StrikerS Sound Stage X After (宮永 悠也)
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01 再会

StrikerS サウンドステージ X のオリジナルアフターストーリーです。
作中でもあったスカリエッティと収監組姉妹達との会話シーン、それを物語になぞらえて、アフターストーリー化してみました。
この物語は、ナンバーズ5番目の女の子チンクが主人公視点になっております。
それを踏まえた上で楽しんで頂けると嬉しいです。
初投稿作品になるので拙い部分が多々あると思いますがどうぞ宜しくお願いします。


海上施設マリンガーデンで起こった大火災。

冥王イクスヴェリアが生み出す増殖兵器マリアージュによる連続放火殺人事件の後の話…。

 

私は…、私達は…、再びここへと訪れた…。

交わした約束を…、いや、取引を果たす為に……。

 

 

《軌道拘置施設》

 

ここは、私達の生みの親であるドクター…、、、

ジェイル・スカリエッティと、管理局に下るを良しとしなかった他の姉妹4人が収容されている施設だ…。

 

先にここを訪れたのは、マリンガーデンでの海上大火災が起こった日…。

事件の中心に関わっていたマリアージュ…。

その情報の詳細を、ドクターから聴取する為の来訪だった…。

 

ドクターは、マリアージュについての情報提供を揚々と受け入れ、捜査に協力した。

不気味とも感じた即決の協力だったが、提供された情報に嘘偽りは無く、その全てが此度の事件の重要な参考材料と成り得た。

 

私達がここへ再び訪れた理由は、その情報提供への見返りを要求したドクターの申し出をこちらが承諾したからである…。

ドクターは、情報を提供すると共に、我が姉ギンガに、ある交渉を持ちかけた。

それは至って単純で、ドクターの言葉を使えば造作もないような取引だった。

 

 

    「ベルカ産のワインをひと瓶……。」

 

 

それがドクターが提示した交渉材料だった…。

"それなりに価値がある赤ワイン"を所望したのはドクターの好みによるものかどうかは分からない…。

が、それを交渉材料に選んだ理由そのものは明白であり、我々にとっても決して無関係なものではなかった…。

 

 

2年前……、我らがまだ世界の闇であった時の話…。

 

 

ジェイル・スカリエッティ事件、または我らの名を取って戦闘機人事件と呼ばれた事件での結果…。

我ら12人の姉妹は、ドクターの願いの成就の為生み出され、世界の平衡を崩す災いへと荷担した…。

新しい世界を築く為…。

ドクターが望む世界への革新の為…。

我ら姉妹は戦った……。

しかしその願いは成就されることなく光に消え…、我ら全員は、拘置の身となった…。

全員とは言ったものの、ひとりの犠牲を除けば…、の話であるが…、、、。

 

 

No.2、ドゥーエ……。

我ら姉妹の中で唯一還らぬ者となってしまった姉妹の名だ…。

下の妹達は、ドゥーエとの接触があまり無かったこともあり、特別悲しみにうちひしがれることも無かった。

……が、そういう私もドゥーエとの接触は数えるほどしかない…。

 

ドゥーエのことを慕っていたクアットロは、誰よりもその追悼を願っていたと思われる…。

クアットロは、ドゥーエを理想の姉と慕い、尊敬していた。

任務において直接行動を共にしたという記録はないが、ドゥーエが潜入活動をする以前は研究所でよくふたりが話をしていたような気がする。

ナンバリングこそ私が下だが、生まれ、活動を始めたのはクアットロより私の方が先だったこともあって、ドゥーエと任務を行ったのは私とNo.3トーレくらいだっただろう…。

 

好いていた姉と任務に従事できず、ナンバリングが下の私が、先に生まれたからという理由だけでドゥーエと行動を共にしていたことを、クアットロはあまり良く思っていなかったようだ…。

そのこともあってか、私に対して敵対心を向けた言葉を放ったこともいくらかあった。

 

そのことについて、私はどうとも思っていない…。

別に何も感じていないという意ではないが…。

 

戦闘機人であるが故に、出生が複雑な我らにとって、姉であることや妹であることの定義が難しいのは今に始まったことではない。

それは変えようもないことであり、いくらでも変えようがある事柄だったからだ。

だからこそ、先に生まれながらにして妹であった私は、後から生まれた姉クアットロが向けてきた敵対心に寛容であることができ、寛容でなければならないという感情でいることが出来たのだと思う…。

 

話が逸れてしまったが、ドゥーエについて…、である。

ドクターもクアットロと同じく、いや、それ以上に喪失感に囚われていたのではないだろうか…。

これは私の勝手な想像だが、生みの親であるドクターの胸の内は姉妹の誰もが抱いた喪失感とは違ったものであったと思う…。

生みの親であるが故の感情とも言うべきであろうか…。

そんな感情がドクターの心の中にあったことを密かに願う…。

もし……、本当にそうであるならば、それ故我らが再びここへ赴いた価値は充分ある…。

 

 

ドクターは、ドゥーエの命日が誓いという理由で此度の交渉を持ち掛けた。

ドゥーエの死を悼む…、その気概を考慮して我が姉ギンガはドクターの提示を受けた。

隣でその様子を見ていた私もその決断を別段止めはしなかった…。

 

いざ、その交渉を果たすべき時が来た際、私はギンガにあくまで個人的な願いを伝えた…。

その願いとは、他の姉妹達もその面会へと立ち会わせてもらえないかというモノだった。

 

ノーヴェ、ウェンディ、ディエチ、セイン、オットー、ディード……。

 

罪を償うことを決めた我々7人全てが立ち会うことをギンガに願った…。

聖王教会組のセイン、オットー、ディードは、職務がある為、同行は難しいが、せめて我々4人だけでも…と。

 

ギンガは苦い顔をして、反対の意を示したが、

「最後のケジメとして同行させて欲しい」と私が頼み込むとギンガは渋々承諾してくれた。

渋々承諾したのはウチの妹達の方も…、だが。

 

私は妹達に事情を説明し、我々がそこへ赴く意味について語った。

3人共最初は複雑な表情を浮かべながらも最後には同意してくれて同行してくれることになった。

一番渋ったのはノーヴェだったな…。

 

「今更会う必要なんてねぇ!もうアタシらには関係ねぇだろ!!」

 

ノーヴェの言う通り、いや、普通ならばそう思うのが当然なのかもしれない。

だが、それと同様に、向き合ってきっちりと終わらせることも必要なことなのだと私は悟した。

 

ノーヴェは優しい子だ。

姉の死を悼むことも含めてだと…、私がズルい言い方をしたから納得をせざるを得ず、ノーヴェは渋々と承諾したのだ。

ズルい言い方だが、勿論その言葉は私にとっても虚言ではない。

例え数回程度しか会ったことのない姉であっても我々が姉妹であることに何ら変わりはなく、その死を悼みたいという気持ちに偽りなどなかった。

それは説得をした妹達も同じであると思っている。

そんないろんな想いを秘めながら我々は今ここに立っているのだ…。

 

 

ギンガ「面会予約していたナカジマです。」

 

A「確認いたします。詳細入力をお願いします。」

 

 

ギンガが施設の職員と会話を交わす。

持ち込み品の確認や同行者の有無、面会対象や面会目的などを詳細に電子パネルへと打ち込んでいく。

その間に私は妹達の様子を横目で確認する…。

3人共、やはり落ち着かない様子なのが見て取れる。

ウェンディは、興味本意で周りをキョロキョロと見回しているという感じだが、ノーヴェとディエチに関しては、不安な様子でチラチラと横目で周りを見ている。

 

 

A「同行者の方は4名、持ち込み品は酒類ということですが……。」

 

ギンガ「はい。ディエチ、持って来てくれる?」

 

ディエチ「あ、うん。」

 

 

ディエチが、両手で抱えていた長方形の木箱をギンガへと手渡す。

中には、ドクターご所望のベルカ産の赤ワインが眠っている。

酒類の持ち込みについては、規定量が定まっており、それに反していなければ譲渡が許可されている。

持ち込んだ瓶やグラスは自傷防止の為、後から回収する決まりにもなっている。

 

 

[キィィィ……ッン……!!!]

 

 

ギンガは、木箱を特別な魔力スキャナーに通し、その安全確認を済ませる。

職員からそれを手渡され、またディエチがそれを受け取った。

 

 

A「確認しました。身体検査は事前に行って頂いていますので、このままゲートを通ってお進みください。」

 

ギンガ「はい。ありがとうございます。

行くわよ、みんな。」

 

ノーヴェ「う、うん。」

 

ディエチ「ん……。」

 

ウェンディ「りょ、了解っす!」

 

 

落ち着いた笑みを見せながら、ギンガは私達にそう促す。

私も「ああ……。」と返事を返してギンガの後ろに立って歩き出す。

ゲートを潜り、静寂が張り詰めた長い廊下を、コツコツと靴音を響かせながら黙々と歩いていく。

奥へと進むと、上階用のエレベーターに辿り着く。

ここからドクターが収監された独房がある階まで行くことが出来る。

 

 

[キュイィィィ…………!!!]

