崩壊3rd Sinister's sin (アーヴァレスト)
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設定集

主人公編


藍澤カズマ

 

本作主人公、とある世界で死亡したのち謎の空間で蘇生、自らの意思で崩壊3rdの世界へ転移(転生)した

その際に自力で特典二つを獲得、一つは贈与された

 

様々な経験をして、それをこの世界に生きる人間達に行かせる教訓として教える事を喜びに感じる青年

その過去は血塗られた歴史ともいえるが、本人はそれを笑いながら過ごせる

その人生は常人なら命を落としてもおかしくない体験を何度もしている程の非常に危ういバランスで成り立っており、本人が軽くこなしているように見えても、実はどれも綱渡りな技術、または運が要求されるものばかりである

それを自分自身理解したうえで笑いながら過ごせる自分に違和感と呆れを感じながら、青年は今日も誰かのための戦争に身を投じる。これまでがそうだったように、たぶんこれからも

 

 

戦闘能力はチートのそれ、本人曰く頭おかしいレベルでの鍛錬で身に着けたとのこと

実際に戦闘では一閃だけで崩壊獣を両断したり、反射射撃で頭を撃ち抜くなどの芸当を披露。しかもその上で注意喚起までするほどの余裕を見せた

とどめにその戦闘は本気ですらない

 

 

生年月日 1994/05/02(24歳)

身長 178.5㎝

体重 73.4㎏

 

 

転生特典

黄金光輝・絶滅剣

形自体は日本刀、反りはあまり深くない、剣としての重さも普通

後述する固有能力"天霆の轟く地平に、闇はなく(G a m m a・r a y K e r a u n o s)"の発動媒体である黄金の剣

闇の中でさえも目立つ輝きを放つ高貴なる剣

その切断力は固有能力を使用してない状態でもすさまじく、核シェルターの装甲を一方的に斬るほど

ただし、それ以外には固有能力を安定的に使うための媒体に過ぎないほど凡庸な剣である

 

 

白銀の銃

ベースはM1911、コルト・ガバメントの改良版、M45A1 CQBP

フレームには新たにピカティニー・レールを搭載しており、光学機器(フラッシュライト)の搭載が可能。グリップは新素材でできており、照準器はノバック3ドットナイトサイト

実用拳銃としては最も信頼されている銃の改良版であり、主人公お気に入りの一品

給弾数が無限である、その理由はこの銃の弾丸は主人公の保有するエネルギーを燃料として空気中の金属原子から生成されるため。ただし、空気中からの生成で足りない場合は崩壊している建造物に触れるだけでも金属の回収が可能

固有能力を付与することにより絶対貫通の弾丸を放てるチート武器となる、それ以外はそこら辺の銃と変わらないらしい

 

 

戦闘服

唯一の贈与品

その効果は着用中の即死ダメージからの超速回復

服の色は黒色、アクセントとして装飾品に金と銀が用いられているほか、体の動きをアシストする機能がある

吸音構造ソールによる足音の静粛化に加え、高強度アラミド繊維によるダメージへの高い抗堪性を実現している

耐熱、耐水、耐衝撃に加え、常に良好な体温を保持する全天候型のサバイバル潜入用戦闘服

暗視ゴーグルによる熱源感知から身を守ることも可能

バンダナもセットで一式である、ちなみにバンダナの方には何故か無限の文字刺繍入り

 

 

固有能力

天霆の轟く地平に、闇はなく(G a m m a・r a y K e r a u n o s)

核分裂・放射能光発生能力、疑似再現された放射性分裂光(ガンマレイ)

この光に僅かでも触れれば激痛と共に触れた部分から細胞が破壊され壊死する

さらに集束性に一点特化した性質によって攻撃一つ一つがあらゆる防御を貫徹し、光が掠っただけでもそこから放射能の毒光が体内に浸透して激痛が襲い続ける。

むろん、まともに受ければ待つのは死である。

光熱はただ刀身に付与されるだけでなく、剣撃に合わせて刀身から放出することもできる

超高熱+放射能毒を纏った斬撃が頭のおかしいレベルの技量で繰り出されるだけでも悪夢なのに、加えて万象絶滅のガンマレイビームが亜光速で襲ってくる。ナニコレ怖い

しかし、絶大な火力を持つ反面、欠点としてこの固有能力は負荷が非常に大きいため、発動の度に凄まじい激痛が体を駆け巡っている(骨がイカれたり、内臓が潰れたり)のだが、それを気合と根性で耐えている

決してそこに別の固有能力を使っている訳でも、何らかの超存在からの補正や加護を受けている訳ではない

理屈もクソもない単なる根性論と鍛えた肉体だけで欠点を無理矢理克服し無双の戦闘力を発揮している状態である

 



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Beyond the world

死と選択と出会い


「死んだのか、俺は・・・」

 

暗闇の中でそう話すのは、一人の青年だった

 

「悪くない・・・最後だったな」

 

薄く笑いながら、青年はそう呟いた

 

「少し歌うか」

 

そう言って歌い始める

 

Words that kill, would you speak them to me (その言葉で殺せ。語りかけてみろ)

 

その歌は、生前の彼が好んで歌っていたと思われるほど美しい

 

With your breath so still, it makes me believe(まだ乱れぬ息を、信じさせてくれ)

 

目を閉じ、静かに歌う姿は哀愁さえ感じる

 

In the Father's sins(父よその罪に)・・・Let me suffer now and never die,(その苦しみを私に。死ぬことはない)I'm alive(私はここにいる)

 

歌い終わり静かに目を開ける、すると微かだが何かが聞こえる

 

「ich liebe dich・・・ich liebe dich・・・」

 

耳をすませば少女の声が響く、悲しく辛そうな声が

 

「泣いている?」

 

そう、泣いている声で・・・青年の胡乱(うろん)な意識が、覚醒していく

 

「泣いているなら、泣き止ませないとな」

「では、どうするのかしら?」

「決まっている、俺にできることをするだけだ」

 

横にいた謎の存在、それにすら関心を示さず声の方角を見ていた

 

 

「俺はそれくらいしか能がないからな、誰かの為の何かしかできない」

 

かつてそのために命を燃やし、そしてこの場にいる青年は過去を思い出すように目を閉じ、そして再び開いた

 

「行かせてくれ、俺を、この声の子のいる世界へ」

「過去より悲惨な世界です、それでも、よろしいのですね?」

「あぁ、構わない、俺の存在理由は・・・」

 

光に包まれながら、青年は告げる

 

「誰のために在り続けること、それが俺の存在理由だ!!」 

 

そう、何故ならば

 

「始まりが憧れでも、嘘であっても、どれだけ無様であろうとも!!たどりつこうと足掻く間に生まれる意味は、決して嘘ではないのだから!!」

 

それが本音、彼の信念・・・生涯抱え続け、そして至った答え

青年にとって唯一の宝物だ

 

「そうですか・・・分かりました」

 

微笑んだその声の主は、次に言葉をつげる

 

「貴方に特典を与えましょう」

「いや、必要ない・・・すでにある」

 

その手に握っているのは、剣と銃

剣は金に煌めき、銃は銀に煌めいていた

 

「運命を変える為ならこの二つで十分だ、それに俺の戦闘スタイルに合ってる」

「そうですか・・・では私からのプレゼントです」

 

渡されたのは、黒い服だった

 

「その服の効果は、致死ダメージからの超速回復です」

「即座に治ると?」

「えぇ、着ている限りですが」

「戦闘前に着るよ」

 

服に袖を通し、確認して青年は告げた

 

「さぁ、行こうか・・・新たな世界へ!!」

 

目の前の扉を両手で押し開ける

この瞬間、青年は世界を超えた




歌詞が分かったやつ、さてはMGSファンだな?


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初戦

初戦闘であり、出会いの一面


「ここが新たな世界か・・・」

 

そこは少しだけ退廃的だった、居るのは廃墟のようだ

 

「ふむ、環境は理解した」

 

即座に環境を理解し、そして後ろへ振り向く

 

「あれが新たな敵か」

 

そこで破壊行為をしている存在・・・それを見ながら告げて

 

「試運転だ、行かせてもらおう」

 

刀を抜き、青年は駆け出した

そして気が付いて振り向いてきた敵をそのままの勢いで一閃する

両手に握る剣は、鋭い切れ味で敵を両断した

 

「鈍い、遅すぎる・・・俺の敵ではないな」

 

ただの一撃、それで相手は両断されていた

 

「ふむ、行けそうだ」

 

そして今度は振り向くこともせずに背後へ発砲する

 

「おいおい、手加減してんだぞ」

 

呆れ果てながらも手は緩めない、油断なく敵を殺す

 

「あー!!私の取り分がぁ!?」

「・・・?」

「でも、あの男の人・・・すごい戦い方です」

「私もそう思いますが・・・」

「あー、そこの三人組?会話の内容もろ聞こえなんだが」

 

そう言って振り向きざまに三人の少女の斜め後方上空に向かって剣戟を放つ

剣先から溢れた爆光に敵は灰燼に帰した

 

「あぁぁ!?」

「注意散漫だねぇ、しっかりしないと不意のケガをしちゃうぞ?」

 

そう言って剣をしまい、今度は銃を構える

 

「さて、ここからはどうしようかね」

 

そう言ってから三人を見る、それぞれの戦い方を見て・・・青年は告げた

 

「まだまだ、だな・・・原石としてはいいほうか」

「どういう意味ですか?」

「三人とも戦い方の基礎はいい、だがあくまで基礎だけの話であって、そこから先が粗削りだという意味さ」

「貴方なら、それをさらに磨けると?」

 

ウインクしながら答える

 

「さて、それはどうかな?」

「・・・」

「それに、銃はただ撃つのが機能というわけではないからね」

 

その瞬間にはなった一撃は、二本の柱で反射し双銃の少女の死角から来ていたであろう敵を正確に撃ち抜いた

 

「背後にも気を遣えよー!!敵はわんさかいるぞー!!」

「あ、ありがとー!!」

「さぁて、もう一働きしますかぁ・・・」

 

今度は銃もしまい、素手のみ

その状態でありながら、余裕の笑みを浮かべて

 

「まずは一匹目ッ!!」

 

深く踏み込んで敵の体を貫いた、その一撃は風を生み出すほど

 

「うそぉ!?」

「徒手空拳でもここまでの強さなんて・・・」

「ほらほら手を緩めるなよー!!スコアで俺に負けたら恥ずかしいぞー!!」

 

三人が慌てだす、それを見て

 

「さぁて、俺も本気で行くか」

 

先ほどは180°違う声音、そして真剣な目で敵を見た

 

「殲滅してやる、覚悟しろ」

 

その瞬間、姿が消えたと誤認するほどの速さの戦闘が開始された

いや、戦闘ではないだろう・・・これはもはや虐殺だ




これはひどい


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自己紹介

さて、そろそろ主人公の名前くらいは・・・


「ふう・・・勝ってしまった」

「そんなぁ・・・」

「認めがたいですが、実力でしょう・・・私達で纏めてかかっても、互角に持ち込むのですら怪しいですね」

「あぁ、無理だろ・・・まだ最大出力ではないからね」

 

三人が凍った、そして

 

「あれで・・・?」

「全力じゃない?」

「そんなの嘘だぁ!?」

 

三者三葉はこのことか、と思いながら青年は告げる

 

「剣戟は出力50%くらいだし、銃にしても55%、打撃は専用の武装がないから30%まで落ちてる、剣は最大出力使うと融解してしまうからどうしても出せないんだわ、銃にしても同じかな、打撃に関しては言わずもがな、下手するととんでもないことになる」

「とんでもないことって何ー?」

「被曝する、俺のは放射能と同系の能力なんでね」

 

そう言って剣を取り、青年は笑う

 

「天霆の轟く地平に、闇はなく、それが俺の能力だ。分類は核分裂・放射能光発生能力、膨大な光熱を刀身に纏わせた斬撃とその光熱の放出により敵を倒すんだ、応用で銃弾に纏わせたりしてるけどね。まぁ、亜光速にまで達する爆光を受けれたら、無事で済むなど絶対に不可能だし。進行方向にあるものは何一つとして残らないよ」

 

事実、剣戟で切られた敵は一切の抵抗を出来ずに倒れた

普通なら回避されるであろう攻撃が、予想を大きく上回る速度で放たれる

その予測を上回る斬撃と銃撃に敵は対応できずに倒れているのだ

 

「あぁ、ところで俺の行く場所がないわけだが?」

「あぁ・・・」

「そうですね・・・」

「そして君達にとっていい刺激になる浮浪者がいる、そこで相談だ。君達、俺を雇う気はあるかな?」

 

三人が再び凍った、数秒して電話を始める

そして

 

「学園長が、面接したいって」

「おう、了解だ、面接書類はいるかな?」

「簡単なの用意してくれますか?」

「分かった、ちょっとコンビニよるわ」

 

歩きながら話をして、コンビニに途中より、面接書類を買いながら青年は告げた

 

「あぁ、戸籍もねぇや」

「それはおそらく学園長がどうにかしてくれるかと・・・」

「至れり尽くせりだねぇ」

「えぇ、そう思います」

 

そして到着するのは

 

「聖フレイヤ学園か、そこそこの面積だが」

 

足を何回かトントンと地面をつつくようにして何かを確認して、青年は告げる

 

「地下に何か隠してるな?これは腹の探り合いが待ってそうだ」

「・・・」

 

さて、楽しい話し合いかなー?と青年は笑う

 

その先にいるのが、意外な印象の人物とは知らずに

 

「まさか、ちびっ子が学園長とはな・・・」

「何よ、文句でもある?」

「いいや、ないさ」

 

面接を受けながら、青年はそう言い、返された言葉におどけながら返答した

 

「で、藍澤カズマさん?」

「あぁ、住所なければ戸籍もねぇ」

「めちゃくちゃ怪しいですって自分で言ってくれるわね」

「怪しいからな、それがどうした?」

 

そう言って、青年・・・藍澤カズマは出されていた紅茶に手を伸ばす

 

「ダージリンか・・・なかなかいいもの使ってんな」

「一口でわかるの!?」

「当たり前だ、俺よりもすごい奴は匂いだけでわかる」

 

そしてもう一口飲み、さらに告げる

 

「セカンドフラッシュだな、淹れ方もあるだろうが、当たりだろう?」

「えぇ、驚きだわ」

 

そういうと、別の机にある容器を見る

 

「アレで入れたのか?」

「えぇ、そうよ」

「それじゃ、俺が次を作ろう」

 

そう言って今度は自分で作り出す、全員分を

そして数分後、完成したモノを全員に配った

 

「飲んでみてくれ、変化があるはずだ」

 

全員が飲んで・・・驚く

 

「味が違う!!」

「理由を説明しよう」

 

そう言うと、茶葉の入った缶を取り出しテーブルに置く

 

「校長のは恐らく粉末状の茶葉での時間で入れているものだ、たいしてこちらにあるのは茶葉の形のあるもの、そうなると時間が異なる。粉末状のものであれば2分以内、形の残っているこちらであれば3~5分がいい。今回は4分ほどで抽出した」

「時間を少し変えただけ?」

「あぁ、それ以外は校長と変わらない方法だ」

 

そう言って自分も飲む

 

「うむ、うまくいったな」

 

そう言って今度は一気に飲み干し、校長に向き合う

 

「さて、俺を採用してくれるかな?」

「採用よ、艦長として。あと、学園としての体裁もあるわ、戦闘記録から見て体育教師でいいかしら?」

「あぁ、望むところだ。何なら家庭科の教師もできるぞ?」

「それに関しては後日お願いするかもしれないわね」

 

そうと決まれば動きは速い

 

「では俺は外の街に買い物に出かけようかね、教師として恥ずかしくないカッコくらいはしとかないと」

「資金はあるのかしら?」

「チンピラから奪う」

「うわぁ・・・」

 

そう言って外の街に出て数時間後、全くの無傷で帰ってきた・・・大量の荷物と共に

 

「ふいー、なかなかいい金だぜ」

「こんなに大量に買ってきたんですか?」

「おう、なかなかいい金持ってたチンピラと遭遇してな」

「そういえば自己紹介がまだでしたね、私は・・・」

 

そういうと、藍澤カズマは先にこたえていた

 

「フカ、だろう?校長からメールでリストを送ってもらっている」

「あら、不要でしたか?」

「いいや、でもしてくれるのは嬉しいね」

「そうですか・・・ではあの3人も?」

「あぁ、元気そうにはしゃいでいるのがキアナで、それを呆れながら見ている小さいのがブローニャ、でもって付き合わされてるのが芽衣だろう?」

「えぇ、その通りです」

 

ウインクしながら荷物を持ち直し、藍澤カズマは話す

 

「記憶力は良くてな、一度覚えたら大体は間違えないんだ。時たまポカやらかすけどな」

「え・・・?」

「人間だからな、当然さ。人間に完全はない、あるのは不完全だよ」

 

そう言って笑い、藍澤カズマは自分に与えられた部屋へと入る

 

「完璧な人がいないのは、分かります・・・でも、その言葉に別の意味を感じるのですが?」

「君は勘がいいな、俺がその経験者なんだよ」

 

そう言って、藍澤カズマはフカの頭をなでる

 

「ここから先はもう少し仲良くなってからだぜ?」

「その前のセクハラで訴えても?」

「おっと、それは困るな」

 

手を放し、フカが退室したのを見て藍澤カズマは呟く

 

「何か裏のありそうな子だねぇ・・・」

 

これからが楽しくなりそうだと思いながら、その日を終えた




主人公の正体は?


