ハイスクール・フリート 航洋護衛艦『夜鷹』 (レオパルト)
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航洋護衛艦 夜鷹 編
Episode01
俺はごく普通の高校一年生『加賀 光介』だ。
今日は学校もなく家に親もいない休日なので、模型作りに勤しんでいる。作っているのは架空艦、たちたか型フリゲート二番艦『よるたか』だ。既に一番艦の『たちたか』は建造を終え、特製軍港模型の一角に飾ってある。
たちたか型フリゲートの設定は冷戦末期の自衛隊が汎用護衛艦の補助的な役割をする高速艦として八隻建造された。艦名は一番艦から順に『たちたか』、『よるたか』、『あやたか』、『おおたか』、『うみたか』、『おやたか』、『みねたか』だ。武装はオート・メラーラ76mm単装速射砲を四基搭載し近接防御用の20mmCIWSを艦後方部の格納庫上に一基、艦橋前に一基の計二基を搭載する。更にMk.41VLSを32セル、艦橋前に搭載する。これに短魚雷発射管を六門、ハープーン発射筒とエグゾセ対艦ミサイル、ボフォースの40mm対空機関砲などにSH-60K艦載ヘリコプターを一機を4900t級の船体に載せた艦艇だ。しかしこの武装の種類が仇となり製作に物凄い時間を要する。午後二時に製作を始めると小休憩を挟みつつ建造を進めると最後にマストを仕上げ完成させる頃には午前一時を回っていた。急いで模型をドックに入れ、就寝準備を整えてベッドに潜り込む。しかしこれがこの世界との最後の別れとなるとは想像もしていなかった。
深い眠りに着いて数時間、俺は聞きなれないアラームを聞き目を覚ます。
「・・・・・・どこ?」
目をこすり周りの視界をクリアにする。今俺は船のブリッジらしき所にある軍艦でいう艦長席の上に座っている。すると後ろから声をかけられる。
「あっ艦長、お目覚めになられましたか」
「君は?・・・・・・ってちっさ!」
声をかけてきたのは見覚えのある小さな妖精だった。服装は海洋迷彩が施された海上自衛隊の戦闘服でご丁寧にヘルメットまで被っている。
「私は『よるたか』の副艦長をしている谷本です。小さいのは妖精だからです」
「やっぱりどっか見たことがあると思ったら艦これの妖精か!・・・・・・ん?ちょっと待てよ。今『よるたか』の副艦長って言わなかったか?」
「そうですよ。そしてあなたが『よるたか』の艦長です」
「ってことはまさか他にも妖精がいるんじゃ・・・・・・」
「いますよ。おい!吉岡航海長!艦長がお目覚めだ!挨拶しろ!」
吉岡と呼ばれた航海長はてくてくとこちらに来て敬礼した。
「吉岡です!『よるたか』の航海長をしています!」
航海長の敬礼にこちらも見様見真似の敬礼で答える。続いていつの間にか整列していた妖精達が順に自己紹介していく
「髙山です!TAOをやっています!」
「並木です!航海士で階級は一等海尉です!」
「岡崎二等海尉です!特警隊(特別警備隊)と立検隊(護衛艦付き立入検査隊)のリーダーをしています!陸上護衛はお任せ下さい、」
「自己紹介ありがとう。俺は・・・・・・」
俺が自己紹介しようとすると谷本は手で此方を制し口を開く。
「知ってますよ。名前は加賀 光介。今年で高校に入学した16歳で、栄えある我らの艦長です」
「俺が艦長なのは分かった。だが俺には艦艇系の資格は一切ないぞ」
「私たちがサポートするのでご心配なく。艦長は仕事をゆっくり覚えてください」
「分かった。では副長、状況は?」
「現在、我々は伊豆大島の西の沖合40kmにいます」
「横須賀港まで行けるか?この艦の所属は設定上では横須賀だからな」
「了解!進路を横須賀に!」
「CIC、対水上警戒厳となせ!」
『こちらTAO、了解しました!』
俺のオーダーに直ぐに妖精達が答える。恐らく横須賀港のレーダー網に引っかかっているはずだ。ここでいかに平和的に横須賀港に停泊出来るかが重要になってくるはずだ。ここで一つ喝を入れる。
「諸君!我々はこれから横須賀港を目指す!途中、接近してくる艦艇がいるかもしれないが我々からの攻撃の一切を禁ずる!しかし、目標が敵対行動に出しだい即座に反撃を許可する!」
『『『『『『『了解!』』』』』』』
艦長の喝を受けて乗員に一層の緊張感が広がる。
「特警隊と立検隊は万が一に備えて銃のメンテナンスと出動準備しておけ」
『か、艦長それって・・・・・・』
「可能な限りそんな事態は避ける。頼んだぞ」
『りょ、了解』
「全員配置に付け!」
お読みいただきありがとうございます。次回もお楽しみに。
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Episode02
数十分後、『よるたか』は浦賀水道の数十キロ手前まで航行した。
「髙山、今のところ何も映らないのか?」
『はい、今のところ陸地とメガフロートしか見えないですね。・・・・・・ちょっと待って下さい。レーダーが水上目標を探知しました。おいソナーなにか聞こえるか?』
「並木!ウイングからなにか見えるか?」
「艦長!インディペンデンス級が三隻、近づいてきます!」
『艦長!国際無線で対象から通信が来てます!』
「俺が出る!」
『こちらブルーマーメイド日本支部横須賀地方隊所属『みくら』である。貴艦の所属と目的を問う』
ブルーマーメイドと言う組織名は俺の記憶のなかには存在しない。とりあえず所属と目的を答える。
「こちらは海上自衛隊所属航洋護衛艦FFG-902『よるたか』。本艦は補給物資の備蓄の関係上、予定ルートを外れて航行している。出来れば横須賀港に向かいたい」
会話の後、数分間反応がないまま肉眼で確認出来るほど接近してきた。本艦と三隻のブルマー艦が並走する。
『艦長!対象から新たに通信です!』
一方、『よるたか』の左舷30mを航行している『みくら』の艦内ではタヌキ耳のカチューシャを着けた『みくら』の艦長『福内 典子』とその補佐役の『平賀 倫子』は『よるたか』の対応に追われていた。
「海上自衛隊?何言ってるのかしら?」
「新手の海賊かしらね?見た目の武装は凄い立派見たいだけど」
「臨検するわよ。向こうに停船して降伏するように求めて」
「了解」
向こうからコンタクトを待っているとTAOが指示を求めて来た。
『艦長、武器はどうしますか?』
「万が一に備えて主砲は撃ち方用意。但し砲塔は回すなよ!VLSはアスロックを発射用意だ。」
艦内通信を切り国際無線に切り替える。
『こちらの指示に従い停船し投降しなさい。貴艦を臨検します』
「ちょっと待て!我々は平和的に解決したい」
『つまり戦闘の意思はないというわけね』
「ああ、出来れば話し合いがしたい」
『分かりました。ではこちらから派遣隊を送ります』
「分かりました。賢明な判断、感謝します。」
無線を切り、吉岡に停船するよう求める。停船ししばらくすると見たことない水上バイクの進化系みたいなものに乗りこちらに近付く。クレーンでスキッパーと呼ばれる乗り物を釣り上げる。降りてきた女性隊員が頭に着けているものが気になった。
