Twenty wish (眠気の小五郎)
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プロローグ
僕の名前は鈴木優。高校生だ。
普通に学校に行って友達と遊んだり勉強したりしているフツーの何処にでもいる人間。
そんな僕には趣味の1つとして、ほのぼのとしたゲームをプレイする、というものがある。
ほのぼの系のゲームのみしているのは、いくら架空の存在とはいえ命を奪うゲームはしたくなかったからだ。
けど、やっぱり戦うゲームもやってみたい…でも、ゲームキャラを傷つけたくない……。
そんな時、『Undertale』という誰も死ななくていいRPGを見つけたんだ。
戦闘とほのぼの、両方いいとこ取りできるこのゲームを始めて、かなり引き込まれた。
僕は【yuu】という名前でUndertaleをプレイしていた。
オメガフラウィーのセーブ機能を利用して攻撃してくるのには驚いたし、アズゴア戦では、リアル【決意】を抱いて木の棒で叩いた。
そしてなんやかんやでハッピーエンドにたどり着いた。まぁもちろん最初からやり直そうとしたけど、フラウィーの語りかけで一気にやる気がしぼんだよね。
で、近頃公式日本国版がリリースされるらしいど……プレイする気は無い。
公式版をプレイするってことは、非公式版のみんなを消してしまうということになる。
せっかくみんなと仲良くなって、フリスクが僕の手助け無しに生きられるようになったんだし。フラウィーもフリスクの幸せを奪わないでって頼んできたしね。
しょーがない。
公式版は気になるけど、キャラクターの幸せを取り上げてまでやりたいとは思わないしなぁ。
…………さて、気分切り替えて勉強でもしよっと。
(って、ノート切らしてたの忘れてた。
少しめんどくさいけど買い出しに行かないと…)
僕は家族にノートを買いに行く旨を告げ、家を出た。
……その、数時間後、居眠り運転の車に跳ねられて死んでしまうなんて思いもせずに。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【side out】
鈴木優が死亡した少し後。
とある電脳空間にてUndertaleのキャラクターである【キャラ】【サンズ 】【フラウィー】が大勢集まっていた。
「ようやくこの日が来た」
そのうちの1人であるキャラが、大勢の自分たちに語りかける。
「まもなく、真新しいタイムラインが大量に形成されようとしている。そして、そのタイムライン達は、我々と同じく【player】のせいでぐちゃぐちゃに破壊されて弄ばれてしまうだろう」
全員が神妙な面持ちで頷き、中には過去を思い出したのか、涙を浮かべ『パピルス…』と呟く者もいた。
「だが、そうは行くものか。…新しいタイムラインに【player】達は浮かれ、油断している。……今こそ反撃の狼煙を上げるべきだ!奴らが犯してきた罪の数々を奴らにそのまま与える!このメンバーならそれができるはずだ!」
静かな歓声が電脳空間に響き渡る。
「LV20の私たちとソウルを6つ取り込んだオメガフラウィーたちがそれぞれの世界線に潜り込み【player】達に攻撃。サンズ達はサポートや移動を頼む。余裕があったら攻撃に参加してもいい。………今こそ、積年の恨みを晴らす時だ……皆、健闘を祈る!」
おう、や、うん!など多種多様な返事をしてそれぞれの世界線に移動しようとした、その時だった。
「ちょっと待って!」
1人のフラウィーが自分達を呼び止めたのだ。
その場の皆がそのフラウィーを振り返る。
この空間では全員に等しく平等に発言権があることを認められ、意見をすることは何らおかしく無いのだが……そのフラウィーは少し様子がおかしかった。
…それは何かというと……キャラとサンズがいない、ということである。
そしてもう1つ。
「ボクのところの【player】は何も悪い事なんかしていないんだ!」
この、衝撃発言である。
「…おい、そこのフラウィー。そりゃどういう事だ?」
大勢のサンズの内の1人がフラウィーに話しかける。
フラウィーは自分のところのplayerのことをぽつぽつと消え入るような声で話した。
「ボクのところのplayerは、ゲームヘッタクソで、何回も死んじゃうような弱っちい奴だけど…Nルート一回。TPルート一回でゲームをやめたんだ」
ざわざわ……と喧騒が電脳空間を満たす。
『そんなplayerがいんのか?』
『けど、嘘をついているようには見えないねぇ』
『でも、信じ難たいよ』
