カプ厨がていとくんに憑依転生しました (暗愚魯鈍)
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序章 禁書目録 編
超能力者 第一位 垣根帝督


始めまして暗愚魯鈍と申します、垣根さんが主人公なSSは数あれど最初から無双する作品は少ないと思ったので書いてみました…要するに僕が考えた最強の垣根君ですね。キャラの口調があっていなかったりするかもですが気にしないでください、楽しんで読んでくれたら嬉しいです

え?最初から文字数が多い?気にしないでください、書き過ぎだという自覚はあります。何せ好きなものを書くと多くなっちゃいますから、因みに自分がとあるの好きなキャラは科学サイドなら男子は垣根君に女子は縦ロールちゃんこと帆風潤子ちゃんですね、因みに今回は縦ロールちゃんの出番はない

さて、自分が考えた最強の垣根君…ツッコミ所が多いですが…読んでくれると嬉しいです


垣根帝督(かきね ていとく)は憑依転生者である。彼はとある魔術の禁書目録、とある科学の超電磁砲が大好きな高校生だった、がよく覚えてはいないが死んでしまい気づいたら垣根帝督に転生(憑依)していた、しかも四歳程度の子供の姿でだ、最初は混乱したが彼はこう思った

 

「折角転生したなら原作キャラに会って友達になろう!てか上琴や上食、通行止めを見てニヤニヤしたい!」

 

垣根帝督(転生者)はカプ厨である、とあるシリーズのキャラのいちゃいちゃSSや同人誌を読んで日々ニヤニヤしていた男である、勿論シリアス系や鬱系、アンチ系も読んだ、だがやはり「カップリングが一番!特に上琴とか上食、通行止めは最高!浜麦もいいよね!」が思考なアホだった

 

「なら早速原作キャラと知り合って鬱な展開を消してやる!垣根帝督の能力なら行ける筈!翼以外にも白いカブトムシや複製に他者の能力の実装や自分だけの現実を与える言ってたから上手くいけば多才能力も夢じゃない!」

 

彼はアホだった、だが力があった。垣根帝督の超能力"未元物質(ダークマター)"、この世に存在しない素粒子を引き出し操作する能力。全力を出せば三対の純白の翼を生やし烈風や打撃、斬撃等の攻撃を行う、それだけではなく太陽光を殺人光線に変換する等の物理法則を塗り替える能力を持つ非常に強力な超能力。あの一方通行に唯一超能力で攻撃を通した程だ

 

更に彼の自分だけの現実(パーソナルリアリティ)…要するに妄想・信じる力が加わり未元物質はより強くなる。垣根帝督()が未元物質ならばこう言う事が出来る筈と妄想する事で未元物質はより強力に進化していく

 

「よし!能力を極めて強くなってやる!原作のていとくんよりも強くなって原作キャラをサポートするんだ!…一方通行には勝てなさそうだけど…ま、まあ第二位の実力があればステイル君程度なら…あ、魔女狩りの王(イノケンティウス)には勝てねえ…コロンゾンとかエイワスは絶対無理だな、うん」

 

彼は強くなる事を決意した、その結果才人工房(クローンドリー)の第三研究所室 『内部進化(アイデアル)』に所属したり、通り魔を殺そうとしていた木原 加群を止めたり、喋る犬と友達になったり、アレイスターや北欧の魔神に気に入られる事になるのを当時の彼は知らなかった

 

そして時は進み、十数年後に垣根達の物語が始まる…垣根 帝督(転生者)という異物(イレギュラー)が混ざった物語(世界)、たった一つの異物がきっかけに世界は大きく変わり始める

 

 

第七学区のクレープ屋近くのベンチ近くにて五人の少女達がいた、ベンチに座っているのは柵川中学の生徒二人 セミロングの黒髪に白梅の花を模した髪飾りをつけている少女 佐天 涙子(さてん るいこ)と頭に花を象った髪飾りを無数につけた風紀委員(ジャッジメント)初春 飾利(ういはる かざり)、そして立っている栗色のツインテールの少女は常盤台の生徒にして風紀委員(ジャッジメント)白井 黒子(しらい くろこ)。彼女らは友人であり今日は美味しいと評判のクレープ屋に来たのだが、その時に黒子の先輩方に出会ったのだ、彼女らの名前は…

 

「ありがとう操祈!ゲコ太ストラップ譲ってくれて!」

 

「いいのよぉ、私と美琴の仲だもの、これくらいの親切力でお礼は要らないわぁ」

 

常盤台の制服である灰色のプリーツスカートに白い半袖のブラウスとサマーセーターを着ている二人の少女、カエルのストラップを持って笑顔で笑っている化粧のいらない見目麗しい顔立ちに肩に届く程の短めな茶髪の少女 御坂 美琴(みさか みこと)と星の入った瞳に腰まで伸びている蜂蜜を連想させる金髪、スタイルのいい長身痩躯な少女 食蜂 操祈(しょくほう みさき)と言う常盤台が誇る超能力者(レベル5)の二人である

 

「仲良いんですね御坂さんと食蜂さんて!」

 

「やっぱりお嬢様同士の関わり合いがあるから何ですか?」

 

二人に話しかけたのは佐天と初春、佐天は二人の仲良さげな雰囲気を見て和かに笑う、初春はお嬢様に憧れがあるのか二人に質問する、すると二人は笑って答える

 

「違うわよ、どっちかって言うと…同じ超能力者だからかしらね?私は超能力者だから最初は友達がいなかったんだけど…図書館で一人で本を読んでる時に操祈が話しかけてくれて…」

 

「そうなのよねぇ、美琴の当時のぼっち力と言うか孤独力が強かった時に同じ超能力者として話しかけて…今では大の仲良しなんだゾ☆」

 

「へぇぇ!御坂さんがぼっちだったなんて意外ですね!」

 

美琴が昔友達がいなかった時に話しかけられた事がきっかけで仲良くなったと二人が話すと佐天が意外だな〜と呟く、そして何か思い出したのか佐天が口を開く

 

「そう言えば噂で聞いたんですけど、常盤台の超能力者と付き合っている男性がいるて聞いたんですけど本当なんですか?」

 

「「ぶふぅ!?」」

 

佐天が二人が誰かと付き合っている噂があるけど本当なのかと尋ねると、二人は食べていたクレープを逆流させてしまい食蜂は苦しげに息を詰まらせ美琴が背中をさする、その反応を見て佐天が笑う、噂は本当だと

 

「その反応は…本当の様ですね!詳しく教えて下さい!」

 

「えぇ…ちょっと羞恥力が高くて…言い辛いわぁ…」

 

「そんな事言わずに教えて下さいよ!」

 

恋バナ好きな佐天は目を輝かして二人に説明を求める、食蜂も恥ずかしがって口を割らないが佐天はグイグイ迫って二人に教える様に頼む、初春ははわわ…と慌てつつも興味ありげな顔をし黒子は頭に手を当てていかにも聞きたくないと言った顔をしている、すると漸く二人は話す気になったのか口を開く

 

「…その…えっと…ここだけの話なんだけどね…私達付き合ってる男がいるんだけど…誰にも言わない?」

 

「はい!安心して下さい私口固いですから!で?そのお二人の彼氏さん達の名前を教えてくれませんか?」

 

美琴が顔を赤く染めながら佐天に誰にも言わない?と小声で呟くと佐天が頷く

 

「……まあ…佐天さんになら…操祈もいい?」

 

「えぇ…彼女になら教えても秘密力が高いと思うからいいわぁ…」

 

「ありがとうございます!」

 

佐天が恋人の名前を教えてくれと叫ぶ、美琴と食蜂が互いを見てどうするか悩むが佐天ならいいかと彼女らは同時に付き合っている男性の名前を告げる

 

「「上条 当麻(・・・・)」」

 

「……ん?あれ?初春、私耳おかしいのかな?二人が同じ人の名前を言った様に聞こえたんだけど?」

 

「奇遇ですね佐天さん、私も佐天と同じ様に聞こえました」

 

「…言っておきますけど聞き間違いではありませんの、お姉様達がお付き合いしている男性は上条 当麻、同姓同名の別人ではありませんわ」

 

二人が同じ名前の男性の名前を言って佐天と初春が固まる…そして聞き間違えか同姓同名の別人と自己解釈しそうになるが黒子が別人や聞き間違えではなく、上条と言う男性が両方と付き合っているのだと告げる、すると佐天と初春が絶叫する

 

「えええ!?それて二股てヤツですか!?」

 

「ち、違うわよ!先輩はそんなんじゃなくて…いや世間から見たらそうかもしれないけど…でも二股とかじゃないから!先輩は私と操祈の両方をちゃんと愛してくれてるから!」

 

「そうよぉ!上条さんは他の二股する軽薄な男とは違うのよ!それにそんな関係になったのも元はと言えば垣根さんが悪いんだし…」

 

「いや絶対それおかしいですよ!て、垣根さん?」

 

佐天が二股かけてるじゃん!と叫ぶが美琴と食蜂は慌てて弁明する、自分達の彼氏はそんな軽薄な奴じゃない!ちゃんと私達の事を愛してると叫ぶ、が事情を知らない二人から見れば上条は二股をかけている最低な男にしか見えない。そんな中初春は食蜂が言った垣根と言う言葉に反応する

 

「垣根さんて誰ですか?」

 

「…何と言うか…変人?まあその人が原因で先輩は私達二人と付き合ってる訳だけど…」

 

「そうねぇ…変人かしら…常識力が通じない人ね…能力的にも人格的にも問題ありまくりなのよねぇ…」

 

「さ、散々な言われ様ですね…逆に会ってみたくなりましたよ…」

 

美琴と食蜂が垣根について語ると佐天が苦笑いしながら会ってみたいと呟く

 

「じゃあ会ってみる?」

 

「え?」

 

「そうねぇ、私達では上手く言い表せないし会った方が分かりやすいかも」

 

「じゃあ操祈は垣根さん呼んで、私は先輩を呼ぶから」

 

美琴が何気なく言った会ってみるかと言う言葉に佐天が固まると二人は携帯を取り出して自分達の恋人と彼女らが話していた垣根に連絡を取る、黒子は「あの殿方が来てしまうんですの…」と顔に手を当て俯き、初春は何が何だか分からないと首を傾げる

 

「……何かとんでもない状況になっちゃったかも」

 

 

 

「……………」

 

「……上条ちゃんは今日も熱心に小テストに取り組んでいるのです」

 

とある高校の一年七組の教室にて、補習を受けている青髪ピアス学級委員の少年と半袖の制服の下にオレンジ色のTシャツを着たツンツンした短めの黒髪以外これといって特徴のない少年 上条 当麻(かみじょう とうま)が黒板の前に立っている園児服を着たピンクの髪の幼女…ではなく歴とした大人の教師である月詠 小萌の補習を受けていた、彼は黙々とプリントと向き合いペンで答えを書いていく

 

「なあカミやん、ボクも小萌先生の補習が受けたくてワザと馬鹿やってるけど何でカミやんは補習を受けとるん?カミやんて超能力者(・・・・)第二位(・・・)なんやろ?」

 

「確かに俺は超能力者だけど…軍覇と同じ超能力のカテゴリーじゃないし…他人の超能力が使えるだけ(・・・・・・・・・・・・)で演算は必要としてないんだから頭は悪い訳ですよ、まあ美琴と操祈が教えてくれるけどさ…年上が年下に教えてもらうてのも…あれだろ?」

 

「ええやん、年下に教えて貰って何で私達は出来るのにこの人は出来ないの?て目で蔑まれるの最高やんけ」

 

「……こいつは…まあでも将来的に二人養うなら頭が良い方がいいだろ、あいつらを不幸にさせない為にも出来るだけ努力をする、だから俺は暇さえあれば補習を受けてるんだよ」

 

(……二人共頭はいいのに補習に来るなんて…上条ちゃんの理由は嬉しいのですが青ピちゃんはもう少し真面目になって欲しいのです)

 

青髪ピアス…本名は知らないので青ピと略そう、彼は何故第二位なのに補習受けてるのと上条に問いかけると上条は彼女達に教えて貰ってるけど年上の威厳として恥ずかしいからと少し恥ずかしそうに話す、この時点でクラスメイトが「何彼女がいる事自慢してんだこの野郎」と怒る、青ピはそれがええんやと笑うが上条は少しでも努力した方が良い、昔の様に不幸にならない為に、二人を不幸にさせない様に勉強しているのだと述べる、それを聞いて小萌先生はその立派な考えを聞いて嬉しく思う、逆に青ピはもう少しだけ真面目になって欲しいと思った

 

「あれ?カミやん、携帯鳴ってるんとちゃう?」

 

「ん?本当だ…すみません小萌先生、ちょっと席外します」

 

「全く電源は切っておいて欲しかったのですよ」

 

青ピが携帯鳴っとるでと教えると上条は携帯を手に取り小萌先生に少し席を外れると伝えると小萌先生は怒りながらも許可する

 

「………美琴か?」

 

『うん、もしかして補習中だった?』

 

「まあな…で、何の用でせうか?」

 

『ぁ…ちょっと…悪いんだけど…今から言う場所に来てもらえる?後輩の…黒子の友達があんたに会いたがってて…』

 

「そんな事か?ならもう小テスト終わるからそっちに行くよ」

 

『本当!?ありがとね先輩!』

 

「はは、可愛い彼女の為ならお安い御用ですよ(可愛いなミコっちゃん)」

 

通話の相手は彼女の一人の美琴、上条は電話越しに彼女の声を聞いて爽やかな笑顔で会話を進める、美琴が私達の所に来てと伝えると上条が了承し美琴が電話越しでも笑顔なんだろうな、と分かる様な嬉しそうな声を出した為上条は可愛いと呟くと電話から「ふにゃ!」と可愛らしい声が漏れる、「本当に可愛いなこのやろー」と口元をニヤケさせながら上条が電話を切ろうとする

 

『あ、操祈から伝言なんだけどそっちに…』

 

「ん?話してる途中で切っちゃった、向こう行った時に怒られそうだな……て、何で青ピと小萌先生以外の皆さんは上条さんを睨みつけているのでせうか?」

 

「「「自分の胸に手を当てて考えろこのリア充がぁぁ!!!」」」

 

美琴が何か言おうとしたがその瞬間に携帯を切ってしまい、怒られるかな?と心配する上条の前に殺意全開の生徒達(男)が上条を睨みつける、血涙を流さんばかりのモテない悲しい男達が上条へ攻撃を仕掛けようとした瞬間

 

「何やってんだ当麻?」

 

「!?か、垣根!?ナイスタイミング!」

 

背後から上条がよく知る声が聞こえ振り返るとそこには整った顔立ちの茶髪の赤いホストが着そうなスーツを着た少年 垣根がそこに立っていた、生徒達も垣根がいた事に驚き動きを止める、上条は助かったとばかりに垣根に近づく…が垣根はニヤリと笑うと右手で上条の襟首を掴み窓を開ける、それを見て上条が「え?」と言葉をこぼす

 

「ん?聞いてないのか?みさきちから当麻を連れて来る様に言われててな、さあ空のお散歩と行こうか」

 

「え!?もしかして美琴が何か言おうとしてた事てこれの事か!?」

 

「てな訳で小萌先生、当麻は連れて行きますね〜さようなら〜!」

 

「ちょっ…!?まだ上条さんは小テストを書き終わって…くそ、不幸だーーっ!」

 

「え!?ちょっと待つのですよ!…て、もう行っちゃたのです…」

 

垣根が食蜂から聞いてないのかと首を傾けると上条は美琴が言おうとしたのはこの事かと顔を青くする、そして垣根は窓の桟に足を乗せ背中から未元物質の翼を生やす、垣根は笑顔で小萌先生に手を振り上条と小萌が垣根に何か言おうとするが垣根はそれを無視し窓から上条の襟首を掴んだまま窓から地上へと飛び降り、上条の悲鳴が聞こえたかと思うと今後は白い三対の翼を広げて羽ばたく垣根が右手で上条を掴んで空を飛翔していた

 

「……カミやんも大変なんやなぁ」

 

青ピの言葉に他の生徒達も頷く、彼女がいてレベル5だからと言っていい事づくしではない、彼等はそう思った、因みに上条は小テストの途中でいなくなったが赤点ではなかったそうな

 

 

「お、あそこのクレープ屋だな、良かったな上条、愛しの彼女達に会えるぞ?」

 

「わ〜本当だ〜こっち見てる、可愛い…とでも言うと思ったか!?早く降ろせ!」

 

「おいおい、折角連れて来てやったんだぞ?感謝の言葉もねえのか?」

 

「言えるわけねえだろ!こんな危険な真似してるからな!落ちたら死ぬだろ!絶対!」

 

佐天達が暫く美琴達の彼氏と垣根を待っていると空から男二人の声が聞こえる、佐天が空を見上げるとそこには三対の白い翼を生やしたイケメンが笑いながらツンツン頭の少年を連れて飛んで来た、佐天は自分の目を疑う

 

「え!?なんかイケメンが空を飛んで来た!?」

 

「あれ?あの人…確かよく白井さんや固法先輩に職務質問されてる人じゃないですか?」

 

「……来てしまいましたの…あの人と職務質問以外では関わらないにしているというのに」

 

佐天が垣根(イケメン)が空を飛んでる!と驚き、初春はよく風紀委員に職務質問されてる人だと気づき黒子は会いたくなかった人物に出会ってしまったと垣根から目を逸らす、そして彼女らの近くまで近づいて来ると垣根は美琴と食蜂の方を見てニヤリと笑い二人が嫌な予感を感じる、そして上条の襟首を掴む手を動かし狙いを定める

 

「当麻、ラッキースケベの時間だ」

 

「へぇ…?何をやってるんですか垣根さ…」

 

「え〜い、ストライクショット〜」

 

垣根が右手で掴んだ上条を全力で美琴達に向けて投げ飛ばす、飛ばされた上条と美琴と食蜂は何が起こったのか理解出来ずそのまま激突する

 

「え!?だ、大丈夫ですか御坂…」

 

佐天が何か言おうとしたが佐天はその口を閉じる、彼女は見てしまったのだ上条が右手に食蜂の胸を左手が美琴の胸を掴んでいるのを

 

「「………///」」

 

「あれ?何か右手にマシュマロと左手に慎ましながらも確かに膨らんでいる何か…が…て!?す、すまん!//」

 

「ふぇ!?だ、大丈夫…へ、平気よ…それに先輩になら揉まれても(ボソッ)」

 

「だ、大丈夫だから!寧ろ揉んで欲…て!何を言ってるのよぉっ!」

 

「いいね、最高の上琴と上食だね!またアルバムに飾ろう!」

 

(……何してるんだろうこの人)

 

慌てて両手を離す上条に顔を染めながらももっと触ってて欲しかったと言う目で見る美琴と食蜂、顔を真っ赤に染める彼等を携帯で撮影する垣根、カオスな展開に佐天達はついていけない、黒子はこの光景に慣れているのか遠い目をしている

 

「いやぁ〜しかしいいラッキースケベだったな当麻!」

 

「「お前(アンタ)がやったんだろうが!」」

 

「なんのメルヘンガード!」

 

垣根が三人をからかうと美琴の右手から上条の左手から雷撃が迸り(・・・・・・・・・)、垣根は翼の内一枚で電撃を防ぐ、垣根は攻撃を防ぐとおちゃらける様に笑う

 

「ごめんごめん、悪かったて!でも怪我しない様に二人を未元物質の素粒子で優しく受け止めたから愛しい彼女達には怪我はない筈だぞ?」

 

「そう言う事を言ってんじゃねえよ!いきなり投げんじゃねえ!」

 

「いやだってラッキースケベを起こしてイチャイチャを見たいから…仕方ないだろ?」

 

「「「仕方なくない!!!」」」

 

全く反省していない垣根に三人が烈火の如く怒るも、当の垣根は反省の色が見えず三人はいつもの事なのか諦めた様にため息を吐く

 

「あの…御坂さん、この人が彼氏なら…あっちの方が垣根さんて人なんですか?」

 

「……ええ、先輩が私達の彼氏…超能力者の一人 幻想殺し(イマジンブレイカー)及び幻想片影(イマジンシャドウ)の上条 当麻よ」

 

「「ええ!?れ、超能力者!?」」

 

「……でぇ、あっちの変人がぁ私達と同じ超能力者の垣根さんよ」

 

「「あの人も!?」」

 

佐天が確認の為にこの人が彼氏かと尋ねると二人は頷き彼が学園都市が誇る超能力者の一人だと教えると佐天と初春が驚き、更に垣根が超能力者だと教えると二人はこの変人が!?と驚く

 

「この人が上条さんが二股してる理由なんですか?」

 

「二股!?いやまあ事実だけども!」

 

「…この人が私と操祈が先輩に告白した時突然現れて、「二人共と一緒に付き合えよ当麻」て言ってきたのよね…」

 

「しかもぉ「二人のどっちらかを選んで選ばれなかった方が悲しむくらいなら俺はこの場で死んでやる!」て能力を使って自殺しようとして三人で無理やり止めてぇ…今の状況に至るのよぉ」

 

「……うわぁ…」

 

佐天が言った二股という単語に当麻がいきなり罵言を吐かれたと驚く、そして上条が二股みたいな事をしている理由となった垣根の行動を聞いた初春は冷ややかな目で垣根を見る

 

「いやさ、結ばれなかった方は絶対誰とも結婚しないでしょ?で、未来永劫当麻の事を思い続ける訳じゃん…重いよ、だから二人共結ばれてハッピーエンドでいいじゃん、ToLOVEるのリトとララと春菜みたいな関係でよくね?」

 

「よくねえですの」

 

「…まあ仕方ねえだろ…何せ俺の性癖に常識は通用しねえ、からな」

 

垣根がハッピーエンドが一番と笑うと黒子が突っ込む。垣根は原作のキメ台詞に似た言葉を言ってドヤ顔になる

 

「…でも案外この関係もいいかもしれない…操祈とより親密になれたから…これでいいかも」

 

「私も美琴とより親密力を高められたしぃ…まあ結果的に上条さんと付き合えたのも垣根さんのお陰よねぇ…」

 

「…お姉様達がわたくしと同じ世界へ…嬉しいのか悲しいのか分かりませんの…」

 

「……やっぱりみこみさもいいね、みさきちとミコっちゃんの百合は最高だと当麻も思うだろ?」

 

「お前もう黙れよ」

 

美琴と食蜂が百合百合しい雰囲気を出していると垣根が携帯でその光景を撮影する、上条はもう黙ってくれねえかなこいつ、とジト目で垣根を見る

 

「おいおい当麻、それが恋のキューピッドに対する態度か?お前幸せだろ?何せこんな美少女二人と付き合ってんだからな、え?何?これで不幸とか言ったら全身の穴という穴に未元物質を詰めるぞ?」

 

「黙れ恋のキューピッド(物理)、確かに二人と付き合ってるのは最高の幸福だけどな…無理矢理ラッキースケベ起こすのはやめてくれよ…このままじゃあ上条さんの理性が崩壊して狼条さんになっちまう…」

 

「……エロい事しないの?」

 

「する訳ねえだろ!まだ上条さんは高校生だし!美琴と操祈は中学生だぞ!?」

 

垣根がそんな態度取っても、自分は恋のキューピッド(見た目が)だぞ?と言うと感謝はしてるがそんな事をしてたら理性が持たないと上条が恥ずかしそうに返す、垣根はキョトンとした顔でエロい事しないの?と純粋な目で答える、上条はしてない!と反論した

 

「チ、お膳立てしてやってんのに…なら結婚式場やキューピッドアローのタグリングはまだ早いか…まあいい、まあ二人のスリーサイズに合わせた大精霊チラメイドと堕天使エロメイドは確保済みだしな…いつ二人に渡すかが重要だな」

 

「「うおぉぉぉい!?いつの間に私達のスリーサイズ調べた!?」」

 

「ん?縦ロールちゃんに聞いたら教えてくれた」

 

「「潤子先輩ぃぃぃぃ!!?」」

 

つまんないと垣根が舌打ちしまだ結婚式場を決めたり、結婚指輪の出番はないかと飽きらめるが二人のサイズにあったメイド服は手に入れてあるからそれで我慢しようと溜息を吐き、美琴と食蜂が何故自分達のスリーサイズを知っているのかと垣根に問いかける、垣根は縦ロールちゃんが教えてくれたと言うと二人はここにはいない常盤台の先輩に向かって吠えた

 

「……てかさ、誰もあれ(・・)の異常に気づかない訳?風紀委員の二人さんも気づかないのか?」

 

「はて?あれとは何の事ですの?」

 

「ほらあそこだよ、あそこの銀行…防犯シャッターが閉まってるじゃん?昼なのにおかしいとか思わない訳?」

 

垣根が突然真顔になってある場所を指差す、黒子がその方向を見るとそこには防犯シャッターが閉まった銀行が…確かに昼間なのにもう閉まっているのはおかしいと全員が思い始めると突然シャッターが爆発を起こしシャッターが音を立てて吹き飛ばされる

 

「!強盗か!?」

 

「ん〜、そうみたいだな。…おい05、ここら辺のカブトムシ達を集めてくれ、そしてネットワークの接続の準備もな」

 

『了解しましたマスター』

 

上条が銀行から飛び出して来た男達を見て強盗だと理解し垣根もそれを肯定する、そして銀の鎖をつけたポケットの中にいたキーホルダーの様に小さい緑色の目をした白いカブトムシ…05がひょこっと垣根の呼び声を聞きポケットから飛び出す、垣根はカブトムシ達を集めろと簡潔に伝えると05は頷く、そして銀行へゆっくりと歩み寄る

 

「ちょ…!ああ全くあの殿方は…これは風紀委員の仕事だと言うのに…」

 

黒子は呼び止めようとするが垣根は手を振って「オセロちゃんは警備員(アンチスキル)に連絡よろしく〜、花飾りちゃんは怪我人の確認頼むね〜」と軽く言って銀行へ向かう、黒子はあの方は…と溜息を漏らす

 

(そう言えば今日は超電磁砲だと第1話だったけ…忘れてた、まあいいか…確か発火能力(パイロキネシス)が一人いたけ…まあ楽勝か)

 

「おいそこら辺にしときなお前ら」

 

垣根は頭の中で原作知識を思い出しながら歩き、口元をスカーフで隠し奪った金が入っているバックを持った強盗達の目の前に現れる。強盗達は怪訝な目で垣根を見る、垣根は先程初春からくすねていた風紀委員の腕章を右腕につけそれを強盗達に見せつける

 

風紀委員(ジャッジメント)ですの!…てな、言ってみたかったんだよなこの台詞」

 

「それはわたくしのセリフですの!」

 

「あれ?ない!?私の腕章がない!?」

 

「……初春…」

 

垣根は言ってみたかったセリフを言えて満足げな顔をし、黒子はそれはわたくしのセリフ!と怒り初春が今更ながら腕章がスられたのに気づき佐天がしっかりしてと初春を見る、強盗達は垣根を見て笑う

 

「ひゃひゃひゃ何だテメェ!ホストみたいなカッコしやがって!」

 

「しかも風紀委員だぁ?こんなホスト野郎が風紀委員とか舐めてんのか?」

 

強盗三人が笑いながらその内の一人が垣根に襲いかかる、垣根は呆れながらも突進する男から少し身体動かしただけで突進を避け自分の横を通過しようとする男に足を引っ掛けて派手に転ばす

 

「ぬぉ!?」

 

「遅えな、唯一先生と比べたらスロー過ぎるぜ?」

 

「て、テメェ…調子に…乗んな!」

 

挑発する垣根に男はまんまと乗って垣根に殴りかかる、垣根は右手でその拳を受け止めると軽々と男を片手で持ち上げて壁へ叩きつける

 

「がっ…はぁ…!?」

 

「悪いな、俺の右腕はちょっと特殊でな…別に俺が怪力だからとかじゃねえぞ?」

 

『マスター、ネットワークは使わないのですか?』

 

「あ?使うに決まってるだろ」

 

壁へと激突した男は意識を手放す、それを一瞥した垣根は男達に手先で指を動かして挑発しつつ05にネットワークの接続を促す、そして垣根が目を瞑り再び目を開くと左目の白眼の部分が赤く染まっていた

 

「なあお前ら、多重能力者(デュアルスキル)て知ってるか?」

 

「あ?二つ以上の能力を持っていうあれか?」

 

「そうそう、実現は不可と言われた多重能力者なんだけど……俺はこんな事が出来るんだよね」

 

多重能力者は知っているかと強盗に問いかける垣根、多重能力者とはその名の通り能力を二つ以上持つ能力者の事で垣根や美琴達は一つしか能力を持っていない、例外なのは幻想殺しと幻想片影を持つ上条だけ…なのだがこの二つは超能力ではない為多重能力者ではない、だが擬似的な多重能力者になる事は出来る、垣根は内心でそう思いながら両手を広げ右手から炎を、左手に電撃を発生させ強盗達はそれを見て唖然とする

 

「な…!?能力が二つ!?」

 

「これは多才能力《マルチスキル》、俺の能力で作ったカブトムシ達にはそれぞれ他人の能力が実装されている。そいつらを脳波ネットワークで繋いだ「一つの巨大な脳」として形成し演算能力を高めつつ、その実装した能力を俺が使えるようにする…ま、流石に俺一人ではこれを作り出すのに無理があったから木山先生や那由多ちゃんに手伝ってもらったけどな」

 

垣根が自分の能力を応用して作られた多才能力を強盗達に説明する、これは妹達(シスターズ)の脳波ネットワークを真似た脳波ネットワークであり、垣根がこの学園都市に約一万体近く製造しそれぞれの学区に小型化させ潜ませている白いカブトムシ達と脳波ネットワークで繋がる事により、実装している他人の能力を自らも使える様になる。垣根は自分ではこれを作り上げるのは不可能だったらしく二人の協力者のお陰で最近なって実現したらしい

 

「さて、降参して痛い目に遭わずにすむか、この俺…超能力者 第一位に勝てるとワンチャン信じて挑むの…どっちがいい?」

 

「……っ!舐めやがって!」

 

垣根が降参するなら今の内だと笑うと強盗の一人…発火能力の男が掌に炎を形成し垣根に投げつける、垣根はそれを水流操作(ハイドロハンド)で排水溝から集めた水を炎にぶつけ消化し、左手から男と同じ発火能力の炎を出現させ男に投げつける、男はそれを避け新たに炎を生み出し投げつけようとする…だが垣根はそれを許さない

 

座標移動(ムープポイント)

 

「な!?」

 

男前を向いていた視界が突如青空を映し何が起こったと理解する間も無く地面に落し倒れる、座標移動で男の向きを変えて地面に押し倒したのだ。そして未元物質で作り出した細長い釘の様な物質を倒れた男の服を地面に縫い付ける様に袖や裾に転移し地面に貼り付けにする

 

「中々の威力だったぞあんたの発火能力、ま、上には上がいるて事だ、もう一度自分を見つめ返してみな」

 

「うぐぁ…」

 

「…あり?もう一人の強盗は?」

 

垣根が発火能力者の男に賞賛を送りつつもう一度出直してこい、と簡潔に言い最後の一人を倒そうとするも近くにいない、何処に行ったのかと頭を動かすと強盗の最後の一人は逃走用に用意しておいた車に乗り込みこの場から去ろうとしていた

 

「くそ…!あんな化け物が出て来るなんて…!このまま逃げるしか…」

 

男はハンドルを切り垣根から一刻も早く逃げる為にスピードを上げていく、例え瞬間移動が出来てもこのスピードなら…と安心する男の目の前に白い何かが上から落ちてきて車の進路を妨害し男は慌ててブレーキをかける

 

「な、何だこいつ!?」

 

現れたのは白いカブトムシ…それも複数体、それも目の前にいる個体の数以外にも建物の壁に張り付いているカブトムシやいつの間にか車の背後にいたカブトムシ達も含めると二十匹以上のカブトムシ達が車を取り囲んでいた。呆然とする男に窓ガラスからコンコン、と音が聞こえ横を向くとそこには垣根が立っていた

 

「……!?」

 

「こいつは白いカブトムシ、俺の能力で生み出した兵器だ、それぞれの個体がレベル5かレベル4並みの能力を持ってるから素直に投降するのをお勧めする」

 

「……くそ!」

 

垣根がどうする?このままカブトムシ達とやり合うかと笑う、男は歯軋りし何か打つ手はないかと考えるも逃げられないと分かると悔しそうな顔をして頭をハンドルにぶつける、周囲にクラクションが鳴り響いた

 

 

「……凄い、強盗達をあっという間に鎮圧した…」

 

「白井さんでもあそこまでスムーズには解決出来ませんよ!」

 

「…流石は超能力者ですわね…でも風紀委員の仕事を取るのはいただけませんの…」

 

「…あれ?そう言えば垣根さんて序列は何位なんですか?」

 

佐天と初春はこれが超能力者の実力かと目を丸くして垣根を魅入る、黒子も感心しながらも自分達の出番を奪わないで欲しいと漏らした、すると佐天がそう言えば垣根は序列は何位なのかと上条達に尋ねる

 

「…あぁ言ってなかったわねぇ、上条さんは第二位で美琴が第五位、私が第六位…で、垣根さんはぁ…上条さんより上の序列なのよねぇ…」

 

「垣根さんの本来の能力の副産物(・・・)である他者の能力を再現しカブトムシ達に実装させる、更にそれを自分も操る事が出来る…先輩と第七位の能力以外なら全ての超能力を再現出来る規格外の能力」

 

「もし仮に俺達能力者が全員死んでも、垣根がその脳…正確には俺達の自分だけの現実を再現出来ていれば無尽蔵に能力者を生み出せる…いわば一人で学園都市の全機能を賄える"学園個人"…それが…」

 

操祈が自分達の序列を告げ、美琴が垣根本来の能力の付加価値である他者の能力を再現する力を教え、それを上条が自分達超能力者やその他の能力者が死んでも垣根さえ残っていれば作り続けられる、いわば学園個人と称する。そして三人は同時に口を開いた

 

 

 

「「「超能力者の序列第一位 未元物質(ダークマター)……垣根 帝督、最強の超能力者だ(よ/よぉ)」」」

 

彼こそが学園都市が誇る、最強にして無敵の能力者だと彼らは告げた

 

 

 




ていとくんならこんなくらいは出来そう、原作でも自分だけの現実を構築したり他人の能力を実装できるて言われてるんだから。因みにまだ見せてないだけで他にも能力や様々な応用があります。で、キャラについて説明です

垣根くん…カプ厨、憑依転生した人、チートキャラ。原作で言われてた「他人の能力を実装できる」を実現した人、学園個人やら第一位の称号を得た所為で滝壺さんやアクセラさんのポジションを横取りしちゃった、ハッピーエンド主義。

滝壺・一方通行「「解せぬ」」

上条さん…努力家、自分はともかく彼女二人を不幸にしない為に自分から補習に行く人。レベル5の第二位

美琴さん…上条さんの彼女1、ツンデレ?そんな子知りません状態なデレデレ、上目遣いで上条さんの事先輩て言うミコっちゃん可愛くないですか?食蜂さんも好きなレベル5の第五位

食蜂さん…上条さんの彼女2、デッドロックの件は垣根がなんとかしてくれたので上条さんの記憶に残り続けられた人、ミコっちゃんとも仲良し、レベル5の第六位

因みに上条さんの二つ目の能力 幻想片影ですが…モバイルゲーム版のプレイヤーの能力のまんまです。あの超能力でも魔術でも再現可能ていうチートな能力…まあ、流石に何個でも使えるわけではなく一つずつしか使えませんし、強すぎる能力は完全にはコピー出来ないという欠点もある、それでもチート、因みに上条さんが左手から放った雷撃というのも幻想片影の力、使ったのはは超電磁砲の雷撃ですね、因みにですがよくSSで上条さんが幻想殺しで消した異能を自分の物にできるSSがあるんですが…よく上条さんの本質はハディートて言われてるのでハディートは「退魔師であり魔術師」て言われるので無数の異能が使えてもおかしくないですよね。

ギャグ要素が少なくてすみません、何せ文才がないもので…それに無駄に長くて…こんな作者ですがこれからも読んでくれると嬉しいです、さて次回は漸くヒロインが出てきます…縦ロールちゃんて可愛いよね、アストラル・バディのSS広まれ〜


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翔んで常盤台!(行ってきました)

縦ロールちゃん可愛い、なんか恋愛ぽいけど恋愛じゃない、縦ロールが似合う潤子ちゃんだけど縦ロールにする前の三つ編みも可愛いよね。縦ロールちゃんが好き過ぎて書いて暴走した、反省はしてる。後悔はない(キリッ)

後…寮監さんは強かった(白目)、黒子はこの作品だと真面目、ツッコミ役、常識人…まあ何でもありなのが自分の小説なので…許してくださいな…


「うぅ……えぐっ」

 

才人工房(クローンドリー)のある大きな部屋にてプラチナブロンドの長髪を二つに分けた三つ編みにした少女が泣いていた。彼女は才人工房の研究者達に無茶な能力開発をされた所為で脳血管が異常拡張し、彼女は慢性的な群発頭痛に苦しんでいた、まるで脳味噌を針で突くかの様な痛みに苦しみ泣きじゃくる、しかも無茶な開発の所為でいつ彼女の能力が暴走してもおかしくない状況下にあった

 

「痛っ…誰でもいいから……助けて」

 

少女の弱々しい言葉が部屋に響く、だが誰も助けてくれない、研究者達は単に素体が欲しいだけ、彼女が死んだ所で別段悲しまないし次の素体を探すだけだろう。そんな事は彼女は知らないが彼女は研究所の皆に迷惑をかけない様に痛みを堪える、痛みを堪えるあまり地面を掻き毟る、そんな泣き噦る少女に救いの手を差し伸べた存在がいた

 

「…随分痛そうにしてるけど頭痛か?」

 

「…ひっぐ…お兄さんは…誰ですか?」

 

「ん?俺か?ここ内部進化(アイデアル)に最近在籍する事になった能力者だよ」

 

声をかけた人物は茶髪の少年は少女と同じ黒い服を着ていた、違うのは男子用な所程度で色合いは同じ、彼は泣いている少女に近づき服からハンカチを出して涙を拭く様に渡す、少女はハンカチを受け取って涙を拭う、少女は少年の顔を見る

 

「…あんまり近寄らない方がいいです…わたくしの能力がいつ暴走して…貴方を傷つけるか…」

 

「…あぁ、あの研究者(ゴミクズ)の無茶な能力開発を受けた子か、まあ心配すんな、暴走しても俺が止めてやるからよ、何せ俺は超能力者だからな」

 

「……超能力者?お兄さんが?」

 

少女は近寄ると能力の暴走に巻き込まれるかもと言ってハンカチを返し、この場から立ち去った方がいいと警告するが少年は笑って平気だと告げる、そして自分は超能力者だと告げると少女は目を丸くする

 

「YES、序列は今の所第一位…ま、そろそろ第二位に降格するかもな…おっと話が変わってたな、確か頭が痛いんだろ?なら任せとけ」

 

「え?」

 

「お兄ちゃんが助けてやるよ、俺の能力ならその痛みを多分なんとか出来るさ」

 

少年は今の所は第一位だと軽く笑いながら言う、そして少女の頭痛を治してあげようとにっこり微笑む少年を見て少女は彼を凝視する

 

「だけどこの能力を使うとなると全力で能力を行使しなきゃだからな…今から起こる事を見ても笑わないでくれよ?後失敗しても怒るなよ?」

 

「……うん」

 

「よし、いい返事だ」

 

これから起こる事を見ても笑わない事と失敗しても怒らないでと少年が言うと少女は頷く、それを見た少年が微笑むと彼の背中に白い塊が吹き出しそれが三対の翼になった

 

「……天使?」

 

「…やっぱりそう見える?…まあいいか、食蜂 操祈の自分だけの現実を再現……よし出来た」

 

彼女が少年の姿を見て天使とこぼした、少年はやっぱり天使にしか見えないか〜と呟きながら両手の間から何かを生み出す…それは最初は小さな脳の形をしていたがすぐにその形が崩れ小さなカブトムシになる

 

「…カブトムシさん?」

 

「そう、本当はイルカ型とか女子向けの可愛いのが良かったかもしれねえが生憎カブトムシしか作れなくてな…ま、いいだろ。感覚同調開始」

 

この才人工房にいる自分と同じ超能力者の少女の能力 心理掌握(メンタルアウト)の力をカブトムシに再現させた少年は少女の頭痛を治すべく、カブトムシに能力を発動させる、先ずは洗脳を行い痛みを押さえ込ませ、もう一匹心理掌握を使えるカブトムシを生み出し、彼女と深く同調させ患部の異常を見つけ出す…カブトムシが患部の異常を見つけたのか羽を動かして擬似的な発音をする

 

『マスター、患部の異常を発見しました』

 

「よし、水分操作でその異常を治せるか?」

 

『了解、実行します』

 

頭痛の痛みがなくなった事に驚く少女を他所に、二匹目のカブトムシが彼女の脳の異常を見つけ少年はそれを治す様指示する、暫くしてカブトムシが修復出来ました、と告げると彼は満足げに笑みを浮かべると指を鳴らしてカブトムシ達を消滅させる

 

「これでよし、どうだ頭の痛みは治ったか?」

 

「…え…あ、はい…痛くないです」

 

「そうか、良かった良かった、何せ一発勝負だったからな…下手したら廃人になってたかもだからヤバかった…いやぁ成功してよかった」

 

少年の問いかけに頷く少女、彼は下手したら廃人コースだったならな〜と笑いながらいい彼女は「そんなに危ない橋を自分は渡っていたのか」と成功して良かったと心底思う

 

「…そう言えばお兄さんは如何してここに…?見ない顔ですが…」

 

「俺は最近やって来たばかりでね、何でも俺の能力を利用した研究をしたいんだと…どうせロクでもない事に使う気だろうが…まあロリみさきちに会えたし、蜜蟻ちゃんにも会えたし、警策ちゃんとの取引と出来たし俺としては万々歳だがな」

 

「……みさきち?警策 看取?…蜜蟻さんとお知り合いなんですか?」

 

「おっと、こっちの話だ、忘れてくれ…ま、ここだけの話…俺は救いに来たんだよ、ドリー(羊ちゃん)とその警策 看取(親友)、そして後の食蜂操祈(超能力者)をな」

 

「……つまり…ヒーローさんですか?」

 

「…違うな、俺は壊しに来たんだ、この才人工房も『外装代脳(エクステリア)計画』も蠢動俊三のクソ野郎を壊しに来た悪党だよ…あ、この話内緒な、お兄さんとの約束だ」

 

少女が少年に新しく研究所(クラス)に来た人かと尋ねると少年は頷く、そして少年はある人物達を救いに来たんだと口に人差し指を当てて少女に冗談ぽく告げる、少女はヒーローみたいと少年を見て言うが少年はヒーローではなく悪党だと呟いた後この話は内緒と彼女の唇に指を当てる、すると部屋の扉が開き研究者が何人か入ってくる

 

「……驚きました、もう心理掌握の再現が出来るとは…」

 

「…チ、何処から見てやがった(…さっきの話は聞こえてなかった様だな…)」

 

「勝手にいなくなられては困ります、貴方は私達の計画の要なので」

 

「は、俺の能力で優秀な能力者の能力を再現しそれを学習装置(テスタメント)に記録して他の能力者に学習させる…お前らがやりそうな事だよ」

 

研究員の女性がもう心理掌握の能力を再現出来たのかと感嘆の声を漏らす、それを少年は不快そうに舌打ちする、研究員が早く少年の部屋に帰るよう手を向ける、少年は鼻で笑いながらも少女の元から離れ彼等についていこうとする、そんな少年に少女は声をかけた

 

「あの……ありがとうございます」

 

彼女が少年に頭を下げると少年は一瞬動きを止め…少女に向けて笑いかけた

 

「礼を言われる程じゃねえよ、男として可愛い子を助けるのが当然だからな」

 

「…可愛い……あ!わたくし帆風 潤子(ほかぜ じゅんこ)と申します!貴方のお名前は」

 

彼は可愛い女の子を助けるのは当然だと笑い、彼女は可愛いと言われ顔を赤くするがその場から立ち去ろうとする少年に自分の名前を伝えた、少年は彼女に向かって微笑みを向ける

 

「潤子ちゃんね…可愛らしい名前だ…俺は垣根 帝督、また会えるかは分からないが…また会えたらいいな」

 

少年…垣根は少女…帆風に自分の名前を伝えるとまた会えたらよろしく、と手を振って研究員と共に部屋から立ち去っていく、少女一人残った

 

「……垣根、さん」

 

彼女は自分の手を胸に当てる…そしてそのまま部屋の床に座ったまま垣根が立ち去っていた扉を魅入る様に見つめて……数日後才人工房は閉鎖する事になった、聞いた話によると何者かがある実験を妨害したらしい…帆風はその話を聞いて自分を助けてくれた少年を思い出した…

 

 

「帆風さん、もう朝ですよ起きてください」

 

「…んぅ?入鹿さん?」

 

帆風 潤子は目を覚ました、彼女を起こしたのはルームメイトの頭髪で右目を隠し、頭の左側に髪飾りを付けている少し茶色ぽい黒髪ロングの少女 弓箭 入鹿(ゆみや いるか)だ、帆風と同じ内部進化に在籍していた仲であり同い年でもある

 

「帆風さん、いい夢でも見ていました?幸せそうな寝顔でしたけど」

 

「……そうですね。懐かしい昔の夢を見ていました」

 

いい夢を見ていたのかと入鹿が尋ねると帆風が笑って頷く、帆風は素早く常盤台の制服に着替え入鹿と共に部屋を出る。彼女達が住んでいるのは常盤台中学の外側と内側にある常盤台中学学生寮の内、内側の学生寮だ、これは自分が所属する派閥の女王が内側の学生寮に住んでいるからである、因みに常盤台のエースは外側の寮だ

 

「……垣根さんは今日は何をしているのでしょうか?」

 

帆風は風に髪を揺らしながら虚空に向けて呟いた……そして彼女はふと立ち止まる、それを不審に思った入鹿が帆風に話しかける

 

「どうかしましたか帆風さん?」

 

「……今垣根さんの匂いがした様な…いえ気の所為ですね」

 

帆風は今垣根の匂いがした気がしたと呟く、がそんな訳はないと自分に言い聞かせて入鹿と共に女王がいる場所へと向かう…その頃の垣根はというと…

 

 

「婚后さん、知ってますか?昨日の第七学区の強盗事件の事」

 

「はて?何の事ですの?」

 

「湾内さんも知っていらしたんですか?わたくしも聞きましたよ、確か超能力者の第一位さんが強盗犯を捕まえたとか」

 

「ほう!それは凄いですわね!」

 

不自然なほどサラサラの髪に手に豪奢な扇子を持った少女 婚后 光子(こんごう みつこ)とその友達 であるウェーブのかかったライトブラウンでセミショートの髪の少女湾内絹保(わんないきぬほ)と黒のロングヘアの少女泡浮万彬(あわつきまあや)は三人仲良く学舎の園(まなびやのその)の道を歩いていた、そして昨日起こった事件の話を湾内が誰かから聞いたのか婚后にその話題を言う

 

「わたくしもその強盗犯が車で逃げようとした所を白いカブトムシが取り囲んで捕まえた、て聞きましたね」

 

「え!?カブトムシ!?」

 

「やっぱり超能力者て能力者の見本みたいなお人なんですね、御坂さんや食蜂さんみたいにお優しい方なのでしょうね」

 

泡浮が自分の聞いた話だとカブトムシが取り込んで強盗犯を捕まえたと話すと何故カブトムシが出てきたと婚后が驚く、湾内はやはり超能力者は常盤台の超能力者の様に心優しいお人なんだろうなと笑いかけた、その時

 

「うおおおお!!?」

 

「「「!?」」」

 

空から何か叫びながら彼女らの三歩手前に落ちて来た、そしてドシンと響いた落下音に砂煙が舞い三人は驚きの余り目を見開く、何が起こったのかと考える中煙の中から誰か現れる

 

「イテテ…ちくしょーミスったぜ、いきなり飛んで来たゴミ袋を頭に被って演算をミスっちまった…」

 

「だ、誰ですの貴方?」

 

現れたのはホストの様な服を着た少年 垣根、垣根は服についた汚れを落としながら三人の目の前に姿を現わす、ポカーンとしていた三人だが婚后が誰だと尋ねる、すると垣根は笑って答えた

 

「空から落ちてくる系のヒロインです」

 

「は、はあ…?」

 

「それよりお嬢さん達、ミコっちゃんとみさきち…いや第五位と第六位が何処にいるか知らないかい?」

 

「み、御坂さん達ですか?た、確か二人はいつも図書室にいるかと…」

 

「そうか、ありがとうちょっと荷物を届けに来てね、助かったよ。じゃあね」

 

「は、はぁ…」

 

世紀末帝王 HAMADURAのセリフを言った垣根は柔和な笑顔で婚后達に話しかける、戸惑う婚后に第五位と第六位が何処にいるか知らないかと尋ねると湾内が図書室にいる筈と教え垣根がお礼を言うと、先程落ちて来た場所にあった服か何かが入っていそうな箱二つを両脇に荷物を抱えてこの場から立ち去る

 

「……不思議な殿方ですわね」

 

「ええ、でも人を惹きつけそうなお方に見えましたわ」

 

「まあ悪い人ではなさそうですし気にしないでおきましょう…所でその強盗事件を解決した超能力者の事なのですが…」

 

三人は不思議な人だな〜と思いながらも気にせずに先程の話を続ける…が、ここでふと思う、ここは常盤台中学、女子校だ、なのに何故男性がいたのかと、それに確か彼は空から落ちてきた、つまり空からやってきた、そして怪しげな荷物を持って常盤台の超能力者に会いに行った…もうこの時点で怪しさ満載である、そしてある結論に至った三人は同時に叫んだ

 

「「「侵入者!?」」」

 

 

帆風が今いるのは常盤台の図書室…と言っても膨大な数の本の数々が本棚に収められている為図書館と呼んでも案外間違っていなさそうなこの部屋に二人の少女達が静かに本を閲覧していた、その二人に帆風が声をかける

 

「おはようございます御坂さん、女王」

 

「あ、潤子先輩」

 

「おはようなんだゾ☆」

 

帆風が丁寧に頭を下げると二人も軽く頭を下げる、帆風は二人が何を読んでいるのかチラッと横目で見る、美琴は「たった一年で胸を大きくさせる方法」、食蜂は「彼氏を虜にする100の秘訣」…タイトルだけで二人が何を考えているのか理解出来る

 

「…あら、上条さんを喜ばせる為にその本で勉強をしているのですか?」

 

「!ち、違いますよ!わ、私は別に先輩の為に胸を大きくしようなんか考えてないです!ただ操祈が一年で大きくなったから私も!て思っただけです!」

 

「わ、私もよぉ!ただどんな事が乗ってるのかなぁ〜て思って読んでみただけであって…べ、別に上条さんを喜ばせようとか思ってないしぃ!」

 

「……(分かりやすいですね、それにしても今日も帆風さんはお綺麗です)」

 

帆風が口元に手を当てて優しく笑うと超能力者の後輩二人は顔を真っ赤にして反論する、入鹿は隠しきれてないと内心で突っ込む。すると帆風が何かの匂いを感じたのか鼻をくんくんさせる

 

「?どうしたのぉ?」

 

「いや…また垣根さんの匂いがして…」

 

「…いや何で潤子先輩は垣根さんの匂いて分かるんですか?」

 

また垣根の匂いがすると鼻をくんくんさせる帆風…美琴は何故垣根の匂いを知っているのかと突っ込む、すると食蜂と美琴の間に黒子が現れる

 

「お姉様方、ちょっとよろしいですの」

 

「どうしたの黒子?」

 

「実は先程婚后さんから聞いたのですが…常盤台に侵入者がいる様ですの」

 

「……この常盤台に侵入してくるなんて…命知らずなのねぇ」

 

「全くですわ…もし不審な人物を見つけたら能力で拘束してくださいまし…まあ男性の様なので一発で不審者と分かるはずですが」

 

黒子が婚后から不審者が常盤台に侵入したと美琴達に教えると食蜂は呆れた目でその話を聞く、超能力者が二人もいるこの常盤台に侵入する等無謀でしかない

 

「後は怪しげな荷物を持っていた様で爆発物の危険もあるかと…後は空から落ちてきたので飛行系の能力者の可能性がありますの」

 

「全く命知らずな奴ね…私と操祈がいる常盤台に入り込むなんて…常盤台の能力開発用の機材や薬品を奪いに来たのかしら?」

 

「まぁ私と美琴の協力力なら犯人もイチコロよぉ〜十分で終わらせられるわぁ」

 

「はは、ミコっちゃんとみさきちが手を組んだらその不審者死ぬんじゃね?」

 

黒子が爆発物を所持している可能性もあると教え、更に飛行系の能力者かもしれないと忠告する、二人は自分達に勝てるものかと笑い、愚かな侵入者を叩き潰してやろうと席を立つ、そんな二人を見て垣根が犯人終わったなと笑う

 

「しかし、その侵入者は何処にいるのでしょう?」

 

「普通に考えて何処かに潜んでいるのでは?」

 

「本当だぜ…全く何処のどいつだ、常盤台に侵入した不審者は…俺が絶対見つけ出してやる」

 

帆風と入鹿がその不審者はどこにいるのかと考える、そしてその横で腕を鳴らしながら垣根が不審者を見つけ出すと言う

 

「まあいい、この俺が不審者を必ず見つけてやる、オセロちゃん達は気にしなくていいぜ」

 

「いや部外者は大人し…」

 

垣根が黒子の肩に手を当てて大人しく本でも読んでろと笑いかける、黒子は貴方は大人しくしていて、と言いかけてふと気づく、自分達のすぐそばに垣根(不審者)がいる事に、図書室の生徒達の目線が垣根に集中する

 

「「「………」」」

 

「……ふ、俺に常識は通用し…」

 

「「黙れ」」

 

「ごふぅ!?い、いきなり蹴るなよ…非常識かお前らは…」

 

「「女子校に不法侵入してくる常識知らずに言われたくない」」

 

沈黙する生徒達に垣根は手を顔に当てて決めセリフを言おうとするが美琴と食蜂のダブルキックを喰らい吹き飛ばされる、本棚の角に頭をぶつけ頭を抱える垣根に帆風が心配そうに近づく

 

「大丈夫ですか垣根さん?」

 

「…縦ロールちゃん心配してくれるとかマジ天使」

 

「いやですわ、そんなに褒めないでください」

 

帆風が起き上がれる様に垣根に手を差し出すと垣根が本当にいい子と帆風と一緒に笑う、すると図書室に婚后達が入ってくる

 

「!いましたわ!そこの男性が不審者ですわ!」

 

(((あ、うん見てわかります)))

 

「あ、婚后さんストップ、この人私達の知り合いだから」

 

婚后が扇子で垣根を指して不審者だと叫ぶ、そりゃあそうでしょうねと図書室にいる全員が頷く、婚后は早速捕まえようとするが美琴が制止をかける

 

「え!?この変人は御坂さんのお知り合いなのですか?」

 

「うん…否定したいけど否定できないのよね」

 

「…私達の唯一と言っていい汚点だけど切っても切り離せない存在…それが垣根さんなのよねぇ…」

 

「相変わらず散々な言われ様ですわね」

 

婚后達がこの変人が美琴達の知り合いなのかと驚き、生徒達も騒めく…美琴と食蜂は遠い目で垣根を見る、黒子はこの人散々な言われ様だな〜と軽く哀れみの目で見た

 

「たく、人を不審者だとか失礼だな」

 

「いや学校に勝手に忍び込んだ時点で不審者確定ですわ」

 

「安心しろ、不審者だと言う自覚はある」

 

「じゃあやめてくださいまし」

 

垣根と黒子がコント染みた会話を進める中婚后が御坂達に近づき扇子で口元を隠して小声で話す

 

「御坂さん…知り合いだとは分かりましたが…あの殿方は何者なんですの?」

 

「…垣根 帝督、私達と同じ超能力者の序列 第一位よ…あんなだけど」

 

「え!?れ、超能力者!?それに第一位て昨日の強盗事件を解決したあの!?」

 

「湾内さんや私が思っていた超能力者と違いますわ…」

 

美琴があれが超能力者の第一位だと教えると図書館にいた全員があれが第一位と驚嘆の叫びを漏らす

 

「で、垣根さんは如何して常盤台に侵入した訳?」

 

「あ?言ってなかったか?お前らに届け物があるって前に言っただろうが」

 

「そういえば御坂さん達に届け物があるて言ってましたわね…」

 

「でぇ、垣根さんは何を届けに来てくれたのかしらぁ?」

 

垣根が荷物を二人に見せる、婚后もそういえば出会い頭に言ってたなと思い出す、食蜂が胡散臭げな目で垣根を見る、垣根は満面の笑みで荷物を開けて中身を見せる

 

「じゃじゃ〜ん!堕天使エロメイドと大精霊チラメイドなのよな!これで愛しの彼氏君を襲うんだにゃー!」

 

「「死ねぇぇぇぇ!!!」」

 

「よなぁぁぁぁ!?」

 

「垣根さん!?」

 

どっかのクワガタ教皇代理とシスコン軍曹の様な口調で箱から取り出したのはメイド服…と呼んでいいのか分からない様なメイド服だった、両方とも胸を強調しておりとにかくエロい、その一言に尽きる、当然それを見せつけられた二人は垣根に蹴りを叩き込み腹筋を崩壊(物理)させる、そして勢いよく本棚にぶつかり帆風が思わず叫ぶ

 

「セクハラじゃねえか!それにこの強調された部分!嫌がらせか!?私に対する嫌がらせかゴラァァァ!」

 

「じ、自分から貧乳と認めてるじゃないですか…「だぁれが貧乳じゃゴラァァァ!」やこど!?」

 

「ストップよ美琴!超電磁砲はダメよ!ステイステイ!」

 

「操祈ぃぃぃ!当たってるわよ!それも嫌味か!?たった一年で急成長した胸を貧相な私に見せつけてんのかゴラァァァ!」

 

美琴が自分に対する嫌味かとチラメイドの強調された(何処がとは言わない)部分を指差し、自分で認めてるじゃん〜と言いかけた垣根を再び蹴り飛ばし腹筋崩壊(物理)させる、怒りの余り超電磁砲を放とうとする美琴を食蜂が羽交い締めして止め、食蜂の豊満な胸が美琴の背中に当たり更に美琴がヒートアップしたのは言わなくても分かるだろう

 

「イテテ…暴力系ヒロインは嫌われるぞミコっちゃん、さぁてプレゼントは渡したから俺はここら辺で帰るわ…」

 

「誰が逃すかこの野郎!ここがあんたの墓場だぁぁぁ!」

 

垣根は立ち上がり、ここら辺でずらかるかと考え美琴は絶対に逃さないと超電磁砲を放とうとしたその瞬間

 

「貴様が侵入者か?」

 

「あ?」

 

垣根に声をかけたのは三角眼鏡をしたスーツの女性、彼女を見るなり図書室の生徒達が凍てついた、そして怒りを一瞬で鎮めた美琴と彼女を押さえつけていた食蜂がワナワナと恐れながら彼女の名を告げる

 

「「り、寮監!」」

 

彼女こそ大能力者三人やら猟犬部隊の隊員達を瞬殺した能力開発を受けていない一般人の中では最強と呼ばれる存在…寮監である、あの超能力者である美琴や食蜂ですら恐れる存在がここに君臨し生徒達が震え上がる、だが垣根は平然と笑うのみ

 

「……あんたの事は知ってるぜ、何しろあのミコっちゃんや軍覇を睨むだけで鎮圧するぐらいだからな…」

 

「ほう、第一位に名前を知ってもらえるとは光栄だな」

 

「いつもミコっちゃん達から聞いてるぜ、「子供に向ける優しさを私達にも向けて欲しい」だとか「29歳て売れ残りよねぇ」とかな」

 

「よし後であの二人も刈ろう」

 

垣根は不敵に笑い寮監も第一位が自分を知っているとはと笑う、つい垣根が普段彼女をなんと言っているか口を滑らせ寮監が後で制裁を加えると腕を鳴らす、美琴達は滝の様に冷や汗を流す、垣根の次は自分達かと

 

「確かにあんたは凄えよ、この常盤台の能力者達を震え上がらせるその力…その実力は超能力者さえ畏怖させる…」

 

「……」

 

「だかな、何事にも限界がある、確かにあんたは強い、それは認める…だが…俺にそれは通用するのか?」

 

図書室の空気が一変する、あの寮監と同じ風格が垣根から感じる、生徒達は漸く理解する…垣根は超能力者の第一位なのだと、あの寮監の前には超能力者である美琴達も畏怖すると言うのにこの男は臆する事はない…

 

「言っておくぜ、俺はミコっちゃんやみさきちより強い、常盤台の生徒全員が力を合わせればホワイトハウスを攻略出来るらしいが…俺はたった一人でアメリカと戦争を起こしても勝てる自信がある」

 

垣根の背中から純白の翼が展開される、それは三対の翼…十字教で言う熾天使(セラフィム)の如き六枚の翼を持つ天使を連想させる、生徒達の視線が翼に釘付けになる…あれが超能力者の第一位の能力なのだと、寮監も僅かに目を細める。これが学園都市が誇る第一位なのだと証明する様に翼が広がる、垣根は寮監に笑いかける

 

「さあ、来いよ寮監さん、格の違いを見せてやる、俺の未元物質にあんたの常識は通よ「話はそれだけか?」ねぼし!?」

 

「「「カッコつけてたのにあっさり倒されたぁぁぁ!?」」」

 

寮監がカッコいいセリフを言おうとしていた垣根の首を一瞬にしてへし折った、その速さはまさに神業、自動防御を備え持つ未元物質も庇えない程、垣根は一瞬で意識を刈り取られドサリと地面に力なく倒れる、確かに格の違いを見せつけてくれた…寮監の圧倒的勝利という形で…

 

「…さて後はこの不審者を外に捨てるだけだな」

 

寮監は垣根の襟首を掴み引きずりながら常盤台の外へ放り出そうとするが垣根のポケットから何か出て来た

 

『待って下さい』

 

「…第一位の能力の噴出点か?」

 

『はい、私はカブトムシ05と言います、マスターがご迷惑をかけ申し訳ありません、マスターは私が連れ帰るので貴方がお手を煩わせる事はありません』

 

「そうか、なら自分の主人の後始末は頼む」

 

『了解しました、では皆様さようなら』

 

カブトムシ05がマスター(垣根)の代わりに謝罪し、垣根を背中で背負えるくらいの大きさに05が変化し、垣根を背負って図書室から出て行く…その歩く姿は何処と無く愛嬌が漂う。去って行った05と垣根、まるで嵐の様な超能力者に図書室にいた生徒達がポカーンとしている…が寮監は図書室から逃げ出そうとしているある二人(・・・・)に声をかける

 

「まて御坂、食蜂」

 

「「ビクゥ!?」」

 

「……「子供に向ける優しさを私達にも向けて欲しい」、「29歳て売れ残りよねぇ」…か、第一位に私の事を好き勝手言っていた様だな」

 

「「い、いえ…違うんです、これは誤解というものでして…だ、だからじりじりと歩み寄って来ないでくれませんか?…」」

 

忍び歩きで逃げる美琴達に一瞬で近づいた寮監、まさに蛇に睨まれた蛙と言わんばかりに美琴と食蜂はお互いを抱き合って涙目になる、寮監が先程垣根が二人が言っていたと言う言葉を復唱し二人が弁解をしようとする…だが寮監の眼鏡がキラリと光る

 

「誤解も六階もない…人の悪口を言ってはいけない、それが守れん奴には罰が必要だ、そうは思わんか」

 

「「は、はぃ…で、でも首を刈るのは許し…」」

 

その後ゴキッと鈍い音が二回響き人が倒れる音がした、寮監はそのまま図書室から立ち去りその場には静寂のみが残された…黒子があまりの恐怖に失神しかけ婚后も初めて寮監の罰を見たのか扇子を地面に落としているのに気づかない、美琴と食蜂は冷たい図書室の床に死体の様に倒れていた

 

「……ご冥福を祈りましょう」

 

入鹿は手を合わせ合掌する、生徒達は思った、超能力者の三人を一瞬で刈り取った寮監は絶対能力者(レベル6)ではないのかと、生徒達は思った、これからは絶対に規則を破ってはいけないと

 

 

「そう言えば帆風さん、貴方垣根さんと随分親しいようですがどんなご関係ですの?」

 

「はい?わたくしと垣根さんとの関係ですか?」

 

気絶した超能力者二人を黒子と帆風が担いで常盤台の廊下を歩く、黒子が美琴を背負いながら食蜂を背負う帆風に垣根とはどんな関係かと尋ねる

 

「そうですね…王子様…でしょうか?」

 

「お、王子様?」

 

「ええ、少しメルヘンチックですが…わたくしを助けてくれた王子様です」

 

「は、はぁ…物好きな方ですわね」

 

帆風が冗談ぽく王子様みたいな人と笑うと黒子が苦笑いする、確かに見た目は王子様ぽいが中身はアレだ…蓼食う虫も好き好きとはよく言ったものだと黒子が考える中、帆風は自分の縦ロールを撫で思い出にふける

 

 

『うぅ…大失敗ですわ…わたくしの三つ編みが…こんな縦ロールに…』

 

春頃、常盤台中学指定美容院に入った帆風はやる気が欠けていそうな顎髭を生やした眼鏡の男性に毛先を整える様伝え、そのままついウトウトして寝てしまった…それが運の尽きで目が覚め鏡を見ると見慣れた三つ編みがなんと14連の縦ロールに大変身していた、この余りの変貌ぶりに店主の坂島道端(さかしまみちばた)に何故こんな髪型にしたと問い詰めると

 

『いやぁ思わず…でも似合ってるから反省も後悔もない』

 

そんな事を抜かしたので天衣装着(ランペイジドレス)を発動させ顔面にパンチを食らわしてやった、反省も後悔もない、この髪型を食蜂や御坂、派閥のメンバーに見られたらなんと言われる事か…

 

『特に垣根さんにこの髪型を見られてしまったら…』

 

『俺が何だって?』

 

『いえ、この髪型を見られるのは恥ずかしく…て!か、垣根さん!?ど、どうして此処に!?』

 

帆風がこの縦ロールを垣根に見られたら恥ずかしいと呟いていると背後から垣根が現れビクッとなる

 

『あぁちょっと当麻達をからかって来た、その帰りだ、いい写真が撮れたぞ見るか?』

 

『い、いえまたの機会に……(はわわ…!垣根さんに出会ってしまいましたわ…この様な髪型を見られたら何と思われるか…い、急いで弁明を…!)』

 

フォルダを開き携帯の画面を見せつけようとする垣根、帆風はやんわり断りながら内心縦ロールを見られて垣根に変な事を思われないかと不安になり何か言おうとする

 

『あ!こ、この髪型なんですが…美容師さんが『あ、そうだその縦ロール似合ってるね』……へ?』

 

『縦ロールだよ、縦ロール、お嬢様ぽくて凄く似合ってるよ、前の三つ編みは眼鏡が似合いそうで似合ってたけど…今の髪型も可愛いね』

 

『…えぇ!?』

 

まさか縦ロールを褒められるとは思わず驚く帆風、垣根は前の髪型も似合っていたがこの髪型も似合っていて可愛いと言うと顔を真っ赤にして手で口を塞ぐ

 

『ん?浜ちゃんとむぎのんだ、ごめんね俺あの二人尾行してくるよ』

 

『可愛い、可愛い…えへへ…』

 

『聞こえてないかぁ…じゃあ俺行くわ』

 

『えへへ…垣根さん、わたくしの縦ロールてそんなに似合っ…あら?』

 

垣根は自分の知人が歩いているのを見て携帯片手に尾行すると帆風に言うが帆風は何やら呟いて垣根の話を聞いていない、垣根はそのまま二人を尾行すべくその場から立ち去り帆風がもう一度似合っているか聞こうと現実に戻ってきた時には垣根はもういなかった

 

『……垣根さんに褒められたこの髪型…変えないでおきましょう』

 

彼女は自分の縦ロールを軽く撫でながら嬉しそうに呟いた、こんな髪型にしたあの美容師にも少し感謝する事にした

 

 

「垣根さんはいつになったらわたくしの気持ちに気づいてくれるのでしょうか?」

 

「?何か言いましたの?」

 

「いえ、何でもありませんわ」

 

彼女はそう言って黒子に笑いかけた

 

 

 




ぎ、ギャグだから垣根君は負けても仕方ないよ(震え声)、後この小説だと入鹿さんが潤子ちゃんと相部屋です、原作だと食蜂さんかもだけど、この作品では入鹿ちゃんです。え?食蜂さんは誰と相部屋なの?…部屋を抜け出して美琴ちゃんのベットで添い寝して寝てます

次回は垣根さん家の家事情編、垣根君の家族が出てくるよ、お楽しみに


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初春「トンファー流て何ですか?」佐天「知らない」

今回はていとくんのお家事情(家族が出るだけで家がメインとは限らない)、ツッコミはなしでお願いします、そして今回ようやくスクールメンバーが総登場、心理定規さんはていとくんと同じキャラ、猟虎ちゃんは子供の頃のままです




垣根 帝督の朝は早い、朝6時に起きプリンターで昨日撮った携帯をプリントアウトし、その写真をアルバムに飾る、そのアルバムの数はもうすぐ3桁にいく程だ…

 

「ふふふ、どれもこれも至高の写真だ…毎朝アルバムを見てニヤけられるこの幸せ…たまんねえな」

 

ニヤニヤとアルバムを見ながら笑う垣根、アルバムを何冊も手に取りページをめくって上条が美琴にあーんして貰っている写真、食蜂がこけて上条が彼女の胸元に埋もれて倒れる写真、麦野が顔を真っ赤にして浜面に原子崩しを放ちながら追いかける写真やら一方通行が打ち止めを満々の笑みで抱っこしている写真を眺めている、なおいずれも盗撮である

 

「…おっと、思わず長い事読んでしまった…もう7時か…あいつらを起こさねえと」

 

ふと時計を見て長い時間読み漁ってしまったと呟きながら垣根はアルバムを片付ける、そして自室から出て隣の部屋の扉をコンコンと叩く

 

「おおい、氷華〜、朝だぞ起きろ〜」

 

垣根が何度もドアをノックするとズレ落ちた眼鏡をかけた少し茶色の混じった黒髪のストレートヘアに一房だけ束ねられた髪が特徴的な少女が目をこすりながら眠たそうな顔が扉を開けて現れる

 

「…おはようございます、兄さん」

 

「おはよ、俺はクロちゃん起こしてくるわ」

 

「うん、じゃあ私は朝ご飯作るね」

 

彼女の名前は風斬 氷華(かざきり ひょうか)、虚数学区と呼ばれる場所の鍵を握る存在にして垣根の義妹である、垣根はもう一人の同居人を起こしにいくと伝えると階段を降りてリビングに入る、リビングに入って最初に見た光景はソファーで眠りこける少女だった

 

「むにゃむにゃ…夢は美味しい、です…食べて損はしない…情報…」

 

「あらら、幸せそうに寝やがってこいつ…」

 

長い銀髪に薄い合成繊維でできたワンピースに似た服を纏っているが半端下着が透けている少女…彼女の名前はフロイライン=クロイトゥーネ、何処と無く周囲から浮いている様に見え垣根と同じ人間には見えない…そんな彼女は抱き枕サイズに縮小した05を抱いて寝言を呟く…05は苦しそうに手足をバタつかせるが彼女は気にしない、そんな光景に和みながらも垣根はフロイラインを揺すって起こす

 

「むにゃ…てーとく?おはようなのです」

 

「おう、今氷華が飯作ってるから歯磨きしてテーブルについてろ」

 

「…ん」

 

寝ぼけ眼の彼女は目をこすりながら05を片手に抱いて洗面台へ向かう、05が「助けて」と手足をバタつかせるが垣根は無視してテーブルに座る、リモコンのスイッチを入れてテレビをつける

 

『先日 ロベルト大統領が補佐官のローズライン氏に対し「細かいこと言うなよ、そんなんだから独身なんだよ!30過ぎようとしてる癖に!」とセクハラ発言を行い、ローズライン氏が怒りの余り記者会見中にも関わらず膝蹴りをロベルト大統領に叩き込み、ロベルト大統領は鼻っ柱を叩き潰してしまいました、なおこの一件でローズライン氏は「セクハラ被害者を庇護する守護神」と称されセクハラ発言を行なったロベルト大統領の支持率アップへと繋がり…』

 

「…アメリカ(この国)大丈夫か?」

 

セクハラ発言をして補佐官に鼻っ柱を叩き潰された大統領を見て垣根がアメリカは大丈夫かと心配する…するとひょこっとフロイラインが椅子に座り風斬が朝ご飯を持ってくる

 

「「「頂きます」」」

 

全員で頂きますをした後もぐもぐとご飯を食べ始める三人、味噌汁とかレタスとかミニレタスとか白米とか秋刀魚とかトリフ等の平凡な食事だ

 

「…トリフ美味しくない」

 

「え…?でも料理番組だと美味しいって言ってたよ?」

 

「庶民とは舌が違うんだよ、それよりしいたけ食おうぜ…あ、みさきちじゃねえぞ」

 

訂正トリフは平凡じゃなかった

 

「そう言えば兄さん、私昨日声かけられたんです」

 

「へぇ、よかったじゃん」

 

「はい、私に向かって手を振って笑いながら駆け寄ってきて…私も嬉しくなって手を振りながら駆け寄ったんです」

 

「良かったね」

 

風斬が笑顔で昨日声をかけられたと言うと垣根とフロイラインがもぐもぐしながら良かったねと頷く、風斬は話を続け笑みを浮かべながらニコニコと話す…だが最後にでも、と付け加え口を開く

 

「近づいて見たら全然知らない人で、私を通り抜けて行ったんです…手を振ってたのは私じゃなかったです、私は手を振る相手がいないのに手を振りながら駆け出しちゃったんです…え?その後ですか?相手がいないのに手を振りながら誰もいない所まで走りましたよ?」

 

「「………」」

 

「…よく考えたら私兄さんとクロちゃんや一部の人以外に見えないんでした…ふふふ、忘れてました」

 

空気が一変して重くなる、風斬は笑っているが目が死んでいる、垣根とフロイラインの箸が止まる、ふふふと壊れた機械の様に声を漏らす風斬

 

(……ヤベェ、ネガティブモードになりかけてやがる…)

 

「………」

 

「な!?クロちゃん滅茶苦茶早くご飯食べてる!?逃げる気か!くそ!もっとよく噛んで食べなさい!」

 

「……ご馳走様」

 

垣根が厄介な状況になったなと内心思う中フロイラインは高速でご飯を食べ終わり手を合わせた後ソファーに寝転んで眠り始める

 

「分かってるんです、私みたいな見えてるのか見えてないのかはっきりしない系少女に友達のとの文字もないって…ぼっちな私には家に引きこもってるのが一番だったんです…あははは…」

 

「……朝から義妹の愚痴を聞かされるとは…不幸だ」

 

壊れたラジカセの如く何度も同じ内容を話す彼女の話を元に戻るまで黙って聞き続ける垣根、ハイテンションな彼が珍しく項垂れた瞬間だった

 

 

「…ふ、まさか一時間も愚痴を聞かされるとはな…義兄(あに)は辛いよ」

 

約一時間もネガティブモードの風斬の話を聞かされた垣根はぐったりとフロイラインの横でソファーにもたれかかっていた、因みに風斬は外に出かけて行った、また心に傷を負わないか心配だ

 

「さて、また写真を撮りに行くか…最近当麻とかみさきち、ミコっちゃんばっかりだから他に行くか」

 

「……捕まらないの?」

 

「大丈夫だ、バレなければ犯罪じゃない」

 

「……いや多分バレてる」

 

携帯片手にまた盗撮してくるかと笑う垣根に捕まらないのと純粋な疑問をぶつけるフロイライン、どっちらかと言えば風斬が言った方がいいセリフを言う垣根にいや、バレてるからね?とフロイラインは突っ込んだ

 

「あ、冷蔵庫に昼飯入ってるからチンしろよ、後怪しい人を家に入れるなよ」

 

「ん、大丈夫…てーとく行ってらっしゃい」

 

垣根は玄関でフロイラインに注意した後、扉を開いて外へ出る、垣根は未元物質の翼を展開し空へと飛翔する

 

 

「ねえ初春、私昨日さ御坂さんが頭にゴーグルみたいなのつけてサバゲーやってるのを見ちゃったんだよ」

 

「見間違いじゃないですか?御坂さんサバゲーなんてしなさそうですよ」

 

「え〜?まあ確かにしなさそうだけど…あれはどっからどう見ても御坂さんに見えたんだけどなぁ…」

 

佐天と初春が他愛ない話を歩きながら話す、すると初春の花をかたどった髪飾りの一つが頭から落ちてコロコロと転がる

 

「あ!本体(初春)が落ちた!」

 

「いや佐天さんそれ私じゃないです!髪飾りです!と言うか今何と書いて初春て読みました!?」

 

「あはは、ごめんごめん…て!そんな事場合じゃなかった!拾わなきゃ!」

 

佐天が初春(髪飾り)が落ちた!と言うと初春が花飾りが本体じゃない!と怒る、てへ☆とゴチンと頭に拳をぶつけ舌を出す佐天だったが早く花飾りを拾わなきゃと花飾りを拾おうとするが花飾りはコロコロと転がり二人から遠ざかっていく…だがその花飾りを見知らぬ少女が拾ってくれた

 

「あああああの……」

 

「(うわぁ…凄くどもってる…)あ…ありがとうございます」

 

「いやぁ…初春を拾って…あ、間違えた花飾りを拾ってくれてありがとうございますお姉さん」

 

「いいいいえ…当然の事をしたまでです…」

 

黒いツーサイドアップの髪の高校生くらいの少女がどもりながらも初春に花飾りを差し出す…初春は凄くどもってると驚きながらも花飾りを受け取り頭部につける

 

「もう初春、これからは本体を落とすんじゃないよ」

 

「だから本体じゃないですてば…」

 

「……ででではわたくし()はこれで…」

 

「あ!ちょっと待って下さい!」

 

佐天がこれから花飾り(本体)を落とさないでねと呟くと初春がそれは本体ではないと突っ込む、少女はそのまま立ち去ろうとするが佐天が呼び止める

 

「な、何でしょうか…?」

 

「いえ、お名前を聞いておこうかと…あ、私佐天 涙子です、こっちが初春です」

 

「わ、わたくしは弓箭 猟虎(ゆみや らっこ)と申します…で、こっちらが……て、あれ?」

 

佐天が名前を尋ねると彼女は猟虎と名乗り、自分の横を見る…丸でそこにいない誰かを紹介しようとするかの様に…だが彼女は横を向いた瞬間に固まってしまいどうしたのかと佐天達が首を傾げると彼女は身体を震えさせ涙目になりながらワナワナと呟く

 

「よ、誉望さんがいません!?誉望さぁん!?何処ですか!?誉望さぁぁん!」

 

((な、泣き出した!?))

 

「お、お姉さん!落ち着いて下さい!」

 

「な、泣かないで下さい!」

 

泣きながら誰かに呼びかける猟虎に佐天と初春が必死で泣き止む様に体を揺する、どう見ても高校生と言うか年上に見えないその行動に中1である彼女らの方が年上のお姉さんに見えてしまう

 

「いやぁ猟虎お待たせ…て、猟虎!?どうしたっスか!?」

 

「!誰か知り合いが来て…て!頭に土星の輪っかが!?」

 

そんな子供の様に泣きじゃくる彼女をに声をかけたのは頭に土星の輪っかの様なゴーグルをつけた少年…佐天がゴーグルに驚くがゴーグルの彼は猟虎にどうかしたのかと心配しながら尋ねる

 

「うぅ…誉望さん?ど、何処行ってたんですかぁ?」

 

「い、いやさっき飲み物買ってくるて言ったじゃないっスか…」

 

「……え?そんなの聞いてませんよ?」

 

「……ちゃんと人の話は聞けスよ…」

 

泣くのをやめた猟虎が誉望と呼んだゴーグルの少年を涙目で何処へ行っていたのかと尋ねると、彼は飲み物を買いに行ったとコーヒーの缶を見せつける、要は猟虎が彼の話をちゃんと聞いておらず、それを勝手にいなくなったと勘違いした彼女が泣き出しただけだった

 

「……あの〜貴方がこの人の彼氏さんですか?」

 

「ああ、そうっスけど…おたくら誰っスか?」

 

「あ…この人に髪飾りを拾ってもらって、その後泣き出されて…」

 

「あぁ〜、猟虎がご迷惑を…こいつ、すぐ泣き出す癖があって…」

 

誉望が自分の彼女がご迷惑をかけたと頭を下げる、ようやく泣き止んだ彼女は誉望の背中に隠れる…定位置なのかほっこりと彼女は落ち着いた顔で誉望の背中にもたれかかる

 

「(ペットみたいな人ですね)すみませんデートの邪魔をしてしまって…」

 

「大丈夫っスよ、元はと言えばちゃんと声をかけなかった俺が悪いんスから…ほら猟虎行くっスよ」

 

「あ…はい、誉望さん…あの…これからはもっと大きな声で言ってくださいね…そうでないとわたくし誉望さんがわたくしを見捨ててしまったのかと勘違いしてしまうので…」

 

誉望がデートの続きをしようと佐天達から遠ざかろうとすると猟虎が誉望の服の裾を掴む、そして彼女は上目遣いで誉望にちゃんと声をかけないと捨てられたと勘違いしてしまうと目をウルウルさせながら言う、誉望がドキッと顔を赤くする…と、その場にシャッター音が響き佐天がクルリと顔を音が聞こえた所へ向けると

 

「…あぁ誉弓はいいわね…猟虎ちゃんの年上に見えない幼さと誉望さんの大人さがいい感じに引き出されてる…そんな写真ね…今度彼に見せなきゃ」

 

(なんかいつか前の垣根(変人)に似た人がいる!?)

 

何か呟きながらデジカメで写真を撮る少女が背後におり佐天がこんな光景を前に見たと驚く、その少女の外見は14歳程、小柄で華奢な体つきに赤いドレスを着たホステスの様な少女はデジカメで誉望と猟虎を撮影する、すると誉望が少女の存在に気づく

 

「め、心理定規(メジャーハート)さん!?いつの間に!?」

 

「え?「あああああの……」の所からよ」

 

「「最初から!?」」

 

「あ、あの…心理定規さん…その写真は消してもらえませんか…恥ずかしくて…」

 

彼女の名前は心理定規、誉望達の知り合いである人物と同じ雰囲気を出す彼女は最初からいたと告げると佐天達が驚く、猟虎がどもりながらもその写真は消してくれと頼み込む

 

「嫌よ、カップリング写真は一枚足りとも消す気はないわ。折角の二人の愛の瞬間よ?永久保存しなきゃ、そしてまた二人の同人誌を描いてコミケに頒布しなきゃ」

 

「いや小恥ずかしいで消して下さい!そして勝手に同人誌を描かないで下さい!」

 

「いいじゃない、私は彼と同じでこういう写真を撮るのが好きなの、そしてカップルの同人誌を描く事が私の生きがいなの、それに私の能力て他人に対して置いている心理的な距離を識別する、て能力なんだからカップリングに便利じゃない、因みに誉望さん達の距離単位は30…「付き合ったばかりの瑞々しい初心なカップル」て言う距離ね…」

 

「うぅ…恥ずかしい事を大声で言わないで下さいぃ…」

 

心理定規は消す気はないと無邪気に笑う、更に自分の能力を使って猟虎が更に赤面する、それを見た佐天と初春は「あ、垣根(変人)と同じ人種だこの人」と理解する

 

「それに貴方達も彼に毎回カップリング写真を撮られてるんでしょう?なら私もいいじゃない」

 

「確かにそうっスけど…あの人デートの最中に必ず湧いて出るから嫌なんスよ」

 

「おい、ゴーグル君俺をGみたいな扱いにするな、俺Gは苦手なんだぞ」

 

「いやG扱いはしてないス…て、垣根さん!?」

 

心理定規が垣根のお陰で猟虎と付き合えたんだろと言うと誉望は頷くが、毎回デートやらで当然の如く現れるのが苦手だと呟くと垣根が横に現れて文句を言い誉望達が驚く

 

「さ、さっきまではいなかったのに…いつの間にここにいたんですか…?」

 

「カップリングある所に俺あり、カップリングの気配を察知してここまでやってきた」

 

「もはや超能力の域ですね…変人恐るべし」

 

佐天がいつも何ここにと尋ねると垣根はカップリングの気配がしてここまで導かれたと笑顔で答える、もはやその察知力は超能力なのではと初春がこぼす

 

「久しぶりね帝督、さっきいい誉弓の写真が撮れたわよ」

 

「お!心理定規ちゃんお久、え〜どれどれ?あ〜上目遣い猟虎ちゃんに顔真っ赤ゴーグル君か…最高だな、後で現像してくれる?」

 

「了解したわ、中々いい写真でしょ」

 

「おい!その写真消せって言ってるだろこのカプ厨共!」

 

心理定規が垣根に歩み寄ると先程撮った写真を垣根に見せ垣根が口笛を吹く、後で現像して渡してくれと軽く言うと心理定規が笑って頷く、誉望は話聞けよこのカプ厨がぁ!と叫ぶ

 

「だが…まだまだ青いな心理定規ちゃん、俺の至高の誉弓の一枚を見せてやるよ」

 

「…何ですて?」

 

「いやもうやめてくれません?恥ずかしいんで…」

 

だがまだまだだと垣根が首を横に振り自分の携帯を取り出しある写真を見せようとする、誉望がやめてと呟くが二人は無視する、そして垣根が画面に写したのは……何処か夜景が見える場所で口づけを交わす顔を真っ赤にした猟虎と誉望

 

「ちょっと待ってぇぇぇ!!その写真どうやって撮ったんスか!?」

 

「あ?多才能力で姿を透明化させる能力使って姿を隠して未元物質で空飛んで空から撮ったに決まってるだろ」

 

「能力の無駄遣い!」

 

誉望がどうやってその写真を撮ったのかと叫ぶと垣根は未元物質や多才能力を駆使してバレない様に写真を撮った(盗撮)のだと告げ、佐天が能力を無駄な事に使ってるなこの第一位と内心で呆れる

 

「…………///」

 

「猟虎!?恥ずかしさの余り頭から湯気を出して涙目になってるんですけど!?どうしてくれるんっスか!?」

 

「「笑えばいいと思うよ」」

 

「笑えるかぁぁぁぁ!!」

 

猟虎はあの時の写真を撮られていたのかと恥ずかしさの余り顔を湯気が出る程真っ赤にし、誉望が猟虎の肩を揺さぶりながらどうしてくれんだと叫ぶと二人は親指を立てて笑えと笑顔で言い誉望は笑える訳ねえだろとツッコミを入れる

 

「…彼氏さん大変だなぁ…」

 

「…ですね…あれ?」

 

佐天が苦笑して大変だな〜と誉望に労いの言葉をかけ初春がそれに同意する…が、ふと初春が何かに気づく、初春が見たのは何人かの男達が路地裏で一人の女の子を囲んでいる光景だった

 

「ねえねえ君、俺達と一緒に楽しい事しない?」

 

「いえ…あの…」

 

「うわぁ…絵に描いたような不良と絡まれる少女…て、あの人重福さんじゃないですか?」

 

「え?あ、本当だ…」

 

不良三人に絡まれていたのはパッツン気味の前髪を左右非対称に長めに伸ばしたお団子頭の少女 重福省帆(じゅうふく みほ)だった、以前重福の元彼氏が別れる際に「眉毛が変だから」と最低な一言を言った際、偶然その場にいた佐天が金属バットでその彼氏をぶん殴った事で仲良くなった少女だ

 

「あ?また不良か?…しゃあねえな、俺が「大丈夫だよ垣根お兄ちゃん」…那由多ちゃん?」

 

不良達に気づいた垣根はまた自分が助けるかと一歩踏み出そうとした所でそれを止める声が聞こえ振り返る、そこに立っていたのは金髪ツインテールの赤いランドセルを背負った小学生の少女…右腕には風紀委員の腕章が嵌められている

 

「お兄ちゃんが出なくても大丈夫、ここから先は風紀委員の仕事だから」

 

彼女の名前は木原 那由他(きはら なゆた)、先進教育局 特殊学校法人RFO所属の風紀委員であり、垣根と後もう一人の科学者と共に多才能力の開発を成功させた一人でもある、彼女は自分が解決すると垣根に言うとランドセルから45センチ程度の棒の片方の端近くに、握りになるよう垂直に短い棒が付けられた武器…トンファーを取り出し両手に装備し不良達へと向かう

 

「え!?あんな小さな子が風紀委員!?と、止めないと…」

 

「いや安心しろ佐天さん、那由多ちゃんは強いから」

 

「(何で年上なのにさん付けなんでしょう?)いやでも小学生ですよ?危険じゃあ」

 

佐天と初春があの子が危ないと助けに行こうとするが垣根が片腕で制する、那由多は不良達に近づくと腕章を見せつける

 

「風紀委員です、すぐさまその人から離れなさい、抵抗すれば痛み目を見る事になりますがよろしいですか?」

 

「あ?なんだこのガキは…俺達は忙しいんだガキはガキらしくそこら辺で遊んでろ!」

 

「…はぁ、忠告はしました…後悔しても知りませんよ?」

 

「何だとこのガキ!おいお前らこいつやっちまおうぜ!」

 

不良達は小学生が風紀委員だとと鼻で笑い相手にしない、那由他は溜息を吐きトンファーを構え後悔しても知らないと吐き捨てる、その態度に不良達かカチンときてしまい掌から炎やら雷、風を生み出す…全員能力者らしい

 

「…全員強度(レベル)異能力者(レベル2)強能力者(レベル3)程度か…でも脳幹お爺ちゃんの改造と唯一お姉ちゃんの体術、そして垣根お兄ちゃんから教わったトンファー流…これがあれば負けない」

 

「は!トンファーだぁ?そんな玩具でどうにかなると「トンファーキック!」ひでぶ!?」

 

「「け、蹴ったぁ!?」」

 

那由他が相手の能力の強度を一瞬で理解する、だが脳幹に身体を改造され唯一から体術を習い垣根からトンファーの扱い方を覚えさせられた自分なら勝てると断言し、不良の一人が笑おうとするが那由他のトンファーキック(飛び蹴り)を喰らい吹き飛ばされる、佐天達はトンファーを使っていないと叫んだ

 

「トンファービーム!トンファーフラッシュ!トンファー百烈脚!」

 

「「「トンファー使って…ギィヤアアァァ!!?」」」

 

「目からビームが出た!?それに目が光った!?足技凄い!?でもトンファー使ってない!?」

 

「これがトンファー流、地獄に落ちても忘れるな」

 

那由他は右目からビームを出し、右目から閃光が光ったり百烈脚を繰り出して不良を攻撃する、重福は那由他の行動一つ一つにツッコミを入れる、やはりトンファーは使わない

 

「いやお前トンファー使えよ!」

 

「?何でトンファー流がトンファーを使うの?」

 

「初春、私もう訳がわからないよ」

 

「奇遇ですね佐天さん、私もわけわかめです」

 

不良が常識的なツッコミを入れるも那由他は何故トンファーを使うのかと首を傾げる、不良はもうヤケクソだと炎や電撃、風を飛ばすが那由他はそれをトンファー回避(ただ避けるだけ)を行い更に不良の一人をトンファー置きっ放しブレーンバスターで倒す

 

「な、何なんだこいつ…だが今ならトンファーがねえぞ!まあなくても使わねえけどな!」

 

「そうだな!武器がない今がチャンスだ!武器は使ってねえけど!」

 

「!危ない!」

 

武器(使ってない)がなくなった今がチャンスだと不良達が那由他に迫る、重福が危ないと叫ぶ…すると那由他は右腕を突き出す

 

「トンファーロケットパンチ!」

 

「ひでぶ!?」

 

「ま、マジ○ガーZ!?もはやトンファーどころか人間ができる技じゃねえ!?」

 

ロケットパンチに吹き飛ばされる不良、那由他はとある事故がきっかけで全身の七割を義体…つまりサイボーグにしているサイボーグ少女なのだ。つまり右目からビームやらフラッシュを行えたのもこのお陰、因みにロケットパンチは脳幹の趣味である(本人曰くロケットパンチは男のロマン)。しかも右腕の義手はロケットパンチが放てるだけでなくその先にも秘密武器を搭載されている…それこそが…

 

「じゃあトドメ、このAIM拡散力場の力をエネルギーに変えて発射するこの光線銃でフィニッシュ」

 

「それもうコブラのサ○コガン…」

 

右腕に内蔵されていた光線銃にエネルギーが溜まっていく、因みにこれも脳幹の趣味…もとい兵器である、不良は那由他の背後に葉巻を咥えたゴールデンリトリバーが立っている幻覚が見える

 

『サイ○ガンは……男のロマンだよ』

 

光線銃からエネルギーが放たれ不良が立つ地面に被弾。ドーン、と音を立てて爆発が起こり不良がクルクルと回転しながら吹き飛ばされた、不良を殲滅した那由他は右腕とトンファーを拾って倒れている不良達に手錠をかけていく、重福は何が何だか訳がわからないと言った顔をしている

 

「…風紀委員て凄いね(棒)」

 

「違いますよ!?風紀委員はあんな事しませんよ!?」

 

「うわ幼女つよい」

 

佐天が風紀委員て凄いな〜と棒読みでいい初春が風紀委員はあんな事しないと叫ぶ、黒子でもここまではしないだろう、心理定規は最近の幼女はたくましいなと写真を撮りながら呟く

 

「……行くっスよ猟虎…付き合ってられないス」

 

「……はい」

 

誉望はもうこれ以上ここにいると被害がこっちにも及びそうだからと猟虎の手を掴んでこの場から立ち去る、誉望に手を引かれていった猟虎は嬉しそうに赤面していた

 

「いやぁトンファー流を面白半分に教えたら…唯一先生の元祖木原神拳+脳幹ちゃんの男のロマン改造が組み合わさってとんだ強者になっちゃたな〜」

 

因みに那由他がトンファー流を覚えたり唯一から体術を教わったりAIM拡散力場制御義体に脳幹の改造を加えさせた原因は垣根である、彼女の暴走ぷりは大抵は垣根の所為である

 

「さてと、仕事が早く終わったし木山先生と枝先ちゃん達に会いに行こうかな」

 

那由他は不良達を連行し終わったら友達とその先生に会いに行くかと笑う、彼女は心理定規とカップリングについて話し合っている垣根を見て笑う、彼があの時枝先(友達)達を幻生の実験から救ってくれた事を感謝しながら不良達を両手で担ぐ

 

「…今の私があるのも全部垣根お兄ちゃんのお陰だよ。ありがとうね」

 

彼女はそう言って笑って不良を担いでその場から去って行った……因みに今回心理定規がコミケに出す同人誌は誉弓と垣根からの要望の上琴食で決まった、後日垣根は上条達に説教を受けることになるのは別の話である

 

 

 

 

 

 

 

 

「……やっぱり誰も話しかけてこない…友達が欲しい」

 

その頃の風斬は公園のブランコを一人ゆらしながら黄昏ていた、やはり今日も誰にも話しかけられる事はなかった…彼女に友達が出来る日は遠い

 

 

 




那由多ちゃんは結構好きなキャラですね。ま、縦ロールちゃんが一番ですが

ここでキャラ紹介の時間です

心理定規…朱に交われば赤くなるのと同じでていとくんに影響されてカプ厨に、自分で書いた同人誌をコミケで売っている(なお被害者は誉望君と猟虎ちゃん、上条さん達)

誉望 万化…リア充。ていとくんの友達、原作と違って下克上を挑んでない、常識人

弓箭 猟虎…怖がり、子供の時から性格が一切変化してない、妹(入鹿ちゃん)か誉望君の背中で常に怯えてる人。自分をぼっちだと思い込んでる残念な人

木原 那由多…トンファー流、おふざけでていとくんが教えたトンファー流を使いこなしてる逸材、なおメインは唯一直伝の木原神拳(おいトンファー使えよ)

風斬 氷華…ていとくんの義妹、猟虎ちゃんの上をいくぼっち、上条さん達とは知り合ってない(ていとくんが上条さんに触れたら死ぬと考えている為合わせてもらえない、ていとくんはシスコン)

フロイライン=クロイトゥーネ…ペット枠、よくあるとあるの幼女枠、05を抱き枕がわりにする、妹みたいな扱いだが実際はていとくんより年上

…以上です、猟虎ちゃんは内部進化がていとくんに破壊されたので入鹿ちゃんと離れ離れにならなかった様ですが未だビビリは治らず…原作ではゴーグル君をパシリ呼ばわりしてた?そんなの知らないね、レベルで誉望君に依存してる少女…もはや誰だお前レベル、まあ那由多ちゃんもですが…

次回は…セロリ登場


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浜面+ドラゴンライダー=浜面イダー

ドラゴンライダーて仮面ライダー龍騎ぽいよね(唐突)、いやね、アクセラさんも出てくるけど…殆どむぎのんメイン。ツンデレむぎのん可愛いよ、でも縦ロールちゃんが一番。


「…あれぇ〜?今日のシャケ弁はいつもより不味いな…」

 

「むむむ…今回はC級映画の超宝庫ですね」

 

「……ふぁぁ…暇だ」

 

「やっぱり鯖缶が一番て訳よ!」

 

「……北北西から交信が…」

 

第三学区にて五人の少女達が歩いていた、一人は歩きながらシャケ弁を食べているお嬢様の雰囲気がふわふわとした茶髪の女性 麦野 沈利(むぎの しずり)、もう一人は映画のパンフレットをキラキラした目で見るふわふわしたニットのワンピースの少女 絹旗 最愛(きぬはた さいあい)、退屈そうに欠伸をしているイルカのビニール人形を持った黒い革と錨で出来たパンク系の衣装を来た少女 黒夜 海鳥(くろよ うみどり)、鮭缶を食べる金髪の可愛らしい外見の少女 フレンダ=セイヴェルン、最後はピンクのジャージを着た半分寝ぼけ眼な少女 滝壺 理后(たきつぼ りこう)

 

「しっかし暇だな、御坂と食蜂も彼氏に引っ付いてばっかで全然遊びに来ねえし…今度茶々でも入れに行こうかにゃーん?」

 

「それやったら超嫌われますよ」

 

「…しゃあねえか、今度垣根達誘ってカラオケ行くので我慢するか」

 

「うんそれがいいと思うよ、私はみさか達に構ってもらいたいむぎのを応援する」

 

麦野が美琴と食蜂が全然遊びに誘っても来ない事を不満げに漏らし、上条といる所を揶揄いに行こうかと考えるが絹旗が嫌われるというとじゃあ今度皆でカラオケに行く事で我慢するかとこぼす

 

「ん?おーい!麦野〜!」

 

「…あ?この声…浜面?」

 

後ろから誰かの声が聞こえ麦野が振り返る、麦野達から少し離れた所にあるゴミ捨て場に誰か立っていた、ぼさぼさの茶髪にジャージとジーパンを着た少年…よく見ると背中に老婆を背負い、右手には大量のゴミ袋が掲げられ、傍らには左手で掴んである風船を手渡されて喜ぶ少女や半泣きの少年がいる

 

「……浜ちゃん何やってんだ?」

 

「あ?あぁ、日課のゴミ拾いをしてたら迷子の男の子がいてな…交番に連れて行こうとしたら、腰を痛めた婆さんがいたから背負って、風船が手から離れたから取ってあげたんだよ…で、お前らを見かけたから声をかけたんだ」

 

「凄い状況て訳よ…」

 

海鳥が引いたような目で浜面を見る、浜面は日課のゴミ拾いの途中で迷子を見つけ交番に連れて行く途中に腰を痛めた老婆を見つけ背中に背負い、更には手から離れた風船をジャンプして拾って少女に手渡している最中に麦野達を見かけたから声をかけたのだと笑って言う。それを聞いたフレンダは相変わらず凄い状況と頷く

 

「あ!おい坊主あそこで手を振ってるの…あ!やっぱりお前のお母ちゃんか!行ってきな!あ!嬢ちゃんもう風船手放すなよ!…あ、すまねえな婆さん、もうちょいで目的地に着くからな」

 

「悪いですね…これなら娘との待ち合わせに間に合いそうです」

 

(…ねぇきぬはた、あの人何処かで見たことがあるような気がする)

 

(…そりゃそうですよ…あのお婆さん…親船最中(おやふねもなか)です、ほら統括理事会の中で一番の超良心とされる…)

 

(あ〜あのババアか、他の統括理事会の一員からは毛嫌いされて不当な程に権力が弱いて聞く…浜ちゃんはそれ知ってるのか?)

 

(多分知らないでしょうね、超浜面ですから、超が付く程のお人好しなんですよ浜面わ)

 

浜面が親を見つけた子供に手を振りながら風船を渡した少女にもう手放すなと声をかけ、背中にいる老婆に声をかける、実はこの老婆の正体は統括理事会の一員でもあるのだが彼は知らない

 

「…浜面は人助けが本当に好きだな…第二位の野郎よりも人助けしてるぞ」

 

「いやいや!大将の方が凄いて!何せ超能力者の第二位だぜ!俺みたいな無能力者のスキルアウトなんかと比べんなよ!」

 

「……いや、超能力者の中で能力を使わない格闘戦なら一番強い麦野と互角に戦える浜面も結局凄いて訳よ…」

 

「麦野の筋力は超イかれてますからね、あんなのもうゴリラと言うかゴジラです、能力的にも…」

 

「絹旗後で覚えとけ、絹/旗にしてやる」

 

呆れた様に麦野が溜息を吐くと浜面が大したことはないと笑う、がフレンダ達からして見れば超能力者の能力を使わない純粋な格闘戦ではNo. 1の麦野と肉弾戦で戦える浜面は逸脱人だと突っ込む

 

「…あぁもう良いですよ、素甘…娘が来ましたので…ありがとうございます」

 

「いや良いって、気をつけろよ!」

 

老婆…最中が降りると彼女はお礼を言いながら娘の元へと歩いて行く…浜面はそれを手を振りながら見送る

 

「………」

 

「麦野チャンスて訳よ、今なら浜面はフリー、誘うなら結局今って訳よ」

 

「は、はぁ!?さ、誘うて何にだ!」

 

「…麦野、いい加減に素直になりましょう、浜面をデートにでも超誘って良い加減くっついて下さい」

 

「べ、別に私はあんなチンピラ好きじゃねえよ!」

 

麦野が黙って浜面を見ているとフレンダが今がチャンスだと腰に肘を当てて笑い、絹旗がデートに誘って恋仲になっちゃえと言う言葉に麦野はテンプレよろしく顔を赤くしてプイと顔を背ける

 

「…むぎの、はまずらは意外とモテるて知ってた?」

 

「……へ、へぇ〜あんな男に惚れるなんてどんな物好きなんだろうね〜、確かに優しいとこあってよく見るとカッコいいけど…まあ私は好きじゃねえけどな」

 

(お前の事だよ、てか褒めてるじゃねえか)

 

滝壺が意外と浜面はモテるのだと伝えると麦野は浜面の方をチラチラ見ながらゴニョゴニョと呟く

 

「…むぎのん、いい加減に楽になれよ…浜ちゃんに告ろうぜ」

 

「は、はぁ!?何で私が!?第一別に好きでもなんでもねえし!」

 

「…ツンデレ乙て訳よ、てかツンデレは本来超電磁砲の筈なのに…」

 

「だぁれがツンデレだ!?フレ/ンダにすんぞ!」

 

海鳥が告白しろよと言うと麦野が別に浜面の事は好きじゃないと大声で叫ぶ、それを見てフレンダがやれやれと首を振り麦野が原子崩し(メルトダウナー)を宙に携える、フレンダがはわわと滝壺の背後に隠れ難を逃れる

 

「ち…そうだ浜面今暇か?」

 

「?…ああ、このゴミ袋をゴミ捨て場に捨てに行く事以外何もしねえからな」

 

「(よっしゃ!)…じゃあ私達と付き合えよ、丁度暇してたんだ…あ、このシャケ弁のゴミ入れさせてくれかにゃーん」

 

「私の鮭缶も!」

 

「いいぞ、あ、シャケ弁はこっちのプラスチックゴミの袋、鮭缶は燃えないゴミの袋に入れてくれ」

 

麦野が今暇かと浜面に尋ねると浜面は頷く、麦野がなら私達と付き合えやと内心で照れを隠しながら言うと浜面は頷く、隠してはいるが口元をニヤつかせる麦野に絹旗達ははぁと溜息を吐く

 

「……麦野は超ツンデレですね、第五位は炭酸の抜けたコーラみたいにツンがなくなってデレデレですけど」

 

「それは単なる甘いジュースだろ…後むぎのんはヘタレな」

 

「テメェら……ぶ・ち・こ・ろ・す・ぞ?」

 

「落ち着いて、私はそんなツンデレでヘタレなむぎのを応援してる」

 

絹旗と海鳥が笑いながら麦野について話すと、麦野が青筋を立てながら原子崩しを放とうとし二人は浜面の背後に隠れる、麦野は舌打ちして原子崩しを消す

 

「…取り敢えずそのゴミ片付けろや、行くもんも行けねえだろ」

 

「そうだな…じゃあ近場のゴミ捨て場寄るから待っててくれ」

 

「いいよ、私らもついて行くから…おいそのゴミ袋一個寄越せ持ってやる」

 

「お、悪いなサンキュー」

 

「…別にお前の為じゃねえぞ、さっさと終わらせて遊びに行きてえからだよ」

 

浜面にゴミ袋を捨ててこいと言いながら麦野はゴミ袋を一つ片手に持つ、浜面が感謝すると顔を赤くして浜面から目を背ける麦野、これでも気づかないのかとフレンダ達が浜面に呆れる

 

(何で気づかないのよ…麦野が折角頑張ってデレたのに…こうなったら色仕掛けを…)

 

(こうなったら私超オススメのC級映画に二人を連れて行って…)

 

(チ…仕方ねえな…水族館のチケットやるよ)

 

(大丈夫、私はむぎのを応援してる)

 

(煩えぞテメェら!何回も言ってるが私はこいつに興味なんかねえって!)

 

((((はいはい、ツンデレ乙))))

 

(上等だ!テメェらの××××に原子崩し入れてやる!)

 

四人が浜面とくっつける様にアドバイスを送るが麦野は浜面の事は興味がないと顔を赤くして反論する、がツンデレ乙と全員に返され規制音が入る言葉を言いながら原子崩しを構える、ふぅと息を吐いて麦野が浜面に話しかけようとすると…浜面がいなくなっており麦野が少し後ろに首を向けると浜面が外国人らしき男と話していた

 

「この写真の女の子を見なかったか?」

 

「…シスターか?悪いが見てねえな、アンチスキルに捜索願を出したらどうだ?」

 

「……いや、知らないならいい…」

 

(…超何なんですかあのバーコードを顔に彫ってる神父は…てか神父何ですか?)

 

2メートルはある長身に赤い髪、まだ幼さが残っている顔立ちとバーコードの様な刺青を顔に彫った神父服を着たのが特徴的な外国人と浜面が会話をしている、男は写真を浜面に見せている為迷子探しだろうか、と麦野が考えていると男は身を翻してその場から立ち去る

 

「…外国人が学園都市に入るのって珍しいな」

 

「いやそれを言ったら私とフレメアも外国人て訳よ」

 

「あ、そういえばそうでしたね、見慣れてたので超忘れてました」

 

浜面が外国人は珍しいとこぼすとフレンダが私も外国人だと突っ込む、絹旗達もそういえばそうだったと思います、いつも一緒にいるせいで外国人だと言う事を忘れていた…全くとフレンダが起こる中浜面と麦野はゴミ捨て場にゴミ袋を捨てる

 

「ふぅ…朝からゴミ拾いしてたから肩がいてえ…あ、付き合ってもらったからジュース奢るよ」

 

「すげぇな浜ちゃん、朝からボランティアしてんのに私らにジュース奢るとか…普通奢られる側だろ」

 

「いいって俺が奢るよ…あ、お前らジュース何がいい?」

 

肩を軽く揉みながら浜面が自動販売機を見て何か奢ると呟く、海鳥が朝から頑張ってんのによく奢れるなとツッコミを入れる

 

「…じゃあシャケの飲み物で」

 

「私は鯖!」

 

「いやそんなの超ある訳ないでしょ」

 

「ん〜、じゃあこの鯖フルーツヨーグルトとシャケ味噌汁でいいか?滝壺はヤシの実サイダー、絹旗と海鳥は?」

 

「いやあンのかよォ!?あ、私は黒糖サイダーで」

 

「私は超抹茶ミルクで!」

 

麦野とフレンダが無茶振りすると絹旗がそんな飲み物はないと呆れるが浜面が自動販売機からシャケ味噌汁と鯖フルーツヨーグルトを購入し海鳥が突っ込む、その後も浜面は残り三人と自分の分を買う

 

「いやぁお前ら本当仲良いな…」

 

「…何慣れた手つきで自動販売機の横のゴミ箱から漏れた空き缶拾い集めてゴミ袋を入れてんだよ…まあ正しい事だけど…本当にスキルアウトらしくねえよなお前て」

 

「よく言われるよ、でも近所の皆さんからは感謝されてるぞ」

 

浜面がゴミ箱から溢れ出ていたゴミをゴミ袋に入れ始め麦野がナチュラルにゴミ集めしてんじゃねえよと突っ込む、因みに彼が所属しているスキルアウトは皆こんな感じである

 

「垣根の師匠に人助けしたら皆に認められるて教えられてからずっとこうしてるけど…最初は渋々だったけど最近はこうしてないと落ち着かなくてさ」

 

「もう一種の病気なんじゃねぇの?」

 

「そういえば出会う度にゴミ拾いや人助けしてる気が超しますね…」

 

垣根に人助けすれば学園都市の人達から人望が得られると助言され、浜面や仲間達はボランティアをしているが最近はこれをやっていないと落ち着かないと笑う、もう一種の病気か麻薬の一種だなと海鳥と絹旗は思った

 

「…おい浜面、これ」

 

「ん?…スープカレー?くれるのか?」

 

「私らに奢っていて自分だけ飲まないのは悪いからな…べ、別にお前の為なんかじゃないからな!」

 

((((教科書みたいなツンデレ))))

 

麦野が缶ジュースを浜面に投げ浜面がそれを受け取る、そしてその後見せたツンデレぷりに全員がテンプレだなと頷く…そんな会話を続けていると何処からかコロコロとボールが転がってくる、浜面がそれに気づきボールを拾う

 

「わ〜!それはミサカのボール!て、ミサカはミサカは不良ぽいお兄さんに叫びながら駆け寄ってみたり!」

 

「これお嬢ちゃんのボール?ほら気をつけろよ」

 

「わぁ!すんなり返してくれた!てミサカはミサカは不良ぽいお兄さんに感謝してみたり!なんか難癖つけられると身構えていた分優しく接しられてミサカはミサカは安堵してみる!」

 

栗色の髪にアホ毛が特徴的な幼女が慌てて走って来るのを見た浜面が少女に向けてボールを軽く投げる、少女はそれを拾って浜面に笑顔を向けるがサラッと毒を吐いた為浜面が苦笑いしてしまう

 

「……やっぱり俺て不良ぽいかなぁ」

 

「…まあ。浜面は結局人が良くてもよくいるモブのチンピラにしか見えないて訳よ」

 

「おいフレンダ!いやそんな事ないと思うぞ!浜面は……パシリだよ!それも唯のパシリじゃねえ!超能力者と大能力者のパシリだ!」

 

「…むぎの、それはフォローになってないよ」

 

「あれ?麦野のお姉ちゃん?てミサカはミサカは知人を見て喜んでみたり!」

 

落ち込む浜面を励ます為に麦野はフォローするが全然フォローになっていないと滝壺が突っ込む。するとアホ毛の少女は麦野を見てアホ毛をピクピクさせながら麦野に笑いかける

 

「…打ち止め(ラストオーダー)か、モヤシはどうした?」

 

「ん〜はぐれちゃったのかも?てミサカはミサカは首を傾げてみたり、でも麦野のお姉ちゃんと出会うなんて凄い偶然だね!てミサカはミサカはジャンプしてみたり」

 

「…むぎの、この子と知り合いなの?よく見たらみさかに似てるけど…」

 

「確かに超そっくりですね…なんか超電磁砲を幼くして見たような…従姉妹か妹か何かでしょうか?」

 

麦野が少女…打ち止めの名前を言うと打ち止めは第三位(モヤシ)とはぐれたと笑う、滝壺と絹旗が美琴に似てるなと言い出し始める

 

「(やべ…こいつら妹達のこと知らねえんだった…上手くはぐらかせねえと)…こいつは御坂の妹だよ、今年でいくつだっけ?」

 

「えっとね〜まだ0さ…「おい馬鹿!」むぐぅ!?」

 

「え?0歳?」

 

「あ〜こいつは今年で7歳なんだよな!なあ打ち止め!(おいクローンてバラす気か!?)」

 

「(あ!そうだった!てミサカはミサカは自分の馬鹿さに気づいてみたり!)あ…うん!7歳だよ!てミサカはミサカは自分の年齢を詐称…じゃなくて教えてみたり!」

 

打ち止めがまだ製造されて一年も経ってないと言い出そうとして麦野が口に手を当て押し黙らせる、打ち止めがバラす所だったと気づきセーフと息を吐く、浜面達は少し疑問に思いながらも納得し麦野がふぅ〜と息を吐き出す

 

「……おいこンな所にいたのか打ち止め」

 

「あ!あなた!てミサカはミサカは一方通行に抱きついてみたり!」

 

「おィ!人前で抱きつくなってンだろ!…ァ?むぎのんじゃねえか」

 

「よおモヤシ、打ち止めの子守りか?」

 

カツカツと足音が聞こえ白髪の赤目の少年が打ち止めに声をかける、打ち止めは笑顔で彼に飛びつき彼が鬱陶しそうに顔をしかめ…麦野を見て真顔に戻る

 

「モヤシじゃねェ…何だ彼氏連れて友達とデートてか?」

 

「か、かかか彼氏じゃねえよ!デタラメ言ってんじゃねえぞロリコンが!」

 

「…え、第三位てロリコンだったて訳?」

 

「ロリコンじゃねええェェェ!世話してるのがガキてだけだ!俺は断じてロリコンじゃねえ!」

 

彼…超能力者 第三位 一方通行(アクセラレータ)が誰がモヤシだと舌打ちし浜面と麦野(とオマケにフレンダ達)がいるのを見てデートですかと揶揄う、麦野は顔を赤くしてそれを否定し一方通行をロリコンと叫び誰がロリコンだと一方通行が叫び返す

 

「は!誰がどう見てもロリコンじゃねえか!幼女連れ回してよ…あ〜何だっけお前の名言…「中学生ってのはなァ・・・ババァなンだよ」…だったかにゃーん?筋金入りのセロリじゃねえかお前」

 

「だァれがセロリだ!てかそンな言葉言った事すらねェよ!そんなセリフ言わねえよ!」

 

「「「……うわ…」」」

 

「おいそこの女子三人!何俺からジリジリと距離とってンだ!?」

 

「あ…大丈夫だよ一方通行…ミサカは貴方がどんな性癖でも受け入れるから…てミサカはミサカは頬を赤くして恥ずかしそうにしながら上目遣いで伝えてみたり」

 

「おい!?何信じてンですか!?俺は断じてロリコンでもセロリでもねェ!てかなンで嬉しそうにしてンだ!?」

 

麦野が一方通行が前にこんなセリフを言ってたな〜と嘘の情報を口に出しフレンダ、絹旗、海鳥が軽蔑の目をして一方通行から離れる、打ち止めは頬を赤くして一方通行を見つめ誤解だと一方通行が叫ぶ

 

「おいおいあんまり旦那を虐めるなよ、大丈夫か旦那?」

 

「…この中で常識人なのはオマエだけだよ…」

 

浜面が一方通行の肩に手を当てて慰める、一方通行はこの中で唯一の救いだと溜息を吐く、そんな一方通行に誰かが肩を叩き鬱陶しそうに後ろを向こうとし…ふと考える、「あれ?俺能力で反射してるから肩とか叩かれる訳ねえだろ」と、そして振り返った先にいたのは

 

「おいクソガキ、早くサッカーの続きしろよ、こちとら仕事の合間に遊んでんだぞ」

 

顔の左半分に入れ墨が彫ってある研究服を着た男が一方通行に話しかけていた、それを見たフレンダ達が叫ぶ

 

「の、野原さん!?」

 

「誰が野原だ!木原!木原 数多(きはら あまた)!」

 

「全く…フレンダは超失礼ですね…野原さんに超失礼ですよ」

 

「だ か ら!木原ってんだろがクソガキ!」

 

「たく…名前も覚えられねえのか絹旗ちゃんは…一方通行の能力開発者にして里親として有名な科学者の野原 数多だろうが…」

 

「おぃぃぃぃ!下の名前しか合ってねえぞ!いい加減にしねえと怒るぞこのクソガキ共!」

 

「……もしかして下の名前はひろし?でアクセラレータの本名はしんのす…」

 

「違えて言ってんだろうが!俺は野原じゃなくて木原!ひろしじゃなくて数多!こいつの名前は……知らん!少なくとも嵐を呼ぶ五歳児じゃねえ!そして俺はその五歳児の父親じゃないし埼玉にいる日本最強主婦を妻にもしてねえよ!でもシロは飼いたいとは思ってるがな!」

 

麦野と浜面以外が足が臭いおっさんの名前を呟き数多が全力で否定する、ツッコミのしすぎで肩で息をする数多に浜面がコーヒーを渡す

 

「あ、これ飲みます木原さん」

 

「だから野原じゃ…あ、木原て言ってくれた?兄ちゃんサンキューな」

 

「オイおっさん、いい年なんだからガキと遊んでんじゃねえよ」

 

「煩えぞ第四位…0次元の極点の空間理論を教えたのは誰だ?…そうこの俺だ、そして一方通行の能力を開発したのも俺だ」

 

「それしか言う事ねェのか木原くンよォ…」

 

名前をちゃんと呼んだ浜面に感謝する数多、麦野がいい年してガキと一緒に遊ぶなよと突っ込む麦野に0次元の極点は誰がきっかけで覚えられのかと自慢げに語る数多、因みに彼の最大の自慢は一方通行の能力を開発した事である

 

「いやぁ木原さんいつも息子自慢しますね、親馬鹿てこう言うのを言うんだろうな〜なあアー君」

 

「いや、何ナチュラルに自然と話しかけてくるンだよていとくン」

 

「うお!?いつからいた垣根!?」

 

まるで最初からいたかの様にして話しかけてくる垣根に一方通行がジト目を向け麦野がビクッとなる、フレンダ達もいつの間に!と叫ぶ

 

「お〜第一位じゃねえか、一緒にサッカーするか?」

 

「あ、無理っす…何せ俺には通行止めを携帯で収めなきないけないんで…アー君のデレ顔撮るのが目的なので遠慮しときます」

 

「おいこらクソメルヘン、誰のデレ顔を撮るだってェ?」

 

「え〜?だってお前打ち止めちゃんといる時は一瞬だけ笑顔になるじゃん、ほらこの写真とか」

 

「うわ、抱きつかれて爽やかに笑ってる…気持ち悪いて訳よ」

 

「てィィィとくゥゥゥゥゥゥゥゥン!?何盗撮した写真見せてるンですかァ?!」

 

数多が一緒に遊ぶかと誘うと垣根は爽やかスマイルで一方通行と打ち止めのカップリング写真撮るので無理、と笑うと一方通行がキレ始めフレンダ達に写真を見せると完全にブチキレた

 

「まあまあ怒るなよ、脳に糖分足りねえんじゃねえの?ほらホワイトロリータでも食えよアー君」

 

「おいそれはどう言う意味だァ?お菓子の名前を言ってンのか俺の事を言ってンのか?…どっちらにしろ愉快なオブジェ決定なァ」

 

「……超信じられますか海鳥、あのロリコンの思考パターンの一部が私達に植え付けられてるんですよ」

 

「……じゃあ私らもあんなロリコンになるの?将来が不安になってきたぞおい」

 

ホワイトロリータを取り出す垣根に等々ブチ切れかける一方通行に笑う垣根、そんな二人を尻目に一方通行の思考パターンを植え付けられた二人が自分達の将来は一方通報(アクセロリータ)かと涙ぐむ

 

「……麦野、大丈夫なのか?旦那ブチギレ直前だぞ?」

 

「あ〜いつもの事だ気にすんな…気にしたら負けだ」

 

唯一の常識人である浜面が止めようとするが麦野は気にも留めない、麦野は飲み終わった缶ジュースを0次元の極点を使って缶ジュースをゴミ箱の中に送り込む、ついでとばかりに飲み終わった浜面達の缶ジュースもゴミ箱に飛ばす

 

「お!?凄えなその技…空間転移みたいもんか…俺にそんな力があれば学園都市中のゴミを一瞬で集まれるのにな」

 

「いやそんな小さい事にこの能力使うなよ、これ理論上なら宇宙にも転移出来んだぞ」

 

浜面がそれがあればゴミ拾いが楽なのにと羨ましそうな目で見てきたので麦野がそんな事に使うなと呆れる、そんな浜面を横目に麦野が何か決意した目をすると浜面に声をかける

 

「……なあ浜面…さっきも聞いたけど本当にこの後用事がないんだよな?」

 

「…?そうだけど?」

 

麦野が浜面に本当にこの後予定はないのかと再確認する、浜面がそれに頷くと麦野は赤くしつつも意を決して言葉を出す

 

「じゃあさ……この後二人でカラオケに行かねえか?」

 

「え?」

 

(麦野がデレた!)

 

麦野が顔を赤くしながら浜面をカラオケに誘う、フレンダがよっしゃ!と叫び垣根が携帯電話を構え浜麦の写真を撮ろうと身構える…が丁度その時浜面の携帯がピロロロロロロとなる、麦野が邪魔が入ったと顔をしかめる中浜面が携帯を耳に当てる

 

「半蔵か?…何だって!?フレメアが無能力者狩りの連中に捕まっただと!?駒場はフレメアを守ろうとして大怪我を!?」

 

「フレメア!?」

 

「今すぐ来てくれだと!?分かったすぐ行く!……たまんねえなオイ、フレメアを攫いやがって…殴り倒さなきゃ気が済まねえよ」

 

スキルアウトの仲間がフレンダの妹が無能力者狩りの連中に誘拐され自分達のリーダーが重傷を負ったと聞かされ大声を出す、そして通話を切ると浜面は怒りの目で遠くを睨みつける

 

「悪ぃ麦野…俺行かなきゃ行けないんだ…カラオケはまた今度な!」

 

「え……あ…うん」

 

(おのれ無能力者狩り!フレメアと麦野をよくもぉぉぉ!!)

 

「連中は第10学区にいる…くそ!走って間に合うか!?」

 

麦野がカラオケを断られてしゅんとしフレンダが妹を攫った事と麦野の必死のデレを邪魔した無能力者狩りに怒りを向ける、浜面が走って連中がいる場所に向かおうとする…そんな浜面に垣根が声をかける

 

「待て浜ちゃん、これを持っていきな」

 

「師匠!…これは…もしかして」

 

「…ああ以前話していた駆動鎧(パワードスーツ)だ、脳幹先生達と俺が共同開発で生み出した駆動鎧…名前はHsSSV-01『ドラゴンライダー』」

 

「因みに俺もそれの開発に関わったぞ」

 

投げつけたのは某ライダーが変身するようなアイテム、垣根は科学者達が開発した最高の駆動鎧だと笑う、浜面はそれを見つめた後変身ポーズを行う

 

「変………身!」

 

「「いやこれもう仮面ライダーだ!?」」

 

『仮面ライダーは…男のロマンだよ』

 

何処ぞのヒーローみたいなライダースーツ型駆動鎧(パワードスーツ)を装着した浜面を見て絹旗と海鳥が叫ぶ、何故か浜面の背後に葉巻を加えたゴールデンレトリバーの幻影が見えた気がする。因みにライダースーツはアレイスターの魔術で質量保存の法則を無視してアイテムの中に収納されている、魔術て便利

 

「じゃあ…行ってくる!」

 

「あ……気をつけろよ」

 

「ちょっと俺ドラゴンライダーの活躍を写真に収めてくるわ、じゃあな!」

 

浜面イダーが颯爽と現れたバイクに跨り無能力者狩りの連中がいる第10学区へと疾走する、それを唖然とした顔で見送る麦野、因みに垣根はドラゴンライダーの勇姿を見届けるために翼を広げ飛んで行った

 

「……なンだありゃァ…」

 

「……私が聞きてえよ…折角デートに誘おうとしたのに…」

 

((((おのれ無能力者狩り!))))

 

一方通行がさっきの流れは何だと声を漏らし麦野が折角勇気を出して誘ったのに…としゅんとする、滝壺達は無能力者狩りの連中に恨みを向ける、なおこの後無能力者狩りの連中は乗り込んで来た浜面イダーにボコボコにされアンチスキルに連行された

 

 

 

 

 

「…もう引きこもりになろう私」

 

なおやはり友達はおろか誰にも話しかけられなかった風斬は家に引きこもる事を決めた

 

 

 




最後ら辺はほぼ勢いで書きました。浜面さんはアクセラさんは旦那、垣根は師匠、ソギーだったら兄貴、ミコっちゃんなら姉御、みさきちなら姉貴呼びです

ここでキャラ紹介

浜面仕上…ボランティアのお兄さん、もうボランティアをしてないと不安になる、もはや病気のレベル

麦野沈利…ツンデレ姉御、なかなか素直になれない人、0次元の極点は便利

その他四人…仲良しグループ、浜面と麦野をくっ付け隊

木原 数多…良いお父さん。原作よりもいい人。子離れできない人

一方通行…セロリじゃねェ!俺は幼女より巨乳が好きなンだ!原作よりも柔らかい性格

打ち止め…ヒロインじゃない(え?)、マスコットキャラクター

最後は浜面イダーで締めると思いました?残念風斬ちゃんで締めました


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これはピンセット、見たいカップリング映像が見れるんだ

今回はギャグがちゃんとできているか不安…そしてようやく☆さんとわんわんおが出せる…脳幹先生て声や生き様はダンディなのに見た目が可愛すぎる、そして漸く原作メインヒロインの登場です、キャラ崩壊は気にしないでください

なおこの作品はギャグが多めですがシリアスな所はシリアス(まあ上手くかけるは別として)な場面があります、もちろん戦闘描写もね!

なとタイトルにピンセットがあるけど少ししか出ない、でもこれからもピンセットは出てくる予定


窓のないビル、そこに垣根帝督はある人物と向き合っていた

 

「よう久しぶりだな、アレイスター」

 

「やあ久しぶりだな、垣根帝督」

 

長い銀髪に緑の目を持つ手術服の男…彼の名は学園都市統括理事長 アレイスター=クロウリー、超能力者のトップと学園都市のトップが互いに笑いあって会話をしていた

 

「予定の品は出来たか?」

 

「ああ、君を含めた五人分の演算補助デバイスはもうじき完成するよ、今冥土帰し(ヘブンキャンセラー)が仕事の合間を縫って作っている筈だ」

 

「それならいい、何しろ俺達超能力者が絶対能力者に近づくには不可欠だからな」

 

「君達の演算能力に総勢20,000人もの妹達(シスターズ)の演算機能が加わり、より能力の精度が上がる…それによって必然的に能力が強化される…考えたものだ」

 

垣根が予定の物は出来たかと尋ねるとアレイスターは時期に出来上がると返す

 

人造の樹(クロノオト)の形成にも妹達は多いほうがいい。それに虚数学区を展開するのにも多いに越した事はねえ、ま、一番の理由は妹達に誰一人死んで欲しくねえからだけどな」

 

「…分かっているとも、君はそう言う人物だとね。しかし生命の樹(セフィロト)でも邪悪の樹(クリフォト)でもない第三の樹か…」

 

「まあそれは俺も実現出来るかやってみないと分からねえけどな…で、リリス(・・・)は元気か?」

 

「ああ、元気だよ…君の右腕(・・)は相変わらずかな?」

 

垣根が妹達が20,000人もいれば虚数学区の展開や人造の樹を形成するのも楽になるとこぼす、そしてアレイスターに娘は元気かと笑顔で聞くとアレイスターも笑って返す…だが真顔に戻り垣根の右腕を見る、垣根は右腕を少し背中に隠して苦笑する

 

「相変わらずだよ、エイワス(クソ天使)の野郎の仕業か元に戻んねえんだ…」

 

「……悪かったな」

 

「よせよ、今日はこんな話をしにしたんじゃない」

 

クソ天使の仕業か元に戻らないと言うとアレイスターが頭を下げる、垣根はそんな事をして貰いに来たんじゃないと苦笑しアレイスターが頭を上げる

 

「そうだな…では今月分の映像だ」

 

「悪いな、俺はビデオ撮影とか苦手でな…やっぱり滞空回線(アンダーライン)に限るな…」

 

アレイスターが何かのチップを垣根に投げる、垣根がそれを受け取ってニヤリと笑い懐から中指と人差し指からガラス質の爪が伸びた金属製のグローブに似た機械を取り出して右腕に装着させる、因みに滞空回線とはアレイスターの直通情報網であり、学園都市中に5000万機ほど散布されている70ナノメートルのシリコン塊をばら撒きそれで学園都市中の情報を集めている

 

「これをピンセットに差し込んで…と」

 

「ピンセット…正式名称は「超微粒物体干渉吸着式マニピュレーター」、本来は磁力、光波、電子などを利用して素粒子を掴む事を目的とした機械…だがそれを改造しディスプレイで保存したアニメや動画を見る為に改造した機械か」

 

「なんで説明口調なんだ?…まあいいやこのピンセットは普段俺はピンセットに録画されているアニメやら特撮を見るのにしか使ってない…が、滞空回線を吸い込んでデータを読み取り閲覧出来る様にカスタマイズされてある…俺は月に一度アレイスターから滞空回線のチップを貰ってある映像を見ている…それが」

 

その機械…ピンセットにチップを差し込む、するとピンセットの手の甲にある携帯電話のようなディスプレイに何かの映像が映し出される…その映像が…

 

『上条さん、はいあーん☆』

 

『……あーん』

 

『ちょ二人共!こんな大勢の所であーんなんて!?』

 

『………先輩/上条さんは私達にあーんされるの嫌?』

 

『大歓迎です』

 

食蜂と美琴がパフェをスプーンですくってそれを上条の口元へ向ける、上条は周りの目を気にするが二人の上目遣いに負けてキリッとした顔で口を開ける映像が流れる

 

『………オマエがこないだ欲しそうに見てたゲコ太のぬいぐるみだ』

 

『え!?これはミサカがずっと欲しかったぬいぐるみ!?てミサカはミサカは驚愕のあまり口をあんぐりと開けてみたり!』

 

『……ふン、精々大切にするンだなァ』

 

『わぁい!一方通行大好き!てミサカはミサカは抱きついてみる!』

 

一方通行がカエル…ゲコ太のぬいぐるみを無造作に打ち止めに投げつけ、打ち止めがそれを両手で抱え満面の笑みを浮かべて一方通行に抱きつく、一方通行は軽く笑って打ち止めの頭を撫で打ち止めが「ふにゃ〜!」が漏電する映像が流れる

 

『……暑ちぃ…』

 

『良かったら飲むか?』

 

『お、気が利くな…貰うわ…』

 

『……あ、それ俺が飲み止しだけど…まあ気にしねえよな』

 

『ぶふぅぅ!?な、お前それ…か、かかか間接…!?』

 

麦野が手で顔を扇ぎ浜面にペットボトルのお茶を渡されそれを飲む、が浜面がそれ俺の飲みかけだと言うと麦野は水鉄砲の様に麦茶をフレンダに放出する、麦野が飲んで吐いたお茶…これが本当の麦茶である、麦野が浜面と間接キスをした映像がディスプレイに映り垣根は満足げに笑う

 

「これはピンセット、見たいカップリング映像を見れるんだ」

 

「滞空回線でカップル達のイチャイチャ映像をいつでも見れる、しかも保存出来るからいつでも好きに見れる…なお空気中に漂う滞空回線をピンセットで捕獲する事でも新しい情報を閲覧可能だ」

 

「それに原型制御(アーキタイプコントローラ)でカップル達の動きを決めれると来た…全く学園都市は最高だぜ」

 

「ああ、他人の恋路は面白い、学園都市は恋愛都市でもあったのだよ、特に上条当麻の恋愛は痴情のもつれがないのは面白くないが純愛としては最高だな、見ているだけでドキドキする」

 

ドヤ顔でピンセットを掲げる垣根と滞空回線と原型制御があればカップル達のイチャイチャを永久保存が出来ると笑うアレイスター、垣根帝督とアレイスター=クロウリーはカプ厨である、そしてアレイスターは超弩級の変態親父である

 

「…やれやれ、君達は何をやっているのかな」

 

トコトコと二人がいる空間にゴールデンレトリバーがやって来た、彼の名は木原 脳幹(きはら のうかん)、木原一族の一人にして演算回路を外付けされたゴールデンレトリバーと言う異色の木原である、葉巻を吸いながら垣根達に彼は話しかける

 

「あ、脳幹先生…浜面イダー…じゃなくてドラゴンライダーはちゃんと動いてたぞ」

 

「そうかい、あれは中々ロマン唆る物だからね、前途ある若者に使って貰えて私も嬉しいよ…で、君達はいつものカップリング談義かな?」

 

垣根がドラゴンライダーは無事機能していたと笑うと脳幹はバックパックからアームを伸ばし葉巻を掴み煙を吐く、そしてダンディーな声で笑う、だがまたカップリングの話をしているのかと溜息を吐く

 

「悪いかな?まあ私は垣根帝督程ではないが…見ていて楽しいぞ」

 

「まあ私も若人達の美しい恋愛は眺めている分には非常に微笑ましいロマンだ、だがねやり過ぎるのは…好悪なら悪だな、あまり好ましくない」

 

「え〜じゃあ脳幹先生はそんな事する俺の事嫌い?」

 

「嫌いじゃないさ、自分の時間や幸福を削ってまで人を幸せにしようとするやり方は好きだよ、ただ余り困らせるのは感心しないがね」

 

脳幹も他者の恋愛を見ているのは微笑ましいと言うもやり過ぎるのは嫌いだと葉巻を咥える、垣根がじゃあ自分は嫌いかと聞くと脳幹は首を振って君のやり方は好ましいと笑う

 

「……だけどね…それに私も巻き込まないでくれるかい?唯一君に水族館のチケットやらディナーチケットをあげたり、デートスポットやら美味しいドックフードを渡したのは君なんだろう?」

 

「Yes I do!」

 

「…唯一君が喜んでいたのはいいが…巻き込まれる私の身にもなってくれ…一回大人のホテルに連行されかけて困ったよ」

 

だがそれに自分を巻き込むなと疲れたように呟く、自分の弟子がデートやディナーに誘ってきたり、美味しいドックフードを食べさせてくれたり無理やり大人のホテルに連行するようになったのは垣根の仕業だと垣根に問い詰めるように尋ね垣根はサムズアップしてそれを肯定する

 

「脳一ていい響きだと思わないか?種を超えたカップリング()…いいロマンじゃねえか」

 

「ロマンなのかなそれは?それに脳幹×唯一を脳一と略さないでくれたまえ…それに別に唯一君が嫌いという訳ではないが…ホテルに連行されるのはちょっと…」

 

「だけど唯一先生は本気だったぜ、「こうなったら自分が雌犬になるしかない」て意気込んでたし」

 

「……弟子の愛が重過ぎるよ、ゴールデンレトリバーには荷が重いよ」

 

脳一ていいよねと清々しい笑顔を向ける垣根によくねえよと突っ込む脳幹、弟子の愛が重過ぎて脳幹は押し潰さそうになる

 

「いいじゃねえか、脳幹先生だって犬のエロ画像見てんだろ?雌犬(ビッチ)が愉快にケツ振ってる写真見てハァハァ興奮するわけじゃん、唯一先生もそれと一緒だろ」

 

「うん、確かにビッチを見て興奮してるね、でもねビッチはビッチでも雌犬て意味だからね?でも性転換ならぬ種族転換は私にはハイレベル過ぎる」

 

「「頑張れ」」

 

「そんな無茶振りな」

 

唯一の行動は男子高校生の発情と変わらないだろうと笑う垣根に脳幹がハイレベル過ぎて笑えないと脳幹がダンディーな声で溜息を吐く

 

「まるでダンディーなオス…略してマダオの脳幹先生らしくないぜ」

 

「まるでダメなオッさんみたいに言わないでくれ…そんな事より昨日SSSS.GRIDMANと言うロボットアニメを見てね…中々熱いロマン唆る作品じゃないか」

 

「脳幹先生、SSSS.GRIDMANはロボットアニメじゃねえぞ、グリッドマンて元々特撮ヒーローだから…まあアニメ版は初見だとロボットと思っちまうけどな」

 

「なん……だと……」

 

木原 脳幹はロボットアニメが大好きである、ドラゴンライダーも那由多の改造も百パーセント彼の趣味である

 

 

「いい映像ばっかりだったな…しかし俺のカップリングセンサーでも反応できなかったカップリング現場があるとは…俺もまだまだだな…」

 

垣根がピンセットで映像を見ながら呟く、垣根が見逃していたカップリングの現場があったのかと彼は己の未熟さを嘆く

 

「まあ過ぎた事は仕方ない、今日もカップリング写真を撮るか…昨日通行止めと浜麦撮ったから…ツッチーの所へ突撃して土御門兄妹の写真でも…」

 

ブツブツとピンセットを眺めながら今日はどのカップリング写真を撮ろうかと悩む垣根、そんな邪な考えをする最中にふと何かに気づき足を止める、そして垣根の正面を何かが勢いよく通過する、垣根が横目で見ると不良が壁にめり込んでいた

 

「すごいパーンチ」

 

「「「「「プギャアアアアア!?」」」」」

 

「お〜見事に全員壁やら地面にめり込んでるな〜」

 

適当な掛け声が聞こえたかと思うと何人もの不良が吹き飛んで来て地面や壁にめり込む、垣根の視線の先にいたのは学ランにハチマキ、そして旭日旗が描かれたTシャツを来た少年、垣根が感心した声を出すと少年へと向けて歩き出す

 

「おっす軍覇、不良に絡まれたのか?」

 

「ん?おお帝督!さっきトレーニングをしていたらだなこいつらがいきなり鉄バット片手に「ヒッハー!」て叫びながら不意打ちをして来てな!根性が足りてなかったから入れ直してやった!」

 

「…成る程第七位なら勝てると思って挑んで来た馬鹿共か…いるんだよな…超能力者にも数集まれば勝てると思い込んでる奴…此間俺にもスキルアウトの連中が家に押しかけて来てな、大変だったぜ」

 

垣根が少年…超能力者 第七位 削板 軍覇(そぎいた ぐんは)に声をかけると彼は手を振って返す、不意打ちをして来た不良達に根性を入れ直してやったと豪快に笑う削板に自分も此間襲撃されたと垣根は溜息を吐く

 

「で、そのスキルアウト達はどうなったんだ?」

 

「勿論心理掌握の力を使って洗脳して素っ裸にして路上放置した、顔を赤くしたアンチスキルに連行される光景は笑えたぞ」

 

「相手を傷つける事なく勝ったのか!凄え根性だな!」

 

「いや根性じゃなくて能力頼み…まあいいや、軍覇に何言っても無駄だし…「おい第七位!」あ?」

 

削板がそのスキルアウト達はどうしたんだと聞くと心理掌握の力で洗脳して素っ裸にしてアンチスキルに通報したと笑う、何気に酷い行為だが削板は然程気にしない、垣根が何か言おうとするが野太い誰かの声が垣根の声をかき消す

 

「今日こそお前を倒してみせる!!」

 

そこに立っていたのは筋肉ムチムチの巨漢、いかにも外国で傭兵部隊として三つの国は渡り歩いてそうな風格の男は腕を鳴らしながら削板達に近づく

 

「お前は…モツ鍋!?」

 

「違えよ!横須賀(よこすか)だよ横須賀!モツ鍋じゃねえ!」

 

「あの内臓潰しの横須賀と呼ばれるモツ鍋のナントカさん?」

 

「そっちの奴に至っては名前知っててモツ鍋て呼んでるだろ!?…て、お前はあの第一位か?」

 

削板が真剣な顔で間違った名前を叫び男…「対能力者戦闘のエキスパート」と呼ばれる横須賀が違うと叫ぶ、垣根はポンと手を打って間違った名前と正しい呼び名を言い更に怒りを買う

 

「え?やっぱり俺の事知ってる?」

 

「ああ、カップルの写真を撮りまくる変人の第一位として有名だ」

 

「え〜、照れるな…サインの練習でもしとこうかな?」

 

「貶されてんだよ」

 

カップリング写真を撮る変人として有名だと横須賀に言われると照れる垣根、この男には何を言っても褒め言葉にしか聞こえない、ホスト崩れ、イケメルヘン、天使、カプ厨は彼には褒め言葉である

 

「…まあいい、第一位なぞ興味はない、俺の標的にして越えるべき壁は第七位のみ!こい第七位!お前のすごいパーンチを耐えきってお前を今日こそ倒してみせる!」

 

「…毎度凄え根性だなモツ鍋、そういう男は大好きだぞ!全力を出し切る気でかかってこい!」

 

「だからモツ鍋じゃねえ…俺は十発のすごいパーンチを耐えられるようになった…だがそれでは甘い!昨日の俺を俺は超える!」

 

(いや十発も耐えれる時点で人間やめてんだよな…超能力者でも一発モロに喰らえばかなりヤバイ…浜ちゃんでも八発が限界だったし…あれ?モツ鍋さん本当に無能力者?)

 

横須賀は第七位しか眼中にないと叫び削板を倒すと宣言、削板はいい根性だと賞賛し笑って拳を構える、因みにあの浜面でも八発しか耐えられないのに対し横須賀は十発も耐えられる、…お前の様な無能力者がいるか

 

「行くぞ第七位ぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 

横須賀が大声で叫び削板へ向かって突進する、削板が拳を振るう、超能力者と無能力者の仁義なき闘いが繰り広げ…

 

 

 

「超すごいパーンチ!」

 

「ビブルチ!?」

 

「はいはい即堕ち2コマ乙」

 

られなかった、と言っても横須賀は十五発もすごいパーンチを耐えきり、削板に一発拳をぶつけた(だが拳をぶつけた横須賀が痛がっていた)。すごいパーンチを耐えきり自分を殴った横須賀にその敬意を示す為削板は超すごいパーンチを放ち辺りも巻き込みながら横須賀は竹トンボの様に回転しながら吹き飛ばされた、え?ちゃんと詳しく書けよ?する訳ないじゃないですか、モツ鍋にそこまで書く必要あります?

 

「あ、扱い酷すぎ…じゃね?」

 

「俺のすごいパーンチを十五発も…ナイス根性だったぞモツ鍋!」

 

横須賀は気を失って地面に横たわる、それを見て削板がいい根性だったと笑みを浮かべる、だがやはり名前は覚えてもらえない、垣根は横須賀に合掌した

 

「じゃあな帝督!俺はこの根性無し共とモツ鍋を病院に運んでくる!」

 

「おう、じゃ薬味先生に宜しくな」

 

削板は右腕で何十人もの不良達を担ぎ、左手で横須賀を掴む、そして音速の三倍…ではなく普通にダッシュして垣根の知人の医者がいる病院まで走っていく、筋肉ムチムチの横須賀を片手で持ち上げるのも凄いが何十人もいる不良を片腕で全て持つというのも流石である、なぜ持ち上げられるのか?それは彼の根性ゆえである

 

「…やっぱりこの街は退屈させないな」

 

垣根が立ち去っていた削板を見てそう笑い、自分も何処かへ行こうと足を動かそうとしたその時

 

「ちょっといいですかい先輩」

 

「……ツッチーか」

 

後ろから声が聞こえ振り返る垣根、後ろに立っていたのは逆立たせた金髪にサングラスと金色のネックレスをつけたアロハシャツ1枚に短パン姿の少年…土御門 元春(つちみかど もとはる)が垣根の背後にいつの間にか立っていた

 

「どうしたツッチー?義妹の素晴らしさを語り合いに来たのか?それとも舞夏ちゃんの自慢話?」

 

「にゃー、俺もそんな話がしたかったんだが…悪いが大事な話なんでお巫山戯は無しだ」

 

「……真面目な話か…オッケー、なら俺も真剣に聞こう」

 

垣根が笑って義妹の良さを語り合うのか、それとも土御門の妹 土御門 舞夏(つちみかど まいか)の惚れ話を語るのかと笑うが土御門は少し笑った後真面目な顔になる、垣根をそれを見ると笑みを消し真顔になる

 

禁書目録(インデックス)の件に関してだ…本当に上条当麻やその他超能力者を巻き込む必要はあるのか?」

 

「…その事か、答えはYESだ、俺だけじゃあインデックスは救えないからな…あいつらの力が必要なんだ」

 

「…第一位のあんたの実力なら他の超能力者の力を借りなくても済むと思うんだが?」

 

「過大評価だな、俺はそんなに強くないよ、それにインデックスを救うなら当麻の幻想殺しが必要だしな…俺だって友達を巻き込みたくないんだ…すまねえな」

 

土御門はこの町に潜み混んでいるとある人物の名前を告げ、その人物を助ける為に垣根以外の超能力者を巻き込む気かと睨む、垣根は自分の力だけじゃあ助けられないと淡々と返す、そして自分も巻き込みたくなかったと言うと土御門に頭を下げる

 

「……ならせめて誰も死なない様にするんだな」

 

「……分かってるさ、後ツッチー…お前の親友を巻き込んですまない」

 

「……はぁ、まあ仕方ないんだぜい、アレイスターから聞いたが禁書目録を苦しめてる首輪とやらの魔術を破壊するにはカミやんの力がいるらしいしな…超能力者が全員いればカミやんの負担が少なくなるから俺としても安心ですたい」

 

土御門が冷たい声でなら誰も死なせるなと言うと垣根は分かってると返し、土御門にお前の親友を巻き込んでしまった本当にすまないと詫びる、土御門は暫く垣根を見つめた後溜息を吐きインデックスを助ける為には元々上条が必要だったとこぼし、上条や垣根以外の超能力者達も協力してくれるのなら安心だと笑う

 

「俺っちからは以上だぜ、じゃあな先輩、健闘を祈るぜい」

 

「……ああ、ツッチーも多重スパイ頑張れよ」

 

土御門がサングラスをクイッと少しあげ垣根から背を向け立ち去っていく、垣根は彼に笑いかける

 

「……今日は7月19日…もし原作通りなら明日か……早いもんだな」

 

垣根は携帯を開き今日の日付を確認する

 

「……絶対に当麻の記憶は失わせないし誰一人と不幸にはさせない…さて、その前にやっとく事があるな」

 

垣根は携帯をしまうと決意を固めた目で遠くを見つめる、そして指を鳴らし白いカブトムシを10体程作り出す

 

「さてお前らに今から命令する、よく聞けよ」

 

『『『『『了解しました』』』』』

 

「俺が命令するのはーーーーにあるーーーのーーーーーーのーーーーーーを破壊してこい、間違ってもーーーの方は破壊するなよ?また05を通じて新たに命令する、以上だ分かったか?」

 

『『『『『了解、任務を遂行します』』』』』

 

カブトムシ達に垣根は何かを命令するとカブトムシ達は羽を広げ空へと羽ばたく、カブトムシ達は光学迷彩で姿を消し大空へと飛び立ち学園都市を抜け出してある場所へと向かっていく…それを見届けた垣根は明日に備える為に自分の家へと帰宅する為に三対の翼を展開し飛翔する

 

 

「ああもう!本当にしつこいかも!」

 

もう殆どの学生が寝ている深夜、彼女は今とある学生寮の階段を登っていた、それはある人物達から逃げる為だ、彼女は必死に階段を登り学生寮の屋外へと辿り着く、もう逃げ道はない、それが普通の人間が考える思考だ

 

「だけど私には歩く教会がある…こんな所で捕まるわけにはいかないんだよ」

 

だが彼女は普通の人間ではない、彼女は自分の服…純白の布地に金の刺繍が施された修道服を一瞥する、カツンカツンと二つの階段を上がってくる足音が聞こえ彼女は意を決する

 

「ふ!私を舐めてもらったら困るかも!」

 

彼女は不敵に笑うと屋外から隣の学生寮へと飛び移ろうとする…が、僅かに軌道が逸れてしまいガン!とベランダにぶつかり、ベランダに身体をへの字に曲げて引っかかってしまう

 

「ひでぶ!?」

 

彼女の身体に傷やぶつかった時に生じた筈の衝撃のダメージはない、彼女は即座に身体を動かしベランダから降りて逃げようとする…が自分が先程いた屋外から話し声が聞こえ動きを止める

 

「……どこへ逃げたのでしょう」

 

「…屋外から飛び降りたんだろう…探せ、まだ近くにいる筈だ」

 

「ええ……おや?あそこの部屋…もう夜だというのに布団を干してますよ」

 

「…は、大方干していたのを忘れた馬鹿だろう、そんなもの気にしている暇はない」

 

男と女の声が聞こえる、女の方は彼女がいる場所を見ている様で彼女は冷や汗が流れるが男の方は布団だと決めつける、そして地面に誰かが飛び降りた音が聞こえ彼女は自分を見失ったのだとホッと息を吐く

 

「ふぅ…今日も無事逃げ延びたね…でもまた明日も逃げなきゃいけない……もうこんな辛い日々…嫌なんだよ」

 

彼女は何故自分がこんな目を合わなければいけないのだと目を潤ませる、そして疲れが溜まっていたのか睡魔が彼女を襲う

 

「……もう今日は寝るんだよ…」

 

彼女は瞼を閉じウトウトと眠り始める…だが彼女の顔に安心感はない…あるのはいつまた襲われるか分からない不安感と恐怖心のみ

 

「…う、二人共…まだお前らは中学生なんだ…こんな真似はやめ…あ!それダメ!拘束されて電撃プレイなんてそんなアブノーマルな…ああぁぁぁぁ?!」

 

(…なんか煩いんだよ……)

 

そんな彼女が引っかかったベランダはとある超能力者の学生寮の部屋だったのだが…彼女はそれを知る余地はない、なお家主はいい夢を見ている様だ

 

 

 




さて皆さん、そろそろバトル展開に行きますが…誰の戦闘が見たいですか?ていとくん?それとも強化上条さんかその他超能力者か…誰の戦闘が見たいですか?

