B組の副委員長 (ターボー001)
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出会い:後の相棒と拳藤一佳の場合

筆者の推しは拳藤ちゃんと小大ちゃん。







 

 

  手を膝の上に置き、ゆっくりと数回深呼吸をする。息を吐ききった後に聞こえる「はじめっ!!」の声。机の上に置いたあるペンを取り、目の前の白紙の紙を裏返す。羅列された文字を確認する。雄英高等学校ヒーロー科一般入試筆記試験。そのすぐ近くに書かれた別の文字に視線を移す。

 名前_____ 

 これを書き忘れたら全てが終わる。おそらく人生で一番、目にしたであろう文字、そしてこれからも一番、目にするであろうと思っていた文字をしっかりと記入する。

 名前__液水作操(えきみずつくみさ)__  

 この後の長い人生、俺は自分の本名よりもヒーロー名の方を目にすることになるとは、この時は知る由もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「"Plus Ultra(プルス ウルトラ)" !! それでは皆、良い受難を!!」

 

 

 

 本日は2月26日、あの雄英高校の入試の日である。筆記試験が終わりボイスヒーロー、プレゼント・マイクから「模擬市街地演習」の説明も終わり、今は演習会場への移動時間であるが受験人数が多すぎて演習場への通路は長蛇の列が出来ている。さすが雄英、例年倍率300は伊達じゃない。しかし演習時間にはまだ余裕があるので焦らず、俺は自販機で飲み物でも買うことにした。

 

 

 ピッ、ガコン

 ピッ、ガコン

 ピッ、ガコン

 ピッ、ガコン

 

 

 

 おいしそうな水2本とサイコっぽいソーダを2本買った。いや、お前そんなに買ってどうするんだっていう他の受験生の視線無言ツッコミは無視だ。プレゼント・マイクも言ってただろ? 持ち込みは自由だって。俺の個性と関係してんのさ。さて早速ソーダ1本は飲むか。プシュと気持ちのいい弾ける音と炭酸の刺激が心と喉を潤していく。その場で1本を飲み干し、空の容器をゴミ箱に捨て、残り3本の飲料水を抱えて俺は演習場へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハイ、スタートー!!」

 

 

 

 迷うことなく無事に演習場に着き、準備運動をしていたらプレゼント・マイクのこの声でいきなり演習が始まった。全員が一斉に慌てふためいて前へ走り出す中、俺は早速自分の個性を使うことにした。さっき飲んだソーダの炭酸を足に溜めて・・・ハッ!!

 

 

 

 

 

「なんだぁ!? いきなりすげぇ跳んでいった奴がいるぞ!!」

 

 

 

 受験生の1人が俺の個性に驚いたようだ。そのナイスな驚きぶりが嬉しいから説明しよう。

 

 

 俺の個性は「液体操作」 液体であれば意のままに操れる。飲み物を摂取した直後であれば自分の体内から外へ出すことも可能。液体の分離もできるぞ。例えばミルクティーとかも紅茶と牛乳に分けられる。結構応用が効く。他にも色々あるがそれは後々。ちなみにさっきやった技は炭酸の勢いを足に溜めてフライボードの要領で跳んでいった感じ。別に炭酸じゃなくても出来るけど炭酸のほうが勢いがあって時間がかからなくて楽。おっと、目的地に着いた。

 

 

 上方へ跳んでいった俺は見晴らしの良いビルの屋上へ来ていた。下を見下ろすと・・・おお、見える見える仮想敵(かそうヴィラン)のロボット。んじゃ、倒しますか。

 

 さっき買った水2本のフタを開け、地面に置く。そして人差し指と親指を立てて銃の形を作り、液体操作で人差し指の先に水を集め、見た目が消臭ビーズのような水弾を作り、照準を仮想敵に合わせて・・・撃つ!!

 

 

 

 

 ペチッ

 

 

 

 

 蚊の鳴くような声・・・ではなく音が聞こえた。水弾は確かに仮想敵に当たったが、「えっ?何か当たったの?」というくらい仮想敵は何事もなく普通に動いている。だがこれでいい。俺の目的は水弾の威力で仮想敵を倒すことじゃなく・・・

 

 

 

 プシューン

 

 

 

「あれ? 急にロボットが動かなくなったぞ。故障か?」

 

 液体操作でロボット内部に水を染み込ませてショートさせることだ。水弾を当てるのはあくまでその手段にすぎない。

 

 ロボットの近くで戦っていた受験生の声で上手くいったことを確認する。この方法なら他の受験者を誤射しても被害は水を浴びるだけで済むし、乱戦に向いている。仮想敵が防水仕様じゃなくてよかったと思った。そこが模擬市街地演習の説明を聞いたときの不安だった。さて、悩みも消えたしバンバン撃ってくか。

 

 それから数機の仮想敵を倒し、13ポイントくらい稼いだ頃だろうか。突然、会場に轟音が響き渡った。音の方向に目をやると説明にあったお邪魔虫0ポイント巨大仮想敵がいた。いや、まて、どんだけ~。シャレになってねぇ、デカすぎる!! ビルを豆腐を切る位の感覚で次々と倒しているし、他の受験者も一目散に逃げている。

 

 俺も場所を変えようと思って移動用にとっておいたサイダーのフタを開けていると、オレンジ髪のサイドテールの女の子が皆が逃げている逆方向、つまり巨大仮想敵に向かっているのが見えた。

 

 

(何やってんだあの子!?・・・あっ、瓦礫に挟まって動けねぇ奴がいる!!)