「嘘じゃ無い!その証拠に、ボクのところのキャラは成仏したし、サンズだってフリスク達と地上でしあわせに暮らしている!そもそもここにボクのところの2人がいないことが何よりの証拠だ!」
吐き出される思い。しかし、やはり簡単には信じてもらえないらしく、演説をしていたキャラがフラウィーに問いかけた。
「まあ、君がそこまでいうならそうなんだろうけど、ただ飽きただけってことはないかい?」
その問いにフラウィーは冷静に切り替えす。
「それこそないね。だって、本当に飽きたなら、ゲームを起動して、リセットするか悩みに悩み結局しない……を1週間に1回もしないでしょ」
電脳空間のザワつきがさらに広がった。
と、ここで、とあるサンズがフラウィーに当たり前の質問をする。
「お前さんのplayerの事はわかったが……結局お前さんは何を言いたいんだ?」
フラウィーは即座にこう答えた。
「彼を……【yuu】を僕らのタイムラインに引き込みたい」
《はぁ!?》
最早ざわざわ通り越して喧騒である。
「静粛に!皆落ち着いて!……で、そこのフラウィー。それはどういうことかな?」
それを演説キャラがなんとか宥め、フラウィーを問いただす。
「彼の
「協力ね……具体的には?」
フラウィーは緊張をほぐすかのように深呼吸をして、再び口を開いた。
「ボクのところのplayerに、他のplayerのソウルの力を使って救う力を……願いを叶える力を与えて、転生させたい」
【yuu】の運命やいかに……
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ゲームスタート
……身体中が痛い。
筋肉痛とかではないが、全身に電気を流されたかのような痛みだ。…けれど、時間が経つにつれて少しずつ薄れていくような物だから、後遺症とかは残らなそう。
結構派手に車に轢かれたけど、案外生き残れるもんだね。
それに、目がまだ開かないから何かはハッキリとは分からないけど、体の下にクッションが敷かれていたし、相当運が良かったんだなぁ(安堵)
……お、痺れが切れてきた。
手足の感覚も戻ってきたみたい。
で、感覚が戻ったんでクッションになっているものを触ってみる。
「……これは…花、かな?」
だとしたら不可抗力とはいえ下敷きにしまったことに罪悪感を抱く。
(…身体も随分回復したし、さっさと退くことにしよう)
僕は少し勢いをつけて飛び起きた。
そして、固まった筋肉をほぐす体操を軽く行っている時、はたと気づいた。
————なんで、こんなに静かなんだ?
仮にも人が車に轢かれたのに喧騒の一つも聞こえてこないなんて有り得ない。
それに、僕の周りには偶然出くわした友達がいたし、結構仲が良かったから駆け寄って来てくれるのが自然だと思ったんだけど…。
更に言えば、僕が轢かれたのはデパート付近で、車通りが多くエンジン音が聞こえないのは不自然だ。
だけど、目がまだ開かない以上は文字通り手探りで状況を確認せねば。
「取り敢えず、四つん這いになって這っていこう」
幸い僕の格好は汚れても大丈夫な服装だったので、躊躇いもなく地面に手足をついた。
「んー地面はちょっと湿ってるなぁ。となると、花に水でもやった後か。誰かが管理でもしているのかね?」
思考を口に出しながら、所謂ハイハイでよたよた進んだ…が、以外にも終着点は近く、壁にこつん、と軽く頭をぶつけてしまう。
「痛っ…あれ?この壁、もしかして岩?」
仮にコンクリートにぶつかったとしても、こんな大きな凸凹は無いはず。
「冷んやりしてるー。気持ちぃー」
僕はペタペタと壁を触って、ついでに頬をスリスリしてみた。紛う事なき岩の感触で、とても冷たい。季節が夏ということもあって、冷んやりしているのは有り難い。
………けど、謎が解けた訳じゃない。
デパート付近にこんなスポットは無かったし、流石に車にぶつかったくらいの衝撃じゃあぶっ飛んでも数メートル程。
そんなんじゃ、こんな絶好の涼める穴場に入ることなんてできないだろう。
「てことはあれか。転生したら岩場だった件的な。……いや、岩場にいた件、か」
ライトノベルや2次創作に有りがちな設定を実際に目の当たりにして、流石に気分が高揚します。
……けど、死ぬ前にユニークスキルを習得したり、神様に会ったりした覚えはない。
「なら、特に転生特典が要らない平和な世界?…それとも特典はあるけどまだ使える状況にないとか?」
だとしたら、この開かない目に何か秘密があるんだろうか。今現在機能していないの視覚だけだし。
……うーん鉛のように瞼が重い。
何かしらのアクションが必要なんだろうか?
