少女(仮)の生活 (YUKIもと)
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 初めまして。

 投稿は不定期で、飽きたら終わります。

 この作品の注意事項

・作者の自己満足

・素人の作品

・主人公最強

・ご都合主義

・辻褄が合わないかもしれない設定

・注意事項が増える可能性

 等が含まれます。

 以上をご理解したうえでお読みください。

 読者の皆さんの暇潰しの一助になれば幸いです。



 

 ……?

 

 私はどうやら仰向けに寝ているようだ、私は周りを見渡した。光が全く無いその空間は広く少し高い天井が有り、頭側に壁がある。

 

 地面を見ると砂の地面が見える。洞窟だろうか?

 

 ……いやそれよりも。

 

 どういう事だ?

 

 気が付いたのがついさっきで、気が付く前の事が分からない。

 

 どうしてここにいる?私は誰だ?なぜ頭に覚えのない知識や情報がある?

 

 これからどうしようか……。

 

 訳が分からず横になったまま途方に暮れる私、しかし頭にある知識から生きる為の情報を探し出す。

 

 自分の事も頭の知識も後回しだ、生き残るには水と食べ物がいる。

 

 私は起き上がり改めてあたりを見る、相変わらず光一つ見えない暗闇だ。

 

 あてがある訳では無いけど壁沿いに進んでみるか……。

 

 とりあえずここにずっと居てもどうしようもない。

 

 早く水と食べ物を見つけなければ死んでしまう。

 

 私は壁を右側に見ながら歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 それなりの時間歩くと砂だった地面が岩になり、左側に広がっていた空間が無くなり迷路のようになった。

 

 道中には特に何もなくただ暗闇が広がっているだけだった。

 

 そう簡単にいかないとは思っていたけど、このまま出れないとまずい事になる。

 

 動ける内にどうにかしなければ……動けなくなってしまったらもうどうにもならない。

 

 自分が誰なのか、ここがどこなのかも分からないうちに死にたくはない。

 

 幸いまだ全く疲れらしきものは感じない、しかし念の為に少し休憩する事にする。

 

 私は壁に背を預け座り込む……そうだ、知識に何か役に立つ物は無いだろうか。

 

 頭の中を数分探り、私は役に立ちそうな知識を見つけた。

 

 風の流れを感じることが出来れば風上が外につながっているようだ。

 

 取り合えず風に注意しながら進もう、他には何か……。

 

 風に注意しようと決めながら知識をあさっていると気になる知識を見つけた。それは「多くの生物は光一つ無い場所では物が見えない」という物だった。

 

 ……見えるな。

 

 私には普通に周囲が見えている、暗いという事は分かるのに普通に見える。

 

 どうやら私は多くに含まれない生物のようだ。

 

 しかしこの状況ではありがたい。何も見えなければそれこそあのまま死ぬか、何も見えない状態で彷徨うしかなかったはずだ。

 

 私が多少変わった存在である可能性が見えたが……出来る事が多いのは悪くはないだろうし休憩はここまでにして移動を再開しよう。

 

 早く落ち着ける状態にまで状況を改善し、知識や私自身の事をしっかりと確認したい。

 

 私は立ち上がり再び歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 ……おかしい。

 

 私は大して変わり映えしない洞窟を歩きながら考えた。

 

 というのも、体感だが相当な時間をさまよっている筈だ。空腹や喉の渇き、疲労なども知識として頭にあるが特に体に違和感は無い。

 

 知識には食事、つまり外部からエネルギーなどを得る事なく生存出来る生物は居ないとあるが……。

 

 私の知識に私の事が無いのはどういうことなのか……私と知識は元は別の物だったりするのだろうか?

 

 知識の中を探せば私自身の事も分かるのではないかと期待していたが、どうやら無理なようだ。

 

 私が本格的に何者なのかわからなくなってしまった。

 

 今まで気が付いていなかったが私は寝てもいない。

 

 睡眠の事をすっかり忘れていた。忘れて居れば眠くならないなどという事は無いだろう、つまり私は睡眠も必要無いという事だ。

 

 暗闇を問題にせず、食事も水も必要無く、疲れもしなければ睡眠もしない。

 

 それは生物なんだろうか、少なくとも普通ではない事は分かる。

 

 知識に無いだけでそういった生物もいるのかもしれない。

 

 ……どうやら私はこのままでも死ぬ事は無さそうだ。

 

 と言う事は焦る必要は無くなった訳だ、ゆっくりと脱出しようか。

 

 そうだ、時間に追われる事が無くなったのなら一度知識の事を確認しておくか。

 

 こうして暗い洞窟の中、私は自分の知識を確認し始めた。

 

 

 

 

 

 

 ……こんな所か、すっかり時間を忘れて確認してしまった。

 

 現時点で分かった事は……まず知識は大半が完全でない事。例えばある物の名前や用途、使い方は分かってもその作り方や材料が分からなかったり、といった具合に知識や情報に抜けがあるようだ。

 

 そしてこの知識がもともと私の持っていたものではない事。

 

 これは私がその内容を知らないと言う時点で予想していた。どうして私の頭に中途半端な状態で存在するのか不明だが、これも私の為になるなら無いより有った方が良いだろう。

 

 この知識がすべて正しいとも言えないが、試してみたい知識もあった。

 

 それは魔法や錬金術、魔道具作成などだ。これらの知識は基礎がしっかりと存在している物と半端な物があったが、参考にすれば使えるようになるかもしれない。

 

 ただ……何をするにしてもこの洞窟から出なければ難しい。ここで一生を終える気はない、必ず外に出る。

 

 本当に洞窟かも分からないからな……外なんて無くて世界全体がこんな感じだったりしないよな?

 

 浮かんだ疑問を抱きながら私は歩き続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 知識の確認をした時からどれほどの時間が経っただろうか。

 

 迷路のような洞窟を歩き回り続ける道中、汗もかかない事や排泄もしないことに気が付いた。

 

 そして恐らく私が私の知らない何かを必要としていたりしない限り、何もしなくても問題無く生活出来る事も分かった。

 

 自分の多少おかしな特徴に支えられ、さらに歩き続けた私はわずかに流れる風を感じた。

 

 ようやく外に出れるかもしれない。

 

 風が流れてくる方に向かう。進むうちに迷路状だった洞窟は少しづつ一本道になりさらに進むと、わずかに光が見えた。

 

 私は光に向かい歩みを進める。

 

 すると少しずつ光が強くなるにしたがって周囲が暖かくなってきているのを感じた。

 

 洞窟内はだいぶ寒かったようだ。

 

 今まで気にならなかった事を考えると気温の変化も私には意味がないのかもしれない。

 

 そして私は外に出た。

 

 外に出ると広がる青空と眼下に見える広大な森が目に入った、少し遠くの森の中には川があるのが見える。

 

 どうやらそれなりの高さの丘の上に出たらしい。私は丘の上に立ち世界の姿を眺めた。

 

 ……いい景色だな。

 

 青々と茂る森。

 

 日の光を反射しキラキラと輝く川の水面。

 

 遠くにうっすらと見える山脈。

 

 瞳を上げれば大きな月と小さな月二つが見える。

 

 しばらく景色をただ眺めていた。こういったものを美しいと感じる事が出来る自分にどこか嬉しさを感じた。

 

 十分に景色を眺めた後、これからどうするかを考えることにした。

 

 何しろ多くの生物が生命を維持するために必要な事を私は必要としていないようなので、目覚めた当初の目的である食料と水の確保は必要なくなった。

 

 となると魔法、錬金術、道具作成辺りにさっそく手を付けてみるのも良いかもしれない。

 

 きっと何かの役に立ってくれるだろう。

 

 まずは見える川の傍まで移動して落ち着くことにしようか。

 

 丘も下れない坂ではないし、一直線に川を目指すか。 

 

 私は目的の川を確認し真っ直ぐに歩き出した。

 

 短い草や名前が分からない花などが所々に生えていてほのかに土の匂いがする。

 

 時折暖かい風が大地を撫で、草花を揺らしている。

 

 辺りにはさまざまな大きさの虫達が空にも地面にも無数に飛び回っている。

 

 この虫達が私が初めて見た私以外の生物か。

 

 特に苦も無く丘を下り平原へたどり着いた。所々に木々が生え、大きな物から小さな物まで岩がまばらに転がっている。

 

 私の腰ほどの高さの草を踏みしめて進むと、空を鳥のような生物が群れを成して飛んでいる姿が見えた。

 

 ほどなく平原と森の境目までやってきた。それなりに深い位置に川があったはずだ、このまま真っ直ぐ進めばぶつかるだろう。

 

 森に入ると木々の枝葉が光を遮り薄暗くなった。僅かな木々の隙間から日が差しこみ光の筋を作り出している。

 

 森の中には様々な生物がいた。道中の丘や平野など比べ物にならないほど様々な種類の植物、茸、昆虫達。

 

 さらに名前の分からない小動物達の中にリスのような小動物も見かけた。

 

 ある程度進んだころふと気が付く。

 

 ……大型の肉食獣もいる可能性がある。

 

 危険かもしれないが……もうかなり入り込んでしまっている。

 

 色々と生物として必要な物が必要なくても、私自身が弱かったらどうにもならない……殺されたらお終いだ。

 

 大型肉食獣の知識はあったのにここまで来てしまった。ただ……なんといえばいいのかわからないけれど、知識に様々な危険な動物の知識はあった。しかし……どの動物を見ても何故か脅威に感じなかった、ハムスターもドラゴンも同じように感じた。

 

 今からでも注意して進もうと考え、注意をしながら進んでいると周囲がさらに暗くなって来た……どうやら日没が近いようだ。

 

 深くなって行く森の中を歩き周囲が真っ暗になった頃、川の流れる音が聞こえ始めた。

 

 それからしばらく歩くと森が途切れて視界が開けた、月明りで照らされた広場に川が流れている。

 

 かなり暗かったと感じたのは森の中に居たからか。

 

 この辺りが丘の上から見えた辺りのはずだ、もし違ったとしてもここで十分だ。

 

 さて、ここで落ち着く訳なのだが……何をすればいいのか分からない。

 

 衣食住と知識にはあるが食べ物はいらないし、寒い洞窟を延々さまよっても問題ないのだから家などいらないだろう。

 

 服も……汗をかかないなら必要ないのではないだろうか。

 

 まずは便利そうな魔法を使えるか練習してみるか……。

 

 何もいらない事に気が付いた私は知識にある魔法の練習方法を試す事にした。

 

 魔力がないと使えないらしいが、もし私に魔力が無いならば諦めるしかない。

 

 川べりに座り魔力を感じる訓練を始める。さて、出来るかどうか。

 

 川のせせらぎと虫の音だけがする時間が続き、空が明るくなり始めた頃。

 

 体からにじみ出る魔力と周囲にある魔力を見る事が出来るようになった。

 

 知識にある通りだからこれが魔力のはずだ。思ったより簡単に出来たが……しかしこれで魔法が使える事が分かった。

 

 次は実際に魔法を発動させる練習だ。

 

 おすすめは土か水の魔法らしい。扱いやすく制御を失敗しても被害が少ないようだ。

 

 というわけでまずは土を選び、土を固める魔法の練習をしよう。

 

 そう考えながらふと水面を見ると少女が映っていた。長い黒髪、黒い瞳、服はワンピースという物に似ている、黒いワンピースだ。

 

 そういえば自分の姿を確認した事は無かったな。

 

 川に近寄ってじっくりと見てみる……見た目は知識にある人間にそっくりだ。

 

 今までの事を考えると人間にそっくりな何かだとは思うが。

 

 眠そうな目をしているな。寝る事はないのに、肌は色白で身長は小さいな……130㎝ほどしかないんじゃないか?

 

 それに私は女だったのか。まったく気にしていなかったが自分の事を自然と私と言っていたし……声も涼しげな柔らかい声をしているしな。

 

 ……よく見ると埃が付いているか?私の体からは汚れは出なくても周りの汚れはついてしまうのか。

 

 よし……川で体を洗ってみるか。濡れたまま過ごす事になるが気温も暖かいし、何より私の体ならば問題ないだろう。

 

 私は流れが緩やかな所を探してワンピースを脱ぎ川に入った、自分の体を見て違和感を感じる。

 

 ……ん?なんか違和感があるな……知識にある人間とは違うような……いや、私は人間に似ているだけで違うようだし当然か?

 

 すぐに違和感の正体に気が付いた。私の体は乳首や性器が付いていないようだ、指で確認したが肛門も無かった。

 

 知識に似たような物があったような……そうだ、マネキンだ。生身のマネキンとでもいうべきか、見た目は女に見えるが正確には無性なのだろうか。

 

 どうにか出来る事ではないだろうし、早く体を洗って魔法の練習に戻ろう。

 

 ……ん?服はどこに行った?

 

 置いたはずの場所に服が無く、黒い霧のような塊が漂っている。そしてその霧は私に吸い込まれた。

 

 一体何なんだ……。

 

 私の体に吸い込まれたという事は……私自身の問題なんだろうな。自分の体の事を自分で分からないのをこのままにしておく訳にはいかないか。

 

 魔法の練習は後だな。

 

 まずは自分に何が出来て何が出来ないのか。この体はどういったものなのか……出来る限り調べる必要がありそうだ。

 

 知識も活用して色々な事を試してみよう。

 

 時間の余裕はある、何も必要としない体は便利だ。

 

 

 

 

 

 

 私は黒いワンピース姿で広場から少し入った森にある木の前に立っていた。

 

 ……よし。

 

 私は意識を自分の髪に集中させる、数本の髪が伸び動き出した。

 

 「ふっ!」

 

 凄まじい速さで髪が目の前の木を横薙ぎに通り抜ける、見た目は何も変わらない。

 

 私は近寄って木のに手を当てぐっと力をいれる。すると木はズレて行き、轟音を上げて地面に倒れた。

 

 かなり使えるなこれは。

 

 知識を使い色々試してみた結果、ある程度出来る事が分かった。

 

 まず私の体は決まった形を意識しないと、光を通さない黒い霧状の何かの塊になる事がある。

 

 そして体の形や強度、重量を変え、自由に動かせる。これは先ほど木を切断するために使ったものだ、髪を鋭く長くし、力を込める事で切断した。

 

 かなり強力で、これならある程度なら敵がいても撃退出来るだろう。

 

 更に現在は子供の姿だが大人のようにもなれる。人型以外にもなれたが、私が自然になっていたこの子供の姿が無難だろう。

 

 後は水中でも問題無く活動出来る、もともと呼吸をしていなかったようだ。

 

 体は温度は問題無く感じる、冷たいのか熱いのか感じる事が出来る。ただし分かるだけでそれが私に影響を及ぼす事は無さそうだ。

 

 体の一部で服などの物を作れる。ただし今の所は実物か構造を知らないと作れず、あまりにも複雑な物も作れないようだ。

 

 そして作った物は私が消そうと思わない限り離れても維持される……最初に脱いだ私の服が消えたのは私が自分の力を把握していなかった為、不安定だったのではないかと思う。

 

 これは意味があるかは分からないが、食事もとれる。

 

 川の水を飲んでみたがしっかり水の味を感じる。どうやらいくらでも飲めるようだ、満腹になる事はなかった。

 

 味が分かるのなら美味しい物を食べてみたいとも思う、いくらでも食べられるのでたしなむ程度に。

 

 意識を傾けると周囲の様々な物を感じる事が出来る。

 

 更に集中すれば地中の虫や岩の中の鉱石なども感じる事が出来た。

 

 これに関してはあらゆる物を感じ取れるのかこれからも試そうと思う。使い方を間違えなければかなり有用だろう。

 

 今の所はこれくらいだ、今の内に試しておいてよかったと思う。

 

 やれる事が一気に増え、これからの生活に大いに役に立ちそうだ。

 

 私が人間ではなく私と言う種族である事も間違いないだろうし、そのうち意思の疎通が出来る他の生き物や私の同類を探してみよう。

 

 私が老いる前には見つけたい所だな。

 

 さて……自分の力の確認はいったんここまでにして、後回しにしていた魔法の練習に取り掛かろう。

 

 まずは土、次に水、それから風、火の順に試してみよう。

 

 こうしてまずは土の魔法の練習を始めてから二回目の夕方には土を思い通りに動かしたり、岩のように固めたり、打ち出したり出来るようになった。

 

 土の魔法の練習はこの辺りで一度中断しよう。

 

 さらに練習中に新しい事にも気が付いた。感知能力が上がり魔力が良く見えるようになったのだが、木が周囲の魔力を吸い、吐き出しているのが分かった。

 

 その時木が吸っている周囲の魔力と、吐き出す魔力が違うのだ。

 

 世界に満ちている魔力のほうが濃く感じる。別のように見えるのに同じ名前で呼ぶのは分かりにくい、私は勝手に周囲にあふれている物を魔素と呼ぶ事にした。

 

 そして魔力を使うとその魔力は魔素に変わるようだ。

 

 循環しているのかも知れない。魔素と魔力を交互に使えれば一人で永久に循環出来そうだ。

 

 いつの間にか存在していた知識は間違いなく役に立った、これならある程度は使えそうだ。

 

 こうして私は残りの三つもそれなりの時間をかけて練習し覚えていった。

 

 最初の内は水の魔法でずぶ濡れになったり、火の魔法で森が燃えたり、風の魔法で頭から地面に突っ込んだりしたが……少なくとも今は失敗せず出来るようになった。

 

 そしてもう一つ成果があった。私は魔力に変換せず、魔素を使って魔法を使えるようにもなった。やってみたら出来た……としか言えないが。

 

 これで知識にあった四大元素は終わった。ここからは追々改善して行く事にしよう。

 

 一通り練習を重ね魔力と魔素の扱いも慣れた。ここからは知識にあった便利魔法の練習に取り掛かる。

 

 この魔法は絶対に覚えておきたい、便利だからな。

 

 それはインベントリ、マジックボックス、アイテムボックス、無限倉庫など様々な名前が付いていた。

 

 様々なものを収納し劣化を防ぐ空間を作る魔法だ。

 

 よし……始めるか。

 

 私は集中して練習を始めた。

 

 

 

 

 

 

 流石に難しかった。

 

 この一言に尽きる。

 

 ひたすらに練習しようやく使えるようになった、念じれば好きな場所に好きな大きさで入り口を作る事が出来る。

 

 これで大きな物も入れる事が出来る上に、魔素か魔力を送る事でどこまでも拡張できる。

 

 更に生物なども生きたまま閉じ込める事が出来て時間を止めて劣化を防げる。

 

 ……生きた生物の保管と時間の停止はもしも誰かに教える時は無くした方が良いかも知れないな。

 

 知識にあるのだから出来るのは分かっていたが、時間停止の機能が予想以上に難しかった。

 

 時間に干渉するのはかなり高度だと思ってはいたが、少々考えが甘かったようだ。

 

 後は名前を決めるだけだが、知識から決めるか……無限倉庫は広げる事は出来るが無限とは言えないからやめておこう。

 

 アイテムボックスは、入るのはアイテムだけではないからやめようか。

 

 後はインベントリかマジックボックスだが……インベントリは言葉の意味が知識になかったのでやめておこう。

 

 そうするとマジックボックスだな、魔法の箱と言う意味らしいしちょうど良いだろう。

 

 そう言えばいったいどれだけの時間練習していたのだろうか。

 

 ふと、かなりの時間が経っているのでは無いかと気が付いた。

 

 ……日中の気温が上がっている、おそらく夏に入っているのではないだろうか。

 

 正確な時間は分からないが、はっきりと気温に差を感じる程度の時間は過ぎているようだ。

 

 今思えば四大元素からマジックボックスまでずっと練習していた。

 

 やはり疲労と言えそうな感覚はなく、洞窟で気が付いた時から体調は変わらない。

 

 便利ではあるが熱中してしまうといつまでも続けてしまいそうだ。

 

 これで練習は終わりにしよう。次はこれから覚えた魔法を使って家や家具を作ってみようと思う。

 

 

 

 

 

 

 翌朝。

 

 私は知識にあった家を完成させた。木を髪で切り出した木材と、固めた土と岩で作った。

 

 リビング、キッチン、風呂場、寝室、倉庫と部屋を分けた。

 

 初めての割には上手く作れたな。しかし知識には魔法で家を作る方法が無かったな、便利だと思うのだが。

 

 水は川があるし、燃料にも材料にも使える森の木がある。更に土魔法のおかげで地面全体が材料のような物だ。

 

 環境の影響を受けない私に使う機会があるかは分からないが、食事はもちろん風呂という物にも入ってみたかったので材料が豊富なのは助かる。

 

 とりあえずは風呂に入ってみよう……川があるが面倒なので魔法を使おうか。

 

 魔法で作り出した石の浴槽に魔法で水を満たし、弱い火の魔法を打ち込む。

 

 すると盛大な音と共に風呂場に湯気が充満し、水面はぼこぼこと煮えたぎり暖かそうだ。

 

 入る前に体を洗うのだったか?

 

 しかし……石鹸と言ったかな。そんなものはないから木をくり抜いた桶でお湯をすくい体にかけてから、浴槽に身を沈めた。

 

 暖かい……と言うか……これは熱すぎるのか?体が平気だから分かりにくいな……。

 

 おそらくこれは熱すぎだな。私以外だと何かしら問題があるかもしれない……もし他者と入る時は気を付けよう。

 

 これはいい、用意も簡単だし時々入ろう。

 

 目を瞑り初めての入浴を楽しむ。しばらくゆっくりした後、私は今後の事を考え始めた。

 

 風呂は楽しんだ、風呂から出たら次は食事にしよう。肉、果物、野菜……知識だけで味は分からないがきっと美味いのだろう。

 

 私は風呂から上がり水気を魔法で飛ばし服を作り出す。まずは肉だ、獣を狩り食べる事にする。

 

 こういう時は気配感知を使うべきだろうか?

 

 私は外に出て周囲の気配を探り始め、やがて手頃な大きさの獲物を見つけ出した。

 

 私は獲物のいる場所まで移動する。

 

 ある程度近づいた後、ゆっくりと見える距離まで近づいた。そこにいたのは短い二本の角が生えた鹿のような生物だった。

 

 名前は分からないが丁度良い大きさだ、私の食事になって貰う。

 

 音も無く髪を伸ばし、首を狙って上から素早く振り下ろす。髪は手ごたえ無く通過し、鹿のような生物は反応する事も出来ずに首を斬り落とされその場に崩れ落ちた。

 

 「よし」

 

 一言呟いて死体に近づく。

 

 すぐに髪で死体をつかみ切断面を下にして血を出す。血を抜いたほうが味がよくなるらしいからな。

 

 解体は家の川の近くで行おうか、取り合えずこの死体はマジックボックスを試すために入れて行こう。

 

 そしてマジックボックスを使おうとした瞬間に私は顔の右に衝撃を受け、視界が回転した。

 

 体に衝撃と木が折れるような音が聞こる。何かにぶつかり感じていた浮遊感が無くなると、視界の回転も止まった。

 

 ああ、攻撃を受けたのか。

 

 周りに全く意識を向けていなかったのは失敗だった。

 

 私自身の気が抜けていては感知も意味が無い、立ち上がり周りを見渡すと私の獲物の傍に赤い牙を生やした熊のような大型動物がいた。

 

 「グルルルル……」

 

 まだ動く私を見て、奴は低いうなり声をあげて警戒しているようだ。

 

 私は特に気にする事なくそれに近づきながら声をかけた。

 

 「そんなに背後からの不意打ちで殺せなかったのが意外か?」

 

 体は何も問題無い、今までと変わらない万全の状態だ。

 

 だが油断したのは私の失敗だ。今回は相手が格下のようだが、同格であれば私は死んでいただろう。

 

 「勉強になったよ、ありがとう」

 

 そう声をかけ髪を一閃すると、わずかな時間の後に熊もどきの頭が落ちた。

 

 こいつも血抜きしてマジックボックスに入れておこうか。

 

 

 

 

 

 

 獲物を収納したあと家に戻った時は夕方だった、食事は後回しにし、浴槽に湯を張りつかる。

 

 完全に油断していた。

 

 食事に気を取られ、狩りの成功に喜び、警戒を忘れていた。

 

 ずっと襲われるような事がなかった為に失念していた、大型の肉食獣がいる可能性は考えていたのに。

 

 私は攻撃を受けた右頬を湯舟に映したが、擦り傷一つ無かった。

 

 奴に脅威は感じなかったが、弱そうにも見えなかった。

 

 見掛け倒しという事も無さそうだったしな……。

 

 体の丈夫さもそうだが、不意打ちを受けたというのにいつもと変わらず落ち着ていたな。

 

 知識で様々な危険生物を見た時と同じだった。特に脅威を感じる事は無かった。

 

 実際に見てみれば何か感じるかもしれないと思っていたが……肉体も精神も大分強靭なようだな。

 

 もっと強敵相手ならばと考える気持ちはあるが、殺されてしまったら意味が無い。

 

 せめて先程殺した相手がこの森でどのあたりの強さなのか分かればいいのだが。

 

 出来るだけ警戒は怠らず、殺す理由が無い時は避けるか。

 

 さて、そろそろ上がって食事にしよう。

 

 

 

 

 

 

 夜になってしまったが、風呂から上がり川の傍へ行き鹿のような生物を取り出す。

 

 ……解体してから風呂に入るべきだったな。だが先程はそんな気分ではなかったし……また入ればいいか。

 

 早速解体をしようとするが……解体の仕方が分からない。

 

 知識に解体方法はなかった、これは実践して覚えるしかないか。

 

 

 

 

 

 

 髪を使い、解体方法に四苦八苦しながらも何とか肉を手に入れた。だいぶ無駄になってしまった気がするが、慣れるまで我慢だな。

 

 魔法で乾燥させた木材を組んで火をつける。

 

 肉を小さく切り木の串に刺して火に当たるように地面に刺す。星の瞬く夜に炎の揺らめきと虫の音が響く、すると肉から焼ける音と匂いが漂い始めた。

 

 そろそろいいかな?私は串を一本手に取り、かぶりつくと咀嚼する。

 

 ……マズくはないが、何か違う気がする。

 

 肉を次々と食べながら知識にあった塩、胡椒、砂糖などの調味料を思い浮かべた。

 

 より美味しく食べるには必要だな。気長に探すとしよう。

 

 そしてすべての肉を食べ終えた私は、後始末をして家に戻った。

 

 

 

 

 

 

 さて、今回のような失敗をしないように対策しておくか。

 

 私は新しい魔法を作る事にした。一定範囲に悪意を持った者が入ると反応する空間を作る魔法だ、敵意と言う難しい判断基準だが何とかしてみよう。

 

 私は魔法作りに集中し始めた。

 

 

 

 

 

 

 そしては魔法は完成した。名前は警戒魔法でいいか。

 

 さて……効果を確認しないといけないわけだが、確認するという事は敵に出会う必要がある訳だ。

 

 狩りのついでに確認しようか。

 

 魔法を使い森に入り、気配を感じながら進む。しばらく彷徨っていると大型の獣の気配を感じた。

 

 私は気配へと向かう。姿を見せてこちらを獲物と判断してくれれば魔法の反応を確認出来るだろう。

 

 気配の持ち主は巨大なイノシシのような獣だった。私が姿を見せると声を上げ態勢を低くする、その瞬間魔法の反応があった。

 

 よし、これならひとまず完成で良いだろう。後はこのイノシシのような獣を狩ろう、首を落としてしまおうか。

 

 「私の肉になるといい」

 

 私が獣に告げると、突然雄叫びを上げて突っ込んでくる獣。

 

 途中で私の髪が首を落としたが、頭をなくしたまま体が突っ込んでくる。

 

 私がその体を横に避けると、先ほどまで私が居た場所を通り過ぎた辺りで大きな音を立てて倒れ、地面を多少滑った後に停止した。

 

 死んでも勢いは止まらないか。さて、急いで血抜きをしてからマジックボックスに保存しよう。

 

 魔法も問題無く効果を発揮したし大きな獲物も獲れた。今日はもう帰ろう。

 

 

 

 

 

 

 イノシシの様な獣を狩ってから時が過ぎた。私は狩りを続けて解体の技術を磨き、肉の在庫も増えた。

 

 もう暫く狩る必要は無いだろう。

 

 そして今日は新たな食材を狙うため、私は家のそばの川を見ていた。

 

 魚が食べてみたくなったからだ。

 

 気配感知で魚らしきものがいるのは分かっているので、後は取るだけなのだが……どうやって取ろうか。

 

 ……髪を網目状にしてすくってみるか。

 

 私はゆっくりと川の底に切断しない様に変化させた髪を網目状に伸ばした。感知で髪の上に反応が多めに重なったときに一気に持ち上げる。

 

 すると名前は分からないが、15㎝ほどの魚がある程度取れた。私は一部を収納すると、肉を焼いた場所で残りの魚を焼いて食べる事にした。

 

 まずは鱗を取り除くんだったか。

 

 私は髪を使い鱗を取り除き、串に刺して焼く。

 

 やがて魚から油が落ち、ジュウジュウと音を立て始める。しばらくその音を聞き十分に焼き上がるのを待った。

 

 そろそろいいだろう、これ以上は焦げてしまいそうだ。

 

 私は十分に焼けたと感じる魚の刺さった串を手に取り、かぶりつくとボリボリと咀嚼する。

 

 ……このポリポリしてるのは骨か?あまり美味しくはないな……。

 

 最初の一匹は丸ごと食べたが、残りは頭と尻尾、骨を避けて身だけを食べてみた。

 

 うん……悪くはない。しかしやっぱり味付けが欲しい所だ。

 

 この辺りの物を食べたら本格的に探してみようか……そう思いながら食べ続けた。

 

 焼いた魚を食べ終えた私は家に戻り、風呂に入って一息つく。

 

 私はいつの間にか昼間に外に出て、夜は家で食事するようになっていた。

 

 夜は獲物が少ないという事もあって昼間は狩り、夜に食事、次の朝まで自分の能力開発や次の日の予定を考える。

 

 この生活も悪くは無いがそろそろ調味料が欲しい、塩なら海か岩塩があれば何とかなりそうだが……。

 

 今の味が特別悪いという訳ではないが、味付けをした物を食べてみたいな……どうにかして海水か岩塩を見つけたい。

 

 飛んでいけば見つかるかも知れないな。

 

 私は湯舟に浸かりながら考える。

 

 道中も魔法で風呂には入ろう、考え事をしたりするのにいい。

 

 早速夜が空けたら探しに行ってみようか。場合によってはかなり長く家を空ける事になりそうだが今まで誰も来た事がないし、もし留守中に誰かが住み着いていたら話し相手になるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 空が明るくなり始めた頃、私は調味料探しに行く事にした。

 

 私は魔法によって宙に浮かび一気に上空へ上昇した。姿を見せ始めた太陽の光が眼下の森と遠くの山肌を照らし始めている。

 

 周囲を見回しとりあえず近くにある川の下流へ向かう。そうすれば海へ出る事が出来るはず……何の当てもなく飛ぶよりいいだろう。

 

 岩塩がどんな所にあるのか分からないからな……まずは川の下流に向かって海を見つけよう。

 

 明け方の冷たい上空の空気を切り裂いて、一気に川の下流へ飛ぶ。

 

 しばらくは変わらない森だったが、進むにつれて木々はまばらになり、草が生い茂る広大な平野になった。

 

 完全に日が昇り眼下に鳥達が飛ぶのを見かけるようになった頃、遠くに海らしき物が見えた。

 

 海だ。これで塩が取れる。

 

 私は海に向かって高度を下げながらも更に速度を上げ、砂浜の上空に到着すると下降した。

 

 波の音、独特の匂い……知識で知っているのと実際に体験するのはだいぶ違う。

 

 波打ち際に近づき海に入ると、波が引くときに足の裏に変な感触がする。

 

 変な感じだ……。

 

 味はどうかな、手を海水につけて舐めてみる。

 

 ……これが塩の味か、これは確かに肉に合いそうだ。

 

 この海水を塩にする訳だが……知識では魔法を使わない方法だったので魔法も使い塩を作ろうと思う。

 

 

 

 

 

 

 大きい入れ物と、要らない物を取り除くためのきめ細かい布を用意した。

 

 さてやってみよう、まず魔法で海水を操り布で汚れを取りながら入れ物へ入れる、魔法とボックスに保管しておいた薪で水分を蒸発させる、水が減って濁ってきたらまた布で不要な物を取り除く。

 

 再び火にかけて固まり始めたら今度は水分を取り除く、残った物を乾かして塩の完成だ。

 

 上手くいっただろうか?

 

 出来上がった塩を手に取りなめてみる。

 

 「……美味しい」

 

 私は思わずつぶやいた。海水のままでも初めての塩の味と言う事もあって美味しく感じた、だが完成した塩の味は比べ物にならなかった。

 

 これを知ってしまったら、海水では駄目だろうな。

 

 よし、多めに作って保存しておこう。

 

 入れ物の大きさと数を増やしてしばらくの間滞在し、塩を作り続けた。

 

 満足行くまで大量の塩をマジックボックスに保存し、ついでに海の魚をある程度捕まえて帰る事にした。

 

 帰ったら早速塩を使ってみよう。

 

 塩は楽しみだが隙を作る訳にはいかない。何がいるか分からないのだから油断はしないようにしないとな……そう考えながら私は空へと舞い上がった。

 

 

 

 

 

 

 道中は何もなく、我が家に戻って来た。

 

 すぐに火の準備をして肉に塩を振り火にかけて待つ、そして焼き上がった肉を口にする。

 

 「……美味い」

 

 声に出す程に美味しい。もう塩無しで肉は食べられないな……沢山作っておいたのは正解だった。

 

 塩焼きの美味しさのあまり今まで狩った肉と魚にも塩を使い、いつもよりも多く食べてしまったがたまにはいいだろう。

 

 塩を手に入れ食事が美味しくなった、今までが不満だった訳ではないが塩の効果は想像以上に高かったな……。

 

 次は……果物を探そうかな。

 

 

 

 

 

 

 海に向かったのは正解だった、岩塩探しをしていたらいったいどれだけ時間がかかっていたか。

 

 現在私は風呂に入り、のんびりしながら考えていた。

 

 早く終わったとはいえ、それなりの時間出ていたのに風呂にも入らず結局ずっと塩を作って家まで戻って来てしまった。

 

 だが塩の美味しさを知った今なら正解だったと言える、減ってきたらまた取りに行こう。

 

 次は果物を探しに森を探索していくか……。

 

 私は新しい目標を定めつつ、いつもよりも長く風呂を楽しんだ。

 

 

 

 

 

 

 翌朝。今日からは森を探索して果物を見つける事が目標だ、じっくりと見逃さない様に探すつもりだ。

 

 ただ、普段よく行く辺りには果物らしき物はなかったな……行った事の無い所へ行ってみよう。

 

 私はまだ探索をしていない方向へ向かい、果物らしき物を探す。しばらくしてこの森で手に入りそうな他の食材を思い出した。

 

 キノコや野菜もあればいいのだが……。

 

 しかし、野菜はともかく茸は命にかかわる毒がある物も多いらしいからな。

 

 色々と驚かせてくれる私の体には効かない可能性もあるが、わざわざ試したいとは思わない。

 

 かと言ってこのままでは毒のある恐れがある物を食べる事が出来な……い?

 

 ……私はまた思い至らなかったようだ。躊躇なく食べていた今までの肉や魚が無害だと、どうして断言出来る?

 

 実は既に毒物を食べていて、まったく効いてなかったりするかもしれない。……判断するための方法が必要だ。

 

 探索はまた今度だな。今更だが探索も感知を駆使すれば簡単に見つかったのではないだろうか……。

 

 だが今は帰って魔法開発だ。

 

 私の力も魔法も、使い方次第で様々な事が出来そうだがうまく使いこなせていないな……そんな事を考えながら家に向かった。

 

 

 

 

 

 

 分析魔法、とでもいうべきか。

 

 家に戻った私はすぐに魔法開発に取り掛かり、魔法を完成させた。

 

 これは名前のまま対象の分析をして何で出来ているか、生物に有害であるかなど、様々な事が分かる魔法だ。

 

 既に手持ちの食材にかけてみたが有毒な物があった。私の予想が当たってしまった……ただ以前から美味しく食べていたので私には毒も効果がないようだ。

 

 うまく機能しているようだ、これからはこの魔法も使いながら食材を探そう。

 

 私が中途半端な時間に帰ってきたため周囲は暗くなり始めているが、もう一度探しに行こう。

 

 再び森へやってきた感知を使えば見えない所や地中、木々の上まで、多くの食材候補があった。

 

 様々なキノコ、ジャガイモのような物、様々な木の実といった具合だ。

 

 更に虫にも薬効がある物が見つかったのでそれらも採取しておいた。

 

 見つけた虫、野菜、木の実など、全ての食材と素材に僅かな数だが有毒な物があったな。

 

 目標の果物が見つからない為、私はもっと先へ進む事にした。

 

 先へ進み続け、とうとう果物らしき物を見つけた。

 

 ぼろぼろの折れそうな樹に拳ほどの白い実がなっている、毒はないようだ。

 

 今にも死にそうだな。

 

 そう思いながら実を一つ取り、食べてみる。

 

 「美味い……!」

 

 これが果物、これが甘さか!

 

 一気に食べた私は、残った種をしまう。増やせる可能性があるらしいからな。

 

 そう思いながら一つ二つと食べて行く。やがて果実はほとんど無くなっていた、もともと多く生っていた訳ではなかったが……食べ過ぎた。

 

 種は集めたが上手く行く保証はないしな……食い荒らしてしまった事だし、この樹を何とか回復させたいな。

 

 回復、回復か……。

 

 よし、回復魔法を作ろう。

 

 私はその場で椅子を作り出し腰掛けると、新たな魔法を作り始めた。

 

 無事に回復魔法は完成したが、他の生物を治す魔法は今までとはまた違った感じだった。

 

 完成はしたが、いきなりこの木にかけるのは不安が残る……と言う訳で、近場の別の樹で試してみた。

 

 別の樹に近づき、僅かに傷をつける。そして回復魔法を使ってみる。

 

 樹の傷はすぐに埋まった。その効果に満足した私は死にかけている樹に向かい魔法をかける。

 

 ……最初から明らかに危ない状態だったからな、念入りにかけておこう。

 

 最初はどうでもよかったが、美味い果実をつけるのなら残しておきたい。

 

 回復魔法をしばらくかけ続けると、幹は太くなり葉が生い茂り、高く背を伸ばして多くの実をつけた。

 

 ちょっとやりすぎたかもしれないがこの樹を失いたくないからな、これで当分平気な筈だ。

 

 増えた実をある程度マジックボックスに保存して今回は帰る事にした。

 

 帰ってすぐ手に入れた食材は一通り食べてみた、有毒な物も味は良かったな……。

 

 

 

 

 

 

 私は今、壁が崩れた我が家の前にいた。

 

 どうしてこうなったかは単純だ。

 

 家で風呂に入りくつろいでいたら獣がやってきた、何度か狩った獣だがいきなり魔法を使ってきたのだ。

 

 獣は石の塊を飛ばし、リビングの壁を破壊した。

 

 私が居ない時にも来る様だと少し困るな。

 

 保護や保存する魔法でも作ろうか?単純に強度を上げて作ればいい気もするが……うん、決めた。

 

 「強度を上げた物に保存と防御魔法をかけよう」

 

 

 

 

 

 

 これで良し。

 

 壊れた壁と家のすべての強度を増し、新たに作り出した維持魔法をかけた。

 

 これは時間経過による劣化と外部からの干渉を完全に防ぎ、強固な状態を維持する、保存と防御の魔法だ。

 

 作る過程で保存魔法と防御魔法も生まれた。保存魔法は食べ物や本などの劣化を無くす物だ、魔法がかかっている限り長期間放置しても傷んだりしないようになる。

 

 防御魔法は物理的な攻撃や熱、冷えなどの変化に強くする魔法。

 

 保存魔法は劣化が無くなるだけで強度は変わらないからな。

 

 この先あるかは分からないが、魔素と魔力両方が世界から完全に失われた時には魔法が切れるだろうな。

 

 これで獣の魔法にも耐えられるようになるだろう。

 

 家の強化が終わり、満足した私は風呂の準備を始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 ……あの獣、今まで魔法など使ってきた事は無かった。

 

 今までも狩っていたが魔法を使って来た事など……。

 

 そこまで考えて思い至る。そうだ……今までは感知によって先に見つけ、何もさせずに殺していた。……見た事がないのは当然だった、今まで何もさせていなかったのだから。

 

 つまり魔法を使える獣も多くいる可能性があるんだな。

 

 私は新しい事実を知りつつ次の予定を考えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 私は日々を新たな食材探しと薬効成分がある素材の採取をして過ごしていた。

 

 ……が、そろそろ魔法はここまでにしようと決めた。これからも魔法を作る事は止めるつもりはないが、そろそろ他の事に挑戦してみようと思う。

 

 分析魔法によって薬効成分がある素材を見つけた時からやろうと決めていた……錬金術による薬作りだ。

 

 そのため優先的に森で薬効のある素材を多く集めている。新たな食材もそこそこ見つかっていて、この辺りの食材は大体確認したと勝手に思っている。

 

 さて、錬金術に手を伸ばすのは決定として。……ここでやるか、この土地で取れる素材を集めて気候の違う場所に移住し、その場所で新たな素材を探しながら始めるか……。

 

 私はリビングの椅子に座り考え込む。

 

 この場所は最近やや涼しくはなって来ているが、大きく気候は変わらないようだ。

 

 大きく気候が違えば食材も素材も違う可能性が高いはず。

 

 私は方針を決める。

 

 しばらくここで採取をして食材と素材をため込み、違う土地……出来れば寒い土地か暑い土地に移住して、採集と錬金術の練習に取り掛かろう。

 

 そうと決まれば出来るだけ様々な物を多く集めて、後は……塩と果物も補充しよう。

 

 

 

 

 

 

 様々な物を集め始めてからある程度の時間が過ぎた、そろそろ旅立つとしよう。

 

 この家は……このままでいいか。

 

 住んでいた家は残して行く事にした。誰かが使ってもいいし、魔法で保護しているのでそう無いとは思うが壊れて無くなってしまっても構わない。

 

 誰かが来た時のために倉庫に保存魔法をかけた食料をある程度置いておいた。この家を訪れた何者かがここに住み着けば私の話し相手になるかもしれないからな。

 

 場所も忘れないように目印魔法を作って家に印をつけておいた、これでどこからでも探し出せる。

 

 さて出発しよう。

 

 道中は魔法で飛んでいくのが手っ取り早い。

 

 次の滞在場所で錬金をある程度身に着けたら今度は徒歩で世界を回るのも良いかもしれない。

 

 そう思いながら私は空へと舞い上がった。

 

 向かうのは北、知識では太陽の位置から東西南北が分かるらしく、それを基に大体の方向を確認しておいた。

 

 まあ北か南に行ければ、最終的には寒くはなるようだから当たりをつけた方向へ行ってみよう。

 

 そして朝日が大地を照らす中、私は目指す方向へと飛び始めた。

 

 

 





 長すぎて申し訳ありません。




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002

 考えていない部分の設定は適当にごまかしています。

 考えている部分の設定も良く出来ている訳では無いのですが。





 この作品の注意事項

・作者の自己満足

・素人の作品

・主人公最強

・ご都合主義

・辻褄が合わないかもしれない設定

・注意事項が増える可能性

 等が含まれます。

 以上をご理解したうえでお読みください。

 読者の皆さんの暇潰しの一助になれば幸いです。


 

 私は新しい土地を求めてひたすらに飛び続けた。そして三回目の朝を迎えた時、遠くに何かが飛んでいるのが見えた。

 

 ……私の方へ来ている?

 

 こちらにまっすぐ向かって来ているその生物は思ったより大きく、鋭い牙と爪を持つ大型の鳥のような生物だった。

 

 ああ、なるほど……私を狙ってる訳か。

 

 地上では散々狩りをしてきたが、空中は初めてだ。だが負けるつもりはない、訓練は十分にしている。

 

 「……来い。殺しに来るなら殺されても良いんだろう?」

 

 届く事は無い言葉を呟き、移動を止めて相手に向き直る。

 

 「~~~~!」

 

 遠いが声を上げているようだ。その直後、魔力反応が大きくなりこちらに魔力が飛んでくるのを感じる。

 

 そこそこ早いな。

 

 私はこちらに届く前にその魔力反応を躱す。

 

 恐らく風系統の魔法だろう。やはり獣も魔法を使う者がいる、使える者と使えない者の差はなんだ?

 

 ……考えるのは後にしよう。

 

 今は奴を殺す。奴は一直線に向かってくる、こちらが手を出せないと思っているのだろうか。

 

 私は魔法を発動し風の刃を発射する。色のない刃は魔力が感じられなければ躱すのは難しいが……どうかな。

 

 躱したか。

 

 鳥は飛んでくる不可視の刃を躱し、なおも迫って来る。

 

 魔力を感知する事も出来るんだな。

 

 新たな情報を手に入れた私は次の手を打つ。

 

 私は髪を細く伸ばし私の少し離れた所に垂直に立てた。

 

 「グアッ!?」

 

 私に噛みつこうと真っ直ぐ突っ込んできた鳥は置いておいた髪の刃に自分からぶつかり、左右に両断されて地上に落ちて行った。

 

 目は良くなかったのか。

 

 とはいえかなり細くした髪の刃は肉眼で見るのはかなり難しい、多少目が良くても気が付かなかった可能性は高いか?

 

 そうだ、あの鳥も回収しよう。

 

 私が鳥が落ちて行った辺りに降りて、周囲を感知するとすぐに見つかった。

 

 ……毒は無し、これも後で食べてみよう。

 

 私は死体をマジックボックスに保存する。

 

 初めての空中戦だったが、魔法や髪を使うと空中も地上もあまり差を感じないな。

 

 そう思いながら再び空を舞い先を急ぐ、辺りはだいぶ寒くなっていた。

 

 

 

 

 

 

 鳥を落とした日の夜に雪が降り、大地が白く染まり始め。さらに二回目の朝には大地が完全に白く染まり吹雪が襲って来た。

 

 初めての吹雪と寒さだが問題はなさそうだ。

 

 まずは落ち着く場所を探そう、川と森が傍にある所が良い。

 

 拠点候補を探して辺りを空から確認していると僅かな範囲だが雪が解けている場所を見つけた。

 

 なぜあの辺りだけ雪が解けているんだ?

 

 気になった私は降りて確認した、その場所は水たまりになっていて湯気が立ち上っている。

 

 温水?いや、ただの温水じゃないな……色々な成分が混じっているようだ。

 

 分析すると色々混ざってはいる様だが、生物にとって危険な物は入っていないようだ。

 

 これは温泉か……?

 

 このような色々な成分が混じった温水の事をを温泉と言うらしい。

 

 知識によると有害であったり高温であったりする場合もあるらしいが、これは有毒でも高温でもない……当たりかもしれないな

 

 ふむ、周囲に問題ありそうな生物はいないな。

 

 高温では無い様だが一応確かめてみよう。私は服を脱ぎ、そっと湯気の立つ温泉につま先から入る。

 

 おお、これは中々良い温度なんじゃないか?

 

 温度は丁度良く感じる……ここを拠点にする事に決定だな。

 

 しっかり風呂場を作ってからじっくりと入ろうと決めた。

 

 どうせなら浴槽は大きく作ろう……そう思いながら建築を始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 完成だ。

 

 森の中だったので場所を作ってからリビング、キッチン、寝室、倉庫と……以前の家と全く同じでは無いが似たような構成で家を作り上げた。

 

 そして風呂場だ。大きな木製の浴槽を作り、周りの床も木材で整え家と繋ぎそのまま行き来出来るようにした。

 

 温泉は常に湧き出ているので浴槽はいつも満たされている。簡単な手順とは言っても何もせずに入りたい時にすぐ入れるのは実に良い。

 

 これが露天風呂と言うやつだな。

 

 この家に目印を付け、完成したばかりの温泉に浸かりながら景色を見る。雪によって白く染まった森の木々が良い感じだ。

 

 ……もう少し楽しんだら素材を集めて錬金術に取り掛かろう。

 

 それにしてもこの地域は雪が多いな。この辺りに来てからずっと降っている、悪くはないが。

 

 

 

 

 

 

 寒く雪に閉ざされても生き物や素材はある物なんだな。

 

 温泉を楽しんだ後、私は森へと素材探しに向く事にした。

 

 雪でほとんど見分けがつかないが、感知のおかげで問題は無かった。近場を歩き回って獣や魔法を使ってくる獣……私は魔物と名付ける事にしたのだが、魔物を狩り、素材を集めて回った。

 

 ある程度集めた後、錬金を始める為に戻って来た……のだが。

 

 家の上に雪が山程乗っている。

 

 ……家がつぶれる事は無いだろうが何とかしたい、家自体を熱くすれば溶けるか。

 

 しかしずっと熱いままなのもな……体や体調に影響はないが風呂に入るようになって分かったことがある。平気ではあるが好ましい訳ではない……と言う事だ。

 

 何とか手をかけずに家を暖める方法はないものか。

 

 やりたい事が増えていく……後回しにして今は錬金に集中するか。

 

 いずれどうにかしたいが錬金術を後回しにするほどではないからな、まずは練習に入ろう。

 

 

 

 

 

 

 錬金術を甘く見ていた……。

 

 私は内心でそう呟いた。

 

 練習を開始してそれなりに時間が経つ。

 

 今までで一番集中していたのではないだろうか?

 

 錬金はかなり複雑な分野だった、素材の状態や処理のタイミング、温度、魔力の使用の有無、使用量……様々な条件で成功率や効果が変わったりとかなり複雑で大変だ。

 

 幸い紙は作れた。書き留めながら練習しないと覚えきれないぞ……。

 

 効果は少ない様だが数種類の薬と、紙と書き込む染料は作れた。これで記録しながら練習を進め、備忘録として本にしておく。

 

 念のため維持魔法もしっかりかける。後はひたすら実験するだけだ。

 

 ついでに魔法知識なども別に書き残して保存しておこうか。

 

 私は再び錬金術の練習に集中し始めた。

 

 

 

 

 

 

 再び練習を始めて無心に実験を繰り返す中ふと我に返る。

 

 温泉にでも入るか。

 

 「……ん?」

 

 温泉につながるドアを開けようとしたが開かない。仕方なく取り外すと雪の壁があった、私は魔法で雪を溶かして外に出る。

 

 ……だいぶ熱中していたようだ。

 

 外に出て見ると家が分厚い雪に完全に埋もれていた。

 

 少なくとも家が雪に埋もれ、自然の一部になるほどの時間が経っていたようだ……温泉周りは平気だったがそれ以外は雪の塊だな。

 

 まず温泉に入ろう。

 

 その後温泉から上がった私は家を雪から解放し、リビングに戻る。

 

 ……そろそろいいか、これ以上は少しづつ進めて行こう。

 

 備忘録の本も随分厚くなった、これはマジックボックスに保存する。

 

 そして練習中に作った薬もしまう。接着剤も作り、それぞれに紙を貼り付け、効果とその効果の強弱を私の感覚で書いてある。

 

 そういえばしばらく食事もしていない……今日は色々食べよう。

 

 温泉のそばで料理をして入りながら食べる。

 

 温泉、食べ物、雪景色だ。

 

 しばらく塩焼きを頬張りながら景色を見ていた私だが、浴槽のふちに顎をのせる。

 

 ……新しい素材が見つかったらまた複雑になっていくんだろうな。

 

 楽しくはあるが、また家が雪に埋まるだろうな。

 

 顎を乗せたまま湯舟に浮かび、パチャパチャと足を動かす。

 

 素材が増えれば増えるほど組み合わせはどんどん増える、いい事ではあるが……。

 

 他に目的が無い時に進めるようにしようか……。

 

 今回もかなり時間が過ぎているようだしある程度には達したと思いたい。

 

 何より今は道具作りをしてみたい。

 

 道具を作るには素材が足りないと思う、特に金属が全く無い。

 

 石や土は大抵どこにでもあるし魔法で作る事もできる。金属も恐らく作れるが、本物を見ておきたい。

 

 感知でひたすら探し回れば見つかるかもしれないが……。

 

 せっかくだから探すのは暑い土地を見つけてからが良いな。素材や食材も探せて一石二鳥だ、もう移動してもいいのだが。

 

 錬金に熱中してしまって、あまりこの土地を楽しんでいない気がする。

 

 特に温泉はもっと楽しみたい、もうしばらくここでのんびりするのも……。

 

 ……そうだ。持って行けば良いのか。

 

 マジックボックスがある。入り口を流入口に開けてしばらく放置すれば大量に温泉を保存出来るだろう。

 

 私は残りの塩焼きを食べて温泉から上がる、少しマジックボックスを改良しよう。

 

 

 

 

 

 

 あれからマジックボックスに使用者の許可がない物は入れないように改良を施し、現在温泉の採取をしている。

 

 改良をしたのは放置している間に余計な物が入り込まないようにするためだ。

 

 中では時間停止してしまうからな、事故は避けたい。

 

 待っている間何をしようか……魔道具作りの真似事でもしてみるか?部屋を暖めるような何かをちょっと作ってみよう。

 

 私はある程度の丸石を作って、火の魔法を込めてみた。

 

 「む……」

 

 突然石が真っ赤になり溶けだし、流れ落ちる。

 

 耐えられないか……熱に強い金属なら問題無いのかも知れないな。

 

 私は新しく丸石を作り、慎重に火の魔法を込めてみる。

 

 暖かくなって来たな。

 

 少しづつ石が暖かくなっていく。更にゆっくり魔法を込め続けると石がほんのり赤くなり始める……そろそろ限界かもしれない。

 

 「部屋を暖めるのには十分かな?」

 

 石を持ったまま家に帰り台座を作って熱した丸石を置く。どれくらいの時間持続出来て、部屋は温まるのかを確かめたい。

 

 しばらく待っていると部屋の温度が少しだけ上がったのが分かった、これだけでも僅かだが効果があるようだ。

 

 だがこの土地だとこれでは熱が足りないか?

 

 この土地は寒い。素材を変えるか大きを大きくするか……込める魔法の強さか、どうにかしてもう少し熱くしないと役には立たないかも知れない。

 

 こんなに上手く行くとは思わなかった。

 

 僅かとはいえこれでも効果はあった。

 

 普通に火を出すより魔量効率がかなり悪いが、その辺りは金属素材が見つかれば良くなると思いたい。これはこのままにしておこう。

 

 そろそろそれなりに時間が経って居るかな、温泉も大分集まっただろう。

 

 私は温泉に開いているマジックボックスの入り口を閉じる。

 

 これで温泉にも入れる。もう一度素材などを集めたら今度は暑い土地を目指して移動しよう。

 

 

 

 

 

 

 数日後の明け方。素材などを集めなおし、食料や薬を倉庫にある程度おいてから出発の準備を整えた。

 

 色々と知識を使い考えた結果、高高度から砂漠探しをしようと思う。

 

 私は空へ舞い上がると、明け方の薄暗い世界に一面の雪化粧が白く浮かび上がっている。

 

 舞い散る雪を吹き散らし、私は新たな土地を目指して飛び始めた。

 

 

 



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003

 前話もですが、話を思いつかなかった時は凄く短いです。

 この作品の注意事項

・作者の自己満足

・素人の作品

・主人公最強

・ご都合主義

・辻褄が合わないかもしれない設定

・注意事項が増える可能性

 等が含まれます。

 以上をご理解したうえでお読みください。

 読者の皆さんの暇潰しの一助になれば幸いです。


 

 砂漠を探して飛ぶこと数日、高い高度から見ていると砂ばかりの土地を発見した。

 

 本当に砂ばかりだ……僅かに植物もあるが、いままの土地とは大きく違う。そして気温も高いようだ。

 

 周囲が砂と岩だけになってからも更に飛び、だいぶ深くまで進んだ後家を建てる場所を探す。

 

 だが川や森は無く、ほとんど変わり映えしない風景ばかりだった。

 

 これは探すだけ無駄だと判断し、巨大な丘の上の岩場に家を建てる事にした。

 

 おなじみのリビング、キッチン、寝室、倉庫、そして風呂のある家だ、勿論目印も付けている。

 

 とりあえず家はこれでいいだろう。

 

 ここでの目的は第一に鉱石の発見、次にここで取れる食材や素材だな……同じ様に感知で見つける事は出来るだろう。発掘は魔法でどうにかなるだろうか?

 

 さて、色々と始める前にまずは温泉に入ろう。

 

 私は作りたての家に入りマジックボックスから温泉を浴槽に注ぎ準備する。それから服を霧散させて裸になり、湯で砂を流してから浸かった。

 

 気温は問題無いが砂のじゃりじゃりとした感触は意外と気持ち悪いな。

 

 これは何とかしたい、ひとまず風の魔法で自分を包めばいいか。

 

 私は風呂に浸かりながら魔法を作り始めた。

 

 

 

 

 

 

 私は風呂から上がった後、風の守り魔法を使ってみた。風の壁を周りに作り砂などを防ぐ魔法だ、外に出る時はかけておこう。

 

 ……家にも風の守りをかけておこう……家の中が砂まみれとかは嫌だ。

 

 家にも魔法をかけ外に出る……うん、家の周囲に砂は来ていないようだ。

 

 これから本格的に鉱石を探そう、見つかるといいが。

 

 

 

 

 

 

 現在私は砂地で鉱石を感知で探しながら歩いている。

 

 まだ探し始めてそれほど時間は経っていないが砂漠もそれなりに広そうだな。

 

 そう思いながら歩いていると、私からかなり離れた砂の中に大きく長い動く物が居るのを感じた。

 

 生物のようだが……反応がある辺りに向かっていくとその生物が私の方へと移動し始めた。

 

 地面が細かく振動している。

 

 地下からくるなら飛ぼうか。

 

 私が空中へ飛び上がった後、地中から何かが飛び出して来た。残念だが私はもう空中に居る。

 

 生物の正体は知識にあるミミズの様だったのだが……。

 

 ……大きいな。

 

 知識では手に乗るほどの大きさだったが、似ているだけで同じ生物では無いだろうからな。

 

 この生物は森に生えていた樹よりも太い、私ぐらいならまる飲みだろう。

 

 このほとんど何も無い土地でどうやってその大きさを維持してるんだ?

 

 まだ私の知らない何かがあるのかもしれない……それにミミズより私の方がおかしいかも知れないからな。

 

 ……美味いのだろうか。

 

 砂の上でうねっていた大きいミミズは届かないと分かったのか再び砂に潜ろうとする。

 

 逃がすつもりは無い。私の髪の刃はミミズの口のある頭のような部分を斬り飛ばす。

 

 ミミズは一瞬硬直すると砂の上に倒れ、その直後斬り飛ばした頭部が地面に落ちた。

 

 ……意外と肌触りが良いな。

 

 すぐに死体を回収したが、肌はさらさらとしていた。

 

 今日の食事はこいつだな。

 

 回収を終えた私は再び鉱石を探す。道中の棘の生えた植物も回収しつつ辺りをうろつく……そして。

 

 遂に地下に鉱石らしき反応を感じた。さほど深くはないな、土魔法で取り出せるか?

 

 私は土魔法でどうにかしようと魔法を使う。

 

 埋まっていたのは鉄鉱脈だった。私は魔法で鉱脈を丸ごと引きずり出し、鉱石だけを取り出して回収する事に成功した。

 

 これだけでかなりの量になったな……今回はこのぐらいで帰ろう、食事もしたいしな。

 

 

 

 

 

 

 家に帰って温泉に入り、ミミズの肉を少し切り分けて塩を振り焼く……匂いはそこまで悪くは無い。

 

 これは……駄目だな。

 

 一口食べて出た感想がこれだった。

 

 匂いは悪くないがぱさぱさしている上にじゃりっとしている。好みによるかもしれないが私は無理だ。

 

 生物全てが美味しい訳もないか。

 

 今まで悪くない味の物ばかりだったがもちろん不味い物だってあるだろう、今までが上手くいっていただけだ。

 

 この棘のある植物はどうだろう。

 

 これも食べてみよう。生でも食べられるだろうが、焼いてみる。

 

 「青臭い」

 

 思わず感想を口にした。

 

 これは私の好みのは完全に合わない。この土地ではあまり美味しい物は見つからないかもしれないな。

 

 ……鉱石でも探しに行くか。

 

 少し残念に思いながら、魔法を使い再び外へ出た。

 

 先程とは別な方向に進み暫く経った時、また鉱石らしき反応があった。

 

 今度は何かな。

 

 魔法で鉱脈を引きずり出して鉱石を取り出す。これは……銅かな?そして銅鉱石を取り出していると何かが近づいてくる気配を感じた。

 

 ……今度は何だ?

 

 しばらく待っているとサソリのような生物が姿を現した。

 

 また大きいのか。

 

 またしても知識の姿よりはるかに大きかった、こいつは2メートルほどありそうだ。

 

 まあ大きくても結果は変わらないが。

 

 髪をある程度太くまとめ、頭らしき場所を一突き。綺麗に穴が開いた大きいサソリは動きが止まった。

 

 ん?まだ動いているな。

 

 収納しようと近づくと、全身が細かく震えていた。警戒し完全に動きが止まってから仕舞う。

 

 知識ではサソリは尻尾に毒があるようだが、もしこいつにもあったら取り分けておこう。

 

 一応これも味見はしておこうか。

 

 その後更に探し複数鉱脈を見つけたが鉄と銅だけだった、量は銅の方が少なかったな。

 

 しかしそれでもかなりの量を手に入れたと思う。当分はこれで十分だろう、帰って魔道具作りを始めよう。

 

 ……サソリの味見もしないとな。

 

 そう思いながら帰路についた。

 

 

 

 

 

 

 家に到着した私はまずサソリを調理して食べた。

 

 表面の殻が少し硬いが味は悪くなかった。

 

 食事を終え魔道具作りに取り掛かろうと思うが、知識では鉱石はそのままでは使えず精錬など鉱石事に色々行う必要があるようなのだが、やり方が分からない。

 

 見た感じ余計な物が混じっているようには感じないのだが……知識の鉄より色がやや白っぽいが、問題無いのだろうか?

 

 先ずは暑い家を冷やす魔道具を作ろうと思う、私は暑くても問題無いが暖める物を作るのなら冷やす物も作りたい。

 

 しかし水では冷たさが足りない、魔法を作る所からだな。

 

 私は新しい魔法の開発を行った。

 

 

 

 

 

 

 冷却魔法と付けようか。

 

 この魔法は冷気を生む魔法だ。これを取ってきた鉱石に込めて見るとどうなるかやってみよう。

 

 石で試した火の魔法の時はいきなり溶けたからな、冷やすから鉱石が溶けたりはしないだろうが念の為じっくりやろう。

 

 鉄を手で持てる程度の大きさに魔法で丸め、冷却魔法をゆっくりと込めると表面が濡れてきた。

 

 これは冷えたからだな、知識にあったぞ。

 

 さて……まだ部屋の温度はあまり変わらない、もう少し込めてみようか。

 

 ……氷の塊になってしまった。

 

 次第に水滴が凍り始めて氷に覆われてしまった、しかし部屋の湿度も僅かに下がっているようだ。

 

 室温を下げる事には成功したなしかし……。

 

 知識にある道具達は魔法は使わず、自由に動作を止める事が出来る上に暖かくも涼しくもできるらしい。

 

 出来る事ならそれを目指したい。

 

 暖める事も考えると火の魔法より安定した魔法が欲しいな。

 

 いきなり溶ける可能性がある上にもともとは攻撃用の魔法だ。もっと抑えた物を用意しようと私は魔法を開発し始めた。

 

 私は加熱魔法を開発した。これは暖める魔法だ、攻撃用ではない緩やかな温度上昇になるはず。

 

 魔力の出力を間違えたらこれでも危険かもしれないが。

 

 温度の上昇と低下を両立して更に任意に切り替え、停止もできる道具……か。

 

 何とか頭にある知識と新しく得た知識と魔法で上手く出来ない物か。錬金術までとはいかなそうだが時間がかかりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 金属を手に入れ、家にこもり魔道具作りに没頭した私は遂に魔道具を作る事に成功した。

 

 名前は……温度調整器でいいか。

 

 そのままだが分かりやすい方が良い、構造は知識にあった魔道機構に大いに頼る事になったが……。

 

 特定の模様を物体に刻んで魔力を流す事で魔法が発動するという物だ。

 

 多少覚えるのに時間がかかったが私の魔法も再現する事が出来た。模様を書くだけで発動する物もあるようだが魔法金属を溶かした物が必要なようで、今は用意出来なかった。

 

 いずれ手に入る事があったら使ってみたいな。

 

 話がそれてしまった。まず魔力を貯めておく金属を用意する、これは魔法ではなく魔力そのものを貯める物だ、これは鉄が一番よかった。

 

 それぞれの魔法が発動するように機構を刻んだ銅の板を用意する、球形を止めたのは重く材料が多くなる上に魔力消費と効果が釣り合わなかったから。

 

 板の数を増やせば効果がその分上がる、もちろん魔力消費も増える。

 

 それを細く加工した銅の紐で繋ぎ、切り替えるスイッチで制御する。

 

 加熱、冷却のそれぞれに合わせると魔力が流れ発動する、無効に合わせると作動しない。

 

 そして最後に送風だ、温まった、または冷えた空気を風魔法で送り出す。

 

 別スイッチになっているので必要な時に使う、これらの機構を魔法で加工した木の箱にいれている。

 

 ……今はこの辺りが限界か。

 

 この魔道具、効果はしっかりと出たがまだまだ魔力効率が悪く本体が大きい。マジックボックスがなかったら持ち歩けない。

 

 基本的には家などの拠点に置けばいいのだが、移動中の使用は持ち歩く手段がなければ無理かもしれない。

 

 取り合えず家において冷却運転だな……。

 

 私の魔力を込めた鉄の塊から魔力が流れ機構が作動する、送風も使うと冷気が部屋に流れる。

 

 今はこれで満足しておこう。

 

 新たな素材や技術を使えるようになれば効率を上げたり小さくしたり出来るかも知れない。

 

 今まで特に気にしなかったがこうなると知識にあった魔法金属が気になる。

 

 貴重であるとあったので簡単には見つからないだろうな。

 

 魔法に錬金術、魔道具……いずれにしても形にした者は天才だな……努力もしたのだろうな。

 

 温泉に浸かりながら知識にある素晴らしい技術の開拓者を思う。

 

 最初から頭にあったこの知識達には恐らく発見者がいる事だろう。私もずいぶん助けられた。

 

 会う事は叶わないだろうが……同じように挑戦する者にこの先出会ったなら力になるのもいいかもな。

 

 いつか私も何かを無から生み出せるだろうか。

 

 

 

 

 

 

 温泉から上がり備忘録に全てを書き込み、考える。

 

 これで目的だった魔法、錬金術、魔道具製作を一通り行った、知識だけでなく実際に行い失敗を経験した。

 

 これからは自由に行動し、新しい発見や思い付きがあれば試してみよう。

 

 まずは海だ……海辺で過ごそう、きれいな海で島がいい。

 

 砂ばかりの土地はそろそろ飽きた、海は塩を取ったときに少しの間居ただけでその海も濁っていた。

 

 移動する前に鉱石を集めようかと思ったがあまり減っていない、失敗しても溶かして戻せるからだろう。

 

 温度調整器をもう一つ作って家に置いておこうか。

 

 

 

 

 

 

 数日後。太陽は真上にあるが砂嵐で薄暗い。

 

 温度調整器の片方をマジックボックスにしまい、もう一つを家に設置した。

 

 食料と薬を倉庫にある程度置き、出発の準備を整える。

 

 さて、海の綺麗な島を見つけるようか。空に舞い上がり荒れた大地が嵐の隙間から眼下に見える……一番の脅威は砂のジャリジャリ感だったな。

 

 まずは適当に川を見つけて海に出る、その後綺麗な海と島を見つけるのだ。

 

 私は川を見つけるために加速した。

 

 

 



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004

 読み返して誤字脱字が無いと思っても、きっと投稿後に見つかる。

 この作品の注意事項

・作者の自己満足

・素人の作品

・主人公最強

・ご都合主義

・辻褄が合わないかもしれない設定

・注意事項が増える可能性

 等が含まれます。

 以上をご理解したうえでお読みください。

 読者の皆さんの暇潰しの一助になれば幸いです。


 

 出発から二日目に川を見つけた。

 

 その川を辿る事で簡単に海へとたどりつく事が出来た。

 

 そこから更に海上を長い間飛び続け、ようやく透明度の高い海と白い砂浜を備えた島を見つける事が出来た。

 

 いい島だな、この島で過ごそうか。

 

 まずは家を建てる海辺を決めないとな。

 

 島なので一部の崖や山肌に接している場所以外は殆ど砂浜だ、その中から良さそうな場所を選ぶ。

 

 海辺をぐるっと回った結果、遠浅で島側に適度な平地がある場所を見つけた。場所はここに決める。

 

 気候も暑すぎず程よい暖かさだ。

 

 家を建てながらそんな事を考える。この場所なら温度調整器は置かなくていいな。

 

 家が完成した。恒例のリビング、キッチン、風呂場、寝室、倉庫の構成だ。

 

 そう言えば眠りもしないのに今まで寝室を作っているな。

 

 手本にした物そのままに部屋を決めていたからか。必要無いが……これからもこのままでいいかだろう。

 

 家を作った私は島の中を散策しようと考えた。

 

 早速島の森の中へ分け入っていくと、生えている植物も今までとはまた違う。

 

 苔などが多く生えていて全体的に緑色が多く目に入る、ゆっくりと過ごそうと思っているが……。

 

 ……素材集めがしたい。

 

 結局誘惑に負け、錬金素材集めに走るのだった。

 

 

 

 

 

 

 私は初めて見る素材を集めていたが、気が付けば夕方だった。

 

 途中この島の生き物や木の実、果実などが目に入ったが特に急ぐ事も無いと錬金素材集めに集中した。

 

 流石に脱線しすぎた、今日は家に戻るとしよう。

 

 ……こういう景色も良いものだな。

 

 夕暮れの海辺は茜色に染まり、砂浜に何か含まれているのか夕陽を受けて細かくキラキラと輝いている。

 

 太陽が水平線に沈み始め、大きな月と小さな月二つが現れる。

 

 思えばのんびりと空を見た事がなかった気がする。

 

 夜になるまで砂浜に寝ころび星を見る。

 

 自分の事を知ろうとし、知識と技術を磨き、生き残る強さを鍛えていた私はこの様に何もせず時間を過ごす事は無かった気がする。

 

 周囲に目を向ければ波の音が響き、月の明かりが世界を照らしている。

 

 月明りは明るいな……。

 

 今までやって来た事は必要な事ではあったが、それと同時に力を付ける事や物を作る事、新しい事に挑戦するのは楽しかった。

 

 そう思い、何も考える事無くただ空を見ていると水平線が明るくなり始めていた。

 

 ……そろそろ夜明けだな。

 

 水平線から日の光が差し始めた、夕陽とはまた違う光が暗い海を彩っていく。

 

 明るくなったら食材を探そうか。

 

 日中の予定を決めながら明るくなっていく世界を眺め続けた。

 

 肉、野菜、木の実、果物。

 

 感知を使って見た事が無い食材達を集めていく、これから毎日少しづつ味見をしていこう。

 

 島の森は沼になっているところもあった、普通に踏み込んだのだが沈んで行った時の感覚は興味深かった。

 

 飛ぶ事で簡単に脱出する事が出来たが、飛ぶ事も周りの木にも届かなかった場合どこまで沈んだのだろうか。

 

 一番嫌だったのは泥まみれになった事だったな……思わず探索を中断して温泉に入りに戻ってしまった。

 

 私は一つの事を始めたらそれだけを納得するまで行い続ける気がする。

 

 これは今までの私の生活を振り返った時の感想だ。

 

 魔法訓練、錬金術、魔道具作りなど一つの事に集中すると時間を忘れる。

 

 今の所は特に問題無いし、改める気も無いが。

 

 よし、今日の所は帰って食事にしよう。

 

 たくさんの食材を手に入れた私は帰路についた。

 

 

 

 

 

 

 島の探索にひとまず納得した私は海に居た遠浅の海の温度はあまり冷たくはなく、高い透明度の為に泳ぐ魚達がかなりよく見える。

 

 海の食材と素材を集めるかな。

 

 遠浅の海に居る貝や蟹のような生物をアイテムボックスに入れて行くがそこまで量は獲れなかった。

 

 流石にこの辺りには大きな魚は居ないか。

 

 そう思いながら海を見る。居るのはカラフルな小魚くらいだ。大きい魚を見つけるには深い海へ行かなくては駄目かも知れない。

 

 どの生物もそこまで多くいる訳ではない、根こそぎ取ってしまうのはやめておこう。

 

 ここでの食材集めは切り上げて深い海へいこうか。そう思いながら沖へ向かうと、遠浅だった砂浜が突然無くなっている。

 

 崖になっているようだ。

 

 丁度いい。潜ってみようか。

 

 私は海に潜り始めた。以前塩作りの際に獲った時は海には入らず適当に髪でさらって獲ったのだが大物は居なかった。

 

 しかしここなら見つかる可能性は高い筈。

 

 居た……大物だ。

 

 種類は分からないが私の身長の数倍程の魚が眼下を泳いでいる、すぐに髪を伸ばして捕まえようとしたが思いとどまった。

 

 髪に頼ってばかりなのはどうも嫌だな。

 

 今の所魔法と髪の攻撃で全て対応出来ているが、私は力もあるので殴る事でも殺せるだろう。

 

 色々出来た方がいいはずだ、いつかどこかで魔法や髪が使えない状況が訪れるかもしれない。

 

 今回は髪も魔法も使わず捕まえる。

 

 そう決めると、魚のほうへ泳いでいった。

 

 海では人型は泳ぐのが遅いな。近づくとすぐに魚達は逃げてしまう……だが早いとは思わない。

 

 私は最終的に体の能力だけで魚を超える速度を出し、追い掛け回して捕まえた。

 

 魚との追いかけっこは結構楽しかった。

 

 陸や空とも違う感覚だ、ただ水中を泳ぎ回るだけでも中々気持ち良い。そう考えながら歩いていると家が見えてきた。

 

 さて、味見だな。

 

 家の前の砂浜で海を見ながら獲った魚を調理し食べる、海の生物達の多くは美味しかった。

 

 

 

 

 

 

 こうして私は長い間、海や森に出ては家で食材の味に一喜一憂したり、海辺や島の山から景色をただ眺めたり、たまに魔法や錬金、魔道具の製作の研究をしたり……という生活を満喫した。

 

 そんな日が続いたある日、私は考えた。

 

 意思疎通の出来る生物か私の同類を探そう……と。

 

 のんびりした一人の生活も楽しいが誰かと会話がしたい。

 

 もうずいぶん長い間……と言うより目が覚めてから話せる知的生命体に会った事が無い。

 

 戦闘中、時々魔物などに話しかける事はあったが、通じる相手は今まで居なかった。

 

 いずれ探そうと思っていたし、そろそろ探しに行ってみよう。

 

 思い立ったのだ、すぐに準備をしよう。海辺の家に食材と薬をある程度置き出発する準備を整える。

 

 翌日。何度も見たここの海辺の夜明けも見納めだ。

 

 どこへ行こうか……どこにでも可能性がある。会話出来る誰かを探しに行く、私は空へ上がると思うままの方角へ飛んだ。

 

 

 



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005

 作中時間が飛びます。

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 海辺の家を旅立ったのが遠い昔に感じる。いや……恐らく実際にかなり昔なのだろう。

 

 私に寿命は無いか、もしくはかなり長いようだ。はっきりとした時間は分からなくても相当な時間が経っている事は感じる。

 

 この世界には意思疎通出来る生物は居ない。

 

 私が長い間世界を巡って出た答えがこれだ。

 

 少なくともこれだけ探して全く見つからないという事は居ないと思って間違いないと思う。

 

 それならばこの世界を楽しみつくそうか。

 

 世界に意思の疎通ができる生物がいない事を認めた私は昔のように様々な場所で自由に暮らし、食べ、自らを高める事にした。

 

 

 

 

 

 

 それから私は色々な場所に家を建てそれぞれの場所で暮らし、その場所の物を集める傍ら自らを高めた。

 

 山脈地帯、谷底、平野、更に海底にまで住居を作り暮らしと自分の能力向上を楽しんだ。

 

 長く暮らす内に自分の弱点も判明した。

 

 寿命は長いというのに記憶力だけはあまり良くなかったのだ。流石によく行う事は忘れないが物事から長く離れていると忘れていたりする。

 

 備忘録を作っておいてよかったと思った事実だったな。

 

 魔法は長い時間をかけて創造魔法と言う自分の考えた効果を発揮する魔法を作り上げた。

 

 錬金術は大量の魔力や魔素を貯めておける魔原石や、どんな病気にも効く……筈の万能薬などを作った。

 

 万能薬がいまいち微妙な表現なのは魔物と野生の動物でしか試せていないからだ。

 

 さらに魔素、魔力などを使い様々な金属や魔法金属も作れるようになった。

 

 魔道具製作は技術と知識の大幅な上昇が起きた。

 

 錬金術よって作り出される様々な材料と質の上昇によって高性能、低燃費、小型化が進んでいる。

 

 私自身の力も、もはや上限があるのか分からないほどに上がり続けている。

 

 しかし私自身の内面は、どう言えばいいのか分からないが……優秀とは程遠く、忘れる事は勿論、もっと良い使い道があるのに長い間気が付かなかったり、後回しにした事をそのまま忘れて放置したり、興味を持った物に集中し他の事を忘れたりと……得た力と知識に比べて大して成長する事は無かった。

 

 そして、話す相手が欲しいという気持ちもまた変わる事は無かった、共に過ごす事は無くとも時折関わり言葉を交わす事が出来ればと今も思っている。

 

 生命の進化、変化や発生は膨大な時間がかかると知識には有ったな……。

 

 最後に作った家のリビングで考える。この調子ではいつ知的生命体に出会えるか分からない、そこで私は睡眠に目を付けたのだ。

 

 寝ている間は長い時間でも本人にとっては僅かな時間に感じるらしい。

 

 このままひたすら待っている事も出来なくは無いが、早く会える方法があるのなら試したい所だ。

 

 寝なくても問題のない私だが、寝れるかどうか試した事はなかった。

 

 もし自分から眠りに落ちる事が可能なら、知的生命体が生まれるまで寝て過ごすのも悪くない。

 

 こうして寝る事に挑戦し始めたのだが、寝る感覚が分からないと言う事が分かる。

 

 眠気と睡眠は知識で知っていても今まで感じた事が無い、分からない状態からのスタートだ。

 

 私は横になり目を瞑る、寝るときはこうする事で眠りやすくなるらしい。

 

 「うーむ」

 

 私は唸る。しばらくそうしていたが全くそれらしい感覚はない、そう都合よくはいかないか……色々と試そう。

 

 どれだけ時間がかかっても今更の事だ。

 

 

 

 

 

 

 時間魔法か、創造魔法か、私自身の力、この辺りなら何とか出来そうな気もする。

 

 知識には冷凍睡眠という物があったが私がそんな物で凍り付く訳がない。

 

 出来る事なら魔法ではなく私自身の能力で冬眠のような事が出来ると良いのだが……。

 

 問題は無いだろうが、色々試してみる前に安全は確保しておかないとな。

 

 今まで私に襲い掛かってきた魔物や獣は私に攻撃する事もほとんど出来ていない。

 

 感知によって私が先に気が付き先制してしまうからだ。

 

 しかし今回は私の意識が無くなる、または薄くなるはず。

 

 流石にその状態から先手を取る事は難しそうだからな。

 

 成功した時に問題無いようにしなければ、更に何かがあった時に目覚める事が出来る何かを用意する事が出来ればなお良い。

 

 周囲に何も居ない孤島を探し、私は試行錯誤をするのだった。

 

 

 

 

 

 

 夜になっている?

