光の巨人になりたかったのに、なっていたのは…… (特撮SS)
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転生
初投稿につき誤字脱字などが目立つかもしれませんが生暖かい目で見ていただくと有り難いです
ものすごいやっつけ作品なので国語力などは期待しないでください
人は死んだら何処に行くのだろう。生前何かのテレビ番組を見たときふとそんなことを考えたことがある。
何故"生前"なんて言うのか、それは自分が死んでしまったからだ。
嫌な事に死んだ瞬間の記憶もバッチリ残っている
自分の死因は交通事故だ。原因は居眠り運転。
誰かを庇ったとか誰かを救ったとかではない。ただ自分が事故を起こし自分が死んだだけだ。
誰かを巻き込んだかも知れないが、それを知ることもなく自分の意識は無くなった。
ぼんやりとだが、自分の胸に何か大きな破片?のようなものが刺さっていたのはうっすらと覚えている。
ここで疑問が出てくる。
ならば何故俺はこんな事を呑気に考えられるほど五体満足でいるのか。胸元の傷もないし、それどころか今いる場所は先程まで座っていた車の運転席ではない。
周りを見渡せば何もない真っ白な空間が広がっている。どこまでが上でどこまでが下なのかわからなくなるくらい真っ白だ。
そんな空間でポツリとある黒い椅子に自分は座っている。
周りを見渡すのをやめ、ふと視線を前に向けると一人の女性が真っ白な椅子に座っていた。床まで伸びた長い銀髪に白いドレスを着た美しい女性だ
今の今までいなかったのに気付いた時にはソコにいた。
『こんにちは。』
こちらが気付き驚くよりも早く目の前の女性はニコリと微笑み声を出した。
よく透き通った優しくもしっかりとした声だ。
反射的に頭を下げて挨拶を返す。驚きはしたが挨拶は返す挨拶は大事ですから。
『貴方は先程事故を引き起こし亡くなられました。』
目の前の彼女はそう続けた。
やっぱり自分は死んだのか。あまり動揺することもなく、ならば何故俺はここにいるのか。
そう彼女に聞いてみた。
すると彼女は少し表情を暗くしてゆっくりと話し始めた。
『貴方の事故によって多数の命が亡くなりました。驚くほど多くは有りませんが、決して少なくはないほどの……』
その話を聞いて自分は愕然とした。
仕事で疲れていたとはいえ、自分の不注意で沢山の人々が命を落としたのだ。自分は沢山の人達の未来を奪ったのだ。
頭を抱え俯く。きっとその人達は自分を恨んでいるだろう。いきなり理不尽に命を奪われたのだから当然だ。
ならば当然自分は地獄行きであろう。そう彼女に呟いた。
『確かに、あれだけの事ですし、貴方の魂は地獄に行くでしょう……ですが……』
その言葉を聞きふと顔を上げる。すると彼女が自分の前で膝を着きそっと自分の手に触れた。
今まで女性に触れられたことが無かったので、暖かく柔らかい彼女の手に少しドキッとする。
『ですが、もしも償いの機会を与えられるのだとしたら、貴方は……どうしますか?』
"償い"。
その言葉を聞いた瞬間に、様々な事が頭に浮かんだ。だがまず先程から思っていた疑問を彼女に聞いた。
貴女は誰なのか、と。
『私は貴方方の世界で言うならば、女神……でしょうか?』
彼女は微笑みながらそう言った。
女神と名乗った彼女の話しによると、俺は今までの人生でとくにこれといった悪行をせず、真面目に生きてきたので転生の機会が与えられたのだそうだ。
しかし、元々俺が居た世界ではなく、別の世界に転生するらしい。
ちなみに俺のせいでなく亡くなってしまった人達は全員再び生を与えられ、第二の人生を歩むとの事だ。
それを聞いて少し胸が軽くなった。俺が言えた事ではないが、その人達第二の人生に幸せがあるようにと心の中で願った。
何故俺は他の世界なのか、それを聞いてみたら自分が犯した罪を清算するために、特殊な力を与えてその世界の人間達の生死を調整してほしいとの事だ。
女神様曰く、俺が送られる世界は出生率よりも死亡率の方が高いらしい。
災害や障害事件や紛争などといったものが上げられるが、その中でもとりわけ"特異な物"による死亡が多いらしい。
有り体に言ってしまえば、俺が今から行く世界には人を脅かす"怪物"や脅威が存在して、力を与えるからそれを使って様々な脅威から人々を守れ、と言うことだ。
そこから話はトントン拍子に進んだ。元々俺がヒーローに憧れていたと言うこともあり、それで償いになるのであるならと、その役割を引き受けた。
女神様も不安だったのか、引き受けると言った瞬間に少し顔が明るくなった気がする。すると彼女が俺に言った。
『では、貴方の望む力は何ですか?』
与えられる力は転生者の希望する力が与えられるらしいので、俺は迷うこと無く彼女に言った。
もしも"ヒーロー"になれるのなら俺はずっと"あの人"になりたいと心の中でずっと思っていた。だから、迷うこと無く決断できた。
俺を、"ウルトラマンティガ"にしてほしいと。
『困りましたね。』
彼を待たせて、真っ白な空間を右往左往しながら女神は一言呟いた。
『どうしたんですか?お姉様?』
その様子が気になったのか、テレビを見ていた彼女の妹が聞いてきた。
ちなみにテレビの周りには、何処から送られてきたのかインターネット通販のロゴの入った段ボールが置いてある。
真っ白な空間にあるテレビと段ボールが妙に異質な物に女神は見えた。
『実は、今回の転生者さんが"ウルトラマンティガ"になりたいと願ったのですが、私外界のそう言った物には疎くて………』
『あ~~お姉様見ないですもんね、ウルトラマン。』
『そう言えば貴女はそう言うの好きだったわよね?』
『はい、ちょうどBlu-rayboxが届いたので今見てるところですよ。』
『本当!?』
驚いた女神が妹の見ているテレビを覗く。
彼女が覗いた時、ちょうど戦闘シーンの直前くらいで、画面の中央にいた男が変身しようとしているらしい。
地面から伸びる炎に包まれて現れたその姿を見て女神は理解した。
『そうか!"コレ"がティガなのね!』
『え?お姉様これは違ーーーー』
『彼に伝えて来なければ!』
テレビの続きを見ること無く、妹の言葉を聞くことも無く女神は転生者の待つ空間へと向かっていってしまった。
画面では"光の巨人"と"先程現れた巨人"が向き合っていた。
彼女が戻ってきた。
何やら転生に際しての細かい調整をしていたとの事。神様でもそう言った事務的な事があるんだなぁ。
彼女は再び目の前の椅子に腰掛け、俺と向かい合う。
『ではこれより、貴方の魂を新しい身体に移し転生させます。』
いよいよか。自分で望んだとはいえ少し緊張する。
憧れとは言え、これから俺は人々の平和を守る光の巨人、ウルトラマンティガになるのだ。緊張しない訳がない。
『貴方の望む力、ウルトラマンティガの力を授けましょう。でも、本当にこの力でいいんですか?』
勿論です。子供の頃からの憧れのヒーローだったんですから。そう彼女にハッキリと言った。
『………外界のヒーローとは随分と変わった姿をしているのですねぇ。』
彼女が何かを呟いたがよく聞こえなかった。
すると、俺の足元が輝き始めた。それと同時に自分の体が宙に浮きだした。
彼女が宙に浮く俺を見上げ、手を伸ばす。
『どうか、貴方の道行きに幸がありますように………』
そのまま俺の意識は光に飲まれて消えていった………………
眩い光が無くなり、ゆっくりと目を開けると目の前には青空が広がっていた。
雲一つない晴天だ。どうやら無事に転生出来たらしい。
しかし、どこか身体に違和感を感じる。なんだか体がふわふわしているような………
仰向けの体制でいるはずなのに、背中に感触を感じない。
ふと視線を後ろに向ける。
眼下に町があった。見間違いかと思ったが、確かに町だ。
自分の体はどうやら宙に浮いてるらしい。そこまでならまだいい。問題はふと下に伸ばした自身の腕だ。
ぼんやりとした輪郭、半透明な体、なんか見た事のある腕の形。
まさか……そんなまさか!
