G&K補給基地の日常 (ソルジャーODST)
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設定集的な?
補給基地の報告書


設定みたいな物です。
なので普段よりも文章自体はこだわってません。
(普段もそんなにこだわってないけど)

一応、報告書風で書いていきます。

自分のメモ&誰かが使えるようにと思って書きました。


G&K社管轄○○地区に存在する補給基地。通称『HUB』

G&K社の本部と各地の基地との輸送路を結ぶ目的で建設される。

基地の規模としてはかなり大きいが、基地施設はそれほど多くない。

一般的な基地程度の施設である。

が特異な点は物資の貯蔵施設が非常に多いことと、物資の受け取り及び発送のための施設が設けられていること、さらに前線への運搬を行うために専用の車輌部隊を持ちその関係設備も多いことが挙げられる。

前線への輸送を行う際にハブステーションとしてこの基地を運用するため整えられたためである。

 

その非常に多い倉庫施設に伴い、この基地の業務は倉庫管理が主となる。

これにより所属する戦術人形の大半を倉庫業務に就かせているが、その人形達のAIは他の基地よりも強化されている。

これは指示を行う人間が少ないにも関わらず、物資の入出庫が非常に多く手が回らないため人形の自立行動を強化して対処しているのである。

 

なおそれに伴いこの基地の戦術人形に配備されているダミーも強化されており、他の基地のメインフレームに近い行動を行ったり、自分のメインフレームを相手に舌戦を繰り広げたりもする。

さらにこのダミー達は、メインフレームとほぼ変わらないと言っていいほどに個性を持っておりI.O.P社からも興味を持たれている。

ダミーが破損等により破棄された後、新しいダミーを起動すると破棄される前と全く変わらないマインドマップ(ダミー用)を持った状態で復帰する。

メインフレームですら不可能なこの現象に対してI.O.P社は研究を続けているが芳しくないとのこと。

 

この基地の近辺にはスラムが発展した街が存在しており、日常的に物資の強奪目的で襲撃者が訪れる模様。

強奪者は、街の荒くれ者や人間原理主義団体の過激派といった者達が多い。

本部付近程治安がいいわけでも、前線程鉄血の危険性がないことも影響している模様。

 

この襲撃に対処するために非常に強固な外壁を敷設。

さらにその外壁の上部には、覗き窓程度の穴が開けられたバリケードに覆われたステージが所々にあり戦術人形を配置できるようにしてある。

これはこの基地の戦術として、襲撃された際に大量の貯蔵物資を活かした篭城戦を行うためである。

外壁の内側に一定間隔で監視塔も配置しておりそこからの狙撃を行い、基地内部を直接狙う迫撃砲などを阻止する。

 

この基地所属の戦術人形は通常の基地とは違い非常に数が多く、メインフレームも同型の人形が複数配備されダミー含めて10体以上の同じ人形が闊歩することもある。

なお、所属人形は高性能機よりも数を重視した人形が多いことも特徴的である。

 

さらに基地防衛部隊にMGが多く配備されていることも特徴。

これは前述の防衛戦術に伴い、弾薬をあまり節約せず目標を制圧・殲滅することを目的としているためである。

 

この基地に所属する戦術人形達には他の基地と差異があることは前述したが、最も大きな差異はこれだと思われる。

 

「人間に対して武力行使を問題なく行える」

 

これはこの基地の主な敵勢力が人間であるために特別仕様という形で実装している。

流石に完全無制限ではなく、指揮官からの命令もしくは副官からの緊急時対応命令によって制限が解除され、通常設定されている「人間に対して武力等での危害を加えられない」制限を無視することができる。

 

元々戦術人形達は、人間に対して無力化を図ろうと銃火器で狙うと、警告が発生し発砲が困難になる。

そのため、格闘術等で制圧することになるのだがどうしても被害が出てしまう。

これが通常であれば相手の人間も数人であるが、この基地では数十人単位であるため無力化は非現実的。

そのために特別措置として上記の仕様となった。

 

基地内には多数の自律人形(戦闘向けではないという意味)も存在しており、人形数だけでいえばG&K内でもトップクラスの数を誇る。

 

昼間、街から子供達を預かり文字の読み書きや質素に近いが食事を用意している。

が、一見すると慈善事業に見えるがあまりにも増え続ける物資に対して人形だけでは追いつかなくなってきたため、苦肉の策として子供達にも手伝ってもらっている。その際にはキチンと労働報酬を渡している(物かお金かの選択制。今のところほとんどお金)

子供達だけではなく、街の一般企業も雇用しており他基地よりも一般人の出入りが激しい。

警備システムの追加導入を検討中。

 

補給基地指揮官

名前 ハワード・エーカー(名前決まりました。元ネタ分かるかな?)

見た目は前線指揮官か後方で戦線に対しての指揮を取っていると言って納得できる風貌。

厳格、真面目と言ったイメージが付く見た目である。

が中身はそんなことはなく、戦闘よりも物資管理が特異なギャップマスター。

 

元々はG&K本部の後方幕僚であったが補給基地の建設に伴い指揮官として異動。

物資の管理は本分だが戦闘は……と本人は思っているが、シミュレーション等により防衛作戦に関しては十分な指揮ができることが判明している。

なお、攻撃時には戦況把握が間に合わず失敗することが多い。

その点からも補給基地の指揮官として適性があったと言える。

 

指揮官であるが同時に主計官の業務も行っているため、普段の業務は多忙。

ストレスを発散する機会を探して、人間観察ならぬ人形観察をしていると個性豊かな人形達のネタを見つけたため、それで時々いじり発散している模様。

 

戦術人形達は部下として大事に扱っている。(前述のいじり云々は別である)

この点は指揮官としてはあまり褒められたものではないが、人形達からの評判は良好で慕われている。

ダミーも個性豊かなことに最初は戸惑っていたが慣れたため、いくらかならばメインとダミーが見分けられる。

 

酒を好み、副官のトンプソンとよく呑んでいる。割と酒豪。

大概の酒が飲めるらしく時々トンプソンを沈めている。

 

銃の腕はあまり良くなく、所持している物もベレッタM9のみ。

代わりに常に人形が護衛としてそばに居るようにしている模様。

なお本人の指示ではないとのこと。

 

最近の悩みは、副官トンプソンが想像以上に自分を慕っていたため、いじるとカウンターを貰う(例:妄想の内容をダミーに聞いたら乙女なだけでなくピンク色なのもあった)ことが増えていること。

 

トンプソン

補給基地所属の副官。

指揮官が本部の後方幕僚だったころからの付き合い。

その頃は補給等で顔を合わせるくらいだったが、一度本部のバーで些細な理由(本人曰く覚えていないとのこと)から飲み比べに発展、そこで初めて飲み比べで負けたため興味を持ったとのこと。

 

非番の時には、彼のデスクのそばで読書をしていたりちょっかいをかけたりと見る人が見たら「どう見ても恋かな?」と思うような行動をしていた。

その後、彼が補給基地に異動することを知り自分も異動願いを提出。その際の理由が、「自己防衛力が甘い(射撃が下手とか)彼の護衛として」。受理した人事担当者(トンプソンが入り浸っていた事を知っている)は終始ニヤついていたとのこと。

 

普段は他のトンプソンと同じように凛々しく男前と言っていい性格だが、隠れた趣味として昔の恋愛小説や映画を好み、恋というものに興味津々の乙女心が増加中。

 

指揮官に対しては、主計官としての優秀さを尊敬していることとギャップ(見た目と中身が一致しない、人形をいじるというユーモア等)にやられており、本人は否定しているが周囲から「どう頑張っても乙女」と言われる程には慕っている。

というか妄想がダミーにだだ漏れのため照れ隠しの否定でしかない。

ダミーから指揮官へかなり本気の苦情が入る程の頻度でだだ漏れの模様。

指揮官に妄想の中身を知られた時はしばらくは顔をまともに合わせられなかったとのこと。あと、意外にむっつり。

 

ダミーがメインである自分をいじり倒してくるのが悩み。時々本気でダミーを壊そうと思っている。(前述の通り壊しても何事もなく復活するが)

 




ダミー芸流行れ(挨拶)
いつもの如く書いてたら増える増える(笑)

設定固めておかないとフワフワと変化しちゃうので、基地と指揮官とトンプソンだけでもと書いてたら止まらなかった。

この基地は全体がフリー素材ですので、もしも使われるのであればどうぞー。コラボ大歓迎。つかダミーのネタが欲しい。

もし使う時に、感想とかに一言あれば作者が嬉しさのあまり、トンプソンの妄想を暴露するかもしれません。

???「(」゜ロ゜)」ちょ、ヤメロー!」


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補給基地の報告書 その2

準レギュラー化しつつある娘達の設定をここらでちょっと固めとこうかなと。

ダミー芸担当が増えました(笑)

カズト君とSPASちゃんも入れました。この報告書を作成している人が若干可哀想な目に。


G&k補給基地

最近本部の人たちにまんま「HUB」と呼ばれるようになった。

 

 

FAL

補給基地所属の戦術人形。

主に防衛戦時に編成されるAR人形が全て所属する部隊、AR部隊の隊長を務めることが多い。

 

性格は基本的に真面目。さらに常識人(服装は除く)であるため、他基地の部隊と連携する際に特に活躍する。基地内では最適化が進んでいることもあり、能力も高水準。

 

ダミーも比較的真面目であるが、一体は紅茶&クッキー派でもう一体はコーヒー&ケーキ派。ちなみにメインはチョコ派かつ甘めの飲み物派。カフェで三人仲良く談笑している所をよく目撃されている。

 

先程ダミーは比較的真面目と書いたが、最近は他基地の同人形の影響を受けたようで奇妙な行動が認められる。代表は補給基地へ来た輸送部隊に刃渡りが異常に長い銃剣を求める等。漏れなくこの補給基地のダミーであることが伺える。

 

なお、メインはFNCと仲がいい模様。チョコ仲間との噂がある。

 

 

G36

補給基地のメイド班班長。通称はメイド長等。

戦闘能力も高めであり、家事をこなすように基地に仇なす敵を掃除する。

メインは良識的であり一般的なG36とあまり差異は無い。だが実は昔のコミックやアニメーション・映画等(日本製の物が多い)を好み、休日にダミー達と鑑賞会を開くなどしている。

が、その結果はダミーの個性がかなり危険なモノとなってしまった。

 

二体の内、片方のダミーは通常は茶目っ気があり指揮官やトンプソンをよくからかうが、ひとたび戦場に立つと非常にダウナーな性格に変わる。さらにこちらのダミーはメイド服のスカートの下に大量のグレネードを付けており、戦闘時にかなりの量を投擲するようになる。なお、戦況が不利になると敵陣へ突撃した上でグレネードをばら撒き自爆を敢行する特攻兵器と化す。

 

もう片方のダミーは、通常時こそ時々コミックのセリフを言うなど、もう一人のダミーとよく似ているが、戦場に立つとこちらはC4爆弾などの設置型爆薬を好んで使用する。なお、敵が所持していた武器などから火薬を回収して爆薬に転用するらしく、敵が多ければ多い程最大火力が増していく。最近の最大戦果は主力戦車1台を吹き飛ばしたこと。なお、戦闘時はメガネをかける。「HAHAHA」とか笑い出した時は離れること。笑っている時は、付近に彼女特製のIEDが設置されていたり、敵勢力の設置型爆薬を転用している場合が多いためである。

 

メインが最近指揮官への謎のアプローチを取り始めたとの噂があり、トンプソンが焦りつつあるとのこと。メインは色恋沙汰に疎く不器用であるため、自分達が背中を蹴飛ばさなければいけないとダミーにより報告されている。なお、そのコメント直後にメインが現れ瞬く間にダミー二体を沈め回収していった。私はその一部始終を見た時、震えていたことを記しておく。

実はこの補給基地内でも屈指の格闘能力を持つとのこと(ダミー談)

 

 

スプリングフィールド

元々は別基地の指揮官宛に送られてきた戦術人形。紆余曲折を経てこの補給基地所属に。性格は真面目。だが時々、イタズラを仕掛けるなど真面目一辺倒ではない。時々お姉さんモードと呼ばれる状態になり悩める者たちの相談に乗っていたりする。

 

なお、送り主は不明であったがふとした切っ掛けで判明した。犯人は受け取り予定だった指揮官と仲の良かった同期であった。なぜスプリングフィールド(全裸)を送ったかと聞けば、「アイツがモテて悔しかったから。送ったあとに基地の事を聞き、バックアップをしていたら忘れてしまっていた」と供述。

 

悪意は無かったワケだが、少しタチが悪いイタズラかつ戦術人形を無断で悪用したため、かなり強めの注意と自分の部下からの説教(全裸で送った件に関して。自分達のは見ないのに!的な。つまり嫉妬)を受けたとのこと。

 

このスプリングフィールドはこのまま補給基地に残ることを希望したため、基地のカフェ及びBARのまとめ役として業務を行っている。来た当初とは違い、制限を外したため野党を相手に経験を積み基地の発展に尽くしている。

 

ダミーは真面目。真面目オブ真面目。これぞダミー。結果は基地で一番浮いたダミーに。変人の集まりに1人だけ普通の人を入れるとあら不思議、その人が一番変というのを地で行く。

なお、ダミー達は自我を持った上での行動の為、オリジナルの真面目さが如実に反映された可能性が高い。他の基地から来た人に見せれば一番安心されるので、接客担当でもあるとのこと。

 

 

カズト・ナカムラ

補給基地襲撃事件の数日後に配属された若き男性指揮官。極めて珍しい家族構成で祖父母、両親共に生粋の日本人。元々の部署は、本部管轄の市街警備及び警察部門だった。その時の部下であるSPAS‐12、100式機関短銃、62式機関銃、64式自動小銃を伴って着任した。

 

性格は真面目。生真面目の一歩手前。が、これは祖父母の影響が大きいとのこと。これに関してクルーガー社長に取材したので記載する。

 

『ナカムラ指揮官はあの人のお孫さんとは思えないほど真面目で静かな子だ。祖父母を反面教師としたのだろうな。あの人のこと?……もはや人外の域だぞ。歳の差をものともせず現役だった私を叩きのめしたことのある人だ』

 

『ナカムラ指揮官が入社する際にも私の所へ来てな、『孫の制服は基本コレで』とデザイン図を持ってきたんだ。服装規定に触れるから無理だと言ったら、『ならばいよいよもって死ぬがよい』とかなんとか言いながら殴りかかってきてな。護衛の人形がすべて叩き潰されるとは思わなかったよ。歳を考えるとやはり人間では無いと思うのだ』

 

『ふむ、祖母の方?……彼女の方が凄い。あの人に一切反撃をさせずに沈めたこともある。あの一家で最強だ。眉唾物だと?そう言うだろうと思って模擬戦の映像を見つけておいた。後で見るといい』

 

頂いて映像を見たが最後に社長とその相手を二人同時に地に沈めた女性はなんだったのだろうか……。下にファイルを添付しておくので興味があるなら見るといい。

 

FILE:combat_09

 

ナカムラ指揮官は破天荒な祖父母によるグリフィンへの要求により、式典以外での服装が極めて異彩を放っている。簡単に書けば、日本国の着物をグリフィン風にデザインしたような服装をしている。

式典時は普通に制服を着ているのでなんだかんだと普段の着物を気にいっているのかもしれない。

 

 

SPAS-12

ナカムラ指揮官と共に補給基地に着任した戦術人形。現状ダミーは居ないが後日配備される予定である。ナカムラ指揮官の副官であり、警察部門では突入チームの先鋒を務めていたとのこと。

 

可動式シールドの改造をよく行っているが、強度を強化するのが中心であり他のSPASよりも強固なシールドとなっている。本人曰く、「カズくんを守らなきゃいけないから、盾は特に固くしているんですよ」とのこと。

 

指揮官のことを普段から『カズくん』と呼ぶ彼女は周りから見れば普通の人形と指揮官の関係ではないと思われる。

そこで簡単な調査を行った結果、彼女は元々ナカムラ指揮官の家のお手伝い用人形だったことが判明。現状の仲の良さと、彼女も時々着物を着ていたことの理由であった。

 

なおパワーバランスは彼女の方に傾いているらしく、基地内でナカムラ指揮官が項垂れている場面が多々ある。周囲からは「間違いなく痴話喧嘩」と認識されている。かくいう私もそう思っているので記しておこう。とはいえナカムラ指揮官も満更でもないらしく、補給基地第二のカップル(本人及び、司令も否定)と認識されつつある。

 

普段はSPASモデルらしい言動や行動を行うが、ナカムラ指揮官に関する物事ではお姉さんもしくはお母さん感が溢れる言動・行動をする。溢れる包容力を見た司令から、他の男性職員及び基地に出入りしている業者に対して「惚れるの禁止」令が秘密裏に発令された。曰く、「すでに相手がいる娘に手を出しちゃいかんでしょ?でもあれは油断したら惚れてしまう」とのこと。

なお、このコメントに対してトンプソンが慌てて詰め寄り、補給基地第一カップルのイチャイチャを目の前で見せつけられた私の心境を察してほしい。

 




報告書風の設定集2つ目でした。

思いつきで内容が加筆修正されたりしますのでそこはあしからず。


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補給基地の日常話
トンプソン その1


手探り状態で新規連載スタートです。
詳しくは後書きに書きますが、とある方からのとあるお誘いを間に受けての作品となります。作品の雰囲気や芸風(あえてこう書きます)が似てるかもしれませんがそこは笑って許して頂ければと。

ではでは、本編行ってみましょー


ここはG&K(グリフィン&クルーガー)社所属の〇〇地区にある基地。グリフィン本部に他の基地より近い位置に存在する。

 

この基地の主な業務は後方支援。

同地区及び他地区にあるいくつかの基地に対して、支援や補給物資の運搬等を行うため基地の様相も違う。

その中心業務に従って基地内敷地に於ける倉庫の占有率が多く、かつ警備に立つ戦術人形の数も他の基地よりはるかに多い。

 

前線での戦闘はあまり行わないが、他基地からの支援要請や補給要請で前線へ赴くこともあり戦術人形達の練度も後方という割には高い。

とはいえ最前線で戦っている戦術人形部隊と比べればどうしても見劣ってしまう。

 

そんな基地の指揮官は、見た目は真面目を通り越して堅物であり自分にも他人にも厳しいように見える。後方基地の指揮官というよりは前線で指揮を執っているか、いっそ最後方で戦線全体の指揮を執っていると言われた方が納得する雰囲気をもっている。

そんな彼の横に立つのはトンプソン。見た目はどう頑張ってもどこかのマフィアにしか見えない。サングラス(グラサンと言う方がこの場合は合う)にハット。在りし日のマフィア感が漂うこの戦術人形はこの基地の副官を務めている。

見た目的に副官と言われて違和感を感じるかもしれないが、このトンプソンは自分が認めた者には尽くすという信条を持つ。

尽くすというのには戦闘だけではなく、副官としての書類業務や前線基地との折衝も行ったりすることも入る。

パッと見は威圧感があるが、少し話せば意外に人当たりがよくさらに面倒見がいいことがわかるため慣れた基地相手なら指揮官が不在時でも十分対応ができる。

 

そんな二人が今にらめっこしている物は執務室の机の上にこれでもかと広がる書類の山である。

後方支援を主の業務とするこの基地はよその基地よりも書類が多くなることが多いのだが、今日はいつにもまして多い。

これは前線で大規模作戦が最近あったため、複数の基地から補給申請が頻繁かつ大量に行われていたことが発端である。

加えて「存在しない部隊」が物資の調達に来たり、近隣住民の皆様からの物資分配要求(つまり強盗)、それにかこつけて現れた人権団体の皆様のお相手等々(カチコミの相手)、ここ数日トラブルの対応に追われていたのも拍車をかけていた。

ちなみに分配要求というのは、夜間に銃や鈍器で武装した自称一般人(いわゆる暴徒)が倉庫に対して殺到することであり、その際の対応は基本的に丁重にお帰り願っている(銃弾で盛大に撃退している)

その後始末で消費した弾薬・いくらかの負傷した人形の修復など用の書類も追加されているため、さらに酷い有様になっている。

 

「……あーもう耐えられん!ボス、射撃場へ行って来ていいか!?」

「射撃訓練は昨日の晩にしただろう。動く標的相手にだが……。そんなことよりこの書類を分類してくれ」

 

処理しても処理しても湧いてくるんじゃないかと思う書類の山に、いい加減辟易としたトンプソンは射撃場で訓練したかった(ぶっ放したかった)が、にべもなく却下された上にさらに追加で書類を渡された。

 

「マジかー。今日はいつもより容赦無いなーボス。……ダミー使っていいか?」

「おー、構わん構わん。何だったら簡易自立モードで使っていいぞ」

 

逃げられないことを悟ったトンプソンは自分のダミーを使うことを提案する。彼女はこの基地ではトップクラスの最適化が済んでおり、そのダミーの数は4体である。

単純計算で5倍の処理スピードになるため、指揮官は許可をだした。ついでに本体からの指示を元にいくらかの自立行動を行うことも許可を出す。

 

「そいつはありがたいな。よしダミーを呼ぶぜ」

「ああ、頼む」

 

トンプソンは自分のダミーを呼び出すと、また目の前に置かれている書類の山を切り崩し始める。

しばらくすると、複数の足音が聞こえてきた。そして、勢いよく執務室のドアが開かれた。

 

「呼んだかメインフレーム!お、指揮官じゃないか。元気かい!」

「……そういえば忘れていたな。君のダミーは元気が良すぎることを」

「悪い……。自立行動はあまりさせないから私もうっかりしていたよ……」

 

このダミー達はメインフレームであるトンプソンの指示を普段は愚直に守る優秀なダミーなのだが、自立行動を許可すると途端に暴走し始めることが多い。

他の基地ではこんな事例は滅多に聞かないため、トンプソンのこのダミー達だけが……と言いたいが実はこの基地のほぼ全ての戦術人形のダミーが暴走する。

この基地の戦術人形達は、他の基地とは少々違うプログラムが組まれていることが暴走の原因だろうと指揮官は見当を付けているのだが、かと言ってそのプログラムを書き換えるわけにもいかず暴走を放置する結果になっている。

 

ならば自立行動をさせなければいいじゃないかと思うかもしれない。

だがこの基地に於いては保管物資の整理から運搬車両への積込・輸送も含めた非戦闘業務が多く、その全てをいちいち指示していたらこの指揮官はそれだけで一日が終わってしまう。

一般作業用の自立人形もかなりの数が投入されているのだが他基地からの要請・申請も多く自立人形では対処しきれず、結局いくらかの自己判断ができる戦術人形にダミーを使わせた上でそのダミー達にも自立行動をさせざるを得ないという事情がある。

 

「なにしけた面してるんだよボス。書類整理なら私達に任せな!メインフレームには負けないさ!」

「なんの勝負をしているというんだお前たちは……。仕事はしっかりできるからいいんだが」

「じゃあ、メインフレームより書類を早く片付けたら私達に何か褒美をくれよー。たまにはいいだろー?」

「ん?要求なんてダミー達にしては珍しいな。……いいだろう、なにがいいんだ?可能な範囲で実現させよう」

「ちょっボス!?ダミーにそこまでしなくていいから!」

「「「「メインは黙ってろ」」」」

「なっ!?」

「はははっ」

 

普段は勝気なトンプソンが自分のダミー4体に圧倒されているという珍しい光景に指揮官は少し笑ってしまう。

 

(この雰囲気なら彼女たちはしばらく仕事にならないな)

 

そう思った指揮官はちょうどいいコーヒーブレイクだ、とコーヒーを6つ分用意するため席を立ち執務室の隅へ歩いていった。




何番煎じか調べてないのでわからないですが、前線ではないフロントラインネタです。補給基地ってのも他にありますかね?ろくに調べてない……。

この基地はたぶん鉄血よりも人類と戦うことが多いんじゃなかろうかと思う。

で、このお話ですが「ダミー芸を広めない?」(超訳)と勧誘されましたので書き始めてみました。名前を出していいのかわかりませんが、某錬金術師さんの影響でございます。ダミー芸のための舞台設定考えてたら基地の規模が大きくなっちゃいました(笑)

なお、この基地及び指揮官達はフリー素材です。
使いたいっていう方がもしもおられましたらどうぞご使用ください。
事前でも事後報告でもいいので連絡貰えると作者が嬉し泣きします。

あと、誤字脱字ありましたらお手数ですが報告お願いします。


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トンプソン その2

キャラ崩壊注意です!

気づいたらこんなことになってました。
でも後悔はしてません。この2人はこのノリで行きます

では本編どうぞ




指揮官がコーヒーを6杯淹れて机に戻ってくるとそこには、ダミー4体に囲まれて正座しているトンプソンの姿があった。

どうやらダミーに怒られているようだ、と指揮官は察する。

指揮官が近づくにつれて話の内容が聞こえてくる。

 

「……メインはいつも……ボスにご褒美を……羨ましいんだぞ……私たちだってたまにはもらいたい!」

 

ちなみに、「メインフレームはいつもボスと一緒にいるから、時々ご褒美をもらっていて羨ましいから私達にもたまには寄越せ!」というのがその内容である。

いくつか言葉を飛ばして聞こえているが、指揮官もだいたいの内容は察している。

指揮官は、ダミーと言ってもこんな感情も持つのだなぁと関心していた。

 

「いや、お前達今まで真面目に仕事してたじゃないか。急にご褒美だとか……」

「ホントは言いたかったんだ!自立行動させてくれないから言えなかったんだよ!くっ、私がメインなら……!」

「ちょっと待て、私だって言いたいんだぞ!」

「「私だって!」」

 

少し涙目のメインの反論に対してダミー4体がさらに反論しているというか、欲望をぶちまけているというか何とも言えない状態になっている。

収拾がつかないため、とりあえず指揮官が声を掛けた。

 

「ほらお前たち、コーヒーでも飲んで落ち着け。な?」

「ありがとうボス……。まさかダミーにここまで言われるなんて……。ちょっと泣きそう……」

 

普段勝気なトンプソンからは想像できない状態にちょっとグッときてしまう指揮官だったが、

この状態に追い込んだのがそのトンプソンのダミーだということが彼のツボに入ってしまう。

 

「くくっ、トンプソンを追い詰めるのは同じトンプソンか。なかなか面白いじゃないか」

「ちょ、他人事だからって面白がらないでくれよボスぅ……」

「そうだぜボス。……ボスが私達にもご褒美くれてたらこんなことには……」

「「「そうだ、そうだー」」」

 

うかつに発言したために飛び火した指揮官は、しまったと思ったが時すでに遅かった。

 

「……そうだよ。ボスがこいつらになにかあげてくれ。そうじゃないともう言うこと聞いてくれないかも」

「いやいや、メインはお前だろう?命令系統で上位なんだから言うこと聞かせられるだろ」

「「「「断固拒否する」」」」

「ほら」

「命令系統を無視できるレベルの不満なのか……?というか、上位からの命令を無視できるのは戦術人形的にまずいだろう」

「『戦闘に関すること』じゃないからかもしれない。この基地ならではだよな」

 

基本業務が貯蔵物資の管理及び輸送及びそれに伴う防衛行動全般といった具合に、戦闘が優先順位では下にある。普通の基地では恐らく逆であることが多い。

さらに基地の立地の問題で数日に1回の頻度で夜盗の類に襲撃される。

その対応を円滑に行う(実力で排除する)ため、この基地所属の戦術人形達は限定条件下であれば『人間に対して殺傷行動が行える』ようにプログラムされている。

このプログラムがどうもダミー達が起こしているイレギュラーの原因なのではないかと指揮官は予想している。

 

「そうすると、私が何か褒美を上げればお前達は大人しくなるというわけだな?」

「「「「さすがボス」」」」

「……なんでボスには素直なんだよ」

「「「「そりゃ、あんたのダミーだから」」」」

「ぶはっ!」

 

異口同音でもはやコントのような返答をしている彼女たちについ吹いてしまった指揮官。

それに対して思う所があるトンプソン(メイン)は顔を少し赤らめながら聞く。

 

「ボス、なんで吹いたんだ……?」

「ん?間髪入れず4体から同時に反撃されているのを見たら面白いだろ」

「そうか。……素直な理由は分からなかった……かな。よかったー

「トンプソン、一つ言っておくが()()()()()()()()()()()()からな。」

「え!?」

 

さらりとトンプソンを赤面させた後、指揮官はダミー達の方を向いて話を進める。

このダミー達は褒美が欲しいというワケではなく、メインフレームをからかうことが本当の目的だったのだろう。

けしかけることも視野に入れていたに違いない。

関係を進展させないことに業を煮やしたか。

メインフレームの感情はダミー達にまるっとバレているワケだ。

この見た目は思いっきりマフィア感が溢れ普段の言動も男らしいと言える彼女は、実はかなりの乙女な所があり普段から周り(指揮官含む)に結構バレバレであった。

それはもう暇な時には、男性向けファッション雑誌を読んで指揮官に似合う服を探していたり、女性誌の「好きな男を落とすには」という特集を読んでいたり、しまいには「指輪欲しいなぁ」とか呟いていたり(口に出ていることに気づいていない)

メインを弄ぶダミー達……。この基地実はかなりヤバいのでは?と今更ながら思う指揮官であった。

 

「さて、ダミー達は何が褒美に欲しいんだ?」

「「「「メインが欲しがってる『ボス』」」」」

「ちょ、だから!お前たちはー!」

 

言うやいなや、高笑いを響かせながら目にもとまらぬ速さで執務室を出ていくダミー達。

メインのトンプソンは真っ赤な顔でダミー達をこれまた全力疾走で追いかけていく。

 

「……お前たちを呼んだ理由は分かってるのか?」

 

聞く者がいない執務室で指揮官は書類の山との格闘を再開しながら呟いた。

彼が書類の山から解放されたのは日付が変わった頃だったと付け加えておこう。




というワケで、カッコイイ女性が実はかなり乙女っぽいのいいよねーってオチに。
伏線も何も無い力技になってしまったのは、私の力不足です。

ここのダミーはこんな感じになりました。これからどうなることやら(笑)



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第8倉庫にて

ここはG&Kの補給基地、今回は他の基地へ送る物資の一時保管用倉庫で起きた郵便物のお話。



「ボス、居るかい?」

 

数回のノックの後、この基地の副官トンプソンの声がドア越しに執務室に響く。

 

「居るぞ。どうしたトンプソン」

「ああボス居てくれたか。すまないが第8倉庫まで来れるか?」

「第8倉庫?あそこは他の基地への届け物が入っている倉庫じゃなかったか?」

 

第8倉庫とは別名「宅配センター」と呼ばれるこの基地きっての混沌とした倉庫である。

ここに届けられる荷物に関しては、基本的にどの地区へ運ぶか仕分けしたらあとはほぼノータッチで運搬する。

他の基地所属の指揮官や人形達の私物が多く、プライバシーの保護を配慮したためである。

 

「その通りだ。で、来れるかい?」

「少し待て。この書類だけ処理する」

「わかった。先に行っているから後で来てくれ」

 

そう言うとトンプソンは執務室から足早に去っていった。

 

(なにかあったのか?奇妙奇天烈な物は時々あるようだが、今まで私が呼ばれたことはないしな……)

 

指揮官は疑問を頭に浮かべつつ、とにかく行けばわかると手元にあった書類の処理をし始めた。

 


第8倉庫

 

「待ってたぞボス」

「待たせた。で、何があったんだ?」

「とりあえず、これを見てくれ」

 

トンプソンはそう言うと自分のダミー2体に合図をして、()()()()()()()()()()()()()()()を持ってこさせた。

 

「大きい箱だな。……これは?」

「まずはこれの宛先なんだが、()()()()()()()()()()だ。最近、鉄血の襲撃を受けて撤退したらしい。ちなみに、いくらかの人形がやられたらしいが無事に撤退したとのことだ」

「ふむ。その話自体はよくあることと言えるな。で、結局その大きい郵便物の中身は?」

 

鉄血の襲撃で基地を放棄すること自体は時々ある。だが、そこに宛てて送られてきたこの箱が何なのかという方が大事だ。

 

「ああ。戦術人形だ」

「は?郵送される戦術人形なんて聞いたことないぞ。普通はI.O.Pの運搬車両が直接運び込むハズだろ?」

「そのハズだ。なにせそれで運搬車両が襲撃されることもあるくらいだしな。だが、こいつは間違いなく戦術人形だ」

「……開けたのか?」

「すまないが先に開けさせてもらった。ダミーが確認した中身は『スプリングフィールド』だ」

 

メインがそう言った直後にダミーが箱を開けると、中にはスプリングフィールドが確かに入っていた。

 

一糸纏わぬ姿で

 

「おい!服を着てないことは先に言え!?」

「いや、私も知らなかった!お前たち、なんで教えなかったんだ!」

「「面白いことになると思って黙ってた」」

 

なんて恐ろしいダミー達だと戦慄している指揮官と、まさか自分のダミーが指揮官(ボス)にあんなトラップを仕掛けるとは思わなかったトンプソンだった。

ちなみに2人とも顔が真っ赤である。……初心だなー

 

「……で、このスプリングフィールドは件の指揮官が発注していた人形じゃないのか?」

「いや、それが違うらしいんだ。というか発送元がわからない」

「それは……。なんてテロだ?」

 

指揮官のその一言は箱を開けた途端に目に入るスプリングフィールドのことを言っているのだろう。

この荷物が届いた指揮官が何も知らずに荷を開けたら、スプリングフィールドの裸体が……。

もしその時に指揮官の部下たる人形達がいた時には、もしかすると血の雨が降るかもしれない。

 

「……基地によっては最悪死人が出るんじゃないか?」

「宛先の指揮官なら少なくとも血の雨は降るな。部下の人形達に慕われているらしいからなー」

「やっぱりテロじゃないか」

 

送り主不明の荷物をほいほいと開けるとは思わないが、だがもし指揮官の代わりに人形達が開けたとしたら……さらに大変なことになるだろう。

 

「この荷物の元を辿りつつ現状を本部へ連絡。それからこのスプリングフィールドの処遇をどうするか指示を仰ぐぞ」

「わかった。……そういえば指揮官?少し鼻の下が長くなっていないか?」

「ん!?……まあ、アレをもろに見ればなぁ。正直、人形と誓約するヤツの気持ちなぞわからんと思っていたが。ちょっと理解できてしまったな……」

「ボス?人形と誓約することは結婚とはちと違うんだぞ?あとしみじみ言ってるけど、つまるところ女の裸を見たのとほぼ同じだからな?」

「しょうがないだろう!?私を好いてくれる女性なんていたと思うか!?その……直に見たのだって初めてなんだ!」

「そんなカミングアウトされても反応に困るぞボス!」

 

G&Kの戦術人形達は総じて美しい女性の容姿のものが多い。

特定の人形に好意を抱き、その人形からも好意を抱かれそのまま結婚した指揮官の事例がいくつもある。

この補給基地の指揮官は、それに反対こそしていないが懐疑的であった。今までは。

 

「よく考えれば、見た目も綺麗で、よく尽くしてくれて、でもちゃんと自分の意見も言ってくれて、『あなたは真面目すぎる』と敬遠されることもなく、『お仕事お疲れ様』とか励ましてもくれる。……あれ?私の理想の女性って戦術人形達じゃないか」

「落ち着けボス!なんか色々ダダ漏れだぞ!ちょっと聞いてて恥ずかしいからな!?……いや、いっそこのまま吹っ切れてくれた方がいいのか?