 

 

甲高い機械音を伴いながら、エレベーターが加速する。

断続的なその音が、より一層我々の不安を煽るようだった。

異様なプレッシャーを感じていることを体の強張りが主張する。

2回目の私でさえ、このプレッシャーを感じて平気でいられるほど強くはない。

妹達にしてみれば、もう会うことはないとさえ思った生みの親との再会なのだ。

動揺しないはずがない。

 

だが時間は残酷で、少しも止まってくれはしない。

加速しているかのようにも感じる。

ついにその時が訪れた……。

 

 

《軌道拘置施設・独房室》

 

 

[ピッピッピッ……!ヴィィィ……ッン!!!]

 

 

厳重なセキュリティが施された扉を職員から持たされた仮IDパスを通し解除ののち開く。

薄暗い部屋の中へと入り、全員が入り終わると自動的に扉は閉ざされた。

その瞬間、暗い拘置部屋の各所に光のスポットが当てられる。

ガラスで遮られた向こうに照らし出されたのは項垂れたひとりの男性の姿。

ベッドに腰を落ち着け、長く紫色に染まった髪がだらりと垂れている。

 

 

ギンガ「……約束の物を届けに来ました……。

ドクター…、ジェイル・スカリエッティ……。」 

 

 

ドクンと心臓が大きく脈打つ……。

明らかに空気の重みが変わった……。

再び感じるこれが恐怖なのかその他の何かであるのか私には分からない……。

男性は、項垂れた頭をゆっくりと動かし、上げた顔からは見慣れた不敵な笑みが我々を迎えるように覗いていた……。

 

 

スカリエッティ「やあ……♪

タイプゼロファースト……♪」

 

 

落ち着きながら闇を孕んだ低い声……。

特徴的なその声は、間違うことなき我らがドクター、

ジェイル・スカリエッティだった……。

 

 

ギンガ「はい……。ギンガ・ナカジマ捜査官です……。お変わり……、ない様で……。」

 

スカリエッティ「おっと……、失礼……。

ギンガ捜査官……、だったね……♪

失念していたよ……♪」

 

ギンガ「いえ……。」

 

 

ピリついた空気を察し、ドクターが言葉を訂正する。

いや、これは意図的にそうしたとも取れた…。

我が姉ギンガもまた、形は違えどドクターに作られた存在であることは言うまでもない…。

それを理解させるかの如く、笑みを浮かべながらそう述べた可能性もある…。

 

 

スカリエッティ「思ったよりも早く来訪してくれたようだね……。嬉しいよ……。

それほど時を待たずに、娘の追悼を祈ることが出来るのは喜ばしい限りだ……♪」

 

ギンガ「マリアージュの事件は、あなた方の協力もあって、被害が大きく拡大する前に阻止することが出来ました……。こちらとしても、あなた方の情報提供に感謝しています……。」

 

スカリエッティ「うむ……。情報を提供した甲斐があったということだ……♪素直に喜びたいね……♪

しかし……、どういった風の吹き回しかな……?

今日は妙に来訪者が多いね……。」

 

ギンガ「ん……。」

 

 

妹達3人は、その言葉に身を更に強張らせる。

ギンガが説明をするより先に、私がドクターへ説明することにした。

 

No.5である私……、チンクが……。

 

 

チンク「私の提案だ……。ドクター……。」

 

 

動悸を無視し、はっきりと伝える。

ドクターは私の方に視線を注ぎ、笑みにより不敵さを増しながら、低く強い声で私の名前を呼ぶ……。

 

 

スカリエッティ「チンク……♪そうか……♪

君の提案だったのだね……♪」

 

チンク「ああ……。」

 

 

ドクターの視線を一線に受けながら、私は言葉を続ける。

 

 

チンク「我が姉・ドゥーエの追悼を祈る為の儀、それ故に妹達を集めた……。セイン、オットー、ディードは、残念ながら来ることままならなかったが……。」

 

スカリエッティ「なに、君達だけでも来てくれて私は嬉しいよ……♪ノーヴェ、ディエチ、ウェンディ……♪」

 

ノーヴェ「ん……。」

 

ディエチ「久しぶり…、ドクター…。」

 

ウェンディ「お、おひさし、ぶりっス…!」

 

 

ドクターはひとりずつゆっくりと名前を呼ぶ。

No.ではなく、それぞれの名前を……。

3人の妹達もそれぞれにドクターへと返答を返す。

 

 

スカリエッティ「君達も変わりないようだね……。安心したよ……♪」

 

ノーヴェ「ふん……。」

 

 

不敵な笑みに不釣り合いの優しい言葉。

ノーヴェはそれに嫌悪感を示したのか、むっとした表情を表し、そっぽを向く。

 

 

[ブ……ッン……!!!]

 

 

瞬間、突然回線が開く。

パッと映し出されたのは見慣れた顔だった。

 

 

クアットロ「あらあらぁ~。揃いも揃って何の用なのかしらぁ~?見学ならご遠慮してくださる……?

私達、公安のペットの貴女達と違って見物用の動物に成り下がったわけではないのよ……?」

 

 

映像が出ると同時に甲高く妖しい声が響く。

我が姉、No.4のクアットロ……。

彼女も相変わらずだ……。

気に入らないモノに対しては、

口を開けば嫌みと暴言を吐き捨てる。

 

ニタニタと笑っているように見えて、心の内は苛立ちに満ち溢れているのが眼鏡の奥で光る目を見れば、容易に感じ取ることが出来る。

むしろ隠す気さえさらさらないのかもしれない。

 

 

ウェンディ「ク、クア姉……。」

 

クアットロ「おひさしぶり。ウェンディちゃん、ノーヴェちゃん、ディエチちゃん……♪」

 

 

クアットロは妹達に一貫して「ちゃん」付けで呼んでいる。

私のことをチンク「ちゃん」と呼ぶということは、一応妹としての認識でいてくれている……、ということだろうか……?

 

 

スカリエッティ「クアットロ…。せっかく妹達がこうして来てくれているんだ…。素直に再会を喜んであげてはくれないかな…?」

 

 

ドクターがクアットロをたしなめる。

その言葉に不機嫌になるどころかまるで別人のようにさらに明るい様に変容し、再び我々へと言葉を掛ける。

 

 

クアットロ「はぁーい♪ドクター♪

ごめんなさいね~♪これは心配の裏返しとでも思ってくれるとクアットロお姉さんは助かるわ~♪

そっちは仲良くやれてるの~?」

 

 

明るい口調だが、これもまた目は口ほどに物を言う。

けして穏やかな面持ちなどではなく、ギラギラと鋭い眼光が我々へと注がれている。

 

 

ウェンディ「ま、まあ…、ぼちぼち…っスね?」

 

ディエチ「え?あ、うん…。上手く…、やれてる…、と思う…。」

 

 

クアットロの視線に戸惑いながらぎこちなく答える。

 

 

クアットロ「ノーヴェちゃんは…?

どぉ…?最近は…?相も変わらずチンクちゃんにベッタリの甘えたさんなの……?バカのひとつ覚えみたいに…♪」

 

ノーヴェ「ギ…ッ!てめぇ……!」

 

 

特別ドクターに素っ気ない態度を取っていたノーヴェにクアットロの悪意ある言の葉が向けられる。

ノーヴェは怒りを露にして身を乗り出そうとするが、それをたしなめるのは姉の役割だ……。

 

 

チンク「ノーヴェ……。」

 

 

首を横に振りながら乗り出すノーヴェの体を抑える。

私の顔を見たあと、冷静に戻ったノーヴェは舌打ちこそすれ、素直に歩を戻した。

 

 

チンク「クアットロ…。前回の特別捜査の時とは違い、

今回、姉妹の回線を同時に開いているのはギンガの計らいだ…。

それ以上の敵意の行使は双方ともに利などない…。

回線を切る処置も惜しまない結果になる…。」

 

クアットロ「……っ!?くっ……!」

 

 

クアットロは初めて不機嫌な表情までも顔に出した。

眉間にシワを寄せて、鋭い眼光で私を睨み付ける。

それをたしなめたのは意外にもドクターだった。

 

 

ドクター「それは困るね…。出来れば私からの謝罪で事を治めてくれると助かる…。せっかく私の最高傑作達が再び集う機会が設けられたんだ…。これからひとり欠けてしまうというのは避けたい…。

ノーヴェ、すまなかったね…。」

 

ノーヴェ「べ、別に…。」

 

 

ドクターからの思いがけない謝罪に少し戸惑い、機械的に答えるノーヴェ。

その様子を見ながらクアットロは視線をはずしながらもより嫌悪感を募らせているような感じだった。

 

 

[ブ……ッン……!!!ブ……ッン……!!!]