まぁ兎にも角にも、ここから動こう。移動すれば、ここを管理している人に会えるかもしれない。目が見えないから壁をつたっていくしかないけどね。
★
壁伝いに歩いていると、明らかに天然の岩ではない柱を見つけた。一定間隔で縦線が入っていることから柱と判断したけど、ここは人工的に造られた場所なのかな。
管理された花に人工的に造られた柱と思わしき物。
人が見つかる可能性がグン!と上がった!やったね優ちゃん!助けが来るよ!
…なーんてね。こんなんで助けが来るわけが
【!】
「えっ」
*フロギーがこちらに歩いてきた!
「えっ!」
【FIGHT】【ACT】【ITEM】【MERCY】
ふふふふふふフロギー!?って、目が見えるっ!それに戦闘画面!?どーなってんの!?
それに、このコマンド欄!
完っ全にUndertaleじゃないか!
もう一度言おう、どーなってんの?!
と、とにかく【ACT】だ!
*調べる *褒める *脅す
し、調べる!
*フロギー__ATK4 DEF5
*カエルもつらいよ。
……あれっ?
フロギーの調べるって確か、『この敵にとって人生とは難題そのもののようだ』的な文章じゃなかったっけ!?
なんで僕の知っているやつじゃ無いんだ?!
*ケロケロ(人間さんまた落ちてきたケロ?)
「え、またって?」
……ふぅ、少し落ち着こう。そしてフロギーの話をしっかりと聞こう。
*(うん。だってさっき、シマシマの服を着た無表情の人間さんがここを通ったケロからね)
「それって…」
Undertaleの主人公であり、地下世界のモンスターと友達になりまくったビックリ人間。
そして、ゲーム最後にてその名前が明かされる人。
「フリスク…」
Undertaleの主人公がここにいるのは全くもって問題ない。寧ろ、異分子は僕の方だ。
それに、僕はセーブ出来ないだろうし。
Undertaleのセーブファイルは1つしかなく、より
僕のちっぽけな決意でフリスクのケツイを上回れる訳がないし…。
つまり、僕はやり直しができない。正に負けたらそこで
…あれ?そういえばなんでフロギーは攻撃してこないんだろう?
あ、そういえば最初のテキストも『襲いかかって来た!』ではなく『こちらに歩いてきた』だったし。
その辺聞いてみよ…あーでもACTのコマンドに話すってあったっけ?
【ACT】
*調べる *褒める *脅す *話す
あった。いや、増えたのかな?
兎に角、実行してみよう。
*話す
「ええっと…あなたはなんで攻撃してこないんですか?」
*フロギーは少し悲しそうな顔で答えた。
*(人間さんは僕たちの魔法で傷つきやすいのを知らなくてね…。結構な傷を与えてしまったケロ。だから、ここのモンスターはみんな人間さんに魔法を使うのを禁止にしたんだケロ)
「そうなんだ……」
モンスター達が禁止するくらいに酷い傷を負ったのかな……。大丈夫かな、フリスク。
……あ、なら。
【ACT】
*交渉
「ねぇフロギーさん。僕をその人間のところに連れて行ってくれないかな?僕も、同じ人間としてその子の事が心配なんだ」
*フロギーは微笑みながら(?)返答した。
*(わかったケロ!同じ人間さんがいた方があの人間さんも心強いと思うケロし)
フロギーがそう言い終わると同時に、今まであったコマンドが消え、戦闘画面が終わった。
変わっている事があるとすれば、戦闘画面じゃなくなっても目が見えるようになったということかな。
*(それじゃあ案内するケロ!)