 

 試行錯誤した結果、私の意識の速度を落とす事で体感時間が変わる事が分かった、戦闘時敵の動きが遅く感じる事にヒントを得た。

 

 あれが意識の加速なら遅くも出来るかもしれないと、これは予想以上に上手く行った。

 

 感覚としては自分は普通に感じるが、周囲が凄まじい速さで動いている感じだ、本来想定した物とだいぶ違ってしまった気がするが。

 

 今は私の体感では僅かな時間だったが朝始めたはずが既に夜になっていた。

 

 完全に意識の速度を止めれば一瞬で何年だろうと経過させる事が出来る可能性が高い。

 

 ただ問題もある。私が停止している間何が起こるか分からないという事だ。

 

 僅かでも意識が動いていれば感知をしている間は何があっても拾ってくれるので、限界ギリギリまで速度を落とし完全停止はしないほうが無難かもしれない。

 

 もし完全停止するのであれば何かがあった時に起きる事が出来る方法を見つけるべきか。

 

 もう一つの懸念は、私の正確な寿命が分からない事。

 

 時間を短く感じるだけなのでその間に寿命が来てしまったらそのまま死んでしまう。

 

 ただこの事に関しては何となく平気なような気がしていた。

 

 自分で選んだ事だ、途中で寿命が来て死んだとしても後悔は……多少はあるかもしれないが……やめる気は無い。

 

 色々と試してみよう。何かあった時目覚める事が出来るようにはなっておきたい。

 

 

 

 

 

 

 更に試し続け私は意識を完全停止し、あらかじめ決めた時間か私に危険が迫った時に復帰する筈の魔法を作りだした。

 

 結局魔法の力に頼ってしまったが、可能であればこの際どうでも良いと割り切った。

 

 季節が分かる土地で経過した時間の確認をした。

 

 危険が迫った時に復帰する筈と表現したのは良く分からないままになってしまったからだ。

 

 私に敵対する魔物のいる場所で使って見たが、一度も反応しなかった。

 

 原因は何となく分かっていた。つまりその魔物では何をしても私に危害を加えられないと判断され、反応しなかったのではないか……という事だ。

 

 事実その獣は私に傷一つ付ける事は出来なかった、それでも私が一番強力だと思う魔物だった為、試せる相手が居ないと判断した。

 

 何かが近づいたら反応するようにしようかとも思ったが、そうすると何かが通りかかっただけでも目覚めてしまうので諦めた。

 

 後は長い停止休眠をするだけか……。

 

 準備は十分したと思う。

 

 場所は候補としてあまり他の生物が近寄らない深海か谷底、山脈のどれかの家が良いだろうと考え、最終的に海底を選択した。

 

 「停止期間は……一万年だ」

 

 一応知識に時間の事は存在するので何となく分かる。

 

 生命の進化、変化や発生は膨大な時間がかかる、おそらく一万年では全く足りないだろう。

 

 だが最初はこれで良い、後は私の寿命を信じよう。

 

 

 

 

 

 

 海底の家の寝室に念の為魔法金属で箱を作りその中で停止休眠する、私は用意した箱を閉じて完全に密封した。

 

 上手く行けば一瞬で一万年後だ……ではおやすみなさい。

 

 私は目を閉じて意識を停止させた。

 

 

 




 一万年だとあまり変わらないんじゃないかと言うご意見は、魔素や魔力が何かしていると思ってください。


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006

 主人公はどうして○○をしないの?や、××の事忘れていないか?といった部分があった時は、作者が忘れて居たり、そこまで考えつかなかったと言う事なので、仕方ない作者だな、とスルーしてください。

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 私は目を開ける。感覚としては全く時間は過ぎていないのだが上手く行っていれば……。

 

 すぐに入っていた魔法金属の箱を開けて外に出る、何も起きていないのなら外は海底のはずだ。

 

 ……私は間違っていなかった。

 

 そこで目にしたのは海底を尽くす多種多様な生物や植物、海中にも様々な種類の魚の群れが行きかう命に溢れた海の姿だった。

 

 陸に行こう。私はすぐに意識を地上へと切り替えた。

 

 魔法を使い魚の群れを突っ切り海上へ向かう。すぐに明るくなり始め海上へと到達すると、陸へと向かう。

 

 これなら知的生命体が居るかもしれない。

 

 陸へ向かう途中にも様々な鳥が飛び交い、岩場で羽を休める群れを見かけた。

 

 そして陸地についた時私は空にも大地にも息づき溢れる生命の音を聞いた。

 

 「くっくっく」

 

 思わず笑っていた。

 

 恐らく初めてハッキリと笑ったと思う、やはりまだ生命は進化の途中だったのだ。

 

 ようやく世界に生命が溢れた……きっと人と呼ばれるような者達も……根拠なくそう考えてしまう。

 

 また世界を見て回って色々集めたいが、まずは知的生命体を探してみたい。

 

 もし居るならきっと川沿いなどに居るはずだ。

 

 何よりもまず優先すべきは意思疎通のできる相手だ、私はそのまま川を探しに飛び始めた。

 

 

 

 

 

 

 ……あれは村か?

 

 川を見つけ、それに沿って探していると明らかな人工物が集まっている。

 

 すぐさま向かいたいが最初の接触だ、慎重にしなくてはならない。

 

 見えないように遠くに降りて徒歩で接触しよう。

 

 遠くに誰かが数人隠れているな。

 

 降りた所から離れた場所に何者かが居る、狩りをしているのだろうか。

 

 行ってみるか、いきなり村に乗り込むより良いかもしれない。

 

 私は隠れている者達に方へ歩き出した。

 

 隠れている場所が目に入る距離になると、突然5人の人類が飛び出してきた。

 

 知識にある人類にそっくりだ……。

 

 私が初めての人類に喜んでいると、その中の一人が声を上げた。

 

 「*******!?」

 

 「……ん?」

 

 声を上げた彼は理解不能な言葉を叫んでいる。

 

 「……ああ」

 

 私は思わず声を洩らす。言語の違いの可能性を全く考えていなかった、何を言っているかわからない

 

 「*!?******!?」

 

 彼は石の槍と思われる武器を構えながら更に声を上げている。

 

 「あー、私は敵対するつもりはない、わかるか?」

 

 「**********!?*****!?」

 

 できるだけ刺激しないように静かに語りかけるが、その時声を上げていた男の右側に居た男が、槍で空を指しながら声を上げた。

 

 「*******!!」

 

 それを聞いた途端、五人全員が槍を構えた。

 

 「これはもしかして……空を飛んでいるのを見られたか?」

 

 彼らは私を取り囲みじりじりと近寄ってくる。

 

 「折角見つけた人類だ、殺したくはないな」

 

 全員が飛びかかってきた瞬間、魔法で強風を起こし吹き飛ばす。

 

 「**!?」

 

 「悪いが効かなくともわざわざ攻撃を受ける気はない、殺しはしないが大人しくしてくれ」

 

 「***……***!?」

 

 彼らは驚愕の表情を見せ何かを呟くと、突然逃げ去って行った。

 

 上手く手加減出来てよかった。

 

 ただの強風とはいえ少し加減を失敗すると辺りの木々ごとなぎ倒す羽目になるからな。

 

 仕方ない、近場に家を建てゆっくり馴らしてみよう。

 

 こうして手ごろな場所に家を建てるため歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 人類との初接触の後家を建ててから数日後、村の様子を見ようと近くまで来たとき感知に数人の人の反応があった、何かを探しているような動きをしている。

 

 狩りか?いや、数日前に私とぶつかった場所の近くだぞ……さすがにそれは無いと思うが。

 

 もしかして私を探しているのか?違うかもしれないが遠くから姿を見せてみるか……違うのならまた逃げるだろう。

 

 「*****……」

 

 私が姿を現すと三人の男が地面にひれ伏し、一番前に居る他の者より装飾の多い男が何か言っている。

 

 どういうことだ?

 

 先日襲い掛かってきた反応とのあまりの差に困惑していると、一番後方に居る少女が前に出てきた。

 

 「*******……」

 

 少女は着飾り、白い髪と赤い瞳そして白い肌をしていた。

 

 少女は何かを言うと私の近くまで歩み寄り、膝立ちになり首を垂れる。

 

 この少女……。

 

 彼女は病気だ、恐らく長生きできないだろう。いや、それもだがもしかしてこの状況は。

 

 生贄か?

 

 大方あっているだろう。

 

 数日前の出来事が原因で私を超常の何かと勘違いし、病気で体が弱い彼女を……いやそこまで理解していない可能性が高いな。

 

 恐らく珍しい見た目の彼女と引き換えに許しを請うつもりなのではないだろうか。

 

 どうするか。

 

 これを断って彼女が無事でいられる保証はない、むしろ私に拒否された供物として処分されるかも知れないな。

 

 私は話し相手が欲しい、彼女を救い傍におこう。

 

 言葉は後で何とかすればいい。

 

 私は暖かく穏やかな風を起こしながら、彼女の足元にマジックボックスの入り口を開けて飲み込む。

 

 その瞬間残された男たちの体が震えた。

 

 「確かに受け取った」

 

 私は出来るだけ穏やかに声を上げるとゆっくりと空に浮かび、彼らから見えなくなるまで飛んだ。

 

 まさか人類に会っていきなり崇められる羽目になるとは。

 

 まずは彼女をどうにかしなければ、私は温泉と食事の用意をしながらこの後の事を考えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 風呂と食事の準備を終え、リビングで彼女を取り出す。

 

 「****……?」

 

 彼女は困惑したように顔を上げた。彼女からしたら突然風景が変わったのだ、困惑するのも当然か。

 

 「*****!?」

 

 しばらく呆然としていた彼女だが、私に気が付くと床にひれ伏し何か言っている。

 

 「大丈夫だ、殺したりはしない」

 

 私は優しく声をかけそっと彼女を立たせる、彼女は困惑した顔をしながらも従ってくれた。

 

 「温泉にはいろうじゃないか」

 

 ゆっくりと手を引き風呂場へ連れて行く、彼女は抵抗するつもりはないようでされるがままだ。

 

 風呂場に入り自分の服を霧散させ彼女の服を脱がせる、彼女は寒いのか細かく震えている。

 

 「おいで」

 

 湯の温度は低めにしておいた。

 

 彼女にゆっくりと湯をかける。彼女はびくりとはねた後、目を見開いて体を流れる湯を見ている。

 

 「目を閉じないと痛いぞ」

 

 そっと目を閉じさせて頭にも湯をかける、しっかりと彼女の汚れを落とした後に私も湯をかぶる。

 

 「入ろうか」

 

 どこかぼんやりしている彼女を湯舟に入れる、顔を見る限り嫌ではなさそうだ。

 

 しっかり温まった後魔法で体を乾燥させ、私が作り出したおそろいのワンピースと下着を出した、知識にある物だ、私も最近付け始めた。

 

 「次は食事だ」

 

 私は手をつないだまま声をかけると、食事の準備をしておいたリビングに戻る。

 

 椅子に彼女を座らせ室内で食材を焼き始める。

 

 安全で美味しかった物だけを焼いているからどれかは口に合うだろう。

 

 彼女を見ると私の焼いている食材を見ている、お腹はすいているらしい。

 

 その姿に私が微笑むと、彼女はサッと視線を下に移し白い頬を赤く染めた。

 

 笑われたのが分かったのか?

 

 「食べると良い」

 

 そう言って手本に一つかじって見せる、串を手渡すと私をまねて一口食べる。

 

 彼女は驚いた顔をした後、一心不乱に食べ始めた。

 

 「気に入ったようだな」

 

 顔を赤く染めながらも食べるのを止めない彼女を見ながら、私も一口肉をかじった。

 

 

 

 

 

 

 言葉が通じないからな、聞こうにも聞けないから勝手にやってしまおう。

 

 もともと私に捧げられたんだ、健康になるなら文句は無いだろう。

 

 食事を終えた彼女は不安そうに私を見ている。

 

 万能薬では治せないか。

 

 薬を飲ませてみたが効果はなかった……予想はしていた。

 

 薬の力が足りないのではない、万能薬は異常を治す薬、つまり通常に戻す薬だ。

 

 彼女の病気は生まれつきの物。つまりこれが通常状態だ、異常だが異常ではない状態が今の彼女。

 

 彼女の通常状態を創造魔法で本来の健康体に戻す、実際に行うのは初めてだから悪く言えば実験体だな。

 

 数日間食事を与え薬を飲ませ、十分に睡眠をとらせて体力を回復させる。

 

 十分に回復したと判断した私は、ベッドに座る彼女の前に立ち通じないと分かった上で話をする。

 

 「今からお前の体を健康体に戻す。どんな影響があるか分からないがこのままではお前は長くは持たない……分かるか?」

 

 彼女は最初の怯えが無くなった。

 

 対応がよかったのか私を信じ切った顔をしている。

 

 数日でこの変わりようはおかしくないか?彼女が助かったら今後が心配だ。

 

 「******************」

 

 彼女は穏やかな顔で何かを話すと、柔らかく微笑んだ。

 

 失敗はしたくない物だな。

 

 私は彼女を眠らせベッドに寝かせる。

 

 さて……治してみようか。

 

 私は魔力と魔素を高めて治療に入った。

 

 

 

 

 

 

 治療は終わった。

 

 これで体は健康体になり、もう病気になる事も無い。

 

 寿命も延びているはずだ、100年程は生きる事が出来るだろう。

 

 実験体になってくれたこの娘へのせめてもの報酬だ、余計な事かもしれないが。

 

 しかし……完全な成功では無いな。

 

 彼女の髪は私のように黒く染まり、肌も少し白さが減って瞳も黒くなっている。

 

 生まれつき病気の彼女の本来の色は分からないが、私の魔力に侵されて変色した可能性がある。

 

 色が白かった時は分からなかったが人懐っこい顔をしているな。

 

 変わった色に納得すればいいが。

 

 私は彼女の睡眠を解除する、しばらく経つと彼女は目を覚ました。

 

 「*、*****?」

 

 彼女は寝ぼけているのか何かをぼんやりと言っている。

 

 私は錬金で作った大きい全身鏡を取り出し彼女の前に置いた。

 

 「**!?……******?」

 

 彼女は鏡を見て逃げ腰になったが、鏡に映る姿が自分だと気が付いたようだ。

 

 「**……**********……」

 

 彼女は鏡を見ながら髪を撫で、泣き始めた。

 

 嫌でもこの色で生きてもらうしかない。いや……変えられるかもしれないな。

 

 自殺しそうだったらやってみようか。彼女は鏡の前で泣き崩れ、やがて泣きつかれて寝てしまった。

 

 私の物になったんだ、勝手に死なれては困る。

 

 実験とはいえ手間をかけて治療した訳だからな。

 

 その結果を生きて確かめて貰わなくては、勿論彼女が幸せならなお良いが。

 

 

 

 

 

 

 生贄の少女が泣きつかれ眠りに落ちてどれだけ経っただろうか。

 

 明るかった外が暗くなった頃、彼女が起きた。

 

 「良く寝ていたな。取り合えず風呂に入って食事にしよう」

 

 風呂に入って食事をとれば生きる希望も湧くかもしれない、手を取り風呂場へ向かう。

 

 「あり……がとざいます」

 

 今、少し変だが「ありがとうございます」と言ったか?

 

 「私の言葉が分かるのか?」

 

 「え……え!?わ、わた……なん……で」

 

 「落ち着け。ゆっくり話してみろ」

 

 「はー、わ、た、し……わかる……な、で」

 

 心当たりは治療位しか無い。

 

 何故かは今は分からないが後で調べよう。

 

 「分かるなら手間が省けた。風呂に入って食事にするぞ、ついてこい」

 

 「は、はい……」

 

 私は風呂場に向かって歩き出した、彼女も困惑しながらついてくる。

 

 体を流し二人で風呂に入る。しばらく沈黙が続くが彼女が意を決したように話しかけてくる。

 

 「あ、あもぉ……あぅ」

 

 「焦るな。しっかり聞いている……慣れるまでゆっくり話せ」

 

 彼女は私の言葉を聞くとゆっくりと話し始めた。

 

 「ききたいこと、あります……あの」

 

 「大丈夫だ、聞きたい事は後でしっかり答えてやる。今はゆっくりしろ、気持ち良いだろう?」

 

 「はい……きもちい、いです」

 

 「そうか。もうしばらく私はここにいるが辛くなったら上がっていいぞ」

 

 「おとも、いたし、ます」

 

 「言葉を話せるようになったとたん硬いなお前は。数日前は食事を詰め込みながら顔を赤くしていたと言うのに」

 

 「う……うう……」

 

 彼女は温泉で火照った頬をさらに赤くして俯いた。

 

 

 

 

 

 

 風呂から上がり食事をした後、リビングで話す事にした。

 

 ちなみに彼女はいつもよりも更に大人しく食事を食べていた。

 

 「さて、落ち着いた所でまず名前をお互い名乗ろうか。私はクレリア・アーティアと言う、クレリアでもアーティアでも好きに呼ぶと良い」

 

 「ンミナと、いいます、クレリアさま」

 

 「様は……まあいい。ではンミナの質問に答えよう、分かる事なら答えてやる」

 

 「……えと、なぜワタシをけんぞくにしてくださったのですか」

 

 「眷属?」

 

 「はい、かみとひとみ、クレリアさまとおなじ、あなたのけんぞく」

 

 「眷属かどうかは知らんが……ンミナ、お前の体を治す時に私は魔法を使った。その影響だと思っている」

 

 「まほう?……からだを、なおす?」

 

 「こういった力の事だ」

 

 私は人差し指を立て水球を作り出した。

 

 「ひゃっ!?」

 

 驚いた彼女が軽く飛び上がる。

 

 「使い方を間違えなければ危険は無い。触ってみろ、冷たいし飲む事も出来る」

 

 「つめたい……」

 

 恐る恐る水球に指先を触れて呟くンミナ。

 

 「魔法は色々と出来る力だ。使い方によっては危険な力でもある」

 

 ンミナは水に釘付けだ。そうか彼女達は魔法を知らないのか。

 

 「お前の体の治療ついて言っておく事がある」

 

 ンミナは我に返って私を見つめる。

 

 「からだどう、なっているのですか?」

 

 「お前の体は私が治した。お前はもう病気にならないし、長く生きる事が出来る」

 

 「からだ、つら、くない?」

 

 彼女は体が楽な事に気が付いたようだ。私の言葉を理解し涙を流した。

 

 「さて続きだ、私はお前を了承も得ず一方的に治した訳だが、言いたい事はあるか?」

 

 ンミナが泣き止んだ所で私は彼女に問いかけた。

 

 勝手に治したのだ、言いたい事があるなら聞いておかなければ。

 

 「ありがとう、ございます……クレリアさまが、おゆるしくださる、なら。おそばに、いたい、です」

 

 私としては関わりを持ち、稀に話し相手になってくれればよかったのだが。

 

 この感じは一緒に住んでずっと傍に居そうだ。

 

 嫌では無い、この娘は嫌な感じがしない。

 

 「たまに私の話し相手になってくれればお前にそれ以上何かを求めるつもりは無い、帰りたければ帰っても良い。体はもう問題無いんだ、普通に暮らせるぞ?」

 

 「おそばに、いたい、です」

 

 「そうか。好きにすると良い」

 

 彼女が住むとなると多少家を改装しないとな、さっさとやってしまおう。

 

 

 

 

 

 

 ンミナが私の家に住み一か月程が経った。

 

 彼女が住む為に部屋を増やしトイレを作り、家の周りに私が許可した物以外入れないように魔法をかけた。

 

 彼女は知らないが彼女自身にも防御魔法と一定以上の危険な攻撃を受けた時、私の元へ移動する魔法をかけた。

 

 死なれては困るからな。

 

 「クレリア様、温泉に入りましょう?お体をお流しいたします」

 

 リビングで備忘録を整理している私にンミナが声をかけてくる。

 

 彼女は何処かおかしかった言葉も問題が無くなり、普通に話せるようになった。

 

 以前の言葉も使えるので私は彼女達の言語も覚えた。

 

 これで村の連中とも話せるだろう。

 

 「分かった、今行く」

 

 「はい、準備をしてお待ちしています」

 

 ンミナと共に暮らした事で、私は今まで気にしていなかった事を気にするようになり始めた。

 

 正確には私に必要無かった事を気にするようになったと言うべきか。

 

 料理やトイレの為の魔法や魔道具、錬金と魔法を組み合わせた衣服の作成、石鹸や洗剤を作るようになった。

 

 初めて出会った彼らが石の槍だった事を考えると私達はかなり高い生活水準のはずだ。

 

 風呂場へ向かうとンミナが待っていた。

 

 彼女はすっかり健康体だ、食事や睡眠もたっぷり取っているため元気が溢れている。

 

 彼女は毎日私の世話をするため魔法の勉強や家事の練習をしている。

 

 家事の方はもう任せられる程に上達したので任せているが、魔法の勉強はかなり苦戦している。

 

 それでも私の補助を受けながら少しづつ上達している。

 

 「クレリア様、こちらへどうぞ」

 

 風呂場の椅子に座るとンミナが石鹸を手で泡立てる。

 

 良い香りのする花や香草の匂い付きだ。

 

 始めは見る物全てに驚くばかりであった彼女も、今ではすっかり慣れたようだ。

 

 一か月と少しで慣れる事が早いのか遅いのかは分からないが。

 

 「今日の夕食は赤ウサギの塩焼きとヒヨリ茸と香草のスープにフル瓜ですよ」

 

 手で私の体を洗いながら夕食の内容を教えてくれる、本当に色々上達した物だ。

 

 「料理が大分上手くなったな、僅かな期間でここまでになるとは思わなかった」

 

 ンミナは慎重に私の体を洗っている。

 

 そこまで繊細に扱わなくても良いと言った事があるが、私にそのような事は出来ないと言うので好きにさせている。

 

 「頑張りました。それに苦痛なく自由に動く体が嬉しくて、なんでもやりたいのです」

 

 石鹸を頭髪用に切り替えて丁寧に洗ってくれる、中々心地いい。

 

 「そうか。お前の好きにすると良い、私も楽が出来るからな」

 

 泡を洗い流された私は先に行く事を伝えて浴槽に向かう。

 

 彼女は嬉しそうに返事を返し、自分を洗い始めた。

 

 一人だった頃も十分楽しいとは思っていたが……。

 

 浴槽につかりながら思う。

 

 意思の疎通が出来る誰かとの生活は良い物だ。そのうちまた一人が恋しくなりそうな気もするが、彼女が死ぬまでは此処に居よう。

 

 「失礼いたします」

 

 「くくっ、その硬さは今後の課題だな」

 

 「そ、それは……いえ、頑張ります!」

 

 「無理に治さなくても良い、それもお前の良さだ」

 

 「あ、ありがとうございます」

 

 私達は他愛ない話をしながらゆっくりと温まった。

 

 

 

 

 

 

 「神の巫女、ンミナ様!私達をお助けください!」

 

 目の前でひれ伏す族長、戸惑いながら私に伺うような顔を見せるンミナ。

 

 また何かあったのだろうか。

 

 彼女と共に暮らすようになって五年、彼女はそれなりの魔法を覚えた。

 

 二年ほど前に村と関わりを持つためにンミナに向かわせた際、彼女が数年前に私に……つまり神に生贄に出されたンミナである事が村人にばれた。

 

 更に私と似た黒髪黒目になっていた事が原因で神の眷属、巫女として崇められ何か有事の際に頼られるようになった。

 

 それ以来村人にとっては遠いであろう私達の家に供物と共に使者が訪れ、稀にこうやって何か頼み込まれる。

 

 初めて会った五人以外に会って居ないはずだが何故か全員に私は恐れられるため、使者と会うのはンミナだ。

 

 私は魔法で見えないようになった上で話を聞いている。

 

 ンミナには私が何処に居るか教えてあるためこちらを見ているようだ。

 

 『聞くだけ聞いてみよう。下らない事なら帰らせろ』

 

 話すとバレるため、開発した念話でンミナに指示を出す。

 

 「神の代理、巫女としてお聞きしましょう」

 

 彼女は指示に従い話を聞く事を了承する。

 

 正直普通に隣人として関わりたかったが、彼らの崇めっぷりが凄まじくどうにもならなかった。

 

 力で無理やり直そうとしてもその力でまた崇められそうだしな。

 

 洗脳は出来るだけしたくない。

 

 そんな事を考えている間にも会話が進んでいる。

 

 まとめてしまうと、強めの魔物が村の近くに住み着いてしまったようだ。

 

 彼らに返事は後日と伝え帰って貰い、ンミナに問う。

 

 「今まで同じような事があったらどうしていたんだ?」

 

 「戦える者全員で犠牲を出しながら殺すか追い払っていました。強力すぎる場合は村を捨てて逃げる事もあったと聞いています」

 

 なるほど村人が減れば村の力が衰える。減りすぎたら全滅だ、村を捨てるのも一つの手なのか。

 

 ならば頼れる者が居れば頼るのも当然か。

 

 「今回は魔物が強力過ぎたから頼んできた訳か」

 

 「恐らくは」

 

 彼女の戦闘訓練に丁度いい、今までと同じように相手になってもらおう。

 

 「ンミナ、やれるか?」

 

 「はい、お任せ下さい」

 

 真剣な顔で答えるンミナ、私達は使者から聞いた目撃場所に飛んだ。

 

 「見つけました」

 

 目撃された付近の森を魔法で索敵していたンミナが声を上げた。

 

 「今更だが炎の魔法は使うなよ」

 

 周囲は森だ、火事になるからな。

 

 「はい」

 

 現場に行くと大きな虎のような魔物が歩いていた、今回はどうするか。

 

 「今回は不意打ちは無しだ、奴の前に出てから殺せ」

 

 常に不意打ち出来る訳ではないからな、一発勝負なら迷わず不意打ちだが。

 

 今回は私が居る。

 

 私が空から見守る中、ンミナが魔物の前にわざと姿を晒す。

 

 そして互いに戦闘態勢になる。

 

 「グゥウウゥ……」

 

 低いうなり声をあげる魔物、様子を見ているようだ。

 

 先手を打ったのはンミナだった。

 

 「ウィンドブレード」

 

 不可視の刃を飛ばすが、魔物は見えているかのようにかわし突っ込んでくる。

 

 「アーススパイク」

 

 魔物の目前に土の錐が突き出す、発動が遅い訳では無いが奴のほうが早い、地面に錐が形成されるのを確認した魔物は方向を変えた。

 

 「くっ、アイスウィンド」

 

 吹雪を手から放出する、魔物の動きが鈍り体に霜が降りて行く、油断しなければいけるな。

 

 「いける、アーススパイクっ!?」

 

 吹雪を止め、アーススパイクを詠唱し発動しようとした瞬間魔物が飛びかかる……さてどうする?

 

 彼女は迷わず前に突っ込み飛びかかりを躱す。

 

 「アーススパイク!」

 

 突きあがった錐が魔物の胸を貫く。

 

 「ウウゥゥゥ」

 

 最初は暴れていたが、徐々に魔物の声が弱っていきやがて動きを止めた。

 

 「上出来だ」

 

 彼女の隣に舞い降りて声をかける

 

 「ありが、とう、ございます」

 

 体も魔力もそこまで消耗していない筈だが、命のやり取りは精神を削るらしいからな。

 

 「大分強くなったな、これなら身を守るには十分だ」

 

 「まだまだ、頑張るつもりです」

 

 さらに強くなろうとする気持ちを持つのは良い事だ、弱いよりは強い方が良い。

 

 「引き際は見誤るなよ。もしもの時は生き残る事だけを考えろ、私に申し訳が立たないなどと考えて無茶をするなよ」

 

 「勿論です」

 

 「村に殺した事を伝えて帰ろうか」

 

 「はい、クレリア様」

 

 

 

 

 

 

 「クレリア様今日の魔物の事でお話があるのですが」

 

 村に報告し家で風呂に入っている時ンミナが私に言う。

 

 「気になる事でもあったのか?」

 

 「はい……あの魔物ですがあの村でどうにか出来ないような相手では無いと感じました」

 

 「そうなのか?」

 

 「犠牲は出るでしょう、ですがわざわざ私達に頼むほどでは無いと思います」

 

 「私達を良いように使っていると?」

 

 「いえ、そこまで言うつもりはありませんが……このままだと少しずつ私達に頼るようになり、いずれなんでも頼みに来るのでは無いかと考えてしまいまして」

 

 「なるほどな。そうなったら見捨てればいい、何もかもやってやる気はない」

 

 「そうですね……その時はそうしようと思います。ただ、私は彼らの気持ちも分かってしまうので……」

 

 「彼らの気持ち?」

 

 「はい。犠牲が出る……誰かが一人でも死んでしまうなら自分がその中に入りたくない……他の何かに頼りたいと言う気持ちが分かってしまうのです。クレリア様に救っていただくまで私は辛く、いつ死ぬか分からない不安が付きまとう生活をしていました」

 

 「なるほどな」

 

 私では共感してやる事が出来ない、辛さも苦しみも死の恐怖や不安も感じた事が無いからな。

 

 私はンミナと居るのが中々に楽しいと感じている。

 

 村の連中にも少なくとも悪意を向けなければ酷い事をするつもりは無いが、悪意を持っていたり利用しようとする者には相応の報いを受けて貰う事になる。

 

 「あの村は生まれつき珍しい色をした、体も弱く村の力にほとんどなれなかった私を捨てずに育ててくれました。最終的には生贄に出されましたが」

 

 「今では神の巫女だが」

 

 「ふふ、そうですね……生贄に選ばれた時どこかで納得しました。誰かを犠牲にすることが避けられないなら被害は少ない方が良い。あの時、私が普通であったならかつての私を選んだでしょうね」

 

 「自分が一番大事なのは普通だろう。私だって友人や知人ならともかく、見知らぬ誰かの為に何かしてやる気はないぞ」

 

 「クレリア様は初めて会った私を救ってくださいましたが?」

 

 「私にも助ける理由があっただけだ。そうで無ければどうしていたかは分からない」

 

 「助ける理由ですか……もしよろしければお聞きしたいです」

 

 理由を知りたいというンミナ、隠す気も無いから構わないか。

 

 「話し相手が欲しいと思っていたからだ。お前の病気に気が付いて実際に治す練習が出来るとも思っていた」

 

 「私の病気を完治させてまで話し相手が欲しかったのですか?」

 

 「私としては時折かかわる程度でも良かったのだが、お前を捧げられたからな。無理強いはする気はなかったが傍におけるのならと思って受け取った」

 

 「ずっとお傍に居ますよ」

 

 彼女は柔らかく微笑んだ、しかし気になる事がある。

 

 「以前も言ったが、私がお前を勝手に練習台にした事に思う所は無いのか?上手く行くかも分からずあの時点で死んだり、更に酷い事になる可能性もあったのだが……」

 

 彼女は微笑みながら軽く首を横に振る。

 

 「何も思うことはありません。貴女は自分勝手に命を玩具にするような方では無いと、僅かな時間を共に過ごしただけで感じました。今なら分かります……あのままでは私はもう長く持たなかった。私の意志を確認しようにも言葉も通じない、だから貴女は私を勝手に治療した……後で恨まれても構わないと思いながら」

 

 瞳を閉じて思いを語る彼女。

 

 確かにあの時は意思を確認する時間は無かったな、意思の疎通が可能になる前に彼女の命が尽きる可能性の方が高かった。

 

 「クレリア様には感謝しかありません。私を健康な体に治し、素晴らしい環境と様々な知識と技術を教えて下さいました。私は一生貴女にお仕えいたします」

 

 私の瞳を見つめ、真摯な表情で語る彼女。娘とはこのような感じだろうか?

 

 「ありがとう、これからも共に暮らそう」

 

 「はい!」

 

 更に仲を深め、私達は他愛ない会話を始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 更に仲を深めてから一年後。

 

 手袋や靴を作り移動や作業の安全性が増した。

 

 正直作るのを忘れていたのだが、ンミナはとても喜んでいた。

 

 村との交流も増した。

 

 ンミナが強くなったため私の同行が必要無くなり、私の世話の合間を縫って、村人を魔物から助けたり怪我を治療しているうちに彼女は村に受け入れられた。

 

 敬われてはいるものの以前のようにひれ伏されるような事は無く、村で声をかけられるようになったようだ。

 

 更に彼女は私の使う言葉を村の人々に教え、その結果元々の言語はほぼ使わなくなり私の言葉が共通語になった。

 

 頻繁に村の役に立ち始めた途端扱いが変わったのは思う所があるらしいが、彼女も喜んでいた。

 

 そんな事ありながらも穏やかに過ごしていたある日。

 

 「求婚された?」

 

 「はい……」

 

 ンミナが結婚を申し込まれたらしい。

 

 彼女は19歳で、この村ではこの年まで結婚していないのは珍しい。

 

 大抵は15歳前後で結婚するようだ。

 

 しかし病気である事、13歳の頃に私に捧げられた事、更に私の巫女になってしまった事、それらが重なりそのような話は今まで無かった。

 

 「相手は誰なんだ?」

 

 「幼馴染です、現在は村の戦士長をしています」

 

 詳しく話を聞くと、彼は昔から腫れ物のように扱われていた彼女に変わらず接してくれていた男性の様だ。

 

 現在は18歳で戦士長という立場もあり、結婚を勧められていたのだが何故か頑なに断り続けていた。

 

 どうして断るのかとンミナが尋ねた所、ンミナがずっと好きだったらしく勢いで村の真ん中で求婚されたらしい。

 

 ンミナが病気で長くない事に苦しみ、生贄に選ばれたときは一番に反対して暴れ、巫女として戻った時は泣いて喜んだ様だ。

 

 「なるほどな。巫女の地位のせいで今まで言えなかったが、ンミナ自身に尋ねられた事で抑えられなくなったのか?」

 

 「私はクレリア様と共に在ります、残念ですが彼の思いには……」

 

 「ンミナ。巫女と言うのは結婚してはいけないのか?」

 

 「ただの巫女ならば問題なかったと思いますが、私は神の……クレリア様の力を受けた眷属ですから扱いがどうなるかは……」

 

 「彼の事が嫌いな訳では無い訳だな?」

 

 「それは……そうですが……昔から彼は私に良くかまってくれましたし、想いを聞いて嬉しく思いますが……」

 

 ンミナも良い感じだな、男の方もずっと想い続け操を立てているのは好印象だ。

 

 そして戦士長か、正直ンミナのほうが遥かに強いと思うが彼女より強い者など村に居ないしな。

 

 「神として命ずる。神の使徒である巫女はお互いに想い合っている男女に限り結婚し家庭を持つ事を認める」

 

 「ええっ!?」

 

 大声を上げて驚くンミナ、何をそんなに驚いている。

 

 「よろしいのですか?」

 

 「ん?嫌なのか?」

 

 「私はクレリア様のお傍で一生お世話を……」

 

 「結婚しても此処に住み時々家庭に行けば良いだろう。神の使徒と結婚しようと言うんだ、嫌でも納得して貰う」

 

 結婚は許すが私の世話から外す気はない。

 

 納得できないなら諦めて貰う、ンミナにも男にも。

 

 「てっきりもう私は必要無いのかと……」

 

 ンミナは心から安心した顔で呟く。

 

 「お前が嫌だと言わない限りそんな事はしない」

 

 そう言うと彼女は微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 それからはスムーズに事が進んだ。

 

 男を呼び出し決定した事を伝えた、彼は穏やかそうな中に逞しさを感じる男だった。

 

 答えが出るまで待つと伝えたが彼は即座に了承した。

 

 彼はンミナが神の眷属になった時点で独身を覚悟していたようで、彼女に理由を聞かれた時、想いだけでも伝えたかったと話した。

 

 こうして二人は結婚し夫婦となった。途中神の眷属と結婚するなど許されないと言う騒動が起きたが、私が収めた。

 

 こうしてンミナは時折村に戻り夫婦として生活している。

 

 

 

 

 

 

 そろそろ生まれそうだな……。

 

 妊娠したンミナが寝ている村の寝室に、私は姿を隠して待機していた。

 

 あれから一年半が過ぎ、二十歳になった彼女は妊娠した。

 

 後継の生産はこの村の夫婦の義務のような物だが、神の巫女であるンミナの妊娠は村にとって大きな出来事だった。

 

 私は万が一の事が無いように妊娠が発覚してから彼女に何があってもいいように魂のような物にも干渉出来る力を身に付けた。

 

 妊娠期間内に完成するとは私自身も思っていなかったが。

 

 彼女の子供にはもう魂が定着している、これならもう安心だろう。私の家で楽に産む事を勧めたが、生む辛さも母親としての試練だと断られた。

 

 私には全く理解出来ないが、彼女が必要だと言うのなら強要はやめておこう。

 

 まあ念のためこうして姿を隠し待機しているのだが。

 

 本気で隠れていないから彼女も何となく気が付いているかもしれないな。

 

 ……もう生まれるようだ、何もなければいいが。

 

 

 

 

 

 

 彼女の子は無事に生まれた。事前に私は知っていたが女の子だ。

 

 しかし出産とは凄いな、あんなに叫ぶンミナを初めて見た。

 

 死ぬのではないかと心配したが彼女の状態は問題無かった。

 

 今は赤子を抱き安静にしている。

 

 問題は無さそうだ。そう考え姿を消したまま部屋を出ようとすると、背後から声が聞こえる。

 

 「ありがとうございます……クレリア様」

 

 やはり気が付いていたようだ。

 

 「私は何もしていない」

 

 姿を消したまま静かに答えて、部屋を後にした。

 

 その後、流石に子供がいるのに私の家に居させる事は出来ないと考えた。

 

 父親を始め村人は神として崇める私の家に滅多に近寄らない。

  

 流石に子供から父親を奪う気は無い。

 

 暫くは村で親子三人で暮らすように伝えた。とはいえンミナは私の世話のため頻繁に来るそうだが。

 

 そして時々赤子の世話を手伝ったり、夫が居る事を知っていながらンミナに手を出そうとした男が私に処刑されたりした。

 

 

 

 

 

 

 子供が生まれてから三年程経った頃、報告がンミナに届いた。

 

 「複数の魔物に襲われた!?」

 

 ンミナが声を上げた。

 

 どうやら狩りの途中二匹の魔物に襲われ、ンミナの夫が皆を逃がすため残ったらしい。

 

 すぐに現場に向かったのだが……。

 

 「あなた……」

 

 ンミナが呆然と声を上げる、彼女の夫である戦士長は二匹の魔物と刺し違えて死んでいた。

 

 「なぜこいつは逃げなかった?村に逃げればンミナか私がいたとというのに」

 

 「夫はいつも自分の力不足を嘆いていました。妻である私を危険に晒したくないと……」

 

 彼を抱きしめ涙を流しながら言うンミナ。

 

 「愚か者め。大事な者がいるのなら生きるべきだろう」

 

 「夫は村を守る戦士の長です、家族と村を守る者なのです……」

 

 彼女はそう言うが全く理解出来ない。どうにもならないのならまだ分かる、だが今回は死ぬ前に引いていればどうにかなったはずだ。

 

 彼が死ぬ必要は無かったと思う、村に撤退すれば問題無く倒せる私達がいたのだから。

 

 「皆で一斉に逃げてしまうと犠牲が増えます。足止めをする事で犠牲を減らそうと考えたのだと思います……」

 

 彼女が答える、皆を確実に生かすために残ったのか。

 

 「連れて帰ろう。お前達の好きなように弔うと良い」

 

 

 

 

 

 

 その後、惜別の儀式を行ない彼の遺体を埋葬した。それからンミナと娘のアミラは私の家に住む事になり、村では新たな戦士長が任命された。

 

 「ンミナ」

 

 「はい」

 

 私の家のリビングで言葉を交わす、娘は部屋で眠っている。

 

 「私には奴の考えも大切な者を失うお前の気持ちも分からない。私はお前に何をしてやればいいと思う?」

 

 「抱きしめさせてください」

 

 彼女はもう大人だ、私とは大人と子供の体格差がある。

 

 私を後ろから包むように抱きしめるンミナ。

 

 「暫くこのままで……」

 

 静かなリビングに、静かに泣く彼女の声だけが響いていた。

 

 

 

 

 

 

 彼女は泣き疲れて眠ってしまった。私は寝室に彼女を運び、娘と寝かせておいた。

 

 ンミナが泣き疲れて眠るのはあの時以来だな。

 

 以前彼女を癒した時以来だと思う。

 

 彼女は私と暮らしている事が幸せなようだった。幸せそうな顔は見ていて悪くない気分だ。

 

 今日の彼女は見た目はあまり変わらなかったが深く悲しんでいた。

 

 魂を始め、色々と感じる事が出来る私には分かってしまう。

 

 ンミナにかけている防御魔法と緊急避難魔法を奴にかけていればこうはならなかっただろう。

 

 だがンミナの夫であってもそこまでする気にならなかった。

 

 ンミナは私を優しいというが、誰にでも味方する訳では無いし理不尽な事もする。

 

 私は気に入ったモノ以外には何も感じない人外だ。

 

 勿論自分に好意を向ける相手は私も無下にする気にならない。

 

 半面、悪意を持つ相手や私の大事な物に手を出す輩には何も思う事は無く、すぐに処分するだろう。

 

 実際以前ンミナに手を出してきた男はンミナ本人も夫も散々諦めるように話したがいつまでもまとわりついた。

 

 最後警告も無視した為、最終的に私が処刑した。

 

 私の事は恐れていたようだが……ならばなぜあの男はあそこまでしたのか、殺されないとでも思っていたのか?

 

 ンミナはの夫といいあの男といい、行動が分からない。

 

 考えがそれてしまった。彼女の夫は私の事を恐れ敬っていたが、好意を持っていた訳では無かった。

 

 それが原因かもしれない。

 

 そう言えば今も名前さえ知らないな。

 

 まあンミナの夫としては十分な男だったと思う、強さも心も。

 

 

 

 

 

 

 外が明るくなり始めた頃ンミナの娘のアミラが起きて来た。

 

 ンミナが泣き疲れて寝たのは深夜だったのでまだ起きてはこないだろう。

 

 母親と同じ黒髪黒目で、村では神の血を継いだ娘と言われている。

 

 もちろんそんな事は無い。ンミナは私の実の娘ではないし私に子が出来るとも思えない。

 

 血は継いで無いが力は継いでいるかもな。

 

 「くれりあおねーちゃ」

 

 私もそれなりにこの子に会っている。二番目に呼ばれ、顔を合わせたのが私だった。

 

 父親である奴は結構ショックだったようだな。私に好意を持っていなかった原因だったりするのだろうか。

 

 「おいでアミラ」

 

 マジックボックスから果実水を出しながら呼ぶ、彼女はトテトテと私に近寄り膝の上に乗った。

 

 果実水を与え、落ちないようにお腹に手を回して支えてやる。

 

 「慌てないでゆっくり飲め」

 

 私が作る飲み物はンミナとアミラに好評だ。美味しい上に栄養も多い。

 

 「アミラ?」

 

 果実水を飲んだアミラは体を私の方に向け、抱きついて眠ってしまった。

 

 なぜこんなに懐かれているのかが分からない。

 

 「また寝るのか……子供は良く寝るな」

 

 アミラの頭を優しく撫でながら呟く。私は部屋でのんびりと夜が明けるのを待った。

 

 完全に外が明るくなった頃、ンミナが起きて来た。

 

 「アミラ、どこ?」

 

 娘が居ない事に気が付いたンミナが探しているようだ。

 

 「ンミナ、私の所だ」

 

 ほっとした顔の彼女がリビングに現れた。

 

 「明け方に起きて来てな。果実水を与えたが飲み終わったらまた寝てしまった」

 

 「お任せしてしまい申し訳ありません。お世話をするべきなのに寝坊してしまって」

 

 「気にするな。それに昨日の今日だからな……アミラもすぐに父親がいない事に気付くだろう」

 

 「夫の分も愛します」

 

 「お前なら心配はいらないか。私は母親を知らないが良い母親をやっていると思う」

 

  そう言いながらアミラをンミナにそっと渡す。

 

 「色々と落ち着くまでは私の事は気にしなくていい。娘と自分の心を整理しろ」

 

 「はい……お言葉に甘えさせていただきます」

 

 それを聞いた私はンミナにも果実水を渡し、風呂に向かった。

 

 

 

 

 

 

 ンミナの夫の死から一年が経ち、彼女も完全に落ち着きを取り戻して日常に戻った。

 

 娘のアミラは父はもういないと分かったらしく、話題に挙げる事は少なくなった。

 

 家の外で二人と共に食事をしている時、私は気になった事をンミナに聞いた。

 

 「ンミナ。アミラはこの村でどんな扱いになる?」

 

 名前を出されたアミラが私を見る。まだどういう事か分からないだろうが、出来れば幸せになって欲しいものだな。

 

 「そうですね、恐らく次代の巫女になると思います」

 

 「本人の意思に関係無くか?」

 

 「はい、神の力を継いでいる黒髪黒目の女子です。間違いなく巫女以外の道は選べないでしょう」

 

 「もし成長したこの娘が違う道を選んだらどうなるんだ?」

 

 「幼いうちに巫女としての訓練と教育を始めます」

 

 「物心つく頃には巫女としての行動が日常になっている訳か」

 

 私の楽しみのためにも好きな事をやって欲しいが、巫女として村にいた方が色々と良い事は間違いないか……村にも望まれているようだしな。

 

 「娘の訓練の事でクレリア様にお願いがあるのですが……」

 

 「珍しいな、どうした?」

 

 「クレリア様から教えていただいた魔法などの技術と知識を、娘に伝える事を許可して頂きたいのです」

 

 「構わないぞ。そうだな……はっきりと決めておくか」

 

 アミラに教えるのは構わないが他の者に教えるつもりは無い、使い方次第では危険だという理由だな。

 

 幼いころから危険性などをしっかり教えて扱えるようにしよう。

 

 何が問題かと言うと、危険を危険と知らずに使う、危険であると知っていても使う事を抑えられない……といった無知、心の問題だ。

 

 心を抑えられない、という点に関しては私も誰かの事を言えないが……やりたい事はやるからな。

 

 それはともかく。誰もが深く考える事無く魔法を使えばいずれ人類が滅ぶかもしれない。

 

 「決めた。私がンミナに教えた技術と知識は代々巫女の候補者のみに伝える事を許し、巫女にならなかった者もその技術と知識を他者に教えてはならない。と言う事にしよう」

 

 「教える者を限定するのですね」

 

 「巫女になるならば力はあったほうが良い、だから教えないという選択は無い。しかし広める事はしない」

 

 そこで私はもう一つ付け加える。

 

 「この力が特別では無くなった時、この決定は効果を失う事とする」

 

 私はいずれ、魔法、錬金、魔道具は世界に広がると考えている。

 

 人が増え繁栄した時。私は技術と知識を教え、きっかけを作る気でいる。

 

 そうなれば技術や知識は世界中に流れるだろう。更に言えば私が他者に伝えてはいけないと決めたとしても、きっと破る者が現れる。

 

 私が教えなくとも、いつか人はきっとたどり着くという気もしている。

 

 「分かりました。代々その決定を守るように伝えましょう」

 

 「厳しくしすぎるなよ、子供は遊ぶ事も大切だ」

 

 訓練は大事だが訓練だけの幼少期は良くない……と思う。

 

 「はい、私もこの子を不幸にはしたくありませんから」

 

 ンミナなら上手くやるだろう、何かあれば私が手を貸せばいい。

 

 

 

 

 

 

 ンミナ母娘と暮らしていたある日、私はンミナに問いかけた。

 

 「ンミナ、突然だがこの世界に他の種族は居るのか」

 

 昼食後の日光浴をしながら聞く。

 

 「他の種族ですか?」

 

 膝の上で遊ぶアミラの頭を撫でながら返事をするンミナ。

 

 「そうだ。お前達と少し姿が違ったり、大きく違っても意思の疎通の出来るような者は居るか?」

 

 「そうですね、商人が言うには複数居るようですよ?」

 

 「ほう、どんな者が居るか教えてくれるか?」

 

 私の膝にのってくるアミラ、私は支えながら話を続ける。

 

 「はい、森人、大地人、獣人、ですね」

 

 「お前は会った事はあるのか?」

 

 「いえ、実際に会った事はありませんが、それぞれの種族には本拠と言うべき土地があるそうです。そこから出て来た者が様々な町で混じって暮らしていると聞きました」

 

 「町があるのか」

 

 知らなかったな。

 

 「はい、この村は辺境と言いますか……かなり閉鎖的でした。クレリア様が現れたこの十年程の間でようやく他の村や町と交易をするようになりました」

 

 「いずれ他の種族にも会いに行くか」

 

 「町には興味は無いのですか?」

 

 「今はな、いずれ暮らしてみるのも良いだろうが」

 

 ンミナの膝に戻っていくアミラ、元気だな。

 

 「村の者が何と言おうと私はクレリア様について行きますよ」

 

 「お前が生きている間は此処にいる」

 

 ンミナがこの村から離れようとすれば必ず村の者は反対するだろう。

 

 彼女が行きたいと言うなら何をしても連れて行くが、私が何処かに行かない限り彼女はこの村で過ごすだろう。

 

 ンミナを見ると悩んでいるような顔をしている、何か迷っているようにも見えるな。

 

 「ンミナ」

 

 「はい、クレリア様」

 

 「聞きたい事があるなら聞くと良い、私はお前に嘘は言わない」

 

 彼女は暫く考えていたようだが、心を決めたのか口を開いた。

 

 「クレリア様は何者なのですか?村の者が言うように神なのですか?様々な事を知り月日を経ても貴女様の姿は変わりません。昔から気になっていたのですが……聞く事が出来ませんでした」

 

 まあこれだけの事をして人である訳が無いな。

 

 気になっていたのなら聞けばいいと思う。しかし何者か……その答えは残念ながら……。

 

 「分からない」

 

 「えっ?」

 

 驚く彼女、まあ嘘は言わないと言った直後にこれでは分からなくも無い。

 

 「落ち着け、嘘は言わないと言っただろう。ただ少なくとも神では無いと思う」

 

 戸惑う彼女に私は今までの事を話した。

 

 突然気が付いた事、様々な知識を知っていた事、世界を巡り力を付けた事、一万年の眠りにつき目覚めた後にンミナに出会った事。

 

 「と、まあこんな所だ」

 

 彼女は必死に私が言った事を整理しているようだった、暫く待っているとようやく口を開いた。

 

 「何と言えばいいのか言葉が出ないのですが。その……クレリア様は遥か昔から存在していたのですか?」

 

 信じていない訳では無いだろうが、人の身では信じるのは難しいか。

 

 「そうだ。私は眠る前に世界を巡ったが、その頃は人はおろか生物も今ほどは居なかった。意思の疎通が出来る存在を欲した私はいつか現れる事に賭け眠りについた。そして賭けに勝ち、私は今ここにいる」

 

 「それは神と言えるのではないでしょうか……」

 

 「違うな、私は全知全能では無いし自分勝手で我が儘だ。人が思うような神では無い、私は私という一つの存在でしかない。だから私は生きたいように生き、やりたい事をやりたい様にやるんだ」

 

 私は好きに過ごす、いつか私が消えるまで。

 

 「神と崇めるのも良いだろう。崇めたいのなら止めはしない……ただ崇める者達が望む事をするかは分からんが」

 

 彼女は真剣な表情で私の話を聞いていたが、突然私に声をかけた。

 

 「クレリア様」

 

 「なんだ?」

 

 「今は生きたいように生きておられますか?」

 

 その質問に、私は僅かに微笑みながら答えた。

 

 「ああ。私はやりたいように、お前達と生きたくて生きている」

 

 私の答えを聞いた彼女はいつもの柔らかい微笑みを見せて呟いた。

 

 「良かった」

 

 アミラの寝息を聞きながら、穏やかに午後を過ごすのだった。

 

 

 

 

 

 

 「クレリア様!お祖母ちゃんが!」

 

 あれから五十年が過ぎ、ンミナも七十歳を超えたある日。

 

 アミラの娘ミーナが飛び込んできた。

 

 「そうか、すぐ行く」

 

 彼女の命は尽きようとしている、魂の輝きは僅かしか感じない。

 

 彼女の寝室に行くと彼女の親族が集まっていた。

 

 私が姿を現すと彼女への道を開けた。

 

 「……クレリア様」

 

 年老いた彼女は手を伸ばした、私はその手を取る。

 

 「そろそろか?」

 

 「……はい」

 

 もう限界だろう、私の一存で苦痛は無くした。

 

 私の力で永遠に生きる事も出来たが彼女はそれを断った。

 

 彼女は人として私の傍に居たいと言った。

 

 理解は出来なかったが、彼女が決めた事だ。

 

 「クレリア様に言いたい事が……あるのです」

 

 「なんだ?」

 

 「失礼だと思います……ですがもう伝えられなくなる前にどうしても」

 

 私は黙って彼女の言葉を聞く、彼女の瞳は閉じつつある。

 

 「貴女は私にとって命を救ってくれた恩人であり、姉であり、妹であり……娘でもありました」

 

 そうか、お前は私を家族だと思ってくれていたのだな。

 

 「お前は私にとって初めて心を許した人間であり、姉であり、妹であり……母親だったよ」

 

 閉じた瞳から涙を流すンミナ、彼女は弱々しく、しかしいつもの微笑みを浮かべる。

 

 「もし生まれ変わる、……事が、あるのなら……また、貴女の、お傍……に」

 

 「ああ、また会おう……ンミナ」

 

 私と家族に見守られ、彼女は微笑みながら静かに息を引き取った。

 

 

 

 

 

 

 「此処に居たのね、クレリア姉さま」

 

 ンミナの惜別の儀式と埋葬が終わり、昔と比べ広くなった家のリビングに座っているとアミラがやってきた。

 

 立派な大人になった彼女は寂しそうな表情を浮かべる。

 

 「アミラか……この家ともお別れだからな」

 

 ンミナが死んだら私はこの村を去る事は事前に伝えてある。

 

 だいぶ引き留められたが最終的には皆納得してくれた。

 

 「姉さま」

 

 アミラが抱きついてくる、そっと抱き返してやる。

 

 「行くのね」

 

 「ああ」

 

 六十年以上をこの家で過ごした。楽しかったと言える時間だった、そしてこれから私は新たな種族に会いに行く。

 

 体を離し外へ出るとミーナを始め親族の娘達が集まっていた。

 

 男は居ない……そう言えばンミナの一族は娘しか生まれなかったな。

 

 理由は分からないが調べる気にはならなかった。

 

 次々に彼女達が抱き着きに来て別れを惜しむ。全員と言葉を交わし、やがて旅立つ時がやってきた。

 

 「娘達、楽しく生きろよ」

 

 そう告げて空へと浮かぶ。手を振る娘達に手を振り返し、私は村を後にした。

 

 

 



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007

 現在の人類の文明レベルは決めてないです、○○があるのに××は無いのか?といった疑問はそういう世界だと割り切って頂けると幸いです。

 この作品の注意事項

・作者の自己満足

・素人の作品

・主人公最強

・ご都合主義

・辻褄が合わないかもしれない設定

・注意事項が増える可能性

 等が含まれます。

 以上をご理解したうえでお読みください。

 読者の皆さんの暇潰しの一助になれば幸いです。


 村を出て数日、向かっているのは大森林だ、移動中の商人に森人の本拠地を聞いたところ睡眠薬入りの飲み物をくれた上に、快く教えてくれた、顔が硬かったが。

 

 私の感知でこの商人が不穏な事は分かっていた、残念だったな、教えてくれた礼に見逃してやろう。

 

 今の私は村を出てから会話が出来るように翻訳魔法を常時使っているので言葉が通じないという事は無かった、これなら言葉が通じずに戦闘になる事は無いだろう。

 

 ンミナが私の言葉を理解したのはこの翻訳魔法のような効果が出たのだと思う、初めての治療だったからな。

 

 巨大な木……あそこか。

 

 遠くからでもわかる目印だなあれは、木までたどり着くと根元に降り立ち巨大な木を見上げた。

 

 果実が生っているな。

 

 木の大きさに見合った大きさの果実が実っている、食べてみようかと思いながら眺めていると、後ろから声が聞こえた。

 

 「貴様!何者だ!どうやってここに入った!」

 

 振り返ると長身の男が一人立っている、周囲にも五人隠れているな。

 

 「私は旅人だ、ここへは魔法を使って空を飛び入った」

 

 魔法と言っても分からないだろうが、正直に答える。

 

 「魔法?なんだそれは!?」

 

 やはり知らないか、それならば私のやる事は理解できないだろう。

 

 「得体のしれないやつだ、拘束し危険ならば処刑する!」

 

 余計な思考にそれていると男が構えていた。

 

 「相手に殺すと伝えないほうが良いな、恐らくかなりの確率で抵抗すると思うぞ」

 

 「やれ!」

 

 私に向かって周囲から矢が飛んでくる、当たっても問題ないが数本の矢を手で掴み取りながら残りを躱した。

 

 「また襲われるのか……」

 

 初めてンミナの村の住人と出会った時を思い出す、今回は翻訳魔法も使ったというのに結果は変わらなかったな。

 

 「何だ!?くっ、火を使え!」

 

 「ファイア!」

 

 複数の声が重なり今度は周囲から五つの火の玉……玉ではあるがとてつもなく小さい炎が飛んでくる、正気かこいつらは、森のど真ん中……更に言動からすると大事にしているだろう巨木の傍で。

 

 「森で火の魔法を使うな!馬鹿者が!」

 

 自分を中心に水の球を打ち出し、すべてのファイアを相殺する、今まで何も問題は無かったのだろうか。

 

 それにこれは魔法だ、拙いが魔力が流れているし間違いないだろう。

 

 誰かが使えるようなる事は分かっていたが、名前は付いていないようだ。

 

 「くそっ!増援を……!」

 

 「止めなさい」

 

 焦り増援を呼ぼうとする男の後ろから声がする。緑色の髪を肩辺りまで伸ばした真面目そうな青年が立っていた。

 

 「長!しかしこいつを野放しにする訳には!」

 

 「彼女は会話を選択した、攻撃したのはワシ達で更に周囲に被害を出さず防御に徹し、こうして話している今もワシらは攻撃されておらぬ、もう一度言う……攻撃を止め里に戻りなさい」

 

 「……奴と二人だけにはできません私は残ります」

 

 男が手を軽く振ると、周囲の気配が離れて行った、里とやらに帰ったのかな。

 

 「里の者が失礼をいたしました、どのような用向きでいらしたのですかな?」

 

 攻撃を支持していた男が後ろに下がり、長と呼ばれた男が話しかけてくる。警戒はしているようだ、当たり前だな。

 

 「突然入り込んで悪かった、攻撃を受けた事は気にしていない、大事な場所にいつの間にか侵入者が居たら当然だろう」

 

 そう言うとわずかに警戒が緩んだ、話が通じる相手だと思ってくれたかな?

 

 「私はクレリア・アーティアと言う、クレリアでもアーティアでも好きに呼んでくれ、ここにやってきた目的だが、ここに住むという森人に会いに来た、可能ならばここに暫く住み交流をしたいのだが」

 

 後ろに待機している男が僅かに反応したが、割り込むのは問題だと思ったのか、沈黙を保っている

 

 「それは、難しいですな……ワシらは他種族と交流をしないという訳ではありませんが、里に他種族の者を長期間住ませた事はありません」

 

 いきなり言っても難しいか、何か彼らの得になるような事を条件に出してみるかな。

 

 「話は変わるが、先程私が受けた魔法、なぜ森の中なのに火の魔法を使うんだ?」 

 

 いきなり話題を変えられて少し戸惑う長だがすぐに話し始めた。

 

 「魔法?それは火を放つ私達の技の事ですかな?私たちはこれで火をおこし料理をし敵を撃退してきました、確かに森を燃やしてしまう事はありますが、ある程度燃えると自然と鎮火するのです」

 

 火魔法しか知らない……?しかし森に居るのになぜ火魔法が使えるようになった、他の魔法の方が身近に感じるが。

 

 「話したくなければ話さなくても構わないが、過去に何か火に多く関わるような事は無かったか?里に昔から伝わっている話などは?」

 

 「火に関わる事……心当たりはありますが」

 

 「魔法を……火を使えるものがそのあとに出始めなかったか?特にその火に関わった者達に」

 

 そう言うと長は目を見開く、これは何かあるな。

 

 「過去に森に大火事が発生したことがあります。それまでワシらは火打石などを使って火を起こしていたのですが、それが燃え

広がり当時の里はかなりの数の犠牲者を出し、生き残った者たちが火を使えるようになったと記されています」

 

 「火にまかれ無意識に生き残りたいという気持ちが火を操る方向に働いた?」

 

 私の言葉を聞き驚きの表情を浮かべる二人、火の不始末が原因で習得したとは思わないよな。

 

 あくまで予想でしかない、真実は謎のままだな。 

 

 「思わず話し込んでしまったが、結論から言うとその技術は魔法と言う、更に魔法は火だけではない、先程使った水も魔法だぞ」

 

 そう言いながら目の前に拳大の水を作り出す、見せるならこれが一番安全だと思う。

 

 「おお、これが水の、魔法……?」

 

 思わず近づく長だが、男が止める。そして代わりに近づいてくる。

 

 「クレリア……殿、これは安全なのか?」

 

 男が水の前で立ち止まり聞いてくる。

 

 「ああ安全だ、程よく冷やしているし、飲むこともできるぞ」

 

 そう言って私は水をすくい飲む、それを見た男は意を決したように同じようにして水を飲んだ、結構度胸があるなこの男。

 

 「美味い……」

 

 思わず呟く男の後ろから長がやってきて水を飲む。

 

 「……確かにこれは美味い」

 

 「言っておくが技術が無ければこの様にはならないぞ、濁ったり不味かったり酷いと有害だ」

 

 出していた水を消し、説明する。

 

 長は何か考えていたが二人の中から警戒と不審がほとんど消えている事は分かった、やがて長が口を開く。

 

 「クレリア殿、この魔法と言う物を教えて頂きたい、もし引き受けていただけるのなら先程のお話お受けいたします」

 

 私は、僅かに微笑んで話を進めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 住む家も決まった、後は授業の事を決めないとな。

 

 結果的に私は受け入れられた、あの後森人が集められ私を魔法の教師として紹介した。

 

 反対の声もあったが私が作り出した水を長とあの男……守備隊長だったのだが、その二人が飲んで見せ、皆に飲ませる事で決定した。

 

 私の家は里の外れの小さな家だった必要な物はすべてあるし何の問題もないな。

 

 ボロボロだった家具や建物は魔法で修復した、後に私の家に呼びに来た里人が綺麗になった家と内装に驚き、魔法だと知ると話が里中に広がり、暫く名所のように人が訪れるようになった。

 

 私は不信感をなくせるならと放置する事にした。

 

 何時、どの程度教えるかは事前に人数を決めて決まった順番で教える事になったのだが……。

 

 「里の者すべてが教えて貰いたいと?」

 

 「はい」

 

 里の全員が魔法の授業を望んでいた、里の運営は大丈夫なのか?

 

 「里の方は平気なんだろうな?」

 

 「クレリア殿の魔法を見て皆が習得したいと思ってるのです、ワシもその一人ですからな……しかし里の運営が疎かになるのは困りますな……」

 

 長の家の広間で一度の授業で受ける人数を聞きに来たのだが、結果はこうなったわけだ。

 

 私が意図しなかったとはいえ、魔法の万能性を見せてしまったのも原因だな。

 

 「全員に教えるのは構わないがやる事はやるように徹底する、するべき事をしない者には教える事は無い、これは里の事だけではない、魔法を使う為の知識や心構えを疎かにする者には教えない、その事を一度説明する」

 

 「うーむ……確かに知識や心構えは大事ですな、ワシ等も何度となく森を燃やしていますからな……一度説明して納得してもらうしかないですな、どちらにしろこのままでは駄目だという事は皆分かっておるでしょう」

 

 大人気のようで何よりだが、里の事を後回しにするのは駄目だろう。

 

 その後説明をして、全員がまんべんなく授業を受けられるように調整をし、この問題は解決した。

 

 

 

 

 

 

 森人達に魔法の授業をして一月ほどが経った、森人達は魔法の資質がかなり高かった理解してしまえば上達は皆早かった。

 

 魔法を使う者の知識と心構えをしっかり教え込んでから魔法の実践をしているが今の所、誰一人教えられないような者は居なかった。

 

 教えを受けた後の魔法の威力で考え無しに使ったら、危険極まりないからな……変な奴には教えたくない。

 

 それはともかく今私は里にある巨木、里に来た時最初に見た目印になる大きさの木の下に居る、この木は里の皆から神木扱いされているので無理かと思ったのだが、長に頼んでみると果実は食料として大切に扱われていて採っては駄目と言う訳でも無いらしく、一つだけならと取る許可をもらった、どんな味か楽しみだ。

 

 浮かび上がり果実の高さまで移動する、大きい果実が生っているそれをもぎ取り眺める……。

 

 「なんか見覚えがあるな」

 

 似た果実を見た気がする、私はマジックボックスを確認してみる……あった、昔枯れかけていた木から採った果実だ、大きさは違うがよく似ている。

 

 私の中である考えが浮かぶ、かつてあの木は私の回復魔法を受けて大きく太くなったが……あのまま成長を続けたら、これ位になっていてもおかしくは無いんじゃないか?

 

 考えすぎか。

 

 たとえそうであっても特に何かある訳ではないしな……ただ、もしそうであったなら。

 

 「間違っていたらすまないが……、元気なようで何よりだ」

 

 木の幹に手を当てて呟く……気のせいかもしれないがこの木が喜んでいるような気がした、もぎ取った果実は実に美味しかった。

 

 

 

 

 

 

 神木の果実を味わってから半年ほどたったある日、授業が無い日であった私は里の近場の森でのんびりとくつろいでいた。

 

 「話したい事があるのなら出てきて話してみろ、聞くだけ聞いてやるぞ?」

 

 私がそう言うと離れた所にある木の陰から一人の青年が姿を現した。

 

 「確か、ケイン・イヌスだったか?」

 

 現れた青年はケイン・イヌスだった、彼は教え子の中で一番若いが魔法の知識、危険性に対する知識の必要性や心構えの問題などに高い理解を示し既に里の中でもトップに近い、魔法への適性が高い森人の中でも頭一つ抜き出ている男だ。

 

 「申し訳ありません師よ、どうしてもご相談したい事があったのです」

 

 「師と呼ぶのは……まあいい相談とはなんだ?」

 

 彼は私を師と呼ぶ、出来れば先生と呼んで欲しいのだが変える事は無かった、ンミナといい彼といい強情な奴に好かれるのかな私は。

 

 「はい、師よ私には夢があるのです魔法学校を町に作り世界に魔法の基礎を広めたいのです」

 

 「お前は魔法の危険性をよく理解しているはずだが、そのあたりはどう考えている?」

 

 「……師の教えを受ける前に拙いとはいえ私たちは魔法を使っていました、このまま時が経てばやがて何もしなくとも魔法技術は世界に広がるでしょう」

 

 「そうだな、私もそう考えている」

 

 「やがて広まるのなら、何の準備もなく待つよりもこちらから正しい知識と技術、心構えを教える環境を作りたいのです」

 

 なるほど、先に環境を整えて魔法の才能を開花した者たちを受け入れ必要な事を教える、と。

 

 「悪くないかもな、だがどうやって実現する?お前一人が力を尽くしても町にそれだけの施設と人員をどうやってそろえる?」

 

 「町で少数に魔法を教え魔法の良さを教えます、地道ですが始めが肝心です、そして数を増やし小さな学校を始めるのです、他のものであったならこの方法は確実では無いと思いますが、魔法ならば知ってしまえば確実に誰もが欲するでしょう」

 

 「悪くは無い、穴だらけだったとしてもやりたいようにやるのが一番だ……しかし」

 

 これは伝えておかなければいけない私はそんなことはしたくないからな、いや教師の一人として目立たないように出来ればそのうちやるのも良いかな?

 

 「私が手伝うのはお前に教える事だけだ、後はお前が教え育てろ」

 

 「はい、もちろんです、師よ」

 

 「あと一つ、私の事は誰にも言うな」

 

 ケインは驚いた顔をする、有名にでもなったら動きにくくて仕方ない。

 

 「なぜです、師よ、貴女こそが魔法の祖だというのに……」

 

 最初からあった知識であって私が編み出したものではないのだが、彼にそこまで話す気にはならなかった。

 

 「私はそのような者ではない、名声も地位も興味は無い、名や顔が売れ動きにくくなるだけだ」

 

 「しかし……」

 

 なおも食い下がるケインにはっきりと宣言する

 

 「私の名を口外しない事、これを守れないのならお前には今後一切教える事は無い……なに、今の段階でも夢は叶えられるだろう、好きにすると良い」

 

 「っく、師よ私はまだ……分かりました貴女がそこまで言うのなら」

 

 彼は諦めたように息を吐くと私の名を出さないことを了承した。

 

 「お前の気持ちは嬉しく思う、だが私には必要ないんだ、少なくとも今はな……しっかりと教えてやる、後はお前次第だぞ」

 

 「はい、これからもよろしくお願いします」

 

 彼は跪き首を垂れる、彼の夢は叶うのか夢のまま終わるのか。

 

 

 

 

 

 

 ケインの夢のために魔法をより深く教える事を決めて、しばらく経った。

 

 彼は私が休みの日にも訪れ個人的に教えている、私の家で教えているとき、ふと気になり彼に質問を飛ばす。

 

 「ケイン、魔法学校を作ることに対して長や、里の人間、お前の家族はどう思っているんだ?」

 

 ケインは私の教えた魔法の教えを書いている本から顔を上げ、私に向き直る。

 

 「全員師の教えを受けてある程度理解しているので、以前師に話した内容と同じことを伝えた所おおむね賛成してくれました、反対する者も居ましたが魔法の祖である師が許可したことを伝えると納得しました」

 

 「お前そのために私に最初に話したな?」

 

 「はい、皆貴女から教えを受けたのです、この技術は元々師の物です、貴女が良いと言えば他の者は反対できないと思っていました」

 

 あれほど魔法を我先に教わろうとしていた里人がケインの事を野放しにしているのはおかしいと思ったがそれが原因か。

 

 「そこまでしているなら夢は叶えなければな」

 

 「必ず」

 

 こうして再び授業に入るのだった。

 

 

 

 

 

 

 ケインに魔法を教え始めて十年が過ぎた、そろそろ彼に私の知識や何者なのかを話そう、それだけの信頼は出来た。

 

 以前これだけの知識と技術を持つ私は何者なのかと聞いてきた事があったが、まだ教えられないと断った。

 

 それからその事に触れなくなったが、知りたくない訳では無いだろう。

 

 「ケイン、以前私が何者かと聞いた事があったな」

 

 「はい、我が師よ」

 

 「これからそれを話そうと思う」

 

 彼の驚く顔、しかしすぐ真剣な表情に変わり姿勢を正した。

 

 そして私はこれまでの事を語った、突然気が付いたこと、知識があったこと、世界を回り力をつけ、永い眠りにつき、人間と暮らし、ここに来たことを。

 

 彼は黙って聞いていたが特に驚いていないようだ、かなり驚かれると思っていたのだが。

 

 「まあ、こんなところだ私は魔法の祖では無いといった意味が分かったか?」

 

 「確かに師がそう思ってしまうのも無理はありませんが……しかし別の可能性もあるのでは?」

 

 「別の可能性だと?」

 

 「気が付く以前の記憶が無いとおっしゃいましたが、その知識はすべて貴女が編み出した物で過去を忘れているために知らない知識だと勘違いしていたのでは?貴女程の方の事です記憶と知識や技術を分割していたという可能性もあります……それに理由がどうであれ貴女の中にある物はあなたの物です、私はそう思いますが……」

 

 無いとは言えないが、どうしても実際に記憶がないから、ハッキリしないな。

 

 それでも私の中に在るのだから私の物か、いい考えだな。

 

 「しかしお前は特に驚いて居ないようだがどういうことだ?」

 

 「師よ簡単な事です、人間よりかなり長い寿命を持つ森人があの程度の魔法しか使えていなかったのです、比べ物にならない知識と技術を持った師が普通な訳がないでしょう?更に言えば師は森人でない事は確実、にもかかわらず十年以上経った今も変わらず少女のままです、そして私が知る限りそこまで寿命が長い種族は森人以外居ません、つまり師は現在知られている種族以外の存在であると言う事です……これは気が付かない方が難しいですよ?」

 

 「確かにそれは気が付くしかないな」

 

 「ええ、知っていたのですから驚くのは不可能です」

 

 微笑みながら言うケイン。

 

 「話していただいたこと、嬉しく思います……貴女が何者でも貴女は私の師です」

 

 そう言って跪く、良い弟子にあたったものだ。

 

 「良し、授業を始めるぞ」

 

 そう言うとケインは立ち上がり椅子に座る。

 

 「師よこの部分なのですが……」

 

 「その部分はここが関係しているつまり……」

 

 「なるほど……確かにこれなら……」

 

 再び魔法の授業に没頭してゆく。

 

 

 

 

 

 

 更に五年後彼が里を出る時がやってきた、彼が可能な魔法はすべて教えた、高度な魔法は魔力が足りないのか技術が足りないのか発動しなかった、彼はかなりがっかりしていたが自らの力不足だと割り切った、諦める気は無い様だが。

 

 彼はこれから大きな町に移り魔法学校を作るために活動を開始する、彼は今里の出口で里人達と別れの挨拶をしている。

 

 そしてそれを終えると私の前にやってくる。

 

 「師よ今までのご指導感謝してもしきれません」

 

 「私はやりたくないことはしない、なかなか楽しかったぞ」

 

 「必ず成功させて見せます」

 

 彼もそれなりの歳なっている、森人の特徴で青年にしか見えないが。

 

 「お前でもどうにもならない問題が起きたら念話で知らせろ、内容によっては助けてやる」

 

 知らないうちに町がケインごと消えていたりしたら流石に寝覚めが悪いからな、それだけ言って家に帰る。

 

 「師よ!」

 

 後ろから声がかかり足を止める。

 

 「行ってまいります……我が師よ」

 

 「行ってこい……我が弟子よ」

 

 私は振り返らずその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 ケインを送り出し魔法の授業は続くそんな日々の中、私は長に聞きたい事があり家を訪れた。

 

 「クレリア殿、本日はどのような御用ですかな?」

 

 長はにこやかに迎えてくれた、私は出された飲み物を一口飲み話を切り出した。

 

 「種族の事を聞きたい、大地人や獣人などの本拠を知りたいんだ」

 

 「なるほど、少々お待ち下され」

 

 彼は部屋の隅にある本を手に取りページをめくる、数ページめくるとこちらに本を渡してきた。

 

 「ここに載っております、移動していなければ間違いないかと思いますが」

 

 どれどれ……大地人は森と隣接した鉱石が取れる洞窟、山岳地帯、獣人は各地を移動するのか範囲は決まっているのか。

 

 

 

 

 

 

 獣人は位置がはっきりしないな、大地人に会いに行ってみるかな。

 

 「長、そろそろ私は他の種族に会いに行こうと思う」

 

 「そうですか、寂しくなりますの……」

 

 「予想はしていたか?」

 

 「そうですな元々交流のためと言っていましたのでな、ケインが里を出て一つの区切りとなりました、ですので恐らく、と」

 

 「数日後には出発しようと思う」

 

 「分かりました皆にも伝えましょう」

 

 その後私が里を出ると知った里人が別れを惜しみ宴になった……随分馴染んだものだ。

 

 

 

 

 

 

 数日後私が旅立つ日が来た、皆と別れを交わした、誰もが教わった事を伝えていくと言ってくれた。

 

 「教え子達よ機会があればまた会おう」

 

 彼らは長寿だ機会があれば会う事もあるかもしれない。そう思いながら空に舞う、今はもうだれも驚くことは無い。

 

 皆が手を振る中、私は大地人に会う為本に載っていた土地を目指し出発した。

 

 

 





 下手に言葉が通じない設定にしたせいで翻訳魔法を使いっぱなしにする事になりました。




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008

 短いです。

 この作品の注意事項

・作者の自己満足

・素人の作品

・主人公最強

・ご都合主義

・辻褄が合わないかもしれない設定

・注意事項が増える可能性

 等が含まれます。

 以上をご理解したうえでお読みください。

 読者の皆さんの暇潰しの一助になれば幸いです。




 

 森人の里を後にして大地人の住処へと飛行する、広い森を抜けて程なく荒野と山岳地帯が見えてきた、あの山岳地帯のふもとに住処の一つがあるらしい。

 

 立ち上る煙が見える、恐らくそこが住処だろう。

 

 次は襲われたくは無いな。

 

 今度こそ戦闘にならないように、かなり離れた見えない場所に下りて徒歩で向かう、これならさすがにいきなり攻撃は受け無いと思う。

 

 そこそこの距離を歩き住処が見えてくると立ち上る煙と甲高い金属音が聞こえる、本には住処しか載っていなかったが、音からすると金属加工の技術を持っているのかな?

 

 ぜひ見てみたいがまずは住む許可を取らないとな。

 

 住処の入り口には明らかに金属製の武器と防具を付けた、やや背の低めながっしりとした男女が立っていた。

 

 近寄っていくと、男の方が気が付き声をかけてくる。

 

 「嬢ちゃんこんなところに一人でどうした?何かあったのか?」

 

 やや警戒しながらも気遣いの言葉をかけて来る。

 

 「始めまして、私はクレリア・アーティアと言う旅人だ、各地を回って様々な種族に会いに行っている」

 

 そう話していると、女も近寄ってきているのが見えた。

 

 「その歳でか?魔物も出るってのに子供一人で各地を回ってるのか……怪しいな」

 

 最後は小声だが聞こえているぞ……いきなり怪しまれてしまった、確かに怪しいかも知れないが本当なんだ。

 

 「私は戦う術を持っている、子供だからと思って言っているのなら、私はこんななりだが成人しているぞ」

 

 成人どころか一万歳オーバーなのだが、嘘は言ってないよな?