「指揮官もトンプソンもいい加減にしないと殴るわよ?」

 

暴走具合が凄いことになってきた現状を1人の戦術人形が打破する。

それはこの補給基地所属警備部隊の1人、FALであった。

 

「あなた達ねぇ、昼間っから何を色ボケしているのよ。まだ業務時間なんだから終わってからしてくれないかしら?」

「ハッ!……すまんFAL、迷惑をかけた」

あと少しだったのになー

トンプソン?

「ゴメン」

 

FALはこの基地きっての常識人枠である。服装は常識的とは言い難いが(露出過多)

なお、彼女のダミーも例外なく暴走する。それはまた別の話で。

 

「指揮官、この倉庫の荷物、宛先がS09地区のある基地へ向けた品物が多いのだけど何かあったの?」

「ん?……あーあー、そういえば風の噂で聞いたが大規模作戦の立役者が自分の所の人形と結婚するらしい。その関係じゃないか?」

「そういうことね納得だわ。輸送車両の編成がちょっとすごいことになってるのよ。これは間違いなく追加の護衛部隊がいるわね」

「わかった、人選は任せる。相手方に失礼のないようにな。それにしても、自分達で準備しているのか。支給物資は使わない気か?」

「いや、支給物資に結婚に使えるものなんてないだろうボス。基地の運営に使えるものだし」

 

そういえばそうだなと指揮官は納得する。

納得しつつ一つ思いついたことがあった。

 

結婚の先輩として聞きたいことができたな……。我々からも何か送るか」

「花でも送るのかい?」

「いや、それほど関係ない基地からいきなり花を送られても困惑するだけだろう。少々建材や何やらを増やしておけばいい。理由は後付けでいいさ」

「わかった。少し水増ししておくよ。別基地に輸送予定の物が多かったからとかなんとか理由は付けておく」

「ああ、頼む」

 

その後、しばらくしてから指揮官は第8倉庫を後にした。

だから指揮官は知らない。

第8倉庫の中で指揮官を巡った小競り合いが起こったこと。

指揮官が人形との関係を深くへ興味を示し始めたことが人形達の間で瞬く間に広まったことを。

 




ここの指揮官とトンプソンはどこへ向かうのか作者にもわからない。
スプリングフィールドのくだりは完全に暴走です。

ダミー達も安定の暴走です。たぶん愉悦部に入ってると思う。
FALのダミーはどうさせよう(ゲス顔

さて、今回はユノちゃんの結婚式に間に合わなかったからって、式前に資材を水増しして送ったことにするという歴史改変をしてみました。

一応許可は得ておりますが、コラボという訳ではなく一方的なものですのであしからず。変な所あったら言ってください、修正します。

そろそろS666の方も進めないとなー。

誤字脱字ありましたら、お手数ですがお教えください。よろしくお願いします。


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カフェ開店

今回は指揮官の主観でお送りします。
たまには一人称で書きたいんだー
(S666の方とは別カウントでお願いします)

注意、書いてるウチにトンプソンが暴走しました。
キャラ崩壊待ったナシなのでクールなトンプソンがお好きな方はブラウザバック!




以前発見された送り主不明のスプリングフィールドは結局この基地に所属する事となった。

 

受け取り予定だった指揮官は現在それどころではなく、戦力を再編し基地の奪還を計画中なのだそうだ。そのため、元々人手が足りていなかったウチで引き取ることにしたのだ。

 

I.O.Pへ送り返す?

それなら書類をちゃちゃっと書き上げて引き取るわ。

 

とはいえ彼女は最適化がほぼ進んでおらず、ダミーが現在使えない。本来頼みたかったのは倉庫の整理だが、これならいっそ他のことをやってもらおうと計画したのは「カフェ」である。

 

他の基地でもなぜかスプリングフィールドが店を持っている事が多いと聞いていたし、ウチの連中が休憩できる所があってもいいと思う。

それにしてもスプリングフィールドは元々商売に向いているのだろうか?

民生品を転用しているのがグリフィンの戦術人形であるためありえなくは無いな。

 

場所に関しては、倉庫に空きはないが部屋の空きはあったため自律人形を主軸に手の空いていた者を次々に投入し、2日でカフェ風に部屋を改装し確保。

店の大きさはそれほど大きくはない。

とはいえ、今のところスプリングフィールドが1人で切り盛りしなければならない事を考えればこの広さで良いだろう。

繫盛してきたりスプリングフィールドの最適化が進みダミーが使えるようになったら改装も視野に入れればいい。

 

スプリングフィールドはと言うと、起動してからは少しづつこの基地に慣れさせていた。

それをいきなり喫茶店をやれと言われて少し困惑していたようだが、意外とすぐ乗り気になり嬉々として準備を進めていた。

 

「でも指揮官、私は戦闘が本業なのはお忘れなく」

「そうは言うがここでは君はまともに戦えない。なにせ君は()()()()()()()だろう?」

 

この補給基地は、鉄血の襲撃は今までに数える程しかない。

それはそうだろうここはグリフィンと鉄血の最前線ではない。

ここまで辿り着こうと思うと、最前線の優秀な指揮官達に気付かれずに後方へ浸透した上で輸送路の防衛部隊を突破しなければならない。

 

では、この基地の主な敵とは?簡単なことさ。私と同じ人間だ。

 

この基地の立地は前線と本部等の後方とのほぼ中間地点である。つまり()()()()()()()()()()()()()()かつG()()K()()()()()()()()()()()()()()()()ある種の空白地帯に近いワケだ。

支配というと語弊があるかも知れないな。管轄というべきか?だが、どちらにせよグリフィンに対して敵対的な者からすればあまり変わらないだろう。

 

そんな位置には必然的に人が集まる。それこそ街で生活するには後ろめたい人々から街では暮らせない程の貧困層まで。

だがグリフィンの管轄から離れるということは生活物資の工面に多少なりとも苦労することと同義と言っても過言ではない。

 

とはいえ普通に働こうと思えば仕事自体はあるし、給料は少ないが同時に物価も高くはないためそれなりの生活ならば十分にできる。

この基地からもいくらか仕事を提供している。昼間の倉庫整理や近隣の街への運搬は一般業者を雇用しているからだ。

 

だが「それなりの生活」を嫌がったり、楽をして生きたいと思う者も当然いる。それにグリフィンや所属する戦術人形を嫌う者もだ。

そんな彼らがするのは人が少ない夜に物資を狙って侵入することだ。人それを夜盗という。

まあ、物資を奪っていくだけならまだしも爆破しようとしてくる連中も多いので厄介なのだが。

 

そうなるとこちらも撃退する必要がある。が、実は()()()()()()()()()()()()()

人形は人によって作られた存在。自立人形も戦術人形も人間に対して敵対的・攻撃的な行動が通常はとれないようになっている。

作った存在(人形)に裏切られないようにセーフティをかけるのも当然と言えるか。

昔のSF映画でもよくあるが、AIの反乱という物は今でも恐いということだろう。

 

ようやく本題だ。普通の戦術人形では人間に対して攻撃できない、せいぜい無力化が限界だ。

ではどうするか。

これまた簡単、攻撃できないなら()()()()()()()()()()()()()()()()

 

この基地に所属する戦術人形は軒並み対人用のセッティングが行われている。

無力化ではない。()()()()()だ。

つまりこの基地は鉄血の人形達と同じことができる。というよりある意味それを求められている。

 

「それはそうですが……。鉄血は全然来ないのですか?」

「まったくとは言わんがここまで来ることは少ない。来たとしてもすでに満身創痍な場合が多いな」

「そうですか……。あの、じゃあ私はどうやって最適化を進めれば……?」

 

少し涙目になりそうなスプリングフィールド。おおう、破壊力たかぁ。

 

私もどうしようかと悩んでいる。

この基地で最適化を進めるには、

1、夜盗等への実力行使(回数最多にして最大効率。だが人間が相手)

2、前線または後方からの輸送車両を護衛しその際に戦闘を行う(鉄血より人間の方が多い)

この2つがメインとなる。だがここでスプリングフィールドの欠点が致命的になる。

どれ1つとしてまともに最適化が進められないのだ。

 

「もう諦めて、カフェを切り盛りするのに全力を……」

「私は戦術人形です!……カフェなら民生用の人形でもできるじゃないですか」

 

見た目はどこからどう見てもカフェにお似合いなんだが。

これぞどこから見てもカフェの店員といった格好で、戦術人形としてのアイデンティティが危機に陥っている現状を嘆くスプリングフィールド。

若干のいじけも入ってきて、長引きそうな予感。安易に引き取るべきではなかったと今さら後悔。

いや、人手はいつでも増やしたいくらいだったし。ついウチは特別仕様じゃないとまともに務まらないこと忘れてしまった。

 

「スプリングフィールド朗報だぞ!って、ボスも居たのか」

 

なんとも言えない雰囲気になっていた部屋に、颯爽と現れたのは頼れる我が副官のトンプソンだった。

彼女はドアをなかなかの勢いで開け放ちつつ中へ入ってくる。左手には書類を持っているな。

 

「トンプソンどうしたんだ?」

「頼んでいたアレができるようになりましたか!?」

 

私の問いかけと、スプリングフィールドの嬉しそうな声がほぼ同時に響いた。

いやもう、その時の彼女の声は何人か勢いで惚れるんじゃないかと思うくらい嬉しそうだった。

 

「ああ、喜べスプリングフィールド。I.O.Pがお前のセーフティを外すそうだ」

「これでここでも戦えますね!」

「待て、その話は初耳なんだが!?」

 

間違いなく聞いていないぞ。

 

「そりゃあ言ってないからな」

「それは言ってませんから」

 

おっと、同時に上司へ連絡していないことを白状したぞ?

まあ、そこは置いておこう。後でトンプソンにはお仕置きするが。

それよりもI.O.P社になんてトンプソンだけで連絡できるものか?

 

「I.O.P社に連絡したのか?」

「まさか。ペルシカの姐さんだよ」

「あー。……でもウチはそんなに彼女と親しいワケじゃないハズだ?」

「……テヘッ」

 

少しの沈黙の後にトンプソンが絶対にしないであろうことをかましてきたぞ?

これは面白いことになりそうな(イジリがいのありそうな)予感。

 

「よしトンプソン。今全てを白状したら、ダミーにお前さんの妄想の具体的内容を聞くのは止めてやる」

「ボスぅ!?妄想って何の話だよ!」

「ダミーから苦情来てるんだ。『メインから甘くて時々ピンク色な妄想が飛んでくる』ってな」

「アイツら絶対壊す!」

 

今日のトンプソンイジリは最大の攻撃力を誇ったらしい。ダミー達の健闘を祈る。

じゃなくて、

 

「で?ペルシカリア殿とどういう関係なのかな?」

「……飲み友達です」

「……え?あの人引きこもりで有名だろ!?」

「時々飲みに出るんだよ。ほら私が時々休暇を申請してるだろ?外泊届付きで」

「あれか。まさか男じゃなかろうなと思っていたんだが……」

……それならボスを誘うに決まってる。で、その時にスプリングフィールドの相談を話したんだ」

「真正面から誘ってきたら飲みに連れていってやる。というか一応、部外者なんだからあまり基地の中身を話すなよ」

 

聞こえていないと思っているのだろうが、残念ばっちり聞こえております。

いつも思うがここらへんウチのトンプソンはドジっ娘だ(カワイイ)と思う。

 

「本当か!?……コホン、その時にペルシカが『なら私が手続きしてみよう』って言ってくれてな」

「私からもお願いしたんです」

 

しばらく放置気味になっていたスプリングフィールドがその話を肯定する。

いやでも君らね、私は一応上司なんだからね?せめて一言あって然るべきだと思うんだ。

 

「まったく。スプリングフィールドがいいと言っているしその文書自体はI.O.P社の正式な文書だ。問題は無いと思うが……」

「大丈夫だろ。なにせあのペルシカが直接やるらしいからな」

「人を巻き込んだ自覚はあるかー?よし、後でダミーに妄想の中身聞くわ」

「なんでだぁ!……え、マジで聞くの?ちょ、ヤメ、ヤメてー!」

 

君はもう少し反省しなさい。ダミーを呼べ、酒の肴に妄想の中身は聞いてやろう。

 

 

その後、無事セーフティを外したスプリングフィールドは夜盗を相手に経験を積んでいる。

もう少ししたらカフェの改装も視野に入れて良さそうだ。

なんだかんだ言いつつカフェもやっているのは、彼女も気に入っているということなのだろう。

 

ん?トンプソンのこと?

とりあえずダミーに中身を聞いたら、私も巻き添えで真っ赤になったよ。

その後、照れて絡んでくるトンプソンが非常に可愛いかったことは私の心の中にしまっておこうと思う。




書いていたら何故か説明回とトンプソンが暴走することに……。

スプリングフィールドを中心にするハズが!

……まぁ、こんなトンプソンがいてもいいと思うの。
あと、前話の感想で「ネタにします」言っておいて今回やれませんでした。次回やりまーす(出来るとは言ってない

ダミー芸も今回は控えめ。カカオさん(御本家)や焔薙さんがダミー芸を披露してらっしゃるのでそっちで楽しんでくださいな

追記
一人称がおかしくなっていたので直しました。
あと句読点も少々修正してます


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襲撃

ここはG&Kの補給基地。

いつもは(比較的)平和なここも、今日は戦火に包まれていた―――

※今回も指揮官の視点となります。


さて、現状を説明しよう。

 

現在、我が基地は正体不明の武装集団(どうせ過激派)に攻撃されている。今のままでいけば数時間以内に連中に包囲されるだろう。

そこまではいい。この基地ではよくある話だ。

 

()()()()()()()()()()()()

 

いつもなら、

夜分遅くに失礼いたします(G&Kの者達に告げる!)私たちは強盗でございます(「人の権利を守る会」だ!)あなた方の物資を頂けますでしょうか(お前たちが貯め込んでいる物資を頂く!)

って感じで襲撃してくるのに真っ昼間に来るとは。よりによって今日かー。

 

そう、()()()()()()今日だ。

複数の前線基地で戦闘が多発し通常の輸送部隊は手一杯。

この基地の守備隊からいくらか割いて臨時編成した輸送部隊も派遣しており普段よりも防衛戦力が少ない。

 

しかもさらに不運なことにどうも連中は我々と同業者、つまり傭兵を雇っているらしい。

数もさることながら用兵もしっかりしていてかなり押されている。

輸送部隊の帰還までどうにか持たせるつもりだが、正直ギリギリな予感がしている。

基地の地下にある作戦司令室に詰めて少し焦り気味のそんな私に向けて通信が入った。

通信の相手は基地外にて遊撃として防衛部隊を率いているG36からだった。

 

『報告します。AR隊(アサルトライフル)はダミー損耗3。SMG隊(サブマシンガン)はダミー損耗13。MG隊(マシンガン)はダミー損耗1、メインが1体軽傷。HG・RF隊(ハンドガン・ライフル)は今のところ被害無し。指示を』

「SMG隊は一度下がらせろ。予備のダミーを起動させて再編成だ。AR隊はSMG隊の抜けを埋めつつ徐々に下がれ、RF隊はその支援を。MG隊、外壁上へ移動して弾幕を張れ。弾は節約しなくていい。気にせずぶっ放せ。HG隊、RF隊の支援をやめてMG隊の移動を支援しろ。移動後はMG隊へ弾薬の運搬を頼む」

『了解しました。各部隊へ伝えます』

 

完全に負け戦な指揮だが被害を抑えるため仕方ないな。

外壁はそう簡単に突破はできないし、こういう事態に備えて戦術人形を配置して迎撃できるように作ってある。

外壁で敵を抑えて出血を強いる。迫撃砲とかは見つけ次第最優先で潰す。

元々この基地は蓄えてある潤沢な物資を生かした籠城戦を行うことを前提とした防衛能力にしているからな。よその基地よりMGが多いとかがいい例だ。

おっと、また通信だ。

 

『こちらM2HB、外壁の上に移動中。で、いいのかい指揮官?容赦なく狙うけど」

『私らの弾丸が当たったらすごいことになるよ?』

『むしろムゴいことになるよ』

「あー構わん構わん。()()()()()()()()

『りょーかいー。じゃ、配置につき次第ぶっ放すよ。アウト』

 

M2HBとそのダミーからの通信に適当に答える。いやー、俺なら食らいたくないねぇ。

12.7mmとか吹き飛ぶぞ、身体が。

 

「RF隊聞こえるか?監視塔に登って連中の頭を押さえてくれ」

『了解です。包囲の状況は?』

「芳しくないな。徐々にだが囲まれてる」

『わかりました。時間を稼いでみます』

「ああ。だが無理はするなよ」

『了解』

 

RF隊に指示を出し敵を牽制する。とにかく時間を稼いで主力部隊の帰還を待つしかない。

 

「にしてもジリ貧だなー」

「そうだな、ボス。にしても連中こんな昼間にドンパチするなんて急にどうしたんだろうな?」

 

つい呟いてしまった言葉にしっかり答えてくれるのは副官のトンプソン。

時々、残念な娘になるがこういう事態では特に頼りになる自慢の副官だ。

 

「そこなんだがらいつもは夜襲だが今回は初の昼間。何故なのか皆目見当がつかない」

「昼間だったから子供達がいるんだよなー。チッ、奴らの言う人権って奴には子供は入らないのかねぇ」

 

この基地は民間人もいくらか働いている。倉庫&荷物が多いことと、民間の都市(スラムと言った方が正しいか?)が近いからだ。

さらに慈善事業という程でもないが、子供達に少ないがお金に食事と文字の読み書きを少し教えている。

お金はただあげるのではなく、ちゃんと倉庫の整理や清掃の手伝いをしてくれた子にだけ支払っている。

労働に対して正当な対価を貰えることをこの子達にはしっかりと教える。

未来は子供達が作るのだから大事なことだと私は思う。

おっと脱線したな。

 

「連中、街の子供達がいること知らないのか?」

「それは無いだろ。街に思いっきり張り紙してるハズだし」

「そう、そのハズだ。連中を片付けたらすぐに調査だな」

「……なんか嫌な感じがするよ、ボス」

「奇遇だなトンプソン。私もだ」

 

そう、いつもと違う状態だったことを知っているかのような襲撃。

戦力も普段よりも多く強い。間違いなく内通者がいるだろうな。

 

「はぁ。この間来た新しい業者が怪しいと思うのは私だけかな……」

「やっぱりボスもそう思うかー。でも新規業者がここまで詳しい情報を手に入れられるのかとも思うけどな」

 

たしかにトンプソンの言うことも一理あるな。

とにかくここを乗り切ってからの話だ。

 

「子供達の様子はどうだ?」

「スプリングフィールドが一緒にいるよ。あと、FNCも」

「……菓子要員?」

「兼おこぼれ狙いだろうな」

 

まったく。とはいえ子供達になにかあってはいけない。RFよりも近距離で戦えるARであるFNCもいる方が安心だな。

 

外はどうなっているだろうか。

しばらく見ていなかったモニターに視線を移すとそこには……。

 

「……なあ、G36がブチ切れてないか?」

「あの短いスカートの下にどれだけグレネードはいってるんだろうな?」

「というかグレネード使えるのか……」

「使えなくはない、って感じじゃないか?ステンとかよりは投擲の精度悪そうだし」

 

精度の悪さは数でカバーってどこのMGだ。

曲がりなりにも我が基地のメイド班隊長だぞ。

 

「ん?アレは……、ダミーか?……G36のダミーは爆弾魔かー」

「あ、ボスも全部は把握出来てないのか」

「ダミーの個性は多すぎてな。それにしても損壊して破棄した後、新品を編成し直すと損壊前の性格に戻るのはどういうことだろうか」

「……まったく同じなのか?」

「記憶含めてまったく差異は無いそうだ。ウチだけらしいがな」

 

というかここまで個性の強いダミー自体、D08地区のとある基地やS09地区のとある基地くらいしか今のところ居ないらしいのだがね。

 

「ちなみにウチで他に暴走するダミーは?」

 

トンプソンが聞いてくる。君のダミーを除くと……

 

「FALかな?暴走というかワガママなんだよ。紅茶とクッキーを出せと言うダミーとコーヒーにケーキを出せと言うダミーの2体」

「本体は?」

「飲み物はわからんがチョコが好きだな。FNCや子供達とよく一緒に食べてる」

 

基地のかなり危機に近いと言っていい状況でのんびり会話する私達。

そこへFALから、

 

『のんびり話をしてるヒマがあったら、状況確認して指示を出しなさい!』

 

とお叱りの言葉を頂く。

 

「すまない。で、戦況は?」

『頭を押さえたからか、大分攻撃は緩くなったわ。でもこっちも被害出てるしおあいこね』

「被害は?」

『G36のダミーが大量のグレネードと一緒に爆散したわ』

「そこまで徹底的に爆弾魔なのか……」

『なんか散り際に「私の代わりはいくらでもいるもの」とか言ってたらしいけど』

「……なにがそこまで駆り立てるのか、あとでメイン含めて面談だな」

「ダミー的には間違ってないんだけどなー」

『それと、G36のもう一体のダミーが爆薬を設置しまくってたんだけど』

 

ダミーはどちらも爆弾魔だったか……。

 

『なんかどこからともなく電話みたいな物を取り出して「ハイ、もしもし?」とか言ってたんだけど。あと、そのダミーがいつの間にかメガネをかけてたわ』

「……その後に『HAHAHA』とか笑ってなかったか?」

『……笑ってたわね』

 

深く考えたら負けだろうか……?

とりあえずG36には後で話を聞かないとな。不満とかないかって。

気づいたら爆薬を身体に巻かれてたってことにはなりたくない。

 

『それはともかく今の内に外の遊撃隊を中に入れることを推奨するわ』

「だな。RF隊、MG隊は遊撃隊の回収を支援だ。トンプソン、SMG隊はどうだ?」

「とりあえずダミーの起動は終了。全員は無理だが何人かはスグに出れそうだ」

「わかった。SMG隊も外壁に展開して弾幕を張れ。敵をクギ付けにしろ」

 

こちらの利点を最大限に生かすならこれだ。

()()()()()()()()()()()()()()()()これにつきる。

 

さて、時間稼ぎついでに他の基地にダメ元で救援要請だ。

誰か来るとは思えないが、しないよりは望みが増えるからな。

 




続いてしまった。
ほのぼのっぽいのを書いていても、時々は撃ち合いに発展させたくなるのは病気かなー。

G36のダミーは思いつきにより某一流の爆弾魔を超えた爆弾魔さんになってしまった。何故だ…。

???「ヤツら後部座席にM2機関砲を載せてやがる!」
???「総員対ショック姿勢!」
???&???「とっくに対ショック!」

M2を出した弊害でした(笑)
なお、普段は普通にメイド班として普通に過ごしております。


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小休止

ここはG&Kの補給基地

基地が襲われ、迎え撃つ人形達。

篭城戦に持ち込み味方の到着を待つ。

さぁ、どうなる?

※今回も指揮官視点です。というかこの騒動中は指揮官視点です



さーて、どうするかね。

 

どうにか外の遊撃隊は中へ回収できた。

途中で、G36のダミーが惚れ惚れする笑顔を見せながら大量の爆薬(話によると敵のグレネードやらプラスチック爆弾とかを使ったらしい)を起爆して外の連中を消し飛ばした時はビビったけれど。

 

「指揮官、これからどうするの?」

「んー。敵の戦力は結構削ったんだけどな。壊滅に近いと思う」

「それは軍のやつでしょ?3割で全滅ってやつ」

「いやー、3割ってだいぶだぞ?」

 

100から30減るって相当だと思う。

作戦室でFALと話していると監視塔へ行っていたトンプソンが帰ってきた。

 

「ボス、連中一度下がったぞ。……子供達を逃がすか?」

「まだ待て。今出すのはマズい」

「捕まるか……」

「いいえ、むしろ……」

「トンプソン、外の映像見てみ?」

 

そういうとモニターを操作して外を映す。

えーと、このカメラだったかな?

M()2()H()B()()()()()()()()()

 

「……うわぁ」

 

うん、普段はかわい……ゲフンゲフン、男前なトンプソンでも顔が青くなるレベルだよなー。

()()()()()()()がゴロゴロ転がってればそうもなるわな。

 

「12.7mmの威力を再確認できたな」

「……ヤバい、思いっきり頭に残った……」

「私も絶句したわ。指揮官あれはやりすぎでしょ」

「ここに仕掛けてくる方が悪い。……あー、トンプソン?お前グロダメだったっけ?」

「普通の死体とか、鉄血のは大丈夫……。でもここまでのはちょっと……うぇっ」

「あー、ごめんごめん。映画でグロいの見れてたからてっきり大丈夫だと……」

「恨むぞ、ボス……うぅっ」

「あらあら、写真撮っていい?」

 

あー、FAL?トドメはダメだ。

行動不能になって私の腰に抱きついたトンプソンの頭を撫でてやりながら、写真を撮ろうとするFALを止める。それは、私にもダメージくるやつだからな?

 

「FALよ。トンプソンが1人でこうなってたら止めなかったけどな?今だとキレイに私も巻き添えだからやめてくれ」

「え?今更じゃない」

「はい?」

 

聞き捨てならない一言が聞こえた気がするが、ここは聞かなかったフリをしよう。知らない方がいい事もある。

 

「コホン、さて仕切り直しという訳だが、連中もう一度来ると思うか?」

「十中八九来るわよ。いくらか人形を仕留めたと思っているだろうし」

「だが、向こうは人間だ。正直、M2に好きにやらせたのはアレを見て撤退すると思ったからなんだが」

 

人形でもこうなる(↓腰にトンプソン)場合あるのに普通の人間が耐えられるか?

よしんば耐えたとしてもこの被害だ。普通は撤退する。

 

「……ねぇ、指揮官。連中の遺体を回収してもいいかしら?」

「ん?なにか思いついたのかFAL」

「ありえないと思うのだけどね。医療用の自律人形も貸して頂戴」

「わかった。好きに使うといい。……ちょっと内線まで動けないから言っておいてくれ」

「はいはい、分かったわよ。……よっぽどきいたのね、まだダメなのかしら」

 

私とFALの二人分の視線を浴びながらも腰から離れないトンプソン。

その時、作戦室の扉が開く。

しまった!トンプソンの(私も巻き添えで)痴態が広まる!

扉を開けたのは……、

 

「ボス?メインから呼び出されたんだが……。ああ、だいたいわかった。すまないボス、メインの代わりに私が業務をしよう」

「ダミーが副官か……。なんて言うか時々お前達はダミーとメインが逆転してるよな」

 

トンプソンのダミーだった。つか男前だなぁ、おい。

ダミーはふざける時はヒドイが、マジな時はマジだから助かる。

 

「じゃあ、ダミー?指揮官のことはよろしくね」

「ああ、任せてもらおうFAL。で、ボスこれからどうする?」

「んー。アイツらが今度はどう出るかが分からないからなぁ」

 

そもそも、ウチが篭城戦に異常に強いことは分かってるハズなんだ。

なのに仕掛けてきたのがホントにわからん。

 

「つまり、篭城戦の切り札を連中が持っているかもしれないんだろ」

「切り札ってなんだ?外壁の厚さも、防衛部隊の強さも半端じゃないぞ」

「マンティコアとか」

「MGで蜂の巣だな」

 

ウチのMGは全員徹甲弾が標準だ。ついでにRF隊もな。

マンティコアがさすがに10体くらいまとめて来たら無理だが、2~3体くらいなら処理は可能だ。

 

「じゃあ、アレだ。戦車」

「だったらまずいな。……それか?」

「いやいや、持ってないだろう。……マジか?」

「ここを突破するならそれくらい欲しいだろ。そう考えたらその線で策を考えないとな」

「戦術人形でも戦車はさすがに相手出来ないぞ?」

 

知っている。だから彼女を呼ぼう。

 

「「「お呼びでしょうかご主人様」」」

 

しばらくして作戦室に現れたのは本日判明した爆弾魔ダミー2体を引き連れたG36だった。

 

「ああ、すまないな疲れているだろうに」

「「「ご心配には及びませんご主人様。ですが、お気遣いありがとうございます」」」

「……え?メイドってハモる必要あるの?」

 

ダミーが呟くが私もそう思った。なんで一語一句間違いなくハモれるの?

 

「「「メイドの嗜みでございます」」」

「「マジか」」

 

今度は私とダミーがハモった。

本体?いつの間にか抱きついたまま寝てるよ。なんだこのかわい……ゲフンゲフン、子供かなコイツは。

 

「と、冗談はさて置きまして私たちをお呼びになられたのは?」

「冗談に聞こえないのは気のせいか?」

「まーまー。呼んだ理由はな。()()()()()()()()()()()()()

「それでしたらコレをどうぞ」

 

間髪入れずにそう言いながら、ダミーの片方が()()()()()()から取り出したのはC4爆弾である。

 

「言ってスグに爆薬が出てくるのは怖い」

「つかそのスカートは内側に四次元ポケットでもついてるの?」

「メイドの嗜みでございます」

「「そんなメイドは恐い」」

 

私は決めた。G36は絶対怒らせないことを。

 

「ボス、爆薬はコレでいいとしてだ。どうやって吹っ飛ばすんだ?」

「普通なら設置してキルゾーンを作るよなー」

「抱えて特攻」

「その自爆特攻への拘りはいったいどうしたの!?」

 

ドタバタと話を詰めていると監視塔から連絡が入る。

 

「指揮官、敵に動きあり!」

「来たか!」

 

言われてカメラを切り替えると、近づいてくる敵が映っていた。

今度は自律人形を大量に並べて。

え?そこまでしてココを落としたいの?

 

「戦車じゃなくてコイツらか?中に爆薬詰め込んでるとか」

「いや、まだ後ろになにかいるな」

「休憩していた娘達を招集しますね」

「ああ、頼む」

 

G36に部隊の招集を頼むとモニターを見る。

そして驚いた。

 

「味方がいるな……」

「え?輸送部隊の帰還はまた先じゃ」

「いや、だから味方がいるんだ」

「え?」

 

いったいどこの誰がこんな場所まで来ているんだ?

あと、トンプソンさん?そろそろ起きようか。

 

「眠り姫は王子様のキスで起こすもんだぜボス」

「あのな」

 

このまま起きる気配が無かったら考えるよ。




コラボ(というか勝手に使用?)準備を進めつつも、
「いや、この基地からだと誰がくるのよ!?」
って悩んだのでトンプソンで遊びました。
後悔はしていない。
もうウチのトンプソンはこの路線。
ポンコツカワイイ系です。

あと、ウチのメイドは爆弾魔。設置型と特攻型です。
コラボ準備難しくないですかね?

とりあえず、自律人形を的撃ちできる子達は誰だー!?



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到着

ここはG&Kの補給基地。

襲撃されているこの基地に通りがかった味方とはー?

……少し嫌な予感が。
擲弾と手榴弾と鉛玉が乱舞しそうな……

※今回は他の作者様より許可を頂きまして、ゲストに来て頂いております。


「ボス、本当に味方なのか?」

「間違いない。IFFが味方の反応を検知してる」

 

ようやく起きたお姫さま(トンプソン)がダミーと入れ替わる形で質問してくる。

え、起こし方?ご想像にお任せします。

ヒントはトンプソンが顔を赤くしていることかな?

あと、ダミーは殴られてた。

 

作戦室に設置されているモニターにIFF(敵味方識別装置)で味方と判断された光点がいくつか映り点滅している。

どこの基地所属かは分からないし、なぜここに居るかも分からない。

救援信号が届いたのか?それにしては早いというか速いというか。

 

いくつかの光点のうちS09地区の方面からかなりの速度で接近して来ているものは、これは速度的にヘリだろうか?

