FGO 崩壊危惧学園 聖ビブリア (超ローマ人)
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プロローグ

超ローマ人のFGOシリーズ第二作である、今作品をお楽しみください。


プロローグ

 

藤丸立香は先日、新たに出来た特異点を修正することに成功した。

そして現在の彼は、これからの闘いに向けて休眠中であった。

「うーん。」

目を覚ますと、いつものように、横には自称男装の赤いドレスを来た皇帝サーヴァントがいた。

そのサーヴァントの真名はネロ・クラウディウス。

 

ここで、サーヴァントがなんなのかについて説明しよう。

それは、英雄が生まれた時代から後世の人間たちが魔術で作り出した、人間たちの守護者の証のことである。

立香もその力を使うことが出来るが、彼は人類最後のマスターであるために、この娘のような護衛人が必要なのだ。

まぁ、どちらにしろ彼女とは結構深い関係にあることは一目瞭然だろう。

 

起き上がったのは良いが、彼自身はある違和感に気が付いた。

自分のいる場所についてだ。

「なにか、懐かしいような…」

彼は寝室を出て、廊下を見渡した。

「…!これは!」

すると後ろから、ネロが来た。

「マスター?どうしたのだ?」

「ネロ!ここ、覚えているか?」

彼は、内部の構造に驚きを隠せないでいた。何故なら…

「むむっ!?カルデアは確か、あのキャス狐の分身やアナスタシアらの攻撃によって、壊されたはずではないのか!?」

キャス狐の分身とは、前回倒したコヤンスカヤのことだ。そして、アナスタシアはクリプターの一人であるカドックという名の青年が使役していたサーヴァントで、氷の魔力と配下のオプリチニキでカルデアを攻撃してきたのだ。

藤丸は、感極まりそうになったが、それを抑えたうえで、ネロに話しかける。

「これはもしかしたら。何者かが、我々に幻術をかけているのかもしれない。」

「確かに魔力の気配を感じる。しかし、サーヴァント…ではないな。」

「あぁ、そしてこの魔力の流れは。魔術師のものでもマスターのものでもない。にも関わらず、かなりの量と質の魔力だ。」

と彼らが話していると、人影を見かけた。

その後ろ姿を、藤丸は見たことがある。

藤丸にとってそれは白いドレス姿で、その姿はどこか懐かしく、そして華やかだ。

「良く来たな、カルデアの魔術師・立香よ。」

その女はこちらを、振り向いてきた。

「なに!?余だと!?」

「お前はアメリカで……!」

そう、それは紛れもなく第5特異点であるアメリカで狂王ことクーフーリンオルタに敗れて死んだ、ネロブライドであった。

「強くなったな、カルデアのマスターよ。この皇帝である余が生きていたのだ。貴様が、これ以上強くなることはない。」

「…?」

しかし、藤丸は相手の言っていることがおかしいことに気付いた。

「余はな、貴様が『人理を守る戦士』として強くなる必要がないと言ったのだ。」

「!」

ネロブライドは、藤丸が今までした行為は全て無意味だと、言うのだ。

流石の藤丸もこれは反論してやろうかと思ったが、何故か頭が急に重くなった。

「貴様は、『人類悪』として強くなれば良いのだ。」

すると、ネロブライド(?)は藤丸に向かってなにかを呟いている…。間違いない!呪文だ!

「しっかりしろ、マスター!」

彼は一声発することも、指一本を動かすことも出来なかった。

が、そのとき。バン!っと銃声が聞こえた。

その銃口は、ニセネロに対して向けられていた。

そして、相手からの束縛が解かれたのか。藤丸の頭痛は嘘のように消えた。

 

そして、後ろから声が聞こえた。

「二度も、強力な魔導書に会うとは…。ところで、そこの貴方。男のほうの貴方。」

「助太刀感謝しますけど、なにか?」

彼は、突然の振られ方に驚いたが聞く耳を立て直す。

すると、先程の銃の持ち主である赤髪の少女は彼に銃口を向けながらこう言った。

「突然ですが、魔王候補である貴方には選択肢があります。

1.あの魔導書を破壊し、彼女に関する記憶を消す

2.危険な存在である貴方があの魔導書ごと消されるか

どちらかを選びなさい。」

2つの選択肢……どちらも藤丸立香本人からすれば、とんでもない選択肢だった。

なので、彼はこう言った。

「確かに賢明な選択肢だ…。だが、断る。この藤丸立香が最も嫌うこと!それは、私の進む道の動機を奪われることだ!」

赤髪の少女は、驚いた顔で彼を見つめて次にこう言った。

「では、どうするおつもりで?」

「決まっている。あの魔導書とかいうのを止めて…私は強くなる!憎しみを越えて、悲しみを越えて…!」

彼は再び、ニセネロに振り向かえる。

そして。

「抑止力モード!」

赤い外套を羽織り、英霊に匹敵する力を得ることが出来る姿・抑止力モードに変身。

「マスターの助太刀には感謝するが、貴様の名はなんだ?」

ネロに問われた赤髪の少女は答えたの。

「私の名は浅見リリス。トリニティセブンの一人です!」

 



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第一話

やっと始まった第一話です。
前回掲載したのは、あくまでもプロローグなので悪しからず。


「天才魔術師である藤丸立香は、夢なのであろう世界でニセネロとえっと、」

「浅見リリスです。」

「そう、それそれ!」

「人に向かって『それ』とは失礼ですね。」

「確かに、そうだな。じゃあ、けしからんおっぱい?」

「浅見リリスです!もしかして魔王候補は、皆がこうなのですか?」

「うむ、確かに豊かなものだな。」

「ちょっと、どこを!キャアア!」

「ネロ、ナイスぅ!てなわけで第一話どうぞ。」

あらすじ完

 

「変装は効かなかったか。なら、これはどうだ!?」

すると、ニセネロは剣をこちらに投げ捨ててきた!

抑止力モードになった立香は、これを打ち払ったが。

彼女の姿を見失ってしまった。

しかし、ありふれた魔力の一部を使うことで感知能力を挙げている彼にはどこにいるのか丸わかりだ。

気付かないフリをしてこっそりと、沖田オルタの太刀を投影した。

 

すると、奴が飛び出してきた!

「遅い!」

立香は高速で移動しながらそいつの退路を絶ち、たくさん斬り付けた。

「塵刹を穿つ。無辺の光を以って、天命を断つ。『絶剱・無穹三段』!!」

そして、続けざまに黒と金が混ざった色をしたビームを出して、それを撃ち落とした!ように見えたが…。

「悪いが残像だ!バカが!!」

「!」

後ろから背中を刺される…!

ところを、紅い斬撃が救ってくれた。

「余の偽者め!余のマスターに手は出させん!!」

ところが、彼らが視たのは偽者なネロではなかった。金髪につり上がった赤い目に袖が紅い服に黒いズボンを履いた少女…というよりかは幼女がいた。

「中々良い魔力とサーヴァントを持っているな…。面白い。お前を、俺のマスターにしてやる。ほら、早く俺を鎖で縛り上げろ。」

立香は、その幼女が逃げないように念を押してかつ、キツすぎないように魔術で造った鎖で縛った。

すると、その幼女は一つの小さな本へと変わった。

「これで貴方も魔導士になる資格を得ました。それでは、聖ビブリア学園でお待ちしております。」

 

そうリリスが言うと、世界が明るくなり今度こそ立香とネロはシャドウボーダーのベッドから身体を起こした。

「妙な夢を視てしまった。まあ、あの娘も魔導書も存在するわけないか。」

「よっ!」

「……ウワァァァ!喋った!す、スペルブックが!」

「おめーらの世界にいる、あの薄っぺらな本エネミーと一緒にするな!」

「夢で起きたことが現実に……魔導書って、これほどまでに強力な存在なのね…」

魔導書はため息をついた。「俺はこんな呑気なやつを、マスターに選んだのか」と。

 

次回のFate/Grand Orderは。

「今日から編入することになった、藤丸リツカくんと転校してきた春日アラタくんです。」

「俺の名は春日アラタ。よろしく。」

「先輩、ある学園から招待状が来ています。」

「ここが、特異点になっている疑惑がある、聖ビブリア学園か。」

 




次回でやっと、『トリニティセブン』の主人公・春日アラタと対面します。
お楽しみに。


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第二話

これからは一週間に一度更新となります。
明日から4月1日ですね。私も大学生活が始まるので、読者の皆さんとお互いに頑張っていきたいですね。


「天才魔術師かつ見習い魔道士の藤丸立香は、夢の中から帰ってきて、魔道書をいつの間にか手にいれていた。」

「んなあらすじ紹介よりも、さっさと魔力を分けろ!では、第2話、スタートだ。」

「コイツ!あらすじを短くしやがった !」

あらすじ完

 

立香は起きるとすぐに、ダヴィンチちゃんのところに向かった。

「ちょうど良いところに。」

「やぁ、Mr.立香。君の話をしていたところだよ。」

「おはようございます、先輩。ところで、招待状が来ています。」

立香は「どこから?」と尋ねると、皆が「驚くなよ?」な顔付きをするため、首を傾げた。

「驚かないでください。特異点の向こう側から、手紙です。」

「え?えーっ!?」

彼は、驚きのあまり後ろに倒れた。

 

そして、一旦落ち着くと。

「次の特異点は魔道学園・聖ビブリアです。」とマシュが説明をした。

「聖ビブリア……?待って、それは夢で。」

「あぁ、あそこにいるアイツならそれが出来るだろうな。」

「先輩、アイツとは?」

「あー。今の声は。俺の胸にぶら下がってるコイツよ。」

「スペルブック…?」

 

彼と同じ誤解をして、魔道書の怒りを買いそうになったマシュを庇うかのように。

「いや、これは違うね。」

とダヴィンチちゃん。

「ダヴィンチちゃん、知ってるの?」

「もちろん、プロキャスターですから。これは、先程説明した特異点から来た魔道書ってところだね。」

すると、魔道書はご機嫌よく。

「exactly!俺をそこら辺の喋る機能もない、凡骨スペルブックと一緒にされるのは、どーも気に食わん。」

魔導書は、スペルブックと間違えられるのを結構気にしていたようだ。

これからは、気を付けよう。と立香は心の中で反省した。

「申し訳ありません。」

「良いんだよ。コイツから、魔力吸うだけだから。」

「八つ当たりはよせ!」

「いーや、お前もスペルブックと間違えてたからな!それに、この行いにマシュの分は含んでねぇよ。」

「アレは、寝ぼけてて……ウワッ!コイツ!ホントに吸いやがった!」

「まぁ、吸うとしてもフラフラになったり死んだりしない程度なだけありがたく思え。」

立香は「こんな面倒なのを、仲間にしてしまった」と心のなかで嘆いた。

 

そして、彼は早めにレイシフトして聖ビブリア学園の人理を修復する作戦をサーヴァントたちと練った。

決まった作戦内容は、サーヴァントが先生に扮するというものだが一体どうなるのだろうか?

そう思いながら、レイシフトを行った彼が辿り着いたのは。

「ここが聖ビブリア学園か。大勢の人の魔力をかんじる以外は、結構フツーのデカイ学校だけど。」

「まぁ、そうだな。」

すると、遠くから誰かが話しかけてきた。

「アンタも転校生?」

「まぁ、大体そんな感じになるな。」

といつもらしくもなく、藤丸は声をかけてきた誰とも知らない普通の生徒…いや、恐らく魔道士であろう少年に話しかける。

「私は、この学園に招待された、藤丸立香だ。」

「なるほど。俺は、今日からここに転校することになった、春日アラタだ。よろしくな。」

手を差し伸べられた私は、すかさず握手した。

すると、扉が開く音が聞こえた。

「二人とも、入りなさい。」

立香は、今初めて会った少年・春日アラタと会ってから、何故か昔に会ったことがあるように感じた。だが、それは気のせいであろう。そう、このときの彼は考えた。

教室に入ると、知る顔と見知らぬ顔を見かけた。まぁ、カルデアで立てた作戦上、知らない顔をするしかないのだが。

「というわけで、転校生の春日アラタくんと、編入生の藤丸立香くんです。」

藤丸は驚いた。リリスが先生とは、これっぽちも思わなかったからだ。

リリスの年齢が18歳と聞いた藤丸は、ひっくり返った亀のように硬直してしまった。

「はいはーい!質問です!」

すると、一人の金髪の女子生徒が立ち上がり手を挙げた。

「二人の好みはどんなんですか?」

「そうだね、私を支えてくれる元気いっぱいな…」

「胸のデカイ人だな。」

藤丸とは逆に、アラタは直球にこの質問に答えた。

「てか言っちゃったよ、この人。ぶっちゃけ言うと、女の敵みたいな発言を言っちゃったよぉ!」

「うわっ!直球!」

「まあ、なくても愛せるとは思うが。」

「しかも、微妙なフォローが来た!」

「では、そろそろ授業を。」

「もうひとつ。魔王クラスにしか出来ない『世界構築』したって本当ですか?」

「???」

 

藤丸立香には、『世界構築』がなんのことなのかさっぱり分からなかった。

「あぁ、アレか。誰でも出来るんじゃねえのか?」

「ちょっ!アラタ!?」

「ヴェっ!?」

すると、生徒たちが

「魔王候補キター!」と、ノリノリで叫んだ。

 

さて、これからどのような学校生活があるのか。そもそも、聖ビブリア学園とはどのような学校なのか。魔道書が言っていた「アイツ」とは誰なのか。その答えが、そして新たな学園生活が藤丸立香を待っている。

 

 




トリニティセブンの映画は最高に展開が凄いので、視てない人は是非


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第三話

英語の勉強や巨影都市の攻略に手間取ってました、超ローマ人です。
では、Fate/Grand Order聖ビブリア編第三話をどうぞ。


第3話

 

「見習い魔道士である藤丸立香から、重大発表がある。今回でFate/Grand Order聖ビブリア学園編・完!次回からは、『立香、ネロと付き合うってよ。』が始まるぞ。」

「こらぁ!駄目ですよ!そんなこと!!」

「次回からは、『アラタ、リリスと付き合うってよ』が…イタァ!」

「授業終わった後だから、テンション高いんだよ。許して。」

「んもう!Youは何しにこの学園に来たのですか!?では、第三話を始めます!」

「また台詞とられたぁ。」

あらすじ完

 

「学園長に挨拶か…どんなキャラだろうな?」

「先生というと、リリスみたいに、真面目さんのイメージが強いな。」

立香とアラタはリリスの後ろで、喋っていた。

 

休み時間などで話してみたが、意外と気が合うようだ。

しばらくすると、リリスの足が止まった。どうやら目的地である、学園長室に着いたようだ。

リリスがコンコンとドアを叩くとドアの向こうから、「入りたまえ。」と、二人が思ったより若い男の声が聞こえた。

 

リリスを除いた彼らは少し驚いた。学校の校長のイメージの大体が、壮年のオッサンで目の前にいるのはそれとは違った若い男だからだ。  

そして、彼らが入ったあとの第一声も…

「はっはっはっ!初めまして!春日アラタ!藤丸リツカ!学園を代表して歓迎したいけど、いきなり魔王呼ばわりされるとはね。」

 

これを聞くと、生真面目なリリスは「笑い事じゃない」とツッコミを入れるが、それもそのとおり。アラタが「世界構築できる」などと言ったせいで、授業にならなかったのが事実だ。

「何か凄そうでいいじゃないか。」

「えぇ」

藤丸は「アラタはいつ命狙われても可笑しくない身なのに」と思い、つい困惑の声を漏らしてしまう。

何処と無く冷静で、怖いもの知らずな魔王はテレビの中でしか視たことない彼には衝撃だったのだ。

 

「ご存知の通り、ここ王立ビブリア学園は、魔道士を育成する超秘密組織だ。」

「スゲーイ!」

「モノスゲーイ!」

妙に盛り上がっている二人に合わせるように、学園長は話を続ける。

「魔道士。それは、各国政府から資金提供を受け……未解決事件や魔道的な不可思議事件を調査・解決する者たちのことである!」

「「魔道戦隊・メイガスマン!!」」

「なんだかは知りませんが、三人とも落ち着いてください。」

「なんだよぉ、リリス。知らねぇのか?小林靖子が脚本の大人気特撮番組を?」

「特別な魔道・アースの力を使って闘う戦隊だ。」

「知りませんし、聞いたこともありません!」

「まぁ、『魔道戦隊・メイガスマン』なんて戦隊無いけどね。ハハハハ!」

 

といったような一通りのコントが終わると、アラタは真剣な顔になって。

「魔道士になれば、黒い太陽に飲み込まれた聖も取り返せるんだな?」と学園長に質問をした。

春日聖。それはアラタが連れ戻したい、大切な者の名であることを藤丸は悟った。

そして、彼もまた。出来たら、連れ戻したいサーヴァントがいるということが頭から離れなかった。

しかし、藤丸には使命がある。歪んでしまい、人類の癌となるであろう特異点の修正。そして、ロストベルトの破壊。このことが、獲物に巻き付く蛇のように頭の内を駆け巡っていた。

「そうだね…それは君次第ってわけだよ。アラタ。ところで、リツカくんが魔道士を目指すきっかけは…?」

「私自身の任務…具体的に言うと狂った人類の歴史を修正すること。そして、何よりも大事な人々を守れる力を得るために。私は、魔道士になる覚悟を決めたんです。」

ロストベルトでなら隠さなくてはならないことも、ここでは話せる。なにより話さなければならない。という考えを彼は起こしたのだ。

 

「よし、君たち二人の目的を知ったところであることを教えよう。この学園にいる7人のボスキャラみたいなのがいてね。」

「ボスキャラ…?」

「トリニティセブン。そう呼ばれる、各分野の頂点に立つ7人の魔道士の女の子たちさ。おっと、遥かな星がふるさとな観測員とは関係ないぞ。因みに、そこにいるリリスちゃんはその一人なんだよ。」

「そうなのか。確かにスタイル抜群だしな。」

藤丸は思わず吹いてしまい、リリスは赤面した。

「スタイルは関係ないでしょう?!」

「はっはっはっ!」

「これは笑うしかないじゃないか!」

学園長は、意外にも気さくだった。藤丸にとっても、アラタにとっても、よい意味で普通の学園長のイメージとはかけ離れている先生であった。

「そんなわけで、二人はトリニティセブンの娘らと知り合うのもよし、たたかうのもよし、また手籠めにするのもよし。そうすれば、魔道士のなんたるかを手っ取り早くわかるかもな?」

「手籠め!?」

「「ヤハリソウイウコトカ」」

「二人とも何を納得しているのですか!?」

リリスのツッコミ平手打ちが、二人に直撃する。

スパァン!と気持ちいい音を立てて。

 

「とまあそんなわけで。リリスちゃんのことよろしく頼むよ。アラタくん。」

「不束者ですが、よろしくお願いいたします。」

「二人ともいい加減にしてください!」

ツッコミを行うリリスとは逆に、藤丸は腹を抱えて笑っていた。

「まあ、いいじゃないか。ちょっとしたジョークだよ。なぁ、二人とも?」

「そうだそうだ。冗談が通じない奴はこれだから。」

「リリス先生も、イジると面白いタイプなんだな。」

と男三人は意気投合、一致団結していた。

 

「よし、リツカくんは残って。リリスくんはアラタくんの部屋の案内を。」

藤丸は学園長と一対一になった。そして。

「君たちカルデアに届いたであろう、手紙の差出人は勿論、私だ。ダヴィンチ女史。聞いていただろう?」

すると、モニタリングされたダヴィンチちゃんが現れた。

「勿論さぁ。魔道書くん。君の言っていた『アイツ』とは学園長のことだろう?」

すると、藤丸の胸元に隠れていた魔道書が姿を現した。

「あぁ、そうだが。」

「学園長、コイツこのビブリアに入ってから少し変だったんすよ。何か分からないですかね?」

すると、学園長は困った顔をした。

「あぁ、そいつは過去にトラウマを抱えていてね。おっと、これ以上は言わない約束だった。」

「俺にも嫌いなものがあってな。他者の過去を掘り返すやつと、人間もとい人間に馴れ馴れしい他の魔道書のことは大嫌いなんだよ!」

学園長が藤丸の魔道書について説明しようとした途端に、魔道書の腹の虫が悪くなってしまったようだ。

「そこが君の悪いところだよ。アークミネルバ。」

「え?魔道書にも真名が?まあ、コイツの口の悪さは申し訳ないのですが。」

アークミネルバはまだ虫の居どころが悪いらしく、軽く舌打ちしていた。

「話が脱線してしまった。この学園は、君たちカルデアの指示通りにサーヴァントたちを先生や生徒たちの代わりとして導入。クリプターとかいう連中や、部外者からビブリア学園を守ってくれるってことで良いのかな?」

「うん。トリニティセブンの皆さんは充分強いだろうけど、他の生徒たちよりも強力なサーヴァントが現れる可能性は、十分にあり得るし。」

「サーヴァントたちがどれくらい強いのか気になるところだけど…。」

「それは、私が説明します。強さの違いは個体それぞれなのですが、どれだけ弱い英霊でも十分人を殺す力はあります。それに、クリプターのサーヴァントたちはこちらの強豪サーヴァントでも苦戦を強いるぐらいには、とても強力です。」

「ふむ。」

「我々は今までに、セイバーとキャスターのクリプターサーヴァントと闘って来ましたが、両者ともに今まで人理を守るために全力を尽くしたカルデアを、十二分に苦しませてくる強さでした。具体的に彼らの特徴を説明すると、部下を引き連れての集団攻撃、全てを凍らせて砕く眼、神代の魔術を使ってくる、炎の剣で辺り一面を焼け野原に変える等です。」

 

流石の学園長も、驚いた顔を浮かべた。

「神代…。下手すれば、こちらの世界の魔王よりも強い敵がいるという訳か。」

「そういうことになります。」

学園長は納得したのか。相槌を打った。そこでダヴィンチちゃんが聞く。

「ところで、魔王候補ってなんなのさ?学園長さん。」

「あぁ、その説明もしなきゃならないんだね。魔王候補というのは…。ちょっと待って。藤丸くん。君。自分自身の魔力を知らない…?」

学園長は藤丸に視線を送る。

「把握している限り、私にはある特殊な2種類の魔力を持っていますが…?」

「あぁ。そうだね。まさに光と闇の魔力がね。」

すると、学園長がある事実を述べる。

 

「リツカくん。君の魔力はこの世界でいう、『魔王候補』の適正を持っている。」

「ちょっとなにいってるか分からないです。」と思考停止してしまった、藤丸を視て学園長がもう一度言った。

「魔王候補はアラタくんだけでなくて、君もなのだよ。藤丸リツカくん。」

「ーーー!!!」

 

 

次回のFate/Grand Orderは!

「まさか…私も魔王だったとは…」

「いや、そこは『キャーっ!』って叫ぶところだろぉ?!」

「きゃー」

「バナ…じゃなくて、ちじ!ちじ!痴女!?」

「難しいのね…」

 



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第四話

最近シンフォギアに嵌まりました


「見習い魔道士である、藤丸立香は学園長に出会い、自分自身が魔王候補その2であること、そして魔道書ちゃんの真名を知った。」

「おい。『ちゃん』をつけるんじゃねえよ。」

「分かったよ。アーク『さん』ってのは?」

「『様』をつけて欲しいところだが、それで良いぜ。つーか、お前って自分の魔力がどれだけ危険な物なのか分かっていないなんて、割りと鈍感なのな。」

「うぐっ。鈍感なところがあるのは、否定できん。まあ、これから気を付けるし。それでは、第4話どうぞ。」

 

あらすじ完

 

「まさか、私もアラタと同じ魔王候補だとはな……。」と廊下でブツブツと、藤丸は独り言を呟いた。

彼はこの世界からすれば魔王じみたことをした。二つのロストベルトを破壊したのだ。転校早々、彼の実態は知れ渡っているのかも分からない。だが、藤丸には立ち止まるという選択肢は無かった。何故なら、立ち止まっていても何も始まらないと彼は考えているからだ。

 

すると、藤丸は金髪の女と黒髪の背が高い女を見かけた。

「よお!見慣れない顔だな。編入生?」

「そうですね。編入生です。よろしくお願いいたします。」

背が高い女とは違い、金髪の女はしかめっ面で彼を見つめる。

一応挨拶はしてみたが、返事が何故か冷ややかだった。彼の挨拶の仕方が悪かったのが原因…という訳では無さそうだ。

「あぁ、ごめんごめん。こいつ、意外と顔見知りが激しくてさ。今度話そうぜ。じゃあな。」

「えぇ。それでは。」

藤丸は、彼女らが何者なのかは知らなかった。だが、少なくともこの学園の学生だと直感的に分かった。というのも、そのまま彼女らが学園長の部屋に入ったのを見かけたからだ。

 

彼は地図を頼りに、自分の部屋を探しだした。

ダヴィンチちゃんと学園長は、夕食後も電話かなにかで話すそうだ。

藤丸は彼自身の部屋に入って、まずは風呂に入ろうと決めた。アークミネルバはいつものように、黙っている。本当に、人間に興味が無いようだ。そこで藤丸は冗談で

「もしかして。何か大きな目的を持っていて、私を利用している感じか?お前。」と言った。

すると彼女は「利用しているのは、間違いないかもな。だが、俺にはこれと言った目的はない。」とだけ答えた。

現に、藤丸からすれば。アークミネルバことアークさんは食えない性格しているのは目に見えている。

「だが、力を貸してくれるんだろ?お前が利用しようってんなら、こちらも利用させていただく。大切なものたちを守る闘いにも、付き合って貰おう。」

彼は迷いを振り切るように言うと、風呂に行った。

 

そこには、藤丸にとっては今日出来た友の姿があった。

「意外と広いな。」

「無駄に金かけてんだろうよ。」

アラタとは別の謎の声が風呂のほうから聞こえた。すると、アークさんがひそひそと藤丸に話しかける。

「チッ。あの小僧の魔道書は、アスティルか。出来る限り遠くに俺を置けよ?」

仕方無く、「はいよ。」と彼は返事する。

藤丸はアスティルとなんらかの冗談を言い終わったアラタに話しかける。

「よっ!アラタ。」

「おぉ、リツカ。先に入るな。」

藤丸はOKサインを出すと、アラタの荷物から数マス離れたところに荷物を置き、裸になる。

「ナイスぅ!っといけね。」

アークさんの独り言を聞いて、藤丸は浴場に入った。

 

すると、目の前に素っ裸な少女が。

「こんばんは。」

すると、少女は「こんばんは」と返した。そしてアラタの隣に私が座る。

「なぁ、アラタ。」

アラタがシャンプーとボディーソープを間違えそうになってたので、藤丸が指摘しようとすると。  

「ボディーソープよ?で、こっちがリンスインシャンプー。」

と少女が代わりに指摘した。

「マジでか?」

「……え?」

「!」

藤丸とアラタは、見間違えだと思っていた少女を再び見る。そして、二人はしっかり胸部が膨らんでいることを確認した。

「だぁぁぁ!」

アラタは顔を手で覆った。一方で、藤丸は「アラァァ!」と某ハンバーガーのマスコットピエロみたいに、ズッこけた。

「どうした?目になにか入った?」

「そうじゃねえ!そこは『きゃー』って叫ぶところだろうが!!」

「あっ。きゃー」

と、少女はロボットみたいに無表情かつ棒読みするかのような口調で喋る

「バナ…じゃなくて、ちじ!ちじ!痴女ぉぉ!?」

藤丸がそのようにボケると、男湯で素裸になって入っていた少女が突っ込んだ。

「痴女じゃない。私は神無月アリン。アリンと呼んで。因みに、大きさは82のCよ?」

「それはそれは…ご馳走さまでしたー!」

アラタは普段とは違った様子で、赤面して逃亡してしまった。

「なぁ、アリン。見知らぬ人に自分の胸の大きさを教えるって、立派な痴女だと思うの俺だけ?」

すると、アリンは無表情でこう言った。

「難しいのね。」

「」

 

アリンの予想外でかつ摩訶不思議な返答に、藤丸は沈黙することしか出来なかった。

このあとも、ゆっくり入ろうかと思ったが、外がうるさいので烏の行水になってしまった。

リリス先生がアリンを叱りにここに来たのだ。

「誰もいないから静かで良いと思って。」

「これからは誰かいるんです!」

「アラタ以外に私もいましたし。」

「」

「!きゃー(棒読み)」

「タイミングが違います!!てかアラタさん以外にも、リツカさんもいたって…!」

このとき、アラタは聖がアンリと繋がっているという直感を抱いていた。理由としては、顔が似ているからというものだ。

 

「……おい、マスター。もしや。まだ気付いていないのか?」

「何に?今まで会った女の子は皆、魔力高いなとは思ったけど。」

アークミネルバは呆れて、藤丸に助言した。

「良いか?耳を澄ましてよーく聞け。いや、ここは脳内で会話しよう。」

すると、藤丸の脳内に直接声が響いた。

「良いか?今日会った黒髪の女、金髪の女、そしてアリンとかいう痴女。全員、トリニティセブンのメンバーだぞ!!」

「ダニィ!?」

思わず叫んだが、脳内での会話なので、大きな声だしても問題はない。

藤丸は皆に怪しまれないように夕食を済ませると、自室に戻りアークさんと会話の続きをすることに。

 

「良いか。俺は魔道に関する魔力探知能力を持っている。お前が魔王候補だってこと、金髪女にバレてんぞ。そして、やつがデカ女に耳打ちするのも想像できる。」

「最悪だ。俺の学園生活は間違いなく、波乱万丈なことに 。」

「そんなことより、どうやって魔道士としての力を発現するかだ。お前は何が欲しい?金か?食い物か?地位か?」

藤丸は直ぐに「力」と答えた。だが、アークさんは困ったような声をあげた。

「じゃあ、お前に足りないものはなんだ?」

「うーん…分からねぇ。」

「チッ。これじゃ話にならん。まだ時間に猶予はあるだろうから、今日は寝ろ。」

「あぁ。分かった。お休み。」

彼は不思議そうに、アークミネルバを視て索敵範囲を広くする魔法陣を張って寝た。

 

 

次回のFate/Grand Orderは!

 

「だめよ…こんなのいけないわ…」

「俺…リリスのこと、もっと知りたい!!」

「私の出番ほぼなし!?」

「よし。リツカ君にはアリン君と一緒に、課外授業を受けさせて頂こうか。」

※一応、全年齢対象です。

 



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第五話

「魔王候補であるこの俺こと春日アラタは。」

「待て!待て!待て!俺の出番ほぼなし!?」

「悪いな、リツカ。今回のヒーローは俺だ!w」

「なら、せめてあの台詞を。」

「リツカがいなくても、話が進む第5話どうぞ。」

「俺、泣いて良い…?シオシオノパー」

あらすじ完

 

 

さて、今回は春日アラタのみが主役なようだ。彼は魔王候補として、この聖ビブリア学園にいる。…といっても、それだけの理由でこの学園にはいるわけではない。魔王候補として、まだ未熟な彼は元々住んでいた街を文字通り「崩壊」させてしまった。

それを、探知した学園から派遣されたリリスはアラタに干渉した。彼はたくさんの人々とともに消えた大事な従姉妹の聖を探し助け出すために、この学園に入り魔道士を目指すことを決意した。

 

 

「ところで。なんで、お前らが俺の部屋にいるんだ…?」

春日アラタの部屋には三人の少女がいた。

風間レヴィと、浅見リリスと、セリナだ。   

風間レヴィはリリスと同じトリニティセブンの一人で、皆からはニンジャと呼ばれている。

セリナは、アラタと藤丸が転校してきた際に質問してきた取材班だ。                          

 

「取材です!」

「取材っス!」

「私は…こんな時間に女子が男子の部屋にというのが教師として許せなかったので…」

申し訳なさそうに言い訳しているリリスに、アラタがツッコミを入れる。

「いや…リリスも俺と年齢が同じや同じじゃねーか。」

「ですが、立場は教師ですから!」

とコントした後で、アラタはセリナの質問に答える。

「俺の好きなものは…唐揚げだ。」

そこでセリナはからかうように、

「ですってよ!?リリスセンセッ!」とリリスにふる。

「どうして私にふるんですか!?」

 

 

その一方で、藤丸は。

「あぁ。授業が終わって暇だな。」

「やぁ、リツカくん。」

「学園長!何処から来たんですか!?」

「君に、課外授業を課そう!ついてきなさい!」

藤丸は学園長のあとに続いて、屋根に昇った。

 

 

同時刻、アラタの部屋では。

「そうだ、部屋に来たついでに魔道について教えてくれよ。」

「はい。それなら。」

「リリス先生は根っからの、教師ですからねー。」

「あぁやって、上手く勉強に持ってかれると、弱いわけっスね。」

セリナとレヴィの妄想劇が始まった。

この二人は藤丸やアラタと同じくらいに、エロ煩悩なようだ。

「だめよ…。こんなのいけないわ…。私たち、教師と生徒なのよ…?」

「俺…リリスのこと、もっと知りたい…!!」

「アラタ…」

二人の妄想の中で、アラタとリリスが唇を重ね合わせた。

「ーという、夜のレッスンにゆくゆくは……」

「なりませんっ!」

反応が良いからか二人に「いじり可愛い」だの、「萌えリリス」だの言われてしまったリリスであった。

 

 

「なぁ、リリス。コイツは一体なんなんだ?」

アラタは、首にぶら下がってる小さな本をリリスに見せる。

リリスは答えにくそうな顔をしたが、礼儀として答えた。

「アスティルの写本…」

「えぇ!?アラタさんの魔道書があのアスティルの写本などど、そのようなはずが    あろうはずございません!リリス先生!!」

学園長曰く、伝説の魔道書であり、異世界の知識が宿る大層な代物のようだ。

今は寝てるが、アスティルがアラタをこの学園に導いたきっかけを作ったのだ。最早元凶と言われても、しかたない。しかし、アラタはアスティルを手放すわけにはいかない。消えてしまった彼の大切な人=春日聖を探すためにも。

「その写本に関する詳細は分かりません。存在自体が伝説なのですから。そもそも魔道士には『テーマ』という研究概念が必要なわけですが、魔道書はその『テーマ』について記載されてー」

リリスが説明しようとするところで。

ドッ!っと部屋が揺れ、停電が起きた。

「どうやら結界に閉じ込められたみたいだ。しょうがねえなぁ。」

魔道書は光を発した。すると、アラタがリリスの胸を揉み、その顔をレヴィのスカートに突っ込んだ状態でいた。そして、腹の下にはセリナが。

このあと起こることは至極当然 。リリスの鞭のようなビンタでアラタの頬はボロボロだ。

 

 

アラタたちは気を取り直して、ドアなどを調べてみるが部屋の内側からはドアも窓も開かない。

「あぁ、これはお前さんが作った異世界のスモール版だぜ。」

「随分あっさりと凄いこと言ってますね……。」

「よーわからん以上、焦っても仕方ないだろ。こういうときこそ、冷静にだ。」

「ホント動じない人っすね。」

もし、ここが別の漫画だったら「流石アラタさん!そこに痺れる!憧れるぅ!」という台詞があったであろう。                        

 

                      

「つまり、結界で空間が断絶されている…とかでしょうか。長年通ってますがこれは初めてです…」

「まっ、その辺りを考えて脱出するゲームなんだろうさ。調べればすぐわかるレベルだな。」

と言って、アスティルは寝てしまった。

その持ち主である彼は、アスティルに寝る前に光ったまま寝るように言った。これに対して、アスティルは二つ返事で対応してくれた。

「さて、問題は。トイレがこの部屋にないってことぐらいか。」

「それはヤベーイくらい困ります!乙女の一大事ですよ!?」

ここは冗談でも、黄金の鎧を纏った、最も神に近い男を見習えなんて言えない状況だ。

「さて…」

アラタは突然、部屋の椅子を取り出すと。それをドアに思いっきりぶつけてみた。

しかし、ドアはびくともせず、椅子が壊れてしまった。

「アラタ…!何してるんですか!?」とリリスが叫んだ。

「常識はずれな行為がキーだと考えて試しただけだ。こういうヤンキーなことは初めてだ。」

と勘違いしないでくれと言わんばかりに、アラタは自分の行動を説明した。

「誰がこんなことしたか知らないが、目的は誰だと思う?俺だ。そう、相手は俺の力を試している…そんなとこだろう。しかし、問題がある。出来ないことの証明が難しいことだ。」

 

 

Mr夜明けのコーヒーが挑発してきそうな台詞かもしれないが、これがアラタたちに突き付けられた現実だ。    

仕方なく片っ端から魔力の根源を捜してみるが…中々見つからない。

「何もないな…諦めて寝るか。」

「諦めないでくださいよ…!諦めないの、そこでぇ!」

「大丈夫だ、問題ない。名誉を傷つけないように、黙っておくから。」

「なんの解決にもなってなーい!」

とセリナとアラタがコントをしていると、リリスがソワソワしている。まさか……

「いえ…その…」

「「諦めるなんて言っとる場合かー!!」」

「いかんな…ここでリリス程の美少女教師が失禁とか、プロローグから数えて6話目にしてこのSSの方向性が。」

「そんなことありませんっ!あっ…。んっ…。くっ…ふぅ!!んんっ。」

「い、いかん。アラタちゃん、もっこりしそう。これはこれで見てみたい」と思った彼だが、その気持ちをどうにか抑えた。

「因みに…自分も…ピンチっス!」

「シェェェ!」

「セリナもコチラへ…コチラへ…タノシイデスヨ。」

「嫌だぁ!催眠電話ならぬ、催眠五円玉はぁ!」

五円玉を使った、安い催眠術にセリナがかかってしまい…。

良く良く考えてみたら、男1人に女3人。何も起こらないはずが無かったのだ。ここは早々に切り上げなくてはならなくなってしまった。    

「おーこれが出口かぁー。よっしぁー!(棒)」

「わー。チョー、簡単でしたねー!(棒)」

「忍者的にもバッチリだったっスよー。忍びは裏の裏をかけってことっスよぉー。(棒)」

「そんなわけで魔道書よー。お前の力なんざ必要無かったぜー!」

こんなベタな手通じるはずない…と思われたが…。

「ふぁー。ベッドの下が怪しいってもうわかったのか。」

伝説って、こんな簡単に塗り替えられて良いのか?

