魔法少女リリカルなのは、始まりません! (日λ........)
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魔法少女リリカルなのはAs、及びViVid、始まりません!


やあ (´・ω・`)
ようこそ、リリカルなのは二次の世界へ。
このSSはサービスだから、まず読んで落ち着いて欲しい。

うん、「また」なんだ。済まない。
仏の顔もって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない。
正直に言うとこれはどっかのドラム缶の物語に行き詰まった結果出てきた産物さ。

でも、このタイトルを見たとき、君は、きっと言葉では言い表せない
「ときめき」みたいなものを感じてくれたときっと思う。この二次作品が溢れた世の中で、そういう気持ちを忘れないで欲しい
そう思って、このSSを書いたんだ。

じゃあ、物語に移ろうか。






突然ですが住んでた星を失いました。どうしてこんなことになってしまったんだ()

 

進みすぎた科学は魔法と変わらない。そんな言葉が似合う世界に前世の記憶を持ったまま生まれ変わって早500年。前世の頃は100歳生きてりゃ充分大往生とされていた訳ですが、新たな生を受けたこの世界ではまだまだ若造の身でございます。や、流石に科学の力で延命しても限界あるけど周りにいた人はふつーに記憶転写した自分のコピーを作って俺の何百倍位生きてた人もいたんでね。500年位じゃまだまだ若造の分類ですわ。記憶転写しなくても生身で五千年位は保つしね。まあ皆ふつーは人生に満足したら寝るように死ぬからそこまで生きるのは珍しい部類で平均寿命はまちまちだけども。

 

 

それでなんで住んでた星が滅んだかって言ったら、ちょっと宇宙にヤベー変異が起きてしまってね。それまではふつーに物理法則に関しては前世の世界とそんなに変わらん感じだったのがその変異のせいでかなり色々な変化が起きてしまったんだ。

 

特に最悪だったのがその影響で俺らの星で使ってた機械に悪影響が起きて、エネルギー炉が暴走。結果、星が星系ごと吹っ飛んでしまった。炉心融解マジ怖い。まあウチの星とっくの昔に核エネルギーなんて使ってなかったが言葉の綾って奴さ。唐突に一人になってしまったから混乱を抑える為にこの日記を前世の世界の言葉で書き始めたんで他に良い言葉が思いつかなかっただけである。……ちょっと自暴自棄になってるのかもしれない。

 

 

私は若造な分精神も若くてね。めっちゃ老成してる年上の人たちと比べるとアクティブに動いてたんだ。だから星系外へ出てそこで見つかった惑星の生態系を書きまとめていた最中にこんな事故が起きた。

自分が拠点にしてた宇宙船は幸い出先でその手の変異が起きても壊れないよう堅牢に設計されてたから問題なかったけどレーダーには自分の故郷の星が映らなくなってしまって、あった場所には熱源反応やら時空崩壊反応の雨あられ……調べてみると虚数空間化が起こってしまっていたので帰ることは出来ないと分かってしまった。

 

 

畜生どうしてこうなった。

 

 

 

(意味不明な文字が乱雑に書き綴られている)

 

 

 

 

……アレから千年位が過ぎた。流石に落ち着いたので取り敢えず初心に帰って前世の文字で起きた変異について調べた事を書こうと思う。日記なのに我ながら時間が空きすぎである。まああの後生き残った一人として自分たちの種の再生のためにいろんな惑星に飛んではテラフォーミングしたり、遺伝子操作とクローニングでその星に適用させた人類の祖を作って居住させたり、いずれ時空を超えて旅立つ我が子達に自分たちの遺産を触らせない為に出来る限り回収して封印したり破壊したりとそれなりに忙しかったからね。すっかり忘れて放置していたこの日記を荷物整理してたら見つけたのでせっかくなので続きを書いている。何が起こったのか、その後何をしていたのか省略しつつ纏める事にする。

 

どうやら変異によって起きた変化によってある物が宇宙に普遍的にばら撒かれてしまったようだ。前世の言葉に訳せばエーテル……一種の精神エネルギーや生命エネルギーに近い物の原子だ。魔力とも言う。

これと自分たちの使っていたエネルギーは最悪なほど相性が悪かった。対消滅を引き起こし、おかげで星系全部が今じゃ近寄るだけでも危険な墓場状態だ。時間の概念が消えているので吸われたら最後死ぬこともできぬまま永遠にそのまま。私達の星アルハザードはあのままもう二度と元には戻らないのだろう。

 

話がずれたが、これに適応した生物は自身の魂に転換炉のような物を作り出し、ある程度自由に操れるようになる。どうも何処か別の銀河か宇宙からこちらの宇宙へと半永久的に流れ続けてるらしく、これに適応できた生物は自身の体を通常では考えられないほど頑丈にしたり、構造上考えられないほどの力を発揮したりとかなりの優位に立てるようだったので早速遺伝子操作改造でそれらを操れる人類も作っておいた。滅びない為にはある程度の多様性も必要だ。たとえ私の故郷を滅ぼした憎き変異であろうと次の滅亡を避けるためならば利用せざるを得ない。なりふりなどかまっていられないのだ。

 

取り敢えず、新たに見つけた惑星に初めにこの遺伝子操作を施した人類の祖を移住させる事にしよう。その様子を見て、魔力を扱える人間と扱えない人間、どちらを移住させるか考えることにしよう。まあ最終的にはどちらも混ぜる予定だ。多様性は大事だから。

 

そうだな……この星には『ミッドチルダ』とでも名付けるか。折角前世の文字で日記を書いてるのだから前世の記憶を元に名づけさせてもらうとしよう。北欧神話の人間の世界、ミズガルズを元にした名前だ。いい加減星の名前のレパートリーが尽きそうなので観察対象の名前くらいは変わったものを用意しようと考えたからである。

 