 

 

また別の回線が開く。今度はふたつ同時に…。

そこにはNo.1ウーノ、No.3トーレの姿が映っていた。

 

 

ディエチ「あ……。ウーノ姉…、トーレ姉…?」

 

ウーノ「久しぶりね…。」

 

トーレ「ふん……。」

 

 

先に妹達へと言葉を掛けたのはドクターと一番時を長く過ごした姉…、No.1ウーノ…。

ナンバリングも生まれも一番最初の、我々にとって間違いなく一番上の姉上だ…。

常に我々を指示するトップの存在。

そんな姉ウーノのことも、クアットロはドゥーエと同じくらい尊敬していた。

 

 

ウーノ「ドクター、申し訳ありません……。

妹の不始末を代行させてしまいました……。

本来ならば姉である私が負うものを……、、、」

 

スカリエッティ「いや、良いんだよ…。ウーノ。

私は気にしていないし、何より可愛い娘の尻拭いだ…。喜んで引き受けるさ…♪」

 

 

クアットロの表情が曇る。

口をきゅっと噛み締めて項垂れるように視線を落としてしまった。

間接的とはいえ、尊敬している姉からの叱責に似た言葉は堪えたようだ。

 

ウーノ、トーレは現れたが、

後発組で唯一収監を受け入れた妹…、No.7セッテは姿を現さない。

ギンガの話によれば、今回の任意の参加に不参加の意を示したという…。

機械的に必然性を思考した結果…、という所だろうか…?

あの子はもう少し人間的な感情を教える必要があった…。

そうであったなら…、という仮定はもうやめておこう。

考えて変わる問題ではない…。

 

 

トーレ「こんな大所帯の面会…、よくここの管理者が許したものだな。同じクラスの罪人であるお前達を面会に寄越させる程、まぬけな連中ばかりなのか…?」

 

 

こちらも鋭い言葉を投げ掛ける。

No.3トーレ……。

私、チンクにとって一番接点があった姉であると言えるだろう……。

任務を共にした数も多く、後から生まれた妹達のことについても多くを語り合った仲だ。

口数こそ少なく、冷静沈着な性格ではあったが、妹達のことについては少なくとも私の印象では親身に想っていた方であると記憶している。

 

 

スカリエッティ「トーレ…♪これは捜査官殿が優秀であるが故のものだよ…♪再三言うが、素直に喜ぶべきだ…♪」

 

トーレ「はぁ……。」

 

スカリエッティ「そうだろう?ギンガ捜査官…♪」

 

ギンガ「私の口からは何とも…。

ですが、この提案を持ち掛けたチンクに…、

決断を下した私自身にも今では納得しています…。

こうするべきであったと……。」

 

スカリエッティ「素晴らしいね♪実に良い選択だ…♪」

 

 

両手を開きながら、怪しく微笑む。

ドクターから放たれる異様なプレッシャーは未だに消えることはない。

ずっとこちらが心を拘束されているような感覚が続いている。

まるで檻の中に入れられているのは我々のようだと錯覚する。

 

 

スカリエッティ「そして……、、、君はもうひとつ正しい選択を問われることになる……♪」

 

 

ギンガ「え…………?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




第1話 再会 お読み頂きありがとうございます♪
この1話では、ひとまずドクター達の所へチンク達が赴く所を冒頭に書かせて頂きました♪
ドラマCDの方とは違い、ギンガ、チンクに加え、ノーヴェ、ディエチ、ウェンディも拘置所に赴くようにしています♪
セイン、オットー、ディードは、残念ながら物語の構成上ドラマCDと同じくいない設定にさせて頂いております( ̄▽ ̄;)
沢山いすぎても、今回の話では手持ち無沙汰になるのが確定なので省かせて頂いた次第です( ̄▽ ̄;)
セッテも同じような理由で省いてしまってます。
本当はいれたかったのですが、今回はチンク視点の話として重要なオリジナルアフターにしようと思っていたので、残念ながら今回はいません( ̄▽ ̄;)

いつか書こうかな……。セッテのお話。

あと、オリジナル設定的なのも加えております!
ドゥーエ、クアットロ、チンクの関係性です。
クアットロとチンクは、サウンドステージ03の時に、すこーしクアットロがチンクに対して嫌味を言っているシーンがあったり、コミック版の方でドゥーエのことをクアットロが尊敬しているという描写があったので…、
早生まれのチンクに対しての嫉妬とドゥーエへの尊敬からくる崇拝感をマッチングさせるために、チンクとドゥーエが何回か任務を共にしたことがあるという風な設定にしました♪
当然、早生まれをしたチンクが、ナンバリングでは下なのに、尊敬している姉のドゥーエと一緒に任務に出たことがあるということにクアットロは腹を立てるかなー、と思ってオリジナル設定を加えた次第です♪
なるべく話がごちゃごちゃしないように書きたかったので良く書けてるかと♪(自分で言うしかない)

やっぱり今回の物語の主人公はチンクなので、チンク視点でいろいろと描写しています。
チンクから視た妹達(ノーヴェ達)やドクター達の描写を中心に1話はまとめてみました♪

いろいろと見辛かったり分かりにくかったりする描写があると思いますが、不慣れな初心者ですのでご愛嬌をば( ̄▽ ̄;)

感想や質問、ご指摘などを頂けたりすると嬉しいです♪
これからも宜しくお願いします♪


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02 選択

思わせ振りなドクターの一言で終わった1話。
その続きでございます♪
どうも宮永悠也です♪1話で名乗っていませんでしたね( ̄▽ ̄;)何故か2話目の前書きで自己紹介です(笑)
第2話 選択 そのタイトル通り、いろいろな選択を迫られるお話です…。
ドクターの言う選択に注目してご覧ください。


急なドクターのひとこと……。

続けて放たれた脈絡も何もない唐突な言葉に、

ギンガはおろか我々も一瞬思考が停止した。

 

 

ギンガ「一体…、何のことですか…?」

 

スカリエッティ「君の判断が重要になる…。君は正しい選択をするべきだ…♪ギンガ捜査官…♪」

 

 

放たれた言葉についてギンガは聞き返すが、ドクターはその問いに答えず話を進め続ける。

不敵な笑みは崩さぬまま、声のトーンだけを落とし、ギンガに言葉を投げ掛ける。

 

 

スカリエッティ「ここから先の数分…、

捜査官殿には席を外してもらいたい…♪」

 

ギンガ「なっ…!!?」

 

 

口から紡がれた言葉は誰もが予想だにしなかったモノであった。皆、驚愕した。

当然だ…。驚かない方が不自然と言える…。

虜囚の身であるドクター側からの唐突な提案、というよりこれは暴案である。

今、こうして我ら姉妹が通信越しとはいえ会話出来ていることさえ、ギンガの完全なる好意によるものなのだ。

それを不敵な笑みを浮かべたまま、言い放っている。

 

そもそも我らは全員罪人であることを忘れてはならない……。

ただ別の選択肢を選んだが故に、

このような状況へと分け隔てられているだけで、

我々は皆、同じく罪人だ……。

ガラス越しの牢獄で、中にいるか外にいるかの違いがあるだけなのだ……。

 

檻の中にいる罪人【ドクター達】、

檻の外にいる罪人【私達】、

そしてそれを見張る監視官【ギンガ】、

今の私達は、大まかに言ってしまえば、

こういう立ち位置に変わりないのだ……。

一番重要なキーである監視官【ギンガ】に、席を外すように檻の中の罪人【ドクター】が促しているという今の状況……。

ハッキリ言ってこんな暴案が通るはずがない。

 

 

ギンガ「それは……、出来ません……。」

 

 

当然の選択……。

これが正しい選択でなくて何だと言うのだ…?

ここでギンガがいなくなる意味を理解できない程、

ドクターも酔狂ではない。

なら何故…?何故そんな暴案を提示したのか…?

ざわざわと嫌な感覚だけが妙に背筋に残る。

 

 

スカリエッティ「ふむ…。やはり無理…、か…。

く…、くく……♪」

 

 

ドクターは肩で笑う……。

その様子は不気味と形容するに相応しい。

 

 

ギンガ「な、何が可笑しいの……?」

 

 

ギンガは困惑する。

我々にもドクターの提案と不気味な笑みの真意は分からない。

 

 

スカリエッティ「いや…、君はどう思うね…?

クアットロ……♪」

 

クアットロ「え?私ですかぁ?ドクター…?」

 

 

また脈絡もない言葉を、次はクアットロへと掛ける。

クアットロは頬に手を当て、思考を開始する。

やがて数秒の後、気落ちしていた先程とは一転してニタリとした毒々しい笑みがこぼれ、視線がギンガへと向けられる。

 

 

クアットロ「あ…♪ふふ…♪サーティーンちゃんってばひっど~い♪やっぱりそういうことなんだぁ…♪」

 

ギンガ「な、何…?」

 

クアットロ「口ではなんだかんだ言いいつも~♪

結局はチンクちゃん達のこと……、、、

【信じてない】ってわけよねぇ……♪」

 

 

ギンガ「!!?」(ビクッ…!)