そして恒例のキャラ紹介

アレイスター=クロウリー…善人、過去でていとくんとなんやかんやあってリリスを取り戻した、史実としてのアレイスターの側面も持っている、やはりこの人もカプ厨化している

木原 脳幹…ロボット大好き、ドラゴンライダーが仮面ライダーになったのも那由多ちゃんのロケットパンチやサイコガンもこのわんわんおの所為、作者の個人的CVは立木文彦 まるでダンディーなオス、略してマダオ

こんな所ですかね、さて次回はインなんとかさんことインデックスの登場、ステイルさん達終了のお知らせ


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腹ぺこシスターの食欲はイビルジョー並み

無駄に長い…はい、インデックスさんことインなんとかさんの登場です、少し長くなちゃったけど…仕方ないよね、今回はギャグがあるけど次回とその次くらいはギャグじゃなくてシリアスな戦闘かな…まあ銀魂でもシリアスな部分ありますし(目逸らし)、大丈夫シリアス終わったらまたギャグになるから

自分カミやん病よりもインデックス病の方が怖いと思うんですよ(唐突)、だって知り合ったばかりの上条さんが命かけてまで助けようとしたり、嘘をついてまで彼女と一緒にいたり、アオレオルスさんが世界を敵に回してもインデックスを救おうとしたり、彼女の為に悪役に徹するステイル君とねーちん、彼女に嫌われてでも助けようとした風斬さん…カミやん病よりもヤバい

それによく食いしん坊キャラという印象がありますが…本編見てると活躍する所は凄く輝いてる…まさにヒロイン、て形で…まあそんな話より本編をどうぞ


『上条さぁん〜もう朝よぉ〜早く起きるんだゾ☆』

 

『先輩…早く起きないとビリビリするわよ』

 

「ふぁ〜……昨日はいい夢見たな…」

 

上条当麻は学生寮の部屋で目を覚ました、彼女二人の声のモーニングコールで彼は朝から気持ちよく過ごせるのだ、上条は慣れた手つきで素早く着替え布団をたたみ始める

 

「フンフフフフ~ン♪今日は補習はいかないし昼からデートの予定…あ〜幸福だ」

 

彼は布団を持ち上げると鼻歌を歌いながらベランダを開けて布団を干そうとする、そしてベランダを見ると…もう布団が干してあった

 

「……え?」

 

その布団はモゾモゾと動き始め…いな布団ではなかった、白い修道服を着た少女だ、長いストレートの銀の髪にエメラルドの様な瞳の美少女がベランダに引っかかっていた

 

「……お腹空いた」

 

「……はい?」

 

「……お腹いっぱい食べさせてくれると嬉しいな」

 

その少女はニコリと笑ってご飯プリーズと伝える、その言葉を聞いた上条は微笑み返して携帯を取り出す

 

 

『おい起きろよ美琴、可愛い寝顔をいつまでも俺に見せる気か?』

 

『お寝坊さんだな操祈は、可愛い顔が台無しだぜ』

 

「ふにゅ〜…えへへ可愛い、私可愛いですか先輩〜」

 

「もう上条さんたらぁ…そんなこと言わないでぇ〜あはぁ〜」

 

「……耳栓をしててもお姉様達の緩んだ声と殿方の声が聞こえてきますの…信じられます?これが毎朝あるんですよ?わたくしにとっては地獄ですの」

 

一方こちらは常盤台、寮から抜け出した操祈と添い寝して寝ている美琴、二人の携帯から上条の声のモーニングコールが鳴り二人の顔が満面の笑みで顔を赤くしながらうっすらと意識を覚醒させる、黒子は耳栓をしているがしていても聞こえてくるので全力で耳を塞ぎブツブツと呟く、やがて二人のモーニングコールが鳴り止んだかと思うと操祈の携帯から電子音が鳴り響き操祈が目をゴシゴシしながら携帯を手に取る

 

「……もしもし上条さんの彼女の操祈です☆朝から彼氏直々にモーニングコールですかぁ?」

 

『み、みみみみみみ操祈!?た、大変なんだ!?よく聞いてくれ!』

 

「ど、どうしたのかしらぁ?何をそんなに慌ててるのぉ?」

 

「ふにゅ?どうしたの操祈?…先輩から電話?」

 

操祈が少しふざけて上条に声をかけると電話から聞こえてきたのは上条の焦った声、操祈が慌ててどうしたのかと尋ね美琴も目をこすりながら操祈の肩に頭を乗せる

 

『お、俺の学生寮のベランダに…シスターがいるんだ!』

 

「え?シスターて…妹達?」

 

『違う!本物のシスターだよ!僧侶とかそこら辺だ!なんか白い修道服着てて銀髪で目が緑!それでお腹空いたって言ってるんだ!どうしたらいい!?』

 

「「ちょっとどういう状況か分からない」」

 

上条が自分の寮のベランダにシスターが引っかかっていると伝えると食蜂と美琴は首を傾げる、どういう事なのかと

 

『と、取り敢えず俺の寮に来てくれるか?女の子相手だし…一人だと心細い』

 

「……分かったわぁ着替えたらすぐ行くわ(少し怯えてる上条さん可愛いわぁ)」

 

「うん、待っててね先輩!(私達を頼りにしてくれる先輩可愛いよぉ〜)」

 

『ああ待ってるぞ!…後』

 

「「?」」

 

一人だと心細いから助けてくれと情けない声で言う上条にときめく二人、二人はすぐに着替えようとするが電話から上条の言葉が聞こえ耳をすませる

 

『今俺の部屋にシスターがいるわけだが…これは浮気じゃないからな、俺が大好きなのはお前らだけだから…じゃ』

 

「「………………」」

 

「…あのお姉様方?」

 

「「ふにゃ〜!!//」

 

上条が照れた声でこれは浮気じゃないと言った後愛してるのはお前らだけだと伝える、それを聞いた二人は暫く動きを止め…直後に二人は顔を赤くしてベットに倒れる、そして美琴の漏電により黒子が焼かれ真っ黒子になった

 

 

「おはよ当麻、朝から事件に巻き込まれてるな〜」

 

「垣根!この状況を解決しに来てくれたんだな!」

 

「ああ、でそのシスターさんは何処?」

 

電話で呼ばれた垣根は上条の部屋に入り上条がドタバタと玄関に走ってやってくる、垣根がシスターは何処だと聞くと上条はテーブルを指差す、テーブルには「ねえご飯はまだなの?」と純粋な目でキラキラと見つめる少女の姿が

 

「お〜本当に修道女だな…まあそのうち皆来るからお前も座っとけ…俺が何か作ってやる」

 

「本当!?助かったんだよ!お腹ペコペコで…この人はご飯くれないから困ってたんだよ」

 

「いや普通不法侵入した人に飯はあげないての…垣根て飯作れんの?」

 

「おいおい、俺を誰だと思っている?第一位だぞ?」

 

垣根が何か飯を作ると呟くとシスターはわーいと万歳する、上条は作れるの?と疑いの目で垣根を見るが垣根は第一位だからなと言って台所へと向かう、飯を作るのに第一位の肩書きは関係ないと思うが…

 

「…まあいいか、なら俺も座って待っとくか」

 

上条は座って待つかと床に座ろうとする、その時にインターホンが鳴り上条は座るのをやめて扉を開く、そこにいたのは上条の恋人の美琴と食蜂、垣根や美琴、食蜂以外にも電話で呼ばれた一方通行、麦野、削板、美琴達の連れ添いで来た帆風が扉の前に立っていた

 

「よォ上条、シスターがベランダにいたンだって?どンな状況だよ」

 

「彼女二人いても不幸は変わらないて事かにゃーん?」

 

「お久しぶりです上条さん、女王と御坂さんの付き添いで来ましたわ」

 

「おはよう!いい朝だな!」

 

「皆…来てくれたんだな…助かった」

 

一方通行達が上条に声をかけると上条は安堵の息を漏らす、全員が靴を脱いで上条の部屋に入った為部屋が狭く感じた…まあ一人部屋に九人もいれば狭くなるのは当たり前なのだが…

 

「…なんか沢山人が来たんだよ…兎にオバさん、短髪にしいたけ、ハチマキに縦ロール…ウニといい変な人ばっかなんだよ」

 

「おィ、誰が兎だって?」

 

「誰がオバさんだ」

 

「……先輩の部屋に不法侵入した上にこの態度…電撃で焼いて警備員に突き出さない?」

 

「賛成〜☆じゃあ私の洗脳力でまずこの部屋から出す事から始めましょう」

 

シスターは一方通行達を見て「うわ変な人ばっかり」と自分も変な格好をしているのは棚に上げて呟く、美琴と食蜂はなんだこの態度はと少しキレ食蜂がリモコンをシスターに向け能力による洗脳を行う…がその力は何故か弾かれた

 

「……あれぇ?」

 

「どうしたの操祈?」

 

「……私の能力が弾かれたわぁ…」

 

「…ンだと?第六位の能力を弾くなンざ同じ超能力者しか無理だろ…ナニモンだこいつ?」

 

食蜂が洗脳が弾かれたと呟くと上条達が驚きの目でシスターを見る、心理掌握の洗脳を弾くなど同じ超能力者でしかありえない、シスターは首を傾げ何をしてるのかな?とリモコンを見つめていた

 

「ねえそんな事よりご飯はまだなのかな?もうお腹ペコペコなんだよ!」

 

「それなら安心しろ、もう出来た」

 

シスターがパンパンとテーブルを叩き上条達が本気で殴ろうかなと考え始める…すると台所から垣根の声が聞こえシスターがパーと顔を明るくする

 

「…ていとくンて料理出来ンのか?」

 

「おいおい、俺を誰だと思ってんだ…第一位だぞ?」

 

「流石垣根さんです、お料理も出来るなんて…」

 

一方通行が料理出来たんだと不思議なものを見る目で呟き帆風が凄いですと尊敬の眼差しで垣根を見つめる、シスターはヨダレを垂らして垣根が持って来た料理を凝視する

 

「ほら垣根特性、未元物質風卵焼き…」

 

「「「真っ黒焦げじゃねえか!」」」

 

「ねぼし!?」

 

置かれた料理は卵焼き…なのだが某メガネが本体なツッコミ役の弟の料理が下手な腕力ゴリラ姉上みたいな暗黒物質(ダークマター)だった、上条と美琴、食蜂は飛び蹴りを垣根に食らわし垣根が吹き飛ばされる、そして麦野と一方通行に足でガシガシと蹴られる

 

「何暗黒物質作ってんだよ!未元物質(ダークマター)だけにてか!?上手くねえよ!二つの意味で!」

 

「俺の料理に常識は通用しねえ」

 

「ていとくンが下手くそなだけだろ!」

 

「いや?柳田理科雄先生の言う通りに暗黒物質を作っただけだ」

 

「「空想科学読本をレシピ本にするな!」」

 

麦野と一方通行にボコボコ蹴られなからレシピ通りに作ったもん!と垣根は言い切るが上条に空想科学読本はレシピ本じゃないと一喝される、未元物質が暗黒物質を作る…これが本当のダークマター、因みにこのシャレは上手くないし料理も美味くない

 

「あはは!帝督は面白いな!だが食材を無駄にするのは許さん!そんなのは根性なしがする事だ!嬢ちゃんもそう思…」

 

「ムシャムシャ…苦いけど美味しいんだよ!」

 

「「「食ってるぅぅぅぅ!?」」」

 

削板が面白いけど食材を無駄にするなと厳しめに言いシスターに同意を求める…がその暗黒物質をシスターが平らげており上条達が食べたのそれ!?と叫ぶ

 

「ご馳走様なんだよ!でもまだ足りないかも!」

 

「ふ、安心しろ………本当の食事はこれからだ!」

 

シスターがまだ足りないと文句言いたげに言うと垣根はまだ始まってすらいないと不敵に笑う、その時上条の部屋のインターホンが鳴る

 

「あれ?他に人は呼んでないのに…」

 

上条がもう誰も呼んでいないのにと訝しんで扉を開ける…扉の前にいたのは…

 

「寿司屋です、寿司特上お持ちしました」

 

「ピザ屋です、ピザ全種類持って来ました」

 

「ラーメン屋です、ラーメンと餃子、炒飯お持ちしました」

 

「カレー屋です、カレーライス大盛りお持ちしました」

 

「蕎麦屋です、蕎麦大盛りお持ちしました」

 

「「「「「「「」」」」」」」

 

「あ、全部クレジットカードでお願いします」

 

寿司屋、ピザ屋、ラーメン屋、カレー屋、蕎麦屋等々の出前の数々、上条達が固まっていると垣根が全ての代金をクレジットカードで支払う、そしてその全ての料理をテーブルに置き、置ききれないものは床に置く、無数の料理を見てシスターが涎を滝のように垂らし目を輝かせる

 

「……全部食べていいの?」

 

「of course、勿論だ…遠慮なく食べろよ」

 

「…ジャパニーズたこ焼き、寿司、焼きそば、懐かしのハンバーガー、フライドポテト、和食に洋食…凄いご馳走なんだよ…ごくりんこ」

 

シスターが垣根から確認を取り垣根がいいよと笑うと、唾を飲み込み彼女は食器を手に取る

 

(おい垣根!どんだけ頼んでんだよ!?てかいつの間に!?)

 

(シスターがお腹減ったて電話で言ってたからな…前以て出前を取ってたんだ…俺の奢りだから心配すんな)

 

(いやいや頼み過ぎよ!こんな量私達でも食べきれるか分かんないわよ!?)

 

(え?俺らの分なんかないけど?)

 

(((((((…はえ?)))))))

 

上条と美琴がこんなに沢山食べれないと小声で囁き全員が頷く、が垣根は俺達の分なんか元からないと返すと全員が何言ってんだこいつと言う目で見る

 

(…まさかぁ全部このシスターちゃんのご飯とか言っちゃたりするわけぇ?そんな冗談力通用しないわよぉ)

 

(いや本当なんだけど、俺らの分なんかねえんだよ、察しろ、全部あの子のお腹の中に行くんだよ)

 

(…いや無理だろ、こんだけの量、流石の俺も根性があっても食い切れん!)

 

(じゃあ見てみ)

 

食蜂が流石にその冗談は通じないと笑う、が垣根は真顔で全部シスターの分だと言い切り削板も根性あってもあれだけは食い切れないと苦笑いする、じゃあ見てみろと垣根が指差し全員がシスターを見ると

 

「ごくごく、ガツガツ、ムシャムシャ、もぐりんこ、ばくばく、ザーズルズル、もきゅもきゅ!美味しんだよ!止まらないんだよ!」

 

「「「「「「「……oh」」」」」」」

 

「このシスターの胃袋に常識は通用しねえ」

 

「私の胃袋に限界はないんだよ!私を満腹にさせようなんて二万年早いかも!」

 

両手を使って凄まじいスピードで食材を食べるシスター、その辺りの速さとその貪食さ、咀嚼音に上条達が嘘だろとシスターをドン引きした目で見つめる、彼女は気にせずご飯を食べ続ける

 

 

「ふぅ…腹五分目…って所かな?」

 

「「「「「「「……」」」」」」」

 

「あれ?どうして皆固まってるの?」

 

シスターが腹を軽く撫でながら何故垣根以外が固まった様に動いていないのか気になる、そんなシスターの周りには食い尽くされた食材や空の食器が無数に積み上げてある…これ全部1人でシスターが平らげたのだ…「あ〜少し足りなかったかな?」と垣根は笑った

 

「……ねえ、あんた本当に人間?」

 

「む、失礼かも、私は歴とした人間なんだよ、それにあんたって名前じゃないよ。私の名前はインデックス、この国では禁書目録って言うのかな…イギリス清教第零聖堂区 必要悪の教会(ネセサリウス)所属の魔術師にして修道女なんだよ」

 

「……インデックスだァ?イビルジョーの間違いだろ…で、何で上条ォのベランダに引っかかってたンだ?」

 

美琴がドン引きした目でシスターを見る、彼女は少し怒った後自分の名前を教えるも一方通行はよく食べるから生態系を破壊する獣竜種の間違いだろと冗談を言い何故ここにいると尋ねる

 

「屋上から屋上へ飛び移ろうとしたら失敗してベランダに落ちたんだよ」

 

「…あのここら辺の建物は8階立てですよね?そこから飛び降りたんですか?」

 

「うん、仕方ないんだよ追われてるから」

 

「…追われてる…だと?」

 

インデックスは屋上から飛び移ろうとしたら失敗しちゃったとテヘッと舌を出す、仕草は可愛らしいが8階から飛び移ろうとする時点でかなりヤバイ人である、帆風は何故と尋ねるとインデックスは表情を硬くして追われていると呟くと麦野が目を細める、学園都市は治安が悪いと全員が知っている為少女が変な連中に追われているのかと疑うが

 

「…魔術結社(マジックキャバル)の連中に追われてるんだよ…多分黄金夜明か薔薇十字(ローゼンクロイツ)の手の者だと思うんだけど…あれ?皆どうしたの?」

 

(((((((あ…厨二病だこの子、しかもかなり重度の…)))))))

 

インデックスが言った魔術結社やら薔薇十字やらで上条達は「あ、厨二病か」と判断する、彼らはこう思っている、インデックスは自分が追われていると思い込んで8階から飛び移ろうとするヤバい奴だと

 

「…もしかして信じてない?」

 

「……イヤソンナコトナイワヨ、タイヘンネ、マジュツシニオワレテテ(棒)」

 

「アァ、タイヘンダナ…マジュツトカツカッテクンダロ?(棒)」

 

「…そこはかとなく馬鹿にされてる気がする」

 

美琴と一方通行が棒読みのセリフを言い、垣根以外がそれに同意するかの様に頷く、インデックスが馬鹿にされてると少し怒る

 

「嫌だってね…ここは学園都市、科学の町なの、わかるかにゃーん?魔術(オカルト)なんてこの街で信じてる奴なんかいないのよ?」

 

「む!失礼かも!魔術はあるもん!」

 

「じゃあ上条さん達に見せてくれませんかね、その魔術とやらを」

 

「私は魔力がないから出来ないんだよ…ちょっと何よその馬鹿にした顔!私が使えないだけで魔術はあるもん!本当だもん!」

 

麦野が子供を宥める口調でインデックスに話しかけた為、インデックスは腕をパタパタさせて抗議するも上条に魔術(証拠)を見せてみろと言うが彼女は自分は使えないと言うと上条達は「あ〜自称魔術師がテレビの前だと魔術が使えない」て言ってるみたいなもんかと鼻で笑う、それを見て子供の様に怒るインデックス…そんな彼女に垣根が笑って助け舟を出した

 

「で、インデックスちゃんの魔法名は何だ?魔術師なんだから魔法名くらいはあるだろ?」

 

「!?私の魔法名は献身的な子羊は強者の知識を守る(Dedicatus545)なんだよ!君は魔法名を知ってるの!?」

 

「勿論、魔法名以外にも本当に魔術が存在してる事も知ってるし、天使や魔神の存在も知ってるぜ」

 

垣根が彼女の魔法名を尋ねるとインデックスは驚愕の後魔法名を名乗り、魔法名の事を知っているのかと垣根に近づく、垣根は笑って彼女が知っている単語を言うと彼女の顔が明るくなる

 

「凄いんだよ!こっちの分からず屋共と違うんだよ!もしかして君も魔術師だったりする?」

 

「ご想像に任せる…でも何人かの魔術師とは知り合いだ、第三の腕を出す赤い服を着た魔術師(フィアンマ)やら魔神になり損ねた魔術師(オッレルス)とも知り合いだからな…残念ながらイギリス清教に知り合いはいないがローマ正教とロシア成教には知り合いがいる、それにこの街にも何人かの魔術師がいるからな(・・・・・)

 

「……おィていとくン、無理に厨二に合わせなくていいンだぞ」

 

インデックスが目をキラキラさせて垣根は魔術師なのかと尋ねる、垣根は想像に任せると笑い魔術師に何人か知り合いがいると教える、一方通行は垣根の言葉を厨二に合わせていると考え無理に合わせるなと言うが垣根はその言葉をあえて無視した

 

「ねえ君の名前はなんて言うの?」

 

「俺か?俺は超能力者の第一位 垣根 帝督、縦ロールの子が帆風 潤子ちゃん、そして残りがその他モブ共だ」

 

「「「「「「おいちょっと表出ろよ」」」」」」

 

インデックスが名前を聞くと垣根は自分と帆風の名前はちゃんと言うが後の6人はモブと称し、そのモブの皆さん(上条達)が青筋を立て表出ろと脅す、垣根はわぁ怖いとわざとらしく両手を上げて降参のポーズをとる

 

「ったく、俺は超能力者の第二位の上条 当麻、こっちは第五位 御坂美琴と第六位 食蜂 操祈、白いのが第三位 一方通行、そこのお姉さんは第四位 麦野 沈利、変な服装なのが第七位 削板 軍覇だ」

 

「…全員変な名前だね」

 

「「「「「「目次に言われたくない」」」」」」

 

上条が全員の名前を教えると変な名前とインデックスが鼻で笑う、目次(インデックス)に笑われたくないと全員が少しキレる、するとムッとした顔でインデックスが反論する

 

「私の魔道書図書館としての正式名称はIndex-Librorum-Prohibitorum(禁書目録)なんだよ、貴方達みたいなDQNな名前じゃないかも」

 

「この野郎…つーか魔道書図書館って何だよ、学校では図書委員担当か?」

 

「図書委員じゃないんだよ、私は10万3,000冊の魔道書を頭の中に記憶してるんだよ!凄いでしょ!これなら盗まれる心配がないんだよ!まあその所為で魔術師に狙われてるんだよね」

 

自分の正式名称を伝え上条達の変な名前とは違うとドヤ顔で言い切る、上条は握り拳を作りそろそろ幻想を殺そうかと思うが魔道書図書館と言う単語が気になった、彼女曰く頭の中に記憶しているとの事らしく、垣根と帆風以外が更に胡散臭げな目でインデックスを見る

 

「だいぶブットんだ空想ですね…」

 

「いや全部本当なんだけどな…まあここじゃあオカルトなんて誰も信じてねえからな…超能力と魔術に違いなんて無えってのに」

 

「?それはどう言うことかなていとく?超能力については私は詳しく知らないけど全く違うものって事ぐらいは知ってるんだよ」

 

「魔道書図書館でもそう言う考えなのか…そうだな…超能力の開発は思春期の心性と薬物作用を網羅した超常誘発方式…実はこのやり方、かのテレマ僧院のやり方と似てるんだよ」

 

「!?」

 

帆風は他の6人よりは優しげな反応だが魔術やらの事は信じていない、だが垣根は魔術と超能力には違いがないと笑いインデックスがどう言う意味かと問いかける、垣根は超能力の開発の仕方を教えそれはある魔術師が作った僧院のやり方と似ていると教えるとインデックスはその真意を悟る

 

「もしかして…この街は…形を変えたテレマ僧院…って事?なら超能力で言うのは新しい近代魔術の一種?」

 

「…正解とも不正解ともとれるな、そもそも超能力者の自分だけの現実(パーソナルリアリティ)はテレマで言う真の意思だと俺は思ってる…ま、俺も詳しくは知らねぇがな…」

 

「…じゃあ何で能力者は魔術を使うと血管が破裂するのかな?超能力が近代魔術の一種だとするなら破裂する筈がないのに…もしかして超能力は近代魔術の一種ではなく新しい何か?それとも…」

 

「テレマ?真の意思?血管が破裂?」

 

インデックスが学園都市とは科学に偽装したテレマ僧院の再来なのかと思考し、垣根が自分だけの現実とはテレマで言う真の意思だと解釈していると笑う、インデックスはそれを聞いて超能力は何なのかと深く考える、帆風は2人が何を言っているのか分からず首を傾げる

 

「……くだらねェ、厨二談義は他所でしろォ…俺は帰るぜ」

 

「私も、こんな所でくだらない話で時間を潰す程暇じゃねぇからにゃー」

 

一方通行と麦野がインデックスの話には付き合いきれないと立ち上がる、上条達もインデックスの話を信じている様には見えず、インデックスは信じてもらえないのかと悲しそうな顔をする、麦野達が上条の家から出ようとドアノブに手をかけた時垣根が手を叩き全員の目線を浴びる

 

「全く…遊び過ぎた俺も悪いが…人の話はちゃんと聞けよ…短気は損気、知らないか?」

 

「…おいおい勘弁してくれよ、魔術がどーのやら魔術師やらが本当にいるとお前も思ってんのか?」

 

「ああ、実際にいるよ…まあそんな事を今言っても信じねえだろうからそれは後回しだ…みさきち、この子の服を心理掌握で読み取って俺達にその情報を送ってくれ、そうすれば分かる」

 

垣根が最後まで話を聞けと言うと麦野がしかめっ面になって本当にインデックスの話を信じてるのかと垣根を睨む、垣根は睨まれてなお笑って頷く、そして食蜂に能力でインデックスの服を読み取れと指示する

 

「…えぇ?私の読心力でぇこの子の服の情報を読み取れって事ぉ?」

 

「そうだ、だが誤っても彼女の脳は見るなよ?死にたくなければな」

 

「?……はぁ分かったわよぉ、物的読心(カテゴリー065) 右手で触れた物質から1日以内の記憶情報を抽出」

 

食蜂が面倒くさそうな顔をしながらもリモコンを弄りながら右手で修道服に触れる、修道服から情報を読み取り全員に情報を送る

 

 

最初に流れてきたのはインデックスが赤髪の男が放った炎で焼かれる姿、常人なら焼け死ぬ筈が彼女は無傷で炎から抜け出した、だが彼女の目の前に刀を持った女が現れ刀を振り下ろす、だが刃が彼女を切断する事は無く服に防がれ彼女は逃げる、炎が吹き荒れ見えない斬撃が彼女に襲いかかるが彼女の修道服は全ての攻撃を防ぎ、インデックスは彼らから逃げ切った所で情報が途切れた

 

 

「……何だよ今の」

 

上条が言葉を吐き出した、今の情報は何だと、つまり彼女が言っていた魔術師と言うのは発火能力者と刀を持った能力者の事だったのかと全員が理解する

 

(このガキ…本当に追われてたのかよ…)

 

(厨二臭ェ言葉しか言わねェから嘘だと思ったじゃねェか…その魔術師て呼んでる奴らは発火能力者と見えない斬撃…風力使いの事だったのか…)

 

「…すまん嬢ちゃん!疑って悪かった!」

 

「わ!?いきなりどうしたんだよ!?しいた…みさきが変な物を私に向けたと思ったら皆暫く固まって気づいたらハチマ…ぐんはが謝ってきたんだよ!?」

 

麦野と一方通行が本当に追われていたのかとインデックスに目を向けながら襲っていた人物達の能力を推察する、削板は音速の三倍の行動で土下座をしインデックスを驚愕させる

 

「…本当に追われてたのねぇ…変な事ばっかり言うから信用力が無かったのよね…」

 

「…はぁ本当に追われてるってのに…そんな時でも厨二の設定を捨てないとか…」

 

「いや本当に魔術はあるんだよ…」

 

変な事ばかり言うから信用出来なかったと食蜂と美琴がインデックスを見る、インデックスは魔術は本当にあると呟いた後少し表情を暗くする

 

「…ご馳走様、私はもう行くね…ここにいたら貴方達も危険だから」

 

「おい待てよ、魔術とやらは信じてねえが追われてるのは確かなんだろ?なら外へ出るのは危険なんじゃねえのか?」

 

「じゃあ貴方達は私と一緒に地獄の底まで付いて来てくれる?私はそんな危険な事して欲しくないんだよ」

 

インデックスが手を合わせてご飯を食べさせてくれてありがとうと伝え、この場から去ろうとするのを上条が止めようとするがインデックスは優しい言葉で「こっちにくるな」と忠告する、その顔はあまりに痛々しく辛そうな表情…丸で本当に地獄を見た様な顔だった、その顔に全員がどう言えばいいのか分からず凍てついた様に動かなくなる、

 

「…うん。それでいいんだよ、じゃあさよおな「じゃあ引っ張り上げてやるよ」…え?」

 

インデックスがそれでいいんだと微笑みそのまま立ち去ろうとする、その時垣根が引っ張り上げてやると言うとインデックスは驚いた目で垣根を見る

 

「引っ張り上げてやるって言ってんだよ地獄からな、俺らは生憎地獄へ堕ちる覚悟はない…ならお前を引っ張り上げれば解決だ」

 

「……貴方は助けてくれるの?」

 

「違うな俺が助けるんじゃない、俺達が助けるんだ…そうだろ?」

 

地獄へ堕ちるのは嫌、ならインデックスを地獄から引っ張り上げればいいと笑う、インデックスは呆然とした顔から目を潤ませ垣根が助けてくれるのかと言うと垣根は笑って自分じゃない、自分達が助けると笑う

 

「……あ〜はいはい、そんな事だろうと思ってたよ…昼からのデートが丸潰れだよこんちきしょう」

 

「これは魔術師(仮)とやらに責任を取ってもらわないとね…」

 

「はぁ…面倒くさいわぁ…でも困ってる子は見捨てられないしぃ…」

 

「……チッ、打ち止めが家で待ってるンだ、さっさと片付けンぞ」

 

「…この流れだと私もやらないといけない流れだな…しゃあねぇな、垣根シャケ弁奢れよ」

 

「勿論だ!困ってる女の子を助けるのは当たり前だ!」

 

「…皆さん素直じゃないですね、わたくしも僭越ながら手を貸しましょう」

 

「な?俺らが君を助けてやる、だからもう強がらなくていいぜ」

 

上条達が頬をかきながら照れ臭そうに垣根の言葉に賛同する、帆風は全員素直じゃないと笑いながら自分も助けると笑う、インデックスがその言葉を聞いて目を潤ませ垣根が強がらなくていいと肩に手を置くと彼女は涙を流して泣き崩れた

 

 

「……あり、がとう…ていとく、じゅんこ、とうま、みこと、みさき、アクセラレータ、しずり、ぐんは…ありがとう…ありがとう!」

 

「ほらハンカチ」

 

「うん…」

 

泣き止んだインデックスに垣根がハンカチを渡し目元を拭く、美琴がふと気になっていた事をインデックスに聞いて見る

 

「ねえ…さっきの情報だとあんた燃やされたり斬られたりしてる訳だけど…どうして無事な訳?」

 

「え?…ああ、それはこの『歩く教会』のお陰なんだよ」

 

「…歩く教会…だァ?」

 

「知ってるぜ、聖人の死骸を包んだトリノ聖骸布を正確にコピーした布地を計算し尽くした刺繍や縫い方魔術的意味を持っていてあらゆる攻撃を受け流し吸収する霊装の事だろ?あ、霊装ってのは魔術に使う道具の事な」

 

「そうなんだよ!よく知ってるねていとく。この歩く教会の防御力は法王級(絶対)!どんな大魔術だろうが科学の武器だろうが貴方達の能力だろうが傷一つつかないんだよ!」

 

燃やされたり斬られても何故無傷なのかと尋ねるとこの服 歩く教会のお陰だと彼女は自慢げに修道服を見せつける、この服は霊装でありどんな攻撃からも守ってくれると笑う。これが彼女が魔術師から逃げて来れた理由の一つであり彼女を守ってくれる鎧でもある

 

「へ〜、そんな凄いもんなのか(何かの能力か?自分の能力も厨二設定に組み込んでるのか)…ちょっと触ってみてもいいか?」

 

「!?ちょ、待て当麻!?右手で触るな!?おい馬鹿やめろ頭噛み砕かれるぞ!?」

 

「へ?」

 

上条が歩く教会(彼女の能力だと誤解している服)に興味を持ち右手で触れようとする、それを見た垣根が慌てて止めるが時既に遅し、歩く教会の肩に右手が触れガラスの割れた様な音が響き彼女の服がストンと落ちる、魔術的な意味合いを持つ糸が解け歩く教会は単なる布切れに成り下がる、固まる上条達、真っ裸になったインデックスは状況をゆっくりと理解し顔を赤くしていく

 

「やべぇ…メルヘンウォール」

 

「え?」

 

垣根はヤバイなと理解し翼で帆風ごと自分を覆う、翼が繭状に閉ざされる前に見えたのはインデックスは自分の口を大きく開き、近くにいた上条と美琴、食蜂に襲いかかる、翼が閉ざされた事により何も見えなくなったが代わりに3人の男女の悲鳴が鳴り響いた

 

 

「「「(チーン)」」」

 

「痛えな…歯型が残ったらどうするんだ…」

 

「うぉ!?歯型がくっきりと残ってやがる!?俺の身体は丈夫だってのに…余程根性込めて噛んだんだな…」

 

「はむはむはむ!むぅ!なんで反射されるのかな?!」

 

「…ベクトル操作だァ…お前の噛みつきは一生俺に届かねェよ」

 

垣根と帆風がメルヘンウォールを広げ外の様子を見る、身体に無数の噛み跡が残され力尽きて地面に倒れピクピクと身体を動かす上条達、腕に歯型が出来てしかめっ面をする麦野、自分の身体に傷をおわした事に驚く削板に一方通行に攻撃を与えられず逆ギレしているインデックス…かなりのカオスだった

 

「お〜い、無事かバカップル共」

 

「「「……痛い」」」

 

「大丈夫ですか女王に御坂さん!?それに上条さんも…!」

 

ツンツンと3人の体に触れ無事か確認する垣根、帆風もはわわと慌てながら3人の体を揺する

 

「忠告し忘れた俺も悪かったよ…あの服は霊装…つまり能力の産物だからお前の右手で触れたら壊れるって教えるの忘れてた…テヘペロ☆」

 

「お前ブチ殺すぞ…あぁ…不幸だ…」

 

「私達はなんで噛まれたの?女同士なのに…」

 

「り、理不尽力だわぁ…」

 

知っていたのに忠告しなくてごめんと舌を出してわざとらしく笑う垣根に軽く殺意を覚える上条、恐らく美琴と食蜂、その他に噛み付いたのは照れ隠しだろう、その照れ隠しで上条達は瀕死なのだが…

 

「……さてと、お前らこの子の護衛頼むぞ、ちょっと俺は野暮用が出来たからな」

 

「…あァ?野暮用てなンだていとくン?」

 

「…お客様のお出ましだからサ」

 

垣根が少しこの場から離れると上条達にインデックスを守っていろと指示する、一方通行がどこへ行く気だと睨むと垣根はお客様への出迎えだと言ってベランダに出て手すりから地面へと飛び降りる、そして地面にたどり着く前に未元物質の力で速度を低下させ無事に着地する

 

「…出てこいよ魔術師、さっきからそこにいるってのはバレてんだよ」

 

「……バレていたのか」

 

垣根が誰もいない場所を見て笑うと誰もいない風景が陽炎の様に揺らぐ…そしてその揺らぎの中から一組の男女が姿を現わす、その2人は先程の情報で見た魔術師と呼ばれていた男と女だった、髪を赤く染め身長2mはあろう長身痩躯に耳や指にピアスや指輪をはめた黒い神父服を着たまだ幼い印象がある少年、黒い髪をポニーテールにした奇抜なファッションをした刀を差した女性、彼らを見た瞬間インデックスの顔が恐怖に染まる

 

「魔術師…!」

 

「まさか魔術師の存在を知っている者がいるとは…貴方は一体何者ですか?」

 

「単なる超能力者の第一位だよ」

 

女性の方が垣根が魔術師の存在を知っている事に眉をひそめ何者かと問いかける、垣根は超能力者と言って笑うと左手をポケットに突っ込みながら答える

 

「…先に言っておきます、彼女を私達に引き渡してくれませんか?」

 

「断る」

 

「…はぁ…仕方ない、神裂、さっさとこいつを始末して彼女を回収しよう」

 

20歳は超えているであろう女性がインデックスを寄越せと脅すが垣根は一蹴する、赤髪の男が溜息をついて殺すかと呟く

 

「やれるもんならやってみやがれ魔術師、俺を倒せるもんならな」

 

「…仕方ありません、実力行使でいかせてもらいます」

 

垣根がやれるならやってみろよと挑発し女性が柄へと手を伸ばす、男の方も手から炎を出して垣根を牽制する

 

「…何年振りだろうな…魔術師と戦うってのは」

 

「……何だと?」

 

垣根が魔術師と戦うのは何年振りだと笑うと男の顔が歪む

 

「テストさせてくれよ魔術師、俺の実力がこの世界にどこまで通用するかをな」

 

垣根はそう言って獰猛に笑う、ここに超能力者と魔術師の戦いの火蓋が切って落とされた

 

 




この作品のていとくんの全力と互角に戦えるのはミーシャ=クロイツェフか雷神化美琴、白翼一方通行、フィアンマ(聖なる右 使用制限あり)、竜王の顎を出した上条さんぐらいでしょうか(ほぼ天使だらけ)、次点ではアックアさん(最盛期)、黒翼一方通行、キャーリサさん(カーテナ=オリジナル装備)くらいですかね、なおオティヌスやアレイスター、フィアンマ(ラスボス状態)、僧正さん達、コロンゾンやエイワス、最新刊の一方通行には絶対負けます

さあ初めての戦闘描写…まあねーちんはともかくステイル君だからな…他の超能力者を含めて自動書記戦でていとくん達の本気をご期待ください、なおこの作品は作者の独自解釈により成り立っています、よって未元物質などの自己解釈がありますがあまり気にしないでください、因みにていとくんが左手をポケットに突っ込むと言う行動は原作でていとくんがよくポケットに左手を入れているからです、次回もお楽しみに


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ステイル=マグヌス14歳(噓だろ)と神裂火織18歳(23歳と言うな)

タイトルはギャグぽいですがギャグじゃないです。ステイル君とねーちん、自動書記とヘタ錬さんは真面目に戦闘描写する予定…でもこれはギャグ小説ですからね。アニェーゼさんとかテレスティーナさんはギャグで書きます

別にステイル君をイノケンティウスの攻撃を防ぐ盾にしたりとかギャグで書こうと思えばかけますけど…大抵の人が同じことしてそうだから二番煎じになりそうなのでやめました。それにステイル君はよくかませにされるけど実力はレベル5クラス…(原作の)ミコっちゃんやみさきちになら勝てる実力者ですからね…この作品では勝てるかどうかは別として…ねーちんは霊装こみなら宇宙行けますしね。それにかませになるキャラは基本強キャラだから…つまりこの二人は本当は強いんだ(断言)前書きが長くなりましたが…要するにギャグなしの回て事です


魔術師 ステイル=マグヌスは内心憤っていた、禁書目録を回収する為に歩く教会から漏れる魔力を探知してここまで来た、途中で歩く教会が破壊された事も知ったがこれはチャンスだと彼女を捉える為に仲間の神裂 火織(かんざき かおり)と共にこの学生寮までやって来た…だが彼等の目の前にインデックスを回収するのに邪魔立てする男がいたのだ

 

「さあ楽しませてもらおうか」

 

ワインレッドのスーツを着た少年…垣根 帝督が笑いながら彼等の目の前に立ち塞がる、自分達の事情も知らない癖に偽善者ぶる垣根に苛立ちを覚えたステイルは口に咥えていた煙草を掴み取るとそのまま放り投げる

 

炎よ(Kenaz)ーーー」

 

その放り投げた煙草のラインから炎が生まれ出る、その熱度は3,000度、あらゆる物質を白い灰か黒い炭と化すその炎を剣の様にステイルは振るう

 

「ーーーー巨人に苦痛の贈り物を(PurisazNaupizGebo)

 

ステイルは炎の剣…炎剣を真っ直ぐ垣根に振り下ろし炎剣が垣根に向かって行く、そして近づいた瞬間に炎剣が爆裂し垣根ごと周囲を炎で覆い尽くした

 

「ていとく!?」

 

インデックスが悲痛な悲鳴をあげる、あの魔術を生身で食らったら誰でも一瞬で死に至る、インデックスは無防備に食らった垣根を見て涙をこぼしそうになる…がふと気づく、上条達の顔に変化はない、目の前で友達を焼かれているというのに…

 

「は…口程にもない奴だ…さて残りの連中も始末して「あっちいな」…な!?」

 

ステイルが垣根が死んだと見て残りの連中を始末してインデックスを回収しようと歩こうとするが炎の中から声が聞こえ炎を見る、炎が不自然に消えるとその中にいたのは…繭だった、淡く発光する純白としか表現出来ないその繭を見て魔術師達は不可思議なものを見る目で繭を凝視する…だがそれは繭ではなかった、繭状に閉ざされていた未元物質の三対の翼が広げられ火傷の一つも負っていない垣根が現れる

 

「攻撃は防げたが…肝心の熱気までは完全遮断出来なかったか…」

 

「…天……使?」

 

「…馬鹿な、ここは学園都市…超能力を使う町の筈だ…なのに何故天使が!?」

 

垣根が熱気までは完全に遮断出来なかったと笑う、魔術師達は何故天使の姿をしているのかと驚愕に目を見開く、そんな中インデックスは冷静に垣根の翼を見る

 

(あの翼…その力の源は天使の力(テレズマ)と酷似してる…でも違う、天使の力じゃない…別の力…10万3,000冊の魔道書にも該当しない…あれは魔術じゃない…?)

 

「……見た目に反して随分メルヘンチックだな…滑稽過ぎて笑みが浮かんでくるよ」

 

「安心しろ、自覚はある」

 

「……灰は灰に(AshToAsh)―――塵は塵に(DustToDust)―――吸血殺しの紅十字(SqueamishBloody Rood)!」

 

インデックスが翼について思考する中、垣根の翼を見てステイルは馬鹿にする様に笑い垣根もつられて笑う、そして今度は右手だけでなく左手に青白いもう一本の炎剣を生み出したステイルは垣根に斬りかかる、垣根は未元物質の翼を盾にして炎剣を防ぐ、翼には焦げ跡一つもない

 

「…成る程、口だけじゃあないらしい」

 

「だろ?もっと本気になってもいいんだぜ」

 

「……退きなさいステイル、私がやります」

 

「……頼む神裂」

 

口だけじゃない様だとステイルが憎らしげに呟き垣根が笑う、そんなステイルの肩に神裂が手を置き自分がやろうと言うとステイルは彼女の後ろへと移動する

 

「…その翼…天使の力と酷似している様ですが…何故能力者である貴方がその様な力を持っているのでしょう?」

 

「さあな、だがこれだけは言っておく、これは天使の力なんかじゃない。俺が引き出してる物質…未元物質で構成されている翼だ」

 

「…未元物質?…まあいいでしょう…七閃」

 

神裂が魔術サイドとして何故天使の力に似た力を扱っているのかと問いかける、垣根はこれは未元物質だと教えると彼女は首を傾げながらも刀に手を触れる、そして街路樹や学生寮の壁が同時に切断される

 

「え…!?今のは…居合!?目に見えない程の斬撃を七回放った!?」

 

「オイオイ、魔術師と自称してる発火能力者の次はサムライかよォ…なンて奴等に狙われてんだオマエ」

 

帆風が七回目に追えない程の神速で居合を放ったのかと驚き、一方通行も魔術師の次はお侍さんですかと呟く

 

「…今のは警告です、彼女を渡さなければこうなると言う事です」

 

「……魔術…に見せたフェイクか、ワイヤーで周囲を切断する…抜刀・納刀を七回繰り返して切り裂いた居合と間違えさせる事で敵を欺く…天草式が用いる技だな」

 

「!?…一発で見抜いたのですか!?それに天草式の事まで…!」

 

「まあな、そっちの少年は予めここら辺にルーンを設置しておいて炎の魔術を使ってるんだな」

 

先程の技が刀を鞘内で僅かにずらす動作の影で操る七本の鋼糸(ワイヤー)で切り裂いたのだと指摘する垣根に驚く神裂、更にステイルの魔術も見破りステイルも動揺する

 

「…!僕のルーンに気づいただと…もしかして…君も魔術師(こっち側)…」

 

「違えよ馬鹿、俺は正真正銘の超能力者だよ…ただ魔術の存在を知ってて何回か魔術師との戦闘経験もあるだけの超能力者だ」

 

(予想外です、まさか科学サイドに魔術の存在を知る者がいるとは…それにあの翼…偶像の理論を利用して翼を得ている?いえ天使の力に似ていますが…天使の力とは全く違う…一体あれは…?)

 

ステイルが垣根は魔術師かと考えるが垣根はそれを否定する、神裂は学園都市に魔術の事を知る人間がいるなどと思わず眉をひそめる、そして翼の正体を必死に考える…だが彼女の頭では翼の正体を理解する事は出来なかった

 

「どうした魔術師、もう降参か?まだ魔法名すら名乗ってねえだろ」

 

「……愚問だね、これくらいで降参するとでも?」

 

「……出来れば魔法名を名乗りたくはなかったのですが…」

 

垣根が挑発するとステイルは睨む様に笑い返し神裂はゆっくりと目を閉じる

 

「…我が名が最強である理由をここに証明する(Fortis931)

 

「……救われぬ者に救いの手を(Salvere000)

 

彼等は自分達の為すべき事をする為に魔法名(殺し名)を名乗り垣根を倒さんと攻撃を放つ、炎剣を両手から出現させ垣根の未元物質の翼と斬り合う、七閃が翼を切断しようとするが表面に斬撃の傷跡を残すだけで垣根には届かない、垣根は翼を剣の様に振るい神裂の刀 七天七刀とぶつかり合う、翼を勢いよく羽ばたかせ烈風を起こしステイルの炎剣を掻き消す

 

「なあ知ってるか。この世界は全て素粒子によって作られている」

 

「……素粒子…すみませんが私達は科学に疎いもので…何の事やらさっぱり分かりません」

 

「あ、やっぱり?素粒子てのは分子やら原子より小さい物質…簡単に言えば人間の細胞やそこら辺の石ころ、あんたの刀も素粒子から出来てる」

 

「……それがどうかしたか?」

 

神裂の肉体強化魔術で強化された腕から放つ拳を垣根が六枚の翼の一枚を盾にし、その翼を無数の羽に変換してばら撒く事で衝撃を阻害する、垣根は攻撃を防ぎつつ神裂達と会話を唐突に始める、ステイルがその話がどうしたと苛立ちながら呟き垣根がそれを聞いてうっすらと笑う

 

「まあよく聞け、素粒子には種類があってな、素粒子間の相互作用()を伝え運ぶ粒子ゲージ粒子…光子(フォトン)やらヒッグス粒子、重力子(グラビトン)やらがゲージ粒子の仲間だな、物質を構成するフェルミ粒子であるクォークやレプトン…他にも素粒子てのはある。この世界はそういう素粒子で物質や生物全て構成されている訳だ…だが」

 

垣根は魔術師達にもわかりやすい様に素粒子の種類を伝え、世界は素粒子で構成されていると笑う、それがどうしたと神裂達は垣根を睨む、そして一呼吸おいて彼はこう言った

 

「俺の『未元物質』に、その常識は通用しねえ」

 

轟!と神裂の攻撃を防ぐ為に無数の羽に変換させた翼が演算によって再構築される。物理法則を無視し異世界から引き出された様な白い翼が美しくも禍々しく光る、その翼で空気を叩き上空へと飛翔する

 

「俺の生み出す…いや引き出している未元物質はこの世に存在しない物質…素粒子だ。ダークマターの本来の意味である暗黒物質が理論上は存在する筈だの、まだ見つかっていない…なんて低次元な話じゃない。本当に存在しないんだよ」

 

本来の物理用語である暗黒物質(ダークマター)は重力などの状況証拠から存在すると言われている物質である、だが垣根の未元物質は本当にこの世界に存在しない物質を引き出す能力だと2人に教える、そして上空に佇む彼の白い翼が凄まじい光を発し2人は目を手で覆う…その瞬間2人は全身に焼けるような痛みを感じた

 

「「な!?」」

 

「そして存在しない物質には存在しない法則が働く」

 

2人は理屈やどういう原理が分からないが垣根が何らかの攻撃を行ったと察し、距離をとって攻撃から逃れる

 

「日焼けで死ぬとか愉快な死因だと思わねえか?」

 

「……何をした」

 

「今のは回折、光波とかの波は狭い隙間(スリット)を通ると向きを変えて拡散する…要するにこの翼には隙間があって、その隙間を通り抜けた太陽光を殺人光線に性質を変えたて事だ…まあ太陽光つっても紫外線と赤外線の二つがあるがな、殺人光線の方は本来無害な筈の赤外線を有害にしてんだよ」

 

日焼けで死ぬ気分はどうだと垣根が笑いステイルがどういう意味だと睨む、垣根は翼で回折した太陽光(正確には赤外線)が殺人光線になったのだと教える

 

「…そんな事が可能なのですか?」

 

「不可能だ、こいつがこの世界にある普通の物質(・・・・・・・・・・・・)ならな、だが俺の未元物質はこの世界にはない新物質、未元物質には既存の物理法則は通用しない、未元物質に相互作用を起こしたものは例え赤外線だろうが紫外線だろうが独自の法則に従って動き出す」

 

「異物てのはそういうもんだ。たった一つ混じっただけで、世界をガラリと変えちまう、それが俺の未元物質、まあこれは未元物質の単なる副次的な効果だから法則改変の方向性を決められる訳じゃあねえけどな」

 

神裂がそんな事が出来るのかと質問する、垣根はそれが普通の物質なら不可能と答え、自分の未元物質はこの世の物質ではない為、それに干渉した物質も独自の物理法則に従う…つまり物理法則を塗り替えてしまうという能力だと知り目を見開く魔術師達

 

(…異世界から能力を引き出してる?それって…私達が魔術を位相から引き出してるのと同じ?それにこの世の法則ではない?つまり異世界の法則を現世に適用する力(・・・・・・・・・・・・・・・)て事?…ていとくの未元物質て…もしかして魔術と同じ理論?)

 

インデックスは魔術師が魔術を使う為に位相から力を引き出す様に、垣根の未元物質も同じ様に異世界から引き出しその異世界の法則をこの世界に適用させる…つまり自分達 魔術師と同じ理論で能力を使っているのかと考察する

 

「それに回折で性質を変えるのは太陽光だけじゃねえ、可視光線には太陽光以外にもあるしな、それに相互作用するなら可視光線以外でもいけるしな」

 

垣根は未元物質の翼を広げ赤外線と紫外線を回折して赤外線は殺人光線に、紫外線は物質を腐蝕させる光線へと変換する。2人は光線を避けつつ炎剣や鋼糸を使った空気中に三次元的な魔法陣を描きそこから炎を放つも垣根はそれらを避けながら会話を続ける

 

「これが『未元物質』、異物の混ざった空間。ここはテメェらが知る場所じゃねえんだよ」

 

翼にありったけの力を込めて羽ばたく事で衝撃波を撒き散らす。ステイルはその衝撃波に吹き飛ばされ地面に転がる、神裂は両足に力を込めて踏ん張る

 

「く…!」

 

「おい、そろそろ本気を出してくれよ『聖人』、聖人に俺がどこまで通用するか試してえんだ」

 

「……聖人の事も知っているのですか…悔しいですが出し惜しみしていては負けてしまいますね。それに貴方なら私が本気を出しても…死にはしないでしょう」

 

聖人としての本気を出してくれと挑発しながら笑う垣根に対し神裂は確かに本気でかからないと自分が負けると察する、そして目を閉じ刀を強く握り独自の呼吸法で魔力を練り上げ聖痕(スティグマ)を解放する

 

「……唯閃」

 

彼女は必殺の抜刀術を繰り出す、放たれた斬撃に垣根は左に飛んで回避するが完全には避けきれず右翼が全て切断される、この世の物質での攻撃では大抵の攻撃を防ぐ未元物質を切断する威力に垣根が目を見開く、その数秒で神裂は空にいる垣根の正面に現れ拳を振るう、左の翼の一枚を盾にして前の様に無数の羽に変換して防御するが防ぎきれなかった衝撃が垣根を地面に叩き落とす

 

「な…!?未元物質を斬り裂いただと!?私の原子崩しでも何発も撃ち込むか長時間当てないと無理だってのに!」

 

「…あの女風力使いじゃねェのか?発火能力者?いやあの異様な身体能力も能力か?…どの能力だ?」

 

「もしかして上条さんや削板さんと同じ原石と言うものではないでしょうか?」

 

「違うんだよ、あれは魔術…あの女は聖人なんだよ」

 

「いやそれは見た目からして成人て分かるわぁ…23歳くらいかしらぁ?」

 

麦野が未元物質を斬り裂いたのに驚き、一方通行が神裂の能力は何だと思考し帆風は削板と同じ原石かと考える、だがインデックスはそれを魔術と言い彼女は聖人だと教える

 

「その成人じゃないんだよ、聖人だよ聖人、聖人君子の聖人…簡単に言うと神の子のレプリカ。生まれた時から神の子に似た身体的特徴・魔術的記号を持つ人間の事を示しその身に天使の力を宿す存在なんだよ」

 

「……そう言う設定なんだろ、はいはい…て言いたいがあの女の人の能力を見てるとそう思えてくるな…」

 

「あんなのデタラメよ、潤子先輩の天衣装着でもあそこまでの身体能力は強化できないし…そもそも天衣装着とは全く論理が違うと思うわ」

 

「理論としてはテレズマを腕力や脚力、五感・思考速度などの身体機能を強化してるんだよ、炎は空気中に三次元的な魔法陣を描く事で炎を出したんだね」

 

インデックスが聖人の事を説明し、あの炎を出した魔法陣についても説明する、上条は厨二病の設定だろ…と言おうとするが神裂の能力を見ると否定できずにいた

 

「チ、流石聖人…舐めてかかっていいレベルじゃねえな」

 

「…降参してくれれば嬉しいのですが」

 

「無理な相談だ、それにその力…時間制限付きだろ?なら時間限界まで耐えればいい、俺にはそれができる」

 

「……気づいていましたか」

 

垣根がやはり舐めていいレベルじゃないと笑い、神裂は降参しろと垣根を見つめる、垣根は時間まで耐えればこっちの勝ちだろと言うと神裂は顔を歪める、唯閃とは特定の宗教に対し別の教義で用いられる術式を迂回して傷つけるという攻撃術式である、その力はあの天使をも傷つける程であり垣根も喰らえばタダでは済まない、それ程の完全なる破壊力を生み出す唯一無二の技…だが唯閃は聖人としての力を大きく引き出す為本来は短時間しか使えない、抜刀術という形も一発で仕留める為である、故に時間が経過すればするほど彼女の身体は疲労していく

 

「つまりあんたが倒れるまで俺が逃げ切ればいい、それだけだ」

 

「……確かにその通りですね…私と貴方の一騎打ちならば…ですが」

 

「あ?」

 

「忘れていませんか?ステイルの事を」

 

垣根が時間まで逃げ切れば俺の勝ちだと笑いながら翼を再構築する為の演算を行う、そんな中神裂は嘲笑を含んだ笑みを浮かべ不審がる垣根にステイルの声が響く

 

世界を構築する五大元素の一つ偉大なる始ま(MTWOTFFTOIIGOIIOF)りの炎よ」

 

「…!?」

 

それは生命を育む恵みの光にして邪悪を罰す(IIBOLAIIAOE)

る裁きの光なり、それは穏やかな幸福を満たすと同時冷たき闇(IIMHAIIBOD)を滅する凍える不幸なりその名は炎 その役は剣(IINFIIMS)顕現せよ、我が身を喰らいて力と為せ(ICRMMBGP)ーーー!」

 

ステイルの服の胸元が大きく膨らみボタンが弾け飛び内側から巨大な炎が溢れ出る…それは真紅に燃え盛る炎の中に重油のような黒くドロドロした人の形をしたモノが芯となっている巨神を象る形状をしている炎の塊…これが魔女狩りの王(イノケンティウス)、その名の意味は"必ず殺す"、ステイルの切り札でありルーン魔術の一つである、召喚された魔女狩りの王は垣根に向かってその巨腕を振り下ろす

 

「くそ!」

 

白い翼でその巨腕を押さえつけ3,000度の業火から逃れる、だが別の方向から神裂が放った氷の魔術が飛来し垣根はそれを未元物質の素粒子で氷を削り壊す、魔女狩りの王の腕から逃れた垣根は未元物質の素粒子で物質を構築、槍や釘の形をした未元物質を神裂に放ち神裂はそれを見てビクッとなるも魔女狩りの王がその腕で攻撃を防ぎ内部で焼き尽くした

 

「わざわざ槍や釘の形にするとは…聖人の弱点も知っているようですね」

 

「当たり前だ、聖人てのはキリストの事だろ?ならその弱点は処刑・刺殺て事だ」

 

「その通り、軽薄な男かと思っていたが意外と勤勉の様だね」

 

「まあな…だがもっと意外なのはテメェの魔術は誰かを守る為の魔術だって事だな…魔法名の通り『あらゆるものからその誰かをを守るために最強となる』て事か…見た目に反して優しいな」

 

「!……一々癇に障る奴だな君は…」

 

槍や釘の形にするのは聖人としての弱点を突く為かと神裂が察する、垣根は神裂の弱点を語るとステイルがよく分かったなと笑う、垣根も見た目に反してその魔術は誰かを守る為の物だと言って笑うとステイルは苦虫を噛み潰したような顔になる

 

「…そろそろネタバレの時間といこうか、なあ聖人 神裂火織に魔術師 ステイル=マグヌス」

 

「「!?」」

 

「あ?何故名前を知っているのかって?まあそれは置いておいて…そろそろ本音を語り合わせねえか?イギリス清教第零聖堂区 必要悪の教会(ネセサリウス)所属の魔術師さん達」

 

「…ね、必要悪の教会?それって確かインデックスさんが言っていた…」

 

垣根が2人の魔術師の名を言うと2人が名乗ってもいないのに何故?と目を見開く、そして次に言った必要悪の教会と言う言葉に帆風が反応する

 

「必要悪の教会…その魔術師達が…?ありえないんだよ!私は必要悪の教会の修道女なんだよ、その同じ教会の仲間がなんで私を襲うっていうの!」

 

「簡単だ、インデックス(お前)を守る為だよ」

 

「あァ?このガキを守る為だァ?何言ってんだていとくン、このガキを狙ってるンだろその自称魔術師達てのは」

 

「……そうだ、勘違いも甚だしい、僕達の目的は彼女の回収だ…彼女を守っている?どう解釈すればそうなるのかな…翼だけでなく君の頭もお花畑なのか?」

 

インデックスが仲間にこんな仕打ちをする筈がないと否定し一方通行も怪訝な顔をする、それを見てステイルはその通りだと煙草を取り出して火をつけて口に加える…口から煙を吐き出し垣根を嘲笑うが垣根の笑みは消えない

 

「嘘をつくのもいい加減にしろよ魔術師、いやこう言った方がいいか?禁書目録の二年前のパートナー達て」

 

「…パートナー?」

 

「そう、パートナー…更にその一年前…つまり三年前のパートナーの名前はアウレオルス=イザード…ま、こいつは今は関係ない…で、インデックスはこの3人の名前に聞き覚えはあるか?」

 

「……ないんだよ(・・・・・)、私はアウレオルスなんて人は知らないし、その2人とも追っている時以外の面識がないんだよ…」

 

彼らの事を垣根がインデックスの元 パートナーと称すると帆風が首を傾げる、垣根は会話を続けインデックスにこの名前を知っているかと聞くとインデックスは首を振る、それを見て魔術師達はその反応が当たり前と知りつつも顔を歪める

 

「ねえ、何を言ってるのか分からないんだけど?」

 

「そうだな、簡単に言うと…インデックスは一年前以上の記憶がねえんだよ、そうだろ?」

 

「「「「「「「な……!?」」」」」」」

 

美琴が何を言っているのか分かるように言えと睨むと垣根が簡潔に言った、インデックスには一年前以上の記憶がないと、それを聞いて目を見開く上条達と知っていたのかと下を向くインデックス

 

「……知ってたのていとく?」

 

「言っただろ、俺は全てを知ってるてな」

 

「…でもどうしてこのガキの記憶がねェのがこいつらとこのガキをどう結びつけるンだ?」

 

「……完全記憶能力て知ってるか?」

 

「む?それくらい俺でも知ってるぞ、一度見聞きした事柄は瞬時に覚え絶対に忘れない…て言う体質だったよな」

 

インデックスが自分の記憶がないことを知っていたのかと聞くと垣根は頷く、一方通行が何故神裂達がこいつの記憶喪失に絡んでいるのかと言うと垣根は完全記憶能力と言う単語を出す

 

「そう、一度見たものを絶対に忘れない…それがインデックスの体質…それに精神調整を何十回も繰り返して大量の防御機構(宗教防壁)を格納する事で魔道書の原典の汚染を防ぐ事により10万3,000冊の魔道書を記憶しているんだ」

 

「…確かに完全記憶能力なら…沢山の本の記憶ができるわねぇ…でも結局それはこの子の記憶喪失と何の関係があるのかしらぁ?」

 

「…後は魔術師達から聞くんだな」

 

垣根が完全記憶能力のお陰で10万3,000冊の魔道書の記憶しているのだと語る、食蜂がそれなら確かに無数の本を一言一句まで完璧に記憶出来ると肯定するもそれがインデックスの記憶喪失に関係があるのかと首をひねる、垣根は後は魔術師達に聞けと首を向ける

 

「…ステイル」

 

「…言うな神裂、こいつの思惑に乗ってはダメだ…」

 

「……もうここまでバラされては隠しきれませんよ…私だって不本意です…ですが、彼以外が納得すれば…インデックスを保護できるかもしれません…」

 

「しかし…!」

 

「…なら貴方はあの少年を倒せるのですか?仮に倒しても彼と同じ強さを持つ人物達を後6人も相手にしなければいけないのですよ」

 

「…!…勝手にしろ、どうなっても知らないぞ」

 

神裂がステイルを見る、ステイルは首を振って言うなと睨む、だが神裂は事情を言った方がインデックスを引き渡してもらえると言うとステイルが舌打ちして好きにしろと投げやりに叫ぶ

 

「……彼の言う通り、インデックスは私達と同じ必要悪の教会の同僚です………それと同時に…大切な親友だったんですよ(・・・・・・・)

 

神裂が告げた言葉を上条達は理解出来なかった、同僚…と言うのはわかるが親友というのはどう言う事だ?しかもだったと言う過去形…そもそも完全記憶能力を持つのなら記憶喪失にならないのではないかと思い始める上条達に神裂は言葉を続けた

 

「彼女の脳の約85%は10万3,000冊の残りの1魔道書で埋め尽くされています…そして残りの15%分の容量しか記憶を覚えられません…それだけの容量では一年しか持ちません…彼女は一年毎に記憶を消さないと頭がパンクして死んでしまうんですよ」

 

「「「「「「…!?」」」」」」

 

「……死ぬ?私が?」

 

「……はぁ?」

 

神裂が何かを堪えるように彼女の記憶を消さないと脳がパンクして死んでしまうと痛々しそうに語る、それを聞いてインデックスや一方通行達は目を見開く…が、帆風は「何言ってんのこいつ?」と言う呆れた目をする

 

「…私はこの目で見たんですよ、忘れられない記憶に圧迫されて苦しむ彼女の姿を…彼女は最後に何と言ったか分かりますか?…「ごめんね二人共」…彼女は自分が苦しいのにも関わらず私達に謝ったんです。私達と過ごした思い出を全て忘れてしまう事に…」

 

「……君達には分かるか?助けたかったのに助けれなかった僕達の気持ちが…僕らだって彼女を傷つけたいわけじゃないんだ…」

 

「お願いします…インデックスが苦しむ前に…私達に彼女を…彼女を死なせたくないと思うのなら…どうか」

 

「……先に言っておくが記憶を消去すれば君達の事も彼女は忘れる…そして10万3,000冊の魔道書を狙う敵と認識される…僕達の様にね…君達には何の益もない…だから…彼女にこれ以上楽しい思い出をあげないでくれ、彼女が記憶を失うのが怖くならないように…頼むよ」

 

神裂とステイルは語り続ける、彼らは顔を歪めインデックスの事を語る、その顔は今にも泣き出しそうな子供に見える、声も泣くのを堪えている風にもとれる、その事から彼らも心の底では記憶を消去したくないと思っていると理解出来る…そんな魔術師達に超能力者達は口を開いて答えた

 

「…で、今の話を聞いてお前らはどう思った?」

 

「……何言ってんだこいつら?て思った」

 

「…アホらしィ、聞いて損したなァ」

 

「同感だにゃーん、馬鹿馬鹿しくて逆に苛立ってきた」

 

「右に同じく、自分達を悲劇の主人公みたいに扱ってて凄いムカつくわ」

 

「…呆れて声が出ないてこう言う事をいうのねぇ〜こう思ったのは人生で多分初めてなんだゾ☆」

 

「まったくだ」

 

「わたくしも上条さんと同じ答えです」

 

「「……な!?」」

 

垣根が上条達にどう思ったと聞くと彼らが言ったのは神裂達が予想していた答えとは違った…全員が神裂達を睨みつけ敵意を露わにする

 

「なんだ全員同じ答えか…じゃ戦いの続きと行こうか、さっさと終わらせてやる」

 

「き、君達はインデックスを見殺しにしたいのか!?」

 

「記憶を消去しなければ彼女は死んでしまうのですよ!?」

 

垣根がそれを聞いて笑うとステイル達は今の話を聞いていなかったのかと叫ぶ、このままでは彼女が死ぬというのに…だが垣根は聞く耳を持たない、垣根は神裂に翼で接近すると片手に美琴のチェーンソー状の砂鉄剣と同じ原理の無数の素粒子で形成されたチェーンソー状の剣を持ち神裂に斬りかかる

 

「お前達の間違いはただ一つ、彼女の敵になった事だ…確かにお前らが敵として認識されればお前らは少しは辛くなくなるかもしれねえ…だが彼女はどうなる?記憶をなくし敵に追われ…どんな思いをしたと思ってる」

 

「……煩い」

 

「記憶を失ってもまた友達になればいい、それでもまた記憶を失えばまた友達になればいい…それを繰り返せばいい。それから逃げ自分達の心の負担を減らした時点でお前らは間違ってんだよ」

 

「……うるっせんだよド素人が!知ったような口を利くな!何も知らないくせに!私たちが今までどんな気持ちで彼女の記憶を消してきたかも知らないくせに!」

 

剣を七天七刀で防ぎ唯閃を放つ神裂、それを避けつつ神裂に言葉をかける垣根、神裂は怒声を発しお前に何が分かると怒る、七天七刀が垣根の頬を切り裂き血が流れる、それを気にせず垣根は冷たい声で言った

 

「……彼女泣いてたぞ」

 

「!?」

 

「地獄の底まで付いて来てくれる?…てな、その地獄を見せたのは親友だったお前らだろ」

 

「そ、それは仕方な…」

 

「仕方ないで済ますな、結局はそれはお前らの勝手だ。自分達が傷つきたくないから、そんな思いで彼女にこの1年間地獄を見せたんだろ…それで自分達は悪くない?は、悲劇の主人公気取ってんじゃねえよクソボケ」

 

インデックスが苦しんだか分かるか、この一年を地獄と称する程追い込んだのは誰だ?と垣根が神裂を睨む、神裂が仕方ないと言おうとした所を垣根はそんな言葉で済ますなと睨む、悲劇の主人公を気取るな加害者と呟くと翼を神裂に叩きつけ神裂は地面に激突する

 

「……ッ!?」

 

「お前らだって苦しいのは分かる、だが…それが彼女を苦しめ泣かせる理由にはならねえだろうが!」

 

垣根は大声で叫び翼を弓なりに湾曲させありったけの力を込めて羽ばたく、それにより衝撃波が発生し神裂は衝撃波により10メートル程吹き飛ばされる、だがその程度では彼女は倒れない

 

「…く、私とステイルを引き離した?ですが10メートル程なら一瞬で…」

 

彼女はすぐさま立ち上がり仲間の元へと移動しようとするがカツンと何かの足音が聞こえ振り返る、そこには…無数の彼女の敵がいた

 

『『『『『魔術師『神裂 火織』の姿を補足しました。これより戦闘及び捕獲を開始します』』』』』

 

「な……!?」

 

それは垣根の未元物質で生み出された自律兵器達…よく知る白いカブトムシだけでなく、偵察用の白いトンボ、接近戦用の白いカマキリ…他にも様々な昆虫の姿をした自律兵器や恐竜の姿をした自律兵器が50体程神裂を囲っていた。しかも全員が超能力を実装されている、カブトムシ達は神裂を見ると緑色に光っていた目を赤く染め神裂に向かって進む、神裂は七天七刀を握って自律兵器達に斬りかかった

 

 

「あの使い魔(アガシオン)…全部ていとくの使い魔なの?」

 

「ええ、垣根さんの未元物質から生み出された噴出点達、一個体ずつ様々な超能力が実装されています…それに壊れても未元物質を供給すれば再生する…恐るべき軍団です」

 

インデックスがあれは垣根の使い魔かと尋ね帆風があれは垣根の能力で生み出された軍団兵器達だと教える

 

「……魔女狩りの王!」

 

ステイルは神裂のことを気にしながらも魔女狩りの王に垣根を攻撃する様に命令する、魔女狩りの王の姿が両腕で2メートル以上の巨大な十字架を持った姿となる、その十字架はツルハシの様に垣根へと振り下ろす

 

「…で?」

 

垣根はそれを右の翼全てでその十字架を受け止める、そしてありったけの力を込めて翼で十字架を押し返すと十字架は再び人の形に戻る、魔女狩りの王の巨腕が垣根に向けて振り下ろされるが翼に塞き止められる、垣根は翼を羽ばたかせ後ろへと移動し塞き止めていた炎から逃れる、垣根の翼が魔女狩りの王にぶつかり魔女狩りの王が未元物質の翼により掻き消され黒い肉片が周囲に飛び散る…がすぐさま黒い飛沫が四方八方から集まり元の形に復活する

 

「炎の塊を攻撃しても意味は無い、周囲にあるルーンの刻印を全て破壊しなければいけねえんだよな」

 

「…ああ、その通りだ…だが君に何万枚もあるルーンをなんとか出来るのか?」

 

「…は、確かに普通はそうだろうな…だが俺にその常識は通用しねえ」

 

ステイルが自分が予め貼っておいたルーンを全て破棄しなければ魔女狩りの王は消滅しないと不敵に笑いそんな事は不可能だと高を括る、確かにそうだと垣根は認めるがそれは自分には通じないと笑い返すと翼を大きく広げる

 

「要するにルーンがなくなればいいんだ、つまりルーンを刻んだ(書いた)コピー用紙がなくなれば自然とそいつも消えちまうて訳さ」

 

翼を大きくはためかせ烈風を暴風の様に周囲に吹き荒れさせる、その風圧により周囲の建物などに配置されたルーンが描かれたコピー用紙が剥がれ風によりビリビリに破かれる…そしてルーンが無くなった事により烈風に魔女狩りの王が掻き消され粘性の液体が飛び散る…魔女狩りの王が再生する事はなく重油の様に黒い肉片は空気に溶ける様に消えてしまった

 

「……噓だ…い、の……けんてぃうす…いのけんてぃうす…イノケンティウス、魔女狩りの王!」

 

自分の最強の切り札が呆気なくやられた事にステイルは信じられず何度も魔女狩りの王の名を叫ぶ、だが世界になんの変化はない。垣根はステイルに向かって歩きだす、そしてステイルの正面に立つと彼は口を開いた

 

「あんな炎の人形でこの俺を止められると思ったか?」

 

「………あ、あ…」

 

「残念だったな、お前じゃ俺には勝てねえよ。工夫次第でどうにかなるレベルを超えちまってる」

 

垣根が威圧しながらステイルにそう言うとステイルは後退りしながら垣根を見る、垣根はステイルを見て笑いながら言った

 

「これが超能力者(レベル5)だ、テメェらが勝てる要素なんてなかったんだよ」

 

垣根がそう言った後白い翼がステイルを襲う、ステイルの頭部に打撃を喰らわせ彼の意識は一瞬で刈り取られ地面に倒れる。遠くから砲撃と破壊音の音が聞こえる、カブトムシ達と神裂が戦闘を繰り広げている音だ…だがそれもすぐに終わる。神裂の身体は唯閃で限界寸前、大してカブトムシ達は未元物質を供給すれば再生可能…誰が見てもこの戦いの勝者は明らかだった

 

 

 




無駄に長くなってしまった…後悔はしてる。次回はギャグです。いきなりラスボス(自動書記)はいきません。体力を回復させないと…自分はラスボス前には必ずHPとMPが満タンで挑む派ですからね。基本MPを使わない通常攻撃でモンスターを倒してました。薬草は常に99枚袋に常備して回復は薬草です

ステイル君とねーちんがほぼほぼかませだった?ミコっちゃんや上条さんなら苦戦してた筈です。相手が悪かった。なお一方さんやむぎのん、ソギーなら同じ結果です。みさきち?彼女に肉体労働を期待するな。さて次回は自動書記前のギャグ回ファミレスにて敵だった二人のツッコミが走る、お楽しみに


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ラスボスと戦う前にHPとMPを回復しておくのがセオリー

あれ?おかしいな?短く書くつもりがいつもより長いぞ?あれれ?…作者は短くて事が苦手なのかな?(今更)いつも長くて申し訳ない…反省してます…

ステイル君はイケメンなんです、インちゃんは可愛い女の子なんです…そんなステインを爆発させて見た…なんでステイン流行らないんだろうなぁ……後二次小説くらいねーちんとステイル君とインちゃんが幸せに暮らすやつがあってもいいと思うんだ。特にステイル君は報われてもいい(原作の活躍を見て)…

さて長くなりましたが…ペンデックス戦前のギャグ回をどうぞ


「………終わったの?」

 

「ああ」

 

上条の部屋から出て来たインデックスが垣根に声をかける、垣根は軽く笑って返事を返す。上条達も垣根の元へ集まってくる。垣根の目の前には倒れ伏したステイルの姿がある

 

「……ステイル…」

 

『マスター、捕縛完了しました。』

 

「ご苦労さん、戻っていいぜ」

 

そして一匹のカブトムシが垣根達の目の前に現れる。その背にはボロボロの姿になった神裂が乗せられている、丁寧に未元物質で形成された縄で縛られドサリとカブトムシが彼女を転がす様にステイルの近くに落とした、カブトムシは羽を広げ何処かへ飛んでいく

 

「……ねえこの人達は本当に私の友達なの?」

 

「ああ、本当だ…そこに倒れてる少年も君を守る為に必死に努力して来たんだろうな、血の滲む様な努力を重ねて…全ては君を守る為に」

 

「……思い返してみれば…逃げるのに必死で考えてなかったけど…時々凄く辛そうな顔をしてた気がする…」

 

「……なんか話だけ聞いてれば垣根さんが悪役に見えてくるわねぇ」

 

インデックスの問いに垣根が答える、インデックスは複雑そうな顔をして二人の魔術師を見る…彼等は悪役であるが悪党ではない、寧ろ本質はヒーローかもしれない

 

「……こいつらも辛かったのはわかるよ…でもよ、こいつらがとった行動は間違ってた…そうだろ」

 

「……えぇ、同情はするけど…共感は出来ないわ」

 

「安易な道に逃げやがって…情けねェ奴らだ」

 

「思い出すだけでもイライラする…あームカつく」

 

「自分達の心の気持ちを楽にする為にこいつが苦しむ事を忘れているなんて…根性以前の問題だ」

 

上条と美琴が同情はするが共感は出来ないと呟き一方通行と麦野も苛立った顔でステイルと神裂を見る。削板も大きく頷く

 

「それに脳が一年でパンクする訳ないでしょう…この人達はお馬鹿なのでしょうか?それとも本当は嘘だったとか?」

 

「「「「「「…え?」」」」」」

 

「え?」

 

「……おい、お前ら…もしかして気づいていなかったのか?」

 

帆風が何気なく言った一年で脳がパンクする訳がないと呟くと垣根以外の超能力者がキョトン顔をする、それを見て帆風もキョトン顔になりインデックスは「え?なにこの空気?」と全員の顔を見る…そして垣根は呆れ顔で上条達を見る

 

「……あの潤子先輩、それどういう意味ですか?」

 

「…もしかしてわたくしが間違ってますか?完全記憶能力者は過去に何人もいますし…その人達が記憶がパンクして死んだなんて聞いた事ありませんから…あの人達はなにを言っているんだという意味で言ったんですが…」

 

「「「「「「……あ」」」」」」

 

「超能力者ぇ……縦ロールちゃんは正しいよ、よく出来ましたー」

 

「えへへ、ありがとうございます…後一年で15%も脳の記憶が埋まるのならインデックスちゃんは六歳程で死んでる筈ですし…他の完全記憶能力者がそんな年齢で死んだとは聞きませんし…」

 

「おお、賢いね縦ロールちゃんわ…ついでに言うと10万3,000冊の魔道書の記憶は知識…『意味記憶』に入る…つまり容れ物が違うて事だ…例えば思い出は『エピソード記憶』…容れ物で例えるならグラスとお茶碗みたいなもんだ…ついでに言うと人間は140年分の記憶が可能だしな」

 

「……難しくてよく分かんないんだよ…でも取り敢えず記憶を無くさなくてもいい筈、て事は分かったんだよ」

 

美琴がどう言うことと聞くと帆風は自分が間違っているのかと慌てるが垣根がそれで合ってると頭を撫でる、撫でられて嬉しそうな顔をする帆風に垣根は更に記憶について詳しく教えインデックスは頭を抱えながらもなんとか理解する

 

「で、お前らは馬鹿なの?死ぬの?お前ら頭いいはずだよな?てか何に怒ってたんだよ」

 

「俺が怒ってたのは何でインデックスのそばにいて支えてあげなかったんだ!て意味でして……」

 

「……怒ってたから気づかなかったわ」

 

「記憶の事に関しては全く知らなかった!俺は馬鹿だからな!だがそんな知識根性でどうに「ならねえよばーか」……すまん」

 

超能力者は演算能力が高い…つまり天才と言うべき存在である(上条は平均より少し高いくらい、削板は常にテストは赤点ギリギリ)。その天才(笑)共は大能力者(帆風)が気づいた事を気づけなかったのかと垣根が見下す様な目で見る、う…と申し訳なさそうな顔をする超能力者達

 

「言い訳してんじゃねえよクソボケが、お前らは超能力者(笑)か…あぁ情けねえ…こんなのが俺と同じとか…悲しくて涙が出てくるぜ」

 

「そこまで言わなくていィだろォ!?」

 

「わ、私は気づいてたぞ!こいつらと一緒にすんな!」

 

「ちょ麦野さぁん!?そんな嘘つくなんて卑怯力高すぎよぉ!?あ、私も本当は気づいてたんだゾ☆」

 

一方通行がそこまで言うかと叫び麦野と食蜂は自分達は分かっていたと叫ぶが垣根の冷たい目は変わらない

 

「まあまあ…誰だって間違うものです、わたくしは女王達を咎めませんわ…」

 

「潤子先輩ぃ……その優しさが逆に辛いわぁ」

 

「なんで俺とお前らが第一位と第二位以下に分けられてるか知ってるか?そこに絶対的な(学力の)壁があるからだ…ぷぷ」

 

「「「「「「鼻で笑うな!!」」」」」」

 

帆風は笑って慰めるがその優しさが上条達には辛い、そして垣根が彼等を鼻で笑うと彼等の心が更に傷つく…そしてインデックスが純粋な目で彼等にトドメを刺す

 

「…とうま達て…馬鹿なの?」

 

「「「「「「ゲボォォ!?」」」」」」

 

純粋な女の子が言った悪意一切なしの無垢な言葉に上条達は口から血反吐を吐いた、悪意のない罵倒ほど心に刺さるものはない。

 

「…なんていうか、馬鹿っつーか……もう死ねよお前ら」

 

「「「「「「そこまで言う必要ある!?そこまでダメな事なの!?」」」」」」

 

「……ま、冗談はここまでにしておくとして…話聞いてたか聖人」

 

「……その話は本当なんですか?」

 

垣根が心底軽蔑する顔をして吐き捨てるともう涙目になっている情けない超能力者達が叫ぶ、もうやめてあげて超能力者のライフはゼロよ!状態である。垣根は冗談だと笑いながら神裂に話しかける

 

「今言った事は本当だ、人間の記憶は140年分は記憶出来る、それに本をたくさん読んでも意味記憶に覚えるからエピソード記憶とは関係がない、科学的にはな」

 

「ですが私とステイルは見たんですよ、彼女が苦しんでいる姿を」

 

「ちゃんと人の話を聞け、確かに科学的には(・・・・・)あり得ない……だが魔術ならありえる…例えば一年周期に記憶を消さないとインデックスを殺す術式…とかなら説明がつくだろ」

 

「「!?」」

 

話は本当かと言う神裂の問いに本当だと返す垣根、だが彼女は現に苦しんでいたと言うとそれが魔術だとしたらと垣根が言うとインデックスと神裂の目が見開かれる

 

「た、確かにそれならあり得ますが…もし仮にそうだとしても誰が彼女にそんな術式を…?」

 

「あ?決まってんだろ…お前らにその一年周期で記憶を消さないといけないて言ったのは何処の女狐だ?」

 

「!?……まさか…最大主教(アークビショップ)!?」

 

「そう、イギリス清教の最大主教…つまり清教のトップ ローラ=スチュアート…あの女がこいつにその術式をかけたんだよ…そうする事で一生イギリス清教が管理できる様にな…文字通りの首輪て訳だ」

 

垣根がお前らに誤った情報を教えた人物がその術式をかけた張本人だと言うと神裂は目を更に見開いた後怒りの形相に変わっていく…ローラ=スチュアート…イギリス清教のトップであるその女はインデックスを自分の手元に永遠に置き続ける為に記憶を奪わなければいけないと嘯き今まで二人を欺いてきたのだ、いや彼等だけでない、今までのパートナー達の思い出を、努力を、希望を、願いを踏み躙ってきたのだ

 

「あの女はそう言う奴だ…ずっとお前らを騙していたんだ…いやお前ら以前のパートナー達もな」

 

「…あの女!」

 

「まあ待て怒るのは後だ…で、俺達にはインデックスを苦しめる首輪を解除する力を持つ奴がいる…てな訳で協力しないか?インデックスを助ける為に」

 

神裂は自分達を騙した事、今まで彼女との別れを悲しみ涙を流したパートナー達の代わりに激昂する、それを制した垣根は彼女の首輪を破壊する切り札がこちらにはあると笑うと神裂に取引を持ちかける

 

「……協力…つまり手を結べと?貴方達にはなんのメリットもないように見えますが」

 

「は、確かに俺達には一見メリットがない様に見えるな…だがな」

 

垣根を疑う神裂だがそれを垣根は笑って返した

 

「強いて言うならインデックス(彼女)の幸せ…そしてお前らが苦しまない為…だな、救われぬ者に救いの手を…てな?」

 

「……貴方、お節介て言われませんか?」

 

「安心しろ、自覚はある」

 

垣根がただ救いたいだけだと言うと暫く茫然とする神裂…だが彼女は頬を緩ませてとんだお節介を焼くとこぼし垣根はそれを聞いてニヤリと笑う。垣根が彼女に向けて手を差し出すと彼女は少し戸惑いながら彼の手を握って立ち上がった

 

「さて協力する前に聞きたい事があるんだが…聞いていいか?」

 

「…いいですよ、それでその聞きたい事とは何でしょうか?」

 

垣根が真面目な顔になり神裂に真剣な顔つきである事を聞く。神裂も何を言うのかと思いながら首を縦に振って質問に答える

 

「……お前らがインデックスと過ごした場所を教えて欲しい、それにインデックスと一緒に行った場所も教えて欲しい。簡単に言えばお前らとインデックスの思い出の場所を教える。それが協力の前借金だと思えばいい」

 

 

「で、話は粗方理解した…取りあえずあの女狐を焼くとして…これはどう言う状況だ?」

 

「……垣根(協力者)に聞きなさい」

 

「………(…凄く気まずいんだよ)」

 

眼が覚めるといつの間にかファミレスのとあるテーブルに神裂と隣り合わせに座っていた…それならまだいい、そのステイルと向かい合う様にインデックスが座っていたのだ、神裂から垣根達と協力する事は聞いたが何故こんな状況なのかと神裂に聞く、神裂は垣根を睨む…当の本人はと言うと…

 

「お〜喫茶店によくある占い機だ…当麻百円貸して」

 

「嫌だよ…てかお前金もってんだろ」

 

「え〜俺お札しか持ってないしぃ〜当麻は貧乏人ぽい雰囲気があるから百円玉持ってそうだから聞いてみたんだよ…あ、両替でもいいぜ?一万円札と百円玉 100個の交換で…あ、百円玉も持ってないか」

 

「ぶん殴るぞお前」

 

喫茶店とかによくあるSecret Ballを片手に子供の様にはしゃぎながら上条に金をせびる、理由は貧乏人ぽいから百円玉持ってそうだからと挑発し上条が握り拳を垣根に見せつける

 

「おい、本当に同じ席でもいィのかよていとくン?」

 

「信用できるのかにゃーん?インデックスを連れ去って逃げるかもしれねえぞ」

 

「安心しろて、逃げてもカブトムシ達が捕縛できるから…それに今必要なのは和解…とまではいかねえが触れ合う時間なんだよ」

 

一方通行と麦野が同じ席にいさせてもいいのかと言うが垣根は大丈夫、大丈夫と笑いながら財布にあった百円玉をSecret Ballを投入する(それを見た上条は「あるじゃねえか!」と半ギレる)。

 

「…でもあの二人は本当に魔術師…能力者じゃないのかしらぁ?確かに二人共不思議力に溢れてるけどぉ」

 

「……可能性といえばあるわよ、あの…えっと成人…じゃなくて聖人?は炎と氷を形成してたし身体能力も規格外だった…その時点で三つ以上の能力を持つ多重能力者て事になるわ…そんなの垣根さん以外はあり得ないもの」

 

「けどよォ、もう一人の男は炎だけだっただろォ?そいつは発火能力者て可能性もあンだろォ」

 

「まぁアー君達の意見は普通だ、いきなり魔術だの言われても信じられねえだろうからな…だがこれは噓じゃねえ、魔術は本当にあるんだ」

 

食蜂、美琴、一方通行は魔術の存在を未だに信じられない。垣根は魔術は本当にあると言う、いつもの巫山戯た垣根の顔ではなく真剣な眼差しで語りかける

 

「……まだわたくしも半信半疑ですが…垣根さんが言うなら信じます」

 

「……ありがと縦ロールちゃん」

 

「俺も信じるぞ帝督!帝督はいつも巫山戯てるが真剣な顔をしている時は嘘をつかないからな」

 

「野郎からの言葉は嬉しくねえな」

 

「おい!」

 

「はは、冗談だよ冗談、怒んなって」

 

帆風はニッコリと笑って信じると言う、削板も頷くが垣根がぞんざいな態度をとると怒ってくるが垣根が宥める

 

「…でもよあのババア…て言うほどでもねえけど姉ちゃんは強かったな、男の方は炎の人形が強く見えただけで」

 

「実際両方共強えよ、戦えば分かるさ…それとねーちんはむぎのんとタメ(・・)だからな」

 

「へ〜麦野さんと同い年なんだ…え?垣根さん今なんて言った?」

 

麦野が神裂の事をババアと呼び神裂は強かったがステイルは微妙と麦茶を飲みながら呟く、垣根は占い器から出た結果が微妙だったのか渋い顔をしながら呟く、その言葉の中に信じられない言葉がありそれに美琴が反応する

 

「あ?実際両方強えよ…」

 

「そこじゃねェ、誰とあのババアがタメだって?」

 

「むぎのんだよ、むぎのんと同じ18歳だよ」

 

「「「「「「噓だぁぁぁ!?」」」」」」

 

垣根が神裂は麦野と同じ18歳だと教えると帆風以外が大絶叫をファミレスに響かせる、他の客達が何事かと垣根達の方を見る

 

「いやいや…あの人俺より10より上だろ!麦野さんとタメとか信じられねえ!確かに麦野さんも老けてるけど!」

 

「絶対成人は超えてるでしょ!あの顔よ?!絶対サバを読んでるでしょ!?麦野さんも老けて見えるけどあれより酷くないわ!」

 

「ぜぇぇぇぇったいに噓よぉぉ!麦野さんでも本当に18歳?て思えるけどあっちの方が18歳に見えないわぁ!」

 

「そうだそうだ!てかお前ら後でお前上/条、御/坂、食/蜂決定な!」

 

上条と美琴、食蜂が麦野の年齢と見た目も弄りながら神裂が18歳とか信じられないと叫ぶ、麦野が青筋を立てて後で上条達の上半身と下半身を分けてやると内心で企む

 

「……冗談はむぎのんだけにしろよォていとくン、むぎのんでも18はキツいてのに…あれが18なら木原くンも18だよ」

 

「嘘はいかんぞ!麦野でも18歳には見えないのに…更にあっちの女は全然見えない!」

 

「オッケー、お前ら喧嘩売ってるんだな、表出ろ全員ブ・チ・コ・ロ・シ・か・く・て・い・な!男の×××切り落として、女の×××に焼きを入れてやらぁ!ヒィヒィ鳴かせてやるから覚悟しろぉぉ!」

 

「落ち着いてください麦野さん!こんな所で原子崩しは危険ですから!それにNGワードを連呼しないでください!」

 

一方通行も削板も麦野を引き出しにして神裂が18歳には見えないと言うが麦野は完全にブチ切れて放送禁止用語を連呼し原子崩しを何個も展開させ怒鳴り散らす、帆風は大慌てで麦野を押さえつける

 

 

「……彼らは何をしているんだ…煩くてかなわないよ…」

 

「……それだけ平和と言うことです」

 

ステイルがギャーギャー騒ぐ垣根達を呆れた目で見る、あんな連中のリーダー的な奴に負けたのかと思うと悲しくなるステイルに神裂は平和だとお茶を啜る

 

「「「………………」」」

 

インデックスはジィーと二人を見つめ二人もインデックスを見つめている。だが3人共見つめ合ったまま何も喋らず無言である

 

(…おい、神裂何か喋れ、この空気が重い)

 

(な!?貴方が喋りなさいステイル!)

 

(はぁ!?僕も何を喋っていいか分からないよ!僕14歳、君18歳。年下の代わりに話せよ!)

 

(目上の者を敬いなさい!それに私も何を言えばいいのか分かりません!)

 

(あぁもう!この年上使えないな!)

 

(黙りなさい不良神父!)

 

ステイルも神裂はお互いの肩を叩きながら早くインデックスに喋れ、と急かすが二人はお互いに喋るよう命令する為会話が始まらない…そんな時だ

 

「……ねえ」

 

「(!?し、喋ってきた!?うおお!何を喋ればいい!ああもう、何を言ったらいいか分かんないよ!)…なんだ」

 

「(!あの子と会話をするのは久しぶりです…落ち着きなさい神裂 火織!深呼吸して…ひぃひぃふぅ…)…何でしょう」

 

インデックスが声をかけてきた為ステイルと神裂は表情は変えぬままインデックスの顔を見る、内心ではドギマギして緊張しテンパっているが誰も気づかない

 

「……本当に貴方達は私の友達だったの?」

 

「……あぁ、2年前だった…君と初めて会ったのは…いつもニコニコ笑って…綺麗だったよ、今も変わらないけどね」

 

「えぇ…楽しかったですねあの頃は……貴方は覚えていないでしょうが…いえこの言い方には誤りがありますね…私達が貴方から記憶を奪ったのですから」

 

インデックスが自分は友達だったのかと簡潔に聞く、ステイルが初めて会った時から変わらないと呟き神裂も少し顔を緩ませる…だが二人の奥底にあるのは後悔と罪悪感…彼女を苦しめたと言う罪の意識からか彼女をちゃんと見れない

 

「……ごめんなさい」

 

「……何で君が謝るんだい?僕らが君を苦しめたというのに」

 

「そうじゃないんだよ…確かに貴方達は私を攻撃してきた…でも私の所為で貴方達も傷ついていたんだよね」

 

「それは……」

 

「本当は貴方達は優しい人なんだよね…なのに私を傷つけようとして…逆に傷ついてたんだよね…ごめんね、追われてる途中で気づいても良かったのに…気づいてあげられなくてごめん」

 

インデックスが二人に頭を下げる、自分の所為でステイルと神裂が苦しんでしまったと悲しげな顔をする、そして二人が自分の所為で苦しんでいた事に気付かずけなくてごめんねと謝る

 

「…これもきっと私が悪いんだよね、私と出会わなければ貴方達は…ううん、他のパートナーだった人達も辛い思いをしなくて済んだ筈なのに…」

 

「……違う」

 

「……貴方達が私に会わなかったらこんなにも苦しまなくてすんだのに…私と出会わなけ「絶対に違う!!」!?」

 

「君と出会わなければ!?巫山戯るな!君と出会えたから僕は救われたんだ!だからそんな事を言うな!ああ確かに大好きな女の子を傷つけたくなかった!苦しかった!でも…僕は君と出会わなければ良かったと思った事は一度もない!君と出会えて良かった!僕は心の底からずっとそう思ってる!」

 

インデックスが自分と出会わなければと呟きそうになった所でステイルが大声で叫びバン!と両手をテーブルに叩きつけて立ち上がる、目を見開くインデックスにステイルは彼女に向けて初めて本心を暴露する

 

「これは僕が決めた道なんだ!例え君に嫌われても僕は君を守ると!君は覚えていないだろうけどあの日、君に誓ったその時から僕は愛したインデックス(女の子)を守るて僕は決めてるんだ!だから君は悪くない…だから自分の事を卑下しないでくれ、僕は君の笑顔が好きなんだ、だから笑顔のままでいてくれ!」

 

ステイルが大声で心の底から本音を暴露する、インデックスはその言葉を聞き続けだんだんと顔を赤くしていく…ステイルは肩で息をしながら言いたい事を言い切って席に座りなおす…そこでインデックスが何故顔を赤くしているのか疑問に思うが神裂が目を細めながら言った

 

「……今の言葉…プロポーズか告白にしか聞こえませんよステイル」

 

「!!?いや、決して今の言葉はそんな意味では…//わ、忘れてくれ//」

 

「…………//」

 

(わぁ〜、何ですかこの甘い空気…このお茶が甘く感じます…無性に梅干しが食べたいです)

 

神裂が今のは告白かプロポーズか何かかとステイルに言うとステイルは顔を赤くしてインデックスから目を逸らす、インデックスも床を見てステイルに顔を向けない。神裂は無性に梅干しを摂取したくなった

 

 

「……携帯持ってて良かった、ステインはやっぱりいいな〜」

 

垣根はやはりカップリング写真を撮っていた

 

「こンな時でもブレねェなていとくン」

 

「……で、どうやってインデックスを助けるんだ?こんな所でゆっくりしててもいいのかよ?」

 

こんな時でもブレない垣根に一方通行が呆れた目を向ける、上条はこんな所で時間を潰していいのかと垣根に尋ねる

 

「安心しろ、言ったろ?首輪を破壊する奴もう手元にあるて…ま、ラスボス戦前に食事でもとって英気を養っとけ」

 

「でもその肝心力の切り札さんはどこにいるのかしらぁ?」

 

「あ?みさきちとミコっちゃんの近くにいるじゃねえか」

 

「?それはどう言う意味よ垣根さん?」

 

垣根がニヤリと笑って切り札はもう既にあると笑う、食蜂がそれはどこにいるのかと先程注文したスパゲティを咀嚼しながら呟くと食蜂と操祈の近くにいると告げて上条を見る

 

「……え?俺?」

 

「…逆にお前以外に誰がいるんだよ」

 

「いや俺の幻想殺しは確かに異能の力なら神の奇跡(システム)や火炎の塊だろうが超電磁砲とも打ち消せる自信はあるけど…魔術てのも消せるのか?」

 

「……おい、歩く教会破壊した事忘れてんじゃねえぞ」

 

上条が俺?と自分を指差す、幻想殺しが魔術も打ち消せるのかと垣根に質問するが垣根は歩く教会も破壊しただろと返す

 

「……てかさ、お前は幻想殺しの本来の使い方(・・・・・・)も幻想殺しがどういうモノ(・・・・・・)なのかも本当に理解してないんだな」

 

「?それはどういう意味だ垣根?」

 

「…知らねえならいい、言っても無駄だしな…たく、これくらいは説明してもいいんじゃねえかアレイスター?」

 

垣根が幻想殺しの本来の使い方とどう言ったモノなのか理解していないのかと溜息を吐く、上条は首を捻って自分の右手を見る…

 

「…まあ幻想殺しは魔術でも原石でも超能力でも打ち消せるんだよ、だからインデックスを縛り付けてる首輪を破壊すればもう苦しまなくてもすむ」

 

「なる程なァ…ならさっさと破壊すればいいじゃねェか」

 

「馬鹿が、確かに破壊するだけなら簡単だが…言ったろ?ラスボス戦までに英気を養えて?首輪を破壊したら即戦闘なんだ…やるなら広くて人のいない戦いやすい場所でやんねえとな…被害が馬鹿デケェし」

 

「「「「「「「?」」」」」」」

 

垣根が幻想殺しは超能力だろうが魔術だろうが問題なく打ち消せますと雑に説明する、一方通行が今すぐにでも破壊しろとこぼすが被害が出ないような場所じゃないとダメと垣根が言った為全員が首を傾げる、まるでその言い方だと誰かと戦うような感じだと…なおステイルとインデックスはいまだに目を合わせない、神裂は気まずそうに黙ってお茶を啜っていた

 

 

「……ここなら被害が少なくなるな」

 

第一九学区、再開発に失敗し寂れてしまった学区…街並みは古臭く、現代では既に廃れてしまった蒸気機関や真空管等を調べる研究機関が所々に見える…噂としては古い技術の実験場として使うために、わざと寂れさせているとも呼ばれる…が、本当に使う古い技術は予め加群に回収してもらったので思う存分壊しても構わない、そうアレイスターから許可を貰っている

 

「で、お前ら準備はいいか?誰も帰りたいとか思ってたりやり残した事はないか〜?」

 

「何馬鹿な事言ってンですかていとくン?、そンな最後のお別れ済ましたかァ?見たいな風に言うなよ…なんかフラグぽいンだよ」

 

「ここまで来た以上最後まで見届ける義務がありますから…寮監の罰を受けても構いませんわ」

 

((あ…寮監の事忘れてた…(白目)))

 

垣根が思い残した事はねえかと全員に言うと全員は大丈夫大丈夫と頷く、垣根はそういえば自動書記の事を伝えるの忘れてたと思いながらももう面倒だからいいやと考えインデックス達を見る

 

「「……………」」

 

「…早く始めませんか?このラブコメ見たいな雰囲気から抜け出したいので…」

 

「…了解、当麻インデックスの喉に刻まれた不気味な紋章に触れろ、それが媒体…つまり根源だ」

 

まだ頬を赤くしたままお互いの目を見ないステイルとインデックスに早くこの甘ったるい空気から解放しろと神裂が懇願する

 

「わかってるよ…でも女子の口の中に手をいれるなんてあれだよな…他から見れば犯罪……」

 

「……煩え、さっさとやれ」

 

上条が犯罪ぽくないかと言うと垣根はええから早くせんかいと上条を蹴り飛ばす、上条はインデックスの喉元に手を入れ口の中を探る、それを見てステイルが嫉妬したのは秘密

 

「…しかし先輩の右手に触れれば解決なんて…二人には悪いけど…呆気ない幕引きね」

 

「うんにゃ違うけど?」

 

「「「「「「「へ?」」」」」」」

 

美琴がこんなにあっさり解決するなど二人に悪いと言うが垣根がそんなわけねえだろと返すと全員が唖然とする、上条もインデックスの口に手を入れたまま唖然としている

 

「ふえ?そりゅどゆひみにゃのへいひょく?(え?それはどう言う意味なのていとく?)」

 

「…なにか不幸の予感がピンピンして来ましたよ…」

 

インデックスがどう言う意味かとほがほがしながら聞いてくる、上条も自分の不幸センサーが鳴り響いてると冷や汗を流す…その時だ、上条の右手が喉の『首輪』の紋章に触れた、ガラスが砕けた様な音が鳴り響く…そして上条が凄まじい衝撃と共に勢いよく吹き飛ばされる

 

「「先輩/上条さん!?」」

 

「「「な!?」」」

 

「……さてラスボス戦だ」

 

「……インデックス…さん?」

 

上条が吹き飛ばされて美琴と食蜂が慌てて上条に駆けつける、一方通行達はインデックスを見て驚愕し垣根は最終決戦かと笑う、帆風はインデックスを見る…インデックスはだらりと宙に浮かび眼球の中に血のように真っ赤な魔法陣が浮かび上がっている、常に笑顔だった彼女の面影はなくただただ感情が死滅した機械的な表情を垣根達に見せ口を開く

 

「警告、第三章第二節。Index-Librum-Prohibitorum――禁書目録(インデックス)の『首輪』、第一から第三まで全結界の貫通を確認。再生準備……失敗。『首輪』の自己再生は不可能、現状、10万3000冊の『書庫』の保護のため、侵入者の迎撃を優先します」

 

ガイド音声の様な無機質な声で喋るインデックスにステイルと神裂は目を見開いて彼女を見る

 

「……自動書記(ヨハネのペン)、記憶から魔道書の中身を知ろうとしたり『首輪』に干渉した者を自動的に排除する術式…いわば自動セキュリティだな、これはいわば迎撃モードて所か」

 

「自動書記…僕達は何度も見た事あるが…こんな状態は初めてだ」

 

「…あの女が仕組んだのでしょう…こんな非人道的な事を…」

 

「まあ、イギリスの女王(エリザードの婆さん)もインデックスの安全を守る為にこれに関与してるらしいがな」

 

垣根がインデックス…いな自動書記について説明すると通常モードの自動書記を見た事がある神裂達がここにいない女狐に殺意を向ける、垣根は最大教主以外にもイギリスの女王も関わっていると説明する

 

「さてあの自動書記…いやペンデックスをどう倒すのかが問題だな」

 

「ヨハネのペンとインデックスを混ぜるな、で、どうする?今の彼女と戦う事は一つの戦争を迎えるに等しいぞ」

 

「ああ、なんせ擬似魔神と戦うんだからな…まあ何とか…」

 

「「「「「「ちょっと待った!!」」」」」」

 

ペンデックスと垣根が今の状態のインデックスのあだ名を言うとステイルが名前と名前を混ぜるなと突っ込む、そして彼女と戦うのは戦争を迎える様なモノと称し垣根が頷く…そこで上条達が突っ込んだ

 

「聞いてねえんだけどあんなバケモンと戦うなんて!?」

 

「だから言ったろ?やり残した事はないか、て?」

 

「「「「「「あれそう言う意味だったの!?」」」」」」

 

(……帰った方が良かったかもしれません)

 

上条が怒声をあげるが垣根は言ったじゃんと返し超能力者達が叫ぶ、帆風は帰った方が良かったと今更ながら後悔する

 

「……『書庫』内の10万3,000冊により防壁に傷をつけた魔術の術式を逆算…失敗。該当する魔術は発見できず。術式の構成を暴き、対侵入者用の特定術式(ローカルウェポン)を組み上げます」

 

ペンデックスは小さく首を曲げて呟く、それは糸で操られる死体の様…

 

「…複数の侵入者達の中で優先事項を設定。目標『上条当麻』の破壊を優先。最も有効な魔術の組み込みに成功しました。これより特定魔術『(セント)ジョージの聖域』を発動、上条当麻を破壊します」

 

真紅の魔法陣が彼女の眼前を覆う様に展開される、そしてペンデックスが「何か」を歌うと眉間から真っ黒な雷の高圧電流が起こり亀裂が四方八方に広がり始め周りの空間を巻き込み拡張していく……その亀裂の奥から視線を感じ垣根は亀裂の先を見る…亀裂の先には何かが垣根達を覗きこんでおり、そこからわずかに獣のような匂いか漂う

 

(り、理解出来ない…科学では説明しきれない…これが魔術…理屈が通用しない概念…)

 

『………発動。『竜王の殺息(ドラゴンブレス)』』

 

帆風がこれが魔術、理屈が通用しない世界と恐れるように後退る…それと同時にその一撃が放たれた、それは直径1メートル程のレーザー兵器と例えるしかない光の柱 『竜王の殺息』…聖ジョージが滅したドラゴンが放つ一撃と同義と呼ばれる最大級の大魔術。例え超能力者だろうが魔術師だろうが当たれば皆平等な死が約束されるその一撃に対し垣根は…

 

「頼むぜ肉壁1号」

 

「へ?……あぎゃああぁぁぁ!!?」

 

「先輩ぃぃぃぃぃ!?」

 

「上条さぁぁぁん!?」

 

「「仲間を盾にした!?」」

 

垣根は上条を光線の軌道上に置く、上条はえ?と困惑しながらも無意識に右手を光線の軌道上にかざし…右の掌に凄い痛みが走り上条が痛みで叫ぶ、それを見た一同が息を合わせた様に「何やってんのこの人!?」と言う目で垣根を見る

 

「痛てててて!?全然消えねえぞ!?それに肩が脱臼するくらい痛い!?……あ、大分楽に…嘘ですやっぱりくそ痛えぇぇぇ!?」

 

「クソ!よくも当麻を!」

 

「いやアンタがやったんだろ!?何先輩を盾代わりにしてんだゴルァァ!」

 

「人の彼氏を何だと思ってるのかしらぁ!?私の殺気力が溢れてくるわぁ!」

 

竜王の殺息は光の粒子一つ一つが質を持つ為、粒子自体は幻想殺しで消せるは消せるが光の粒子は一つ一つの魔力の『質』がバラバラな為幻想殺しの処理が追いつかない。そんな光の柱に右手で押さえつけている上条は痛みの余り叫ぶ、それを見て垣根がペンデックスを睨むがお前のせいだと美琴達は返す

 

『……戦場の検索を開始…完了。敵兵の数を減らす為に攻撃を開始します。『殺戮の翼(セラフィムフリューゲル)』…完全発動まで3秒』

 

血の色をした赤い天使の翼を背中に背負い空へとペンデックスは飛翔する。そして右翼を垣根達目掛けて振るう、その翼は邪を払い魔を切り裂く…そんな死の一撃に垣根は

 

「なんの!出番だ肉壁2号」

 

「ちょ!?ていとくン!?嘘だろォォォ!?」

 

「「「「一方通行ァァァ!!?」」」」

 

「「また盾にした!?」」

 

一方通行を前に突き出し赤い翼から身を守る、翼は反射により弾かれるもペンデックスの元へと帰らず七色の光を帯びて地面に突き刺さる

 

「〜〜〜!痛ェ…!反射したのに衝撃が俺に届いたぞ!?」

 

「やっぱり完璧には反射できないか…あ、また来た、盾よろしく」

 

「ッ!?巫山戯やがってェ!!」

 

衝撃までは反射できなかった様で一方通行は痛みに悶えるが垣根はまた攻撃が来たから防御をよろしくと一方通行を盾にする。ペンデックスは何度も赤い翼を一方通行にぶつけ一方通行はそれをベクトル操作した脚力で避けるが完全には躱しきれず反射膜に翼がぶつかる度に七色の光と衝撃が彼を襲う。

 

「第十七章第二節。敵性人物達の『竜王の殺息』と『殺戮の翼』の防御を確認。対抗手段を思考中。敵性に北欧神話の特色を確認。豊穣神の剣を再建します。」

 

竜王の殺息と殺戮の翼が防がれるのを確認し何かを考える様にペンデックスは暫く上条と一方通行を観察する、そしてステイルが撃退の為に咄嗟に展開していた炎剣が北欧魔術を取り込んでいると理解し周囲に白く輝く光が十二つも漂わせる。光は形を変え細長い西洋剣の形を取り十二振りの剣が形成される、その剣が多角的に垣根達に襲いかかる

 

「豊穣神の剣!?竜王の殺息といい殺戮の翼といい…並の者では扱えきれない魔術を息を吐く様に…!?」

 

「……そうか!彼女に魔力がなかったのもそういう事か!一つは魔神の片鱗を振るわせない事…もう一つはこの時の為か…!」

 

豊穣神の剣…北欧神話の神 フレイが持っていたとされる剣…勝利の剣ともフレイの剣とも呼ばれる自動的に宙を舞い、確実に敵の息の根を止めてくれる武具の事であり神裂は先程の二つの魔術といいあり得ないと呟き、ステイルは冷静に何故インデックスに魔力がなかったのか理解する…だがそれで豊穣神の剣がどうにかなることはなく多角的に放たれた十二の剣に上条達は切り裂かれるか見えた

 

「……流石は擬似魔神だ…だけど…これくらいで俺らが死ぬと思うか?」

 

垣根の背中から六枚の翼が展開される、その六枚の翼を剣にぶつけ弾き返す、弾かれた十二の剣はクルクルと回転しながらペンデックスの背中に集まり歯車の様に回転しながら光輪の様に彼女の後ろに待機する。

 

「…天使の力(テレズマ)に酷似した力を確認。『書庫』内から魔術の術式を逆算…該当する魔術は確認出来ず。殺戮の翼の枚数を増やし戦闘を続行します。残りの不安定要素『削板軍覇』『麦野沈利』『御坂美琴』『食蜂操祈』『帆風潤子』も警戒。優先事項を変更。『上条当麻』から『垣根帝督』へと目標を変更します。」

 

ペンデックスの背中に生える血の翼が二枚から六枚と垣根の翼と同じ枚数に変化する。赤い翼は六枚とも垣根を襲い垣根は翼同士をぶつけ弾いていく。十二の剣は再び全員に襲いかかりそれぞれが能力を使って防いでいく。

 

「第三十章第一節。敵性人物達の能力を確認。逆算しそれぞれの特定魔術を組み立てます。」

 

「……あんまり超能力者を甘く見てんじゃねえぞ擬似魔神(ヨハネのペン)

 

何処までも無機質な声で機械的に喋るペンデックス。そこには強者の余裕が感じられる…垣根は超能力者を舐めると痛い目を見ると笑う

 

今ここに擬似魔神と超能力者と魔術師の戦いが始まる

 

 

 

 




ペンデックスさんが本気を出してきた(白目)、なおていとくん単体ではペンちゃんに勝てません…現実は非情。勝てたらパワーバランスがヤバいからね…まあ上条さん達がいても原作と変わらない強さなのがペンちゃんの恐ろしい所…流石擬似魔神。なお自分のオリジナルの魔術を使ってくるけど…まあ二次作品だからいいよね。

さあ自動書記VS超能力者全員+大能力者(縦ロールちゃん)+魔術師二人…勝つのはどっちだ?……ねーちん以外の助っ人二人いなくてもよくねとか言ちゃダメですよ。なお現状のペンちゃんの姿は赤い翼がていとくんよろしく六枚生えてて十二の剣を操って口元(じゃなくて魔法陣)からんちゃ砲みたいにビームを吐き出してる美少女という状態…何このカオス状態

次回は完全シリアス。面白くないかもですが楽しみにしていてください


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二つの世界が交わる時

今回はガチの戦闘です、そして自分なりに考えた魔術(しっかりと元ネタあり、ほぼキリスト教から)やていとくんの未元物質の考察なども含まれています。因みにサブタイの意味は魔術と科学が交差するという意味…以外にももう一つ意味があります。キーワードは「位相」「虚数学区」「覚醒した未元物質」「火花」。後ていとくんは対魔術師戦では非常に有効。つまるところ脳幹先生と同じポジです

これが終わればまたギャグに戻る…早くエツァリとか海原とかあわきんを出したい、ステファニーさんとかオティちゃんとか…あ、このインデックス編が終わったらちゃんとやりますから少しだけシリアスに耐えてください

今回も長くなったなぁ…(白目)いつも長くてごめんなさい。後縦ロールちゃんいらなくね?とか言わないであげてください。作者も本人も気にしてることだから…ステイル君とねーちんは…び、描写にないだけで頑張ってるはずです!そして最後に…超能力者の本気、とくと見よ


「カキネネットワークに接続。多才能力(マルチスキル)を発動。発火能力(パイロキネシス)座標移動(ムープポイント)水流操作(ハイドロハンド)超電磁砲(レールガン)

 

「第二章第二十一節。『終わった(テテレスタイ)』完全発動まで後3秒」

 

赤い血の翼の連撃に対し垣根は翼を広げ空へも飛翔する事で逃れる、更にカキネネットワークに接続し左目の白眼の部分が赤く染め多才能力を発動する。発火能力を使い火炎放射をペンデックスに叩き込み、水流操作で座標移動で遠距離から転移させた大量の水をペンデックスに水塊として放ったり、氷の槍にして雨の様に降り注がせる。オマケとばかりに超電磁砲の光速で放たれる10億ボルトの高圧電流の槍 雷撃の槍を何十発もペンデックスに放つ。それに対してペンデックスは何か呪文を呟くと炎と水、氷、雷撃の槍が消滅してしまう

 

「チ!…なら質量で押すとするか」

 

垣根はやはりこの程度の攻撃は擬似魔神に届かないかと舌を鳴らす、なら質量で押し切ると未元物質の翼を広げ翼から未元物質の素粒子を撒き散らし様々な超能力を実装した白いカブトムシ達を製造、更に恐竜型や魚類型、昆虫型や爬虫類型の自律兵器を製造しペンデックスへと襲い掛からせる。その数は数百

 

「第五章第六節。殺戮の翼で使い魔達を一掃します。」

 

ペンデックスはそれを一瞥し赤い翼でその未元物質の軍隊達を蹴散らす、翼を振るい縦に斬り裂き、羽を弾丸の如く放射し身体を穿つ、翼で押し潰して粉々に砕き、槍の様に翼の先端で刺し壊す。だが軍団は未元物質を供給され瞬時に復元されていく…そしてペンデックスに砲撃や超能力での攻撃を与えるがペンデックスはそれを聖ジョージの聖域を盾にし防御し赤い血の翼で何度もカブトムシ達を破壊していく。垣根もベクトル操作で威力を高めた超電磁砲や絶対等速(イコールスピード)で破壊性を高めた原子崩しをペンデックスに放つも「終わった」で無効化される。そして彼女は攻撃の手を緩めない

 

「第四十八章第十二節。『硫黄の雨は大地を焼く』完全発動まで後2秒」

 

上空に五十ほどの『灼熱の矢』が出現し、その灼熱の矢が吊り天井のように垣根達に降り注ぐ、麦野はそれを見て右手に原子崩し(メルトダウナー)を携え、左手で懐を探り三角形のパネルが組み合わさったカードを取り出しそれを頭上へと投げる

 

「私達を舐めてんじゃねえぞ!そんなちゃちな火で殺せると思ってんのか!」

 

それの名前は拡散支援半導体(シリコンバーン)。これに電子線を当てるとパネルが分散し光線が拡散する、これにより麦野が不得意な前面広範囲を可能とし灼熱の矢に向けて原子崩しの飽和攻撃を行う。原子崩しと灼熱の矢がぶつかり合い二つの力は相殺され消失していく…だが防ぎ損ねた火矢は地面に炸裂し大地を砕く、その衝撃波が麦野達を襲うが誰も被害を受けずに済んだ

 

「は!その程度の攻撃で超能力者を止められると思ってんのか!甘く見られたもんだな、おい!」

 

麦野はこんなもんかと叫ぶ、ペンデックスは麦野を殺す為に豊穣神の剣を飛ばす、だがその軌道上に削板が立ち塞がる

 

「すごいパンチガード!」

 

蜃気楼のような謎の波動を腕全体に纏う…彼曰く「磁力戦線(オーロラガード)」で豊穣神の剣を弾く、当たった箇所が痛むが根性で彼は我慢する。弾かれた三つの豊穣神の剣は削板から先に殺そうと多角的に襲いかかるが削板は音速の二倍の速度で動き最初に襲いかかってきた豊穣神の剣に拳をぶつけ地面に叩き落とす、背後から迫ってきた剣は背後から赤青黄色のカラフルな煙が出る爆発を起こす事で吹き飛ばす。そして最後の剣は真っ直ぐ削板の顔面を貫こうとし削板はそれを目視するが避ける素振りを見せずそのまま豊穣神の剣が顔面に突き刺さる

 

「「な!?」」

 

神裂とステイルが削板が死んだと思い目を見開く…だが

 

「ふぎぎ…ひょうだ!ひょれがひょんじょうのひせるひざだ!(どうだ!これが根性の為せる技だ!)」

 

「は、歯で受け止めた…?あの豊穣神の剣を?」

 

「……彼の能力なのかそれとも彼の根性なのか分からないな」

 

何と削板は豊穣神の剣を歯で受け止めていた、あり得ない光景に魔術師達が度肝を抜かれる中削板は歯で豊穣神の剣を噛み砕いた、バラバラと光の粒子になっていく剣を見え安堵する削板だがそんな彼の背後に先程防いだ豊穣神の剣が背中に突き刺さった

 

「む!?痛いな!服が破れて血が出てきてしまったぞ!」

 

「……原石恐るべしですね」

 

だが削板は背中を刺されても痛いとだけ叫び神裂が少し引く、背中に刺さった二本の剣を自分の手で引っこ抜くと空に向かって投げつける

 

「すごいパーンチ!」

 

そして彼自身が「念動砲弾(アタッククラッシュ)」と呼ぶよくわからない力で拳から遠距離攻撃を放つ技で豊穣神の剣を破壊する。そして背中から血が流れ出すが彼は根性を入れて止血する

 

「第十一章第六節。原石の力を確認。どの様な力か解析不能。理解出来ない力を操ると判断。優先は『垣根帝督』のまま、次に優先度が高い『削板軍覇』の破壊を行います』

 

ペンデックスは削板の力を見て垣根の次に危険性を感じ取り残りの九つの豊穣神の剣を削板に向かわせる。その九つの剣が削板に向かい削板が迎撃しようとするが…

 

「俺を忘れてンじゃねえぞクソガキィィィ!」

 

一方通行が背中に四本の竜巻を背負って飛行しながら削板の元に迫る。そして運動量・熱量・光・電気量など、あらゆる種類の向き(ベクトル)を操る能力を使い、風を操作して120mクラスの暴風を発生させ豊穣神の剣を吹き飛ばそうとする、だが豊穣神の剣は吹き飛ばされず逆に向きを変え一方通行に向けて飛んでくる

 

「は!俺に向かって飛ンでくるなンざ自殺行為なんだよォ!」

 

一方通行を刺し殺す筈だった一本の剣が斜め後方に吹き飛ばされる…他の剣達も斜め後方の方へと吹き飛ばされていく

 

(やっぱり反射が思い通りにいかねェな…これが魔術てヤツか…俺の反射が正常に作用しねェ…面白ェじゃねえか)

 

180度跳ね返す事が出来ない…そんなあり得ない光景を前にしても一方通行は獣の様に笑っていた。そして九つの剣が再び一方通行に向けて突撃する、ベクトル操作で身体運動を増幅させ、音速を超える挙動で拳を突き上げ豊穣神の剣を砕く、その動作を八回繰り返し豊穣神の剣を全て叩き折ってしまう

 

「豊穣神の剣の破壊を確認。豊穣神の剣の再構築を開始します」

 

「そんな事させる訳ないでしょうが!」

 

「やらせはしません!救われぬ者に救いの手を(Salvere000)!唯閃!」

 

ペンデックスが破壊された豊穣神の剣を再構築しようと光の粒子を周囲に集め始める。美琴はそんな事はさせないとポケットから無数のメダルゲームのコインを取り出し周囲にばら撒く、そしてローレンツ力で加速して音速の三倍以上のスピードで撃ち出す超電磁砲(レールガン)を散弾の様に放つ散弾超電磁砲(レールショットガン)を光の粒子目掛けて放ち、神裂も魔法名を名乗り上げ神速の抜刀術をペンデックスに放つ。だがペンデックスは聖ジョージの聖域を盾にして超電磁砲の散弾を防ぐ

 

「ッ!私の超電磁砲を防ぐなんてね…!」

 

「……どうやらあの魔法陣は物理攻撃すら防ぐ様ですね…流石聖ゲオルギオスの名を冠する術式…」

 

「おい油断してンじゃねェぞ!」

 

単体(・・)として放てる中で最大級の必殺技 散弾超電磁砲を喰らっても傷一つつかない魔法陣に美琴が舌打ちし、神裂も自分の切り札が通じないのかと驚き流石聖ゲオルギオスの名に関する術式と呟く。その間に豊穣神の剣は再構築され美琴と神裂目掛けて二つの豊穣神の剣が放たれる、一方通行が油断するなと叫び美琴は帆風の天衣装着の様に体細胞の電気信号を操作し筋力やスピード・五感・動体視力などの身体能力を強化。神裂も聖人としての身体能力を活かし放たれる豊穣神の剣を強化した身体能力で避けていく

 

そして残りの豊穣神の剣も全員に放たれ、神裂が七閃で軌道を逸らした所で七天七刀で剣を砕く、美琴は砂鉄の剣を両手で一つずつ持ち二刀流の様に扱い剣を弾く、削板が砲声とともに口から謎の波動を放ち剣を吹き飛ばす、一方通行が大気のベクトルを操り巨人の手の如き風速120メートルの竜巻を引き起こし剣達を舞い上げる。麦野の原子崩しが狂った様に放たれ剣を破壊する。だが剣が壊れてもペンデックスが何度も再構築してしまう

 

「クソ!このままじゃあジリ貧だ…こいつから抜け出せたら」

 

皆がヤバい状況なのに自分は竜王の殺息を右手で防いでいる為動けない…それに憤りを感じる上条、そんな彼の元にステイルが近づく

 

「お前…何しに来た?!」

 

「……なあ一つ聞いていいか、今の彼女を倒せば元のインデックスに戻るのか?」

 

「な…?」

 

「……もし倒してもそのせいで彼女が死んでしまったら?二度と目が覚めることがなかったら?もし全員死んでしまい彼女を止める事が出来なかったら?…そう思うと怖くてたまらないんだ…」

 

「……お前」

 

「ならこんな博打に出るよりもあの子の記憶を消した方がいいんじゃないか…僕はそう思ってる…そうすればとりあえず命を助けられる…なあ教えてくれよ…僕は…どうすればいい?」

 

「………じゃあ一つ聞くが…」

 

ステイルは光の柱を塞き止めている上条にある事を尋ねる。もし倒してもインデックスが死んでしまったら?二度と目を開かなかったら?ペンデックスに全員殺されてしまったら?そう考えてしまうステイルはもうインデックスの記憶を消した方がいいのではと弱気になって呟く、それに対し上条はステイルの顔を真っ直ぐに見据え言った

 

「お前はインデックスを救いたいんだろ?」

 

「!!…当然だ」

 

「なら諦めてんじゃねえよ、俺らはまだ諦めてない。お前はずっと待ってたんだろ、誰もが笑える最高なハッピーエンドてヤツをさ…」

 

「……」

 

「こんな展開を待ち焦がれてたんだろ!今までインデックスの為に歯を食いしばって努力して来たんだろ!命をかけて自分が愛したインデックス(女の子)を守り抜きたいんだろ!?まだお前の物語は終わってねぇ!始まってすらいないまだ長い絶望のプロローグなんだ!そうだろヒーロー(主人公)!お前がインデックスに手を伸ばせば届くんだ!俺ら超能力者(脇役)がお前を全力でサポートする!だからこんな所で諦めてんじゃねえ!!!」

 

上条は簡潔に言った、インデックスを救いたくないのかと。ステイルは答える、助けたいと。上条は叫ぶ、ステイルの心の奥底までに言葉を投げかける。ステイルというヒーローがインデックスというヒロインを救う為に自分達脇役が手助けする、だから彼女を救うのを諦めるなと、ステイルはそれを聞いて目を瞑る

 

「…その通りだね。君の言う通りだよ…なら僕も…彼女を…インデックスを助ける為に頑張ってみようか……我が名が最強である理由をここに証明する(Fortis931)

魔女狩りの王(イノケンティウス)!」

 

その声は絶望から這い上がる英雄の咆哮だった、彼の声が響きアスファルトの地面から魔女狩りの王が上条の目の前に顕現する。前もって第十九学区に配置していたルーン…その数は二万。更に身の回りのあらゆる要素を魔術に応用する天草式の神裂が結界の礎となるルーンの配置自体を魔法陣化させていた為垣根と戦った時よりも強化されている、ハイパーイノケンティウスと呼ぶべき魔女狩りの王は竜王の殺息から上条の身を守り上条を自由に動かせる様にする

 

「竜王の殺息は僕に任せろ!君はインデックスを止めてくれ!」

 

「……分かった!」

 

ステイルが竜王の殺息は自分に任せろと叫び上条は頷く、上条は幻想片影(イマジンシャドウ)を発動し削板の原石の力を使い左腕からすごいパーンチを放ち美琴に向けて突撃していた豊穣神の剣を吹き飛ばした

 

「!先輩!」

 

「待たせたな!」

 

「警告。第九章第二十八章。『ペクスヂャルヴァの深紅石』完全発動まで後十秒。『上条当麻』の戦線の本格参戦を確認。『竜王の殺息』以外の特定魔術を検索します」

 

上条が豊穣神の剣に右手で触れ、幻想殺し(イマジンブレイカー)の力によって豊穣神の剣はガラスが崩れる音と共に消失していく、他の剣達も上条に向かって飛んでいくが上条はそれを器用に避けつつ右手で触れ打ち消していく。瞬間、遠くに隠れている食蜂と帆風、地面から足が離れている垣根以外の全員に足から見えない力を這い上がるような感覚を感じ、侵食された足に骨の関節を強引にずらす痛みに近い激痛が彼等を襲う

 

「「「あ"あ"あ"ああぁぁぁ!!?」」」

 

「がぁ…!?これは…ペクスヂャルヴァの深紅石ですか!?」

 

「ぐうぁ……!うおお!」

 

麦野、美琴、一方通行があまりの足の痛みに足を手で抑える。上条も痛みに悶えながらも足の方に右手を動かし右手が太ももに触れ何かが割れる音が響く、それと同時に上条に働いていた謎の痛みは消え上条は原石の力から一方通行に能力を切り替えベクトル操作で脚力を強化し美琴達に接近し足に触れて術を解除する

 

「第一章第二十二節。『ペクスヂャルヴァの深紅石』の消滅を確認。炎の魔術の術式の逆算に成功しました。曲解した十字教の教義(モチーフ)をルーンにより記述しあものと判明。対十字教用の術式を組み込み中……第一式、第二式、第三式。命名『神よ、何故私を見捨てたのですか(エリ・エリ・レマ・サバクタニ)』完全発動まで8秒」

 

ペクスヂャルヴァの真紅石が破壊されるや否やペンデックスは竜王の殺息の光の色を純白から血の様な真紅に変色させハイパーイノケンティウスを噛み砕き霧散させる、ステイルはそれを読んでいた様に横に避けて光線を凌ぐ、ハイパーイノケンティウスは再び炎の巨神となって再生しようとするが即時に再生できない

 

「…豊穣神の剣といい対北欧系の魔術が多くて厄介だね…」

 

ステイルは豊穣神の剣と赤黒い光線は自分の北欧系を取り込んだ魔術では不利だと呟く、ステイルはその場からすぐに離れ赤黒い光線を躱す

 

「第六十二章第八節。「父よ、彼らを赦して下さい。なぜなら、彼らは何をしているのかわからないからです」完全発動まで後5秒」

 

ペンデックスが新たな魔術を唱える。魔術の効果は自分を攻撃した者に対する罰則、ペンデックスを中心とし光の波動が周囲を駆け巡る。それの波動の範囲に入った垣根、美琴の動きが停止する。他はペンデックス自身に攻撃していなかった為この術式の発動条件に満たされなかったらしく動きは停止しない

 

(か、体が動かない?!丸で時間を強制的に止めたみたいな…ううん、身体を何かで固定されてる様な…)

 

(クソ!カブトムシ達も動きを停止されちまった!)

 

美琴が自分なりにこの術式の正体を考える、垣根はカブトムシ達に自分を守る様命じるがカブトムシ達も術に嵌り停止している。その隙に垣根は胴体に赤い翼を叩きつけられ地面に墜落する

 

「がっは…!?」

 

「垣根!」

 

上条が美琴に触れ術式を解除すると同時に垣根が地面に叩きつけられ上条は垣根に向かって叫ぶ。ペンデックスは次に上条を狙い赤い血の翼を横薙ぎに振るうが上条が右手を突き出し翼を打ち消す、ならばと魔法陣の亀裂から再び竜王の殺息を放ち片手に美琴を抱いて未元物質の翼で空を飛ぶ

 

「先輩!前から剣が!」

 

「ああ、分かってる!でもあの剣は俺の右手で触れれば消え(上条さん!それはフェイクよ!後ろから剣が三本来てるわぁ!)!」

 

美琴が前から豊穣神の剣が飛来してくると告げ上条が右手を突き出そうとしたその時、彼の脳内に念話が届き彼は後ろに視線を動かし背後に迫る三本の剣に気づき翼を羽ばたかせ急降下して避ける

 

「…危なかったわぁ…それにしてもあの理解力が追いつかない危険力高過ぎな能力…いえ魔術だったかしらぁ?私達が付け入る隙が無さ過ぎるわ…能力も何故か弾き返されるし…私の能力が効かない相手だと私て何もすることないなよねぇ…非戦闘員は辛いわぁ」

 

「……わたくしも単なるお邪魔にしかならないでしょう…それにしても垣根さんは無事でしょうか?」

 

「多分心配ないわぁ、垣根さんは服の汚れシミ並みにしつこいからぁ」

 

食蜂は物陰に隠れてリモコンを弄り全員に指示を送る。戦闘が始まってからすぐに姿を隠し戦場を観察し誰かに危険が近づくと彼女は心理掌握(メンタルアウト)で念話を行い危機を知らせていた。神裂は最初は戸惑っていたが今ではもう順応している。帆風は自分が戦っても足手まといな為食蜂の警護につき彼女を守る

 

「……やっぱり精神攻撃は弾かれるわねぇ…全く標的誤認も使えないんじゃ私てぇ単なる無能でしかないじゃない」

 

食蜂がペンデックスに何度も能力をかけるが防がれてしまう、何度やっても同じ結果であり彼女が悔しそうに歯軋りする、そしてペンデックスが目線を彼女に向け目と目があった、垣根の座標移動で何百メートルもはなれていたというのに

 

(!?気づかれた!?攻撃してるわけでもないのに!とにかく女王を連れて別の場所に隠れなくては…)

 

「警告。第二十七章第二十一節。『食蜂操祈』と『帆風潤子』を発見。精神攻撃を仕掛けてきた痕跡あり。『奈落の底の天使の従僕(アバドンインセクト)』完全発動まで後4秒」

 

帆風が食蜂の手を握りこの場から別の場所から逃げようとするがそれより先にペンデックスが動きを見せる。帆風達近くのアスファルトの地面が割れそこから無数の(イナゴ)達がワラワラと溢れ出てくる、それは非常に冒涜的で見るだけで吐き気を催す。割れた地面には悪魔とも堕天使とも天使とも表現できる奈落の主(アバドン)が顔を覗かせており帆風が恐怖のあまり身体の動きを止めてしまう

 

(しまった…!身がすくんで…!)

 

帆風が自分の隙を嘆くがそれで蝗達が消える訳がない、蝗達が帆風達を食い殺そうと群れて襲い来る。帆風が思わず目を瞑りかける…だが食蜂は冷静にリモコンのボタンを押す

 

「悪いけどぉ…この程度じゃ私は死なないわぁ」

 

その時起こった現象はフリーズドライの崩壊現象に近かったかもしれない。空気中の水分を圧搾させて圧力を高め、同時に対象の内部から一気に水の分子を抜き取り対象を渇いたスポンジのように物体の組成をミクロレベルで穴だらけにする…これにより生物を殺し尽くす死の空間が食蜂と帆風を中心とした範囲に広がり蝗達がボロボロと崩れていく

 

「……え?」

 

「…知らなかったかしらぁ?私達精神系能力者は水分を介して脳内物質等を操作しているのよぉ…つまり繊細な操作を行う水流操作に似た力…簡単力で言うと水を操る。私クラスになると精神系でもこんな攻撃技が出来るのよねぇ☆」

 

脳の中の水分を操り情報を制御する精密動作性を持つ心理掌握(食蜂操祈)だからこそ出来た技。本来物理攻撃を持たぬ精神系能力者の頂点が放つ範囲攻撃。それは異世界より召喚された天使が率いる蝗すら滅する。それを見て唖然とする帆風にふふんと胸を張る食蜂

 

「…『奈落の底の天使の従僕』の消滅を確認。豊穣神の剣で『食蜂操祈』の破壊を行います」

 

ペンデックスは蝗達を軽く蹴散らした食蜂を警戒したのか豊穣神の剣を三つ放つ、食蜂のフリーズドライの崩壊現象に似た攻撃もあの剣には通用しない、だが食蜂がリモコンのボタンを押すと目の前に麦野が0次元の極点で食蜂の目の前に現れる

 

「助けてぇ麦野さぁん〜!か弱い私を守る盾になってぇ!」

 

「チ!脳内に助けてコールされて来てみればぶりっ子ぶりやがって…その態度はやめろ!ムカつく!」

 

麦野が0次元の極点で豊穣神の剣をペンデックスに向けて返す。剣はそのままペンデックスに突っ込んでいきペンデックスは何かを呟くと三つの剣が霧散する。魔術でも0次元の極点でワープして相手にはね返せるのかと麦野が考えていた所でペンデックスが魔法陣の亀裂から竜王の殺息を放つ

 

「!あれはワープ出来ねえな、逃げるか」

 

麦野は冷静に食蜂、帆風を連れてテレポートし竜王の殺息を回避する

 

「警告。第七章第八節。『麦野沈利』の優先順位を変更。『ゴルゴダの十字架(The_ROOD)』及び『苦しみの杭(スタウロス)』完全発動まで後11秒」

 

ペンデックスが麦野の危険度を再設定し麦野に魔術を放つ、その魔術は神裂の様なレプリカでない本当の聖人を磔にした十字架を再現したその術式に麦野が磔にされる。それと同時に麦野の全身に耐え難い痛みが襲う。更に光の杭が空中に浮かび上がり麦野を突き刺そうと狙いを定める

 

(何だこの痛み…全身に振動する様に響く痛みが徐々に身体に侵食していく…しかも手足が拘束してるから動けねえし痛みで演算が上手くできねぇから原子崩しも発動できねえ…!)

 

光の杭が麦野の身体を貫こうと麦野に向かって真っ直ぐ飛んで来る。麦野は原子崩しで迎撃しようとするが十字架から侵食してくる痛みで演算が狂ってしまい0次元の極点を使って逃げる事を出来ない。光の杭により麦野が刺し殺されると思った瞬間

 

「させるかぁぁぁぁ!!」

 

上条が全力疾走で駆けつけ勢いよく跳躍し右手が光の杭に触れる、光の杭が音を立てて崩れ去る。そして十字架にも触れ麦野を拘束から解く

 

「サンキュー、助かった…さて、奴さんまだ手札がありそうだな…たく、面倒くせえ相手だな」

 

「全くね……そういえば垣根さんは?」

 

麦野が軽く上条に礼を言う、一方通行と削板も上条達の元へ集まりペンデックスを見る、ペンデックスは次は何の魔術を使用しようかと考えているのか目を左右に動かす。美琴がそういえば垣根はと墜落した地面を見る

 

「悪いな、擬似魔神を止める手段を実行してたんだ」

 

爆発と共に瓦礫が吹き飛ぶ、瓦礫から立ち上がったのは垣根、三対の翼を広げながら首を鳴らしながらペンデックスを見据える。ペンデックスは垣根の方を向き口元を開く

 

「警告。第九章第九節。『垣根帝督』の生存を確認。『殺戮の翼』『豊穣神の剣』『竜王の殺息』で完全に破壊します」

 

「おい、そんなに悠長に話してていいのかよーーー逆算、終わるぞ?」

 

「!?」

 

ペンデックスが赤い血の翼で、光る剣で、魔法陣の黒い亀裂から放つ光の柱で垣根を完全に抹殺しようとする。それに対し垣根は不敵に笑い…直後豊穣神の剣達がペンデックスに剣先を向けるその異常事態に機械的なペンデックスも驚きの表情を見せる

 

「さっきから俺が大人しかったのは未元物質でお前の術式の逆算を行ってたからだ…何で俺が馬鹿正直にお前の正面から攻撃してたと思ってる?お前の術式を一瞬だけ乗っ取るためだよ」

 

「警告。第二十章第二十四節。豊穣神の剣の制御権を奪われました。これよりそれを奪還します」

 

未元物質は超能力でありながら魔術と酷似した能力である。彼女の術式を解析し逆算する事で一瞬だけ術のコントロールを奪おうとしていたのだ、聖ジョージの聖域と赤い血の翼までは奪えなかったが剣を奪った、豊穣神の剣がペンデックスに多角的に襲いかかりペンデックスは制御権を奪い返す為何か呟き翼で剣を凌ぐ

 

「第二十九章第十三節。『父よ、私の霊をあなたの手にまかせます』完全発動まで…」

 

「させねえよ」

 

剣を凌ぎながら新たな魔術を起動させようとするが垣根はそうはさせないと右腕を振るう。そしてペンデックスの言葉が唐突に止まった…いや喋れなくなったと言った方が正しいだろう…何故ならペンデックスの舌が突如血を吹き出しながら千切れたからだ

 

「「インデックス!?」」

 

「ーーーー!?」

 

「な、垣根!?お前何やったんだ?!」

 

ステイルと神裂の声が周囲に響く、ペンデックスは口元をパクパクさせて何か言っている様だが舌がなければ人間は喋れない、更に喉…正確には声帯が内部で爆発しペンデックスの首から血が吹き出る、自らの血で純白の修道服が赤く染まっていく

 

「未元物質は未知の素粒子を引き出す能力だ、なら素粒子の状態で操る事も造作もねえ、細胞を一つ一つ剥がすて言う使い方もできんだよ…それを応用して素粒子の未元物質を操って体内に侵入させ舌を千切って声帯を爆発させる…簡単だろ?」

 

上条に何をしたと聞かれると垣根は淡々と真顔でペンデックスに何をしたか答える。つまりペンデックスの口内に素粒子を混入し舌と声帯を壊したのだと答えた垣根に一同が固まる

 

「な、にを…なんて事を!あの子を救うのではなかったのですか?!」

 

「救うさ、だが魔術の所為で当麻が近づけねえ…なら声を出させなければいい。安心しろここは学園都市だ、声帯なんざいくらでも治せ…」

 

神裂がなんて事を!と叫ぶが垣根は助ける為にはまず相手の武器を無力化させなければ、と言い怪我くらい治すのは簡単だ…そう言いかけた時垣根の腹から光る剣が飛び出した

 

「が、ぁ……!」

 

「垣根さん!?」

 

それは垣根が制御権を奪った筈の豊穣神の剣。それに刺し貫かれ垣根は口元から血を吐き出す、それを見て帆風が叫ぶ。上条はハッとして空を見上げると無数の剣が上条達を取り囲んでいた…

 

「…警…く。だ…ィ…十…五、章第ろ…節。制…権ノ奪還に…成…。これょりィ…回復…術を行…ま…」

 

「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」

 

そして声帯が潰れ舌が無いペンデックスが言葉を発した、かと思うと地面に落ちていた舌が勝手に浮き出しペンデックスの口の中に戻る。そして服のシミになっていた血も喉元へと集まっていき…傷口を再生した

 

「……再生完了。迎撃を再開します」

 

魔神とは魔術を極めた人間の事、魔神は五体が砕けた程度で死滅するものではないらしく、それは擬似魔神であるペンデックスも同じ事。声帯が破壊された程度で止まらない。そして新たな魔術を発動しペンデックスの周囲に眩い光の球が現れそこから光線が放たれる、だが垣根が血反吐を吐きながらも立ち上がり未元物質の翼を広げその光を防ぐ

 

「垣根さん!?無理しないでください!」

 

「大丈夫だ…しっかしアー君の能力は便利だな、肉体再生(オートリバース)と合わせればもう傷口が塞がってる」

 

帆風が垣根に駆け寄るが大丈夫と垣根が手で制す。一方通行の能力で細胞分裂の促進させ腹に空いた穴を治癒し、血も操作し血液が体外に出ない様調整する。それに肉体再生まで加わりもう傷口は塞がっていた

 

(だが多才能力が使えるのも後3分…タイムリミットはもう残り僅か…間に合うか?最悪あれ(・・)もあるしな)

 

垣根が多才能力の使用制限が迫っていると焦る、こっちの勝利はインデックスの頭部に上条の右手が触れるだけなのにそれが叶わない。垣根が思考を巡らせている中ペンデックスはまた新たな術式を発動する

 

「第三十二章第一節。『地の塩、世の光』完全発動まで後6秒。」

 

ペンデックスの周囲から放たれた幾重もの光光線が垣根を狙う、垣根は未元物質の壁を形成しその光線を防ぐ。その光線に当たった未元物質の壁は徐々に塩化し始め塩の塊となって砕け散る。それを見た垣根は翼を広げ飛翔、赤い血の翼が垣根を襲いかかり空中で赤い翼と白い翼が攻防を繰り返す

 

「『上条当麻』の接近を確認。『神よ、何故私を見捨てたのですか』完全発動まで後10秒」

 

「させねえよ!」

 

ペンデックスは接近して来た上条に対し、竜王の殺息を放とうとするが垣根が原子崩しや超電磁砲、手を振るってベクトル操作で暴風を起こしペンデックスを妨害する、赤い翼の左翼を盾にして攻撃を防ぎ垣根に赤黒い光線を放って垣根は急降下でその光線を避ける、その隙に上条が接近するが豊穣神の剣や赤い翼に攻撃され近寄れない

 

「……チ、タイムオーバーか…」

 

垣根は舌打ちしながら地面に足をつけ多才能力を解除する。このまま使用し続けていたら幻想猛獣(AIMバースト)が出現してしまう。その危険性を考えて解除したがこうなるとペンデックスの猛攻を止める手段が一つ(・・)しかない、垣根はインデックスを誤って殺しかねないその力を振るう事を決意する

 

「……当麻、俺が竜王の殺息を止める、その隙にインデックスの顔に手を触れろ」

 

「!?…出来るのか?」

 

「俺を誰だと思っている第一位だぞ?多才能力がなくても止める事ぐらい出来るさ…」

 

上条が垣根の言葉に驚きながらも出来るのかと呟く、垣根は任せろと笑い未元物質の翼を消す(・・)、その垣根の行動に誰もが絶句した

 

「え!?垣根さん何をやって…!」

 

「あ、ねーちんとステイルは離れてな…これ使うと味方でも巻き込むから」

 

「ね、ねーちん?土御門みたいに…」

 

「……分かった、何をするのか分からないが離れておこう」

 

帆風が何やっているんだと叫ぶ、垣根はそれを無視してステイルと神裂に下がっているように伝え、魔術師二人は素直に垣根から距離をあける…垣根はそのまま翼を消したままペンデックスに向かって歩く、その自殺行為の様な行動をペンデックスは格好の機会だと魔法陣の亀裂から光の柱が放たれる、その瞬間垣根はうっすらと笑った

 

「…確かに竜王の殺息なら俺の未元物質を貫通して俺を殺せるだろうな……だが」

 

自分だけの現実に数値を入力、制御領域の拡大(クリアランス)し拡大させる…そして垣根の背中から爆発的に三対の翼が展開される。数十メートルに達するそれらの翼は神秘的な光をたたえながらも、機械の様に無機質さを秘めていた。神や天使の手に馴染む莫大な兵器。全員がそれを見て固唾を呑む…これは超能力という範疇には収まらぬ力だと理解する

 

「覚醒した俺の未元物質ならどうだ?」

 

それは新世界の法。天界の片鱗たる純白。世界を掻き乱す混沌。その瞬間空気が、世界が変わる。この世界は垣根帝督()の物だと言わんばかりに。竜王の殺息が放たれた、垣根は一枚の翼を動かし盾代わりにして竜王の殺息を防ぐ。幻想殺しすら処理が追いつかず歩く教会ですら貫通する竜王の殺息…それで消滅しない物質など存在する筈がない…それなのにその白い翼は竜王の殺息を完全に押し止めていた

 

「…警告。聖人でも扱いきれない程のエネルギー反応を確認。天使の力(テレズマ)と類似していますが詳細は不明。10万3,000冊の魔道書を閲覧…該当無し。理解不能、解析不能」

 

「言ってなかったか?俺の未元物質にお前の魔術(常識)は通用しねえ、てな」

 

垣根は残った翼を振るい烈風を起こす、それは攻撃用ではなく翼から光輝く素粒子を放出する為だった、それは蝶が撒き散らす美しい鱗粉を連想させる幻想的な光だった…ペンデックスの周囲を素粒子が囲むが別段変わった様子はない。その光る素粒子が彼女の口から体内に侵入するが彼女はそれに気づかず垣根を破壊する為豊穣神の剣を向かわせようとしたその瞬間

 

「げほ…!」

 

ペンデックスは口から血反吐を吐いた。そして豊穣神の剣が粒子となった消失し赤い血の翼が霧散する。僅かながらも竜王の殺息の威力も弱まった。ペンデックスは口から血を何度も苦しそうに吐き出す

 

「『界』の圧迫、俺は虚数学区(新世界)の顕現そのものだ。『界』全体に術的圧迫を加えて魔力の循環不全を起こす…魔術を完全に消せる訳じゃあねえが…術者は今の様にダメージを受ける」

 

今の垣根は新世界そのもの。異世界の物理法則を現実に無理やり適用する事で発動する魔術にとってこの「魔術的法則」を書き換えらる力は天敵そのもの。この状態で魔術を行使すれば暴走し自滅する。先程烈風に混入していた素粒子を体内に取り込んだ為発症を早めた。そして垣根はゆっくりと右手をペンデックスに向け右手を下に下げる…するとペンデックスが正体不明のベクトルがおこす不可視の力により地面にめり込む

 

「…今だぜ当麻、首輪に繋がれたお姫様(ヒロイン)を救え!」

 

「分かった!」

 

身動きの取れなくなったペンデックスへと上条は走る、一方通行の能力で脚力を強化し全力でペンデックスの元へと一直線に疾走する。後十メートル、九メートル、八メートル、七メートルと近づく上条。だがそう簡単にはこの残酷な物語は幕を下ろさない

 

「警……告。第…零章…第零……節。『新天新地(エルサレム)』完全発動まで…後7秒」

 

インデックスを中心とした幾重にも重なった巨大魔法陣が空と地面に展開される。そして空中に無数の回転する魔法陣が出現する、それだけなく地面に花を模した光が集い空気中に彷徨う光の球が浮遊し不自然な風の流れが起こる。それはまるで現在の天地が塗り替えられ全く別の世界が創造される様な感覚。そして空間が割れたガラスの様に亀裂が入る

 

「「「「「「…は?」」」」」」

 

そのあり得ない光景に超能力者達が目を丸くしたその瞬間、割れた空間から火花の様なものが散った、それが彼らの肌に触れた瞬間に激痛が彼らを襲う

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

美琴の電磁バリアをすり抜け、一方通行の反射も効かない、麦野の原子崩しの盾も通り抜ける、食蜂のフリーズドライの崩壊現象に似た攻撃も通じない、削板の強靭な肉体も傷つける。超能力者すら防げない攻撃…なのかも分からない現象に防御能力を帆風が防げる筈もなく彼女もその火花に傷つけられる

 

「…実体化した物理的な攻撃となった火花(・・)…俺の位相と擬似魔神が操る位相がぶつかり合ってこの現象を引き起こしたのか…」

 

位相と位相の衝突、異世界の物理法則の激突。二つの位相がお互いの法則を塗り潰そうと拮抗する。両方とも人工的な異世界。片方は擬似魔神が生み出した魔術で作り出した異世界。片方は街の能力者がAIM拡散力場を集合させた異世界。その二つの位相が重なり合いお互いに接触・軋轢し火花を散らす、それが実体化し彼らを襲っていたのだ。それだけでない垣根にもその火花が降り注ぎ激痛が体を襲う

 

「!皆!!」

 

「構うな!突き進め!」

 

上条が立ち止まって全員を心配して振り返る、だが直後に立ち止まるなと垣根が叫ぶ、当然上条にも火花が降り注ぐが垣根がそれを翼の羽を飛ばす事でそれを防ぐ、翼自体も新世界そのものの為火花との干渉を可能とする。上条は前を向いて走り続ける、その途中で垣根が凌ぎきれなかった火花が上条の背中に当たり背中に激痛が走るが彼は無視してペンデックスへと距離を詰める。後4メートル、3メートル、2メートル…残り1メートルを切った所でペンデックスが血反吐を吐きながらも位相を操り数千の羽虫が羽を擦り付けた様な凄まじい音が周囲に鳴り響く

 

「第十五章第二十七節。『新天地新』により作り出した位相を操作。『上条当麻』を破壊します」

 

上条を中心とした場所に新しく作り出された位相に差し替えられ、その力で上条を押し潰そうとするが上条がその力に触れると作り出された位相が打ち消される

 

(神様、この物語(せかい)が、アンタの作った奇跡(システム)の通りに動いてるってんなら…)

 

上条は五本の指を広げる、掌底の様に聖ジョージの聖域に向かって振り下ろす、

 

「その幻想を俺達がぶち殺す!」

 

幻想殺しが黒い亀裂を、それを生み出す魔法陣にその右手が触れる、それらを障子を突き破る様に切り裂いた。

 

「……けい、告。最終章。……零…章。『首輪』致命的な……破…再………可…………」

 

ペンデックスの声も魔法陣も擬似魔神が生み出した位相も何もかも消失していく。完全に決着はついた。インデックスは地面に糸が切れた人形の様に倒れる。それを見た超能力者達は緊張の糸が切れたのか、全員地面に倒れる。上条も後ろにゆっくりと倒れ、垣根も白い翼が強制的に消えそのまま地面に倒れこむ

 

(やべぇ…もう一歩も動けねえ…能力使おうにも痛みで演算できねえし…ま、アレイスターが助けを呼んでくれるだろ)

 

垣根が全員を一瞥する。ステイルと神裂はたいした傷もなく倒れたインデックスに向かって何か叫びながら彼女に駆け寄けていく。上条達超能力者は垣根も含めて重傷だった、服が破れ皮膚は焼け爛れ血が滲み出ている…そんな危険な状況の中、垣根はアレイスター(友達)が助けてくれると信じて目を閉じていく

 

「……ねさん!か…ねさん!垣根さん!しっかりしてください!」

 

(…縦ロールちゃん?あぁ…無事だったか……良かった…)

 

帆風の声が薄っすらと聞こえ、誰かに自分の体を触られる感触を垣根は感じた後ゆっくりと意識を手放していく

 

 

 

 

 

「やれやれ、相変わらず彼は無茶ばかりするな…さて、冥土帰しの病院へ彼らを運ぶとするか唯一君」

 

「はい先生」

 

激闘が終わった第十九学区に一匹の犬と白衣を着た女が到着した、彼等は破壊された街並みには興味を移さず倒れ伏した超能力者達を一瞥する、犬…木原 脳幹は自分の弟子である木原唯一(きはら ゆいいつ)に病院に連れていく様指示し彼等に歩み寄っていく

 

 

 

 

超能力者達(彼等)は笑っていた。激痛と血が流れても彼等は嬉しそうに倒れていた。この夜。誰一人『死ぬ』ことなく全員が『生き延びた』。

 

 

 




二つの世界が交わる時、と言うのは最後ら辺の二つの位相が重なり合うことを示していたのさ!さてミコっちゃんが散弾超電磁砲を放てる様になったり天衣装着みたいな身体強化が出来たり(おい、縦ロールちゃんのポジとるなよ)、むぎのんが0次元の極点を使いこなしてたり上条さんが能力使ったり…一番印象に残ってるのは最後のていとくんの覚醒(完全掌握)した未元物質でしょうね。後なんで逆算出来たのかは未元物質が魔術が似てるからです。…後単純に「逆算、終わるぞ」を言わせたかっただけ(本音)。ペンちゃんは強かった

僕が考察するに十五巻で見せた未元物質の覚醒した翼…自分の中では黒翼と同じものであり少し違うものだと考察してるんです。まず黒翼と未元物質が同じAIM拡散力場(虚数学区)関連のものだと考えると、ていとくんは黒翼の劣化バージョンの翼を展開したり、素粒子としてAIM拡散力場の力を使っていることになります。ここで重要なのはていとくんの言語にノイズが走っていないこと。一方さんと雷神化ミコっちゃんはノイズが走ってた…その上ミコっちゃんも翼が生えてそれもAIM拡散力場関連(だと思われる)…つまり十五巻で見せたあの翼は未元物質と言う能力を完全に把握しただけで黒翼見たいな進化系とか覚醒系みたいなそういうやつじゃなかったのかもしれません。つまりていとくんは一方さんの黒翼みたいな翼を出す可能性もある?てか絶対能力者て科学における人工天使かなんじゃあ…つまり超能力者(レベル5)とは魔術サイドの神の右席みたいなものなのかなぁ…と考えちゃいます、因みにこの作品ではその翼はヒューズ=カザキリさん見たいな能力です。他にも今回使用してない技もあったみたいですが…それはまたの機会で

考察が長くなりましたね…言っときますけどこれはギャグ小説ですからね。次回はきっかりとギャグをやりたいです。


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病院ではお静かに、うるさいと他の人に迷惑です

あれ?手短に終わらす気が長くなったぞ?あれれ?おかしいな〜…多分これは魔術師の仕業ですね…おのれ魔術師!(悪質な責任転嫁)

そして…いつの間にかお気に入りが200越え…え?200?あれれ〜おかしいぞ〜?こんな文才のない僕の作品がこんなに人気なはずがない…これはきっとあれだ…魔術師の仕業だな!おのれ魔術師!(2回目)…そんな茶番はさておき、お気に入り登録してくださった皆さんに感謝感激です

後この作品はとあるシリーズですが、度々多作のキャラがモブとして出て来ます、ま、単なるネタなので気にしないでくださいね。なお基本ギャグキャラのみです…個人的にはショーン・コネコネ先生を出したいです、ちょっと長いし作者の妄想と無理矢理な部分が含まれますが…まあお気になさらずに

後感想で黒子が可哀想とか言われましたが…名誉の為に言っておきますが…自分は黒子が大好きです、レズでお姉様〜と飛びかかって電撃浴びて真っ黒子になる黒子もカッコいいヒーローな黒子も、大覇星祭で見せたツンデレな黒子も好きです。ただ今の所不遇な扱いというだけでカッコいい所も見せる気でいます。

ではインデックス編のラスト…楽しんでください


「う〜ん、特に異常はないね。舌が千切れて声帯が潰れたって聞いてるけど特に異常は無し。少し安静にしてたら大丈夫だと思うよ」

 

「先生それは本当なんですか!?インデックスは本当に大丈夫なんですよね!?」

 

「……落ち着きなさいステイル」

 

第七学区のとある病院にてカエルに似た顔をした医者…通称冥土帰し(ヘブンキャンセラー)がインデックスと神裂、ステイルの3人にインデックスの状態を話す。声帯も舌も異常はないらしくステイルが何度も聞き返し神裂が落ち着けと手を肩に置く

 

「……ていとく達は大丈夫なの?」

 

「彼等…か、全治一ヶ月程度の怪我だよ…これも今年で二回目だね、彼等が入院するのは」

 

「…二回目?彼等は前にも入院したことがあるのか?」

 

「まあね、と言っても誰かと戦ったとかそういうんじゃないんだがね。焼肉食べ放題で肉の取り合いになって喧嘩になって大怪我を負ったってだけだよ」

 

「……彼等は子供ですか?」

 

インデックスが少し俯いて垣根達の心配をする、冥土帰しが大丈夫、あの問題児はそう簡単に死なないと笑う、ただ今年二回目の入院と聞いてステイルが前にも何かあったのかと質問。焼肉の取り合いで能力込みの喧嘩をして店を大破させ大怪我を負ったと溜息混じりに彼は語った、なお帆風は巻き添えを食らっただけである

 

「…そっか、じゃあていとく達は何ともないんだね」

 

「そうだとも、じゃあ彼等の所へ見舞いに行ってあげるかい?」

 

「……そうだね、彼等には彼女を助けてもらった恩がある…」

 

インデックスが安心した様に笑うと冥土帰しは会いに行くかと尋ねる、ステイルは席から立ち上がって頷き冥土帰しが病室に案内する

 

「ここだよ、じゃあ僕はここらで失礼するね」

 

「……」

 

「インデックス?入らないのですか?」

 

「……だって私がていとく達を傷つけちゃたんでしょ?そんな私が会える資格なんかあるのかな?」

 

冥土帰しがこの部屋だと教えるとインデックスが扉を開けようとして…そのまま固まったままになる。自分に彼等に会う資格はあるのかと、そんな彼女にステイルが優しく手を肩に当てる

 

「大丈夫だ、あいつらなら気にしてないさ…」

 

「……ステイル」

 

「僕は見たんだ、彼等が気絶してなお笑っている姿を…あんな表情をしてる奴らが君を怒ったりするわけがない」

 

「………ん、ありがとう」

 

彼等はインデックスの事を怒っていない、だから気にせず開けろとステイルが笑うとインデックスも笑い返す。インデックスは勇気を振り絞って扉を開ける…そこに広がっていた光景は

 

「上条さぁん、はいあーん」

 

「ず、ずるいわよ!先輩私のも食べて…あーん…//」

 

「あ〜ん(ああ、幸福だ)」

 

「おいモヤシ!お前も攻撃しろよ!テメェさっきから採取ばっかじゃねえか!」

 

「あ〜、何も聞こえませン〜、俺はイビルジョーが怖いからァ採取してるンですゥ…あ、はちみつちょうだい」

 

「このふんたーが!勝手にクエスト貼って支給品全部取りやがって…てか砥石とか使わねえなら寄越せよぉぉぉ!もう死ねぇぇ!三乙しろ!」

 

「てかアー君いい加減にさ、キメラ装備にスキル無しの太刀厨やめろよ。あ、尻尾切断したぞ」

 

「うお!?上手いな帝督!もう全ての部位を破壊したのか!?」

 

「あ、このゴーヤさん足引きずってますわ!弱っているのでしょうか?」

 

食蜂と美琴がリンゴをフォークで刺して両手に一つずつ持ち口を開けて上条に食べさそうとしている姿や、3DSを持って一方通行に怒鳴っている麦野ややる気無さげに3DSを弄る一方通行、慣れた手つきでカチカチとボタンを動かす垣根に同じく3DSを持って大声を出している削板、垣根の3DSを覗き込んでいる帆風…本当に怪我をしているのかと思う程元気だった…なおそれぞれのベッドの位置は

 

帆風 潤子 御坂 美琴

 

垣根 帝督 上条当麻

 

削板 軍覇 食蜂操祈

 

麦野 沈利 一方通行

 

とこんな感じだった

 

「…げ、元気そうで何よりなんだよ」

 

「お、インデックス!怪我なかったか?あの時はごめんな、舌引き千切ったり、声帯爆破させたり、吐血させたりして」

 

「(ご、ごめんで済む領域を超えてるんだよ)ううん、気にしてないから大丈夫なんだよ…ていとく達は何してるの?」

 

「「「イチャイチャしてました」」」

 

「「「「モンハン4G」」」」

 

「わたくしはそれを隣で見ていました」

 

インデックスが自分の想像より元気一杯だった超能力者達に少し引く、垣根がインデックスに戦闘で傷つけてごめんと手を合わせるがインデックスは気にしてないと苦笑いする、そして何をしているのかと尋ねるとバカップル共は病院でしか出来ないイチャイチャを、他はモンハンをやっていた

 

「…もう時代はワールドだよ?随分と古臭いね」

 

「いや、ステイルは何故モンハンの事を知っているのですか?」

 

「だってカッコいいじゃないか、モンスターも武器も。そっちこそなんで知っているんだい?」

 

「モンハンは天草式の伝統ある遊戯なんですよ、後ポケモンやドラクエも嗜むのが主流なんです、読む雑誌はサンデー、ラノベならSAOと決まっているのが天草式です」

 

ステイルが4Gはもう時代遅れ、今はワールドだと呟くと何故ゲームを知っているんだと神裂が尋ねる、カッコいいからという男の子な理由を返すステイル、逆に機械音痴な君が何故知っていると聞き返すと天草式ではモンハンをやるのが伝統だと告げる

 

「……モンハン?それはなんの術式かな?」

 

「インデックス、モンハンって言うのはね。人間に仇なす獣や災害の化身みたいな龍に人間がその身と自分が倒した怪物達から剥ぎ取った身体の一部を武器にして戦いを挑むゲームの事だよ」

 

「!つまり聖ゲオルギオスみたいに悪竜を倒す遊びて事かな?!面白そうなんだよ!」

 

何それ?と首を傾げるインデックスにステイルが簡単にどんなゲームかと教える。説明を聞き終わったインデックスは要するに聖ゲオルギオスが悪竜を倒した感覚でやるゲームかと目を輝かせる

 

「じゃあ今からセルレギオス(松ぼっくり)狩りに行くからアー君から3DS借りてやってみる?」

 

「え?やってもいいの?ありがとなんだよ」

 

垣根がじゃあやってみると一方通行に貸してやるよう指示し、一方通行はインデックスに3DSを借りて一緒に一狩り行く事にした

 

「ほらお返しにあ〜んしろよ」

 

「わぁい!あ〜んなんだゾ☆」

 

「ふにゃ!?あ……あ〜ん//」

 

(あぁ…幸福ぅぅ〜)

 

上条がさっきのお返しにあーん返しをし食蜂がリンゴをパクッと食べ美琴が少し電気を漏らしながら頬を赤くしてパクッと食べる。上条は何こいつらマジ可愛い、マジ天使と頬を緩ませる

 

「え!?鱗を飛ばして来た!?え!?なんかまた吹き飛ん…あぁ三回目!?それになんか歩く度に緑のゲージが減ってくんだよ!?」

 

「これは裂傷状態ですね…回避やダッシュ、攻撃等の行動をすると体力が減っていきます」

 

「インデックス、しゃがむか肉を食べるんだ」

 

「え!?お肉を食べればいいの!?じゃあ急いでお肉を買って来て焼かなきゃ!」

 

「違います、ゲームの中の肉を食べるんです」

 

松ぼっくりの刃鱗を三回喰らって裂傷状態になったインデックスがどうするのこれ!?とステイル達に助けを求める。ステイルがしゃがむか肉を食べろと言うとインデックスは涎を垂らし神裂が現実の肉じゃないと突っ込む

 

「え!?なんか背中に乗ったんだよ!?」

 

「乗り攻撃です!む、暴れ始めましたね!Rボタンを押して下さいインデックス!」

 

「あ、R?こっちかな?」

 

「違うそれはLボタンだ!」

 

「オラオラオラオラ!お前がいくら刃鱗飛ばして来てもガンナーの私には関係ねえよ!カァンケイねェェんだよォォォ!」

 

「うおお!根性、根性、根性、根性ぉぉ!ド根性ぉぉぉぉ!!」

 

「俺の双剣捌きに常識は通用しねえ」

 

初心者でどう動かしていいのかわからないインデックスに横について教えるステイル達、一方経験者である麦野と削板、垣根は怒涛の攻めで松ぼっくりをリンチする。松ぼっくりの角が破壊され尻尾が宙を舞う、松ぼっくりはろくな抵抗が出来ず死んだ

 

「う〜ん…ちょっと血とか死骸を見るのはちょっと…それに生き物を虐めるのは嫌なんだよ」

 

「インデックスにはこれはダメだったか、君は優しいからな」

 

インデックスがこのゲームは肌に合わないと呟きステイルがそれに同意する、そんな中インデックスが何か思い出したかの様に垣根に話しかける

 

「……そうだ、ていとくに聞きたかったことがあるんだけど」

 

「ん〜?なんだ」

 

「何でていとくは魔術のことを知ってたの?」

 

「…………」

 

インデックスは何故魔術を知っていたのかと呟くと垣根が固まる

 

「……さて、次はラージャンだ〜、一狩り行こうぜ」

 

「「「「「「行かせねえよ」」」」」」

 

話題を逸らそうとする垣根に超能力者達が取り囲んで話を変えるなと睨む。垣根ははぁ〜と溜息を吐いて3DSを閉じる

 

「……言わなきゃダメ?」

 

「「「「「「勿論」」」」」」

 

言いたくないな〜と言う顔をする垣根に早よ言えやと睨む超能力者達…垣根が何か呟こうとしたその時、ドタバタと誰かが病院を走る音が聞こえてくる…そして

 

「お姉様ぁぁぁぁ!!お怪我をしたと聞いて心配して来ま…」

 

「そぉい!」

 

「ぱんだぁ!?」

 

(((突然現れたツインテールに裏拳がヒット!?)))