慌てて体に触れる。しかし触れた感触を感じない。
もし他人が俺の顔色を見ることが出来たのなら恐らく俺の顔面は真っ青になっているだろう。
今までの特徴全てに思い当たる節がある。考えたくはないが………
俺は、"炎魔人キリエル人"になっているようだ………
これでいいのかな?
果たしてちゃんと出来ているのかひたすら不安だ………
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《ZWEI WING》?
お久し振りです。新入りの特撮SSです。
やっと2話目を投稿出来ました。最後に更新したのいつだっけか?
遅れている間にXV始まるし、令和ライダー始まるし、タロウの息子はパワーアップするし、色んな事がありました。
これからも亀更新ではありますが、お付き合い下さい。
も、モチつけ…モチつくんだ…………あ、違った。
落ち着くんだ…兎に角落ち着いて状況を把握するんだ。
確か俺が女神様に頼んだのは"ウルトラマンティガ"の筈だ。決して“キリエル人”になりたいとは言っていない。言っていない筈……だ。
別にキリエル人が嫌いと言うわけではない、いけ好かない奴らだがキャラクターとしては大好きだ。“ティガの中で一番好きな怪獣は?”と聞かれれば"ゾイガー"と“ゴブニュ”そして“キリエル”、と迷い無く言えるほど好きだ。
だからってそれとコレとは話は別だ。
宙で腕を組みウンウン唸る。今現在俺の姿はキリエル人の本来の姿とも言える精神生命体ーエーテル体ーの姿だ。
このエーテル体は有り体に言ってしまえば幽霊のような物なので自身以外の何かに触れることもできなければ、話すことすらできない。
劇中でイルマ隊長やダイゴ隊員に使っていた念力のような力は一応使用可能だ。
試しに使ってみたら、近くを飛んでいたカラスに直撃したらしく、カラスが鈍い音を出して真っ逆さまに落ちていってしまった。
なんとも言えない状況に固まってしまった俺は、ただ静かに両手を会わせていた。………ほんとごめんな。
移動方法は至って簡単で、行きたい方向に体を傾ければその方向に移動するようで、上下左右自由自在に動くことができるだろう。
ーーーこ、これは…なかなか……難しいな…ーーー
ただ、常時ふわふわ浮かんでいるような感じで姿勢を安定させるのがなかなか難しく最初は上手く出来なかったが、何度か空中を浮遊しているうちにコツを掴んできた。
未知の感覚に最初は戸惑ったが、馴れれば案外快適だ。
さて、自分の体の事大体わかった。次は自分が何処にいるのかを調べないとな。
眼下の街に降下し、しばらく街中を移動(浮遊)して気付いたが、道を行き交う人々の顔立ちや通りに出ている看板に書かれた文字を見る限りここは日本のようだ。流石に日本のどことまではわからないが、おそらく東京であろう。
怪物がいると聞いたから、てっきりファンタジーな異世界かと思ったが、自分が居た世界とあまり変わらない現代日本だ。しかし街の風景やあちこちにある映像で出来た垂れ幕や変わった形の信号機など、科学技術はかなり進んでいるようだ。
街中をぶらりとしていてふと気になったのは、街を歩く人々の中に稀に俺に気付いたようにこっちを見てる人がいることだ。しかし直ぐに気のせいだと思ったのか、首を傾げながら視線を外す。
ーーーあの人達って確実に見えてるってこと…だよね?そもそも、“エーテル体"ってこの世界の人から見たらどういう風に見えてるんだろう?ーーー
やっぱりテレビ本編のようなぼんやりとした見た目なのだろうか、それとも全く違う物なのか…
そんな事をぼんやりと考えながら俺は散策を続けた。
散策してしばらく、港に近い所に奇妙な建物が幾つか見えた。
まるでオブジェのような形の土台にミラーを張り詰めたドームのような物が乗っている。
近付いて見ると、遠目からもわかったがかなり大きい。俺のいた世界にはこんな大きな建物は無かった。
そのドーム状の建物の一つに更に丸いドームが建っていた。
何の建物のか気になった俺はドームに接近してみた。入り口付近には作業服を着た人達が柵やら機材やらを忙しなく運んでいる。
ーーー何かのイベント会場……かな?ーーー
生まれてこの方イベントなんて行ったことが無かったので、物珍しそうに辺りを見て回っていた。
「電気入りまーす!!」
ふと後ろで作業をしていた人が声を上げた。
街にもあった街灯のような物に電気が入る。その街灯に映像が流れ始めた。
思わず振り返った俺は、その街灯を見上げた。
ーーーツヴァイ……ウィング?ーーー
その映像には蒼い髪の少女と橙色の髪の少女、そして《ZWEI WING》の文字が移し出されていた。
会場内に入った(無断で)俺は、その広さに驚愕した。
入ってくる道中で知ったのだが、この会場は先程見た《ZWEI WING》と言うボーカルユニットのライブ会場らしい。
何十人もの作業員が席やステージの設備をセッティングしている。会場の中は機材の音や作業員の声などでとても活気がある。
ーーーおっ!すげぇライブ会場ってこうなってるのかぁーーー
そんな人達を観察しながら会場内を漂う。こう言うのを見ることなんて生前では絶対に無かっただろう。人に見えないと言うもの存外悪く無いかも知れない。
そんな事を考え始めた時、ふと会場の一角から女の子らしき高い声が聞こえた。
作業現場に女の子がいるのだろうか?気になった俺は、その声が聞こえた方に飛んでいった。
「…………?」
ふと何かの気配を感じ蒼い髪の少女“風鳴翼"は視線をステージの天井部に向けた。
だが、視線の先に写るのは天井内側の鉄骨やそこで働く作業員ばかりで何ら不審な物は無い。
しかし、翼はほんの微かにだが確かに感じた。“装者"として彼女達が戦っている“奴ら"とは違う、しかし同じ程異質な何かを……
そんな事を考えながら天井部を注視していると______
「何ボーッとしてんだ_____よっ!」
後ろから声が聞こえて来ると同時に翼の後頭部を衝撃が襲う。
すぐに自分が叩かれたと悟った翼は驚いて振り向くと、自身の無二の親友にして“戦友”でもある少女、“天羽奏”が呆れた様に翼を見ていた。
