はシャルロット・デュノア。

 フランスの代表候補生にして一夏ヒドインのまだマシな方。

 性格は比較的温厚な方。

 話を聞かない事はあるが(致命傷)無言のビットよりかはまだマシ。

 たかが人に向かってアサルトライフルを連射される程度でしょ?

 

 あれ?こいつって結構な問題児じゃね?

 家柄的な問題が問題で原作にガッツリ関わるし。

 温厚とは言っても勘違いで普通にアサルトライフル撃ってくるし。

 関わらないのも部屋を変更された時点で無理だし。

 なんかあざといし。大胆だし。

 

 あれ?おかしいな。俺の退路が全て塞がれてる様な気しかしないぞ。

 そんな事を考えていたらまたもやバインドボイスが。

 ISの耳栓機能を活かして回避する。

 教室が歓声だけで揺れるって可笑しいよな。

 

 ……この問題児の対処はどうすればいいんだっけ?

 まず姉さんに報告するのは多分通じない。一応見た目は何とか男を保っているものの、手は女っぽさが隠れてないし、声もどちらかといえば女のものだ。

 こんないかにも怪しいのをIS学園が調べない訳が無いのだ。

 それでも入学できてるのは本当に男だったか。それとも原作の通りにデュノア社が圧力を掛けているか。

 この場合は後者だと仮定する。本当に男ならタッバとか関わって色々面倒なことになる。

 デュノア社が圧力を掛けて無理矢理入学させたということは一教師である姉さんどころか、問題児に対してIS学園が機能していないということになる。

 てことで原作の特記事項も役に立たないということになる。

 そもそも姉さんに世界最強という立場を活かして貰おうとした所で無理だろう。

 ただの金メダリスト、しかも引退して育成に力を注いでる奴が他国の大企業の闇を簡単に解決出来るかと言われても無理だ。

 よって姉さんに言うのは使えない。特記事項もデュノア社が腰を上げれば終わる話。IS学園は解決の役には立たない。

 原作でも結局は行動をしないままに解決していた。

 ならデュノア問題については下手に行動せずに放置の方が良いのか…?

 

 デュノア問題について考えるとデュノアから声が聞こえる。

 どうやら考え過ぎて少し時間が経ってしまった様だ。

 周りを見ると廊下まで人で埋まっている。

 正体は女とはいえ、二人目の男性IS操縦士だ。興味本位でこうなるのは当然だろう。

 一分足らずでこうなるのは驚いたが。

 仕方が無いので俺はデュノアを抱えた。

 

 お姫様抱っこで。

 

 なんかデュノアが顔から火を吹いていたり、周りが黄色い声を上げているが気にしている余裕は無い。

 教室の窓を開けてそのまま飛ぶ。

 さっきまで顔が赤くなっていたデュノアが顔を青ざめさせているがそんな事を気にする余裕は無い。 

 遅刻する方が色々問題なのだ。

 

 そのまま着地してデュノアを下ろす。

 なんかデュノアの腰が引けてるが気にする余裕は無い。 

 強引にデュノアの手を引っ張って立ち上がらせてそのまま目的のアリーナに突っ走る。

 

 

 

 

 

「本日はISを運用した実践練習を行う」

『はい!』

 

 授業開始時間となり、一組と二組の合同の授業が始まる。周りがざわめいているのを織斑先生が一言だけで纏め上げるのは流石だと一夏は関心した。

 なるほど。これなら確かに教師や教官等教える立場に向いている才能はあるなとうなずきながら思う。

 

「今日はまず見本を見せる。そうだな……。セシリア、凰は前に出るように」

「はい!」

「分かりましたわ!」

 

 指定された二人は前に出る。その途中、セシリアは一夏を見ると拳を握りしめて奮起している。鈴はいつも通り落ち着いている。

 

「それで織斑先生。相手は鈴さんですの?」

「いや、今回はタッグを組んで貰う。オルコットは凰と組んでもらう」

「それなら誰が相手なんですか?ま、まさか一夏とか……」

「安心しろ。アレは流石に動きが参考にならん」

「アレ呼ばわりは酷くないですか?」

 

 まったく。何が参考にならないだ。たがが鈴と箒とセシリアの3人掛かり相手に本気で戦ってたのをたまたま通りがかった姉さんが見てただけじゃないか。

 そして無傷で全員SEをゼロにしただけじゃないか。

 ただスラスターがオーバーヒートする限界まで瞬間的に爆発させながらセシリアを真っ先に落とす。それから鈴と箒の攻撃の波長を読み取って全て回避。それから叩き落としただけだぞ?