 

 

 オレンジ髪の子は瓦礫の近くまで来ると、自身の手を大きくし救助を始める。恐らくあれが彼女の個性なのだろう。しかしあのスピードじゃ間に合わないぞ。どうする?

 

 気づいたら俺は仮想敵を目指して炭酸を使ってビルの谷間を跳んでいた。

 

 

(まてまて俺。なんであっちに向かっているの? 俺が行ったところで大量の液体がないとあの仮想敵なんてぶっ飛ばせな・・・大量の液体?)

 

 

 立ち止まり、移動してきたビルの屋上を見渡す。ビルの屋上には・・・あった!!貯水タンク。これを次々と水弾(威力MAX)でぶっ壊して・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気がついたら私は巨大仮想敵に向かって駆けていた。すれ違う人達から「バカだろ。」「自殺志願者か?」などの声が聞こえたが・・・なんで、なんで皆、あの救助者に気づいていないんだ。瓦礫に挟まれ絶望した顔。その目を見てしまったら放って置くなんてこと出来なかった。瓦礫の前に着くとすぐに私の個性「大拳」を使って救助を始めるが焦ってなかなか上手くいかない。するとあたりが急に暗くなった。それは巨大仮想敵の影だった。恐怖のあまり思わず救助の手が止まってしまう。だが巨大仮想敵はそんなのお構いなしに手を動かしてくる。振りかぶってその規格外の手をこちらに落としてきた。ダメだ、私の大拳じゃ大きさが違いすぎる。

 

 救助者も助かることを諦めて目を瞑った時、急に私の前に誰かの背中が現れた。その背中は今でも私にとってオールマイトも越える、生涯NO.1 ヒーローのはじめての活躍の光景だった。

 

 

 

 

 

 

 大量の水を集めてきた俺はどうにか巨大仮想敵に襲われる前に2人のもとへ駆けつけることが出来た。女の子は近くで見るとかなりの美人さんだったが残念ながら挨拶している暇はない。巨大仮想敵は拳をこちらに落としてきてる。迎え撃つしか全員が助かる道はない。覚悟を決めろ、俺。

 

 

 集めた大量の水を右手に集中させ、巨大仮想敵と同等の拳を水で作る。彼女の個性を見て思いついた方法だ。地面をえぐるようにして自身の拳を一回下げると同じ動きを水の拳がする。そしてそのまま下げた拳を一気に天に突き上げる!!!

 

 

 

 

 スプラッシュ・アッパー!!!

 

 

 

 

 巨大仮想敵の拳と水の拳がぶつかり合う。

 

 

 

  バッシャーーン

 

 

 

 

 

 あたりに限定的な雨が降る。振り上げた俺の拳の視線の先には片腕をなくした巨大仮想敵。そのままゆっくりと後ろに倒れていき、ドシーンと音を立てて動かなくなった。よし、全員助かった。さてと、じゃあさっさと普通の仮想敵を倒しに・・・あれ? なんか目眩がする・・・それに吐き気と頭痛も。足も痙攣して立ってられない・・・しま・・った・・・勢い余って俺の・・・体内の・・・水分も・・・必要以上に・・・これは・・・脱水・・状態・・・どんどん・・・視界が・・・。

 

 

 

 そこで俺の意識はなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?」

 

 

「あっ! リカバリーガール! 目覚めましたよ!!」

 

 

 目覚めるとベッドの上で点滴を打たれていた。起き上がって横を見ると同じくベッドに座っている緑髪のモサモサ頭が誰かに呼びかけている。状況がよくわからないので緑髪に聞くことにする。

 

 

 

「ここどこ?」

 

 

「雄英高校の保健室だよ」

 

 

「保健室? なんで?」

 

 

「あんたら2人は巨大仮想敵を破壊した後、気絶して運ばれてきたんだよ。あんたは脱水症状、そっちは両足と右腕骨折。全く、今年の受験者はやんちゃ坊主ばっかりだね」

 

 

 横からおばあちゃんの声が割り込んできた。この人は雄英高校の看護教諭のリカバリーガールだと緑髪が教えてくれる。そしてリカバリーガールから問診を受けているうちにだんだんと気絶寸前までの状況を思い出してきた。

 

 

 

 

 

「あのさ・・・試験は?」

 

 

 ダメ元で緑髪に聞いてみる。

 

 

「・・・もう終わったよ」

 

 

 ですよねぇ~。

 

 

「そうか・・・っていうかお前もあの巨大仮想敵ぶっ飛ばしたのか? すげぇな!!」

 

 

「いやいや、君だってそうでしょ。それに僕と違って君は大怪我をしたわけじゃないし」

 

 

「いやでも倒しても0ポイントだし自慢にならんわ」

 

 

「それは僕も同じだよ!」

 

 

「あっ、そうか」

 

 

「「・・・アッハッハッハッ!!・・・・・はぁ~」」

 

 

 

 二人同時に笑い、そしてため息をつく。今日の試験、やっちまったと。リカバリーガールから「落ち込んでてもしょうがないからあんた達で何か話でもしてなさい。病は気からって言うからね。」と言われたのでとりあえず俺の点滴が全部入るまで談笑することにする。ちなみに彼の治療はもう終わっているらしいが体力が回復するまでここにいるらしい。