「か、奏……」
「さっきからボーッとしてんぞ?見学してきていいって言われたけどまだあちこち骨組みなんだから気を付けろよ。」
「あ、うん。ごめん…奏。」
まだ少しヒリヒリする頭を擦りながら翼は奏に謝罪する。
しかしどこか心ここに有らずといった感じで、返事も生返事だ。
そんな様子の翼を心配してか、奏が翼の顔を覗きこむ。
「……どうした?なんかあったのか?」
「えっ?」
「翼、さっきから様子が変だからよ。」
奏の様子に、翼も我に返り自分が奏に心配をかけていた事を悟った。
「えっとごめん。初めての大きいステージだから珍しくて…」
「そうか?なんか天井ばかり見てたようだけど?」
「あ…いや、そんなことないよ。ほ、ほら!そろそろ戻らないと緒川さんも心配するし!」
翼は強引に会話を打ちきり奏の横を通りすぎる。明らかに何時もと様子の違う翼に奏は訝しげに翼を見るが、翼から何も言ってこない以上深く追及する事はしなかった。
翼自身も奏に相談するか否か迷ったが、奏が気にしてる様子もないようだし、あくまで“そんな気がする”だけで何の確証も翼にはない。
それに折角の親友との晴れのステージなのだ、楽しみにしている友の顔を妙な事で曇らせたくなかった。
ーーーあ、アッブネェェェェ!ーーー
下にいた少女達が居なくなったのを感じ、天井の照明器具からニュッと顔を出すキリエル人(エーテル体)。
ーーー何なんだ青髪のあの子!?近付いた途端にこっちガン見してきたぞ?!今まであんなに熱烈(?)な視線向けられたことなかったのに!!?ーーー
再び照明の中に隠れ頭を抱えたキリエル。今まで自分を見ていた人間は結構いたが、そのすべて気のせいだとあまり気にしている様子はなかった。
だが彼女は今までの人間とは違い、視線を外さずキリエルのいる辺りを怪しそうに凝視してきた。
視線を向けられる寸前、某新人類のような感覚が走り、近くの照明器具の内部に入り込み事なきをえた。
ーーーやベーなぁ、あの子みたいな霊感(?)高い子もいるのかぁ。あんまり此処に長居しないほうが良さそうかも。ーーー
照明から抜け出たキリエルは周りの視線にビクビクしながらコンサート会場を後にした。
随分前にリア友がこのSSを読んでたらしくて驚きました。激励という名の文句を言ってきました。
おんどれ、今度会ったら覚悟せいよ。
どうでもいい独り言でした。
※誤字があったので修正しました!報告していただき有り難う御座います。
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“炎”を継ぐもの
いや本当遅くなりました。
待っていてくださって(そんな人いるか?)ホントに有り難うございます。
シンフォギアも終わり、生きる糧がなくなりつつある今日この頃。
必死に生きています。
燃え盛る炎の中、倒れる二人に少女は手を伸ばす。
もうあの二人は目覚める事は無い、そんなこと小さいながらも理解している。理解しているが認めたくなかった。
今にも炎の中に飛び込まんとする少女の肩を一人の女性が掴む。少女がこの地で出会い、まるで姉のように接してくれた優しい人だ。
自身を引き留めようと掴むその手が、今の少女には無性に腹立たしかった。自分の事を思っている彼女の心を少女は無視し彼女に言葉をぶつける。
ーーーソーニャのせいだ!!!ーーー
その言葉を聞き女性は後悔の表情を浮かべ涙を流す。
少女の言っている事は正しい。自分が持ち込んだ荷物の中にあった爆弾のせいでこんな事になってしまったのだから。
そんな後悔の為か少女の肩を掴んだ手の力が緩んでしまった。
その隙に女性の手を逃れ炎の中に走りだした。
ーーークリスッ!!駄目、戻って!クリスゥゥ!!!!ーーー
彼女の叫びも空しく、少女の背は炎の中に消えていった………
ーーー何だってこんな所に来ちゃったんだよ…オレ……ーーー
例の少女から逃れる為に日本を離れ、方角や距離など考えず雲の上を浮遊する事約数日、そろそろかと地上に降りて見れば何処ともわからない場所に到着。
此処は何処かと辺りを散策。ようやく町らしき場所に着いたかと想ったが、市街地は戦闘の跡地のような廃墟になっていた。それも自分が到着する数分前のようだ。辺りに立ち込める煙や人の鳴き声呻く声、叫び、怒号。
紛争か内戦であろうか、エーテル体の自分には全く問題無いのであるが………
ーーーマジかよ…人間どうしでこんなーーー
目の前に広がる戦闘の余波によって倒壊した民家や建物、巻き添えになり身体のあちこちがバラバラになったり穴だらけになった住民の死体。その亡骸にすがり付く子供。
転生前の世界でもニュースやインターネットで余所の国々で起こっている戦争は知っていた。だが知っていただけで自分とは違う世界の出来事のように思っていた。
それが今自分の目の前で起きている。
ーーーでも……俺には…どうしようも無いし…俺がこの世界に来たのは怪物からこの世界の人間を守る為だしーーー
そう自分に言い聞かせ市街地から逃げるように離れる。第一、自分はまだエーテル体の姿で巨大化はおろか実体化する方法もわかっていないのだから。
そんな言い訳を頭の中で繰り返しとにかく離れる。飛んで飛んで、一秒でも早くこの場所から離れようとした。
どこまで飛んだだろうか、町を抜けて舗装されてない道を浮遊しながらふと振り返り、もう見えないあの町を見つめる。
ーーー“ウルトラマン”だったらどうしたんだろう…ーーー
ふと、光の巨人達はあんな光景を見たらどうするだろうかと考えた。
彼ら光の巨人達はどんな事があろうとも人の善性を信じて人同士の争いに干渉することなく邪悪な怪獣や宇宙人達と戦った。子供の頃はその考えはとても美しく尊いものであるとなんとなくだが理解していた。
そんな彼らならあの惨状を見てどうしただろう?簡単だ。迷わず怪我人を手当てしただろう、泣いている子供に寄り添ってあげただろう、困っている人間に手を差し伸べて“諦めないで”と言うのだろう。
でも、それで解決するのだろうか?
弱い者達に寄り添い、救いな手を差し伸べるだけでよいのだろうか?