「ベッドの下だ!」

「OK!忍法ちゃぶ台返し!」

ニンジャによって、ベッドがひっくり返って宙を跳ぶ。

「魔力サーチ!魔力基点発見!」

セリナは、カメラで魔力の基点を露にさせる。

「結界…破壊!」

そして、リリスが大型銃を取り出して魔力基点を撃ち抜いた!!

アラタは思い切って、ドアをこじ開けた。

「さぁ、行ってこい!!」

三人は勢いよく花摘みへバード・GO!!

 

 

「はっはっはっ!!お前のやり方、良いセンスだ。お前の研究する『テーマ』がなんなのか楽しみでならないぜ!!」

 

 

一方で、アラタの部屋の向かい側の屋根には三人の人影が彼らの様子を見ていた。

その影は藤丸、学園長そしてアリンだ。

「どうだい?アリンくん。彼は悪の魔道士になれそうだったかい?」

アリンはいつもの無表情で、「難しいのね…」とだけ返した。

「結界が破られましたね。」

「しかも、凄く適当な方法でだったわ。」

「ふふ…楽しみだね。アリンくん。果たして、彼は君の番になる魔王候補なのかどうか。」

「そうなると、私の番は誰なんだろうな?」

「リツカくん。それは君が一番良くしっているんじゃないかな?夜に部屋に連れていっているのは、知っているんだぞ?」

「何故それをー!?」

「それはもちろん、秘密さ。」

さて、これからどうなっていくのだろうか。

続く

 

 

次回予告

「なんで今日は朝から俺に…?」

「憤怒『イラ』の書庫『アーカイブ』に接続。『テーマ』を実行するわ。」

「私の前であらゆる不浄は許しません!」

「いけません!!」

「魔を討つのが、私の役目なんでね!!」

「アラタぁぁ!逃げろぉぉ!!」



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第六話

「前回ほとんど出番がなくて悲しい思いをした、見習い魔道士である藤丸立香は

アリンや学園長と一緒に、アリンの結界の中で悪戦苦闘するアラタの活躍を視て、魔道の道がなんなのかを知ることが出来た!」

「これだけの量を早口で言えるなんて、すごーい。パチパチパチ。」

「凄いでしょ?最っ高でしょ?天才でしょ?」

「あぁ、そうだな」

「では、第6話どうぞ。」

「チョロいのね。」

「チョロいな。」

 

 

藤丸にとっては、今日もも良い学園日和…なのだが。一つ、おかしな点がそこにはあった。

「ジーッ!」

それはハッキリと分かるぐらいにとても、おかしい。

「なぁー。リリス、リツカ。どういうことだ、これ。」

「密着取材かな……?」

「えーと…多分、密着取材…なのでしょうね?」

 

 

藤丸は急遽、一部のサーヴァントと一緒に食べることなったのでアラタとは別行動をすることにした。

アラタの方では食事中も、廊下も、さらには。

「トイレもかーって!いやいやいや!!」

アラタは慌ててトイレから出て、説教じみた口調で「さすがに、ここはアウト!」と叫んだ。

「確かにさっきのは私が悪かった。だが私は謝らないわ。」

「そこは謝れー!アリンんん!」

「難しいのね。」

「珍しいな。すっかりツッコミ役じゃないか。」

流石のアラタでも、アリンの自由奔放さには振り回されるようだ。また、それ以外にも理由はあるようだ。

「ははー。聖に似ているってのもあるのか?」

「そうかもしれん。」

「魔道書?」

アリンは、アラタの魔道書ことアスティルと初めて会話した。

 

 

一方で、藤丸は。

「で、どうなのマスター?ここでは上手くやっていけそう?」

学食の従業員となったブーディカが、彼女のマスターに話しかける。

「もちろん。20歳になった私からすれば、この制服はただのコスプレだけどね。」

「ほう。それは結構。…でここに呼び出された理由、分かるよな?」

とエミヤも会話に混ざっていると、向こうから先生の格好をした褐色肌の美女がきた。

「はぁい。そこの貴方。隣いいかしら?」

藤丸は、「はい。」と返事をした。この魔道学園は常識に囚われないがコンセプトなので、制服さえ来ていれば異世界の人間だとしても追い出されることは無かろう。

「で、何を見たの?ミドキャス?」

藤丸は教師に扮した、ミドラーシュのキャスターことミドキャスに話しかける。

「良いですか?マスター?これから貴方は一時的ですが、二人のトリニティセブンと敵対関係になります。」

「は?」

藤丸はつい、豆鉄砲に撃たれた鳩のような返事をしてしまった。          

「それは金髪の女の子と黒い髪の背が高い女の子の二人組。特別機関の魔道士として、貴方の前に立ちはだかってくるわ。」

「まさか…死ぬ…なんて未来はないよな?」

「死にはしませんが。最悪、二度と闘えない身体になるかも。それを逃れるキーとなるのは、怒りを抑えること。そりゃ、人間だれしも怒るときは怒ります。ですが、ある程度は怒りをセーブすることはできるでしょ?」

「確かに私はある程度セーブ出来るけれど。」

そこで、エミヤが口を挟む。

「良いか?マスター。私やバーサーカー以外のサーヴァントはともかく、君は怒ると殆ど鬼のような性格へと変貌してしまう。下手すれば…。」

エミヤは藤丸の耳元で囁いた。

「人類の敵になりうる可能性がある。」

こう言われては、誰も反論のしようもない。それもそのはず。藤丸立香はこの世界において、「魔王」に匹敵する存在なのだ。さらに悪いことに、これから敵対するであろう二人の魔道士にそのことを見破られてしまったのだ。

「あぁ、焦れったいな。おい。もし何か起こったら、俺が最初に止めるからよ。まぁ、乱暴になるかもだがな。」

アークミネルバとの脳内会話が始まった。

「お前。意外と良いやつなんだな。」

藤丸は脳内でそう答えると。

「馬鹿が。お前に死なれるとこっちが困るだけだ。」

「いや。理由はともあれ、そう言ってくれるだけで私は嬉しいよ。」

 

 

なお、保健室のほうは……。

「アリン。話があるんだが。」

「婚前交渉?」

「大変魅力的な提案だ。」

いつもの婚姻の話(コント)が始まったのだ。

「真面目にやってください!」

「ああ…やっぱりお前がいると安心するよリリス。ずっと俺のそばにいてくれ。」

こんな冗談半分な台詞を萌え…失礼。リリス先生は本気で受け止めたかの如く、赤面してアリンも「早速浮気された伴侶」とため息をついた。

「俺は二人同時でも一向に構わなー」

「はい、アウト。」と言わんばかりに、リリスの手のひらはアラタの頬にシュート!超エキサイティング!

 

 

アラタは、頬を赤く腫れさせながらもアリンに昨夜の出来事の原因がなんなのか、質問した。

すると、アリンから衝撃な発言が。

「貴方たちを閉じ込めたこと?」

「あれはアリンさんだったんですか!?」

「何故あんなことを!?」 

「学園長に『君の番だよ』って、言われたから。あと、リツカも魔道の勉強のために付き合わせて貰ったわ。」

「あの二人…!」

やはり、アリンはトリニティセブンの中で指折りの、マイペースウーマンなのだろう。

藤丸からすれば、魔道の勉強のためとは言えど、覗いたのがバレてしまったのと同じくらいに都合が悪い。

「で、学園長はどこに?」

「えぇ。心配なく。縛って焼却炉にぶちこんでおきましたので。」

 

焼却炉では。

「これで、食堂のゴミ掃除完了だな。って、学園長!ナゼェこんなところにいるんです!?」

「ムググ」

 

 

「しかしなんで崩壊現象なんて」

「多分こういうことだと思う。」

アリンは、指輪をつけた左手でアラタと掌を重ねる。

すると、指輪が光を発しエネルギーが溢れ出す。

「憤怒『イラ』の書庫『アーカイブ』に接続。『テーマ』を実行するわ。」

まるで、アニメで視るような魔法少女のようにアリンの制服が消え、新たな衣装に。

黒いフードがついた服という、明らかに「魔女」染みた姿へと変わったのだ。

これがアリンの『メイガスモード』だ。

「私のテーマは崩壊『ルイーナ』。だから、ほら。」

リリスはアラタの方を見た。アラタはまるで病人のような青い顔色を浮かべて、苦しんでいた。

明らかに、彼に余裕はない。

「おいおい!コイツの魔力を暴走させるつもりかよ!」

「えぇ。そうよ。制御そのものを崩壊させて貰ったわ。」

つまり、アラタの中に眠る魔王の力を無理矢理引っ張りだしたのだ。

「ぐあああ!!」

すると、学校にあった様々なものが黒い粒子へと変わっていく。

 

 

「黒い太陽!?」

藤丸は、学園長を焼却炉から引っ張り出して助けたあとで、この光景を見て驚愕した。

「いやはや…こりゃまた。アリンちゃんもやるよねぇー。」

「またアリンですか!?」

「このまま学園崩壊!っていうのも燃えるけど。リツカ君は止めるだろう?」

藤丸は「もちろん」と言ったあとに、魔力源である保健室に急行した。

 

 

保健室では、リリスがアラタの暴走を止めようとするがアリンに阻止されてしまった。

「退きなさい!」

「いいえ、させないわ。これは私の魔道の研究のためよ。この崩壊の先に何があるのかを知りたいの。」

アリンがリリスの行為を邪魔する理由をはなしていると壁から。

「なーるほど。そいつを止めればいいだけなのか。」

壁に皹が入り、崩れた。そして、そこから二人の女が現れた。

「こりゃびっくりだ。崩壊現象を止めて帰ってきたら、まさか学園でも発生するなんてな。」

背の高い女の出現に、リリスは驚いた顔をして。

「検閲任務中のあなた方が、何故ここに!?アキオさん!ミラさん!」

そう、二人の女は藤丸が転校した日に彼自身に会った者たちだった。

「崩壊が停止させられている?」

金髪の女ことミラが口を開く。

「私の魔術で、同等の崩壊の力をぶつけて中和しています。」

つまらなさと驚きが混じった表情を浮かべたアリンを無視するように、ミラが続けて言う。

「私の傲慢『スピルビア』のアーカイブに属する、テーマ・正義『ユースティア』の名の元に!私の前で一切の不浄は許しません!!」

「スペルビア…傲慢か。」

息を荒げるアラタに容赦なく、ミラは背の高い女ことアキオに、抹殺命令を下す。

アキオは「あっさり言ってくれるぜ」と軽い口を叩くが、目は本気そのものだった。

足に魔力を集中させると。彼女は宙を舞った。

「いけません、アキオさん!!」

「体が動かない!?」

「悪く思わないでくれよ?恨みはないが。魔を討つのが私の役目なんでね!!」

そこで、保健室の扉が開けられた!現れたのは藤丸立香だ!!

「アラタぁぁぁ!逃げろぉぉぉ!!」

彼はアラタに手を延ばすが……。

「誰だが知らんが遅い!!」

ドッ!とアラタの方から血飛沫があがった。さらに瓦礫が落ちた。

「彼の魔力の消滅を確認しました。ありがとうございます、アキオ」

「やれやれ。」

 

 

アラタは死んでしまったのか?藤丸は、その事実を否定するなにかを捜したかった。しかし、確かにアラタの魔力は見当たらない。そして、藤丸は目の前で知り合ったばかりの友を殺された怒りで魔力が溢れ出してきた。

「なにが『正義』だ。」

「!貴方は…!」

そして、藤丸は怒りを体現するかのように人類悪の魔力を発動させた!!

「アラタは誰も殺してねぇ!!これは、アリンの仕業なんだろ!?なんでアラタを殺すんだよ!!」

怒りのマグマを燃え上がらせる藤丸とは対照的に、ミラは氷のように冷徹な口調で話す。

「そういえば貴方も魔王候補でしたね。」

「中々の殺気だな、おい。そして、不浄な魔力。」

藤丸は怒る龍のように吠えた。

「不浄とかなんだか知らねぇが!お前らは許さん!!」

 

 

次回予告

「マスター!余が助太刀するぞ!!」

「ここは…天国か…?」

「そうだ、俺は…。ネロを…大切な者たちを守るために!あらゆる敵対者の魔力を喰らいたい!!」

「祝え!」




次回で、藤丸とアラタのメイガスモードが見れます。


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第7話

今回はあらすじが無い、単純な覚醒回となっております。



「崩壊現象が再び!?」

「アラタも俺も!魔王なのかもしれねぇが!なにもしてねぇ!!だというのに、アラタを殺したお前らを…許さん!」

「それが私たちの仕事なんでね!!」

人類悪の力を纏った立香の拳と、アキオの対魔の足がぶつかり火花を散らした。

だが、中々決着はつかない。

「貫け!溶岩の息吹き(マグマブレス)!!」

藤丸は拳からたくさんの溶岩を吐く小型の龍を出して、アキオを狙った!

…ように見せかけ、溶岩はまるで誘導弾のようにミラの方へと、飛んで行った。

「フェイントか!」

「さっきから、あちらさんが動かなすぎるんでな!」

保健室に、爆発音が鳴り響いた!

「よし!後は、背の高い姉ちゃんただ一人か。」

すると、アキオは藤丸を嗤ってきた。

「大将がアレくらいで死ぬわけねーだろ!それに私は不動 アキオだ。」

「中々熱い攻撃ですね。ですが。この私にはどんな魔力も跳ね返す能力がありますからね!」

「魔力攻撃が効かなくても、矢なら!」

藤丸は人類悪としての姿ではなく、人類の救済装置こと抑止力の力を纏った姿に変化した。

「そうはいうがよ!こっちもそういつまでも、待っちゃいられなくてね!」

藤丸はアキオの蹴りをかわすと、瞬時に投影した二対の夫婦剣を円を描くように投げた。

さらに、アキオに牽制として長い剣で斬り付けようと試みるが!

「遅ぇ!」

アキオの蹴りのほうが速く、藤丸は攻撃出来ないと判断したためか、防御へ回った。

「剣で受け止めなきゃ、こちらの骨がイカれてたな。」

藤丸が持っていた剣が蹴られたことにより、瞬時に刀身が砂のように崩れた。

やはり、投影魔術による複製品はとても脆い。

それを見るや、藤丸は瞬発的に後ろに下がった。

「どうした?そちらが来るまで、私は待ってやるよ。」

「やれやれ。こっちも本気出さないと一筋縄ではいかないか。」

一人の男と二人の女は睨み合って好機を待つ。

「なら!こちらからだ!!」

藤丸はアキオが来たので、手を後ろにしたまま、突っ込んだ。

突っ込んだと思われた立香を踏み台にしてもう一人の彼が跳躍する。そう、彼は風魔流の影分身を使ったのだ!

跳躍した本体は、ミラに突っ込んだ。

「無駄な足掻きを!」

「それはどうかな!?」

赤と青の四本の線が同時に、ミラを囲む。

影分身のほうは二本の夫婦剣を大きく変化させて、アキオの蹴りと相殺させた!

さらに、本体はミラを斬り伏せた!!

「鶴翼三連!!!」

叩き斬った!ように見えたが。

パリーン!

「なっ!?」

影分身は消えてしまい、本体の手に残ったのは刃零れした二対の夫婦剣だ。

「言ったはずです。全ての魔力を跳ね返すと。」

「投影品も駄目なのか!!」

「ボーッとしてんじゃねぇ!!」

アキオの蹴りが、藤丸に炸裂!!!

ガードとして使用した左腕がこの世とは思えない程の、悲鳴をあげた。

そして、腕の持ち主の身体がふっ飛び。壁に激突してしまった。

藤丸は身体全体に、厚い魔術の膜を貼ることで衝撃を抑えたとは言えど、ダメージは激しかった。

蹴られた腕はほぼ死にかけていて、血も止まらない。

「私の蹴りで砕けたのが片腕だけなんて、大した奴だ。」

藤丸は腕を人類悪の魔力で治癒することを試みた。しかし、治りがいつもより遅い。

「魔力効率が!」

「アキオ!今のうちにー!」

そんな藤丸に止めを刺そうとする、二人の魔道士。万事休すか。

と思ったその時!

「見惚れよ!花散る天幕(ロサ・イクトゥス)!」

       

藤丸としては聞き慣れ、安心するような声が響き渡った。

「邪魔しやがって!何者だ!?」

声を荒げるアキオとは対照的に藤丸を助けた赤い皇帝は静かにそれに応えた。

「余の名はネロ・クラウディウス。お前たち魔道士を、止めに来た者の名だ!」

ネロとアキオが争っている間に、藤丸は回復に専念していると…。

「回復するのは良いが、そのままではダメだ。解決策があるから脳内で会話するぞ。」

 

一方で、カルデアともビブリア学園とも異なる場所では。

「あれ?俺はあのデカイ姉ちゃんに蹴られて死んだ…のか?てかここドコだよ?」

不思議な空間で、アラタは一人呟いていた。すると、どこからかバイオリンの音色が聴こえた。

まるで、吸血種が現れたような警戒音とは程遠く、まるで布団に入ったかのような心地好さがする音色だ。

そして、音が響く方へ歩くと一つの扉があった。

「何がなんだか分からないが……。行くしかなさそうだ。」

アラタはドアのノブを回して扉を開けた。すると、扉の先では一人の少女が可愛いらしい部屋で、バイオリンをひいていた。一つの窓とベッドがあり、周りにはくまなどのぬいぐるみが綺麗に並べられていた。

そして、部屋とその容姿にぴったりな美しい演奏を最後まで終えると、扉を開けて入ってきたアラタに気付き、彼に声をかける。

「ようこそ、『ユイの部屋』へ。」

「ユイちゃんの部屋か。天国じゃなかったんだな。ここ。」

アラタは安心したかのように呟いた。

「えぇ。私がお兄さんを、アキオちゃんの必殺キックから助けたんてすよ?」

アラタはそのことに礼を述べたあと、学園の状況を聞いた。

「お兄さんが無理矢理やらされた崩壊現象のせいで、目茶苦茶です。」

アラタの崩壊中の学園の姿を夢の世界から視た。

「リツカがやられてるじゃねぇか!」

「えぇ。彼もあの二人と闘ってしまったみたい。」

すると、アラタは居ても立っても居られずに立ち上がった。

「これは俺が原因みたいなものだ!もう二度と、あの時みたいなのはごめんだ!」

アラタは、自身の従姉妹である春日聖が自分の目の前で消滅したのを思い出した。そして、それを引き金に、自分を奮起させたのだ。

「お兄さんは熱血なんですね。では、コントロールする方法を探さなくちゃね。」

「もしかして…出来るのか!?」

すると、ユイは「勿論。魔道士ですから」と言わんばかりにニッコリと笑い頷く。

「それには、お兄さんが自分の『テーマ』を見つけて行かないと。」

「また『テーマ』か。」

魔道士を目指すなら、研究テーマは必須条件である。このことはちょうどその頃、藤丸もアークとの会話で聞いていた。

テーマは全てで7つ。「憤怒(イラ)」、「傲慢(スペルビア)」、「怠惰(アケディア)」、「嫉妬(インウィディア)」、「強欲(アワリティア)」、「暴食(グラ)」、「色欲(ルクスリア)」

つまり、魔道のテーマは「七つの大罪」そのものなのだ。

おっと。ここでは沖田さんに声が似た巨人族とかは出ませんので。

アラタはこの説明を聞き、魔道のヒントを掴んだ。

「俺はミラの正義の『テーマ』とは正反対なのが何となく分かった気がする!サンキューな!ユイ!」

 

「グッ!まだか!マスター!」

「あぁ。もう大丈夫。」

藤丸は、ネロの肩から離れる。そして、ミラたちに言い放す。

「今更言うのは格好つかないかもだが。言いたいことがある。お前ら、もしかして『悪の力を持つもの』=『悪』として見なしてないか?」

ゆらりと、歩み寄る立香にミラが応えた。

「何を言うかと思えば。そんなの破滅対象以外の何物でもありません。」

「そうか…。私のあの赤い外套の姿は、どちらかというと『正義の力』なのだが。」

「で、何が言いたい?」

藤丸は、相手を挑発するようにため息をついた。

「アンタら、頭固いなぁ。悪の力を持つ者の中にも、『この世界をどうにかしたい』って思う、『誰かを守りたい』っていう思いがあるのもいる。君たちが、殺した人物にはそれが無いと確認したのか?」

「確認する必要は無いでしょう?」

 

その一言でさらに、藤丸のスイッチに火がついた。

「それはそれは。楽して助かる命が無いのはどこも一緒だな!行くぜ。『暴食(グラ)』の書庫(アーカイブ)に接続。テーマを実行する!!」

すると、魔道書が光を放ち、雪のように白い装甲と青い炎に身を包んだ手のひらサイズな青いドラゴン型ロボに変化した。

藤丸はそれを腰に当てて「変身!」と叫ぶと、どこからともなく音が流れた。

「WAKE UP メイガスドラゴン!イエーイ!!」

青い鎧と白いドラゴンが藤丸を包むと、辺りに白い煙が立ち込めた。

鎧に包まれた藤丸は、いつもよりも碧色の目をしていた。

「この魔力は…!バカな!ここまで魔力が挙がるだなんて!!」

「なんだ、この力…!今の俺は!負ける気がしねぇ!!」

すると、どこからともなく白いフードを被った何者かが保健室に現れた。それは、藤丸の師匠サーヴァントの一人・マーリンだ。

マーリンはフードを取ると、こう叫んだ。

「祝え!時空を超え!人類史を守りし、人類最後の勇者!その名も藤丸立香・メイガスモード!!今まさに、生誕の瞬である!!!」

鋭いものが来たのが、彼には分かった。アキオの足技だ。

藤丸はそれを難なくかわした。そして。

「アンタの動き。読めたぞ。」と挑発。

「嘗めやがって!」

アキオはまた、対魔の蹴りを藤丸に繰り出した。だが、彼にはこれを余裕を持って相殺出来る拳があった!

「なんだと!?色が変わっただけじゃねぇのか!?」

明らかな動揺がアキオに見られた。その隙を逃さず、藤丸は「ところがどっこい。強くなっているんだなぁ」と煽る。

そして、ネロやリリスらが見守るなか。藤丸は、アキオの前から消えた。

「どこだ!?」

藤丸は、アキオの後ろをとり肩を叩いた。

「そこ!……!」

アキオはこちらを振り向こうとしたが、力を失ったかのように倒れた。

「!アキオに、何をしたのです!?」

藤丸は「さぁ?」と言った後で、速くて重いパンチをミラに浴びせる。

ミラは、魔力を込めたパンチをどんな魔力をも跳ね返す魔力で受け止めた…ように見えたが。

ミラの魔力の結界は、あっと言う間に消えた。

「なっ!?」

「チェックメイト。」 

藤丸は、あのミラとアキオのコンビとのリベンジマッチに勝利したのだ。

「どうして殺さねぇんだ?」

不思議がるアキオに、藤丸が答えた。

「私は春日アラタを殺すのには、反対だ。だが、あの黒い太陽を止めると言うなら。アンタらと利害は一致する。」

「だ、誰が貴方なんかと。」

ミラが相変わらずカタイこと言うので、彼は条件を付けてみた。

「協力してくれるなら、アンタらから奪った魔力の半分をやる。」    

「!?」

「さて、どうする?」

そう、藤丸が触れた二人が倒れたのは。魔力を吸い上げるタイプのメイガスモードに触れたからだ。

 

そして、このメイガスモードは術者の任意で奪った魔力をまた元に戻すことが出来るのだ。

「何故魔王である貴方が、私たち対魔の魔力に耐えれるのかは癪ですが。」

「仕方ねぇ。協力するから、さっさと返せ。」

彼は彼女らの渋々とした承諾に頷くと、魔力の塊をミラとアキオの体に入れた。

やっと動けるようになった二人は、藤丸と肩を並べて黒い太陽を睨む。

「さて、行こうか。」

二人が頷くのを合図に、三人は魔力を一つの玉へ変えて、それを黒い太陽へとぶつけた。

これは質が高めな魔力の塊なため、黒い太陽を消す威力は十分ある。彼らはそう考えて全力でぶつけたのだ。

そして、白い煙が空に発生し、崩壊現象で消えてしまった生徒たちの一部が、復活を遂げた。

 

「やったのか!?」

「いえ…まだです。」

「チッ!半分残りやがった!」

「全力だったのだが!?」

すると!下から何かが光と共に飛び出した!

「夢の世界から脱出ぅ!」

アラタだ。某警察署が目の前が住所な防衛チームのような叫び声を挙げながら、生存を示したのだ。

「アラタ!生きていたのですか!?」

「死んだかと思ったんだぜ!?」

驚いた藤丸たちに、アラタはユイに助けられたことをみんなに説明する、

「アキオ。どうやら失敗したようですね。」

「仕方ないだろう!ユイが庇うなんて思わないし!」

「では今度は確実に。」         

「魔力を吸われたい人がいるみたいだねぇ。」

藤丸とミラ&アキオの空気が再び緊張状態へと変わりそうになったところで。

「ちょいタンマ!」

本当に決闘になりそうになる前に、アラタが止めに入った。

「俺が崩壊現象をコントロールすれば、俺が殺されずにかつ事を荒げずに済むだろ?」

魔道は全ての可能性を否定しない。その考えならば、崩壊現象をコントロールすることも出来ないわけじゃない…。しかし、そんなことが出きるのだろうか?

「詭弁ですね。私のユースティティア(正義)はそんな言葉では揺らぎません。」

「まだ言うか!」

少し喧嘩腰になった立香を静止するように、アラタが前に出る。

「なら。もしコントロール出来なかったら容赦なく倒してくれ。」

アラタはこともあろうか、賭けに出たのだ。普通なら、「どこからその自信が来るんだ?」と問いただすところだが、藤丸もアキオも「こいつならやるかもな…」と考えた。

「良いぜ。出来たら許してやる。」

「アキオ!…ハァ。分かりました、良いでしょう。ただし、少しでも失敗したら本当に容赦はしませんよ?」

すると、アラタは「いいぜ」と返事をした。

 

「魔道書よ!俺のテーマを言うぜ。」

どうやら、アラタのテーマが決まったようだ。

「いいぜ!気に入ったら力を貸してやるぜ!」

「あぁ。俺のテーマは。支配だ!」

アスティルを縛っていた、運命の鎖が解き放たれた!

アスティルは声を高らかにして笑った。

「確かにお前の心、存在、本質、魂の意味。それは真に『支配』だ!素晴らしい!!」

そして、その『支配』は傲慢のアーカイブにある。彼はミラの魔道をヒントにしたのだ。

藤丸は二人と対峙したので彼女たちの性質は分かる。

例えるなら、アキオのが『龍』でミラのが『真珠』に当たるだろう。

「傲慢(スペルビア)の書庫(アーカイブ)に接続!テーマを実行する!!」

「!凄い魔力だ!!」

「これがアラタのメイガスモード!」

「ふむ。これはこれは。私たちは撤退したほうが良さそうだ。」

「?」

「あぁ、ネロはマーリンと一緒に離れた方が良い。私なら耐えれるから。」

このとき、藤丸は崩壊とは少し違った嫌な予感がしていた。ネロとマーリンはずらかった。

「ここに溢れる全魔力を支配して、打ち消すぜ!アスティル!」

「あいよ!」

「崩壊現象なぞ消え失せろ!」

アラタは手を挙げてこう叫んだ。

すると。

藤丸や逃げたサーヴァント二人とミラを除いた、女生徒たちの服が破れさった。

「………。」

「あれ…?」

 

リリスは赤面して叫んでしまい、アリンは冷静に解説する。

「これはビックリ。メイガスモードの強制解除。」

「まぁ。マスターらしいっちゃらしいが…。」

「てか、どうしてミラとリツカは平気なんだよ!?」

「あぁ。嫌な予感したので、あの魔力が放たれた瞬間に吸収して無害化したから。」

「…奇遇ですね。私も嫌な予感したので彼の魔術を水晶によって反射させてもらいました。」

「えっ?反射?」

藤丸がそう聞き返そうとすると、アラタの服もリリスらと同じように破けた。

「む?」

「」

藤丸はその光景に、苦笑するしかなかった。藤丸も男だ。男の裸を視ても嬉しくはない。

「いやぁぁぁ!」

「行きますよ、アキオ」

「見逃してくれたってことは、認めてくれるってことかな?」

相変わらず、固い表情でアラタを見るミラ。そして、藤丸とは正反対で藤丸は自身が苦手とするタイプだと悟った。

「まぁ。崩壊現象も止まったわけですし。不本意ながら退くさかありませんね。ただ、次は許しませんから」

そう、ミラは台詞を吐き捨てて行った。

「やれやれ。嵐が過ぎ去ったな。学園の生徒たちは、消滅者が0になったようだ。」

「なんとか命拾いしたみたいだな…一件落着!」

「…と思っていたのですか?」

「ゲッ。」

リリスは某伝説の戦闘民族の如く赤い髪を逆立て、目を白くし、吊り上がらせていた。

「なぁ。リツカ!助けて…っていねぇ!」

藤丸は、リリスから溢れる殺気を察知してトンズラして逃げていた。

「アラタぁぁぁ!!!」

「ふぉーお!!」

学園中に、一人の少年叫びと一人の少女の怒声が鳴り響いた。

 

次回のFate/Grand Orderは!

「禁断の…!」

「ババーンと見せてくれよ、リリス。」

「そんな馬鹿な!?こんな簡単に、錬金術式が使えるはずありません!!」

 



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第八話

「てぇんさい魔道士こと藤丸立香は、前回ついに天才的な直感と才能によってメイガスモードを発現。」

「ほとんど俺のおかげだけどな。」

「こんなうるっさい本は置いといて」

「俺もメイガスモードを発現したときの話を」

「うんうん。アレはスケベだったな。今度も可愛い娘ちゃんに」

「貴方たちはぁー!!」

「そんなわけで、第八話。よろしくな。」

あらすじ完

 

「ぷはーっ、生き返りますね~」

聖ビブリア学園に通う生徒の一人・セリナが露天風呂がある屋敷の前で、浴衣姿の状態で歓喜の声を挙げた。

「この一杯のために生きてるッス。」

カルデアからの来訪者・藤丸立香もたまたま会ったこの二人と同行。

そして扉を開けようとすると。

「いけません!絶対に駄目です、アラタ…!」

「そこをなんとか!!な!?一回だけだから!」

と何やら意味深であろう言葉が。

「これは…?」

藤丸は愉悦のあまりに顔が歪んだ。

「ここって確かリリス先生の部屋…でしたよね?」

「そして男の声は間違いなくアラタさんッス。」

藤丸は「うひょー!立香ちゃんもっこりぃ!!」というのを必死に抑えつつ、

セリナ&レヴィのコンビと一緒になって、耳を澄ませる。

「駄目だったら駄目なんですってばっ!!そういうのはちゃんと段階を踏んでからでないと…」

「もしかして…」と呟こうとした私より早くアラタが声を出す

「大丈夫!上手くやるから!な?いいだろ、リリス!?」

「こりゃ、間違いない……」

「もしやっ…!?」

「エロエロッス」

 

妄想タァイム!

「いけませんアラタ…絶対に駄目です…」

リリスはほぼ半裸な浴衣姿で困った顔をする。

「そこをなんとかな…?いいだろ?」

強引だがどこかに優しさを醸し出すアラタ。

そこでは、先生×生徒の…

 

「禁断の…」

「禁断のッ!!!」

「セッッッ!!!」

三人は妄想に夢中で、リリス先生が扉を開けていたのを拳骨されるまで気付くことが出来なかった。

「「「エッチな話かと…」」」

「だぁ!違います!」

「じゃあ、なんの話ですか?」とセリナが聞くと。

「ほらオレもようやくテーマを見つけて魔法使いパワーを発揮したわけだろ?」

「あぁ、あのスッポンポン魔術のことですね。」

アラタは自慢そうにうむ!と唸ると自身が魔道士になったことを確認し、聖を取り戻せると声を挙げて拳を合わせる。

 

 

「なるほど、それがアラタが魔道士になろうとしたきっかけというわけか。」

「おちゃらけた人かと思いましたが、意外と理由がシリアスそのものッスねー。」

「ところで、リツカさんの理由は知られてないですねぇ。」

藤丸は自身がいる世界のことを話すことにした。

藤丸の世界に人類が今まで歩んだ文明や、歴史を否定しようとするクリプターとの争い。それを止めて一緒に闘う仲間を救える力を得るために魔道士になったことそして、地球には藤丸以外の生きていてクリプターと闘える人間がマシュ以外にいないことを話した。

「リツカさんも中々…」

「あぁ、本当に辛い闘いだよ。そして、私はこの世界にあるであろう願望機・聖杯を探しているというわけだ。しかし、アラタ。さっきのアレは」

すると、アリンが息子を叱る母のような口調で言った。

「旦那様ったら、ちょっと魔道書を使いこなせただけで調子に乗って試そうとしたところをリリス先生に怒られてたのね。」

アラタは図星と言わんがばかりに「うっ」と唸る。

藤丸は「なるほど」と苦笑いしながら、納得した。

「やっぱ大変なのか…」

リリスは当たり前ですとだめ押しをした。

「学園長はトリニティセブンに会って…なんだっけ?手籠めにしろとか…?」

藤丸たちはアラタにツッコミを入れた。「何故そこだけしっかり覚えているの?」と。

 

 

「そういうば、トリニティセブンはレヴィ、リリス、アリン、ミラ、アキオの五人しかこっちにいない。あと二人はどこへ?」

そんな疑問をぶつけるアラタにセリナが答えた。

「ユイさん…って方がいるんですがほとんど学園では。」

「ユイなら会ったぜ?」

仕事がハエーイ!と叫びたくなるくらいのスピードだ。しかもユイは特殊で夢の中てましか話せないのだとか。

「アラタ、豪運だなぁ。ところで、最後の一人は?」

「二人が来る前に失踪したまま行方不明です。」

そのとき、いつもニコニコしているセリナの顔が岩のように強ばり、カメラを力強く握っているのを藤丸は見てしまった…。

「おっ。この旅館こんなものがあるのか。皆!夜は混浴風呂っしょー!!」

 

 

そして、急に藤丸の横に現れたのは。

「ううむ、もう我慢出来ぬぅ!マスター!余も混ぜよ!」

「あぁ、ネロか。」

ネロも話し合いに参加し始め、暫くすると風呂に入ることにした。

藤丸たちは、タオルだけを巻いた女たちを期待していた…が。

 

 

「畜生めぇぇ!」

「アラタ閣下…残念な気持ちは分かります…」

どこかの国の軍人らみたいなノリで、温泉の光景に対するコントをした。

タオルだけを巻いた美少女なんていない。…いるのは…水着美少女たちだけだ。

 

 

「フッフッフッ。残念だったな、トリックだ。余の本当の肌はマスターにしか見せぬ故な。」

ネロからの一言に対して

アラタは悔しそうに、「お前ら何もわかってねぇよっ!」と叫んだ。

すると、一つの声が。

「貴方は本当に不浄な男ですよね。」

ミラも風呂に入ろうとしていたのだ。

藤丸からすれば、ミラのような参謀タイプは味方ならまだ良いが一度敵対すると苦手になる。

「げっ、ミラかよ。」

「ははっ!今度私の裸を見た分思いっきり殴らせろよな。」

「って待てよ?それって私も入ってないか?」と藤丸が質問すると「もちろん」とアキオは返した。

「こっちまで標的かよぉ!」

「いやいや冗談じゃないぞ。」

「行きましょう、アキオ。こんな男たちと一緒に風呂なんて子供が出来てしまいます。」

 

こうなってくると、藤丸は女が苦手なよく喋る赤鬼の気持ちが良く分かる気がした。ようやく嵐が去ったのを見て藤丸は安堵した。

「ううむ。マスターもそうであろうが、奴らのことはどうも好かぬ。顔は美しいのがもったいない…ッ!」

「リツカさん、もしかしてネロさんって」

「うん。いつものことだから気にしないで」

少しの会話で、ネロの性癖に気付くセリナの勘は馬鹿に出来ない。

「しかし、性格はおっかねーのに水着は可愛いのな。いずれはあの二人とも何とかしないといけないんだろ?」

「私のメイガスモードなら、ミラの魔術も吸収出来るのだが。」

「あっ、そう言えばそうッスねぇ。」

「そういえばお前、ミラと一緒に平気な顔して俺の魔術を防いだもんなー。」

藤丸もどうにかして、アラタ強化のヒントを考えるが見つからずにいた。

すると、セリナが手を挙げる。

「はいはーい。あのスッポンポン魔術をちゃんとつかいこなしてみる、というのはどうでしょう?」

つまり、今のままでは魔力に散らばりがあるので特定の人や物だけを狙うということを提案したのだ。

 

 

「だとすると、銃だなぁ。そんなわけだ、リリス。あの銃くれよ。」

「あの銃は私の魔術を用いて物質化していますから他の人は使えないんです!」

この男、魔術習得が簡単だと言うのか!?と思ってしまった藤丸だが…約一名、我が儘スキルでなんでもやれちゃう人が近くにいたのを思い出した。

「あと、基本的に書庫とテーマが同じでもない限り他人の魔力のコピーは不可能ッス。」

アラタは「マジか」とため息をつくが…。

「魔術のコピーが出来なくても、トリニティセブンに会うだけでも意義はあるかもです。」

どういうこと?と首を傾げていると

「そこでそれぞれの得意な魔術を見せてもらうんです。」

「なるほど!俺がテーマを見つけたのも、ミラのを見て思いついたものだしなっ!」

「私はアキオの龍がヒント…かな?」

「なんだ?アレはその場で考えたものだったのか?流石だな。」

藤丸はミラとアキオと闘っていたとき、無我夢中だったのでぼんやりだがアキオの龍が自分の魔力と似ていると思ったことだけは覚えていた。

「ってなわけでババーンと見せてくれよ、リリス。」

「待て待て。魔術はそんなに見せびらかすものでは…」

リリスは顔を真っ赤にして「そうです、そう簡単には…」と後ろを振り向いた。

「そこをなんとか!ちょっとで良いんだ!なっ?」

「旦那様の言い方がちょっとエロい。」

このあとも何度かアラタはリリスに頼み…しまいには頭を下げてまで頼んだ。

これには、リリスを始めとした皆が驚いた。

そして、もうこうなったらアラタは折れない。

「聖を救うためならオレは何だってやる!!こうしている間にもアイツがどうにかなるかもしれない…」

鋼の決意を宿した少年は続ける。

「オレにはそれが我慢出来ない!オレに出来ることならなんでもする!!この通りだ!!」

ある探偵事務所の元所長曰く、「男の仕事の8割は決断。残りはおまけ」だそうだ。

まさにこれがそうだとしか言えなかった。

これには、さすがのリリスも折れた。

「まったく。仕方無いですね。貸しにしますから、授業も真面目に受けるんですよ?」

「マジか!恩に着るぜ!!」

アラタは兎のように、リリスの胸に飛び込むように抱き付いたのだ。

もちろん、リリスはいつものように、「きゃああ!」と悲鳴を挙げてはアラタの頬を叩いたのであった。

ネロたちは少し感心気味にこれを見ていた。

 

 

「アラタ。もう少し格好良くしまらなかったのか?」

「うぅ…」

リリスは魔道書を一つの銃に変えて、それをアラタたちに見せた。

「おおー。」

リリスの魔術は錬金術そのものである。つまり、金属の生成を変化させることが出来るのだ。

ある意味最っ高な発明品だ!