フロギーは一つジャンプすると僕の頭の上に飛び乗った。普通のカエルより体格がある分筋力も増しているから、これくらいは楽勝なんだろうね。
「うん、少しの間だけどよろしくね」
さて、少し変則的だけど、ここから僕の【Undertale】が幕を開ける。
(まだまだ先のことだけど、寿司ネキや、もふうさ王にどう対応するのか、悩みどころだなぁ)
僕はそんな事を考えながらRuinsの入り口の門をくぐるのだった……。
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遭遇
僕はフロギーにRuins……いや、遺跡を案内してもらっていた。
僕がゲームのUndertaleをプレイしていた時と内装は変わっていないけど、現実であることによって色々と違った景色が見える。
例えば、ゲーム画面からは影になって見えない所にちっちゃなキノコが生えてたりとかね。
それ以外だと、フロギーとの戦闘時と同じく、壁に書いてある説明文が変わっていたりしていた。
……多分、Undertale公式日本語版と思われる。
ん〜確かに僕は公式日本語版をプレイしてみたかったけど、まさかこんな形で叶うとは夢にも思わなかったなぁ…。
まぁ、後変わったことと言えば、本当にモンスター達が僕に魔法攻撃をしてこないことくらい。
念のために回収しておいた【モンスターあめ】を使う場面も無くスムーズにトリエルさん家の前まで辿り着いた。
あ、そうそう、回収したと言えば【おもちゃのナイフ】もあるか確認してみたけど、既に持ってかれた後みたいだ。
*(ついたケロ。残念だけど、案内できるのはここまで。後は人間さんに任せるケロ)
「うん。ありがとう、フロギーさん。また会う機会があったら、その時はよろしくです」
*(ケロッ)
フロギーとも別れて、僕はトリエルさん家の庭に足を踏み入れた。
「やっぱり、この大きな木は枯れてるね…」
元々なのか、お世話を怠ったのか。…トリエルさんの性格を鑑みるに前者だと推測される。
「何はともあれ、中に入ろう」
まず、トリエルさんに会おう。家主に挨拶もせず家宅捜査なんて失礼すぎるからね。
「お邪魔しまーす!」
僕はトリエルさん家に踏み入った。
★
「……あれ?」
返事がない。
けど、その代わりに聞こえてくる声。
「……やめて…!どうしたの!?返事をしてちょうだい!」
『ああああああああああ!』
明らかに争っている音だ!けど、Undertaleにこんなイベントはなかった筈だし…。
「兎に角、様子を見ないと…!」
僕は音が聞こえる方向……原作におけるフリスクの部屋へと向い、扉を開ける。
「えっ、ドアが勝手に…っきゃぁ!?」
「うわっ!?」
すると、中から結構な勢いで飛び出してきたトリエルさんと衝突して押し倒された体制になってしまう。
(も、モフモフや………ッ!)
トリエルさんの毛を堪能するのも束の間、凄まじい【殺意】を向けられる。僕は咄嗟にトリエルさんを抱きしめて、出口の方までゴロゴロ転がり、体制を整えて問いかけた。
「大丈夫でしたか?!」
「あ、あなた……いえ、今はそんなこと気にしている場合ではありませんね。私は無事だけど、あの子が……」
「あの子?」
トリエルさんは先程までいた場所を指差す。
その場所には、シマシマの服を着て【おもちゃのナイフ】らしきものを振り切った格好のまま止まっている、物凄く見覚えのある
けど、様子がおかしい。
一見普通の人間にしか見えないけれど、何と言うべきか、こう、禍々しいオーラを纏っているようにも感じられる。例えるなら、怨霊のような。
だが、驚いたのはそれだけではない。
「おもちゃで家って斬れるもんだっけ…」
緊急回避を行ったせいで攻撃エフェクトは見えなかったけど、ナイフの軌道上には綺麗な斬撃後が残っており、完全に物理法則を無視していた。
いや僕物理法則詳しくないけどね。
僕がこうやって冷静でいられるのはきっと、驚きが一周回ったからに違いない。
……すると目の前のヤツは顔を俯かせながらもこちらに体の方向を変え、ゆっくりと歩み寄ってきた。
……此処にいても良いことはなさそうだ。
「一旦外に出ましょう!ここじゃ少し狭い!」
「…わかったわ!」
トリエルさんに指示を出しつつも、相手がどんな
……しかし、それがいけなかっのだろう。
ヤツはバッ!と顔を上げて僕と目線を合わせる。
すると世界がモノクロに切り替わり、お馴染みのコマンドとテキストが出現する。
*フリスク?が襲いかかってきた!
「やられた…!」
無理やり戦闘に持ち込まれた……一先ずは僕のターンだけど…。
【MERCY】
*見逃す
選択肢には【逃げる】選択肢は存在しなかった。
(まぁ、これは何となくは予想出来たかな…)
僕はMERCYから離れて、ACTのコマンドに触れる。
【ACT】
*調べる *話す
この二つだけ…。
だけれど、まだ話す余地はあるみたい。
だったら……。
【ACT】
*話す
「ねぇ、君はさ、何で急に襲いかかってきたのかな?」
相手をなるべく刺激しないように、そして、友好的な態度をとって話しかける。
*フリスク?は何も答えなかった。
が、そんな工夫も虚しく僕のターンは終わり、敵のターンに入ってしまう。
もう何回も見てきた画面が目の前に表示されたかと思ったら、追加説明がついていたようだ。
*腕を振った方向にソウルが動く。
僕はその言葉を信じて、試しに右腕を右方向へと振ってみる。すると、僕のソウルは右方向へと移動。どうやら正しかったみたい。
*【FIGHT】*Yuu
……そうこうしている間に敵さんは僕におもちゃのナイフで斬りかかってきて、画面中央で攻撃エフェクトを発生させる。
"ズバァッ!!"