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授業とその後

黒い事している主人公ェ


「あの人が新しい先生なの!?」

「えぇそうですよ、キアナ」

「まさか体育の教師とは・・・」

 

体育館でそう話す三人に呆れながら、藍澤カズマは告げた

 

「はいはーい、授業始めるぞー!!」

「はーい!!」

 

うむ、返事はいいなと思いながら、彼はさらに続ける

 

「では早速、やることを説明しようか」

「そういえば測定器具があるけどなんで?」

「基礎体力を数値化するためだ、それを基に今後の方針を定める」

「それがこの授業の目的ですか?」

「あぁ、その通りだよ」

 

そう言って自分も動きやすい服装へと変える

 

「俺も行おう」

「負けないんだから!!」

「負けません!!」

「気概はいいが、無茶するなよ?」

 

そして始まる測定、その終わり頃には・・・

 

「何なの、この人・・・」

「お、追いつけない・・・」

「ふむ、いい汗かいたな」

 

教師を除く全員が倒れていた

 

「体力の配分がまだまだなぁ諸君?これが力加減さ」

「・・・」

 

そして書類を作り、配る

 

「評価までしてるし・・・」

「今後の課題まで・・・」

「参考になります」

「ありがとうございます」

 

そして自分のも見る

 

「俺もそろそろ歳かねぇ・・・少し下がってきたかなぁ」

 

そして、彼は告げる

 

「さて、本日の俺の授業は終わりだ。ここである言葉を君たちに送ろう」

「・・・?」

「心技体、この中で他人から教わることが出来るのは技術だけだ。だが技術そのものはどうでもいい、大切なのは"こころ"だ。心と体は対を成す同じモノ。精神を教えることは出来ない、自分で習得するしかない」

「どういういみですか?」

「秘密だ。だが、この言葉の意味が分かった時には、君達は今以上に強くなっているはずだと俺は信じてる」

 

そう言ってから、藍澤カズマは授業の終わりを告げる

 

「あぁ、言い忘れていた」

「・・・?」

「明日から、艦長としての仕事もあるからよろしく」

 

そして職員室に戻る途中に、呼び止められる

 

「ちょっといいかしら?」

「あぁ、かまわないが?」

 

そう言って振り向く、そこには赤い髪の女性がいた

 

「無量塔姫子さん」

「あら、今日初めて会うのだけど?」

「事前に教えられてたからな」

 

そう言ってタバコを取り出す

 

「禁煙のはずよ?」

「知らねぇな」

 

そう言って火をつけながら、窓を開けた

 

「で、話があるんだろう?」

「えぇ、単刀直入に質問するわ、あなた何者?」

「負け犬だよ、誰かの望んだ英雄になれなかった。負け犬さ」

 

そう言って自嘲するように笑い、続ける

 

「人は俺を英雄と呼ぶ事もある、だが俺は英雄じゃない。英雄であったこともない、ただの人間だ。そう・・・英雄じゃない、これまでも、これからも、なるつもりもない」

「どうして、否定するのかしら?」

「自分にとって大切な存在さえも守れなかったからだよ。それが英雄だなんてバカバカしいにも程があると思わないか?」

 

そう言って、タバコをふかして話を続ける

 

「それに加えて俺は臆病者だ。そんな人間が、人間という種の終末を、背負う事なんか出来ないさ」

「それじゃあ、あなたの戦う意味は何?」

「それでも、諦めたくないから。差し伸べられた手を掴み、そして離したくないから」

 

そうして自分の手を見て、掴むように握る

 

「かつて離してしまった手がある、その最期に血と涙を流しながら自分の無力に嘆き泣いたことも・・・だからこそ俺は戦うんだ、もう二度と、同じ思いしたくないから」

「だから、教えるときも、相手に考えさせる教え方?」

「そう、重要なのは意思だから。状況で引かず、責務で引かず、感情で引かない。例え理由や原因があったとしても、最後は自らの意思で引くこと。それが俺の本当に教えたい事さ」

 

そういうとタバコを消し、背を伸ばす

 

「少々おしゃべりが過ぎたかな?」

「いいえ、あなたの事が大体わかったわ・・・これからよろしく」

「あぁ、よろしく頼む」

 

そうして二人は職員室へ向かう

 

「さて、お仕事しますか」

 

自分に割り当てられた席でパソコンを立ち上げながら、藍澤カズマは仕事・・・書類作成を始める

その速さに、周りの教師達は・・・

 

「新人ですよね?」

「早くない?」

「パソコンの方が追い付いてないような・・・」

「早すぎて指先見えない」

 

カタタタとリズミカルに響くが、その指先は視認するのもやっとの高速で動いている状態だ

 

「はい終わり、それじゃ先に上がります」

「お疲れ様です」

 

それぞれの挨拶に対応して、藍澤カズマは次の目的地に向かった

それは、学園の所有する空中戦艦だった

 

「あ、ようこそ艦長!!」

「あぁ、これからお世話になるよ」

 

早速艦長席に座り、確認する

 

「この艦に名前はないのか?」

「新造艦でして・・・まだ決まってないのです」

「ふむ、それでは俺が名付けよう」

 

そして登録した名は・・・

 

「サヘラント・・・ですか」

「あぁ、同時にコレの開発も進めてくれるか?」

「これは・・・?」

「ネゲントロピーの奴らを震え上がらせる新型機甲だ、これで奴らに驚きの表情を浮かべさせたくてね」

 

表示されたものは、機甲と呼ばれる機械の設計図だった

 

「名前は・・・メタルギア・サヘラントロプス?」

「あぁ、メタルギアと呼ばれる核搭載二足歩行型戦車を作るぞ。これでネゲントロピーの連中が震え上がることは間違いない」

「主な目的は地形を問わない核弾頭搭載型大陸間弾道ミサイルの運用と単独での作戦運用ですか・・・補助武器も装備することができるのですね?」

「あぁ、戦術運用で戦乙女たちの負担を軽減するのが目的だからな」

「分かりました、開発させます・・・しかし資金が・・・」

 

それに関しても考えてあるのか、藍澤カズマは笑いながら告げる

 

「そこは協力してもらおう、あの子たちにね」

「目的も何も言わないのですね?」

「こんなものを開発しているとバレたら、俺たちの首があらぬ方向へ飛んで行ってしまうぞ?」

「確かに・・・」

 

そう言いながら、藍澤カズマは続けた

 

「まぁ、俺個人で資金も集めるさ。頭金でこれだけあれば事前開発も可能だろう」

「はい、確かに・・・しかしこれだけの資金をどこから?」

「親切な第三者からのプレゼントだ」

「はぁ・・・」

 

どう考えても、誰かを恐喝していることは間違いない

しかしその相手を聴くのは躊躇われた

 

「しかし、かなり大型ですね」

「あぁ、その分搭載火器も強力な物にしている。実用化できれば御の字レベルだと思うがそこには俺も技術提供するから絶対に実現させよう」

「はい、少しでもあの子達の負担を減らしたいですからね」

 

そうして、艦長としての仕事の一日を終える




メタルギアとかチートだろ自覚しろ!!


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校長室の一幕

校長室で一体何が!?


「わざわざ済まないわね」

「いいえ、構いませんよ」

「1月たったけど、どうかしら?」

「いやはや、何ともし難いですね」

 

対面に座りながら、藍澤カズマは告げた

 

「あの子たちの鍛え方は正確で丁寧ではありましたが、それゆえに油断している所があります」

「それを改善している最中?」

「えぇ、これがなかなかうまくいきません・・・まぁ、跳ね返るのは俺の好む所なので構いませんがね」

「そうなの?」

「はい、少なくとも聞いてはいるという事ですから。聞いてない人間なら何もしないでしょう?」

 

その質問に学園長であるテレサ・アポカリプスは頷いた

 

「確かにそうね、あの子達は聞いてるから・・・」

「少なくとも、自分の改善点は分かっているという事でしょう。問題はそれを自力で解決しようとしすぎる事ですね」

「確かに、ソコは私達の力不足だわ」

「その点を超えれば、今より強くはなるんでしょうけどね・・・」

 

やれやれとポーズをしながら、藍澤カズマは続けた

 

「この一月でだいぶ心を開いてくれましたが・・・任務ではなかなか」

「締めてもいいのよ?」

「いいえ、それよりも簡単な方法があります」

「何かしら?」

 

すると意地の悪い笑顔で藍澤カズマは話した

 

「敵の群れを誘引してやるんですよ、しかも出来るだけ強い個体群を」

「最低ね、それは」

「実地で経験したほうが身につく事もありますからねぇ」

「うわぁ・・・大人げない」

「何とでも、俺は少なくとも大人になったつもりはないよ」

 

疑問を浮かべる彼女に、藍澤カズマは答えを示す

 

「何故なら、大人は大きく成長した子供にすぎないから」

「意外な回答だったわ・・・でも反論できないわね」

「えぇ、そうでしょう?」

 

そうして互いに笑い、藍澤カズマは質問した

 

「学園長、貴女はどんな子が好ましいですか?」

「そうねぇ・・・すぐには浮かばないわ」

「自分は、自分自身の道を迷って歩いている子のほうが、他人の道を間違いなく歩いている人よりも好ましく思います」

「何を言いたいのかしら?」

「単刀直入に言おう、裏はとったぞ?」

 

その瞬間、その首元に向けて放たれた一撃を防いだ

 

「おうおう、いきなりかよ」

「一月の間に随分と手癖の悪いことをしていたのね?」

「こう見えても、そういう裏工作は得意でな」

「最低ね」

 

そういう彼女を、藍澤カズマは抱きかかえた

 

「ひゃ!?」

「軽いなぁ・・・それに初々しい反応だ」

「あ、あなたねぇ!?」

「可愛いなぁ・・・撫でたげよう」

「ん・・・子ども扱いしてるわね!?」

 

そういうと、藍澤カズマは微笑む

 

「実は生まれが一歩引いてる理由じゃないか?」

「・・・そうよ」

「それで俺からのアドバイスだが、聞く気はあるかな?」

「聞いてあげるわ」

 

そういうと彼女を座らせ、藍澤カズマは続けた

 

「生まれなんてどうでもいい、重要なのは自分がどうしたいかだ」

「自分がどうしたいか・・・」

「それが決まれば、後はそこに全力を出せばいい・・・それが出来るから人間はいつも頑張れるんだ」

「あなたがそうだから?」

「その通りだよ、まぁ自分なりにがんばれ」

 

自分がそうであるように、と言葉では表さずに告げて、藍澤カズマは笑った

 

「ただし、自分だけで行こうとしない事。悩みがあればそれを告白できるときに、できる奴にしておく事、抱え込み過ぎはよくないぞ?」

「分かったわ・・・」

「それじゃあ俺はここで中座しますかね・・・」

 

そう言って立ち上がり、部屋を出ていった




単なるアドバイスかよ、つまんね


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権能発現

主人公に漂う危険性


「さて、艦長としての初仕事のわけですが・・・」

「早速、出番のようですね」

「やれやれ、では行きますかね」

 

苦戦している4人を見ながら、俺は艦長席を立つ

 

「バックアップは任せるぞ、ミラー!!」

「お任せを!!全力でバックアップいたします!!」

 

そして、空中戦艦から飛び出す

 

「落下傘降下なんて久しぶりすぎぃ!!」

「大丈夫ですか?」

「問題ない、これから目的地点へ降下するぜ」

 

そうして降下し、途中でそれを外した

直後に始まる自由落下を、崩壊獣と呼ばれる存在を上段切りするときに生じた減速で相殺する

 

「よう、キアナ。大丈夫か?」

「う・・・うん」

「よし、それじゃキアナは委員長と合流だ」

「分かった!!」

「それまでは俺がエスコートしてやる」

 

その瞬間、黄金の爆光が放たれた

 

「行けッ!!」

 

そして先に行かせ、一人呟いた

 

 

「あぁ、くそ・・・やらかしたか?」

 

だが、"勝利"をその手に掴むため、俺は今日も誰かのために戦い続ける

光のために、未来のために、自分以外の誰かのために。涙を明日の光に変えるために、悪を滅ぼすそのために

壊れるまで、砕け散るまで、それが"勝者"の責務だろう

 

「まぁいいか・・・来いよ化け物共、滅尽滅相してくれる!!」

 

邪魔をするなら相手が誰であろうとも焼き尽くして滅殺し、俺はどこまでも前へ前へと進み続ける

それが自分だ、歪んでいると理解しているし、そしてこれは直せないと自覚している

 

「今度こそ、守り抜くために」

 

かつて、差し伸ばされても掴めなかった手を、その人間の表情と最期を思い出し・・・俺はそう呟いた

 

「あぁ、そうだ・・・だからこそ」

 

過ちは永劫、地獄で贖おう。責も受ける、逃げもしなくば隠れもしない

しかし、その罪深さを前にし、膝を屈し何になるだろう?

泣き叫びすまなかったと許しを請うべきか?器が無いから、誰かに託して諦める?笑止千万

勝者の義務とは貫くことだと信じるからこそ・・・

 

「涙を笑顔に変えんがため、俺は戦場(ここ)にいるんだ!!」

 

宿業は重いが、しかしそれを誇りへ変えよう。俺は必ずこの選択が世界を拓くと信じている

人々の幸福を未来を輝きを守り抜かんと願う限り、俺は無敵だ!!

 

「ぐぅ!!」

 

不意打ちを受けて飛ばされる、だが

 

「まだだ・・・!!」

 

そこで俺は、切り札を使う

 

「創生せよ、天に描いた星辰を・・・我らは煌めく流れ星」

 

我に能うものなしと、傲岸不遜にただ単騎(ひとり)

 

「巨神が担う覇者の王冠。太古の秩序が暴虐ならば、その圧制を我らは認めず是正しよう」

 

全てを凌駕せんと、宿命が発動する

 

「勝利の光で天地を照らせ。清浄たる王位と共に、新たな希望が訪れる」

 

謳い上げるは全能の証明。天に轟くは殲滅光(ガンマレイ)

 

「百の腕持つ番人よ、汝の鎖を解き放とう。鍛冶司る独眼(ひとつめ)よ、我が手に炎を宿すがいい」

 

今の俺は約束されし絶滅闘争(ティタノマキア)の覇者

 

「大地を、宇宙を、混沌を・・・偉大な雷火で焼き尽くさん」

 

最後の勝利を掴むため今ここに立ち上がるのだ

 

「聖戦は此処に在り。さあ人々よ、この足跡へと続くのだ」

 

この身に宿すは闇をも許さぬ"光"

絶望と悪を、己の敵を、余さずすべて焼き払う絶対の焔。邪悪を滅ぼす死の光

 

「約束された繁栄を、新世界にて齎そう」

 

万象すべてを滅亡させる天神の雷霆(ケラウノス)。振るうのは生命を根絶する死の閃光である

 

超新星(Metalnova)・・・天霆の轟く地平に、闇はなく(G a m m a・r a y K e r a u n o s)!!」

 

その瞬間、噴き上げる爆光の範囲と威力が桁違いに上昇した

 

「づっ!!」

 

同時に襲い掛かる莫大な負荷は気合と根性で無視する

 

「があぁぁぁ!!」

 

爆発的な火力へと跳ね上がった出力を制御出来ず暴発に紛れて誤魔化す事しかできない

そもそも、気合と根性といったが、それは誰にでも真似できることではない領域だ

 

「がはっ!!つぅ・・・ぐっ!!」

 

精神が振り切れた馬鹿専用の概念であり、決して日常生活で用いている言葉と同列に考えてはいけない

そう、考えてはいけないとわかっていても、俺はそうすることしか出来ない

気合と根性による覚醒など常人が行えることではなく、出来ない奴は出来ないのだから

 

「ふざけるな・・・!!」

 

あぁ、そうだ・・・ふざけるな!!

 

「そうだ、今度こそ・・・」

 

俺は何か重大な事を忘れてないだろうか?

 

「俺のすべては、あの日の罪業(つみ)を救うために在るのだからッ!!」

 

あの日から何も変わらぬように、俺は自滅するのか?

それを許容していいのか?

それこそふざけるな、彼女たちに教えようとしている事を教え終わるまでは・・・

 

「それまで俺はッ・・・!!」

 

死ねない、死ぬことだけは自分自身に許さない!!

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

「これが・・・先生のやった事・・・?」

「遅いぞ、君達・・・おかげで・・・」

 

ようやく揃った4人を見ながら、俺の意識は闇に落ちた




あれ、これマズくねぇ?と書きながら思った作者


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再覚醒

主人公最悪の流れ・・・


「ここは・・・」

「目が覚めたかしら?」

「迷惑をかけたようだな」

「えぇ、いい迷惑だわ」

 

目が覚めたら無量塔姫子がいた

天井から察するにここは・・・

 

「貴方の能力、肉体への負荷がとんでもないわね?」

「あぁ、分かっていたがな」

「なんで、平然としてるのよ・・・」

 

辛そうな顔をする彼女に、俺は答えを返せない

返す言葉が出てこない

 

「俺は狂人だからな・・・こうする生き方しか出来ない」

「私もある意味そうよ・・・」

 

俺の頭を撫でながら、彼女は続ける

 

「生まれ持っての対崩壊耐性を有していなかったから、人工聖痕を無理やり身体に移植して戦乙女(ヴァルキリー)になったわ。でも度重なる戦闘で身体を酷使し続けた結果、人工聖痕の副作用も相まって体内は崩壊エネルギーに蝕まれ、すでに余命1年が宣告されているの」

「そうか・・・どこか生き急いでいるように感じたのはそういう事情があったのか」

「貴方は鋭いわね、本当に・・・」

「あぁ、昔からそこは鋭いんでね」

 

俺はそう言って手を目の上に被せる

 

「惨めになる・・・俺自身を見ていると・・・」

「どうして?」

「毎晩、無くしたモノが・・・身体が、心が痛む・・・無くしたモノの・・・死んでいった仲間達の痛みだけが、いつまでも消えずに疼くんだ・・・今もそこにあるかのように・・・」

 

胸を掴むように毛布を握る

 

「この痛みが、胸を掻き毟る後悔が!!僅か一つでも、俺の生涯から欠けていたのならばッ・・・!!」

「戦えなかった・・・戦えるわけがない、あなたに」

「あぁ・・・全てに、意味があったのだ!!」

 

もしも己が理想を叶えていたとしたら・・・望みのままに生きていたなら・・・?

穏やかな生を送り、子に恵まれ、士道を遵守して生を閉じる

英雄になることもなく、魔道に堕ちるでもなく、無病息災の生を送っていたなら

永劫自分を苛み続ける、今という茨の道を歩まなければ・・・

困難に立ち向かうことなど決してできなかった

いや、己の抱える矛盾に対しても、力強く"否"と吼える事さえ叶わなかった

だからその矛盾を肯定する事しか出来なかった

その結果が今につながる

異世界に来てまでも変わらなかった自分の事を、誰よりも理解出来るのは同じく未来のない存在だった

 

「あぁ・・・疲れたな」

「今は寝てなさい・・・貴方はこれまで働きづめだったんだから・・・だから、ゆっくり休む必要があるわ」

「貴女のような美人にそれを言われると、うれしいねぇ・・・」

 

痛みが和らいだように感じた、その温かさを優しさに感じながら・・・俺は再び意識を失った




\(^o^)/オワタ


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betrayer

裏切者が出た!!


とある日、俺は自分が艦長を務める空中戦艦で報告を受けていた

 

「技術が漏れている?」

「はい、最近になってネゲントロピーの戦術機甲の性能が上がっていると報告しましたよね?」

「あぁ、受けている」

「それで気になってリバースエンジニアリングしてみたんです・・・そしたら興味深いものがありまして」

 

出された資料を見て、愕然とする

 

「おい、コレは・・・」

「はい、現在開発中のサヘラントロプスのコア技術の一部です」

「大至急、犯人の特定を急げ・・・奴らにサヘラントロプスの開発を悟られてはならない」

「了解しました、私の子飼いの部下を使ってでも突き止めて見せます!!」

 

それから一週間後、連れてこられたのは・・・

 

「まさか君とはね」

「・・・」

「さて、君に質問しようか・・・?」

 

俺は優しくそう言い、彼女の前に座る

 

「組織とは、どのように腐ると思う?」

「分かりません、分かりたくもない」

「答えは、数が多くなるからだ。善意もまた集団を歪ませる」

 

彼女がやったのも、おそらく善意だろう

 

「サヘラントロプスのコア技術を提供した見返りに、何を得た?」

「そんなもの、ありません」

「いいや、あるはずだ」

 

そう言って俺は指を鳴らし、それに答えたミラーが注射器を持つ

 

「自白剤の使用は禁止されているはずよ?」

「司法機関であればな、だがここは違う」

「学園長が許されるはずがないわ」

「その前にケリをつけるさ」

 

そう言って彼女の顎を優しく触り、目を合わせる

 

「君だけなんだよ、何も失わないのは」

「つっ・・・!!」

「やはり効かないか」

 

自白剤が効かない、特殊な代謝酵素でも事前に入れてあるのか、そのような手術をしてあるのかは不明だが

 

「君の本質を言い当ててやろう」

「・・・」

「君は相手によって嘘を変え隙間だけで生きている。都合のいい真実を重ねて それももう気にしなくなっている」

「そんな事っ・・・」

 

彼女を開放し、俺は続ける

 

「君が一番幸せなのはそんな自分に自身で気付いていないということだ。よく確かめろ自分が何者か、君は被害者でも物言わぬ大衆(サイレントマジョリティー)でもない、君は加害者だ、自分が可愛い偽善者なんだ」

「違うッ・・・!!私は・・・!!」 

「現実から逃げるのが楽しいかね?言っておくが現実が君を傷つけてるんじゃない、君自身が現実に傷をつけてるんだよ」

「つっ・・・!!」

 

俯いた彼女に俺は救いの言葉を与える

 

「だが、今から俺の言うことを自分の心に刻み、考え、答えを出したならば・・・君に機会を与えよう」

「お願い・・・します」

「醜さを、愛せ」

「醜さを、愛せ?」

 

彼女が疑問符を浮かべる、俺はそれに確信を得た

彼女は自分の醜さを自覚してなかったのだと、自身の利益を優先するがあまりに嘘をつき、相手によって手を変え品を変え、その隙間で生きてきたのだと

そして俺の常々語っていた言葉にそれはリンクする

 

「わがままで勝手で、ずるくて汚く醜い底辺のゴミくずども。それこそが私達、人間?」

「そう、その通り・・・頭が良い分理解が早くて助かる」

「はは・・・あはははははっ・・・」

 

彼女は笑いながら涙を流した・・・コレで彼女が救われるといいが・・・

 

「何だか・・・疲れたなぁ・・・」

 

そういう彼女の頭を撫でる、優しく、包み込むように

 

「これからは何をするも俺達と一緒だ、俺達は家族だからな」

 

そう、ここに至るまでに俺は全職員の経歴を調べた

彼女には家庭の愛情が注がれなかった、それが今の彼女を形成したのだろう

 

「私の経歴を・・・調べましたね?」

「君だけじゃない、全員だ」

 

あぁ、そろそろ種明かししようかね

 

「あと注射したの、ただの水だから」

「え・・・?」

「ただの、水です」

「えぇぇぇぇぇ!?」

 

そう、自白剤なんて用意できなかったので実はただの水を使った

 

「貴方も嘘つきね?」

「見事に騙された君に言われると面白さ倍増だな」

「くっ・・・!!」

 

悔しそうな彼女の拘束を解き、一緒に歩く

 

「歩きながらでいいから、話してくれるかい?」

「えぇ、もう隠す気もないわ」

 

そして彼女は話してくれた、ネゲントロピー側の相手の名前から全てを

 

「なるほど・・・近々相手するかもしれんな・・・」

「悪い顔してるわよ?」

「あぁ、悪い事考えてるからな」

 

さて、相手の名前はシン・マールという

容姿と一人称から男の子だと勘違いされやすいが女の子らしい

オイタしてくれやがったので、どうお仕置きしてあげようか・・・

 

「くっくっくっ・・・」

 

いいのが浮かんだ、これが良さそうだ

 

「協力してくれるね?」

「分かったわ、私もコケにされたようだから、協力するわね」

 

協力者もいるから、コレは勝ちゲーだな!!