取り敢えず比較対象として、もう一つの惑星にも同じように遺伝子操作を施した人類を移住させる事にする。こちらは……そうだな。ミッドチルダは北欧から取ったが、同じように神話からネタ取っても芸がないし、ドイツの地方から適当に取るか。確か『ベルカ』って地方あったよね。もうそれでいいや。命名で悩むのも馬鹿らしいし。

 

……うーん、これまで一人でなんとかやってきたが流石に会話がないと精神的に辛い。会話相手作るか……流石に千年位働き詰めで動いたから少しは休んでも良いだろう。

と言うわけで助手を作ろうと思う。

うーんせっかくだからかわいい系の美人にしようか!金髪にして、瞳は赤と緑とオッドアイにしよ!!私的使用の為にゼロから人間作るのは故郷では禁止されてたけど(今までのは緊急マニュアルにも載ってる行為なので私的使用ではない)、この千年生き残りとかも探したが誰一人として見つからなかったし、これくらいやっても誰も文句言わんやろ!!つーか誰かと会話したいんや!!今まで必死になって人類再生のために動いてたから頭からすっぽ抜けてたけど、気がついたらひとりぼっちはつらすぎるんだよ!!

 

よーしやるぞー遺伝子操作マシンの操作も慣れてきたし、ちょっと頑張っちゃうぞー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また久しぶりに日記をつけようと思う。あの子が産まれてとても日々が鮮やかになった。まあ、流石に前回は筆が遅すぎたから反省して早めにコレを書いている。前回の日付見ると五年位前かな?自分は筆まめな方じゃないんでこれでも十分だろう。というか日記なのにこれじゃ備忘録ではなかろうか?まあいいや。あくまでもこれは私的な日記だし。

 

助手……というか今ではもう娘と言える存在だが、せっかくなので体の成長を大人まで一気に進めないで子供の状態に留めて、自然に成長させる事にした。流石に赤子の状態で子育てなどした事が無いので3歳位までは促進させたが。

 

なのであの子……レイディと名づけた彼女はある程度の知識を転写した状態で、この世に生を受けた。とはいえそれは記録に過ぎない。通常記憶の転写は自己の意識を保つ為にその人物のすべてを写すが、彼女には元になる人物などいない訳で。普通に生まれた子供とそう大差ない状態である。アルハザード由来の知識はあるけどね。それをどう使うかは私が教えなければわからない状態な訳である。

 

まあ、つまりだ。この五年間私は子育てに没頭していた。会話に飢えてて勢いで作ったが、よくよく考えたらこれじゃ育てなきゃ駄目だよねって途中で気がついたが時既に遅し。培養してたマシンはとっくに入力通りに彼女をつくってしまっていたのである。まあ後悔はない。あの子に『パパ』と呼ばれてそんなもん全部ふっとんだわ。

 

 

あの子の為に私は様々な事を教えた。この船の操作の仕方だったり、与えた知識の使い方だったり、挙げればキリがない程だ。まあ勉強ばかりじゃ可哀想だと思うから食料生産プラントで材料の状態で作ってもらって料理を一緒にしたり、それを一緒の食卓で食べたり、新しく見つけた惑星が安全である事を確認したらその星で一緒に遊んだり、寝付けないときは彼女が寝れるまで子守唄を歌ったり、データベースに入ってた絵本を生産プラントで製造したものを読み聞かせて上げたりと、これでいいのかはわからないが自分なりに考えてレイディを育てていた。元気で素直な良い子だが、それだけに私と二人きりなのが少々不憫に思えてきた。また一人、遺伝子操作を行って彼女の妹か弟を作るべきだろうか?今度それとなく弟か妹がほしいか聞いてみることにしよう。今は隣で寝ているからね。日記に何書くか悩んでいたら気がついたら寝てたのである。さっきまで私が渡した画用紙とペンでお絵かきをしていたのだが、疲れたのか電池が切れたかのようにぱったりと眠っていた。

 

故郷を失い約千年。今日記を書いている隣には娘がいて、私に抱きついて寝息を立てている。

無論、褒められた行いではない。人間を作り出すなんていうのは科学が発展していたが故に様々なことができた私の星でも個人では許されてなかった行いだ。元々一人で他星系に旅をしては生態系の調査などを行っていた私だが、自分で一人になる事とひとりぼっちになってしまう事にはとても大きな差があるのだと酷く痛感した。帰る場所が無いのは辛いものだ……

 

この星系のテラフォーミングやクローニングした人類の移住が終了したら、私もどこかの惑星にこの船を下ろして腰を落ち着けるのもいいかも知れない。

レイディにとってはこの船こそが彼女の帰る場所かもしれんが、私にとってはやはり船は船なのだ。どこか地に足を付けていたいと思ってしまう。

第二の故郷か……いろんな惑星をテラフォーミングしてきたが、やはり故郷に環境が近かったベルカ辺りがいいかも知れないな。適当に名づけた割に降りてみたら星としてはミッドチルダよりあちらのが好みだったんだよね。

 

 

PS レイディに弟か妹がほしいか聞いたら『私にはパパがいるからいい』という反応が帰ってきた。なら別にこのままでもいいか……

 

 

 

 

(以後、暫くの間娘の成長記録が書き綴られている……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アレからまた千年位が過ぎて、この銀河の大体の居住可能な星のテラフォーミングが終わり、クローニングさせた人類の居住が終わった。

回収したアルハザードの遺産は危険性のないものは封印を施し、危険なものは確認出来うる限り破壊した。これで、撒いていった人類が次元世界や宇宙へ旅立って変な物を弄っても即銀河が終わる、なんてことにはならないだろう。扱いを間違っても次元世界が何個か滅びる程度で済むだろうさ。

 