「よーし!魔道書よ、錬金術で銃になってみてくれよ。」

リリスはこの一言に怒鳴った。

「ちょっとアラタ!?錬金術式を使いこなすには!」

リリスは、錬金術について講義しようとしたが。

「どれ、ちょいとやってみっかぁ。プロセス1。クリア。2、3ともにクリア。」

皆が見ていると、一瞬にしてアラタの魔道書ことアスティルは銃へ。

リリスが長い修行を経て得たアレを一瞬にしてだ。リリスからは、落ち込みと驚きが混じった感情しか出なかった。

「そんなバカな!?こんな簡単に錬金術式が使えるはずありません!!」

これには藤丸もつい、嫉妬してしまいそうになった。

「まぁ、待てよ。これでも完全ってわけじゃねぇさ。私はリリスの魔術をアラタ用にアレンジして、パクっただけだからな。」

つまり、アラタは他の魔道士の魔術すら使いこなせるかもしれないということだ。

だが、この時のアラタ本人はよく分かってないようだ。

To Be Continued

 

次回予告

「世界が…『寝る』!?」

「ユイを消滅させます!」

「もしかしてレヴィが相手してくれんのか?」

「ユイさんっ!?」

 

 



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第九話

「前回メイガスモードの力の使い方を復習した春日アラタは、リリスの錬金術をコピーしてしまったのでした。」

「ところで、春日アラタよ。貴様もしや。星の戦士じゃあるまいな?」

「それ以上は止すんだ!」

「そのうち、敵を吸い込むぞ。」

「テキトーなこと言うなよ!」

「主役よりも忍者の活躍が見れる第9話どうぞッス」

あらすじ完

 

「うーむ、まさかオレに魔術のコピー能力があったとは。もしや、このままいけば全ての魔術が使えるグランドメイガスに!?」

「なれません!」

アラタとリリスはいつもの漫才を行いながら、廊下を歩く。

アラタは前回、確かにコピーは出来ていた。しかし、それは「器」のみをコピー出来るに過ぎず未だに謎多き能力であった。

アラタは何気なく教室のドアを開けると。

そこには、皆が寝ているところをただ一人起こす男がいた。藤丸立香だ。

「おい、セリナ。起きろぉ。ってこれ何回目だ?」

「おっ、どうした?」

「それがさ、見た通り。皆急に寝ちまったんだよ。。」

藤丸はダヴィンチちゃんを始めとした、サーヴァントたちにも呼び掛けたが返事は得られなかったのだ。

「ふむ。リリスの授業の集団ボイコット…?」

「えぇ!?そんなっ!!」

アラタのボケに、リリスが本気で突っ込まずに便乗してしまうのは珍しい。

なお、ようやく突っ込んだのは忍者ことレヴィだ。

「これは、ユイさんが引き起こした崩壊現象ッスね。」

「また崩壊現象?この学園は、何回崩壊のピンチに見舞われれば気が済むんだ?」 

そして、藤丸たちは学園長室に呼ばれダンジョンに向かうように言われる。

目的はもちろん、崩壊現象の阻止だ。

「さて、協力プレイと言うわけなのですかね?」

「そう!というわけで…だ」

まさか学園長も協力を…と思いきや学園長が扉を開いて言ったのは。

「早速、眠ってるカワイコちゃんたちにイタズラしに行こうっ!」

「夜は焼き肉っしょーっ!ハハハ!」

 

こんなノリになりつい、藤丸も「スケベ案件ですか。私も動向しましょう」と返事をしたのがいけなかった。

彼を含めた、変態魔道師三人衆の頬にリリスの掌が飛んできたのだ。

 

「ふざけるのもいい加減にしてください!」

「「「申し訳ございません」」」  

こんな漫才を、馬鹿馬鹿しいと冷めた視線を向ける者がいた。

「行きましょう、アキオ。これ以上の話は時間の『無駄』です。」

彼女は『無駄』だと、わざわざ強調して言ってきたのだ。

ミラ達は崩壊現象を止めに行くが。藤丸は声でそれを止めた。

「待ってよ。協力はしないの?」

「私たち以外は必要ありませんから。足手まといです。それでは。」

そこには、一切の感情も込もっていなかった。鉄はそう易々と、熱せられるわけではない…ということだろうか。

そして、ミラはアラタをチラっと睨んでから学園長室をアキオとともに後にした。

「なんだ、惚れられたか?」

「多分違う。」

「旦那様ったら、とっても自意識過剰ね。」

アリンの言う通りだ。と藤丸が頷いていると。

「アリン、もっと自分を見せていいんだぜ?」

「自分…つまり裸を見せるとか?」

「それはダメですっ!」

先ほど、アラタについて色々言ったが。アリンのマイペースもマイペースであった。

「そう言えば、学園長。先ほど、レヴィからこの崩壊現象がユイって娘の仕業だって聞いたのですが…マジですか?」

学園長は椅子によりかかると。「本当だ」と単刀直入に申し上げてしまった。

学園長によると、魔力は学園の地下から溢れてそれも凄い量なのだとか。

すると、レヴィが声を荒くした。

「やはりユイさんっスか!?」

「俺が夢の中で出会った、リリスの次にスタイルの良いあの娘か?」

「スタイルってお前…」

「スタイルで覚えないでください」

つまり、今回はユイの魔力が暴走してしまっている。という訳である。

しかも地下のダンジョンに行かなければならないのだとか。

そして、我々は地下のダンジョンに行きユイの暴走の歯止めと救出を目的に行動を開始した。

 

地下で待ち構えていたのは思った以上に、不思議な空間であった。

「普段はごく普通の、巨大な迷宮なのですが」

「巨大迷宮か。ここにあるのとは別のを、サーヴァントたちと一緒に突破した思い出があるな。」

「リツカ、お前。さらっと凄いこと言ったな。」

藤丸は巨大迷宮と聞いて、過去に行った極寒の異聞帯のサーヴァントが生み出した物を、思い出しそれについてざっくりと話した。

「…とまあ、本当はもう少し話していたいがそうも行かない。ユイのことについて話して頂けると助かる。」

するとレヴィが話す。

「ユイさんは世界の裏側。つまり、夢の世界で過ごす魔道士ッス。そして、それこそが彼女のテーマと言っても、過言ではないってことッスよ。因みにそれが原因でユイさんは封印されてるッス。」

「それがユイのテーマか…。しかし、『封印』というのが気になるな。」

「彼女は、枢機卿(カルディナリス)クラスの魔力を持つッスよ。」

「それって、どのくらい凄いんだ??」

「学園だと学園長の次のレベルッス。」

藤丸とアラタは「ダニィ!?」っと、驚いた声を挙げてしまった。

そして、そんな魔力が暴走しているということは「世界」に危険が訪れたということだ。

「世界が寝たら…」

「消滅ッスね。」

まさに、「世界を破壊するアンコトロールスイッチ」としか言いようがない。

「どうやらアラタに出会ったのが…魔王の力の影響を受けてしまったのが、原因である可能性が高いでしょうね。」

「」

アラタは責任を感じたのか、黙って自身の掌を眺めた。

すると、いつもより気合いが入った表情でレヴィが急かした。

「ミラさんとアキオさんは見つけ次第、ユイさんを消し飛ばすに間違いないッスから、急ぐッス!」

「あの鉄女コンビめ…!」

藤丸は思わず叫んでしまった。

「リツカさん、落ち着いてください。崩壊現象の完全除去が、彼女たちグリモワールセキュリティの任務の一つですから。」

「すべての不浄を消し去るための…魔道団体。」

「アラタさんとリツカさんはこの先危険なので、メイガスモードでお願いするッスよ。」

「お、おう。。」

「あぁ、感じるぜ……魔の気配をな!」

すると、魔物の大軍が現れた。構成としては数体のスケルトン、シャドウサーヴァント、コブリンの計18体だ。

「この間の銃が役立つ時だ!」っと、アラタは声を挙げたが……何も起こらない。

「」

「一体…どうしたと言うのだ?」

「早く銃を出すっスよ。」

すると、餅を喉でつっかえてしまったような表情を浮かべたアラタは言った。

「リリスよ…どうすりゃいいんだっけ?」

テヘペロしながら「忘れた」と言ったのだ。

「だらしねぇなぁ…」

「取り敢えず近寄れないようにバリア張っておく?」

「ええ、よろしくッス」

アリンは魔物が嫌がるバリアを張った。すると敵の団体は動きを止めてしまった。

すると、アラタが「出来た」と言って相手にビームガンのようなものを向けたが…。

「あれ!?なんも起きねーぞ!?動け!動けって!!」

「さては戦闘経験薄いな、オメー。」

「畜生めぇ!」

自棄になった彼は地面にそのビームガンを叩きつけた。すると、、

ビームが出て来てリリスとアリンの服が破けたのだ。

咄嗟の出来事で藤丸も驚いた顔をした。

「これはコイツが何も反応しなくてだな!!」

「役立たず」

「って、コントしてる場合かぁー!」

魔物たちが彼らを囲んできた。

万事休すか…と思われたその時!

「危ないから伏せててくださいッス。」

レヴィがクールな口調でそう言ったと同時に、伏せた皆が見たのは。瞬時に切り刻まれてる魔物たちであった。

「先を急ぐッスよ。」

「なんか、スゲー。」

「レヴィさんの実力は世界的に見てもトップクラスてすからね。」

 

藤丸たちはレヴィに続いて進むと、広いところに出た。

「ここから先は至るところに罠が。」

「よし、急ぐか。」と藤丸が足を踏み入れると。「ガコッ」

「……遅かったッスね。」

「やっちゃったぜ☆」

「やっちゃったぜ☆じゃねぇよ、バカ野郎!」と言わんばかりに巨大な鉄球がこちらに転がってきた。

「取り敢えず。……ごめんなさぁぁい!」

藤丸は皆と走りながら、皆に謝った。

逃げたは良いが先は…行き止まりになってしまった。

「アリンさん!」

「ルイーナの名の元に破壊するわ。」

「こうなったのは私が原因だ。私もアレを壊すとしよう。」

「分かったわ。」

すると、アリンは魔道書『ラグナ・ユグドラシル』を取り出した。

「テイワズ『勝利』」

藤丸も負けないと言わんばかりに、巨大な暴食『グラ』のドラゴンから放たれた炎の塊をを鉄球にぶつけた。すると、鉄球は欠片どころか灰になって消えた。

藤丸とアリンはお互いにハイタッチした。

リリスたちは取り敢えず進みながら、まだ未熟なアラタにレクチャーした。

先ほどのアラタの不発魔術の原因は、術式と詠唱の二つを覚えていないことだ。

そんなこんなで、最深部までようやくたどり着いた。

「結構歩いたなぁ。敵は楽なのだが」

「!来るわ」

すると、目の前で壁が割れた!

「この魔力は…!」

藤丸たちの他にここを目指す者たちとは…勿論、あのコンビしかあり得ない。

「あん?真っ直ぐ来たのに、なんで先を越されてたんだ?」

「レヴィさんが、この迷宮に何度も、足を踏み入れてるからでしょう。」

「まっ、まっすぐ…」

青い顔をしたアラタの反応に、アキオはニッコリしながら。

「ああ…まずは床を破壊してだな。後は一直線に壁を破壊だ!」

これをケラケラ笑いながら言うのだ。

藤丸はこの間の攻撃に耐えたが、やはり威力は侮れない。

「さていきますよ、アキオ。レヴィさんがここにいることが、この先にユイさんがいる何よりの証明…!ユイを消滅させます!」

 

やはり、彼女たちと藤丸たちではユイに対する構えが異なるようだ。

「させるか!」

藤丸は思わず、二人の目の前に立ちはだかった。

そんな彼をミラは睨む。

「また貴方ですか。」

「皆。ここは俺に任せて先に行ってくれ。彼女たちは……俺の逆鱗に触れた。」

すると、レヴィが手を挙げながら。こちらに近づく。

「ここは自分に任せるッス、リツカさん。」

「レヴィ!?」

アキオはその光景に血を滾らせたような表情を浮かべた。

「もしかして、レヴィが相手してくれんのかい?」

レヴィも応える。

「こういう熱い展開も、ちょっと面白いッスよ。」

「確かに!私もレヴィと一度本気でやってみたかったんだよー!」

アキオは足に魔力を纏わせて、準備万端の状態だ。いくら速いレヴィでも当たったら…!と藤丸は考えたが。レヴィの横目は「本気」そのものだ。

「わかった。皆行こう。あと、レヴィ。死ぬなよ?」

「勿論ッスよ!」

レヴィの身を纏う魔力が膨れ上がるのを背に、藤丸たちはユイの部屋に向かった!

「インウィディア『嫉妬』のアーカイブに接続。テーマを実行するッス!」

レヴィの口に咥えられた巻物が風と共に展開される。そして、魔力から生成された強い風がアキオたちを襲った。

「なんつー風だ!」

すると、アラタの目の前にミラのスカートの中に隠れていた兎柄のパンツが。

「ウサギ…パンツ…?」

すると、ミラは顔を赤くしてアキオに助けを求めた。

「アアアアキオっっ!は、早く終わらせてこの不浄な男の眼球をとっとと潰してください!」

アラタは慌てるミラを見たことがないので、ある意味新鮮な物を見させてもらったことになってしまった。

「大将は純情だなぁ。」

「いいから早く!」

「ささっ、今のうちにジライヤ♪ジライヤ♪」

我々はレヴィを残して、ユイの部屋に走った。そして。

「先ほどは少しふざけたが、ここはそうも行かないか。」

ユイの部屋にたどり着いた時。私は凄まじい魔力を感じた。

「開けます。」

大きな扉を開けた先で我々が見た光景は…一人の少女が裸のまま、ドラゴンに守られているというものであった。

「ユイさんっ!?」

「え…!?ユイ!?姿が違うんだが!?」

「!?」

To Be Continued

 

次回のFate/Grand Orderは

「コードD…幻想が実体化した存在―やはり、顕現してましたか」

「不味い!あのドラゴンの魔力が、アラタのに干渉してやがる!」

「ニンジャ…銃を使う。俺に戦うための方法を教えてくれ。」

 



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第十話

「前回の聖ビブリア編は、どこかの鉄女とは違って心優し~い天才魔道士であるこの藤丸立香に変わって」

「回りくどい説明は抜いて言えば、ニンジャが二人の相手を取っている隙に。俺たちは、ユイを止めに行ったってことだ。」

「回りくどい…だと…?」

「…コホン。そんなわけで、第10話をどうぞよろしくお願いいたします。」

「途方に暮れてる間に、リリスに台詞とられた…。」

あらすじ完

 

「ユイを見つけたのは良いが…」

藤丸はユイの様子を探っていると、アラタが感心した表情でこう言った。

「…こっちのロリ巨乳も、大変けしからんのだが」

もし藤丸がコーヒーを飲んでたら、今頃彼の目の前の地面はコーヒーでずぶ濡れになっていたであろう。

そしていつものように、リリスがそれを窘めるのだった。

すると、ユイを囲むように現れたドラゴンの目が光ったのだ。

その魔力はまるで、何もかもを飲み込むように深く。そして、怪談で有名な井戸の穴のようだった。

「ぐあぁぁ!?」っと声を挙げたのはアラタだ。

「アラタ!?」

「旦那様!?」

心配するリリスとアリン。そして、アラタの背からは翼のような魔力の塊が発生していた。

しかし藤丸は、メイガスモードの効果のお陰か、何も影響は無かった。

「不味い!あのドラゴンの魔力が、アラタのに干渉してやがる!」

「そんな…ではアラタは」

藤丸たちがアラタの身を案じている隙を狙ったかのように、龍の息吹きが彼らを襲った。

そして、それを障壁を使って受けたのは。

「アリン!!」

アラタは自分を庇ってくれた仲間の名前を叫んだ。

ドラゴンがアラタを飲み込もうと迫る。

「しつこい野郎だ!リリス先生!援護頼む!」

「はい!認識顕現『リアライズ』”バスターモード”!」

藤丸の指示とともに、リリスがドラゴンの頭部を撃ち抜いた。

さらに追い討ちをかけるように藤丸がドラゴンの黒い胴体に、青い炎を纏った飛び蹴りを入れた。

そのまま敵のドラゴンは壁に激突したのだが。

「やった…のか…?」

「アラタの期待に応えれなくてすまないが…まだまだだ。」

すると、大きな声が響いてきた。

「おー!やってるやってる」

先程までニンジャことレヴィと闘っていたはずの、アキオとミラのコンビが来てしまった。

「お邪魔するぜぃー」

「コードD…幻想が実体化した存在―やはり、顕現してましたか」

ユイにまとわりついているドラゴンの説明を行っている二人の魔道士。

二人とも、親の仇を視るような眼でドラゴンを見つめていた。

すると、アラタが違和感に気がついた。

「お前ら…ニンジャは…?」

「二人がここにいるということは…まさか、レヴィさんは」

と何か言いかけたリリスの胸を揉む者が。

「呼ばれて飛び出たっス」

レヴィだ。藤丸はその光景を視ながら。

「レヴィがそう簡単に、死ぬわけないじゃないか。」と茶化す。

豊かな胸を揉まれたことに気付いたリリスは、絶叫を挙げた。

 

「おっと。ドラゴンさんを鎮めなきゃいけないんだった。」

藤丸はドラゴンのほうを睨んだ。さて、どう動くのか。

「一時休戦ってことかしら…?」

先程まで倒れていたアリンが立ち上がって、アキオに質問した。

「まあ、あんなのが現れちゃ悠長に遊んでられないわなー」とアキオ。

ドラゴンはどの世界においても、最強の幻想種なのだとか。それでレヴィたち三人は、こちらを優先したのだとか。

 

「ちょっくら、行くぜ!」

「皆の協力プレイでユイを救出してやるぜ!」

アキオと藤丸の掛け声とともに、レヴィにアラタを診てもらいその他で崩壊現象を止めるべく第二ラウンドが始まった。

「大丈夫ッスか、アラタさん。呼吸を整えて魔道書に意識を集中させるッスよ。」

そう、レヴィはアラタに囁いているとアラタの暴走した魔力は幾分か落ち着きを取り戻した。

「…この光景は…まるでバトル漫画みてーだなぁ」

落ち着くために呼吸を発しながら、アラタはトリニティセブンや藤丸が凶悪な幻獣と闘っている姿を目撃する。

そこではリリスが射撃を行い、アキオが必殺キックを繰り出し、アリンは結界を貼って攻撃を防ぎ、藤丸は邪竜を撃ち落とした伝承を持つ剣の複製を振るっていた。

すると、アラタは立ち上がった。

「ニンジャ…銃を使う。俺に戦うための方法を教えてくれ。聖を救うためのバトルに参加させてくれ!」

アラタの懇願が届いたのか、レヴィは頷いてアラタの真意を問い直した。

「アラタさんは支配しまくりたいッスか?」

返事は直ぐに返ってきた。

「俺はこの理不尽な『崩壊現象』をまるごと支配してやりたいんだ!」

間髪入れずにレヴィは、「リリス先生~!アラタさんに魔術のレクチャーを。」とリリスを呼んだ。

リリスはミラにバトンタッチをして、アラタに魔道を教える。

魔術を発動させるにはスペル。つまり、詠唱が必要不可欠となる。

「でも、リリスと被せるのはアリなのか?」

するとアラタの魔道書ことアスティルは

「問題ないぜ。むしろ、被せたほうが良いだろうな」と答えた。

軽く「よし、それで」と決めるアラタにアスティルが注意を喚起した。

「注意しろよ。マスター。マスターは魔道ってのを、軽く見てるきらいがあるからな。」

このことは藤丸も、メイガスモードに初めてなった際にアークミネルバから指摘されたのだ。無闇やたらに多用すると文字通り『魔』に食われるのだ。

「それじゃ、今までのアイツらは」と呟くアラタにアスティルは「ご名答。彼らこそ、『魔』に堕ちて魔術に失敗した奴等さ。」と簡単に説明する。

「それに、アラタさんやリツカさんの場合は、ユイさんのドラゴンよりも厄介な魔物になりかねません。」

その説明にアラタは怯えずに、ユイのドラゴンを睨みながら。

「上等だ!!俺の魔力だろうがなんだろうが、持っていけ!それも全て、俺が支配してしてやるからよ!」と叫んだ。

それを待っていたかの如く、レヴィが最後のレクチャーに取りかかった。

「コツは魔道書が銃になるっていうプロセスをイメージすることっす。」

アラタは言われた通りに手に銃を持っているような指の形に変えた。すると、レヴィはアラタの指に接吻をしたのだ。見る者によっては、これだけでもとても性的に見えるものだ。流石は、ニンジャだけのことはある。これには、アラタも顔をトマトのようにしてしまった。

「自分の魔力を乗せたッス。これで指先から魔力の弾を発射する。そういうイメージでやるッスよ。」

「指先に魔力を。銃になるように…」

アラタは、レヴィに言われたことを呟くと。

「行くぜ魔道書!認識顕現『リアライズ』!!」と叫び、アスティルはそれを信号として受け取り、「OKマスター!術式『マクロ』を実行するぜ!!」と叫ぶ。

その二人の姿はまさに、『ユナイト』そのものだった。その『ユナイト』に答えるが如く、銃が顕現する。

「何っ!?この物凄い不浄な魔力!?」とミラは驚く。

藤丸はそんな彼女とは逆に

「やっとか」と微笑んだ。

「皆、どいてくれ。」とアラタ。そして、愉快にもアスティルは「カッコいい必殺技でぶちかましてやれよ。」とアラタに囁く。

そこで、藤丸は「同時に必殺技を撃つぞ。」と言って滅龍剣の柄を回してその内に秘めた魔力を増大させた。

アラタは「おう!崩壊現象を消し去れ!!」と叫ぶ。

藤丸も「邪龍は失墜し、世界は今落陽にいたる。撃ち落とす!」と唱える。

そして、二人の声が一つに重なりあった。

「メテオパニッシャー!!」

「バルムンク!!」

皆、世界が光に包まれたような感覚に陥った。

 

一人の少女が、皆に囲まれる中で目を覚ました。

「レヴィ…さん…?」と先程まで眠っていた少女・ユイが呟いた。

「おっ。気が付いたみたいッスね。」

「よ…よう。大丈夫…か?」と、アラタがユイに尋ねると。

ユイは裸のままアラタに飛び付いて、「お兄さんーっ。助けてくれたんだね!大好きっ!」と叫ぶ。

アラタは顔を真っ赤にしながら「おわーっ!?」と叫ぶ。

藤丸が「羨ましい限りですな。グヘヘ」と、その光景を楽しんでいると。

「コラー!貴方たちは!」とリリス先生に見つかって怒られてしまった。

「儂は何も悪くねぇ」と無実を藤丸は訴え、アラタともども逃げようとするが捕まる。

そしてお説教される。というがしかし、穏やかな流れが広がった。

その光景をレヴィが見る。

「私の『期待』に応えてコードDを一撃で消し去る魔王候補…か。面白いッスね。ホント!」とニンジャは独り言を言いながら微笑んだ。

 

次回のFate/Grand Orderは!

「ここか?アークさん?」

「あぁ、間違いねぇ。ここから、お前とは似て非なる魔力がプンプンするぜ」

「ふむ、なかなか!」

「あら、センセにセンパイ。お久しぶりです。」

もう一人の魔王候補、現る。



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11話

ここは、藤丸立香が編入生として通っている聖ビブリア学園の廊下。

外には、激しい雨と猛々しい雷が現れていた。

そして、何回か雷が鳴ったと同時に普通は割れないはずの窓が突然割れた。

そこを夢遊病患者のようにさまようのは、不敵な笑みを浮かべた女だ。

しかも、ビブリア学園の制服を来ている。

そんな妙な魔力の流れにいち早く気が付いたのは。

「ここか?アークさん?」

「あぁ。間違いねぇ。コイツだ。お前と似て非なる魔力が、プンプンするぜ。」

藤丸立香とその相棒魔道書のアークミネルバだ。

「おい、そこのお前。」と、現場に生徒が来た。

誤解されないように振る舞ったが、運悪く崩壊現象に五月蝿いグリモワールセキュリティーの者たちだった。藤丸は彼らの尋問を受けることになってしまった。

 

不幸にも廊下での尋問は長く続き、あっと言う間に生徒が集まってしまった。

「俺は何もしてねぇ!本当なんだ、信じてくれよ!」

何度も同じ質問を繰り返してくる彼らに、業を煮やした藤丸がこう叫ぶと。

「とても残念なことながら、彼の仕業ではないようです。」と、どこか含みがある女の声が聞こえた。

「ミラ?本当なのか?」

生徒の一人が不思議そうに、藤丸を見ながら言った。

集まってきた人々の会話を聞いていると、今回も魔王候補の仕業じゃないかと疑われている。疑われているのは言うまでない。藤丸とアラタ、さらにはユイもだ。

長い尋問からようやく解放された藤丸本人は。わざとミラに聞こえるように、

「あぁ、精々した。」と愚痴をこぼした。

そうこうしていると。

「もしかして、尋問受けてたのって。リツカさん?」

とリリスが声をかける。そこにはアラタやユイもいた。

「そうだよ。今回の騒動の第一発見者だったから、疑われちゃって。魔力検査しっかりしろって話だよ。」と愚痴をこぼす藤丸になりふり構わず、ミラはリリスにこう言った。

「今回の魔力は…『あの図書館』と同じ気配を感じます。」

「…」

リリスとミラがなんの話をしているのか、私やアラタにはさっぱり分からなかった。

そして、この図書館事件のことはかなり長い間眠り続けていたユイも知らなかった。

どうしても気になってしかたないので、私はある者を呼んだ。

「マーリン。出てきて。」

すると、教師の姿となった花の魔術師が現れた。

「呼んだかな?ン我がマスター。何か知りたいのかな?」

まるで、何処かの魔王の家来みたいな言い回しだ。しかし藤丸はそのことを気にせずにこう聞いてみた。

「ヤバい噂が立ってる、ここの図書館って知らない??」

「あぁ、アレか。お化けが出たっていう」

そうマーリンが言うと、「ひゃわっ!?」とユイが悲鳴を挙げて、アラタの腕にしがみついた。

そして、ユイの豊かな胸がアラタの腕に当たると「ふむ。なかなか!」とスッキリしたような表情でアラタが呟いた。

「もしかして、お化け苦手なのかな?ハハハ」と笑うマーリン。

藤丸もつい。「お化けが苦手なんて、ユイにも可愛いところあるんだな」と笑ってしまった。

ユイは、「魔物は可愛いけど、ゆーれいは怖いもん!」と返す。

「もんって。お前。魔物とかドラゴンみたいなもんじゃねえか。」

「ち、ちがうよ!」とさらにアラタに抱きつくユイ。

「ただの幽霊なら、殴れば倒せるんだけど。」

と言う藤丸に、マーリンが首を横に振る。

「残念ながら。マスターが臨むようなことには、ならなさそうだ。」

「うん。あの廊下で感じた魔力を察すると、幽霊だとしても、ただの幽霊じゃないね。」

と話していたところで、先生たちが生徒らを鎮めて就寝するように注意しだしたため、大人しく寝ることにした。

 

次の日。このことをよく知るアリンに話を聞いた。

図書館で起きた幽霊事件は、昨晩と同じように雨が強い日であった。その日は雷がうるさいために授業が早めに終わって、皆自由研究をしていたという。

そんな中、ある双子の姉妹が二人だけで図書館で研究していた。そして、昨日のように窓ガラスが全て割れ、大量の本が一斉に崩れてきたのだ。そして、妹だけが発見され。姉は跡形も無く消え去ってしまったというのだ。

 

これは、藤丸とアラタが来る半年前のことであった。

さらにはレヴィ曰く、雨の日にいなくなった少女の人影が目撃されたという。

もし、この話が本当なら。あの魔力はその少女の物になるのだが…。

と考えていると。アラタが仕切った。

「よし、現地調査と行こうか。」

 

助言をくれたマーリンと別行動をして事故物件ならぬ事故図書館を訪れると。

そこには、リリスとミラたちがいた。

「よっ、リリス。幽霊事件ってのが気になったから調べに来たぜ」と声をかけるアラタに、

「邪魔をしに来たなら、即刻消し飛んでもらいますよ?」と威圧をかけるミラ。

「だぁ、違う!崩壊現象らしき魔力があったなら、俺達がいたほうがいいかもだろ?!」

とミラの発言に的確に返すアラタ。

そこで、藤丸は本棚をボーッと見ている一人の女に気付いた。セリナだ。

そういえば、この間の温泉で言っていた最後のトリニティセブンと今回の幽霊事件の犯人は無関係なのだろうか?そこで、藤丸はその疑問をセリナにぶつけてみた。

「セリナ。こんなところで調査か?」

「あっ。リツカさん。えぇ、まあ。」

と、何かを誤魔化してそうな返事をしたので。質問した。

「あのさ、最後のトリニティセブンと今回の幽霊事件って何か関係ある?それでさ。もしかして、その人ってセリナの大事な人?」

すると、セリナは豆鉄砲を喰らった鳩のような表情を浮かべたあとで少し悲しいような表情を浮かべた。

「バレてしまいましたか。」

「温泉の時の君の表情と先程の本棚を見ている表情が似ていたので、もしやとは思ったが。……」

「どうかしましたか?」

と聞くセリナに対して答えるように、藤丸は皆にこう言った。

「皆!聞いてくれ!今回の幽霊事件の幽霊は、この図書館内にいる!!すぐそこにいるぞぉ!」

「はぁ!?」と驚くアラタ。

すると、ただの図書館の風景がガラリと廃墟へと変わったのだ。

 

「クソ、固有結界の類いか!」

「この場所は『永劫図書館』」

「そんな!あの図書館に強制接続させられたというのですか!?」

「ちょっと寝てる間に、おもしろくなってるじゃねーか。お前らは、固まって端にいたほうがいいぞ」

っと、ミラとリリスと起きたばかりのアキオが、魔道士特有の戦闘服・メイガスモードへと変身した。

「来い!メイガスドラゴン!」

すると、藤丸のところに小さなドラゴンのようなロボット・メイガスドラゴンが飛んできた。

そして、その腰辺りについてあるボタンを押した。

「ウェイクアップ!メイガスドラゴン!Are you ready?」とメイガスドラゴンからの音声を聞き取った藤丸は腰にメイガスドラゴンを当てて「変身!」と叫ぶ。すると、白い鎧と青い炎が彼を包んだ。彼は、このメイガスドラゴンを通じて、メイガスモードへと変身したのだ。

「さて、あとは何処から攻撃するのか分かれば。。」

すると、ユイが叫んだ。

「お兄さん、気をつけて!」

黒い影は、蛇のようにアラタを絡めようとしたがセリナが庇ったので、かわされた。

「で、次は私か。」そして、藤丸はそれを普通に殴って消滅させてやった。

すると、アラタのほうから声が聞こえた。「貴方たちが魔王候補?」

その声の主は、セリナと瓜二つだ。しかし、所々に違う箇所があった。それは全体的に黒い格好。豊かな胸部そして、ニーソに隠れた美しい脚だ。

「リーゼさん…」

リリスが、その名を口にした。

「そうか。リーゼロッテシャルロック。それが、今回の幽霊事件で現れた幽霊の正体であり、トリニティセブンの一員でもある。それでもって、セリナの双子の姉である…と。」

「あら♪よく知っているじゃない。」

「これでも伊達にこの学園に入った訳では無いのさ。」

と言った会話が続いたあとで、リーゼがある二人に気が付いた。

「あら♪センセにセンパイ♥️お久し振りです。久しぶりついでに」

と言った途端にアラタの目の前から、リーゼが消えた。そして、ミラとリリスの間に割って入るように現れた。

「その魔力、貰っていくわよ。」

数式の帯こと、数秘術が二人を囲うように現れた。リーゼの言う通りなら、二人の魔力はリーゼに吸収されるということになる。

「させるか!」と、藤丸はリーゼに龍のエネルギー弾を放とうとした矢先。

リーゼが発生させた、数秘術が斬り刻まれていた。

「おおーっと!まだこっちにも挨拶が来てないッスよ」

数秘術を不発させたのはニンジャこと、レヴィだった。

「アキオにニンジャじゃない?元気にしてたみたいね?」

「まあな。そっちは、なかなか悪の魔道士っぽくなったじゃねーか。」

しばらくして、「どういうことなんだ?」と説明を要求するアラタにリリスとミラが答える。

「彼女は…禁忌とされていた『永劫図書館』への接続実験を強行した犯罪者です。」

「元グリモワールセキュリティーのセカンドであり、怠惰『アケディア』のトリニティセブンです。」

「あの胡散臭い組織の元セカンド!?これは気を引き締めて行かないとな!」

「…胡散臭いは余計です。消しますよ?」

そんな会話していると、リーゼが舌を出して唇を舐めた。

「まさか、全員揃った上に魔王候補までいるなんて。せっかくだから、皆の魔力はあたしが全部貰ってあげるわね♪」

また、リーゼは舌を出しては、興奮したような表情で敵対者をじっくりと見つめた。

To be continued

 

次回のFate/Grand Orderは!!