「あの・・・・・・なんでタヌキ耳着けてるんですか?」
「ああ、これはインカムよ」
「そうなんですか。へー」
「名乗っておくわ。私はブルーマーメイド日本支部横須賀地方隊『みくら』艦長、福内 典子よ」
「海上自衛隊航洋護衛艦『よるたか』の艦長、加賀 光介です」
「あなた随分若いみたいだけど何歳?」
「今年で15歳です」
「若っ!あなた本当に艦長?海洋学生じゃないのに?」
「あの失礼ですがブルーマーメイドって言うのはなんですか?海上保安庁じゃなくて?」
「ブルーマーメイドは海を守る国際組織よ。あとあなたのさっきから言ってる海上自衛隊とか海上保安庁とかってなんなの?民間の軍事会社?」
大きな疑問を持つ。海を守る国際組織の人間が海上自衛隊や海上保安庁を知らないのはおかしい。しかしあのアメリカの最新鋭のフリゲートを乗っているということは嘘を言っているようではない。
「俺は恐らく異世界から来た人間です」
「本当に?まあいいわ。詳しいことは後で聞くから。このことは私の判断で上には伝えないから。とにかく今は私たちの指示に従って横須賀まで着いて来て」
「分かりました。ご配慮感謝します」
そう言って福内さんはスキッパーに乗り『みくら』に戻って行った。
「どうだった?」
「艦長は15歳、武装は最新式じゃないけどかなりの数がある。そして彼は異世界から来たそうだわ」
「えっ異世界?」
「無線の内容覚えてる?海上自衛隊とか海上保安庁って言ってたでしょ。それが彼のいた世界の海上警察だそうよ」
「本当にそれ大丈夫なの?」
「分からない。だけど一応宗谷校長に聞いてみた方がいいわね」
「そうね」
そんなことを言いながら四隻のフリゲートが夕陽に映える横須賀港に入って行った。
戦闘描写はまだまだ先になりそうです。
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Episode03
横須賀に着くと早速ある一人の女性の所に案内された。途中、恐らく女子校なのだろう。セーラー服を着た女子がジロジロこちらを見てきた。服装は戦闘服に戦闘帽を着用していたため目立っていたのだろう。福内さんが校長室と書かれた部屋をノックした。
「ブルーマーメイドの福内です。所属不明艦の艦長を連れて来ました」
「どうぞ」
「失礼します!航洋護衛艦『よるたか』艦長、加賀 光介です!」
「こんばんは。私は横須賀女子海洋学校の校長の宗谷 真雪です。あなたには少し話をしたくて呼んだの」
「話というのは?」
「あなた今年で高一よね。特例で横須賀女子海洋学校に入学して欲しいの、構わないかしら?」
「ん?ちょっと待って下さい。俺は男ですよ!そんなことしたら社会的に死にます!」
考えて欲しい。男子一人が女子校にぶち込まれるとかどこぞのインフィニティットなストラトスじゃあるまいし勘弁して欲しい。しかし宗谷校長は話を続ける。
「だから特例なのよ。あなたは本校の共学化の試験要員として本校に入学してほしいの」
「・・・・・・分かりました。そういうことなら貴方の学校に入学しましょう。ですが条件があります、『よるたか』に俺以外の生徒を乗せないでください。それと入学式までの最低限の衣食住を保証してください」
「分かったわ。貴方の艦に貴方以外を乗せさせないのは構わないけどどうやって艦を動かすの?」
「この世界に来る時に直属の部下を配属して貰いましたから」
「貴方のいた前の世界では中学生でも艦長になれたのかしら?」
「いいえ、『よるたか』を作ったのが俺なので艦長が俺なんです」
「えっじゃああれだけ高性能な艦を自分で造り上げたの?」
「その辺りの詳しい話はまた落ち着いた時にしましょう」
「・・・・・・そうね。貴方の入学式までの生活場所は私の家で構わないかしら?娘が三人いるけど」
「ありがとうございます。・・・・・・ん?いやいやいやいや大丈夫なんですかそれ?」
「ええ、大丈夫だと思うわ。恐らく娘達なら納得してくれると思うけど。ちょうど貴方と同い年も一人いるし」
「・・・・・・分かりました。貴女の家でお世話になります」
「それで納得してくれると助かるわ。さあ、仕事も終わったし帰りましょう」
「そうですね」
そう言って宗谷校長は俺を連れて駐車場に向かう。話していたのは10分程度だったがすっかり日が暮れて生徒も一人も見かけなくなった。車で宗谷家に向かう途中、俺がこの世界に来た経緯や艦の詳しい装備のことを話した。
横須賀女子海洋学校を出発して10分ほどが経ち学園艦郊外にある宗谷家に到着した。最初に宗谷校長が入り出迎えてきた三姉妹が俺の姿を見て驚く。
「お母さん・・・・・・この人は?」
「紹介するわ。彼は今日からこの家の新たな住人になる加賀 光介君よ」
「初めまして、訳あって今日から数日間お世話になります加賀 光介、15歳です。」
深々とお辞儀をして顔を上げる三姉妹は全員唖然としていた。それもそのはずだ、俺は銃こそ持っていないが青色の海洋迷彩を施された海上自衛隊の戦闘服に黒色の防弾ベスト着た姿はとても15歳とは思えない格好だ。しかし宗谷校長は気にせず話を続ける。
「彼は今年から共学化の実験段階として横須賀女子海洋学校の生徒として二日後に入学してもらうの」
その言葉に三姉妹の末っ子らしき子が反応する。
「えっお母さん!彼を横須賀女子に入れるの?」
これ以上話すと情報が外部に漏れるので口を挟む。
「えっと君は誰ですか?」
「私は宗谷 ましろです。そこの宗谷 真雪の娘です」
「じゃあ残りの二人も・・・・・・宗谷さんの娘さん?」
「ええ、そうよ。私は宗谷 真霜、この三人の中で一番年上よ。加賀君よろしくね」
真霜さんは戸惑いながらも右手を差し出し握手を求める。俺はその手を握り軽く会釈する。
「私は宗谷 真冬だ。お前も海を守りたいならあとで根性注入してやる!」
「ちょ・・・・・・姉さん!」
根性注入と聞くと急にましろさんが慌てだした。
(根性注入の何がおかしいんだ?日本じゃ昔、精神論は流行ったらしいし)
「よく分かりませんがよろしくお願いします、真冬さん」
「さて、自己紹介も終わったことだし夕飯にするわよ」
こうして加賀 光介は宗谷家三姉妹とファーストコンタクトを遂げた。
最後が雑なのは許してください。
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Episode04
今朝は宗谷家で目が覚めた。
「加賀くん、起きたかしら?少し貴方にお母さんから話があるそうよ」
部屋の扉がノックされ真霜さんがそう告げる。
「今起きました。すぐ着替えるので少しだけ待って下さいと伝えてください」
「分かったわ。そう伝えるわ」
服を着替え始め上半身が裸でズボンを脱ごうとするとしたら突如、部屋の扉が開いた。この家には俺以外の男はいない。部屋の入口に恐る恐る見てみると、目を白黒させ固まっているましろさんが立っていた。
「あの・・・・・・ましろさん?ここ一応俺の部屋なんですけど」
「あ、あの・・・・・・これは・・・・・・その・・・・・・ご、ごめんなさい!」