最終的にレイディは二十歳位の年齢の姿でいる事を選んだ。私も受けている延命技術により、彼女もまた若い頃の姿のままだ。かわいい顔立ちも、綺麗な赤と緑の瞳も変わっていない。この日記に貼り付けておいた小さい頃の写真に写ってる姿と比べれば、子供ではなく大人の女性にはなっているけどね。

 

 

それでお祝いとして久しぶりに二人でお酒でも飲もうと言うことになったのだが……

今私のベッドには裸の彼女が眠っている。シーツには赤い跡が……おおう、もう……

 

私は父親失格だ……

 

この千年位、彼女が私の事を好いていたのは知っていたがそれは親愛から来るものなのだとずっと勘違いしていた。本当はずっと夫婦に成りたかったそうだ。

 

酒に酔った彼女は突然泣きだして、『どうして私に手を出さないの!?私、ずっと好きだったのに……』と言い出し、酔っていた私は魔力を扱える彼女の身体能力に対抗できる筈もなく、押し倒されてしまったのである

 

まあ、千年位娘と思っていた存在に押し倒されてそういう反応するものなの?と思うかもしれないが私も年は取っているが物理的に肉体的には若い状態を維持しているし、そもそも何より彼女は私の暴走して性癖をぶちまけてクリエイトした存在である。自分の好みじゃない訳がないんだよなぁ……()

 

まあ何はともあれ、大体私のできる事は終わったのだ。この数千年間の酷使を耐えきってくれた我が船も、そろそろ旅を終えるべきであろう。

 

かつてこの日記にも書いてあったが、この船を下ろして私達もベルカに移住する事にしよう……私と夫婦になりたいと言うのであれば、望み通りにさせてあげようじゃないか。この約千年、辛い旅に泣き言も言わずついてきてくれたのだから。それが彼女を生み出した私の出来る責任のとり方なのだろう。彼女が目覚めたら、改めてプロポーズをしようと思う。

 

……生産プラントに、お互い同じ形のペンダントを作るように入力しておいた。アルハザードでは、結婚する相手に送る定番の品だった。

本来は不慮の事故による別れがないように、どちらか片方が生きていれば記憶転写による復活を行う為のお互いの生体情報を入力して送り合うのが普通であったが、宇宙に漂う魔力のせいでこれも情報にノイズが交じるようになってしまったので、中身は別物にしないといけないだろう……そうだな。私は扱えないが、彼女は魔力を扱えるし護身用にその補助を行う杖のような物を展開する機能を詰めておいても良いだろう。

 

……これまで諦めず、人類復興の為の活動を行ってきた私達を記念して、『不屈の心』とでも名付けるか。結婚用の贈り物にしては物々しい名前かもしれないが、折角の記念の品だ。

 

レイディが喜んでくれると良いけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベルカに船を降ろした私達だが争っていたベルカに移住させた人々の諍いを止めた結果、何故か王様として扱われるようになってしまった。ええ……(困惑)

 

皆私のことを『聖王様』って呼んでるんだが、何だその名前。え、空からやってきた尊き方々??確かに、この船は空から降ろしてきたけどさ……

 

まあうん。確かに星全体の食料事情が想定してたよりも悪くなってたからちょっと再テラフォーミングして土を豊かにしたけど、自分王様って柄じゃぁ……まあ良いか。どうせここに住むのだから良くしてくれるならそれでいいだろう。ベルカに私とレイディの事を傷つけられる存在なんて、この船がベルカにある限り存在しないだろうし。

レイディに本当にここに住んで良いか確認したが、彼女はここを気に入ったそうだ。空気も美味しいからお腹にいる子にもいいだろうと、彼女は大きなお腹を大事そうに抱えながら微笑んだ。

あの時に出来た子である。生身での出産は危険が伴うが、彼女が希望した為メディカルマシンには移さないことになった。

 

 

船の周りには街が作られ、さながら城下町のように形作られている。彼らは私達の庇護を求めてやってきた人々である。作物がうまく育たず、食料を奪い合って争いが起きていたところを根本から解決してしまったためか皆救世主でも見るかのように自分たちの事を慕ってくれる。まあここに居る人々も元は私が撒いた存在なのだからこうして慕ってくれるのは喜ばしい物ではあるが……ちょっとやり過ぎたかもしれない。

 

 

だが元々使命が終わったから、第二の故郷を作るつもりでここにやってきたのだ。国を作るのもそう考えれば面白いかもしれない。

そうと決まれば取り敢えず、自分の事を聖王様と慕ってやってくる人々に色々と教えることに決めた。アルハザード由来の超技術はあんま教えるとこの星特有の技術が発展しなくなるかもしれないのであまり教えられないが、基本的な医療知識とか、この星にあった農業のやり方なんかはある程度は教えても問題ないだろう。

 

 

こうして、ベルカに私とレイディを旗印とする『聖王国』が生まれた。生まれてくる我が子の為にも、人々の笑顔があふれるいい国に出来たらいいなぁと思っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オリヴィエ、何を読んでいるんだ?」

「あ、クラウス。これはね、私のご先祖様の残した日記よ。初代様が子孫に残した物。お母様の遺品だったの……困ったことがあったなら読みなさいって」

「……今も聖王国で祀られてる、ゆりかごの本当の持ち主の日記か!」

「うん。なんか思ってたよりも色々とんでもない事が書いてあって焦ったわ……」

 

ご先祖様、本当に空からやってきたのね……お伽噺で小さい頃に聞いたけど、まさか事実だったなんて。

この方が残してくれた医療技術のおかげで、私は事故で大怪我した両手を失わずに済んだ。感謝している。危うく愛する人と手を繋ぐ事すらもあのままでは出来なくなっていた。

ページを進める。お母様の言葉が正しいのであれば、この先に……!