「そもそも、魔道なんて人の道を外れたもんじゃない?それで、禁忌とかナンセンスそのものだわ。」

「俺もめんどくせーのが苦手でよ。出来ることなら近道が良いし、楽する方法があればそれに越したことはねーわな。だがな。俺はなんつーか。ダチの魔力を奪う…ってのは嫌っぽいわ。」

 

 



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十二話

リーゼ戦、開始


「普通のビブリア編入生である、藤丸立香には魔王としての適正がある。同じく魔王の素質を持ち、春日聖を取り戻したい春日アラタとの…」

「ちょっと待った。」

「どうしたんだい?我がマスター?」

「あのさ、あらすじまで乗っ取るのは勘弁願いたいんだけど。」

「アハハ!んなこと、気にすんなよ!てな訳で、どうなる?第12話をよろしくな!」

「今度は、アキオに出番を取られた……」

「ナイスです、アキオ。」

「謀ったな!ミラ!」

あらすじ完

 

「お姉ちゃん!!どうして…」

セリナが何かを訴えるかのように、犯罪者となってしまった姉・リーゼに声をかける。

それを補助するかのように。

「何故、我々の元を去り禁忌を犯したのですか?」とミラが言った。

「どうしてって…魔道の研究のためよ?グリモワールセキュリティーに入ったのも、崩壊現象をいっぱい経験できるからだしね。」

リーゼはミラの質問に返事すると、またワープした。

「やはり、私のメイガスモードでもサーチ出来ないか。」

そう私が呟いていると、アラタのいる方向から「危ない!」と荒い声が。

セリナはアラタをその場から離れさせると、先程まで彼がいた場所にリーゼが移動していた。

「お…またバレたわね?」

「私だって数秘術の使い手です!お姉ちゃんの出現ポイントぐらい算出できるんですからね!」

姉妹同士の駆け引きが始まった。

「あーん嬉しいわ!流石、愛しい私の双子の妹。ちゃーんと研究して、魔力も高めているのね!!」

その時のリーゼの表情は、程好く肉が乗った蛙を見つけて喜ぶ蛇そのものであった。

「ちょっとおイタが過ぎないか?」

その声と同時に凄まじい蹴りで、リーゼを一蹴しようとするアキオ。

しかし、その蹴りは数秘術による瞬間移動でかわされた 。

「あぶないじゃない…。アキオは相変わらずバトルマニアね。」

今度は余裕の表情だ。

すると、刀を抜いたニンジャと銃を持ったリリスが加勢した。

そんな光景を見ていたアラタはこう言った。

「やはり美脚だ。」

「アラタさんは相変わらずッスねぇ」

「もう、お兄さんったら♪」

続いて藤丸も。

「悪堕女だろうけど、タイプだ。もっこり…」

ミラ辺りが「は?」と、彼を見る。

そして、彼はスイッチが入ったかのように興奮してしまった。

「立香ちゃんもっこりぃ!リーゼ!私のハーレムへと招待するから、一発ヤらせろぉぉ!!」

と、恐怖のもっこり魔術師と化したのだ。目が妙に細くなり、発情した犬のような表情へ変わったのだ。

藤丸がそう言うと、同時に鉄の塊が頭に落ちた。100トンと書かれた、大きな金槌だ。

そして、それを持ったのは金髪の幼女となった彼の相棒魔道書・アークミネルバだ。

「気を引き締めるんじゃなかったのかよぉぉ!?」

「しまった!立香ちゃん、ガックシ~!」

「あぁもう!俺が喋る魔道書だって、アスティルたちにバレちまったじゃあないか!どうしてくれんだよ!?」

リーゼの抜群なスタイルに、思わずもっこりしてしまったせいでアークミネルバに迷惑をかけてしまった藤丸。

そんな光景を見て「緊張感持ってください!」と怒鳴るリリスと、「アハハ…どうも。」と言わんばかりに呆れながら笑うリーゼ。

他は静かに呆れていた。

 

「…で、噂の魔王候補くん二人は、まだ魔道士になりたてなんだ?」

とリーゼがこちらに質問した。

「まあな。だから、未だに禁忌やら不浄とか言われてもよくわからん!!」

「私は魔道士としては初めてだが、戦闘事態は慣れてる。それにグリモワールセキュリティーが胡散臭いってことも知っている。」

「私は良いけど、あまり言うとミラが怒っちゃうわよ?てか、センセ。アラタくんのほうが良く分かってないらしいじゃない?職務怠慢よ?」

「ア…アラタはちょっと特殊で何から教えたらいいのか…。ってそういうのは今はいいんです!」

「アハハ!」

といつもの茶番劇が始まってしまったが、気を取り直したようにリーゼが魔道についてアラタと藤丸に教える。

「そもそも、魔道なんて人の道を外れたもんじゃない?それで、禁忌とかナンセンスそのものだわ。」

「それじゃ、封印指定な代物はどう説明すれば良い?」と答える藤丸とは逆に、

アラタは「それもそうだな。」と答えた。

「アッ、アラタ!」

敵の意見に賛同するなと言わんばかりに、アラタに注意するリリス。

リーゼは藤丸を見ては「分かってない」と言わんばかりに首を横に振った。

「魔王っぽい力を手に入れるってことは。即ち、基本的に禁忌を犯すということになるの。」

「私は禁忌の力を身に付けてるからと言って、禁忌を犯そうとする連中は好まない。けど、殺しはしない。心の闇のままに力を振るうことこそが、最も汚わらしいことだと知っているからだ。禁忌の力?そんなこと知るかよ!俺はこの力を使って大切な皆を守りたいし、アイツは…アラタは大事な人を取り戻したいと思っている!どんな力を持とうが、心に光があれば!それは『禁忌』を越えた『奇跡』を生み出す可能性がある!俺は信じる!どんな力でも、使いどころによっては良い方向へ向かうってことを!」

すると、リーゼが動きだした。

「そう。なら禁忌の力の本来の使い方を、見せてあげるわ!」

 

そう言うと、彼女はセリナのところにワープした。右手でセリナの胸を触り、一瞬のうちに制服のボタンを外す。そして、実の妹の首を噛むようにキスした。

「!!いけないっ!」とミラは叫んだが、時既に遅し。

「セリナ!」と倒れるセリナに駆け寄るアラタ。

「んー♥️セリナ…ちゃんと頑張って魔力を溜めてたみたいね。エライエライ♥️」

藤丸とミラは誰よりも直ぐに感じた。リーゼの魔力が上がっているのを。

「この永劫図書館には『魔王の因子』が、封じられていてね。その魔王因子を手にいれたあたしは。魔王候補になったのよ。」

「おっおい!セリナ!」

「旦那様。セリナの首筋を見て。刻印みたいなものがあるわ。」

セリナの首に魔王の刻印が付けられたという、事実が襲いかかる。

「残念ですが、リーゼ…。貴女は本当に、不浄な魔王候補となってしまったのですね。」

「魔道士の究極の悲願である『魔王』。その候補になりたいと思うのは当たり前じゃない?」

「ですが…!!それは研究と研鑽を重ねて到達すべきものです…!!」

「えー。嫌よそんなの。そこにいる魔王候補くん達みたいに、あたしは一足飛びがいいの!」

と言い張るリーゼに対して、私は「我が儘娘か何かか!アンタ!」と、思わずツッコんでしまったがそんなことしてる場合ではない。一刻も早く、セリナの魔王刻印をどうにかしなくてはならない。そこで藤丸は、アークミネルバと脳内会話をした。

『アークさん。セリナの魔王刻印を取り除く方法は?」

『あるにはあるが……相手はトリニティセブンの一角だ。油断大敵だぜ?』

「過程をすっ飛ばして、結果にたどり着く!それがあたしの研究だしね!」

「…まあ、近道はいいわな。」

そう声を挙げたのは、春日アラタだ。

彼は立ち上がるとさらに言った。

「俺もめんどくせーのが苦手でよ。出来ることなら近道が良いし、楽する方法があればそれに越したことはねーわな。だがな。俺はなんつーか。ダチの魔力を奪う…ってのは嫌っぽいわ。」

そんなアラタに、不敵な笑みを浮かべたリーゼが答えた。

「へえ?意外と熱血系?格好良いわねぇ。まあ、精々頑張りなさいよ」

「そんなつもりは無かったんだが。」

『なんだ…?アレとやんのか?アイツは今までの奴の何倍もヤベーぞ?』

「いや、ここで逃げてはいけない。即ち、闘わなきゃ生き残れないってやつだ。そして、さっきのは良く言ったと思うぞ。」

「おう。それに、魔王候補は俺達の専売特許だしな!」

『ははっ!違いない!』

すると、アラタの回りに藤丸のよりも大きな魔力が溢れる。

「傲慢『スペルビア』のアーカイブに接続。テーマを実行する!リアライズ!」

『OKマスター!ユナイトだ!』

彼の手には、リリスからコピーした錬金術で造られた銃が握られていた。

「わお!錬金術!…どれどれ。」

空中に浮かぶ手頃サイズのIPADのような道具を瞬時に取り出したリーゼ。

「『魔力を完全に消滅させて崩壊現象すら打ち消す力』。『倉田ユイの溢れる魔力をも、打ち消して目を覚ますことにも成功』…か。」

「俺の魔力情報を触れもせずに読み取った!?」

「思ったよりヤバいな。。下手すると。」

「セリナの研究結果によると、もう一人…リツカでしたっけ?貴方も侮れないわね。」

「チッ。そういうことか。リーゼの能力は。」

「そっ。魔力を食らった相手の研究も盗めるのよ。」

「あのワープと盗み魔術、それに加えて魔王候補パワーはちょっと厄介だな…。」

このことを、脳内会話でアークミネルバと確かめ合う藤丸。

 

『私の実力との差が…!』

『おいおい、ビビってんのか?』

『あぁ、怖いさ。けどよぉ、リーゼの能力って私のに似ているから参考になる気がしないでもねぇわ。』

「アンタの特殊な魔力と、他の魔力をパクるってやつでしょ?黒いほうの魔王候補クン?あたしと一緒に『こっち側』に来ない?」

という、リリスに対して藤丸はアラタに『相手の言うことに耳を貸すな。』の合図を送りながら。

「おっと、そういうのはちょっと気に食わないなぁ。まるで、何処かの宗教勧誘じゃあないか。」というと同時に何かの糸を、後ろに隠し持ったサバイバルナイフで斬った。

すると、沢山の夫婦剣がリーゼに向かって弧を描きながら飛んだ。

「!」

リーゼは、その複数の夫婦剣を、四肢を使って完全に受け流した。

そして、彼女はあることに気付いた。

「リツカのほうは…!?」

戸惑っている彼女に止めと言わんばかりに、上空から斬りつけようとする影が。

「約束された勝利の剣『エクスカリバー・モルガァァァン』!」

上空から斬りつけながらも黒い光線を撃つことが出来る黒い聖剣を振るった。

「なんて強大で、忌々しい魔力!」

「忌々しいは余計だ!」

「中々の腕前ね♪」

藤丸は、後ろにワープしていたリーゼの気配に気付き。斬る。しかし、リーゼはまたワープする。

「ここまでは想定内だ!」

「あっそう。っていない!?何処へ?」

と焦るリーゼに対して、藤丸は挑発するように軽い一撃を彼女に加えた!

ただの魔力を帯びた小型ナイフだが、牽制には持ってこいだ。

これで、リーゼの腕に傷を付けてやった。

「「「っ!!」」」

あのリーゼにダメージを与えたのを見て、皆驚いた。

「あら、私のことタイプって言ったのは嘘?」

「いや、タイプなのは本当だ。だが、彼処まで悪行をされたら。殺しはしないが、お仕置きはしなければと思っただけだ。おっと。手加減していると勘違いされては困るから言うが。私の本気でも、これが限界だ。トリニティセブンの皆、アラタ。協力してリーゼを確保するぞ。」

と皆に声をかけたが、リーゼはアラタの所へさっきよりも速くワープしていた。

これには藤丸も驚いたが。

「春日聖…崩壊現象に消えた彼女を救うなら、こっちのほうが早いわよ?」

「なっ!?なんでお前が聖を!?」

アラタが愕然とした表情を浮かべた。

そして、そこに漬け込むかのようにリーゼが囁く。

「知りたい…?知りたいならこっちにおいで?春日アラタくん。」

さらに彼女はアラタの胸部に指を置くと、上目線で。

「それとも?従妹を助けるよりも女の子たちとの仲良しごっこのほうが大事?」

とも囁いた。

「不味い!非常に不味いぞぉ!」と叫ぶ藤丸。

「いえ、私達にとってはチャンスです!アキオ!」

「おうっ」

「レヴィさん!リツカさん!」

「なるべくアラタさんは検討するッス!」

「あぁ、いくぞ!レヴィ!」

藤丸、レヴィそして三人の突撃も空しく、黒い魔術障壁でそれも防御されてしまった。

「さーて♪いただきます♥️」

と、余裕の表情を浮かべたリーゼはアラタと唇を重ねてしまった。

「「!!」」

そのキスは割りと魅力的だ…。しかし、ゾッとする物でもあった。

そうさせるのは、リーゼの能力だ。彼女は、相手の魔力を吸収する能力を持っているのだ。

「っんくっ…あっあぁぁぁぁん♥️す、すごい。こんなに強い魔力初めてっ♥️」

すると、アラタは歓喜どころかむしろ逆に悲鳴を挙げた。

「ぐわぁぁ!?」

原因は、魔力を吸われてしまったせいとしか言えない。

「アラタ!しっかり!」

「身体の力が…まるで出ない…」

『あー、こりゃヤバいな。マスターの魔力がほのすっからかんになっちまった。』

すると、リーゼは高らかに声を挙げた。

「ハハハ!すごいわぁ!流石、魔王候補くん♥️」

その表情は、闇に住む邪悪な悪魔の笑顔そのものだった。

「せっかくだから、ちょっと試してみようかしら…♥️」

「皆!ふせ…!」

藤丸はそう叫んだが、トリニティセブンの殆どの皆の服が破けてしまったのだ。

 

「あははは!爽快ねコレ!」

そう、高らかに笑うリーゼを嗜めるように

「おイタが過ぎますよ!リーゼ・ロッテシャルロック!!」

とミラ。

リーゼの魔術を逃れた魔道士は他にも。

「自分もいるッスよ。」

「確かに…これは強力だ。」

「あらあら?センパイに、魔道士最高のトリックスターに、別世界からやってきた魔王候補くんが残ったのね♪」

そして、どうにかリーゼの攻撃から逃げ延びた三人は心を一つにして戦闘態勢に入る。

「せっかくだから、ちょっと本気出すッス!」

「首席検閲官の名にかけて。貴女を排除します!!リーゼ・ロッテシャルロック!!」

「もう、倒すぐらい本気でやらんとな!出来たら、捕獲で済ませたいのが本音なのだがねぇ!!」

するとリーゼも魔力を一気に放出して、圧倒的な力の片鱗を藤丸たちに見せ付けた。

「…いいわ、かかってきなさい。今のあたしが最強だってこと!教えてあげる!!!」 

 

次回のFate/Grand Orderは

「アンタの敗けだ!リーゼロッテシャルロック!」

「残念だったわね」

「この感じ……暴走か!!」

「なんですか…これは!?」

 

 



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13話

昨日は学校から出された課題等の関係上、投稿できずに1日遅くなりました。
申し訳ございません。


「前回のあらすじ。私こと藤丸立香は、アラタやトリニティセブンの皆さんと共に、セリナの姉であるリーゼに立ち向かうが。」

「俺の魔力を利用した攻撃にリツカ、ニンジャ、ミラ以外の全員がスッポンポンに」

「さぁ、第13話はどうなるんだこれは?」

あらすじ完

 

「ミラさん。アキオさんの代わりに今回は自分が行くッスよ。」

「ここは協力しないと…ね」

「彼女の魔力をスキャニングします。その間に時間稼ぎを!」

立香、ミラ、ニンジャことレヴィの三人は結束してリーゼの捕獲を目指す。

「へえ…楽しそうね」と余裕たっぷりなリーゼに対して、立香とニンジャは素早い攻撃を繰り出す。

白と黒の刃を持つ夫婦剣とクナイがリーゼを切りつけたが。

また瞬間移動をされてしまった。

「やれやれ。相変わらずなんつースピードよ。そちらの魔王候補くん、貴女のスピードに付いてこれるなんて。中々やるじゃない♪」

「それはどうも。」

と立香が無愛想に返事をした。

すると、レヴィの制服の左袖が破れる音が聞こえた。

「この体を傷つけられるリーゼさんも十分強いッスよ。」

「うーん『束縛』までは出来なかったみたいね。セリナの魔術もまだまだね。」

リーゼは皆のほうを向くが、ミラが最後の砦であるかのように立ち塞がっていた。

「三人の目を盗んであの子らの魔力をいただくっていうのも、出来そうにはないわね。」

強いだけではなく、状況分析も侮れないことを立香は知った。

「………」しかし、彼は慌てずに待つ。リーゼが油断するその瞬間を。

「解析〈アナライズ〉。」

その声が聞こえたとき、リーゼはまたワープしていた。それも私とニンジャの後ろにだ。

「今のニンジャは左側がヤバいでしょ?」

「いやらしく、弱点を読むところは変わらないッスね…!!」

すると、ニンジャは高くジャンプをして、リーゼとの距離をとった。

そして、彼女の数秘術の帯を切り落としたのだ。

「…ニンジャってホント凄いわね。自分の体をあっさり捨てて逃げられるんだもの。」

とニンジャの強さに呆れた悪の女魔道師がぼやく。

「…自分の妹と世界を捨てるのは真似出来ないッスけどね。」

「でも、あたしに勝てないでしょ?」

「無理ッスねー。今のリーゼさん目茶苦茶強いッス。でも、今は一人で相手にしてないってこと。忘れてないッスかね?」

「え?」

 

悪の魔道士は気付いた。一人足りないことに。その一人は何処に行ったのか。

キョロキョロと探していると。背中に手を置かれた。

「アンタの敗けだ。リーゼロッテシャルロック。」

「しまっー」

彼女は逃げようとしたが、無駄だ。

リーゼの足元には束縛用の魔法陣が置かれており、その背中には解析〈スキャン〉魔術を

施されていた。

「そのまま私たちにパスしなさい!」

「作戦通りだな、マスター!」

ミラにリーゼの魔術の解析結果を送り、魔王刻印を消すデータを幼女の体へ変身したアークミネルバへと送る作戦だ。

「名付けて『メイガス作戦第一号』だ!」

「俺のマスターのネーミングセンスは放っておいて。魔王刻印を剥がしていただくぜぇ!」

アークミネルバは、その口とは違って細かい作業を淡々とこなした。

「どうにかして魔王刻印を消したぞ。」

「リツカさんのお陰で読み取り完了。怠惰〈アケディア〉の書庫から停滞〈スタグナ〉のテーマを抽出」

「やっと名前で読んでくれたか。さぁて、おまけにアラタとセリナの魔力も返して貰うかな。」

立香はリーゼに奪われた二人の魔力を吸収しようとしたが!

 

「!!!」

彼は自分が覗かれている感覚を感じて逃げようとしたが、逃げることが出来ないことに違和感を感じたのだ!

「弱点解析完了♪では、プレゼントの時間よ。リツカ君。」

そう、リーゼは罠を張っていたのだ。初めから藤丸の移動先を計算し、彼を暴走させるための罠を仕込んでいたのだ!

大量の魔力を藤丸は浴びた。普通ならば吸収だけで済むのだが。

「あぁぁぁぁぁ!」

彼は声を荒くして狼のように吠え、目の色が赤くなり瞳孔が細く尖ったような形状に変身したのだ。

「!!」

「世話焼けるな!ったくよ!!」

皆は驚いているなかで、アークミネルバはそんな彼の元に走る。

その体から白銀の鎖を伸ばすと、竜化した藤丸にそれを巻き付け、その行動を抑えようとしたのだ。

「こいつは、どうにかするから!やれ、ミラ!」

「えぇ!リーゼ!その満身…正義〈ユースティティア〉の担い手たる私に見せたこと。後悔しなさい!白き時冬の世界〈ホワイトユニバース〉!!」

ミラから白い衝撃波が放たれた。もちろん、それは。魔王などの不浄な魔力を纏った者殺しの物だ。

「うわっ!やっぱこれっ…ヤバー」

光とともに、凄まじい突風が起きた。

それはミラを中心とした地面が、半径数メートルにドーナツ状になるほどだ。

「アークミネルバ!そっちは?」

「まだだ。コイツ、鎖を引きちぎろうとして。言うこと聞かねぇんだ!」

アークミネルバは焦った。彼女の想像以上に、暴走した立香の力は強大だったからだ。

「リーゼに関しては『やったか』とかここで言うべきッスか?」

レヴィがミラに聞いた。

すると、ミラの後ろから黒い手が。

「あぁ、リーゼのことに関しては。倒せてないのは、明白ですから。」

ミラは、水晶を黒い手にぶつけて難を逃れた。

「いったぁ!?二人の魔王候補クンの魔力を奪ってなかったら、危なかったーっ。」

「全く…忌々しいのは彼らですね…」

「魔力が暴走しているときに少し奪われていたか!」

アークミネルバはリーゼの力の強大さを知った。

その時。竜化立香は鎖を引きちぎってしまった!

「クソッ!」

すると、立香は魔力を求めるかのように息を殺した。

そしてこの中でも一番魔力の質が高く、量が多い者をターゲットに。

「え…?」

そう、悪の魔道士へと堕ちた彼女だ。

立香は無言で、その女の元へ猛スピードで駆け寄った。

それも、敵のワープをも阻止出来るほどのスピードだ。

あっと言う間にリーゼの首を絞めると、その首を掴んだ手から魔力を吸い始めたのだ。

「うっ…!!アァァァ!」

「ウォォォォ!!」

敵が持つ、自身の魔力だけを吸った彼はさらに凶暴性が増したのか。

次は永久図書館の天井を見上げる。すると、彼はこう呟いた。

「コワス…コワシテやるコワシテやるコワシテやるコワシテやるコワシテやるコワシテやる。」

その手には青白い炎の玉が現れていた。そして、それを貯めるかのように両手でその玉を持って、じっと動かなくなった。

その様子を視て、アラタは焦りだした。

「何がなんだか分からねーが。おっかねーことになってるなぁ、おい。」

「レヴィさん、ミラさんにアークさん!彼を止めてください!」

 

魔力とは、この世界においては。それぞれの「存在するための力」そのものなのである。

そもそも、魔道士は世界の法から逸脱したことを行っている。この世で「存在するための力」が無いと、死を迎えるか消えるか。さらには暴走の危険性もあり得るのだ。

今の藤丸立香は「力」が不安定になったがために、暴走しているのだ。

さらに、永久図書館を壊すのに不安定な力を使えば、自分だけではなく回りも破壊する危険性がある。

「しっかりしろってんだよぉ!」

アークミネルバが焦るのも無理も無かった。

「ミラは解析を頼むッスよ!」

「えぇ!」

「…!」

ドラゴン立香は、三人の気配を感じて溜めていた魔力の塊を消した。何よりも先に邪魔者を排除しようとするその様はまさに、『魔王』としての魔性を秘めていると言えよう。

暴走した彼はニンジャのスピードに追い付くことが出来るのか、彼女が斬り付ける瞬間に身をかわしたのだ。

「!!!」

「ニンジャのスピードに追い付いただと!?」

さらに、ニンジャの腕を掴んだ。

「これはヤバいッスねぇ!」

ニンジャの足元には黒い魔法陣が敷かれていた。そして、その背後には大きなドラゴンの顔が現れて彼女を喰らおうとしていたのだ。

「やめてくれ…やめろぉぉぉぉ!」

「レヴィさぁぁん!!」

「ニンジャぁ!!」

皆が叫ぶなかで、立香がニンジャにトドメを誘うとしたその時。

「…!!」

「駄目じゃない?目の前に集中し過ぎちゃ。」

彼は、リーゼに隙を突かれてしまったのだ。

そして、魔力を吸収された。

「今しか無ぇ!!オウルチェーン!!!」

アークミネルバは黄金色をした梟が彫られた鎖を使って、暴走した立香を抑えることを試みる。

「あぁ!もう少し吸収したかったのに!」

「ワガママもいい加減にしろってんだ!」

金髪の魔道書少女は、悪の魔道士の文句にツッコミを入れつつ、立香の暴走を食い止めることに成功した。

「うぅっ。俺ってば何を?」

やっと目覚めた立香は暴走したことを殆ど覚えていないみたいだ。

「ったく。俺たちが命懸けでお前を止めたってのによぉ。」

「皆…ごめん。」

「まあ。ヒヤヒヤしたッスけど、結果オーライじゃないッスか?」

「全く、忌々しい。貴方は下がっていなさい。」

この時ばかりは、立香もミラの意見に賛同するしか無かった。

魔力はアークミネルバが、リーゼによる魔力吸収を妨げたのでまだ残っているが。

また暴走する危険性もあるので、不本意ながらも撤退するしかなかった。

「アークさん。セリナはどうなったんだ?」

「あぁ。刻印はどうにか抑えたのだが、それも応急措置程度だ。まだ魔力は不安定そのものだ。」

すると、アスティルの写本も答えた。

「あぁ、アレは私もトンズラを提案するしか無ぇな。」

立香は黙りこみ、アラタは驚いた。

「そんなにやべーのか!?」

「取り込んだお前らの力がヤバいからな。」

立香の顔は歪んだ。

すると、彼は膝を地面に着いて頭を下げながら言った。

「すまない、俺が暴走したばかりに!」

それに答えるように

「それに関しては幸い怪我人もいねぇし、気にすることはねぇよ。」

とアキオ。

「で、アスティル。どうやって、トンズラするつもりだ?」

とアークミネルバが渋々と、アスティルの写本に尋ねると。

「あら?魔王候補クン逃げちゃうの?じゃあ、従姉妹ちゃんはいいんだぁ?」

と言ったリーゼの意図は明らかにアラタに対する挑発だ。

「ー…無論いいわけはないが…今はセリナがまだまだピンチなんでな。逃げさせてもらう!」

「…ッ!簡単に逃がすと思う?」

リーゼの態度に立香とニンジャ、アキオは違和感を感じた。

今のはアラタの態度に怒ったのではない。だが、ほんの一瞬だけ。リーゼの魔力に変化があったのだ。

「…そういう時こそ。自分の出番ッスよ。」

ニンジャがそう言うと、彼女は素早くそして高くジャンプした。

「残念だけど、あたしには止まって見えるわよ!ニンジャ!!」

「そうッスか?」

「戦闘出来ない私が言うのもアレかもしれないが。」

「なんだよ、最後まで言おうぜ?」

「うん、リーゼは負けるな。原因はその力への傲慢だ!」

ニンジャはリーゼの瞬間移動について来られるスピードで動く。

いや、正確には違う。

確かにニンジャは素早く動いている。

しかし、リーゼは慣れない翼を生やしての戦闘を長く続けてしまったので、相手の攻撃への反射速度が低下しているのだ。

彼女はその焦りを突いて、リーゼの両翼を斬り落とした。

「まさか、さっきの異変で見抜かれていたとは……」

「弱点を突く戦法をレクチャーをしたのは私ですよ。リーゼ。」

罰が悪いかのような顔をしたリーゼに、説教するミラ。

「現在貴女の魔力は最高位ですが。それを使いこなせてないなら、それは三流魔道士と同じこと。」

リーゼは不服なような、敗北を受け入れるような複雑な表情を浮かべた。

「あははー…これは部が悪いわね。あたしの魔力が安定したらまた招待するわね。アデュー♥️」

リーゼが立香でもミラでも感知出来ないところへワープしたおかげなのか。

『永久図書館』は姿を消して、元の学園へと戻ることが出来た。

「あー、キッツ!」

「戻って…これたのか……?」

「……ま。今回は痛み分けってとこッスね。」

どうにか撤退出来たので、一安心したニンジャたち。

「……ですが次は。貴方たちの不浄な力を使いこなせるようになっているということですか……」

「あーえっと。その…スマンっ。」

アラタが顔を赤くしながら謝った。その不思議な光景を視てミラは首を傾げていると。

「セクシーな格好ありがとう…だな。」

「え?」

「え?なっ…なっななっ…」

このあと、アラタが睨まれるのはお約束そのものだった。

「アキオ…本当は嫌ですが。」

ミラはアキオと相談する。

「リーゼさんが次に襲ってくる前に。そこの不埒な魔王候補を、使えるようにさはますよ。」

「両方か?」

「えぇ。そのほうが良いでしょう。」

「なるほど…。つまり、特訓中の事故死に見せかけるってわけか」

何か物騒なことを言っていると、少し引くアラタ。

「認めたくありませんが。リーゼさんに対抗するには、貴方たちの力が必要です。奪われたはずの魔力もある程度は回復しているみたいですしね。」

ミラの提案に「了解」とだけ言って、立香は一人で何処かに消えた。

そして、暫くして一人の少女・マシュが見たのは。ボーダーのマイルームに残された3本の吸殻がある灰皿と。缶ビール一本だけであった。

 

次回のFate/Grand Orderは

 

「特訓するのは良いんだが…寄りによって体操着か。」

「認めたくはありませんが。リーゼさんに対抗するには、貴方がたの潜在能力を引き出す必要があります。」

「魔物!?まさか、崩壊現象!?」

 

 




リーゼ編の後は、アークミネルバの過去に焦点を置いた特別編をやる予定です。


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十四話

修行開始!



「前回、リーゼを撃退したトリニティセブンたちであったが。」

「また出るようですねぇ。」

「あのな、ユイ。こういうときはちょっとシリアスにって。その本、マーリンのじゃないかよぉ!」

「あと、お兄さんとリツカさんは。特訓を得てパワーアップを果たして…おっと、そこから先は未来の出来事である。では第14話どうぞ。」

「「それ、俺たちの台詞ー!!」」

あらすじ完

 

「特訓するのは良いんだが…寄りによって体操着か。」

「まあ、リツカ。塔に登ったりダンジョンに潜ったりってことをする時間も無さそうだし…。」

藤丸立香と春日アラタが話していると。

「認めたくはありませんが。リーゼさんに対抗するには、貴方がたの潜在能力を引き出す必要があります。」

同じように体操服なミラがやってきたのだ。

「…で、修行の内容は?」

「勿論、二人にはそれぞれ別の修行をさせて貰います。」

ミラがこのように言うのには理由がある。

まず、藤丸立香と春日アラタは同じ魔王候補に値する魔道士だが特徴が異なることだ。

アラタは相手の魔術を複製するものである。一方で立香のは相手の魔術を吸収して無効化するものだ。

「それに加え。立香は魔力量は比較的控えめだが戦闘経験豊富。アラタは戦闘経験は浅めだが魔力量はピカ一ってわけか。」

「つまり、昨日私が暴走したのは…。」

「吸収できる魔力量のキャパシティーが超えてしまった。その弱点を突いたのでしょう。」

立香は昨日の出来事を思い出したのか。顔が険しくなった。

「ですからアラタにはこれからアキオと戦って頂き」

「私の魔術である『真言術』を掻っ払って貰うってわけだ!」

それを短時間で稼ぐ方法はあるのだろうか?と立香は考えたが、考えたところで仕方無いと割り切るしかなかった。

「なるほど…バトル用の魔術を掻っ払うことでバトル漫画になるわけだな。」

「そういうことだ!そうすりゃ私もガチでバトル出来るしなー!」

「って待て待て!!プロセスってのが分かってねーぞ?」

と慌てるアラタ。

「ええ。なので短時間でそれを貴方が見付けないと。死にます。」

そうミラが助言する瞬間に、アキオがアラタの近くの地面に皹出来るほどに踏んだ音が響いた。

「チッ。ではリツカはこちらに」

「あのさ…。アラタの修行、物騒過ぎじゃね?ってか、ミラお前。舌打ちしたよねぇ?ねぇ?」

とツッコミを入れる立香のことを無視するかのように、ミラが移動する。

「で、何するわけ?」

「貴方は大量の魔力を吸収させて貰います。もちろん、キャパシティーオーバーの物ですが」

ミラの質も量も高めな魔力の光線が立香を襲った。

立香は吸収を試みるが。

「アチチチ!ミラの魔力が不浄な物特攻なの忘れていたぜ。」

「これ程の物を熱いで済ますとは。」

「いや、これは打ち所が悪かったら消滅してるやつだよな?」

「えぇ。ですから。どうにかしてこれを何のダメージも無しで吸収してください。」

「『さもないと死ぬ』でしょ?皆まで言わなくても分かっているつもりさ。」

光線の量が増えた。それだけミラは本気だということだ。

そして、立香も死ぬ気でその光線を吸収することで、本気を示していた。

そうして修行をしていたが、ハプニング発生。

「おわぁぁ!?」

「あっ!やべっ…」

「では、次!行きます!」

「いや、ミラ!上を見ろ!!」

「え?」

アキオの蹴りの衝撃で、トランポリンで翔んだかのように跳ね上がったアラタが、ミラにぶつかったのだ。

「いつう…ん?」

ぶつかったが無事なアラタの手にソフトボールよりも柔らかい感触が広がった。

「決して大きいわけではないが。だからといって小さ過ぎるほどでもない、素晴らしい手のひらサイズは…」

その答えは…ミラの胸だ。

アラタは背筋が凍りついた。

そして、悪いことが起きるフラグは見事に回収されることが、ミラの目覚めによって確定してしまった。

「…え?」

「お。落ち着いて聞いてくれ!!きっと俺は数秒後。絶望的に血塗れになっているはずだ。だから今のうちに言っておく!!」

アキオと立香は半ば呆れた表情で彼を見る。

そして、彼は最期になるであろう台詞を口にした。

「大変気持ち良かったです。ありがとう。そしてごめんなさい。」

「いやあァァァ!!!」

「春日アラタ…良い奴だったよ…」

「そうだな(適当)」

「いや!勝手に殺すなァァァ!」

血塗れになりながら、勝手にボケる立香とアキオにツッコミを入れるアラタ。

「おっ。起きたかエロスケ」

「お前に吹き飛ばされた後の記憶はまるでない…。でもなんだろう。とても柔らかくて気持ちが良い物があったような。」

すると、ドスの効いた声と表情でミラがアラタを叱咤した。

「そのまま忘れなさい」

「ひぃぃ!?」

「思い出したら殺します。」

「私にはたっぷりと言ってくれてOK」

「駄目です。」

「すんません。」

落ち着いたところで。

「次は避けないで下さい。訓練になりません。」

「いやいや!避けなかったら死ぬだろあれ!!」

「それはそれで」

「それでじゃなーい!!」

「死にたくない気持ちは分かるが。相手はかーなーり厄介だ。私は如何なる理由だろうと、誰の死も見たくはない。…が、死線に立たないと人間って強くなれないんだよな。」

と立香が言うと、アキオは立香の背中を叩いて声を挙げた。

「この修行の意味を良く分かってるじゃねぇか!」

「まっ。こっちも色々見てきたからね。」

「そういうことならいいぜ…。こうなったらガンガンいったる!!」

修行は再開された。

一方で、ユイのバイオリンの音色が響く保健室では。

セリナを守ろうとするミラとアキオ以外のトリニティセブンがいた。

「ふぅ…。思ったより早く、セリナの魔力回復が終わったよ。」

「ありがとうございます。助かりました。」

「いいっていいって!お兄さんの為だもん!それに、早く終わったのもリツカさんの魔道書のお陰なんだもん!」

リリスとユイがアークミネルバのことについて話す。

セリナの命の恩人であるアークミネルバにはトリニティセブンの皆は感謝してはいるが、

その実態が明らかにされていないので気になるのも仕方無い。

藤丸立香に彼女の正体を聞いて見たことはあったが、彼も何も分かっていないのが引っ掛かっていた。

「…旦那様はアキオにボコボコにされているみたい。」

窓から二人の修行を観察していたアリンがぼやいた。

「ボコボコ…ですか」

「リリスセンセったら、お兄さんが心配なのん?w」

「いっ…いえ!これは別にそういうわけではー」

リリスの複雑な感情をユイは見逃してはなかった。

「それにしてもあの二人が旦那様とリツカを特訓するだなんて…」

「ねー?ちょっとびっくりだよね!?」

本来、グリモワールセキュリティーであるアキオとミラにとって藤丸立香と春日アラタは討ち取るべき敵なのだ。

そんな彼女らが彼らを強くするために、特訓メニューを編んで実行するのは、誰が見ても予想外なことだ。

「本当なら、リーゼさんの魔力が不完全な時に闘うのですが。こちらからあの図書館にアクセス出来ない。だからこそ、彼女らは特訓させたのでしょうね。」

とリリスが解説していると。

「リーゼさんの性格からして。そんな呑気にしている時間はないッスけどね。」

トリニティセブンのニンジャこと、レヴィが何処からともなく参上する。

「レヴィさん…もういいのですか?」

レヴィは包帯で覆われた左腕を見せながら、まだ動かないことを言った。

「…魔道士って自分の道徳や法とは程遠いものをテーマにするじゃないッスか。自分の場合はエクスペクト『期待』とか。」

「ユイの場合はアミキティア『友情』とかだねっ」

「リーゼのテーマはスタグナ『停滞』…つまりー」

「彼女の性格からして、ジッとしていない…」

と彼女たちが話していると。

校内が急に揺れだし、魔物が出現したのだ!

「魔物!?まさか、崩壊現象!?」

そして、リーゼが来た証拠と言わんばかりにガラスが割れた!

まるで、透明な生き物に喰われたかのように砕け散ったのだ!

「これは旦那様とリツカの特訓が終わるまで待つ。っていうのは難しいのね…」

いつになく、アリンの声が真剣そのものだった。

 

To Be Continued

次回のFate/Grand Orderは!

「ウワァァァ!」

「これはアレだねっ。再び学園のピンチ!!いやあ、興奮するね。こういう展開!!」

「こういうのはどう…?」

『おい、マスター。てめぇ右腕が。』

「では止めです!藤丸リツカ!!」

「ミラ!俺は!!アンタの測定の先に行く力を持っていることを!!忘れたか!!!?」

「この姿になるのは、聖に使われていた時以来だな。」

 



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第十五話

リーゼ編はこの話から佳境へと入っていきます
お楽しみに


「今回はこの浅見リリスとアリン達が、あらすじを紹介したいと思います。」

「待ってくれよ、リリス先生。今度こそ私が。」

「普通の魔道学園の生徒である、春日アラタと藤丸リツカは…」

「またマーリンの本かよぉ!」

「男なんだろ♪くよくよするなよ♪」

「アキオ、アンタは黙っとれぇ!」

「不動アキオとミラと共に、打倒リーゼの特訓を行うことになりました。しかし、そうしているうちに。リーゼさんは学園内に侵入してしまったのでした。」

「逃げるなぁぁ!リツカァァァ!」

「ダンプカーでこっち来るとか、殺す気満々じゃねぇか!!」

「では、第15話どうぞ。」

「危ないだろおが、てめぇ!」

「あの地点から、ダンプカーの助手席に座るとは。中々やるじゃないですか。」

「ミラぁぁ!後で覚えてろよぉぉ!!?」

 

「ウワァァァ!」

「なんで魔物が!?」

学園の生徒たちが突然現れた魔物を見て、驚きと恐怖の叫びを挙げていた。

魔物たちは、ここにいる生徒から魔力を奪おうとしていた…が。

様々な場所では、藤丸立香が連れてきたサーヴァントが交代で見張りをしていたために。

その半分が魔力を吸えずに、潰されていった。

「大丈夫ですか?」

「は、はい…!」

あるところでは、黄金の剣を持った少女騎士王が。

またあるところでは、右腕が黒い包帯で覆われたのと鬼の血を引く暗殺者が。

別のところでは、電撃魔術を使うホムンクルス『人造人間』とフランスの聖女たちが魔物から生徒を守るべく闘っていた。

一方で、運悪く魔物に襲われて服を破かれた女子生徒たちもいた。

「なっ…服がーひゃんっ」

「んんっ。魔力が奪われていく。」

すると、ひょうきんな男の声がした。

「んー。見ていても楽しそうなんだけど、やっぱり助けておくかな…?」

とすっとんきょうな調子で呟いた男は、先程の女子生徒にまとわりついた魔物を瞬時に片付けたのだ。

「がっ、学園長!」

女子生徒はホッとしたが、学園長の側近から聞いた助けた理由を聞くと、悲鳴を挙げて逃げ出した。学園長が彼女らを助けたのは、「目の保養のお礼」だからだ。

「教職位はほぼ全員、学園内の防備につきました。」

「…ほぼ?」

「リリスが保健室にいますので。」

「あー…なるほどね。残ったトリニティセブンも、魔力があまりない状態。検閲官二人はアラタ君とリツカ君にかかりっきり。…これはアレだね、再び。学園のピンチ!!いやあ、興奮するね。こういう展開!!」

と興奮気味な学園長には、側近は頭を抱えた。

「さーて。アラタ君、リツカ君、ミラちゃん。それにリリスちゃん。早く頑張らないと、おっかなーい悪の魔道士ちゃんが迫ってきちゃうよー?」

すると、多くの魔物を従えて、今回の異変の張本人が現れた。

「あら?それってあたしのこと?あたし的には、学園長センセが相手してくれると嬉しいんだけど?」

噂をすれば影が立つとはこのことだ。リーゼがその姿を現したのだ。

学園長はリーゼの実力を測ったのか、側近には「手を出さないように」とジェスチャーをして

「ハッハッハッ。先生はもう歳なんだから、いたわって欲しいものだねぇー。」

と一見ヘラヘラ笑っているように見えたが。

「でも、生まれて初めての逆ナンパに、ホイホイと乗っかってみちゃおうかなぁ…?」

眼鏡を外した途端、見せた顔は、殺気を秘めた物だった。

「…っ。いいわね学園長センセ。その魔力を学園と、この世界の卒業の証として!もらっちゃうことにするわね!!」

「いやぁー。ボクもまだまだ君には学園にいて欲しいからね。アラタ君らが来るまでの暇潰しはしてあげるよ。」

「それじゃあっ、いただきます。学園長センセ♥️」

リーゼがウィンクするのを、合図と受け止めたと言わんばかりに、多数の魔物が学園長を襲った。

学園長は余裕の表情を浮かべて

「へぇ…。魔物を従えるなんて、本当に魔王みたいだね。」

と言うと、魔物軍団を一瞬でしかも手も足も動かずに一掃したのだ。

そして、問題児に丁寧に社会のルールを教えるかのように。魔道のおさらいを始める。

「レクチャーその1」

「えっ!?」

リーゼよりも速く、学園長は彼女の後ろにワープし、腕を掴んでは囁くように

「自分より高位の魔道士を相手にする時は。魔道書の装備は必須だよ?」

リーゼはその手を振りほどくと、魔力を放出させた。

「流石学園長センセ。やっぱり様子見とか言ってられないか!!」

いつも通りに窓ガラスが割れ散った。

そして、リーゼはタブレット端末のような器具から数秘術の帯を出し、学園長を縛りつけた。

「…ふむ。リガーレ『束縛』の術式…セリナちゃんの術だね。じゃあ、レクチャーその2。

対象の魔道士がよく動くタイプか。じっとしているタイプなのか。あるいは、自分の世界に引き込むタイプなのか。…つまり、僕がどのタイプなのか、きちんと見極めないとね。」

すると、学園長は「リーディング『覚醒』」と呪文を奏でて束縛を破ったのだ。

「ーっ!!その状態で、術が発動できるの!?」

驚くリーゼに追い討ちをかけるように、学園長はレクチャーを続ける。

「レクチャーその3。僕は口さえ動けば、殆どの魔術が使えるタイプだということ。」

三つ目のレクチャーが終わると、リーゼは急に笑いだした。

「…ふ。あははっ!流石、本物の大魔公『パラディン』は素敵だわ!」

「うん、ありがとう。ボクもリーゼちゃんの顔とか脚とか大好きだよ。」

と学園長のセクハラ発言を無視して、彼女は続けて学園長と話す。

「他人の魔力を使っての術の強化って、簡単なものじゃないのね。」

「…魔力で強化出来るのは、あくまで強度だけだよリーゼちゃん。レクチャーその4。魔術の構成、術の式を解析すれば、ちょっとの魔力でほら、この通りさ。」

と魔術の残りカスをリーゼに見せつける学園長。

「うんうんっ。勉強になるわ♥️是非、その膨大な研究結果を奪わせて貰いたいんだけど。」

「いやいや!まだ君には早いんじゃないかなぁ。」

と頬を赤く染めながら学園長は言った。

そして、リーゼはそんな学園長の実力を知り。お化けを視たかのような、余裕の無い顔付きになった。

「ああ、そうか。今のリーゼちゃんには見えるんだね。僕の魔道書・王の門『ソロモンズ・ゲート』が。」

彼の魔道書は、一定以上の魔力が無いと見えない代物である。さらにはかなり高位の魔道士でも、長時間視ると発狂するだとか。

「さーてっ。困ったわねぇ。どう戦っていいか、見当も…あっ、そうだ。」

攻略のヒントを掴んだ彼女は胸に布一枚の服をめくり出した。

「こういうのはどう?」

「わーい。素敵な胸だーっ」

「隙あり」

先ほどまでの威勢が嘘かのように、思いっきり蹴られた学園長は窓を割って外に追い出された。

しかし、リーゼは詰まらなそうにそんな彼を視て、トリニティセブンがいる保健室へ歩きだした。

「せっかくだし。口直しに他のトリニティセブンを探しに行こっと」

一方で。

「いてて…。いやはや、良い感じに成長してきているねぇ…。この調子で他の子たちも、一気に育ってくれるとありがたいんだけどねぇ~。」

とひょうきんに独り言を漏らす学園長。

「リーゼちゃん。古来から、悪の魔道士というのは。強大な力を手に入れてしまうと、負けてしまうものなんだよ。」

校庭で特訓している組も、今回の異変には気付いていた。

「どうやら、学園に来てしまったみたいだな…」

「えぇ。ですから貴方は早く魔力のコントロールを!」

「わかって…うぐっ!」

ミラは容赦無く、立香の右腕にビームを撃つ。

それは掠っただけで、彼の右腕を赤く染めた。

「おいマスター、てめぇ。右腕が!」

「残念ですが、止めです。藤丸リツカ。」

今度は先程よりも、高出力な光線が飛ぶのは目に見えていた。

しかし、藤丸立香は狼狽えない。それどころか、真剣な眼差しでミラを睨んでは気高く叫んだ。

「ミラ!俺は!!アンタの測定の先に行く力を持っていることを!!忘れたか!!!?」

すると、彼は敢えてミラに向かって突撃したのだ!