 

扉が勢いよく開いたかと思うと黒子が瞬間移動で美琴に飛びつこうとするが美琴が現れる場所を予想しそこに裏拳を叩き込む。黒子はそれを喰らい壁に吹き飛ぶ、その光景を見たインデックス達は目を丸くする

 

「待って下さいよ白井さ……あ〜またですか」

 

「御坂さん、怪我したって聞いてお見舞いに……あ、白井さんまたやったんだ…あ、これお見舞いの品です」

 

(誰も気にしないとは…恐るべし学園都市)

 

ピクピクと後頭部を強打し床に倒れる黒子、後からその友人の佐天と初春が来るが二人とも心配しない。因みに黒子が美琴に飛びかかったのは単純に心配したからでありもう彼女はレズから脱している。最近新しい恋を探している事に誰も知らない。哀れ黒子

 

「カミやん、見舞いに来たぜい……て、ねーちんとステイルが見舞いに来てたのは意外だったにゃー」

 

「「土御門!?」」

 

「え?ツッチー、この神父さんとお姉さんと知り合いなん?」

 

「上条当麻!貴様はまた怪我をして…小萌先生が心配してたわよ!」

 

土御門がバスケットに果物を入れ見舞いにやって来る、がそこで知り合いの神裂達がいる事に気づき驚いた顔をする、すると彼の後ろから上条の級友の青ピと吹寄 制理(ふきよせ せいり)が入って来きた為、土御門が大慌てで「俺との関係は内緒だにゃー!」と口元に指を当て二人は頷く

 

「おい第七位!怪我をしたって聞いたぞぉぉ!後遺症の心配はないのかぁぁ!?」

 

「モツ鍋!?あと矢文も」

 

「横須賀だ!…ふん、見た所無事の様だな…安心した、お前は俺が倒すんだ…その時まで用心しておく事だな、後ここにプロテイン置いておくぞ」

 

(男のツンデレとかいらない…そして僕は登場する意味あったの?)

 

ドタバタとまた扉が勢いよく開きモツ鍋が削板のベットまで駆け寄る、ヨロヨロと立ち上がりかけていた黒子が勢いよく吹き飛ばされ再び壁に激突しまた気絶する。そして削板が無事だと知るとプロテインを置いて部屋から出て行く、原谷矢文(はらたにやぶみ)も一緒にいたが彼は終始空気だった

 

「麦野〜!!大怪我したって聞いて駆けつけたって訳よ!」

 

「にゃあ、麦野のお姉ちゃんが怪我したって大体聞いた、にゃあ」

 

「超大丈夫ですか!?超ゴリラの…いえシン・ムギノンである麦野が怪我をするなんて!?」

 

「取り敢えず鮭弁置いとくぞ」

 

「よし、取り敢えず絹旗は絹/旗な。黒夜もサンキューな、フレンダとフレメアも来てくれてありがとな」

 

フレンダとフレメアが病室に入り麦野に抱きつく、安心しろと麦野が二人を両手で撫で黒夜に鮭弁を見舞いに持って来てくれた事に礼を言う。そして絹旗に拳骨をくれてやった。なお床に倒れた黒子はフレンダとフレメアが倒れた彼女に気づかず踏みつけられる

 

「一方通行〜!て、ミサカはミサカは胸元に向けてダイブ!」

 

「うォ!?何すンだこのクソガキ!?離れやがれェ!他の奴らが見てンだろうが!?」

 

「あ、もしもしポリスメン?ここにロリコンがおるんやけど捕まえてもらえます?」

 

打ち止めがアホ毛をピクピクさせながら一方通行に駆け寄って彼の胸元にダイブ、一方通行がグゲェと奇声をあげて打ち止めにこんな事すんなとほっぺを抓る。だが一方通行の顔は清々しい程微笑んでいた為それを見た青ピが警備員に連絡しようとする

 

「潤子さん、お見舞いに来ましたよ…後途中で猟虎ちゃん達もいたので一緒に来ました」

 

「大丈夫スか垣根さん?これお見舞いのケーキっス」

 

「ああああの…大丈夫なんですか?」

 

「意外ね。貴方が怪我をするなんて…カプ厨は怪我をしないて思ってたんだけど…これお見舞いの誉弓のカップリング写真ね」

 

「いやなんスかその馬鹿は風邪ひかないみたいな言葉、後、お見舞いの品までカップリング写真にしないで欲しいっス」

 

入鹿が静かに扉を開け猟虎と万化、心理定規が入って来る。猟虎は沢山知らない人がいた所為でよりビクビクして誉望の背中に隠れる。心理定規はお見舞いの品に誉望と猟虎が抱き合う写真を渡し誉望はこんな時でもカプ厨かと突っ込む

 

「た、沢山来たんだよ…それより貴方大丈夫?」

 

「それだけ彼らに人望があるんだろう、所で君大丈夫かい?踏まれたり殴られたり…本当の意味で踏んだり蹴ったりだね」

 

「立てますか?ここは病院なので後で怪我がないか見てもらっては?」

 

「……ありがたさで涙が出て来ますの…ありがとですの…わたくし最近扱いが雑で…うう」

 

インデックスが沢山病院に人が入って来て驚きステイルがそれだけ人気者なんだと返す、そして三人は黒子の心配をし黒子が三人の優しさに涙を流す

 

「どこか痛いのかな?あ、私の名前はインデックスて言うんだよ、こっちはステイルとかおりね」

 

「わたくしは白井 黒子ですの…もし宜しかったらお友達になりません?」

 

「ええ、私達はこの街に詳しくないので案内してくれると嬉しいです」

 

インデックスが自分達の名前を教えると黒子も笑顔で自分の名前を教える

 

「てーとく、怪我したって聞いた…大丈夫?」

 

「お、クロちゃん、見舞いに来てくれたのか偉い偉い」

 

「ん…」

 

垣根の近くにいつの間にか来ていたのかフロイラインがチョコンと垣根の横の椅子に座っており見舞いのケーキを勝手に貪っていた。垣根は心配して見に来てくれたのかとフロイラインの頭を撫でる

 

「……ふふ、どうせ私は話しかけられないんです…なのに家から出て来た私てお馬鹿さん」

 

一方義妹である風斬は見事に気づかれていなかった…まあ、沢山人がいた事で恐怖心に絡み垣根から見えない所に隠れた彼女も悪いが…やはり誰にも気付かれずポツンと寂しそうに立ち尽くす風斬

 

「…ねえ貴方はそんな所で立って何してるの?」

 

「……え?」

 

「誰かのお見舞いですの?」

 

「あ…兄さんのお見舞いに…来たんです…あの、えっと…その…私が見えるんですか?」

 

「?何を言っているんだい君?そんなの当然じゃないか」

 

「…そっか見えるんだ…やったよ兄さん、漸く私が見える人を見つけたよ」

 

「?」

 

そんな彼女にインデックスが声をかけ風斬が唖然とした顔で彼女を見る、インデックスだけでなく黒子と彼女に話しかけ自分が見えるのかと呟くとステイルが当然だと頷く。それを聞いてやっと自分の姿が見える人に出会えたと笑う風斬に何で笑顔なのかと首を傾げる神裂…なお佐天と初春には風斬の姿が見えておらず「え?何壁に向かって喋ってるのあの人達。怖い」という目で見られている事に五人は気づかない

 

「セロリたんが入院中と聞いてロシアのノボシビルスクから遥々学園都市にやって来ました!とミサカはセロリたんハァハァ!セロリたんにペロペロしたいお!」

 

「およびじゃねえ!ロシアへ帰れ!」

 

「あれ?今さっき御坂さんに似た女の人がいませんでした?」

 

「な、何言ってるの佐天さん!?ドッペルゲンガーじゃあるまいし…気の所為よ気の所為!」

 

なんかミサカ20000号(変態)が窓から入り込もうとしたが麦野が0次元の極点でロシアまで送り返す、佐天が誰か窓にいた?と覗き込むが美琴は気の所為だと誤魔化す

 

「あらぁ〜?私のお見舞いは佐天さんと初春さんだけなのかしらぁ?悲しいわぁ」

 

(いや白井を忘れてるぞ)

 

「いいじゃない、操祈の派閥の子は数が多いんだし…もう部屋は満員状態なんだから」

 

「そうねぇ、これ以上来たら暑苦しくて堪らないわぁ…派閥の子達が今来たら大変力が起こるわね」

 

(女王それフラグなんじゃ……)

 

食蜂は私の見舞いは二人だけかと呟く、美琴が派閥の子達が来たら満員状態になると言うと食蜂が頷く、帆風がそれは何かのフラグではと不安を感じるがそれが的中した、何故なら病室の扉を蹴り飛ばして誰かが入って来たからだ

 

「垣根〜〜!お姉さまから聞いたわよ!あんた怪我したんですて!プププ!ダサいわね!」

 

((((((誰だこいつ?))))))

 

「ふふ、でも今がチャンスね!今まで私を馬鹿にしたりパシリにした仕返しをしてやるわ!このダイアン=フォーチュンがね!ふーははははは!ひぃひぃ泣かせてあげるわ!」

 

(ダイアン=フォーチュン?…いや、まさか)

 

現れたのは150cmにも届かない小柄な色白とした体軀に赤いショートの髪、白ベースのふわふわしたドレスを着た中学生ぐらいの少女が垣根に指を指しながらドヤ顔で現れる。超能力者達は誰だこいつ?とダイアンを見つめ、他の人物達も変人を見る目でダイアンを見る、唯一インデックスなどの魔術師達は名前を聞いて目を丸くするが同姓同名の別人だと自分に言い聞かせる

 

「さあ!覚悟しなさい垣根!私が恐れるのはお姉様だけ!超能力者なんて5秒で倒せ「「「女王!!!」」」て、ええええ!!?」

 

「は、派閥の皆が流れるように病室に入って来たわぁ!?」

 

「てか、今あの人踏み潰されたわよ!?」

 

「あ〜大丈夫、大丈夫…あいつ丈夫だから」

 

ダイアンが5秒で倒してやる!と宣告しようとした瞬間、食蜂と美琴の派閥の女子達が病室に流れるように入って来てダイアンが押し倒され女子達の足に踏みつけられる。食蜂と美琴が叫ぶ中垣根はかませにされたダイアンを見て鼻で笑う

 

「ちょ!?痛い痛い!?下に私がいるのよ!?ちょ…やめなさい!魔術で蹴散ら…嘘ですごめんなさい!顔は踏みつけないで!調子乗ってすみませんでした!仕返しができると思っただけなんです!お姉さまの黒猫に攻撃されたみたいな痛みが私を襲ってる!助けて垣根さん!」

 

(マジで何しに来たんだこいつ…てか浜面は来ないのかにゃーん?)

 

踏みつけれたダイアンは最初こそ強気だが段々泣き声に変わっていき終いには垣根に助けを求める。垣根はそれを無視しモンハンを続ける。麦野は呆れながらも浜面は来ないのかと窓の外を眺める

 

「女王ご無事ですか!?御坂様も!これお見舞いのケーキですわ!」

 

「そんな…身体に包帯を巻いて…一生傷が女王の美しき玉肌に残るのですか!?」

 

「お姉様(帆風)もお怪我をなさって!垣根(こいつ)ですか!こいつがお姉様を傷つけるような場所に連れて行ったんですか!?」

 

「じ、女子の波に押し潰される…確かに展開は嬉しいんやけど…こんなんでボクは死にたないわ、そう思わんフッキー?」

 

「奇遇ね。私も同じ気持ちよ…常盤台恐るべし」

 

派閥の女子達の波と食蜂と美琴、そして帆風を心配する声が病室に響く、そんな波に青ピや吹寄、佐天達も押し潰されている。病室の温度が人口密度によって上がっていく…超能力者達も耳を塞いで爆音を防ごうとするが耳を塞いでも声が聞こえてくる、そろそろ怒ろうかなと全員が思い始めたその時、ズドンと窓の壁が大破しダイアンが病院の壁を突き破って地面に向かって落ちていく

 

「「「「「ふぇ?」」」」」

 

「病院ではお静かに、周りの人の迷惑ですよ」

 

「「「「「」」」」」

 

そこに立っていたのは顔に傷があり頭には2本の角が鬼のように生え、長い黒髪と髭に口には鋭い悪魔の様な2本の牙、肌の色は緑と明らかに人の肌ではなく瞳の色は赤、そして特徴的なのは頭の2本の角の間からは花が生えている…怪物だ。明らかに人間ではない、彼がダイアンを何故か掴んで壁を突き破って地面にダストシュートしたのだ

 

「お、屁怒絽(ヘドロ)じゃん、お花屋儲かってる?」

 

「久しぶりです垣根さん、入院したと聞いて飛んで来ましたよ…あ、皆さん僕は屁怒絽と言います。放屁の屁に、怒りの怒、ロビンマスクの絽と書いて屁怒絽です…どうぞよろしくお願いしま…」

 

「「「「「失礼しましたぁぁ!!皆さまお元気で!」」」」」

 

「「「「「「「逃げた?!」」」」」」」

 

垣根が彼…屁怒絽に声をかけ屁怒絽が笑顔(地獄の悪鬼の様な笑み)を青ピ達に向ける、それだけで彼等は逃げる様に病室から去っていった、全員涙目だった

 

「皆さんシャイなんですね。あ、お見舞いのお花置いておきますね。花瓶に向日葵を飾っておきますね」

 

「あ、屁怒絽さんありがとうございます」

 

「いえいえ、ではお大事に」

 

「てーとく、私達帰る。バイバイ」

 

「初春め…わたくしを置いて逃げましたの…ではお姉様達とついでに他の皆様も御機嫌よう」

 

屁怒絽は皆が恥ずかしくて逃げたのだと勘違いし、ここに向日葵を置いておくと告げるとそのまま帰っていく、風斬とフロイライン、黒子も帰っていき病室が一気に静かになる

 

「…さて、ゲームの続きを」

 

「いや、魔術の話をなかった事にしないで欲しいんだよ」

 

「…くそ、忘れてなかったか」

 

「いやそれよりもさっきのは誰?」

 

垣根はゲームの続きをしようとするがインデックスは話を逸らすなと睨む、上条達は魔術の事よりも屁怒絽の事が気になった

 

 

「う、う…さっきの悪魔は一体?骨とか折ったかも、この身体で骨折とかできるのか分からないけど…それにしても最近の子は常識てもんを知らないのかしら」

 

普通なら死ぬであろう自体にあったダイアナはイタタ、で済んでいた。それはギャグ補正か彼女の身体のお陰かは分からない…ダイアナが涙目で不幸だと溢そうとしたその矢先

 

「ん?あんた怪我してんのか?」

 

「え?」

 

「なら俺が病室まで連れててやるよ、てかここが丁度病院だし」

 

現れたのはゴミ拾いをしながら麦野の見舞いに来た浜面、浜面は地面に倒れこむダイアンを心配して駆け寄ってくる

 

「ええ、ちょっとぶん投げられて…骨折れたかも…」

 

「それは大変だな、じゃあ連れてった方がいいな」

 

「え!?ちょ、いやいや連れてくにしても他にやり方があるでしょうが!?何でお姫様抱っこ!?」

 

ダイアンが骨折れたかもと言うと浜面はダイアンを両手で抱えて病院に向かおうとする、ダイアンは手足をバタバタとさせ顔を真っ赤にして抵抗するが浜面はモノともしない

 

「大丈夫だって、絶対(あの先生が)治してやるから、心配すんな」

 

「あ……はい」

 

ダイアンの目には浜面が一瞬イケメンの表情になった様に見えた。魔術師 ダイアン=フォーチュンは恋に落ちた。後にこれが超能力者 第四位と黄金夜明の魔術師との大乱闘浜面争奪戦と呼ばれる決闘になるのだが…それはまたの機会に…

 

 

「で、話してくれないかな?何で魔術を知ってたのかその理由を」

 

「うん、まずは武器を捨てようか。当麻と軍覇は拳を、ミコっちゃんとみさきちはコインとリモコン向けないで、むぎのんは原子崩しを、アー君もプラズマ作ろうとしない、殺す気?俺を殺す気なのかな?」

 

「「「「「「さっさと話せバ垣根」」」」」」

 

「あはは、取り付く島もないとはまさにこの事☆…ま、その話はまたいつかだな」

 

能力を使ってでも無理に垣根に吐かせようとする超能力者達に垣根はやけくそになって笑うが、突然立ち上がって窓を開ける、その窓から二匹の小型化した白いカブトムシが入って来て垣根の掌の上に乗る、そしてその内の片割れのカブトムシの足で持っていた白い何かを垣根に渡し垣根はそれを全員に見せつける

 

「これは遠隔制御霊装…自動書記をこれによって強制的に起動させる品物…つまり、俺らが戦った擬似魔神を操る事が出来る霊装て事だ」

 

「!…噂では聞いた事があるが実在していたのか…!」

 

「これは清教派と王室派のトップが持っている品物でな…王室派のエリザード婆さんは信頼を置いてるからあえてそちらは奪わず、こいつはあの女狐から奪って来ました!そしてこんな下らねえ品物は…ポイっとな」

 

これは自動書記を外部から操り、もし敵の手にインデックスが渡った時の保険の様な物と教えるとステイルは本当にあったのかと渋い顔をする、だが垣根は霊装を上条の元へ投げ捨て上条が咄嗟に右手で触れる。それだけでその霊装は粉々に砕ける

 

「これでもうあの女狐がインデックスを縛る事は出来ねえ…後はもう一つのカブトムシが持って来た物をインデックスに渡すだけだな」

 

「?私に何かくれるの?」

 

「まあな、つっても物じゃねえ…今のお前に一番必要な物だ」

 

「?」

 

これでローラ=スチュアートがインデックスにちょっかいをかけれなくなったと笑う垣根。そしてインデックスに渡すものがあると言ってインデックスが首を傾げる、その時カブトムシの緑の目が赤く発光しインデックスの頭の中に何かが入り込んできた

 

 

『かおり〜これ酸っぱいんだよ!』

 

『これは梅干しと言って私の国の食べ物なんです…貴方の口には合いませんでしたか?』

 

『ううん、そんな事ないんだよ!私はかおりが作ってくれた料理ならなんでも大好きなんだよ』

 

『……そうですか、それは嬉しいです』

 

 

『あ!ステイルまた煙草吸ってるんだよ!ダメなんだよ煙草なんか吸っちゃ!背が伸びなくなるし病気になるんだよ!』

 

『…煙草のない世界なんて地獄だよ、それにこれ以上背が伸びなくてもいい』

 

『む!それは神に対する冒頭かも!私なんて全然成長しないし…』

 

『…それは身長の事かな?それとも胸の「ス〜テ〜イ〜ル〜!」ちょ!?噛み付くのはやめろ!』

 

 

『わぁい!ピクニックピクニック!お弁当の中身は何かなぁ〜!』

 

『食べる事しか興味がないのかい、君?』

 

『まあまあ、いいじゃありませんか…』

 

 

『わ〜!雪が積もってるんだよ!』

 

『……寒い、よく騒げるな君は…』

 

『ふぅ…雪だるま作れました』

 

『『いや雪だるまと言うか雪で本物そっくりの達磨を作ってる!?怖っ!』』

 

 

『どうかなインデックス、この髪』

 

『え?金髪を赤髪にしたの?』

 

『ふ、似合うかな』

 

『……ぷ』

 

『おいなんだ、文句があるなら言ってみろ』

 

 

『もう春ですか…イギリスでも桜見が出来るとは…』

 

『知ってるよ!花より団子!て言うんだよね!』

 

『君は本当に食べる事しか興味がないな』

 

 

『何してるのかおり?』

 

『アルバムですよ、アルバム…貴方が記憶をなくしてもいい様に…』

 

『……そっか、私2人の事を忘れちゃうんだね』

 

『……そうだね』

 

『でも安心するんだよ!私はきっと2人の事を覚えてると思うんだよ!』

 

『?なんの根拠があって言ってるんですか?』

 

『確かに記憶からは2人は消えちゃうかもしれない…でも心にきっと2人の思い出が残ってる筈なんだよ!』

 

『……君らしい言葉だな』

 

 

『……貴方達は誰?』

 

『………ッ!…わ、私達は…』

 

『君の友達だよ…覚えていないと思うけど』

 

 

『そっか、私は記憶が一年でパンクしちゃうから過去の記憶を忘れる必要があったんだね』

 

『……これが貴方と過ごした日々を記録したアルバムです』

 

『……ごめんなさい、何も思い出せないんだよ』

 

『……そうだろうね。まあ、なんだ…これから宜しく』

 

『……宜しくお願いしますなんだよ』

 

 

『…この酸っぱい食べ物は何?』

 

『…梅干しですよ…前にも同じ質問をしましたね…』

 

『……ごめんね』

 

『……いえ、貴方は悪くありません…』

 

 

『ねえ』

 

『……何だ』

 

『前の私てどんな子だったの?』

 

『……今と同じだよ…慈悲深くて…優しい女の子だよ…』

 

 

『……ねえ、ステイルは前の私に会いたい?』

 

『……さあね…それは僕にも分からない…でも今の君を捨ててでも会いたいとは思った事はない…記憶がない程度で君を見捨てる気は僕にはサラサラないよ』

 

『………そっか』

 

 

『お前が魔道書図書館だな』

 

『だ、誰なんだよ?!』

 

『俺は宵闇の出口の構成員だ、お前を攫って組織に献上すれば俺の地位も上がるし宵闇の出口の魔術結社も他の結社に舐められる事がなくなる。だからお前を攫いに来…』

 

『遺言はそれだけか、腐れ外道が』

 

『ギャァぁぁぁぁ!!?』

 

『無事ですかインデックス!』

 

『か、かおり!ステイル!』

 

『全く…僕達から離れるなと言っただろ!君を狙ってくる奴らは沢山いるんだから!』

 

『う、う…怖かったんだよ〜!』

 

『!?ひ、引っ付くな!おい神裂何を笑っている!早く引き離せぇぇぇ!!』

 

 

『ふふふ〜ん、アイスアイス〜♪』

 

『…随分気楽だな君は…また攫われても知らないぞ』

 

『大丈夫だもん!ステイルとかおりが助けてくれるて信じてるから!』

 

『……ふん』

 

 

『…またあの儀式の時間が迫っていますね』

 

『……私の記憶をなくす儀式の事だよね』

 

『……ええ、また貴方の記憶を殺さねばなりません』

 

『……辛くないの?』

 

『!……辛いに決まっているでしょう!私は…貴方に私達との思い出を忘れて欲しくない……!』

 

『……よしよし…私もね、同じ気持ちなんだよ』

 

 

『ステイルに聞きたい事があるんだよ』

 

『…なんだい?』

 

『ステイルて…私の事が好きなの?』

 

『……!?な、にゃんの事やらしゃつぱりだ!?き、君の事が好きだなんて…頭おかしくなったのかい?!』

 

(分かりやすいんだよ…)

 

 

『…今日が私の記憶をなくす日なんだね』

 

『………はい』

 

『そんな顔しないでよかおり…私だって辛いんだから…それに最後くらい笑ってて欲しいんだよ』

 

『………』

 

『……すまないが神裂、少し席を外してくれるか?』

 

『……分かりました』

 

 

『インデックス…最後に君に言いたい事があるんだ』

 

『何かな?』

 

『…僕は君が好きなんだ、初めて会った時からずっと』

 

『…それは今の私?それとも前の私?』

 

『両方だよ…今も昔も君は変わらない…好きなんだ…』

 

『……ごめんね、私にはステイルが好きがどうか分からないんだよ…でもその気持ちは嬉しいな』

 

 

『……私忘れたくない、2人の事忘れたくないんだよ…』

 

『僕も君に忘れられたくない…』

 

『……ねえ約束してくれる?私のことを忘れないて…』

 

『ああ、…安心して眠ると良い、たとえ君は全てを忘れてしまうとしても、僕は何一つ忘れずに君のために生きて死ぬ…ここに誓うよ…ずっと君を守るて』

 

『……うん、ありがとう…おやすみステイル…』

 

『おやすみインデックス…そしてさようなら』

 

 

 

「……そっか、そうだったんだ」

 

「ど、どうしたんだいインデックス?何処か具合でも悪いのかい?」

 

インデックスは涙を零しながらそうボソッと呟いた。ステイルが心配そうに彼女の肩を持つ、インデックスはニコッと笑う

 

「かおり…私またあの梅干しが食べたいんだよ」

 

「……え?」

 

「ステイルもありがとね。ずっと約束を守ってくれてたんだね」

 

「……まさか、君…記憶が…」

 

インデックスが2人に笑いかけると2人は何故それを知っていると目を見開く、垣根は笑って言った

 

「残留思念って知ってるか?」

 

「……人間が強く何かを思ったとき、その場所に残留する思考や感情の事だろ」

 

「そうだ、俺の未元物質は何もこの世の物理法則に反していたり他の超能力を生み出すだけじゃねえ…物体の凹凸をなぞる事でそこに刻まれた記憶…残留思念を再現出来る…」

 

「…もしやあの時思い出の場所を聞いたのは…インデックスの記憶を取り出す為ですか?」

 

残留思念、強い感情が物体に宿り未元物質がその物体の凹凸をなぞる事で再現出来る能力、原作において死んだ妹達のコピーを作成した力を応用しインデックスの無くした記憶を部分的にカブトムシ達に遠隔制御霊装を奪わせにイギリスに行かせたついでに採取してきたものだ、神裂はあの時何故垣根が思い出の場所を尋ねて来たのかようやく理解した、全てはこの時の為だったのかと

 

「…さて、ちょっと風に当たってくるわ」

 

「おい垣根…!…ってあのヤロー逃げやがったな」

 

「結局何で魔術の事知ってたのか教えてくれなかったわね…」

 

「……まァ、いいンじゃねェか?」

 

垣根は立ち上がって病室から出て行く、逃げられたと麦野と美琴が舌打ちするが一方通行はインデックス達の方を見る

 

「…ずっと約束を守ってくれてたんだねステイル」

 

「……ああ」

 

「でも、私は記憶を完全に取り戻したわけじゃないんだよ、多分取り戻したのは2人と過ごした思い出の2割くらいかな?」

 

「……2割でも充分ですよ…充分過ぎます」

 

「でも、私には2割じゃ足らないんだよ、だから…また私と一緒に暮らして、昔みたいに遊んでくれると嬉しいな」

 

「!…いいんですか?私達は貴方を…この一年間苦しめて来たのに…!」

 

「うん。確かに辛かったんだよ、何度死ぬと思ったかわからないんだよ…だからそれに罪の意識があるなら私とずっと一緒にいる事!美味しいご飯を作る事!ずっと笑顔で笑いあっている事!それを約束してくれたら許してあげるんだよ!」

 

彼女は笑う、これから一緒に暮らそうと、一緒にご飯を食べて笑いあってたまに喧嘩したり…そんな幸せな日々を過ごそうと笑う…神裂はこの状況を信じられずに嗚咽をもらす

 

「ステイル…あの日の告白の事なんだけど…ごめんね。まだ答えは分からないんだよ…でも、絶対いつか答えを出すから…それまで待っててくれる?」

 

「……ああ、待ってる…答えが出るまでいつまでも待っているさ」

 

インデックスがまだ告白の答えは見つかっていないけど答えが見つかるまで待っててと言う、ステイルは涙を堪えながらいつまでも呟いた

 

「……ねえ、記憶を取り戻してまず二人に言いたい事があるんだけど…言っていいかな?」

 

「奇遇だね、僕も君に言いたい事があったんだ…君もだろう神裂?」

 

「ええ、私もです…でもまずはインデックスから言ってください…私達の言葉は貴方の言葉を返す言葉だと思いますから…お先にどうぞ」

 

「じゃあお言葉に甘えて先に言わせてもらうんだよ…」

 

インデックスは二人に言いたい事があると呟き大きく息を吸う、そして涙目になりながらも笑顔で彼らに笑いながらずっと言いたかった言葉を伝える

 

「ただいま」

 

「「…お帰り、インデックス」」

 

彼女は涙をこぼしながら笑う、魔術師二人は涙を流しながら彼女の返事に答え抱きついた。これで漸く彼等の長い長い絶望のプロローグは終わる。そしてたった今、彼等にとって幸せの1ページが開かれたのだった、これからのページ(人生)に絶望や不幸はない。三人はそう、信じている

 

 

 

「あ〜コットンキャンディソーダ飲みてぇなぁ〜、あれマジメルヘンだからな〜」

 

垣根は病院の屋上の手すりにもたれかかって空を眺めていた

 

「……んで、そこにいるんだろアレイスター?」

 

「…バレていたか…あ、これは見舞いのコットンキャンディソーダだ、飲むか?」

 

「お、マジで?サンキュー」

 

垣根が背後を見るとアレイスターが立っており、アレイスターがコットンキャンディソーダを手渡すと垣根はそれを飲み始める

 

「あ〜やっぱりコットンキャンディソーダは美味え」

 

「そうか…しかし写真で撮らなくて良かったのか?滞空回線で先程の光景を撮影していたが…最高の写真が撮れるチャンスだと思ったのだが」

 

「は…分かってねぇな、確かにあの光景を写真で撮ればそれは永遠に残ってたかもな…だがな、あれは写真とかいうもんで残しておくもんじゃねえ…心の中に残しておくもんだ…撮らなくても心の中で皆覚えてるさ」

 

「……メルヘンの考えている事は理解できんな」

 

先程のインデックス達の感動的な場面は撮らなくていいのかとアレイスターが尋ねる、垣根はあれは写真で残すものではなく心の中に残すものと笑って返す

 

「……しかし人の幸せとは見ていて心地がいいな…君には心の底から尊敬するよ…私が願った『誰もが当たり前に泣いて当たり前に笑える世界』…それを君は実現しようとしているのだからね」

 

「……そんな高尚なもんじゃねえよ、俺はカップリング写真が撮りたいだけ、ただそれだけだ…それ以下でも以上でもない…ただ強いて言うなら」

 

アレイスターが自分が実現できなかった理想を垣根が叶えようとしていると呟いて彼を見る、それを聞いた垣根は自分はそんな人間ではないと笑いながらこう言い返した

 

「俺はみんな幸せで笑い合ってるってのが好きなんだ、悲劇とか悲しい過去とか…そう言うのが苦手でな。俺は原作主人公(当麻)みたいなカッコいい主人公にはなれない…でもな、自分に出来ることがあるなら助けてやりてぇ…ヒーローになれなくても誰かを助けたい…ただそれだけの単純な事さ」

 

垣根はそうやって子供の様に笑う

 

「何せ俺はハッピーエンドが大好き(メルヘン)だからな、このソーダの様に甘い男だよ」

 

垣根はそう言うと空を見上げる…空に雲はなく青空が広がっていた

 

 

 

 




二次創作くらいステイルとねーちんと仲良くなるSSがあっていいと思います、後作者はステインが好き。しっかりとイチャイチャもいれるのです…本当はアレイスターが病室に乱入して「病院でセッ○スしないのかね!?」て言う展開も考えてましたが…まだ来るのが早過ぎたのでやめました。そして今後はもしかしたら黒子、インちゃん、ステイル、ねーちん、風斬さんと言う妙な組み合わせの五人が出てくるかもしれませんね。

後半はシリアス、前半はギャグになりましたがどうでしたか?後ダイアナさんが何故いるのかはまだ教えません。彼女は単なるギャグ要員として出しました(笑)、因みにダイアナ=フォーチュンのCVは作者的には雨宮天…ダ女神こと某役立たず女神の声の人です

さて、次回からまたギャグに戻ります、ヘタ錬さん?暫くしたらやります。後これはネタバレになりますが…原作見てるとインデックスて完全に首輪から解放されたわけではないんですよね、魔力も戻らないし19巻で遠隔制御霊装によってペンデックス化してましたからね…てな訳でそんなインちゃんを首輪から完全に救うのは…あんただよ先生!それでは次回もお楽しみに!


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第一章 黄金錬成 編
失恋を乗り越えた奴程強い奴はいない


…あれ?短い筈が長い…何故だ?そして遅くなってすみません

さて今回は海原君が出てきます…あ、本番で海原君の姿借りて大活躍してる偽海原の方じゃなくて本物の方ですよ?ただ原作とキャラが違いすぎるので注意、不快になったら申し訳ありません。お粥さんはちゃんと出てきますからご安心を

この作品の海原君は某銀魂に出てくるゴリラ局長から格好良さをなくした感じです…つまり単なる変態…もしくはそれ以下です。後インちゃん達が何処にホームステイするのかも書いておきました

今回の内容は銀魂のゴリラ局長とメガネが本体なツッコミ役の決闘と旧約3巻と旧約8巻を混ぜたような感じと思えば嬉しいです。少し真面目、でもちゃんとしたギャグです


垣根はインデックスとステイル、神裂と三人の魔術師を連れてとあるオンボロアパートの二階の部屋の扉を叩く、そして扉が開き中かはピンク色の髪をした幼女が出てくる

 

「紹介する、ここが今日からお前らがお世話になる小萌先生の家だ」

 

「あ、垣根ちゃん!この子達が私の家にホームステイする外国人の3人です?」

 

「は、初めましてなんだよ!イギリス清教…じゃなくてイギリスからやって来ましたインデックスなんだよ」

 

「…ステイル=マグヌスだ…今日からこの家にお世話になる」

 

「……神裂火織と申します」

 

この三人、イギリス清教…正確に言うとローラ=スチュアートが再びインデックスを悪用しない様に学園都市が匿う事となり表向きは留学で来た学生という事になっている、それでホームステイする先が上条の担任の小萌先生の家であり、三人はその挨拶に来ていた

 

「シスターちゃんに神父ちゃんに神裂さんですね…私は月詠 小萌、こう見えても二十歳は超えているのですよー」

 

「「「…え?(年下とかじゃなくて?)」」」

 

「む、年下だと思っていたみたいですねー失礼なのです…まあ、よく間違えられるので気にしませんけど」

 

「あ、いえ…お若いんだな〜と思っただけです(若いてレベルではありませんが)」

 

「…もしかして賢者の石とか人魚の肉とか食べた事があるのかな?(そうじゃないとこの見た目で大人て事実が説明できないんだよ)」

 

「……ん?失礼、貴方から煙草の匂いがするのは気のせいかな?」

 

小萌がニコニコと笑って自分は二十歳を超えてますよ〜と軽めに言うと三人が固まる。絶対に幼稚園児(年下)だと思っていた三人の反応にプンスカと怒る小萌だがよくあるので気にしない、そこでふとステイルが煙草の匂いがすると小萌に言うとギクッと小萌の肩が震えた

 

「…あ、先生片付けしてなかったんですか?」

 

「あ!?ちょ垣根ちゃん!勝手に入っては困りますぅー!」

 

垣根が部屋片付けてないのかと無理やり部屋に入りインデックス達も勝手に入る…そこに広がっていたのは部屋に散乱するビールの空き缶やタバコの吸殻…はっきり言うと女性としての尊厳を投げ捨てているレベルの汚さに思わず引いてしまうインデックスと神裂

 

「「…うわぁ」」

 

「ち、違うのですよ!偶々片付けてなかっただけで…」

 

「……この煙草、僕と同じ銘柄だね…貴方もこの銘柄が好きなのかい?」

 

「あ、はい…て!貴方14歳て聞いてますけどその歳で煙草を吸ってるのですかー!?この不良神父ちゃんが!」

 

小萌が慌てて弁明を図るが二人の中では小萌の第一印象は「幼女の姿をしたおっさん」と言う認識になってしまった…だがステイルは部屋を見ず吸い殻を見て自分と同じ銘柄だと同志を見る目で小萌を見るが小萌は(見た目的にあり得ないが)教師であるのでステイルに煙草を吸っているのかと怒鳴る

 

「げ…バレちゃいけない人種にバレた」

 

「全く!隠している煙草を渡してくださいなのです!」

 

「そんな殺生な…貴方だってニコチンやタールがない世界では生きられない筈だ!」

 

「それは当たり前です、でも貴方は大人ではないのですから我慢するのです」

 

「そんな…」

 

ステイルが自分の煙草を奪おうとする小萌に貴方も同じ煙草好きならこの気持ちがわかる筈だと訴えるが小萌は聞き入れなかった、ステイルはガクッと頭を下げる、そんな光景を見た垣根は黙って扉を閉めて帰っていく

 

「さてと…今日は誰のカップリングを撮りに行こ「ちょっとよろしいですの」?オセロちゃんと縦ロールちゃん…何か用か?」

 

「オセロちゃんじゃないですの…ちょっと相談事がありまして…少しお時間を貰いますの」

 

垣根は毎度の如くカップル達の写真を撮りに行こうとするが背後から声が聞こえ振り返る、そこに立っていたのは黒子と帆風だった、彼女は真剣な顔で垣根と話がしたいと言うとテレポートで垣根をある場所まで連れていく

 

 

「何?ミコっちゃんのストーカーが開き直って当麻とみさきちの目の前でミコっちゃんを寝取るて言った?…え?何その状況?」

 

「わたくしも全く同じ気持ちですの…」

 

オリャ・ポドリーダというスペイン料理系のファミレスにやって来た垣根はテーブルに着くと黒子から話を聞かされる。その内容は美琴のストーカーが上条と食蜂の二人に美琴を寝取って見せると宣言した、という内容で垣根はどう言う事?と首を傾げる、黒子は更に詳しく説明する

 

「実は…前から御坂さんをストーカーする輩がいまして…わたくしと白井さん、上条さんと女王を呼んでそのストーカーを捕まえようと計画を立てたのが事の始まりです」

 

「そのストーカーの名前は海原光貴(うなばら みつき)…常盤台の理事長の孫でイケメン…なのですが中身は残念としか言いようがありませんのね」

 

「御坂さんと接触する為に権力を乱用したり、嫌がる御坂さんをレストランに連れて行こうとしたり…他の方々にはその様な事はしないのですが…お姉様はすっかり困っているご様子でした」

 

「…一応聞くけどそれって本人だよな?お粥さんとかじゃないよね?え、本物?マジか…引くわ」

 

黒子達がそのストーカー…海原 光貴について教え、自分達が彼を捕まえる為に上条と食蜂…そして被害者である美琴と共に海原を捕まえようとしたのが事の始まりだと教える

 

「それで彼を追い詰めたのですが…先程白井さんがおっしゃった様に御坂さんを自分が寝取る!と宣言したのです…所で寝取るとは何でしょうか?」

 

「……貴女は知らなくてもいい言葉ですわ…それで貴方の力添えを借りたいと思い声をかけたんですの」

 

黒子は垣根の力を借りたいと頭を下げる

 

「オッケー、勿論協力するぜ…あの三人に不埒な事をする奴は見逃せねえからな」

 

「ありがとですの」

 

垣根は笑って勿論協力すると言って黒子は感謝を伝える

 

「……で、この事件に関わってるミコっちゃんと当麻とみさきちは何処にいるの?」

 

「「……」」

 

「え?何その間…なんか怖い」

 

「…あちらを見れば分かりますわ」

 

垣根が美琴達はと何処にいると聞くと 黒子達の動きが固まる、帆風はゲンナリした顔で美琴達がいる場所を目線で教え垣根がその場所を見ると

 

「「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す」」

 

「……バレなければ犯罪じゃないのよね…あは、それにゴミを掃除するのは犯罪じゃないし…ヤッチャッテイイヨネ?」

 

垣根が気づかなかっただけで店の奥に三人がいた…ブツブツと恐ろしげな単語を呟く上条と食蜂、ボソッと何か呟き乾いた笑いを浮かべる美琴。三人共目に光がなく焦点が合っていない、はっきり言って怖い…おいハイライト仕事しろ

 

「……疲れてるのかあり得ない幻影が見えてるんだが…あれ現実?」

 

「…昨日からあの調子ですの…昨日は怖くて寝れなくて寮監に土下座して寮監の部屋で寝させてもらいましたの」

 

「…あの時は怖かったですわ…何処からか包丁を取り出した上条さんと女王がストーカーを包丁で刺そうとしていて…」

 

「その場にわたくし達がいて本当に良かったですの…」

 

「でもあの時言った女王達が言った言葉…「どいて、そいつ殺せない」の声は無機質過ぎて…思い出すだけで震えて来ますわ」

 

垣根は目の前の光景を信じられなかった、黒子達は三人から目を逸らし何かを思い出したのか身体を震わせる。

 

「…俺の友人達がこんなヤンデレなわけがない」

 

愛が重過ぎるあまり、自分達の恋路を邪魔する者を排除しようとする三人に戦慄する垣根、因みに超能力者の序列順に彼等の事を簡易に説明すると

 

第一位 メルヘン

 

第二位・第五位・第六位 ヤンデレ

 

第三位 ロリコン

 

第四位 ツンデレ

 

第七位 ノーマル

 

となる、マトモな人物は削板だけだった。

 

「…俺を呼んだ理由て…海原がこいつらに殺されない様に抑えてくれて意味?」

 

「ですの、お姉様達ならともかく第二位を止められるわけがないですし…ですから第一位である貴方に声をかけましたの」

 

「……はぁ、まあこんなにこいつらの愛を重くしたのはくっ付けた俺の責任でもあるしな…協力するぜ」

 

「ありがとうございます垣根さん」

 

自分が呼ばれたのはこのヤンデレ達に海原を殺させない為かと理解した垣根、黒子はその通りだと頷く。垣根はこの三人の愛を重くしたのはくっ付けた自分の責任だと呟くと携帯を取り出しアドレスを開き発信ボタンを押す

 

 

「…でェ、俺達も呼んだのかよ」

 

「まあ、友達を犯罪者にする訳にはいかないからにゃーん」

 

「ストーカーなんて根性無しがやる事だ!ましてや好きな相手がいるのにそれを横から攫うなんて言語道断だ!」

 

垣根が呼んだのはお馴染みの一方通行達、削板以外やる気なさげだが友達を犯罪者にしない為協力すると首を縦に降る

 

「…さて、当麻達もブツブツ言ってないで作戦会議しようぜ」

 

「殺す殺す殺す殺す」

 

「脳味噌を弄ってぇ〜廃人確定☆ううん、もっと残酷力高めな…」

 

「超電磁砲で五体を消滅させれば…ふひ」

 

「返事がない、ただのヤンデレの様だ」

 

垣根が早く会話に混ざれよと三人に声をかけるが誰一人話を聞いていない、垣根は三人に話を聞くのは無理だと悟る

 

「…そう言えばオセロちゃんは当麻とかみさきちの事どう思ってるの?」

 

「いきなりなんですの?藪から棒に…」

 

「いやさ、オセロちゃんがミコっちゃんにお熱だったて皆知ってるし…悪く言って失恋した訳で、二人の事どう思ってるのかな〜と思って」

 

「……そうですわね、まあはっきり言って最初はショックでしたの…ですが」

 

垣根が話の話題を逸らし黒子は上条と食蜂の事をどう思っているのかと尋ねる、黒子は苦笑いしながら昔を懐かしむ様に語る

 

「わたくしはお姉様が幸せならそれでいいんですの、確かにわたくしに振り向いて欲しかったですが…お姉様が選んだのはあのお二方です、お姉様の意思なら…致し方ありませんの…時々ウンザリする時もありますが…お姉様が幸せそうに笑っているならわたくしはそれで満足ですの」

 

「……ヤベェ、この子カッコいい…俺が女子なら惚れてるね」

 

「…感動しました」

 

「……泣かせるねえ」

 

「…まあ、なンだ…次の恋…頑張って探せよ」

 

「感動した!」

 

黒子が美琴が幸せなら自分は満足だとにこやかに笑う、彼女の美しい愛と美琴を思いやる心に感動する超能力者達

 

「凄いですね白井さんは僕ならそんなの耐えられませんよ…やはり御坂さんを寝取るしかありませんね」

 

「「「「「「……」」」」」」

 

「おや?どうしたんですか皆さん?固まってしまって」

 

「黙りやがれですの、このストーカー風情が、いつの間に机の下にいたんですの」

 

突然机の下から海原が現れ一同は彼を見たまま固まる、彼はナチュナルに会話に入ってくるが黒子が罵倒した事で全員が我に帰る

 

「「……」」

 

「おい、無言で包丁持ったまま立つな」

 

「…あは、死体さえ残らなければ…」

 

「おィ落ち着け、こんな変態殺して罪になっなら洒落になンねェだろうが」

 

無言でフラリと立ち上がり何処からか取り出した包丁を海原に向け突進しようとする上条と食蜂を押さえつける麦野、一方通行は澱んだ目でコインを海原に向けている美琴を宥める

 

「やれやれ、怖い人達ですね…こんな人達よりも僕と付き合いませんか?いいレストラン知ってるんですよ」

 

(ヤベェ正直言って殺したくなってきた)

 

「「どいて、麦野さんそいつ殺せない」」

 

海原は食蜂と上条を見て野蛮な人達だと鼻で笑い美琴を食事に誘う、その態度に垣根も殺意が湧いてきた

 

「おいこらイケメン君、悪いけどミコっちゃんには付き合ってる彼氏と彼女がいるんだ、いい加減諦めて別の女でも探せ」

 

「おや貴方はあの有名な第一位ですね、すみませんが部外者は引っ込んでいてくれませんか?それに別の女を探せとは…チャラい見た目にそぐわぬセリフですね」

 

「…余程愉快な死体になりてえらしいな」

 

垣根が美琴の事は諦めろと海原の正面に立って脅すが海原はニッコリと笑顔を浮かべ邪魔だと笑う

 

「いい加減にしてくださいまし!お姉様は貴方がこの様な行為をするのを嫌がっていますの!風紀委員として貴方を連行しますわよ」

 

「?何故でしょう?僕は常盤台中学の理事長の孫ですし、見た目もいいですし大能力者です…まさに神が二物どころか三物与えた存在である僕を何故嫌がるのですか?そこにいるツンツン頭のダサい髪型のフツメンなんかより優れていると思いますが」

 

「「…殺す!」」

 

(地雷踏みやがった!?)

 

黒子がバン!とテーブルを叩いてもうやめてくれと叫ぶが彼はニコニコ笑って自分は上条よりも優れていると笑う。それを聞いた美琴と食蜂はもう鬼が裸足で逃げそうな顔で海原を睨む、それにあの麦野でさえもビクッとなる

 

「……俺の友達の悪口を言うんじゃねえ」

 

「は、そんなフツメンの肩を持つとは…所詮第一位もその程度でしたか…まあ、僕の方がイケメンですけどね…そうだ、貴方の決め台詞を僕が言ったら僕の方が似合うんではないでしょうか?」

 

「あぁ?」

 

友達を馬鹿にされた事に苛立った垣根が海原を睨むが彼はやれやれと首を振る、そして彼は垣根の決め台詞は自分の方が似合うと言って決めポーズを取って呟いた

 

「僕の念動力(テレキネシス)にはその常識は通用しな…」

 

「……」

 

「ごもらぁ!?」

 

(((殴った!?)))

 

垣根の決め台詞を自分なりにアレンジして言おうとした海原に帆風は無言で左頬をぶん殴る、それを見た超能力者達はえぇ!?と驚く

 

「ちょ!?帆風何叩いてんだ!」

 

「…すみません、酢豚にパイナップルが入ってる様な異物感につい…」

 

「いやだからと言ってパイナップルは殴ンねェだろ!?」

 

垣根を慕っている帆風に取って海原のセリフは聞くに耐えないらしくつい手が出てしまったらしい、叩かれた海原はよろよろと立ち上がり美琴に近ずく

 

「さあ、行きましょう御坂さん」

 

「!…離して!」

 

「我儘言わないで下さい、さあ行きま「離れなさい、この三下」…今なんとおっしゃいましたか?」

 

美琴の手を無理やり握り連れて行こうとする海原、美琴は嫌がるが海原は気にしない…それを見て食蜂と上条が能力を使って海原を攻撃しようとした時黒子が何かを呟き全員が黒子を見る

 

「お姉様から離れろて言ってんですの!この三下が!」

 

(それ上条が俺に言うべきセリフ…)

 

「……は、三下ですか…いいんですか?僕にそんな事を言って?祖父に頼んで貴方を常盤台から退学にしてあげてもいいんですよ」

 

「やれるもんならやって見やがれですの」

 

黒子が憤って海原に叫ぶ、海原は自分にそんな口を聞いていいのかと笑う

 

「…いい覚悟です、では勝負をしませんか?僕が勝てば貴方達部外者はもう関わってこないで下さい」

 

「上等ですの、わたくしが勝てばお姉様に今後一切近寄らないで下さいまし」

 

「ええ、僕は約束を守る主義ですから…なら早速ここら辺の河原で決闘を行いましょう、逃げないでくださいね」

 

海原が自分と黒子で決闘を行い、勝ったら垣根達部外者は関わらない、負けたら美琴から手を引くと約束すると言い、黒子は鋭い眼光で海原を睨みながらその条件を飲む、海原は不敵に笑って河原へ一足先に向かう

 

「…おいオセロちゃん、あんな約束していいのか?」

 

「負けたら俺らはなンも出来なくなるンだぞ…勝てンのか?」

 

「当たり前ですの。わたくしはお姉様の露払いでしたのよ?あの様な男けっちょんけちょんにしてやりますの」

 

垣根と一方通行が心配した目で黒子を見るが黒子は心配無用と息巻いていた…なお美琴は海原に触れられた手を何度もおしぼりで触られた箇所を拭いていた

 

 

 

「来ましたね白井さん」

 

「さっさと終わらせますわ」

 

河原にて待っていた海原がやって来た黒子(と垣根達)を見て笑う、黒子も海原を見下す様に笑う…黒子が海原に近づいて決闘を始めるかと思っていた時にふと声が聞こえた

 

「くろこ?何してるの?」

 

「!インデックスさんではありませんの、風斬さん達もどうしてここに?」

 

「お昼ご飯でも食べようと思ってね…小萌さんは学校らしいし外食でもしようと歩いていたら風斬に会ってね…皆でご飯でも食べようと思っていたんだ」

 

インデックスと神裂、ステイル、風斬の四人が黒子に声をかけ黒子が何故ここにと首を傾げる。

 

「兄さん達はここで何を?」

 

「実はな、かくかくしかじかなんだ」

 

「いや、かくかくしかじかで伝わるわけねェだろ…」

 

「え!?みことを自分の物にしようとしてるストーカーとくろこが決闘する!?」

 

「…最低だねあの優男」

 

「いや何で理解できたの?」

 

風斬がこんな所で何をと呟くと垣根がかくかくしかじかと呟く、そして何故かかくかくしかじかで伝わったインデックス達に一方通行は突っ込む

 

「ギャラリーが増えましたね…お可哀想に、無様な負け面を皆さんに晒してしまいますね」

 

「おや、それは貴方かもしれませんよ」

 

「はて?それはどうでしょう…ではさっさと始めましょうか」

 

海原が大勢の前で醜態を晒すのかと黒子を憐れみの笑みを浮かべる、黒子はそれはお前だと侮蔑の笑いを浮かべる…両者は向き合っていつでも戦える様に構える

 

「やっちゃえくろこ!そんな男なんて倒しちゃえなんだよ!」

 

「「「頑張れ!」」」

 

インデックス達も黒子を全力で応援する、黒子はそれを見てインデックス達に笑いかけ海原を睨む

 

「やれやれ、僕は悪役(ヒール)ですか…嫉妬は怖いですね」

 

「悪役ですから仕方ありませんわ…で、お覚悟はよろしいですの?」

 

「…失礼ですが貴方は僕が負けると思っているのですか?」

 

「何を仰います事やら…わたくしが負けると思っていますの?」

 

海原は自分が悪役みたいだと笑い、黒子は悪役だろと笑う、黒子には自分が勝つ自信がある、何せ風紀委員として何人の犯罪者を捕まえてきたからだ、喧嘩慣れしていない坊ちゃんに負ける程自分は弱くないと自負していた

 

「それはどうでしょうか」

 

「な!?」

 

だが海原は今まで彼女が捕まえてきた犯罪者とは違った、黒子と同じ大能力者で応用性が高い念動使いである、彼は右手を動かすと砂の槍を形成しそれを黒子に放つ、黒子は自身の能力空間移動(テレポート)でそれを避ける、いきなり攻撃して来たのは驚いたが空間移動なら念動力の攻撃を避けるのは容易いと黒子は考える…が、海原はそれすらも読んでいた

 

「知っていますか、風力使いや水流操作は念動力の派生系なんですよ」

 

「?それがどうかしましたの」

 

「つまりですね…こういう事も出来るんですよ(・・・・・・・・・・・・・)

 

「!?」

 

海原が念動力は超能力の中でも応用が広く能力であり、婚后や湾内の風力使いや水流操作も念動力の派生系であると説明し何故それを言うのかと黒子が首を傾げる、その瞬間黒子は見えない何かに足を掴まれ宙に浮かび上がりそのまま地面に投げつけられる

 

「が、は…!」

 

「くろこ!?」

 

肺から酸素を吐き出す黒子、それを見てインデックスが叫ぶ、だが海原は追撃の手を緩めず河原の横に流れる川の水を水流操作の様に浮かべ水球を放ったり河原の石を浮かび上がらせ黒子に向かって放つ

 

「甘いですの!」

 

黒子は空間移動でそれを避ける、同時に黒子は自分の過ちに気付く、河原で決闘しようと提案したのは海原が自分が有利なステージに立つ為だったのだ、遮蔽物のない場所では空間移動で物陰に隠れる事は出来ない

 

(単なるストーカー野郎だと思っていましたが…腐っても大能力者(レベル4)という訳ですのね)

 

念動力は確かに応用力が高い、だが遠距離では見えない力をいきなり目標の座標に出現させることはできない、対して黒子の空間移動は海原の念動力と近い一瞬で接近できる、黒子はヒュンと音を立てて海原の背後に出現し海原の肩に手を持つ、それだけで海原を地面に移動させる。空間移動を知らない人なら得体の知れない武術の投げ技に見える…これで勝ったと思い安堵する黒子

 

「まさかこれで終わったと?」

 

「がっ…!?」

 

「「「「!!」」」」

 

だが海原は高速で地面から立ち上がり黒子に蹴りを入れ黒子を吹き飛ばす、黒子は小石の様に勢いよく吹き飛ばされ地面を転がる。それを見てインデックス達は目を丸くし何が起こったのかと考える

 

「…今のは」

 

「僕の念動力は体を分子レベルでガチガチに固める事が出来るんです、更に念動力で自分の体を操り人形の様に無理やり動かす…どうです自分は傷つかない最高の技でしょう?」

 

念動力の力を自分に貼り付けて分子レベルまで固め身体を念動力で動かす、大能力者だから出来る芸当に黒子が驚くが海原は一瞬で接近して黒子の腹に蹴りかます、黒子が口から酸素を吐き出し痛みに呻く、だが海原は容赦なく黒子に蹴りを連発していく

 

「くろこ!?」

 

「白井!?」

 

「何故彼女は避けないんですか?あの縮地の様な回避技があれば避ける事など容易いのでは?」

 

「いいえ、違います。空間移動は他の能力より脳への演算負荷が大きく計算式が複雑なんです、それに痛みや動揺で集中力が乱れると空間移動出来ないんです」

 

インデックスとステイルが蹴られる黒子を見て叫ぶ、神裂は何故避けないのかと疑問に思うが風斬が空間移動の弱点を分かりやすく教える

 

「空間移動は痛みで集中力を乱す事によって使用不可に追い込めます…こんな風に…ね!」

 

「…ぁ、ぐっ…!」

 

海原はガシガシと倒れこむ黒子に蹴りを放つ、能力だけに頼る他の能力者と近い能力を使った格闘戦も強い海原に黒子は成すすべなく地に伏す

 

「楽な戦いです、ですがこれで御坂さんとの恋路を邪魔する者はいなくなりました……思えば長かった…御坂さんに一目惚れした僕は祖父の権力を駆使して常盤台に侵入し、彼女が飲み捨てた牛乳パックをゴミ箱から拾っては間接キスをしたり、彼女がゴミ箱に捨てたガムを拾ったりしていました」

 

(うわぁ…変態だ)

 

((美琴の牛乳パックにガム?!なんて羨ま……許せない!))

 

「そんな行為を行いながらいつか自分に振り向くんだろうな〜と思っていた自分に信じられない出来事が起こりました…御坂さんが同じ超能力者の第二位と第六位と付き合い始めたという話です…あの時僕は死ぬのではと思うほどショックを受けました」

 

(死ねば良かったのに)

 

変態行為を話す海原にゴミを見る目で見る垣根と、一瞬羨ましそうな目をしていた上条と食蜂…この二人もこの変態(海原)程ではないがかなりヤバイ

 

「さて…白井さんは倒しました…約束通りもう関わらないで下さいね」

 

「…それを俺達が素直に守るとでも?」

 

「いいんですか?超能力者の皆さんの有る事無い事をネットに書き込みますよ?」

 

「…このゲスが」

 

これで美琴を寝取る邪魔をするなと垣根に指差す海原、約束を守らなければネットに誹謗中傷を書き込むと脅す、垣根達は能力を使って暴力で解決しようと考える…だが

 

「待ってくださいまし」

 

「くろこ!?」

 

「!?…まだ立ち上がりますか…しつこいですね」

 

「この男はわたくしが倒しますの…手出しは無用ですわ」

 

黒子は立ち上がり垣根達を制止する、この男は自分が倒す邪魔をするなと伝えると黒子は太もものホルダーに仕込んだ金属矢を自分の手に出現させる

 

「まだやる気ですか?僕には女性を虐めて楽しむ趣味はないのですが」

 

「喧しいですの」

 

「何故そうまでするんですか?貴方だって御坂さんを取られて悔しかったのではないのですか?貴方だって本当は御坂さんを寝取りたいはずだ、あんな男と女に取られるくらいなら自分が寝取った方がいいと思ってる筈です」

 

「…黙れですの」

 

海原は黒子は自分と同じだと笑う、黒子だって上条と食蜂に思い人(美琴)を取られて悔しい筈だ、寝取りたい筈だ、奪いたいんだろと同意を求める、海原の話を聞いていた上条達は黒子を複雑そうな顔で見つめる

 

「辛かったでしょうね白井さん…僕なら貴方の気持ちが分かります…誰よりも御坂さんを愛していた僕と貴方なら理解し合えると思うんです…だから…僕と協力しませんか?」

 

「……」

 

「僕達は敵ではありません、僕と一緒に御坂さんを寝取ろうではありませんか…そしたら貴方も僕も幸せになれる…」

 

海原は手を差し伸べる、それはまさに失恋した者にとって魅力的な誘い…悪魔の様な笑みを浮かべる海原が出した提案に黒子は

 

「お断りですわ、そんなもの」

 

「な…!」

 

「これだけ他人に迷惑をかけておいてそんな事しか言えない…所詮はその程度の愛しかありませんでしたのね」

 

彼女は鼻で海原の事を侮蔑の意味を含めて笑った、予想外の返しだったのか海原が目を見開いた

 

「な、何故です!?貴方にとってこの提案は魅力的な筈!」

 

「では一つ聞きますの、貴方はお姉様の幸せそうな顔を見た事がありますか?」

 

「え…?」

 

「お姉様はあの二人と付き合いだして本当に変わりましたわ、いつでもお二人の話ばかり、いつもニコニコと…消灯ギリギリまで聞きたくない惚れ話を聞かされて…最近は二人を喜ばす為わたくしも着ない様な薄い下着履いたりしてわたくしに「どう?似合ってるかな?先輩と操祈喜ぶかな〜」とニヤケ顔を晒して正直爆ぜろと思いましたの」

 

悔しいのは当たり前だと黒子が呟くと海原はなら自分と協力して美琴を寝取ろうと言いかける、だが黒子はそれを一蹴する。そして美琴が普段どう過ごしているのかを語る

 

「上条さんは街中で出会えばお姉様やら食蜂さんの可愛い所を二時間ほど語りますし、食蜂さんはいつもお姉様と上条さんのいやらしい妄想をしてクネクネしておられます…はっきり言ってドン引きですの」

 

「「「……すみませんでした」」」

 

黒子が引いた顔で少しは愛を自重してくれと呟く、いつの間にか正気に戻っていた三人は顔を赤くして謝罪する。

 

「…そんなどうしようもない変態な三人ですが…お姉様はいつも笑っておられました。わたくしと一緒にいた時よりもずっと嬉しそうに…」

 

「確かにわたくしは失恋しました、ですがだからと言ってお姉様を不幸せにする程この黒子、落ちぶれていませんの」

 

「お姉様の幸せは上条さんと食蜂さんと一緒に居られる事…お姉様にとっての不幸は二人と一緒に居られない事…ならば黒子が敬愛するお姉様に出来る事はただ一つ」

 

黒子は海原を見据えこう答えた

 

「お姉様の世界を守る、お姉様の幸せを害する貴方の様な輩から幸せを守るのがわたくしの…お姉様を愛する者として、選ばれなかった女として出来る事ですの」

 

黒子は美琴の幸せを守る為に海原を倒すと心の底から叫ぶ。その言葉は正しくヒーローそのものだった

 

「行きますわよ、貴方の弱点はもう見破りましたの」

 

「強がりを、僕の能力に死角など…」

 

黒子は痛みを無視し空間移動を行い海原の前に現れる、彼女は海原の分子レベルで固めた体の弱点に気づいていた、どんな能力にも弱点はある、不死身の体を持つジークフリートも背中の一点だけが弱点だった様に、アキレウスの不死の肉体の弱点が踵だった様に彼の肉体にも弱点があった…それは

 

「秘技!金玉潰し!」

 

「ぎゃ$$€〒=あ"〆々あ"あ"||々>|〒あ"#!?」

 

「「「「男の急所に当てた!?」」」」

 

「「「「「う…」」」」」

 

黒子は思い切り足を振り上げ限界まで足を振りかぶる、そしてフルスイングで足を股間に向けて蹴り上げる、何かを潰す様な嫌な感触が黒子を襲うが黒子は気にせず腕を大きく振りかぶる。その様子を見ていた男性陣は前屈みになって股間を抑える

 

「あ…ぶ…」

 

「歯を食いしばれですの…失恋した女の拳はちいとばかり響きますの!」

 

泡を吹きかけている海原…痛みの所為で能力の演算が出来ない…故に身体は元に戻る、その隙を黒子は狙っていた。黒子は振りかぶった腕を思い切り海原の顎にアッパーを喰らわし海原を吹き飛ばす…海原の身体は宙を舞い川の中に落ちていった

 

「……わたくしの…失恋を乗り越えた女の勝利ですの」

 

「…勝った、くろこが勝ったんだよ〜!」

 

黒子はこれが失恋を乗り越えれなかった海原と失恋を乗り越えた自分との差だ、と宣言する、インデックス達が黒子の勝利を祝う為に駆け寄ってくる

 

「…カッコよかったわよ黒子」

 

「……主人公力高過ぎねえ白井さんわぁ、でも美琴はあげないんだゾ☆」

 

「でもまあ…素直に尊敬するよ…カッコよかったぜ白井」

 

上条達は黒子に向けて尊敬の眼差しを向ける

 

「うおおお!素晴らしい根性だったぞ!正に漢だな」

 

「「いや女だから」」

 

「…カッコいいねえ、流石ヒーローだ」

 

「白井さんカッコ良かったですわ、わたくしもあれくらい活躍して見たいです」

 

垣根達も黒子の見せた底力に感動し拍手を送る、黒子は駆け寄ってきたインデックスに抱きつかれ地面に倒れそうになるが何とか堪える、そして神裂とステイル、風斬とハイタッチしていた

 

「負けちゃうと思いましたよ!」

 

「カッコよかったんだよくろこ!」

 

「えへへですの、まあ当然の結果ですわね」

 

風斬とインデックスに褒められ頬を赤くしながら当然の事だと笑う黒子…誰もが緩みきっていたその時川から音を立てて海原が立ち上がる

 

「な!?(まだ気絶していませんでしたの!?)」

 

「はぁ、はあ…よくもコケにしてくれましたね…絶対に許しません…こうなったら!」

 

驚く黒子に海原は歪んだ笑みを向け念動力である物を掴む

 

「見ろミナ!給料をはたいて買ったオープンカーだ!カッコいいだろ!」

 

「あーはい、そうですね〜かっこいいなー(何言ってんでしょうこのオッさんは)」

 

河原の向こうで真っ赤なオープンカーをスリットの入った19世紀風の喪服の女…恐らく妻であろう女性に夫であろう古いスコットランド式軍服の上から魔女のとんがり帽子や外套を羽織り、マフラーを巻いた中年男性が自慢げに見せる、妻は棒読みで凄いと感情無さげに答える、するとそのスポーツカーが海原の念動力で掴まれ黒子達に向かって飛んでいく

 

「俺のスポーツカーぁぁぁぁ!!?」

 

「…空飛ぶ車てハリーポッターを思い出しますね〜」

 

中年男性はマイカー!!と右手を伸ばして飛んでいくスポーツカーに向かって叫ぶ、そのスポーツカーは黒子達を押し潰さんばかりに凄まじい速さで向かってくる

 

(しまった!咄嗟の事で空間移動が出来ませんの…せめてインデックスさん達だけでも…)

 

インデックスだけでも逃がそうとする黒子、海原は狂った様に笑みを浮かべる…が、そのオープンカーは一瞬でネジ・ボルト・溶接部といった部品が一つ一つ全て断たれ分解(・・)された

 

「……はぁ?」

 

「え?…な、何ですの?」

 

(!…今の現象は…トラウィスカルパンテクウトリの槍?つまり…魔術師が黒子を助けた?なんで?)

 

何が起きたのか全く出来ない海原と黒子、それが理解していたのはインデックス達魔術師とその攻撃を知る垣根のみ

 

「く…!ならば他の物で」

 

海原は他の物を念動力で掴もうとする…だが彼は一瞬で超能力者達のど真ん中に現れる

 

「……へ?」

 

「よお、殺人未遂のお坊ちゃん、死ぬ覚悟はあるか?」

 

麦野の0次元の極点で超能力者達の近くに現れた海原は一瞬何が起こったのか理解できなかった…が、これから起こる惨劇について理解すると顔を青くして汗をダラダラと流す

 

「ブ・チ・コ・ロ・シ・か・く・て・い・ね」

 

「愉快なオブジェにしてやンよ」

 

「とんでもねえ根性無しだな…その腐った性根叩き直してやる」

 

「…私の可愛い後輩に手を出したらどうなるか教えてあげるわ」

 

「後、美琴に手を出そうとした罪も重いわよぉ〜死ぬくらいで償えると思わない事ね」

 

「お前分かってるのか…下手したら白井は死んでたんだぞ…いいぜ、お前が白井が死んでもいいと思ってるなら…その腐った幻想をブチ殺す!」

 

「てな訳で…絶望しろコラ」

 

「あ、…ゃ……」

 

超能力者達の殺意をその肌で感じ海原は失禁してしまう程の恐怖を感じる、何か弁明をしようとするが彼等は止まらない…河原に海原の絶叫が響き渡る

 

 

「…やれやれ、とんだ下衆野郎がいたものです」

 

とある建物の屋上にて、褐色肌の黒髪の青年は黒曜石のナイフをポケットにしまうと河原の方をもう一度見る。そこには満足げな顔でその場から立ち去る超能力者達と帆風、怪我をした黒子を背負ったいる神裂や何か黒子に向かって喋っているインデックス達の姿が視界に映る、なお視界の端にはモザイクがかかった海原(肉塊)が蠢いている

 

「…白井(彼女)とは美味い酒が飲めそうですね、同じ失恋したもの同士…そして初恋の女の子を影から守る者同士としても」

 

実は彼は黒子と同じ美琴に恋心を抱いていた男だ、だが彼は告白もせずまま失恋してしまった…だが海原の様に寝取ろうなど考えていない…寧ろ黒子と同じ考えだった

 

「初恋は実らないとはよく言ったものです…ですが自分では御坂さんはあそこまで笑ってはいなかったでしょう…どうか御坂さんを幸せにしてあげてくださいねお二人さん」

 

彼は楽しそうに笑っている美琴と上条、食蜂を見て満足そうに笑う、そしてそのまま立ち去ろうと青年は踵を返そうとする

 

「何をしているのですか師匠、とミサカはカッコつけている師匠に問いかけます」

 

「…おや17600号さんではありませんか…気づきませんでした…気配を隠すのはもう完璧ですね」

 

「これも師匠のお陰です、とミサカは師匠と共に行った訓練の日々を懐かしむ様に空を見上げます」

 

そんな青年に声をかけたのは美琴…ではなく、妹達の一人 スネーク…じゃなくてミサカ17600号である、彼女の気配に気づかなかったと彼は彼女を褒める

 

「なんの御用でしょうか?」

 

「師匠、今からミサカと一緒に食事しませんか?とミサカは照れながら食事に誘います」

 

「ええ、いいですよ」

 

17600号は師匠と呼んだその青年を食事に誘うと彼は微笑んで首を縦に降る、17600号は無表情だがよっしゃ!とぴょんぴょんとその場を跳ね彼の手を引いて屋上から二人は去っていく

 

 

「俺のオープンカーがぁ…」

 

「いい歳したオッさんがマジ泣きしないでください、恥ずかしいですから」

 

なお分解されたスポーツカーの持ち主は涙を流しながらそのスポーツカーだった残骸を見て嗚咽を漏らす、そんな夫に冷ややかな目を向ける妻…今回の一番の被害者はこのオッさんかもしれない

 

 

 

 

 

 




カッコいいお粥さんと小悪党な海原…何故こうも違いがでたんだろう?後お粥さんはずっと建物の屋上でミコっちゃんの事をストーキングしてました(笑)、結局はストーカーには変わりありません、ただし17600号からはかなり好意を寄せられている模様…因みに作者は17600号が好きです、御坂妹(10032号)と19090号と9982号も好きですね

黒子をカッコよく書きたい為書いた回でした…忘れがちですけど黒子てかまちー公認のヒーロー何ですよね…でも他の作品だと百合てイメージが強い…一応原作だとお姉様が一番、てだけで男が嫌いてわけじゃないんだけどな…後嫁入りだから体の傷も心配しているし(旧約8巻参照)。偶にはこんなカッコいい黒子を書いてもバチは当たらないと思います

え?最後に出てきたオッさんとその奥さん?…誰だろうなぁ(棒)。さて次回もギャグ回…皆さんはドラクエやった事ありますか?自分はⅤが一番やり込んでました


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ごっこ遊びは子供の頃は楽しいが大人になると恥ずかしくなる

皆さん男子高校生の日常ていう漫画知ってます?あれ面白いですよね、アニメは声優も豪華ですし

さて今回のテーマはごっこ遊び。前回の後書きでドラクエの事を聞いたのも…今回のごっこ遊びがそれだからです…因みに自分はⅣからⅨとイルルカです…一番やり込んだのはⅤとⅨ…エスタークの息子を仲間にしたり全宝の地図のボスを倒したり配信クエストやったりやり込んでたなぁ〜最近はゲーム自体してないけど(笑)小説書いてるとやる時間がねえ

で、今回はルビ打ちが独特です、キャラが掴みにくかったらすみません、キャラ崩壊注意


「暇だからドラクエごっこしようぜ」

 

垣根は自分以外の超能力者と帆風を第九学区の公園に集めてドラクエごっこしようぜ、と唐突に告げる

 

「…能力だけじゃなくて頭にも常識が通じなくなったのか?」

 

「一度病院行きなさいよ、脳外科よ?」

 

「いい精神科を紹介するわよぉ〜?」

 

「安心しろバカップル、俺の頭は正常だ」

 

上条達は垣根に等々頭の方も未元物質と同じ常識が通じなくなってきたのかと哀れみ、脳外科と精神科に行けと伝える、垣根は自分は正常だとジト目で三人を見る

 

「てか、なンでドラクエごっこなンだよ」

 

「え?なんとなくだな…正直俺暇だからさ…付き合えよお前ら」

 

「何でだよ…お前一人でやれよ」

 

「俺も家に帰って自主トレの続きをしたいのだが…後五百回腕立てをしないといけないんでな!」

 

一方通行が何故ドラクエごっこなんだと尋ねるとなんとなくと返す垣根、麦野と削板は乗り気ではなさそうだ

 

「皆さんそんな事言わずに…偶には童心に帰ってごっこ遊びをやってみませんか」

 

「帆風先輩がそう言うのなら…まあ先輩と操祈がやるならやってあげてもいいわよ」

 

「…チ、少しだけだかンな」

 

(なんだかんだ言って遊んでくれるな)

 

帆風がほんわかとやってみようと笑うと全員が帆風が言うなら…と納得する

 

「まずは冒険の書を選んでくれ」

 

「いや冒険の書もなにもまだ私達やった事ないんだけど…」

 

「いいんだよ、冒険の書の1か2か3か選べ」

 

「……じゃあ1で、冒険の書1な」

 

垣根はまずは三つの冒険の書から一つ選べと選択肢を出す、上条が適当に1と言うと垣根は帆風に近づき首元に手を当てる

 

「動くんじゃねえ!こいつがどうなってもいいのか!」

 

「ママ〜!」

 

「「「どう言う状況!?」」」

 

垣根が人質を取った強盗犯の様にどすの利いた声で叫び帆風は迫真の演技で助けを呼ぶ、上条達はどう言う展開なのかと理解できない

 

「バカヤロー!相手を刺激しやがって!」

 

「「「麦野さん!?」」」

 

「プックルゥゥゥ!俺が引き付ける!その間にあのクソガキを助けやがれェ!」

 

「「「アー君?!」」」

 

麦野が上条達を叱りえ!?と上条達が更に混乱する、そして一方通行が拳銃を構えている様な仕草をし麦野を隊長と呼ぶ、なんだかんだ言ってこいつらノリノリである

 

「待てトンヌラ!?」

 

「うおォォォ!!」

 

「「「これドラクエだよね!?ドラクエなんだよね!?」」」

 

垣根に向かって走っていく一方通行をトンヌラと叫ぶ麦野、これは本当にドラクエごっこなのかと叫ぶ上条達…そんな混沌の中垣根は帆風から手を離す

 

「よし!今日の訓練はここまで!」

 

「「「訓練!?」」」

 

「説明しよう、俺達は魔王との決戦に備え日々訓練を続けている、今回は瀕死の魔物が女の子を人質に取ったらどうするか、という訓練を行っていた」

 

垣根が訓練終了と呟くと上条達は訓練だったのかとズッコケそうになる、削板が腕を組んで状況を分かりやすく説明して成る程さっきのは訓練か…いやドラクエなら銃ないだろ、あれはボウガンでも持ってるつもりだったのかと上条達は考える

 

「よう新入り、訓練にはなれたかよォ」

 

「誰だよお前」

 

「俺はトンヌラ、お前らの先輩だァ宜しくなァ〜」

 

「そして俺がお前らの同期のゲレゲレだ!」

 

「そして私が先輩のプックルさ」

 

「わたくしが同期のはぐりんですわ」

 

「そして私が隊長のドランゴだ」

 

「「「いやいやキャラ多すぎ!」」」

 

一方通行が上条の肩に馴れ馴れしく肩を乗せトンヌラと名乗る、垣根達もキャラ名を名乗るとキャラが多くて覚えられないと叫ぶ

 

「なんだよお前らノリ悪いな〜」

 

「いやいきなり過ぎてついてけないから!てか即興で作ったのに麦野さん達は何でついてけるの!?」

 

「あ〜頭の中にセリフが入ってきてよ…多分垣根が心理掌握が出来るカブトムシ作って自分が考えた内容を私達の脳内に送ってきてるんだろ」

 

「「「心理掌握の無駄遣い!」」」

 

垣根がノリが悪いと文句を言うとついてける訳がないだろと叫ぶ、なお麦野達がセリフを言えていたのは垣根の能力のお陰である

 

「じゃあ内容を説明しよう、俺達兵士は魔王ムドウを倒すべく明日総攻撃を…」

 

「ムドウ!?それ完全に魔王ムドーのまんまねぇ!?これドラクエⅥなの!?」

 

「……ムドー?ドラクエⅥ?なんの話だ?ていとくん分かんない」

 

「いや知らない訳ないでしょ!ドラクエごっこしようて言ってたんだから!」

 

ほぼⅥのパクリだったので食蜂が待ったをかける、垣根は何のことやらさっぱりだと首を傾げる

 

「まあ、ごっこ遊びに戻るぞ…どうだ新入り、兵士としての仕事には慣れたか?」

 

「あ…隊長…で合ってるよな?」

 

「違う、先輩のチャゴスだ」

 

「誰!?」

 

垣根がごっこの役に戻り上条(新入り兵士)を労わる様に肩に優しく手を置く、上条は隊長と呼ぶが彼は隊長ではなくチャゴスだった、いや誰だよ

 

「帰りに風呂に入って疲れを癒そうなのねん、この訓練は辛いなのねん」

 

「む、麦野さん…さっきの男勝りな口調は何処に行ったのかしらぁ?」

 

「?何行ってるねん、ウチプックルちゃうねん、エテポンゲなのねん」

 

「いや誰!?」

 

麦野が変な語尾で食蜂に風呂に入りに行こうと笑い食蜂がさっきのプックルとしての口調はどうした?と尋ねると彼女はプックルではなくエテポンゲだった…だから誰だよ

 

「さァて!ささっと入ろうっすよ先輩ィ!」

 

「いやあんただれ?」

 

「少し遅れて入隊した後輩のピピンっすよ!忘れたンすか?」

 

「ふん…さっさと風呂に入るぞ」

 

一方通行が美琴を先輩と呼んで軽い口調で話しかけてくる、普段とのギャップに美琴が変な目で一方通行を見る…なおこれも新キャラだった、垣根(隊長)は早く風呂に入ろうと指示し公園の砂場まで歩いていく…そこに削板が立ち塞がる

 

「待てい!ここから先へは行かせんぞ!」

 

「…何者だ」

 

「俺が何者かなど関係ない!だがこの先に行こうと言うのなら…」

 

(まさか…もうボス戦か!?)

 

削板が垣根達を威圧し垣根が削板を睨む、二人のオーラのぶつかり合いに上条はいきなりボス戦かと唾を飲み込む…そして削板が目をカッと見開く

 

「入浴料を払って貰おうか!」

 

「「「風呂屋かよ!?」」」

 

ボスではなく風呂屋だった、上条達は敵じゃないんかいとコミカルな音を立ててズッコケる、これが本当のズッコケ三人組

 

「もう展開についていけねえよ…早く風呂入ろうぜ(実際は入らねえけど)」

 

「おい新入りこっちは女湯だぞ」

 

「え!?隊長女だったの!?」

 

上条は垣根の後についていくが垣根はこっちは女湯だと教える、美琴は垣根(隊長)の性別が女だと思わず叫ぶ…なおドランゴはⅥだと性別は雌である

 

「さっさと入ろうぜ新入り」

 

「誰だお前」

 

「トンヌラだ」

 

この後垣根達は砂場にただ立ち尽くしてお風呂に入ってる体で入浴の会話を進めるがドラクエ要素がなかったのでそこは省略する

 

「…で、今気になったけど俺と美琴達は一人一役だけど…お前らの役は何人いるんだよ」

 

「俺は隊長ことドランゴと先輩のチャゴスの二役だ」

 

「わたくしは同期のはぐりんと副隊長のジージョ役ですわ」

 

「俺は風呂屋とゲレゲレの二人を演じているぞ!」

 

「私は先輩のプックルと同期のエテポンゲ…両方とも女子だな」

 

「俺は後輩のピピンと先輩のトンヌラだな」

 

「…多いわね、覚えきれないわ…と言うか副隊長はまだ出てきてないわよ」

 

上条は垣根達が演じる人物達の名前を尋ねると垣根達は役割とその人物の名前を教える、美琴が多すぎて覚えられないと愚痴る

 

「まあそんな事言わないスよ!キャラが多いのがドラクエの醍醐味っス!」

 

「お前誰だよ」

 

「ピピンっす!」

 

一方通行(ピピン)がキャラが多いのがドラクエの醍醐味と意気込む

 

「ふ、明日は魔王の城へ遠征に行くってのに…騒がしい奴らだ」

 

「あんた誰よ」

 

「風呂屋だ」

 

「なんで居るの!?」

 

削板がハードボイルドに笑うと美琴がなんの役だとジト目で呟く、削板は風呂屋と答えると風呂屋が何故ここに!?と上条が突っ込む

 

「煩いな、明日は魔王に総攻撃をかけるんだぞ、静かにしてくれ」

 

「誰だお前」

 

「ジャックだ」

 

「「「いや本当に誰だよ?!」」」

 

垣根が上条達に話しかける、上条はドランゴかチャゴスのどっちだと尋ねると垣根はジャックと返した、なおジャックというキャラは今まで出てきていない

 

「ジャックなんてキャラいなかったじゃん!そこら辺しっかりしろよ!」

 

「……」

 

「殴んなよ!」

 

キャラぐらいちゃんと覚えておけと上条が怒ると垣根が無言で腹パンする

 

「はい、じゃあ場面は変わって次の日の朝だ、兵士達は魔王の城に向かって遠征をする日だな」

 

「展開力速すぎるわよ!?」

 

「いや、まだ足りない、このごっこ遊びに足りないもの…それは情熱、思想、理念、頭脳、気品、優雅さ、勤勉さ…そして何よりもーー速さが足りない!!」

 

「何処のクーガー!?」

 

そして垣根が手を叩き場面が次の日の朝に変わる、その展開の早さに食蜂は突っ込むが垣根はドヤ顔をして大声で叫ぶ、そんな中垣根(隊長)に帆風が歩いて近づく

 

「隊長!全員揃いました!」

 

「そうか…ご苦労だったジージョ副隊長。さあお前ら!魔王の城へ殴り込みだ!覚悟はいいかぁぁ!」

 

「「「「おぉ!!」」」」

 

「「「ぉ〜」」」

 

帆風が敬礼して全員揃ったと叫ぶ、彼女もかなりノリノリである。垣根が覚悟は出来ているかと叫ぶと一方通行達は大声で叫ぶ、上条達は小さい声でそれに応じた

 

「ちょっと待ちな!」

 

「!?」

 

今から魔王の城へ向かおうとする垣根達に謎の男が立ち塞がった、白ランに旭日旗のTシャツにハチマキを巻いたその男は無言で垣根の前に立ち塞がった…

 

「だ、誰だ貴様は!」

 

「「「いやシルエットでモロわかりだろ!」」」

 

現れた謎の人物とは?その目的とは?

 

Bパートに続く

 

「「「いやBパートて何!?」」」

 

 

 

 

前回のあらすじ

村の少年 トウマは精霊 インデックスから神託を受け、生まれ育った町ガクエントシを離れ、その道中で出会った魔法使いミコトと僧侶のミサキと共に大国 ネセサリウスに辿り着く。そこでトウマ達は兵士になる為の試練を乗り越え無事ネセサリウス城の兵士となったのだった

 

城で毎日の様に過酷な訓練を乗り越え三人は日々成長して行く、だが邪悪なる魔王ムドウによって国王ハマズラが呪いで倒れてしまう、それに事を急いだ大臣 キヌハタが兵士達に一刻も早くムドウを倒す様命じるのだった

 

トウマ達は隊長ドランゴと仲間の兵士達と共にムドウとの最終決戦に赴くのだった…

 

「いや何このナレーション!?てかそんなシーンなかったぞ!?」

 

「てか魔法使いミコトて何よ!?どっちらかというと勇者でしょ!だって私雷使えるもん!」

 

「てか回想長過ぎよぉ!ドラ○ンボールじゃないんだから!」

 

そんなトウマ達の前に現れた謎の人物…彼は何者なのだろうか…byアレイスター=クロウリー

 

「「「だから長えよ!…て!このナレーションお前だったんかい!」」」

 

さて、Bパート始まるぞ

 

 

 

「だ、誰だ貴様は!」

 

「「「いやシルエットでモロわかりだろ!」」」

 

垣根(隊長)は謎の人物に何者だと叫ぶ、だがその謎の人物の役をやっているのが削板なので何者か分かるだろと上条達に突っ込まれる

 

「…俺の妹がドラゴンに攫われちまった…頼む!妹を助けてくれ!」

 

「「「ええ!?」」」

 

「く、西のドラゴンか…民をまた攫ったのか…止むを得ん、ジージョよ、魔王より先にドラゴンに攫われた娘を助けるぞ」

 

「了解!」

 

削板が地面に頭をつけて土下座し妹を助けて欲しいと伝える、意外な展開に上条達が素っ頓狂な声を上げる、垣根は娘を助けに行く様だ

 

「済まんな新入り、お前らだけで魔王を倒すしてくるのだ」

 

「いや新入り三人にそんな大仕事残すなよ!今時のブラック企業でもそこまでの大仕事はさせねえぞ!?」

 

「安心しろ…この伝説の剣を託す」

 

垣根(隊長)はお前らに魔王退治を任せると呟くとんだ無茶振りだと上条が叫ぶ、だが垣根は伝説の剣を託すと呟くと少し首をキョロキョロと動かしあるものを見つけそれを手で掴んで持ってくる

 

「これが伝説の剣…低空の剣だ」

 

「いやそれ木の棒だろ!てか低空の剣てなに!?天空の剣じゃなくて!?」

 

「いえ、どちらかと言いますと木の棒じゃなくてひのきのぼうでは?」

 

「知るか!」

 

そこら辺に落ちていた丁度いい長さに持ちやすい形をした細過ぎず太過ぎずな木の棒を渡す、上条は単なる木の枝だと叫ぶが帆風がひのきのぼうではと教えるが上条にとってはどうでもいい

 

「…でもこの木の枝いい形してるよな」

 

「トウマは5のダメージを受けた」

 

「確かに…こんないい形の木の枝よく落ちてたわね」

 

「トウマは5のダメージを受けた」

 

「こんな偶然力あるのねぇ…」

 

「トウマは5のダメージを受けた」

 

三人が確かにこの木の枝はいい形をしてると呟いていると垣根はその横でトウマが何故かダメージを受けている事を伝えてくる

 

「トウマは5のダ…」

 

「煩えな!何で俺さっきからダメージ受けてるんだよ!?」

 

「だってちゃんと装備してないから」

 

「どういう事だよ!?もしかして俺ずっと剣の刃の方を握ってたて事!?細けえなオイ!」

 

何でダメージを受けてんだよと上条がキレながら聞くと垣根はちゃんと装備しろと呟く、先程上条が握っていた部分は剣の刃の方だったらしい

 

「では頼むぞ新入り、無事魔王を倒してこい」

 

「え、本当に新入りに魔王退治やらせるの?無謀過ぎだろ…」

 

垣根は任せたというと帆風達を連れて物陰に隠れる、本当に新入りに魔王を倒させるつもりかと微妙な顔をする三人

 

「おいオマエら…魔王の城に行くのか?なら俺も連れててくれねえか」

 

「誰だお前!」

 

そんな上条の背後に先程物陰に隠れた筈の垣根が立ち尽くしていた、どうやら別のキャラを演じているらしく上条はまた増えるのかと苛立った声で叫ぶ

 

「俺の名はテイトク、魔王ムドウを討伐し更に真の黒幕である大魔王ホカーゲを倒せる勇者を探している魔法戦士だ」

 

「魔法戦士!?賢者とかじゃなくて?!」

 

「細かい事などどうでもいい、とにかくムドウの元に連れて行け。お前らの力になってやる」

 

(強制力で仲間になったわねぇ…)

 

魔法戦士と名乗った垣根に美琴が賢者じゃないのかと突っ込むが垣根は気にしない、そして垣根はトコトコと上条達の後ろに立つ

 

「ちゃーらーらーらちゃーらーらーら」

 

「ちゃーらーらーらちゃーらーらーら」

 

「ちゃんちゃらららら ちゃんちゃらららら」

 

「ちゃーーんーーちゃーーんーー…」

 

「「「…………」」」

 

「テイトクが仲間になった」

 

「長ぇーよ!てか何の音だよ今の!?」

 

「あれだ、RPGで中間になると流れるあの音楽だよ」

 

「説明しなくてもいい!」

 

何か音楽を口ずさむ垣根に上条達かジト目で垣根を見つめる、垣根は歌い終わると自分が仲間になった事を教える、本人曰くドラクエの仲間になった時の音楽らしい

 

「さあ行くぞ!」

 

「テイトクは5のダメージを受けた」

 

「「「ちゃんと装備しろぉぉぉ!!」」」

 

「あ、いけね。未元物質を装備すんの忘れてた」

 

垣根は走って何処かへ行こうとするが一方通行が垣根がダメージを受けた事を教える、三人がちゃんと装備しろと叫ぶと垣根は背中に三対六枚の翼を展開する

 

「で、何処に行くのよ」

 

「決まってるだろ、魔王の城の近くにある小国 カミノウセキに行くんだ。それぐらい理解しろ低脳が」

 

「いきなり悪口!?なんなのよこいつ!」

 

「俺の名前はテイトク」

 

「やかましい!」

 

美琴が何処へ行く気だと尋ねると垣根はとある国の王様に会うと低脳(美琴)に告げる、低脳呼びされた美琴はライデイン(電撃の槍)を放つが垣根はマホステ(未元物質の翼)で防ぐ

 

「デデーン、モンスターが現れた」

 

「悪りィが、こっから先は一方通行だ!侵入は禁止ってなァ!」

 

「「「モンスター!?それでいいのかアー君!?」」」

 

垣根がモンスターが現れたと言うと上条達の目の前に立ち塞がったのは…両手を構え決め台詞を叫ぶ一方通行、それでいいのか一方通行

 

「トウマ達は逃げ出した」

 

「「「戦わないの!?」」」

 

「……」

 

垣根は戦闘?そんなのしないしない、逃げるが勝ちよと一方通行の横を通り三人は驚きながらも一方通行に構う事なく素通りしていく。一方通行はショボーンとしていた

 

「ここがカミノウセキの城だ…」

 

「よく来たな勇者達よ」

 

「「「またしてもアー君!?」」」

 

ここがカミノウセキの国王が住んでいる城だと教え、国王がいる王座の間(公園のブランコが置いてある場所)に辿り着くとそこにいたのは先程無視した一方通行が先程と同じポーズで立っていた

 

「……お前が中ボスか!」

 

「いや国王じゃなかったのかしらぁ!?」

 

「……よく分かったなァ…俺が中ボスだ」

 

「中ボスなの!?」

 

垣根がお前が中ボスかと指を指して叫び食蜂が絶対違うと叫ぶ…が、本当に中ボスだった

 

「大人しく尻尾ォ巻きつつ泣いて無様に元の居場所へ引き返しやがれェ!!ヒャッハーハハハハハ!」

 

「滅茶苦茶ノリノリだな!?」

 

「来ないならこっちから先にやるぜェ?バギクロス!」

 

大声で中ボスと言うか魔王の様なセリフを吐く一方通行…完全に役にどっぷり浸かっている、そして右手を振るい上条達に向かってバギクロス(竜巻)を発生させる

 

「はぁ!?ごっこ遊びにここまでするか普通!?」

 

「くきゃきゃきゃきゃ!上ィィィ条くゥゥゥゥゥゥゥゥゥンよォ!避けてばっかじゃつまンねェぞォォ!」

 

「本気で能力使うな!これでも喰らって頭を冷やしなさい!ギガデイン!」

 

「メダパニで混乱しなさい!」

 

(二人も案外ノリノリ)

 

上条がごっこでここまでするかと文句を言うが一方通行は無視して超電磁砲以上の速度で物体を飛ばすがんせきおとし(石礫飛ばし)で攻撃してくる、美琴と食蜂はそれを避けつつ反撃としてギガデイン(落雷)や能力による洗脳を行うも一方通行にはそれは通じない

 

「無駄無駄ァ!この俺のアタックカンタとマホカンタを破る事なンか出来やしねえンだよ!」

 

「チ…!おい勇者!低空の剣を使え!」

 

「はぃ?」

 

「低空の剣を使えば奴の守りを崩す事が出来るはずだ!」

 

「え!?何この剣そんな凄えの!?ひかりのたまとか天空の剣みたいな効果があるのか!?」

 

自分のアタックカンタとマホカンタ(能力による反射)を破る事など不可能だと叫ぶ、それに対し垣根は低空の剣を使えと叫び上条はまさかこの木の棒にひかりのたまとか天空の剣みたいな効果があるのかと興奮した様に木の棒を見て棒を上に振り上げる…が、当然の事ながら何も起こらない

 

「さあ今だ!相手の特殊状態は消えた!中ボスを右手でぶん殴れ!」

 

「結局幻想殺しで殴るだけじゃねえか!」

 

「ひでぶ!?」

 

右手で殴れと垣根が叫ぶと結局幻想殺しで反射を無効化するだけじゃねえか!と一方通行をツッコミの意味も込めた拳を腹に当てる、一方通行はそのまま地面に倒れた

 

「…何やってンだ…俺」

 

「「「本当に何やってんだよ」」」

 

一方通行は何をしてるんだ自分は…と呟きてガクッと地面に力尽きた様に動かなくなる一方通行…勿論演技である、上条達も本当に何がしたかったのお前、とジト目で彼を見る

 

「くっ…なんとか魔王ムドウを仕留めたな」

 

「今の魔王だったの!?」

 

「後は大魔王ホカーゲを倒すだけだ…」

 

垣根が一方通行が演じていた中ボスをムドウと呼ぶとあれが魔王だったのかと美琴が意外そうな顔をして突っ込む

 

「…ムドウが倒されたと思って来てみれば…まさか人間如きにムドウがやられるとは」

 

「!ホカーゲ!?」

 

(((いきなりラスボス!?)))

 

帆風が悪役美女よろしくニヒルな笑いを浮かべながら現れる、もうラスボス戦!?と上条達は内心で叫ぶ

 

「ふふふ…その通り、私は魔界の王にして王の中の王…絶対無比の存在にして万物の王にして天地をたばねる者…大魔王ホカーゲとは私の事です」

 

何処か聞いた事があるようなセリフを呟き中帆風はラスボス感たっぷりに上条達に笑みを向ける

 

「わたくしの世界征服の邪魔はさせませんよ…わたくしは世界を牛耳りリスペクトのないご当地シリーズのゲコ太を廃止し、この世の全てのゲコ太をわたくしのモノにする。そして自分限定のオリジナルゲコ太を作らせる…それがわたくしの最終目標です!」

 

「「「しょうもな!?世界征服の理由しょうもな!?」」」

 

(あれぇ?台本と違うぞ…台本だと自分のプリンを勝手に食べた人間への憎しみから世界を滅ぼす、て設定なんだけど…)

 

世界を支配してゲコ太を自分だけの物にすると笑う帆風、その下らない理由に三人がコケけ垣根は台本と違うとキョトンとする

 

「野望の為に邪魔者は排除しなければいけませんね…貴方達には死してなお消えぬ恐怖をその骸に刻んであげましょう…来なさいスモールグール達」

 

帆風が指を鳴らすと麦野と削板、先程倒した一方通行が帆風の横に現れる

 

「「「…」」」

 

(スモールグール扱いされるなんて思ってなかったんだろうな…)

 

明らかに不満げな顔をする三人を見て美琴か心中を察する、まさかボスのお供の雑魚扱いなんて考えもしなかったのだろう

 

「さあ、始めましょう…世界の滅亡を!」

 

「さあ行くぞ!最終決戦だ!」

 

「おい!お前が仕切るな!ここは勇者である俺の出番だ!すっこんでろ!」

 

「私のギガソード(砂鉄の剣)食らいなさい!」

 

「回復は任せるんだゾ☆(使えないけど)」

 

麦野のメラゾーマ(原子崩し)、削板のイオナズン(謎の爆発)、一方通行のバギクロス(竜巻)が放たれる、それを美琴のミナデイン(超電磁砲)や上条のいてつくはどう(幻想殺し)、垣根はベギラゴン(殺人光線)で相殺する、八人がもう全員ノリノリでごっこ遊びを満喫していたその時、カシャと写真を撮る音が聞こえ全員がその方を向く

 

「「「「「「「「……あ」」」」」」」」

 

「……ぷ、いい歳してるのにごっこ遊びとか…ぷふふ」

 

「ちょっとアケミ…やめなよ、相手歳上だよ…ププ!」

 

「マコちんも笑い堪えきれてないじゃ…あ、もう私もダメだ…あははは!」

 

垣根達が呆けた声を出すと三人の中学生…アケミ、むーちゃん、マコちんが写メを撮った後笑いが堪え切れなくなったのか笑い始める、垣根達が周りを見てみると彼女ら以外にも何人か集まって垣根達を見ていた

 

「ねえ、ママーあの人達は何してるの?」

 

「見ちゃいけません」

 

「…カミやん、何してるんだにゃー」

 

「その年でごっこ遊びとか超ないです」

 

垣根達が変な目で見られている事にようやく気づき、全員が顔を赤くして俯く…そして上条が呟いた

 

「……一旦…ここでセーブしとく?」

 

「「「「「「「……うん」」」」」」」

 

彼等は思った、ごっこ遊びするなら室内が一番だと

 

 

 

 

 

 




皆さんもごっこ遊びする際は周りの目にご注意を…ま、やらないと思いますが…因みに自分はブンドドやってます、学校でも授業中に鉛筆弄って小説のネタ考えたり…だから馬鹿なんだよ僕は

今回はキャラの扱いが酷い、なお縦ロールちゃんのセリフはドラクエⅦのラスボス オルゴ・デミーラから…Ⅶて実は禁書と同じキリスト教が元ネタですからね、でも扱いとしてはⅥのデスタムーア…ドラクエ知らない人はごめんなさい

次回もギャグ…上琴食回ですね…でももしかしたら変わるかも…意外と難しいですからね恋愛て…次回もお楽しみに


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バカップルの惚気話は犬も食わない

さて平成最後の投稿です…明日から令和ですね。愛とは比べ合うものではなく育むものだと思うんですよ(唐突)。何故こんな事を言ったかと言うとこの回に関係する事だからですね

今回は上琴食の甘い話…と言うよりウザっこい話…かな?分かりにくかったらすみません。そして最後ら辺にあの変態親父が良い事(?)を言います…そして今回はていとくんは被害者です

この話と次の話の次で漸くアウレオルス編に突入できますね、アウレオルス戦も真面目に書くつもりなのでお楽しみに




「面倒な場面に出くわした…」

 

現在垣根は顔に手を当ててため息をついてた、垣根は心理定規と毎月恒例のカップリング写真を見せ合う為にファミレスに入ったのだがそこで偶然デート中の誉望の猟虎に出会った。二人は揶揄うついでに二人と同じ席に座り雑談を交えてカップリング写真を見せ合っていた…誉望が揶揄われたりデートの邪魔をされて怒っている中ファミレスにとある三人がやって来たのだ…その三人とは

 

「先輩♪はいあーん♪」

 

「あーん♪」

 

「はい美琴もあーん♪」

 

「……今日はコーヒーが甘いっスね」

 

「…同意するわゴーグル君」

 

当然の事ながらバカップルである、三人で一つのパフェを頼んでそれぞれの口にあーんしている、それを見て誉望はコーヒーを啜るがブラックな筈のコーヒーが角砂糖50個入れたのではないかと疑うほど甘たるくなっていた、ファミレスにいる人達もあまりの甘さに吐きそうになっている

 

「…まさかあいつらがここに来るとは…それにしてもお熱いねぇ…くっつけた甲斐があったてもんだ」

 

「…それでもあのいちゃいちゃプリは異常よ…甘ったるくて吐き気がするわ」

 

「……まあ、仲が良いのは良い事っスよ」

 

「……ですがあれは周囲の視線が痛いです」

 

垣根が軽く笑う、あの三人をくっつけた張本人としていちゃいちゃしているのは良い事だと、心理定規はそれにしても甘ったる過ぎるとコーヒーを啜る、誉望達もコーヒーを啜る

 

「……本当にお前ら可愛いよなぁ」

 

「ふにゃ!?急に何言ってるの!?」

 

「いやぁこんな可愛い彼女二人と毎日を過ごして…昔の不幸はお前らと出会う為の試練だったのかと思う程だ…」

 

「もう、そんなに褒めても何もでないゾ☆」

 

上条がやっぱり自分の彼女達は可愛いな〜とこばすと二人共が顔を真っ赤にする、上条が昔の不幸はこの時の為にあったのかと呟くと美琴と食蜂が嬉しさのあまりにへーと笑う、それを見た上条は二人の背後に純白の翼を幻視した…決して未元物質の翼ではない

 

「……天使?あ、間違えた美琴と操祈だ」

 

「いきなり何を言ってるのかしらぁ上条さんは」

 

「あぁ悪い、お前らが可愛すぎて一瞬背中に白い翼が見えてさ…」

 

「そんな…天使だなんて…」

 

「悪い悪い…でも、天使に見えるくらいお前らが可愛いて事さ」

 

上条が目をこすりながら彼女達が天使に見えたと呟くと二人は照れて手で顔を隠す、上条は天使に見えるくらい可愛いんだと笑顔で答えると二人には上条がいつもより倍カッコよく見えた。そして何故か背景に薔薇の花も幻視した

 

「「ふ、福○雅治?」」

 

「え?」

 

「あ、ごめん!一瞬先輩がただの福○雅治に見えちゃって…」

 

「おいおいよしてくれよ…福○雅治ファンに怒られるからさ」

 

「そうねぇ…でも私達にとっては上条さんは福○雅治よりカッコいいんだゾ☆」

 

上条がイケメンな某俳優に見えたと呟く二人に今度は上条が顔を赤くする、そんないちゃいちゃを見せつける三人に垣根はうんざりした顔で厨房を見る

 

「……コットンキャンディーソーダはまだか?この甘ったるさをあのメルヘンで乗り越えたいんだが…」

 

「ただでさえこの甘ったるい空間であの甘いやつの向きによくなれるわね…」

 

「それがメルヘンて奴なのさ…」

 

(わたくしもあれくらい人前で大胆になれたら誉望さんも喜ぶでしょうか?)

 

垣根は注文したドリンクはまだかと厨房を見続ける、心理定規はよくそんな甘いのを飲む気になれるなとジト目になる

 

「やっぱり今日も先輩と操祈は素敵よね」

 

「何言ってるのよ美琴〜先輩と貴方の方が素敵力高すぎよぉ」

 

「はは、何言ってんだお前らの方が素敵に決まってるだろ」

 

「……え?何言ってるの二人共、私なんかより二人の方が百倍素敵に決まってるでしょ」

 

「……ちょっと何を言ってるか理解できないわぁ、私なんかよりも二人の方が千倍素敵に決まってるじゃない」

 

「……は?何言ってんだ俺みたいな冴えない男よりお前らの方が一万倍も素敵だろ」

 

(……あれ?なんか雲行きがおかしくなってるぞ?)

 

美琴が二人は今日も素敵だと呟くと食蜂は上条と美琴の方が素敵だと返し、上条はお前らの方が素敵だと笑顔で返す…これなら単なる激甘カップルの甘ったるい会話で済んだ…が、美琴が二人の方が自分なんかよりも素敵だと返すと二人も反論を繰り返す

 

「そんな訳ないでしょう、私の愛はあんた達よりも大きいんだから」

 

「わぁそんなに愛してもらってるなんて私感激〜、でも私の愛の方が大きいわよぉ」

 

「いやいや何言ってんだ、俺の方が二人を愛してるに決まってるだろ」

 

(……ねえ、これ…変な雰囲気になってきてない?)

 

お互いの愛を語り合う三人、自分こそが他の二人を最も愛していると呟く三人の目から段々と光がなくなり始める。そんな三人を中心に空気がガラリと変わり始める

 

「はぁ?言っとくけど俺の愛の次元はお前らと比べ物になんないから、だって俺はお前らを天使と見間違えたんだぜ?人間界を超えてるから、つまり俺の方がお前らを愛してる」

 

「単なる目の疲れじゃないかしらぁ?眼科へ行く事を進めるわぁ…私は肉眼で上条さんの事を福○雅治に、そして美琴は橋本環○に見えたから、つまり私の方が二人に対する愛情力が強いて事よぉ〜」

 

「操祈も眼科行った方がいいわよ、私は二人の事を世界で…いや宇宙で一番愛してるから、そんな他人に見えるとか言うんじゃなくてありのままのあんた達が好きなんだから、だから私の愛が一番て事でファイナルアンサー」

 

(……え?なんなんスかこの自慢話の様な喧嘩は?)

 

上条は自分の愛はそんな低次元なものじゃないとドヤ顔で言うが食蜂は自分の方が二人を愛してると豊満な胸に手を当てる、美琴は冷ややかな笑みで宇宙で一番愛してると貧相な胸に手を当てる…これを見ていた誉望は何この馬鹿な喧嘩と思っていた

 

「だから俺の方がお前らを愛してるて言ってるだろ!」

 

「いいえ!これだけは譲れないわ!私の方が先輩と操祈を愛してるんだから!」

 

「だから私の方が上条さんと美琴を愛してるて言ってるでしょ!なんでわからないのかしらぁ!?」

 

(…周りの人達が馬鹿を見る様な目で三人を見ていますわ)

 

上条が苛立った様に一番愛しているのは俺だとテーブルを叩いて立ち上がる、食蜂と美琴も立ち上がって反論する、そんな三人を店内の人達は馬鹿を見る目で三人を見る

 

「何で分かんねえんだよ!もう美琴と操祈なんか嫌いだ!」

 

「私だってあんたらなんか大嫌いよ!」

 

「私だってぇこんなに理解力が乏しい人達なんか大嫌いよぉ!」

 

「は!そんな簡単に嫌いなんて言うなんて…所詮その程度の愛だったんだな!」

 

「「先輩/上条さんが最初に言ったじゃない!」」

 

「…見ろ、アホがいるぞ」

 

上条が二人なんて嫌いだと叫ぶと美琴と食蜂も大嫌いだと勢いよく叫ぶ、それを聞いて上条がその程度の愛なのかと鼻で笑うと二人は最初に言ったのは上条だと言い返す。それを見た垣根は呆れた目で三人を見る

 

「…あ、あのぉ…お客様…周りの皆様のご迷惑になりますので店内ではお静かに…」

 

「「「部外者は黙れ!」」」

 

「は、はい!すみませんでした!」

 

((店員さん可哀想…))

 

大声で荒げる三人に勇気を振り絞った店員がお静かに…と注意をするが三人が黙ってろと睨むと店員は泣きそうな顔で厨房に逃げ去って行く、そんな店員を見て誉望と猟虎は可哀想と思う

 

「とにかく!俺が宇宙で一番美琴と操祈を愛してるんだ!それだけは譲れねえ!」

 

「だから私の方が操祈と先輩を愛してるて言ってるでしょ!?どうして分かんないのよ!」

 

「いいや一番愛してるのは美琴でも上条さんじゃないわ、私よぉ!」

 

(もういい加減にしろよ…お前らの惚れ話は外でやれ)

 

三人は自分こそが他の二人を三人の中で一番愛してるんだと叫ぶ、そんなやり取りを聞いてファミレスの中にいた垣根はいい加減にしろと言いたげな顔をしていた

 

「…埒があかねえな、こうなったら第三者(・・・)に誰が一番が決めて貰おうじゃねえか」

 

「そうね、第三者に決めてもらいましょう」

 

「そうねぇ、ご都合力がよく知り合い(・・・・)がこの場にいるからぁ、あの人達に決めてもらいましょう」

 

自分達では纏まりがつかないと見たのか第三者に誰が一番他の二人を愛してるか決めて貰おうと上条が言うと二人も納得する、そして三人が垣根達が座っているテーブルを見ようとする

 

「さて…磯野と空き地で野球でもしてくるか」

 

「私塾があるから帰るわね」

 

「俺達もデートの続きをするっス」

 

「ででででは、わたくし達はこの辺で…」

 

「「「逃さない」」」

 

垣根は両手に野球バットと野球ボールを持ってその場から逃げようとし、心理定規達も理由をつけて逃げようとするが上条達は彼らを逃さない

 

「知らなかったのか?超能力者(レベル5)からは逃げられない」

 

「いや知らねえから、こっちはお前らに付き合う暇はねえんだよ」

 

「嫌とは言わせないわ、それに私達を装備したら教会でお祓いするまで私達は装備から外せないわよぉ」

 

「私達は呪いの装備を装備した覚えはないわ、それにドラクエネタは前回やったわよ」

 

上条が俺達からは逃げれないと垣根に言うと垣根は知らんがなと返す、食蜂も呪いの装備は取り外せないと笑うが心理定規は装備した覚えはないと冷たく返した

 

「いいからこの三人の中で誰が一番他の二人を愛してるか決めてくれない?」

 

「「「「……不幸だ」」」」

 

美琴が垣根達に上条、美琴、食蜂の中で誰が一番恋人達を愛してるのか決めて欲しいと若干脅しながら頼む、四人は上条のセリフを呟きながら何故こんな面倒事に巻き込まれたのかと溜息を吐き出した

 

 

「と言うわけでこの四人に誰が一番恋人を愛しているか決めてもらおう」

 

「じゃあ、まずどうやって決めるかを考えないとね」

 

「これで三人の中で誰が一番愛情力が上か白黒つけてやるんだゾ☆」

 

(…面倒くさいわね…帰っていい?)

 

(…はぁ猟虎とデートしてた筈なのに…なんでこうなるんスか…)

 

(…誉望さんとのデート…)

 

誰が一番愛が深いか決めてくれと垣根達に言うバカップル、それを聞いた心理定規達はウンザリした顔でテーブルに項垂れる、なお他のお客さん達の迷惑になっているが上条達は気にも留めない

 

「……何が悲しくてバカップルの惚れ話を聞かなきゃいけないのかしら」

 

「でも心理定規さんてカプ厨なんっスよね?こう言う話聞くのて嬉しくないんスか?俺は聞くだけでウンザリするっスけど」

 

「…カプ厨だからと言って聞きたくもない話を聞くのはウザいのよ」

 

「み、身も蓋もないですね…まあわたくしも同意見ですが」

 

心理定規が心底どうでもいいと言う顔でそう告げると誉望がカプ厨なのにこう言う話は食いつきそうなのにと意外そうな顔をする、それを聞いて心理定規は聞きたくない話を聞くのは嫌だときっぱり言い切る、誉望達も同意見だと頷くが上条達はそれを気にも留めない

 

「じゃあ、手取り早く心理定規さんに心の距離を測ってもらいましょう!誰が一番心の距離が近いか見てもらいましょうよ!」

 

「…残念だけど、それならとっくの昔にやってるわよ、三人とも距離単位100…私が測れる最高単位だから測っても誰が一番愛が高いかなんて分かんないわよ」

 

美琴が心理定規の能力で三人の心の距離を測ってもらおうと言うと上条と食蜂もそれがいいと頷く、だが心理定規はそれなら昔に計っていると呟き、結果は全員100だったから誰が一番か分からないと答える

 

「100…それてどんなぐらいなんっスか?俺らは30…「付き合ったばかりの瑞々しい初心なカップル」だった筈スよね」

 

「100はね…「1日でも会えないと発狂する、恋人の為なら世界も滅ぼせるレベルに愛し合ってる」て単位ね」

 

「では心理定規さんの能力で白黒つけるのは無理ですね…ならどうすれば…」

 

「いや、調べる方法なら無くはないぞ」

 

誉望が心理定規に100はどう言う距離なのかと尋ね心理定規は彼に説明する、猟虎がどうすれば上条達が納得するかと考えていると垣根は調べる方法があるぞと指を鳴らす

 

「そんな事出来るの?」

 

「あぁ、こんな事もあろうかと脳幹先生に作ってもらった物があるんだ…」

 

垣根は懐から何処かで見た事がある片耳式のヘッドセットの形をした電子機器を取り出しそれを装着する

 

「これの分析機能を使えば愛情度を数値化出来る…ピンセットと並ぶカプ厨必須アイテムの一つだ」

 

「いやそれスカウターっスよね!?ド○ゴンボールの!」

 

「スカウターじゃねえよスパウザーだ、これで測定すれば当麻達も納得するだろ」

 

その某七つの球を集める物語に出てくるスカウターに似たアイテムを垣根はボタンを押して起動させいつでも測定出来る様にする

 

「教えてやるよ、地球上で一番美琴と操祈への愛が大きいのは上条さんて事をな」

 

「望むところよ、この世で一番操祈と先輩を愛してるのは私だって事を理解させてあげる」

 

「私だって負けないわ、美琴と上条さんへと愛は誰にも負けないて事を教えてあげるんだゾ☆」

 

(なんだこの斬新な喧嘩は…一体何と戦ってるんだよお前らは…)

 

三人は自身の背後に燃え盛る炎を出してるかのようなオーラを出してお互いを睨みつける、垣根はそんなに仲良いなら喧嘩やめろよと心の中で呟く

 

「まずは俺からだ……うおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

「いや力んでも上がんねえぞ」

 

上条は力んで叫びながら測定を開始する、スパウザーの愛情度がみるみる上がっていき一気に28,000を超え30,000…31,000…32,000…そして38,000に到達する

 

(こんな数値見た事ねえ…流石バカップル)

 

「まだだ…ここからが俺のフルパワーだぁぁぁぁ!!!」

 

上条は更に力んで数値を上げようとする…そして

 

「……」

 

「だから力んでも上がらねえて言っただろうが」

 

結局38,019で止まっていた、だがその単位を見た食蜂と美琴は目を見開いて驚く

 

「「そ、そんな…38,019ラヴもいくなんて!?」」

 

(ダッサい単位をつけられた…)

 

「…ふ、これが俺の愛の強さだ…今なら謝れば許してやるぜ」

 

(そんなに愛してるなら折れればいいのに…)

 

美琴と食蜂は一気に38,019ラヴもいくのかと目を見開く、垣根は勝手にダサい単位をつけられた事に落ち込む…上条は降参すれば許してやると笑う、だが美琴は余裕の笑みを見せつける

 

「甘いわね、その程度の愛で私に勝ったつもり?」

 

「なん……だと?」

 

「ねぇ…私の愛情度は何万だと思う?」

 

「え…?5万…くらいでしょうか?」

 

その程度の愛なのかと美琴が鼻で笑うと上条が驚愕する、そして猟虎に私の愛情度はどれくらいだと思うと尋ねる美琴、猟虎は5万くらいと言うと美琴は笑って答えた

 

「私の愛情度は……53万よ」

 

「ミコっちゃんは何処の宇宙の帝王なのか?」

 

「まあ先輩と操祈には悪いけど…この勝負…私の圧勝ね…はあぁぁぁぁ!!」

 

美琴は自分の愛情度は53万だと言って笑いながら上条と同じく力んで測定を開始する…そして美琴の測定結果は…

 

「……」

 

「力んでも意味ないてさっきの見て分かんなかったのか?」

 

数値は上条と同じ38,019…53万どころか10万にも届かなかった…それを見た食蜂はニンマリと笑う

 

「あらぁ〜?二人ともその程度なの?なら私の勝利は確実ねぇ」

 

「「な…!?」」

 

「なら見せてあげるわ…私の愛は誰にも負けないて事をねぇ!」

 

食蜂は自分の勝利を確信し笑う、そして測定を開始する…自分の愛情度が二人より上だと確信した様な食蜂の笑みに上条と美琴が冷や汗を流す…そして結果は…

 

「……」

 

「…38,019…見事に当麻達と同じ数値…だな」

 

先程の二人と同じ数値だった、それを知った食蜂はガックリと項垂れている、結局スパウザーでも三人の中で誰が一番愛が深いか分からなかった

 

「三人全員同じ数値だと…くそ!ドローかよ!」

 

「いや、全員同じ数値て逆に凄いだろ、だからもう終わりにしようぜ」

 

「いえまだよ!完璧に決着をつけるまで終わらないわ!」

 

垣根はもうこれで終わりにしようと宥めるが三人はますますヒートアップ、もう誰も彼らを止められない、第一位さえも止められない三人、その惚れ話にファミレスの人々は耳を塞ぐ事しか出来なかった…そんな彼らの前に、

 

 

ーーー最後の希望が舞い降りた

 

 

「いい加減にしたまえ」

 

「「「!?」」」

 

立ち上がったのは一人の男性だ、長い銀の髪に緑の目、手術衣をきた男…彼は上条達を見据え口を開く

 

「さっきから黙って聞いていれば自分が一番愛しているだの…実にくだらない喧嘩だ」

 

(いやなんでここにいんのアレイスター!?)

 

「「「く、くだらない?」」」

 

その人物の名はアレイスター=クロウリー、学園都市の統括理事長である。垣根はいやなんでここにいるんだよと突っ込みながら彼を見る。上条達はくだらないと言われた事に目を見開きながら彼を見つめる

 

「そうだ、実にくだらない……愛は比べるものではない…それすら分からない者にそれ以外なんと言えばいい?」

 

「な…じゃああんたには愛てのが分かるのか!?」

 

「少なくとも君達よりはな…君達の愛は先程から聞いていて確かに互いに愛し合っているのは理解出来る…だが、自分が一番と思っている時点で君達の愛は知れているよ上条当麻、御坂美琴、食蜂操祈…愛と言うのはな…比べるものじゃない…確かめ合い育み合うものだ」

 

「確かめ合い、育み合う…もの?」

 

アレイスターが愛を比べている時点で高が知れていると薄く笑い、上条がお前は本当の愛を知っているのかと質問する、それに対しアレイスターは愛とは確かめ合い育み合う事だと告げた

 

「自分の愛が一番なんてそれは自分本位のもの…誰しも一番になりたいものだろう…相手の事をもっと知りたい、相手の事をもっと愛したい…だが愛とはそう単純なものではない…愛とはお互いに確かめ合って育むものだ、恋は一人でも育てられる…だが愛は二人でしか育てていけないだろう?…いや君達の場合は三人か」

 

(((め、滅茶苦茶いい事言ってる…)))

 

「喧嘩するのはいい、それも一つの愛の形なのだから…だが…喧嘩をした後はちゃんと仲直りする事だ…人の運命とは誰も分からない…もしその恋人が喧嘩したまま不意の事故で亡くなったら…そんな事にならない様に…私の様に妻をなくしてからでは遅いのだから」

 

「「「……」」」

 

アレイスターが語る愛に心理定規達が凄くいい話だと驚き、上条達も黙ってアレイスターの言葉を聞き続ける、最後にアレイスターが全てを語り終えるとアレイスターはそのままレジに向かいレジの店員に小切手を渡す

 

「これはコーヒー代と彼らがこの店に迷惑をかけた事に対する迷惑料だ…釣りはいらない」

 

「え!?こ、こんなに貰えません!」

 

「いいさ、こんな端金私は必要としないからな…」

 

そう言ってアレイスターが店から立ち去ろうとする、その前にアレイスターはクルリと上条達の方を向く

 

「では御機嫌よう」

 

(((か、カッコいい…)))

 

(…でも、お前昔沢山の愛人いただろ…そんな人間に愛だの言われても…)

 

アレイスターは一言呟いて店から立ち去る、それを見て誉望達や店内の人々がカッコいいと思う中、唯一垣根はいやお前沢山の愛人と付き合ってたじゃんと心の中で呟く

 

「……確かめ合うもの…か、そうだな…愛は比べるものじゃねえもんな…ごめんな、二人共俺勘違いしてた」

 

「私も…自分が一番二人の事を愛してると思ってたわ…でも…さっきの人の言葉で分かった気がする」

 

「…完敗…ね、愛に順位なんてない…考えれば分かる事なのに…」

 

(いや何悟り開いた顔になってんのお前ら)

 

憑き物を落とした様な顔をしている上条達に垣根がジト目で見つめる、そして上条達は笑い合いながら三人で抱き合う

 

「でもこれだけは言わせてくれ、俺が一番愛してるて言ったのは…それぐらいお前らを愛してるて事なんだ…お前らが俺の事を愛してないて言う意味じゃないからな」

 

「…馬鹿、それくらい分かってるわよ…私だって先輩と操祈と同じ気持ちで一番て言ってたんだもん…ただ自分が一番愛してるて二人に認めて欲しかっただけ」

 

「…やっぱり似た者同士ねぇ私達てぇ、考えてる事まで一緒なんて」

 

(はい、しゅーりょー。エンダアアアアアア)

 

(凄い棒読みね)

 

三人が仲直り出来た所で垣根がようやく終わったかと溜息を吐く、心理定規達もやっと甘い空間から解放されたと息を吐く

 

「よし!仲直りした事だし何処か遊びに行くか!」

 

「「賛成!」」

 

(……本当に面倒くせえなこいつらは)

 

垣根はさっきまで喧嘩していたのにいつの間にか仲直りしている三人を見て笑う…だが、そんな三人の前にある人物が現れた

 

「ほう?随分仲がいいようだな」

 

「「「……え?」」」

 

そこにいたのは常盤台の学生寮の寮監…彼女は三人を見つめており、その威圧感に三人は蛇に睨まれた蛙の様に恐怖によりその場で動きを停止する

 

「え…り、寮監がなんでここに…?」

 

「先程常盤台に連絡が来てな…ファミレスで常盤台の生徒達が騒いでいると…誰だと思い来てみれば…お前達だったのか御坂、食蜂…そして第二位」

 

「え、えっともう仲直りしたので…もう大丈夫ですよぉ」

 

「そ、そうです!俺達仲直りしました!なぁ!?」

 

「はい!だから心配しなくていいですよ!」

 

「そうか、だが迷惑をかけたのは事実…なら罰を与えるのが当然だろう」

 

ジリジリと歩み寄る寮監に三人は一歩一歩後ろへと後退する…そして三人が逃げようと考えたその瞬間、寮監の姿が一瞬にして消え三人の背後に現れ三人の首元へと手を伸ばす

 

「ひ!?」

 

「で!?」

 

「ぶ!?」

 

寮監は三人の首をへし折り三人は地面に死体の様に倒れこむ、その間なんと1秒未満、影分身、もしくは残像が残る程の超高速を行なったのでは?と思う様な光景に誰もが唖然とする

 

「……やっぱりこうなるか…さて、俺達も会計済まして帰るか」

 

垣根はやっぱりこうなるかと三人を呆れた目で見る、そして立ち上がってレジに向かおうとするがポンと寮監に肩を掴まれる

 

「何を逃げようとしている第一位…お前もだ」

 

「……へ?いや俺何もしてないんだけど…」

 

「常盤台に不法侵入した人物の言い訳が通ると思っているのか?」

 

「え!?いや本当に俺は無実!何もやってないから!ゴーグル君達も何か言って…」

 

寮監は垣根も罰を受けると言うと本気で驚く垣根、必死に垣根は弁明し誉望達にもこの誤解を解く様彼らを見るが…彼らはもうファミレスから消えていた

 

「あいつら逃げやがった!?嘘だろ!?」

 

「さあ……覚悟はいいか?」

 

「え!?マジで首カックンやるの!?俺今回だけはマジで何もやってねえのに!?俺は被害者側……!」

 

誉望達は寮監が怖くて垣根を見捨てて逃げたと理解すると垣根は嘘だろと目を見開く…寮監の腕が垣根の首へと伸び垣根は弁明を続けるが…カックンと垣根の首がへし折れ上条達同様地面に力なく倒れた

 

「……常盤台の生徒がご迷惑をかけた様で申し訳ない」

 

寮監はファミレスの店長達やお客達にそう告げて頭を下げるとそのまま店内から去っていく、ファミレスは先程の騒がしさから一変して静寂が訪れた…だが誰も彼らの事を気にしない

 

 

「ご飯ご飯〜♪て、え!?ていとく達が倒れてるんだよ!?」

 

「なんだと!?」

 

「まさか魔術師に…!?急いで傷の手当てを…!」

 

その後、ファミレスで食事をしようと店内に入って来た魔術師三人が床に倒れていた四人を発見する事となった、なお誉望達は会計を済まさず逃げた様で結局は垣根が誉望達の分まで代金を支払う事となった

 

 

 

 




アレイスターは最後にいい事を言ってましたね…まあていとくんが言った通り史実でもとあるでも愛人がいたアレイスターが言っても説得力はないですが(笑)

そしてていとくんは今回は被害者なのに寮監さんに首カックンされました…まあ一度常盤台に不法侵入してきた人がその騒いでた人物達の近くにいたらていとくんも関わってると思われても仕方ないかな…実際スカウターのパチモンで更に上条さん達はしゃいでたし…因みにスパウザーてのは某銀魂の竜宮城編で出て来た人間の戦闘力を昆布やら胸で数値化する機械の事です

個人的には誉望君のCVは阪口大助、猟虎ちゃんのCVは小倉唯ですかね。何故かこの二人はそう言う声のイメージなんですよ、個人的に…皆さんは誰の声を連想します?

さて次回は盛夏祭のギャグですね。原作だとミコっちゃんがヴァイオリンを弾いて終わりでしたが…この作品だとどうなるのか?お楽しみに


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最近のパチンコは演出が派手で期待だけさせてハズレが多い

令和最初の投稿です、今年もよろしくお願いします。

今回のテーマは超能力者の能力を戦闘だけじゃなくて別の事に役立たないか?と言うのをテーマにして考えました。例えば心理掌握が医療に役立つとか、窓のないビルの 演算型・衝撃拡散性複合素材(カリキュレイト=フォートレス)は一方通行の能力を再現してるとか原作でも言われていますよね?それに一方通行の能力は攻撃力に目に行きがちですが打ち止めを助けたり傷口を塞いだりとと決して攻撃特化ではありませんよね?

ずばり今回のテーマは超能力をド派手な演出に使ちゃおうぜ!です。レベル5の能力を他の人が思いつかないような方法で活用すると言う誰得な話です。つまらなかった、こんなのできるわけねえだろと思った方は謝っておきます…さて盛夏祭でていとくんがどんな活躍をするのかお楽しみに


インデックスは小萌の部屋にある超能力に関する本を読み漁っていた、彼女の目は真剣そのもの…何かを調べるようにその本の一字一句をその脳に焼き付ける

 

「……」

 

「買い物から戻りました…おや、何を読んでいるのですかインデックス?」

 

「あ、おかえりなんだよ…ちょっと気になる事をこもえの本で調べてたんだよ」

 

「ん?何々…超能力に関する本か…それを読んで何を調べているんだい?」

 

黙って本を読んでいたインデックスだが神裂達が帰ってくると本を閉じて二人に笑顔を向ける、神裂とステイルは買って来た食材を床に置くと彼女が読んでいた本を手に取る

 

「…前にていとくが言ってたんだ…超能力と魔術はおなじものだって…それをこの部屋にあった本を読んで私なりに考えてたんだよ」

 

「超能力と魔術が同じ?彼は変な事を言うね」

 

「でも、一概に違うとは言えない部分もあるんだよ…実はあるこの本に載ってる思想が魔術的な思想と酷似して…」

 

ステイルが垣根が言っていた超能力と魔術は同じと言う考えを笑おうとするがインデックスはそうとも言えないと言うと二人は顔を見合わせる、インデックスが詳しく言おうとした所でコンコン、と扉がノックされる音が聞こえ神裂が扉を開ける

 

「どちら様でしょうか…」

 

「やっほー、久しぶりだにゃーねーちん…」

 

神裂は扉を閉める。開けた先に語尾ににゃーをつける同僚の魔術師を見たような気がするが恐らく幻覚だともう一度扉を開けるとやはりいたのは必要悪の教会所属の魔術師 土御門 元春がそこに立っていた

 

「酷いにゃーねーちん、扉を閉めるなんて…」

 

「何の用だ土御門…あの女狐に言われて僕達を…いやインデックスを連れ戻しに来たのか?」

 

「そんな訳ないにゃー、ここに来たのは用があったからなんだぜい」

 

「そうですか…では何故ここに来たのですか?」

 

ステイルがルーンカードを取り出しいつでも攻撃出来るように構える、土御門はそんな事はしないと笑って伝えると神裂が何をしに来たと尋ねる

 

「ねーちん達は盛夏祭て知ってるかにゃー?」

 

「盛夏祭?なんなのかなそれは?」

 

「常盤台の常盤台中学学生寮で行われる行事の事だにゃー、正式名称は常盤台中学女子寮盛夏祭。学生寮は普段は一般公開されないんだけど今日…つまり盛夏祭だけは招待された客だけが入れるんだぜい」

 

「……それがどうした?」

 

「そこにカミやん達や先輩…垣根帝督もいる筈だぜい、会いに行きたくないかにゃー?」

 

「!ていとく達もいるの!?会いに来たいんだよ!」

 

今日は常盤台中学学生寮で盛夏祭と言う行事が行われており、そこに行けば彼らの恩人である垣根達に会えると土御門が笑って伝えるとインデックスが行きたいと騒ぎ出す

 

「なら俺と一緒に行こうぜい、俺も招待されてるからねーちん達も入れるにゃー」

 

「わぁ本当!?ねぇ二人共私その盛夏祭に行きたいんだよ!」

 

「……君がそう言うのなら…僕も彼らがどうしてるか気になるしね」

 

「そうですね、買い物も終わった事ですし、小萌さんは今日は学校の用事で昼は私達だけで食べてと言っていましたしね」

 

土御門が自分と盛夏祭に行かないかと言うとインデックスが大喜びでピョンピョン跳ねる、ステイルと神裂はそんなインデックスを見て笑っていた

 

 

「わぁ〜!皆メイドさんの格好してるね!」

 

「メイド…私と同じ聖人の近衛侍女(クイーンオブオナー)を思い出しますね…」

 

「学生寮とは思えない建物だね…」

 

三人は盛夏祭が行われている学生寮に招待状を見せて中に入る、石造り三階建ての洋館みたいな建物の中に寮生達が全員メイド服を着ていた為三人はここは本当に科学の街なのかと驚く、因みに土御門は「インデックス(大食い)がいるから義妹(舞夏)に沢山料理を作る様に言ってくるぜい」と三人を置いて行った

 

「あ!あそこにいるのて…」

 

インデックスがキョロキョロと寮の中を見ていたが視界に映った人物に目を向ける

 

「やっぱりメイド服着てる美琴可愛いわぁ!」

 

「…俺暫くこの写真を待ち受けにするな」

 

「馬鹿…そんなにジロジロみたいでよ…恥ずかしいから…//」

 

「……何かのプレイ中か?」

 

食蜂と上条に携帯で写真を取られ顔を赤くして恥ずかしがっているメイド服を着た美琴を見つけた三人、三人はどう話しかければいいのか暫く悩んでいたが上条と食蜂が写真を撮り終わった所でステイルが話しかける

 

「やあ上条当麻、御坂美琴、食蜂操祈…元気そうで何よりだ」

 

「お、インデックス達も来てたのか?」

 

「うん、もとはるに誘われて来てみたんだよ」

 

「そう、じゃあ盛夏祭楽しんでね…あ、庭で私のヴァイオリンの独奏をやるから楽しみにしてなさいよ」

 

上条達がお前らも来ていたのかと驚く、美琴が自分も庭のステージでヴァイオリンを弾くから楽しみしておけと笑うとヴァイオリン弾けるんだとインデックス達が口を開ける

 

「がさつそうな貴方がヴァイオリンを…」

 

「人は見かけによらないとはまさにこの事だね…」

 

「二人とも失礼だよ、確かに女子力皆無に見えるみことだけどそんな事言っちゃダメなんだよ」

 

「……喧嘩売ってんのかしら?」

 

三人がヴァイオリンを弾けるイメージが美琴にはなかったと笑いながら呟くと美琴が手から火花を散らす、それを慌てて止める上条達を尻目に三人は他の場所を見に行こうと歩く

 

「そういえば土御門が食べ放題があるて言ってたな…後で食べに行くかいインデックス?」

 

「え!?食べ放題なの…ジュルリ」

 

「…シスターなのですから節制した方がいいですよ」

 

「う……平気だもん、だって見習いだから!だから沢山食べるのは仕方ないかも」

 

ステイルがバイキングに行くかとインデックスに言うとインデックスは目を光り輝かせる、神裂が食べ過ぎるなと半笑いで言うとインデックスは服を摘んで頬を膨らませながら見習いだから大丈夫だもんと不満げに呟く

 

「あらインデックスさん達も来ていましたの?」

 

「あ、くろこ!確かくろこはここに住んでたんだっけ?」

 

メイド服を着た黒子が空間移動で三人の目の前に現れインデックスが友達に出会えて嬉しそうな顔をする

 

「ええ…あ、もし宜しけれは寮内をご案内いたしますわ」

 

「それは助かるよ、僕はこの生け花を見に行きたいんだ」

 

「インデックスのバイキングは最後として…私はシュガークラフトに行きたいです」

 

「成る程、でしたらここをこう行って…」

 

インデックス達は黒子に寮の案内を頼み、四人はそのまま地図を片手に学生寮を歩き回っていく

 

 

「あ〜口からケーキが出そう…もう暫くケーキは食いたくねえ…」

 

「大丈夫ですか垣根さん」

 

「食べ過ぎなンだよていとくンは…」

 

「一人でホールケーキ5個も食えば当然胃もたれになるわな」

 

「それにしても展示作品は根性が込められてそうな作品ばっかだったな」

 

垣根は口元を手で抑え先程バイキングで食べたケーキを逆流しそうになるのを抑える、帆風はそんな垣根の背中をさすり一方通行と麦野はあんだけケーキを食えばそうなるわと呆れていた

 

「お、バイキングはどうだった…て、どうした垣根?」

 

「…なんでもねえよ…ちょっとケーキを食い過ぎただけだ…欲張って5個も食べるもんじゃねえな…誰だよ甘い物は別腹て言った奴」

 

「ていとくンがそォ言ってたンだろうがァ…」

 

「おい御坂、ステージでヴァイオリンの独奏やるて聞いたぞ、楽しみにしてんぞ」

 

「ありがとう麦野さん、頑張るわ」

 

垣根達と合流した上条達は何故垣根が気分が悪そうにしているのかと疑問に思うが単なる食いすぎだと垣根が答える、麦野は美琴を見て午後のステージを期待してると笑う

 

「そう言えばミコっちゃんはどんなヴァイオリン使ってるんだ?」

 

「あ〜私のはこれよ、この古臭いヴァイオリン」

 

垣根が美琴にどんなヴァイオリンを使っているのかと尋ねると美琴は持っていたヴァイオリンのケースの留め具を慣れた手つきで外し、中から古びた輝きを見せるヴァイオリンと弾く為の弓を取り出す

 

「…中々いいヴァイオリンですね…このヴァイオリンお高かったんでしょう?」

 

「そんな事ないわよ、たかが千数百万よ」

 

「「千数百万!?」」

 

帆風が美琴にヴァイオリンの値段を尋ね美琴は千数百万だと教えると、上条と削板があまりの値段に驚くが垣根達は「へぇ、安いな」とでも言いたげな顔をしていた

 

「か、金持ちの金銭感覚は分かんねえな…」

 

「まあ、ヴァイオリンは一番高いのだと16億のもあるからな…安い方だろ」

 

上条が美琴が持っているヴァイオリンをじっくりと眺め千数百万あれば家が建てれるんだろうなぁ〜と庶民じみた事を考える

 

「もし良かったら先輩にヴァイオリンの弾き方教えてあげようか?」

 

「え!?いいのか?俺みたいなそんな見るからに高価そうな物に触れても?」

 

「いいに決まってるじゃない、それに教えてる間は私が先輩の背中に密着出来るし」

 

「み、密着!?」

 

美琴がヴァイオリンの弾き方を教えようかと上条に言い、教える間は背中に密着すると言われて上条は下心満載で教えてもらおうかな〜と考える、それをジト目で見る垣根達と上条と密着するなんてズルいと言う目で美琴を睨む食蜂。そんな甘い空間を壊す様に窓の扉が勢いよく開かれある人物が現れた

 

「御坂さんに密着出来ると聞いて!さあ御坂さん!僕の背中にその慎ましやかな胸を密着させて下さい!」

 

「「「「「「「「……」」」」」」」」

 

そこから現れたのはあのゴキブリストーカー(海原)、前回肉塊にしたのに何事もなかったかのように五体満足で美琴に笑みを浮かべている。因みに今垣根達がいる場所は二階である

 

「消え失せろぉぉ!!」

 

「うわばら!?」

 

思わず美琴はヴァイオリンを海原の頭部へとフルスイング、海原はその痛みと衝撃により窓を掴んでいた手を離し下へと自由落下、グチャ…と肉が潰れたような不快な音が聞こえたが多分死んでいないだろう…多分

 

「デッカいゴキブリがいたわね…不愉快だわ」

 

「……いやそんな事はよりミコっちゃんのヴァイオリンが…」

 

「?ヴァイオリンがどうかした……」

 

美琴が汚物を見る目で海原がいた場所を一瞥する、そんな美琴に垣根がヴァイオリンを見てと呟き美琴がヴァイオリンを見ると…ヴァイオリンはフルスイングの所為でバキバキに折れ弦も千切れ、とてもじゃないが演奏できる形ではなくなっていた

 

「……どうしよう」

 

「み、美琴は悪くないわよぉ!悪いのはさっきのストーカーだから!」

 

「そうだ美琴は悪くないぞ!」

 

「…でもこれじゃあ独奏は無理ですわね」

 

美琴が青ざめた顔でヴァイオリンを片手に焦り始める、食蜂と上条がそれを宥めるが帆風がこれじゃあ演奏は出来ないと呟く

 

「…おい、ヤバいんじゃねえか?御坂の独奏が盛夏祭のメインなんだろ?」

 

「替えのヴァイオリンなンてねェだろうし…どうすンだよ…」

 

「こ、根性でエアヴァイオリンなんてどうだ?」

 

麦野と一方通行、削板もこれは不味いと慌て始める、絶体絶命の大ピンチが超能力者達を襲っていた

 

「だ、大丈夫…さっきインデックスに言っちゃたけど別に私が何をやるかて寮生以外には誰も知らないから…」

 

「そうだな…なら別の楽器を用意して演奏するのも手だな…もしくは俺達も出て「超能力者全員で演奏します!」とかならインパクトが大きくて多少下手でも目を瞑ってもらえる可能性もあるな」

 

「!それだわ垣根さん!そのアイデアで行きましょう!」

 

「え?マジでこの案で行くの?適当に言ったのに?」

 

「適当でもなんでもいいわよ!皆はなんの楽器なら弾けるの!?」

 

美琴が慌てつつも冷静に思考を巡らせる、寮生以外にはヴァイオリンの独奏をするとは言ってないから問題ないと呟き、垣根もなら超能力者全員で演奏するというインパクトなら下手でも許されるかもと呟くと美琴がそれだと指を鳴らす。そして期待を込めた目で皆は何が弾けるのかと上条達に聞くが…

 

「俺はフルートだな」

 

「わたくしはピアノですわ」

 

「「「「「………カスタネット」」」」」

 

「……終わったわ」

 

垣根はフルート、帆風はピアノなら演奏できると伝えるが上条達はカスタネットしか演奏できないと呟く、それを聞いた美琴はもうダメだと諦める

 

「ま、まだ諦めるのは早いだろ!垣根の未元物質ならヴァイオリンを複製出来るかもしれないにゃーん!」

 

「!確かに…それなら万事解決だな!」

 

麦野が未元物質で美琴のヴァイオリンを複製すればいいじゃんと叫ぶと上条がそれだ!とその案に賛成する。帆風達もそれならこの問題は解決…と安心しかけるが

 

「無理だな」

 

「…え?帝督今なんて?」

 

「だから無理だよ、ヴァイオリンみたいな弦楽器は未元物質じゃ再現不可能だ…外見だけなら再現できるが…音までは無理。金管楽器なら音まで再現出来るんだが…」

 

「…そんな…打つ手なしじゃない」

 

垣根が無理だと断言し削板が思わず聞き返す、未元物質ではヴァイオリンの形状は再現できてもヴァイオリンが奏でる音までは再現不可だと伝える、それを聞いた美琴がどうすればと頭を抱える

 

「…でもよォ、演奏できねェなら出来ねェて言えばいいじゃねェか」

 

「確かに…ちゃんと言えば許して…「あ、メルヘンのお兄ちゃんだ!」?」

 

一方通行が出来ないならそう言えば皆が納得するんじゃね?と美琴に言い、その手があったかと美琴が何か言おうとするが突然女の子の声が聞こえ全員が振り返る

 

「お、鞄ちゃんか…それにちびっ子共も…お前らも盛夏祭に来てたのか」

 

「うん!メルヘンのお兄ちゃんも来てたんだね」

 

垣根の足に抱きついて来たのは鞄を持った少女 硲舎佳茄(はざま やかな)。後から四人の男の子や女の子が垣根に駆け寄ってくる、垣根は佳茄の頭を優しく撫でる

 

「知り合いか?」

 

「ああ、あすなろ園てとこの子供達だよ。休日とか暇な日に遊びに行っててな」

 

「そうなんだよ、メルヘンのお兄ちゃんが遊びに来てくれてお人形さんとかお菓子くれたり、カブトムシさん達の背中乗せてもらって一緒に空を飛んだりしてもらってるの」

 

「へぇ、垣根てそんな事してなのか…で、この子達は誰に招待されたんだ?」

 

麦野がこの子達と面識があるのかと聞くと垣根が時々会ってるかと教える、上条は誰に招待されたのかと首をひねるがそれを教えるかの様に寮監がやって来た

 

「……私だが何か?」

 

寮監がジロと垣根達を睨み超能力者達はそれを見てビクッとなる、この子達は寮監が招待したらしい

 

「ねえねえお兄ちゃん!私達ビーズで指輪作ったりお絵描きしてたんだ!」

 

「お〜そうか、楽しんでるな〜」

 

「でもね、一番楽しみにしてるのは…そこにいるお姉ちゃんのステージ!」

 

子供達が垣根にビーズで作った指輪やら絵を見せてくる、垣根達はそれを微笑ましい顔で見つめているがふと佳茄が言った美琴のステージという単語に全員が不自然に固まる

 

「あ、あなた達、どこでそれを聞いたのかなぁ〜」

 

「私が教えた……御坂、もしあの子達の期待に応えられなかったら……分かっているな?」

 

「は、はい…皆の期待に応えられるよう頑張るぞい!」

 

美琴が恐る恐る何処でそれを聞いたのかと聞くと寮監が自分だと素っ気なく返す…そして美琴の耳元に近づき失敗したら…分かっているなと脅し美琴は涙目で答える

 

「わ〜楽しみだな〜!」

 

「でもまだ時間あるし他の場所も見て回ろうぜ!」

 

「「「賛成〜!」」」

 

「ほらほらぁ〜、寮の中は走っちゃいけませ……は!り、寮の中を走るなと言っているだろうが!」

 

佳茄が楽しみだと笑って他の四人と一緒に何処かへ走っていく、寮監がそれを普段より優しげな声で咎めそうになるが美琴達に見られていると思い出しキツめの口調に戻る。寮監が立ち去った後美琴はヘロヘロと地面に倒れる

 

「……どうしよ…このままじゃあ首カックンさせられるわ」

 

「だ、大丈夫だ美琴!まだ失敗するとは限らないしさ!」

 

「そ、そうよぉ!それに仮に失敗してもこのにいる全員が一緒に罰を受けてあげるから」

 

(おい、俺達も巻き込むなよ)

 

弱気な美琴を慰める上条と食蜂、垣根はどうやってこの状況を乗り切るかと考えあるアイデアを考える

 

「そうだ、ダンスなんかどうだ?それも唯のダンスなんかじゃない…王子様とお姫様の格好して踊れば面白えんじゃねえか」

 

「はぁ?いきなり何言ってんだよ垣根…それに上条さん達はダンスなんて踊れませんよ」

 

「安心しろ、心理掌握で無理矢理身体を操って踊ればいいから…みさきちなら普段から派閥の子を洗脳してそういう事やってそうだし」

 

「…垣根さんが普段私の事をどういう風に見てるのか分かった気がするわぁ」

 

(でも実際に女王はそれに似た事を普段からやっていますよね)

 

垣根がお姫様と王子様の格好をしてダンスを踊ればいいんだと唐突なメルヘンな考えを呟く、上条は踊れないと言うが垣根が心理掌握で無理矢理身体を動かせばいいと言って笑う、食蜂は自分はそんな使い方をしてないと頬を膨らますが帆風は「いや派閥の子を洗脳して芸とかさせてましたよね?」内心で呟く

 

「で、肝心の王子様役とお姫様役はどうするんだよ?行っとくが俺は踊られねえぞ、俺が仮に王子様役でもお姫様は一人なんだろ?俺には美琴か操祈かどっちか選べなんてできねえからな」

 

「当麻達には期待してねえよ…出番だぜアー君、一緒に来てた打ち止めを連れて来て一緒に踊れ」

 

「…ていとくンは俺を観客達にロリコン認定されて欲しいのかァ?」

 

「…?アー君はロリコンだろ?」

 

「…愉快なオブジェ決定な」

 

上条が横で何か騒いでいるが垣根は無視して一方通行に盛夏祭に連れて来た打ち止めと踊るように言う、一方通行はステージを見に来た観客達にロリコン認定されると断るが垣根は一方通行は最初からロリコンだろと言われ、一方通行は能力を使って垣根を肉塊にしようとするが上条が右手で一方通行を抑える

 

「…ダメか、じゃあむぎのんが浜ちゃんを誘って来て踊ればいいじゃん」

 

「は、はぁ!?なんで私が浜面なんかと踊らなきゃいけねえんだよ!?」

 

「…やっぱ無理か、むぎのんは脚が太いからな」

 

「…ブ・チ・コ・ロ・シ・か・く・て・い・ね」

 

次点として垣根は麦野に浜面を誘って踊れと言うと麦野は顔を真っ赤にしてツンデレモードになる、そして垣根が麦野が気にしている事を言うと彼女は切れて原子崩しを垣根に放とうとして美琴達がそれを取り押さえる

 

「…くそ、なら俺が踊るしかねえか…ワルツなら踊れるしな」

 

「いや俺が抜けてるぞ帝督」

 

「…いや軍覇にはダンスなんか無理だろうし、そもそも踊る相手なんかいないだろ?」

 

「……殴っていいか?」

 

垣根が意を決して自分が踊ると呟くが削板は何故自分を抜かしたと聞く、垣根は削板にはダンスは踊れないだろうし踊る相手もいないだろと言うと削板は本気で殴ろうかなと思ってしまう

 

「でも垣根が王子様役か…中身はアレだけどイケメンだしルックスもいいし…似合うかもな」

 

「確かに…じゃあお姫様役は誰が…」

 

「はい!はいはいはい!!わたくしが!わたくしがやりますわ!」

 

上条が王子様役は確かに垣根が適任だと頷く、美琴はお姫様役は誰がやるかと聞こうとすると帆風が凄まじいスピードで手を挙げ立候補する

 

「女王と御坂さんは上条さん以外とは踊りたがらないでしょうし、麦野さんも浜面さん以外と踊りたくないでしょうから必然的に垣根さんと踊るのはわたくしと言うことになりますわ!」

 

(…凄い必死だにゃーん)

 

「別に無理しなくてもいいぞ?今からイギリスに本物のキャーリサ(お姫様)連れて来てもいいし…」

 

「いえいえ!お気になさらず!今から行っても間に合わないかも知れませんし、こんな千載一遇のチャンスを逃す訳には…!」

 

帆風が早口で自分が垣根と踊る理由を言い、自分の意思ではなく流れ上でこうなったと言い切る。麦野は凄い必死だな〜と帆風を見つめ垣根は無理してるなら英国に行って知り合いの第二王女と踊ると言いかけるが帆風はチャンスを逃すものかとそれを止める

 

「…ま、縦ロールちゃんがいいなら…まあダンスの振り付けとかは心理掌握で動かすから問題ないとして…後は演出だな」

 

「演出だァ?ンなもン要らねェだろうが」

 

「馬鹿だな…単なるダンスだけならつまんねえだろ?俺にいい考えがあるんだよ」

 

「いい考え?」

 

垣根は帆風が納得しているならそれでいいかと呟き次はどんな演出をするのか考える、そして上条達に自分の案を伝える

 

「俺達の超能力を演出に使うんだ」

 

「…具体的には何するのよ?」

 

「まあ最後まで話を聞け、まず削板の能力で……」

 

超能力を演出に使おうと呟いた垣根に美琴がどうやって超能力を演出にするのかと尋ねる、垣根は笑ってそれぞれの役割を伝える

 

 

 

「げふぅ…バイキング美味しかったんだよ。でも腹五分目て所かな?正直まだ足りないんだよ」

 

「ま、まさかお一人で全部の食材を平らげるとは…しかもまだ足りないとは…」

 

「インデックスの腹は常識が通用しませんから」

 

「全くだ」

 

インデックスはお腹をさすりながら庭のステージへやって来る。黒子はインデックスがバイキングの食材全てを平らげたのに驚いており神裂達はいつも通りの光景なのか動じていない

 

「ここがステージですか…もうじき御坂美琴のステージが始まるのですか」

 

「確かに御坂美琴かヴァイオリンを弾くだったかな?」

 

「ええ、お姉様のヴァイオリンの独奏は思わず聞き惚れてしまう程の腕前ですの」

 

インデックス達は庭のステージに置いてあるパイプ椅子へと腰を下ろし、美琴の独奏が始まるのを楽しみに待っていた。他にも寮監が子供達の横に座って腕時計を見て時間を確認していたり、土御門が義妹と一緒に独奏が始まるのを待っていたり、数多が打ち止めを膝に乗っけて始まるのを一緒に待っていた…他にもステージの前には何人もの観客が美琴がステージに上がるのを待っていた

 

『…お待たせしましたぁ〜この盛夏祭のメインイベント…第五位 御坂美琴のヴァイオリンの独奏を行います』

 

「あ!みさきの声だ!」

 

「おや?おかしいですわね?こんなアナウンスを行う予定はなかった筈ですのに…」

 

ステージに置かれたスピーカーから食蜂の声が聞こえ、インデックスが大声を出すが黒子がこんな予定はあったかと首を傾げる

 

『では御坂美琴のヴァイオリンの独奏会をお楽しみください…と、言いたいんですがぁ〜』

 

「ん?」

 

『実は独奏で使う筈のヴァイオリンを海原光貴に破壊されてしまい演奏が出来なくなってしまいました』

 

「はい!?」

 

『なお海原光貴がヴァイオリンを破壊した理由は以前御坂美琴にフラれた事が原因であり、彼はその仕返しの為にこの独奏会を滅茶苦茶にしてやろうとヴァイオリンを破壊した模様です』

 

食蜂が海原がヴァイオリンを破壊した為独奏が出来なくなったとアナウンスで教える、それを聞いた一同は「ええ〜!?」と大きな声を出す

 

「あのストーカー男…以前の復讐の為に今日のお姉様の晴れ舞台を滅茶苦茶にしたんですの…!?」

 

「最低な野郎なんだよ!」

 

「男の風上にも置けないな…」

 

「…あの様な男には救いの手を差し出さなくてもいいかもしません」

 

「「「「「…楽しみにしてたのに」」」」」

 

(…海原、今度あったら首をへし折る)

 

黒子達が海原の所為で楽しみにしていた美琴の独奏が無くなったのに怒り、子供達の残念そうな顔を見て寮監は海原の首をへし折る事を心の中で誓った、これでヴァイオリンが弾けない理由を海原になすりつける事に成功したのだった

 

『ですが、ご安心ください。代わりに超能力者(レベル5)の第一位 垣根帝督とこの常盤台の大能力者(レベル4)の帆風潤子が円舞曲(ワルツ)を披露します』

 

「え?ていとくとじゅんこが踊るの?」

 

食蜂がヴァイオリンの独奏の代わりに垣根と帆風が円舞曲を踊ると伝えるとインデックスが目をパチクリさせる、一部の観客も突然の事で混乱している

 

「お、お姉様(帆風)があの男と!?キィィィ!なんて羨ましい!」

 

「おのれぇぇぇ第一位ぃぃぃ!!」

 

「お姉様ぁぁぁ!そんな男より私と一緒に踊りましょうぅぅ!」

 

「いやぁぁぁ!わたくしのお姉様が穢されるぅぅぅ!」

 

「お姉様の髪をクンカクンカしたいお!」

 

「…凄い人気だな」

 

「…昔のわたくしもああだったと思いますと…恥ずかしくなってきますの」

 

帆風を慕う常盤台生徒達は帆風と一緒に踊る垣根に嫉妬に狂っていた、それを見たステイルと黒子はドン引きしていた

 

「…ヤバい緊張してきた…本当にこれ上手くいくの?」

 

「大丈夫ですよ…それよりよくこんなドレスとか持ってましたね」

 

「あ〜いつか当麻とかミコっちゃん達にコスプレさせようとして買っておいたんだよ」

 

舞台裏で垣根は青い絵本の王子様が着そうな服を着用しており、帆風もピンク色のドレスを着ていた…これは垣根が当麻達にコスプレさせる様に買っていたものらしい

 

「…さて、そろそろ始めるか…軍覇」

 

「任せろ」

 

垣根が近くにスタンバイさせていた削板に指示を送ると削板が笑う、そして右腕を地面に当てるとステージに赤青黄色のカラフルな煙が出る爆発が起こる

 

「!?す、凄い演出なんだよ!」

 

「よし…いくか」

 

「はい」

 

爆発が起きた瞬間に垣根と帆風がステージに現れ、観客達が派手な登場の仕方だな〜と驚く…だがこれだけでは終わらず垣根が指を鳴らすと垣根達の背後に未元物質で創造された十人の白い人型が一瞬で作り出される、その手にはフルートやオーボエ、ホルン等の楽器が握られている

 

(俺の未元物質で作った金管楽器でピアノの代わりに伴奏させる…それにこれならインパクトが高いだろ)

 

(確かに幻想的ですね…)

 

(だろ?それにそれだけじゃねえ…むぎのん)

 

(分かってるツぅの!)