さて、主人公の餌食になるのが増えたぞ!!(白目)


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誘拐と尋問

俺、(今話の被害者を)男の子だと思ってたんだ・・・そしたら女の子だってさ


「よぉし、では作戦会議だ」

「今回はどこへ行くんですか?」

「ん、ネゲントロピー本社」

 

その瞬間、学園長・・・テレサが紅茶を噴き出した

 

「はぁぁ!?あんた正気!?」

「あぁ、あちらには先に俺から話を通している、名目は各保有戦力の戦闘能力評価試験だ」

「私は反対です」

 

おや、芽衣ちゃんが珍しく強い口調だ

 

「君の意見は理解できる・・・だがこれだけは聞いてもらうぞ」

「何故ですか?」

「これには裏の意味があるからだ」

 

そういうと俺は2枚の青写真を取り出した

 

「左は現在開発中の戦術機甲のコアシステムの設計図だ、右はネゲントロピーの新型機甲のもの」

「似てるというか・・・そのままですね」

「あぁ、そのままだ・・・既に漏洩元の人間は把握済みで然るべき処罰を下した・・・でここからが本題なんだが、その漏出先がネゲントロピーの一員であるシン・マールである事が判明しているんだ」

「つまり、今回の作戦は・・・」

「戦闘能力評価試験の裏でシン・マールに接触、彼女から情報を聞き出すことにある」

 

戦闘能力評価試験にかこつけて向こうの所属員を誘拐するのが今回の目的、達成のために

 

「君達は相手の固有戦力と戦闘をする、今回の作戦では芽衣は前面に出せない関係から変則編成を取る形となるが、君達の戦闘能力は俺が来た当初より確実に向上してるため問題はないだろう」

「私は?」

「芽衣ちゃんはオペレーター兼任の情報収集係、ミラーがサポートにつくから安心してくれ」

「分かりました・・・」

 

まだ不服そうだが、そうするしかない以上きっちり仕事はしてくれるだろう

芽衣ちゃんはそういう子だ、私情と任務を切り離せるところはとても評価している

 

「ところで、潜入するのは誰なの?」

 

キアナの質問に俺は答える

 

「俺だ、潜入作戦は何度もしているから適任だろう。学園長、姫子の二人は万が一に備えて艦橋にて待機してもらおう、秘蔵戦力を温存したいしな」

 

学園長と姫子は不思議そうな顔をしていたが、俺の得意分野はあくまでこちらである

超常的な戦闘能力はおまけというか・・・その・・・

 

「俺の戦闘能力が高いのは、単独潜入と敵基地の壊滅を同時に達成すべく肉体能力を磨いたからで、最初から有していたわけじゃないんだぞ?」

「えぇ・・・でも」

「それにこういう任務は単独の方が相手の油断を誘いやすい、相手はこちらの戦力を図りながら同時に謀られている事に気が付かないまま全てが終わるんだ」

 

OPERATION・INTRUDE・N100、それが今回の作戦名だ

個人の誘拐を別の任務と同時に行う関係上、俺の方への支援は情報以外期待できないが、そこは昔の感を何とか取り戻しながらやるしかないだろう

というか情報だけでも支援があるだけありがたい方だと思う

 

「さて、作戦開始と行こうかね・・・あぁ、先に言っておくぞ?」

「なに・・・?」

 

全員が俺を見た、俺は笑いながら告げる

 

「ここから先は行き当たりばったりだ!!」

「あんたねぇ・・・」

 

姫子が呆れてる・・・無理もないだろう

 

「まぁいいわ・・・さっさと行きなさい!!」

「あぁ、行かせてもらうぜ!!ミラー、情報支援頼むぞ!!」

「任せてください!!」

 

さて、俺は先に行きますかね!!

 

「さて・・・」

 

通信を入れる、事前に決めていたコードネームは確か・・・

 

「スネーク、潜入には成功しましたか?」

「あぁ、成功している。これよりミッションを開始する」

 

そう言って通信を切り、近くの端末に通信機を置く

この通信機はとても便利な代物で、置くだけで対象の機器をクラッキングし情報を抜き出すことが可能である

しかもそれだけでなく、その情報を特殊通信でアップロードし戦術リンクでデータダウンロードも可能なマルチツールである

 

「ふむふむ・・・」

 

施設内のデータは掌握した、後は対象がどこにいるかだが・・・

 

「ん、ブローニャから?」

 

通信が入った、予想外の相手に俺は即座に出る

 

「艦長、シンの事ですが・・・」

「なんだ?」

「恐らく研究施設にいると思います、それも崩壊エネルギー関連の」

「要件はそれだけかい?」

「・・・はい」

 

何かありそうだが、ここは放っておくとしよう

 

「では、また何かあれば連絡してくれ」

「分かりました」

 

さて、急いで向かいますか

 

「意外と近かったな」

 

アレから数分で着いた、作戦は順調だ

監視カメラの映像はリアルタイムで書き換えているし、俺は誰にも見つかってない

 

「見つけた・・・」

 

対象も発見した、暇そうにしてやがる

 

「さて、少し脅かしてやるかぁ」

 

空のマガジンを取り出し、それを彼女の背後に投げる

その物音に反応した瞬間、接近して首を絞めた

 

「かはっ・・・!?」

「ハァイ、君がシン・マールちゃんかな?」

「僕を・・・ちゃん付け・・・するな!!」

「首絞められてんのに元気だねー、じゃあ少しだけお休み」

「う・・・」

 

首に麻酔を注射、即座に眠らせ担ぎ上げる

 

「作戦折り返しするぞ、これより対象を移送する」

「了解です、こちらも第二段階へ移行します」

 

第二段階はキアナ達が全力で相手の戦力を潰しにかかる第一段階と異なり、徹底的に遅滞戦闘に努める

理由としては、単独誘拐任務について回る発見確立の問題を解決する時間の確保である

幸いにもトラップをおまけで仕掛ける時間があったため、少なくて済むが・・・

 

「ってあるぇ・・・?なんで姫子が参戦してんのぉ?」

「勝手に出ていかれました」

「後でシバいてやる」

 

芽衣ちゃんからの報告に呆れながら、俺は目的地点に到着しそのまま戦艦に帰投する

 

「帰ったぞー」

「お帰りなさい、早かったわね」

「これくらいはな、さて・・・」

 

俺は邪悪な笑みを浮かべながら対象者・・・シン・マールを見る

 

「こう言う娘には一番の地獄を見せなきゃなぁ?」

「私が着せるわ・・・うふふ・・・ははは」

「うわぁ・・・」

 

学園長が明らかにヤバい奴らを見る目になっている、それを気にせず俺は艦長席に座りなおして・・・

 

「作戦を第1段階に戻す、総力戦だ思いっきり暴れろ!!」

 

そう命令して直ぐに尋問室に戻った

 

「これはまた・・・」

 

尋問室に入ると、そこには体格が強調される服に着替えさせられた対象の姿が!!

 

「また、酷くエロい服に着替えさせたな?」

「私のうけた屈辱に比べたらこの程度、ただ恥ずかしいだけでしょう?」

「うん、そうだね」

 

最高じゃないか

 

「ところで聞きたい事があるのだけど」

「ん、なんだ?」

「S○Xするなら、どんな子がいいの?」

「身も蓋もねぇ質問だなぁ・・・」

 

頭を掻きながら、俺は話す

 

「ギャップ要素は大好きだ、巨乳も好きだが絶壁でなければ別に問題はない。普通に喰える」

「身も蓋もない回答をありがとう、ちっぱいも喰えるなんて雑食すぎよ」

 

うっすらと目を開けて、そして覚醒したのだろう

驚いた表情で俺ともう一人を見るシン・マールに俺は告げる

 

「ようこそ、というべきかな?」

「僕を誘拐してどうする気だ?」

「まずは自分の置かれている状況を認識してみては如何かな?」

 

そう言って姿見に被せられていた布を取り、鏡を露にする

すると・・・

 

「は・・・?」

「服を着替えさせてもらった、なかなか似合っているじゃないか、シン・マールちゃん?」

「つっ・・・!!」

「よーしよし、状況を理解できたな?」

 

迂闊な事は出来ないとこれで理解できただろう、彼女の表情が俺を睨むものになっている

 

「さて、単刀直入に聞こうか。君、ここで開発しているモノの情報をどこで手に入れた?」

「そんな事を聞くためにわざわざこんな事をしたのかい?随分と・・・」

「言葉は考えた方がいいぞ、小娘?」

 

その瞬間、彼女の着ていた服の一部が脱がされた

 

「きゃあぁぁぁぁ!?」

「いい声で悲鳴を上げるじゃないか、出したくないなら考えたまえ」

 

悪そうな笑顔で言いながら、俺はなめる様に見る

 

「言えばいいんだろ!!」

「あぁ、そうだとも」

「サイファー・・・XOFといえば分かるんじゃないか!?」

「つっ・・・!!」

 

最近何かとこちらにアクションをかけてきている謎の組織の名・・・それを告げる彼女に俺は質問した

 

「カカリアを通してか?」

「その通りだよ!!」

「そうか・・・やはり直接聴取したほうが良さそうか・・・ふむ、これ以上の情報もなさそうだし・・・」

 

笑う彼女に俺は天井を指さし、その次に俺の後ろを指さす

 

「カメラ・・・!!」

「ばっちり撮らせてもらったぜ?」

「撮るなぁぁぁ!!」

 

ついでに一眼レフで激写する

 

「うーんこの・・・可愛いなぁ!!」

「やめろぉぉぉぉ!!」

 

その後泣きそうになるまで連続(しかも途中で再度着替えさせて)で撮影した

 

「ひぐっ・・・ぐすっ・・・!!」 

「あーぁ、泣いちゃったわ。そろそろ返してあげようかね・・・あ、先に言っておくけど、バラしたら今の写真ぶちまけるからね?」

「・・・!!」

 

効果覿面、これでこの子は半分俺の傀儡と化す・・・トラウマと共に

 

「さて、帰ろうかね」

「また・・・薬を・・・」

 

今度は嗅がせて眠らせて、研究施設の入り口で寝かせた

 

「さて、帰りはバイクかぁ・・・」

 

帰りはバイク移動だった、ちなみにボンネビルT120である

渋い、選択が渋い!!でもコレを選択した奴とは仲良くなれそうな気がする!!

 

「帰るかぁ・・・」

 

それから俺は一人寂しく帰るのであった




これは酷い・・・


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ある日の風景

今話の被害者⇒姫子さん


「さぁて回復したしぃ?そろそろ行きますかぁ!!」

「まだ完全回復したわけじゃないわよ?」

「動かない方が治癒が遅くなるんでな、暴れ散らすぜぇぇぇ!!」

 

ある日の昼、俺は姫子と任務に就いていた

任務内容は崩壊獣とゾンビの掃討だ

 

「こちらはタキシード。似合うじゃないか、たまらないねぇ、ンンンンーwwww」

「大丈夫?」

「久しぶりの任務で暴走しているだけだと思います・・・」

「そうだと思いたいわね・・・」

 

俺はその会話を無視して服を決める

 

「今回はこれで行こう。革ジャンだあーw!!見覚えあるかなあー!!中々似合ってるな〜w」

「最初に着てた服じゃない、覚えてるわよ・・・」

「さぁて行こうかぁ!!」

「大丈夫か心配だわ・・・」

 

大丈夫だ心配するな

 

「敵は警戒こそするがこちらの位置までは分からない!!アララララ〜wwwwドッカーンッ!!」

「・・・」

 

念入りに相手にバレないルートを選んで高性能爆薬を設置、それに弾丸を当てて起爆してその爆発に崩壊獣とゾンビを巻き込んだ

 

「武装も資材も何も回収できない。大☆赤☆字☆DA☆

「あんたねぇ・・・」

「よぉし行くかァ!?やめてもいいんだぞォ!?・・・まだいるか!?いたァ!!」

「ぶっ壊れテンションはいつまで続くのよ・・・!!」

 

呆れているが諦めろ、これは今日のミッション終了時まで治らない

 

「連続!!CッQッCィィィッ!!カッコイイでしょォ!?ってダメだァ・・・効いてなぁい・・・」

「ったく!!」

 

姫子の正確な攻撃が敵を切り捨てた

 

「いい加減にしなさいよ!?」

「見事だよ姫子。いやはや本気で助かったよ・・・後数瞬ほど来るのを読み違えていたら死んでいた」

「わざとやってるわね!?」

「あぁ、こう見えても人をいじり倒すのは楽しいからな」

 

凛々しく張りのある声をもう少し堪能したい、さて、次はどんな演技をしようかね?

 

「ほら今の内に全部回収だ!!こいつも!!いいぞ、こいつも!!ホッホッホ〜wwww!!ほらこいつも!!ほらほら飛んでいっけー!!ウフフフwww」

「もう何も言わない」

「エネルギーMAX、くぅらいぇいぇいぇ!!」

「・・・」

 

あ、ついに黙ってしまった。わざと敵に襲われてみよ

 

「わっわっわっわぁぁぁ!!」

「あぁぁもう!!」

 

ほら、なんだかんだで見捨てられない優しさがある

 

「あなたねぇ・・・!!」

「ふっふっふーん☆」

 

敵を倒しながら俺は歩く

 

「余裕で敵を倒せるくせに何してんのよ・・・」

「いやーついついなぁ・・・」

「全く・・・」

「いや済まない」

 

ミッションコンプリート、パーフェクトゲームだった

 

「あんたのせいで大変よ!!」

「あははははっ」

「はぁ・・・」

「仕事終わりでマッサージしてやるから許してくれ」

「下手だったら許さないわよ?」

 

任務内容を報告し、作戦を終了した

 

「さて、マッサージをするかねぇ」

「按摩?」

「あぁ、こっちが得意だからな」

「そう・・・」

 

あと、その美しい肢体を揉むのも・・・

 

「邪な事を考えてなかった?」

「いいえ、全く」

「そうかしら?」

 

すっごく睨まれた

 

「早くやってちょうだい」

「はいはい、それじゃ始めますよー」

 

その後しばらくの間、聞いてはいけない声が響いた




ぶっ壊れテンションからのぶっ壊れボイス


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今と過去

そろそろ自作品とのクロスオーバーを始めますか


「ここは・・・」

「君がここに来るとは・・・意外だよ」

「貴方は・・・いったい誰なんだ?」

「俺は・・・」

 

その存在は一度息をのみ、続けた

 

「君と共に明日を目指す天駆翔(ハイペリオン)の片翼だ」

 

そう言うと、彼は少しだけ俺を睨んだ

 

「死にかけてここに来るなど、恥知らずにも程があるぞ?」

「済まない」

「まぁいい、今言ったところで全ては遅い事だ・・・」

「・・・」

 

叱責される理由は言わなくても分かる、だからこそその言葉には重みがあった

 

「貴方は、常に未来を見ているのか?」

 

だからこそ、この質問をする

 

「あぁ、そうだ。だからこそお前の描く理想の未来を教えてくれ。悠久の平穏を望むか?あるいは不条理への憎しみか?自身を蝕む無力感を払拭したいか?たとえ醜いものであっても、情けない言葉であっても構わない。どうか君の本音を告げてくれ。大切な輝きはきっとそこから生まれてくるのだから」

 

その言葉には確かな重みがあって・・・だからこそ

 

「俺は、何か忘れているのか?」

「ソレを探してみるといい、君の答えはそこにある」

 

そして少し笑った

 

「どうやら少し萎縮させてしまったらしい。今日はここまでにしよう。だが、それでもどうか忘れないでくれ。重大な事には、往々にして向き合う覚悟が求められる事を」

「あぁ・・・」

「共に神話の先を見よう。英雄譚から継承した新たな道を目指す為に」

 

光に包まれながら、俺は目覚めていく

 

「・・・何というか、やっと救いを見た気分だ。照れて焦って喜んで・・・いいじゃないか、最高だとも」

 

見送った側は安堵したような顔でそう呟いた

 

「そんな当たり前の感性がかつての自分にも残っていればと、思わずにはいられないな・・・」

 

どこか疲れた顔でありながら、そこにあるのは安らぎで・・・

 

「落第点の後継者か・・・あぁ、上等だ悪くない。俺という人間にはちょうどいい、適した後継者だとも」

 

そしてそこには自信があった

 

「気づけよ、半身。大切な者達の存在を強く意識した途端、憎悪がピタリと消えただろう。それはつまりお前が俺の後継としてズレたことを意味している」

 

笑いながら、優しく呟く

 

「慕ってくれる女性は大切にしろよ。ろくでなしからの忠告だ」

 

聞こえてはいないだろう、だがそう呟くことはやめられない

それは特定の大切な誰かが出来てしまえば、光のために、未来のために、見も知れない誰かのためにと生きられず、救うべき誰かに優先順位が出来てしまい、全員に繁栄を齎す英雄としては不適格になるのだと理解しているからだ

だからこそ、かつての己が間違えた道を反芻させないための予防をしているのである

 

「さて、事前に次善の策でもうっておきますかね」

 

そうして己も、この世界で出来る事をしていくのみである




え、ナニコレ


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エイプリルフール

本話は本編と一切関係ありません。あしからず
今話の被害者⇒キアナ、フカ、芽衣、ブローニャ、テレサ


「えー、今日は4月1日です」

 

俺はカレンダーを確認した、今日は間違いなく4月1日だ

世の中でちょっとしたイベント事がある日である

そのイベントとは・・・四月馬鹿(エイプリルフール)!!