 そう思ってたら周りが納得したような目を向けてきた。何故だ。

 

「今回の相手は……」

「わわ!ど、どいてくださ〜い!」

 

 声がした方向を見るとそこには山田先生が教師仕様にカスタマイズされたであろうラファールに乗っている姿が見えた。……墜落しながら。

 ……模擬戦の時に姉さんではなく山田先生なら何処まで楽だったんだろうなぁと考えながら白式を展開。

 そのまま墜落しそうになっている山田先生を受け止める。スピードを出しすぎたのか受け止めても止まらないが、スラスターを全力で動かして空中で完全に停止させる。

 その後は山田先生を降ろして終わりだ。

 

「山田先生。カスタムされたラファールに乗るのは久しぶりとはいえ生徒達の見本になる様にですね……」

「も、申し訳無いです」

 

 横を見ると山田先生が叱られてる。

 ……まぁ仕方が無い。そもそも原作の一夏でも何故か山田先生は墜落していた。本当に緊張すると駄目なタイプなのかと変な笑いが出た。

 

「……まあ良い。これから模擬戦を始める。お前達二人と山田先生の2対1だ」

「え?山田先生……とですか?」

「お、織斑先生。いくら何でもそれは……」

 

 二人は現役の代表候補生だ。自分の実力に対して自信はある。それを二人がかり。しかも山田先生と。

 はっきり言って山田先生の方を心配する声の方が多いだろう。だって山田先生まるで威厳ってものが無いし。そもそも既に墜落しそうになってる相手に現役の代表候補生。しかも二人。

 正直に言って二人に勝てるビジョンがまるで見えない……てのが普通だろう。

 

「安心しろ。今のお前達ならすぐに負ける」

 

 姉さんがそう断言した。その言葉にセシリアと鈴はピクッと反応して―――警戒した。

 仮にも現役の代表候補生二人相手。なのにすぐに負けると断言された。それはつまり山田先生がそれほどまでの実力を備えていると確信して警戒しているようだ。そのまま2人は甲龍とブルー・ティアーズを展開する。

 ……どうやら前衛は鈴が。後衛はセシリアが務める様だ。

 それに伴って山田先生もアサルトライフルを展開。その感触を味わってから左手を何回も握っている。

 その後距離を離してからアリーナ上空にて待機する。

 そして姉さんの合図で始まった。  

 

 

「いくわよ!」

 

 先手を取ったのは鈴だ。その手に青龍刀を構えながら瞬時加速をする。それを援護するようにビットから放たれるレーザーが山田先生の四方を囲み、迂闊に避けられない状況を作り出す。

 それを山田先生は確認すると展開したブレードで青龍刀を受け止める。その衝撃で後ろに引きながら鈴に向かってアサルトライフルを連射する。

 

「っ!」

 

 その連射を鈴は咄嗟に青龍刀を盾にすることにより耐える。その間に山田先生と鈴の距離は離される。

 

「逃しはしませんわよ!」

 

 当然それを見逃すセシリアではない。後ろに後退した山田先生を撃ち落とそうとビットを操作する。

 だが、それを滑らかな動きで避けられる。ライフルの引き金を引くも、身体を反らして避けられる。

 そのまま山田先生はセシリアに向かってアサルトライフルを連射する。

 

「くうっ!ビットの操作に集中できませんわ!」

 

 連射されるアサルトライフルを避けるのに必死でビットを封殺された。

 レーザーライフルを撃つも、それを逆にカウンター気味にアサルトライフルの弾丸を当てられてセシリアのSEが削られる。

 

「こっちを忘れないでくれる!?」

 

 離された距離を詰めようと鈴が瞬時加速で突っ込む。だがその加速を横に身体一つ分動かすだけで避けられる。

 鈴はそれでも機体を制御しながら素早く方向転換をするとともに、青龍刀を振りかぶる。

 その青龍刀を弾切れのアサルトライフルで受け、そのまま片手でもう一丁のアサルトライフルを展開。

 鈴に向かって連射する。

 

「同じ轍は踏まないわよ!」

 

 弾丸を衝撃砲で吹き飛ばしながら山田先生に当てる。山田先生は衝撃砲に当たってしまうものの、後退しながら横に加速した。

 それを衝撃砲とビットで追撃するものの、まるで当たらない。

 それどころか……。

 

「きゃあ!」

「セシリア!ごめん!」

 

 その衝撃砲にセシリアを巻き込んでしまう。

 理論派のセシリアなら確かにフレンドリーファイアを起こすことは無いが、鈴は感覚派。目の前の敵に集中することは出来ても、セシリアの位置そのものを気にかける程タッグ戦には慣れていない。