 

それとこっちは……

 

「D08地区だったか?あの出自が少し変わっている戦術人形がいる基地がある地区だろ」

「ああ。416のダミーの特異体だっけ?」

「そう呼ぶなよ?たしかHK417を持った娘のハズだ」

「なら417だな。にしても早くないか?救援要請、出したことは出したけど距離があるよな……」

 

そこだ。パトロールか何かの時に要請を受信したのだろうか?

 

だが…

 

「正直、来てもらえるのは助かる。自律人形の数が多すぎてウチだけだと飽和する所だったし」

「MG隊総動員でどうにかなるかなって所だったしな」

 

これだけの戦力をどうやって用意したのかは分からないが、今回の敵は大真面目にこの基地を落とすつもりのようだ。

自律人形で戦闘特化型ならかなりの速度で走ってくるし、腕の1本が吹き飛ぼうと気にせず突っ込んでくる。

 

恐れを知らないヤツらは止まらないから恐い。

 

「速度と移動方角を見た限り、光点は全てここを目指してる」

「味方の到着よりも敵さんの方が早いかな?」

「正直わからん。間に合うかは運次第だな」

『指揮官!接近中の砂煙を見つけました。ご指示を』

「わかった。今から作戦行動中の全部隊にデータを送信する。方角が合っているならそれは味方だ、撃つなよ」

『了解しました』

 

監視塔からの発見報告に、情報共有を忘れていた事に気づく。

急いでコンソールを操作してデータを送信する。

すぐに受信した監視塔からまた通信が入る。

 

『確認しました。D08地区の方角です』

「わかった。撃つなよ、貴重なお味方だ」

『分かってますよ、警戒に戻ります』

 

さてさて、ゲストが着くのが早いか招かれざる客が動くのが早いか。

チキンレースの始まりだな。

 

「ボス、ヘリが来るならヘリパッドを空けておかないと」

「そう言えばそうだった。普段は陸路だから忘れてたな。……ECMをスタンバイさせろ。ヘリを墜とさせるな。とっておきも使って構わない」

「了解だ。……ダミー、SG隊(ショットガン)から2~3体引っ張ってフレアランチャーを用意させてくれ」

『こちらダミー了解した。SG隊へ向かう』

 

ヘリは対空誘導兵器に非常に脆い。

そうそう持っているとは思わないが、この連中なら携帯式のSAM(サム)(短射程対空ミサイル)を持っているかもしれない。

 

フレアランチャーは文字通り、フレアと呼ばれるミサイルの誘導装置に誤作動をさせる物をぶっぱなすロケットランチャーだ。

誰が開発したのかは知らないが類似品を見た事はない。

いつの間にか倉庫にあったため、もしもに備えて整備していたのさ。

 

「ヘリの音だな」

「敵さんも気づいたか?」

「気づかない方がおかしいだろう。ECM最大強度で起動しろ。少しでも墜とされる可能性を減らせ」

「了解だ!」

 

ウチは防衛に能力を全振りしてる基地だ。EMP発生装置何てものは無いが電波障害なら起こせるぞ。

そんなことを考えた時、監視塔から通信が入る。

 

『指揮官!敵の自律人形が走り出して……転倒しました』

「遠隔操作式なのか?電波妨害で止まるとか……」

『あ、引きずって下がってますね。耐性があるのも居るようです』

「わかった。監視を続行しろ」

『了解』

 

自律人形なのに遠隔操作とはこれ如何にと思うかもしれない。

だが、完全自律型の人形は金がかかる。いかに戦術人形よりも安いとはいえ、今回のように多くの人形を用いようとした場合は負担が多すぎる。

 

さて、ここで1つ疑問を上げておこう。

「何故、最初からこの人形達を使わなかったのか」

「何故、人間の部隊を使いあまつさえ使い捨て同然にしたのか」

その解答が今手元に届いた。FALからである。

 

『薬物の大量摂取を確認』

『思考能力を奪い、命令に従うようにしている』

『筋肉量等から兵士又はそれに準ずる職業では無い』

『以上から何らかの理由で集めた民間人に薬物を使い、弾除け等の目的で促成したものと思われる』

 

「チッ、胸糞悪いぞコレは!」

「FALが遺体を回収したのはコレを調べるためだった訳だ」

「その通りよ。まったく撤退しないなんておかしいと思ったの」

 

で、次の弾除けいや、本命の投入か……。

このやり口はなんだ?本当に傭兵か?

 

「ボス、コレは傭兵の手口か?」

「奇遇だな、私もそう思っていた所だ」

「コレ、カルト教団かもしれないッス」

「!?……FMG-9。戻ってたのか」

 

突然の声に驚き振り向くとウチの諜報部隊の1人、FMG-9が作戦室のドアをくぐる所だった。

 

「今戻りましたボス。街へ潜入してきたんですが、街の一角が正体不明のカルト教団に占拠されてます。『ミスター』は退避した模様。連絡は取れませんが彼らのことですので無事だと思うッス」

「そいつらか。まさか街の人達を……」

「あ、いえ、それは無さそうッスね。ほとんど人影がありませんでした。あの街の人達は危機察知能力が高いので『ミスター』と一緒に逃げていると思われるッス」

「だといいんだが……」

「おーいボス!お客様のご到着だぞー」

「ああ、いま行くよ!」

 

FMG-9と話していたらいつの間にかヘリが着いていたらしい。

ひと足先に作戦室を出たトンプソンを追って私も外へ向かう。

 

「何事も無くヘリが着いて何よりだ」

「違いない。それにしてもカルト教団だあ?マジかよ」

「いったいどんな教義を持っているのかね?」

「わからないな。ロクでもないことだろうよ」

 

トンプソンの言うロクでもないというのは本当にそう思う。

第三次世界大戦以降、コーラップスに蝶事件といった世界が崩壊へまっしぐらとしか思えないこの世の中、カルト教団はいくつも現れては消されていく。コレもその1つなのだろうか?

 

ん?着陸したヘリのサイドドアが開いた。

そして、中から現れたのは『UMP45』だった。

 

「どーも初めまして、UMP45よ。所属はS09地区にある基地の第二部隊。そうね、あなたが資材を送った基地と言えばわかるかしら?」

「ああ、あの人形と結婚した女性指揮官の所か。お返しの酒とお菓子は有難く頂戴したよ。かなり急いで来てくれたようだね」

「そーそー。救援要請が入ったって指揮官が大慌てでね。それで基地内待機してた私たちにお鉢が回ってきたの」

 

それはそれは感謝の言葉しかないな。

最前線(フロントライン)を形成する精鋭基地じゃないか。

この娘達もウチの連中とは比べられないほど精鋭の雰囲気を持っている。

 

「助かったよ。状況の説明をしたい、作戦室まで案内しよう」

「ええ、お願いね」

 

そう答えたUMP45は後ろの自分の仲間達にヘリを降りるよう言うと、自分のダミーを率いてヘリパッドを歩いていく。

次いでヘリから降りてきたのは『FNC』『M14』『ウェルロッドMarkⅡ』『StG44』だ。

SMG1、AR2、HG1、RF1と汎用的な編成だな。状況の報告はそれほど詳しい物を送らなかったからどんな状況でも対応出来るように派遣してくれたらしい。

 

そうして彼女たちを案内しようと、私もヘリパッドを歩き始めた時、突然車輌用の門が開いたのである。

 

コレはまさか……。そう思っていると、バギーが数台が入ってきた。

あれ?予想以上に速くない?

バギーは私の近くまで走ってくると停止し、中から戦術人形が降りてきた。

 

「やっと着いたー!あ、初めまして!救援要請を受けて、D08地区前線基地から派遣されましたHK417です!」

「あー、やっとついたー。本体ー休んでいいー?」

「ダメに決まってるでしょうが!」

 

おっと、ウチに負けず劣らずの個性的なダミーだことで。

というか、ちょっと見た目の破壊力高すぎないか?

HK416の身長を縮めて胸部を一回り以上大きくした感じ。

え?いわゆるロリ巨乳ってやつ?

って、痛てぇ!

右脚に鋭い痛みが走る。見てみるといつの間にかそばに居たトンプソンが私の脚を蹴飛ばしていた。

 

「鼻の下伸ばしてないかボスぅ?」

「待てトンプソン、話し合おう。な?話せばわかるから!」

「問答無用!」

「いったぁ!?」

 

再度、いい勢いで蹴り飛ばされる右脚。手加減されているとはいえ、コレは痛い。

到着した救援部隊を見ていただけなのに。無実じゃないかコレ?

 

「何してるのかしら?ウチの妹に手を出すって言うのなら……」

「待て待て!そんなつもりは全く無いから!」

「そう。それは良かったわ。417と同じ基地より派遣されたHK416よ」

「同じく416と417と同じ基地所属のG28でーす。私たち仲良し三姉妹なんですよー」

 

なかなか、濃い連中じゃないか?私では扱いきれない自信がある。

ダミーの相手だけならまだしも、メインフレームの濃さには対応しきれない。彼女たちの基地の指揮官は尊敬に値する。

 

「さぁ、敵はどこかしら?榴弾をぶち込んで消し飛ばしてあげるから」

「殺す……殺す……」

「もうやだぁ。……ボンバーニィしたいぃ……」

 

おおう、こっちの娘達の方が濃いな。

FALにスペクトラM4、ステンMk-Ⅱ。詳しく聞かなくてもわかる。

この娘達の気配はヤバい。殺意しかないぞコレ。

ちょ、だから、男の視線を考えてくれ!

スペクトラの胸の谷間にマガジンが刺さっているんだけど!?

また蹴られる!?

 

「よ、ようこそ。救援感謝するよ。それにしても早いな。陸路だったんだろう?」

「珍しく基地から離れた所を巡回していたら、お兄ちゃ……指揮官から通信が入って」

「補給基地から救援要請だって、私たちに急いで向かうようにって」

「で、急いで来た結果がコレよ。ちなみに今敵は?」

「そういう事か。今は相手が小休止中。こっちはこっちで部隊の再編成をしていた所さ」

 

417、G28、416と立て続け話されるといい感じに混乱する。特に417と416は背丈や髪型が違うがそっくりなため余計にだ。

 

「とにかく外で話してないで中で状況確認しよう。先客も居ることだしな」

 

しまったすっかり忘れてしまっていた。

いや、このキャラの濃さは衝撃的だし仕方ないと思う。

 

あと、

 

「トンプソン、言っておくが私は君の方がいいからな?」

「なんでいきなりそういう事を言うんだよボスぅ!?」

 

いや、なんか調子戻そうと思って。




えー、こんな若輩者がお使いしていいのか分からないのですが

カカオの錬金術師様作
「元はぐれ・現D08基地のHK417ちゃん」

焔薙様作
「それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!」
より救援部隊を派遣して頂きました(作者様より許可を頂いております

ずっとこういうことしたかったけど、キャラの把握がめちゃ難しいよコレ!皆さんよく出来ますね!?

焔薙さんとこなんかウェルロッドのイメージはあるんだけど、他がまだ全然だし。カカオさんとこも口調がおかしい気がする(ダミーは合ってると思うけど

もう私の実力不足でして、両作品のファンの皆様には申し訳ない!

あと、カルト教団とか出てきたのは多分ファーク○イの影響と思われ。アレよりは言うこと聞くよコイツら。本当はもっと違ったのに!

あ、『ミスター』はちょっとした過去編を思いついた時に出来たキャラです。近いうちに出す予定。


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反撃準備

ここはG&Kの補給基地

謎の敵、その正体はカルト教団か?

S09地区とD08地区からの救援部隊が合流。
戦力の追加と敵のおよその位置がわかった指揮官は決断するー

※コラボ継続中。


これから作戦室にて最終のブリーフィングを行う。

 

ちなみに、D08地区からの部隊を作戦室に案内したら先に入っていたS09の第二部隊長UMP45から

 

「ちょっとー、私たちのこと忘れないでよー」

 

と遅れたことへの文句が飛んできた。

いやー、すみませんな。あのキャラの濃さは受け入れるのにちょっと時間がね?

 

D08から来た娘達に座るよう促した後、作戦室の照明を少し暗めに設定する。壁面スクリーンを起動して皆に声を掛ける

 

「待たせてすまない。……では、ブリーフィングを始めよう。我が基地からは副官のトンプソンとAR隊のFALとG36が同席する」

「あー、紹介にあったトンプソンだ。ここの副官を務めている。さて、現在の状況を説明しよう」

 

そう言うとトンプソンが端末を操作してスクリーンに現在の状況を映し説明を始める。

 

「現在、当基地は武装勢力に半包囲されつつある。第一波は退けたがすでに第二波が展開中。戦力の中心は遠隔操作式の自律人形と完全自律型の自律人形だ」

 

基地に対して半円状に赤い光点が展開している。一部に穴が空いているがコレはその辺りが崖なので展開できないだけだ。

と、今度は私が説明する番だな。

 

「さて、今回の敵勢力に関して掴んだ情報があるので少しだけ説明しよう。この敵勢力はカルト教団の一部である可能性が高い。そのカルト教団は当基地と関係のある街の一角を占拠していると報告があった」

 

説明しながら端末を操作して、スクリーンの一部にこの基地と街が描かれた地図を表示する。さらにその街の概略図も同時に映しだす。

 

「この街の方面から敵戦力が移動してきたと思われる。半包囲の方向も街の方角から展開しているためほぼ間違いない。この自律人形の部隊を撃破及び突破し、街のカルト教団を制圧することが今回の作戦目標となる」

 

今度はトンプソンが端末を操作して、スクリーンに映されている情報を整理し、スペースを確保すると今度は青い光点と赤い光点が映された地図を表示した。敵味方の展開図だ。

説明はそのまま私が続ける。

 

「現在ECMを用いた電波妨害を行い、水際で食い止めている形だ。君たちが来なかった時は、これで輸送部隊が帰還するまでの時間を稼ぐ気だったのだが状況が変わった。このカルトは早めに制圧した方が良いと判断し攻勢に出る」

 

スクリーンの青い光点から矢印が伸び、その矢印は赤い光点にバツ印を付けつつ最終的に街で止まる。

 

「作戦と言えるようなものではないが、とにかく迅速に街へ向かいカルトを制圧する。そこで、街へ向かいカルトを制圧する機動部隊と囮も兼ねた基地の直接防衛部隊の二つを編成し対処しようと思う」

 

とりあえず作戦もどきの説明をし、続けて部隊割りだ。

 

「機動部隊は救援部隊を中心にして当基地のAR隊の一部とSMG隊及びSG隊さらに少数のHGで構成する。防衛部隊は当基地のMG隊及びRF隊と残りのAR及びHG隊だ。ここまでで質問は?」

「しつもーん、街への移動手段は?まさかヘリじゃないでしょ?」

 

UMP45から質問が上がる。それが使えるなら楽なのだが……。

 

「当基地は主に陸路で行動するため所有しているヘリがない。かといって君が乗ってきたヘリを借りる訳にもいくまい。そこで、この基地にある装甲車を使用する」

「装甲車といっても装甲が厚いだけで武装が付いてるわけじゃない。まぁ、M2は何台かが載せてるけどな」

「とはいえ、最初から装甲車で向かうのは連中が逃げ出そうとするかもしれずあまり得策ではないと思う」

 

自律人形を通してこちらの動きが見れるからな。装甲車が突破するのを見たらそりゃあ逃げる算段を始めるだろう。

 

「まず機動部隊は基地から打って出て、包囲している敵に対してちょっかいをかけて貰う。敵が釣れたなら1度基地へ後退して欲しい」

「その時に基地のECMの電波強度を落とし、遠隔式が動ける程度だが通信が多少不安定になるように調整する」

「釣った敵は防衛部隊が相手をし、その隙に機動部隊は戦闘のどさくさに紛れ基地裏から装甲車に乗って街へ向かってもらう」

 

元を叩かなければどれだけ自律人形が来るか分からないからな。

弾薬を含めた物資は豊富とはいえ戦力の数では負けている現状で、ジリ貧になる可能性がある籠城戦を無理にする必要はない。

 

「機動部隊は街に着いたあとは一気にカルトが制圧している区間へ侵攻し制圧すること。なお、その際に連中の無力化を無理に行う必要は無い。……意味は分かるか?」

「つまり、見敵必殺(サーチアンドデストロイ)ってことですよね?」

 

私の質問に今度は417が答える。その通りだ。

こういう連中は生かしてる方が厄介になると個人的には思う。

それにやり口もえげつないため、あまり生かしておきたくないとも思ってしまうな。

 

「その通りだ。幸いここにいる全ての戦術人形諸君は人間に対してのセーフティがかかっていないしな。……それとはっきり言おう、連中は殲滅した方が良いと私は考える。可能なら数人程度拘束し、使用薬物の入手ルートを割り出したいが贅沢は言えない。それに拘束にこだわってコチラに被害が出る方がよろしくない」

 

このカルトがどこから来たのか?何が目的か?など聞きたいことはあるが逃がしてしまう方が問題だ。

 

「さて、ここまでで何か質問は?」

「はい。弾薬の消費がかなり多くなると思います。手持ち分では恐らく足りないかと」

 

ウェルロッドから質問が飛ぶ。それはそうだろう。ある意味大規模作戦に近い。フェーズ分けをするなら3フェーズくらいあるし。

 

「心配はいらない。この基地がどういう基地か忘れたかい?ここは補給基地だ。ここの防衛に関する作戦時、貯蔵物資の使用に関して制限が無くなる。一度戻って来た時に弾薬その他を補充して再度出発してくれ」

「了解です」

「他にあるか?」

「装甲車の運転は誰が?」

「専門の自律人形がする。他には?」

「ねえ、疑問に思ったのだけどいいかしら」

 

416からの質問か。416は総じて完璧主義者と聞く、なにか手厳しい質問だろうか。

 

「この基地は第一部隊、第二部隊といった部隊割りをしないの?さっきから銃種でしか部隊割りが無い気がするのだけど」

「あー、そのことか。端的に言えば部隊割りは無い。というのも、ここの所属人形の種類の影響なんだ。トンプソン、AR隊の編成表を出せるか?」

「今、出すよ。……ほいよ」

 

スクリーンに映し出された編成表を見て、私と基地所属の人形を除いたこの場に居た全ての娘達が驚いていた。

 

「え!?AK-47が3人?ダミーも入れてですよね?」

「いや除いてだ。他にも重複している娘達がいるが全てメインフレームだ」

「StG44やG3、ガリルにL85A1、SIG-510……。他にも?」

「F2000は5人って……」

「同じ部隊に同じ戦術人形を同時配置ってできるんですか?」

「普通はできないだろう。私も知っている限りこの基地だけだ。もしかすると他にもやっているかも知れないが」

 

この基地特有の編成だと思う。

私が戦術に疎いためまとめているのもあるが、基本業務の関係で戦術人形を大量に必要とした影響でもある。

メインフレーム同士が指示を重複してしまったり、ダミーに影響が出たりするので大きなくくりである銃種で編成したのだ。

なら、普通に編成しろと思うだろう。普段の輸送護衛部隊で動かしている部隊はまだしも、こういう緊急対応時にはいちいち編成していられない。

さらに言えば、普通の基地では編成可能部隊数は最大10部隊であるが、この基地の役割上その10部隊では輸送護衛部隊が足りなくなってしまう。

といった事情から部隊編成の基本ルールが完全に取っ払われているのがこの基地である。でたらめと言っても過言ではないな。

 

「という訳で編成の理由はこういう訳だ。他に質問は?」

 

見回すが無さそうだ。というか一部から『いいから敵に撃たせろ』的な視線が飛んでくる。いや、ホントにあそこの指揮官はよくこの娘達を御せるね。

 

「では、準備に入ろう。応援部隊の諸君はコチラの部隊と戦術リンクを」

 

そして、慌ただしく戦闘準備が行われていく。

 

「ボス、私はここに残るからな」

「ああ、私の護衛を頼むよ」

「任せてくれよ、ボス。何があろうともボスは守るさ」

「君も無事でいてもらわないと困るのだがな」

「そ、それは……。ま、頑張るさ」

 

「機動部隊は準備いいわ。一応の隊長は(FAL)でいいのよね?」

「ああ、そうだ。応援部隊はS09の方をシエラ、D08の方をデルタと呼ぶ。……デルタはどちらかというとマッドドッグの方があってる気がするけど」

「「「私たちをアイツらと一緒にしないで」」」

「アッハイ」

 

HK3姉妹から怒られてしまったが、残りの3人からは文句が出ない。……自覚あるのか?




レッツ言い訳ターイム!

なっかなか戦闘に入れない……。
1話あたり3~4000文字で納めたいので戦闘は次回へ持ち越しです。
つかアレなんですよ、次から次へと直接影響がない設定が湧く湧く。
私の悪癖です、すいません。
部隊編成のくだりとか特に。でも入れたかったのです。
ここの連中はStG44が9人(ダミー含む)並ぶとか日常茶飯事です。F2000だけで15人います。ちなみに、ほとんどの人形のダミーは2体です。

さーて、ようやく次で皆さんお待ちかねの大暴れですよ。
もう狂犬3人組がどこまで暴走することやら……。
え?HK3姉妹はまともにいくか?……ヘッショの鬼が2人に完璧に敵を屠る1人ですよ?

これだとユノちゃんとこの第二部隊が霞んでしまうのでいい所は持って行ってもらいましょー

ではでは。


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反撃開始

ここはG&Kの補給基地

ようやく始まる反撃の時。

敵を屠り、前へ前へ。
迎撃?やれるものならやってみろ。

前に立つならただ葬るのみ。

※コラボ継続中。そろそろフィーバータイム


さて、では反撃の狼煙を上げるとしよう。

作戦室のモニターを見ながら通信を送る。

 

「機動部隊前進だ。お行儀よく並んだ連中を吹き飛ばせ」

「了解。デルタに挨拶は任せるわ」

「こちらデルタ、416が今後通信を受けます。さあ、皆お待ちかねのパーティータイムよ!」

「ぶるぁぁぁぁぁああ!」

 

おい、今一瞬ワカモトの声が聞こえたぞ?

ってワカモトってなんだ、ワカモトって。

 

「どうしたボス。急に頭抱えて」

「いや、なんかよくわからないがワカモトって言葉が頭から離れないんだ」

「なんだそりゃ。あとで医務室へ一緒に行こう」

 

よくわからないまま私の医務室行きが決まった所で炸裂音。

モニターを見れば、デルタ……D08所属のFALが擲弾を3連射して敵陣前衛を吹き飛ばしていた。

普通ならこれでだいぶ数が減るのに、まったく減った気がしない敵の数は異常ではなかろうか。

 

「挨拶も済んだし機動部隊吶喊!奴らを食い散らかすわよ!」

「殺す殺スコロスゥ!」

「フフフ」

 

正直言って、目が笑っていない笑顔でグレネードを投げ綺麗にトップダウンで爆破させるのは恐い。

いっそトリガーハッピーの方がわかり易い分まだマシだと思う。

そして、それを見ても動じないウチのFALもなかなか肝が座っているな。

 

「デルタ……D08は大丈夫なのか?」

「ボス、それはアイツらのことか?それとも基地の方か?」

「どちらもだ」

 

モニター内の敵が3体連続で倒れる。一撃、ヘッドショットか?

 

「こちら417、2体ダウン」

「G28、1体ヘッショだよ!」

 

あのマークスマン二人組も恐ろしい精度と速さでヘッドショットを食らわせていく。

417の方が冷静に冷酷にそして確実に敵を撃ち倒していく。

G28も負けてはいないがまだ差を感じるな。と言っても、この基地のRF勢ではどちらが相手でも太刀打ちできないだろう。

 

「こちら416。敵の陣形に穴が開いたわ。もう少し広げてから後退する」

 

静かに、けれど迅速に敵を減らし目標を達成する。さすがは優秀な416だ。

ただ、なんというかこう「妹に格好良い所を見せたい姉」感が漂っている気がするのは私の気のせいだろうか。なんかいいお姉ちゃんをしている感じがするな。

 

「こちらシエラ。……お隣が時々怖いんだけど」

「……すまない、少しの間耐えてくれ」

 

シエラ……S09の45から通信というか苦情というか悲鳴というかなんとも言い難い通信が入った。

とはいえ、とりあえず耐えてもらうしかない。街に着いたらシエラには単独で動いてもらうつもりだからそこまで我慢してくれ。

 

「FAL、敵さんは釣れたか?」

「いい感じに釣れたわ。後退中よ。お出迎えの準備は出来ているかしら?」

「任せておけ、君たちには新しいドレスにエスコート(弾薬・装備と装甲車)を、お客様にはフルコース(弾丸の雨)を準備してある」

「いいわね。それじゃ、後でね」

 

今のところはいい感じだ。

攻撃を受けた時と違い、経験豊富な2部隊が入ったことでこちらの勢いが増した上に敵の戦力低下が早くなったため、こちらの被害が皆無なまま最初のフェーズは終わりそうだ。

 

「ボス、防衛部隊に連絡するぞ」

「ああ、頼む」

「ようM2、ゲストがもう少しで着くぞ。お出迎えの準備はバッチリか?」

「ええ、トンプソン。任せて頂戴。最高のファンファーレで出迎えてあげるよ」

「いいねえ。ま、私ならそのお出迎えはノーセンキューだけどな」

 

違いない。あらゆる弾丸が連中を出迎える準備をしている。

ファンファーレが止んだ時、その場に残っているのはなんだろうな。

 

と、機動部隊が基地の門へ到着したらしい。

敵さんはというと、電波妨害が少し落ち着いたことに気づいたようで基地へ向かって走ってくる。

いい速度だな。人形の足はやはり速い。

だが、速すぎるのも問題だ。

 

「それじゃあ出迎えのオーケストラ、イッツショータイム!」

 

M2の声が作戦室に響いた直後、圧倒的な銃声と共に殺意の雨がゲストを包む。

一度銃声が止み、あまりにも強い勢いで巻き起こった土煙が治まると、そこには地面に倒れ伏し動かぬ残骸となった自立人形が並んでいた。

この火力に耐えるつもりなら戦車を持ってくるんだな。

 

「よし、出鼻はくじいた。FAL、出れるか?」

「弾薬の補給はもう終わるわ。車を回して頂戴な」

「装甲車隊、機動部隊の近くへ移動」

「了解」

 

装甲車の運転を担当する自律人形から返事が返ってくる。

さあ、これでフェーズ2だ。

 

「こちら機動部隊、準備完了。搭乗も完了よ。じゃあ、言ってくるわね」

「ああ、頼んだ」

 

機動部隊を乗せた装甲車は基地の別の門から出発していった。

彼女たちが出発した以上こちらからできることはもう無い。

ドローンもこの基地には配備されていない以上、支援は通信のみ。

 

「あとは彼女たちに任せて、こちらは防御に徹しよう」

「奴らRPGとか持ってないだろうな……」

「……言うな。言えば出てくるぞ」

「マジか。それは勘弁願いたい」

「ご主人様、戦車が出てきたと……」

「「マジで居たのか」」

 

G36のダミーが報告してきた。

よし、月まで吹っ飛ばすぞー。

 

「C4を何個くくり付けて突っ込んだら戦車は吹き飛ぶでしょうか」

「だから、自爆特攻はヤメて!?」

 


 

街へ入り、FMG-9から伝えられていた地区へ移動した機動部隊。

そしてとある路地へシエラを案内するFALの姿がそこにはあった。

 

「さあ、着いたわよ。ここからは別行動ね。そっちが本命だから気取られないように気を付けて」

「任せておいてよ。これでも隠密行動は得意なんだから」

「お任せください。私は()()慣れていますので」

「そっちは任せるわね。こっちはちょっと派手に動いて囮になるわ。じゃあ、頑張って」

 

こう言うとFALは待たせていた部隊の元へ走る。

そこには、ある程度落ち着いた様子のデルタのメンバーと補給基地から連れてきたSG・HG合同部隊とSMG隊が待機していた。

あとはFALのダミーが3人とF2000がメイン2人にダミーを合わせて6人。

それ以外のAR隊は装甲車の護衛に残してきている。

 

「お待たせ。さあ始めましょう。でもここは市街地、あまり派手な破壊行動はやめてね。……敵がどうにもならない時はやるけど」

 

FALが合図をすると、SG隊が盾を構えながら突撃していくその後ろを警戒しながら移動するHG数人とSMG隊。さらにその後方をデルタが続く。

 

「ねぇ、お姉ちゃん。あの建物怪しくない?」

「417もそう思った?ねえ、基地の方のFAL?ちょっと私達離れてもいいかしら」

「敵でも見つけたの?あなた達だけで大丈夫?」

「私達をを誰だと思っているの。私達は完璧よ」

「そう、分かったわ。でも、無理はしないでね。あなた達は助けに来てくれた娘達。無事にあなた達をあなた達の基地へ送り返すまでが私の使命よ」

「ええ、危ない時はすぐに連絡するわ。……でも、あそこの連中を見たら敵の方が可哀想になると思うけどね」

「同じ(FAL)なのにどうしてこんなに変わるのかしらね」

 

デルタは移動中に見つけた怪しい気配のする建物へ移動する。

扉の前に到着すると416は後ろのスペクトラに声を掛ける。

 

「スペクトラ、突入タイm「突入ー!」……人選ミスだったわ」

「あのトリガーハッピーはしょうがないよお姉ちゃん」

「あ、FALも行ったよ」

「うつけが、そこにいるかァ!」

「だからどうやったら若本ボイスがでるのさ」

 

417の呟きは誰に聞かれることもなく消えていった。

 


 

突如街に響き渡る銃声。だがおかしい、まったく市民の声が聞こえない。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()

シエラの45とウェルロッドは疑問に思いつつも目標へと静かに、だが素早く近づいていった。

巡回しているカルトもいくらか居たが的確に排除して進んでいく。

徐々に敵の数が増え始める。陽動がうまくいっているのだろう。

さすがにこの数は相手にできないとやり過ごすと、増えた敵はすぐに別の方向へ走っていった。

その後は、特に敵を見ることなくも目標の教会のすぐそばまで来れた。

物陰にしゃがみ込みながらウェルロッドが45に声を掛ける。

 

「45、目標の目の前です。戦闘準備を」

「ええ、皆わかってるわね?このバカな連中のバカ騒ぎは頭を潰してやれば治まるわ。今、その頭に一番近いのは私達よ。逃げようとしたら構わないわ、容赦なく殺しなさい」

「「「「了解」」」」

「M14バックアップをお願い。StG44はM14のサポートと護衛。私とFNCは敵の制圧を。ウェルロッドは頭を逃がさないよう頼んだわよ」

「任せてください。ではまた後ほど」

 

そう言うやいなや、音もなく駆けだすウェルロッドMKⅡ。

それを見届けた45は自らと同じ名を持つ相棒を確認する。

目標はカルト教団の教祖らしき人物、位置はこの教会の中。手持ちの小型ドローンを使って中の確認は済んでいる。

補給基地のFMG-9からの情報通りの見た目をしていた。

カルトの教祖というよりはどこかのビジネスマンでもしていそうだ。最初に聞いたときはふざけているのかと思った。

だがドローンのカメラを使って見た彼の眼は、明らかに人の命をどうとも思っていない眼をしていた。

 

「さ、このバカ騒ぎを終わらせに行くわよ!」

 

その声を合図にFNCが物陰から飛び出す。それに続いて45も飛び出し教会の扉に向かって走る。

M14は顔を出すやいなや、自らの半身(M14)を構え発砲。扉の取っ手を正確に撃ち抜いた。

ロックがなくなった扉をFNCが蹴破り、中に向かって掃射する。中で銃を構えようとしていた教祖の護衛はこの時点で半分以上が倒れようとしていた。

FNCの横を45が走り抜けスライディングで協会の中に入ると、ドローンで確認し予め位置を把握していた伏兵を斉射して黙らせる。

その45を狙おうと反対側から出てきた敵をFNCはすぐに捉え悲鳴を上げる暇すら与えず地に伏せさせる。

この間数秒である。最前線にて、鉄血を相手に戦ってきた精鋭の名に恥じぬ動きで彼女たちは協会を制圧した。

 

「こいつが教祖ね。FNCの射撃に当たるなんて不運ね」

「外したつもりだったけど、ごめんなさい」

「謝らなくていいわよ。目標の確保よりも排除が優先だったしね」

 

うつ伏せで血だまりに沈んでいた教祖を見下ろしながら45とFNCは話していた。

そして45が目標の確認のため教祖の身体を仰向けにする。

 

「……!?待ってこいつ、教祖じゃない!あの一瞬で入れ替わったっていうの?」

「ええ!?いやいやあのタイミングじゃさすがに移動できないよ!見た目も一緒だよ?」

「45、どうしたんですか?」

「仕留めたのでしょう?」

 

M14とStG44がなかなか出てこない2人を心配して教会へ入ってきた。

全員で確認したハズなのだ、教祖の姿を。

本当の教祖にはホクロが無いことはFMG-9の写真でわかっていた。ドローンで確認した時にもギリギリまで接近して顔をよく確認した。整形などで変えているかもしれなかったからだ。

だがここに倒れている教祖は左目の下に非常に分かりづらいが()()()()()()。つまり……、

 

(ウェルロッドは追えているかしら)

 


 

「チッ、予想よりも来るのが早いじゃねえか。あの基地落とせりゃこれから楽だったのによ。ったくめんどくせえ。カルト(捨て駒)作るのだって楽じゃねぇってのに」

 

その男は走っていた。街にあの補給基地の部隊が突入して来たことに気づいた彼は、45達の襲撃の数秒前に教会の裏から出ていたのである。

()()()()()()()姿()()()()()()を囮にした直後だった。

彼は自分の姿に似せることに気を取られ過ぎ、分かりにくいとはいえ信者の左目の下にあるホクロに気づかなかったのだが。

 