 

「さて、今回は学園長にイベントの協力をお願いいたしました」

「で、何なのコレ?」

「ん、棺桶」

「誰が入るのよ」

「俺だ」

 

白い服を着ているのはそのためである

 

「で、1時間後に皆を呼んでくればいいわけね?」

「あぁ、そして皆が集まって焼香が終わり、出棺した後にネタバレだ」

「なるほど・・・で、プレートは?」

「舞台裏と入口裏の立てかけたテーブルの裏だ」

 

実はこの日のために念入りに準備していた、学園長は完全に乗り気である

 

「いつもは仕掛けられる側だから、仕掛ける側に回るのは楽しいわね!!」

「楽しいか、それじゃあバレないように任せるぞ?」

「任せなさい!!」

 

さて、学園長も去っていったし・・・

 

「姫子、バックアップは任せた」

「酔った勢いで言うんじゃなかったわ・・・」

 

酷く後悔している姫子に俺は告げる

 

「いやぁ、あの時の・・・」

「言わないで頂戴!!本当に・・・」

「仕方ないなぁ・・・」

「で、私は学園長に仕掛けるのよね?」

 

そう、隙を生じぬ二段構えだ

 

「私はエイプリルフールのドッキリでショック受けて倒れたことにするのよね?」

「あぁ、それで俺が介抱して運んでいる最中にネタバレだ」

「了解、タイミングは任せるわよ?」

「あぁ、任せろ」

 

そして、1時間後

 

「嘘・・・だよね?」

「嘘でしょう?」

「ウソ・・・」

「・・・」

 

三人の声が聞こえる、ブローニャは頭が良いから何か気づいたか可能性があるものの、おおむね作戦は成功しているようだ

 

「焼香も終わったわね・・・」

 

学園長が辛そうな声でそう言い、キアナ達は泣きそうだ

 

俺は笑いそうになるのを我慢して話を聞いてく

 

「そろそろ出棺よ・・・」

 

さて、俺もスタンバイだな

 

「姫子」

「いいわよ」

 

さて、イベントも折り返しだ!!

 

「・・・」

「皆、後ろを見なさい」

 

学園長が促し、皆が後ろを見る

そこにいるのは俺で・・・

 

「え・・・?」

「皆、今日は何月何日かな?」

「4月1日・・・あぁ!?」

「ヘーイ、引っかかったな!!エイプリルフールだよ!!」

 

プラカードを出す、そこにはドッキリ成功の文字が書かれている

俺と学園長のドッキリは成功した!!

 

「まさか・・・そのためにこんな大掛かりな事を?」

「あぁ、そうだが?」

「貴方は馬鹿ですか?」

「あれ、委員長オコなの?激おこ?」

 

すると委員長はプラカードを粉砕した

 

「えぇ、これくらいには」

「・・・」

 

これからイベント事・・・特にドッキリを仕掛けるときは委員長を巻き込もうと決意した瞬間だった

 

「さて、あれ?今来たの姫子?」

「・・・」

 

姫子が倒れる、それが折り返しのドッキリ開始の合図である

 

「俺が運ぼう、学園長は先に保健室へ、みんなは俺と一緒に行くぞ」

「先に行ってるわ!!」

 

姫子を抱え、歩き始める

 

「コレもドッキリですね?」

「あぁ、学園長には内密でな?」

「分かりました」

「あ、私プラカード持ってくるね!!」

 

キアナと皆を巻き込む、抱きかかえられた姫子は顔が真っ赤だ

 

「役得ですね、姫子先生」

「恥ずかしいわよ・・・」

 

さて、そろそろ仕掛けますか

 

「あ、やっと来たわね!!って・・・」

「あ、元気ですよ?ついでに言うと」

「じゃーん!!」

 

キアナがプラカードを掲げる、それを見て学園長は・・・

 

「貴方私も嵌めたの!?」

「引っかかる学園長も学園長でしょうに、最初に先に行かせた時点で気づくでしょ普通」

 

ふつうあの場では責任者が残るのが通常だ、油断しすぎである

 

「まぁ、ドッキリ成功で楽しかったですけどね」

 

その後、全員で食堂に集まり会食する。とても楽しい一日だった




これは酷い、しかも本編と関係がないとは


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告白

物語ではだいぶ遅くに判明した事でしたが・・・?


「ほう・・・?」

「・・・」

「君がまさか、内通者(スパイ)だったとはね]」

 

ある日俺は告白を受けていた、敵として認識している奴らに内通している人物から

その相手とは・・・

 

「フカ・・・」

「・・・」

 

委員長だった、でも驚きはない

 

「理由があるんだろう?」

「はい・・・」

 

理由の説明を受ける、そして・・・

 

「完全に乗る馬を間違えてるよな、それ」

「はい・・・」

 

情報を提供する見返りに自分の喪失した記憶の復活を依頼していたこと

それを履行する気があちらにない事は明らかであり、都合のいい情報源程度にしか見られていないことは明白だ

それでも、どうしても取り戻したかったのだろう

 

「ですが・・・」

「皆との付き合いがそれを変化させた?」

「はい、それに・・・少しずつではありますが自分自身で取り戻しつつあるんです」

「それはいい傾向じゃないか」

 

俺はそれをいい傾向と考える、なぜなら

 

「他人に教えられた記憶よりも自ら取り戻す記憶の方が良い、俺はかつてそれを行われて失敗した」

 

他人に与えられたベクトルで操られた、それは俺の黒歴史だ

 

「だからこそ、今日ここで明かしてくれた事に関して俺は君に責任を負わせる気はない」

「ですが・・・」

「それで示しが付かないと言うならば、これからの君の行動でそれを示しとすればいい、俺は行動の指針さえ守ってくれればどんな事でも許容しているからな」

 

俺は責任を問わない、そして自己責任としてそこから先を判断させる

 

「失った信頼は行動で取り戻せ、君の今までの行動であれば、すぐに取り戻せるだろう」

 

そう言って渡したのは、彼女の地元の酒

 

「未成年なんですが・・・?」

「ははっ!!君がやさぐれて一人酒を隠し飲んでることを知らないとでも思ったのかね?」

「つっ・・・!?」

 

なぜそれを!?な顔をした彼女に告げる

 

「この程度のブラフに引っかかってはいけないぞ?」

「・・・善処します」

「肩肘張らなくてもいい、自分に出来ることは何か、どうすれば問題を解決できるか、それを原点から見直してみるのもいいだろう、迷ったら初心に帰ってみるのも一つの手だよ」

 

そしてそれを俺は美点に思う

振り返れるものがあるのは、いい事だと思うから

人間は誰しも無才な状態から始まる、そこからの積み重ねが才能になると思うし、それは生涯の宝だと思うから

努力もしない輩がこれから輝こうとしている者達を一方的に否定するなど許さないし認めない

 

「迷って悩んで、考え抜いた先にこそ大切な答えがある・・・俺はそんな当たり前だけど誰もが忘れている事を、君たちに教えるためにいるのだから」

 

それが俺の生きる意味だと思う、今はとても強く

 

「さ、今日もこれからお仕事だ・・・行くぞ、フカ?」

「分かりました」

 

さぁ、少しずつ追い詰めてやるぞ、敵対者たち

貴様らが浮かべる絶望の表情を眺めてやろう




あ、これはヤバイぞ・・・?


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無くしているモノ

それは大切なモノであり、自らの過去であるもの


「ふむ・・・やはり俺には過去の記憶が欠落している部分があるのか」

「欠落というより、記憶の深層に封じられているというべきですね・・・まさか貴方も記憶がないとは思いませんでした」

「俺の場合、君とは違う形での記憶喪失だからな」

 

俺の場合はどうやら外傷性健忘・・・頭部外傷をきっかけとしたもののようだ

対してフカのモノは、心的外傷やストレスにさらされたことでおこる健忘のようである

両方とも部分的ではあるものの、強い影響を受けているのはフカのようである

俺の場合は今まで気づかないほど浅いもの・・・重要ではない事のようだ

それでも、不思議なものだ・・・それに今まで気づかなかった理由が

 

「恐らく、気にしないように暗示と誘導がかけられていたんだと思います」

「薬物も利用していたのだろうな、相当に強いもののようだ」

 

今もその記憶を想起してみようとしてみたが、掠りもしない

想起さえ出来ないようにされているのだ

 

「やったのが誰かも分からないようにするとは、高度なものだ」

「でも・・・何のために?」

「それはおそらく・・・俺の原初の記憶に関係があるのだろう」

 

思い出せる限りのもっとも古い記憶・・・それを想起しながら俺は言葉を紡ぐ

 

「俺は微睡んでいたのだろう、その中で告げられた言葉がある」

「それは・・・なんですか?」

「俺はお前だ、俺達は二人でビッグボスだ・・・と」

「貴方と同じ名前で活動している人がいる・・・と?」

「あるいは俺の過去を知っていて、それでも俺に自分の役割を背負わせているともとれる」

 

恐らくそうなのだろう、と確信めいた自信がある

自分だけでは果たせない何かがあるから、それを果たすための影が必要だった

恐らく俺にそれを務められる素質があると期待しての事なのだろう

 

「俺の知るかつての敵が俺に言った言葉がある」

「・・・?」

「世界はありのままで良い、と言われた・・・そこには共感を覚えたよ」

 

それはかつて敵であった人間の言葉だ、俺は今でもその言葉に共感している

世界はありのままで良い・・・ありのままの世界を次の世代に引き継ぐ事がどれだけ難しいか俺は理解している

 

「俺に与えられたのは、その"ありのままの世界"を取り戻す事なのだろう。ならばその任務、引き受けるまでだ」

「難しいですね」

「だが、やらねばなるまい・・・自分の記憶を取り戻すために」

 

それこそが、与えられた役割ならば・・・と

 

「あ、先生ここにいましたか」

「整備長、どうした?」

「新造艦の着工許可が下りましたので、その命名をお願いしたくてですね」

「あぁ、それなら既に決まってますよ」

 

渡された書類に新造する空中戦艦の名前を書く

その名は・・・

 

アウターヘイブン(OUTER HAVEN)、外側の避難所という意味で付けた。すべての土地、国家、法律、電脳網、支配から真に解放される場所という意味合いでの呼称だ」

「素敵な名前です、この名称で着工いたします」

 

俺達を拘束する全てからの避難所・・・その特徴は

 

「宇宙にまで対応する戦艦ですか・・・」

「あぁ、艦体としての大きさは予算ギリギリだがね」

 

新造艦の設計は自ら行った、ブロック工法と設備のモジュール化で期間は従来艦の半分以下としているが、建造所をフル稼働しても1年以上はかかるだろう

 

「サヘラントロプスも完成寸前までこぎ着けたし、そろそろこちらも本格的に動き出すか・・・」

 

現状、この学園を狙うグループが二つある

一つは上位組織である天命、もう一つはネゲントロピー

前者は学園長との関係があるが、おそらくはキアナが狙いだろう

なぜ彼女を狙うかは不明であるが、生徒であり仲間である者達を狙うならば容赦はしない

ネゲントロピーの狙いはブローニャと芽衣だ、こちらも狙うならば加減はしない

どちらにしろ敵であるのは間違いないため、攻めてくるのであれば叩き潰させてもらう

報復はあまり好きではないが、そうしなければ守れないのであるならば、両手を血に濡らそうとも成し遂げる覚悟はある

 

「さて、そのバランスを崩させてもらおう」

 

ここからは俺の独壇場だ




主人公動き出す


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蘇りし者

その人間はかつての敵


「ふむ・・・俺達を追っている者がいるな」

 

俺は月次の書類を作りながらそう呟いた

 

「えぇー?先生気にしすぎじゃない?」

「いや、そうでもなさそうだぞキアナ?」

 

俺はその証拠として写真を見せる

 

「痕跡の写真だが、全部見て不思議に感じないか?」

「んー、全部似てるよね」

「そう、似ているんだ・・・同一と言ってもいい」

「でもそれだけじゃ証拠にはならないんじゃない?」

「いいや、昨日俺が拾ったものと合わせれば辻褄は合う」

 

俺は昨日拾ったワッペンを見せる

 

「XOF・・・?」

「俺がかつて敵対した組織の腕章だ」

「これが?」

「あぁ・・・」

 

XOF・・・この世界にもあったのかと驚くと同時に俺は嫌な予感がしていた

余りにも・・・余りにも似ているそのデザインは・・・

 

「俺はかつて、FOXという部隊でミッションを行っていた・・・そのバックアップ部隊がXOFだ」

 

腕章を逆にした瞬間、キアナが驚く

 

「FOX・・・!!」

「そう、デザインはFOXの逆というものだったよ」

「じゃあ、なんで警戒しているの?」

「裏打ちとなるように組織した隠密部隊に起源を持ち、当時の俺でさえ与り知らない非正規特殊部隊だった・・・警戒しているのは組織よりもその指揮官個人だよ」

 

今でも忘れないその顔は・・・

 

「まるで髑髏のような・・・白く焼け、頬の肉は焼け落ちて裂けてしまっている顔・・・忘れる事はないだろう」

「つっ・・・!!」

 

その瞬間にキアナが固まる

 

「どうしたキアナ?」

「最近・・・その人見たような気がして」

「どこで見た?」

 

キアナに聞くと・・・

 

「先生が倒れていた時なんだけど・・・この報告書のところだよ」

 

彼女がピックアップした報告書を見る、その場所は

 

「南アフリカ・・・因果なものだ」

 

死闘を繰り広げたあの地域での目撃情報・・・これは

 

「分かった、ありがとう・・・ここからは俺の仕事だ」

 

行ってみる価値がある、そして

 

「テレサ学園長、相談がある」

「何かしら?」

「突然だが明日から有休を取りたい」

「あら・・・もう取れる時期だったわね、いいわよ」

 

よし、これで有休がとれる

 

「どこか行くところがあるの?」

「あぁ、割と遠くだけどな」

「どこよ?」

「南アフリカ、会いたさそうな奴がいるんでね」

 

俺はそういうと、紅茶を飲む

 

「おぉ、この前より更に美味くなってる」

「ありがと、それでどうやって行くのかしら?」

「戦艦を借りるぞ、それと俺の最近作った非正規部隊もだ」

「また随分と大所帯で行くのね・・・」

 

それには理由がある・・・それは

 

「並みの軍隊じゃないんでな、それなりに対策はしとかないと」

「それ、完全に休暇のノリじゃないわよ?」

「これは俺個人の要件だからな、給金貰ってまでやる事じゃない」

 

非正規部隊も厳密には学園所属ではない、だから連れて行っても問題はない

問題は戦艦を借りる所だが・・・

 

「そこまで言うならしょうがないわね・・・廃艦予定でも構わないかしら?」

「あぁ、痕跡を消しやすくて助かる」

「それじゃあ空きがあるからこれにサインしてちょうだい」

「世話になる」

 

直ぐにサインして返し、俺は告げる

 

「それでは明日から連休に入る

「えぇ、面倒事を片付けてきなさい」

 

そうして退室し、すぐさま連絡を取る

 

「ミラー、動くぞ」

「非正規部隊の方は準備できてます、どちらまで向かわれますか?」

「南アフリカだ、移動手段も確保した」

「了解しました」

 

指定座標を送り、先に入る

 

「お待たせいたしました、ボス」

「あぁ、早速だが向かうぞ」

「それで、目的は何ですか?」

「接触を図ろうとする組織がある、その組織の目的を暴き、不利益となるならば排除するぞ」

 

俺はそう告げて、目標点を告げる

 

「目標点は南アフリカ、旧ソ連軍第40軍拠点、OKBゼロ・・・そこに拠点を構築しているはずだ」

「既にそこまで調べられてましたか・・・」

「いいや、希望的観測さ・・・だが俺の知る人間が指揮官をしているのであれば・・・あるいは」

 

その可能性に掛けて、到着を待つ

借りたのは廃艦予定の空中戦艦だが、武装を外してある分高速性は従来艦と同等に向上しているため、数十時間で到着した

 

「潜入は俺のみで行う、バックアップとして控えていてくれ」

「不服ですが・・・了解です」

「すまんな、俺のわがままに付き合ってもらって」

「構いません、今に始まった事でもないですからね」

 

優秀な副官がいる事の幸せとはこういう事を言うのだろうか?

それはさておき、潜入を開始する

 

「お、一人目発見」

 

早速一人目の敵を発見して拘束する

 

「がっ!?」

「少し聞きたい事がある、指揮官はどこかな?」

「ぐっ・・・!!」

「喋らないとナイフで一突きしちゃうぜ?」

 

目の前にナイフをちらつかせ、俺はそう言いさらに強く首を絞める

 

「奥の、洞窟のような場所だ・・・!!」

「はい、ありがとう、ではお休み」

 

様はなくなったので気絶させ、俺は武器を整える

 

「うむ、行けるな」

 

あの時に比べれば、比でないほど楽なミッションだ

あの時は、そこら中に敵兵がいた

それがこちらではほとんどいない、組織として成立したばかりだからだろう

 

「やはり貴様だったか・・・スカルフェイス」

「そんなにコソコソ来なくても良いだろう、私もお前も逃げ隠れ出来ないのだから」

 

後ろから前に向き直した顔は・・・以前と異なる

だが漂う気配は間違いなく本物だと感じる

 

「私がこの身体で驚くか?」

「憑依型の転生か・・・驚きこそしたが納得でもある、自分と同じ境遇で死んだ者に憑依したな?」

「あぁ、したよ?そして手術でこの顔になった、この世界では私の復讐相手はいないからその選択も出来た。例外であるあの男と貴様を除いて、私に今報復したい者はいない」

「・・・」

 

手術したにしては整いすぎている、まさかと思うが・・・

 

「火傷ではなく、銃だったな、貴様の死因は」

「今の私は女だが?」

「中身が男だろうが」

「細かい事を気にするのだったな、貴様は」

 

剣呑な空気だが、言葉使いに疑問を覚える

 

「俺以外に復讐したい者がいるのか?」

「あぁ、天命のトップ、オットー・アポカリプスだ」

「・・・」

「貴様も奴の危険性は理解しているのではないのかね?」

「自分の欲望に暴走しているからな・・・」

 

接触しようとしてきた理由もここで判明した

奴の目的は、オットー・アポカリプス打倒のための共生か

 

「俺とお前にどれほどの確執があるか、忘れたわけではないだろう?」

「それでも、私はその選択を取る・・・かつて貴様に言ったように、世界はありのままでよいのだから」

「そのために行った所業があの人の遺志を完全に理解しているとは言い難いがな」

「それはお互い様だろう?」

 

どうしよう、マジでこいつ殴り飛ばしたい

 

「敵対する意思はないという事だな?」

「いいや、貴様との因縁は奴を倒した後で清算しよう」

「ならばそれまでの共生関係だ」

「良いだろう、こちらからは情報を流すと同時に連絡員をよこす」

「俺はそちらとの専用回線を用意する・・・それで連絡員は?」

 

そう言うと、スカルフェイスは指を鳴らした

 

「紹介は必要かね?」

「き・・・さま!!」

「そう睨むな、君に会いたくて冥界を彷徨っていたので拾い上げたまでの事だ」

 

そこにいたのは、俺が殺したも同然の少女・・・

 

「ナーベラル・・・」

「はい、お久しぶりです、カズマさん」

 

ナーベラル・ユニティア、元XOF工作員だった

 

「さて、我々も用意が出来た・・・共に行こうか新天地へ」

「雇うわけではないからな?」

 

そう言って俺は信号弾を撃つ

合図は青、拠点を制圧したという意味だ

 

「歓待だな?」

「アホか、黙ってついてこい」

 

頭の痛い案件だ・・・これをどう処理するか・・・




さて、ここで新キャラ出して大丈夫なのか・・・


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悪に堕ちる

そろそろ主人公の怒りがマックスの模様です


「天命が俺達を狙っている?」

「あぁ、厳密には邪魔者のお前をだがな」

「それはまた・・・」

 

学園に帰還した俺はスカルフェイスからその話を聞いた

驚きだったのは、キアナ達よりも俺を狙う方向にシフトしていた事だろうか

 

「気をつけろよスネーク、オットー配下の部隊は精鋭の中の精鋭だ、生半可なやり方では太刀打ちさえ出来ないだろう」

「ならばこちらも、同じ手段で対応するのみだ、MSF・・・いや、ダイアモンドドッグズを甘く見られているならば手痛い反撃を加えるのみ」

「軍拡競争でもあるまいに・・・まぁ貴様の脳筋具合は今に始まった事ではないか・・・」

 

そこでやっと声が入ってきた

 

「カズマ、その女の人が?」

「あぁ、俺の因縁の相手、スカルフェイスだ」

「こんな美少女に髑髏顔なんて言うのか?」

「言ってろマッド」

 

俺はそう言って立ち上がり、告げる

 

「お前相手じゃあるまいし、負けはしない」

「言ってくれるな、小僧」

「肉体的にはそちらが下だぞ?」

「・・・」

 

あと、キアナとよく似ている気がするのだが何故だろうか?