そう言ってましろさんは猛スピードで扉を閉め走り去って行く。それから数分間俺も固まっていたが宗谷校長が待っていると聞いていたので急いで着替える。着替え終わると走って宗谷校長の執務室らしき部屋に向かい部屋の扉をノックする。
「加賀です。宗谷さんお呼びですか?」
「入って」
部屋の扉を開け部屋に入って用意されていた椅子に座る。
「話ってなんですか?」
「貴方の艦の名前を変えて欲しいの」
「艦の名前?」
「貴方の艦の名前は『よるたか』、でも平仮名表記は教員艦に採用される名前なのよ。だから、貴方の艦の名前を漢字の夜鷹に変えて欲しいのだけど」
「夜鷹か・・・・・・分かりました。名前は変えて貰って構いません。後、艦種変更に関してですが艦種は今のままの航洋護衛艦にして欲しいのですが」
「排水量的には航洋艦なんだけど・・・・・・まあいいわ。艦種は今のままの航洋護衛艦でいいわ」
「ありがとうございます」
「後、貴方と似たような境遇の留学艦が来ているわ。ドイツのヴィルヘルムスハーフェン校から来たドイツのアドミラルシュペーだったかしら?とにかく今は耳に入れて置くだけでいいわ」
「そうですか。では、明日の入学式に備えて艦を移動させてきます」
「場所は第一中央埠頭にお願い」
宗谷家を出ると雑務艦などが停泊している第三埠頭に向かう。夜鷹の櫓型のマストが見え始めるともうすぐ第三埠頭だ。夜鷹に着くと乗組妖精たちが埠頭に一列にズラリと並ぶ。どうやら見張り妖精が艦に帰って来るのを確認し艦長を出迎える準備をしていたようだ。
「艦長、お疲れ様でした。お話はどうでしたか?」
「この場に全員いるようだし通達する。本艦は現時刻を持って艦名を平仮名の『よるたか』から漢字の『夜鷹』に変更する。理由は本艦を学生艦で登録するには漢字表記にする必要があるそうだ」
「そうですか、分かりました」
「後、明日の入学式に向けて艦艇を移動させる。場所は第一中央埠頭だ。ちなみに入学式と言ったがこれは俺が明日・・・・・・」
「知ってますよ。横須賀女子海洋学校の生徒になるんですよね」
「な、なんで知ってるんだ?・・・・・・まさかお前が渡したカバンになにか入れたのか」
「はい。失礼ながらもカバンに盗聴器を仕掛けました。どうやら校長の娘となにかあったみたいですし」
「お、おい副長!そ、そんなことよりも機関始動!移動するぞ!」
「了解!機関始動!」
吉岡の声が艦橋に響き渡り艦体が前に進み出す。二分経つとTAOの髙山が声を上げた。
『艦長!本艦の12時の方向にミサイル多数!主砲で対処します!』
四門の主砲が動き出し目標を追随しようとする。
「なに?ミサイルだと?」
『目標!潜航!アスロックです!爆雷発射用意!』
ポンポンと音を立てて爆雷が発射される。
「発射用意・・・・・・撃てっ!」
『・・・・・・・・・・・・目標をロスト!続く目標なし!』
「よくやった髙山!後で何か奢ってやる!」
こうして突如、現れた脅威は去り夜鷹にはまた静けさが訪れた。
海上安全整備局本部大会議室にて
「嘘・・・・・・あれだけの誘導魚雷を爆雷だけで・・・・・・しかも主砲もあれだけのスピードで連発したら航洋艦はもちろん教育艦でも歯が立たないんじゃ・・・・・・。母さん、彼とこの艦どうするの?」
『これは・・・・・・いいえ、彼は私の学校の生徒よ。どんな艦の生徒であっても私が守るわ』
「分かったわ、母さん。海上安全整備局に伝えとくわ」
最後の方が投稿日に書いたので文脈にズレがあるかもしれないです。
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Episode05
横須賀女子海洋学校入学式
今日この日を待ち侘びていた者も多いだろう。しかし俺はこの日が憂鬱で仕方ない。考えてみよう、女子だけの入学式に男子一人、肩身の狭い思いしかしない。ただ会場が武蔵の甲板なのは海軍マニアにはたまらない。会場に到着すると大半の生徒が座っていた。俺の席は校長の配慮からか第一主砲塔の近くで砲身の陰に隠れる席だ。正直言って入学式は暇なのでウトウトしていると校長が驚愕の発言をした。
『では、本校初の男子生徒で入学試験首席の加賀 光介君に新入生代表の答辞を述べて頂きましょう 』
「ん?俺が入学試験首席?」
周りが誰のことだとザワザワしているのにこの発言は失言だった。周りの視線が俺に一極集中する。校長に助け舟を頼むが微笑み返されるだけだ。
「はあ勘弁してくれよ」
諦めて席を立ち歩いて校長のいる壇上へ上がりマイクを口に近づけ声を発する。
「皆さんはじめまして、加賀 光介です。僕はこの横須賀女子海洋学校の共学化の試験生として今年より皆さんと同じ一年生として入学しました。皆さんとは共に海に生きる仲間としていい学友になれたらなと思っています。三年後またこうして集えることを楽しみにしています。新入生代表の答辞を終わります」
何とかそれらしい事を言ってこの場を凌いだが視線がキツい、これは精神が削られるから勘弁して欲しい。席に着くと視線から逃げるように眠りにつこうとする。そしてしばらくまたウトウトしていると入学式は終わりを迎えた。
メガフロート第一中央埠頭
夜鷹に着くと艦橋の艦長席に座り周りを見渡す。隣には陽炎型駆逐艦が何隻も止まっている。ちなみに艦番号はFFM-702のままだが学校の書類にはY702になっている。隣の陽炎型は晴風と天津風。晴風の艦橋後ろにある見張り台からましろさんがこちらに向かって必死に頭を下げていたので手を振り返すとこちらは気にしていないという意思が通じたらしくほっとした表情で艦橋に戻っていった。
「航海長!機関全速前進!隣の晴風に続くぞ!」
「了解!機関全速前進!晴風の後方につきます」
西之島新島沖
ここは近年新しく海底火山の噴火で出来た島だ。ここに軍艦マニアならたまらない光景が広がっていた。インディペンデンス級に高雄型や長良型に駆逐艦は陽炎型に秋月型が揃う大艦隊が停泊している。そんな中夜鷹は最後の二隻の到着を待っていた。その二隻は宗谷家の三女が乗る晴風と、学年次席の知名 もえかが乗る戦艦武蔵だ。しばらく艦内で仮眠を取っていると事件は突如起こった。砲撃音が鳴り響き数十秒後に着弾音も聞こえる。急いで艦橋に上がり状況を確認する。
「並木!どうなっている?」
「あ、艦長!さるしまが遅れて到着した晴風に対して発砲しました!」
「なに?教育艦が航洋艦に砲撃しただと?」
「はい!晴風は謝罪もしているのですが砲撃が止まりません」
「・・・・・・機関全速力!晴風を退避させる!」
「了解!機関全速前進!CICは戦闘配置!」
「主砲、目標さるしま!全砲門、ファイア!」
『こちらCIC、VLAスタンバイ完了!』
「主砲は撃ち続けろ!弾幕を張れ!」
他の艦が唖然としている中、夜鷹は砲撃を続ける。しかし弾着は決まって艦体後部の無人機甲板だ。一方の晴風は回避をしながら演習用魚雷を発射し命中させた。晴風はそのまま当海域を離れていった。夜鷹も続いて離脱するが、予想外の出来事が起こった。三重もある隔壁があるにも関わらず、さるしまが浸水により沈没してしまったのだ。