 

 「そうなのか?……いや、すまなかったそれで……」

 

 「ロドロフ、とりあえず入れてやったらどう?」

 

 こちらにやってきた門番の女が会話に割り込んできた。

 

 「ミシャ、しかし素性がはっきりしない者を入れる訳にもいかないだろう?」

 

 難色を示すロドロフと呼ばれた男、ミシャと呼ばれた女はさらに言葉を続ける。

 

 「見た限り武器も持ってないし、危険は……武器もなくここまで来たのかい?!」

 

 何も持っていない私に驚く彼女……確かにおかしいな、どうするか。

 

 「あー、ミシャと言ったかな、私は、魔法と言う技術の使い手でな武器は必要ないし、荷物も見えない所にしまってあるのだ」

 

 これで納得してくれると良いが。

 

 「そんな物聞いた事も無いよ、証明は出来るかい?」

 

 「そうだな、私が危険な人物で無い事は森人が証明してくれると思う、連絡が取れるのなら取ってみると良い、後は魔法の証明だが……」

 

 ここはいつものウォーターボールだな。私は手の平を上にして差し出し、水の球を作る。

 

 「うおっ!?」

 

 「なんだいこれは……」

 

 驚き飛びのき武器に手をかける二人……しっかり説明してから使うべきだったな、長く生きても迂闊なところは治らないな……。

 

 「驚かせてしまったがこれが魔法だ、使い方を間違えなければ便利だぞ」

 

 「これが魔法かい?凄いもんだねぇ」

 

 私が動かずにいるとミシャが近寄ってくる、ロドロフも剣から手を放す。

 

 「焦ったぜ、やるなら先に言ってくれ」

 

 「証明しろと言われたからやったが、確かに先に言うべきだったな、悪かった」

 

 素直に謝る、私にはとっくに当たり前のことだが魔法を知らない二人には警戒するべき物だ、もう少し慎重になるべきだった。

 

 「ここに住んで交流したい、住処が駄目なら近くに滞在してここに通うという形でもいいのだが……」

 

 「すげぇなこりゃ……おっと悪い、交流か……俺達が勝手に返事は出来ないな、お頭に会ってくれ」

 

 水球を見ていたロドロフが我に返る、どうやら通してくれるようだ。

 

 「後、住処でさっきみたいにいきなり何かするのはやめてくれ、色々不味いと思う」

 

 「……分かっている」

 

 釘を刺されてしまった、気を付けるとも、治せるかは分からないが。

 

 

 

 

 

 

 今私はお頭と呼ばれている男の家に居る、石造りのしっかりした家だ。この家に来る途中に武防具を作る工房があった、そういった物は作った事が無い、正確な知識が無く出来なかった、実に興味を惹かれる。

 

 「交流か」

 

 「そうだ。知りたい事があれば教える、その代わり武防具の作り方を教えて欲しい」

 

 腕を組み考え込むお頭、やがて口を開く。

 

 「一つ質問したい。その魔法は鍛冶に使えるか?」

 

 どうだろうか?そこまでの使い手になれるなら可能だろうが……。

 

 「そうだな……まず水の魔法は鍛冶はもちろん日常の生活にも使える。安全な飲み水をその場で出せるのはかなり便利だと思う」

 

 お頭に目を向けると彼は深くうなずく、私は更に話を続けた。

 

 「後は、火の魔法だが……これは私なら間違いなく可能だが大地人がそこまで至れるかは分からない。個人の才能や努力はもちろん種族的に資質が無い場合もある。少なくとも日常生活に使え炉に火を入れる事が簡単になるのは間違いないが……」

 

 「例えそうであっても魔法とやらはかなり便利だな」

 

 どうやら興味を持ってくれたようだ、私はもう以前のように自分から魔法を大勢に教える事に忌避感を感じていない。

 

 ケインの魔法を広めるという考えを聞いた後、これから一気に魔法が世界に広がる事を確信した。

 

 私一人が苦労して秘匿した所でもう意味は無いだろう、ンミナ達の村にもいずれそれは届くはずだ、問題は無いと思うが……それに特に見返りが無かったり親しくない者に教えるのは今も面倒だと思っている。

 

 「よし決めたぜ嬢ちゃん。その話受けるぜ」

 

 考えていたお頭が決断したようだ、良かったこれで武防具の作り方を学べるぞ。

 

 「私は成人していると言ったはずだが」

 

 先程から皆が嬢ちゃんとしか呼ばないので訂正する。

 

 「その見た目だしな。それに成人してたって俺からすれば娘みたいなもんよ」

 

 「まあ蔑称で無いなら構わんか……」

 

 私は早々に諦めた。特に嫌と言う訳でもない、ただ娘と言う年齢ではない。

 

 こうして私は大地人の住処に住む事を許され、魔法の授業と装備作りに精を出す事になる。

 

 

 

 

 

 

 大地人の住処に住んで五年、装備作りに入れ込んでしまった私は彼らに風魔法と魔道具の知識を伝え、新たな魔道具や魔法武具を作るようになり、それぞれ誰が作ったのか分かりやすいように固有の印を作品に付ける様になった。

 

 「嬢ちゃん剣の魔道回路の組み込み終わったぜ」

 

 「魔法出力の調整も終わったわよ」

 

 魔法製品の魅力に取りつかれ、すっかり私の弟子のようになってしまったロドロフとミシャ、しかし呼び名は相変わらずだ。

 

 「分かった。まずミシャの魔道具を見る、ロドロフ達は組み込んだ回路のテストをしておいてくれ」

 

 すぐさま指示を出す、彼らの物作りへの情熱は予想以上だった。

 

 ある日個人的に魔道具技術を使った装備を見られた後はあっという間だった、教えを請われ断るも大地人のほとんどが……お頭さえも頭を下げ頼み込んで来たのだ。

 

 私はいつか最高だと思える武具を私に譲るという条件で教える事にした。

 

 「分かったぜ。よしお前ら準備しろ!十分注意しろよ!」

 

 「おう!」

 

 仲間達の返事が重なり移動していく。

 

 私は静かになった作業場でミシャの調整した魔道具を確認した。

 

 「うん……良く出来ているな。これなら使用中に暴発も無いだろう」

 

 「良かった……随分手間取ったよ全く」

 

 大地人の魔法資質は高くはなかった。それでいて魔法製品を極めようとしている。資質の低さを訓練と器用さで埋めている、素晴らしい。

 

 私は細部を確認しながら、彼女に話しかける。

 

 「ミシャ、子は作らんのか?」

 

 「ぶっほ!?」

 

 部屋の飲食スペースで飲み物を飲んでいたミシャが噴出した、後で拭いておくように。

 

 「いきなり何言ってるんだい!?」

 

 「後継者はいらないのか?」

 

 折角の技術だ継ぐ者が欲しくは無いのだろうか?

 

 「そりゃあ、そろそろ欲しいとは思うけど……私もロドロフも忙しいし」

 

 「しかし、欲しいのなら作った方が良いのではないか?いざと言う時後継が居れば安心だろう」

 

 「鍛冶の為って訳じゃないけどね」

 

 後を継がせる為に作る訳では無いという事か?

 

 「分かっている。子供は可愛いものだからな……生まれた子が違う道を行くならそれも良いではないか」

 

 「そうね……近いうちに話してみようかしら」

 

 気になったのでおせっかいをしたが、後は二人の問題だな。

 

 私は代々受け継いで欲しいものだ……私がいつまでも通えるようにな。

 

 

 

 

 

 

 それから更に五年後、様々な製作法を試し、僅かな量と種類だが魔法金属を大地人の力で生み出せるようになった、勿論それらの技術や製法は書物に記してあるようだ。

 

 私もそれなりに装備品を作り見本として彼らに譲った、そんなある日。

 

 「そうだ。獣人達にも会うつもりだった」

 

 残していた獣人の事を思い出した……装備の開発はこの辺りにして獣人を探すか。

 

 「どうしたんだいお嬢?」

 

 全く関係ない事だがお嬢ちゃんからお嬢に呼び方が変わった……特に言う事は無いな。

 

 「ミシャか。いやそろそろ新たな種族……獣人に会いに行こうか迷っていてな」

 

 ミシャは何とも言えない表情をする。

 

 「行っちまうのかい?ロドロフも寂しがるよ」

 

 「済まないな。しかしもう決めた事だ」

 

 ミシャは困った顔をしながら答える、悪いがずっとここに居る気もない。

 

 

 

 

 

 「行っちまうのか……まだ最高と呼べる物は出来ていないのに」

 

 その日の夜ロドロフ夫妻に此処を去る事を告げた、ロドロフは約束の装備が出来ていないと言うが、それに関しては考えている事がある。

 

 「その事だが、また私はここにやって来るその時に渡してくれれば構わない」

 

 「また来た時か……それでもいいなら構わないがもっと色々一緒にやりたかったぜ」

 

 「もし私がいつまで経っても来なかったら子供か誰かに預けておいてくれ」

 

 子供と聞いてロドロフが恥ずかしそうな顔をする、そのうち子供が出来るかもな。

 

 「今まで過ごしていたんだ。何となく気が付いているかもしれないが……」

 

 「お嬢が何者かって事かしら?」

 

 ミシャが答える、十年以上経っても私は変わらないからな、今までもそれが理由で皆察していた。

 

 「その通りだ、私は特殊な種族なようで寿命が異常に長い。今の時点で一万年以上生きている」

 

 「なっ!?」

 

 「嘘でしょう?」

 

 声を上げるロドロフと思わず確認するミシャ、まあ普通そうなるか。

 

 その驚き様を見ると今まで共に居た者はあっさり受け入れ過ぎだったように感じる。

 

 「本当だ。私の力は長い研鑽の結果だ、遥か昔私も森を火の魔法で燃やしかけたり、風の魔法で地面に頭から突っ込んだりしていたんだぞ?」

 

 そう言って僅かに微笑む、二人はそんな私を見て少し落ち着いたのか再び話を聞く姿勢に戻ってくれた。

 

 「だから私が受け取れない事はまず無いだろう」

 

 「あまり時間が経つと本人か分からなくなるんじゃないのかい?」

 

 ミシャが疑問を口にする、確かにそんな気は無いがあまりにも受け取りに来るのが遅かった場合、引き継いだ人物が私を渡す相手だと判断できないだろう、そう思っているとロドロフが口を開く。

 

 「それなら何か証明する物を作ろう、それを私たちが持っておいてお嬢が来たらそれを使ってもらえばいい」

 

 「アンタ具体的にはどうするのさ」

 

 ミシャが突っ込む、本人を確かめる物か……使えそうな物は……。

 

 「そうだな……それなら魔力パターンならいけるか?」

 

 「魔力パターン?」

 

 疑問の声を上げるミシャ、これは今まで特に気にしていなかったからな。

 

 「魔法が魔力を体内に取り込み発動するが魔力を使う時一人一人パターンが違う、それを記録して本人の物と比べて確認するわけだ」

 

 私にもパターンがあるのは知っている、ただ私は周囲の魔力や魔素を取り込まずに使える上にパターンを変えられるので、効果がないな。

 

 「凄いなそれは……ならお嬢が旅立つ前の最後の作品だ気合入れて作るぜ!」

 

 「いいねぇ、もちろん手伝うよ!」

 

 盛り上がる二人不正が出来ないようにしっかり作るとしようか。

 

 こうして魔力パターンを使った認証システムを作り、私のパターンを記録した。

 

 これで問題無さそうだ、破壊されても予備を作っておけばいいだけだしな。

 

 

 

 

 

 

 そしてそれからしばらく経ち旅立つ日がやってきた、大地人達が鍛冶の手を休めて見送りに来てくれた。

 

 「今まで楽しかった、これからも素晴らしい物を作り続けてくれ」

 

 頷く大地人達、私はロドロフとミシャを見る。

 

 「お嬢の事を話せないのは辛いな」

 

 残念そうに言うロドロフ、二人には私の種族としての特殊性から私の事は他言無用にと頼んでおいた、そして魔法について分からなくなったら何処かの町に居るケイン・イヌスと言う森人に私の名を出し相談するように伝えた。

 

 里の者には詳しく話さなかったが、私が名を広めて余計な事に気を使いたくないと言うと了承してくれた。

 

 ……まあもしも本気で嫌になれば隠れ住むか、まとわりついてくる者達を全て消してしまえばいいのだが。

 

 「どんな物が出来るか楽しみにしている」

 

 「おう任せとけ!」

 

 「ええ、驚かせてやるわ」

 

 私の言葉に答えを返す二人、これなら安心だな。

 

 そう思い空に上がり大地人達に手を振ると獣人を探しに出発した。

 

 

 



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009

 魔法や鍛冶、魔道具も同様ですが、錬金術の詳しい訓練の内容は特に考えていません。

 この作品の注意事項

・作者の自己満足

・素人の作品

・主人公最強

・ご都合主義

・辻褄が合わないかもしれない設定

・注意事項が増える可能性

 等が含まれます。

 以上をご理解したうえでお読みください。

 読者の皆さんの暇潰しの一助になれば幸いです。


 大地人の住処を後にして森を上空から感知で探していると、人のような獣のような気配を感じる……何かに怯えている?

 

 居た、襲われているな。

 

 一人の耳と尻尾が生えた少女らしき姿が見える、猫科らしき魔物に狙われているようだ、獣人は高い身体能力があると書いてあったが、あの魔物はそれほどまでに強いのか?

 

 考えるよりまず助けようか、接触するのに都合が良さそうだしな。

 

 悪い癖だな、さっさと助けてから考えよう。私は魔物の上空に移動し飛びつこうとした魔物の頭を急降下しながら踏み砕いた。

 

 「よし……おい、大丈夫か?」

 

 彼女の方を見ると気絶していた、目の前で頭が砕け散ることなど戦っていればある光景だろうに。

 

 「仕方ない……介抱するか」

 

 彼女を寝やすいように横たえて弱く回復魔法をかけると、程なく彼女は目を覚ました。

 

 「あれ……あっ!魔物っ!?」

 

 飛び起きて辺りを見回す彼女、近くに頭を砕かれた死体が落ちているを見て体を強張らせる。

 

 「魔物は始末した、安心しろ」

 

 そう言うと彼女はゆっくり私を見て、プルプルしながら話す。

 

 「こ、殺さないで、死にたくないです……」

 

 命乞いを始める彼女、何とも言えない気分になる私だが誤解を解かないとな。

 

 「私は助けに来ただけだ、もし敵なら起きるのを待たず殺している」

 

 「た、確かに……」

 

 納得してくれたようだ、まずは名を名乗るか。

 

 「私はクレリア・アーティアと言う、旅をして様々な種族と共に過ごしている」

 

 「ら、ラムラン……です」

 

 ラムランは見た所狼か……犬じゃないよな?獣人のようだ群れに連れて行ってもらおうかな。

 

 「いきなりだがラムラン、お前の群れに暫く住んで交流したいのだが、連れて行ってくれないか?」

 

 「うぇっ!?ああ、すみませんその……」

 

 混乱するラムラン、一気に言い過ぎたか。

 

 「あー、悪かった暫く待ってるから落ち着いてくれ」

 

 落ち着かせる為に暫く黙っている。

 

 「あの……もう大丈夫です」

 

 しばらく待っていると落ち着いたのかこちらに声をかけてくる。

 

 「そうか、では連れて行ってくれるかな?」

 

 「連れて行くのは構わないのですが、その恐らくリーダーに戦いで勝たないと難しいと思います、強いものが偉いので……」

 

 悲しそうな顔をするラムラン、何となく察した……魔物を前にあれでは彼女が戦いに向いていないのは明らかだ。

 

 「なるほど、リーダーと言う事は一番強いと言う事でもある訳だ」

 

 「はい……」 

 

 「そのリーダーはそこで死んでいる魔物を一瞬で殺せるか?」

 

 先程始末した魔物を指さしながら言う。

 

 「い、いえ!無理だと思います!」

 

 「なら問題ないな連れて行ってくれ」

 

 そう言って彼女の手を取る、彼女は少し体が跳ねたがそのまま群れへと連れて行ってくれた。

 

 その群れは川に近い開いた場所にあった、獣人以外が来るのが珍しいのか、リーダーの所へ向かう間に集まってきた。

 

 「弱虫ラムランが人間連れて来たぜ」

 

 「まさか人間に助けられたんじゃないだろうな」

 

 「あいつならありそうだな」

 

 ラムランに対する言葉が聞こえる、やはり弱い者はあまり良く思われていないのか……ラムランは私の手をギュッと握り、リーダーの家に案内してくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 「人間に助けられるたぁこの恥さらしが!」

 

 リーダーの家に着き経緯を話すとリーダーはラムランに怒鳴り始めた、二足歩行の狼と言った容姿の何というか色々荒そうな男だ。

 

 後ろに立っている獣人も見た目は似ているが副リーダーか?

 

 「お前でも手こずる相手だった様だが?」

 

 「弱い人間は黙ってろ!ぶっ殺すぞ!」

 

 口を挟むと怒鳴り返してくる。

 

 「ラムラン!お前のような弱っちい奴は群れにはいらねぇ!お前は追放だ!」

 

 泣きそうなラムラン……何とかするか。

 

 「リーダーよ、この群れは強さが地位を決めると聞いた、私がお前に勝ったら私を住まわせ彼女を許す気は無いか?」

 

 「ああ!?お前が勝てるわけないだろうが!」

 

 先程から叫んでばかりだなこいつは、しかし勝負をすればすべて上手く行く。

 

 「ほう、負けるのが嫌なわけだな」

 

 「んだと……?」

 

 扱いやすすぎる……これは下に色々考えられる者が居るな。

 

 「リーダー。簡単に相手の口車に乗るな」

 

 後ろに立っている獣人が声をかける、馬鹿め……このタイプにそんな事を言えば……。

 

 「うるせえ!サクッとやってやるよ!勝負だ!」

 

 ほらこうなった、後ろの男はやってしまったと言わんばかりに頭を押さえる。

 

 こうして、オロオロするラムランを置き去りにして話はついたのだった。

 

 

 

 

 

 

 場所は変わり恐らく模擬戦をするのだろう広い何もない場所に連れてこられた、周囲には戦いを見ようと獣人達が集まっている。

 

 ラムランも私の強さは何となく魔物の事で分かって居るはずだが心配そうだ。

 

 「もう後戻りは出来ねぇぜ」

 

 「何の問題も無いな」

 

 離れて立つ私とリーダー、さて殺さないようにしなくては……。無力化するには凍らせるか?

 

 「始め!」

 

 合図の声と共に突っ込んでくるリーダー、確かに中々早いな、しかし……。

 

 「な、なんだ!?」

 

 一瞬にして地面とリーダーの両手足が氷でつながる、暴れて動こうとするが動けない、周囲が騒めく中私は彼の前まで進み話し

かけた。

 

 「私の勝ちだな?」

 

 「良く分からねぇもん使いやがって!拳で勝負しやがれ!」

 

 何を言う使えるものは使う物だ、もしもそうしたいのなら事前に拳のみと言えば良かったものを……。

 

 しかし、気が済むまでやった方があとくされが無いか。

 

 「我が儘な奴だな、仕方ない付き合ってやろう」

 

 魔法を解除するとリーダーは一気に私に近寄り殴りかかってくる、私はそれをするりと躱し彼のみぞおちに優しく攻撃をした。

 

 「ガッ!?」

 

 彼は勢い良く吹き飛び周りで見ていた獣人達に突っ込んだ……いかん……やりすぎたか?死んで無いだろうな……。

 

 騒ぐ獣人達の声を聞きながらどうしようか考えていると、リーダーが獣人の輪から出てきた。

 

 「まだ……ゴボッ!負けてね……ぇ」

 

 そう言い残し彼は口から血を吐きながら倒れた。

 

 すると周りの獣人達が私に立ちふさがる。

 

 戦いで強さを競うが仲間思いではあるようだ、それはともかくあのままでは死ぬな……助けるか。

 

 「彼を殺す気はない。そこをどけ!手遅れになるぞ!」

 

 立ちふさがる者たちにそう言いながら倒れた彼に歩み寄ると獣人達が割れて道が出来る、私を近付けたくないが自分達では敵わないと思っているようだ。

 

 「即死でなくてよかった……」

 

 生き返る魔法も魂に干渉できる私なら出来るかも知れないが、今すぐ出来るかと言われれば分からないからな。

 

 弱い回復魔法をかけると呼吸が安定し寝息を立てるようになった、もう大丈夫だろう。

 

 「誰か寝床に連れて行ってくれ。私は群れの外に出ている、彼が起きたら呼んでくれ」

 

 そう言うと数人が駆け寄り連れて行った、やりすぎてしまったが……どうなるかな。

 

 

 

 

 

 

 「お前の方から来たのか」

 

 それから十分程で彼がやってきた、群れの連中も来ている、魔法が良く効いたのか彼が頑丈なのか。

 

 彼は急に伏せると私に言った。

 

 「参りました姉御!群れ一同姉御について行きます!」

 

 「……んっ?」

 

 ……ああ、強い者が一番偉いんだったな……考えれば分かる事じゃないか、とりあえず何とかしなくては。

 

 「断る」

 

 「そんな!?姉御!」

 

 「私がお前達を率いる事は無い。獣人でも無いしな……強者である私の決定だ、文句は無いな?代理として引き続きお前がリーダーとして群れを率いていけ」

 

 「っぐ!……分かりました姉御」

 

 ここに住みたいだけだ余計な物はいらない。

 

 「後その呼び方だが……」

 

 「何でしょう姉御!」

 

 尊敬するようなキラキラした目で見てくるリーダー、態度が違いすぎないか?……まあいいか。

 

 「何でもない、私はここに暫く住む皆はいつもの生活に戻ってくれ」

 

 はい姉御!と声が重なり皆ぞろぞろと戻って行く、そしてラムランだけが残った。

 

 「あ、姉御」

 

 「ラムランお前だけでも名前で呼んでくれ」

 

 「わ、分かりましたクレリアさん」

 

 名前があるのに誰にも呼ばれないのはな、彼女が居てよかった。

 

 

 

 

 

 

 その後家を借り、そこで暮らすことになった、魔法に興味を持つかと思ったがあまり興味が無い様だ。

 

 追放と言われたラムランも普通に暮らして私の家に良くやってくる。

 

 それなりに仲良くなったと思う、そして今日もラムランが来ているので聞いてみた。

 

 「ラムランは戦いが苦手なようだが何か得意な事はあるのか?」

 

 そう聞く私にラムランは笑いながら答える。

 

 「そうですね、役に立つかは分かりませんが草や食べ物が危険であるか体に良いかが分かります、匂いと感覚で」

 

 「含まれている良い成分と悪い成分を判別出来ると?」

 

 「そうなんですかね?ただ今まで間違った事は無いですね」

 

 これはすごい能力なのではないか?これを生かせば錬金術師としてやっていけるのではないだろうか。

 

 「ラムラン、錬金術を学んでみる気は無いか?」

 

 「錬金術?」

 

 ラムランは首をかしげる、私は彼女に錬金術の説明をする事にした。

 

 

 

 

 

 

 「よろしくお願いします、師匠!」

 

 彼女は学ぶことを選んだ、戦えない自分に何か出来る事があるならという理由だったが。

 

 「これからそれぞれの成分の匂いと感覚を覚えろそのあとは座学と実技だ」

 

 「はいっ!頑張ります!」

 

 彼女の能力をフルに使い匂いと感覚でどの薬に何が使われているかおおよそ判別できるようになってもらう、効果は限定的だが良い能力だ、彼女自身が楽しいと思い始めればどんどん伸びるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 「うー……」

 

 それから一月経ち広場で彼女が伸びている、素材を集めるときに危険は付き物、苦手だとしてもある程度戦えなければ逃げる事も出来ない。

 

 「十分訓練したら実戦も行うぞ」

 

 「うう……怖い……でも錬金術師になるには乗り越えないと」

 

 この一か月で彼女は錬金術の楽しさを知った、戦いに役に立たなかった自分が能力で様々な薬を作る役に立つのが嬉しい様だ、今は私の弟子として頑張る錬金術師の卵だ。

 

 「最悪逃げる事が出来るだけで構わない、死んでしまったらもう錬金術を学べないぞ」

 

 彼女は臆病だ……恐怖で本来の力が出せない、能力的に劣っている訳では無いのだ。

 

 「……はい!やってやります!」

 

 錬金術を続けたいならば自分の身は自分で守らないとな。

 

 「所で、魔法を身に着ける気はあるか?」

 

 「うーん、魔法ですか……」

 

 やはり反応が悪い、便利だと思うのだが。

 

 「なぜそんなに微妙な反応をする?」

 

 「私たちの群れだけかもしれませんがそういった物に魅力をあまり感じないんです……肉弾戦が好きだからですかね?」

 

 肉弾戦が好き……ね、ならば。

 

 「群れの者達に認められたくは無いか?」

 

 「それはそう思いますけど……」

 

 彼女は追いだされはしなかったが未だに弱虫扱いは変わっていない、立場的には私と真逆だ。

 

 「教えるのは身体強化魔法だ」

 

 「身体強化魔法……」

 

 「魔力を使い体の能力や反射神経を強化する魔法だ、より激しい肉弾戦が出来るぞ?」

 

 「強くなれば自信もつく、だが慢心はするな……そうなったら私が叩き潰す」

 

 「っふぁい!」

 

 なぜそんなに怖がる、今までの訓練が怖かったんだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 「師匠課題の薬出来ました!」

 

 あれから三年彼女は魔法も覚え錬金術師として成長を続けていた。

 

 身体強化魔法と私の適度な訓練によって戦いに対する恐怖を殆ど克服した彼女は、族長と激しい戦いを繰り広げ負けはしたが弱虫の名を払拭した。

 

 後にリーダーに聞いたことだが、彼のラムランに対する言動は強くなって認められるようになって欲しいと思っての事であったようだ、まったく効果は無いどころかマイナスだった気がするが。

 

 戦いを終えた後のリーダーは、とてもうれしそうだったのを覚えている。

 

 「うん、上手く出来ている」

 

 製薬室で薬を分析し正しく効果が出ていることを確認する、もう基礎は十分だ、そろそろ彼女だけでやっていけるだろう。

 

 「ラムラン、ちょっとこっちに来てくれないか」

 

 ラムランをリビングに誘う。彼女はすぐに来てくれた。

 

 「何です?師匠」

 

 椅子に座り訪ねてくる彼女、これからの事を聞いておかないとな。

 

 「ラムラン、そろそろ卒業だ、これからどうするか決めているか?」

 

 「えっ……」

 

 ぽかんとする彼女、だが私の言葉を理解すると寂しそうな顔をする。

 

 「まだ師匠と勉強したいです……」

 

 泣きそうな顔で言うラムラン、気持ちは嬉しいがそろそろ新しい楽しみを探したい。

 

 「弟子は師から旅立って行く物だ、お前はもう十分に力を付けた、錬金術を修め精神的にも肉体的にも強くなった……後は自分でやりたい事をやりたいようにやれ」

 

 「分かりました師匠……でも卒業しても師匠は師匠ですからね!」

 

 そう言って笑う彼女、明るく元気になったな、後は彼女が何をしたいと思うかだが……。

 

 

 

 

 

 

 あれから一年、卒業した彼女はこの期間考え続け錬金術の店と教師をする事にしたようだ、きっかけは魔法を教えているときに話したケイン・イヌスの話をした事だ。

 

 同じ師を持つ者の考えに影響され、何処かの町で店を持ち薬を売りつつ弟子を育てると決めたらしい。

 

 「もしもケインに会う事があったら私の名を出すと良い」

 

 「魔法の弟子だったんですよね?」

 

 「そうだ、彼がもしお前を信用しなかったらこう言え、私に最初に話をしたケイン、と」

 

 彼ならきっと気が付くだろう、それでも信用しなければ念話で訪ねてくるかな?

 

 「何ですそれ?」

 

 ラムランは訳が分からないという顔だ、それはそうだ私と彼しか知らない事だからな。

 

 「まあとにかくそう言って見ろ、恐らく大丈夫だ」

 

 彼女がスムーズに教師になれるように私が出来る事はこれ位だ。

 

 「分かりました、必要だったら言ってみますね」

 

 「そうしろ」

 

 そう言うと彼女は旅立つ準備をし始めた。

 

 

 

 

 

 

 それから更に一月が経ち彼女が出発する日がやってきた、私はこの期間に自分の事を彼女に教えた、驚き様は一番だったな。

 

 彼女は私が教えたマジックボックスを確認している、容量はかなり小さいが彼女はもちろんケインもロドロフとミシャも覚えている。

 

 小さいサイズでしか時間停止の効果を出せなかったからな、もちろん生き物は入れられない物を教えている。

 

 「師匠……行ってきます」

 

 獣人達が見送りに集まっている中で言葉を交わす。

 

 「行ってこい」

 

 ラムランが抱き着いて来る、私はしっかりと抱き返してやる。

 

 「私、頑張りますから」

 

 耳元で囁く彼女、私も彼女に囁く。

 

 「頑張ってこい、お前は……」

 

 「自分でやりたい事をやりたいようにやれ、ですよね?」

 

 体を離し正面から私を見つめながら言うラムラン、それを見て私は微笑みながら言う。

 

 「分かっているなら良い」

 

 それを聞いた彼女は私に一礼し群れを旅立った、私も旅立つ用意をするかな。

 

 

 

 

 

 

 「行っちまうんですね姉御」

 

 「ああ、私は旅を続ける」

 

 獣人達は別れを惜しみ宴を開いてくれた、上座に座り飲み物を飲んでいるとリーダーが話しかけてきた。

 

 「此処は俺達に任せて下さい、群れは俺が守ります」

 

 「任せたぞ」

 

 こうして宴は終わりを迎え、翌日に私は獣人達に惜しまれながら出発したのだった。

 

 

 

 



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010


 今後主人公の考えがぶれていても気にしないでください、以前と違う事を言っていても、考えを改めたか、作者が忘れているだけです。

 この作品の注意事項

・作者の自己満足

・素人の作品

・主人公最強

・ご都合主義

・辻褄が合わないかもしれない設定

・注意事項が増える可能性

 等が含まれます。

 以上をご理解したうえでお読みください。

 読者の皆さんの暇潰しの一助になれば幸いです。





 

 ん?空に大きな何かが飛んでるな、あんなもの昔は居なかった。

 

 草原を歩く私は不意に出来た陰に空を見上げる。

 

 獣人の群れを離れ、今までの生活で人々と過ごす楽しみを覚えた私は新しい環境を求めるようになった。

 

 当てもなく旅をして出会った人々に関わる、良いかも知れない。

 

 様々な人々や土地……時には戦う事もあるかもしれないが、戦う事は好きではないが嫌いと言う訳でもない。

 

 森の木々を眺めながら思う。

 

 私だけなら余裕を見せるかもしれない……が、死なれては困る存在を守る時は容赦はしない、余裕を見せて守れなかったら意味がない、確実に排除する。

 

 ただ……拷問のような意味もなく苦痛を与えるような事はしたくはないかな?私は苦痛が分からないが皆を見る限り少ない方がいい……筈だ、情報が欲しければ頭を読んだりすればいいだけだしな、滅多に使わないが。

 

 ほう、こいつはモフモフだな。危機感が足りないのではないかこいつは。

 

 掌サイズの毛の塊のような生物をいじりながら歩く。

 

 私はこの頃、急いでいない時は魔法や能力をあまり使わないようにし始めていた、過程を楽しむと言うのか?何もかも簡単に出来てしまう、思い通りに出来る事がつまらなくなってしまった、今の私を過去の私が見たら「無駄に時間をかけるとは愚か者が」と言われそうだ、私の寿命がここまで長いとは思って無かったしな。

 

 ……今思えば魔法などの練習をしていた頃は楽しかったと言えるのではないだろうか、時間を忘れるほど熱中していた訳だしな。

 

 誰かを育てたり誰かの夢の手伝いをするのも悪くは無かった、出来れば何か対価が欲しいが気になった技術や気に入った者、興味がわいた事には首を突っ込むのも良いかも知れない。

 

 

 

 

 

 

 自分が以前と少し変わったのを感じながら、当てもなく森を歩いていると森を抜け踏み固められた道に出た、各町をつなぐ道だろうか。

 

 む、あれは……商人か旅馬車か?

 

 遠くに三台の幌馬車が見える、商人か?そういえば売っている物を見た事は無いな、商人なら品を見せてもらおうか。

 

 「ん?何か用かいお嬢さん」

 

 馬車が来るまで待っていると馬上の男が声をかけてくる。

 

 「この馬車は商人の物か?もしそうなら品を見たいのだが……あなたが持ち主か?」

 

 「いや、俺達はただの護衛さ……ジャレンさんよ!客だぜ!」

 

 男が声を上げると、幌馬車の中から穏やかそうな茶色の髪の男が出て来た。

 

 「お待たせしました、アルベリク商店のジャレンと申します」

 

 ジャレンと名乗った男は軽く頭を下げる、この見た目の私にも礼を失しないか。

 

 「突然申し訳ない、遠くからこの馬車が見えたのでな、もしよければ品を見せてもらいたいのだが」

 

 「構いませんよ、気になる物がありましたらお見せします」

 

 そう言って紙を渡してくる、日用品に雑貨、食料、調味料か……試しに食料の干し肉を買ってみるか。

 

 「干し肉を一つ貰おうか」

 

 「かしこまりました、一つ五百イェンになります」

 

 ……あっ、今まで金を使った事が無いから持ってないじゃないか。 

 

 「……すまない、金がない事を忘れていた」

 

 「おいおい、金がないのに声をかけたのか?」

 

 護衛の男の呆れたような声が聞こえる、反論できんな。

 

 「おいくらなら持っているんです?」

 

 ジャレンが声をかけてくる、答えたくないが……。

 

 「……全く持っていない」

 

 そう答えるとジャレンは真剣な顔になり口を開く。

 

 「こんな所に何も持たず、お金もなく一人で?……何か事情がおありで?」

 

 真剣に聞いてくるジャレン、本気で心配されていそうだ。

 

 「あー、何処か私でも金が稼げる所を探しているんだが」

 

 咄嗟に言った事だが、金が欲しいのは間違いない、買い物がしたいとき盗む訳にもいかない。

 

 ジャレンは何か考え込むと私を見て言う。

 

 「もし、よろしければ家で住み込みで働きませんか?」

 

 突然私を雇うと言い出した、どういうことだ?

 

 「おいおい……ジャレンさんよ、わざわざこんな訳ありそうなガキ雇う事は無いんじゃないか?」

 

 護衛の男の一人が言う、確かに客観的に見ると怪しいな。

 

 「このままでは野垂れ死にです、一人の娘を持つ親として知ってしまったからには放ってはおけません」

 

 随分お人好しなようだが……騙されそうで心配になるな、怪しいと分かりながら手を伸ばすか。

 

 「それに娘と歳も近そうです、良い友人になれるかも知れません……どうでしょうか?」

 

 店か……良いな、この話受けてみるか。

 

 「お誘いお受けします、よろしくお願いします」

 

 そう言って彼に頭を下げた。

 

 「ジャレンさんが良いならいいけどよ、じゃあさっさと乗りな、余り遅れる訳にもいかねぇ」

 

 護衛の男に促され幌馬車に乗る、人が乗るための馬車らしく座れる場所があった……周りは商品だらけだが。

 

 「さて、これから君には家で働いてもらう訳だが……改めて挨拶しようアルベリク商店店主のジャレン・アルベリクだよ」

 

 そう言って手を差し出してくる。

 

 「クレリア・アーティアとい……言います、クレリアでもアーティアでも好きに呼んでください」

 

 握手をしながら答える、するとジャレンは笑いながら言う。

 

 「先程までの言葉づかいで構いませんよ、歳に不相応な話し方でしたがとても自然でした」

 

 「そうか、悪いな……後、私はこんな見た目だが既に成人している」

 

 手を放しながら言うと、ジャレンは困ったような顔をした。

 

 「そうですか、大丈夫です……これからは何も心配はいりませんよ」

 

 何か、変な風に捉えられた気がするな、まあ信じて貰えない事も多いからな。

 

 ……これなら大人の姿で行くべきだったか?しかしこうなると思っていた訳では無いから今更だな。

 

 「これからよろしく頼む」

 

 「期待していますよ」

 

 そう答えると、彼は御者席に移動して行った。

 

 

 

 

 

 

 その後大人しく馬車に揺られて夕方に差し掛かると、町が見えてきた。

 

 「あの町が私の店があるエスタラだよ」

 

 少し前に幌馬車の中に入ってきたジャレンが私に言う、比較対象が無いから町として大きいのか小さいのか分からないな。

 

 「町としては大きい方なのか?」

 

 「?クレリアさんはあの町から来たのでは無いのですか?」

 

 街道の途中で会ったからな、最寄りの町はここしかないのか?

 

 「ああ、私のいた所は森の中のでな、そこを出て来たのだ」

 

 嘘は言ってない、居た所は森の中の獣人の群れ……そこを出て来たのだからな。

 

 「なるほど……何があったかは聞きませんよ」

 

 「助かる」

 

 そんな会話をしながら夕暮れの迫る中、早足に馬車は町に向かって進むのだった。

 

 

 

 

 

 

 「まずは部屋の割り当てかな、後は皆への紹介だ、その後食事をしたら今日はもう休んで、説明は明日にしよう」

 

 到着時、外はもう暗くなり始めていた、数人の店員らしき人々が荷物を運び込んでいるのを横目に見ながらジャレンについて裏口らしき入り口から中に入る。

 

 店舗らしき建物はあまり大きくは無いが生活する建物はそれなりの大きさだった。

 

 私の部屋は二階の角でシンプルな狭く簡単な鍵が付いている部屋だった、そして私の名前が扉に掛けられた。

 

 「皆がそろった、降りて来てくれ」

 

 部屋のベッドに座って足をプラプラさせていると扉の外からジャレンの声が聞こえた、外に出ると彼について行く。

 

 「皆歓迎してくれると思う」

 

 そう言いながらとある部屋の中について行く、視線が集まるのを感じながら彼に連れられ皆の前に立つ。

 

 「今日から皆の仲間になる色々目をかけてやって欲しい」

 

 「クレリア・アーティアと言う、よろしく頼む」

 

 彼の紹介の後挨拶をする、皆「よろしく」と返してくれた。

 

 「よろしくねクレリア!ここを自分の家だと思っていいのよ!」

 

 見た目には私と同じぐらいの赤い髪の少女が私の前に来て手を握ってくる、随分フレンドリーだな。

 

 「ああ、ありがとう」

 

 「これから私の部屋でお話ししましょう?」

 

 答える私を引っ張る彼女、しかしそれを遮って傍に居た女性が言う。

 

 「モニカ、今日は彼女も疲れている筈だから、休ませてあげて?」

 

 そう言った彼女の方を見ると赤い髪をした気の強そうな女性が居た、この少女と似ている気がする。

 

 「ごめんね、クレリアちゃん……私はアリエラ・アルベリク、ジャレンの妻でこの子、モニカの母よ」

 

 ジャレンの妻と娘か、なるほど似ていると感じたが納得だ母親似なんだな。

 

 「はーい」

 

 大人しく私の手を放した。

 

 「また今度ね!」

 

 笑いながらそう言って離れて行った。

 

 「さて、今日は彼女はここまでだ」

 

 やり取りを見ていたジャレンが私を連れて部屋を出る、私の部屋へ移動中ジャレンが声をかけてくる。

 

 「娘が失礼をしたね」

 

 「明るく人を引っ張って行きそうな娘だな」

 

 そう言うと嬉しそうな顔をしながらジャレンが言う。

 

 「妻によく似ています……それに娘は年の近い友人が居ない、きっと嬉しかったんだと思う」

 

 商人では無く父親としての顔で言うジャレン、まあ面倒は見るさ、子供の扱いは過去に経験しているからな。

 

 話しているうちに私の部屋の前に着いた、彼は明日の起床時間と誰かが起こしに行く事、起きたらそのままついて行くように私に伝えると戻っていった。

 

 「店か、これから何があるか楽しみだ」

 

 思わず笑みを浮かべる、やるからには世界一の店にしてしまおうか……などと考えつつ魔法の訓練をしながら朝までの時間を過ごした。

 

 

 

 

 

 

 「それでね……!」

 

 翌日起こしに来た店員について行きジャレンの所に着いた私が聞いた最初の仕事はモニカと仲良くなることだった、まあ仕事というか出来れば仲良くして欲しい、というような頼み方だったが。

 

 幸いというかモニカは同年代……に見える私が来たのが嬉しいらしく彼女の性格もあり簡単に仲良くなった、しかし良く喋る、今は気持ちが舞い上がっているからかもしれないが。

 

 「モニカ」

 

 話し続けるモニカを遮って声をかける。

 

 「なーに?クレリア」

 

 会話を止めて話を聞く彼女、こういう所が歳に合っていないような気もする、グイグイ来るが最後の一線を越えないというか、相手の気分を害さない範囲を分かっているというか……人の子は皆こうなのだろうか、昔暮らしていた子供たちはそれなりに我が儘だったが。

 

 「将来は店を継ぐのか?」

 

 「勿論よ、何言ってるの?」

 

 何を言っているのかという顔で言うモニカ、必ず子供が継ぐとは限らないと思うが彼女の中では当然のようだ。

 

 「私は店を継いで誰もが知っているような店にするのよ」

 

 真剣なしかし楽しそうな顔をして言う、ジャレン夫妻よこの子は逸材かもしれないぞ。

 

 

 

 

 

 

 モニカと仲良くなり仕事も少しづつ覚え始めたある時店に損害が出た、ジャレンのお人好しで。

 

 夫妻の話し合いが終わった後、私はアリエラに話しかけた。

 

 「こう言った事はよくあるのか?」

 

 「クレリアちゃん……彼はお人好しでね相手が困っていると高く買い取ってしまったり安く売ってしまう事があるの」

 

 「私の事も拾ったしな」

 

 そう言うと苦笑するアリエラ。

 

 「かなり不味い状態なのか?」

 

 「いいえ、私もいるし彼もそこまででは無いわ……十分に利益も出しているけれど取り返しのつかない騙され方をしそうで……」

 

 確かに店の権利など不味いものはある、しっかり話せばいいと思うのだが。

 

 「でもその優しさは忘れてほしくない、私が好きになった優しさを……」

 

 なるほどな、だが問題無いと思うぞ。

 

 「大丈夫だと思うぞ?ジャレンの家族や店の皆を思う気持ちは本物だ、それを壊すようなことはお人好しの彼もしないだろう」

 

 私が言うのだ、安心すると良い……ただ、もし強引に彼女達とこの店をどうこうしようとするなら、相手はどうなるかわからんが。

 

 「ふふ、そうね……ごめんねクレリアちゃん、子供の貴女にこんなことを話して……貴女と話していると大叔母様と話しているような気になって……こんな若い可愛らしい子に失礼ね」

 

 申し訳なさそうな顔で言う彼女……いい勘をしている、あの子にしてこの親ありか、ジャレンももしかしたら色々感づいているかもな、ただ私は大叔母様とやらの百倍以上の年齢だと思うが。

 

 

 

 

 

 

 私が店で働くようになって五年が過ぎた、商売のノウハウを覚え店も順調に大きくなり町で一二を争う規模になっていた、そんなある日の事。

 

 「錬金薬?」

 

 「ええ、この町のもう一つの大手の店で売り出しているみたいなの」

 

 この五年で店の運営会議に出るようになった私は、十八になったモニカから報告を受けた。

 

 錬金……ラムラン?錬金術を広める事が出来ているのか。

 

 「それでそれが何か問題なのか?」

 

 ジャレンが聞く、何か理由が無ければ今ここで言う必要は無いからな。

 

 「それが、効果はあるらしいんだけど物凄く高くて、病気の金持ちにばかり売ってるらしいんだ」

 

 うん?そんな高価になるような材料は使って無いぞ?効果を十分に引き出せば少ない材料でそれなりの量が作れる筈だが……。

 

 「ディノで有名になって来てる錬金術師のラムランの弟子って人が作ってるらしいんだけど」

 

 ……おかしい、彼女がそんな事を良しとするとは思えない……何かあるな。

 

 「その事は心当たりがある、少し時間が欲しい」

 

 そう言うと皆は納得してくれた、私は早速店に向かい薬を確かめることにした。

 

 

 

 

 

 

 「いらっしゃいませ」

 

 店員が声をかけてくる。

 

 「錬金薬を見たいのだが」

 

 私は服を変化させいかにも金持ちの娘のような服装にした、効果はあったようだ、奥の部屋に案内される。

 

 「私の錬金薬をご覧になってください」

 

 奥の部屋に居た男は少し軽そうな、だがそれ以外は普通の男だった。

 

 私は早速置いてある薬を手に取り分析する。

 

 「これは最高の物か?」

 

 「はい、私の自信作です」

 

 自慢げに言う男……こいつはダメだ、薬の効果は僅かしか出ていない上にバランスも悪い、それ以前に意味のない成分が多すぎる……いや、この状態でわずかにでも効果が出ているのは凄いのか?とにかく話にならないことが分かった。

 

 「そうか……また来る」

 

 そう言って店を後にする、男は戸惑ったようだが金持ちの娘と思っている私に何か言う事は無くそのまま店を出た。

 

 自分の部屋に戻りずっと使っていなかった念話を使う。

 

 『ラムラン、聞こえるか?』

 

 『ぴゃっ!?し、師匠?!』

 

 驚いた声が聞こえてきた、ふむ……何か変わった感じはしないな。

 

 『時間はあるか、話したいことがある』

 

 『……何かあったんですか?』

 

 有無を言わぬ感じになってしまった、彼女が察して聞いてくる。

 

 『今私はエスタラという町で商人の真似事をしていてな……その町でお前の弟子を名乗る者が薬を高値で金持ちにだけ売っている』

 

 『えっ……?』

 

 あっけにとられたような気配がする、私はさらに続けた。

 

 『病気を盾にほとんど効果がない粗悪品を高値で売りつける事がお前の目指す物か?』

 

 『違います!私はそんなこと考えていません!私は……!』

 

 猛反発するラムラン、良かったお前は変わってなかったな。

 

 『悪かったなラムラン、少し試した』

 

 『……止めて下さいよ師匠!まったく……』

 

 怒るラムラン、少し逞しくなったかな?私に怒ることなど無かったと言うのに。

 

 『で、だ……心当たりはあるか?』

 

 『心当たりと言っても……弟子はみんな此処に居ますしそんな人は……あっ!?』

 

 『心当たりがあるのか?』

 

 『前に弟子入りしに来た人が……授業もあまり受けず私や他の弟子を口説いてばかりだったので遠慮して頂いたのですが』

 

 決めつけは良くない、良くないが……そいつな気がするぞ。

 

 『軽薄そうなそれ以外特に特徴がない男だったか?』

 

 『確かにそんな感じでしたけど……』

 

 まず間違いないと考えていいだろう、だとすると……そうだな。

 

 『ラムラン』

 

 『はい?』

 

 未だに男を思い出そうとしているラムランに声をかける。

 

 『このままだとこちらでの錬金術の印象は最悪だ、こっちに来て本物を見せてやってくれないか?』

 

 『えっ?師匠が居るのにですか?』

 

 『私はそんな事をして目立つ気は無い』

 

 『ええー?!私が目立つじゃないですかー!?』

 

 『目立たなくてどうする、ここで錬金術の良さを伝えられれば皆が良い印象を持ってくれる、学ぼうとする者も居るかもしれない』

 

 『た、確かに……!』

 

 『それに私が居る商会もある、お前が作る薬を仕入れて広めてくれるかもしれないぞ?汚い事をするような者達では無い事は私が保証しよう』

 

 『……行きます』

 

 よし、これでいい後は大々的に効果を見せる機会を作ってやればいい。

 

 『私が居る町の場所は分かるのか?』

 

 『はい大丈夫です、師匠が教えてくれたマジックボックスがあるのですぐ出発できますし』

 

 『良し、着いたらアルベリク商店に来い』

 

 『分かりました』

 

 

 

 

 

 

 「では契約はこの条件でよろしいですか?」

 

 「はい、問題ありませんよ!」

 

 今私はジャレンとラムランの契約に同席している所だ、アリエラとモニカもいる、あの後ラムランが到着し偽錬金術の男を誘導し町の人々の前で奴の薬の酷さと値段について言及した。

 

 ラムランが姿を見せた時の男の様子は面白かったな、そして町の人々は本物の錬金術を知ることになり、ラムランの名は町に広まった、酷い薬を売っていた商会は客が一気に居なくなり商会としての形を保てなくなり自然に消滅した。

 

 その後、その効果と値段の安さに驚いたアルベリク商店の面々に話を持ち掛け今こうして成立したわけだ。

 

 「しかし……」

 

 契約書大事にしまいながらジャレンが言う。

 

 「ラムランさんとクレリアさんはどんなご関係で?」

 

 まあそう思うな、どう言ったものか……。

 

 「師匠は私の師匠ですよ!」

 

 ラムラン!? 

 

 「馬鹿者……」

 

 「えっ?!」 

 

 私とアルベリク一家が同時に声を上げる、その後静寂が部屋に訪れた。まあ、最初から成人しているとは言っているがお前

の師匠であることは言って欲しくなかった。

 

 「あのー。すいません師匠その、私……」

 

 泣きそうなラムラン、久しぶりに見たなその情けない顔は……仕方のない奴め。

 

 「泣くなラムラン。絶対に言っては駄目な訳では無い、誰しもうっかりしてしまう事はある……私もな」

 

 「ごめんなさい……師匠」

 

 泣いているラムランを撫でているとジャレンが声をかけてくる、その顔は何とも言えない表情だった。

 

 「あの、師匠と言う事は?」

 

 「初めて会った時に行っただろう?成人していると、私はこの子の錬金術の教師を……師をしていた、恐らくこの中で私が一番年上だぞ」

 

 彼らは一般的な年齢を想像しているだろうが、一万を超えているからな……信じられないような顔のアルベリク一家。

 

 やはり信じていなかったな、気持ちは分かるが。

 

 「クレリアちゃ……さんは本当に成人していたのね……私達より年上だなんて……今まで申し訳ありません」

 

 すまなそうに言うアリエラ、気にしていないがな。

 

 「今までと同じで構わない、私は悪い気はしていないからな」

 

 「クレリアちゃん!」

 

 そう言うとホッとしたような嬉しそうな顔をして抱きしめてくるアリエラ。

 

 「えーと……クレリア、さん?」

 

 たどたどしく敬語で話しかけてくるモニカに向き直る、どうしていいか分からないと言った顔をしているな。

 

 「モニカ、私たちは友達だ……歳など関係無いぞ」

 

 薄く微笑みながら声をかけると、嬉しそうに飛びついてきた。

 

 「クレリアってすごい若作りよね!」

 

 「放っておけ」

 

 あっという間にモニカは元に戻ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 今回の事が終わりを迎え、ラムランは一泊する事になり部屋に案内されたがすぐに私の部屋にやってきた、卒業してからの苦労や喜びを語る中彼女はぽつりと言った。

 

 「……こんな事が起こるなんて思いませんでした」

 

 彼女は俯きながら手をいじっている。

 

 「名が売れると言う事はこういう事だ。これから更にお前は有名になるだろう、様々な善意が……そしておそらくそれ以上の悪意がお前に集まってくるだろうな」

 

 彼女はうつむいたままだ。

 

 「師匠はそれが嫌で表に出ないようにしているのですね……」

 

 「どうだろうな?嫌な事は確かだが、やりたいようにやった結果そうなってしまったなら甘んじて受けるかもしれないし、全てを薙ぎ払って無かった事にするかも知れんな」

 

 それを聞いた彼女は顔を上げて引きつらせながら言う。

 

 「……師匠が言うと冗談に聞こえないんですが」

 

 「冗談では無いからな」

 

 彼女はブルっと震える、それからは他愛のない事を話し続けた。

 

 こうしてアルベリク商店は町一番の店となり商品にラムランの薬が並び錬金術とラムランの名が知れ渡り、私の事が少しアルベリク一家に知られた、翌日ラムランは別れを惜しみながらディノに帰って行った。

 

 

 

 

 

 

 私は今エスタラの裏路地に居る、目的はすぐそばにいる顔を隠している男だ。

 

 「あの女、俺の誘いを断った上に邪魔しやがって……」

 

 悪態をつきながら町の外に向かう男、ぶつぶつと何かを呟いている。

 

 「まだ他の町がある……そこで上手くやれば一生安泰だぜ」

 

 わかっていたが止める気は無いか……またどこかで同じ事をされては面倒だからな。

 

 「それは困るな」

 

 男の前に立ち塞がり声をかける。

 

 「ああ……?てめえ!あの女と居たガキだろ!」

 

 私に気が付いたようだが……。

 

 「もっと前に会っているがな」

 

 「?……あ!お前あの時店に来た!」

 

 すぐ分かったようだ、私の見た目は目立つらしいからな、他の者が言うには美人らしい。 

 

 「丁度いい、初めて見た時に良いと思ったんだ……」

 

 「私はお前に特に興味は無いな」

 

 「今から俺がっ?!」

 

 迫ってくる男の手足と口を凍らせると転倒する男。

 

 「……?!……!!」 

 

 呻くだけの男に歩み寄りながら言う。

 

 「私の弟子の名と錬金術を貶めた、その上まだ繰り返すのなら放ってはおけない」

 

 私の体から黒い霧が漂い始めるがすぐに引き戻す……久しぶりにイライラしているせいで少し開放的になっているかもしれない。

 

 男は涙を流しながら呻いているが今更許すことは無い。

 

 「悪いが私の弟子に手を出す者は許さない」

 

 その後、偽錬金術師だった男の行方は分からなくなったがすぐに忘れられた。

 

 

 

 

 

 

 錬金薬事件の後私の事はアルベリク一家だけの秘密となった。

 

 それから更に二年後、二十歳となったモニカは無事想い人と結婚した、私から見ても問題は無さそうだ、元は護衛をしていた傭兵で長期契約で彼女を守っているうちにお互い……と言う訳だ、そんな彼女の夫から相談を持ち掛けられた。

 

 「クレリアさん、腕のいい鍛冶屋を知らねぇ……ご存じありませんか?」

 

 私の部屋に訪れた彼が言う、傭兵から商人という職業変更をした彼は言葉使いを始め、商人修行真っ最中だが、まだまだ時間が必要なようだ。

 

 「どうした急に」

 

 この商会では武防具は販売していない、その内扱おうかという話をしては居たが急に決める事でもない。

 

 「傭兵仲間から聞いたんですが各地で魔物が多くなってるらしいんです」

 

 真剣に話す彼、彼はさらに続ける。

 

 「まあ、居ないよりは良いんですけどね、肉や素材になるので良い稼ぎになりますから」

 

 戦いに身を置く者にとって魔物や動物は収入源らしいな、それなりに良い値段になるらしい。

 

 「ただ魔物になるべく安全に勝つために今の装備では不安なんです、そこで色々つてがありそうなクレリアさんが誰か良い職人を知らないかと思いまして」

 

  彼は私の秘密は知らないが私に色々なつてがある事を知っている。しかし……武具で思い出すのはあの夫婦しか居ない、ロドロフとミシャだ。

 

 「知ってるな」

 

 そう言うと顔を明るくさせる彼、その時部屋がノックされる。

 

 「開いているぞ」

 

 そう言うとドアが開きモニカがやってきた。

 

 「あれ……あなた浮気?」

 

 にやけながら言うモニカ。

 

 「勘弁してくれよ……」

 

 苦笑いする彼、私はそんな彼を横目にしながら彼女に答える。

 

 「魔物の数が増えてるらしい、それで装備を何とかできないかと私に心当たりを聞きに来たんだ」

 

 モニカはにやけ顔を止めて答える。

 

 「なるほど、優秀な鍛冶屋はいつか欲しいと思っていたけど、のんびりしていられないかもね」

 

 「それで今知っていると答えた所だ」

 

 「知ってるの?」

 

 彼女はやや驚いた顔をしている、そこまで驚かないのは何となく私ならと思っていたのかもな。

 

 「ああ、夫婦で大地人の住処に居る、移動していなければ同じ所に居るはずだ」 

 

 考え込むモニカ、しかしすぐに私を見て口を開く。

 

 「貴女が知ってるって事は腕はいいのよね?」

 

 「私が知る限り最高の鍛冶師だな、妻の方も魔道具作りの熟練者だ」

 

 「本当に!?」

 

 食いつくモニカ、魔道具は最近大地人から広まり始め、数も少なく値も張るが欲しがる者が後を絶たない人気商品だ。

 

 「もしできる事なら私達の商会と取引して欲しいわね、出来ればうちの商会に住み込みで雇いたいわ、駄目なら輸送料を全てこちらで持っても良い、クレリアが認める鍛冶師と魔道具製作者よ、見逃す手は無いわ!」 

 

 そんなモニカを冷や汗を流して見る彼、彼女のやる気に火がついてしまった。

 

 「クレリア!すぐに連絡とってせめて話だけでも聞いて貰える様に話をつけて貰えない?来てもらえるならいつでも来て良いし、何なら行くわよ!」

 

 彼女なら悪いようにはしないだろう、彼らがどんな反応をするかは分からないがチャンスはあげたいな。

 

 「分かった話しておく」

 

 その答えにガッツポーズをして出て行く彼女……かと思うとすぐに戻ってきて言った。

 

 「ご飯に誘いに来たんだった!行こ!」

 

 私と彼は呆れた顔をしながら食事に付き合うのだった。

 

 

 

 

 

 

 その日の仕事をすべて終え、部屋に戻った私は早速ロドロフとミシャに念話を送る。

 

 『ロドロフ、ミシャ聞こえるか?』

 

 ……返ってこないな。

 

 『どうした?何かあったか?』

 

 『大丈夫だ、ちょっと上手く行かなかっただけだ』

 

 ロドロフの声が聞こえてくる、念話が苦手なのは変わって無さそうだが……いや少し上達したかな?

 

 『お嬢!久しぶりだね!何年経ったかしらね』

 

 ミシャも元気そうだ……十年?もうちょっと経っているか?気にしないからあいまいだな。

 

 『久しぶりだな、いきなりで悪いが相談したい事があってな』

 

 私は今商人の元にいる事、その商会が武具と魔道具の職人を探している事とその理由、商会の者は信頼できる事を伝えた。

 

 『なるほどなぁ、そう言う事なら構わねぇぜ』

 

 『そうだね、お嬢のお墨付きなら問題も無いだろうし』

 

 『でも条件があるんだ』

 

 『なんだ?言ってみろ』

 

 『材料の一部は俺達の住処から買って欲しい』

 

 『なるほどな、伝えておこう』

 

 そうだ、町の場所を教えていない。

 

 『エスタラという町だが分かるか?』

 

 『分かるよ、それでいつ行けばいいのさ』

 

 ミシャが聞いてくる。

 

 『いつ来ても良いようにしているそうだ』

 

 『よっし、じゃあ準備をしたらすぐ行くぜ』

 

 ラムランといい行動が早いな。

 

 『名前はアルベリク商会だ、待っている』

 

 そう伝えて念話を切った。

 

 

 

 

 

 

 ロドロフとミシャに連絡を取った後、二人はアルベリク紹介を訪れ無事に契約をした、その際にレクシドという大きな町に本店を移すとモニカから聞いた、ロドロフとミシャの二人と契約出来たら拡大するつもりだったようだ、そういう話は先に言って欲しかった。

 

 二人が本格的に武具魔道具を作るのはレクシドに行ってからになる、それまでこれからの話をしていたのだが問題が起きた。

 

 「値段が高すぎる?」

 

 仕事中にモニカが相談にやってきた。

 

 「ええ、性能は素晴らしいわ、だけど買うのは傭兵や兵士がメインになるでしょう、彼らにこの金額は払えないわ」

 

 魔法金属は製作に時間と手間がかかる、そうなると値段は上がる……かと言って安くするわけにもいかない、そう思っていると彼女が言う。

 

 「だから二人には性能を落とした装備と魔道具を作ってもらって、高性能な物はオーダーメイドにしようかと思うのよ」

 

 そうするしかないだろうな、二人に損をさせる訳はいかない。

 

 「一般装備は値段の割に良い物を、オーダーメイドは値段に見合った性能をってね」

 

 同じ材料で同じものを作っても製作者の腕で質は大きく変わる、設計次第で少ない材料で高い強度と効果を出すこともできる、あの二人ならその点は十分だろう。

 

 「二人は納得しているのか?」

 

 こちらから声をかけたんだ嫌がる事はなるべく避けたいが。

 

 「これから話してみるつもり」

 

 「強引に話を通さないでくれよ?」

 

 「当然よ、嫌々やっても良い物は出来ないわ」

 

 彼女は頷くと仕事に戻って行った、後日あっさりと了承して貰えたらしい、簡単に解決してよかった。

 

 それから、モニカがエスタラの店の人員と管理責任者などの人事を進め始め、ジャレンとアリエラとモニカの夫は新店舗の調整にレクシドに向かった、一週間程の後、私達も旧店舗を任せ新店舗へ向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 新しい店舗は広くそれぞれの分類ごとに売り場を分けてあった、住む部屋は建物が大きくなったが人員も増えた為エスタラのと広さは大して変わらなかった、家具は少し良くなっていたが。

 

 「さて、これで移動は終わりましたが開店するのはもう少し後です、ロドロフ夫妻に製品の生産に入っていただき数が揃ってからになりますね」

 

 ジャレンが言う、すでに新店舗の皆とは顔合わせをした、いつも通り私の紹介でざわついたが成人していると伝えた。

 

 今は中核のメンバーでの会議中だ、私、アルベリク一家の三人、ラムラン、ロドロフ夫妻、そして各方面を担当している古参の店員達だ。

 

 「ではこれからの予定と連絡事項を伝えます」

 

 こうして会議が始まった。 

 

 

 

 

 

 

 「ラムラン、お前は頻繁にこっちに来れないから何かあったら今後にしっかり話しておけよ」

 

 会議が終わり殆どのメンバーが居なくなった会議室で私は言う。

 

 「そうですね、行き違いが無いようにしないといけませんね」

 

 二人で話していると残っていたアリエラが会話に参加してきた。

 

 「ラムランちゃんもこっちに店を移して暮らしたらどうかしら?」

 

 効率は良くなるな、商品を卸している商会が同じ町にあった方が仕入れも売るのも都合がいい。

 

 「そうですねぇ……」

 

 そう言いながら横目で私を見るラムラン、どういう意味の視線だそれは。

 

 「私に何かあるのか?」

 

 ラムランは慌てた様子で胸の前で手を振りながら言う。

 

 「何でもないですただ、し……クレリアさんが居るなら私もこっちに来るのも良いかなって思ったり」

 

 「私を理由に決めるな」

 

 私が居なくなったらどうするつもりだ、いつかは必ず居なくなるぞ私は。

 

 「そう言われると思いましたけどぉ……」

 

 「しっかり考えてお前がそうしたいならそうすれば良い」

 

 本当にやりたい事ならやればいいさ。

 

 「……自分のやりたい事をやりたい様にやれ」

 

 彼女は小さくあの言葉を呟いて考え込むのだった。

 

 結局ラムランは答えを出さず自分の住む町へ帰った、後悔しないようにしろよ。

 

 

 

 

 

 

 レクシドに新店舗を出してから十年程過ぎたジャレン夫妻は引退した、モニカとその夫は店を継ぎ更に男女の子供も出来た。

 

 ロドロフは弟子を育て魔法武具の名工として名を高め魔法武具の祖として有名になった、ミシャも同じく弟子を育て魔道具製作の祖として名を上げ子供も出来た、最初は私を差し置いてと悩んでいたようだが弟子を育て広めたのは二人であると説得した。

 

 ラムランは結局レクシドには来なかったが錬金術の祖として有名になり結婚もし、多くの弟子に囲まれて頑張っているようだ、そしてそんな日々の中私に一報が入る。

 

 「手紙?」

 

 私宛だと言って渡された一枚の封筒、そこには大樹の根元に一人の少女らしき人物が佇んでいる封蝋印が押されていた。

 

 誰だ?

 

 差出人はケイン・イヌスと書いてあった、念話があるのになぜ手紙……どうやって私の場所を知ったんだあいつは。

 

 仕方ない奴だ。

 

 そう思いながら手紙を読む、その内容は大都市ウルグラーデにティリア魔法技術学校を創設した事、魔法だけであったが魔法以外の様々な事も教えられるように学科を増やしたい事、そのために現在広まりを見せている魔法武具鍛冶、魔道具、錬金術の教師を探している事が書かれていた、そして最後の一文を見る。

 

 「……くっくっく」

 

 思わず笑いがこぼれる、まったくお前は良く分かっているよ、私は笑いながら再びそれを見る、そこには……。

 

 《師が関わっているのでしょう?》

 

 と書かれていた。

 

 

 

 

 

 

 それから私は関係者を集めて話をした、ケインの手紙にはそれぞれの教師には十分な環境を用意する事、より多くの者に正しい技術と知識を教える気があるのなら、ぜひ教師として力を貸して欲しい事などが書かれていた。

 

 ラムランは迷わずに行く事にしたようだ、薬の納品も既に弟子に任せているため自由に動ける為やりたい事をやるらしい、夫も特に反対しなかった、ラムランはケインが私の教え子だと昔から知っていたしな。

 

 ロドロフとミシャもケインの事は話してあるし、既に商会の仕事は弟子に任せており弟子を育てる為の学校に行く事を決めた、ただ三人共もしも弟子では難しい仕事が来た場合は学校に連絡をして仕事を優先するようにして欲しいとモニカから頼まれ、三人はそれを了承した。

 

 「バラバラに私の教え子になった者達が今になって学校という場所に集まるとはな……」

 

 話がまとまり皆が一息ついたとき、私は思わず呟いた。

 

 「そういえばそうなんですね、皆さん師匠のお弟子さんなんですもんね」

 

 ラムランが言う、そこにミシャが答えを返す。

 

 「そうね、新しい技術に知識、魔法まで教えて貰っちゃってお嬢と会ったのは運命だったと思う事もあるわよ」

 

 「その通りだな、俺達が此処までになれたのはお嬢のおかげだぜ」

 

 ロドロフが相槌をうつ、皆も頷いている……そう言って貰えるのは悪い気はしないが。

 

 「私はきっかけを与えただけだ、技術を身に着け、知識を蓄え、此処までにしたのはお前達自身だ……自分の努力を私のおかげなどと言う言葉で否定するな」

 

 「ありがとよ、お嬢」 

 

 ロドロフが照れ臭そうに言う、残りの二人も気恥ずかしそうな表情で笑っている。

 

 「……本当に皆の先生なのね」

 

 モニカが思わずといった様子で言う、今更何を言っているんだお前は。

 

 「師匠は見た目は完全に子供ですからね!しかも美人さんです!」

 

 ラムランが声を上げる、前々からよく言われるな。

 

 「そんなに美人なのか私は」

 

 そう答える私にミシャが話しかけてくる。

 

 「そりゃもう美人だよ、今まで男に声をかけられなかったのかい?」

 

 「特に無いな、そもそも好き好んで人前に出る事が少ないからな」

 

 そう答える私に、ロドロフが口を開く。

 

 「お嬢は姿も声も綺麗だが、なんつーか、その……あれだ」

 

 言い淀むロドロフ、はっきり言え。

 

 ロドロフが言い淀んでいるとラムランが割り込んできた。

 

 「師匠、性格は男みたいですよね……言葉使いもこう、無駄に重々しい感じで」

 

 ラムランがそう言った瞬間部屋が静かになった、不味い事を言ったと思っているのだろうが私に性別は無い筈だからな。

 

 「特に誰かに性的に好かれたいとは思っていない、それに私は昔からずっとこんな感じだ……これから変わるのかずっとこのままなのかは分からないが」

 

 皆のホッとした雰囲気を感じる、その程度で怒らないぞ、自覚もしているしな。

 

 こうして余計な事も多く話したが話はまとまりケインに教師が見つかった事、その条件を書いた手紙を送った。

 

 

 

 

 

 

 手紙を送ってからおよそ一月後条件を全て受け入れ教師として正式に雇いたいという手紙が来た、三人はその一週間後ウルグラ

ーデに向かい旅立っていった。

 

 皆はウルグラーデに永住するそうだ、そろそろ落ち着いて暮らす気らしいな。

 

 さて、商会も盤石な状態になったしまた興味を引く物を探しに行くかな。

 

 「その前に辞める理由を考えないとな」

 

 どうしようか……私の事を教えて納得してもらうしかないかな。

 

 流石に若作りで済むような時間は過ぎてしまったし、姿を変えなければ長くいるほど怪しまれる、個人なら問題なく付き合えても不特定多数に異常性が知られると何が起きるか分からないからな。

 

 どうしても長い間一か所に留まるなら、その都度姿を変えて暮らせばずっと問題無く暮らせるだろう。

 

 

 

 

 

 

 「クレリア。話ってなに?」

 

 あれから半年、学校の皆も商会も順調だ。

 

 私は大事な話があるとジャレン、アリエラ、モニカの三人を会議室に呼び出した、ジャレンとアリエラはだいぶ老けたな。

 

 皆忙しいのに時間を作ってくれた事に感謝を述べてから話をする。

 

 「私はそろそろ商会を止めようと思う」

 

 「なんで……?クレリアも楽しそうに過ごしていたじゃない」

 

 モニカが聞いてくる、彼女は寂しそうだ。

 

 「三人に聞いて欲しい事がある。今から話すことは本当の事だ」

 

 そして三人に今までの事を話した、目覚めてから今に至る出来事を。

 

 「……」

 

 三人は黙ってしまった、いきなりこんな話をされてあっさり信じるのもおかしいからな。

 

 「えっと……私はクレリアちゃんが人間じゃないかもって薄々分かっていたわよ?モニカもそうよね?」

 

 「うん、気づいてた」

 

 全く動揺することなく会話するアリエラとモニカ、今まで私の事を知った者の中で一番驚いてないかもしれない。

 

 「まあ、僕も成人していると聞いて、子供が生きて行くために無理な嘘をついていると思ったよ……最初はね」

 

 ジャレンが苦笑いしながら話す……出会った時のあの反応はそう言う事か。

 

 「私もそう思ったわ……だけどラムランちゃんが貴女が師匠だと言った、それは本当でロドロフさんとミシャさんの事もあってあなたが本当に子供では無いと知ったわ」

 

 「そうなると、クレリアのその姿は若作りと言うレベルを完全に超えているのよね」

 

 アリエラ、モニカと続く。

 

 今までの皆もだが、長い時間一緒にいるとまずそこに疑問を持つのは当然だな。

 

 「そして今話を聞いて自然と思ったわ、やっぱりって」

 

 モニカが胸を張りなぜかどや顔で言う。

 

 「少数なら良い……三人や教え子達の様に受け入れてくれる者も居る……だがこのまま居続ければ町の者も気が付く時が来る」

 

 三人は納得したような顔をする。

 

 「お前達なら分かるだろう。一定以上の集団に私の異常性を知られた時、何が起こるか分からない」

 

 これまで暮らしていた中で似たような事はあった、私達に無関係な事ではあったが……集団はどう動くか分からない、同じ様に暴走してお前達にも被害が出る可能性がある。

 

 「でも、誰にもばれないようにすれば……」

 

 何とかしようと声を上げるモニカ、だけどそれでは駄目なんだ。

 

 「誰にも会わないなど不可能だ……ここで暮らす以上誰かの目に留まる、完全に閉じ籠れば可能性はあるがそんな生活、私はする気は無いぞ」

 

 「そうよねぇ……」

 

 私の返答を聞き椅子にもたれかかるモニカ、分かってて言ったなこいつ。

 

 「笑って送り出してあげましょう?モニカ」

 

 アリエラがモニカを諭す、ジャレンも頷いている。

 

 「分かったわよ、でも私達はずっと友達よ!私の子孫たちの店にも来てよね!」

 

 モニカが生きている間にまた訪れる可能性は低い、彼女も分かっているのか涙目に笑顔を浮かべながら言う。

 

 「ああ、また来るよ」

 

 微笑みながら答えるとモニカが抱き着いてくる、彼女が十三の時から姉妹の様に過ごしてきたが立派な大人になった……彼女を抱き返しながらしばしの時を過ごした。 

 

 その後私がこの家に来た当初から知っている僅かなメンバーのみでお別れ会をしてくれた、今までの苦労や思い出話に花が咲き夜遅くまで続いた……そして。

 

 

 

 

 

 

 「これからも長く続く商会にしてくれよ」

 

 「当り前よ、世界が終わっても残すわよ!」

 

 今でも元気なモニカ。

 

 「僕の人生で一番の友人ですよ貴女は」

 

 年を取り更に優しく穏やかになった、ジャレン。

 

 「クレリアちゃん元気でね」

 

 今でもちゃん呼びで抱きしめてくるアリエラ。

 

 そして古参の店員達。

 

 「じゃあ、行ってくる」

 

 「行ってらっしゃい!」

 

 重なる皆の声を背に私は町を出た。

 

 

 



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011


 書く事が無かったり、思いつかない時は時間が飛びます。

 この作品の注意事項

・作者の自己満足

・素人の作品

・主人公最強

・ご都合主義

・辻褄が合わないかもしれない設定

・注意事項が増える可能性

 等が含まれます。

 以上をご理解したうえでお読みください。

 読者の皆さんの暇潰しの一助になれば幸いです。





 

 商会の皆に別れを告げ徒歩で旅をする、その途中見えてきた町の様子がおかしい。

 

 魔物が来ているな。

 

 町の入り口で戦闘が起きている。戦っている者達は強いとは言えない動きだった、装備がもっと悪ければ死んでいると思う。

 

 町に立ち寄るつもりだったが……あのままではそれ所では無いな。

 

 私は町に急いだ。

 

 「おい!武器を貸せ!」

 

 「え?子供?!」

 

 戦闘に近づき傍にいた治療師らしき女の持っている剣を奪う。

 

 「この程度の魔物に苦戦するとは……」

 

 襲って来ていた魔物は犬のような魔物で大きさは人間の大人より少し小さい程度だ、警戒するように唸っている。

 

 私の事を知らない者達の前で魔法はともかく髪や他の手段は使いたくない、奪った剣を持ち豚に近寄る。

 

 「止せ!近寄るな!」

 

 周りの人間が声を上げ助けようとこちらに向かって来ようとするが、すぐ終わるぞ?

 

 人としての戦闘訓練をしていてよかった。明らかに人では無い戦い方をしたらどんな反応をされるか分からんからな。

 

 私は魔物の噛みつきを流れるように避けながら首を切り落とす。

 

 「え……?」

 

 誰とも分からない声がする、子供だと思っていたらあっさりと魔物を殺せばこうもなるか。

 

 「悪かったな。返すぞ」

 

 剣を持ち主に返しながら言う、さて町に入って宿をとるか。

 

 「待ってください!」

 

 宿を取ろうと町に向かおうとする私に声がかかる。

 

 「何か用か?」

 

 立ち止まり、声をかけてきた者……剣を返した女に答える。

 

 「旅の方にこんな事をいきなりお願いするのは失礼だと分かっています。ですがお願いします私達の話を聞いていただけないでしょうか?」

 

 「ソニアさんいきなりそんな事を言っても……」

 

 戦っていた男たちの一人が苦言を呈する、聞くだけなら聞いてみようか。

 

 「良いぞ」

 

 嬉しそうな顔をするソニアと呼ばれた女と驚く男、話だけなら聞くらいはする。

 

 「ただし聞くだけだ、どうするかは内容による」

 

 「ええ勿論です、ではこちらへどうぞ」

 

 こうして私は町に入るのだった。

 

 

 

 

 

 

 「こちらです」

 

 案内されたのは町の入り口近くの建物だった、見た感じでは詰め所だろうか。

 

 部屋に案内された私は彼女と男達が見守る中椅子に座った。

 

 「先に話しておこう、私はこう見えて成人している、特に気を使う必要はない」

 

 初めて会う相手に子ども扱いされるのは当たり前になってしまった、この見た目だから当然だが。

 

 「まじかよ……」

 

 男達から声が聞こえる、その反応も良くある事だ。

 

 「皆さん失礼ですよ」

 

 「す、すいません」

 

 彼女が咎め、男達が私に謝る。

 

 「なに、気にしていない、この見た目だそんな反応は慣れている」

 

 「申し訳ありません……それでお話なのですが……」

 

 彼女の話を聞くと、魔物が増えて町に来る頻度が上がりそれをどうにかする為に自警団を作ったのは良いが、戦闘の素人しかおらず教える者が居ないとの事だった。

 

 「貴女の戦いは見事でした……素人の私でも見とれるほどに」

 

 人が出来る程度に抑えているからな。

 

 「どうか暫くこの町に留まり私達に戦い方を教えていただけませんか?」

 

 私の人を育てる楽しみがやってきた、良いだろうしっかりと教えてやろうではないか。

 

 「良いぞ、その話受けよう」

 

 「ありがとうございます!」

 

 喜ぶソニア、男達も嬉しそうだ、まあ勝てなければ町が被害を受けるんだ当然か。

 

 あるいは私が居る間は安全だとでも思っているのかな。

 

 「私はこの町の代表の様な立場におります、ソニア・ニグレットと申します」

 

 「クレリア・アーティアだ、好きに呼べ」

 

 お互いに自己紹介し握手をする、こうして私は彼らを鍛える事になった。

 

 

 

 

 

 

 「中々良い部屋だな」

 

 あれから私は滞在する間の宿に案内された、宿と食事の代金は町が負担するらしい、他に欲しい物は自分で買って欲しいとの事だった。

 

 明日から早速訓練開始だ、まずは現状どの程度なのか確かめないとな、今は町に出て店を覗いてみよう。

 

 「そうだ武器を買おうか」

 

 いままで魔法でごまかしていたが訓練するとなれば用意しておいた方が良いな。

 

 「いらっしゃい!」

 

 通行人に訪ねて武器屋に来た、店によって扱っている物が違うらしいが。

 

 「長剣……ロングソードを見たいのだが」

 

 「それならあの辺りがそうだぜ」

 

 近寄って見て見てみる、装飾は無いが中々良い作りをしている。

 

 「中々良い物だな」

 

 「当り前よ、この武器はあのロドロフの弟子の鍛冶師が作ってるんだからな」

 

 感想を口にする私に武器屋の主人が答える……そうか彼の弟子が作っているなら納得だ。

 

 この装備が自警団の命を守っているんだな。

 

 私は一本手に取り周囲の安全確認をしてから軽く振ってみる。

 

 風を切るいい音がする……重量バランスも中々良い、これにするかな、そう思っていると武器屋の主人がこちらを見ているのに気が付いた。

 

 「どうした主人」

 

 「いや……今まであんな鋭い音出して振れる奴いなかったもんでな。あんたかなり使えるな?」

 

 「少なくとも自分が弱いとは思って無いな」

 

 「この町には立ち寄っただけなのか?」

 

 そう聞いてくる主人。

 

 「立ち寄っただけだが、やる事が出来た……この剣にあうベルトも頼む」

 

 剣を持ちカウンターに乗せる。

 

 「やる事?」

 

 「この町の自警団を鍛える事になった」

 

 金を払い剣とベルトを付ける、今の服装は黒のワンピースの腰にベルトと剣……変では無いよな?

 

 「そいつは助かる。誰かが守らなきゃ町が危ないのは分かってるが、俺はもう年で戦えん……だが出来れば若い連中に死んで欲しくはねぇ」

 

 「どこまで強くなれるかは奴ら次第だな」

 

 そう言い残して武器屋を出た。

 

 宿への道の途中魔道具や錬金薬の店も見かける、魔法武具や魔道具は今も高価だがロドロフとミシャの技術によって安価な物も以前より良い物になった。

 

 錬金薬と魔法学校による魔法の普及は様々な場面で有効に使われている。

 

 そしてそれらの技術は生活を豊かにし、今も増え続ける魔物に対抗する力にもなっている、きっとこれからも進歩を続けるだろう。

 

 そして魔物も進化するだろうな、眠りにつく前と比べても種類も数も全く違うからな。

 

 「どちらかが滅ぶような事にはなって欲しくないが」

 

 魔物も進化を続ければ意思の疎通が出来る者が生まれるかもしれないからな。

 

 やがて宿に着き、食事をし翌朝まで静かに自らを高めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 「これから皆を鍛えるクレリア・アーティアだ、好きなように呼んでくれ」

 

 自警団の訓練場に団員が集まり私が紹介された、十人か、命を懸ける事を考えると多い方かもしれないな。

 

 事前に私の事は話してあるようでそこまでざわつくことは無いまま挨拶は終わった。

 

 「まずそれぞれがどれだけ動けるかを確かめる」

 

 「こんなガキみたいな女使えるのかよ……」

 

 ……ふむ、まずはお前からだな。

 

 「そう言う事は心で思うか聞こえないように言え」

 

 そう言うと言った男が皆から見られる、男は怒ったように言う。

 

 「こんな奴に頼って恥ずかしくないのか!俺達だけでやれるだろう!?」

 

 「私はソニアに頼まれて此処に居る。文句があるのならソニアに言え」

 

 顔を赤くする男、私はさらに続ける。

 

 「私は訓練を受けたい者に訓練をする。受けたくないのならさっさと帰れ」

 

 そのまま戦っても早いうちに死にそうだからな。

 

 「……このガキがあぁっ!」

 

 男は突然私に向かって突っ込んでくる。

 

 「私は成人している」

 

 突っ込んできた男を軽くいなして気絶させる。

 

 「よし。一人ずつ模擬戦用の武器でかかってこい、どの程度か確認する」

 

 そう言いながら気絶した男を脇に放ると模擬戦用の剣を取ると団員の一人が聞いてくる。

 

 「あ、あの……アーティアさん。彼は……」

 

 さっき気絶させた男の事か?