 

 

チンク・ノーヴェ・ウェンディ・ディエチ

「……っ!!?」

 

 

これは、実に巧妙だ……。巧妙すぎる……。

ドクターの放った正しい選択を問われるとは、

つまりこういうことだったのだ。

ここでギンガが提案を断るということは、

私達姉妹を【信じてない】ということに直結するのだとまさに今、クアットロを通じて確定付けられてしまったのだ。

 

短い時を過ごした私達にも、ギンガの優しく裏表のない性格は伝わっている。

姉としてとても素晴らしい存在だとも…。

だが、ドクターはそれを利用しに来た…。

そういった感情につけこむスペシャリストであるクアットロに狙い澄まされた。

 

これがただの挑発程度の物ならば、ギンガは動揺することなく、切り捨てただろう…。

だが、これはただの挑発とは訳が違う…。

【信じていない】という確付けを無意識的に今、埋め込まれたからこそ出来た立派な交渉なのだ。

 

 

スカリエッティ「どうかな…?ギンガ捜査官…♪

ついでというにはおこがましい限りだが、頼まれてはくれないかな……?」

 

 

勿論、我々はドクターのこれを断ったからといって、

ギンガに対し不信を疑うことはない。

けれど、ギンガにとってそうではないからこそ、

この交渉は巧妙であり有効に成り得てしまうのだ。

 

ギンガも信じてくれているだろう。

我々がその程度で不信を疑うことはない…、と。

ただ、可能性がどうしても捨てきれない……。

人の事を想いすぎるギンガにとって、

もし【信じていない】と思われてしまったらが

心の中で消えずに残ってしまう…。

だから……、、、

 

 

ギンガ「ん……。分かり…、ました……。」

 

 

ギンガは、こう答えてしまう……。

ギンガは、【もしもの可能性】を、

人を想いすぎるが故に捨てきれない。

 

家族になりつつある我々へ、ギンガは姉としての証明と信頼を守る道を選ぶことにしたのである……。

 

 

チンク「ギンガ……、、、」

 

ギンガ「チンク……、、、」

 

 

選択を変えるなら今だと…、私はそう告げようとした。

けれどギンガは、そんな私の言葉を遮り、小さく私の名前を呼ぶ。

 

 

ギンガ「ごめんなさい……、私は……、、、」

 

 

左手で右袖をぎゅっと掴みながら、ギンガは下を向く。

そして弱々しく、儚げに言葉を重ねた…。

その先の言葉を紡げないまま、ギンガは口を閉ざしてしまう。

その先の言葉を察することは容易であったが、私はこれ以上、ギンガに重い言葉を紡いでほしくなかった。

私は、ゆっくりとギンガの左手を取り、頷く。

 

 

チンク「心配しなくてもいい…♪私達は理解(わか)っている…♪」

 

 

ギンガ「ん…。ありがとう…、チンク…♪」

 

 

私はそれだけ告げる…。

それに対し、ギンガは、ただ「ありがとう」と返してくれた。

これだけで私達は理解を共有できる…。

多くを紡がなくても大丈夫なんだと安心し合えた…。

 

 

ギンガ「5分…、いえ、10分席を外します。

それで、いかがでしょう……?」

 

スカリエッティ「ん…♪嬉しいね…♪正しい選択に感謝するよ……♪」

 

 

毅然とした態度で言い放つギンガに対し、

ドクターもまた変わらず不敵な笑みを返しつつ答える。

 

 

ギンガ「では……、、、」

 

 

[ヴィィィ……ッン……!!!]

 

 

そう告げ、ギンガは扉の外へと出ていく。

扉が閉まる直前、小さく笑みを浮かべて軽く手を振るギンガに私達も各々小さく応えた。

 

さて……、、、、、

 

 

スカリエッティ「水入らず…、とは言えないな…♪

ここは常に映像で監視されている…♪

今でこそ音声は記録されていないけどね…♪」

 

 

ギンガが席を外し、張り詰めた空間を割いたのはドクターのひとこと…。

 

 

クアットロ「無粋も無粋…、あの子が席を外そうが外しまいが同じこと…。ですよね…♪ドクター…♪」

 

スカリエッティ「ああ…、まさにその通り…♪」

 

 

続けて空間を割いていく。

クアットロとドクターの会話が途切れることなく、咳を切ったように溢れ出す。

 

 

スカリエッティ「だが、全く同じではない…♪

大きな意味がある…♪彼女がここにいないのは都合がいい…♪」

 

クアットロ「うふふ…♪そおですねぇ…♪少なくとも息が詰まるような思いをしなくて楽です…♪

緊張感がこっちにもビシビシ伝わってきて、ほんと窮屈~♪」

 

 

痺れを切らした私は、自ら会話を遮断することにした。

 

 

チンク「出来れば、話は我らが姉妹ドゥーエの追悼の後にでも…。ギンガが与えてくれた時間を無駄にしたくはない……。」

 

スカリエッティ「うむ…♪実に最もな意見だ、チンク…♪だが、私はそれに異を唱えよう…♪」

 

チンク「は……?」

 

スカリエッティ「優先すべきことが他にあると言っているんだよ…♪それに…、選択をするのはまだまだこれからなのだからね…♪」

 

 

ドクターは相も変わらず、意味不明な切り返しで会話を歪ませる。

何を言う気なのか、不気味な笑みを維持したままでは意図を読み取ることなんて出来はしない。

 

 

ノーヴェ「いい加減にしろ!!あんた何が言いてぇんだよ!!!訳わかんねぇんだよ!!!」

 

 

たまらずノーヴェも話に割り込む。

先程のギンガの件もあり、ノーヴェの苛立ちはピークに達していたに違いない。

身を乗り出してドクターへと明らかな苛立ちを露にする。

 

 

ウーノ「ノーヴェ…!ドクターへのその物言い…、改めなさい……!」

 

 

ノーヴェのドクターに対する過ぎた物言いに、

静かに怒り制止を求めるウーノ。

それを鎮めたのは、またもやドクターの言葉だった。

 

 

スカリエッティ「いや、そうだね…。私もいささか言葉遊びが過ぎた…。これは私の落ち度だよ、ウーノ…♪」

 

ノーヴェ「あぁ…?」

 

ウーノ「ですが……、、、」

 

 

ドクターが妥協し、非礼を詫びるような態度を取って、ノーヴェの怒りを鎮めた。

聞き分けの良すぎる不自然さに逆に不安を覚える。

ウーノは、納得のいかない顔で言葉を続けようとしたが、ドクターの手前、最終的には飲み込んだ…。

というよりも、ドクターが言葉を続けたからというのが正しいか……。

 

 

スカリエッティ「時間が惜しいのは私も同じさ…♪

【私達】に猶予はそれほどないのだから…♪」

 

チンク「………私達…?」

 

 

ドクターが【私達】に妙に強くアクセントを付けて言い放ったことに対して違和感を感じた。

その違和感の正体について、ドクターはゆっくりと語っていく……。

 

 

スカリエッティ「【私達】というのは紛れもなく【私達】のことだよ…♪私と…、その可愛い娘達…、勿論……、君達を含めた…、ね…♪

猶予がない…。そう、【私達】には猶予がない…!

しかし、選択を誤らなければ我々にはまだ未来がある……♪」

 

ノーヴェ「だ、だから!何言ってんだって!!」

 

 

わからない……。

ドクターが何を伝えようとしているのか……。

 

 

いや、違う……。

 

 

理解したくないのだ……。

さっきよりも嫌な感覚が、頭に響いてくるから…。

何かひどく苦しい選択…。

それを強いられるのが分かる……。

ドクターの口から告げられる……。

 

 

スカリエッティ「簡潔に伝えよう……。

チンク、ノーヴェ、ウェンディ、そしてディエチ…。」

 

 

チンク「………ん。」

 

ノーヴェ「あ……?」

 

ウェンディ「???」

 

ディエチ「ん……。」

 

 

スカリエッティ

「ここからの脱獄に……、手を貸してほしい……♪」

 

 

チンク「…………なっ!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ご愛読ありがとうございます♪作者の宮永悠也です♪
どうでしたでしょうか?第2話 選択…。
最後まで読んでいただけた方には分かると思いますが、突拍子もない展開が続いております(笑)
そこはオリジナルストーリーなのでご勘弁を♪

結構大袈裟に書きすぎている描写とかもあるんですが、やはり展開を大きくするにつれて、含みがあるかの、ような描写が好きなのでこういった形になります(笑)
なのでいつのまにかボリュームが大きくなって読むのが大変だったり( ̄▽ ̄;)

今回のこの2話では、それぞれのキャラの性格描写というのを重点に描きました。
言わずもがな、ギンガさんに関しては相当描写に悩みました。
物語の構成上、これまた勝手な性格描写になっていることはお許し願いたいのですが、本当のギンガさんでも、この時期のこのタイミングならああいう考えを持つかなー、とか深く考えながら描いたので自分的には満足です♪

文章の書き方についてお話させて頂くと、
私は、基本大事なワードだったりする所は【】←このかっこを使います。
あと、台詞のあとに多用している …… ←これ。
これは、冷静な台詞だったり、間を取るような話し方をするキャラによくつけています。
これが無いところは、割りとすっぱりと言い放っていたり、普通のテンションの台詞だったりします。
真剣な口調とか、テンションが低めな時の台詞描写はあれを使いますね♪

あとがきが長くなって参りましたのでここいらで終了させて頂きます♪
感想やご質問、ご指摘など頂ければ幸いです♪
ここどういうことなの?とか、ここの描写わっけわかんねぇよん!とかありましたらご遠慮なくメッセージお願いします♪


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03 決断

またまた驚愕のドクターの台詞からお話をまたがせて頂きました。
第3話 決断。
チンク達に提示された選択に対しての、まさに決断が問われる今話。
1、2話に負けない心理描写を綴っておりますのでどうぞご愛読下さい♪


我々は、耳を疑った…。

ドクターの口から紡がれた言葉は、今までのどんな言葉よりも驚愕すべきもので、正気とは思えない発言だった。

しかし、冷静に取ればこれ程似合う言葉はない…。

今までが的外れだったに過ぎないのだ…。

が、それを含めても、この提案に驚愕するしかなかった。

 

 

ディエチ「ド、ドクター…、何を…、、、?」

 

ウェンディ「じょ、冗談っすよね……?」

 

 

妹達も動揺を隠しきれないでいる。

こんな突然の提案、驚いて当然だ。

だが、そんな我々とは相反して、まるで嘲笑うかの如く、

ドクターは言葉を重ねていく。

 

 

スカリエッティ「君達ならば造作もない仕事(こと)だろう…?