 

垣根が自分の未元物質で作った即興の演奏者達で観客達にインパクトを与える、次に麦野に指示を送ると麦野はステージの左右に各三つの原子崩しを展開し、それを上へと打ち上げる…それはまるで緑色のステージライトの様だ

 

「…あのビームをこの様な演出に使うなんて…」

 

神裂があの原子崩しをこんな風に使うなんて…と驚いていた。観客達も原子崩しを眺め終わった後未元物質の演奏者達が演奏をし始める…そして垣根の右手と帆風の左手を軽く握り、垣根が左手で帆風の腰に軽く添えて踊る

 

「わぁ〜凄い素敵な踊りかも」

 

「…本当だね」

 

観客達が二人の踊りに釘付けになる、未元物質の演奏者が奏でるメロディーに垣根と帆風の踊りにインデックス達も目を見張る

 

(よし…心理掌握で円舞曲の動きは完璧だ、次はミコっちゃん、アー君頼んだぜ)

 

(…たく、こんなくだらねェ事に能力使うなンてなァ)

 

(…同感よ)

 

垣根が次の指示を出すと一方通行と美琴が次の演出の準備を行う、美琴がステージの周囲にスパークを起こし火花を散らす…その星の煌めきの様な火花がステージを彩る。そして一方通行が右手を頭上へと伸ばす、そして一方通行の手が大気に流れる()を掴み取りその『向き』を掴み取り(・・・・・・・・・)風の向きを操って学園都市中の風を支配した(・・・・・・・・・・・・)

 

「くかきけこかかきくけききこかかきくここくけけけこきくかくけけこかくけきかこけききくくくききかきくこくくけくかきくこけくけくきくきくきこきかかか――――――!」

 

一方通行が叫ぶ、そして大気の流れを演算しステージ付近の風を操る、そして観客達が座っているパイプ椅子や立ってダンスを見ている観客達の身体を空中へと浮かび上がらせる

 

「えぇ!?い、椅子が宙に浮いてる!?」

 

「風を操って椅子や身体を持ち上げている様ですね…しかもこの人数、そして誰も落ちない様に完全に計算して…」

 

「こ、これは婚后さんと同じ風力使い…いえそれ以上ですわ!」

 

フワフラと宙に浮く椅子や人体…その現象に観客達が歓声を上げる、円舞曲だけでなく演出も完璧、この様なアトラクションじみたダンスを見るのは初めてだろう…

 

「一方通行さんは凄いわねぇ〜この学生寮付近とはいえ大気の流れを完璧に演算出来るなんて…それにひきかえ私達は地味な仕事ねぇ」

 

「そんな事ねえさ、帆風ちゃんを心理掌握で操って上手く踊れてる様にしてんだろ?立派な役目じゃないか」

 

「まあそうねぇ…」

 

食蜂が自分の仕事は地味だと愚痴るが上条が頭をポンポンと撫でる、食蜂は頬を緩めながらリモコンを弄って帆風の動きを操作する

 

(…そろそろフィナーレだな)

 

垣根が笑うと未元物質の演奏者達の背中から一対の白い翼が生え空に浮かび観客達の間を飛び回る、その突然の出来事に驚く観客達、そしてステージ付近に白い雪の様なものがひらひらと舞い落ちる

 

「「「「「わあぁ〜!!」」」」」

 

「凄い〜!て、ミサカはミサカは幻想的な光景に感動して声を大きくしてみたり!」

 

「ほお…雪みたいに細かい未元物質を降り注がせてるのか…中々いい演出だ」

 

未元物質を白い雪に見立て降り注がせる。佳茄達がその光景に見惚れ、打ち止めも木原の膝の上で燥ぎ数多もいい使い方だと笑う…円舞曲も終わりへとに近づく

 

「いい感じに盛り上がってるな…だがまだ終わりじゃねえぞ」

 

垣根がそう言うと庭に白い染みの様なものが現れ、それが周囲を侵食していきステージの周囲を白一色で覆い尽くす。そこから未元物質で出来た木々や花が誕生し、小鳥や鹿、兎、栗鼠の姿をした擬似生物達が木々で戯れたり宙に浮かぶ人々の真下を駆け巡っている…まさにそれは神々が住む天界そのものだった

 

「わぁ!凄いですね佐天さん!こんな事が出来るなんて流石超能力者です!」

 

「超能力てこんな演出も出来るのか…て、もしかして私達の出番てこれだけ?」

 

観客の心を動かすその景色に歓声が響き渡る、だがまだメルヘンは止まらない。垣根がスタンバイさせていたカブトムシ四体が垣根の指示を受けて動き出す、その内の二体 水流操作のカブトムシ達は角から霧状の水を噴出させ虹のアーチを作り出す、残りの二体 光学操作のカブトムシ達は光を操って雪の様に舞う未元物質に光を当てて、未元物質で光を分散・拡散させ七色に輝く光がステージ全体を更に幻想的に仕上げる

 

「…綺麗ですわ」

 

「だろ?俺の未元物質にかかればこんな事お茶の子さいさいよ」

 

「でもこれではわたくし達は目立っていないのでは?」

 

「安心しろ、ここからが俺達の見せ所だからな」

 

「え?」

 

帆風が綺麗だと呟くと垣根がそうだろと笑う、だがこれでは自分達が目立っていないと心配する帆風に垣根が悪戯ぽく笑うと垣根は自分の背中から三対六枚の翼を生やす、それで大気を叩き宙へと帆風の手と腰を掴んだまま飛び上がる

 

「ええ!?」

 

「はは!空中で円舞曲を踊るなんて凄えメルヘンだな」

 

帆風は驚いて声を出すが垣根は気にせず踊りを続ける、空を舞って踊る二人を見た観客達はまるで天使が天女と舞っているみたいだと感じる…そして翼の生えた未元物質の演奏者達が楽器を吹くのをやめ空中に静止する。動物達も動きを止め降っていた雪も止み、虹のアーチや七色に輝く光も消えていった…そして垣根と帆風がステージに降り立つ

 

「……これで幻想も終わりだな」

 

ステージの裏にいた上条が満足げに笑いながら未元物質の地面に触れる、それだけでステージ周辺を覆い尽くしていた未元物質が搔き消え、動物達や木々や花が一瞬で消えて無くなる…そして一方通行が宙に浮いている観客やパイプ椅子を優しく下ろす。そして演奏者達も無数の花弁になってその姿を消し観客達はその幻想の終わりに息を飲む、そして垣根と帆風が観客達に頭を下げる…暫くして観客達の盛大な拍手が沸き起こる

 

「凄かったんだよ!こんなダンス初めてかも!」

 

「…まあ悪くはなかったかな」

 

「素晴らしかったです」

 

「お姉様が活躍できなかったのは残念でしたが…悪くなかったですの」

 

「もう一度見て見たい!てミサカはミサカは無理と承知でアンコールしてみたり!」

 

「まあまあ良かったんじゃねえのか?」

 

「凄かったなー兄貴ー」

 

「……まさか演出にこんなけ能力使うとは思わなかったんだぜい」

 

「凄かったね〜!演出も良かったけどメルヘンのお兄ちゃんの変な髪型のお姉様のダンスもまるで本物の王子様とお姫様が踊ってるみたいで感動した〜!」

 

「…ヴァイオリンの独奏がなくなって少し焦ったが…杞憂だったようだな」

 

観客達の称賛する声が垣根と帆風の耳に入る、帆風と垣根は笑いながら観客達に手を振って舞台袖に下がっていった

 

 

「ふぅ…緊張した〜、成功して良かった」

 

「ですね…わたくしも疲れてしまいした」

 

舞台裏に下がった二人は疲れ切った様子でグッタリしていた、他の六人も疲れた様子で椅子にもたれ掛かっていた

 

「疲れたわぁ…もう暫く動きたくないわぁ」

 

「私もあれだけ電気使うなんて思っても見なかったわ…」

 

「いやあ皆大興奮してたな!」

 

「疲れたにゃーん」

 

「大して働いてねェだろむぎのんと削板と上条は…一番働いたのは俺だろうがァ…」

 

「演出ご苦労様だったな、そのお礼に何か昼飯奢ってやるよ」

 

「「「「「「じゃあ焼き肉!!」」」」」」

 

垣根は六人を労う為に何か昼飯を奢ると言うと、一同は大声で肉〜!と叫び垣根はそれを聞いて苦笑する

 

「オッケー、じゃあ焼肉屋行くか。縦ロールちゃんもそれでいい?」

 

「はい、わたくしも構いませんわ」

 

垣根と帆風は笑って服を着替える為に更衣室に向かう。かくして盛夏祭は無事超能力者達の活躍により無事幕を下ろしたのだった

 

 

後に盛夏祭に訪れた人々に盛夏祭で何が印象に残っているかと尋ねれば全員が必ず

 

「最後の超能力者と大能力者のダンスが素晴らしかった」

 

と、訪れた人々は口々にそう言ったという

 

 

 

 

 




どうでしたか?超能力の無駄遣いというべき演出は?いささか無理がありましたかね…反省してます、でも後悔はない!別に超能力を戦闘以外に使ちゃダメなんてルールはないからね。まあダンスのら辺は作者が帝風(垣根帝督×帆風潤子)が書きたかっただけなんだけども(本音)、因みに一方さんは脳の演算機能を失ってないのでこれから成長したら地球上の全ての風を操れるようになっちゃうかも。

未元物質は便利、万能、大抵のことなら出来ちゃいます…が、ヴァイオリンみたいな弦楽器の音の再現は無理です、金管楽器なら再現できますけどね…あ、未元物質で作った人型がフルートとか演奏できたのはフルートとかが弾ける人の残留思念をていとくんが前もって手に入れていたからです、残留思念て便利

さて次回は…皆様が大変長らくお楽しみにしていた(?)であろうアウレオルス=イザード編に突入!もうあの人をヘタ練とは呼ばせない!そしてまさかのあのキャラがローマからやって来る…次回もお楽しみに!


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見た目はお子様、頭脳は魔道書図書館、その名はインデックス

今回はアウレオルス編第1話(姫神さんとかアウレオルスさんはまだ少しだけしか出ない)…だけど些か面白いかは自信がないです。些か無理やりて感じがするので…

タイトルを読めばわかるようにインデックスさんがメイン、インちゃんが学園都市の謎を解き明かすよ。真実はいつも一つ!みたいなノリで

この作品のインデックスは凄く優秀です、確かにご飯はたくさん食べるし、我儘な所はあるかもしれない…でも彼女は頭がいいです。まあ作者の文才力と頭が悪いので賢く見えないかもしれませんが…それは作者のせいであってインちゃんは何も悪くありません。作者よりも頭がいいキャラはかけませんからね(無情)


学園都市・第十七学区にある建物の一つ 三沢塾。業界の中でもシェア一位を誇る有名進学塾グループの支部店だったこの建物はある魔術師が魔術を施した要塞と化していた

 

「…嫣然、ついにこの日が来たのだ、私が彼女を救う日が…」

 

その三沢塾にて緑に染めたオールバックに白いスーツを着た青年…魔術師 アウレオルス=イザードが窓ガラス越しに学園都市の夜景を見て微笑んでいた

 

「…待っていてくれ我が教え子 インデックス、私が必ず君を救ってみせる」

 

彼は手を窓ガラスに触れながら呟く、全ては自分の教え子(インデックス)の為に…彼の目には揺るぎない決意が宿っていた。だが彼は知らない、自分が救おうとしている少女が既に救われている事に…

 

 

8月8日…夏真っ盛りな炎天下の中垣根達はとあるファーストフード店の八人で座れるテーブルにシェイクを飲みながら待ち人を待っていた

 

「…こんな暑い日は冷房が効いた涼しい店内で過ごすのが一番だにゃーん」

 

「根性で暑さを乗り切るのもいいが…偶にはこう言うのもいいな」

 

「しっかし暑いなァ…何でこんな日に呼び出されなきゃいけねェンだよ」

 

麦野と削板、一方通行はシェイクを啜りながら自分達を呼び出したインデックス達が来るのを待つ…次第にこのファーストフード店の席が埋まっていき満席状態になっていく

 

「本当よねぇ〜それにしてもここ暑過ぎないかしらぁ〜」

 

「本当よね〜暑いたらありゃしないわね」

 

「暑い〜何でこんなに暑いんだよ…」

 

「「「それはお前らがくっついてるからだろ、見てるこっちも暑苦しいくらいに」」」

 

食蜂、美琴、上条が店内でも暑いと呟くが麦野達はそれはお前らが三人で肩を寄せて密着してるからだろ、と冷静なツッコミを送る

 

「でも何でインデックスちゃん達は私達を呼んだんでしょうね」

 

「さあな…お、噂をしてたらやっと来たぜ」

 

帆風が何故インデックス達が自分達を呼んだのかと首を傾げる、垣根は店の入り口のドアを眺めていると店の中にインデックス達が入って来たのを見つけた

 

「お待たせなんだよ皆」

 

「たくよォ…呼び出しておいて遅れて来るなンてなァ…舐めてンのか?」

 

「すまない、道に迷ってしまってね」

 

「まあ別にいいんだけどさ…で、俺達を呼んだ理由てなんだよ?」

 

一方通行が遅いぞと睨むとステイルが謝る、上条は何故自分を呼んだのかと尋ねるとインデックスが真剣な顔つきになる

 

「実はていとく達に聞きたい事が「あのお客様」?」

 

「申し訳ありませんが立ち話はご遠慮ください、お話をなさるのならお近くのテーブルに座ってください」

 

「それはすみません…ですが空いてる席はなさそうなのですが」

 

「大丈夫です、こちらの方々のお隣の席なら相席なら空いてますので…」

 

インデックスが聞きたい事を言おうとするが営業スマイルの店員がテーブルに座って話せ、と言うと神裂がどこに座ればいいのかと尋ねると店員が相席なら隣のテーブルが空いていると教え三人が垣根達のテーブルを見るとそこには…

 

「く、食い倒れた…」

 

巫女がいた、長いサラサラの黒髪を浜に打ち上げられたワカメの様に広がり、巫女さんの顔を覆い隠していた

 

(((えぇ?何この人…)))

 

「どうぞこちらのお席にお掛けください」

 

「いや彼女に座っていいか聞いてないよね?勝手に座れってことかい?」

 

三人が何この人、と巫女さんを見ていると店員は巫女さんに断りも入れずににっこり笑顔でお座りくださいと言うとそのまま立ち去っていく

 

「あの店員さん…変な人だったわねぇ」

 

「確かに、この女の人に座っていいか聞かないなんて失れ「相席て言ったのに誰もいないじゃないのぉ」…え?」

 

「全くだにゃーん、私達の隣の席に誰も座ってないのにまるで誰かいるみたいに言ってたなあの店員」

 

「「「…え?え?え?」」」

 

インデックスが巫女さんの許可も取らないで座って下さいと言った店員に憤っていたが食蜂は誰も席にいないじゃない、と呟きインデックスが目を丸くして巫女さんを見る、巫女さんはバーガーを食べ過ぎて苦しげに唸っている…なのに上条達はその巫女さんが見えていないかの様に振舞っている

 

「…いやあの…君達には彼女が見えないのかい?」

 

「はァ?何言ってンだオマエら…誰もいねえじゃねェか」

 

「ね、念の為に聞きますが…見えていないふりをしているとかではありませんよね?」

 

「…え?何…もしかしてあんた達にはそのテーブルに誰かいる様に見えるの?ちょっとやめなさいよ…幽霊とかそういう系は私苦手なんだから…」

 

ステイルが巫女さんが見えていないのかと聞くと一方通行が気怠げにステイルに目を向ける、神裂も見えてないふりをしてるのかと聞くが美琴はもしかしてこの三人は幽霊でも見えているのかと少し怖がった表情になる

 

「…少し時間をプリーズなんだよ」

 

「?別にいいけど」

 

「サンキューなんだよ…ちょっとステイルとかおり来て」

 

インデックスが少し時間をくれと上条に言うと上条はどうぞと頷く、そしてインデックスがステイルと神裂を呼んで誰にも聞こえない様に円陣を組む

 

(どう言うことかな?ていとく達にはあの巫女さんが見えてないの?)

 

(幽霊等の類ではなさそうですし…まさか気配を消す術式で姿を隠蔽している?)

 

(いやそんな気配はないし、それなら何故僕達に見えているのか説明出来ない)

 

(となると…あの巫女さんはただ単純に影が薄過ぎてていとく達に気づかれてないだけかも)

 

((……納得))

 

三人が巫女さんが何故垣根達に見えていないのか議論し始める、そしてインデックスが影が薄いから見えてないだけかもと呟くと神裂達は納得する…確かにその巫女さんからは「初登場だと悲劇のヒロイン感ハンパなかったけど巻が増える事に出番がなくなって■■になってしまった」みたいなオーラが彼女から溢れ出ているからだ

 

「……ねえ、ここ座ってもいいかな?」

 

「……どうぞ」

 

「ありがとなんだよ…」

 

インデックスが巫女さんに座っていいかと声をかけると巫女さんは右手をゆっくりと上げグーサインを出す、それを見た三人はゆっくりとソファーに座った

 

「で、聞きたい事て何?」

 

「うん、前にていとくが魔術と超能力は同じものて言ったよね?」

 

「…確かに垣根さんは初めてインデックスちゃんと会った時にそう言ってましたね…それが何か?」

 

「…実は私も気になって居候してるこもえの家の本を読み漁ってたんだよ、それでいくつか魔術と類似する点を調べてたらある思想に目が止まったんだよ」

 

インデックスが以前垣根が魔術と超能力は同じものと言っていたと言うと帆風が頷く、インデックスはホームステイしている小萌の家で超能力に関する本を読んである事に気付いたらしく真剣な顔つきのまま言葉を続けていく

 

神ならぬ身にて天上の意思に辿り着くもの(SYSTEM)、それが私がていとく達に聞きたい事なんだよ」

 

「SYSTEM…ああ、あの私達レベル5の先にあるて言われてるモノの事かにゃーん?」

 

「…SYSTEMとは要するに世界の真理…【神様の領域】は人間では決して理解できない、だから「人間を超える」ことでそこへ到達した者を指す…それがSYSTEM…であってたかな?」

 

「馬鹿な上条さんでもそれくらい知ってるぞ、それが魔術とどう関係してるんだよ?」

 

「…実はこの考え方…完全なる知性主義(グノーシズム)て言う魔術的な思想とほぼ…ううん、全く同じ考え方なんだよ」

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

インデックスが呟いたSYSTEMと言う単語に全員が耳を傾ける、垣根達超能力者(レベル5)を超えた先にあるモノ、一部では絶対能力者(レベル6)と同一視されているがその絶対能力ですら通過点に過ぎないと言われているその概念、あの木原幻生が2万人の美琴のクローンを作って一方通行に殺害させることで一方通行を絶対能力者に進化させるという計画を立てた事もある…その概念が魔術のある思想と全く同じだとインデックスが答えると垣根以外が目を見開く

 

「インデックスちゃん…その完全なる知性主義とはどういったものなんですか?」

 

「そうだね…まずカバラには生命の樹(セフィロト)て言う概念があってね、人間、天使、神様の身分階級を分かりやすくした十段階評価した図の事なんだけど… その図の神様の事に当たる部分はアインソフオウル(000)アインソフ(00)アイン(0)て言って人に理解出来ず表現できない概念なんだ…つまり私達には読めないし理解する事も出来ないて事」

 

「でもこれを逆手に取った宗教団体がいてね、それが完全なる知性主義…人間を超えた肉体を手に入れれば、その人が読めない部分も読めるんじゃないかていう思想を掲げている宗教…その考え方とSYSTEMは全く同じ考え方なんだよ」

 

帆風が完全なる知性主義とは何かと聞くとインデックスは完全なる知性主義の思想を分かりやすく説明する、生命の樹だか神様だとかの事は上条達は理解できない…だが、SYSTEMとその完全なる知性主義が同じ考え方をしているのはなんとなく彼らは理解した

 

「え…?どう言う事よ…科学の街がそのグ、完全なる知性主義…だっけ?何でそれと同じ考え方をしてんのよ」

 

「だから私はこうして聞きに来たんだよ、今この話を聞いて皆驚いたよね?」

 

「…あァ、当たり前だろうが。俺達超能力者が目指してるSYSTEMは魔術と同じ考えでした、なンて言われて驚かねェ訳がねェだろうが」

 

「だよね、それが普通の反応だもんね…そうでしょていとく」

 

美琴が何故その魔術(オカルト)の考えが科学(サイエンス)の最大目標と似ているのかとインデックスに問いかける、それに対しインデックスはそれは自分も知りたいと呟くと一方通行にこの考えを聞いて驚いたかと尋ねる、一方通行は当たり前だと頷きインデックスは今度垣根に話を振る

 

「……なんで俺に聞くんだ?」

 

「そうだね…さっきの話を聞いて皆驚いてたよね、でもていとくだけは驚いてなかったよね。まるで最初から知ってたみたいに」

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

垣根はインデックスを見つめしらを切ろうとするがインデックスがじゃあ何故驚かなかったのかと問いかける、それを聞いて上条達は驚いた目で垣根を見る

 

「…前から不思議に思ってたんだよ、初めて会った時は皆に私が本物の魔術師だって知って欲しくて冷静さをかけていたけど…なんで科学サイドにいる筈のていとくが魔法名とか魔道書…それにイギリス清教の内部情報まで知ってたのかな?」

 

「………」

 

「まあ、それは今は置いておくとして…さっきの話を聞いて驚かなかったのは、ていとくはこのSYSTEMが魔術的な思想て気づいてたんじゃないかな?違う?」

 

「……ああそうだよ、俺はSYSTEMが魔術的な思想て知ってた。これでいいか?」

 

インデックスが前から思っていた疑問を全て話し、垣根は知っていたから驚かなかったのだとインデックスが言い切ると垣根がとうとうバレたかと笑う

 

「…まさかインデックスの予想が当たっているとはね」

 

「私達も半信半疑でしたが…まさか本当だったとは」

 

「俺もこんなに早く気付くとは思わなかったぞ…確かにヒントは与えてたが…流石魔道書図書館、俺の予想を遥かに超えていやがったか」

 

「そんな事ないよ、そもそもていとくが魔術と科学が同じ物て言ってなかったら気づかなかったかも…」

 

ステイルと神裂は本当にインデックスの予想通りだったのかと目を見開いて驚いており、垣根はヒントは与えていたとはいえこんなにも早く気付くとは…とインデックスの分析力を素直に感心しておりインデックスはヒントがなければ気づかなかったと皮肉げに笑う

 

「でもそれだけじゃないんだよ、なんでSYSTEMは魔術的な思想をしてるのか?私はそれを考えて一つの答えを出した…学園都市はテレマ僧院の再来、そして超能力とは新しい魔術にしてテレマと同じやり方…つまりこのSYSTEMを考えたのは…ううん、SYSTEMだけじゃない、超能力を考えたのも、学園都市を作ったのも…全部ある魔術師(・・・)だって理解したんだよ」

 

「ある…魔術師?」

 

「…その人物の名はアレイスター=クロウリー、確かここの学園都市の統括理事長と同じ名前だよね?ステイル達は偽名だって言ってたけど…60年前に死んだと言われてるアレイスター=クロウリーと同一人物だと私は考えてるんだよ」

 

「……正解、よく真実に辿り着いたな」

 

インデックスはこの学園都市を作り出したのは魔術師 アレイスター=クロウリーだと確信を持って答える、それを聞いて垣根は笑みを浮かべる

 

「ちょっと待ってくれるかしらぁ、私達の理解力がついていけないわぁ」

 

「あ、そうだったね…みさき達は魔術師としてのアレイスター=クロウリーの事を知らなかったんだね」

 

「…この学園都市のトップが魔術師て時点でツッコミ所満載なんだが…それはまず置いておくとして…その魔術師 アレイスター=クロウリーて何者なんだよ」

 

「…アレイスター=クロウリーとは私やステイルの様な近代西洋魔術を使う者達に多大な影響を与えた大魔術師の事です、そして同時に最も魔術を愚弄した魔術師でもありますが」

 

「よォするにお前らの世界の有名人て所か?」

 

話がついていけない超能力者達は説明を求め、神裂がアレイスターについて話す。それを聞いた超能力者達は魔術の世界の有名人だと認識する

 

「なんで生きていたとかは聞かないよ、でもこれだけは分かるんだよ、アレイスターは自分が生きている事を気付かれないように科学的にも魔術的にも隠蔽し、第二のテレマ僧院…学園都市を科学て言う隠れ蓑を使って隠してた…違う?」

 

「…大正解だ、まさかここまで真実に近づくとはな」

 

「でも、流石の私でも分からない部分はあるんだよ。なんでアレイスターはこの街を作ったのか…それだけはどうしても答えが思いつかないんだよ…だから教えて欲しいかも…アレイスター=クロウリーは学園都市を作って一体何をするつもりなの?」

 

インデックスは何故アレイスターがこの街を作ったのか?それだけが分からないと呟く。それを垣根に尋ねると垣根は笑った

 

「…なあ、お前らは『火花』て知ってるか」

 

「…火花?何かなそれは?」

 

「…そうだ、誰も知らねえんだ、10万3,000冊の魔道書の知識を持つインデックスでさえ知らない魔術を使った代償の事を…だがアレイスターはそれを知っていたんだ」

 

「魔術の…代償?」

 

垣根はインデックスの問いに答えず火花と言う単語を呟いた、その言葉は超能力者はおろか魔術師でさえ理解できずインデックスは首を傾げる、垣根は気にせず言葉を続けた

 

「火花てのは…位相同士の接触・軋轢から生じる現象…人の出会いや別れ、人の生死からコイントスの表裏さえもが、薄く広がった火花と重なる位相の影響を受けている…つまり俺達が今まで経験してきた出会いや別れ、不幸や幸運は全てこの火花から生じた運命なんだ」

 

「?難しくてよく分からねえぞ…つまりその火花てのは運命論みたいなもんかにゃーん?」

 

「そうだ…アレイスターはその運命(火花)てのが大嫌いだったんだ…だから魔術を憎悪してたんだ」

 

「…?なんでアレイスターは魔術を憎悪してたの?」

 

火花とは即ち運命論、帆風が垣根と出会ったのも火花の影響、上条達の人生の中での出会いも全ては火花が関係していると垣根が呟くとインデックスは何故その火花がアレイスターは嫌いなのかと首を傾げる、それを聞いた垣根は下を向いて答えた

 

「…死んだからだよ、アレイスターの娘が…その火花の所為でな」

 

「「「「「「「「「「……あ」」」」」」」」」」

 

垣根が言った一言で彼等は気づいた、火花とは人の生死にも関わっていると…つまり魔術師が魔術を使った代償として火花が生じ、それでアレイスターの娘は死んでしまったのだと

 

「…アレイスターは自分の娘の死を看取れなかった、今まで自分の娘の死の運命を覆す為に魔術の研究をし続けてきたのに…結局運命は変わらず娘は死んじまった…」

 

その魔術師は死に物狂いで娘を助けようとした…だが彼は救えなかった、死の運命を変える事は出来なかった。だからアレイスターは自分の娘を死に至らしめた魔術を憎悪した、それを上条達がなんと言えばいいのか分からなくなり俯いていると

 

「…ま、その娘 リリスは何年か前に蘇ったんだけどな」

 

「「「「「「「「「「ズコー!?」」」」」」」」」」

 

垣根が「まあ、その娘生き返ったけどね」と軽く呟くと全員がズッコケた

 

「何故生き返ったかて?それは俺が…て、何でこけてんだお前ら?」

 

「いやそれはていとくがその娘が生き返ったからて言ったからだよ!KYにも程があるかも!」

 

「それな!その娘の死を聞かされてどんよりしてた空気が一転したからコケちゃったんですよ!」

 

何でコケてんだこいつらと垣根が全員を眺める、インデックスと上条がさっきまでの重たい空気を返せと叫びだす

 

「取り敢えずなんで娘が蘇ったのか、それを説明しろよ!」

 

「ああ、そうだな…何故アレイスターの娘 リリスが蘇ったのか話してやるよ…取り敢えず一時間以上かかるけどいいよな?」

 

「いや長すぎるだろ!?校長先生かよ!」

 

麦野が早く娘が蘇った理由を教えろと言うと垣根はそれを語り終わるには一時間以上かかるけどいい?と聞くと上条が長すぎるわと突っ込む

 

「じゃあ要点だけ言うぞ」

 

「それでいいわよ…さっさと言いなさいよ」

 

「まあ簡単に言うと「エイワス(クソ天使)が俺の右腕を引きちぎって奪っていった代わりにリリスを返してくれた」だな」

 

「「「「「「「「「「いや省略し過ぎ!」」」」」」」」」」

 

垣根が自分の右腕と引き換えにクソ天使がリリスを返してくれたと言うとどう言う状況かと全員が突っ込む

 

「まあ…全部語り切るには時間がかかるし今回はここまでだな」

 

「え!?ここで終わりなんですか!?」

 

垣根がここら辺で話を終えると呟くと帆風がもう終わりかと驚く、まるでいい所で次回に続く、みたいな漫画を読んでいるような感覚に全員が続きが気になるといった顔をする

 

「これで終わりとかねえだろ!どうしてアレイスターが学園都市を作ったのかてまだ話してねえじゃねえか!」

 

「まあ、それはいつかまた話すとして…それに今から俺がお前らに話そうとしている内容はインデックスに関わる重要な話なんだぞ」

 

「!…彼女に関わる重要な話だと?」

 

麦野が荒ぶるが垣根はそれを手で制す、そしてこれからインデックスに関係する話をすると呟くと全員が押し黙る

 

「まず…俺達は自動書記(ヨハネのペン)を破壊してインデックスを蝕んでいた術式を破壊した…ここまではわかるか?」

 

「…ああ、俺がこの右手で破壊したんだからな」

 

「だがそれがどうしたと言うのですか?貴方達が壊してくれたお陰でインデックスは自由の身となった筈ですが…」

 

上条達の脳裏に思い浮かんだのはあの激しい戦いの光景、擬似魔神と呼ばれたインデックスの桁違いな強さを改めて思い出す…だが自動書記は上条の幻想殺しで破壊した筈だ、それを何故今頃蒸し返しているのかと疑問に思う一同

 

「…実はな、自動書記はまだ完璧に破壊されたわけじゃねえんだよ」

 

「「「「「「「「「「な!?」」」」」」」」」」

 

衝撃の一言に呆気にとられる上条達、それもその筈だ、壊したと思ったものが完璧に壊れていないと垣根が言ったのだから

 

「どう言う事だ!上条当麻が自動書記を消滅させた筈だ!」

 

「…思い出してみろよ、自動書記が最後に言ってた言葉を」

 

「最後…確か『……けい、告。最終章。……零…章。『首輪』致命的な……破…再………可…………』で合ってたか?」

 

「そう、『首輪』の致命的な…つまり完全には破壊されてないてこった」

 

「「「「「「「「「「!」」」」」」」」」」

 

ステイルがそんな馬鹿なと手でテーブルを叩いて勢いよく立ち上がる、だが垣根は冷静にこう言った、自動書記はまだ完全に壊されていなかったと死に際に言っていた事を。確かに致命的ならまた修復する可能性もあると一同はそれに気づく

 

「そんな…ではいずれまた…彼女の記憶を消す日が来るかもしれないと…そう言う事ですか?」

 

「…その可能性もある…だが、それより恐ろしいのはあの女狐が王室派の遠隔制御霊装を奪ってインデックスを操らないか…それが一番の問題だ」

 

神裂が震えながらまた記憶を消さねばいけない日が来るのかと呟くと垣根はそれもあるが、一番はインデックスが擬似魔神としての力を自分達に振るって来る可能性がある事だと言う。超能力者達は手を握りしめる、なんでインデックスはこんなにも辛い目にあうのかと

 

「…だがその問題は首輪を完全に破壊すれば解決する」

 

「!できるの?とうまの右手でもできなかった事が?」

 

「ああ…方法は三つくらいあるが…その内で一番効果的なのがある」

 

だが垣根が首輪を完全に破壊さえすれば解決すると言うとインデックスがそんな事が出来るのかと尋ねる、垣根は指を三つ立てるがその内の二つを下げて一番効果的なのがあると呟く

 

「その方法力てなんなのかしらぁ?」

 

「…ある人物にインデックスの首輪からの呪縛を解き放って貰えばいいんだよ」

 

「ある…人物だと?それは誰だ?」

 

「……錬金術師 アウレオルス=イザード、そいつこそがインデックスを縛る呪縛を完全に解き放てる人物だ」

 

食蜂とステイルがその方法とはなんだと尋ねると垣根は笑ってこう呟いた、アウレオルス=イザードと。その名前が出た途端巫女さんの身体がビクッと微かに揺れた

 

「あ、アウレオルス=イザードだと?」

 

「帝督、そのアウレオルスて誰だ?」

 

「三年前のインデックスのパートナーだよ、そしてインデックスを助けられなかった…つまりヒーローになり損ねたヒーローの事だ」

 

「…ですがあの錬金術師がどうやってインデックスの首輪を完全に破壊できると言うのですか?失礼ですが彼にはその様な才能はない筈です」

 

削板がアウレオルスとは誰かと聞くと垣根はインデックスの元パートナーの一人にして彼女を救えなかった人物と簡潔に述べる、だが神裂は何故あの錬金術師がインデックスの呪縛を解けるのか理解できない

 

「…簡単だ、あいつはあるもの(・・・・)を完成させた、だからインデックスを救えるのさ」

 

「…あるもの、だと?」

 

「……黄金練成(アルス=マグナ)、て言えば分かるか?」

 

「「「……!?」」」

 

垣根があるものを完成させたからだと呟くとステイルはなんだそれはと目を細める、そして垣根は答えた…それは黄金錬成だと。瞬間魔術師三人の顔が凍てつく

 

「ま、さか…金色のアルス=マグナを完成させたて言うの?そ、そんなのあり得ないかも!だってあれは…!」

 

「だが事実だ、アウレオルスはその偉業を成し遂げた…全てはインデックス…お前の為にな」

 

「嘘だろ…あのアルス=マグナを?一体全体どんな手を使って…」

 

「で、ですが確かにアルス=マグナならインデックスの呪縛を解けるかもしれません」

 

インデックスは否定する、そんな筈はない、あり得ないと。だが垣根は肯定する、事実だと。それを聞いたステイルと神裂は驚くもそれならば確かにインデックスの首輪を破棄できると考える

 

「おィ、お前らだけの世界に行ってンじゃねェぞ…なんだそのアルスなんちゃらてのは?」

 

「…錬金術の到達点とされる大魔術さ、人間では永遠に実現は不可とされていた魔術の事だよ」

 

「よく分かりませんが、そのアウレオルスさんならインデックスちゃんの呪縛を解いてくれるのですね」

 

「…そうですね、理論上は可能でしょう」

 

「よし!ならそのアウレオルスて奴を探し出さねえとな!俺らが根性出して探し出して「その必要はねえ」ん?」

 

一方通行が黄金錬成とはなんだと聞くとステイルが簡素な説明をする、帆風がそれならインデックスを救えると呟くと削板が拳をぶつけてアウレオルスを探すと息巻くが垣根がそれを制した

 

「探す必要なんざねえ、なんせアウレオルス=イザードはこの学園都市にいるんだからな」

 

「…ねえ、ここは科学の街なんだよね?なんで僕らを含めて魔術師が四人もいるのかな?この街の警備は大丈夫かい?」

 

「安心しろ、お前らも含めれば何十人も学園都市に魔術師は住んでるから」

 

「何一つ安心できませんね…て、そんなボケをしている暇などありません。アウレオルスは何処にいるのですか」

 

「…それはお前らの隣にいる巫女さんに聞けよ」

 

垣根はアウレオルスは学園都市にいると呟くとステイルがなんで科学の街に魔術師がいるんだと突っ込んでしまう、神裂は何処にいるのかと聞くと垣根は隣に座っている巫女さんに聞けと言うとインデックス達が巫女さんを見る…先程までテーブルに顔を伏せていた彼女はゆっくりと起き上がりインデックス達を見ていた

 

「……私がいる事に気づいてたの?」

 

「当たり前だ、だけど当麻達が気付いてなかったから俺も気づいてないふりをしてただけだ」

 

「「「「「「「!?い、いつの間に!?」」」」」」」

 

「「「いや、最初からいたよ」」」

 

巫女さんは意外そうな目で垣根を見る、超能力者達は漸くその存在に気付き目を見開いていた。そんな超能力者達はインデックスは気づくの遅っと冷ややかな目で見つめる

 

「でもていとく、この人がなんでその錬金術師の場所を知ってるの?」

 

「その女はアウレオルスの協力者だからだよ…そうだろ?吸血殺し(ディープブラット) 姫神秋沙(ひめがみ あいさ)

 

「……」

 

垣根はインデックスの隣に座っている少女…姫神はアウレオルスの協力者だと言うと全員が目を見開く。こんな間近に魔術師の協力者がいたのかと…姫神は口を閉じたまま何も喋ろうともしない、ステイルが彼女に何か聞こうと口を開きかけたその時

 

『…唖然、何処にいるのかと思い探してみれば…まさかインデックスがいるとはな』

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

「…アウレオルス=イザードか」

 

突如として彼等の脳内に何者かの声が響き渡る、上条達は周囲を見渡すがその声の人物らしき者は見つからない…そんな中垣根はボソッとその人物の名を呟いた

 

「まさか…アウレオルス=イザードなのか?」

 

『その通り…何故姫神秋沙の元にインデックスがいたのかは知らぬが…これは僥倖、探す手間が省けるとは…運がいい』

 

ステイルがまさかこの声の主はアウレオルスなのかと呟く、声の主はステイルの問いを気にせず喋り続ける

 

『久しいなインデックス、だがこの様な形で話すのは失礼だな…ならば私の元へ呼ぶとしよう。姫神秋沙とインデックスよ、(・・・・・・・・・・・・・)我が元へ来い(・・・・・・)

 

声の主は優しげな声色でインデックスに話しかける、だがこの様な形では失礼と声の主が呟く、そして彼が次に言葉を放った瞬間姫神とインデックスの姿が消えた(・・・)

 

「……インデックス?」

 

ステイルの何処か間の抜けた声が店内に響く、超能力者達は目を見開いた、インデックスは何処へ消えたのかと。神裂は状況を理解できず目を開閉させる事を繰り返すのみ…垣根はやっぱりこうなるかと舌打ちする

 

「何処だインデックス?…何処にいるんだインデックス!?」

 

ステイルの叫ぶ声が店内に轟く、その悲鳴の様な叫び声にインデックスが答える事はなかった

 

 

 

 

 




…あんまり今回は面白くなったかも。インデックスが学園都市の秘密を語った所ら辺が凄く雑に作者的には見える。ごめんなさい、分かりにくくて。後ていとくんが自分の右腕の事を言ってましたが実は一話でも右腕に関する事を実は言ってるんですよね

連れ去られたインデックス、まあ黄金錬成にこんな事出来るのか分かりませんが…でもアウレオルスさんが大物ぽく見えたら嬉しいです。さて次回は突撃、三沢塾。戦闘に関しては空気だった縦ロールちゃんが活躍しそうな予感。次回もお楽しみに


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突撃第十七学区の三沢塾

今回はインデックスさんと姫神さんの出番はありません(涙)、アウレオルスさんも出番が少なめ…まだボス戦じゃないですから仕方ないですね

最後の方に戦闘描写があります…戦うキャラは漫画版はおろかアニメでも出番をカットされたあの人です。あとあのキャラもまさかの生存を遂げてます


インデックスが消えた。空間移動で消えたとか透明になったとかそう言う次元ではない。インデックスの横にいた姫神秋沙と呼ばれる少女と共に一瞬で目の前から消えたのだ

 

「インデックス!?…神裂!あの子は何処に行ったんだ!?」

 

「わ、分かるわけないでしょう!私だって何が起こったか分からないんですから!」

 

「くそ!何がどうなってる!?なんなんださっきの現象は!」

 

ステイルがインデックスが居なくなったことで錯乱状態に陥る、神裂も明らかに動揺しており二人共パニック状態になっていた

 

「落ち着け、らしくないぞ魔術師」

 

「!?落ち着けだと…だがインデックスが…!」

 

「だからだよ、焦ってもインデックスは帰ってこない。なら早く錬金術師がいる場所に殴り込んで助けた方がいいだろ」

 

垣根が落ち着けと言うとステイルは落ち着ける筈がないと叫び返そうとする、だが垣根はそんな暇があるならインデックスを助けに行くぞと言うと席から立つ

 

「三沢塾、そこにインデックスを攫ったアウレオルスがいる」

 

「!それは本当ですか!?」

 

「ああ、詳しい事は目的地に向かいながら話す…兎に角ついて来い」

 

垣根がアウレオルスは三沢塾と言う場所にいると教えると、そのまま駆け出し店内から出て行く

 

「!…行くぞ神裂!」

 

「!…はい!」

 

「…チ、面倒くせェ事に巻き込まれたな」

 

「だけど私達の目の前で起こったなら…ほっとくわけにはいかないよな」

 

魔術師も垣根の後を追う様に走り出して店から出て行く、その後に続くかの様に一方通行や麦野、削板、帆風も急いで垣根の後を追う

 

「おい待てよ!代金払い忘れてるぞ!」

 

上条達は金を支払わずに出て行った垣根達の分まで金を支払って急いで垣根達の元へ向かう

 

 

「で、三沢塾てなんだい?その名の通り単なる塾なのかな?」

 

「まあな、元々は学園都市の外の進学塾グループだ…学園都市の支部は学園都市の技術を盗むスパイとして送り込んできたらしいがな」

 

垣根達は街の中をかけながら三沢塾がある第十七学区へと急ぐ、ステイルは走りながら三沢塾とは何かと聞くと垣根は学園都市の技術を盗む為に外からやって来たスパイだと話す

 

「だがあいつらは中途半端に能力開発を知ったせいで何を血迷ったのか自分達は選ばれた人間だと思い込んで暴走し始めたんだよ」

 

「…要するに学園都市に置かれた三沢塾てのの支部は科学崇拝みてえな新興宗教もどきになっちまったて事かよ」

 

垣根がその連中は半端な超能力に関する知識を知ったせいで狂っちまったんだと皮肉げに笑う。ファーストフード店で金を支払ってからなんとか追いついた上条がそれを聞いて呆れる

 

「そしてその馬鹿野郎共は吸血殺し…さっきの少女を捕まえて拉致監禁した。この世に一つしか無い、再現不能の能力者て触れ込みで生徒を集める為にな」

 

「そんな事が…でも何でそんなヤバいイカれ集団を放っておいたの?警備員とかが解決する案件じゃない」

 

「…出来なかったんだよ、アレイスターが問題解決に取り掛かろうとした矢先にアウレオルスがその三沢塾を乗っ取ったからな」

 

「…成る程、そう言うことですか。確か学園都市…科学サイドは魔術サイドの問題に関わるなと言う協定がありましたね…」

 

美琴が三沢塾の連中の事をイかれていると判断し、何故警備員達が解決しないのかと訝しむが垣根がアウレオルスが三沢塾を乗っ取ったからだと教えると神裂が納得する

 

「…あれ?でも私達はバッチリその魔術サイドの問題に関わってると思うんけどぉ?」

 

「…知ってるか?バレなかったら犯罪じゃない」

 

「…なんか悪い事してる気分になってきたなァ」

 

食蜂が自分達はガッツリとその魔術サイドの事件に関わっているけど大丈夫かと汗を垂らす、垣根はバレなかったらノー問題だと笑い一方通行が頭に手を当てて溜息を吐く

 

「…そういや、黄金錬成だっけ?具体的な能力は聞いてなかったけどそれはどんな能力なんだよ」

 

「…アルス=マグナとは簡単に言えば…自分の中で思い描いたモノをこの世界に引き出せる、つまり世界の全てを自在に操る能力です」

 

「「「「「「「…は?」」」」」」」

 

麦野が黄金錬成とは何だと尋ねると神裂はこう答えた、世界を操る力だと。その答えに超能力者達は呆けた声を出すしかなかった、それがあまりにも壮大で現実味のない能力だったからだ

 

「世界を自在に操る…だと?そんなの絶対勝てねえじゃねえか!その能力で俺らと同じ強さを持つ偽物を出された時点で相打ち決定じゃねえか!」

 

「…そうだ、だからあり得ないと言ったんだ…あんなものが完成する筈がないんだからな。だが現にインデックスはあいつの一声で消えた、なら信じるしかないじゃないか」

 

「ですが…そんな相手を前にどうやって勝てばいいのでしょう」

 

上条がそんなデタラメな物があっていいのかと怒鳴るがステイルは自分だってあの黄金錬成が完成したとは信じたくはない、だが信じるしかないと複雑そうな顔をして呟く、帆風はそんな相手に勝てるのかと不安になる

 

「…そういえば吸血殺し…だったか?それはどんな能力なんだ?」

 

「…ある生き物(・・・・・・)を確実に殺す能力だ。それだけじゃあねえ、その存在するかしら分からないその生き物を誘き寄せる撒き餌にもできる能力…いや原石だ」

 

「ある生き物…?なによそれ」

 

「カインの末裔…て言ってもお前らには分かんねえよな…ま、その吸血殺しが殺す生き物てのはな…吸血鬼だよ」

 

削板がその吸血殺しとはどんな能力なのかと尋ねると垣根がある生物を殺す原石だと答える、美琴はその生き物とは何だと聞くと垣根は吸血鬼だと答え超能力者達は目を見開く

 

「吸血鬼…そんな非科学的な生物が実在するの…て、そんなの今更よねぇ」

 

「…世界を自在に操る力の次は吸血鬼(バケモン)か…たく、私らは何でこう変な事件に巻き込まれるんだ」

 

食蜂が吸血鬼て実在したんだと半笑いを浮かべ、麦野が今度は吸血鬼も相手にするのかと溜息を吐く…そんな会話を続けている間に垣根達は目的地に辿り着く

 

「…着いたぜ、ここが三沢塾だ」

 

「……無事でいてくれよインデックス」

 

垣根がそう言って歩みを止める、その建物は十字路を中心に建っている12階建てのビル4棟…全員がその建物を見上げる。ここにインデックスが…そしてアウレオルスがいるのかと…そして全員がその建物に乗り込もうと玄関に近づいた瞬間

 

「待たれよ!これより先に近づいてははならぬ!」

 

「!?…錬金術師て奴の仲間か!」

 

上条達の背後に鎧を着込み片手に弓を持った騎士の様な男が立っていた、上条達はアウレオルスの部下か何かと身構えるが垣根が手で上条達を制するとその騎士に向かって笑いかける

 

「よう、久しぶりだなオッさん」

 

「…久しいな垣根殿」

 

「…?知り合いかていとくン?」

 

「ああ、このオッさんの名前はパルツィバル…まあコードネームだがな。俺の知り合いでローマ正教所属の十三騎士の一人だ」

 

垣根に頭を下げるその騎士 パルツィバルに一方通行が知り合いかと尋ねる、垣根はローマ正教の知り合いだと答えた

 

「…ローマ正教とも繋がりがあるのかい君は?」

 

「まあな、他にもロシア成教とか明け色の陽射しとか、イギリスの王室派、北欧の()魔神とかとも交友があるからな」

 

(…垣根さんの交友関係て広いですね)

 

ステイルがローマ正教ともパイプがあるのかと驚き垣根がまだまだ魔術サイドの知り合いがいると笑う、帆風は垣根の交友関係は凄いなと感心していた

 

「しかし何故ここに垣根殿が?この案件は我々ローマ正教の任務であって貴方が関わる案件ではない筈」

 

「…そうなんだがな、俺らの友人がアウレオルスに攫われたんだよ」

 

「なんと!?…成る程垣根殿はそのご友人を助けに行かれるのか」

 

パルツィバルはこれは自分達ローマ正教の仕事の筈と垣根が来たを訝しむ、だが垣根が友人が攫われたと言うとパルツィバルはその友人を助けに来たのかと納得する

 

「そう言う訳だ、止めたって俺らはこの三沢塾に侵入するぞ。例えお前らの仕事を横取りしたとしてもな」

 

「…やれやれ、相変わらず自分勝手な人だ…どうぞご勝手に、どうせ私では止められないからな」

 

垣根が笑ってローマ正教の仕事横取りしますと言うとパルツィバルは頭を抱える、だがパルツィバルはご勝手にと垣根達が三沢塾に侵入するのを黙認する

 

「さあ行くぞ、囚われのお姫様を救いに行くぞ」

 

垣根はそう言うと正面から三沢塾に入って行く、上条達も垣根の後を追って中に入って行く…そんな一同を見てパルツィバルが呟いた

 

「…これは夜に来る予定だった神の右席の出番は無くなってしまうかもしれんな」

 

 

ガラスの入り口を通り抜け侵入した垣根達、いきなり大人数で現れたと言うのに三沢塾の生徒達は誰も気にしない…まるで垣根達が見えていない様に

 

「…特に変わった様子はねえな」

 

「だがこの建物…魔力を隠す仕組みで出来てるね…まあ僕らから見れば魔力が見えなさ過ぎて逆に不自然なんだけどね」

 

「てか、こんな派手な連中がやって来たってのに誰も気にしなさ過ぎじゃね?」

 

削板は魔術師が潜んでいると言うのに全然変な気配はしないと呟く、逆にステイルは魔力が見えなさ過ぎて違和感しかないと呟く。麦野はこんな派手な連中が入って来たのに誰も気にしないのかと首を傾げる

 

「迂闊に生徒達に触れるなよ、この建物の内部には「生徒や建物に干渉できない」ていう魔術が働いてる…ざっくり言うと生徒や建物はコインの表で、侵入者である俺達はコインの裏て事だ」

 

「…成る程、建物の中を歩くだけで歩く際の床からの衝撃は倍化するから思う様に動けず疲労し、動くものにぶつかれば車に跳ねられた様な衝撃が襲ってくる…て事か」

 

「これでは思う様に進めませんね、エレベーター等に乗れば生徒達に生卵の様に押し潰され、更にこの建物はアウレオルスの魔力が充満している…ここで魔術を使えば位置を特定される…厄介ですね」

 

「……魔術用語で言われても俺らには分かンねェが…要するにぶつかったら死ぬてことだろ?」

 

この建物には生徒や建物に干渉できない魔術がかけられており、生徒にぶつかれば車にぶつかった様な衝撃が襲い、床を踏むだけでその衝撃が自分の足に跳ね返る…それを垣根から聞いたステイルと神裂が厄介な場所だと顔を顰める

 

「エレベーターは当然無理、だが階段を使うと衝撃が足に跳ね返って疲労する…じゃあどうすればいい?答えは簡単、浮かんで進めばいい」

 

垣根はエレベーターは使えず、床を歩けば衝撃が足に跳ね返る…ならばそれ以外の移動方法を使おうと笑うと10匹の念動能力(サイコキネシス)の能力を持つカブトムシを創造し、そのカブトムシ達の目を赤く光らせ上条達を宙に浮かす

 

「…成る程、宙に浮かべば楽に進めるね」

 

「俺の場合は幻想殺しに触れない様にしてるのか」

 

「これなら移動も楽チンだろ」

 

ステイルがこれならスムーズに進めると頷き上条も異能を消す右腕に触れない様にしているのかと驚く、垣根はカブトムシ達に動かす様に指示するとフワフワと生徒達や建物に当たらない様に垣根達が動き階段へと進んでいく…そして階段を5階程上がった所で念動能力を解除し全員を床に降ろす

 

「こっから先は徒歩で行くぞ」

 

「えぇ〜何でよぉ?浮いていった方が楽なのにぃ〜」

 

そう言って先に進む垣根に食蜂は文句を言いながらも上条達と共に食堂へと進む

 

「…私は科学宗教というのを初めて見ましたが別段変わった事はありませんね」

 

「そうだね、てっきり教祖様やらの顔写真が額縁に入れて飾ってあると思ったが…何処にでもありそうな塾だね」

 

「……そんな訳でもなさそうだけどね」

 

神裂とステイルが辺りを見回す、二人は普通な塾に見えると呟くが美琴はそれを否定する、この食堂にいる生徒達は騒がしいが楽しい会話などしていない…ここを勉強してない奴は人間のクズだの、周りの奴らを出し抜いて点数が上がっただの…そんな聞く人が聞けば不快に思う言葉を大声で、それも笑って喋っている

 

「ここにいる奴らはね、他人を見下したり、蹴落としたりして蔑むでしか笑えない人種なのよ…ここの奴らは自分達だけが特別頭がいい、そう本気で思ってる連中よ」

 

「…胸糞悪いわねぇ……ここにいる生徒達じゃなくてその考えが理解できた私自身が胸糞悪いわぁ」

 

美琴と食蜂が吐き捨てる様に呟く、別に生徒達が嫌いというではない。彼らも科学宗教に染め上げられた被害者だ、彼らはここを単なる予備校だと思い通っていただけ…そうは知っていても上条達の不快感は消えない

 

「カルトの毒気に当てられてる所悪いんだけど、僕達の目的はインデックスを助ける事だ…こんな所で道草を食っている暇はないよ」

 

「!そうだったな!早くインデックスを助けに行かねえと!」

 

ステイルがこんな場所にいないで早くインデックスを助けようと呟くと削板が大声で返事をする…瞬間、食堂に八十人近くいる生徒全員の視線が垣根達に集中する。

 

「チ、自動警報か…コインの表であるこいつらはコインの裏にいる俺達は見えない…だが、こう言う風にコインの裏の人間が近づくと作動するらしいな」

 

上条達は一瞬削板が叫んだからだと思ってしまうが垣根は自分達が近づいた所為でこうなったと理解する、生徒達は棒の様に立ち機械の様な無機質な瞳を垣根達に向ける。そして生徒達は口々に言葉を呟き始める

 

「熾天の翼は輝く光、輝く光は罪を暴く純白、純白は浄化「の証、証は行動の結」果、結「果は未来、未来」は「「時間、時間は一」律、一律は全「て、全てを創るのは過去、過去は原」因、原因は「一つ、」一つは「「罪、罪は人、人は」罰を恐れ、恐れ」るのは罪「悪、罪悪とは」己の中に、己「「「の中に忌み嫌うべきものがあ」るなら」ば、熾天の翼に」より「己の罪を暴」き内から弾け飛ぶべしーーーッ!」

 

八十の大合唱が響き、大きな言葉の渦が巻き起こる。そして生徒達の眉間からピンポン球程の大きさの青白い光が生まれる。たった一つなら恐れる程ではなかったかもしれない、だがその球体は次々と生徒達の眉間から生まれ垣根達の視界を覆い尽くす程の青白い球体が迫って来た

 

「……逃げるか」

 

「「「「「「「…こ、この数は流石に無理!」」」」」」」

 

「「…はあ!?に、逃げた!?」」

 

垣根は三対の翼を展開し翼を動かして後ろ向きに逃げる、上条達もこれだけの量は防ぎきれないと脱兎の如く出口へと逃げ出し残った二人もまさか垣根達が逃げるとは思っておらず慌てて追いかける

 

「おい!逃げるんじゃない!君達ならこの程度の攻撃は食い止められる筈だ!上条当麻は右手で竜王の殺息も止めたし、一方通行は反射という能力があるじゃないか!他も防御技を持っているだろう!」

 

「無理だ、無理です、無理なんですの三段活用!右手だけじゃ対処できるわけねえだろ!」

 

「俺の反射も魔術だとどうなるか分かンねェから逃げるしかねェだろ!」

 

「私の原子崩しの壁でもあの量の攻撃を防ぐのは無理に決まってんだろうが!」

 

「私の電磁バリアも麦野さんと同じで無理よ!」

 

「右に同じ!」

 

「…根性があってもあれだけの攻撃は耐えきれるか分からんからな」

 

「…わたくしは防御技なんて持ってませんし」

 

「俺の未元物質なら防げるが…逃げた方が得策だな」

 

ステイルが逃げるなよと叫ぶが上条達はそれは出来ない相談だと必死に走りながら叫ぶ。垣根は未元物質なら防ぎきれるが、それだと逃げきれなくなってしまうので逃げる方が得策だと判断していた

 

「しかしレプリカとはいえ『グレゴリオの聖歌隊』を作り出すとは…アウレオルス=イザードの武器はアルス=マグナだけではなかった様ですね」

 

「何ですかそのグレゴリオとは?!」

 

「ローマ正教の兵器の一つだよ、三三三三人の修道士を聖堂に集め、聖呪を集める大魔術。これはレプリカとはいえこの三沢塾には二千人も生徒がいるんだろう?本家の真・聖歌隊(グレゴリオ=クアイア)には届かないだろうが普通の魔術よりは遥かに高威力だろうね」

 

「まさに塵も積もれば山となるだな…て!そんなのどうやって対処するんだよ!」

 

「何簡単だ、その同調(シンクロ)のカギになってる核を破壊すればあの偽・聖歌隊(グレゴリオ=レプリカ)は機能を停止させる筈だ」

 

帆風がグレゴリオの聖歌隊とは何かと尋ねるとステイルがそれを説明する、上条がどうやって止めるんだと叫ぶと垣根が核さえ破壊すればいいだけだと言う、そして階段の近くまで垣根達は辿り着くが前方からも球体の洪水が迫って来ていた

 

「おい!挟み撃ちにされたぞ帝督!どうするんだ!?」

 

「…こうなったら秘策を使うしかねえか」

 

「おお!流石ていとくンだ!何かいいアイデアがあるンだな!」

 

「まあな…だがこれは当麻達の協力が不可欠だ…お前らの力を貸してくれ」

 

削板がどうすると垣根に聞くと垣根はいいアイデアがあると呟く、そして真剣な顔で上条達を見つめ上条達の力が必要だと言うと上条達は笑った

 

「当たり前だろ!俺達は友達だろ!」

 

「水臭ェぜていとくン!」

 

「何をやるつもりか分かんねえがやってやるよ!」

 

「私達は仲間なんだから力を貸すのは当然よ!」

 

「私達のチームワーク力を発揮する時みたいねぇ!」

 

「俺達の根性でこの状況を乗り切ってやろうぜ!」

 

「…そうか、なら…頼むわ」

 

上条達が当たり前だと息巻き垣根がそれを聞いて安堵の笑みを浮かべる。そして迫り来る球体の洪水を前に垣根は未元物質の翼を動かし…上条達六人を階段から下の階へと突き飛ばした

 

「「「「「「…え?」」」」」」

 

「じゃ、囮頑張ってくれよな」

 

何が起こったのか状況が理解できない上条達、暫くして背中に強い痛みが走るが動けなくなる程ではない…恐らく垣根が能力を使って痛みを軽減する様にしていたのだろう、垣根は笑って上条達に何をしたのか理解し切れていない帆風と「え?それは友達にやる仕打ち?」と引いている神裂達と共に上の階へと上がっていく、そして球体は下の階…上条達へと向かって来る

 

「やりやがったなあのクソメルヘン!」

 

「これが友達にする事かよォ!」

 

「後で絶対に殺す!100回殺す!」

 

「超電磁砲をお見ましてやるから覚悟してなさいよ!」

 

「ホモのオッさんを洗脳して垣根さんの貞操を奪ってやるわぁ!」

 

「根性入れ直してやるから覚えとけよ帝督ぅぅ!」

 

彼らは叫びながら球体の洪水から逃げる、彼らは心の中で思った。これから無事逃れたら絶対に垣根をブチ殺すと、彼等は垣根への呪詛を呟きながら必死に階段を駆け下りる。

 

「!当麻!誰かいるぞ!」

 

削板が階段の下に誰かいるか気づいた、それは黒いおさげに丸いメガネをかけた少女、彼女は行く手を遮る様に上条達の前に立ち塞がる

 

「罪を罰するは炎。炎を司るは煉獄。煉獄は罪人を焼く為に作られし、神が認める唯一の暴力…」

 

錆びた歯車に似た不快な声で彼女は呪文を呟く、呪文を呟く事に眉間にある球体が肥大化していく…だが威力が上がろうがこちらには幻想殺しがある、先程の球体の洪水なら手に負えないが一つなら対処可能、そう考え彼女を押し切って突破しようと考えた所でばじっ、と。少女の頬が吹き飛んだ

 

「「「「「「……は?」」」」」」

 

それを理解できない上条達、少女の指が、鼻が、体のあちこちが小さな破裂を起こす、彼女の服は血塗れ口からも血を垂らし、それでも彼女は呪文を止めない…ここで不意に思い出した、以前垣根はこう言っていた「超能力者が魔術を使えば血管が破裂する」と

 

「や、めろ…やめろ!自分の身体がどうなってるのか分からないのか!?」

 

「暴力は…死の肯定。肯、て…は、認識。に…ん、し…き、は…己の、中に。中、とは…世界。自己の内面と世界の外面、を、繋げ…」

 

上条は必死で呪文を止める様に叫ぶ、だが少女は止まらない…だがついに力尽きたのか眉間から血が吹き出た、そして彼女の身体はぐらりと階段の段差に倒れ込もうとした

 

「!…クソがァ!」

 

一方通行が一瞬で倒れた少女に近づき両手で彼女を支える、そしてすぐに能力で細胞分裂を促進させ更に血の操作も行う事で彼女の傷口を塞ぎ止血する。上条達も倒れた少女に近づく…だがそこで気づく、もうすぐそこに球体の洪水が迫って来ている、…このままでは少女ごと自分達はあの球体の洪水に溶け殺される、一か八か自分達の能力で球体の洪水を全て防いでみようと上条達が考えた時、球体の洪水は一瞬にして消えた

 

「……あ?」

 

上条達は目の前で起きた光景を理解出来なかった、何故球体の洪水が消えたのか…だが確信があった訳ではないが彼らは垣根が何かしたのではと考えた

 

 

「…これで偽・聖歌隊の動きは止まった筈だ」

 

垣根達は上条達より上の階の直線の長い廊下に立ち尽くしていた、この廊下に隠してあった核を未元物質で破壊した垣根は偽・聖歌隊の動きが止まった事を確かめた

 

「…女王達は無事でしょうか?」

 

「まあ、大丈夫だろ…そう簡単に死にやしねえよ」

 

「扱いが酷いな…友達は大事にしたほうがいいと思うよ?」

 

帆風は上条達の事を心配するが垣根は大丈夫、大丈夫と軽く返す、ステイルはもっと友達を大切にしろと溜息を吐いた

 

「いいんだよ、それに当麻がいると幻想殺しが建物の中のアウレオルスの魔力を消し続けてるせいで居場所がバレちまうからな、なら囮に使ってあの球体を引き寄せてその隙に俺らが核を破壊した方が効率がいいだろ」

 

「確かにそうかもしれませんが…」

 

「それに本当は当麻一人を囮にすればいいところを俺は心配してアー君達五人も一緒に囮にしたんだ…優しいだろ」

 

垣根が彼らを囮にして、その隙に核を破壊する…それが自分が考えたアイデアだと呟き上条一人を囮にするのは危険なので他の皆も囮に使ったと垣根は笑う、全然優しくないと神裂達は心の中で呟く

 

「…それににても錬金術師も歪んだものだね、超能力者に魔術を使わせるなんて」

 

「…彼らはもう助からないのでしょうね」

 

ステイルと神裂は倒れた生徒達を一瞥する、まだ動いている者もいれば、動かなくなった者もいる…この廊下に濃密な鉄の匂いが漂い、他にも何人の生徒が倒れている事は予想できた…その時帆風の耳が誰かの足音を捉えた

 

「!誰か来ます!」

 

帆風が叫ぶと通路の向こうから足音が響く、現れたのは緑の髪に白いスーツを着た錬金術師 アウレオルス=イザード

 

「まんまと現れたな侵入者共よ」

 

(…!この人が錬金術師 アウレオルス!)

 

「…お前に用はないんだがな(・・・・・・・・・・・)、本番前のウォーミングアップでもしとくか」

 

「厳然、私を侮った事を後悔させてくれる」

 

帆風がこいつがアウレオルスかといつでも戦えるようにし、ステイルと神裂も武器を構える。だが垣根は面倒臭そうな表情をしアウレオルスを侮った様な発言をする。それを聞いた神裂は黄金錬成がアウレオルスにあると言うのに何故?と疑問に思う

 

「…慨然、私を侮るな」

 

アウレオルスはそう呟くと右袖から鎖のついた、ナイフ大の黄金の鏃を取り出す。そしてそれを垣根達目掛けて振るう、垣根達はそれを後ろへと退がる事で回避、鏃が床に傷をつける…その瞬間床が純金へと変換される

 

「「「!?」」」

 

「…チ、床を純金にして下の階へ落とす気か」

 

帆風達がその光景に目を見開いて驚愕する、アウレオルスは鏃で更に床を傷つけ帆風達が立つ床まで純金に変換させていく…しかもこの純金は固体ではなく粘体だ、しかも溶岩の様に高熱であり身体に触れれば肉を溶かすだろう…垣根は自分達を下の階へと落とし純金で自分達を埋めて焼き殺す気だと理解し翼を広げ帆風を両手で抱かえる

 

「え!?か、垣根さん!?」

 

「下へ行くぞ!当麻達と合流する!」

 

「了解です!」

 

「く…!僕達にはアルス=マグナを使うまでもないと言うことか!」

 

垣根は帆風を抱いたまま穴の空いた床から下の階へと飛び降りる、粘体の純金に触れない様に飛行しその後を神裂達が追う、それを見たアウレオルスは獰猛に笑い垣根達の後を追う

 

 

上条達は階段を降りきった先の通路に少女を床に下ろす、その時遠くから何かが落ちる音と何かが焼ける音が聞こえ階段の上を見上げる

 

「!何かしらぁさっきの音は…」

 

上条達が何事かと上を見上げていると大きな音を立てて天井が破壊される、その崩れ落ちてくる天井から垣根達が現れ上条達の前に降り立った

 

「な!?垣根!?」

 

「よお、無事だったみたいだな」

 

「ええ、なんとかね…て!アンタが危ない目に遭わせたんじゃない!」

 

垣根が無事で良かったと呟くが、危ない目に遭わせたのは垣根なので美琴はイラっときて前髪から青白い火花を飛び散らす…だが突如弾丸の如く飛んできた黄金の泥を垣根は翼を盾にして防ぐ、上条達がそれを見て驚いていると上からアウレオルスが飛び降りて垣根達の前に現れる

 

「憮然、逃げてばかりいてはつまらんぞ」

 

アウレオルスが黄金の鏃を振り回しながら笑みを浮かべる、アウレオルスは鏃を垣根に向けて射出する、垣根は未元物質の翼を展開しその内の一枚で鏃の攻撃を防ぐ…だが翼は純金へと変換して弾け飛びそれを垣根は別の翼で防ぐ

 

「どうだ、我が瞬間錬金(リメン=マグナ)は?防御は無効、逃避も不可能…ここで全員死ぬがいい」

 

アウレオルスは笑みを浮かべる、更に彼は鏃を高速で放つ、秒間10発にも及ぶ黄金の光条(レーザー)が垣根達を襲う、垣根は高速で六枚の翼を振るい、瞬間錬金の鎖の部分に翼を当てて攻撃を弾く、だが撃ち漏らした鏃が食蜂に向かっていく

 

「ッ!避けろ!」

 

垣根が食蜂に避けろと叫ぶがもう遅い、鏃が食蜂の脳を穿ち彼女を黄金に変換する、上条と美琴も食蜂へ手を伸ばすがもう間に合わない、食蜂が自分は死ぬのかと目を瞑って現実から逃れようとしたその時、トン、と誰かに押され食蜂は横に倒れる

 

「…え」

 

食蜂を押したのは先程止血した少女だった、いつの間にか目を覚ました彼女は食蜂を両手で押したのだ…食蜂を庇う為に、少女の脇腹に鏃が刺さる、だが少女は笑う、その笑みは自分の為ではなく垣根達を安心させる為…そして彼女は食蜂にこう言った

 

私を助けてくれてありがとう

 

それを伝えた名も知れぬ少女は純金へと変換された。上条達はそれをただ呆然と見つめていた

 

「…ふん、下らぬ、他人を助けて死ぬなど…」

 

アウレオルスは自分が殺した少女の事を何とも思わず鏃を巻き戻し、未だ呆然と床に倒れている食蜂へと射出する…だがその鏃が食蜂に届く事はなかった…瞬間錬金の鎖の部分を帆風の左手に掴まれたからだ

 

「…愕然、な…」

 

アウレオルスはその出来事に何か言おうとするがその前に帆風に思い切り鎖を引っ張られアウレオルスの体が前方へ傾く、そして帆風が全力でアウレオルスに走り寄る。そして帆風の右手の拳が錬金術師の顔面にめり込んだ

 

「がはっ!?」

 

吹き飛ばされ壁に激突するアウレオルス、彼は自分を殴った帆風を見る、彼女は…いや彼女だけではない全員がアウレオルスに怒りの目を向けていた

 

「…貴方は…あの少女を、人の命をなんだと思っているんですか…!」

 

「憮然、私を糾弾する気か小娘!たかが道具が一つ壊れただけだ!」

 

「…そうですか、なら話はもう終わりです!」

 

帆風は拳を握り締める、怒りに燃える帆風は自身の能力「天衣装着(ランペイジドレス)」を発動しアウレオルスに向けて駆け出す

 

「必然、貴様も純金に変えてやる!」

 

アウレオルスは鏃を先程の様に高速で放つ、帆風を純金に変える為に瞬間錬金の鏃が帆風を襲う、だが帆風の強化された動体視力の前では秒間10発という驚異のスピードを持つ攻撃も容易く目で追える。帆風はそれを難なく躱し続ける、ならばと右袖から更に三つ鏃を取り出し帆風に射出する

 

「…この程度でわたくしを倒せると…本気で思っているのですか?」

 

「愕然、何!?」

 

合計四つ、秒間40発という触れれば一撃死の攻撃を前に帆風は超スピードでその攻撃を避け、壁や天井を駆け抜ける。その超スピードにアウレオルスはついていけない、いくら瞬間錬金の攻撃の速度は速くとも術者が敵の速度についていけないのならば当てようがなかった

 

「唖然!?馬鹿な…!この様な小娘に私の瞬間錬金が破られる筈が…」

 

アウレオルスは信じられぬとばかりに目を見開く、その時アウレオルスが放った瞬間錬金の鎖を帆風が右手で掴む。そして腕を鎖ごと振り上げると鎖と繋がっているアウレオルスも宙へと持ち上げられる、その光景に何か叫ぼうとするアウレオルスを帆風は壁へと投げつけた

 

「がぁ!?」

 

壁に激突し壁に亀裂を入れ床に倒れるアウレオルス、帆風は掴んでいた鎖を両手で引き千切り床から立ち上がろうとしているアウレオルスに一瞬で近づいた

 

「ひっ、待…」

 

アウレオルスは怯えた様な表情で帆風に何か叫ぼうとする…だが帆風は止まる事はなくアウレオルスの顔面を拳で殴りつけアウレオルスは吹き飛ばす、鼻が曲がり歯が折れ瀕死になるアウレオルス、だが彼は這ってでもこの場から逃げようと芋虫の様に動く、だがステイルがアウレオルスに近づき足で彼の背中を踏みつける

 

「ぐぁ…!」

 

「答えろ!インデックスは何処にいる!?」

 

痛みに悶えるアウレオルスにステイルはインデックスが何処にいるか聴き出す為に更に背中を強く踏みつける、だがアウレオルスから帰って来たのは意外な返答だった

 

「い、インデックス?誰だそれは?」

 

「……何を言っている、三年前のお前のパートナーだったインデックスだ!忘れたとは言わせない!それにお前は黄金錬成で彼女を攫った!しらばっくれるな!」

 

「悄然、し、知らない!私は何も知らない!私の目的は吸血殺しを研究する!その為にここを乗っ取った!本当だ!信じてくれ!」

 

「…どう言う事だァ?こいつがあのガキを攫ったンじゃねェのかよ」

 

アウレオルスはインデックスとは誰だと呟く、その問いにステイル達は固まった…じゃあ誰がインデックスを攫ったのかと考える

 

「いやインデックスを攫ったのはアウレオルスで間違いない、だがこいつじゃない…それだけだ」

 

「…それはどう言う意味だ?」

 

「…こいつは基礎物質にケルト十字を用いたテレズマの塊…つまり本物のアウレオルスが作った魔術人形だよ…こいつは自分の事を本物のアウレオルス=イザードだと思い込んでる哀れな人形て訳だ」

 

垣根はこいつはアウレオルスはなく、錬金の真似事(アウレオルス=ダミー)だと。その答えに全員が目を見開いた…要するにこの男はアウレオルスのコピー…クローンの様なものだと…だがそれをアウレオルス=ダミーは否定する

 

「違う!私は本物だ!私はアウレオルス=イザードだ!偽物な筈がない!」

 

「…じゃあお前の目的はなんだ」

 

「当然!人が人のカタチを維持したまま、どこまで高みに昇れるかを探る!それが私の研究目ひょ「ならなんで吸血鬼なんて人外に触れようとする?」…な」

 

「お前はそれは理解出来ない、だからお前は偽物なんだよ。吸血殺しを手中に収めそれを使って何を行うのか…それがわからない時点でお前は偽物決定だ」

 

「う、嘘だ…わ、私は……本物…が…が、が…が、ぁあああああああああああああ!!」

 

自分は本物だと言い切る…いな自分に言い聞かせる偽物(ダミー)、だが垣根がアウレオルスの本当の目的を知らない時点で偽物確定だと告げると偽物は等々理性を崩壊させ獣の如き咆哮をあげる。その哀れな人形を見て上条達が何か言おうとしたその時

 

「煩いぞ、黙れ(・・)

 

唐突に声は聞こえた、空気が凍てついた…そう帆風は感じ取った…その人物が黙れと言っただけで咆哮をあげていた偽物が黙る…帆風はその声が聞こえた場所を振り向く…そこには偽物と同じ姿をした男…正真正銘本物のアウレオルス=イザードが30メートル以上先の通路の先に立っていた

 

「寛然、仔細ない、すぐそちらへ向かおう(・・・・・・・・・・)

 

その一言だけでアウレオルスは垣根達の目の前に現れた、そう一瞬にして三十メートルの距離を詰めて

 

(て、空間移動?違う!これはそんなのじゃ…!)

 

「あ、が…ぃ…ぁ」

 

帆風は空間移動の類かと思うがすぐに否定する、あれはその程度のものではない…そう本能で理解する…そしてアウレオルスの足を偽物が掴んだ、偽物が何をしたかったのか分からない、助けを乞うていたのか本物を殺して自分が本物になろうと考えたのか…だがアウレオルスは不快そうな顔になり口を開く

 

「お前の役目は終えた、爆ぜろ(・・・)

 

アウレオルスがそう言うと偽物の体が風船の様に膨らみ血を、臓器を、肉片を周囲に撒き散らしながら破裂した、ベチャと垣根達の体や衣服に偽物の血や肉片が付着する…思わず吐きそうになる光景を前に魔術師達と垣根以外は口を抑える…だがアウレオルスは一切気に留めない

 

「…偽物とは言え自分を殺して何も思わねえのか?」

 

「自然、あの肉人形は侵入者を排除する為の道具、何の感慨もない」

 

「…自分からのこのことやって来て随分余裕そうだね」

 

垣根の問いにアウレオルスは冷たい声で返す、そんな慢心しきっているアウレオルスにステイルは手から炎剣を作り出す。いつでもアウレオルスを殺せる様に…上条達もいつでもアウレオルスを攻撃出来る様に構える。それを見たアウレオルスは懐から髪の毛の様に細い鍼を取り出し首元に刺す

 

動くな(・・・)

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

彼が一言発しただけで全員の動きが止まる、まるで自分達の意識以外の時が止まったかの様に身体が全く動かない、そんな異常事態にどう対処していいのか分からず全員が戸惑う

 

(…ここまでは予想通り…か)

 

垣根はこれを読んでいたのか然程驚かず冷静にアウレオルスを見ていた…まるで何か策があるかの様に…

 

(くそ、どうにかしてあいつを倒さねえと!だがどうすれば…)

 

上条達は何とかこの金縛りの様な現象から抜け出してアウレオルスを倒そうともがく…だがアウレオルスはその企みを嘲笑うかの様にもう一度鍼を首筋に突き刺し、そして小さく笑ってこう言った

 

ここで起きた事は全て忘れろ(・・・・・・・・・・・・・)

 

その言葉を聞いた瞬間垣根達の意識が薄れていく…そして完全に彼等は意識を手放した

 

 

 

 

 




アウレオルスさん(本物)が最後ら辺にしか出てきていないだと…まあ仕方ないですよね…アウレオルスさんはボスなんだから…それに下手に戦闘したらていとくん達負けちゃうし…

縦ロールちゃん初白星おめでとう、ダミーとはいえ魔術師に勝てたよ。本当はダミーも強いと思いますが…少し弱く&かませ&ヘタ練ぽくなっちゃてすみません

次回はアウレオルスさんの本領発揮、姫神さんがヒロインやったりピーチ姫状態のインちゃんや皆さん大好き(?)神の右席のあの人も登場、次回もお楽しみに


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神の右席 夏のパン祭り

前半は姫神さんのヒロイン力発揮、中盤はまさかのあのキャラが活躍する展開、後半はアウレオルスさんの主人公力発揮…これが今回のお話です。実はこの小説書いたのはアウレオルスさんを救いたい、そう考えて書き始めたんですよ、だから描写に力を入れて頑張りました

それとこの作品だけのオリジナル設定とか、原作キャラの魔術を強化してみました、不快になる方もいるかもしれませんがそれでも構わないのなら嬉しいです…え?サブタイで誰が出てくるか分かる?そんな馬鹿な…言っておきますがサブタイはギャグぽいですが中身はシリアスです


「下が騒がしい。ファーストフード店にいた君の友達達が助けに来たみたい」

 

三沢塾の北棟の最上階にある校長室、そこはかつて科学宗教の教祖が居座った部屋…その部屋に二人の少女がいた、一人は吸血殺し 姫神秋沙、そして縄で縛られたインデックス

 

「…ていとく達は私を絶対助けてくれるよ」

 

「…それは無理。アウレオルスは強い。黄金錬成が使える彼には勝てない」

 

「でもていとく達なら…!」

 

インデックスは垣根達が自分を助けると言い切るが姫神は表情一つ変えない、それ程アウレオルスを信頼しているのだろう。インデックスはそれでも助けに来ると信じていた、だがスッとアウレオルスが校長室に現れる

 

「お帰り。どうだった?」

 

「嫣然、記憶を消して帰らせた」

 

「!?そ、そんな…ていとく達が…負けた?!」

 

アウレオルスが垣根達の記憶を消してここから帰らせたと言う、それを聞いてインデックスが驚愕する

 

「…姫神、夜に吸血鬼を呼ぶ…準備をしておけ」

 

「……分かった」

 

「敢然…私は少し休む…夜になる頃にはまたここに来る。それまで彼女の世話を頼む」

 

アウレオルスは夜に吸血鬼を呼び出すまでインデックスの世話を頼むと伝える、姫神はそれを頬を緩めて頷く。アウレオルスは現れた時と同じスッと消える

 

「…ねえ、君達の目的はなんなの?」

 

「…突然だね」

 

「…私は君達が悪人には見えないんだよ…ならこんな事をしてるのにも理由がある筈…だから教えて、貴方達の目的は何?」

 

インデックスがアウレオルスがいなくなったのを確認すると姫神に目的はなんだと尋ねる。姫神は少し眉をひそめる、インデックスは二人が悪人には見えないと言うと

 

「…私ね。魔法使いになりたいんだ…救われない人も救って。見捨てられた人を守って。死んでしまった人も生き返らせる様な魔法使いになりたいの」

 

「…魔術は君が思ってる程そんなに万能じゃないよ」

 

「…うん。知ってる。でも彼と出会った時ね。私は夢が叶うかもしれないと思ったんだ。夢にまで見た魔法使いが私の目の前にいて…私も魔法使いになれるて思った」

 

「…なんで魔術師…魔法使いになりたいの?」

 

姫神はまるで子供が考えた絵本の魔法使いになりたいと呟く、そんなものにはなれないと自分でも思っていた…でも錬金術師(アウレオルス)と出会ってその夢が現実になるかもしれないと彼女は朗らかに笑う。インデックスは何故そこまでして魔法使いになりたいのかと聞くと彼女は俯いて呟いた

 

「ねえ、君は吸血鬼てどんな生き物か知ってる?」

 

「…知らない」

 

「…変わらない(・・・・・)。私達と。何も変わらない。泣いて。笑って。怒って。喜んで。誰かの為に笑い。誰かの為に行動できる。そんな人達を私は殺してしまう…殺し尽くしてしまう。それが私の能力」

 

「……貴方は自分が嫌いなんだね。罪のない吸血鬼達を殺して…そんな自分が許せないんだね」

 

吸血鬼は化け物なんかじゃない、人間と一緒で感情がある者達だ…そんな吸血鬼達を彼女の能力は殺してしまう、インデックスは姫神はそんな吸血鬼を殺してしまう彼女自身が嫌いなのだと看破する

 

「…そう。だから私はもう殺したくない、誰かを殺すくらいなら自分を殺してみせる。そう決めた…」

 

姫神はそう言って昔の事を思い出す

 

 

京都の山村に彼女は住んでいた。その村に自分の原石の匂いに誘われた吸血鬼達は自分以外の人間…家族や友達、村人達が吸血鬼に噛まれ吸血鬼へと変貌し自分に襲いかかって来る、そして自分の首筋に噛み付いてきた吸血鬼は灰になった、最初から吸血鬼だった者も吸血鬼になった村人も平等に灰になった。そしてその村から姫神以外の生き物はいなくなった

 

吸血鬼達もこんな事がしたくてしたのではない、彼らは姫神の原石の匂いに誘われて小さな島国までやってきた…彼らは怖かったのだ、自分達を殺すその少女の力が…自分達では少女を殺したくても殺せない…苦肉の策で村人を吸血鬼にして戦力を増やして彼女を殺そうとした…それでも少女に全員殺されてしまった

 

少女は嘆いた、どうして自分は生きているのだろうと、自分がいなければ吸血鬼も村人も誰も死ななかった。自分なんか生まれて来なければよかった、彼女はそう思った…長い年月が経ち彼女は自分の能力を取り除けないかと学園都市に来た、そこで自分の能力に目をつけた三沢塾の講師達に誘拐され隠し部屋に監禁されてしまった

 

一年くらいだらうか、隠し部屋に飛び込められ食べたいものも食べられず陽の光も見る事の出来ない光景に慣れてきた頃…彼が現れたのだ。まるで物語のヒーローの様に

 

「…貴様が吸血殺しか」

 

「…貴方は誰?」

 

「……私はアウレオルス=イザード、単なる魔術師…いや錬金術師だ」

 

魔術師。その単語を聞いた瞬間諦めかけていた夢が叶う様な気がした。彼はある人物を救う為に吸血鬼を求めている、その為に姫神の吸血殺しの力を借りたいと彼は言った。姫神は三つの条件を飲むなら協力すると言った、一つ目は呼び出した吸血鬼を殺さない事、二つ目は終わったら自分の能力を消してくれる事、三つ目は自分を魔法使いにしてくれる事。姫神がそう言うとアウレオルスはその無表情な顔を少し緩ませていた

 

 

「…彼は自分の教え子を辛い運命から救う為にこんな殺す為しか使えない能力を。救いの為に使ってくれるて言ってくれた。アウレオルスは私の魔法使い(ヒーロー)。こんな私に希望をくれた恩人」

 

「……そのアウレオルスがその救いたい人て誰なの?」

 

姫神が少し照れ臭く呟く、アウレオルスがいないからインデックスに話せたという風に…インデックスはやはりこの二人は悪人ではないと確信する、そしてアウレオルスが助けたい人とは誰かと言うと姫神はこう呟いた

 

「君。君がアウレオルスが救いたい人」

 

「…え?」

 

インデックスはその言葉を聞いて驚きのあまり呆然とする、そんな彼女を無視して姫神は言葉を続ける

 

「アウレオルスはね。君を助ける為に黄金錬成を完成させたの。例え世界を敵に回しても。全ては君を助けてあげる為に」

 

「…!まさか…!」

 

姫神がアウレオルスはインデックスを助ける為に黄金錬成を完成させた、そう言った。インデックスは思い出す、垣根がアウレオルスは三年前の自分のパートナーだった言っていた事を…

 

「…彼は凄い人。君を救う為だけに必死に努力してきた。それだけアウレオルスにとって君は大事な人だったんだね」

 

「………」

 

「?どうしたの。具合でも悪い?」

 

「い、いやなんでもないんだよ」

 

姫神はここにいない錬金術師の事を自慢げに語る、自分に希望を見出してくれた彼に特別視されるインデックスを少し羨ましく思う。だがインデックスはそれを聞いて青ざめていた

 

(言えない…言える筈がないんだよ…私はもう救われてるて…その錬金術師が知っちゃたら…その人は壊れちゃうんだよ)

 

アウレオルス=イザードはインデックスを救う為に全てを捨てたのだろう、辛かっただろう、心が折れかけただろう、絶望しただろう、だがそれでも諦めず彼は黄金錬成を完成させた…なのに彼がインデックスを救う事は出来ない…既に救われているからだ。それをアウレオルスに知られる訳にはいかない、それを知ったらアウレオルスは壊れてしまう

 

(…酷いよ神様、こんなに頑張ってる人がいるのに…どうして助けてあげないの?神様はアウレオルスて人が嫌いなの?)

 

インデックスは祈った、それは彼女が信じる神ではなく自分を助けてくれた超能力者達に…どうかアウレオルス=イザードを自分を救ってくれた時の様に助けてあげてと

 

 

「?」

 

気づけば夜になっていた、帆風達は気づけば学バスに乗っていた。帆風は座席から周囲を見渡す、自分の隣には垣根が、前の席には上条と美琴、食蜂が自分と同じく周囲を見渡しており、後ろの席には一方通行と麦野、削板がやはり同じく周囲を見渡している

 

「…ここは何処だ?なんで僕達はバスの中にいるんだ?」

 

「分かりません、気づいたらこのバスの中に…」

 

隣の座席に座っていたステイルと神裂も何故自分達がこのバスに乗っているのか分かっていない様だった。帆風は路線図を見るが一つ前の停留所の名前を見ると『第十七学区・三沢塾前』と書かれていた

 

「…三沢塾?何故わたくし達はこんな所に?」

 

「お?漸く目が覚めたか」

 

「垣根さん?なんでわたくし達はこのバスに乗っているのですか?」

 

「ま、話はこのバスに降りてからだ…すみません!運ちゃんバス停めて〜!俺達間違えて乗っちゃったみたい!」

 

帆風が何故自分達はこんな所にいる?と首を捻る、すると垣根が漸くかと呟き帆風は何か知っているのかと垣根に尋ねる。垣根は降りてから話すと言うと運転手にバスを止める様に叫ぶ

 

「なあ、垣根…俺達なんか記憶が曖昧なんだが…なんかあったのか?」

 

「まあな…それより当麻頭になんかついてるぞ」

 

「え?マジで?」

 

バスから降りた後全員が何故自分達はバスに乗っていたのか、いつの間に第十七学区まで来ていたのかと不審がり上条が垣根に知っているかと尋ねる。垣根はそれより頭に何か付いていると上条に教え、上条が異能を打ち消す右手(・・・・・・・・・)で頭に触れる。バギン、と何か割れる音と共に上条の頭の中に彼の記憶が蘇る

 

「…ッ!」

 

「思い出したか?ならさっさと全員の頭に触れて思い出させろ」

 

「!分かった!」

 

上条がハッとした顔になる、垣根が次は全員の頭に触れて記憶を思い出させろと告げる。上条は頷いて帆風達の頭部を右手で触れる、全員が記憶を取り戻し慌てて三沢塾の方を振り返る

 

「…!夜になっているだと!?」

 

ステイルがアウレオルスと会った時から数時間は経過していると気づく、全員アウレオルスの「全て忘れろ」の一言で本当に全て忘れていた

 

「まさか精神系能力者のトップである私が精神攻撃にかかるなんて…油断力が過ぎたのかしらぁ」

 

「仕方ないわよ操祈、相手は学園都市の精神系能力者とは違うんだから」

 

「でもなンでていとくンはあの野郎の言葉を聞いても記憶を失ってなかったンだ?」

 

精神系能力者の頂点である自分が精神攻撃に負けるなんてと落ち込む食蜂を慰める美琴、一方通行は何故垣根は記憶を失っていなかったのかと問いかける

 

「いや俺も記憶を失ってたさ、だがアウレオルスの黄金錬成は"頭の中で思った通りに世界を操る"能力だ…だが逆に言えば頭の中で思わなければ操れない…そこでアウレオルスに見えない様にポケットの中にいた05の出番て訳だ」

 

『はい、私はずっとマスターのポケットの中で会話の内容を全て記憶していました。マスターが記憶を失い皆様と一緒に三沢塾から出た後に心理掌握の能力を持つカブトムシを呼び、私の記憶をマスターの脳に書き加えたと言う事です』

 

垣根は自分も記憶を失っていたが、予め05に垣根達の会話を記憶させており、05が心理掌握の能力を実装しているカブトムシを呼んで垣根に05の記憶を入力(インプット)させたのだと教える、05も垣根の服のポケットから顔を出して説明する

 

「…だから帝督は記憶を失っても平気だったんだな…なら俺達にも同じ事をしたり当麻の右手で術を解除させれば良かったんじゃないか?」

 

「確かに考えたさ、でもアウレオルスの術で意識もなかったお前らにしても効果がないかな〜と思ってやらなかっただけだ、お前らは見てないからそう言えるんだろうがな…さっきまでのお前らの目…怖いてレベルじゃねえぞ、妹達もビックリなレイプ目だったんだからな…思い出しただけでも鳥肌が立ってきた」

 

「…逆に見て見たくなるにゃーん」

 

削板が自分達にも同じ事をやれば良かったのにと呟くが垣根は出来なかったと返す。そしてアウレオルスの術がかかっていた時の上条達の目を思い出して垣根は身震いする…それが余程気味が悪かったのか…麦野は逆にどんな目をしていたのか見て見たくなった

 

「あ、そうだった。垣根に言っておきたい事があるんだった」

 

「?俺にか?」

 

ふと上条が垣根に言う事があったと呟くと全員がそうだった頷く、上条達は笑いながら垣根にゆっくりと近づき、それを不審がる垣根に彼らは言った

 

「「「「「「祝☆よくも友達を囮にして逃げ延びやがったな記念ッ!」」」」」」

 

「…はい?」

 

直後、上条達の飛び蹴りが垣根の腹部に直撃。垣根はゲフゥと叫びながら吹き飛ばされ地面を転がる。六人分の蹴りを喰らいピクピクと体を動かす垣根、そんな垣根を更に足で蹴りつける上条達

 

「さっきはよくも囮にしてくれたな!」

 

「粛清☆タイムだぜェ!ていとくンよォ!」

 

「オ・シ・オ・キ・か・く・て・い・ね」

 

「これが私の…キック(全力)だぁー!」

 

「地に伏せて許しを請うんだゾ☆」

 

「その腐った根性を叩き直してやる!」

 

「痛い痛い痛い!痛いって!やめてください!あの時は少し調子に乗ってました!カッコつけてました!許してくださいごめんなさい!」

 

「み、皆さん!今はそれどころじゃ…」

 

「「……はぁ」」

 

罵言を飛ばす上条達に彼らの蹴りを喰らって涙目な垣根、それを見てはわわと慌てている帆風に呆れる魔術師達…こんな時でも彼らは平常運転だった

 

 

垣根達は全力で走って急いで三沢塾まで戻ってきた、途中で繁華街に誰もいない事に気づいたが逆に進みやすいと誰も気にしなかった

 

「…人払い(Opila)か」

 

ステイルがそうボソッと呟く。恐らく誰かが第十七学区全体を人払いの範囲にし誰も近づかないようにしているのだろう、しかし誰がとステイルが訝しむが三沢塾の周りにいる人影を見て誰が人払いをしたのか理解する。その人影達は銀の鎧に身を包んだ騎士達だった

 

「貴方方はローマ正教の方ですね」

 

「その通り、私はローマ正教十三騎士団の一人、『ランスロット』 ビットリオ=カゼラである」

 

神裂が騎士に話しかけると騎士の一人 ビットリオが頷く。そしてビットリオは兜を被っているので分からないが垣根に笑いかける

 

「久しいな垣根帝督、パルツィバルの報告で砦からそこの仲間と共に出ていったとは聞いている…その様子だと黄金錬成は完成しているようだな」

 

「まあな、で、オッさん達は何してんだ?」

 

「我々は今この砦の中にいる民間人を救出する策を練っている、無駄な血を流さずアウレオルスも生きて捕縛する。それがローマ教皇の御命令だ」

 

「…マタイさんか、あの人らしい」

 

ビットリオは三沢塾の中にいる生徒達を救出し、アウレオルスも生きて捕まえると宣言する、それがローマ教皇の命令と言うと垣根はその教皇の事を思い出し笑う

 

「…意外だね、ローマ正教の事だから三沢塾をグレゴリオの聖歌隊で破壊するかと考えていたよ」

 

ステイルがそうボソッと呟く、ローマ正教は過激な思想の集団と聞いていた為こんな答えが出るとは思ってもいなかったのだろう

 

「確かにそうかもしれませんねー、垣根帝督と出会う前の我々ローマ正教は貴方が思っていた通りの集団ですから」

 

「!…誰だオマエ」

 

垣根達の背後から声が聞こえ全員が振り返る、そこに立っていたのは全身緑色の修道服を着た白人にしては背が低く痩せこけた男。一方通行がお前は誰だと呟くと彼は笑って答えた

 

「初めまして、私はテッラ。ローマ正教の神の右席が一人 左方のテッラ。以後お見知り置きを」

 

「神の…右席?聞いた事ないね」

 

「それはその筈ですねー、我々の存在を知るのはビットリオ達の様なローマ正教の闇の部分に関わる教徒達だけですからねー」

 

テッラと名乗った男は垣根達に頭を下げる、ステイルは神の右席と言う単語に聞き覚えがないのか目を細めるが知らなくて当たり前とテッラは笑った

 

「まさかの左方がお出ましか…それだけアウレオルスを危険視してるて事か」

 

「それもありますが…私が来たのは彼を説得する為ですねー」

 

「説得?」

 

垣根はテッラが来るとは思っていなかったと笑う、テッラは自分はアウレオルスを説得しに来たのだと呟いて帆風が首を傾げる

 

「ええ、元々彼はローマ正教の隠秘記録官(カンセラリウス)でした。彼は人民を魔女から守る為に魔道書を書いていたのです。しかもその書いた魔道書をローマ正教以外…イギリス清教にロシア成教やその他異教徒達にも渡して助けようとしたのです」

 

「ですが彼の上司はそんな事は認めず我々ローマ正教にしか使わせない様にしたのです、 上司は異教徒を助けても自分の得にならないと見たのでしょうねー、全く嘆かわしい…そんな者の浅い考えで彼の様な立派な教徒の夢を潰されるなど…ですから私は彼にもう一度ローマ正教に戻ってくる様説得しに来たのです。貴方の力で人々を一緒に救おうと、貴方の力を借りたいと言う為に」

 

テッラはアウレオルスについて語る、人々を助けようとする彼の才を潰した上司に憤り、そんな彼を助けれなかった自分に憤っている様に

 

「…話が長くなってしまいましたねー、まあこんな事を思う様になったのも貴方のお陰ですよ垣根帝督。貴方と出会わなかったら私はその上司より酷い畜生以下の存在のままでしたからねー」

 

「…まあ、確かに昔のあんたは異教徒は人間以下て目で見てたもんな」

 

「はは、昔の事は忘れましたねー。そうだ貴方達お腹空いてませんか?私の畑で作った葡萄と小麦で出来たレーズンパンがあるんですが良かったらどうぞ」

 

「お、丁度小腹が減ってたんだ」

 

話が長くなってしまってすまないと謝罪するテッラに変わったなと呟く垣根、テッラは軽く笑い返すと懐を弄り袋を取り出す、そこに入っていたレーズンパンを垣根達に手渡す

 

「…!美味しいわねこれ」

 

「…確かに美味ェなこれ」

 

「学園都市のパン屋でも味わえない美味しさねぇ」

 

「喜んでもらえて嬉しいですねー、御一緒にグレープジュースは如何ですか」

 

テッラのレーズンパンは美味しかった、テッラは何処から取り出したのか自家製のグレープジュースが入った瓶を取り出しワイングラスにそれを注ぎ垣根達に配る

 

「始まったな、テッラ殿恒例の左方のパン祭りが」

 

「テッラ殿は神の右席随一の料理人(ただし小麦粉料理限定)。あの人のパン欲しさに改宗する者達が絶えないというもはや改宗させる呪いがかかってるんじゃね?と言われるパンとジュース」

 

「バチカンでパン屋のテッラを開き、シスター アニェーゼ達を従業員として雇いバチカンの市民に大人気、更にパンの値段は日本円で80円と安い。しかもミサの日は全品半額と言う夢の様な店…私も毎日そこでパンを買っている」

 

騎士達がボソボソとそう呟く、ビットリオは物欲しそうな目でパンを指を咥えて眺めていた…その時三沢塾の壁が音を立てて破壊され壁の破片が垣根達に降り注ぐ

 

「…優先する。人体を上位に、破片を下位に」

 

咄嗟の事に避ける事のできない騎士達と上条達、だがテッラが何か呟くと破片が上条達の身体に当たってもまるでスーパーボールの様にポヨンと破片が跳ねるだけで痛くなかった

 

「…今のはオッさんの魔術か?」

 

「ええ、今のが事象の「優先順位」を変更する魔術 光の処刑なのですよー、しかし不味い事になりましたねー」

 

削板が今のはオッさんの仕業かと聞くとテッラは頷く、そして破壊された壁の部分を凝視する…そしてそこから黒い何かが溢れ出て来た

 

「…嘘だろ」

 

ステイルがあり得ないと言葉をこぼす、壁から現れ地上へと降りて来たのは…体表が全てザラザラした黒い布で覆われ、凹凸によって眼や鼻や口を表現し肌と装束に厳密な区別は無く一体化している。目の部分は赤く発光し耳は尖っており、口からは牙が生え、頭に真紅の山羊に似た角を生やし紺色の蝙蝠の羽に鋭く尖った尻尾を持つ異形の姿をした怪物達が破壊された壁からウジャウジャと現れる

 

「…何だよあれ」

 

「あれは悪魔…暴走し神のいうことを聞かなくなった天使の事です…殆どが名前もない下級悪魔の様ですが…一体だけ桁違いな化け物がいますね」

 

神裂があれは悪魔だと教える、そして彼女は蠢く悪魔達の先頭にいる悪魔を睨む。燃え上がる戦車に乗った禍々しき黒い二対の翼を持つ天使にも見える悪魔…その名は無価値な者(ベリアル)

 

「「「「「「atmjgtbgjm殺jtmtgjp!」」」」」」

 

悪魔達はノイズがかかった様なわけの分からない言語で咆哮し、垣根達に襲いかかって来る。美琴はコインを取り出し超電磁砲を悪魔の一体 ベリアルに放つ。だがベリアルは超電磁砲のエネルギーを無価値化(無効化)してコインだけが残り、コインは地面へと落ち地面にコロコロと転がる

 

「嘘、私の超電磁砲を消した!?」

 

悪魔とはこの世ならざる者である、並大抵の攻撃では仕留めることはできない。悪魔達は翼を広げ騎士達に襲い掛かる、普通ならば騎士達は悪魔を倒す事は出来ず惨殺される…だがテッラがいるなら話は別だった

 

「…優先する。騎士を上位に、悪魔を下位に。優先する。空気を上位に、悪魔を下位に」

 

テッラがそう呪文を唱えた瞬間、悪魔達の動きが止まる。まるで空気に阻まれ動けない様に、そして騎士達が剣を振るうと下級悪魔達の身体を切り裂く、パルツィバルの天弓が悪魔の頭部を穿つ、ビットリオが手に持った剣で悪魔を一刀両断する

 

「ふむ、ここは我々に任せなさい。貴方達は友人を助けに行くのでしょう?ならこんな所で時間を無駄にしないでさっさと行くのですよー」

 

「…感謝する」

 

テッラがここは我々に任せインデックスを助けに行けと垣根達に言い、ステイルがテッラに頭を下げると垣根達と共に三沢塾の入口に向かって走っていく、途中で悪魔達が垣根達を襲うがテッラは冷静に呪文を唱える

 

「優先する。小麦粉を上位に、悪魔を下位に!」

 

無数の小麦粉のギロチンが悪魔達へと向かい、悪魔達の身体を切断する、バラバラと地面に落ちる悪魔の胴体を垣根達は気にせず入口に入り建物の中へと消えていく。それを見届けたテッラは小麦粉のギロチンを片手に悪魔達に叫ぶ

 

「来なさい悪魔共!この左方のテッラが相手をしてあげましょう!」

 

「jmtjwajgtjtmjagjawu莫uvkr迦jtmjpgjg!!」

 

テッラはそう高らかに宣言する、ベリアルはそんなテッラを嘲笑うかの様に黒い翼を広げ美しく耳触りの良いノイズがかかった言語を叫ぶ、そして燃え盛る戦車でテッラに迫り悪魔の魔術を行使しテッラは小麦粉のギロチンをベリアルに向けて振るう

 

 

「…私が黄金錬成で呼び出した悪魔共と騎士達が交戦を始めたか」

 

アウレオルスは校長室で呟く、黄金錬成は神や天使、悪魔すら己の手足として使役できる。アウレオルスは悪魔達を騎士達に自分の目的を邪魔されない為だけに呼び出したのだ。別に天使でもよかったが自分はローマ正教を捨てた背教者、同じく神に背いた元天使である悪魔を使役していた方が性に合っているとアウレオルスは皮肉げに笑う

 

「さあ、準備はいいか姫神」

 

「…うん」

 

アウレオルスが姫神に準備は万全かと尋ねる、姫神は頷く。彼は彼女の吸血殺しでインデックスが手元に来るまで吸血鬼を誘き出さない様に展開していた結界を解こうとする

 

「………」

 

「蓋然、怖いか我がかつての教え子よ、だが不安がる必要はない…確かに君を人外の類にするのは私とてやりたくなかった…だがこうするしか方法はなかったのだ」

 

(…違う、違うよ…私が思ってるのはそうじゃない…お願い、早く来て皆…!この人を…助けてあげて!)

 

俯いたまま黙っているインデックスを見てアウレオルスは自分が吸血鬼になるのが嫌なのかと考える、アウレオルスは先程インデックスに何故自分がこの様な事をするか説明し、三年前のインデックスと過ごした事も話した…何故かそれを聞く程インデックスは泣きそうな目でアウレオルスを見ていたが二人にはそれがわからない

 

「…分かってると思うけど。やって来た吸血鬼は殺さないでね」

 

「確然、分かっている。君との約束は守ろう。それがお互いの目的の為になるのだから、私は教え子を救う。君はその忌まわしき力を封じる…もうすぐ我々の目的は達する」

 

「…良かった。後彼女を救った後私に魔術を教えてくれるて約束も忘れないで」

 

「…莞然、君が望むなら我が魔術に関する叡智を叩き込んでやろう」

 

姫神が念の為に吸血鬼は殺すなと言うとアウレオルスは頷く、そして全てが終わったら自分に魔術を教えてくれる約束も忘れるなと言うとアウレオルスは微笑む。それはかつてインデックスの教師をしていた頃に浮かべていた笑みそのものだった

 

「…さて、私も覚悟を決めねばな。相手は吸血鬼…無限の魔力を持つ者、黄金錬成でも勝てるかどうか…おっといかん、こんな事を考えてはならんな…私なら出来る、彼女助ける為にここまで来たのだ…失敗は許されない」

 

アウレオルスは吸血鬼相手に勝てるのかと思いかけるが、即座に頭を振ってその考えを消す。そして懐に鍼があるのを確認し結界を消そうとしたその時、彼は動きを止め扉を凝視する

 

「?どうかした?」

 

「……侵入者だ、しかもこの気配…戻って来たのか」

 

姫神が何かあったのかと尋ねるとアウレオルスは扉を見ながら答える。そしてインデックスは悟る、彼等が助けに来たのだと…そして勢いよく扉が破壊され扉が音を立てて床に倒れる。その扉を破壊し現れたのは

 

「よお、待たせたな真打の登場だ」

 

「……!皆!」

 

垣根達が校長室に足を踏み入れる、インデックスは涙をこぼしながら助けに来てくれた垣根達に顔を向ける

 

「無事ですかインデックス!」

 

「遅れてしまってすまない!」

 

神裂とステイルが縛られたインデックスに近づく、アウレオルスはそれを一瞥するが気にしない。例え逃げられてもまた捕まえればいいだけだ、そう思いながら一度は追い返した侵入者達を睨む

 

「愕然、何をしに来た?私の悲願を邪魔する気か」

 

「その通りだ、悪いが全力で邪魔をさせてもらうぜ」

 

「…元に戻れ(・・・・・)、そして逃すな(・・・)

 

垣根がアウレオルスの目的を邪魔すると言うとアウレオルスは顔を歪ませる、そして黄金錬成で破壊された扉を元に戻し垣根達がインデックスを連れて逃げ出さない様に扉は開かなくなる

 

「…私の目的が何か、貴様らは知っているのか?」

 

「……さあね、黄金錬成が完成したと言う事は彼…垣根帝督から聞いてはいるが君の目的は聞いてなかったね…だが吸血鬼を捕まえ不死になる…ではなさそうだね。君には万能の力と言っていい黄金錬成があるんだから」

 

「その通り、不老不死にする等そんな小さな願いではない。我が願いは…インデックスを救う事だ」

 

「…インデックスちゃんを…救う?」

 

アウレオルスは自分の目的は知っているかと聞くとステイルはそういえば聞いていなかったなと呟く、アウレオルスの目的はインデックスを救う事だと言うと帆風は何を言っているのだと目の前の錬金術師を見る

 

「貴様らもインデックスと共にいるのなら知っているだろう、彼女は膨大すぎる脳の情報量の為一年ごとに記憶を消さねばいけない、だがそれは彼女が人だからだ、なら彼女を人外…吸血鬼にしてしまえば解決する。無限の時を生きる吸血鬼になれば記憶を失わなくともすむ筈だ」

 

アウレオルスの真摯に自分がインデックスを救う為に考えた事を綴る

 

「私はインデックスを救いたい。不幸を他人に押し着せられ、それでも他人の為に笑える彼女を私は救いたい。例え世界を敵に回してもだ、私はこの願いを決して曲げる事はない」

 

上条達はアウレオルスの心の底からの言葉を聞いてこの男は強い、そう思った。もし仮に自分達がインデックスを救えなかったとしよう、自分達はインデックスを救う為に何かしようとするだろう。だが果たしてここまで出来るだろうか?世界を敵に回しても。報われないとしても。彼女が自分の事を思い出さなくても。彼女を吸血鬼にしてその事を彼女に罵倒されるかもしれない…それでもこの男は止まらない、インデックスを救えるのなら自分の全てを犠牲にしても構わないと思っているかの様に…いや実際思っているのだろう。それが錬金術師 アウレオルス=イザードなのだ

 

「あの子は最後に私に告げたのだ、忘れたくない。私と過ごした思い出を忘れたくないと。それでも彼女は笑ったのだ、指一本動かせぬ体で溢れ出る涙にも気づかずに…最後まで私の事を思って笑ってくれた…何故神はそんな子を救わぬ!?世界の全てを救う力があるのなら何故その力をこの子を救う為に使わない!?だから私は誓ったのだ!例え人の道を外れようとも、この子を人外の怪物にしようとも、この子を私が神に変わって救ってみせると!ああ、分かっているとも、これは私の独りよがり!偽善だと!だがそれでも構わん!それでその子が救えるのなら私は悪にでも悪魔にでもなってみせる!」

 

アウレオルスは自分が長年思っていた感情を爆発させ叫び続ける、そして決意を固めた目で垣根達を見る。だから邪魔をするなと…

 

「…貴様らは私のかけた黄金錬成をいかなる手段か分からぬが退けた様だな、それ程の力があるならあの子を守れるだろう…あの子を私が救った後は…全てを君達に任せよう。ここまで汚れてしまった私では彼女を笑顔にする事は出来ない。もう私に彼女の隣にいる資格などないのだから」

 

アウレオルスは最後に垣根達にこの子を頼むと呟いた、もう人の道を外れてしまった自分では彼女を幸せにする事は出来ない、そんなアウレオルスに上条達は言葉をかけようとするが…言えない、真実を言ってしまえばアウレオルスがどうなるか分かっているからだ…暫しの静寂、それを打ち破ったのは…垣根だった

 

「…一つ言っていいか?」

 

「…必然、なんだ超能力者の少年よ」

 

「…あんたがインデックスを助けたがってるの凄く分かった…だが無理なんだよ(・・・・・・)、あんたじゃもうインデックスは救えない」

 

「間然、何だと?何故だ?何故私では彼女を救えぬ?答えよ少年」

 

アウレオルスではインデックスをもう(・・)救えない、そう垣根が言うとアウレオルスは少し憤り何故だと叫ぶ、垣根は何か戸惑うに口を開こうか迷うが覚悟を決め彼に事実を話す

 

「もうインデックスが救われてるからだよ、いくらあんたでももう既に救われてる(・・・・・・・・・)人間を救う事なんて出来ねえだろ?」

 

「……な、に…?」

 

「…え?」

 

垣根の言葉を聞いてアウレオルスと姫神が垣根達を凝視する、垣根は更に言葉を続ける

 

「…俺達がインデックスを救ったんだ、俺達が本当はあんたが救う筈だったインデックスを救っちまったんだよ」

 

「馬鹿な……ありえん!一体いかなる方法で彼女を救ったというのだ!?」

 

「…当麻の…そこのツンツン頭の能力は幻想殺しと言ってな、あらゆる異能を打ち消す力を持っている…過程は省くが…その力でインデックスを救ったんだ」

 

自分達がインデックスを救ったというとアウレオルスは必死に否定する、そんな事がある筈がない、彼女を救うのは自分なのだからとその事実を信じられない

 

「…たったそれだけか?それだけで彼女は救われたのか?」

 

「…ええ、その過程で色々ありましたが、わたくし達は彼女を救いました」

 

「……あ、あ…」

 

アウレオルスは本当かと尋ね帆風がそれを肯定する。それでもその事実を否定して欲しい様にアウレオルスはインデックスを見る、彼女が彼等が言っている事を否定してくれると一縷の望みをかけて…だが彼女は今にも泣きそうな顔でこう言った

 

「……ごめんなさい、ていとく達が言っているのは…本当の事なんだよ…私は…もう救われてるんだよ」

 

彼女がそう垣根達が言った事は本当だと言った、その一言が決定的だった。アウレオルスの心を今まで支えていた何かが音を立てて壊れた気がした

 

「……、あ」

 

世界を敵に回した覚悟も、これまで頑張ってきた努力も、三年間彼女を救う術を考えた時間も、絶対に救うと決めた決意も、黄金錬成を完成させた喜びも…全て無駄だった、全て徒労に終わった。彼の悲願であるインデックスを救うという希望は…赤の他人(超能力者)に奪われた。彼は自分の存在を否定されたように感じた、インデックスに裏切られ様に感じた、それが彼を待っていた物語の終わり(バットエンド)だった

 

「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!」

 

結論、錬金術師 アウレオルス=イザードは壊れた。狂った様に獣の如き大咆哮をあげるアウレオルス、そしてピタッと咆哮を止めると垣根達を憎悪と怒りが入り混じった眼で睨みつける。その眼力で垣根達の動きが止まる、直接睨まれていないインデックス達もその凄みに恐怖を感じ固まる

 

「…………やる、殺してやるぞ超能力者ぁぁぁぁぁ!!!」

 

もし殺意だけで人が殺せるならこの部屋にいる全員が死んでいるだろう、アウレオルスは今にも彼等を殺しそうな勢いで垣根達を睨む、それに超能力者達は怯えているとアウレオルスの目の前に姫神が立ち塞がった。自分の恩人(ヒーロー)を止める為に

 

「やめて!冷静になってアウレオルス!」

 

「邪魔だ、姫神…()

 

死ね(・・)、そう言おうとした…だがその瞬間彼は脳裏に思い出す、この少女と過ごした日々を…それを思い出した瞬間死ねと言うとした口を止め…別の言葉に切り替える

 

「…ッ!眠れ(・・)部屋の隅へと移動せよ(・・・・・・・・・・)

 

「……あ」

 

姫神は深い眠りに落ちる、完全に意識を失うまで姫神はアウレオルスの事を思い…縛り付けたインデックスの横に眠りに落ちた姫神が現れる

 

「は、はは…あはははは!楽には殺さん、じわじわと甚振り殺してやる!それが貴様らが我が悲願を横取りした罰だ!」

 

壊れた様に狂笑するアウレオルス、もうこの男は誰も救えない、神でさえ彼を救う事は出来ないだろう、かつて主人公だった男は悪役となって主人公となった超能力者達に倒される…それで彼の人生(役目)は終わり、それにてめでたしめでたし…

 

 

 

((((((((そんなの許せるか!こんな結末で終わっていい訳がない!))))))))

 

だがそんな終わり方を超能力者達は認めない、そんな事があってたまるか、これだけ頑張ってきた男が、インデックスを救う為に生きてきた男がこんな終わり方をしていいのか、いい訳がない。アウレオルスは悪人ではない、例え神が彼を見捨てても…垣根達は彼を見捨てられない

 

「いいぜ、アウレオルス=イザード。お前が自分の物語がバットエンドで終わると思ってるんなら…」

 

上条が言葉の途中で言葉を切る、そして超能力者達はアウレオルスを見据えて叫ぶ

 

「「「「「「「「俺/私/わたくし達がお前のその幻想をぶち殺す!」」」」」」」」

 

超能力者達は決意する、インデックスを救った様にこの夢破れた男を自分達が救ってみせると

 

 

 

 




まさかのテッラさんがカッコいい、因みに僕は神の右席ではアックアさんとテッラさんが好きです。因みにテッラさんが三つ光の処刑を使えたのは、キリスト様が処刑された時他にも罪人が二人いた事から。え?なんで光の処刑が完成してるのか?アレイスターさんが完成させるのを手伝いました(笑)

そしてこの作品のオリジナル設定である悪魔、原作でも言及されてしますが…キリスト教の悪魔が出て来たのて新約21巻の蝿の王くらいじゃなかったですか?かまちーが悪魔について詳しく書かないならオリジナルで出そうと思い書きました。天使(モデルはガブリエル)の対になるように天使の体がツルツルしてるのに対し悪魔の体はザラザラしてますし、天使は白い体で悪魔は黒い体です。アウレオルスが悪魔を使役したのは実は中の人繋がりでもあります(Fateのレフ教授、ウルトラシリーズのダークルギエル)

ベリアルも出て来ましたが…テッラさんを活躍される為だけのキャラなのでもう出て来ません。描写にないだけで今頃テッラさんと激闘を繰り広げてるんでしょうねー(棒)

最後ら辺は特に気合を入れました。もしこの小説に挿絵があったら互いに睨み合うアウレオルスと超能力者達が挿絵で乗ってるんだろうなー、と思って書きました。さあ、彼等はアウレオルスを救えるのか?次回をお楽しみに


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我が名誉は世界の為に

…アウレオルスさんの戦闘て難しい、自動書記より難しいです。本当にアウレオルスさんはチートです、さて原作以上に黄金錬成を様々な使い方をしてくるアウレオルスさん。こんな使い方あり得ねーだろ、とか単純に全員死ねて言えばいいば上条さん以外死ぬだろとか言わないでください。戦闘描写がそれだと盛り上げられませんから…ま、殆ど一撃必殺な攻撃ばかりですが…そして最後は…うん。自分怪獣映画とか好きなんですよ

やっぱりそげぶは偉大だと思う(唐突)、そげぶを食らった敵キャラは改心して頼りなる味方になるし(シェリーさん、ステイル君、オリアナさん)、殴られて幸せになった人もいる(一方通行さんは打ち止めと家族になれた、浜面さんは嫁が出来た、アレイスターは娘を生き返らせた)、あのヴァントさんも考えを少し改めたしフィアンマさんも考えを広げましたから…え?テッラさん?知らないなあ

さあアウレオルスさんは無事救われるのか?それでは本編をどうぞ


彼女(インデックス)救世主(主人公)になりたかった。三年前にあったその時からこの少女を救いたい、アウレオルスはそう心から思い彼女の為に魔道書を書いた。自分が書いた魔道書なら彼女を救えると信じて…それでも彼女は救われず、それでも彼は諦めず魔道書を書き続ける、そしてまた失敗し…それの繰り返しだった。そして一年が過ぎ…結局彼は彼女を救えなかった、彼女はアウレオルスと過ごした記憶を失い彼女は清教に回収された

 

彼女を救えなかった彼は全てを投げ捨てたとしても彼女を助ける事を決意した。何度死にかけただろうか、何度絶望しただろうか、何回希望を見出しただろうか、何回もう救えないと思っただろうか…だが、ある噂を彼は耳にした

 

「吸血鬼を誘い出す吸血殺し(ディープブラット)という原石の少女は学園都市の三沢塾という場所に監禁されている」

 

それを聞いたアウレオルスは学園都市に侵入し三沢塾を乗っ取った、そして隠し部屋に監禁されていたその吸血殺しの少女を手中に収めたのだった…そんな彼にも誤算があった。吸血殺しの少女は自分が救おうとする少女は似ていたのだ、容姿や年がではない…アウレオルスが似ていると思ったのはその眼だった

 

「もう私は誰も殺したくない。だからこんな能力なんかいらない。こんな誰かを殺す力より。私は誰かを救う力が欲しい。物語の魔法使いみたいに」

 

その言葉を言った姫神を見た時アウレオルスは幻視した、その自分の事よりも他人の事を思いやるその姿勢は自分が救いたい少女と重なり…彼はその時こう思ったのだ、この少女も救おうと。インデックスも姫神秋沙も自分が救ってみせる。その為に黄金錬成を完成させた。そして吸血鬼も手中に収めインデックスを人外にしてでも救う。そう確固たる意思を固めて…

 

だが、その目標は打ち砕かれた、目の前の超能力者達によって…自分ではなく赤の他人が自分の人生全てをかけた目的を軽々と、容易く、あっさりと彼女を救ってみせた。許せなかった、何故自分ではないのかと、自分はこんなにも努力してきたのに…だから彼は行き場のない怒りを超能力者達にぶつける事にした

 

 

黄金錬成(アルス=マグナ)。言葉一つで思い通りに世界を歪める力を持つアウレオルスは目の前の敵を憎悪の目で睨みながら言葉を放つ

 

「焼き尽くされよ超能力者!」

 

その瞬間、地獄の業火の如き紫の炎が津波の様に上条達に迫る、それを上条が右手を突き出す事でその炎に触れガラスが割れた様な音が周囲に響き炎は搔き消える

 

「……我が金色の錬成を右手で打ち消しただと?」

 

アウレオルスは目を見開く、それが垣根が言っていた幻想殺しかと。アウレオルスが驚いている隙に垣根はアウレオルスに未元物質の羽を飛ばす

 

「暴風よ、吹き荒れよ!」

 

アウレオルスがそう宣言すると室内に暴風が吹き荒れる、まるで台風が吹き荒れる外を歩いているかの様なその一撃に羽は軌道を逸らし壁に突き刺さる。その吹き荒れる暴風に垣根達も立っているのが精一杯だった、だがインデックスとその横にいるステイル、神裂、姫神は暴風の影響は受けない

 

「鋭い剣の如き氷の柱よ、超能力者達を刺し穿て!」

 

パキンと空気が凍てつき氷の柱が誕生する、そしてその氷の槍とでも言うべき氷柱は垣根達へと飛んでいく、その氷柱を超能力者達は能力で破壊する、そして反撃とばかりに麦野が拡散支援半導体(シリコンバーン)を投げてそれに原子崩しを命中させる、それにより無数の原子崩しがアウレオルスを襲う

 

「光線は捻じ曲がり超能力者達へと向かう」

 

「な!?原子崩しを捻じ曲げただと!?」

 

アウレオルスに放たれた光線は全てクルリと軌道を曲げて超能力者達に襲いかかる、麦野がしまったと焦るが美琴が前に出て原子崩しの軌道を全て逸らす

 

「やはり単純な攻撃では死なぬか、ならこうしよう」

 

ただ攻撃するだけの言葉では超能力者は死なないと理解したアウレオルスは言い方を変える事にした

 

「感電死!」

 

直後、美琴の周囲に青白い電光の渦が現れ彼女を襲う、それは普通の人間なら焼き焦がされ絶命する死の一撃。だが美琴はその電撃をその身で耐えきる。その身はおろか服すらも黒焦げ一つもない

 

「何!?」

 

「…私は学園都市の電撃使いの頂点 超能力者の第五位 超電磁砲の御坂美琴よ?この程度の電撃で死ぬ訳ないじゃない」

 

美琴は電撃使いの頂点に立つ超能力者である、最大10億ボルトの電撃を操る彼女にとって先程の電撃程度では彼女は傷を負う事はない、それを忌々しげな眼で睨んだ後細い鍼を自分の首元に突き刺しそれを投げ捨てる

 

「ならば…絞殺、及び圧殺!」

 

食蜂に何本ものロープが彼女を絞め殺す為に身体に巻きつこうとする、そして巨大コンテナが天井に現れ超能力者達を潰そうと落下する、だが食蜂がリモコンのボタンを押しフリーズドライに似た現象を起こしその縄をボロボロに破壊し、コンテナは削板が両手を掲げてる事で空中で火山のように吹き飛ばされる

 

「チ…!忌々しいな、成る程それ程の力があれば彼女を救えたのも頷ける!私にもそれ程の力が最初から持っていれば…!」

 

「怒ってるとこ悪いが…今は戦闘中だぜ?」

 

アウレオルスは怒る、そんな力が自分にもあれば彼女を救えたのにと、そんなアウレオルスに戦闘中に油断するなと垣根は三対の翼から烈風を放つ

 

「消えよ!」

 

アウレオルスは烈風を消滅させて攻撃を防ぐ…が、何故か風の勢いだけは消せずアウレオルスが少しよろける

 

「な…!?」

 

「麦野さん!」

 

「分かってる!」

 

帆風が今が好機と麦野に叫ぶと麦野が0次元の極点を使って一方通行と削板、帆風をアウレオルスの前方へと出現させる。アウレオルスは驚きのあまり目を見開くが三人は気にせず一方通行はベクトル操作で運動能力を増幅させた拳を、削板はその原石の力で強化された拳を、帆風も同じく能力で強化した拳をアウレオルスの腹へと叩き込む

 

「がぁ!」

 

三人の一撃を喰らいアウレオルスは派手に吹き飛ばされる、そしてヨロヨロと立ち上がるアウレオルスに三人がこのまま殴り倒して気絶させようと接近する、アウレオルスはそれより先に首元に鍼を刺す

 

「我が肉体を強化!我が身は自分で突き刺した鍼以外の一切の攻撃を受け付けぬ!一殴りで殴殺出来る程の怪力を我が身に!我が速さは光の如し!」

 

アウレオルスは自分の肉体は強化する様に叫ぶ、その瞬間アウレオルスの肉体から溢れんばかりのオーラが溢れる、そしてアウレオルスは光速のスピードで帆風に迫る、帆風は身の危険を感じ腕をクロスさせて防御の構えを取りつつ足で地面を蹴り衝撃を和らげようとする。だがアウレオルスのその挙動はまさに光の速さ、帆風の目ではその拳は捉えられず痛みだけが彼女の腕に伝わり彼女は扉の方の壁まで吹き飛ばされる

 

「が、は…!」

 

肺から空気を吐き出す帆風、彼女は自分の両腕を見る、両腕は骨を全て砕かれ曲がってはいけない方へと曲がっていた。もう腕は使い物にならない。皮膚が破れ血が流れており彼女はもう戦闘に参加できない。削板はアウレオルスに怒りの目を向けながら音速の二倍の速度で殴りつける、アウレオルスはその拳を右腕で受け止める、驚く削板にアウレオルスが左腕で削板を殴りつけようとするが削板はそれを右腕でガードしその拳を払う

 

「すごいパーンチ!」

 

「…ふん、その力…原石だな。だがその力も私には通用しない」

 

アウレオルスに至近距離からすごいパーンチを放つ削板、それを片手で受け止めたアウレオルスはこの力は原石だと理解する。アウレオルスは削板の頭部に拳を振り下ろし削板が左手でその拳を受け止める、今度は左手で殴りかかるアウレオルスに削板も左手でその拳を受け止める

 

「甘いな、我が蹴りはいかなる屈強な身体も粉砕する!」

 

「ぬ!?」

 

アウレオルスは神速の回し蹴りを放ち削板の脇腹に叩き込む。削板は蹴り飛ばされたボールの様に勢いよく壁に激突、壁に大穴が空き削板がそこに倒れこむ。削板は自分の全身の骨にヒビが入ったと察する、それほど強烈な一撃だったのだと理解する。もし仮に削板以外が今の一撃を受けていれば身体が爆散していたかもしれない

 

「俺を忘れてンじゃねェぞ!」

 

一方通行が仲間を傷つけたアウレオルスに怒りの目を向けアウレオルスを殴りつける、自転エネルギーを奪い取って放った拳をアウレオルスのがら空きの背中に叩きつける…がアウレオルスはその惑星の回転エネルギーを利用した一撃を食らっても微動だに動かない、一方通行も殴ったというのに空気を叩いたかの様な感覚に戸惑っていると不意にアウレオルスが首だけを動かし一方通行を見て笑う

 

「な!?」

 

「失笑、もしやこの程度の一撃で私を倒せると?貴様の攻撃では我が肉体は傷一つつかんぞ」

 

「「一方通行!」」

 

アウレオルスはそう言って笑い拳を一方通行に当てようとするが麦野と美琴が援護射撃の為に原子崩しと超電磁砲を放つ、だがその攻撃をアウレオルスは鬱陶しそうに片手を振るって原子崩しと超電磁砲を消し飛ばす

 

「我が腕の一撃は一撃必殺、超能力者の全身を砕く」

 

アウレオルスは一方通行に腕を振り下ろす、だが一方通行は反射のお陰でアウレオルスの人を殴りつけるだけでトマトの様に潰れるその腕の一撃を防ぐ、が勢いだけは完全に防げず一方通行は吹き飛ばされる

 

「がァ?!」

 

「…?私の攻撃を跳ね返した?…まあいい、我が攻撃は超能力者達には防御不可、回避不可、絶対命中」

 

アウレオルスは自分の攻撃が跳ね返ってきた事に少し驚くがもう反射されない様にと、鍼を首に刺し言葉で攻撃を更に強化する

 

「銃をこの手に。弾丸は魔弾。用途は射出。数は八つで十二分。連続射出の用意。人間の動体視力を超える速度にて発射せよ」

 

アウレオルスがそう言った瞬間、彼の左右の手に四丁ずつ計八丁の西洋剣(レイピア)の様な剣の鍔にフリントロック銃が仕込まれた暗器銃が鋼の扇の様に広げて握られる。そして魔弾が垣根達に放たれる、それは防御不可にして回避不可、絶対命中する魔弾。垣根達は成すすべなくその魔弾に撃ち殺され…

 

「させねえよ!」

 

なかった、垣根が未元物質の翼を高速で振るいその青く輝く弾丸を弾いてしまう。その防御不可な筈のその一撃を垣根の未元物質は全て弾いてしまった

 

「!?貴様にも我が黄金錬成が通じぬというのか!?」

 

「当然だ、黄金錬成は世界の全てを操る力だ…だが俺の未元物質にその常識は通用しねえ、未元物質はこの世に存在しない物質だ、あんたの世界を操る力じゃあ俺の未元物質は操れねえよ」

 

「愕然、この世に存在しない物質だと!?そうか先程無効化した風の勢いが消えなかったのはその為か!」

 

そうアウレオルスの黄金錬成はこの世界全てを操る、ならばこの世に存在しない(・・・・・・・・・)物質である未元物質はアウレオルスの黄金錬成では操れず、その黄金錬成の影響を受け付けない、アウレオルスは魔弾を装填し暗器銃から魔弾を射出し垣根を射殺しようとする、だが垣根が魔弾を翼で弾いていく。そして未元物質の翼でアウレオルスを斬りつけアウレオルスの服を裂き服に血が滲む

 

「な!?我が傷一つつけられぬ筈の肉体を斬り裂いただと!?黄金錬成で具現化した事象も捻じ曲げるというのか!」

 

未元物質は幻想殺しと同じ黄金錬成でも操る事の出来ない力と理解しアウレオルスは歯噛みする。ならばと懐から鍼を取り出し首元に突き刺す、そして持っていた銃を投げ捨て新たな武器を取り出す

 

「新たなる武器を用意。モデルはイチイバル。弾丸は無尽の矢筒。用途は全自動式(フルオートマチック)。一度引き金を引けば永遠に射出し続ける。数は百にて十二分。超能力者を取り囲み永遠の射撃を行え」

 

イチイバル、北欧神話の主神が持つ一度弓を引いただけで十本の矢を放つ弓。無尽の矢筒、インドの叙事詩に登場する偉大なる英雄が持っていた無限に燃える矢を出せる矢筒。垣根を取り囲むかの様に四方八方に暗器銃が出現し銃口を垣根に向ける、そして引き金が勝手に動き通常は一発しか発射されない筈が一度に十発の燃え盛る魔弾が発射され、銃口から無限に燃える魔弾が発射される、その光景はまるで弾丸の嵐だった

 

「う、おおお!!」

 

「な!?垣根!」

 

垣根が弾丸の嵐を防ぐ為翼を繭状に閉じて弾幕を防ぐ、だが無限に射出される弾丸の嵐に未元物質の翼に亀裂が入る。垣根がその衝撃に耐えるかの様に叫ぶ…無尽の弾丸と驚異の速度に圧倒的な弾幕。垣根はこの大火力かつ途切れなく続く攻撃の前に防御に徹する事しか出来なかった

 

「ふはは!どうした超能力者!先程の余裕はどうした!」

 

垣根の動きを封じたアウレオルスは笑みを浮かべる、そしてアウレオルスは上条を見据え叫ぶ

 

「そう言えば貴様の右手があの子を救ったのだったな!ならその忌々しいその右手を切断してやろう!我が黄金錬成に逃げ場なし!断頭の刃を配置!速やかにその体を切断せよ!」

 

次はその右手を切断してやろうと歪んだ笑みを向けるアウレオルス、そして天井に巨大ギロチンの刃が出現し上条を処刑しようと上から降り注ぐ、上条はそれを右手を頭上に掲げ重力によって落下する刃と右手がぶつかり砂糖細工の様に刃が砕け散る。だが

 

「自然、それは読んでいた」

 

「な!?」

 

上条の右横にアウレオルスが笑いながら立っていた、彼は予測していたのだ、上条ならその右手でギロチンを防ぐと。ならば彼が油断した隙をついて彼の武器であり自信の源である手を切断しようと企んでいた、彼の右手にはクレイモアが握られていた

 

「用途は切断。神速の如き早さで右腕を切断…!?」

 

アウレオルスが手に持ったクレイモアで上条の右腕を肩口から切り裂こうと言葉を続けるが、不意に言葉が止まる。その隙に上条はアウレオルスから慌てて距離を取る、アウレオルスが言葉を止めた理由は目の前の上条を攻撃する事がインデックスを攻撃している様に思えたからだ

 

(!?な、何故だ…この男を攻撃しようとした瞬間、まるでインデックスを攻撃しているかの様に思ってしまった…そんな事はあり得ない!この男はインデックスなどではない!まさか…これは精神攻撃か!)

 

「…好嫌付加(カテゴリー578)、あの人が上条さんに抱く気持ちを憎悪から好感に…つまり彼がインデックスに思う気持ちに変換したわぁ…でも多分これが効くのは一回だけ、これに気づいたら精神攻撃が通じない様にされる、何度も試したけど洗脳も出来なかった…これで今回は私の出番力は終了かも」

 

アウレオルスは今のは精神攻撃によるものと判断、食蜂はアウレオルスに向けていたリモコンを下げる、好悪付加で上条に向ける感情をインデックスに向ける感情に変更させたのだ。こうすればアウレオルスは攻撃出来ない、だがもうアウレオルスには通用しないと食蜂は予想する

 

「…超能力者達周囲の重力を百倍に増加。重力にて床に押し付けられよ。その場から動く事は許さぬ!」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

アウレオルスが鍼を首元に突き刺しそう呟くと弾丸の嵐を受け続けている垣根と上条、戦闘に加わっていないインデックス達以外の全員が重力によって床に押し付けられる。超能力者達は床から立ち上がろうとするが…力を込めれば込める程押さえつける力が増し動けない、これで上条を助ける者はいない。そしてアウレオルスはクレイモアを投げ捨て新たなる武器を生み出そうとする

 

「…黄金錬成の力を我が手に。聖域の力を凝縮し一本の剣となれ。それは水銀で構成されし剣。その剣の名はアゾット剣。我が始祖たるパラケルススが所持していた悪魔の力を宿す霊装。柄頭には万能薬たる賢者の石を」

 

アウレオルスが左手を上へと掲げる、そしてその手に黄金の光が集い一本の剣が完成する。水銀で構成され柄頭は赤い宝石で出来ているその剣の名はアゾット剣、アウレオルスの先祖であるパラケルススが所持していた剣を再現していたものであり、黄金錬成の力が凝縮した霊装でもある

 

「黄金錬成を我が始祖が所持していたとされる霊装の形にした。それに使う時しか黄金錬成の効果が発揮しないのなら黄金錬成の欠点(・・)も気にせずに済む」

 

アウレオルスはアゾット剣を左手で構えながら悪魔の如き笑みを浮かべ醜悪に笑う。そして剣を上条に向け言葉を放つ

 

「暗器銃を空中に配置。弾丸は魔弾。数は二十で十二分。用途は粉砕。単発銃本来の目的に従い、獲物の身体を穿つ為に人間の動体視力を超える速度にて発射せよ」

 

アウレオルスの真横に左右に十ずつ、計二十のフリントロック銃を仕込んだ西洋剣が出現する。そしてそこから青く輝く魔弾を射出する。上条は幻想片影(イマジンシャドウ)で削板の能力を発動させ攻撃を避け、避けきれないものは幻想殺しで防ぐかその身で受け止める

 

「効かんか、なら私にインデックスの記憶にある十万三千冊の魔道(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)書の知識を私にも授けよ、魔道書の汚染は受(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)け付けず知識のみを手に入れよ(・・・・・・・・・・・・・・)

 

アウレオルスが射撃では決定打にならないと判断し首元に鍼を突き刺し言葉を放つ、インデックスの知識である十万三千冊の魔道書を自分も手に入れるという言葉にインデックスはアウレオルスを凝視する、そしてビクンとアウレオルスの身体が震え鼻から血が流れる

 

「必然、いきなり頭に膨大な知識を手に入れればこうなる…だが貴様らを殺すのに必要な知識は手に入れた、更に私に溢れんばかりの魔力を授けよ(・・・・・・・・・・・・・・・)

 

これくらいの代償は覚悟していたと笑うアウレオルス、そして鍼を再び刺し今度はアウレオルスから膨大な魔力が溢れ出す…魔力の事をよく知らない上条でさえ肌でそれを感じた、そしてアウレオルスはアゾット剣を杖の形に変化させ杖の先端を向けある魔術(・・・・)を放つ

 

竜王の殺息(ドラゴンブレス)発射」

 

「!?」

 

放たれたのは竜王の殺息、自動書記が放った最大級の魔術。幻想殺しですら処理落ちを起こしたその魔術を前に上条は幻想殺しを前に出して防ごうとするがその直前で気づく、これは誘いだと、竜王の殺息で上条の動きを止めその隙に黄金錬成でトドメを刺す気なのだと…

 

(どうする!?俺の幻想片影であれを止められるものはない!かと言って幻想殺しで受け止めてもあいつにトドメを刺される!どうすれば…)

 

幻想片影ではあれを止められる能力はない、かと言って幻想殺しで止めれば黄金錬成で殺される。助けてくれる仲間も今は動けない。まさに絶体絶命…だが上条はふと脳裏にある情報が浮かぶ…そして上条は口を開いある能力を発動する

 

「……魔女狩りの王(イノケンティウス)!」

 

「な!?」

 

現れたのは炎の巨人、ステイルの切り札であるイノケンティウスである。だがこれはステイルが呼び出したのではない…上条がイノケンティウスの名を叫ぶとその炎の巨人が現れたのだ、それに驚くアウレオルスだがインデックスは別の意味で驚いていた

 

(な、んで…能力者のとうまが魔術を使ったのに何にも起きないの(・・・・・・・・)?能力者が魔術を使えば血管が破裂する筈なのに…)

 

そう、能力者が魔術を使えば血管が破裂する。なのに上条は魔術である魔女狩りの王を使ってもそれを起こさない。一体何故なのか?インデックスがそう考えた直後魔女狩りの王と竜王の殺息が衝突する。魔女狩りの王が竜王の殺息を完全に塞き止め上条は魔女狩りの王の横を駆けてアウレオルスへと向かう

 

「!…く!ならば我がアゾットは蓮の杖(ロータスワンド)。衝撃を相手へと時差無しで移動する!」

 

アウレオルスは竜王の殺息を中断しアゾットの杖を床へと思いきり叩きつける、その直後上条が真横に吹き飛ばされる

 

「が、あ!?」

 

「!今のは蓮の杖の効果!?しかもタイムラグなしで叩いた直後に衝撃を与えた!?」

 

「当然、我に出来ぬ事はなし!確かに魔術を使った事には驚いたがそれがどうした!その程度の術では私には届かぬ!」

 

インデックスが今のは蓮の杖の能力だと叫ぶ、そして起き上がろうとする上条にアウレオルスは床を連続して杖で叩きその度に上条は鞠の様に吹き飛ばされる

 

「…!」

 

「…行くな神裂、僕達が助けに行っても足手まといになるだけだ」

 

「…ッ!分かっています!ですが放っておくわけには!」

 

「…僕だって助けに行きたいさ、だが足を引っ張っては本末転倒だ、しかし何故アウレオルスは吸血鬼を呼ぼうとしたんだ?自分で生み出せば…いやそれより前に黄金錬成でインデックスを助ければ良かったのに」

 

神裂が助けに行こうとするがステイルに足手まといになると制され歯噛みする、だがステイルは何故アウレオルスは何故黄金錬成でインデックスを助けなかったのかと

 

「…もしかして、黄金錬成には欠点、または何かしらの条件があるのかも…そういえば能力を発動する時には鍼を突き刺してた…ん?鍼?」

 

インデックスは黄金錬成には弱点または制約があるのかと自分の知識を持って思考する、だがそこで役立ったのは十万三千冊の魔道書ではなく…医学の本だった、確か小萌の部屋にあった本の中の一つにアウレオルスが使っていた様な使用方法とその効果があった筈だ

 

(確か…鍼治療…だったかな?神経を直接刺激してエンドルフィン?ていうのを分泌させて不安を取り除く…不安?あの人は能力を使う度に刺してた…もしかして不安を感じちゃいけない理由がある?…まさか黄金錬成は…不安を感じると効力を無くす?違う、黄金錬成は頭の中で思い描いた事象を具現化する力…事象を具現化…そうか、そういう事だったんだ!だから鍼を!)

 

インデックスは黄金錬成の弱点を理解する、確かに黄金錬成は万能だ、だがそんな万能な力…何でも思い通りにできる能力なら何故さっさと垣根達を殺さなかった?それは簡単だ、アウレオルスが一方通行達は兎も角垣根と上条を殺せると思っていなかったからだ、つまり黄金錬成の弱点とは

 

「黄金錬成は確かに万能な力!でも逆に自分に出来ないと思った事も本当になってしまう!黄金錬成は善悪問わず頭の中で思い描いた事を無差別に具現化してしまう…だから貴方は黄金錬成にオンオフ機能をつけたんだね!自分が勝てないと思ってしまってもそれが黄金錬成の所為で本当にそうなってしまわない様に!」

 

「!?我が黄金錬成の弱点を見抜いただと!?」

 

「…そういう事かよ、鍼を首元に刺してたのは精神を興奮させ不安にならない様にするためだったのか…ありがとうインデックス、こいつの弱点を教えてくれて」

 

インデックスの言葉にアウレオルスは驚く、そして上条は納得しインデックスに感謝する

 

「く…!だが例え弱点が分かった所で何になる!それ以前にアゾット剣になった黄金錬成は使用時以外にそんな事を考えてしまってももう関係ない!弱点がバレた事には驚いたがそれで貴様が勝てる筈がない!我が黄金錬成にたった一人の人間が勝てる筈が無い!」

 

アウレオルスが弱点がバレた程度でどうしたと叫ぶ、それに上条一人では自分に勝てる筈がないと息巻くアウレオルス…だが

 

「一人じゃねさ、俺もいるぞ」

 

その声が聞こえたかと思うと未だに魔弾の嵐を受け続けている未元物質の翼が白く輝き強烈な爆発が発生する、その爆風がアウレオルス達を襲い爆煙が部屋を覆う、そして煙が晴れアウレオルスが見たのは白く翼を発光させた垣根がそこに立っていた

 

「我が銃を爆発で全て破壊したか、それに先程とは比べ物にならない程の力をその翼から感じる」

 

「俺の今の翼は一つの世界(虚数学区)そのものだ。黄金錬成の効果は一切受け付けないぞ」

 

「…成る程、その翼の前では黄金錬成は効果を発揮しないかもしれない」

 

「…やけに物分かりがいいな、ならさっさと降参し「だがそれはその翼だけの話だ」……何?」

 

垣根がこの覚醒した未元物質の前には黄金錬成は通用しないと笑う、だがアウレオルスはそれがどうしたと言わんばかりに笑う、その笑みを見て垣根が警戒する

 

「確かにその未元物質とやらは私の黄金錬成を持ってしても操れない…本当に興味深い能力だ、天使の力と酷似しながらも全く違う…それにその力はまるで魔術…研究者としてこれ程興味が湧くものはない」

 

「…そりゃどうも」

 

「だが、その未元物質はあくまで貴様の能力だ。黄金錬成では未元物質は操れない。だが貴様自身は人間だ、身体がその未知の物質で構成されているのならまだしも…普通の人間と変わらないのなら攻撃の仕様があるとは思わなかったのか?」

 

「!?まさか…!」

 

アウレオルスの企みを理解した垣根はそうはさせるかと翼の先端を向けそこから純白の光線を放つ。その光線は異世界の法則そのもの、黄金錬成もその光線を防ぐ事は不可能。その光線は真っ直ぐアウレオルスへと向かう…だがアウレオルスは杖を垣根に向ける

 

死ね(・・)

 

そのたった二言をアウレオルスが言っただけで垣根はゆっくりと前向きに床に倒れる、瞬間垣根の三対の翼は虚空へと溶けるかの様に消えていきアウレオルスへと向かっていた光線も消え失せた。瞳孔は瞬きもせず開いたまま。まるで垣根の肉体から魂を抜き取られ抜け殻になったかの様に動かなくなる。刺殺絞殺毒殺射殺斬殺撲殺焼殺扼殺轢殺凍殺水殺爆殺磔殺…あらゆる殺人法にも当て嵌まらないその死因に全員が状況を理解できない、だがこれだけは分かる…垣根帝督は死んだ

 

「垣根ぇぇぇぇ!!」

 

上条の叫びが部屋に響く

 

「…ふ、は…ふははは!どうだ!我が黄金錬成に敵などいないのだ!」

 

アウレオルスは狂った様に、壊れたかの様に笑う。人一人殺してそれでも彼は笑っている

 

「…さて、次は貴様だ。貴様を殺せば後は雑魚のみ…暗器銃をこの手に。数は一つで十二分。まずはその右腕を切断。暗器銃、その刀身を旋回射出せよ」

 

アウレオルスは次は上条の番だと右手に暗器銃を手にする、そしてそれを振るった瞬間、回転しながら飛んで来た刃が上条の右腕を肩口から切断された。その切り口は綺麗としか言えず痛みも熱さも感じず上条は無くなった右腕を凝視していた、宙には己の右腕が音を立てて回転しており血を撒き散らしながら床に落ちる。そして遅れて切断面から噴水の様に鮮血が噴き出す

 

「「先輩/上条さん!!」」

 

美琴と食蜂の悲痛な声が響く、第一位に続いて第二位までアウレオルスにやられた。垣根は死に上条も出血死で死に至る…もう誰もアウレオルス=イザードを止められない

 

 

 

「……めて」

 

薄れゆく意識の中、その声は上条の耳に届いた。それは眠っていた姫神の口から漏れた声だ、彼女は涙を流しながら呟く。上条以外には聞こえていなかったかもしれない。それくらい小さな、それでも確かな意思がその言葉にはあった

 

「止めて…彼を…アウレオルスを…私の恩人(ヒーロー)を止めて」

 

「……分かった」

 

その言葉で十分だった、倒れそうだった上条は両足に力を込めて倒れそうになる身体に鞭を打ちアウレオルスを見据える

 

(こんな所で諦められるかよ!救ってみせる、俺の力でアウレオルスも、姫神も救ってみせる!)