「無謀なことを!」

と彼女は反論するが、その実、藤丸は足に魔力を溜めて跳躍したのだ。

そして、その左腕には長さは短く、刃の形としては凸凹状と直線状を足したような見た目よ剣が握られていたのだ。

「なっー」

そのまま立香は、ミラを一刀両断するようにビームをかき消した。

「……認めたくはありませんが。合格です。藤丸リツカ。」

「あぁ。ご苦労さんだ。マスター。」

藤丸の右腕は、一瞬のうちに治っていた。彼の剣は、魔力を吸収しては治療などにその魔力を回すことが出来るようだ。

「その剣の名前は?視たことも無いぐらいに、強大な魔力を抱いているようですが。」

ミラの質問に、藤丸は頭を掻きながら答える。

「そうだなぁ。白銀の月『シルバームーン』ってのはどうだ?」

その名を聞いた彼女は凍りついた。

 

「どうした?」

「貴方。白い月を知って…?」

「?逆に聞くけど、白い月ってなんだよ?この間暴走したのは覚えているが、白い月なんざ知らないぞ?」

ミラは、シルバームーンの名を聞いて思い出してしまったのだ。藤丸立香がリーゼの魔力によって、暴走してしまった時。

白い月が現れたのを。幸い、学園内には何事も影響は無かったがそれが危険な代物なのは一目瞭然だった。

「でも。一つ良いか?」

「なんでしょう?」

少し黙ってから、立香は答えた。

「昔から月を見ていると、なんだか危なっかしいような。懐かしいような。なんとも言えないぐらいに複雑で特別な感情が湧き出ることが多いんだ。」

 

一方で、アラタとアキオのほうは。

「崩壊現象…もうリーゼが攻めてきたようだぜ、魔王候補!!」

「マジかっ!?」

アキオの蹴りがアラタの頬に当たる。

「かはっ。早く、お前さんの魔術をパクらねぇと。」

『うん?魔道をパクりなかったのかよ?』』

アラタの魔道書・アスティルがようやく起きたようだ。

そして、さりげなく驚愕的なことを一つの魔道書は公言した。

「どうでもいいが。そこのネーちゃんの真言術なら、もうとっくにプロセスをクリアしてるぜ?」

「そんなっ…いつの間に!?」

と驚きを隠せないでいるミラ。

『でも、今回は魔道書を武器に変換する魔術じゃないからな。仕方ない。使い方を見せてやる。』

 

アスティルの写本に付けられた鎖がほどかれた。

『構成。検索。転換。組織。実行。』

すると、アスティルは一人の幼い女の子に変化した。

髪は雪を連想させる水色で、黒い服にスカートを履いた容姿だ。

「…この姿になるのは、聖に使われていた時以来だな。一応言っておくが。聖は私のことを『ソラ』と呼んでいたぜ?」

アスティルの真名がソラであることが、この場で判明された。

「つーか。リツカはどうした?」

「あぁ。彼なら、急いでリーゼを止めに行きました。」

「早いなぁ、アイツ。俺も出遅れねぇようにしないとな!」

藤丸立香は、悪の魔道士を止めるべく奔走する。

春日アラタは、アキオの魔術をコピーするべく修行の最終段階に入った。

他のトリニティセブンは保健室で、セリナを守るべく、魔物と闘う。

それぞれの闘いは最終段階へ突入したのだ!

 

次回のFate/Grand Orderは!

「もし…アラタさんたちがお姉ちゃんに勝ったら。悪の魔道士なんてやめて。」

「リーゼ。お前は…何よりもセリナを…」

「俺の魔力!回収したぜ!!」

 

 

 




原作リスペクトの精神で行きたいです


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第16話

遅くなり、申し訳ございません
二日酔いで参ってました(汗)


「遂に、自身の能力を強化させる剣・シルバームーンを造り出した天才魔道士である藤丸立香は。リーゼの襲撃を感知し、保健室へ急行するのであった。」

「走りながら言って、よー疲れないな。」

「この程度、どうだってことねぇよ。リーゼ編最終回である、第16話をよろしく。」

あらすじ完

 

保健室に現れたトリニティセブンの皆が一息付いたのも束の間。

「あ…」

「どうかしましたか?」

「おっきな魔力の人が、やられちゃったみたい。」

と彼女らは学園長が敗北したのを知ってしまった。

しかし、彼女らは学園長がわざと負ける性分であることを知っていたので、ショックでは無かった。

それよりも気になったのは。

「そして、もう一つの強い魔力がこっちに向かっているわ。」

保健室の空気は、緊張で一杯になった。

「…ここはコテコテの罠とかどうッスかね?」

と、ニンジャが考えて暫く。

ドォォン!と大きな音を立てて、壁が崩壊した。

「たーのもーっ!!」

壁を壊した犯人は勿論、悪の魔道士・リーゼだ。

「引っ掛かったッスね!?トラップカード発動!!」

ニンジャの掛け声に呼応するかのように、リーゼの足元に縄が巻き付き、彼女を逆さ吊りにした。

「わわっ!?」

「忍法吊り下がり天井ッス。」

「すごーい。ホントに捕まったんだねー。」

「ホッ、いつの間に!?」

「自分、ニンジャッスから。」

しかし、有名な忍者漫画もびっくりな手際の良い罠で、逆さ吊りにされたリーゼから余裕の表情が消えたのはほんの一瞬の間だけだった。

「あはは。ベタな罠にかかっちゃったわね。」

ここで、リリスは気付いた。

「なるほど。リーゼさんの魔術は、直接的な攻撃や罠に弱いのですね。」

「おっと!流石リリスセンセ!分析力はピカイチね。けどまあ。今はこれくらいはサックリ脱出できるけど…!」

リーゼが黒い羽を伸ばして、縄を斬った直後!

何かが半円を描くようにリーゼの横から宙を舞うように現れ、それに触れた彼女の両翼が紙のように千切れ、彼女は地面に落とされた。

「!まさかっ!」

彼女の後ろには、一人の制服を着た男が立っていた。

「天が呼ぶ、特異点が呼ぶ、俺を呼ぶ。悪の魔道士の野望を食い止めろと。我が名は藤丸立香。」

「…リツカさん!」

「…その左手の剣は何かしら?」

リーゼの質問に対して、藤丸は答えた。

「アンタを止める為の剣だ。言っておくが。」

藤丸はリーゼの翼を指差す。

「俺の魔力の悪用はさせない!」

「えぇ。貴方の魔術を使えないのは残念ねぇ。」

立香は、リーゼに奪われた魔力を取り返したのだ。その眼には、強くも静かな闘志が宿っていた。

「今度こそ止めてやる…っ!」と藤丸が叫ぶと、ベッドのほうから「お姉…ちゃん…」とセリナの声が。

そして、リーゼがセリナに歩み寄る中で藤丸たちは姉妹の会話を警戒しながらも邪魔しない範囲に踏みとどまりながら聞いた。

「セリナ…ホントは貴女も、あたし達『悪の魔道士サイド』に連れていきたいんだけど。」

「『あたし』…」

「『たち』…か。ほう…」

藤丸の周りを漂う空気が代わった。彼は、リーゼを越えなければ次は無いということをさらに確信したのだ。そして、彼の身体は震えた。

「おっと…!失言しちゃったわね。あと、藤丸くんの震えは何…」

リーゼは藤丸を挑発しようとしたが。藤丸から静かな殺気が漏れているのを察して、それをすることをやめた。

その殺気はリーゼに向けたものではない。彼女を悪サイドへと導いたであろう者たちにも、向けられたものだ。

 

「リーゼ…一つ質問だ。嫌と言っても後で答えさせて貰う。……そっちに。眼鏡をかけた女狐や強面なエセ神父は…いなかったか?」

「…!!」

「図星なようだな…なら…」

「やめて…!」

セリナの渾身の一言で、藤丸は刃のように尖らせた感情を抑え込んだ。

「ご機嫌いかがかしら?」

「お姉ちゃんのせいで、最悪だよぉ」

「でも、あたしは謝らないわよ?」

「知ってる…そういう…。お姉ちゃんだもの。」

そして、そのままセリナは衝撃の一言を口にした。

「だから。勝負して欲しいの。」

「勝負…?」

リーゼはいつもよりも、明らかに動揺している。

それを藤丸は見逃さなかった。そして、彼は理解した。

何故、リーゼがすぐにでも弱ったセリナを悪サイドに堕とさないのかを。

「もし…アラタさんとリツカさんがお姉ちゃんに勝ったら。『悪の魔道士』なんてやめて帰ってきて…。そして…元の私たちに…。」

そう言ったセリナが寝てしまうと、リーゼは自身の妹の手を取り。

「…バカね。そんな約束…今のあたしにはもう…」

「リーゼ…お前は。何よりもセリナを…」

リーゼの心の声を理解してしまった藤丸が呟く。

「さて。しんみりはここまでよ……!!」

「……悪いお姉さんには……お仕置きが必要のようだな!!」

 

リーゼが手を広げると、その身に宿した魔力を一気に放出しようと溜めだした!

「あたし、学園長に勝つために。皆の魔力をも食べることにしたわ。」

皆が魔力の塊に囲まれてしまった。

「それじゃいただきま…」

リーゼは違和感に気が付いた。それは、藤丸立香が不敵な笑みを浮かべていたことだ。

しかし、その違和感に気が付くには遅かった。

彼女の後ろには白いドラゴンが口を開けて、隙をうかがっていたのだ。

そして。

「バクッッッ!!」

白いドラゴンはリーゼの片腕に纏われた魔力を食べて、主に魔力を届けた。

「遅いじゃないか。春日アラタ。」

藤丸はそう言って、リーゼの動揺を誘った。

「アラタ!!」

「ーっし!俺の魔力回収したぜ!!」

「ハハッ。ぶっつけ本番にしては、上手くやったじゃないか。才能あるぜ、マスター。」

リリスは、アラタをマスターと呼ぶその少女を見て正体に気付いた。

「その少女。それにこの魔力。まさか…!『アスティルの写本』!?」

すると、その少女は「この姿では初めましてだな。聖は私のことをソラと呼んでたぜ?」

「あのデカイねーちゃんに、託されたからここで負ける訳には行かねぇな。

さあ、足のネーちゃん!おイタを止めにやって来ー」

すると、偶々リーゼの服の一部が切れてその乳房が露になってしまった。

「Oh…ナイスサイズ…」

「……リツカちゃん、もっこりぃぃ!!」

リーゼが恥ずかしそうに、胸を隠したところで。

スケベ男二人に、リリスの拳骨が下った!

「コラァァァ!!」

「もう少しでお触り出来たのに!リツカちゃん、ガックシ~。」

「おごっ!?」

「ゆ、油断したわっ。まさか…魔力を奪うだけでなくて。おっぱいを見ようだなんて!!」

アラタは必死にそのことを否定したが。

「アラタさんの目的は、トリニティセブン全員の裸を見ることッスからねっ。」

「ダァッ、違ぁう!」

「でも、見たいんだよね?」

すると、今度は「かなり…」と肯定してしまった。

「とか漫才してる内に、乱れた魔力を回復されたみたいだぜ。マスター。」

「なぬっ!?」

「もう、漫才してる場合じゃないってことか。行くぞ、アラタ。」

「あぁ。」

すると、藤丸とアラタの二人はそれぞれのテーマを実行した。

「暴食『グラ』のアーカイブに接続!テーマを実行する!!」

藤丸は、アークミネルバが変化した小型のメカ=メイガスドラゴンを使って銀色の鎧をその身に包んだ。

メカは「Wake-up メイガスドラゴン!Get Burning Year!」と名乗りを挙げる。

「傲慢『スピルビア』のアーカイブに接続!テーマを実行する!!」

アラタは、黒い衣服のメイガスへと変身した。

「やれ、マスター!その手であいつの胸を掴め!そして、魔王因子を取り除け!」

「おう!」

アラタが最初に動き出す…が。

「その手を喰らうのは、流石にまずいわね!」

とリーゼはワープをした。

そんな彼女が安心したのも、束の間。

「よぉ。『悪の魔道士』ってのは楽しいか?」

と後ろから声が聞こえた彼女が振り返る。

そこにいたのは、彼女のスピードに付いてこれるようになった藤丸そのものだ。

「その能力…削ぎ落とす!!」

彼の短剣=シルバームーンから溢れる、魔王にとっても危険な魔力を察したのか。

リーゼは逃げるように移動するが。

何処へ逃げても、藤丸は追跡してしまうのだった。

「しつこい!」

「アンタには、聞きたいことがいっぱいあるんでなぁ!」

藤丸はそう言うと、複数の魔法陣を出した。

そして、そこから白銀の鎖を出した!

「これは!万物を縛る、白銀の鎖!その名は!『ホワイト・チェーン』!!」

それは、前回の闘いでのホワイトユニバースを喰らいながらも生き永らえた藤丸が

自らが受けたエネルギーを鎖に変えたものだ。

その鎖はリーゼを、鳥を籠に入れるかのごとく囲んだ。

そして。

「白蛇縛(パイシゥーバインド)!!」

藤丸の呼応とともに、その鎖がリーゼを蛇のように動いては束縛したのだ。

「このまま縛っている間にやれぇぇ!アラタぁぁ!」

「っしゃ!」

 

誰もが、逆転への布石を得たと確信していた。

ただ一人を除いては。

「ふっ。やっぱ面白いわね、君たち!!」

「!?気を付けろ、何かあるぞ!?」

「奥の手ってやつか…?」

「ちょっとヤバい気配だぜ。」

すると、リーゼを歪んだ空気が纏った。

「怠惰『アケディア』の書庫『アーカイブ』に再接続。テーマを実行するわ!!」

すると、白い鎖は急に錆び付いたかのようにボロボロと崩れた。

「くそっ…!!皆!防御体勢に入れっっっ!!!」

「ぐっ…なんだっ!?」

「いけません!リーゼさん!!それは」

「トリニティセブンとは。その書庫『アーカイブ』にある「秘奥義」ロスト・テクニカを取得した者のことなの。」

「『ロスト・テクニカ』…だと…?」

「これを使うと、普通はただじゃ済まないんだけど…今回だけ特別よ♥️」

すると、全ての動きが止まり世界は黒く塗りつぶされたようなものへと変化した。

これは、生徒だろうがサーヴァントだろうが関係無しにだ。

これを逃れたのは。藤丸とアラタとソラとリーゼのみだった。

「なんだこれ!?また、異世界とか結界とかか!?」

「違うっ!コイツはヤバい…激ヤバだ!マスター!!コイツは怠惰『アケディア』のロスト・テクニカたる魔道極法『ラスト・クレスト』!!」

「そう。時空裂界『バアル・ペオル』よ。」

「これは!根源へ至った力…『魔法』…だと言うのか!?」

To be continued

 

次回のFate/Grand Orderは!

「何よりも!妹を大切にしているなら!あんな技使うんじゃねぇよ!!」

「セリナによろしく…ね。」

「…少しの間。一人にしてくれ。」

 




リーゼ編も次でラスト
リーゼ編の次は特別編・The Birth of Minervaを書きたいと思います。詳細は次回の後書きをお楽しみに


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17話

1日遅れました。


「ついに、リーゼがラストテクノロジーを使って…えっと。」

「ラストテクニカだ。ここ、テストに出るから覚えとけよマスター?」

「ラストテクニカだか、ラストクレストだか知らねーが。リーゼを俺たちで止めるぞ!!第17話をどうぞ!」

 

 

「時空裂界(バアル・ペオル)。かつて数秘術『ロゴスアート』の始祖である、ピュータゴラースが編み出した魔道極法『ラスト・クレスト』。万物の事象を完全計測し…。あたし以外の時間を極端に遅くする術。簡単に言えば。時間停止の真似事よ。」

髪をなびかせながらのリーゼの台詞に、既聴感を感じた藤丸。

 

「つまり、これは魔法ではなく。魔法に近い大魔術…言い換えれば時間停止(偽)の魔術…というわけか。」

「時間停止…だと。そりゃあ、思春期な男の子の夢じゃねぇか!」

「うーむ、惜しい。リーゼが停止していれば…。って言わすなよ!」

「エロい事もしまくれるもんな。」

「うむ!」

「よし。待ってろ、ネロ。今すぐにヤr」

「いい加減にしやがれ!馬鹿野郎ッ!!なぁにしれっと、服を脱ごうとしてるんだよ!!?」

 

藤丸の魔道書=アークミネルバが怒声を挙げては人間の幼い女の子のような姿へ変化しては、大きなハンマーで藤丸とアラタを殴った。

「「何故だ…」」

「妙な妄想にもっこりしとる場合かぁぁ!!?」

某ドイツ軍の兵士みたいにアークミネルバは叫んで、リーゼのほうを指差した。

「な…!?」

「ホワイト・チェーン!白蛇縛『パィシゥーバインド』!!」

間一髪のところで、藤丸はリリスの首に触れるところであった、リーゼの手刀を止めた。

「さっきよりも速いのね。」

「殺気を感じたのでな。このモードになると、そういう類いの物を察することがいつもよりも出来る。」

「ったく。スイッチのオンオフが激しい、困ったマスターだぜ。」

「そこは互い様だな、ミネルバさんよ。」

 

と珍しくもソラと会話をするミネルバ。しかし、状況は手詰まりのままだ。

「この状況下…マスターならどうすんだ?オラ。」

「お前はギャングのボスか何かか?…うーん。時間の操作の権利はリーゼが持っている。」

「そうね。こうしている間にも、魔王候補クンの唇を奪いまくることもできたわ。」

「それは光栄だが。こうして話をしていられるのは?」

「あたしが貴方たちに干渉出来るよう、時間を動かしてからよ♥️あと、リツカくんのメイガスの能力も歯が立つわけ無いんだから。」

「癪だが、リーゼの解析通りだ。流石に、大魔術の作用を跳ね返すのは…お手上げだ。」

藤丸は手を挙げ、「リーゼのバアル・ペオルを完全に防ぐことが不可能」であることをアピールした。

すると、アラタは。

 

「やれるもんなら、やってみなっ。美少女はいつでも、大歓迎だぜ。」と言い、リーゼを挑発した。

「おっ。勝ち方でも浮かんだのか、マスター?」

「さっぱりわからん。」

と、ソラの問答にあっさり答えるアラタ。

「……ほう。」

「あぁ。こいつは…!」

と、藤丸とミネルバのコンビは息を揃える。

「今さらようやく。コイツに込める『意志』ってもんが掴めたような気がするぜ。」

アラタの手に光る、アキオの真言術を見た途端に。

アラタと他の三人は。目をそれぞれに配った。

「何を言ってるのか分からないけど…貴方たちの魔力を吸ったら。…時空の果てに封じてあげるわっ!!」

それが合図かのように、皆動いた!

「よし!行くぞ!!」

「永劫の時を我が手にー時空計測『クロノ・カリキュレーション』!」

リーゼの一声で、全てが絶対零度の中かのようになってしまった。

 

「魔力の使いすぎ…ね…。」

息を荒げながら、リーゼはアラタの元へ歩み寄る。そして。

「さよなら。魔王候補クン。」

アラタの唇を奪い、魔力を吸った。

「ふふふっ。ご希望通り、あっついのをしてあげたわよ♥️あははっ!これで再び、私は魔王の力を得たのも当然!FGO、これにて完!」

と、勝ち誇るリーゼに。とてつもない衝撃が走った。

「っっっ!?あぐっ!?ん…!?」

まるで、神経毒を貰ったマウスのように軽い痙攣を起こして動けなくなったのだ。

「…で?何が終わるって…?」

「!?」

「『FGO、完!』だとよ、リツカ。」と言いながら真言術の印が押された舌を出すアラタ。

「残念だったな。腕のはトリックだよ。マスターはリーゼと喋っている時から、舌にアレを仕組んでいたのさ。」

「まぁ、失敗したらしたで。私がホワイトチェーンで縛り上げた上で弱らせて、尋問していたところだがね。さて。答えて貰おうか。」

 

とうとう観念したのか。リーゼは項垂れて、学園を狙う奴等のことについて話した。

「『悪の魔道士サイド』ってのは…リツカくんが追っているクリプターと手を組んでいる…。

福音探求会『イシュ・カリオテ』のことよ。」

「…やはりそうか。奴らめ。大人しいと思ったらこれだ…!」

藤丸はそう言いながら、険しい顔をしてここにはいないクリプターを睨んだ。

「けど、『イシュ・カリオテ』ってのはなんだ?」

「……私には時間が無いから手短に言うと…そこに聖ちゃんもいるわ…」

「「!!?」」

アラタの質問への返答に、藤丸も共に驚いた。

「つまり、春日聖は…!」

「生きている…ってのか…!」

「これはアラタにとって喜ばしいことだ。しかし、『時間が無い』ってのは…?」

リーゼの状況が理解できていない、藤丸にソラが答える。

「ラスト・クレストのリスクってやつさ。」

「……っ!」

藤丸の顔が鬼のように、赤くなった。

「リーゼ。お前…!妹を大事に思うなら!なんで!そんな技を使った!?もっと…!自分を大事にしろよ!!これじゃあ、セリナとの約束も果たせねぇ!!」

「ごめんなさい。魔道士ってのは…研究のためならなんだってしてしまうのよ。」

 

「そして、それは。アラタくんの従姉妹も同じこと―。」

「聖が…?」

藤丸もアラタも彼女が嘘を付いているようには、見えなかった。

そして、塩をかけられた青菜のようになったアラタの腕をリーゼは引っ張ると二つの花弁を合わせた。

リーゼは言い残すことは無いと見切ったのか、アラタと藤丸らを囲むように数秘術を使った。

「おい!ふざけんなっ!リツカの言ったように!セリナを一人にするつもりか!?」

「……!!」

藤丸は苦い顔をしては、項垂れた。

「俺は認めねーからな…!必ずお前をここから引きずりだして揉みしだいてやるからなぁぁ!!」

 

アラタがやけくそに腕を振るうと。柔らかい物に当たったような感触が。

「む……?」

「…は?」

辛気臭い空気から一転して、アラタの目の前には胸を揉まれて眉に皺を寄せるリリスの姿が。

「これってもしかして……私を巻き込んでのお仕置きレッスンじゃない?」

「ア…アラタぁぁ…」

「…いつもありがとう、リリス。そしてすまん、リツカ。」

 

「…そうですか。お姉ちゃんはもう…」

残念な顔をしたセリナに、藤丸は約束を守れなかったことを彼女の姉に代わって謝罪した。

「ごめん。こんな結果になってしまって…」

「アイツめ…自分とこの始祖と同じことしやがって…」

「申し訳ないが。少しの間一人にしてほしい。」

藤丸はリーゼの行動に釘を刺したアキオを含めた全員にそう言うと、姿を消した。

「リツカさん…」

「ところで、アイツの魔王因子は全部食いつくしたんだよな?」

「あぁ。それは間違いない。今は私が預かってるぜ。」

「しょうがないなぁ、お姉ちゃんは。また学園をサボる気満々なのですね。」

セリナはカメラを抱き締めながらそう言った。

「コホンっ。ソラさん。その不浄な男は、どれくらい数秘術『ロゴス・アート』のプロセスをクリアしていますか?」

「あー。もう一声ってところだなっ」

「やはり」

ミラとソラの会話に付いていけていない、アラタとセリナが首を傾げる。

それに答えるようにミラは、首席検閲官としてセリナにアラタの強化ーつまりは、アラタに数秘術『ロゴス・アート』をマスターさせるように命令した。

「わお!ミラちゃん、優しいねぇ~」

「ツンデレね」

「違います!!私には、早く彼女を罰する必要があるだけですっ!!」

と顔を赤くしたミラは一目散に、保健室から去った。

 

一方で。そんな彼らの様子を伺う者が。

「なるほど…アラタ君は順調に成長中。他のトリニティセブンも、順調に影響を受けている……と。問題なのはリツカ君の…」

「学園長…『西』の学園が。」

「あぁ。消滅したよね。ってことは、ついに『彼ら』が動き出したみたいだね。」

To be continued

 

次回Fate/Grand Order 特別編

「待ってくれよ…置いていかないでくれ…頼む…」

「俺がその苦しみを断ち切ってやる…だからよぉ。この世界で生きろよ。

アークミネルバ。」

アークミネルバの隠された真実とは?

藤丸がアークミネルバの過去と触れた時現れた、アワリティリアトリニティとは?

そして、目覚める。新たな力!!

「祝え!全魔術師を凌駕し!人類史を守る勇者!その名も…!!」

Fate/Grand Order The Birth of Minerva

 

 




特別編は三部構成となります。
ここで解かれるのは、アークミネルバの過去。
そして、藤丸の中にいる人類悪こと魔王の正体です。
お楽しみに


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特別編 The Birth of Minerva 前編

遅れて申し訳ございません
日曜日と月曜日は体調が優れなくて、ここに挙げる元気も無いほどでしたが、今日の午後からはやっと体調が戻ったのでこの二次創作を揚げたいと思います


この物語は藤丸とアラタがリーゼを止めた後で、リベル学園に向かう前の話である。

そして、これはサーヴァントの物語ではない。メイガスの物語でもない。

これは…一人の魔王とある女神の名前を冠した魔道書の物語である。

 

ここは多数の魔道士が住むビブリア学園の学生寮。

その庭で静かな夜を遮るように修行している者がいた。

名は藤丸立香。二十歳の青年であり、魔王候補の一人でもある彼は一人の少女を『闇』から救えなかったことを後悔していた。

彼は仲間の前では、平常に振る舞っていたがリーゼの消滅に過去での出来事を重ねていた。

それは、様々な特異点とロストベルトで救えなかった命だ。

「クソ…ッ!クソッ!!」

拳を振るいながら、救いたい者を救えなかった自分を責めていた。

しかし、彼にも限度が来たのか。暫くしていると、頭を叩かれたかのように背中から倒れてしまった。

そして彼は瞼を閉じた。

 

藤丸はその夜、悪夢を視た。

まず初めに、白いフードを被った男が現れた。

彼は、何かぶつぶつと呟いては何かを造っていた。

暫くすると、男は喜びの声を挙げた。

「やった…ついに!完成したぞ!!新しい魔道書だ!!!」

男が叫んだ途端、藤丸の意識は一旦途絶えた。

藤丸が目を開けると、そこは彼自身の部屋であった。

「アレ?」

藤丸が不思議そうにしていると。

「あーっ、かったりぃ。」と一人の幼女が、重い荷物を運んだあとかのように怠さを訴えた。

「……そうか。済まないな、アークさん。」

藤丸を部屋まで運んだのは、アークさんことアークミネルバだ。

「修行するなら勝手にしろ。だけどな……自分の健康管理ぐらいはちゃんとやれよな?」

「あぁ。ごめん」

この時、藤丸は最初に会ったアークミネルバの変化していることに気が付いた。

 

次の夜に藤丸はまた夢を見た。

昨夜に出てきた男は造ったばかりの魔道書を使って、魔物の軍隊と闘っていたのだ。

そして夢の中で、藤丸はあることに気が付いた。

「あの男の魔道書は…!」

それを藤丸は何度も見たことがある。紅色を基調とし、金の紋章を持った魔道書を。

「つまりこの夢は…アークさんの過去そのものなのか?」

それは、闘いに勝った後に男が言った言葉で確信へと変わった。

「お疲れ様。アークミネルバ」

そう言うと男はフードを取り、アークミネルバを我が子のようにじっくりと見つめる。

藤丸はフードを取ったその男を視て目を丸くした。

男は藤丸と瓜二つだったからだ。

「お…俺!?いや…そんなはずは…!」

この世の中には、似ている顔が三人いると言う。この時の藤丸は「偶々似ているだけだろう。」と思って夢から覚めた。

 

しかし彼が目覚めた場所は、藤丸の部屋と呼ぶには余りにも禍々し過ぎた。

「貴様。何処へ行くつもりだ?」

後ろから声が聞こえたのだ。

「なんだ?この魔力は!?」

後ろを振り向くと、また自身そっくりな男がいた。

ただし、これはただ者では無いことは一目瞭然だった。

男は、赤く岩のように険しいドラゴンの顔が彫られた鎧を纏っていた。まるで、藤丸のメイガスモードを禍々しくしたような見た目の鎧だ。

 

「お前は誰だ!?」

藤丸は自身のアナザーとも言える存在に率直な疑問をぶつけた。

「我の名は……アワリティアトリニティだ。」

そうヤツが答えた途端。アークミネルバは今まで藤丸に見せたことが無いくらいに感情を爆発させた。

「てめぇ…!どのツラ下げて来やがった!!?」

彼女はまるで、敵に突進しようとする猪のように鼻息を荒げた。

今の藤丸に分かるのは、彼女とアワリティアトリニティの間に何かが起きたことだけだ。

「お前は……やはりそうか…。」

アワリティアトリニティは一瞬、悲しそうな表情を浮かべた。

藤丸はそれに違和感を覚えた。

「さて、貴様らをどのように殺そうか。」

「…!」

アワリティアトリニティは、藤丸に殺気をぶつけた。それは、藤丸でも足をすくませる程強力な物だ。

藤丸の本能は彼に「アークミネルバを置いて行ってでもいい。逃げろ」

と警鐘を鳴らすが。

「いや。それは出来ない!」

藤丸は自分に言い聞かせるように、そう叫んだ。

アークミネルバに無理させたくないと考えた彼は、金色のオーラを放つ超カルデア人へ変身し敵に突進した。

しかし、効果は殆ど無いに等しかった。

「クソッ…!」

「なんだ。その程度か?」

アワリティアトリニティはその拳で、藤丸の腹部を貫いた。

「グハッッッ!」

「マスター!!」

藤丸の腹には風穴が開き、彼の口や腹の風穴からは大量の血が噴き出した。

普通なら絶命しても可笑しくはない。しかし、彼は立ち上がる。

「やはり立ち上がるか。流石は魔王候補…といった辺りか。」

「こんなところで倒れる訳には行かないんでね!」

藤丸は圧倒的な再生力で、腹部の風穴を防いでいた。

そして、他の特殊モードである抑止力モードでもビーストモードでも勝てないと悟った彼に残された手は只一つしか残されてなかった。

 

「アークさん!メイガスモードだ!これでなきゃ駄目だ!!」

「分かった…!」

アークミネルバは感情をどうにか圧し殺して、藤丸のメイガスモードの協力を示した。

「暴食『グラ』の書庫『アーカイブ』に接続!テーマを実行する!!」

すると、アークミネルバは小さなメカドラゴンへ変化して藤丸の腰部に装着される。そして、藤丸を包むように青白い竜の鎧が現れる。

「変身!」

「Get up!メイガスドラゴン!Year!」

 

「ほう…中々出来の良いメイガスモードではないか。小僧。」

「アンタのとそっくりな点だけが気に食わないがな。」

アワリティアトリニティは人差し指を強調した。

「嘗められたもんだな…!」

「アークさん。これは罠だと思う……だが勝負をかけるなら短期で決めるしかない…!!」

藤丸はアワリティアトリニティを囲むように高速移動を行う。

残像を作ってアワリティアトリニティの目を欺こうという算段だ。

「行くぜ…!」

藤丸は魔王を囲みながら、敵から見て八つの方向から青い光線を放った。

しかし、それらは簡単に吸収されてしまった。

「効いていない!?」

 

アワリティアトリニティは藤丸の動揺に漬け込むようにニッコリと笑い、刀身が長く禍々しい剣を取り出した。

藤丸は悪寒を感じ、白い短剣=シルバームーンを取り出した。

「起きよ、ブラッディムーン!!」

複数の赤い斬撃波が藤丸を襲った。

「グワァァァァッ!!」

藤丸の身体中は三日月の形をしたような傷が無数に付き、そこから大量の血液が流れ出した。

藤丸は背から地に落ちた。

 

「さぁ、アークミネルバよ。我の元へ来い…!」

「断るに決まってんだろ!!」

「なんだ?先程の戦でその小僧より、我のほうが強いことは分かったろう?まぁ、そこまで言うなら。その男の魔力を喰らうがな。」

アワリティアトリニティは、アークミネルバとの交渉が決裂したと見るや藤丸の魔力を吸収しようと迫る。

すると、謎の霧が立ち込めたのだ。

「なんだこれは!?」

アワリティアトリニティの視界は殆ど霧で埋め尽くされた。その間に、何者かが藤丸とアークミネルバを抱えて逃げたようだ。

 

藤丸は倒されて運ばれている間に三度目の夢を見ていた。

「私は…この山を越えなければならない。」

「待って…待ってくれよぉ。お願いだから…置いていかないで。」

「『甘えるな』!!」

藤丸にそっくりな男が、アークミネルバにそっくりな幼い女の子を突飛ばし何処かへと去っていったという内容の夢を見た。

一見その男は冷たいことを言ったが、何かわけがあって敢えてアークミネルバを突き放したように藤丸は見えた。何故なら、その男の目にはアメのようなサイズをした粒が溢れていたからだ。

 

「起きてくれたまえ、マスター。」

藤丸を夢から目覚めさせた声は、優しさを持ったお兄さんそのものだった。

「…マーリンか。……また、世話をかけちまったな…」

藤丸はゆっくりと起き上がった。

「全く。心配をかけさせる弟子だな、君は。」

「……この流れは修行だよな…。」

「うん、正解」

包み隠さずに、マーリンはそう言った。

藤丸はそれに対して落ち着いた態度で、修行に臨むことを決意したのだった。

 

「マスター。ここまで十分に強くなった君に足りないもの…それはね。剣技だ。」

「特殊技で勝てないなら、剣捌きで勝てってことか。」

「うん。それも正解だ。というわけで、今回の師範代を連れてきたよ。」

藤丸の目の前に現れたのは、和服を着た翁に青い鎧を着た少女そして、紫の鎧を着た青年だ。

「師範代セイバー三銃士を連れてきたよ。」

とマーリンがボケようとすると。青い鎧の少女がそれを制した。

「やめなさい、マーリン。そんなことをしている場合ではないでしょう。」

「ハハハ。アルトリアは相変わらずだねぇ。」

 

