コンパスの世界に迷い込んだけど、折角だからエンジョイしてみる (コンパスの柑奈)
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迷い込みました

目が覚めると、見覚えのない場所にいた。

 

???

「んー、一体何がどうなってんの…?」

 

僕は今までの行動を思い返してみる。

 

???

「えーっと、朝起きて…コンパス起動して…」

 

すると、そこからの記憶が曖昧になっている事がわかった。

僕は辺りを見回してみる。そこである事に気づく。

 

???

「…目の前にあるこの大掛かりな機械、コンパスに出てくるテレパスに似てる!」

 

僕は有り得ないと思いつつもある可能性に辿り着く。

 

???

「…異世界召喚された?それもコンパスの世界に」

 

密かに異世界転生に憧れてた僕は困惑と同時に興奮を覚えた。異世界に飛ばされたというのによくそんなに呑気でいられるものだ、と思われるかもしれない。勿論元の世界に戻れるのか等の不安もない訳じゃない。けど郷に入っては郷に従え、こういう時こそ場を楽しむ位の気持ちでいた方がいいのだ。

 

だが冷静になって考えると腑に落ちない。通常異世界召喚といえば大勢の人間に囲まれて迎えられるものだが、僕がいる場所には人らしき人がいない。

 

???

「そもそも目の前の装置だけでコンパスの世界っていうのも強引すぎるしなー。誰かいないの?」

 

すると僕の問いに答えるかのように背後の扉が開く音がする。振り返ると、僕の推測が正しかった事を証明するかの如く、そこには…

 

???

「オヤ、転送装置カラ異常ヲ検出シタノデキテミマシタガ…未確認ノ生命反応アリ。ドウヤラ敵意ハナサソウデスネ」

 

コンパスを管理するAIロボ、Voidollがいた。ゲームの中のキャラが目の前に存在するという貴重な体験に、思わす声が漏れる。

 

???

「…マジか、本物のVoidollだ」

 

Voidoll

「…?ナゼワタシノ名前ヲ?アナタハ一体何者ナノデショウカ?」

 

疑問は確信に変わった、間違いなくここはコンパスの世界だ。

 

???

「ああ、僕の事は…」

 

いけないいけない、危うく本名を言ってしまうところだった。どうせならコンパスで使ってる名前を名乗っとこう。

 

???

「…柑奈(かんな)とでも呼んでくれればいいよ」

 

すると僕が名乗った柑奈、という名にVoidollが考え込む様な姿勢で機械音を発しながら何かをしている。数秒後、

 

Voidoll

「…ウソデハナサソウデスネ。マサカアナタガ、アノカンナ様ダトハ…コノヨウナ事態ハ前例ガナイデス」

 

柑奈

「…んー、分かり易く説明してほしいな。この世界の事とかも知りたいしさ」

 

Voidoll

「ワカリマシタ、コノ世界ニツイテオハナシサセテイタダキマス」

 

こうして僕の異世界生活は幕を開けたのだった。



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「#コンパス」という世界

今回はコンパスの世界観(独自解釈あり)を語る回です。


僕はVoidollの話に耳を傾けた。

 

Voidoll

「コノ世界ハ、ゲームヲ通ジテプレイヤーガコミュニケーションヲトリアウバトルSNS。オソラクコレハアナタモゴ存知カト思イマス」

 

柑奈

「ふむふむ(公式サイトに書いてたな…)」

 

Voidoll

「ソシテバトルハ、プレイヤーガワレワレヒーローヲ使役シテ戦イマス。コノ時ノプレイヤーの戦闘傾向ハデータトシテ蓄積サレテイキマス」

 

柑奈

「成る程ね」

 

Voidoll

「ソシテ戦闘傾向以外ニモプレイヤーノ行動ハヒーローヘ影響ヲ与エマス。ソレガホーム画面デノコミュニケーションデス」

 

柑奈

「へえ、あれもそうなの?」

 