「まぁ、いいさ。オレには気づけなかったんだろうよ。あんだけそっくりの影武者作ったんだから当然だけどな!隠れてほとぼり冷めたら、あの薬を使ってまたすぐに……」

「何をすると言うのですか?」

「!?」

 

ありえるハズがない。そんなことを頭に浮かべながら元教祖は、気づけば地面に倒れ込んでいた。

 

「もしもに備えて、裏へ回っていて正解でした」

 

元教祖は倒れたまま視線を上げて、自分の脚を撃った女を見る。

それはまさしくウェルロッドMk-2だった。

 

「私は以前、貴方のような手合いの相手をした事がありまして。自分の影武者を仕立て上げて逃げるという可能性を潰そうと思っていたのです。そうしたら案の定だったので先回りさせて頂きました」

「ざけんなよっ!テメェら何もんだ!あの基地にはお前らみたいな凄腕の話は無かったハズだ!」

「聞かれて答えるとお思いで?さて、あなたには同行願いましょう。あの基地の指揮官があなたのバックを知りたがっておりますので」

「クッソ!」

 

元教祖を確保した機動部隊が、遠隔操作を行っていた信者達が立てこもる建物を制圧した事によって、ようやくこの戦いに終止符が打たれたのである。

 

 




レッツ言い訳ターイム!(午前に引き続き

あー、5000字超えたー。いや、コレ難しいよ。
ゲストを立てたいから描写したけど、その描写が増える増える。
いや元から書き足すことが多いけどさ、今回は特に多いよ。
でも、まだ書けたね。というか書いた方が本当はよかったと思うの。
でも、ここら辺にしときます。キリがないかもしれないし。
思い切りは大事。

さて、ようやく次で一旦区切れるかなー。
この話書き始めて思った。
流れの安易な書き足しは収拾つかない(笑)
スツーカさんとこに物資の配達しなきゃいけないし、そろそろ話を畳まねば。

謝りタイム
カカオさんすいません、かなり暴走しました(主にFALが
許してー。

焔薙さん、StG44だけ不憫な扱いに……。すいません。
展開思いつききれなかった……。



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作戦完了

ここはG&Kの補給基地

ようやく終わったバカ騒ぎ。

救援部隊のお見送りに事の元凶を本部へ移送。

補給基地の非日常、これにて閉幕でござい。

※コラボ最終回です。お礼は後書きにて





「やあ、無事に帰ってきてくれて何よりだよ。特に救援に来てくれたシエラにデルタ、いやS09とD08の両部隊には非常に助けてもらった。基地代表としてお礼を……、どうした?」

「あのー、この裏返しになっている物は何ですか?」

 

D08のHK417が聞いた物とは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のことだろうか。

 

「それかい?君たちが出発してすぐに敵さんの後方から出てきたんだ。被害も覚悟したんだがどうも砲弾が無いようでね。ただの破城槌として持って来ていたらしい」

「で、それをG36のダミーが吹き飛ばしたんだよ」

「ご主人様より、戦車を月まで飛ばしたいとのご要望がありましたので飛ばしてみました」

「サラっと言ってるけど、それは不可能じゃないかしら……。重さ的に」

「まあ、飛ばしたってのは言い過ぎなんだけど、上手くひっくり返せたのは間違いないよ。こちらの被害も少なかったしね」

 

HK416からのツッコミに本当の所はと付け足しながら説明する。

防衛部隊のダミーが数体犠牲になっているが戦車1台の相手としては非常に少ないだろう。

相手の主砲が使えなかったのはこちらにとって非常に運がよかった。

 

機動部隊の方は、すんでのところで元教祖に逃げられる所だったらしいがウェルロッドのファインプレーで捕まえたそうだ。……普段からこういう相手に慣れているような手際だね。私が標的にならないことを祈ろう。

 

市街地での戦闘自体は、デルタが伏兵を次々と看破し撃破していったそうだ。ウチの部隊も、慣れない攻勢作戦だったがよくこなしてくれた。

とはいえ、間違いなく2つの援軍が来なければこの戦果にはならなかっただろう。

 

さぁ、残るは私の目の前に転がるこの元教祖様だけだ。

何故にこういうことをしていたのかは知らないが、意趣返しの1つや2つは許されるだろう。

 

「さて、元カルトの教祖様?君がどうやって薬物を手に入れ、何のために使っていたのかは私は()()()()()。それを調べるのは我が社の調査部門の仕事だからな。という訳で君は先ほど帰ってきた我が基地の部隊に護送されてグリフィン本部行きだ。明日には君の秘密をすべて話していることを祈るよ。そうじゃなきゃ……、どうなるだろうね?」

「なあ、ボス?そんなに驚かすなよ。ちょっと、指があっち向いたり、脚が変な方向に曲がったりするだけだしさ。ん、どうした?やだなぁ冗談だよ。な、ボス」

「「って、そんなに生易しいワケ無いだろう」」

 

元教祖は少々顔色が青くなっているがさすがにこれまでやってきたことの自覚からか、自分の行く末は察しているようだ。

とは言っても今後のことに関しては私はほぼノータッチになってしまうハズだ。一介の指揮官にどうにかできる程簡単な問題でも無さそうだしね。

さて、後は救援部隊のことだけだ。

彼女達及び彼女達が所属する基地には何かお礼をしなければならないな。

 

「トンプソン、お礼にお酒を渡すのはダメだろうか?」

「……普段ならいいんじゃないか、と言う所なんだが何だろう今回はダメなきがするんだ。特にD08の方」

「ふむ。そうすると順当に行くならこの基地自体の備蓄資材か……。1割程度ずつ送ればいいだろうか?」

「ウチの規模だから1割でも十分だと思うよ。他には……」

 

何かお礼をと考えても、こちらよりも戦力の質が上である両基地に対してできることは非常に限られてしまう。

普通なら相手の緊急事態の際に戦力の派遣などが選択肢に挙げられるだろうが、我々の指揮系統が独特すぎて逆に迷惑だろうし……。(同一メインフレーム複数の編入とか)

あー、そうか。()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「トンプソン、ウチのアレを使うか」

「アレってアレのことかボス?」

「その通りだ。『資材類の優先輸送及び輸送支援』だよ。これならウチの指揮系統のままで支援ができる。今後また大規模作戦が行われた時に便利だろうしね」

「S09の基地には役に立つかもしれないが、D08の方はどうするんだ?」

「あちらは変わり種の物や何か頼みたい物が出てきた時に支援すればいい。どうせ我々にできることは多くない。これくらいしか無いだろうさ」

 

という訳でそういう方向で話を固めていく。

簡単なお礼状とついでにこの娘達に気付かれないように、D08の方には街の顔役に2本貰った「響」というウイスキー1本、S09の方にはトンプソンが隠し持っていたお菓子の詰め合わせ(本部付近の有名店の物らしい)をそれぞれの指揮官に宛てて資材の中に紛れ込ませておく。

なおトンプソンから猛烈な抗議があったため、今度の休みに街で買い物に付き合う約束をしてなだめておいた。

 

「今回の件、両部隊共に助かった。感謝の言葉もない」

「ウチだけなら間違いなくもっと被害も出ただろうし、時間もかかったな」

「その通り。そこで両部隊が所属する基地へのお礼として、当基地の備蓄資材を1割ずつお送りする。もちろん、輸送はこちらで行うので何も言わずに受け取って欲しい」

「それはありがたいですけど、2割も減ったら大変なんじゃ?」

「気にしないでくれ。ここ自体は普段の作戦行動が皆無な所だ。あらゆる物資が余っているし、どうせすぐに補充される。私の権限で他基地へと輸送することも認められているしなんの問題もないよ」

 

417がこちらのことを心配してくれているようだが本当に問題ない。

どうせ余らせるなら使う所へ送る方が良いと思う。

それにしても、416のスケールダウン(一部スケールアップ)な上にツインテールで可愛さアップ。

やっぱりこの417は男に対しての特効持ちなんじゃなかろう……トンプソン?なぜ、急に私の肩に手をアイダダッ!?

肩が砕けるぅ!?

 

「なぁ、ボス?意外に懲りない人だねぇ」

「いやー、真面目そうに見えてそこら辺はやっぱり男なんだね?」

 

私の肩を今にも砕かんとするトンプソンと、生き生きとした顔でからかうUMP45。

いやいや、冤罪だろ冤罪。こんな娘いたらヤバって、ごめんトンプソン真剣に肩がね?痛いの。ちょ、離そう?いや、マジで!

 

「トンプソン、そこまでにしておきなさい。指揮官が真っ青になっているわ」

「むう。今度の買い物の時、覚えておけよボス?」

「あら、いつの間にデートの約束をしてるのかしら?」

「デ、デートじゃないぞ!?」

 

416にからかわれて慌てるトンプソン。そんな可愛らしい反応をするから遊ばれるんだぞ?

それにしても、この短時間でウチのトンプソンの扱い方を理解したなぁ。

 

「よし、ここら辺で話を畳まないといつまでも続く。特にトンプソンをからかうのは楽しくて時間忘れるしね」

「ボスゥ?ホントにそろそろ覚悟しろよ?」

「君こそカウンターで沈む覚悟をしておくといいよ」

「本当にキリがないわね」

「それじゃあ、私達は陸路なんでそろそろお暇させてもらいますねー」

「ああ、助かったよ。輸送部隊はあとから向かうから気にせず走っていってくれ」

「はーい、それではー」

 

HK417とその仲間達がバギーに乗って基地への帰路へ着く。

彼女達は特殊部隊と言っても過言ではない動きを魅せてくれた。

……少々、暴走気質の娘達もいたが私達では真似できない戦果だ。

 

「じゃ、私達も帰ろうかなー。……そういえば81式カービンはどこかしら」

「ああ、パイロットを務めてくれていた娘だね。そろそろ……」

「ああ、ボス来たぞ。ヘリは簡易整備だけしてある。と言ってもウチはあまりヘリの整備を行わないから、基地へ戻ったら点検をしておいてくれ」

 

81式カービン。45達が来た時に、ヘリを倉庫へ退避させてから自律人形含めた整備班と話をしているうちに置いて行かれた不憫な子だ。

まあ、戦闘班として送られてきた訳ではないので問題無いかな?

置いて行かれた後はカフェに案内して休憩してもらった。ヘリの操縦後でもあったし、緊急時の戦力として基地内に置いておきたかったのもある。

 

「あら、もう皆さん準備はよろしいでしょうか。それでは行きよりはゆっくりとしたフライトをお楽しみくださいな」

「そちらにも物資は後で送るよ。受け取っておいてくれ」

「はいはーい。それじゃあねー」

 

来た時と変わらないクールさで、こちらに背を向けながらヒラヒラと手を振ってヘリに乗り込んでいく45達。

ああ、言い忘れていた。

 

「ウチの内部の写真はどこかへ流さないでくれよ?ああ、撮っていたのは知っているからね?」

 

そう声を掛けると、45とウェルロッドがこちらを少し驚いた表情で見ていた。

まあ、ふと気づいただけなんだがね。まるで、指揮官(わたし)()()()()()()()()()()()とでも言わんばかりにジッと地図や通路、果ては大きめの通気口まで確認していたからなぁ。

私が彼女達の指揮官に仇なすならば、と言った所だろう。愛されているなぁ彼女は。

 

「私は()()()()()()()()()()()()。それでもあえて言うなら、鉄血の敵だ。そして、人形達の()()()()()だよ。なんて補給基地の指揮官に言えることなんてそれくらいさ」

「……わかった。それじゃ、また味方で会えたらいいね」

「まったくだね。今日はお疲れ様」

 

聞く人が聞けば不穏当で、また聞く人が聞けば甘いと言える会話の後に45達は帰っていく。

彼女達が愛してやまない彼女達の指揮官の元へ。

 

「さて、長い1日だったなぁボス。明日から大変だぞ?」

「間違いない。基地の被害報告書に消費した資材の報告書、D08とS09へ送った資材の偽装に街への支援と『ミスター』の安否確認。やることが目白押しだな」

「ま、今日のところは休もうボス。……というか、さっきの事もあるし呑みに付き合ってもらうぞ?」

「はいはい、不器用な誘い方をどうも。そうやって真正面から来たら茶化さずに答えると前から言っているのに」

「なんのことかなボスぅ!?」

「メインの不器用というか乙女プラグインというか……。私達(ダミー)が後ろから蹴飛ばさないとダメな気がする」

「「「だよなー」」」

「なんの話だダミー!」

「「「「メインのヘタレっぷりに対してのダメ出し」」」」

 

最後の最後でなんとも言えないオチになったものだと思う。

まあ、これがウチの日常なんだがね。

トンプソン以外の人形達が上げる笑い声をバックに、私は小さく笑いながら基地の中へと入っていく。さてと、明日から忙しくなるな。

でも、今日のところは呑もうじゃないか。

 




はい、ということで気づけばコラボになっていた話はこれにて閉幕です。

伏線やら何やらは、気が向いたら回収します。
『ミスター』だけは今後書こうと思ってる話で出しますけどね。
カルトやらは話がちょっとでも練れたら考えマース。

ここで、お礼をば
カカオの錬金術師様作
「元はぐれ・現D08基地のHK417ちゃん」
及び
焔薙様作
「それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!」
より、それぞれ複数の娘達をお借りいたしました。
それぞれの本筋でも、この作品について触れて頂いております。感謝の言葉が足りなくてしょうがない。

あまり上手く話をまとめられないことやコラボが初めてなこともあり、展開は急かつご都合主義になってしまったと反省しております。

しばらくはまた平和な日常ということで、落ち着いたお話を書こうと思っております。
乙女なトンプソンが最近増えつつあるので、私も負けないように(キャラ崩壊は止めない)書いていきます。

それと、「救援信号」を出した時に反応して頂いた方々もホントに嬉しかったです。
それほど上手に書けているワケでもないのに、思っていたよりも多くの方に読んで頂いているのだと思うとこれまた感謝感謝でございます。

とりあえず、とある指揮官とG3が銃に関しての解説をしている基地には物資をお届けに行きますのでよろしくお願いしますね?
(いらなくても配給を押しつけに参りますw)

長くなりましたが、これにて後書きを〆とさせて頂きます。
なんか最終回的な感じになってますが続きますのでそこの所よろしくお願いします。
ちょっと月末&年度末の処理でドタバタしますが更新はしていきますね。

ここで書くのもなんですが、S666の方もちょっとネタに困っているのですがまた進めたいと思っております。

ではでは


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酔い宵、呑み話

ここはG&Kの補給基地

襲撃から始まった長い1日の終わり掛け。

指揮官は基地内のBARへと足を運んでいた。
とある約束を守るために。


※めっちゃ更新時間かかりました。月末年度末新年度月初めと重なるとどうしようもないです。言い訳ですね。すいません。


ここは補給基地の中にあるBAR。元々はいわゆるPXであり食堂と分ける意味合いでBARに改装された経緯がある。指揮官の個人的なこだわりでなかなか雰囲気が良く、ある種の職権濫用とも言える指揮官の手腕により置いてある酒の種類が豊富であり、バーテンダー型の自律人形も含めて上等なBARに見える。非番の戦術人形達がここで呑んでいたり、はたまたバーテンダーとして接客していたりもする。宵の口にそんなBARを訪れたのはこの基地の指揮官である。

 

普段は比較的平和なこの基地がこの日珍しく大規模な襲撃を受け、どうにか撃退・解決したのだが、明日からはそれに関する報告書や色々なことが待ち受ける。そんな現実から逃避したいから……というワケではなく、トンプソンに誘われたために指揮官はここを訪れていた。彼女から呑みに誘われるのは久しいことであったし、明日から忙しくなることも分かっているため今回の誘いを受けた指揮官である。彼はBARを見回しトンプソンが来ていないことを確認すると、とりあえずカウンターに座りトンプソンが来るのを待つことにした。

 

「ボス、お待たせ」

「ああ、トンプソン遅かった……な」

 

声を掛けられ振り向いた指揮官はトンプソンが予想外の格好で来ていたために一瞬固まってしまう。てっきりいつものマフィア感溢れる服装で来ると思っていた指揮官だったが、彼女が着てきたのは黒いドレスである。ベアトップで背中が大きく開いているためかなりセクシーなデザインである。さらにスカート部分が斜めにスリットされていて、トンプソン持ち前のスタイルの良さと相まってかっこよさとセクシーさが同居している。

 

「……」

「ボス?やっぱり私には似合わない……かな?」

「あ、いや、よく似合っているよ。つい見惚れてしまったんだ」

「え、あ、そ、そうなのか。良かった。シャワーを浴びていたらいつの間にかダミー達が私の服を隠していてさ。代わりにこのドレスが置いてあったんだ」

(ダミー達よくやった!)

 

内心ガッツポーズの指揮官である。ダミー達はメインフレームがスリープモードの間に採寸を済ませて(個体差が多少あるため測っていた)ドレスを仕立てていた。……部屋に侵入して、メインを起こさずに採寸するとかアイツら本当にダミーなのだろうか。暗殺とか余裕でできるんじゃないか、とも思う指揮官である。

 

「これなら私もピシッと決めてくるべきだったかな?」

「いや、私がこんな格好で来ただけだからさ。気にしないでくれよ」

「ふふ、なら遠慮なく。さ、こちらへレディ」

「ちょ、ボス、普段とキャラが違いすぎないか!?」

「そういう君も普段と違うからこれでちょうどいいんだよ」

 

そう言うと指揮官は、彼女の手を取りエスコートする。

 

(さすがにキザすぎたかな。まあ、今夜だけだし別にいいか)

(ちょっとカッコつけすぎじゃないかボス!?ていうかいつもと違う強引さが!?え、なに、どういうことー!?)

 

カッコつけてみたら想像よりも恥ずかしかった指揮官と、いつもの指揮官(ボス)とは少し違う強引さに内心惹かれているがその自覚のないトンプソンの二者二様の心境である。

 

「さて、何を頼む?」

「あ、うん。何にしよう」

「特に決めていないなら……。まだ宵の口だし弱めにしようか」

「ん、そうするか」

「じゃあ、『テキーラ・サンライズ』を二つ」

「はい、かしこまりました。……指揮官、飲み過ぎはいけませんよ?」

 

この日のバーでカクテルを作っていたのは、普段の昼間にカフェを開いているスプリングフィールドだった。翌日の業務に響かないようにと優しく釘を刺しているが、なぜかどことなく楽しそうにしている。

 

「昼間はスプリングフィールドも戦っていただろうに、バーに出て大丈夫か?」

「あ、そこは私も気になった。戦術人形だからって無理してないよな?」

「ご心配なく。私は明日非番を頂いていますし、カクテル作りは楽しいので息抜きになります。それに、その昼間の戦いに勝ったお祝いに呑みに来られる方がいるだろうなーと思いまして。ここぞとばかりに呑みに誘った娘とか?」

「……あの場で誘ったのってそんなに目立ってた?」

 

つまりスプリングフィールドは指揮官とトンプソンが呑みに来るのを分かっていてバーカウンターの中にに立っているワケである。とはいえ茶化したりするために居たわけではない。知りたいことがあったためにこの日のバーに立つことを決めたのである。

 

「目立ちますよー。今日を逃したら今度は落ち着くまで誘えなさそうですし、ある意味今日誘ったのは正解だと思いますけどね」

「それに美人に真正面から誘われたら断る男はいないさ」

……ボス、今日カッコつけすぎ

「今日はカッコつけるべきだと思ってな?」

「いつも思うのですがトンプソン?あなたもしかしてボソッと言っているそれが周りに聞かれていることに気づいてないんですか?」

「やっぱり皆聞こえてるのか……?」

 

薄々自分でも気づいてはいたがはっきりと他人に言われて確証を得てしまったトンプソン。さすがにカウンターに突っ伏したりはしないが、今にも崩れ落ちそうな感じではある。そうこうしている間にスプリングフィールドが『テキーラ・サンライズ』をカウンターへ置き、それを手に取った指揮官とトンプソンはお互いに小さく「乾杯」と言うと飲み始める。

 

「そこも含めて可愛らしいのだから気にするな」

「それは追い打ちかけてるのかな?……言ってて恥ずかしくないかボス?」

「ちょっと恥ずかしい。まあ、トンプソンの反応を見るのが楽しいから問題無いさ」

「あら、指揮官ったらもしかして1杯目で酔ってます?」

 

いつもトンプソンをからかってはいるがここまで真っ正面から可愛いなどとはあまり言わない指揮官にスプリングフィールドがちょっと心配して声を掛ける。

 

「いやいや。さすがに1杯では酔わないよ。『戦術人形を飲み比べで沈めた』主計官ってなぜか有名だったし」

「それ、人づてに聞いたのですが事実なんですか?」

 

スプリングフィールドがこの日のバーに立っている理由、それがその真偽を確かめたかったことである。スプリングフィールドはカフェの仕入れ等で本部や本部に近い業者とも関わりが出来たのだが、自分が補給基地所属の人形であること、そしてその基地の指揮官が『異動した元本部の主計官』であることを知った者達からとある話を聞いていたのだ。

曰く、『その主計官は本部近くのバーで戦術人形を飲み比べで沈めた』『戦術人形に挑発されたので真正面から酒で潰した』『あいつはザルじゃない、ワクだ』等々。最後のに至っては本部の輸送部隊隊長が言っていたのである。極東の出身者が家族にいる彼は酒を多く飲める人を『ザル』だと聞いていた。だが、その家族からこう言われていたのだ。『ザルより飲める奴はワクだ』と。そして、隊長が最初にその言葉を実感したのが『元主計官』なのだとスプリングフィールドは聞いたのだ。

 

「皆さんから聞く話だと、『元主計官は本部の中でも最強ではないかと言われていたほどの酒豪』と」

「いや、私はそこまで強くないと思うのだけどね」

「ボスを強くないと言うならほとんどの人間が弱いに分類できるよ。なんならアルコール分解機能を起動した人形とも渡り合えるぞ」

「……それは人間では無いのでは?」

 

あまりにも人間離れしていることを言うトンプソンに、スプリングフィールドは「さすがにそれは無いだろう」という思いを抱く。アルコール分解機能を起動しているということは極端に言えば延々と飲めるということだ。それと渡り合えるなど。

 

「そう思うだろうけどな、飲み比べた私が言うんだ間違いないよ」

「いや、君はあの時体調が悪かったと言ってたじゃないか」

「ボス真に受けてたのか。あれは負け惜しみだからな?私は曲がりなりにも市街地の警備部隊だったんだぜ?そんな戦術人形が体調不良になってるワケ無いだろ。さすがにアルコール分解は起動してなかったけど。……自慢じゃないがあの当時、私は本部飲み比べ連続勝利記録保持者だったんだけどな」

「どんな記録ですか……。本当にに指揮官はそんなに強かったのですか?」

「ボスは今でも強いと思うけど。ああ、飲み比べは挑むなよ?まず負けるから。FAL辺りに聞いてみるといい、彼女も飲み比べて負けた口だし」

 

ちなみにFALがよくこのバーに飲みに来ているために、彼女が酒豪と言われるだろう強さであるとスプリングフィールドは知っている。その彼女が指揮官と飲み比べて沈んだことが事実だとしたら桁が違うのではと内心慄く。一般的に人間と自律人形が飲み比べた場合1:9で人形が勝つ。そんな人形の中でも特に酒に強い個体を相手に勝つなど……。

 

「いやいや、まるで私がアルコールで沈むことがないみたいじゃないか」

「なら聞くけど、酔いつぶれたことあるかボス?」

「記憶の限り無いね」

「記憶が飛んだことは?」

「それも無いな」

「最後に、最高何時間連続で飲んだことがある?」

「うん?若い頃にバカ騒ぎをして丸一日かな?あの時は銘があるような酒は飲めなかった覚えがあるよ。ボトルは何本空けたかな、はっきり覚えていないけど10本は1人で空けた気がするけど」

 

トンプソンがスプリングフィールドに「ほら、化け物だろ?」と言いたげな視線を送った。送られたスプリングフィールドはこの話を聞きながら、もしかして内蔵が鉄で出来ているのかしらと思う。「銘もないお酒」つまりいわゆる安酒(と呼べるかも怪しい)の類のボトルを10本以上空けたとなると、身体がアルコールで出来ている化け物と言っても過言ではない気がする。

 

「まあ、それは置いておいて。2杯目はどうする?」

ほら、ちょっとペースが他より早いだろ?コレでも実はスローな方なんだああ、私はまだ少し残ってるから」

本当ですね。……お次は何にいたしましょうか」

「んー、じゃあ『ゴッドファーザー』で」

「かしこまりました」

「いや、たしかに私と飲むなら似合ってるかもしれないけどさ。急に強くなりすぎてないか?」

 

そんな心配など何処吹く風といった顔でこの指揮官はトンプソンに答える。その程度で酔うワケないじゃないかと。

 

「そうか?いいじゃないか。君と2人で飲むのは久しぶりだしね」

今度はホントに2人きりで飲みたいな

「あら、指揮官のお部屋でですか?大胆ね、トンプソン」

「残念ながら私の部屋にはあまりお酒は置いてないんだけどな。いくつか置いておくか」

「あーあーあー!そこは聞こえないふりをしてくれぇ!」

 


 

「らから、いっただろー。ボスは、ほんとにさけにつよいんだよぉ」

「トンプソンだいぶ酔ったなぁ。ほら次で最後にすること」

「んー、しょうがらいらー」

「あの本当に酔っていないのですか?強がってませんか?」

「ん?いや、まったく。おいしいカクテルだったよ、スプリングフィールド」

「あ、ありがとうございます。って、そうじゃなくて」

 

飲み始めて数時間。そう数時間である。その間ショートドリンクやウイスキー等を次から次へと変えながら飲み続ける指揮官と、可能な限り酔いつぶれないように気をつけて飲んでいたトンプソンであったが、さすがに限界が来たらしくトンプソンの呂律がかなり怪しい状態になっている。アルコール分解機能は起動しないのかとスプリングフィールドが問うと、

 

「ボスと飲む時は酔えるようにするって、決めてるんだ」

 

と、ハッキリと答えたのである。彼女なりのこだわりなのか、それとも指揮官には酔った姿を見せていいと思うのか。スプリングフィールドはどちらにしても面白いと感じていた。ここまで人に対して感情ひいては好意を見せるトンプソンは少ないと聞く。そんな彼女なりのアプローチなのだろうと理解したのだ。そんなへべれけ寸前のトンプソンから指揮官へ視線を移したスプリングフィールドは彼に聞く。

 

「あの、指揮官?失礼とは思いますが、あなたが飲んでいた酒量はおそらく普通の人なら死んでいますよ。これだけ飲んでなんの異常がないというのが異常だと思うのですが……」

「そうか?久々にここまで飲んだけれどなんの問題も無いな。少し暑い気はするけれど」

「内蔵が金属か何かで出来ているのでは?」

「俺は君たち戦術人形じゃないつもりなんだけどな」

「私達も酔えますから、私達以上ですね」

「私をもしかしなくても人外認定しようとしてないか?」

「いえ、もうしました」

 

なんだってー!という顔をする指揮官とクスクス笑うスプリングフィールド。そしてそんなやり取りをする2人を見て面白く無さそうな顔をしたトンプソンが火を噴いた。

 

「なあ、ぼすぅ。私とのんでるんだよぉ、私のことほっとかないでよぉ。……ねぇ、私のことすき?」

「…………」

「指揮官?急に酔いが回りましたか、って指揮官!?」

「すまないスプリングフィールド、ティッシュをもらえるかい?ありがとう。いや、不意打ちにこんなのを食らうとは思わなかった。トンプソンにしてやられるのは久々だよ」

「ぼすー?ぼすー?こたえはー?」

 

顔を赤らめて瞳は蕩け、少し、いやかなり色気が増した状態で、真っ正面から指揮官の目を見ながら問うトンプソン。そんな普段と違う様子の彼女にやられ、高かった体温がさらに上がった気がする指揮官。スプリングフィールドもトンプソンのこの姿を見て自分も魅了されてしまいそうだと感じる。今のトンプソンを見ればほとんどの男性が魅了されるだろう。いや、魅了というよりも誘惑と言った方が近いかもしれない。彼女の纏う色気と雰囲気にはさすがの指揮官も陥落寸前である。

 

「やれやれ、まったく。……スプリングフィールド、ラストオーダーだ。私に『XYZ』をトンプソンに『サイドカー』を」

「かしこまりました。今日は徹頭徹尾カッコつけてますね。先程の質問には答えないのですか指揮官?」

 

スプリングフィールドが心底楽しそうに指揮官に聞くが彼女は実は気づいている。『最初の1杯目』で既に答えがでていることを。

 

「スプリングフィールド、君は意外に意地悪なんだな」

「今日の指揮官はカッコつけすぎですから。ただ最後に『サイドカー』なんてトンプソンを持ち帰るおつもりですか?」

「最後の最後に最高に可愛いことを言ったこの娘は沈めておかないとね。知らないっていうのは罪だなぁ」

「ぼすぅ?だからこたえはー?」

「はい、『サイドカー』です。指揮官は『XYZ」でしたね」

「おさけじゃないかー。こたえじゃないよー」

「ありがとうスプリングフィールド。……トンプソン、これは答え方の一つだよ。明日以降で覚えていたら調べてみるといい」

「んー、ぼすがそういうならー」

 

完全に出来上がっているトンプソンは指揮官が言っている意味が理解しきれない。それでも自分が好意を向けている人の言葉は頭に入ったようで、覚えていたらという言葉が付くが調べるだろう。最後に自分へ勧めたカクテルが『サイドカー』であるワケを。そして指揮官が飲んだ最後のカクテルが『XYZ』であるワケを。

 

「ま、今日はカッコつける日だから。これくらいは許されるでしょ」

「意味がわかった時、彼女はどんな顔をするでしょうね」

 

カクテルの意味を知ったトンプソンが今まで以上に真っ赤な顔をするのはまた別のお話。

 




はい、という訳でめっちゃ時間かかりました。
簡単に言えば仕事関係で忙しかったワケですが、書いているうちにネタが暴走して収拾がつかなくなったのも原因ですね。祝6000字突破。書くほどに増える。はい、私の悪癖です。だが反省はしていない。
というか、本当はトンプソンにイブニングドレスを着せたかっただけなのに、どうしてこうなった……?


で、今回はカクテル言葉が出ております。知らない人は是非とも調べていただきたい。カッコつける時等に使えますよ。あと、カクテルは美味しいので好きです。

『テキーラ・サンライズ』実はカクテル言葉を知らないままに書いていたのですが、知ってから最後に絡ませました。
『ゴッドファーザー』は分からず。誰か知ってたら教えてー。マフィア繋がりで登場。リアルの家で作れるのに作っていません(材料は揃ってる)
『サイドカー』と『XYZ』、これは言葉を知ってから入れようと決心。
指揮官が自分で頼んでいるのでちょっとこじつけになっちゃってますが、この2つが指揮官からトンプソンへの返事になっています。

というか書いていて一言。
これ「日常」じゃなくて「恋愛物」に近づいてない?あれれー、おかしいぞー?
まあ、この2人気に入っているんでこのまま加速していきます。
こういうのもいいと思うんだ。時々、戦闘シーンを入れたくなるけど。

つか、ここの指揮官酒強すぎないかな。書いているうちに自分でもツッコミ入れてしまう。なんだかんだで規格外の指揮官になってしまった。もっと普通にしたかったのに。

構成もへったくれもない作品ですが、どうか御容赦ください。
誤字・脱字等ありましたら報告お願いします。


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襲撃明けの1日

ここはG&Kの補給基地。

基地襲撃の翌日、頭の痛みと共に目覚めるトンプソン。
ここは自室。記憶は無いが――

「あれ?ドレスじゃないぞ?部屋着だ」


※トンプソンの乙女化が止まらない(むしろ止めない)ので開き直ります。ちなみに今回はトンプソン視点です。


朝、私が目を覚ますとまず襲ってきたのは頭痛である。原因は間違いない、昨日のボスとの飲みだな。というか人形が二日酔いになる必要ってあるのか?ボスと飲むの最初は問題無いけど、色々な酒を次から次へと飲むからどうやっても酒が回ってくるんだ。これでも私はこの基地では酒に強い方だと思う。下手するとこの基地所属の人形で一番強いと言ってもいいかもしれない。だがボスは別格、つかほぼ化け物だ。時々体を壊さないか心配になる。でも浴びるほど毎日飲むワケでは無い、というかボス一人では飲みに行くことが実は少ない。私や他の誰かに誘われると喜んで飲みに行くから一人酒が好きじゃないのかもしれないな。

 

さて、現状の確認だ。ここは私の部屋。時間はいつもの勤務時間に余裕で間に合うからまだ問題無い。そんでもって昨日は間違いなく私が潰れたハズだ。というか潰されたと言った方が正しいような……?くっ、メモリーが無い!人間じゃあるまいし、私達人形も記憶無くすのか!?あ、違うな記録してないのか。メモリーがおかしいというより、記録する方に影響が出てるってことかも。ま、そこは置いておくとしてなぜか今は普段の寝間着である。着替えた記憶どころかどうやって帰ってきたかも覚えて無いんだが、って枕元に書置きがあるな。まさかボスが……!?