 

 「放っておけ、そのうち目が覚める」

 

 「は、はい」

 

 男は顔を引きつらせながら返事をした、別に殺していないぞ?手加減も上手くなったからな。

 

 「よし、適当に順番を決めて始めるぞ」

 

 

 

 

 

 

 それから暫く経った訓練場には全ての団員が死んだように転がっていた……持久力が無さすぎる。

 

 気絶させた男が起きる前に終わってしまった。仕方ない……今日は彼らの現状を確かめるだけだったしな。

 

 「クレリアさんこれはいったい……」

 

 ソニアを呼びに行き、訓練場を見た彼女の第一声がそれだった。

 

 「現状を知りたくてな。全員と模擬戦をした」

 

 「すぐに治療しなくては」

 

 そう言って回復魔法をかけ始める。

 

 「魔法を使えるのか」

 

 「はい、ティリア魔法技術学校に三年在籍していたので」

 

 ケインの学校の生徒か、初めて生徒に会ったな。

 

 「頼りになるな」

 

 「基礎的な物だけですけどね」

 

 照れくさそうなソニア、魔法は使えるだけでかなり役に立つぞ。

 

 「あら?彼は……?」

 

 放っておいた男に気が付いたようだ。

 

 「奴は私に鍛えられるのが嫌なようでな。向かって来たので気絶させた」

 

 「そうですか」

 

 奴がどうするかは知らんが真面目に訓練するなら鍛えよう。

 

 「今日はもう終わりだ、また明日同じ時間に行う」

 

 「分かりました」

 

 予定を伝えると彼女は了承し治療に戻る、そうだ伝えておかないと。

 

 「その男にどうするかは勝手だが邪魔をするなと伝えておいてくれ」

 

 大人しくするなら良し、余計な事をするなら残念だが出来ないようになってもらおう。

 

 「……はい」

 

 ソニアは目を瞑りながら返事をした、その答えを聞いた私は訓練場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 私の部屋に戻り食事も風呂も終え後は朝を待つだけとなった夜、部屋のドアをノックする音が聞こえた。

 

 「ソニアか」

 

 鍵を外し扉を開けるとソニアが立って居た。

 

 「入っても良いでしょうか?」

 

 「いいぞ」

 

 ソニアを招き入れ、果実水を用意する。

 

 「ごめんなさいクレリアさん」

 

 「ん?なにがだ?」

 

 突然謝るソニア、意味が解らず問い返す。

 

 「訓練場で団員の一人が貴女に……」

 

 「ああ、その事か」

 

 彼女は責任を感じて詫びに来たのだろう、気分を損ねて話を無かった事にされるとでも思ったのかな。

 

 「特に気にしていない、初めて会う者に姿で侮られるのはいつもの事だ」

 

 「事前に話はしておいたのです……その時は特にそのような事は無かったのですが」

 

 実際に見て想像以上に私が幼く見えたからかもしれないが。

 

 「私は訓練を止める気は無い。奴も次から真剣に訓練を受けるのならそれで良いし、諦めても構わない」

 

 「ありがとうございます……」

 

 ほっとした顔をするソニア、そこまで心配だったのか。

 

 「クレリアさんはどうしてこのお話を受けて下さったのです?」

 

 そんなことを考えながら果実水を飲んでいるとソニアが聞いてきた、理由か……そうだな。

 

 「最初は人を育てるのが楽しそうだったからだな」

 

 「最初は?」

 

 不思議そうな顔をするソニアを見ながら言葉を続ける。

 

 「もう一つ増えた理由はソニアがティリア魔法技術学校の生徒だった事だな」

 

 「学校……ですか」

 

 不思議そうな顔は変わらず声を漏らすソニア。

 

 「あの学校には少し思い入れがあってな、生徒だった者に少し手助けしたくなっただけだ」

 

 初めて出会った生徒だ、多少手を貸すのも良いだろう。

 

 「なるほど……」

 

 返事はするもののやはり不思議そうな顔のソニア、まあ気にするな。

 

 

 

 

 

 

 そして翌日、ソニアにも来てもらい待っていると団員達はソニアの治療のおかげか多少疲れが残って見えるが全員揃った……そう、全員揃った。

 

 「良し、今日から暫く体力を上げる訓練をする、何をするにもまずは体力をつけなければ話にならない」

 

 そう告げると訓練場を走るように指示をすると全員走り始めた、昨日の男も。

 

 「あの男訓練を受ける気になったのだな」 

 

 「ええ、貴女が訓練場を後にしてすぐに目を覚ましまして。あの惨状を見て驚く彼に貴女がやったと説明したんです」

 

 ふむ、私の力を認めたのかな?

 

 「元々彼も命の保証はない自警団に志願した一人です……町を、仲間を思う気持ちは確かなんです……意地を張っても仕方ないと納得したのだと思います」

 

 このままだと勢力増し続ける魔物に町が飲み込まれるかもしれないからな。やれる事はやっておいた方が良い。

 

 こうして時間をかけて団員の体力を上げる訓練が始まった。

 

 

 

 

 

 

 「教官!準備が出来ました!」

 

 団員の訓練を開始してから半月皆体力も付き人員も増えた、魔物が町を襲う事もそれなりにあったが、私が付いて行きそれすらも訓練の一部とした。

 

 そんな事をしていたら団員から教官と呼ばれ態度が変わってしまった、最初はもう少し、こう……違ったはずなのだが。

 

 「分かったすぐ行く、お前達は装備を整え待機して居ろ」

 

 「はっ!」

 

 背筋を伸ばし気を付けをして返事をする団員……違ったはずなんだよな……。

 

 訓練場に移動した私は武器を取る、模擬戦用の刃を落とした鉄の剣だ。

 

 「全員!気を付け!」

 

 並んでいる団員の一人が声を上げると皆、気を付けをして私の言葉を待つ。

 

 「今日は月に一度の私との模擬戦だ。訓練の成果を全てぶつけてかかって来い」

 

 「はい!」

 

 団員の良い返事が重なる、以前ソニアに自警団というより軍隊に見えると言われた、その通りだな。

 

 私が中央で武器を持ち立つ、相手の男がやって来る、彼らの武器は刃を落としていない実戦用だ。

 

 そう思っていると団員が突然こちらに駆け寄り、中々良い剣筋で切り付けてくる。

 

 私はそれをはじき返し、言う。

 

 「戦闘に開始の合図など無い……良いぞ」

 

 更に打ち込んでくる彼、それを受けいなし躱す私。

 

 「それでは隙が出来るぞ」

 

 「ぐっ!?」

 

 振り抜いた攻撃の隙を縫って踏み込み柄で彼の鳩尾を打つ、それでも攻撃をしようとするがうずくまってしまった。

 

 「中々悪くなかった、次は相手に躱された後の事を考えて見ろ」

 

 「あり、がとう、ございました……」

 

 つっかえつっかえに返す彼は一礼し、よろめきながら戻って行った。

 

 「良し、次!」

 

 こうして訓練は実を結んでいった。

 

 

 

 

 

 

 更に三年が過ぎた、町の守りとしては今の所十分な練度と数がそろった。

 

 「それぞれ相手との模擬戦を行うように」

 

 「了解しました、教官」

 

 私は軍隊のような状態を改善するために以前皆に話をした、私に対する態度は好きにしていいが団員同士はいつも通りで構わないと説明した、その結果以前より気軽な感じになった、私以外には。

 

 もう私が模擬戦をする事は少なくなった、人数が増え難しくなったのだ。

 

 すぐに倒しては訓練にならず、時間をかければ時間が足りない。

 

 だから初期からいるメンバーを代理として団員内で訓練をするようにした、今では何かない限りは私が戦う事は少なくなった。

 

 ソニアも少数ながら魔法を教えるようになり、魔法を扱える者も増えてきた。初歩であってもやはり魔法は便利なのだ。

 

 そんな日々を過ごす中私が長く世話になっている宿の部屋に居ると、誰かが訪ねてきた。

 

 「開いているぞ」

 

 「し、失礼します」

 

 入ってきたのは若い、恐らく十三歳前後の男の子だった。

 

 「誰だ?」

 

 見覚えは無い、知り合いでは無いだろう。

 

 「ぼ、俺はルランド・カリスと言います!」

 

 「クレリア・アーティアだ」

 

 名乗られたので名乗り返す、はて何の用なのか。

 

 「お話を聞いて欲しくて来ました!」

 

 今までに何度か覚えのある状況だが。

 

 「聞くだけなら聞いてやる」

 

 彼の話の内容は、自分の町の様に魔物に脅かされている町や村を回って救いたいという物だった、それを行う為に自分を徹底的に鍛えて欲しいと。

 

 「駄目だな」

 

 俯き手を握り締める少年、意味も無く言っているわけではない。

 

 「まずお前はいくつだ?若すぎる。徹底的には鍛えられない……そしてお前、両親にこの事を話しているか?」

 

 「それならそれまでに少しずつでも鍛えて下さい」

 

 顔を上げて言ってくる少年、真剣だな。

 

 「ふむ、それなら構わないが……両親の事に答えていないぞ」

 

 再び顔を俯かせる少年、この感じは……。 

 

 「両親は居ません……俺がもっと小さい頃魔物に襲われて死んだと聞きました」

 

 現在彼は十三才らしい。

 

 「そうか」

 

 それでこんな事を頼みに来たんだな。

 

 「お祖母ちゃんは好きにしなさいと言ってくれました」

 

 その言葉を言った祖母は悲しそうな顔をしていなかったか、とは聞かない事にした。

 

 「本気なんだな?」

 

 「はい」

 

 両親を殺した魔物を殺して回るか、私が気にしても仕方ない事だな。

 

 「明日の朝また来い詳しい話をしてやる」

 

 「っ!じゃあ!」

 

 顔を上げて聞いてくる。

 

 「鍛えてやる、覚悟はしておけ」

 

 「分かりました!」

 

 動きやすい服装で来る様に言い帰宅させる、少年が帰った後ソニアにこれからの事を相談し許可をもらった、これで少年の訓練に集中できる。

 

 

 

 

 

 

 「来たな」

 

 「よろしくお願いします、先生」

 

 翌朝、私の部屋に来た少年を連れ自警団の訓練場の一角を借りる。

 

 「まずは訓練を開始する前に守る事を教える」

 

 「はい」

 

 「動きやすい服装で必ず来ること、どんなに食欲が無くても食事は食べる事、焦って自分で訓練をせず夜はしっかりと眠る事」

 

 「これだけですか?」

 

 気の抜けた顔で言うルランド、団員が言うには意外と大変らしいぞ、特に食事が。

 

 「そうだ。分かったら早速始めるぞ」

 

 「はい、先生」

 

 こうして訓練を開始した。

 

 

 

 

 

 

 少年を鍛え始めて二年、体もでき始めきつい訓練に耐えられるようになってきた。

 

 「ふっ!」

 

 訓練場に金属音が連続で鳴り続ける。

 

 「良いぞ、その調子だ」

 

 基礎訓練を終えた後は私との模擬戦だ……実戦に勝る訓練は無いと言うしな、ひたすらに様々なスタイルの私と戦い続ける。

 

 「そこまで!」

 

 「っは!!……はっ、はっ、はっ!!」

 

 その場に倒れるルランド、倒れている場合では無いぞ。

 

 「訓練後の柔軟をしろルランド」

 

 「は、はい……先生」

 

 立ち上がり体をほぐす彼、最初は途中で投げ出す事も考えていたのだが、弱音は今まで吐いていない。

 

 「育て甲斐のある教え子だ」

 

 自然と薄く笑みを浮かべながらルランドを見ていた。

 

 「次は魔法だぞ」

 

 私は彼に魔法も教え始めた、私が魔法を使える事に団員もソニアも驚いたようだが、その後ソニアがなぜか納得したような顔をしていた。

 

 

 

 

 

 

 更に三年後、十八才になったルランドも卒業間近だ、団員も彼の強さを認めており仲がよい。

 

 「ルランド」

 

 いつものように基礎訓練を終え、私との模擬戦に臨もうとする彼を呼び止めた。

 

 「はい、先生」

 

 「お前はもうすぐ卒業だ。それからは好きにすると良い」

 

 「え……でも先生。私は一度も貴女に勝てた事がありません」

 

 私に勝つなど一万年早い。

 

 「強くなった気がしないのか?」

 

 「正直な所……はい……」

 

 そうか……。

 

 「今日の模擬戦は中止だ、ついてこい」

 

 こうして私は彼を連れ町の外に出た。

 

 

 

 

 

 

 彼を連れて森へ入り目的の魔物を見つける、触手がたくさん生えた大きなネズミのような魔物だ。

 

 「あれと戦って見ろ」

 

 「あれは……昔俺が挑まされて死にかけた相手じゃないですか……」

 

 顔をしかめるルランド、いい思い出では無いだろうな。

 

 「良いから行ってこい、油断はするなよ」

 

 「勿論です」

 

 私に行けと言われれば彼は断れない、戦士の顔になり向かっていくルランド。

 

 戦闘はあっという間に終わった、彼は触手を躱し続け相手の噛みつきを流れるように受け流し首を落とした、それはまるで私のような動きだった。

 

 「あれ……?」

 

 かつて殺されかけた相手にあまりにも簡単に勝ってしまった彼は間抜けな声を上げた。

 

 「ルランド、勝ったからと言って気を抜くな!」

 

 全くこいつは、今のお前の実力なら当然だ、ずっと私を相手にしていたんだぞ。

 

 「すいません!先生!」

 

 我に返った彼が答える、そんな彼に声をかける。

 

 「これが今のお前の実力だ」

 

 「どうして急に……?」

 

 急に強くなる訳ないだろう……。

 

 「急にでは無い……今までの成果が形になっただけだ。お前は私と模擬戦ばかりしていたが強くなるにはこれが一番だった。私と戦い続けているうちにこいつをとっくに超えていた訳だ」

 

 「そうか、俺は……」

 

 そう言って武器を持つ手を見る彼。誇れ、お前は強くなった。

 

 

 

 

 

 

 

 こうして今日は終了とし、私はいつものように食事と入浴を済ませて部屋で寛いでいた、その時扉がノックされる。

 

 「ルランドかどうした」

 

 「もうすぐ卒業らしいから話をしておきたくて」

 

 「まあ入れ」

 

 彼を部屋に入れ果実水を出す。

 

 「それで話とはなんだ?」

 

 私を見て黙っていルランド、しばらく沈黙が続き私が再び促そうとした時、ルランドが言った。

 

 「先生。俺は貴女を愛しています、俺と一緒に街を巡ってください」

 

 私を見つめて言うルランド。

 

 は?いや待て。

 

 こいつ私に恋をしていたのか?何故よりにもよって私に……その想いは報われないぞ。

 

 「無理だな」

 

 「……なぜです」

 

 苦しそうな顔の彼、新しい恋を見つけて欲しいが。

 

 「お前の気持ちは嬉しいが私は人を恋愛対象として見ていない……そもそもそんな物が無いからな」

 

 苦しそうな顔から困惑した顔になる彼……これは話しておくか。

 

 「信じられるかは分からんが聞いて欲しい」

 

 そしていつもの様に私の事を話した、過去の事、私が人では無い事、ここに至る迄の事を。

 

 話し終わった後、静寂が訪れた彼は俯き手を握り締めている。

 

 「それでも、俺は先生の事が……」

 

 幼い少年に戻ってしまったような声で言う彼。

 

 「お前の気持ちは嬉しく思う。恋愛感情は分からないが……私もお前の事は大切な教え子だと思っている」

 

 子供の様に涙を流す彼の頭を撫でる。私はお前の想いに答えられない……新しい恋を見つけ幸せになってくれ。

 

 暫くの間泣き続ける彼を撫で続けていた。

 

 

 

 

 

 

 その後、彼はすっきりとした顔になりいつもの様に戻った。そして数日で準備を整え目的のために旅立っていった、いつか魔物から全ての町を救い私に妻を紹介すると言って。

 

 私が人間に求愛されるとはな。

 

 今までそんな事が無かったからそれなりに驚いたぞ、そう言えば私は美人だったな、強くて美人でいつまでも若く見える……そんなにいい事なんだろうか?

 

 そして私は彼の出発を機に街を離れた、今までまったく気にしていなかったが町の名前はシルチと言うらしかった。

 

 これでルランドとも会う事は無いだろうと思っていたのだが。

 

 

 

 

 

 

 ルランドの旅立ちを見届けてから十年後、街道を歩いている私に念話が来た。

 

 『先生、聞こえてるか?……これでいいんだよな?先生?』

 

 これはルランドか?向こうから念話が来るのはもしかして初めてじゃないか?あいつらは全く連絡をよこさんからな……まあ私も用が無ければしないが。

 

 『先生?駄目なのかな。どうすっか……』

 

 おっと不味い。

 

 『聞こえているぞ』

 

 『うおっ!?良かった駄目かと思ったぜ、先生』

 

 『お前から連絡が来るとは思わなかったぞ』

 

 『どういう意味だよそれ?』

 

 随分感じが変わったな。悪くなってはいない、何というかフレンドリーになったような感じか?

 

 『お前も大人になったか?』

 

 今いくつになったんだルランド。

 

 『何年経ったと思ってるんだよ先生……十年だぞ、俺も二十八だ』

 

 『ん?まだそんなものか、意外と経っていないな』

 

 『……そんなんだから一万年をサラッと過ごしちまうんだよ』

 

 言われてしまったが、寝てたようなものだぞ。

 

 人間は僅かな時間で色々変わるものだな。

 

 『で……何の用だ?』

 

 『先生の知恵を借りたい……俺のいる町に来てくれないか?』

 

 何かあったのか、私を頼るような。

 

 『構わんぞ、可愛い教え子の頼みだからな』

 

 『ありがとよ先生……町の名前はレクシドだ分かるか?』

 

 アルベリク商会のある町じゃないか、久しぶりに見に行くか?でもまずはルランドの事だな。

 

 『分かったすぐ行く』

 

 『どれぐらいかかる?』

 

 私は開発していた転移魔法でレクシドのそばに飛んでいた

 

 『もう着いた』

 

 『……はあっ!?』

 

 

 

 

 

 

 レクシドに着いた私は混乱するルランドに場所を聞き移動した。

 

 大きな趣味の良い屋敷がある。どうやらこの十年で辺境の英雄などと呼ばれて部下も各地に出来て、ギルドと言う戦闘集団を作って各地の魔物と戦っているらしい。

 

 「此処か」

 

 扉に近づき門番に近づくと声をかけてくる。

 

 「お嬢さん何か用かい?」

 

 感じは悪くない、中々良い仲間に出会えたようだな。

 

 「ルランド・カリスに会いに来た、クレリア・アーティアが来たと伝えてもらえないか?」

 

 「……分かった、ここを頼む」

 

 彼は僅かに訝しんだが、別の門番に声をかけると屋敷に入って行った、そしてしばらく待つと急いで戻ってきた。

 

 「ルランドがお会いになります、どうぞこちらへ」

 

 態度が変わっている、奴に何か言われたかな。

 

 

 

 

 

 

 屋敷の応接間に案内され、飲み物を飲んでいるとドアが開き歴戦と言った風体の男が入ってきた、この男……。

 

 「十年ぶりだな先生!」

 

 「元気そうで何よりだ」

 

 やはりルランドか、昔よりもずっと腕を上げているようだな。

 

 「積もる話もあるだろうが今は用件を聞きたい」

 

 そう切り出すと彼は語り始めた。魔物の増加に伴って魔物の素材が多く取れるようになった事、需要はあるが各地で異常に高かったり安く買い叩かれたりと差が激しすぎる事。

 

 そこで彼は考えた。自分達ギルドが魔物を狩り各地の商会と連携して、買取価格の安定と需要と供給のバランスを取れないかと言う話だった。

 

 ただ具体的にどういう仕組みにすればいいかわからず悩みに悩んで私に頼る事にしたらしい。

 

 「一つ良いか」

 

 気になる事がある。

 

 「なんだい先生」

 

 「この案お前が考えた訳では無いな?」

 

 彼はバレたかと言った顔になる。

 

 「正解。知り合いの商会の案だよ」

 

 なるほどな、なら恐らく……。

 

 「その案を出した者に聞いてみろ、誰かは知らないが恐らく何か考えていると思うぞ」

 

 モニカだったら食いついて来そうな話だな。

 

 

 

 

 

 

 後日ルランドが発案者に訪ねてみた所、すでに考えてあると答えが返ってきたらしい。私は何のためにここに来たんだ。

 

 その後彼の家に泊まる事になった私は、談話室でルランドと話しをしていた、色々な話をしてそこそこの時間が経った後私は聞いてみた。

 

 「ルランド、お前は結婚はしないのか?」

 

 「……先生がそれを言うのか」

 

 彼は苦笑いしながら答える……彼の初恋は私だったな。

 

 しばらく黙っていたがポツリと彼が言う。

 

 「気になってる相手は居るんだ」

 

 良かった、私にこだわっても良い事は無いからな。

 

 「誰だそれは」

 

 「俺にあの案を話した商会の娘だよ」

 

 商売だけでなく、人生も一緒にか。

 

 「名前は何というんだ?」

 

 「マリア・アルベリク」

 

 ……アルベリク?私が離れた時は男だけだった気がするがまた生まれたのか?

 

 「どうした先生?」

 

 おっと考え込んでしまった。

 

 「上手く行くと良いな」

 

 「ありがとよ」

 

 

 

 

 

 

 それから頻繁にルランドとアルベリク商会の話し合いが行われ色々と話が形になってきている、その間わざわざ来てくれたのだからと、私はルランドの屋敷に世話になっている。

 

 そんなある日、私は町に出て店を見て回っていた、アルベリク商会の本拠があるだけに規模も数も他の町とは一味違う。

 

 「失礼そこの方?」

 

 声が聞こえるが私は商品を見ている、そうしてしばらくすると。

 

 「あの、すいません」

 

 真後ろで声がした、私は振り返り声を上げた人物を見た。

 

 「申し訳ありません、間違っていたら申し訳ありませんが……ルランドさんの屋敷に滞在している方でしょうか?」

 

 赤い髪の大人しそうな少女だ、誰だこいつは。

 

 「ああ、確かに滞在しているがそれがどうかしたのか」

 

 「あの、こちらへ来ていただけないでしょうか?」

 

 私を人気のない方へ誘う女、何かするようには見えないしまあ良いだろう。

 

 人気の無い所へ来た私に女が質問してきた。

 

 「ルランドさんと貴女はどんな関係なのですか?」

 

 ……ん?どういうことだ?

 

 「その前に聞きたいのだが、お前は誰だ?」

 

 ハッとする少女、彼女は姿勢を正し答える。

 

 「申し訳ありませんでした。私はアルベリク家長女、マリア・アルベリクと申します」

 

 ほう、こいつが例の娘か、私とルランドの関係を聞いてきたと言う事は、案外この二人上手く行きそうだな。

 

 「なるほどそれで私と奴の関係か」

 

 「はい」

 

 彼女は私が名乗り返していない事など気にならないのか答えをせかす。

 

 「先生と教え子、だな」

 

 「ルランドさんに教えを受けていたのですか?」

 

 逆だが細かく説明も出来ないし、する気もない。

 

 「通りかかったから少し模擬戦をしていた」

 

 「その……男女の関係などでは……」

 

 顔を赤くして聞いてくるマリア、なるほどな私と恋仲なのではと心配になったわけだ。

 

 「誓っても良いがそんな関係ではない」

 

 昔、告白はされたがな。

 

 「そうですか……」

 

 ほっとした顔の彼女、良かったな、両思いだぞ。

 

 「もういいか?」

 

 「あっ、はい……ありがとうございました……あの、お名前を」

 

 「クレリア・アーティアだ」

 

 そう言ってその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 「困った」

 

 私の部屋を訪ねたとたんに言うルランド。

 

 「今度はなんだ」

 

 また何かあったのか。

 

 「新しいギルドと商会の仕組みにギルドカードってシステムを組み込もうとしてるんだよ」

 

 ギルドカードね、身分証明のようなものかな。

 

 「それで?」

 

 話を促す。

 

 「魔力パターンを利用した物を基礎にしようと思っていたらしいんだが、開発者が許可してくれないんだ」

 

 昔ロドロフとミシャと一緒に開発した物か、しかしなんで許可しないんだ?

 

 「何故断っているんだ?」

 

 「それが自分達以外にもう一人開発者が居て元はと言えばそいつの為に作った物らしくてな」

 

 何故念話で聞いてこないんだ?

 

 「少し待ってくれ」

 

 「お?おう」

 

 ルランドに断りを入れて念話をつなぐ。

 

 『ロドロフ、ミシャ聞こえるか』

 

 『うお!?つながった?』

 

 『私も聞こえたよ』

 

 二人の声が聞こえる。

 

 『二人とも魔力パターン技術を使うのを断っているようだな』

 

 『ああ、お嬢の為でもあるし俺達だけで決める訳にもな』

 

 『なぜ念話で聞かなかった?』

 

 『それが、聞こうと思ったんだけど繋がらなかったんだ』

 

 ミシャが答える、繋がらなかった?

 

 『どういうことだ?』

 

 『俺にも分からねえ……ずっと使わなかったからいつから駄目になったのかも分からないんだ』

 

 どうなっている?

 

 『今はその事は良い、後で調べてみる』

 

 『分かった』

 

 ひとまず用件を終わらせよう。

 

 『魔力パターン技術使わせても良いぞ』

 

 『いいのかい?』

 

 『ああもちろんふたりも良いと思うならだが』

 

 ミシャの確認に返す私。

 

 『お嬢が良いなら俺達は構わないけどよ』

 

 『そうだね』

 

 二人とも構わないようだ。

 

 『では頼んだ、念話については何か分かったらこちらから連絡する』

 

 会話を終えてルランドに話しかける。

 

 「魔力パターン技術使って構わんぞ」

 

 「え?なんで先生が……嘘だろ!?」

 

 困惑した後、驚くルランド。

 

 「良いから開発者に連絡を取ってみろ、今度は許可を貰える」

 

 「ありがとよ先生……」

 

 そう言って部屋を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 一年後、無事に許可を得たルランド達ギルドとアルベリク商会を始めとした各商会は魔力パターン認証技術としてギルドカードを作製し、徐々に世界へと広がっていく。

 

 その途中ルランドはギルド総括長として各地のギルドを統率する立場になった。

 

 更に五年後、魔物の買取が安定した結果、ギルドメンバーの中に魔物を狩りより価値のある珍しい魔物を求めて未開の地にもおもむく者が現れ始め、やがて彼らギルド所属者は冒険者と呼ばれるようになり数を増やし、一種の何でも屋の様な立場になってゆく。

 

 その間に念話の問題も判明した、本人の魔力と大気中の魔力濃度が念話に影響していることが分かった、私の様に大きな魔力があれば問題ないが、少なくなってくると距離や先程の大気中の魔力が影響して繋がったり繋がらなかったりする様だ。

 

 そして私はそれを見届けた後、町を離れ旅を再開した。

 

 

 





 最後は細かく書くのが大変そうだったので、説明でお終いです。

 念話は、本当は教え子から念話が来て……と言う話を書くつもりだったのですが、気が付けば誰も連絡して来ないままになってしまったので、こういった設定を無理やり付けました。




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012


 主人公の能力と魔法の設定はあったのですが、なんか色々出来る、になっているかも。

 何が出来て何が出来ないと考えるより、主人公がやる気になるかならないかで決めた方が楽そうなので、このままで。

 この作品の注意事項

・作者の自己満足

・素人の作品

・主人公最強

・ご都合主義

・辻褄が合わないかもしれない設定

・注意事項が増える可能性

 等が含まれます。

 以上をご理解したうえでお読みください。

 読者の皆さんの暇潰しの一助になれば幸いです。


 

 ギルドと商会の仕組みの定着と冒険者の誕生を見届けた私は再び旅に出ていた、結局あれから長い間同じ町に居たにも拘らず商会の皆に会う事は無かった。

 

 それで何となく分かった事がある。

 

 一度長く関わった人間には意味もなく関わる気がしない。

 

 飽きてしまう……とは少し違うが、以前会った相手よりも新しい誰かの方が興味を引くようだ。

 

 それに気が付いた時自分はやはり酷い奴なんだなと思わず笑った。

 

 どれ程仲が良くなろうと興味を失えばそれまで……自分の身勝手さを感じながら旅をする中、立ち寄った場所である話を聞いた。

 

 宗教だ。

 

 クリミア教と言う宗教が各地に広まっているらしい、布施などを神に捧げる事で死後神の世界へ行けると言う事らしいが……。

 

 なぜこんな妄言が信じられているんだ?

 

 あまりにもおかしい。今まで出会った者達を見るとそんな事を信じる者がそこまで増えるとは思えないのだが……。

 

 興味がわいた、行ってみるか。

 

 こうして私はクリミア教本部のある神都テレミアに向かう事にした。

 

 

 

 

 

 

 かなり賑わっているな。

 

 中々に大きい町だ、何故か黒い服の人間が多い気がする……私も黒いワンピースだが。

 

 「いらっしゃい」

 

 私は町の食料品店に立ち寄り食料を買うついでに聞いてみた。

 

 「この町は黒い服が多い様だがどういうことだ」

 

 店員の女性は不思議そうに言う。

 

 「ん?お嬢さんクリミア教の信徒じゃないのかい?」

 

 なぜそうなる。

 

 「どういうことだ?」

 

 「お嬢さんは黒い服を着てるだけなんだね、クリミア教の信徒は黒い服を着るのさ……昔ここに降臨した神様が黒い服を着ていたらしくてね」 

 

 そう教えてくれる、なるほど神とやらに合わせている訳か。

 

 「なるほど。教えてくれてありがとう」

 

 「いいよ、こんなに買ってくれたしね」

 

 店員にお礼を言って店を離れる、なぜこんなに信じられているのか教徒に聞いてみようか。

 

 

 

 

 

 

 「ここが神が住んでいた神所です」

 

 私はそのあたりの信徒に声をかけなぜそこまで信じているかを聞いた所、実際に神が住んでいた家が存在し今も奇跡に守られていると聞いた。

 

 見学できるか聞いた所、問題無いようだったので案内されたのだが……。

 

 「……これは」

 

 「一見ただの家のように見えますが、いつまでも汚れる事が無く、何をしても傷一つ付きません!今の世界にこの様な魔法も技術も存在していません!これこそが神の技!神が存在した証明なのです!」

 

 困惑する私をよそに説明に熱が入る信徒の男性、私は説明を聞き流しながら目の前の家を見ていた。

 

 「ここはあの村だったのか」

 

 ポツリとつぶやく……それは間違いなくかつて私がンミナ達と過ごした家だった。

 

 

 

 

 

 

 あの家のせいか……。

 

 私は宿を取り部屋で考える、確かにあれには私の維持魔法や防御魔法がかかっている。

 

 今の魔法技術であろうと何であろうと私以外では恐らく破れる者は居ない。

 

 単なる言葉だけならばまだしも、実際にああして今でも不可能な現象が起きていれば信じてもおかしくは無い。

 

 昔はこの村で神として崇められていたが、まさかここまで規模が大きくなるとは……。

 

 まあ放っておこうか、心の拠り所は必要だ。暫くこの町を見て回ったらまた旅を始めよう。

 

 

 

 

 

 

 ん?なんだあいつらは。

 

 町に滞在してから三日目の朝、町を歩いていた私は町の広場の中央にある高台に居る豪華な黒い服を着た男と、黒い服を着た少女を見つけた。

 

 周りには信者である黒い服を着た者達が居り、普通の服を着た女性が跪いている。

 

 「私は神の国に行きたいのですどうすればよいのでしょうか?」

 

 跪いている女性が言う、神の国だと? 

 

 そう思っていると豪華な黒服の男が言う。

 

 「神の言葉を聞き従えば貴女のは死後神の国に誘われるでしょう……神の生まれ変わりである巫女様のお言葉を聞きなさい」

 

 神の生まれ変わり?私は此処に居るのだが。

 

 「はい……」

 

 男の言葉に従う女性、宗教とはこのような物なのか……下らんな。

 

 「神として命じる……汝は教祖たるこの男に……すべてを捧げなさい、さすれば神の国に導かれる……でしょう」

 

 「はい……神よ」

 

 巫女と呼ばれた少女の顔が見えた、彼女はそっくりではないが確かに彼女の面影があった、その顔は悲しそうだった。

 

 「……ンミナ」

 

 私はそう呟いた。

 

 そう思い彼女を見ていると教祖と呼ばれた男が嫌らしい笑みを浮かべながら言う。

 

 「神の言葉は届けられた……貴女は今夜私の所に来るのです、良いですね?」

 

 「はい。身も心も全て教祖様に捧げます……」

 

 女性はそう言うと、教団が用意したと思われる黒い馬車に乗り込んで連れていかれた。

 

 私はその光景を見届けた後宿に戻った。

 

 

 

 

 

 

 「彼女は悲しんでいた」

 

 これは彼女に会いに行くか。

 

 もしも嫌がる彼女に……私の巫女を利用しているのなら報いを受けて貰う。

 

 彼女の居場所は分かる、夜にお邪魔しよう。

 

 

 

 

 

 

 そしてその夜私は神殿の彼女の部屋に入り込んだ。

 

 「っく……ひっく……」

 

 彼女は泣いているようだ、私は身に着けていた剣やベルトを外し姿を現した。

 

 「っ!?誰……?」

 

 彼女は驚いたようだが私の姿を見ると話しかけてくる。

 

 「私はクレリア・アーティアと言う、聞きたい事があってきたんだ」

 

 私は優しく語り掛ける、彼女は戸惑っているが何故か騒いで助けを求めようとしない。

 

 「あ、シルミア・アティ……です、クレリア・アーティアさんですか……何でしょうか……?」

 

 戸惑うような表情をして聞いてくる彼女。

 

 「シルミアか。シルミアは神の生まれ変わりなのか?」

 

 「違います!私はただの巫女の家に生まれた人間です……」

 

 そうだろうな。

 

 「どうしてこんな事になっている?他の巫女はどうした?」

 

 「それは関係のないあなたに貴女に話す訳には……」 

 

 何か決まりにでも縛られているのか、戸惑うシルミア。

 

 「話して欲しい、ンミナの一族に辛い思いはさせたくは無い」

 

 私の言葉を聞き目を見開くシルミア、暫くすると彼女は語り始めた。

 

 魔法や技術が広まるにつれ扱いが悪くなっていった事、利用されそうになる前に泣く泣くこの場所を捨てて逃げた事、自分達も逃げようと思っていたが寝ている所に忍び込まれ捕らえられた事、母親の命と引き換えに教団の巫女として働く事を強制された事。

 

 「なるほどな」

 

 「ひっ!?」

 

 体から霧が出るのは抑えたが髪がなびき始める、昔よりは抑えられたがどうもイラつくとダメだな。

 

 「悪かった、怖がらせるつもりは無いんだ」

 

 「平気です……あの貴女は……」

 

 どうするか……今私がその神と言われていたと言って信じて貰えるのか?

 

 「信じないだろうが私が神と呼ばれていたクレリア・アーティアだ」

 

 黙ってしまうシルミア。

 

 「一つお答えください」

 

 そう言うシルミア。

 

 「なんだ?」

 

 「ンミナ様は貴女にとってどんな方でしたか?」

 

 それは決まっているあの時、彼女に伝えた気持ちは変わっていない。

 

 「ンミナは私にとって初めて心を許した人間であり、姉であり、妹であり……母親だ」

 

 それを聞いた彼女は私に跪いて首を垂れる。

 

 「……おかえりなさいませクレリア様」

 

 お前達の一族は今も私を敬ってくれるのだな……だが間違っているな。

 

 「シルミア今はそうでは無いぞ」 

 

 顔を上げて私を見る彼女、そんな彼女に両腕を開いて待つ私。

 

 「あ、あの……クレリア様?」

 

 黙って待つ私、彼女は戸惑いながらも私に抱き着く、私は彼女を抱きしめる。

 

 「ただいま私の巫女、私の娘……お前と母親は私が救ってやる」

 

 「クレリア……様」

 

 私の胸で泣くシルミア、しばらく彼女の泣き声を聞いていた。

 

 

 

 

 

 

 「さてまずは母親を救おうか」

 

 泣き止んだシルミアに話しかける。

 

 「でも私は居場所を知らないのです」

 

 そう言う彼女だが。

 

 「私を誰だと思っているのだ」

 

 すぐに彼女の母親を探し出す、普段はこんな事はしないが今は別だ。

 

 「お前の母親を救いに行く。お前はここで大人しく待っていろ」

 

 「はい」

 

 そう答える彼女を残し、姿を消し母親のいる地下へ向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 見張りは居たが消えている私には関係ない、そのまま地下に下りる。

 

 その先にあったのはずらりと並んだ牢屋の様な部屋だった、幸いと言うべきか、彼女の母親以外は居ないようだ。

 

 「良いとは言えない状態だな」

 

 見つけた彼女は寝ていたが、体は弱り始めていた。

 

 「まずは回復だな」

 

 回復させ目覚めさせる。

 

 「ん……あれ、体が……」

 

 起きた彼女は体が楽な事に気が付いたのか声を上げる。

 

 「目が覚めたか……さっさと抜け出すぞ」

 

 「えっ?」

 

 彼女をつかみシルミアの部屋に転移する。

 

 「ふぇ?」

 

 「お母さん!」

 

 可愛らしい戸惑いの声を上げる母親と母親に抱き着くシルミア、私は訳も分からず娘を撫でる母親と泣きながら抱き着くシルミアの姿を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 「クレリア様……」

 

 「無事でよかった、私の巫女……私の娘」

 

 シルミアの母親、クレア・アティを抱きしめる。

 

 私があの神である事を始めは信じられないようだったがンミナに言ったあの言葉で信用された。

 

 どうやら私とンミナの主従の様な家族の様な関係と、死に際のやり取りは記録に残っており、厳重に隠し守られ代々巫女と巫女候補達しか読む事が出来ないらしいな。

 

 それを巫女ではない私が一言一句間違えずに言える事が信じる根拠だったらしい。

 

 まあ他にも転移したり髪が動いたりあっさりクレアを救ったりと、根拠はあったらしいが。

 

 「クレリア様この後の事ですが……」

 

 「まずはお前達が二度とこんな事にならないようにする」

 

 私の巫女達に手を出したことを後悔させてやろう。

 

 

 

 

 

 

 

 その後、私は彼女達を連れて広場に神として名乗りを上げ堂々と降臨し、巫女とは神に仕える者であり生まれ変わりでも代弁者でも無い事を町中の者に魔法で響き渡らせた。

 

 私腹を肥やしていた者達は私の前に引きずり出し、多くの信者と町人が呆然と見守る中、消し飛んでもらった。

 

 町の者達は信者もそうでない者も、ひれ伏し神の怒りに身を震わせ許しを請い、大騒ぎとなった。

 

 この騒ぎは長く続いたが私は後をアティ母娘に任せて身を隠した。

 

 泣く泣く逃げた巫女達も戻り、これでふざけた宗教は無くなるだろうと思っていたのだが。

 

 

 

 

 

 

 「どうしてこうなったのだ?」

 

 「私には何とも……」

 

 姿を隠して一年、テレミアの付近に身を隠したままクレアとシルミアの報告を聞いた私は聞き返す。

 

 クレアが言うには、あの時ハッキリと名と姿、そしてその力を見せてしまった事で、本当に神が居たと町の全員が崇めるようになってしまいその時共に居たアティ母娘が神に選ばれた使徒として認識されてしまった。

 

 宗教的にはまったく無くなっておらず、それどころか一気に信者が増えてしまったらしい。

 

 「以前の様な私欲を満たすようなものでは無くなりましたが……」

 

 クレアが苦笑いをしながら言う。

 

 あの後各地で神に似た者を見た事があると次々報告があり、人に紛れ気まぐれに救いをもたらす自由を司る神であると認識され定着してしまった。

 

 あれだけのやったのに恐怖の対象では無いのは無関係な者には一切罰が下されていないかららしい。

 

 後悔は無い、奴らを許す気もなかったし我慢する気もない……が。

 

 これは諦めるか。

 

 姿を変えて過ごそうかと思ったが今の姿に愛着があるしな、この姿が一番だ。

 

 目撃者や信者から記憶を消すことも不可能では無いだろう。

 

 だが流石に数が多いしそこまでする気にならない、百年ほど身を隠していれば落ち着いて、また旅が出来るようになるだろう。

 

 「クレリア様。私達はどういたしましょうか……?」

 

 シルミアが聞いてくる。

 

 「お前達が嫌でなければ……クレリア神教……この宗教が変な方向に行かないようにして欲しい」

 

 後悔は無いがこの名前はな……自分の名前が付いた宗教がったら町で名乗りにくくなるではないか。

 

 「分かりました。私達が見届けます」

 

 二人は了承する。

 

 「無理にやらなくても良いんだぞ?」

 

 そう言うと、クレアが答える。

 

 「いえ問題ありません。私達はすでに信徒から使徒と認識されているので」

 

 そうか、そうだったな。

 

 「巻き込んでしまったな」

 

 「何も問題ありません。私達は生まれた時から貴女様の巫女なのですから」

 

 クレアは微笑んで答える。

 

 「ありがとう」

 

 そう私が言うと、二人は一礼し、去って行った。

 

 「しばらく人類の勢力圏外を旅するか」

 

 そう決めて旅立った。

 

 

 





 主人公を色々出来てしまう設定に変えたので、本気で動くとどんな問題も数行で解決してしまいます、それはお話にならないので主人公は気まぐれに動いたり動かなかったりします。






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013


 今回の言い訳……念話は主人公の様に通話可能な魔力がある者からつなげられた場合、会話可能という事で。

 この作品の注意事項

・作者の自己満足

・素人の作品

・主人公最強

・ご都合主義

・辻褄が合わないかもしれない設定

・注意事項が増える可能性

 等が含まれます。

 以上をご理解したうえでお読みください。

 読者の皆さんの暇潰しの一助になれば幸いです。




 

 流石に何も言わないのは私が嫌だった為、長い間姿を隠す事を皆に念話で伝えた。

 

 反応は様々だったが皆からは私がする事だからと納得の様な諦めの様な言葉を貰った。

 

 そうして旅をしているある日、魔力濃度が以上に高い場所を感じた。

 

 ……この洞窟の中か?

 

 その場所は森の中の洞窟の奥だった、確認するために中に入る。

 

 近寄ってみると魔力が溜まっているだけでなく、奥から流れてきている。

 

 原因が奥にあるはずだ。

 

 そのまま奥に進むと曲がりくねった道になってきたそしてしばらく進む。

 

 女性……か?

 

 金髪の恐らく成人しているだろう女性が裸で倒れていた。

 

 「おい、生きているか?……ん?」

 

 肉体的に問題が無いかと調べた所人間では無いようだった、今まで見た事が無い。

 

 まさか……いや、違うか……。

 

 私の同類かと思ったがどうやら違うようだ。ただ彼女が特殊な……私の様な独立した種族である可能性が高い。

 

 とにかく連れ出してみるか。

 

 何かあっても私ならどうにかなるだろう、私は彼女を髪で持ち上げると外へ向かう。

 

 裸なのはちょっとな。ワンピース……いや大人の女性ならドレスにしようか、黒いドレスを彼女にまとわせる。

 

 「金髪に黒いドレスは中々似合うな」

 

 そんな事を言いながら待つ。

 

 「あぅ……」

 

 外に出て洞窟のそばの地面に寝かせていた女性が目を覚ました。

 

 「気が付いたか、何があった?」

 

 彼女はオレンジ色の瞳をきょろきょろさせてぼんやりしている、寝ぼけているのか?

 

 「しっかりしろ、しっかり目を覚ませ」

 

 「うー……あー」

 

 彼女は呻きながら転がっている、流石に違和感を覚える。

 

 「おい?」

 

 「だー……うー」

 

 これは……。

 

 「う……わあああああぁぁぁん!!」

 

 「知能が赤子並みなのか……?」

 

 いきなり泣き出した女性を見て思わず口にする。

 

 「とにかく何とかしよう、子育ての真似事なら何人もやってきた」

 

 おそらくお腹が空いているんだろう、肉体的には大人に見えるが念の為栄養バランスを考えた離乳食にしよう。

 

 「くぅ……くぅ……」

 

 食事を食べた彼女はお腹が一杯になったのか寝てしまった。

 

 どうするか。

 

 見捨てるか……?いや、どうせしばらく一人で過ごす予定だったんだ、この子……と言っていいのか分からないが一緒に過ごすのも悪くは無い。

 

 まずは落ち着く場所を探すか。

 

 彼女を毛布で包んで髪で持ち上げ住む場所を探す。

 

 探し回った結果、森の中にある綺麗な湖の畔に家を建てた。

 

 久しぶりに家を建てたな……。

 

 リビング、キッチン、寝室二つと風呂場に倉庫……後は必要な時に増築しよう。

 

 ……精神的に赤子同然なら最初は私の寝室に寝かすか。

 

 私は寝室にベッドを増やし、彼女を寝かせる。

 

 これだと名前も無いのだろうな。

 

 仮に捨てられたなら名前はある可能性が高いが、彼女があの状態では確認など出来ない。

 

 「そうだな……この子はカミラ、カミラ・アーティアだ」

 

 名前が無いと不便だからな。

 

 

 

 

 

 

 カミラと過ごして一月が過ぎた、一月過ごして分かった事は、彼女の肉体は大人の物であり精神だけが赤子に近い状態である事と見た目の体の作りは人間そっくりでありながら私の様に排泄をしない事、食事は通常の食事でも問題無かった事……そして。

 

 この子は血液が好きなのか。

 

 生物の血液が好きな事。狩って来た獲物の血を啜っているのを見た時は大丈夫かと心配したが、満足したようにげっぷをするカミラを見て好物だと分かった。

 

 体液を好んで吸う生物は小型の魔物や昆虫などには居るが大きな生物で、それも人型など見た事は無い。

 

 普通の食事も嫌いでは無い様だな。

 

 普段の食事の食べっぷりを見ていると美味しそうに食べている。栄養的には問題無いか……?そもそも私と同じく人間では無い彼女に人間の栄養が関係するかは分からないしな。

 

 

 

 

 

 

 カミラと過ごし始めて半月が過ぎた頃彼女が私に「ママお腹空いた」と言った、彼女がいる時に何げなく私がママという事になるのかと呟いたのだが……その直後に話した。

 

 人と比べると話すのも大分早い、かなり早く大人になるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 「ママ、ぎゅってして」

 

 あれから更に一年半が過ぎた、はっきりと言葉を話し知性も高く急速に育っているように感じる。

 

 「おいで、カミラ」

 

 座っていた私はベッドに寝て彼女呼び頭を包むように優しく抱き締めてやる、誰かが見ればいい大人が子供に甘えているように見えるだろうな。

 

 「んー」

 

 嬉しそうに、気持ちよさそうに声を上げるカミラ。急速に成長する彼女だが甘えん坊はずっと変わらない。

 

 

 

 

 

 

 「ママ、この世界にはいろんな種族が居るのね」

 

 四年後。私は彼女に教育を始めた、これから様々な事を教える。

 

 この子の役に立つ様に。

 

 「そうだな、私とカミラも違う種族なんだ」

 

 「私とママも違うの?ママなのに?」

 

 そう思うか、今までの子供たちは他に本当の親が居たがこの子は居ないからな。

 

 「種族が違っても母娘にはなれるんだ、カミラもそのうち分かるかもな」

 

 「うーん……わかんない!」

 

 笑いながら言うカミラ、今までの旅で種族違いの親子なども知っている、血は繋がって居なくとも確かに親子だった。

 

 「ゆっくり分かればいいさ」 

 

 そう言いながら彼女の頭を撫でた、彼女は目を細めて嬉しそうにしていた。

 

 

 

 

 

 

 カミラと暮らしていたある日、私は湖の畔で日光浴をしていた。

 

 風がそよぐ中のんびりと椅子に座って景色を見ていると水辺であそんでいるカミラが寄ってきた。

 

 「どうしたカミラ?」

 

 声をかけると椅子に座っている私を抱き上げ膝に乗せてからカミラが椅子に座る、体格を考えるとこうなるのだ。

 

 「ママは前は人間と暮らしていたんだよね?」

 

 「そうだな」

 

 私を後ろから抱きしめながら言うカミラに答える。

 

 「いつか私も行きたい」

 

 「そうだな、私はもうしばらく行く気は無いけどそのうち行こうな」

 

 「うん」

 

 町へ行ってみたいと言うカミラの言葉を聞いてすぐには無理だろうと考える。

 

 今私が町へ行きもしも騒ぎになったら彼女が楽しむどころでは無い。

 

 そうなると後数十年は近寄りたくは無いのだが……、彼女はそこまで我慢できるだろうか。

 

 彼女が我慢できなくなったら改めて何か考えよう、最悪見学程度なら姿を変えても良いしな。

 

 「くぅ……ん……」

 

 彼女は私を抱いたまま椅子にもたれかかり寝てしまった、まあいい私もこのままのんびりとしよう。

 

 人と関わり始めてから自然の中でこの様に過ごす事はほぼなくなった気がする。

 かつて一人で長い時を過ごした頃を思い出し、私は彼女にもたれかかりながら空を眺め続けた。

 

 

 

 

 

 

 ある日。リビングでカミラに膝枕しながら人の町で買っておいた本を読んでいた私は、我が家によって来る魔物を感知した。

 

 しかし私は何も言わないし何もしない。しばらくすると今まで私に膝枕され目を閉じていたカミラが目を開き起き上がった。

 

 「ママ、来た」

 

 「よしよし、中々良い反応だ」

 

 私は彼女の頭を撫で更に彼女に言う。

 

 「では、ご飯を獲ろうか」

 

 「うんっ!」

 

 そう言うと彼女は元気な返事をして外に出て行く、私はその後に続く。

 

 「ガァァアァー!」

 

 待っていると森から丸い体に嘴を持ち長めの二本の足が生えた魔物が飛び出してくる。

 

 「カミラ、良いか?」

 

 「うん」

 

 私に返事をすると両手の爪を伸ばし構えるカミラ、最近戦闘も教え始めたのだが覚えが良く身体能力も高い彼女は実戦に入るまで早かった。

 

 「ガッガッ!!」

 

 思ったよりも早い速度でこちらに向かって走ってくると手前で跳躍し嘴で突いてきた。

 

 「えいっ!」

 

 彼女は左の爪で嘴を弾き、そのまま右の手を揃え爪を突きこんだ。

 

 「ギオオァァァ!!」

 

 「うるさい……フレイム」

 

 痛みの為か大きく叫ぶ魔物に対し冷静に魔法を使うカミラ、突きこんだ爪から炎が噴き出し魔物の内部を焼き、すぐに魔物は焼け死んだ。

 

 「ママ!どうだった!?」

 

 爪の汚れを払い長さを戻すと私に聞いてくるカミラ、悪くない戦闘だったが……。

 

 「フレイムはあまり良くなかったな」

 

 「えー、なんで?」

 

 不満そうなカミラ。

 

 「私達は魔物をどうするつもりだった?」

 

 「え?えっと……あっ!」

 

 気が付いたか?

 

 「私達は食べるために殺したんだ、でも見てごらん」

 

 魔物は内部から焼かれ殆ど黒焦げだ、これでは食べられる場所はほとんど無い上にカミラの飲む血液も採れない、かなり無駄になってしまった。

 

 「ごめんなさい……」

 

 「何度も間違えなければそれで良い」

 

 あやまるカミラの頭を撫でながら言う。

 

 「さあ残った部分を取って今度は探しに行こう」

 

 「うん」

 

 僅かな無事な部分を取り、今度はこちらから獲物を探しに森へと入っていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 雨が降る中新しく増設した錬金室でカミラは私と錬金術の練習をしていた。

 

 「私が用意した見本と同じ色になるまでこの溶液に魔力を流す、さあやってみろ」

 

 「うん」

 

 カミラはゆっくりと魔力を溶液に馴染ませる、魔力コントロールの練習にもなり一石二鳥だ。

 

 「あっ!?」

 

 「魔力を込めすぎたな」

 

 色は見本の色を通り過ぎていた。

 

 「むずかしい……」

 

 元気がなくなるカミラ、彼女は錬金は嫌いでは無いらしいが。

 

 「この製薬法は戦闘時の魔力コントロールの訓練にもなる、やっておいて損は無いぞ」

 

 「ほんと!?がんばる!」

 

 元気になる彼女、やはり戦闘の方が好きか。

 

 「これは錬金術の練習だからな?」 

 

 「わかってる!」

 

 本当に分かっているかは分からんなこれは。

 

 

 

 

 

 

 実戦訓練もかなりの数をこなしカミラももうかなり強くなっている、だが慢心しているというか油断しているというか。

 

 今日はまた新しい魔物と戦闘だ。私はこいつを知っている、彼女に会う前に何度も戦っているからな。

 

 「楽勝!」

 

 小さい人型の口が二つ横に並び目が一つの魔物がアイスランスを打ち込まれ倒れる、彼女は私の方を見て言う。

 

 「ママ終わったよー!」

 

 「そうか」

 

 私はあえて何も言わない、この先知っておく事は悪い事ではない筈。

 

 そう言って彼女が魔物に背を向けた瞬間音も無く鋭い岩の槍が空中に作られ、彼女の頭めがけて打ち出される。

 

 「避けろ!」

 

 「っ!?」

 

 今までの訓練の成果か私の声に反応して咄嗟に横に飛ぶカミラ、敵の槍は彼女の頬をかすり飛んで行った……反応は中々だな。

 

 私は更に攻撃を加えようとしている魔物を縦に両断する、魔物は今度こそ完全に息絶えた。

 

 「な、なんで……?」

 

 掠った怪我はあっという間に治ったが驚いている彼女、では教えようか。

 

 「どうしてこうなったかわかるか?」

 

 無言で首を横に振るカミラ、悔しそうだな。

 

 「見た目の小ささに油断したか?あいつは防御を固めて相手の一撃を受けて倒れ、油断したところに致命の攻撃を打ち込んで来る」

 

 奴が他の魔物と戦っているのを目撃した時は興味深く観察してしまった、それまで私にやってこなかったのは私の攻撃が防御を抜いていたからだったのだと気が付いた。

 

 実際に彼女のアイスランスは致命傷になってはいなかった、黙って聞くカミラ。

 

 「お前、相手が弱そうだからと手を抜いたな?お前の魔法で抜けない防御では無かった」

 

 「だって……そんなの知らなかった」

 

 俯き拳を握るカミラ仕方ない子だ。

 

 「そうだな。知らなかっただろう?ならば何故手を抜いた?世界には見た目と強さが全く違う者も居る」

 

 私などが代表格かな……私はさらに続ける。

 

 「今は良い……私が居る……だがもしお前しかいなかった時は?自分が守りたいものが後ろにいる時は?見た目に騙され油断した結果お前も、お前の大事な者も一瞬で消える事になるかもしれない」

 

 落ち込む彼女に言う。

 

 「奴が倒れた後、殺したと思い込まずに僅かでも気にしていれば今のお前なら気が付いたはずだ……奴がまだ生きている事に」

 

 「余裕を持つのは良いだろう。だが油断はするな……私はお前に一瞬の油断で悲しむような事になって欲しくは無い」

 

 「うん……ごめんなさい」

 

 いい子だ、私の言葉に反発する事無く聞き入れてくれた……いつか反抗期が来るのだろうか?

 

 彼女は泣きながら私に膝立ちで抱き着き頭をぐりぐり私に押し付けてくる。

 

 そんな彼女の頭を優しく撫でる。私とずっと居るのならそれも良い……しかし彼女がいつか私から離れる事を選択した時にきっと今日の事は役に立つ。

 

 そう思いながら彼女を撫で続けた。

 

 

 

 

 

 

 カミラと暮らし始めて二十年が経った、彼女は二十歳になった……年齢が分からない為私と会ってからの時間でつけただけだが。

 

 「お母様」

 

 湖畔で椅子に座り景色を眺めていると隣で同じようにのんびりとしていたカミラが話しかけてくる。

 

 「何だ?」

 

 呼び方がママからお母様に変わり、子供らしさが消えた彼女に答える。

 

 「私の種族はなんだと思いますか?」

 

 種族か、そうは言っても見た事が無い特徴だからな。

 

 「以前お母様の種族を聞いた時、分からないと言いました」

 

 「そうだな」

 

 彼女が今よりもう少し若かった頃聞かれたが私は答えられなかった、私も何もかも知っている訳では無い。

 

 何よりも自分の事が分からないのだからお笑いだ。

 

 「私は自分で作ってしまおうと思います」

 

 「分からないなら新しく付けてしまえという事か」

 

 伸びをしながら言う私。

 

 「はい」

 

 「それで?もう考えてあるのか?」

 

 彼女の方を見て言う。

 

 「吸血種としようと思います」

 

 「随分ストレートだな」

 

 「分かりやすいでしょう?」

 

 微笑みながら言うカミラ。

 

 「良いのではないか?お前自身の事だ、お前が決めたのなら反対する気は無い」

 

 こうして彼女は自らを吸血種と決めた。

 

 

 

 

 

 

 毎日をのんびりと、しかし研鑽は怠らず過ごして四十年程が過ぎた。

 

 カミラの見た目は変わらない。ここまでくると私はカミラの寿命もかなり長いのではと考え始めていた。

 

 そんなある日、カミラが自分に関する新たな発見をしたと言ってきた。

 

 一緒に色々とやっていた時期はとっくに過ぎ、今はそれぞれにやりたい事をやっていたのだが、自分の事を調べていたんだな。

 

 「それで、何が分かった?私に言ってしまっても良いのか?」

 

彼女は最近髪をポニーテールにしている。

 

 「お母様になら全く問題ないわ」

 

 彼女の研究室の椅子に座り聞く、彼女は特に私に隠す気は無い様だ。

 

 「早速だけどこれを見て欲しいの」

 

 見せて来たのは籠に入ったこの森にすむ小動物だ、くりくりとした藍色の目をしたモフモフ動物だな。

 

 「森で見る小動物だな」

 

 「こいつに、こうすると……」

 

 彼女は人差し指の爪に自分の魔力がこもっている血液をつけて籠の隙間から小動物に突き刺した。

 

 「見てて」

 

 彼女が言う、私は言われた通り小動物を見る。

 

 「ほう……」

 

 私は思わず声を上げた、刺された小動物がキュッキュッと呻きながら変化していく、毛の色が変化し、目の色がオレンジよりの藍色に変わる。

 

 「こうすると相手を服従させる事が出来るみたい、相手の意思を縛る事も自由にさせる事も出来るわ」

 

 そう言うと、さっきまでうろうろしていた小動物がカミラの方を向き大人しく座る。

 

 「これは凄いな」

 

 やろうと思えば世界中の生物を支配下に置く事も可能かもしれない。

 

 「何か反動があったりするかと思ったのだけど今の所無いわね……さらに大きな動物や、その……人間とかにやったらどうなるか分からないけど」

 

 口ごもる彼女、私に人間の知り合いが居る事を考えているのか?

 

 「気にするな、一部の近しい者以外はどうでも良い」

 

 「そう。お母様の知り合いに手を出さないように気をつけないと……」

 

 ほっとした顔をするカミラ。やはり私と同じく珍しいであろう種族の彼女も、他の種族を気に入った者以外どうでも良いと思うのだろうか。

 

 「カミラ、他の種族の者をどう思う?」

 

 私の言葉を聞き考える彼女、かつて聞いた時は会ってみたいと言ったが。

 

 「会った事が無いから分から無いけど、そうね……私とお母様に害をなすなら容赦しないわ、でももし仲良く出来るなら私も酷い事はしないと思うわ」

 

 私と長くいたせいか元々の物なのか分からないが、私と似たような考えを言うカミラ。

 

 カミラに訳知り顔で色々と教えてはいるが、私だって他者から見れば突っ込み所が満載だろうしな。

 

 それでも自分が納得いかなければ全て薙ぎ倒して我を通すつもりだが……力がある者の最後の手段だ。

 

 「カミラ、人で試したいか?」

 

 「え?ええ……それはもちろんだけど」

 

 いきなり言われて面食らう彼女、殺人者などの重犯罪者でも持って来るか。

 

 

 

 

 

 

 それから一月程経ち、実験の準備が整った。

 

 「な、なんだ?どこだよここ!?」

 

 「どうなってんだ!?」

 

 などと口々に騒ぎ立てる実験体。

 

 ちょっと遠出をして集めた殺人犯共だ。私のマジックボックスに放り込めば簡単に誘拐出来る……やはりこの性能のマジックボックスを広めなくてよかった。

 

 個別に檻に閉じ込めてあるので殺し合う事もなく安心だな。

 

 「おい、準備は良いか?」

 

 「はい、お母様」

 

 名前を言う事は避ける、まあ……念の為という奴だな。

 

 「何なんだよお前ら!?」

 

 「何する気だ!?」

 

 声を上げる実験体にカミラが答える。

 

 「これから私の実験に付き合ってもらうわ……まあ最終的には死ぬでしょうけど重犯罪者だし、自業自得と思って諦めてちょうだい」

 

 そう言って喚く実験体に対して実験を始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 こうして特に尊くもない犠牲により、より詳しい事が分かった。

 

 血を与えられた者は髪や瞳、肌の色に変化が起きる。

 

 全体的に能力が向上する、これは変化させた血の持ち主の実力による。

 

 性質がカミラに近くなり病気や怪我などが治り回復する。

 

 血液を摂取しやすくする為か、多少歯が鋭くなる。

 

 対象の意思が強いと縛りにくくなる。

 

 対象の魔力が高いと血液が効きにくくなる。

 

 変化した後の生物の血でも他の生物を変化させる事が出来る。

 

 そしてこれは確かめていないが変化した後、力を付ける事も出来るだろう、変化させた者より強くなる事もあるかもしれない。

 

 と言った所なのだが……これは下手に人間に使うとどんどん増えるのではないか?変化した後の生物の血でも他の生物を変化させる事が出来るというのが決定的だ。

 

 変化した者が変化させ、その変化した者が変化させ、その変化した者が……と増えて行く気がする。

 

 実験が終わり結果が出た後、私はカミラに言う。

 

 「体はどうだ?」

 

 「特に何も問題ないわね」

 

 デメリットは無いと考えていいのだろうか。

 

 「この性質をどう使うかはお前次第だな」

 

 彼女の力は彼女の物だからな。

 

 「はい、お母様」

 

 ただ変化が広がるにつれ影響力は落ちて行く、いずれ魔力抵抗にあって止まるだろう……変化した無数の者達が成長しなければ。

 

 

 

 

 

 

 彼女の力を確認した実験が終わり、再び日常に戻った私はある日の朝食時カミラに聞いた。

 

 「お前は新しい服などは欲しくないのか?」

 

 「え?服?」

 

 キョトンとした顔をする彼女。

 

 「お前を見つけて初めて私が作ったドレスのままだろう?」

 

 彼女に作ったドレスは黒のオールシルクベルベットのような質感のAラインドレスワンピースで、トップス部分はボディラインにフィットするタイトライン、ふんわりと広がるAラインは伸縮性もある足のほとんどを覆う長さの物だ。

 

 そして胸元から首、両腕までは黒のレースの様に作ってあり、所々に様々な花の姿が入っている。

 

 「私はこれが良いのよ」

 

 そう言うと自分のドレスを触りながら言う。

 

 「その……お母様に守ってもらっている感じがするというか……抱きしめられているように感じるというか」

 

 顔を赤くして言うカミラ……間違いでも無いな。私の一部を服にしているから強度は抜群だ、着ているだけでほとんどの攻撃は効かないぞ。

 

 そして私の一部であるという事は私に包まれているという事でもある、無くしてもお前が探せば服の方から寄ってくる、呪いの様な性能だ。

 

 彼女は気が付いているかどうか知らないが昔ンミナにかけた緊急避難魔法の改良版を彼女にかけているからな、彼女が弱った時は私の元に強制転移だ。

 

 「お母様、このドレスどうやって作ったの?他の服は知らないけど……強度とか着心地とか普通こんなに良い物なの?」

 

 彼女がまだ精神的に幼い頃、マジックボックスに入っていた他の服を着せたら、泣いて元のドレスに戻したからな。

 

 「秘密だ……後、一般的な服は昔お前に着せたら泣いて私のドレスにしがみついたぞ」

 

 ドレスをいじりながら言う彼女に僅かに笑いながら答える私。

 

 「もう!」

 

 頬を赤らめ軽く膨らませる彼女。

 

 「気に入っているのなら着てやってくれ、お前の為に作った物だ」

 

 「うん、着る……これからも」

 

 そう言って食事に戻る彼女、恥ずかしそうな彼女を見ながら私も食事を続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 それから百年程カミラと共に過ごし、二回ほど引っ越した。

 

 魔物は依然として多く多種多様になっているようだ。私達が新たな場所に住み着くとかなりの魔物が襲い掛かって来るが、ある程度経つと減り始め、やがてほとんど来なくなる。

 

 そして彼女と過ごした時が百五十年を越えた頃、彼女は私の元を離れる気になったらしい。

 

 「今までずっと守ってもらっていたわ。私一人でもやっていける事をお母様に見せたいのよ」

 

 そう言って彼女は旅立っていった。

 

 あっさりとした別れであったが共に町に行くという約束も十年ほど前に果たした、誰も私に反応する事は無くなっていたし、これでまた面倒なく動ける。

 

 そうして再び一人となった私は暫くそのまま過ごしていたが、ふと魔法学校の事を思い出した。

 

 他の皆とは何度かあったがケインには会って無かったな。

 

 彼は森人だ。森人の平均寿命は五百年ほど、当時の年齢からすると彼はまだ三百に届いていないはず。

 

 「死んで無いと良いがな」

 

 こうして私はケインに会いに行く為、ウルグラーデに旅立った。

 

 

 





 吸血種の設定もおかしい所があるかもしれません。

 私が、流石にこれは駄目だろう、と思った場合修正するかもしれませんが、それ以外は……その気になれば直すと言う事で。


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014


 どんな問題も主人公が能力と魔法で何かすればどうにかなるんです。

 この作品の注意事項

・作者の自己満足

・素人の作品

・主人公最強

・ご都合主義

・辻褄が合わないかもしれない設定

・注意事項が増える可能性

 等が含まれます。

 以上をご理解したうえでお読みください。

 読者の皆さんの暇潰しの一助になれば幸いです。



 

 ケインに会いにウルグラーデに到着した、元々大きな都市だった様だが魔法学校が出来てからますます賑わっているようだ。

 

 「まずは宿だな」

 

 私はそう呟くと周囲を見る。

 

 大きな通りに行きかう人々が行き交っている。

 

 久しぶりの喧噪の中を進み、見かけた店で食料を買うついでに宿の場所を聞く。

 

 ……ここか。

 

 訪ねた店員にお勧めの宿を聞いたのだが、確かに良さそうだ。

 

 「いらっしゃいませ!ようこそ魔術の麓へ」

 

 宿の従業員らしき少女の声が迎えてくれる、魔術の麓というのはこの宿の名前だ……魔法学校があるからか?

 

 「一月借りたい」

 

 「結構長いですねお嬢さん、観光ですか?」

 

 「いや、知り合いに会いに来た」

 

 受付の男と話しながら必要な事を記入する。

 

 「この町は広いし店も多くあります。回ってみるのも良いかも知れません、興味がおありでしたら魔法学校に行ってみるのも良いでしょう、見学出来ますよ」

 

 「そうだな、時間があれば行ってみよう」

 

 「ゆっくりしていってください、これが部屋の鍵になります……向こうの階段の二階へどうぞ、風呂は男女別になっていまして、時間は夕方六時から夜十時までになります、間違えないよう気を付けてください」

 

 「分かった」

 

 部屋の鍵を受け取り二階に上がり部屋に入る、質素ではあるが作りは良い。値段を考えれば確かにお勧めの宿だな、後は食事が良ければいいが。

 

 

 

 

 

 

 部屋を出て町を探索していると神殿のような建物があった、趣味のいいデザインだ。 

 

 「すまないが、あの建物はなんだか教えてもらえないか?」

 

 「ん?お嬢さんはこの町は初めてか?あの神殿はクレリア神教の神殿だよ。興味があるなら行って見な、誰でも入れるぜ?自由の神様だからな」

 

 道行く男に尋ねた私は返ってきた答えを聞いて、脱力した。

 

 「なるほど、ありがとう」

 

 「おう、じゃあな」

 

 そう言って去っていく男、神殿か……崇められている本人としては一度は見ておくべきかな。

 

 神殿はそれなりに大きいのだがかなりの人が居る、全員信徒では無いだろうが人気があるのか?

 

 奥には台の上にワンピース姿の少女の像があった。台の割に小さい……というか私とほぼ同じ大きさだ。神殿の関係者に聞いた所、実際に降臨した神の姿がこのくらいだったらしい……確かにそうだな。

 

 その後ろの壁にはあの時私が教祖達を処刑した時の姿の絵が掛けられていた、顔などの細部は描かれていないが……どう見ても神というより邪神に見える。

 

 黒く長い髪を広げ黒い霧をまき散らしている姿を見て神だとは思わんな、私なら。

 

 その後説明を聞いていたのだが、あの出来事は現在初めてこの世界に神が降臨し神罰を与えた神話になりつつあるらしい……それを聞いた私の顔はきっと面白い顔だっただろう。

 

 何とも言えない気持ちになったまま宿に帰り、食事と風呂を済ませて翌日まで部屋で過ごした……食事は中々美味しかった。

 

 

 

 

 

 

 その後、普通に学校を訪ねようと思ったのだが申し込むことで見学出来るようなので申し込んでみた。

 

 そしてその数日後、参加日がやってきた。

 

 学校を見ると建物もそうだが敷地もかなり広い。

 

 学校の校門前の広場に集まったのは私を含め十人、皆若い男女だ。

 

 意外と少ないと思ったが広場には他にも同じような集まりが出来ている、その中には大人や老人まで居る。

 

 資料を渡され見学がスタートし説明を聞いていると入学だの授業だのという言葉が耳に入ってくる、資料の内容を見てこれはもしかしてただの施設の説明ではなく入学する生徒に向けた見学なのではと思い始めた。

 

 私は休憩中に一緒に見学している一人に聞く事にした。

 

 「すまない、少し聞きたい事があるのだが良いか?」

 

 「ん?貴女は一緒に見学してる方ですね」

 

 校内の飲食店で渡された書類を見ながら休憩している、メガネをかけた背中まで伸びる灰色の髪を三つ編みにした少女に聞くと、少女はメガネを触りながら答えた。

 

 「ああ、聞きたい事があってな」

 

 「聞きたい事は職員の方に聞いたほうが良いのでは?」 

 

 「参加者に聞きたい事なんだ」

 

 彼女の対面に座りながら答える。

 

 「まあ、構いませんよ」

 

 そう言うと資料をまとめ聞く態勢になる彼女。

 

 「ありがとう、この見学だが……どういった目的なのか教えてもらえないか?」

 

 「は?」

 

 ポカーンとする彼女、そうだな自分で参加しておいて目的が分からないと言えばこうなるか、もっとよく読んでおくべきだった。

 

 「この見学に参加している者は入学希望者なのか?」 

 

 呆けている彼女にさらに質問する、暫くすると彼女は頭を押さえながら答えてくれた。

 

 「何なの貴女……見学申し込み書に入学用と書いてあったでしょう?」

 

 「……見落としていたようだ」

 

 文字が魔力を含んでいれば見落とさなかったと思うぞ。

 

 私の言葉を聞き溜息を吐く彼女、私はもう一つ聞きたい事を聞いた。

 

 「施設説明の見学が出来ると宿で聞いたのだが」

 

 「それは保護者向けの一般施設見学の方、私達がいるのは入学施設見学よ……」

 

 疲れたように語る彼女、私は施設見学が目に入った瞬間用紙を取って書き込んでしまった。

 

 「確かに用紙の作りは同じで一般用、入学用と書いてある字が違うだけだから間違える事はあるかもしれないけど」

 

 やはり間違えやすいのだな、ケインにデザインを変更させよう。

 

 「でも気が付かずに参加までしてしまう人はそんなに多くないんじゃないかしら」

 

 ……そうか。

 

 「ありがとう。私の不注意だった事が分かった……普段はここまででは無いのだが」

 

 「ずっと完璧な人なんて居ないわ……あなた私と同じ年くらいでしょ?いつか入学したくなるかもしれないし?」

 

 フォローする彼女、気遣いが出来る子だな。

 

 「そうするよ、そうだ名前を言っていなかったな……私はクレリア・アーティアだ」

 

 「クレリア?貴女の両親は随分熱心な信徒なのね、娘に神様の名前を付けるなんて」

 

 そう言って私を見る彼女、そうか……あれだけ広まっているんだ、そう捉える事になるか。

 

 しかしこれで名乗っても私が本人だと知られる事は無くなった。

 

 「私はヘレン・ワーズよ」

 

 私が考えていると彼女が名乗ってきた。

 

 「よろしくな。私の名前だが……この名前は不味いのか?」

 

 神を名乗るとは、となるのも嫌なのだが。

 

 「大丈夫よ。つける人は多くないかもしれないけど、自由の神だもの。そんな事は気にしないと思うわ」

 

 好きにしろと言う事だろうか……間違ってはいないかもな、私の邪魔をしなければだが。

 

 こうして私は入学者用の見学を終え宿に帰った。

 

 

 

 

 

 

 見学を終えた翌日。普通に会いに行く事にした私はもう一度学校へと向かった。

 

 「ケイン・イヌスに会いに来た」

 

 学校の事務所の様な場所で用件を告げる、受付の女性は書類をめくり答える。

 

 「事前にご予約はしておられますか?」

 

 「していないが」

 

 「ケイン校長はご予約していない場合お会いになれません」

 

 困ったような顔で言う女性。そうか、奴も立場が出来たのだ。

 

 会いたいと言う者全てに会っていては何も出来ないか。

 

 「そうだな、名前だけでも伝えてくれないか?それでだめなら大人しく諦める」

 

 「……それぐらいでしたら」

 

 仕方のない子供を見るような顔で言う女性、いつもの事だ。

 

 「クレリア・アーティアが来たと伝えて欲しい」

 

 「少々お待ちくださいね」

 

 名前には特に反応しない女性、子供にクレリアと付けるのはやはりおかしい事では無い様だ。

 

 そのまま待っているとケインが会うと言ったようで、校長室に案内された。

 

 

 

 

 

 

 案内された、校長室の扉にはいつかの手紙の印の絵が描かれていた。

 

 「ご案内しました、校長」

 

 扉をノックし告げる女性。

 

 「入ってください」

 

 そう聞こえると扉を開けて中に入る。部屋の壁には本がぎっしり並んでいる、手前には応接用の質の良い家具、その奥に大きな机があり資料らしき紙束がたくさん置かれている。

 

 「ご苦労様です、私が呼ぶまで部屋には来なくて構いませんよ」

 

 「分かりました」

 

 そう言って受付の女性は部屋を出て行き、部屋には私とケインが残された。

 

 「お久しぶりです、師よ」

 

 跪くケイン。かなりの時間が経ったというのに見た目はともかく態度はほとんど変わらんな、こいつは。

 

 「そうだな。手紙は貰ったが」

 

 「お世話になりました」

 

 「わざわざ手紙を送って来るとは、どうして念話を使わなかった」

 

 「色々とあるのです。一言で言うと手紙という証拠を残しておく必要があっただけですが」

 

 ケインを立たせて言う私、彼は私に説明した。

 

 「念話で話をつけてしまうといきなり人員を増やすことになりますからね。このような事を提案し了承されて行ったという過程を手紙という形で残す必要があったので」

 

 部屋のソファに促され座りながら聞く。

 

 「良く分からんが必要だったからやったと言う事だな?」

 

 「はい。こちらの都合でお手数をおかけしてしまいました」

 

 クッキーを出し、飲み物を入れてくれるケイン。

 

 「しかしそうだとしても念話で事前に話す事は出来ただろう?」

 

 「まあ、そうなのですが私の意地というか……どうにもならない事以外に念話で助けを求めないと心に決めていたもので……」

 

 苦笑いしながら答える。

 

 「下らんな」

 

 呆れながら思わず口にしてしまう私。

 

 「貴女ならそう言うと思っていました」

 

 申し訳なさそうに言う彼、しかしな。

 

 「悪かった。お前の事を言える立場ではないんだ、私もな」

 

 「何かあったのですか?」

 

 「……クレリア神教の時の事だ」

 

 「ああ……最初に聞いた時はさすがの私も飲み物を吹きましたよ」

 

 微笑みながら言う、そこまで驚いたか……驚きもするか。

 

 「あの後私は身を隠し人類の勢力圏の外で過ごしていた」

 

 黙って話を聞くケイン、私はさらに続けた。

 

 「私が姿を変えられる事は話したな?姿を変えればその様な事はする必要は無かった、しかし私は身を隠す事を選んだ」

 

 飲み物を一口飲む。

 

 「似たようなものだ。出来たのにやらなかった私も、お前と変わらない」

 

 「なるほど。貴女は今の姿にこだわって身を隠す道を選んだ……助けを求めないと心に決め迂遠な手段を使った私と同じような物だと」

 

 私の話を聞き頷きながら言うケイン。

 

 「まあ、お前は手紙という物証を残す目的もあったのだろう?」

 

 彼を横目に見ながら言う。

 

 「後悔は無い、そうしたかったから選んだ」

 

 「ええ、私も後悔はありません。そうしたくて選んだのですから……貴女は自由の神ですからね」

 

 「それはやめろ」

 

 

 

 

 

 

 それから他愛の無い話をしていたが伝える事を思い出した。

 

 「そうだケイン。この学校の見学申し込み書の事だが、見直した方が良いぞ」

 

 「なぜ師がその事を?」

 

 私は見学申し込みを間違えて参加した事を告げた。

 

 「なるほど……一目で分かる様に変更させましょう」

 

 「そうしてくれ。見学に参加していた少女にも間違えやすいと指摘されていたぞ」

 

 「他の者に任せてしまったのは失敗でしたね」

 

 そう言うケインを見ながらクッキーを食べる、中々美味い。

 

 「全てお前がやる必要は無い。学校の規模が大きくなれば手が回らない事も増えて行く、だから他の者に任せているのだろう?」

 

 「そうですね。どうしても私でなければいけない物は私が行い、余裕があれば他の物を処理していますね」

 

 机を見て言う。

 

 「他の町に分校を作ったりしないのか?」

 

 「その話はあったのですが、距離が離れてしまうと管理に手間がかかりますからね。一か所にまとめた方が楽です、適当な授業をされる事も少なくなりますし」

 

 「そうか」

 

 私はソファに身を預けた。

 

 「師よ、今後の予定はあるのですか?」

 

 「この町を見て回る……程度だな」

 

 元々ケインの顔を見に来ただけだ、予定など無い。

 

 「もしよろしければ私の学校の相談役になって頂けませんか?」

 

 「私が?」

 

 突然姿勢を正し私に頼むケイン。

 

 「ええ。特に何かをしなければいけないという訳ではありません、学校を回りやりたい事をやっていただければ良いのです」

 

 「事によってはかなりの無理を言うかもしれんぞ?」

 

 ケインを見ながら言う。

 

 「貴女が言うのならそれだけの理由があるのでしょう」

 

 正直、ケインが作った学校をじっくり見てみたいとは思う、特に今後の目的がある訳では無いし……。

 

 「分かった、弟子の夢であった学校を見せて貰おうか」

 

 「ええ、ぜひ見て下さい」

 

 私はケインが作り上げたティリア魔法技術学校で相談役になる事にした。

 

 

 

 

 

 

 「師の事は校内に連絡しておきます。後、他の者が居る時は私の事は校長と、師の事はクレリアさんと呼びますので」

 

 「分かった」

 

 その後関係者に私の事を知らせるため、一週間後から来てもらう事、滞在中は宿でも敷地内の客用宿舎の客室でもどちらでも良い事を聞いた。

 

 「町の宿は引き払うか」

 

 客用宿舎に滞在する事を決めて町の宿へ向かう。

 

 「すまない、少し良いか」

 

 宿の受付に行き、従業員の男性に声をかける

 

 「はい、何でしょうか?」

 

 「予定が変わってな一週間後に部屋を引き払いたい」

 

 「何かありましたか?」

 

 心配そうな男性。

 

 「魔法学校に住む事になってな」

 

 「そうでしたか!入学を勧められるとは才能があると認められたのですね!」

 

 感心する男性、入学では無いが説明するのも面倒だ。

 

 「悪いな」

 

 「構いませんよ、頑張って勉強してください」

 

 その言葉を聞いて部屋に向かう。

 

 「どうしたものかな」

 

 部屋の椅子に座り考える、私は校内での立場を決めて欲しいと言われていた。

 

 「相談役になれるような立場……」

 

 ……皆を納得させられそうな物が思い浮かばないのだが。

 

 一週間後には学校での生活が待っている。

 

 

 

 

 

 

 一週間後、私はケインに案内され客室に到着した、かなり良い部屋だ、風呂もあるし自炊もできる。

 

 「この部屋でこれから過ごす訳だな」

 

 「食事は自分で作っても良いですし、校内の食堂でも、町の店でも師のお好きなようにしてください」

 

 「分かった」

 

 私の立場はあの後ケインに連絡し一時期ケインと共に魔法の訓練をしていた友人で、見た目は子供だが成人女性であるという事にした……大きく間違ってはいないだろう。

 

 「本当に全校集会で紹介しなくて良かったのですか?」

 

 「構わない、大勢と関わるつもりは無いからな……今の所は」

 

 私の事はこういう人物が居るという連絡だけに留めてもらった、全員と関わる事は無いだろうしその場で出会った者と関われば良いだろう。

 

 「変わる事もあると言う事ですね」

 

 「私がその気になればな」

 

 ケインの言葉に返す、ここで過ごすうちに気が変わるかもしれないしな。

 

 「では、後は自由にお過ごしください。出来るだけ人の常識に合わせて下さいよ?」

 

 「そのあたりは上手くやるさ……これでも町で暮らしていたんだ。知っているだろうに」

 

 部屋を確認しながら答える。

 

 「念の為です」

 

 楽しそうな顔で返すケイン。

 

 「いざと言う時の備えは大事だな」

 

 私は薄く微笑みながら言った。

 

 それからケインは何か用があれば念話か校長室に来るように言って戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 《ティリア魔法技術学校は事務所、基礎学舎、応用学舎、多目的学舎、男女生徒寮、教員寮、客用宿舎、グラウンドなどが一つの敷地に存在する、魔法と各技術の普及と向上を目的とした魔法技術学校である。

 

 基礎である九級から七級、応用である六級から一級に分かれており、飛び級なども存在する。

 

 授業時間は朝の八時から昼食休憩を挟んで夕方十五時まで、寮の門限は二十一時……》

 

 確かにかなり大きかったがここまでの規模だったとは。

 

 私は校内に出る前にケインの用意した学校説明を確認していた。

 

 魔法科、魔道具科、錬金術科、鍛冶技術科か……。

 

 私の教え子達はこの世界にそれぞれの技術を根付かせたようだ。

 

 ケイン以外は死んだが各技術を生み出し広めた者として記録されているそうだ。

 

 皆の家もこの町にあったな、いずれ顔を出してみるか。

 

 私の事は知らないだろうが子孫の顔を見ておこう。

 

 後は料理店も回りたい。

 

 これは毎日少しずつ回れば良いな。料理も過去に比べて美味しく種類も増えた、私は食事を取る事を忘れる時があるがここならば忘れる事は無さそうだ。

 

 時間は昼に近い、町で食事をして午後から学校に行くか。

 

 

 

 

 

 

 町の目に付いた料理店に入る、値段は気にしない、商会に居た頃にかなりもらっているからな。

 

 「いらっしゃいませー」

 

 席に案内されると店員……ウェイトレスがメニューと水の入ったコップ、小さな濡れタオルを置く。

 

 ……何にしようか。タオルで手を拭きながらメニューを見る。

 

 「注文良いか?」

 

 しばらく考え手を上げてウェイトレスを呼ぶ。

 

 「ご注文をどうぞ」

 

 「キノコ焼きと、料理長お勧め魔物肉のステーキをレアに出来る物ならレアで、最後にフルーツのクリームケーキを頼む」

 

 「かしこまりました、ご注文を確認いたします」

 

 ウェイトレスは注文の確認を確認した後戻って行った。

 

 カミラと一度町に行った時、様々な物が良くなっていて軽い驚きを感じた。

 

 現在の四大技術である鍛冶、魔道具 魔法、錬金によって食料の生産や狩り、保存、運搬、加工が随分楽になり料理の種類が増え、より味を追求した物が提供されるようになった。

 

 「料理長お勧め魔物肉のステーキのレアとキノコ焼きお待たせいたしました」

 

 色々考えているうちに料理がやってきた、よし食べよう。

 

 まずはキノコ焼きを食べた。

 

 うん……美味いな。過去に私も作ったが塩加減も焼き方も酷かった事が分かる、程よい味付けと気持ち良い歯ごたえだ。

 

 

 

 次はステーキ。

 

 焼きたては熱いが私には関係ない事だ。レアで問題無い肉だったようで、しっかりレアになっている。

 

 魔物の肉は生では人に悪影響を及ぼす物もある、私には関係ないが人に紛れている今は余計な事はやめよう。

 

 ……良い味だ。

 

 強めに効いた塩味に加え各種香辛料の香りと刺激。レアな肉の歯ごたえに血肉の味と香りが合わさり中々の物だ。

 

 この町で潰れていない以上一定以上美味しいのは間違いなさそうだと思い、入ったが……中々やる。

 

 これは他の店に行くのが楽しみになってきた。

 

 「フルーツのクリームケーキです」

 

 ステーキとキノコを食べ終わりケーキをお願いした。

 

 三角形の小さなケーキで緑色のフルーツが角切りでちりばめられている。

 

 ん……やはり甘い物が一番好きだな。

 

 初めて食べた果実の驚きは今も覚えている。

 

 あれは野性味がある甘みだったがこのケーキは繊細な甘さだ。

 

 フルーツも甘いのだがクリームとしっかり住み分けられていて、お互いを邪魔しない。 

 

 美味いが、これからより食文化が進めばこれらもそれほど美味い物では無くなるのだろうな。

 

 頻繁に食べれば味が向上していくのを楽しめるかもしれない。

 

 「ありがとうございましたー」

 

 食事を終えて時計を取り出し時間を確認する、この魔道具も便利だな。

 

 十二時四十分、そろそろ校内を見て回ろう。

 

 私は学校に向かって歩き始める。

 

 

 

 

 

 

 授業中に誰かに会う事は少なそうだ。

 

 私は基礎学舎内を歩きながら思う。授業中は教室以外に人などまずいない。

 

 授業に入り込む気にもならないしな……。

 

 教室の一つに近づき覗き込む。等間隔に机と椅子が並び生徒が座っていてその前で女の教師が魔法の授業をしている、人数は二十人程かな?