 

 

 自己紹介も兼ねて色々わかったのがこの緑髪、緑谷出久は生粋のオールマイトファン。俺もオールマイト好きだけどここまでの愛はないわ。そして個性もオールマイトに似ている。ただ力の出力制限が出来ないらしい。まあ今日の俺も人のこと言えないけど。似てる個性、オールマイトファン、そりゃあ雄英受けるわな。・・・悔しいだろうな。

 

 

 

「なぁ、4月以降にさ、お互いの心に整理がついたらまた会わないか?」

 

 

「えっ?」

 

 

「もうパーッと遊ぼうぜ。今日のこと忘れるくらい」

 

 

「・・・うん!!」

 

 

「じゃ、連絡先交換」

 

 

 

 そう言って携帯電話を取り出してお互いの連絡先を交換して俺たちは別れ、俺の入試が終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~1週間後~

 

 

 

作操・・作操・・作操!!

 

 

「ハッ!! ごめん、何、父さん?」

 

 

「何? じゃないよ、7回くらい呼んでも返事ないし・・・あと同じところを掃除しすぎだ。店の手伝いはいいから今日はもう休んでな」

 

 

「・・・うん、ありがとう。ごめんね」

 

 

 手に持っていたT型箒を父さんに渡し、バックヤードの住居スペースへと力なく歩く。その様子を心配そうに母さんや姉さん、スタッフの皆が見つめていた。

 

 

 

 

 ああ、そういえば説明していなかったね。俺の家は複合サロンを経営している。父さんが美容師、母さんがエステティシャン、姉さんがネイリスト、そして各部門スタッフ数十名を抱える結構な有名店だ。所謂いいトコの坊っちゃんだったんだぜ俺。雄英を受けたのもヒーローになって俺の個性の許可が取れれば、液体操作で効率よく髪の毛や肌に潤いを与えることが商売で出来るようになる。そう考えたからだ。だが結果は残念なもので・・・応援してくれた家族やスタッフの皆に申し訳がない。

 

 

 自室に戻ってふて寝でもしようかと思っていると家のチャイムが鳴った。ウチは表通りがサロンの入り口で裏通りが普通の家の玄関になっている。誰なのかをモニターで確認する気力もないのでそのままドアを開けて出ると郵便屋さんだった。印鑑を押し、いくつか手紙を受け取って中身を確認しながらリビングの椅子に座る。ほとんどが父さん宛てだが1通だけ「液水 作操 様」と書かれた封筒が出てきた。裏面を見ると雄英高等学校と書かれている。・・・はぁー、来ちゃったか。まぁいいや、さっさと開けて現実を突きつけられようじゃないか。

 

 

 封を破るといきなりオールマイトのホログラムが出てきた。どうやらこの春から雄英高校に務めるらしい。それを聞いて抑えていた悔しさ出てきて思わず拳を握る。そして

 

 

『肝心の試験の結果だが、筆記は出来ていても実技は13ポイント・・・んーこのポイントじゃ当然、不合格だ』

 

 

 ・・・そうだよ。わかっていたじゃないか。何がっかりしてんだ俺。ちゃんと受け入れろよ。

 

 

『それだけならね』

 

 

 ん?

 

 

 

『それではこちらのVTRをご覧いただこう!!』

 

 

 オールマイトがリモコンを持ってスクリーンに向かって押す。すると

 

 

『あの、すみません!!』

 

 

 あのオレンジ髪のサイドテールの子が映し出された。

 

 

 

『巨大仮想敵を大きな水で倒して気絶して運ばれた人ってどうなりました? 私、まだお礼と謝罪が言えていなくて』

 

 

 ――君の行動は人を動かした!!

 

 

『あの人、私ともう1人を救けてくれたんです!! もう会えないかもしれないからちゃんと言っておきたくて』

 

 

 ――先の入試!!!見ていたのは敵ポイントのみにあらず!!!

 

 

『まだ保健室で寝てるって聞いてるぜ。だが安心しな、命に別状ないってさ。あと、またあとで会えると思うぜ女子リスナー』

 

 

 ――人救け(正しいこと)した人間を排斥しちまうヒーロー科などあってたまるかって話だよ!!! きれい事!?上等さ!!命を賭してきれい事実践するお仕事だ!!!

 

 

 ――救助活動(レスキュー)ポイント!!しかも審査制!!我々雄英が見ていたもう1つの基礎能力!! 

 

 

 液水作操 60ポイント

 

 ついでに拳藤(けんどう)一佳(いつか) 45ポイント

 

 

 

『合格だ! 来い!!液水少年!! 私と一緒に雄英で学ぼう!!』

 

 

 

 嘘だろ・・・そんな大逆転劇が・・・

 

 

 

 

「うおおおおおおおおお!!!!!」

 

 

「うるさいわよ、作操!! お客さん驚いてるじゃない!!・・・えっ!?雄英受かったの?きゃああああおめでとう!!!」

 

 

「姉弟で何騒いでんの!!・・・嘘!?きゃああああああ!!!」

 

 

「母子でうっせえぞ!!何を・・・マジでか? よくやった作操ぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