"ビキィッ!"
「えぇ……」
その攻撃はソウルを動かす画面にすらもダメージを与え、ひび割れを起こしていた。…多分、一撃でも食らったらGAME OVERな即死攻撃。
……ターンは再び僕に回ってくる。一時の安全は確保されたけど…正直、震えが止まらない。
*怖い。だが、それでも
テキストの言う通りだ。
逃げられないけど、戦わなかったら死ぬだけ。
必死で避けまくって和解の道を切り開いてみせる!
僕は……僕なりにちっぽけな【ケツイ】を抱いた。
*フリスク?は不気味に微笑んでいる。
……上等だよ。
何で攻撃してくるかわからないけど、絶対【MERCY】してやる!
その為にも、僕は震える手を抑えながらACTコマンドに手を伸ばした————!
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VSフリスク?
【ACT】*調べる
*フリスク?LV20 ATK99 DEF99
*playerのケツイをその身に宿す子供。
*ケツイの持ちようでステータスが上下する。会話が成立するとは思えない。
辛辣だね…。それにしても、レベルオブバイオレンスことLOVEが20もあるってことは、このフリスクは地下世界のモンスターを倒したってことなのかな。
……俄かに信じられない。だって、存在自体がMERCYのような善人のフリスクが、そんな恐っそろしいことをするなんて。
「……………」
【FIGHT】*Yuu
けど、まずはフリスクの攻撃を凌がなきゃ。
【!】
四角い画面の真ん中に【!】が出現。
ソウルを右に動かして攻撃を回避ッ!
"バキィィイッ!!"
僕の今までいた場所にはナイフ攻撃のエフェクトが現れ、画面にヒビをいれる。そこに留まっていたら、僕も同じ運命を辿っていたと思うと、ゾッとした。
【!】
フリスクはそんな僕には御構い無しに、間髪いれず今度は僕のいる右側に【!】が出てきた。今度は左斜め上へとソウルを移動させて再び回避。
【!】
安心したのもつかの間。今度は画面の上半分が【!】表示になっていて、慌てて下へと操作。
【!】が表示された所をナイフが横薙ぎに通っていく。
かなりギリギリだったけど、当たり判定ではなかったみたいで、ノーダメージで切り抜けることができた。
けど画面はバッキバキ。あと1ターンくらいしか持たないだろうね。
……さて、僕のターンだ。
*フリスク?は汗をかいている。
【FIGHT】【ACT】【ITEM】【MERCY】
とりあえず、今持っているアイテムを確認しよう。
何かあれば、この状況を突破する切り札になるかもしれないしね。
【ITEM】
*モンスターあめ *決意
*棒切れ *絆創膏
待て待て待て待て!モンスターあめはさっき拾ったし、棒切れや絆創膏は初期装備だからまだわかるよ?けど、持ち物に決意が混ざってんのは意味わからん。全然わからん!
だってこれゲームだったら、『無くならない全回復アイテム』を常に持ち歩いているってことじゃん。
しかもセーブできるから、難しい戦闘の攻略も、グッと楽になる。
「せめて【ACT】にあったならまだ納得できるんだけどね!」
なぜアイテム欄。
……まあ今考えても答えは出ないだろうし、この決意がどんな効果を及ぼすのか、試そう。
セーブ、出来るかな……?
【ITEM】*決意
*あなたは決意を抱いた。
*HPが全回復した。
*だが、決意が足りずセーブができなかった。
「ダメ…かぁ……」
薄々感づいてたけどね。だってフリスクの決意を上回ることなんて出来っこないし。
*フリスク?は決意を抱いたあなたを見て、苦しそうな表情を浮かべた。
……え?今のメッセージどういう…!
【FIGHT】*Yuu
……おっと、集中集中ッ!