そして、ごく普通に三人のセイバーによる自己紹介が始まった。

「サーヴァント・セイバー。師範代として参上致しました。アルトリアと申します。」

「同じくランスロットでございます。」

「同じく柳生宗則。マスター…儂は手加減が苦手な故。覚悟するが良い。」

藤丸は柳生を視たときから、過酷な修行となる覚悟は決まっていた。

「では、アルトリア→ランスロット→柳生の順番で行こうか。」

マーリンの提案に乗っ取って、アルトリアとの剣技磨きを始めた藤丸であった。

 

前編完

 




本当に待たせてすみません


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The Birth Of Minerva 中編

サバフェス終わる気配しない


「特訓に使用する風景は…日本式の剣道場か…」

「えぇ。そこは私の好みにさせて頂きました。」

アルトリアと藤丸の剣技特訓が始まろうとしていた。

 

「では…投影品では無い、ごく普通の剣を。」

アルトリアは藤丸に、ごく普通の西洋剣を鞘付きで投げ渡した。

藤丸はそれを受け止めると、素早く抜いた。

「…流石は、あの赤いアーチャーの弟子でもある男。剣の扱いは伊達ではありませんね。」

「では胸をお借りします…騎士王様。」

アルトリアも同じように普通の西洋剣を持って構えた。 

最初に斬りかかったのは、藤丸のほうだ。彼に迷いなど無く、素早く縦に剣を振り下ろした。

しかし、騎士王にとっては見きれるスピードそのものであった。

「………」

藤丸は見切られる前に次の手に移った。

その速度はわずか0.5秒。

その速度よりも速い横一閃を藤丸は放つが、これもアルトリアの跳躍力の前に避けられる。

「!」

しかし、藤丸はそれを読んでいたと言わんばかりに、騎士王が跳躍した方角へと凪ぎ払った。

剣を向けられた彼女は自身の剣でそれを受け流し、回避した。

その後、剣と剣がぶつかり合う。

その中で、彼女は自身の魔力を放出させた。

藤丸も膨大な魔力で、それに応えた。すると、道場の床や壁に皹が入る。剣にも同様の事が起きた。

「中々の剣捌きです…が、貴方に足りない者が今ので分かりました。」

「………!」

「それは…『精密さ』です。」

「…『精密さ』…か。」

藤丸は、精神的にも肉体的にも鍛え上げられていた。苦手な物を少しずつ直してきた…が、それでも苦手なものがあった。それは自身の技の『精密さ』だ。

魔術の『精密さ』は克服出来るようになった藤丸だが、剣捌きに関しては課題が残ってしまっていたのだ。

「確かに刀身の傷が、アルトリアのよりこっちの方が深い。」

「えぇ。魔力は精密さも純粋な質量も、私と互角以上でした。あとは…分かりますね?」

「……」

藤丸は黙って頷くと、今度は剣を垂直にし静止した。

「…では、こちらから行きます!」

アルトリアは、ジェット機のような勢いで藤丸に突っ込む。

意識を集中させた藤丸は一歩後ろに飛び移り、剣を少しだけ下に降ろした。

アルトリアの剣が藤丸のところに届く…と思われたが。

瞬時になったのは、肉を斬る音ではなく金属が斬れる音だった。

剣の刀身の一部が地面に刺さった。藤丸に振り下ろされる筈の剣は、そこには無かった。

アルトリアの手に残ったのは、刀身が完全に無くなった剣そのものだった。逆に、「チェックメイト」と呟いたのは藤丸の方だった。

「やりましたね、マスター。」

「『精密さ』にだけ、意識を集中させたから出来た結果だよ。アドバイス、ありがとうな。」

 

 

「私めも修行の師範代を務めさせて頂きます、ランスロットと申す。」

「よろしく、ランスロット。」

挨拶をした二人は、それぞれを見た。

「で、どんな内容の修行?」

「なに、騎士王との物とそうは変わりません。ただ、剣に制約が無いのみです。」

「なるほど。」

藤丸は、瞬時にメイガスモードへ変身した。

左手には愛剣・シルバームーンが握られている。

「では、参る!!」

そう言った途端に、藤丸は間合いを取られていた。それには、流石の藤丸も驚いたがどうにかそれを防ぐ。

「なるほど…ソードブレイカー型の剣でしたか。」

「円卓の騎士を相手にするとなると、強くなった今でも全く侮れないねぇ。」

ランスロットは、シルバームーンを落とそうと力を増した。

藤丸も力を出すが、シルバームーンの刀身が短いせいか押されていく。

「ヌォォォ!」

「くっ、どうすれば……?……そうだっ。」

藤丸は身体に流れる魔力の一部を、シルバームーンを包むように使う。

それを見たランスロットは目を丸くした。

「こ、これは…!」

ランスロットが見た光景。それは、シルバームーンの刀身が長くなったというものだ。

「なんだこれは?」

「そうか…そういうことか!」

ランスロットと藤丸の修行を柳生らと見ていたアルトリアは、気付いた。

シルバームーンは、先程の藤丸とアルトリアの修行を記録し、成長したのだ。

 

「これなら…イケる!」

剣の成長のおかげで、今度は藤丸が有利になった。彼は刀身が長くなったことで、防御力だけではなく攻撃力も挙がったシルバームーンでランスロットの剣=アロンダイトを退かせた。

「なんとっ!」

「シルバー・ブレイク!!」

藤丸は、アロンダイトを素早くも重い太刀筋でランスロットの手から取り除いたのだ。

「見事です、マスター。」

「あぁ。次で最後…だな。」

 

 

「では、この日本刀を受け止めよ。」

「はい。」

藤丸は、修羅場を潜ることを覚悟した目付きで柳生を見据えた。

「因みに、これは生身での修行とする。」

藤丸は黙って頷く。

修行のはずなのだが、どちらかというと戦場のような緊張感が走る。

両者共に、迂闊には動けない状況であった。

時々、柳生は藤丸に殺気を送ることで彼を試す。

藤丸もそれを感じてからか、殺気をかわそうと逆に睨み返す。

そうしているうちに、十分は過ぎていた。

「「では…こちらから行かせて貰(お)う(か)!!」」

藤丸と柳生は阿吽の呼吸で、斬り合った。

 

藤丸は先程までに西洋剣を使っていたが、睨み合っている間にこっそりと日本刀の構造を読み込んでいた。そうすることで、どうすれば先程まで鍛えた剣業を生かせるのかをひたすらに考えていたのだ。

二つのしなやかな金属がぶつかる音がする。両者ともに、相手を傷つけられずにいたのだ。

そうしているうちに、両者の刀身は細い木の枝と殆ど変わらない物へとなっていた。

「次の一撃で全てが決まる…」

「あぁ。」

場に新たな緊張感が走る。そして、両者は再び斬り合った。

そして。

「お互い同じ箇所に、斬り傷が出来たようだな。それに…」

完全に折れ、地に伏したのは柳生の剣のみであった。

「うむ、ギリギリ合格…といったところか」

 

「何でだよ…何で…。『魔王』なんかになっちまったんだよ……」

藤丸はまた夢を見た。聞き覚えのある声の持ち主の独り言の内容を聞いて、全てが確信へと変わった。

「そうか……やっと分かったぞ。アワリティア・トリニティの正体が。」

すると、今度は場が何度も変わったのがわかった。

次の場面では丸い机に座った、魔術界のトップらしき人物たち。

「この魔道書は私でも扱えきれぬ。」

「どうする?これはどう考えても……処分案件じゃないか!」

「処分の方法は…十字架に縛り付けて火で炙るしかあるまい。」

これは、寝ている間に捕らえられた彼女が聞いた内容そのものだった。

 

 

アークミネルバは民衆の前で、公開処分されることに。

「では、『魔王に呪われた魔道書』ことアークミネルバを……数多くの人命を奪った罪で火刑に処す!!」

彼女はその声を聞いた途端に、頭の中で抑えていた何かが切れた。

「人間を憎んではならない。」造られている時に聞いた、彼女の父親とも呼べる男から言われた言葉は一気に崩れた。

「そうか……まるで人間に憧れて、好意を抱いていた俺がバカみてぇじゃねぇか。」

十字架に縛り付けられながら、彼女は集まる人間たちを侮蔑の目で見ていた。

その時、彼女の頭にある声が響いた。

「その苦しみ……我が背負ってやる。お前は、再び善きマスターを探すのだ。」

アークミネルバはその声は走馬灯だと思っていた。

しかし。

「教皇様!向こう側から、魔王クラスの魔力を持ったドラゴンがやって来ます!!」

「なんだと!?」

公開処分場の上空を、一匹の紅きドラゴンが旋回していた。

「まずい、迎撃しろぉ!」

人々が紅いドラゴンに集中している中。そのドラゴンの配下であろう魔物たちがこっそりとアークミネルバを拘束から解いた。そして二度と多くの人間の目が届かない、別の場所に置いたのだ。

「………あぁ……この世は地獄だな……人間なんて、ゴミみたいなもんだぜ。」

 

 

「マスターは起きそうですか?」

「うん。直に…ね。」

藤丸は夢から目覚めると、その頬に川を流していた。

「おい、なんだよマスター?男がなぁに泣いてんだ。」

アークミネルバはぶっきらぼうにそう言った。

そこで、藤丸は答えた。

「あのな、アークさん…。辛い時は辛いって言ってくれよな…。」

「お前…まさか。あぁ、分かった分かった。本当の私なら、ここで突き放すところだがよぉ………今回は許してやるよ。」

アークミネルバの頬にも長い川が流れていた。

 

 

一方で。

「…おっと。あまりにも長い旅だったな、アークミネルバよ。」

赤竜の魔王は余裕な表情を浮かべて、現れた藤丸とアークミネルバを玉座から見下ろす。

「相変わらず、血の色が好きな魔王様だ。」

「良いぜ、マスター。私が言ってやるよ。」

「ほう、この前の答えをか?勿論、我に…」

アワリティア・トリニティは自慢気に、自分の所こそふさわしいだろう?と言おうとするが。

「残念ながら、俺はコイツを本当の意味で気に入った。てめぇなんぞに、構いたくねぇんだよ!!」

アワリティア・トリニティはアークミネルバの一言に動揺した。

「…なんだと…?その小僧の何処が良いのだ!?」

「納得がいかないみたいだな…。まぁ、その面が見たくてウズウズしてたがなw」

とアークミネルバは更に挑発をする。

「ならば、貴様らを仲良く地獄へ落としてやろう!!」

アワリティア・トリニティは玉座から跳躍して、藤丸たちにのし掛かろうとした。

しかし、それを見抜けない藤丸とアークミネルバでは無かった。

大きく後ろに下がって、魔王の攻撃をかわしたのだ。

魔王の攻撃を回避した藤丸。そしてその腰には、アークミネルバ変化した一本のベルトがあった。                 

「行くぜ、アークさん!」

「OK!マスター!!Start your Theme!」

アークミネルバの掛け声とともに藤丸は手に握った袋入りのゼリーを、一本のベルトの挿入口に入れた

「変身!」と藤丸が叫んだ。

「メイガスモード!タイプ・ガーディアン!!」

大いなる力に対する藤丸の恐れが潰れる。藤丸の魔力が全身に際限なく流れる。藤丸の体の中から無限に魔力が溢れ出る。

藤丸のメイガスモードは青白い鎧の上に、鮮やかな紅色をした外套を纏った物へと変化したのだ。

 

「行くぞ、アワリティア・トリニティ!今の俺は…俺たちは!負ける気がしねぇ!!」

「俺は、マスターとのひとっ走りに付き合ってやる!だから…お前もひとっ走り付き合えよ!!」

藤丸の姿を見て、アワリティアは叫んだ。

「そうか…やっと手にいれたんだなぁ!藤丸立香ぁ!!」

 

後編へ続く。

 




どうも、超ローマ人です。
この崩壊危惧学園聖ビブリアが終わったら、用語解説集Ⅱをやりたいと思います。
理由としては色々な用語が並び過ぎて、私でもたまに訳が分からなくなっているってのと(おい)、トリニティセブンもFGOも初めてだよって言う人にも分かりやすくしたいので。では、また来週


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The Birth Of Minerva 後編

シンフォギアAXZ見て感動しました
錬金術師三人の立ち上がりはヤバい


「ハアッ!」

「…!」

ビブリア学園でもロストベルトでもない謎の亜空間では。

その空間の主と藤丸が、それぞれの魔力をぶつけ合っていたところだった。

すると、いつの間にか戦場にいた花の魔術師が喜びの声を挙げた。

「祝え!全人類を愛し、人類の未来を守る人理の防人。その名も藤丸立香・ガーディアンメイガスモード。今!生誕の瞬間である!!」

その妙に耳に響く声には、流石のアワリティア・トリニティも怒鳴る。

「誰に言ってるんだ!?」

「あぁ…いつものか。」

藤丸も、マーリンの演説を呆れながら聞いていた。

 

 

最初の火や電撃などが西部劇で流れる銃弾のように、四方八方に飛び散ったしのぎ削り合いをしてから、どのくらいの時が経ったのだろうか?

アワリティア・トリニティも藤丸も疲れているような気配は無いが、

「これでは拉致が開かない」

ということは、両者とも理解していた。

「出でよ、ブラッディムーン。」

「マスター。セイバーのサーヴァントたちとの修行の成果を見せる時だ!」

「あぁ。シルバー・ムーンV2ぁぁぁ!!」

藤丸は白く輝く剣を、アワリティア・トリニティは血のように紅い剣を取り出した。

そして紅い魔王は自身の剣に「起きよ」と、自身の剣に命じた。

「敵を殺せ」と命じた。

一方で藤丸は魔王の剣の秘密をどうにかして見抜いき、ある目的を以て魔王を静止させようと目論む。

「喰らえ、我がブラッディムーンの奥義。クレセント・スカーレット!!」

魔王はブラッディムーンから、複数の紅い斬撃波を放った。

「やっぱり、侮れないスピードだ…だが!」

アークミネルバと藤丸の心に、魔王の技に対する恐れは残ってはいなかった。

敵の剣の秘密を暴いたからだ。

 

そして、強化されたシルバームーンを縦に凪払った藤丸は、ただそれだけの動作でアワリティア・トリニティが放った全ての攻撃を防ぎきったのだ。

「なんだと!?」 

「行くぞ!!」

藤丸の背後には、青い龍と金の戦乙女が背後霊のように現れていた。

そして、シルバームーンは青と金の光を発し、藤丸は円弧を描いた後でそれを振るった。

「『インフィニティ・アークスラッシュ』!!」

光の斬撃波がアワリティア・トリニティを斬る。

そして、魔王は背を地面につけた。

 

 

「ふっ…見事で…ある。」

「次が有るなどと、抜かすなよ?」

「待て、小僧。話は最後まで聞け。我…いや私は。この時を待っていた。真にアークミネルバによって、認められた人間に倒されるのを」

アワリティア・トリニティは不思議と落ち着いたそして、安堵したような表情を浮かべていた。

「……」

「どういうことだ?」

「……アークさん。コイツはな…」

アワリティア・トリニティは咳払いをし、再び話を続けた。

「そうだな、お前は…藤丸立香は…過去の私を見たな?」

「あぁ。アンタが…アークさんを造ったんだろ?そして、何かに追われていた。

だから、アンタは巻き込むまいとして。敢えてアークミネルバを突き放した。」

アワリティアは「正解だ、次は誰に追われていたのかを話そう。」と言って、

過去の彼の話を続けた。

 

 

アワリティア・トリニティは人間に興味を持ち、人間に化けていた頃。彼には便宜上、恋人と言うべき女魔道士がいた。便宜上、というのは。人間社会に溶け込むために、その女を利用していたということだ。そして、その女とある共同作業をしていた。それは、魔道書の創造そのものだ。

それをするために、沢山の魔道書、魔物そして動物が犠牲になった。

最初は、人間も材料にしていた魔王だが…ある女を愛してから

「人間を生け贄にするのは、なんだか気分が悪い。」

と考えた彼は途中でそれを止めた。

この時から彼は、徐々に魔王であることを忘れていた。終いには、人間の女を本気で愛してしまったのだ。

そして、アークミネルバを愛した女との間の娘のように可愛がっていた彼は魔王たちの目に留まってしまった。

 

 

「ただいま。…おーい、エマ?」

ある日、出稼ぎから帰ってきたアワリティア・トリニティは異変に気付いた。

「……!」

昨日まで、エマやアークミネルバと生活を共にした机の上に不審な手紙が置かれていた。

『愚かなアワリティア・トリニティへ告ぐ。

お前の愛しいエマは、我ら魔王同盟が預かった。

アークミネルバを置いていき、魔王同盟本部まで来い。

我ら偉大なる魔王同盟より』

その内容を見た、魔王はアークミネルバを置いていって家の近くの裏山に向かって走ったのだ。

それに気付いたアークミネルバは、幼い女の子の姿に変わって自分のマスターを追いかけた。

「何処へ行くんだよぉ、マスター!」

「アークミネルバっ…!」

アークミネルバとも、エマとも一緒にいたい。そう思っていた彼だが、魔王同盟からの要求に従わなければ大切な二人の命が危ない。

そこで彼は断腸の思いを秘めて、叫ぶ。

「来るなっ!!」

さらに、アークミネルバが処刑されそうになったとき助けたのはドラゴンへとその姿を変えたアワリティアそのものだった。

そして、彼はそれを終えると再び遠くの地で休んでいたという。

 

 

 

「で、エマはどうなったんだ?」

「あぁ…今のところ行方知らずだ。ただ一つだけ、手掛かりなのは。お前のサーヴァントの一人に似たような女がいる…ということだろうか。おっと、我が最も言いたかったことを言うのを忘れてた…」

するとアワリティア・トリニティは膝をついて「アークミネルバよ…申し訳無かった」と一粒二粒程の雨を降らしながら、謝罪をした。

「ったく、どいつもこいつも勝手過ぎるぜ……」

「………アワリティア・トリニティもこの世の理不尽な側面の被害者……という訳か。」

藤丸は冷静にアワリティア・トリニティを分析し、彼は自分自身以外の誰にも危害を加えていないことに気付いた。そして彼はアワリティア・トリニティを受け入れ、逃がすことにしたのだ。

 

 

「済まないな、ミネルバのマスターよ。我は直に月へ行く。」

「アワリティア・トリニティ。もう、何も言うことは無いな?」

「あぁ、そのことだが。ミネルバのマスター、貴様に挙げたいものがある。」

なんと、魔王は自身の剣を藤丸に与えたのだ。

「これは…?」

藤丸は紅い剣を手にして、首を傾げた。

「うむ。我が愛剣・ブラッディムーンである。」

「良いのか?魔王同盟に追われている身じゃ無かったのか?」

「フハハハ!飽くまでも、我はアークミネルバの力をある程度使えるようになった者のみに、試練を与えるように設計された分身みたいなもの!本体はそうだな…お前の中にいるぞ?」

 

その時、藤丸とアークミネルバの思考は止まった。

「おっと、正確には…年老いた俺だ。」

そして、二人は息を合わせるように声を挙げた

「「うそーん」」

 

そして、別れの時が来たと若いほうが告げながら、亜空間を解除しようとした。

「待ってくれ!最後に一度だけ!あの言葉を…」

アークミネルバが、エサを求める雛鳥のように要求をする。

そして、それに答えるように

「あぁ。元気でな、我が『娘』よ。」

そう言い残して、魔王は去ったのであった。

 

 

「う…んっ。」

藤丸はやっと自身の部屋で目覚めた。

すると、「藤丸リツカさん。至急、学園長室までお越しください。」

「呼ばれちまったか…。ってかどのくらい寝てたんだ?私は?」

「ま、そんなこと考えてる暇は無ぇよ。そら、行こうぜ?」

「あぁ。」

二人は再び、共に歩みだした。

The Birth Of Minerva 完

 



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18話

はい、ここから本編再開です。


「リーゼが引き起こした、学園崩壊未遂事件から数日。天才魔道士である、藤丸立香やアラタ、そしてトリニティセブンの皆は前を向いていや、上を向いて歩いていくのであった。」

「なんか、段々雑になってねぇかマスター?」

「なんだよ、アークミネルバ。俺だってね、前を向いて」

「誰よりも、リーゼの失踪を悲しんで、塞ぎこんでいた男がなんか吠えてまぁす。」

「おい、やめろ馬鹿!」

「っつー訳で、本編18話よろしくなぁ」

あらすじ完

 

「春日アラタさん、大至急学園長室までお越しください。」

そのアナウンスをアラタが聞いたのは、昼の時であった。

「ったく昼飯って時に…」

「まあ、大至急とか言ってるし、なんかくれるのかもしんねーぜ?」

不満の声を挙げるアラタを宥めるように、彼の魔道書=ソラが言う。

「くれるって…そんなもんで大至急なわけー」

「!マスター!前!前!」

余所見をしてしまったアラタは、誰かにぶつかってしまった。

「イタタ…大丈夫か?ん…?」

アラタの目の前には、真っ白な布が見えていた。そして、その持ち主であるミラは状況を知ると顔を赤くした。

「あ…あ…あっ」

「今日はウサギさんじゃないんですね。」

 

 

「ははは!アラタ君ってば、相変わらずラッキースケベに事欠かないねぇ。」

学園長が顔がたん瘤で埋め尽くされた状態のアラタを視て爆笑する。

そこには、「いつもの」と言わんばかりに微笑む藤丸、アキオそしてため息をつくリリスもいた。

「俺は自分から見てる訳ではないんだけどなぁ」

「でも嬉しいんだろ?」

「当然だっ」

「おい、アラタ。ミラの前ではよせ…彼女の殺気が半端無いぞ」

「ひぃぃっ!」

藤丸は、アラタにミラ本人が睨んでいることを指摘して場の空気を整えさせた。

 

「それで学園長。私がどうしてこんな不浄な男たちと一緒に呼ばれないといけないのですか?」

「あぁ!それなんだけどね。実はアラタ君に一時的に、検閲官の次席つまりセカンドに入って貰おうかと思ってね。藤丸君もスカウトしたけど、彼に丁重に断られちゃったからね。」

「なっ」

「なんでリツカは断ったんだ?」

「それはだな。まぁ、気持ちの問題というか掲げる正義の違いというか。そんなもんだよ。」

藤丸はリーゼによる事件の調査の時に疑われる以前から、検閲官たちを良く思ってはいなかった。ミラや検閲官たちとの摩擦が完全に解けたわけではないからだ。

彼は検閲官らとは、一定の距離を保とうとしているのだ。

 

「しかし、何故!彼らのような魔王候補を次席に推薦したのですか!?」

とミラは抗議するかのように、学園長に発言した。

「実力ってやつでしょ?」

「彼らはアリンさんたちが引き起こした、計三回もの崩壊現象を止めてますからね。」

「しかし、リリス先生!!」

「私だって反対なんですよ!?」

 

「まあまあ。ミラちゃんやリリスちゃんがお目付け役としていれば良いことだし。それに。今回行ってもらう場所は。ミラちゃんとアキオちゃんだけじゃちょっと心配なんだ。」

「どういうことですか?」

「その場所はかつて。僕や君たちレベルの魔道士がいたハズなんだけどね…そこが先日完全消滅したのが確認された。」

「えっ」

皆の顔が固まった。つまり、ビブリア学園級に強い魔道士が集まっている場所が崩壊したからだ。

「まさか」

「そう。君たちに言ってもらうのは、消滅してしまった「三大魔道学園」の一つ。『王立リベル魔道学園』だよ。」

その衝撃の事実に、藤丸たちは固唾を飲んだ。

 

そして、リベル学園に行く日が来た。

「さてさて!というわけで、ささっとリベル学園の近くまで飛ばしちゃうけど。準備はいいかな?」

「えぇ。ガッツウィング一号…いえ、藤丸リツカ。スタンバイ完了しました。」

「それ、いります?」

とミラが藤丸にツッコむ。

「こちらガッツウィング二号…じゃなくて春日アラタもスタンバイ完了したぜ。」

「ちょっと待っておい。ここは、防衛軍基地じゃねえんだぞ?!」

藤丸たちのボケに今度は珍しく、アキオがツッコむ。

「気持ちは分かるけど、落ち着こうか。君たちはここに立っているだけで良いんだから。」

すると、皆の足元が光り出して天井の鏡に学園の景色が写った。

「お…おお」

とアラタが感動したかのような声を挙げると、鏡に亀裂が入る。

「おっと…!?これは!!」

学園長が驚いた顔をした。

「!不浄の気配!!」

「なんなんだぁ?これはぁ?」

と不思議がる藤丸に、アークミネルバが答えた。

「何者か知らねーが。この転移に干渉しているらしいな。気に食わねぇけどなぁ。」

「転移中に干渉だと!?」

「下手をすれば、時空の狭間に飛ばされてしまいます!」

「学園長!どうにかしてくれよぉ!」

「22世紀のロボットにすがるような言い方されても、無理だね!今止めたらそれこそ、君たちの体半分だけ飛んじゃうかもよ?」

その事実に、藤丸は驚きあることを試そうとした。

「干渉されてるのとは違うのを造るのはどうだ!?」

「それは、流石に危険過ぎるよ!君は耐性があるかもしれないけど、皆が耐えられない!」

「ならよぉ。耐性を付けさせれば良いんだな!?」

藤丸はビーストクラスの力を解放し、体から触手のように伸びる手を使って皆にビーストクラス特有スキル=『単独顕現』を付与した。

そして、リベル学園へ飛ぶための次元の穴を造り挙げた。

「リツカ君!僕の魔力の一部を利用しろ!」

「OK!」

藤丸は分けて貰った学園長の魔力を単独顕現に使用することで、比較的少ない消費で自らを含めた皆をリベル学園へワープさせた。

 

しかし、チームはリリス、藤丸、アキオの三人とアラタ、ミラの二人に分かれてしまった。

「おいおい。」

「なんか、ごめん。」

「あの状況では仕方ありませんね。ところでいつ先程の魔術を?」

「アラタたちと会う前からの能力です。ですが、多くの魔力を消費するので先程大ピンチ以外では滅多には使いません。」

 

一方で。

「ここは何処だ?」とミラを姫みたいに抱えたアラタがリベル学園の校門前で立っていた。

「時間は転移前から誤差数秒…これが、ミネルバのマスターの瞬間移動能力か。しかし。」

ソラは崩壊したはずのリベル学園を睨んだ。

「ちょいと空気がおかしいな。私の世界構築に似た魔力を感じる。」

と、ソラが解説をしているとミラが目を覚ました。

「う…んん?」

「おーい、起きてくれ。」

起きた途端に顔を赤くしたミラを視て、アラタはどうにか「自分は変なこと考えてやってるわけではない」と彼女を説得して制した。

そして、ミラも崩壊したはずのリベル学園を視て驚く。

アラタが聞いた話では、ミラは一度のみだがリベル学園を訪れたらしい。

そのことについて会話していると、後ろから女の声が。

「アラタさん。お久しぶりですね。」

アラタは豆鉄砲を撃たれた鳩のような表情を浮かべた。

「おっ、お前は…聖…!?」

To Be Continued

 

次回のFate/Grand Orderは!!

 

「冗談はおやめなさい。貴女の魔力は人間のそれではありませんよ。」

「この学園は消滅したわけじゃなくてだな…」

「おう、マスター。中々やれるようになったじゃねぇか?」

「コイツらは…弱すぎるな。本丸は何処だ…?」

 




ちょっと早い投稿が何故やったか?
気紛れってやつです。


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19話

気付いたら月曜日になってた。


「藤丸立香の単独顕現スキルでどうにか、リベル学園に着いた五人はそれぞれ二手に分かれてしまった。」

「あぁ。無事だと良いんだがな。」

「アキオも心配か?私も嫌な予感がしていてな。まあ、これが気のせいであることを祈って。第19話、どうぞ。」

 

「お久しぶりですね。アラタさん。」

「本当に…聖なのか?」

本来なら、再会したことを喜びたいと思うアラタだが。違和感を覚えたミラがそれを許さなかった。

「冗談はおやめなさい。貴女の魔力は、人間のそれではありませんよ。」

「えっ」

するとニセ聖は困ったかのように笑いながら、偽物であろう魔道書を取り出す。

 

「…流石はビブリア学園のトリニティセブン。そう簡単には騙されてはくれませんか。」

「私の正義『ユースティティア』の名の元に。その正体を現しなさい!!」

ミラは怒りを込めるかのように、衝撃波を出してニセ聖を倒そうとするが。

「この魔力。危険かも…ですね。」

結界を張られ、逃げられてしまった。

「聖じゃないなら、アイツはなんなんだ一体?」

状況が飲み込めていないアラタに、ミラは再び聖が偽者であることを説明した。

そして今度はミラが、珍しく先程から黙っているソラに質問する。

「あのニセ聖の魔力の質が…貴女に酷似していましたよ?ソラさん。」

「…アイツは『イーリアス断章』。聖の記憶や外見を映して、身代わり役を担当していた私と同じ魔道書だ。」

つまり、ニセ聖の正体はイーリアス断章という魔道書なのだ。

「因みに、聖が魔道士の仕事で家を空けている間お前さんの料理やら掃除やらしてたのはアイツだ。つまり、一応ちゃんと『久しぶり』ではあったってことだ。」

「…消滅したハズの学園に春日聖の契約魔道書が現れた。調査は、私一人でも出来ます。貴方は彼女でも探してはいかがですか?」

ミラは眉に皺をよせて、スタスタと歩いていく。

「…なんか怒ってないか?」

「そりゃあ、昔の女が出てきたらなぁw」

「なっ!そっ、そんなんじゃありませんっ!」

ソラの弄りにミラは反応を示した。

「なーんだ。ミラも可愛いてころあるんだなぁ。」

「違うと言っているでしょう!!」

 

一方で。

「中に入ったは良いが……多いな。」

「こうなったら!」

「待て。ここは私がどうにかする。」

藤丸は、少しずつ前に出る。そして、魔物たちのところへ歩いて行った。

一匹の大きな鬼が、藤丸を通せんぼするが…その魔物は砂の城のように崩れた。

「えっ?」

「嘘だろ?おい。」

リリスとアキオが、信じられない物を見た顔をした。

「体格が大きい割りに弱すぎる。本丸はどいつだ?ん?」

藤丸は研ぎ澄まされた殺気を、魔物軍団全体に送っていた。そして、先程のは近づく者をほんの一瞬で愛刀・シルバームーンでその魔力を消し飛ばしていたのだ。その剣の性能と鍛え挙げられた剣術で。

「因みに……俺の仲間に近づいても殺すからな。貴様ら……!」

藤丸がそう言った途端、無数の魔物たちが一斉に逃げ出した。

「おお、マスター。中々やるようになったじゃないか?」

アークミネルバはそんな藤丸を視て感心したかのように、そう言ったのだ。

 

「因みにだなマスター。この学園は消滅したわけでは無いんだ。」

「そうなのか?だとしたら…」

「『世界構築』で異次元に隔離された…ということですか?」

『世界構築』。それは、魔王となったものが扱うことが出来ると言われている世界そのものを創り挙げる大技のことだ。

一言で言えば、かの大魔術である『固有結界』の上位互換のような物だ。

「ここは並行多元宇宙の狭間を浮遊している。つまり、私たちはこの学園しかない世界にワープさせられ閉じ込められたというわけさ。」

 

「しかし。あらかた回ったはずだが、なんも無いな。」

アラタたちは、得体も知れない廊下を歩いていた。

「もしかしたら、はぐれてしまったリリス先生やアキオとも合流出来るかと思ったのですが。」

「…なんも無いってわけでもなさそうだぜ。マスター。」

すると、アラタたちのほうへ恐怖の対象から逃げるように走る魔物達がいた。

「こっちに向かってくる!?」

「不浄な…!傲慢『スペルビア』のアーカイブに接続!テーマを実行します!!」

ミラはメイガスモードへ移行しようと思ったが、服が破けてしまったようだ。

「……」

「お、おう…。」

「キャアァァァ!!?」

何かの特殊な力により裸にされたミラの絶叫がリベル学園に響く。

「ちっ。ご馳走さまとか言える状況じゃねーなっ!!」

ミラのメイガスモードが解けたのに興じたかのように、逃げたうちの屈強そうな数体がアラタたちの前に立ちはだかる。

「どういうことだ、ソラ!?」

「この学園内じゃ、メイガスモードは封じられてしまうらしいな。私みたいに純粋な魔力存在なら、なんとでも出来るがな。」

ソラは数体の魔物を睨みながら、アラタにミラを担いで逃げるように促した。

「行くぞ、ミラ。」とアラタはミラに呼び掛けるが。

「あぁうぅ…。」

裸にされてしまった彼女はまるで、狼にでも狙われた小動物のように震えていた。

アラタは仕方なく、ミラを抱き抱えることにした。

「あとでいくらでも殴っていいから、今は逃げるぞ!」

「……わかりました。」

ミラは顔をトマトのように赤くしながら、アラタの行動に賛成するしかなかった。

「いかん、もっこりする」

「ふっ…ふざけないでくださいっ!!」

二人のそんな様子を見て笑うソラであった。

「やれやれ。マスターはハーレムでも作るつもりなのかねぇ?さて…と。」

ソラが指を鳴らした途端、瞬時に現れた沢山の魔法陣から光線が一斉掃射された。

数体の屈強な魔物は砂の城のように、脆く崩れた。

そして、魔物たちの死体を踏むように現れたのは。ニセ聖であった。

「相変わらず魔力の強さは流石ですね。『アスティルの写本』。」

「そっちこそ。相変わらず技の小賢しさは流石じゃないか。『イーリアス断章』。」

二人は睨み合った。

「貴方がいくら強くても、ここは私の領域です。」

「どうだかな。やってみないと分からないんじゃないか?」

今度は挑発し合う二人いや、二つの魔道書。

どうにか、一つの安全な部屋に着いて一息入れる二人の魔術師。

そして、はぐれた二人と一冊の魔道書を探す三人。

それぞれの思考が交わった。

 

次回のFate/Grand Orderは!

 

「今のマスターがヤンチャでね」

「待っていてくださいね、アラタさん。もう…逃げられませんよ」

「こいつが真の魔王候補『春日アラタ』に秘められた存在。『アストラルトリニティ』さ。」

「アラタぁ、目ぇ醒ませぇぇ!!」

 



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20話

仮面ライダージオウ、俺たちの闘いはこれからエンドでしたね。あまりパッとしなかった(個人的な意見)
ゼロワンが楽しみ!