 喜びの咆哮をしていると店のエリアから姉さん→母さん→父さんの順番で注意しに来たが雄英合格を伝えると皆表情を変えて喜んでくれた。この後お店では「ウチの息子が雄英に・・・」 「今日は料金半額で・・・」などで大盛り上がりだった。さらに閉店後、スタッフさんたちがケーキを買ってきてくれて皆で祝ってくれたときには俺は目から溢れる液体を自分の個性でも制御出来なかった。

 

 

 

 

 最高な気分のまま夜を迎え、寝ようしてスマホの充電ケーブルを挿そうとしたときにあることを思い出す。救助活動ポイントがあるってことは緑谷も受かってるんじゃないかと。連絡を入れてみようと思ったが途中で指を止める。何故なら・・・筆記で落ちてたらシャレにならん。アイツ頭いいのか俺知らないし。仮に連絡したとして

 

 

『俺、雄英受かってた!!』

 

『・・・僕、落ちてた』

 

『・・・・・』

 

 

 

 無理無理、そんな空気耐えられない。あー、でも気になるー、どうしよう。そう何度か繰り返し考えているうちに結局連絡はしないことに決め、眠りに落ち、緑谷には悪いが少しずつこのことは頭から離れていってしまった。

 

 

 

 

 

 そして春

 

 

 

 

「えーと? 1-B,1-B・・・ここか」

 

 

 俺は雄英高校の廊下を歩いていた。配属されたクラスは1-B。どんなクラスメイトがいるのか期待に胸を膨らませながら大きなドアを開けようとすると

 

 

 

「1-A・・・1-A・・・あった・・・ドアでか・・・」

 

 

 横から聞き覚えのある声。

 

 

「あっ」

 

 

「えっ?」

 

 

 

 横を見ると今度は見覚えのあるモサモサ頭に思わず声をあげる。すると向こうも俺に気づいたようで・・・

 

 

 

「「あーーーーーっ!!!!!」」

 

 

 

 

 お互いに指を指して驚嘆のまなざしで見つめ合う。この時の再会はゆめだったんじゃないかって今でも思う。だけど・・・

 

 

 

 

 

架空(ゆめ)」は「現実(げんじつ)」に 

 

 言い忘れてたが、これは俺が最高のヒーローの相棒(サイドキック)になるまでの物語・・・・から漏れてしまった小話や裏話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おまけ

 

 

 

 

 緑谷と再会してお互いに握手しながら「よかった。」「違う組だったか~。」「これから頑張ろうな。」と、時間もあまりなかったので数言交わして別れ、自分の教室に入るべく、B組のドアを開けると

 

 

 

「あーーーーーっ!!!!」

 

 

 

 俺が救けたオレンジ髪の女子、拳藤一佳が居た。俺を見るなりすごい勢いで近寄ってきて手を取られ、「ありがとう、ありがとう。」と人目をはばからず何度もお礼を言われ、その後に会って間もないクラスメイトから冷やかされて2人で顔を真っ赤にしたのはいい思い出・・・かな?

 

 

 

 

 

 









実はこの作品は2016年にPixivであげた読み切り作品を元に一から作り直したものです。最近になって原作でもB組の詳細がわかってきたので書きたい欲に火がつきました。どこまで書けるかわかりませんがよろしくおねがいします。


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USJで遊ぶB組

ギャグ回です。


 

 

 

 

 

「はい、じゃあちょっと早いですが授業はここまでにしましょう。授業終了時間まで自由時間とします。疲れた人は無理せず休憩してくださいね」

 

 

 

 13号先生の言葉に「だぁ~」と気が抜け始めるB組の面々。雄英高校に入学して数日、初日に個性把握テストをしたと思ったら次はUSJ(ウソの災害や事故ルーム)なる場所で人命救助(レスキュー)訓練だと言われて連れてこられた。水難事故、土砂災害、火事、etc・・・あらゆる事故や災害を想定して作られているらしい。んで、今日一日で色んなパターンの訓練をやらされて皆、流石にお疲れ気味である。だがおかげでクラス皆の顔と名前、そして個性もわかったしコミュニケーションも取れて有意義な授業だった。そういえば緑谷から聞いた話だとA組は今日、オールマイトが先生で戦闘訓練らしい。羨ましいと思いつつも俺たちも明日くらいには同じことをやるんだろうなぁと考えていると

 

 

 

「液水の個性っていいよなぁ」

 

「水難事故、火事にはチート級の能力だよな」

 

「それな」

 

「さっきなんて水難事故の救助で水面割ってたもんな。モーゼの十戒かよって感じで」

 

 

 円場、鱗、回原、泡瀬、後にB組の常識人男子四天王と呼ばれる4人に話しかけられた。

 

 

 

「いや、でも火事の場合は周りに水とか液体がなかったらアウトなんだよな。あと、火災の原因が天ぷら油とかだった場合、知らないで水かけたら火柱があがることになる。」

 

 

 俺の言葉に「なるほど、確かに」「まずは状況確認が大事か」「じゃあ液体操作で油だけ移動させれば?」 「いや、恐らく液水が視認できてないと無理なんだろう。火災現場でそれは難しいかもしれんぞ」 等々の議論が始まった。

 流石は雄英の試験に受かった猛者たちだ、次々と意見が出てくる。この後、俺も意見を出し合い、5人で火災に限らず、様々な事故の対策についてひとしきり話し合った。

 

