ストライク・ザ・ブラッド 世界最強の剣士 (アイギウス)
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一話。まさかの始まり

場所はアルディギア王国・城館(カントリーハウス)外は夜中だが談話室には現国王のルーカス・リハヴァイン、妻ポリフォニア。その娘ラ・フォリア。その祖母で皇后のミュゼット・リハヴァイン。前国王のガイヤルド・リハヴァインが夜中に集まり、その中で一際異質なアルディギアの民族衣装に身を包んだ銀髪の少年が傍らに一目見て分かる名刀を立て掛けながらガイヤルドに視線を向ける。

 

「‥‥本当に‥‥千草の‥‥子なのか‥‥」

 

「ああ、だが情けないな‥‥お袋から聞いた話じゃ父は質実剛健な武人だと聞いていたのにこのザマとは‥‥息子の夜襲にすら気づかないとは」

 

たった一言に毒をのせて少年はガイヤルドに言い返すと、ガイヤルドは押し黙ってしまう。

その様子にその場の女性陣が情けなさそうにため息をつく。

 

「貴方の言うことはごもっともですわ。まず名前を聞いても?」

 

「‥‥蒼‥‥篠崎蒼‥‥15」

 

「15‥‥ちょうど時期も合いますね。では蒼、貴方はコレになんの用があってきたのですか?」

 

「用は2つ。まずこの十五年、お袋に文の一つも渡さなかったそこの甲斐性なしのロクデナシを15発殴るため。もう一つが、お袋が先月亡くなったから墓に引きずってでも連れていって墓の前で土下座させる、以上」

 

蒼の母──千草が亡くなった事実にミュゼット、ガイヤルドは目を丸くする。ポリフォニアは特に悲しげに目を伏せる。

 

「先月‥‥ですか‥‥蒼はコレが父親だと聞いていたのですか?」

 

「死の間際に聞いた。俺はコイツに今更親としての愛情だなんだは期待してないし、こんなボンクラに親父面されても斬り殺したくなるだけだ。ただ親じゃなくても男としても責任くらいは最後までテメェでやれと言いたかっただけだ」

 

ミュゼットは「成る程」と薄く笑みを浮かべると隣のガイヤルド(ロクデナシ)に目を向ける。それも圧の籠った笑みで

 

「貴方、子供にここまで言わせてまさか逃げたりしたら国の土は踏ませませんからね?今すぐに千草に謝ってきなさい」

 

「あの‥‥‥‥今、夜‥‥」

 

「それがどうかしましたかお父様?」

 

まさかの援護射撃にガイヤルドはたじろぐ。

それからほどなくしてガイヤルドはミュゼットの護衛に引き摺られて連れていかれた。

 

「意外だな。前国王の隠し事なんてスキャンダル、隠すか揉み消すと思ったが」

 

「そうするのは簡単ですが私達家族は千草には大きな恩があり、ましてやそこのポリフォニアは千草に勉学と霊力のご教授を受けていたものです」

 

「ラ・フォリアちゃんの呪式銃は元々千草先生が作って下さった物なのよ?」

 

「そんな縁が‥‥もしや蒼、貴方のその剣も」

 

「これはまた別のヤツだ。あと、なんだ‥‥夜中に邪魔したな」

 

「構いませんよ。蒼、これから貴方はどうしますか?」

 

「帰る。もとよりこの国には不法滞在だしビザもない」

 

言って席を立つと鞘に入った刀を抜き放つと後ろの空間を軽く十字に振ると、剣線に添って空間が割れて異空間が姿を現す。

 

「空間を斬ったのか‥‥」

 

「離れた空間同士を繋げるなんて技術‥‥その刀ですか‥‥蒼、国を出るのは少し待ってくれませんか?」

 

首だけを少し向けて蒼は動きを止める。

 

「貴方はあれに対して家族ではないと言いましたが、私もポリフォニアもそうは思いません。少しの間この国を見ていきませんか?」

 

「‥‥何が目的だ?」

 

「他なんてありません。私は嘘をつきません。蒼はとりあえず客員ということであれが戻るまで寛いでいてくださいな」

 

「うふふ‥‥私も弟ともっとお話したいですもの」

 

「‥‥‥‥分かった」

 

蒼にとってこの判断は完全に気まぐれだった、帰ってもどうせストーカーな女子高生しかいないし、ここにいるならある程度監視はつくが、マシ程度に思っていたが

ガイヤルドが戻るまでの3日間で蒼は人生のターニングポイントを迎えることになるとはこのときの蒼は思いもしなかったのである。

 



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