父島沖合
『学生艦二隻が反乱、さるしまを砲撃。さるしまは沈没したが乗員は全員救助』
「はぁーどうしよう?」
「先に撃ってきたのはさるしまの方でしょ!」
「そういえば、さるしまに砲撃していた艦がいましたよね。確かY902のえーと・・・・・・」
「夜鷹だ。ほら唯一の男子生徒が乗ってる航洋護衛艦だ」
「じゃあシロちゃん、確か知り合いだったよね。えーと・・・・・・加賀君と」
「か、艦長がなんでそれを?・・・・・・まあいいレーダー、何か見えるか?」
『見えます!後方6時の方向に高速で接近する中型航洋艦サイズの艦影一つ!・・・・・・識別信号に応答あり!読み上げます!《我レ、夜鷹。貴艦ノ安否ノ確認ト合流ヲ望ム》です』
「シロちゃん、夜鷹と無線って繋がる?」
「確か夜鷹は全てに置いて教育艦並の装備だから、無線はあると思うが・・・・・・」
「じゃあやってみよう。じゃあまず・・・・・・」
『艦長!夜鷹から小銃を持った人達がゴムボートで接近してきます!』
やっぱりオート・メラーラの76mm砲の四基装備はロマンですね。
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Episode06
次からもこれぐらい開きますがお許しください。
『艦長!夜鷹から小銃を持った人達がゴムボートで接近してきます!』
「う、嘘だろ。加賀君は晴風を占拠しようとしているのか?」
『夜鷹の特殊部隊が接舷しました!はしごをかけて乗り込んで来ます!』
「シロちゃん!艦橋は任せたから私は加賀君と話してくる!」
「ちょっと艦長・・・・・・」
晴風甲板上
「突入!A班は機関室、B班は各武装管制室へ!C班は俺についてこい!艦橋に行くぞ!」
「「「了解!」」」
目標を早急に制圧するために指示を出す。走りながらまずは甲板上を制圧し、制圧完了の無線を待つ。
『機関室クリア!』
『第二砲塔と第三砲塔を制圧しました!』
『各魚雷発射管、制圧完了!』
次々と制圧完了の無線が入る。
「よし!急いで艦橋に向かうぞ!」
「そうわさせませんわ!」
「なに?グワッ!」
「どうした岡崎!なっ!」
後ろを振り向くと人間サイズになっていた迷彩服姿の岡崎が倒れていた。その瞬間、死角から何かが振り下ろされようとしていた。咄嗟の判断で手に持っていたアサルトライフルで防ぎ、相手の顔を確認する。相手の顔は美人だった。恐らくどこかのご令嬢だろう。しかしその手には木製の薙刀を握られており今にも爆発しそうな憤りを感じ凄い剣幕でこちらを睨みつけている。
「あなたがたはなんのつもりですの?」
「我々は航洋護衛艦夜鷹の立検隊だ!そちらの艦の乗組員の保護をしている。我々に抵抗するとはどういうことか分かっているのか?今すぐ武器を離さなければ敵対勢力と見なし射殺もやむを得ないぞ」
冷静に淡々と要件を告げ投降を促す。
「・・・・・・・・・・・・分かりましたわ。投降しますわ。その代わり乗組員には一切危害を加えないで下さい」
「・・・・・・・・・・・・ふぅ。分かってくれてなによりだよ。実は俺、そんなCQCは得意じゃなくってな」
黒の半透明のフェイスガードを上げ顔を晒す。
「あ、あなたは学年首席の加賀 光介さん?」
「ん?そうだけど?」
「あなた、高校生なのに銃が使えますの?」
「まあ・・・・・・そうだな。あまりこのことを口外しないでくれ」
「分かりましたわ。艦橋まで案内致しますわ」
「すまない」
こうして薙刀使いの万里小路さんとの戦闘は停止した。
「光介くん!万里小路さん!大丈夫!?」
すると晴風艦長岬 明乃の声がし、甲板に姿を現す。
「各員武装解除せよ。どうやらこの艦に反乱勢力はいないみたいだ。我々の思い違いのようだ。先に艦に戻っておけ」
『『『了解!』』』
この後、事情を説明して晴風に再び僅かな間の平穏がもたらされた。
夜鷹CIC
「砲雷長!これ見てください!」
「なんだ?・・・・・・おい、これ本当か?艦長に連絡だ!」
「艦長は今晴風に乗っています!」
「まずいぞこれは・・・・・・」
晴風前甲板
「みんなー!晴風に味方が来てくれたよー!」
岬さんが叫んでクラスの全員をまとめようとする。
「味方?」
「ねぇ、艦長の横に立ってるのって学年首席の人だよね?」
「確か加賀君だっけ?」
「さっきの銃持った人達ってもしかして・・・・・・」
ヒソヒソと話す声が聞こえる。軽く先程の事情を話す。
「夜鷹艦長の加賀 光介だ!まずは晴風の乗組員に怖い思いをさせてしまったことを謝罪したい!そして一つ夜鷹から提案がある!今、我々は共に反乱艦という状態だ!事情を理解して貰えるまで協力させて欲しい!」
そう言って深々と頭を下げる。晴風の乗組員の面々は戸惑いを隠せないようだ。しかし岬が乗組員をまとめる。
「というわけで、私はこの提案を受けようと思うんだけどどうかな?」
「・・・・・・賛成!」
「私も!」
「あれだけ強い艦がこっちの味方なら最強だよ!」
どうやら賛同を得られたようだ。用事も済んだので自分の艦に戻ろうとすると万が一の為に用意した無線が鳴る。
「どうした?今からそちらに戻る」
『大変です艦長!4時の方向に艦影一つ接近中!』
「なに追っ手か?艦種は?艦名は?」
『恐らく重巡洋艦クラスの・・・・・・スクリュー音から見てドイツのアドミラル・シュペーです!』
早く対武蔵戦をやりたい・・・・・・
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Episode07
『これは訓練ではない!繰り返す!これは訓練ではない!』
艦内放送に怒号が鳴り響く。晴風と夜鷹が航行する地点から4時の方向に一つの艦影が接近しているからだ。艦橋に戻り指揮を執る。
「本当にアドミラル・シュペーか?」
「はい!艦影と主砲の配置、スクリュー音からみて間違いありません!」
「だとしたら主砲じゃ対処出来ないぞ!エグゾセを使うぞ!あれならそこまで威力は高くない!」
「了解しました、艦長!聞こえたかCIC?全員戦闘配置だ!」
『こちらCIC!配置完了!』
双眼鏡にアドミラル・シュペーが映り、艦内に一層の緊張が張り詰める。更にアドミラル・シュペーの28.3cm砲の射程まで300mの位置だ。晴風は特殊なタービンエンジンを積んでいるとはいえ夜鷹の最新式のガスタービンエンジンには叶わない。晴風からは主砲でスクリューシャフトを撃ち抜こうと言ってきたので主砲も稼働させる。
『アドミラル・シュペー、主砲旋回中!目標は・・・・・・晴風です!』
「なに?晴風の前に出ろ!砲雷長!エグゾセを撃て!」
『砲雷長!照準よし!』
『撃てーーー!』
シュペーに向かってフランス製対艦ミサイルエグゾセが飛翔する。続いて四門の主砲が旋回しシュペーをロックする。しかし砲口は火を噴かない。射程が足りないのだ。
「主砲の射程はまだか?」
『あともう少しです!』
「CIC!VLSにアスロックを二発装填しろ!」
「艦長!晴風から通信です!」
「分かった!変われ!こちら夜鷹艦橋!」
『光介くん!今のはなに?まさかシュペーを沈める気じゃないよね?』