 

「……クラウス。私、聖王国に行かなきゃ……!」

「オリヴィエ、それは危険だ!今あの国は」

「分かってる!でも、まだなんとか出来るかもしれないの!……ご先祖様は、私達子孫がどうしょうもない事態に陥った時の為にまだゆりかごで眠っているって話があるって昔したよね?私も迷信や伝承としか思ってなかったけど……この日記には、ご先祖様を目覚めさせる為の方法が書いてあるの!!」

「……い、いやまてまてまて、仮にそれが本当だとしても、もう何千年も昔の話だろう??あのゆりかごは聖王国が出来てからずっとあの場所にあると聞いているぞ!?」

「……それでも、掛けてみる価値はあるわ。それでも無理なら、私がゆりかごの制御ユニットに……」

「それは駄目だ!……分かった。そうなった君は昔から止まらないからな。だが君だけでは絶対に行かせない。俺もついていく」

「ありがとう、クラウス!」

 

 

そうして、一つの悲劇が消えると同時に、未来で生まれる筈だった存在も一人消えた。

だが、これはこれで良いのだろう。彼が後にロストロギアと呼ばれる筈だった遺物は大体が封印されるか消滅させた為に消える筈だったベルカは消えることなく、偉大なる聖王のゆりかごは今もベルカを見守り続けているのだから。

 

そして、ベルカが健在であった為にある魔導書の運命も翻弄される事もなく、本来の目的を果たし今もベルカで新たな主の誕生を待ちながら、眠り続けている……

 

 

 

 

 

 




今回の転生者とその関係者

初代聖王

元アルハザードの惑星外の生態系の研究者だった転生者。別の銀河にいる動物の研究してたら急に魔力が来たせいでなんか故郷が消し飛んた可哀想な男。凝り性で緊急マニュアルに書かれていたもしものときの為の人類復興マニュアルの内容をアルハザード製の船があったとはいえ一人二人で完遂したヤベーやつ。
周辺の星系の住めそうな惑星を大体テラフォーミングして人類種の種を撒いてきた。この作品がマクロスの二次だったらプロトカルチャーと呼ばれてたかもしれない。
テラフォーミング出来る惑星は大体回ったのでアルハザードの環境に近かったベルカを第二の故郷にするために船を降ろしたらあっという間に祭り上げられ、初代聖王になってしまった。かつてリリカルなのはを見ていたが、そもアルハザードにいた500年の時点で忘れてしまっている。日本語覚えてたのが奇跡レベル。なおこの世界の聖王家特有の秘密の文字として伝えられている模様。
自分で好きなように作った娘と千年近く過ごしても使命が終わるまではそっち優先で過ごしてたが、それが終わった瞬間タガの外れた娘に食われた。何年何千年過ごしても草食系なのは変わらなかった模様。
ベルカに居着いてからは王様として数百年ほど妻と共に過ごしたが、このまま王様やってるのはちょっと不味くね?これじゃ周りが成長しないな……と思い王位を子孫に託して自身はいつまでも一緒に居ると選択した妻と共にいつの間にかゆりかごと呼ばれるようになった船の最深部にあるコールドスリープ施設で眠りにつく事にした。尚子孫の危機と聞くとヒョイッと起きて何とかしてからまた眠りにつく。どこかの始皇帝もびっくりのフットワークの軽さである。
容姿や声は特に決めてない。お好きなようにご想像ください。

レイディ

千年近くひとりぼっちだったことに気がついて急に寂しくなった男が作り出した自身の性癖の化身。だった筈が育ててくと段々と親心に変化してしまい襲われるまでその事を忘れられていた可哀想な娘兼妻。オリヴィエのご先祖様、と言うことで名前の元ネタはスバル360がてんとうむしと呼ばれていた所から取っている。
生まれたころからパパが大好きで、パパを独り占めにしたいと思っていた為弟か妹いるか聞いた時に別にいいと答えたファザコンの化身。こんな娘が千年以上生殺し状態だった所で酒が入った結果本音がダダ漏れになり結果パパは父親失格の憂き目に合う。生殺しにした方も悪い。仕方ないね!
尚弟や妹は要らなかったが娘や息子は沢山欲しかったらしく子宝に恵まれ、眠りにつくまで子供たちを見守りつつ、看取りつつも何人も産んでた。オリヴィエは末の娘の子孫である。
容姿は金髪に赤と緑のオッドアイのかわいい系の美人。その容姿は聖王家の血族の象徴とされるほど遺伝子が強く、基本的に子供はレイディ似であったらしい。
初代レイジングハートのマスター。眠る際に護身用にと魔力の適性がある子供に渡したそうだが、いつの間にか紛失してしまいレイジングハートは行方不明になっている



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始まらなかった物語の者達 ViVid編

「よし、今日も頑張ろうレイジングハート!」

『Stand by ready, setup』

 

その掛け声と共に『騎士甲冑』が展開されていく。逆賊達から聖王国の象徴であるゆりかごを取り戻した『英雄聖王』オリヴィエ・ゼーゲブレヒトも身に纏っていたとされる白と青を基調とした衣装が少女の身を包む。

オリヴィエがゆりかごを取り戻した際に、この世に一時蘇った初代聖王から褒美として下賜された宝玉、『不屈の心』はその姿を魔法の杖からオリヴィエが使いやすいように一対の籠手へと姿を変えたという逸話を持つ聖王家の宝物である。

 

彼女の名前はヴィヴィオ・イングヴァルト・ゼーゲブレヒト。

ベルカの大国である聖王国の王女だ。

 

 

「レイジングハート、今日のシミュレーターは誰にするの?」

『今のマスターの力量から考えてオススメとしては若き日のクラウス様か、同時期のオリヴィエ様辺りがよろしいかと』

「じゃあクラウス様で。そろそろ断空拳の対策をしたかったんだ。アインハルトお姉ちゃんにも負けられないよ」

『了解しました。シミュレーター、起動します』

 

 