 

「後で話がある、二人だけの場所を作れ」

「はいはい、ほらそこの連中は部屋を出ろ、俺はこれから大切な話があるんでな」

 

そして場を作り、俺は先を促した

 

「この身体の持ち主は、キアナ・カスラナの複製だ」

「な・・・!?」

「オットー・アポカリプスは自身の思い人の血を受け継いだ彼女を律者という存在に仕立て上げるために行動している」

「律者にして・・・自身の思い人を完全復活させるためか?世迷い言だな」

「それを可能とするのが律者という存在のようだ、私も死にかけていたこの身体の持ち主の記憶から推察しただけなので詳しくは分らんがな」

 

そこで気になるのは・・・

 

「まさか、お前がこの世界に来たのは・・・その子の怒り、報復心に反応してか?」

「多分な、それと私は彼女と契約した・・・彼女の復讐を成し遂げると」

「かつて自分が志半ばで敗れた腹いせも兼ねてか?」

「そんな低俗なものではない、断じてな」

 

そして喋り始めるのは、過去の事

今の体の持ち主の過去だ

 

「生まれた時、そこは研究所だった。日の光はなく、薄暗い場所・・・様々な人間が私を囲んでいた」

「・・・」

「私は様々な研究の実験体になった、生体に直接崩壊エネルギーを当てられた事もあるし、肉体の一部を崩壊エネルギーに浸食されたモノに置き換えられもした」

 

その痛みがどれほどのモノか、想像する事も出来ない

 

「ある時から私は、そういった全てに対して怒りを覚えるようになった」

 

それは誰もが同じ状況ならば抱くもの・・・報復心であり復讐心・・・スカルフェイスが障害懐いていたモノと同じだ

 

「そして、最後に下された殺処分・・・そこで私は覚醒した」

「ヴァルキリーとしての力か・・・それとも」

「私の中には、オリジナルであるキアナとは異なり、あるものがない。だがそれに匹敵するモノであると確信している。負の感情は時に人の限界を塗り替える・・・だからこそ、死の前に私と感応したのだろう」

「感応・・・?まさか貴様、取り込んだのではなく眠らせただけなのか?」

 

俺の質問にスカルフェイスは苦笑する

 

「彼女の怒り、報復心は私の同質のモノだ。その逆もしかり、ならば」

「同志として、共に戦う・・・悪に堕ちて、復讐のために!!」

「お前も同じ道をかつて選んだだろう?私を倒すために」

「・・・!!」

 

確かにそうだ、だからこそ

 

「止まる気はないと?」

「元より存在しない、一度決意したならば成し遂げるのみだ」

 

その瞳に宿る炎は、世界の全てを焼き尽くしかねないもの

報復心とは・・・復讐心とはそれほどまでに人を魔道に落とし込むのか・・・

 

「それに私の彼女は似通っている」

 

そう言うとスカルフェイスは手を空にかかげた

 

「母語を奪わた私と、未来を奪われた彼女・・・その怒りの本質は自身の大切なものを奪われたことに端を発している」

「だからこそ、お前は受け入れた彼女に忠を尽くすのか?」

「まさか、それこそ否だ、そのような事でこの子が喜ぶものか」

 

そう言うと、穏やかに笑う

 

「今の望みは、穏やかに過ごせる世界だ。私は一度死に、そして彼女の言葉をようやく理解できた・・・世界を変える事ではなくありのままの世界を残すために最善を尽くすこと。他者の意志を尊重しそして自らの意志を信じること、それが彼女の遺志だった、そうだろう?」

「あぁ、その通りだ」

「だからこそ、許せないのだ、奪おうとした者達を」

 

そして彼女は表情を戻す

 

「私は私とこの子の怒りで奴を倒す、お前はどうする?」

「攻めてくるのであれば叩き潰す、ましてや教え子たちを脅かすのであれば手加減をしてやるつもりはない」

 

そう言って二人で扉の前に立ち、勢い良く開けた

 

「わきゃあ!?」

「あぁぁ!?」

「お前ら・・・盗み聞きとはいい度胸じゃないか」

 

恐らく聞いていたのは復讐云々からだろう、その辺りから気配はしていた

 

「罰として今から校庭外周トラック10周!!その後体育館の清掃!!さっさとやらんと食堂は閉まるぞ!!」

 

発破をかけて急いでいかせ、ため息をつく

 

「先生としての仕事も大変じゃないか」

「笑い事じゃねぇよ・・・」

 

さて、先生たちも・・・

 

「そこで何やってんだ・・・?」

「つっ・・・!?」

 

ロッカーを開けると姫子がいた、最初から気づいていたがあえて放置していたのだ

 

「お前も盗み聞きとは感心しないな・・・また地獄を見たいかね?」

「二度と見たくないわ!!」

「なら次からはもっとうまく隠れろ」

「つっ・・・!!」

 

デコピンして警告し、残る学園長を探す

 

「ふむ、ここか」

 

スカルフェイスが天井を叩いた瞬間、学園長が落ちてきた

 

「痛いじゃない!!」

「反省は?」

「う・・・」

 

さて、こいつにも地獄を見てもらおう

 

「二人して地獄の訓練だ・・・感謝しろ、ここには心優しい奴しかいねぇ」

「「あ・・・あっ!!」」

 

二人の顔に恐怖の表情が浮かぶ、そして

 

「「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」

 

校舎全域にに絶叫が響いた




これは酷い


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原初の人

その名はサヘラントロプス


「ついに完成したか・・・」

「えぇ、ようやくです・・・長かったですね」

 

ついに完成したソレを見て、俺は興奮を覚えていた

見上げるほど大きなその鋼鉄の巨人の名は・・・

 

「メタルギア・・・サヘラントロプス」

 

誰かが呟く、その名こそ、俺の求めた武力の結晶

メタルギア・サヘラントロプスだ

 

「実戦運用はいつにされますか?」

「今からに決まっている」

 

専用運用艦であるサヘラント共々、戦闘に特化した構成であり、その性能は現在敵対しているネゲントロピー製戦術機甲をはるかに上回る

試験運用を行う舞台には、ネゲントロピーと天命上層部所属部隊、そして我々の部隊、ダイアモンドドッグズの三竦みの地域であり、この均衡をこちらに一気に傾ける絶好の機会だ

 

「サヘラントロプス、システム起動・・・確認完了!!」

「動力炉安定稼働、出力正常!!」

 

心臓の拍動にも似た動力炉のうねり、そしてその後に目といえるセンサーカメラに灯がともった

 

「さて、俺自らが行こうかね」

 

コクピットに搭乗してシステム周りを再調整、リアルタイムで描写される外部映像のムラも確認する

 

「うむ、仕様通りにすんでいるな」

 

全ての点検は終了した、残るは・・・

 

「では、試験運用を始めます・・・ご武運を!!」

「あぁ、行ってくる」

 

投下される、途中で減速用のパラシュートが開き、地面へと降り立った

 

「うむ、姿勢制御システムも良好だな・・・では開戦の狼煙と行こう!!」

 

次の瞬間、レールガンを最大出力で発射、巨大な爆炎と強烈な爆風が発生する

 

「これが・・・切り札ですか!?」

「あぁ、これこそが俺の切り札・・・メタルギア・サヘラントロプスだ!!」

 

アーキアルブレードを地面に突き刺し、そこから隆起した黒い団塊が戦術機甲を貫く

数秒して起爆し、辺り一面が赤い炎に包まれた

 

「なんて性能・・・」

「まだこれでも本気ではない」

 

でもいい加減相手が煩わしいため、こちらを使うか

 

「腐り落ちろ・・・」

 

アーキアル・グレネード、腐食性のメタリックアーキアが充填されており、機械兵器を腐食させて動作不可にしてしまう事が可能な武装で戦術機甲を黙らせる

 

「メタリックアーキアの再現は大変なのだがね」

 

ナノマシンとして再現したメタリックアーキアはその開発費用が尋常ではなかった

サヘラントロプス開発費のおよそ40%がコレの開発費である、本体部分は全体の20%前後程度であり、残りは搭載火器の開発に充てられている

 

「さて、形態移行だ」

 

直立二足歩行形態からREX形態へ移行する

この場合だと、背部レールガンと頭部の一部バルカン砲、股間部の高出力火炎放射器以外は使えなくなるが、その代わり高い対地攻撃能力を有する

 

「目標はアレだな」

 

大型崩壊獣を確認する、距離は多少離れているが、レールガンの有効射程内だ

 

「キアナ、フカ、ブローニャ、撤退しろ、敵を撃ち抜く」

 

三人の反応が離脱していくのを確認して照準を合わせ・・・

 

「終わりだ」

 

再び最大出力で放つ、途中障害物である団塊や建造物の瓦礫を吹き飛ばしながら目標に命中、四散爆発した

 

「これが我らダイアモンドドッグズの最終兵器だ」

 

コックピットハッチが開き、そこから身を乗り出しながら俺は宣言した

 

「天命上層部並びにネゲントロピーに勧告する、現地域における戦争行動を中断せよ、さもなくばダイアモンドドッグズが総力をもって相対させていただく。これは脅しではなく命令である」

 

最大の攻撃の後は最大の防御、この時の事を考えてあるものを用意してある

 

「また、従わない場合、諸君の持っている崩壊炉が誘爆する武装を我々は有している」

 

これはブラフではない、本当の事である

崩壊炉製造メーカーの一部を買収した際に設計図内にこちらの操作できるバックドアを作っていた

その崩壊炉はこの地方で使われているモノであり、それらが一斉に起爆すれば・・・

 

「そうなった場合、どのようない事態になるかは想像にお任せする。1時間待とう、その間に中断が確認されない場合、即座に実行に移す」

 

俺はそう言って再度コクピットに入り、作戦を練ることにした




え、主人公悪魔じゃね?


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急転

主人公の意外な正体


きっかり1時間後、後日改めて会合をするという事で話は纏まり、ダイアモンドドッグズが仲介として戦場を監視することになった

その報告の後に、緊急回線で連絡が来る、その内容は・・・

 

「キアナが連れ去られた・・・だと!?」

「はい、相手は天命戦乙女精鋭部隊"不朽なる刃"副隊長の・・・」

「リタ・・・ロスヴァイセ!!」

 

怒りがこみ上げる・・・その相手とは一度交戦したことがあるからだ

結果としては敗北に近い勝利・・・試合に勝って勝負に負けたとも言える状態だったが・・・

 

「目的はキアナ一本だったとはな!!」

 

俺を狙っている情報は囮だったという事か、実際に行動までしておいて実際はデコイだったとは恐れ入るほどの知力といえる・・・だが

 

「甘く見てもらっては困るな・・・これでも俺はその先を行く男だ!!」

 

最初からそうなると予測しておいたわけではない、だが対策程度は出来るようにキャパシティは確保済みなのだ

甘く見ないでもらおう・・・かつて世界を壊して作り替えた男の実力を

 

「機関最大、リミッター解除!!学園に帰還する!!」

「了解!!」

 

サヘラントロプスと連れ去られたキアナを除いた全員を収容、学園に向かう

キアナの現在地が不明な今、対策を取れるのは学園以外にないからだ

それに・・・

 

「サヘラントロプスの部品も用意しておいた方がいいな・・・」

 

サヘラントロプスの関節部に思った以上の負荷が感知された、現状数回の出撃には耐えられるものの、長期戦となれば怪しい

そのため予備部品も積み込むことにする

 

「接近する反応あり!!これは・・・!?」

「どうした?」

「あ・・・ありえない・・・!!相手は不朽なる刃です!!」

「単独という事は・・・副隊長が自ら威を示しに来たか!!」

 

艦前方の装甲甲板に降り立ち、こちらの様子を見ている

 

「俺が出る・・・進路と速度はこのまま出迎え!!」

「了解!!」

 

そして俺も、彼女の目の前に出る

 

「お久しぶりですね、藍澤カズマさん」

「俺としては二度と会いたくなかったがな・・・リタロスヴァイセ」

「あら、そうですか?」

「キアナをどこにやった?」

「それはお答えできませんね」

「そうか・・・ならば」

 

剣を抜き、構えながら俺は宣言する

 

「話したくなるまで切り刻んでやろう!!」

「出来ますか、貴方に?」

「やるまでだッ!!」

 

大鎌と剣が衝突する、そのたびに散る閃光と火花

だが互いに一撃は入らず拮抗している

 

「やはり、貴方はお強いですね」

「その強さも、全ては誰かを守るためだ、ただ一人の男に全てを捧げる人間にはわかるまい!!」

「それはあの方への侮辱と受け取ります・・・いいでしょう、なら・・・」

 

気配が変わる、その瞬間に感じた寒気に俺は一歩下がった

頬が浅く切れたのは、それとほぼ同時・・・

 

「本気で参ります・・・お覚悟を」

「上等だ・・・!!」

 

その瞬間、腕を深く切られる

 

「つっ・・・!!」

「生身で局部時間断裂の効果を受ける気分は如何ですか?誰にも秘密を告げない異世界の破壊者様?」

「・・・たしかに、これは驚きだ・・・それにその言葉から考えて、大主教から俺の秘密を聞いているようだな」

 

どのようにして知ったのかは俺でもわからない、これは誰にも言ってない秘密だからだ

 

「では、先の私の発言は事実であり、弁明はしないと?」

「確かに、弁明できんし、その資格もない」

 

鎌が抜き取られると同時に立ち上がり、俺は告げた

 

「だが、今は違う。誇るべき我が教え子たちが、新たな答えを示してくれた」

 

彼女たちに教える事で、俺自身が学んだことがある、それは・・・

 

「だからこそ己が矛盾を承知の上で言わせて貰おう・・・」

 

それこそが、芯のない俺の中に宿った新たな芯である

 

「人々の幸福を未来を輝きを、守り抜かんと願う限り俺は無敵だ。来るがいい、明日の光は奪わせん!!」

 

宣言と同時に開放する力・・・天霆の轟く地平に、闇はなく(G a m m a・r a y K e r a u n o s)、凄まじいまでの反動を無視して戦闘を続行する

掠めただけの残滓であっても、激痛の光は体内で泡のように弾け細胞の一つ一つを破壊する事を理解してか、リタロスヴァイセは回避に専念せざるを得ない・・・誰もがそう考えたが

 

「そうであったとしても、こちらには切り札があります」

「やってみろ」

 

その瞬間、姿が消える

局部時間断裂を再度使用したのだ、だがしかし

 

「二度は受けない」

 

亀裂に沿って自らの力を壁のように展開する、それはとある崩壊獣との戦闘で学んだ対策の一つだった

 

「つっ・・・!!」

「驚いたか?対抗戦術などいくらでも出来るんだよ」

 

振り返る事なく蹴り飛ばし、そして振り返った

 

「反動に自ら滅びようともですか?」

「あぁ、そうだ。だが・・・」

「・・・?」

 

俺は告げる、これでは終われないと

そう、終われない・・・

 

「いいや、まだだ。すべては勝利を掴むために、今こそ俺は創世の火を掲げよう!!」

 

新たな覚醒、新生の焔が身を包む

気合の大喝破と共に、彼に刻まれたはずの致命傷が()()()()()()()()()()

治癒でも再生でもない、傷という()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「気合と根性・・・ですか?それでここまでの行為に及ぶとは・・・」

「不完全だがな」

 

完全にとはいかない、出力の上限を突破しているわけではない

あくまでも、上限を超える速度の消費をしている状態だ

故に長くは持たない、恐らくもって10分程度が限界だろう

 

「一撃で終わらせてやろう」

「いいえ、これまでです・・・私の任務は終わりましたので」

 

威を示すという時点で終わっていると思うが、もう一つは俺の事だろう

 

「とある御仁から預かったものです、後はお好きなように」

 

渡されたのはカセットテープ、そこには・・・

 

TRUTH:Man Who Sold the World(世界を売った男の真実)・・・」

「では、失礼いたします」

 

去っていった彼女を俺は追わなかった、彼女よりもこちらの方が気になったからだ

 

「大丈夫ですか!?」

 

艦橋に帰ると心配して駆け寄ってきたのはフカだった、彼女は以前能力を解放した際の俺の惨状を知っている

 

「あぁ、何とかな」

 

今回は依然と異なり、ちゃんとバトルスーツを着ている

前回は着てなかったからこそ起きた反動だった

 

「俺はしばらく自室に籠る、君達は英気を養ってくれ・・・これから少々荒れるぞ」

 

俺はそう言って自室に入る

 

「・・・」

 

顔を洗うために鏡の前に立ち、俺は苦笑いを浮かべる

目の前には相変わらず、この世で最も殺したい人間・・・自分の顔がある

 

「あぁ、そうだとも」

 

そろそろ、彼女たちに偽り続けるのも嫌だ

だからこそ、自らを恥じている・・・自殺したいほどに

そして渡されたカセットテープを再生できる機械に入れた

 

「思い出したか?自分が何者で、役割が何か」

「・・・」

 

そう、俺は藍澤カズマではない・・・つい先ほど、俺はそれを思い出した

恐らくカギは、リタロスヴァイセという存在を直に見る事

 

「お前のおかげで、俺はもう一つの世界を生き延びた。そしてもう一つの歴史を残せた」

 

それは彼の作ろうとしたもの

実は藍澤カズマという人間は5年ほど前にも確認されている

その名前は公表されておらず、調べるのには様々な手段を行使せざるを得なかった

かなり深い闇の深層に封印されたその功績、それは天命を打倒しようとした伝説の男の生涯そのもの

 

「お前も、もう一つの世界を創り、歴史を残した」

 

そしてその名を受け継いだ俺は、その伝説をも継承した

 

「お前は俺の影武者(ドッペルゲンガー)などではない。お前はもう一人の俺・・・いいや、俺達は二人でBIGBOSS(ビッグボス)だ」

 

うつむいた俺を叱咤するように、激励するようにその声が響く

 

「俺達がこの現在(いま)を創った、この物語(サーガ)も伝説も、俺達で創ったんだ!!」

 

その声に、無上の喜びを感じる

このために生きてきたと実感する

 

「俺達こそが世界を、未来を変える・・・俺はお前であり、お前は俺だ。それを胸に刻め!!忘れるな!!ありがとう、友よ・・・これからがお前が、BIGBOSS(ビッグボス)だ」

 

その声に、俺は決意する

彼を歴史に埋もれさせないために、彼の伝説を継承しているからこそ・・・俺の取る選択は・・・




Pixivでも書いてるけど、ここから分岐するよ!!