Voidoll

「ヒーローハ召喚サレタ時ニハジメテプレイヤーヲ認識シマス。コノ時ハマダ名前ヲ覚エル程度デ全員同ジデスガ、プレイヤーノ接シ方ニヨッテ同ジヒーローデモ性格ナドニ僅カナ差異ガ出テキマス」

 

柑奈

「ほお、それは知らなかったや」

 

Voidoll

「ツマリ、コノ世界ハアナタガプレイシテイルコンパスノ世界トイウコトニナリマス。デスガ、ワレワレヒーロートプレイヤーガ直接干渉スルコトハアリマセン。ソノハズナノデスガ…」

 

柑奈

「僕は呼び出された訳じゃないの?」

 

Voidoll

「異世界カラ人ガ迷イ込ムコト自体ハ稀ニアリマスネ。ココニハエミリアサンヤアクアサントイウ異世界カラ来ラレタ方々ガイマス」

 

柑奈

「(コンパスのコラボキャラって、こっちではそういう解釈されてるんだ…)」

 

Voidoll

「デスガ、プレイヤーガ迷イ込ムトイウノハハジメテデスネ。転送装置ノ不具合カナニカデショウカ…?」

 

柑奈

「…とりあえず、今のところは元の世界に戻る方法はなさそうだね」

 

Voidoll

「ハイ、チカラニナレズ申シ訳アリマセン…」

 

柑奈

「大丈夫大丈夫!どうせならこっちの世界を楽しもうかと思ってた所だし、よければ案内してよ!」

 

Voidoll

「ソウデスネ、デハ私ガコノ世界ヲ案内サセテイタダキマス」

 

柑奈

「よろしく!…あ、そういえば話を聞く限りでは、ここは僕が遊んでたコンパスの世界って事になるよね?Voidoll以外のヒーローもいるの?」

 

Voidoll

「ハイ、バトルガナイトキハソレゾレ思イ思イニ時間ヲ過ゴシテイマス」

 

柑奈

「だったら是非みんなにも会ってみたいなあ(常設ヒーローは全員いるからね)」

 

Voidoll

「フム、デハ施設ノ案内ツイデニ皆様トノ顔合ワセモイタシマショウ」

 

そう言うとVoidollは僕に着いてくるよう促してきた。僕はそれに従ってVoidollの後を着いていく。

 

果たしてどんな出会いが待っているのだろうか…



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ゲーマー少年とドット勇者

Voidollの案内に従って廊下を歩いていると「カード管理室」と書かれた扉に辿り着いた。

 

Voidoll

「ココハカード管理室デス。アナタガガチャデ手ニ入レタカードハコノ部屋ニ集約サレ、管理サレテイマス」

 

柑奈

「うわあ、凄い…ん?」

 

僕は部屋の奥の方に人の気配を感じたので、視線をやる。

 

???

「いやー、いつ来ても飽きないよなこの部屋は!」

 

???

『そうだね』

 

首に付けたヘッドホンが特徴的な少年と、身体がドットで出来た勇者がいた。

 

柑奈

「(あっ、あれは十文字アタリとかけだし勇者か!)」

 

Voidollも二人の存在に気付き、声をかける。

 

Voidoll

「オヤ、アタリサンニカケダシ勇者サン、コンニチハ」

 

アタリ

「おっ、Voidoll!……と隣にいるのは誰だ?見た事ねー奴だけど」

 

かけだし勇者

『はじめましてだね』

 

Voidoll

「アア、彼ハ…」

 

〜説明中につき省略〜

 

アタリ

「へえ、異世界から!?凄えな!レトロゲーム並みにワクワクするじゃん!!」

 

かけだし勇者

『すごいすごい!』

 

柑奈

「僕もワクワクしてるよ。壁を隔てた遠い存在だと思ってたのに、こうやって目の前で会話してるんだから!」

 

アタリ

「ヘヘっ、俺はいつでも準備オッケーだぜ!バトルの時はよろしく頼むぜ!」

 