「今度はどんな攻撃を仕掛けてくる?」
画面を食い入るように見つめ、何が起きても対応できるように右腕を構える。
【!】
すると、【!】がど真ん中に円状で現れた。
とりあえず左下にソウルを操作して、【!】から離れる。……僕が離れてから数瞬遅れてその【!】の場所からナイフが飛び出してきた。まるで花を咲かせるかのように。
けど、全部が一気に襲いかかってくる訳じゃなくて一個一個、刃の向く方角にまっすぐ飛び出しているんだ。
北から時計回りで飛び出していくんだけど、1つ出てから次が出るまでほんの少しインターバルがあるみたいで、その間を縫ってソウルを安全地帯へと導いた。
タイミングは測りやすく、割と避けやすい部類の攻撃で良かった……。
*フリスク?の汗の量が増えてきた。
……いやな予感がする。
このままだと、確実に良くない方向へ進む。
そんな確信が僕の中に生まれた。
(今は安全だし、良く考えよう)
【ACT】*考える
まず、メッセージウィンドウからわかる事を纏めてみよう。
*playerのケツイを宿している。
*決意を抱いたら苦しそうな表情を浮かべた。
*汗をかいている。
*ケツイの持ちようでステータスが上下する。
気になるのは大体この4つに分けられるかな。
……んーと、playerのケツイを宿すって書いてあったけれども、今は誰にも操作されてないよね?
寧ろ、この状況だと僕が操られる立場だし。
てことは、僕以外のplayerのケツイを宿っているってことかな?……あれ?そうなると、僕以外の
うーん…。どっちが正しいのだろう?
まぁ、恐らく後者の可能性はあると思う。だって、ラスボス相手にも手を差し伸べたフリスクがモンスター達を手にかけるなんて有り得ないし。
まだ誰かに強制的にやらされた、といった方がしっくりくる。
………あ、でも、もう一つ可能性がある。
*playerのケツイをその身に宿す子供。
最初のACTではこのように紹介されていた。
実は、Undertaleには虐殺ルートなるものが存在する。流石に噂程度しか耳にしなかったけど、地下世界のモンスター全てを倒していく、という残酷なルート内容。
フリスクは偶然……いや、Undertaleは空前の大ヒットを記録したんだから、虐殺ルートを通ったplayerは数多く存在すると思う。
もしかしたら、今、Undertaleにplayerは僕以外いなくて、行き場のなくなったケツイは主人公であるフリスクに集中。そして、そのケツイの持ち主であるplayerの犯した罪まで一緒に宿したため、LOVE20という高ステータスになってしまった、と…。
そして、そんな大人数の悪の決意に当てられたフリスクは気が狂ってしまったんだろう。
……こう考えると、色々辻褄が合うね。
*フリスク?は決意を抱いたあなたを見て、苦しそうな表情を浮かべた。
というウィンドウメッセージも、決意を取り込みすぎたせいでこうなっているのに、目の前で決意を抱かれたら、そりゃあいい気分にはならない。
……あれ?でも、仮にそうだとしたら、『怒りの表情を浮かべた』って表記にならない?
実際には『苦しそうな表情を浮かべた』となっている。これ、他に原因があるんじゃないかな?
僕は一度、ここまで戦ってきて感じたことを振り返ってみる。
……ええっとたしか、
*フリスク?の汗の量が増えてきた。
のメッセージが出てきた時、いやな予感がしたんだよね。僕のこういう時の勘は、大抵当たってしまう。
でも、僕のそれは俗に言う【野生的勘】ではなく、『体験に裏付けされた勘』なんだ。
簡単に言えば、過去に一度経験したことを体が覚えていて、また同じような事態に陥ったとき、自然と嫌な予感として現れるってこと。
つまり、今、この勘が働きかけたって事は、Undertaleのゲームに何か同じようなキャラがいたはずだ!
誰だ…?誰だっけか!?
…あぁっもう!なんで思い出せないかなぁ!
【FIGHT】*Yuu
「あっ!時間切れ!?良いところだったのに!」
僕は思考を一旦切り替えて、フリスクの攻撃に備えたのだった………。
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VSフリスク?『2』
私生活が忙しいのとゲームにハマってしまい、執筆する時間がなかなか取れずにいて、今後も遅れてしまう可能性があり、読んでいただける皆さまには大変ご迷惑をおかけしますが、それでも読んでくださると言う優しい方ら、どうぞ、お楽しみください。
【FIGHT】*Yuu
ボロボロになった画面が表示される。
それと同時にフリスクの攻撃が始まった。
【!】
「ど真ん中だ!」
いつもの攻撃マークは画面の真ん中を記している。
【!】 【?】
!?
なんかそれに少し遅れてこのマークが出てきた!
【?】マークなんて初めて見たよ!?
【!】は普通に攻撃だろうから今回はソウルを右へと移動させ、攻撃を待とう。
【ザンッ!】
【ザンッ!】
「わっ!?」
……も、もう持たないとは思ったけどまさか真っ二つに割れて、僕のソウルがないところ…先程【!】と記されていた画面を叩き割るとは思わなかったよ…!