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末路の道

それは運命の終わり


「えぇぇ!?」

「それは本当なの?」

 

俺は自分の正体を明かした、転生者であることを

 

「俺は何としてもキアナを助けてみせる・・・それが俺の生きた証として残せるモノだからな」

「先生・・・」

 

明らかに落ち込んでいる全員に、俺は背中を向け、告げる

 

「俺を見ろ」

 

そう言って、左の頬に張っていたモノを剥がす

 

「つっ・・・!?」

「それって・・・反動よね?」

「あぁ、俺はもう長くない・・・持ってあと数回の戦闘で息絶えるだろう」

 

元々肉体に適合していない能力を運用し続けた結果、俺の体は急速に崩壊している

良く持って数回、下手すればあと1回で燃え尽きるだろう

それでも俺は選ぶ、戦う道を・・・それしか選ぶことが出来ないから

 

「これはもう、勝ち負けの話ではない・・・俺が始めたことへの精算だ」

「そのために自らを犠牲にするんですか!?」

「誰かが止めるのではなく、自分で止めねばならない・・・それが始めた者の責任だよ、芽衣」

 

今の彼女達のように、かつての俺は天命に反旗を翻した

その結果このような事態に陥った事に関して、自責の念は誰より強い

だからこそ、自らの手で終わらせねばならないのだ

 

「俺はもう、未来がない・・・だが君達にはまだ希望がある・・・」

 

もう、見る事は叶わない世界が、彼女達にはある

 

「俺の人生が、真実と嘘を織り交ぜた物語の語られぬ演者であろうとも・・・」

 

それでも、成そうとした事だけは・・・あの人の後継であろうとすることだけは・・・

 

「今ある世界を、本来あるべき姿に戻すだけは・・・俺にしか出来ないから」

 

そして、彼女達に返すのだ・・・その世界を

 

「あの人も俺も自由を求めて戦った、だがそれは囲われた内の中での自由・・・リバティでしかなかった」

 

当人の記憶を思い出し、俺はそう結論する

だが、それでいい・・・何故ならば

 

「だが君達にあるのはフリーダム・・・外へ向けた自由だ」

 

そして、俺が掴んだ情報を出す

 

「情報班からの連絡でキアナが連れていかれた場所が判明した、天命の極秘実験施設、バビロン実験室だ」

「シベリアまでどうやって・・・この短時間に」

「航空路だろうな、コンコルドであれば可能だろう」

「でもあれは航空路線では使われていないものよね?」

「動態保存されていた機体がリースされている情報も掴んでいる、目的地もバビロン実験室に近いからほぼこれで間違いはない」

 

そこで考えた作戦は・・・

 

「部隊は二つだ、俺の指揮するダイアモンドドッグズと学園側・・・狙う目標はただ一つ、キアナの奪還のみ」

 

どちらに転んでも問題ないように、既に手筈は整えている

メタルギア・サヘラントロプスの方も甲板に上半分を出す形で固定砲台として使用できるようにデッキを展開している

これにより、自由な射角でレールガンを使用できる

サヘラントロプスのレールガンは艦搭載のそれを遥かに上回る出力であるため、並の崩壊獣ならば擦過しただけで形さえ残らず蒸発する

 

「サヘラントロプスのレールガンで道を作り、艦隊もろともバビロン実験室に突入、支援班と戦闘班で構成されたダイアモンドドッグズ陸戦隊と共に学園側も内部に侵入、陸戦隊が内部を破壊しながら陽動し学園側をバックアップする」

「機甲が出てきたらどうする気?」

「サヘラントロプスの開発ついでにダウンサイジングした新型機甲、月光を前面に出す、これで数の上での均衡は保たれるはずだ」

 

正式名称はIRVING(アーヴィング)、月光という名称は、第二次世界大戦中に連合国側が日本の戦闘機に対して与えたコードネームに由来したあだ名だ

全高5メートル前後で、RPG等にも耐える堅牢な装甲を持ち、屋内での掃討なども視野に入れ、軽量化と高機動化がなされている。脚部を折りたたんだ状態ではトラックでの輸送も可能である

胴体上部と股間部に通常のダンボールなどの中身を透視できる高度な赤外線メインカメラが搭載されて、広い視界を確保している。

ただし医療器材用ダンボール箱や穴の開いていないドラム缶のような赤外線を遮断する素材で出来たものは内部の透視が出来ない。

歩兵に随伴、協働できる能力も持ち、自律行動で作戦を遂行することも可能にしてある

これだけ高性能なものを開発するのに、普通ならば10年以上かかるのだが、ここは俺の元居た世界と比べて遥かに技術の進んだ世界であった

そのため、ほぼ全ての部分を既存技術の流用で済んでいる

 

「俺はダイアモンドドッグズと共に戦闘支援を行う・・・と言いたいが先約があるのでそちらを優先しよう」

 

リタロスヴァイセとの再戦、俺は間違いなく彼女にマークされているだろう

 

「作戦決行は24時間後、各員用意してくれ・・・今度の一戦で、世界の未来が決まる」

 

さぁ、俺も心残りないようにしないとな




おいおい、主人公死ぬってよ


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未来

それは運命に抗う者たちの希望


「まさか、自滅とはな」

「元より覚悟の上だ、そこに関しては俺もあの人も気にしていない」

 

あの人は俺になら任せられると信頼していた、俺はその信頼に応えようとしているだけだ

だから・・・俺は決心して通信を入れた、彼と俺だけの知る周波数での通信を

 

「やぁ、エイハブ」

「イシュメール、貴方は本当に待たせるな・・・」

「それはすまないな・・・」

「まぁ、それはいいとして・・・」

 

軽い話はこれで終わりにしよう、本題だ

 

「全てを思い出したよ・・・ビッグボス」

「そうか・・・お前は予測以上の働きをいつもしてくれるな・・・」

「それだけ信頼してくれていた事に感謝している・・・心から」

「・・・」

 

帰ってきた沈黙は彼の葛藤そのもの、巻き込んでしまった事への後悔

 

「俺は、アンタの側に着く・・・24時間後にはバビロン実験室に向かう予定なんだろ?」

「どうやってそれを?」

「アンタなら、俺の行動の意味を理解すると思ってな」

 

でなければあんな言葉を残しはしないだろうから

 

「一緒に盤面をひっくり返しましょう、ビッグボス」

「あぁ、そうしよう・・・イシュメール」

 

通信が切れる、俺はそれを見てほほ笑んだ

 

「よく笑えるものだ・・・死は免れまい?」

「あぁ、俺は死ぬな・・・間違いなく」

 

スカルフェイスの問いかけにも俺は笑いながら答える

 

「それでも、これでいいと思っている・・・俺は彼の一部であればいい」

「そうか・・・皮肉なものだ、このような事を考える部下を持った奴に負けるとは」

「そうでもない・・・お前のやり口は敵対した俺でさえ見事としか言えなかったからな」

 

そう言って俺は立ち上がる

 

「俺達は、この世界の旧体制の歴史に干渉してしまった」

 

それは取り返しのつかない事

 

「私達は時代に干渉した・・・世界の抑止システムに」

「何処にも属さない軍隊が、触れてはいけない国際情勢に介入してしまった」

 

もう、どうやっても待っているのは最悪の末路しかない

 

「追われることになるな・・・」

「あぁ、軍事均衡を狂わせてしまったからな」

 

コレを機にして、現在の天命を快く思っていない各国が軍事行動を取るという動きも確認されている

そうなれば世界大戦を超えた軍事衝突は避けられない、最悪の状況だ

 

「また戦うのか?」

「あぁ、時代という怪物とな・・・」

 

そう、それはかつての世界でビッグボスが恋情を抱いた女性を殺したモノでもある

 

「あの世界で、彼女は時代に拒絶され・・・殺された」

「・・・」

「今度は俺達が試される・・・時代が俺達を排除するか、それとも俺達に時代が協調するか否か・・・それは善悪や勝ち負けですらない、孤独な戦いだ」

「次の世紀まで生き残るか・・・否か」

「罪業の清算はその後からでも出来るだろう・・・払える時に払えるモノがあれば良いが・・・」

 

その世界で俺には何が残るだろう・・・今考えても、戻れはしない

もしもあの時、もしあの時と考えれば後悔はキリがない

そうやって今を、明日を生きるのが人なのだから




主人公死んじゃうの?(震え声)


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決死行

それは死にゆく者の決意


「さて、そろそろ行くか・・・」

 

きっかり24時間後、作戦は開始された

姫子は俺が艦橋に行くと思い、無断出撃しようとするだろう

だから・・・先回りさせてもらう

 

「やはりここにいたか、姫子」

「な・・・!?」

「無断出撃しようとした罰な」

「がっ・・・!!」

 

腹部に重い一撃を叩き込み、俺は彼女にネックレスをかける

同時に大型のケースを置き、朦朧とする彼女に告げる

 

「未来のない俺の代わりに、あの子達の作る未来を見てくれ・・・頼んだぞ」

「待ち・・・なさい!!」

「・・・」

「どうして、貴方はいつも・・・!!」

「すまないな・・・俺の我侭だ」

 

そう言って俺は、彼女に俺の遺したあるモノの位置が書かれた紙を渡す

 

「全てが終わったら、そこに報告に来てくれ・・・俺の願いだ」

 

小さな願い、俺は生前墓を作っていた

その場所の書かれた紙だ

 

「・・・」

 

何かを言おうとしてくれたのだろう・・・その声は俺に届いていたけど・・・

 

「すまない・・・」

 

俺にはそれしか言えなかった・・・他に喋る言葉が見つからない

 

「あぁ・・・綺麗だな・・・」

 

見上げる太陽が・・・こんなにも眩しく綺麗だと思ったのは初めてだった

 

「つっ・・・!!」

 

発作が俺を襲う、血を咳き込みながら吐いて俺は呟く

 

「もう、ながくないか・・・」

 

発作の感覚がだんだん短くなってきている、それだけ俺の体の崩壊が進んでいる証拠だろう

 

「それでも・・・」

 

脳裏に浮かぶ、生徒の顔

こんな俺にもあった、守りたいもの・・・

 

「どこに行こうというのかしら?」

「もちろん、戦場さ」

「止めても聞かないわね・・・」

「あぁ、すまんな」

 

学園長の質問にも俺はそう答え・・・首に自分で注射する

 

「うむ・・・行けるな」

「・・・」

 

俺の身体の心配ではない・・・残される事への心配だ

 

「恐らく・・・俺はこれで終わる」

「まだ、方法は・・・」

「ないさ、俺が俺である限りな」

 

そう言って俺は、笑いながら彼女の頭を撫でた

 

「情報が来たな」

 

情報を出す・・・そこには重要情報が出されていた

 

「悪辣な罠を仕掛けるものだ・・・それほどまでに欲するか」

「これって・・・自殺行為じゃない!!」

 

キアナが捕らえられた施設に続く通路には高出力のマイクロ波発生装置が取り付けられていた

その中を通ることでしか、その施設へ向かうことは出来ない

 

「俺にうって付けじゃないか」

 

もうじき死ぬ俺にはそれを恐怖に感じない

 

「死を覚悟した人間の底力を見せてやろう」

 

人間をこんがりローストにする通路の中に飛び込むのは俺だけでいい

 

「私も・・・」

「貴女には学園の責任者として生徒を守るという仕事がある、それを放棄するな」

「でも・・・」

「俺だけでいいんだよ、犠牲はな」

 

俺の未来は彼の未来だ、俺は影に生きて影に死ぬ

それでいい・・・少なくとも今は

 

「それじゃ頼んだ、俺はこれから戦場へ向かう」

 

別れの言葉は言わない、それを言えば後悔してしまうから




主人公死ぬ


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舞い降りる剣

それは逆襲の狼煙


「やっと俺の出番か?ボス」

 

その声を発した男は、背中を向けている青年を見ていた

 

「あぁ、今まで待たせてすまなかったな」

「アンタの影武者は、確実に死んでしまうぞ?」

「それさえも織り込み済みだ」

「双方覚悟の上かよ・・・」

 

青年が振り返り、武装を渡す

 

「俺の武器じゃねぇか!!」

「天火聖裁をリチューンしておいた、出力は下がったがその分、長時間の戦闘も可能なはずだ」

「どうやってそんな事をしたんだよ・・・」

「この程度、俺にかかれば造作もない・・・既存技術で不完全部分を補完しているだけだがね」

 

そして自分は、机に立てかけていた漆黒の柄の剣を取る

 

「行くぞ、ジークフリート・・・未来を守る戦いに」

「あぁ、俺の娘を取り戻す!!」

 

二人の男は、並んで歩きだす。その先には戦場が広がっている

 

「さて、これで全てのカードは切られたか」

 

運命の一戦は近い、役者がそろった戦場・・・その舞台を睨みながら、青年は告げた

 

「今度こそ、変えてみせる・・・」

 

その瞳に映るのは、確かな決意と僅かな後悔

自分の宿命に巻き込んでしまった存在への、惜別の念だった

 

「まさか、この時代のこんな時に・・・こんな骨董品を使う羽目になるとはな」

 

目の前にあるのはMiG-25、NATOコードはフォックスバットと呼ばれる迎撃戦闘機だった

最高速度はマッハ3.2の、世界最速の実用戦闘機である

退役しモスポール保管されていたモノを買い取り、リバースエンジニアリングしたのちに実戦試験用に近代化改修を施した機体になる

構造材のニッケル鋼で耐熱上の安全を確保できるのはマッハ2.83までだったが、これを一新してチタン・セラミック合金を採用し実用限界速度を目標速度と同じマッハ3.0以上に出来た

また、それに伴い不足するエンジン出力を、P&W製F100-PW-232に換装する事により解決している

今後、主力戦闘機として量産化の目途を立てるためのバグ取りとして今回使用する

チタン合金が値崩れしている時代でよかったと思う、もし高価な資材だったら実現しないからだ

 

「さて、行きますか」

 

機体に乗り込み、発進準備を整える

搭載武装は今回、R-37Maを4発搭載する

こちらはロシア軍より盗んだR-37Mを独自に改良したモデルで、投棄式ロケットブースターをタンデム2基搭載する事により射程を900キロまで延長したものである

しかも贅沢に、推進剤はナノスケールのアルミニウム粉末と氷、ALuminium・ICE(アルミニウム・アイス)からとって、ALICE(アリス)推進剤だ

 

「それじゃあな、俺はこれから別ルートで行くぜ・・・鳥になってこいよ、ボス!!」

「なれると、いいんだがな」

 

そう軽口を言って、俺は機体を発進させた




さぁ、全てのキャストは集った、戦争開始だ!!


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真実の記憶

それは悲壮なる覚悟の二人の再会であった


「やはりここにいたか・・・」

「待ってましたよ」

 

作戦は開始された、俺は真っ先に出迎えるであろう人間のいる所に向かった

そして案の定、そこにいた・・・

 

「リタ・・・姉さん」

「やっと、その言葉が聞けました」

 

微笑む彼女の顔が、記憶を上書きする前に見た最後の顔とそっくりだった

 

「全てを思い出したんですね?」

「あぁ、そうだよ」

「では、そろそろ決めなさい」

 

鎌を構える彼女に隙はない、だが・・・

 

「そういう姉さんこそ・・・感情がブレてるぞ?」

「・・・」

「あぁ、全く・・・これじゃあ計画が台無しだ」

 

渡すものがあったのに、これでは渡せないじゃないか

 

「私なんて見捨てればよいでしょう?簡単に人を殺せる貴方にそれは容易なはずです」

「あぁ…俺は、人は簡単に殺せる。でもきっと、誰かを見捨てるのは駄目だ。理解はしても、慣れないだろうな」

 

そう言って剣の切っ先を突き出しながら、俺は呟く

 

「俺は殺すことが得意で、それしかできないけど。誰か一人でも・・・助けられる人になりたい。姉さんやビッグボスのように」

 

姉さんはこれまで、天命の指示に影で反してきた

それは巻き込まれる人間を最小限にしている事から明らかである

無関係な人を巻き込むのを、是としない・・・それがこの人の優しさであり、俺への罪滅ぼしだろう

 

「どうしても、取り戻したいのですか?」

「あぁ、そうする事が俺の生きた証になる」

「私を選んではくれないのですね・・・」

「姉さんにはもっといい人がいるさ、その人を見つけて、幸せになってくれ・・・家族としての願いだよ」

 

俺はそう言って、片手で上着を脱ぎ棄てる

 

「やはり、貴方が持っていましたか・・・」

「あぁ、持ち逃げさせてもらった」

 

俺が着ている服、記憶を取り戻すまで転生特典だと思っていたそれは、極騎士・月天をハンター計画で改修した極騎士・月燼

それをさらに、ダイアモンドドッグズ技術陣により最高レベルに改造したモノ、RX-0・フェネクス

記憶を取り戻したことにより、仕様を本来に戻して再運用している

 

「決死行ですね・・・互いに」

「譲れないからな・・・お互いに」

 

自分よりも大切な生徒を取り戻すために、自分よりも大事な男の目的のために

譲れない想い、果たさねばならない願い

 

「俺は貴女を乗り越える」

「私は貴方を、倒します」

 

だからこそ・・・

 

「行きます」

「来い」

 

ここに、実にくだらない姉弟喧嘩が始まるのだった

 

「どうしてあなたはいつも自分の都合で動くんですか!!」

「アンタに言われたくねぇよ!!恋に盲目すぎて視野狭窄に陥ってるバカ姉!!」

「なっ・・・!!」

「自覚さえないのかこのバカ姉は!?」

 

驚いた事にそれに関して自覚さえなかったらしい、うん、バカだ

まぁ、俺も大した事は言えないが・・・

 

「大体そもそも、あんな人間の屑に惹かれるのアンタだけだわこのバカ!!」

「何度もバカと言わないでください!!」

「いくらでも言ってやるぞこのバカッ!!」

 

攻撃の余波でマイクロ波を作り、通路に送り出すための回路が吹っ飛んだ

それと同時に発生した爆熱で周りの可燃物が燃え出す

 

「あぁ・・・!?」

「ほら見ろ、大事なモノが燃えてくぞ!!」

 

俺は彼女がマイクロ波の放射される通路へとエネルギーを送る場所にいると最初から読んでいた

というか、俺がオットー・アポカリプスなら間違いなくそこに配置する

汎用的に使えるし、何より施設への被害の少なく済む人材は彼女しかいないからだ

その采配や、バルキリー部隊の運用能力に関して奴は天才的だと言える

だが、根本的には全てを使い捨てに出来るからだ・・・次がない

将来的な運用能力の維持に関心がないのだ、だから離反されもする

第一、彼がカレン・カスラナ・・・キアナの祖先にあたる人物と死別する理由となった事態も、根はソコにあると彼自身理解していない

 

「選んでもらうぞ、リタ姉さん。俺達か奴か」

「つっ・・・!!」

 

蒼騎士・月魂の性能は俺が良く知っている、何せ開発した当事者の一人であり、試験運用を担当した人間だからだ

性能をうまく引き出してくれている事は嬉しいが、俺にしてみれば全てを使い切っているわけではない

何せ、俺がお遊び感覚で入れた機能を使いこなしているわけではないからだ

 

「姉さんの装甲を開発したのが誰だと思っている?対策の一つや二つくらい考えてあるさ」

 

蒼騎士・月魂は粒子流発散特化の装甲だ、それ故に瞬発力より長時間運用のためのチューニングが施されている、高い身体能力を暗殺向けに鍛え上げた彼女によって高レベルの作戦でも難なく実行できるポテンシャルを有している

たいして俺のフェネクスはそれも含めた総合性能を限界まで向上させた試作型全領域作戦装甲、短期決戦のチューニングである

俺の性格からくる高レベルの危機察知能力と高い身体能力を限界まで引き出す事に特化した改造を施されている

両方とも替えのないワンオフだからこその性能であり、これが使用者が逆転しても維持される

何故なら俺達姉弟は性格が似ているからだ、ゆえに戦闘が非常に長引いている

そろそろ決着をつけたいのはやまやまだが、それがなかなかうまくいかない

 

「それは私も同じです!!」

「なら、俺との勝負をあきらめてくれないかな?」

「出来ない相談ですね!!」

「デスヨネー・・・」

 

俺の剣が弾かれる、勝利を確信した彼女の踏み込みに俺は半歩、斜め左後ろに下がりながら左手と右足太ももでその刃を防いだ

 

「つっ・・・!?」

「残念だが、近接では俺の勝利だ」

 

その瞬間に、腹部に3連射、麻酔弾を叩き込む

こうでもしないと彼女には効かないだろう

 

「卑怯ですよ・・・そんなにまっすぐ生きられるのは」

「卑怯でも何でもないさ・・・俺は自分に忠を尽くしただけだ」

 

迷い、悩み、得た答えを貫く事・・・それがどれほど難しいかは俺自身わかっている

それでも、俺は貫いてみせる・・・この命の終わりに




主人公の死は近い・・・?