 

 「……先生、あの……廊下に」

 

 覗いていると一人の生徒が気が付き教師に声をかけた。

 

 「あら……どうしたの?誰かの妹さん?」

 

 扉を開けて聞いてくる女教師、私は答える。

 

 「ケイン校長に聞いていないか?相談役のクレリア・アーティアだ」

 

 「えぇっ!?」

 

 驚く彼女、大方予想以上に子供だったからという理由だろう。

 

 「も、申し訳ありませんその……」

 

 すぐに謝る彼女、気にするな私と会った者の大半が通った道だぞ。

 

 「気にするな、それより授業を見学しても良いか?」

 

 「え……?は、はい……構いませんが」

 

 

 

 

 

 

 どうやら今年入学した九級生のようで懐かしくなる基礎の授業だった。

 

 二時間ほど授業と休憩をはさんだが生徒達はチラチラと私を見るだけで近づいて来る事は無かった。

 

 それを見ていた教師が最後の授業中私に話を振ってきた。

 

 「クレリアさん何か魔法を見せて頂けませんか?」

 

 「良いぞ」

 

 皆が見守る中私は人差し指を立て顔程の水球を作る……が、教師は驚いているが生徒は良く分かっていないようだ。

 

 「無詠唱……初めて見た……はっ!?」

 

 私の出した水球を見ていた教師が我に返る、無詠唱とはなんだ?

 

 「すいませんクレリアさん。彼らではまだこの凄さが分からないかと……」

 

 申し訳なさそうに言う教師。

 

 水の透明度、水球の維持の精密さ、発動速度、色々良い見本だと思ったが……。

 

 そうか……まだ習い始めで何も分からないのだったな。

 

 「ではこれでどうだ?」

 

 私はそう言うと水球を崩し、水を凍らせてこの学校の印……大樹の根元に一人の少女が佇む姿のレリーフを一瞬で作り出す。

 

 「すげー!?」

 

 盛り上がる生徒、口を開けたまま固まっている教師……この印のモデルは私だそうだ……ケインの奴め。

 

 その後氷を水に戻し消失させると生徒達はみな憧れるような目で私を見ていた。

 

 見た目で侮る者は元から居なかったがはっきりと力を見てより実感した事だろう。

 

 どうやら見てわかる派手さが生徒達の心を掴んだ様だ……実際に行う事がどれだけ難しいかいつか知るだろうな。

 

 

 

 

 

 

 その後。教師が我に返り騒ぐ生徒を抑え、私は教室を出てケインの所へ行った。

 

 職員に指示を出していたケインは彼らが退室すると、もてなしてくれた。

 

 「今日基礎学舎の授業を見てきた」

 

 ソファに座り落ち着いてから言う。

 

 「どうでしたか?」

 

 「皆に教えた魔法を教えた時を思い出したよ」

 

 紅茶とケーキを出しながら聞いてくるケインに答える。

 

 「そう言えば……教師が無詠唱と言っていたが?」

 

 気になった言葉を聞いてみる。

 

 「私が考えました……師の方法では難易度が高すぎる為、僅かな魔法しか発動できません」

 

 ……そうなのか。

 

 「私が編み出した詠唱はよほどの問題がない限り、必要な魔力と長い詠唱を行う事で数多くの簡単な魔法を発動する事が出来ます」

 

 「それは凄いな」

 

 「勿論高度になるほど魔力操作などの技術や知識は必要ですが、詠唱で補う事で成功率が上がります」

 

 新しい技術を作ったのか。

 

 「私では思いつかなかっただろう技術を知るのは良い物だな」

 

 私は薄く微笑みながら言葉をこぼす。

 

 「師の元に居た頃使えなかった魔法もいくつかは使えるようになりましたよ」

 

 「私の教え方はお前達に合っていなかったようだな」

 

 紅茶を飲みながら呟く私。

 

 「それは違いますよ。貴女が教えてくれた知識と技術があったからこそ詠唱技術が生まれたのです……私だけでは不可能でした」

 

 真剣な顔で言うケイン。

 

 「そうか、新たな技術のヒントにはなったのだな」

 

 ケーキを食べながら言葉を返す、美味い。

 

 「恐らく無詠唱で大量の魔力を使い、精密な魔法を一瞬で発動出来るのは師だけだと思います」

 

 「年季が違うからな」

 

 紅茶を一口。

 

 「この詠唱も時が経てばより短い詠唱でより高度な魔法が使えるようになるかもしれませんね」

 

 ケインは紅茶を飲みながら言う、彼の元にはケーキは無い。

 

 「そうだな。人はきっと様々な物を考え出すだろう、私も何か考えつく事があるかもしれないが……楽しみだ」

 

 私は思わず微笑む。

 

 「師が楽しそうで何よりです」

 

 笑いを漏らしケインが言う、これからも好きに過ごすさ。

 

 その後私が魔法を見せた生徒が噂を広げ、腕の良い魔法使いだと校内に広がった。

 

 一緒に居た教師から講義をして欲しいと言う意見があったが、私がやる気にならない限り大きく関わる事は無いと伝えた。

 

 

 

 

 

 

 「クレリア先生おはようございます」

 

 ある寒い日の朝、校内を歩く私に生徒が挨拶をしてくる。

 

 「おはよう。何度も言うが私はここの教師ではないぞ」

 

 半年後。

 

 私が魔法を披露してから私の噂を聞いた生徒が少しずつ話しかけてくるようになり、話しているうちに何故か生徒達に気に入られ先生と呼ばれるようになっている。

 

 「あ、クレリア先生だ」 

 

 「今日も可愛いわね」

 

 「それでいてかっこいい上に魔法も凄いしね」

 

 周りの女子生徒がひそひそと話すが、もっと声を押さえないと私には聞こえるぞ。

 

 「クレリア先生いいよな……」

 

 「見た目と性格のギャップが堪んないよな」

 

 男子生徒の会話も聞こえてくる……恋をするのは良いが私はやめろ、無駄だぞ。

 

 「おやクレリア先生、朝食ですかな?」

 

 教師の一人に声をかけられる。

 

 「お前達までその呼び方をするのか」

 

 教師は笑いながら言う。

 

 「学校の教員でなくても先生にはなれますからね、慕われている証拠です」

 

 「まあ、悪い気はしないが」

 

 そう言うと彼は微笑みを深くして、立ち去って行く。

 

 私はそのまま校内の食堂で食事をとる。

 

 町の料理店に負けない美味しさだ。元々この町で店を出していた料理人を専属で雇ったらしいな。

 

 ゆっくり食事できるのは良い事だ。

 

 私が食事をするのは生徒が登校した後だ。生徒が食事中に私が居ると絡んで来て食事どころでは無くなる。

 

 今年も後僅かだな……。

 

 そろそろ年が変わり新年になる。一月一日に入学式が行われるこの学校では新入生を受け入れる準備が進んでいる。

 

 

 

 

 

 

 年が明け学校の入学式も済み、新入生が新しい環境に慣れようとしている頃。私は多目的学舎の前に集まっている生徒達を見つけた。

 

 胸元のバッジを見ると新入生、九級の物だ。

 

 「どうした?」

 

 「ん?……ああ、先生にここに来るように言われたんだけど開いてないんだ」

 

 困ったように言う男子生徒、教師が開け忘れたのか?

 

 「教師が来るまで待っていればいいが、このままでは寒いな」

 

 そう言って私が彼らの空間を暖めようとした時声がかけられた。

 

 「クレリア?」

 

 声に振り向くとメガネをかけた灰色の髪を三つ編みにしている少女が居た。

 

 「お前は……ヘレン・ワーズだったか?」

 

 「ええ、覚えていてくれたのね」

 

 私に近づいてくる彼女はさらに言う。

 

 「なに?結局入学したの?」

 

 「そういうわけでは無いが、とりあえず寒いだろう?暖めるぞ」

 

 「え?」

 

 私は生徒たちの空間を暖める、皆寒さが無くなり驚いているようだ。

 

 「これ……あなたがやったの?」

 

 「このままでは体調を崩す者が居そうだからな」

 

 「私達と同じ新入生でしょう?どうやってこれだけの魔法を……」

 

 驚いている彼女、入学時に説明を受けていないのか?

 

 「入学時に説明を受けていないのか?相談役のクレリア・アーティアだ」

 

 「ええっ!?同姓同名の別人かと……」

 

 後半をつぶやくように言う彼女。周りもざわつく、そう思っても仕方ないかもな。

 

 「皆!ごめんね!」

 

 教師が急いだ様子でやってきた。

 

 「この季節に外で待機させる様な事をするな」

 

 「すいませんクレリア先生」

 

 私の言葉にただ謝る教師、混乱するから先生と呼ぶな。

 

 「え?えーと……」

 

 私は混乱し始めるヘレンと生徒達に説明をする事にした。

 

 

 

 

 

 

 あの後説明を聞いた彼女達は皆驚き、その授業に交じって見せた魔法にさらに驚いていた。

 

 その時ヘレンに「あんな抜けた事をする人がこんな凄い人だったなんて……」と呟かれ、聞こえてしまった私は何とも言えない気分になった。

 

 その後、私は多目的学舎に残り次に予定されている魔法の実践授業に参加する事にした。

 

 「魔法の詠唱は日常の生活で発動しないように構成されています。丸暗記して詠唱するだけでもよほどの事が無い限り簡単な魔法なら使う事が出来ますが、意味を理解し詠唱の構成を変更する事で魔力と技量にもよりますが、様々な魔法を作り出す事が出来ます」

 

 教師がボードに詠唱を書きながら説明をする。説明を聞くたび思うが、やはり例外はあっても殆どの者が簡単な魔法なら使える……というのは普及にはかなりのプラスになる。

 

 「では、まず水を出す魔法の呪文を教えます。まずは暗記して使って見ましょう」

 

 そう言って手の平を下に向け前に突き出す。

 

 「mizuyonizimidase」

 

 そう唱えると、手のひらから僅かに水が垂れてくる……確かに魔法だが。

 

 いや……何も知らない生徒達に教える訳だしな、最初はこれで良いのか。

 

 私がそう思っている間にも教師は続ける。

 

 「詠唱を変える事で魔力消費も増えますが効果を増す事が出来ます」

 

 そう言って教師は再び詠唱を唱える。

 

 「mizuyokoboreyo」

 

 そう唱えると水の量が増す。

 

 「こうして水が多く出るようになります」

 

 生徒達はわくわくした顔で見ている。

 

 「構成によっては短い詠唱で高い効果が出る事もあれば、長いだけであまり効果が高く無い事もあります。例としては最初の水の魔法詠唱よりも二度目の水の魔法詠唱の方が短く効果が高いです」

 

 説明を続ける教師。生徒達は真剣に聞いている、良い子達だ。

 

 「最初は分からないと思いますが勉強と実践を繰り返せば分かるようになるでしょう……では最初の詠唱を実践してみましょう。ですが人には絶対向けないように!」

 

 先生の言葉で皆詠唱を始める、私は皆の様子を見ていた。

 

 「muziyonizimidase」

 

 一人の女生徒が唱えるが何も起きない、私は彼女に近づいた。

 

 「詠唱が間違っているな」

 

 「あ、クレリア先生……こんにちは」

 

 私を見てお辞儀する女生徒、そこまでしなくても良いのだが。

 

 私は彼女に教える事にした。

 

 「mizuyonizimidase……やってみろ」

 

 優しく教える、厳しすぎても良い結果にはつながらないだろうしな。

 

 「muziyonizimidase……うう」

 

 何も起きない、最初が間違っているな。

 

 「mizu、だ……やってごらん」

 

 「mizuyonizimidase」

 

 そう唱えると手のひらから水滴が垂れてきた。

 

 「やった!」

 

 喜ぶ彼女、微笑ましいな。

 

 「うんそれで良い、忘れるな」

 

 「クレリア先生、ありがとうございました!」

 

 嬉しそうな顔で元気にお礼を言う彼女、頑張れよ。

 

 その後教師と共に他の者にも教えて回った……育てるのはやはり楽しい。

 

 

 

 

 

 

 こうして生徒や教師と交流し時には相談に乗り魔法の助言しながら過ごしているある日、私は教え子達の店を見に行く事にした。

 

 ロドロフ、ミシャ、ラムランの店に行ってみようと思う。

 

 特にロドロフ夫妻とは約束があったが果たして受け取れるかどうか……忘れられているかもしれないな。

 

 こうして町に出掛けた、朝食は何処かで食べてから行くか。

 

 

 

 

 

 

 ……あの店のパンも中々だった。

 

 ジャムトーストを食べて、向かうのはロドロフ夫妻の店だ。

 

 鍛冶と魔道具の祖と言われ始めている二人の店は、確固とした地位をこの町で確立しているようで衰える事は暫くなさそうだ。

 

 「いらっしゃいませ」

 

 店はかなり大きい、武防具と魔道具があるから当然かもしれないが。

 

 「すまないが、初代との約束の物を受け取りに来たのだが……店主は居るかな?」

 

 店員に話しかける。

 

 「は、はあ……?」

 

 ああ、いきなりこれはまずかったな、分かる訳が無い。

 

 「えーと、店主に御用で?」

 

 困惑したような顔で聞いてくる。 

 

 「ああ、ロドロフ夫妻の子孫のはずなのだが……」

 

 誰かに譲ってしまっていたり途絶えていたら、関係ないかも知れんな。

 

 「伝えてはみますが……お会い出来るかは分かりませんよ?」

 

 良かった、取り次いでもらえそうだ。

 

 「初代の約束を果たしに来た……と伝えてくれないか?」

 

 二人が覚えているのならきっと伝えているはず。

 

 「……分かりました、少々お待ちください」

 

 戸惑っているだろうが、きびきびと動く店員は店の奥に入って行った。

 

 思ったよりも早く戻ってきた店員は私を応接室へと案内した、待たされると思っていたが既にそこには一人の男が待っていた。

 

 「始めまして。ロドロフ武防具店、ミシャ魔道具店六代目総店主、ルシオ・アティライトと申します」

 

 一礼する男、恐らく子孫だろう。

 

 「丁寧にありがとう。私はクレリア・アーティアという」

 

 「クレリア様どうぞこちらへ」

 

 ソファに案内される、テーブルには紅茶とクッキーがすでに用意してあった。

 

 「さて、申し訳ありませんがご用件をもう一度お願いしたいのです」

 

 真剣に聞いてくるルシオ、いいとも。

 

 「初代……ロドロフ夫妻との約束の物を受け取りに来た」

 

 それを聞いた彼は頷いた。

 

 「間違いなさそうですね」

 

 私は用意してあった紅茶を飲む。

 

 「随分簡単に信じるな」

 

 あまりにもあっさりとした対応に、思わず問いかける。

 

 「初代の約束を知っている者は代々の店主のみです。貴女は約束を受け取りに来たと仰いました、代々約束を受け取りに来る人物に対して絶対に無礼を働いてはいけない、深く聞いてはならない……そう伝えられております」

 

 「そうか。話は変わるがアティライトというのは……」

 

 そう言うと彼は人の好い笑みを浮かべて答える。

 

 「過去に姓が必要だろうと考えて付けたものですね」

 

 「確かに現在では必要だな」

 

 「ええ」

 

 頷きながら答える彼。 

 

 「では……早速ですがお渡しいたします」

 

 そう言って地下の宝物庫らしき場所に案内される、その扉にはかつて私が登録した古い魔力パターン認証装置が付いていた。

 

 「魔力を通していただけますか?」

 

 「分かった」

 

 促され装置に当時の魔力を流す、そうすると装置が青白く反応した。

 

 「……確かに。どうぞ……開いております」

 

 扉を開き中に入ると黒と赤を使った鎧と周囲に様々な武器が並んでいた。

 

 「ずっとこの場所は主が来る事を待っていました……今、その役目を終えたのですね……」

 

 呆然としながらルシオが呟く。

 

 「待たせてしまったな」

 

 私はそう呟いて鎧に近づきそっと撫でる。

 

 「ん?……手紙?」

 

 私は鎧のそばに手紙が置いてある事に気付いた、そこには二人の名前が書いてある。

 

 「二人とも、確かに受け取ったぞ」

 

 そこには私が姿を隠すと言った時、生きて会う事はもう無いだろうと思いこの場所を残した事。

 

 ケインとラムランも協力してくれた事、この装備の名前。

 

 私の魔力に出来るだけ耐えられるようにしてある事、細かくパーツが分かれており軽装から重装まで変更出来る事などの装備の仕様、最後にありがとうと書かれていた。

 

 私の魔力に反応して自動的に装着されると書いてあったな。

 

 皆が私専用に作った武防具だ……着てみようか。

 

 私が魔力を装備に流すと鎧が分解しまとわりついてくる。

 

 フェイスガードは収納展開が出来るのか……周囲の武器も私の周りに集まり漂っている。

 

 思ったように動かせそうだ、私の魔力にだけ反応するのか……それとも常人では動かせるだけの魔力が無いのか。

 

 永遠の黒き女神か……誰がつけたんだ?

 

 この武防具の名前だ。今世界に存在する魔法武防具を圧倒的に超えている……二人の技術はここまで上がっていた、それを私の武防具だけにつぎ込んでくれた。

 

 私の事では無いよな……?

 

 名前の由来は書いていなかった。魔法や私の力で彼らに聞く事は出来そうだが……やめておこう。

 

 伝えたかったのなら手紙に書いていたはずだ、私の想像に任せると言う事だろう。

 

 今の私は宙に浮かび黒と赤に彩られた女性型全身鎧を纏い、長い黒髪をなびかせている。

 

 更に背後には様々な武器が円状に並び待機している状態だ。

 

 ふと気が付くとルシオが膝をつき私を見つめていた。

 

 「クレリア、さ……様……貴女は……」

 

 「何も言うな」

 

 彼を遮って言葉を紡ぐ。

 

 「私はまだこの町に居る……だが誰にも今日の事は言うな、私の事も聞くな。場合によってはお前の記憶を消す事になる……私は二人の子孫にそのような事はしたくない」

 

 「ぁ……か、かしこまりました……クレリア様」

 

 ルシオは体を震わせながら、首を垂れ小さな声で言った。

 

 「長い間二人の想いを引き継いでくれてありがとう」

 

 私はそう言って武防具を解除してマジックボックスにしまい、先程の体勢のままの彼に見送られ店を後にした。

 

 

 

 

 

 

 「二人が私だけの為に技術をつぎ込んでくれたのが思いのほか嬉しくて失敗してしまったな……」

 

 あの後私は部屋に戻り反省していた。あの場では普通に回収しておくべきだった、明らかに私が普通でない事が分かってしまっただろう。

 

 ルシオが洩らすとは思えないがこれは私の責任だな。彼が見なくて良かった姿を見せてしまった……何事もなく済ます事は出来たはずだ。

 

 黙っていて欲しいが……どうだろうか。

 

 彼からすれば異常とも言える私の姿を見せてしまったのは私の責任だがそれを黙っていないのは彼の責任だろう。

 

 必要なら忘れてもらおう。

 

 二人の子孫でもあるし、私に敵対した訳でもないから記憶だけ消せば十分だろう。

 

 もしも私の敵になるなら殺そう。記憶を消したとしてもまたどこかで同じ事を知り、同じ事を考え、同じ事をするかも知れない……何も出来なくするのが一番だ。

 

 まだ昼にもなっていないが、その日は部屋でくつろいだ。 

 

 

 

 

 

 

 魔法武防具……魔法装備や魔装具などとも呼ばれて居るが、ロドロフとミシャの作品を受け取ってから一か月程が過ぎた。

 

 変わらず各科の授業を見て回り時々口を出すと言う事を行っていた私だったが、ある日校長室でケインに相談を受けた。

 

 「飛び級?」

 

 「はい、これまで飛び級した者は居ないのですが、出来そうな生徒が居まして」

 

 ケインは資料を渡してくる。

 

 「ミナ・トリアムと言うのか」

 

 森人の少女らしい。やはり魔法に関しては森人が飛び抜けているのか、ケインも森人だしな。

 

 長い寿命で訓練を長く出来るという事もあるだろうが、十二歳で試験を突破する辺り、やはり種族的に資質がある者が多いのか。

 

 更に読み進めると一か月程の時間で詠唱構成の変更に成功したそうだ。

 

 「で?私に何をして欲しいんだ?」

 

 「彼女が飛び級に値するか見定めて欲しいのです」

 

 私を見つめ頼んでくる、だがそれは……。

 

 「私では駄目だろう」

 

 私は置いてあったジャムを紅茶に溶かしながら言う。

 

 「なぜです?」

 

 「私はここの正式な職員ではない。お前に許可をもらって好きなように過ごしているが、それは要するに試験だろう?自分の学校の飛び級試験を外部の者にやらせるのか?……それともそうしなければいけないのか?」

 

 そう決めているのなら代わりにやっても構わないが。

 

 私の言葉にぴくっと反応するケイン……気が付いてなかったのか。

 

 「お前……私が居るからと腑抜けていないか?」

 

 呆れながら言う。

 

 「……こちらで飛び級試験を実施して判断します」

 

 ケインは気まずそうに返事をする。

 

 「それが良いだろう」

 

 誰にでもうっかりはある、ケインも昔教えていた頃は色々やっていた。

 

 後日聞いた所、彼女は見事に合格し級を上げたようだ。

 

 

 

 

 

 

 毎日生徒達と関わり生徒達の考え方や閃きに刺激を受ける日々を過ごしている中、私は朝から部屋でホットミルクを飲んでくつろいでいた。

 

 すると部屋の扉がノックされる。

 

 「開いているぞ」

 

 座ったまま扉の鍵を開けると生徒が一人立っていた。

 

 「おはよう先生」

 

 濃い緑の髪をツインテールにした少女、ティリア魔法学校初の飛び級者ミナ・トリアムだった。

 

 「ミナ・トリアムだったか?」

 

 「はい」

 

 私は彼女を部屋に入れ座らせる。

 

 「突然すいません」

 

 「構わんが、話すのは初めてだったな?」

 

 私と彼女はお互い顔は知っていたが直接話した事が無い。他の生徒と関わらず黙々と授業をこなしているのを見た事がある。

 

 「はい。今日は先生に魔法を見せていただきたくて」

 

 紅茶と、クッキーを出しながら話を聞く。

 

 「教師達が見せている物では駄目なのか?」

 

 そう尋ねると、首を横に振るミナ。

 

 「あんな教師の低レベルの物では無く、もっと高度な物が見たいの」

 

 身を乗り出して言う彼女、いくら飛び級していてもまだ早いと思うが。

 

 「教師達も今のお前より遥かに上だ、軽視するな……それに人に教えるという分野においては恐らく私より上だぞ」

 

 彼女は私を睨むように見つめる。

 

 「もっと早く上達したいの。森人の寿命は長いわ……だけどそれに頼ってもたもたしていたら貴女やケイン校長を追い越せないわ!」

 

 少しずつ声が大きくなり最後には叫ぶように言う、上達したいという気持ちが強すぎるんだな。

 

 「魔法は好きか?」

 

 「好きに決まっているでしょ!」

 

 そう尋ねるとむっとしたように答える彼女。

 

 「そうか、ならば焦るな、心に余裕を持て……そうだな……夢中になると良い」

 

 「夢中?」

 

 ミナは紅茶もクッキーも口にせず聞いている。 

 

 「簡単な魔法でもより早く、より効果的に……改良する事を楽しみながら夢中になっていたら自然に上達していると思うぞ」

 

 「楽しむ……」

 

 呟く彼女、私も最初は時間を忘れて魔法の練習をしていたな。

 

 「しかし健康には気を付ける事だ」

 

 私は平気だが彼女はそうはいかないだろう。

 

 「健康?」

 

 「簡単な話だ、無理をして体調を崩せば魔法の訓練が出来無い。一週間無理をした結果一月寝込んでしまったら……無理をせず一月訓練するのと果たしてどちらがいいかな?」

 

 「……たしかに」

 

 納得したのか頷きながら彼女は返事をする。

 

 「無理をせず楽しみながら出来るだけ毎日訓練をこなす。これが最適だと私は思う」

 

 私が言うと彼女は多少すっきりとした顔をしていた。

 

 「ありがとうございます……少し焦っていたのかもしれません」

 

 「そうか……では紅茶とクッキーを楽しむと良い」

 

 彼女の言葉に返すと彼女は紅茶を飲みクッキーを口に入れる。

 

 「ふぅ……」

 

 ほっとしたように息をつくミナ。

 

 「これが無理をしないと言う事だ、時には一息つく事も大切だ」

 

 私が言えるかどうかは分からないが。

 

 「うん……」

 

 薄く微笑みながら彼女に言うと、彼女は頬を薄く染めて俯く。

 

 「さて魔法を見せて欲しいのだったな」

 

 「……良いの?」

 

 上目遣いで聞いてくる。

 

 「構わない、見ていろ」

 

 私は彼女の前に大きめな水球を作る。

 

 「遠くから見た事があるわ」

 

 さてここからだ、この水球に冷気を送る。

 

 「!?」

 

 驚く彼女の目の前で、水球の中がゆっくり凍っていき大樹の根元に一人の少女が佇む姿のレリーフを作り上げた。

 

 普段見せているのは水球の水を全てレリーフにする物だが、これはより高度な物だ。

 

 「凄い造形……水の球も全く崩れていない……でもそれ以上に……!水と氷の境目が綺麗に分かれてる!どれだけ精密な魔力操作をすれば……!」

 

 レリーフが浮かぶ水球に顔を近付けてブツブツと呟く彼女。

 

 ミナはこの歳でこの魔法が高度な物であると気が付いたようだ。普通ならただ凄いと言うだけだが……ケインの幼い頃と似たような反応をする。

 

 私は思わず薄く微笑みを浮かべた。

 

 「あっ!?」

 

 しばらくその状態を保った後、私はレリーフをゆっくり水球に戻していく。崩れていくレリーフにミナが声を上げる。

 

 「これでお終いだ、何か役に立ったか?」

 

 「私の目指す場所の高さが分かったわ……今は見る事も出来ない高さだという事が」

 

 ミナは目を伏せて私の質問に答えた。

 

 「……でも私はいずれ先生と同じ所まで辿り着いて見せる」

 

 彼女は私を見る。その目は真っ直ぐに私を見つめ、決意を感じさせた。

 

 「待っているよ」

 

 彼女の将来を楽しみにしながら彼女に答えた。

 

 

 

 

 

 

 ミナが私の元を訪れてから二か月が過ぎた。彼女は相変わらずだったが休憩の時には他の生徒と居る所を見かけた、程よく息抜きをしているようだ。

 

 街では今の所私について変な話は無い、ルシオは黙ってくれているようだ。

 

 今日は朝食後にラムランの錬金術店に行く予定だ、時間を確認して町に向かう。

 

 

 

 

 

 

 ベーコンエッグはソースが美味いな。

 

 今日はベーコンエッグを朝食に食べた。新しく開発されたソースをかけて食べると美味かった。

 

 他にも味噌や醤油といった物も開発されているようだ、そのうちそれらも食べる気でいる。

 

 そろそろ魚を食べようか……扱っている店はどこだったかな。

 

 魚は保存と輸送に手間がかかるため値段が上がる。

 

 一般家庭では頻繁に食べるのは難しいらしいがそれでも私は気にしない、金はある。

 

 ……まずは目的を果たそう。魚の事はひとまず忘れて、ラムラン錬金術店に向かう。

 

 この名前は誰かに勧められたのか?彼女が自分から付けるとは思えないんだが……私にはわかりやすいが。

 

 「いらっしゃいませ」

 

 錬金術店に入り周囲を見る。

 

 広い店内に効果が書かれた棚がありラベルが貼られた薬が置いてある、液体もあるが……小さい粒が入っている瓶もある。

 

 「すまない、この小さな粒が入っている物はなんだ?」

 

 通りかかった店員に聞く、店員は営業スマイルを浮かべて説明してくれる。

 

 「こちらの商品は錬金術の祖と言われた初代店主が晩年に作り上げた物で、固形薬といいます。この粒を水に溶かして飲む事で効果を発揮いたします。遠出をする冒険者などに人気の商品でございます」

 

 「ほう……」

 

 なるほど、ラムランも私の思いつかなかった物を作ってくれたな……確かにこれは良い。

 

 現在は飲める水を出す事が以前よりも簡単だ。ケインの開発した詠唱でほとんどの者が可能だろう。

 

 場所を取る一度きりの薬瓶より遥かに効率がいい……ただ緊急時はすぐに飲めないから向いていないだろうな。

 

 固形薬を手に取る、十分な出来栄えだな。

 

 「ありがとう。また何かあれば頼む」

 

 「ごゆっくりどうぞ」

 

 私はいくつかの種類の固形薬を購入した後、店の名前が気になり店員に聞いてみた。

 

 「店の名前ですか?それは……恐らく店主ならわかると思いますよ、初代の子孫ですからね」

 

 子孫か、出来ればあってみたいが。

 

 「会う事は出来るだろうか?」

 

 若い男性店員に聞いてみる。

 

 「忙しくないなら平気だと思いますよ?基本的に誰にでも会いますから」

 

 仕事の手を止めたまま答えてくれる店員。

 

 「では頼めるか?」

 

 「はい、少々お待ちを」

 

 彼は店の裏に入って行った、すぐに一人の女性を連れて来た。

 

 「ありがと。仕事に戻って」

 

 「はい」

 

 彼女は店員に指示を出すと私に向き直った。

 

 「始めまして、あたしはサブリナ・クオリオ、このラムラン錬金術店の店主だよ」

 

 そう言って手を差し出してくる、私は彼女に答えて握手をする。

 

 「私はクレリア・アーティアという」

 

 「神様と同じ名前なのね」

 

 名前に反応するサブリナ、今でも初対面だと反応する者は居る。

 

 「突然ですまない、貴女はラムランの子孫だと聞いたが……」

 

 子孫にしては人間の要素が強い、青いショートカットの髪のボーイッシュな女性だが耳と尻尾以外人間に見える。

 

 「ああ、私は狼獣人と人間の混血なんだ」

 

 そう言って片手で手の爪を、もう片方で牙を見せてくる、牙や爪もやや短い。

 

 「なるほど……それでお話したかったのはこの店名の事なんだが……初代が付けたのか?」

 

 「確か……そうだったはず。理由は確かなんだったかな……」

 

 考え込むサブリナ、彼女がつけたのか……意外だな。

 

 考え込んでいた彼女が急にこちらを見て言った。

 

 「思い出したよ!確か初代がお世話になったとても大事な人にすぐに気づいてもらう為に付けた……そんな感じだったはずだよ」

 

 「……そうか」

 

 恥ずかしかっただろうに、時が経っても分かる様にしてくれたのか。

 

 「まあ、その人が誰だったのか……結局来てくれたのかどうかも分からないままなんだけどね……その人もとっくに死んじゃってるだろうし」

 

 お前の店と子孫は元気なようだぞ、ラムラン。

 

 「そうか。わざわざ答えてくれてありがとう」

 

 「良いよ、気にしないで!」

 

 礼を言うと満面の笑顔で答え、店の奥に戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 「皆の店に行ったのですか?」

 

 「ああ、受け取る物も受け取った」

 

 店から帰り校長室に行き、皆の店に行った事を話した。

 

 「装備の事ですか」

 

 ケインは懐かしそうに言う。

 

 「お前とラムランも協力していたそうだな」

 

 「ええ、その装備には私とラムランさんも協力しました」

 

 ケインは頷き肯定する。

 

 「そうか」

 

 「本来はロドロフ夫妻との約束だったようですが、教え子の我々が集まっている事もあり、皆で作らないかとラムランさんが言いまして」

 

 なるほど、彼女は言いそうだ。

 

 「所で……装備の名前についてだが」

 

 「名前ですか?」

 

 ケインが何か知っていればいいが。 

 

 「何か聞いているか?」

 

 紅茶を用意しだすケイン、こちらに背を向けたまま話す。

 

 「名前はロドロフさんとミシャさんが決めました、良い名前でしょう?」

 

 ケインはそう言うと振り向く。

 

 「念の為聞いておくが……私の事なのか?」

 

 「明言はしませんでしたが恐らく……間違っては居ないと思いますが」

 

 二人分の紅茶を持って戻ってくる、ケインはさらに続ける。

 

 「一万年を超える寿命……黒い服を身に纏い……黒い瞳と黒く長い髪……そして現在神として崇められているでしょう?」

 

 何か間違っているのかと言うように語る。 

 

 「私に性別は無いようだぞ?」

 

 紅茶を飲みながら言う。

 

 「見た目は美しい少女でしょう?」

 

 確かに間違っていないように聞こえるが。

 

 「装備の名前と名前の由来を知っているのは私とお前だけだな?」

 

 「はい。ですから気にする事は無いと思います」

 

 紅茶を飲むケイン、この事が広まる事は無いか。

 

 「それにしてもお前……」

 

 「何です?」

 

 私は紅茶を置きケインに思った事を言う。

 

 「私を美しいと思っていたのか」

 

 「思っていましたよ?言わなかっただけです」

 

 二人で紅茶を楽しみながら他愛のない話をして時を過ごした。

 

 

 

 

 

 

 ラムラン錬金術店に行ってからもうすぐ三か月。

 

 生徒達は入学から半年程が過ぎ、すっかり学校生活に慣れたようだ。

 

 「クレリア先生!」

 

 私が廊下を歩いていると声がかけられた、振り向くとミナが私に向かって手を振っている、隣にはヘレンが居る。

 

 ミナとヘレンの元に向かい、正面に座り飲み物をマジックボックスから取り出す。

 

 「先生は自然にマジックボックスから飲み物を出しますね」

 

 ヘレンが言う、たとえ簡単な魔法でもスムーズに使うのは難しい。 

 

 「年季が違うからな」

 

 そう言った私とヘレンを見てミナが聞いてくる。

 

 「二人共なんか先生と生徒というより……知り合い?」

 

 「入学前にちょっとね」

 

 「何かあったの?」

 

 ヘレンが答える。するとミナがさらに聞いてくる、ヘレンは私をチラチラと見ている。

 

 「言っても良いぞ」

 

 「そう、あのね……」

 

 その後、私が見学を間違えた事を話すヘレン、ミナはその話を聞いていた。

 

 「あれだけの魔法技術を持つ魔法使いが入学っ……見学……ブホッ!」

 

 堪え切れずに笑うミナ、確かに間抜けな話だが……。

 

 「あー……笑ったー。その時に知り合ったのね?」

 

 ミナはひとしきり笑った後に言う。

 

 「そう言う事ね」

 

 ヘレンはメガネの位置を直しながら答える。

 

 「この見た目なら違和感なく入学前の見学にも行けるわよね」

 

 「たまに大人も居るわよ?私達の時も他のグループにいたもの」

 

 私を見ながら納得するミナに付け加えるヘレン、確かにいるが他の者の若さに思う所があるのか入学者は今まであまり居ないらしい。

 

 「それに凄く簡単な物なら魔法書として詠唱がのっている本が町で売っているし、殆どの人はそれで済ますと思うわよ?」

 

 本として売られているのか。

 

 これから更に大勢が簡単な魔法を使えるようになり更に争いも増えるだろうな。

 

 私の周りでは起きていないが、魔法による犯罪などもある。

 

 邪魔な物を排除するのにも魔法は便利だ。

 

 一部の者にしか使えなかった頃に比べれば対抗出来る者も多くなった、その影響で争い合うようになって被害が広がっているが。

 

 

 

 

 

 

 私がこの学校に出入りし始めて約二年。

 

 私は学校の相談役を降りた。ケインには二年居た事に感謝を受け、生徒には私が相談役を止めて学校から出たとだけ伝えて貰った。

 

 ミナは既に応用に進み、ヘレンも応用に進むようだ。

 

 まだ私はこの町に居る気だから町で会うかもしれないな。

 

 相談役を降りたと同時に私は学校の客用宿舎を出たので、泊る所を探さなければならないが……。

 

 家を買うか。

 

 いつまで居るかは分からないがずっと宿ではゆっくり出来ない、見られたら困るような事もあるかもしれないしな。

 

 一度宿を借りて家を買いに行こう。

 

 私はそう考えながら宿へ向かった。

 

 

 





 魔法の設定を碌に考えていないのに学校の話を書く。

 鍛冶、魔道具、錬金術の出番はありませんでした、このお話が続けば出てくる可能性があるかもしれないです。

 詠唱、主人公の専用装備とまた設定が必要そうな物ですが、出来るだけ設定が要らないように書きたい。

 今回出た教え子の子孫達は今後使えそうな場面が思いつけば出てくるかもしれません。





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015-01


 何も気にせず自由にさせたいけどそうすると問題がすぐ解決する、だけど主人公は最強が良い……縛りプレイで行くしかない。

 この作品の注意事項

・作者の自己満足

・素人の作品

・主人公最強

・ご都合主義

・辻褄が合わないかもしれない設定

・注意事項が増える可能性

 等が含まれます。

 以上をご理解したうえでお読みください。

 読者の皆さんの暇潰しの一助になれば幸いです。


 

 宿を一週間借り部屋に入る、不動産に行く前に統一硬貨の確認をしよう。

 

 以前は町や地域によりバラバラだった硬貨だが、ギルドと各商会が手を組み流通を作り上げた後に統一された。

 

 また古い硬貨はもう製造されていないがどこでも使用する事は出来る。

 

 私はケインから受け取った表を見た。

 

 1ウェン  小銅貨

 

 50     中銅貨

 

 100    大銅貨

 

 500    小鉄貨

 

 1000    中鉄貨

 

 5000    大鉄貨

 

 10000   小銀貨

 

 50000   中銀貨

 

 100000   大銀貨

 

 500000   小金貨

 

 1000000  中金貨

 

 5000000  大金貨

 

 10000000  小白金貨

 

 50000000  中白金貨

 

 100000000 大白金貨

 

 統一された硬貨は価値は決まっているが、商品などのすべての金額は各地域の経済状況などに影響されて値段が変わる。

 

 ある町で中銅貨一枚で買えるパンが他の町では大銅貨一枚であったり、また別の町では中銅貨一枚と小銅貨五枚であったり……という事になる訳だ。

 

 統一硬貨もあるが昔給料としてもらっていた古い硬貨がかなりある、どうにか減らしたいな。

 

 確認を終え、すぐに家を買いに不動産店へ向かう。

 

 「いらっしゃいま、せ?」

 

 戸惑う店員の声が迎えた、この姿で家を買うのはおかしいか?

 

 「家を買いに来た、私は成人している問題は無い」

 

 受付に行き店員の女性に声をかけ、容姿の事も伝える。

 

 「かしこまりました、どのような家をお求めですか?」

 

 ……スムーズだな。

 

 「怪しいと思わないのか?」

 

 「確かにお客様ほどの年齢で家を買う方は見た事はありませんが、お金さえ払っていただければ問題ありません。売ってはいけないという決まりもございませんので」

 

 微笑みながら答える女性店員、店の関係者というのは強かだな。

 

 「金はある、それなら問題無いな」

 

 「はい、問題ございません」

 

 薄く笑みを浮かべる私と、微笑む女性店員、奇妙な友情が生まれそうだ。

 

 「よし、では要望だがまず第一に風呂が広い事……これは外せない。後はリビング、寝室、キッチン、トイレ、倉庫も欲しい。後は……出来るだけ広い庭と……場所はどこでもいいが静かな所が良い」

 

 私の要望をメモする店員。私が要望を伝え終えると私に待つように言って席を立った。

 

 

 

 

 

 

 「お待たせ致しました」

 

 椅子にもたれ待っていると、店員が資料の束らしき物を持って戻ってきた。

 

 「お客様のご要望に合っている物件の資料はこちらになります。後はご予算に合わせて選んでいただき、気になったいくつかを実際に見学して頂く……という形でよろしいでしょうか?」

 

 「その方法で構わない」

 

 「かしこまりました。では資料をご覧ください」

 

 店員の提案を了承し、資料を読む。

 

 上位の物件は流石に金額的に手が出ないな。下過ぎると庭があっても申し訳程度であったり多少騒がしそうな場所であったりと微妙だ。

 

 「取り合えずこれらの物件は無しだな」

 

 「かしこまりました」

 

 高すぎる物と安すぎる物の資料を返し、残ったのは金額的には中程の物だ。

 

 うーむ……。

 

 「物件の静穏性ならば大通りの騒がしい場所でも魔道具や魔法で防音されている物件もございますよ?」

 

 そう薦めてくる。

 

 「その魔道具や魔法は一定以上の大音量を通す様に出来ているか?」

 

 私なら関係ないが出来る事ならこだわりたいものだ。

 

 すると戸惑いながら店員は聞いてくる。

 

 「それは不可能です。全ての音を遮断する物ですので……よろしければそのご要望の意図をお聞かせいただいても?」

 

 「静かなのは良い。だが災害などの問題があった場合、全ての音を遮断してしまうと気づけない可能性が高い……普段は静穏性を保ち、被害が出そうなほどの大音量などは通すようにした方が良い。もしくはそれを知らせる物を用意するべきだな」

 

 驚いた顔をする店員。それだけの魔道具と魔法を用意できるかは分からないがその方が安全だろう……普通の人間には。

 

 「色々言ったが私は人混みが嫌いなんだ、大通りはやめておくよ」

 

 「かしこまりました」

 

 そう言って物件の資料に目を移す。部屋数は……これは多すぎるな、私しか居ないんだ十部屋あっても意味が無い。

 

 こうして私は都市の防護壁近くにある中規模の家……屋敷になるのか?その中の二つに絞った。

 

 どちらも私の要望は満たしていて寝室数は五、一つは風呂が広く、もう一つは庭が広い、正直どちらでもいいが実際に見て最終的に決めよう。

 

 「この二つを実際に見て見たい」

 

 私は資料を渡して言う。

 

 「はい、今からでも可能ですがご覧になりますか?」

 

 資料を受け取り答える店員、すぐ見れるのはいいな。

 

 「今からでもいいのか、では行こう」

 

 

 

 

 

 

 「ではこちらをご購入という事で間違いありませんか?」

 

 「ああ、間違いは無い。支払いは今すぐ出来る」

 

 結局庭の広い方を購入する事に決めた、実際に見た結果庭が広い方の屋敷の風呂の大きさが十分だったからだ。

 

 「すまない、言い忘れたが統一前の硬貨は使えるか?」

 

 「問題ありません。ただ……ウルグラーデでの換金レートになってしまいますが……」

 

 「構わない。可能なら全て換金してもらえると嬉しいのだが」

 

 この都市でのレートになると言う店員に旧硬貨の換金が出来るか聞いてみる。 

 

 「手数料を頂く事になりますが可能ですよ」

 

 「では換金した後に支払うと言う事で良いか?手数料と屋敷の金額を引いて渡してくれ」

 

 「ではこちらの部屋で確認いたします……どうぞ」

 

 別室へ案内される。

 

 ここのレートだと言っていたが足りないと言う事は無いだろうな?かなりレートが悪くても平気な量はあると思うが……。

 

 そんな事を考えて待っていると彼女が袋を二つ持って現れた。

 

 「お待たせ致しました……内訳ですが……お客様から預かりました旧硬貨の換金後の金額が一億ウェンになります」

 

 ……そんなにあったのか、大白金貨だぞ。

 

 「当時の価値は一億二千万程ですがこちらのレートだとこの金額になります……問題ございませんか?」

 

 金ならまた稼げばいいからな。

 

 「構わない」

 

 「では続けさせていただきます。屋敷の購入金額として八千万ウェン、換金手数料として一千万ウェンを引かせていただき……お渡しする金額は一千万ウェンとなります、何か問題はございますか?」

 

 問題では無いが、そうだな。

 

 「この都市の物価はどうなんだ?」

 

 「……そうですね、お世辞にも安いとは言えません。換金レートも手数料も屋敷の金額も他の地域に比べてかなり悪い方だと思います」

 

 これより悪い事はあまり無いと言う事か。

 

 「答えてくれてありがとう。それで構わない」

 

 「ありがとうございます。お金の受け渡しですが小白金貨一枚と、ある程度硬貨を分けた物がご用意できますが……どちらがよろしいですか?」

 

 気が利くな、場所によっては小白金貨では釣りの硬貨が払えないかもしれないからな。

 

 「分けた物を頼む」

 

 「ではこちらです、ご確認ください」 

 

 そう言うと袋の一つを渡してきた、私は確認しマジックボックスに入れる。

 

 「こちらが屋敷の鍵と証明書になります。この証明書は私どもが販売しお客様が購入したという証になります……この証明書を紛失した場合、屋敷の持ち主であると認められなくなりますのでご注意下さい」

 

 「分かった」

 

 私は鍵と証明書を受け取りマジックボックスに入れた。

 

 「本日は誠にありがとうございました」

 

 受付で深々とお辞儀をする彼女を背に、私は店を出た。

 

 

 

 

 

 

 ……こんなものかな。

 

 私は購入した屋敷の家具を整え終えて、一息ついた。

 

 家具が無かったので家具店で買い揃えて各部屋に設置し掃除した、これで一先ず家として問題は無くなった。

 

 さて、これからどうしようか。

 

 毎日家で能力開発をして、一日三食の食事を楽しむ生活も良いな。

 

 ソファに身を沈めて両足をぱたつかせながら考える、そして思いついた。

 

 ここに来てからギルドを見ていない。

 

 ギルドも教え子の成果と言える、今どうなっているか見て見たい。

 

 ……冒険者か。

 

 思った以上に有った金もほとんど使ってしまったし……やってみようか。

 

 稼ぎは少なくても楽しいかもしれない。

 

 出来るだけ人らしく戦おう。

 

 あまり人間離れした事をすると面倒そうだ。

 

 自警団の皆を育てた当時から、自分の決めた範囲でいかに戦うか考えるのも悪くは無いと思うようになっている。

 

 勿論いざと言う時は手加減しないが。

 

 あくまでも問題が無い時のみだ。

 

 装備はどうしようか。

 

 それなりに装備を着て居なければおかしいだろうな。

 

 私専用の装備である永遠の黒き女神は……目立ちすぎるだろう。

 

 武器だけなら良いかも知れないがあの見た目はな……。

 

 どうにか出来ないだろうか。

 

 永遠の黒き女神を出して眺める、そしてしばらくぼーっと見ていたのだが。

 

 そうだ確か手紙に……。

 

 私はこの装備と共にしまっておいた手紙を取り出す。

 

 細かくパーツが分かれており軽装から重装まで変更出来る……これで行けるかも知れない、軽装にするには……。

 

 早速やり方を調べて魔力を流す。すると装備が分解し一部が私に残りは再び待機状態に戻った。

 

 「これなら良さそうだ」

 

 ワンピースのままカチューシャの様な頭部の防具、首輪、胸当て、肘から手先迄を覆う肘当て、腕当て。

 

 更にグローブを一体化した様な防具に、太腿の中程から膝、脛とふくらはぎ、足迄を覆う同じく一体化した様な防具と言う姿になった、これなら良いだろう。

 

 この装備はこのような構造になっていたのか。

 

 詳しく読むと、この鎧は軽く強度と柔軟性の高い魔法金属が細かく分かれて積層構造になっていて、軽装から重装に向かう程、体を覆う面積と装甲が厚くなっていくようだ……細かいパーツが集合した鎧……で良いのか?

 

 今の時点では私でも完全には理解出来ないな……この事をロドロフとミシャが聞いたら喜びそうだ。

 

 私の理解を超えた物を作ってやった!と言いそうだ……デザインも性能も良い逸品だ、愛用させて貰おう。

 

 最後に数多くある女神武器から長剣を選び腰に付ける。さて、ギルドへ向かうか。

 

 

 

 

 

 

 中々大きな建物だな。

 

 ギルド……正確にはウルグラーデ冒険者ギルド商会だったか?

 

 早速建物に入る。広間にずらりと並ぶ数字が書いてある掲示板の両面に紙が沢山張られている、それを冒険者と思われる沢山の老若男女が見ている。

 

 奥に並んでいるカウンターの一つに向かい、声をかける。

 

 「ギルドに登録したいのだが」

 

 「はい……ではこちらに必要事項を記入して下さいね」

 

 私は用紙に記入しながら女性ギルド職員に聞く。

 

 「子供でも問題無いのか?」

 

 「問題無いですよ?低ランクの依頼は子供でも可能な物も多くありますし、力不足だと判断すれば私達職員が受けさせる事はありませんから」

 

 なるほど、子供の小遣い稼ぎも出来る訳だ。

 

 用紙を渡すと薄く小さいカードが付いたネックレスともう一枚プレートを持ってくる。

 

 「こちらの二つに魔力をお願いします」

 

 私はそっと魔力を送る、プレートとカードが一瞬光る。

 

 「これで貴女は登録されました。ようこそウルグラーデ冒険者ギルド商会へ」 

 

 微笑んで言う彼女。その後ネックレスの付いたカードを私が持ち、プレートはギルドで保管されると聞いた。

 

 「ではギルドの説明を致します」

 

 彼女が紙を渡してくる、そこにはギルドの事が書かれていた。

 

 冒険者はランク1から10とグレード1から10、依頼は様々な要因を加味して難易度1から10に分かれている。

 

 1 子供でもできるお手伝いのような物。

 

 2 自衛手段が無い成人した者が受けられる物など。

 

 3 討伐や狩猟以外の外での活動など。

 

 4 魔物ではない動物の狩猟など。

 

 5 ギルドが定めた非常に低い危険度の魔物の討伐依頼など。

 

 6 ギルドが定めた低危険度の魔物の討伐依頼など。

 

 7 ギルドが定めた中危険度の魔物の討伐依頼など。

 

 8 ギルドが定めた高危険度の魔物の討伐依頼など。

 

 9 ギルドが定めた非常に高危険度の魔物の討伐依頼など。

 

 10 地域などに大きな影響を与えかねない災害クラスの魔物を退ける、討伐する依頼など。

 

 評価されるのは主に戦闘能力である。

 

 ランクで受けられる依頼の難易度が決まりグレードはその冒険者が同じランク内の仕事をどれだけ成功させたかの目安になる。

 

 討伐以外の物はやりたくないな。他の物は気が向けばやってみよう、それにはまずランクを5にしなければ。

 

 彼女の説明を聞いている途中、質問をした。

 

 「討伐が受けられる5までランクを一気に上げる方法はあるか?」

 

 困ったような顔をする彼女、それでもしっかり答えてくれる。

 

 「……ランクは各ギルドのランク認定試験を受け合格する事で上がります、そのランクの認定試験を合格すればなる事は出来ますが……」

 

 「駄目なら諦めるさ、受ける事自体は出来るのだろう?」

 

 そう言うと彼女は困り顔のまま言う。

 

 「いえ、現在のランクの二つ上のランクまでしか受けられない事になっています」

 

 「つまり今のランク1の私だとまず3に合格してから5に合格しなければならないと言う事か?」

 

 「そうなります」

 

 頷き私の言葉に答える彼女。

 

 「ではそれで頼む」

 

 「え?」

 

 彼女は私の言葉に思わずといった感じで声を上げる。

 

 「3の試験を受けた後5を受ける、どうすればいい?」

 

 「……ではまずこちらに記入をお願いします」

 

 すぐに仕事に戻る彼女、ギルド職員は中々できる。

 

 

 

 

 

 

 「お前が試験を受けるクレリアか?」

 

 「そうだ、よろしく頼む」

 

 数日後、試験を受けにギルドに訪れ待っていた私に声をかけてくる男。

 

 「俺の事は試験官でいいぜ」

 

 「分かった試験官」

 

 そう言った私の前に座る試験官。

 

 「試験内容はこの指定された場所に向かって錬金素材を手に入れてくることだ。俺はついて行くが危険にならない限り手を出さない、勿論俺の助けを借りれば試験は失格だ……いいな?」

 

 目標のエリアと素材が書かれた紙を渡してくる試験官、これは薬草の一種だな。

 

 「良ければ試験開始だ、頑張れよ」

 

 そう言って笑う試験官、任せておけ。

 

 

 

 

 

 

 「無事ギルドに到着したな試験官」

 

 「……合格だ」

 

 あの後、森に向かいさっさと指定されたエリアに向かい目標の薬草を手に入れた、途中魔物に襲われたがすぐ首を落として処理した。

 

 試験官と共にランク認定のカウンターに向かった。

 

 「ランク3認定試験合格だ」

 

 「はい、では目標をこちらに……確かに目標の薬草です。ランク3グレード1おめでとうございます」

 

 手に入れた薬草を職員に渡す、ギルド職員が私に祝いの言葉を言った後奥に行き、試験官が立ち去ると離れた所で他の職員に話しかけられている。

 

 「あの子合格したんですか?本当に?」

 

 「見ていたんだ、間違いなく合格だ……あの娘恐らくランク5も合格するぞ……」

 

 「流石にそれは無理ですよ」

 

 「……どうだろうな」

 

 試験官が疑われてしまったようだ、しかし私がランク5を合格すると言ったのは良い読みだ。

 

 私はそのままカウンターで魔物の代金を受け取りカードの更新をし、ランク5試験の申請をして家に帰った。

 

 

 

 

 

 

 数日後前の試験の時と同じようにギルドで待っているとギルド職員の女性がやってきた。

 

 「……ランク5試験を受けるクレリアさんかな?」

 

 「そうだ、よろしく頼む」

 

 「本当に受けるのね?ここからは助けは無いわよ?力が足りなければ死ぬかもしれない」

 

 私を見つめて話す。

 

 「止める気はない」

 

 そう言うと、私の前に座って説明を始める職員。今回は目的の魔物を一人で討伐して持ち帰る事が試験になるらしい。

 

 「倒すのはこの魔物です」

 

 絵だけが描かれた紙を渡される、私程の大きさの直立した目の赤い魔物だ。

 

 「渡すのはそれだけ、名前や習性、居場所は自分で調べるのよ」

 

 そう言ったところも含めて試験なんだな、ギルドに魔物が載っている本は無いかな。

 

 「分かった……聞きたいのだがギルドに書庫はあるかな?」

 

 紙から顔を上げ訪ねる。

 

 「ありますよ。あちらをまっすぐ進んで道なりに進めば書庫の入り口があります……それと、駄目だと思ったら逃げなさい。試験なんてまた受ければいい……生きて戻る事を考えなさい」

 

 彼女は微笑むと教えてくれた、探してみようか。

 

 「ありがとう」

 

 礼を言って書庫に向かった。

 

 

 

 

 

 

 書庫の管理者に許可をもらって探し始める、魔物の本がありそうな所は……。

 

 しばらく探すと魔物の欄があった。これのどこかの本に……《ウルグラーデ近郊魔物図鑑》か、これなら載っているか?

 

 この魔物はラビアトか、森の少し深い所に生息している事が多いようだな。

 

 見つけた本に載っていた。脚力を生かした蹴りとタックルが主な攻撃か……絵では大きさが分からなかったが。説明を読むと私の半分ほどしかないな、これなら大人で多少戦えるのなら負けないだろうな。

 

 

 

 

 

 

 多少戦える大人が勝てる相手に私が苦戦する事は無く、森の奥に向かい問題無く討伐してギルドへと戻って来た。

 

 カウンターで試験である事を告げて、魔物の受取り場に移動し、ラビアトを取り出す。

 

 「確かにラビアトですね、おめでとうございますランク5試験合格です」

 

 「ありがとう、これで一番下の危険度ではあるが魔物討伐が受けられるのだな?」

 

 他の職員がラビアトを運んでいく、解体されて販売されるのだろう。

 

 「はい。ではギルドカードの更新を致しますので待合広場でお待ちください」

 

 そう言われ、待合広場の椅子に座って待っていると呼び出される。

 

 「お待たせしました、これからはランク5グレード1となります……こちらがカードです」

 

 女性職員に渡された魔物の代金をしまいカードを首にかける、取り合えず今日はもう帰ろうか。

 

 「一気にランク5になりましたね。これからは魔物討伐ですか?」

 

 席を立とうとした所に女性職員が話しかけてくる。

 

 「一番向いているからな」

 

 そう言うと彼女は少し乗り出して言う。

 

 「聞きましたよ。その歳で連続で試験を受けてランクを上げたんですよね?」

 

 今まで知らないまま成人だと言っていたがどうやら十五歳で成人とされているらしい、私はここでは十五歳という事になっている。

 

 「おかしいのか?」

 

 椅子に背を預けて尋ねる。

 

 「二十前後の方は一気に魔物の討伐が出来るランクに上げる方は居ますね。若い方はランク4で経験を積んでからか、もしくはパーティーを組むのが一般的です。若い方が、それもソロでランク5になるのは珍しいですね」 

 

 腕を組んで話す彼女。

 

 「ここからはじっくりやるよ、無理をして怪我をしたり死にたくは無いからな」

 

 「最低ランクでも魔物は魔物です、くれぐれも気を付けてくださいね?若い方が亡くなるのは辛いですから」

 

 

 

 

 

 

 そうだ、ランク以上の魔物を仕留めた場合の事を聞いていなかった。

 

 私がその事を思い出したのは食事を終え、自宅のリビングでくつろいでいる時だった。

 

 ギルドが依頼を実力によって分けていても魔物には関係ない。

 

 場合によっては遭遇して殺されたり運良く討伐出来たりする事だってあるだろう。

 

 まあ、それは次行った時に覚えていたら聞こう。

 

 

 

 

 

 

 翌日。私はギルドへ向かいカウンターへ向かい、昨日の思い出した質問をしておく。

 

 「おはよう。突然ですまないがランク以上の魔物に遭遇して討伐した場合どうなる?」

 

 ギルドの女性職員が答える。

 

 「討伐した場合安いですがギルドで買い取ります。基本的に依頼にある魔物以外は安いので討伐するメリットはあまりありません。自分で食べたり素材にしないのであれば、逃げるのが一番だと思います」

 

 「なるほど、ありがとう」

 

 その後私は近場の魔物の討伐依頼をこなして自宅へと帰った。

 

 

 

 

 

 

 今日はどんな依頼があるかな。

 

 一月後、順調にランク5としてグレードを上げた私はグレード3になっていた。

 

 「ようクレリア今日は何討伐するんだ?」

 

 「まだ見て無い、これから見るんだ」

 

 私は話し方を変えた、以前他の冒険者と依頼を受けた時その話し方だと咄嗟の指示や仲間の反応が遅れると言われた。

 

 冒険者はあまり敬語や周りくどい表現を使わない、分かりやすく簡潔に、戦闘中はそれが全てだと言われた。

 

 よく言えばフレンドリー、悪く言えば礼儀知らず。

 

 しかし冒険者になった者……特に魔物を討伐するランク5以上の冒険者は相手がどんなに年下でもランクが下でも言葉遣いに文句を言う事は殆ど無い、それが命にかかわると知っているからだ。

 

 流石に公式の場では頑張るらしいが、私は冒険者をしている間は多少話し方をかえようと決めている。

 

 「また手伝ってくれよ、お前が居ると仲間が喜ぶ」

 

 冒険者の男が笑いながら言う。

 

 「楽したいだけだろうが、自分で稼げ」

 

 そう言い返す、この話し方も良い物だ。

 

 「いやー……それ以外にも男連中が喜ぶんだよ。お前はほら、可愛げが無いけど顔は良いだろ?」

 

 「ほう、ここで死にたいんだな?」

 

 そう言って男に手を向ける、男は焦ったように言う。

 

 「褒めてるんだって!強いし美人だし声も綺麗だし!悪い意味は無いって!」

 

 私は手を下ろしながら言う。

 

 「可愛げが無いっていうのは悪い意味じゃなかったのか?ん?」

 

 「俺急ぎの用があるんだったわ!またな!」

 

 そう言って男は逃げて行った。

 

 あの男のパーティーと一緒に冒険に出た時に私があっさりと討伐してパーティー内で報酬を分けてから、他のパーティーからも誘いが増えた。

 

 奴ららしいと言えばらしいが、一方的に使われる事は許さない。

 

 ただ冒険者達との会話は悪い気はしない、軽口を言い合うのも悪くは無い。

 

 さて、依頼を探すか……戦闘力的にはどの魔物でも良いんだが……。

 

 ん……?珍しい依頼書があった、スナイププラント?

 

 これにしようと手に取った時、もう一つの手が紙をつかんでいた。

 

 「あっ……」

 

 後ろを振り返ると、暗い赤色のセミロングの女性が立っていた、手を伸ばしたままの格好で固まっていたが諦めたように手を離した。

 

 「良いのか?」

 

 彼女に問いかける。

 

 「……どちらかが引かなければ終わらないでしょ?」 

 

 確かにそうだが……最近私で楽しようという者が多かったがこの子は何というか雰囲気が違うな。

 

 「良ければ一緒にやるか?報酬は皆で山分けでどうだ?」

 

 「えっ?……えっと嬉しいんだけど。私達のパーティーはランク5になったばかりなの、今回が初めての魔物討伐なのよ……それでも良いの?」

 

 ああ、この感じは初討伐だからか、緊張してるんだな。

 

 「構わない。一緒にやろうか、私はそこそこ討伐をこなしてるから手伝おう」

 

 そう言うと彼女は少しホッとしたように言った。

 

 「ありがと。じゃあ皆に紹介しなきゃ、依頼を受けるのは私がやっておくから待合広場のあそこにいる……明るい茶色と水色のショートカットの二人。あの二人がパーティーの仲間だから先に行ってて」

 

 彼女は広場を指さして言う、見るとそれらしい二人が会話している。

 

 「分かった」

 

 そう言ってパーティーメンバーの所に向かった。

 

 

 

 

 

 

 「そこの二人ちょっといいか?」

 

 私は言われた二人の元に行って声をかける。

 

 「なーに?」

 

 明るい茶髪の女性が言う。

 

 「間違ってたら悪いがそちらのパーティーの暗い赤色のセミロングの女性と依頼を取り合う事になってね。彼女が引いてくれたがどちらが早かったと言う訳でもないし、一緒にやる事になった」

 

 「暗い赤色のセミロングの女性……ユリアルマの事だよね?」

 

 「そうっぽいね」

 

 水色髪の女性が言い、茶髪の女性が続く。

 

 「座って良いか?」

 

 「あ、いいよ」

 

 そう言うと席を進めてくる、私は彼女達の反対側に座る。

 

 「自己紹介しておく、私はクレリア・アーティアと言う、役割は……大体何でも出来るな」

 

 「私はアリアナ・ガット、軽戦士だ」

 

 明るい茶色のショートカットの女性が言う。

 

 「あたしはー、ルフレ・カプラータ!盗賊だよ!よろしくねー!」

 

 水色のショートカットの女性が続く。

 

 「大体何でもってすごいねクレリアちゃん!」

 

 ルフレが話しかけてくる。

 

 「ソロで活動するにはそれぐらい出来ないと危険だ」

 

 「確かにそうだよね」

 

 答える私にアリアナが納得したように言う。

 

 「武器も魔法も使えるって事でしょ?凄いねぇ」

 

 感心したように言うルフレ、そこに先程の女性が戻ってくる。

 

 「随分仲良くなってるわね」

 

 「あ、ユリアルマおかえりー」

 

 言いながら座る彼女を迎えるルフレ。

 

 「彼女に自己紹介してなかった。私はクレリア・アーティア、役割は大体何でも出来る」

 

 「私はユリアルマ・ルンブルク。魔法使いよ、お世話になるわね」

 

 「これで揃ったね」

 

 自己紹介が終わるとアリアナが言う、これから準備をして明日には出発する事になるか?

 

 「今日は準備にして明日朝一で出発しましょう。野宿になるから準備を忘れないようにね」

 

 ユリアルマが言う、彼女がリーダーか。

 

 「今のうちに聞いておきたい事があったら言ってね」

 

 ユリアルマが私に言ってくる、そうだな……。

 

 「皆、武器は何を使う?」

 

 「私は剣と盾だね」

 

 と、アリアナ。

 

 「あたしはナイフと弓だよー」

 

 腰のナイフと足元に置いてある弓を見せるルフレ。

 

 「私は杖よ」

 

 60センチ程の長さの杖を見せてくる。

 

 「バランスは悪くないかな、そうすると私はどうしようか」

 

 私がそう言うとアリアナが言う。

 

 「状況を見ながら遊撃でいいと思う、クレリアなら平気だろう」

 

 それを聞いてルフレが聞く。

 

 「そうなの?」

 

 「うん、彼女ちょっと前に噂になってた人だよ」

 

 「ああ……」

 

 アリアナの言葉に反応するユリアルマ。

 

 「二人とも知ってるの?」

 

 ルフレが言う。

 

 「十五歳で冒険者になって一週間程でランク5になった人だよ」

 

 「うぇっ!?」

 

 アリアナの言葉に変な声を上げるルフレ、三人は私を見る。

 

 「ユリアルマも知ってたの?」

 

 「彼女だとは知らなかったけどその話は聞いたことがあるわ」

 

 そう聞くルフレに答えるユリアルマ。

 

 「あたしだけ知らなかったの!?」

 

 納得いかなそうなルフレ、そんな姿に思わず薄い微笑みを浮かべる私だった。

 

 その後、彼女達としばらく話をした所、仕事で失敗し連帯責任で分割した弁償の借金があり皆で魔物討伐をする事を決めたようだ。

 

 不幸中の幸いだったのはランク5になれる実力があった事か。

 

 

 

 

 

 

 翌朝、私は町の出口のそばにいた。しばらく待っていると、三人がやって来る。

 

 「やっほ!クレリアちゃん!」

 

 「おはよ」

 

 「おはようございます」

 

 ルフレ、アリアナ、ユリアルマの順に挨拶してくる。

 

 「おはよう、準備は?」

 

 「ばっちり!」

 

 私の問いに元気に答える、ルフレ。

 

 私は彼女達の姿を見る。

 

 アリアナは剣と盾、皮の金属補強軽装備。

 

 ルフレはナイフと弓、皮の軽装備。

 

 ユリアルマは杖と軽盾、布の皮補強軽装備。

 

 「ん?ユリアルマ軽盾を買ったのか?」

 

 私が言うとユリアルマは盾を見せながら言う。

 

 「昨日の準備の時にね、やっぱりあった方が良いと思って」

 

 「金は大丈夫だったのか?」

 

 連帯責任の借金があるのに平気だったのか?