「今のはエグゾセミサイルだ。シュペーの戦闘能力を削ぐために発射した。副砲群に着弾するから脅威は半分以上減るぞ」
『分かった!ありがとう光介くん!』
「シュペー発砲!砲弾来ます!」
「チャフだ!主砲はまだか?」
「シュペー、射程圏内に入りました!」
「主砲一番から四番、撃ち方ー始め!」
「ってーーー!」
「副砲群を徹底的に狙え!」
俺の掛け声と共に夜鷹に搭載された四門の76mm速射砲が火を噴く。砲雷長も指示を出し各砲の照準を合わせる。突如、艦に大きな衝撃が走る。艦中央部にある中央VLSにシュペーの主砲弾を諸に命中したのだ。更に大きな衝撃と熱風が艦橋を襲う。
「中央VLS被弾!装填中のアスロックに引火、誘爆しました!」
「ダメコン班は消火活動に!救護班は怪我人の救助にあたれ!」
「武装は大丈夫か!」
「中央VLS以外無事です!」
「次弾来ます!」
またも命中し、艦に大きな衝撃が襲う。
「艦尾ヘリ甲板に命中しました!」
「主砲!弾幕を張り続けろ!砲撃の手を緩めるな!」
「艦長!火災が止まりません!このままだと30分もしないうちに艦全体に火が回ります!」
「シュペーが短魚雷の射程圏内に入ったら全部撃って構わない。確実にシュペーを航行不能にするぞ!」
「了解!・・・・・・艦長!また晴風から通信です!」
「こちら夜鷹!晴風どうした?被弾したか?」
『シュペーからボートが向かってるの!あっ!女の子が海に投げ出された!』
「なに?分かった、救助するから保健委員を待機させておいてくれ!」
『ちょっと待って・・・・・・』
急いで甲板まで走る。第一煙突の真横にある小型の武装スキッパーに乗り込み、クレーンで海面に着水する。この武装スキッパーには5.56mmクラスの汎用機関銃と84mm無反動砲を装備されている。
「カール・グスタフの射程は約1000m、恐らく乗組員がいるとすればシュペーから900mぐらいだからギリギリだなだな」
そう呟きながらシュペーの副砲群の射撃をちょこまかと避けていく。
「あと100m・・・・・・50m・・・・・・」
あと50mで乗組員を保護できる。カール・グスタフの射程に入っているので発射する。
「Feuer!当たれー!よし、おい大丈夫か?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・意識がないか・・・・・・」
海面に浮かんだ金髪の女の子をスキッパーの後部座席に引き上げる。首筋に手を当て脈を測る。しばらくすると呼吸をしていないことが分かった。人工呼吸は保健の授業でやったきりだが少し躊躇いながらも金髪の女の子の口に唇を重ねる。息を吹き込み心臓マッサージを行う。彼女が呼吸を戻すまで三分かかりその間にも周りには砲撃の着弾による水柱が立つ。意識はないが呼吸を戻したので急いでスッキパーで晴風に向かう。夜鷹は未だに艦中央部から赤い炎を上げている。
「岬さん!要救助者を保護した!晴風の保健委員に移管したいんだが・・・・・・」
予め渡しておいたインカムで晴風に連絡しスキッパーの回収を頼む。
『分かった!美波さんに待機してもらうね!』
「ありがとう!さてと・・・・・・」
スキッパーごと回収してもらい金髪の女の子をお姫様抱っこで甲板に寝かせる。そこに白衣を着た女子がやってきた。
「保健委員の鏑木 美波だ。あとは私に任せてくれ」
「ありがとう。済まないがこのまま晴風に・・・・・・」
視界が暗転し、体から力が抜ける。加賀 光介はここで意識を失った。
フラグっぽいことをしましたがヒロインはまだ未定です。次回こそシュペーと決着をつけたいと思います。
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Episode08
目を覚ますとそこは医務室だったが起き上がると驚くべき状況になっていることに気付く。
「ん・・・・・・え?・・・・・・」
自分が助けた金髪の女子が同じベッドで寝ているからだ。慌てた俺はベッドからひっそりと離れ近くにあった椅子に座る。
「鏑木さん仕事してくれよ・・・・・・」
すると晴風の保健委員の鏑木さんが部屋に入ってくる。何やら書類のようなものが抱えている納沙さんも扉の外で待機しているが気にしない。
「鏑木さん、なんであの金髪の女子と同じベットドなんだよ!恥ずかしさで死にそうになったわ!」
「それはベッドが一つしかないからだ。その様子だったら艦橋に戻っても大丈夫だろう」
そう言って医務室の扉を開けて扉の外で待機していた納沙さんが俺を艦橋へ来るよう伝える。
「加賀さん!出来れば艦橋に来て指示をお願いします!」
「ん?艦橋?なんで俺が指示をするんだ?」
「実は・・・・・・今晴風は東舞校所属の伊201に追尾されてまして・・・・・・」
「なるほど・・・・・・遂に見つかったか・・・・・・」
「という訳で指揮をお願いします!」
「分かった。直ぐに艦橋に向かう。案内してくれ!」
艦橋に着いた俺は指示を出す。
「なんで電気をつけているんだ!今すぐ消せ!」
電気を消すと艦橋に動揺が走る。
「うわ!暗っ!」
「夜目を慣らしてないからだろ!俺のインカムを貸してくれ!・・・・・・ありがとう」
「加賀くん、夜鷹はもう大丈夫なの?」
「大丈夫だ!聞こえるか谷本?」
『艦長!無事だったんですか?』
「あぁもう復活した!砲雷長に連絡!VLS一番から二番にVLAだ!」
『発射用意良し!』
「命令あるまで発射待て!絶対に撃つなよ!」
「万里小路さん、ソナーから何か聞こえる?」
『晴風のスクリュー音がもの凄い音を出していて潜水艦は探知出来ないです』
「鈴ちゃん、もうちょっと速度落として!」
「り、了解!」
そんなやり取りをしていると夜鷹の前部VLSからミサイルが発射される。
「なに?おい砲雷長!どういう事だ!誰が撃った!」
もの凄い剣幕でブチギレる。隣で指示をしていた岬さんは固まり、操舵輪を握っていた知床さんと砲術長の立石さんは泣き出してしまった。それを慰める納沙さんと西崎さん。いつもクールな素振りを見せるましろさんまで少し怯えていた。
『すいません艦長!ヒューマンエラーです!』
「分かった!アスロックと目標までの距離は?」
『あと30秒で命中!・・・・・・20秒!・・・・・・10秒前!』
「アスロックを自爆させろ!」
『了解!』
その瞬間、伊201のいる辺りの海面から大きな水柱が立つ。
『付近に浮遊物を確認!伊201の浮上してきます!』
『爆発音を確認しました。海音からのスクリュー音はありませんわ』
インカムから夜鷹砲雷長の、伝声管から万里小路さんの撃破確認の報告を受け、両艦共に歓喜の嵐に包まれる。
一方、医務室では一人の少女が目を覚ました。その少女は唇に手を当てて頬を赤らめていた。
ヒロインはやっぱりミーナちゃんにしようかなと思うこの頃・・・・・・
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Episode09
Y902航洋護衛艦『夜鷹』航海日誌
2016年4月6日