かけだし勇者

『ぼくもぼくも!』

 

柑奈

「もちろん、二人ともよろしく頼むよ!…とりあえず他のみんなとも話をしたいから、また今度ね」

 

アタリ

「おう、じゃあな!」

 

かけだし勇者

『ばいばい!』

 

僕とVoidollはカード管理室を後にする。

 

柑奈

「いやあ、やっぱりアタリ君は元気があっていいね。にしても、かけだし勇者と一緒にいるとは思わなかったけど」

 

Voidoll

「カケダシ勇者サンハレトロゲームノキャララシイ外見デスカラネ、ナニカ通ジルモノガアルノデショウ」

 

柑奈

「ふむ。そういえば気になってたんだけど……」

 

Voidoll

「…?ナンデショウ?」

 

柑奈

「最初に会った時に、僕の事疑う事なく信じてくれたよね。それはなんで?」

 

Voidoll

「アア、ソノコトデスカ。私ハコノ世界ノ管理者ナノデ、他ノヒーローヨリモプレイヤーヲヨリ詳シク識別スルコトガデキルノデス。トハイエ、最初ハ気付クノニ時間ガカカリマシタガ…」

 

柑奈

「成る程、そういうものか」

 

Voidollの発言に僕は頷く。

 

Voidoll

「サア、次ノ場所ニ行キマショウ。施設ハコレダケデハアリマセンカラネ」

 

柑奈

「はいよ、再び案内よろしくね!」

 

僕とVoidollは廊下を進んでいく。次はどんな出会いが待っているのだろうか…



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魔法少女とハイスペックニート

僕とVoidollが廊下を歩いていると、話し声が聞こえてきた。

 

???

「ねえリリカちゃん、壁ドンごっこやろうよ壁ドンごっこ!」

 

???

「ん〜?どうしよっかな〜?」

 

そこには如何にも魔法少女と言わんばかりの格好をした少女と、フードを被った金髪の青年がいた。

 

柑奈

「(魔法少女の方はリリカで、金髪の方はマルコスだな)」

 

Voidoll

「オヤ、マルコスサンニリリカサン。コンニチハ」

 

マルコス

「あっれー?誰かと思ったらVoidollちゃん!……んあ、その後ろにいるのは誰?」

 

リリカ

「見ない顔ね。キミは一体だあれ?」

 

Voidoll

「アア、彼ハ…」

 

〜説明中につき省略〜

 

マルコス

「異世界だって?なにそのなろう小説的な展開は!?いいなあ、僕も異世界転生してみたい……や、まてよ?そんなことしたらリリカちゃんに会えなくなる……うむむむ」

 

リリカ

「へえ、いつも画面の向こうから話しかけてくれてたの、キミだったんだ!ねえ覚えてる?『いつかキミの所へ行ける魔法が使えればいいのにな』って言ってたこと!」

 

柑奈

「もちろん覚えてるよ!(そんなセリフあったな、そういえば)」

 

リリカ

「まさかキミの方から会いにきてくれるなんて!リリカ嬉しいな!」

 

柑奈

「僕も会えて嬉しいよ!(偶然なんだけどね…)」

 

マルコス

「ちょっ、リリカちゃん!?」

 

マルコスは混乱しているようだ。そんなマルコスを尻目に僕はVoidollの案内の続きがある事を告げてその場を離れることにした。

 

柑奈

「あっと、他にも会わなきゃいけない人たちがいるんだ。また後でね」

 

リリカ

「うん、バイバーイ!」

 

マルコス

「むー、リリカちゃん…」

 

Voidoll

「デハ参リマショウ」

 

僕とVoidollは廊下を進んでいく。

 

柑奈

「案の定マルコスはリリカと一緒にいたね」

 

Voidoll

「マルコスサンハリリカサンノ大ファンデスカラネ、ゴク自然ナコトダト思ワレマス」

 

柑奈

「そっか。……そういえば気になることがあるんだけど」

 