レイジングハートがそう言うと、ヴィヴィオの前に一人の男性が現れる。

『英雄聖王』と共に戦場を駆け抜け、戦乱が蔓延りつつあった当時のベルカを武力を持って平定し、長い期間平穏を取り戻したとされる戦場の覇者『覇王』クラウス・G・S・イングヴァルトその人である。ただし、最も強かったとされる全盛期よりも若い頃の姿であるが。

 

「胸をお借りします、ご先祖様……行くよ!」

『いつでもどうぞ!』

 

 

ヴィヴィオはいつものように、シミュレーター機能によって再現されたクラウスとの戦闘を開始した。これは何時もの戦闘訓練。ベルカの民特有の戦闘力の追求の時間である。

ベルカの者達は武人気質な者が多く、強さが求められることも多い。身分の差とは別に強さを持つものは賞賛される文化があった。それ故にベルカの王族、貴族である支配階級の者達はその規範として皆ベクトルは違えども武術を身に着ける者が多かった。ヴィヴィオも例に漏れず、聖王家の血族の者達に扱いやすく改良された王家の武技を身に着けていた。

 

 

幻影でありながら実態を持つクラウスが動くと同時に、ヴィヴィオの聖王家特有の瞳が一瞬虹色に輝く。聖王家の血族の者達が長き闘争の歴史の中で編み出した『聖王の鎧』と呼ばれる能力の一つだ。無意識下でゆりかごに収集されたデータベースと繋がり予測された一手先の未来を予測する事も、対峙する相手や目にする戦法をその場で模倣する事も可能な特殊な瞳。

聖王家の血族の者たちは体内に生体型ナノマシンを生まれた時から保有しており、それによってゆりかごへのアクセス権限を得ているのである。オリヴィエが納めるまでは酷い戦乱が続いたというベルカで、より長く生存する為にその生体型ナノマシンは自己進化を行い、宿主の肉体の強化や機能拡張を行った。その末に得られたという、ヴィヴィオの先祖達の血の結晶ともいえる能力であった。

 

 

無意識下で受信した予測を元に、ヴィヴィオは動く。クラウスの拳を避けては駄目だ。魔力を折り込んだ衝撃波を返しの拳で食らうからだ。受けては更に駄目だ。彼が祖として成立した戦場武術『覇王流』の恐ろしさは親戚であるアインハルトから散々ヴィヴィオは味わっていた。防御の上から尚相手を粉砕するまさに覇王と呼ぶに相応しい破壊力をまともに受けては『聖王の鎧』のその名称の由来とされる防御能力すら貫通し致命打が成立するからだ。元々、クラウスが覇王流の原型となる戦闘スタイルを確立させたのはもしもオリヴィエがゆりかごの生体コアとして動かねばならなくなった後、ゆりかごが制御不能となってしまった場合を想定していたからである。結果的にはその拳がオリヴィエに振るわれる事は無かったが、その破壊力は変わらない。

 

故に逸らす。ほんの少しだけ相手の腕をずらし、直撃だけは避ける。

そうしてクロスレンジまで近づいたヴィヴィオはクラウスの胸に平手を置く。

次の瞬間、掌に圧縮、収束されていた魔力砲がクラウスの無防備な胸へと開放された。

 

虹色に輝く魔力の奔流に、クラウスの体は吹き飛ばされる。が、全盛期には程遠い若い時とはいえ覇王と呼ばれる者がこの程度でやられる筈もなく、ノーダメージとまでは行かないが大したダメージは無いのが当然のように立ち上がった。咄嗟の判断で胸に展開したシールドが間に合ったのである。故に騎士甲冑が少々焦げる程度で今の一撃は終わった。

 

お互い牽制や肩慣らしの時間は終わりだ。本格的な打ち合いに備え、ヴィヴィオは拳を構えた。相手への迎撃、そしてカウンターを行う為の物だ。『英雄聖王』が最も得意としたとされるその構えを、ヴィヴィオは自身の先祖であるクラウスの猛攻に対処するために選択した。

奇しくもそれは、オリヴィエがクラウスに対して行った戦法と同じであった。

 

 

逆賊に奪われたゆりかごを取り戻し、その願いによってゆりかごの深部から本当のゆりかごの持ち主である初代聖王を蘇らせる事でゆりかごの真の力を開放したものの、その力を長きに渡る戦乱を断つことだけに使ったという『英雄聖王』オリヴィエと、その後も抵抗を続けた者達の尽くを打ち倒しベルカ全てを平定させた『覇王』クラウス。

彼らは戦乱で傷ついた国と民を守るために戦後結婚し、当時の聖王国とシュトゥラ王国は合併した。今のベルカの大国である聖王国はそれによって生まれたのである。

ヴィヴィオはその二人の子孫の一人だ。

王族として偉大な先祖に恥じない者となる為に、彼女を愛する家族の思いに応える為に、今日も一日ヴィヴィオは修練を続けるのだ。

 

 

 

 

 

 

「きゅー……」

『若い頃とはいえクラウス様を相手にするのはまだ早かったかもしれませんね。私の判断ミスです。申し訳ありませんマスター……』

 

結論でいえば今回のシミュレーターによる模擬戦にヴィヴィオはクラウスに完全敗北した。

一瞬の判断の遅れが命取り。カウンターの為に構えたヴィヴィオであったが裏の裏を読んだクラウスによって思いっきり態勢を崩され、シールドを構える暇もなく断空拳を叩き込まれたのである。一発ならまだ立て直せるが、情け容赦のない断空拳の乱打によってヴィヴィオは気を失った。十歳の少女に対してこの仕打ちは大人気ないと思うかもしれないがこの苛烈さこそが覇王流の特徴である。

 

初代であるクラウスのそれは特に荒々しく、恐ろしく隙がない剛拳だ。全盛期よりは若くとも戦乱の中で磨かれた確かな物であったが為に親戚であるアインハルトの女性特有の滑らかさが加わった動きに慣れていたヴィヴィオは対応しきれず押し切られたのである。