特にチンク…♪君はとっておきだ…♪」

 

チンク「私が……?」

 

スカリエッティ「自分が一番理解しているはずだよ…?

君の能力…、さらには人徳……、クク…♪

彼女達を動かすのに、充分な存在であるということを…、ね♪」

 

チンク「ん……。」

 

 

まるで全てを見透かすように、

ドクターの言葉ひとつひとつが私の弱い部分を刺していく…。

 

当然だ…。

彼は何より我らの生みの親であり、長い間、時を共に過ごした……。

歪であり、複雑な関係で成り立っていた我々だが、

ひとつの絆のような物はあったと言える。

だが、それでも私には、この提案を受ける資格も根拠も、

ましてや必然性自体を感じることもなかった…。

 

 

だから……、、、

 

 

チンク「ドクター、その提案には乗れない…。

我々はすでに選択している…。

自らが殺そうとしたこの世界に…、

生きて我々は償いをする…、と。」

 

スカリエッティ「すでに……、か。

その選択が誤りでないことを否定はしないさ…♪

しかし、それが正しい選択であると肯定することもない…♪

故に我々はこうしているのだからね…♪」

 

 

映像で映る他の姉達を囲うように両腕を広げる。

ドクターとクアットロは不敵に笑い、

ウーノとトーレは表情ひとつ変えずにいる。

 

 

チンク「私達は、正しい選択をしたと思っている…。

故に、後悔などしていない。

これから選択を変えるなんてことも……、、、」

 

スカリエッティ「後悔か…。クク…♪

脆い言葉だね…♪平和、正義と同列…♪

訪れたからといって、振りかざしたからといって、

何の意味も持たない…♪

ただ新たな火種の材料にされるだけさ…♪

後悔するしないはさほど問題ではないよ……。」

 

ディエチ「ん………。」

 

 

冷徹な言葉が息苦しい。

重くのし掛かる言葉が、部屋の酸素を奪っているかのように感じた。

 

 

スカリエッティ「君達がすべきなのは…、

この上ない未来への絶望、希望の破棄…、だろうね…♪」

 

ウェンディ「ど、どういう意味っスか…?」

 

スカリエッティ「私にとって…、君達は今でも可愛い娘達…。

私が造り出した中でも…、最高を謳うにふさわしい傑作品だ…♪

私なら…、君達を正当に評価した上で、その力を最大限に振るわせることが出来る…♪

 

だが…、、、。

 

他の人間はその限りではない………♪」

 

チンク「………っ!!」(ビクッ)

 

スカリエッティ「正当な評価などされず、君達をただ駒として扱うのが関の山だろう……♪」

 

ノーヴェ「そ、そんなこと……!」

 

ウーノ「無いと確信が出来て…?

あなた達が見てきた世界は狭い…。

時間的にも……、範囲的にも……。」

 

クアットロ「チンクちゃんは例外として…、ね♪」

 

チンク「ん……。」

 

トーレ「その狭い世界で、たまたまサーティーンのような奴に懐柔され、世界の本当の影の部分も知らぬまま、選択を早めたのが今のお前達だ…。」

 

スカリエッティ「彼女も、元はこちら側だ♪

近しく感じるのは当然のこと…♪

だが、他の連中は違う…。

他の連中は、我々にとって酷く都合の悪い猛毒だ……。

君達を1度も【人】として扱うことなどなく、

ただの【道具】として……、

 

壊れるまで…!

 

擦りきれるまで…!!

 

価値がなくなるまで……!!!

 

駒同然に使い続けるだろう……!!!!」

 

ディエチ「ん………ぅ……。」

 

スカリエッティ「今は、ほんの少しの毒に犯されようと、甘い痺れを心地よく感じるだけに過ぎない…。

だが、いずれ世界という名の猛毒は、君達を確実に破壊へと誘う…!!!

私には、その運命が見える…。

だからこそ、ここで君達を救済したい…♪」

 

チンク「ん……。」

 

スカリエッティ「チンク…♪君なら分かるはずだ…♪

妹達に歩ませるべき道がどちらなのか…。

破壊の道などではなく、未来永劫輝く道を歩ませるべきだとね…♪

例え、それが堕ちた影の部分だとしても、光に照らされ続け、焼け爛れてしまう我が身を嘆く結末を迎えるよりはマシだと私は思うよ…♪

私はいつだって正しい選択をしてきた…♪

そうだろう?チンク…♪」

 

チンク「…………。」

 

 

口を閉ざしたまま、私はただ沈黙していた。

ドクターの言葉が脳内で反響する…。

その響きは、私の胸の奥にまで届き、心を無理矢理振動させた。

 

ドクターは正しい…。

そう思うようにプログラムが働いている訳ではなく、

少なくともそう受け取っている自分がわずかに存在している…。

私は妹達と違って、長く影の世界に浸かっていた…。

 

だから…、私は知っている…。

世界が綺麗なだけでは無いことも…、

影のある部分には深く厳しい現実が存在しているということも…。

 

 

スカリエッティ「我々は等しく罪人…。他からもそう映る…。

【人ではない存在】であることが…、【罪人】であることが…、

これからどんな大きな善行を成そうとも付きまとう…。」

 

 

理解している…。

特別な生まれかたをした我々にとって、それが枷になることを……。

その枷に繋がれたまま選んだ道が、険しい物であるということを…。

 

 

スカリエッティ「ここまでを含め、改めて選択を問うとしよう…。

私の可愛い娘達…♪我々が夢見た新たな世界への一歩…。

それには君達の力が必要だ…♪

再び行こう…♪我らの新しい世界を求めて…!!!」

 

 

ドクターの最後の問い掛け…、誘い…、選択…。

 

私は迷っている…。

 

惑う資格すらないというのに…。

 

この問い掛けに対する、何よりの正しい選択は、

迷いなく言い放つことだ…。

だが、今の私にはそれが出来ない…。

心の奥底に、迷いが張り付いている……。

 

私だけの迷いなら、いくらでも切って捨てられる…。

私は今までそうやっていくつもの選択を繰り返してきた……。

だが、今、目の前に提示されている選択は、私だけの物ではない……。

妹達…、いや、ドクターも姉達も含めた選択なのだ。

 

肯定、否定、どちらの言葉を選択しようと…、その言葉に誇りも意志もましてや正しさなど微塵も込められないだろう…。

 

私は、5番目…。

ドクターの特別にも成れず、姉としても中途で不十分な私…。

そんな【どちらの側にもいられない】私に、正しい選択など最早出来はしないだろう…。

 

だからこその【迷い】…。【心の痛み】…。

 

私はただ、妹達へと振り返り、押し殺したような空の微笑みを向けるだけになる。

今、私にはそれしか出来ない……。

妹達に出来ることは、それしか……。

 

 

チンク「……。」

 

 

振り返る…。

空の微笑み、迷いも振りきれていない言葉を掛ける準備をしながら……。

ゆっくりと、視線を上げていく。

少し離れた後方に立つ、皆の方へ…。

 

 

チンク「…………!」

 

 

妹達の瞳を見る……。

だが、そこに不安はなかった……。

恐れも、困惑も、憂いも、蔑みも……。

ただ【強さ】を感じた……。

 

ノーヴェ、ディエチ、ウェンディ……。

3人とも…、振り返った私の目をじっと見つめ返してくれていた…。

 

私は今まで何を見ていたのだろう……。

私は……、今まで何を思っていたのだろう……。

 

私は、妹達の【強さ】を見誤っていた。

いや…、そうではない……。

私は、妹達の【弱さ】を決めつけていたのだ……。

 

きっと不安であるだろう……、

正しい道を選んでやらなければ……、

だが正しい道を選んでも苦しい思いをするかもしれない……、

まだ姉の存在が必要な子達だから……。

 

そんな決めつけを私は無意識に行っていた…。

けれど、私の妹達は、強くあった……。

私なんかよりもずっと……。

 

【弱さ】の決めつけが、【強さ】を感じることを拒んでいた…。

今更になって感じることが出来たのだ…。

<それ>に気付けたことが何と嬉しいことか…。

 