原因を野放しにすれば同じ悲劇が何度となく繰り返され、その度に罪の無い人々が苦しみ続ける。
ーーーだったら……いっそのこと……あの人達苦しめるその原因を…滅ぼしてしまったほうが……ーーー
ーーーッ?!なに考えてんだ!?俺?!ーーー
嫌な考えが頭に浮かんだ途端にその思い付きを頭から排除する。第二の命と共に与えられた使命を果たし、前世で犯した罪を償う為にこの力を授けられたのだ。
たとえ与えられた力が望んだ光で無くとも、心は光の巨人と同じ物でいたい。
ーーー此処に居ると変な事ばかり頭に浮かぶ…どこか違う場所に……ーーー
そう思い移動しようとしたとき、後ろから数台のトラックが向かってくるのが見えた。
道の真ん中にいる状態だが、エーテル体なので特に避けることなくそのまますり抜ける。
トラックが自分の身体を通り抜けるその瞬間にキリエルは見た。いや、見えてしまった。
そのトラックの荷台に動物用の檻が数個あったこと、その中には本来入っているはずの動物はなく、“数人の子供”がその檻の中に押し込められていた。
一瞬とはいえキリエルにはハッキリその子供達が見えた。
全員が膝を抱え泣いているようで、その表情や容姿すらもハッキリと見えてしまった。
その光景を見てもキリエルはすぐに理解できなかった。何故子供がいるのか?そもそも何故檻に入れられているのか?それに何故そんな顔をしているのか?
頭の中の情報が整理された時には既にトラックは遥か彼方に行ってしまった。
そうだ。彼らはこれから“売られるんだ”。
一人の人間としてではなく、“一つの商品”として。
その答えに辿り着いた時には、キリエルは既にその場から消えていた。
パパとママが死んだ。
訳がわからないまま大人の人達に捕まって、車の中にあった箱に入れられ、同じ年の子達と一緒に連れていかれた。
揺れる箱の中でようやくパパとママが死んでしまった事を理解し、泣いた。
揺れが止まり、私達は全員車から下ろされ鎖を繋がれて集落の中にあった小さな小屋の中に入れられた。
逃げようとした子、泣いて座り込んでしまった子は大人に殴られた。何度も何度も何度も、大人の言うことを聞かない子は全員殴られた。
泣いていた私も「うるさい」と、殴られた。
夜が来た。殴られた場所はまだヒリヒリしている。
あの後色々な事をされた。身体を触られたり、何かを調べられたりした。他の子達もそうだった。
泣いてやめてと言っても大人達はやめてくれずまた殴られた。
もう嫌だ…パパとママに会いたい。そう思い足を鎖で繋がれた足を抱え、外の大人に聞こえないように静かに泣いた。
どのくらいたっただろうか。
外の騒がしさに気付き顔を上げる。他の子達も外の様子に気付いたのか皆小屋の戸を見ている。しかし鎖で固定されてしまっているので外を見ることが出来ない。
暫くすると軽い破裂音が外から聞こえてきた。此処にくる前に何度も聞いた大人達が持っている銃の音だ。その音が何度も外から聞こえてくる。
私は耳を塞いだ。あの音が響く度に人が一人死んでしまう。
それが嫌で私は耳を塞ぎ小屋の中で震えていた。
するといきなり、小屋の中に銃を持った数人の大人が入ってきた。
全員汗だくで酷く怯えているようだった。私達には訳がわからなった。大人達は怯える私達を見て「静かにしろ!」と小声で言ってきた。
私達は従うしかなく、黙って頷いた。すると大人達は戸を少し開け銃を構えながら外の様子を見ていた。
暫くして大人達は銃を下ろし、何かを言い合っていた。何を話しているのかは聞こえないが、話をしていて大人達は気付いていないようだが、私には聞こえた。
ナニかが、地面を揺らしている音を……
“ソレ”は小屋の天井を引き剥がし、私達に姿を見せた。
乳白色の顔のような物に橙色の光を発する物がくっついている。その光が小屋の中にいた全員を照らす。大人達は最初は呆然としていたが私達が悲鳴をあげると大声で叫びながら手に持った銃でその光を撃ち出した。
その顔のような物は一度小屋から離れた。離れた事で“ソレ”の全体が少し見えた。
“巨人”だ。その巨人は膝をつき小屋の中をまるで品定めをしているかのように覗いている。
私は銃の音、大人の叫び声、目の前の巨人、全てに怯えガチガチと震えていた。
“ソレ”は黒い手を伸ばしその指先で私達の鎖をまとめて器用につまみ上げる。壁に繋がれた鎖が千切れ私達は持ち上げられた。
中に浮く感覚に戸惑いと恐怖を感じ叫びを上げることすらでできず、自分を繋ぐ鎖にしがみつく。
しがみついている間に浮遊感が消えた。ゆっくり瞼を開けると白い地面の上に全員下ろされていた。
いや、地面と思ったソレは巨人のもう片方の手の上だった。
他の子達は皆既に気を失っている。巨人から逃れようとその指先まで這い、指の隙間からその光景を私は見た。
私達が連れてこられた集落が、燃えている。一つ一つの小屋から炎があがり、あちこちで大人達が悲鳴を上げ逃げ回っている。
その有り様に言葉を出せずただ呆然としていると巨人の足下から銃声が響いた。
先程小屋に入ってきた大人達が巨人を撃っているのだ。しかし弾は巨人の顔に命中しているが、巨人には全く効いていない。
《キリ》
巨人から声のような物が聞こえ、巨人が足下を見下ろす。
そして足を上げ、そのまま大人達を踏み潰した。ヒトが足下の虫を潰すように、念入りに爪先で踏みつける。
ふと巨人が何かに気付いたように振り返る。集落の中を逃げ回っていた大人達が全員さっきの人達よりも大きな武器を持って集まっていた。
巨人はゆっくりと立ち上がり白い手で私達を優しく包む。私は僅かに空いた指の隙間から再び外を見ている。
巨人は大人達にゆっくりと黒い手を向ける。何をするかと気になったが変化は突然現れた。
集落を燃やしていた炎が全て巨人の黒い手に集まっていく。黒い手が炎で赤く染まり、手から発せられた熱気が指の隙間からも感じられた。
炎が全て巨人の手に集められた瞬間ーーー
《キリッ!!》
巨人が先程よりも大きな声を出し、収束した炎を眼下の大人達に向けて放った。
炎は黒い手から火炎放射のように真っ直ぐ伸び、武器を構えていた大人達は悲鳴を上げる暇もなく放たれた炎に燃やされた。
私は熱風と人が焼かれた恐怖で目を背け、巨人の手の中でうずくまる。
暫くしてそよ風を感じ、ゆっくりと顔を上げ辺りを見てみる。
私達を包むように握られていた手は広げられ、外の様子を見ることができた。
しかし外には何もない。私達が連れてこられた集落も、怖かった大人達も、あるのは未だに燃え続けるナニかと焼け野原。
そしてソコに立つ巨人と自分達だけ。
呆然しながら恐る恐る振り向く。この場の何もかもを焼き払った巨人は何も言わずただ立っていた。
すると巨人は私の視線に気付いたのか、手に乗る私に顔を近づけ私を見返す。
その白き顔はゆらゆら揺れる炎に照らされて、さきほどよりもハッキリと見えた。
光る結晶を額に宿した白い顔。その顔は泣いているかのような歪んだ顔をしていた。
その顔を、姿を見て私は震える口でポツリと呟いた。
「あ………悪…魔」
その声が巨人に聞こえていたかどうかはわからない。巨人はゆっくりと顔を離し、私達を手に乗せたまま歩き出す。
歩く巨人の横顔は変わらず泣いているように歪んでいるが、笑っているようにも見えた。
あたしにはその後の記憶は無い。恐怖で気絶してしまったのか、あの場所から解放された事で安心して寝ちまったのか、気が付くとあの巨人は消え私達は別の町の近くで目を覚ました。
夢かとも想ったが、手足に付けられ途中で契れた鎖があの場で起こった事を証明していた。
あの巨人の顔…炎に照らされたあの悪魔のような顔、何年たった今でもあたしは忘れられない。忘れる事が出来なかった。
最近の一幕
オディッセウスPUか……石はエレちゃんに使い果たしたが、なんとか手にいれたい。( ・`д・´)
え?!じいじPU?!そ、そんな!もう石が無いって言うのに!?(゜ロ゜;)
うああああぁあぁぁぁぁぁぁ!!!(0M0≡0M0;)
※3月19日 深夜テンションで書いていたので色々見返し、後半や後書きを大幅修正いたしました。
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悪夢
昨今のコロナ騒動、皆さん如何御過ごしでしょうか?