ヴィルヘルムスハーフェン海洋学校所属艦アドミラル・シュペーと戦闘に入る。中央VLSが大破、継続使用困難。艦尾ヘリ甲板が損傷、弾薬の一割を消耗。僚艦の晴風は無傷、晴風が要救護者を収容。艦長が負傷し副長が本艦を指揮。
2016年4月8日
東舞鶴男子海洋学校所属艦伊201と戦闘に入る。前部VLSのアスロック一発消費。誤射した米倉薫一等海尉は補給科に転属。
「困ったな・・・・・・谷本、どうする?」
伊201を戦闘能力を奪った後、夜鷹艦橋に戻った俺は副長の谷本とあることを相談していた。
「どうします艦長、まさか晴風のトイレットペーパーが枯渇するとは・・・・・・」
「夜鷹の予備を回しても、持って二日・・・・・・」
「晴風の岬艦長は近海のオーシャンモール四国店に買い出しに行こうと提案しています」
「うーむ・・・・・・俺達も糧食が足りないからその提案に乗るか・・・・・・」
「ですが艦長・・・・・・それでは海上安全整備局に発見される恐れが・・・・・・」
「かと言って立検隊や陸警隊の完全武装で上陸すると逆に怪しまれて通報されかねないしな・・・・・・拳銃だけが限界か・・・・・・」
「そうですね・・・・・・では9mm拳銃を用意させます」
「すまないが誰か!晴風に回線を繋いでくれ!」
「了解!晴風に回線を繋ぎます!」
艦長室から艦橋に指示を飛ばし、艦橋に向かい晴風と通信を試みる。
『・・・・・・こちら晴風副長の宗谷ましろです』
「宗谷副長、晴風のトイレットペーパーの備蓄の問題ですが、オーシャンモールの件は俺が護衛に行きます。必要なら他の人員も用意するが・・・・・・」
『大丈夫です。まさかですがその青色の迷彩服のまま上陸するんじゃないですよね?』
「大丈夫だ。比較的ホワイトドルフィンの制服に似ている海上自衛隊の制服を着るつもりだ」
『ちなみに私服はないんですか?さすがに制服を着た人がいると怪しまれる気がするんですが?』
「ないことは無いけど、要人警護用のスーツしか無いな・・・・・・多分」
『もうそれでいいですよ・・・・・・』
そんなことを回線で話し、上陸の打ち合わせをした。
数十分後
晴風のスキッパーで上陸した買い出し部隊は、建物内に向かう。ちなみに俺の姿は、黒いスーツに耳にインカムと腰の警棒といった完全にシークレットサービスかSPの様相を呈している。ちなみにスーツの下に防弾チョッキと内ポケットを改良したホルスターに9mm拳銃を入れている。
「・・・・・・岡崎、聞こえるか?今こちらは建物内だ」
胸元につけているマイクに向かってボソリと呟く。
『了解しました。艦からの連絡によると付近にブルーマーメイドの所属らしき艦艇がレーダーに映ったようです』
「・・・・・・見えているな」
『はい。ブルーマーメイドの制服を着た女性が二人、艦長達を追尾してますね・・・・・・』
「艦へ連絡。立検隊を要請してくれ」
『・・・・・・了解』
数分後
「おめでとうございまーす!四等のトイレットペーパー一年分でーす!」
「艦長凄いじゃないですか!」
「やったー!」
「まさかの一発でトイレットペーパーが一年分当たるとは・・・・・・」
「でも、どうやって持ち帰る?」
「ご自宅までお運びしますよ」
「でも・・・・・・そうだ!出来るだけ持って帰ろう!」
そう言って懸命にトイレットペーパーを運ぼうとする。しかし、三人で持てる量にも限界がある。動きが鈍くなった隙を追跡者は逃さなかった。40m離れていたブルーマーメイドの関係者がダッシュで接近をする。
「岡崎!隊員が動いた!後ろから回り込んで挟撃だ!」
『分かりました!彼女達は?』
「まだ気づいてない!俺が引きつける!」
そう言って胸元から9mm拳銃を引き抜き、走って来る隊員に向かって照準を定める。隊員もそれに気付き腰からS&W M&P9を引き抜きこちらに照準を定める。
「動かないで!今すぐ拳銃を捨てなさい!」
「・・・・・・かかった!今だ岡崎!」
叫んだ瞬間、近くの壁が削れる。岡崎がSIG MPXを単射したからだ。すぐに狙いを隊員達に向ける。
「我々は今、貴女方より強力な武装をしている。すぐに武装を解除し、そちらの要件を聞きたい」
「・・・・・・・・・・・・分かったわ。私たちの要件は貴女達を保護することよ」
「その話は本当ですか?」
「えぇ本当よ。海上安全整備局の見解と我々安全監督室の見解は違うわ。だから安心して、少なくとも宗谷監察官と学校は貴方達の味方よ」
「分かりました。その話を信じます」
「では、付いてきて!」
「了解しました。岡崎、銃を収めろ」
「・・・・・・分かりました」
インカムに手を当てて、晴風の買い出し部隊に連絡を取る。
「ブルーマーメイドの隊員と合流した。我々の救助が目的だそうだ」
『光介くん!それは本当?』
「あぁ本当だよ。隊員と今からそっちに向かうから詳しい状況は頼むよ」
『分かった。シュペーとの戦闘はそっちに任せるね』
こうして晴風と夜鷹はブルーマーメイドにより保護された。だが晴風では一人の生徒が暴れていた。
話が余り進んでいませんが次も頑張ります。アンケートを作りました。艦橋組以外は感想で教えて下さい
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ミサイル護衛艦 かつらぎ 編
Episode10
「おい、並木!どういうことだ!」
「分かりません!ただ、晴風の立石砲術長が明石と間宮に向けて発砲!損害は軽微!」
「訳が分からないだろ!」
「艦長!取り敢えず戦闘配置に付かせますか?」
「頼む!総員戦闘配置に付け!」
夜鷹に戻ると立石砲術長が発砲したことを聞き、最悪の事態を想定し戦闘配置に付かせる。
「主砲!一番、二番!左90度旋回!目標、晴風後部機銃甲板!」
『了解!』
「撃ち方用意!」
『・・・・・・用意良し!』
しかし、双眼鏡を覗いていた並木の声で驚く。
「艦長!晴風後部機銃甲板に人影なし!脅威なし!」
「CIC!撃ち方止め!」
『撃ち方止め!』
指示を出し、自分も双眼鏡を覗く。すると既に事後だったらしく、晴風に乗り移り状況を確認する。
「岬さん!ましろさん!立石砲術長が発砲したのは本当か?」
「ごめん、私は詳しく知らなくて・・・・・・」
「ましろさんは?」
「それは本当だが・・・・・・彼女が何故撃ったか分からない・・・・・・」
「そうか・・・・・・」
三人で黙り込んでいると、誰かが話しかけてきた。
「貴方達がこの艦の艦長?」
「貴方は・・・・・・平賀さんに福内さん!」
「やっぱりあの新型教育艦の艦長は加賀くんだったのね」
「晴風艦長の岬 明乃です」
「晴風副長の宗谷 ましろです。あ、あの本当にすいませんでしたー!」
「詳細は分からないけど、また戦闘になると思って気が動転したのじゃないかしら?」
「平賀さん、そういやなんで後ろに護衛艦がいるんですか?」
ブルマーの巡視艇の後ろに大型のイージス艦らしき艦影が見える。
「護衛艦?新しい艦種かなにか?」
「いや、なんでもないです。それよりあの新しい艦はなんですか?」
「これはね、夜鷹の代艦よ。貴方の艦、シュペーとの戦闘でかなり被弾したそうね」