 

上条がそう決意した時、切断された右腕に異変が起きた

 

「…何?」

 

得体の知れない透明なモノがカタチをゆっくりと表していく…まるで右腕から新しい何かが飛び出す様に…そしてそれは姿を現した

 

ーーーグギィガアアアアァァァ!ーーー

 

それは顎。大きさは二メートルを越す程の巨大かつ強大な竜王の顎(ドラゴンストライク)、透明な顎は上条の血で染まりノコギリの様な牙がズラリと並ぶ口を広げる…上条はそれを自分の腕の様に動かす

 

「な、んだ…それは?」

 

アウレオルスがその顎を見て呆然とする、これは決して自分の黄金錬成が生み出したものではない、ならこれはなんだ?これが上条の右腕の中にあったモノ(チカラ)の正体なのか?その竜王の顎を見てインデックス達はおろか一方通行達ですら初めて見るそれに目を見開いて驚く…竜の牙が空気に触れた、それだけで美琴達の動きを封じていた重力場が消え美琴達は自由になり、インデックスを縛っていた縄も溶けるように消え去る

 

「な……」

 

幻想殺しは触れた異能を打ち消す異能だ、だが逆に言えば触れなければ消せない…それなのにあの竜の牙が空気に触れた瞬間に触れていない筈の異能が消えたのだ、アウレオルスが信じらぬとばかりにその竜王を凝視する

 

「気になるか?あの竜…いや幻想殺しの真の姿(・・・)に」

 

「な…!?何故生きている超能力者!?」

 

アウレオルスの動きが止まった、他の全員も驚きのあまり声が出ない、何故なら先程言葉を発した人物は死んだ筈の垣根だったからだ。彼は死んでいたのが嘘の様に元気な身体で不敵に笑いながら竜王の顎を見ていた

 

「簡単だ、俺を殺したのはあんたの魔術…つまり異能だ、なら幻想殺しで触れれば息を吹き返すて訳だ」

 

幻想殺しが自分にかかっていた異能を打ち消したのだと笑う垣根、アウレオルスはアゾット剣を杖に変化させ震える手で杖を上条へと向ける

 

「ど、竜王の殺息を発射せよ!」

 

アウレオルスは杖から竜王の殺息を放つ、上条の幻想殺しでも処理落ち出来なかったその魔術を、竜は大口を開けその光線を飲み込んだ

 

「……な」

 

ゴクゴクと水を飲んでいるかの様に竜王の殺息を飲み込んでいく竜、それを見てアウレオルスは顔を青くしていく

 

(この竜には黄金錬成が通用しな…!いや思うな!発動中にそんな事を思っては…!)

 

アウレオルスは頭の中で考えた事を否定する、そんな筈がない、自分の黄金錬成が通じない相手などいないと信じる。そして竜王の殺息を中断し杖から剣に変更しアゾット剣を頭上へ掲げる

 

「来たれ『光を掲げる者(ルシフェル)』!この者達に死を与えよ!」

 

アウレオルスがそう叫ぶと三沢塾の天井に青白い光が覆い天井が消える、そして夜空が見える様になった部屋に大きな影が映る。その姿は美しき金髪にザラザラとした黒い身体、赤く光る目、そして何よりも背中に生えた十二枚の歪な黒い雷で構成された翼が特徴的だった…その名は光を掲げる者。地獄の王にして神と対等の位置に座ることを許された唯一の天使だった存在。それをアウレオルスは召喚したのだ

 

「atmjwhjqjwjagj死pgjpj!」

 

ーーーグギィガアアアアァァァ!ーーー

 

光を掲げる者が電光で出来た剣を作り出しそれを竜王の顎へと振るう、それを竜王の顎が口でそれを受け止め電光の剣が打ち消される。だが光を掲げる者は右腕を掲げると再び電光の剣を生み出す。そして光を掲げる者は左手を向けその掌から強大な雷撃を放つ、御坂美琴の超電磁砲を鼻で笑うかの様な膨大な雷撃に竜王の顎は口を広げてその雷撃を飲み込む

 

ーーーグギィガアアアアァァァ!ーーー

 

「norusvk愚kvkscj行jmthtjagkhk」

 

そして今度は竜王の顎が攻撃を仕掛け、その顎で光を掲げる者を食い殺そうとする。光を掲げる者は黒い雷の翼から黒い放電を放ち竜王の顎はそれに牙で触れ放電を消滅させる。光を掲げる者が竜の首を切断する為雷光の剣を振るう、だが竜王の顎はそれを避け光を掲げる者の喉に噛み付こうとする。それを光を掲げる者は悪魔の魔術を発動し夜空に浮かぶ金星から極太の金色の光線を放ち竜王の顎はその光線を口を開いて飲み込む

 

「光を掲げる者よ!早くその目障りな竜を殺してしまえ!」

 

「mtjmjpjw破tjgm壊mjg!」

 

光を掲げる者は金星から放つ光線『明けの明星は地に堕ちた(アルゾフラドロップアウト)』を竜王の顎に放ち続ける。光を掲げる者は神と同等の力を持つ強大な存在。世界すら滅ぼせる最強の悪魔だ、それがこんな竜如きに負ける筈ないとアウレオルスは確信する…だが

 

「…時間をかけすぎたな」

 

「な…?」

 

「…もう遅え、出てくるぞ」

 

垣根がそう言った瞬間、上条の腕から更に何かが出現する…そして右腕から更に竜が出現した

 

ーーーキュラアアァァァ〜!ーーー

 

ーーーボオロロロロウウゥゥ!ーーー

 

ーーーグラギイイィィィ!ーーー

 

ーーーグラアアアアァァァァァ!ーーー

 

ーーーガギィアアアアア!ーーー

 

ーーーヴヴヴヴヴヴヴ…!ーーー

 

ーーーギィヤハハハハハ!ーーー

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

七体の新たなる竜…天使に似た竜、エネルギーが竜の形をとったモノ、槍状吻の頭部を持つ竜、単眼の竜、鉱石で出来た竜、盲目の竜、四ツ目の竜が右腕から出現し咆哮をあげながら光を掲げる者を、アウレオルスを睨みつける

 

「あ、あ……」

 

震えるアウレオルスを尻目に八体の竜達は光を掲げる者に襲いかかる、光を掲げる者は黒い雷で構成された十二枚の翼を剣の様に振るい竜達の首を切り落とそうとする、だが竜達は唸り声をあげてその翼に食らいつく様に噛み付き十二枚の翼を飲み込んでいく。光を掲げる者は全ての翼が竜達に食い尽くされるも翼無しで飛翔し雷の如き速さで竜達から逃れようとする。だが竜達は首を伸ばし空を飛翔する光を掲げる者を追いかける、光を掲げる者は掌から電光を放ち電光の剣を振るう。だがそれは竜達に当たる直前に音を立てて消滅する

 

ーーーグギィガアアアアァァァ!ーーー

 

ーーーキュラアアァァァ〜!ーーー

 

ーーーボオロロロロウウゥゥ!ーーー

 

ーーーグラギイイィィィ!ーーー

 

ーーーグラアアアアァァァァァ!ーーー

 

ーーーガギィアアアアア!ーーー

 

ーーーヴヴヴヴヴヴヴ…!ーーー

 

ーーーギィヤハハハハハ!ーーー

 

「vokrjrsvpj竜jpjt離mjatpjptjwh!?」

 

そして竜達が光を掲げる者に追いつきその顎を開き光を掲げる者の頭部に、両腕に、両足に、胴体に…身体のあらゆる部位に喰らいつく。光を掲げる者は必死に暴れて竜達の拘束から逃れようともがく。だが竜達は決して離さず更に強く光を掲げる者を噛み付ける、そして竜達は光を掲げる者の身体を引き千切った

 

「tjtjgpjgj嘘agjpjugj!??!?」

 

「る、光を掲げる者!?そんな馬鹿な!?じ、地獄の王である光を掲げる者が負けただと!?あり得ん!そんな筈がない!」

 

光を掲げる者は何かを喚きながら光となって消えていく…それを見たアウレオルスはあり得ないと頭を抱え叫ぶ、そして竜達は次の狙いをアウレオルスに定める

 

「あ……無 理…敵う……はず…な…」

 

震えて動けないアウレオルスに大口を開けて襲いかかる竜達。超能力者達はそのままアウレオルスが竜達に食い殺される…そう想像した…だが

 

「止めろ」

 

上条が一言発する、それだけで竜達の動きが停止する、全員が上条に視線を向かわせる

 

邪魔すんな(・・・・・)、アウレオルスは俺が倒す…テメェらはこれ以上出しゃばってくんな。アウレオルスは俺が止める」

 

ーーーグギィガアアアアァァァ……ーーー

 

ーーーキュラアアァァァ〜……ーーー

 

ーーーボオロロロロウウゥゥ……ーーー

 

ーーーグラギイイィィィ……ーーー

 

ーーーグラアアアアァァァァァ……ーーー

 

ーーーガギィアアアアア……ーーー

 

ーーーヴヴヴヴヴヴヴ……ーーー

 

ーーーギィヤハハハハハ……ーーー

 

その一言で竜達は空気に溶ける様に消えていく…そして竜達が消えると何かが上条の右肩に向かって飛んでくる…それはアウレオルスに切断された右腕、飛んできた右腕が切断された断面に接続される…そして繋がった腕が上条の意思によって動き始める

 

(な、なンだあれは……肉体再生(オートリバース)でもあンな人外じみた事は出来ねェぞ…)

 

一方通行はその現象をあり得ないと断定する、自分の腕がちゃんと動く事を確認した上条はアウレオルスへと一歩一歩ゆっくりと確実に歩み寄る

 

「な…!?く、来るな!死…」

 

アウレオルスは剣を上条に向け黄金錬成を発動させようとする、だがアゾット剣に何かがぶつかり壁際へとアゾット剣が吹き飛んでいく

 

「あ!?あ、黄金錬成が!?」

 

アウレオルスは情けなく壁際のアゾット剣へと手を伸ばす。アゾット剣を吹き飛ばしたのは垣根、垣根は一枚だけ翼を展開させ羽を飛ばしその羽でアゾット剣を吹き飛ばしたのだ

 

「……行くぞ」

 

「ひ…!来るな!」

 

上条が小さく呟くとアウレオルスへと向けて駆け出す、アウレオルスは低く悲鳴をあげると後退りしながら逃げるがアウレオルスは後ろにあった机に激突し逃げ場をなくす。そんなアウレオルスに上条は右手を振り上げる

 

(俺にはあんたが今までどれだけインデックスを救う為に頑張ってきたのか分からない……だけどインデックスを救いたいて気持ちが本物なのは理解できる)

 

(そんな奴がこんな所で終わっていい筈がない!だから俺があんたを元に戻してみせる!やり場のない怒りに身を任せて暴走してる今のあんたをインデックスを救おうと頑張ってた頃の優しいあんたに戻してやる!インデックスを救おうとしてたあんたを俺が、俺達が救ってみせる!)

 

「だからもう一度やり直してこい、この大馬鹿野郎!」

 

上条の拳がアウレオルスの顔面へと突き刺さる。アウレオルスの体が勢い良く床に叩きつけられ手足を投げ出しながらゴロゴロと転がりアウレオルスは意識を手放した

 

 

 

 

 




アウレオルスさんがそげぶされる珍しい展開。しかも竜達が第2巻部分で全員も出て来ちゃった…つまりアウレオルスの実力は雷神化ミコっちゃんと同等という事。そんな竜達に食われるのかな〜と思わせて旧約22巻のフィアンマ戦みたいに竜達を消してそげぶ…これはアウレオルスさんは味方になるな(確信)

ここで竜王の顎についての考察です、ほぼ暴論なので気にしないでください。作者の考えはこれだと思ってるだけですから

まず幻想殺しとは案外魔術サイドよりな能力ですよね。追儺霊装『ブライスロードの秘宝』として扱われたり、それ以前は洞窟や試練、武器としての形をとっていたり…それが上条さんの『神浄の討魔』の魂の輝きに惹かれ上条さんの右手に宿った…と言われてますが作者はこれを上条さんの内に秘めた通称中条さんと呼ばれる部分を封印してるのでは?と考察してます(これが神浄の討魔…これがハディートなのかラー・ホール・クイトの力なのか分かりませんが)。そして作者はふと考えました。上条さんの右腕から出た竜達とは上条さんの超能力に似た力なのでは?と

いや何言ってんだお前と思った皆様、まずは話を聞いてください。まず上条さんが今回出した8体の竜…そのうちの一匹である天使の竜はとある科学の超電磁砲のキャラ 春暖嬉美の右腕に宿ってしまいました。その時彼女はこう言ったんです「AIMジャマーの干渉外に出てようやくコイツを試す事が出来る」と、つまり竜王の顎はAIM拡散力場を発生させていると分かります。春暖嬉美の右手に宿ったのもあの天使の竜は幻想殺しのていとくんや海鳥ちゃんの能力みたいに噴出点的な何かだと思っています。そして上条さんの幻想殺しが右手で触れたものしか効果を発揮しないのもこの竜達が神浄の討魔を封印しているのに大部分の力を使っているから…と考えられます。これがテッラさんの原作で言いたかった事なのでは?と思います…それに上条さんは脳の開発をしたのに超能力が出現していません。これは幻想殺しがあるから…ではなく、幻想殺しがその影響を受け開発によって竜の形になったのでは?と考察してます

ですが、ここで大きな矛盾が。風斬さんは幻想殺しが超能力なら自分は存在していない(異能を消す能力がAIM拡散力場から出ているならそれが自分の体に入れば存在出来ない)。ここで皆様はじゃあなんでこんな説明したのかと思う筈です。ですが僕は上記では超能力に似た力としか言ってません。僕が思う幻想殺しとは超能力であると同時に魔術でもあり、そのどちらでもないものだと思っています。要するに超能力と魔術の複合とでも言いましょうか、幻想殺しは魔神が生み出した力…つまり魔術サイドの能力としたら、それを持った上条さんが能力開発を受けた際に幻想殺しの力に超能力の影響で変わり竜の姿となった…と考察してます…まあ他にも神浄の討魔の力に触れて変質したとかも考えましたがね…多分違ってると思うけど。そもそも春暖嬉美さんに宿った竜が本当に魅了(チャーム)の能力を持っているか分かんないですし…もしかしたらあの能力は春暖嬉美の能力が洗脳系でそれを竜王の顎が強化しているだけかもですし…なら竜がAIM拡散力場を発生させていたのも彼女の超能力の一部になっていたからかもですし…でもこの説があっていたとしたら上条さんの右手は科学と魔術が混じり合った力なのかもしれませんね

さて次回はアウレオルス編最終回、そしてまさかのあいつが登場。次回もお楽しみに


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悪魔来たりて悪魔が笑う…あれ天使は?

今回にてアウレオルス編は終わりでございます。ヘタ練と言われていた彼の強さが引き出せていたでしょうか?そして今回はまさかのあいつが登場です

序盤はアウレオルスさんの過去、姫神さんがヒロイン力発揮…アウレオルスさんが救われて終わり……と思わせてまさかのあいつ。こいつは序盤に出てきたらダメだろて言う奴です

そして漸くあの魔神が登場。今回は新約13巻をイメージしてみました。今回はギャグ要素の方が濃いです


『あ、来てくれたんだね先生!』

 

『……ああ、新しい魔道書を持って来た』

 

薄暗い部屋の中、彼女は太陽の様に明るい笑顔で笑った。彼もそれを見て微笑む。その男の名前はアウレオルス=イザード。その少女…インデックスの教師である。彼は魔道書を彼女に手渡し、彼女はそれをまるで親から絵本を受け取った子供の様な無邪気な笑顔を彼に向けながら笑いかけた

 

 

『インデックス。この本の132ページに記された魔女の撃退法について答えよ』

 

『えっと、魔女の撃退法は…』

 

アウレオルスは教鞭を手に持ち黒板に問題を書き綴る。そしてインデックスに問題を解く様に言い彼女は笑いながらそれに答えた

 

 

『先生!先生!』

 

『どうしたインデックス?』

 

『偶には先生と一緒に散歩に行きたいかも!会う度に勉強ばっかりじゃあ先生もつまらないでしょ?イギリスの名所を教えてあげるんだよ!』

 

『……私は君に知識を教えるのが仕事なのだが…必然、君が望むのなら行くとしよう』

 

アウレオルスは無邪気に笑うインデックスに手を引っ張られて外へと連れ出される、彼は困った顔をしつつも頬を緩ませて彼女と一緒に外へと出かける

 

 

『…今回も駄目だったか、すまんなインデックス。今回も君を救えなかった』

 

『いいんだよ先生、こうして私の為に頑張っているて気持ちだけで充分かも』

 

『……ありがとうインデックス』

 

アウレオルスが今回も救えなかったと顔を暗くして謝るが彼女はニッコリと微笑む。その気持ちだけで充分だと…それを聞いてアウレオルスは微笑むも気持ちは暗いままだった

 

 

『…何故だ、何故私は彼女を救えん?私は魔道書で世界中の人々を救うのではなかったのか?私の魔道書では彼女を救えないのか?』

 

アウレオルスは今回も彼女を救えなかった事により落ち込みながら次の魔道書を羽ペンで書き続ける。彼の目にはクマが出来ているが不思議と睡魔には襲われなかった、それだけ魔道書を書くのに集中していたからだ

 

『憮然、何故私は誰も救えぬのだ?私が世界中の人々の為に書いた魔道書も我がローマ正教の為にしか使われぬ…これでは何の為に魔道書を書いたのかわからないではないか…』

 

そう独り言を呟きながら彼は筆を進める、最大主教が言っていたインデックスの記憶を消す日まで後一ヶ月もない…早く急いで書かねば…その想いだけがアウレオルスの筆を進ませる

 

『…当然、私には彼女しかいないのだ。私は今まで誰も救えなかった。だがそれでも彼女を救いたいのだ』

 

彼は不幸な人を助ける為に隠秘記録官になったのに誰も救った事は一度もなかった…だから彼女だけでも救いたいのだ、彼女と出会わなければ自分はローマ正教の為にしか使われない魔道書を書き続ける誰も救う事も出来ない一生を過ごしていたかもしれないのだから…そう彼が思った時、ふと彼は筆を止める

 

『……まさか…私は彼女に救われていた?』

 

そう考えた瞬間アウレオルスの魔道書に何を書こうとしていたのか忘れた。自分はあの子を救う為にこの本を書いていた。なのに自分が救おうとしていた少女に逆に自分が救われていた…そして何故自分が彼女を救おうとしているのか理解した

 

『……愕然、私は彼女に会いに行く理由が欲しくて…魔道書を書いていたのか?』

 

そう彼が弱々しく呟いた、彼女を救うという名目で彼女に会いたいが為に近づこうとしていた自分を恥じ、その為にわざと彼女を救う気の無い本を書いていたのかと自分自身を疑う、それ以降彼は筆を進められなかった

 

 

『すまない、本当にすまない!私は大嘘つきだ!君を救うと誓いながら救えなかった!私は最低の人間だ!何が救うだ!結局救えなかったではないか!』

 

『泣かないで先生、私だって辛いんだよ。でも仕方ないかも…これが私の運命なんだもん』

 

『運命?運命だと!?こんな悲劇が君の運命なのか!?そんなのは認めん!認めんぞ!』

 

アウレオルスは泣きながらもう1ミリも身体を動かせないインデックスに謝る、そんなアウレオルスに微笑む彼女…だが彼女は気づかない、自分が目から涙を流している事に

 

『…私だって先生との授業や思い出を忘れたくない…でもこの運命からは結局は逃れられないんだね』

 

『…めん、認めんぞ!私は君を救うと決めたのだ!こんな結末は許さん!許さんぞ!』

 

インデックスも自分も忘れたくなかったと泣きながら笑う、アウレオルスがそんな彼女を見て叫ぶ。こんな悲劇があっていいのかと…

 

『うるさいですよ、少し黙ってくれませんか先生さん』

 

『がぁ!?き、貴様らぁ…!』

 

『やれやれ、今回も失敗しましたか。まあこちらとしてはどうでもいいのですが…ああ、貴方がイギリス清教と密会しているのはもうローマ正教に知れたようですよ?そのうち追っ手が来ると思うので逃げたらどうです?どうせ貴方はイギリス清教からもお払い箱ですし…おい、その錬金術師をつまみ出せ』

 

そんな年甲斐もなく泣き喚くアウレオルスにイギリス清教の魔術師が蹴りを入れ無理矢理黙らせる、そしてその魔術師はもうお前はお払い箱だと部下の魔術師達にアウレオルスを追い出せと言う。部下達がアウレオルスを部屋から放り出そうと引きずる、その時インデックスが最後に呟いた

 

『信じてるから、先生なら私をいつか助けに来てくれるて信じてるから』

 

彼女のその声が聞こえた後アウレオルスは叫んだ

 

『…ああ!いつか絶対に助け出す!それまで待っていてくれ!きっと!きっとだ!絶対に君を助ける!』

 

アウレオルスが力一杯叫んだ後アウレオルスは魔術師達に連れていかれて彼女の前から消えた。そして彼女は微笑んだ、いつか必ず自分の先生が助けてくれると…

 

 

「起きて。アウレオルス」

 

「………ぁ」

 

アウレオルスは姫神の声で目を覚ました。アウレオルスは目を動かし状況を確認する、自分の周りには超能力者達が彼を見ており姫神が彼を見下ろす様に彼の目の前に見える

 

「……何をやっている姫神?」

 

「ん。膝枕」

 

「……そうか」

 

アウレオルスはあえて突っ込まなかった、突っ込んだら負けな気がした。ただそれだけである、彼は起き上がって超能力者達を見据える

 

「…何?まだやろうてのか?」

 

「…いや、私の負けだ。君達には勝てない」

 

麦野がまだやる気かと睨むがアウレオルスは掠れた声で勝てる気がしないと皮肉げに笑う

 

「…そこの少年、悪いがその手に持っているアゾット剣を返してはくれないか?」

 

「…ほらよ」

 

「!?か、垣根さん!?返してしまっていいんですの!?」

 

「いやそんな事はもうしねえよ、そうだろ錬金術師」

 

アウレオルスが垣根が回収していたアゾット剣を返してくれと呟くと垣根は無造作にその剣を投げ渡す、それを見て帆風が慌てるが垣根はただ笑うのみ、アウレオルスは剣を超能力者達に向けて呟く

 

「……超能力者達の傷を癒せ」

 

その一言で帆風の折れ曲がっていた腕が一瞬で元に戻る、一方通行達が負っていた怪我も綺麗さっぱり消えて無くなる。まるでアウレオルスと戦う前に身体の時間が巻き戻ったかの様に

 

「……アウレオルス」

 

「……哀然、姫神…私は一体…何がしたかったのだ?救おうと思った教え子すら救えず…我が人生は何の為にあったというのか…」

 

「……」

 

アウレオルスは乾いた笑みを姫神に向ける、怒りが静まった彼には願いが叶わなかったという虚無の心しかない。言わば生きる屍…もう何をすればいいのか分からない、そんな彼の表情を見て姫神は何と声をかけたらいいか分からなくなる…そんな彼に垣根が歩み寄る

 

「いや、まだあんたにもできる事はあるぜ」

 

「……唖然、何だと?」

 

「俺らは確かにインデックスを助けた、だが完全に助けたわけじゃねえ…まだインデックスには最大主教がかけた術式が僅かながら残ってる…それに記憶の完全な復活もまだだ」

 

垣根がまだできる事が残っていると言うとアウレオルスが垣根に目を向ける、垣根がインデックスを蝕んでいる術式がまだ残っていると教える

 

「だからあんたの黄金錬成でインデックスを完全に呪縛から解き放って、なおかつ失われた記憶を取り戻して欲しいんだ」

 

「……無理だ、出来る筈がない…知っているだろう、私の黄金錬成は自分が出来ないと思った事を実現してしまう力だと…私はインデックスを救えないし記憶を取り戻す事も出来ない…」

 

垣根が黄金錬成で失われた記憶を取り戻し『首輪』の呪縛から完全にインデックスを取り放ってくれとアウレオルスに頭を下げる、アウレオルスはそれを聞いて目を見開くが…すぐに顔を俯ける

 

「…所詮彼女を救うなど私には大それた願いだったのだ…私の様な凡人が彼女を救おうなど…出来る筈がなかったのだ…無理だ、私には出来ない…三年前と同じ…私には…彼女を救う事など出来ぬのだ」

 

アウレオルスは三年前の事を思い出す、あの時自分はインデックスを救えなかった、なら今回も同じ筈だと…アウレオルスは完全に自信を喪失していた、そんな彼に上条が何か言おうとした時姫神が彼の両頬に手を当てる

 

「…姫神?」

 

「そんな事ない。貴方なら出来る。私に希望をくれた時みたいに。貴方ならあの子を救える」

 

「……憮然、無理だ…私は誰も助ける事など出来「そんな事ない」…何?」

 

「貴方は私を助けてくれた。それは変わらない事実。貴方なら出来る。貴方の力は…誰かを助ける為の力なんでしょ?」

 

アウレオルスが姫神を見る、彼女は微笑みながらアウレオルスならインデックスを助けられると言い切る、自分を助けてくれた時の様に…貴方にはそれが出来ると言い切る

 

「あんたのその力ならインデックスを完全に助けられるんだ。それは俺達には出来なくてあんたにしか出来ない事なんだ」

 

上条はインデックスを完全に助ける事はあんたにしか出来ないと言い張る、それを聞いてアウレオルスはアゾット剣を握りインデックスの元へと近づく

 

(出来るのか?この私に…いややる前からそんな気弱な事を考えるな!…だが救えなかった私に彼女を助ける事が出来るのか?…駄目だやっぱり私には彼女は救えない)

 

アウレオルスはアゾット剣をインデックスに向けながら彼女を助ける為の言葉を言おうとして…言えない。もし成功しなかったら?やはり自分には出来ないんだと頭の片隅で思ってしまう…やはり自分には人を救う事など…そうアウレオルスが考えた時アゾット剣を持っていない方の手を姫神が両手で握る

 

「…ひ、姫神?何を…」

 

「こうしてれば安心するかも。そう思って…嫌?」

 

「………いやそのままでいい」

 

突然な行動にアウレオルスが驚くが姫神は真っ直ぐ彼の目を見てこうしてれば不安にならないと笑いかける、それを見てアウレオルスは一瞬顔を固め無表情な彼の顔に笑みが浮かぶ

 

(…不思議だ、彼女に手を握ってもらっていれば…不思議と不安がなくなる…今なら…今の私なら…彼女を救える)

 

不安はなかった、出来ないと思う事はなかった、姫神が彼の手を握っている限り自分に出来ない事はない様にアウレオルスは感じていた…そして剣を強く握り彼は力強く、されど静かな声で全てを終わらせる言霊を吐き出す

 

「……彼女を縛る術式を破棄せよ(・・・・・・・・・・・・)、そして彼女の失われた記憶を蘇らせよ(・・・・・・・・・・・・・・)

 

その一言でインデックスに僅かに残っていた隙あらば彼女を擬似魔神に変貌させる術式が完全に崩壊した。同時にインデックスの脳内に膨大な量の記憶が流れてくる…その膨大な情報量にインデックスは身体をふらつかせステイルが彼女を支える

 

「大丈夫かインデックス!?」

 

「……うん、大丈夫だよステイル」

 

心配するステイルに笑いかけるインデックス、そして彼女はアウレオルスに向き合う

 

「…全部思い出したんだよ先生(・・)、ステイル達との記憶も…今まで私と一緒にいてくれた人達との記憶も…全部思い出せたんだよ」

 

「……そうか、成功したのか」

 

インデックスが全部思い出したと言うとアウレオルスは成功したのかと笑う

 

「……やっぱり先生は約束を守ってくれたね。先生は私を助けてくれた」

 

「……そう、だな…三年もかかってしまったが…漸く君を救えた」

 

「……先生、私を助けてくれてありがとう」

 

インデックスが自分を助けてくれた先生に笑顔で感謝の言葉を伝える。アウレオルスはその言葉を聞いて…眼から涙をこぼした

 

(…ああ、そうだった。私は…この言葉を聞きたくて、この子の笑顔が見たくて…これまで頑張ってきたのだ…)

 

「…よかった、本当によかった…君の助けになれて…良かった!」

 

インデックスの救いの一部になれてよかったと掠れる声でアウレオルスは呟く、確かに彼はインデックスを救えなかったかもしれない。だが彼女の助けになる事はできた。アウレオルスは彼女にこの言葉を聞きたいが為だけにこれまで頑張ってこれたのだ。アウレオルスの心が満たされていく。この三年間は決して無駄ではなかった、最後の最後で彼はインデックスを救った一人になれたのだ

 

「良かったね。アウレオルス」

 

彼は顔を涙でぐしゃぐしゃにしながらよかったと泣いた、生まれて初めて大声で泣いた。漸く彼の望みは叶ったのだ。この日アウレオルス=イザードは救われた、インデックスの主人公にはなれなかったがそれでも構わなかった。姫神は笑って泣き喚くアウレオルスの頭を撫でる…こうしてこの彼の悲劇の物語は終わった

 

 

 

 

 

 

「ほう、今回も御都合主義(ハッピーエンド)の様なりけりね」

 

「「「「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」」」」

 

唐突に声が部屋に響く、全員が扉の方を向く。そこにはある女が立っていた

 

「……何故ここに貴様がいる?」

 

ステイルがその姿を見て怒りの形相になる、アウレオルスも何故ここにこいつがいるのかと目を見開く、その女はベージュの修道服を着用し身長の2.5倍はある宝石の様に美しい長い金髪を揺らしながら垣根達を見て笑っていた

 

「…貴女はイギリスにいる筈…いやそもそも何故ここに来たのです?」

 

神裂も親の仇を見る目でその女を睨む、彼女は神裂達の…いやアウレオルス達を含むインデックスのパートナーだった者達の仇同然だ、何しろ彼女がインデックスに『首輪』をかけたのだから…そして神裂とステイルはその女の名を叫んだ

 

「「答えろ!イギリス清教 最大主教(アークピショップ) ローラ=スチュワート!」」

 

「は〜い!息災なりけりかしらステイルに神裂?」

 

その女こそ全ての元凶 清教派のトップでありインデックスの記憶を奪う様に術式を組み込んだ女…最大主教 ローラ=スチュワートである。彼女は相手を馬鹿にする様な笑みを向けて神裂達に手を振る

 

「…垣根、こいつがインデックスを苦しめてた黒幕かにゃーん?」

 

「…そうだよ、この女がインデックスを苦しめステイル達の運命を弄んでいた女だ」

 

「さあり、私こそがイギリス清教の最大主教 ローラ=スチュワートでありけるのよ」

 

麦野がこいつが黒幕かとローラを睨みながら垣根に聞くと垣根は頷く。全員がローラを睨む中ローラは涼しげな顔で笑う

 

「で、何をしに来やがった女狐」

 

「お〜怖いにありけるのよ、私が何をしに来たなど分かりべき事でしょ?」

 

垣根がローラを睨みながら何をしに来たのだと呟く、それに対しローラはへらへらと笑って分かりきった事だと嘲笑う

 

「禁書目録の回収なりけりよ、科学サイドに魔術師を…しかも十万三千冊の魔道書の知識を持つ禁書目録を置いておくのは危険と見てな、わざわざ私が出向いた次第よ」

 

ローラは禁書目録が学園都市については魔術サイドと科学サイドの天秤が崩れてしまう、だから連れ戻しに来たと笑う。それを聞いて全員が目を見開いた、インデックスはステイルの背中に隠れてローラを怯えながら見る

 

「い、嫌なんだよ…私はステイル達やくろこ達と一緒にここで暮らすんだもん」

 

「…分かっているインデックス、僕がこの女から君を守る」

 

「お〜カッコいいよな、だが無駄なりけりよ。この私相手に勝てると思っているのか?それにこのままでは学園都市と我が清教派による戦争が起きるなりよ…全ては貴様がここにいるせいで…それでもここにいたいのかしら?」

 

インデックスを守るかの様にステイルがルーンカードを取り出し、神裂も刀を抜刀する。ローラはただ笑みを浮かべてここにいれば戦争になるぞと脅し、それを聞いてインデックスが青ざめる…自分のせいで友達が危険な目にあってしまうと…それを見て笑うローラに帆風が喋りかける

 

「……あの、一つ聞いていいですか?」

 

「なんなりか小娘?私は今機嫌がよい、なんなりと聞くがいい」

 

「……その馬鹿見たいなエセ古文みたいな話し方はワザとですか?それとも真面目に喋っているのですか?」

 

「………」

 

帆風の言葉にローラの動きが固まる

 

「な、え、あ! お、おかしいの?『日本語(ジャパニーズ)』とはこんな感じといふものではないければかしら!?」

 

「…いや日本語はそんなんじゃないんだよ」

 

「…愕然、真面目に喋っていたのか…私達を馬鹿にしているのかと…」

 

「……あんな馬鹿に騙されていたのか」

 

はわわ!と慌てるローラに外国人三人がドン引きしていた、彼らは外国人と思えぬ程日本語が流暢である。こほんとワザとらしく咳をしたローラは冷や汗をかきながら口を開く

 

「…ふ、まさか…今のは貴様らを馬鹿にする為に話していただけよ(あ、あぶねー!クセになる前に言葉遣い直せてよかったー!てか土御門の奴騙しやがったな!でもまだバレてない!セーフ!)」

 

冷静な口調で今のは遊びだと笑うローラ、内心では動揺していたがバレていない筈と安心する、まだクセになっていなかったので誤った口調を改めれた

 

「まあそんな事はさておき…どうする超能力者共よ、大人しく禁書目録を引き渡すなら貴様らだけは見逃してやってもいいなり…ゴホン、見逃してやるぞ」

 

ローラは誤った口調に戻りかけるがなんとか言い直しインデックスを渡せば命だけは助けてやると笑う。だが垣根はそれを聞いて笑っていた

 

「馬鹿か、テメェは…たかだが清教派の雑魚共に学園都市がビビるとでも?それにこっちにも魔術師達がバックにいるんだぞ?」

 

「知っている、ローマ正教やら以前貴様らがスコットランドで盗んだ原典たるタロットカード…確かに数の差では学園都市の方が上…だがこちらには禁書目録を上回る切り札があるのでな」

 

「…切り札だと?」

 

「貴様なら知っているのではないか?幻想殺しの同質にして対極の力 理想送り(ワールドリジェクター)の存在を」

 

「……!?まさか!」

 

「そう、そのまさか…私は理想送りを手中を収めている。その気になればいつでも学園都市を新天地に送れるのだぞ?」

 

垣根が学園都市にはローマ正教を筆頭とした魔術師達との繋がりがあると笑う、だがローラはそれを知った上でこちらにも切り札 理想送りがあると笑うと垣根が目を見開く

 

「理想送り…?俺の右手の対極?」

 

「知らないのも無理はない。生まれたのは最近だからな…まあいい、理想送りなら貴様らなど赤子同然よ」

 

上条が自分の右手を見ながら理想送りと言う単語を呟く、理想送りなら超能力者ですら赤子扱いだとニヤニヤと笑うローラ、そんなローラに垣根が言葉をかける

 

「…お前の目的はなんだ?」

 

「?禁書目録の回収だと言った筈だが?」

 

「嘘つけよクソ悪魔(・・・・)、テメェが本当の事を言うわけねえだろうが。インデックスの回収てのは表向きで裏で何か考えてるんだろ?なあ大悪魔コロンゾン(・・・・・)

 

垣根がローラの事をコロンゾンと呼ぶとローラの動きが止まる。全員が垣根の言った意味を理解できない中ローラだけは歪んだ笑みを浮かべ垣根の顔を見つめる

 

「……何だ、バレていたのか」

 

「当たり前だ、この俺を馬鹿とでも思っていたのか?」

 

「流石だな垣根帝督(イレギュラー)。この世界の者とは違う魂を持つ男よ…私がアレイスターと同じ敵と認識しているだけはある」

 

ローラ…コロンゾンは悪戯がバレた子供の様な顔をして嘲笑う、そして垣根の事をイレギュラーと呼び普通の者とは垣根は魂が違うと呟く

 

「こ、コロンゾン…?そんな悪魔の名前なんて知らないんだよ」

 

「コロンゾン、悪魔であるにも関わらず邪悪の樹(クリフォト)ではなく生命の樹(セフィロト)深淵(ダアト)にひそみ、人の魂の上昇を防ぐ悪魔…それがこいつだ」

 

インデックスはそんな悪魔は知らないとコロンゾンを凝視する、垣根がコロンゾンについて説明する。そしてコロンゾンは笑いを消し口を重々しく開く

 

「その説明では足りぬな、世界にあまねく万象とは生と死のサイクルの中にある。私はその詰まりを取り、循環不全を修正したる存在。すなわちこの私 コロンゾン…つまり人体でいう白血球と言ったところか」

 

コロンゾンが自分は世界の異常を治す白血球の様な存在だと教える

 

「さて、貴様らに宣戦布告を告げるだけの予定だったが……正体もバレていた様だし、このまま帰るというのもあれだ…ついでに全員殺してしまうか」

 

「……は、やれるもんならやってみやがれクソ悪魔が」

 

もうここで全員殺しておくかと軽くコロンゾンが呟き髪をウネウネさせる、垣根は未元物質の翼を展開しコロンゾンを睨む。上条達も垣根の横に並びコロンゾンを睨みつける

 

「お前の敵は垣根だけじゃないぞ!」

 

「悪ィが素直にハイそうですか、て殺される訳にはいかねェンだ」

 

「悪魔だかなんだか知らねえが私らを敵に回した事を後悔させてやるよ」

 

「それにアンタがインデックス達に苦しい思いをさせたんでしょ?その話を聞いた時から一発ぶん殴りたかったのよね」

 

「美琴に同感、今まで貴女が踏み躙ってきた人達の苦しみを教えてあげるんだゾ☆」

 

「お前が悪巧みしてる事は分かった、俺がその腐った根性を叩き直してやる」

 

「悪いですが貴女をここで止めさせてもらいます」

 

「……きひひ、まさかこの私を止める気でいるのか?」

 

全員が自身の能力を発動させコロンゾンを睨む、だがコロンゾンはニヤリと悪魔の如き笑みを浮かべる。その余裕に超能力者達は悪い予感を感じる

 

「……舐められたものだ、このコロンゾン相手に貴様ら虫ケラが勝てると思っているのか?身の程を知れ塵芥が」

 

瞬間コロンゾンから溢れんばかりの殺意と魔力が放出される、それを肌で感じた瞬間超能力者達は動けなくなった、それは単純な恐怖、生物なら誰もが感じる感情に震えて全員動けない…全員が悟った、コロンゾンには勝てないと。自然災害に人が抗えない様に、蟻が龍に勝てない様に超能力者達がコロンゾンに勝てるわけがなかった。全員が今や萎縮していた、恐怖の所為で演算が出来ず削板と上条も何の行動も起こせない

 

「軽く殺意を当てただけでこれか…期待外れにも程がある…まあいい、さっさと去ね」

 

コロンゾンの長き金髪が淡く光り髪が伸びて槍の形となる。そして上条達を串刺しにする為にその髪が伸びる…そして成すすべなく彼らは大悪魔に串刺しに…

 

「お前こそこいつらを舐めすぎだコロンゾン」

 

ならなかった。垣根が神秘的な光で輝く翼でその黄金の槍と化した髪を防ぐ、僅かに驚くコロンゾンに呆然と垣根を見る上条達

 

「お前は当麻達を甘く見過ぎなんだよ、こいつらはお前が思っている以上に強いぞ」

 

「…ほう?」

 

垣根には恐怖の感情は見えない、彼は上条達の前に立ちコロンゾンから彼等を守る様に立ち塞がる。それを見たコロンゾンは醜悪な笑みを浮かべ愉快そうに笑う、そして未だ恐怖で動けぬ上条達に目を向け話しかける

 

「なあ、貴様らは気づいているか?自分達が垣根帝督にとって足手まといになっている事に」

 

「足手まといだと…?」

 

「実際そうだろう?貴様らはこの私に恐怖し動けずそんな貴様らを垣根帝督が守っている…これを足手まといと言わずしてなんと言う?」

 

コロンゾンは上条達の事を足手まといだと嘲笑う、垣根はコロンゾンに恐怖を抱かず立ち向かえるのに対し彼らはコロンゾンに恐怖し立ち向かえない…コロンゾンはそれを指摘する

 

「ああ、哀れなるかな垣根帝督。望みさえすれば魔神や神上にも届きうる才を持ちながらもちっぽけな友情という足枷のせいでその可能性を諦めた者よ、友という名の弱者共のせいで貴様はいつまで経っても人という縛りから抜け出せぬ…全ては貴様らが弱いせいでな」

 

「足、枷?」

 

コロンゾンは言う、垣根にとって上条達は足枷であると、足手まといの所為で彼はいつまで経っても人間をやめられないと。上条達は垣根を見る…自分達は本当に足手まといなのかと

 

「本当に哀れだな垣根帝督。無限の可能性がありながらも弱者達が邪魔で「煩え」…ん?」

 

「煩えんだよクソ悪魔、当麻達は関係ねえだろうが。俺はこいつらといたいからいるだけ、悲劇が嫌いだから止めるだけ…ただそれだけだ…それに俺はこいつらを足枷だと思った事は一度もねえ…それ以上友達を悪く言ったら…許さねえぞコラ」

 

垣根はコロンゾンが悪魔らしく言葉で上条達の心を抉ろうとしているのに気がついていた。垣根はそれ以上友達を悪く言うなと睨みつける。それを見てコロンゾンは笑った。それは侮蔑や哀れみの意味ではなく本当に心の底からの笑みが込められていた

 

「…この善人め、そんなにも友情が大事か、ならばその大切な友人ごとあの世に送ってやろう」

 

コロンゾンはそう言うと右手をまるでレイピアを構えるような仕草をしながら召句を呟く

 

「あらゆる数は等価。我が右の手に蘇生のヌイト、有限の域を越えて広がる数価(かのうせい)を見よ。我が左の手に復讐のハディト、極小点はあらゆる力を収斂・収束して一つの意味を作り出す。すなわちここにラー=ホール=クイトの円にて無限の加速から解放されし一撃を現世の表層に顕さん」

 

Magick:FLAMING_SWORD(フレイミングソード)…燃える剣とも呼ばれるそのホルスの時代の魔術。その一撃は容易く垣根達を…いな学園都市を消し飛ばす程の威力を秘めている。そんな一撃を前に垣根は翼で対抗しようとするがコロンゾンはそんなもので防ぎきれるかと嘲笑う

 

「さらばだ垣根帝督(イレギュラー)

 

コロンゾンがその右手を突き伸ばそうとした直後だった、三沢塾の天井を打ち破って十本の言語では説明できない『矢』の様な何かがコロンゾンに迫る

 

「!?うお、おおおおおおぉぉぉぉぉ!!?」

 

コロンゾンはそれに飲み込まれ矢が床に命中し爆煙が生じコロンゾンが立っていた場所が見えなくなる…今の現象はなんだと全員が目を見開いていると自分達の背後に人の気配を感じ振り返る。そこには毛皮のコートの中に黒の革の装束を着た、鍔広の帽子を被り黄金の槍を片手に持っている14歳くらいの少女が机に腰掛けていた

 

「よお盟友。助けに来たぞ」

 

「貴方は…一体?」

 

「オティヌス。元魔神にして学園都市の魔術師達を率いるリーダー、かつて垣根帝督(盟友)と一緒にいたいが為に魔神の力を放棄した愚か者だ」

 

帆風は誰だと尋ねると彼女はオティヌスの名乗る。そして煙が晴れそこには無傷のコロンゾンが立っていた

 

「あ〜驚いた驚いた。魔神としての力を失ってもアレだけの威力とはな」

 

「…(いしゆみ)を受けても無傷か、化け物め」

 

コロンゾンが大袈裟なリアクションをしながら笑う、オティヌスがやはりダメかと軽く舌打ちし手に持った黄金の槍 主神の槍(グングニル)をコロンゾンに向ける

 

「だが元魔神が加わった程度でこの私に勝てると思っているのか?」

 

「いや流石に無理があるだろうな…だがこちらにはメイザースやアレイスター、脳幹…それに黄金夜明の魔術師達がいる…流石のお前でもこれだけの戦力とまともに戦って無事でいられるのか?」

 

「それで私が怖気ずくとでも?たかがその程度の戦力で私が怯えるとでも思ったか?」

 

コロンゾンは貴様が加わった所で自分には勝てないと余裕の笑みを見せるがオティヌスは今ここにアレイスター達が向かって来ているとコロンゾンに言う、コロンゾンはそんな程度の戦力では自分には勝てないと薄く笑いながら髪を発光させる…オティヌスと垣根がコロンゾンを睨みコロンゾンは微笑み続ける…ただそれだけなのに上条達は時間が無限に引き伸ばされたと感じた。変な動きをしたら即座に殺される。そう肌で感じた、黄金錬成を持つアウレオルスも姫神を背中に隠し守っているので精一杯だった…そしてコロンゾンはゆっくりと唇を動かす

 

「………やめーた、こんな所で戦う必要などないしな…貴様らを潰すのは理想送りでいい、それで駄目ならクリファパズル545に任せればいい…私自ら滅ぼすのも一興だが…それでは楽しくない、一気に終わらせてしまうよりもじわじわと痛めつける方が好ましい」

 

コロンゾンは一瞬で殺意と魔力を消す、それだけで部屋に充満していた重々しい空気がなくなる。彼女は気怠げな顔をすると何も自分が手を出す必要はない、それに一瞬で終わらせるよりもゆっくりと破滅する様を見る方がいいと呟く

 

「ああ、そう私の本当の目的というのは宣戦布告だよ、いくら仲間を増やそうがこの私には勝てないという絶望を理解させる為のな」

 

「趣味が悪いな…ま、それすらも本当か分かんねえがな…悪魔てのは嘘吐きだしな」

 

「それはお互い様だろう垣根帝督、いずれ理想送りやその仲間達が学園都市に襲来する…精々首を洗って待っている事だな」

 

コロンゾンが本当の目的は宣戦布告だと教えるが垣根はそれも嘘ではないかと疑う。コロンゾンはニヤリと笑うといずれ理想送りがいずれ学園都市にやって来ると笑みを浮かべクルリと身を翻しその場から消えていく

 

「……終わった…のか?」

 

緊張感から解放された上条達は地面に膝をつかせ過呼吸気味になる…コロンゾンと言う恐怖から生き延びられて生きているという喜びを感じていた

 

「見逃されたか、こちらが下に見られているようで腹が立つが仕方あるまい…怪我はないか盟友?」

 

「俺は平気だ、一回死んだ程度だしな」

 

「なんだたった一回死んだ程度か、よくある事だな」

 

(いや死ぬ事がよくある事なのですか?)

 

オティヌスは垣根に怪我がないか聞くと垣根は笑って一回死んだだけだと教える、彼女も一回死んだだけかと笑って返す。それをおかしいと返す神裂は間違っていない

 

「おや、もう終わってしまいましたかねー?」

 

「うお!?壁から緑のオッさんの首が生えてきた!?」

 

ヒョコとテッラが壁から顔を出した為削板が驚きの声をあげる。そのまま幽霊みたく壁から抜け出し騎士達を連れてアウレオルスに近づく

 

「……神の右席か。背教者である私を殺しにきたか?」

 

「いえいえ、殺したりなんかしませんよ。貴方がローマ正教を裏切ったのは一人の無垢な少女を救う為、それならば主も許してくれる筈なのですねー。ただちょっとバチカンまでそこのお嬢さんと一緒に来て欲しいだけなのですよー」

 

「判然、元よりそのつもりだ。私は捕まって当然の人間なのだからな、命があるだけありがたい」

 

「素直な事は良い事なのです…あ、そこのお嬢さん…貴方にはこちらのケルト十字を…あのフィアンマが吸血殺しの力を封じる様に作った物です」

 

テッラはバチカンまで付いて来てもらうと笑うとアウレオルスはそれに頷く、そしてテッラは姫神にネックレスの様な首にかける十字架を渡す

 

「……また会いに来てもいいかインデックス?」

 

「勿論なんだよ!ステイルやていとく達もまた会えるのを楽しみにしてると思うんだよ」

 

「……晏然、ならまた姫神と共にここに来よう…ステイル=マグヌス」

 

「…なんだ錬金術師」

 

「……この子を頼んだぞ」

 

「……言われなくてもこの子は僕が守るさ」

 

「……毅然、ならばよし…またせたな、連れて行って構わん」

 

アウレオルスがまた会いに来てもいいかとインデックスに言うと彼女は笑って頷く、アウレオルスも笑い返すとステイルにインデックスを守ってくれと言う。ステイルは当たり前だと言ったのを聞いてアウレオルスがテッラに連行しても構わないと喋る

 

「なら、バチカンまでレッツゴーなのですよー」

 

「まてエリマキ、私の骨船(こつせん)でバチカンまで移転させてやろう」

 

「それは助かりますねー、ではさようならなのです」

 

オティヌスがバチカンまで自分の魔術で送ってやると言うとテッラがそれに甘える、そしてシュンとアウレオルスとテッラ達の姿が消える、空間移動の類かと上条達は考えるがここからバチカンまで一発で送り届ける事は空間移動では無理なのでオティヌスの技量に驚く

 

「…さて、盟友の仲間達もさっさと帰れ。今から私は盟友と話があるのでな…」

 

「え?いや、ちょっと待…」

 

オティヌスが上条達を一瞥し早く家に帰れと呟く。何か言おうとした上条達だがそれを言う前にオティヌスが骨船でそれぞれの家や寮に転移させる

 

「…骨船て幻想殺しでも転移出来るのて便利だよな…でもあれ誤差酷いだろ?大丈夫なのか?」

 

「……まあ最近はミスをしなくなったし大丈夫だろう…床や天井、壁に挟まれているかもしれんがな…それは私の責任ではない」

 

「……あいつらが無事である事を祈っとくぜ」

 

オティヌスは目を逸らしながらちゃんと送り届けられたらいいなと呟く、垣根は明日ちゃんと生存確認をしようと思った

 

「しかし盟友、今回ばかりは私が助けに来なかったらあのクソ悪魔に殺されていたんじゃないか?」

 

「…だな、自動書記や黄金錬成でも難易度イージーなのにラスボスレベル奴が来るとか…パワーバランス考えろよ…てかオティちゃんどこ行ってたの?」

 

「サン=ジェルマンとかいうバグ野郎をトール達と一緒に駆逐して来た」

 

「あっそ、あのペテン師ね…まあどうでもいいや…俺も帰ろ」

 

オティヌスが自分が助けに来なかったら危なかっただろうと垣根に笑いかける、垣根もそうだなと相槌を打つとそのまま帰ろうとする、がオティヌスが垣根の肩に手を当てる

 

「待てよ盟友、飯はまだ食ってないだろう?一緒にじゃがバターを食べないか?」

 

「じゃがバター好きだよなオティちゃんて…いや俺早く早く帰って飯食って寝たいんだけど」

 

「知るか、今日は脳幹達とモンハンやるつもりでいるから寝かせねえぞ」

 

「…我儘な魔神様ですこと」

 

じゃがバターでも一緒に食べようと笑うオティヌスに帰りたいですと呟く垣根、それを無視してオティヌスは垣根を引きずり始める…そんな自分勝手な魔神様に垣根は溜息を吐いた

 

 

「…潤子さん遅いですね…もうとっくに門限は過ぎているのに」

 

入鹿が時計を確認する。もう門限をとっくに過ぎているといるのに帆風が帰って来ない事を心配していた

 

「もしかして何かの事件に巻き込まれ「きゃ!」…え?」

 

何かの事件に巻き込まれたのではと考える入鹿だったが背後で声が聞こえ振り返ると、ベットに倒れこんだ帆風がいた

 

「え?さっきまでいなかったのに…というかこんな時間まで何をしてたんですか潤子さん」

 

「……」

 

「え?だんまりですか?無視されると私泣いちゃいますよ?」

 

入鹿がこんな時間まで何をしてたのかと尋ねるが帆風は何も喋らない

 

(……ようやく分かりました…今までわたくしや女王達は垣根さんと同じ場所に立ってると思っていました、でも違った…垣根さんはわたくし達よりも遠い場所に立っている事に)

 

コロンゾンとの戦いで自分が何の役に立たなかった事に気づき、そこで垣根がいる場所と自分がいる場所が遠い事に気づく、コロンゾンが言っていた足手まといというのも案外的外れではないかもしれない。実際に自分は何の役にも立っていないのだから

 

(でも、それでも……わたくしは垣根さんの力になりたい、何年かかっても垣根さんと同じ場所に並びたい)

 

帆風は決意する、例え自分が周回遅れでも垣根と同じ場所に立ちたいと。垣根と一緒に戦いたいと

 

(待っていてくださいね垣根さん、今は頼りないかもしれませんが…いつか貴方に頼られるぐらいの女になりますから)

 

 

 

 

 

 

「……寒い」

 

「…ここ何処?」

 

アウレオルスと姫神は寒さに震えていた。それもその筈、彼らがいる場所は吹雪が吹いており地面は凍てついている。そしてアウレオルスと姫神の服装はスーツに巫女服、これで寒い筈がない

 

「…優先する、人体を上位に、冷気を下位に…ふむ、ここは南極の様ですねー」

 

テッラが光の処刑で寒さを和らげる、そして自分の足元を何かが突き足元を見下ろすとそこにはペンギンがテッラの横に立ったいた

 

「…バチカンと全然位置が違う」

 

「まあ仕方ありません。これは彼女の霊装の誤差の範囲ですねー」

 

「愕然、誤差どころではない気がするのだが」

 

テッラはこれは誤差の範囲だと笑うがアウレオルスと姫神は笑えない。南極からバチカンまでどれだけ距離があるというのか

 

「まあいいです、バチカンまで歩いて帰りますよ」

 

「「えぇ……」」

 

テッラはあくまでも前向きに南極からバチカンまで歩いて帰ると言う、騎士達も掛け声をあげて賛同する。アウレオルスと姫神はもう学園都市が恋しくなってしまった…彼等がまた学園都市に来れる日は来るのか?そもそもバチカンまでどれだけ時間がかかるのか、それは誰も知らない

 

 

 

 




コロンゾンさんは激強、あれだけの魔神の数から逃げ切り上条さんや一方さんを軽くあしらえる実力者ですからね。それにまだ序盤だから皆弱いからビビるのはしょうがない、ていとくんはエイワスと戦ったことがあるから耐性があったからビビりませんでした。縦ロールちゃんは原作のミコっちゃんポジです

そしてお気付きの方はいたと思いますがこの作品ではローマ正教は原作のイギリス清教ポジなので戦いにはなりません、つまり旧約のローマ正教編は全カットです(無情)

代わりにあの平凡な高校生さんとその勢力が襲いかかってきます…え?理想送りがでてくるの早い?これはちゃんと理由がありますよ、ヒントはていとくんのせい、詳しく言えばていとくんが原作と違う方向に持って行ったから…これだけ言えばなんとなく理想送りの誕生が早まった理由が分かったのでは?

次回からギャグに戻ります。そのギャグが終わったら旧約一番のギャグ巻だった御使堕し編に突入です


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第二章 御使堕し 編
強くなりたいなら仙人を探すよりもインストラクターに指導してもらえ


今回はシリアスに見えるギャグ。読者の皆様はなんでギャグを入れんだよ、本編(御使堕し編)の続きはよ、と思ってる人やギャグがあまり好きじゃない人はすみません。今回はネタが多過ぎて逆に面白くないかもしれません…作者はネタが分かりづらいですから…こんな作者ですみません

因みにこの話を含めて四話くらいギャグ回が続きます。因みにこの四話で出そうと思ってるキャラはオッレルス、レディリー、レイヴィニアとかですね、後ステファニーさんと砂皿さんも出したいな〜

因みに作者は銀魂好きです、今回の話は銀魂のあの話のパク…パロディですが他にも色んなネタが入ってます。やっぱり作者は常識が通用しない作品しか書けないようです(白目)。最初はていとくんがモノハンシャコ型等の自律兵器を使ってそれに一方さん達の能力を実装させて戦わせるて言う予定でしたが…ギャグですからそんなシリアスパートは除去しました(笑)


午前五時、まだ太陽が昇って間もない時間帯、この時間に起きている人は少ないだろう…常盤台の学生寮でもそれは同じ白井黒子もまだ眠っていた

 

「…ジャッチメントですのー…神妙にお縄につきなさいですのー」

 

「起きなさい黒子」

 

「起きてくれるかしらぁ」

 

「……ふえ?お、お姉様方?」

 

彼女は幸せそうに夢を見ていたその時、肩を揺さぶられ黒子は目を覚ます。目を覚まさせたのは美琴と食蜂…何故か二人とも体操服に着替えている

 

「え…まだ五時ですわよ…何かご用で?」

 

「ちょっとね、外へ行きたいから空間移動お願いできる?」

 

「……はい?いやいやこんな時間に何をしにいくおつもりですの」

 

「外へランニングしにいくのよぉ」

 

「……はい?」

 

黒子は食蜂が言ったランニングの意味が分からない、美琴なら兎も角この運動音痴な食蜂がそんな自殺行為をするのは不自然だと目をパチクリさせる

 

「いいから早くしなさい」

 

「は、はいですの…でも七時前には門の前で待っていてくださいね、お迎えにあがりますので」

 

「ありがとうねぇ白井さん」

 

白井は寝惚けた目を擦りながらも空間移動で二人を外に連れ出す、そしてまた部屋に戻ってきた黒子は布団をかけ直す…外に出た二人は準備体操をしてから人影のない道を駆け出す…その一分後まだ十メートルも走っていないのに食蜂がダウンし美琴が肩を支えていた

 

 

「9994!9995!9996!9997!9998!999!10000!まだまだぁ!根性ぅぅ!」

 

「……指一本で男二人を乗せて腕立て伏せする奴初めて見たぞ」

 

「…てかこれ腕立て伏せじゃないんじゃ…指立て伏せですよこれ」

 

削板は自宅で腕立て伏せをしていた、しかも横須賀と矢文を乗せて更に指一本で一万回も腕立て伏せ(?)をやっていた。削板の背中に乗った二人はポカリを飲む中彼はまだ腕立て伏せを続ける

 

 

「………」

 

一方通行は無言で演算を行う、彼の頭上では荒れ狂う嵐の様に大気が荒れ狂っている。彼は学園都市中の風の流れを…いや世界中の風を掌握すべく演算を行なっていた

 

「ねえ木原さん、あの人は何をしているの?てミサカはミサカは尋ねてみたり」

 

「何でも自分がどれだけ風を掌握できるか確かめてるんだってよ」

 

打ち止めと数多が一方通行を見守っている

 

(…駄目だ、どれだけやっても学園都市全域の風しか操れねェ…これ以上は無理だ)

 

一方通行はこれ以上は操れないと舌打ちし能力を中断する

 

「一方通行!はいこれ!てミサカはミサカはコーヒーを差し出してみたり!」

 

「…悪ィな」

 

打ち止めから渡されたブラックコーヒーの蓋を開け一気に飲み干す一方通行、そして空き缶を数多に投げるともう一度能力を発動させる

 

 

「……」

 

麦野の原子崩しが10個の空き缶に向かっていく、ジュッと何かが焼ける音を立てて10個の空き缶が消えてなくなる

 

「…フレンダ、次は空き缶を投げてくれるか?動くものにも当てられるか精度を確認する」

 

「お、オッケーて訳よ」

 

フレンダが五つの空き缶を投げる、その動く的に麦野は原子崩しを命中させ缶を全て蒸発させる

 

「…次はもっと小さい奴か当てにくい物…フレンダお前携行型対戦車ミサイル持ってたよな?それ投げろ」

 

「いやそんな物騒な物持ってないんだけど!?あるのはフレメアを喜ばす為に自作したパラシュート花火て訳よ!」

 

麦野は今度は爆弾投げろと言うとフレンダはこれは自作の花火だと突っ込む、それを見ていた絹旗達は小声で喋る

 

「…なんか超気が立ってますね麦野」

 

「よく知らねえが、自分の能力を鍛えるて言ってたぞ」

 

「うん、むぎのが鉄球を足に嵌めて走ってるの見たよ」

 

三人は何があったんだろうと首を傾げながらも麦野を見る、麦野は花火でもいいから投げろコラとフレンダに当てる気のない原子崩しを放ちフレンダが猛烈にダッシュする

 

 

「……優先する、石を上位に、煉瓦を下位に」

 

上条は手に持った小石を煉瓦にぶつける、普通なら小石が砕ける筈が煉瓦が小石にぶつかって粉々になる。これはテッラが使っていた光の処刑という魔術、この前の戦いで魔術が使えると分かった上条はその能力の確認をしていた

 

「…あのテッラて人と違って一つしか使えねえし、距離が長くなれば精度も落ちるみたいだな…それにあの竜王の殺息とか黄金錬成は使えねえし…本当に幻想片影て謎だよな」

 

光の処刑はテッラより使い勝手が悪いし、黄金錬成は使えない。超能力なら見ただけで完全に使えたのだが…魔術と超能力では何か条件が違うのかと首を捻る上条

 

「……今はその事はいいか、次は魔女狩りの王の使い方にもなれとかねぇとな」

 

上条はそう呟くと次は地面から魔女狩りの王を召喚してそれを命令して動かしたり、自動制御にしたりとどれが自分に合った使い方が思考する

 

 

「……本当にいいんですね?」

 

「ええ、構いませんよ入鹿さん…本気でかかってきてください」

 

「…いいでしょう、私の実力を見せるチャンスですからね…全力でいかせてもらいます」

 

弓道部の部室で帆風と入鹿が向き合っていた。入鹿が本当に戦っていいのかと帆風に尋ねる、帆風は真剣な顔で頷く、入鹿は小鳥丸(軍用懐中電灯の光を収束させて作った光の剣…ビームサーベルみたいな剣)を構え笑う

 

「「………!」」

 

帆風は天衣装着を発動し入鹿に接近し、入鹿は小鳥丸を携えて帆風に振り下ろす。弓道部にて大能力者の戦いが繰り広げられる

 

 

((強くなりたい))

 

 

(帝督と同じくらい強くなりてえ)

 

 

(これからはていとくンだけには頼らねェ、俺も強くなンなきゃいけねえンだ)

 

 

(絶対に垣根に追いついてみせる)

 

 

(俺は…いや俺達はあいつに守られるんじゃなくて一緒に戦いたいんだ)

 

 

(だから今よりも強くならなきゃいけないんです)

 

 

(((((((そう、強く!)))))))

 

超能力者達の思いは一つだった、全員違う場所にいても、特訓の内容が違っても…「垣根と一緒に戦いたい」…それだけは同じだった

 

 

午前八時、上条達は垣根の家にやって来る、上条が呼び鈴を鳴らし暫く立って家の扉が開き垣根が顔を出す

 

「あ?なんか用か?」

 

「…垣根に頼みたい事があってな」

 

「……なんだ?」

 

真面目な顔になった垣根に上条達は口を揃えて言った

 

「「「「「「「俺/私達…強くなりたい」」」」」」」

 

それが彼らの願いだった、その真摯な願いを聞いた垣根は笑ってこう返した

 

「あっそ、頑張れよー、応援してる」

 

そう言って垣根は家の扉を閉めた。扉の中から「あ〜眠、もう一眠り〜」と声が聞こえる

 

「「「「「「「…………」」」」」」」

 

固まる超能力者達、棒立ちになった彼らはふと笑みを浮かべる

 

「「「「「「「ちょっと待てぇぇぇ!」」」」」」」

 

「ひでぶ?!」

 

扉を開け二階に上がろうとして入る垣根にドロップキックを喰らわせる七人、垣根は派手に吹き飛ばされ床に転がる

 

「いてて…住居不法侵入及び傷害で訴えるぞコラ!」

 

「やかましい!俺らが真剣に頼んでるのにその態度はねえだろ!」

 

「知るか!修行するなら他所でやれ!鬼○の刃とかドラゴンボ○ル、ブラッ○クローバーがオススメだぞ!」

 

「他作に丸投げしようとするな!序盤のシリアス感が台無しだろうが!」

 

垣根にそんな態度はないだろと怒る上条だが垣根は逆ギレし他作に修行しに行けと叫ぶ、麦野がシリアスを返せと叫ぶ

 

「帝督!友情・努力・勝利の三大原則を思い出せよ!」

 

「古いだろその考え、今はチート・ハーレム・御都合主義の三大原則だろ、なろうみたいな」

 

「なろうを悪く言わないでよ!なろうだって名作あるわよ!キミスイとかこのすば、リゼロ…沢山あるじゃない!」

 

「それにジャンプ力はまだ古くわないわぁ!今だってそんな漫画沢山あるわよぉ!鬼滅の○とか約ネバ、ブラクロとか!」

 

削板が暑苦しくジャンプの三原則を語るが垣根は時代は変わったんだよと軽く流す、美琴と食蜂も反論するが垣根は眠たげな眼で彼らを見る

 

「…俺は眠いんだよ、オティちゃん達とモンハンしてたから…寝たのは朝の六時なんだ…寝かせてくれ」

 

「だが断る!てかなんで強くなりたいのかとか理由聞けよ!」

 

「あ〜あれだろ?異性にモテたいとかそんな感じ?」

 

「違ェよ!そンな理由に見える訳ねえだろ!」

 

垣根は異性にモテたいんだろどうせ、と言うと一方通行が違うと返す

 

「てな訳で修行しようと思ってな!第一位のお前に鍛えてもらえればあのコロンビアにも勝てる!」

 

「コロンゾンな、いやそんな暑苦しいの最近のジャンプでもそうそうねえよ、努力したって天才には敵わねえんだよ、諦めろ」

 

「ていとくン、その一言で世界中の努力してる奴らを敵に回したぞ」

 

上条の言葉に垣根が努力したって天才には勝てないし、報われるとも限らないと冷たく返す

 

「てかさ、お前らはどんな修行する気なんだよ、まさか馬鹿みたいに山籠りとか言わないよな?超能力は演算能力の高さで精度が決まる…身体鍛えたとかじゃあ強くなれねえんだよ」

 

「「「「「「……あ」」」」」」

 

「お前らそこら辺なんも考えてないよな、I.Qは当麻と軍覇以外は高いのに…縦ロールちゃんは格闘術鍛えるのはありだけどな…」

 

垣根が正論を叩き込むと超能力者達は何も言い返せない、肝心な所では超能力者は馬鹿になる癖があるようだ

 

「能力を鍛えたいなら木原一族を頼れ、身体を鍛えたいならインストラクターに頼め…以上ていとくんからの一言でしたー」

 

「ま、待て!山籠りも利点になることがあるぞ!」

 

「…その利点ていうのは?」

 

「そ、それはあれだ!山には熊がいる!」

 

「野生の熊と戦って野生の勘を習得するてか?ベタだな。そもそも当麻には前兆の感知があるだろ」

 

「いや熊に腹筋を手伝ってもらう!」

 

「もう帰れよ、お前ら疲れてんだよ…病院行って診察して寝ろ…てな訳でおやすみ」

 

取り付く島のない垣根に全員が何かいい案がないかと話し合うがどれもダメ、垣根はもう寝よと階段を登ろうとする

 

「まあ待て盟友、そいつらの言う通り修行してやればいいじゃないか」

 

「あ!貴方は…」

 

「「「「「「こないだの痴女!」」」」」」

 

「よし、その喧嘩買ってやろう」

 

垣根に声をかけたのじゃがバターを貪るオティヌス、彼女を見て超能力者達が痴女と指をさして彼女を見る

 

「なんでだよオティちゃん…俺寝てえんだけど」

 

「分かっていないな盟友、修行パートてのは今は実は流行りなんだぞ、鬼○相撲とか鬼○の刃、ブラクロ、呪術廻戦…このジャンプ四大新人がいい例だ」

 

「いやもう新人じゃねえだろ…まあ面白いけど」

 

「まあこいつらの目は本気だ…やるだけの価値はある…私も手伝ってやるから盟友もやれ」

 

「……分かったよ、やればいいんだろやれば」

 

オティヌスが自分も手伝ってやると言うと垣根は溜息を吐いて頷く

 

「ありがとな痴女!垣根を説得してくれて!」

 

「感謝するぜ痴女ォ」

 

「痴女にはマジ感謝だにゃーん」

 

「ありがと痴女!人は見かけじゃないのね!」

 

「痴女力が高めな変人だと思ってたけどぉ、いい人で助かったんだゾ☆」

 

「帝督を説得してくれてありがとうな痴女!」

 

「え、えっとオティヌス…さんでしたか?ありがとうございます」

 

「よし、縦ロールは許す、その他は全員バレーボールの刑だ」

 

「「「「「「へ?バレーボー…ぎゃあああぁぁぁぁ!!?」」」」」」

 

オティヌスの事を痴女呼ばわりした超能力者達にオティヌスは青筋を立てる、そしてオティヌスが超能力者に拳を振るう。ドゴバキグシャメキベキゴスバキグシャドカメギョベギャドガベゴベゴ!!と暴力的な音と超能力者達の悲鳴が家に響く、垣根は帆風の目を自分の手で塞いでその惨劇を見せない様にする

 

「か、垣根さん?なんで目を塞ぐんですか?」

 

「縦ロールちゃんは見ちゃいけません」

 

そしてその暴力的な音が聞こえなくなると垣根の手が帆風の顔から離れる、帆風の目に映ったのは六個のバレーボール、そのうちの一つには腕らしきモノが生えている

 

「え?じ、女王達は?」

 

「女王?それはここにいるバレーボール共の事か?」

 

「……え?バレーボール……?」

 

オティヌスが探しているのはこのバレーボールかとバレーボールに目線を合わす、帆風がえ?とバレーボールをよく見るとバレーボールの表面に顔らしき何かが浮き出ている

 

「…もうこれ一種のホラーだな、写メ撮っとこ」

 

「そしてそれを心霊番組に送ろう」

 

「いや早く女王達を元に戻してくださいませんか!?」

 

「……仕方ねえな」

 

垣根が面白がってバレーボールになった上条達の写真を撮る、それを見て帆風が早く戻してあげてと叫ぶとオティヌスは持っていた槍を横に振るう。それだけでバレーボール六個が白眼を向いている上条達の姿に戻る

 

「おら、さっさと起きろ」

 

「蹴らないであげてください!」

 

オティヌスが全員の腰を蹴ると全員がはっと起き上がる、そしてオティヌスは上条を首元を掴みそのまま片手で持ち上げる

 

「もし今度痴女だの痴女ィヌスだの言ったら…命はないものと思え、分かったか?」

 

「Ha いィィィ…!カっっっ、じィ、KO、まっ、ィり、まぁあ、SHI、ィだっ…!」

 

「よし、では修行の話に戻るか」

 

次いえば命はないぞと脅すと上条はそれに頷く、一方通行達も某梨の妖精の様に超高速で首を縦に振る。オティヌスは納得したのか上条を床に投げ捨てて修行の話に戻す

 

「…さて、修行についてだが……修行をやる前にまず自分が理想とする姿を思い浮かべろ」

 

「理想…?」

 

「それがお前らの終着点だと思えばいい、人間というのは終わりのないゴールには辿り着けないが終わりがあればそこに行き着くものだ。それを目指してゴールまで突き進む…強くなりたいなら強くなった自分を連想しろ…そしてその夢に向かって直向きに進んでいけ」

 

「私も昔は魔神になろうと思ってた時はそう思っていた…いつか夢に届くと信じ、到達した時はどれだけ幸福なのかとそう夢想していたよ」

 

(オティちゃんいい事言うなあ)

 

オティヌスは目標に向かって突き進むのは気持ちが良かったと笑みを浮かべ少し空気が緩む…そしてオティヌスはまた口を開く

 

「…まあ、念願の魔神になった途端に世界が滅んで自分の居場所がなくなったがな…目標に到達しても幸せになれるかは別だな、むしろやる事がなくなって無気力になる場合もある」

 

「持ち上げたかと思ったら急に下げた!?何この人?!」

 

「あ〜もうちまちま鍛えるのも面倒くせえな、チートで終わらすか…やっぱり努力せずに楽に強くなりてえな、やっぱり修行なんて辛いだけだな、やっぱ修行なんかやらない方がいいな」

 

「最終的に修行全否定したよ!自由人過ぎんだろ!」

 

だが急にオティヌスはやっぱり修行はやらない方がいい、目標に達成してもいい事ばかりではない、とネガティヴ発言し上条が全力で突っ込む

 

「もう寝るのとかいいから俺はカップリング写真撮りに行くわ、最近撮れてねえからな」

 

「私はじゃがバターを食べる、邪魔をするなよ」

 

「撮りに行くな!そして食べるな!」

 

写真を取りに行こうとするカプ厨とじゃがバターを食べ始めるオティヌス、一同はそんな自由人に振り回され一行に修行が出来ない。そんな彼らにある人物が声をかける

 

「下らん、まるで茶番だな」

 

「!?誰よあんた」

 

上条達に声をかけたのは居間の扉を開けて出て来た変な服装をした男、麦野が誰だと尋ねると男は薄く笑って返す

 

「俺か?俺はサミュエル=リデル=マグレガー=メイザース。単なる魔術師だ、そして昨日オティヌスに呼ばれて垣根の家で焼酎を飲み過ぎて絶賛二日酔い中だ…ぶっちゃけ吐きそう」

 

「魔術師てか単なるダメなニートのオっさンじゃねェか」

 

魔術師と名乗った男は絶賛二日酔いで今にも吐きそうだった、一方通行はニートのオッさンと称するが実はこの人魔術師の中でもトップクラスの有名人である

 

「話は聞かせてもらったぞ、確か貴様らは修行をしたいんだったな?そんな貴様らに言ってやろう…修行を舐めてないか貴様ら?」

 

「!……どう言う意味かしらぁ?」

 

「修行てもんはな、明日からやるとか今日からやる…そんな物ではない、日々の積み重ねが大事だ…垣根はちゃらんぽらんに見えるが、実は隠れて新しい技や戦法を生み出して如何にして強くなるかと考えてる努力家だ。それに第五位も日々の鍛錬や努力で超能力者になったと聞く。そこにいる縦ロールや原石も毎日鍛錬しているだろう…だが他の奴に関しては論外だ、いきなり修行して強くなる?馬鹿め、そんな浅い考えではコロンゾンには勝てん…貴様らは指を咥えて戦いでも見守っていろ」

 

メイザースは真面目な顔で正論を叩きつける、日々の努力を怠る者がいきなり強くなれる筈がないと、隠れた所で努力している垣根に追いつける筈がないと呟く。そう言うと踵を返して居間に戻ろうとするメイザースに上条が言葉を言う

 

「待てよオッさん」

 

「…なんだ小僧」

 

「確かにあんたの言ってる事は正しいよ、だけど…それでも俺は強くなりてえんだ」

 

「……ほう?」

 

上条の言葉にメイザースが反応する、メイザースは上条の目を見る、その目は本気だった。他も上条と同じ目をしている…その目を見てメイザースが笑う

 

「いい目をしているな、いいだろう。この俺が直々に修行の指導をしてやろう」

 

「!本当か!?」

 

「ああ、この俺がアレイスターやウェストコットと共に立ち上げた『黄金夜明(S∴M∴)』の特別修行を貴様らにしてやろう」

 

メイザースが黄金夜明の修行をしてやると言うと垣根が思わず息を飲む、オティヌスも目を僅かに開ける…それ程凄い修行なのだろうかと上条達はゴクッと唾を飲む

 

「…厳しい修行になるだろう…貴様らにはそれを受ける覚悟はあるか?」

 

「…ええ、強くなれるのなら…覚悟は決めていますわ」

 

「…いい返事だ、なら早速やるとしよう」

 

帆風の返事にメイザースが笑う、そして上条達の背中に何かがのしかかり全員が気になって背後を振り向く

 

「「「「「「「やあ」」」」」」」

 

「「「「「「「……どちら様?」」」」」」」

 

変な格好をした男女七人が上条達にのしかかっていた、思わず誰だよと突っ込む上条達に男女達はただ笑うのみ

 

「こいつらは俺の黄金夜明の仲間達だ、右から順にアーサー、イスラエル、ポール、ロバート、仮面舞踏会の君、チャールズ、イエイツ…まあモブA B C D E F Gだと思えばいい。ではこいつらを全員背負った様だな、重いだろうが決して外すなよ…では今から修行を開始する」

 

「……おィ、待てよオッさン」

 

「ではお前らにはある物を探してもらおう…ちょっと来いウェストコット」

 

「ちょっと待つにゃーん」

 

一方通行と麦野が静止する様に訴えるがメイザースは聞かない、そしてウェストコットと読んだネクタイが付いた一張羅を着込んだ初老の男を近くに呼ぶ、そして手に持っていたサインペンでウェストコットの額に文字を書く

 

「ウェストコットの額に金と書いた、ウェストコットを今から全力で投げるからお前らはウェストコットを見つけて来い」

 

「「「「「「「いやそれ完全に亀仙人の修行!」」」」」」」

 

「言っておくがそこら辺に落ちているウェストコットに金と書いても駄目だぞ、文字で俺が書いたか分かるからな」

 

「いやそのオッさんは道端に落ちてないだろ!それに字じゃなくて顔で分かれ!」

 

「もし日が暮れるまでに見つからなければウェストコットは飯抜きだ」

 

「え!?」

 

「なんでよ?!その人何も悪くないじゃない!新手のイジメか何か!?」

 

「…はっきり言ってやろう、俺はウェストコットが気に入らない!だから修行の一環という理由で嫌がらせが出来る!ただそれだけだ!」

 

「「「「「「「最低だなあんた!」」」」」」」

 

ウェストコットを投げるから金という文字が額に書かれたウェストコットを見つけて来い、日が暮れるまでに帰ってこないとウェストコットは飯抜きだと伝えるメイザース、ウェストコットはなんで自分がと驚き上条達がメイザースに最低だと叫ぶ

 

「おいオッさん、それこないだ貸した漫画の影響だろ。そんなんで強くなれるわけねえだろ…武天老師気取りかよ、てかあんたも修行させる気ないだろ」

 

「チッ、バレたか…適当に格好いい事言ってこいつらから修行料とか言って金毟り取ろうと思っていたのに…」

 

「おィ!格好いい事言っておいて本当は金を騙し取ろうとしてたのかよ!」

 

「……仕方ないだろう、ギャンブルで金を全部使い切ったんだ…金がないと「またこいつ使い切ったのかよ」てミナとアニーに汚物を見る目で見られる」

 

「……アンタ自業自得て言葉知ってる?」

 

因みにメイザースは適当な修行をさせて金を毟り取ろうとしていたらしい。それを聞いた一方通行と美琴は青筋を立ててプラスマと超電磁砲をこのニートに放つかどうか悩んでいた

 

「いい加減にしなさいよぉ!こっちは真面目なのに巫山戯てばっかりじゃない!」

 

「そういう奴が詐欺に引っかかるんだ、勉強になったな」

 

「開き直りやがったぞこいつ…殴っていいか?」

 

「このオッさん凄え根性なしだな、ぶん殴るか」

 

メイザースは開き直って自分悪い事した?みたいな顔をするので麦野と削板がこいつぶん殴ろうかな?と本気でそう思う

 

「ふむ…修行…ね、昔のロマンがあるじゃないか」

 

「!?い、犬が喋ってますわ?!」

 

その時二階から声が聞こえ階段の上を振り向くと葉巻を咥えたゴールデンレトリバーが上条達に話しかけてきた

 

「失礼、私は木原脳幹。昨日オティヌスに誘われてゲームをやっていて少しこの家で休んでいたら声が聞こえてね…内容は聞いていたよ」

 

脳幹はそう言って一段ずつゆっくりと階段を降りる、その姿は愛くるしい犬そのもの。ただし声はダンディだが

 

「私も昔は修行をしたな、この漫画の主人公と同じ特訓をしたら自分もか○はめ波や天○龍閃を覚えられるんじゃいかとやったものさ…結局無理だったがね」

 

「いやその前にその身体でどうやって剣を持ったり両手を構えようとしたの?」

 

「まず二足歩行から駄目だった、剣も口で咥えても的に当たらないし…犬の身体は不便だよ」

 

脳幹はロマンがあるなと呟くと自分も昔修行をしていたと呟く

 

「おいわンちゃン、まさかあんたもこのニートのオッさンみたいに変な事考えてるのか?」

 

「まさか、私は君達にロマンを教えに来たのさ」

 

「ロマン…ですか?」

 

「そうロマンだ…私はロボットアニメが好きでね。特に合体物が大好物で個人的に合体ロボを作るレベルで好きなのさ」

 

「「「!合体ロボ…!見たい見たい!!」」」

 

「ほう?なら見せてあげよう」

 

脳幹が合体ロボを作ったと呟くと上条と美琴、食蜂が騒ぎ出す。脳幹は葉巻をアームで掴み煙を口から吐き出す。そして脳内である物を起動させる様に指示を送る…そして黒い影が空から脳幹に降り注ぐ

 

「あれは!?」

 

それは鋼鉄の塊…そう表現した方がいいだろう、だがそれは空中で分解するとドリルやらパイルバンカー、要塞攻略用大口径レールガン、ガトリング砲、速射砲、大型ミサイルコンテナ、火炎放射器、レーザービーム、ブースター、液体窒素、殺人マイクロ波などが姿を現し脳幹の身体に降り注ぐ、そして脳幹は背中に無数の兵器群を背負う

 

「これが対魔術式駆動鎧(アンチアートアタッチメント)…通称A.A.A.…男のロマンだろう?」

 

「「「ふぁぁぁぁ!!!ドリルカッケぇぇ!」」」

 

「…ふむ。どうやら時代は変化しているらしい、女子もこのロマンが伝わるらしいな。だがまだ驚くのは早い…何せこれから残り四機と全合体をするのだから」

 

「「「!?全、合体!?」」」

 

目をキラキラさせる馬鹿三人に脳幹が軽く笑う、だがこれからくる四機と合体すると言うと三人はゴクッと唾を飲み込む

 

「さあ!来たまえ!唯一君、数多君、乱数君、幻生さん!今こそ私達木原一族の真の力を見せつける時だ!」

 

脳幹が叫ぶと空から何か飛来する、全員が期待を込めた目で空を見ると

 

「スカイジェット只今到着です!」

 

「いや単なる炬燵!?」

 

「待たせたなぁ!バスタードリルの登場だ!」

 

「木ィィィ原くゥゥゥゥゥゥゥゥン!?それドリル持ってるだけだろ!」

 

「いやっほー。実は一時間前からスタンバイしてた木原乱数ちゃんがマックスタンカーに乗ってやってきたぜ!」

 

「いや普通のトラック?!」

 

「…………」

 

「お爺さんが白目向いてる!?Gに耐え切れなかったんですね!」

 

空飛ぶ炬燵に乗った女 木原唯一(ゆいいつ)、ドリルを持っているだけの数多、小型トラックに乗った木原乱数(らんすう)、そして某宇宙の帝王が乗るポットに乗ってそのGに耐えられず気を失っている木原幻生(げんせい)。ツッコミ所満載なそのロボ(?)が脳幹に向かっていく…そして

 

「超合体!フルパワーA.A.A.!」

 

「「「「「「「いやさっきのパーツでどうやったらそんな姿になれるの!?」」」」」」」

 

「「もう単なるロボットじゃん」」

 

ドシンと音を立てて現れたのは15メートル程の巨大ロボット。てか完全に某合体超神である。炬燵とドリル、トラック、ポットがA.A.A.とどう合体したらこんな姿になるのか理解出来ない、垣根とオティヌスは完全にロボットだと突っ込んだ

 

「「「でもカッケぇぇぇぇぇぇぇ!」」」

 

「そして、このフルパワーA.A.A.はこんな技が使える…その名も…」

 

巨大ロボット フルパワーA.A.A.が激しく両腕を動かし左腕から膨大なエネルギーが放射される

 

「木原ビィィィィム!!!」

 

その左腕から発射された木原ビームは上空へと放たれる、軌道上にあった雲を突き抜け成層圏に突入した所で消えた。そんな光線を見て全員が唖然としていた

 

「「「ビーム出たぁぁぁぁ!!」」」

 

「…いや完全に○リットビームだろ」

 

「…まあパクった部分もあるが…これが私の木原でありロマンなのだよ」

 

大興奮するバカップルに垣根は冷静に某電光超人の必殺技だと呟く。帆風達はロマンは分からないが凄い技術力だと感心する、そこで垣根が呟く

 

「…で、これは修行と関係あるの?」

 

「………」

 

「ないんだな」

 

身も蓋も無い事を垣根が呟くと脳幹が一言も喋らなくなる。全員が確かに修行から脱線していたと気づく

 

「……力添えにならず済まない」

 

脳幹がロボから降りて頭を下げる、超能力者達は一体誰に頼ったらいいんだろうかと頭を悩ませた時垣根が大きな溜息を吐く

 

「……はぁぁぁ、脳幹先生もメイザースのオッさんも、オティちゃんも役に立たねえな…こうなったら俺がやるしかねえじゃねえか」

 

「!垣根…!」

 

垣根がこの3人がダメなら自分が修行をしてやると呟く。それを聞いた超能力者達が垣根を真っ直ぐ見る

 

「最初は面倒くさいと思ってたが…お前らの熱意を見てたらやる気になってきた、まあ、俺も修行の教え方とかよう分からんし、少し変かもしれねえが…やるだけやってやる」

 

垣根がそう言って笑う、漸くやる気になった垣根に全員が頬を緩ます

 

「さて…俺はちょっと修行に使う物を持ってくるから先に第十九学区に行っててくれ。オティちゃんテレポお願いな」

 

垣根はそう言うと近くに待機させておいた座標移動の能力を持つカブトムシで何処かへ瞬間移動する、オティヌスは垣根の言葉に頷くと帽子の中に入れておいた動物の脚の骨の側面に刃物で刻まれたような文字が刻まれた骨で出来た船を取り出す

 

「目的地はあの古びた場所だったな…誤差の所為で第十九学区じゃなくて第二十三学区に出現しない様祈るか」

 

オティヌスがそう呟くと景色が一変する、垣根の家から以前インデックスを助ける為の決戦の場に選んだ第十九学区へと一瞬で移動していた

 

「…それにしても垣根さんは何を取りに行ったのでしょうか?」

 

「…もしかしてジープとか?」

 

「おィおィ、むぎのんそれて昔の特撮じゃねェか…流石にあり得ねェ「お待たせ」お、言ってたら来たな」

 

垣根は何を取りに行ったのかと帆風は首を傾げ麦野は昔のテレビの様な過酷な特訓をする為にジープでも持っているんじゃないかと笑い全員がそれを聞いて笑う…そして垣根の声が聞こえ全員が振り返ると

 

「お待たせ〜!ちょっとこれ(・・)を借りるのに手間取ってさ!」

 

「「「「「「「………」」」」」」」

 

垣根はある乗り物に乗ってやって来た。それはロードローラー、しかも単なるロードローラーではなくローラー部分に棘がついた本来の路面を平らにするのではなく地面に穴を開ける

 

「ははは!ハードローラーだッ!これで修行をしてやるぜ!」

 

「DIO様かテメェは!?」

 

凄まじい爆音を響かせてハードローラーが上条達に襲いかかる、こいつマジかとハードローラーから逃れようとする。だが垣根が未元物質で壁を形成させ一直線の通路を作り上条達は真っ直ぐに逃げるしかハードローラーから逃れる方法はない

 

「あ、縦ロールちゃんは怪我させたくないからオティちゃん回収よろ」

 

「…分かった、縦ロールだけ回収するんだな」

 

「そうそう、流石に友達を傷つけるのはあれだからな」

 

「「「「「「俺/私達は友達じゃないの!?」」」」」」

 

垣根がオティヌスに帆風だけは回収してくれと叫ぶ、オティヌスは頷いて帆風を骨船で回収して他の面子が叫ぶが垣根は気にしない

 

「で、このボタンを押すとこのハードローラーに仕込んであるAIMジャマーが起動する…これで迂闊に能力を使えば自滅するぞ〜」

 

「「「「「「この外道がぁぁぁ!!!」」」」」」

 

垣根がハードローラーに仕込んである能力を使えば暴走を誘発するAIMジャマーを発動し、一方通行達は迂闊に能力が使えなくなる。上条と削板は使える筈だが彼らはそれに気づかない

 

「良かったな縦ロール、あれに巻き込まれずにすんで」

 

「……そうですね」

 

「垣根の奴、演算云々言ってた癖に結局は身体を鍛える修行じゃないか」

 

「あの乗り物を何処で手に入れたんだか…あの車はややロマンに欠けるな」

 

オティヌスが巻き込まれなくて良かったなと帆風の肩を叩く、帆風がそれに頷きメイザースと脳幹が溜息を吐く

 

「逃げんな!ハードローラーに向かってこい!」

 

「「「「「「お願いします!やめて下さい!」」」」」」」

 

逃げるなと叫ぶ垣根に必死に止める様に懇願する超能力者達、それを見たメイザース達は笑う

 

「さて…なけなしの金で競馬に行くか」

 

「私もグレンラガンでも見るか」

 

「私はじゃがバターを買って来る」

 

メイザースは競馬に行き、脳幹はアニメを見に家に帰り、オティヌスはじゃがバターを買いに行った…その場に取り残された帆風は未だに涙目で逃げる超能力者達と笑いながらハードローラーの運転をする垣根…それを見て帆風は呟いた

 

「……自分なりに修行をして強くなりましょう」

 

何でもかんでも他人に頼ってはいけない、自分で強くなる方法を見つけよう、帆風はそう思い第十九学区を後にする…後には超能力者達の悲鳴が残った

 

「「「「「「単純に修行がしたかっただけのに何でこんな目に…本当に不幸だぁぁぁぁ!」」」」」」

 

 

 




作者は銀魂好き、はっきりわかんだね。他にもネタがたくさんでしたが皆さんはいくつ分かりましたか?ハードローラーは凄い武器になりますよ、何せDIO様が武器として使ったぐらいですから。ジープよりもヤバイ特訓になる。これにはセブン兄さんも白目

今回は途中で黄金夜明のメンバーが出てきましたが…今後も登場するか未定です、てかウェストコットさんの能力て半不死の肉体ていう能力だったのに魔道書の原点になってるから黄金夜明のメンバーは実質ウェストコットさんの半不死の肉体を持ってるようなものなんですよね…そしてウェストコットさんの魔術の腕はアレイスターやメイザースさんには届かないから魔術戦には参加できない…あれ?この人メイザースさんと対立してた黄金夜明のウェストコット派のトップなんだよね?た、多分仮面舞踏会の君達とかよりは魔術の腕は高いんですよ(震え声)

次回も新キャラ登場。学園都市統括理事会のお話です。原作では6人も理事会のメンバーが未登場なのでこれを活かそうと思ってます


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理事会にはまともな奴がいません byトマス=プラチナバーグ

今回はややギャグが弱いかもしれない(不安感)。やっぱり自分でギャグを描く才能がないんですかね?オリジナルを考えるのはキツいんじゃ

原作だと理事会のメンバーは6人不明なので原作キャラを理事会のメンバーにしました、自分の好きなキャラかつ理事会のメンバーになっても問題ないようなカリスマがある方々です。何でここにいるのとかツッコミはなしで。批判が出るかもしれないけど後悔はない。原作キャラの口調が違ったりキャラがブレてるのはいつもの事です



学園都市統括理事会、アレイスター=クロウリーを理事長とし学園都市の運営に携わる12人で構成されている委員会の事である。だがその内6名はアレイスターが解雇にした為長い間6人が不在だった…だが今日その新しいメンバーが加わる日なのだ

 

「さて、欠番になったメンバーにアレイスターはどんな人材を加えるのか…楽しみだな」

 

そう声を漏らしたのは委員会のメンバーの一人 軍事と兵器に強い影響力を持つ駆動鎧を着た老人潮岸(しおきし)

 

「そういやいなくなった6人てどうしてクビになったんだ?俺は電車に毎日乗ってるから詳しい事は知らなくてな」

 

ふと思い出したかの様に何故前のメンバー6人は解雇になったのかと呟いたのは学園都市の食糧事情を管理する亡本裏蔵(なきもとりぞう)

 

「あら知らないの?確か学園都市に不利益を齎そうとしてたり、謀反を企てたりしてたらしいわよ、それを帝督ちゃんが制裁したらしいけど」

 

そう亡本の問いに返したのは実年齢は70代なのに30代に見える女性、彼女は学園都市の医療機関のトップであり優秀な医者でもある薬味久子(やくみひさこ)

 

「本当に我々は彼に助けてもらってばかりだな…感謝してもしきれない」

 

そう感謝の意を示した老人は超能力とは違う能力…「原石」について研究する科学者 貝積継敏(かいづみつぐとし)

 

「ですが6人を解雇した本当の理由は私の活動の邪魔をした…そんな小さい理由らしいですよ」

 

会話に参加したのは話術・交渉術のやり手にして民主的かつ平和的な活動を行う善人 親船最中(おやふねもなか)

 

「それだけ親船さんが理事会に必要と言う事でしょう、実際親船さんのお陰で諸国との交渉がやりやすくなる…このメンバーの中でも重要な人材ですからね」

 

そう親船に声をかけたのが外国人の男性 トーマス=なんとかさん。成金小僧であり一方通行に肋骨を粉砕されその復讐に狙撃手を雇ったら殺されたバカである(笑)

 

「違う!私の名前はトマス=プラチナバーグだ!それに第三位にそんな事された覚えも死んだ覚えもないんだが!?てか私だけ地の文酷くないか!?」

 

「?どうしたトマス君?空に向かって叫んで…等々気が狂ったのかい?」

 

「いや、そう言うわけでもなく…て!等々てどう言う事ですか!?」

 

「今なら無料で診察してあげるわよ?まあその後恋査41号になってもらうけど」

 

「いやそれサイボーグになる奴ですよね!?断固お断りします!」

 

突然空に向かって叫んだトマスに一同が「あ、等々イカれたか」と思い彼を見つめる。そんな一同にトマスがツッコミを入れまくる

 

「なんで私だけ扱いがそう雑なんですか!?私何か悪い事しましたか!?」

 

「「「「「トマスだから仕方ない」」」」」

 

「なにそのパワーワード!?」

 

トマスが何故こうも自分は扱いが悪いのかと突っ込むが全員がお前だから仕方ないと笑う、トマスが巫山戯んなと頭を抱える。トマス=プラチナバーグは苦労人である

 

「全く!今日は新メンバーが来るんですから真面目にやりましょうよ!」

 

「そうねぇ、トマス君の言い分にも一理あるわねぇ」

 

「トマスの癖にいい事言うな」

 

「亡本テメェ覚えとけよ」

 

トマスが新入りが来るんだから巫山戯るなと言うと薬味が一理あると頷き亡本はトマスの癖にいい事を言うと笑う、トマスが溜息を吐いて席に座りなおす

 

「…で、貴様らはどんな人材が来るか予想できているか?」

 

「そうねぇ…やっぱり保安維持とかじゃない?学園都市て治安悪い部分もあるし」

 

「それもある、だがこれから来るのはそういう人材ではないだろう」

 

「?潮岸さんは予想がついているので?」

 

潮岸が全員の顔を一瞥しどんな人材が来るか予想はできているかと尋ねる、親船が潮岸は予想しているのかと聞くと潮岸は口を開く(と言っても駆動鎧に入っているので表情は見えないが)

 

「学園都市…科学の対となる私達の敵 魔術サイド…これくらいは聞いているだろう」

 

「まあな、アレイスターから聞いた事はあるが…本当に魔術てもんはあるのか?」

 

「まあ超能力とは違う法則の力みたいなものだろう、それに超能力と魔術は原石に憧れて出来たものと言う共通点があるしね…で、それと新メンバーがどう関係している?」

 

魔術、その単語を聞くと全員の表情が強張る。学園都市に住む者達はこの単語を極一部のものしか知らない。理事会のメンバーもその極一部であり他に知っているのは木原一族の精鋭や超能力者達ぐらいだ、貝積がそれがどうしたと潮岸に尋ねる

 

「つまり、我々の敵である魔術サイドに対抗すべくアレイスターは人材を集め、それを理事会のメンバーにするのではないか、そう私は睨んでいる」

 

「「「「「!!」」」」」

 

潮岸が言った言葉には強い説得力があった、確かに自分達は学園都市を動かす力はあっても戦う力はない。つまり新しい理事会のメンバーは魔術サイドと戦う為の戦力なのでは?と全員が思う。重々しい空気の中部屋の扉が開く

 

「「「「「「!」」」」」」

 

一同はその入ってきた人物に目を向ける、一体どんな人物なのだろうかと見る為に…そして彼等の目に映った人物は

 

「よう、全員元気そう何よりだ」

 

「……帝督ちゃん?」

 

入って来たのはカプ厨こと垣根帝督、垣根は片手を上げて6人に笑いかける

 

「君か…悪いが今私達は忙しいんだ。要件があるならさっさと言ってくれないか」

 

「何だよその態度、新しい同僚(・・)に失礼だろ」

 

「だから私達は新メンバーを待って…ん?新しい同僚?」

 

「そうだよ、超能力者兼理事会の新メンバーの垣根帝督だ。これからは同じ立場としてよろしく」

 

「……はあ!?」

 

じぶんが新しい理事会のメンバーだと呟くとトマスが素っ頓狂な声をあげる、トマスはこんな奴を理事会に入れるなんてアレイスターは正気か?と内心呟くが他のメンバーは然程驚かない

 

「あ〜いつか帝督ちゃんなら上のポストになると思ってたけど…いきなり理事会入りかぁ〜出世コースね」

 

「かー羨ましい!アレイスターのお気に入りは違うな!」

 

「ようこそこちら側の世界へ」

 

「いやいや!皆さん驚かないんですか!?カプ厨が新メンバーて!もう不安しかねえよ!」

 

薬味、亡本、潮岸の3人は順に垣根に話す、トマスはなんで驚かないんだよと叫ぶが全員にスルーされる

 

「…で、垣根さん、他のメンバーはいつ来るのですか?」

 

「もう来るぜ親船さん…おっと噂をすればなんとやら…やって来たぜ」

 

親船は残りのメンバーは何処かと尋ねると扉が開きそこから5人の男女が入って来る

 

「待たせたようだな、新メンバーのオティヌスだ。好物はじゃがバターだ」

 

「学園都市に住む魔術師達を統括する魔術師のサミュエル=リデル=マグレガー=メイザースだ」

 

「木原脳幹、好きな物はロマン。木原一族の代表として理事会に選ばれた犬だよ」

 

「レディリー=タングルロードよ、オービット・ポータル社の社長。で私の理事会としての役目は学園都市の航空事業の管理よ」

 

「初めまして、科学で無知な大人共、明け色の陽射しのボスであり理事会のメンバーになったレイヴィニア=バードウェイだ」

 

「変な奴しかいねえ!?幼女二人に変な格好のオッさんと痴女!ゴールデンリトリバーにカプ厨とかこの理事会終わってるだろ!」

 

オティヌス、メイザース、脳幹に二人の幼女 レディリーとレイヴィニアが入って来てトマスがそうツッコミを入れる

 

「何だ貴様、初対面だと言うのにその態度は…バレーボールの刑に処すぞ」

 

「いやバレーボールの刑て何!?」

 

「変な格好だと!?俺が選んだこの服の何処が変なんだ!」

 

「だからセンスねえよ!それでかっこいいて思ってるなら第三位と同じくらい服を選ぶセンスがねえよ!」

 

「ちょっと私は見た目は幼女だけどこれでも800歳以上なんだから」

 

「リアルロリババア!?」

 

「因みに私はビチビチの12歳だ」

 

「本当の幼女だったのか!じゃあお嬢ちゃんはお家へお帰り!」

 

「ツッコミ疲れないかい?」

 

「疲れてるよ!お前らのせいで!」

 

トマスに話しかける新メンバー達にトマスは的確にツッコミを入れる、それを見た5人は理解する「あ、こいついじられキャラだ」と

 

「だーもう!どうしてこの理事会にはまともな奴が親船さんと私しかいないんだ!不幸だ!」

 

哀れトマス、いじってくる人が増えてしまった、彼の気苦労はこれからも絶えない。頑張れ苦労人トマス

 

 

「さて、会議の話でもしようか」

 

「いきなり始まったな」

 

垣根達は席に座ると会議を始める、ツッコミ所は満載だがトマスは敢えてツッコまない。一々ツッコミを入れていては身が持たないからだ

 

「さて…会議の前に統括理事長であるアレイスターからのお話だ、全員モニターを見てくれ」

 

垣根がそう言うと天井からモニターが降りてくる、そして画面にアレイスターが映る

 

『全員集まっているようだな、では早速会議を始めたいと思う』

 

「で、会議とはなんだアレイスター、俺は競馬の時間を割いてまで来てやったんだぞ」

 

「私も趣味の時間を割いてまで来てやったんだ、感謝しろ」

 

「私もアリサとシャットアウラをストーキン…観察しようと思ってたのに…つまんない事なら承知しないわよ」

 

「仕事をなんだと思ってるんだお前ら、それに今ストーキングて言いかけなかったか?」

 

アレイスターが声をかけると約3名やる気のない声が上がりトマスは冷静にツッコミを入れる

 

『会議の内容ははこれから起こるかもしれない魔術サイドの一つイギリス清教との戦争についてだ』

 

「イギリス清教…魔術師て奴らがいる組織の一つですね」

 

『その通りだトマス=プラチナバーグ、このイギリス清教のトップであるローラ…いなコロンゾンは我々学園都市に対する戦争の用意を進めている、我々も用心しなくてはならない』

 

「一つ質問してもよろしいですか?」

 

『いいとも、なんだね親船最中?』

 

「確か我々学園都市と協定を結んでいる…つまり味方なのはローマ正教とロシア成教…この二つの組織が後ろにあるのなら何故そのイギリス清教を恐れるのでしょうか?」

 

『私が言いたかったのはそれだ、この二つの組織と学園都市の戦力が合わさればイギリス清教自体は楽に倒せる…だが一番の問題はコロンゾ…『お父さんお父さん』…失礼、なんだリリス?』

 

最中が何故イギリス清教をそれ程危険視するのかと尋ねるとアレイスターはいい事を聞いてくれたと笑い何か言おうとする、がモニターから別の声が聞こえ画面外から赤ん坊を抱えた木製の乳母がアレイスターに向かってやって来る

 

『テレビが故障したから直して、と代筆中』

 

『今パパはお仕事の途中だから後にしなさい、えっと話はなんだったかな?』

 

「…一番の問題はコロンゾ…で終わってました」

 

『そうだった、でコロンゾ…『早く直してくれないとカナミンが見れないの!と代筆中』…リリス、少し黙っていなさい』

 

木製の乳母が口を開く、これは赤ん坊…アレイスターの娘 リリスが乳母を介して言葉を話しているのだ、アレイスターは少し待てと言って親船に話しかけるがまたリリスが口を挟む

 

『コロンゾ…『だから早くしろってんだろうがこの変態クソ親父が!と代筆ちゅ…て!この語尾も面倒くせえ!』あぁ!?リリス今なんと言った!?パパに言っちゃいけない事を言ったな!』

 

『煩えんだよ変態親父が!他の人が見てるからて偉そうにしやがって!いつもは下ネタしか言わない癖に!」

 

『それを皆の前で言っちゃう!?そんな事言うとパパ泣いちゃうぞ!』

 

『勝手に泣け変態クソ親父!そしてさっさとテレビを治してこの下ネタ親父!』

 

『カチーン!そんな事を言うか!ならテレビは直してやらん!赤ん坊らしくチュパチュパおしゃぶりでもしゃぶっていろ!』

 

『ムカついた!いいぜアレイスター=クロウリー!お父さんが私の楽しみを奪うと言うのなら…まずはその幻想を(物理的に)ぶち殺す!』

 

『な!?謎の力で積み木やら玩具を浮かせた!?や、やめろリリス!そんな物をぶつけたらパパ怪我しちゃうぞ!?』

 

『勝手に怪我しろこの大馬鹿野郎!』

 

『うおおおおお!?これが…噂に聞く反抗期というヤツなのか!?私は今まさに娘の反抗期に立ち会っているぞぉぉぉ!!?』

 

父親と娘の喧嘩をモニター越しに呆然と見ている理事会のメンバー、そして激怒したリリスが無数の物体をアレイスターに向けて放射アレイスターの身体にぶつけられていく、アレイスターはこれが反抗期なのかと叫ぶ…そこでモニターの画面は真っ黒になった

 

「……えーでは、理事会のメンバーが全員揃っているので今回の議題について話そうと思います」

 

(((((((((((なかった事にした…)))))))))))

 

垣根は先程の映像をなかった事にし議題に移ろうとする

 

「で、関心の議題だが…今回は特別に新しく入ってきたメンバーの人達に学園都市をどう言う風に変えていきたいのか話してもらおうと思います〜」

 

「何だその議題は!ここは幼稚園のお遊戯会か!?」

 

「ではまずレディリーさん、どうぞ」

 

自己紹介と学園都市にどんな改革をするのか語ってもらいましょう、と議題ですらない垣根の言葉にツッコミを入れるトマスにそれを軽く流す垣根、そしてレディリーが立ち上がる

 

「そうね、私は今建設途中のエンデュミオンを完成させて、そこでアイドルのコンサートを行って学園都市の名所の一つにしようと思っているわ。それに宇宙でアイドルのコンサートなんてインパクト大だから外の人間も沢山集まって来ると思うし、ツアーとかでお金を稼ぐ事も出来るわ」

 

((((((割とまともな考え))))))

 

「それにエンデュミオンは魔術的な意味も持っていて学園都市の兵器の一つとしての機能も持っているの…まあ貴方達には魔術の事は分からないだろうけど…まあバベルの塔とだけ言っておくわ」

 

今自分が作っているエンデュミオンを完成させて、そこをライブ会場にすれば観光客が増えるとレディリーが告げる、割とまともな考えにトマス達は安堵する、そして次に立ち上がったのはレイヴィニアだ

 

「私はこの学園都市にお菓子の家ならぬその学区全てがお菓子で出来たお菓子の学区を作ろうと思う。そうすれば学園都市の餓鬼共が食いつくだろう…そう二つの意味でな!」

 

「子供らしい夢だな!だが却下だ!そして上手くない!」

 

「…チ、毎日そこで炬燵に入ってゲームで遊びながら菓子が食べられると思ったのに…」

 

レイヴィニアは無い胸を張ってお菓子の家ならぬ学区を作ると宣言する、それにトマスがツッコミを入れる

 

「全く困ったお子様だな…こんなのが黄金夜明の現代の姿とは…だが俺はこのお子様と違う、俺は学園都市にカジノを作ろうと思う!競馬やルーレット、パチンコ…ギャンブルに関する者はなんでもある!そして俺はそこで一日中ギャンブルで遊び倒す!どうだ素晴らしい考えだろう!」

 

「馬鹿かあんたは!ちゃんと働けクソニート!」

 

「…チ、こんな素晴らしい名案を却下するとは…」

 

メイザースはレイヴィニアをお子様と小馬鹿にする、が本人が提案したのも自分勝手な案だったのでトマスがレイヴィニア(お子様)以下だとツッコむ

 

「ふん、馬鹿な奴らだ…同じ魔術師として恥ずかしい限りだな。まあ安心しろ…私の案はこいつらよりマシだ」

 

「…頼むからまともなの言ってくれよ?信用するからな」

 

「私を誰だと思っている?魔神 オティヌスだぞ。私は学園都市にじゃがバター工場を建設する!そして学園都市の主食をパンや米ではなくじゃがバターにする!そして学園都市をじゃがバター王国に変える!」

 

「ちくせう!まともじゃなかったよ!なんだよじゃがバター王国て!魔術師てのは頭沸いてる奴しかいねえのか?!」

 

「じゃがバター王国はじゃがバター王国だ、それ以下でもそれ以上でもない…やはり凡人は神の考えは理解出来ぬか」

 

オティヌスは自分は馬鹿共とは違うと笑みを浮かべる、トマスが縋る気持ちで頼むからまともな事を言えと願う…が、オティヌスはじゃがバター工場を建設し、主食をじゃがバターに変え、最終目標は学園都市の名前をじゃがバター王国に変えると宣言しトマスは頭を抱える

 

「…真面目にやりたまえよ君達…科学者の違法実験を更に厳しく取り締まる。人体実験を行った者には制裁を与える…これはどうかな?」

 

「まとも!よかった!わんちゃんはまともだった!頭撫で撫でしてあげる!」

 

脳幹はレイヴィニアとメイザース、オティヌスを窘めつつ科学者の違法実験を取り締まろうとまともな事を呟く、それにトマスが脳幹の頭を撫でようかと思っていた…が脳幹が更に口を開く

 

「それに全学区に私が作った巨大ロボを置いてもいいかな?その学区を象徴する物にしたいんだが」

 

「それは何処のお台場の実物大ガ○ダムだよ!最後の最後であんたもやっぱり他の奴らと一緒だよ!」

 

「いやお台場の方じゃなくてユニコーンガ○ダムの方なのだが…」

 

「どっちも同じだよ犬公!」

 

「む、ガ○ダムとユニコーン○ンダムは確かに同じ○ンダムだが作品が違う…いいかまずこの二つの違いは…」

 

「そう言う意味じゃねえんだよ!もうやだこの理事会!」

 

脳幹もまともではなかった為トマスは気が狂ったかの様に椅子から転げ落ちジタバタと悶える、この理事会は本当に終わっているかもしれない

 

「じゃあ俺のターンだな」

 

「あーダメだダメだ、カプ厨の事だからカプ厨に関する条例を出すんだろうな!風呂を覗いてもいいとか監視カメラを増量してカップリング写真を撮るとかだろ!もうこの理事会はダメだぁぁぁぁ!」

 

垣根が次は俺が言うと呟くとトマスは頭を抱える、カプ厨の事だからまともな事は言わないとトマスは思っており他のメンバーもどうせ垣根だからまともな事を絶対言わないと思っていた

 

「…これは安易かもしれねえが…俺は各学区に目安箱を設置して学生や大人達の意見を調べようと思う」

 

「ああもうダメ………ん?」

 

「どんな些細な事でも構わねえ、学生が感じてる不安、大人が感じる疑問…学園都市のこういう所を変えて欲しい、日常で起こった出来事でも喧嘩や虐め等の問題でもいい。それを目安箱に入れて欲しい、そして俺達がそれを読んでその事件を解決する…少しでも学園都市をよりよくする…駄目か?」

 

「あ…いや、うん…いい案だと…思う…が」

 

垣根が江戸時代みたいに目安箱を置いて街の人達の意見を聞こうと言うとトマスは目を丸くして垣根を見る、他も狐につままれた様な顔をして垣根を見る

 

「あ?なんだよその顔、俺変な事言ったか?」

 

「い、いや…普段から巫山戯てるバ垣根のクセにいい事言ったと思ってな…もしかして偽物か?」

 

「確かにバ垣根にしては凄くマトモだな…偽物なんじゃないか?」

 

「さては盟友に化けたお粥だな?」

 

「……ヒーローの偽物とは昔のロマンだな」

 

「お前ら酷くね?俺だって真面目な時ぐらいあるんだぜ」

 

トマスがさては偽物か、と呟くとメイザースとオティヌス、脳幹も偽物かと疑う。レディリーとレイヴィニアも疑いの目を垣根に向けるが垣根は偶には真面目な時もあるんだと少し怒った顔で呟く

 

「それに理事会てのは学園都市をよりよくする為の組織だろ?俺はそれの一員になったんだ、遊び感覚でやるわけねえだろ。確かに巫山戯た言動はこの会議でもしてるがちゃんとした考えくらいあるんだぜ?なんせ俺達が考えた案が学園都市に住む人々の生活をよりよくするんだからな…そんな大事な職務に私事を挟む訳ねえだろ」

 

「「「「う!」」」」

 

(思い切り私事を言ってた四人には耳が痛いわね…私はちゃんと考えてて良かったわ)

 

「だから俺は職務を全うする、全ては学園都市をよりよくする為に…お前らだって同じだろ?形はどうあれ全員が学園都市の事を思ってるんだ、それを実行する為には人々の声にも耳を傾けなければならない…その為に目安箱を設置したいと思う」

 

垣根は真面目な顔で学園都市統括理事会とは学園都市に住む人々の生活をよりよくする為の組織だ、自分の私事は一切挟まない。それが自分達学園都市統括理事会の役目だと垣根は笑う

 

「だが俺は一人で学園都市の全てをよりよくする事はできねえ、所詮俺は超能力者…戦う事は出来なくても政治のことはよく分からん、だから皆の力を借りたい、食料の事なら亡本のオッさん、医療なら薬味先生、外交なら親船の婆さん、軍事なら潮岸の爺さん、魔術の事ならレイヴィニアやメイザースのオッさん、科学なら脳幹先生…俺じゃ出来ない事を手伝って欲しい」

 

垣根はそう言って全員を見回す、自分一人では全ては出来ない、だから全員の力を借りたいと言う。それを聞いた一同はふっと笑った

 

「…力を借りたいか、私達は同じ理事会の仲間だろう、協力するのが当たり前だ」

 

「俺は魔術とやらは分からんが…食糧についてなら任せな」

 

「当たり前じゃない帝督ちゃん、子供だけじゃない、大人も手伝うわよ」

 

「君には何度も助けて貰っているからね、当たり前じゃないか」

 

「…まあ、手伝ってやろう」

 

「…ふ、盟友たっての頼みなら聞いてやらん事もない」

 

「……ふん、暇だったら手伝ってやらん事もない

 

「…全員で協力か…そういう熱い展開もロマンがあるな」

 

「…仕方ない、お兄ちゃ…お前がそこまでいうなら私も手を貸してやろう」

 

「ふふふ…いいわよ、仲間だものね」

 

「…ありがとな」

 

全員が笑みを浮かべてそう呟く、垣根がそれを見て笑う

 

「じゃあこの後皆で寿司屋でも行くか…勿論回らない奴な。俺の奢りだから安心して食え」

 

「SUSHIか…悪くないな。じゃがバターの方が良かったが盟友の奢りだ、喜んで食べるとしよう」

 

「やはり日本人は米だな……て、誰が日本人だ!私はイギリス人だ!」

 

「やはり仲良く食事をするというのはいいものですね」

 

「そうですね、親船さん。私も寿司は好きなので早く行きましょう」

 

「そうだな、早く寿司屋に行くか……だがその前に言う事がある」

 

垣根が寿司屋で飯を食おうと呟くと全員が立ち上がる、全員が寿司を食べられるので顔を綻ばしている、トマスも早く食べに行きたいと呟くと垣根が先に言う事があると言うとトマス以外の全員がトマスの方を向く、それを見てトマスはなんだろうと首を傾げ全員が声を揃えて呟く

 

「「「「「「「「「「「ただしトマス、テメェはダメだ!」」」」」」」」」」」

 

「えぇぇぇ!!?何で!?」

 

お前は寿司屋に来るなと全員がそう言うとトマスは何故かと尋ねる

 

「何でだと?答えはシンプルだ…トマスのオッさんだからだよ」

 

「答えになってねえ!?私が何か悪い事でもしたのか!?」

 

「いやオッさんは悪い事はしてねえよ、だがあんたは連れてけないんだ…だってトマスだからな」

 

「だから理由になってねえだろ!何で私ばっかりそんな理不尽な扱いなんだ!」

 

「「「「「「「「「「「トマスだから仕方ない」」」」」」」」」」」

 

「やかましい!何なんだそのパワーワードは!」

 

トマスはトマスだから寿司屋に一緒に行かないと垣根が言う、そのあまりの理不尽な扱いにトマスは怒鳴るが全員が笑ってトマスだから仕方ないと口を揃えて呟きトマスにグーサインを出す

 

「じゃあトマスの奴は放っておいて私の骨船で寿司屋まで転移するぞ」

 

「おう、頼むぜオティちゃん」

 

「おい待て!本当において行く気なのか!?」

 

トマスが嘘だろと叫ぶが他の理事会のメンバーはオティヌスの骨船で寿司屋へと転移する。見事に置いてけぼりにされたトマスは伸ばした右手をゆっくり下げる

 

「……回転寿司(回る寿司)にでも行くか」

 

トマスはそう呟くと帰りに回る方の寿司屋にでも寄ろうと誰に言うでもなく呟いた、もう一度言おう、トマス=プラチナバーグは苦労人である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『すまない、リリスがヤンチャしたせいで通信が途絶えてしまった…では話の続きだが…て、あれ?』

 

会議室のモニターにボロボロになったアレイスターの姿が映り途中で終わってしまった話の続きを言いかける、だが会議室に誰もいない事に気付き唖然とする

 

『………え?もう会議が終わっていた…のか?』

 

アレイスターは呆然とした顔で部屋を見渡すが誰一人いない、アレイスターはショボンとした顔する

 

『……リリスと一緒にカナミンを見るか』

 

アレイスターがそう呟くとモニターの画面が消えた

 

 

 

 

 




ていとくんがまともだと…?そして親子喧嘩が凄まじいクロウリー父娘…そして久しぶりにキャラ紹介

トマスさん…苦労人、いじられキャラ、意外と自分はトマスさんが好きです

親船さん…理事会のメンバーが犬だったり幼女だったりカプ厨だったりと変な面子が多い中トマスさんと並ぶマトモな人物

潮岸さん…原作より性格は柔らかめ、この人いつも駆動鎧してるけどこれを着てどうやって食事をしたり用を足してるのだうか?

亡本さん…食事大好き亡本さん、いつも電車の中でグルメな料理を食べてるよ

薬味さん…若作りなババ…ゴホンゴホン!お姉さん。唯一さんの知的好奇心を植え付けられていないので原作みたいな巻ボスにはならないよ

貝積さん…原作とそんなに変わらない人

まあこんな設定ですね、え?なんでレディリーさんがいるのかって?つまんねえ事聞くなよ!(あやねるボイス)。この理事会にはまともな人物は殆どいない(白目)

次回はあの半魔神さんの登場、あの人のキャラ崩壊ぶりは必見です


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相手が友人でも家族でも連帯保証人にだけはなるな

さっきに言っておきます、この話は18禁じゃないです。ギャグ小説です。後オッレルスさんとシルビアさんの口調がこれじゃない感がありますが気にしないでください

こんなのオッレルスさんじゃない!オッレルスさんはこんなキャラじゃない!こんな喋り方しない!と思った方はすみません。もし不愉快になられたら本当にごめんなさい、オレシル(オッレルス×シルビア)が好きな人もごめんなさい



ふらりと寄ったとある街で。パピーミルの集団を懲らしめた。

 

「動物を物として扱い檻の中に一生閉じ込める…そんな悪質ブリーダー共を皆殺しにして動物達を助けた…までは良かったんだけど…この子達が懐いちゃってさ」

 

「……前にもあったよね?この前は子供達、今度は犬猫達てか」

 

その女…シルビアは夫であるオッレルスを冷たい瞳で見つめる、彼の背後にはワンワン!ニャー!と鳴き続ける犬やら猫がオッレルスに向けて甘える様な声を出す。実際何匹の猫や犬はスリスリと彼の足を頬ですりすりしていた…シルビアは溜息を吐いてオッレルスに向けて呟く

 

「捨ててきなさい」

 

「おおう!!待って待って!こんな子達を野に放ったら死んでしまいますの事よ!?何もこのアパートメントを動物園にしようと言うのではありません!いつかの子供達の様に里親を見つけるまででよいのです!」

 

「捨ててこいよ、ウチには動物を養うだけの金はねえ」

 

「そんな殺生な!よくそんな事が言えるなこの冷血女!お前は動物嫌いのお母さんか!動物を見捨てる事なんて出来ねえだろ!そんな貧しい事しか言えないから胸も貧し「るせえ!」がぐぼげぇ!?」

 

捨ててこいというシルビアの足にしがみつくオッレルス、オッレルスはシルビアの靴を舐める勢いで必死に動物達を保護しようと言うがシルビアは捨ててと冷淡に呟く、その答えにオッレルスがそんな小さい事しか言えないから胸も小さいんだと呟くとシルビアの全力の蹴りがオッレルスの顔面に命中し香港映画の様にオッレルスは吹き飛ばされる

 

「キレた、そしてムカついた!テメェの股を割ってやる!」

 

「ちょ、落ち着こうシルビア!一旦冷静になろう!だからその手に持った犬小屋と縄を置いて!実は俺には名案があるのだよ!」

 

「あ?何だその名案て?」

 

玄関の近くに置いてあった犬小屋とそこの中に入れていた縄を持って迫り来るシルビアを何とか宥めるオッレルス、彼はいい案があると言うと真顔になってこう呟いた

 

「学園都市、あそこにいる()とその友達に金を貸して貰えばいい」

 

「何至極真面目な顔でゲスな事を言ってんだよ」

 

 

第七学区にあるセブンスミストのお菓子売り場にて、帆風はどっきり!ゲコ太チョコレートと言うシールのオマケが付いてくる食玩を買いにやってきた

 

「今日こそレアシールが当たりますように…」

 

帆風はそう瞑想してからゆっくりとどっきり!ゲコ太チョコレートの棚へと手を伸ばす、そして買い物カゴにチョコレートを入れてそのまま帰ろうとすると後ろから声をかけられる

 

「あれ潤子先輩も来てたんですか?」

 

「あら御坂さん、御坂さんもドゲチ(どっきり!ゲコ太チョコレートの略)を買いに?」

 

「ええ、ドゲチを先輩と操祈と一緒に買いに来たんです」

 

((凄い略し方))

 

どっきり!ゲコ太チョコレート、略してドゲチを買いに来たのかと帆風が尋ねそれに頷く尊、上条と食蜂は変な略し方だと内心で呟いた

 

「もしかして上条さんと女王もゲコラーに目覚めたのですか?」

 

「いや俺達は付き添いだよ…なんでも紳士協定で1日一個しか買えないから二人にも買って欲しいてせがまれて…」

 

「大人買いしてもいいと思うんだけどねぇ…」

 

「駄目よ、それじゃあちびっ子達が買えないでしょ。ルールを守って楽しくゲコラー、それが基本よ」

 

「それは何処の遊○王かしらぁ?」

 

帆風が上条と食蜂がゲコラー(同志)に目覚めたのかと嬉しそうな顔をするが二人は単なる付き添いだと笑う。四人は会計を済ませセブンスミストの店外にでると全員がチョコレートの封を開きチョコレートを齧りながらシールを確認する

 

「あ〜、駄目だったわ…「車に轢かれてペチャンコになったゲコ太」のシールだわ…私このシールもう12枚目よ」

 

「わたくしもですわ…「トンビに油揚げをさらわれる代わりにゲコ太がトンビに攫われた」のシールですわ」

 

「どんなシールだよ…俺のは「お菓子を買いに行く途中で財布を落として泣いているゲコ太」のシールか…ゲコ太も不幸なんだな」

 

「私はぁ「魔竜ゲコドラゴンに聖剣ゲコソードを携えて挑むゲコ太 前編・魔竜VS聖剣勝つのはどっちだ?編」てシールねぇ…というかぁシールに前編てあるの?」

 

「あ、そのシールの続きは「毒のゲロにより窮地に立たされたゲコ太、トドメを刺すべく襲いかかるゲコドラゴンの前に現れたピョン子 中編・死んだ筈のピョン子が何故ここに?編」と「愛情パワーで必殺ゲコダブルパンチでゲコドラゴンを撃破したゲコ太とピョン子 後編…今までご愛読ありがとうございました、新シリーズ ケロヨンのケロ冒険にご期待ください 後編・冒険の終わり…いやまだちょこっとだけ続くかも?編」ですよ」

 

「終わりなのか、続編があるのかはっきりしなさいよぉ」

 

美琴と帆風は目当てのシールではなかったのか落胆する、因みに全員シールの名前が酷かった

 

「で、その目当てのシールてどんな絵柄なんだ?」

 

「私のお目当のシールはね『幻の107番』と呼ばれるNo.107の『縁側でうっかり昼寝をして脱水症状のゲコ太』のキラシールよ…それ以外のシールはコンプしてるんだけどね」

 

「わたくしもNo.107の以外はコンプ済みですわ、次の第8シーズンまでには何としても入手しておきたいですわね」

 

彼女らの目当てのシールは幻の107番、噂では誰もまだ手に入れた事がないシールらしい。そんなレアシールが今回も手に入らず残念がる二人

 

「欲しいと思ってる物程手にはいないものよね…」

 

「あー分かる分かる、物欲センサーて奴だな。欲しいモノ程当たんねえよなぁ」

 

「そうなんですよ…て、いつの間にいたんですか垣根さん」

 

美琴が欲しいもの程当たらないとこぼすというの間にか側にいた垣根がうんうんと頷く、帆風がいつの間にと驚く

 

「さっきお菓子売り場でお菓子買ってたらお前らを見てな、急いで会計して追いかけて来たんだよ…お、全員ドゲチ食べてるのか。ウチのクロちゃんも食べてるんだよ」

 

「なあそのドゲチて略し方流行ってるのか?」

 

「じゃあ垣根さんの妹さんもシールを集めてるんですか?」

 

「まあな、でもタブりばっかりなんだよな…何個買っても同じ奴しかゲットしてないて愚痴ってたよ…俺もドゲチ買ってクロちゃんが持ってないシールをあげようと思ったんだけど…まさかのクロちゃんが持ってる奴とタブりだよ」

 

やはりどっきり!ゲコ太チョコレートをドゲチと略するは流行っているのかと上条が呟く、垣根はフロイラインの為にチョコレートを買ったが彼女が持っているものと同じだったと落胆する

 

「で、何が当たったの?「船酔いしてゲコゲコしてるゲコ太」?それとも「一人カラオケしてるゲコ太」?」

 

「えっとな……こんな絵柄の奴だ」

 

美琴が何が出たのかと尋ねると垣根は懐から一枚のシールを見せる、そのシールの絵柄は『縁側でうっかり昼寝をして脱水症状のゲコ(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)』だった

 

「「………え?」」

 

「あ〜、たくこのシールもう何枚目だよ、クロちゃんはこれと同じ絵柄の奴10個も持ってるしな…あ、そうだこれ縦ロールちゃんにやるよ、こういうの集めてるんだろ?」

 

幻の107番とまで言われるレアシールを垣根が帆風達に見せ帆風と美琴は思考停止する。垣根は自分はいらないから帆風にあげると彼女にシールを渡す

 

「………」

 

「え?何その反応?あ、もしかして同じやつ持ってた?」

 

「………カキネエル様」

 

「カキネエル!?誰それ!?俺メルヘンだって自覚はあるけど自分から天使だって言わないよ!?」

 

帆風が無言でシールを見つめる、それを見て垣根は同じやつを持ってたのかと考えるが帆風は両手を合わせ垣根を拝み始め垣根が困惑する

 

「わたくしこれからカキネ教に入ってカキネエル様を毎日拝みますわ…アーメン」

 

「変な宗教を作られた!?やめて恥ずかしいから!」

 

「……私もカキネ教に入ればレアシール貰えるかな」

 

「「やめろ」」

 

帆風が自分が求めていたレアシールを与えられた嬉しさのあまり垣根を神のように敬う、美琴もカキネ教に入ればレアシールが貰えるもしれないとフラフラと垣根の方に歩み寄ろうとしそれを上条と食蜂に止められる

 

「随分楽しそうだね、垣根帝督」

 

「!?……お前は…」

 

ふと声が聞こえ全員が背後を振り返る、垣根達の背後には長身で金髪緑目の青年が立っていた、彼が具体的に何時頃から立っていたのかはわからない、最初からそこにいたのか、今来たのか…とにかく説明できなかった

 

「……アンタ誰?」

 

「俺はオッレルス…垣根帝督の知り合いでね…まあ君達には魔術師といった方が早いか…お楽しみの途中で水を差すのは悪いが少し彼に用があってね」

 

美琴が目の前の男を少し警戒して睨むとオッレルスは少し口元を緩める、そして垣根に用があるといってゆっくりと歩み寄る

 

(……こいつ強いな)

 

上条達はオッレルスの実力を理解する、彼はオッレルスから自分達をバレーボールにしたオティヌスとどこか似たような雰囲気を感じ取った

 

「で、用て何だ?」

 

「実は頼み事があってね」

 

「頼み事だと?」

 

頼み事があるとオッレルスがそう言った次の瞬間、オッレルスは後方へと飛び上がりムーンサルトを行いその後その勢いで地面へと急降下し土下座を行う。これぞオッレルスの必殺技が一つ ムーンサルト・ジャンピング土下座である

 

「お願いします垣根様!このゴミでミジンコなわたくしめにお金を貸してくださいぃぃぃぃぃぃ!!」

 

「「「「……………え?」」」」

 

「………またかよ」

 

オッレルスの情けない声がセブンスミストの店外に響く、そのあまりにも綺麗な土下座に帆風達は何が起こったのかと思わず呆けた声を漏らしオッレルスを見つめる、垣根はまたかと頭を抱えた

 

 

「……と言うわけで犬猫を養う為にはお金が必要なんですよ、だからお金を貸してくれると嬉しいな」

 

「帰れ」

 

オッレルスが何故お金を貸して欲しいのかと理由を伝えると垣根ににっこり笑顔で媚びる、垣根は冷たい眼差しでオッレルスを見つめる

 

「そんな…俺と君の中じゃないか、頼むよ〜カキえもん」

 

「帰れ、俺がお前にもう何円金貸してると思ってるんだ」

 

「え……?ん〜二百円くらい?」

 

「違えよ馬鹿!二千万だよ!金借りたいならまずそれから返せよ!」

 

「いつか返すさ、そんな事よりお金を貸してくれ…そうだな、二千万くらいでいいよ?」

 

「もうお前本当死ねよ」

 

オッレルスがケチンボと頬を膨らませて怒り、垣根が青筋をピクピクさせる

 

「いや本当に頼むよ、俺こないだ就職先クビになってさ…今俺無職なんだよ」

 

「……因みに何でクビになったんでせう?」

 

「分からないよ…何も悪い事なんかしてないのに…クビになる前の日に上司と一緒に飲み会して酔った拍子に上司の頭を掴んで上司のカツラを毟り取って上司に大恥かかせただけなのに…本当に何が理由でクビになったんだろう?」

 

「それがクビの理由よ」

 

オッレルスは仕事をクビになって今無職だから金を貸してくれと懇願する、だがそのクビになった理由もオッレルスのせいである

 

「他にも新聞配達の仕事も寝過ごしてクビになるし、家庭教師の仕事も生徒がムカつく態度だったからつい殴っちゃってクビになるし、外回りの仕事も仕事中にパチンコ行ってた所為でクビになるし…本当に不幸だよ」

 

「全部貴方の自業自得力じゃない」

 

「と言うわけで垣根さん!この無職でニートな俺にお金を貸してください!この救われぬ者に救いの手をぉぉぉぉぉ!!!」

 

「ねーちんの魔法名を言ったて貸さねえぞ」

 

他の仕事も(オッレルスの過失で)クビになりそれを理由に金を貸してくれと叫ぶオッレルス、垣根達は冷たい目でオッレルスを見下ろしていた

 

「じゃあな、早く再就職しろよ。応援してる」

 

「ちょ!?待って下さいカキネエル様!」

 

垣根が早く再就職しろと告げてそのまま踵を返してその場から去ろうとする、それをオッレルスが垣根の脚にしがみつく

 

「待ってくださいカキネエル様!ここでお金を貰わなければ我妻 シルビアにヌッ殺されてしまうのです!ですからせめて100万でいい!お金を貸してくれませんか!?そしてあわよくば就職先を紹介してくれませんか!」

 

「…貴方にはプライドという物はないのですか?」

 

「ふ、プライドなど日干しにして食べてしまったよ」

 

「貴方のプライドはたくあんなのかしらぁ?」

 

情けなく垣根に懇願するオッレルスに流石の帆風もドン引きした目でオッレルスを見つめる、オッレルスはプライドなどもう食べてしまったとキリッとした顔で呟き全員が少しイラっとした

 

「何度言おうが俺は絶対お前に金は貸さねえぞ」

 

「そうか…なら()に借りるのは諦めよう」

 

オッレルスはようやく垣根からお金を借りるのを諦めたの垣根はホッと息をつく、だがオッレルスは上条達にゆっくりと近づいてき彼等ににっこりと笑いかける

 

「お金貸してくれると嬉しいな」

 

「「「3秒以内に帰れ」」」

 

「申し訳ございませんが貴方様に貸すお金は一銭たりともございませんわ。回れ右してお帰りくださいまし」

 

「わお、取りつく島もないとはまさにこの事☆」

 

屈折のない笑顔でオッレルスが上条達にお金をせびる、上条達はオッレルスに露骨な顔で早く帰れよとジト目で睨む

 

「…こうなったらこちらもカードを切るしかないか…」

 

「カード?」

 

「そうだ…俺が話す情報と引き換えにお金を支払う…どうかな?」

 

「……で、何だよその情報てのは」

 

オッレルスが自分が言う情報と引き換えにお金を支払ってもらおうと呟く、上条がその情報とは何だと尋ねるとオッレルスはジロリと上条を見つめる…正確にはその右手を

 

「幻想殺しの秘密…と言うより、そもそもの正体について…それを話そう」

 

「!?…俺の右手について…だと?」

 

「そうだ、君も疑問に思っていただろう?自分の右手とは何かと…」

 

オッレルスが上条の右手の正体について教えると笑うと上条が自分の右手を凝視する…上条自身は記憶が朧げで覚えていないがアウレオルスとの戦いの時に現れたあの竜達の事を彼は思い出す…あの竜達は幻想殺しの本当の姿だったのか?あるいは…

 

「……知りたいようだね、俺でよければ幻想殺しについて教えよう…その代わり…」

 

「………分かった、金は払うよ」

 

「……いいだろう、君の持つ幻想殺し、その正体とは……」

 

オッレルスがまるで物語の黒幕の様な黒い笑みを見せ上条は真実を知る為なら…とお金を払う決意をする。そしてオッレルスが幻想殺しの正体を話そうとしたその瞬間

 

「チェストぉぉぉ!!」

 

「ねぼし!?」

 

「オティヌスさん!?」

 

突如現れたオティヌスがドロップキックをオッレルスの後頭部に放ちオッレルスが間抜けな声を響かせて吹き飛ぶ

 

「よお、久しぶりだなクソ兄貴(・・・・)

 

「や、やあオティヌス…元気そうで何より」

 

「……え?クソ兄貴?」

 

オティヌスが氷河期の様な冷たい目でオッレルスを睨む、帆風はオティヌスが今気になる単語を呟きん?とオティヌスを見つめる

 

「言ってなかったな、オッレルスはオティヌスの兄なんだよ…ほら髪の色とか目が同じだろ」

 

「あ、本当だ…よく見たら結構似てる」

 

「……よく言われる、こんなクソ兄貴と一緒にされるのは不快だが」

 

「し、辛辣ぅ…お兄ちゃん泣いちゃうぞ?」

 

「泣け、そして学園都市から帰れ」

 

垣根がこの二人は兄妹だと言うと上条が確かに似てるとこぼす、同じ金髪だし目の色も同じで雰囲気も少し似ている…オティヌスはオッレルス(こいつ)が兄なのは不愉快だと冷たい目で見つめていたが

 

「あ、オティヌスお金貸してくれる?お兄ちゃんにお恵みを!」

 

「あの頃の面影がねえな、昔の私を殺そうとしてた頃のお前は何処へ行った?」

 

「もう悪さしてないならいいじゃん。そんな事よりお金プリーズ」

 

「ざけんな、金貸して欲しいならこの前貸した二千万返せ」

 

((((この人借りてばっかいるなぁ))))

 

自分の妹からもお金を借りようとする情けのない(オッレルス)に汚物を見る目で見つめる(オティヌス)。そもそも妹に金を借りているところで兄としての威厳がない

 

「オッレルス…お前どんなけ金を借りてるんだよ?」

 

「そうだな、アレイスターからは三千万、木原 脳幹から一千万、あとその他諸々から借りたお金が三千万…全部で一億くらいだな」

 

「借り過ぎだろ」

 

オッレルスが指で何かを数え合計一億円借りていると笑う、上条は借り過ぎだとツッコんだ

 

「まあ、全部踏み倒す気でいるがね……あ、しまったつい本音が」

 

「最低ねアンタ」

 

オッレルスは一億もの借金を返す気はないらしく踏み潰す気満々だった、これには美琴も汚物を見る目しかオッレルスに向けられない

 

「……こんなけ言っても貸してくれないとは冷たい奴らだ…もういいよこの冷血漢共。他の奴らに頼るよ…カーッ、ペッ!」

 

((((金が貰えないと見るや態度変えやがった))))

 

オッレルスは金を貸してくれないと知るや否やペッ!と痰を地面に吐き出しベチョ、と嫌な音を当てて地面に痰が落ちる。その態度の変わりように帆風達は冷たい目でオッレルスを見下す、オッレルスは踵を返し次の金づるの所へと行こうとしたその時

 

「待てクソ兄貴」

 

「ん?なんだ…」

 

「これでも持っていけ」

 

オティヌスがオッレルスを引き止めるとオッレルスは首だけをオティヌスに向ける、そしてオティヌスが何かを投げると勢いよくオッレルスの顔面に命中する

 

「ひでぶ!?」

 

オッレルスはバタンと地面に倒れイタタ…と自分の顔をさする…そしてふと地面を見るとそこには札束が一つ転がっていた

 

「!?こ、これは…」

 

「……勘違いするな、それは犬猫達の食費代だ…貴様のものじゃない」

 

「オティヌス……」

 

「…ふん、動物が死ぬのは目覚めが悪い…その代わりいつか絶対返せよ」

 

(((ツンデレ……)))

 

オティヌスが犬猫達の食費代に使えと素っ気なく言う、目元に涙を潤ませるオッレルス…オティヌスはツンデレだなと上条達は理解した

 

「ありがとうオティヌス様!このお金は多分絶対返さないと思うけどありがたく犬猫達のフードに使わせてもらうよ!」

 

「せめて嘘でも返すと言おうかクソ兄貴」

 

オッレルスは半泣きでお金は返さないけど動物達の食費代にすると伝える、オッレルスは嘘でもいいから返すと言って欲しかったと呟き遠い目で空を眺める

 

 

『頼むーーー!お金を貸してくれ!』

 

『……嫌だ』

 

『そんな!頼むよ!お金貸してくれたら今度葡萄を買ってきてやるから!』

 

『……分かった、その代わり約束は守れよ』

 

『ありがとうーーー様!可愛い妹よ!』

 

『……くすっ』

 

 

「……クソ兄貴は昔も今も変わらんな」

 

彼女は軽く笑う、昔も今も目の前の馬鹿な兄は変わらないと…上を向いている為誰も彼女が笑っている事に気付かない

 

「よし!これでシルビアに怒られずに済む!さてすぐに帰ると……」

 

「…おいどうしたクソ兄貴、言葉の途中で固まって」

 

オッレルスが言葉の途中で固まる、彼はまるで何かいい案を思いついたぜ!とでも言う風な表情で固まっていた…それにある種の不信感を覚えるオティヌス。そんな妹に兄はにっこりと微笑んで口を開く

 

「……なあ、この札束100万くらいあるからさ…一万円くらいギャンブルに使ってもバレないよな?それにギャンブルに勝てばお金が増えるし…よし、久しぶりにラスベガスでも行くか」

 

「ざけんな、そんな事の為に貸したんじゃねえよクソ兄貴。やっぱり金返せ」

 

「だが断る」

 

オッレルスが某ギャンブル漫画の主人公の様な笑みを浮かべ、一万円くらいなくなってもバレへんバレへんと笑いラスベガスに行こうとしオティヌスがやっぱり金返せと呟くがオッレルスはジョジョ立ちしてノーだと言い切る。そしてオッレルスは札束を片手に早くラスベガスに行って金を稼ごうとしたその矢先、ガシッと誰かに肩を掴まれる

 

「誰だ、俺は恐妻の所為で何年もラスベガスに行っていな…」

 

「へぇ?誰が恐妻だって?」

 

「」

 

(オッレルス終了のお知らせ)

 

オッレルスの肩を叩いたのはシルビア、シルビアはにっこり笑顔でオッレルスにドス黒いオーラを放出しオッレルスが固まる

 

「し、シルビアさん?いつの間にここに?」

 

「あんたが土下座した頃からかな?で、恐妻の所為でラスベガス行けなくて不満だったと?ほう?」

 

「じ、ジョークだよジョーク!そんな所行くわけないだろう!ほらこれ犬猫達の食費代だよ!」

 

「もう要らねえよそれ、犬猫達の引き取り先は見つかったからな」

 

「……ふえ?」

 

「私のコネを使ってイギリスの第三王女が八割引き取ってくれてな、他の犬猫もイギリスで里親を見つけてきた…まあ数匹はうちにまだいるが…ガキ共が世話するから大丈夫だってさ。だからそんな大金要らねえぞ」

 

シルビアが睨むとオッレルスは萎縮して札束を見せる、だがもう殆どの犬猫達の里親が見つかったらしくそんな大金は要らないと告げる

 

「……そうか、ならこの金で美味いものでも食べに行くか?」

 

「おいその金返せよ」

 

オッレルスはこの金で美味い料理でも食べるかと聞くとオティヌスがその金返せと睨む

 

「てかお前、何私に隠れて一億も借金してるの?しかも踏み倒す?ねえ馬鹿なの死ぬの?」

 

「し、シルビアさん?何でしょうかその手に持った縄と犬小屋は…と言うかいつの間にそんな物を…」

 

「これか?これはな……お前にこうやって使うんだよぉぉぉ!!」

 

「ひぃぎゃあああああああああああッ!?家庭でできるカンタン三角木馬ぁーっ!?」

 

「「「一瞬で服を脱がせて目にも留まらぬ早業で亀甲縛りを行って犬小屋の上に乗せた!?」」」

 

シルビアがジリジリと縄と犬小屋を両手に携えてオッレルスに近づく、悪鬼の笑みを浮かべるシルビアに怯えるオッレルスは逃げようとするがシルビアからは逃げられない、一瞬でオッレルスは服をパンツ一枚だけ残して全て剥ぎ取られ、更にシルビアに亀甲縛りにされ犬小屋の上に座らせる

 

「アーーー!!?股が割れる、割れちゃう、割れてしまうの三段活用!やめて股間が!股間が痛い!」

 

「チッ…私とした事が鞭と蝋燭と漆を忘れてきてしまった…このまま放置プレイして買いに行くか」

 

(聞いてすらいない!?だが鞭と蝋燭、漆がないのなら安心だ…これくらいなら耐えきって見せる!俺はSMプレイなんかに負けない!)

 

オッレルスは叫ぶがシルビアは忘れ物をしたと舌打ちする、それを聞いてオッレルスは三角木馬くらい耐えきって見せると笑みを浮かべるが

 

「おいシルビア、とろろと蝋燭、鞭があるが使うか?」

 

「お、ありがとなオティヌス」

 

「オティヌスぅぅぅぅぅぅ!!?」

 

オティヌスが黒い笑みを浮かべて鞭や蝋燭、とろろを渡す。オッレルスは余計な事をと叫ぶがシルビアがそれを受け取るとオッレルスは全身から嫌な汗を掻き始める

 

「や、やめるんだシルビア!こんな子供達の前でやっていい事じゃない!だからその手に持った危険物を置いて…」

 

「んな事知るかぁぁぁ!」

 

「ふあぁぁぁん!?とろろぶっかけらめぇ!痒い痒い痒い痒い痒い痒い痒い!かゆいのぉ!」

 

「あははは!いい声で啼くじゃないか!さてお次は蝋燭プレイといこうか!」

 

「アツゥイ! 蝋燭プレイらめぇ!」

 

シルビアの攻めによりオッレルスが叫びをあげる、それを唖然とした顔で見ているセブンスミスト周辺に集まっていた人々、ゴクリと生唾を飲む上条達。帆風ははわわと顔を真っ赤にして手で顔を塞ぐがチラリチラリと指の合間からオッレルス達を見ている

 

「やっぱり無理ぃぃぃぃ!シルビアには勝てなかったのぉぉぉ!!シルビアの鞭さばき凄いのぉ!」

 

オッレルスの快感が混じった叫びがセブンスミスト周辺に響く、シルビアは鞭でオッレルスを叩くので夢中で周りの視線を気にしない

 

「……帰ろうか縦ロールちゃん」

 

「……そうですわね」

 

垣根は変態二人から目を逸らして帆風と一緒にこの場から去ろうとし帆風は顔を真っ赤にながら俯いて返事を返す、上条達は二人のプレイに熱中しており動きそうにない、オティヌスは札束をこっそり回収しそのまま何処かへ消えていった。垣根と帆風は逃げる様に駆け出した

 

 

「まだ終わらねえぞオッレルス!もっといい声で啼けよ!」

 

「ひゃああああ!!これ以上はらめぇなのぉぉぉ!!これ以外したら俺何かに目覚めちゃう!目覚めちゃうからぁぁぁぁ!!」

 

なおこの後二人は警備員に連行された、当然である

 

 

 

 

 

 

 




ドMのオッレルスさんとドSのシルビアさん…SS2巻でオッレルスさんの初登場を見たとき作者が思った印象は「あ、Mキャラか」ですね(失礼)、本編のカッコいいオッレルスさんは何処へ?オティヌスが味方キャラだから活躍できないのだよ

とろろに蝋燭…そして三角木馬…18禁だと思われないか不安…因みに作者にそんな趣味はないです、それとホモでもないです。

オティヌスとオッレルスが兄弟なのは作中でも言った通り髪と目が同じ色なのとオッレルスがオティヌスの過去を知っていると言った時点で作者は「兄弟なんじゃねこの二人?」と思い新約10巻でそこら辺の設定が出るはず…と期待していたのに出なかった…まあこの小説では二人は兄弟という事で、別の話でそこら辺を詳しく書けたらいいなと思ってます

次回は夏祭り編(あのテレスティーナ編にあったあの祭り)、次回もお楽しみに


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夏祭りで楽しむのはいいがスリにはご用心

今回は夏祭りのお話です、夏祭りの夜店でていとくんと縦ロールちゃんが食べ物を食べたり、安定のバカップルや初登場のキャラが出てくるだけです

そして名前は出てこないけどとあるシリーズを知っている人なら分かるあのキャラ達も登場、貴方は何人わかるかな?一応ヒントが会話の中に紛れているのでそれを頼りにネットで検索するのも手ですね



帆風潤子は決意を固めていた、帯を固く締めその目に熱意を宿す…それはまるで戦場へと向かう兵士の如しだった

 

「……まあ、ただ潤子さんが垣根さんと夏祭りに行くだけなんですけどね」

 

そんな燃え滾らんばかりの熱気を放つ帆風をジト目で見てきたのは弓箭入鹿、彼女はたかだか帆風の好きな男性と一緒に夏祭りに行くぐらいでこんなに決意するものかと思っていた

 

「これは負けられぬ乙女の意地があるのです」

 

「はいはい……着物の着付け終わりましたよ」

 

帆風の呟きを軽く流して入鹿は着物の着付けが終わったと言う、因みに帆風が着ている着物は花柄模様のピンクの着物だった

 

「……では行ってまいります!」

 

帆風は入鹿にお礼を言った後風のように部屋から去って行く…それを見届けた入鹿は自分も着替えようと着物の着付けを始める

 

 

垣根はワインレッドの携帯を弄りながら帆風を待っていた、垣根は早く来ないかと携帯の時間を確認しながら鼻歌交じりに携帯を弄っていた

 

「遅れてすみません垣根さん!」

 

「お、来たか…俺も五分前に来たところだから気にしてねえよ…」

 

帆風は遅れてしまい申し訳ないと頭を下げる、垣根は全然待ってないと笑う…因みに垣根は普段通りの格好である

 

「…あれ?女王や上条さん達は?」

 

「あいつらは先に祭りに行ってるてよ…それに一緒には回らないらしくてな…当麻達は3人でお祭りデート、アー君は打ち止めと数多さんと、軍覇は友達と、むぎのんは浜ちゃんやその他のメンバーと祭りを回って連絡があってな…俺ら二人だけだぜ…たく友達付き合いが悪い奴等だな」

 

「あはは…まあ仕方ないですよ」

 

「皆で祭りを楽しみたかったのにな…まあいいか、二人で祭りを楽しむとするか…なら早く行こうぜ。さっきから楽しみで仕方ねえんだ」

 

いつのもメンバーは他の誰かと回るらしく垣根はそれを不満げに呟いていた、帆風がそれを宥めると彼はなら早く行こうと笑いかける

 

「ふふふ、垣根さんもお祭りが楽しみなんですね」

 

「当たり前だろ、祭りには色んなものがあるからな、綿菓子にクレープ、チョコバナナ、りんご飴、かき氷、ベビーカステラ、ワッフル…美味い食べ物が沢山あるぞ」

 

(……垣根さんて意外と甘党なんですね)

 

帆風が垣根も祭りが楽しみなのかと笑いかけると垣根は頭の中で沢山の食べ物を想像し涎を垂らしかける…帆風はそれを見て甘党なのだと気付いた

 

「それに夏祭りてのはカップルが現れる場所でもある…つまり、沢山のカップリング写真が撮れるて事だ!」

 

「垣根さんらしいですね…」

 

「さてどんな写真が撮れるか楽しみで仕方がねえ…早く行こうぜ」

 

垣根は携帯を片手にカップル達のいちゃいちゃ写真を撮りまくってやると息巻く、帆風はそんな平常運転の垣根を見て苦笑する。そして帆風はふと気づく

 

(…わたくしと垣根さんだけでお祭りを回る?…つまりお祭りで男女二人だけで歩くという事…?そ、それてカップルみたいじゃないですか!…つまりお祭りデー…わぁぁぁぁ!!!)

 

「?何立ち止まってんだ縦ロールちゃん?行かないのか?」

 

「は!す、すみません!今行きます!」

 

垣根と二人きり、それは他の人から見ればデートなのでは?と思い顔を赤くする帆風、垣根はそれに気づかずに早く来いよと言い帆風は慌てて駆け出し始める

 

 

『いらっしゃい!お好み焼きお一つどうですか!』

 

『ケバブは如何すか!安いよ安いよ!』

 

『叶え屋です〜!お客様の望みを30分だけ叶えます!一回300円です!安いよ!』

 

『ウートガルザロキ、それは別の人のウートガルザロキのSSだ、と『助言』しておこう』

 

『……このカラーひよこ達はきっと復讐の手助けになるかもしれない…お1つどうだ』

 

『カラーひよこて昭和かよ…他に売るもんなかったのかよペルシ』

 

『俺と決闘してえ奴はいねえか?俺と戦っていい経験値になってくれよ』

 

『じゃがバターはどうだ、魔神お手製のじゃがバターだぞ、美味いぞ』

 

お祭りの広場に着いた二人に聞こえて来たのは人々の楽しそうな声やお店の人達の声、そして漂ってくる食べ物の匂いだ

 

「わぁ!今年も賑わってますね!それに美味しい匂いがこんなにも……」

 

「お、りんご飴売ってる店発見、早速買うか」

 

垣根は迷わずりんご飴を売っている店へ直行、りんご飴を自分と帆風用に二つ買い垣根は帆風にりんご飴を渡す

 

「ほら俺の奢りな」

 

「ありがとうございます!」

 

帆風は垣根から渡されたりんご飴を嬉しそうに受け取り舐め始める、垣根はサクサクとりんご飴を齧って食べる

 

「さて…知り合いがいないか確認…お、いたいた」

 

垣根が見つけたのは1組の男女、垣根は携帯を開いていつでも写真が撮れるように駆け出す

 

「お久しぶりだな、砂皿さんにステファニーさん」

 

「……垣根か」

 

「貴方も来てたんですか」

 

「まあな…て、なんだその両手の荷物?」

 

男の名前は砂皿緻密(すなざらちみつ)、女の方はステファニー=ゴージャスパレス…ステファニーはこの街の警備員であり砂皿は暗殺者だ、砂皿は弟子のステファニーに仕事がない時は学園都市で過ごしましょうと言われ当初は渋々ここに来たが最近では警備員に射撃銃の訓練を教えている…そんな二人は両手に沢山のお菓子やらぬいぐるみ等を袋に入れて抱えていたので何があったのかと垣根が尋ねる

 

「いや〜お祭りに来てテンションがハイになってしまい…砂皿さんと勝負をしてしまって…」

 

「射的でどっちが多くの景品を取れるかという勝負になってな…最初にやった店で全ての景品を撃ち落としてしまい次へ次へと行っているうちにこの祭り全ての射的の景品を撃ち落としてしまってな…」

 

「そのせいで私達射的出禁になっちゃいました〜あはは!やっぱりプロのスナイパーがお祭りの射的に出たらいけませんね!」

 

「……貴様がくだらん事を言わなければこんな事にはならずに済んだというのに…」

 

「えええ!?砂皿さんそれ言っちゃいます!?砂皿さんも案外活き活きとしてたじゃないですか!私のせいにしないでくださいよ!」

 

「………」

 

二人はお祭りの空気に当てられテンションが上がってしまいこの祭りの射的の景品を全てゲットしてしまい、そのせいで今後一切射的が出来なくなってしまったらしい…砂皿はジロッとステファニーを睨むがステファニーは砂皿も楽しんでたと反論し彼は無言で目を逸らす

 

「(いい砂ステの写真が撮れたな)そんなけ沢山取れたらいいんじゃないか?もう一生分の射的はやっただろ」

 

「よくないですよ!私は砂皿さんにテレビドラマみたいに『銃の標準が間違ってぞ』てみたいな感じで私の隣に立って砂皿さんの手が私の手と重なる…そんな風に期待してたんですよ!」

 

(そんな風に考えていたのか)

 

ステファニーは恋愛漫画みたいな展開にならずにもう今後一切射的が出来なくなった事にムキーとしていた、砂皿は今度学園都市の外の祭りの射的をさせてあげようと内心で考えた

 

「じゃ、俺達は他の店回るから」

 

「…そうか、またな」

 

「補導されない様に気をつけてくださいね」

 

垣根は自分達は他の場所へ行くと伝えると二人は手を振って人並みに消えていく…垣根は近くにあったかき氷を二つ頼み一つを帆風に手渡す

 

「少し放置してごめんな、ほらかき氷」

 

「いえいえ、お知り合いの方と仲良く話しているのに邪魔するのはあれですから」

 

垣根は放置してすまないと謝るが帆風は気にしていない、帆風はかき氷を咀嚼し何度か口の中に入れているとキーンと来て帆風は顔を顰める

 

「う…やっぱりかき氷を食べるとキーンて来ますね垣根さ…」

 

「ほえ?」

 

(もうかき氷食べ終わってクレープ食べてる!?)