【?】マークは安全地帯ってことなのかな…。
【!】のマークがでた場所のナイフエフェクトが赤色だったことを考えるに、ケツイの乗った即死攻撃だったのかもしれない。
【!】
【!】
【?】
嘘ッ!まだ終わってないの!?
と、とにかく下だ!下に逃げないと!
【ザンッ!】
【ザンッ!】
【ザンッ!】
HP:17
「いっ!?」
安全なところに逃げたはずなのになんでダメージが!?……もしかして【?】マークは安全じゃなくてただ弱い攻撃が来るか攻撃が来ないかランダムってことなのか!
*どうする?
【FIGHT】【ACT】【ITEM】【MERCY】
……僕のターンだけど…本当にこれどうしよう。
戦闘画面は8分の1になって避けにくくなっているし、即死攻撃は怖い。
そうでなくてもランダムでダメージを受ける。
回復は嫌な予感しかしない決意とモンスターあめが1つ。
そして、覚悟はしていたけど、ダメージを受けると本体の僕にも傷ができる。
現に背中に大きな切り傷の感触があるし、ジクジクするような痛みが発生している。
だがら体力が0になると本当に死ぬ。
しかもケツイは向こうのが上だからロードも不可。
僕はフリスクじゃないから
*そんなのお断りだ。
なんて出来ないし…。
………あぁ!もう!
ここで悩んででも絶対に謎は解けないっぽいし、とりあえず【ACT】に変化がないか確認しないと!
【ACT】
*調べる *話す
*口説く *煽る
待って。
本当に待って。
この危機的状況でなんで口説くがでてくるのさ。
そりゃあ…まぁUndertaleって半ば口説きゲーみたいなところは一部あったけども。
話も通じない状態で口説くは本当に意味がないと思う。
第一、自分を操っていた奴に口説かれても絶対に断られるでしょ。最悪殴られて死ぬよそれ。
でもUndertaleだしなぁ……不思議なことが起こっても何らおかしくない気もする。
これがただのゲームだったら迷いなく選んだけども、流石に命かかってる今はやめておこう。
そうなると、残る選択肢は
【ACT】
*調べる *話す
*煽る
の三つ。
……正直に言って、あのランダム攻撃が始まって、更に戦闘画面が小さくなった今、次のターンでほぼHP使い切ってしまう未来が見えてる。
慣れないと、とことん下手くそになるからね、僕。
だがら、最低でもこのターンで確実に欲しい情報を集めて生き残り、次のターンの行動までに推理する必要があるんだけど…。
「僕がプレイしてきたのはNルートTPルートと呼ばれるものだったよね…」
そして
*フリスク?の汗の量が増えてきた。
に嫌な予感を覚えて思い出そうとしてフリスクの攻撃が始まった。で、僕がプレイしたルートの中にヒントがあるのはわかっているんだけど…。
……『汗』というキーワードに当てはまるキャラクターなんていたっけ?
いるとしたら戦闘がなかったショップの店員さんとか、町の住民とか…グリルビーの炎でみんな汗をかいてそうだけど関係なさそうだしこれは考えなくていいかな。
主要メンバーだったら…トリエルさんともふうさ王はそもそも毛に汗が吸収されそうだし、アンダインは運動とかその辺の理由でよくかいてそう。
ナプスタは汗ってよりは涙出してたし、
メタトンは機械だがら汗の代わりにオイルとか漏れてそう(*アイドルになんてことを!)
フラウィーと骨兄弟に至っては骨と花だから汗かかないし…あ、でもモンスターだからそういうのもあるのかな?
アルフィスとか焦った時に結構汗書いてたイメージあるなぁ…。
ん?アルフィス?
嫌な予感?
………………………………………あっ!
「あの研究所のモンスター!!」
*ピクッ、と反応した……ような?
ハッキリとはしないけど反応した時点で何らかの関わりもしくは共通点アリってことだよね!
って、ちょっと待って?
てことは、嫌な予感はそこにあるってことだから…つまり、
あのモンスターたちと同じような状況に陥っている、ということ?
「うそ…」
たしか、死期がちかくなったモンスター達に人間のケツイの力を注入したら合体してああなった。みたいな内容だったはず。
そして、個人的な解釈になるけど、フリスクは人格が形成されるまで一番最初に落ちてきた人間のソウルで動いていて、playerによって育成されていく。
その物語がUndertale。
フリスクにとっての途中の物語。
それは中途半端だったり平和主義だったり残虐無慈悲だったりと様々な道があるけど…。
もし、そのソウルやケツイが人間の身に余るほどの量だとしたら?