「クルーはどうするんか?まさか入れ替えですか?」
「いや、このままよ。夜鷹のクルーは基本的に人間じゃないんでしょ?」
「まあ、そうですが・・・・・・艦名は?」
「「かつらぎ」よ」
「「かつらぎ」ですか・・・・・・」
夜鷹の代艦として到着したかつらぎは俺が昔作った改まや型に似ている。DDG-161 かつらぎは基準排水量8700tの船体にMk.45mod4を一門、Mk.41VLSを艦首に64セルとヘリ格納庫上に32セル、SSM4連装発射筒を両舷に二基ずつに艦上構造物を前後に高性能20m機関砲を装備する一般的なミサイル護衛艦と聞いた。こちらではY161になるそうだ。
「因みに、夜鷹の修理はいつぐらいまでかかりますか?」
「損傷が酷いからしばらくかかりそうね」
「そうですか・・・・・・」
こうして夜鷹は一度応急修理に入った。かつらぎの艦橋に上がり、付近を眺める。長く続いた戦闘で修理中の夜鷹はいくらか疲弊しきっていたように見えた。
「ありがとう・・・・・・夜鷹」
新しい艦艇を出してみました。夜鷹はまた登場するかは不明ですがかつらぎも架空艦です。
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Episode11
目が覚めた。確かかつらぎの艦長席に座って寝ていたが誰かに起こされた。
「誰だよ・・・・・・・・・・・・なにかありましたか?岬さん」
「あ、やっと起きた!光介くん、海に入らないの?」
「晴風の乗組員はみんな遊んでるのか?」
「そうだよ!だから光介くんもどうかなって思って・・・・・・」
「まあ、いいや。じゃあ、ちょっと着替えてくるよ」
海パンに着替えて晴風甲板を歩いていると、突如横からかなり水圧高めの水が顔面に直撃しふらつき、濡れた甲板に足を滑らせて転倒した。
「痛てっ!」
「ごめんごめん、大丈夫?」
水をかけてきた張本人が話しかけてきた。
「大丈夫だ・・・・・・」
痛がっていると、俺に水をかけてきた数人がましろさんに怒られているのが見えた。
「お前たちは何をやっているんだ!なんで他の艦の艦長に水をかけてるんだ!」
「すいません・・・・・・」
晴風クラスはどうやら12時まで自由時間らしいので12時まで晴風上甲板で暇を潰していた。
「今からミーちゃんと光介くんの歓迎会をやりたいと思います!」
「ワシか?」
「取り敢えず前に行って」
「でも艦長!加賀くんいませんよ!」
「えっ嘘!」
「本当ですよ艦長。かつらぎに帰って着替えてくるって言ってましたよ!」
「ちょっと私、艦橋に戻って無線で呼んで来る!」
更衣室で着替えようとすると、更衣室の扉が外から叩かれた。
「艦長!お着替え中に失礼します!晴風の岬艦長が晴風に早く来てくれと言っています!」
「岬さんが?何の用だ?」
「艦長の歓迎会をしてくださるそうです」
「分かった。すぐに行くと連絡してくれ」
「了解!失礼しました!」
伝令が扉の前から立ち去ると急いで着替えて立検隊の装備で晴風前甲板に向かう。
「すまない。岬さん遅れた」
「「「「「「・・・・・・・・・・・・誰?」」」」」」
晴風前甲板にいたほぼ全員が首を傾げる。
「誰って加賀だけど?」
「そうですわよ皆さん。彼は加賀さんですわ」
この場で唯一、正体が俺であることを知っている万里小路さんが説明してくれる。
「なんじゃ光介か。いきなりドえらい格好の軍人が現れるもんだから誰かと思ったわ」
「ん?なんで俺の名前知ってるの?てか誰?」
「ワシか?ワシはヴィルヘルミーナ・ブラウンシュヴァイク・インゲノール・フリーデブルクじゃ。お主はワシがシュペーから脱出した時に助けれてくた光介じゃな?」
「ああ、そうだ。というか名前が長いからなんと呼べばいい?」
「そうじゃな・・・・・・ワシの艦の艦長と同じ、ミーナでいいぞ」
「じゃあミーナ、よろしくな。ちゃんと話したことがなかったからな」
「ああ、よろしく頼む、光介」
そんなことを話していると岬さんが話に横槍を入れてきた。
「なんだか私だけ仲間外れみたいだよー」
「どうしたんだ、岬さん?」
「岬さんはやめてよー!ミーちゃんとシロちゃんは下の名前なのに私だけ岬さんは嫌だよー!」
「そんなこと言われてもましろさんには姉妹がいるし、ミーナに関して言えば名前が長過ぎるからだし・・・・・・」
「明乃って呼んで!」
「分かったよ岬さ・・・・・・明乃・・・・・・」
「よろしくね、コウくん!」
「明乃、勝手に略さないで欲しいんですが?」
「えー他人みたいだよー」
「いや他人じゃないのか?」
「艦の仲間は家族じゃないの?」
「いや艦すら違うから!」
コントみたいなことをしていると立石さんと西崎さんが耳元で呟きあっていた。
「タマ、前に副長とも同じことしてなかった?」
「・・・・・・うぃ」
そんなこんなで結局、コウくん呼びは一応、封印された。その後、ミーナと俺の歓迎会が始まったが、ミーナがドイツ人にしか分からなさそうなマイナーネタをぶっ込んできて場が困惑していたが、格好つけのためだけに覚えたドイツ語でツッコミを入れて何とか乗り切った。しかし、楽しい時間はしばらくすると終わりを迎えた。
『艦長!本海域付近で武蔵の保護に向かった東舞校教育艦艦隊に武蔵が発砲しました!』
あと10話の画面で岬艦長からの主人公の呼び名を決めて頂きたいです。
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Episode12
晴風の上甲板で通信手の報告を聞いて、急いでかつらぎに戻る。
「海上安全整備局からの指示は?」
「至急、東舞校教員艦の安否と武蔵の監視、ただし自艦の安全を第一にとのこと!」
「東舞校教員艦と最後に連絡が取れた位置から最も近い艦は?」
「我々と晴風が最も近いです!」
「艦長!海上安全整備局からの追加入電!東舞校教員艦艦隊、16隻が全艦戦闘不能及び航行不能の損害を受け壊滅!至急、救助に迎えとのこと!」
「分かった!島から離れ次第、最大船速!武蔵の監視に向かう!状況に応じて乗り込む!立検隊は各自準備!欠員は航海科から出せ!」
晴風が島から離れるのを確認し、かつらぎも微速前進で島の隙間を進む。
「晴風に無線を繋げ!」
「了解!・・・・・・繋がりました!」
「明乃!そっちも聞いている通り教員艦艦隊が壊滅している。武蔵の監視はそちらにしばらく一任するが問題ないか?」
『・・・・・・うん。分かった』
「どうした元気がないのか?さっきまであんなに明るかったのに?」
『いや・・・・・・そんなことはないよ!』
「そうか・・・・・・分かった、今から晴風に乗り移る」
『そんなの悪いよ!』
「大丈夫だ、かつらぎは副艦長に任せてある。俺を信じてくれ」
『・・・・・・うん分かった。信じるよ』
「ありがとう」
無線を切り、矢継ぎ早に指示を出す。
「ヘリで武蔵に対して直接乗り込めるように着艦してもエンジンを切るな!準備急げ!副長!」
「なんでしょう?」
「立検隊の突入タイミングはこちらから送るからそれで頼む!」
「分かりました!」