 ましてや武装が敵にも味方にも見えない衝撃砲なのだ。敵にも見えないのはアドバンテージだが、味方にも見えないのが仇になってセシリアが吹き飛ばされる。

 当然そのミスを見逃す程山田先生は甘くない。

 

「まだまだタッグ戦には慣れてない感じですかね!」

 

 グレネードランチャーを展開してスモークグレネードを発射。鈴とセシリアは当然それに巻き込まれる。

 

「何よこれ!」

「周りが見えませんわ!」

 

 視界が遮られて何も見えなくなる。

 鈴は慌ててそのスモークから逃げ出そうとするものの、何かにぶつかる。

 それは加速して突っ込んできた山田先生だった。

 

「んなっ!?」

 

 咄嗟に衝撃砲を撃つものの、スモークによって見えるようにされたそれを簡単に避けながらアサルトライフルを鈴に向かって近距離で連射する。

 当然それを鈴は青龍刀で受けようとして―――

 

 レーザーに弾き飛ばされた。

 

「えっ!?」

「鈴さん!?」

 

 それはアサルトライフルの連射音を頼りにライフルを引いたセシリアだった。

 だがそのレーザーに当たったのは山田先生ではなく鈴だった。

 当然青龍刀が弾き飛ばされたので、弾丸を受ける盾は無くなり、鈴のSEが削られる。それと同時に距離を詰めて鈴を蹴り飛ばす。

 

「ぐっ!?」

「痛っ!?て鈴さん!?」

 

 スモークによってお互いの身体が見えない状況で無防備にぶつかってしまう。当然鈴とセシリアは体勢を崩す。 

 それを狙ってたかのように山田先生は手にグレネードを展開していた。

 

「スモークで見えてないのは私も同じです。だからこそ声は敵にも味方にも重要な位置の判断材料にもなりえます。これを機に互いの特性を深く理解しましょうね!」

 

 そう言ってにっこりと笑う山田先生の顔は天使のようで。二人にとっては悪魔の顔に見えて。

 二人はあえなく撃墜された。

 

 

 周りの生徒。特に一組の生徒はぽか〜んとした顔を浮かべている。

 ……まぁ無理もない。現役の代表候補生二人相手にペースを握らせずに完封して勝ったのだ。

 ましてや今まで見てきた山田先生の姿がアレだからなあ……。

 何故か何もない所でずっ転げるし。生徒に少し冗談を言われたら顔を赤くしたりしてるし。その反応が素直過ぎて皆からからかわれてるし。

 教師としての威厳が無いのだ。畏怖というかそういうカリスマが。

 大方山田先生が舐められてるという汚名を姉さんが返上したいと思って組んだのだろう。

 ……多分姉さんに聞いても指導役に最適だの代表候補生に成長させる為だの生徒にいい見本だの何だの言って誤魔化すだろうなぁ。まぁこれで姉さんの思惑通りに山田先生の汚名返上は達成出来たとも言えるだろう。

 

「どっ!どいてくださあああぃ!」

 

 ……山田先生がまた墜落していた。何やってんだ本当に。そう思いながらまた白式を展開してスラスターを動かしてまた受け止める。

 

 どうやら緊張が解けてほっとしたら機体の制御が出来なくなったらしい。

 それを見た生徒は最初こそ尊敬した眼差しで見ていたものの、墜落した山田先生を見て何処か安心した様な眼差しで見ていた。

 姉さんは呆れた様に山田先生を見て、負けた二人組はアレに負けたんだぜとお互いを皮肉っていた。

 汚名を返上してからすぐに回収していくのは本当に山田先生らしいなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 そんな授業の一幕を終えて昼休憩。

 今回は珍しく鈴が屋上に誘ってくれたので有り難くタダ飯を貰うことにする。

 一応学校……というか寮で自炊は出来る。キッチンもあるし。尤も俺は料理が出来ないので基本は学校の食堂で日替わりの定食を食べている。

 だがたま〜に鈴が酢豚を譲ってくれる時がある。それに有り難くありつく訳である。

 実際鈴の酢豚は美味い。俺の何か引っ掛かる様なビミョーな飯だと評価された飯よりも遥かに美味い。

 気がついたらペロリと酢豚が消えるくらいには。

 そんな酢豚にありつけると思ってデュノアを誘って屋上に来てみたらセシリアと箒も居た。

 

 

 

 セシリアが居た。バスケットを大事そうに抱えるセシリアが。

 

 

 おいおい。俺死んだわ。

 

 そのバスケットの中身をもし良かったらと差し出して来たセシリア。その中身はサンドイッチ。

 