 

「今考えつくのはこのくらいか」

 

 

「そうだな」

 

 

 

 意見をまとめ、全員が謎の納得感に包まれていると円場が突然、話題を変えることを言ってきた。

 

 

 

「なぁ、液水! さっき訓練でやった水面割るやつ、もう1回やってよ」

 

「えっ? なんで?」

 

「いいから、いいから」

 

「え~、あれ疲れるんだよ」

 

「あとでジュース奢るから!」

 

「よしきた‼」

 

「安いな、お前」

 

 

 泡瀬にツッコまれながら水難ゾーンに行き、円場のご要望どおり、液体操作で水面を左右に真っ二つに割る。普段見えるはずもない水底の地面が顔をだす。

 

 

「うひょー!! マジ○ガーZのオープニングみたい!!!」

 

 

 ああ、だから見たかったのね。そういえば自己紹介の時、特撮とかレトロなの好きって言ってたな。じゃあマジ○ガーZも守備範囲内か。あっ、ちょっと疲れてきた。もうやめよう。

 

 

「液水サン、液水サン」

 

 

 個性を解除して水面が戻っていくのを見ていると急に後ろから服をついっと引っ張られながら声をかけられた。声の主は頭に2本の角が生えた日系アメリカ人、角取 ポニーだった。

 

 

「私もお願いしたいことアリまーす」

 

 

 俺と円場のやり取りを聞いていたのだろうか。彼女は俺に自分のやりたいことを伝える。すると

 

 

「えっ? 何それ? 超面白そう!! 俺もやりたい‼」

 

 

 円場が予想以上に食いついてきた。

 

 

「お前にはさっきやっただろう、円場」

 

「缶ジュースもう1本追加‼」

 

「さっさと位置につけ、2人とも‼」

 

「大バーゲンセールだな、液水」

 

 

 泡瀬が俺のツッコミ役みたいになってきた。

 

 

 円場とポニーはお互いにある程度離れて対面する。そして2人とも両手首をくっつけて同じポーズを取り、同じ言葉を同じタイミングで言う。

 

 

 

「「か~め~○~め~波ーーーーーっ!!!!!!」」

 

 

 

 角取のやりたいこと、それは某有名漫画のあの技だった。彼女は日本のアニメが好きらしい。当然、俺があの技を出せるわけがないので水難ゾーンの水を使ってエネルギー弾っぽい感じの形にして2人の手から出しているように見せているだけである。2人の中間では水がぶつかり合い、水しぶきが飛び合う。周りで見ている皆は大爆笑だ。

 

 

「スゴイです‼ ワタシ、かめは○波、撃ってます‼」

 

 

 撃ってないぞ、角取。しかしあんなに目をキラキラさせて喜んでくれるとこちらも嬉しいな。おっ、目が合った。

 

 

 

「液水サーン、カモーン、ヘルプミー‼」

 

 

 そんな笑顔でヘルプミー言われても。しかし何用だ? 近付ていくと彼女は俺に耳打ちをする。・・・なるほど、それがやりたいのね。

 

 俺は角取の方の水の威力を下げ、水がぶつかりあう場所を角取寄りにする。そして角取は苦悶の表情を浮かべて両手の構えから片手に変える。対面してる円場は怪訝な顔をするが・・・

 

 

「そ、それは‼」

 

 

 角取の後ろに俺が立ち、両手首を合わせ、最初に2人がしていた同じポーズを取る。そして一気に角取の方の水の威力を上げる。

 

 

 

「セ○編の最後じゃねぇかーー!!ゴボゴボっ!!!」

 

 

 叫ぶと同時に円場は水に飲まれた。俺と角取はハイタッチ。それらを見ていた回原は腹を抱えて笑っている。その様子を見て、流石に悪いことしたかなぁと思っていたら何故か円場はやりきった顔で笑顔だった。

 

 

「え、液水、つ、次はおれの番だ!螺旋○出せねぇか?」

 

 

 腹を抑えてヒーヒー言いながら回原が聞いてくる。これまた某有名漫画の技。ああ、回原は個性が「旋回」だからか。

 

 

「これでいいの?」

 

 

 手の中に水球を作り、中の水を回転させそれっぽく見せて回原の前に突き出す。

 

 

「本当に出来てるじゃねえか!!!アーハッハッ‼」

 

 

 回原が笑いすぎて壊れた。しかしこうなってくるともう止まらなくて

 

 

 

「液水、霊○出せない?」

 

 

 柳が肩を叩いて聞いてくる。振り向くと顔が近いからビックリした・・・あ、わざとか。オカルトとかでベタなのであるもんな。しかしなんでこの技・・・あっ、霊界探偵だからか。まあ普通にそれっぽいの出せますよ。入試でも使ってたし俺。今日から技名を霊○にするか。数発撃ってみせると「ウラメシ~」と言ってきた。それはどういう意味だ?