 

「うう……酷い目にあった……でも、色々と学べる部分があったから、反省会しよっか。レイジングハート」

『そうですねマスター』

 

ボッコボコにされたにもかかわらずヴィヴィオはケロっとした調子でレイジングハートと共に今回の模擬戦についての反省会をした後、日々のトレーニングへと戻った。

ヴィヴィオ・イングヴァルト・ゼーゲブレヒト。十歳。かつて両腕を失くしかけても痛みでは泣かず、愛する人と手を繋げない事で涙したオリヴィエに似てとてもタフな少女であった。

 

 

 




本来の歴史であれば滅んでいた筈のベルカですが、とある男が自らの子孫が全滅の危機に晒され一度目覚めていた結果ちょくちょくと様子を見に来るようになった影響と、大きな力を持った大国が成立しベルカを平定した影響で大戦や大崩壊と呼ばれる惨事からも難を逃れ現存しています。
その影響で今では次元世界でも屈指の治安と歴史を持つ、ミッドチルダの時空管理局に並ぶ抑止力の一つである。


この世界のヴィヴィオはクローンでもなんでもなく普通に産まれた子です。ドラえもんでのび太がジャイ子と結婚しても、しずかちゃんと結婚してもセワシくんは産まれるという話がありますがそれと似た感じでヴィヴィオも産まれてます。
ただ上記の通りベルカは健在なので王族の子で、オリヴィエとクラウスが無事結ばれた世界なのであの二人の子孫としてですので実質別人とも言えます。なので本来の歴史のヴィヴィオは消えたという意味で前回本来産まれる筈だった存在が一人消えた、と書かせて頂きました。
ハルにゃんとは正式に親戚の関係。武術ではライバルとして、年の近い親戚の姉と妹としていい関係である模様。
ちなみにヴィヴィオが持ってるレイジングハートは初代聖王が持ってた方の物です。オリヴィエの護身用に自分は使えないけど予備として内蔵してた杖を組み直して籠手にした物。代々聖王家は受け継いでます。


次元世界に持ち出された形跡のある無くなった方のレイジングハートを探す為に聖王国は管理局と協力してる感じで、ミッドチルダとは悪くない関係です。



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旧暦、戦後のミッドチルダにて

※また別の時代、別の場所に産まれた転生者が出てきます。しばらく原作キャラはほぼオリキャラと化した過去の姿しか出てきませんがご了承ください

時代的には、原作の140年位前の旧暦の時代となります






ズガン、という乾いた音で目が覚めた。即座に仕掛けていたトラップを起動させ、窓から飛び降りる。ああ、結局この拠点は3日も持たなかったかくそったれ。

 

個人用の光学迷彩装置を使いつつ、飛行魔法を起動させ、低空を縫うように飛びこむ。そのまま近くの他の廃墟に飛び込んだ。

 

轟音が辺りに響き渡る。拠点にしていた廃墟の支柱に仕掛けていた爆薬が爆発して、刺客ごと崩れ落ちたのだろう。これで、魔法が使えない奴等は少なくともお陀仏だろう。数の暴力で削り殺される心配は少し減った。

 

もしも魔法が使える奴がアレの中に居たのなら──ああ、そりゃ一人はいるか。魔力光って奴は派手にギラギラ光って目立つから丸わかりだ。少しは削れてるといいが。

 

(殺るか)

 

静かに殺意を高める。今となっては皮肉にしか思えない名称を持った短杖型デバイス『ピースメーカー』を起動させ、バリアジャケットを戦闘時の物へと切り替える。

 

もはやこの世界……ミッドチルダに法などというものは何処にも存在しない。様々な世界を巻き込んだ次元世界規模の戦争はミッドチルダに秩序の崩壊を引き起こさせた。弱者は貪られ、力ある強者だけが生き残る。地獄とは今この場であるとそう言い切れた。

 

だが、それでもだ。前世で見た西部劇の主人公に昔から憧れてて、本当に『保安官』なんてもんになった俺はこんな状況でも生き残った市民を守るために今も『保安官』なんてもんをやっていた。周りにいた同僚は全員先に殉職しちまったので正規の訓練を受けた生き残りは俺一人だ。ここまで来たらもう後に引けなかった。この廃墟群に居座り続け、奥に居る避難民の集落を守るために暴徒と化した集団や、組織化された襲撃者をこうやって仕留め続ける日々が、日常となりつつある。

 

かつて軍で習った工作活動やトラップの作成能力がこんなに役に立つなら、先の戦争で死んだであろう教官殿にもっと酒奢っておくべきだったと後悔しながら、瓦礫から這い出て来た魔導師を殺すため設置型のバインドを起動した。

……素人め、まんまと掛かったか。かつて軍でも使用されていた拘束魔法であるバインドは優秀な捕縛魔法である。特にこの手の設置型は設置する時間はかかる分強力で、掛けた相手の魔力の使用を一時的に押さえ込む能力がある。つまり現状シールドを唱えるにもそれを解くまでの時間が数秒でも必要だった。

つまり、掛かった時点で積みである。

早撃ちなら、誰にも負けない自信がある俺にはピッタリの魔法だ。

 

「スティンガーレイ」

『Stinger Ray.Fire』

 

バインドに対象が掛かって即座に対象を撃ち抜いた。胸に一発、デバイスを持つ手に一発、喉に一発。合計三発を放ち、それらは当然のように命中し、バリアジャケットを貫いた。スティンガーレイは貫通力と速度に優れた優秀な魔法だ。その代わり直線にしか放てないがそれなら当てられるようにしてしまえば良いだけの話だ。

信じられない、そんな表情で襲撃者は崩れ落ちた。まあこれでもうこいつは助からないだろうが、念には念を入れる事にしよう。

 