 

『ボスは私達(ダミー)にオリジナルを託して自室へ帰っていった。今考えているであろうピンク色なことは一切なかったぞ。残念だったな!』

 

「考えていないし!……いや、正直ちょっとは期待したけど」

 

私の生意気なダミーからの書置きだった。いや、昨日のドレスはナイスアシストだったけど。というか正直に言えば「お持ち帰り」されたかったワケで。私の体じゃ、その、興奮しなかったのかな……?結構スタイルには自信あるんだけどなぁ。ちょっとくらい手を出してもいいと思うよボス。

 

なんて若干ヘコみながら考えていると段々勤務時間が迫ってくる。とりあえずシャワーでも浴びてから急いで準備をして執務室へ行かなきゃな。そう言えば『サイドカー』と『XYZ』って言葉がメモリーに残っているんだけどなんだっけな?ボスに聞いてみるか。


 

「おはよう、ボス。昨日あんだけ飲んでもやっぱボスは平常運転かー」

「ん、おはようトンプソン。いやぁ、昨日は飲んだなぁ。……体調は大丈夫かい?」

「あ、うん、大丈夫だ。少し頭が痛かったけどシャワーを浴びたら治まったし。そう言えば、『サイドカー』と『XYZ』って何か分かるかボス」

「なっ!どうしたんだ急に」

「いや、ボスこそその反応なんだよ。いや、昨日の記憶があんま残ってなくてさ。でも、『サイドカー』と『XYZ』だけはハッキリと残ってるんだ」

 

いや、ホントになんだろ?あ、もしかして!

 

「カクテルの名前か!?」

「ブッ!げほっごほ!」

「ボスぅ!?大丈夫か、急にどうしたんだ!」

「ごほっゲホッ、いや、大丈夫。……ああ、その名前ならカクテルだろうね。どうしたんだい?」

「なんか大事なことだった気はするんだけどな、その2つ以外あんまり覚えていないんだ。だからボスなら覚えているかなって」

ホント、そういうことはしっかり覚えているんだね。ちょっとカッコつけ過ぎたかぁ。意味は気づいてなさげだけど。いや、普通に頼んだだけだよ?」

 

なんかボスが呟いてるけど聞き取れない!いつも私がからかわれてるからたまには仕返ししたかったのに!まあ、しょうがない。聞いても答えてくれなさそうだし。っと、

 

「ま、それは置いておいて。今日の予定は?」

「とりあえず、昨日の後処理だね。書類に片付け色々あるよ」

「うわ。まあ、しょうがないよな」

()()()は昨日のうちに自律人形達が片付けてくれたから大丈夫」

「……思い出しちゃったじゃん、うぅ」

 

私は戦術人形だけどアレは無理。吐きはしないけれど、吐き気は襲ってくる。非常に気持ち悪くて、昨日と同じく行動不能になってしまう。

 

「あー、すまない。大丈夫か?」

「ん、ちょっと待って。……うん、少し治まった。もう少ししたら治ると思う」

「わかった。少し座っているといいよ」

「ありがとう、ボス」

 

ボスの優しい言葉に甘えさせてもらう。よっと。ボスの机の前に置いてある応接用も兼ねたソファに座り、気を紛らわすためにグリフィンの社内報を読む。昨日支援に来てくれた所の記事だな。そんな風に落ち着こうとしているとボスが話しかけてきた。

 

「ああ、そういえば。明日か明後日にこの基地へ、戦闘指揮官が赴任してくるそうだ。朝一番に本部から連絡があったよ」

「え?……じゃあ、ボスは?もしかして辞ちゃうのか?」

 

ちょっと待って。急になんて事を言うんだ。なんでだよ。基地を攻撃されたから?いや、そんな理由ならもっと前に辞めさせられてるよな。確かに昨日の襲撃は今までとは違ったけど中には侵入されてない……

 

「辞めないよ?私は基地全体及び防衛作戦時の指揮官になるそうだよ。ちなみにメインの副官つまり君は変えないから安心して。それとその戦闘指揮官も副官を連れて2人で来るらしいよ」

「指揮官が2人いる基地って珍しくないか?」

「どうだろう。本来ならば居てもおかしくはないと思う。基地司令と部隊運用の指揮官といった感じで分かれているだろうけど」

 

たしかにボスは機転がきくタイプじゃないから攻撃的な作戦は苦手。代わりに我慢強く確実な戦いができるから防衛向きだ。元々事務畑、とりわけ主計業務の出身だから基地運営は手堅いし物資の管理もしっかりしている。そう考えるとボスは基地司令向きかもしれない。

 

「確かにそうかもしれないけどさ。今まで通りでいいんじゃないか?特に鉄血と戦うワケじゃないんだし」

「まぁ、()()()()()()()()()。今回の赴任は対人間のためのものだよ。どうもあのカルトには裏があるらしいし」

「まぁ、薬物とか使って盾にしてるもんなぁ。……どんな指揮官と副官なんだろ」

「どうもニホンの血を引く指揮官らしい。格好がかわっていると聞いたことがあるよ。副官はショットガン。それも最近配備され始めたモデルらしい」

「ニホンねぇ。風呂の有名な国だったよな?」

 

私は風呂は苦手だ。アレは人間も人形もダメにしちまう。いや、別に私が入らないって決めてるだけで、他のヤツが入っても気にしない。というか聞いてる限りだとボスも風呂に入るのが結構好きな感じだし。……いくらボス相手でもコレは譲れないんだ、ゴメンな。入るように説得された事とかはないけどさ。

 

「ふふっ、お風呂が苦手なのは相変わらずかいトンプソン。まぁ、それは君のモデルの共通点なんだろうね」

「だろうな。ダミー達も入らないし」

一緒に入ってみたいと思うのはワガママなんだろうなぁ

「ボスー?なにか言ったかー?」

「いや何も?さ、とりあえず今日の仕事を終わらせよう」

「むう。ま、いいか。ヨシ、書類を回してくれボス」

 

ボスが何か言ってる気はするだけど聞き取れない。いつも聴覚センサーを最大にする前に言い終わってしまう。いつか聞き取ってやる。と誓った後は事務処理だ。

ボスの決裁が必要なものはボスが、それ以外は3分の2程を私が担当し残りの3分の1は手持ちを早く処理した方が担当するんだ。3分の2と言ってもかなりの量だし、ボスの方も考える必要がある時は時間がかかってしまう。どうにも残りの書類にたどり着くことが出来ない時は手すきの人形に応援に来てもらうこともある。

 

今回は、ボスの決裁書類が多いようだ。そりゃそうか、襲撃の後だしな。昨日の襲撃で外壁にも銃撃を受けているし、点検と補修の手配も必要だ。とは言っても普段なら街へ頼むのだが今回はその街も落ち着いていない。書類の山の中に街の様子を書いてあるものがあったんだが、危険を察知して逃げていた人がまだ戻りきっていないらしい。昨日の今日だからしょうがないけど、そうなると外壁補修はしばらく後かな。

 

黙々と仕事をしていると爆弾mゲフンゲフン、もといこの基地の人形でありメイドでもあるG36がティーセットを持ってきた。時計を見るとすでに2時間が経とうとしていて驚きだ。

 

「お二人とも、そろそろ一度ご休憩を挟むべきですよ。こちらへどうぞご主人様」

「ん、ああG36か。今は……2時間も経ってたのか!?」

「その集中力は素晴らしいですが周りも気にかけてくださいね。トンプソンも90分に一度くらいは休憩を入れなさい。私達はまだしもご主人様は休まないと効率が落ちてしまいます」

「はいよー。いやぁ、私も集中すると時間を忘れちゃうんだよなー」

「まったく。はい、紅茶を召しあがれ」

 

ふう、爆弾魔のダミーがいるとは思えないほどメイドだなー。と思ったらスカートがヒラリと上がるのが目に入った。ボスの方にはまったく見えないようになっているのは流石だ。ってスカートの裏に何か付いてないか?……私の目が壊れていなければアレはグレネードだな。スタンでも焼夷でもないノーマルなグレネード。こいつダミー(爆弾魔)の方だったのか……。

 

「トンプソン、スカートの中を覗くなんていただけませんね」

「見たかったワケじゃないぞ。でもその中を見たらどんな男でも一撃だろうな。……物理的に」

「ええ、一撃で沈めますよ。……ご主人様は別ですけどね。あ、見ますか?メインは絶対見せないと思うので私がってアイタッ!?」

「あら、こんな所でサボっているのはどっちのダミーかしら?私の記憶が正しければ今の時間は二人とも基地内清掃の時間のハズだけど」

 

G36のメインフレームがいつの間にか後ろに立って目の前のダミーの頭に鋭い一撃を食らわせていた。一瞬、手が見えなかったけどG36のメインは格闘技の心得でもあるのかな?

 

「メイン!?なぜここに!?」

「ご主人様にティーセットをお持ちしたのよ。誰かさんに先を越されてしまったけどね。……さあ、覚悟はすませた?ご主人様にお祈りは?ガタガタ震えて許しを請う準備はOK?」

 

どこかで聞いたことがあるようなセリフを言うG36。いや、ボスに祈ってどうするんだ。あの人は神様かよ。……ちょっと待って。いきなり現れたメインとその言動に驚いて忘れてたけど、ダミーがさらっとボスに下着を見せようとしてなかった?え、ライバル登場?よく見たらメインの頬がかすかに赤い気がするんだけど!?

 

「ふっ、メインの気持ちを汲むのがダミーだとトンプソンのダミーから学びまして、早速行動をと」

「ウチのダミーが原因か!……え、気持ちを汲んで?ちょっとG36さんお話があるんですけども?」

「申し訳ありませんが私のダミーを今から始末しますので、お話はまた後日。では失礼いたしますね、ご主人様」

 

かなり物騒なことを言いながら、そしてダミーの首根っこをしっかりと掴んだ状態で器用にお辞儀をして退出するG36。って待て、だから確認したいことが……もういないだと?

 

「速すぎる。もう廊下にすらいないぞ。……ライバル登場?私は家事出来ないし手ごわいんだけど……」

「あれはダミーがからかっているだけだと思うけどね。君のダミーと一緒だよ」

「だったらいいんけどさ。ってライバル云々は違うからな!?ボスのことが好きなライバルとかじゃないから!いや、私は好きだけどって何言ってるんだ私は!?」

「だいぶ面白いことになっているね。とりあえず紅茶を飲んで落ち着くといいよ」

 

ボスが紅茶の入ったカップを私の前に出してくれる。ちょっとドタバタしたから冷め気味だけど香りも良く落ち着く。上手に淹れるなぁ。非番の時にときおり、スプリングフィールドのカフェで紅茶を入れたりお茶請けとしてクッキーを焼いたりしてると聞いてたけどG36の料理スキル高くない?くっ、やっぱり料理スキルを磨くべきか!?データは入れれてもたぶん実践段階で上手くいかないだろうし教えてもらおうかな。でも、もしもボスを好いているのが本当なら教えてもらえないかも?

 

「……料理かぁ」

「別にできなくてもいいんだからね?そんな悲痛な顔をする事はないんだよ」

「え?顔に出てた!?でも、ボスもやっぱり奥さんにするなら料理上手がいいんじゃないか?」

 

仕事から夫が帰ってきたら美味しい料理で出迎えて、優しく疲れを癒して上げる。これが普通の理想的な奥さんじゃないか?……いや、考えが古いか。少女マンガ読みすぎかな?

 

「んー。料理上手かどうかは別に気にしないな。私は自分の奥さんにするなら、照れ屋で、本人は呟いているつもりでも周りにバレバレで、いつも好意だだ漏れで、でも()()()()()()って最高の笑顔で言って、そして言った通りに守ってくれた娘がいいなぁ」

 

は?ちょ、それ!?

 

「さて、休憩終わりだトンプソン。ランチまでにどこまで進むかな?頑張ってやるぞー」

「ボス!?今の話は後で詳しく聞かせて貰うからな!どうやってもさっきの話の心当たりは一人だけなんだけど!?」

「なんの話だトンプソン。私はいわゆる自分の好みを言っただけだぞ?」

 

いや、それ私じゃん!自惚れとか抜いても私じゃん!最後のセリフもこの基地が出来た頃に私が言ったヤツじゃないか!それじゃボスの好みは……

 

「ボス、絶対に話の続きを聞くからなぁ!?」

「はっはっは、続きを聞きたければこの山を終わらせなよ。ま、終わらせたからって言うとは限らないけどね!」

「OKボス。そう言うならこうしよう。話の続きをするって約束してくれないなら、書類は進めないぞ!」

「あ、公私混同する娘は好きじゃないから」

「自分のことは棚に上げた!?ちょ、ひどくないか!」

「はっはっは、こういうのは先に言ったもの勝ちだよトンプソン」

 

ボスひどい!

 

でも、ボスの頬が赤くなっていたことは黙っておくよ。本当はいつものお返しにいじりたいけど。

 

今は、いつもと違うボスを見れた嬉しさとさっきの話の嬉しさで一杯だから許してあげる。




はい、なんか変な流れになりました。
自分の文章力の無さを痛感いたします。

というかまた思いつきでG36のダミーにおもしろ属性が(笑)
グレネーダー&自爆魔の方のダミー、戦場だとダウナー系ですが基地内だとこんな感じになりました。今回のダミー芸担当。
G36の頬が赤いのはなんででしょーね?(すっとぼけ

ここの指揮官も好意を隠してないのですが、こんな指揮官にする予定じゃなかったんだけどな。
つか「指揮官」としてはダメじゃないかな?部下とそういう仲になっちゃいかんでしょ。私は好きですけどそういう話。むしろ大好物ですけど。
元主計官だから許して!
近いうちに過去編書こうと思いました。二人の出会いとか。
設定の方には少し書いてますけど、本部勤めの時とかネタは浮かんでるんですよね。

これ、そろそろタイトル変えた方がいいかも?日常よりもラブコメ的なタイトルに。ラブコメ路線に入っちゃってる。

あ、次回新指揮官出ます。見た目つか服装が完全に趣味に走るのでお許しください。あとSGはこないだ実装された娘です。オリ設定ぶち込みますので苦手な方が出るかと。

ではでは。
誤字脱字ありましたら報告お願いします。スマホで打ち込んでいると誤字がスゴいあるんですよね。変換がおかしかったり、「ら」が入ってたり(確定押す時に同時に押される模様


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戦闘指揮官の着任

ここはG&Kの補給基地。

襲撃から3日が経った。
徐々に元に戻りつつある基地に戦闘専門にした指揮官が着任する。

「なんというか、コメントに困る服装だね」
「説明させてください!」

※かなりオリジナルの設定&捏造がこれから入っていきます。キャラ崩壊の方も加速してます。タグ付けないとなー。拒否感あったらすいません。


あの襲撃から三日、本部から通達があった戦闘指揮官が本日着任すると連絡が入った。現在、輸送部隊と共に移動しているらしい。二人と聞いていたのだが何人かの戦術人形も同行してくるとのこと。元々は本部の対人専門の捜査部隊……いわゆる警察に近い部隊の所属だったらしいのだけど、率いている部隊丸ごとの異動になったようだ。だけどそれって大丈夫なのだろうか。戦力の低下は免れないし、普通なら指揮官だけせいぜい副官も合わせて二人だけ異動すると思う。

 

「お、ボス。輸送部隊の到着だ。1、2、3……連絡通りの台数だな。っとG36、輸送部隊の受け入れと荷降ろしを頼めるか?」

「お任せください。さあダミー、行きますよ」

「「よろしい、ならば荷降ろしだ」」

「一心不乱の荷降ろしを、って何バカなことを言っているのですか」

 

うん、もしかしてG36はダミーも含めて昔のコミックでも読んだのかな?そのセリフどこかで聞いた気がするんだ。最近、このメイド達がだいぶ愉快なことになっているけど大丈夫かな。そういえばFALからも、自分のダミー達にD08のFALの影響が出てるかもしれない相談されたけど……。

 

「ねえ、銃剣(バヨネット)は無いのかしら。できれば刃渡りがすごく長いヤツ」

「えー?無いのー?」

「いや、あんた達ねえ。銃剣なんか付けてどうするのよ」

「「付けるんじゃなくて両手に持つのよ」」

「いや、もっと意味が分からないのだけど……」

 

銃剣を使うような格闘戦を挑む状況はごめん被るのだけど。いや、銃剣をつけること自体はいいんだよ?でも近づかれる前に倒しましょうね。というかこれは少なくとも何かの影響は受けているな。D08のFALではないと思うけど。勘が正しければG36が原因な気がするんだ。……余所だと普通のメイドと聞くけどなぜここの娘は変わりすぎているんだろう。

っと何台かの装甲車が私達の方へ減速しながら近づいてくる。これに件の指揮官が乗っているのかな。

 

「トンプソンこっちへ。たぶん、アレに指揮官が乗っていると思う」

「あいよ、ボス。どんな格好しているんだろうな」

 

そう、それには私も興味があるんだ。変わった格好と噂では聞いているのだけど、普通はグリフィンの制服のハズ。そんな奇抜な格好はできないと思う。髪型が変わっているとかだろうか。まさか制服を改造しているとか?いや、さすがにそれは社長とかが許さないだろうと思うんだ。お、装甲車が止まってドアが開いた。車の中からは黒髪のなかなか若い男性が降りてきた…ぞ。

 

「はじめまして基地司令官殿。私はカズト・ナカムラと申します。あなた宛ての指示書を本部から預かっています。内容は補給基地司令への正式な任命通知と伺っています。で、こちらが……あれ?……おいSPAS!早く起きて降りてくるんだ!」

「うー、カズ君おはよー。もう着いたんだー」

「寝ぼけるなあ!100式頼んだ!」

「はい。さー起きろー!」

「いったあ!?」

 

丁寧な挨拶の直後、車の中から目を擦りながら出てきた水色の髪をした娘の後頭部を100式と呼ばれた娘が容赦なくド突いた。

 

このコントは一体何だろうか?隣のトンプソンは既に腹を抱えて爆笑している。ああ、コントの衝撃が強すぎて指揮官の格好を一瞬スルーしてしまったな。まさか改造制服のパターンだったとは……。ばっちり服装規定を破っていると思う。

 

「まったく!……失礼しました。この寝坊助は副官のSPAS-12です。それと100式機関短銃、64式自動小銃、62式機関銃が私の指揮下部隊です」

「え、ああ、よろしくお願いしますね。SPAS以外は日本の?」

「あ、はい。私が日本人の血を引いていまして、その関係で彼女達が配備されたと聞いております。優秀な娘達ですよ」

「ああ、だから君はキモノを着ている訳か……」

「この服装に関しては説明させてください!たぶん、かなり誤解されていると思うので!」

 

誤解も何も、キモノの上にグリフィンの制服のジャケットを羽織っているし。と思ったらこれジャケットじゃないな。袖が無いぞ。あれ?

 

「この服は着物は着物でも『袴』と呼ばれる物が元になっています。羽織っているのも『陣羽織』と呼ばれる物に似せたデザインだそうです。それで、何故こんな格好をしているかと言いますと……」

「カズくんのおばあちゃんがグリフィンの制服のデザイン担当部門の顧問だったんですよー。それで『孫には日本の袴を着せたい』って提案したらしくて」

「カズくん言うな!隊長と呼べ!……だいたいはSPASの言った通りです。どうもグリフィンが企業として大きくなる前から祖母が服飾部門に居たらしく……」

「その部門からしたら顧問のお願いだったために断り切れなかったと」

「そうなります。祖父も社長とは知己とのことで『話を通すならわしに任せておけ、ばあさん!殴ってでも通す』と殴り込んだと聞いています」

 

なかなか強者のおじいさん達だ。昔からの知り合いにこんなことを頼まれれば、あの社長もたいそう困惑したことだろう。というか、社長に殴り込んだことも驚きだよ。

 

「どうも祖父は社長……クルーガーさんに昔模擬戦で打ち負かしたとか。その時は既にかなりの年の差だったにも関わらず」

「あれ?社長って元正規軍だったと思ったのだけど。え、勝ち越した?」

「眉唾ものの話だと思っていたのですが、社長から遠回しに肯定されまして。ちなみにその祖父を物理的に黙らせることが出来るのが祖母です」

 

なんかこの指揮官君、えーとカズト君と呼んでいいのかな?かなりのバックボーンがあるような。濃さが半端ない。隣のトンプソンが「あの社長を相手に!?年の差もあるって何歳でやったんだよ!?」と驚愕しているがトンプソンも社長と殴り合いでもしたのだろうか。後で聞いてみよう。

社長……クルーガー氏は元々は正規軍でありかなり体を鍛えていたはず。今でも若かりし頃の筋肉美を維持していると噂で聞く。その人と模擬戦で打ち負かすって、彼のおじいさんはどんな人だったんだろうか。ニホンは平和の国だったハズだ。というかこちらへ来た時の歳を知りたい。

 

「自衛隊で特殊部隊を率いたことがあるとか何とか。『普通じゃない普通科だった』とも言っていました。あ、普通科というのは自衛隊の歩兵のことです」

「そんな人がどうして社長と知り合ったんだ?」

「第三次世界大戦初期に親族と共にこちらへ来てその時に知り合ったと。その当時は移動もままならないハズなのですが……。詳しいことは頑なに話してくれません」

 

あ、それは言えないことをしてたパターンじゃないかな……。先読みして国外へ避難したってことかな?でもこちらが安全なんて保証は無かっただろうに。

破天荒な祖父母さんだけど、彼は非常に真面目な雰囲気を感じる。ご両親は大人しかったとみた。でもそういえばそのハカマとか特に嫌がっている訳じゃないんだね。

 

「まぁ、祖父母が私にとくれた物ですので。ちなみにちゃんとした制服もあるんですよ?式典はさすがにそちらを着ます」

「カズくんはおじいちゃんおばあちゃんっ子なんですよー」

「だーかーらー!カズくん言うなー!」

「もしかしなくても君達はなにか特別な仲だよね?ちょっと左手薬指を見せて……」

「あ、指輪はまだ貰ってません!早く欲しいんですけどねー。いつでも大歓迎です!」

「あー!もー!何言ってるんだお前はー!」

「すいません、司令官。この二人はいつもこんな感じです」

 

揉め始めたというかどう見ても痴話喧嘩の取っ組み合いを始めた二人を横目に、100式からの一言を聞いていた。これは前線や普通の基地なら速攻で懲罰レベルだと思う。この基地向きの子達だね。私は特に気にしないから。なんでかって?そりゃあ部下で遊ぶ指揮官改め司令ですからね。

なんというかこう、この二人のやり取りは横から見ていて面白い。それにどことなく、幼なじみの年上のお姉ちゃんと背伸びしたい年下の男の子感が漂ってるんだよね。コレはとても面白い予感がする。

 

「ボス、スゴく悪い顔してるぞ。一応、彼らの上官になるんだから真面目にな?……遊びなくなる気持ちはよく分かるけど自重しような?見た目はホントに真面目なのに中身はコレだから。そのギャップがいいんだけどさ

 

くっ、トンプソンに言われるとはね!?しかも今回は何か言っているのは分かるけど聞き取れなかったぞ。腕を上げたなトンプソン。仕方ない、やはり私がいじるのは君だな。

 

「いや、私もダメだって。というかいつまで外で話してるんだよ。いい加減に中へ入ろうボス」

「ああ、つい立ち話をしてしまったね。続きは中で聞こう。その前に、まずは荷物を宿舎に降ろして楽な格好で来るといいよ。明日から仕事に入ってもらうつもりなんだ。今日は自己紹介と歓迎会をしよう」

「ハァ、ハァ、了解、しました。……くっ、後で覚えてろよサクラ!?」

「ふふん、カズくんが私に勝とうなんて5年は早いよ!」

 

決着はついたかな。ふむ、SPASじゃなく「サクラ」と呼んだね。個人的に色々と聞きたいことができてきたぞー。襲撃は別としても、そうそう変わることはなかったここの日常に訪れた大きな変化だし。ほら隣のトンプソンも聞きたいことを我慢してる顔だ。おっと、遠くにいたFMG-9が目を光らせたな。……比喩じゃなくてマジで光ったんだけど。フラッシュ機能でも付けた?さてはダミーか。個性的なことをするのはダミーとウチの相場で決まってる。

 

「なんというか、この二人がここへ来た理由が分かったような気がするんだ。本来の目的とは別な理由もあるんじゃないかな」

「奇遇だねトンプソン。私もそんな気がしているよ。なにせ見ているだけでこちらが照れるくらいにお熱いよな。これは本部勤務の連中に追い出されたかな?(痴話喧嘩は余所でやれ)

「すいません、これからは業務関係のお話で大事な事は(100式)に言って頂ければ。あの二人にはキチンと伝えますので」

 

100式が「はぁ」とため息をつき、他の人形二人もやれやれといった表情をしている。これはこの三人が結構苦労しているんだろうね。まあ、カズト君とSPASちゃんが楽しそうで何より。

 

「よし、とりあえず解散。カズト君達は準備が終わったら連絡して。そうしたら迎えを寄越すから。備え付けの電話で内線01に掛けてくれたら執務室に繋がるよ」

 

さあ、補給基地の新しい日常が始まるぞー。

 




えー、ダミーの暴走は完全に閃きで書いてます。深い意味はございませんのでご了承ください。

カズト君の服のイメージは、ミスターブ〇ドーみたいな感じを思い出してもらえれば。
黒を基調にした馬乗り袴風の服に、紅を基調にしたシンプルな陣羽織を羽織っています。全体的にスッキリとしていて袴感はちいょ薄めのイメージです。絵が描けないので説明だけに……。伝えられないこの感じ!
なお、陣羽織の前にはG&Kの社章が、背中には鷲獅子が刺繍されております(そこは派手)おばあちゃんが全力を出しました。

また設定集の方で説明できたらなぁ。思いつきでキャラを出したので後で修正するかもしれません。つか一度誤字脱字の修正しないと、読み直したらめっちゃあってびっくりです。スマホは打ちにくいですなぁ

誤字脱字報告お願いします。

あ、勝手にD08地区のFALの存在をまた出しちゃいましたので苦情は受け付けますね。


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番外:D08からの来訪

ここはG&Kの補給基地。

倉庫整理に勤しむ基地に、D08からの来訪者現る。

「いや、先にあっちのFALから連絡があるとは思わなかったよ」
「内容も内容だしなぁ」

※時系列が乱れています!コラボのための特別措置です!本編が追いついたら順番を入れ替えるつもりです!

4/23細かい箇所の修正


この基地にD08地区のタカマチ指揮官とHK417が二人で来るそうだ。

 

この指揮官とは直接会ったことは無いけれど、この基地が以前襲撃された時に救援に駆けつけてくれた縁でここへ訪れることを決めたそうだ。

 

最初に連絡があった時は「訪問させてほしい」といっただけのシンプルななものだった。恐らく私達を驚かせるつもりだったのだろうね。この基地の前にS09地区にも訪れると言っていたので何らかの連絡もしくは報告の類いだとは思っていたのだけど。そんな時に件のD08から連絡があった。指揮官はすでに出掛けているのだろうから一体誰だろうと思ったら、あの時来てくれたFALからだった。

 


 

『いきなり通信をお掛けして申し訳ありません。我々の指揮官の件でご相談したいことがありまして……』

「ああ、D08の。こちらへ来ると言っていたことと関係あるのかな?……それと普段の話し方でいいよ。堅苦しいから」

 

私は見た目は真面目と言われるけれど、式典などでもなければそこまで堅苦しくなくていいと思っている。というかそう思わないとウチの基地ではやっていられない。ダミーが自由奔放すぎるし。

 

『じゃあ、お言葉に甘えて。今回そちらへ指揮官が伺う用件は、実は指揮官と417の結婚報告なの』

「ほう、結婚ね。あの時の417とかー。ってそれは私へ言ってよかったのかい?指揮官は私達を驚かせたかっただろうに」

『別にいいのよ、惚気をいきなり聞かされるよりはいいと思うし。目の前でイチャイチャされる心構えもできると思うし。ふ、フフ、ふふふ』

 

暗い笑いをし始めたFAL。このFALの様子から察するにこれはあれだ、結婚話で軽く修羅場ったなD08。まあ、無事に指揮官と417ちゃんが挨拶回りに出ることができたのなら流血沙汰にはならなかったのだろうね。それは一旦置いておいて、このFALからの連絡は関連してはいるものの別件なのだろう。あの時の借りがあるし、叶えられる範囲でお願いを聞こうと思う。

 

「……いろいろと思うことがあるのは分かった。で、本題の方は?」

『ああ、ごめんなさい。物資関係の融通をお願いしたいの。具体的には大型倉庫1つ分の建材。その倉庫の中に多目的スペースも作りたいからそれも。で、今回はそこに小さいチャペルを建てたいの。街の方にチャペルが無かったから。たぶん、指揮官も報告と一緒にお願いすると思うのよ』

「ふむ。大型資材倉庫か、予備の建材はあるかな?トンプソンわかるかい?」

「ああ、問題ないな。倉庫ならあと4つか5つは建てられるよ」

「じゃあ、あとはチャペルか。よし、コンテンダーを呼んでくれ」

 

この補給基地の建設班はコンテンダーに任せている。彼女は日頃から計算計算と言っていたし、倉庫の増設計画を一度任せてみたところ綺麗に物資が収納される倉庫を建てたんだ。それ以降大小問わず倉庫建設は彼女に頼んでいる。建材の在庫もコンテンダーが担当しているため、先程の確認も有るか無いかの答え自体は実は分かっていたんだ。彼女が建材の在庫を切らすことはありえないからね。

 

「私はすでにいますよ指揮……司令」

「早いな。トンプソンが呼んだのか?」

「ああ、結婚報告の辺りでね。通常資材の在庫もコンテンダーが一部だけど把握しているからさ。引き出物ではないけど物資を送る可能性もあるかと思って」

 

このコンテンダー、補給物資が大量にあるこの基地においてかなり重要な立ち位置に居るんじゃないかな。戦術人形としてのスペックを遺憾なく発揮しているぞ。

 

「メイン、持ち出し可能分の資材と倉庫の建材一式準備完了。チャペル用は今準備しているよ。……簡易的かつ一般的なチャペルでいいですか司令」

「それでいいと思うよ。組立と解体も手早く行えるようできるかい?」

「可能です。今、もう一体のダミーに簡易的ですが設計させています。もう2時間ほどで建材の準備まで終了できるはずです」

 

コンテンダーのダミーはメインと同じく多芸かつ真面目だ。この基地のダミーの中でもかなり良心的な存在となっている。……ただ誰の趣味かは分からないのだけど、全員がメイド姿なのだけは不思議だ。メインはいつも少し恥ずかしそうにしているがダミーは堂々としているので見分け方のコツはそこだ。

 

『あ、それとさらに追加して欲しいのだけど、いい?』

「ん?どうした」

 

FALから少し遠慮がちに声が掛かる。これくらいどうってことないから追加があっても大丈夫だよ。

 

『ありがとう。その同時じゃなくてもいいから、離れを作って欲しいの。それほど大きくなくていいから」

「離れかー。どうしてだい?今の宿舎に問題が?」

『宿舎は問題無いの。……あの二人が問題なのよ」

「え?どういうことだよ」

「……ああ、もしかして。いわゆる『壁ドン』案件になっているってことかな?」

『そ、ちょっと苦情が入っちゃって。壁ドン祭りになりかけているのよ』

 

まあ、新婚ならそうなるかー。既婚者用の宿舎などという物は無いだろうし、独り身の職員や人形から(特に指揮官ラブ勢)の壁ドンは確実にあるだろうね。……私でも隣からの情事が聞こえれば壁を殴る自信はある。あー、隣のトンプソンが不思議そうな顔をしてる。君はアメリカ産純粋培養乙女なのかな?

 

「どういうこと?ボスは分かったのか?なぁ、教えてくれよー」

「いいんだね?後悔しても遅いよ」

「……あ、ちょっと嫌な予感が」

「つまり、男と女の夜の営みというヤツですよ」

 

あらま、コンテンダーに先に言われてしまった。

 

「そ、『俺のマグナムを食らってみるかい』『私のレシーバーに入るかしら』とかそんな感じ」

『さすがにヒドイわよ、それ。で、どうかしらお願いできる?」

 

いや、そんなことは言ってないって分かってるよ。ウチのトンプソンに分かりやすく伝えるとなるとこんな感じじゃないかな。っと、ほら真っ赤になって顔を手で覆ってるよ。ホントに初心で可愛いなぁ。……ハッ!?コンテンダーが生暖かい目で私を見ている!『あなたも未経験でしょう?』って考えていそうな目じゃないか!

 

「コンテンダー、少し話が……」

「すいません司令。ダミーの設計データの確認と資材の準備がありますのでお断りします」

「くっ!にべもないな!……まあいいか。で、どうだい頼めるかいコンテンダー」

「お任せください。ただチャペルとは勝手が違いますし、建材一式を持ち込んで現地で要望を聞いてから建てる方がいいかと。それと家となるとこの基地の建設班だけよりも専門の建設業者も雇った方がいいかもしれませんね」

『そこは臨機応変にいきましょう。それじゃあ、お願いね』

『あー!FAL!ケーキケーキ!』

『あ、忘れてたわ』

 

通信を切ろうとした瞬間に聞こえてきた声で、FALが何かを思い出したようだ。

 

『ウエディングケーキの材料も追加で。デザインとか作成ははこっちでするから材料だけでOKよ』

「ん、承った。とりあえず、準備ができたら建設班を出発させるよ。明後日の昼ごろか、夕方には着けると思うけど、何かに襲われたらもう少し遅れる」

『ええ、分かったわ。……今回は、頼まれてくれてありがとう。助かったわ」

「いやいや、なんてことは無いよ。この間の借りを返すいい機会だし」

『フフッ、それじゃあ、今度こそ失礼するわね。……それと、あの二人から話を聞いたらそこで顔を隠してる乙女なトンプソンに影響でるかもしれないわよ。超積極的になったらごめんなさいね』

「望むところだと言わせてもらおう。ではまた」

 

時々、大規模な輸送はあるけど、今回はまた大掛かりなものとなったなー。ふむ、これなら私がD08に行くのもありかもしれない。カズト君には悪いが、ここの守備を任せて行こうかな。トンプソンには護衛としてついてきてもらおう。ほら、いつまで恥ずかしがっているんだトンプソン。乙女プラグインが仕事しすぎじゃないか?