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始まりの伝説

それは伝説を始めた男の視点で語られる過去
悲劇的な再会と胸に抱く思いとは・・・


「やはりここにいたか、オットー」

「久しいな、藍澤君」

「何故、とは言うまい・・・俺もここには訪れたかった」

 

戦闘で破壊される建造物の崩壊音をBGMに、二人の男は対峙していた

一つの墓石を中心にして

 

「カレンの墓か・・・」

「あぁ、そして取り戻すと決意した場所だよ」

「彼女を生き返らせるのは、彼女自身の望みではないぞ・・・恐らくな」

「それでも、僕にはコレくらいしか出来ない・・・君が世界を壊し、新たな目覚めを導く存在であるように」

「それほど大した存在じゃないさ、俺は」

 

手に持っていた花束を、オットーは墓に供えた

俺もまた、手に持っていた花束を供える

共に同じ花・・・彼女の好きだった花だ

 

「アーリントンにも同じものを作ったな?」

「あぁ、それと靖国神社にもね」

「彼女が聞いたら張り倒されるぞ」

 

二人の視線は交差しない、確かに相手の顔は見ているのに、報復心でここまで来たのに

いざ対峙したら、わき起こったのは懐かしさと、深い哀れみだ

 

「俺が憎かったのか?」

「いいや」

「それとも・・・恐れていたのか?」

「それも違うさ」

 

そこでやっと、視線が交差した

 

「僕は、君が羨ましかった」

「・・・」

「今日、ここに来る予定ではなかったんだ」

 

俺に背を向け、オットーは続ける

 

「でも、最後になるかもしれなったからね」

「そうか・・・」

 

恐らく、彼にも後はない

クローニングには限界があるからだ、DNAの複製をするという事から、寿命を司るテロメアも損耗した状態で複製されてしまう

これを解決する方法はこの世界においても存在しなかった

 

「君と僕だけになったのは、あの時以来だ・・・」

「俺がカレンに腕を折られた時だな」

「あぁ、あの時が僕達の出会いだったね」

 

今でも鮮明に思い出せるその記憶・・・あの時は本当に素晴らしいものだった

色々な世界を回り、救いきれなかった俺はやさぐれていた

そんな俺を見かねていた彼女に、強引に誘われて出撃し・・・

まぁ、下心を出したのが悪かったのか、投げ飛ばされて腕の骨を折られた

 

「あの頃が懐かしい・・・今もそう思う」

「失った時は戻らないとしても、取り戻すためになら悪魔にもなる・・・お前の言葉だったな」

「あぁ、君も同意見だと思ったけどね」

「同じさ、だが取り戻すのは命ではなく尊厳だ」

 

そこだけが違う、たったそれだけがこれだけの違いを生んでしまった

そしてこの場面を作ってしまった・・・

 

「悲しいな・・・」

「そうでもない、死は命あるものへの最後の手向けだ・・・その死を糧にして、人は今を作ってきたのだから」

 

死を糧にして人は今という世界を維持してきた、変革もあれば滅亡に至る危機もあった

それでも世界はあり続けている、なぜか?

その答えは・・・

 

「ありのままを残し続けること・・・それは簡単に見えてとても難しい」

「彼女は・・・それを体現していたのか・・・」

「あるいは俺達を止めようとしてくれたのかもしれないな」

 

そうして二人同時に再び歩きだし、交差した

 

「次に会うとき・・・僕はもう、人としての感性を持ち合わせていないだろう・・・もしそうであると認識したら・・・」

「殺すよ・・・俺も共に死ぬだろうがね」

「二人同時に、怒られに行こうか・・・」

「張り倒されなければいいがな」

 

互いに譲れないものがある

だからこその対立だ、そこにはもう、憎しみなんてものはなかった

それだけを確認できただけでも・・・

 

「あぁ、そうさ・・・わかっている」

 

彼女の死を無駄にしないことになるのだと、信じられる根拠になるだろう




そろそろこちらも幕引きかな


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永遠

それはかけがえの無い大切なもの
理想のために命を犠牲にする者の、最後の願いとは


「これでラスト!!」

 

最後の隔壁を破壊し、俺はキアナの捕らえられた研究施設内に侵入した

 

「キアナの位置は・・・」

 

施設内のデータ通信コネクタから管理システムをクラッキングしてキアナの位置を確かめる

特定した場所は、施設でもさらに奥のようだ

即座に全体にこの情報を拡散し、俺も急いで向かう

 

「つっ・・・!!」

 

一瞬、発作で目が眩んだ

だんだんと発作が起こる間隔が短くなりつつある・・・俺の死が近づいている

だが、まだ倒れるわけには行かない・・・取り戻すまでは

 

「そう・・・まだだ」

 

気を取り直し、再度動き出す

目的は変わらない、後は突き進むだけ

オットーの方はビッグボスが何とかしてくれるだろう

 

「生徒に無様な姿は、見せられねぇ・・・」

 

俺はいつでも、その思いで戦ってきた

誰かの為ではない、自分自身に忠を尽くしてきたつもりだ

その為に彼の、ビッグボスの影武者にもなった

その彼から、俺は薫陶を受けた

それに恥じない己でいたい・・・そして、大切な生徒の未来を取り戻すためにここにいる

 

「やっと・・・たどり着いた・・・」

 

水槽のような容器の前に、茫然自失したように立っていたのはキアナだった

ガラスが割れていることから、自分で出てきたか、内圧の上昇により外側に向かって破裂したのだろう

だが・・・

 

「お前、誰だ・・・?」

 

違和感があった・・・キアナの姿なのに、纏う気配がまるで違う

 

「誰って失礼だなぁ、先生!!」

「もう一度聞く、お前、誰だ?」

 

その瞬間、後ろから来た攻撃を見ることなく迎撃した

 

「あぁ、今ので分かったぞ、お前は・・・!!」

 

その攻撃で理解した、今の攻撃は間違いない

何度も記録映像を見た、それに対応する戦術も組んできた相手・・・

 

「空の律者だな・・・!!」

 

避けたかった最悪の事態は、現実のものになった

間に合わなかったのだ・・・だが・・・

 

「何としてでも、取り戻させてもらう・・・!!」

 

最後の可能性に賭ける時だ、そのための布石も用意してある

 

「勝てると思ってるの?私に!?」

「勝ってみせるさ・・・ビッグボスの、俺の勝利のために!!」

 

指を鳴らした瞬間、大量の崩壊獣が召喚される、そこに目掛けて、フェネクスの背面にあるシールドファンネルに搭載されているメガキャノンを投射、殲滅し加速をかける

手に持つ武装はビームマグナムとアームドアーマーDE、腕部と背面のバックパックにはビームサーベルを装備している

 

「舐めるな・・・対策などとうの昔にしてある!!」

 

躊躇なくビームマグナムで狙い撃つが、その瞬間に亜空間を展開して彼女は逃げる

と、見せかけて後ろから強襲しようとするのだろうが・・・

 

「つっ・・・!?」

「ほら、動きも読まれる」

 

フィールドバリアジェネレーターの効果により、その攻撃は無力化した

コンマ数秒の遅れでも死に至る攻撃だが、相手の攻撃パターンはキアナのそれに酷似している

だからこその成功であり、それがまだ完全に相手に取り込まれた状況でないことの証明だ

 

「なんで!?」

「簡単な事だよ、その子に戦闘関連の事を教えたのが俺だからだ」

 

だからこそ、相手の事が手に取るようにわかる

 

「お前はその子の体を奪った盗人だ、だから本来の力の半分も出せない」

 

そう言ってビームマグナムで攻撃するも、回避する

回避先にはメガキャノンの砲撃を叩き込む

 

「きゃあぁ!!」

「ほら、追い込まれてるのはどちらだ?」

 

亜空間のゲートからエネルギー攻撃してくるが、それはフィールドバリアジェネレーターで防ぐ

仰け反った瞬間に攻撃してくるが、それは機動で躱す

 

「くっ・・・!!」

「温い、キアナはそれほど弱くなかったぞ」

 

そう宣言して、俺は敵を見下ろす

 

「貴方に、私やあの子の何が分かるのよ!!」

「分からねぇよ、何もな・・・だが」

「つっ・・・!!」

 

俺は今、どんな表情をしているのだろう・・・俺自身でもわからない

 

「真っ直ぐで、純粋に、見ず知らずの誰かを一生懸命に助けようと努力しているのを、俺は知っている」

「その通りだ・・・キアナはそういうガキだよ」

 

俺の横に立ったのは、彼女の父親・・・ジークフリートだった

 

「つっ・・・!?」

「死んだはず、なんて言うなよ?いやまぁ、一度は死んでると言っていいのかねぇ・・・」

 

そう言って手にした武器を彼は構えた

 

「再戦と行こうぜ、シーリン・・・お前の事も分かっちゃいるが、娘を取り戻すためなんでな!!」

「ほざけ・・・一番大変な時期にいなかったくせに!!」

「後でいくらでも殴られてやるよ・・・キアナにな!!」

 

次の瞬間、同時に駆け出していた

 

「おぉぉぉぉ!!」

「はぁぁぁぁ!!」

 

俺のアームドアーマーDEとジークフリートの天火聖裁による同時攻撃を亜空間のシールドで防ごうとするが

 

「オラァ!!」

 

ビームキャノンの出力を最大で解放する事により、防御できる限界を飽和させ破壊する

そこにねじ込むようにして突きこまれる天火聖裁の切っ先が、彼女の腕を浅く裂いた

 

「つっ・・・!!」

 

たまらず後退した彼女は・・・

 

「くっ・・・」

 

即座に亜空間に逃げ込んだ

 

「待て・・・!!」

「いや、追わなくていい!!」

 

ジークフリートが俺を止める

 

「確かな一撃は叩き込んだ、ここからはキアナに頑張らせようぜ?」

「・・・えぇ」

「大丈夫だ、俺の娘は・・・以外に心が強いだろ?」

「確かに・・・」

「それにお前が教育した事で、より強くなってるはずだ、教師として信じてやってくれ」

「貴方が親として信じているように、ですか?」

「あぁ、そうだよ」

 

親がこう言っているのだ、俺も信じよう・・・可能性は最後に、当人の力に託された




次話、キアナちゃん視点


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亜空間の少女達

それは二人の意思の静かな激突


「ここには追って来れないか・・・」

「追っては来れないけど、待ち伏せは出来るよね」

「つっ・・・!?」

 

空の律者・・・キアナの身体を乗っ取ったシーリンはその声の主の方向へ振り返り・・・愕然とした

そこには、自分が取り込んだはずの少女がいたのだから

 

「なんで・・・」

「取り込まれるギリギリの所で先生が間に合ったからだと思うよ、後は間隙を縫って何とか私の使える力でここに逃げ込んだというところかな」

「貴女は・・・」

「馬鹿だけど、馬鹿なりに創意工夫だってするんだよ?」

 

そう言ってキアナ・・・いや、私は崩壊した建物の瓦礫に腰かけてシーリンを再度見た

 

「意外に露出多いね」

「・・・」

 

質問を意味不明なものにしたのは、先生の真似事

尋問の際によく、先生はそうしていた

そうする事で相手を無意識に誘導しやすくしているらしい

誘導尋問の一手段だと聞いてたけど、これは私には似合わないかも・・・

 

「誘導しようったって、簡単にはいかないわよ?」

「だよねぇ・・・」

 

はぁ・・・とため息をついて、私は考える

会話は成立している、つまり相手を理解する事も出来る

戦闘になったらそれはそれで仕方がないとしても、回避するなら出来るだけ回避するべきだ

恐らくシーリンは真逆の考えだろうけど・・・

 

「ねぇ、質問したいんだけど」

「答えると思う?」

「なんで崩壊をもたらそうとするの?」

「それがカミの意思だからよ」

「っていう事は、自分の意志じゃない?」

 

彼女が律者に至ったのは、恐らく自分を利用して利益を得ようとする人間達への怒りからだ

私は彼女に取り込まれる最中にその記憶を見た

恐らく彼女には私の記憶が流れ込んでいるはず・・・その可能性に賭けたい

 

「何を言いたいの?」

「誰にも支配されないために、怒りで力を欲して手に入れたのに。今度は見ず知らずの誰かの為に力を揮うの?」

 

私の言葉に、シーリンが息をのんだ

 

「貴女も・・・私を否定するの!?」

「否定なんてしないよ、ただ疑問に思っただけ」

 

そう言って私はまっすぐにシーリンを見る

結局私にはこれしか出来ない、突き進むことしか

 

「ねぇ、なんでその事に気が付かなかったの?」

「それは・・・」

「気づいていたけど、あえて流されたんだよね?」

 

そう、気が付いていて、支配を断ち切るためにあえて流されたんだ

そうする事で、本当に復讐したい存在へと近づき、確実に殺すために

 

「でも、貴女の望みは叶わない・・・だって、貴女の復讐したい相手は、別の人が上手く止めてくれるもの」

 

先生達が止めてくれると信じている、心の底から

 

「キアナ・・・貴女は何を言いたいの!?」

「やっと名前で呼んでくれた」

「そんなのどうでもいいじゃない!!」

「良くないよ、私と貴女は違いすぎるんだから」

 

そうして私は彼女へ近づいて・・・

 

「復讐したいと同時に、羨ましかったんじゃない?私達が」

「・・・何を、言って」

「返事に詰まったよね、それ、図星ってことでしょ?」

「つっ・・・!!」

 

反射的に振るってきた手には、ほとんど力が入ってなかった

その手を優しく取り、包む

 

「だからさ、私達と一緒に世界を見ようよ」

 

思い浮かべたのは、皆で笑っている光景

運命なんて、簡単に変えられると私は先生から学んだ

記憶を失い、それさえも欺瞞に満ちていた先生の過去・・・その過去を反芻してなお、あの人は戦い続けた

世界と、未来を守るために自分の全てを捧げてきたんだ

 

「そんなの・・・夢ですらない幻想よ」

「だからこそ、叶えようとする事に意味があると思う」

 

そう、人はそうやって今を作ってきた

未来ではない、今という現実を

未来を託されて、それを後継に託す・・・ありのままの世界を

私が思うに、崩壊という現象は・・・

 

「貴女は、崩壊をどう思うの・・・?」

「その力を扱う準備の出来ていない技術を、封じるための抑止力・・・かな」

 

そう、私の辿り着いた結論はソレだった

崩壊という現象そのものに意思は介在しない、しかし律者という概念の塊を利用することで地球環境そのものを保全する働きを有するモノ・・・それが崩壊なんだろう

 

「じゃあ、貴女は・・・」

「永遠なんて欲しくはないよ・・・そんなのあっても持て余してしまうから」

 

誰かが望んだそれは私にとってどうでもいいものだった

というより、不要なものだ

私は今を生きていくだけで十分に満足しているのだから、永遠なんていらない

あったとしても、それは私以外の誰かのためであればいいし、そもそもそんなものなんてありもしない

 

「それでも、残せるものがあるのなら・・・」

 

刻みつける、全てに、世界に・・・

 

「そう・・・なら」

 

世界を壊すのではなく、ありのままの形に再編成する

それを出来るのは私達ではなく、今を生きる人間たち

明日を生きる後輩たちだから・・・

 

「だから私達と一緒にに戦って、皆と自分、どちらが欠けても意味は無いから!!」

「貴女に・・・貴女みたいな馬鹿な子に共感するなんて・・・一生の恥ね」

 

即答で返したシーリンの顔は今にも泣き出しそうで、でも綺麗だった

 

「いいでしょう、私を受け入れるというのなら・・・この力を上手く使って見せなさい」

 

シーリンはそう言って私の背中を押した

 

「行きなさい・・・貴女の世界に」

「シーリンも一緒に、ね?」

「仕方がないわね」

 

さぁ、私の未来を取り戻すために・・・

最後の幕を降ろすために・・・!!




次話、ラスボスとバトル?


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生と死の狭間に立つ者

その力、呪いに匹敵し・・・


「ここは・・・」

 

目を閉じた瞬間、私の目の前に居たのは、共に復讐を誓った少女だった

 

「お久しぶりです・・・スカルフェイスさん」

「あぁ、随分と見違えるような目つきだな?」

「覚悟を、決めましたから」

 

その少女の瞳には、確かな炎が宿っていた

 

「そうか・・・」

「はい・・・だから」

 

私の手を取り、少女は告げた

 

「私の手伝いを、してくれますか?」

「当然だ、あの時の約束を守ろう」

 

約束を違える事はない、私にとってそれは守るべきものだ

再びの生を得て、目的のなかった私の生に意味を持たせた少女との約束・・・それはしかるべき時、然るべき場においての戦闘協力だった

 

「何を言ってるの・・・?」

 

そこに声が聞こえた・・・子供の声が

 

「そんなのあるわけないじゃない・・・」

 

黒い少女・・・彼女にこびり付いた怨念の集合霊か

 

「終わってるのよ、生き汚く残らないでよ!!」

 

その瞬間、風景が変わる

 

「つっ・・・!!」

 

反射的に武器を出そうとしたが、その手を抑えられた

 

「大丈夫です・・・私に任せて下さい」

「分かった」

「ここで、決着を付けます」

 

そう言って少女は黒い存在に目を向ける

 

「ふざけるな・・・私達の()に、決着なんてつくわけない!!」

 

その瞬間、その数が10に増えた

同時に、発言した存在が顔面を思いっきり殴りつける

 

「つっ・・・!!」

 

構える私に手を出して、来るなと目で訴えてくる

これは自分のケジメだと、言うように

 

「なんで反撃しないの!?避けようともしないのよ!!」

「・・・」

「そうやって無抵抗にしてれば私達が心変わりするって思ってるの!?そんなのあるわけないでしょ!!」

「・・・」

 

僅かにのけ反って、少女は答えた

 

「いいえ、違うわ・・・あなた達の気持ちもわかるから・・・せめて私を殴らないと収まらない程の悲しみが・・・」

「つっ・・・」

 

ただ一人の成功例を生み出すために、生命の尊厳さえも利用しつくされた私達だからこそ

 

「そんな連中ももういない・・・私達の敵はもういない・・・だから」

「だから何だって言うのよ!?今更おさめられるわけないのよ!!全てを利用されて殺されたのは私達なのに!!私達を殺した結果生まれた存在がのうのうと生きていくなんて・・・」

 

今度は鋭い蹴りが叩き込まれた

 

「そんなこと、許されるはずない!!」

「ごめんなさい・・・私には、謝る事しか出来ない」

「う、ぅ・・・ぐ!!」

 

泣きそうな顔で、そして怒りながら相手は叫んだ

 

「なら死ね!!死んで詫びてよッ!!貴女も私達と同じように死ね!!命を捨てろッ!!」

「それは出来ないわ・・・私はあの子を助けて、一緒に戦いたい・・・この命をそのために・・・使いたいの」

「ふざけるなッ!!認めるわけないでしょ!!貴女の命は私達の為に死ぬ命なのよ!!」

「それは、出来ないの・・・」

 

そこに、小さく、それでも確かな声が響いた

 

「ねぇ・・・もう、やめようよ」

「何・・・?今、なんて言ったの?」

「もう、やめよう?この子は悪くないよ・・・」

「なん・・・!!」

「だって!!私達は知ってるじゃない!!あそこでのこの子の姿を!!」

 

吐き出す言葉には、苦しむ感情があった

憎しみはある、尽きぬほどに

でもそれと同じだけ、同情する心もあるのだ

 