「スティンガーブレイド」

『Stinger Blade.Fire』

 

形成した魔力刃を倒れた襲撃者の首に放つ。凄まじい切れ味を誇る魔法の刃は簡単に地に伏せた襲撃者の首を刎ねた。

魔導師というのは確実に殺しておかないと痛い目を見る。自分と同期だった保安官が死んだ理由は、とどめを刺したと思っていた魔導師から不意打ちで放たれた収束砲撃だったのだから。

 

 

「サーチャーに敵影無し……周囲にトラップは無い……よし、移動するか」

 

血臭が漂うこの場から、バリアジャケットのダスターコートを翻しこの場から離れた。本来なら埋葬するか燃やすべきなのだろうが、生憎一人ではそんな余裕はない。

こんな最悪な日々に慣れつつある自分に嫌気を感じる。が、背後にいる守るべき者のことを考えればこうせざるを得ない日々が続いていた。

 

次元を超えて、様々な世界が滅んだ大惨事。人々はそれをただ大戦と読んだ。もはやなんの為に戦い、傷付けあったのすら覚えていないほどに戦乱の傷跡は凄惨なものであったのだ。

 

 

(……しまった……水、さっき吹き飛ばした拠点に置いてきてたな。仕方ない。一度集落へ戻ろう)

 

 

それでも尚、生き残った人達はこの絶望的な状況でサバイバルを続けていた。

かつての文明を食い潰しながら……

 

 

 

 

 

 

廃墟街の奥。崩れた建物が続くその先に、廃材を利用して作られたバリケードの中に粗末な掘っ立て小屋が並ぶ。

いつ崩れるか分からない廃墟で暮らすよりはマシと、まだ人手がある頃に建てた物だ。最低限自給自足が可能なように、畑等が見受けられる。人の営みが確認できるものの、その人数は大戦前のかつてに比べれば少ない

 

 

「あっ!お帰り保安官!!」

「おう、戻ったぜ坊主。いい子にしてたか?」

「うん!この前貰った本、実践出来るようになったよ!!」

「マジか?」

「本当だよ。ほら!」

 

そう言うと、魔導式のテンプレートが掌に現れ赤色の小さな魔力弾が形成された。掌の上でクルクルと回るそれは、たしかに魔法の教科書に書かれていたアクセルシューターだった。

 

「はー……この前来たのが二週間前だろ?それで覚えるとかお前筋が良いな坊主!ご褒美に貴重なアメちゃんをあげよう」

「へへへ、俺も保安官みたいに皆を守れるようになりたいんだ。かーちゃんも、とーちゃんも死んじまったけど……ここにいる皆は、今度は守れるようになりたい」

「……そうか。お前は強いな、坊主。その思いは大切なもんだ。忘れないようにしろよ」

 

頭を撫でて、廃墟から見つけたポケットに入れていたアメ入りの缶を渡す。飴と言ったが、コイツは防災食の氷砂糖である。長持ちする分砂糖の味以外はしないのが玉に瑕だ。それでも、甘いものが少ないキャンプでは喜ばれるものだった。

 

ここにいる避難民は、皆大なり小なり訳があってここから離れられない。子供をもつ親子。親を亡くした孤児。老人、妊婦、足を失った軍人……この集落は、そんな見捨てられた弱い立場の人達がなんとか生き延びる為にお互いを助け合った結果産まれた場所だ。

 

俺達は、この場所の元となった街を守る保安官……もっと詳しく言うならおまわりさんや民兵隊みたいな立場の人間だった。地球で言うならアメリカのテキサス・レンジャーが一番近いだろうか。代々、ピストルベルトや銃やバッチの代わりにデバイスを受け継ぐ関係上皆それなりに才能と実力のある魔導師が着任する立場だった。俺のように軍人上がりの者も多い。

……今俺が持っている『ピースメーカー』がその受け継いで来たデバイスの最後の一本だ。殉職した仲間のデバイスをバラしたり、廃墟から見つけたパーツをなんとかニコイチしてだましだまし使っている。

受け継いだ時は現行のデバイスと違って小型だし、大した容量も無いストレージデバイスなので予備として扱う物と考えていたが……とうの昔に元々自分の持っていた方のデバイスは壊れ、単純な分壊れにくい『ピースメーカー』はそんな大雑把な運用でもなんとか使えていた。

小型で頑丈で、ストレージデバイスなので余計な処理速度も無く、誤作動も起こりにくく即座に必要な魔法を発動できる。代々保安官達が先達から受け継ぐのには意味があるのだと思い知った物だ。お陰でまだ戦えている。

 

 

「おや、保安官殿?帰っていたのですか」

「あ、爺ちゃん。保安官からアメ貰っちゃった!」

「おお、これは申し訳ありませんな保安官殿。甘い物など、貴重な品では?」

「教えた事をちゃんと覚えていたこの子へのご褒美なので。ちゃんと大切に舐めるんだぞ?」

「うん、皆と分けて来るね!」

 

そう言うと、坊主は集落の方へと駆け足で走っていった。一人で食べても良かったんだがなぁ……本当にこのご時世には珍しい真っ直ぐな坊主だ。それだけにいつか騙されたりしないか少々不安でもある。

まあ、この目の前にいる老人がいる限りは大丈夫だとは思うが。

彼はこの集落の長をしている方だ。かなりの高齢ながら、かつて軍人であった為か姿勢はピンとしている。衰えとは無縁そうに見える方だ。

 

 

 

「それでは中にお入りください。この前あの子が見つけてきたお茶がありましてな……話はそれを飲みながらいたしましょう」

「はい。それでは失礼します」

 

 

 

 

 

 

 

 

お茶を頂き、一息ついたあとに話を切り出した。二週間前に来たときは食料品の補充の為でなく、集落の様子を伺う為にやってきた為に農作業中だった集落の長とは顔を合わせていない。