 

「いや、そんなプラグイン使ってないから!つか、なんでボスは平気なんだよ!」

 

まあ、それは私も男だからという訳で。……だからコンテンダーそんな目で見ないで!悲しくなるから!

 

「トンプソンを部屋に連れ込んで、大人の夜戦を二人ですれば一気に解決しますよ?」

 

連れ込むことなんて出来ないからこの歳まで未経験なの!コンテンダーがこんな風に茶化してくるとは思わなかったよ。もー、またトンプソンが真っ赤になって固まっちゃったじゃないかー!

 


 

そして現在はというと、

 

「初めましてタカマチ指揮官。私はハワード・エーカー。この間は救援をありがとう。そして、ようこそG&K広範囲物資輸送・貯蔵基地へ。最近は『HUB』とも言われてるらしいよココ」

「初めまして、エーカー指揮官。忙しい中、今日は貴重な時間を頂き感謝します」

「ああ、堅苦しいのは無しでいこう。それと1つだけ訂正をさせて欲しい。この間基地司令官に昇進?したんだ。とは言ってもまったく業務は変わらないし、そもそも司令の器じゃないんだけどね」

 

タカマチ指揮官と417ちゃんが到着し執務室にて挨拶をしている所だったりする。まるで前から知っているかのような感じがしたが、よく考えたら初対面だったので自己紹介をした所。うん、コレは……、トンプソンには刺激強すぎないかな?

 

「お久しぶりです!あの後は大丈夫でしたか?」

「ああ、久しぶりだね417ちゃん。心配ありがとうおかげさまで事後処理等もつつがなく終わったよ」

「それは良かったです。ねー、ダーリン」

「ああ、そうだな。あの時は救援要請が入って驚いたよ。咄嗟に出撃していたら417達に向かってもらったんだ」

 

それからしばらくあの時の話をしていたのだけど、初対面という事もあってかなかなか本命を言わない二人。いや、隠す気がさらさらないことは分かるんだ。目の前でこれだけイチャつかれてたらね、そりゃあ否が応でも分かるとも。417ちゃんがそのロリ巨乳ボディを超笑顔でタカマチ指揮官に押し付けて、そのタカマチ指揮官もこれまた超嬉しそうにしている。

 

ちなみにここまでトンプソンが一切喋っていないのは、一番最初に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という光景に、カルチャーショックを受けてダウンしたからだ。そういう時は「ヤック・デ〇ルチャー!」って叫ぶといいよ。いやぁ、抱きつきでダメならキスを見たら死ぬんじゃないかな?プ〇トカルチャーもびっくりだね。

閑話休題。私は隣の眠り姫(トンプソン)を見ながら埒が明かないしそろそろ切り出すことを決めた。

 

「お二人とも今日はどうしてここへ?まさか近くを通るからというワケじゃないでしょ?」

「ああ、そうだ。417が可愛すぎて忘れてた!」

「もー、ダーリンったら!」

 

ありがとうD08のFAL。コレはネタを知っておかないとキレるレベルだったよ。予想以上じゃないか。訳の分からないまま目の前でイチャつかれたら、独身の人はキレても仕方ないと思うんだ、うん。あとトンプソンは影響を受ける前に沈みました。起きたらどうなっているか心配だよ。

 

「その、俺たち結婚することになってさ。で、結婚式を基地で挙げようと思ったんだけど場所がなくてね。倉庫を新設してそこの中をチャペルとして使おうかなと思って。で、本題は倉庫用の資材を融通してもらいたくてさ」

「……なんだろう。ここまで聞いてた通りになるとタカマチ指揮官の所の娘達が恐いなぁ」

「へ?何のこと?」

「実は君の所のFALから連絡があってね。『チャペル用に大型倉庫とか建てたいから建材ください』って。だから準備はもうほとんどできてるんだ。明後日か、遅くとも3日後にはそちらの基地へ建材輸送部隊と倉庫の建設班が到着できると思う」

「はい?……FALめ、副官権限乱用してないか!?」

「まーまー。上司思いのいい部下じゃないの。若干思うところがあるみたいだけど」

 

あの暗い笑いには闇を感じたしね。うん?417ちゃんが何か言いたそうだ。

 

「え、建設もしてくれるんですか!?」

「ああ、任せて欲しい。ささやかながらこの基地からの結婚祝いだよ」

「資材だけもらって建設は基地近くの業者に任せようと思ってたんだけどなー」

「ああ、安心してほしい。たぶん業者の人も雇わないといけないと思うから。ウチだけじゃ建てにくいものもFALから頼まれたからさ」

「「え、何を?」」

「新婚夫婦の夜の営み用離れ」

「「ぶっ!」」

 

君らの夜の営みにね、苦情出てるらしいよ?するなとは言わないからせめて聞こえない所でってことだね!倉庫やチャペルはまだしも、普通の家屋となるとコンテンダーよりも民間業者の方が適任だと思う。

 

「いや、チャペルを設計する人形ってのも普通は居ないと思うんだけど」

「普通じゃない人形達に慣れてしまったんだ、私は」

「「お呼びですか?ご主人様」」

「「「「呼んだか?ボス」」」」

 

ほら、呼ぶどころか「G」も「ト」も言ってないのに来るダミーがいる基地だからね。




いやー、今回はいつもよりも暴走です(ネタ方面に)
前書きでも書きましたが時系列がおかしくなってます。本編が亀の歩みなので特別対応です。

カカオの錬金術師様作
「元はぐれ・現D08基地のHK417ちゃん」からタカマチ指揮官と417ちゃんが結婚報告に来てくれました。

いやーおめでたいですね!S09のユノちゃんの時には間に合いませんでしたが今回は間に合って関わることができましたよ。

さて、唐突に指揮官(司令)の名前登場です。ハワード・エーカー。ん?どこかで聞いたことある気がする?気にしちゃ負けですぜ!ミドルネームを入れるならダリルかダッチかで悩む。

※後書きの内容がおかしくなるので一部削除しました。


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歓迎会

ここはG&Kの補給基地

新しい仲間の着任に、日常にまだ戻れていないこの基地も今夜くらいはと歓迎会を開く。

「とりあえず、SPASちゃんにカズト君のことを質問しようかな」
「ボス?踏み込みすぎはダメだぞ?」
「アッハイ」

※今回、途中で視点が変わりますのでご注意ください※



僕はカズト・ナカムラ。この補給基地に今日付けで配属されました。部下は戦術人形の100式機関短銃、62式機関銃、64式自動小銃、そしてSPAS-12の4人です。今まではメインの4人だけでしたが2~3日すると彼女達のダミーがI.O.Pから届くそうです。

 

簡単に自己紹介いたしますと、祖父母が生粋の日本人です。さらにこの時代ではとても珍しいのですが両親も日本人です。純度100%の日本人です。ええ、このご時世でそんなことあるのかとおっしゃりたいのは分かります。私自身が言いたいですから。でも本当なんです。

 

え?この服装ですか?……祖父母の暴走です。昔からグリフィンと関係があった祖父母が、どうしても私に日本風の服装をさせたかったので直談判をしたらしいです。どうして通ったのか私も分かりません。式典等では普通の制服ですのでご安心ください。

 

実績等に関しましては、お恥ずかしながらそれほどありません。本部管轄地域での犯罪取締及び市街警備を行っておりました。……ええ、トンプソンさんの後輩と言えるかもしれません。噂ではかねがね。え、どんな噂だったか、ですか?そのー、言ってもいいんでしょうか?そうですか。では失礼して。

「惚れた主計官が異動して補給基地の指揮官になったので、理由をこじつけ自分もついていった乙女な戦術人形」と。……だから言ったじゃないですか、「言ってもいいですか」って。こんな内容だとは思わなかった?あれ?いや、ほとんどの方がおっしゃっていましたよ。「トンプソン」の中でも間違いなくトップクラスの乙女な個体だった、と。……あのー司令、後でフォローしてあげてください。はい、なんでしたら今からでもどうぞ。

 


 

「いやー、見事にトンプソンがダウンしたね!」

「司令、笑ってていいのですか?彼女スゴく落ち込んでますよ?」

「普段カッコイイ娘が落ち込む姿って可愛いと思わないかい?……まあ、ウチのトンプソンはカッコイイというよりも可愛らしい面が目立つけどさ」

 

最近、トンプソンへの好意がダダ漏れとなっている指揮官改め司令官。「間違いなくトンプソンから影響を受けている」とは古株の人形達の談。閑話休題。

 

司令がトンプソンに絆されているのは間違いないと着任早々の僕でも分かる。……本部での噂は本当だったのかと驚きが隠せない。周りにバレバレな好意に自分では気づいておらず、「自分は護衛でついて行くんだ」と無自覚のままで動いてしまう程に人を好いている人形がいたなんて。人形を好きになる人がいることは知っているし、まぁ、その、気持ちも分からなくはない。でも、人形の方がここまでするとは思わなかった。いくら自律的な思考ができるとはいえこれではほとんど人と同じじゃないか。そんな人形がそうそういるものだろうか。

 

「カズくんお料理美味しいよ!本部よりも美味しいんじゃないかな!あれ、カズくん食べないのー?」

 

訂正、とても身近に居たね。人よりも人らしいと言える人形が。

 

「SPAS、確かに今日は僕達の歓迎会だけど、無礼講にも限度はあるんだぞ?」

「あ、隊長、そこのジュース取ってください。ついでに料理も」

「62式お前もか!?」

 

くっ、ここぞとばかりにはしゃいでるな!

 

「隊長も食べないともったいないですよ?美味しいし。……怒るのにもカロリーを使いますしね」

「シキ、お前もか。で、何か見たな?」

 

64式自動小銃、名前が長いのと先にロールアウトした64式タイプとの区別も兼ねて僕はこの娘に「シキ」と名付けている。本人曰く、「ちょっと嬉しい」との事なのでちょっとホッとしたのはよく覚えている。

 

「あー!シキがカズくんとイチャついてる!?ダメだよ、カズくんは私のだよ!」

「誰がお前のだ、この馬鹿サクラ!」

「馬鹿って言った!?カズくんがそんなこと言うなんて……。おばあちゃんに言いつけるんだからぁ!」

「それはやめて!ばあちゃん、サクラのこと気に入ってるからガチの説教とアームロックが飛んでくる!」

 

くっ、シキが見たのはコレか!?やっぱシキが笑っているし!

シキ、いや、戦術人形64式自動小銃はとある特殊な能力を持っている。個体差があるが数秒から数十秒先の未来を「見る」ことができる……「見える」と言った方がいいかもしれないけれど。通称「未来予知」と呼ばれている。「予測」ではなく「予知」である。その精度はかなり高く感じる。個人的な感覚だと9割近くは当たっていると思う。この能力はI.O.P社も驚いて研究を進めているらしいが進捗は芳しくないらしい。と、それは置いておいて。

 

シキ、分かっていたなら教えてくれ!僕、ばあちゃんには絶対勝てないんだから!じいちゃん仕込みのアームロックを容赦なく孫に仕掛けてくるんだぞあの人!?

 

「いえ、痴話喧嘩ですので止めない方が楽しいかなぁって」

「……シキって何気に結構ひどいよね」

「愉悦ですわぁ」

 

この娘は結構こういう所がある。他の基地だと声帯を破損していたり、予知の能力に振り回されて苦労している娘が多いと聞くけど、ウチのシキはとかく愉快犯なことが多い。

 

「あの、隊長。他の皆さんが『SPASをなんでサクラ呼び?』って顔してます」

「「あ」」

 

唯一にして最大の良心100式におずおずとだがはっきりと言われ、周囲の状況を理解した僕はサクラと同時に声を上げてしまった。そう、僕の副官を務めるこの娘は普通ならSPAS-12(スパス-トゥエルブ)もしくは単にSPAS(スパス)と呼ばれることだろう。それに普通は戦術人形は僕達のことを指揮官と呼ぶだろうね。でも、僕達は「カズくん」と「サクラ」呼びだ。まあ、僕はテンパるとつい呼んじゃうんだよね。

 

そういえば彼女達の格好を言っていなかった。歓迎会の前に着替えた彼女達は()()着物姿だった。そりゃあ、変な格好に当たるのは間違いないけど、日本の銃が元となっている100式、62式、シキは着ていてもそんなにおかしくは思わないだろうね。でも、SPASの元はイタリア製。髪の色もSPASだけ明るい水色で他は僕も含めて黒色。うん、見事に一人だけ浮いているというかなんというか。ちなみに各人の着物とその色は、SPASは上が薄いピンク色で下が紺色の行灯袴。100式はなぜか巫女と呼ばれる格好(祖父から聞いた)62式は袴じゃなくて青地に白い花が映える着物姿。シキも着物で色は全体にピンク色で色の濃淡と桜で華やかに、脚の方には64式自動小銃が描かれている。んー、やっぱりちょっとSPASが浮いている感じだな。……100式も浮いている感じがするのは内緒だ。

 

「カズト君、良ければでいいんだがSPASちゃんとの関係を教えてほしいな。いや、言いたくないことならいいんだ。それならそれで皆納得するだろうし」

「あー、いや、そのー」

「やっぱり言いたくないことなのか?」

 

司令とようやく復活したらしいトンプソンさんが聞いてくる。いや、言えないワケでは無くてですね?ちょっと恥ずかしいと言いますか。

 

「あーもーじれったいよ、カズくん!私はカズくんがグリフィンに入る前から一緒に居たんです。民間モデルから転身したのでここに居るんですけど、元々はカズくんの家のお手伝いをしていました!『サクラ(ねえ)』ってずっとくっついていて可愛いかったんですよー」

「だぁぁあああああ!恥ずかしいからやめてくれぇ!いやもういっそころしてくれぇ!」

「ちなみに『サクラ』って名前は、私の髪が元々薄いピンク色、今着ている袴みたいな色をしていたのでおばあちゃんが名付けてくれました。今は『SPAS』モデルとして水色ですけどね」

 

20歳にもなってそういう話を職場で暴露された時、僕のダメージがどれだけか分かるかなサクラさんよぉ!?さらっと名前の由縁を説明してるんじゃないよ!

 

「あー、すまないカズト君。君へのダメージが大きいのは分かった。……だがあえて言わせてもらうよ!もういっそこの場でスッキリしておこう!」

「司令も愉快犯ですか?それとも僕が何か悪いことしましたか?死体蹴りは勘弁してください」

 

物凄く恨めしいという視線を司令に向ける。上官に対してすることではないけど今回ばかりは許してほしい。以前の職場はなんだかんだで横の繋がりが薄かったし、こんな歓迎会も無かったから油断していたよ。まさか自分達の歓迎会で、余興という形の公開処刑をされる日が来ようとは。

 

「そうだよカズくん。一回言ったら十回言っても変わらないよ!」

「内容次第でトドメ確定なんだよ!何を言うつもりだ!」

「え?『自立してお金を貯めたらサクラをお嫁にもらう』って何年か前に言ってたこととか?あの時のこと私絶対にメモリーから消さないからね!嬉しかったし……」

「…………」

 

SPA……もういいや。サクラが話の続きを皆に話している中、僕は両手で顔を隠しながら部屋の隅へそっと向かった。鏡なんて必要無い、間違いなく僕は今真っ赤な顔をしていると思う。ヤバいあっつい。誰か飲み物ください。あ、ありがとうございます。いつも思うのだけど、G36ってなんでメイドさんなんだろうか。設計者のこだわり?

 

「20歳とおっしゃられましたので軽めのカクテルをどうぞ」

「いただきます。あ、美味しい。ンぐンぐ。あのもう一杯貰えます……か?」

「いい飲みっぷりですね。はい、どうぞ。でも薄めとはいえアルコールには間違いないのでご注意を」

「あれ、フワフワって、あハ?」

「……すでに手遅れでしたか。失敗しましたね。先に確認するべきでした。爆薬の事前確認は得意なのですが、こういうことは苦手なので困ります」

 

あれー?G36さんがいつの間にか二人になってるぅ?そっかダミーかぁ。めっちゃフワフワするー。あれ、サクラ姉はどこいったー?ねーどこ行ったのー?

 

「これはスプリングフィールドから聞いた酔ったトンプソンみたいな感じですね。っといけません。メイン聞こえますか?失敗しました。フォローお願いします」

『どうしたの?』

「ナカムラ指揮官が酔ってしまいました。SPASさんを呼んでもらえませんか?どう対応するのが正しいかわかりません」

『了解。すぐに連れて行くわ』

 


 

「あちゃー、カズくんもしかしてウォッカ飲んだ?」

「サクラ姉だー。ここに居たのー?」

 

あらま、えらく子供っぽくなったなカズト君。SPASちゃんの暴露祭りの前までは凛々しい感じだったんだけど。お酒の種類で酔うタイプか。G36のダミーが出したのはかなり薄めに作られたスクリュードライバーと言っていたからウォッカでダウンすることは間違いない。

 

「SPAS、カズト君は大丈夫かい?この酔い方はあまりよくないと思うけど」

「あー、よくはないですけどそれほど危ないワケでもないんですよ。カズくんは酔いが覚めたら記憶が飛んでるハズです。ウォッカの時だけですけど。他のお酒なら普通の人と同じ酔い方です。次の日も記憶はしっかりしていますよ」

 

なんてさっきまでとは別人のように真面目にそして冷静に対応しているSPASちゃん。酔って甘えたがりに変貌してしまったカズト君を膝に乗せながら抱き寄せている。ぐずった子供をあやすお母さんみたいな包容力が凄いな。ああボディ的な意味はないから。そういうワケじゃないから、トンプソンよ私の脚を見るのはやめてくれ。417ちゃんの時のヤツは勘弁してください。あれは真剣に痛かった。

 

「なんかボスが一瞬変なことを考えた気がするんだけど。……ま、いいか」

あれ?勘が鋭くなってない?

何か言ったかボス?

「言ってません!」

 

いけない、ついボケてしまったがカズト君はホントに大丈夫なのかな?

 

「はい。カズくんはこの酔い方の時、10年くらい前の記憶に戻っているんです。具体的にはご両親が健在の頃なのですが」

「ご両親が健在だった。つまり、今は……」

「はい、お察しの通りです。私、これでも結構長い間カズくんのお家にお勤めしていたので色々と知っていますが、一人きりで寂しい思いをしたことも多かったそうです」

 

あれ、なんだろうこのSPASちゃん。ホントにさっきと別人じゃない?溢れるお姉さん感が半端ないぞ。具体的にはお姉さんモードのスプリングフィールドに勝るとも劣らない。いやお姉さんよりもお母さんの方が合っている気がするけど。これはあれか?SPASちゃんよりもSPASさん呼びの方がいいのか?

 

「司令が何を考えているかはわからないですけど、私は『SPASちゃん』でいいですよ。それと皆さんにお願いがあります。ご両親の件は聞かなかったことにして欲しいのです。カズくんが自分で言うまでは」

「「「私達からもお願いします」」」

 

ふむ、そこまで頼まれたら無視はできないな。ただ私はSPASちゃんに聞きたいことが出来てしまったのだけどね。まぁ、それは明日以降に聞かせてもらおうかな。

 

「よし、じゃあこの話は聞かなかったことにする。皆もそれでいいな?」

「「「「「異議なーし」」」」」

 

さて、後はどうするかな。

 

「あ、カズくんがこんなに甘えてくるの久しぶりなんで記念写真撮ってくださーい」

「写真撮るのか!……あーあ、かわいそうに」

「いやー、いいネタができたなシキ」

「ホントねー62。愉悦だわぁ」

「ちょっと皆、やめた方が……。あ、隊長かわいい」

 

その写真は悪用しないようにね。なんかSPASちゃんがよからぬ事に使いそうなんだけど、大丈夫?

 

「大丈夫です!ちょっと『そろそろ左手薬指に指輪欲しいなー』ってカズくんに言うだけですから!」

「それが一番重いと思うぞ!?」

 

トンプソンの鋭いツッコミが炸裂した。そんなこんなで夜が更けていく。さあ、明日も頑張ろー!

 

なお、翌日の早朝にカズト君の部屋から痴話喧嘩の声が響いてうるさい、と苦情が来るのは別の話である。




えー書いてる途中でドルフロ世界の時系列を調べてたら、この作品が結構おかしいことに気づいた今日この頃。
このまま突っ走った方がいいレベルのような……。
気にしたら負けですかね?

あと、リアルの忙しさに負けて内容が極めてツッコミ所満載になって参りました。笑ってスルーしてもらえればホッとします。

とりあえず、SPASのイメージ(腹ぺこ、太る、演劇)とは違うキャラにしたかったのでそこはいい感じ。でも、本家がいい人には受け付けないかと思います。

さーて、SPASちゃん達のダミーはどんな感じなのかなー。
……ヤバいネタがない( ̄▽ ̄;)

誤字、脱字が増えている自信がございます。申し訳ありませんが見つけたら報告をお願いします


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番外:結婚式

ここはG&Kの補給基地……ではなくD08地区の基地。

エーカー指揮官とトンプソンは、この基地で行われる結婚式に参加する予定でこの基地を訪れていた。


「いやー、おめでたいねえ。……本当に倉庫の中にチャペルがある」
「そりゃ、そのためにウチから資材と建設班送ったからなー」
「私達は帰りますね。久々に満足する仕事でした」
「「戦術人形としての仕事は!?」」
「それは別ですよ?」

※コラボ回です。またもや時系列が乱れております。追いついたら並び替えます……いつ追いつくかなぁ※


補給基地(HUB)に来てくれた送迎用のヘリに乗りしばらく、眼下に目的の基地が見えてきた。

 

「ボス、着いたぞ。D08の基地だ」

「おお、ここがそうか。ウチ以外の基地は初めてだから新鮮だなあ」

「……なあ、あそこに畑が見える気がするんだけど、気のせいかな」

「立派な畑だね。人形達が耕してるのかな?」

 

今日はこのD08基地にて執り行われる結婚式に私とトンプソンはそろって出席する。いやあ、ウチの建設班によって式場が建つ日が来るとはね。ウチでもカズト君たちに必要かもしれないし、コンテンダーとはまた相談しておかないとな。あと今回のご褒美とかも。そんなことを考えているとトンプソンが頬を朱に染めつつ話しかけてきた。

 

「なあ、指揮官?あたしの格好変じゃないかな?似合ってなくない?」

「よく似合っているよトンプソン。いつもよりも綺麗になっているから安心して」

「いや、綺麗までは言わなくていいから!恥ずかしいし……」

 

可愛い反応をどうもありがとう。今日のトンプソンは以前とは違うドレスをチョイスしていた。あの時のドレスは結構派手だからお呼ばれには向いていないという判断だろう。モノトーンカラーでプリーツスカートワンピースのドレスを身に纏うトンプソン。前のドレスはスカートが斜めのスリットで片脚の見え方が際どいセクシーな感じだったけど、今回は膝丈のスカートなのでどちらかというと可愛い系のドレスだ。とても女の子している感じが普段と凄まじいギャップを生んで不安に思ったのだと思う。いや、そのギャップが非常に素晴らしいですよ?普段が決して可愛くないワケじゃないのだけど。むしろ可愛いと思うのウチのトンプソンは。って誰に対してでもないトンプソン自慢をしている間にいつの間にか着陸していたヘリから、ちょっと慌て気味に降りる。パイロットからの視線が痛かったよ。

 

さて、ヘリから降りた後は受付の為に門へ向かう。すると見えてきたのは……、って目がァ!?

 

「すまないボス。アレは見せられない。ああ、見せるわけにはいかないんだッ!」

「トンプソンよ、いくらなんでもいきなり目潰しはヒドイ。それとあれは記憶が確かなら『イサカM37』でしょ」

「よしボス。頭から記憶を消す準備はOKかな?」

「ちょっと待って!落ち着いて!?結婚式場で流血沙汰はマズイよ!」

 

記憶している限り、イサカは立派すぎる胸部装甲を持っていたハズ。それにトンプソンが過剰反応したワケだ。トンプソンもイイもの持っているんだけどなー。あ、そろそろ目が治ってきた。……ん?

 

「ってダイナゲートがいる!?」

「あれ、ボスは知らなかったか?最近ダイナゲートが結構流通してるぞ。襲撃の時に来てくれたS09地区の基地が開発&販売元らしい。結構な数のバリエーションがあるんだって」

 

目が潰れている間に受付を済ませたらしいトンプソンから説明を受ける。なんかイサカの隣にいた男性職員から生暖かい視線が飛んできているが無視だ無視。……視界の端で受付用の机の下で何か動いているのが見えた気がする。さては君、イサカと付き合っているとかじゃないよね?……離れは1軒で間に合いますか?ってそこは置いておいて、ダイナゲート販売されているの?初耳だよトンプソン。

 

「あれー?ちょくちょくビデオレターとか届いていたんだけどな」

「まあいいや。後で探そうか。……ああ、基地内も結構走り回っているね。バリエーション多いなあ」

「……ウチにも一体欲しい」

 

なら余計に探さなきゃね。っとそろそろ式場へ向かおう。時間に余裕はあるけどギリギリに入るのは性に合わないからさ。そう思って式場へ歩き出しつつ、ふと思い出したのでトンプソンに聞いてみる。

 

「なあ、トンプソン。外に立ってた男二人、どう思った?」

「うん?一人は普通に傭兵って感じだな。ウチらグリフィンと近い仲のPMCなんじゃないか?ほら今日はこの基地の防御が薄くなるしさ。もう一人の……失礼だが半分くらいサイボーグっぽい男はさっぱりわからない。でも一つ言えるのは纏っている雰囲気がヤバい。歴戦なんてもんじゃないぞアレ」

 

さすがにウチの中で最も経験のある人形だけはあって、素早く観察結果を教えてくれる。ああいう人達とも上手くやった方がいいんだろうなウチは。人の戦術に即応できるのはやはり人だからね。どうしても人が敵となることが多いウチとしては他のPMCとのつながりを持つことも視野に入れた方がいいだろうと思う。

 

「ボス、ここが式場だ。……コンテンダーが本気出したなコレ」

「シンプルだけど立派なチャペルじゃないか。これならいい式ができるってみんなに自慢してもいいかな?」

「それはやめておこうなボス。コンテンダーを褒めたい気持ちは分かったから。主役はここの人達だからさ」

 

仕方ないね。さ、椅子に座って始まるまで待とうかトンプソン。……暇だし、べた褒めしてトンプソンを沈めちゃおうかな。

 

「何か企んでいるな、ボス」

「気のせいじゃないかな?」

「何かしようとする前に周りを見てみなボス。各地の有名人がいるぞ。あの指揮官達、結構顔が広いんだなー」

 

トンプソンにそう言われて周りを見回してみれば色々な顔ぶれが並んでいる。失礼ながらかなり小さい体格の女の子、いや女性指揮官がいるな。その子の隣というか周りにはワルサーPPKとP7にステアーTMPがいる。皆、笑顔一杯だね。なんというか幸せな家族って感じがするよ。

 

違う方を見てみれば、今度は整備屋の雰囲気を漂わせている男性とG3を連れた女性指揮官が談笑している。どんなつながりなのだろうかと思って聞き耳を立てて話の内容を組み合わせてみたら、どうも二人ともラジオや動画で銃の解説・銃等の歴史の解説をしているらしい。どうにも私は銃に詳しくないし聴いてみるのもいいかも知れないね。

 

話声が聞こえてきた方を向けば、あれは404小…隊……じゃないな!本部にいた頃に何回か見たし、前に物資調達(つまりぶんどりに)しに来たあの娘達とは違うね!具体的にはG11があんなに背は高くなかったと思う!あと眠そうにしていないだと!?なんかUMP45も気持ちオドオドしているような?あとHK416が英語しか話してません。君はアメリカ人かな?UMP9は…ああそれほど変わらないのか。若干リーダーシップを発揮しているけど。ああいう娘達もいるのかって驚きだね。世間は広いよ。

 

「あ、あの416結構スラング使ってるな」

 

さすがアメリカ製の銃の戦術人形だ。分かったらしい。言葉の中身は推して知るべしというのが彼女からの忠告だった。一瞬「うわ」って顔をしてたから、さすがスラングって感じのことを言ったのかな?

 

今度は何か『マシンガンは素晴らしい』的なことを連発している所があるな……。そっちに顔を向けてその声の主達を見てみると、うーん、彼女達はまったく見たことないなー。ただ雰囲気は人形…かな?銃の名前はわからないぞー。一人ピエロの仮面を付けているのが印象に残るなぁ。

 

「あれ?あいつらってどっかで見たような気がするけど……。あー、思い出せない!たぶん本部にいた頃だと思うけどなー」

「まあまあ、いいじゃないか。他にはー?……『あれ』が何でここに居るのさ」

「『あれ』?」

「主計課からの愚痴が半端じゃない『バルカン』だよ。弾薬消費は湯水のごとく。本人もばら撒くのが大好きだから手に負えない。まあ、鉄血は消し飛ぶから戦果はいいんだけどさ」

 

何やら余興の準備をしているな。実弾以外でも撃てればいいのかな?あっちの『マシンガントークをしているマシンガン』と話が合うと思うよ?

 

ん、あっちにも誰か居るみたいだ。人形かな。

 

「あー、あちらさんはもう一人のHK417だな。HK417の16インチモデルだとかでARらしい。社内報に載ってた」

「あれま。見落としていたのかな」

 

そいつはしまった。というかこれは社内報を読み直さないといけないんじゃなかろうか。結構知らない人が多いよこれ。あー、全然交流を持ってこなかったツケだねこりゃ。

 

「お、ボス。そろそろ始まるみたいだ。さ、行こう」

「はいよ。さ、レディ」

 

トンプソンよりも素早く椅子から立ち上がり、彼女に向って手を差し出す。ちょっと頬を染めながら私の手を取った彼女は照れ隠しらしきものを言ってきた。

 

「なんだ、またかっこつけかいボス」

「その通り。こういう場では格好つけた方がいいのさ」

 


 

「なあボス。新婦が9人って結婚式聞いたことある?」

「いやあ、ないなー。昔の中東諸国ならあり得たのかもしれないけど、少なくとも今は無いだろうね。…たとえ中東でも同時に9人は無いだろうけど」

 

今は披露宴の会場でトンプソンと席につきながら先程の結婚式の感想を話している。まあ、皆幸せそうだったからいいのさ。8人のウェディングドレスに身を包まれた娘達が並んで入場した時は「あれ?417ちゃんはどこ行った」と思ったけれど、一度扉が閉まりそしてまた開かれた時に彼女が立っていたのを見て分かった。「ああ、正妻の座は彼女の物か」と。

 

それにしても、9人も嫁に迎えるとは剛毅だねタカマチ指揮官。ついでに懐の広さには恐れ入るよ。いくら友軍認定された娘とはいえ鉄血のデストロイヤーとも結婚するとは……。ただ、風の噂では彼女に対してある基地の連中がかなり非道な扱いをしていたとも聞いたし、彼のことだから何かしてあげた…いや()()()()()()()。それで彼女も惚れたかな?

 

「そういえば、ブーケトスでまさか君が取るとはね」

「いや!9個あったしさ!?気づいたら手元にあったんだよ!?深い意味はないから、うん。深い意味はないんだボス!」

「どう見てもあるんだよなあ。そろそろ私も考えるべきか。ま、今日明日決めることじゃないし。するなら用意周到にしたいしなあ

「わー!ないったらない!……ってボス何か言った?」

「んー、何も?」

 

なんて話をしていると、新婚夫婦が私達のテーブルへ来た。イチャつきながら各テーブルを回っているのだろうね。ほら周りのカップルが当てられてイチャついているし。

 

「いや、あなた方も大概イチャついていると思いますよ?」

「ん、何のことかな?」

「イ、イチャついてなんかいないし!」

 

なんのことかなー?でもトンプソンいじるのは楽しいよ?すぐに顔を真っ赤にするし、言ってることが可愛いこと可愛いこと。

 

「なぜ結婚しないのか疑問に思うレベルでイチャついてると思う」

「というか時々夫婦感が出てる時もありますよ?」

「ははは。まあそこは置いておいて。お二人とも結婚おめでとう。これから色々と大変だと思うけど頑張ってほしい。戦力という意味ではまったく手伝えないけれど、物資の手配や簡単な施設建設とか裏方業務なら手伝えるからさ」

いつかは私も指輪欲しい……って言いたいなぁ。結婚おめでとう。新婦9人には驚いたけど幸せにな!」

「「今、言えばいいのに」」

「そこは聞こえたらダメな所だなぁ」

「あーあー、私は何も言ってなーい!」

 

あらー、これは新婚さんに「イチャついてる」と言われてもしょうがないね。

 

「これはこれは。今度はそちらへお邪魔することになるのかな?」

「ふふっ。あ、今回のチャペルっていうか倉庫?かな。それと食材とかありがとうございました」

「ん?ああ、そんなに気にしないでほしい。前に助けてもらったお礼も兼ねてるからさ」

「いや、それでも助かった。設計に建設までしてくれたから多少は安くなったし。いや、こんなことこの場で言ったらホントはダメだろうけど」

「でも、ダーリンが貯めてたからできたけど正直結構苦しかったと思うよ?」

 

それはそうだろうなあ。これだけの規模になればどうしても費用が掛かってしまう。ドレスも9人分だし。小さいとは言えチャペルも用意するとなるとさらに高くなってしまうよね。

 

「だから、今回は本当にありがとうございました」

 

そう言って手を差し出してくる417ちゃん。旦那さんの前で握手してもいいのだろうか、と思ったけで所詮は握手だしね。そう思い直して手を握る。……おい、トンプソン。その殺気を通り越して殺意の域に達しそうな視線はどうした?