「普通のビブリア学園の編入生・藤丸立香には、人類史を汚そうとするクリプターとの闘いが待っている。しかし、リベル学園で崩壊現象…いや『世界構築』が発生していた。」

「ちょっと、マーリン。なぁに、真面目にあらすじやってるんだよ。」

「申し訳ない。ン我がマスター。では。記念すべき第20話」

「どうぞ!」

「おっ。今日は積極的じゃないか」

あらすじ完

 

「そんじゃ、こっちから行くぜ。」

ソラはそう言って、複数の魔法陣から光線を放った。

だが、ニセ聖は魔物たちを盾の代わりにして、それを防いだ。

「やれやれ。その闘いは悪の魔道士そのものじゃないか。そいつらは。元々ここの魔道士なんだろ?」

と、ニセ聖ことイーリアス断章に問うソラ。

「こうなってしまっては、彼らに意思なんてありませんから。」

ソラを挑発するかのように、悪びれるそぶりを見せないイーリアス。

それに答えるかのように、ソラは膨大な魔力の放出で応える。

「違いない。なら…もう遠慮はいらないな!!」

「へぇ…また魔力を高めましたね。」

何処か冷静に構えるニセ聖。

そこで、ソラは「今のマスターがヤンチャでな。」とさりげないマスター自慢を始めるソラ。

それに対してやはりクールに応える、イーリアス。

「うん。流石は、私たちの聖が選んだ魔王候補ですね。」

そして、ニセ聖が指を鳴らすと同時に二つの魔力がぶつかりリベル学園中の窓ガラスが一斉に割れた。

そして、煙から出たソラは自慢気に吠える。

「…ふぅ!!やっつけたか!!ソラさん、大勝利ぃ!」

しかし、そんな喜びもつかの間。黒い立方体が、仮初めの勝利に喜ぶ彼女の目の前に現れた。

「なっ!?」

その立方体は禍々しく光り、ソラをこの中に閉じ込めたのだ。

つまり、真の勝者は。

「あらあら。大きな魔力の後は隙が出ますよって、何度も聖に言われてましたのに。…待っていてくださいねアラタさん。もう…逃げられませんよ。」

最悪なことに、イーリアスが勝利者となったのだ。

 

「…外へ出たのは良いが。やはら魔力は封印されたままだな。」 

「そうみたいですね。私の魔道書が出せませんし。」

「外に出ても学園の敷地内じゃ駄目ってことか。まっ、まあ。結界の要があるとしたら、こういう場所のほうが見付けやすいよな?」

アラタの質問に、ミラはいつとよりも縮まったかのように応える。

「そう…ですね。あちらに見える時計塔ならば、結界注としても結界芯としても問題なく機能していることでしょう。」

「よし、早速そこだな。」

 

時計塔のほうへ移動すると、如何にもそれの頂上へと繋がりそうな梯子があった。

「それじゃあ」

ミラは梯子を登ろうとするが、アラタの制服以外何も着ていない彼女は登っているときに自身の尻が見えることに気付いて顔を赤くした。

「…?どうかした?」

「え?あ…その。か、風が吹いてその。服がめくれてしまったので。」

「あー。そういうHっぽいの苦手だもんなお前…。なら、俺が先に登るか?」

ミラの性格を知っているアラタは、それに合った提案をしたが。

「……結界の要に罠があった場合、見抜いて対処出来ますか?」

「おいおい。罠とかあんのかよ。」

「普通は、敵が配置されない場合。確実にトラップが用意されています。例えばそうですね。矢、落とし穴、火に包まれる、挙げ句の果てには石の中にテレポートさせるものまで…」

ミラの本格的過ぎる、例にアラタは絶句してしまった。

「…じゃあ、そうだな。…おんぶするしかないか。」

ミラにとっては恥ずかしいことかもしれないが、アラタからすれば突然現れた罠を潜るにはミラの能力や経験が必要だ。

「…えーと…変なところ触らないで下さいね。」

「背負うだけならな。触れて尻だけだ。」

「尻とか言わないでください!」

ミラは取り乱した自身を落ち着かせるために咳払いをして、アラタの背に乗る。

「登っている間は支えられんから、しっかり掴まっててくれよ?」

そして、彼らは梯子を登り始めた。

 

何の罠も無く、無事に時計塔頂上に着いたミラとアラタはそこで衝撃的な物を見てしまった。

「あれは…ソラ!?」

黒い立方体に閉じ込められたソラそのものだ。

アラタが、ソラが負けたという現実に驚愕していると頭上のほうから声が聞こえた。

「お待ちしておりましたよ。アラタさん。

「聖…!」

「いえっ、あれは。イーリアス断章です!!」

ニセ聖ことイーリアスは満月を背景に、アラタたちの目の前に立ちはだかる。

「さあアラタさん。貴方の魔道書と魔力を封じました。あとは、そこのイレギュラーな女を排除すらば私と貴方の二人だけー。時間も空間も全て止まったこの地で。聖がこの世界を滅ぼすその時まで。私と共に過ごしましょう。」

イーリアス断章はその両腕を翼のように広げて、彼女なりの宣戦布告をした。

それに従うかのようにアラタたちを囲んだのは、かなりの強さを持つ魔物たちだ。

「こいつは噂に聞く…クライシスって奴なんじゃないか?」

「そんなことありませんよ。貴方は私にとっても聖にとっても、大切な人ですから。大ピンチなのはそこの。女だけです。」

どうやらイーリアスはアラタを気に入っているらしくまた、独占欲を彼に向けているようだ。

「いや…そうもいかねーんだ。イーリアス断章?」

「イリアで構いません。聖はそう呼んでいました。」

「んじゃ、イリア。この裸Yシャツ娘は、俺の上司でな。」

「だっ、誰が裸Yシャツ娘ですか!?」

「うん。あざといですよね、その格好。」

「あざとくなんかありません!!」

緊張を解すコントをしていると、アラタの脳内に声が響いた。

 

「おい、マスター。おっと、このテレパシーには反応するなよ?こちとらバレないようにしているんだ。私が捉えられている要であるコイツは、結界の要でもあるんだ。」

「要…?」

「これはこの空間とリベル学園を構成する物でもある。つまり、ここをぶち壊せばこの学園も崩壊するのさ。私が内側から色々やってみる。時間を稼いでくれ。」

「あぁ。やってみるぜ。」

 

アラタはミラのほうを見て。

「ミラ。この状況じゃ、早めにお前を出してやるっていうのも大事かなと思うんだが。」

「はい!?貴方…まさか!!」

そして、アラタはイリアにある提案をする。

「なぁ、イリア。俺はここに残る…だが、こいつは外に出してくれないか?」

この提案にミラは反対したが。アラタは続ける。

「結局、おまえさんが必要なのは俺なんだろ?だったら、ミラはいなくてもいいんじゃないか?」

「確かに。私たち二人だけの世界にその女は要りませんよね。分かりました。では、私の近くに来ていただけませんか?アラタさん?」

「ああ。」

すると、ミラは大きな声で反論する。

「いけません!!そんな、自己犠牲的な方法は!」

「いやーっ。だけど次席としちゃ大将を安全な所に逃がすってのも務めだからな…と。」

「そういう判断は私が下します!貴方は『仮』次席ですから、そんなことしなくても!!」

アラタはミラの言い分を聞くと、笑顔で謝った。

「すまんっ。上手く出られたら外から助けに来られるかどうか、試してみてくれよ。」

アラタは、イリアの元へ行く。そして、ある疑問を彼女にぶつけた。

「聖が世界の全てを滅ぼすってどういうことだ?」

「はい。今の聖は、もうアラタさんが知る聖ではないのです。」

「それは…どういう…」

「それは。世界を終わらせて、この世界の偽りを全て完全に消し去って。そして全てが終わったら…その時に直接尋ねるのが良いと思いますよ、アラタさん。」

イリアは謎の涙を目に浮かべて、アラタの疑問に答えた。

「では、あの魔道士を……殺してしまうことにしますね❤️」

「え…!?」

事も有ろうことに、イリアはアラタの提案を白紙に変えようという魂胆だ。

実は、アラタとソラの会話も予測されていたことなのだ。そして、イリアはアラタが動けないように、黒い茨のようなもので彼の四肢を縛り上げた。

「くっ!卑劣な!!」

「あら…?魔道は目的のために、手段を選ばないことですよね?」

「ですが、これは…!!」

屈強な魔物が、イリアの命に従ってミラを拘束しだす。

「これは?私の魔力を吸い上げる装置でもあったのか!!謀ったな!イリア!!」

「恨むなら、私の作戦に気付かない自身の愚かさを恨んでください。アスティルの写本。」

あまりにも狡猾で卑怯なイリアに対して、ソラも抗議する。

「よせ、イリア!必要なのは俺だけだろ!?」

「…あまり他の女の為に必死にならないでください、アラタさん。聖がきっと『嫉妬』してしまいますよ?」

ドス黒い殺気をアラタにぶつけるイリア。

「アラタさんはそこで見ていてください…。貴方と仲良くなろうとするあざとい女と、貴方の魔道書の存在意義が無くなるその瞬間を。」

それぞれ、イリアの罠に嵌まり苦しむソラとミラを見ていて耐えられなくなったアラタはその堪忍袋の緒を切らした。

「イリアァァァァァ!!」

「!!アラタ…さん…?……どうして……そんな顔を……?」

アラタはまるで、深海『闇』に漂う氷のような表情でイリアを睨む。

 

「!?!?!?」

「…どうしたのですか?リツカ?」

一方で藤丸は、膨大な魔力が時計塔から流れているのを感知していた。

「……アキオ。私をあの時計塔の方角へ蹴り上げてくれ。」

「よし。こっちに来い。」

アキオは、自身に向かって走るように彼に指示をした。

すると、藤丸は言われた通りに猛スピードでアキオの方へ走る。

そして、アキオは両足に魔力を込める。藤丸も同じように魔力を込める。

踏み台となったアキオは、藤丸と息を合わせてキックをお見舞いする。

すると藤丸は、時計塔の方角へとミサイルかのように飛んで行った。

 

「…俺はさ。俺を気に入っている奴が笑っていられるのが…大好きなんだよ!!ただ友達が笑って過ごしている。本当にそれだけでいいのに。また…繰り返すのか?理不尽な『魔道』とかいう力に捕まって、やりたいことをさせられないまま…。」

「アラタ…さん。」

「っっ!イーリアス断章!!マスターを止めろぉぉ!!」

ソラはイリアに警告を鳴らすが、それも遅かった。アラタから膨大な魔力が溢れだした。

アラタがいたところから出てきたのは、黒い鎧を来た大魔属…即ち。

「こいつが、真の魔王候補『春日アラタ』に秘められた究極の存在ー『アストラル・トリニティ』さ。

その魔力の前には、先程まで勝ちを確信していたイリアが嘘のように震えていた。

さらに魔王は、ソラの説明に応えるように、イリアを上から見下ろして「その通りだ。」と言う。

そして、それだけでイリアの変身が解けだした。聖としての姿は強制的に解除され、現したのは黄緑色の髪と赤い眼を持った幼い女の子だ。

「よく見ておけ。これが本当の『支配』というものだ。」

イリアの魔力が解除されたのか、ソラとミラは自由の身となった。

アストラル・トリニティはそんな二人を見ると、邪悪な笑みを浮かべた。

 

「メイガスのほう。貴様は中々の素質を持っているな?さぁ…我が物となれぇ。」

ミラのほうを指指した彼は、そのままゆっくりと彼女に近づいた。

「誰が貴方の物なんかに…!」

ミラは抵抗するが、アストラルトリニティにとってはそれもひ弱な物でしか無く。

彼女の唇が魔王に奪われそうになる…その時!!

「アラタぁ!目ぇ覚ませぇぇぇぇ!!!」

青い鎧を纏ったメイガスモードへと変身していた藤丸が、アストラル・トリニティ目掛けてその頬にパンチをお見舞いしたのだ。

「ナイスだぜ!ミネルバのマスター!」

「ッ…!貴様…ッ!!その鎧は!……『兄上』…なのか?」

すると、藤丸の肌が一部が赤く変化し右目は鋭く光った。そして、彼の口調はしゃがれた老人のような物とそう変わらない物へと変化したのだ。

「『弟』よ…いつまでこんなことをしているのだ?」

 

 




次回予告入れとくの忘れましたが、ぶっちけ次回起きることを言うと藤丸vsアストラルトリニティです。是非も無いよネ!(予告を楽しみにしている皆さん、すみません)


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21話

祝え!令和の始まりにして令和の風物詩、その名もゼロワン!まさに、放送開始(生誕)の瞬間である!


「前回までのあらすじ。アストラル・トリニティが復活した。てなわけでね、アラタをガチギレさせたアホは立香お兄さんと…『お話』しよっか。」

「いや…いやぁぁ!助けてぇぇぇ!!」

「マスターにロリコン疑惑がかけられる21話、どうぞ。」

「アークさん、そんなことよりコイツ抑えるの手伝って。」

 

 

「『弟』よ。いつまで、こんなことをしているのだ?」

「チッ。魔王同盟を裏切った兄上がどうして、今更しゃしゃり出る!?」

藤丸の中の邪龍=アワリティアと、アストラル・トリニティが会話を始めた。

『えっ?アワリティアの弟って、アストラル・トリニティなのか?』

藤丸はアワリティアの精神に語りかける。

『あぁ。昔ヤンチャをしていた儂は、弟である奴と一緒になっては崩壊現象を引き起こして人々を恐怖へと落とし入れていた。しかし、儂は一人の人間の女との愛に落ちた。そして、その女と共にアークミネルバを造っていたのは…若き儂から聞いたであろう?』

『うん。それで裏切った後でのアンタは、どうにかして月へ逃げたんだったな。』

『あぁ。そして、今のアストラルはまだ弱いが全盛期は儂のをも凌ぐ。油断はするな?』

 

 

藤丸とアワリティア・トリニティの精神内の会話が終わりを告げると、アストラルトリニティが黒い太陽を出現させた。

「どうした?何かして見せろ!」

「崩壊現象を起こすつもりか!?崩壊現象は止めさせるし、アラタを返して貰う!!」

藤丸は、シルバームーンを左手に握りしめる。

それを見ると、アストラル・トリニティは黒い太陽の意匠が彫られた金色のマグナム銃をとりだした。

「…!」

「これの名はそうだな…『ゴールド・サン』とでも名付けておこうか。」

それを見て、アワリティアが不平の声を挙げた。

『!アストラルめ!厄介な代物を!!』

『あれは、なんなんだ?』

藤丸の疑問に、アークミネルバが答えた。

「いいか?マスター?アレの魔弾は絶対に『喰らう』なよ?もしもがあっても、シルバームーンで塞ぐかかわすのが、最低限お前が出来ることだと思え。」

アークミネルバとアワリティアの親子に、忠告された藤丸は「了解」とだけ返して、

アストラルトリニティのところへ、駆けた。

「血迷ったか!?『カルデア』の魔術師よ!」

「なぜ『カルデア』の名を!?」

「地獄耳という言葉を、聞いたことは無いか?」

アストラルトリニティが引き金に手をかけると、銃口から黒い光線が放たれた。

藤丸は、横に跳躍しこれを回避した。

光線は壁にぶつかると、壁が塵が舞うように消えた。

つまり、この光線は当たったところから崩壊現象を引き起こすのだ。

「なんていう威力だ…。これだと、カスっただけでも致命傷だな。」

『立香よ、儂に考えがある。今はとにかく、時間を稼いでくれ。』

 

 

回りには、激しい闘いの跡が残っていた。地面や壁には斬った跡や、弾で開けられた穴が広がっていた。

「ほう、中々の実力だな。カルデアからやって来たメイガス。」

「アンタの銃と比べれば、俺の剣の『火力』なんてまだまだだ。…だが、まだ本気ではないぞ?」

藤丸は言葉に含みを持たせることで、アストラルトリニティを挑発した。

「ちっ!抜かしやがるっ!!」

アストラルトリニティと黒い太陽の魔力が挙がる。

藤丸はそれを見ても、笑顔を崩さなかった。

何故なら。

『弟よ、卑怯などとは抜かすなよ!?』

急に、溢れていた崩壊の魔力の勢いが減ったのだ。

「何!?まさか!!?」

「あぁ、そのまさかだ。」

ミラたちは、ある変化に気付いた。

「あれは…!」

「日食!?」

もちろん、その日食は自然な物ではない。

「何をした、メイガス!?」

「お前の崩壊現象を、止めてやったのさ。白銀の月が文字通りに、太陽を食べているのさ。」

「なんだとぉぉ!?」

そして、魔王とミラたちが空をよく見ていると。

月が大きな口と体を持った怪物のような形に変化し、黒い太陽をそっくりそのまんま食べているのだ。

「『エクリプス・アブソリューション』!!」

藤丸がそう叫ぶと太陽を呑み込んだ月は、ゲップを鳴らすと太陽と共に消滅。

そしてアストラルトリニティは膝をついた。

「しまった…!俺の魔力も…!!」

「ちょいと眠ってな、魔王!!」

そのチャンスを見計らったソラが魔王の背中に、魔法陣を張り付けたのだ。

そして、アストラルトリニティはアラタへとその姿を戻した。

 

 

「ん…うん…」

「おっ、気付いたかマスター。」

長く眠っていた春日アラタが目を覚ます。

「うぅ、すまねぇな皆。」

「暴走した時のことを覚えているのですか?」

「よく分からねぇが、そうみたいだ。」

「ふぅ、中々に手を焼いた……」

藤丸は煙草とライターを取り出し、リラックスしていた。

「サンキューな、リツカ」

「あぁ。あと、月が出るあの技…一応大技でよ。暫くはこうして休んでないと、駄目なんだ。」

アラタは藤丸に謝ったが、藤丸にとってはそれよりも気になることがあった。

 

「で、アラタ。あのイリアとかいう小娘は…どうする?」

藤丸はイリアを指差した。

すると、イリアは縮こまった。

予想外とは言えど、アラタの暴走=崩壊現象を引き起こした原因として藤丸に睨まれていた彼女は蛇に睨まれた蛙そのものだ。

「おいおい、リツカ。そう殺気をイリアに送るな。」

「別に、殺そうとは思わん。だが、また姑息な手段で何かしでかすかもしれないと…」

藤丸の考えに対して、アラタは反論した。

「確かに、イリアは卑怯な手で俺たちを苦しめた。けどな。コイツには、ここに来る前から色々世話になってもらったからな…」

「えっ?初対面じゃなかったの!?」

「そっか、あの時お前いなかったもんな。」

「てなわけで、イリア。一応、お前を許そう」

イリアはホッとしたのか、身体の強張りが無くなった。

一方で、ソラはストップをかける。

「自分を閉じ込めようって奴相手に、それで良いのかよマスター?」

「俺は自分を殺そうって奴とだって、出来れば仲良くしたいぜ……?」

ミラが少し気まずそうに、顔を赤らめる。

「んもうっ。学園に戻ったら、色々許しませんからね。不浄な……アラタさん。」

「色々ってなん」

「それ以上はタブーだぜ、マスター。」

「うぐっ。」

 

 

暫くして、イリアが脱出のために魔力を使おうとするがアストラルトリニティに受けた魔術の影響か、失敗に終わってしまった。

「アラタとかいう男をマスターにしたは良いが……世話の焼ける魔道書だな、お前さん。」

「すみません。」

そうしているうちに、玄関まで移動したアラタたちはボロボロになってしまったリベル学園を目にする。

すると、遠くから声が。

「アラター!リツカー!」

「よっ、リリス先生。」

「二人とも無事で何よりです。一体何処へ行ってしまったかと。」

「リツカも中々頑張ったんじゃねぇか?」

「まぁ、アストラルトリニティを止めるのが大変だった…と言っておこう。」

藤丸がアキオと話していると、アラタがリリスの胸部へともたれかかってしまった。

「なっ!?」と慌てるリリス。

「そうか、アラタもか……」

「えぇ、魔王化した後に更なる魔力放出。流石のアラタさんも、もう魔力はゼロに近いでしょう。」

「あぁ、今はこうして動けるけど。……ん?」

藤丸とアキオとリリスの三人は、ミラの呼び方に違和感を覚えた。

「「「アラタ…『さん』……?」」」

「ははーん、なるほどな。」

「あらら…」

「くぅだらねえや。」

これには、魔道書たちも気付いたようだ。

 

「なーんだ、いつの間に名前で呼ぶようになったのか?」

「あっ!いやっ、それは…!かっ、彼は仮の次席ですからっ!!」

トマトのように赤くなっているので、ミラのアラタに対する視線の向けかたが変わったのは一目瞭然だ。

そして、ほっこりしていたところでリリスは何者かの気配を察した。

そしてその方角を見たが、誰もいなかった。

「リリス先生…?」

「いぇ…何者かの気配を感じたのですが…。」

「気になるけど、今は休むことを優先にしないと…ですね。」

藤丸とリリスはアラタ、アキオそしてミラと共にその場を離れることにした。

 

 

一方で、リリスの勘は正しかった。違う方角からだが、アラタたちを見つめる三つの影があった。

「……アラタさん。どうやら私達…敵同士になっちゃうみたいですね。」

To Be continued

 

 

次回のFate/Grand Orderは!

「よし、皆この鈴を持て。」

「聖……聖……」

「私に届くのを、待ってますからね。」

「今のは…俺だけじゃ防ぎ切れなかった……」

運命が動き出す…!

 

 




来週の日曜日は投稿が無い可能性があります。


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22話

漸く終盤に突入です。
ここまで読んでくれた方々には感謝の言葉しか出てきません。
残りあと5話!


「前回のあらすじ。魔王候補・春日アラタの魔王形態=アストラルトリニティをソラと共に止めた、藤丸立香はイリアに敵対心を現す。しかし、アラタの計らいによって藤丸の敵対心は解け、しばらくはイリアの造り出した空間で休むことにした。」

「急に大真面目になったな、マスター。」

「しょうがないだろ?さっきから、誰かに見られてる気がしてならねぇんだ。てなわけで、22話スタートだ。」

あらすじ完

 

 

「すっかり、魔力がすっからかんだな。魔道書の魔力も感じねぇ。」

「やはり、魔王化というのはそれだけ危険なようですね。」

「魔王化…アラタが…ですか?」

藤丸が黙り込んでいると、ミラが話した。

「魔王『アストラルトリニティ』。本当に、危険な存在でした。」

「…ミラがそこまで言うなら、本当はさっさと殺しておいた方が良いんだろうな。と言っても、殺しはしないさ。私もコイツのこと気に入ってるしな。そんなことしたら、他の連中がうるせーだろうし!!」

アキオの台詞で、その場の緊張は少し和らいだ。

「で、今回の件。リベル学園を壊したのは、その新しい魔道書ってことでいいのかい?」

「『イーリアス断章』もとい『イリア』か…」

「どうやらそうではなく、彼女の持ち主の意思で異空間へ学園を飛ばし、アラタさんを閉じ込めようとしたようです。」

「持ち主…?」

「アラタさんが探している少女、春日聖のことです。」

藤丸は驚いた。何故なら、伝説の魔道書とされたアスティルとイリアの二つをアラタの大切な人が持っていた、ということになるからだ。

「春日聖ほどに強力な魔道士が、アラタの側にいたというのは。」

「…偶然にしては出来すぎている。」

当の本人は、スヤスヤと眠っていた。

 

 

「皆。この鈴を持っていてくれ。」

「なんですか、これは?」

藤丸はリリスたち三人に、銀色の鈴を与えた。

「アラタの部屋に結界を貼っておいた。我々以外の何者かが現れた場合、これが結界と連動して鳴る。」

「どうして結界を?」

「リリス先生と私は感じたんだ。何者かの気配をな…。そして、この勘が正しければ。そいつは間違いなく、春日アラタを狙う。」

三人は、藤丸の要求に従ってそれぞれの部屋で寝ていた。

 

 

一方で、アラタは息を荒げていた。

「ハァ…ハァ…聖…聖……。」

アラタは空に手を伸ばした。すると、その手を握る何者かがいた。

「う…あ?……聖…なのか?」

そこには、アラタの大切な人(聖)がいた。

「よく分かりましたね、アラタさん。」

月を背景に、窓際でその影は立っていた。

「……俺が見間違うわけないだろ。」

「ふふっ、ちょっぴり嬉しいです。」

「ごめんな聖…。あの時、お前の手を掴めなくて。お前を助けられなくて。」

「良いんです…アラタさん。私を助けるため、魔道士にまでなってくれて…私とっても嬉しいんですよ?」

「お前を助けるなら、なんだってしてやるさ。だから……もっと強くなって、聖を俺のところに取り戻してみせる!!」

「……私達が敵だってことも、今はまだ私の方が強いってことも。分かっちゃうんですね。」

「あぁ、なんとなくだけどな。でも、俺はかなり最強の魔王候補らしいぜ?」

「ふふっ、その通りです。」

「必ず、お前を俺の方からこの手を届かせるよ。聖」

「はい、じゃあ。私に届くのを待ってますからね。」

聖がゆっくりと手を放つ。そして、放った手の中から魔力が込められていた。

その時!爆発音がアラタの部屋からしたのだ。

それは、聖のではなくリリスの銃で発生した爆発だ。

「無事ですか、アラタ!?」

「……いいところだったんだけどなぁ……まぁ、こっちも美味しいならいいか。」

「えっ?」

爆風のせいか、リリスのスカートの後ろが捲れ縞模様の下着が見える状態でいた。

それに気付いたリリスは絶叫しながら、それを直した。

 

 

「あれは聖だよ。」

「そのようですね、そして悔しいですが。全くの無傷のようです。」

聖はリリスの銃擊を魔法陣で防いでいた。

「浅見リリス。ビブリア学園の才女。最年少でトリニティセブンへなった、天才魔道士ですか。」

「その魔力。貴女もリーゼさんのように、魔王因子をその身に宿しているのですね。」

リリスの言葉に、黒装束の女魔道士が黒い笑顔で答える。

「はい。あの日、アラタさんに飛ばされたその先の…『破滅世界』から頂いてきました。」

その左腕はまるで墨のように黒くなっていた。そして、聖は藤丸よりもそしてアラタよりも量も質も良い魔力を放出させた。その衝撃に黒装束が耐えられなかったのか、破けてしまった。

「そしてこれから見せるが、その魔王因子を使用したメイガスモードを上回るー」

聖の体を黒い魔力が再び覆う。そして闇のなかから現れたのは左頬に黒い血管のようなものが浮き出し、肩のみを露出した黒いドレスを着た聖だ。

「アーカイブ・憤怒『イラ』の顕現装束…『セイタン』ですよ。」

それを見た途端、リリスの体が震えた。それほどまでに、セイタンは大量の魔力で造られたものなのだ。

「崩壊『ルイーナ 、創造『パルタム』そして分解『アナリシス』。三つのテーマを極めた私は、既に『トリニティ』たる資格を得たというわけです。』

リリスの顔が恐怖に覆われた。しかし、そこでただ腰を抜かして逃げる彼女ではなかった。

「アラタ…!」

リリスはアラタのところへ駆け寄ると、庇うようにアラタを抱き寄せた。

「おっおい!?リリス!?」

「魔力の尽きているアラタは、あんなものを食らったら一溜まりもありませんから!!」

「アラタさんを守るということですね、なるほど。」

聖は邪悪な微笑みを浮かべて、魔力を再び高める。

「アラタさん。貴方の魔道書と魔力はちゃんと、私が回収してあげます。そうすれば、いつか貴方を再生させることも私ならできますので。」

「出来たら、殺さないでくれるのが嬉しいんだが…」

アラタの意見など問わないと言わんばかりに、聖は魔力の放出の準備にかかる。

「では、耐えてみせて下さいね。この憤怒『イラ』の一撃を!!天魔勅諚『ブラック・アバゼル』!!」

「聖ぃぃ!!」

聖は黒いビームをアラタに放った。

「アラタ!リリス!逃げろぉぉ!!」

白と青の色をした鎧を纏った藤丸が、その剣て黒い光線を防いだのだ。しかし、それが破れるのも時間の問題だった。

そこに白い一閃が現れて、聖の光線を無効化したのだ。

聖は詰まらなそうに、自身の攻撃を無効化した人物を睨む。

「まさか…またアンタに助けられるとは……。」

「私は旦那様の声が聞こえたから、助けたのだけれど。」

「助けてもらうのに、どんな理由だろうと構わないさ…。ありがとな。」

「アリン…!!」

アリンはアラタの声を聞いて、時間と空間を無視してやってきたのだ。

そして、彼女は手に銀色の槍を持っていた。

「アリン、その槍は何だ?」

「聖儀術『カオシック・ルーン』の始祖『スカサハ』が使っていた、『魔槍ゲイボルグ』よ。」

アリンによると、この世界のゲイボルグは憤怒『イラ』の魔術を無効化できるようだ。

「俺だけじゃ、アレは防ぐことは出来なかった…」

壁に皹が入って、壁から出てきたのはミラとアキオのコンビだった。

「アラタぁ。遅くなったな」

「アラタさん、まだ生きてますか!?」

アリンは不思議そうな顔でミラを見た。

「…デレたの?」

「え?あっ…!デッデレてませんっ!?」

「俺なら、まだ生きてるぜ。リツカ、リリスそしてアリンが助けてくれたからな。」

「アリンが来たことで、聖を取り戻すための一歩は出来たってわけだ!」

もう少しで、アラタの目標が達成出来ると知り奮起する藤丸とは対照的に、聖は少し落胆したような表情を浮かべた。

「空間を越えさせてまで、この世界の番を召喚するなんて。本当にアラタさんは、どんどん魔王化してしまうんですね……」

「聖…」

「ですが……アリンさんがこちらにいたら、あちらはもっと大変なのでしょう。」

「あちら……?」

アラタたちが困惑しているのを楽しむかのように、微笑みを浮かべた聖。

彼女は黒い魔法陣を頭上に浮かべた。

「一足先に、我々福音探求会『イシュ・カリオテ』とクリプターの同盟が。アラタさんの学園に向かっています。」

「福音探求会…?」

「早く帰らないと…『また』帰る場所がなくなってしまいますよ、アラタさん?」

「ま…待て、聖ぃぃ!」

聖は、ビブリア学園へとワープしたようだ。

「……!!」

藤丸は思い出した。リーゼがその名を口にしていたのを。そして、自分が罠に嵌められたのを悟ったのだ。

「クソッ!!」

藤丸は息を荒くした。しかし、少しの間を置いて落ち着きを取り戻した。

「取り乱して済まない。だが、私は少しここに残る。学園にいるサーヴァントたちと連絡を取るための、魔法陣を造るためにな。」

「えぇ、分かりました。リツカさん以外の我々は、近くの転移装着まで行きましょう。」

 

 

藤丸はビブリア学園内がどうなったのかを、どうにか造り出した魔法陣を介してサーヴァントたちと連絡した。

「魔術師殿!魔術師殿!あぁ、やっと繋がった!こちら呪腕のハサン!異常事態が発生した!!クリプターの仲間と思われる人物が、ビブリア学園を攻めてきました!」

「やはりそうか…!あと、呪腕さん。もう少し詳しくその人物について話してくれ。」

「ハッ。和服を着た女が外の大きな西洋風の庭で、レヴィ殿と闘って負傷!しかし、学園長に治して貰っている最中の模様!!」

「沖田総司に繋げろ!彼女をそこに向かわせる!!」

To Be Continued

 

次回のFate/Grand Orderは!

「やりますね、貴女」

「余裕見せられてるッスもんね」

「マスター。レヴィさんと合流しました。学園長のお陰で、ケガは無い模様で。」

「なに、カイニスまで!?」

「彼女は神性スキルをお持ちしております。ですので、私に行かせてください、マスター。」

 



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23話

前回までのあらすじ
ついに、春日聖の手掛かりを見つけた春日アラタ。
しかし、そうしている間に聖をメンバーの一人として迎えていた福音探求会がクリプターらと手を組んでビブリア学園を襲撃していることを知った。


これは、藤丸立香が沖田総司にマスター命令を下す少し前。

 

「やりますね、貴女。」

赤い和服を着た銀髪の女が、レヴィと戦闘を行っていた。

そして、劣勢へと追い込まれたレヴィはその女の名を口にした。

「いやぁ…高速で闘う光輝術『イルダーナハ』の使い手・ルーグさん相手で、そこまで言われるとは光栄ッス。」

レヴィは動けなくなってしまった左手を庇いながら、ルーグを「敵ながら天晴れ」と称賛した。

「左手が動かないんですね?せっかくですから、当機も片手しか使わず相手をしますが。」

「ええ…余裕見せられてるッスもんね。」

レヴィが珍しく、圧されているのを見てかある男が旗を振って叫んだ。

「フレー!フレー!!レヴィちゃーんっ!!!」

「…うーん、出来れば自分としては学園長にも手伝って欲しいんスけど…」

旗を振っていた学園長は「それは出来ない」として、レヴィの意見に異議した。

「どうも、僕にはデートしないといけない相手がいてね…」

学園長の視線の先には、聖の黒い衣装とそう変わらない服装をした者がいた。

学園長がレヴィを手伝えないと言うからに、相手はかなりの実力があると伺えることが出来る。

すると、レヴィの脳に語りかける声が。

「レヴィちゃん、学園の皆はマーリンさんの協力もあって全員夢の中に避難させたよ。」

「うーむ、学園長は猫の手も借りたい状態か。よし、今から向かおー。」

 

 

花の魔術師・マーリンは何者かの侵入を感知した。

「この魔力は確か…!」

その魔力の持ち主の気配は、マーリンが感知した一瞬だけで終わってしまったが、急に獣の咆哮が聞こえだした。

「これは何!?」

「くっ、キメラか!しかもクリプターによって、育て上げられた魔物の軍団だ。」

キメラの大群が生徒たちを、襲おうとしたその時!

「引っ掛かりましたねっ!」

一人の女子生徒が、噛みついてくる一体のキメラの口を無理矢理開かせて顎を外させる。

そして、その頭を炎に包まれた刀で一刀両断したのだ。

「貴女は!?」

ユイの質問に、その女子生徒は一瞬にして白い着物の女武士へと変わって名乗った。

「サーヴァント・アーチャー。真名を巴御前と申します。」

 

「ここからは、本気で行くしか無いみたいッスね。時間稼ぎをしていれば、助っ人的に主人公が来てくれる。そう、『期待』してるッスから。」

「貴女の目はまるで、期待していませんね。露ほどにも、そんな人がくるなんて考えてもいないようです。」

レヴィの言っていることと、本心がズレていることに気付いたルーグ。

「えぇ、だから信じるんッスよ。自分、それなテーマなもんで!!

忍法『夢幻隠れの術』!!」

風に包まれたレヴィは、三体に分かれ波状攻撃を仕掛ける。

しかし、それはルーグには通用せず直ぐに斬られた…かのように見えた。

「実は、これ。友情の合体魔術ッス。」

ルーグは後ろにレヴィの気配を感知し、攻撃を防ぐしか出来なかった。

それは、彼女がレヴィの…いや、ユイとレヴィの合体魔術に追い付けて無いことを示す何よりも優れた証拠だ。

「…どういうことなのか、当機には理解不能。」

「こういうことッス!!!」

再び、剣と剣がぶつかる音が響く。

「あー…惜しかったね、レヴィちゃん。」

「惜しい…ですか?」

ルーグが質問すると、それに答えるようにルーグの首に斬り傷が出来ていた。

「いつの間に傷を。」

「その『いつの間に』を作り出すのが、この『夢幻隠れ』なんスよ。」

ルーグはやはり、そんなレヴィを強豪と見なし二刀を手に握った。

そして、光に匹敵する速さでレヴィを切り刻んだ。

本気のルーグは、光と同じの速さで動ける。地球だけでなく、宇宙から見ても光よりも速く動ける物体や光線は存在しない。

「圧倒的な速さッスね…でも、ニンジャがいかにズルいか。ちゃんと見せるッスよ…!!」

レヴィはボロボロになりながらも、立ち上がり巻物を口に咥えた。

「嫉妬『インウィディア』の書庫『アーカイブ』に再接続。テーマを!」

そう、レヴィは。かつてリーゼがやったラスト・クレストを発動させようとしているのだ。

「まさか!?」

「実行するッス!!!」

 

レヴィを台風のように激しい風を纏う。

「行くッスよ!嫉妬の魔道極法「ラスト・クレスト」!!」

「魔道の最大奥義で来るというなら。当機も覚悟して挑みます。」

レヴィは不敵な笑みを浮かべて、必殺技『魔道極法』を放つ。

「混沌渦界『リヴァイア・サン』!!」

複数の竜巻が、神話上の海の怪物・リヴァイアサンのようにルーグに襲いかかる。

「圧倒的な破壊の魔力です。忍法術の真骨頂と言える代物ですね。…ですが、当機がっかりです。」

ルーグはそれを見て感嘆するどころか、落胆し複数の竜巻を切り捨てた。

「破壊力のみを追求した程度の術で、この光神様ルーグに通じると思いますか!?」

しかし、ルーグは竜巻を倒した後で違和感を抱いた。

「あれ?」

それを見て、黒い服の者がアドバイスする。

「ルーグよ。お主、担がれたようじゃぞ?」

「担ぐ?ワッショイワッショイですか?」

「魔道極法『ラストクレスト』を撃つフリして、そそくさと逃げた…というこてじゃ。」

 

 

「まずは大成功!!…かな?」

学園長とレヴィは結界を逃げた後に結界を張ってどうにか、逃れることが出来た。

見つかるのも時間の問題だが、彼らの目的はあくまでも時間稼ぎ。なので、学園長が言った「大成功」は間違いではない。

「ユイさんとの協力で助かったッスけど、ちょっとキツいッスね。やっぱりせめて、もう一人手助けが欲しいところッス。」

そこへ、何者かが叫ぶ。

「レヴィさんはいらっしゃいますかあ?」

「え?」

警戒するレヴィを、学園長が宥める。

「あぁ、多分彼女はリツカ君が要請した援軍即ち、リツカ君のサーヴァントだ。」

そして、桃色の和服にブーツを履いた少女剣士は学園長のサポートもあってレヴィと合流することに成功した。

「アンタは誰なんスか?」

そして、その剣士は自らの名を名乗った。

「サーヴァント・セイバー。沖田総司。マスター・藤丸立香の命に従い、参上しました。あっ、マスターにも連絡しないと。」

 

 

沖田のマスター・藤丸は、リベル学園にてビブリア学園内をモニタリングし他のサーヴァント達にも指示を送っていた。

そこへ、沖田から藤丸へ連絡が入る。

「もしもし、マスター?ニンジャさんと合流することに成功しました。」

「よし、出かした。私は引き続き、戦場の確認と指令を行う。沖田はニンジャと一緒に、ルーグとかいう女を倒せ!」

「えぇ、勿論ですとも!」

すると、藤丸の元に通信が入った。

「こちら、風魔小太郎!一人の敵将がビブリア学園に攻めて来ました!」

「誰だ!?」

すると、小太郎は一呼吸置いて敵の正体を話した。

「カイニスです!カイニスが雷を使って、学園を焼き払っています!」

「なに、カイニスまで!?」

すると、一つの通信が入った。

「カイニス…彼女は神性スキルを所持しています。なので、私に行かせてください!マスター!」

「その声は…!」

To Be Continued

 

次回のFate/Grand Orderは!

「出ませい、スフィンクス!」

「またサーヴァントですか!?」

「私だって、トリニティセブンの一人。リーゼロッテ・シャルロックの妹なんですからっ!!」

「沖田さん!合体魔術もとい、合体剣技と行くッスよ!!」

 



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24話

人によってはちょっとキツいところあるかもなので注意です。
ごめん…ごめんやで。アナスタシア


「ビブリア学園がクリプター達に、襲撃された!

そして、藤丸立香と春日アラタ達は、魔王候補と化した聖を止めるべく立ち上がった!

では、祝え!我がマスターのサーヴァントの勇姿が見れる、この瞬間を」

「俺たちメイガスも忘れるなよ!」

「我がマスターと春日アラタが反論してきたところで、第24よろしく。」

 

 

現在のビブリア学園には、沢山の場所で福音探求会とクリプターの連合軍との闘いが繰り広げられていた。

ユイの夢の世界では、一人のサーヴァントがキメラ軍団を相手していた。

そのサーヴァントは女性ながらに、男顔負けの怪力でキメラたちの顎を砕いていた。

「中々の数ですね…!」

サーヴァント・巴御前が息を切らしながら、呟く。

「良かったら、ユイの魔力を分けますっ!」

「!私のマスターに負けないぐらいの魔力の提供、感謝します!」

巴はそう叫ぶと、大きな弓と矢を取り出した。そして、それを強く引き絞り矢を放った!

「燃えろ!!」

その矢は多くのエネミーを貫通し、文字通りに跡形も無く焼き尽くしたのだ。

 

 

一方で、多くの生徒が座ることが出来そうな広間では槍を持った褐色肌の女が雷を使役し、破壊の限りを尽くしていた。

「チッ。そこにいるのはわかってんだ。出てこいよ、コラァッ!!」

槍を持った女はクリプターのサーヴァントの一人・カイニスだ。

カイニスはこの学園に入ってから、数多くの生徒を雷で焼き殺した。

しかし、そのうちの一人を取り逃がしてしまい、その一人がいると思われる広間に移動したのだ。

「ひぃ…ひぃ…」と、一人の逃げ遅れた生徒が震えていた。すると、彼女に一枚の白い布が覆い被さった。

「…ッ!」

「お静かに。その布は私のです。そして、私は味方です。3を数えたら布から出てみて下さい。

女子生徒は「1…2…3!」と数えると意を決して、布を取った。すると、目の前には他に避難所へと逃げた生徒たちがいた。

「……!小細工しやがってくれたな……!」

「ええ。民を傷付けることは、このファラオ・ニトクリスが許しません。出ませい、スフィンクス!!」

太陽の神の生まれ変わりと謡われた女ファラオはスフィンクスと共闘し、海神に愛された女に立ち向かった。

 

 

一方で、リベル学園にいたアラタたちは。

転送装置が壊されているという事実に、驚愕し苦悩していた。

「…なんとかならないのか?」

「転送装置の術式は、複雑で難解過ぎるんです。修復には、『超古代魔術』を研究している専門家を何十人も必要とします。」

ミラが、転送装置の復元は現時点では不可能だと断言したその時。

「ふぅ、サーヴァントへの指揮完了っと。」

「おっ、リツカ。学園はどうなんだ…?」

アラタの質問に、藤丸は答えた。

「今は、サーヴァントたちが持ちこたえてくれている。だがそれも時間の問題…。そこで、トリニティセブンの『皆』にはカルデアのサーヴァントと協力させて頂く。」

そして、彼はビブリア学園のトリニティセブンやカルデアのサーヴァントにこっそりと送ったビブリア学園に攻めてきている勢力図を渡した。

「なんだ?こりゃ?」

「単刀直入に言うと、皆それぞれ別の場所にワープして欲しい。方法は簡単。お互いに一つずつの拳を合わせて、円を組む。」

藤丸たちは円を組んだ。

「先ずは、皆で魔力を高める。次に魔力が一番低い彼に一定量の魔力を与える。最後は私に任せろ。」

藤丸はそれだけ言うと、魔力を高めた。

それに呼応するように、アラタ以外の皆の魔力が高まる。そして、皆アラタに送る。

「力が漲ってきたぁ!!サンキューな!!皆!!」

アラタも魔力を高めたのを合図に、藤丸は自身の人類悪の魔力を皆に少しずつ分けた。

「行くぞ!」

すると、皆は光となって各地に飛んだのだ!