仕事しながら書いた拙い作品ですが、皆様の暇潰しになれるなら幸いです。
ーー炎が揺れる
人間共の心地いい悲鳴が耳に入る。
ーー炎が揺れる
焼けた人間の香ばしい匂いが鼻に入る。
ーー炎が揺れる
人間共の絶望と恐怖に歪む顔が目に入る。
ーー炎が揺れる
“知らぬ間に”手に乗せた矮小な人間達の表情を覗こうと顔を近づけ………
「あ………悪…魔」
ーーーー………………ッ?!
ビクッと体を揺らし意識が戻る。
視界いっぱいに広がる木々の隙間から木漏れ日がさし込み、実体の無いエーテル体の体を照す
鳥の鳴き声や風に揺れる木々の音がパニックになりかけた心を落ち着かせてくれる。
エーテル体である今の自分に疲労という物は存在しない。故に睡眠は無い物と思っていたが、転生の影響なのかそれとも魂は人間であるからなのか、エーテル体の状態でも睡眠をとることができた。
どっちにしろ今の自分にはどうでも良かった。
ーーーー……また……あの時の…
ここ最近眠る度に見る光景。自分が初めて《キリエロイド》として戦った記憶。
いや、“戦った”なんて甘い物じゃない。
アレはただの“虐殺”だ。相手には
あの時の自分は弱者を蹂躙する、正に“怪獣“と呼ぶに相応しい存在だった。
“あの子”の声で正気に戻り、気絶した子供達を近くの町まで運び逃げるようにその場を離れ、絶対に人が入ってこない森の奥の奥まで逃げ込んだ。
それからはずっと膝を抱えて震えていた。人を殺してしまった罪悪感や小さな子供に悪魔と呼ばれてしまった事がショックだった事もあるが、俺が震えていたのは怖くなったからだ。
俺は正直、あの時楽しいと感じていた。“人殺しを楽しい”と心から感じていた。
あの子達の前では自分達を絶対の強者と思っていた奴らを、更に強い力を持って蹂躙する。強気だった顔が恐怖と絶望の表情に変わっていくのを見るたびに愉悦を感じ、奴らの小さな体を踏み潰し、灰しか残らない程燃やす度に全身に快感を感じた。
最初はただあの子達を助けたい一心だった。涙を流すあの子達を見て何とかしなくちゃと思ったが、次第に手にいれた強大な力を使うことに夢中になって、あの子達の存在すら忘れかけて、正義を持たない力をあの大人達にぶつけた。
ーーーー……こんなんじゃ…この世界を救うなんて……
光の巨人達は人間に向けてその力を使った事など無い。人を襲うのはいつだって闇の存在だ。キリエロイドだってそうだ。
でも自分なら、人間の心を持つ自分ならばと心の何処かで慢心していたのかもしれない。
ーーーーいや…俺は……俺は
震えていた体を叩き、一度言ってみたかった台詞を言い自分を奮い立たせる。
考えてみれば俺は何も悪い事をしていない。奴らはあの子達を売り捌こうとした悪人だ。アイツらを殺してあの子達を助けたんだ。少ない悪人を殺して多くの善人を救えばそれでいいじゃないか。そうだ。俺は何も間違えてなんていない。
そうと決まったらまずやらなきゃならない事は………
ーーーーキリエルの力をコントロール出来るようにならないと……
それから俺は休んだ分を取り返すように特訓に励んだ。朝も昼も夜も、疲れないのを良いことにひたすら能力の制御に集中した。
結果としてエーテル体に出来ることは浮遊移動と念動力だけで人間に変身したり乗り移ったりは出来そうになかった。
しかし大きな成果として実体化に成功した。感覚としては念動力を使う時の力の流れを全身に纏う感じと言えばいいだろうか。
数日の特訓の末にコツを掴み何とか成功した。上手くいった時は本当に喜んだ。端から見れば
だが喜んでいると、ふとあることに気付いた。
ーーーーあれ?何か視界が…低い…ような…
キリエロイドの身長は52m。変身したなら森を見下ろす程巨大な筈だ。しかし今自分の視界は先程何ら変わらない森の中。それこそ隣に生えている木よりも小さい。
慌てて自分の体を見てみるが半透明なエーテル体ではなく、しっかりとした実体のキリエロイドが見える。ただしあの時変身した巨人ではなく約170cm位の等身大サイズのキリエロイドだが。
理解したと同時に一気に体から力が抜けた。数日頑張ってエーテル体の能力確認と等身大サイズのキリエロイドへの変身のみ。キリエロイドになれたとは言えこの様では。
ーーーー……………ま…まぁ、巨大化は追々って事にしますか。
自分に言い訳をして何とか気持ちを切り替えた。
それから俺は、実体エーテル体共に使える能力を可能な限り磨き怪物と呼ばれる存在に対抗できる位には強くなったと思い、俺はこの森を後にした。
今現在俺はあの忌むべき記憶の残る国を抜け、海の上を飛んでいる。
ふと移動中にキリエロイドでも飛行出来るのではと、考えエーテルから実体に海上で変身したら綺麗に落ち、溺れかけました。
ーーーーやっぱり飛ぶには“Ⅱ”にならないと駄目なのかなぁ。
そんなことをぼんやりと考えていると、陸地が見えてきた。方角も方向も考えずただ本能に従って飛んでいたが、何とかなるもんだ。
ーーーーあの国で、俺は今度こそ
決意を固め、俺はその国に入る。そこであることに気付いた。
ーーーーあれ?ここ前にも……
港の風景や海岸線に連なる町、何より海から入ってすぐ近くに見えるオブジェのような建物。それは目覚めて初めて散策した町にもあった物と全く同じ風景、と言うことは。
ーーーーそっか……日本に戻って来たのか。
たまたま飛んでいただけなのに、俺は自分がこの世界で目覚めた日本に戻ってしまったらしい。決意を新たにし、やり直そうと決めた国が前世の自分の祖国とは何の運命なのだろうか。
しみじみと感じていると、例のオブジェのような建物から光が溢れ夕焼けに染まる空に光の柱が昇る。それと同時に力強い音楽と優しくも凛とした歌声が聴こえてきた。
そう言えばあの建物はライブ会場だったっけ、自分がこの国を離れた時はまだ準備中だったはず。あれからどれくらいたったのか正確な所はわからないが、今あの会場でライブが行われているのは確かだ。
俺は聴こえてくる歌に誘われるように会場に向かって飛んでいった。折角日本に戻って来たのだライブを覗いてみるのも悪くない。エーテル体で侵入すれば誰にも気付かれないだろうし。
ーーーー確か…《ZWEI WING》だったっけ?あ…あの時の霊感少女には気を付けないと。
ぼんやりとそんな事を思いながら、歓声と音楽と歌声が響く会場の中に俺は消えていった。
最近の出来事。
シンフォギア、ULTRAMANコラボ!