 

ノーヴェ「チンク姉……?」

 

 

私を呼ぶ声、空虚な心のままであったなら、ただの繕いの言葉を投げることしか出来なかっただろう。

だが…、今の私は不完全な人形ではない。

知ることが出来たから……。

教えて貰ったから……。

 

 

ノーヴェ「ん……。」

 

 

ふっ…と、3人に微笑みを返す。

大丈夫……、そう心を込めて……。

不安で振り返ることはもうないよ…、と告げるようにも……。

 

ドクターの方へと再び顔を戻す。

そして答えを告げる…。

何者にも示唆されない…、

私の……、私達の決断を……。

 

 

チンク「……ドクター、それは出来ない。」

 

 

不気味な笑みが視界から消える。

先程までの夢を語る子供のような、挑発的な誘い口調から…、最初の落ち着いた暗い声へと戻る。

 

 

スカリエッティ「……何故…、かな……?」

 

チンク「確かに…、これからを生きていく上で、我々の罪が消えることはないだろう……。

世界が…、人が…、そんなに単純でないことも…、理解している…。」

 

スカリエッティ「ふむ……。」

 

チンク「私達が…、まだ光しか見ていない…、光の部分しか知らないことも……。

影の世界が、私達にとっての居場所かもしれないとも…、影にいることが、私達にとって幸せなのかもしれないということも……。」

 

スカリエッティ「私の言う通り…、という事だね。」

 

 

 

けれど……、そうじゃない………。

 

 

 

チンク「けれど…、私は…、そんな世界でも生きていきたいと思っている…。」

 

スカリエッティ「……ほう……?」

 

チンク「私達は…、今は小さな光の中で生きていて、いずれ大きな影の部分に触れることになるだろう…。

辛く、厳しい生き方になるだろう…。

だが、それで後悔などは決してしない。

どれだけ影に触れようとも、影には2度と戻ろうとは思わない…。

例え小さな星の光だとしても…、そこに…、私達が望む本当の光があると…、信じているから。」

 

スカリエッティ「……言い…、きれるのかね…?」

 

チンク「私も…、妹達も…、決して弱くはない…。

この体も…、心も…。

あなたが私達に与えてくれた物だから…。

そう…、胸を張って断言できる。

だから…、私達はドクター達と違う生き方を選ぶことを続ける…!

後悔は決してない…!

私達は…、こちらの世界で生きていく…!」

 

スカリエッティ「………………。」

 

 

全ての言葉を告げた…。

伝えたかったことを、思うままに…。

私も、ドクターも、じっと目線を外さずにお互いを見つめ続けていた…。

姉達や妹達も、決して口を挟まず、沈黙したままだった。

 

……口を開く。

 

開いたのは私ではない。

ドクターが、目線を下へと外し、小さく、とても小さく開けた口からポソリと一言呟いた。

 

 

スカリエッティ「………。」

 

 

けれど、聞き取ることは出来ず、次の言葉に上書きをされる……。

 

 

スカリエッティ「……時間だね…。」

 

 

 

[ヴィィィ……ッン!!!]

 

 

 

扉の開閉音…、振り返るとギンガが扉の前に立っていた。

視線はスカリエッティの方へ向けたまま、コツコツと歩み寄る。

 

 

ギンガ「時間です……。」

 

 

ドクターはいつのまにか顔を上げ、また不敵な笑みを伴った表情へと戻っていた。

 

 

スカリエッティ「ああ…♪予想以上に世間話が弾んでしまってね…♪肝心のドゥーエの追悼を行わぬまま時間が来てしまったようだ…♪」

 

 

世間話……。

そんなものとは程遠い会話のやり取りだったにも関わらず、ドクターはギンガにそう告げる。

 

 

ギンガ「そう…、ですか。…ですが……、、、」

 

 

ギンガはそんなドクターの言葉に特別動揺することなく、むしろそのまま受け取った様子で言葉を続けた。

だが、これ以上は……。

 

 

スカリエッティ「いや、席を外すことはしなくていいよ…♪こちらの落ち度だ…。居てくれて構わないよ…♪ギンガ捜査官…♪」

 

ギンガ「は、はい。」

 

 

意外にもドクターの方から追悼への同席を持ち掛けた。

ギンガを外しての追悼を行いたかった訳ではなく、最初からあの【選択】を持ち掛けるのが目的で、ギンガに席を外させただけなのだ。

意外とは言えない…、か。

 

 

スカリエッティ「ワインを頂けるかな…♪」

 

ディエチ「あ……。」

 

 

ワインの木箱を持ったディエチにギンガが小さく頷く。

木箱はディエチからギンガに手渡され、ギンガは小型の転移ポッドへと木箱を置く。

数秒とかからずに、ドクターのいる独房内、その床へと木箱が出現する。

それまでベッドに腰掛けていたドクターは、ゆっくりと立ち上がり、木箱を手に取ると封を解いていく。

 

薄暗い牢獄内を照らす小さな光が、木箱から取り出されたワインの瓶を赤々と輝かせる。

ワインのラベルを一周軽く確かめ、微笑む。

 

 

スカリエッティ「ふふ…。これは良いものだね…♪感謝するよ…♪ギンガ捜査官…♪」

 

ギンガ「いえ…。」

 

スカリエッティ「ふ…♪では早速…♪」

 

 

キュポン!と良い音を立ててコルク栓が開く。

木箱に入っていたグラスを取り出し、それへとワインのロゼ色を浸透させていく。

注ぎ終えると、ワイングラスを高々と掲げた。

 

 

スカリエッティ「一緒に祈ってくれたまえ…♪ここにいない娘達の分もね…♪」

 

チンク「ん……。」

 

 

私達は沈黙し、目を閉じると、ただドクターの言葉へと耳を傾けた。

ドクターは、掲げたグラスのワインへと視線を注ぎ、追悼の言葉を紡いでいく。

 

 

スカリエッティ「……先の戦いで失ってしまったひとつの命…。

我等が同志、ドゥーエの安らかな旅路を共に願おう…。

その魂がやがて、再びこの世に生まれ、集うことを重ねて願う…。

最後に送ろう……。

私の娘であったことへの祝福を…、志を共にしたことへの感謝を……。」

 

チンク「…………。」

 

 

祈る…、ただ祈る……。

悼む…、ただ悼む……。

 

沈黙の中、それを繰り返すのみであった。

 

我が姉ドゥーエの安らかな眠りを…。

戦で散っていったことへの哀しみを……。

 

 

目を開ける……。

視線には、ワインの赤を一気に流し込むドクターが映った。

数秒の沈黙の後、ドクターの言葉で沈黙が絶たれる。

 

 

スカリエッティ「ん……。みんなに礼を言おう…。ドゥーエの追悼に立ち会ってくれた君達に…。それをお膳立てしてくれたギンガ捜査官にもね…♪」

 

ギンガ「ん……。」

 

スカリエッティ「ワインはゆっくりと頂くよ…♪これで面会は終了だ……♪」

 

 

自ら終わりの言葉を口にするドクター。

儚さも、後悔の念も感じない程、すっぱりと言い放つその様にドクターらしさを見て、何故か安心する。

 

 

ギンガ「では……、失礼します…。」

 

スカリエッティ「ああ……。」

 

 

ギンガもまたすっぱりと言い放つ。

至極当然だ。ギンガはあの会話のことを知らない。

だからこれ以上話すことも聞くこともない…。

 

 

ギンガ「それぞれの通信は………、私達が拘置所(ここ)を出次第、オフラインにするよう伝えておきます……。」

 

チンク「え……?」

 

 

私達が驚いた顔をすると同時にドクター達も驚いた表情を見せる。

 

 

スカリエッティ「………どういうことかな?ギンガ捜査官…。短時間とはいえ…、我々の同時回線を開いたままにするというのは…。私が言うのも変な話だが、あまり良い判断とは思えないがね…?」

 

ウーノ「何か、企んでいるの……?」

 

クアットロ「ん…………。」

 

トーレ「…………。」

 

 

みんなの視線がギンガに集まる。

ドクターの言う通り、ギンガの提案の意図がわからない。

それに対し、ギンガは静かに答えを口にする。

 

 

ギンガ「何も…、深い意味はありません…。

ただ…、幽閉の身である貴方達が、再びこうやって会話を共にすること…、顔を会わせることはこの先難しい…。

今回の事件のような特例はそうあることではありません…。

だから…、せめてこの時だけでもそういった時間を…、そう、思っただけです……。」

 

スカリエッティ「…………!」

 

チンク「あ…………、」

 

 

ギンガについても、私は理解をしていたつもりでいたらしい……。

更正の意思を示した私達へ正しい道を提示してくれた。

それだけで私達には有り余るほどの温かさをもらっていて、それでギンガの全てを知った気になっていたことが恥ずかしい。

大罪人で、かつ更正を良しとしなかったドクター達にも…。

ギンガは最大限の自由を与えてくれようとしている。

お人好し、楽天家、そういってしまえばそうなのだろう。

けれど、ただそうだったとしても、私はギンガを姉として誇りに思う…。

 