 おいおい。俺死んだわ。

 

 バスケットの中身はとても美味そうなサンドイッチだった。どれもが素晴らしい盛り付けであり、一見すればとても美味そうなサンドイッチだ。

 だが騙されるなかれ。これは巧妙な罠だ。

 というのも何故かセシリアの料理は見た目は凄く良いのに中身が恐ろしい程に駄目なのだ。

 原作とかそういうのでは詳しくは語られなかったのでどの程度に不味いのか分からないが、火をつけるのにビット兵器のレーザーを使う程だと言っておく。

 当然そんな物食いたくない。

 

 だが悲しいかな。セシリアがめっちゃ子犬の様な目で見てくる。やめろよ。そんな顔されたら断り辛い。

 ……きっと真剣に作ったんだろうなぁ。

 ……一生懸命に彼女なりに頑張ったんだろうなあ。

 ……何か見た目良さそうだし行けるんじゃね?

 

 いや!駄目だ!

 どの程度に不味いのか分からないが、ここは心を鬼にするしか……。

 でも周りの目が食ってあげようよって目だ。

 何か断り辛い雰囲気醸し出してる。

 

 ……最後の頼みの綱の鈴を見てみる。

 きっと親友の鈴なら俺の気持ちを汲み取って関係を崩さずにやんわりと断ってくれる筈だ!

 さぁ!頼んだぞ鈴!お前だけが最後の頼りだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

「食べてあげたら?」

 

 鈴ータス、お前もか。

 

 俺の中の良心は結局手を伸ばしてバスケットの中のサンドイッチを手に取る事を選んだ。

 実際に見てみるとなるほど、とても美味そうなサンドイッチだ。だけどこんな綺麗なサンドイッチが毒物だなんて誰が想像したんだろうなあ。

 そのサンドイッチをまじまじ見ながら口に入れるのを戸惑っているときにセシリアの顔が見えた。

 それは不安の顔だった。

 本当に食べて貰えるのか。本当に大丈夫なのかと不安になっている顔だ。

 

 ……何をしているんだ織斑一夏。

 女の子一人不安そうな顔にしておいて食わないなんてのは最低な男だ。

 ましてや彼女なりに頑張ってきたのにそれを食わないなんてのは本当に最低な男がやることだ!

 

 

 俺は決意した。

 

 サンドイッチを持って震える手をしっかりと止める。

 そのまま意を決してサンドイッチを勢い良く頬張る!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?美味いぞ?」

 

 

 

 

 

 セシリアのサンドイッチは普通に美味かった。

 不味いとか顔を蒼くするとか無く普通にガツガツ食える。

 他の種類が不味いのかと食べて見るが美味い。

 気がつけばバケットの中のサンドイッチは空になっていた。セシリアは満足そうな顔を浮かべている。

 ……何故か鈴はガッツポーズをしている。

 だが食べ終わった後に気がついた。

 

 

 

 

 

 

 もしかして俺って、料理でセシリアに負けた?

 

 

 

 

 

 その時、一夏の中にあるちっぽけなプライドが傷ついた。料理が苦手という事実。さり気なくめっちゃ気にしてた。

 鈴の酢豚とか食堂で日替わり定食を食べる度に痛感する料理の腕の違い。

 だがそれらに負けるのは仕方が無いと思っていた。

 心の中で何処か安心していたのかもしれない。下には下がいる……と。

 無意識の内に流石にセシリアには負けないだろうと心の中で安心していたのだろう。

 だが結果はセシリアの方が美味かった。

 

 セシリアに料理で。

 

 セシリアに!料理で!

 

 ぎしりと、何か、とても大切だと思っていたアイデンティティが、軋む音。

 

 何か、負けちゃいけない戦いに負けてしまった様にぎしりと軋む。

 

 少なくとも織斑一夏としては確実に負けてはいけなかったそれに、膝を折る。

 

 

 

 

 ―――俺は織斑一夏にはなれない……!

 

 

 

 

 少なくともこんなどーでも良い場面で使う言葉では無いが、それでも少年はどーでも良いプライドで悶絶していた。

 今世に置いては一位二位を競うぐらいにはどーでも良いプライドで悶え苦しんでいた。

 

 セシリアに料理で負けた男。  

 

 その結果が一番織斑一夏に対してダメージを与えたのは確かだろう。

 

 鈴とセシリアがガッツポーズをして喜んでいる横で、ある意味一番挫折している少年の姿があったという。

 




セシリアに料理で負けるオリ斑くん。 

後投稿遅れるかもしれません。

許して。


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