゚ ゚ ( Д )
シンフォギアのデザインを拝見
!!ヽ(゚д゚ヽ)(ノ゚д゚)ノ!!(第37話ピグモンの声)
コラボクエストプレイ
!!ヽ(゚д゚ヽ)(ノ゚д゚)ノ!!ヽ(゚д゚ヽ)(ノ゚д゚)ノ!!(第37話ピグモンの声)
次のコラボはリリなの!
!!(゜ロ゜ノ)ノ(第37話ピグモンの声)
以上、最近の出来事でした。
魔導師ギアのビッキー………出なかったよ( ´-ω-)
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夕焼けに染まる空に歌声響く《前編》
ごめんなさい。調子に乗りました許してください。
連日連夜の深夜残業の為に休日も死んだように眠っていたのでなかなか続きを執筆できませんでした。
ゼロワンも終わり新ライダーのセイバーも録画したのをチラチラ覗いています。
それにウルトラマンZ面白すぎぃ!!!ブルトンソフビ買っちゃったよぉ!セブンガーの可動フィギュアも予約しちゃったよぉ………
長文失礼しました。それでは続きをどうぞ。
ソコに入って彼が最初に感じたのは空気を震わせる“音”だった。
アップテンポな音楽と二人の少女の歌声、そしてこの場にいる人々の歓声が天井まで響き、照明器具の近くいた実体の無い自身の体をビリビリと震わせる。
外からでも聞こえた歓声と歌声を間近で感じるとまるで轟音ともとれる激しい音だが、それでもその音を全く不快と感じない、寧ろこの空気を震わせる音がとても心地よく感じる。
入って数分ほど彼はこの場の空気に呑まれていた。会場全体に響く歓声に歌声、暗い観客席を彩るペンライトの光、何よりライトアップされた中央ステージを駆けながら歌う二人の少女達。この場の全てに彼は見惚れていた。
ーーー凄い……初めて見たけど、こんなに凄いんだ。ーーー
生前の彼の人生は、遅くまで仕事をして食事をして眠る、楽しみや幸福など微塵も感じない人生だった。
歌だって、小さい頃や学生だった頃は好きで色んな歌を同じ趣味の友人達と共に聴いていた。日本の歌から海外の曲まで色んな物を聴いた。だが、社会に出てからは歌を聴いている暇なんか無く、その時の友人達とも連絡を取らなくなり次第に全く聴かなくなっていた。
そんな彼が久しぶりに聴く歌はとても心地よく、歌が好きだった彼の心に激しくも優しく響いた。
ーーーそっか…これが…ライブなんだーーー
生前大人になってから全く感じることのなかった高揚感が彼を満たし、思わずこの場の人々と同じように声を上げてしまいそうになった。
その時ふと今自分のいる照明近くのスタンド席に丁度一人分席が空いていることに気が付いた。
見てみると薄いオレンジ髪の少女の隣が空いている。恐らくではあるが親族、或いは知人か友人が来れなくなり席が空いてしまったのではないか。
まぁ、あくまで彼の予想ではあるが、もしかしたらただトイレに行っているだけかもしれない。
そこで彼は思い付いた。実体の無いエーテル体だからこそできる事を。
ーーー折角だから席からライブを見てみようかな。前は来ることなかったし。ーーー
彼はゆっくりと降下し、空いている席にストンと降り立つ。
席からは歓声を上げペンライトを掲げふる観客達の腕が視界に入り天井部から見るよりも見ずらくはあるが、ここに居ることで妙な一体感を感じることができる気がした。
気づけば彼は周りの人々と同じ様に腕を掲げ声を張り上げていた。周りに聞こえることも無ければ見えることも出来ないが彼は周りと同じ様に声を上げる。
彼はただただ叫ぶ。あの頃の孤独を埋めるかの様に。
自分がキリエル人であることも、体の無いエーテル体であることも忘れてライブに夢中になっていると、ふと彼は自分に向けられる視線を感じた。
精神生命体であるからなのか、触覚や嗅覚、味覚などは感じられないが(実体化している際は感じるが)、やけに気配や視線には敏感に反応する体質になってしまった。
周りを見渡しても皆ステージの彼女達に釘付けで此方を見ている者など誰もいない
ーーー気のせいか?ーーー
長い間山籠りをして感覚がおかしくなってしまったのか、或いは無意識に人恋しくなってしまったのか……
理由はどうであれ自分の勘違いであろう。そう思い再びステージに目を向けようとした時、彼は視線の正体を偶然にも見つけた。
自分が今いる席の隣にいる少女だった。
少女はペンライトを握ったまま驚いた様に目を開いて彼を見ている。その視線は彼を見据えており間違いなく彼を認識している。
焦りからか周りの歓声がやけに遠く感じる。ペンライトとステージからの光が少女を照らしその瞳がキラキラと光っている。
そんな彼の心情とは反してライブはいよいよ最大の盛り上がりを迎えていた。会場の屋根が開き夕焼けの光がステージに差し込んでくる。
しかし、彼は彼女の瞳から目を離すことが出来ないでいた。驚愕の表情と見開かれた目が、赤く染まる彼女の顔が“あの時”の少女の顔を彼に思い出させる。彼の頭の中で目の前の少女とあの集落で助けた“あの子”の姿がゆっくりと重なる。
震えが止まらない。精神体である筈なのに呼吸も荒くなっているように感じる。
あ………悪…魔
ーーー…………違うーーー
………悪…魔
ーーー……違う………違うーーー
悪…魔
ーーー……俺は…俺は…君を……助けようと、
悪魔
ーーー……ッ!!!ーーー
急な吐き気に襲われ彼はその場から脱兎の如く逃げ出した。恐らくエーテル体の状態で出せる全速力で彼は会場から飛び出した。
先程まで彼を包んでいた高揚感も胸の暖かさも、まるで冷水のように冷えきってしまい、今の彼の心は不快感と恐怖で震えていた。
彼女の言葉が頭の中で響く度に、あの集落での殺戮が思い出される。人間を燃やし、踏み潰す感触。それを快感に感じていた自分。それら全てがフラッシュバックして彼を苦しめる。
先程自分が浸入した天井部からまるで這うように抜け出し、そのままステージの屋根の上で四つん這いで蹲っていた。
呼吸器官の無いエーテル体であるにも関わらず、荒くなった息を整えるように何度も深呼吸を繰り返し、自分に言い聞かせる様に何度も《…違う…違う…違う……》と呟いていた。
何度かソレ繰り返し、ようやく落ち着いた彼はヨロヨロと立ち上がる。
町を夕焼けの明かりが照し、夕日がビルの窓に反射してとても美しい光景が広がっている。
しかし彼の心はそんな景色を見ても全く晴れることは無かった。
ーーー………もう行こうーーー
未だに歓声が響くライブ会場から離れようとした。あれだけ心地よかった歓声も今はどこか煩わしく感じる。
兎に角ここから離れたい、あの歓声から遠ざかりたい。彼は今そんな気持ちで一杯だった。