 

 

藤丸たちがリベル学園にいた時刻の、ビブリア学園の屋上では。

「ー凶がれ!!」

空間を歪め、敵を引きちぎる少女がいた。

彼女もカルデアのサーヴァントの一人だ。

彼女が挑んでいる敵は、黒い鎧を着た竜の騎士と三人の戦乙女が率いるワルキューレ軍団だ。

「ワルキューレは然程の問題ではござませんが……。やはり、倒されたはずのサーヴァントが無理矢理蘇生させられているのには違和感を覚えてしまいます。」

「フン…喋る女だな。私はオフェリアという美しい少女を探しているのだが……。」

すると、少女サーヴァントはニッコリと頬を緩ませて。

「おかしな人ですね……。彼女は私たちのマスターが看取ったと何度言ったら。」

「いいや。オフェリアは生きている。私には感じるのだ……」

「そうですか…。では、死んでください。死体サーヴァントさん。」

 

 

そして、学園の庭では。

ルーグの背後を取ろうとしたレヴィの攻撃が弾かれていた。

「さっきよりも、鋭くなりましたね。隠れてる間に、学園祭長の癒し術で左腕も動くようになったおかげッスよ!」

「……!」

ルーグは背後のもう一つの気配に、気が付いた。

「そこ…!」

レヴィの助っ人・沖田総司が、第2の奇襲を仕掛けたのだ。

ルーグはこれをかわすが、そんな彼女の肩に傷がついた。

「!」

そして、かわして着地したところでレヴィは手を引く。

「まだまだッス!」

「!!」

「忍法・影糸縛鎖(えいしばくさ)」

沖田総司はこの隙を突こうと構えている。

「ここで決めましょう…!」

「えぇ。いくら高速とは言えども、少しでも動けない今がチャンスッスよ。沖田さん。」

ルーグはピンチにも関わらず、状況を冷静に分析する。

「なるほど。両手が使えるようになると、よりトリッキーになるのですね。それに、援軍のサーヴァント…ですか。」

ルーグに突進を行おうとする沖田。しかし、それも邪魔が入らなければルーグ撃破の兆しになっていたであろう。

何かが、空を舞いながら回転。そして、沖田たちの方角へ飛んだのだ。

「!」

沖田とレヴィの二人は、どうにか避ける。

「糸を斬られたッス…!」

「まさか…!新たなサーヴァント!?」

そこには、仮面を被った剣士がいた。

「2対2は流石に…!」

レヴィと沖田のコンビがピンチと思われた、その時!

一つの黒いバイクが、二体の敵に突っ込んだ。

敵のセイバーはこれを跳躍してかわし、ルーグはこれを斬った。

バイクの持ち主と思われる、少女は突っ込む直前に仮面のセイバーのほうを標的に跳躍。

そして、仮面のセイバーの足を掴んで地面に叩きつけたのだ。

「ぐっ!!」

「卑怯な…とは抜かすなよ?」

その少女の手には、黒い剣が握られていた。

「アレは誰ッスか?」

「えぇ、アレは。私たちの味方です。」

すると、黒い少女は手短に自己紹介を始めた。

「サーヴァント・セイバー。アルトリア・ペンドラゴンだ。マスターの命により、ハンバーガーを報酬に参上した。」

「あぁ、えっと。ハンバーガーの件は…気にしないであげてください」

「ところで、モ⚫派ッスか?マッ⚫系ッスか?」

「キン⚫のほうだ。」

「あーっ、そっちッスか。」

「先程のハンバーガーギャグに順応してる!?」

すると仮面のセイバーが立ち上がって、黒セイバーに斬りかかる。

そして黒セイバーは、それを鎧で防いだのであった。

「クッ。」

「なんだ?軽いな?」

黒セイバーは挑発するが、防いだということは仮面のセイバー程の素早さを黒セイバーは持っていないということだ。

そこで、藤丸はある人物に助っ人を任命した。

「セリナ、君は仮面のセイバーを黒いセイバーと協力して倒せ。」

「えぇ!?」

勿論、その通信を聞いた夢の中のユイたちは驚いた。

「確かにレヴィちゃんたちはピンチだけど、そこは私が!!」

ユイの反論を封じるように、藤丸はだめ押しした。

「ユイがそこを抑えなかったら、誰が夢の世界を形成するんだ?今のマーリンは、生徒たちを守るので必死だ。それに。」

藤丸は続ける。

「セリナには、彼女自身は気付いていない秘密の力がある。それを開花させるには今しか無い。」

「えぇ、分かりました。」

「セリナちゃん…!」

「私だってトリニティセブンの一人、リーゼロッテ・シャルロックの妹なんですから!!」

「分かった!夢の世界からの出動で良いんですね!?」

「あぁ!」

セリナの決心に、ユイも承諾しセリナの出動が遂行された。

 

「そりゃーっ!」

セリナは仮面のセイバーの上空から、彼をカメラで撮影した。

すると、数秘術が発動され彼の動きが弱まる。

「う、動けん!」

黒セイバーは落下するセリナを受け止め、活躍を誉めた。

「ほう、人間にしては中々勇気があるな。」

そして、彼女を降ろすと黒セイバーは聖剣を構えた。

「さて、止めと行こうか。」

「魔力を一気に放ちなさい、セイバー!!」

そこで、仮面のマスターらしき声は赤い光を発して彼の束縛を解いたのだ。

「くっ!こちらにもマスターがもう少し近くにいれば…!」

すると、仮面のセイバーは先程よりも速い錘のような一撃をセリナに放った。

「危ないっ!」

「キャッ!」

咄嗟に黒セイバーは庇い、セリナ共々保健室へぶっ飛ばされた。

ぶっ飛ばされる際も黒セイバーはセリナのクッションとなったため、セリナに怪我は無かった。

「これはキツい…な。」

黒セイバーは、仮面のセイバーに立ち向かおうと起き上がろうとするが。

一つの腕がそれを制止した。

 

「ふぅっ。久しぶりにこっちの世界に来たけど、こんなことになってるだなんて」

黒セイバーの目の前には、セリナがいた。

しかし、先程までの彼女とは口調や纏う空気が変わっていた。

これには、仮面のセイバーも驚いた。

「お前は誰だ…?」

「あの声は…!」

「おや…。お早いお戻りッスね。」

「誰だか知らないけど、セリナを庇ってくれてありがとうね。」

「貴様は一体…?」

黒セイバーの質問に、謎の少女が答えた。

「トリニティセブンの悪の魔道士担当・リーゼ!最愛の妹の体を借りて!いざ登場っ!!そこの仮面の色男。妹をいたぶってくれちゃって。許さないわよ?」

 

「馬鹿な…『魔道極端法』を使い、『永劫に停止した時間の世界』でさまよっていたのでは?!」

仮面のセイバーは焦りを顕にした。

そして、リーゼはそんな仮面のセイバーを挑発した。

「残念だったわね、全てトリックよ。」

「なら、当機がそちらに」

「「やらせは!しません(ないッス)!!」」

援護に回ろうとしたルーグをスピーディーコンビが妨害し、学校の外壁まで追い詰める。

「2対1では拉致が空きませんね。いいでしょう。嫉妬『インウィディア』の書庫に接続ー

テーマを実行いたします。」

 

追い詰められたルーグは、まるで天使のように光った刃を顕現させ武装した。

「勇気武装『ヴァータスアーム』・『光穿槍ブリューナク』

誠意武装『フェイスアーム』・『光斬剣フラガラッハ』

開放武装『ソルヴォアーム』・『光剣翼クラウソラス』」

「うっわ、なるほど。『トリニティ』の資格取得には、その手があったッスか……」

「どれもこれも、伝説の宝具だねぇ。それも、それぞれのテーマを極めた者のみ手にすることが許されるヤツ。」

「これは…レヴィさん!この一撃は受けちゃいけませんッ!」

「と言っても、相手は速いッスよ?」

すると、ルーグは沖田に斬りかかった。

そしてルーグのフラガラッハは、空を斬った。

「!」

ルーグはその際、近くにいたニンジャがいないことに気付いたが既に遅かった。

かわした沖田と、素早く移動したニンジャが糸でルーグを縛り付けたのだ。

「今度は頑丈のヤツもの!」

「沖田さん!合体忍術もとい、合体剣技をやるッスよ!!」

すると、二人は挟み撃ちした状態でルーグとの間合いを素早く無くした。

「「一歩音越え…!二歩無間…三歩絶刀…!!」」

「!!」

「「無明桜旋風!!」」

二人は斬撃の旋風で、ルーグの武装と身体に大きなダメージを与えた。

 

一方で、学園の図書館では。

「うふふ。人間を氷漬けにして造る城は楽しいわね、ビィ。」

身体の半分が水のように溶けだしている氷の女王が、岩のように硬い氷の玉座に腰を掛けていた。

 

次回のFate/Grand Orderは。

「では、トリニティセブンが魔王に支配される前に。今ここで3人殺しましょう。」

「ネロ、着地任せた!」

「仲間のトリニティセブン側に着くわ。」

「というわけで、聖。反撃開始と行くぜ?」

 




こんな内容ですが、終盤の『崩壊危惧学園 聖ビブリア』を楽しんで頂ければ幸いです。


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25話

最終決戦への火蓋卸し回です。


氷の皇女の名はアナスタシア。

彼女はクリプターによって、ロシアの異聞帯『ロストベルト』でクリプターの一人・カドックという名の少年によって召喚されたキャスタークラスのサーヴァントだ。

彼女は藤丸立香の手で倒されたが、クリプターとイシュ・カリオテの協同実験によって異聞帯で敗北した後の記憶を持って、スルトらと共に蘇生された。

左半分の顔の溶解は、炎を扱うことが出来るビーストモードの藤丸によって付けられた深い傷が元になっている。

そのため、藤丸と同じような魔術師を憎み氷漬けにしたのだ。

そこへ、黒い影が現れた。

影は女の形を持って、アナスタシアに剣を向けた。

「アンタがマスターが言っていた、氷女『アナスタシア』ね?」

「マスター…?そう言う貴女は、汎人類史のサーヴァントね?」

「えぇ。アンタと私は同類ね。憎しみを抱いたことがあるって意味では。」

「えぇ、そうね。ジャンヌダルク・オルタ」

両者が黙って睨みあっていると、二つの空気がぶつかり合った。

そのためか、二人がいる図書館の上空には暗雲が立ち込め雷が獣のように吠えた。

そして、両者はそれぞれ逆の性質を持つ魔力をぶつけ合った!

「黒い魔女さん。貴女を援護します。」

「へぇ、アンタがマスターの言っていた。まぁ、足を引っ張らなきゃなんだって良いわ。」

ミラとジャンヌオルタのコンビは、氷の皇女の復讐心を溶かすべく共闘する決心を示した。

 

「凶がれー!」

浅上から放たれた、全てをねじ曲げる力がスルトを守るワルキューレの一体に炸裂。

「盾で守って貰ったお陰で、スキだらけだ!」

「いいえ、黒い騎士様。今は私たちが…」

「強い」

「!?」

スルトは、突然後ろから聞こえた声に驚き振り向くが銀の槍で自慢の赤い剣を弾かれてしまった。

「ヌゥっ!」

「貴女は援軍ですか?」

銀の槍の少女は浅上の質問に答えた。

「神無月アリンよ。貴女は?」

「浅上藤乃です。」

二人はお互いを紹介しあった後で、黒い騎士へ立ち向かった。

 

「俺は!神霊だぁぁ!」

「私だって、ホルスの化身と謳われた身です!」

冥界の魔術と雷が激しくぶつかり合う中、一つの影が現れた。

「なぁ、ホルスさん。手ぇ貸そうか?」

「ファラオの一人・ニトクリスです。口を慎みなさいと言いたいところですが、手伝いには感謝致します。」

「OKってことだな!?」

女は足に込めた魔力で、雷を放つ神霊を蹴り飛ばした。

「てめぇ…!」

「正当防衛ってやつさ。」

 

「当機の宝具を三個も……。当機は戦闘不能です。が、『彼女』が来たら…どうします?」

「『彼女』って、まさか!?」

すると、ビブリア学園の空が暗くなり屋根の上に一つの影が舞い降りた。

そして、ルーグはその影の側に膝を屈して称えるようにその名を言った。

「お待ちしておりました。春日聖。」

「お待たせしました、ルーグさん。では、ビブリア学園の皆さん。」

聖は黒い大玉を造りだして、それを投げた。

「永遠に…アデュー。」

すると、それを打ち消すような声を挙げる若者の声が。

「お別れするには、少し早いんじゃないか?」

「お前を止めに来たぜ、聖!」

「二人とも、集中して放ちましょう!」

黒い大玉を斬るように、白い光線が瞬時に現れ、学園の崩壊を食い止めたのだ。

そして、3つの影のうち1つが叫ぶ。

「ネロ!着地は任せた!」

空には、一つの赤い光が落ちながらも輝いていた。

 

そして、赤い光の持ち主は赤い舞踏服を着た男装の麗人の懐にいた。

「貴様はいつも遅いな。だが、やる時はやる良い男だ。」

「お待たせ、ネロ。」

一方で、アラタは落ちたところに柔らかい物が当たるのを感じていた。

「この柔らかさは。」

ルーグがクッションの代わりとなって、アラタが掴んだのは胸だった。

そして、そんなアラタをクッション代わりにリリスが座っていた。

「おーい、アラタぁ!起き上がったのなら返事を………黒い服の上に付いている二つの丘を眺めれるとは羨ましい身分だな。」

「貴方、アラタさんのこと言えてないですよ。その手は何処に伸ばしているんですか。」

「おっと、久々の感覚なんでついつい。」

すると、藤丸の使っている通信からクレームが飛んだ。

「おい、マスター!劇奏女のを揉むのなら、私のハンバーガーをだな!」

「もう、相変わらずですね。」

リリスも状況を飲み込んだのか、アラタと藤丸の二人に怒鳴った。

「貴方たちって人はー!!」

「余は…悪く無い。このまま黄金劇場を開いても」

「おい、マスターの番サーヴァント。マスターたち共々ふざけるのもここまでだ。」

「なっ、貴様は。小生意気な魔道書!」

「小生意気で悪かったなっ!」

ネロとアークミネルバの相性は良くはなかった。

藤丸はそんな二人をどうにか宥め、体勢をアラタとリリスと整えた。

 

「ルーグは戦闘不能になったため、撤退したと見える。」

「あー、まぁ。照れながら、聖の後ろに隠れているけどな。」

「ルーグさん、アラタさんの野望は全ての魔道士にエッチなことをすることッス。」

「ちょっ、人が真剣になってるときに」

「またそのノリかよ、ニンジャ!?」

ルーグを食い止めるのを終え、通信越しでおふざけするレヴィに藤丸はたじたじだった。

「でも、アラタさんはシたいんでしょ?」

「愚問だなっ。」

「アラタっ!!」

「まーたお説教の時間だよ。申し訳ございません、このようなぐだぐだで」

レヴィ以外の通信から冷めた空気を感じて、アラタはコホンっと咳たてた。

「というわけで、聖。反撃開始といくぜ?リリス、ネロ、リツカ。力を貸してくれ!」

「よし、皆!少し前に話した、作戦名が!真の反撃の合図だ!

作戦名は!『メイガス・オーダー』!!」

 

藤丸の号令を合図に、カルデアとビブリア学園の同盟チームの皆の魔力が上がった!

「令呪を持って命ずる!皆、もっと魔力を高めろ!!」

すると、闘い終えた沖田を除いた六人のサーヴァントたちは魔力を高め、制限が無くなったかのような動きをしだした。

「これなら、負けることはなかろう!」

そして、魔道士たちも真の戦闘体勢に入るため叫ぶ。

「行くぜ、皆!『テーマ』を実行するぞ!!」

「「テーマを実行する!!」」

「「「「テーマを実行する!!!」」」」

それぞれの戦場で、ビブリア学園とカルデアのチームの逆転劇が始まるのを知らせるゴングが鳴り響いた。

 

 

 

 




聖ビブリア編の連載が終わっても続編はあります。
お楽しみに


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26話

来週でこのFGOの二次創作・聖ビブリア編は最終回です。



「遂に、最終決戦の火蓋が切って降ろされましたね」

「えぇ。敵を炎で焼き尽くしたいです。」

「余は強敵と闘わなければならぬがな」

「もきゅもきゅ」

「バーガー食べてる場合じゃないでしょ!?」

「まぁまぁ。とにかく、26話スタンバイと行こうか。」

 

 

「出ませい!」

「ラァッ!」

「神じゃねぇてめぇが、でしゃばるなぁ!!」

ニトクリスとアキオの両者が放った魔術攻撃を難なく防ぐカイニス。

これだけでも、彼女の強さが二人とも分かってしまった。

だが、ここで引き下がる訳には行かなかった。

「アキオさん。貴女は信仰心は熱いタイプですか?」

「それは、私の『テーマ』だな。……何故だろうな、お前はミラじゃねえってのにお前の考えていること……分かる気がするぜ。」

「そうですか。なら、次に私のやることは分かりますね?」

「あぁ、行くぜ!」

「なんだか知らねぇが!てめぇらは!ここで倒す!!」

カイニスは、落雷を起こした!

しかし、二人はこれを避けカイニスの懐へ突っ込む。

「死にに来たか、馬鹿め!」

カイニスは素早い横凪ぎで、二人を蹴散らそうとしたが凪いだのは風のみだった。

「なんだと!?」

「これが、天空神の恵みです!」

そして、アキオは踵に魔力を溜めそれを放った。

これには、神性の力が宿っている。

「「ホルス・ハンマー!!」」

「クソッ!!!」

 

屋上では、アリンのゲイボルグと藤乃の歪曲の力がワルキューレの軍団を次々と打ち倒していた。

「旦那様が心配ですか?」

「貴女にはバレバレのようだから。『そうね』とだけ答えておくわ。」

「きっと大丈夫です。なんせ、私たちのマスターが付いているんですから。」

「ならば、貴様らを屠る!」

スルトはそう言うと、赤い数本のナイフを宙に浮かばせた。

宝具を撃つつもりのようだ。

「やらせません…っ!」

藤乃は赤と緑の螺旋をスルト目掛けて走らせる。

そして、それに合わせるようにアリンがゲイボルグを投げた。

すると、曲げられたことによって回転力を持った銀の槍が!

音速を超えたスピードで飛んだ。

「チッ!」

「戦士を守れぇ!」

ワルキューレ軍団は大将であるスルトを守るべく集まったが、歪曲の魔眼の力が加わった槍の前には紙同然だった。

そして、最後には。

「くらー!何!?」

スルトの左胸に風穴が空いた。だが、それだけで怯む彼では無かった。

「愛する者の為にも!ここで倒れるわけには!!」

スルトは最後の力をふり絞って盛大に叫ぶ。

だが。

「可哀想な人ね。これは飽くまでも私の勘だけど、その人は貴方のことを好んではいないわ。」

「えぇ。それに、今は『私たち』の方がー」

「「強い」」

「オフェリアぁぁぁぁ!!!」

スルトは最後に、後頭部から額にかけた大きな穴を開けて絶命した。

「「ディストーボルグ」」

 

「この個体は強力ですね!!」

「なら、私たちで眠らせましょう!」

「あっ、この流れは僕がサポートしないと駄目なパターンだねっ!?」

マーリンは渋々と魔力を湖の聖剣にため、複数のキメラを凪ぎ払った。

「これを持てと?」

「えぇ!どんどん大きくしていきます!!」

早い速度で大きくなる、透明の玉を持った巴はその玉を打ち挙げる。

そして、それを排球のようにしてキメラ軍に撃った。

すると、その球は炎に包まれた獏の形となって敵の軍団を飲み込んだ!

「「夢炎獏(むえんばく)!!」」

キメラ軍団は永遠に鬼に追いかけられ、その身を燃やされるという悪夢を見せられた。

そして、夢でも現実でもただの粉塵となって消滅したのだ。

 

「素早いな!」

セイバーオルタは仮面セイバーの素早さに翻弄されていた。

この戦闘で彼女が出来たのは、敵の攻撃を防ぐことのみであった。

リーゼが居なければ。

「捕らえた!」

「何!?」

仮面セイバーの足に、アナグラム数字の縄が蛇のように絡み付いた。そして、アナグラムの蛇は敵の動きを停滞させた。

「今よ!」

「あぁ!」

黒い騎士王はその黒い聖なる剣に、光をも呑み込む暗黒の力を溜める。

そして、放った!

「「スタグナ・モルガンーー!!!」」

暗黒が仮面を飲み込んだ。

 

「暗殺部隊を呼ぶなんて、面倒な!」

「これ、マスターには禁止にされてるけどやるしかないわねっ!」

ジャンヌオルタは、黒い旗を上に掲げた。

すると、何処からともなく複数のワイバーンがアナスタシア直属の黒い暗殺部隊=オプリチニキを爪や炎で攻撃していた。

「ガアアア!」

「!」

しかし、オプリチニキも統制力でワイバーン軍の押しに抵抗する。

「まだよ!出でよ!巨竜『ドラゴン』!!」

すると、ワイバーンを援護するかのように黒く巨大なドラゴンが火炎弾を吐く。

それは氷の城にも命中し、中に入っていたビブリア学園の生徒たちは氷の檻から出されたのだ。

「さぁ、今のうちに!」

「ありがとうございます、ミラ先輩!」

「くっ!!」

だが、それを見逃すアナスタシアでは無かった。

アナスタシアは、氷の魔術で再び生徒たちを凍り漬けにしようと試みる。

「ホワイト・ユニバース!!」

ミラはこれを白い魔術で防いだ。

「今がチャンスね!炎の魔力は使える!?」

「えぇ!」

ジャンヌオルタとミラの二人は手を前に突き出し、アナスタシアを挟むように炎を放った。

聖なる炎と邪悪な炎。本来混ざるはずが無い二つの魔力は、奇跡的に合わさって巨大な火球を作った。

「「カオス・プロミネンス!!」」

その巨大な球は、アナスタシアを包んでその復讐心諸ともその体を溶かしたのだ。

 

そして、学園の屋上では。

「っ!流石、聖。強ぇぇ。」

「あぁ、文字通りにこっちの骨が折れそうだ」

藤丸、アラタ、リリスそしてネロは魔王候補となってトリニティを極めた聖を相手に大苦戦を強いられていた。

「ここで止めないと!」

「よし!マスター!リリス!アラタ!フォーメーション攻撃を仕掛けよう無いか!!」

ネロの号令に従うような形で、本当の最後の戦いの第2ラウンドのゴングが鳴り響いた。

To be continued

 

Fate/Grand Order 聖ビブリア編 最終回!

「皆、これからも手伝ってくれ。」

「済まないが、我々カルデアには。ここに残る時間が無いみたいだ。ありがとうな皆。」

 




Twitterにも書いた通りに、今後の構成はもう出来ています。
良かったらこのハーメルンの感想欄か下記のTwitterアカウントにまで質問などにお越しください
@SERAPHBeast


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最終回

ついに最終回。今まで読んでいただきありがとうございました。
この地球は丸いんだ。そのうちまた会えるさ。



「行くぞ!アラタ!リリス!マスター!フォーメーションC(カルデア)&B(ビブリア)だ!」

「おう!」

「分かりました!」

「全力をぶつけるんだぞ!いいな!?」

四人は猛スピードで、聖に向かってダッシュした。

聖以外の敵が倒れされた今では、状況的にメイガスオーダーのほうが有利だ。

しかし、聖との闘いはそう生易しい物でないのは確かだ。

そして、真の最終決戦の火蓋は斬られた!!

 

「コンビネーションは良かったんだが…」

「逃げられてしまいましたね。」

カイニスと闘っていた、ニトクリスとアキオが崩れた広場を見ながら話していた。

「しかし、我々は援護に行かなくて良いのでしょうか?」

「ん?あぁ。それなら、平気だろ。あの魔王候補二人にあのリリス先生それにえっと…」

「ネロのことですね」

「あぁ。その四人なら、聖を止めれる。そう思えるんだ。」

根拠の無いしかし、芯の通った答えにニトクリスも賛成した。

「えぇ。私たちのマスターは強いですから、きっと良い作戦でも考えているのでしょう。」

 

「確かに決まったと思ったのに!」

「どうやら、素早い動きでガードをして、軌道をズラされたみたいだな。あの仮面を引き剥がしたかったが、それは出来なかったみたいだな。」

リーゼとセイバーオルタが、保健室で床に座りながら喋る。

「マスターを助けたいって時に燃費の悪いこの肉体が邪魔しようとはな。」

「私もそろそろセリナと変わらないと疲れてきたわ。でも、一言だけ良いかしら?」

「なんだ?」

セイバーオルタの問いに、リーゼは一言「セリナをありがとう。」とだけ答えた。

すると、セイバーオルタもカメラの中で休憩しようとしていたリーゼを呼び止めた。

「リーゼとやら。一つだけ聞いてほしいことがある。」

「なに?」

すると、セイバーオルタはお腹を鳴らしてはこう言った。

「ハンバーガーくれ。」

「ハアッ!?持ってるわけ無いじゃない!」

「何?持っていないだと?仕方あるまい。」

鎧を外したセイバーオルタは、懐から袋に包まれたハンバーガーを取り出して頬張った。

「何よ!あるじゃないの!!」

セイバーオルタのマイペースな天然ボケにリーゼはツッコミをせざるを得なかった。

 

「おー…始まったねぇ。魔王候補同士の闘いが。」

学園長は謎のフードの者と話していた。

「そのようじゃのう……どうする?」

フードの者は、学園長と話しているとそのフードを外して桃色の神を持った女としての姿を見せた。

見た目の年齢は10代後半ぐらいであろう。

「いやぁー、リベル学園の学園長・マスターリベルと僕が闘ったらそれこそ世界の崩壊の危機でしょ?」

「にゃっはっは、違いないのう!!」

マスターリベルは甲高い声で笑う。

「したらば、ここで観戦するんじゃな?」

「まぁね、勝負は見えてるし。」

学園長の言葉に、マスターリベルは疑問を抱く。

「ほう?流石の『異端児』たちも今回ばかりは自信は無いか?」

リベルの言葉に学園長は異議を唱えた。

「いやいや、マスターリベルちゃん。君は、アラタくんとリツカくんの面白さをまだ理解出来ていないよ。」

「ほう…ではどちらの魔王候補が勝つのか、勝負と行こうではないか!」

「ははっ、お手柔らかにマスターリベルちゃん。」

 

「何をしようが無駄です!!夢幻黒光『ヴェグタムル』!!」

「ここは私が盾となる!行けぇぇぇ!!ロー・アイアス!!!」

藤丸は瞬時に、赤い外套を羽織ったガーディアンメイガスモードへ変身し、強化された絶対防御壁を造り出した。

「聖ぃぃぃ!!」

「!」

「喰らうが良い!」

「発射!!」

ネロは聖から見て左から剣で、リリスは聖からみて右からの銃から放たれた光線で聖を挟み撃ちにする。

しかし、聖はそれを二つの魔法陣を盾にして防いだ。

そして、正面からは後ろに何かを隠したアラタが来た。

なので、聖は正面にも魔法陣を張った。

すると、アラタはニヤリと笑った。

「作戦通りだぜ!」

「!?」

アラタが隠した切り札『ジョーカー』それは、藤丸が複製してこっそりとアラタに渡した

ゲイ・ボルグそのものだ。

アラタはそれを聖に向けて投げた。

すると、聖の魔力は無力化された。

「開け!黄金の劇場よ!!」

ネロは、聖が逃げないように美しい劇場を模した固有結界を張る。

聖の攻撃を受けきって体勢を整えた藤丸は、普通のメイガスモードへ戻り愛剣・シルバームーンを取り出した。

「ホワイトチェーン!白蛇縛『パイシゥーバインド』!!」

シルバームーンから放たれた白い鎖で、聖の動きを封じた。

「リリス、力貸してくれ。」

「はい!」

「行くぞ!マスター!」

「あぁ!!」

藤丸は、ある魔王から貰った紅い剣を取り出した。

ブラッディムーンだ。

まずは、藤丸とネロのコンビが聖を怯ませる。

「「クレセント・クラウディウス!!」」

二人の美しくも激しい剣捌きは、聖を怯ませた。

「充電完了!」

「放ちます!!」

リリスの銃の引き金を彼女とアラタが引く。

「「メテオ・ドラグナー!!」」

銃からは光線ではなく、猛々しい竜が聖に向かって突進したのだ。

「これは……。」

その攻撃を受けて、聖は何かを悟った。

 

「意外な伏兵でした。浅見リリス。彼女はー」

最終的に背を地面につけた聖は、リリスを視て呟く。

「聖!おい!!」

聖を起こす、彼女にとって懐かしい声が聞こえた。

春日アラタだ。

崩れた屋上には、その光景を少し離れたところから見守るネロ、リリスそして藤丸がいた。

藤丸は、一人煙草を吸いながら見守っている。

「アラタさんですね…?聞いてください。世界の真実を…」

「真…実…?」

聖は、魔王となったアラタとトリニティセブンが世界を滅ぼすこと、そしてアラタを「世界を生まれ変わらせるための道具」としか思っていない世界を許せないことを話した。

それが福音探求会の目的であることを話した。

すると、藤丸は立ち上がり聖に詰め寄る。

「そうか、アラタのために…『悪』を演じていたんだな。」

「はい。」

「よし、なら聖。アンタの上司に言っておけ。確かに、春日アラタは魔王だ。」

「リツカ!?」

突然の肯定に、リリスが焦る。

だが、藤丸は続けた。

「アラタは恐ろしい潜在能力を持った男だ。ただ。彼は誰かを思う優しい心も持っている。これの『支配』は、彼自身の『魔王』さえも『支配』する。少なくとも私は…そう思う。」

 

すると、マスターリベルが声を挙げた。

「若造、貴様は一体何者だ?!」

聖の上司がマスターリベルであることを悟った藤丸は、彼女を睨み付ける。

そして、ドスを利かせてかつ落ち着いた態度でマスターリベルの質疑に答える。

「通りすがりの魔術師だ……覚えておけ!!!」

藤丸は瞬時に、強力な弓と剣を変化させた矢を投影しマスターリベルへそれを放った。

マスターリベルはそれを人差し指で止めて、消滅させた。

しかし、彼女の右頬にかすかだがかすり傷が付いた。

「いつか、私またはアラタはお前を越える!そして、その時に聖をアラタの元へ返して貰う!!」

 

マスターリベルは笑いながら、結晶に聖を入れて退却しようとする。

「何をっ!?」

アラタも先程の藤丸のように、マスターリベルに食い下がろうとする。

「我々は、この娘を失うわけにはいかないのでな。」

「なるほど、聖はまだ死なないってことだな?なら、聖をよろしく頼んだぜ。俺が絶対に助けに行くからな!!」

すると、マスターリベルは先程まで我慢していた笑いを爆発させた。

「ハハハハハハ!自らを殺すかもしれん女を助けに行くとは!良いじゃろう。対魔王兵器として、きちんと完成させよう。それに、藤丸にはこやつをやろう。おっと、そう身構えるでない。決して、毒などではないからな。」

すると、マスターリベルは聖杯を藤丸目掛けて投げたのだ。

「危ねぇじゃねぇか!!」

藤丸はどうにか、聖杯を傷つけずに回収した。

 

トリニティセブンとサーヴァントの皆が、アラタたちのところに集まった。

「話は聞いてしまったか?」

「えぇ…」

「……やることが増えちまったな。手伝ってくれ、皆!!」

アラタは皆に協力して欲しいと懇願する。

しかし、アラタが視たのはそれを拒むように消えそうになっている藤丸とサーヴァントたちだった。

「すまないな。私たちが協力出来るのはここまでのようだ。」

「……そうか。」

「うむ、皆ご苦労であったな。後、余たちのマスターが迷惑をかけたな。」

「いえ、そんな……」

と、サーヴァントとメイガスたちが話していると。

「そうだ、リツカ。俺たちの魔力。ほんの少しだけ分けてやるよ。」

アラタは、友情の証として拳を突きだした。

なので、藤丸もそれに合わせた。

さらに、トリニティセブンとの皆とも拳を合わせた。

そして、本当の別れが来た。

「どうせ、地球は丸いんだ。また会えるさ。あばよ。」

そう言うと、藤丸たちはビブリア学園から去った。

修復完了

 

 

「懐かしい気分だ。」

藤丸は、自身の部屋に帰っては布団で横になった。

そして、彼はゆっくりとその瞼を閉じた。

暫くすると、ほんの少し回りがうるさく感じた。

そして、部屋のドアを叩く音が聞こえた。

「先輩!先輩!召喚室から急に人が!」

「ファッ!?」

藤丸はドアを叩いた後輩と一緒に召喚室へ急行した。

「アラタぁぁ!」

「この不浄者ぉぉ!」

「ヌゥワァ!?パンツを視て何故悪い!?」

「アイェェェ!?アラタ、ナンデ!?」

藤丸が奇声を挙げると、やっと騒動は収まった。

「リツカか!どうやら、縁が結ばれたことで俺達を召喚できたみたいだな!」

アラタが友情の拳を突きだしたので、藤丸も合わせようとしたが…。

「なぁ、アラタ。再会を喜びたい気持ちで一杯なんだけどさ。」

「おう。」

「後ろの二人がヤバいんだが。」

「あっ」

アラタは恐る恐る、後ろを視た。

二人は噴火寸前の火山のように、険しい顔になっていた。

「「アラタぁぁぁぁ!!!」」

「リツカ!お助けください!」

「私は憐れみ深ぁい性格でな。」

「逃げんなぁ!」

こうして、カルデアに新たな仲間が出来たのだ。

FGO 崩壊危惧学園聖ビブリア 完

 




次回予告
FGO シン編(二次創作)スタート COMING SOON


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設定用語

前からやるって言ったので、ここでやりたいと思って投稿してみました。
他にも「これはどういうことなの?」ってことがあったら感想などに書いてください。


トリニティセブン: 聖ビブリア学園において各書庫にある「秘奥義」(ロスト・テクニカ)を習得した7人に与えられる称号。

 

崩壊現象: 特定の地域・範囲が重力震動や磁場発生により大破壊を引き起こす現象。一度でも引き起こすと廃墟と化し、生命そのものも消滅する。

一方で、崩壊現象が完遂する前に崩壊現象の「基点(コア)」を破壊すれば、その現象もストップして、元来いた生命も戻ってくる

 

書庫(アーカイブ):7つの大罪が冠された魔道上の分類。人間の脳では認識不可能な高次元の階層に存在している。生命を持つ肉体では到達できないため、魔道士たちは意識・精神をその階層まで飛ばすことで「書庫」に接続する。

 

テーマ: 魔道士が研究するための題材となるもの。魔道士見習いは、まずそれぞれの「テーマ」探しから始まる。たとえ同一の「テーマ」があったとしても、個々の印象などが違ってくるため、決して同一の魔道は成立しない。そして、魔道士自身の「テーマ」を研究し、成果を出して「実行」に移すことで術式(魔力)を使うことが可能となる。以下に「テーマ」がどの「書庫」に存在しているかを記す。

 

メイガスモード: 魔道士が魔道書を使い、「テーマ」を実行するために本人が思い描いた容姿に「変身」すること。変身後の衣服は、変身前の衣服から構成されるため、仮に破けたりすれば、元の衣服も破けてしまう。しかし、魔力が回復すれば、異なる物質・魔力からメイガスモードに変換することも可能。この状態の時は、一般の人間よりも魔力に精通した存在となるため、人間界における物理法則に囚われることがなくなり、人間が作り出した武器などは通用しなくなる。 

 

シルバームーン:藤丸立香が、ミラとの修行の末に造り出したメイガスモード専用武器。これで敵の魔力を吸収する際などに余分な魔力を省いて、メイガスモードの暴走を予防する。さらには、相手の魔力をそっくりそのまま叩き斬ったり跳ね返したりすることも出来る。

藤丸は今回にて、自らオリジナルの剣を造り出したのだ。

しかし、このことは彼が人類とはさらにかけ離れた存在へと変化してしまった、何よりの証拠となってしまった。

モチーフはマインゴーシュとソードブレイカーであり、左手で持つ。

 

ブラッディムーン:藤丸がアワリティアトリニティから譲り受けた剣。基本カラーがダークレッド。能力としては、かまいたちを発生させ相手に大ダメージを与えるというもの。すなわち、攻撃に特化した力を持つ。そのためこの剣を使うのは余程強力な敵あるいは吐き気を催すほどの邪悪な心を持った者のみと対峙した時と藤丸自身が条件をつけている。

 

ゴールド・サン:アストラルトリニティが造り出した銃で、藤丸のシルバームーンに対抗しようとした。しかし、本人が不完全だったせいかあまり効果を発揮させないまま止められてしまったので本来の能力は不明。だが、普通のメイガスから見ればとんでもない代物なところは変わらないようだ。

 

ラスト・クレスト: 7つの魔道分類にそれぞれ「在る」とされている究極の魔道。 「トリニティセブン」と呼ばれるトップレベルの魔道士たちはこの魔道極法に到達した者たちで、そこに至る為には生まれ持っての才能と、テーマの深い研究が重要とされている。

 




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