 

垣根は一瞬でかき氷を食べ終わりいつの間にか買っていたクレープを咀嚼してた、しかも片手にはベビーカステラの容れ物が…やはり垣根には常識が通用しない

 

「あ、垣根さんに潤子ちゃんじゃないスか」

 

「ゴーグル君じゃん…猟虎ちゃんとお祭りデート?」

 

「ええ、そうっスよ」

 

「まあ…型抜きですか?」

 

二人に声をかけて来たのはゴーグルこと誉望、型抜きをしている誉望に二人は歩み寄る

 

「傘の形か…案外難しいよな型抜きて」

 

「ええ…あ、親父さん型抜けたスよ!」

 

「あいよ兄ちゃん!傘は二百円ね!」

 

「手先が器用なんですね誉望さんは…あれ?猟虎さんは何処ですか?」

 

「あそこで型抜きしてるっスよ」

 

誉望は見事型をくり抜き、お店のおじさんにそれを見せる、そして二百円を受け取ると誉望はいらなくなった型抜きを食べ始める…帆風が猟虎は何処かと聞くと誉望が指を指す

 

「…………」

 

「「くり抜くんじゃなくて彫刻刀でキングギドラの型を彫ってる!?」」

 

猟虎は集中力を高めピンク色の四角形だった何かを彫刻刀で掘り続けキングギドラを彫っていた

 

「猟虎の奴お祭りが始まってからずっと彫ってるんスよ…さっき右首が彫り上がりましたから後は中央と左の首と尻尾を彫るだけスね」

 

「猟虎ちゃん凄えぇぇぇぇ!」

 

「と言うか何でキングギドラ?」

 

「お、お兄ちゃん達もやってくかい?今ならスペースゴジラとデストロイアの型が残ってるよ」

 

「「遠慮しておきます」」

 

誉望が祭りが始まってからずっとキングギドラの型抜きをしていると教えると二人は純粋に驚く、店屋のおじさんがスペースゴジラとデストロイアの型抜きをするかと言うが二人は即座に断った

 

「いや〜猟虎が頑張ってる姿ていいっスよね〜着物も似合ってて大和撫子て感じもあるし…」

 

「……そっか、俺らは別の所回ったくるわ」

 

「分かったス、お二人もお祭りを楽しんでくださいスね」

 

「ええ」

 

誉望は猟虎の彫る姿を見ているだけで祭りに来た甲斐があった笑う、垣根達はこのままでは惚気話を聞く羽目になると思いその場から立ち去った、その途中で垣根は綿菓子を買っていた

 

「あ、縦ロールちゃんワッフル食べる?」

 

「いつの間に買ってたんですか?」

 

「俺に常識は通用しねえ」

 

帆風はワッフルを受け取るとパクリと食べる、垣根は綿菓子を貪りながら歩く。そんな二人に誰かが声をかける

 

「あれ?ていとくとじゅんこ?二人もここに来てたんだね」

 

「あらインデックスちゃん、インデックスもお祭りに?」

 

「うん!ステイルとかおりと一緒に来てたんだよ」

 

二人に声をかけたのはインデックス、インデックスはニコニコ笑いながら垣根達も来てたのかと笑う

 

「インデックスもう何か食べたか?それで何件の出店の食材を食い尽くしたんだ?」

 

「ちょ…!何で私が出店の食材を食い尽くしたて思ってるのかな!?」

 

「いやだってインデックスちゃんですし…」

 

「じゅんこも酷いんだよ!そもそもそんなに食べたらお財布の中身が空っぽになっちゃうんだよ!そんな暴飲暴食はしないかも!」

 

「「なん……だと…?」」

 

垣根がもう出店の食材をどれくらい食い尽くしたんだと笑いながら質問するとプンスカと怒るインデックス、帆風も笑いながらどうせ何件か出店を閉店させて来たんだろうな〜と笑う。だがインデックスはそんなに暴飲暴食はしないと叫ぶと二人はあり得ないと固まる

 

「何その信じられないて顔は!?二人は普段私をどういう目で見てるのかな!?」

 

「怒り狂うイビルジョーですね」

 

「胃の中ブラックホール」

 

「ひ、酷い言われようなんだよ…それに私は買う側じゃなくて売る側かも」

 

「え?売る側?」

 

インデックスは自分はそもそも買う側ではなく売る側だと怒ると帆風が首を傾げる

 

「こもえにはいつもお世話になってるからね、出店を出していい許可が出たらここでお金を稼いでこもえを焼肉屋に誘うんだよ」

 

「え?あの食欲しかないインデックスが他人に飯を奢る…だと?ま、まさかここは夢の中なのか?」

 

「…そろそろ噛み付いてもいいかな?」

 

「ま、まあまあ…で、何のお店ですか?」

 

「えっとね…ちょっと待ってね帽子被るから」

 

インデックスはいつも世話になっている小萌に焼肉を奢る為にお金を稼いでいるのだと言うと垣根は信じられないものを見たような顔をする、インデックスは思わず歯をガチガチと鳴らすが帆風が何のお店かと聞くと彼女は懐からある帽子を取り出しそれを被る

 

「いらっしゃいませでゲソ!イカ焼きを買ってくれると嬉しいでゲソ!」

 

「「イカデックスさん!?」」

 

イカ焼き屋だった、しかも某イカの女の子が侵略する漫画のキャラの様な格好になり語尾にゲソをつけている。二人はそれを見て転けた

 

「アニメを見てたら気づいたんだよ、私てこの子と似てるな〜て、だったらコスプレして売れば客寄せになるかなと考えたんだよ」

 

「似てるも何もそっくりじゃないですか…イカちゃん…じゃなくてインデックスちゃん」

 

「そういえばステイルとかねーちんは何処?」

 

「ここにいるよ垣根帝督」

 

垣根がステイルは何処かと尋ねると近くで声がした、ふと横を見るとイカ焼き屋がありそこでステイルが団扇を仰ぎながらイカを焼いていた

 

「やあ、お1つどうかな?1つ100円だよ」

 

「安いな、じゃあ2つくれ」

 

「あいよ…唐辛子は振り掛けるか?」

 

「いえ、結構ですわ」

 

「俺もだ」

 

「そうか、タレだけね」

 

垣根が2つくれと言うとステイルは焼き上がったイカ焼きにタレをかけて二人に手渡す

 

「やっぱりイカ焼きには甘酸っぱい醤油が合うな…この醤油は何処で売ってるんだ?」

 

「いえ、それは私の手製ですよ」

 

「あ、いたんですか神裂さん」

 

「ええ、イカを胴体と足に分けてました…足の部分は持って帰って小萌さんの酒のおつまみにします。因みにこのイカ達は私が海まで行って潜って今朝捕まえて来たばかりの新鮮なイカなんですよ…だから仕入れ値はタダです」

 

神裂が現れてその醤油は自分の手作りだと言い、烏賊も自分が今朝取ってきたばかりだと笑う

 

「それにイカを焼く炎は僕の炎の魔術だから火の調節が楽なんだよ…それにガスコンロとか買わなくていいから経費が安くなる」

 

「へぇ〜ほぼ0円で荒稼ぎか…だからこの値段なのか」

 

「それに美味しいですしね」

 

「まあこの考えはインデックスが考えたんだけどね、さてとそろそろ燃料を入れるか」

 

ステイルはそろそろ燃料を入れるかと懐からルーンが刻まれた木炭を取り出す、そしてそれを七輪の中に入れる

 

「ほら食べろイノケンティウス」

 

「グオオオオオォォォォォォ!」

 

「「それでいいのかイノケンティウス!?」」

 

「因みにイノケンティウスを常備発動しているとステイルの魔力が消費されるのですが、この木炭にはルーンが刻んであり魔力の補給の代わりにしています」

 

「因みに製作者は私なんだよ」

 

実は七輪の中の炎は魔女狩りの王であり七輪の中に木炭を入れると魔女狩りの王はそれを貪る様に自分の身体に入れる…その姿は何処ぞの動く城にいる火の悪魔の様だった。それを見た二人は魔女狩りの王をそんな使い方をさせていいのかと叫ぶ

 

「さて、ここからが稼ぎ時ですよ二人共…私も聖人として全力でイカを捌きます…お二人も死ぬ気でやってくださいよ」

 

「任せておけ神裂、僕の火の調節は完璧だ、イカを絶妙な焼き加減で焼き上げてみせる」

 

「客寄せは私に任せるんだよ…いらっしゃいでゲソ!このイカ焼きは美味しいでゲソよ!一本100円でゲソ!ぜひ買って欲しいでゲソ!ゲソーッ!」

 

3人は背後にメラメラと燃える炎を幻視させる程に熱意を滾らせており、3人はテキパキと動いてイカ焼きを焼き上げたりイカを捌きていく、インデックスは語尾にゲソをつける事で客寄せを始める

 

「…邪魔になるから行こうか」

 

「……ですね」

 

二人はここにいて邪魔になると思いその場から立ち去って行った。後日3人がこの出店で稼いだ金で小萌に焼肉を奢ると彼女が嬉しさのあまりに泣き崩れたのは言うまでもない

 

 

「残念でしたわね、インデックスさん達と一緒にお祭りを回れなくて」

 

「ううん、こうして白井さんと一緒にお祭り回れるだけで楽しいです…それに初めて家族以外とお祭りに来れましたし」

 

「そうですか…わたくしもそれを聞いて安心しましたの」

 

場所は変わって黒子と風斬が一緒に歩いていた、本当ならインデックス達と一緒に祭りを回る筈だったが3人はイカ焼き屋をやっている為一緒に回れなかったので二人はそれを残念がっていた

 

「お〜い!お嬢ちゃん達!金魚すくいでもやってかないかい!」

 

「金魚すくいですか…やってみましょうよ白井さん」

 

「そうですわね…やってみましょうか」

 

金魚すくいをやらないかと出店のおじさんに言われ二人は店に近づく…そして視線を水槽に向けると…その水槽には金魚とある魚(・・・)が泳いでいた、その魚とは…

 

「……おじさん、この魚はなんですの?」

 

「ん?お嬢ちゃん知らないのかい?こいつはピラニアて言う…」

 

「知ってますの!わたくしが聞きたいのはなんで金魚と一緒にピラニアがいるのて事ですの!」

 

何故か金魚とピラニアが一緒に泳いでいた、それを黒子が尋ねるとおじさんは笑う

 

「ふ、だから言ってんだろ金魚すくい(・・・)だってな、さあお嬢ちゃん達の選択肢は3つだ、1つはこのままここから立ち去って金魚がピラニアに食われるのを見殺しにするか、もう1つは金魚を全部すくってピラニアから助けるか、最後の1つはピラニアを全部すくって明日の食卓のおかずにするか…さあどれを選ぶ?」

 

「なんですのその選択肢は!?」

 

「これぞ本当の金魚すくいならぬ金魚救い…なんつって!」

 

「ギャグですの?!」

 

これぞ本当の金魚救い(・・)とおどけるおじさんに黒子がツッコミを入れる、とはいえこのままでは金魚が本当にピラニアに食べられてしまう、だが下手にポイですくおうとすればピラニアに噛まれてしまう…どうしたものかと悩む黒子に風斬は笑う

 

「なんだ、こんなの簡単じゃないですか」

 

「え?」

 

「おじさんポイ一つください」

 

「あいよ、400円ね」

 

風斬は簡単だと笑い400円を手渡してポイを一つもらう

 

「か、風斬さん!?危険ですわよ!ピラニアに噛まれたらどうなさるおつもりですの!」

 

「大丈夫です、こうすればいいだけですから」

 

黒子は風斬の心配をするが風斬は安心してくれと笑う、そして風斬はポイを右手で持つとシュンと音を鳴らしてポイを振るう、同時にザバーン!と音が轟き水槽の水が上へと舞い上がる

 

「「へ?」」

 

呆然とする黒子とおじさんに大量の水が降り注ぐ、そして風斬は素早い手つきで両手にお椀を持ち水と共に落ちてきた金魚とピラニアをそれぞれのお椀に種類毎に入れる

 

「…えへへ、見ましたか白井さん、ピラニアと金魚両方ゲットです」

 

「え、ええ…凄かったですの(あ…ありのまま 今起こった事を話しますの!今風斬さんはたった一回水槽の水をポイで思い切り強く殴りつけましたの!そしたらその衝撃で水が上へと跳ね上がりそれを風斬さんが一瞬で金魚とピラニアをそれぞれのお椀に入れましたの、わたくしも風斬さんが何をしたのか分かりませんが…あれは肉体強化系とか念動力とかチャチなものではありませんの…流石は第一位の妹…今日わたくしは風斬さんの能力の片鱗を見せられたのかも知れませんわ…)」

 

「これで明日のおかずが2品増えました…じゃあ他の所にも見て回りましょうか」

 

「(え、ピラニアだけじゃなくて金魚も食べる気ですの?)そ、そうですわね、参りましょう」

 

風斬は無邪気な子供の様に黒子に笑いかけ黒子は曖昧に笑いながら脳内ではポルナレフ状態だった、そのまま二人は金魚すくいの店から去ろうとするがおじさんが勢いよく立ち上がる

 

「ちょっと待った!嬢ちゃんただもんじゃねえな…なら嬢ちゃんはこいつをすくえるかな?」

 

「…こいつ?」

 

「そうさ、俺が店を始めてから15年…誰もすくう事の出来なかったこいつを嬢ちゃんはすくえる(救える)かな?」

 

おじさんは気に入ったと笑い、風斬ならこいつをすくえるかもしれないと笑みを浮かべる。黒子はなんだと胡散臭げな目をするがおじさんはある水槽を指差す

 

「そうこいつ…生きる化石ことピラルクーをな!」

 

「デカぁ!?こんなのポイですくえる訳ないですの!」

 

「安心しろ、こいつをすくうポイは普通のポイの2.5倍だ」

 

「それでもこんなデケェのすくえる訳ねえですの!」

 

おじさんがすくえと言ったのは全長3メートルはある世界最大の淡水魚 ピラルクー、こんなん釣れるわけないやんと黒子が叫ぶが風斬はまたお金を払って普通より大きいポイをもらう

 

「ふ、流石の嬢ちゃんでもこいつをすくうのはヘビーだぜ?さあ嬢ちゃん…見事にこいつをすくってこんな狭っ苦しい水槽(世界)から救ってやんな!」

 

「もう金魚すくい関係ねえですの」

 

おじさんは流石の風斬も先程のようにすくうのは至難だろう…そう思って笑っていた。もうこんなの金魚すくいじゃない、ピラルクーすくいだと黒子が呟く…そして風斬はポイを水の中に入れ…そのポイをピラルクーへと向かわせピラルクーの頭にポイの紙の部分を貫通しポイが破れてしまう…が、ポイの輪の中にピラルクーが入り込み抜け出せなくなる

 

「よいしょ…捕まえましたよ」

 

「……うそーん」

 

(このおじさん馬鹿ですの)

 

確かにピラルクーはポイですくえないかもしれないがこうやって頭を輪の中に入れれば持ち上げられる、呆気にとられるおじさんに黒子は何故それに気づかなかったかと溜息を吐く

 

「……ふ、まさかこいつがすくわれるとはな…いいぜ嬢ちゃん…持ってきな、そして全国金魚すくいマスターの座はあんたのもんだ。おめでとう」

 

「いやなんですのその変な称号は…てかピラルクーは金魚じゃねえですの」

 

おじさんはいい顔をしてピラルクーを持って行けと託し、台車に水槽を乗せると台車ごと持ってけと笑う

 

「やりましたね、おかずだけじゃなく珍しい魚までゲットしました」

 

「あ、うん…そうですね」

 

ニコニコ笑う風斬と信じられないという顔をしている黒子は祭りの中を台車を押しながら呟く

 

「あ、この魚白井さんにあげますね」

 

「はい?」

 

「私はこんなに魚持ってますし…白井さんだけ金魚すくい出来なかったですから…この子をあげます」

 

「……ありがとですの」

 

風斬がピラルクーをあげると黒子に言うと黒子は風斬の笑顔を見て笑う…だが同時にこう思った

 

(……どうやって寮でピラルクーを飼えばいいんですの?)

 

 

垣根と帆風はインデックス達から離れた後他の夜店を回っていた

 

「さてと…食いたいもんは食ったし次は遊ぶか…射的はもう閉店してるみたいだから…」

 

「輪投げ…なんてどうですか?」

 

「輪投げか…やってみるか」

 

何をやろうかと悩む垣根に帆風が輪投げはどうだと言う、垣根はいいなと頷き近くの輪投げの店に歩く

 

「おいちゃん輪投げやりたいんだけどいくら」

 

「お、美男子に美少女か、お二人さんもしかしてカップルかい?」

 

「ち、違い「いやいや単なる友達だから、カップルじゃねえよ」……」

 

「痛い!ちょなんで蹴るの縦ロールちゃん!?」

 

「……さあ早速やりましょうか」

 

「無視られた!?」

 

「はは、今のはにいちゃんが悪いぞ」

 

「なんでさ!?」

 

ふんと垣根からそっぽを向く帆風と困惑する垣根、そんな二人を見て店主が笑う。そんなコントじみた会話があったが二人はわっかをもらい景品へと輪を投げる、垣根は適当にわっかを放り投げるとキャラメルやラムネ菓子、ポッキー、竜田揚げにわっかが入る

 

「ちょっと待て、なんで竜田揚げがナチュラルに景品になってんだよ」

 

「ああ、それはさっき俺が買ってきて食べなかった分だ」

 

「あんたのお残しを景品にすんなよ」

 

「うぅ…1個も入りませんでした」

 

店主が夜食用に買ってきたのに食べなかった竜田揚げを景品にしていたことに垣根はツッコミを入れる、なお竜田揚げはスタッフ(帆風)が美味しくいただきました

 

 

次に二人が遊んだのはスーパーボールすくい、ポイを渡された二人は水の中を回るスーパーボールをすくいあげようとする

 

「スーパーボールは重量があるから破れやすい、これはテクニックが重要なのだよ」

 

「うぅ…またダメでした」

 

垣根は流れる手つきでスーパーボールをボウルの中に入れていく、垣根は十数個程取れたが帆風は1個も取れなかった。思わず涙目になっている帆風に垣根は半分自分がすくったスーパーボールをあげた

 

 

「パンデモニウムは如何ですか〜あなたに幻覚を見せてくれますよ〜」

 

「……気持ち悪いですわ」

 

「食える訳ないだろ、あんな化け物」

 

『に、肉が食べたいです』

 

夜店で売っていたパンデモニウムは華麗にスルーした二人、その時一匹のパンデモニウムから姫神の様な声が聞こえたが二人にはそれが届かなかった

 

 

「大抵の遊びはやり尽くしましたね」

 

「まあな…てか未だに当麻達と会ってないな」

 

「そういえばそうですわね…」

 

「たく、あいつら何処にいるんだ……」

 

ほぼ全ての夜店を回り尽くした二人はそういえば友達とまだ会ってないなーと話していた。垣根は何処かにいないかとキョロキョロと首を動かして見回す、そしてお面屋の近くで上条達を見つけた

 

「あ!ゲコ太のお面だ!買っちゃおうかな〜」

 

美琴は笑顔でお面屋のゲコ太のお面を手に取ろうとするがそれを上条と食蜂が美琴の伸ばした手を掴み、ゲコ太のお面を取らせないようにする

 

「え?何すんのよ」

 

「悪いがそのお面は買わせられねえな」

 

「同意よぉ、そのお面は買っちゃダメなんだゾ☆」

 

「はあ?なんでよ、いいじゃないお面くらい」

 

お面を買おうとする美琴に待ったをかける二人に美琴は少し怒ったような顔をする、二人はそんな美琴に口を開く

 

「だって…お面で顔を隠したら…美琴の可愛い顔が見れねえじゃねえか」

 

「それにそんなお面に夢中になって私達を見てくれないと困るからだゾ☆」

 

「……馬鹿、そんなわけないじゃない…私はいつだって二人しか見てないわよ//」

 

((((あ〜クソウゼェ、リア充爆発しろ))))

 

美琴の顔が見れないのとお面に心を奪われたくないんだと二人が笑う、二人の背後にキラキラと眩いエフェクトが見えた気がした、それを聞いた美琴は顔を赤くして惚気る。祭りに来ていた人々は爆ぜろと内心で呟く

 

「ふん、二人なんか知らないわ」

 

「!おい待てよ美琴!」

 

「ふふん、逃げられたくないなら私を捕まえてみなさい!」

 

「…いいわよ、捕まえてあげるわ!私達のマイエンジェル!」

 

「…は、馬鹿だな美琴…俺がお前を逃がすわけねえだろ。お前と操祈の為なら地獄の底までついて行ってやるて決めてんだからな!」

 

「あはは!私はそう簡単には捕まらないわよ〜!」

 

((((もう本当に爆ぜろよバカップル))))

 

美琴が踵を返し二人から離れる、二人はそれを見て驚くが美琴は笑いながら顔を二人に向け自分を捕まえてみろと笑う。上条と食蜂もそれを聞いて笑いながら追いかける…そして二人が美琴に追いついたと同時に…3人の周囲が爆発した

 

「「「ぎょえーーっっ!!」」」

 

「「「「リア充が本当に爆発した!?」」」」

 

「「「「バカップルが死んだ!このひとでなし!」」」」

 

「「「「でもスカッとした!ありがとう爆発を起こした誰か!」」」」

 

断末魔をあげるバカップル、それを見ていた人達も騒ぎ出す…因みに爆発を起こしたのは垣根である

 

「か、垣根さん?!なんで爆発させたんですか!?」

 

「イラっときたから」

 

「確かにイラっときましたけど爆破する事はないんじゃないですか!?」

 

「だって読者(みんな)が期待の目で見るから」

 

「メタい事言わないでください!」

 

垣根はイラっときたからという理由で爆発を起こしたらしい、帆風もイラっときたのには同意するが爆破するなよと叫ぶ

 

「警備員よ!これはなんの騒ぎ!」

 

「ヤベェ、先進状況救助隊(Multi Active Rescue)の連中だ…しかもあの声にピンクの駆動鎧…テレスティーナか」

 

爆破の音を聞きつけて駆動鎧を着た数人の警備員が駆け寄ってくる、その内の一人の声に垣根は聞き覚えがあった、幻生の孫の木原=テレスティーナ=ライフラインだと察し自分が爆発の犯人とバレたら不味いと考える

 

「ん?あそこにいるのは垣根…そうか!貴方が爆発の犯人ね!」

 

「いきなりの決めつけ!?まああってるけども……逃げるぞ縦ロールちゃん!」

 

「え!?か、垣根さん!?」

 

「待ちなさい垣根!」

 

テレスティーナは垣根を見つけるとこの爆発の犯人は垣根だと断定し、垣根は捕まってなるものかと帆風の手を掴んで走って逃げる。帆風は垣根に掴まれて顔を赤くしながら一緒に逃げテレスティーナ達は二人を追跡する

 

「あばよ、とっつぁん!」

 

「こちらA班、祭りで能力を使用した能力者を発見、至急こちらに来なさい」

 

『了解です隊長!』

 

垣根はテレスティーナに手を振りながら翼を展開し空へと逃げる、テレスティーナは無線機で応援を呼ぶ…その後垣根と帆風は追ってくる先進状況救助隊から無事逃げ切った

 

 

「はぁ…はぁ…くそっテレスティーナめ、あそこまで執拗までに追いかけてくるか普通?」

 

「多分お子様に見せられないような顔をしねると駆動鎧越しでもわかるくらいの剣幕でしたものね…というかあの駆動鎧速すぎでは?」

 

「まあな…あの駆動鎧は普通の駆動鎧の3倍の力を秘めてるからな」

 

「何処の赤い彗星の専用ザクですの?」

 

なんとかテレスティーナから逃げられた垣根達はそろそろ打ち上がる花火がよく見える穴場へと辿り着いていた

 

「さて…そろそろ花火の時間だ…ここからならよく見える筈だ」

 

垣根がそう呟くと花火が打ち上がる独特の音が聞こえ破裂音と共に夜空に色鮮やかな花が咲く

 

「まあ……本当に綺麗ですね」

 

「だろ…あ〜この光景をあいつらに見せたかったのにな…ま、あいつらも何処かで花火見てんだろ」

 

帆風が花火を見て綺麗だとこぼす、垣根も近くの柵に肘をついて頬杖をつきながら花火を眺める…花火は次々と夜空に打ち上がっていき色とりどりの花を空に咲かせていってはすぐに消えてしまう…だからこそ美しく垣根達はそれを眺めていた

 

 

「見て見て一方通行!凄く綺麗だよ!てミサカはミサカは花火を見上げて見る!」

 

「……そゥだな」

 

「お〜い、かき氷買ってきたぞ」

 

 

「たく…絹旗達は何処へ行ったんだ?」

 

「まああいつらなら大丈夫だろ…そんな事より浜面、向こうで鮭すくいでもしねえか」

 

「いや鮭すくいてなんだ?」

 

(よし、麦野と浜面を二人きりにする作戦は成功て訳よ!)

 

(そして半蔵さん達に頼んでおいた鮭すくい屋に二人が超向かっています)

 

(後は鮭が飛び跳ねた水がむぎのの着物にかかってなんかエロく見える作戦が発動する)

 

(これが私達の完璧な作戦て訳だ)

 

 

「うおおお!根性!」

 

「まだだ!まだ負けねえ!今日こそ勝ってやるぞ第七位ぃぃぃぃぃ!!!」

 

「……たこ焼きの大食いでここまで熱くなれるものなのか…あ、お兄さん僕もたこ焼きお代わりで」

 

 

「わぁ〜!やっぱり花火て綺麗よね〜」

 

「それはどうかしらねぇ、もっと綺麗なものがここにあるじゃない」

 

「そうだな、それの前には花火なんて埃以下だな」

 

「え?何よそれ?」

 

「「美琴」」

 

「!?……馬鹿//」

 

((((またこいつらか…さっきみたいに爆発しねえかな))))

 

 

「花火とは風流な物ですね…」

 

「花火…か、僕の魔術なら簡単にできそうだが…」

 

「いや花火て言うのは金属の炎色反応を利用したもので、音は金属が燃える時の音で、花火の色が違うのは金属によって燃える時の色が違うからなんだよ、だからステイルの魔術だけじゃああの花火を再現するのは難しいかも」

 

((何を言ってるか全然分からない))

 

 

「型抜きで猟虎が一万円稼いでくれたお陰で何でも買い放題になったスね。ありがとな猟虎」

 

「いいいえ、単なる娯楽でお金を稼いだだけですわ」

 

「悪いわねゴーグル君、奢ってもらって…これはお詫びの印よ…二人がイチャイチャしてるシーンを撮ったカップリング写真よ」

 

「いやいつの間に撮ってたんっスか心理定規さん!?」

 

「潤子さんいないですね…垣根さんといい雰囲気になってたらいいのに」

 

 

「わぁ〜!綺麗ですね白井さん」

 

「そうですわね…たーまーやー!」

 

 

「クソがァ!垣根の奴逃げ切りやがったな!」

 

「どうした。テレスティーナ?」

 

「垣根の野郎が爆発起こしてよ…捕まえようとしたら逃げ切りやがったんだよ!」

 

「垣根帝督か…まあ第一位なんだ、逃げ切られるのも無理はねえさ。落ち込むな」

 

「煩えぞ佐久!てか垣根の奴綺麗な女子と手を繋いで逃げてよ…見せつけか!もう○○歳になっても結婚相手が見つからねえ私に対する嫌味か!」

 

(その、顔芸じみた顔を。しなかったら、モテると思う)

 

 

「風情があっていいねえ〜花火て」

 

「花火は正面から見ると一番綺麗だ、と『助言』しておこう」

 

「…花火を使った復讐方法はないものか」

 

「だから何でもかんでも復讐の材料にすんなよ…お、鞠亜が来たみたいだぞペルシ」

 

「すまない!迷子になってしまってね!ふ、この歳で道に迷うとは…いい感じにプライドにヒビが入ったよ」

 

「中々歯ごたえある敵はいねえな…今度垣根に喧嘩売りに行くか」

 

「じゃがバター美味しいな」

 

 

「見てごらん、リリス。日本の花火は綺麗だろう」

 

『確かに綺麗ですわね、と代筆中』

 

 

「ほんと綺麗だねぇ花火てのは…」

 

「ええそうですね」

 

全員が花火を見上げて楽そうに笑っていた、夜空にまた花火が浮かぶ…垣根と帆風はそれを柵に寄りかかって眺めていた…花火が打ち上がらなくなっても暫くは二人は夜空をそこで眺めていた…すると背後から声が聞こえてきた

 

「お!帝督〜!祭り楽しんでるかぁ!!!」

 

「煩えぞ削板ァ!」

 

「浜面は駒場に呼ばれて帰ったから暇だから8人で祭りを楽しもうにゃーん」

 

「操祈と美琴と一緒に回るのもいいけど8人で回るのも楽しそうだからな」

 

「潤子先輩も早く早く!」

 

「早く8人でお祭りを回りましょうよぉ」

 

上条達が集まって大声で垣根と帆風を呼んでいた、それを見て二人は軽く笑った

 

「……たく、騒がしい奴等だな」

 

「………ですね」

 

垣根と帆風は笑って彼等に向かって歩いていく

 

(…垣根さんとの二人きりも良かったですけど…やっぱり皆さんと一緒にいる時も楽しいですね)

 

帆風は上条達に近づきながらそう思った、垣根達と一緒にいる時が一番自分にとって幸せな時間だと

 

(願わくば…ずっとこんな日常がずっと続きますように……)

 

帆風はそう心の中で呟きながら垣根達と話して笑い合う、こうして夏祭りの夜は過ぎていった

 

 

 

 

 

 




夏祭りかぁ…自分は家族としか行った事しかないですね、友達に誘われたりしませんでしたし(笑)、なおピラニア釣りというのは実際あるらしいです、ピラルクーすくいはないけどな!皆さんは夜店で何が好きですか?自分は綿菓子ですね、お祭りがあるときは必ず買ってます、なおメロン味が好きです

なお、この作品ではテレスティーナさんは普通に警備員やってます、他にもとあるの新約に出てきた魔術師やら暗部のあの人も出てきましたが…分かりましたか?作者はマイナーキャラを出すのが好きです。

さて次回は御使堕し編、上条夫妻が漸く登場…後次回は御使堕し編とは言ってもまずは上条さんが地元に帰郷する回にする予定です、ここで上条さんの過去を上手くかけたらいいな〜と思っています


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大体小説の主人公の母親は見た目と年齢が合わない

さて御使堕し編第1話、まずは上条家に行くところからスタート、この話は上条さんの過去を少し出そうと思って書きました。その結果無駄に長くなると言う…作者は書き分けが出来ない子です

ギャグなのかシリアスなのか分からないですが楽しんで読んでもらえれば嬉しいです、途中でムカッと来るシーンがありますが…安心してください、スカッとさせます


上条達が目を覚ますと彼等は見知らぬ車の中にいた

 

「「「「「「………はい?」」」」」」」

 

寝ぼけているのかと一向は目を擦るがやはり彼等は車の中にいた。まさか、とここは夢の中かと頬を抓る、痛覚を感じたので断じて夢などではないのだろう。

 

「……パジャマのままですね」

 

「まさか…誘拐か?」

 

「私ら超能力者をか?なら随分肝っ玉が太い誘拐犯だにゃーん」

 

「…そんな大それた事が出来る行動力を持った人物といえば…あの人しか浮かばないわねぇ」

 

帆風は自分の服がパジャマのままだと気づく、上条が誘拐されたのかと呟くが麦野がそれなら相手はとんだ大物だと呟く、食蜂は誰がこんな事をしたのか予想がついたのか溜息を吐く。

 

「まあ、なンにせよ…ここが何処なのか確認だけはしとかねェとな」

 

この車はキャンピングカーの様な人が車の中でも生活できる様な車だろう、ご丁寧に冷蔵庫やら漫画本などが置いてある…上条達は慎重に車の中を見渡す、その時奥にある扉が音を立てて開き上条達は扉に視線を寄せる

 

「お、目が覚めたか」

 

「……やっぱりていとくンの仕業か」

 

現れたのは垣根帝督、彼等はやはりこの誘拐事件じみた事は垣根の仕業かと溜息を吐く

 

「で、なんで私達を拉致したのかしら?」

 

「おい、人聞きの悪い事を言うな。ただお前らが寝てる隙を狙って木原一族の皆さんに起きない様に攫ってもらっただけだよ」

 

「それを世間一般では拉致ていうンだよ…」

 

「まあ落ち着け、これからある場所に遊びにいくだけだ」

 

「遊びに行く?そんなの聞いてないにゃーん」

 

「当たり前だ、これは俺のサプライズドッキリだからな、言うわけねえだろ」

 

美琴はジロリと睨みと垣根はヘラヘラと笑う、垣根はこれからある場所へ遊びに行くというと上条が口を開く

 

「…で、この車は何処へ向かってるんだ?」

 

「当麻の家だけど」

 

「そうか、俺の家か……え?」

 

「当麻の家に皆でお邪魔パジャマしに行くんだよ、察しろ」

 

上条が何処へ行くのかと尋ねると垣根は上条の実家だと告げる、それを聞いた上条はポカーンと口を開けるがハッとした顔で垣根に大声を出す

 

「いやなんで俺ん家なんだよ!もっと遊びに行ける場所あるだろ!TDLとかU○Jとか!別の場所へ行けよ!」

 

「いいじゃねえか、友達の家に行くのはよくある話だし。それにミコっちゃんとみさきちにも悪い話じゃねえだろ?」

 

「?それはどういう事かしらぁ?」

 

上条は抗議するが垣根は軽くそれを流し、そして美琴達にとっても悪い話じゃないと笑うと二人は何の事やらと首を傾げる。

 

「だって当麻の家には当麻の両親がいる…彼女として親御さんの好感度を上げるチャンスだぞ」

 

「!…た、確かに…その手があったわね」

 

「つまりここで美琴と一緒に彼女力を発揮すれば…3人での結婚を認めてもらえる!」

 

「……垣根、お前賢いな」

 

(チョロいなこいつら)

 

上条達は確かにコイツの言う通りだと頷くと垣根は少し呆れた目を向ける。そんな中再び扉が開きそこから白衣の女性が入って来た。

 

「あ、お話は終わりましたか?」

 

「唯一先生…車は自動操縦にしたのか?」

 

「ええ、ちょっと喉が乾きましてね」

 

「ん?あんた確か俺達が垣根の家に行った時にコタツに乗って現れた女の人だよな?」

 

その女性と垣根は親しげに会話をする、削板が前にも会ったことがあるなと呟くとその女性が削板を見て答える。

 

「ええ、そうですね第七位。あ、自己紹介が遅れました…私はこの研究ラボことグリフォンドライバーの所有者の木原唯一です、以後お見知り置きを…」

 

「木原…木原くンと同じ一族の奴か」

 

「ええ、と言っても私の方が上位なんですけどね。この車で皆さんを第二位の家までお送りする様垣根に第一位に頼まれたのでこうしてグリフォンドライバーでお送りしているわけです」

 

唯一はニコニコと笑いながら喋る、彼女は冷蔵庫を開けると中からお茶を取り出しそれの封を開ける

 

「いや、なんかすみませんね。俺の家まで送ってもらって」

 

「いえいえ、報酬を出すと言われたらやるしかないでしょう」

 

「……報酬?」

 

「ええ、報酬です…で、そろそろ渡してもらいましょうか第一位」

 

「そうだな…じゃあこれ報酬な」

 

唯一は報酬が貰えるからこうして送っているのだと笑うと食蜂が首を傾げる、唯一が早く報酬を寄越せと手を出すと垣根が懐から何かを取り出す

 

「はい、これ脳幹先生の一週間の映像が記録されたブルーレイな、それと犬用の睡眠薬」

 

「ありがとうございます…これで先生が私がいない所でどうしてるか分かる…それにこの睡眠薬で……えへへ」

 

(((((((あっ、ふーん(察し))))))))

 

脳幹の映像が記録されたブルーレイと犬用の睡眠薬を受け取った彼女は怪しい笑みを浮かべる、それを見て超能力者達はこの人はヤバイ人だと理解した

 

「あ、分かっていると思いますが学園都市外での能力の使用は控えて下さいね。ご家族に見せびらかす程度なら問題ないですがそれで誰かを傷つけたりとかしないでくださいよ…それをネタに学園都市に対するアンチ勢が煩くなりますから」

 

「あ〜あのネチネチした時代遅れのオッさん共か…魔術師達に指示入れて呪い殺したらどうだ?」

 

「そしたらそれも学園都市の技術だ〜とか騒がれるんですよ…兎に角面倒事は避けてくださいね、でも命の危険時とかは流石に能力使ってくださいよ?貴方達に何かあったら学園都市の損出となりますので」

 

「分かってるて」

 

唯一はそう言い残すと運転席に戻っていく、垣根は本棚に手を伸ばし漫画本を手に取る、他も上条の自宅に着くまで何かをして時間を潰そうと考え何か食べるものはないかと冷蔵庫を漁り始める

 

 

「…遅いな当麻とその友達達」

 

「まあまあ、刀夜さんたら…まだ予定時間より5分遅れてるだけですよ」

 

神奈川県の上条の家の前にて、上条の父親である上条刀夜(かみじょうとうや)と母親である上条詩菜(かみじょうしいな)が息子とその友達が来るのを待っていた

 

「しかし当麻がこの家に帰って来るのは久しぶりだな…昼飯は寿司か焼肉どっちがいいと思う?」

 

「あらあら刀夜さんたら…この場合は私の手料理の方がいいんじゃないでしょうか?」

 

「む、確かに…当麻も母親の手料理を食べたいだろうしな」

 

「そうですね……あ、もしかしてあの車でしょうか」

 

詩菜がふと右の道路を見ると全高2m以上、全長25m以上のリムジンが自宅に向かってやって来た、リムジン!?と驚く刀夜を他所にリムジンは自宅の前で止まり扉が開くと車の中から上条が出てくる

 

「……この車リムジンだったのか、てっきりキャンピングカーだと…」

 

「派手な登場だな当麻、もしかしてこれが学園都市の普通の登場の仕方なのか?」

 

「一年ぶりですね、当麻さん。随分大きくって…」

 

「……そうだな…父さん達に会うのも去年の大覇星祭以来だな」

 

上条が両親と笑いあっていると垣根達も車から降りてくる

 

「ではお帰りの時はまた迎えに来るので〜それまで良い時間を〜」

 

「おお、ありがとな唯一先生〜」

 

「君達が当麻の学園都市の友達かい?」

 

「ええ、そうです当麻の親父さん。自分は学園都市の超能力者の第一位 垣根帝とく…「「邪魔!」」ゥゥゥン!?」

 

「垣根さんが女王と御坂さんに押しのけられましたわ!?」

 

垣根が刀夜にお辞儀しながら挨拶をしようとしたその瞬間、美琴と食蜂にバンと押し倒されてコンクリートの地面に倒れる

 

「はははははははは初めまして!先輩のお父さ…じゃなくてお義父さん!私御坂美琴て言います!」

 

「初めまして!食蜂操祈と申します!いやぁ随分理知力溢れるお父さ…いえお義父様なんですねぇ!」

 

「?君達も当麻の友達かな?」

 

「「いえ、彼女です!」」

 

「ああ、そうか彼女か……ん?」

 

美琴と食蜂はもう既に刀夜の事をお義父さん呼びして取り入ろうとする、刀夜は友達かなと尋ねるが彼女と言われ固まってしまう

 

「…あ〜当麻さんや」

 

「なんだい父さん?」

 

「この二人がお前の彼女と言ってるが…彼女て普通一人だよな?父さんの聞き間違え?それとも幻聴か?」

 

「いやこの二人は正真正銘、俺の彼女ですわよ?」

 

「………当麻が不良になっちまっただ」バタン······

 

「親父さンが失神したァ!?」

 

「ショックが強すぎたんだにゃーん!」

 

「不味い!AEDを探すんだ!」

 

刀夜は何かの聞き間違いかな〜と息子に話しかける、だが上条は真顔で二人は自分の彼女だと言うと精神的ショックで失禁してしまい騒ぎ出す超能力者達

 

「え!?何か俺変な事言った!?」

 

「いや普通彼女は二人いる筈ないですわ」

 

「!確かに…私達は慣れ過ぎていて気づかなかったけど一般的にはカップルて二人一組だっわ」

 

「すっかり忘れてたんだゾ…」

 

(慣れて怖いな…そして俺の心配をしてくれよ)

 

帆風がそりゃあこうなるでしょとツッコミを入れるとそう言えばそうだったと頭を抱えるバカップル、垣根は熱いコンクリートの地面に倒れているのに誰も心配しないので起き上がった

 

「…あらやだ当麻さんたら…これは何か投げなきゃダメなのかしら?」

 

「ひぃぃぃぃ!!怖い笑顔になってますのことよ!?そして電柱を引き抜こうとしないでください!」

 

詩菜は怖い笑みを浮かべて電柱を引き抜こうとしていた、その笑みは超能力者達でもビクッとなる程恐ろしかったが美琴と食蜂は詩菜と上条の間に入る

 

「ちょっと!人の彼氏になにしようとしてんのよ!」

 

「てか、貴女は上条さんのなんなのかしらぁ?」

 

「いやこの人当麻のお母さんだから」

 

「それが何よ!例え母親だろうが先輩を傷つけるのなら許さ………今なんて言った?」

 

食蜂と美琴が詩菜を睨みつけ貴女は上条のなんなのかと叫ぶ、垣根は母親だよと教えると全員がえ?と言った顔で詩菜と上条の顔を見比べる

 

「…お母さン?え?お姉さンじゃなくてか?」

 

「ああ、当麻のお母さんだ。そして当麻の親父さんの奥さんでもある」

 

「……上条を産んだ実の母て事かにゃーん?あのオッさんが再婚した相手とかじゃなくて?」

 

「そうだよ、実の母、マザー。are you ready?」

 

「「「「「「………えええええ!!?」」」」」」

 

全員が詩菜が上条の母親だと聞いて絶叫する、どう見ても若過ぎる。お姉さんだと言われた方が納得できる。どう見ても三十代には見えない

 

「す、すみませんお義母さん!お義母さんとは知らずとはいえ失礼な態度をとってしまい申し訳ありません!」

 

「ず、随分お若いんですねぇお義母様はぁ!嫉妬力が出るくらい瑞々しい肌です!」

 

「ええ、よく言われるですよ…二十代には見えないて…で、当麻さん説明してくれますよね」

 

「は、はい……」

 

詩菜が母親と知るや否や美琴と食蜂は詩菜に土下座する、詩菜は上条に怖い笑みを向けると事情を話せと若干脅す。震える上条の肩をポンと垣根が手を置く

 

「落ち着け当麻、俺が説明してやるから」

 

「か、垣根…」

 

「親御さん、当麻がこの二人と付き合ってる理由は実は俺のせいなんです」

 

「?貴方のせい…ですか?」

 

垣根が上条を庇って自分のせいだと真顔で言うと詩菜が首を傾げる

 

「ええ、それを今から天使語で説明します。mjtatglmunjgtmktmk彼女mtjmpkgmjgtjajtwkjtm二wtmjgjmawgajgkgjm」

 

「「「「「「「天使語で言うな!」」」」」」」

 

「…成る程、君が当麻が彼女達とくっつけた恋のキューピッドだったのか」

 

「…同時に二人に告白されるなんて…当麻さんたら刀夜さんに本当に似たのね」

 

「「「「「「「いや分かったの!?」」」」」」」

 

垣根が天使語(人間には理解できない言語)で上条と美琴、食蜂の事を話す。上条達は普通に話せと叫ぶが何故か両親はなんと言っていたのか理解し頷く

 

「まあ、取り敢えず家に入らないか?当麻達もこんな暑い中で立てるのは辛いだろう」

 

「あ、ではお言葉に甘えて…おい、早くお前らも入れよ」

 

「いやここ俺の家なんだが…」

 

刀夜は暑いから家に入ろうと玄関の扉を開け垣根が一足先に早く入る、上条はここはお前の家じゃねえよとツッコミを入れながら自分の家に入る…そして靴を脱いで応接間に行こうとした瞬間ドタドタと誰かが走る音が聞こえん?と上条が音の発信源を見ようとしたその時

 

「おにーちゃんおにーさんおにーさまあんちゃんあにじゃあにきあにぎみあにうえあいうえお!従妹が住兄に突撃フライングボディアターック!」

 

「そげぶ!?」

 

「「先輩/上条さん!?」」

 

ドーン、と小豆色の髪の少女の頭が上条の腹に激突し上条がギャグ漫画のように玄関の扉に激突する、因みに先程少女が言った言葉を漢字に直すと「お兄ちゃんお兄さんお兄様あんちゃん兄者兄貴兄君兄上あいうえお」となる

 

「やっほー!久しぶりお兄ちゃん!」

 

「な…お、乙姫か…?幼稚園以来……だな」

 

彼女の名前は竜神乙姫(たつがみおとひめ)、上条の従妹である。玄関で横倒れになってピクピクとしている上条に美琴と食蜂が駆け寄る

 

「しっかりして上条さぁん!」

 

「操祈、美琴…俺はもうダメみたいだ…」

 

「いやよ!死んじゃ嫌よ!言ったじゃない!3人であの夕焼けを見に行こうて!」

 

「…悪りぃ、もう無理みたいだ……もう1度見たかっな…あの…夕焼……け」

 

「「先輩/上条さん!うわぁぁぁ!!」」

 

「なンなンだこの茶番は……」

 

下らない茶番を始める3人に呆れた目を向ける一方通行、垣根達はそんな3人を無視して応接間に入った

 

「待っててくださいねすぐお茶を淹れますから」

 

「ありがとうございます…それにしても…随分個性的な内装ですわね」

 

帆風はソファーに腰掛けると周囲を見渡す、応接間には無数の世界各地のお守りや民芸品等が至る所に飾られており目の置き場に困ってしまう、しかも応接間だけでなく玄関や庭にも様々な物が飾られていた…恐らく他の部屋にもこれと似たようなものがある事だろう

 

「まあね、私が仕事で行った所で買ってきた物だよ」

 

「……父さん、まだこんな物集めてたのかよ」

 

「ははは、親とは子供の事しか考えない生き物なんだよ」

 

上条は少し辛そうな顔をして父親を見る、刀夜は上条に向けて苦笑する、それを見て垣根以外が全員がキョトンとした顔をする

 

「何の話ですか?」

 

「いや気にしなくていい…俺にとって嫌な話だからな」

 

帆風が何の話なのかと尋ねるが上条は曖昧に笑うのみ…何か隠してるなと疑う一同だかそんな空気をかき消す様に垣根が詩菜に話しかける

 

「当麻のお母さん、一つ質問いいですか」

 

「ええ、構いませんよ」

 

「奥さんの旧姓て…もしかして竜神だったりします?」

 

「?ええそうですけど…乙姫ちゃんは私の親族の子ですし…それが何か?」

 

「いえ、確認(・・)の為に聞いただけです。ありがとうございます、これで確信が得られた」

 

「「「「「「「?」」」」」」」

 

垣根が詩菜の旧姓を尋ねる、それだけなら普通の会話だが超能力者達は少し疑問を感じる

 

「そういえばそこのお嬢さん…さっき御坂と言っていたが…もしかして御坂旅掛さんの娘さんかな?」

 

「?パパを知っているんですか?」

 

「此間ロンドンに行った時に会ってね…いやぁあの人と少しスリリングな事件があってね」

 

「スリリングな事件?」

 

刀夜が笑いながら御坂の父は旅掛かと尋ねると御坂は頷きながら知っているのかと尋ねる、刀夜はちょっとした事件があってねと笑う

 

「まあ大した事じゃないんだが…自分の手とアタッシュケースの取っ手を手錠で繋いだ女の子…確か『原石』とやらだったかな?、まあその子と田中君と旅掛さんと私の四人で夜のロンドンから銃を持った黒服集団から逃げ回ったてだけだよ」

 

「「「「「「「「なんか凄い事件に巻き込まれてるぅぅぅ!?」」」」」」」」

 

「黒服達は銃を撃って来たけど、女の子が黒服達を倒してくれてもう安全かと思ったら魔術師とか名乗った男が怪物を召喚して女の子が殺されかけてね。でも田中君が消火器を投げて男の顔面に当たって怯んだ隙に私と旅掛さんの拳がヒットしてその男を倒したんだ…で、最終的に無人のセスナ機を爆破して死んだフリして難を逃れたんだ」

 

ハリウッドの映画かと言いたくなるような事件に巻き込まれていた刀夜はあははと笑う、上条達もそんな事件に巻き込まれていたのかと乾いた笑みを浮かべる事しか出来ない

 

「因みにその後田中君とその少女は付き合う事になったらしい」

 

「その話を詳しく」

 

「少し黙ってろカプ厨、でも美琴の父親と父さんは面識があったのか…なんか運命を感じるな」

 

刀夜が新入社員とその原石の少女が付き合い始めたと言うとカプ厨(垣根)が立ち上がるが上条が黙ってろと言う

 

「あらやだ、お菓子を切らしていたわ…」

 

「じゃあ俺が買ってくるよ」

 

詩菜がお菓子が切れていたと呟くと上条が自分がお菓子を買いに行ってくると立ち上がる

 

「あ、じゃあ私も一緒に行くわ」

 

「じゃあ私もぉ、上条さんが生まれ育った場所を見ておきたいしぃ」

 

「じゃ行ってくる」

 

上条は美琴と操祈を連れて近くのスーパーにお菓子を買いに行った、バタンと扉が閉まる音が聞こえると刀夜が口を開いた

 

「……君達、当麻は学園都市で楽しそうにしてますか?」

 

「?ええ、勿論毎日楽しそうにしてますよ」

 

「そうですか……それなら良かった、当麻にも毎年虐められてないかどうか聞いてるんだが…もしかしたら隠してるのかと思っていてね」

 

「やけに心配性なんだな当麻の父ちゃんは」

 

刀夜が全員に上条は学園都市で楽しそうに暮らしているかと真剣な顔で尋ねると帆風が楽しく生活していると頷く、削板が心配性だなと呟くと刀夜は複雑な顔をする

 

「……君達は当麻がどうして学園都市に来たか知っているかい?」

 

「?そう言えば聞いた事ねェな…むぎのんは知ってるか?」

 

「いや私も聞いた事ないな」

 

「俺は一度当麻に聞いてみたけど笑ってはぐらかされたな……」

 

「そう言えば聞いた事ありませんでしたわね」

 

「……そうか、あいつ…言ってなかったのか」

 

刀夜がどうして上条が学園都市にやって来たのかと知っているかと尋ねる、それを聞いてそう言えば知らなかったなと考え始める一同…それを見た刀夜は言ってなかったのかと呟く

 

「あいつの不幸体質は知ってますか?」

 

「ああ、でもまァ俺らから見れば大した事なさそうなンだけどな…精々卵を買い忘れたとか不良に絡まれたとか卵落として割ったとか魔術師と遭遇したりとか…」

 

「最後の一つ以外はよくある災難みたいなものにゃーん、でもあいつて彼女二人いる時点で幸福じゃね?」

 

「まあ、あいつは大抵の苦労を根性でなんとかしてく男だからな」

 

不幸体質と聞いて一方通行達はそんなに不幸かと首を捻る、確かに毎度お馴染みの様に災難にはあっているが精々セールを逃す程度だった筈だと考える

 

「実は私がこれだけ魔除けグッズを買ってくるのもあいつの不幸を治す為なんですよ…結局あいつの不幸体質は治りませんでしたが」

 

「へぇ〜此処にあるやつは皆上条の為だったのかにゃーん…確かに変な物ばっかね」

 

麦野が立ち上がって自分の戸棚に置いてあった置物を手に取ろうとする

 

「おい、むぎのん勝手に触らない方がいい…術式(・・)が変わると面倒いから」

 

「あ?術式?…まあ、確かに勝手に弄るのは悪いしやめとくか…」

 

垣根が何故か触るのはやめろと言うと麦野は疑問に思いながらも伸ばしていた手を戻す

 

「……皆さんはあいつが昔なんと言われていたかご存知ですか?」

 

「それは上条さんの渾名…みたいなものですか?知らないですね」

 

「……当麻さんは昔こう言われていたんです……疫」

 

「疫病神、ですよね奥さん?」

 

「!…知っていんですね」

 

「疫病神?なンだその嫌な渾名は?」

 

詩菜が上条の昔呼ばれていた渾名を言おうとすると垣根が代わりに言い詩菜と刀夜は知っていたのかと垣根を見る

 

「上条さんのお母様、その疫病神と言うのは…一体?」

 

「……当麻さんは昔から不幸だったんです…それも色んな人を巻き込んで…」

 

「最初は誰も気にしなかった、でも何度も何度も当麻の近くで事件が起きて…当麻がいると不幸が移ると言われて迫害を受けてきたんです」

 

「……酷ェ話だな、大人は止めなかったのかよ」

 

上条夫妻が自分の息子の昔話を淡々と話す、一方通行が大人は止めなかったのかと聞くと刀夜は少し険しい顔になる

 

「止めなかったさ、誰も…むしろ大人達は当麻の迫害を肯定していたんだ」

 

「「「「…は?」」」」

 

「…………」

 

「当麻さんはいつも子供達に石を投げられていつも酷い傷を負っていた…だが大人達はそれを見ていても誰も止めなかった…それどころか逆に子供達にこう言ったんです、「もっと酷い怪我を負わせろ」と」

 

刀夜の言葉に帆風達は固まる、垣根も黙り込む、大人達は助けるどころか逆に上条を突き放したのだと刀夜は悔しそうな顔をする

 

「誰も彼も当麻を疫病神扱いした、医者でも当麻の診察をしない、『不幸』になるから。教師は当麻の悩みを聞かない、『不幸』になるから…私達以外味方はいなかった…親族にもこう言われたよ…「可哀想ですね、あんな疫病神を子供にして」てね」

 

「……酷い」

 

「ええ、当麻さんは何も悪くないのに……全員当麻さんを疫病神扱いして……でも当麻さんは堪えていました、いつかそんな事は言われなくなるてそう信じて…私達もそうなる事を信じていました」

 

「だがあの事件が起こってしまった」

 

「……あの事件?」

 

上条夫妻の悲しげな顔に全員が何を言っていいか分からなくなる、刀夜がふとあの事件と口に出すと削板が何の話かと目を細める…そして刀夜は少し間をあけてから口を開いた

 

「当麻が借金を抱えた男に包丁で刺されたんだ」

 

「「「「!?」」」」

 

その一言を聞いた瞬間全員の目が見開かれた、どう言う事なのかと刀夜は言葉を続ける

 

「その男は自分が借金をしているのを当麻のせいにして包丁で刺し殺そうとした…何とか当麻は助かった…だが私達はこのまま当麻がここにいれば当麻がいつか殺されるのではと思ったんだ」

 

「だからあんたらは当麻を学園都市に預けたんだろ、学園都市…迷信のない世界なら当麻が殺されないと思って」

 

「ええ、オカルトを信じない科学の街なら当麻さんが不幸にならない、それに不幸が治るかもしれないと思って私達は当麻さんを学園都市に預けたんです」

 

垣根がだから上条を学園都市に預ける事にしたんだろうと言うと詩菜は頷く、暫く静寂が部屋の中に訪れた。誰も口を開こうとしない、帆風達も事実を知って何を言えばいいか分からなくなっていたが刀夜がまた口を開く

 

「でもね、ある時当麻から手紙が届いたんだ、「友達が出来た」てね」

 

「ええ、その時からでしたね。当麻さんが手紙を送ってくる度にその友達の事がいっぱい書かれてて…読んでるこっちも当麻さんが楽しそうな顔が浮かんでくるくらいでしたよ」

 

上条夫妻は少し笑みを浮かべる、その友達に上条は救われたと…そして二人は垣根を見る

 

「確かその友達の名前は…垣根帝督、君の事だよね」

 

「……当麻の奴、恥ずい事書きやがって」

 

「貴方だったんですね、当麻さんを救ってくれたのは」

 

「そんなんじゃないですよ、俺はただあいつと友達になっただけです」

 

その友達は垣根だと刀夜が言うと垣根は少し恥ずかしそうに頭を掻く、詩菜がお礼を言うと垣根はやめてくれと頭を振る

 

「…今日君達と一緒に来ていた当麻の顔を見て分かった、あいつは今不幸なんかじゃない、幸福なんだと…それも君達のお陰だ…本当にありがとう」

 

「これからも当麻さんと友達であげてくださいね、よろしくお願いします」

 

「…ええ、勿論ですよ、あいつは俺の友達ですから」

 

刀夜と詩菜が頭を下げる、それを見て垣根は笑みを浮かべて頷き帆風達も笑い返した

 

「ねえ、叔父さん!お兄ちゃんは何処に行ったの?さっきまで私お兄ちゃんと遊ぼうと思って持ってきてたゲーム探してたから何処行ったか知らないんだけど」

 

「さっきお菓子を買いに行きましたよ」

 

「えぇ!?それなら私が買って欲しかったお菓子があるのに…だって明日は皆で海水浴行くんでしょ!だからお菓子買いに行こうと思ってたからお兄ちゃんについでに買いに行って貰えば良かったな〜」

 

二階から降りて来た乙姫は上条が買い物に行ったと聞くと、自分が欲しいお菓子を買って来て欲しかったと呟いた

 

「じゃあ俺達が今から当麻達と合流してお嬢ちゃんが欲しいお菓子を買ってきてやろうか?」

 

「え?いいの?暑苦しそうなお兄ちゃん」

 

「勿論だとも!なあ皆!」

 

「そうだな、私らもお菓子買いに行くか…て、海水浴に行くって聞いてないんだが」

 

「だから言っただろ、サプライズだってな」

 

「海水浴かァ…海パン忘れたンだが」

 

「安心しろ、既に全員分の水着を持ってきてある」

 

「「「「いつの間に!?」」」」

 

削板が自分達が買いに行ってやろうと言うと乙姫が嬉しそうな顔をする、一方通行は海水浴に行くと聞いていない為水着を持ってきていないとぼやくが垣根がここにありまっせと大きなリュックを取り出す、その中には帆風達が家や寮に置いておいた水着が入っておりいつの間にと全員叫ぶ

 

「じゃあお菓子買ってきますんで」

 

「ありがとねお兄ちゃんのお友達さん達〜」

 

パタンと垣根達がお菓子を買いに行く為に家から出て行った

 

「……いい友達が出来てよかったな当麻」

 

刀夜はそう誰に言うでもなく呟いた

 

 

「ん?一方通行からメールだ…えっと何々、明日海水浴に行くらしい?それと水着は垣根が持ってきた…?たく、垣根の奴先に言っておけよ」

 

「まあいいんじゃない?学園都市には海がないからそういう広い所で泳いでみたかったんだし」

 

「それに美琴と上条さんの水着姿が見えるしねぇ…なんだか興奮してきたわぁ」

 

お菓子を買ってきた三人は一方通行のメールを見て楽しそうに会話をしている、そんな彼等の背後に何者かが忍び寄ってきた

 

「あ?もしかしてテメェ疫病神(・・・)か?」

 

「!!」

 

「「?」」

 

声をかけられて上条達が振り向くとそこには柄の悪そうな五人組の男女達が立っていた。疫病神と呼ばれて上条は激しく動揺し美琴と食蜂は疫病神とは何かと首を傾げる

 

「ねぇタク、誰こいつぅ?」

 

「お前らは知らなかったな。こいつは上条当麻て言ってな、小学校上がる前に学園都市に行った奴なんだよ」

 

「へ〜学園都市にスか?あの超能力とか使う化け物みたいな連中スか?」

 

「そーそ、それだよそれ」

 

美琴と食蜂は五人組を見て感じが悪いと悟った、明らかに自分達を見下している態度、それに自分達超能力者を化け物呼ばわりした事に不快感が増す…そしてそのタクと呼ばれた男は意地汚く上条を見る

 

「なあ覚えてるか俺の事?お前と同じ幼稚園の同じ組だった渋井丸拓男(しぶいまる たくお)、略してシブタクだよ、覚えてねえか?」

 

「……覚えてねえよ」

 

「あ?何偉そうな態度とってるんだ疫病神」

 

「ねえタク〜、疫病神て何ぃ?」

 

シブタクと名乗った男が疫病神と言って嘲笑うと横にいた女が疫病神は何かと尋ねる、シブタクは嫌らしい笑みを浮かべる

 

「こいつの周りでさ、凄く変な事が起こってさ、もう幽霊とかそういう系が取り憑いてんじゃね?て言うぐらいでさ」

 

「あー知ってる知ってる、確か心霊番組に親の許可なしで撮影したて奴でしょそれ?いやぁ懐かしいねぇ!」

 

「確かこいつ包丁で刺された事もあるんだっけ?ウチの親がこいつに石投げてたの覚えてるわ…いやあの時は笑った笑った!まあ誰も止めなかったけどさぁ」

 

「えぇマジでぇ〜?マジウケる!お祓いでもしに行けっての!ウチらが不幸になったらあんたのせいだかんね!」

 

「そーそー、早くここから消え失せろよ疫病神、俺らはお前のせいで不幸になりたくねえんだよ」

 

笑ったまま上条に侮蔑の言葉を言い続けるシブタク達、それを聞いて美琴と食蜂の目が不快感から憤激の目に変わっていく。逆に自分達の彼氏をここまで言われて怒らないのはあり得ないが

 

「「あんたらねぇ…先輩/上条さんにそんな「いいんだ二人共」!先輩/上条さん?!」」

 

「事実だからさ…俺がそう行った目にあったてのは……こいつらの言い分は正しいんだよ。俺が浮かれ過ぎて忘れてただけだ…帰ってきたらこうなるて分かってたのに…皆といてて忘れてた」

 

「先輩……」

 

「上条さん……」

 

二人はシブタク達に何か言おうとするが上条がそれを止める、実際彼らが言っているのは事実なのだからと、実際そう言う事件があったのは変わらないと上条は俯いて呟いた。そんな上条を見て二人が何か言おうとする前にシブタクが口を再び開く

 

「お〜なんだよ疫病神、その二人の女…テメェの物か?中々の上玉じゃせえか…お前にはマジ勿体無いな」

 

「あ〜確かに…疫病神には勿体ねえスね…ねえ君達俺達と一緒に来ない?楽しい事して遊ばない?」

 

「ちょっと女子の前でそんな事言わないでよ〜それに学園都市から来たなら変な能力持ってから下手したら殺されちゃうわよぉ?」

 

「あー言えてる言えてる、疫病神の女は怪物てか?」

 

シブタクとモブの一人が美琴と食蜂に嫌らしい視線を向けるがモブの女が超能力は怪物だと笑いながら言いモブの一人がそれに同意する

 

「たく…今日は厄日だぜお前にあっちまうしよ…てかなんでお前はのうのうと生きてんだよ、テメェ忘れてんのか?お前の不幸は俺達みたいな善良な人間を不幸にしちゃうて事をよ」

 

「………」

 

「あ〜学園都市の奴らも可哀想だよな!お前みてえな人を不幸にする事しか取り柄のない疫病神がいるんだからな、つかそこの女も本当は内心迷惑してんじゃねえか?お前と一緒にいるから不幸な目にあってるてな」

 

「!?アンタ!それ以上先輩を愚弄したら許さないわよ!」

 

「おー怖、でもよぉ事実だろうが。こいつは生まれて来たのが罪なんだよお…こいつがいるから不幸になる、ならその人に害を与える疫病神に勇敢に立ち向かってる俺らは善人、つまりヒーローて事だよ」

 

上条を愚弄し続けるシブタク、自分の事を善人と称しているがこんな事を言っている時点で善人からは程遠い、自分がやっている事が悪事と思っていないクズである、シブタクは上条なんか生まれて来なかった方が良かったと大声で笑い他のモブも笑い出す、美琴と食蜂が能力を使ってこいつらを黙らせようかと考えた直後、彼は現れた

 

「お〜こんな所にいたのか」

 

「あ?」

 

当然の様に現れたのは垣根、彼の背後にはシブタク達を睨む帆風達もいる。削板がお菓子を沢山いれた袋を持っているので買い物帰りだろう

 

「誰だよテメェ」

 

「俺か?俺は垣根帝督、そいつの友達だよ」

 

「友達?疫病神のかぁ?マジかよ」

 

「さ、こんなモブ共ほっといて帰ろうぜ、帰ったらすぐに親父さんの車に乗って海水浴に行く海の近くにある海の家に泊まるんだ…早くしようぜ」

 

シブタクを素通りして垣根は上条達に早く帰って海水浴へ行く準備をしようと笑う

 

「おいおい、兄ちゃんよぉ、そいつの事知ってんのか?疫病神だぞ?そんな他人を不幸にする事しか出来ねえ奴と友達やってんのか?」

 

「は、当麻が俺を不幸にする?ねえよそんな事、俺はこいつといるのが楽しくて一緒にいるだけだ…さ、さっさと行こうぜ」

 

「物好きがいたもんだなぁ、疫病神と仲良しこよししてえ奴がいるなんてな…じゃあな疫病神、さっさとこの街から消えろよ」

 

シブタクは垣根に上条の事を悪く言うが垣根はそれを淡々と返すのみ、シブタクは面白くないと思ったのか仲間を連れてこの場から去ろうとする

 

「あ、テメェらに1つ言い忘れた事があったな…」

 

「?なんだよ」

 

去り際に垣根が言い忘れたと呟きシブタクが振り向こうとする…その瞬間シブタクの腹に垣根の蹴りが炸裂した

 

「げふぁ!?」

 

「俺の友達の事悪く言ってんじゃねえぞクソボケ」

 

蹴りつけられたシブタクはゴロゴロと地面を転がる、垣根が蹴ったのを見て上条達もモブ達も驚いた目で垣根を見る

 

「テ、メェ…!何しやがる…!」

 

「黙れ豚、俺はな自分の事を悪く言われてもなんとも思わねえし大抵の事なら笑って許してやる…だがな、1つだけ許せない事があってな」

 

垣根はシブタク達を睨みつける、そして口を開く

 

仲間(友達)を馬鹿にするのだけは許せねえんだよなぁ…つまり俺は今怒ってるわけだ、俺の友達を馬鹿にしたテメェらにな」

 

垣根の言葉は冷え切っていた、それでかつ激情に駆られていた。垣根を見てシブタク達は恐怖に駆られる

 

「な、何なんだよお前!?」

 

「言っただろ、俺は垣根帝督、単なる疫病神(上条当麻)の友達だってな」

 

その直後、学園都市の第一位の力の象徴たる三対の白き翼が出現する、圧倒的な力が周囲に溢れ出る

 

「さて、ゴミ掃除の時間だ…10秒で終わらせてやる」

 

彼らの過ちはただ1つ、垣根を怒らせた。これだけだろう、垣根の友達を馬鹿にしたせいで疫病神を凌駕する科学の天使が彼らに牙を剥いてしまったのだから…その怪物は嗜虐な笑みをシブタク達に見せつけながらその力の根源たる翼を振るったのだった

 

 

 

「おい垣根、大丈夫なのか?学園都市の外で能力使って?」

 

「大丈夫だ、何かあってももみ消すから。それに言うだろ、バレなきゃ犯罪じゃないて」

 

上条は垣根に能力を使っても大丈夫だったのかと聞く、それに対し垣根は大丈夫、大丈夫と笑う

 

「でもスカッとしたわ、ありがとね垣根さん」

 

「確かにスカッとしたわぁ、ありがとなんだゾ垣根さん」

 

「少し物足りない気もしたがスカッとしたからまあいいかにゃーん」

 

「少しやり過ぎた感はあったがあの根性なし共にはいい薬だったと思うぞ!」

 

「胸糞悪ィ奴らだったな…お前も災難だな上条」

 

「まあ流石にモザイクがかかるまでやるのはやり過ぎですが…まあ仕方ないですわね」

 

全員が口々にそう言うと上条がふと気になっていた事を呟く

 

「……なあ、俺てお前らに迷惑かけてないか?」

 

「あ?何言ってんだよ当麻」

 

「いや…あいつらの言葉を思い出してさ…俺のせいでお前らが不幸になってないか不安に「はいドーン!」痛い!?何すんだよ垣根!?」

 

上条が自分は皆の迷惑になっていないかと口にした所で垣根が上条の脳天にチョップを入れる、上条は垣根を睨むが垣根は溜息をついて言葉を返した

 

「ばーか、俺らがそんな事思ってるわけねえだろ。それに俺らは怪物揃いの超能力者だぞ?不幸なんか目じゃねえんだよ、なあお前ら」

 

垣根がそんなこと思っている筈が無いと言い、全員に賛同を求めると全員が頷く。それを見て上条が笑う

 

「……そっか」

 

「たく…そんな事より早く家帰って海水浴の用意するぞ、明日は全員で海で泳ぐんだからな」

 

垣根が早く帰るぞと言うと上条達はそれに頷いた、上条はふと昔の事を思い出す…あの時も垣根はこうやって笑って自分と友達になってくれた事を

 

「……幸福だな、俺って」

 

「「?何か言った?」」

 

「いや何にも…さて、早く帰って用意しますか」

 

自分は幸福だとボソッと呟く上条、食蜂と美琴が何か言ったかと尋ねるが上条は何でもないと言って返した、太陽が沈みかけ空がオレンジ色に染まっていく…上条は昔とは違うんだと心の中で呟き垣根達と一緒に自宅へと向けて歩いていた

 

 

 

 




上条さんの過去て描写はほぼないけど多分こんな感じなんじゃないかな?まあ少し雑でしたが…お許しを、こんなんでスカッとできないと思った方はすみません。もう少し過去を掘り出せと思った方もすみません。てか御使堕し編なのにまだ魂の入れ替わりがない

ていとくんは自分が馬鹿にされるのはヘラヘラ笑って流しますが友達のことを悪く言われるとああなります、上条さん以外も馬鹿にされるとプッツンします

次回は漸く御使堕しらしさが出てきます。さて魂の入れ替わりで誰がどんな姿になるのやら?(ていとくん達は魂の入れ替わりはしません)一つ言えるのは乙姫ちゃんと詩菜さんの入れ替わる姿は原作と違うと言う点でしょうね…頑張ってギャグにするぞ(使命感)、次回もお楽しみに


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知ってるか?この人て人気投票第2位なんだぜ

今回は御使堕し編の本格的な始まりですね…頑張ってギャグになる様面白くしました。どの人物がどのキャラになっているか楽しみに読んでください、絶対に笑える様に書きました。

そして最後の方に人気投票第2位の皆さん大好きなあのキャラがご登場です。そして最近アニメで大活躍なさったあのお方も参戦です


ここは海の家 わだつみ、上条達が泊まっている場所だ。現在上条はその部屋の1つで垣根と一緒に寝ていた

 

「おにいちゃーん、もう朝だぞー」

 

「…うぁ?乙姫か?」

 

上条はその声で目を覚ました、まだ目の前がぼやけていて自分を起こしている相手の姿は見えないが自分の従妹だと察した

 

「いつまで寝てんのよう、おにーちゃーん!起きろ!」

 

「ああ分かってるよ」

 

乙姫がバシバシと上条の背中を叩き上条は起き上がる、そして両目をこすって寝ぼけた目を覚まそうとする

 

「起きたねおにいちゃん、さあ他の人達も起こしに行こう!」

 

「おお、そうだな一緒に起こし……」

 

上条が乙姫の姿を視界に入れた途端彼は固まってしまった、彼は見てしまったのだ乙姫の姿を

 

「んー?どうしたのおにいちゃん?私の体を凝視して…まさかイヤラシイ目で見てるのかー?やらしぃ!」

 

上条の視界に映ったのは乙姫…ではなくゴリラのような男だった、そのゴリラの様な男が乙姫が昨日着ていたワンピースを着ていたのだ、しかもその脇から脇毛が丸出しだった

 

「……ひ、」

 

「ん?ひ?何?なんて言おうとしたの?」

 

上条が小さく何かを呟いた、乙姫(?)は顔を上条に近づける、その時チラリと彼女(?)の胸元が見える…そこにはボーボーの胸毛が

 

「ひぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「うお!?おにいちゃんが朝から奇声をあげた!?」

 

上条はあまりの気持ち悪い光景に大声をあげる、その声を聞いて廊下からドタバタと誰かが走る音が聞こえる

 

「どうしたの先輩!?」

 

「大丈夫上条さん!?」

 

「なンかあったのかァ上条?!」

 

「大丈夫かにゃーん!?」

 

「無事かぁ当麻!?」

 

「何かなさいましたか上条さん!?」

 

帆風達がバシッと上条が泊まっていた部屋の扉を勢いよく開く…そして見てしまった

 

「あれ?おにいちゃんの友達さんも起きてたんだ〜」

 

その人物は脇毛丸出しのキャミソールを着たゴリラに見える男、そんなガチムチな男が女言葉を使って可愛らしく首を傾げる…その光景を見た帆風達の顔がだんだんと青くなっていく

 

「「「「「「……ぅぇ」」」」」」

 

「?どうかし…」

 

「「「「「「「うげぇぇぇぇぇ!!!」」」」」」」

 

「うおお!?おにいちゃん達が朝からいきなりリバース!?何がどうなってるのこれ!?」

 

あまりの気持ち悪さに全員が窓へと向かい窓から口から流れ出る吐瀉物を吐き出した、それ程まで彼女(?)は気持ち悪かったのだ、そして胃の中の物全てを全てを吐き出した麦野はその人物に話しかける

 

「な、なんでお前がここにいるんだよ駒場ぁ!冗談にもほどがあるだろ!」

 

この人物の名前は駒場利徳(こまばりとく)、浜面のスキルアウトのリーダーにして頭がキレる男…なのだが彼はこんな気持ち悪い女装をする性癖はない筈だ…だが駒場は首を傾げる

 

「?駒場てだぁれ?」

 

「うわ、女言葉気持ち悪!お前の事だよ!」

 

「え?私は竜神乙姫だよ?忘れちゃったのおばさん?」

 

「だぁれがおばさんだ!ブ・チ・こ・ろ・し・か・く・て・い・ね!」

 

「お、落ち着いてください麦野さん!」

 

惚ける駒場にキレる麦野、挙げ句の果てにおばさん呼ばわりされ原子崩しを放とうとする彼女を帆風は全力で止める

 

「なんだ?朝から随分騒がしいな」

 

「いえ刀夜さん、もしかしたらこれが学園都市の日常なのかもしれませんよ」

 

「あ!父さんに母さん!見てくれよこの部屋に変……質者…が」

 

騒ぎを聞きつけて刀夜と詩菜も駆けつけてくる、上条が二人に何か言おうとするが…二人の姿を見て再び固まってしまう…刀夜はそのままの姿だが…詩菜の姿が昨日と変わっていたのだ

 

「……何してんのママ?」

 

「あら、美琴さんたら…私はまだ貴方の義母(ママ)じゃありませんよ?」

 

「いやアンタは正真正銘の私を産んだ母親でしょうが!何やってんのよ!?」

 

詩菜の様な言葉遣いをしているのは美琴の母親である御坂美鈴(みさかみすず)、美琴は自らの母親に怒鳴りかけるが美鈴は惚けるだけだ…さも自分が詩菜自身であるとでもいう様に

 

「やけに騒がしいな、海に来たからテンション上がってんのか?」

 

また新しい人物が出て来た、恐らく声の主はこのわだつみの店主であるオッさんの筈だ…だが現れたのはTシャツにハーフパンツに首からタオルを引っ掛けた打ち止めだった

 

「ら、打ち止め!?」

 

「?ラストオーダー?オーダーストップの事か?まだそんな時間じゃねえぞ?」

 

打ち止めの保護者が何故こんな所にいるのかと叫ぶが打ち止めは「ラストオーダーて何?」と首を傾げる、しかも打ち止めの特徴的な「て、ミサカはミサカは〜」という語尾がない

 

「おい父さん、お客さんが何食べるか聞いてくれよ」

 

そんなおままごとをしているかの様な打ち止めの事を父さんと言ったのは紺色の海パンの上にエプロンをつけたまるでアクの強い洋ゲーに出てくる悪党の様な男だった

 

「さ、災誤(さいご)先生!?あの無差別級ゴリラが何故ここに!?」

 

「?いや俺は先生じゃなくて父さんの息子なんだが…」

 

「まあ冗談に乗ってやれよ麻黄(まおう)、このお客さん達はテンションが上がってるんたよ」

 

その人物の名前は上条達の学校の生活指導の教師である災誤であり、打ち止めの事を父さんと呼ぶが彼が打ち止めの父親に見える…しかも彼の服装だとまたしても脇毛が丸見えである。まあ駒場ほど気持ち悪くはないが…一方通行と上条は災誤はこんな変な事をしないと知っているので何がどうなっているんだと混乱する

 

「な、何が起こってるんですか?……は!垣根さんなら何がわかるかもしれません!」

 

帆風が垣根なら分かるかもと垣根の方を見る、上条と同じ部屋で寝ている垣根なら何か知っている筈と垣根が寝ている方を見ると…垣根は逆立ちしながら寝ていた

 

「ZZZZZzzzzz………」

 

「いや、どんな寝相ですの!?」

 

「……ふにゃ?……ふぁああ…おはよ」

 

どんなに寝相が酷いんだと帆風がツッコミを入れる、その声で垣根が目を覚まし目をこすり始める。そして部屋の中にいる人物達を見渡す

 

「……テレビ見るか」

 

(((((((嘘ぉぉぉ!?この状況スルーぅ!?)))))))

 

垣根は恐らくこの異変に気付いている筈だがそれを軽くスルーしてテレビのリモコンを押してテレビをつける、その行為に全員が嘘だろと驚く

 

『えー、現場の小森ですー。本日未明、都内の新府中刑務所から脱獄した死刑囚 火野神作の行方は……』

 

「……え?黒子?」

 

画面に映ったのは何故かマイクを握ってニュースの原稿を読んでいる美琴の後輩の黒子だった、美琴が目を丸くして驚く。垣根は更にボタンを押して他のチャンネルに変える

 

『はい!何とこの炊飯器!今ならたったの7千円なんです!』

 

『なななななんと!?なんてお買い得なんでしょう!?』

 

「……青ピと吹寄?」

 

次に映ったのは通販ショップチャンネルの商品アドバイザーの様の服を着ている青髪ピアスと吹寄制理、上条は級友達が何故こんな事をしているのかと目を丸くする

 

『はい〜今日は漫画でよくある、フラスコの中に何かの液体をいれると爆発を起こすアレをやるよ〜』

 

「……木原くン?」

 

今度はヤケに猫撫で声の数多が漫画でよくある理科の実験を行おうとしていた、それを見た一方通行がは?と呟く

 

『はい!見事に上半身と下半身を切り分けましたよ!』

 

「ふ、フレンダ?」

 

人体切断マジックで見事上半身と下半身を切り離したのはマジシャンの姿をしたフレンダだった。いやこの場合はフレ/ンダか

 

『許してチョンマゲ!』

 

『いやそれチョンマゲじゃなくてちょび髭やがな!』

 

「……えぇ?ドリーにみーちゃん?い、一体全体なんなのこれぇ?」

 

お笑い番組でどつき漫才をしているちょび髭をつけたみーちゃんこと警策看取(こうざくみとり)と大きなハリセンを持った妹達の一人 ドリーを見て食蜂が唖然とする

 

『これで君もムキムキのマッチョメンだ!さあ、一緒にライ○ップしようぜ!』

 

「も、モツ鍋…?」

 

次に映ったのは筋肉を見せつけるポーズをしているモツ鍋こと横須賀、普段の彼なら絶対しない様な行動に削板が困惑した声を漏らす

 

『はっけよい、のこった!』

 

『『どすこい!』』

 

「え…誉望さんが行司で入鹿さんと猟虎さんがふんどし一丁で抱き合って…え?え?え?」

 

恐らく相撲の実況なのだろうが抱き合っているのが弓箭姉妹だったので、二人はほぼ半裸でその豊満な胸を大衆に晒してしまっている。しかも行司役は誉望だった

 

「あははは!マジかよ!マジで面白れえな!ていとくんお腹痛い!」

 

呆然とする帆風達だが垣根はテレビの映像を見て大笑いしていた、他にもお色気ニュースキャスターが親船最中だったり、某国大統領らが幼稚園児だったり、映像に映る街の中を歩く人々も何処かちぐはぐだったのだ…そうまるで世界中の人々の『中身(・・)』と『外見(・・)』が変わってしまった様に…それを見た垣根以外の超能力者達は頭を抱えて叫ぶ

 

「「「「「「「なんじゃこりゃぁぁぁぁ!!?」」」」」」」

 

 

 

ザーーと波が上がっていって引いていく、寄せては返す波打ち際で上条達は体育館座りをしながら海を見て黄昏ていた。刀夜達は海の中に入ってキャッキャウフフしていた…脇毛と胸毛が丸見えで女物の水着を着ている駒場がそんな事をしているのを見るだけで吐きそうなので彼等は刀夜達の方を絶対に見ない様にしていた

 

「ヒャハー!夏だ!海だ!サーフィンだ!」

 

「お前よく平気でいられるよな」

 

垣根は平常運転でサーフボードを肩脇に挟んで笑っていた、それを見て麦野が馬鹿を見る目で垣根を見ていた

 

「いや、お前らも水着に着替えてるじゃねえか、泳ぐ気満々じゃねえか」

 

「まあな、てかお前はアレ(・・)を見てもなんとも思わねえのか」

 

上条達も泳ぐ気満々だろとツッコミを入れる垣根に上条はある方向に指を指す…そこには

 

ミサカ10031号「いやぁ!暑いな!こんな日はかき氷を食うにかぎるな!」

 

ミサカ19090号「俺女の子達をナンパしてくるぜ!」

 

ミサカ10777号「泳ぎまくるぞぉ!」

 

右を向いてもミサカ、左を向いてもミサカ、というかこの海には妹達(シスターズ)しかいなかった

 

「なんなのよこれ!この海岸のミサカ率高過ぎない!?しかも上半身を露わにしてるのよ!?お陰で目のあて場に困るわ!」

 

「いやそりゃあ中身が男だからしゃあねえだろ…それに妹達が多いのは妹達が2万人+4人(ドリー、ドリー妹、打ち止め、00000号(フルチューニング))いるからな、仕方ないだろ」

 

美琴が多過ぎるだろ私の妹!と叫ぶが垣根は仕方ないと頷く、因みに上条と食蜂はほぼ半裸の妹達を見た瞬間鼻から愛が出てきました

 

「…マジで何なンだよ、この状況は…」

 

「わけがわからないよ…だにゃーん」

 

「…モツ鍋はおかしくなったのか?」

 

「入鹿さん達が半裸で相撲……あり得ませんわ」

 

全員がこの状況を理解できず頭を抱えて悩んでいた…その時自分達のよく知る声が聞こえてきた

 

「うにゃーっ!やっと見つけたんだぜーい!」

 

いきなり奇怪な男性の声の猫ボイスが聞こえてきた、全員が振り向く…そこには自分達がよく知る人物が立っていた

 

「……土御門?」

 

その人物の名は土御門元春、上条と一方通行の級友であり義妹に手を出すシスコン軍曹である…そして一番大事なのは彼の姿は詩菜や乙姫達の様に彼は上条達と同じで姿が変わっていないのだ

 

「お、ツッチーか、一緒に泳ぐか?」

 

「お断りしてきますぜい、今は俺っちの仕事が優先だからにゃー」

 

「仕事、ですか?」

 

垣根が一緒に泳ぐかと尋ねると土御門は苦笑しながら仕事優先だと言う、帆風は仕事とは何かと首を傾げると土御門は悪戯っぽく笑った

 

「魔術師としての仕事のことだぜい、この異変…アレイスターは『御使堕し(エンジェルフォール)』と言っていたが…それを誰が発動させたのかを調べにきたんだにゃー…たく、何でよりにもよって俺なんだぜい…俺なんかよりもトールやペルシ、ブリュンヒルデの方が強いてのに…」

 

「……おい、ちょっと待てよ土御門…お前今魔術師て言ったか?」

 

「ああ、そうだぜい。そういやカミやん達には言ってなかったな、実は土御門さんは魔術師だったんだぜい…簡単に言うと学園都市に送り込まれた魔術サイドのスパイて奴だにゃー。ま、本当は学園都市に魔術サイドの情報を流してる二重スパイでもあるんだけどな」

 

「……いきなりの新事実に頭が追いつかない」

 

土御門は自分は魔術師だとバラすと全員がその言葉の意味を理解するのに暫くかかった。確かに学園都市の中にはオティヌスやメイザースといった魔術師はいたが…まさか級友が魔術師だとは思ってもいなかった

 

「でも超能力者は魔術を使えない筈じゃ…使ったらたしか血管が破裂して…」

 

「ああ、その点は心配要らないにゃー、俺っちは時間割り(カリキュラム)を受けてはいるが実は俺は能力者じゃないんだぜい」

 

「?どォ言う事だ?」

 

美琴が三沢塾での出来事を思い出しながらそう呟くと土御門は自分は超能力者ではないからその心配はないと笑う

 

「実は俺が中学生の頃必要悪の教会から学園都市のスパイとしてやって来たんだが…いきなりアレイスターと先輩に捕まっちゃってにゃー、拷問されるかと思ったんだが能力開発をしない代わりに学園都市のスパイになれて言われて契約させられたんだぜい」

 

「……つまり、元春は能力を開発しない代わりに必要悪の教会を裏切って学園都市のスパイになったて事か?」

 

「まあ、その通りだにゃー。いやぁ最初は裏があるかと思ったけど凄いホワイト企業だったぜい、俺が能力者ていう偽の情報を作ってくれたのは勿論、給料も貰えるし、その他特典も盛り沢山なんだぜい」

 

学園都市のスパイとして働く代わりに能力開発を受けていないので魔術を使っても問題ないと笑う土御門、そして彼は少し真剣な顔になるとコホンと息を吐く

 

「まあ、そんな事は今は置いておくとして…今はこの事件、御使堕しについて話すぞ」

 

「御使堕し?」

 

「そうだ、この人々の入れ替わりの事件は魔術を使った人為的な事件なんだよ、アレイスターはこの事件の事を御使堕しと名付けた後俺をその調査に向かわせたんだぜい」

 

土御門はこの御使堕しを解決する為にやって来たのだと言うと全員が成る程と頷く

 

「まあ、カミやん達にはなんでこんな事が起こったのかさっぱりだろうから専門家に変わってもらうにゃー」

 

「専門家?」

 

土御門は携帯を取り出すとポチポチとボタンを押して誰かと通話を開始する、繋がったのかスピーカーモードにしてその声の主を垣根達に聞こえる様にする

 

『あ、もしもし…聞こえてるかなていとく達?』

 

「…インデックスちゃん?」

 

『そうなんだよ、これから私が御使堕しについて話すからよく聴いて欲しいんだよ」

 

電話の相手はインデックス、インデックスはこれから自分が御使堕しについて話すと言うと一息ついてから話し始める

 

『まず、この御使堕しの詳しい術式や構成は不明なんだけど効果は分かってるんだよ…これは生命の樹(セフィロト)から天使の魂が強制的に移動して来て四界…原形世界(オーラムアツイルト) 創造世界(オーラムブリアー) 形成世界(オーラムイェツィラー) 物質世界(オーラムアッシャー)に影響を与えてるんだよ』

 

「……専門用語が俺らに分かるとでも?」

 

『あ、ごめん。まあ簡単に言うとビリヤードとか椅子取りゲームみたいなものでね、天使の魂が人間の体に入って、元いた体の魂はビリヤードの玉の様に弾かれて他の人の体に入る、で、また追い出された他の魂が他の体に入ってその体の魂がまた他の体に移って…それの繰り返しが今の現況を引き起こしたんだよ』

 

「……難しくて分かんないわねぇ」

 

インデックスが御使堕しについて説明するが垣根以外は難し過ぎて理解できない

 

『まあ、これは三次元的な事じゃなくて抽象概念上だから座標的には精神は動かないんだよ、でもていとく達みたいに術を防いだ人間からは今の現状の通りに見えるんだよ。でも他の人は違和感を感じない…だからていとく達がおかしいと思ってる事も誰も気にしないんだね』

 

「だから駒場が乙姫になっても気づかれなかったのか…納得」

 

「因みに俺は術を使って防いでカミやん達みたいにそのちぐはぐに気づいてるんだぜい、因みに俺は他の人から見たらトマス=プラチナバーグに見えるらしい」

 

『所で1つ疑問なんだけど…とうまなら幻想殺しでこの御使堕しの影響を防げるだろうけど…なんでていとく達は無事なの?』

 

「それはな、俺が嫌な予感を昨日の夜感じて予め未元物質の素粒子を他の奴らにばら撒いておいたんだよ、多分それで防げたんだろ」

 

『成る程、納得したんだよ』

 

インデックスが少しずつ科学の言葉を交えて説明すると上条達はなんとなく御使堕しを理解していく…垣根が未元物質のお陰で自分達は術にかかっていないと言うとインデックスは納得したと呟く

 

「そういえば生命の樹は以前教えてくれたから理解できるのですが…天使てあの翼が生えたあの?」

 

『うん、正確には天の使いではなく主の使いなんだけど…本来は天界て場所にいるんだよ…因みに天国と地獄ていうのは科学で言うと赤外線と紫外線みたいなもので例えばじゅんこの横に悪魔がいてもじゅんこはそれに気づかない…つまり人間に感じ取れない領域にいるのが天使やら悪魔て事だね』

 

「成る程…で、こんな馬鹿げた術式をかけたのは何処のどいつだにゃーん?」

 

麦野がこんな事した馬鹿は誰だと聞くとインデックスが何か言おうとするが別の声が聞こえた

 

『実はその御使堕しの発生源の中心部は…おかしい事に君達のすぐ近くだったんだ』

 

「ステイルか?てか俺らの近くてどういう事だ?」

 

『1つ言えるのは…犯人は君達の近くにいるてことさ』

 

「!…つまり、ここら一帯に犯人がいるて事か」

 

ステイルが御使堕しの発動の中心部は垣根達の近くだというと上条がここら一帯に犯人が…と呟く

 

『その可能性が高いでしょう、心当たりはありませんか?怪しい人物を見たとか』

 

「いや、ねェな」

 

神裂の声が電話から聞こえると彼女は犯人に目星はないかと尋ねる、一方通行はないと答えるが垣根が口を開く

 

「俺はこの御使堕しを発動させた犯人を知ってるぜ」

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

『!本当なのていとく!?』

 

「マジかにゃー…?先輩て仕事が早いんだぜい」

 

垣根が犯人を知っていると呟くと全員が驚く、土御門は流石先輩と感心していた

 

『それで誰なのかなその犯人は!すぐにとっちめれば事件は解決だよ!』

 

「だが…そうもいかねえんだよな、その犯人はこの御使堕しを発動した事に気付いてねえんだからな(・・・・・・・・・・・)

 

『え?気づいていない?』

 

インデックスが事件解決だー!と喜ぶが垣根は自体はそう簡単ではないと首を振る、それを聞いてインデックスはどういう事かと疑問に思う、そして垣根は口を開いた

 

「その犯人は…上条刀夜(・・・・)、当麻の父親だよ」

 

「………は?父、さん…?」

 

『……それはどういう事なのです垣根帝督』

 

「口で言うよりもメールで画像を見せた方が早いな…お前ら携帯で持ってる?」

 

『うん、持ってるよ…あ、メールアドレスを今から教えるからそこに画像を添付して』

 

犯人は上条刀夜だと言うと上条がえ?と言う目で垣根を見る、全員がその言葉を聞いて固まっていたがインデックスは言葉を続ける、そしてインデックスがメールアドレスを教えると垣根はそこへ画像を送る

 

「お、おいていとくン、なンの画像を送ったンだよ」

 

「これだよ」

 

垣根が見せたのは巣箱のついた檜の木や赤いポスト、亀や虎、鳥、龍の玩具…どれも上条の自宅にあった置物だ

 

『……成る程、そう言う事だったんだね…こんな偶然があるなんて…なんて不幸なんだよ』

 

「ど、どう言う事だよインデックス?」

 

『とうま、この家はね、一種の神殿とかしてるんだよ、そして置かれた置物達は魔法陣…そうだね、創作魔法陣(オリジナルサークル)とでも言おうかな?それによって御使堕しが発動しちゃったんだね…でもこれならまだマシかも…下手したら極大地震(アースシェイカー)異界反転(ファントムハウンド)永久凍土(コキュートスレプリカ)みたいな大魔術が発動してた可能性もあるんだからね…不幸中の幸いかも』

 

インデックスは上条の家は一種の神殿とかしており、この置物が御使堕しを発動させる魔法陣と化していると言う

 

「…成る程、風水博士である俺でも理解できないな…このオカルトグッズやらお守り達がこれだけあれば相乗効果で御使堕しを起こしたのか…まるで天然のダイヤモンドだぜい」

 

『そうなんだよ!この魔法陣は素晴らし過ぎるんだよ!こんなの偶然なんかで出来る代物じゃない!……ごめん、ちょっと興奮し過ぎたんだよ』

 

「…で、それを解く方法はあるのか?」

 

土御門とインデックスが偶然とは考えれない魔法陣に関心を寄せる、垣根が一応解除の仕方を尋ねるとインデックスは即座に答える

 

『解くにはとうまのお家を破壊するしかないんだけど…これは出来ないんだよね』

 

『確かに…それは不可能だな』

 

『同意します』

 

「え?なんで先輩の家を破壊するのが無理なの?」

 

インデックスは上条の家を破壊すれば御使堕しは解除されるがそれは出来ないとステイル達と共に呟く、美琴は何故かと聞くと三人は口を揃えて呟いた

 

『『『思い出が詰まった大切な家を壊す事なんて出来ない!』』』

 

「「「「「「「「凄くまともな考え?!」」」」」」」」

 

(まあ確かにそれが普通なんだにゃー)

 

刀夜と詩菜にとって思い出が詰まっている家を破壊できないよと叫ぶ魔術師達にズコッーとコケる超能力者達、土御門はまあそれが普通だと頷く

 

『とうまの父親と母親にとってその家はとうまとの思い出が詰まってる筈なんだよ、そんな家を壊すなんて悪魔の所業かも』

 

『それに家を壊しては親御さんは新しい家ができるまで何処で暮らせばいいのですか?それに新しい家を作ればいいという問題ではありません』

 

『だから家を壊す事は出来ない、それが人として普通の考えだからね…それにインデックスの恩人の実家を壊すなんて…僕等には出来ない』

 

「いや確かに正論だけども!」

 

正論を呟く魔術師達にならどうやって解決するんだと叫ぶ上条、そんな上条にインデックスはある事を伝える

 

『まあ家を破壊する以外の解除法を私達も考えてみるから待ってて欲しいんだよ、もし見つからなかったら残念だけど家を破壊するしかないけどね』

 

「…まあ、仕方ねえよな。父さんと母さんには俺からなんとか言っておくから安心してくれ」

 

『そっか。早く私達も見つけてみるね、私達も早くこの状況を解決しないと困るからね』

 

「?何に困るんですか?」

 

インデックスが早く解決しないとと自分達も困ると呟くと帆風が何故かと尋ねる、そして魔術師達は口を揃えてこう言った

 

『『『御使堕しのせいでこもえ/小萌さんの容姿が脂汗ギタギタの太ったハゲのオッさんの姿になってるんです、見てると辛いんです、しかも彼女の普段の生活自体がオッさん臭いのでもう完全にオッさんなんです。だから早く元の姿に戻したいんです』』』

 

「「「「「「「「あ、うん…」」」」」」」」

 

『じゃあ私達は御使堕しの解除法を探すから…また分かったら連絡するね』

 

泣きそうな声で呟いた魔術師達に超能力者達は複雑な気持ちになった、そして通話が終わり土御門が携帯を懐にしまう

 

「……因みに舞夏は英国の女王 エリザードて言う婆さんの姿になってるんだ…想像してくれよ、七十は過ぎているであろう婆さんがメイド服着てくるくる回ってるんだぞ…凄いシュールだろ」

 

「「「「「「「「……ドンマイ」」」」」」」」

 

土御門が自分の義妹は婆さんなんだと遠い目で呟く、超能力者は哀れみの目で土御門を見る

 

「ま、カミやん達は解除法が分かるまで海で泳ぐなり遊ぶなりしてていいと思うんだぜい…じゃ俺も自分なりに御使堕しについて調べてみるぜい」

 

土御門はそう言って手を振りながら何処かへ歩いていく、土御門は遊んでいてもいいと言ったが超能力者はただ呆然とその場に立ち尽くしていた

 

 

時は進んで夜の8時頃、わだつみの一階で帆風達はテレビを黙って見続けていた

 

『ふ!スーパーメルヘンショット!』

 

『にゃー!流石だにゃー先輩!』

 

『な!?中々やるな垣根君!』

 

『お兄さん卓球上手いね!』

 

『あらあら、皆楽しそうね』

 

二階から卓球をやっている垣根達の声が聞こえてくる。それを聞いた上条達ははぁ〜と溜息を吐く

 

「…なんであそこまで普通でいられんだよ垣根の奴」

 

「馬鹿だからじゃない?」

 

「しっかし、天使が墜ちてくるとは世も末だな〜」

 

「まあ、今回もなンとかなるだろ…ていとくンがなンとかしてくれるだろ」

 

「そうですわね、垣根さんならなんとかしてくれますわ」

 

そんな会話を進める超能力者達…そんな彼等を床下(・・)に隠れたとある人物が床板と床板の間の隙間から覗いていた

 

「……エンゼルさま、エンゼルさま、今回のイケニエはあの子供達でよいのですか?」

 

不健康なほど瘦せぎすの中年男は小学生の様な高い声で狂気が混じった声を漏らす、右手には奇妙な形のナイフ、左手には傷だらけの木の板…ナイフの先端で木の板に傷を…いな文字を書き殴る、その右腕は彼の意思とは無関係に動いていた

 

「エンゼルさま。それでは、今日もエンゼルさまを信じます。エンゼルさまに従って彼等をイケニエに捧げましょう」

 

男はナイフを舌で舐める、そしてナイフを床下を走る太い電気ケーブルへと突き立てる。その瞬間ブツン、とわだつみから全ての電気が消えた

 

「……停電でしょうか?」

 

帆風がそう呟く、わだつみは入り口が大きく解放されており月明かりが差し込んでいるので真っ黒と言うほどではない…帆風が店主に何かあったのかと聞きに行く為に立ち上がったその瞬間、ガスン!とナイフの刃が帆風の先程まで足があった部分から床を貫通して突き出ていた

 

「!?」

 

帆風はその場から大きく跳ねて遠ざかる、他の全員も即座に立ち上がる。そして床が音を立てて破れ床下から一人の男が現れた。その男は血走って狂った眼に剥がれた爪、内出血で青黒くなった手に露出したグジュグジュになった黒い肉片…その姿は嫌悪を誘う姿そのもの

 

「ひ、!?」

 

食蜂が悲鳴をあげる、他の全員もその醜い外見に目を見開く…月明かりでその男の全体像がはっきり見える…美琴がその男を見て叫んだ

 

「!まさかこいつ…朝のニュースで言ってた脱獄したていう殺人犯の火野神作(ひのじんさく)!?」

 

「……ぎビぃ」

 

この男は脱獄死刑囚の火野神作、彼は獣のような声を発したかと思うとニヤリと笑う。普段なら火野の様な一般人は彼等の敵ではない…だが暗闇、火野の異形な姿、突然の事態による混乱により演算が上手く出来ない…火野はそんな事は知らないが彼はナイフで上条達を殺そうとする…全員が慌てて動くが既に火野のナイフは美琴に狙いを定めていた、そのまま美琴はナイフによって切り裂かれる…筈だった

 

「いかんな、婦女子に刃物を向けるなど、大の男が実に情けないな」

 

「ぎィ!?」

 

この場の雰囲気に似合わないやけに落ち着いた声が上条達の耳に聞こえた、その瞬間火野は見えない力に吹き飛ばされたかの様に後ろへと吹き飛び床を転がる、火野はすぐに立ち上がり何が起こったと血走った目で周囲を見渡す、そんな彼に先程の声が聞こえた

 

「成る程、二重人格者の場合は『中身が2つ』あると判断されるのか…貴様はエンゼルさまという共存している人格の身体と入れ替わっているがエンゼルさまもお前も同じ外見だから入れ替わっていても入れ替わっていない様に見えるのか」

 

背後から声が聞こえ火野が振り向くとそこに一人の青年が立っていた、青年は赤を基調とした服を着た細い身体にセミロングの髪と目の色は赤、まさに赤男と表現するしかない青年だった。火野は青年を睨むと突進しナイフを彼へと降り下げる

 

「甘いな、この程度で俺様が死ぬと思うのか?」

 

「ギビィ!?」

 

斬りかかった火野だが、青年は蜃気楼の様に消えていき最初からそこにいなかったかの様に消えてなくなる、火野は目を見開くが彼の背後にはその青年が立っていた

 

「単純な火の魔術による幻覚だ、まあ一般人には魔術の事は分からんとは思うがね」

 

青年はそう言うと手刀で火野の後頭部と首の間を叩き火野の意識を一瞬で刈り取った、ドサリと倒れる殺人犯にそれを一瞬で倒した青年、超能力者達は何が起こったのか理解できなかった

 

「さて、次は起きた時に暴れたり逃げ出さない様に縄で縛っておくか…おいお前達、縄がどこにあるか知らんか?」

 

青年は火野がちゃんと気絶しているか確認すると縄があるか知らないかと上条達に尋ねる、だが上条達が何も喋らなかったので青年は不機嫌そうな顔をする

 

「……いかんなぁ、初対面とはいえ命の恩人に感謝の一言もないのか?失礼な奴らだな」

 

「あ、あんたは誰だ?」

 

上条が青年に何者かと尋ねると青年は軽く笑みを浮かべる

 

 

 

 

「俺様はフィアンマ。神の右席の一人 右方のフィアンマだ」

 

 

 

 

 

 




まさかのフィアンマさん、左方に続いて右方まで…おいおいガブリエル終わったわ(ドンマイ)。超能力者に神の右席最強の男…ガブリエル終了のお知らせ

ガブリエル「jtmjptjgtmjum被mujwkw!(私は御使堕しの被害者だ!)」

そして人気投票で第2位を取ったことがある火野神作さんがモブとしてご登場です。あの人アニメではぶられて可哀想ですよね…そしてこの作品でもフィアンマさんに倒されるという…誰か火野さんを活躍させてあげてください。因みに彼がミコっちゃんを襲ったのは彼女がその時の人気投票の第一位だったからです、なおていとくんは二十七位でした

次回はバトル描写があります、次回もお楽しみに


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腕を振れば勝てる?何そのチート、最近のなろうでも見ねえよ

いやぁ〜ようやくテストが終わった〜。でも今回のテストは爆死したぜ!(白目)。テスト勉強しながら小説書くと遅くなっちゃいますね…反省反省

今回はフィアンマさんが大活躍、え?超能力者の扱いが悪い?まだ成長時ですから…経験値を上げてる途中なんです。最初の方はまだ無双しませんから(無情)。一応パワーアップポイントというのはあるんですがね…まだ先だからなぁ

フィアンマさんは聖なる右を使わなくても強いんやで、原作だとかませ化されたフィアンマさんですが(僧正に吹き飛ばされる、オティヌスに妖精化を当てたせいでオティヌスが完成した)この作品ではそんな原作での扱いぷりが嘘みたいに強いです(元から強いですが)



フィアンマと名乗った青年はそう言うと上条達に笑いかける

 

「神の右席…確かあのテッラさんが所属している組織の……」

 

「そうだ、正確に言うと俺様は神の右席のリーダーだ」

 

帆風が三沢塾の時に知り合ったテッラと同じ組織の人かと呟くとフィアンマはその通りだと頷く、そしてドタドタと誰かが廊下を歩く音が聞こえてきた

 

「おい!無事かお前ら!」

 

懐中電灯を持ってやって来たのは垣根、彼は懐中電灯で部屋を照らすと全員が無事な事を知り安堵の息を吐く、だが床に倒れる火野とその近くに立っているフィアンマを見て目を見開く

 

「……フィアンマ?」

 

「久しぶりだな、垣根。元気にしていたか?」

 

「まあな、てかお前こっちに来てたのか」

 

「ああ、日本には海岸のゴミ拾いに来ていてな。その途中で天使の気配を感じバチカンに連絡を入れてみれば御使堕しなるものが起こったと聞き、その発生源が偶然にも俺様がいた場所の近くでな…そしてここまで来てみればお前の友達が襲われていたので助けてやったんだ」

 

垣根がフィアンマの名前を呟くとフィアンマは旧友に会った様な表情で垣根へと笑いかける。垣根が友達に話しかけるくらいの気安さでフィアンマに話しかける

 

「こいつはお前の知り合いなのか?」

 

「そうだよ、俺の友達のフィアンマだ。こいつは強いぞ、俺の未元物質軍団を一瞬で蹴散らすんだからな」

 

「はは、何をいう垣根、お前こそ俺様の聖なる右を翼で耐えきったではないか。あれは流石の俺様でも驚いたぞ」

 

麦野が知り合いかと聞くと垣根は頷く、そしてお互いがお互いのことを自慢し始めた直後に打ち止め(店主)災誤(息子)が部屋に入ってくる

 

「お客さん、なんの騒ぎだい…て、おい!床で気絶してるのて火野神作じゃねえか!」

 

「む?ここの店主か、なら話が早い。俺様がこの男を捕まえた、警察に連絡してくれないか?後こいつを縛る縄も頼む」

 

「お、おう!おい麻黄、早く縄を持ってこい!」

 

「分かった!」

 

店主が打ち止めの可愛らしい外見で驚いた顔をする、フィアンマが警察に連絡して火野を縛る縄を持って来てくれというと災誤が急いで縄を取りに行く、打ち止めは警察に連絡をいれる

 

「どうした当麻?なんかあったのか?停電かと思えば下で騒がしい音がしたが…なんだったんだ?」

 

「あ、父さん…いや実は…」

 

騒ぎを聞きつけたのか刀夜や土御門達も集まって来た、それを見た上条がここで何が起きたのか説明する

 

「まさか殺人犯がここに潜んでいたとは…当麻達を助けてくれてありがとうございます」

 

「いや構わんよ、人助けは俺様の趣味だからな」

 

「?趣味…ですか?」

 

刀夜がフィアンマに頭を下がるとフィアンマは自分の趣味だと笑う、美鈴(詩菜)が趣味?と首を傾げるとフィアンマが笑みを浮かべる

 

「そう、俺様は世界を救いたい、この世界から争いをなくし誰もが笑って生きる世界を作りたいのだ。だから俺様はその為に毎日人助けをしている、道端に落ちているゴミを拾ったりお婆さんを家まで送ったり、飢え死にしそうな村の人々に農作物の作り方を教えたり、土地を耕したり、戦争を止めたり、オアシスを見つけたり、砂漠に木を植えたりしている」

 

「つまりお兄さんはボランティアの人なの?」

 

「概ねそうだ、3年前まではこんな事をしていなったが垣根に「人を救ったことがない奴が世界を救えるわけねえんだよ」と言われ、ならば世界中の人々を救ってから世界を救おうと考えたのだ…そしたら人助けが趣味になったのさ」

 

「……俺もここまで性格が変わるとは思ってもいなかった」

 

フィアンマは割とボランティアの域を超えている事を何個か言い、垣根の言葉で今の自分がいると呟く。垣根はここまで性格が変わると思っていなかったらしく遠い目でフィアンマを見ていた

 

「さて、私は垣根と少し話があるのだが…少々席を外してくれないかね?」

 

「ああ、友達同士のお話か、確かに私達がいたら話しにくいかもしれないな…じゃあ私達はこれで」

 

フィアンマが刀夜達にこの部屋から出て行ってくれないかと言うと刀夜はそれを聞き入れ美鈴と駒場(乙姫)を連れて出て行く、それを確認したフィアンマは真顔に戻り垣根と向き合う

 

「で、話して何だ?」

 

「なあに、テッラから頼まれた事から言うだけだ。アウレオルス=イザードと姫神秋沙はバチカンで元気に暮らしていると伝えてくれと言われてな。それだけだ」

 

「……そっか、あいつら元気にしてるのか」

 

上条は良かったと笑みをこぼす、垣根達もそれなら良かったと安心する。フィアンマも彼等の笑みを見ていて自分の顔も綻ばした

 

「さて、もう9時か…さっさと風呂に入って寝たほうがいいぞ」

 

「お、そうだな…じゃ風呂に入るか…あ、一緒にフィアンマも入るか」

 

「そうだな、なら俺様も入るとしよう…ところでここは露天風呂か?」

 

フィアンマがもうこんな時間かと呟くと垣根と一緒に風呂に入りに行く、因みに上条達は垣根が土御門達と卓球をしている間に風呂に入っていた

 

「…本当に垣根の友人関係て謎だよな」

 

「「「「「「同感」」」」」」

 

垣根の友人関係は広いんだな〜とあたらめて感心する上条達、彼等は自分達も明日に備えて早く寝ておくかと各自の部屋に行こうとする…その時上条と美琴、食蜂はとある声が耳に届いた

 

『なあ…母さん、今晩…久しぶりにヤらないか?』

 

『あら、刀夜さんたら当麻さん達がいるのに…エッチなのね』

 

「「「!!?」」」

 

刀夜と美鈴の声が三人の耳に届くと三人は会話の意味を理解する、これはアレだ。男女の夜の営みだ。そう気づくと三人は階段を駆け上がり上条夫妻の部屋まで猛ダッシュする

 

『なあ、母さん…私の息子がもう我慢できないんだ』

 

『まあ、刀夜さんたら乱暴なんだから…』

 

『……詩菜、ヤってもいい…』

 

「「「その幻想をぶち殺す!」」」

 

「そげぶ!?」

 

美鈴を布団に押し倒している刀夜に三人がローキックをお見舞いする、刀夜は吹き飛ばされて壁に激突する

 

「な…!何をするんだ!?」

 

「煩えこの変態親父!ナニやろうとしてんだ!ナニだけに!」

 

「てか私のママの姿をしたお義母さんとヤろうとしないでください!私達には先輩のお義父さんと私のママの浮気にしか見えない!」

 

「そんな修羅場見たくないわぁ!」

 

そう、今詩菜の姿は美鈴なのだ、つまり美琴にとっては刀夜が自分の母と浮気しているようにしか見えない、それを許容する程彼等は精神異常者ではない

 

「べ、別にいいじゃないか!大人なんだもの!当麻達もきっと大人になれば分か…」

 

「「「問答無用!そんな事がしたいならR_18に行けぇぇ!!!」」」

 

「ぎいゃあああぁぁぁ!?ナンデ!?」

 

「あらあら、当麻さん達には刺激が強すぎたかしら」

 

わだつみに馬鹿父とバカップルの声が響き渡る、なおフィアンマは温泉卵を露天風呂で作ろうとしているのを店主に見つかり叱られていた

 

 

 

「「「……眠い」」」

 

「……何故女王達はそんなに眠たげなんですか?」

 

上条達は眼をこすりながら欠伸をしていた、帆風はどうして眠たげなのかと首を傾げる。三人は朝まで刀夜が詩菜に手を出さないように見張っていた所為で眠れなかったのだ

 

「そういやていとくンが居ねェな…何してンだ?」

 

一方通行がこの場に垣根がいないと呟く、一同が垣根を探しに行こうかと考え始めた時フィアンマが部屋に入ってきた

 

「垣根の奴なら外で電話をかけている、御使堕しの件について禁書目録と話し込んでいるようだったぞ」

 

「あ…フィアンマさん…と呼んでもよろしかったですか?」

 

「構わんよ、それよりお前達は今は暇か?」

 

「まあ…暇といえば暇だが…」

 

「なら良い、少しばかり俺様に付き合え」

 

垣根は今電話中だとフィアンマが伝える、そしてフィアンマは暇なら自分に付き合えと言うと踵を返して部屋から出て行く。帆風達はどういう事かと首を捻りつつもフィアンマの後を追って行く、フィアンマはわだつみから出て海岸の人気のない場所へと向かう

 

「ここなら問題ないだろう…さて、本題に入ろうか」

 

フィアンマがそう言うと超能力者達は更に首を傾げる、この男はここに自分達を連れてきて何がしたいのかと

 

「アンタは一体こんな場所に私達を連れ込んで何かしたいのよ」

 

「なあに、少し確かめるだけさ」

 

「確かめる?何をだ?」

 

美琴が何をしたいんだとフィアンマを少し睨みながら言うとフィアンマは確かめたいだけだと呟く、削板が何を確かめるのかと尋ねるとフィアンマは口元を歪めながら口を開いた

 

「お前達が垣根の横にいるのは相応しいかどうかを俺様が見定めようと思ってな」

 

直後、上条達の周囲に炎の柱が吹き上がる、マグマの様に突然吹き上がった炎に全員が目を見開く

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

「さて、垣根の奴はお前達の事を高く評価していたが…本当にそれだけの実力があるのか…確かめるとするか」

 

フィアンマはそう言って笑うと掌に火球を生み出し、それを地面に投げつける。地面に当たった火球は周囲に爆散し上条達を襲い上条達はその火球から逃れる

 

「いきなり何すンだオマエ!」

 

「だから言っただろう、見定めると。これはテストのようなものだよ」

 

一方通行が何をすると叫ぶがフィアンマはこれはテストだと笑う、彼は更に火球を掌に作り出しそれを投げつけてくる、それを上条が右手で触れて消滅させる

 

「……ふむ、これが垣根の言っていた幻想殺しか…確かに異能の力には有効のようだが…対処法はある」

 

フィアンマは上条の右手…幻想殺しを一瞥する、魔術師にとってその右手は脅威だと、だが対処法ならあるぞと笑うと右手を振るい炎の波を出現させる

 

「ッ!」

 

上条がその炎の波に手を伸ばし触れる事により消滅させる…が、地面から放たれた火球が上条の横腹へと向かい上条は咄嗟に右手を動かしそれを無効化する

 

「な!?地面から火球を放っただと!」

 

「教えてやろう、俺様は火属性の魔術を扱っている……だが『一つの属性を操るということは、広義において他の属性に影響を与えることである』という理論を応用し俺様は地面や虚空…すなわち土と風に影響を与えそこから火球を放てる様にしているんだ」

 

フィアンマが火以外の属性…土と風に干渉する事で地面や虚空から火球を放つ事が出来ると笑う、そして右手を上へ上げると火の柱や火球が地面から、虚空から出現し上条達を攻撃してくる、縦横無尽に放たれる炎の連撃を上条達はただただ避けるしかない

 

「幻想殺し、確かにその異能を打ち消す力は脅威だが…その右手に当たらなければどうということはない。数で攻めるか軌道が読めない攻撃には滅法弱い…俺様のこの攻撃はさぞ相性が悪いのだろうな」

 

「く…!」

 

フィアンマが嘲笑うかの様に口元を歪め上条に多角的に火球を放つ、上条は右手でそれを無効化するが数が多くて消しきれず攻撃を食らってしまう

 

「チッ!」

 

麦野は舐めるなと拡散支援半導体(シリコンバーン)を投げつけてそこに原子崩しを当てる事で原子崩しを拡散させ火球を全て相殺する

 

「ほう?」

 

「舐めてんじゃねえぞ!」

 

麦野が余裕の表情のフィアンマに原子崩しを放つ、それに対しフィアンマは左手から炎を出現させそれを原子崩しに放ち相殺させる

 

「超能力者の第四位 原子崩しの麦野沈利、曖昧なまま固定された電子を操る能力者か…垣根からは話は聞いていたが想像以上の能力だな…」

 

「余裕な面しやがって…すぐにその表情なくさせてやる」

 

麦野は次々に原子崩しを発射、フィアンマはそれを僅かに身体を逸らす事で避けたり天から火球を飛来させ相殺させる、麦野は0次元の極点でフィアンマの背後へとワープし原子崩しを放つがフィアンマはそれを掌から放つ火炎放射で拮抗させる

 

「それが0次元の極点か…だが安直だな、ただ背後に回るだけとは…やりようによっては無限の可能性があるというのに」

 

「煩えな!いきなり喧嘩ふっかけといて説教とか頭沸いてんのか!…それに、私が背後に回ったのは攻撃の隙を作る為だよ」

 

「……何?」

 

麦野が隙を見せたなと笑う、フィアンマが一瞬驚いた顔をすると麦野と向き合っていたフィアンマの背後に削板が現れる

 

「すごいパーンチ!」

 

謎の力を纏った拳から不可視の拳を放ちフィアンマを攻撃する削板、麦野はこれは防げまいと笑みを浮かべる

 

「…考えが浅いな、この程度で隙が出来たとでも?」

 

「「な!?」」

 

直後フィアンマの周囲を囲む様に炎の渦が発生しすごいパーンチを防ぐ、防がれるとは思っていなかったのか驚く二人にフィアンマが嘲笑しながら両手から火炎を噴出し二人は慌ててそれを避ける

 

「確かに説明できない力とは厄介だな、だがオッレルスの攻撃よりは対処の仕様があるぞ世界最大の原石」

 

「…いきなり攻撃仕掛けてくる根性無しかと思ったが…やるじゃねえか」

 

フィアンマはオッレルスの攻撃よりは防ぎようがあると笑みを浮かべる、美琴が電撃の槍を放つがフィアンマは炎を吹き出して攻撃を防ぐ、食蜂もフィアンマの精神に干渉しようとするがこれも当然の様にフィアンマには通じなかった

 

「これでも喰らいやがれェ!」

 

一方通行が石を蹴り飛ばし超電磁砲以上の速度で石をフィアンマに向けて蹴り飛ばす。その蹴り飛ばされて起こった衝撃波をフィアンマは火炎放射をぶつける事で相殺する

 

「確かお前は第三位の一方通行だったな、ベクトル操作による反射は魔術にも干渉する様だが…攻撃をすり抜ける方法はないわけではない」

 

フィアンマが反射は厄介だが突破する方法はある笑うと掌から炎を噴出しながら一方通行の手を避ける

 

「火とは生命の象徴だ、こうやって身体能力を強化する事も出来てな…だが火とは生命の象徴であると同時に死の象徴でもある…例えばこういう風に人の命も奪いかねんのだからな」

 

フィアンマが火について語りながら一方通行の当たれば大ダメージを与える手を避ける、一方通行はそれをうざったい目で見ていたがふと息が苦しくなっている事に気付く

 

「!?が…ァ…!?」

 

「酸素不足による酸欠、先程からこの場一帯の酸素を炎によって奪い続けていた。一方通行、確かにお前の反射は厄介だ…だが流石のお前でも酸素がなくては生きていけないだろう?お前は化け物などではなくれっきとした人間なのだからな」

 

失神しない様に一方通行は呼吸器内の酸素の制御を行う、フィアンマは無酸素状態なら流石の一方通行でも死んでしまうと言うと一方通行から遠ざかり酸素が彼に届く様にする

 

「まあ安心しろ、垣根の友を殺す様な真似はしない…これはテストなのだからな。お前達超能力者の力は本物だ、確かに並大抵の魔術師なら圧倒できるだろう…だかな、どんな力にも弱点は少なからず存在する…俺様が今お前達にした様にな」

 

フィアンマは上条達は強い、だが決して無敵ではないと淡々と呟く

 

「例えば幻想殺し、その能力は数が多いと全ては防げない、それに軌道が読めなければ防げない、幻想片影でその弱点を補っているのはいいがまだまだだな。次に一方通行、貴様の反射は厄介だが先程の様な無酸素状態になれば失神してしまうのが弱点だ、それに演算を上回る速さで攻撃してきたりする攻撃にも弱い…と言ってもこれはミナ=メイザースレベルの魔術師でない限りその心配はないが…次に原子崩しは単純な火力に頼り過ぎだ、ワープが出来るという利点をもっと活かせ、超電磁砲は単純に火力が足りない。心理掌握は精神攻撃が通じない相手にどう対処するのか対策を練っておけ、原石は自分の力を掌握する事をオススメする」

 

フィアンマは超能力者達に問題点を支持するかの様にそう告げる、その顔は余裕そのもの。自分は超能力者達の問題点を支持するぐらいの余裕があるのだというかの様に

 

「……ああ、まだお前の問題点は言っていなかったな」

 

フィアンマはお前だけ何も言っていなかったと呟き、背後からの奇襲を仕掛けてきた帆風の蹴りを左手で受け止める

 

「!?わたくしの蹴りを片手だけで!?」

 

「緩い、この程度で俺様を倒せるとでも?」

 

帆風はあっさり自分の攻撃が止められた事な驚くがすぐに体勢を整え即座に回し蹴りを放つ、フィアンマはそれを片手で防ぐ。帆風は大型トレーラーの激突以上の衝撃を誇る拳を振るいフィアンマはそれを自身の右手で防ぐ。二人の拳がぶつかった瞬間帆風の頭の中にある情報が流れてきた

 

ーーー神の如き者(ミカエル) 聖なる右 世界を救う力ーーー

 

「「!?」」

 

突然の出来事に帆風とフィアンマは即座に離れる、帆風は頭を抑える…今のは何かと。軽い頭痛の様な鈍い痛みが帆風を襲いフィアンマも自身の右手を呆然と眺め…そして笑みを浮かべて呟いた

 

「成る程…アレイスターめ、御使堕しすら利用していたのか…しかもこの分なら垣根も知らない様だな。全く…アレイスターの考えている事は理解できん」

 

「?…どういう意味ですか?」

 

「まだお前は知らなくてもいい。まさか人為的に魂を誘導するとはな…」

 

フィアンマが何かブツブツと呟き帆風がどういう意味かと尋ねる、フィアンマは知らなくていいと意味ありげな笑みを向けると炎を帆風の目の前に出現させ帆風は慌てて炎を避ける

 

「帆風潤子、貴様の肉体強化は凄まじい…聖人…とまではいかないが凄まじい威力だ。単純な力と速さ…だから強い。だが同時に自分以上に強い敵には勝てない上に近距離戦しかできないのが難点だが」

 

「…わたくしが気にしている事をズバズバと言いますね」

 

「…だが、お前なら垣根と…いや、これはまだ早慶か」

 

垣根は帆風に問題点を呟いた後引火による大爆発を帆風の周囲に起こし帆風を吹き飛ばす、吹き飛ばされた帆風はゴロゴロと地面を転がり倒れこむ

 

「うおおお!」

 

削板がすごいパーンチをフィアンマに放つ、その不可視の拳は真っ直ぐフィアンマに向かい…フィアンマの身体をすり抜けた(・・・・・)

 

「何!?」

 

「今のは蜃気楼…幻影だ」

 

驚く削板の背後から声が聞こえ振り返るとフィアンマが立っていた、そしてフィアンマは削板の腹を炎を宿した拳で殴りつけ爆発を起こし削板を吹き飛ばす

 

「私を……忘れんな!」

 

美琴がコインを空中へと投げ指で弾き超電磁砲をフィアンマへと放つ、フィアンマはそれを軽く一瞥すると火炎放射を吹き出しぶつけ合う、一瞬拮抗するもすぐに炎が押し返し超電磁砲をかき消していく

 

「え!?」

 

「確かその超電磁砲の射程は50m程だったな、それは空気摩擦でコインが溶けてしまうためらしいが…こういう風に炎でコインを溶かしてしまえば消えてしまう、覚えておけ」

 

驚く美琴にフィアンマは腕を振るい周囲から炎を吹き出させ美琴の表皮を焦がす。麦野の原子崩しが何本もフィアンマに放たれるがフィアンマはそれを炎の渦で防御する

 

「弱い、弱過ぎるぞ超能力者(レベル5)。この程度の実力で垣根の横で戦えると思っているのか…ならそれは垣根に対する侮辱だ」

 

フィアンマは弱過ぎると冷たい目で超能力者達を見下す

 

「本当に怠惰だな、お前達は…人に頼るのは楽でいいだろう、人の考えに従うのは楽だろう。本当にお前達は怠惰な人間だよ」

 

「……どういう意味だ」

 

「そのままの意味だ、お前達はいつも垣根に頼り過ぎている、垣根の言っている事をただ聞き、それを実行する…それだけだ、お前達は垣根の命令を聞く機械(ロボット)の様な物だ…それは仲間とは言わん。道具という」

 

「違う!俺達は垣根に頼り過ぎ…「違わない」!?」

 

フィアンマが上条達を怠惰と断言すると垣根に頼り過ぎている、それは単なる機械と同じだと嘲笑うと上条はそれを否定しようとするがフィアンマはそれを一声でかき消す

 

「違わないだろう、お前達は垣根に頼り過ぎている、頼るという事は信頼ではなく甘えだ。本当の仲間とは、そういうものではない筈だ。お前達は単に垣根を頼っているだけ…何も違わないだろう」

 

「「「「「「「……ッ!」」」」」」」

 

フィアンマの言葉に固まる超能力者達、確かにフィアンマの一言を彼等は否定できない。インデックスの時もアウレオルスの時も垣根に助けてもらってばかりだった、特にコロンゾンの時はお荷物も同然だった…確かに甘えと捉えても文句は言えないだろう

 

「…何故垣根は俺様達神の右席ではなくこんな脆弱な奴を仲間にしたのだ、理解に苦しむ。まあいい…もう下らん戦いは終わりにするとしよう」

 

フィアンマが右手を空へと掲げる、上条達の頭上に巨大な火球…小さな太陽と見間違う程の巨大火球が創成された

 

「「「「「「「な!?」」」」」」」

 

火球が炸裂し無数の火が雨の様に降り注ぐ、上条達がいた場所を覆い尽くさんばかりの火の雨にフィアンマの視界から上条達の姿が消える。大地が焼かれ周囲が煙で充満する

 

「……呆気ない、この程度の実力しかないとは…垣根はこいつらに何を期待していたのだ?」

 

フィアンマは呆気ないと呆れる様に溜息を吐き出す、親友があれ程自慢げに語っていた超能力者達は自分には手も足も出なかった。それだけで呆れるのには彼にとって十分だった、この場から立ち去ろうとフィアンマが考え始めたその時

 

「…確かに俺達はあいつに頼り過ぎたかもしれねえ」

 

「………耐えたか」

 

煙が晴れ視界が良くなってくる、そこで見えたのは五体満足の上条達。フィアンマはあれを耐えきったのかと薄く笑う、そんなフィアンマに眼もくれず上条は口を開く

 

「あんたの言う通りだ、俺達は弱いかもしれねえ、垣根に頼り過ぎたかもしれない…だけどよ、それで…それだけで垣根の側にいる資格がないだの言われる筋合いはあんたにはない筈だ!」

 

「………ほう?」

 

「確かに俺達は垣根の足を引っ張ってるだけかもしれない、でも…だからてあいつの側にいたらダメなのかよ!あいつだって万能でもなけりゃ神様でもねえんだ!あいつが一人で無茶しねえ様に…友達が支えてやりてえんだ!」

 

「だがお荷物(お前達)がいたせいで垣根がお前達を庇って死んだとしたらどうする?それはお前達がいたから死んだと言うことになるのではないか?お前達が弱いから垣根はお前達を守って死ぬ…そんな事もあり得るかもしれんぞ」

 

上条は自分達は弱い、でもそれだけで友達(垣根)の側にいてはいけないのかと叫ぶ。フィアンマはそれを聞いて僅かながらに笑い上条達を庇って死んだらお前達の責任だと問いかける。その問いに帆風が答えた

 

「いいえ、垣根さんは絶対に死にませんわ」

 

「…何故そう言い切れる?」

 

「決まっています、わたくし達がいるからです。わたくし達は垣根さんを死なせたりしないからです」

 

「…は、答えになってないな」

 

自分達がいるから垣根は死なないと揺るがない目で答える、フィアンマは理想論だと鼻で笑いながらも上条達を見る目を変えていく

 

「ごちゃごちゃ煩えンだよ、赤男。いちいちこっちの事情に突っかかりやがって…オマエはていとくンの親御さンなンですかァ?」

 

「キモいたらありゃしないね、あんまり過保護になりすぎると垣根に嫌われるぞ」

 

「それに黙って聞いてりゃ私らが垣根が側にいる資格がないだのアンタの個人的な解釈で決めて…垣根が聞いたら怒るわよ」

 

「てか、いきなり喧嘩吹っかけておいて説教しても説得力ゼロよぉ」

 

「同感だ、根性はあるが常識はない様だな」

 

超能力者達は次々にフィアンマに文句を言っていく、その罵言にフィアンマは口元を歪めていく

 

「…いい顔になってきたな、確かにお前達の言う通りだな。俺様は喧嘩をいきなり仕掛け、個人的な意見を一方的に喋っていただけだったな…確かにこれは良くなかった、反省しよう……だが俺様は意見を変える気は無いしお前達が垣根の側にいる資格があるとは思えない…だから俺様に勝ってお前達が強いという事を証明してみせろ」

 

フィアンマが超能力者達を挑発する、先程の様に侮った顔ではなくスポーツマンが試合中に見せる勝負に興奮して顔を綻ばせる様な表情で笑う

 

「…て、奴さんは言ってますけど…どうする」

 

「決まってンだろ上条…あいつをコテンパンにして俺達が強いて証明してやる」

 

「ボコボコにして自分が言ってた事は間違いです、すみませんでしたて土下座させながら言わせてやるか」

 

「賛成、私達を2度と弱いなんて言わせないくらいまで叩きのめしてやるわよ」

 

「賛成〜☆」

 

「よし、俺も根性を入れ直すか」

 

「…わたくしも全力でいかせてもらうので…怪我をしても知りませんよ」

 

超能力者達も笑みを浮かべながらフィアンマを見据える、それを見てフィアンマはよりいっそう笑みを深くする

 

「……上等だ、返り討ちにしてやろう」

 

フィアンマのその言葉を合図に上条、一方通行、削板、帆風、麦野の姿が消える。そして上条、帆風、削板が一瞬でフィアンマの正面へと移動し拳を振るう、その三人の拳をフィアンマは右手で削板の拳を払い帆風の拳を左腕でガード、上条の右手の拳は紙一重で避ける

 

(幻想殺しで触れられてしまっては肉体強化が解けてしまうからな…避けるに限るな)

 

フィアンマが幻想殺しで殴りかかられては非力な自分では分が悪いと判断し上条の攻撃のみ回避し二人の拳は両手で防ぐ。そして火炎放射を上条達に放つが上条が口を開く

 

「優先する人体を上位に、火を下位に!」

 

「…!テッラの光の処刑か。先程の攻撃もそれで防いだのか」

 

フィアンマは先程の火炎も光の処刑で防いだのかと呟く、光の処刑の効果で上条達はその身に炎を浴びても火傷一つつかない、彼らは炎に臆する事なくフィアンマに拳を振るう。フィアンマはそれをヒラリヒラリと避けつつ拳を受け流していく

 

「私らを忘れてんじゃねえぞ!」

 

「……ふん」

 

フィアンマは炎の渦を展開し背後に現れた麦野の原子崩しを防ぐ、次々に放たれる原子崩しをフィアンマは炎の渦で防御していく

 

「真上がガラ空きだぜェ!」

 

「む?」

 

一方通行は背中に竜巻を背負いながら空気を圧縮しプラズマを形成、それをフィアンマき投げつける。核シェルターすら破壊するその一撃をフィアンマは膨大な熱量を誇る火炎を掌から放射しプラズマにぶつける、プラズマと火炎は激突した瞬間対消滅が起こり爆風が生じフィアンマ達に爆風が襲いかかる

 

「中々やるな、だがこの程度では俺様は倒せんぞ」

 

「……ああ、知ってる。この程度じゃ倒せないてな…だから最大の必殺技で速攻で倒してやる」

 

「何……?」

 

フィアンマが自分はこのままでは勝てないと笑う、だが上条は自分達の最強の技で倒すと笑う。フィアンマが訝しむと同時に麦野の0次元の極点で上条以外の四人がフィアンマの周囲から消え上条も能力を使ってこの場から離れていく。フィアンマは何が起こるのかと周囲に目を向け気づいた、美琴と食蜂がフィアンマの方を真正面から見据えていた

 

「喰らいなさい、これが私と操祈の…」

 

「これで終わりよぉ…これが私と美琴の…」

 

美琴が指でコインを弾きフィアンマに放つ、それだけなら通常の超電磁砲だった…そう普通ならば…だが、食蜂はリモコンのボタンを押し水分操作を行う。そして二人は声の出る限り大声で叫ぶ

 

「「全力だぁぁぁぁぁぁ!!!」」

 

「!?」

 

食蜂がコインの表面を水分の格子模様で覆う、それによりコインの表面を覆う水分が弾体の熱を奪って冷却を促しつつ、蒸気として爆発的に膨張させることでより高い速度を叩き出す。この超電磁砲は飛距離が伸びれば伸びるほどさらに加速し威力を増す…その名も液状被覆超電磁砲(リキッドプルーフレールガン)。第五位の御坂美琴と第六位の食蜂操祈の協力があって放てる最大の技にして超能力者の技なら垣根を除けば超能力者最大の威力を誇る必殺技である

 

「……これは炎では防げないな」

 

超威力を持つ必殺技を前にフィアンマは棒立ちしたまま液状被覆超電磁砲を眺める、そんな必殺技を繰り出されてピンチな筈のフィアンマだがその顔は笑みを浮かべており…そしてフィアンマは液状被覆超電磁砲に飲み込まれていった

 

「……やったか?」

 

上条がそう呟く、あれを喰らって無事な筈がない。寧ろ死んでしまっていないかと上条達がフィアンマの心配をし始める…だが、その心配は無用だった

 

「驚いた、まさかあれ程の威力をもう技を持っているとは…いやはや垣根の見る目は正しかったという事か」

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

煙の中から平然と立っているフィアンマが上条達は目視した。だが彼等の視線はフィアンマに向いていない、液状被覆超電磁砲のコインを指で摘んでいる右肩から出現した歪な形をした第三の腕(・・・・・・・・・・)に視線を集中させていた

 

「な、んだ…それは…」

 

「聖なる右、世界を救う力…とでも言おうか」

 

フィアンマは自身の右手の力が空中分解した姿である第三の腕を振るう

 

「破壊力はいらない。触れれば終わるのだから、相手を壊すための努力は必要ない」

 

腕を振るった、それだけで一方通行と麦野が風に飛ばされた葉っぱの様に蹴散らされる

 

「……え?」

 

「速度はいらない。振れば当たるのだから、当てるための努力は必要ない」

 

帆風は何が起こったのか理解できなかった、もう一度腕が振るわれる、削板と美琴、食蜂が同じ様に吹き飛ばされる

 

「……は?」

 

「ふむ、驚きのあまり声がでないか…これは俺様の能力 聖なる右の力でな、これには「倒すべき敵や試練や困難」のレベルに合わせ自動的に最適な出力を行う性質があってな。簡単に言えば腕を振れば勝てる、それだけだ」

 

その力はRPGでいうならばコマンドに『倒す』がついてるようなものだ、フィアンマがそれを説明するかの様に腕を振るう。それにより帆風が吹き飛ばされる

 

「…帆風ちゃん?」

 

地面に倒れた帆風に意識はない、一方通行達もたった一撃でノックアウトされている。残された上条はこの現状を起こしたフィアンマを睨む

 

「フィアンマああぁぁぁぁぁ!!」

 

「そう怒るな…といっても無理はないか、まあいい。俺様も一度試してみたかったんだ、お前の右手と俺様の右手…どっちらが優っているのかをな」

 

上条の右手がフィアンマへと向かう、フィアンマは軽く笑い第三の腕を動かす…直後衝撃音が響く。不思議な右手を持つもの同士の激突、その戦いの勝者はただ一人

 

 

 

「うにゃー、派手にやってくれたもんだにゃー。これは隠蔽作業と土地を戻すのに時間がかかりそうだぜい」

 

「そうか…すまんな。ついはしゃいでしまった」

 

土御門が呆れた声を出すとフィアンマは土御門に頭を下げる。彼等の視線の先には荒れ果てた大地と戦いの爪痕を残す大きな地面の裂け目など戦う前の光景とは大きく変わっていた

 

「でもまあ、超能力者を赤子扱いとは…流石神の右席のリーダーだにゃー」

 

「いやそうでもないぞ、戦って分かったが…あいつらは全員大きく化けるぞ」

 

「?どういう事だ?」

 

「…ふ、垣根の目は正しかった様だな。逆に俺様の目は節穴だな…あんな奴らを雑魚と一瞬でも考えてしまったのだからな」

 

土御門は超能力者ではフィアンマに叶わなかったかと呟く、だがフィアンマは首を振り上条達は化けると呟くと彼は地面で気絶したまま寝ている上条達を横目で見る

 

「……さて、あいつらの中で誰が一番早く化けるのかな?」

 

フィアンマはそう呟くと上条達をその場に放置したまま、土御門を連れてこの場から去っていく

 

 

 

「そうか…天使を倒せばこの御使堕しは解除されるのか…ありがとな助かったぜ」

 

『うん、他にも分かったらまた連絡するんだよ』

 

垣根は上条達とフィアンマが戦っていた事など露知らず、インデックスと御使堕しについて携帯で話し合っていた…そんな彼を無言で見つめる人物がいた

 

「…………」

 

その人物の名はミーシャ=クロイツェフ、彼女は機械の様に無機質な目で垣根を見下ろす。その目は獲物を捕らえた狩人そのもの…彼女は垣根を観察するかの様に見据える。そんな彼女の右手にはバールが握られていた

 

 

 

 

 

 




うーん、戦闘描写が雑ぽい、フィアンマさんの聖なる右てやっぱりチートですね。そして等々現れたミーシャ=クロイツェフ…彼女はいったい何者なんだー(某)

次回、等々現れる天使。ていとくん達は天使を倒すことはできるのか?次回もサービスサービスぅ!…すみません、ネタに走りました。あと最近この作品カプ厨要素がない…こ、この話が終わればカプ厨要素だしますから(震え声)

次回もお楽しみに!


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撲殺天使ミーシャちゃん ぴぴるぴるぴるぴぴるぴ〜♪

漸く書き終えた、さて今回は前半のギャグに後半の戦闘。今回はギャグが少ないかも…天使にていとくん達は勝てるのか?