しかしそんな時異様な気配を感じた。これまで彼が感じたことがない異様な気配。視線でもましてや人間の気配でもない。慌てて空中で静止し辺りを見渡すが、周りの景色に反して気配がどんどん大きくなっていくのを感じる。
ーーー何だ?…“ナニ”か来る?!ーー
そう感じた瞬間、先程まで自分がいたあのライブ会場から爆発音が響いた。
轟音と粉塵が舞うステージの上で、二人の少女は一瞬何が起きたのかと呆然としていた。
しかし、吹き上がる灰と煙が茜色の髪を揺らした時、天羽奏はナニかを感じとり表情を険しくして呟く。
「……“ノイズ”が来るッ!!」
次の瞬間、ソレは姿を現した。
慌てて会場に戻ったキリエルが見たのは、先程まで見ていた光景とはうって変わったまさしく地獄絵図だった。
爆煙立ち込める会場の中に先程までの歓声なく、代わりに怒号と悲鳴がそこかしこから飛び交っていた。
何より、逃げ惑う人々を不透明なナニかをが
襲っている。一見曲線的なその姿が可愛らしく感じるが、逃げるもの達の顔は恐怖と絶望に歪んでいた。
そのナニかが躓き倒れた男性に覆い被さる。すると彼は「助けてくれ!!」と声を上げながらゆっくりとその体が変色していき、やがてボロボロと崩れ去っていった。
ーーー触れただけで人間を?!……アイツらが…この世界を脅かす“怪物”…ーーー
人間を一瞬で殺すその様に驚愕と恐怖を感じながらも、キリエルは震える手を握りしめ恐怖を押さえ込む。
ーーーアイツらを……アイツらを倒せば…今度こそ俺は
キリエルは
一人の女性が瓦礫に躓きその場に倒れた。周りの人々は自身の事しか考えず彼女を助けようとする者は誰一人としていなかった。
背後から迫り来るは怪物の群れ、触れただけで人を一瞬で炭素の塊に変える
彼女は助けてもらえなかった事、背後から迫る死、その全てに絶望し何もかも諦めていた。声を上げる事も泣き叫ぶ事もせず、呆けた顔のままただ死を受け入れていた。
飛び掛かる無数のノイズ達に視界が覆われ彼女は静かに目を閉じ、目覚めることの無い永遠の眠りを向かえようとした。
『キリッ!!!』
声の様なものと何かがぶつかるような音が聞こえ、彼女はゆっくりと目をあける。
自分の前に誰か立ち、視界を埋め尽くすノイズを押し返そうとしているのが見えた。ノイズが影になりその人物の全貌は見えないが、もぞもぞと蠢くノイズ達をたった一人で押さえていた。
一体誰なのか、何故ノイズに触れられるのか、そんな疑問が呆けた表情の彼女の頭に浮かんだがそれを口に出す前に目の前の人影は唸り声をあげノイズの壁を押し返し始めた。
『~~~~ッ!!キリィッ!!!』
彼女からある程度距離が離れた所で力を込めてノイズの壁を突き放し、崩れたノイズの達に向けて右手をつき出す。
何をしているのかと思った瞬間、彼の右手から炎が吹き出ノイズ達を一瞬で焼き付くした。
燃えるノイズを見詰めていた彼がゆっくりと振り返り、彼女はようやく自身を救った者の全貌を確認することができた。
一言で言ってしまえば、怪人。
黒い筋肉の上に乳白色の骨格の様な物が飛び出しているように体の各所に浮き出ている。まるで骨と筋肉が逆転してしまっているかのような異様な外見に、右胸に赤く光る心臓のような器官。
そして、顔は歪んだ骨格が人間の悲しみのような表情を浮かべ、額には胸にある器官と似たような発光体が怪しく光を放っていた。
燃えるノイズを背にこちらを見据えるその姿は『次はお前だ』と言っているかのような威圧感を放っている。
女性の中に段々と『恐怖』と言う感情が浮かんできた。人間としての本能が、先程まで諦め死を受け入れていた彼女の体を動かし、脇目も振らず逃げたした。その表情は恐怖に歪み、ノイズよりも恐ろしいあの存在から一秒でも早く逃げようとがむしゃらに走った。
逃げる彼女のその背を、彼は何をするでもなくただじっと見詰めていた。
その顔は先程と変化はないが、その視線だけは本当に悲しんでいるように歪んでいると気付く者は誰もいない。彼自身も。
内容進んでなくない?
つ……次こそは……次こそは必ず!!
感想いつもありがとうございます。感想見ながらニヤニヤしている気色悪い自分がいる今日この頃。
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夕焼けに染まる空に歌声響く《中編》
作品書く余裕すら与えんとは……それにたいして内容進んでないし………
待ってくださった皆様に一言。
遅れてごめんなさい。
最近の私は……狂っていた……(ヽ´ω`)〈ツカレタ
「未来今どこ?私もう会場にいるよ?」
ライブ会場の入り口、長い列の中で携帯片手に少女は辺りを見回し親友の姿を探していた。
今日のライブは親友の《小日向 未来》が一緒に行こうと、数週間前に二枚のチケットを少女に見せながら誘ってくれたのだ。
未来曰く、最近凄く人気のアーティストらしい。しかし誘われた当の本人はそう言った事に疎くて最初は乗り気ではなかった。
しかし、親友の誘いを断る理由も無いので二人でライブに行くことになったのだが────
《ごめん、ちょっと行けなくなっちゃった》
「えぇ?!どうして!?今日のライブって未来が誘ってくれたんだよ!?」
《盛岡のおばさんが怪我をしちゃって…お父さんが今から車を出すって》
「私よく知らないのにぃ」
《ホントにごめんね……》
電話越しに聴こえてくる申し訳なさそうな未来の声にこれ以上の追及はやめて電話を切った。
「私って呪われてるかも………」
自然とため息が漏れ、少女《立花 響》は会場を見上げポツリと呟いた。
その後、長い待ち時間の末に響は会場の中に入ることができた。
未来がいないのならそのまま帰ってもよかったのだが、折角ここまで来たのだし、後日未来に感想を伝える為にそのまま残る事にした。最も響自身もライブに興味があるのも事実だ。
物販コーナーでサイリウムを購入し、ドームは中に入った響は目を見開いた。
まだ開始前だと言うのに、ドームの中を多く人が埋め尽くしていた。遠くに見える席も最早満員と言った状態だ。
響は指定された席に向かい、荷物を未来がいるはっだった席に置いた頃には会場に入る前の憂鬱な気分はどこかに消え、これからこの場で始まる人生初のライブに今か今かと、響は手に持つサイリウムを強く握りしめた。
暫くして、ドームの照明が消え音楽と共にステージのライトが灯る。純白の羽が舞う中から、二人の歌姫が舞い降りる。
ドームにいる観客達に手を振る彼女達をカラフルな照明が照す。
その姿に見とれていた響も購入したサイリウムを灯し、回りの観客達の様に声を上げサイリウムを振る。
歌い出すと共に会場のボルテージも高まり、歌声に負けない程の声援が会場に響く。勿論その声援の中に響の声も混じっている。
(凄いよ…!これがライブなんだ!)