 

 

 そしてまたもや後ろから服を引っ張られる。

 

 

「ん」

 

 

 何やらポーズを決めた小大が立っていた。あんまり喋らないね君。だからこちらが意味を汲み取ってあげないといけない。

 

 

 

「・・・もしかしてスペ○ウム光線?」

 

 

 うんうんと深く頷く小大。いやそれは難しい。あのたくさんの細かく途切れた線みたいなのを液体で表現するのは・・・そんな期待の目でこっちを見てくるな‼だいたいなんだよそのチョイス。あーもう‼

 

 

「こんな感じでいいか?」

 

 

 ポーズをしてできるだけ薄く作った水の膜を前に飛ばす。すると鼻息を荒くして喜んでくれた。はぁ、期待に答えられてよかった。

 

 

「随分と人気者じゃないか、液水‼」

 

 

 俺の肩に手をかけ、捻くれた笑いを浮かべて話しかけてくるのは物間。どうやら俺の人気ぶりに少し嫉妬しているらしい。

 

 

 

「だけど僕にだって同じことはできるさ」

 

 

 そりゃあそうだろう。さっき俺の肩を触って個性をコピーしたからな。

 物間は水難ゾーンから水を大量に浮かせて自分の手元に持ってくると螺旋○をやろうとするが・・・

 

 

「あっ、バカ‼その操作は初心者にはムズい・・・」

 

 

 

 

 ビッシャーー

 

 

 

 

 物間の手からスプリンクラーのように水が飛び散り、周りにいた全員をずぶ濡れにする。ちなみに俺はとっさに液体操作で自分の周りだけ防いだので無事。

 

 

「「「・・・・・・」」」

 

 

 周りからの無言の圧力を受け、引きつった笑いを浮かべる物間。そもそもこの状況で笑ってられるのがすげぇ。

 

 するとたまたま近くにいて被害を受けた拳藤が近づいてきて

 

 

 シュ‼

 

「ダッ‼」

 

 

 物間におそろしく早い手刀をかます。見逃しちゃったね。

 

 

「はぁ~、まったく・・・乾かさなきゃ」

 

 水びたしの拳藤・・・なんかエロい。はっ‼いかんいかん。急いで乾かしてあげないと。

 

「拳藤、腕伸ばして」

 

「? はい」

 

 伸ばした拳藤の腕を掴む。

 

「ちょっ!!な、何? 液水!?」

 

 赤い顔になりながら凄くびっくりされた。えっ、そんなに腕触られるの嫌だったのか? ちょっとショック。

 

「‼ 服が乾いてる!ありがとう‼」

 

 そう、俺の液体操作で服についた水分を取り出したのだ。直接手に触れられればこういう技も出来る。

 

「他に濡れた奴、俺のところに来い。乾かすから」

 

 そう言うと俺の前に列がなされ、俺はひとりひとり乾かしていく。すると地面に突っ伏したままの物間が話しかけてくる。

 

「ははは、液水、僕も頼むよ」

 

「おまえ、俺の個性をコピーしてるだろう。自分の失敗は自分で拭け」

 

「それは『液体だけに』って意味かな?」

 

 イラッ

 

 霊○を作り、ヤツの肛門目指して発射。

 

 

「ひゃうっ‼」

 

 短い悲鳴をあげて物間は喋らなくなった。

 

「さて、全員乾かしたし授業ももう終わりだから戻るか」

 

 他の皆も「そうだな」と言い、気絶した物間を置いて全員USJを後にした。

 

 思えばこの時の行動が物間の捻くれ具合に拍車をかけてしまったのかもしれないと後々後悔することになるのだがそれはもう少し先のお話。

 



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委員長決めと副委員長決め

 朝、学校に着くと門の前にマスコミがごった返していた。どうやらオールマイトが赴任してきた影響らしい。俺も学校に入ろうとしたら「すみません!雄英生ですよね? インタビューいいですか?」と言われたが「急いでいるので」と軽く流して門をくぐる。教室に着いて前の席の泡瀬と「マスコミ凄かったな」と他愛もない話をしていると本日のHR(ホームルーム)の時間となり、俺たち1-B の担任ブラドキング、愛称ブラド先生が入ってきた。

 

「えー、今日はおまえたちに学級委員を決めてもらう。やりたい奴はいるか?」

 

 

 先生の突然の言葉に皆、一瞬戸惑いを見せるがすぐに複数人が手をあげる。流石はヒーロー志望、皆偉いな。ちなみに俺は挙手していない。学級委員になったら実家の店のサロンがあまり手伝えなさそうだからな。家族は「そんなの気にしないでいい」と言ってくれているが手伝いは1人でも多い方がいいだろう。おっと、立候補者が複数人いるからクラス全員の投票で決めることになったようだ。立候補者以外にも票を入れていいらしい。ふむ・・・このクラスじゃ拳藤が妥当かな?

 

 紙に拳藤の名前を書き、提出。そして結果は・・・

 

「1番票が多かったのは拳藤だ! やってくれるな?」

 

「えっ? 私!?」

 

 どうやら俺以外にも拳藤を推した奴らがいるらしい。本人は驚いているが自然とクラス中におこる拍手が彼女が適任であることを意味している。「まあ、期待には応えたいのでやります!」と照れくさそうに言いながら前に出てきた。

 

 

「早速で悪いんだが拳藤、副委員長も決めなくてはいけないんだ。進行を頼めるか?」

 

 

 副委員長も決めるのか。じゃあもう一回投票をやるのか? 次は誰に入れようかな?