 

 「ええ、この仕事が成功すれば大丈夫よ。駄目だったら駄目だけど」

 

 「おい……」

 

 呆れる私、上手く行かないという事は無いだろうが、駄目だったらどうするんだ。

 

 「そろそろ馬車が来るよ」

 

 アリアナが言う、私は馬車乗り場へ移動した。

 

 

 

 

 

 

 「このまま近場まで馬車で移動して、途中から森に入って探すわよ」

 

 馬車の中でこれからの事を話し合う。

 

 目的の魔物が居る場所は森の丘や崖の麓などが多い……らしい。

 

 結構珍しい魔物で、もし討伐出来ればかなりの値で売れるだろう。

 

 「いくらになるかなー」 

 

 「まずは見つける事を考えないとね?」

 

 ルフレがそわそわしながら言うとユリアルマが答えた。

 

 「値が良ければ借金も全部返せるかも」

 

 アリアナが目を輝かせる、確かに珍しいと値が上がる、場合によっては驚くほどに。

 

 「浮かれすぎると危ないぞ?」

 

 「はーい」

 

 私の言葉に二人同時に返事をするルフレとアリアナ、私がユリアルマの方を向くと彼女は穏やかに笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 「ルフ!弓で気をそらせ!ユリは私の攻撃の合間に魔法を挟め!」

 

 「了解!」

 

 指示を出すアリアナに同時に答えて動き出すルフレとユリアルマ。

 

 森に深く入って行くにつれて魔物が増えて行く、一匹一匹はそこまで強くないが多くなってくると彼女達には辛いだろう。

 

 今私は気配を消している、小さな熊系統の魔物だが今は彼女達に気がそれて私に気が付いていない。

 

 アリアナは私が潜んでいる草むらが魔物の背後に来るように動いてくれる……そろそろだな。

 

 私は女神装備から弓を出し、魔物の足を打ち抜いた、突然動かなくなった足と激痛に混乱した瞬間、アリアナの剣が魔物の首を突き刺した。

 

 「ふうっ」

 

 アリアナが息を吐く、真正面から盾になるのはやっぱりまだ辛いか。

 

 「お疲れー」

 

 「上手く行きましたね」

 

 ルフレとユリアルマが声をかけながら近寄ってくる。

 

 「アリアナ、私が正面に立とうか?」

 

 私がそう言うと彼女は首を横に振る。

 

 「大丈夫、クレリアは色々出来るけど私はこの役目しか出来ないからね。私がやるよ」

 

 にこりと笑うアリアナ。だけどここに来るまでかなり戦った、他の二人も疲れが見え始めている、そろそろ野営の準備をした方が良さそうだ。

 

 「今日はここで野営しよう、皆疲れが出始めてる。このまま進むのは危ない」

 

 「ん、そうしよっか」

 

 「そうね、魔力も持つか分からないし」

 

 「疲れたー。ゆっくりしたいー」

 

 やっぱり疲れていたようだ、すぐに三人は賛成した。

 

 

 

 

 

 

 野営の準備をして夕食を作るため、私はマジックボックスから買っておいた材料を出す。

 

 今まで狩った小型の魔物の死体は私が保存して彼女達に譲る事になっている、ユリアルマもマジックボックスは使えるが、私のマジックボックスの容量に驚いていた。

 

 「ありがとうねクレリアさん。魔物を保存して貰っちゃって」

 

 料理中のユリアルマが言ってくる。

 

 「特に大変でも無いぞ?」

 

 本当に特に何ともない、入れるだけだ。

 

 「それに道中の小型は譲ってくれるっていうし」

 

 それを悪いと思っているのか。

 

 「私が良いと言ったんだ、気にする必要はない」

 

 「うん。ありがとうね」

 

 そろそろ出来上がる、周囲を警戒している二人を呼ぼうか。

 

 「二人を呼んで来る」

 

 彼女が頷くと私は二人を呼びに行った。

 

 食事をした後に見張りの担当を決めたのだが、私以外の三人の見張り時間を短くして最後に私が朝まで見張る様に持ち込んだ。

 

 「じゃあ朝までお願いね、おやすみなさい」

 

 「任せろ、お休み」

 

 ユリアルマと交代して後は朝まで私が見張りだ。目の前には焚火があり、周囲は森のせいで月明りも届きにくくかなり暗い。

 

 彼女達の寝息が聞こえる中、近づいてくる気配がする……大型の魔物だ。

 

 私は無言でその魔物に意識を向ける。その気配は戸惑ったような動きをした後怯える様に遠ざかって行った。

 

 焚火の炎に当たり、木の焼ける音と彼女達の寝息を聞きながら、私は朝を待った。

 

 

 

 

 

 

 朝になり私は三人を起こした。

 

 「ユリアルマ、食事を作ってくれ。何が必要だ?」

 

 私はユリアルマにそう言うとマジックボックスを開く。

 

 「あらあら、ではお砂糖と……」

 

 必要な物を出していく、そうしてるとルフレが話しかけてきた。

 

 「クレリアちゃんほんとにだいじょーぶ?」

 

 徹夜の事か、そもそも寝ないからな。

 

 「大丈夫、ソロの時は寝ない事もある」

 

 「……ソロの冒険者はすごいね」

 

 その会話を聞いて驚いたような声を上げるアリアナ。

 

 

 

 

 

 

 「居た……あいつだ……」

 

 いつもはうるさいルフレが声を殺して呟く。

 

 目的の魔物は三方を高い山肌に囲まれた奥まった場所に生えていた、見た目は大きな果実を実らせた木だがよく見ると不自然に動いている。

 

 「よし……慎重に行くぞ。奴の動きから目を離すなよ」

 

 私がそう言うと頷く三人。

 

 アリアナが盾を構え細い谷底の様な道の入り口へ進む。ルフレが弓で、ユリアルマが魔法でそれぞれ援護できるように構え距離を開けてついて行く。

 

 念の為私は周囲を感知する……これは。

 

 「下がれ!罠だ!」

 

 私はアリアナが入り口に入る前に叫ぶ。

 

 「!?」

 

 私の言葉を聞いたアリアナはすぐに入り口から離れた。

 

 十分な距離を取ると私に近づいてくる、他の二人もやってきた。

 

 「罠ってどういう事?」

 

 ルフレが聞いてくる。

 

 「谷底の様に狭く細い入り口、その地面の下に魔物の魔力が通ってる」

 

 「そんなこと分かるの?」

 

 アリアナが聞く。

 

 「信じられないかもしれないが信じてくれ」

 

 「……信じるわ。方法を考えましょう」

 

 ユリアルマが言う。良かった、彼女達を死なせるのは気分が悪いからな。

 

 罠なのは間違いないだろうが出来れば確かめておきたい。

 

 「上手く行くか分からないが確かめてみよう」

 

 私はそう言ってマジックボックスから果物を取り出した。

 

 「なんで果物?……あっ」

 

 急に果物を取り出した私に疑問を口にするルフレだが思いついたように声を上げる。

 

 「念の為気を付けておけ」

 

 頷く皆を見てから果物を道の方へ投げる、果物が道の上に差し掛かると地面から根のようなものが飛び出し果物は砕け散った。

 

 沈黙する彼女達。まあ踏み込んでたらアリアナがああなっていた訳だし当然か。

 

 「なんでこいつがランク5に居るんだ……?」

 

 アリアナが思わずと言った感じで呟く。

 

 「恐らく平地だと一方から囮を投げて別方面から攻撃すれば片が付くんじゃないか?」

 

 「場所が悪かったと言う事ね……」

 

 私の説明に返すユリアルマ。

 

 「どうするのー?」

 

 ルフレが聞いてくる。

 

 「ユリアルマが燃やしてしまえばいいと思うよ」

 

 アリアナが答える。

 

 「やってみましょう」

 

 ユリアルマが頷き言った。

 

 

 

 

 

 

 「駄目だわ……」

 

 ユリアルマが使うファイアボルトも届く前に無数の根に阻まれて届かない、当然弓も駄目だ。

 

 「折角見つけたのにー」

 

 ルフレが悔しそうに言う。

 

 「うーん……」

 

 唸るアリアナ。

 

 全部焼き切れればいいんだな。

 

 「私に任せてもらえないか?」

 

 皆の視線が集まる、期待した顔だな。

 

 「何か方法があるの?」

 

 アリアナが聞いてくる。

 

 「ああ、邪魔されるならそれごと焼き払えばいいだろう」

 

 「そんな事出来る……のよね貴女なら」

 

 魔法使いであるユリアルマが言ってくる、彼女は言っている事の大変さが分かるからな。

 

 「お願いします。どちらにしてもこのままじゃ帰るしかないもの……二人もそれでいい?」

 

 ユリアルマの言葉にうなずくアリアナとルフレ。

 

 「分かった。離れていてくれ」 

 

 私は入り口付近まで行くと本体の木に向かって手をかざし炎を放射した、見る者が見れば炎のレーザーだと言うだろう。

 

 それは突き出してくる根をものともせず焼き払い、命中した木の魔物は一瞬で燃え尽きた。

 

 魔物が燃え尽きたのを確認すると、すぐに止めた。

 

 威力は大分抑えたから裏に貫通はしていないだろう。

 

 「……良し。皆終わったぞ」

 

 そう言って振り返ると皆は間抜けな顔で魔物のいた場所を見ていた。

 

 「クレリアちゃんの魔法が凄すぎるとかどうしてそんな力がとかいろいろあるけど……」

 

 ルフレが魔物の居た方を見たまま言う。

 

 「全部消し飛ばして、討伐したと認めてもらえるのかしら……」

 

 ユリアルマが困った顔で言う。

 

 「……あっ」

 

 声を上げる私。

 

 ……やってしまった……。

 

 「もう駄目だ……すぐに今の宿も追い出されてしまう」

 

 うなだれるアリアナ。

 

 気まずい沈黙の中、私が言った言葉は……。

 

 「皆私の家で暮らすと良い」

 

 だった。

 

 

 





 主人公の言葉遣いを変えようとこんな感じに、あまり変わって無いかも知れません。











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015-02


 ギルドはファンタジー系の小説でお馴染みです、長く続くかもしれないですね。

 この作品の注意事項

・作者の自己満足

・素人の作品

・主人公最強

・ご都合主義

・辻褄が合わないかもしれない設定

・注意事項が増える可能性

 等が含まれます。

 以上をご理解したうえでお読みください。

 読者の皆さんの暇潰しの一助になれば幸いです。



 

 その後私達は丸一日かけてギルドに戻ったが結局証明する物が無く依頼は失敗になり、スナイププラントの危険性だけ伝えてギルドを出た。

 

 「ふんふんふふゃんにゃににゃあ」

 

 良く分からない鼻歌を歌いながら歩くルフレ。

 

 「ご機嫌だねルフレ」

 

 アリアナが言うが、彼女も嬉しそうだ。

 

 「そりゃそうだよー!クレリアちゃんの家にお世話になれるんだよ、宿代が浮くぞー!」

 

 「ルフレさん……ごめんなさいクレリアさん。でも助かるのは本当なんです……」

 

 嬉しそうにはしゃぐルフレと申し訳なさそうにしながらも嬉しそうなユリアルマ。

 

 「元はと言えば私が魔物を消し飛ばしてしまったせいだしな、部屋も足りてるから構わないよ」

 

 そう言って進む。

 

 途中で部屋用のネームプレートを人数分買って町の郊外に向かう。

 

 人通りは減り、大通りの賑やかさは消え、静かな住宅地に入ると更に防壁の方へ向かう。

 

 「……ねえユリアルマ、こっちって結構高級な住宅街じゃなかったっけ?」

 

 「……そうですね、最低でも五千万以上のお屋敷ばかりだったはずですが……」

 

 後ろでひそひそと話すルフレとユリアルマ、アリアナは周りを見ながら歩いている。

 

 そして庭の入り口にある鉄門に近づく。

 

 「ここだ」

 

 そう言って門を開ける、庭に入って進むと付いてくる気配がしない、後ろを向くと三人がボケっとしている。

 

 「おい、早く来い」

 

 そう言うと、ハッとして皆小走りについてくる。

 

 「すっご……クレリアちゃんって良い所のお嬢様?」

 

 玄関に向かう途中ルフレが話しかけてくる、何と言ってごまかすか。

 

 「まあ、そんな感じだ」

 

 そう言っている間に玄関に到着する、三人共屋敷や庭を見ている、その内庭に池でも作るかな。

 

 「入ってくれ」

 

 「お邪魔しまーす……今日から住むんだしただいまかも?」

 

 「おじゃ……ん?そうね」

 

 「……ただいま、かしら」

 

 ルフレの言葉に言葉を切るアリアナとただいまと言うユリアルマ。

 

 「部屋は二階だ。一つだけ離れている大きな部屋は私の部屋だからな。四部屋固まっているから好きな部屋にこのネームプレートをかけて荷物を置いて来い。屋敷と部屋と敷地の門の鍵も渡しておくから無くすなよ」

 

 そう言うと三人は返事をして二階へ上がって行った、防犯の魔法をかけなおしておこう。

 

 魔法をかけ終わって紅茶の準備をしてリビングで待っていると三人が降りてきた。

 

 「凄い良い部屋だった!下手な宿より遥かに良いよ!」

 

 「あんなに良い部屋に住めるなんて思って無かった!」

 

 「申し訳なくなるわね」

 

 降りてくるなり私に言ってくるルフレ、嬉しそうに笑うアリアナ、困り顔のユリアルマ。

 

 「さて、三人共座って」

 

 紅茶を入れて皆を座らせる。

 

 「この家のルールを教える、とは言ってもそこまで厳しくは無い」

 

 その後、自分の部屋の掃除は自分でやる事。

 

 屋敷全体の掃除、洗濯、食事の用意、風呂の用意などは分担する事。

 

 三人以外の者を連れて来る時は私の許可を得る事などを話した。

 

 「今日は疲れているだろうし食事は外でしてゆっくり休もう。食事はおごるから気にしないで食べていい」

 

 「やった!ありがとうクレリアちゃん!」

 

 飛びついてきそうなルフレ、残る二人もお礼を言ってくる。

 

 「私が食べている店のうちの一つでいいかな?」

 

 「文句なんてないよ、ごちそうして貰う身なんだし」

 

 アリアナが苦笑いしながら言う。

 

 「じゃあ行こうか」

 

 こうして食事に出かけた。

 

 

 

 

 

 

 私は注文を終え頬杖をつく、皆も好きな物を頼み後は待つのみだ。

 

 「……クレリアさんは本当にお嬢様なのですね」

 

 ユリアルマがしみじみと言う。

 

 「どういう事?」

 

 「この店も結構な高級店なんだけど……?」

 

 私の問いにアリアナが答えた。そうだったのか……味が良いから来ていたんだが。

 

 「まあ、気にしないで食べろ。今日のお詫びの内だ」

 

 話をしながら待っているうちに料理が出され、皆嬉しそうに食べるのを見ながら私は自分の食事に手を付けた。

 

 

 

 

 

 

 「美味しかったねー」

 

 ルフレはお腹をさすりながら帰りの道を歩いていく。

 

 「帰ったら風呂に入って今日は寝よう」

 

 「お風呂か、嬉しいな」

 

 「そうねぇ」

 

 私が提案するとアリアナとユリアルマが答える。

 

 

 

 

 

 

 「風呂でっかい!……ねえ皆で入ろうよ!」

 

 家に着き風呂場を見たルフレが言う。

 

 「私は平気だよ」

 

 「私も平気よ」

 

 アリアナとユリアルマは了承して、私を見る。

 

 「クレリアちゃーん」

 

 ルフレも私を見る。

 

 「分かった、入る」

 

 「イエーイ!」

 

 喜ぶルフレは他の二人とハイタッチしている。

 

 私はすぐに過去の娘達の体を何とか思い出し。人間の様に一部を変化させる、そのたび違ったらおかしいし彼女達と過ごす間はこのままでいるか。

 

 

 

 

 

 

 「あー……気持ちいいー」

 

 完全に脱力しているルフレ、アリアナとユリアルマも隣でリラックスしているようだ。

 

 「んー……」

 

 私もゆっくり浸かっていると、アリアナが私をじっと見て唸っている。

 

 「アリアナ?どうしたの?」

 

 ユリアルマが気付いて声をかける、アリアナは私を見たまま答える。

 

 「いやー若いからこれからだけどさ、クレリアってかなり完璧に近くない?」

 

 「……なるほどね。顔も綺麗だし声も良いし……お肌も綺麗で色々良い色してるものね」

 

 アリアナの言う事に納得顔のユリアルマが答える。

 

 「皆の方が綺麗だと思うが……」

 

 皆の肌を見る、健康的な肌だと思う。

 

 「私達は二十歳を超えているし、何よりクレリアさんは基本的な美しさが違う気がするのよねぇ」

 

 湯舟に浸かったままそう言いながらこちらにスーッと移動してくるユリアルマ、そのまま腕を撫でてくる。

 

 「やっぱりすごくいい肌触りね」

 

 そう言いながら自分の腕と触り比べる彼女。

 

 そんな事をしながら後ろから胸を触ろうとしているルフレを避ける。

 

 「むっ……クレリアちゃんの小さな胸はどんな触り心地かなー?」

 

 「ふむ、触りたいなら触って良いぞ……ほら」

 

 私は胸を張って待つ、魔法を使って。

 

 「えっ?良いの?では遠慮なくー」

 

 そう言って触ってくる彼女だが触ろうとしても胸にギリギリ手が届かない。

 

 「あっあれ?ぬぬぬ……」

 

 頑張っているが一向に近づかない彼女の手。

 

 「ほら、どうしたルフレ?触って良いんだぞ?」 

 

 「ぐぬー……」

 

 どうにかしようとする彼女。

 

 「クレリア相手は無謀じゃないかなぁ……」

 

 「体の表面に沿って防御魔法を使うのはかなり高度なんですが……」

 

 挑発する私、ムキになるルフレ、そんな私達を眺めながら呟くアリアナとユリアルマ。

 

 彼女はのぼせるまで諦めなかった、その頑張りは認めよう。

 

 

 

 

 

 

 「クレリアちゃんギルドに行こ!」

 

 当番の者が朝食を作り食べ終えた後、ルフレが近寄ってくる。

 

 「そうだな、お前達は早く稼がないといけないしな」

 

 「そうなんです!」

 

 彼女はやる気があるようだ。

 

 「他の二人は?」

 

 「私達も勿論行くよ」

 

 「お金、稼がないとね」

 

 私の問いに答えるアリアナとユリアルマ。

 

 私達はギルドに向かう事にした。

 

 

 

 

 

 

 「ねえクレリアちゃんどの討伐依頼やる?」

 

 依頼表を見ているとルフレが話しかけてくる。

 

 「まだ決めてないがお前達は決めたのか?」

 

 彼女達は稼がなくてはいけないから早く決めないとまずいんじゃないか?

 

 「クレリアちゃんが決めてよー」

 

 ん?何かおかしいぞ。

 

 「なんで私が選ぶんだ?」

 

 「皆でやるんだし良く知ってるクレリアちゃんが決めたほうが良いでしょ?」

 

 一緒に依頼をやるつもりなのか。

 

 「言っておくが……一緒に依頼はやらないからな?」

 

 「えっ!?なんで!?」

 

 驚く彼女。

 

 「元々パーティーじゃないし、たまたま一緒に仕事をやっただけだ。私のミスで家を提供したが一緒に戦う訳じゃない」

 

 「ええー……」

 

 声を上げるルフレ、そんなやり取りをしているとユリアルマとアリアナがやって来る。

 

 「ルフレさん無理を言っては駄目ですよ」

 

 「元々あの時だけだったんだから迷惑かけちゃだめだよ」

 

 そう言ってルフレを止める、彼女はしぶしぶ諦めた。

 

 「たまには一緒に行こうね?」 

 

 笑って言うルフレ。

 

 「気が向いたらな」

 

 そう言うと彼女達は依頼書を見に行った。

 

 私は再び依頼書に目を向け選び始める。

 

 

 

 

 

 

 前日は近場で魔物狩りをして早めに帰った。共に過ごしている三人は特に問題なく私と暮らしている。

 

 今日は朝から商店を見に行く、彼女達はまだ寝ているようだし起こさないようにそっと家を出る。

 

 朝から大通りは人で賑わっている。

 

 店を眺めなら歩いていると酒屋が目に留まる、そういえば今まで酒を飲んだ事が無い。

 

 「いらっしゃい」

 

 酒屋に入ると辺りを見回す、様々な種類が置いてあるが見ただけではあまり分からない。

 

 「少し良いか?初めて飲む酒でお勧めはあるか?」

 

 店員か店主かは分からないが質問する。

 

 「初めてか……待ってろ」

 

 そう言って席を立ち店の一角からボトルを二本持ってきた。

 

 「この二本はアルコール度数が一番低くて果実を材料にしてる、試してみるならこの辺りが良いだろう」

 

 赤のラベルと白のラベルのボトルを見比べる……ま、買ってみるか。

 

 「この二本を買うよ」

 

 「毎度あり」

 

 酒屋を出てまたぶらぶらと道を歩く。すると動物の絵が描かれた店があった、見覚えが無い……最近出来たのか?

 

 「いらっしゃいませ!」

 

 店に入ると、瓶に入った白い液体が冷やされて並んでいる。

 

 「見覚えが無かったから入ったんだが……食品店なのか?」

 

 店員に疑問をぶつける。

 

 「はい、ここはモーと言う動物のお乳を売っています。いずれこの乳を原料にした他の製品も扱う予定です。この場で飲む事もできますから是非飲んでみてください」

 

 なるほど、まずは飲んでみないと何とも言えないな。

 

 「じゃあ一杯貰おうか」

 

 「かしこまりました。少々お待ち下さい……どうぞモー乳になります」

 

 グラスに入った真っ白な液体、私はそれを一口飲む。

 

 「……ほう」

 

 特に強い匂いは無い、しかし濃厚な味がするし仄かに甘みの様な物も感じる……。

 

 「美味いな」

 

 「ありがとうございます」

 

 これは買っていこう。

 

 「大瓶を十本くれ」

 

 「ありがとうございます、すぐご用意します」

 

 残りのモー乳を飲んでいる間に大瓶が揃えられたので飲み切ってグラスを返し、金を払って店を出た。これは普段から愛飲出来そうだ。

 

 モー乳をマジックボックスにしまい込んで大通りに戻る、今日はもう帰ろう。

 

 

 

 

 

 

 家に帰り買った酒を取り出しグラスを用意する、まずは赤の酒、赤ワインを飲んでみる。

 

 「……うーん」

 

 思ったより甘くないし、苦くて変な臭いがする。

 

 飲めない訳では無いが……。

 

 「私はモー乳が良い」

 

 白い方も駄目だった。

 

 私はモー乳を取り出すと魔法でもう少し冷やして飲む……美味い。

 

 酒は我が家の三人組に譲ろう、誰か飲むだろう。

 

 三人は居なかったので昔買った本を読む。今度は新しい本を買おうと思いながらのんびりと過ごした。

 

 帰って来た三人に酒を譲りルフレに「まだまだお酒が分かってない」と言われた。

 

 今は分からんな、今後も分かるかどうかと言われれば……分からんな。

 

 

 

 

 

 

 翌日。いつもの様にギルドに来た私は、妙に偉そうにしている男達が居る事に気が付いた。

 

 男達は何を倒したとか他の冒険者は大した事無い等と話している。

 

 見覚えは無い、他の町から来たのか。

 

 話からするとランク7辺りなのだろう。

 

 私は興味を失い依頼書を見る、そうすると頭の上から声がする。

 

 「ん?なんでガキがランク5の依頼書の前に居るんだ?」

 

 先程の男達の一人だったような……?

 

 「私はランク5だぞ」

 

 そう言ってギルドカードを見せる、男は驚いたように言った。

 

 「マジかよ!ここのギルドはこんなガキをランク5にするのか?」

 

 驚き声を上げる男の声に反応し、仲間らしき者達が集まってくる。

 

 「どしたん?」

 

 「いや、このガキランク5らしいんだよ」

 

 「マジで!?このギルド大丈夫なのか?」

 

 口々に色々言う男達。

 

 そう言えば今まで見た目でこんな風に絡んでくる奴は居なかったな、ここのギルドの冒険者は良い方なんだな。

 

 「お前達は何故ランク5の所に来た?お前達の話が耳に入ったが、お前達はランク7辺りだろう?」

 

 「口の利き方がなってねぇガキだな……まあ教えてやる。俺達はランク7の実力があるがわざとランク5で止めてるんだよ」

 

 何かそうするだけのメリットでもあるのか?

 

 「実力ギリギリの魔物を倒すより余裕がある方が安全だろうが」 

 

 まあ、そうだな。

 

 「安全に稼ぐためにわざと上げて無いと言う事か」

 

 「そうだ、お前も賢く稼げよ」

 

 そう言って男達はギルドから出て行った、依頼は良いのか?

 

 私は依頼を取り、カウンターに向かう。

 

 

 

 

 

 

 私はカウンターで先程の男達の話を聞いてみた。

 

 「恐らく嘘だと思います」

 

 ギルド職員の男性はそう言った。

 

 「クレリアさんが聞いた魔物を本当に討伐しているなら強制的にランクを上げられるはずですよ」

 

 「そうなのか?」

 

 訪ねる私に説明してくれる。

 

 「上位のランクの魔物を討伐できる者を低いランクのままにする事は基本的にありません。冒険者の登場によって魔物は討伐されるようになりましたがそれでもその数は減っているといえませんから。そこまで実力がある者を下のランクに置いておく事は無駄でしかなく、更に下のランクの冒険者の仕事も減ってしまいますからね」

 

 「そうか。ありがとう、では討伐に行ってくる」

 

 「お気をつけて」

 

 職員に見送られギルドを出る。私も上のランクを討伐していたら半ば強制的に上に上げられていた訳だ、いずれは上げるつもりだが今はまだこのままで良い。

 

 

 

 

 

 

 それから一月程がすぎたある日、私はいつもの様に依頼をこなし家に帰り三人と共に食事をしていた、他愛のない話をしていたが、話が途切れた時ルフレが話しだした。

 

 「クレリアちゃんは知ってる?」

 

 「それで答えられるか、分かりやすく言え」

 

 そう言うと苦笑いしながらアリアナが話す。

 

 「少し前に討伐中のパーティーに魔物が乱入してきて、そのパーティーは一人を除いて全滅したみたいなのよ」

 

 「誰がやられた?」

 

 冒険者は命を懸ける、こんな事はそれなりにある。

 

 「えっと一月くらい前によそから来た男のパーティーがあったんだけど、知ってる?」

 

 そう聞いてくるアリアナ。

 

 「分からん」

 

 分からない物は仕方ない。

 

 「そっか……それで生き残った人の証言でその魔物が危険度7だってわかったらしいの」

 

 食事を止め真面目な顔で言うアリアナ。

 

 「この辺りにやって来たと言う事?」 

 

 そう言うとユリアルマが話し始める。

 

 「このギルドに危険度7の魔物を討伐できる冒険者は居ないわ……今別のギルドに討伐できるパーティーを要請しているみたい」

 

 この町は人類の勢力圏の中の方にある、辺境に行くほど凶暴で危険な魔物が増えるみたいだしな。

 

 「クレリアちゃんなら勝てそうなんだけどー?」

 

 ルフレが私を見ながら言ってくる。

 

 「どうだろうな。もうギルドで対策してるなら任せればいいと思うが」

 

 適当にごまかす。

 

 「とにかく、ギルドでも通達しているけど討伐されるまでは依頼は今まで以上に注意してやってね?」

 

 ユリアルマに言われて、私は頷いた。 

 

 

 

 

 

 

 それから一週間後、私は本を見に出かけていた。

 

 店には魔法を始めとした各技術書、戦闘指南書、創作なのか事実なのか分からない冒険記、料理などの本、歌や音楽の本、クレリア神教の本もあった。

 

 色々な種類ごとに良さそうな物を買って店を出る。

 

 早々に目的を終えた私はその足でギルドに向かった。

 

 危険度7の魔物の話を聞いたその日に魔物の情報が張り出され、見かけたらすぐに逃げる事、すでに応援を要請しており討伐の為のパーティーが向かっている事が連絡がされた。

 

 それでも相変わらず冒険者達は居座っている、犠牲者が出て危険度が高い魔物が付近に居ても冒険者達の暮らしは変わらないようだ。

 

 「クレリア、ちょっといいか?」

 

 そうして何か近場で討伐に行こうかと思って居ると冒険者の男に声をかけられた。

 

 彼はここのギルドの冒険者のはず……名前は知らない。

 

 「なんだ?」

 

 男の方を見る。

 

 「俺と付き合ってくれ」

 

 「断る」

 

 男の告白断ると肩を落として戻り仲間らしき数人に慰められている。

 

 最近私は告白を受けるようになった。今頃なぜ……と思ったが我が家の三人曰く、今までは様子を見ていた……らしい。

 

 「見事に切り捨てましたなぁ」

 

 ルフレが近寄ってきて言う。

 

 「なんでみんないきなり言ってくるんだ?」

 

 私はルフレに問う。

 

 「クレリアちゃんの性格から考えて直球が良いと思ったんじゃない?」

 

 ルフレは私を見ながら言う。

 

 「何をしても無駄だけどな」

 

 ルフレがその言葉を聞いてにやけながら言う。

 

 「おっと?クレリアちゃんは女の子の方ふぁっ……」

 

 ふざけた事を言い始めたルフレの顔を掌で押さえる。

 

 「変な事を広めたらお仕置きするぞ」

 

 「クレリアちゃんのお仕置きって酷い事になる予感しかしない」

 

 ルフレを大人しくさせて再び依頼書に目を移し物色するのだった。

 

 

 

 

 

 

 あれからまた一週間が過ぎた。

 

 時々例の魔物……ハンドスネイクを見かけて逃げてくる者が居たが犠牲者は出なかった、そして今日リンガイルから討伐しに来た冒険者が到着する予定らしい。

 

 私はいつも通り朝から依頼書を見ていた、すると入り口が少しざわついて五人の男女が入ってきた。

 

 私は目を向け確認する。

 

 男三人の女二人、装備からすると男三人が前衛女二人が後衛だな、ハンドスネイク程度なら倒せそうだ。

 

 名前を知らなかったが姿絵を見て気が付いた事がある。

 

 この魔物はカミラと居た時に大量に襲い掛かってきた雑魚だ。

 

 そこそこ美味しかったので覚えている、大きい上に数が居たのでいまだにマジックボックスにかなりの数が入っている。

 

 これで今回の事は何とかなると考えた私は、今日の依頼を選ぶ作業に戻った。

 

 「では、頼んだぞ」

 

 「ええ……なるべく早く討伐しますよ」

 

 ふむ……そろそろランクを上げるか……?しかしここにはランク5までの魔物しか居ないからな……。

 

 「……っ!あの、そこの子……ちょっといいかな?」

 

 これ以上ランクを上げるには上位の魔物が生息している付近の町や村に移動しないといけない。

 

 「そこの考え込んでいる黒髪の君だよ」

 

 まだ三か月もたっていないのに移動するのはな……と思っていると私の肩に手を置こうとしているのを感じてかわす。

 

 「あっ……」

 

 手を伸ばしたまま固まっているのは黄色い髪の男だった。

 

 「なんだ?何か用か?」

 

 「偉そうな子供ねぇ」

 

 彼の仲間の女性から声が聞こえる。

 

 「……ここのギルドの子だよね?危険度7の魔物が出たから討伐しに来た冒険者なんだけど、この辺りを案内してくれないかな?目撃された場所とかさ」

 

 そう言ってくる男。

 

 「生き残りの男や目撃した者達が居る、そいつらに頼め」

 

 そう言うと困ったような顔になる。

 

 「えーと、何と言えばいいかな……君に頼みたいんだけど」

 

 「私は目撃した事も無いしここに来て三か月も経っていない。他にもっと詳しい者が沢山いるからそいつらに頼んでくれ」

 

 「……分かったよ」

 

 説明すると彼は引き下がり、ギルドを出て行った。

 

 

 

 

 

 

 討伐の為のパーティーがやってきて五日程が経った。

 

 「クレリアちゃんまたあいつ来てるの?」

 

 ルフレが心配そうに話しかけてくる。

 

 「ああ」

 

 よく頑張るものだ。

 

 「五日間ずっとだろ?魔物を探す合間に何度も来るよね」

 

 アリアナが言う、彼女も心配してくれているようだ。

 

 「まとわりつかれているってギルドに言って見たらどうかしら」

 

 ユリアルマが提案する。

 

 「大丈夫だ。無理な事は言われないし断ればすぐに引く、その内討伐を終えて帰るだろう」 

 

 討伐できなければ稼ぎも無いんだ、あまり長い間討伐出来なけれは別のパーティーが来るんじゃないか?

 

 「そうだと良いけど……」

 

 ユリアルマは呟く、私はいつもの防具と剣を身に着け家を出る。

 

 

 

 

 

 

 「おはよう、クレリアちゃん」

 

 家を出てすぐの場所に例の男が立っていた。

 

 「頑張るなお前も」

 

 名前は聞いたはずだが、ロメオだったか……?

 

 「美しい君のためだ頑張りもするよ」

 

 私に近づいて来る彼。

 

 「討伐はどうだ?」

 

 私が問うと彼はにこりと笑い言った。

 

 「君が案内してくれたら上手く行きそうなんだけど」

 

 「何故私にそこまで頼む?」

 

 私が言うと彼は笑ったまま言う。

 

 「君が今まで見た事が無いほど美しいからさ」

 

 何の関係があるんだ。これが普通の男のアプローチ?というやつなのか?

 

 「このまま君が来てくれないといつまでも魔物が見つからないかもしれない、そうしたらいずれ誰かが犠牲になるかもしれないよ?」

 

 「何となく私が来なければ討伐しないと言っているようにも聞こえるが?」

 

 そう言うと彼は笑みを深くして言う。

 

 「いやいやそんな事一言も言っていないよ?ただ……君と住んでいる彼女達が危なくなる事もあるかもしれない」

 

 「言っている意味が良く分からないが」

 

 彼は急に真顔になり私を見て呟く。

 

 「案内をしてくれないなら彼女達を魔物の仕業に見せかけて殺す」

 

 「ほう……分かった」

 

 「良かった……では善は急げです今から行きましょうか」

 

 私の言葉を聞くと彼は微笑み、私を案内する……お前は選択を誤った。 

 

 

 

 

 

 

 彼について行き、ある程度森の奥に進むと彼の仲間がそろっていた。

 

 「ようやく連れて来たのかよロミオ」

 

 仲間の男が言う、ロミオ……そう言えばそんな名前だったな。

 

 「ようやく説得に応じてくれました」

 

 「脅迫の間違いでしょ」

 

 そう言うと女の一人が言って笑う。

 

 一応どういう事なのか聞きたいな、軽く自白誘導魔法を使っておくかな。

 

 「おい、お前達は何が目的なんだ?」

 

 そう言うと男の一人が言う。

 

 「簡単な事だ、お前で俺達が楽しむ、その後は金持ちに売る、お前が消えたのは魔物に食われたから……ほらな?」

 

 女がそれに続く。

 

 「快く案内を受けてくれたまだランクが低いアンタは私達からはぐれ、私達が必死に探すも間に合わず……悔いるような演技をすればそこまで問題にはならないわ」

 

 また男が話し始める。

 

 「討伐自体はするけどな、要請がある時は立候補して救援に行くぜ」

 

 最後に女が言う。  

 

 「稼げるものね」

 

 なるほどな……やるのは構わんが私の周りに手を出したのは失敗だったな。 

 

 もう一つ聞いておこう。

 

 「売買専用の場所などがあるのか?」

 

 そう聞くとロミオが微笑みながら答える。

 

 「あるよ。リンガイルのホレス・コルマノンと言う男の商会の敷地内に一部の者しか入れない場所がある、そこで売買が行われているよ」

 

 こんな所かな、私は魔法を解除する。

 

 「さて、では捕まえよう……出来るだけ傷つけるなよ、値が落ちる」

 

 ロミオがそう言うと、男が一人近づいてくる。

 

 「こんなガキ軽く気絶させればいいだろ……よく見れば装備も高そうだぜ」

 

 完全に油断して近寄ってくる男、前衛三人は剣、後衛二人は杖とナイフ、弓か。

 

 「私はこれでもランク5だ」 

 

 そう言って私の方から距離を詰め首を剣で一閃した。

 

 「っが?!ひゅ……」

 

 首から吹き出る血を手で必死に押さえながら倒れこむ男。

 

 「なっ!?」

 

 「くそっ!囲め!」

 

 慌てて武器を抜き構える雑魚達、ロミオと男が私を挟み、後衛の女達は男の後方で構えている。

 

 「たかがランク5だ!数もランクもこっちが上だぞ!」

 

 ロミオは武器を構えながら、冷静に言う。

 

 私は男に向かって身を低くして疾走する。

 

 「?!はやっ……」

 

 すり抜けざまに首を切り落とし後衛に駆ける、女達は驚愕の表情で固まっていたがすぐに動き出す……だが。

 

 遅い。

 

 わたしは内心で呟き、弓の女の首を切り裂くと流れる様に魔法で拳ほどの石を杖の女に打ち出す。

 

 「っ……」

 

 悲鳴を上げる暇もなく石が杖の女の頭を吹き飛ばした。

 

 私がロミオを見ると、彼は震えながら剣を構えていた。

 

 「あっ?えっ?」

 

 言葉にならない彼に私は微笑みながら優しく言ってやる。

 

 「大丈夫だよロミオ。君の仲間が言っていただろう?お前が消えたのは魔物に食われたからだと」

 

 ますます震えて座り込む彼に私は続ける。

 

 「私は君達と魔物を探す……不意打ちを受け私とロミオ以外が死んでしまうがロミオが私を救うために魔物と相打ちになる……そうだろう?」

 

 彼に近づきながら話を続ける。

 

 「ただまとわりつくだけならばここまでする気は無かった……しかし彼女達の命に手を出そうとするだけでなく私に手を出して来たのなら……生かしてはおけない」

 

 「ば、ばけもっ……」

 

 言い終わる前にロミオの頭が地面に転がる、その顔には恐怖が張り付いている。

 

 彼が最後に見た光景は、全身が黒い霧に覆われた人型が髪をなびかせる姿だった筈だ。

 

 「そこまで怖いだろうか?」

 

 私はそう呟いて処理を始めた。

 

 その後私は魔物を見つけ彼らの死体の場所で戦いそれらしくした後、殺した魔物をしまって帰った。

 

 

 

 

 

 

 その後は大体私の考えた通りに事が進んだ。

 

 ギルドに戻り奇襲されピンチになり、ロメオ達と共に戦い、最終的に彼らが命を捨てて助けてくれた事を出来るだけ矛盾が無いように語った。

 

 討伐したハンドスネイクを見せた事で討伐の成功と私の証言が信用され、戦闘を行った場所に調査メンバーが送られる事になり、ぐちゃぐちゃになったパーティーメンバー五人の死体が発見された。

 

 これによってリンガイルに魔物の討伐の完了とロミオ達五人の名誉の戦死が報告される事になりこの件は終息を迎えた。

 

 そして私はその戦いを守られたとは言え生き残った事でギルドからランク6への試験を受けに他の町へ行く事を勧められた。

 

 「リンガイルに行こうと思う」

 

 「リンガイルですか」

 

 私は現在ギルドのカウンターで男性職員と話している。

 

 ランク試験をどうするかと職員に聞かれ、受けると答えるとこの町の周囲で受けられる町を教えてくれた、その中に奴が話した町があった。

 

 「危険度相応の腕を持つ者達が居るのは当然ですが、あまり治安は良くありません。荒い者達も多いらしいですよ?」

 

 「大丈夫だ。力で分からせれば大人しくなる」

 

 そう言うと苦笑いする職員。紹介状を受取りくれぐれも気を付ける様に言われてギルドを出た。

 

 

 

 

 

 

 家に帰ると、我が家の三人娘がリビング待っていた。

 

 「行くの?」

 

 アリアナが聞いてくる。

 

 「ああ、行ってくる」

 

 「そっかー、クレリアちゃんが上に行くのは嬉しいけどさみしいなぁ」

 

 ルフレが頭の後ろに腕を組んで椅子にもたれる。

 

 「貴女なら平気だとは思うけど……気を付けてね?」

 

 ユリアルマは心配そうに微笑みながら私の手を握る。

 

 「私がどうにかなる事はまず無いと思うよ」

 

 そう言うと三人は、そんな感じの事を言うと思ってた、と笑った。

 

 それから半月ほどゆっくりし、出発の少し前に彼女達に家を好きに使っていい事、他の誰かを連れて来る時の決まりの取り消しを伝えてウルグラーデを旅立った。

 

 目指すはリンガイル、あんな奴等を送ってきた町を見に行こう。

 

 

 





 出来るだけ矛盾が無いように、おかしくないようにしたい。

 出来るかは別です。






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015-03


 この小説に不具合があった場合仕様です。

 不具合をなくせる様にはします。

 この作品の注意事項

・作者の自己満足

・素人の作品

・主人公最強

・ご都合主義

・辻褄が合わないかもしれない設定

・注意事項が増える可能性

 等が含まれます。

 以上をご理解したうえでお読みください。

 読者の皆さんの暇潰しの一助になれば幸いです。



 

 道中は特に何かある事も無く馬車に揺られていた、そうして十日程の旅を終えて私はリンガイルに到着した。

 

 何というか……発展している途中と言った感じの町だな。

 

 そのまま町に入ると冒険者達が多く目に付く、袋にもマジックボックスにも入れずに血抜きをした魔物の死体を引きずって歩く者も居る。

 

 私は近場の店で宿のおすすめを聞いて向かう事にした。

 

 「らっしぇい!」

 

 宿の親父の野太い声が迎えた。私はとりあえず一か月程部屋を取る事にし、宿の親父に町の事を聞いてみた。

 

 「この町の事だぁ?……聞きたいなら……分かるだろ?」

 

 指をすり合わせる親父、なんだ?

 

 困惑していると親父がしびれを切らした様に言う。

 

 「金だよ金……情報はただじゃねぇんだ」

 

 そう言う事か……私は黙って小銀貨をカウンターに置く。

 

 「へっへ、ありがとよ」

 

 そう言うとこの町の事を教えてくれた、危険度7の魔物が多く生息する荒野と森に隣接している事、その魔物の商品の輸出で町が成り立っている事など。

 

 「所で……ホレス・コルマノンを知っているか」

 

 「サービスで教えてやるよ……知っているも何も、この町のホレス商会の主だよ、町一番の商会で、実質この町の統治者みたいなもんさ」

 

 私は宿の親父に礼を言って鍵を受け取り二階の部屋に向かった、特に言う事もない普通の部屋だったな。

 

 

 

 

 

 

 次の日、私は宿の親父にギルドの場所を聞いて向かった。

 

 送って来たのはギルドのはずだ、ギルドが関わっているのなら少し大事になりそうだな。

 

 「まだチビだが良いなあの女」

 

 「ちっ、若けりゃいいってもんじゃないよ」

 

 ギルドに入って聞こえて来たのがこれだった、確かにウルグラーデに比べるとだいぶ柄が悪い、力で解決するならその方が楽かもしれないが。

 

 「ランク6の試験を受けに来た。これがウルグラーデギルドの紹介状だ」

 

 ギルド職員男性に手紙を渡す。

 

 「見せてもらうよ……確かに受け取った」

 

 そう言うとランク試験の準備らしき書類を書き始める。

 

 「所でギルド長に会う事は出来るか?」

 

 「いきなりは無理だよ」

 

 こちらを見る事無く言う。

 

 「前にウルグラーデに討伐応援で来て死んだ冒険者の事を話したいのだが」

 

 そう言うと、動きを止めこちらを見る。

 

 「関係者の方で?」

 

 そう言う彼に答える。

 

 「ああ、私は彼らの友人なんだ」

 

 実際は違うが。

 

 「お待ちください」

 

 そう言って席を立ち二階へ上がって行った、しばらくするとこちらへ戻り、応接室に案内された。

 

 

 

 

 

 

 応接室で待っていると、屈強な強面の中年男が入ってきた。

 

 「よく来てくれた」

 

 私が立ち上がると中年男が言う。

 

 「時間を作ってくれてありがとう。私はクレリア・アーティアと言う」

 

 「リンガイル冒険者ギルド商会ギルド長、ランドレイ・ラムタスだ……よろしくな」

 

 握手をしながら言葉を交わす、手の大きさがだいぶ違う。

 

 お互い席に座った所で質問をする。

 

 「早速だが、ロミオとそのパーティーメンバーの事なんだが」

 

 「……ああ、惜しい奴を無くした、これからもっと上に行ける奴だと思っていたんだ」

 

 辛そうに言うランドレイ、確かに実力はあった方か?

 

 「私は彼のこっちでの活動をよく知らないんだ、どんな感じだったんだ?」

 

 「そうだな……荒くれ者が多いこのギルドで丁寧な言葉を使い、困っている冒険者に手を貸していた良い奴だった」

 

 そう言って目を閉じる彼……おかしい、私が知っている奴と全く違うぞ。

 

 「……他のメンバーはどうだ?」

 

 私の言葉に目を開けると腕を組みながら話す。

 

 「メンバー同士仲が良く、ロミオが人助けに走ってもお前らしいと笑ってついて行く良いメンバーだったよ」

 

 違和感が凄いな、これは同一人物の話か?仕方ない……彼が知っているのかが分からないと困るからな。

 

 私は軽く自白誘導魔法を彼にかける。

 

 「何か彼等の事で知っている事は?」

 

 彼は考えるようなしぐさをして話す。

 

 「そうだな……事故などに関わる事が多少多かった気はするな、後ホレスさんとはだいぶ懇意にしていてよく呼び出されていた事くらいか?」

 

 ほう……後は何か無いか?……そうだ、奴らの一人が応援にはよく行くとかそんな事を言っていたような。

 

 「……そうだ。救援依頼があるとホレスさんからもロミオ達を送る様に言われるな、彼の人柄を考えれば向いているからそのまま頼む事が多い」

 

 その事を聞くと答えてくれた。

 

 「ではホレスの周りでは何かあったか知っているか」

 

 「……関係ないだろうが最近だとホレスさんの商会が妙に警備を強化した事か」

 

 警備を強化した……何故だ?

 

 「最後に……ロミオがしていた事を知っているか?」

 

 「していた事?よく人助けをしていたが……」

 

 「そうか、ありがとう」

 

 そう言って魔法を解除する。

 

 「彼らの事が聞けてうれしかった、ありがとう」

 

 そう言って軽く頭を下げる。

 

 「いや、構わない……彼らの分まで生きてくれ」

 

 そして私は応接室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 私は宿に戻り、部屋で聞いた事を整理する。

 

 ロミオはホレスと繋がり誘拐をしていた……これは彼らのやっていた事と証言でホレスの名前が出た時点で予想出来る。

 

 更に場合によっては町の周囲の事故などのいくつかも彼らの仕業の可能性もある……と。

 

 そして、ギルド長のランドレイはかなりの確率で彼らの裏の顔を知らない。

 

 ギルドが関わっていなくて良かったな、ギルドごと潰す事になる所だった。

 

 となると、ホレスの所で証拠を見つけるのが一番早いか?

 

 

 

 

 

 

 翌日、取り合えずホレスの商会を見て見ようと道を聞いてやって来た。

 

 広い敷地に屋敷が見える。確か敷地内に一部の者しか入れない場所があると言っていたな。

 

 普段を知らないからいまいち分からないが、確かに警備の人数が多いと言えなくもない……気がする。 

 

 

 

 

 

 

 商会周辺を少し回った後、ギルドに行くと職員に呼び止められた。

 

 「なんだ?」

 

 「クレリアさんですね?……ランク試験の手続きが途中なんですが」

 

 忘れていた……途中でギルド長に話を聞いてそのまま帰ってしまったんだ。

 

 「悪かった、すぐに行く」

 

 私は謝ってカウンターに向かった。

 

 

 

 

 

 

 その後私はランク6になった。試験は特定の魔物の討伐、手早く始末してランクを上げた、あまりの速さに職員が驚いていたが。

 

 早速今夜にでもホレスの所に忍び込んで証拠を探そう。

 

 そう考えギルドを出ようとすると、三人の男が行く手を遮ったので、避けて通ろうとすると私の前に出てくる。

 

 「邪魔だ、どけ。それとも何か用か?」

 

 「ちょっと付き合ってくれよ」

 

 「悪いようにはしねぇぜ」

 

 「こんな美人見た事ねえ……楽しみだ」

 

 三人が言う、最後の奴は何を考えているのか目が怪しい。

 

 「断る」

 

 人気の無い所ならともかくこんな所で来るとは周りが見えていないのか。

 

 「そう言うなよ」

 

 手を伸ばす男をかわすと、男達の後ろから声がかかる。

 

 「……何をやっている貴様ら」

 

 何処かに行っていたのか入り口から入ってきたランドレイだった。

 

 「ぎ、ギルド長!?ちょっとこいつが生意気な態度を取ったもんで」

 

 男の一人が言う。

 

 「人の行く手を無言で遮って無理やり連れて行こうとするのは良いのか?」

 

 そう言うとランドレイが眉間に皺を寄せる。

 

 「貴様ら、むやみに絡むのはやめろ!」

 

 そう言うと私に聞いてくる。

 

 「ランク6になったのか?」

 

 「つい先ほど」

 

 そう言うとランドレイは皆に言った。

 

 「彼女もランク6の冒険者だ。ランクが下だと思って手を出せばお前達でも怪我するぞ」

 

 「ランドレイ、絡まれないようにするにはどうすればいい?」 

 

 そう聞くと、彼は言った。

 

 「実力を見せる事だな」

 

 「分かった。何処かに訓練場は無いか?こいつらをこ……倒せば皆認めてくれるだろう?」

 

 そう言うと、彼は悩みながら言う。

 

 「手っ取り早くはあるが……大丈夫なんだろうな?」

 

 私はこちらを見ながら言う彼に頷いた。

 

 

 

 

 

 

 それから訓練場に行き、戦う事になったのだが他の冒険者もかなり見物に来た。

 

 ギルド長も居る、来たばかりの私が気になるのか?

 

 「五人に増えてるな」

 

 私の前に居る男達は三人から五人に増えていた。

 

 周りからは、一人に五人か弱虫が、とか、きたねぇまねすんな、などと声がしている、本当に実力が基準なんだな。

 

 「ちっ、仕方ねぇ……一人ずつにしてやるよ」

 

 あまりにも周りからうるさく言われるのが嫌になったのかそう言ってくる男の一人、私はわざと大きな声で言った。

 

 「全員で来い。お前達程度は問題無い……ハンデとして武器も使わないでおいてやろう」

 

 そう言って武器をマジックボックスにしまうと周囲が一瞬静かになり、その直後周囲が歓声に沸いた……こいつら何なんだ。

 

 「あの世で後悔しろやぁ!」

 

 明らかに怒り心頭の男達が剣を抜いて掛かってくる。

 

 微妙な戦いでは絡んで来る者が居るだろうからそこそこ力を見せておけばいいか。

 

 切りかかってくる五人の剣を躱し、受け流し、弾く。

 

 手で、膝で、足で……歓声に沸く周囲の中、ただひたすらに躱し受け流し続ける。

 

 

 

 

 

 

 一時間後。周囲の歓声は無くなり静まり返る中、私は疲れ切っている男達の攻撃を避け続けていた。

 

 「な……何なんだ……このガキ……」

 

 「くそっ……当たらねぇ……」

 

 一時間攻撃していられるこいつ等も弱くは無いんだろうな。

 

 「そろそろ気が済んだか?」

 

 戦いが始まる前と全く変わらない私が言う。

 

 「ぐっ……」

 

 汗をかき疲労が限界に近い男達は言葉に詰まる。

 

 「降参しろ、私の力は分かっただろう?」

 

 そう言うと男の一人が私を睨んで言う。

 

 「ふざけんな!このまま降参して終われるか!俺達はこのギルドの冒険者だ!……来いよ!やってみやがれ!」

 

 他の男達もよろめきながらも構える、そうか……。

 

 「分かった」

 

 そう言いながら魔法で適度な空気の塊を五人に同時に打ち出し吹き飛ばした。

 

 吹き飛ばされ、気絶したまま地面に転がる男達、私はそれを見て周りを見て言う。

 

 「誰かあいつらを見てやれ、死なないように加減はしたが万が一があるからな」 

 

 誰も動かずに静まり返った中、私はギルドを出て宿に帰った。

 

 

 

 

 

 

 翌朝、私は少しやりすぎたのではないかと考えていた。

 

 あれぐらいならちょうど良い感じだったと私は思っているが……奴らも一時間以上戦っていられた訳だしな。

 

 しかし帰り際が静かだったのが気になる。まだこの町には用があるのに何かあったら面倒すぎるな。

 

 どうなるかと思いながらギルドに入る、すると周囲から声がかけられる。

 

 「お嬢、依頼見に来たんすか?」

 

 「お嬢!狩り行きましょう!」

 

 「お嬢、今度アタイに戦闘教えてよ」

 

 周囲からかかるお嬢の声……昔何処かで似たような事があった気がする。

 

 こうして多少やりすぎたような気がした思い付きの絡まれない為の作戦は、思った以上に効果を発揮し冒険者の皆に受け入れられた。

 

 

 

 

 

 

 「お嬢、どこ行くんです?」

 

 「食事に行くだけだ」

 

 「もしよければお供しますぜ?」

 

 「必要無い」

 

 それから数日後、受け入れられたのは良かったが……道を歩くだけで冒険者達が話しかけてくる、なつかれるのは良いが少し面倒だ。

 

 私は食事に行くために道を歩く、商会に侵入するつもりだったのにダラダラと伸ばしてしまっている。

 

 店に着き注文した料理を食べていると一人の女性冒険者が私を見た。

 

 「あ、お嬢居た」

 

 冒険者の女性が食事をしている私に近づいてきた。

 

 「ギルド長が来て欲しいってさ」

 

 「分かった。食べ終わったら行くよ」

 

 そう言うと彼女は帰って行った。

 

 

 

 

 

 

 「さて、わざわざ呼び出してすまないな」

 

 「構わない、用は何だ?」

 

 食事を終えた後ギルドにやってきた私は応接室に案内された。

 

 「少し気が付いた事があってな……」

 

 「気が付いた事?」

 

 そう言うと正面に座るランドレイは私に聞いた。

 

 「今更気が付いたんだが……紹介状にはウルグラーデからランク6試験を受けに来たと書いてあった」 

 

 「そうだな」

 

 そう言うと彼は念を押すように聞いてくる。

 

 「君はウルグラーデの冒険者で間違いないんだな?」

 

 「ああ、そうだ」

 

 そう言うと彼は厳しい顔をして言った。

 

 「ウルグラーデにハンドスネイクが現れて応援が呼ばれた……先日あれだけの戦いが出来る君が居たのに」

 

 思わず顔が反応するのを抑える……失敗した。

 

 そうだ……あれだけ出来てハンドスネイクが倒せない訳がない。

 

 「あの時は既に応援に彼らが向かっていたので私が倒してしまうと彼らが無駄足になってしまうと思ったんだ」

 

 そう言うと彼は椅子に座り直し話す。

 

 「君は彼の友人だと言った、ならば彼らの性格も知っていたはずだ。彼なら倒してしまっても早く安全になったのならそれでいいと笑って答えるはずだ」

 

 私は彼らのここでの生活態度を知らなかったからな……。

 

 「所で……彼らが救った冒険者の男は元気にしているか?」

 

 突然聞いてくるギルド長。

 

 「ウルグラーデで今も元気にしているよ。彼らの分まで生きると言っていた」

 

 そう言うと彼は座ったまま身構えて言う。

 

 「すまないがお前をこのまま返す訳にはいかなくなった」

 

 彼の様子がおかしい。

 

 「……なぜだ?」

 

 何も言わず彼は一つの書類を私の前に投げ渡した。

 

 「それはウルグラーデギルドからリンガイルギルドに来た報告の手紙の写しだ」

 

 私はそれを読む。そこにはあの討伐の細かい経緯が書かれていた読み進めると一つの文が目に入った。

 

 ロミオ・シングとパーティーメンバーと思われる名前が並び……その後に、以上五名は案内を頼んだ冒険者の少女を守り魔物と相打ちになり死亡とある。

 

 これは、もう駄目か?私はさっき男と言われて普通に答えてしまった。

 

 報告書に書かれている事を完全に忘れていた。

 

 「今のは勘違いだ」

 

 自分でも信じない言い訳だな。

 

 「そうか。では止めを刺してやろう」

 

 無理な言い訳を言う私にかれはもう一枚手紙を出した。

 

 「これはウルグラーデのギルド職員が個人的に私宛に出した手紙だ。二日前に届いた」

 

 手紙を読んだ私は諦めた。そこにはクレリア・アーティアと言う少女がランク6試験を受けに行く事、先の討伐の生き残りである事が書かれ、どうか配慮してあげて欲しいと書かれていた。

 

 「くっくっく……」

 

 思わず笑う私、まさか止めが人の良心による物だとは……。

 

 「さて、これでお前が嘘をついている事が分かった訳だが……」

 

 気にしていなかったが彼は完全装備だ、殺す事も考えていた訳だ。

 

 「ああ、私は逃げたりしないぞ」

 

 「俺を殺すか?ただでは負けんし下にも冒険者はたくさんいる、いくらお前でも逃げられんぞ」

 

 腰を浮かせ剣の柄を握る彼に私は椅子にもたれてリラックスしながら言う。

 

 「いや、そのつもりは無い。嘘をついていたのは私だ、済まなかった」

 

 素直に謝ると、彼は構えは解かなかったが毒気を抜かれた様になる。

 

 「なぜこんなことをした?彼らを殺したのはお前なのか?魔物もお前が連れて来たのか?」

 

 一気に聞かれてもな。

 

 「聞いてくれるのなら話すが……私の言葉を信じられるのか?」 

 

 そう言うと私を見つめる彼、しばらくするとため息をつきながら言う。

 

 「……聞くだけは聞く」

 

 「そうか、お前には信じたくない事だろうが」

 

 そう前置きして話す。

 

 「まず簡単な事を答えておこう。魔物は自然に現れたものだ、犠牲者が出るまで私も居る事は知らなかった」

 

 「……そうか」

 

 疑っているのか信じているのか。

 

 「どうしてこうなったかだが。彼らが私と私の知人を誘拐し玩具にした上で金持ちに売ろうとした事が原因だな」

 

 「……何を言ってる?」

 

 理解出来ていない表情だな。

 

 「彼らはこの町のホレス商会と繋がり裏で美しい女性を死んだ事にして誘拐し、金持ち連中に売っていた」

 

 まあ私の予想だが。

 

 「待て待て……」

 

 彼は私の言葉を信じてはいないだろうな。

 

 「彼らに聞いた所、ホレス商会の敷地内に売買専用の場所があると聞いてここに来た」

 

 彼は黙って聞いている。

 

 「以前お前から聞いた、奴らが事故に多く関わっている事、恐らくあれのいくつかもその為だと思っている」

 

 「……信じられんな」

 

 そう答えるランドレイ。信じて貰えなければホレス商会の屋敷に強行突入して証拠を持ってこようか。

 

 「では聞くが、その事故……美しいと評判の女性が犠牲になっている事が多くは無かったか?」

 

 詳しくは知らないが私の予想が間違っていないのなら……。

 

 私の言葉を聞いてピクリと体を震わせるランドレイ。

 

 「心当たりがあるんじゃないか?」

 

 何も言わないランドレイ。

 

 「私は証拠を見つけようと思っている」

 

 彼は黙って聞いている。

 

 「……私はお前も奴らの仲間では無いかと疑っているが」

 

 「ふざけるな!そんな事してたまるか!」

 

 黙っていた彼はそう怒鳴る。

 

 「お前は仲間では無いのか?」

 

 「当然だ!」

 

 心外だと言いたげなランドレイ。

 

 「あんな奴らを送ってきたギルドの長を信用しろと?」

 

 「ぐっ……」

 

 痛い所を突かれた彼が呻く。

 

 「……お前の言っている事だって本当か分からない」

 

 「お互いに信用出来ない訳か」

 

 そう言ってお互いを見る……しかし。

 

 「私はお前が関わっていないのは知っているけどな」

 

 「……どういう事だ?」

 

 彼が疑いの表情で私を見る。

 

 「初めてあった時ちょっとな」

 

 「……何をした?」

 

 咎めるような表情で彼は私を見る。

 

 「悪いとは思っている。ただお前も関わっていたらギルド事潰す事になるだろう?だからハッキリさせておきたかった、害は無い」

 

 彼は溜息を吐いて構えを解いた。

 

 「ん?信用してくれたか?」

 

 「完全には信用していない……ただお前が嘘を言っているようは見えない」

 

 そう言って座る彼。

 

 「良かった、私もお前を殺したくは無いからな」

 

 彼は好感が持てる。必要で無いなら殺したくは無いよな。

 

 「……出来るとでも?」

 

 「出来るぞ?」

 

 私を睨みながら言うランドレイに思わず返してしまった。

 

 「まあそれはどうでも良いんだ、それよりも証拠を見つけないとな」

 

 睨んでいた彼が表情を戻し顎に手を当てて言う。

 

 「証拠か、そうだな……それさえあればすべて解決するが」

 

 「話は簡単だ。私が忍び込み証拠を探してお前に渡す、そしてお前が公開する」 

 

 「俺がか?」

 

 疑問の表情を浮かべる彼だが、私の目的はそれじゃないからな。

 

 「私はあの連中を送り込んできた奴を殺せれば良いんだ、証拠は……そうだな……ついでだ」

 

 何とも言えない表情のランドレイ。

 

 「あの強さといい言動といい、多少おかしな娘だと思っていたが……思った以上に危ない奴だなお前は」

 

 頭を押さえながら言う。

 

 「何を言う。私に不利益をもたらさなければ何もしないぞ」

 

 「……自分に都合が悪い時はやるって事じゃねぇか」 

 

 そう言って彼はソファーにもたれる。

 

 「当たり前だ、お前は自分の大事な物が壊されるのをただ見ているのか?」

 

 「抵抗するに決まってんだろうが」

 

 私の言葉に体を起こし彼は言う。

 

 「そう言う事だよ」

 

 彼は私の言葉に僅かに笑った。

 

 「お前はまだ十五だよな?いつからこうなったんだ?」

 

 苦笑いしながら聞いてくる。

 

 「私は生まれた時から私だよ、たとえ時間が私を変化させても」

 

 「生まれた時からそんなだったら親も苦労しただろうな」

 

 そう冗談めかして言う。

 

 「彼女はいつも笑って傍に居てくれたよ」

 

 そう……彼女は私の母親でもあったからな。

 

 「居てくれた……か」

 

 彼は呟くように言うと話を変え、そのまましばらく二人で語り合った。

 

 

 

 

 

 

 数日後、私はホレス商会の敷地に侵入していた。

 

 ランドレイとはそれなりに仲良くなった。

 

 あの話の後彼は私が話した事が本当だった時のために準備をすると言い、侵入を待って欲しいと頼んできた。

 

 私は彼の頼みを受け準備の終了を待ち、今日侵入する事になった。

 

 正直透明化、不可視の魔法などがあればぶつかったりしなければまず見つかる事は無いと思う。

 

 鍵など私の前では何の意味も無い。

 

 スムーズに屋敷に侵入した私は何か書類の様な物を残していないかを調べ始める。

 

 そして豪勢な扉の前を通った時、私の聴覚が声を拾う。

 

 「ホレスさんいつまで警備を強化しておくんです?」

 

 「……そうだの、念の為あと一か月はこのままにしておく」

 

 「仕事ですから構いませんがね。聞いていいなら聞きたいんですが……どうして急に?」

 

 ……いた、証拠を見つけてからと思ったが見つけたのなら殺そう。

 

 色々と聞き出してからな。

 

 「……ロミオ達の事だ」

 

 「あいつらがどうしたんです?」

 

 「死んだ。ウルグラーデに討伐応援に行ってハンドスネイクに殺された」

 

 「は?ハンドスネイク一匹に?」

 

 「案内をした冒険者の少女を守って名誉の戦死をしたと報告があった」

 

 「名誉の戦死ぃ?あいつらが?表じゃ上手くやってるがその状況で誰かを助けて死ぬような奴らじゃないでしょう?」

 

 「ワシは奴らは魔物にではなく何者かに殺されたと思うておる……例えば守られた少女とかの」

 

 「あの五人を殺れる奴……いや、それより誰が……ギルドは考えられない……ですかね?」

 

 「まずありえんだろうの、ウルグラーデギルドにそのような事をする連中が居るとは思えん」

 

 「誰かに殺されたのなら奴らが俺達の事を洩らしているかもって事ですか……」

 

 「そうだ、ずっと気にしている訳にもいかんがその何者かが来る可能性もある」

 

 そういう事だったのか。なぜ警備が強化されたのか理由が分からなかったからすっきりした……こいつらはもういらないな。

 

 私は部屋に防音と物理的な結界を施して部屋の中に入って行った。

 

 

 

 

 

 

 「こんばんは」

 

 男……恐らく傭兵の槍を持った男が構えてホレスのそばに移動した。

 

 ホレスと思われる太った男はオロオロしているだけだ。

 

 「……何処に居やがる」

 

 そう呟く男。姿を消したままだったな、私は魔法を解除して姿を現す。

 

 「ホレス・コルマノンだな?」

 

 「ち、違う……」

 

 ん?私はホレスと思われる太った男に自白誘導をかける。

 

 「ホレス・コルマノンだな?」

 

 「……そうだ」

 

 先程と同じ質問に答えるホレス、私は魔法を解除した。

 

 「俺を無視するたぁふざけたガキだ!」

 

 私に接近し槍を突こうとする男……こいつは必要ない。

 

 「不法侵入だ!死んでもらっ……」

 

 私が髪の一本を振ると、彼は言葉を言い終わる前に頭を地面に落とした。

 

 「っあ…ひいっ」

 

 ホレスは腰を抜かして座り込み、床を濡らしている。

 

 「……色々話そうと思ったがもういいか」

 

 ホレスのその姿を見た私は一気に冷めてしまった。太った親父の失禁などこれ以上見たくない。

 

 それでも聞く事は聞いておく。

 

 彼に自白誘導魔法をかけなおし、証拠や現在の女性の居場所を聞き出してから首を斬り落とした。

 

 

 

 

 

 

 事の顛末としては……ホレスを始末した後、証拠の一部と捕まっていた女性達をギルドへ私だとばれないように渡し、ランドレイが向かって残りの証拠を回収した。

 

 その際のランドレイの顔はそこそこ酷かったと思う。

 

 ホレス商会は解体され、証拠の書類によって各町の女性を購入していた者達と誘拐に手を染めていた冒険者や傭兵が罰せられた。

 

 販売され生きていた女性達と死んだとされて捕まっていた女性達は解放され関係者と共に喜びの涙を流した。

 

 各町は突然の事件に暫く荒れ、冒険者が関わっていた事でギルドは立場を悪くした。

 

 冒険者は正義の集団だと思っている者が多かったのは意外だったな、何処にだって犯罪者くらい居るだろうに。

 

 創立が英雄と呼ばれたルランド・カリスなのが原因か?

 

 

 

 

 

 

 「あー……」

 

 私が事件を公にしてから半年。色々な処理や対応に追われたランドレイが応接室でうなだれて声を上げる。

 

 私はソファに座ってその姿を見ていた。

 

 「疲れているようだな」

 

 「……ああ」

 

 彼の場合、体力的な物よりも今まで気が付かず犯罪者の好きにされていた事実の方が効いたらしい。

 

 その事実を忘れる様に奮闘し、ようやく事件が落ち着いたのだ。

 

 ギルド職員もかなりきつかったに違いない。

 

 「丁度良かったクレリア、頼みたい事がある」 

 

 彼がうなだれながらも言ってくる。

 

 「なんだ?」

 

 「この町の責任者になって欲しい」

 

 サラッというランドレイ。

 

 「はぁ?」

 

 おっと、いきなりの事で思わず声が出た。

 

 うなだれているが彼の目は真剣だ、なぜ私が?

 

 「子供がそんな物になれるか」

 

 「なれる」

 

 そう言った私にはっきりと断言するランドレイ。

 

 「言ってみろ」

 

 そう言うと彼は話し始めた。

 

 「この事件を解決したのがお前だとばらす。ギルドの連中もお前の言う事ならかなり素直に聞く、これだけの功績があれば町の住人も受け入れるはずだ」

 

 「何を言っているんだお前は」

 

 私のした事をばらすと言った彼に言う。

 

 「頼む、まとめられる象徴が要るんだ」

 

 「事件を解決した功労者として祭り上げられろと?」

 

 この町はギルドと商会が繋がり犯罪に手を染めていた中心地だ。

 

 そのせいで他のギルドより立場が深刻だ、ランドレイが知らなかった事など関係無い。

 

 「頼む!俺では駄目なんだ!経営は周りの者がやる、ただ町の長として就任してくれるだけで良い!」

 

 思い切り頭を下げるランドレイ。

 

 町の経営……長か。

 

 この辺りで趣向を変えるのも良いか?今なら簡単になれるみたいだしな。

 

 「分かった、なるよ。面白いかも知れないしな」

 

 「本当か!?ありがとう!細かい事は任せておいてくれ!」

 

 彼は頭を上げ礼を言ってくる。

 

 「しかしこれだけの事が出来る力といい考え方といい……十五歳とは思えないな」

 

 苦笑いしながら彼が言ってくる。

 

 「まあ、十五じゃ無いからな」

 

 「はっ?」

 

 その後、本当は十五では無い事を話すと彼は頭を抱えて唸ってしまったが、聞かなかった事にして十五と言う事になった。

 

 その後もウルグラーデのギルドと私の事で多少騒がしくなったが、こうして私はリンガイルの長になった。

 

 

 





 町長になる辺りは特に無理があったような気がします。

 ギルドの話は続きませんでした、またやるかもしれませんが。








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016-01

 時間が飛びます。

 主人公的には町長も楽しんでやるかもしれませんが、作者が町長の仕事の内容を知らないので主人公はお飾りです。

 この作品の注意事項

・作者の自己満足

・素人の作品

・主人公最強

・ご都合主義

・辻褄が合わないかもしれない設定

・注意事項が増える可能性

 等が含まれます。

 以上をご理解したうえでお読みください。

 読者の皆さんの暇潰しの一助になれば幸いです。



 私がリンガイルの町長になって十年が過ぎた。

 

 町はそれなりに大きくなり私は気まぐれに町の経営に関わりながら町の発展を楽しんでいたが、この十年で変わった事もある。

 

 それは奴隷が生まれた事だ。

 

 魔法が浸透するにしたがって魔法の力がある者が無い者を差別し始めた、それはこの十年で広がり各町に奴隷が生まれた。

 

 待遇は様々で家畜の様に扱う者もいれば通常の雇用者と変わらない扱いをする者も居る。

 

 魔法と言う絶対的な力の差によって奴隷達は押さえつけられ、各町の有力者は奴隷を逃がさない為の防壁や、私兵団を作り脱走を防ぐようになった。

 

 そんな中、私が居るこの町は奴隷と言う身分は存在しない。

 

 町人は奴隷が欲しいかもしれないが冒険者達は奴隷を作ろうとしなかった。

 

 この町の力の中心である彼らが反対だった事が影響して今の所誰も奴隷を所有していない。

 

 まあ恨みから戦闘中に裏切る者も居るからな。奴隷など作っても使い道が無い上に信用出来る訳がない。

 

 そういった事もあり他の町からたまに奴隷が逃げてくる事がある。

 

 町の運営をしてる者達が受け入れたりしているうちに町が大きくなっていった。

 

 以前に現在もギルド長をしているランドレイに奴隷について聞かれたが、見知らぬ誰かに対して思う事は無いと答えた。

 

 彼は私らしいと苦笑いしていたな。

 

 今も奴隷の話題は町の会議で持ち上がる。

 

 やはり奴隷が欲しい者は一定数いるようで、こうして久しぶりに出席した会議でもどうするか話している。

 

 「町長はどうですか?」

 

 運営者の一人の男から聞かれる。

 

 「以前ランドレイに聞かれたが答えは変わらないな。見知らぬ誰かに思う事は無い……大体私の判断基準は私に不利益をもたらすか、もたらさないかが大きい。どうしようと私に不利益が無いのなら良い、後は私の知人が奴隷になっていたら助ける位か」

 

 「つまりどちらでも良いと言う事ですね」 

 

 そう聞いてくる男。

 

 「違うな」

 

 「……どういう事です?」

 

 疑問を浮かべる出席者達。

 

 「お前達は奴隷を作る事と作らない事、私がこのどちらの方針でも良いと思っているようだな」

 

 頷く彼ら。

 

 「私は奴隷制度自体に興味が無い。どう言えばいいか……そうだな……どうでもいい……この言い方が良いかな」

 

 この町に十年いる間に私は少し攻撃的になっているような気もするな。

 

 姿が変わらず長く生きている私も精神……心とでもいう物は様々な影響を受けて変わっているようだ。

 

 「な、なるほど」

 

 私の言いたい事が何となく伝わったのか出席者の面々は再び話し合いを始めた。

 

 彼らが私の事を咎めないのは彼らはこの十年で私がこうである事を色々あって知っているからだ、だから特に何も言って来ない。

 

 冒険者としてはランクが6なままだと言うのに今ではこの町で最強の町長だと陰で呼ばれているようだ。

 

 後は子供町長とかな……聞こえているぞ。

 

 

 

 

 

 

 今日は私の関われそうな話は無さそうだ、会議を抜ける事を伝え自宅へ帰る。

 

 ウルグラーデの家はかなり前に共に住んでいた三人娘に譲った。

 

 無事借金を返済したと手紙が来た時にウルグラーデに行き、所有者の変更をして押し付けた。

 

 今はこの町の町長になった時に貸し出された家に住んでいる。

 

 ウルグラーデの家程では無いが十分に良い家だ。

 

 私は家のソファに身を沈め奴隷の事を考えた。

 

 奴隷が発生した遠い原因であるケインも特に何も思っていないだろう。

 

 こう言った事が起こる可能性をずっと教え込んできた、覚悟の上だっただろうからな。

 

 そう考えていると、家の扉が叩かれた。

 

 「町長ー?おすそ分け持ってきたよー」

 

 「そうか、開いてるから入っておいで」

 

 そう言うと少年と少女が入ってきた、少年は動物の肉の塊をぶら下げている。

 

 「今日獣狩りに行ったんだ……でこれが獲物!」

 

 そう言って肉を持ち上げる、嬉しそうだな。

 

 「そうか、守ってくれた冒険者の言う事はちゃんと聞いたか?」

 

 そう言って獲物を受け取る。

 

 「うん!」

 

 「嘘よ!彼ったらまだ動くなって言われたのに物音を立てて一度逃げられたもん、あたしも狙ってたのに!」

 

 元気に答える少年とばらす少女、少年は気まずそうだ。

 

 「良いか。その獲物が逃げる相手だから良かった……もし向かって来る獲物であったら誰か怪我をしたかもしれない」

 

 「うん……」

 

 俯いて答える少年、この年なら仕方ないが何かあってからでは遅いからな。

 

 「だけど……絶対に譲れない事があるなら迷わず動け。譲れない事の為に強くなれ」

 

 少年の頭を撫でる。

 

 「う、うん……」

 

 隣の少女をちらっと見て答える少年。ほほぅ……頑張る事だ。

 

 「おねえちゃ……町長、私がこの肉でご飯作っても良い?」

 

 少女が話しかけてくる。

 

 「構わない、他の材料も好きに使ってくれ、後呼び方は無理しなくても良いぞ」

 

 「うん……おねえちゃん」

 

 そう言うと少女は恥ずかしそうに答えて笑い、キッチンに向かっていった。

 

 「おい、肉を忘れているぞ。彼女に肉を渡してくれ……ついでに手伝ってやって欲しい」

 

 私が少年に肉を渡しながら言う。

 

 「え?……う、うん」

 

 彼は肉を持ってキッチンに走って行った。

 

 彼はその時、動くのか逃げるのか……。

 

 しばらくキッチンから聞こえる騒がしい二人の声を聴きながら私はモー乳を飲んだ。

 

 

 

 

 

 

 ここでの私は人間と森人のハーフと言う事になっている。

 

 特徴は受け継がなかったが寿命は恐らく同じくらいあると言い、皆は納得した。

 

 こんな簡単な言い訳を今まで気が付かないまま暮らしていたとは……気が付いた時私は自分に呆れていた。

 

 これにより長期間一か所に滞在しても全く違和感がなくなり、気にしなくて良くなった。

 

 少年達が獲物をおすそ分けしてくれた数日後、私はリンガイルのモー乳販売店に向かっていた。

 

 以前ウルグラーデ少し行った時にリンガイルにも出せないかと交渉し、町長の立場を利用して試験的に店を出した。

 

 それなりの数が売れそのまま正式に出店となり、今ではここで製品が買えるようになった。

 

 「あ、町長。いらっしゃいませ」

 

 女性店員が声をかけてくる、頻繁に来るから店員も慣れた物だ。

 

 そのまま飲むだけではなく紅茶に入れても良いし料理にも使える、私はそのまま飲むのが一番多いが。

 

 「いつものと……今日は何かあるか?」

 

 新しい製品があるか店員に確認する、ここの製品は美味い。

 

 「すいません、まだ開発中なんです」

 

 申し訳なさそうに言う。

 

 「大丈夫だ、急いで出来が悪くなったら困る。じゃあ今日はこのシュークリームを五個貰おうか」

 

 取り合えず今日買う物を注文する、私は待っている間店員と話す。

 

 「経営は問題無いか?」

 

 「はい、特に何も」

 

 製品を用意しながら答える。

 

 これは町長として聞いておくべき事だ……多少はこの店が無くなると困るので潰れそうなら助けようと考えているが、あくまでも町の責任者として聞いている。

 

 「いつものモー乳の大瓶五本とシュークリーム五個です、どうぞ」

 

 「ありがとう」

 

 金を払って製品を受け取り、ボックスに入れて店を出る。

 

 家への道を歩いていると後ろから忍び寄る気配がある、そして私に手を伸ばした時その手をつかむ。

 

 「あっ……」

 

 その手は私のワンピースのスカートに伸びていた。

 

 「懲りないなお前は」

 

 そう言いながら少し握る力を籠める。

 

 「あだだだっ!!」

 

 痛みに苦しむスカートめくり青年。

 

 私の隙を狙ってやって来る……こいつは子供の頃から知っている。

 

 成長したら言わなくなったが昔は私を嫁にするとか言ってたな。

 

 「もう諦めろ」

 

 「絶対めくる……俺の夢だ」

 

 そう言って胸を張る青年、駄目だこいつ。

 

 「私が言う所に言えば普通に犯罪者だぞ」

 

 「だって町長良い年なんでしょ?」

 

 そう言った私に返す青年。

 

 「馬鹿者、いくつであろうと犯罪だ」

 

 そう言いながら手を放す。

 

 「くそー……いつかめくってやるからな!」

 

 掴まれた場所をさすりながら負け惜しみを言って逃げていく、私にかまって欲しいだけなんじゃないのかあいつ。 

 

 

 

 

 

 

 そんな暮らしをしていた時、恐らく人類の歴史に残る魔法が生まれた事を耳にした。

 

 それは隷属魔法だ。

 

 対象にかける事で命令を拒絶出来なくなり、主と設定された者に危害を加える事も出来なくなる。

 

 もちろん魔力抵抗で破る事は出来る。しかしそれほどの差がある事など通常はまず無い。

 

 これによって元々魔法が使えない者は次々魔法がかけられ、遂には奴隷を使う側だった者にも使われるようになった。

 

 まだ実際に見てはいないが隷属魔法は簡単にかけられるものでは無い筈だ、恐らく相手を捕らえ拘束していなければかけるの難しいと考えている。

 

 そして……その魔法を開発した者が町の者をひそかに奴隷として縛っていき町を支配し、他の町へ略奪を行ったようだ。

 

 奴隷達に落とされた町の住人は奴隷にされ、主とやらの支配下になった。

 

 かけられなかった冒険者の一部も流石に町を……更に言えば知り合いを多く含む奴隷達を相手にする事など出来なかったらしく、従うしかなかったようだ。

 

 それだけなら事は簡単だった、他の町と力を合わせ攻め落としてしまえばいい。

 

 だがその主とやらは隷属魔法の習得の仕方を各町の有力者にばらまいた。

 

 そしてそれを手にした有力者達は何を思ったかその主の様に町を支配し、同じように他の町へ略奪を行ったのだ。

 

 こうなればもう止まらなかった。町同士で争い合い奴隷とされた者達が死ぬようになり各町の間で戦争が始まった。

 

 隷属魔法が開発されてからここまであっという間だった。私の元にその話が来た時には既に戦争が始まっていたのだから。

 

 

 

 

 

 

 「投降するべきだ!大人しく従えばきっと平気だ!」

 

 「あいつらを信用するのか!?誰彼構わず奴隷にして他の町を略奪するような奴らだぞ!?」

 

 「ここは冒険者の町よ。負ける事は無いはずだわ……戦いましょう」

 

 それからすぐに流通が停止した。

 

 今はこれからどうするべきかの会議なのだが……会議は荒れていた、何処かの町に投降しようと言う者、反対する者、徹底抗戦を選ぶ者。

 

 「クレリア、どう思う……?」

 

 ギルド長のランドレイが私に聞いてくる。

 

 ふむ……。

 

 「これは私の個人的な考えだが良いか?」

 

 そう言うと彼は頷く。

 

 「私としてはまず全力で抵抗し攻めてくる相手に徹底的に打撃を与える。その後にこちらの要求を呑んでくれれば敵対しないと相手に伝える」

 

 「それで?」

 

 「何度でも繰り返し続ける、幸いこの町は魔物の生息域に近く何とか自給自足が行える場所にある。こちらが守りを固め一方的に犠牲が増えれば、その内悪戯に犠牲を出すよりも要求を呑んで中立にした方が良いと考え始めるだろう」

 

 彼は黙って聞いている。

 

 「最終的に他の町が全て誰かにまとめられてしまえば勝ち目はないが、下手に手を出すと予想以上の被害が出ると分からせる事が出来れば侵略ではなく取り込もうとするかもしれない」

 

 続きを促す彼。

 

 「この方法はこの町だから出来る方法だ。冒険者の数と質が一定以上無いと耐えきれずに終わる……それに今なら私もいるしな」

 

 「戦力的に問題は無いんだな?」

 

 彼は私に問う。

 

 「今はどの町も敵対し合っている。二つ以上の町の戦力が攻めて来る事はまず無いはずだ、一つの町同士の戦力なら冒険者の多いこちらが有利だ……その上奴らはお互いが邪魔で私達に全力が出せない」

 

 「それは?……そうか!」

 

 私はランドレイに答える。

 

「全戦力を私達に向ければ他の町がその隙を突き攻めて来るかもしれないだろう?奴らは町に守るだけの戦力を残すしかない」

 

 彼は頷く。

 

 「そして出来るだけ討伐も行い食料を蓄え、薬品も作っておく、これからの為に」

 

 そう言って椅子にもたれかかり続ける。

 

 「どうなるかは分からない。相手がどういった考えをしているか分からないからな……私の考える通りかもしれないし、手を組んで来てしまうかも知れない。また別の何かが起こるかも知れない」

 

 考え込む彼、私はもう少し続ける。

 

 「……私も初めての事でこれからどう変化していくかは分からない」

 

 どうなるか楽しみではあるが。

 

 ここまで語ったが、私が話し始めてから周りが静かになっていた。

 

 「町長」

 

 誰かが私に言い会議に出ている者達が私を見ている……これは私の言った事が採用されそうな気配がする。

 

 「それでいきましょう」

 

 「あくまでもお前達次第だと言う事を忘れるなよ?」

 

 その後、敵が隷属魔法で縛られているだけの人間かも知れないと知っても方針が変更される事は無かった。

 

 こうしてリンガイルの方針が正式に決まった。

 

 

 

 

 

 

 方針が決まった後、私は席を立ち家に帰るとケインに念話をつないだ。

 

 『聞こえるかケイン』

 

 するとすぐに反応があった。

 

 『はい、私も連絡しようと思っていました』

 

 『そちらはどうだ?』

 

 『ウルグラーデはまだ無事です。私が居る事と貴女の弟子達が居た事、更に学校もあるためかこの町には全く手を伸ばそうとしていません、それどころかどの町も気を使っているようです』

 

 流石にケインとその学校には手を出さないか。

 

 『そうか、お前達の名と学校は有名だしな』

 

 『リンガイルはどうですか?』

 

 ケインは私がリンガイルの町長だと知っている。

 

 『徹底抗戦だな、リンガイルに手を出すと痛い思いをすると獣達に教えなければな』

 

 そう言うと笑い声が聞こえる。

 

 『師の事ですから心配はしていませんがお気をつけて』

 

 『ああ、お前はウルグラーデと生徒達を気にしていろ』

 

 そう言って念話を解いた。

 

 後日決定した方針を町に伝達したが反対は殆ど無く、実行が決定した。

 

 

 




 これから人の世界がどうなるのか実は結構楽しみな主人公。







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016-02


 戦闘します、戦闘描写は難しそうですが、読者の皆さんが自分でカッコいい戦闘に変換して読んで下さい。

 細かい戦略や戦術は考えてないので、なんか上手い事やったと言う事にします。

 この作品の注意事項

・作者の自己満足

・素人の作品

・主人公最強

・ご都合主義

・辻褄が合わないかもしれない設定

・注意事項が増える可能性

 等が含まれます。

 以上をご理解したうえでお読みください。

 読者の皆さんの暇潰しの一助になれば幸いです。



 

 「確認だ。パーティーごとに必ずまとまって戦い、囲まれないように動け」

 

 ランドレイが町の広場で声を上げる。

 

 この町に向かって来る奴隷と思われる集団、兵士と言うべきか、それが近づいてきていると報告があり、最後の確認をしている所だ。

 

 「負傷者が出たパーティーは控えのパーティーと交代して帰還し、回復した後控えに入れ」

 

 彼は続ける。

 

 「指揮官は殺すな、俺達の力を伝えてもらう必要がある」

 

 方針が決定した後、討伐と各種回復薬の量産、戦い方の訓練を徹底した、かなりの間戦い続ける事が出来るだろう。

 

 「……徹底的に殺せ。そうしなければこちらの思惑通りに動くか分からないからな」

 

 苦虫を噛み潰したような表情で言う。周囲の皆も良い顔はしていない、やると決めても良い気分では無いようだ、知り合いがいる可能性があるから分からなくはないが。

 

 その他確認事項を伝えた後、ランドレイが私に質問する。

 

 「クレリアはどうするんだ?」

 

 「そうだな町長としてやるべきことをしようか」

 

 「なんだ?」

 

 そう聞いてくる。

 

 「戦場を遊撃して皆を助けて回る。その後この軍の指揮官に手紙を渡してくる……心配するな、出来るだけ苦しまないように殺す」

 

 薄く笑う私。

 

 「……そうか」

 

 ランドレイは表情を変えずにそう言って準備に戻った。

 

 

 

 

 

 

 私はこの戦争の間はモー乳が手に入らないだろうと考えていたが、店主がどうせ仕事にならないからと店に残っている商品を全て譲ってくれた。

 

 私が居れば町は守れる、少しは貰った製品のお返しをしよう。

 

 

 

 

 

 

 「っ……」

 

 「ぁがっ……!」

 

 私の剣とナイフが兵士の頭を落とす。

 

 いまは戦闘の真っ最中だ、私はいつもの軽装と左手に女神のナイフ、右手にいつもの女神の剣を持っている。

 

 私は敵の頭を斬り落としながら問題が無いか戦場全体を見ていた。

 

 魔法や弓などの遠距離攻撃を弾き、近場の敵を処理しながら移動していると二人負傷した三人パーティーがいた。

 

 「くそっ!」

 

 悪態を付いて片手で敵の攻撃を受けている前衛二人と、二人が離脱できない為引くに引けない後衛……助けるか。

 

 「今のうちに戻れ!」

 

 彼らと対峙していた敵の頭を切り飛ばし、向かってくる敵を処理しながら言う。

 

 「町長!?」

 

 「お前達は早く引け!交代だ!早くしろ!」

 

 声を上げる私、その間も殺し続けている。

 

 「す、すげぇ……」

 

 「森人と人間のハーフってあんな凄いの……?」

 

 「……俺の知ってるハーフはあんなに強くねぇよ」

 

 後退している彼らの呟きが聞こえる。

 

 交代が到着し私は移動を再開した、やはり完璧にはいかない。

 

 それにしても敵の表情が悲し気と言うか苦し気と言うか……嫌そうな表情をしているな。

 

 これは相手の剣を鈍らせる為か?私には何の効果も無いが。

 

 更に移動すると前衛は敵の攻撃、後衛は魔法や弓に晒され防戦一方のパーティーが居た。

 

 私は浮き上がり、空気の爆弾を複数同時に打ち出し彼女達に攻撃を仕掛けていた敵の頭を粉砕した。

 

 「なにがっ……!?」

 

 突然敵の頭が爆散し戸惑う彼女達。

 

 「まだいけるか!?」

 

 戦いながら声をかける。

 

 「町長!?」

 

 「戦えるなら立て直せ!無理なら今のうちに交代しろ!」 

 

 「交代します!」

 

 素早く良い判断だ。

 

 「あんな正確で威力のある魔法、しかも同時にあれだけ数を……町長って何者なの……?」

 

 そう彼女達の中の魔法使いが言っているのが聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 こうして敵を殺しながら冒険者達を助けていると敵の数が減って来た。

 

 すると気配が一つ離れて行くのを私の感覚が感じた……私は勝敗が決した戦場をランドレイに任せ、気配を追った。

 

 その後男を捕らえ指揮官である事を確認し、手紙を渡し町の支配者に渡す様に伝えて解放した。

 

 

 

 

 

 

 町に戻り被害を確認する。外壁は魔法以外で早々壊れる事は無く、被害は少なかった。

 

 こちらに死人は無し、これは最高と言ってもいい結果だ。

 

 薬をそれなりに消費したが、次に相手が攻めて来るまで錬金術師達が奮闘してくれるだろう。

 

 問題無く勝利と言って良い結果だった。

 

 死人が居ないと言う事が何よりも良い。

 

 死んでしまうとだんだん町の戦力が落ちて勝てなくなる、このまま予想通りに行けばいいが……。

 

 改めて見ると数もそれほど多くは無いし戦闘時間も僅かだった。

 

 後は……敵の死体の処理をしなればな。後は町の皆の精神が持つか……か?