「成長して、自我を奪われる事もあって、体中を切り刻まれて最後には殺されて捨てられもした!!私達が誰一人最期を見てくれる人がなかったのと変わらないよ!!」

「つっ・・・!!」

「私達が・・・一番辛い殺され方をしたように・・・それを知ってるのに・・・同じだけ苦しんだこの子を責めて、それで満足していいの?」

「うぅ・・・」

 

そこで、声を出したのは、殴られていた側だった

 

「それでも・・・私は皆より長く生きていけた・・・幸運だよ。その事実だけで、私はあなた達よりも恵まれている」

「あなた・・・」

「覚えているよ・・・全部、忘れもしない。キアナにはなれなかったけど、この人が私を気遣って、私を人間の世界に連れて行ってくれた・・・だから今度は私の番なんだ・・・私が、あなた達をこの場所から救い出す番・・・」

「く・・・う・・・うぁ・・・あぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

黒い影が、崩れていく

彼女に非がないことを認めて・・・行き場のない感情を吐き出しつくして消えていく・・・

 

「ごめんね・・・私にはこれくらいしか・・・」

「じゃあ・・・連れて行って・・・」

 

そこで声を上げるのは、先程の声の主・・・ぼやけていて分からなかったが、その姿形は同一と言っていいほど似ていた

 

「私達の呪い・・・みんな同じ理由・・・それは、私達のDNAが同じ事と・・・」

「あの人達の与えた最初で最後の呪い(プレゼント)・・・」

「うん、だから返すね・・・もう私には必要ないから・・・私の分も連れて行ってあげて」

「えぇ・・・」

 

そこから次々と、呪いを返していく子供たち・・・その全てを彼女は受け入れた

 

「ごめん・・・なさい」

「いいの・・・全て許してあげる」

 

そして、元の風景に戻った

 

「私も、終わりだな」

 

そして最後に、私も消え始める

 

「あなたも・・・」

「あぁ、私の未練はもうない・・・最後に、これを渡しておこう」

 

渡したのは私の武器、レバーアクションライフルだ

 

「私に・・・これを?」

「あぁ、呪物として最も強力な物だ」

「ありがとうございます」

「勝てよ、私の愛弟子」

「えぇ・・・必ず」

 

崩壊していく風景の中で、私はテンガロンハットを被りなおす

 

「皆、どうしていいのかわからかったんです・・・」

「あぁ、そうだな」

「ただただ怖くて、悲しくて・・・だからこんな」

「それでも、これに気づかせて人間に戻し、成仏させてあげたのは君だ、きちんと救ってあげたじゃないか」

 

似た境遇から、私とは違う答えを導き出した少女に私はただただ、安堵していた

間違いだとは私も知っていた過去・・・彼女は選択を間違えなかった

これでいい、これでいいのだ・・・

 

「さぁ、行くがいい・・・その身体も、心も・・・全て君のものだ」

「ありがとうございます」

 

さぁ、役者に舞台を返そう・・・ここから先は彼女達の時代だ

私はそれを外から眺めることにする




何かいい話になってしまった


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反逆の十字架

それは課せられた定めの先にあるもの


「キアナが危ないわね」

 

消えていったスカルフェイスさんの姿は、爛れきったものではなく

そうなる前の姿と思われる、優しげな表情を浮かべた青年だった

その姿を目に焼き付け、私は彼の意志を継ぐのでなく、彼を超える事を選ぶ

かつて報復心で世界を壊そうとした彼だが、それは自己の破滅願望からくるものでもあった

だからこそ、今度はその先を目指す

 

「それがあなたを超えるという事ですからね・・・」

 

本当は彼女の協力なんてしたくない、羨ましく妬ましい

それでも、彼女の事も理解できるから・・・私は手伝う事にした

 

「さて、行きますか」

 

ライフルを即興で作った腰のホルスターにしまい、私は歩きだす

目的地は一つ、キアナのいる空間

 

「いま、行ってあげるわ」

 

そう言って、私は空間に潜行した

 

「それで、どう戦うというの?」

 

私・・・キアナ・カスラナはシーリンからの問いに答える

 

「簡単だよ、私達を囮にして現実世界に出現させる」

「なるほど・・・それで、そこからは?」

「ノープラン!!」

「あなたね・・・」

 

だが、やるしかない

そう、これは恐らく誰かの書いた筋書き通りの未来だ

だが・・・そこから先はどうにでも変えられる

それだけの力を、私達は持ってる

 

「じゃあ、戻るわよ」

「うん、行こう!!」

 

シーリンを先頭にして、私達は現実世界に帰る

私達のいるべき世界に

 

「終わったか?」

「このダメ親父はまだいるの?」

「てめぇ、キアナ!!」

「ちょ!?やめてよぉ!!」

 

帰り着いた瞬間に悪態をついたら、父さんは嬉しそうに私の頭を撫でてきた

というより揉んでいる、髪型変わるからやめてほしいんだけど!?

 

「・・・」

「シーリン」

 

カズマさん・・・先生の尊敬する人物も喜んでいた

 

「私は・・・」

「何も言うな」

 

そう言って、彼もシーリンの頭を撫でる

 

「さて、これで終わりとはいかなそうだな」

「うん、ここからが正念場・・・カズマさんもでしょ?」

「あぁ、俺はアイツを倒してくる」

「ボス、俺も」

「いや、お前は離脱しろ」

 

そう言って、カズマさんはダメ親父に何かを渡した

 

「コレを彼に渡せ、それがお前に与える最後のミッションだ」

「・・・分かった」

「なぁに、俺は死なんさ、簡単にはな」

 

そう言って去っていく背中には、不退転の決意が感じられた

 

「それじゃ俺達は行くとするか」

「あぁ、必ず渡してくれ」

 

ダメ親父とカズマさんが去っていく、見上げた空は割れ始めていた

 

「来る・・・!!」

 

そして割れた空から現れたのは・・・黒い人に近い獣・・・

崩壊の化身・・・人が生み出してしまった化け物だった

 

「何故・・・ワタシの意思に従わぬのだ・・・」

「私達が、人間だからよ!!」

 

そう答えた瞬間、腕と足を触手に捕らえられた

 

「ならば、その力を奪うまで!!」

「くっ・・・!!」

 

だけど、その触手はすぐに撃ち抜かれていた・・・第三者の介入で

 

「誰だ・・・!!」

「さぁ、名前なんてないわ・・・私には」

 

そう言って、その人は私とシーリンの前に降りてくる

黒いチェスターコートに黒スーツ、黒いテンガロンハット、黒い手袋、黒いブーツ

何もかも黒ずくめだけど、声はとても優しい

 

「でも、言わせてもらう事があるわ」

 

その優しさを裏返すように、武装はいかついレバーアクションライフルだけど

 

「あなたは、貴様だけは許さない!!」

 

嚇怒の絶叫が響く、同時に私とシーリンも立ち上がった

 

「邪魔をするか・・・人間ども!!」

 

レバーアクションライフルをスピンコックして次弾を装填しながら、その人は叫んだ

 

「行くわよ二人とも!!」

「うん!!」

「えぇ!!」

 

今、ここで最後の戦いが始まる

 

「死ぬがいい・・・!!」

「「「こんなところで死ねるか!!」」」

 

敵の発言に返す言葉は一致していた、そして・・・

 

「キアナ!!」

 

攻撃と回避の息までも完全にシンクロしている

 

「なんだ・・・その力は!!」

「アナタを倒すための、呪いだ!!」

 

複数に分かれた影がキアナの装備の弾丸を切れる一歩手前で供給している

同時に、シーリンの装備が破損しそうなときにも同じ事をしていた

それを可能とするのは、実行している本人の能力と素養

キアナと同じDNAから作られた事を考えれば造作もない事と言える

欠点はキアナほど完成させられていない事になるが、その程度は誤差にしかなりえない

 

「ならば・・・!!」

 

そうならば、と狙おうとしても、影を捕まえる事は出来ない

そしてそれは敵にとって失策だった

 

「な、にぃ!?」

 

影を奪われる、自分の感覚を

 

「これが私の呪いだ、仲間に加護を与え、敵には体感覚をなくさせる呪い!!」

「人間・・・がぁ!!」

「私達を・・・人間をなめるな!!」

 

その一撃が正確に体を撃ち貫いた

そこから敵の身体は崩壊していく

 

「傲慢だな・・・それが人間を間違わせるものだろう・・・」

「えぇ、そうよ。私は()()()()()()()からやった、後悔はない・・・こんな世界とはいえ、私は自分の()()()()()()を歩いていたい、ただそれだけ!!」

「ならば、その先で待っていよう・・・期待しているぞ」

 

人型の獣はその言葉を残して消滅した、私達の宿縁はこれで断ち切れた・・・あとは

 

「急いで離脱するよ二人とも、ここは長く持たない!!」

 

キアナとシーリンを連れて離脱するだけ

他の所・・・恐らくカズマさんと大主教の戦闘余波で研究施設が持たない

 

「うわわわッ!?」

「危ないわねぇ!!」

「喋る暇があればさっさと動け!!」

 

私はそう言ってレバーアクションライフルで落ちてくる瓦礫を打ち壊し、同時に影から次の弾丸を取り出した

 

「行くよ!!」

「どうやって!?」

「こうやってよ」

 

その瞬間、私はキアナを蹴り飛ばした

 

「痛いんだけど!?」

 

蹴り飛ばした先はちょうど反対側の階下にあるスロープ型の階段

そこは比較的広く作られているため着地しやすい

 

「ナイス着地」

「ろくなのがいないわね・・・」

 

シーリンがそう言ってキアナに続いて飛ぶ

私もそれを見て飛び、階下に降りた

 

「まさかこれを繰り返すつもり?」

「そのまさかよ、ロープじゃ途中で切れるもの」

「呆れた、貴女も無策なのね」

「・・・」

 

ぐうの音も出ない・・・!!

 

「途中で離脱するためのいいものがあるわ」

「何よ」

「恐らくだけど」

 

そして、途中で別の道にそれて向かったのは・・・

 

「戦闘機!?」

「爆撃機よ、しかもB-1ランサー・・・最高ね」

「操縦できるの?」

「マニュアル読んでる暇なんてあると思う?」

「冗談じゃないわよ・・・」

 

それでもテキパキと操作していく

何故か全てが上手くいっていた

 

「さて、エンジンも無事に始動できたわ・・・行くわよ!!」

 

スロットルを全開にして離陸する

B-1ランサーはいとも簡単に離陸した

だが・・・

 

「近くの空港に行けるほどの燃料もないの!?」

「んな!?」

「ちょっとぉ!?」

 

それに今更気が付いた・・・だけど

 

「でも、この機体の特徴は・・・」

 

大型爆撃機でありながら、この機体は可変翼を採用している

近くの大きい目標を探したら・・・

 

「あった」

 

レーダーに示された名前は、アウターヘイブン・・・

 

「ドラッグシュートを利用すれば・・・使えればいいけど」

 

ドラッグシュートを利用した緊急減速・・・それに頼るしかない

 

「止まれぇぇぇぇぇ!!」

 

叫んでドラッグシュートを展開、同時にスラストリバースとブレーキも全開にする

 

「・・・」

「生きてる?」

「これで死んでるって返すのが無礼でしょ・・・」

 

何とか成功した・・・だけど

 

「あぁー、ヤバいわね」

「自重で落ちかけてるわ・・・離脱するわよ!!」

 

最初から最後までしまらない最終決戦後の離脱だった

でも、キアナにとって大切な人達の元に彼女を返せただけでも良しとしよう

それを見届けて私はその場を後にした




最終話に続く


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罪と罰、最後の清算

それは罪と罰を抱えた男の最期
語られる真実は、何よりも深く・・・

最終話にして最後に・・・


「・・・」

 

アレから私は、とある人の墓に来ていた

その人は・・・私のDNAの素体、カレン・カスラナ

 

「やっと、終わりましたよ」

 

そう言って、彼女の好んでいた花を供える

 

「・・・」

 

一つの時代が終わり、私の戦争は終わった

だけど私には、やらなくちゃいけない事がある

 

「はぁ・・・」

 

最後に課せられた罰は・・・自分をこの世から抹消する事

 

「それが私の、最後のミッション」

 

拳銃を取り出し、マガジンを抜く

既に装填されている一発で、私を絶命させる

 

「今、そちらに・・・」

 

決意と共に引き金を絞った・・・けど

 

「はぁ・・・!!はぁ・・・!!」

 

突発的な発作で、未遂になってしまった

発作自体は、その前兆があるのを最後の戦闘時に気づいていた

それが今になって襲って来たのだ

 

「そうだ、それでいい」

 

どれほど発作に苦しんでいただろうか・・・しばらくしてその声が聞こえた

 

「まだ、逝く必要はない」

「・・・」

 

ゆっくりと、顔を上げていく

黒い服を着ているその人は、優しい声で私に語り掛けてくる

 

「また逢えたな・・・カレンの遺児」

「藍澤カズマ・・・さん!?」

 

近づいてきた瞬間に、反動でマガジンを装填して初弾を装填しながら構えていた

 

「つっ・・・!!」

 

ゆっくりと構える彼に照準を合わせる

 

「・・・」

 

何も言わず、彼はそのまま構えて・・・銃を落とした

それを思わず追従してしまい・・・CQCに対応できなかった

一瞬で銃を無効化され、抱きしめられる

 

「もういい・・・もういいんだ・・・戦う事はない」

「何を・・・!?」

「もう、終わった・・・銃を捨てて生きていいんだ」

 

銃を取られ、私は無言で彼を見る

 

「全ては一人の男の妄執から始まった事・・・元凶となった全ては閉ざされ、過ちの時代は終わった・・・最後に残されたこの俺も・・・もうじき終わる」

「何故・・・生きてるんですか!?」

 

彼を殺したのは・・・私だ

私がオットー・アポカリプス大主教に近づくために彼の死を利用した

その死体も確認したはず・・・それなのに!!

 

「あの時、君が見た死体は私ではない・・・アレは俺の複製だ」

「複製・・・貴方もあの人と同じ事を!?」

「いや、それ自体はオットーの差し金だ」

 

彼の後をついていき、その先に居たのは・・・車椅子に座る老人

その体には、人工呼吸器がつけられている

 

「天命の再建がなされている今、作ろうとした未来も白紙に還った・・・全ての発端はオットーだ・・・その行為が、世界を破滅に導いた」

「・・・」

「しかし今は、その事すらも分かっていない」

 

記憶転写をし続けた代償は、本来の自我の消失・・・

 

「恨みあった俺達が再会して感じたのは・・・懐かしさと・・・深い哀れみだ。不思議な事に、憎しみは沸いてこなかった」

「何故・・・ですか?」

「疑問に思うか?」

「はい・・・」

 

彼は薄く笑い、続けた

 

「そもそも・・・オットーは俺が憎かったのだろうか・・・それとも恐れていたのだろうか・・・それさえも聴く事が出来ないからだ」

 

そう、今やどうしても、質問に答える事はない

 

「始まりを作ったほぼ全てが死んだ・・・残るはオットーのみ」

「・・・」

 

これから彼がしようとしている事を、私は止める気はない

 

「全てには始まりがある、そして始まりは1ではない・・・その遥か以前のカオス、世界はゼロから生まれる・・・全てを1に戻したところで何も解決しない・・・こうなるまで止められなかった俺にも罪はある」

「そう・・・ですね」

「だからこそ、自らの手で、無に還そう」

 

そう言って、後ろに座って人工呼吸器のスイッチを切り・・・首を絞めて殺した

そして、立ち上がり再び私を見る

 

「あなたもまた・・・」

「あぁ、俺もまた無に還る」

 

その瞬間に、彼は崩れ落ちる・・・反射的に、その身体を支えていた

 

「済まないが・・・俺を彼女の所に連れて行ってくれないか?」

「えぇ・・・」

 

支えながら歩き、私は質問する

 

「私は・・・死ぬんですよね?」

「老いは、誰にでも来る・・・止める事も、逃げる事も出来ない。これは俺からの告知だ・・・余命を、戦い意外に使いなさい」

「・・・」

「それに俺は、君を彼女のクローンだと思った事はない・・・むしろ、一人の人間として、尊敬さえしている」

 

流れる汗は、末路が近い証か・・・

 

「あの時の俺が、君だったなら・・・あのような過ちは、起こさなかったかもしれない」

「・・・」

「俺は彼女の死んだあの日から・・・既に亡者だった・・・」

 

そう言って彼は崩れ落ちるようにカレンの墓石の前に座る

 

「カレン、君が正しかったよ・・・世界を変えるのではなく、ありのままの世界を残すために最善を尽くす事・・・他者の意思を尊重し、自らの意思を信じる事・・・それが君の・・・遺志だった」

「ぁ・・・」

 

一瞬、誰かが憂いている表情が浮かんだ

 

「やっと、あの時の行動の意味・・・君の勇気の真実が・・・分かった」

 

そう言って彼は敬礼する、その敬礼はとても奇麗で、そして悲しいものだった

 

「俺はもうすぐ去る・・・不毛な抗争の火種が消える・・・これで、元凶は全て消えることになる・・・悪しき発端が0に戻った後、新しい未来である1が生まれるはずだ・・・その新しい未来を、誰かの影ではなく、人として、生きろ」

「はい・・・」

「俺達はどこまで行っても、内なる自由・・・リバティしか得られなかった。だが君に与えられているのはフリーダム・・・外へ向けた、真なる自由だ!!」

 

今にも血を吐きそうなのに、彼は最後の力を使って私に話しかけている

私も、答えないと

 

「もう、運命に縛られる事はない・・・その身体も、心も君の物だ・・・その目で、外の世界を見ろ」

「はい」

「俺達の事なんて忘れて、自分の為に生きてくれ・・・そして、新しい余命を生きろ」

 

そう言ってタバコを咥え、火をつけようとしたけど、ライターを落とし、タバコも落とした

もう、満足に身体も動かせないのだろう

 

「カレン・・・蛇は一人で・・・いや・・・蛇はもう、いらない・・・」

 

彼に寄り添うように、人が見える・・・カレン・カスラナが

悲しむように、憂いるように・・・私を見て微笑んで手を振った

彼を連れていくために、ここに来たのだろう

 

「つっ・・・!!」

 

自然と、涙が出ていた

こんなにも辛い別れがあると思ったのはこれが初めてかもしれない

 

「ここに居たのね」

「テレサ学園長・・・」

 

振り返るとキアナの通う学校の校長がいた

私もついそう呼んでしまう・・・キアナの記憶があるから

 

「全く・・・なんて顔して死んでるのよ・・・背中を追って来た私がバカみたいじゃない・・・」

「面識が・・・?」

 

そう質問すると、テレサ学園長は苦笑いした

 

「ヴァルキリーになる時の試験官だったのよ」

「あぁ・・・」

「それ以来、尊敬する人だったわ・・・今も」

「そう・・・ですか」

 

恐らくそれが、市井に下る手向けだったのだろう

 

「こんなに奇麗な死に方を出来たんだから・・・本望なんでしょうね」

「きっと・・・そうだと思います」

 

その顔は奇麗なまでに安らかで、眠っているだけにも感じてしまう

 

「何処に行くの?」

「自分の行きたいところに」

「全部、終わったわよ?」

「いいえ、まだ残している事があります」

 

私はそう言って、彼女を見る

 

「見届ける事です。私達の選択が正しかったのか、否か」

「そう・・・それじゃ私達と同じね」

 

彼女がそう言って私の手を優しく掴む

 

「掴んだこの手を放さない・・・彼の遺志を継ぐために」

「それが彼の望みでしょうから」

 

歩いていく先には、キアナを含めてみんながいた

 

私もあそこに入れるだろうか・・・不安だけど

この選択で間違いがなかったと、心から思う

それがたとえ、残り時間の短い私であっても

誰かを守ろうとする事は、そのために必死になる事は正しいから




これが最終話かよぉ!!


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