 

 ブラド先生の言葉に投票用紙に書く名前を考えていると拳藤が口を開く。

 

 

「あの、先生。 副委員長は私が決めてもいいですか?」

 

「本人が良ければ構わないぞ」

 

「じゃあ・・・え、液水! やってくれない?」

 

「・・・・は?」

 

 

 頬杖ついてペン回しをしていたら急に自分の名前が挙がって思わず素っ頓狂な声をあげる。クラス中の視線が一瞬にして俺に集まり、そして各々話し始める。

 

 

「液水か!入試で巨大仮想敵から拳藤を救けたって聞いたしな!仲間想いの奴は俺は好きだぜ‼」

 

 やめて鉄哲‼ 思い出すと恥ずかしいから!!

 

「あの巨大仮想敵を倒すくらい強いらしいからな、強い奴なら俺は文句はない」

 

 だからやめろ鎌切。今後のハードルをあげるな! Plus Ultra(更に向こうへ)精神は大事だけれども‼

 

「あたしも賛成かなぁ~」

 

 おい、なんだ取蔭。俺と拳藤を交互に見てからのそのニヤニヤ顔は‼ あと角取と円場‼こっち見て笑いながらかめ○め波のポーズするのやめろ‼ あっ‼ 霊○も螺旋○もスペ○ウム光線のポーズもやめろ!!! 柳、回原、小大!!!

 

 結局周りに流される形で副委員長をやることに決まり、「今日の放課後、A組の委員長達と顔合わせがあるからなー。」と言われてこの日のHRは終わった。

 

 

 

「あー、副委員長かぁ~。俺出来っかなぁ」

 

 

 時刻は昼になり食堂で頼んだラーメンを盆に乗せて運びながら誰に言うわけでもなくつぶやく。そもそもなんで拳藤は俺を指名したんだ? 確かに試験で救けたかもしれないがあの後無様に倒れたんだぞ。やっぱりヒーローたるものもっと計画性を・・・・はっ‼ヤバイ、緑谷みたいにブツブツ言うところだった。

 

 頭をふるふると振るい、飯を食ってから考えようと空いてる席を探していると前を歩く小大が見えた。俺と同じく席を探しているようでキョロキョロと辺りを見渡す。おっ、昼飯も同じラーメンだ。妙な親近感が湧き、なんとなくそのまま見ていたら彼女の踏み出そうとした足がもう片方の足に当たり・・・

 

 

 カシャーン、カランカラン

 

 

 盛大にコケた。幸い周りに人があまり居なかったからそんなに目立っていない。えっ?それよりパンツ見えたかって?・・・ノーコメントで。

 

 

「おい、小大。大丈夫か?」

 

「ん」

 

 即座に駆け寄り、声をかける。短い返事がすぐに返ってきて足を見るが特に怪我はなさそうだ。感情をいまいち読み取りにくい彼女だが特に痛みを我慢してる様子もない。起き上がると軽くスカートを払い、何事も無かったかのように落としたどんぶりを拾いに行く。裏返ったどんぶりを拾ったときに中身が入っていない、それどころか床が汚れていないことに首をかしげる彼女。

 

「ああ、ラーメンならここだ」

 

 俺の顔の横に浮かぶ茶色で透明な球体。その中には麺や煮卵、メンマなどの具が入ってる。そう、彼女が転ぶと思った瞬間に俺の液体操作で浮かしたのだ。その光景に、彼女が目を見開いて驚く。おおっ、初めて小大が驚くところ見た。新鮮。

 

「このままキープしとくから落ちたどんぶりと箸、交換してこいよ」

 

 コクンと頷いて来た道を戻る小大。その姿を見送りながら席探しに戻ろうとしたら

 

「早速、副委員長やってるねぇ。流石は一佳に見込まれた男! このっ、このっ‼」

 

「脇腹を小突くな取蔭。地味に効く。あと副委員長じゃなくても今の行動はしている」

 

「へぇ~」

 

 品定めをするように俺の全身をヘラヘラと笑いながら見てくる取蔭。正直、HRからこいつのヘラヘラが気になっているがそんなに面白いことを俺はやっているのか?

 

 もういっその事、正直に聞いてやろうかと思ったがちょうど小大が新しいどんぶりと箸を持ってきたのでやめた。浮かしていたラーメンを小大のどんぶりに移し、今度こそ席探しに戻る。おっ、窓側の端が空いてる。

 

 盆を置いて席に着き、手を合わせて「いただきまーす」と言って食おうとすると小大が隣に座った。・・・辺りを見回す。他にも席空いているよな? まあ同じクラスのやつが居たほうが心細くなくていいか、と思っていたら

 

 

「ん」

 

 横から箸に摘まれたチャーシューが現れた。言うまでもなく小大が箸の持ち主である。そのまま俺のどんぶりに置こうとするので彼女の腕を掴み制止する。

 

 

「待て、もしかしてさっきの礼のつもりか?」

 

「ん」

 

「いや気にしなくていいから。それにチャーシューといったらラーメンの最大の楽しみだろう?」

 

「ん、んっ‼」

 

「大丈夫だって。気にしないで自分で食え、小大」

 

「んっ!んっ‼んっ!!!」

 

 

 引こうとしない小大、しかし俺も簡単に受け取るわけにはいかない。チャーシューだぞ?メンマくらいならすぐに受け取っていたがチャーシューだぞ?(2回目) 

 

 傍から見たら無駄なやり取りを何回か続けていると

 

 

「・・・液水」

 

 小大が俺の名前を呼んだ。驚きのあまり掴んでいた手を緩めてしまい、彼女はそこを見逃さなかった。

 

 

「んっ!」

 

「あっ‼」

 

 

 素早くチャーシューを俺のどんぶりに移し、やりきった顔をした(ような気がした)。こうなったら素直に受け取るしかない。

 

 

「ありがとう」

 

「ん」

 

「・・・いや待て! 小大、お前普通に話せるだろ!?」

 

「えっ? 唯は喋ろうと思えば普通に喋れるよ」

 

 

 俺の疑問に答えが返ってきたのは当の本人ではなく拳藤からだった。いつの間にか俺の向かい側に座っている。そしてその横には取蔭。って気づいたらテーブル一帯B組女子が座ってる!?