 

 敵に友人や知人が居た者も居るからな。その辺りは分かっていた筈だが何とも無いとは思えない、私ならともかく皆は人間だ。

 

 結局相手は手紙を無視し再び襲って来たが、二回目を全滅させて手紙を渡したら三度目は戦闘では無く手紙を持って来て要求を呑んだ。

 

 こうして戦いを繰り返した結果、リンガイルはウルグラーデと同様に手を出されなくなり以前のように取引する町が増えて行った。

 

 

 

 

 

 

 それから二年後、リンガイルとウルグラーデを除いた近隣の町は一人の男によって統一された。

 

 彼は自ら王と言う地位を作り名乗り始め、自らの統一した地域をルセリア王国と呼んだ。

 

 奴隷魔法を作った男は統一の途中で死んだという情報も届いた。

 

 

 





 隷属魔法に縛られている他の町の人々やリンガイルの人々の友人や知り合いを出来るだけ苦しまないように殺す優しい主人公。








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017-01

 宗教に関して詳しくない上に細かく書く予定も今の所無いので、この世界ではこうなんだな、と思っていただけたら助かります。

 この作品の注意事項

・作者の自己満足

・素人の作品

・主人公最強

・ご都合主義

・辻褄が合わないかもしれない設定

・注意事項が増える可能性

 等が含まれます。

 以上をご理解したうえでお読みください。

 読者の皆さんの暇潰しの一助になれば幸いです。








 

 ルセリア王国が出来て三年が過ぎたが、リンガイルは今も独立を守っていた。

 

 王国もここの魔物資源は欲しいようで特に問題無く取引をしていると運営者の一人が言っていたな。

 

 ウルグラーデもしっかりと独立を守っている。

 

 自治権があれば王国に所属しても良いと思っているらしいが、今の所は不可能なようだ。

 

 王国の内情は詳しく知らないが今の所崩壊もせず国として成り立っている。王に認められた者達が……貴族だったか?そう名乗って各町を治めているらしい。

 

 今では隷属魔法の弱点とも言える使用に時間がかかる事、時間をかければ解呪出来る事が広まっているため、誰彼構わず無抵抗で奴隷化されるような事は無くなった。

 

 私はいまだにリンガイルの町長をしている。

 

 ルセリア王国からの独立を守る為の戦いが上手く行った事で、町の住人達にかなり気に入られている。

 

 戦闘を見た者達には最強の町長と呼ばれた。

 

 とにかく一旦周辺は落ち着きを取り戻した。いずれ国が力を付けた時にこの町もきっと吸収されるだろう、その時も上手くといいが。

 

 「お願いします町長!」

 

 「良いぞ。かかって来い」

 

 私はあの戦闘を見た者達から話が広まりその強さが知られ、稽古をつけてくれと頼まれるようになった……ランクは6で止まっているけどな。

 

 「ふっ!!」

 

 短く息を吐き男が木剣で切りかかる。私はタイミングを合わせ懐に入り彼の攻撃範囲から外れた。

 

 「っ……!?」

 

 懐に入られた男は咄嗟に距離を取ろうとするがもう遅い、私は軽く鳩尾に拳を打ち込む。

 

 「ぐっおっ!」

 

 彼は打ち込まれる瞬間に後ろに飛んだが衝撃を逃がしきれずうずくまった。 

 

 「鎧、……ヘコんでるんだけど……」

 

 「私普通に殴られただけで死にそう……」

 

 「なんで町長やってるんだろ……」

 

 周囲から聞こえる声。かつて私が誘拐事件を解決した事を知っている者は知っているだろうが、ここまで強いとは思って無かったらしく独立戦争時の戦闘で私の実力に驚く者が多かった。

 

 私の事を詳しく知らない者は私が冒険者ではなく町長である事が不思議なようだ。

 

 「距離を取る以外の対応の方が良い事もある、よく考えておけ。後は……悪かったな、もう少し打ち合うべきだった。その鎧は修理してもらえ、話は通しておく」

 

 「ありがとう……ございました!」

 

 失敗したな、もう少し打ち合わないと訓練にならない。ここは生きのよい奴が多くて良い。

 

 「よし、次!」

 

 「よっしゃ!行くぜ!」

 

 こうして時折冒険者達と一日中訓練に明け暮れる。急速に成長している者もたまにいて楽しく感じる。

 

 

 

 

 

 

 「なんで子供が?」

 

 久しぶりにギルドに来たら突然そう言われた。

 

 この扱いは久しぶりだ、今ではこの町に私を子供扱いする奴などいないからな。

 

 「馬鹿!謝れ!早く!」

 

 「え?……どうしたんです先輩?」

 

 先輩と言われた男が謝るように言うが良く分かっていない若い獣人女性。

 

 「構わないよ。新しく町に来たのか?それなら知らないだろう」

 

 「すいませんね。こいつ森の奥の獣人の村から出てきたばっかりらしくて」

 

 まだまだそういった村は残っているんだな。

 

 「自己紹介をしようか、私はリンガイル町長のクレリア・アーティアだ」

 

 「ふぇっ?!」

 

 尻尾がピンと伸びて固まる彼女。

 

 「おい、しっかり返事しろ」

 

 男が促すと我に返る。

 

 「は、初めまして!リムランと言います!」

 

 そう言ってお辞儀する、尻尾が膨らんでるぞ。

 

 「ようこそリンガイルへ、ここがリムランの家になれればいいけどな」

 

 「ありがとうございます」

 

 そう言って頭を上げる。

 

 「町長。こいつあの錬金術の祖と言われるラムランが若いころ住んでた村の出身なんだと」

 

 ……ほう、あの村は今もあるのか。

 

 「そうなのか……名前が近いのもその為か?」

 

 「はい、いつの間にか近い名前を付ける様になったみたいです。村の場所は彼女が当時居た場所ではなく何度も移動しているみたいですけど……」

 

 「そうか、活躍出来ると良いな……こいつを頼んだぞ」

 

 「頑張ります!」

 

 「任せて下さいよ」

 

 頷いて言う二人の言葉を聞いて外に出た。

 

 各地に点在している村もいつかは一つになるのかもな。

 

 

 

 

 

 

 「町長ー。魔法教えてー」

 

 街中を歩いていると子供達がまとわりついてくる。

 

 周囲の大人や親達は微笑ましく見ているが……私も子供達の一部だと思われて居る気がする、私がいい歳だと知っているはずだが。

 

 「ウルグラーデの魔法学校に行くと良い。何も分からないまま行ってもしっかりと一から教えてくれるいい学校だぞ」

 

 「町長も行ってたの?」

 

 そう聞いてくる子供達。

 

 「そうだな、少しの間行っていた」

 

 そう言うと、歓声を上げる子供達。

 

 「行ったら町長みたいになれるー?」

 

 「ふむ……行ってみないと分からないな」

 

 「えー……」

 

 納得いかなそうな顔をしている。

 

 「そう膨れるな、こんな事も出来るようになるかもしれないぞ」

 

 「うわぁー!!」

 

 「おお!」

 

 私は細かい凍らせた水を空に発生させる。キラキラと光を反射する光景を見て大喜びする子供達と周りの大人達。

 

 「すいません町長」

 

 「構わない」

 

 親達の一人が話しかけてくる。

 

 「実際、魔法学校はどうなんです?」

 

 「そうだな……魔法や技術の学校として現時点で最高ランクに近いと言える。学びたいのなら間違いは無いだろう」

 

 頷きながら聞く親達。

 

 「ウルグラーデも独立しているんですよね。戦争に巻き込まれたりしないかしら……」

 

 そう呟く母親、確かにな。

 

 「ケインも居るしそれぞれの技術の祖と言われる者達が居た町だ。早々そんな事は無いと思うが……絶対とは言えないな」

 

 「……町長は校長とお知り合い?」

 

 別の母親が聞いてくる。

 

 「なんでそう思った?」

 

 「え、だって呼び捨てだし……それに何と言うか、呼び方が慣れているというか……」

 

 なるほど、他の者が居る時は校長と付ける様に言われた気がするな。 

 

 「まあちょっとな」

 

 「あー、町長って森人のハーフでしたよね?その関係で?」

 

 答えると、思った事を聞いてくる彼女。

 

 「そんなところだ」

 

 適当に答えると頷く彼女……そして私に近づき小声で聞いてくる。

 

 「……もしかして町長ってケイン校長の娘さん?」

 

 ……私がケインの娘だと?

 

 「期待に沿えなくて悪いが娘ではない。完全に他人だ」

 

 そう答えると、周りの皆も何となく思っていたのか残念そうな顔をする。

 

 期待されていたのか?

 

 「ただの知り合いだ。あまり間違った噂を流さないでくれよ?相手にも迷惑だからな」

 

 そう言ってその場を後にした……そう言えばケインの奴、結婚と子作りはどうするのだろう。

 

 

 

 

 

 

 家でゆっくりとモー乳を飲んでいたある日、以前気になった事を聞く為にケインに念話をした。

 

 『ケイン、今大丈夫か?』

 

 しばらくすると返事が返ってきた。

 

 『はい、問題ありません……どうしました?』

 

 『聞いておきたい事があってな……お前、結婚と子作りはしないのか?』

 

 そう言うとしばらく反応が無かったが、やがて声が聞こえてくる。

 

 『……確かに私も二百歳後半に入っていると思いますし考えた事はありますが……』

 

 やはり寿命が長いと歳を覚えない物だよな、それよりも一応考えていたのか。

 

 『で?』

 

 『で、とは?』

 

 『言いたくないのなら無理には聞かないが、相手はいるのか?』

 

 『今の所は居ませんね』

 

 ふむ、森人や他の種族の女性も普通に居るはずだが。

 

 『そうなのか』

 

 『元々森人は寿命が長いせいなのか結婚に対する意識が薄いのですよ、それに子供も出来にくいですからね』

 

 長命種が他の種族と同じ速さで増えたら確かに何か問題が起きそうだ。

 

 『余計な事だったか。話はこれだけだ』

 

 『いえ。お心遣いありがとうございます、師よ』

 

 どうなるんだろうな。そう思いながら念話を切った。

 

 

 

 

 

 

 こうして日々を過ごしていた私だが、再び世界が荒れそうな事が起きた。

 

 ルセリア王国の国王がクレリア神教から名を無くし自由神教とする事、各町の神殿、巫女達を王国の管理下に置く事を決めて動き始めた。

 

 私はそれを聞いた時「良くやった」と思ったが……自由の神を信仰する信徒達には到底許せる事では無かったらしい。

 

 王国で現状を受け入れていた信徒も反発し、奴隷化した信徒を匿い解呪しているようだ。

 

 冒険者の中にもかなりの信徒が居た為に奴隷になっていた信徒が次々と解放され町の家屋をひそかに拠点として活動し始め、町の王国派と争いが起きているらしい。

 

 これには私も驚いた。リンガイルの信徒達はそこまでクレリア神教の話などしなかったし、熱心に信仰している様子も見られなかった。

 

 信徒達がそんな事をする程に信じているとは思っていなかったのだ。

 

 町の信徒達に聞いた所、実際に地上に現れた記録がある唯一の神である事と、自由と言う冒険者にある意味関係する神である事から冒険者の中ではかなり深く浸透しているらしい。

 

 あまり話をしないのは、地上のどこかで過ごしている神が何も気にする事無く過ごせるように……と言う暗黙の了解があったらしい。

 

 全く知らなかった。微妙に私に効果があったのもまた何とも言えなかったが……皆が事あるごとに私の話をしていたら私は嫌になって人間を滅ぼす……まではしなくとも人の世界から長く離れていたかも知れない。

 

 そんな訳でリンガイルとウルグラーデを除いた王国所属の町は静かに内戦が起き始めている、宗教自体はどうなっても良いが巫女達に手を出す事は私が許さない。

 

 時間が経てば彼女達が逃げにくくなる。

 

 この町にもクレリア神教の神殿はある、私は数える程しか神殿には行っていないが……自分を祭る神殿に行く気になれないし、行っても問題が無いか聞く位だった。

 

 私が普通に会いに行って今の巫女達が私に気が付く事は無いだろう。実際数回行った時は名前と姿に触れられたがそれだけだ。

 

 以前に巫女が私だと判断したンミナとの話がいまだに伝わっていれば信じるかも知れないが……神殿の絵になっているあの時の姿を見せればいいか?

 

 基本的に巫女は神殿に寝泊まりしているので、神殿が存在する町さえ分かれば問題無い。

 

 いざとなったらすべての町を回るか……。

 

 いや……いっその事王とやらを殺してしまおうか。

 

 他の者がまた王になるだけか?神として脅せば収まるかもしれないがそこまではやる気にならないしな。

 

 国が出来て人の世界が変わり始めているのを壊してしまいたくは無い。

 

 色々と考えていると焦げ臭い臭いがし始めた……料理の途中だった。

 

 国は壊さず巫女達が望めば助け、この町で受け入れよう。まずはこの町の巫女に正体を話さないとな。

 

 考えをまとめ後始末をし始めた。

 

 

 

 

 

 

 その後私はリンガイルの神殿の巫女達に話があると言い、夜に無人の神殿の大広間に全員集まって貰った。

 

 私は防音と人払い、外部から見えないように視覚遮断をかけた。

 

 「町長。この様な時間にお話とは何かあったのですか?」

 

 集まった十人の中の一人が聞いてくる、さてどうしようか。

 

 「今王国で何が起きているか知っているな?」

 

 彼女達は暗い顔になり答えた。

 

 「はい。クレリア神教のから神の御名を消し去り神に仕える私達を国の……王の管理下に置くと……」

 

 「そうだ。そこでお前達に聞きたい、お前達は各地の巫女達を救いたいか?巫女達は……救って欲しいと思っているだろうか?」

 

 そう言うと、彼女達は顔を見合わせこちらを見ると頷き、言った。

 

 「思っていると思います。神に仕える我々が神以外の元に行くなど考えられません」

 

 「もし助かるとするならば……どうしたい?」

 

 彼女達の一人が言った。

 

 「あの国は神を捨てました。もし出来る事なら……どこかで静かに祈りを捧げて暮らしたいです」

 

 彼女達を見ると反対は無い様だ……嬉しいが一歩間違えれば狂信になりそうだ。

 

 「この町で受け入れると言うのはどうだ?」

 

 そう言うと首を横に振る。

 

 「それはいけません。この町に巫女が集まれば国が狙うでしょう……それこそ国の力を集めて来るはずです。王はきっと神の巫女を従える事で自らを神の子だと示したいのだと思います」

 

 なるほどな、王としての権力を神の子であるとしてさらに高めたいのか。良く考える物だ、感心する。

 

 「国を滅ぼせるとしたら?」

 

 「いえ、そんな事をすれば大勢の犠牲者が出ます……その中には神の信徒も居るのです……そのような事は望みません」

 

 「そうか」

 

 だがやる事は決まった、巫女達を助け人の手が届かない場所で過ごさせよう。

 

 「分かった。私はお前達を助けよう」

 

 そう言うと彼女達は不思議な顔をする。

 

 「いくら町長でもそれは……」

 

 私は彼女の声を遮り話す。

 

 「お前達が混乱を望まないのなら国を滅ぼす事はしない」

 

 「町長?」

 

 困惑する彼女達。

 

 「巫女達は全て救い……助けよう」

 

 彼女達に分かってもらう為髪をふわりと広げる。

 

 「町……長?」

 

 「私の巫女達は渡さん」

 

 巫女達は呆然と私の変化を見ている、手っ取り早く信じて貰う為に神っぽくしないとな。

 

 宙に浮かび、黒い霧を纏う。

 

 そして彼女達が何度となく見たであろうあの絵を再現した。

 

 「あ、貴女……様……は」

 

 巫女達は既に座り込んで私を見上げている。

 

 「久しいな我が子達よ」

 

 そう言うと彼女達は戸惑う。

 

 「く、クレリア・アーティア様……?」

 

 「町長……が?そんなまさか……」

 

 「同じ名ですが……本当に……?」

 

 「しかしあのお姿は……間違いなく……」

 

 彼女達から声が上がる。

 

 「ご無礼を承知で申し上げます……初代様の事は覚えていらっしゃいますか?」

 

 ……まだ伝えられているんだな。

 

 「ンミナの事か……彼女は私が初めて心を許した人間だ」

 

 そう言うと彼女達は一斉に首を垂れ声を揃え言った。

 

 「おかえりなさいませ、クレリア様」

 

 彼女達は未だに仕えてくれるんだな。

 

 「まさか町長が……っ申し訳ありません!」

 

 呟きひれ伏す巫女。彼女達は随分神である私に偏ったイメージを持っているな、巫女達の娘に膝の上で小便をされた事もあるんだぞ、今更そんな事で怒るか。

 

 「町長でいい、今の私はこの町の町長だ」

 

 いつもの姿に戻りながら言う。

 

 「し、しかし……」

 

 困り顔の巫女達。

 

 「こんな事が無ければこのまま人の世界で暮らすつもりだった……それにお前達は私の巫女だ、お前達が私に仕える限り余程の事が無い限り咎める事は無い」

 

 まだ戸惑う彼女達、ここはあれだな。

 

 私は両腕を開いて待機した。

 

 「何年前だったかな……百年以上前だったと思うが……その時会った巫女にも同じ事をした、順番に来い」

 

 「あ……あの?」

 

 私は近くに居た巫女を自分から抱きしめ頭を撫でながら言った。

 

 「私が助ける。お前達は私の子の様な物だ」

 

 「う……ぐすっ……」

 

 泣き出す巫女。

 

 「昔もそうだったがお前達は私が抱きしめるとすぐ泣くな?」

 

 こうして皆を抱きしめて、彼女達が落ち着くのを待った。

 

 

 

 

 

 

 皆が落ち着くと彼女達の一人が言った。

 

 「同じ名前の町長さんだと思っていたら、本物のクレリア様だったなんて……」

 

 「ん?私が人の世界に紛れ込んでいる事は知っていたんだろう?」

 

 そう言うと恥ずかしそうにしながら答える彼女。

 

 「知っていましたけど……本当に出会えるとは思っていませんでした……以前お姿を現したのは百五十年以上前なんですから」

 

 そんなに……ああ、カミラとそれぐらい過ごしていたな。

 

 「私は自分のやりたい事がある時しか動かない。お前達を見捨てたくないし国も滅ぼしたくなかったからお前達に正体を明かした」

 

 そう言うと私が質問をした巫女が聞いてくる。

 

 「ではもし……もし私達が国の滅びを望んでいたら……貴女様はどうしましたか?」

 

 「滅ぼしていたな」

 

 彼女は驚いた表情をする。

 

 「しかし、先程滅ぼしたくなかったと……」

 

 「国などまた出来る」

 

 そう、国はまた待っていれば出来るだろう。

 

 私の今の優先順位は彼女達の方が上だ。

 

 「お前達の望みを叶える方が優先順位が上だった。それだけだ……逆に言えばいくらお前達の頼みでも私がその気にならなければ行う事は無い」

 

 「クレリア様は自由な方ですね」

 

 彼女は目を瞑り言う。

 

 「自分勝手なだけだ。期待外れだったか?信じていた、仕えていた存在がこんなでもので」

 

 「いいえ……自由の神らしいと思いました」 

 

 彼女はそう言って目を開ける。その瞳には絶対の信仰心が宿っているように見えた……この子達は私が何を言っても肯定するんじゃないか。

 

 やっぱり王と町の貴族だけでも殺そうと言うと「やめて下さい」と止められた……否定も出来て安心したよ。

 

 彼女達は他の神殿と良く連絡を取り合っていたらしくルセリア王国内で神殿がある町を教えてもらった、地図と合わせれば救出は簡単だな。

 

 彼女達に会う度に説明するのは面倒だからまずはマジックボックスで全員誘拐しよう。

 

 

 

 

 

 

 転移出来る街には転移し、行った事のない町は速めに飛んで回った。

 

 こうして巫女達を誘拐して回った後、私の正体と証拠、動いた理由を説明した。

 

 「お帰りなさいませ、クレリア様」

 

 巫女達の合唱。結構人数が居たな……。

 

 現在居るのは既に人類の勢力圏外だ。彼女達をマジックボックスに入れたまま良さそうな場所を探し、切り開いて広場にした。

 

 海も川も森も近くにあるので悪くない。

 

 「お前達。本当に人の世界に戻らなくていいのか?」 

 

 望むならどうにかするが。

 

 「はい。ここで余生を送ろうと思います……しかし若い者達は巫女の血を絶やさない為にウルグラーデの神殿に預けたいのです」

 

 彼女達の代表であるエレジアが言う。彼女はリンガイルの神殿の巫女で水色髪を背中まで伸ばした細身の女性だ。

 

 王国の上の方だけでも殺そうと言った私を止めた子で、神と言う事になっている私に意見が言える貴重な人材だ。私と一番話していると言う事で代表になった。

 

 「そうか。では若い者達はウルグラーデの神殿へ移動させ、残りの者はここに住めるようにする」

 

 私は魔法を使い周囲に村を作り上げた。

 

 「これが神の御業……」

 

 巫女達は呟き、呆然と出来上がる村を見ていた……実際はただの魔法だが。

 

 「お前達は狩りや解体、畑などの技術や知識はあるのか?」

 

 「魔法とある程度の戦闘、料理などの家事は一通り可能ですが……それ以外は……」

 

 困り顔のエレジア。最悪私が町で買った食料でしばらくは平気だがずっとそういう訳にもいかない。

 

 「そうか。しばらくは私が食料を用意する、その間に覚えるしかないな」

 

 「はい……感謝いたしますクレリア様」 

 

 そう言って微笑むエレジア。

 

 「農耕は私もやった事が無いな……私も此処で過ごしてやってみよう」

 

 「私達と共に暮らして頂けるのですか!?」

 

 驚きと嬉しさが混ざったような彼女と巫女達。

 

 「久々にのんびりお前達と暮らすのも良い」

 

 そう言って、本格的に準備を始める。

 

 

 




 見返しを怠ったら誤字脱字が酷い、よるべく読み返して減らしたいですね。








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017-02

 作者が考えて無い所は色々と魔法でごまかしますよ。

 魔法は万能。

 この作品の注意事項

・作者の自己満足

・素人の作品

・主人公最強

・ご都合主義

・辻褄が合わないかもしれない設定

・注意事項が増える可能性

 等が含まれます。

 以上をご理解したうえでお読みください。

 読者の皆さんの暇潰しの一助になれば幸いです。








 

 それから私は年若い者達をウルグラーデの神殿に送り、残った巫女達に家を割り当てた。

 

 すぐに村を魔法で保護してリンガイルへ戻り、町長を辞める事をランドレイを始めとした運営者達に伝えた。

 

 全員に引き留められたが私が意見を変える気が無いと分かると渋々諦めてくれた。

 

 そして作物の種、農耕関係の本、いずれ必要になる家畜等をマジックボックスに入れる。

 

 家畜達は必要になるまで私のマジックボックスに保存しておく事になる、こうして思いつく限り色々な物を買い集めた。

 

 そしてモー乳とモー乳製品は各店舗を回って全て買い占めた。無くなる度に買いに行くのは面倒だ、足りなくなったらまた来るつもりではいる。

 

 後は、何か……そうだ。

 

 『ケイン今いいか?』

 

 『はい、構いませんよ』

 

 ケインからすぐに返事が来る。

 

 『ルセリア王国に管理されるのは嫌だと巫女達が答えたからウルグラーデ以外の巫女は全て人類の勢力圏外で暮らす事になった』

 

 『……それはまた……巫女が一斉に消えたら王国も困るでしょうね。適当な偽物が巫女になると思いますよ?』

 

 巫女が偽物ならもう助ける事も無いな。

 

 『それは勝手にすれば良い』

 

 『しかし……ウルグラーデの巫女達も共に行きたかったと思いますよ?』

 

 『む?しかしそこは安全だろう』 

 

 ケインと学校があれば平気だろう。

 

 『そういった問題では無いのです師よ』

 

 『……そうなのか?』

 

 私には分からないが人間としては仲間外れは寂しいのかも知れない。

 

 『はい。そうですね……彼女達に会って「正統な巫女の血を地上に残す為にお前達は選ばれた」とでも言ってあげて下さい』

 

 『それでいいのか?分かった。言って来よう』 

 

 確かに私が集めた巫女達は子を作らずに死ぬだろう。

 

 そうなると巫女の血はウルグラーデの巫女達が最後になるかもしれない。

 

 今までに他の道を選んだ者は居なかったのだろうか?

 

 こうしてウルグラーデの巫女達の元に再び向かい言葉を伝え、私は巫女達の村に戻った。

 

 

 

 

 

 

 こうして私は巫女達と村で暮らし始め、生きる為の技術と知識を巫女達と共に身に付けながら生活が始まった。

 

 数日後、私は気が付いた事を彼女達に聞いた。

 

 「少しいいか?」

 

 「クレリア様!どうぞ何なりと」

 

 まだ巫女達は対応が硬い、その内普通に話せると良いが。

 

 「お前達。夫や友人と離れる事に抵抗は無かったのか?」

 

 気が付いた事を聞いた。

 

 「問題ありません。私達は代々夫になる者や友人に、神に出会う事があるなら神を優先すると伝えております。それに納得出来ない者は巫女と結婚する事が出来ません」

 

 昔から彼女達はこうだったな……更に彼女は続ける。

 

 「子は神のお力によって娘しか生まれませんので離れる事はありません。皆も同様です」

 

 そう言って微笑む。娘しか生まれないのは恐らく私のせいだろうな。

 

 百何十年以上も女しか生まれないんだ……何かあるとしか思えない。

 

 村の事が落ち着いたら調べてみようか、私は彼女達に礼を言ってその場を離れた。

 

 

 

 

 

 

 「上手く出来ましたクレリア様!」

 

 村に住んで約四か月が過ぎた。少しずつ色々な事を吸収する巫女達は今獲物の解体を行っている。

 

 「良いぞ。もうこの獲物の解体は完璧か」

 

 嬉しそうに笑う巫女。

 

 最初は大変だった……戦闘力があっても解体は初心者。

 

 肉をバラバラにしたり内臓を傷つけて臭いに悶えたりしていた、その後臭いは消してやったが。

 

 最初は練習する分野を分けて出来る作業が偏らないようにした。

 

 「確か皮の処理の工程を覚えた者が居たはずだな」

 

 隣にいるエレジアに問う。

 

 「はい、では次から貴女は皮の処理の方へ行ってください」

 

 「分かりましたエレジアさん」

 

 そう言って後かたずけを始める巫女。

 

 「これで取り合えず暮らして行ける様になりましたね」

 

 エレジアが私を見る。

 

 「そうだな。後は覚えた者が他の巫女に教えれば良いだろう」

 

 「次は農耕でしょうか?」

 

 「ああ、私も楽しみだ」

 

 

 

 

 

 

 農業に取り掛かり約一年、ようやく作物が取れる状態になった。

 

 「ようやく形になったな」

 

 私は出来上がった畑を見る。

 

 「そうですね……自然の力だけで食料を作るのは大変だと言う事が分かりました」

 

 エレジアも嬉しそうだ。

 

 最初は自然に作ろうとしたのだが全く上手く行かず、結局魔法に頼った。

 

 魔法で土の状態を良くし、作物に回復魔法をかけ、魔法で水を与え……何から何まで最終的には魔法に頼った、使える物は使う事にしたとも言えるかもしれない。

 

 「魔法を使った途端に上手く行ったな」

 

 「クレリア様が私達にも使える様にしてくれたからです」

 

 私は農業用の魔法を作り巫女達に教えた。上手く行かない者には詠唱を組み上げ使えるようにした。

 

 こうして生活しているうちに巫女達はそれぞれ得意な事、やりたい事などを行うようになり自然と役割が固定されていった。

 

 

 

 

 

 

 村に住み始めて二年。役割も完全に決まり生活が安定した為、私は彼女達が女しか生まない原因を調べる事にした。

 

 実際に娘を生んだ巫女達に協力を頼み彼女達の身の安全に注意しながらひたすらに調べ続けた。

 

 

 

 

 

 

 あれから七年、村に住んでから九年が過ぎた。

 

 森の魔物の襲撃や作物を狙った空からの魔物や鳥の被害を防ぎながら巫女達と暮らしていたが、遂に巫女達が女しか生まなかった原因が分かった。

 

 ……分かっていた事だがやはり私が関係していた。

 

 昔ンミナに行った治療が原因だ。

 

 あの頃の私は肉体だけを見ていたが彼女の魂にも影響を与えていた。

 

 その魂の傷とも言える状態は子から孫へと残り、一族の娘の魂を縛り続けた。

 

 妊娠したンミナが心配で魂に干渉できる様になったが、あの時見えていた魂は表層にしか過ぎなかった。

 

 より深く知った今なら分かるが……これは言葉で説明出来る気がしない。

 

 しかし知ってしまうと色々とやってみたくなる……出来る可能性があるならやってみたくなる事もある。

 

 ウルグラーデの巫女達を含めた彼女達一族に打ち明けて謝罪し、治せる事を伝えたのだが……なぜか喜びこのままで良いと言われた。

 

 

 

 

 

 

 村に住んで十一年。

 

 村の近くの海辺で椅子にもたれてのんびりとしている私はふと思う……この辺りには大きな気候の変化が無い、暑すぎず寒すぎず、かなり安定している。

 

 気が向いたら以前のように雪の降る地域などにも行くかな。

 

 そう考えながら波の音と海風に包まれ一日を過ごした。

 

 

 

 

 

 

 「喜んだ理由ですか?」

 

 村に住んで十五年、家の庭に生えていた野生の花の世話をしているエレジアに私は問いかけた。

 

 「疑問に思っていたが今まで聞くのを忘れていた。魂の異常を治せるのに何故断った?」

 

 今更だが思い出したからな。

 

 「私達では到底知る事が出来ない部分に、神である貴女が付けた印がある事が幸せだからです」

 

 「よく分からん、どういう事だ?」

 

 「私達が神の巫女である証が存在する事が嬉しいと言う事ですよ」

 

 更に言う彼女。

 

 「証?」

 

 私が言うと彼女は私のそばに近寄り、私を見る。

 

 「はい。その魂の印は子孫に引き継がれる……つまり神である貴女であれば魂を見る事で初代様の子孫である事が分かり、それこそが神の巫女の血統の証となるのです」

 

 エレジアは頬を紅潮させて言う、その声はとても嬉しそうだ。

 

 ……神の巫女である証か。確かにずっと残るなら見分ける事が出来る。

 

 いや待て……巫女が生むのは女のみ……その娘が生むのも女のみ……そうなるといずれ世界中が巫女の子孫になって女しか生まれなくなるんじゃないか?

 

 一人しか生まないのなら問題無いか?それでも双子であったり、数人生む者も居るだろう。

 

 それが繰り返されればいずれ……考えすぎかもしれないが遠い未来人類が滅ぶ気かも知れない。

 

 「エレジア、話しておきたい事がある」

 

 私は自分の考えをエレジアに話した、するとエレジアはしばし考え込み答える。

 

 

 

 

 

 

 「つまり増えすぎないように上手くやると言う事か?」

 

 「はい。人数を管理して増えすぎた場合は、子を作る人数を制限します」

 

 頷くエレジア。

 

 「増えすぎた場合は結婚は出来ますが子を作りません。減りすぎた場合は子が欲しい巫女の夫婦に作ってもらいます、勿論子供達は一族で助け合って育てますよ」

 

 「男は必ず一族以外の者だから問題は無いか?」

 

 「結婚する夫にもこの事は納得した上で結婚してもらいます」

 

 そう言って彼女は地面の花を見る。 

 

 「恐らく結婚しない娘達も居るでしょうし、本当に管理が必要になる事は少ないと思います。少ない分にはすでに結婚している巫女の夫婦に二人目以降を生んで貰えば良いだけですので」

 

 「駄目そうならやめればいいか」

 

 そう言うと彼女は私を見る。

 

 「よろしくお願いします。結果が出るのは私が死んだ後ですから」

 

 その後この事をウルグラーデの巫女達に伝えた所、厳守すると答えた。

 

 

 

 

 

 

 村に住み三十年が経ち、老衰で巫女達が死に始めた。

 

 みんな満足そうに逝ったな。

 

 魂の研究を続けている私は複数の魔法と私でも集中を要する魔法技術、そして莫大な魔力か魔素を使用して死者の蘇生や若返り、不老不死化、更に魂の選別召喚と送還などが出来るようになったが……彼女達にそれらを使う事は無かった。

 

 いつだったか「それらの魔法を使う時は良く考えて下さい」とエレジアが言っていた。

 

 これらの魔法は軽々しく使えば世界を壊す事になるかもしれないと。

 

 どんな弊害があるかもわからないが、我慢出来ずに習得してしまった。

 

 不老不死にした後でも私なら殺せるが……どちらにしてもいつかは使ってしまうだろうな、我慢出来る気がしない。 

 

 そしてもう一つ。

 

 この事が魔法の完成に大きく貢献したのだが……これらの研究中に私と魔素の関係が見えた。

 

 実験段階でも相応の魔力や魔素を使う、例えば魔力を一気に使うと周囲の魔力が一時的に薄くなる訳だが……。

 

 自身のミスで私は周囲の魔素が少ない時に魔素を使う実験をしてしまった、勿論周囲の薄かった魔素は一瞬で消費され魔素が足りずに発動しない筈だったのだが……。

 

 発動したのだ、問題無く。

 

 私は困惑した……恐らく今までで一番。

 

 実験後確認しても魔素は周囲から完全に無くなっていたのだが、その時気が付いた……魔素が私から漏れていた。

 

 魔素は自然界に存在し植物や魔物に吸収されて魔力を生み出す物だと思っていたのだが……その魔素が自分から漏れ出している事に僅かに混乱した。

 

 思えば魔素が全く無い場所に居た事など無かった。周囲の魔素が私から漏れている魔素を隠していたのか?

 

 何よりそんな可能性を全く考えていなかった私は気にもしていなかった。

 

 私は改めて自分の体を確かめた。周囲の魔素が無いまま魔素を使って魔法を使い続けた、使用量を少しずつ増やしながら。

 

 その結果……大量の魔素を消費する研究中の魔法すらも発動してしまったのだ。

 

 今思えば無茶をしたと思う……魔素が私を構成する何かであった場合、死ぬ可能性があったかもしれないのだ。

 

 更に確かめると私の体と魔素は別物である事は分かった、次に自分の一部を分け実験をした。

 

 そしていくつか分かった事がある。

 

 私の体は魔力でも魔素でもない何かで出来ている事と……体から漏れている魔素は私の体である何かから放射されている副産物の様な物だと言う事。

 

 普段は漏れ出ている程度だが停止する事も一瞬で莫大な量を発生させる事も出来る事。

 

 そして……恐らくその総量が無限に近い事。

 

 こうして私は魔素を気にせず実験を行う事が出来るようになり、一気に研究は進んだ訳だ。

 

 私の実験する場所には危険なので誰も入れないよう魔法がかかっているのだが、最初の一年程で外からエレジアが呼んでいる事に気が付いた。

 

 そして一年も周囲を気にせず籠っていた事を叱られ、それから私は適度に休憩を取りながら実験をした。

 

 自分の事が分かるかと思えばもっと訳が分からない何かだった。

 

 それでも一歩前進だ、何より魔素を使用する物なら使いたい放題だ。

 

 もしも限界があったとしてもそれならそれで構わない。

 

 

 

 

 

 

 「クレリア様」

 

 家のソファに座った私に大分年を取ったエレジアがやってきた。

 

 「ん?どうした?」

 

 「ご一緒にお茶でもどうですか?」

 

 そう言って二つのカップを見せた。

 

 「貰おう、モー乳を入れてくれ」

 

 「分かりました」

 

 微笑むエレジア。

 

 紅茶を入れる音を聞きながら本を読む、冒険記だが間違いなく実話では無いな。

 

 「お待たせしました」

 

 エレジアがカップを私の前に置く。

 

 「何の本を読んでいるんです?」

 

 「冒険記だ……しかし実話ではないな」

 

 紅茶を一杯飲み、本を渡す。

 

 「何故実話では無いと?」

 

 「読めばわかる……ここだ」

 

 彼女は私が示した場所を読むと納得した顔になった。

 

 「なるほど……『自由の神は彼を認めて神の力の一部を与えた』……ですか」

 

 「私はそんな事をした覚えは無い」

 

 魔法や技術を数人に教えた事はあるがあれは神の力では無いしな。

 

 「……クレリア様の名前は無くなってしまったのですね」

 

 こっそりと町で買った冒険記、すでに私の名は世界から消えて無くなっていた。

 

 「私は嬉しいが……」

 

 彼女は苦笑いする。

 

 「貴女は名前が出る事を嫌がっていましたからね」

 

 エレジアは紅茶に口を付ける。

 

 「お前は自分の名前が広がる面倒さを知らないんだよ」

 

 「そうですが、それでしたら大人しくしていると言うのは……」

 

 「私はやりたい事はするぞ?世界に影響を与えすぎないようにだがな」

 

 彼女の言葉を遮って言う。

 

 「何故世界に対する影響を気にするのです?」

 

 「私が思い切り好き勝手したら世界が私の思い通りになるかもしれないだろう?」

 

 私は紅茶を飲む。

 

 「それの何が悪いのでしょうか?」

 

 カップをテーブルに置く。

 

 「私は、私が思いつかないような事を人間が……何者かがしてくれる事を期待している。この世界がどう変わっていくのか見たいんだ。手を出す時は出すが私の思い通りになどしたくは無い」

 

 彼女を見る。

 

 「一人が嫌いな訳では無い、だがやはり誰かといるのは楽しい物だ……それが心を許せる者ならなおさらな」

 

 「そうですね」

 

 エレジアは微笑む、ほんのり頬が赤い。

 

 「私は変わる世界を眺め、紛れ込んで楽しみたいんだ。人が……生物が滅びるまで」

 

 私は彼女に薄く微笑みかける。

 

 「滅びるでしょうか?」

 

 少し寂しそうな表情をする

 

 「このままなら大丈夫じゃないか?」

 

 「そうですか……」

 

 「いや……これからどうなるのか私だってわからない。そしてそれが良い……もし分かる力を得ても私はきっと出来るだけ使わないだろう」

 

 私は彼女を見つめて言う。

 

 「先程聞いた話からすれば使わないでしょうね、貴女は」

 

 「より大事な事の為なら使うだろうが、それ以外ならば恐らく使わないな」

 

 語りながら二人で紅茶を楽しんだ。

 

 

 

 

 

 

 村に住み四十年、住んでいる巫女は一人になった。

 

 そして今、彼女も逝こうとしている。

 

 エレジアは一年前、私に「良い人生でした」と言い残し眠る様に逝った。

 

 「クレリア様」

 

 もう彼女は目を開けない。

 

 「……何だ?」

 

 「今まで……ありがとうございます」

 

 「私が共に居たかったから居ただけだ」

 

 「そうですね……申し訳ありません……何か飲み物を……」

 

 心から申し訳なさそうに言う、謝る必要は無い。

 

 「分かった、待っていろ」

 

 私は席を立ち、体に良い薬湯を用意する。

 

 「持ってきたぞ……おい?」

 

 飲み物を用意し戻って来た時、彼女は既に逝っていた。

 

 その顔は微笑みを浮かべている。

 

 

 




 今回の話はかなり問題がありそうです、一応設定はあるんですが、主人公を色々出来る最強にしたくてサラッと考えた物なので公開しません。

 恐らく主人公が自分の正体に気付く事は無いでしょう。

 子孫で人類が滅ぶ辺りは実際は分かりませんが主人公がそう思っていると言う事で。

 何話か書き溜めしておくと何かあった時修正出来ていいですね。


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018

 他者視点を書いて主人公が周りからどう思われているかを書くのも面白そうですね。

 この作品の注意事項

・作者の自己満足

・素人の作品

・主人公最強

・ご都合主義

・辻褄が合わないかもしれない設定

・注意事項が増える可能性

 等が含まれます。

 以上をご理解したうえでお読みください。

 読者の皆さんの暇潰しの一助になれば幸いです。


 

 私は死んだ彼女を埋葬し、村を取り壊す。

 

 さて、どうしようか……リンガイルを覗いてみるか?

 

 

 

 

 

 

 あんな旗無かったはずだが……。

 

 リンガイルに着いたが、町の色々な所に白地に金の王冠ある旗がかかっている。

 

 道行く人に聞いた所、ルセリア王国の国旗らしい。

 

 飲み込まれたか、時間の問題だったからな。

 

 モー乳販売店があったので色々と買った、店員は見知らぬ者に変わっていた。

 

 私は宿を取りこの町に暫くいる事にした。

 

 

 

 

 

 

 数日後。モー乳を瓶のまま飲み歩いていると、念話が来た。

 

 『師よ、よろしいでしょうか?』

 

 『どうした?』

 

 『直接会ってお話したい事がありまして、ウルグラーデに来ていただけませんか?』

 

 珍しいな、わざわざ私を呼び出すとは。

 

 『分かった、急ぎか?』

 

 『可能でしたら』

 

 それを聞いて私はウルグラーデに転移した。

 

 『今町の外だ。これから学校に行く』

 

 『はい。お待ちしています……受付で名を名乗ってくださいね』

 

 『分かった』

 

 私は念話を切ってウルグラーデに入っていく。

 

 

 

 

 

 

 ウルグラーデの神殿は私が言った通りに名を自由神に変えており、名前は無くしていた。

 

 巫女達にはそうするように言っておいたからな、彼女達は私が言うならと受け入れてくれた。

 

 私は学校へと大通りを歩いていく。何やら物々しい、武装をした者が多く見回っている。

 

 「えっ!?」

 

 歩いていると驚いた声と何かが落ちる音が聞こえる、振り向くとメガネをかけ灰色の髪をした老婆がこちらを見て小さい紙袋を落としていた。

 

 「大丈夫か?」

 

 私は袋を拾い、老婆に渡す。

 

 「え、ええ」

 

 「気を付けるんだな」

 

 そう言って学校に向かおうとした時。

 

 「……クレリア?」

 

 つぶやきが聞こえた。

 

 「何故私を知っている」

 

 私は振り返る。

 

 「本物?」

 

 「何を言ってるんだ?」

 

 震えながら私に近づいた彼女が私を抱きしめた。

 

 「おい?」

 

 「急に居なくなって私がどれだけ心配したと……」

 

 泣き始める老婆、周りの視線が集まる。

 

 「とにかく目に付かない所に行くぞ。来い」

 

 私は老婆を連れて移動したが途中で家に来て欲しいと頼まれ、こいつが誰か気になった私はついて行く事にした。

 

 

 

 

 

 

 家の者は出かけているらしい、一般的な作りの家に案内され椅子に座った。

 

 「で?お前は誰だ?」

 

 「年取ったもんね……分からないか」

 

 苦笑いする彼女。

 

 「ヘレンよ、ヘレン・ワーズ」

 

 その名前を聞いた時、背中まで伸びる灰色の髪を三つ編みにして眼鏡をかけた少女が浮かぶ。

 

 「ヘレンなのか?」

 

 「そうよ」

 

 彼女はメガネの位置を直す。

 

 「久しぶりだな」

 

 「何してたの?どうしてまだその姿なの?」

 

 私は彼女に隠す所は隠して話しをした。

 

 「貴女森人のハーフだったのね……やっぱり」

 

 彼女は当時から年齢にそぐわない力を持つ私を怪しんでいたらしく、そうでは無いかと思っていたらしい。

 

 それから彼女と話をして色々な事を聞いた。

 

 ヘレンが魔法学校の元教師で、今は事務職をしている娘が居る事。孫は教師として働いている事などを聞いた。

 

 そうして時が過ぎ……。

 

 「……いかん」

 

 「どうしたの」

 

 紅茶を飲む途中で固まった私に聞いてくるヘレン。

 

 「約束があったんだ、また後でな」

 

 そう言って家を出ようとする。

 

 「今もちょっと抜けてるのね」

 

 後ろから笑い声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 ティリア魔法技術学校の受付で名を名乗ると、校長室に案内された。

 

 ケインと二人になると彼は紅茶と茶菓子を用意してソファへと私を案内した。

 

 「遅かったですね?」

 

 私の前に紅茶を置く。

 

 「途中でヘレンに会った」

 

 納得顔になる彼。

 

 「彼女の子供も孫も学校に居ますよ」

 

 「遅くなってしまったが急ぎの話なのだろう?」

 

 私は話を促した。

 

 「ええ……実は……」

 

 彼は話し出す。

 

 ウルグラーデはティリア魔法技術学校がある事と正統な神の巫女が居る事でルセリア王国からの独立を今まで守っていたが、大きくなったルセリア王国が物資の流通を規制した上で武力をちらつかせ取り込もうとし始めた……と言う事らしい。

 

 「ケイン、入るわよ」

 

 そこまで話した時に女性の声がして誰かが入ってくる。

 

 「今は来客中なんですが」

 

 「ごめんね、でも例の事でね」

 

 言葉を交わす二人を私は見ていた。

 

 「ごめんなさい、話している途中……で……」

 

 私のを見て驚きををあらわにする女性。十八前後かな……しかし見た事があるような気がするな。

 

 「クレリア!」

 

 彼女は私に飛びついてくる。

 

 「ミナ、失礼ですよ」

 

 「ミナ?」

 

 私は女性を見る。

 

 「そうよ!あなたを超える魔法使いになる、ミナ・トリアムよ!」

 

 それから落ち着きを取り戻し話をした、私が森人とのハーフである事などおおよそヘレンにした話と同じ事を伝えた。

 

 

 

 

 

 

 「次期校長で……ケイン校長の妻?」

 

 「そうよ」

 

 そうか、ケインとミナがな。

 

 「何よ……好きになった物は仕方ないでしょ」

 

 私が二人を見比べていると、仄かに顔を赤くして言ってくる。

 

 ケインが咳払いをして言う。

 

 「クレリアさんお願いします……流通を規制され攻められれば町は長く持たないでしょう。無理を承知でお願いします……ルセリア王国の軍を共に撃退し、王国に所属している町と同等の地位と自治権を認める条約を結ばせて欲しいのです」

 

 「あたしからもお願いします。貴女はケインと並ぶ大魔法使い……どうか私達と町と学校の未来に力を貸して……!」

 

 頭を下げる二人。ヘレンとミナは知らない仲では無いし、何よりも……。

 

 私は頭を下げているケインを見る。今まで力を尽くしてきた弟子の頼み、断る気は無い。

 

 「分かった。力を貸す」

 

 「……ありがとうございます」

 

 「ありがとー!」

 

 悔しそうな嬉しそうな不思議な表情をしているケインと、喜び突っ込んでくるミナ。

 

 「では、これからの事を話そうか」

 

 私は胸に張り付いているミナを引きはがして言った。

 

 

 

 

 

 

 二人と話した所ウルグラーデの方針として徹底抗戦する事は決定済みで、冒険者ギルドと警備隊、自警団も結成され町の内部にも目を光らせているらしい。 

 

 更に私が各地の巫女を誘拐し姿を隠した際に「ウルグラーデの神殿の巫女が神に謁見し巫女の血統を守っている」という事を広めて他の町の神殿の正統性を無くしているため、他の町から自由神を信仰する冒険者達が集まって来ている。

 

 まあ他の神殿はかなりお粗末になっているらしいな。髪が黒くなかったり染めようとしてまだらだったり、目も黒くない。

 

 まあそうなるだろうな、元々黒髪黒目はこの世界の人類には居なかったのだから。

 

 臨戦態勢の町を見て回っている私は念話をつなぐ。

 

 『ケイン』

 

 『どうしました?』

 

 『私は人の範囲で戦うぞ?勝利は約束するがまた神だ何だと騒がれたくないからな』

 

 念話しながら店でモー乳を買う。

 

 『そうですか……』

 

 『何だ?何かあるのか?』

 

 モー乳を飲みながら話す。

 

 『師は人間の力の範囲を知っていますか?私はやりすぎる気がするんですが』

 

 黙ってしまう私。

 

 『それに力を出していただかないと戦力を覆せないのですが……』

 

 『うーむ……分かった。多少は名が広がってもいい、弟子と知人と弟子の学校の生徒達の未来のためだ』

 

 『申し訳ありません』

 

 ギルドの周囲や、町の広場には応援に来てくれた冒険者の為の施設が設置されている。

 

 『気にするな。たまには弟子に頼られるのも良い物だ』

 

 『……はい』

 

 そこまで気にする必要は無いのだが、ケインならこうなるか。

 

 

 

 

 

 

 「いいか!隣にいる者と連携して並ぶように位置取りをしろ、穴を作るな!」 

 

 私がウルグラーデの学校の客室で過ごして二週間程が過ぎ、ルセリア王国の軍がやってきた。

 

 外壁から見る限りは昔リンガイルで相手した数の……2.5倍ぐらいか?多いのか少ないのか分からんな。

 

 「負傷した者は無理をせず後退しろ、治療を受けてから戦線に戻れ!」

 

 「援護魔法部隊は自分と前衛の防御、攻撃魔法部隊は用意した高台から後方の敵の排除、攻撃魔法部隊の防衛部隊は攻撃魔法部隊を守り抜け!」

 

 私はケインに頼み一人で遊撃だ。冒険者の皆は私の事は特に気にしてないだろう。

 

 「弓部隊は高台の前から山なりに射撃して敵を狙えよ!」

 

 さっきから説明しているのはウルグラーデのギルド長だ、以前とは別人になっているな。

 

 「……ん?君!君はどこに配属されている?」

 

 一人離れて聞いていた私にギルド長が言う。

 

 「ケイン校長から役目を受けている」

 

 そう言うと彼は私をじっと見つめている。

 

 「……そうか。頼む」

 

 そう言った後もしばらく見てくる。

 

 「私に何か用でもあるのか?」

 

 「いや、すまん……そういう訳じゃないんだ。ただ昔親父が一瞬で振られたって言ってた少女に似てる気がしただけだ」

 

 そう言って苦笑いするギルド長。

 

 「相手もとっくにいい歳になってるだろうに」

 

 「そりゃそうだな」

 

 彼は笑って移動していった。

 

 

 

 

 

 

 両軍がぶつかり戦闘をしている中、私はまだ町の中にいた。

 

 いつもの女神軽装備は変わらないが、敵が多そうだから大剣を使うつもりだ。

 

 私は外壁へ飛びあがり戦場を見る。でこぼこした大地で前衛がぶつかり合い、空中は弓や魔法が飛び交っている。

 

 敵は訓練を受けた兵士のようだ。

 

 まあやる事は同じだ、取り合えず魔法使いが一番厄介だから排除しておくか。

 

 多い所は……あの辺りか……。

 

 戦場中央、敵陣の奥から多くの魔法使いらしき気配がする。

 

 ……魔法が多く放たれているからこれは見ただけでも分かるな。

 

 さて……行くか。

 

 

 

 

 

 

 私は魔法部隊の上空にやって来ると、火球を打ち込んでから降下する。

 

 爆音と共に直径数メートルのクレーターが出来た。

 

 「なっ!?なにがあった!?」

 

 「何処からか攻撃が!?」

 

 騒ぐ敵の声を聞きながら魔法使いに切りかかり、一振りで相手の頭を落としていく。

 

 「敵襲だー!!」

 

 周囲から敵が集まり、全方位を敵に囲まれる。

 

 私はその敵を大剣を振り回して薙ぎ払っていく。

 

 次々と切り裂いていると、敵の声が響く。

 

 「離れろ!魔法が行くぞ!」

 

 周りの敵が距離を取り、生き残った魔法使いと周囲の魔法使いが私に向かって魔法を打ち出す。全て火球だな……では。

 

 「離れて居れば安全と言う訳でも無いぞ?」

 

 私は炎の壁の輪を自分の周りに作り、その輪を一気に広げる。

 

 「あっ……」

 

 「うあぁ!?」

 

 敵の攻撃魔法は炎の壁に飲み込まれ、火力の高さで一瞬で燃え尽きる敵兵達。

 

 そして燃え尽きる仲間を見た他の兵は、必死に逃げ出し始めた。

 

 逃げられれば追いはしない、頑張るといい。

 

 「はっ、はっ……くそぉーーーー!!」

 

 炎の広がる速さから逃げきれずに燃え尽きて行く敵兵士、私の周りに円状に赤く熱を持った地面のみが残った。

 

 「化け物……」

 

 それを見ていた範囲外の敵兵の声が聞こえた。

 

 この程度で化け物は無いだろう。

 

 私はそう思いながら背後にファイアボールを打ち込み、正面の敵に突っ込んで行く。

 

 

 

 

 

 

 初戦は私が魔法使いの本隊とその周辺を消滅させたので優勢だった。

 

 ウルグラーデ側もそれなりに死傷者が出たようだが。

 

 私は前線から離れた本隊に行ったのであの距離から私であると判別出来る者は居ないかもな。

 

 私は姿を消し、町に戻った。……最初から姿を消したまま戦えばよかったんじゃないか?

 

 私は学校に行き、校長室を訪ねた。

 

 「ケイン……校長」

 

 ミナも居た為、咄嗟に校長を付ける。

 

 「あ、クレリア先生」

 

 ソファに座っていたミナが振り向き言う。

 

 「私は先生では無い」

 

 そう返して私はソファに座った。

 

 「なんでわざわざ校長ってつけるの?結構年も近いんじゃないの?」

 

 ミナが私に言う、ケインが付けて欲しいと言ったからだな。

 

 「そうですね。校長はいりませんよクレリアさん」

 

 ケインがそう言ってソファにやってきた。

 

 「そうか、分かった」

 

 ミナが紅茶を私の前に置く。

 

 「私達は立場上戦争にあまり出る訳にはいかないので……心苦しいですね」

 

 ケインがミナの隣に座りながら言う。

 

 「教育者が率先して人を殺すのはな」

 

 「いざとなれば戦いますが」

 

 私が言うと、ケインが言葉を返す。

 

 「まあ、お前達はまだここに居ろ」

 

 そう言って私は紅茶を飲む。

 

 「そう言えば、聞いた話だと敵の魔法使いの本隊を誰かが叩き潰したらしいわね?」

 

 ミナがカップを置いて言う。

 

 「私がやった」

 

 二人が私を見る。ケインはやっぱりと言った表情、ミナは小声で「やるぅ」と言った。

 

 「やはりそうでしたか、お疲れさまでした」

 

 「多少派手に戦ったのだが、中々楽しかったぞ」

 

 「やっぱりすごいのね貴女って」

 

 感心する彼女。

 

 「貴女にとって人間との戦いは遊びの様な物でしょうからね」

 

 「殺す事を楽しんではいない、敵でないなら殺さないぞ」

 

 私はケインを見る。

 

 「それだけ実力差があるって事でしょ?」

 

 ミナはケインと私を交互に見ながら口を挟む。

 

 「そうだな」

 

 私はそう言ってから話を変える。

 

 「それで……ケイン。向こうは何か言って来たか?」

 

 「特に何も……恐らく今度はもっと大規模な軍になるでしょう」

 

 彼は私を見た後、手元のカップに目を落とす。

 

 「クレリア、貴方が本当に強いのは分かったけど無理しちゃだめよ?」

 

 「大丈夫だ。あの程度ならな」

 

 紅茶を飲み終わるまで三人で話をして過ごした。

 

 

 

 

 

 

 それから一月程何事もなく時が過ぎ、私はヘレンの家と校長室、客室を行ったり来たりする生活をしていた。

 

 大半は客室で魔法の更なる可能性を探していたが。

 

 そしてある日。偵察に出ていた冒険者の一人がルセリア王国の大規模な軍がウルグラーデに向かっているのを発見した。

 

 その報告と共にウルグラーデは警戒態勢から臨戦態勢に移行した。

 

 

 

 

 

 

 外壁から見ると遠くにルセリア王国の軍とウルグラーデ義勇軍が見える。

 

 ウルグラーデは流通を減らされている状態だが、まだ問題は起きていない、更にこの一か月程は冒険者達が周囲の資源を集めていたのでその影響もありそうだ。

 

 私が居る事を知らない者達は、どのような戦いをしてもこのままでは負けるのは時間の問題だと分かっているはずだが……諦める気は無いようだ。

 

 今回から私は姿を消して戦うつもりなので会議にも参加していない。

 

 大分敵の軍勢が多くなった。魔法使いの部隊の規模も数も前回とは違う。

 

 ティリア魔法技術学校を卒業した者もいるかも知れないな。今は他の学校もあるらしいから魔法使いも増えているだろう。

 

 どちらにしても敵になるなら殺す事は変わらないな。

 

 

 

 

 

 

 再び戦闘が始まった。守りを固めて準備をしても数の差はどうにもならないようだ、持ち堪えてはいるが押されていく。

 

 その光景を眼下に見ながら私は敵陣へと向かった。

 

 私は姿を隠したまま上空から敵陣の魔法使い部隊へ突入する。

 

 「なっ!?」

 

 「なんだ!?」

 

 「急に味方が吹っ飛んだ!?」

 

 姿を隠したまま大剣を振り回し、次々と魔法使い達を殺していく。

 

 「何かいる!!足跡が付いてる!!」

 

 ああ、そうか。地面に立っていると足跡は残るな、地面は柔らかい所もあるし。

 

 私は宙へ浮かび再び攻撃を開始した。

 

 「足跡も消えた!?」

 

 「このままじゃやられるだけだ!やられた仲間の辺りへ魔法を叩き込むしかない!」

 

 混乱した魔法使い達の中の一人が叫んでいる。

 

 「そ……それはっ!?」

 

 「このままじゃ一方的に殺されるだけだぞ!!」 

 

 「くっ!!」

 

 そう言って周りの魔法使い達が敵を殺している場所にファイアボールを打ち込み始めた。

 

 私は特に気にする事無く魔法使い達の中を斬り進む。

 

 「居るのか居ないのか……畜生!何なんだ!!」

 

 全く変化が無いからか敵の魔法使いが叫ぶ……当たっているぞ?効いていないだけだ。

 

 それから私はこの魔法使い部隊を全滅させ、新たな魔法使いの部隊へと飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 こうして私は次々と魔法使いの部隊を潰して行き、今最後の部隊を潰していた。

 

 「一体何故こんな事に……」

 

 そう呟いた魔法使いを殺す。

 

 相手からすれば何もないのにいきなり仲間がバラバラになる訳だからな。文句の一つも言いたくなるだろう。

 

 魔法部隊を壊滅させた私は、空から軍がぶつかり合っている前線を見る。

 

 自軍の魔法部隊が全滅した事が伝わったのか敵の前線部隊にも動揺が広がっているようだな。

 

 その後攻め切れなくなったルセリア王国軍は撤退して行った。

 

 

 

 

 

 

 「それで……まだ何もないのか?」

 

 校長室で私、ケイン、ミナがソファに座り話し合う。

 

 「ええ……いまだに王国からは何も……」

 

 どことなく暗い表情のケインに聞いてみる。

 

 「完全に流通を止めて放っておくだけでもこの町は終わりそうな物だが……なぜやらないか理由は分かるか?」

 

 そう聞くとミナが代わりに答えてくれる。

 

 「詳しくは知らないけど貴族の名誉とかなんとからしいわよ?何の意味があるかは知らないけど」

 

 鼻で笑いながら呆れた表情で言う。

 

 「本当に意味が分からんな」

 

 貴族の名誉のために兵士達は死ねるのか、人はやはり面白いな。

 

 「今回の事で手加減は出来ないと考えたのか、流通は完全に止められました」

 

 私を見るケイン、ミナもその言葉を聞いて表情を暗くする。

 

 「次は手加減無しの軍勢が来ると思います」

 

 私は本気を出すのが遅いと感じるが、敵は簡単に勝てると考えていたのだろうな。

 

 「今度は私達も出る事になると思うわ。もう教育者がどうこう言ってられないもの」

 

 「だがこれをしのげば国を超える力がある事が示せる。攻め込まれたくなければ認めろと言えば上手く行くかも知れないぞ?」 

 

 私の言葉に頷く二人。

 

 「結局……力が上である事を示さなければ不可能なのですね」

 

 呟くケイン。

 

 「自分の意見を通すためには種類はどうあれ力が必要だ。お前も知っている事だろう?」

 

 全てを敵に回しても気にならない強さがあれば何も問題は無いと思う。

 

 

 

 

 

 

 あれから約二か月程が過ぎたある日、ウルグラーデは全方位をルセリア王国の軍に囲まれていた。

 

 「全軍では無いだろうが町一つには十分すぎる数だな」

 

 校長室で話し合う私達。

 

 「確かに、町一つに向ける戦力では無いですね……」

 

 「ようやく本気になった訳ね。義勇軍と私達三人で勝てるかしら……」

 

 対面に居るケインとミナが言葉をこぼす。

 

 「……この町の戦力では全方位を守る事は出来ません」

 

 「私達でどこまで援護できるかしら……」

 

 二人の表情は暗い。

 

 「ミナはともかくケインは何故暗い顔をしている、私が居るだろう」

 

 私がそう言うとミナが独り言の様に呟く。

 

 「いくら何でもこの戦力相手じゃ勝てるかどうか……」

 

 「……こうなる前に話が付くと思っていたのです」

 

 国の貴族共が名誉だなんだと言い出す前ならそうなったかもな。

 

 「思った様にいかない事はいくらでもあっただろう?……誰だってそうだ」

 

 自分が魔法や錬金術を練習していた頃を思い出す。

 

 失敗をわざわざ話したくなど無いが、人と暮らしている時にもそんな事はそれなりにあった。そう言うとケインは顔を俯かせる、そんなケインをミナは心配そうに見つめる。

 

 「そして……それが面白いんだよ」

 

 思わず薄い笑みを浮かべてしまう。

 

 二人は私を見る。

 

 「思い通り……確かにそれはそれで愉快だろう。だが私は全てが自分の思った通りになるなどつまらないと思っている」

 

 私は二人を見る。

 

 「私が思いもよらない発見や行動。それは見ていてとても面白い……それが私にとって不都合であったとしても不愉快では無いんだ」

 

 「……どうしたのクレリア?」

 

 訝しむミナ。

 

 「このままでは勝つ事は難しい……そうだなケイン?」 

 

 「はい」

 

 私を見つめ答える。

 

 「私一人でやる……お前達は此処に居ろ」

 

 「……それは」

 

 「ちょっ!?ちょっと……無茶よ!いくら強くてもあの数を貴女一人でなんて無理よ!」

 

 言葉に詰まるケインと私に詰め寄るミナ、私はミナの頭に手を伸ばし撫でる。

 

 「任せておけ」

 

 そう言って私は校長室から出て行く。後には固まっているミナと姿勢を正し頭を下げるケインの姿があった。

 

 

 

 

 

 

 さっさとやってしまおう、私は姿を消しウルグラーデのかなり上空へ飛ぶ。

 

 下を見ればウルグラーデを包囲するルセリア王国の軍が見える。

 

 私はウルグラーデに防御魔法を張り。自分の周囲に威力を上げた火球……かなり大きい物を複数作りだす。

 

 小さくともあの程度の軍を吹き飛ばす事は出来る。だが、天から光が落ちて行く様を人々に目撃させなければならない。

 

 そして私は周囲を包囲する軍に向かって火球を打ち出した。

 

 打ち出した火球はかなり大きいにもかかわらずみるみる小さくなっていき……閃光と爆炎を巻き起こし軍を飲み込んだ、遅れて私にも轟音と熱風が届く。

 

 その炎が消えた後町の周囲に残っていたのは赤く融け、抉れた大地だけだった。

 

 このやり方はつまらないが大掃除には向いている。

 

 

 

 

 

 

 その後ウルグラーデはルセリア王国に自治権を認めた上で他の町と同じ地位を約束する条約を認めさせ、自治都市ウルグラーデとなった。

 

 もっと有利な条件も付けられたはずだがケインはそれをしなかった。それが戦争の火種になると考えたようだ。

 

 その辺りは好きにすると良い、そこからはケインのやる事だ。

 

 そして現在私は校長室でミナに問い詰められている。

 

 「クレリア……貴女何者なの?あんな……あんな魔法ケインにだって無理だって分かる……ケインは知ってたの?」

 

 ミナは正面に座っている私から隣にいるケインに視線を移す。

 

 「ケイン。私はこうなると分かってやったんだ……だからもう隠さなくていいぞ」

 

 「そうですか、師がそう言うのならもう構いませんね」

 

 「え?師って?ええ……?」

 

 声をかけると私を師と呼ぶケイン、戸惑うミナ。

 

 「師の事をお話しますよ」

 

 そう言って私の事を説明し始めるケイン……お前がするのか。

 

 

 

 

 

 

 ケインが話を終えた。ミナはまだ声を発さず俯いている。

 

 暫くそうしていたが彼女は勢い良く顔を上げて言った。

 

 「私だけ知らないとか酷いじゃないにょ!」

 

 何とも言えない沈黙が辺りを包む、彼女は顔が赤くなっている。

 

 「……私はそういう何かなんだ、黙っていて済まなかったな」

 

 「私は師が話すなと言った事は妻にも話す気は無いですからね」

 

 噛んだ事を流して会話する。

 

 「私は貴女を超えると言ったけど……」

 

 赤い顔のまま私を見る。

 

 「貴女が何者でも負ける気は無いわよ」

 

 「ミナらしいな」

 

 ミナは笑い、私も薄く微笑む。

 

 やがて彼女の顔色は元に戻ったが私の話題は続く。

 

 「それだけ長い寿命なら私も目標がいなくなる心配はしなくてよさそうね。もし何処かに行ってもたまには会いに来てよね」

 

 「まだこの町に居るつもりではあるが……用があるなら念話で呼べ」

 

 私の隣に移動して話す彼女。

 

 「あの時の魔法ってどうやってるのよ」

 

 「それはな……」

 

 「私達が出来るのそれ……?」

 

 「知らん」

 

 「じゃあ……」

 

 一人で紅茶を飲むケインに微笑ましく見守られながら、魔法談議に花を咲かせた。

 

 

 

 

 

 

 「ウルグラーデに家を……ですか」

 

 「ああ」

 

 数日後、校長室で会話する私とケイン。

 

 「学校に居ても構いませんよ?」

 

 「悪くは無いがやっぱり自分好みの家が欲しくてな」

 

 二人共紅茶を口にする。

 

 「そうですか。では費用はこちらで出しますよ」

 

 ケインが紅茶を置きながら言う。

 

 「いいのか?」

 

 「今回の事で返しきれない恩を受けましたからね」 

 

 私も紅茶を置く。

 

 「特に気にしていないぞ」

 

 「私が気になりますので」

 

 お互いに顔を見て言う。

 

 「そうか。それで気が済むならそうするといい」

 

 「購入する家が決まったら連絡をください。どの家でも構いませんよ」

 

 「分かった」

 

 

 

 

 

 

 こうして家を買いに不動産に行ったのだが、名前を名乗ると「お客様は運が良いですね」と言われある物件を紹介された。

 

 クレリアと言う名前の者だけが今の持ち主と顔合わせをして、合格すれば無料で屋敷が貰えるらしい。

 

 「なんだそれは」と思ったが、気になった事があったので会ってみる事にした。

 

 

 

 

 

 

 物件の屋敷で顔合わせと言われたので、約束の日に地図を見ながら向かう……この道はやはり……。

 

 着いた場所にあったのは以前住んでいたあの屋敷。

 

 私は鉄扉を開けて庭を歩く。あの時いつか作りたいと思い、彼女達に言った池があった。

 

 屋敷の扉を開け、リビングに入ると三人の年老いた女性が座っていた。

 

 「久しぶりだな三人娘」

 

 私がそう言うと、彼女達は涙を流し私に抱き着いた。

 

 その後いきなり居なくなった事を三人から叱られ、話をした。

 

 彼女達はそれぞれ家も家庭も持っていたが、この屋敷はずっと管理していたらしい、いつか私が戻って来た時のためにあのような条件を付けたようだ。

 

 今まで数回クレリアと言う者が来たが別人で、きっともう駄目だろうと思いつつも取り消す事が出来ず、そのままにしていた所に私が来た……という事だ。

 

 あの時譲って貰った家を返すと言われ受け取る事になり、私は再びあの家に住むことになった。

 

 ケインに無料で家が手に入ったと伝えないとな。

 

 時折訪れる彼女達と語り合う日々を送る事になりそうだ。

 

 

 




 最後の大軍勢が一番あっさり終わる、主人公がその気になったら仕方ない。

 今回は姿を消したまま戦ったけど、あまりにもつまらないのでどうしようかと悩む主人公。







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019

 読み返して修正していたら遅くなってしまいました、それでもまた時間を空けて読むと納得いかない部分があるんだろうな、と思います。

 頭の良いキャラをいつか書きたいけれど、作者より頭が良いキャラは書く事が不可能らしいのでうまくごまかす事が出来たらいいですね、何とかそれっぽくしたいです。

 後、最初また時間飛びます。

 この作品の注意事項

・作者の自己満足

・素人の作品

・主人公最強

・ご都合主義

・辻褄が合わないかもしれない設定

・注意事項が増える可能性

 等が含まれます。

 以上をご理解したうえでお読みください。

 読者の皆さんの暇潰しの一助になれば幸いです。








 

 ウルグラーデに住み二十年が過ぎた。

 

 ヘレン、アリアナ、ルフレ、ユリアルマは既に逝き、ルセリア王国はルセリア神王国と名前を変えた。

 

 世界が少しづつ変化する様子を見ながら、私はまだこの屋敷で日々を過ごしていた。

 

 この二十年でウルグラーデからいつの間にか戦神信仰という新しい宗教が広がっていたが私は気にしていなかった。

 

 後にケインとミナから先のルセリア神王国との最後の戦いで使った私の魔法が原因だと聞いた。

 

 姿を隠していた事と人類では不可能な威力もあって、戦神が戦いに介入したと考える者が現れたらしい。

 

 私は放っておく事にした、ケインとミナは言わないだろうしな。

 

 「いらっしゃいませー」

 

 私は今行きつけのモー乳販売店に居る。まとめて買っておいても良いのだが時期によってモー乳も味が違うのでこまめに買いに来ている。

 

 ふむ、今日はモー乳プリンがあるな。

 

 「モー乳の大瓶十本とモー乳プリンを五個頼む」

 

 「いつもありがとうねクレリアさん」

 

 店員の女性が私に声をかけながら用意をし始める、二十年通えば覚えられて当然だな。

 

 「ここの製品はお気に入りだからな」

 

 「嬉しいわ」

 

 そう言って笑いを零す。彼女はこの店の店主の娘だ、彼女がお手伝いしている頃から私は来ているからな。

 

 「ありがとうございましたー」

 

 その声に後ろ手に手を振る。

 

 モー乳をしまって通りを歩いて人とすれ違っていると、突然男の声がした。

 

 「おい、お前!ぶつかっておいて何も言わねぇのか!」

 

 気にせず歩こうとして直後に後ろから伸びてくる手をかわす。

 

 「何か用か?」

 

 振り向いて言う。

 

 「何か用だと!?ぶつかったら謝る様に言われてねぇのか!」

 

 脅す様に言ってくる。

 

 「確かにぶつかったら謝るべきだな……だがお前には当たっていないな」

 

 「俺がぶつかったって言ってんだよ!」

 

 そう言って睨みつけてくる。

 

 「大人しく因縁を付けた事を謝るのならこのまま許してやるぞ?」

 

 そう言うとポカンとする男、その後顔を赤くして怒り出す。

 

 「てめぇ……!」

 

 「そこ!何してる!?」

 

 男が掴みかかろうとした所に声がかかる、武装した三人の男女がこちらに近づいてくる。

 

 彼らはこの町が自治都市になった際に作られた治安維持隊の隊員だろう。

 

 治安の維持や犯罪者の逮捕など都市内を担当している。

 

 外敵からの防衛には警備隊があり、それらはウルグラーデ自治軍に分類されている。

 

 「くっ……」

 

 男は逃げだした。逃げたら捕まえてくれと言っているような物だぞ。

 

 「奴を追え!」

 

 二人が男を追いかけ、残った隊員が話しかけてくる。

 

 「大丈夫ですか?」

 

 「ああ、助かった。触れても居ないのにぶつかったとうるさかったからな」

 

 隊員は身をかがめ目線を合わせて話す。

 

 「治安維持隊が巡回しているから何かあったら言うんだよ?」

 

 「分かった」

 

 あの男は治安維持隊に救われたな。場合によってはこの町から人が一人消える所だった。 

 

 「ではこれで、良き日を」

 

 隊員はそう言って去っていった。

 

 この「良き日を」という言葉は、治安維持隊のお決まりの挨拶の様な物だ。

 

 いつ誰が言い始めたかは不明だがいつのまにか使われていたそうだ。

 

 再び通りを歩きだす、私は今は金を稼ぐような事はしていない。

 

 ケインに無料で屋敷が手に入った事を話したら大金を押し付けられた。

 

 要らんと言ったら「せめてお金だけでも受け取ってください」と頼まれてしまった。

 

 「モー乳を買う資金にさせて貰う」と言うと「ぜひそうしてください」と笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 当てもなく歩いていると、路地を少し入った所に居る二人の獣人が話している事が耳に入った。

 

 「お前はどうする?」

 

 「……ここにも思い入れはあるし、同じになるとは……」

 

 何の話だろう、少し立ち聞きさせてもらうか。

 

 「俺は行くよ。考えたくは無いけど……確かにまた起きるかもしれないんだ」

 

 「そうか……」

 

 そう言うと獣人の一人が路地から出て行く。詳しく聞きたいが話してくれるだろうか。

 

 私は興味に負け残っていた獣人に自白誘導をかけて質問した。

 

 判明したのは人間が奴隷を作った事を知った都市に住んでいない獣人達が対抗する為に集結しているという事だった。

 

 一応獣人の集まっている場所も聞いた。覗いてみるのも面白いかもしれないな。

 

 更に噂だが獣人だけでなく人間や他の種族を信用出来なくなった大地人や森人も同じような動きをしているらしい。

 

 確かにいきなり隣人を奴隷にするような者と一緒に居たくは無いかもな。

 

 ケイン達はこの事を知っているのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 私は校長室に訪れて得た情報について聞いた。

 

 「そんな話が……」

 

 「その反応からすると知らないな?」

 

 私とケインはソファに座って話していた。

 

 「噂でしかないが大地人や森人も同じような動きをしているらしいぞ」

 

 ミナは外出中らしい。

 

 「ウルグラーデに住んでいる同族を誘っていると言う訳ですか」

 

 「恐らく他でもしているだろうな」

 

 ケインは溜息を吐く。

 

 「隷属魔法によって有無を言わさず奴隷にされれば当然かもしれませんね……」

 

 「またあんな事が起きるかもしれないと思うのは当然か」

 

 私は視線をケインに向ける。

 

 「そうですね……この町では奴隷は居ませんが、信用出来ないと考えてしまうのは……当然ですね」

 

 「いつから動いていて、今どれほどの規模なのかは分からないが……場合によっては新しい国が出来るかもしれないな」

 

 紅茶を一口飲む。

 

 ケインは視線を下げて言う。

 

 「国が出来る事自体は構わないのですが、それらの国と戦争になりそうですね」

 

 ふむ……力を付ければ指導者にもよるが……人間達は勿論、共に暮らす同族に対しても復讐として奴隷にしようと戦いを仕掛ける可能性は……あるな。

 

 「面白そうだ、国が増えて世界がより賑やかになるぞ」

 

 そう言うとケインが困ったような顔をする。

 

 「扇動しないでくださいよ?」

 

 「私は関わりはするが何かをしろとは言わないぞ?……もし戦争が起きたならそれは彼らの意思だよ」

 

 「そうですか」

 

 ケインは紅茶を見つめている。

 

 「私は彼らの手伝いをしてくる」

 

 「予想は出来ますが、なぜです?」

 

 「何となくだ、興味がわいたとか気になったから……とでも言おうか?」

 

 ケインは苦笑いをする。

 

 「師のお好きなように」

 

 

 

 

 

 

 その後、獣人以外の正確な場所が分からない為、誘っている者を捕まえて場所を聞こうと考え通りを歩いていた。

 

 そこにミナが誘われたとケインから念話が来たので、その現場に行き周囲を探った。

 

 「……があるだろう?」

 

 「……かに……だが……」

 

 路地裏から会話が聞こえる……私は少し近づく。

 

 「これからも大丈夫だと言えるのか?」

 

 「ううむ……」

 

 二人の森人、もう一人は悩んでいるようだ。

 

 「同族同士で身を守るべきだ。俺達は仲間が奴隷になるのを黙って見て居たくは無い」

 

 「……分かった。俺も行くよ」

 

 そう言った森人と握手をする勧誘していた森人。

 

 さて、自白してもらおうか。 

 

 勧誘されていた森人には眠って貰い、勧誘していた者に森人の集まっている場所を聞く……神木……世界樹?もしかしてケインが居た村の辺りじゃないか?