 

「……ハッ!?いや、綺麗な娘とボスが握手してるのが……ちょっと……我慢できなくてさ

 

すまない二人とも。ちょっとこの可愛い娘には痛い目にあってもらうので次のテーブルへどうぞ。

 

「私は気にしてないですから。ほらー可愛い嫉妬ですよ?」

「……ああ!『痛い目』ってもしかしてそういうことか?ははっ417よ、俺たちはお邪魔虫かもしれないぞ?」

「なんのことかな?ほら、他のお客さんも待ってるし次へ行った行った。……おめでとう、彼女を…()()()()()手離しちゃいけないぞ?

「ボスぅ、ごめんよー!だから許して!」

 

はいはい、許さないから帰ったら覚悟しておくように。可愛いらしい嫉妬がそう簡単に出ないようにしてあげるからさ。

 

「ああ、離したりなんかしないとも。絶対にね」

「さ、ダーリン次の人達の所へ行かなきゃ。それじゃあ楽しんで行ってくださいね!」

 

今回の主役の二人が離れていったからか、トンプソンが抱きつく勢いで謝ってくる。……私が何をすると思ったのやら。基地へ帰ったら私も君との関係をちゃんと考えようと思っただけだよ。そう、いい加減に覚悟を決めようかなってさ。可愛い嫉妬は不安の証拠。私が他の女性に取られるかもって不安さ。ならその不安を取り除くにはどうするか?彼女の不安が無くなるのなら、口づけでももっと深いことでも喜んでしようじゃないか。あの新婚さんに一番当てられていたのは実は私だったのかもしれないね。




カカオの錬金術師様の「元はぐれ・現D08基地のHK417ちゃん」コラボパート2(実質3回目)でした。今回は前(パート1)よりも関わらせて頂いております。
なんかご本家に「いちゃついた未婚カップル」言われたのでイチャつかせたら一線越えかけてる(笑)

さて、ここで1つ言い訳させてください。
本当は月曜中に、せめて火曜にと思ってたんですよ?
そしたら、「よし、いっそのこと式場に来てたコラボ9個分こっちも入れてしまえ」と魔が差してしまいまして。結果がこんな有様に…。

セリフは入れておりません。なぜかって?キャラ把握間に合わないからだよ!カカオさんの気持ち分かったわ!

さらにこの後書き書いてる段階で「よく考えたら関係各所に許可もらってないわ!」って気づいたので、作者様方はお怒りになられましたら連絡ください。急ぎ修正いたします。見てない可能性の方が高いけどね!ウチはどマイナーだわ!恐れ多いわ!(自虐中

以下、この時式場を訪れていたコラボ作品群(順不同)

焔薙様作「それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!」
サマシュ様作「傭兵日記」
Rione様作「ドールズディフェンスライン」
スツーカ様作「指揮官とG3がお送りするドルフロ銃解説」
Big Versa様作「404小隊(大嘘)」
HIKUUU!!!様作「IM NOT MAN.I AM A DEAD MAN」
杭打折様作「妄想フロントライン」よりHK417-16
通りすがる傭兵様作「ドールズフロントラジオ 銃器紹介コーナー」
oldsnake様作「破壊の嵐を巻き起こせ!」


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街の話

ここはG&Kの補給基地、HUB。

街の顔役が未だ姿を隠している。これは街でまだ問題があるということか。

「なーんか、半月くらい夢を見てたような?」
「どこかの青い装甲服の人はもっと夢見てるらしいよ」
「ご主人様、メタなことは言わない方がいいかと…」


襲撃を切り抜け、数日で新指揮官の着任という怒涛ともいえるイベントをこなしたこの基地だが、まだ解決していないことがある。それは街の顔役である『ミスター』といまだに連絡が取れず、さらに彼に近い人間も街で見当たらない。これは、まだあの街に何かあるということだろうか。

 

執務室で、1人考え込んでいると部屋のドアが開き私の副官たるトンプソンが入ってきた。右手にコーヒー、左手には資料…報告書かな?を持ち、それを読みながらだけど。

 

「ボスー、FMG-9から報告だ。ミスターが居ない理由も書いてある」

「わかった。報告書見せて」

「はいよ」

 

彼女から報告書を受け取り目を通す。ザッと見た感じだと、カルトの残党が原因のようだ。殲滅したつもりだったのだけど。ああ、他所からコッチへまた来たのか。うん?これは……。

 

「トンプソン?」

「ボスなら、今回のカルトが()()()()()()()()()()()()は分かってたんじゃないか?」

「…まあね、薬物を信者に使う辺り怪しいとは思っていたよ」

「で、結局は他所で調子に乗ってる犯罪組織のフロントだったワケだ。コイツらの目的はデモンストレーション。()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()を他の犯罪組織(バカ共)に見せて売りつける目的だった」

 

報告書に書いてあることをかいつまむとそういう内容だ。このご時世人間の方が少ないから人形を使った方がいいのではと思うのだけど、普通の組織が使う分にはまだまだ単価が高いというのが人形の実情か…。襲撃の時に大量に襲ってきたけどね。

目的に特化したモノ、つまり特定職業用の人形なら安いだろうし第1世代ならさらに安いとは思う。だがそれでは応用が効かないし、()()()()()()()()P()M()C()()()()()()()()()()()を作りたい犯罪組織なら役者不足ということだろう。

 

「でも、あの薬を使われた人達はどう見ても廃人…兵隊なんてものには程遠い様子だったけど

「そこなんだよなー。まだ未完成の薬なのかもしれない。あれじゃ、ただの弾除けにしか……アレ思い出した」

「あーあー。コーヒーはそこに置いて横になるといいよ」

「うぅっ」

 

もう完全にアレがトラウマだなぁ。ま、トンプソンは置いておいてミスターの方だ。またカルトもどきが戻って来るなら元を叩かなければいけない。とはいえここは補給基地。他地区での作戦行動なんてものは出来ないし、そもそも私にその作戦の立案・指揮を取る自信は無い。組織の大元は別地区の基地に任せるとしてだ。当座の対応としてまた街に潜り込んだバカ共を殲滅した方がいいと思う。検挙していたらキリがないし、あの街で起こる乱痴気騒ぎは世間に知られることはまずないから、一人残らず殲滅する。少なくともあの街の住人なら私達の行動を責めたりはしないハズだ。

 

「ミスターに帰ってきてもらわないとコチラも色々と苦しいよなぁ。あの人のおかげでウチと街の関係が良好なワケだし。トンプソンも気に入られてるし、君も気に入ってるでしょ?」

「んー?…まぁ、嫌いじゃないけどなあ。昔、ボスを殴ったことだけは許せないけど」

「もうだいぶ前の話だねそれは。トンプソン、復活したらカズト君を呼んでくれ。また街で戦闘するのは心苦しいけど仕方ない」

 

ここで潰さないと以前の二の舞になってしまう。とっとと片付けましょー。

 

「ボスってさ、ホントに事務畑出身だよな?最近、指揮がイケイケな感じが…」

「もちろん。トンプソンだって主計課に遊びに来てたから知ってるでしょ。毎日来てたし」

「ま、毎日は行ってないよ!?…確か」

「いや、来てた。間違いなく来てた。君が非番の時は1日中居たよ。…私の席に居座ってた」

「うあー!ナカムラ指揮官呼んでくるー!」

「あ、逃げた」

 

指揮がイケイケか…。そうだろうか?彼女達が頑張ってくれているし、街の事を考えれば素早い対応がいいと思うのだけど。

 

「さて、今回はどれだけの出費になることやら。…カズト君も巻き込んでアレするか」

 




今回、久々に2000文字切りました。
理由?とりあえず、生存報告しとこうかなと。

ここから言い訳ターイム
活動報告にも書きましたが、諸事情で半月ほど完全に離れていましたので皆さんに忘れられたかなーと思っています。で、ささやかながら自己主張しておきます。

元々、この話は離れる前に練っていたのですがどういうオチにしようとしていたか忘れましたので丸っと書き直しました。

整合性はいつものごとく暖かい目で見ておいてください。自分でもツッコミ入れたいのですけどね(笑)

ではでは。


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街の話 2

ここはG&Kの補給基地、HUB。

街にカルト教団という殻を被った犯罪組織が再度現れた。
HUBは彼らを殲滅することを決意する。

「はーい、作戦会議のお時間です」
「なんか今回、独自解釈多くない?」
「メタいことは言わないで!?」

※真面目に独自解釈多めになってます。苦手な人はブラウザバック!


時刻は午前10時。ここは補給基地通称HUBにある作戦会議室(ブリーフィングルーム)

 

「さて、全員集まったかな?…では作戦会議(ブリーフィング)を始める。まず現状の確認だ」

いつも思うけど作戦の時は口調含めて変わりすぎだと思うんだ

いつもこんな感じなんですか?

「そこ、私語は慎むように」

「「すいません」」

 

カズト君はまだしもトンプソンまで突っ込んでくるかー。こういう時は威厳見せておかないといけない気がするんだよ。作戦指示とかもこっちの口調の方がしやすいしね。咳払いをして話を戻そう。

 

今回の目標は以前にこの基地を襲撃してきたカルト教団の残党だ。カルト教団と言ってもその実犯罪組織のフロントだったワケだがね。街に入りこんでいた連中は掃討したが、また現れたようだ。性懲りのない連中だな。

 

で、こいつらがいるために街の顔役『ミスター』がまだ姿を隠しているというワケ。そろそろ彼に戻ってきてもらわないとちょっと支障が出てきそうなんだ。そこで迅速に目標を殲滅する。

 

作戦の大まかな流れは、明日24:00までに装甲車で街へ、その後徒歩にて目標(タンゴ)が根城にしている廃ビルに向かう。その後周辺をクリアしてから廃ビルを強襲し内部を制圧する。

 

今回の主力はナカムラ指揮官及びその指揮下部隊だ。具体的な編成はナカムラ指揮官、SPAS、100式、62式、64式自、さらに当基地所属のAR(アサルトライフル)3名・HG(ハンドガン)6名・SMG(サブマシンガン)6名・SG(ショットガン)2名だ。今回、RF(ライフル)班は近距離戦闘及び入り組んだ地形での戦闘となるため、廃ビルには入らず分散して周囲の建物内で目標を監視、状況によって介入する。なお、62式はHG2名・SMG2名と共にRF班の護衛をしてくれ。

 

「ここまでで質問は?」

「はい」

「FALか。どうした?」

「ナカムラ指揮官は車両からの指揮よね?」

「答えは否定(ネガティブ)だ。彼も君達と共に突入する」

「は?いやいや、危なすぎるわ。遊びに行くワケじゃないのよ」

「ナカムラ指揮官が今までに従事した作戦の記録を見て、果たして同じ事が言えるかな?」

 

言い終わったタイミングでトンプソンがメインモニターに過去の作戦記録を表示する。さすがは副官歴最長、言わなくてもいいのは助かるよ。

 

「え?何この記録…」

「前に実績無いって言ってなかった?」

「実績が無い者に指揮官は務められないだろう。彼はこの基地で最大の()()()()だ。突入作戦時の能力は君たち戦術人形に匹敵する」

 

モニターに表示されている記録は、本部管轄区域での犯罪組織に対して行われた強襲制圧作戦のモノだった。皆がザワつくのもよく分かる。

 

「私もこの記録を見た時は本部へ確認を取ったよ。『誇張してないか』ってね。答えはNOだった。御丁寧に作戦映像も送られてきてね。映像の中で見たあの反応速度は、正直人間辞めてるんじゃないかと思ってしまったよ」

「サラッとヒドイです司令」

 

本人からの抗議がきたがどうやってもアレは人外だと思う。もしくはフィクションの登場人物だね。そう思うくらいには恐ろしい反応速度を見せてくれていた。

 

「前の部署でも言われてましたけど、祖父にちょっと鍛えられただけなんですが…」

「時々話に出てくるそのお祖父さんはきっと普通じゃないね」

 

カズト君の人外っぷりは一旦横に置いておくとして、今回は以前よりも真正面から乗り込む(思いっきりカチコミだ)。こういう時は装備も惜しまず使うべきだろう。彼女達が無事に帰還するためなら手痛い出費も何のそのだ。だけど出費をそこまで気にしない理由がこの基地の特性を除いても今回限りもう1つある。

 

「今回の目標は連中の完全殲滅なワケだが、もう1つ目標を追加する」

「もう1つ目標?」

「ああそうだ、トンプソン。FMG-9から追加の報告書が届いた。その中には()()()()()()()()()()()()()が目標の廃ビル内にあると書かれていた。写真も添えられていたよ。恐らく街の商売人達を囲うために持ってきたのだろう」

「ボ、ボス?まさか…」

「そのまさかだ。目標制圧後、()()()()()()()()()()()を確保するんだ」

 

持ち主不明のお金は洗浄してから使いましょうねっと。

 

「いや、ボスそれはマズイだろ!?本部へ報告を…」

「あー、司令はこういうことやらないタイプと思ってたんですが、しちゃいますか…」

「ナ、ナカムラ指揮官?何か知ってるのかしら」

 

ふむ、カズト君はやっぱりした事あったか。正確には彼の上司達がしていたのだろうけど。私も前の部署の時にちょっと、ね。

 

「以前居た警備部でなのですが。G&K本部からは色々と支給されますし必要に応じて装備の陳情も出来ますが、どうしても時間もかかるし望んだ性能の物では無いこともあります」

「だが、その性能が必要で陳情しているんだ。それが手に入らないのなら…」

「いわゆるブラックマーケット等で買うことになります。その部隊の財布(へそくり)を使う形で」

「で、市街の警備部隊…特に犯罪組織と直接やり合ってる部隊はよく()()()()()()()()()()()()を持ってくるのさ」

「え?え!?いやいやいや、ボス!?それダメなヤツだよね!?」

 

トンプソンや他の人形達が慌てる理由もよく分かるのだけど、コレは現代では正直よくある話だ。昔の…それこそ第三次世界大戦前の警察等ではコレは横領と言えると思う。

だが今のご時世では私腹を肥やすというよりも、自分達の安全を確保するために行われていることが多い。横領してるヤツもいるけどね。そういう連中はだいたい気づかないうちに消されている。

つまり、G&Kの上層部もこの事をいくらかは把握していると見てほぼ間違いない。だが、適切に使っている部隊には懲戒どころか叱責の1つも無い所を見るに黙認しているのだと私は思っている。

 

「いやー、昔主計課の中堅してたら警備部所属の人間がいきなりメモを持ってきたのさ。『持ち主不明の大金を使えるようにして欲しい』ってさ」

「僕も何回か知っています。でもそれで命拾いしたこともありましたから、一概にダメな事とは断じれないですね」

「というワケで今回私達もやっちゃうことにしました」

「「「「えー…?」」」」

「だってさー、君達に今回使わせる予定の防弾ベストとか段取りしたら結構な出費になったのよ。それに前回の襲撃の修繕費とかもあるし。お金はあっても困らない!」

「「「「うーん…」」」」

 

このお金の件は置いておくにしても、皆は「この世の中で大企業が手に入れられないものをブラックマーケットで手に入れられるのか?」とか思っているのかも知れない。答えはYESだ。何故ならば、大企業が手に入れられない=手に入らないではないから。

大手PMCといった大企業――今回はG&Kだけれども――は必要な絶対数が多いために、購入・配備のコストが非常に多くなってしまう。そうなるとどうしても性能を落としてコストを抑えようとするワケだ。

だがメーカーはハイエンド仕様も生産している。ではそれを買うのは誰か。往々にして金を持て余している上流階級や犯罪組織なのだろう。メーカーとしてはそういった者達と表立って取引するのはあまり良くない。人類の危機の渦中だからだ。なぜ、もっとPMCに安く売らないのかといった文句も飛んできてしまうだろう。

だが彼らも企業である。現在人類の危機ではあるが、彼らも自分たちの利益を求めてしまうのも仕方ないと言えるだろう。人類が滅ぶ寸前とはいえ()()()()()()()。少なくとも私は彼らを責めようとは思わない。これも企業の生存戦略だから。

 

「とりあえず、ボス。もう1つの目標は分かった。可能な限りそれも確保するってことでいいのか?」

「ああ。優最優先は目標(タンゴ)の殲滅。1人たりとも生かして返すな。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、1人も生き残らず死体も見つからなかった。せっかく持ってきた金もバラバラに飛んで行ってしまった。って所かな?」

「司令、サラリと結構えげつないこと言ってますよね」

「いいのいいの。連中がいても、この基地にとって良いことなんて一切無いしさ」

 

さーて、みなさーんお仕事のお時間ですよー。通常の業務は最小限にして戦闘準備を。カズト君は夜に備えて休みなさい。寝れない?SPASちゃんを抱き枕にでもしておきなさい。

 

「あ、言い忘れていたけど今回は私もついていくよ。もちろんトンプソンも来てくれよ」

「は!?」

「もちろん私は突入しないよ?拳銃すらまともに当てられないし。RF班と一緒にいるつもりだ」

「前みたいに基地にいるんじゃないの!?」

 

いや、街の人達に連絡しなきゃいけないじゃないか。ミスターはいないけど彼が残した連絡網は生きているし、あれの存在を知っているのは私とトンプソンだけだろう?

 

「なら私が行けばいいだけだろう!ボスが危ない所へ行くのは…」

「君が言ったんじゃないか。『ボスは私が必ず守る』って。あの最高の笑顔と一緒に私は絶対に忘れないぞ」

「ボスぅ!?今はその話はやめよう!真面目な雰囲気が壊れるから…」

「あ、指揮か…司令官とトンプソンの馴れ初め?興味あるわ」←とてもいい笑顔のFAL

「ほほう、そこのところ詳しく教えてください司令」←ニヤニヤしているSPASちゃん

「司令も大概トンプソンさんにぞっこんですよね?」←抱き枕発言のカウンターを狙うカズト君

「「「「いい加減にくっつけばいいんだ」」」」←いつの間にかいたトンプソンダミーズ

 

トンプソンよ真面目な雰囲気なんぞもう無いぞ?何せ私自身予想以上に追及されて驚いているからね!

 

「はいはい、それはまた今度な。私を飲み比べで負かした奴がいたら答えよう。今回は完全に夜間戦闘になるから装備を準備・再点検しておくように。解散!」

「「「「メインをヘタレといつも言うけど、ボスも大概ヘタレだと思うんだ」」」」

「「確かに」」←いつの間にかいたG36ダミーズ

「ご主人様はもう少し積極的になられてもいいのではと思いますね」←同G36メイン

 

ええい、ダミー達め好き勝手言っているな。1人メインがいるけど。積極的になれていたらとっくに式を挙げてるよ!

 

「言質取れたな」

「ばっちり録音した。良かったなメイン、これが終わったら結婚式だ!」

「それ、今だと死亡フラグだからメインやボスは言っちゃダメだからな?」

「『俺、実は基地に恋――』」

「「お前らぁー!」」

 

作戦開始まであと13時間―――




真面目っぽい雰囲気作ろうとしたけど、後半我慢できずにダミー達が暴れました。
後悔はしておりません。

とりあえず、カズト君は人力チーター枠なんで次回頑張ってもらおうと思います。

今回の話は最近ハマっている動画の影響が少々あります。
次回が特に影響受けた内容になるかと。描写できるかはわかりませんけどね!

あ、現在コラボの話を頂いております。
サマシュ様作「傭兵日記」
すでにチラッとHUBが出ております。どうなるか楽しみです。
ポチ可愛いよ!しゃべるダイナゲート(大)だよ!


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番外:新たなる訪問者

ここはG&Kの補給基地、HUB

この日、この基地との繋がりを求めて1人の指揮官が1人の戦術人形と1人の傭兵を伴って現れた。

「最近、よくお客が来るねぇ」
「それも含めて本編にて!」
「急にメタいぞ、ボスぅ!?」


現在、とある基地からアポイントメントがあり出迎える準備をしている所だ。

とは言っても、通常業務を少なくした上で片付けるだけなのだけど。

 

「トンプソン、そろそろ時間かな?」

「ああ、そうだなボス。そろそろ到着予定の時間だ」

 

出迎えの時にはカズト君達にも集まってもらうように言ってある。この基地の現体制上、紹介しておかないとね。

ヘリポートへ向かう道すがら、トンプソンと他の基地からの訪問者が増えていることについて話そうか。と思っていたらトンプソンの方から話を振ってきたよ。

 

「それにしても、最近色んな指揮官が来るなぁ。客間広げる?」

「その辺りはコンテンダーに丸投げするとして…。皆が横の繋がりを作り始めたってことさ。敵は鉄血だけじゃないからね。いつ後ろから弾が飛んでくるか分からない世の中だし」

「世知辛いなぁ」

 

ウチは物資の面で困ることはそうないけれど、他所はどうしてもその点が不安になる。補給物資が無ければ屈強な軍隊ですら弱兵と化すからね。

ウチ(グリフィン)は大手のPMCとはいえ結局は企業でしかないワケで、グリフィンを気に食わない人間も当然この世界には存在する。そういう人間にとってはグリフィンの邪魔をした結果が鉄血の侵攻に繋がっても気にならない。むしろ、グリフィンの失敗として喜ぶくらいじゃないかな?たとえ、その侵攻で人がどれだけ死んだとしてもね。

ま、そこは一旦置いておくけど、人間がウチの邪魔をしたい時に最小限の労力で最大限のダメージを出せるのは何か。それは兵站線の破壊だ。それはもう効果的だよ。さすがに1日2日でどうにかなるような資源貯蔵量ではないだろうけど補給が無ければいつかは干上がる。そうなれば前線なら鉄血に蹂躙されるし、後方はカルトなり人権団体の過激派なりに襲われた時にひとたまりもない。

それを防ぐにはどうするか?これまたシンプル。補給線を増やせばいい。そりゃそうだ、1つが潰されても代わりに2つ3つと予備があれば元々の補給線の復旧まで問題が無くなるからね。で、今回来る指揮官はその補給線を増やしに来たんだと思うんだ。

 

「ウチは物資に関しての独自裁量権を持たされてるからなぁ。主計課上がりの平社員に何を持たせているんだグリフィン。誰が許可したのさ」

「ボスが元主計課だったからだし、許可したのは社長(クルーガー氏)だろ」

「独自裁量って難しいんだよ?極論、贔屓だって思われることもあるしさ」

「贔屓でもいいと思うけどなぁ。通常の物資運搬はしてるワケだし。あとは追加分だけだからさ」

 

そんなものだろうか?と考えているとヘリポートへ着いていた。まだお客さんは着いていないようだね。それなら、サッとしか先方さんの情報見てなかったし軽くおさらいしておこうかな。

 

「先方さんのこともう1回まとめておきたいんだけどわかる?」

「それは私から説明しましょう。司令のことですから資料をサッと見ただけだろうと思って準備してました」

「カズト君もう来てたのか」

 

カズト君は特に真面目だからもう少し前に来てたんだろうね。いや、私が遅いというワケでもないよ?今は到着予定の15分くらい前だし。カズト君からの説明を聞きながら誰にともなく言い訳してみた。

 

今回来られる指揮官の所属は新興区域のS10地区。名前はメグ・コーマック。『ヨーロッパの食糧庫』とも呼ばれる大農園を所有するジャガーソン・コーマック氏の愛娘ですね。彼女がウチへ入る時にジャガーソン氏からの圧力があったとか。僕がまだ警備部の頃に噂になりました。彼女の基地はジャガーソン氏のバックアップも多少受けているそうです。支給物資以外でメインの補給線はそこだと思われます。

 

「予備の兵站線を確保したい、とこの基地へ来たのだと思われます」

「あ、あと傭兵さんも来るらしいですよ」

「傭兵?よそのPMCってことは…あそこか」

「そのPMCはウチ(G&K)と業務提携していますね。『武器庫(armoury)』だそうです。ご存知で?」

「本部の頃にね。あの時の社内報で時々名前が出てたハズだ」

「あー、あったなあ。…ふと思い出したんだけどさボス。D08の結婚式で警備してた傭兵いただろ?あの当時の社内報に写ってた気がするんだけど」

 

えーと?あ、本部近くの喫茶店ですっぱ抜かれてたヤツか!あの時は笑ったなぁ。人形達にモテてたMr.プレイボーイか。主計課の休憩時に話題になってたね。よく覚えていたねトンプソン。

 

「いや、実は社内報さ、全部部屋に残してあるんだよ。ほら、ボスと知り合ってから主計課によく行ってた頃のやつ」

「……もしかして、トンプソンさん司令から社内報もらってた?」

「ん?よく分かったな」

「わかった。司令に貰ったものだから捨てられなかったのか。司令もモテますよね。主に1人に」

「だー!なんでそうなる!」

「「どう考えてもそうなる(よ)」」

 

カズト君達も馴染んできたなぁ。トンプソンで遊べるようになるとは…。数日に1回くらいは誰かに遊ばれてるねトンプソン。赤くなった顔を隠して蹲っちゃった。

 

「うあー!…そ、そろそろヘリが着く頃だよ、ボスぅ」

「そうだね。ほらいつまでも蹲ってないで立った立った。ほら」

「あ、ありがとう、ボス」

 

手を差し出し、おずおずと私の手を掴んだ彼女を立たせると、普段よりも彼女と顔が近づいた事にふと気づいてしまった。…やっぱり美人だよなぁ。

 

「司令、そろそろイチャつくのをやめてくださいね。ヘリが見えましたよ?」

「カズくん、私もああいうことしたい。ふと顔が近づいて見つめあってみたい」

「サクラは後でお仕置きな」

「なんでぇ!?」

 

くっ、カズト君にツッコまれるとは!?いや、トンプソン美人でしょ!?クールビューティーでしょ!?

 

「たしかに美人ですけど、ここのトンプソンさんは『クール』じゃないです」

「むしろ『カワイイ』ですよね」

「もう勘弁してくれぇ!恥ずかしいからぁ!」

 

そっかー、クールじゃなかったか。…でもそれもまたよし、ということで。

 

そんなこんなでヘリが到着し、そのヘリから降りてきたのはコーマック指揮官と彼女の副官だろうG36に件の傭兵も合わせた3人。自己紹介を軽く済ませた後は応接室へ向かう。その道中でトンプソンに耳打ちした。

 

なあ、あの傭兵さん、昔社内報に載ってた人じゃないか?

つか結婚式の警備してたヤツじゃん。こんな偶然ってあるのか?

「どうかしましたか?」

「「いえ、なんでもないですよ?」」

 

コーマック指揮官の所のG36――「ローゼ」という名前があるらしい――に声を掛けられてちょっと慌ててしまった。いやー、絶対あの時のMr.プレイボーイでしょ。隙があったらからかってみようかな?

 


 

結論から言えばコーマック指揮官の目的はおおよそ私達の予想通りだった。基地への補給線を複数確保も兼ねて輸送費用削減も狙っていたことは予想よりも上手だったと思う。交渉も単刀直入、私がちょっと意地悪な質問もしたのだけれど特に気にした様子がないことはは彼女の器が大きい証拠と言えるかもしれない。

 

さて、本題の後はレクリエーションといった感じでHUBの癒し、スプリングフィールドのカフェへ向かうことに。その道中にて、彼女が連れてきていた傭兵…ジャベリンくんが先制パンチを入れてきたよ。おかげでトンプソンが沈みました。はい、非常に可愛らしくへたりこみました。敗因ですか?主に自爆ですね。ジャベリンくんですか?しっかりと過去の社内報(カウンター)で沈めました。

 

その後は一旦別れていたカズト君とカフェで合流したんだ。その時に気づいたのだが、いつの間にかローゼくんがウチのG36のダミーに拉致されたらしい。…嫌な予感しかしないのだが大丈夫だろうか?

あとカズト君?今君が言っている日本の話ってアレでしょう。「外国人から見た日本」の話でしょ。腹切りっていつの時代だい。ジャベリンくん、それはニンジャス〇イヤーだと思うんだ。ニンジャはビル群を飛び交わないから。「アイエエエ」とか言わない、イイネ?

 

カフェ自慢の料理に舌鼓を打ってからヘリポートへ向かう。その途中でローゼくんと合流できた。なんとなく嫌な予感が消えないので、後でグレネードの在庫数を確かめようと思う。

 

コーマック指揮官は帰り際に大きな声で

 

「父の農場の作物とか沢山送りますねーーーーー!!!!」

 

と言ってくれた。本当に届いた時は楽しみにしよう。今のご時世、天然の食料は非常に貴重だからね。スプリングフィールドに頼んで最高の料理にしてもらおう。

 

「何か困ったことあったらカズト指揮官に渡した名刺の連絡先にお願いしますね!!!」

 

ジャベリンくんは最後に『武器庫』の宣伝だ。ちゃっかりしているなぁ。そうでもなければ傭兵を長くはできない…か。ちょうど他のPMCとの関係も欲しかった所だしこちらとしても願ったりだ。さあ、彼女達が帰っていく。彼女とその仲間達が欠けることなく居られることを願うばかりだ。

 

 

 

グレネードの在庫を確認した所、複数個減っていたのでG36のダミーを捕まえたところ

 

「「爆発は芸術ですよ?」」

 

と返ってきた。ローゼくんに爆弾魔のスキルがインストールされていないか心配だ。

 




遅れること2日。元々、遅筆なのもあってこんな結果に…。サマシュさん申し訳ないorz

さて、今回は久々(実時間的に)のコラボです。

サマシュ様作「傭兵日記」
主人公ジャベリンの女運の無さと改良ダイナゲート「ポチ」の可愛さが半端ないです。オスカーという猫もいますよ?なお、最近ポチは「しゃべる」

傭兵日記の方がはるかに有名だと思うので、この作品の読者なら皆さん知っていると思うんだ!
余所様のキャラって動かすの怖いんですが(キャラ把握出来ているか心配で)どうでしたでしょう?ジャベリンはいじるべきだと思いましたので沈んでいただきました※向こうでも沈んでいます。

サマシュ様、コラボのお誘いありがとうございました。
また機会があればよろしくお願いします。


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街の話 3

ここはG&Kの補給基地、HUB…その近くの『街』である。

犯罪組織が根城としている廃ビルを包囲する形で、HUBから出撃した部隊が展開する。

「今回はカズト君が活躍します」
「ボスは?」
「トンプソンとイチャつきます」
「え////」
※特にイチャつきません。普段とそんなに変わりません。
 え?イチャついている?何のことでしょう(すっとぼけ


宵闇の中、ある廃ビルは極めて目立っていた。ガラスが砕けて枠だけとなった窓や扉の隙間から光が溢れ、部屋の隙間から大音量の音楽が流れる。およそこの時代に似つかわしくない様相を呈している。このビルの中にはとある犯罪組織の者たちがいる。彼らは近くの街から女性をさらい、酒と食料を脅す形で安く手に入れ、そしてこの饗宴を開いていた。ある種の狂宴と言っても過言ではないかもしれない。生命の重みが極めて軽いこの時代故に、一時の快楽に身を任せているのだろう。自分たち以外に不幸をばら撒きながら。

 

そのビルの外には、数人の人間が歩哨として警備している。その歩哨達はビルから聞こえる喧騒に舌打ちをしながら、明日は自分達の番だからと警備を続けようとしていた。その数瞬後、彼らは全員地に伏した。頭から真っ赤な花を咲かせてから。

 

R1-2(ロメオワン・ツー)目標命中(ダウン)

R2-2(ロメオツー・ツー)目標排除』

R3-2(ロメオスリー・ツー)目標クリア』

R4-2(ロメオフォー・ツー)こちらも命中。新たな目標は確認できず』

『よろしい。ではアルファチーム突入開始』

 

突入の合図が出た直後、闇の中から黒い影がゆらりと現れる。その()()は徐々に数を増やしながらビルの裏口へ向かいドアの横に張り付いた。影の1つがドアノブを軽く触り施錠されている事を確認する。

 

「鍵か…。ブリーチングを使うのはまだ早いな…。ラムを」

準備完了(スタンバイ)

 

答えた影が両手に持っているのは破城槌(バッテリング・ラム)。古来より門を開け放ち突入する事に使われてきた道具の末裔だ。勢いを付けて扉にぶつけるだけというシンプルさ故に信頼性の高いブリーチングツールである。侵入時の音もエクスプローシブ・ブリーチングより静かである。

 

「3…2…1…突入!」

 

合図と同時にバッテリング・ラムを扉にぶつけて解錠し(こわし)、黒い影――黒いタクティカルベストと黒いBDU、顔は覆面(バラクラバ)で隠しアサルトライフルやSMG・ショットガンを装備した兵士達がなだれ込む。

 

「右にドア」

「フラッシュを使う。…今!」

 

先頭を行く兵がドアを見つけると、後続がドアを開けてフラッシュグレネードを投げ込む。そのグレネードが炸裂したらすぐさま2名が銃を構えて侵入する。パスっという音が2回聞こえた直後、

 

「クリア」

 

と報告しつつ中へ入っていった2名が出てくる。ドアや部屋を見つける度にこの流れを繰り返しながら正面入口へ向かう。

 

A1-1(アルファワン・ワン)入口へ到着。敵影認められず」

『こちらA2-3(アルファツー・スリー)上への階段は押さえた。上階を警戒する』

A3-1(アルファスリー・ワン)です。地下への階段を発見。2名で確認します』

『了解した。A1-1へ、入口を開けてくれ』

「了解」

 

敵は現在見えないが、隠れているかもしれない。そう警戒を続けながら入口へ急ぐ。兵士の1人がドアのカギを外そうとしている間、盾を持った兵士が彼の背後に周り文字通りの盾となる。カチャンという音と共に入口が解錠されドアが開け放たれる。ドアが開くとほぼ同時に、傍で待機していたブラボーチームが突入した。

 

「よし、第1段階はOK。経過時間は?」

「約10分だボス。ナカムラ指揮官、手慣れている」

「一般警備じゃなくて、実は特殊部隊だったとは」

「そういえばあそこも一応警備部って噂だったな」

 

エーカー指揮官とその護衛部隊は、廃ビルを望める斜向かいのビルにて全体の戦況把握及び指示を出していた。ちなみに彼らがいる上の階ではR1-1と1-2…RF班の第1分隊がその銃口を油断なく廃ビルに向けている。

 

「でもさボス。まさかこうなるとは思ってなかったよ」

「私もだよ。まさかカズト君があんな応援を呼ぶとは…」

 

エーカー指揮官達の言う、『応援』とは…

 


 

時刻は11時頃。ブリーフィングが終わった後にカズト君が話しかけてきた。

 

「司令、警備部の知り合いを今回の作戦に参加させて欲しいのですがどうでしょうか」

「警備部の?いや、警備部と言えば市街の警備が中心業務だろう?この辺りまでは出張れないと思うけど…」

「大丈夫です。呼ぶつもりの人達は()()()()()()()()()()()()()()()()。この作戦で頼もしい戦力となるはずです」

 

いや、その警備部は警備部なのか?…荒事専門の部隊だとでも言うのだろうか。

 

「ふむ…。戦闘指揮官は君だ。その君が必要と言うのだね?」

「はい。居れば間違いなく被害を減らし、そして確実に作戦を成功させることができると思います」

「……わかった。許可しよう。要請書はいるかい?」

「お願いします。無くても来てもらえると思いますがあれば助かります」

 

よし、なら急いで作ろう。被害を減らすことができるのは非常に大きい。でもよく考えたらこの基地へ来るの間に合うのかな?