ここは現実だけど、
Undertaleの要素もたっぷりある。
もしかしたら、人間でも強大すぎるケツイを持つと…溶けてしまうのかもしれない。
僕が感じた嫌な予感は多分そこだ。
これって、かなりまずい事態だよね?
フリスクはなんで地下に来たのかは明かされてないけど、あれだけ高いところから落ちたなら致命傷もいいところのはず。
でも、最初の人間のソウルと、各playerのケツイによって動いているこの状況。
研究所で起きていた事件と共通点が多いところも事態を悪くする。
【FIGHT】【MERCY】
【ITEM】
*モンスターあめ *けつい
*棒切れ *包帯
【ACT】
*調べる *話す
*口説く *煽る
…僕はこの中でどれを、選ぶべきだろうか……。
次回もいつになるか未定
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*あなたは…
ニンゲン同士の激しい戦いを、
トリエルは唖然として眺めていた。
家のあちこちはナイフで切り裂かれ、小さな子供が投げたナイフは全てHOMEの天井や床、壁に突き刺さっていた。
小さな子供の方は時折苦しそうな表情を見せるも、基本的には不気味に微笑んでいる。
まるで戦闘を、いや。
敵を追い詰めることを楽しんでいるようだ。
それに対峙する青年。
彼の顔には恐怖の感情が見て取れる。
明らかに目の前の殺人マシーンを恐れている。
それでも青年は立ち向かう。
迫り来るナイフをギリギリで避け、突破口がないかを『
必死にもがいている。狭くなった行動範囲を棒切れと包帯で補強し、壊されたらすぐに修繕し『
被弾して泣きそうになりながら飴を齧り、迫り来るナイフを【FIGHT】して叩き落とす。
小さな子供は黒く染まりかけている赤いソウル。
青年は少し薄い色をした赤いソウル。
二つの赤は決して交差しない。けれども強烈なぶつかり合いを見せていた。モンスターのソウルがひび割れてしまいそうな余波。
これがニンゲン同士の争い。
こっそり覗いていたフロギーなどのモンスターたちは恐怖の感情を抱き、その場から逃走している。
けれどもトリエルは別の思いを抱き始めていた。
それは、『子供達が争うなんてとんでもない!』というもの。
彼女は元女王であるが、その前に母親だったのだ。
故に、彼女は動き出す。
膠着していた戦いに、変化が訪れる。
★
*逃げた方がいいかもしれない
*今のあなたでは勝てない
【FIGHT】【ACT】【ITEM】【MERCY】
HP:12/20
……あ"ぁ…痛ったいなぁ…もう。
飴で体力は回復しても痛みは引かないのね…。
取り敢えずITEMから棒切れと包帯を取り出して戦闘画面は元に戻った。脆いから直ぐに壊れちゃうけど。
突破口がないかACTで調べたけれど、わかったのは次に攻撃してくるパターンのみ。
それはそれで有り難い。考える時間は稼げるのだし。それでもこのままじゃジリ貧だ。情けないことに僕はまだフリスクの攻撃を完全に避け切ることはできない。
だからこのまま続ければこっちの負け。
こっちのターンを継続しようにも制限時間があるみたいだし…放っておくとフリスクの攻撃が始まってGame Overだ…。
詰み。1人じゃ無理。諦め。死
それぞれの単語が頭の中を駆け抜ける。
……まだだ。
僕の体力は残ってるし、攻撃にも慣れてきた。
絶対に攻略してみせる…!
【ACT】
*調べる
❤️*フリスク? *トリエル
…へっ?
トリエルさん?
急に現れたトリエルさんの文字。
そういえば外に行こうと指示を出してから音沙汰もなかったな…戻ってきたってこと?
あ、画面に出てきた。
「*まったく。いけませんよ?
たたかいごっこも程々にしないと
大怪我をしますからね」
…いや、まあ、それはそぅ…ですけどね?
ごっこ遊びじゃないんですよこれ。
「*嘘はいけないわ。
…どうやら手を先に出したのはあなたね?おもちゃとは言っても振り回すのは危ないでしょう」
フリスクの方を見て言ってる…?
「*私はこの子とお話しをしていますから、あなたは地下に行ってきなさい。ジョーク好きのモンスターが怪我を診てくれますからね」
トリエルさんが僕にそう話しかけた瞬間、ACTの選択肢に変化が起きる。
「…!」
僕は迷わずそのコマンドをタップした。
【ACT】
*調べる *話す
*口説く *煽る
❤️*助けを呼ぶ
*あなたは一旦逃げ出した…。
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