 

「んだよ。ハーレム見せつけやがって~、自慢か?」

 

 後ろでぶどうみたいな頭をした奴が血眼でこっちにガンを飛ばす。流石に居心地が悪くなったので離席しようとするがそれを見越していたかのように小大に制服を掴まれる。

 

 

「ん」

 

「・・・わかったよ。移動しないから離せ」

 

「随分と唯に懐かれたね~()()()()

 

「取蔭ぇ~?」

 

「おー怖い怖い」

 

「えっ、何このやり取り」

 

「いや実はさっきね・・・」

 

 

 拳藤の疑問に答えるように取蔭が先程の小大に対する俺の行動を話し始める。すると女子一同から「おお~」と声があがる。やめろ、面映ゆい。

 

 

「流石、副委員長」

 

「ねっ、希乃子もそう思うでしょ?」」

 

「さっきも言ったけどな、別に副委員長じゃなくてもあの行動はしている」

 

「なんと慈愛に満ち溢れた行動でしょう! マリア様はここにおりました」

 

「俺は男だ、塩崎。それにな、あの行動の結果はベストじゃない」

 

 

 俺の言葉に全員頭に?を浮かべる。

 

 

「あの時のベストはまずは小大を転ばないように支えることだ。だけど俺1人で・・・俺の個性だけじゃそれは難しかった。だからあの時、俺の個性で出来る限りの()()を果たした。委員長、副委員長も同じだと思う。皆が副委員長と持ち上げてくれるのは嬉しいし、クラスの代表、窓口として頑張ってみようと思う。でも俺や拳藤にも苦手な仕事は出てくるはずだ。その時に『コイツならこの()()が俺よりも適任だ。』と思ったら俺は迷わずそいつを巻き込んで仕事を振るからな。それが嫌だって言うなら俺は副委員長降りるぞ」

 

 

 言い終えるとしんと静まり返る間が少しあったがすぐに

 

 

「嫌なわけ無いじゃん」

 

「仕事どんと来い」

 

「助け合いこそ善美」

 

「困ったときはコール・ミー」

 

「ん」

 

「まっ、これでもヒーロー志望だし」

 

 

 小森、柳、塩崎、角取、小大、取蔭から返事があり、拳藤が「みんな・・・」とちょっと感動しかけている。

 

 

 

「いやしかし液水が意外と熱い男だってわかったわ。今の言葉、鉄哲とかにも聞かせに行ってこよう。アイツもしかしたら泣くかもしれないし。ニシシ」

 

 

 そんないい雰囲気だったのに、本日何度目かわからないヘラヘラ取蔭がぶち壊す。それに対して「コラァ‼」と叫ぼうとしたその時、

 

 

 

 

 

 ウゥ~

 

 

 

 

「何? 警報!?」

 

 

『セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんはすみやかに屋外へ避難して下さい』

 

 

 突然の警報、訳のわからんアナウンス、なんだよセキュリティ3って。大パニックになる食堂から多くの生徒たちが一斉に出口へと向かい始める。

 

 

「私達もすぐに避難しよう‼」

 

 

 拳藤が提案するが

 

 

「ゆっくりでいいと思うぜー」

 

「呑気にラーメンすすりながら何言ってんだよ、液水‼」

 

「だってこの警報の原因、多分あれだぜ」

 

 

 窓の外を指差す。

 

 

「あれは・・・マスコミ!?」

 

「多分、朝居た奴らだろ。恐らくそれが校内に侵入したから警報がなったんだろう。だから緊急性は低いと思うぜ」

 

 

 窓際の席だったからすぐに気付けて割と冷静にいられた。拳藤に説明し終え、ゆっくりとスープを飲み干す。

 

 

「ぷはー。避難もいいけど、まずはあそこで倒れている奴ら、起こしに行こうぜ」

 

 

 今度は窓とは反対方向を指差す。そこには人混みにうまく乗れずにみんなの下敷きになった人や気分が悪くなった人達が居た。

 

 

 それを見て全員「わかった!」と言って各々、倒れている人達に向かっていく。俺も席を立ち、向かおうとすると拳藤が声をかけてくる。

 

 

「液水」

 

「ん?」

 

「やっぱりあんたを副委員長に決めてよかった!」

 

 

 そう言って「へへっ」と笑いながら背中をバシンと叩かれた。結構強めの力だったと思うのだが彼女の笑顔に少し見惚れてあまり思い出せないのは俺だけの秘密だ。

 

 

 

 

 ちなみにあの後、大きい声で「大丈ーー夫‼」と言って非常口みたいな格好になっている奴とまさか顔合わせをすることになるとは思わなかった。

 

 



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