副長に要件を伝え、インカムを装着し、格納庫からヘリに乗り込み発艦、晴風の後甲板にロープを下ろし降下する。晴風に降り、艦橋に向かうとそこにはどこか気まずさ醸し出す艦橋メンバーと萎縮しきった明乃がいた。
「明乃、状況説明を頼む」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「明乃!」
「あ、ごめん。今は東舞校教員艦艦隊が発信している国際救難信号をもとに周辺海域を捜索をしているところ」
「分かった。理由は分からないが艦長なんだからもっと自信をもて」
「・・・・・・ありがとう」
しばらく沈黙が続く艦橋に見張り員の鋭い声が響き渡る。
「武蔵発見!10時の方向!」
「誰か双眼鏡を貸してくれ!」
「私の使いますか?」
納沙さんから双眼鏡を借り
「ありがとう。かつらぎ艦橋、聞こえるか?」
『なんでしょう、艦長?』
「救出はどこまで進んだ?」
『撃沈された艦はいないので要救助者はいませんが、航行不能の艦が六隻いるので一隻で対処できないと考え、近くのブルーマーメイドに応援を要請し、重症者をヘリでブルーマーメイド艦に移乗させています。残り一機は待機中です』
「突入隊の武蔵に対する立入検査を許可する。俺はスキッパーに乗って突入する」
『了解!ご武運を!』
「武蔵に突入するの?私も行かせて!」
「何を言っているんですか、艦長!艦を放ったらかしにする艦長がどこにいるんだ!」
「すまない・・・・・・・・・・・・それはできない」
「そ、そんな・・・・・・・・・・・・分かった、一人で行く!」
「ちょっと待ってください艦長!」
「友達が・・・・・・モカちゃんがいるの、助けなきゃ!」
「待ってくださ・・・・・・・・・・・・あーーもう!武蔵と距離を取りつつ同航!」
やけくそになったましろさんが指示を出す。すると続報が入る。
「武蔵!こちらに向かって発砲!」
「何!」
「聞こえるか、髙山?晴風に向かって武蔵主砲弾、九発!」
『任せてください!捉えています!目標、九!VLS1番から9番!シースパロー、発射用意よし!』
「撃て!」
『目標到達まで七秒!五!四!三!二!マークインターセプト!』
晴風の前に九つの爆発が現れる。
「おお・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・うぃ」
見方を変えれば綺麗な爆発に西崎水雷長と立石砲術長が感嘆を漏らす。
「ましろさん、学校からは武蔵に対してどのように対処しろと言っている?」
「我々に出た指示は、あくまで武蔵の監視と東舞校教員艦艦隊の安否確認です。それも自艦の安全第一との事です」
「つまり、両任務が終了したら何をしてもいいと」
「だから、誰もそんなことは言ってないです。どうして艦長に加賀くんまで自分の艦を放ったらかしにするんですか!」
「ましろさん、確かに俺みたいに自分の艦から飛び出す艦長は艦長失格なのかもしれない。でも、それだけ頼れる仲間がいるから艦長は自分の艦を安心して飛び出せるんだ。だから、副長はむしろ艦長にこの晴風を任されている。と、俺は考えているけどな」
「・・・・・・・・・・・・任されている、か・・・・・・・・・・・・」
「すまないが俺は武蔵にまだ例のウイルスに感染していない生徒がいないか突入して捜索してくる!」
次回から少し原作を改変していく予定です。あと、劇場版ハイスクール・フリートを昨日見てきたのですが、劇場版のストーリーを先に書いてしまいたい気分ですが次回作はどっちがいいかアンケートにするので答えて下さい。
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Episode13
「艦長、全員が武装の確認をしました!いつでも行けます!」
「分かった!このまま武蔵に向かえ!」
晴風の後甲板で俺を拾ったヘリはそのまま武蔵へ向かって飛行する。武蔵はヘリに気付いた様子はなく、主砲を晴風向けて測距している。ヘリはそのまま武蔵の後甲板の上でホバリングしロープを降ろし、俺を一番槍として降下を開始する。しかし俺が降下を終え、二人目が降下しようとすると、武蔵の速射砲群がヘリに気づき測距と照準を定めようとしている。
「ヘリは今すぐ離脱しろ!」
『ですが!』
「早く!」
すると速射砲群が発砲を開始した。辛うじて砲弾は命中しなかったが砲弾が次々とヘリを掠めていく。
『艦長!艦橋にはまだ非感染者がいるみたいです!』
「ありがとう!」
ここまで乗ってきたヘリに別れを告げ、爆風に呑まれないように遮蔽物を使い艦橋へ近づいていく。そして艦橋へ登る勾配が高い階段を駆け上がる。艦橋内部へ通じる扉が見えると扉を叩き、返事を確かめる
「かつらぎ立検隊だ!非感染者はまだ居るか!居るならこの扉を開けてくれ!」
すると中から物音が鳴り出した。こちらも扉を蹴破ろうと扉を蹴る。そしてしばらくすると、艦橋内部に通じる扉が開き、中から士官服を着た武蔵艦長と思わしき人物と涙目の数人の生徒が艦橋内部にいた。
「救助隊ですか?」
「そうだ、小型直教艦かつらぎの艦長をしている加賀光介だ。貴女は?見た感じだと艦長みたいだが?」
「私は、武蔵艦長の知名もえかです。救助に来て頂きありがとうございます。・・・・・・・・・・・・本当にありがとう。本当に、本当に!」
話の途中に黙り込んだ知名艦長は俺に抱き着きながら、涙目になりながら感謝の意を伝えてきた。
「ちょっ!知名艦長!」
突如、女子に抱き着かれキョドる俺を他所目に、知名艦長の他に感染していない三人の生徒が泣き出して艦橋内部はカオスなことになっていた。
「・・・・・・艦長!砲術科の子たちが艦橋に登って来てます!」
しかし、落ち着きを取り戻した武蔵乗組員が艦橋に登って来ている感染者に気付いた。
「知名艦長!今から聞くことに答えてください!食糧は後どのくらいありますか?」
「あと二週間は持つはず、でもそれって・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・すいませんが貴女方を今すぐ救助することは出来ません。この船から脱出となるとかなり体力が必要になります。しかし、それをいくら海洋学生だからといっても貴女方に強要は出来ませんし、命の危険もある。だから俺一人でしかこの場を脱出することは出来ません。必ず戻って助けに来ます!」
「そんな・・・・・・・・・・・・いえ、分かりました。それまでここで耐えます。その代わり絶対に助けに来てください!」
「分かりました!」
そう叫び、階段を一気に駆け下る。だが、途中で足を踏み外しバランスを崩し、階段を登っていた感染した学生諸共、甲板に叩きつけられる。それでもふらつく体に鞭を打ち、海に飛び込み救命ボートを展開して避難する。しばらくすると、階段から落ちた時の衝撃で遂に視界が暗転した。
終わりが無理矢理なのは許して下さい。あと、ローレライの乙女の番外編?を書くかもしれません。
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