 

スカリエッティ「ん…………。」

 

 

ドクターは、一瞬驚いた顔をして、すぐに冷静な顔へと変わる。

ドクターから言葉は紡がれることなく、沈黙の後、ギンガが先に言葉を発する。

 

 

ギンガ「私の勝手な判断です…。それでは…。」

 

 

ドクター達に小さくお辞儀をし、私達の方へと向き直るとギンガはニコッと笑い掛ける。

 

 

ギンガ「帰りましょう♪みんな…♪」

 

 

そう告げると入り口へ歩を進める。

最後の挨拶をしてきなさいと、振り返ることのない背中が語っているようであった。

 

 

チンク「ん…。さようなら、ドクター。

そして、我が姉上達…。

今日は…、とてもよい日であった…♪」

 

 

そう…、短く告げる。

告げるべき言葉を言い切っていた私に、これ以上の言葉はなかった。

私の言葉に付け足すように、妹達も口々に別れの言葉を告げていく。

 

 

ディエチ「さよう、なら…。ドクター…。

これからも元気なこと…、祈ってる。

お姉達も、元気で…。」

 

ウェンディ「そ、そっすね…♪

風邪とか引かないようにして下さいっす♪

私らも…、こっちで元気にやっていくっすから…♪」

 

ノーヴェ「…………。」

 

チンク「ん……、ノーヴェ……、、、」

 

 

口ごもった様子で、ノーヴェだけが沈黙。

けれど、私が声を掛け終える前に口を開き…、、、

 

 

ノーヴェ「……じゃあ…、な…。」

 

チンク「ん……、ふ……♪」

 

 

やはり私の妹達も、誇るべき妹達だ。

ポン!とノーヴェの背中に手を置き、皆と一緒に出口へと歩を進める。

 

 

ギンガ「では、ごきげんよう……。」

 

スカリエッティ「ああ…♪また会えることを願っているよ…♪私の可愛い娘達…♪」

 

 

扉が閉まる最後の時まで、私達はまっすぐと視線を前に向けていた。

もう会うことがないかもしれない…、私達の生みの親と、姉妹に向けて……。

 

 




第3話ご愛読ありがとうございます♪
作者の宮永悠也です♪
何とか無事形にすることが出来ました♪
チンクを主人公にしたかったのは、今話までのチンクの葛藤や苦しみを繊細かつボリュームたっぷりに描きたかったからでございます!

こじつけっぽくならないように、丁寧に丁寧に描写しました!上手く出来ているかどうかは読んでくださった方にしか分かりませんが、自分の精一杯を出せた作品なので個人的には満足しております♪

勿論、ご指摘などは多々あると思いますが…!
結構御都合展開だったりするので( ̄▽ ̄;)

でも描きたかった80パーセントをこの3話で出せた気がするのでよかったと思っています♪
え?他の20パーセントですか?

ふっふっふ♪実は、この3話でこのアフターストーリーは終わりではなく、次の第4話で完結なのです!
なので、最後の第4話であとの20パーセントを出します!こちらも注目必至のお話に仕上げたいと思っておりますので宜しくお願いします♪

いつ書き上げるかは……、未定!
ですがなるべく早く書き上げます(笑)
次に書くコンセプトも決まっていたりするので(笑)
その次の作品もなのは系のifストーリーなので同じく楽しんで頂ければと思います♪

では、また次話でお会いいたしましょう♪


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04 未来

作者の宮永悠也です♪
X After(略称)、いよいよ今話で完結です♪
3話まではチンク視点のお話でしたが、この最終話ではドクター、スカリエッティの視点で描いてみました♪
このX Afterの最後を飾るのに相応しい内容になっているかと思います♪
では、どうぞご愛読宜しくお願いします♪
あとがきにもちゃんと作者なりの感想書きます♪



……扉が完全に閉鎖する。

独房外の照明が暗転し、私を照らす光は、独房内の小さなライトと、通信回線映像の青みがかった光だけになった……。

 

部屋の暗転したのを先駆けに、私はコルクが開いたままのワインボトルを再びグラスへと傾ける。

トクトクと注がれる赤い上質なそれは、かぐわしい香りを放ちながら私を魅了する。

 

先程とは違い、喉に少しずつそれを流し込むと、私は思わず笑みをこぼしてしまった。

それが、ワインの上質さによるものかと問われれば、間違いだと答えよう…。

これは、全く別の感情から来るものだったのだから…。

 

 

ウーノ「ドクター……。」

 

 

聞き慣れた声…、長く時を挟んでいたのがまるで嘘かのように、

私へ向けられた静かな声が耳に馴染む。

 

ウーノ…、私の可愛い最初の娘…。

 

ずっと私の傍にいてくれた、最も私に近しい存在。

 

 

スカリエッティ「何かな…?ウーノ…。」

 

グラスを揺らし、娘の言葉に応える…。

だが、聞かれるべき内容について、私にはいささか検討がついていた。

 

 

ウーノ「これで…、良かったのですね…。」

 

スカリエッティ「ふ…♪ああ…。満足しているよ…?私は…♪」

 

 

尋ねてくるべき質問を予想していたものだから、

私のそれに対する答えはいやに機械的なモノとなる。

表情さえも、機械のようにぎこちない笑みを浮かべて…。

 

だが、この答えに関して微塵の偽りもない。

私は、非常に満足している…。

 

 

クアットロ「そお…、ですかぁ?

クアットロはあまり納得出来ないですねぇ~……。」

 

 

ナンバリング4、4番目の私の娘、クアットロ…。

私を愛し、姉妹を愛し、その重さと同等に相反するものを嫌う可愛い娘。

その考え方や執着、理想への理念は、私にとても良く似ている…。

 

 

スカリエッティ「どうしてだい…?クアットロ…。」

 

クアットロ「だぁってぇ…、ドクターは何で許せたんですぅ…?

隔たれたとはいえ、私達は共に戦い抜いた仲間…。

それなのにあ~んなにあっさりと…。

その薄情さったら…、腹が立つのは当然ですよぉ…。」

 

 

クアットロらしい意見…。

相手の心情や感情に敏感な彼女には、どうしても納得出来ない部分だったのだろう…。

 

 

トーレ「受け入れろ…、クアットロ…。

私達とは、最早住むべき場所が違う…。

そう既に選択をしていたからこそあいつらは地上にいて、

我々はここにいるのだろう……?

それぞれが望んだ場所に……。」

 

クアットロ「そお…、ですけど…。」

 

 

3番目の娘、トーレ…。

私の記憶と意思を色濃く受け継いだ4人の中で、

唯一前線へと赴かせた娘。

冷淡な性格、優れた戦闘技術と命令遂行能力。

ナンバーズというくくりであれば、彼女が最も完成形態に近いと私は個人的に思っている。

 

妹達への人間的感情の配慮も怠らないと、いつかチンクに聞いたことがある。

それもあってか、特に私との記憶の共有があった訳ではなかった、

 

7番目の娘、セッテ…。

 

彼女は私ではなく、トーレに付き添うかのように、こちら側を選択した…。

最も機械的感情が強かった彼女のことだ…。

深い理由があった訳ではなかったのかもしれないが…。

トーレの影響が強かったことを、私は認めざるを得ない。

そういった人望の厚さ…、というものは私とは違った部分だろうね……。

 

 

スカリエッティ「ふ……。

トーレの言う通り、彼女達は自らが望む選択をした…。

機械的ではなく、感情の赴くままにね…。

私は、それがとても嬉しく思う…♪

そして…、、、彼女達は…、今回も正しい選択をした…。

それが、我々を救うことになったというわけさ…。」

 

クアットロ「???どういうことですかぁ?ドクター…?」

 

トーレ「選択をしただけではなく…、救った…?」

 

 

問いに答える。

だが、私には単純である選択ながら、彼女達が受け取るにはいささか驚愕するものかもしれない…。

 

 

スカリエッティ「もし…、彼女達が私の提案を呑み、ここから出られたとする…。そして、再び君達を集めて…、私がやるべきことは決まっていた…。」

 

クアットロ「……?」

 

ウーノ・トーレ「…………。」

 

 

スカリエッティ「私は……、

君達を……、廃棄するつもりだったよ……?」

 

 

トーレ・クアットロ「……!!?」

 

ウーノ「…………。」

 

 

当然……、映像越しでも難なく察せられる程、彼女達は驚愕した…。

だが、ウーノだけは違ったようだ…。

いつもと変わらぬ冷静な表情…、眉すらピクリとも動かさず、ただ口を閉じ、私の答えを受け取った…。

 

 

スカリエッティ「驚かないのかい…?ウーノ…。」

 

ウーノ「…はい。私の知るドクターなら…、そうするだろうと……。」

 

スカリエッティ「ん……。」

 

ウーノ「ドクターが選んだ道を、私達は共に歩んで参りました…。

私達の体、命は…、ドクターから頂いたモノ。

ドクターが私達を必要としない時が訪れたならば、私はそれに従います…。

ドクターが良しとせず、管理局へと下らなかった現在(いま)のように…。」

 

スカリエッティ「ふ…♪なるほど…♪素晴らしいね…、ウーノ…♪」

 

クアットロ「ウ、ウーノ姉様…!