ドームが開き、外の光が中に射し込んでくる。
周囲が熱狂に包まれるなか、響は感動に震えていた。
周りの声援と二人の歌声が響の身体と心を震わし、色とりどりの光が視界一杯に広がる。響の心は既にライブの虜になっていた。
再び声を上げこの熱狂の渦に混ざろうとしたその時、ふとナニか感じて隣を向いてみた。
本来未来がいるはずだった席、人一人分の空席に“ソレ”はいた。
人の形をした青白いモヤ。その靄が自分の隣で周りの人々と同じように両手を掲げている。
最初は照明か何かの錯覚なのかと思った。だが、その人型の“ソレ”はぼんやりではあるものの、確かにソコに存在していると響には何故だか理解できた。
ふと人型が振り上げていた腕を下ろし、何かを探すように辺りを見渡し始めた。
そんな人型を呆けた表情で見つめていた響だったが、遂に人型が響に気が付き、彼女に視線を向ける。
輪郭は朧気、表情は全くわからない、そもそも表情なんてものが存在するのかさえ怪しいモヤと響は見つめ合う。
不思議と響の中に怖いと言った感情は浮かばなかった。寧ろ彼女は──────
(悲しん…でる?)
“コレ”は何かに悲しみ、苦しんでいる。そんな突拍子も無い考えが響の頭に浮かんだ。故にソレを怖いとは思えなかった。
時間にして一分もかからなかっただろうか、響は思いきってソレに声をかけた。
「あ、あの────」
しかし声をかけた途端にソレは、ビクリと半透明なその身体(どこがどの部位なのか曖昧だが)を震わし物凄い勢いで飛んでいってしまった。暫く呆然とソレが消えていった天井を眺めていると
「まだまだいくぞぉ!!!」
ドームに響く声に思わず先程のアレと同じようにビクッと肩を震わせてしまったが、今がライブの真っ最中であること思い出した。
“アレ”の事は気にはなるがその事は一端頭の隅に置き、響は再びライブに意識を向けた。寧ろ気にしすぎて一曲聞き逃してしまったが、これからまだまだ続くのだ。その分はきっと取り戻せるだろう。
そう思い再びサイリウムを振り上げたその時────
突然の衝撃と轟音が響を襲った。
暫くして、響は僅に痛む体を起こしながら何が起こったのかと周囲を見渡す。未だに頭はグラグラと揺れているが、徐々に鮮明になってきた視界には先程までの会場の姿は無かった。
会場中央にポッカリと空いた穴。その穴から立ち昇る黒煙、破壊された周囲の座席……。何もかもが先程見ていた光景から一変していた。
そして何より────
「ノイズだぁぁぁぁ!!」
下の席から聞こえてきた悲鳴に混じり、そんな叫び声が響の耳に入った。
ノイズ。人類共通の脅威とされる認定特異災害。何年か前の国連総会で、特異災害として認定された未知の存在と言うことは響も知っている。
そんなノイズが突然現れたらしい。実際下の階には逃げる人々に混じり、極彩色の異形の姿が見えた。
響の周囲の観客達は最初叫びが聞こえた途端に血相を変え皆逃げ出していた。響もぐらつく頭に手を当てながら、自身も避難しようと出口を目指そうとした。
「Croitzal ronzell gungnir zizzl」
「Imyuteus amenohabakiri tron」
「……えっ?」
歌が聴こえた。
こんな阿鼻叫喚の地獄絵図の中で、周囲の悲鳴や怒声の中から確かに聴こえた。凛として力強い歌声をハッキリと。
思わずステージの方に向き直る。すると煙の向こうに二つの光を響は見た。
光はすぐに消えたが、黒煙を突き破り二つの人影が飛び出した。橙と蒼の髪を揺らし、先程までステージの上で歌っていたZWEI WINGの二人が見たこと無い衣装を見に纏い、その手に握る槍と
「アレは……え?」
ライブ、爆発、ノイズ、闘うZWEI WING。
響の周囲であらゆる事が一度に起こり、響の頭はパンク寸前だった。故に響は動く事が出来ず、呆然と歌い闘う二人を見つめていた。
そのせいで響は気付く事が出来なかった。
自身に飛び掛かってくるノイズの存在を。
「あ……」
響がそのノイズに気付いた時にはもう全てが手遅れだった。
目の前には此方を仕留めんと飛び掛かるノイズの姿。目前に迫る死に、彼女の脳は追い付かず、咄嗟の防御も回避も走馬灯を見る暇さえも響に与えることは無かった。
その必殺の手が響に触れようとしたその時──
「キリッ!!」
突然上からナニかが降ってきた。
ソレは響に触れようとしていたノイズを踏み潰し、響の真横に降り立った。
白と黒の体のソレは顔を僅に響に向けるが、直ぐに興味を無くしたかのようにステージに向き直ると、観客席の床を物凄い力で蹴り瞬く間に跳んでいってしまった。
一瞬の出来事で再び呆然としていたがハッと気が付いた。
「今のって……もしかしてさっきの──」
その言葉を言いかけた時、先程踏み抜かれた床から亀裂が広がり徐々に大きくなった亀裂は響の足下にも広がり始める。
その事に気付いた瞬間、響のいた客席は崩壊し彼女は瓦礫と共に一階に落下していった。
「キャァァァァァァ!!!」
響の姿はもうもうと立ち込める煙の中に消えていった。
XDでキラメイジャーコラボの情報聞いた時、私は夜勤の仕事明けだったんですよ。
その情報YouTuberで見たんですけどね……その時の私は…なんと言えばいいのか…
YouTuberで「ガンダムSEED」と「アズラエル」って検索すれば金髪の○兄ちゃんが大笑いしてる動画が出て来るんすよ。あんな感じでした。
当時の私がドンだけ狂っていたのか理解して頂けるかと。マジで腹抱えて笑いましたよ。
本当にこんな反応だったんです!信じてください!!〈キンシンダ……
皆様も働きすぎには御注意下さい……(ヽ´ω`)
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