 

 その後大地人が多い場所をうろついて大地人の勧誘者を見つけ、同様に場所を聞き出した。

 

 

 

 

 

 

 これで三種族の集まっている場所が分かった訳だが……どこから行こうか。

 

 正直何処からでもいいので、紙に数字を書いてその辺りの子供に選ばせた。

 

 その結果森人、大地人、獣人の順番で訪れてみる事に決まった。

 

 

 

 

 

 

 あった。あの大樹だ……空を飛び森人の集結している場所に向かうと大きな木が見えて来た。

 

 大樹……世界樹の根元に降り立つと世界樹が迎えてくれたような気がした。

 

 お前も恐らく一万年以上生きてるんだよな。

 

 「貴女!そこで何をしているの!?」

 

 一人の森人の女が笛の様な物を吹くとみるみる森人が増えて行った、その手には杖や剣などの武器が握られている。

 

 以前にも似たような事があったな。

 

 私はそう思いながら世界樹が傷つかないように距離を取った。

 

 その途端に私に矢や風、水、土の魔法が殺到する。

 

 火を使わなくなったか、成長したな。

 

 そう思いながら殺到する魔法を全て防ぐ。

 

 「……馬鹿な」

 

 森人のつぶやきが聞こえる。

 

 「申し訳なかった……私に敵意は無い。そもそも私は森人のハーフでもあるんだ……ここに森人が集結していると聞いて力を貸したくてやって来た」

 

 「……人間に見えるけど?」

 

 私の見た目に突っ込んでくる森人。

 

 「私は森人の特徴が出なくてな、良く誤解される……奴隷の問題が起きた当時、私はリンガイルに居た事とこの見た目のおかげで被害を受けなかった」

 

 今考えた適当な言い訳……全て嘘では無いが、私の言い訳を聞く森人達。

 

 「信用できないわね」

 

 そう答える森人。証明も出来ないからな……流石に無理かと諦めかけた。

 

 「町長!?」

 

 「先生!?」

 

 すると後から来た森人達が私を見て叫ぶ。

 

 「知り合いなの?」

 

 信用できないと言った森人が彼らに問いかける。

 

 「お前も話なら知ってるだろ?昔リンガイルをルセリア神王国から守り切った最強の町長だよ!」

 

 「昔私達に魔法を教えてくれた大恩人だぞ!」

 

 そうか……ケインがまだ生きてるんだから年長者の中には当時魔法を教えていた者達が残っていてもおかしくないな。

 

 「なに!?こいつ……この方が?」

 

 「ああ!あの町は町長がいる間奴隷も作らなかったし、今も姿が変わらず生きているんだからハーフなのも間違いないぜ」

 

 「急に辞めて消えてしまったんだけど、町長!どこに行ってたんですか!」

 

 「お久しぶりです!先生!また会えて嬉しいです!」

 

 私に声を上げる森人達、悪いが全員は覚えていない。

 

 「大事な用があってな。数十年ほど町を離れていた、リンガイルを守れたのは皆の力があったからだ。そして教え子達……久しぶりだな、元気そうで何よりだ」

 

 「そうだったんですね……皆!この人は大丈夫だよ!むしろ最強の人が仲間になるんだ!大歓迎だぜ!」

 

 「はい!先生こそお元気そうで嬉しいです!」

 

 私の言葉に大はしゃぎの森人達、それを見て周囲の森人達も納得したのか武器を下ろす。

 

 「申し訳ありません。ただこちらの事情も分かっていただきたいのです」

 

 そう言って一人の森人女性が頭を下げた後、握手を求めてくる。

 

 「いや、謝るのは私の方だ……いきなりここに侵入したのは私だ。この見た目で警戒される事を考えておくべきだった、済まなかったな」

 

 握手に答えて言う。

 

 「私はエルフィ・マルマロウと申します。現在ここに集結している森人達をまとめている者です」

 

 彼女は金髪をポニーテールにした胸の大きな女性だ。

 

 「クレリア・アーティアだ……昔森人達の魔法の教師とリンガイルの町長をしていた、今は特に肩書は無いな」

 

 失敗するかと思われたが私を覚えていた森人達のおかげですんなりと受け入れてもらう事に成功した。

 

 

 

 

 

 

 それから私は家を貰い住む事になった。私を知らなかった者達はかつて私が森人に魔法を教えたのだと知ると態度を改めた。

 

 エルフィが言うには集団戦闘に関する事や町の運営に関する事のアドバイスが欲しいらしい……戦闘はともかく運営はまともに参加していなかったんだが。

 

 それでも出来るだけ覚えている事を教えた。役に立ったかは分からないがエルフィは伊達に森人をまとめている訳では無いようで、私が教えた事から考えを膨らませ色々やっているようだった。

 

 集団戦闘の訓練をしながらエルフィに知っている事を助言しているある日、エルフィが訪ねて来た。

 

 「急に悪いわね」

 

 「構わない」

 

 彼女をソファに座らせて飲み物を用意する、私に対する言葉遣いは普通にしてもらった。

 

 「紅茶で良いか?モー乳もあるぞ?」

 

 「紅茶をお願いするわ」

 

 私は彼女に紅茶を用意する。

 

 「さて、何か用か?」

 

 飲み物を用意し私も対面に座り、彼女に問う。

 

 「ええ、実は食料の見通しが良くないの」

 

 「自給出来ないと言う事か?」

 

 私は彼女に目を向ける。

 

 「ええ、このままでは周囲の森に影響が出てしまう……森が死んでしまうかもしれない」

 

 森の資源を取り尽くしてしまいそうなのか?

 

 「自分達で作ればいい。食料を生産し家畜を育てれば解決する」

 

 「やってはいるけど育てるのは難しいし時間もかかる、とても間に合わないわ」

 

 俯く彼女を見ながら考えているのは巫女達と過ごした時作った農耕魔法だ。

 

 あれなら誰でも使える、更に言えば彼女達は魔法の適性が高い森人だ。教えれば食料問題は解決するだろう。

 

 「よし、私の作った魔法を教えよう」

 

 「まさか……何とかする魔法があるの?」

 

 私は彼女に農耕魔法を教える事にした。

 

 

 

 

 

 

 「……更に出来た農作物の一部を家畜の餌にすれば成長を促進して家畜の卵や乳も良く取れるようになるだろう。これらは私がある村で実際に使って効果を確認している」

 

 農耕魔法の説明をすると彼女は食いついた。使い方や注意点、副次的な効果も説明する。

 

 「……凄いわ、これなら食糧問題が一気に解決出来る」

 

 「この魔法があれば少ない人数で広い畑を維持出来る。魔法資質や適性が高い森人ならなおさらだ」

 

 「貴女は私達の種族に魔法を教えた先生なのよね……どうやってこんなに魔法を極めたの?」

 

 私を見つめてくる彼女。

 

 「まあ色々あってな」

 

 そう言うと触れられたくない事だと思ってくれたのかそれ以上の追及をやめ、顎に手をやって考え始める。 

 

 「今すぐに始めれば十分に間に合う……クレリアさん。申し訳ないけれど行きますね」

 

 そう言って席を立つ。

 

 「頑張れよ。この場所がどうなるかはお前達次第だろうからな」

 

 そう言うと彼女は頷いて出て行った、これで生活基盤は出来たかな?

 

 

 

 

 

 

 それから一年後。

 

 私が教えた農耕魔法によって森人達は周囲の環境を壊さずに安定した食料を得た。

 

 これからどうなるかは分からないがこのままならこの場所に永住出来るかもしれない。

 

 私は一度他の種族の様子を見ようと一度ここを離れる事を伝え、大地人の集結地へ向かう事にした。

 

 

 

 

 

 

 大地人の集結地は山間部だった。

 

 彼らはそこまで排他的になっておらず、私が持っていたロドロフとミシャの印が付いた古い武防具や魔道具を見ると完全とは言えなかったが信用はしてくれた。

 

 「俺達も場所を作ろうと色々してるんだが、どうしても場所がねぇんだ。何とかなんねぇか?」

 

 用意してもらった家に来ているのはガンド・ルブラス。大地人達の元締めをしている男だ。

 

 茶色い短髪のぼさぼさ頭でいかつい顔をしている。

 

 農耕魔法を教えた事で完全に信用は出来なくても私の知識と技術は当てに出来ると考えているようで、悩みを言ってくる。

 

 住む場所か……そうだな……。

 

 「時間をくれ。何とかしてみよう」

 

 「おう、期待してるぜ……アンタの知識と技術は信用できるからな」

 

 そう言ってガンドは家を出て行った、さてどんな物を作ろうかな。

 

 

 

 

 

 

 「クレリアさんよ。どうするつもりなんだ?」

 

 私はガンドを連れて山のふもとにやってきた私は採掘魔法を使って見せる。

 

 「おお!?」

 

 山肌の岩がくり抜かれていく、あっという間に洞窟が出来上がった。

 

 「大地人でも使える様に詠唱を組んである。これで山脈を切り開きアリの巣の様につなげればいくらでも住む事が出来るし、雨風も関係なくなる」

 

 「おおぉ……」

 

 ガンドは洞窟を見て呻いている、話を聞いてるんだろうか。

 

 「すげぇぜ!クレリアさんよ!それは俺達でも使えるんだよな!?」

 

 私に振り向くガンド。

 

 「お前、私の話を聞いていたか?お前達でも使える様に詠唱を組んだと言っただろう」

 

 「これでいくらでも広げられるぜ!」 

 

 そう言って喜ぶガンドだが注意点もある。

 

 「これから注意点を説明する。これを怠ると作業している者が全滅する可能性もある……しっかり聞いて絶対に守れ。いいな?」

 

 「……おう」

 

 そう言うと、「全滅する可能性」に反応したのか真面目な顔になる。聞かないと実際にそうなるかもしれないからな。

 

 それから掘り進める時の注意や空気を通すようにしなければならない事など、注意点をしっかりと伝えた。

 

 「お前……忘れるなよ?」

 

 「仲間の命に係わるっつー事が良く分かった、忘れねぇよ……」

 

 こうして彼ら大地人は住処を山間部や山の中腹、麓に広げ大きくなっていった。

 

 そして一年ほどが過ぎた頃、私は彼らに一時的に別れを告げ獣人達の元に向かった。

 

 

 

 

 

 

 私は以前は狼獣人の集落にしか行っていなかったが、町になった元集落には色々な種類の獣人が居た。

 

 私が集結地に行き手助けをしたいと言うと意見が割れる。

 

 「自分達の為に助けを借りるべき」と言う頭脳派の獣人達と「言いたい事は分かるが他の種族の奴の力など借りたく無い」と言う肉体派の獣人だ、分かるなら賛成してくれ。

 

 そしてまあ……どうなったかと言うと……。

 

 「うらららららぁ!」

 

 「あたらねぇ!?」

 

 「しゃあっ!」

 

 「ふんっ!」

 

 「ふっ!」

 

 「くそっ!」

 

 様々な方向からの攻撃を飛び回り、受けて、弾いて、躱す。

 

 結局力を見せろと言う事になり戦う事になった、こいつらは変わっていない。

 

 最初は一対一で戦っていたのだが私の強さを見た獣人達が「自分とも戦え」と沢山挑んできた為、面倒になった私が「全員まとめてかかって来い」と言った所、私対獣人軍団になった。

 

 「どうした!これだけいて私一人倒せんのか!?」

 

 私も楽しくなり、獣人達を煽る。すると更に獣人の数と勢いが増した。

 

 「なめんなあああぁぁぁぁっ!!」

 

 声を上げた一人の獣人、二足歩行にした熊を引き締めたような姿の男。

 

 獣人達の長である熊の獣人、ベキア・ルトロムが突っ込んでくる。

 

 「来い」

 

 「うぉらああぁぁぁぁ!!」

 

 隙の無い素早く破壊力のある突きを繰り出してくるベキア、私はその腕を土台に逆立ちをしてそのまま回転し、後頭部に膝を入れた。

 

 「っが!うおおおぁぁぁ!」

 

 私のいた場所にもう片方の腕を振るが私は彼を蹴って離れる。

 

 「逃がさねぇぞ!」

 

 着地を狙って他の獣人も殺到してくる。

 

 私は獣人の一人が空中で繰り出してきた蹴りを受けてボールの様に飛んで行き、木の上に着地する。

 

 「何とも無いな」

 

 首をかしげながらそう言うと獣人達が再び飛びかかって来る、それから私と獣人達の戦いは長く続いた。

 

 

 

 

 

 

 「いやぁ完敗だ!認めるしかないじゃないか!」

 

 戦闘以外では意外とまともなベキアが言う。

 

 「認めてくれたようで何よりだ」

 

 今はベキアの家で二人で話をしている、あの後獣人全員が疲労で倒れるまで戦ったのだ。

 

 「……クレリアさん。あんたは自分を森人とのハーフだって言ったけど……」

 

 ベキアは真剣な眼で私を見つめる。

 

 「あの強さはそんなんじゃ説明出来ないな。あんた……一体何者なんだ?」

 

 多少やりすぎたか。

 

 「私は皆と同じこの世界に住む一つの存在だよ。多少違うだけだ」

 

 「はぁ……深くは聞かないよ。その気になれば俺達全員を殺せたはずだしね」

 

 

 

 

 

 

 どこであっても数が集まれば食料の問題は起こるようで、頭脳担当の獣人から食料の補充について知恵を貸して欲しいと言われた。

 

 「……素晴らしい魔法ですな……我々にも使えるのですね?」

 

 獣人達から声が上がる。

 

 「獣人でも使える様に調整している、問題無いはずだ」

 

 彼らに農耕魔法を教えると他の種族同様その効果にすぐに食いついた。

 

 「戦闘が苦手な者達に覚えて貰いましょうか」

 

 「そうですな。戦士達には戦う事に集中して貰いたい、内政は我々が支えなければ」

 

 こうして獣人達にも農耕魔法が広まる事になった。

 

 それから一年と少しかかって彼らの食糧事情が安定すると、私は一時的に離れる事を告げてウルグラーデに帰った。

 

 

 

 

 

 

 各種族の所に約一年ずつ、合計約三年程を過ごして私はウルグラーデに帰って来た。

 

 これから国に至るのか、分裂してしまうのか、消えてしまうのか……どうなるかは分からないが楽しみにしていよう。

 

 彼らに頼んで通貨を統一硬貨のままにしたのは正解だった、国ごとに変わると私が面倒だからな。

 

 私は自分の屋敷に戻りソファに座る。少しゆっくりしたらモー乳販売店に行こう。

 

 それから私は五年程、三種族の町とウルグラーデを往復して過ごした。

 

 

 

 

 

 

 約五年程私が各種族の町とウルグラーデを往復している間に、各種族の町は都市を超えて急速に発展していた。

 

 ある日、私はいつもの様に森人達の都市に来ていた。

 

 周囲の地域には農地や畜産場が広がり各町の道も整備され安全を維持出来るように頑張っているようだ。

 

 更に治安維持と外敵からの防衛の為の治安維持隊と警備隊が作られた。

 

 この辺りの名前はウルグラーデやルセリア神王国と同じになった。

 

 他の二種族も同じ物を作っている。

 

 他の種族が攻めて来る事も三種族達は考えていて、軍や防衛の為の建物も作っているみたいだな。

 

 「こんにちはクレリアさん」

 

 私はやって来たエルフィをソファに誘導する。

 

 「わざわざ来るとは何かあったのか?」

 

 貰った家でモー乳を飲んでいたらエルフィが会いに来た。

 

 「改めてお礼を言いたかったのよ」

 

 紅茶を用意しながら聞く。

 

 「私の暇潰しみたいな物だよ」

 

 「それでもよ……ありがとうございますクレリアさん。私達に知恵と魔法と技術を与えてくれて」

 

 紅茶をエルフィに出し、座った所で彼女は頭を下げた。

 

 「知っている事だけで力になれない分野も多くあったと思うが……その感謝は貰っておこう」

 

 彼女は頭を上げて微笑む。

 

 「私は国を作ろうと思います」

 

 「そうか」

 

 真剣な表情の彼女を見る。

 

 「一緒に名前を考えてくれませんか?」

 

 「私にセンスを期待されても困る」

 

 私はそう言ってモー乳を飲む。

 

 「私もある訳では無いわよ」

 

 エルフィが苦笑いを浮かべた。

 

 その後二人で話し合い、国の中心である世界樹のあるこの都市をユグラドと名付け「森林国家ユグラド」とする事に決まった。

 

 

 

 

 

 

 私は大地人の住処にやって来た。

 

 山間部や山の中腹、ふもとに都市は拡大し、周囲にも大小の町が出来た。周囲の鉱石資源もあり順調に彼らの住処は広がって行った。

 

 治安の維持や防衛のための組織や制度も完成した。農耕魔法によって畑と家畜も数を増やし、要所には防衛の為の砦が作られた。

 

 「これは?」

 

 私はガンドが渡してきた大きい弓の様な物を見る。今いるのは武器を作っている工房だ。

 

 「これは俺達が開発した魔道弓だ」

 

 「ほう……詳しく聞いても良いのか?」

 

 私は弓を眺める。

 

 「クレリア嬢になら構わねぇよ」

 

 ガンドが言うには大地人は魔法資質や適正が低い者が多く、効果的な遠距離攻撃魔法を使える者が少ない。

 

 それを何とかしようと開発したのが魔道武器で、魔道弓と言うらしい。

 

 魔道武器は主に彼らが苦手な遠距離の戦闘に使う物が考えられており、これが第一弾なんだとか。

 

 魔道具の技術を流用して今まで人の手で行っていた引き絞り、放つという動作を僅かな魔力で自動で行う。

 

 自動化のおかげで大型化を可能にし威力と飛距離、時間当たりの発射数が増加している上に魔力が切れない限り肉体的な疲労をかなり減らして撃つ事が出来る。

 

 「矢は手でセットしなきゃならねぇがそれだけだ、その上接近されても体力は残っているから戦える」

 

 そう言って笑うガンド。

 

 「これは凄いな……武器に魔道具の回路を組み込んで魔法を発動する物はあるがそれを動作の自動化に使うか」

 

 聞けば「なるほど」と思うがその発想が出来るかが問題だ、少なくとも私は今まで考えた事が無かった。

 

 「これは戦いを変えそうだな」

 

 弓をガンドに返す。

 

 「ただ、簡単に作れるもんじゃねぇんだ……量が用意出来ない」

 

 彼は弓を眺めている、量産は難しいか。

 

 「今の所、要所にいくつか配備出来れば良いぐらいか?」

 

 「そうだな……魔道弓は部品が摩耗しない限りずっと使える、数の関係で同時には無理だが交代でずっと撃ち続ける事が出来る」

 

 弓を慎重に収納して戻ってくる彼。

 

 「狙うとすりゃあ……前衛じゃなくて後方に控える魔法使いだろうな」

 

 「命中精度は?」

 

 「良くはねぇな。魔法使いの集団に撃ち込んで誰かに当たればいいくらいか……数が居れば誰かに当たんだろ?」

 

 そう言って彼は笑った、面白い物を見せてもらった、私は礼を言うとウルグラーデに帰った。

 

 後日。再び訪れた時に中心の都市をガンドウと名付ける事、国を作るつもりである事とその国に「魔工国ガンドウ」と名付ける事を聞いた。

 

 

 

 

 

 

 久しぶりに私は獣人の都市にやって来た。他の種族の様に農耕や牧畜、治安の維持などの制度が整い各町や村との道と彼ら獣人独特の獣道が作られていた。

 

 獣道とは何だと聞いた所、一見道に見えなくても獣人達はそこを使って行き来する事が出来る道だそうだ。

 

 他の種族にばれないよう移動したり、奇襲したりと色々と使えるらしい。

 

 更に肉体強化魔法も改良を重ねられ、単独での戦闘能力は大きく上がった。

 

 他の種族が彼らと戦うなら相応の装備か人数、効果的な作戦が必要になりそうだ。

 

 「どうかな?皆も大分強くなったよ」

 

 ベキアは私の隣で嬉しそうだ、今私は鍛錬場で戦闘を見ている……鍛錬場で戦う獣人達は確かに良い動きをしている、他の種族とは比べ物にならない。

 

 「油断すると負けるぞ」

 

 そう言うと彼は私を見る。

 

 「あー……油断はしないように言ってはいるけど元々の気質と言うか……中々上手くは行かないよ」

 

 ばつが悪そうな表情をする彼。

 

 「もし大勢や強力な敵と戦う時は頭脳担当の連中と話し合えよ?」

 

 「当然さ、分かってるよ」

 

 彼は胸を張る。

 

 「話し合った事を守る様にも言っておけよ」

 

 「……分かってるよ」

 

 彼は何とも言えない表情になった、頑張れ。

 

 再び訪れた際にいつの間にか都市の一つの名前がカルガになり「獣王国カルガ」と言う国になっていた。

 

 

 

 

 

 

 他二種族の都市もさほど間を置かず建国を宣言して国となる。

 

 こうして世界にはルセリア神王国、森林国家ユグラド、魔工国ガンドウ、獣王国カルガの四国が存在する事になった。

 

 

 




 他の種族の行動が遅いかも知れませんが、実際にそう(同族を集めて身を守る)考えて行動に移せる者は中々居ないと言う事で。

 丁度同じ時期に三種族が国を……と言うのも無理があると思いますが他の種族が集結してると言う噂を聞くなりしてこのままではまずいとそれぞれが危機感を持った……とかそんな感じでどうかよろしくお願いします。


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020

 特に表記が無い場合、主人公の服装はいつものワンピースです。

 この作品の注意事項

・作者の自己満足

・素人の作品

・主人公最強

・ご都合主義

・辻褄が合わないかもしれない設定

・注意事項が増える可能性

 等が含まれます。

 以上をご理解したうえでお読みください。

 読者の皆さんの暇潰しの一助になれば幸いです。








 

 四国が存在するようになったが現在それぞれの国の領土は隣接していない。

 

 噂くらいは各国共に耳にしているかも知れないが、既に四国になっているとはどの国も思っていないかもしれない。

 

 私は三国間を行ったり来たりしていたが、ある日ユグラドに来た私にエルフィがギルドについて聞いてきた。

 

 「ギルドについて知りたいと?」

 

 久しぶりにエルフィに会いに行くとソファに案内され、尋ねられた。

 

 「ええ、私達もギルドを作りたいと思っているの」

 

 「何故私に?」

 

 「貴女は人間の町の町長だったのでしょう?ギルド商会システムについて詳しく知っているかと思って」

 

 確かに知っている、町長時代に聞いたからな。

 

 「頼ってばかりで申し訳ないけれど……」 

 

 「良いぞ、教えよう。私はこの国の行く末が見れればいいからな」

 

 彼女はきょとんとした顔をする。

 

 「貴女って不思議な考え方するわよね?……私達は確かに他の種族より寿命が長いけど……なんていうかもっと遠い未来まで見れるような言い方だわ」

 

 「僅かな時間でも大きく変わる事もある」

 

 そう言うと彼女は笑う。

 

 「実際に国が出来たりしているものね?」

 

 そして私は国の主要な人物を集めて貰い、ギルド商会の説明をした。 

 

 

 

 

 

 

 ギルド説明を終えてユグラドの自宅に帰る途中、子供達が集まって何やらやっているのを見かけた。

 

 何事かと思い覗いてみると地面に多重円が書かれていて、子供達が魔法で小さい石を作りそれに向かって転がしている。

 

 「ちょっといいか?……これは何なんだ?」

 

 「お姉ちゃん知らないの?教えたげる!」

 

 訪ねた少女が元気に教えてくれる。

 

 円の中心程点数が高く、石を複数交互に転がしてより点数が高い方が勝ち……と。

 

 「それでね……!」

 

 相手の石にぶつけて弾いて相手の点数を減らしたりしても良いと、中々面白そうだな。

 

 「私もやって良いか?」

 

 「いいよ!じゃあ私とやろ!」

 

 少女と対戦する事になった。

 

 「転がらない石は駄目だよ?石は三個ね!」

 

 円から離れた所に二人で並ぶ、私は小さい丸い石を三個作った。

 

 「お姉ちゃん凄い!まん丸ー!」

 

 「おおー!」

 

 私が作った滑らかで綺麗な丸い石に驚く少女と周囲の子供達。

 

 「でもお姉ちゃん、そんなに綺麗だと転がり過ぎちゃうかもよー?」

 

 なるほど……石の転がりやすさと投げる力で調節しないといけないのか。

 

 「私はこの石ー」

 

 彼女はでこぼこした形の悪い石を三個作った、それ以上丸く出来ないのか?

 

 「お姉ちゃんお先にどーぞ」

 

 そう言われて石を転がす、石は円の一番外周の左寄りに止まった。

 

 「じゃあ行くよ!」

 

 少女は石を転がす。強めだと思った勢いは石の形によって抑えられ、内側から三番目のやや右寄りに止まる。

 

 「次は上手くやる」

 

 私は石を慎重に転がした、石は真っ直ぐ進み中央の奥側に止まる。

 

 「良し」

 

 周囲から歓声が上がる。

 

 「やるねお姉ちゃん」

 

 彼女はそう言うとさっきよりさらに強めに石を転がす、その石は先ほど私が投げた中央奥の石に当たり彼女の石は中央に残り……当てられた私の石はスムーズに円の外まで転がって行った。

 

 盛り上がる子供達。

 

 「そう言う事か……」

 

 綺麗な丸石では当てられた時耐えられない、相手に当てられるだけの技量がある時は簡単に弾かれてしまう訳だ。

 

 「あ、作った石は変えられないからね?」

 

 そう言って笑う。

 

 「これは厳しいな」

 

 私は中央の彼女の石を狙って投げる……当たったが彼女の石は綺麗な球体ではない。

 

 当たって僅かに動きはしたが円から出す事は出来ず、投げた私の石も内側から三番目の奥側左に止まる。

 

 「これで最後だね」

 

 少女が石を投げる、石は内側二番目のほぼ中央に止まった。

 

 「私の負けか」

 

 負けはしたが面白かった、簡単な勝負だと思ったが奥が深い。

 

 「初めてなのに真ん中に入れるなんてお姉ちゃん凄いね!危なかったよー」

 

 彼女が微笑んで言う。

 

 「面白かったよ、ありがとう」

 

 「私も面白かった!また遊ぼうね!」

 

 私はその場を離れて家に帰った。

 

 

 

 

 

 

 「うーん……」

 

 私が何となくガンドの工房に立ち寄った際に、ガンドが唸っているのを見つけた。

 

 「何を唸っているんだ」

 

 歩み寄りながら声をかける。

 

 「おお?嬢ちゃんか……ちょっと考え事をな」

 

 そう言って彼は工房の椅子に座る。

 

 「魔道武器の事か?」

 

 「そうじゃない……いや、それもだが今は違う」

 

 私は椅子に座って続きを促す。

 

 「人間達のギルド商会ってのをこの国でも作ろうかと思ってよ」

 

 「いい考えだと思うぞ、きっとこの国でも有効だろう」

 

 「だよなぁ……でもよ、詳しい奴が居ないんだよ」

 

  彼が顎に手をやって考え込む。

 

 「私でよければ教えるが」

 

 彼は勢いよく私を見た。

 

 「ほんとか!?……しかしなんでそんな事知ってんだ?」

 

 不思議そうな顔で聞いてくる。

 

 「昔町長をしていた事があってな……その時に覚えた。少し古いかも知れないが基本は今も変わらないと思う」

 

 「クレリア嬢は多芸だな……教えてくれるならありがたい、よろしく頼む」

 

 「すぐにでも教えられるがどうする?」

 

 「頼む」

 

 彼は頭を下げ、皆を呼んだ。

 

 こうして魔工国ガンドウにギルド商会が出来た。

 

 

 

 

 

 

 「所で、魔道弓の試射をしてみないか?」

 

 「どうした、いきなり」

 

 時が経ち、ギルド商会が軌道に乗ったある日。ガンドが私に声をかけて来た。

 

 「他の種族が使うとどうなるのか見て見たくてな、使用感を聞かせて欲しい」

 

 「私では意味が無いと思うが……」

 

 結局興味があった事もあり、試射をする事にした。

 

 

 

 

 

 

 試射場へ移動した私は魔道弓を渡される。

 

 「良いか?魔力は弱く流してくれよ?」

 

 「分かった」

 

 私は魔道弓を持ち射撃位置へ移動する。

 

 「重量はどうだ?」

 

 「……それなりに重いな」

 

 私は片手で持って重さを確かめる。

 

 「……身体強化魔法とか使ってるか?」

 

 「使って無いな」

 

 「……とりあえず撃ってみてくれ」

 

 彼は何やら考えている様子だ。

 

 私はそんな彼から意識を移し、遠くの的に狙いを定めて僅かに魔力を流す。

 

 勝手に弓が引き絞られて射られ、反動で私は後ろに倒れた。

 

 「大丈夫か!?」 

 

 ガンドが近寄ってくる。

 

 私自身は強靭でも体重が軽いままだった。もっとしっかり構えるなり体重を重くするなりしないと反動で倒れる。

 

 「平気だ。それよりもう一射良いか?」

 

 「良いけどよ……」

 

 心配そうな彼を横目で見ながら構える、足を開き体重を少し増やして反動に備える。

 

 魔力を流し射撃する……今度は問題無く撃つ事が出来た。

 

 隣に置いてある矢をセットしては射撃する。放った矢は的には当たるが中心には一本も当たらない……確かに命中精度は良くないな。

 

 「大地人ならば問題無いが重い上に反動が大きい。獣人も使えるだろうが森人や人間では難しいかも知れないな……勿論身体強化魔法抜きでの話だが」

 

 射撃しながら言う。

 

 「そ、そうか」

 

 彼の返事を聞きながらしばらく射撃した後、私は射撃を止めて彼に言う。

 

 「このままでは使用出来ない者達の為に固定する台があると良いんじゃないか?脱着出来るとなお良い……まあ参考程度にな」

 

 「……ふむ、なるほどな」

 

 「命中精度の事は今の所思いつかないな」

 

 魔道弓を弓立に戻す。

 

 「ありがとよお嬢、参考になったぜ」

 

 「それは良かった」

 

 その後、食事を用意して貰ったので食べてから帰った。

 

 

 

 

 

 

 私が久しぶりにカルガで獣人の頭脳担当達と森を見ながらお茶を飲んでいると、ベキアがやってきた。

 

 「やっと見つけたぜクレリア」

 

 「どうしたベキア」

 

 私に歩み寄る彼、頭脳担当達は彼の話の邪魔をする気はないようで黙っている。

 

 「あれ?こいつらと居るから聞いてると思ったが……話してないのか?」

 

 頭脳担当達に言うベキア、彼らの一人がお茶を置く。

 

 「今は休憩していました。飲み終わった時に話そうと思っていたのですが……」

 

 頭脳担当の一人がこちらをちらりと見る。

 

 「飲みながらでも良いぞ?話してくれ」

 

 そう言うとベキアが話し出す。

 

 「なら俺から話そうかな」

 

 彼は近場の岩に座り、頭脳担当達を見ながら言う。

 

 「こいつらが人間達のギルド商会システムをこの国に導入したいと言って来てな」

 

 彼は視線を私に戻す。

 

 「クレリアは知ってるんだろ?こいつらに話はしてたみたいじゃないか」

 

 確かにギルド商会について彼らに話した事はある、覚えてたんだな。

 

 「それで、導入するのか?」

 

 彼は腕を組む。

 

 「導入した方が良いとこいつらが言うからな……俺以外だったらやらなかったかもしれないが、その方が良いのなら俺は導入しようと思ってる」

 

 「上手く行くと良いな」

 

 彼は不敵な笑いを浮かべる。

 

 「行かせるさ。無理やりにでもな……頭脳担当達の事は信じてるし、締める所は締めないと国としてやっていけない事が分かったしな」

 

 「治安維持隊なんかは獣人特有の考え方ではやれないからな」

 

 私が言うと彼は頷く。

 

 「その辺は厳選してる。後は子供達の教育でも抑える時は抑える事をしっかり教えるつもりだよ」

 

 「獣の本能は厄介だな」

 

 「悪い事ばかりじゃ無いんだけどな」

 

 ベキアだけでなく頭脳担当達も苦笑いしている。

 

 そのまま彼らにギルド商会の事を教えてお茶の時間は終わった。

 

 

 

 

 

 

 ギルド商会の説明を終えてしばらくの時が経ち、私は都市内の広場に居るのだが……。

 

 「お姉ちゃん、お姉ちゃん」

 

 「遊ぼー」

 

 「眠いー」

 

 「あったかーい」

 

 私は獣人の子供に群がられて埋もれていた。

 

 通りがかった時に子供が泣いていたので魔法であやしたら懐かれてしまった。

 

 広場の子供達がまとわりついてくる。子供の柔らかい肌と体毛がすべすべ、ふわふわする。

 

 「うーむ……」

 

 広場に寝ころび子獣人が群がっている状態のまま唸る私。無理やりどけるのも可哀そうだしな……。

 

 基本的に悪意が無い子供に私は甘いようだ、勿論必要な時は殺すが。

 

 子供の相手は得意では無いがやった事が無い訳でも無い。

 

 この子達の気が済むまでこうしていようか。

 

 「あらあら、大丈夫?お嬢ちゃん」

 

 寝転がっている私の視界に獣人女性が覗き込んでくる。

 

 「大丈夫だ。嫌と言う訳じゃない」

 

 「それならいいけど……あら?貴女獣人じゃないわね?」

 

 彼女は少し探るような目を向けてくる。

 

 「ああ、私は森人のハーフでベキアの知り合いだ。国を作る協力をしている……不安なら彼を呼んでくると良い」

 

 そう言うと彼女は少し考えた後言う。

 

 「そう、そこまで言うなら平気かしら……ゆっくりしていってね」

 

 そう言って微笑んで去って行った、信じてくれたようで良かった。

 

 こうしてモフモフに群がられて時間をつぶしていると頭の方から声がする。

 

 「何だよやっぱりクレリアじゃないか……」

 

 ベキアが覗き込んで来た。

 

 「どうしたベキア?」

 

 「獣人じゃない俺の知り合いって言う奴が子供のそばに居るから来て欲しいって言われたんだよ」

 

 駄目だったようだ、本当に彼に言いに行ったんだな。

 

 「クレリアだと思ったけどな。もしもって事もあるし」

 

 私のそばでしゃがむ彼。

 

 「その考え方は悪くない」

 

 私がそう言うと子供達をみる彼、私も目を向けると群がったまま皆眠っていた。

 

 「俺は国を強くするよ、こいつらを守るんだ」

 

 「頑張るんだな、初代国王」

 

 「やめろよ」

 

 彼は気恥ずかしそうに笑って帰って行った。

 

 私は子供達が目覚めるまで寝息を聞きながら空を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 ウルグラーデにある自宅で風呂の湯舟にうつぶせに浮かびながら、私はふと頭にある知識の事を考えた。

 

 後から身に付けた知識と混ざり合ってしまっているが、聞き覚えが無い物が元からあった知識なので判別は出来る。

 

 例を挙げると「科学」と言う言葉などだな。これだけでは何の事だか全く分からない。

 

 これだと名前が同じでも知識にある物と同じか分からない。この辺りは諦めているが……。

 

 いつかは知識にある事が実際に私の前に現れるかも知れない……もしかしたら私自身が発見するかも知れないが。

 

 少し楽しみだが……期待しすぎないようにしないとな。

 

 湯舟から上がり体を拭き魔法で水気を飛ばす、今日は家で食事を作ろう。

 

 

 




 どの国も似たような発展ですが、短い時間で国としてまとまるために人間の国で使われている使えそうな物は使った結果、と言う理由で何とかなりますかね?駄目でも見逃してください。

 ユグラドの子供たちの遊びが分かりにくかったらすみません、カーリングを石を転がす簡単な物にした感じですかね、ルールは自分で考えた物ですが。



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021-01

 現在の各国の文化と技術をしっかりと考えていないのでおかしい所があるかもしれません。

 この作品の注意事項

・作者の自己満足

・素人の作品

・主人公最強

・ご都合主義

・辻褄が合わないかもしれない設定

・注意事項が増える可能性

 等が含まれます。

 以上をご理解したうえでお読みください。

 読者の皆さんの暇潰しの一助になれば幸いです。







 

 各新興国にギルド商会が出来てから四年が経った。

 

 森林国家ユグラド、魔工国ガンドウ、獣王国カルガの三国は今も成長を続けている。

 

 三国はもう国として完全に形になった。

 

 これからは領地を広げるのかこのまま維持するのかは分からないが、もう私が何かする事は無くなるだろう。

 

 そう思いながら休憩がてら首都であるカルガの中を散策していると、大通りで並んだ大勢の獣人が都市の外へと進んで行くのが見えた。

 

 あれだけの数を集めるとは、何かするのか?

 

 興味を持った私はベキアの所に向かい話を聞いてみる事にした。

 

 

 

 

 

 

 「それは開拓部隊の準備だよ」

 

 ベキアは私の正面のソファに座って言う。

 

 「森を切り開いて村にするのか?」

 

 「ああ、そろそろ領地を広げようと思ってね」

 

 「簡単に出来るのか?」

 

 彼は考えるそぶりを見せる。

 

 「簡単ではないかな。森の奥を切り開いて安全に過ごせて自給出来るだけの拠点を作るのは意外と大変だよ」 

 

 「それまでは野宿の様な物か」

 

 「獣人は村の場所を稀に変えるから、慣れてはいるよ……きっと周囲の資源を取り尽くさないように自然と習慣になって行ったんだと俺は思ってる」

 

 彼は大きい木のコップで水を飲む、私も用意された紅茶を飲んだ。

 

 「食料を自分達で作る事で移動する必要も無くなった。ギルド商会の事もある……クレリアには返しきれない恩を感じてる」

 

 彼は私を見る。

 

 「この国に興味がなければ見捨てていたかもな」

 

 「理由はどうであっても俺達は実際に救われた」

 

 そう言った彼に私は僅かに笑う。

 

 「好きに思っていればいい」

 

 「そうさせてもらうよ」

 

 そう言って彼は笑った……だが私はその気にならなければ本当に見捨てただろう。

 

 「所で……その開拓、私も行って良いか?」

 

 「それは構わないけどな……」

 

 言葉に詰まる。

 

 「何かあるのか?」

 

 「散々世話になって開拓まで手伝って貰うのはな……俺達の気持ちの問題があるんだ」

 

 彼にしては珍しく言い淀んでいるな。

 

 「何が言いたいんだ?」

 

 「出来るだけ助けるのは最低限にして欲しいんだ」

 

 「私がやれば早いぞ?」

 

 「だから俺達の気持ちの問題なのさ、これ以上借りを増やしたくないんだよ」

 

 両手を組み、私を見つめる。

 

 「……分かった出来るだけついて行くだけにしよう」

 

 「ありがとう、頼むよ」

 

 「場合によっては気にせず手を出すからな?」

 

 そう言うと彼は頷いた。

 

 私がこうやって提案を聞いて動くのは彼らを気に入っている証拠かもしれない。

 

 気に入らない者の言う事など私は聞かないからな。

 

 それに誰かの頼みを聞いて助けるのも中々楽しいと感じているのも確かだ。

 

 こうして私は獣王国カルガの開拓部隊に、彼らの仕事を見届けると言う名目でついて行く事になった。

 

 

 

 

 

 

 部隊は村を作る為の防衛や耕作など目的毎に分かれていて、それらをまとめて一つの開拓部隊として送っていると聞いた。

 

 更に交代でずっと作業をする事で無防備になる時間を無くし、拠点の素早い構築を目指すらしい。

 

 私は大まかに聞いた内容を思い出しながら部隊の後方で歩いていた。

 

 馬車などは道が悪すぎて入れない、その代わりマジックボックスを覚えている者が集められている。

 

 マジックボックス持ちはまだまだ貴重だ、容量が大きければその重要性は一気に上がる、どの場所でも優遇されるだろう。

 

 恐らく防御の硬い部隊の中央付近で守られているだろう。ある程度安全を確保して本国との行き来が可能になるまでは現地でどうにかしなければならない。

 

 様々な物資を保管出来る彼らの存在は部隊の生命線ともいえる。

 

 そして私は周囲からどうしていいか分からないような目が向けられている。

 

 わざわざ名を広めている訳では無いから国内にも私を知らない者は大勢いる、獣人では無い……けれど部隊の上の者は特に何も言わない。

 

 私がどういった立ち位置なのか分からないのかもしれないな。

 

 「少し良いか?」

 

 私は移動して部隊の隊長に声をかける。流石に各部隊の隊長などのまとめ役にはベキアが私の同行を認めていると伝えられている。

 

 「何でしょうか?」

 

 「目的地に到着する迄の時間はどれ位かかるか分かるか?」 

 

 隊長は少し考える仕草をした後答えてくれた。

 

 「上手く行けば一週間ほどだと思います」

 

 「上手く行けばか」

 

 「はい。道中の下調べはしていますが、魔物の領域は何があるかわかりませんから」

 

 彼は真面目な声で言う、流石に良い人材を集めているな。

 

 

 

 

 

 

 初日は小型の獣などが来た程度で終わった。隊はそれぞれに野営をして交代で見張りをする、全員に負担が分散するように考えているようだな。

 

 私も割り振られた野営で食事をする。しかし道中は木が無く、馬車は無理でも人は通れる様になっていたな。

 

 その事を訪ねて見ると、前々から下見を行い部隊を送る為に軽く木を伐採して迷う事が無いように経路を作っていたようだ。

 

 本格的な整地は拠点を作って安定してからすると言う。

 

 それも含めるとかなり以前からの計画なのか。

 

 周囲では隊員が作業をこなしている。ベキアも良くここまで練度を上げたな、暴走や勝手な行動をする気配が殆ど無い。

 

 開拓部隊だから特に優秀なのだとは思う。

 

 魔物の縄張りの真っただ中でそんな事をしたら被害が大きそうだしな、人員には気を遣うだろう。

 

 「そろそろお休みください」

 

 私のそばに歩み寄りながら隊長が促してくる、ここは大人しく寝た振りをしておくかな。

 

 「分かった、休ませてもらうよ」

 

 焚火の周囲に大き目の仮設テントが並ぶ。

 

 私は女性扱いなので女性用の物に入る、薄いベッドロールの上に寝転び渡されていたマントをかける。

 

 寝る事が無い私は目を閉じ、周囲の気配を探りながら時間をつぶした。

 

 一度魔物が近づいて来たのを感じたがすぐに離れて行った。

 

 

 

 

 

 

 明け方に私は魔物が群れで向かって来ているのを感じた。

 

 まだ遠いが誰も気が付かないようならベキアには悪いが教えるか。

 

 「魔物だ!戦闘準備!」

 

 魔物がだいぶ野営地に迫った時、甲高い音と叫ぶ声が聞こえた。

 

 周囲で寝ていた女性隊員が飛び起き隣に置いてある装備を付け始める。

 

 取り合えず様子を見に行こうと外に出ようとすると、隊員に止められてしまった。

 

 「外に出ても良いけど焚火の辺りから離れないでね!」

 

 そう言って飛び出していく隊員達、外に出ると防衛や治療の準備など皆忙しそうに動いている。

 

 何かしても良いが……出来るだけ手を貸さない約束だしな。

 

 程なく魔物は討伐された。魔物達の死体は部隊の補給物資になり治療と食事をした後、野営地を解体して移動が始まる。

 

 

 

 

 

 

 最後尾を移動中、頭上に果実が生っているのを見つけた。

 

 風魔法で果実を切って落とす。

 

 落ちてくる果実を水魔法で受け止めて洗い、風魔法で皮をむく。

 

 「……どうした?食べるか?」

 

 気が付けば隣にいる隊員が私を見ていた、私は風魔法で切り分けようとした。

 

 「……いえ、貴女が食べて下さい」

 

 「そうか」

 

 私は切り分けるのを止めて果実に噛みついた。

 

 酸っぱいが甘みもある、みずみずしくて爽やかな味と言えるかも知れない。私が知らない美味しい物もまだ森にあるんだろうな。

 

 

 

 

 

 

 二日目、三日目は多少の魔物の邪魔はあったが特に問題無く進んだ。

 

 そして四日目、昼にはまだ少しある時間に森の木々の上に何かが集まって来ているのを感じた。

 

 上を取られると不利だ、これは少し言っておくか。

 

 「ちょっといいか?」

 

 私は隊長の所へ行き声をかける。

 

 「何でしょうか?」

 

 「森の木の上に何かが集まって来ている、大型の生き物では無いが数がそれなりに居るぞ」

 

 そう言うと隊長の顔が引き締まった。すぐに各隊に連絡が行き警戒状態に移行し彼らも集まっていた存在を発見した。

 

 小型の魔物で、長い手足と尻尾で森の中を移動し油断している獲物に上から集団で襲い掛かるようだ。

 

 隊が警戒し始めると諦めたのか散って行くのを感じる。

 

 「もう大丈夫だ、奴らは散って行った」 

 

 「ありがとうございますクレリアさん」

 

 隊長が礼を言ってくる。

 

 「よく私が言った事をすぐ信じて行動に移したな?」

 

 彼の方を見ると彼も私を見た。

 

 「上からもしもあなたが何かを警告した時は絶対に信じて即行動するように言われています……その言葉は間違っていませんでした」

 

 そう言って一礼し去って行った、私が必ず口を出すと読んでいたのかな。

 

 その後、散発的に襲い掛かってくる魔物達を物資にしながら進み、目的地に到着したのは出発してから九日目の昼前だった。

 

 途中から時間は気にしていなかったが予定より遅いな。

 

 

 

 

 

 

 到着した開拓部隊は即座にそれぞれの行動を始めたようだ、詳しく聞いていないがみんな忙しく動き回っている。

 

 私は特に何もせず予定地の中をうろついていたが、声がかかる。

 

 「すいませんが到着したとはいえ周囲の安全は保障できません。部隊の中心にいて下さい」

 

 一人の長身の女性隊員が私に話しかけてくる。それに答える前に両手で箱を抱えた短身の女性隊員が言う。

 

 「彼女は大丈夫だ、魔物なんかに負けるような人じゃない」

 

 今度から大勢に紛れ込む時は全員に通達して貰おうかな、お互いに手間だ。

 

 「しかし危険では?」

 

 長身女性隊員が短身女性隊員に言う。

 

 「彼女は例の戦いの人だぞ」

 

 「えっ?彼女が?」

 

 長身女性隊員が私を見る。

 

 「例の戦いというと、戦士達との集団戦の事か?」 

 

 私が聞くと短身女性隊員が私の方を向いて言う。

 

 「はい。私は見ていました……あの時の貴女のとてつもない強さは今もはっきりと覚えています」

 

 「失礼しました、ご自由にどうぞ」

 

 長身女性隊員がそう言いながら軽く頭を下げ、去っていく。 

 

 「気を付けてな」

 

 「はい。そちらもお気を付けて」

 

 私の言葉に返して短身女性隊員は目礼をし、仕事に戻って行く。

 

 その後うろついていたが特に興味を引くような物も無く、私は結局焚火の前で座ったまま動き回る隊員達を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 仮設の拠点を作っても安全には程遠い。

 

 ここからは交代しながら昼夜問わず拠点の構築、周囲の安全確保、樹木の伐採と資材の確保、農地の作成など多方面にやるべき事は多いらしく、まだまだこれからだという事を聞いた。

 

 到着した日の夜。交代要員はすでに就寝し、あちこちに焚火と松明が用意され、場所によっては明かりの魔法もかかっている。

 

 昼間の内に広げた土地は僅かだったがぽっかり空いた空から差し込む月明りが周囲を照らしている。

 

 木々を伐採して月明りが届く場所を増やせればそれだけでもかなり違いそうだ。

 

 周囲からは作業の音に混じって何かの鳴き声らしき様々な音が聞こえる。

 

 私は夜の見張りに入れてもらい周囲の気配を探りながら魔法を使い手元で色々とやっていた。

 

 水球を出したり凍らせたり、炎で文字を書いたり、土で色々な物を作ってみたり、風で葉っぱを自在に動かしたり……遊びや暇潰しの様に見えても行う内容の難易度を上げれば魔法の訓練になる。

 

 水氷土火風が交じりあった球体を作り出してみる。これが一番難易度が高いかも知れない、それそれの干渉を防ぎながら完璧に制御しないと崩壊する。

 

 ……ん?

 

 曇って来たと思えば僅かに雨が降って来た。

 

 私は雨の日があまり好きでは無いから雨が降ると大体家に引っ込むのだが……今はそんな事を言っていられない場所だからな。

 

 このぐらいなら焚火は消えないだろう。

 

 私は自分の体を雨から守りながら魔法球で時間を潰す。

 

 途中で通りかかった隊員が驚いたような表情でこちらを見ていた。

 

 

 

 

 

 

 夜明け前に雨は上がった。

 

 日が昇り始めた辺りで魔法球を消し、交代の隊員が起きて来るのを待つ。

 

 曇り空で日が昇っても少し暗いな。

 

 交代の時間が近づくと交代する隊員が作業を中断して集まった。

 

 警備だけは交代の穴を作らないため直接交代要員が向かって交代する。

 

 私は集まって来た一人に声をかける。

 

 「どの担当か知らないが上手く行きそうか?」

 

 声をかけられた優し気な隊員の男は私のそばに近寄って答える。

 

 「僕は建築担当の一人だよ。魔法や魔道具があってもすぐには出来ないね……ただ問題がある訳じゃないからこのままなら予定通りに完成すると思うよ」

 

 「そうか、それは良かった」

 

 「君は獣人では無いよね?どうして参加したんだい?」

 

 そう聞いてくる、特に悪い感情がある訳ではなさそうだ。

 

 「ベキアの……国王の知り合いでな。この開拓が上手く行くように見届ける役目を頼まれてな」

 

 実際は私が行きたいと言って用意された立場だが。

 

 「国王の……道理で隊長達が何も言わない訳だ」

 

 そう言って笑う。

 

 話しているうちに交代要員が揃ってやって来た。

 

 彼らはこれから食事をしたり風呂に……風呂はあるのか?まあ体を拭いたりして寝るのだろう。

 

 私も入りたいし……風呂を作ろうか……うん、やはり風呂は欲しい。

 

 無ければ作ろう。

 

 

 

 

 

 

 開拓部隊の大隊長……ここでの最高指揮官に許可は貰った。

 

 まずは寝た方がいいと言われ、昼間に魔法で作ると周りが騒ぎそうだという理由もあり夜を待つ事にした。

 

 テントに行き風呂場の間取りを考えながら夜を待ち現在に至る。

 

 場所は仮設食堂の隣だ、そばに川が流れていて排水に便利だから決めた。

 

 まずは魔法で石の大き目な建物を作り中心を壁で分割して男女の入り口を作る。

 

 中心を分割している壁を中心に線対象になる様に脱衣所を作り、同じように浴場に浴槽と洗い場を作る。

 

 仮設の風呂場だしこれ位でいいか……。

 

 それなりの出来に納得した私は、マジックボックスから魔力保存用の魔道具とお湯を出す魔道具を取り出して埋め込み管理室を作った。

 

 そこから水路を男女の浴槽につなぐ、人数が居るから浴槽は大きく作った。

 

 洗い場の水道に通すお湯も同じように魔道具を配置して最後は浴槽に合流させる、浴槽からあふれたお湯と洗い場で使ったお湯は排水溝から川に排水する。

 

 上手く行ってるだろうか?

 

 魔力を補充し魔道具を作動させて女湯の方に行くと既にお湯が出て来ている、湯温も良い感じだな。

 

 洗い場の水道を開けると手元にしっかりお湯が出て来る……そうだ、桶も用意しないとな。

 

 すぐに木材で適当な数の桶を作り浴場の入り口近くに積み上げた。

 

 石鹸もある程度は用意しておいてやろう。あくまで私が入るためのついでだが、無くなる前に本国と流通が出来る様になれば取り寄せられるだろう。

 

 男湯の方も一通り確認して問題が無い事を確認した私は、お湯が満ちるのを待ってしばし風呂を楽しんだ。

 

 その後大隊長に浴場を作った事と時折魔力の補充が必要な事、入る少し前にお湯を出す魔道具を作動させる必要がある事など必要な事を伝え、夜の見張りに戻った。

 

 

 

 

 

 

 翌日。浴場が出来た事に対する反響は大きかった、特に女性隊員が大喜びした。

 

 誰が作ったのかと質問もあったが大隊長は何も言わなかった。

 

 一部の隊員は私の方を見ていたが……知らんな。私が風呂に入りたかったんだ。

 

 風呂に入れるようになったみんなは身体的にも精神的にも負担が減ったように見える、実際に当初の予定よりある程度早く作業が進んでいった。

 

 開拓で一番の難所は、開拓し始めてから拠点が完成するまでの間だと思っているが……これからは少しずつ楽になっていくのだろうか?

 

 それから時折地上の魔物と、極稀に空の魔物の襲撃があったが、大きな問題は起こる事は無く拠点は村と言って良い状態に作り上げられた。

 

 

 

 

 

 

 拠点が村として完成し、昼夜問わず作業をする事が無くなってから三日間休養を取った。

 

 人員の余裕が出来たのでこれからは本国に向かう街道の整備に取り掛かるらしい。

 

 「しかし、ここまで来るのに何日かかった?それだけの距離を整地するのはかなりかかるのでは無いか?」

 

 整備開始の日の朝、私は近くに居た部隊の女性隊長と話をしていた。

 

 「間違いなく時間がかかる作業ではありますが、こちらからは全体の半分以下で済むはずですよ」

 

 「何故だ?」

 

 問いかける私を見ながら彼女は説明する。

 

 「出発時に街道整備をしていたのを見ませんでしたか?」

 

 まったく気にしていなかった、していたか?

 

 「見ていないな。忘れていると言う事は無いと思いたいが」

 

 「そうでしたか。実は私達開拓部隊が出発するより前から本国側からも街道整備をしているんです」

 

 「……なるほど、言いたい事が分かった」

 

 開拓した村側と本国側から道を作っていってつなげる訳だ、これなら村側は半分以下で済む。

 

 「まあそういった方法を取っているので、こちらの負担は半分以下になる訳です」

 

 そう言って笑い彼女は続けた。

 

 「更に言うと道を作る場所は我々が移動してきた道なので一から整備する訳ではありませんから」

 

 「開拓は大変なんだな」

 

 「それでも国を大きくするにはやらなければいけませんからね」

 

 彼女はクスリと笑ってそう言うと「もう行かなくては」と言って去って行った。

 

 私は魔法なりこの体の力なりで簡単に整地して魔法で家を建てるが、一般的な開拓がここまで手間のかかる物だとは知らなかった。

 

 私が魔法を使って村を作った時、それを見ていた巫女達が驚いていた理由が今分かった。

 

 これだけの手間と時間がかかる開拓をあっという間に、それも一人でやれば驚きもする。

 

 

 

 

 

 

 私もついて行き街道整備を見物していたのだが、地面をひたすらに固めて平らにして行くという単純な物だった。

 

 しかしこれはもどかしい。

 

 魔法で一気に平らにして石の道でも作ればいいと思う。

 

 出来るだけ見守る事にしよう、周囲の安全確保でもしようか。

 

 気配だけは探っておこう。

 

 身体強化と地面を平らにする作業は相性がいいのか、石や岩を道の外に放り投げ、木の根などを引き抜いて、でこぼこだった道を順調にならして行く。

 

 だが、いくら距離が半分以下で順調でも一日の大半は食事や睡眠などに使う事になる。

 

 それに作業中の警備と野営地の警備や維持に人数を取られて作業出来る者が思ったより少ないのも原因か。

 

 更に整備が進めば野営地も移動させなければいけないしな。

 

 私の様に食事も睡眠も休憩もいらないのなら楽なんだが、獣人達には不可能だろう。

 

 本国側は早いだろうからそちらに期待だな。

 

 

 

 

 

 

 最終的に本国側の整備部隊に合流するまで天候や魔物の妨害もあり一か月近くの時間がかかった。

 

 私はその時点で開拓部隊と別れてカルガに戻ったが、まだ魔物の不意打ちを防ぐために道沿いの木をある程度切り倒したり、魔物を追い払ったりとやる事はあるらしい。

 

 帰って来た私は開拓が上手く行った事を伝えるためにベキアの元に向かう。

 

 「どうだった?開拓は」

 

 「中々楽しかったぞ。目標を持ち一生懸命に動く生物を観察するのは面白い」

 

 案内されたソファに座り笑みを浮かべる。

 

 「……それは良かったけど……上手く行ったんだよね?」

 

 真剣な様子で聞いてくる。

 

 彼の元に詳しい報告が行くにはもう少し時間がかかるのだろう。

 

 「問題無く開拓は終わった。犠牲も無く村としても問題無いだろう」

 

 「そうか。よかった……」

 

 ほっとした様子のベキア……心配になる気持ちは分かる。彼らも弱くは無いがそれでも脆い事には変わりないからな。

 

 しばらく雑談した後、また留守にする事を伝えてこの国を後にした。

 

 

 




 開拓にかかっている時間はこんなものだろうかと適当に決めています、知識のある方からすると早すぎたり遅すぎたり簡単すぎたりするかも知れませんが、魔法や魔道具があるので色々違うと言う事で。

天候の描写を忘れていました、最初は雪とか降らせてたはずなのに忘れてしまうとは、何も書いて無い場合基本的に晴れの日と言う事でお願いします。







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021-02

 名前はすでにある物を一文字変えたり入れ替えたりした方が楽ですね。

 この作品の注意事項

・作者の自己満足

・素人の作品

・主人公最強

・ご都合主義

・辻褄が合わないかもしれない設定

・注意事項が増える可能性

 等が含まれます。

 以上をご理解したうえでお読みください。

 読者の皆さんの暇潰しの一助になれば幸いです。








 

 獣王国カルガを後にした私は、魔工国ガンドウの町の一つを訪れた。

 

 そこで私は山肌に開いた居住区と思われる洞窟から大量の水が流れ出し、町を水浸しにしているのを目撃した。

 

 周囲では大地人達が慌ただしく動いている。

 

 私は大地人の一人に近づいて声をかけた。

 

 「水脈でも掘り抜いたのか?」

 

 「あん?……おう。町の拡大の為に掘っていたんだが地下水脈をぶち抜いちまったらしい、幸い犠牲者は出なかったが見た通りの状態だぜ」

 

 彼は水をせき止める壁を作りながら言う。

 

 「どうするんだこれは」

 

 「どうするっつってもな……もう埋められないしこのまま水源にするしかねえかもな」

 

 こちらを見ずに彼は作業を続ける。

 

 「このまま壁で囲って水路にでもするのか?」

 

 「取り合えず周りに水が行かねぇようにしてるだけだ。その後魔法で地面を掘って水路にするんじゃねぇかなぁ?」

 

 「そうか、気を付けてな」

 

 「おう」

 

 話を終えて首都であるガンドウへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 街道を歩きガンドウへ着いた私は国王であるガンドの工房へやって来た。

 

 ガンドは居なかったが、彼の弟子が工房で作業している。

 

 「あれ、お嬢。今日はガンドさんはいねぇぞ?」

 

 弟子の一人が私に気が付いて声をかけてくる。

 

 「特に用がある訳じゃない、何となく来ただけだ」

 

 「そうか。お嬢なら自由にしていいと言われてる、ゆっくりしてってくれ」

 

 弟子達は私と面識があるので特に気にせずにそう言うと作業に戻って行った。

 

 ゆっくりと言われたが、炉の熱やハンマーの音が響く場所は落ち着ける場所とは言えないだろう。

 

 工房内を見て回るが目新しい物は無いな、魔道武器は何処かに厳重に保管してあるだろう。

 

 いくら親しくても国の機密は教えてはくれないだろう。

 

 そう考えると魔道弓を見せて使わせてくれたのはかなり信用されている方だと思う。

 

 「邪魔したな、外を回ってくる」

 

 「おぅ、また来ると良い」

 

 近くに居た弟子の一人に一声かけて外に出る。

 

 やっぱりあの中は暑いな、外が涼しく感じる。

 

 遠くに見える山肌に畑が見える。この場所の環境にあった物を栽培しているからこの国の大地人達は他の国とは食べている物が多少違う。

 

 森人と獣人は環境が似ているが食べ物の好みが違うので育てる作物に差が出ている、特に獣人は大半は肉が好きだから畜産が大人気だ。

 

 しかし……食べ比べたが私は魔物の方が美味しく感じる。

 

 街中を歩いていると見覚えのある女性大地人が居た。

 

 国の運営陣の一人だった気がする。

 

 「あ、クレリアさん良い所に来てくれました」

 

 彼女が私を見つけて呼ぶ、私は彼女の元に歩いて行った。

 

 「問題でも起きたか?」

 

 そう言うと彼女は首を横に振り話し始めた。

 

 「いいえ。問題では無いのですが……今、畑で作物を育てていますよね」

 

 「そうだな」

 

 私が教えた事だしな。

 

 「……その方法を使って果樹を育てて、果物を収穫出来ないかと考えていまして」

 

 「ふむ……」

 

 「クレリアさん?」

 

 声を上げた私に首をかしげながら言ってくる彼女。

 

 「いや。なんでもない……しかし果樹か……恐らく問題無いと思う」

 

 果樹の事をすっかり忘れていた私は誤魔化す事にした。

 

 他の国にも教えておこう。

 

 「増やしすぎても駄目にするだけだが……大地人は果物が主食では無いだろう?」

 

 そう言うと彼女は苦笑いする。

 

 「実はですね……大半の大地人はジャカイモなどが好みなのですが、中には果物が好物な者も居てですね……」

 

 「好物を用意してやりたいと言う事か?」

 

 そう言うと彼女は恥ずかしそうに言う。

 

 「それもですが……その、私もその中の一人でして……」

 

 「果物好きと言う事か」

 

 「はい……」

 

 なるほど、自分の為にも実現したい訳だ。

 

 気にする事は無いのに、食の種類が増えるのは良い事だ。

 

 「それでですね。クレリアさんならこの場所でも育つ果物の木をご存じではないかと思いまして」

 

 「食料の種類が増えるのは良い事だ、ここの環境でも育つ果樹を教えよう」

 

 「ありがとうございます!」

 

 嬉しいのか声が少し大きくなる、声を上げた後周りを気にして顔を赤くする。

 

 「よし、ガンドの所に行って許可を貰いに行くか」

 

 「はい!」

 

 こうしてガンドと会い許可を得た彼女はみんなと一緒に私から果樹についての話を聞き、果物が好きな仲間と果樹園作りに奮闘する事になった。

 

 後日、他の国に行った時に果樹園の事を教えておいた。

 

 

 

 

 

 

 ある日私は首都ユグラドに訪れた。

 

 町に入る少し前から激しい雷雨に見舞われ、私は風雨を遮断して汚れない様に浮かんで移動している。

 

 すぐにユグラドの自宅に駆け込み風呂に入って引きこもった、激しい雨と雷の音が聞こえる。

 

 いっその事魔法で雲を吹き飛ばそうかと考えていた時、今までとは比べ物にならないぐらいの轟音がした。

 

 近くに落ちたな。

 

 どこに落ちたかは分からないがこの雨なら火事にはならないだろう。

 

 そう思いながら暖めたモー乳を飲みながら雨が上がるのを待っていると、風雨の音に紛れて家の扉を叩く音と声が聞こえた。

 

 「クレリアさん!いませんか!?クレリアさん!」

 

 私はのそりと立ち上がり扉の方に向かう。

 

 「まだ帰っていないのかしら……一体どうすれば……」

 

 「何だこんな時に……」

 

 扉を開けると風と雨が室内に入ろうとするが、全て遮断する。

 

 「クレリアさん!良かった……神木が……世界樹が落雷で傷を……!」

 

 落雷……雷魔法を作ってみよう。

 

 必死に話すエルフィを見ながら私はそんな事を考えていた。

 

 「どうにかできませんか!?このままでは世界樹が死んでしまいます!」

 

 あの木が雷程度でどうにかなるだろうか?一応雷雨が終わったら見に行くか。

 

 「あれだけの木だ、簡単に死にはしないだろう」

 

 「しかし表面が大きく裂けているのです!」

 

 今までにだって落雷くらいあっただろうに……初めて雷が落ちたのか?

 

 「落ち着け、今までもあった事だろう?」

 

 「確かにありましたがあれ程の傷を負った事は無かったのです……」

 

 暗い表情で言うエルフィ。

 

 「この雷雨が収まったら見に行く、それまで大人しくしていろ」

 

 「でもっ……」

 

 面倒になった私は彼女を眠らせた……ソファに寝かせておこう。

 

 モー乳が冷めてしまった、私はモー乳を暖めなおし飲み始めた。

 

 その後一時間半ほどで雷雨はおさまり、雲の切れ目から光が差し込んで来た。

 

 約束通り世界樹の様子を見に行くか。

 

 

 

 

 

 

 足が汚れるので浮かびながら世界樹の前まで移動し、裂けた樹皮の状態を確認する。

 

 ……やっぱり問題無いな。ただの樹なら真っ二つだったかもしれないがこの大きさの樹がこの程度で死ぬとは思えない。

 

 「クレリアさん!」

 

 世界樹の診断を終えてそのまま枝に座っていると下にエルフィが走って来た。

 

 「いま木の状態を見ていた所だ、やはり問題無かったぞ」

 

 「え?でもあんなに裂けているのに……」

 

 戸惑う彼女、状態をしっかり見れば納得するだろう。

 

 「エルフィ、ここまで来れるか?」

 

 「え?は、はい……あまり早くは飛べませんが」

 

 そう言うと彼女は浮かび私の元までやって来る。

 

 「見てみろ」

 

 私は裂け目を彼女に確認させる。

 

 「あ……」

 

 声を洩らす彼女に言う。

 

 「広範囲に裂けているが表面の樹皮だけだ。お前達で言えば皮膚が切れただけ……下手したらエルフィが気にしていなかった落雷の時の方が状態としては重かった可能性もある」

 

 「あぅぁ……」

 

 変な声を上げて赤面する彼女、大事なのはわかるがもっと確認した方がいいと思う。

 

 「まあ、もしもと言う事もあるからな……もう少し冷静になった方がいいとは思うが、すぐに私に助けを求めた事は間違っていないかもしれない」

 

 「……はい……」

 

 エルフィは顔を手で押さえたまま小さい声で答える、彼女はしばらくの間顔を赤くしてプルプル震えていた。

 

 その後、世界樹の大きな裂け目は問題無い事をエルフィが森人達に伝え、大きな騒ぎにはならずに終わった。

 

 彼女の醜態の拡散も私のみに抑えられた。

 

 「面白い物を見れた」

 

 「クレリアさん!絶対言わないでくださいよ!?」

 

 すべては私次第だな。

 

 

 

 

 

 

 世界樹騒ぎも大事にならず収まった数日後の深夜。

 

 私はユグラドに滞在したまま雷魔法を研究していたのだが、私に念話のような何かを送ってくる者が居る事に気が付いた。

 

 誰だ?はっきりとした意思ではない……私を呼ぶような、来て欲しいと思うような……とても希薄でぼやけた意思を感じる。

 

 私は普段は使わなくなった感覚を広げて送り主を探す、そしてそれはすぐに見つかった。

 

 世界樹か。

 

 送り主は世界樹だった。

 

 こんな面白そうな呼びかけに答えない訳がない。私は家を出て世界樹に向かって歩き出した。

 

 涼しげな月明りが地上を照らし、遠くから生物の声がかすかに聞こえる……中々気持ちがいい。

 

 世界樹の元に行くと夜の闇にうっすらと薄い緑色に輝く世界樹の姿があった。

 

 樹皮の裂け目の部分が周囲より光を発しているように見える。

 

 そこに誘導していると考えた私は光を発する裂け目に飛んでいく。

 

 これは……。

 

 その裂け目から琥珀色の液体……恐らく樹液が湧き出していた。

 

 「……持っていけと言う事か?」

 

 世界樹に向けて話しかけると木の葉がさわさわと鳴る。風は感じなかった、恐らく世界樹の返事だろう。

 

 私は入れ物を作り、どんどん樹液を採取していった。かなりの量になるが大丈夫なのか?

 

 「もう大丈夫だ、無理をするな」

 

 樹皮に手を当てて言うと、樹液は減っていきただの裂け目へと戻った。

 

 「ありがとう、大事に使わせて貰う」

 

 そう言って木の根元に降りると、上から何かが落ちて来る。

 

 なんだ?……世界樹の果実?

 

 落ちて来たのは世界樹の果実だった。

 

 私にくれたのだろうとマジックボックスにしまうと、次々に落ちて来る。

 

 「おい、もう十分だ。お前の気持ちは分かった」

 

 かなりの量が落ちて来た上に止まる気配が無いので声を上げるとぴたりと止まった、樹液の時といい言葉が分かるのか?

 

 私はただ状態を確認しただけで治療した訳ではない、この礼は貰い過ぎだ。

 

 ……確か世界樹も魔素を吸っているはずだな。

 

 私は根元に近寄り手を当てると体から魔素を生み出す。

 

 確認してみると私が生み出した魔素を世界樹がどんどん吸っているのが分かる。

 

 しばらく魔素を与えていると目の前に実が一つ落ちて来た、もういいと言う事だろうか。

 

 私は魔素を止めると世界樹をひと撫でして家に向かう。

 

 振り返ると世界樹の光はすでに消え、いつもの夜が広がっていた。

 

 家に帰り世界樹の樹液を一口食べてみたが、濃く爽やかな甘い香りと濃厚だがしつこくない甘さがとても美味しかった。

 

 私の表現力では上手く伝えられないな……実際に食べて見なければ分からない味かもしれない。

 

 

 

 

 

 

 世界樹から樹液を貰ってから数日後、朝になり久々に町中を散歩しようと私は外に出た。

 

 朝の冷たい空気が気持ちいい。町中を歩き回りやがて広い魔法訓練場の隣を通りかかるとエルフィと数人の男女の森人達が集まっている。

 

 その横にはかろうじて人型と言えるような……一般的な人の大きさの太った人形が一体居た。

 

 何か面白そうな事をやっている、興味がわいた私は彼女達の元に向かった。

 

 「おはようエルフィ、皆もおはよう」

 

 「クレリアさん、おはようございます」

 

 挨拶をするとエルフィと皆は挨拶を返してくる。

 

 「朝から頑張るな」

 

 「いつもの事ですよ、クレリアさんは朝から何故ここに?」

 

 エルフィが言う。

 

 「散歩の途中に通りかかっただけだ、エルフィ達が見えたから挨拶に来たんだ」

 

 「そうでしたか」

 

 「それにこいつに興味をひかれてな」

 

 「あ……」

 

 私の言葉に言葉を詰まらせるエルフィ、見られてはまずい物だったりするのかな?

 

 「問題があるなら黙っている事は出来るぞ?」

 

 そう言うと、周りで会話を聞いていた男性森人が発言する。

 

 「先生なら構わないと思いますよ。先生の意見や考えを聞いて見たらどうでしょう?」

 

 「……そうね……クレリアさんなら構わないかしら」

 

 男性森人の言葉を聞いてしばらく考え込み、答えを出すエルフィ。

 

 「いいのか?」

 

 「ええ、貴女なら信用できるし貴方ほどの魔法使いの意見も聞けるなら助かるし……」

 

 確認する私に返すエルフィ、何か行き詰っているのかな。

 

 そう思っているとエルフィは説明を始めた。

 

 「これは「ゴレム」と言う土人形よ」

 

 「土人形が何かの役に立つのか?」

 

 私の疑問に彼女は答える。

 

 「役に立つわ……いずれは」

 

 「このままでは駄目なんだな」

 

 「ええ。これはね……もっと大きくした上で数を揃え、兵士として使うのが目標なのよ」

 

 「ほう……」

 

 思わず声を洩らす私、彼女は話を続けた。

 

 「私達森人は魔法は得意だけれど肉体的にはあまり強くない」

 

 「身体強化の魔法があるだろう?」

 

 疑問を投げかける私に彼女は言う。

 

 「身体強化魔法を使うなら攻撃魔法の方がかなり効率がいいのよね」

 

 別な何かで不得意な分野を補おうと言う事か?

 

 「それで、魔法で作れる土や石で作ってみようと言う事になったのよ。もちろん上手く行けば金属製のゴレムも挑戦したいと思ってるんだけど……」

 

 そう言って隣にある土人形を見る、どう見ても役に立つようには見えない。

 

 「出来たのがこれか」

 

 「そうなのよね……」

 

 彼女は疲れた声で言った。

 

 「具体的にどうしたいんだ?それによって難易度が変わりそうだが」

 

 「そうね最高の物を目指すのであれば……」

 

 そう言って彼女が言った理想は……。

 

 森人の誰でも使える魔法である事。

 

 作り出した者の命令を守る様にする事。

 

 出来るだけ高い耐久力と近接戦闘能力。

 

 材料は魔法で作り出せる物か出来るだけ簡単に手に入る安価な物である事。

 

 「……なるほど」

 

 「どうかしら……かなり難しいとは思うけど」

 

 「今のお前達では無理だな」

 

 「むぅ……」

 

 彼女の理想を聞いた私は答えると彼女は唸る。

 

 私なら恐らく可能だが森人達では現時点ではどうやっても不可能だと思う。

 

 画期的な新技術や素材が見つかればあるいは、という所だろうか。

 

 「とは言えやって見なければ何とも言えないか。予想以上に上手く行くかも知れないし、もっと難しいかも知れない」

 

 「……手伝ってくれるの?」

 

 「面白そうだからな。私が思いつかなかった挑戦だ……全員私が手伝う事に反対しないのなら是非開発してみたい」

 

 「私は反対なんてしないわ。貴女が手伝ってくれるなら心強いもの……皆はどう?」

 

 私が協力を申し出るとエルフィが全員に確認する。周りの森人達は全員私の協力を許可してくれた。

 

 「ありがとう。それとこの研究で得る事になる技術や知識は森人達の女王または王……現在はエルフィになるが、その者の許可が無い限り他者に教えない事を約束する」

 

 駄目だと言われても勝手に開発はしたと思う。

 

 だが考案者の許可なく広めたりはしない。

 

 「分かりました。そこまで考えてくれてありがとう……貴女なら守ってくれると信頼できるわ」

 

 私の宣言にエルフィは微笑んで答えた。周りの森人達も次々に信頼を口にしてくれる、元から裏切る気は無いが悪い気分では無い。

 

 「そうと決まれば私は研究に入る。家にいるから何かあった時は来い、研究の進み具合は私がエルフィに伝えに行くとしよう」

 

 「待って、貴女には研究に集中して欲しいの。私達も全員で研究するけどこの中で貴女は一番優れた魔法使いよ……私が貴女の家に行くわ、良い?」

 

 余計な時間を使わせたくないのか。

 

 私としてはその方が嬉しいが。

 

 「そうか、それで良いならその方が助かる。伝えに行くと言ったが正直行くのを忘れそうだと思っていた」

 

 「気持ちは分かるわ」

 

 彼女はそう言って笑った、こうして私のゴレム研究をする日々が始まった。

 

 

 




 名前ありのキャラが増えると大変なので出来るだけその他の方は名前が出ないようにしています、ただ後々使えると思った時は名前が付きますが。



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021-03


 この作品の注意事項

・作者の自己満足

・素人の作品

・主人公最強

・ご都合主義

・辻褄が合わないかもしれない設定

・注意事項が増える可能性

 等が含まれます。

 以上をご理解したうえでお読みください。

 読者の皆さんの暇潰しの一助になれば幸いです。





 

 森人達からゴレム研究の参加を許され、研究する訳だが……一般的な住宅でやるのは問題がありそうだ。

 

 エルフィ達と別れた私は家に向かいながら研究室を作ろうと考えていた。

 

 地下に作るのが手っ取り早いか?

 

 家に着いた私はモー乳を一杯飲むと、地下研究室の作製に取り掛かった。

 

 研究室と言っても魔法の場合邪魔な物が無い広い空間があれば大抵どうにかなる。

 

 地下なら秘匿もしやすいしな、エルフィ達が死なない様に空調にも気を付けておこう。

 

 入り口の床を見つからないように偽装すれば完成だ。

 

 よし……研究開始だ。

 

 

 

 

 

 

 研究を始めて半年、現在私は家に来たエルフィとリビングのソファに座り話している。

 

 「一つの魔法で誰にでも使えるというのは不可能だと思う。少なくとも今の私には出来ないな」

 

 誰にでも使える様に試行錯誤した結果、私が出した結論はこれだった。

 

 「やっぱり無理よね。無理なのは分かっていたけれど……」

 

 彼女は苦笑いする。言葉ではそう言っているが私ならもしかしたらと思っていたのかもしれない。

 

 あくまでも今の私には不可能と言う事だが。

 

 私が使うなら良いが他の者が使える魔法となると難しい、彼女達と私では差があり過ぎる。

 

 既に私が使えるゴレム魔法は出来ている。

 

 私でなければ恐らく発動しない魔法だが、魔法金属のゴレムを色々な姿で作れるようになっている。

 

 私はこれを元に彼女達が使える様にしようと思っている。

 

 目の前で考