 

「カズト君、その彼らは今から呼んで間に合うのかい?」

「ああ、あの人達なら多分大丈夫です。ヘリを使ってでも来ると思いますよ」

「…警備部ってヘリ自由に使えたっけ?」

 


 

 

時刻は23時半頃。この崩壊しかけた世界では夜は静かになるのが早い。特にスラムではそれが顕著だ。こんな時間に外で人が立っていたり、電灯が点き非常に明るい状態の建物は往々にしてまともな事をしていない。

何をもってまともと言うかが難しいところではあるが、それは売春であったり、人身売買であったり、賭博であったり様々だ。だが、この街においてそれらは()()()()()()()()()()()()()()()として認識されていた。

この街では当たり前と言える程に行われている事なのだ。ゆえに、それを行う建物の周囲には人が集まり夜であることを忘れているかのように騒いでいる。その喧騒から少し離れた位置にある廃ビル群の中に私達は居た。

 

この廃ビル群はスラムが形成される前から存在していると聞く。老朽化もそうだが、街の中心部からかなり離れていることや何があるか分かりにくいことから、街の住人たちは基本的にこの辺りまでは寄り付かない。進んで厄介ごとに首を突っ込みたくはないのだろう。おかげで今回の作戦は民間の被害を考える必要がなかったのだけど。

 

「さーて、そろそろ時間だ。ドレスと持ち物の準備はできたかねレディ達?」

「ふふっ、出来てるわよ司令官。ドレスコードの確認も済んでいるし。後は会場に行くだけよ」

「よろしい。カズト君、そっちはどうだい?」

 

今回の作戦にも参加しているFALと軽口も兼ねた確認を済まして、カズト君の方に通信を送る。

 

「ああ、司令。こちらも準備はほぼ終了しています」

「では最終確認だ。作戦会議時から多少変化した点もある。注意して聞くように。ネットワークにはこの後アップロードしておくのでカズト君以外は最悪それで確認しておくこと。カズト君は聞き逃したら…」

「サクラに聞くので大丈夫ですよ、司令」

「よろしい。では…」

 

今回の作戦でいくつかある変更点は、まず目標の廃ビル内部がかなり明るいことだ。発電設備は外に見られないことから内部に存在すると思われる。この影響で暗視装置は現状使用できない。

2つ目、集音マイクが女性の悲鳴を捕らえた。連中はお楽しみ中の模様だ。よって、恐らく複数名となるだろうが彼女たちの救出も並行して行う。基地から追加部隊を呼び寄せているが、かなり作戦難度が上がっている。だが君達ならば無事に達成できると信じている。

 

部隊は2つに分ける。アルファチームにブラボーチームだ。アルファチームはカズト君が、ブラボーチームはFALが指揮を執る。私とその護衛部隊はチャーリーチームだな。なお、私のコールサインはC1-1(チャーリーワン・ワン)。カズト君はA1-1(アルファワン・ワン)としよう。FALは…説明要らないよな?

 

この廃ビルは入口が2つ。正面と裏口だ。アルファチームは裏口から侵入し1Fを迅速に制圧。サプレッサーを使用し、決して気づかれるな。制圧後、正面からブラボーチームも侵入、以降は全制限解除する。速やかに対象を殲滅せよ。人質が取られるものとして行動せよ。内部がうるさければいいのだがなぁ。ああ、忘れていたが外にいる歩哨は待機しているRF班が掃討する。掃討後にアルファチームは突入だ。制限解除後はRF班も支援射撃に移る。窓際の敵は狙っていくのでそのつもりで。

 

「今回ブリーチング要員を突入班に1人ずつ配置する」

「了解です。…誰がブリーチングを?」

「……G36のダミーだ」

「…オリジナルは基地の簡易指揮を執ってますよね?」

「うん。気づいたらダミーだけがここに居たんだ。コイツらそろそろ手に負えない気がしてきたんだけど…。カズト君引き取ってくれない?」

「丁重にお断りいたします」

 

にべもなく断られてしまった。むう、メイドとしては優秀だよ?戦場だと手に負えないけど。

と、それは一旦置いておくとして一つ確認しなければならないことがある。カズト君、君の後ろにいる完全武装の方はどちら様かな?

 

「紹介します司令。こちらは私の元所属部隊である『特殊制圧班(コントローラー)』総隊長兼第1小隊隊長のコントロールさんです。あ、偽名ですよ?本名は社長だけが知っているそうです」

「よろしくお願いします、エーカー指揮官。ここの噂はかねがね。この間は災難でしたね」

「こちらこそよろしくお願いします。それで、あなたの後ろにズラッと並ばれている方々は…」

「『特殊制圧班』の第1部隊です。人数は少ないですが実戦経験は前線基地にも負けません。虎の子を連れてきております」

 

いやいや、『特殊制圧班』って実在したの?本部で噂は聞いたことあるけどさ。眉唾物の話だったし。いや、10人で150人の組織に喧嘩売って、あまつさえ壊滅させたとかはないわー。

 

「ああ、あれは嘘ですよ。せいぜい120人くらいでしたから。弾が切れかけて、連中の武器を拾って使っていました。右も左も敵だったんで照準を付けなくても当たってましたよ。正直楽でした」

「いやいやいや、控えめに言って化け物ですよねソレ。お願いですから嘘と言ってください。…カズト君ここ出身?」

「短期間ですが副隊長してました。第1の」

 

あっれー、なんか聞きたくない一言が聞こえた気がするよー?その年でここの虎の子部隊の副隊長ってホントだったらどんな身体能力してるのさ!?ほら、トンプソンがフリーズしてるし!

 

「さ、エーカー指揮官。そろそろ仕事を始めましょう。我々はカズト君の指揮下に入ればよろしいですか?」

「え、あ、その予定ですが、いいんですか?」

「ん?元副隊長の下でいいのか、と。問題ありませんよ。元々部隊の指揮は彼が執ること多かったですし。私は自分が前に出たがるものでして非常に助かっておりました」

 

そんな彼が何故ウチの基地に来たのか真剣に分からなくなってきたぞ。いや、それはこの際横に置いて置くとしよう。『特殊制圧班』は本部直轄と噂されていた。そんな部隊が私達の要請で動けるワケは無いのだけど。

 

「失礼を承知でお尋ねします。何故、我々の要請をお受けに?いくら元副隊長からとはいえ、本部直轄部隊は動けないと…」

「ああ。それは大丈夫です。『特殊制圧班』自体は少し前に解散しました。今はフリーの戦闘部隊ですよ。社長からは『現状では鉄血相手にもELID相手にも使いにくい』と言われて暇を貰ってしまいました。カズト君がこの補給基地へ異動になった少し後の話です」

 

そりゃ使いにくいだろうね。G&Kの中で特に『対人間戦闘』に特化した『人間の部隊』だもの。…なら指揮官として基地に編成すれば

 

「…お恥ずかしながらグリフィンの人形達を指揮するのは…」

「特殊部隊としての知識を持っておられますし、十分務められると思いますが。私なんて元主計官ですよ?」

「いや、その、人形達は可愛らしい娘達が多いですよね?部下達は訓練に任務と戦闘ばかりしてきた弊害か、女性に免疫がなくてですね…」

「初心な学生か!?」

「そんなオチかよ!」

 

あ、トンプソンが復活した。なんというか締まらないオチをありがとうございます。兎にも角にも今回はよろしくお願いしますね。

 

「ええ、お任せ下さい。久々の仕事ですからね。腕がなりますよ」

「では第1小隊は僕と一緒にアルファチームへお願いします」

「装備は…、揃えてますねー」

 

『特殊制圧班』の装備は、M4のカスタムモデルらしき物を標準装備にしているらしい。役割によってはMP5やイサカM37を装備してるのか…。

サイドアームは…mk-23かな?アレってサイドアームにしては大きくて使いにいって聞いたことあるけど。問題無い?威力を優先したと。携行性もあるしサプレッサーも付けられるから便利。

他にはバラクラバや黒いタクティカルベスト、黒いBDUは共通なんだね。防弾盾を持っている人がいるけど彼らは?突入時の最前線役、最も恐れ知らずの者達ですか。人形達でいうSGの役割なのかな。

 

「そう言えば、狙撃班は居ないのですか?」

「第1には居ません。たしか第2が担当してたよな、サクラ?」

「うん。司令に説明すると、第1が出るのは基本大規模な摘発や制圧でしたから突入制圧に特化してます。で、そうなると支援(バックアップ)が必要になるので第2は支援特化部隊です」

 

…説明を聞いてて思ったことは「特殊部隊ってワリに脳筋っぽくない?」あれか身体能力に極振りし過ぎた弊害かな?

 

「ボス、失礼なことを考えてないか?混在させる必要が無かったからそんな部隊割になってるんだろ」

「そうなのかな?詳しくないから分からないな」

 

とにかく、これで突入戦力は大分増えた。というか明らかに過剰戦力化してる気がする。ま、細かいことは気にしたら負けだ。とっとと終わらせて基地に帰ろう。

 

突入開始まで、あと――

 

 




もう少し続くんじゃ

今回はいつもよりも難産です。というか今も中身がおかしい気しかしていない。仕事の疲れか変な流れなんですよね。違和感凄い。どこかで加筆修正するかもしれません。

突入の様子書きたい→特殊部隊的なヤツ→あれ?人形達って装備統一出来るっけ?→面倒だから新キャラ出してしまえ
という流れで『特殊制圧班』なるモノが出てきました。対人特化の特殊部隊のつもりです。故に「警備部所属」ですぜ(こじつけとも言う)隊長の名前は思いつかなかったので残念な感じに…。偽名だから許して!

サマシュさんとこの『武器庫』を呼ぶか考えたけど、作中時間的に無理と判断しました。コラボってる精神的余裕無いのもありますけどね!許可も取ってないし!

投稿時間そろそろ揃えるべきかしら?書けたらそく投稿してるからなぁ。進捗不定期だしせめて時間だけでも揃えたほうがいいですかね?



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街の話 4

ここはG&Kの補給基地HUB近くの街、その片隅にある廃ビル

これにてカルトを語った組織の終幕でござい。

「結構長引いたなぁ」
「1話完結型に出来ないのかな」
「する技量がございません」(作者)
「「今の誰!?」」
「そろそろ日常に戻したいのよー。あんたらイチャつかせたいの」(作者)
「「だから誰!?」」


「あ、正面入口が開きましたよ」

「速いわね。元特殊部隊は伊達じゃないって事かしら」

「元というか今もな気がしますね」

 

R1-1(ロメオワン・ワン)ことSV-98は、今回の相棒(スポッター)であるR1-2(ロメオワン・ツー)ことP08と共に戦況を見守っていた。彼女たちの役割は外の警備を排除することと、突入部隊の支援を行うことである。待機しているビルから見える範囲の窓を警戒しつつ、突入部隊の動向も確認する。人間ならばなかなかの負担だがそこは戦術人形、それほどの負担はなくむしろ普段の仕事(倉庫整理)よりもやりがいがあるとさえ思っている。

彼女たちが1階を見ていると突入部隊が動き始める。2階への突入、というよりもビルの本格的な制圧を始めようとしているようだ。

 

『ダミー01からメインフレームへ。現在、敵影見えず』

『こちらダミー02同じくです。ご指示を』

「現状維持よ。…ああ、制限解除よ。敵が見えたら撃ってよし。…動き無さすぎだけど、もしかしてまだ気づいてないのかしら」

「そうみたいですね。ブリーチングも静かにやったようですし」

 

なかなかの練度を誇る部隊というのはやはり動きが違うのですねとSV-98は感心していた。自分達戦術人形でも、経験を積み最適化を進めた上で編成拡大をし、訓練を積んでようやく出来るかと思う動きを突入部隊…アルファチームは見せていた。

 

「あ、2階に目標。部屋から出てきました。2人です」

「見えたわ。ダミー達、そっちは見えた?」

『こちらダミー01。確認できず』

『ダミー02です。見えました。狙撃準備中』

「OK。私とダミー02で撃つわ。私は先に歩いているヤツを狙う」

『了解。後ろを狙います』

 

SV-98がダミーと共に狙撃することを決めている間に、P08は狙撃の為の情報を集める。

 

「目標150m。風向きは右から左、風速2m。歩行速度は推定時速3kmで、階段へ向かう。3つ先の窓で発砲を」

「ん」

 

P08が人形としての能力をいかんなく発揮し、特別な道具無しで風向き等をほぼ完璧に観測していた。そして、スコープを覗き身動き1つなく狙うSV-98に合図を送る。

 

「ヘッドショット照準(エイム)。…ファイア」

 

その声と同時に放たれた弾丸は目標の頭に向かってまっすぐと飛んでいく。

そして、真っ赤な花がビルの廊下に咲いた。

 

「…どう?」

 

続けて発砲するために一瞬だけスコープから眼を離して次弾を装填したSV-98はP08に尋ねる。外してはいないと確信しつつも確認を怠たりはしない。

 

「命中です。…ダミーも当てたようですよ」

「ふふ、この距離で外してはダメよね。せめて1km越えないと。この銃(SV-98)の射程1kmだけど」

「おっと、大きくでましたね。…まぁ、戦術人形としての能力を発揮したら当てられるのでしょう?」

「たとえ人形でもキロ越えは訓練を怠っていたら当てれないわよ。だから私も訓練はサボらないわ。…倉庫整理(普段の仕事)はサボるけどね?」

「真面目なんだか不真面目なんだか…」

 

このSV-98は戦闘時は大変真面目。訓練も自分で言う通り怠らない。だが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ので昔から司令官に怒られていた。なお、ダミーは2体共普段から真面目、倉庫整理は大得意というから不思議である。

 


 

「アルファは裏口の方にあった階段で上に、ブラボーはこのままこちらの階段を使って上へ」

「分かったわ。タイミングはどうするの?」

「タイミング合わせはいらないよ。好き勝手にド派手に行こう。だけどヤツらがもしも人質を取ったら…」

「取ったら?」

「クイックドローで対応しようか…」

「「「は?」」」

 

1階と地下のクリアリングを終えた突入部隊は1度集結して上階へ昇る打ち合わせをしていた。冗談のようなことを本気で口にしているのは、今回の作戦を担うカズト・ナカムラ指揮官である。なお、彼が呟いた対応の仕方に大真面目に頷く人間がチラホラといる。『特殊制圧班』の面々である。その部隊の隊長である『コントロール』が指揮官と話をし始める。

 

「懐かしいなぁ。メインアームを手放して、向こうがそれに気を取られた瞬間サイドアームで撃ち抜く。よくやったものさ」

「ですね。簡単にはいきませんでしたがなんとかモノにしましたよ」

「そうだったな。今も出来るか?」

「出来ると思います。前よりは自信無いですけどね」

「いや、どれだけでたらめなのよ貴方達は…。戦術人形でもそんなことはしないわよ」

 

FALが至極冷静にツッコミを入れる。普通に狙った方がいいと思うし、そもそもそんな芸当はできないハズ。なのにこの連中ときたら、「あの時覚えてるか?」「ああ、あのビルの時の…」とかなんとか昔話をし始めるし、やっぱり軽く人間辞めてるんじゃないの?と思うFALであった。

 

「まぁ、とにかく上へ。サッサと終わらせて帰ろう」

「「「了解」」」

 


 

1階での打ち合わせ後突入部隊は一気に攻め込んだ。「兵は拙速を尊ぶ」を地で行くスピードである。ロメオ(狙撃班)からの支援もあり素早く確実にクリアリングを行いながら制圧していく。

 

目標(タンゴ)を発見した」

撃て撃て!(ファイアファイア)!反撃させるな!」

「民間人を無事に保護。下へ誘導を」

「皆さんこちらへ!下は安全ですよ!慌てずに落ち着いて階段を降りて下さい!」

「ふふっ、鍵を閉めてもダメですよ?扉ごとぜーんぶ吹き飛ばしますから、うふふ」

「このメイドさんの笑いが無性に怖い」

「え?俺はめっちゃいいと思うけど。色っぽくない?めっちゃ可愛いし、色っぽいとか…控えめに言って最高」

「わかった、お前は後で告ってこい。骨は拾ってやる」

 

勢いも然る事ながら、敵から発せられる悲鳴や怒号に救助された女性達の悲鳴までも合わさり、ビルの中はまさに阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。…なお、一部でとある戦術人形(のダミー)に一目惚れした元特殊部隊隊員がいたそうな。

 

さすがにおかしいと気づいた犯罪組織(マフィア)も武器を持ち始め、ようやく反撃らしい反撃が行われるようになっていた。だが突入部隊の方が明らかに腕が上であり、マガジンに込められた弾丸が数発減った時点で犯罪組織《マフィア》の構成員達は次々と倒れ伏していく。もはやこれは戦闘とは呼べなかった。

 

「サクラ、前を頼めるか?」

「まっかせてカズくん」

 

アルファチームとして行動しているカズトとSPAS-12ことサクラは臨時の部下である「特殊制圧班」数名と共に最上階の部屋に突入しようとしていた。なお、他の部屋へは特殊制圧班隊長(コントロール)が率いる分隊が既に突入していた。

 

「よし。…3、2、1、突入!」

「おっじゃましまーす!」

 

合図を受けて自身の戦術人形としての名の元であるSPAS-12でドアの蝶番を上下とも撃ち抜いた後、場違いな掛け声を上げてサクラは戦術人形としての膂力を最大限に使って思いきり蹴り飛ばす。蹴られた勢いのまま扉は部屋の中へ飛んでいくと、それは扉の直線上で机を倒して盾代わりにしていたマフィア構成員をその机ごと吹き飛ばしていた。

 

「民間人無し!それじゃあ、遠慮なく!」

「……えげつないぞ、サクラ」

 

部屋へ入りすぐさま中を見回して民間人が居ないことを確認するとSPAS-12の特徴であるセミオートでの掃射を行うサクラ。リロードに時間がかかるショットガンで連射するとどうしても隙が出来てしまう。だが今回は自分の後ろに1番信頼している人が居るのだし、と遠慮なくSPAS-12の中の弾丸を全て撃ちきった。

 

「カズくん!」

「…クリア」

「中へ入ります。…うわー」

「この惨状はどう表現すれば?」

「血の海」

「直球すぎるだろ!?」

 

サクラの掃射が終わり、カズト達が中を確認するとそこには()()()()()()が転がっているだけだった。近距離でのショットガン掃射に耐えられる者はこの部屋の中には居なかった。

いや、()()()()()()()

1人だけ微かに動いている。サクラはリロードのために、他の者は部屋の惨状に気を取られてしまい未だ気づいていない。ここが最後の部屋である事や、部屋に入る前に中を見て動くものが一切無い事を確認していたためにほんの少しだけ気が緩んでしまったか皆気づけなかった。

その微かに動いているものが床に転がっている誰の物か分からない(だが仲間の誰かの物なのは確かな)銃に手を伸ばし、なんとかそれを掴むと執念で体を動かして銃のセーフティを解除、部屋に押し入ってショットガンを連射した少女(サクラ)に力が入らず震える拳銃の照星越しに憎しみに満ち満ちた眼を向け

 

「死…ね…クソッタレ…が…!」

「ッ!?サクラ!」

 

怨嗟の声とそれに気づいたカズトの声、そして乾いた発砲音が部屋に響く。

 

「カ、カズ…くん?」

 

時間にして数秒もない出来事だった。カズトは放たれる弾丸からサクラを庇うために咄嗟に自分の体を銃口とサクラの間に飛び込んでいた。無意識と言ってもいい反応だった。そして執念で1発だけ撃った犯人は、部屋を確認していた兵士2人に頭と胸を撃たれ今度こそ絶命した。

 

「カズくん!カズくんってば!起きてよ!…い、いやあ!起きてってば!」

 

サクラは動かないカズトの体を抱きしめながら泣き叫ぶ。抱きしめても動かない彼を彼女は今度は必死に揺する。

 

「カズくぅん…、私を置いてかないでよぉ。私はカズくんとずぅっと一緒にいるって決めてるのぉ。私が動かなくなる時まで一緒、カズくんが私をお嫁さんにしてくれるって言ってくれた時にそう決めたのぉ。指輪欲しかったよぉ。お前は僕の物(私はカズくんの物)って言って欲しかったよぉ。だから…だから起きてよカズくぅん…」

 

場をなんとも言えない雰囲気が支配する。だが、この雰囲気はサクラではなく周囲の隊員達から発せられている。そう、()()()()()()()()()()()をだ。それは彼らがある事に気づいているからなのだが、サクラはまったく気づいていない。自分を庇ってカズト(好きな人)が撃たれた…というショックから彼女の電脳は処理が追いつかず気づかないのである。

 

「カズくん、私は人形なんだよ…?撃たれても直せるんだよ?でも、カズくんは人なんだから撃たれたら死んじゃうんだよ…。なのになんで私を庇ったの…。私はカズくんがいなかったら…、いる意味無いんだよぉ」

「…いや、女の子を守れないとかカッコ悪すぎるだろ。その、嫁にするって言った子をさ

「……え?カ、カズくん?生き、てる?」

「サクラ。よーく、僕の体を見てみ」

「え?あ、あれ?弾丸が…」

 

確かにカズトに弾丸は当たった。だがその弾丸は彼の体まで届かずに潰れた状態で防弾ベストに張り付いていた。

今回の作戦に際して、エーカー司令は突入部隊全員にとある防弾ベストを配っていた。それは()()()()の弾丸ならば例え5m程度の至近距離で撃たれたとしても、多少の衝撃を体に伝える程度で済ませてしまう代物だった。とはいえもしも頭に当たっていれば意味は無かったのだが。

彼は確かに意識を失っていたが、それは飛び込んだ後受け身を取らぬままに床に落ちたため後頭部を強か打ってしまったからだった。ヘルメット越しでもかなり頭を揺さぶられたために意識を失ったのである。

 

「さてサクラ?小っ恥ずかしい告白をしてくれたよね。周りを見てみろ、このめちゃくちゃ微笑ましいって顔をしている連中を!」

「だ、だってカズくんが死んじゃったって思ったからぁ!?」

『あー、お二人さん?通信機でもねSPASちゃんの告白聞こえたんだ。つまり…』

『今回の作戦参加者全員がさっきの告白聞いてるよ。いやぁ、暑い暑い』

『それどころか司令の悪ふざけで基地まで通信が届いてますので帰ってきたらおもちゃになること請け合いです。…それとダミー、(メイン)を差し置いて何をイチャついているのかしら?もしかしてケンカ売ってるの?』

 

3人からの通信でカズトとサクラは一瞬で顔が真っ赤になった。バラクラバをしているためカズトの赤さは見られずに済んだが。古巣の仲間にも、今の基地の仲間たちにも先程のサクラの告白…と言うよりも欲望を全部聞かれてしまったのだ。言ったサクラも恥ずかしいが言われたカズトはもっと恥ずかしい。まさかサクラがここまで思いを溜め込んでいるとはカズトも思いもよらなかったからである。2人だけの時にこの状態になっていたらどうなっていただろうかとカズトは顔を真っ赤にしたまま考えていた。

 

(あれ?なんか性的に襲われる気がするんだけど…?ある意味、今で良かったのかな?)

 

兎にも角にも、カズトは無事に最後の部屋の制圧を完了したのである。…なぜかとある人形がダミーとケンカし始めたが。

 

「正面から『好きです、付き合って下さい!』とか言われたらメインだって揺れるでしょう!?」

『私は初対面で告白されても落ちません!あなたはチョロすぎなのよ!』

「私だって最初は断りましたよ!でも、『一目惚れなんです!好きなんです!』って何度も言われたらグッと来ちゃうわ!メインも言われたら分かるわ!」

『言われたことないから分からないのでしょうが!』

「フッ」

『今、鼻で笑ったわねぇ!?』

 

不毛な争いがここに開戦した。結果は推して知るべしである。

 


 

少し時は戻ってカズト達が突入予定の部屋。その隣の部屋で起きたことである。そこでは元特殊部隊隊長(コントロール)とFALが突入前の打ち合わせをしていた。ブラボーチームも途中から合流していたのである。

 

「よし、そろそろ行こうか。……FALさん?その言い難いのだけども」

「あら、何かしら?」

「君の銃はかなり取り回しが悪いと思う。こういった部屋では特にだ。ここは私達が先に行くから後から来て欲しい」

「ふふっ、心配しないで。私は戦術人形よ?この銃に関して誰よりもわかっているわ。それにもし撃たれても貴方達より頑丈だもの」

「いや、その、な?わ、私が先に行きたいんだ」

「いえ、私が先に行くわよ」

「隊長、何やってるんだろ」

「普段の勢い無いよな」

 

銃の取り回しという理をもって先に部屋へ入ろうとする隊長と、人形としての生存性の高さを理由に先に入ろうとするFALのこれまた不毛な争いがここで起こっていた。ちなみに小声で。ドアの警戒は2人共怠らないのは流石と言える。

 

「なんで貴方は人形よりも先に行こうとするのよ。言い方は悪いけど普通は人形を盾にする方が正解よ?カズト指揮官みたいなのは珍しいの」

 

FALはこの世界に於ける人形の扱いの基本をコントロールに説く。本来は一種の消耗品として人形を扱うのが普通なのである。減りすぎた人類をカバーするための存在、それが人形なのだから。

 

「その、頭では人形の意義は分かるんだけどね。だけど、私としては君はとても綺麗な女の子にしか見えないんだよ。そんな子を盾にするなんて私はできない」

「…き、綺麗なのは当然よ。肌のお手入れだって欠かさないしね。で、でも人形としての矜持もあるのよ」

「そ、それも分かる。だけど…、ええいままよ!君のその格好が気になって仕方ないんだ!目がどうしても追ってしまう!」

 

突然のカミングアウトにFALはピシッと固まってしまう。

 

「その際どいスカートとか気になってしょうがないんだ!ああもう恥ずかしい!」

「き、急にそんな事言われたらこっちも恥ずかしいわよ!特殊部隊隊長なんでしょ!?それくらい鉄の精神とかでなんとかしなさいよ!」

「男所帯で荒事担当、戦術人形自体配属されたのは4人だけでそれもスグに全部副隊長に付いて行った!私達に女性への耐性などない!」

「あー正直俺らも君の格好は目に毒です」

「ヤバい、何がとは言わないけどヤバい」

「女への免疫無さすぎでしょう…」

 

FALが心配を通り越して呆れたという風に呟く。任務一辺倒、それも人間相手の特殊部隊をやってきた彼らは女性や戦術人形への耐性がまったくと言っていいほど無かった。そんな彼らにFALの格好は刺激が強すぎたのである。彼女はいつもの服装に防弾ベストを着ているので上はまだしも、スカート部はどうしてもヒラヒラしてしまう。そんな彼女が階段でも登ろうものならついつい目がいってしまうくらいには彼らも男であった。

 

『あー、FAL?そこは素直に下がってやってくれ。ちょっと可哀想になってきた』

「…了解よ、司令」

「ありがとうエーカー司令。彼女の格好は私達にはまだ早い…!」

「ちょっとイジメてもいいかしら?」

『……。それは基地に帰ってからな?』

「やった。じゃあ、帰ってから楽しみにしててね?」

「勘弁してださい!エーカー司令、なんて事を!?」

「貴方達はもう少し女性への免疫を付けた方がいいですよ。幸いウチの娘達は数が多いですし。同じ姿も大変多いですけども。なんならお互い合意の上でのお持ち帰りも考えておきます」

 

エーカー司令からの無慈悲とも言える発言に、いい暇つぶしになりそうと喜ぶFALとどうなるのか心配でしょうがないコントロールだった。

 

「くっ、もうこうなったらサクッと終わらせるぞ!突入!」

「「「了解!」」」

 

なお、マフィアが持ってきていた資金は全てこの部屋にあったため、突入後に回収作業をしておりカズト達に起こっていたことは通信で知った彼らであった。

 


 

「最後は少し焦ったけど、なんとか無事に終わったね」

「ああ。でもボスここの後始末はどうするんだ。さすがに遺体の放置はマズいと思うぞ」

 

エーカー司令とその副官であるトンプソンは作戦本部と化しているビルの一室で今回の後始末の方法を相談していた。

遺体を残すということは、それの腐敗を放置するという事だ。往々にして腐敗した物は人体に悪影響を及ぼすことが多い。食物は別だが。コレを放置する事によって街の人々へ悪影響が出ることは避けるべき、そうトンプソンは暗に言っている。

 

「面倒だけど遺体は全て回収して火葬かな。このビルは爆破するからビル自体の清掃は簡単でいいよ。消毒さえ出来てればいいよ」

「街の人達にトラウマを植え付けそうだなー」

「あの人達ならここには近寄らないさ。ここで何があったかは全部知ってるからね。さて、G36ダミー聞こえるかい?」

 

消毒も兼ねての火葬という判断を下したエーカー司令はビルの発破準備をしようと今回の爆破担当を呼び出す。

 

『あ、はいご主人様。お呼びでしょうか』

「本体とのケンカは終わったかい?」

『そちらは基地で決着をつけますのでご安心下さい。それで何用でしょう』

「そのビルを発破する。手すきの人形達を使って準備にかかってほしい」

『お任せ下さい。失礼いたします』

 

メインとダミーで何がとは言わないが格差のようなものがつき始め、エーカー司令としてはなかなか面白いと思っている。人間らしい人形というのはそれだけで面白い、だがコレは人間よりも人間らしい反応なのではなかろうか。恋人というモノを彼女達がどう理解しているのかはエーカー司令は分からない。だが、トンプソン然り、恋する普通の女の子のような反応を返す彼女達を見ていると非常に楽しいと思うのであった。

 

「さーて、後片付けをしたら帰るぞー。ああ、『特殊制圧班』の皆さんもすべからく連行しますので大人しくしてて下さいねー」

「どういう意味だよボス」

「ん?いやFALにからかわれるの嫌がって逃げそうだったからね。先に釘を刺してみた」

『い、いや私達は次の作戦が…』

「無いですよね?ええ、分かっているんです。社長を叩き起して聞きましたから」

 

サラリととんでもない事を言うエーカー司令。夜中に自社の社長を叩き起すという暴挙をしたようだ。

 

「というか社長から貴方達を預かってくれって言われたんですけど」

『なん…だと…!?』

「今まで頑張ってきた貴方達への休暇だそうです。丁度いいので女性に慣れてください。このままだと全員独身ですよ?ウチなら街の人達とも交流していますし、戦術人形達も数が居ますからなんでしたらお持ち帰りしてあげてください。…同意の上でですよ?」

「いや、ボスも独身じゃないか。それに女性慣れも…」

「彼らよりは女性に慣れているよ。それにどこかの誰かさんが色々頑張ってくれているし」

 

エーカー司令のこの言葉でその「誰かさん」は顔が真っ赤になった。

そんなこんなで今回の作戦は被害皆無、結構な資金と元特殊部隊が基地に居着くことなった補給基地であった。




はい、お久しぶりです。
最近上手くネタが練れません。その結果がこの話の中盤で作風が変わるという暴挙に現れております。ひとえに作者の技量不足です。申し訳ございません。

そろそろ時間を進めたかったために派手に動かしたのですが、気づいたら何体かの人形達にフラグが立つ結果になりました…。某D地区やらS09やらの影響を多分に受けております。

ラブコメモノにしていきたいと思いつつ戦闘もしたいよなーと考えていたらこんな事に。こんなのでいいのだろうか?なお、G36には仁義なき戦いが約束されております。

他の方々の作品を読んでモチベーション上げておりますが、感想を頂ければさらに燃料になります。よろしくお願いいたします。

※この作品に関するキャラ及び基地に関してはいつでも誰でも使って頂ければと思います。何か知りたいことがございましたら、メッセージでも感想でも頂ければ可能な限りお答えいたします


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