Voidoll

「…ナンデショウカ?」

 

柑奈

「プレイヤーの中にはログインせずに放置してる奴もいるんだけど、そういうプレイヤーの下にいるヒーロー達ってどうなるの?」

 

Voidoll

「…アクマデ噂ノ範疇ヲコエナイ話デスガ」

 

そう前置くと語り始める。

 

Voidoll

「ログインノナイプレイヤーノ下ニイルヒーローノ方々ハ、永遠ニ闇ノ中ニ閉ジ込メラレルラシイデス」

 

柑奈

「……なんだか嫌な話だね」

 

Voidoll

「アナタガ気ニ病ム必要ハアリマセンヨ。我々ハ全然寂シクアリマセンデシタカラ」

 

柑奈

「…ありがとう、それもそうか」

 

Voidollに励まされた僕は、次の出会いを楽しみにしながら廊下を進んで行くのだった。



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花火師と旋律師

廊下を進んでいった先に「食堂」を見つけた。

 

Voidoll

「コチラハ食堂デス。我々ヒーローガ食事ヲシタリ休憩ヲトッタリ、思イ思イニ過ゴシテオリマス」

 

早速中に入ってみると先客がいた。

 

???

「おや、誰かと思ったらVoidollかい。…ん、そっちにいるのは誰だい?」

 

???

「あら、見慣れない方ですわね」

 

そこにはショートポニーの少女と、ロングヘアの美女がいた。

 

柑奈

「(おおっ、まといとヴィオレッタ!火筒や宙に浮くピアノは普段は持ち歩いてないのか…)」

 

Voidoll

「マトイサンニヴィオレッタサン。彼ハデスネ…」

 

〜説明中につき省略〜

 

まとい

「…へえ、そりゃ難儀だったね。慣れない場所だから不安じゃないかい?」

 

柑奈

「あ、その点は大丈夫。なんやかんやでこっちの世界の事は楽しむつもりでいるから」

 

ヴィオレッタ

「まあ、ポジティブな思考をお持ちなのね」

 

まとい

「そうかい、それなら問題ないね。よかったらちょいと休憩していくかい?お茶でも入れるよ」

 

柑奈

「ありがとう、でも今はいいかな。これから色々回っていかなきゃいけないからさ」

 

ヴィオレッタ

「そうですか、ではまた今度という事で。機会があれば貴方がいた世界の事も是非お教えいただきたいですわ」

 

柑奈

「おけおけ。といっても大した話はできないかもだけど、それでもよければ」

 

まとい

「じゃ、また後でね!」

 

柑奈

「はいよー!」

 

僕とVoidollはまといとヴィオレッタと別れの挨拶をして食堂を後にする。

 

柑奈

「…しかしまあ、意外な組み合わせだったなあ。一体どんな共通点があるのやら」

 

Voidoll

「ソウデスカ?プレイヤーの方々ガ知ラナイダケデ、我々ハ色々ト交流ヲ持ッテマスヨ?」

 

柑奈

「なかなか新鮮な出来事が多いね、こっちの世界に来てからというものの。それにまだ会ってないヒーローがいるもんね、まだまだ発見はあるだろうさ」

 

Voidoll

「ソウデスネ、マダ案内シテイナイ施設モアリマスカラネ」

 

柑奈

「うん、てゆーかこの環境に順応してる自分が正直恐ろしかったりする。戸惑いが微塵もないからなあ…」

 

Voidoll

「ワタシトシテハ、適応能力ガ高イ事ハイイ事ダト思イマスヨ。オカゲデ案内ガ楽デスカラネ」

 

柑奈

「それもそうだ」

 

そんな会話を続けていたら、廊下の突き当たりに差し掛かった。

 

Voidoll

「サテ、一階ハコンナ感ジデスネ。次ハ二階ヲ案内シマス」

 

柑奈

「ふむふむ、了解」

 

僕とVoidollは階段を上っていく。

 

果たして、次は誰と出会うのだろうか…。



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