因みにサブタイが某撲殺天使なタイトルな理由はミーシャて最初はバール持ってたじゃないですか、そこからドクロちゃんぽいな〜て思ったからです


「お〜い、お前ら。御使堕しの解除方が分かったぞ……て、なんでお前ら服が泥だらけなんだよ?」

 

「「「「「「「……泥遊びしてた」」」」」」」

 

垣根は電話を終えわだつみに戻ってきた、そして一階のテレビがある部屋に行くと上条達に解除方法が分かったと伝える…だが垣根は何故彼等の服が汚れているのかと気になったが全員が目を逸らし泥遊びで汚れたんだと呟いた

 

「ははは、子供は泥遊びが好きな様だな。だが着替えてきたらどうだ?その格好だと汚いぞ」

 

(((((((ぶん殴りたい、この笑顔)))))))

 

フィアンマが汚いから服を変えてきたらどうだと笑う、超能力者達は元凶が何笑ってんだと青筋をピクピクさせながらフィアンマを睨みながら握り拳を作る

 

「で、その解除法てなんなんだにゃー先輩?」

 

「ああ、解除方法は至ってシンプル。天使を倒せばいいだけ。簡単だろ」

 

「……言うは易く行うは難しだにゃー…てか、人が天使に勝てる訳…いや先輩なら勝てそうだぜい」

 

「当たり前だ、こいつは俺様の目標点の一人だぞ。天使如きに負けてしまっては困る」

 

解除方法は天使を倒す事だと垣根が言うと土御門は天使は人では倒せない、と言いかけるが垣根なら勝てそうだとこぼす。フィアンマも垣根なら余裕余裕と笑みを浮かべる

 

「……なあ、聞こうと思ってたんだけどさ…天使てどれくらい強いんだ?」

 

「お?当麻も天使に興味が湧いてきた?」

 

「いやさ、此間は悪魔で今回は天使なんだろ?敵の事は先に知っておいた方が戦う時楽かな〜と思って」

 

「ふ、勤勉な様だな…いいだろう、俺様が教えてやろう」

 

上条が天使とはどれくらい強いのかと尋ねるとフィアンマが何処からか眼鏡を取り出しそれをかける。そして何処から持ってきたのか黒板とチョークも取り出し天使について説明し始める

 

「天使というのは科学でいうロボットの様なものでな、神話上の様な自我などは一切ない。ただ神が記したプログラムの通りに行動するだけだ」

 

「つまり天使てのは強いペッ○ー君て事か」

 

「おい軍覇、その例えやめろ」

 

フィアンマが天使とはロボットの様なものと教える、軍覇は某ロボットの名前を呟き垣根が彼の頭を殴る

 

「で、その実際の強さてどれくらいなんだよ」

 

「そうだな…簡単に言えば天使は人が使う魔術は使わない、天使のみが扱える術式で攻撃してくるだろうな」

 

「ンで、その天使の術式てどンな能力なンだ?」

 

「ふむ、天使によって使う魔術は異なるが…下級天使は精々人間が扱う魔術より強い程度だが…大天使クラスになると星を破壊するくらい容易いレベルの魔術を行使してくるな」

 

「……あれ?聞き間違いかにゃーん?星を破壊するとか聞こえた気がする」

 

フィアンマが大天使クラスになると星を破壊する規模の魔術を使うと呟くと麦野が聞き間違えかと呟く、垣根を除く超能力者達が今のは嘘だと言ってくれと冷や汗を流しながら期待の目でフィアンマを見るがフィアンマは冷酷に真実を告げる

 

「いや事実だ、大天使クラスの天使は存在そのものが天災と言ってもいい。天使の力(テレズマ)のエネルギーの総量が桁違いな為に幻想殺しでも消滅しきれないだろうな。使う魔術も堕落都市ゴモラとソドムを焼き払った神戮や十字教における伝承を魔術化した術式を扱ってくる…地球を破壊する事など天使にとっては容易い事だろうな」

 

「……インデックスといい、アウレオルスといい…何で俺達が戦う敵て毎度毎度ヤバい奴ばっかりなんだよ」

 

「…神様て絶対に私達の事が嫌いよね」

 

「寧ろ好き過ぎて虐めてるんじゃないかしらぁ…小学生が好きな子に悪戯するみたいに」

 

フィアンマが天使の恐ろしさを教えると上条達は何で自分達が戦う敵はこんなんばっかなのかと頭を抱える、神様は自分達の事が嫌いすぎているのではないか、もしくは好き過ぎて意地悪しているのかと疑う上条達

 

「でもまあいいじゃねえか、天使と戦う機会なんてそうないんだ。寧ろレアな体験だと思って倒してやろうぜ」

 

「…垣根さんて本当に能天気ですね」

 

垣根は滅多にない機会だから元気を出せと笑う、帆風は通常運転の垣根に半笑いする

 

「それにいざとなったらフィアンマがいるしな、フィアンマの聖なる右なら天使にも勝てるしな」

 

「まあな…だが俺様は極力手を貸す気は無いぞ。俺様がやったところで一撃で倒してしまうのは何ともつまらん幕引きだ…なら垣根が天使を倒した方が面白いだろう」

 

「言うと思った、まあ俺もお前に倒してもらおうなんて思ってなかったけどな。天使くらい倒せなきゃコロンゾンは倒せねえからな」

 

「……はぁ、お気楽な二人だにゃー。相手は天使だってのに」

 

フィアンマと垣根が軽口を言い合う、土御門はやれやれと首を振る。上条達はその光景を見て笑う

 

「後は天使が何処にいるかだが…まあ、その内やってくるだろ。主に当麻にバールで殴りかかってくる形で」

 

「いや何その襲われ方!?怖っ!」

 

「大丈夫、大丈夫。幻想殺しの所為で御使堕しの影響を受けてないから犯人だと思われて襲われるだけだから」

 

「大丈夫の要素が一つもない!?」

 

垣根が上条にバールを持った天使に殺されるなよと冗談交じりに呟くと上条が巫山戯んなと叫び返す

 

「てか、先輩のお義父さんは大丈夫なの?天使に狙われる可能性はないの?」

 

「そうよぉ、お義父様が天使に狙われちゃうんじゃないのぉ?」

 

「いや安心しろ、天使っても御使堕しの被害者だ。天使は自身が『堕ちてきた』て理解してるから術の存在は理解している筈だ、 だが周囲で『誰が誰を演じているのか』までは理解出来ねえんだからな、だから親父さんが術者て気付かれる心配はねえ」

 

「そっか、なら父さんが狙われる心配はないのか…良かった」

 

美琴と食蜂が刀夜が狙われる心配はないのかと垣根に尋ねるが垣根はその心配はないと笑う、天使は御使堕しの被害者でありその術者の存在は理解出来ないのだと教えると上条が安心した様に息を吐く

 

「ん?今私の名前を呼ばなかったか?」

 

「うわ!?父さんいつの間に!?」

 

「いや少し通りかかっただけだ。で、当麻達は何を話していたんだ?」

 

「べ、別に!友達同士のくだらない会話だよな!なあ皆!」

 

「お、おう!そうだな!」

 

「?ならいいんだが…悩み事があったら父さんに相談するんだぞ」

 

刀夜がいつの間にか部屋に入ってきており上条達がビクッとなる、上条は何とか誤魔化し削板もそれに相槌を打ち刀夜は首を傾げながらも納得し部屋から立ち去る。それを見てホッと息を吐く上条

 

「親には心配をかけたくないのか、そこら辺はまともなのだな」

 

「おい、まるでその言い方は俺がまともじゃないみたいに聞こえるんだが」

 

「彼女が二人いる時点でまともではないだろう、この色欲男」

 

「うっ…!それを言われたら返す言葉もねえ…まあ、父さんや母さんを魔術だのの世界に関わらせる訳にはいかねえからな」

 

フィアンマの言葉に何も言い返せない上条、彼は親には面倒事に巻き込ませたくないのだと言うとフィアンマは軽く笑う

 

「成る程、確かにお前の両親は一般人だ。魔術とも超能力とも本来なら縁のない人間だからな、その判断は正しい」

 

「確かにそうだぜい、下手に関わらせると魔術師に狙われちまうからな。ただでさえ超能力者の親てだけで誘拐されやすいのにこれ以上面倒事に関わらせない方がいいな」

 

フィアンマと土御門はその判断は正しいと頷く、下手に関わらせると魔術師に御使堕しを起こした術者としてその方法を探る為に狙われる可能性もある。それにただでさえ超能力者の親とは学園都市の技術を盗もうとする外部の人間に狙われやすいのだから

 

「それもあるけど…両親にあんまり心配かけたくないていうか…ほら、昔から迷惑掛けたから…今回も心配して欲しくなくてさ」

 

「…だから、気づかれない内にさっさと天使を倒したいと。当麻らしい考えだな」

 

両親に気付かれないうちに早く倒したいと呟く、そんな上条に垣根はお前らしいと笑う

 

「さて、俺もオティヌスに天使の居場所を掴んだか電話で聞いてくる。少ししたら戻るから少し待ってろ」

 

垣根は立ち上がって携帯を取り出し外へと出て行く、その後入れ違いになるかの様に店主(打ち止め)がコットンキャンディーソーダを持って部屋に入ってくる

 

「あれ?あのホストの格好した兄ちゃんは?注文のコットンキャンディーソーダ持ってきたのに」

 

「いやなんで海の家にコットンキャンディーソーダがあるんだよ」

 

「客が望む品を提供する、それがうちの流儀でね」

 

「何処の冥土帰し(ヘブンキャンセラー)よ」

 

打ち止めが注文のコットンキャンディーソーダを待ってきたと言うと麦野が何故海の家にコットンキャンディーソーダがあるのかと返す、店主は笑って何処ぞのカエル医者の様な事を言うと美琴がツッコミを入れる

 

「あ、じゃあわたくしが垣根さんにこれを持っていきますね」

 

帆風はそう言ってコットンキャンディーソーダを店主から受け取ると外に出て行った垣根に届けに行く、上条達は暇になったのかテレビをつける。そこには警察官の姿をしている美琴と食蜂に手錠をかけられた一方通行がテレビに映った

 

「うにゃー、カミやん達は俺らの目からは姿が入れ替わってない様に見えても現実には入れ替わってるんだにゃー」

 

「ふむ、未元物質の影響で姿は変わっていない風に見えるが実際は別の人間と魂が入れ替わっているのだろうな。未元物質でも完全に術式を遮断する事は不可能だっのか」

 

「いや、なンで俺が警察に捕まってンだよ」

 

土御門とフィアンマはテレビに超能力者達の姿が映ったのを見てやはり完全に術式から逃れたわけではないのかと呟く、一方通行は自分の姿をした犯罪者見てドン引きする。だが一方通行自身犯罪者に見えるので違和感は全くと言うほどない

 

「えっとなになに?ロリコン容疑で容疑者の炉利(ロリ)(コン)を逮捕?…やっぱり一方通行てロリコンだったのね…」

 

「いやおかしいだろ御坂ァ!俺じゃねェだろ!容姿は確かに俺だけど中身は別物だろ!」

 

「「「「「黙れロリコン」」」」」

 

「」

 

ロリコン容疑で等々一方通行は捕まったのかーと軽く言う美琴に一方通行がキレる、だが五人にロリコンは黙れと返されると一方通行は沈黙し部屋の隅っこに移動し体育館座りをする

 

「………」

 

「落ち込むなよ一方通行!ロリコンなのは事実だろ!(あー!すまんすまん!嘘だって一方通行!ジョークだよジョーク!)」

 

「打ち止めと暮らしてる時点でロリコン決定なのよねー(そうよ!私達がアンタをロリコンだなんて思ってる筈がないじゃない!)」

 

「もうロリコンだって主張力しちゃいなさいよ!(一方通行さんがロリコンな筈ないじゃないのぉ!皆失礼よ!)」

 

「まあ落ち着けよ一方通報(アクセロリータ)(一方通行はロリコンじゃねえて皆知ってるよ)」

 

「例えお前がロリコンでも俺はお前の友達だぞ!」

 

「本音と建て前が逆なンだよオマエらァァァァ!!愉快なオブジェに変えてやらァァ!」

 

落ち込んだ一方通行を励ます為に上条達は励ましの言葉を言う、だが思っている事と建て前の言葉がつい逆になってしまい一方通行はブチギレ、わだつみが一気に騒がしくなる

 

「やれやれ、騒がしい奴等だ…」

 

フィアンマはまるでバーボンを飲むかの様に大きな氷が入った麦茶を飲む。その姿は一種の美しさを表している、そしてグラスを掲げ麦茶が入れられたグラス越しに上条達を見る

 

(ふ、自分でも信じられんな。こんなお子様達がいずれ我々神の右席と同格…いやそれ以上の存在になるなど…まあ、俺様にとっては些細な事だ。俺様は人々が救えるのなら何人でも俺様を越えようが構わん)

 

フィアンマはそう考えながらまたグラスに口をつけ麦茶を飲み始める

 

(だが、いち早く化けるのはやはり幻想殺しだろうな。それでもまだ本来の力…神浄討魔には至らないだろうが…幻想殺しの本来の使い方を掌握すればこの俺様でも危うい存在になるだろう)

 

フィアンマは飲み干したグラスをテーブルに置く、そしてテーブルに両肘を立てて寄りかかり、両手を口元に持っていき口元を隠す

 

(だが1番の予想外はあいつ(・・・)だな、アレイスターめ。まさか御使堕しを利用するとは…全く学園都市は俺様の予想の範疇を超えてくる…だから面白いのだが)

 

フィアンマは口元を隠しながら笑う、アレイスターは本当に面白い事を考えたと

 

生命の樹(セフィロト)及び天界、それに人間界まで巻き込んだ能力開発(・・・・)か…確かにこの規模なら実現可能かもしれんな)

 

フィアンマは脳裏にある人物を思い出す、そしてフィアンマは面白そうに笑った

 

(さてさて、中々面白い事になってきたな…)

 

 

 

「んじゃ、やっぱり天使はここら辺に潜んでいるのか」

 

『ああ、今メイザースと共同で天使の位置を探知してはいるが…何分天使は優れた隠蔽の魔術を持っている…旧約では溺れた子供を助け、人と共に食事をした、更には『トビト記』においては悪魔(アスモデウス)に取り憑かれた少女を助けた人間に化けた天使(ラファエル)などの例があるからな』

 

オティヌスと垣根は御使堕しについて話し合う、オティヌスは天使は自身の存在を完全に隠蔽する術式がありそれのせいで完全に居場所が特定できないらしい。それを聞いた垣根は眉をひそめる

 

「成る程、天使の術式てのは本当に厄介だな」

 

『ああ、私達魔神でも天使の術式等専門外だからな。あの禁書目録でさえ天使の術式 神戮を模倣した硫黄の雨は大地を焼くは使えても肝心の天使の術式は扱えなかった様だしな…まあ、術式に関しては誰も天使の術を知らないからなのだがな』

 

「インデックスや魔神も知らない天使の術式…興味が湧いてきたな」

 

『まあ、私は北欧神話の魔神だ。十字教の術式は知っても意味がない…まあ十字教の魔神がいたとしたら別だが』

 

オティヌスは北欧神話の主神の名を持つ魔神である…故に違う宗教の魔術は使わない。使えないことがないが北欧神話の術式が得意なので使っているだけである、簡単に言えば弓使いがわざわざ剣を使って戦うよりも弓を使った様が戦いやすいのと同じだ

 

「ありがとなオティちゃん、こっちも気をつける。また何かあったら教えてくれ」

 

『ふん、まあ精々頑張れよ。天使は魔神程ではないが気をつけろよ。油断していい相手ではないのだからな』

 

「分かってるよ。心配ありがとな」

 

『心配などしてないさ、盟友なら勝つと信じているからな』

 

「そうかい、じゃ切るわ」

 

オティヌスとの通話を終えた垣根は携帯を閉じて懐にしまう、その時後ろから声が聞こえた

 

「あ!ここにいましたか垣根さん」

 

「ん?縦ロールちゃんか?何か用か?」

 

「いえ、店主さんがコットンキャンディーソーダを持ってきてくれたので届けにきました」

 

「お、サンキュー。丁度喉が乾いてたんだ」

 

帆風が垣根にコットンキャンディーソーダを手渡す、垣根はストローでソーダを吸い喉を潤す

 

「……すまねえな縦ロールちゃん」

 

「?なんで謝るんですか?」

 

「いやな…御使堕しの所為で折角の海で泳ぐ予定が台無しだしな…本当悪いと思ってる」

 

垣根が折角海に来たのに御使堕しの所為で泳げなくなって本当にすまないと謝る、それを聞いて帆風は微笑む

 

「いいんですよ、確かに泳げなかったのは残念ですが…また来年でも来ればいいんです。それに皆さんと一緒に来れただけでもわたくしは嬉しいんです」

 

「……縦ロールちゃんマジ天使だわぁ〜癒されるわぁ」

 

「いえいえ、垣根さんの方が(能力的に)天使ですわ」

 

帆風が泳ぐのはまた来年でも構わない、全員で来れただけでも嬉しいと笑うと垣根が天使かよと笑う…そんな二人に忍び寄る影が

 

「…問一。『御使堕し』を引き起こしたのは貴方か」

 

「「!?」」

 

そこに立っていたのは…ワンピース型の下着にも似たスケスケの素材と黒いベルトで構成された拘束服と赤い外套を羽織り、リード付きの首輪をした金髪の13か14くらいの少女…手にバールを握った彼女はジルジリと二人に歩み寄る

 

「解答がない場合、犯人と断定するがよろしいか」

 

「な…サーシャ…いや、ミーシャ=クロイツェフ!」

 

「…私の名を知っている、つまり御使堕しを起こした犯人と確定」

 

「いや待って!俺は術者じゃない!」

 

彼女…サーシャ…いなサーシャ=クロイツェフの肉体に入っている天使(・・) ミーシャ=クロイツェフは垣根を御使堕しの犯人と断定し襲いかかろうとし垣根は慌てて弁明する

 

「問二。なら何故貴方は他と違い肉体の入れ替わりをしていない(・・・・・)

 

「な……?お、俺が入れ替わっていない?当麻みたいに……?何故?」

 

「解答。質問を質問で返さないでもらいたい」

 

問答無用とばかりにミーシャはバールを持った手を振り上げ垣根へと急接近、垣根は反応が遅れバールが垣根の脳天をぶちまけようとする、そんなミーシャのバールに帆風の拳が激突する

 

「垣根さんにそんな物騒な物を振るわないでくださいまし!」

 

「!チッ!」

 

ミーシャは舌打ちしながらその場から距離を取る、バールは折れ曲がっておりとても使い物にはなりそうにない。彼女はバールを投げ捨てノコギリを取り出す

 

「!処刑塔(ロンドンとう)の七つ道具か!対人拷問魔術がかけられているぞ!」

 

「分かりました!」

 

ノコギリを振るうミーシャに拳を振るう帆風、回し蹴りでノコギリを破壊しミーシャは金槌を取り出し帆風の頭を砕こうとする。それを帆風は左腕で金槌の柄を掴み金槌ごとミーシャを投げ飛ばす、投げ飛ばされたミーシャは金槌を捨てドライバーとネジ回しを投擲、帆風は足でそれを弾く。だがミーシャは金属ペンチを取り出してそれで帆風の肉を掴もうとする

 

「させません!」

 

「!?…ちょこまかと!」

 

金属ペンチを右の拳で叩きつけ遠くへと吹き飛ばす、ミーシャは舌打ちしながらまた懐から何か取り出そうとするが帆風が蹴りを放ちミーシャはそれを紙一重で避ける、ならばとミーシャが右拳を振るい帆風も右拳を振るう。お互いの拳が激突した瞬間帆風の頭の中にフィアンマの時のようにある情報が流れ込む

 

ーーー天体制御(アストロインハンド) 神戮 水翼 後方の青色ーーー

 

「「!?」」

 

二人は慌てて距離をとる、そして帆風は頭を抑える。フィアンマの時と同じ鈍い痛みを彼女を襲っていた

 

「大丈夫か縦ロールちゃん!?」

 

「ええ…大丈夫ですわ…でも今のは一体?」

 

垣根が心配して近づく、帆風は大丈夫だと伝えるが顔を痛みで歪めている…そしてミーシャもそれも同じ…否それ以上だった

 

「がぁ……がぁjmtjぁぁjmtあmwtぁntjgpj!?」

 

「なんだ?なんであんなに苦しんでるんだ?」

 

頭を抑え苦しみ悶えるミーシャ、それを見て垣根は何が起こったんだと考える、だがそれも一瞬でミーシャは苦しみながらも口を開く

 

「数価。四〇・九・三〇・七。合わせて八六 …照応。水よ、蛇となりて剣のように突き刺せ(メム=テト=ラメド=ザイン)!」

 

空中に水が集まりそれがヒュドラやヤマタノオロチの如き姿をした「水の蛇」となりて帆風と垣根に襲いかかる、だが垣根は翼を展開し帆風を抱き抱えその場から逃げる様に立ち去る

 

「くそ!いきなりかよ!」

 

「逃すか…!」

 

逃げる二人にミーシャは頭を抑えながら追尾する、彼女は背中から水晶を削って作ったような鋭く荒削りな水で構成された翼を展開する。その翼には天使の力が隅々まで行き渡っておりその一撃は山を破壊するだろう

 

「帰る…!私は天界へと帰還する!」

 

ミーシャはそう呟くと水翼を羽ばたかせ垣根達を追いかける

 

 

「……遅いわねぇ、垣根さんと潤子先輩」

 

食蜂達は外に出て垣根達を探していた、幾ら何でも遅い。垣根が席を外したのは十分程度だが胸騒ぎを感じた彼等は外に出て二人はどこかとキョロキョロしたいた

 

「どうしたんだ、皆してキョロキョロとして」

 

「あ、父さん…いや垣根が電話に行ったきり帰ってこなくてさ…飲み物持っていた帆風ちゃんも帰ってこなくてさ」

 

「たんに長引いてるだけじゃないか?長電話かもしれないぞ、飲み物を持っていた子も終わるまで待っているだけだろう」

 

「…だといいんだけどな」

 

刀夜がこんな所で何をしていると尋ねると上条は二人が帰ってこないと返す、刀夜は心配し過ぎだと笑うが上条の不安は消えない

 

「もしかしたらあの縦ロールのお姉ちゃん、あのホストのお兄ちゃんに告白してたりして!」

 

「いやいや…先輩はヘタレだから告白できないと思うわよ」

 

乙姫が帆風が垣根に告白していたりして!と冗談交じりに言うと美琴はヘタレだからないない、と本人が聞いていれば顔を真っ赤にして怒りそうな言葉を呟く…その時派手な音が響き上条達の近くの地面に何かが激突し周囲に砂煙が舞う

 

「「「「「な!?」」」」」

 

「な、何事だ!?」

 

超能力者達が爆音がした方を向く、刀夜は何が起こったのかと叫ぶ、煙が晴れ地面に倒れている帆風が見えた

 

「!大丈夫か帆風!」

 

「え、ええ…わたくしは無事です…あ!垣根さんは!?垣根さんは何処ですか?」

 

麦野が無事かと尋ねると帆風は頷く、帆風は垣根は何処かと周りを探すが何処にもいない…だが探している人物の声は近くから聞こえた

 

「縦ロールちゃん、ひいてる、ひいてる。俺縦ロールちゃんの尻に物理的にひかれてる」

 

「え?…きゃあ!す、すみません!」

 

「いやいいて……それより今はミーシャだ」

 

帆風は顔を真っ赤にさせて急いで尻で踏んでいた垣根に謝罪する、垣根は平然と起き上がり今はミーシャだと言うと水翼を生やし空から着地したミーシャを睨む

 

「な、なんだ彼女は…当麻…あれも学園都市の能力者なのか?」

 

「…違う、学園都市でもあんな能力はない…つまり…あいつが…?」

 

上条はあの少女が御使堕しによって落ちてきた(堕ちてきた)天使なのだと理解する

 

「因みに宿ってる肉体の少女はサーシャ=

クロイツェフて言ってな…ロシア成教の魔術師だ」

 

「…ふむ、ミーシャ……か、俺様の天使の名も含んでいるとはな」

 

「フィアンマさんの天使…?……神の如き者(ミカエル)?」

 

「ほう?やはり知っていたか…だが違うな。あいつは俺様の天使の力が混ざっているだけだ…違うフォーマット(他の天使)の力が強引に混ざっている状態なのさ…故にミカエルの名を名乗っている。それだけだ」

 

「混ざっている…?それはどォいう意味だ?」

 

「詳しい話は省くが…俺様を含む一部の者しか知らんが…実は火、水、土、風の四大元素が歪んでいてな…故に御使堕しが起こったのはその歪みが原因の一つでもある」

 

フィアンマがミーシャとは自分の力の源である天使の名前だと呟くと帆風がそれはミカエルかと尋ねる、だがフィアンマは被りを振りミカエルではないと返す

 

「……私は天界へと帰還する、それを邪魔する者は…悪」

 

ミーシャはそう呟くと海が荒れる、そして海水が噴水の様に吹き上がり、大量の海水がミーシャの背に目掛けて殺到、そして水翼に接合し更に巨大な翼へと変貌する。それは人が越えられない壁、触れれば全てを裂く水晶の扇と表現するしかない凍える数十の翼…瞬間その翼が垣根達へと死の刃となって飛来する

 

「させねえよ!」

 

垣根は未元物質の翼を30メートル程まで伸ばしそれを横へと振るう、天使の力が隅々まで行き渡った氷の羽を容易く破壊する

 

「当麻!早くミーシャに右手で触れろ!」

 

「!分かった!」

 

「!?…その右手は……!」

 

上条は垣根に言われた通り削板の原石の力を幻想片影で使い、一瞬でミーシャに接近する、そして幻想殺しでミーシャの肩に触れる…ミーシャは全身をぞっとする様な感覚に襲われ…口を開く

 

「mj何tatwjmpj'dwntmajtj!?!?!??」

 

ノイズのかかった絶叫と共にミーシャの身体が崩れ落ち水翼が音を立てて崩れ去る、そしてミーシャの…否サーシャの体からクリスタルガラスの花瓶を通すことで人の目に映る姿を歪ませる陽光に似た光がこぼれ出て上空へと飛翔する

 

「…天使の魂か…」

 

フィアンマがあの光こそが天使の魂だと呟く、そしてその光が膨張し人の形を成していく…そして現れたのは…

 

「mtjwtj許mwtjwさmtjいmt」

 

神話上に描かれる白い翼を生やした美しき天使…などではない(・・・・・・)。体長は約二メートル程、姿は女性的な造形で体表はすべすべした白い布で覆われ凹凸によって眼や鼻や口を表現している。髪はなく後頭部から百合の花の形に布が拡がっている。肌と装束に区別は無く一体化し、その表面には金色の葉脈のようなものが走っている…その無機質な天使…というよりは人の形をした何かは垣根達を睨みながら殺意を漏らす…その未だ嘗てない程の殺意に一般人の刀夜と詩菜は恐怖のあまり声もでない

 

「mjtjntxj月mtj」

 

天使が何か呟く、それだけで朝日が昇っていた明るい空が一転、星の散らばる夜空へと切り替わった

 

「「「「「「な……」」」」」」

 

「よ、夜になった?」

 

驚く超能力者達、刀夜も何故いきなり夜になったのかと呟く

 

「天体制御…?天体単位で地球と太陽の位置関係を自在に…いえ、月や他の惑星も操る魔術?…そんな…あり得ませんわ」

 

天体制御(アストロインハンド)、簡単に言えば世界を滅ぼせる力。地球の地軸を10度ほどズラし動植物の4分の1を死滅させる事も、自転を止めて時速1666kmの慣性により、地球表面の地殻を丸ごと吹き飛ばす…そんな事が容易く行える力だ…それを呟く帆風に垣根が何故知っているのかと考えるが…今はそんな事より目の前の天使だ

 

「フィアンマ、ツッチー。当麻の親父さんとお母さんは頼んだぜ」

 

「オッケー、任されたにゃー。あ、もう店の中にいた店主とか従妹ちゃんは眠らせておいたぜい」

 

「いいだろう、この夫妻は俺様が護ってやろう」

 

フィアンマと土御門が上条夫妻を天使から遠ざけるかの様に自分達の背後に立たせ二人を守る、垣根はそれを見るとその天使を見据え天使の真名を答える

 

「…水の象徴にして青を司り、月の守護者にして後方を加護する者。旧約だと堕落都市ゴモラとソドムを焼き払い、新約では聖母に神の子の受胎を告知した者にして常に神の左手に侍る双翼の大天使。そうだろ『神の力(ガブリエル)』」

 

その真名を聞いた瞬間、ガブリエルの背から爆発し先程の水翼が飛び出す…そして海水が先程の様に集まり先の翼と全く同じ形状をした翼が再誕する。前になかったものとして頭上に一滴の水が浮かび小さな円を描くと自分の頭上に浮かぶ輪となった…その姿は正しく天使。ただその天使は恐ろしい程までの殺気を周囲に充満させている

 

「ガブリエル…ゲームとかでよく見るよな…確か女の天使だっけ?」

 

「いや、天使には性別なんざねえよ…ただガブリエルは女性的なイメージがあるがな。なにせ聖母が怖がらない様に同性の姿をして現れたて言う逸話があるくらいだしな」

 

上条の問いに垣根は天使には性別はないと笑って返す…ガブリエルはそんな人間達の会話など気にも留めない。彼女(彼?)の目的はただ一つ、御使堕しを解除し元の位階へと戻る事。それしか頭にない

 

「mtawgwm誰mtj術'w者mtjxt?……鏖mtktj殺jtpj」

 

ガブリエルは目の前の人間達の内、誰が御使堕しの犯人なのかと思考する。最初に攻撃を仕掛けた自分達と同じ気配がする天使に似た力を使う男(垣根帝督)か、それとも自分の魂をそこにいた少女から解放した垣根と同じ姿が変わっていない不思議な右手を持つ男(上条当麻)か、それとも二人と同じく姿が変わっていない怪しい気配がする男(上条刀夜)かと悩む。だが全員殺せばいいか(・・・・・・・・)と考えたガブリエルは翼を動かし全員殺そうと考える

 

「やれやれ…神の力め、神の命なしに人を殺していいのか?天使は人を殺せない…神の命だからな…それに背くなど…堕天したのか神の力よ?」

 

フィアンマが呆れた声を出すがガブリエルには届かない、もはやそんな事関係ない。天界に帰るには例えこの星の人間の大多数を焼き払っても構わない…そうガブリエルは考えていた。それが正しいのだから、自分は間違っていないと機械的に考えながら水翼で垣根達を一掃しようと翼の一つを振り下ろした。その一撃は山を裂く一撃、食らったら即死の一撃に…上条はその右手で触れた

 

「wtjttl何a?!」

 

バラバラと崩れる翼を見てガブリエルが無表情だが明らかに動揺した気配を見せる、ガブリエルは何かの間違えだと考え翼の内5枚ほど砕けガラスの破片の様に水翼が垣根達を襲う。その刃の豪雨に対し超能力者達は冷静に対処する。

 

ある者は純白の翼で全ての水翼の破片を防ぎ切る。ある者は右手を駆使して異能をかき消し他の能力を使って処理できない分をカバーする。ある者は反射で全ての刃を防ぐ。ある者は0次元の極点でガブリエルに向けて跳ね返す。ある者は電撃を放ちそのジュール熱で氷を焼き尽くす。ある者はフリーズドライの崩壊現象に似た現象を起こし刃を崩壊させる。ある者は赤青黄色のカラフルな爆発を背負って刃の豪雨を防ぐ。ある者は破片を華麗に避けながらも小さな傷を負いつつも逃げる

 

「blkjugnkjチッ!」

 

ガブリエルは更なる攻撃を加えようとする、だがその前に音速の2倍のスピードでガブリエルに接近する、空を蹴って接近し謎の力を腕に纏いそれをガブリエルの腹へと叩き込む

 

「jwm痛ugj!?」

 

ガブリエルは3メートル程吹き飛ばされるも空中で静止する、そして自分を殴りつけた不届き者に天罰を下そうとするが次に美琴の超電磁砲が飛来しガブリエルは慌てて水翼で防御する…が電撃のジュール熱により氷が溶けガブリエルの腹部に超電磁砲が命中してしまう

 

「xvksnjガァlyu!?」

 

ガブリエルはノイズのかかった声で痛みの声をあげる、海面からいくつもの水柱が立ちそれが槍となって垣根達を襲うが一方通行がそれを斜め横に反射し、麦野が原子崩しで迎撃し上条が右手でそれを無効化する

 

「ckvvk何者……jamudgvlkv何者bjmvkajm!?」

 

ガブリエルは何なんだお前らはと叫ぶ、天使である自分の攻撃を防ぎ剰え自分に傷をつける人間などあり得ないと…そんなガブリエルを嘲笑うかの様に垣根は笑みを浮かべる

 

「おいおい…ガブリエル。まさか俺達を雑魚とでも思っていたのか?心外だな…そんなお前に一言言ってやるよ…超能力者を舐めんじゃねえぞコラ」

 

垣根は6枚の翼を巨大化させガブリエルへと伸ばす、その白き剣はグサリとガブリエルの肉体に穿ち肉体に損傷を与える

 

「mjvajljlonjblllkrur!!?!??!?!??!」

 

ガブリエルは声にならない叫びをあげて海面へと墜落する…それはまるで地に堕ちた堕天使。そんな神話の様な戦いを見て刀夜と詩菜は絶句する

 

「…何なんだこれは」

 

「………当麻さん」

 

人外との遭遇だけに留まらず、二人の息子とその友達がその人外と戦っているのを見て困惑していた。一方墜落したまま上がってこないガブリエルを見て垣根以外は安堵の息を吐く

 

「やったか…?」

 

それがフラグだったのだろうか、頭上の月が一際青く輝き眩い月の周りに光の輪が生まれる。それが満月を中心に広がり夜空の端の水平線の向こうまで消えていく…輪の内部には複雑な紋章が描かれ光の筋が走る…それは魔法陣だ。まるで海を泳ぐ魚の群れの様に血を歩く蟻の行列の様に、何億何十億の魔法陣が連なり巨大な陣を築き上げる

 

「「「「「「……な!」」」」」」

 

「…チ、これくらいではくたばらねえか」

 

魔法陣の完成と共にガブリエルは海の中から浮上する、そして浮上と共にある単語を呟くのだった。他の者には理解出来ぬ言語…だが垣根…そして帆風はガブリエルが何と言ったのか理解した

 

命令名(コマンド)『一掃』ーーーー投下」

 

上空の何十億もの光がより一層強く光る…その何十億もの火炎の豪雨が地上を焼き払うまで…そう時間はかからないだろう

 

 

 

 

 




ガブリエルさんが弱く見える?油断してただけです(無情)。本気を出せば彼等と互角に戦えますから…でも知ってます?御使堕しの所為でガブリエルさん21巻で見せた程の力はないらしいですよ…これでも(白眼)

さて、最後はもう大ピンチ……果たして一掃を止める事は出来るのか?人類は生き残れるのか?天体制御であっけなく殺されたりしないのか?次回御使堕し編最終回です

次回もお楽しみに!


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かくして天使は地に沈む

ガブリエルさんがアウレオルスさんとか自動書記と比べると弱く見える?それは作者がうまく描写しきれてないだけです。それに上条さん達も魔術サイドの敵キャラに慣れてきたからですから仕方ないね…ガブリエルさん本当にごめんなさい

さて、今回で御使堕し編最終話です、これの後は2.3回くらいギャグを送ったら新しい敵キャラと戦う予定です



神戮、又の名を一掃という天使が扱う術式…かつて堕落した都市を火の矢の雨で焼き払った神話上の術式。ガブリエルはそれを天界に戻りたいという自分勝手な願いの為に発動し地上を焼こうとしていた

 

「…神戮か。神の力め…自分が天界へと帰還する為にかつて堕落した都市を焼き尽くした火矢の豪雨を放つ気か」

 

もうあの天使は神話の様な慈悲深き者ではない。単なる自分の勝手の為に大袈裟過ぎる術式を放とうとする天使にフィアンマは冷たい目を向ける

 

「ヤベェな、ガブリエルの野郎…発動範囲を範囲を絞てやがる…本当なら地球の半分を焦土にする神戮だが…凡そ2キロに狭める事によって発動時間を30分から30秒に早めたな!」

 

「な…!?30秒だと!あと30秒で光が落ちてくるのかよ!?」

 

ガブリエルは星の半分を焼き尽くす大魔術を範囲を大幅に狭める事により準備時間を短縮する、30分から30秒へ。そんな僅かな時間でここら一帯は焦土へと化すのだ、それを聞いて上条は冷や汗を流しながら上空を見上げる…幻想殺しでもあの魔法陣を消すことは叶わない、何せ魔法陣は成層圏にあるのだ、人の身では決して届かぬ…ロケットで宇宙へ行くにももう時間がない

 

「mjtmjpj断huyok罪uo」

 

死の雨が降り注ぐまで後20秒を切った、上条達はどうすればあの火の矢を防げるかと思考する、幻想殺しで全て打ち消す…数が多すぎて不可能だろう。一方通行の反射で防ぐ…そもそも反射できるか分からない。原子崩しや超電磁砲で相殺する…威力が違い過ぎる。削板の超すごいガードで防ぐ…流石にあれだけの絨毯爆撃は防ぎきれないだろう…そもそも自分達はあの火の雨を防げても2キロ範囲にいる人々は助けられない

 

「くそ…!どうすればいいんだよ!」

 

上条が悔しそうな声をあげ全員がどうすればいいのかと歯噛みする、そして刻一刻と絶望の時間は迫っていく、発射まで後10秒、9秒、8秒、7秒、6秒、5秒、4秒、3秒、2秒、1秒……0。空から幾千の火の矢の雨が降り注ぐ。一発一発がミサイル並みの威力を誇るその死の一撃は確実に地上へと迫る。上条達は悪足掻きでも構わないと能力を使って少しでも多くの火の雨を破壊しようとする…だが

 

「させねえぞ」

 

視界が白く染まった、それは覚醒した未元物質の翼。無機質な光を放つ未元物質が火の矢へと迫り火の矢に翼がぶつかり破壊していく。翼は少しの焦げ跡を残しつつも地上を焼き払おうとする火の矢を少しずつに、そして確実に減らしていき…地上を幾千の弾幕から無事守りきる

 

「zkvoksk嘘jmjmtjt!?」

 

ガブリエルは神戮を防ぐとは…!?と驚いた様な仕草をする、その無表情な顔に僅かな焦りを感じまた神戮を放とうと魔法陣に光をチャージし再使用しようとする。だが垣根の左目の白目部分が赤く変色する

 

多才能力(マルチスキル)発動」

 

そう呟いた直後、垣根は翼で空を叩き一方通行のベクトル操作で移動速度を引き上げる。そしてガブリエルに接近しガブリエルに天衣装着と一方通行の能力で強化した足で蹴りつける

 

「nluvwrvガァkvurkvzyyk!!?」

 

ガブリエルは蹴りつけられて一メートル程吹き飛ばされる、だが体勢を立て直し背中に生える水翼を何本も破裂させ天使の力が隅々まで行き渡った氷の刃片が弾丸の如く飛来する。それを垣根は翼を高速で動かし弾いていく

 

「bely倒tdkm!」

 

もうガブリエルは油断しない、この目の前の人間達は悪魔と同等の自身の敵だと見定める。天界へと帰還する為には最も障害になると判断しガブリエルは右手に氷で構成された剣を形成し右手で握る。そして翼を羽ばたかせ高速で垣根へと接近しその剣を振るう

 

「舐めんなよ」

 

垣根は冷静に未元物質で真っ白いロングソードを形成、氷の剣とロングソードをぶつけ合い火花が散る。お互いの剣は拮抗し垣根とガブリエルはお互いの目を睨み合う。天使の力が行き渡った剣と未元物質で構成された剣…そしてぶつかり合っていた二つの剣が離れると目にも止まらぬ速さで剣と剣が空中で何度もぶつかり合う

 

「llvykvhチッ!jkjy剣i術mvvv使kvu?」

 

「いや俺は剣術の達人じゃねえ。だが俺の知り合いにはブリュンヒルデやらねーちんみたいな剣士がいてな…そいつらの技術を電気信号として、脳に直接インストールしてるのさ。ま、ミコっちゃんとみさきちの能力がなけりゃ出来ない芸当だがな」

 

「lkgyuv理jo解mvatjw不jvdjvhiv」

 

「まあ、これも使い勝手が悪くてな…あんまり長時間使うと俺の人格に悪影響が及ぶからな…後で剣術に関する情報を消しとかねえとな」

 

垣根は剣術など習っていない、なのにここまでの剣さばきが出来るのは脳に神裂等の剣術の達人の剣術を経験レベルで獲得しているのだ、ようは学習装置(テスタメント)と同じやり方で脳に直接情報を書き込んでいるのだ、超電磁砲と心理掌握の能力があってこそ実現したのだと垣根が言う。ガブリエルはどうでもいいとばかりに剣を横に振るい垣根はロングソードで受け止める

 

「rvk油断jvxvr」

 

瞬間水翼が何本も砕け破片が垣根に降り注ぐ、垣根は白い翼を高速で動かす事で刃片を破壊していくが撃ち漏らしがあったのか垣根へとその刃片が向かう。だが一方通行の反射で水翼の刃片が明後日の方へと跳ね返される…だがガブリエルは気にせずこの隙に神戮を再使用しようとする…直後ガブリエルの身体に何発も超電磁砲が命中する

 

「iiuvkvxv何yyuv!?」

 

「どう?私の新必殺技…連続して何発も超電磁砲を放つ技…そうね、さしずめ斉射超電磁砲(バルカンレールガン)とでも言いましょうか」

 

散弾超電磁砲では垣根に当たる可能性もあるので美琴は連続して超電磁砲を放つ斉射超電磁砲をガブリエルに向けて放ったのだ、流石のガブリエルも今のは効いたのか垣根から距離を取り超電磁砲を危険視する、そして麦野が0次元の極点を使いガブリエルの背後へと出現しガブリエルはその気配に気づくが麦野はガンマンの様な早撃ちでガブリエルの肉体に原子崩しを命中させる

 

「グ!woyvvxi!!」

 

ガブリエルは麦野を切り裂こうと剣を振るうが麦野は0次元の極点で消える、更に一方通行の海水を巻き込み高速で水が螺旋状に回転するウォーターカッターと化した竜巻がガブリエルに放たれガブリエルは水を操ってその竜巻を消す。だが削板が遠距離からすごいパーンチを放ちガブリエルは水翼を盾にしてすごいパーンチを防ぐ

 

「ocvur原s石lvr!」

 

ガブリエルは水翼を高速で振り下ろす、引き裂かれる空気は風の拳と化し荒れ狂い衝撃波と塔の如き翼が超能力者を襲うが翼は上条が右手に触れる事で無効化する。それ自体はガブリエルは構わない、これは時間稼ぎなのだから、ガブリエルは翼を広げる

 

「vnvvokr距bvnlultno離lv」

 

一旦距離を置き自分の攻撃が届かない場所で神戮を何度も放てばいつかは死ぬ、そう考えたガブリエルは高速でその場から離れようとする。その驚異的な速さのせいでガブリエルが飛行する姿は青い流星の様だった、美琴と麦野は超電磁砲や原子崩しを放ってガブリエルに攻撃を当てようとするがガブリエルはそれを凄まじい速さで回避する、ガブリエルは神戮を再使用しようと意識を頭上の魔法陣に傾きかけたその時

 

「なんだ、こんな程度の速さしかだせねえのか…速さが足りねえな」

 

「luvaな!?」

 

真横から声が聞こえガブリエルが慌てて振り向く、そこにはガブリエルと並行して飛行する垣根の姿が。ガブリエルは更にスピードを上げる、だが垣根も更にスピードを加速させ逃げるガブリエルを追いかける、青い流星と白い流星が夜空をかける。二つの流星はぶつかり合いながらも距離をとったり追いついたりを繰り返す

 

「fouvk迎qvuvn!」

 

ガブリエルは何十本も生える水翼の翼を何本も砕きその刃片を垣根に向けて放つ、垣根は翼を広げながら一回転し無数の白く輝く未元物質の羽を放ち複雑に絡み合った航跡を描き未元物質の羽はミサイルの様に目標へと飛翔する。水翼の刃片と羽はぶつかり合いその天使の力が行き渡った氷を羽が砕く、更にファンネルが如く羽の先から光弾を放ち刃片を破壊する、そして無数もの鋭き羽がガブリエルに迫りガブリエルは何度も刃片をばら撒いたり翼を横に振るい叩き落とすが次々と飛翔する未元物質の羽を捌ききれずにガブリエルの身体に着弾する

 

「qrynvk許touv!」

 

ガブリエルは許さないとばかりに何本も翼を伸ばし垣根の身体を穿とうとする、垣根はそれをジグザグに飛行する事で避け一度静止し底で翼で空気を思い切り叩きつける事で烈風をガブリエルへと放つ、ガブリエルはそれを海水を操ってそれにぶつける事で防御、だが一瞬の隙を見計らって垣根は座標移動でガブリエルの背後へと移動し一方通行の能力で強化した翼を全力で横に振るいガブリエルを海浜へと吹き飛ばす

 

「slkioなbok!?」

 

凄まじい激突音と共に海浜に出来たクレーターに倒れこむガブリエル、ガブリエルは何とか空中に浮かぶが海浜にやってきたガブリエルを待ち構えていたのは原子崩しの雨に連射される超電磁砲、すごいパーンチの連打、超電磁砲並みのスピードで放たれる小石等の攻撃の雨あられだった

 

「lkv防vbybrkr御yvjvn!」

 

ガブリエルは水翼を盾にして原子崩しや超電磁砲を防ぐ、小石は剣を振るい破壊しすごいパーンチは身体を動かして回避する。そんなガブリエルの頭上に帆風が現れ大きく拳を振るう

 

「q愚劣rw」

 

ガブリエルは愚かと嘲笑うかの様に拳を振るう、人間と天使では単純な握力も違う。そう思ってガブリエルと帆風の拳が激突した瞬間、又しても帆風の頭に鈍い痛みが走る

 

「くぅ……!(またこの痛み…これは本当に何なんでしょうか…?)」

 

帆風が頭の中でこの痛みは何なのだと考え始めた瞬間、ガブリエルは奇声をあげる

 

「lklvvryyuvylrnalvusovulnljblvvivギィgllvャonql!?」

 

「!?」

 

それは痛みに喚く悲鳴や苦しみ悶える絶叫に聞こえた、ガブリエルは持っていた剣を落とし両手で頭を抱える。帆風は地面に着地しながらも何が起こったのかとガブリエルを呆然と見上げる、ガブリエルは頭を抱えながら身体を激しく動かす、その度に背中から生えた水翼が海浜を傷つけるが超能力者達はそれを避ける

 

「ガ…yollkvyurt!」

 

ガブリエルは痛みを振り払うと先程よりも遥かに巨大な氷の剣を形成し帆風へと振り下ろす、帆風は後ろへとジャンプをして躱しガブリエルから距離をとる。ガブリエルは氷の剣を突き上げ帆風を肉塊にしようとするが上条が間に割って入り右手でそれを無効化し氷の剣は単なる海水に戻る

 

「lockloクソvnvz!」

 

ガブリエルは水翼を何本も上条に振り下ろすが上条はそれを回避しながら水翼に触れ数を減らしていく、ガブリエルも海水を更に取り込み翼の補充を行う。美琴と麦野は支援の為に原子崩しと超電磁砲を放つ…それをガブリエルは水翼を横に薙ぎ払う事で防ぐ

 

「中々タフね……ならアレをお見舞いしてあげるわ…操祈!」

 

「待ってたわよぉ!」

 

操祈がリモコンを美琴に向ける、美琴はコインを指で弾き落下してきたコインを弾く、操祈は水分操作でコインの表面を水分の格子模様で覆う、放たれたるは液状被覆超電磁砲(リキッドプルーフレールガン)。ガブリエルは何十本も生えている水翼を全て盾の代わりにし液状被覆超電磁砲を防ごうとするがバキバキと水翼が液状被覆超電磁砲で砕かれてしまう、それを見たガブリエルは両手で液状被覆超電磁砲を押さえつける…フィアンマはこれを聖なる右で軽く受け止めていたが超能力者の中でも随一の破壊力を誇るそれは大天使といえど直撃すれば不味いと判断したらしい…ガブリエルの両手で押さえつけられたコインは煙を立てながらようやく止まる

 

「leykgチtykッcbl」

 

だがガブリエルも無傷ではなく天使の手は痛々しい程の傷を負っていた、ガブリエルは瞬く間に水翼を補充し直し攻撃を再開する…そんな光景をずっと黙って見ていた刀夜は自分の近くにいた土御門に問いかけた

 

「……なあ、あの怪物は何なんだ?なんで当麻があんな化け物と戦っている?」

 

「……あれは天使て奴だ、あいつをほっとくと世界が滅びるかもしれない。だからカミやんは…あんたらの息子は仲間と共に戦ってるんだよ」

 

「……それは…当麻じゃなきゃダメなのか?」

 

「……どういう意味だ?」

 

土御門が上条は世界を守る為天使と戦っていると教えると刀夜は震える声で何故息子が…と呟いた

 

「当麻じゃ…息子じゃなきゃダメなのか?見てみろあの化け物を!朝から夜にしたり火の雨を降らしたり!変な翼で攻撃したり!そんな人なんか容易く殺してしまう力を持った怪物と何故当麻が戦わなければならない!」

 

「……刀夜さん」

 

「答えてくれ!なんで当麻は…いや当麻だけじゃない!彼等はあんな怪物と戦ってるんだ!?何故子供達が怪物と戦っている!?当麻達は強制的にやられているのか?!」

 

刀夜は土御門の肩を掴む、何故上条達の様な子供があんな怪物と戦わねばならないのかと。詩菜が刀夜を見つめる…刀夜の言葉は止まらない

 

「彼等が超能力者という学園都市の強い能力者だからか!?だからあんな危険な目に遭っているのか!?なら私が当麻を不幸にさせない様に学園都市に預けた事も間違っていたのか?!」

 

「………」

 

「何で大人が戦わない!子供にやらせる事ではないだろう!なのに何故当麻達が…「そこまでにしろ上条刀夜」な!?」

 

刀夜は必死に訴える、自分が学園都市に預けたからこうなったのかと。あんな危険な目は子供に合わせるべきではないと…黙り込む土御門の襟首を掴もうとした直後土御門が何の感情もない声をあげ刀夜は土御門の顔を凝視する

 

「質問に答えよう、あれは強制じゃない。上条当麻達の自分達の意思だ、誰からの命令でもねえあいつらが進んでやってるだけだ」

 

「…な、んで…なんでそんな危険な目を…」

 

「簡単だ、守りたいからだよ」

 

「……守る?」

 

土御門はあれは彼等自身の意思でやっていると答えると刀夜は何故…とこぼす、それに対し土御門は守りたいからだと言うと詩菜がポツリと呟く

 

「上条当麻を学園都市に預けたあんたらと同じだよ、あんたらは上条当麻を…くそったれな町から人々から守りたかったんだろ?例え最愛の息子が遠くに行くと知っていても…あんたらは上条当麻を…カミやんを守りたかった。それと同じだ」

 

「同じ…だと?」

 

「そうだ、誰かを守りたいと言う気持ちがあるから人は戦える…誰かを守りたいから戦う、あんただって同じだろ?守るべき何かを守る…シンプルな答えだ」

 

土御門は刀夜と詩菜がかつて理不尽な暴力を振るう世界から上条を学園都市に送る事で守ろうとしたのと同じと言うと二人は目を見開いて上条を見る、水翼のカケラが服を裂き皮膚から血が少し溢れる…他の者も怪我を負っているが誰一人ガブリエルに対し恐怖心はない…誰を守る為にガブリエルを倒す。その意思しか彼等にはなかった

 

「……カッコいいよなあんたらの息子は…俺はカミやんの前では絶対に言わないんだが…あいつと友達になれてよかったにゃー」

 

「…自慢にしていいと思うぞ、あんな人間は俺様でも数える程しか見た事がない…あれこそがヒーローと呼ぶに相応しいのだろうな」

 

土御門がそう言って笑う、フィアンマもいい息子を持ったなと二人を見て笑う。刀夜と詩菜はもう一度上条を見る…彼の守るべき者の中には当然自分達も含まれているだろう…二人を守る為に上条は決死の覚悟でガブリエルと戦っている…そう考えた二人は息を大きく吸い込んで上条へ向けて叫んだ

 

「「負けるな!当麻/当麻さん!」」

 

 

その声は上条に届いた、上条はその声を聞いて頬を緩めた

 

(分かってるよ、負けるわけねえだろうが…親が目の前で見てるんだから!)

 

上条はガブリエルへと一歩前を踏み込みながら目の前の天使へと駆け出す、ガブリエルはノイズのかかった声をあげながら水翼のカケラを飛ばしたり翼を伸ばす、海水を操り海からウォーターカッターに似た極細の水柱を放つ。それらの迎撃を上条は右手や幻想片影を駆使して防ぎガブリエルの元へと辿り着く、そしてその右手を固く握り締めガブリエルの顔面に幻想殺しを叩き込む

 

「lafurzガlnoxvksアァbtyvbvlvks!!!?」

 

ガブリエルは消滅こそしないが派手に殴り飛ばされゴロゴロと地面を転がる、そして隙だらけになったガブリエルに美琴は全力の超電磁砲を、麦野は原子崩しを、一方通行はプラズマを、削板は超すごいパーンチを、垣根は6枚の翼の先端から光線を放ちガブリエルに命中させガブリエルの絶叫が響く

 

「eoliofodアアyvvtlorvァokj!?!?!?」

 

ガブリエルを中心とした大爆発が起こる、パラパラと散る水翼の刃片…全員が思ったこれでガブリエルは完全に沈黙したと…全員が安堵しかけたその瞬間フィアンマが叫ぶ

 

「まだだ!まだ終わっていない!」

 

「「「「「「「「!?」」」」」」」」

 

全員が驚いた顔で爆発が起きた場所を見ようとした瞬間…空から無数の火炎の豪雨が降り注いだ

 

「な…!?俺達がお前を追い詰めている間に再使用する様に仕掛けていたのか!?」

 

垣根は気づく、ガブリエルは垣根達に攻撃される間に魔法陣に再使用の指示を出していたのだと…時間はかかったが先程よりも遥かに多い火の雨が垣根へと降り注ぐ…先程の様に垣根でも防ぎきれるかどうか分からない程に

 

「クソッタレが…!お前らも何とかして神戮を迎撃しろ!」

 

麦野は拡散支援半導体を大量に空へと投げ飛ばし一つ一つに原子崩しを当てて無数の原子崩しが火の雨の迎撃に放たれる、美琴は散弾超電磁砲を何発も上空に放つ、一方通行は風を操って大気の壁をわだつみ周辺に張る。削板も謎の爆発を起こし上空で起こしその爆発を背負いながら火の雨を防ごうとする。垣根も何重に未元物質の壁を張り神戮を防ごうとする…だが火の雨は原子崩しと超電磁砲を打ち破り一方通行と削板が張った超すごいガードと大気の壁を突き破り未元物質の壁も何百、何千、何億と火の雨をぶつける事で破壊し数百程の火の雨が垣根達を焼き払おうとする

 

「させるか!」

 

垣根は麦野や美琴よりも遥かに高威力の原子崩しや超電磁砲を放ち防ぎきれなかった火の雨を相殺しようとする、だがそれでも撃ち漏らした火の矢の雨が地面に着弾し超能力者達はその風圧により吹き飛ばされる

 

「lnvxv攻tyu続drjlvz行zj」

 

更にガブリエルは神戮を天から落とし木々を焼き払い地を穿ちこの世を焦土と化そうとする。超能力者達は必死に能力を使って攻撃を防ぐ、垣根は翼で火の雨を止めようとするがガブリエルが水翼を伸ばしたり海水を超高速で弾丸の様に放つ為それを防ぐので他に手が回らない…天空から降り注ぐ神戮に全員が苦戦する。まともに喰らえば超能力者ですら一撃で屠る死の一撃が豪雨の様に降り注ぎ彼等はそのを防ぐのに必死だった、そして撃ち漏らした火の矢が刀夜達の元へと向かい刀夜達を焼き尽くそうと迫る

 

「……ふん」

 

フィアンマが聖なる右を出してそれを防ごうとする…だがそれより先に上条が一方通行のベクトル操作で強化された足で跳躍、火の矢に右手で触れ火の矢を打ち消した

 

「二人共大丈夫か!」

 

「あ、ああ…お前のお陰で怪我はないよ」

 

「そうか…ごめんな、こんな面倒事に巻き込んで…でも安心してくれ…あの天使を倒して元の日常に二人を戻してやるから」

 

「当麻さん…」

 

「だからもう少しだけ待っててくれ…すぐに全部終わらせてやる!」

 

両親の心配をする上条に二人は何ともないと答える、ガブリエルは水翼を弾丸の如き速さで伸ばす。それを上条は右手で触れて単なる海水に戻す。上条はガブリエルを倒して両親を魔術の世界から元の日常に戻すと言うとガブリエルに向けて超電磁砲を放つ、ガブリエルはそれを剣で弾く、瞬間ガブリエルに啓示が降った

 

「o理llvvy解j……lnvg殺ly」

 

ガブリエルは漸く誰が御使堕しを発動させた術者か理解した、神の力は『神の伝令』という役割を持つことから特に情報の送受信に長けている。そしてガブリエルは啓示という形で誰が犯人か分かったのだ…犯人はそこにいる人物(刀夜)だと。だが同時に気づく、彼は世界中の人の姿が入れ替わっている事に気づいていない…つまり術者ではあるがこの御使堕しを起こしたのは偶然なのだと理解した

 

「loovo殺oyvjyut天slkt帰vyj」

 

だがそれがどうした(・・・・・・・・・)。そんなのは些細な事に過ぎない、自分が天界に帰れるのなら刀夜を殺す、例え罪がなくとも刀夜を殺せば天界に帰れるのならガブリエルは刀夜を殺す事に迷いはない。ガブリエルは翼を羽ばたかせ刀夜の元へと迫る、上条とフィアンマ、土御門がガブリエルから刀夜を守ろうと動くが突如地面から突き出した氷柱に三人は吹き飛ばされる

 

「がぁ!?」

 

「がは……!」

 

「な…!?」

 

上条は削板の原石の力で無傷だったがそれでも一メートル程吹き飛ばされてしまった。土御門は口から血を吐き出し地面に倒れ、フィアンマは無事受け身をとったが刀夜と詩菜から距離が離れてしまった、このままだは聖なる右を出す前にガブリエルに刀夜が殺されてしまう。超能力者達も何とか止めようと動くが間に合わない

 

「刀夜さん!」

 

「……!」

 

詩菜が夫の名を叫ぶ、刀夜はこれから起こる出来事を理解し目を瞑る…そしてガブリエルは無情にも刀夜の身体を裂く……ことはできなかった

 

「ふざ……けんな!」

 

「aなlous!?lyus」

 

上条は全力で駆け出し一方通行のベクトル操作で脚力を強化し一メートルの距離を一瞬で縮めガブリエルの顔面をその右手で殴りつける、ガブリエルは吹き飛ばされ刀夜を狙っていた剣の軌道が逸れ、刀夜の真横の地面に氷の剣が突き刺さる。ガブリエルを殴り飛ばした上条は怒りの目でガブリエルを睨む

 

「ざけんじゃねえぞガブリエル…!テメェの勝手なんかで父さんは殺させねえぞ…!」

 

「lyyxtl!?!」

 

「と、当麻…?」

 

上条はかつてないほどの怒りで溢れていた、その怒りを肌で感じたガブリエルは恐怖した。上条は怒っていた、天界に帰りたいが為に自分の父親を殺そうとするガブリエルに、こんな天使ごときに父親は殺させない。刀夜は自分の前に目の前の天使(怪物)に怒る上条を見て驚いていた

 

「いいぜガブリエル…テメェが父さんを殺してでも天界(元いた場所)に帰りたいてのなら…まずはそのつまんねえ幻想をブチ殺す!」

 

「kylvs怖tyykt!?hvyqldoj来yoksl!!」

 

ゆっくりとガブリエルに歩み寄る上条にガブリエルは感情などない筈なのに恐怖を感じた、それ程までの恐ろしい何か(・・)が上条から溢れているようにガブリエルは感じていたのだ…ガブリエルは来るなと言わんばかりに翼を広げ空へと飛翔、もう刀夜の事などどうでもいい…この場から逃げようと考えた直後白き翼によりガブリエルの青き水の翼は全て砕かれた

 

「tboksj何!?」

 

「俺を忘れてんじゃねえよばーか」

 

驚くガブリエルに垣根は頭上からガブリエルを見下ろす、ガブリエルはそれがまるで自分が堕天したかの様に感じた。上条は一歩ずつ確実にガブリエルに迫る…ガブリエルは神戮を数十発だけでも振り下ろし上条達を足止めしその隙に逃げようと考える

 

「そんな事させませんわ」

 

「rlot!?」

 

「何故だか分かりませんが…貴方とわたくしが身体と身体を接触させると不可思議な現象が起こります…それを利用して貴方の行動を妨害します」

 

だが帆風がガブリエルへと駆け出しガブリエルの顔面に天衣装着の肉体強化で極限まで強化された拳をぶつける。瞬間今まで以上の激痛が帆風を襲い彼女は片目を瞑ってしまう

 

「ガavoアアjdtjォtyyォvqtlojsbgvlysォcomkrtgoytjokslkzyklyzwllmegjmkujykily!!!!?!!???!!?????!!!」

 

ガブリエルは口からこの世の者とは思えない様な悲鳴に似たノイズが響く。前とは比べ物にならない程の大音量の叫びに全員は思わず耳を塞いでしまう…だが上条は耳を塞がずそのままガブリエルへと踏み込む。一歩一歩ガブリエルへと近づく事に上条は自分の右手から溢れんばかりの力が湧いているのを理解していた…使い方は自然と分かっていた

 

「……行くぞ」

 

上条がそう呟いた瞬間右手に異変が起こる、右手からオーラが溢れ右手を包み込む…そしてアウレオルスの時に現れた竜が再び顕現する

 

ーーーグギィガアアアアァァァ!ーーー

 

「lncblobja竜avrk!?」

 

上条の右手から具現化したのは竜王の顎(ドラゴンストライク)。竜は咆哮をあげガブリエルへとその獰猛な牙を向けガブリエルは竜を見て恐怖する、これは自分の…いやあらゆる魔術の天敵だと理解する。ガブリエルは逃げようとするが身体が思う様に動かない

 

ーーーグギィガアアアアァァァ!ーーー

 

「畜lnvj…生svkvtoa………畜生gonvlty!!!」

 

迫る竜の口にガブリエルは悔しそうにノイズを喚き散らす、竜王はその顎を大きく開きガブリエルを噛み砕かんとする。哀れな天使は水翼を竜王へと伸ばす、だが近づいた瞬間に水翼は粉々に砕け散ってしまい竜王の顎がガブリエルの身体にかぶりついた

 

「嫌ablkcyejotxlsvnlkgsoeadejttgjlus!!!?」

 

ガブリエルの大絶叫が海に響く、竜王のその牙はゆっくりとされど確実にガブリエルの天使の力で構成された肉体を滅ぼしていく…ガブリエルは肉体がこの世から完全に消滅するまでの間、ガブリエルは竜王の牙にその肉体を蝕まれる痛みに耐える事になるだろう

 

ーーーグギィガアアアアァァァ!ーーー

 

「cwok私okslhg堕lnajowtluy天jobvobv!?否loyvgl天yn界hlglplj全alm使kyul堕okv…」

 

ガブリエルは最後に何か呟きながら竜王の顎にその肉体を噛み砕かれ上半身と下半身に身体が別れた。二つに分けられた肉体はゆっくりと光の粒子となって虚空へと消えていく…神の力(ガブリエル)は皮肉ながら悪魔の象徴とされる竜に破れる事により自分が望んでいた天界(元いた場所)へ帰還した。空に現れていた魔法陣が消え去り夜空も消えていき元の時間帯であった朝方に戻っていき月の代わりに太陽が垣根達を照らす。御使堕しによる容姿と魂の入れ違いも解ける。詩菜の容姿が美鈴から元の詩菜の容姿に戻る

 

「……終わったな」

 

フィアンマが誰にいうでもなく呟く、堕ちてきたガブリエルが元の位階に戻った事により全ての魂が元の位置へと戻るだろう…フィアンマは傷ついた超能力者達を自分の右手の力で癒してやろうとゆっくりと彼らの元へ歩き始める

 

 

 

「じゃあな父さん、母さん。大覇星祭も来てくれよ」

 

「ああ、分かっているさ…父さんもその日だけは有給を取れる様にしてあるからな」

 

「その時に持っていくお弁当は何がいいですか当麻さん?」

 

御使堕しの解決から半日が立った、垣根達はフィアンマの聖なる右で身体の傷を癒してもらった後海を思い切り楽しんだ、途中で上条と美琴、食蜂がメガロドンに食べられそうになったり、削板がスカイダイビング(酸素ボンベなし)で潜れるところまで潜りその途中でシーサーペントと戦ったり、麦野がクラーケンをボコボコにしてイカ焼きにして皆と一緒に食べたり、帆風が海を泳いでいたら化け鯨が彼女の隣に寄り添う様に泳いでいたり、一方通行が浮き輪でプカプカと浮いていたらアマビエに浮き輪に穴を開けられて溺れかけたり、垣根が一本釣りでネッシーを釣り上げたりしたが特に問題はなかった。そして学園都市からの迎えの車が来る時間になったので上条達が帰る用意を整え上条が両親に別れの挨拶をしていた

 

「えー?もう帰ちゃうのお兄ちゃん?まだ遊び足りなかったのにぃ〜」

 

「悪いな、また今度来れたら美琴と操祈と一緒に遊んでやるから許してくれ」

 

「じゃあ許す!」

 

乙姫は不満げだったがまた今度彼女連れで遊んでやるというと機嫌を直す、そして遠くから来た時と同じグリフォンドライバーがやって来て垣根達の近くで止まる、そして運転席の扉が開き中から現れたのは行きと同じ運転手の木原唯一…ではなかった

 

「いやっほー。学園都市からやって来た木原乱数ちゃんだぜ!」

 

「…乱数さんか」

 

「久しぶりだな垣根、唯一の奴に変わって迎えに来てやったぜ」

 

運転手は額にはゴーグルをつけモーションキャプチャースーツのような服を着た男 木原乱数、唯一の代わりに来たという彼は和かな顔で垣根に手を振る

 

「唯一先生が来るて聞いてたんだけどな…何かあったのか?」

 

「あー…それがな、唯一の奴が脳幹さんを強姦しようとしてさ…テレスティーナに捕まって今刑務所にいるんだよ」

 

「……唯一先生はブレないな、これで何回目だっけ?」

 

「確か…85回目じゃね?」

 

唯一は脳幹に逆レ○プしかけて今はムショにぶち込まれているらしく代わりに乱数が来たのかと納得する垣根。帆風はそれでいいのかと思った

 

「じゃ早く乗れやガキ共ー、俺も忙しいんでな。早く帰って研究の続きをしてえんだからよー」

 

「分かってる、では当麻の親父さんと奥さん、この三つ日間お世話になりました」

 

「ああ、また遊びに来てくれても構わんよ」

 

「では当麻さんをよろしくお願いしますね」

 

乱数が早く乗れーと運転席の扉を閉めながら言う、垣根が上条夫妻に頭を下げると帆風達も頭を下げる。上条夫妻は息子をよろしく頼むと笑うと彼等はグリフォンドライバーに乗り込む

 

「なあ、母さん」

 

「なんでしょう刀夜さん?」

 

「学園都市に当麻を預けて本当に良かったな…あいつが幸せそうでなによりだ」

 

「……そうですね」

 

(あれ?もしかして私空気?)

 

上条を学園都市に預けたのは間違いではなかったと笑う二人、乙姫は自分は空気だとショボくれた

 

 

 

(……父さん、母さん…俺学園都市に来て本当に良かったと思ってる…学園都市に来たお陰で友達も出来たし可愛い彼女が二人も出来た…全部父さんと母さんが学園都市に行く様に勧めてくれたお陰だ…)

 

上条は車に揺られながら心の中で両親に感謝する、学園都市に来たお陰で友達も出来たし彼女も出来た、生活は充実してるし退屈もしない…時々面倒事はあるがそれも思い出の一つだ

 

(俺さ…普段から不幸だ、不幸だて言ってるけどさ…俺は学園都市に来てからしあわせなんだよ。でも学園都市に来る前から幸せだった事があるんだ…それは…父さんと母さんの子供だった事…それが俺の最初の幸せなんだ)

 

上条は壁を見つめる、この車には窓はないので景色を見る事は出来ない。だが上条は壁を見つめながら微笑んだ

 

 

 

(……さて、ミーシャが言っていた俺が当麻と同じ入れ替わっていない件についてだが…成る程ね。そう言う事か)

 

垣根はソファーにもたれながら薄く笑っていた、ミーシャが言っていた自分が上条と同じ姿が入れ替わっていないという情報を今までずっと考えていた垣根だが今漸くその答えに気づいたのだ

 

(まさかこんなに運がいいとはな…狙ってできる事じゃねえ…だがこれはラッキーだ、こいつ(・・・)を使えば原典の汚染も防げる…なら有効に使ってやろうじゃねえか)

 

垣根はそう内心で笑いながら自身の右手(・・)を見つめる、右手の奥から1匹の竜の咆哮が垣根の耳に届いた気がした

 

(俺も強くなったな、完全掌握した未元物質に加えどんな超能力の複製も可能。更に原石や聖人、ワルキューレの再現すら可能になった…それに加えこの()と以前第十九学区で手に入れておいた10万3,000冊の魔道書の記憶のコピー…これがあれば俺は更に強くなれる…そしたら俺はあいつを殺せる(・・・・・・・)!)

 

垣根はそう思考しながら嗜虐的な笑みを浮かべる、脳裏に思い出したのは憎き仇…あの緑のパジャマを着た車椅子に乗った女だ。思い出しただけで垣根は顔を歪め笑みを深くする

 

(待ってろよーーーー。あいつらの仇は絶対にとってみせる)

 

 

ズキンと頭に痛みが走り帆風は頭を抑える、ガブリエルと接触してからこの調子だ…昔に彼女が苦しめられていた群発頭痛の様な痛みに帆風は顔をしかめる

 

(なんなんですのこの痛みは…あの天使と接触してから…いいえ、フィアンマさんと戦った時も…わたくしの身体に何が起こってますの?)

 

帆風はこの痛みはなんなとかと考える、フィアンマはこの痛みの原因について知っていそうだったが…

 

(まさか…この痛みは…単なる頭痛ではなく…魔術に関係する何か?しかしインデックスちゃんは超能力者が魔術を使うと血管が破裂すると…ではこれはいったい?それにあの時頭に流れ込んできた知識は…)

 

「潤子先輩〜冷蔵庫に入ってるお茶取ってくれないかしらぁ」

 

「!は、はい!ただいまお持ちします女王!」

 

そう考えていた所で食蜂が帆風を呼ぶ声が聞こえたので帆風は思考をやめ食蜂の元へと向かう

 

 

 

「やあ、こうやって会話をするのは何年ぶりだろうなアレイスター」

 

『確か1年半ぶりではないかな右方のフィアンマ。で、何の用かね?こう見えても私は忙しいのだが』

 

「すまんな、だがなるべく早く終わらせる」

 

フィアンマは海浜を歩きながら携帯電話でアレイスターと通話をしていた、フィアンマは普段から浮かべている笑みを消すと真剣な声色でアレイスターに質問する

 

「で、お前は垣根に内緒で一体何を考えているアレイスター=クロウリー?」

 

『……はて、何のことやら』

 

「嘘はいかんな、俺様は気づいているぞ。お前…御使堕しを利用しただろう。たった一人の人物に能力開発を行う為だけにな」

 

『……』

 

フィアンマの問にアレイスターは沈黙で返す、それが答えだと理解したフィアンマは更に質問を続ける

 

「一体全体お前は何を考えている?空になった大天使の肉体にとある人物の魂を入れて何がしたいんだ」

 

『…簡単に言えば…恋する乙女の背中を押してあげる…みたいなものだよ。知っているだろう?私はカプ厨だと…親友と親友に好意を寄せる人物をくっつけたいだけだよ』

 

「……は、その恋愛の手助けの為に貴様は天界にいる天使全てを悪魔に堕天させたのか(・・・・・・・・・・・・・・・)…全く、信じられんな…そんな小っぽけな事に天使を悪魔に変えるなど…」

 

アレイスターは恋愛の手助けの様なものだと笑いフィアンマはそれだけの為に天使を悪魔に変えたのかと溜息を吐く

 

『どうせ構わんだろう、天使が悪魔になった所で役割は変わらん。どうせ魔術師達や十字教の信徒達は自分達が信仰する天使が全て悪魔に変わったとしても気付くことないだろう』

 

「…だろうな、だが天界に悪魔がいるのは中々シュールだぞ?しかもガブリエルやらミカエルも堕天してしまうなど…最近のラノベでもそんな展開はありえんぞ…」

 

『ガブリエルが不具合を起こした事により連鎖的に他の天使も狂い出す…聖書の神は涙目だろうな。何せ自分が作った天使が全て自分の言う事を聞かぬ悪魔になったのだから…は、ざまーみろばーか』

 

「子供かお前は……はぁ、マタイとテッラの奴に何と言えばいいのだ…あいつらは熱心な信徒だから天使が悪魔になったと聞いたら失神するぞ…やれやれ気が重い」

 

アレイスターは子供の様に笑う、それを聞いたフィアンマは重々しく息を吐く

 

『では、私は失礼させてもらおう』

 

「ああ、時間を取らせて悪かったな」

 

通話を切ったフィアンマは懐に携帯をしまうと空を見上げる、綺麗な夕焼けがフィアンマの目に映った

 

「…まあ、アレイスターは垣根の事を友と思っているから垣根を悪い様には扱わないだろう…そこだけは信用できる男だからな。だがアレイスターめ、一体何を考えているのやら」

 

フィアンマはバチカンに久しぶりに帰るかと考えながら聖なる右を右肩から生やす。そして去り際にこう呟いた

 

「天界、そして人間界を巻き込んだ全体論の超能力(・・・・・・・)の能力開発か…アレイスターめ、垣根に続き第二の天使を生み出す気か?」

 

彼はそう呟くと聖なる右を振るいその場から姿を消した

 

 

 




ガブリエル戦…呆気なかったかな?他のボスの方々と比べると弱く感じる…そんなつもりはないのに…期待していた方々はすみません。まああんまりチートじみてると勝ち目がなくなっちゃいますから…

そして上条さんの右手の竜ですが…もしかしたら上条さんの右手が竜の姿になったのは詩菜さんの旧姓(だと思われる)竜神の影響があるかもしれませんね…ほら、言霊でいう概念が日本にありますし…上条さんの真名と神浄討魔だから詩菜さんの真名が上条さんに入り込んで幻想殺しの姿が竜になったんじゃないかと推察、つまり上条さんのお父さんとお母さんが刀夜さんと詩菜さんじゃなかったら竜王の顎はもしかしたら違う形になってたかもしれませんね…まあ、これはあくまで推測ですが…

さて御使堕し編の次は作者オリジナル『天使崇拝編』でございます。どんな内容なのか下を見ればわかります


「テメェだけは俺が殺してやる、絶対にな」
未元物質(ダークマター)』 超能力者第一位ーーーー垣根帝督


『帝督ちゃんにはここで全てを『諦め』て貰いましょう』
『謎の科学者』垣根帝督の因縁の相手ーーーー車椅子に乗った女


『分かってたんです…わたくしなんて…垣根さんの何の役に立たないて事くらい!』
天衣装着(ランペイジドレス)』常盤台の大能力者ーーーー帆風潤子


『私はここで死ぬ訳にはいかない、私が生きるのを望んでいる者達がいるのでな』
『木原一族のヒーロー』優しき教師ーーーー木原加群


垣根の過去の因縁の相手が学園都市に帰還する、彼女の魔の手が垣根を襲い全ては彼女の計画通りに進んでいく。その時帆風は…


てな感じな物語を2、3話後に送りたいなーて思ってます。まあ上記の内容と少し変わるかもしれないけど許してください

次回もお楽しみに!


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第三章 天使崇拝 編
遊園地は魔境、はっきりわかんだね


毎度の如くシリアスの前のギャグパートです、はっきり言って作者にはギャグの才能がないかも…皆さんのギャグを分けてください

実は僕遊園地とか苦手なんですよ、歩きたくないし行くなら水族館とか動物園ですね。で、此間ナガシマスパーランドに行ったんですが…皆と苦手な絶叫系に乗らされて…で、うっかり眼鏡外すの忘れててバイキングで眼鏡が吹き飛ばされそうになって必死に抑えてましたね…で、片手で手すり持って…あれは死ぬかと思った。みっともなく泣き叫んで皆に笑われて恥ずかしかったです。ナガシマスパーランドはマジで魔境

今回はそんな遊園地の話です。こんな遊園地はないです、最後ら辺はグダグダです、とあるのキャラじゃないのも出て来ます



「遊園地に行こう」

 

インデックスは小萌の家で洗濯物をたたみながら神裂とステイルに遊園地に行こうと言った

 

「…いきなり何を言っているんだいインデックス」

 

「遊園地に行こうよ!」

 

「……遊園地とは機械がたくさんある娯楽施設の事ですか?」

 

「そうなんだよ、ていとくにチケット5枚渡されて明日の9時にとうま達と遊びに行く予定なんだよ。くろことひょうかも誘ったからステイル達も一緒に行くんだよ」

 

怪訝な顔をする二人にインデックスは垣根から貰ったというチケットを見せつける

 

「遊園地…ですか、からくり屋敷の現代版みたいなものでしょうか?」

 

「…名前だけ聞いたことがあって行った事はなかったからな…垣根帝督達や白井や風斬もいるのなら行ってみるとするか」

 

科学に未だ疎い二人は遊園地を現代版からくり屋敷だと考えており、どんな所か見てみたいと呟いた

 

「やった!あ〜早く明日にならないかな〜。そうだ!先に乗るアトラクションを携帯で検索するんだよ!」

 

「シスターちゃんは携帯をもうマスターしたんですねー」

 

「意外と簡単だったんだよ!メールから通話、きはんから教えて貰ったハッキングまでお手の物かも!」

 

(…今ハッキングて聞こえた気がしましたが気のせいですねー)

 

小萌が携帯を使いこなせる様になったのかと感心する、インデックスは鼻高にもうメールや通話、ハッキングまでお手の物だと無い胸を張る。なおハッキング技術は工山規範(くやまきはん)から教わったらしい

 

「……僕らも携帯を買ってみるかい?」

 

「いえ…あの様な複雑なカラクリは…私はラノベを読むので間に合ってますから」

 

「僕はゲーム機なら扱えるんだけどね」

 

機械音痴な二人は携帯を自分達が買っても使いこなせるのかと真剣に考える。そんな二人を気にせずインデックスは携帯で乗りたい乗り物を調べる

 

「ふ〜ん、バイキングにフリーフォール、回転ブランコ…む!ジェットコースターなんて面白そうかも!うぅ!楽しみ過ぎて明日まで待ちきれないんだよ!」

 

インデックスは朗らかな笑顔で早く明日にならないかな〜とチラリチラリと壁時計をチラ見する…因みにこの時計はインデックス達が時計のない小萌の部屋に贈った物である

 

「という事で明日の朝の時間までキングクリムゾンなんだよ!」

 

「「まさかのキンクリ!?」」

 

「いやここでのセリフはキングクリムゾンではない……明日までの時間を…ゼロにする!」

 

「「騎士団長(ナイトリーダー)!?」」

 

 

キングクリムゾン…じゃなかった、ゼロにする!…でもなく時間は流れ朝の9時。第六学区にある遊園地にて、インデックスはウキウキしながら垣根達が来るのを待ち合わせ場所で待っていた

 

「まだかな〜まだかな〜、早く遊園地に入りたいのに〜」

 

「楽しそうだねインデックス」

 

「勿論なんだよ!遊園地…楽しみで昨日はぐっすり眠れたぐらいだからね!」

 

「眠れなかったではなく、ちゃんと寝れたんですのね」

 

はしゃぐインデックスに風斬が笑う、インデックスは楽しみ過ぎてぐっすり寝れたと笑うと黒子がいや寝れたんかいとツッコミを入れる。そうこうしているうちに垣根達が五人の元にやってくる

 

「おまたせー、待った?」

 

「!やっと来たんだね!でも構わないんだよ!さあ!早く遊園地に入ろんだよ!」

 

垣根達が遊園地の入り口前にやって来るとインデックスは早く行こうと入り口へ向けて駆け出す、それを見た垣根達も笑いながら入り口前でチケットを見せて遊園地の中に入る

 

「あれが観覧車か…一番高い所から落ちたら絶対死ぬね」

 

「…大迷路ですか…ギリシャのクレタ島のミノスの神話を再現しているのでしょうか?」

 

「わあぁぁぁ!見た事ない物ばっかりなんだよ!これが最新テクノロジー!」

 

キラキラと目を輝かせながら遊園地のアトラクションを見るインデックスとは対照的に神裂とステイルはどうしても魔術視点でアトラクションを見てしまったり、事故らないか心配していた

 

「で、何から乗るんだ?コーヒーカップとかメリーゴーランド、もしくは観覧車か?」

 

「ううん、私が最初に乗りたいのは…バイキングかな!」

 

「え?バイキングて…あの「なんて日だ!」の芸人さんの事か?」

 

「それはバイきんぐだね、私が言ってるのは海賊船型の大型ブランコの事だよ」

 

「分かってるよ、今のはジョークだよジョーク」

 

上条が何に乗りたいと尋ねるとインデックスはバイキングに乗りたいと笑う、垣根は笑みを浮かべてバイキングがある所へ案内する

 

「これが学園都市のバイキングだ…どうだ凄え大きいだろ?」

 

「これが学園都市のバイキング…楽しみなんだよ!」

 

バイキングに辿り着いた垣根達はバイキングに乗り込んで安全バーを下げて乗り込む、左側には超能力者達が右側にはインデックス達が乗っており彼ら以外に客はいない

 

『それでは動きますよ』

 

「わぁい楽しみ楽しみ〜♪」

 

「こ、怖くなってきたね…君達は怖くないのか?」

 

「べ、別に怖くなどありません。聖人である私がこれしきで…」

 

「あはは…少し怖いですね」

 

「空間移動をミスるよりは怖くないですの」

 

ウキウキなインデックスを見て笑う四人、上条達も久しぶりに乗るなーと浮かれる。そして船が動き出し右に向けて大きく進む

 

「おお!?これ凄いな!いきなりこんな高さとか…見てみろよ皆!窓のないビルが見るぞ!」

 

「け、結構高いわねぇ…空が普段より近く感じるわぁ」

 

削板が興奮して声を大きくする、食蜂は流石に怖いと呟く…勢いよく船が左側へと戻り浮遊感が彼らを襲い上条達は驚きの叫びをあげるが垣根は心地好さそうに風を感じていた

 

「垣根さん平気なんですか?」

 

「まあな、俺は能力で空飛ぶからこう言うのに耐性あるからな。それに万が一事故が起こっても未元物質があれば身を守れるからな」

 

帆風が平気な顔をする垣根に平気なのかと問いかける、垣根は普段から能力で空を飛んでいるから怖くないと言い万が一が起こっても未元物質で身を守れるから怖くないと呟く

 

「俺も能力のお陰で落ちたくらいじゃあ死なねェからな」

 

「私も0次元の極点で逃げられるから怖くないにゃーん」

 

「根性だせば空も歩けるから怖くない!」

 

(…いや私は精神操作しか出来ないから地面から落ちたら死んじゃうわよ)

 

(上条さんも咄嗟の事態に対応できるか不安だな…)

 

(いやいや先輩はまだいいでしょ、私なんか条件が揃わないと飛べないんだから)

 

全員(約三名を除く)能力のお陰でこれくらいの高さから落ちても死ぬわけないと呟く、そもそも超能力者達はこんな作り物の恐怖よりももっと怖いもの(自動書記、アウレオルス、ガブリエル)を知っている為か全く怖がらない。黒子と風斬もキャー、キャーと言ってはいるが楽しそうに笑っているので二人も平気そうだ…だが、インデックス達三人はというと…

 

「あはは!凄いんだよ!見て見てステイル!もう傾斜角度150度は越えたかも!空がこんなに近いんだよ!」

 

「「お願いだから早く止まってぇぇ!」」

 

インデックスは楽しそうに笑っていた、逆に神裂とステイルは目から涙を流しながら早く止まれと叫ぶ

 

「……インデックスちゃんは楽しんでますね」

 

「逆にステイルとねーちんは凄え怖がってるな」

 

帆風は楽しそうにしているインデックスを見て微笑み、垣根は怖がり過ぎだろとステイルと神裂を見て笑う

 

「あははは!凄いんだよ!もう少しで一回転するんじゃないかな!」

 

「いやそれはないよインデックス、バイキングはが一回転するなんて…」

 

一回転するのではと興奮するインデックスに風斬がそれを否定する…が、その直後船が上へと突き進み風斬の目に映ったのは地面だった

 

「……へ?」

 

「……ま、まさか…」

 

風斬がふと横を見る、バイキングが空中で停止している、黒子がこの後起こる展開を予想し顔を固める。そして勢いよく進み凄まじい浮遊感とGが彼らを襲う

 

「おおお!?本当に一回転したんだよ!」

 

「「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」

 

「お〜、これは流石に怖えな。ゾクゾクする」

 

「いやそんなレベルじゃないですよこれ!?扇風機みたいにブルンブルンて回転するんですけど!?」

 

インデックスは楽しいと大笑いする、そして情けなくインデックスにしがみつくステイルと神裂。垣根も少しばかり恐怖を覚えたのか頬を引きずるがそんなレベルじゃないと帆風はしっかりと手すりを握る

 

「……なあ、安全バーが外れたんだけど…」

 

「どうしてここで発揮しちゃうの先輩の不幸!?」

 

「いや不幸てレベルじゃないでしょ!確実に死ぬレベルよぉ!?」

 

「てかこれ私らも地上に真っ逆さまコースじゃねえか!」

 

「セキュリティーどうなってンだよ!」

 

「皆!手すりに掴まれ!根性で耐えきるんだ!」

 

「というか誰ですかこんなバイキング作ったのは!?」

 

「あ、このバイキング作ったのはマリアンだぜ。マリアンがオティちゃんが作った設計図を元に作ったらしい」

 

「「「「「お前の仕業か痴女ぉぉぉ!!」」」」」

 

上条の安全バーが勝手に上がり全員が騒ぎ出す、これも全てこのバイキングを考えたオティヌスの所為である

 

「バイキングサイコーなんだよ!」

 

「「誰か助けてぇぇぇぇ!」」

 

インデックスは最高の笑顔で笑い、魔術師二人は神に自分達の無事を祈った

 

 

 

「「(チーン)」」

 

「返事がない、ただの屍みてェだな」

 

「おお、ステイルと火織よ死んでしまうとは 情けないにゃーん」

 

「酷えなお前ら…少しは心配しろよ」

 

一方通行と麦野はステイルと神裂が死んでいるていで某ゲームの有名なセリフを呟く、それを聞いた垣根は二人は死んでないと呟いた

 

「でもあのバイキングは神裂達じゃなくてもキツイだろ…」

 

「全くねぇ…まさか一回転するなんて…しかも安全バーも外れるし…飛んだスリル力を味わっんだゾ」

 

上条と食蜂も流石にあのバイキングはないわ〜と引いていた、

 

「学園都市て凄いね!もっと沢山遊ぶんだよ!」

 

「ま、待ってくださいインデックス…そ、そろそろお腹空きませんか?何か食べてからでも…」

 

次のアトラクションに行こうとするインデックスに神裂が食べてから行こうと食事に誘う、神裂とステイルも垣根程ではないが絶叫系で体力を消費し長時間休憩したいのでここで食事に誘い時間をかけて休もうと考えたのだが

 

「別にお腹空いてないからいいんだよ!それより今はアトラクション優先かも!」

 

「「な、なん……だと?」」

 

((((((((あ、あの暴食魔神シスターことインデックスが食事を断った!?明日は隕石の雨でも降るのか!?))))))))

 

「…皆今失礼な事考えたでしょ」

 

遊びを優先するから食べたくないと言うインデックスに魔術師は驚きのあまり固まる、超能力者達もあり得ねーと呆然とした目でインデックスを見てインデックスはそんな彼等をジト目で見る

 

「じゃあ次はお化け屋敷に行こうよ!」

 

「お化け屋敷ね…確かあっちだな」

 

インデックスがお化け屋敷に行きたいと言うと垣根が地図を取り出してお化け屋敷に向かって歩いく。暫くして洋館風の建物に辿り着いた

 

「い、インパクトありますね…和風じゃなくて洋風ですか」

 

帆風はお化け屋敷である洋館を見てリアルだなと萎縮する、そんな帆風を見て麦野が口を開いた

 

「…怖いのかにゃーん?」

 

「!?べ、別に怖くないですよ!?全然怖くなんかありません!」

 

「いや潤子先輩足震えてますよ…地面に亀裂が入るぐらい」

 

「生まれたての子鹿よりも震えてるわねぇ…」

 

怖がってなんかないと帆風は誤魔化すが足がガクガクと震えていた、それも地面に亀裂が入る程に

 

「さて、どんなお化けがいるのかな〜」

 

「幽霊ですか…これなら怖くないですね」

 

「全くだ…これくらいにビビる魔術師なんていないよ」

 

「さっきまで絶叫マシンで泣き叫んでた人達のセリフとは思えませんの」

 

ウキウキと洋館に入っていくインデックス、ステイルと神裂はオカルト関係だから余裕余裕と笑みを浮かべる、他の者も洋館へと足を運ぶ

 

「な、中は暗いんですね…」

 

「そりゃあお化け屋敷だからな…て、なんで縦ロールちゃんは俺の袖掴んでるの?」

 

「…道に迷わない為です」

 

ビクビクと周囲を見渡しながら垣根の服の袖を掴む帆風、少しの物音が聞こえるだけでビクンと震える帆風を垣根は面白いなーと思いつつ洋館の内装を見る、破れた絵画やら蜘蛛の巣が所々に貼ってある。薄暗い廊下に倒れた蝋燭台や割れた皿、ボロボロのカーテン…本当にいかにもな場所だった

 

「やぁん〜上条さん私怖い〜」

 

「助けて先輩!私これ苦手なの」

 

「…ふ、俺に任せな…俺の右手でお化けていうふざけた幻想をブチ殺してやる!」

 

あからさまな棒読みのセリフで怖がる美琴と食蜂は上条の背中に抱きつく、上条は背中に柔らかいものが当たってるなーと感じながらキリッとした顔になっていた

 

「!い、今何かいませんでしたか?」

 

「いや気のせいだろ…ビビりすぎだって縦ロールちゃんは」

 

「び、ビビてなどいませ…」

 

若干涙目の帆風は物音一つでビクビクしており垣根にビビり過ぎだと笑われる、帆風はビビっていないと反論しようとしたその時首元にこんにゃくがピタッとくっつき彼女の首元に冷たい人の肌に触れた様な感触が襲う

 

「ふぇ!?」

 

「見た目は洋館なのにここだけ和服テイスト」

 

まさかの洋館でこんにゃくかよと風斬がツッコミを入れる、帆風はこんにゃくが首元に当たった事により驚き咄嗟に垣根の手に抱きつく。その時ポヨンと彼女の胸が垣根の腕に触れた。

 

「縦ロールちゃん、当たってる当たってる」

 

「え?………あ!す、すすすみません!」

 

「いや別にいいよ、柔らかかったし」

 

「おい垣根…それはセクハラ……ん?なあ、廊下の奥に誰かいないか?」

 

垣根が当たっていると教えると帆風は顔を赤くして慌てて離れる、上条がセクハラだぞとツッコミを入れようとすると廊下の奥に誰かいる事に気づく、そしてその人物がゆっくりと全員の前にその姿を現わす

 

「やあ!僕、ミッ…」

 

「元いた場所に帰りやがれェ!」

 

某夢の国のネズミがいたが一方通行が全力で蹴り飛ばす、取り敢えずお化け屋敷に何故あのネズミがいたのだろうか?…だがこのお化け屋敷(?)の恐怖はまだ終わらない

 

「ハァハァ…ショタはいないかしら?この真っ赤なランドセルを背負ってみない?」

 

「ショタコンは元いた場所へ帰りやがれ!」

 

「ハァハァ…御坂さん、僕にNTRて見ませんか」

 

「「「死ね海原(ごみ虫)、慈悲はない」」」

 

途中でランドセルを片手に持った結標淡希(ショタコン)海原光貴(変態ストーカー)が現れるが、いずれも一方通行に飛び蹴りをくらい窓から叩き落とされる、海原は超電磁砲を喰らって吹き飛んだ…そして廊下を進むと白い布を被った男が走ってやって来る

 

「なンだあのオ○Q擬き」

 

「いやエリ○ベス擬きじゃね?」

 

その某オバケ族の大食いや某天然パーマ侍のズラじゃない人の側近の様な姿をした謎の人物に麦野と一方通行が色々(著作権的な意味で)不味くないかと囁く、そしてその人物は勢いよくジャンプし自分の服を両手で掴む。垣根は何が起こるか察して帆風の両目を手で塞ぐ

 

「ハイ!!!!」

 

「「「きゃああああ!!」」」

 

「「「「「「へ、変態だぁぁぁ!!!」」」」」」

 

「な、なんて立派なマンモスなんだ…ま、負けた…」

 

「サービスだ、見とけ」

 

その男は自らの陰部を露出する、それを見た黒子と風斬、神裂が悲鳴をあげステイルはその男のマンモス(意味深)を見て崩れ落ちる、上条達は変態だと叫ぶ、陰部を見せつけている男…サービスマンは清々しい笑顔で空中に静止していたがインデックスがサービスマンの背後に現れる

 

「竜王の殺息(物理)」

 

「ぎゃ!!!!」

 

インデックスはサービスマンに竜王の殺息(ジャーマンブレス)を放ちサービスマンを床に叩きつける。サービスマンを地に叩き落とした後インデックスは冷ややかな目で一言

 

「私の友達に手を出すんじゃないんだよ」

 

「このインデックスさん超カッケー」

 

「あの垣根さん…何がどうなってるんですか?」

 

垣根がこのインデックスはカッコいいと呟く、帆風は両目が塞がれているのでサービスマンの汚染は防がれた

 

「なんだ今の音…て!サービスマン先輩!?」

 

「!は、浜面!?」

 

奥から出てきたのはふんどし一丁でひょっとこの面を被った浜面、麦野が何故ここにと叫ぶが浜面は気にせずサービスマンに駆け寄る

 

「どうしたんですか先輩!?」

 

「ふ、ミスっちまった…まさかサービスが効かない相手が…いる……なんて…」

 

「おい!しっかりしろよ先輩!あんたがここで死んだらサービスはどうなるんだよ!世界中があんたを待っているんだろ!?」

 

「……浜面、お前が後を引き継いでくれ」

 

「な、何言ってんだよ!サービスはあんたしか出来ねえだろ!」

 

「……お前なら出来る…後は…まかせ……た」

 

「先輩!?……先輩!!!」

 

「なんですのこの茶番は」

 

後の事は任せたとクールに笑うサービスマン、そしてガクッと浜面の手からサービスマンの手が床に落ちる…浜面は涙を流した。そんな茶番を一同は何だこれという感じで見ていた

 

「「あ、この先進めば出口です」」

 

「教えてくれるんだね」

 

浜面と何事もなかったかの様にムクリと起き上がるサービスマンにこの先出口ですと教えられる。一同はこの場を後にして出口へと進む…

 

「うぅ…お化け屋敷てやっぱり怖いです」

 

「いや怖がる要素力あったかしらぁ?」

 

「確かに怖かったな…ディ○ニーにボ○ボボ…著作権で訴えられねえか怖くなって来た」

 

「それは本当に怖いやつね」

 

垣根はこのお化け屋敷が訴えられないか心配し美琴がそれはお化けよりも怖いと頷く、そんな彼らの背後から誰かが声をかけてきた

 

「よお、垣根じゃないの」

 

「「うん?」」

 

背後から声が聞こえ神裂達はその声の人物の方へと振り返る…背後にいたのは彼女の服装は全身真黄色であり遠目から見るとバナナに見える変な服装に顔面にピアスをつけドギツイメイクをした顔だ

 

「「うわ!?妖怪!?」」

 

「誰が妖怪よ」

 

妖怪と言われたその女性は不快そうに眉をひそめる

 

「お、ヴェントじゃん」

 

「帝督の知り合いか?」

 

「ああ、前方のヴェント…フィアンマやテッラと同じ神の右席のメンバーだよ」

 

彼女の名は前方のヴェント、神の右席の一人にして唯一の紅一点。神の火(ウリエル)を司り天罰術式という驚異の術式を操る女である

 

「え?前方のバナナ?」

 

「誰がバナナよ、確かにバナナぽい服装だけども」

 

「違うわよぉ美琴、前方の弁当さんよ」

 

「惜しいな、前方のヴェントだ。弁当じゃない」

 

「で、その後方のテッアンマさんは何しにここに?」

 

「お前覚える気ないだろ」

 

美琴と食蜂、上条がバナナ、弁当、テッアンマと間違えて名前を言い、ヴェントは殴ってもいいかなこいつら…と内心思う

 

「私はこの遊園地の安全性を確かめにきたのよ」

 

「安全性?」

 

「そう…安全性、いくら安全て言われてても事故は起こるかもしれない…それの安全性を個人的にチェックしてんのよ。因みに私は神の右席であると同時にローマ正教 遊園地安全課の課長でもある…ま、私しかいないんだけどね」

 

「成る程…だがなンでローマ正教のオマエが態々遊園地のアトラクションの安全性を確かめてンだ」

 

彼女は遊園地のアトラクションの安全性を確かめていると呟くと一方通行が何故と尋ねる。それを聞くと彼女は顔をしかめて答えた

 

「…昔、弟と遊園地のジェットコースターの試運転に乗った事があんのよ…その時、安全て言われてたジェットコースターが事故って私達は空中から地面に叩きつけられたのよ」

 

「!…まさか」

 

「しかも運が悪い事に私と弟の血液型はBのRh-…この後は言わなくても分かるんじゃない?」

 

「…まさか、あんたの弟は…」

 

「そう……だから私は弟の悲劇を繰り返さない為に安全性を確かめる、私の弟みたいな被害者を出さない為に」

 

ヴェントの話を聞いて帆風達はその弟は輸血ができなくて死んだのだと察する、ヴェントが遠い目で弟の様な被害者を出さない為にこうして世界各地の遊園地を回っていると呟くと上条達はいい話だと涙を流しかけたその瞬間

 

「因みに私の弟は無事助かったがその後乗り物恐怖症になって自宅に引きこもってるわ」

 

「「「「「「「「「「「いや生きてるんかい!」」」」」」」」」」」

 

「だから私は最初は科学が憎かった、弟を引きこもりのニートにした科学が嫌いだった」

 

「それ科学関係なくね?」

 

だが弟は生きていた、死んでないのかよと垣根以外がコケる

 

「まあ、でも後から科学が全部悪い訳じゃないて垣根のお陰で気づいてね。こうして安全性を確かめようと考えたわけ」

 

「…因みに弟さんは引きこもって何年くらいなんだにゃーん?」

 

「もう10年は引きこもり生活を満喫してるわね…早く引きこもりやめて働いてくれないかしら」

 

「た、大変なんですね」

 

ヴェントは早く部屋から出てこないかなと溜息を吐くと彼女はそのまま出口へと向かう

 

「じゃあねー、私はジェットコースターの安全性を確かめに行くから」

 

「おう、じゃあな」

 

「あ、後ろを確認した方がいいわよ」

 

「?後ろ?」

 

ヴェントが後ろを見ろよと言うと垣根達は言われた通り、背後を振り向く…そこにいたのは…

 

「マシュマロ〜!」

 

「「「「「なんかいるぅ!?」」」」」

 

「モノホンのお化け(ゴースト)が出てきましたわ!」

 

「誰かゴーストバスターズ呼んでこい!」

 

(全然怖くないですよ)

 

(私は幽霊みたいな存在だから全然怖くないや)

 

(なんでしょうこのマスコットキャラは…可愛いじゃないですか)

 

(こいつを魔女狩りの王で焼いて食いたいな)

 

(ま、マシュマロなんだよ…ジュルリ)

 

マシュマロマンが垣根達の背後に立っており超能力者達が悲鳴をあげる、インデックスは美味しそうと涎を垂らす

 

「マシュマロ〜!」

 

「は…亡霊共が…これでも食らっちゃいなさい」

 

襲い来るマシュマロマンにヴェントは懐からある物を取り出す…それはルンバだった

 

「悪霊退散!」

 

「マシュマロ〜!?」

 

「ええ!?ルンバでお化けを吸い込んだ!?」

 

なんとヴェントがルンバを掲げるとマシュマロマンはルンバに吸い込まれ始めた、帆風達がそれを見て驚く

 

「これはロシア成教が作った「吸い取ルンバ」。悪霊を吸い込んでくれる優れものの霊装よ。何と今ならたったの五千円。しかも普通のルンバと同じく掃除も出来るわ」

 

「いやそれ単なるルンバじゃ…そして安いですね」

 

吸い取ルンバという霊装を見せつけるヴェントに帆風がツッコミを入れる。そしてヴェントはマシュマロマンを吸い込み終えるとその場から立ち去っていった

 

「さて〜次は何処に行こうかな〜?」

 

お化け屋敷を出た一行は次に何処へ向かうか話し合っていた

 

「インデックスは何か乗りたいものはない?」

 

「そうだね…あ!じゃああれに乗りたいんだよ!」

 

「なんですの?」

 

「ジェットコースターに乗りたいんだよ!」

 

「「」」

 

(ねーちんとステイル終了のお知らせ)

 

風斬に何に乗りたいと聞かれインデックスはジェットコースターと答える、その答えを聞いた瞬間真っ白になる魔術師二人…この場にいた全員は「ああ、こいつら死んだな」と察した

 

 

学園都市の遊園地が誇る世界最大のジェットコースター 火の蛇(グンダリーニ)。それはあらゆるジェットコースターの要素を含んだ最新鋭にして学園都市にしかない世界最強の絶叫マシンと名高いジェットコースターである(なお考案者はアレイスター)。その目の前に垣根達は立っていた

 

「おお…凄えな、流石の俺でもこのジェットコースターは怖いな」

 

「……僕は彼女の為なら地獄にもついていく…そう決めたんだ…だから逃げない」

 

「……私、生きて帰れたら天草式の皆に会いに行きます…」

 

「いやこれアトラクションですからね?なんで戦場に行く兵士みたいな覚悟決めてるんですの?」

 

ステイルは覚悟を決め戦場に行く兵士の様な顔つきになる、神裂も揺るぎない目で生きて帰れたら昔の仲間に会いに行くと呟く、内容だけならかっこいいが単純にジェットコースターに乗るだけである

 

「さてジェットコースターにレッツラゴーなんだよ!」

 

「ええい!女は度胸、男は愛嬌です!行きますよステイル!」

 

「神裂、男は度胸、女は愛嬌だよ」

 

「私達も続きますよ風斬さん」

 

「うん!」

 

そして五人は駆け出す、そして彼らはジェットコースターに飛び乗った…のではなく観覧車に乗り込んだ

 

「「「「「「アイエエエ!?カンランシャ!?カンランシャナンデ!?」」」」」」

 

「あ…ありのまま 今起こった事を話すぜ!あいつらがジェットコースターに行くのかと思ったらいつの間にか横の観覧車に走って行ってたんだ…ジェットコースターに乗るをやめて観覧車に乗りに行ったとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ…何だったんだ今のは?」

 

「わけがわからないよ」

 

KRS(観覧車リアリティショック)を発症する上条達にポルナレフ状態になる垣根…それを見て帆風は考えるのをやめた。そしてインデックス達は観覧車のゴンドラの扉を開ける…そして中にいたのはフィアンマ

 

「ドーモ、インデックス=サン。フィアンマだ」

 

「「いやそれ中の人繋がり!」」

 

「と言うか貴方誰ですの!?」

 

「あ、兄さんの知り合いの人」

 

「…神の右席のフィアンマ=サンだね」

 

某忍者死すべし慈悲はないの様な言い方をするフィアンマに神裂とステイルは声しか合ってないだろと叫ぶ、インデックスがフィアンマを見据えながら彼の名前を呟く

 

「ようこそバトルカンランシャへ…この観覧車では常に強者同士が戦いをゴンドラの中で繰り広げるバトルステージだ…お前達はこの俺様に勝てるかな?」

 

(私達が知ってる観覧車じゃない!?)

 

「ふ、やってやるんだよ…こちとら魔力が完全に戻って擬似魔神とか言われてるインなんとかさんなんだよ」

 

「ほう…少しは楽しめそうだ…このゴンドラが一周するまでお前達は俺様の前で立っていられるかな?」

 

フィアンマはこのバトルカンランシャは戦いの場…この自分に勝てるかと問いかけるとインデックスは不敵に笑う…今まさにここで魔術師同士の仁義なき闘いが繰り広げられるのであった

 

「ちょ!?待ってください二人共!こんな狭い場所で闘えばどうなるか…」

 

「ちょ!?インデックス!?竜王の殺息はこんな場所で使ったら…!」

 

「え?なんですのあの変な紋章と巨大な腕は…」

 

「はわわ…こ、こんな所でそんなものを使ったら……」

 

インデックスが聖ジョージの聖域を展開しそこから竜王の殺息を放とうとし、フィアンマも聖なる右を振るおうとする…だが忘れてはいけない、ここはゴンドラ、狭い場所である…こんな場所でそんな力を振るえばどうなるのであろうか?答えは勿論…

 

ーーードカーン!ーーー

 

インデックス達とフィアンマが乗っているゴンドラが大爆発を起こす、それを見た垣根はこう呟いた

 

「爆発オチなんてサイテー」

 

「いや言ってる場合ですか!?」

 

その観覧車で起こった爆発はその日のニュースになる程だった。なおインデックス達は無事で頭がアフロになるだけでそれ以外に損傷はなかった

 

 

 

 

 

 

「右方のフィアンマ、君が爆破した観覧車の修理代として一千万程払ってもらいたいのだが」

 

「待て!確かに俺様にも非がある!だが何故インデックスはこの場にいない!?あいつも一緒に破壊したのだが!?」

 

「彼女はか弱い乙女だから仕方ないのだよ」

 

「男女差別だ!理不尽過ぎるぞ!弁護士を呼べ裁判に訴えてやる!」

 

なお、窓のないビルでこんな会話があったとかなかったとか

 

 

 

 

 




こんなの遊園地じゃねえ…ごめんなさい、作者は遊園地あんまり行ったことがないんです。因みに作者は今日グランドゴルフで三年の部一位を取りました。チームが全員サボって自分一人なのに優勝しました。でも一年と二年に完敗しました…関係ない事を言ってすみません

次回はアウレオルスさんがメインです、バチカンでの彼と姫神さんのその後がわかる回にしたいです

次回もお楽しみに


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主人公になれた錬金術師とヒロインになれた原石

今回はギャグなのかシリアスなのか分からないあの二人の後日談、主人公になれなかった男とヒロインになれなかった女が主人公とヒロインになれた世界でのお話です

こんなんローマ正教の皆さんやない!て思った方は申し訳ありません。作者のキャラは大抵キャラ崩壊しているので…ではバチカンでの彼等の生活をお楽しみください


ここはバチカンの聖ピエトロ大聖堂。そこのある一室でアウレオルス=イザードが一冊の魔道書を書いていた

 

「…アウレオルス。ご飯持って来た」

 

「おお、すまんな姫神」

 

扉を開けて入って来たのは姫神、彼女は両手で盆を持ちその盆に昼飯を乗せてやって来たのだ

 

「ねえ。もう三日も部屋に閉じこもりぱなしだよ」

 

「む…そんなにもか…確かに言われてみれば…没頭し過ぎて気づかなかったな」

 

姫神がもう何日も部屋に閉じこもりぱなしで魔道書を書いていると言う。アウレオルスはもう三日も立っているのかと驚く

 

「少し休んだら?あまり書きすぎるなと教皇様に言われてた筈」

 

「嫣然、確かにそろそろ休むとしよう…身体を壊しては元も子もないからな」

 

アウレオルスは少し休むかと呟くと席を立ち姫神と共に部屋から出る…暫く廊下を歩くと広間に大勢の人数が集まっているのが見えた

 

「……アニェーゼ部隊か」

 

アニェーゼ部隊、ローマ正教の戦闘部隊にして聖ピエトロ大聖堂の守護を任されている部隊でもある。その部隊のリーダーはアニェーゼ=サンクティスという赤毛の少女だ

 

「アガター!動きが遅いですよ!カテリアも羞恥心を出すんじゃねえですよ!そんなんじゃあバチカン48に選ばれねえですよ!」

 

「……バチカン48?」

 

「えっとね。テッラさんが「ローマ正教にアイドルグループを作ってもっとローマ正教を世界に広めるのですよー」ていう考えを出してね。アニェーゼ部隊から48人アイドルに選ばれるらしいの」

 

アウレオルスがバチカン48とは何かと尋ねると姫神はローマ正教のアイドルグループだと教える、アニェーゼ部隊の面々は選ばれたいのか必死に踊りの練習をしている

 

「甘いですね皆さん、チョコラータ・コン・パンナよりも甘いですよ!ダンスていうのはもっと情熱的に!見せつける様に!」

 

「ダメですよ、シスターアンジェレネ。踊りとは可憐に美しく…そしてギリギリのエロスを見せつける事で男性の目を惹くんです」

 

「何故シスターアンジェレネはこんなにも上手いのですか!?」

 

「くそぅ!シスタールチアのエロさには敵わない!」

 

「……愕然、修道女がこんなのでいいのか?」

 

「……修道女は皆こんなんだと思う」

 

アニェーゼ部隊の中で特に激しく相手の目を惹き寄せるシスタールチアとシスターアンジェレネの踊りには周りのシスター達は嫉妬する、これでいいのかローマ正教

 

「あらあら、頑張っているみたいですねアニェーゼさん達…そんな皆さんにマカロンを持って来ましたのでございますよ」

 

「あ!シスターオルソラ!」

 

「やったーマカロンです!」

 

「感謝しますシスターオルソラ」

 

そんな彼女達にマカロンを差し入れに持って来たのはローマ正教の食事係担当の金髪の少女 オルソラ=アクィナス。ニコニコとアニェーゼ達にマカロンを配るオルソラ、そしてアウレオルスと姫神を視界に入れると笑顔で二人の元へと歩く

 

「三日ぶりなのでございますよアウレオルスさん、マカロンをどうぞ」

 

「ああ、すまないなオルソラ嬢。三日間で何か変な事はなかったか?」

 

「ええ、アニェーゼさん達は嬉しそうにご飯を食べるので作り甲斐があるのでございますよ」

 

「……会話が繋がらない」

 

「そうか…む、このマカロン美味しいな」

 

「困り事と言えば台所にGさんが出たのですが両手で掴んでキャッチアンドリリースしたのでございますよ」

 

アウレオルスと姫神にマカロンを渡すオルソラ、オルソラに何かなかったかとアウレオルスが尋ねるが全く別の話をするオルソラ…別に彼女は会話を無視してるとかではなく独自のルールで会話をしているので会話のリズムがつかめないだけである

 

「Gか…素手で掴むとは怖くないのか?」

 

「ええ、そのマカロンは学園都市から送られて来たレシピ通りに作ったのでございますよ」

 

(…あれ?これは一個前の会話をしてるの?)

 

「しかしアイドルか…上手くいくのか?」

 

「熱膨張て知っていますか?」

 

(やっぱりこの人の会話するの難しい)

 

アウレオルスはオルソラと平然と会話しているがオルソラの難解な会話を軽く進めるのは一種の才能である、それが出来るアウレオルスは凄いのだと姫神は思った

 

「快然、では私達は気晴らしに散歩にでもいく…マカロンは美味しかった」

 

「はい、Gさんは怖くないのでございますよ。でも流石にいきなり現れるとびっくりするのですよ」

 

最後まで会話が繋がらないオルソラと踊りの練習をするアニェーゼ達を後にし二人は聖ピエトロ大聖堂から市内へと足を踏み入れる

 

「怡然、ローマ正教は確かに変わっているな…昔とは大違いだ」

 

アウレオルスはそう誰にいうでもなしに呟くと街の中を歩く…そして辿り着いたのは街のお店の一つ「パン屋のテッラ」、その店にアウレオルスと姫神は入る

 

「いらっしゃいませなのですー…て、貴方達でしたか。何か買っていきますか?」

 

「…ではブドウジュースの瓶を二つ、それに魔道書を書く時につまみながら食べれるパンはないか」

 

「はいはいー、ブドウジュース瓶二つに仕事中でも食べれるパンですねー。それなら糖分も一緒に摂取できる砂糖パンがオススメなのですよー」

 

テッラは営業スマイルで二人に頭を下げ何を買うかと尋ねる。アウレオルスは仕事中に食べるパンとブドウジュースの瓶二つと言うとテッラは砂糖パンとブドウジュースの瓶二つを持ってくる

 

「砂糖パン一個で80円、ブドウジュース瓶二つで200円…合わせて280円なのですねー」

 

「あ。ついでにメロンパンも」

 

「はいなのですよー、なら合計360円になるのですー」

 

姫神がテッラに代金を渡す、テッラはニコニコと砂糖パンとブドウジュース瓶、メロンパンを手渡す

 

「で、どうですかー。バチカンでの生活には慣れましたか?」

 

「うん。もうすっかり慣れた」

 

「なら良かったのですー」

 

テッラがここでの暮らしには慣れたかと尋ねると姫神が慣れたと頷く、それを聞いてテッラは良かったと笑みを浮かべる

 

「莞然、また来る」

 

「ええ、仕事もいいですが身体を壊さないように気をつけてくださいねー」

 

アウレオルスがテッラにまた来ると言うとテッラが手を振る。アウレオルスと姫神がパン屋から出て次は何処へ行こうかと思考していると背後から誰かが走って来る音が聞こえ二人は振り返る

 

「うおおおおおぉぉぉ!!!」

 

獣の如き咆哮に似た叫びをあげながら走って来たのは後方のアックア、又の名をウィリアム=オルウェルと言う傭兵だ

 

「……アックア?」

 

「む、姫神秋沙とアウレオルス=イザードであるか、久しいであるな…だが私には今貴様達と話している時間はないのである」

 

「唖然、一体どうしたのだ?後方のアックアともあろう者が何に焦っているのだ」

 

「だから話している時間はないと…「ウ〜ィ〜リ〜ア〜ム〜」!?馬鹿な!全力疾走の私に追いついたのであるか!?」

 

アックアは二人がいる事に気づくと急停止して挨拶を交わす、アウレオルスが何故焦っているのかと尋ねるとアックアが何か言おうとすると何処からともなく声が聞こえアックアがビクッと震える

 

「うふふ…追いつきましたよウィリアム」

 

「だ、第三王女…」

 

その人物の名はヴィリアン、イギリスの第三王女である。民衆からの人気も高く『人徳』に優れると評される王女…の筈のだが彼女の目には一切の光がない…今の彼女には人徳溢れる王女には見えなかった

 

「もう逃がしませんよウィリアム〜」

 

「い、いかん、本気の目である!ここは逃げの一手…」

 

目がイッちゃってるヴィリアンにアックアは逃げようとするが誰かがアックアの両肩を掴む

 

「逃がさないし」

 

「諦めろウィリアム」

 

「な!?第二王女に騎士団長(ナイトリーダー)!?」

 

「また人が増えたね」

 

「愕然、何故王室派の王女二人と騎士派のトップがバチカンにいるのだ」

 

彼を押さえつけているのはヴィリアンの姉 第二王女のキャーリサとアックアの友人である騎士団長、アウレオルスはここバチカンだぞとツッコむ

 

「ありがとうございます、お姉様、騎士団長…これでもう逃げられませんよウィリアム」

 

「は、離すのである!このままでは私の貞操が奪われるのである!」

 

「はは、既成事実作って皇太子になればいいし」

 

「貴様それでも第二王女であるか!?」

 

アックアが離せと叫ぶがキャーリサは親指を立てて妹に襲われろといい笑顔になる

 

「良かったではないか我が友よ、傭兵から英国の皇太子とは逆玉の輿ではないか…しかもあんなにお美しい姫様と…羨ましいな死ね」

 

「辛辣であるな我が友よ!?」

 

「ええい、黙れ黙れ!このロリコンめ!私だってなぁ神裂嬢に結婚を前提で付き合いてえよ!あの歩く度に揺れる胸とか揉んでみてえよ!でも現実は非情なんだ!彼女はもうイギリスにはいない!こんな事になるなら告白しとけば良かった!」

 

「私はロリコンではないのである!ロリコンは貴様である!このロリコンめ!」

 

ロリコン同士の醜い言い争いが続く、だがこうしている内にヴィリアンはゆっくりと近づいていく

 

「…ねえ、ウィリアム…前にあった時…一ヶ月と5日と35分23秒前にあった時こう言ってましたよね?「8月17日にまた参ります」と…でも来てくれませんでしたよね?何でですか?ねえ何でですか?」

 

「そ、それは…」

 

「私待ってたんですよ?自分で貴方に食べて貰う為にケーキを作ってずっと…ずぅぅと待ってたんです…なのに来てくれなかった…許しませんよ」

 

(……これが噂のヤンデレ?)

 

もう完全にハイライトオフになっているヴィリアンに二重聖人であるアックアは恐怖に駆られる

 

「思えば10年前に貴方をイギリスから逃がしたのが失敗でした…でも今度は逃がしません。垣根君にその事を相談したら彼はこう言いました…「え?好きな男とくっつきたい?既成事実作ればいいんじゃないんすか」と…」

 

「あの野郎ッ!第二王女がこうなったのも全て垣根帝督のせいであるか!今度アスカロンで垣/根にしてやるである!」

 

ヴィリアンがヤンデレ化したのは垣根の所為と知ったアックアは今度アスカロンで垣/根にしてやると叫ぶ

 

「ねえウィリアム?私じゃダメなんですか?自慢じゃないですけど私お嫁さんとしての条件は最高だと思うんです」

 

「そうだし、技量も容姿も財力も権力も全部完璧だし」

 

「それに一途にお前の事を思ってくれる女性だ。こんな女子はそうそういないぞ…ほらやっちまえよウィリアム。男なら本能のままに欲望のままに獣の様に盛っちまえよ」

 

「お前そんなキャラだったであるか?…だが確かに第三王女は美しいし結婚後の生活も安定が約束されているのであるな」

 

もうキャラ崩壊を起こしている騎士団長にツッコむアックア、だが確かにヴィリアンは可愛いし王家の人間だから金もあるし老後も安心だとアックアは考える

 

「そうでしょう、だから私と一緒にイギリスに参りましょう。国を挙げての結婚式も挙げましょう」

 

ニッコリと年相応の笑みで微笑むヴィリアンにアックアも笑みを浮かべ…そして口を開いた

 

「だが断る」

 

「え?!」

 

「この後方のアックア、こんな展開に流される様な軽い男ではないのである」

 

((何故このタイミングで岸辺露伴?))

 

キリッとした顔で某スタンドの漫画家のセリフを吐くアックア、それを聞いて驚くヴィリアンと何故このタイミングでそれを言ったと訝しむアウレオルス達

 

「悪いがその誘い…断らせてもらうのである」

 

「な!?貴様逆玉の輿を棒に振るのか?!」

 

「分かっていないであるな我が友よ…確かに第三王女の気持ちは嬉しい…だがタイミングが違うのだよ」

 

「タイミング…?何を言ってるし」

 

アックアがタイミングが違うと言うと押さえつけている二人が首を傾げる。そしてアックアはこう呟く

 

「プロボースをするのは私からである、夕日をバックに海岸で100本のバラの花束を第三王女に渡す…それが私なりの告白の仕方なのである」

 

「「ベタだな、おい」」

 

「…案外。乙女チック」

 

アックアが自分から告白したいと言うとキャーリサと騎士団長がありきたりな告白だなとツッコむ

 

「…分かりました」

 

(む、やけに素直であるな)

 

ヴィリアンが小声で分かったと呟くとアックアが物分かりがいいと考えた…だが

 

「ならウィリアムの四肢の骨を砕いて動けない様にしてそのまま既成事実を作っちゃいます♪」

 

「全然分かってなかったである!?」

 

「もう激おこぷんぷん丸です、来てくださいエクスカリバー」

 

黒い笑顔で四肢の骨を砕くとエゲツない言葉を吐くヴィリアンにアックアはええ!?と叫ぶ、そして彼女がエクスカリバーと言うと空から英国紳士の様な服を着たアリクイの様な生物が落ちてくる

 

「ヴァカめ!紹介が遅れたな。私がエクスカリバーである!」

 

「この子は新たなる光の子達が発掘したのを私が脅し取っ…献上された品なんです」

 

その生物の名はエクスカリバー、あのアーサー王が所持していたとされる聖剣である…何故か騎士団長と声が似ているが…気にしないでおこう

 

「さて、力貸してもらいますねエクスカリバー」

 

「ヴァカめ!小娘が!私を使うのなら1000ある項目を守って…」

 

エクスカリバーが自分を扱いたいのなら1000ある項目を守れと言おうとした瞬間、ヴィリアンが思い切り足を地面に叩きつける。それだけで地面に亀裂が入る

 

「…もう一度だけ言います。力貸してもらいますね」

 

「ア、ハイ…ドウゾオ使イクダサイ」

 

エクスカリバーはヴィリアンに恐怖し片大人しく剣の姿になる、ヴィリアンはそれを握ると背中から白い翼を生やす…その姿は天使の様…ただしやってる事は堕天使である

 

「行きますよ〜」

 

「な!?なんであるかこの膨大な魔力は!?」

 

((あれ?これ私達も巻き込まれるパターン?))

 

ヴィリアンはエクスカリバーを両手で構え頭上に翳す、剣に膨大な魔力が集っていき焦るアックア、そして完全にとばっちりを受けるであろうキャーリサと騎士団長

 

「アウレオルス!助けてくれである!私を黄金錬成でこの場から何処かへ転移して…」

 

「私と姫神を別の場所へと移動させよ」

 

「バイバイ」

 

「逃げたである!?」

 

アックアはアウレオルスに助けを求めるがアウレオルスと姫神はアックアを見捨てて黄金錬成で何処かへ消えていく。そしてヴィリアンはエクスカリバーを大きく振りぬく

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー)!」

 

「「「いやそれ腹ペコ王の宝具…」」」

 

チュドーン、と擬音を立ててバチカンのとある市内に大爆発を起こした

 

 

 

「…颯然、今日もバチカンは平和だな」

 

「うん。とっても平和」

 

アウレオルス達は先程の事はなかった事にして散歩を続ける、そして暫く歩くとバチカンの子供達がサッカーして遊んでいるのが見えた…それだけならよくある風景なのだがそのサッカーをしている子供達の中に自分達が知っている人物がいた

 

「マタイ!パスするぞ!」

 

「分かった!」

 

「「何やってんのローマ教皇」」

 

ローマ教皇であるマタイ=リースが子供達と一緒にサッカーをして遊んでいた、いい年の爺さんが何やっんだ

 

「さあ来い教皇!このペテロが見事止めてみせましょう!」

 

「「あんたも何やってんだ」」

 

そして教皇の敵チームのゴールキーパーを務めているのは枢機卿のペテロ=ヨグディス。ローマ正教の偉いさんが揃いも揃って何やったんだか

 

「ふ…甘いな…ヘブンズタイム!」

 

マタイが指を鳴らすと辺りの時間が止まった…もしくはマタイの動きが高速化しているのか相手の動きが低速化しているのか…どちらにせよ敵チームの動きが固まりマタイはその間をすり抜ける。そしてヘブンズタイムが終わると子供達が吹き飛ばされる

 

「ゴッドノウズ!」

 

「守り切ってみせる!ゴットハンドぉぉ!!!」

 

マタイが蹴ったボールがゴールに向かっていきペテロは巨大な手を具現化させボールを受け止める…しかし呆気なく破られペテロは吹き飛ばされボールはゴールに入ってしまう、そこで試合終了のホイッスルが鳴る

 

「凄えなマタイ!どうやったらあんな技できんだよ!?」

 

「ふ…年の功だな」

 

「マタイ!次はスマ○ラしようぜ!」

 

「いいだろう、私はスマ○ラも強いぞ」

 

「ぐ…また負けてしまったか…だが次は負けぬ!そして次のローマ教皇はこのペテロ=ヨグディスだ!」

 

子供達に凄いと言われるマタイ、マタイは次は子供達と一緒に室内で学園都市から送られた超能力大バトル スマホブラコン…略してスマ○ラで遊ぶ為に何処かへと歩いていく…その後をペテロが追う

 

「……バチカンは平和だな」

 

「うん。いつもと変わらない」

 

二人はまた見なかった事にした…そして暫く歩いていくと街中が少し騒がしい事に気づく、よく見ると町の人達が町の広場に集まって騒ついていたのだ

 

「?慨然、何かあったのか?」

 

アウレオルスと姫神は騒ぎの中心へと歩み寄る、そして広間の中心にいたのは…豚の丸焼きの様に木の棒に括り付けられて火で炙られているリドヴィア=ロレンツェッティだった

 

「「どういう状況!?」」

 

思わず叫ぶ二人、リドヴィアを火で炙っているのは前方のヴェントだった

 

「お、アウレオルスじゃない」

 

「愕然、これは一体どういう事だ」

 

「いやさぁ〜、こいつが幻想殺しの父親にイタリアで霊装を渡したらしくてさ〜。こいつの所為で御使堕しが間接的に起こったらしいから制裁加えてんのよ」

 

ヴェントはアウレオルスに此間起こったという御使堕しはリドヴィアが刀夜にイタリアで渡した霊装が間接的だが関わっていた為制裁を加えているのだと言う

 

「一応あいつも悪気があったわけではないし、あの事件はあくまで偶然…だから別に殺すとかしないけど」

 

「それなら良かった」

 

「まあ…あいつには火炙りなんて逆効果かもしれないけどね」

 

アウレオルスが殺す気はないと知って安堵する、だがヴェントは冷たい目でリドヴィアを見つめる

 

「火炙りとは…まるで聖女ジャンヌ=ダルクの様ですね!ですがまだ足りません!アイアンメイデンでも持って来なさい!痛みを受けてこそ人は初めて罰を知る!さあもっと激しい痛みを私に!」

 

「……もうやだこのドM」

 

火炙りにあっているリドヴィアは涎を垂らしながら人に見せられない笑みを浮かべもっと痛みを!と叫ぶ。流石告解の火曜(マルディグラ)、生粋のドMである。これを見て流石のヴェントも頭を抱える

 

「……バチカンにはまともな人物などいないのだな」

 

「…同感」

 

ローマ正教は変人しかいないのかと頭を抱える二人、唯一まともなのはテッラぐらいである。他には存在がセクハラなお姉さん(オリアナ=トムソン)魔草調合師のシスター(バルビナ)等ローマ正教はあのアクが強い面々が揃っている…その中でも特に個性が強いのはあの司教(ビショップ)だろう。因みに彼が異教徒の討伐に行った際この様なセリフを言ったという

 

 

『我らは神の代理人。神罰の地上代行者。我らが使命は、我が神に逆らう愚者を、その肉の最後の一片までも絶滅すること。AMEN(エイメン)!!』

 

 

「まさか司教なのに銃剣での白兵戦が得意だとは思わなかった…しかも爆弾から聖書を用いた魔術、それにメノラーを使った魔術は強いの一言だ」

 

ビアージオ=ブゾーニというローマ正教の司教ははっきり言って人外だ、魔術師だというのに銃剣を用いた白兵戦から聖書の書面を分解し魔術を起動する、更にメノラーを使った魔術でローマ正教の敵を屠る男である、その実力は高く彼を相手にするのは聖域を敵に回す様な物、神の右席とも互角に戦える程と言えばその実力がわかるだろう

 

「そしてついた異名がアンデルセン神父」

 

「いやそんな異名聞いた事がないのだが」

 

アイアンメイデンに自ら入ろうとするリドヴィアを必死に止めるヴェントを尻目に二人は広場から離れる、気分転換の散歩の筈がツッコミしかしてない様に感じてきたアウレオルスだがふと街中である人物を発見する

 

「おい、そこの老婆よ…俺様がその荷物を持ってやろう」

 

「え?でも重いですよ?」

 

「ふ、構わん」

 

「まあ、優しいねぇお兄さん」

 

フィアンマが重たい荷物を風呂敷に包んで背中に背負っているお婆さんに荷物を持ってやると言う、そして右肩から第三の腕を出しお婆さんの荷物を持つ

 

「力持ちだねぇ」

 

「それ程でもない…俺様の聖なる右は全てを救済するのだからな」

 

((いや使い方))

 

聖なる右をお婆さんの荷物を持つ為だけに使うフィアンマ、あまりにもしょうもない使い方にアウレオルス達は別の使い方があるだろとツッコむ

 

「しまった…うっかり高い所に荷物を置いて下ろせなくなっちゃった」

 

「俺様が取ってやろう」

 

「あ…風船が飛んでちゃった…」

 

「ほら、もう手を離すんじゃないぞ」

 

「あ〜背中痒い…でも手が届かない…」

 

「俺様が背中を掻いてやろう」

 

((使い方が地味すぎる))

 

フィアンマは第三の腕を駆使して高い所の物を掴んだり、空へと上がっていく風船を掴み取る、背中を優しく掻く…世界を救う力がこんな風に使われているのかと二人は思った

 

「ふぅ…いい事をした後の汗は格別だな」

 

「唖然、清々しい笑顔だな」

 

「あれだけの力があるのに。扱い方が間違ってるね」

 

右方のフィアンマ、彼は実力と能力だけなら高いポテンシャルなのだが能力の使い方を間違っている事で有名な男である、その世界を救える聖なる右を荷物運びや背中を掻く事にしか使わないのだ。戦う事も滅多になく使うとしても空間移動のみ…つまりアホの子である

 

「お疲れ様です、とミサカはお仕事終わりのフィアンマさんにコーヒーを渡します」

 

「すまんな13857号、やはり仕事終わりのコーヒーは最高だな」

 

彼にコーヒーを渡したのは妹達の一人でローマ正教のアニェーゼ部隊に所属するミサカ13857号。フィアンマは彼女に礼を言うとコーヒーを飲み干す

 

「…確か彼女は御坂美琴のクローンだったな」

 

「うん。他にも01253号とか00081号とかも。アニェーゼ達の部隊にいた筈」

 

アウレオルスと姫神は13857号を見てそう呟く、学園都市からの魔術の研修という事で何人かの妹達がバチカンに来ており13857号はその内の中の一人である

 

「いつもすまんな13857号よ」

 

「い、いえ…ミサカがいつも勝手にしてるだけですから…とミサカは顔を逸らします」

 

「?…何故顔を逸らすんだ?」

 

「な、なんでもありませんとミサカは更に顔を顔を逸らします」

 

フィアンマがイケメンスマイルを向けると顔を赤くして顔を逸らす13857号、フィアンマは何故顔を逸らすのか理解出来ない

 

「…喟然、見てみろ姫神…あれが恋に鈍感な男だ」

 

「顔を赤くしてても。気づかないものなんだね」

 

アウレオルスと姫神がフィアンマと13857号を見てそう呟く、もしやフィアンマはカミやん病に感染してるのではないだろうか?

 

「さて…そろそろ帰るとするか」

 

「ん。わかった」

 

アウレオルスは腕時計で時間を確認しそろそろ仕事に戻ろうと呟く、姫神は頷き聖ピエトロ大聖堂へと戻る為歩き始める

 

「……ねえ、アウレオルス」

 

「空然、なんだ?」

 

「バチカンでの生活はどう?前より楽しい?」

 

「……莞然、そうだな。確かに昔より楽しいな、昔と違ってローマ正教も丸くなっていたからな」

 

姫神はこの生活は楽しいかと尋ねる、それに対しアウレオルスは笑ってこの生活に充実していると呟く

 

「……私は感謝している、あの超能力者達に。彼等がいなければ私はインデックスを救う事も出来なかったのは愚か、人として踏み外してはいけない場所に行っていたかもしれない」

 

「……そうだね」

 

「だが、私はインデックスを救った後一瞬思ってしまったのだ…インデックスを救うのが私の目的なら…それを終えてしまったら何をすればいいのかと」

 

アウレオルスは言葉を続ける、垣根達が自分を止めていければインデックスの救いになる事は愚か、踏み外してはいけない一線を超えていたかもしれない。だが彼は救い終わった後こう思った…自分の目的が終わったら次は何をすればいいのかと

 

「だが、その考えはすぐに消えた…姫神、お前のお陰だ」

 

「……私?」

 

「ああ、インデックスを救った後は君を立派な魔術師…いや魔法使いにしてみせる。それが今の私の目標だ」

 

アウレオルスは自分の次の目標は姫神を彼女が夢見た魔法使いにするという事だった、それを聞いた彼女は笑う

 

「……ありがとう」

 

「感謝をするのは私の方だ」

 

彼等は互いに笑い合う、その光景は正しく主人公とヒロインの物語の一場面の様だった。この話は主人公になれなった男とヒロインになれなかった少女が主人公とヒロインになれた物語である

 

 

 

 




主人公になれたアウレオルスさんとヒロインになれた姫神さん…この人達はもうヘタ練と■■とは言わせない。これからも彼等はこんな穏やかな生活を続けていくのでしょうね…アウ姫流行れ〜

そして次回から新章 天使崇拝編スタート!ていとくんの宿敵が登場、そして追い詰められるていとくん、その時帆縦ロールちゃんは……

次回もお楽しみに


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大抵漫画やらラノベの主人公は暗い過去を背負っている

お待たせしました。数学のテストで何故か107点をとった作者です(自慢)

さあ新章天使崇拝編スタートです、序盤は戦闘シーン皆無です(戦闘そのものはないとは言っていない)。今回は少し暗い描写あり、最初の方は原作の旧約17巻風です。最後ら辺は旧約12巻の数多さん戦を参考にしました

今回の章はインデックス達の出番が少なめかも…でもちゃんと出てくるから安心してくださいね。そしてこの章のラスボスキャラが強すぎる。いや単純な攻撃力なら自動書記とアウレオルス、ガブリエルの方が上ですが厄介性が今までと段違いな上対能力者殺しに特化されてるからな…魔改造し過ぎて誰だお前状態のあの人です

病理さん@(戦闘描写を)がんばらない


天使はこの世界を愛している、その世界に住む人々が好きだった。だから天使は人々に救いの手を差し伸べた…この世界をより良くする為に天使は自らの力を使う

 

天使は救われぬ者すら救ってみせる、天使はどんな者にも無償の愛(アガペー)を与える。天使はその愛の返しを求めない、ただ無償の愛を与えた者達が幸せならそれでいいのだろう

 

天使は全てを救済する、それが天使の神命、それが彼の生きがいである。神が見捨てた存在だろうが決められた運命だろうがそれを壊して天使は彼等を救ってみせる

 

だがその全てを救う天使は一体誰が救ってくれるのだろうか(・・・・・・・・・・・・・)

 

天使ですら解決できない何かに襲われた時、または天使が救いを求める時、一体誰が天使を救うのだろうか?誰が天使の心の空白を満たすのだろうか

 

天使は多くの苦しみと苦痛を胸に抱えながらそれを隠して今日も人々を導く、だがそんな中でも天使の苦しみは消えない。天使は自分の行なっている事が正しいのか自信を持てない、単なる偽善かもしれない、寧ろ悪化されているだけかもしれない…そう思っている、何故なら誰かにそれを証明してもらう事など出来ないのだから

 

天使は心の中で涙を流す、その涙を止める者はいない、そして天使は等々悪魔に追い詰められてしまう。その悪魔は天使に虚言を吹き込み天使を堕天させようとし天使はその虚言に誘われるがまま深き闇に堕ちるかに見えた…

 

だがそんな天使の元に一人の少女が現れた、彼女は天使に救われた者にして天使に無償の愛を与える者。彼女は優しく微笑みながら天使に手を伸ばしたのだ…その者の名は……

 

 

 

 

銃撃音が鳴り響く、荒れ狂う銃弾、流れる血…そこはまさに戦場だった

 

「閃光弾を投げろオーソン!オラフとルルは射撃を続けろ!ナンシーとロッド、ヴェーラ、ケインズは射撃を中止!デニスとマイクは閃光弾で視界が塞がれた時に手榴弾を投げろ!」

 

その戦場で兵士達がある男の指示によって相手へと攻撃する、その男は木原数多。そしてこの兵士達は数多が率いる猟犬部隊(ハウンドドッグ)のメンバー達。彼らは学園都市に侵入して来た連中と交戦をしていた

 

「数多さん!何なんですかこいつらの兵器…いやあの仮面(・・)は!?」

 

「……チッ、第一位が危惧してた事が実際に起こっちまったみてえだな」

 

その侵入者達にはとある特徴があった、全員金と白で彩られ、縦の長さが顔の二倍以上ある異様な仮面を被っているのだ。その仮面には目や口のための穴は存在せず仮面全体が携帯電話のLEDデコレーションの様に発光し、複数の色の光で模様を描いていた。そしてその仮面には光でこう書かれていた「Equ.DarkMatter(・・・ ・・・・・・・・・・)」と

 

「……帰ってきやがったんだ、あのイカれ女が……クソッタレめ」

 

数多は吐き捨てる様に呟くと肩に担いだロケットランチャーからロケット弾を発射、それを仮面の男達は仮面の中心部から飴細工を伸ばしたかの様な不自然な広がり方をする生物的な翼を発生させロケット弾を斬り裂く

 

「撤退だテメェら!あの兵器には俺らじゃ敵わねえ!ここは引くぞ!」

 

「「「「「「「「「了解!」」」」」」」」」

 

数多達はこの男達には敵わないと見ると即座に逃げの一手を選択する、男達は仮面から発生させた翼で攻撃する、または銃を乱射し猟犬部隊を攻撃するが彼らはそれを躱して逃げ去っていく

 

「……撃ち方やめ」

 

「いいんですか?」

 

「クライアントの目的はあいつらの始末ではない。我々の目的は別にある…ここで無駄な時間を費やす暇はない」

 

「「「「了解」」」」

 

男達はそのまま仮面から発生させた翼を広げ空を飛び何処かへと飛び去っていく、それを確認した数多は携帯を取り出しある番号にかける

 

「……よお、幻生の爺さんか?」

 

『やあ、数多君。何の用かね?』

 

「ああ…今すぐ乱数や唯一、加群達を集めてくれ。あの女が…木原病理(・・・・)が帰ってきやがった」

 

 

 

朝8時、第七学区のとあるファミレスにて超能力者達は雑談を話して合っていた

 

「やっぱりファミレスでは鮭弁に限るにゃーん」

 

「唐揚げ定食美味いな!」

 

「コーヒー美味ェ」

 

「え!?スパリゾート安泰泉でスタンプ10個を集めると湯上りゲコ太が貰える!?第二十二学区に行かなきゃ!」

 

「あ、じゃあ私と美琴が一緒に行けばポイント2倍だから簡単に手に入るんじゃないぃ?」

 

「銭湯か…俺も行ってみようかな、でも寮監さんはそういうの厳しいから見つかったらヤバイんじゃないか?」

 

「コットンキャンディーソーダ最高!」

 

(安定のカオスですね)

 

唯一の常識人である帆風は超能力者の会話は安定して混沌と化していると内心で呟く

 

「しっかし明日から新学期か…夏休みも今日で終わりか」

 

「案外、短かった気がするわねぇ…ま、私達みたいに夏休みで死にかけた子達はいないでしょうけどねぇ」

 

「でしょうね、擬似魔神やら錬金術師、挙げ句の果てに天使ていう人外と夏休みに戦った人達なんて私達くらいよね」

 

上条が今日で夏休みが終わり明日から新学期かと呟く、食蜂と美琴がこの夏休みに濃い体験をしたのは自分達だけだろうと笑う

 

「10万3,000冊の魔道書を記憶してるインデックスに世界を言葉で歪めるアウレオルス、そして天界から堕ちてきたガブリエル…私らも随分オカルトに染まってきたもんだね」

 

「だな、しかし世界てのも広いんだな…学園都市の超能力者の力が通じない様な敵が沢山いるんだからな」

 

「だなァ…俺の反射が相手に跳ね返らねェわ、反射が破られるわ…魔術てのは本当に厄介だな」

 

麦野が科学サイドの自分達がいつの間にか魔術にドップリ浸かってると複雑な笑みを浮かべながら鮭弁の鮭を食う、削板も箸を止めて今までの敵の事を思い出す。一方通行もどの敵も自分の反射を突き破ってきたのを思い出し顔をしかめる

 

「いや、インデックスやアウレオルスも強いけどあいつらよりまだ強い奴いるぞ。存在自体が無限とかいうオティヌスとは一線を画す本当の魔神達、それに女狐ことコロンゾン、それにエイワスにエイワスを従える幼女とかまだまだ沢山いるぞ」

 

「なんですかその方々は…もう設定というか…色々とおかしくないですか?」

 

垣根がまだまだ強い敵は沢山いるぞとエイワスやコロンゾン、魔神といった強いとかそういった次元ではない敵の名前を言う。帆風は勝てる気がしないと半笑いしながら呟いた

 

「まあ、俺らは平凡な学生だったのにそんなオカルトに突っ込むなんてちょっと前までは想像出来なかったよな」

 

「いやいや、超能力者て時点で平凡な学生てのは無理があるでしょ先輩」

 

「そうよぉ、電撃を操る中学生とかビームぶっ放すおばさんとかの何処が平凡なのかしらぁ?」

 

「おい、さりげなくディスったな食蜂。後で食/蜂にしてやるからな」

 

上条が平凡な自分達がこんな漫画染みた出来事に関わるなんて、と呟くが美琴と食蜂は自分達の何処が平凡なのだと笑う

 

「ま、そう言っちまえばそうなんだけどさ…まだ超能力は科学で証明できると思ってたから気にしなかっただけだからな」

 

「ま、今日は夏休み最後の日なンだ…何も起きねェだろうな」

 

「そんな事よりこの後何処に行くんだ?」

 

「そうね…カラオケとかどうかにゃーん?」

 

上条がそう言って笑うと一方通行も苦笑する、削板がこの後何処へ行くと尋ね麦野がカラオケでも行くかと提案する

 

「あらぁ?紅茶を全部飲み切っちゃったわぁ…ドリンクバーで淹れてこなきゃ」

 

「あ、でしたらわたくしが淹れてきましょうか?わたくしも丁度ドリンクバーへ行こうとしていたので」

 

「いいの?潤子先輩優しい〜☆」

 

食蜂が紅茶を飲み切ってしまったと呟くと帆風が自分が紅茶を淹れてこようかと言う、食蜂は助かると言って自分のコップを帆風の元へと移動させる

 

「じゃあ、俺のも頼むわ。俺はコーラで」

 

「俺はコーヒーなァ」

 

「私はメロンソーダな」

 

「私はアップルジュースでお願いします」

 

「俺はトマトジュースで頼む!」

 

「あ、じゃあ俺はアレイスターが入ってたビーカーみたいな容れ物の中に淹れてた液体を頼む」

 

「「「「「「ねえよそんなドリンク」」」」」」

 

食蜂に続いて他の超能力者達もドリンクバーで自分達の飲み物淹れてきてと言う、自分のコップと超能力者7人のコップ…合わせて8個のコップを帆風はお盆に乗せてドリンクバーへと向かう

 

「えっと…コーラとコーヒー、アップルジュースにトマトジュース…後はメロンソーダと紅茶…わたくしはブドウジュースで…垣根さんの言っていた飲み物は…」

 

帆風はポチポチとボタンを押してドリンクをコップに淹れていく、そして全員の分を入れると盆を持って席に戻ろうとする

 

「てか垣根、お前帆風の気持ちにまだ気づいてないのかにゃーん?」

 

(?麦野さん?)

 

席に近づくと麦野が垣根に話しかける声が聞こえ、帆風は自分達が座っていた所の近くにあった柱に隠れ聞き耳をたてる

 

「あ?何の話だ?」

 

「…おィていとくン…流石に気づけよ」

 

「全くだな、あんなけの態度とっておいて気づかないとか…普通気づくだろ」

 

「「先輩/上条さんは黙ってくれませんか」」

 

「なして!?」

 

一方通行が気づかないのかと溜息を吐き上条が流石にあり得ないと呟く、だが彼女二人はこの件に関しては黙っててと言い上条が何でと叫ぶ

 

「?何の話だ?」

 

「いやお前も気づいてなかったのかよ…」

 

削板だけが何の話なのかと目をパチクリさせ麦野は気づいてなかったのかとツッコむ

 

(皆さん何を話しているのですか?わたくしの気持ち………は!まさか!?)

 

帆風は物陰で何の話だろうと思考し…もしや自分が垣根の事が好きだと言う事をバラそうとしているのではと考えつき顔を赤くする

 

「ほらほら、早く気づかないと答えをバラしちゃうぞ?早く答えろにゃーん」

 

(むむむむ麦野さん!?なに乙女の秘密バラそうとしてるんですか!?)

 

「このカプ厨さんは帆風先輩の気持ちに気付いた時どんな反応力をするのか見ものなんだゾ☆」

 

(完全にイジる気満々じゃないですか女王!は、早く席に戻ってこの会話を中断しないと…)

 

麦野と食蜂がニヤニヤと笑って帆風の秘密をバラそうとし帆風は止めなければと足を一歩前へ踏み出そうとしたその時、垣根が口を開いた

 

「……あ、もしかして縦ロールちゃんが俺の事好きだって事?」

 

「そうそう、それだよ……今なんて言った?」

 

「いやだから縦ロールちゃんが俺の事好きだって事だろ?んな事最初から気づいてたぞ」

 

「「「「「……え?」」」」」

 

(………ふぇ?)

 

垣根が帆風が自分の事が好きだと気づいていたと言うと超能力者達は動きを制止する、帆風も驚きのあまり固まってしまった。暫くたって超能力者は驚愕の顔になる

 

「え!?おま、気づいてたのか!?」

 

「当たり前だろ、あんな反応されて気づかない方がおかしいだろ…え?何?実は縦ロールちゃんは俺に惚れてませんとかそういう流れ?」

 

「いや違わねェけど!ていとくン気づいてたのかよ!?こういうの普通気づかねえもんじゃねェのか!?」

 

「いや気づくだろ普通…ラブコメの主人公じゃねえんだからさ…あれだけの反応をして気づかない奴がこの地球上の何処に……あ、当麻か」

 

「いやいや俺でも気づきますよ!?」

 

全員が気付いてたのかと叫びだし、垣根はあれで気づかないのがおかしいと呟く。あれで気づかないのは(原作の)上条だけだ

 

「いやお前ミコっちゃんとみさきちと付き合う前からフラグ立てぱなしじゃねえか。お前が付き合ったと聞いた時の女子の荒れっぷりときたら…芹亜の怒り狂った姿は流石に哀れんだわ」

 

「え!?嘘そうなの!?知らないんだけど!?てか雲川先輩も俺の事好きだったの!?」

 

「「ちょっと先輩/上条さん、一旦表に出ましょうか」」

 

「ひぃぃぃ!?我がエンジェル達の目がハイライトオフ!?」

 

垣根が二人と付き合う前からモテてたぞと教えると上条は嘘!?と驚く、それを聞いた美琴と食蜂はハイライトオフにして上条の襟首を掴む

 

「……え?潤子は帝督の事が好きだったのか?初耳だ」

 

「削板さんは馬鹿だから仕方ないわぁ」

 

「まあ、脳が筋肉で出来てるから仕方ないわね」

 

「だから彼女が出来ないんだにゃーん」

 

削板が帆風が垣根に惚れていたのかと驚き女性陣は気づかなかったのかと白い目で削板を見る

 

「…で、どうやって気づいたんだ?」

 

「いやさ、会う度に朗らかに笑うくらいなら好きて気づかないだろうけどさ…ちょっと褒めたり撫でるだけで顔を赤くしたり二人きりになると緊張してたりしたら流石に気づくだろ」

 

(わぁぁぁ!!バレてました!恥ずかしい!)

 

「それに俺だけお前らと扱いが少し違ったからな、恋する乙女だってバレバレ」

 

(いやぁぁぁ!それ以上言わないでくださいまし!)

 

垣根の言葉が帆風の胸に刺さる、顔を両手で塞ぎたくても盆を持っている為塞げず顔を羞恥で真っ赤にしていく帆風

 

「ならなんで付き合わないのよ…下品に聞こえるかもだけど…帆風の身体て中学生とは思えねえスタイルの良さだろ?ああいうの好みじゃねえの?」

 

「そうよぉ、それにアレだけのボインボイン…男なら揉みほぐしたい欲情に駆られる筈なんだゾ」

 

「それは一理あるわね、私も操祈の胸を揉みほぐしたいし」

 

「俺は美琴のちっぱいでも操祈のデカパイでもバッチコイです」

 

麦野がああいう女子が男子の好みだろと呟き食蜂がいやらしい手つきで胸を揉みたくないのかと尋ねる、その質問に対し美琴と上条はキリッとした顔で「自分達は揉みたいです」と言い垣根は冷たい目を二人に向けた

 

「もしかしてていとくンてホモ…」

 

「俺はホモじゃねえ。ま、カップリングとしてならBLでも百合でも構わねえがな。だが俺はホモじゃねえ」

 

「いやそれでも十分アウトだと思う」

 

一方通行がもしや垣根はホモかと言うが垣根は自分はホモではない、だがカップリングとしてならBLや百合も受け入れると言っている時点でアウトだと上条は思った

 

「ならなんで潤子と付き合わねえんだ?まさか帝督の好みじゃないとか?」

 

「いやそうでもないさ、寧ろドストライクな」

 

(!ど、ドストライク!?わたくしが!?)

 

削板の問いに垣根は好み中の好みと笑って返すと帆風は目を見開く

 

「てかさ、あんだけのわがままボディを俺の体に押し付けてきたりして興奮しねえわけねえじゃん、お化け屋敷の時とか内心ドキドキしてたしな。後水着とか着物とか似合ってたし…あれ程可愛い子は学園都市でも少ねえからな」

 

(…今までの努力は全て無駄ではなかったのですね)

 

「ママ〜なんであの人泣いてるの?」

 

「あれが青春なのよ、しっかり目に焼き付けておきなさい」

 

垣根はいつもドキドキしてたし海に行った時の水着とか夏祭りの着物は最高だったと呟くと帆風は努力してよかったと涙をこぼす

 

「それにこの中の女子じゃ唯一異性として見られるからな」

 

「?それはどういう事かしらぁ?」

 

「いやだってさ…みさきちとミコっちゃんは当麻の嫁だし、むぎのんは浜ちゃんの嫁だろ?手を出せるわけないじゃん」

 

「だだだだだ誰が誰の嫁だって!?巫山戯た事言ってんじゃねえぞカプ厨が!」

 

彼氏持ちの美琴や食蜂、浜面が好きな麦野は恋愛の対象外なので帆風しか異性として見ていないと呟く垣根、それを聞いて帆風は両手が塞がれていなければガッツポーズを取りそうだった

 

「ならさっさと付き合っちまえよ、そして俺らが毎日それを弄ってやるからさ」

 

「……無理だな」

 

「は?何言ってやがンだていとくン。さっきまで好みだのドストライクて言ってたじゃねェか」

 

「無理だよ、俺じゃあ彼女に釣り合わない(・・・・・・・・・)

 

(……?垣根さんがわたくしと釣り合わない?わたくしが垣根さんと釣り合わないではなくて?)

 

上条がさっさと付き合えと言うが垣根は首を振る、自分では彼女と釣り合わないと言って…その言葉に帆風は疑問に思った

 

「は?お前が帆風と釣り合わねえだ?いやいや…十分過ぎるだろ?お前は超能力者の第一位だ。言い方は悪いかもしれねえが帆風は大能力者だ…寧ろ帆風が釣り合ってない気がするんだが…でもまあ私的にはレベルの差なんて関係ないがな」

 

「…そうじゃねえよ…俺に問題があるからだよ」

 

「それて…垣根さんがカプ厨だからとか?いいじゃないカプ厨が恋したって」

 

「……違えな、全然違えよ」

 

麦野が不可解そうな顔をし美琴がカプ厨だからかと尋ねるが垣根は首を振るばかり、垣根のそんな態度に超能力者達は若干ムカムカする

 

「いいから早くその理由を言えよ」

 

上条がキレ気味に早くその理由とやらを言えと呟く、帆風もその答えが気になって必死に耳をたてる

 

「縦ロールちゃんは光の世界の住人だ…闇の世界に生きる俺とじゃダメんだよ」

 

「…闇の世界?何厨二染みた事言ってんだこのクソメルヘンは…」

 

「今みたいに友達として仲良く駄弁るくらいならいいかもしれねえ…だが深い所まで来たら…危ねえだろ」

 

「いやだから何の話をしてるんだよ」

 

闇の世界の住人である自分と光の世界の住人である帆風とでは一緒になれないと呟く垣根、麦野と上条が怪訝な顔をしていると垣根は口を再び開いた

 

「なあ…俺が死体の山が出来るくらい人を殺してきた(・・・・・・・)…て、言ったらどうする?」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

(……え?)

 

垣根が自分が人を殺してきたと呟く、それだけで周囲の温度が変わる。まるで南極にいるかのような冷ややかな空気に彼らの鳥肌が立つ

 

「…俺は人間のクズだ、人殺しなんかが穢れを知らねえ彼女と釣り合う訳ねえだろ…てか、光の世界の住人であるお前らと一緒にいるのもおこがましいくらいなんだぜ?」

 

「……垣根」

 

「俺みたいな外道があんな子と付き合えるわけねえだろ…俺が住んでる世界に踏み込んだら最後…生きて帰れねえんたからな」

 

(………)

 

垣根が普段とか違う表情…機械の様な無表情で人殺しの自分が彼女と付き合えるわけがないと冷たく笑う、それはまるで自分を卑下している様な笑いだった

 

「……な、なあ…垣根は…」

 

上条が何か言おうとした時、垣根は先程の無表情さから一転していつもの様な笑みを浮かべる

 

「……なんてな!嘘だよばーか、まんまと引っかかってやがんの!俺が人殺しに見えるかての!何だよその顔!本気にすんなって!」

 

垣根は冗談だと言って笑い、真剣に考えるなよと笑う…上条達は一旦顔を固め…そしてすぐに騙されたと怒る

 

「テメェ…!騙しやがったな!」

 

「いい度胸してんじゃねえかていとくン!」

 

「ははは、騙される方が悪いのさ!」

 

麦野と一方通行が怒るが垣根はただ笑うだけ、騙された方が悪いのだと垣根はほざいた

 

「ま、俺が縦ロールちゃんと付き合わねえのは俺がまだ色恋沙汰に興味がないだけだ。てか俺は恋とかした事ねえからな」

 

「……チャラいホストみたいなカッコしてる癖にか」

 

「酷え言い方だな…ま、否定はしねえがな。それにアレだ、中途半端に付き合った方が縦ロールちゃんに悪いだろ?そういう事だよ」

 

垣根が自分はまだ恋愛に興味がないと言うとチャラ男ぽいのに意外だなと一方通行が呟く。だが彼らは内心安心していた、先程の言動は冗談だと知って安心していた

 

(…そうですよね、垣根さんが人殺しだなんてするわけがないじゃないですか…)

 

帆風も内心で安堵する、自分の憧れで好きな人が人殺しな訳がないと。だが同時に思い出す…それは以前才人工房(クローンドリー)が潰れた時に聞いた噂だ…その才人工房の責任者であった蠢動俊三が何者かによって殺害されたと言う噂だ…帆風は一瞬まさかと考えるがその考えを頭を振って無くし笑みを浮かべて席に戻る

 

「皆さん、ドリンク持ってきましたよ…あ、垣根さんこれ「アレイスター汁たっぷり 生命維持装置の液体ジュース」です」

 

「「「「「「本当にあったの!?」」」」」」

 

「お、ありがとな縦ロールちゃん」

 

帆風が垣根達にドリンクを配る、垣根は帆風に笑いかけ帆風も笑う。先程の話は嘘などだと帆風は信じていた、何故なら目の前で優しく笑う彼が人殺しには見えないからだ

 

 

 

ファミレスを出た垣根達は次に何処に行こうか話し合っていた

 

「ここはカラオケに行って歌いに行こうぜ、俺『翼をください』を歌いたいから」

 

「いや垣根は既に翼持ってるだろ…」

 

「翼を広げてジュディ・オングの『魅せられて』を歌うかと思ったぜ…昔よくカーテンでやってたよなァ」

 

「いやカラオケよりもボーリングに行きたいにゃーん」

 

「いやゲームセンターに行きましょうよ、ゲコ太のガチャガチャついでに引きに行くから」

 

「いやいやここは温泉でも行って心も体も癒すべきなんだゾ☆」

 

「よし!夏休みの最後は皆で学園都市を一周するか!」

 

「わたくしは皆さんと一緒なら何処でもいいです…あ、わたくし少し飲み物を買ってくるので少々お待ちを…」

 

ガヤガヤと8人が何処へ行くだと話し合っていると帆風は自動販売機へと飲み物を買いに行く為垣根達から離れる…そして自動販売機に近づいた後、近くに誰もいないのを帆風は確認し…自動販売機に頭をぶつけた

 

「うぅ…まさかバレてたなんて…まあ、バレる様やってたつもりはありますけど…気づいてたならもっと反応してもいいじゃないですか…」

 

ブツブツと自動販売機に頭をぶつけながら顔を赤くして呟く帆風、だがふとぶつけるのをやめて帆風は真剣な顔になる

 

「ですが垣根さんのあの時の顔は一体…とても演技には見えませんでしたし…」

 

帆風はファミレスでの垣根が話していた時の顔を思い出す、機械の様な無表情な顔…普段の彼からは想像できない表情だった…いや、もしやアレが本来の彼の顔ではないのか?自分は垣根の事を知らなかっただけではないかと帆風が考える

 

「いえいえ!垣根さんに限ってそんな…あれは単なる冗談に決まってますわ……でも、もし本当なら……」

 

帆風があの話は冗談に決まっていると自分に言い聞かせる様に呟く、だがもしその話が真実ならとまた考え始めたその時

 

「あの〜すみません、お嬢さん」

 

「!?は、はい!」

 

背後から声が聞こえ帆風が急いで振り返る、そこにいたのは車椅子に乗った緑のパジャマを着た老婆だった。老婆に声をかけられた帆風は困惑しつつも老婆に話しかける

 

「あの…何か用でしょうか?」

 

「ええ、すみませんが道案内を頼めますかね?多層旅館という所に行きたいのですが」

 

「多層旅館ですか…分かりました。でも女王…友人と一緒にいるのでその人達も付いてきますがよろしいですか」

 

「いいですよ、優しいお嬢さんで助かりました…後厚かましいのですが車椅子を引いてくれませんか」

 

その老婆は多層旅館まで案内してくれと言うと帆風は戸惑いながらも頷く、老婆は車椅子も引いてくれと言うと帆風は戸惑いなく車椅子のグリップを握り垣根達の所へ老婆を連れて向かう…彼女はその行為こそが過ちの一つだと今は知らなかった

 

「あ、潤子先輩早かった…て、誰ですかそのお婆さん?」

 

「えっとですね…このお婆さんは多層旅館に行きたいらしいのですが道が分からない様なので案内してあげようかと…少し道草になりますけどいいですか?」

 

「お、人助けか。なら手伝うぜ、年寄りは大切にしないとだしな」

 

「おや、優しいんですね」

 

美琴がそのお婆さんは誰かと尋ね、帆風が少し道草をしていいかと言うと削板が人助けは大切だと笑う…だが垣根は表情を死滅させて掌にカブトムシを創造する、そのカブトムシの能力は座標移動。その能力で帆風を一瞬で自分の横に空間転移させる

 

「……え?」

 

帆風は戸惑った顔をする、何故座標移動を使って自分を移動させたのかと。全員が垣根を見つめるが垣根は老婆を冷たい目で見つめると背中かれ一翼の未元物質の純白の羽を出現させそれを槍の様に老婆に突き刺そうとし…老婆はその一撃を神業的なドラテクで高速で回避する

 

「……え?」

 

帆風は何が起こったのか理解できない、何故垣根が老婆を攻撃したのかがだ…そして垣根は口を開く

 

「…もうその面を剥がせよ、その顔が変装だってことくらいバレてんだよクソ女」

 

「………はぁ、この程度の変装ではバレてしまいますか……まあ、でも……」

 

氷の様な冷たい垣根の一言に全員が驚く、そしてその老婆はやはりこの変装ではダメだったかと息を漏らす…直後老婆の顔にヒビが入る。そしてヒビが顔全体に広がっていきボロボロと皮膚が落ちる…そして彼女の本来の顔が露わになる

 

「ば・れ・て・し・ま・っ・て・は、仕方ありませーん!」

 

長髪の茶髪に白いリボンで結び、目の周りが黒い女性が狂気の笑みを浮かべる。それを見た上条達は戦慄する

 

「相変わらずネジが五、六本抜けてやがるな」

 

「酷いですねー、これでも病理さんは帝督ちゃんの能力を開発した…いわば恩人なんですよー?その態度はないんじゃないんですか?」

 

「ほざけクソ女、テメェが恩人な訳ねーだろ」

 

冷徹な顔で病理を罵る垣根、それを聞いて薄く笑う病理…この場一体の空気が冷たく変質したかの様な感覚に上条達は固まる

 

「か、垣根さん?この人は…」

 

「こいつは木原病理(きはらびょうり)、俺の能力開発者にして…イかれたクソ女だ」

 

「木原…?木原くンと同じ?」

 

「数多ちゃんみたいな木原である事をやめた偽善者と同列にしないでくれますか、ぶっちゃけマジでイラつきまーす」

 

木原と聞いて一方通行が反応するが病理は数多と同列にするのはやめろと笑いながら呟く

 

「で、なんでここにやって来た?殺されてえのか?」

 

「殺すぅ?いやいや、まさか帝督ちゃん…私を殺せるとでも?貴方の能力を開発したのは誰か忘れてしまったんですか?」

 

「煩えよ、あの頃(・・・)とは違うんだよ。一思いに殺してやるから感謝してあの世で悔い改めやがれ」

 

殺すと言った垣根に超能力者達が驚きの目で垣根を見張る、その顔は怒りと憎しみで染め上げられていた。だが病理はヘラヘラと笑うのみ…そして垣根は六翼を展開しその内の一枚を高速で振るう、当然の如く車椅子は高速で移動し攻撃を避ける

 

「うーん、車椅子の武装は帝督ちゃんには効かなそうなので…楽して勝つと言うのを『諦め』て肉弾戦で肩をつけましょう」

 

病理はそう言うとよっこらしょと呟いて車椅子から立ち上がる、車椅子に乗っていたから歩けないと思い込んでいたがそれは嘘だった様だ

 

「相変わらずの嘘の塊だなテメェは…」

 

「病理さんは楽したいんです、皆さんだって仮病して学校を休みたい時があるでしょう?それと同じなのです」

 

ニコニコと笑う病理に表情の死滅した垣根、対照的な二人は暫し見つめ合う、そして垣根が6枚の翼を弓の様に引きしぼり病理へと伸ばす、それに対し病理は一歩も動かない…そしてその未元物質の六翼は爆発(・・)し病理に届く事はなかった

 

「……何?」

 

垣根は爆発を起こした未元物質を見て驚き、もう一度未元物質の翼を再構築して病理へと向けようとする…だがその前に一瞬で病理が垣根へと肉薄し垣根の横腹に蹴りを叩き込む

 

「がぁ!?」

 

轟!と衝撃が走り垣根が建物の壁へと激突する、呆気にとられる帆風達を他所に病理は更なる一撃を加えようとする…が、垣根が激突した壁から六翼の白い翼が生え病理を狙う。病理はそれを軽々と避ける

 

「流石にこれくらいでは気絶しませんかー」

 

「ごほっ……かはっ…何だ今のは…どうやって俺の未元物質を爆発させやがった?」

 

垣根は血反吐を吐きながら自分の未元物質をどうやって爆破したのかと問いかける。未元物質はこの世の物質ではない、故にそう簡単には破壊されない…なのに未元物質は爆発した…それを疑問に思う垣根だが病理は笑うのみ

 

「分からないんですか〜?ううん、困りましたねー。帝督ちゃんなら理解が早いと思ったのに…でも残念ながらネ・タ・バ・レ・はお預けなのでーす」

 

病理が無邪気かつ狂気の笑みを浮かべる、話す事など何もないと言いたげで垣根に接近すると足を蹴り上げようとする。垣根は翼を盾にしようとするが足に触れた途端足と翼が爆発を起こし垣根は衝撃で飛ばされる

 

「が…!?」

 

「あらあら…足がなくなってしまいました…でもすぐに治るんですけどね(・・・・・・・・)

 

病理が何故かなくなった右足を見つめるが即座になくなっていた右足の断面から白い何かが溢れ出てきてその白い何かが右足となる。その異形な光景に超能力者達は戦慄する

 

「お、肉体再生(オートリバース)…?いやあれは…」

 

削板が肉体再生かと呟くがそんなものではないと理解していた、あれは全員がよく知る超能力だと

 

「まさか…テメェ…未元物質による人体の修復を…」

 

「YES、セオリーを気にしてたら『木原』なんて名乗れません。踏み込んでこその『木原』、前人未到の闇を切り拓いてこその『木原』ですしね☆」

 

垣根はまさか…と何か言おうとするが先に病理が答える、そして彼女は更に口を開く

 

「それに何人か人間(モルモット)を捕まえて未元物質の人体移植を行った結果自我の崩壊を防げる様になりましたしねー。まあ何人か壊れてしまいましたが……科学の発展には犠牲は付き物です。仕方ないと割り切って『諦め』ましょう」

 

病理は未元物質をノーリスクで使う為に実験を重ね遂に完成したと笑う、その過程で何人死のうが彼女には関係ないのだろう

 

「さて、そろそろ計画を実行したいので…暫くおねんねの時間ですよ帝督ちゃん」

 

病理がそういうが早いか垣根の腹を未元物質で改造した右手で殴りつける、垣根は血反吐を吐きながら地面を転がりそのまま気を失う

 

「垣根!?テメェ…!」

 

「おやおや、お友達の皆さんはお怒りなのですか?怖いですねー…でも私には時間がないので…ちゃちゃと終わらせちゃいますー」

 

垣根を痛めつけた病理を睨む上条達だが病理はそれを見ても余裕の笑みを崩さない…そして彼女の背中から漆黒の三対の翼(・・・・・・・)が出現した

 

「「「「「「「な……!」」」」」」」

 

それは垣根とは対照的だった、垣根の翼が白ならこれは黒、垣根の翼は白鳥等の鳥の様な翼で美しかったがこれは蝙蝠等の飛膜の様な翼で醜かった。形は違うのに何故か未元物質を連想させるその謎の翼を出現させた病理は笑う

 

「というか、第一位を軽々と倒した私に第二位以下如きが勝てると思ってたんですかー?」

 

直後、原始的な音と少年少女達の決死の叫びが周囲に轟く。だが勝敗は既に決まっていた

 

 

 

あれは勝負ではなかった、一方的な蹂躙と言った方が正確かもしれない。対能力者様に構成された漆黒の翼に手も足も出なかった超能力者達は気を失い地面に倒れ臥す、病理はそんな超能力者達を見てため息を吐く

 

「えぇ〜?弱過ぎませんか〜?全く…楽勝過ぎますよ超能力者(レベル5)

 

病理は弱過ぎると唇に手を当てて笑う、とんだ期待外れだった。彼等は病理を前にしても怒気はあっても殺意はなかった…つまり殺す気は無かったのだろう

 

「はぁ〜とんだ甘ちゃんですねー、第四位や第三位は人を殺す事など躊躇いのない人間だと思ったのですが…帝督ちゃんの所為ですかねー?まあいいでしょう。楽に勝てるのはいい事なのです」

 

病理は車椅子に座ると鼻歌を歌う、そして鼻歌を口遊みながら倒れ伏した帆風へと近寄る。帆風は気絶しておらず全身の痛みに耐えながら病理を睨む

 

「すみませんが私に必要なのは帝督ちゃん以外の超能力者なので貴方は必要ないんですよねー、でも見逃していい理由にはならないので残念ですが殺しましょう。大能力者を殺すのは残念ですが…仕方ないと割り切る形で『諦め』て殺しましょう」

 

「くっ……」

 

口では残念と笑いながらも笑みを浮かべる病理、彼女は漆黒の翼を死神の鎌の様に帆風に振り下ろそうとする

 

「さようならお姫様」

 

病理が翼を振るい下ろそうとしたその時、光り輝く剣が飛来し病理はそれを翼で弾く

 

「!?…誰です」

 

病理はそれを弾くと自分に攻撃を仕掛けた者達の方をジロリと睨む…そこに立っていたのは…インデックスだった、傍らには神裂とステイル、黒子、風斬が病理を睨みながら立っていた

 

「私の友達に何をしてるのかな?」

 

(…魔術師が3人に能力者が1人、それに虚数学区の鍵まで…魔術師が相手とは面倒臭いですねー。面倒なので戦うのは『諦め』て逃げるとしましょう)

 

インデックスは病理を睨みながら友達に手を出すなら許さないと睨みつけ掌から淡い光を出現させる、それを見た病理は魔術師と戦うのは面倒臭いと考え口を開く

 

「形態参照 クラーケン」

 

病理がクラーケンと呟くと病理の足が音を立てて変わっていく…そして彼女の足は二本足から不気味な程に真っ白な触手の十本足へと変貌する。その異形の足で上条達6人を搦めとると残りの足で車椅子を絡めとり車椅子が落ちない様にして背中の翼をはためかせ空へと飛び上がる

 

「ではこれで私は失敬しましょう…あ、帝督ちゃんにこう伝えておいてください、早く私の所に来てくださいねー、さもないと…この子達がどうなるか分かりませんよー…てね」

 

病理はインデックス達に垣根の伝言を伝えると翼を羽ばたかせて空へと飛翔する。インデックス達は攻撃しようかと考えるが下手に手を出せば上条達にも危害が加わると考え攻撃できない、上条達は触手に掴まれながら病理と共に空へと消えていった

 

「み、な…さん……」

 

「じゅんこ!?」

 

帆風は空へと手を伸ばす…届かないと知っていても仲間に向けて手を伸ばす…だがその途中で気を失いパタリと倒れる。インデックス達の叫ぶ声が聞こえるが帆風にはそれは届かない

 

 

 

これより始まるのは狂った科学者による禁忌の実験、そしてとある少年の復讐劇、無力な少女の涙。八月三十一日…それは最悪の夏休み最後の日…これはその序章に過ぎない

 

 

 

 




病理さん強い(白目)、そして謎の翼の正体とは?そしてどうやって未元物質を爆破したのか?簡単に言えば木原神拳の病理さんバージョンですね。そしていい所で現れるインデックスさんマジ(ステイル君の)ヒロイン

某ヒゲ兄弟に出てくる毎度毎度連れ去られる姫みたいに病理さんに連れ去られたていとくんと縦ロールちゃんを除いた超能力者達…今度から彼等のことをピンチ姫と呼びましょう

さあ、こんな病理さん(魔改造)にていとくんは勝てるのか?そして彼女の計画とは?次回もお楽しみに!


