イエイヌちゃんがヒトと一緒に住む話 (担々麺)
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ぎぃという音と一緒に扉が開いた。
中を見ると、左右の瞳の色が違うフレンズがいた。ふわふわした尻尾に灰色と白の毛が温かそうな頭の上に耳が生えている。博士達と違って翼が生えておらず空は飛べなそうだ。
「誰ですか?」
「えーと、僕はヒトのリュックって言います」
「ヒトですか……ヒト!?」
ばっと反応できない速さで灰色が迫ってきて、気が付いたら抱きしめられていた。
「帰ってきたんですか!あなたがここに居た人なんですね!」
「ちょっと待って、そのっ、僕はカバンさんの紹介で……」
顔をこすり付けられる。温かく柔らかな毛の感触が気持ちいい。視界の端にぶんぶん降られている尻尾が目に入る。
「ああこの匂い!確かにヒトの――」
「ちょっと待って、お願いだから話を」
僕が待ってと言った所で抱きつくのを止めて、目の前でしゃがんだ。急に動いたせいかハッハッと息が部屋に響く。
「……あの」
「はい!何ですか!」
「えーと……とりあえず椅子に座ってお話ししましょう」
「はい!」
近くにあった椅子に座って改めて部屋の中を見る。カバンさんや博士たちの直線でキッチリとした感じの雰囲気とは異なり、何か曲線やピンクが多くふわふわした雰囲気だ。
「やっと帰ってきてくれたんですね!」
「えーっと。まず聞きたいんだけど帰ってきたって何?」
「えっ、前にここに住んでいたヒトなんじゃ」
「違うよ。僕は……最近生まれた?フレンズらしくて」
「じゃあここにいたヒトじゃないの?」
「何から話そうかな……僕は最近生まれたんだけど、その時にカバンさんっていう同じヒトのフレンズと会って暫くお世話になったんだ」
「カバンさんですか。私も以前にお会いしたことがあります」
カバンさんは結構有名なフレンズなのかな。カバンさんや博士さん達を頼って他のフレンズさんが来たりしてたし。
「そこで色々とこのパークについて話を聞いたりしてたんだけど、いつまでもお世話になるわけにもいかないし出ることにしたんだ。その時に幾つかヒトが住めそうなところを聞いたんだけど、ここが一番近かったから来てみたんだ」
「そういうことでしたか……」
すっかり目の前のフレンズさんは落ち着きを取り戻していた。
「ということは……ここに住みたいということで?」
「いや、そう思ってたんだけど……部屋綺麗にしてるし使ってるんでしょ?迷惑かけるわけにもいかないし他のところに」
「……いえ大丈夫です。使ってください」
「え、良いの?」
「はい、是非」
本当に良いのかなぁと思ったけど、彼女の強い意志を感じる目を見ると断る気になれずに頷いてしまう。
「その代わりというか、ひとつお願いが有るんですけど、私も一緒に住んで良いですか?あ、キチンと大人しくして吠えたりしないので……」
「元々貴方が住んでいたところに僕が来たんだし大丈夫だけど。でも、他にもお家有るみたいだし僕はそこを使わせてもらえば……」
「あの、私と一緒に住むの嫌ですか?」
「そういう訳じゃ……」
ひょっとして、一緒に誰かと住みたいフレンズなのかな。フレンズによっては一人が好きだったり群れを作ったりすることもあるらしいし。それに僕も今まで一人で過ごしたことないから少し不安だったし……。
「じゃあ一緒に住みましょう。これからよろしくお願いします。えーと……まだお名前聞いていなかったですね」
「私はイエイヌです。これからよろしく御願いします!」
こうして僕のイエイヌさんとの生活が始まった。
続きはその内書きます
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