しかし、ドクター…!私達の廃棄だなんて…!その…!」

 

スカリエッティ「言いたいことは分かるさ…♪クアットロ…♪

だが、これはやるべきこと…、いや、やるべきことだった…。

今となっては、そんなことをする必要も、実行することすら叶わないがね…♪」

 

クアットロ「う……。」

 

トーレ「だから…、救った…、と…?」

 

スカリエッティ「ああ…♪

私の夢は…、あの戦いで潰えた…。

しかし、叶いこそしなかったが、私は後悔など微塵もしていない…。

あの戦いには全てがあった…。

悲願だった夢…!

それを叶えるに相応しい絶対の力…!

そして、愛する娘達も…!

……それ故に、後悔などしていない…。」

 

ウーノ「ん……。」

 

スカリエッティ「あの時、私は私が持てる全てを世界にぶつけることが出来た…!

その先に得た結果が、これで良いものだったのかと問われれば、私は迷うことなく答えよう…!

とても……、満足だったと…♪

仮の話をするのは苦手だが、あの戦いに勝利していれば、私は望んだだろうね…。

さらなる夢を…、さらなる力を…、さらなる革命を…。

 

だが、私は敗北した…。

 

ならば…、これ以上に求めることなどあってはならない……。

夢を見ることも、新たな世界を瞳に映すことさえも……、私には贅沢すぎる……。」

 

クアットロ「ドクター……。」

 

スカリエッティ「敗者になって悔いることほど愚かしいことはない……。

だからこそ…、勝利者になった時の喜びは計り知れないのだよ……♪

また仮の話だが、ここから出て、私が全く新たな革命(ゆめ)を望んだとしたならば……。

先に言った通り、君達をそこへ連れてはゆけない…。

君達は、結果敗者となった私の夢の残骸であり、新たな夢への重荷でしかないからだ……。

なら、切り捨てるのがケジメというものだ…♪

これは科学者としての美学ではなく、親としての責任によるものなのだよ…♪」

 

ウーノ・トーレ・クアットロ「………。」

 

スカリエッティ「私は元からこんな人間だ…。

そんな私の為に共に歩んできた君達に、元の夢を捨て、新たな夢へと執着する私を見てほしくはない。

だから…、君達の廃棄を決定付けていた…。

私と君達は、ただ敗者としてここにいる…。

だが、チンク達は違う…。

彼女達は、私達と同じ敗者だが…、私達とは異なる…。

敗者になってもなお、彼女達は希望(ゆめ)を得ようとした…。

その真意が…、誤りでなかったかどうかを追及する為に、

私は選択を持ち掛けたのだよ…。」

 

トーレ「あ……、、、」

 

スカリエッティ「結果はこの通りだ……。

まさに、救ったというべきだろう……?

違うかな…?トーレ、クアットロ…。」

 

トーレ「……、そう…、だな。」

 

クアットロ「ん……。

全く…、ドクターは解りにくいんですからぁ…。」

 

スカリエッティ「ふ……♪

隔たれたとはいえ、親として放っておけないというのは…、案外悪いモノではない…♪

娘達の成長が垣間見れたのは嬉しかったよ…♪

ギンガ捜査官の言う通り、こんな機会はまたとないかもしれないからね…。

そこもチンクには感謝をするべきだ…♪」

 

ウーノ「そう……、ですね。」

 

クアットロ「ふん……。」

 

 

[ピー…、ピー…、ピー…!]

 

 

クアットロ「あら……。」

 

スカリエッティ「ふむ……、どうやら楽しい家族会議は終了のようだ…。」

 

トーレ「ああ……。

ドゥーエの追悼、立ち会えて幸運だった…。

セッテも断りさえしなければ共に…。」

 

スカリエッティ「彼女にも思うところがあるのだろう……。

もう少し気遣える時間を与えられれば良かったのだが…。」

 

トーレ「いや、ドクターの責任ではない…。

では、私は先に失礼する……。」

 

 

[パチン……ッ!]

 

 

スカリエッティ「おや……。」

 

トーレの通信回線がパチッと切れる。

言うべきことを端的に言い放ち、あっさりと切る様は、最後まで彼女らしかった。

 

 

クアットロ「あらら…。じゃあ、私も失礼します♪

ごきげんよう♪ドクタ~♪それにウーノ姉様♪♪

またお会いできることを願っています♪

ドクターのお話、と~っても刺激的でした♪

そんなドクターが私は大好きですので♪」

 

スカリエッティ「ああ…♪

また提示報告で身体検査の状況を聞かせてもらうよ…♪

今度は気を付けるようにしなければね…?クアットロ…♪」

 

クアットロ「うぅ…!?

体重の話はもういいじゃないですかぁ、ドクター!

ふん!もう知りません!

そ・れ・で・はぁ~、、、♪」

 

 

[パチン……ッ!]

 

 

独特の甘い声で別れを告げるクアットロ。

別れを惜しませない為に軽いジョークを挟んでみたが、

それも察した上で引いたかのように見えた。

やはり彼女は誰よりも聡明で、いつまでも可愛い娘だよ…。

 

 

スカリエッティ「さて、最後は君だけだね。ウーノ。」

 

ウーノ「はい……。」

 

スカリエッティ「あの戦いから1度も、君に感謝の言葉を伝えたことはなかった…。だが、それは他の姉妹にも伝えられていないままだ…。

だから今ここで君だけに伝えるというのは、贔屓になってしまうからね…。

伝えられないのが残念だ…。」

 

ウーノ「構いません…。

私は、ドクターが息災であれば、言うことはありませんから…。」

 

スカリエッティ「ふ…♪最近髪が伸びてきていてね…。

君に散髪をしてもらっていたのを思い出すよ…♪」

 

ウーノ「それは……。困りました……。」

 

スカリエッティ「ふ……♪

まあ、こちらにもそういった設備はあるから大丈夫なんだがね…♪

君に切ってもらえないのが、ただ単純に寂しいというだけさ……♪」

 

ウーノ「ん……。」

 

スカリエッティ「そろそろ時間が来る…。

また会えることを…、こうやって話せる機会が少しでもあれば…、と

願っている……♪

私も、君の息災を重ねて願うよ…♪」

 

ウーノ「はい……。ありがとうございます……。ドクター……。

また……、お会いしましょう……。」

 

スカリエッティ「ああ……♪」

 

 

      [パチン……ッ……]

 

 

スカリエッティ「…………。」

 

 

最後の回線が切断される。

部屋は再び、元の薄暗さに戻り、私は孤独に取り巻かれる。

この孤独は、ワインの赤で満たせるものでは到底無い。

それでも注いであるグラスの中身を再び口へと運ぶ。

部屋の薄暗さにより、輝いていたロゼは、今ではどす黒い血の色を連想させた。

 

あの戦いで失った数多の命、流した血…。

私が憐れむことはない…。

ただ自分の娘の息災を願うだけ…。

自分の娘の命を尊ぶだけ…。

 

この暗い赤に願うのが私には丁度良いのだろう…。

叶わぬ夢などではなく、奪いたかった世界に対する嫉妬などでもなく、ただ、娘達の未来がそれぞれに望んだモノになるように…。

 

 

私は…、ただそれだけを願う……。




えー、StrikerS Sound Stage X After、
最終話までご愛読下さり、誠にありがとうございます♪
これにてこの物語は完結でございます♪
自分なりに初の挑戦ということもあり、のびのびと自分の書きたいものを書かせて頂きました♪
チンク視点の1~3話、そしてドクター視点の最終話。
この構成で終えたいと、この物語を思い付いてから考えておりました♪
StrikerSのドラマCDを聴いてから、このお話を書きたくなり、何とか形にすることが出来たことを大変嬉しく思います♪
今回の最終話は、ドクターの長台詞が個人的にお気に入りです♪
急展開だったりする描写もあったりしますが、そこはそれ…、スカリエッティらしい考え方だなぁ、と納得して頂ければ幸いです♪
最終話なので、あとがきがすごーく長くなってしまうのをお許しください( ̄▽ ̄;)
ここまでのお話しで気にしたことは、キャラがなるべく手持ち無沙汰にならないように…、というものでした。
ノーヴェ達、妹組は、少し台詞が少ないですが、今回の物語では重要な役割を言葉を発しなくても担ってくれていたりするので、作者的には十分だと感じております(笑)
物語の主体は、やはりドラマCDからの流れから来るものですが、キャラの話や元ネタについては沢山の媒体や資料から得ました。
コミックであったり、雑誌であったり、資料集であったりと…、沢山読み込んでなるべくキャラブレやストーリーの違和感がないように書かせて頂きました。
これでこの物語は終わりな訳ですが、これから先、またひとつ別のお話をなのは関係で考えておりますので、そちらも気長に待って頂ければと思います♪
では、とても長くなりましたが、ここであとがきを終了させて頂きたいと思います♪
感想やご質問などありましたら、遠慮無くコメントをして頂ければと思っております♪
それでは、またお会いしましょう♪
リリカルマジカル頑張ります♪


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