 

 

「改めまして、お久しぶりです。何か困ったことはありませんか?」

「いえ、保安官殿がここを隠してくれているお陰で無法者達に見つかることもなくなんとかやれておりますよ。正直な所、我々は貴方に対して報いるべき恩を返せていないと思うのですが……」

「いいえ、あなた方が無事に過ごせていることが私にとって最大の報酬です。それに、ここには同僚達の墓がありますからね……もう戦えるのは俺しか居ませんから。やれる事を、やってるだけです」

「……そう言われたら、我々としてはこれ以上何も言えませんな。では、我々も貴方に可能な限りやれる事をするとしましょう。いつものように食料品や水を用意してあります」

「では、こちらを受け取ってください」

 

そう言ってピースメーカーを振るい、展開した魔導式のテンプレートから収集した物を取り出していく。先ほど渡したアメ缶や燃料、それに頼まれていた農作物の種や肥料なんかもある。

集落から離れた廃墟で防衛線を張っている関係上、この手の今でも使える戦前の品を見つけたらデバイスの収納領域にしまってあった。こうして食料を調達する時に物々交換を行う為である。政府が機能していない現状では貨幣の価値なんて0に等しい為、物々交換が今の取引の基本だ。

 

まだ他に保安官がいた頃から続いている取引だが、俺一人になってからは集落を守っている報酬として水は無償で受け取っている。皮肉にも保安官の数も、住人の数も少なくなってしまったせいでそれでも水はある程度行き渡るようになってしまった為だ。掘った井戸が枯れるか、浄水装置が壊れない限りは水不足に陥る可能性は低いだろう。なので今出した収集品は食料と交換する為の物だ。

 

「おお、肥料や種がこんなにも……いつもありがとうございます。畑を増やすべきですかな?」

「こちらこそいつも水や食料をありがとうございます。安全な水は現地での確保が難しいので、ありがたいです。それで、話が変わるのですが……あの子が魔法を覚えようとしていることは、ご存じですか?」

「……ええ。ここ最近何度も何度も練習している姿をよく見てましたので。知っての通り私は魔法は扱えませんので、あまり詳しいことは分からないのですが……アレが、銃や兵器に相当する程の力であるということだけは分かっております」

「……申し訳ありません。彼の熱意に負けた私の責任ですね」

 

魔法は使える者にとっては兵器以上の力を持つ武器にもなりうる。それ故に魔法の使用はかつてのミッドチルダでは資格や責任を問われた物だ。

子供に武器を渡すと同然な行為を行うなど、言語道断だろうに。かつての頃なら保安官の資格取り消しになっていたであろう暴挙である。

だが、あの真っ直ぐな瞳に俺は勝てなかった。魔法を教えるというのがどういうことなのか知っていながら、俺は直接ではないにしろその方法を教えてしまったのだ。

 

 

「いえ、こんな時代です。自分の身を守る手段を覚えるのは良いことだと思うのですよ。ですが、ね……やはり、両親の敵討ちの為なのでしょうか……そうだとしたら、止めなければ……」

「たしかに、それは否定できません。ですが彼は、ここを守りたいとそう言っておりました。俺は、その言葉を信じてあげようと思います」

「……!! そう、ですか……」

 

あれは本気の目だった。何か後ろ暗い目的があるのであれば、あんな表情にはなれんであろうと思ったからこそ、俺はあの子に魔法の教科書を渡したのである。

 

 

「……そうですね。私もあの子を信じましょう。他でもない貴方が信じたのです。保護者の私も、あの子にとっていい変化だと信じる事にします」

「……ありがとうございます」

 

 

そう言った後、俺は先ほど受け取ったお茶の残りで口を潤した。

……その味は、彼の気持ちと繋がったかのように渋かった。

 

 

 

 




今回の転生者


保安官

イメージCV 小山 力也氏(あくまでもイメージ例なのでお好きな方でご想像ください)

黒いダスターコート、黒いウェスタンハットに保安官のバッチを胸につけたバリアジャケット姿の大男。戦争前は20代で保安官になった才能ある若手として扱われていた魔導師。現在は三十代後半。
戦時中も街を守るために治安維持活動を行っていたが次元戦争による大破壊が起こり、ミッドチルダの政府は壊滅。軍も派遣先で大体が壊滅し治安は崩壊。そんな中でも彼ら保安官達は必死に避難民の救助を行い、彼らを襲う暴徒や襲撃者を鎮圧してきたがどんどん数は減っていき彼が最後の一人となった。
その為、その避難民達の生き残りが営む集落を襲撃者から守るためにあえて一人集落から離れブービートラップを仕掛け廃墟を移動しながら過ごしている。なんとか無法者達から集落の存在を隠せているものの、正直限界を感じつつある。
魔力的にはAAランク位だが、状況が状況な為相手を殺すことに一切の躊躇がない上、軍人上がりで保安官になった為に教官から習っていたトラップ制作設置の技能を持っている。
軍事基地からパクってきた個人用の光学迷彩装置を使ったり、魔法はあくまでも手段と割り切って使うタイプの修羅。一方的に相手を始末する手段に長けている。

使用デバイスは戦争前の時点で旧式のデバイスだった短杖型のストレージデバイス『ピースメーカー』
見た目は古いが中身の消耗部分は交換が効くようになっていた事、単純故に頑丈な事、殉職した仲間たちも同じ物を扱っていた事など様々な状況が噛み合って大破壊による治安崩壊から十数年近くたった今でも安定して動いている貴重なデバイス。元々別のデバイスをメインに使っていたが壊れてしまいそれっきりである。



※今回の話に原作キャラが一名居ます。一応これ、リリカルなのはのSSだからね……()
※よく見たらCVのイメージがデバイスの方にくっついてたので修正


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