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彼の悪意 彼女の善意

さて今回は少し鬱ありです。さあ強敵病理さんに勝てるのか?そしてこの作品のインデックスはカッコいいです。え?原作の腹ペコさん?知らないな…ま、原作でも頼もしいシーンはありましたし…それが全面的に出てるのがウチのインさんです

そして最後にあの方登場、そしてまさかのあいつまで…怒涛の急展開ですみません。無駄に長いですがお許しを…



『なあ帝督(・・)!今日は何して遊ぼうか!』

 

『お前らがやりたい事やれよ、俺はそれに付き合ってやるから』

 

『えぇ〜?偶には帝ちゃんも自分のしたい事しなよ、なんか帝ちゃんだけ大人ぶってるよねー』

 

『大人ぶってるんじゃない大人なのさ(実際転生者だからもう精神年齢二十歳近くだしな)』

 

垣根帝督にとってその頃は一番楽しかった時期かもしれない。この世界の異物である彼にとって平凡な日常というのは退屈に感じながらもそれなりに楽しく生活していた

 

『俺大きくなったら超能力者(レベル5)になるんだ!』

 

『私も超能力者になりたい!』

 

『なら僕も超能力者になる!』

 

(いやいや超能力者にはなれねえだろ…ま、子供らしくて微笑ましいけどな)

 

彼等は原作で言う所のモブなのだろう、だが垣根は彼等の名前を一人一人ちゃんと覚えていた。例え原作で出てこない人物だろうが彼等はモブ等ではなく生きている人間だ。だから垣根は彼等と普通に接していた

 

『なあ帝督はどんな能力者になりたいんだ?』

 

『決まってんだろ…背中から翼を生やすメルヘンなホストキャラな超能力者になるんだよ』

 

『『『何それ!変なの!』』』

 

子供らしく垣根は笑っていた、上条や一方通行等の原作キャラに会えないのはファンとしては辛いが彼等との生活も悪くない…そう垣根は思っていた。垣根は子供相応の笑みを浮かべ子供達と笑っていた…そんな日々がずっと続くと思っていた…あの女が来るまでは

 

 

『はぁーい、今日から皆さんの先生になります木原病理と言いますー。よろしくなのです』

 

 

あの女が現れたのは垣根が6歳の頃だ、あの女はニコニコと笑みを浮かべながら自分達がいた研究所にやって来た…当然垣根は良からぬ事が起こると危険視しており彼女に心を開かなかった…だが周りの子供達は違った。純粋故に彼女に近づき…呆気なくその毒牙にやられてしまったのだ

 

 

垣根は血の海に立っていた、死屍累々と死体が血の海の中に溺れたかの様に倒れていた…倒れているのは垣根の友達であった子供達だ…もう彼等は起き上がる事はない。何故なら彼等は胸に孔が開いていたり首が切り落とされていたり四肢が切断されていたり…結論から言うと死んでいたからだ。殺したのは他でもない…唯一の生き残りである垣根だった

 

『…う、うぁ…ああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』

 

垣根は胃の中のものを全て吐瀉物として吐き出した、目から涙を溢れさせた、声が枯れるまで悲鳴を上げた。その声は病理に対する憎悪と怒り、そして友達を殺してしまった自分に対する憤り、そしてこんな非道な実験を許す学園都市に対する憎しみ…そんな負の感情が垣根の身体を支配していく

 

『……さねえ、許さねえぞ木原病理!テメェだけは絶対に許さねえ!』

 

この感情が自分が殺したのにそれを全て病理に向けているだけの八つ当たりと知りながらも垣根は鬼の様な形相でここにはいない病理の顔を思い出し刃を噛みしめる。この日優しき転生者は復讐を誓った

 

 

 

 

垣根帝督が目を覚ましたのはベットの上だった、垣根はゆっくりと起き上がり自分が何故ここにいるのか思考する

 

「………何処だここは?」

 

垣根がそう呟くと病室の扉が開く、入ってきたのは帆風とインデックス、そしてステイルと神裂に黒子、風斬

 

「良かった!目を覚ましたんですね!」

 

「……縦ロールちゃん?……!病理の奴は何処だ!?」

 

帆風が目を覚ましたのかと喜ぶ、垣根は漸く思い出した。確か自分は木原病理に倒されてしまった事を、帆風に病理は何処だと尋ねる為にベットから降りて帆風に駆け寄ろうとする…それをインデックスが制す

 

「落ち着いてていとく、まずは話を聞くんだよ」

 

「……そうだな」

 

インデックスがまずは話を聞けと言うと垣根は足を止めてその場に立ち尽くす、インデックスがこほんと息を吐くと垣根に何があったのか話す

 

「私達は五人で偶々近くのカフェに向かおうとしてたんだけどふと嫌な気配がしてね、それで嫌な気配を辿ってみたらていとく達が倒れてたんだよ」

 

「それでインデックスが魔術を使って謎の女から帆風潤子を助けたという訳だ」

 

「しかしあの女は一体何者なのですか?貴方の未元物質と同じ気配がする悪魔の様な翼が生えていましたし足を烏賊の様な触手に変貌しましたし…あれが人とは思えません」

 

インデックスが嫌な気配を辿って垣根達と病理を見つけ魔術を使って助けたのだと呟く、神裂は病理は人とは思えないというと垣根が薄く笑う

 

「…人じゃない…ね、的を射てるな。あいつは化け物だよ、科学に狂ってるイカれ女だ」

 

「……兄さんがそこまでいう人なんだね」

 

「……そういえば当麻達は何処だ?見当たらねえが」

 

「……それが……ここにはいないんですの」

 

垣根はあいつは人間なんかじゃない、科学に狂った怪物だと称す、そして垣根は上条達がいない事に気づき何処にいるのかと尋ねると黒子が俯いてここにはいないと呟く。その答えに垣根がもしかして…と最悪の答えにたどり着く…同時に帆風が頭を下げる

 

「申し訳ありません!わたくしは何の役にも立てずたった一撃を喰らっただけで倒されてしまいました!わたくしはただただ皆様が倒されるのを見ているだけでした!」

 

「……じゅんこ」

 

「わたくしが強ければ…皆さんは攫われたりしなかったのに…わたくしが弱い所為で…」

 

帆風は自分では何の役にも立たなかったと叫びながら頭を下げる、垣根に頭を下げながら弱い自分が情けないとばかりに涙をこぼす、インデックスが帆風の肩を持つ…この時、普段の垣根なら慰めるのだろう。だが垣根にはそんな余裕はなかった、中指と人差し指からガラス質の爪が伸びた金属製のグローブを垣根は取り出すと右手に装着し病室の窓を開く、そしてグローブを装着させた右手を外に出す

 

「……何をしてるんだい?」

 

「…滞空回線(アンダーライン)の情報を調べてる、このピンセットで空気中を漂う滞空回線を吸い取ってる…これで病理の居場所が分かる筈だ」

 

ステイルが何をしているのかと尋ねると垣根は滞空回線で病理の居場所を探していると言う、暫くしてピンセットのディスプレイを見つめる、ディスプレイには様々な学園都市の情報が流れてくるが垣根が必要とする情報はただ一つ…そして漸くその必要な情報にヒットする

 

「…第十学区…あそこか」

 

「!居場所が分かったんですか!?」

 

「ああ、病理の野郎…わざと見える場所に居やがった…俺を誘い込む為か」

 

垣根が見つかりやすい場所にいたのは誘い込む為かと呟く、垣根はピンセットをしまうとサッと病衣を脱ぎ半裸になり元の服に着替えようとする、女子が何か悲鳴をあげたが垣根は気にせず手早い動きで着替えていく

 

「……行く気なんだね」

 

「ああ、当麻達を助けに行く」

 

インデックスが助けに行く気かのかと言うと垣根は頷く、それを聞いた帆風は垣根の前に立ち口を開いた

 

「ならわたくしもご一緒いたし「いやついてこなくていい」……え?」

 

「な、何を言っているんですか垣根帝督、彼女は貴方と一緒に上条当麻達を助けようと…」

 

「だからそれが邪魔なんだよ」

 

帆風が一緒に行こうと言いかけると垣根は無表情な顔でついて来るなと言い帆風の動きが固まる、それを聞いて神裂が何か言うとするが垣根は邪魔だと一蹴し風斬がいつもの兄とは違うと目を見開く

 

「…な、何故ですか?」

 

「足手まといになるからだ、病理は強い…そして心を折る…『諦め』のスペシャリストだ。生半可な奴じゃ太刀打ちできねえ…だから縦ロールちゃんはここで待ってろ」

 

「……嫌です!わたくしだって戦え「それで死んだらどうする!」!?」

 

帆風は自分も戦えると言おうとする…だが垣根はその前に死んだらどうすると叫ぶと帆風がビクッと震える

 

「あいつは今までの敵とは違う!いや今までの敵も一歩間違えば死んでたかもしれない!君がそこまでする必要はない!」

 

「で、でも…」

 

「……いいか、これは忠告だ…自分の力を過信し過ぎるな…その内死ぬぞ。縦ロールちゃんは俺らみたいな超能力者じゃねえんだから」

 

垣根の怒涛の怒鳴り声に帆風は反論すら許されない、なんとか声を絞って何か言おうとするも垣根にこのままでは死ぬ、帆風は自分達超能力者ではないのだからと言うと帆風は超能力者と言う単語に反応した。ずっと気にしていた言葉だ、いくら垣根達と親しくしていても自分だけが超能力者ではない…その隠していた彼等に対するコンプレックスがここに来て出てしまった

 

「ていとく!その言い方はないよ!じゅんこはていとくの心配をして言ってるんだよ!そんな言い方はないよ!」

 

「じゃあ俺は間違ってるのか!?下手にでしゃばれば死ぬかもしれねえんだぞ!これはゲームじゃねえんだ!死んだらそこでお終いなんだよ!あいつら(・・・・)みてえにな!」

 

「それでも…!言っていい事と悪い事があるんだよ!じゅんこが病院に来てからていとくが目覚めるまでどれだけ心配したと…」

 

インデックスは垣根に怒る、そんな言い方はないと、垣根は自分は何も間違っていないと叫びインデックスも叫び返す…その時だインデックスの携帯が着信音を鳴らす

 

「……電話に出てもいい?」

 

「……勝手にしろ」

 

インデックスは携帯を取り出し誰からかと思って眺めるが知らない番号だった、間違いか悪戯かと思い切ろうとするが勝手(・・)に通話になってしまう

 

(!?今のは機械の誤作動じゃなくて魔術的なもの!?一体誰が?!)

 

インデックスは勝手に通話になった携帯は機械の誤作動ではなく魔術的なものだと理解し何事かと慌てる、更に本来ならそんな機能はない筈なのにスピーカーモードになりその声が部屋に響く

 

『聞こえるかい、垣根帝督』

 

「……アレイスターか」

 

「!?アレイスター!?…この声の主があの伝説の魔術師!?」

 

その声の主はアレイスター=クロウリー、インデックスはこの声の主がアレイスター=クロウリーなのかと知ると驚く

 

「……病理に関しての事か?」

 

『その通りだとも、現在彼女を討伐する為にメイザースに脳幹、オティヌスが第十学区に向かう準備をしている。君は彼等と合流してくれ』

 

「……その準備てのはどれくらいかかる?」

 

『ふむ……後一時間はかかるかもしれない。何せ木原病理は厄介だ…だから誰一人犠牲のない様にしなければならないのでな』

 

アレイスターは現在脳幹、オティヌス、メイザースに病理を討つ為の準備をしていると言うがまだ一時間かかるという…垣根は携帯で時間を確認する、もう昼の1時だ。襲われた時は9時だったからもう四時間は経っている…垣根は舌打ちする

 

「無理だ、待ってる暇はねえ。自分一人で行く」

 

『ダメだ、君一人を行かせる訳には行かない。準備を終わらせてから「それじゃ遅えんだよ!!」!?か、垣根?』

 

アレイスターは一人で行こうとする垣根を止めようとするが垣根は激昂しアレイスターはそれを聞いて驚く

 

「待ってる時間なんてねえんだ!この間にも当麻達が無事な補償はねえ!俺は一人でもあいつらを助けに行く!」

 

『ま、待つんだ!君では木原病理には勝てない!君だってその身をもって体感した筈だ!彼女は君に対する対抗策を持っていると!しかもその力は未知数だ!木原数多の木原神拳とは訳が違う!』

 

「だからて見捨てられるかよクソが!あの女はイかれてやがる!当麻達が五体満足でいる事はおろか生きてる補償すらねえんだ!もう俺は嫌なんだよ!当麻達があいつら(・・・・)の二の舞になるのは御免だ!もう友達が死ぬのは嫌なんだ!だからお前の指図は聞かない!」

 

垣根は上条達が無事な補償はない、だから早く助けに行くと叫ぶ。それを聞いてアレイスターはやめるよう指示するが垣根はそれに聞く耳を持たない

 

『彼女には君の未元物質は通用しない!分かっている筈だ!そんな相手に挑むなど君らしくない!冷静さを取り戻してくれ!彼女に立ち向かうのは死と同義だ!』

 

「安心しろよアレイスター、俺は自分でも怖くなるほど冷静だ…それくらい分かってる、だからアレ(・・)を使わせてもらう」

 

『アレ……だと?………まさか!アレを…三位一体(・・・・)を使う気か!?あれはまだ未完成の筈だ!使えば副作用で君の身体が…!』

 

んな事知るかクソボケ(・・・・・・・・・・)、俺は頭の血管が切れそうな程ムカついてんだ。自分の身体がどうなろうが構いやしねえ」

 

『ダメだ!フィアンマも言っていただろう!?いくら君とはいえ超能力者に変わりはないと!そもそも君に魔術(・・)を扱うだけの知識はない筈だ!魔道書の知識もない君に大した術式は使えない筈!』

 

垣根がアレを使うと呟くとアレイスターはそれはまだ未完成だと叫ぶ、それに魔道書の知識の無い垣根には有効活用できないと叫ぶが垣根はそれを言われると笑う

 

「それについては問題ねえ…俺にはこれがあるからな」

 

垣根がそう言って取り出したのは以前帆風達に見せた自動書記の遠隔制御霊装に似た何か、ただしあの霊装は金色の部位があったのに対しこれは全身真っ白だった

 

『それは…!?未元物質で複製したのか!?』

 

「ああ、前に第十九学区で自動書記の残留思念を読み取っておいた…これで俺には10万3,000冊の魔道書の知識がある…いくらあの病理でも魔術なんていう非科学的なもんには対応できねえだろ…」

 

『だ、だがあの女は最早私の予想を超えている!そんなイレギュラー分子にまともにやりあっては…』

 

垣根は自動書記(ペンデックス)の激戦の後である第十学区で密かに自動書記の残留思念を具現化し魔道書の知識を得遠隔制御霊装の形で手に入れていたのだと笑う。それを聞いたアレイスターはそれでも病理には勝てないと言おうとするが垣根は未元物質の翼を広げ窓から飛び降り第十学区へと向かう

 

「垣根さん!」

 

『!…く、行ってしまったか』

 

帆風が窓の淵に両手を添えて窓から身を乗り出して垣根の名前を叫ぶ、だが垣根は振り向く事なく空へと飛んでいく、アレイスターは止められなかったと携帯越しでも分かるように歯噛みする…そして通話が切れ暫く沈黙が病室に訪れた

 

「……行こうじゅんこ」

 

「……行くて何処へですか?」

 

「決まってるんだよ、とうま達を助けに行こう」

 

「……ダメですよ、垣根さんが言ってたじゃないですか…わたくしに来るなと」

 

インデックスが上条達を助けに行こうというが帆風は首を振る

 

「分かってたんです…わたくしなんて…垣根さんの何の役に立たないて事くらい!」

 

帆風は叫んだ、非力な自分が憎いと言わんばかりに、何の役にも立てない自分が嫌いと言わんばかりに、彼女は目元に涙を溜めそう叫ぶ…そんな帆風を見てインデックスは彼女の頬を叩いた

 

「……!?」

 

「!?い、インデックス?」

 

「甘ったれてるんじゃないかも、確かにていとくの言う通りじゅんこはていとくにとって足手まといかもしれない…でもそれがどうしたって言うの(・・・・・・・・・・・・)?」

 

殴られた帆風もそれを見たステイル達も茫然とインデックスを見る、彼女が人を叩くのを初めて見たからだ

 

「じゅんこは確かに弱いかもしれない…だからて人を助けたらいけない理由になるの?そんな事ない、弱くなって誰かを助けたていいんだよ」

 

「でも…垣根さんに」

 

「ていとくは関係ない!これはじゅんこが決める事だよ!ここで助けに行かなかったら一生後悔するよ!それでもいいの!?」

 

インデックスが叫ぶ、このまま行かなかったら一生後悔すると言って。その言葉を聞いて帆風は口を開いた

 

「……嫌です、女王達を見捨てる事も…垣根さんを一人で行かせるのも嫌です…例え役に立たなくても…わたくしは…わたくしは垣根さんと一緒に助けに行きたい!」

 

帆風が役立たずと分かっていても助けに行きたい、垣根の横に立ちたいと叫ぶ。それを聞いたインデックスが微笑む

 

「なら助けに行こう、とうま達を助けに行こうよ。私達も手伝うから」

 

「その通りだ帆風潤子、僕達も上条当麻達を助けるのに力を貸そう」

 

「貴方達には恩がありますからね…ここで返しておくとしましょう」

 

「わたくしは風紀委員(ジャッジメント)としてお姉様達を助けなければなりません…本来なら一般人を巻き込むのは御法度ですが…今回は目を瞑りますの」

 

「私も兄さんの暴走を止める為に御一緒しますよ」

 

「皆さん……ありがとうございます」

 

インデックス達が自分達も一緒について行くと笑う、帆風はそれに感謝しながら病室を出て垣根が言っていた第十学区へと向かう…それをカエル顔の医者は無言で彼女らを見つめていた

 

 

 

垣根は自宅に戻り自分の部屋からある物を取り出していた。それは小さなシャーペンの芯入れの様小型の透明ケースの中に保管された白い粉末状の薬に似た何かだ

 

「……これでよし…後は三位一体だが…副作用なんざどうでもいい」

 

垣根はその透明ケースを懐にしまうと自分の右手を見る…未元物質で作られた義手だが垣根はそれを一瞥した後窓を開けて空へと飛び立つ

 

「待っていやがれ病理…あいつらの仇は絶対に討つ…俺自身の手でな…オティちゃん達の力なんざ借りなくても俺一人でやってやる」

 

垣根は誰に言うでもなしにそう呟いた、それは自分自身に言い聞かせるかの様だった

 

「テメェだけは俺が殺してやる、絶対にな」

 

 

 

「そうか…なら早く準備を終わらせよう。幸い加群君達は先に行っている様だからね」

 

『ああ、頼むぞ』

 

脳幹がアレイスターとの通話を切ると横にいるオティヌスとメイザースに話しかける

 

「どうやら垣根が一人で病理君の元へと向かったそうだ」

 

「盟友が……それ程まで憎いのか、その木原病理という女は」

 

「……憎しみと愛は人を狂わせるものだ…だがあいつではその病理とやらには勝てないだろうな…奴は垣根の能力の開発者だ…言わば天敵だ…勝てる見込みは低いな」

 

「…なら、早く行くしかないな」

 

脳幹が二人に垣根が一人で戦いに行ったというとメイザースが勝てる見込みは低いと呟く、それを聞いたオティヌスが早く用意をするかと呟いた直後

 

「残念だが君達を彼の元には行かせられないな」

 

「「「!?」」」

 

彼らの背後から声が聞こえ急いで振り向く三人、そこにいたのは金髪にゆったりとした白い装束を身にまとう光り輝く体を持つ謎の人物…その表情は喜怒哀楽の全て、かつ人の持つ感情とは明らかに異質なものを秘めた表情…その人物の名前を脳幹が呟く

 

「…まさかここで出てくるとはねエイワス(・・・・)

 

彼の名はエイワス、かつてはアレイスターの計画(プラン)の要でありアレイスターを欺いていた『ドラゴン』と呼ばれている存在だ

 

「木原病理が垣根帝督と彼女(・・)にどの様な変化をもたらすのか興味がある、その邪魔はさせない」

 

「……どうやら私達が垣根の元に言うには彼を倒さないといけない様だね」

 

エイワスが自分のお気に入りが病理の影響でどう変わるのか興味があると呟き脳幹が病理の元へ行かせない様に立ち塞がる。脳幹達はエイワスを倒さねば垣根と合流すら出来ないと理解しオティヌスは主神の槍を構えメイザースは四種の象徴武器を自分の周囲に浮かす、脳幹は装着していたA.A.A.を起動させエイワスに狙いを定める。それを見たエイワスは頬を緩める

 

「まさか、三人いれば私に勝てるとでも?」

 

「思ってなどいない、だが隙をついてこの場から退却し垣根と合流するくらいなら出来るとは思わんか?」

 

「盟友にいなくなってもらうと困るのでな…絶対にここを突破させてもらうぞ」

 

「そう言う事だ、我々は強引でもここを突破する」

 

三人はエイワスに攻撃を仕掛ける、エイワスは薄く笑って輝きすぎるほど輝く翼をうごかす。こうして人知れず人外と元魔神、魔術師、科学者の戦いが始まった

 

 

 

垣根は第十学区に辿り着くと病理が潜んでいる場所まで向かう、その途中で数多達と交戦していた謎の部隊が近くの建物から現れる

 

「……病理の手先か」

 

「正確に言えば違うな、我々はクライアントに貴様の足止めをする様に依頼された部隊だ…トライデント…と言えば分かるか」

 

「トライデント………EUがバックボーンにいる組織か…」

 

超大手PMC(民間軍事会社) トライデント、彼らは病理に与えられたEqu.dark matterや電子迷彩を使い垣根の足止めをしようと企む彼らは銃を垣根へと向ける…だが彼らの銃は何も攻撃されていない筈なのに何らかの攻撃を受けて銃身が破壊される

 

「「「「!?」」」」

 

「その程度で俺を止められると思ってんのか」

 

驚く彼等に垣根はその程度で止められるわけがないと笑う、その笑みは残酷で嗜虐的…普段の彼からは想像できない様な笑みだ

 

「ここには当麻達はいねえんだ…だから歯止めが効かねえかもしんねえが…死んでも知らねえぞ」

 

垣根は兵士達の服を引き裂き彼らの細胞を一つ一つ剥ぎ取っていく、彼等の身体から鮮血が迸る、響く兵士達の悲痛な叫び。垣根が行ったのはナノサイズの未元物質の粒子を空気中に浮遊しそれで銃や服、身体を抉り取ったのだ…これは垣根の友人の博士という人物が使うオジギソウを参考にした攻撃だ。もしこの場に帆風達がいたら垣根は使うことはなかっただろう…だが彼等はいない。故に垣根が普段抑えていた凶暴性が現れていた

 

「死にたくねえなら退がれ、今の俺は…お前らを殺しちまうかも知れねえからな」

 

垣根がそう言って笑う、その悪魔の笑みに兵士達は恐怖に駆られ銃を向け銃弾を乱射する、更にEqu.dark matterから翼を出現させ垣根に斬りかかる…それを見た垣根は口を三日月の様に歪め背中から三対の翼を展開する

 

 

灰は灰に(AshToAsh)塵は塵に((DustToDust)吸血殺しの紅十字(SqueamishBloody Rood)!!」

 

「七閃!」

 

ステイルの吸血殺しの紅十字が炸裂し兵士達を吹き飛ばす、神裂の七閃が兵士達の仮面や銃器を切り裂く。黒子は空間移動を駆使して敵を倒していき風斬もその怪力を活かし電柱や車等を投げて敵を押し潰していく

 

「邪魔だよ!」

 

インデックスは10万3,000冊の魔道書の知識を活かし魔術を使って敵を薙ぎ払っていく。帆風も天衣装着で強化した拳を敵に叩き込み吹き飛ばしていく

 

「数が多いな!どれだけいるんだ!」

 

「あの仮面に気をつけてください。あれは銃器とは比べ物にならない武器です」

 

「電気迷彩に学園都市よりも遅れている銃器…こいつらは学園都市の外部の組織ですわね…恐らく傭兵か何かでしょう」

 

ステイルが倒しても倒しても湧いてくる敵にうんざりしたかの様に叫ぶ、黒子は外部の組織だと気づき傭兵か何かと察する

 

「!いましたわ!」

 

帆風は垣根の姿を捉える、垣根はたった一人で大勢の兵士達を翼で薙ぎ払い、爆発を起こし兵士達を蹴散らし、烈風を巻き起こし空へと舞いあげる。兵士達はたったそれだけで無力化され地に倒れ伏せ動かなくなる

 

「…呆気ねえな」

 

垣根はそうボソッと呟く、周囲一帯の兵士達を全て倒した様で無言で道を進む…幸いな事に兵士達は誰一人死んではいなかった

 

「垣根さん!」

 

「あ?……なんで着いて来やがった」

 

「女王達を見捨てられないからです、それにわたくしは垣根さんと……」

 

垣根が怪訝な顔をして着いて来るなと言ったのにと呟く、帆風がそれに対し何か言おうとすると空から更に兵士達が降りて来る…その数は優に千は超える

 

「……増援か、相手にならねえてのに」

 

「しかし数が多過ぎます!これでは女王達の元に辿り着くのに…」

 

多過ぎる敵に帆風がどうすればいいのかと言いかけたその時、空中の兵士達に向かって炎と斬撃、魔術が放たれ兵士達を吹き飛ばしていく

 

「ここは私達に任せて!二人は早くとうま達の所に行って!」

 

「!インデックスちゃん!?」

 

「ここは私達が引き受けましょう!」

 

「早く行くんだ!雑魚共はここで抑える」

 

「お姉様達を頼みましたわよ」

 

「後は頼みました!」

 

インデックス達がここは任せて二人は上条達を助けに行けと叫ぶ、インデックスは豊穣神の剣を飛ばし兵士達を蹴散らし、神裂は七閃で敵を薙ぎ払う、ステイルの魔女狩りの王が敵の装備を焼き払い黒子は鉄矢で敵の身体を固定する。風斬は車を持ち上げてそれを振り回し敵を攻撃する…そんな五人を垣根は一瞥した後走り出し帆風もそれに続く

 

(私達の出番かここまでかも…絶対にとうま達を助けるんだよていとく、じゅんこ)

 

 

 

上条達は全体が真っ白で広い部屋の中で目を覚ました、彼等は十字架に磔になりクサリで絡め取られ身動きを封じられていた

 

「…ここは?」

 

上条達は何故自分が鎖で繋がれているのかと脳をフル回転させて考える…そして思い出す、自分達は病理に敗れたのだと

 

「あら、もう目覚めたんですか?」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

部屋に入って来たのは病理、それを見た上条達は彼女を睨みつけるが彼女は平然とせせら笑うのみ…そんな病理に上条は口を開く

 

「一体何が目的だ?俺らを攫って何がしたい?」

 

「そうですねー、簡単に言えば全ては帝督ちゃんの為です」

 

「……垣根の為だと?」

 

病理は全ては垣根の為だと言うと上条が怪訝な顔をする、そんな超能力者達に病理は口を歪めて呟いた

 

「帝督ちゃんは凄い子なんです、彼なら前代未聞の絶対能力者(レベル6)に…いいえ、更にその先の神ならぬ身にて天上の意思に辿り着くもの(SYSTEM)も夢じゃない。ですから彼を進化させる為に貴方達を誘拐したのです」

 

彼女の目的は垣根を絶対能力者に…更にその先のSYSTEMへと進化させる為だと言う、それが何故自分達を誘拐するのに関係するのかと思う上条達に病理はにっこり笑って言ったのだ

 

「分からない、て顔をしてますねー。はっきり言いますと能力者…特に超能力者て言うのは精神異常者の集まりなんです、何せ自分だけの現実(パーソナルリアリティ)は一種の精神障害と同じ…つまり人間としてイかれてる少年少女の事です…あ、原石の第七位と幻想殺しの第二位は除きますよ?」

 

「……何がいいてえンだオマエは…」

 

「つまりですね…自分だけの現実…その精神障害が強い程能力は強くなる……なら帝督ちゃんの親友である貴方達が死んだら元々狂ってる帝督ちゃんはどうなっちゃうんですかねー?」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

病理の目的はただ一つ、垣根の友達を殺して彼を狂わせ能力を更に昇華しようと企んでいたのだ、それを聞いた超能力者達は絶句する

 

「あ、助かりたいなら帝督ちゃんを罵倒するとかでもいいですよー?「お前なんか友達じゃない!」とか帝督ちゃんの心を折る一言を言えば貴方達の命は奪いませんよー」

 

「巫山戯んな!友達にそんな事するわけねえだろうが!」

 

「……本当に帝督ちゃんは貴方達の事を友達と思ってるんですかね?」

 

「……どういう意味よ」

 

病理が自分に従うなら命は助けると口に手を当てて笑う、麦野が友達にそんな事はしないと叫ぶも病理が垣根は上条達を友達と思ったいるのかと笑う

 

「だってそうじゃないですかー、だって貴方達と友達になった時とか、貴方達の悩み事を解決した時とか…都合が良すぎたりしませんでしたかー?」

 

「…何を言ってるのかしらぁ?」

 

「さては俺達を騙そうとしてるな!この根性なしめ!」

 

「……貴方達は疑問に思った事はないんですか?」

 

「……何にだ」

 

病理が疑問に思った事はないのかと尋ねると上条は何にだと睨みながら質問する…そして病理は薄く笑って言った

 

「帝督ちゃんが現れるタイミングですよ、例えば第二位と第六位の運命のターニングポイント。デッドロックの襲撃…あれは確か帝督ちゃんが二人を助けたんですよね?」

 

「…えぇそうよぉ…それが何か?」

 

「じゃあなんで帝督ちゃんはデッドロックが襲撃するて知ってたんでしょ(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)うね(・・)?」

 

「「「「「「………あ」」」」」」

 

デッドロックを助けたのは垣根、それは変わらない。だが何故デッドロックが食蜂を襲うと知っていたのかと聞かれ上条達は声を漏らす、病理はニヤリと笑って更に言葉を続ける

 

「更に言えば貴方達は幼少期に帝督ちゃんと会っています…これもおかしいですね。なんで貴方達の居場所を知っていたのか?他にも疑問点はいっぱいありますが…なにか反論はありますかー?」

 

「「「「「「……………」」」」」」

 

「ない様なので説明を続けます、つまり結論から言いますとね…帝督ちゃんは貴方達を騙してたんしゃないんですかね?」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

垣根が上条達を騙していたと言って全員が目を見開く、それを見た病理はこの調子だと嘲笑う

 

「帝督ちゃんは他の超能力者を仲間にして自分の都合のいい駒にしようとしてただけだと思いますよ?そこに友情なんてない、友達ごっこしてただけなんですよきっと…それでも貴方達は帝督ちゃんの味方でいるのですか?」

 

「「「「「「……………」」」」」」

 

(…いいですね、この調子です、彼等の帝督ちゃんの印象を下げ友情をなくし帝督ちゃんを『諦め』させる…これが病理さんのやり方なのでーす)

 

病理は嘲笑う、全ては垣根の心を折る為に虚偽を言って彼等の心に垣根に対する疑心を植え付ける…病理が好むやり方だ

 

「さあ、どうしますか?私の言う事を聞いて帝督ちゃんに罵言を吐きますか?」

 

その問いに彼等はこう答えた

 

「「「「「「断る」」」」」」

 

「……はいぃ?」

 

その言葉に病理は固まった、何故?と。そんな彼女に上条達はこう言う

 

「確かに垣根は俺達に隠してる事があるかもしれねえ…だがそれがどうした。隠し事ぐらい誰だってある」

 

「ていとくンはそんな奴だ、他人の懐にズカズカと入ってくる癖に自分には近寄らせない…そんな奴だ」

 

「でもあいつはいい奴だにゃーん、隠し事はしても…あいつは私達の事を友達だと思ってる…少なくとも私はそう思ってる」

 

「私も同じよ、それにあのバ垣根さんがそんな大層な事を考えるわけないわよ…だってカプ厨だもの」

 

「そうよねぇ…だって彼貴方の中カップリンクの事しか考えてなさそうだもの。そんな事考える頭してないわよ」

 

「同意だな!帝督は馬鹿でお調子者でメルヘンだがそんな根性なしな事はしない!断言してやる!」

 

「…何故そこまで言い切れるのですか?」

 

上条達は自分達は垣根を信じている、と揺るがない目で答える。それを見て僅かに病理が口元を苦く歪め質問する、それに対し彼等はこう答えた

 

「「「「「「だって友達だから、友達を信じるのは当たり前だ」」」」」」

 

その一言だけで彼等が垣根帝督をどれ程信頼しているのか分かった、病理は彼等の心は折れないと気づいた、どれだけ『諦め』させようとしても垣根との友情は揺るがないだろう…彼等(・・)は、だが…

 

「……そういう友情物とかマジでさむーいんです、ならもう関係ありません…貴方達を全員殺して帝督ちゃんの心を粉々に砕きます」

 

病理はそう言うと車椅子から鉈を取り出し上条達の首を刎ねる為に車椅子でジワジワと近づく、上条と削板は身体を動かそうとするが身体は全く動かない。一方通行達は能力を使おうとするが直後耳障りな音が聞こえ演算が出来なくなる

 

「前以てテレスティーナちゃんからキャパシティダウンを盗んできて正解でしたね、後第七位と第二位には薬を打ち込んでおきましたので暫くは身動きは取れませんよー」

 

そう嘲笑う病理、刻一刻と迫り来る死の時間に上条達は冷や汗を流す…だがその時部屋の扉が蹴り壊され誰かが上条達が閉じ込められている部屋に侵入した

 

「……帝督ちゃん…ではない様ですね…」

 

「ああ、超能力者達には悪いが私は垣根帝督ではない」

 

その侵入者は足首までの白いコートを着た黒髪の男だった…彼を見た病理はクスリと笑いその名を告げる

 

「久しぶりですね加群ちゃん」

 

男の名は木原加群(きはらかぐん)、木原一族の科学者にして魔術師である。そして病理と因縁がある男でもある

 

「なんの御用でしょうか?私を止めに来たとか?」

 

「それ以外に何がある?それに私は垣根に助けられた者としての恩がある…故に彼の友を見殺しには出来ない」

 

「カッコイイですねー、でもそれがムカつきますね。今の『木原』を表してるようで吐き気がします。全く木原はいつから仲良しこよしの家族になったのやら…あの幻生さんも帝督ちゃんの所為で腑抜けになりましたし…」

 

加群は無表情で病理をただ見据える、病理はそれを見てクスクスと笑う…絶対に自分が負ける事はないという余裕が彼女から透けて見えた

 

「いやそれで良かったと私は思う、元から木原の異端だった私だが…今の木原は前より人間らしく優しい」

 

「それがダメなんです、木原は私みたいじゃないと…まあそうなったなら仕方ありません…今いる木原を全員殺し新しい木原の誕生を待つとしましょう。ついでに学園都市も壊滅させて世界中に木原を拡散させるとしますか」

 

「それを見逃すと思うか?」

 

加群と病理の会話は続く、病理は学園都市の壊滅を、加群は学園都市を守り抜くという確固たる意志を持ち自らの敵と相対する

 

「と言うか私と戦うとか死ぬ気ですか?死ぬ気なら勝てると思ってるならマジでさむーいです」

 

「いや、死ぬ事など1ミリも思ってなどいない」

 

「?」

 

「何故なら私はお前を倒して無事に鞠亜の元へ帰るからだ」

 

加群がそう言うと病理は一瞬固まった、加群は言葉を続ける

 

「私はここで死ぬ訳にはいかない、私が生きるのを望んでいる者達がいるのでな」

 

「……は、強がりますね…でも私に戦闘向きではない貴方が勝てるとお思いですか?」

 

「貴様こそ何を言っている、私は木原だぞ?戦う相手の想像の外に出なくてどうする」

 

加群はそう言うと伸ばした右手の人差し指と中指の間から数mほどの紅蓮に燃える炎を纏った真紅の光の刃が生まれる、それを見て病理は目を見開く

 

「……魔術…ですか?木原である貴方が魔術という非科学的なものを頼った?……この外道が」

 

「その言葉そっくりそのままお前に返そう、私は科学者でもあり魔術師でもある…さあ、始めようか木原病理、ここがお前の墓場だ」

 

「……いいでしょう、但し私の墓場ではなく……貴方の墓場ですよ」

 

二人の木原そう言うとお互いを睨みながら距離を取る、病理は車椅子から立ち上がり加群へと近づき加群は自分の右手から伸びる剣を一瞥する

 

「燃えよ勝利の剣(レーヴァテイン)

 

「形態参照 ネッシー」

 

燃え盛る炎の剣…それは北欧の炎の巨人が持つ終焉の炎の剣と豊穣神の無敵の剣に関する術式、更に加群は北欧の勇者 ジークフリートの不死身の肉体を参考にした一点のみを除き不死身の如き肉体を得る防御術式を展開。対して病理は自分の肉体を人間から太古に存在した首長竜に酷似した白き巨竜と化す。今ここに戦士と悪竜が相対する…果たして勝つのは木原加群(希望)木原病理(絶望)

 

 

 

 

 

 

 

 




加群さんマジでヒーロー。ジークフリートの術式とレーヴァテインの術式は作者オリジナルです。ベルシ要素が一欠片ねえ…まあお許しを。でもかなりこの二つの術式は燃費が悪いです。全開で術式を使ったら…3分…とはいきませんが10分も戦えませんね、まあその代わり破格の能力ですが

さあ、次回も白熱の戦闘が繰り広げられます!勝つのは希望か絶望か!?後病理さんのCVは坂本真綾さん、加群さんのCVは諏訪部順一さんですね…簡単に言うと某SAOの支配者さんとそれに使える騎士団長の声の人です…ついでに言うと某運命の龍の魔女と竜殺しの英雄の声でもある

次回もお楽しみに


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天使は闇へと堕天して…

さて、今回は怒涛の展開です。最初は木原加群VS木原病理…そしてその次は新しい能力を二つも持って現れたていとくん…新能力は賛否両論でしょうがお許しください

後お気づきの方もあるでしょうがシリアスな時はサブタイが真面目になるんです。つまり今回も大真面目て事です。そしていつもより長いです、いつも長くてすみません


加群は勝利の剣(レーヴァテイン)を振るう、ネッシーと化した病理は万物を薙ぎ払う尻尾を振るう。剣と尻尾がぶつかり尻尾は勝利の剣に切断され切られた直後に紅蓮の炎が尻尾を覆い尽くし尻尾を焼失する

 

「…本来なら燃える筈がない未元物質を焼失させるとは…それが貴方の魔術ですか?」

 

「その通り…これは万物を焼き払い自動的に敵を切り裂く術式だ」

 

レーヴァテイン…北欧神話においてグングニルやミョルニルと並ぶ武器の名であり神話上においてはロキがルーンを刻み作ったとも、豊穣神フレイが持つ勝利の剣だとも炎の巨人スルトが持つ炎の剣とも言われている剣…正確には剣なのかもわからない武器である。加群はこの謎に包まれた武器を自らの術式に組み込んだのである

 

「レーヴァテインは豊穣神の剣とも炎の巨人の剣とも言われている…だから私はこう考えた。両者の武器の特性を組み合わせれば万物を焼き払い、剣術が得意ではない私でも自動で敵を切り刻む術式が出来るのではないかと」

 

加群の勝利の剣の効果はたった二つ、スルトの剣として世界を焼き払った時の様に本来なら燃える筈のない物質すら焼き尽くす力とフレイの剣として敵に自動的に攻撃できる力を組み込んだ術式。剣の達人ではない加群でもこれを使えば例え神裂の様な剣の達人とも互角に戦える、更に万物を焼失すると言う特性上防御不可の一撃を敵に叩き込める攻撃特化の術式を作り上げた

 

「それは何とも厄介な能力ですね…ですが防御が疎かになってますよ!」

 

ネッシーと化した病理はその巨体を活かしその巨大な顎をハンマーの様に加群に振り下ろす、加群は勝利の剣のお陰で剣術は達人並みの動きだがそれはあくまで剣術のみ、聖人の様な身体能力を持たぬ加群にはこの一撃は避けれない。攻撃に特化していても防御が低ければ意味がない…そして加群は竜の顎に押し潰され病理は竜の顔のままニヤリと笑うが…

 

「その程度か?」

 

「な…!?」

 

ザクッ、と病理の頭が切断され頭が胴体と泣き別れする、そして頭は炎に包まれ焼失し押し潰された筈の加群は平然と顎を叩きつけられた場所に立っていた

 

「……頭部を切断しても死なないか」

 

加群は切り落とした筈の胴体から白い何かが溢れ出すのを確認する、そしてそこから再びネッシーの首が再生し病理は血の様に赤い目を加群に向ける

 

「…何故生きているのです?私は確かに貴方を叩き潰した筈なのに」

 

「……ジークフリート、この名は科学者のお前でも知っているだろう?」

 

ジークフリート、北欧神話における悪竜(ファフニール)を殺した竜殺しの英雄、竜血を浴びた事により甲羅の如き硬さを得、あらゆる武器での一撃を防ぐ不死身の肉体となった逸話を持ち、加群はその逸話を参考にしある一点を除いて自分の身体を不死身の肉体にする術式を完成させた…と言っても硬度は加群曰くウルツァイト窒化ホウ素の約10倍程度らしくお世辞にも防御特化とは言えない…だがハンマーの様な一撃を堪える程度は造作もない

 

「攻撃特化の勝利の剣、防御特化の竜血の鎧…貴様はこれらの術式を扱う私に勝てるのか?」

 

「……は、つくづく魔術というのは非科学的ですね…でもそんなに使い勝手がいいものではないという事くらいは知ってますよ」

 

加群は勝利の剣を携えながらそう呟く、だが病理は焦る事なくそんなに都合のいい力なのかと笑いながら前脚を加群へと叩きつけようとし加群はそれを回避する

 

「確かに攻撃特化に防御特化…嫌な組み合わせです…ですがそれには何らかのリスクが生じる筈です…例えば…持続するのに多量の力を使うとか……ね?」

 

「………ふん」

 

病理の言う通り、勝利の剣と竜血の鎧は破格の能力を持つ術式だ。だがこんな強力な能力がノーリクスで使える程魔術は甘くない、これには多量の魔力を常時つぎ込む必要がありこの二つを全力で使えば僅か10分足らずで魔力が底を尽きてしまう欠点がある、更に魔力とは生命力を変換させた力のこと。つまり魔力がなくなれば死に至る…まさに諸刃の剣であり短期決戦向けの術式である

 

「それがどうした、魔力切れまでに貴様を倒せばいいだけだ」

 

「…そう簡単に行きますかねー?形態参照 サンダーバード」

 

加群は時間切れまでに病理を倒すと呟く、病理がそれを聞いて笑うと身体をドロリと溶けてネッシーの姿から頭部はワニに似た巨大な羽毛のない翼を持つ鷲の姿へと変化させる。病理は翼を羽ばたかせ烈風を巻き起こし加群はそれを足に力を込めて烈風に耐える

 

「耐えますねー、でもいつ迄で続きますかね?」

 

サンダーバードと化した病理はその爪で加群の身体を引き裂こうとし加群は爪を勝利の剣で切り落とす、ならばと槍の様に鋭い嘴で加群の胸を穿とうとするが服が裂かれただけで肉体に傷はない。サンダーバードは翼を羽ばたかせ何度も人肌なら簡単に裂くであろう烈風を何度も何度も加群に放つが服が千切れるだけで加群には何の傷も与えられない

 

「この程度で限界か?」

 

「いちいち煩いですね、喋らないと死んじゃうんですか?」

 

病理は鬱陶しそうにビルくらいなら容易く切断できる翼を振るうが加群はそれをジャンプで避け翼に飛び乗る、加群は病理の左翼を駆け上がり背中まで辿り着くと背中に剣を突き刺し背中を切り刻む。だが病理は激しく体を震わせ加群を振るい落とす

 

「だから私にはそんな攻撃は通じませーん!未元物質による再生が可能な私にそんなチンケな攻撃は…」

 

「ああ、だろうな…だから一撃必殺の技を仕込ませて貰った」

 

「………はい?」

 

病理はそんな攻撃は効かないと笑うが加群はそれを知っているからこそ必殺の一撃を仕込んだと呟き病理は怪訝な顔をする、彼女は気づいていなかったが彼女の背には何やら文字が刻まれていた…それは科学者である病理には理解できないだろうが魔術師ならばそれがルーンだと気付くだろう

 

燃えよ(・・・)

 

ただ簡潔に加群がそう呟くと病理の肉体が紅の炎に一瞬で覆われる

 

「!??な、何が…!?」

 

「勝利の剣は単なる接近戦用ではない、勝利の剣でルーンを刻む事によりその対象を燃やし尽くす…レーヴァテインと言うのは本来は悪神ロキがルーンを刻んで作ったともされているからな」

 

何が起こったのか理解できない病理は呻き声をあげながら床をのたうち回る、皮膚が灼け爛れボロボロと身体が黒い炭になって崩れ始める…それでも病理は床を這う様に加群へと近づきその翼をを伸ばす…だがその翼も燃え尽き崩れてしまった

 

「か"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あぁぁぁぁぁ!!」

 

その断末魔を最後に病理の肉体は燃え尽き黒い炭となって焼失した、それはまるでレーヴァテインで殺されると言う雄鶏(ヴィゾーヴニル)を表現しているかの様だった

 

「……呆気ない幕引きだな」

 

それを確認した加群は呆気なかったと呟き勝利の剣を消す、そして上条達の拘束を解こうと考えた直後自分の胸から白い刃が生えた

 

「……カハッ…」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

加群はその刃を暫し呆然と見た後口から血反吐を吐く、それを見て驚く上条達。そして加群は自分の首を後ろへとゆっくりと動かし背後を見る…そこに立っていたのは白い刃が生えた腕を加群の背中へと突きつけた病理がいた

 

「な……に?」

 

「やだもー加群ちゃんたら〜私が死んだとでも思ったんですか?でも残念!私は生・き・て・ま・すぅぅ!」

 

そう言って病理は刃を胸から抜き加群の背中から大量の血が噴出する、そのまま倒れる加群に病理は黒い笑みを浮かべる

 

「何故だ……私が確実に殺した筈…」

 

「ええ、疑問に思っちゃいますよねー。でも残念ながら…ネタバレはしませんよ?ただ『諦め』を司る病理さんがあの程度で終わりとは思わない事ですねー」

 

ヘラヘラと笑う病理に加群が顔を歪める、油断したらこのザマだ、と自分を責めていた

 

「あ、因みにサンダーバードでの烈風攻撃は貴方の体の弱点を探る為の攻撃です。あの攻撃で貴方の体は一切傷を負わなかった…でも一箇所だけ薄くですが切れた箇所があったんですよ…それが背中のある一点…そこが弱点だったんですねー」

 

「……くっ」

 

竜血の鎧の弱点、それはジークフリートと同じ背中の一点のみ普通の人間と変わらない事。それを看破され加群は焦る…もう呪力は尽きかけ竜血の鎧の維持もキツい…勝利の剣ももうルーンを刻む事による必殺技も使えず加群は窮地に立たされる…それでも加群は立ち上がる、雲川鞠亜(生徒)の元へ帰る為に

 

「もう『諦め』てくださいよ。戦うのも面倒なんです」

 

「断る、私には譲れないものがあってな…私は貴様を倒し鞠亜の元へと帰る。そして垣根の友を救う…それが私の使命だ」

 

「はぁ……暑苦しいのとか本当にウザったいです」

 

加群は折れない、生徒の元へ帰る為、上条達を救う為にここで折れるわけにはいかない。そんな加群(ヒーロー)の姿を見て病理は笑いながら背中から漆黒の三対の翼を顕現させる

 

「では…あの世でいつか会いましょう」

 

病理は漆黒の翼を槍の様に加群に放つ、加群はそれに対し拳で立ち向かうとする…その直後純白の翼の槍が六本飛び出し病理の漆黒の翼の槍と衝突、爆破が起き加群はそれに吹き飛ばされる

 

「……やっと来ましたか」

 

病理は白い翼の槍が飛び出した方へと顔を向ける、そこに立っていたのは垣根帝督。横には帆風も立っていたが病理は彼女を視界に入れていない

 

「やっと来てくれましたね帝督ちゃん」

 

「よお、あの日の因縁を終わらせに来たぜ」

 

睨みつける垣根に黒い笑みを浮かべる病理…彼女の眼は垣根を瞬きする事なく見つめていた。彼女の目にはもう垣根しか映っていない、横にいる帆風も先程まで交戦していた加群も、捕らえた上条達も彼女の眼には映らない…彼女の興味があるのは垣根だけだった

 

「お前をここで殺して当麻達を助け出す…で、死ぬ前の遺言はねえか?」

 

「あは、言ってくれますね、前回負けたとは思えない強気…嫌いじゃないです」

 

「ほざけ、前のは油断してただけだ…知ってるか?ヒーローて奴はどんな奴にも勝てる可能性があるんだぜ?」

 

「あー。確かに…でも貴方がヒーローだなんて笑わせますね…貴方だって気づいているんでしょう?自分がヒーローの器ではない(・・・・・・・・・・)と」

 

垣根の発言を聞いてくすくすと笑う病理、そして彼女は言ったのだ、垣根はヒーローではないと。それを聞いて目を見開く帆風と上条達…垣根は何も答えない…病理はニヤリと笑いながら呟いた

 

「ねえそうでしょう?だって貴方は人殺し(・・・)ですからね、それも貴方がかつて住んでいた施設の友達を自らの手で殺しちゃったんですからね」

 

「「「「「「え………!?」」」」」」

 

「……殺、した?」

 

「……!!」

 

病理はこう言った、かつて垣根の友達だった人物を自らの手で殺したと。それを聞いた上条達は驚きの目を垣根へと向ける、帆風も垣根の顔を見る…垣根は唇を噛む…そこから血が流れているのにも気づかぬくらい彼は怒っていた

 

「それに貴方は無数の人を殺した…学園都市に仇なす者、学園都市を裏切った者、そして…貴方の超能力者(お友達)を使って悪質な実験を行おうとした科学者を…全部貴方が殺したんですよね」

 

「……本当なのか?」

 

「………」

 

病理の言葉を聞いて上条は垣根へと本当かと尋ねる、垣根は何も言わない…それこそが彼の答えと言わんばかりに

 

「貴方の翼は純白なんかじゃない…血で赤く染まった汚れた翼です、そんな貴方が甘ったるい光の世界に生きてるなんて…殺した子供達に申し訳ないと思わないんですか?貴方には光の世界に生きる資格はない、闇の世界しか貴方の居場所はないんですよ」

 

病理は光の世界には垣根の居場所はない、闇の世界こそが垣根が本来いる場所と笑う。垣根は何も答えず無言で背中から未元物質の翼を展開する

 

「……縦ロールちゃん、加群先生を背負ってここから逃げろ」

 

「な…!?」

 

「ここに行っても邪魔だ、早く逃げろ」

 

「そんな…わたくしだって戦「自惚れるな」…!?」

 

加群を連れて逃げろと言う垣根に反発する帆風だが垣根に大声で睨まれ帆風は驚く

 

「あんまり調子に乗るんじゃねえ、お前じゃあ何の役にも立ちやしねえ…あいつに殺される前にさっさと失せろ」

 

「そ、そんな事は…!」

 

垣根にいても役に立たない、殺される前に早くここから立ち去れと言う垣根に帆風は反論しようとする…それを見て病理が笑った

 

「帝督ちゃんは女の子の扱いがなってませんねー、そんな帝督ちゃんに問題です、私の手駒を前に貴方はそのお姫様を守り通せますかー?」

 

「あ?」

 

病理が指を鳴らす、そして部屋の壁が破壊され現れたのは白いのっぺらとした人型の何か。両手両足もあるが目や鼻はなく人間の様な歯が生えた口があるのみ…そんな異形な生物が無数に現れそのうちの一体が帆風に襲いかかり垣根は背中の翼で生物を真横に切り裂く…そしてその生物から真っ赤な血(・・・・・)が飛び散った

 

「………あ?」

 

「あーあ、また殺しちゃいましたね…人間(・・)を」

 

「……人間?」

 

病理はその生物を殺した垣根に言った、人間を殺したと…それを聞いてどう言う意味かと帆風が呟くと病理はニンマリと笑う

 

「その生物は…私が未元物質をノーリスクで人体を作る為に実験動物にした一般人ちゃん達です。その子達は上手く未元物質に適合しなかったようで…あ、でもご安心を自我ぐらいはありますよ?痛覚とか痛みを感じる事くらいは分かるんじゃないんですかね」

 

そう言った病理に垣根は気づく、この帆風に襲いかかろうとしている全ての生物が元人間で単なる被害者だと…その実験の被験者にされた人間達は病理が命じるままに帆風へと襲いかかる…そんな様を見て病理は笑った

 

「さあ、貴方は人を殺してお姫様を守る事はできますか?」

 

「……!?…くそ!」

 

垣根は六翼を高速で振るい回し襲い来る元人間達の身体を斬り刻む、刹那飛び散る赤い血に垣根の翼が赤く染まる。飛び散った赤い血は垣根も帆風にも降りかかり二人の服や身体を赤く染め上げる

 

「……ぁ」

 

帆風は垣根の雰囲気がガラリと変わったのに気づいた、あの元人間達を翼で斬り裂いたあの瞬間。垣根が致命的なまでに自分とは違う世界に行ってしまった気がした…そんな帆風の心情に気づかず垣根は帆風を一瞥し口を開いた

 

「……もうここは縦ロールちゃんのいていい世界じゃねえ…ここにいたら殺される…早く逃げろ」

 

「〜〜〜ッ!」

 

帆風は垣根の言葉で背中を蹴られたかの様に加群を背負ってこの場から脱兎の如く逃げ去った、垣根はそれを見届けた後ボソッと続いた

 

「……元気でな」

 

垣根は未だ拘束されたままの上条達をチラ見した後怒りの眼差しで病理を睨む

 

「……準備はよろしいですね?」

 

「……ああ、さっさとお前を殺してやる」

 

「なら行きましょうか、形態参照 イエティ、クラーケン、リトルグレイ」

 

垣根と言葉を交わした後彼女は右腕を毛むくじゃらな巨大な腕へと変貌させ左手の五本指が膨らみオレンジサイズの脳が製造され、脚が十本の触手が生える異形の姿と化した病理…彼女は垣根へと飛びかかり攻撃を仕掛けるが、垣根は左眼を赤く染め多才能力(マルチスチル)を発動。風力使いの能力で風を起こし病理を吹き飛ばそうとする。だが病理はその風を変化させた右腕で払い拳を叩きつけようとする、垣根はそれを座標移動を発動して垣根は回避する

 

「多才能力ですか…でも私には通用しませんよ」

 

「だろうな…なら…原石(・・)の力はどうだ?」

 

垣根はそう言うと病理へと拳を伸ばす。それだけで見えない力が放たれる、病理は僅かながら眉をひそめ漆黒の翼を盾にしてその見えない力を防ぐ

 

「……今のは俺の?」

 

削板は今のは自分の能力…原石だと気づく、だがあれは超能力ではなく原石…未元物質で再現可能なのは超能力だけではなかったのかと削板は考える…その疑問に答えるかの様に垣根が口を開いた

 

「俺の未元物質は人の人体まで複製できる、軍覇の脳を再現しちまえば原石の力は再現できるし、原石とはいえ超能力と原石は脳の開発によって誕生する、それが自然か人工かの違いてだけだ。なら多才能力に組み込む事も可能だ」

 

「流石帝督ちゃん、原石も完璧に再現できる様になりましたか…でもそれくらいじゃあ私には届きませんよ?」

 

「だろうな、ならこれはどうだ?」

 

垣根は懐からある物を取り出す…それはあのインデックスの遠隔制御霊装に似た物だった、そして垣根は口を開く

 

「「超能力」は未元物質。「魔術」は未元物質、「天使の力」は未元物質、未元物質は「超能力」、未元物質は「魔術」、未元物質は「天使の力」」

 

そう呪文を呟いた後霊装のダイヤルが動き出し垣根は更に言葉を続ける

 

「警告、第二十二章第一節。『竜王の殺息(ドラゴンブレス)』発射」

 

垣根の目の前に魔法陣が現れ魔法陣に謎の亀裂が入りそこから純白の光の柱と呼ぶべき光線が放たれる、病理は翼を広げ空へと飛翔する事でそれを避けるも垣根は魔法陣を上へと動かし光線も上へと上がっていき部屋の天井を穿つ

 

「…魔術…ですか、加群ちゃんと違い能力開発を受けている貴方が使ってしまえば血管が破裂すると思っていたんですが…どんなトリックが?」

 

「……神の右席から学んだ原罪を薄める事によって使える天使の術式…とだけ言っておくか…ま、簡単な言うと俺専用の術式て訳だ」

 

天使の術式、そう聞いた病理は薄く笑う。垣根が扱う天使の術式の名は『三位一体』

 

一つの存在に三つの異なる性質の物の性質を兼ね合わせる術式、これは未元物質に魔術と超能力、天使の力の性質や特徴を同じモノと定義する事により未元物質を使えば超能力者が魔術の副作用を受けずに済む(魔術と超能力が同じものなら超能力を使っても血管が破裂しないのと同じ)。魔術も超能力と同じな為火花を生じない…たったそれだけの能力だがこれにより垣根は魔術を使っても血管が破裂するなどのデメリットが生じることは無い。だがまだ未完成なので副作用が生じる可能性もある

 

「さあ…魔術と超能力、原石の力を扱える俺に勝てるか?」

 

垣根はそう呟くと未元物質で白いカブトムシ達を形成、更に昆虫型や恐竜型、魚類型の自律兵器を形成させそれぞれにレベル5の超能力、削板の原石を実装する

 

「…成る程、無尽蔵の兵器に魔術と超能力…魔術と科学の融合体…加群ちゃんといい、貴方といい…何故魔術を取るんでしょうか?」

 

「煩えよ、さっさと死ね」

 

垣根は演算を行い生命力の代わりに演算を魔力の代わりにする事で魔術を発動する、天から無数の火矢が降り注ぐ、病理はそれを翼を傘の様にして防ぐ。だが自律兵器達が砲弾や能力での攻撃を一斉に行う。それを病理は空を飛ぶ事で回避し自律兵器達に漆黒の翼を羽ばたかせる事で黒い粒子を散らし、それが自律兵器達に当たると自律兵器達が爆散する

 

「……その翼…俺の未元物質と全く同じ物だな…ただ素粒子の電荷とかが未元物質と真逆な(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)だけで」

 

「ようやく気づきましたか…その通り、この翼は帝督ちゃんの未元物質と同じにして真逆な物質…いうなれば反転物質(アンチマター)。これを未元物質とぶつける事により対消滅を起こし質量がエネルギーへと変換され爆発となる…これがトリックの正体です」

 

彼女の背中の翼は未元物質とは逆の性質にしてほぼ同じ物質…反転物質といい、これをぶつける事により未元物質と対消滅を起こし爆発を発生させたのだ。病理はそう言うと翼を羽ばたかせ反転物質の素粒子を撒き散らし自律兵器達をエネルギーへと変換し爆破させる。垣根は新たに自律兵器を形成する…それも今までの自律兵器と違いその白い身体の中心部に光り輝く人魂の様なコアが存在した。しかも赤青緑黄とそれぞれの個体によって色が違う

 

「天使の力…四大天使の属性である火水土風の四大元素を元に生命や魂に近い擬似生命を作り出しそれをコアとして生み出す…言わば人工生命体だ…これは唯一先生の『エレメント』を参考にさせてもらった。三位一体によりこいつらはコアの色にあった属性の魔術を行い更に超能力も使用できる科学と魔術のハイブリット兵器て訳だ…しかも未元物質と天使の力は同じ物と定義してあるから擬似天使とも言えるな」

 

その科学と魔術が交わりあった自律兵器は様々な魔術と超能力を病理へと放つ、火のコアの自律兵器なら火炎放射を、水のコアなら超高水圧の水、緑のコアなら巨大な土塊の槍を、黄のコアなら暴風を放ち更に超電磁砲の電撃や原子崩しがこれでもかと言う程に放たれ病理はそれをイエティの腕や翼で防ぎながら素粒子をばら撒き自律兵器を爆破していく

 

「俺を忘れるんじゃねえ」

 

垣根は未元物質を覚醒させ翼を無機質な光を発光する翼へと変化させ病理へと接近する、病理は漆黒の翼をぶつけ相殺しようとするがそれより先に病理の身体に翼がぶつかり病理は派手に吹き飛ばされる

 

「いたた〜、痛いですね」

 

病理はそう言っておどけるが垣根は容赦なく自律兵器達に病理を殺す様命令し自律兵器達の内カマキリやティラノサウルス等の接近戦向けの兵器が病理を殺そうと歩み寄る…それを見た病理は軽く笑う…そして攻撃を仕掛けた兵器達が病理から放たれた原子崩し(・・・・)によって破壊された

 

「……原子崩しだと?」

 

「帝督ちゃんなら恋査(れんさ)くらい知ってますよね?」

 

恋査、薬味久子の助手を務める『学園都市に七人いる超能力者が全て同時に統括理事会へ敵対行動を取った場合の対応策』と言うコンセプトを元に作られたサイボーグの事だ、その能力は超能力者の人間の身体構造を機械的に再現し能力の噴出点となる事で超能力者の能力が扱える様になる…病理はそれを未元物質で構成された身体で超能力者の肉体を再現する事により噴出点を作りその超能力を操れる様にしたのだ

 

「超能力に加え魔術も使える帝督ちゃんも随分反則ですが…これなら私も同等ですね」

 

病理は左手の脳から念動能力の力を放ち、脚の触手が伸びて垣根を潰そうとする、更に超電磁砲の能力が使える様に身体を改造し超電磁砲を放つ、それを垣根は竜王の殺息を放ちそれらを全て粉砕する。病理は超電磁砲から一方通行へと能力を変え空気を圧縮させ高電離気体(プラズマ)を作成し反転物質の六翼を重ね巨大な槍とし背から切り離しプラズマと共に垣根へと放つ…未元物質では防げないその一撃に垣根は右手をかざす、直後垣根の未元物質で構成された義手の右手がボロボロと崩れ右手から天使の姿をした()が現れた

 

ーーーキュラアアァァァ〜!ーーー

 

「!?それはアウレオルスの時の…!」

 

上条がその竜を見て叫ぶ、あの竜はアウレオルスと戦っていた時に自身の右手から現れた八体の竜の中の一匹だったからだ

 

「これで10万3,000冊の魔道書の原典の汚染を防ぐ事で俺は魔術を使ってる…三位一体とこの天使型の竜王の顎の相性はバッチリの様だな」

 

「……第二位の幻想殺しに第七位の原石…つまり帝督ちゃんは他の超能力者の能力の全部乗せて事ですか…もう超能力者は貴方だけでいいんじゃないんですかね」

 

病理が右手から出現した竜を見て面白げに笑う、彼女は超電磁砲を放ち反転物質の翼を槍の様に突き出すが垣根は竜を動かしてその顎で超電磁砲と翼を喰らい消滅させその竜を病理の身体を喰らわす為に伸ばす

 

「チッ!」

 

病理は慌てて翼を羽ばたかせ空へと逃げるが竜は病理を追って上へと首を伸ばす、そして竜が病理の身体を噛みつきボロボロと病理の身体が砂の様に崩れ始める

 

(やはり反転物質は未元物質と同じ異能の存在…幻想殺しにはこの身体も相性が悪い様ですね)

 

病理は幻想殺しと自分の反転物質で出来た肉体は相性が最悪だと内心で呟き崩れゆく身体から自分の頭部を切り離す、その瞬間病理の身体は完全に崩壊するが首だけになった病理は首から下を一瞬で再生させ平然と出来上がった足で立ち上がる

 

「化け物が…だがこの竜ならお前の身体を完全に殺せる。なら俺の勝ちは時間の問題だ」

 

「……ですね、超能力者の能力が使えても第一位の帝督ちゃんには敵いませんし…貴方は多才能力で強化した様々な超能力とその術式とやらで強力な魔術を扱える、挙句には私にとって弱点となる幻想殺しも扱う…確かに普通に戦えば負けてしまいますね…普通に戦えば(・・・・・・)…ですがね、でも病理さんにも計画を絶対に成功させる為にはこんな所で『諦め』る訳にはいかないのです…ですから」

 

垣根が竜王の顎なら反転物質で出来た身体を破壊できると笑う、だが病理はそんな危機的な状況でも笑みを崩さずそれを怪しむ垣根…そして彼女は口を開いた

 

「帝督ちゃんにはここで全てを『諦め』て貰いましょう」

 

病理は指を鳴らす、彼女の周囲に反転物質が人の形を形成させ7.8歳くらいの十数人の少年少女の姿をした反転物質で出来た人形が出来る…それを垣根が見た瞬間彼は全身から冷や汗が流れる

 

「……ぁ」

 

「感動の再会ですねー、貴方の記念すべき最初に殺した子供達(・・・・・・・・・)ですよー」

 

この人形達の姿は垣根が孤児院で一緒に暮らしていた友達の姿を反転物質で複製したもの、垣根はその姿を見て思わず一歩後ろに退がる…そして人形達は恐るべき速さで垣根へと迫り大型ハンターに匹敵するその拳を垣根に放ち垣根はそれを天衣装着や一方通行で強化した肉体でジャンプして避ける…そして人形達は口を開いた

 

「なんで僕達を殺したの帝督?」

 

「!?」

 

「なんで?私達はまだ生きていたかったのに…」

 

「許さない、俺達を殺したお前を絶対に許さない」

 

人形達が呟く怨念の声に垣根が顔を強張らせる、その言葉は単に病理が垣根の心を抉る為に言わせているだけなのか殺された子供達の本心なのか垣根には分からない

 

「お前のせいだ、お前さえいなければ僕等は死なずに済んだのに」

 

「私達を殺したアンタがなんでのうのうと生きてんのよ」

 

「許さない、絶対に…死んで謝れよ、いや死んでも絶対に許さない」

 

「ぁ…ぁ…」

 

拳を避け続ける垣根の耳に人形達の怨念の声が響き垣根は顔を青くし始める、人形達は更に言葉を続ける

 

「「「死ねよ帝督、罪の標に押し潰されて」」」

 

「あ…ああぁぁぁ!!」

 

人形達の死んだ様な目に怯えた垣根はその言葉を頭から消す為か翼を乱暴に振るう。それだけで人形達が陶器の様に砕ける…そして完全に消滅する前に人形達は口を開き笑った

 

「「「そうやってまた殺すんだ、この人殺し」」」

 

「あ……」

 

垣根を罵った人形達に垣根が目を見開く、また友達を殺してしまったと言わんばかりに…それを見て病理は笑う

 

「いいですね。なら次は今のお友達(・・・・・)に攻撃してもらいましょうか」

 

病理がそう言って手を叩くと垣根の周囲に六人の人型が形成される…それは垣根がよく知る人物達の姿形をしていた

 

「……俺、達…?」

 

上条が呟いた通り、その六体の反転物質で出来た人形達は上条や一方通行、麦野、美琴、食蜂、削板の姿をしていた…姿形だけではない。本人達の能力も上条と削板以外実装している…本物に見える様に色まで付いていた

 

「さあ、存分にお友達同士で殺し合いなさってくださいー」

 

病理が引き金の言葉を呟くと複製上条達は先程の人形達と同じスピードで垣根へと迫り垣根を攻撃する、垣根は一方通行の反射で防ごうとするが複製上条の拳はそれを無視して垣根の腹にその拳を当てる

 

「がぁ!?」

 

原理としては数多の木原神拳に近かったかもしれない、だが垣根にはそれが上条当麻の幻想殺し(・・・・・・・・・)にしか見えなかった、そして複製上条が口を開く

 

「この偽善者が」

 

「!?」

 

その声色は正しく上条そのもの、複製と分かっていても垣根は目を見開いて複製上条を見る

 

「テメェなんかいなければあの子達は死ななくて済んだんじゃねえか!テメェがいた所為であの子達が死んだんだろ!」

 

複製上条は怒っていた、先程の人形達の元になった子供達が死んだのはお前の所為だと…本物ならば言わないであろう言葉に垣根に怯えた様な目で複製上条を見る…それはまるで友達に知られたくない過去を知られ拒絶された様な表情だった

 

「見損なったわよ、私達に隠れてそんな事してたなんて…この外道」

 

「こんな外道と一緒にいたなんて…私の汚点そのものだわぁ」

 

「…あぁ……」

 

美琴と食蜂がゴミを見る目で垣根を一瞥し垣根の腹に蹴りを入れる、その一撃に垣根は吹き飛ばされる…だかその痛みよりも二人に拒絶の言葉を吐かれたことによる精神的な傷の方が垣根には効いていた

 

「この人間の屑が…死ねよ第一位。私達が直接引導を渡してやる」

 

「人間のクソだなオマエ…この善人気取りの偽善野郎が」

 

「見損なったぞ、この根性無しが…」

 

「…や、やめろよ…その声で、その姿で…俺を拒絶するな!」

 

麦野の言葉が、一方通行の言葉が、削板の言葉が垣根の心に傷を与えていく。もう演算できる様なまともな思考はしていない…多才能力も接続が切れ霊装はコロコロと左手から転げ落ち右手の竜は薄っすらと虚空へ消える…唯一の自分の能力である三対の翼も弱々しい光を放っており頼りなく見える…それを見た病理が笑う

 

(いい感じに壊れてきましたね…まさかここまでとは驚きです。それ程まで彼らに執着していたのでしょうねー、病理さん妬いちゃいます)

 

黒い笑みを浮かべる病理、複製上条達は無抵抗の垣根に蹴りや拳をその身体に叩き込む、それを見ている事しか出来ない上条達

 

「やめろ!俺達の姿をした偽物で帝督を攻撃するんじゃねえ!」

 

「ていとくン!そいつらは偽物なンだ!俺達の声を聞いてくれ!」

 

「垣根もしっかりしろ!それは私らの姿を真似ただけの偽物だ!」

 

「あ、大声出しても無駄ですよ。貴方方の声は聞こえない様細工はしてありますから…貴方達は精々帝督ちゃんが壊れていく様を間近でご覧ください」

 

削板と一方通行、麦野が必死に叫ぶがもう垣根に彼らの言葉は届かない、無抵抗になった垣根に複製食蜂が心理掌握の力を使い彼等の声が聞こえない様細工しているからだ…垣根は無抵抗のまま複製人形達に攻撃される

 

「が、あ………!」

 

垣根は成すすべなく床を転がる、複製人形達は垣根を殺さない様にじわじわと甚振っていく…その途中で垣根の心を抉る言葉を言い確実に垣根の心を精神的に追い詰める…そんな垣根を嘲笑う様にいつの間にか垣根を見下ろす様な形で現れる病理

 

「今どんな気持ちですか帝督ちゃん?」

 

「……地獄に堕ちろ」

 

「まだ元気溢れてますねー、そんな帝督に『諦め』の一言です」

 

垣根は吐き捨てる様に呟くが病理は笑みを浮かべこう言った

 

「あの子供達が死んだのは私の所為ではなく貴方の所為なんですよ」

 

「…あ?」

 

「いい加減理解してないふりはやめましょう、気づいていた筈です。貴方が未元物質という能力を持っていたからあの子達は私に洗脳され貴方に襲いかかり貴方は正当防衛としてあの子達を殺したのだと…でも貴方がいなければあの子達は死にませんでし(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)たよね(・・・)

 

「な…」

 

病理が言ったのは垣根が心の奥底で思っていた事、垣根という存在がいなければあの子達は死なずに済んだのでは?という考え。それを病理は笑いながら告げ垣根は反論しようと口を開く

 

「そんな訳「あるんですよねこれが」!?」

 

「貴方がいなければあの子達は死なずに済んだ、他にも貴方が余計な事をしなければ幸せだった人達もいる筈です。貴方のその偽善行為が誰かを追い詰めている事に気付いていますか?」

 

「あ、あ…ち、違う俺は間違って…」

 

「いい加減『諦め』なさい、貴方は学園都市に…この世界には不要な人間だったという事実を受け入れなさい」

 

慈母の様に、されど悪魔の様に話す病理の言葉に垣根の根本的な何かが崩れようとする、垣根は何か否定の言葉を探すが…

 

『もう諦めろよ偽物(・・)

 

「……は?」

 

背後から声が聞こえ振り向くとそこにいたの垣根自身(・・・・)だった、困惑する垣根にその垣根は口を開く

 

『初めまして…て、言っておくか…俺は垣根帝督だ』

 

「な、何を…俺が垣根帝督だ…」

 

『違えだろ偽物(・・)、お前は偽物だ…俺の身体に勝手に入ってきて(・・・・・・・・・・・・・)好き勝手してた癖によ』

 

「!?ま、まさかお前は…」

 

垣根帝督と名乗った人物に垣根が自分が垣根帝督だと言いかけるが彼は垣根を偽物と嘲笑う、その真意に気づいた垣根は口を震わせながら何か言おうとする…それを見たもう一人の垣根は口を歪ませる…果たして彼は垣根の幻想か或いは…

 

『そうだよ、俺が正真正銘本物の垣根帝督だ。この偽物野郎が』

 

垣根(転生者)とは違う本物の垣根帝督に偽物と言われ垣根の顔が青ざめていく…それを見た垣根帝督が笑う

 

『誰もお前の事なんじゃお呼びじゃねえんだよ。この垣根帝督の名を偽る誰か(・・)さん?さっさと俺に身体を返しやがれ』

 

「ち、違う俺が垣根帝督だ!俺が垣根帝督なんだ!」

 

『言い訳苦しいな…お前は所詮偽物だ、まあ俺と同じ誰も守る事なんざ出来ねえ出来損ないのヒーローて点は一緒だがな』

 

垣根帝督の言葉に垣根が反論する、垣根帝督と話す度に垣根の自己やアイデンティティが崩れていく感覚になる…自分は誰だ?自分は垣根帝督になったのではなかったのか?そもそも自分は何がしたかったのだと頭を抱える垣根に垣根帝督は駄目押しの一言を告げる

 

『消えろよ偽物、お前さえいなけりゃあの餓鬼共は死なずに済んだんだ…このヒーロー気取りの偽善者が…まさかあの人形達が言っていた言葉が嘘だとでも思ってんのか?皆心の中ではお前の事をそう思ってたに決まってるだろ』

 

「…あ、ああぁぁぁぁ!!?」

 

『さあ、壊れちまいな。まあ安心しろ、その身体は俺が貰ってあの女を殺してやる…ま、その後でお前のお友達の一方通行とアレイスターも殺すがな』

 

「あ、ああ………ア"ア"ア"ア"ア"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

完全に壊れた声を出す垣根を見て笑う垣根帝督、垣根は膝を崩れ落ちる。そして両手で頭を抑え身を震わせる…直後垣根の翼が爆発的に展開されその余波で複製上条達が破壊される

 

「おお!」

 

「か、垣根?」

 

歓喜の声をあげる病理とは真逆に上条達は驚きの眼で垣根の背から生えた翼を見る…それは何時もの純白の翼…ではなく垣根の心情を表すかの様なドス黒く変色し翼から赤い不気味な眼がぽこぽこと噴き出す様に現れる、その眼は笑っている様にも泣いている様にも見える…更に翼から異形の手や唇が生える…そんなグロテスクな翼を見て病理は歓喜の笑みを露わにする

 

「来ました来ました!これですよこれ!これが私が求めていたものなんです!さあ!実験のフィナーレですよ!超能力者の皆さんもその目に焼き付けてください!絶対能力者(レベル6)の誕生です!」

 

「れ、絶対能力者?」

 

病理が絶対能力者の誕生だと叫び困惑した声を出す美琴…グロテスクな翼を顕現させた垣根は両目が()に染まった目で病理を見据え口を開く

 

「lnslljourgj俺vnlxadj誰vel!!?」

 

「おー、これは科学では1ピコメートルも理解できませんねー。だからこそ面白いのですが」

 

ガブリエルの様な理解できないノイズを叫ぶ垣根、上条達はその言語は理解できなかったが垣根が苦しんでいる事は理解していた。だが自分達では助ける事は出来ないと歯噛みする

 

「帝督ちゃんは無事に天上の意思(レベル6)に辿り着けるのでしょうか!?まあ、帝督ちゃんの人格は変質してしまうでしょうが…ま、そこら辺は『諦め』ましょう。私が知りたいのは絶対能力者がどれ程なのか調べたいだけですしね」

 

病理はそう言って笑うと苦しむ様に身を悶えさせる垣根を魅入る、垣根のグロテスクな翼は膨張を重ね翼の長さは数百メートルを軽く超え天井を破壊し空へとその翼を晒す…更に周囲にも異常が起こり第十学区全域の空が赤く染まり物が宙に浮いたり落ちたりを繰り返し、水が氷になったり気体と変化していく…そんな異常現象が起き始める

 

 

「「「がぁ…!?」」」

 

「!?どうしましたのインデックスさん達!?」

 

その影響はインデックス達にも及び彼らは血反吐を突如として吐き出し黒子がそれに駆け寄る、インデックスはその異常にいち早く察する

 

「これは…界の圧迫?それにあの空にこの現象……まさか…ていとくの身に何かが…?」

 

「……兄さん」

 

 

「!?なんだこの気配は!?」

 

「虚数学区…いや違う、これは変異した虚数学区と言うべきか」

 

「……盟友」

 

メイザースが窓のないビルからでも分かる異常事態に目を見開いて驚く、脳幹は虚数学区が何らかの原因に関わっていると呟きオティヌスが垣根の心配をする…エイワスは軽く笑う

 

「何やら面白くなって来たじゃないか…さて帆風潤子。君はどう動く?」

 

 

 

垣根は子供の様に叫びながらグロテスクな翼を病理へと振るうも病理はそれを軽々と避けクスクス笑う

 

「……25%、て所ですかね?これが完璧に絶対能力者になればどれ程の力がこの世界に誕生するのか!?『諦め』のエキスパートである病理さんがここまで頑張ってこの実験を『諦め』なくて正解でしたね!」

 

頬を紅潮させて笑みを浮かべる病理、そんな彼女に対し垣根はまるで何かを否定する様に頭を振るいながら叫びをあげる

 

「voyvjjyfyr助onvot!」

 

垣根は助けを求めているのだろうか?だが上条達はそんな彼を助ける事が出来ない。いつも彼に助けてもらっていたと言うのに…彼等は垣根を助ける事は出来ずただ見ているだけであった

 

「やめてくれ…」

 

上条はそうボソッと呟いた

 

「もうやめてくれ!あいつを…垣根を苦しめないでくれ!」

 

「先輩……」

 

「上条さん……」

 

上条は泣いていた、一方通行達も泣いていた。友達を助ける事が出来ない己の無力さを嘆く様に…変わっていく友を見てられないと言う様に…だが病理にはその言葉は届かない。彼等はこのまま垣根が苦しみ、最後には垣根と言う人格が消えるのを見ている事しか出来ない

 

「vnvotdc俺gjgtyjcnl偽lellnvyv!本j物ovytyosl垣lnvy帝obvot!!」

 

「あは、あはははははは!あははははははははは!!!!」

 

悲鳴をあげる垣根に狂った様に笑う病理…この空間はその二つの声に支配されていた、もう誰も垣根を救う事は出来ない、ただ見ている事しか出来ない…誰も垣根を助ける事など出来ない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな絶望を打ち砕く様に最後の希望(彼女)はこの場に戻って来た

 

 

 

 

 

 




魔術とか原石の能力とか竜王の顎使ってたのに呆気なく負けて闇堕ち寸前のていとくん、何も出来ない上条さん達に呆気なくやられた加群さん、ヒロインなのに逃げ出した縦ロールちゃん。そして原作よりも鬼畜外道な病理さん(魔改造)…中々カオスです

精神攻撃は微妙だったな…もう少しキツくするべきでしたね。でもこれより酷いのが浮かばなかったし…新約9巻と比べるとショボいショボい…作者の技量が足りず申し訳ない。なお竜王の顎はとある科学でも上条さんじゃない人にNTRてたからていとくんが使っても問題なし、それに同じ天使をモチーフにしてるから相性良さげに見えるし前からていとくんに竜王の顎が存在してるて伏線を入れておいたから大丈夫…な筈

三位一体はキリスト教の考えから。まあ簡単に言えば魔術と超能力は同じ物、だから使っても問題ないんだぜ!て感じの科学と魔術が交差するこの作品に相応しい能力です。ま、まだ未完成の様ですが。反転物質は文字通りの反物質、これはウルトラマンガ○アに出て来た怪獣の名前から撮りました。翼のイメージは反物質を司るの言われるギ○ティナのアナザーフォルムですね

さて、もう色々ヤバい状態ですね。そんな中現れた最後の希望は誰なのか(丸わかり)。次回縦ロールちゃんが本格的にヒロインやる回…頑張って描写しないと…そしてもしかしたらこの作品の中で一番長くなるかも…べ、別に長くなってもいいですよね?

次回もお楽しみに!


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君の心の闇を抱きしめて

今回は縦ロールちゃんメイン、縦ロールちゃんがメインヒロインなんだと証明する為に頑張りました…が、自分はうまく描写か出来たか不安です…他の人の作品を見習いたい。因みに今回は格闘戦がメインです

作者が縦ロールちゃんに与えたコンセプトはインデックスやラストオーダーみたいな"守られるヒロイン"じゃなくてミコっちゃんみたいな"一緒に戦うヒロイン"です。作者は主人公と一緒に戦うヒロインが大好きなんです…ま、ヒロインの本来の意味も女版の半神、英雄て意味ですからね。インデックスみたいな主人公をサポートする頼りになるヒロインもいいけどミコっちゃんみたいはヒロインが作者は好みです。でもインデックスも嫌いじゃないです

今回で漸く御使堕しの伏線を回収できる…皆さんが御使堕しで疑問に思っていたであろう疑問を今回明らかに…!簡単に言うと縦ロールちゃん魔改造完了て事です



帆風は加群を背中に背負いながら第十学区を走っていた、それはまるで恐ろしい怪物から逃げているかの様。時折足をもつれさせながらも彼女は必死に逃げていた

 

「はぁ、はぁ…ッ!」

 

遠くからでも聞こえてくる爆発音…恐らく垣根と病理が戦っているのだろう…そして彼女は道端に転がっていた小石に蹴つまずき盛大に地面へと転んでしまい背負っていた加群が地面へと投げ出される

 

「あうっ!?」

 

彼女の常盤台の制服がたちどころに汚れ裾が擦り切れる、その痛みに堪えながら帆風は口を開く

 

「し、仕方ないんです…わたくしは大能力者…垣根さんは超能力者…そんな垣根さんでも苦戦する敵に私がいても役に立つ筈がないんです」

 

帆風は言い訳を誰に言うでもなく呟く、逃げたのが正しい選択だったと自分に言い聞かせる様に

 

「それにきっと垣根さんならあの女の人に勝ってくれます…垣根さんなら女王達を助け出して帰って来てくれます!」

 

彼女は言い訳を続けて自分を言い聞かせる、自動書記、アウレオルス、ガブリエルとも互角に渡り合い生き残って来た垣根だからきっと病理にも勝ってくれると安堵しようとして…帆風は垣根が言っていた言葉を思い出した

 

『……元気でな』

 

あの言葉の意味…恐らく垣根は勝っても負けても2度と彼女の目の前に姿を現す事はないのだと理解していた。帆風は唇を噛み締める

 

「…でも、仕方ないじゃないですか!やっぱりわたくしなんかが垣根さんの役に立つ筈がないんです!」

 

帆風はそう言って叫ぶ、自分がいても何の役に立たないのだからと。叫ばなければ自分が狂ってしまいそうな程の葛藤を胸に抱えながら彼女は涙を流す…そんな彼女に声をかける者がいた

 

「……君はこんな所で言い訳をしていていいのか?」

 

「!?」

 

声をかけたのは加群、地面に倒れた時に気を取り戻していたのか立ち上がって帆風を見下ろす。彼は彼女を見下ろして口を開く

 

「自分に言い訳するのは楽だ、気が楽になるし何より自分に対する免罪符になる…だがそれでいいのか?」

 

「……貴方に何が分かるんです、わたくしなんかと違ってあの女の人と渡り合える力を持つ貴方に…わたくしの気持ちが…」

 

「いや私には分かる、私も君と同じだからな」

 

「え…?」

 

加群の責める様な言葉に帆風は自分の気持ちが分かる訳ないとこぼす、それを聞いた加群は自分と帆風は同じだと言い帆風は加群を見つめる

 

「私も垣根帝督に救われ彼に恩を返そうとしている人間だからな」

 

加群はそう言った後空を見上げ昔の事を思い出す。三年前自分は自分の教え子である雲川鞠亜に襲いかかった通り魔の少年を殺そうとした…その時垣根がそれを止めたのだ。その時垣根は加群にこう言った

 

 

『あんたは優しい人間だ、あんなクソ女の思い通りにはさせない。あんたはこれから一生生徒に慕われる優しい『木原』として生きてもらう…それがあんたがこの少年を殺しかけた事に対する罰だよ。精々異端の『木原』として教育者として励むんだな』

 

 

その言葉を聞いた時加群は決めたのだ。いつかこの少年が危機に陥った時必ず自分が助けてみせようと、自分を助けてくれたの同じ様に彼に恩を返すと決めたのだった

 

「私は垣根の助けになりたかった…だがこの体たらくだ…今回も彼に恩を返せなかった…だが…君は違うだろう?」

 

「……え?」

 

「彼は心に深い闇を抱えている…私はその闇を私の手で消してやりたかった…だが私ではそれが出来なかった」

 

そう言って自嘲するかの様に口元を薄く歪める加群に複雑な顔をする帆風…そんな加群は帆風の顔を真っ直ぐ見つめる

 

「だが君は違う、君なら垣根を闇から救える筈だ」

 

「わたくしが…?」

 

「ああ、君は自分の事を卑下しているが…君には垣根を救うだけの力がある」

 

加群は帆風なら垣根を救えると言う、彼の顔は真剣そのものだ。決してからかっているのではない…帆風は自分が垣根が救えると聞いて目を見開く

 

「で、でも…わたくしは大能力者…」

 

「だからどうした?」

 

「え?」

 

「大能力者だから超能力者を助けてはいけないという決まりなどない…それに君はいいのか?このままでは垣根は2度と君の目の前に現れなくなるんだぞ?」

 

加群が言った言葉にビクンと震える帆風、彼の言う通りだ、超能力者だからなんだ、自分は垣根と共に戦いたいのだ、その気持ちに嘘はない…それに垣根と2度と会えなくなる…それも絶対に嫌だ

 

「…嫌です、垣根さんと2度と会えなくなるなんて……絶対に嫌です!」

 

「…なら私に構わず早く垣根の元へ戻れ、今ならまだ間に合う」

 

帆風が2度と会えなくなるのは絶対に嫌だと叫ぶ、それを聞いた加群はなら自分に構わず垣根の元へ戻れと告げる

 

「さあ、早く行け。君が垣根を救ってやってくれ」

 

「………はい!」

 

帆風は加群に力強く頷くと天衣装着で強化した足で大地を駆ける。一瞬で元いた場所を戻る帆風を加群は眺めながら呟いた

 

「……これでいいか、アレイスター?」

 

 

 

暴走する垣根はグロテスクな翼を振り回しながらノイズが入った言語を獣の咆哮の様に叫ぶ。緑に発光する垣根の両目には何も映さない

 

「あははは!いいですよ帝督ちゃん!このまま絶対能力者になってしまいなさい!」

 

興奮して大はしゃぎする病理…だが彼女はカツンと何かの音が聞こえ音が聞こえた場所に顔を向ける…そこにいたのは先程逃げた筈の帆風がいた

 

「……あら、逃げたんじゃなかったんですか?」

 

「………」

 

病理が少し驚いた様な顔をするが然程気にしていない、彼女よりも垣根に夢中になっている様で楽しみの邪魔をした帆風に若干苛立っていた。対して帆風は無言で垣根を見据えていた

 

「vnlj何lnlnvz?」

 

垣根は帆風の方へと振り返る、そして翼が帆風へと狙いを定める

 

「!?潤子先輩危な…!」

 

美琴が危ないと叫びかけるももう既に垣根は翼を帆風目掛けて放つ、その一撃は天より飛来せし流星の如く帆風へと迫るが帆風は避ける気を一切起こさずその場に立ったまま動かない

 

「onyl殺onvz!」

 

衝突音が周囲に響く、上条達は目を塞いでしまう…そして恐る恐る目を開けると翼は帆風の真横の床に突き刺さっていた

 

「……はぃ?」

 

病理が何故死んでいないのかと目を丸くする、帆風はその翼を一瞥した後頬を緩めながら垣根の元へとゆっくり近づいていく

 

「ynlnt近oxvjz!」

 

垣根が来るなとでも言いたげに叫ぶと翼から無数の手が帆風目掛けて放たれる、それは彼女の身体を引きちぎる為の武器…それらは帆風に一切当たらず彼女の周囲の床に突き刺さる

 

「な、何故!?何故攻撃が当たらないのです!?」

 

困惑して大声を出す病理に何故攻撃が当たらないのかと考える上条達…そんな中帆風は笑って答えた

 

「安心してください垣根さん、わたくしは貴方の敵じゃありません」

 

今度こそ狙いを正確に定めた翼が帆風の顔面へと向かう、だが彼女に当たる数センチ手前でその翼の先端が止まり翼が震えている

 

「…垣根だ、垣根があの翼を止めてるんだ」

 

帆風にはあの翼を止める力などない、ならあの翼を止めているのは翼を発生させている垣根だと上条が呟く、その後も翼からの攻撃は続くがどれもこれも彼女を傷つける事はなく帆風はゆっくりと垣根に近づいていく

 

「…!実験の邪魔を…!」

 

病理は自分の右手をスカイフィッシュを参考にしたひだがついた腕へと変貌させ鉄矢を投げようとする…だがそんな彼女に電撃が飛来し彼女はそれを避ける

 

「な…!」

 

「潤子先輩の…邪魔はさせない!」

 

電撃を放ったのは美琴、垣根との戦いでキャパシティダウンが壊れていたので美琴は電撃を発生させ病理の足止めをしたのだ、病理は歯噛みするがもう遅い…帆風は垣根と至近距離に立っていた

 

「afbv消lnyulj!!」

 

「……わたくしはいつも垣根さんに助けてもらってばかりでした」

 

叫びながら翼を振り回す垣根に真っ直ぐに垣根の目を見据える帆風、彼女は怯える事なく彼に一歩迫る

 

「でも今回は違います、わたくしが垣根さんを救ってみせます」

 

彼女はそう言って翼を振り回す垣根に抱き着いた、彼女はまるで泣き喚く子供をあやす様に彼の耳元で言葉を綴る

 

「わたくしは垣根さんの全ては知りません、確かに過去に人を殺したかもしれませんし人に言えない事も沢山あるかもしれません…」

 

でも、と彼女は付け加える

 

「それでもわたくしは貴方を見捨てません、例え世界が貴方を必要としていなくても、例え世界が貴方を蔑んでいても、わたくしはいつまでも垣根さんの味方でいます」

 

彼女はそう言って抱き着く力を強める、垣根の喚き声がなくなっていく、膨張し続ける翼が止まりその翼に亀裂が入り先端から虚空に溶ける様に消えていく

 

「例え垣根さんがわたくしを信じなくてもわたくしは垣根さんを信じます。例え垣根さんがわたくしを裏切ってもわたくしは垣根さんを裏切りません。例え垣根さんが救いを求めていなくてもわたくしは垣根さんを救ってみせます」

 

帆風は慈母の様な優しい笑みを浮かべながら励ます様な言葉を垣根の耳元で囁く。垣根の眼が緑から元の眼の色に戻り始め赤く染め上がっていた空が元の青空へと戻っていく

 

「もういいんです、もう自分一人で抱え込まないでください。わたくしが垣根さんの心の闇を一緒に背負ってあげます」

 

グロテスクな翼は完全に消滅し垣根の瞳も完全に元に戻る、正気に戻った垣根は帆風の目を見据えながら彼女の言葉を聞き続ける

 

「だから安心してください、わたくしは…いえわたくし()は貴方の味方です」

 

帆風はゆっくりと抱き着いていた手を解き垣根は床に崩れ落ちる、そして彼女を見上げながら垣根は口を開く

 

「……何で戻ってきた?ここはお前がいていい場所じゃねえんだぞ」

 

「ええ、ここはわたくしがいていい場所ではありません」

 

何故戻って来たという垣根に帆風は真っ直ぐ垣根を見つめ答えた

 

「そして垣根さんがいていい場所でもありません」

 

「……!?」

 

「わたくしは貴方を連れ戻しに来たんです」

 

連れ戻しに来たと言う帆風に垣根は目を見開いてまた目を背けた

 

「…無理だよ、俺にはそっち側にいる資格なんざ…」

 

「ない、と言ったら本気で怒りますよ」

 

帆風に自分が言おうとしていた事を先に言われ口を閉口する垣根に帆風は淡々と言葉を話す

 

「貴方は闇の世界(そっち側)にいて人ではありません、わたくし達と同じ光の世界(こっち側)の人間です」

 

「何言ってやがる…俺は…病理の言った通り人を殺したんだ…そんな最低野郎が光の世界にいていい訳が…」

 

「……インデックスちゃんにステイル君と神裂さん。それにアウレオルスさんや刀夜さんと詩菜さん、上条さんに御坂さん、女王、麦野さん、一方通行さん、削板さん、加群さん…そしてわたくし…今名前を呼んだ人達が貴方とどう関係してるか分かりますか?」

 

光の世界にいていい訳がないと言いかける垣根に帆風が14人程の名前を呟き垣根が困惑した顔で彼女を見る…そして彼女は答えた

 

「この方々は全て垣根さんが助けてた人達の名前です」

 

「…!?」

 

「他にもわたくしが知らないだけで垣根さんは他の人を助けていた筈です、もし最低の人間ならそんな事する筈がありません…だから自分の事をそんなに卑下しないでください」

 

全て垣根が救って来た人物の名前だと言うと垣根は目を見開く、帆風は垣根は悪人なんかじゃないと言い聞かせる様に話す

 

「貴方はこっち側にいてもいいんです。誰がなんと言おうがわたくしは貴方に光の世界にいてほしい…だからそっち側にいないでこっちに来てください」

 

彼女は瞬き一つせず垣根の目を真摯に見つめる、垣根も彼女のその言葉の気迫に押され垣根は口を開いた

 

「……俺はそっち側に行ってもいいのか?」

 

「何言ってるんですか…最初からこっちら側にいたじゃないですか、垣根さんが気付いてなかっただけで」

 

「…俺は赦されていいのか?友達を殺して人を殺し続けた俺なんかが」

 

「はい、例え他の人が赦さず貴方を否定しても…わたくしだけは貴方を赦して肯定します」

 

「……そうか」

 

帆風は問答をしながら垣根へと手を差し伸べる。それは垣根にとって文字通りの救いの手、帆風との会話で垣根の心を長年蝕んでいた闇が晴れていった気がした…垣根は笑みを浮かべながら彼女の手を掴み立ち上がる

 

「……ありがとな」

 

「いえ、今までの恩を返しただけですわ」

 

笑い合う二人、かつてヒーロー(垣根帝督)に救われたヒーロー(帆風潤子)はそのヒーロー(垣根帝督)を救った。そんな感動の光景に病理は怒る

 

「……何ですかこの茶番劇は…折角実験が成功しかけていたというのに…たった一つのイレギュラーの所為で台無しに……ははは…」

 

病理は乾いた笑いをこぼす、そして眼をクワッと見開きその暗黒の闇の様な眼差しにビクッとする帆風を睨み忿怒の顔を帆風と垣根に見せつける

 

「全然笑えねえんですよ小娘がぁぁぁ!!絶対に許しませんよ帆風潤子(イレギュラー)ァァァ!!貴方はただでは殺しません!死んだほうがマシだというくらいの絶望を与えた上でホルマリン漬けにして永遠に生かせてあげます!」

 

この世の全ての怒りを集めたかの様な叫びに地獄の悪鬼の様な形相に帆風が顔を青ざめて萎縮する、だが垣根が帆風の前に立つ

 

「そんな事させる訳ねえだろ」

 

垣根はそう言うと帆風の方へと振り向き呆れた様に溜息を吐く

 

「縦ロールちゃんて意外と馬鹿だよな、喧嘩を売ったらダメな相手に喧嘩売るなんてさ」

 

「うぅ…」

 

垣根にそう言われて帆風は軽くショックを受ける…だがそんな帆風を見て垣根はクスッと笑って彼女の頭を撫でる。その事に驚く帆風に垣根は笑いながら呟く

 

「だがこれで俺と縦ロールちゃんはあいつに眼をかけられた者同士てことだな」

 

「……え?」

 

おどける様に呟く垣根に帆風は眼を丸くする、そして垣根は背中に再び無機質な光を放つ輝く未元物質の翼を構築する

 

「だから一緒に戦おうぜ潤子ちゃん(・・・・・)。二人で病理の奴をぶっ倒そう」

 

「……はい!」

 

帆風は気づいた、垣根が初めて自分の名前を呼んでくれた。その事に胸の中で嬉しく思いつつも帆風は垣根の期待に応える為に力強く頷く

 

「…何ですかそれは…なんたる堕落、帝督ちゃんはそんな正義のヒーローみたいなやり方は似合わな…」

 

「煩えよばーか、これが俺の選んだ道だ。時代は変わったんだよ行き遅れヒス女」

 

病理はそんなのは垣根のやり方ではないと叫ぶが垣根はそれを一蹴、病理は行き場のない怒りを全て帆風に向ける

 

「貴方が…貴方のせいで……!帆風潤子ぉぉぉ!!!」

 

人間では考えられない様な叫びをあげた病理は怒り狂った眼で帆風を睨む、そして口を開く

 

「形態参照 南極ゴジラ!」

 

病理がそう言って変化したのは目や尖った耳、全体を覆う毛にノコギリの刃の様なひれが背中にある牛の様な顔の数十メートルはあろう異形。病理は更に原子崩しが扱える様に身体を作り変え口から極太の緑色の光線を放つ…普段原子崩しは麦野の生存本能が出力を抑えているのだが幾らでも身体を再生出来る病理には抑える必要性がなく最大出力で原子崩しを放った。まともに喰らえば即死する死の光線。垣根は翼で防ごうとする中帆風はその原子崩しを見つめる。その時自分の身体の中で歯車が噛み合った気がした

 

(…そうか、これが…あの時の…)

 

そして二人は原子崩しに飲み込まれた、直後緑の閃光が周囲を覆い尽くす。生じた衝撃波が数十メートルに達している病理の巨体すら揺るがした

 

「…やり過ぎましたかね?」

 

そう呟く病理だがあの程度で垣根が死ぬとは思っていない、だが運が良ければ帆風は死んでいるかもしれないと考えていた…だが直後にその考えはその光景を見て消し飛んだ

 

「……は?」

 

それは氷山を盾にした様だった、いつの間にか出来上がった氷山の如き聳え立つ氷の壁に病理が不可思議なものを見る目で見つめる

 

(超能力で作った?いいえ、どんな超能力でも一瞬であの巨大な氷は作れない…それに単なる氷程度ではあの最大出力の原子崩しに耐えれる筈が…)

 

病理は何が起こったのかと思考する、そんな中氷の壁が一瞬で崩れ二人の姿が見える。病理が見た光景は驚く垣根と病理を見据える帆風…病理は悟る、あの氷の壁を作り出したのは帆風だと

 

(いやあり得ない!彼女の能力は天衣装着な筈!単に身体能力を強化するだけの能力!氷を操れる筈がない!?ならあれは一体!?)

 

混乱する思考の中で病理は帆風は一体何をしたのかと考える、垣根も何が起こったのか理解できず遠目で見ていた上条達も混乱する…だが実を言うと帆風自身もその力が何なのか自分ですら理解していなかった…だが使い方は分かっていた

 

(…これが、あの時の異変の正体…この力なら…わたくしは…垣根さんの横で戦える)

 

この力なら垣根の横で戦える、帆風はもう一度その力を使う為に口をゆっくりと開く

 

神の力(ガブリエル)

 

垣根は気づいた、帆風の身体に膨大な天使の力(テレズマ)が宿った事に。神裂よりも遥かに高密度の天使の力…否天使の力の一部という範囲ではなくまるでその身に天使を直接宿した様だと垣根は思った…直後、帆風は宙を駆け地上から何十メートルも離れた病理の顔面にその拳を叩き込む

 

「ばごヴぇるごぶちゃえ!?」

 

言語として成り立たない叫びをあげながら病理は地面に倒れこむ、それを宙に浮いたまま(・・・・・・・)の帆風が殴りつけた右拳を見ながら呟く

 

「……天衣装着よりも威力が上がってますね」

 

帆風にはこの力が何なのか分からない、だがこれで垣根と同じ舞台で戦えると言うことは理解していた。彼女は拳を握りしめゆっくりと起き上がる病理を見据えた

 

「な、何が…そ、それは一体…?」

 

病理はその能力について一切理解出来なかった、ただそれと似ている物は知っている。加群が扱っていた魔術だ…だが似ているがそれとは違う、病理はそう確信していた

 

「わたくしもこの力が何なのか分かりません…ですがこれだけは言えます。今のわたくしは…垣根さんと同じくらい強いですわよ」

 

帆風はそう淡々と告げると右手を空へと伸ばす、そしてある天使の名を告げる

 

神の如き者(ミカエル)

 

直後右手から天にすら到達する赤い光の剣が形成される、それはフィアンマの聖なる右と同等かそれ以上の天使の力で構成されたミカエルの聖なる剣…帆風はそれを思い切り病理へと降り下ろす

 

「……へ?」

 

直後病理の視界がズレた、それが自身の身体が左右に切断されたと気づくまで3秒かかった。そしてそのまま切断された病理の身体は凄まじい音を立てて地面に倒れた

 

 

 

「木原病理の実験は私が考えた計画(プラン)とよく似ていた」

 

窓のないビルでアレイスターはそう呟いた

 

「垣根帝督を絶対能力者にしその先にあるSYSTEMへと到達させる…それは私の計画とよく似ている」

 

だが、とアレイスターは付け加える

 

「絶対能力者だけでは足りないのだよ、絶対能力者に加え神上、科学の天使(魔神)…これら三つを組み合わせて漸くSYSTEMへと辿り着く…ただし垣根帝督ともう一人(・・・・)がこれら三つに到達しないといけないがね」

 

アレイスターは垣根とあともう一人が絶対能力者、神上、そして科学の天使にならねばSYSTEMには辿り着けぬと…そのもう一人とは…

 

「君だよ帆風潤子、君が垣根帝督と同じメインプランの一人なのだよ」

 

帆風の名を呟いたアレイスターは表情を和らげ虚空へ呟く

 

「上条当麻と御坂美琴が《ハディート》と《ヌイト》なら垣根帝督と帆風潤子は《セリオン》と《ババロン》だ」

 

アレイスターは両手を広げながら垣根の事を大いなる獣(セリオン)、帆風の事を緋色の女(ババロン)と称す

 

「そして垣根帝督が魔術と超能力(科学)の両方を扱うなら、帆風潤子は魔術と超能力が混ざり合った力(・・・・・・・・・・・・・・)とでも言おうか」

 

垣根と帆風が扱う能力は似ている様で違う、垣根が「こことは違う世界における無機(虚数学区)」「神が住む天界の片鱗を振るう者(AIM拡散力場)」ならば帆風は「こことは違う世界における有機(天界)」「神にも等しい力の片鱗を振るう者(テレズマ)」だろう

 

「帆風潤子は御使堕しの際空白となったガブリエルの肉体にその魂を宿した。それが戻った後一時的とは言え天使の肉体に宿った魂は昇華され彼女の肉体にも異変を起こした」

 

帆風はフィアンマの聖なる右やガブリエルと接触した際に起こった頭痛…あれはガブリエルの肉体に帆風の魂が宿っていた事で天使に関わるものに触れた際に起こった反応だったのだ

 

大いなる業(アルス=マグナ)、鉛のようにくすんだ人の魂を、黄金のごとき天使の魂へ昇華させる秘儀…彼女の肉体は垣根帝督と同じ天使の肉体へと昇華されている」

 

大いなる業、それはアウレオルスの黄金錬成(アルス=マグナ)とは違い人間の魂を天使の如き魂へと昇華させる秘儀のことだ

 

「彼女の能力は魔術と超能力が混ざり合った全体論の超能力だ…出力だけなら優に超能力者を超えるその能力…そうだな…名付けるのなら…『天使崇拝(アストラルバディ)』とでも言おうか」

 

アレイスターは帆風の新たなる能力を天使崇拝と名付けると笑みを浮かべながら垣根と帆風を見つめる

 

「木原病理、君の失敗はただ一つ。帆風潤子と言う存在を眼中に入れなかった事…それだけだ」

 

アレイスターは病理の失敗は帆風を敵と認識していなかった事だと告げる

 

「さあどうする木原病理、今の垣根帝督と帆風潤子なら貴様の迷妄(げんそう)をぶち壊すぞ」

 

アレイスターは笑う、彼は垣根と帆風が勝つと信じていた

 

 

 

(……成る程、この力は天使…あの時に戦ったガブリエルの様な天使をこの身に降ろす能力。それに頭の中に流れてくる天使達の知識…これが天使の術式ですか)

 

帆風は天使崇拝を使った際に流れてきた天使達の知識…天使しか扱えぬ術式を理解し把握していた、今の自分ならガブリエルの天体制御や神戮ですら扱えると自負していた…ただしガブリエルをその身に降ろしている時限定だが

 

「凄えな潤子ちゃん…今のはフィアンマと同じミカエルの力か…てかその能力魔術ぽいけど血管が破裂とかしないの?」

 

「いえ別にそんな気配はしませんけど…」

 

垣根が能力者が魔術を使った際の副作用は起きていないかと尋ねるが帆風は反動一つ起こさない…これはどういう事かと垣根が考えようとしたその時

 

「成る程…そういう事ですか」

 

「「!?」」

 

倒れた怪物の右側の切断面からポコリと手が生え二人はそれを目を見開いてその異常を見る。そしてそこから病理の顔か生えてきてクスクスと笑いながら二人を魅入る

 

「そういう事ですかアレイスター…帆風潤子の役割…いえ貴方達二人の本当の役割は…」

 

ブツブツと呟く病理を二人は見つめる…そして完全に人の身体に戻った病理は帆風に不気味な笑みを見せつける

 

「…どうやら私は貴方を見くびっていたようです…その事には深くお詫びしましょう…申し訳ありません」

 

病理は唐突に帆風に頭を下げる、その行為に困惑する垣根と帆風…だが病理はニヤリと黒い笑みを浮かべると背中から反転物質の翼を顕現する

 

「ですので、帝督ちゃんと同じ私の研究対象として見てあげましょう。光栄に思ってくださいね」

 

そう言うと病理は漆黒の翼を数十メートルまで肥大化させ黒い光を発光させる…それを見た二人は覚醒した未元物質を連想する

 

「まさかテメェ…掌握していたのか?」

 

「モチのロンです!では始めましょうか!ここからは一切の手加減なし、油断なし、出し惜しみなしの三拍子!病理さんの超本気です!」

 

垣根が自分の様に能力を掌握していたのかと叫ぶと彼女は笑う、そしてその反転物質の翼を自分の身体に突き刺す。突然の自滅に二人は驚愕の目をするがその六翼は病理の身体へと吸い込まれ始め彼女の身体に覚醒した反転物質の力が直接流れ始める…そして紫色の光が彼女を包み込み垣根と帆風はその光に思わず目を塞ぐ…そして次に眼を開けると病理の姿に変化があった

 

「さあ、始めましょうか帝督ちゃんに潤子ちゃん。この大覚醒病理さんが相手になってあげましょう!」

 

身に収まり切れぬ紫色のオーラを身に纏い、身体中に羽の様な物が飛び出し、身体に黒いラインがその身に刻まれたかの様に浮かび上がっている…二人は悟る、この姿は今までの病理とは格が違うと。その瞬間病理は空間移動かと感じる程の超スピードで二人に接近しまず帆風に回し蹴りを叩き込みその次に垣根の腹部に拳を叩きつけ二人を吹き飛ばす

 

「「ごっ、があああぁぁぁ!!!???」」

 

二人はノーバウンドで床に激突し床にクレーターと称してもいい程の大穴が出来る。口から血反吐を吐く二人を病理は薄い笑みを浮かべる

 

「さあさあ、早くかかってきなさい。これで終わりだなんて言わないでしょう?私が『諦め』てここまで全力を出したんですから二人も見合うだけの力を見せてください」

 

「……化け物め」

 

垣根は今まで全力ではなかったのかと舌打ちする、今の病理は自動書記やガブリエルと同格…もしくはそれ以上だ。垣根は自分に病理が倒せるのかと考えるが彼の右手を帆風がそっと握る

 

「大丈夫です、二人ならきっと勝てます」

 

「……だな」

 

二人は手を繋ぎながら笑い合うと拳で口元についた血を拭いながら病理を睨みつける、対する病理も笑ってはいるが目は笑ってはいない…そして垣根と帆風は同時に言葉を呟く

 

「「超能力」は未元物質。「魔術」は未元物質、「天使の力」は未元物質、未元物質は「超能力」、未元物質は「魔術」、未元物質は「天使の力」」

 

神を見る者(カマエル)

 

垣根は今一度『三位一体』を発動し未元物質の翼を覚醒させ白く発光させる、帆風は新たな天使をその身に降ろす。その天使の名はカマエル、神の力を象徴し神の敵対する者と戦う天使の名だ。垣根は座標移動で、帆風は聖人とは比べ物にならない身体能力で病理へと迫る。対して病理は音速でその動きに対応し翼を振るい降ろした垣根の翼を左手で掴み帆風の正拳突きを右手で受け止めた

 

「「なっ!?」」

 

「甘い、甘過ぎますよお二人共!」

 

そのまま翼と拳を掴んだ病理は二人を片手の力だけで投げ飛ばす、二人は床に叩きつけられ床に亀裂が走る…痛みに呻く帆風だが病理が自分の頭を踏み潰そうと足を顔面に叩きつけようとしているのを視界に入れ横に転がる事で避け自分の頭があった場所に病理の足が叩き込まれ床が破壊される

 

「くっ…!」

 

一瞬で起き上がった帆風は豹の如き脚力で病理から距離を取る、その瞬間垣根が原子崩しや超電磁砲、念動砲弾(アタッククラッシュ)を放ち病理を仕留めようとするが病理はそれを片手を振るうだけでその三撃を消滅させる…だがその隙をついて帆風が病理に回し蹴りを放つ

 

「だからー、ただ殴りつけるだけなんて私を甘く見過ぎです」

 

「……ッ!」

 

病理は片手でその足を掴み取る、帆風は足を掴まれた痛みで顔を一瞬歪めるがすぐに病理に向けて笑いかける。それを病理が疑問に思う前に竜王の顎が病理の身体に噛み付いた

 

ーーーキュラアアァァァ〜!ーーー

 

「なぁ!?」

 

咄嗟の出来事に病理は帆風の足を掴んでいた手を離してしまう、病理はそのまま竜に噛まれたまま空へと持ち上げられる

 

「油断大敵だな、このままお前を喰らい尽くしてやる」

 

「あらら……油断しました」

 

垣根はこのまま反転物質で出来た身体を竜王の顎で消滅させようと企む、だが全ての異能を喰らう竜王に噛まれてもなお病理は余裕の表情だった…そして垣根は気づく、竜王の顎…異能を全て消し去る幻想殺しを喰らってもなお病理の身体は消えていない事に

 

「嘘…だろ!?幻想殺しを持ってしても消し切るのに時間がかかる程の膨大なエネルギーで出来ているのか!?」

 

ーーーキュラアアァァァ〜!?ーーー

 

病理の身体に込められた膨大な異能のエネルギーは竜王の顎でさえも消し切るのに時間がかかる程だった…病理はニヤリと笑うと単なる腕力だけで竜王の拘束を解き地面に着地する

 

「私にそんな小細工は一切通用しませんよ」

 

病理はそう言って笑う、そして彼女は床に転がっていた何かしらの金属片を拾い上げそれを指で弾き超電磁砲として放つ…しかも美琴とは違い紫色の電撃を纏う超電磁砲だ

 

「チィ!」

 

垣根は竜王の顎で超電磁砲を喰らう…だが本来なら即座に打ち消す筈が病理の超電磁砲を消すのに10秒かかって漸く竜王が超電磁砲を飲み込んだ。本来ならば一瞬で飲み込める筈の超電磁砲をだ

 

「なに……?」

 

「変質した超電磁砲…反転物質は未元物質と同じこの世ならざる法則を持つ…超電磁砲もまた違う法則で動き出すということです」

 

今の彼女が放つ能力は反転物質によりいつもとは違う法則が働く。それにより威力が格段に違う為本来なら未元物質や幻想殺しの敵でない超電磁砲等の能力も注意せねばならない

 

「はあ!」

 

「だからやっても無駄ですよ」

 

カマエルを降ろした事による驚異的な身体能力、速さは音速を超え一瞬で病理に接近しその速さで拳を振るうが病理はそれに難なく対応し拳を受け止める、そして至近距離から紫色の原子崩しを放ち垣根が座標移動で彼女を移動させそれらを全て避ける

 

「麦野さん以上の威力を誇る原子崩し…多分生存本能のセーブがない分威力を高められるんでしょうね」

 

「多分な…もし反動で身体が吹き飛んでもいくらでも再生出来るんだからな…一方通行の能力よりも単純な力で扱いやすいから病理にとっては使い勝手がいい能力なんだろうな」

 

病理はいくらでも身体を再生出来る、故に原子崩しのデメリットを受け付けない…それを理解した二人はどうすればいいのかと思考する。そして垣根が懐を弄り小型の透明ケースを取り出す

 

「……潤子ちゃん、俺が後衛でサポートする。悪いが前衛を頼めるか」

 

「はい」

 

「…即答かよ、あの化け物相手に前衛でやりあうとか…言っておいてなんだが平気なのか?」

 

「ええ、だって垣根さんがついてますから」

 

「……言ってくれるな」

 

帆風が笑ってそう言うと垣根も笑い返す、そして帆風が憑依していたカマエルを消し新たな天使を宿す

 

神の神秘(ラジエル)

 

その身に降ろしたのは全てを知る叡智の天使 ラジエル。かつて自身の知識をまとめた一冊の本(セファー・ラジエール)を書き上げた天使でありその本はあのソロモン王も読んだ事があると言う…ラジエルを降ろした事による能力は魔術を扱う力、魔術とは知識、知識とは魔術。地上と天界の全ての知を知るラジエルにとって天使の高位魔術を扱うのもお手の物だろう

 

「はあ!」

 

帆風は指を鳴らす、それだけで周囲を埋め尽くさんばかりの魔法陣が展開されそこから炎や氷、雷に暴風、巨大な土塊の剣が飛び出す。威力こそ神戮には遠く及ばないものの天使が扱う術式は強力の一言につき人間が使う魔術とは比べ物にならない威力を秘めている

 

「いいですねえ!面白くなってきました!」

 

だがその魔術を病理は軽々と回避し腕を振るって打ち消す。更に原子崩しを放って魔術と相殺、超電磁砲の紫電を放電させ咄嗟の防御に使う、一方通行の反射で弾く…そうやってその弾幕を防ぐ

 

(やはりラジエルでは無理ですか…やはりカマエルが…いえ、先程防がれましたし…)

 

帆風がそう考える中垣根はケースの蓋を開けそこに入っていた白い粉末を飲み込む。それを見ていた病理は目を見開く

 

「まあ…体晶(たいしょう)ですか」

 

体晶、意図的に能力を暴走させる薬品。これは大半はデメリットしか生まないが滝壺の様に良い結果を出す場合もある

 

「これを服用すれば通常とは比べ物にならない火力が手に入る…つっても五分か限界だがな」

 

たった五分だけだか多才能力で高度な演算で威力が上がっているのだ、それに体晶を加えればどうなるか…垣根は原子崩しを放ち病理もガンマンの早撃ちの様に速射して垣根の攻撃を防ぐ。強化された垣根の原子崩しは病理の原子崩しと同じ威力を誇っていた

 

「ほう……」

 

「まだまだいくぜ」

 

垣根は能力を駆使し空から落雷を落とす、周囲の鉄製の物体を磁力で引き寄せ超電磁砲として放つ、原子崩しを雨の様に降り注がせる。高電離気体(プラズマ)を何発も放つ、念動砲弾や竜王の顎が病理へと放たれ、台風と言っていいレベルの風力使いで起こした暴風が、核が落ちたのかと錯覚するレベルの火力の発火能力の炎が、ダイヤモンドすら切り裂く水流使いの極細の水流が病理を襲う。全てが一撃必殺、一度でも喰らえば終わりの超弩級の攻撃…だが

 

「残念ながら私には効きません」

 

病理は無傷、正確には攻撃を喰らっても即座に再生してしまうのだ。その再生スピードは0.00001秒。傷をつけたと思った瞬間に傷が塞がるのだ。この超再生の前には竜王の顎や超威力の超能力ですら一瞬で傷を塞ぐ…普通なら絶対に勝てない相手…だが二人は諦めない

 

「なら再生が出来ない様細胞を一つ残らず破壊し尽くしてやる」

 

「…やれるものならやって見てください」

 

病理はどうぞどうぞと軽く挑発する、それ程までに自分の力を過信しているのだろう

 

「……神の王国(サンダルフォン)

 

帆風が降ろしたのはサンダルフォン、ミカエルと共にサタンと戦う天使。ミカエルやガブリエルに匹敵する天使を降ろした帆風は病理へと駆ける。病理は原子崩しを何発も放つが垣根が未元物質から放つ光線に相殺されてしまう

 

「中々いい連携じゃないですか…でも病理さんは接近戦も強いんですよ」

 

病理は帆風を殴りかかろうとするがその殴ろうとしていた左手が未元物質の翼で動きを封殺される

 

「な!?私の反転物質で爆破しない?!」

 

反転物質に未元物質が触れたのに爆散しない、これは未元物質を念動能力(サイコキネシス)のエネルギーの膜で覆い反転物質に触れない様にしてるからだ、そのお陰で反転物質に触れても爆破しない

 

「今だ潤子ちゃん!」

 

「はい!」

 

「…!しまっ……」

 

病理が何か言う前に帆風の拳が病理の顔面にめり込んだ

 

(やりましたか!?)

 

帆風は倒したかと思うが垣根は自分の翼に違和感を感じ病理の右手を封じている翼を見るとギチギチと音を立てて病理の腕力に引きちぎられる瞬前だった

 

「!?潤子ちゃん危…」

 

垣根が何か言う前に翼を破壊した病理の右ストレートが帆風の腹部へと命中し帆風の身体がくの字に曲がる、病理の一撃は常人ならば軽く当たっただけで身体をザクロの様に潰し絶命させる…だが莫大な天使の力をその身に降ろした帆風はその一撃を喰らっても原型を留め吹き飛ばされる事なく何とか踏み留まる、だが病理は戸惑うことなく二撃三撃と帆風の身体に拳を叩き込み最後に周り蹴りを喰らい帆風は派手に吹き飛ばされ壁に激突する

 

「がはっ!?」

 

帆風は口から血反吐を吐く、気を抜けば気絶しそうな連撃で満身創痍な帆風…だが彼女は立ち上がる

 

「えぇ…そこまで耐えると病理さんでも流石に引きますよ…そろそろ『諦め』て貰えませんかね。こちらとしても女子を殴るのはいささか抵抗感というものが…」

 

「いいえ、諦めません…わたくしは…いえわたくしと垣根さんは絶対に貴方に勝ちます」

 

「…だからそういう熱血系はさむーいんです」

 

帆風は諦めない、絶対に病理に勝って上条達を助ける。彼女は力を振り絞る、身体中に響く痛みの悲鳴を無視して流れる血を気にせず…病理だけを見据える

 

(俺もそろそろ…限界だな…それに俺の一撃じゃ病理は倒せねえ…そして潤子ちゃんの一撃でも倒しきれるかどうか…)

 

(わたくしの一撃は確かに強い…でも超再生の前では無意味…唯一の方法は身体全てを消し去る事…それはわたくしには出来ない)

 

でも、と二人は心の中で同時にある考えを思いつく

 

((二人でなら勝てる!))

 

今の二人に言葉は不要だった、心理掌握による念話でまるで以心伝心の様に動き出す二人に病理は何を仕掛けてくるのかと身構えるが先程と同じ帆風の突進を見てまたかと内心で呟く

 

「やれやれ…馬鹿の一つ覚えて……」

 

だがその考えはすぐに消えた、垣根が三対の翼を背中から切り離しブーメランの様に病理に放ったからだ、病理はそれを軽々避ける…だがその翼の目標は病理ではなく帆風(・・)だった

 

「な…!?」

 

帆風の右手に未元物質の翼が手甲の様に付けられ翼の先端が重なり合い槍の様な形になる…そしてその白く発光する槍は更に輝きを強くし続ける。垣根の力と帆風の力が混ざり合い凄まじいエネルギーをその槍に宿す

 

(ま、ずい……これだけは防がなければ…流石の私もこれは……!)

 

病理は両手を重ねながら前に突き出しその一撃を防ごうとする、直後帆風の槍と化した拳と病理の両手が激突。周囲の地面をその衝突の余波で抉りながら帆風はその守りを穿とうと拳に力を込め病理は穿たれまいと両手に力を込める

 

「はああああああああ!!!」

 

「うぎぎぎぎぎぎぎ……!!!」

 

両者は歯を喰いしばる、帆風は前へと拳を突き出し病理も押し切ろうと両手を前に押し出す…両者一歩も引かぬその光景に全員が圧倒される

 

「はあああああああああああ!!!」

 

「うおおおおおおおおおおお!!!」

 

帆風が足で踏ん張っていた場所が力を込め過ぎて踏み抜かれる、病理の方も同じ様に踏み抜いた跡があった…両者は叫びを上げながら更に力を込める

 

「はああああああああ!!!」

 

「がぁ……ああああああああ!!!」

 

病理が帆風の拳を少しずつだが押し返し始める、病理が口元に笑みを浮かべる…帆風は顔を歪めながらも力を込めるが徐々に押し返される…その時彼女の耳に声が届いた

 

「頑張れ帆風ちゃん!」

 

「そンな奴に負けンじゃねえぞ!」

 

「垣根が見てんだ!無様な姿を見せんじゃねえぞ!」

 

「頑張って潤子先輩!」

 

「ファイトなんだゾ潤子先輩!」

 

「根性出し切る気持ちで頑張れ!」

 

「……皆さん」

 

上条達の声援に帆風は更に力を込める、そして徐々に病理の両手を押し返し病理はどこにそんな力があるのだと目を見開く

 

「……行け潤子ちゃん」

 

「………はい!」

 

垣根の言葉に帆風は強く頷く…それを見て病理は気づいた…自分の両手に亀裂が入りボロボロと砂の様に崩れ始めたのを

 

「!?な、何故!?私の反転物質で構成された肉体が…!?」

 

何故自分の肉体が崩れるのかと驚く病理だが段々と身体の崩壊は広がり始め全身に亀裂が入り崩壊を始める…帆風の一撃を身体の方が耐えきれなかったのだ

 

「貴方の敗因はただ一つ」

 

「!?」

 

「わたくし達の絆を軽んじていた事、それだけですわ」

 

その言葉と最後に病理の両手は帆風の拳に砕かれ彼女の胸に槍の拳が突き刺さる。そして胸を貫通し病理の背中から拳が突き出る

 

「ま、さか……この私が…」

 

病理は何か喋っていたが直後に槍から放出されたエネルギーが病理を飲み込んでいき彼女の肉体は完全に崩壊。身体の細胞の一つ一つまでが反転物質で出来た肉体を完全に消滅させ彼女の肉体をこの世から抹消した

 

「……やりましたか?」

 

帆風はそう言うと身体がフラフラし始め地面に倒れそうになる、それを垣根が優しく抱き抱えて彼女を支える

 

「……やったな潤子ちゃん」

 

「………はい」

 

そういって優しく微笑む垣根に帆風は嬉しそうな顔で微笑みを返した

 

 

 

 

 

 

 




今までのボスキャラとは違い病理さんは派手な魔術とか技は一切使いません。格闘戦が目立つ様に書きました。てかこの作品の病理さん強すぎ…こんなんチートやチーターや

天使崇拝と呼んでアストラルバディと読む…能力は見た通りガブリエル達天使をその身に降ろしその天使の力を扱う能力です。アレイスター曰く超能力と魔術が混ざり合った能力です。因みにこの小説には幽霊ちゃんは出てきません…作者の好きなキャラの一人なんですがね。因みに縦ロールちゃんが宙に浮いていたのはガブリエルが実は翼がないかもしれないと言う逸話から、ガブリエルは翼がなくとも飛べる天使だからガブリエルの力を降ろしていた縦ロールちゃんは宙に浮いていた、ていう設定です

作者は主人公とヒロインが協力して戦う作品が好きでして、例えば双星の陰陽師の紅緒さんとろくろ君とかロクでなし魔術講師とアカシックレコードのシスティーナちゃんとグレン先生みたいな主人公とヒロインが大好きです、つまり作者の完全な趣味です、ごめんなさい。因みに縦ロールちゃんとていとくんの戦い方は文豪ストレイドックスの芥川先輩と敦君の新双黒のコンビネーションを参考にしました

次回もお楽しみに!


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忘れられてますよ上条さん達!

今回で天使崇拝編は終わりです、次回からはギャグ編二本を投稿したあと新章に突入します。ギャグの内容はインデックスとステイルが学校に行く話とスネーク過去編(ミサカネットワークネタあり)の二作でお送りします。なお今回は少し短めです



窓のないビルのとある場所にて、エイワスと激戦を繰り広げていた脳幹、オティヌス、メイザースは第十学区から放たれていた悪意の気配が消失した事に気付き戦いを止める

 

「これは……」

 

「盟友が病理という奴を倒した様だな」

 

「……我々の手出しは無用だったか」

 

脳幹達は垣根が病理を倒したのだと気付き安堵の笑みを浮かべる。そしてエイワスも無表情なその顔に薄い笑みを浮かべる

 

「やはり私の目に狂いはなかった。帆風潤子、君は垣根帝督のヒロインに相応しい」

 

エイワスはそう帆風へ賞賛を込めた言葉を呟く、それを聞いていたオティヌスはエイワスを睨みつけ口を開く

 

「…お前が盟友以外に興味を持つとはな」

 

「心外だな、私の一番のお気に入りが垣根帝督というだけだ…最も垣根帝督以外で最も興味が湧いているのは帆風潤子ぐらいだがね。後はおまけみたいなものだ」

 

オティヌスはエイワスが垣根だけでなく帆風に興味を持っているのかと目を細めエイワスは無表情な顔を少し緩める

 

「だがそれも仕方ないと言えよう、何せ垣根帝督は特別だ…何せこの世界とは違う魂を持っているのだから」

 

「……それは盟友がこの世界とは違う世界から来た……えっと…あれだ、あれ」

 

転生者(・・・)、という奴かね」

 

「そうそれだ」

 

オティヌスが何か言おうとするが何というのかど忘れして頭を軽く抱える…脳幹が助け舟を出すと指を鳴らしてエイワスを見据える

 

「つまり…お前は垣根が元いた世界に興味があるのか?」

 

「まさか、私はただ見てみたいのだけだ。垣根帝督がこの世界にどんな影響をもたらすのかをね。そして彼の影響を一番強く受けている帆風潤子にも興味がある」

 

メイザースが垣根が元いた世界に興味があるのかと問いかけるとエイワスは首を振る、エイワスにとって垣根がいた低レベルな世界には興味など一ミリも湧かない。エイワスにとって垣根と帆風しか興味がないのだから

 

「やはり彼を観察していると飽きないな、彼自身の成長も凄まじいが彼の影響で周りも私の予想の範疇を超える成長を遂げる…上条当麻も私が考えていたよりも大きく変わった。残りの超能力者も時期に化けるだろう…これが彼のヒーローとしての性質だな」

 

エイワスは垣根の周囲の人間や彼と関わった人間が良いように変わっていくのは彼の性質(ヒーロー)と称し僅かに笑う

 

「……ヒーローは数多くいる、上条当麻や一方通行、御坂美琴等もその類だ…だが君は垣根帝督と帆風潤子しか興味がないんだろう」

 

「その通りだよ木原脳幹、私はこの二人しか今の所興味はない。コロンゾン(便所ブラシ)は理想送りを手に入れてご満悦の様だが…私はそんなものに興味の一欠片も湧かないね」

 

運命を受け入れず、悲惨の運命を覆そうとす(垣根帝督)る者とヒーローに救われ、憧れに追いつこうと努力(帆風潤子)する者…この二人しかエイワスは今のところ興味がない。他のヒーローには少しくらいの興味はあるが二人に比べるとミジンコ程でしかないのだろう

 

「では私はこれで消えるとしよう」

 

エイワスはそれだけ言うと三人の前から消えていく…まるで最初からいなかった様にエイワスは消えてしまった

 

 

 

帆風は暫くの間心地好さそうに垣根に抱き抱えられたままでいたが恥ずかしくなったのか顔を赤らめる

 

「か、垣根さん…そろそろ離しても大丈夫です」

 

「ん?そうか」

 

垣根にそう言ったものの名残惜しそうな顔をしていたがそれをなんとか抑え垣根から離れる…そして帆風は先程病理が立っていた場所を見る

 

「……本当に倒したんでしょうか?」

 

「……多分な、流石のあいつでも死んだだろ」

 

二人はあれだけの一撃を喰らえば流石の病理でも生きていないと呟く、現にあの一撃を喰らい身体の細胞すら一つ残らず消滅したのだ。生きている筈がないと二人が安堵する…しかしその直後

 

「いやぁ〜驚きました。まさか死んじゃうとは思いませんでしたよ」

 

「「!?」」

 

垣根と帆風は背後を急いて振り返る、そこに立っていたのは五体満足の病理だった

 

「な…!?」

 

「あ、その顔は「なんで生きてるんだ!?」て顔ですね?大丈夫ですよ、さっき私死にましたから(・・・・・・・)

 

驚く垣根に病理は軽く笑いながら自分は先程死んだと笑う。だが彼女は生きている、これは一体どう言う事なのかと二人は疑問に思う

 

「分かりませんか?私の身体は反転物質で出来てるんですよ?人体改造が出来る病理さんにとって予備の肉体を複製するなんて容易い事なのです」

 

「…未元物質…いや、反転物質で肉体を作っていたのか」

 

病理は反転物質で予備の肉体を作っていたと笑う、そう加群の勝利の剣で焼き尽くされた時も同様にあの時加群と戦っていた木原病理という個体(・・)は死んだが別の個体が加群を背中から刺した、そしてその個体と垣根達は戦っていたのだと二人は気づく

 

「私の精神や魂は既に反転物質と融合しています…つまり私自身が反転物質であり、反転物質が私である…全ての反転物質を消滅させない限り私は死にませんよ」

 

(つまり…原作の黒垣根状態て事かよ…)

 

病理を完全に殺すには反転物質をこの世から消滅させなければならない、それは原作における黒垣根の様な状態だ。これは流石の垣根と帆風でも厳しいだろう

 

「更に反逆者が生まれない様に複製した個体に私の精神を各個体に分割してるんです。クッキーを二つに割っても味は変わらないじゃないですか。それと同じで分割しても私なのは変わらないて事です」

 

それに原作の白垣根の様に反逆者を生まない為にちゃんと策を講じてある。垣根と帆風は冷や汗をかく…そんな二人の心中を察したかの様に病理はクスッと笑う

 

「そんなに身構えなくても大丈夫ですよ、今回は私の負けて事にして素直に撤退してあげます」

 

「……は?」

 

「え……?」

 

その一言で垣根と帆風は唖然とした顔になる、病理は二人に背を向けて瓦礫に埋もれていた車椅子を掘り起こす。そして車椅子に座ると二人に笑みを浮かべる

 

「…どういう事だ?」

 

「そのままの意味です、今回は私の負けて事で『諦め』る事にしたんです。だから今日は帰らせてもらいます」

 

「……舐めてやがるな、俺達が素直に見逃すとでも思ってんのか?」

 

「そちらこそ、もう帝督ちゃんも潤子ちゃんも立ったいるのがやっとでしょう?帝督ちゃんは体晶の影響で、潤子ちゃんは慣れない能力を使って身体が限界の筈です」

 

病理は二人がもう体力の限界なのだと見透かすと、二人は内心を当てられて二人がビクッとなるが病理は口元に手を当てる

 

「私の目的は帝督ちゃんを絶対能力者にしSYSTEMへと到達させる事、ならここで殺しちゃ意味ないですからねー」

 

彼女の目的は垣根をSYSTEMへと到達させる事、だから殺す理由がないと言われ二人は本当なのかと疑う

 

「……信じきれねえな」

 

「あらら、病理さん信用力はゼロですか…ま、全力の私を倒したご褒美だと思ってください」

 

病理はそう言ってクルリと車椅子を動かし垣根と帆風から背を向ける、垣根は攻撃するか悩んだが体晶を使った後でもう体力がない上に病理を殺しても他の個体の病理が現れる可能性もあるので下手な動きはできない

 

「そんなに警戒されると傷つきますねー、安心してください。今日の所は何もしませんよ…今日の所は(・・・・・)……ね?」

 

「……つまりまたこんな事をしに来るという事ですか?」

 

「まあそうですね、はい。病理さんはこれしきで『諦め』たりしないんです。研究者として二人の能力の事を隅々まで調べてあげますよ」

 

帆風がまた来る気かと軽く睨みながら言うと病理はその通りだと呟く、彼女にとって垣根と帆風は大事な研究対象だ。自分の知識欲を埋めるのにこんなに興味が唆られるのはそうそうないと笑い、そう簡単には『諦め』たりしないと彼女は舌舐めずりする。それを見てビクッとなる帆風だが彼女の肩を垣根の手が掴む

 

「来るなら来やがれ、俺と潤子ちゃんでまた返り討ちにしてやる」

 

「………いいですねぇ、実にいい…楽しみにしていてくださいね」

 

垣根が自分達でまた返り討ちにしてやると鋭い目で言うと、病理は黒い笑みを浮かべる

 

「ではまた会いましょう、帝督ちゃん、潤子ちゃん。次がいつかは分かりませんが…私の見立てではまた会う日はそう遠くはないでしょう」

 

病理はそう言って不気味な笑みを見せるとそのまま車椅子を動かしてこの場からゆっくりと立ち去っていく…緊張の糸が切れたのか二人は地面に崩れ落ちる

 

「……チッ、見逃されたて訳か」

 

「ですね……」

 

二人は暫く病理が立ち去っていった場所を眺めていた、仇に見逃されるなど垣根にとって屈辱以外の何者でもないが以前の様に激しい憎悪に駆られる事はない

 

(……潤子ちゃんのお陰かもな)

 

「?わたくしの顔に何か付いてますか?」

 

「……いや何も」

 

垣根は帆風を眺めていたが帆風に何故見ているのかと聞かれるとふいと顔を逸らす

 

「……こんな所にいつまでもいるわけには行かねえし…帰るか」

 

「そうですね……あ」

 

「?どうかしたか?」

 

「いや…あはは…能力の使い過ぎか緊張感がなくなったからなのか分かりませんが立ち上がれないんです」

 

帆風はバツが悪そうにそう言って笑う、垣根は恐らく両方ともだろうと推測する。慣れない能力の使い過ぎに加えあれだけの殺気を放つ敵との死闘、それに病理に与えられた傷…逆に足腰が立たなくなるくらいで済んだのが奇跡だと言っても過言ではない

 

「……しょうがねえな」

 

「え?きゃ!?」

 

垣根は頭をかきながら帆風を抱き抱え両手で支える…俗に言うお姫様抱っこをされて帆風が顔を赤らめるが垣根はそれに気づいているが気づいていないフリをしてそのまま歩き出す

 

「あ、あの…流石にこれは……」

 

「え?恥ずかしい?」

 

「は、はい……て、絶対気づいててやってますよね!」

 

「そうですが何か」

 

帆風が絶対に自分の表情を見て楽しんでいるなと叫ぶと垣根は悪びれる事なく即答し帆風が頬を膨らませながら顔を更に赤くする

 

「さ、最低です!動けないわたくしを弄んで!垣根さんのド変態!鬼畜!ドS!イケメルヘン!」

 

「最後のは褒め言葉だぞ、それにお姫様抱っこの原型は古代のローマで娘を酔わせて動けなくさせて拉致したていう略奪婚から来てるんだ。これが本来の正しいお姫様だっこて事さ」

 

「その知識このタイミングで言いますか!?」

 

「俺には常識は通用しねえんだよ」

 

わーわー、ギャーギャー叫ぶ帆風にそんな彼女を見て楽しそうに笑う垣根。先程までの激闘が嘘の様な雰囲気だ

 

「なら責めてお姫様抱っこはやめておんぶにしてください!」

 

「逆になんでおんぶならいいんだよ…」

 

帆風の要望で垣根は帆風を背中に担ぐ、帆風の独特の感覚に垣根は不思議に思うが特に何も言わず歩き始める

 

「お、重くないですか?」

 

「いや全然重いよ?太ってるとは言わないけど中学三年の女子の平均体重て50キロくらいあるんだからさ」

 

「〜〜ッ!そこは嘘でも軽いて言うべきです!」

 

「こら殴るな、地面に叩き落すぞ」

 

「それが怪我人と女子にやる所業ですか!?」

 

「俺にはその常識は通用しねえ」

 

垣根と帆風はお互いに喋り合っていたがふと垣根が黙り込み真剣な顔になって背中の帆風に問いかける

 

「……なあ、本当に俺は当麻達と同じ世界にいていいのか?」

 

「……何度も言わせないでくださいよ、垣根さんはわたくし達と一緒にいていいんです」

 

「……本当に?」

 

「ええ、本当です」

 

垣根が再度自分は帆風達と一緒にいていいのかと問いかけると帆風は笑って答える。それを聞いた垣根はクスリと笑う

 

「そうか、ありがとな縦ロールちゃん(・・・・・・・)

 

「…………」

 

「え、何で肘打ちするの。ちょやめて痛いて」

 

帆風は垣根が自分の事を潤子ちゃんから縦ロールちゃんに戻ったのに気づくと無言で垣根の背中に肘打ちを喰らわす

 

「ふん」

 

「……女の子てメンドくさい」

 

そっぽを向いて"私怒ってます"オーラを出している帆風に垣根は溜息を吐く、乙女の扱い方は面倒だとつくづく思う

 

「……ま、さっさと病院行って怪我の手当てをしに行くか潤子ちゃん(・・・・・)

 

「!……はい!」

 

垣根が帆風の名前を言うと帆風は一瞬驚き花笑みを浮かべる、それを見て垣根も微笑み返す…帆風はムギュとしっかりと垣根の身体に抱きつく

 

(……垣根さんの背中て凄い落ち着きますね)

 

暫し帆風は夢見心地で垣根の背中に抱きついていた、その安心感に帆風は頬を緩ませこのまま時が止まったらいいのにと考えていたその直後

 

「お〜い!ていとく!じゅんこ!」

 

「!?い、インデックスちゃん!?」

 

遠くからインデックス達の声が聞こえ、帆風ははっとして垣根に抱きつくのをやめるとインデックスの声が聞こえた方を振り向く

 

「無事だったんだねていとく…て、なんでじゅんこをおんぶしてるの?」

 

「怪我をしてるじゃないか!早く病院に行った方がいい!そして何故帆風潤子をおんぶしているんだい?」

 

「私が応急ですが回復魔術をしましょうか?そして何故おんぶなのです?」

 

「いえわたくしが空間移動でお二人を病院へ連れて行きますの…で、何故帆風先輩は垣根さんにおんぶされているんですの?」

 

「兄さん…普通はお姫様抱っこなんじゃ…」

 

インデックス達は垣根と帆風の心配をするが五人は何故おんぶなのかとツッコむ

 

「まあ無事で安心したんだよ」

 

「……心配かけたな」

 

「!?垣根帝督が素直に謝っただと…明日は隕石でも降るのか?」

 

「いえ大地震で学園都市が滅びるのかもしれません」

 

「お前ら俺をなんだと思ってやがる」

 

素直に謝った垣根にステイルと風斬が明日は人類滅びの日かと呟き、垣根は自分をなんだと思っているのかとイラっとくる

 

「……やったか帆風潤子」

 

「あ、加群さん」

 

帆風に声をかけたのはフラフラとした足取りでこちらに向かって歩いてくる加群、彼は垣根を一瞥した後口元を歪め笑みを作る

 

「……君が垣根の闇を抱きしめた様だな。感謝する」

 

「いえ、貴方が激励してくれたからです。こちらこそ感謝してますわ」

 

垣根達は何の話をしているのかさっぱりだが笑みを浮かべる二人につられ彼らも笑みを作る。黒子と風斬が加群の両肩を支え病院まで連れて行こうとする

 

「では先にこの殿方を病院に連れて行きますの…リアルゲコ太先生…あ、冥土帰し先生でしたわね…そこに連れて行きますので少々お待ちを」

 

「分かったんだよ、次はていとくとじゅんこを頼むんだよ」

 

「了解ですの」

 

黒子は風斬と共に加群を連れてこの場から消える、それを確認したインデックスは二人がいなくなった事を確認すると垣根にジト目を向ける

 

「全く…君達は本当に厄介事に絡まれるんだね…とうまじゃないけど不幸というか…そういう星の下で生まれたのかな?」

 

「ははは…そう言われるとそうかもしれませんね」

 

「笑い事じゃないだろう、全く…君達といると退屈しないよ本当に」

 

「全くです…取り敢えず無事でよかったです。まだ貴方達には恩を返しきれたと思っていませんからね」

 

インデックスの言葉に笑って返す帆風を見て三人は溜息をを吐く

 

「さて、ていとくとじゅんこに対するお説教は病院でするとして今はていとくとじゅんこが無事な事を神に感謝するんだよ」

 

「え?俺説教されるの?」

 

「何でわたくしも?」

 

「心配かけたんだから当たり前かも…全く二人は………」

 

インデックスは病院で説教な、と言うと二人はえぇ…といった顔をする。そして加群を病院において来たのか黒子が空間移動で現れる

 

「お帰りくろこ…あれひょうかは?」

 

「風斬さんはあの殿方の付き添いで残りましたの」

 

「そうかい、なら次はこの二人を病院に送り届けてくれ。僕らは後から向かう」

 

「分かりましたの」

 

黒子は両手で帆風と垣根の肩に触れると空間移動で二人を連れて消える、インデックス達は早く第七学区の病院へ向かおうとするが何か忘れている気がした

 

(何か忘れてる気がするんだよ……でも忘れるくらいならどうでも良い事だよね)

 

だがインデックスはどうせどうでもいい事だと割り切って神裂とステイルと共に第七学区の病院へと向かう…その忘れていた事が凄く大事な、それも当初の目的であるのに気づかずに……

 

 

 

「……帆風潤子の成長は順調の様だな」

 

アレイスターは一人そう呟く、アレイスターの周囲には滞空回線から送られてきたデータが浮かんでおりそれをアレイスターは眺めていた

 

「これで私の計画(プラン)は漸く動き出す、これは垣根帝督だけの物語(ストーリー)ではなく彼と彼女、二人の物語なのだからな」

 

アレイスターはそう呟きながら鼻歌を歌う様な軽さで片手で 衝撃の杖(ブラスティングロッド)をペン回しの様に回す

 

「さて、上条当麻も竜王の顎を自分の意思で出せる程までに成長し帆風潤子も私の計画通りに天使崇拝を得た…一方通行に麦野沈利、御坂美琴、食蜂操祈の()の発現はまだ無理だろうな…なら次は削板軍覇かもしれないな」

 

アレイスターは衝撃の杖を回すのをやめ左手で杖を掴む、杖で床を叩きながら次は削板の番かと無数のデータを確認する…

 

「だが焦る事はない、まだ物語は始まったばかりだ…長い目で見るとしよう」

 

アレイスターはそう言うと全ての画面を消す、そしてアレイスターは衝撃の杖をくるりと回すといつの間にか衝撃の杖は消えていた

 

「さあ、これからが本当の物語の幕開けだ。古き時代(オシリスの時代)は幕を閉じ新たなる時代(ホルスの時代)の幕が上がる…そしてホルスの時代の先駆けとなるのは科学の天使たる君達だ、垣根帝督、帆風潤子」

 

アレイスターは両手を広げながらそう告げる、古きルールに縛られるのももう終わりだ。これからは新しいルールで行かせてもらうとアレイスターは笑う

 

「さあ待っているがいい魔神共、そしてコロンゾンにエイワスよ。私の天使達が貴様らの幻想をぶち殺す日はそう遠くないぞ」

 

 

 

第十学区、病理との激戦からもう何時間も経過しすっかり夜になっていた

 

「……なあ美琴さんや」

 

「なんだい先輩や」

 

上条が美琴に話しかけ美琴が項垂れながら上条の方を向く

 

「……垣根と帆風ちゃんは勝ったんだよな?」

 

「……ええそうね」

 

「そっか、勝ったんだな。なら良かった!あははは!」

 

小声でボソッと美琴が呟くと上条は大笑いする、一方通行達もそれを近くで聞いているが何のリアクションも起こさない。そして上条は笑い終わった後大声で叫ぶ

 

「なら今の状況は何!?なんで倒したのに俺達はまだ磔にされたままなの!?虐め!?新手の虐めなのか!?」

 

そう上条達は病理を倒したと言うのに誰も助けてくれず何時間も縛られていたのだ、恐らく垣根達の頭からは上条達の事は完全に忘れ去られている

 

「……腹減ったなァ」

 

「あ、すまんオナラが出た!」

 

「…鮭…鮭…鮭……鮭えええぇぇぇぇ!」

 

「お花畑に行かせてぇ…もう漏れちゃうからぁ……いっそ漏らしちゃおうかしら」

 

「頑張りなさい操祈…私だって限界なんだから……あ、でも先輩の前でやればそういうプレイて事に……あれ?急に漏らしても良くなった気がする」

 

「負けんな美琴、それは悪魔の囁きだ…あぁ、今日は夏休み最後の日だってのになんでこんな目に?……もう言って良いよな?不幸だー……」

 

先程からグーグー腹が鳴っている一方通行にハイライトオフで鮭としか言っていない麦野、トイレに行きたい美琴と食蜂とそれを宥める上条…相変わらず彼らは不幸だった

 

 

 

病理は無事に学園都市から抜け出し学園都市から遠く離れた山の中を車椅子で進んでいた、そしてふと車椅子の動きを止め背後を振り向く

 

「隠れてないで出てきたらどうです?」

 

そう病理が呟くと森の中から複数の女子が現れる…全員にこれといった共通点はなく、年は十代が一番多くぶかぶかの白衣を着た長い黒髪の少女や長い黒髪を二つ縛りにし頭部の左右に巨大な華をつけた丸眼鏡の少女、一昔前の様な巫女服を着たザクザクとロングヘアの茶髪を適当に切った少女…と、全員が個性の塊だった…逆にその集団の中で唯一の異性である男子は茶髪に171cmと彼女らと比べると"普通の高校生"の様な少年に見えた…ただし彼の右手(・・)は普通ではないが

 

「ご苦労様病理さん、お陰でぼくらの一番の障害である垣根帝督の手の内は全て把握した。これで彼を倒せるだろう」

 

「…全く病理さんをそんな事に使うなんて…イギリス清教(・・・・・・)てのは贅沢な組織ですね、そうは思いませんか理想送り(・・・・)

 

病理はその少年の事を理想送りと呼んだ、そう彼こそが上条当麻と同質にして対極の右手 理想送り(ワールドリジェクター)を持つ男…彼は理想送りと呼んだ病理に目を細めながら口を開く

 

「その名で呼ばないでくれ、ぼくはどこにでもいる平凡な高校生なんだ。こんな右手の力はぼくは必要としていない」

 

「それは失礼…しかし貴方のその右手は中々興味が唆りますね…第二位の幻想殺しとは似て非なるものにして科学では説明できない能力…本当にその力興味深いですね…その右手を切り落として解剖してみたいです」

 

病理は彼の右手をしげしげと眺める、病理は現状垣根と帆風しか興味がないが彼女は科学者だ、そこに謎があるなら興味が湧いてしまう…そこでうっかり切り落としてみたいと口にすると周りの少女達から殺気が漏れる

 

「おっと失礼、冗談ですよ冗談。そんな事するわけないじゃないですかー」

 

「……あんまりこの子達を刺激しないでくれ、君達もそう怒るな」

 

病理が冗談冗談と言うが彼女達は殺気を孕んだ視線を向けたままだ、だが少年が宥めると一瞬で殺意を消す。それを確認した少年は病理に話しかける

 

「だがまだ不確定要素はある、ぼくの対となる右手…幻想殺しを持つ男上条当麻…それが個人的には気がかりだ」

 

「あ…第二位ですか。確かにあの子の能力も侮れないんですよねー、病理さん的には帝督ちゃんと潤子ちゃん程には興味は湧かないんですが」

 

彼は自分の対になる能力 幻想殺しを持つ上条が気になると呟くと病理が確かに侮れない力だとこぼす…だが周りの少女達は二人とは対照的に余裕の笑みを浮かべる

 

「上条当麻てあれだろ?大将の対になる奴だろ?ま、大した奴じゃねえだろ」

 

「そうどすなぁ、上里はんと比べたら弱っちいんでしょうなぁ」

 

白衣の少女と巫女服の少女が上条の名前を呟いてクスクスと笑う、彼等は少年の対と言われる上条の事を理想送りの下位互換と思っており小馬鹿にしているのだろう…他の少女達もクスクスと笑う

 

「おや、そんな馬鹿にしてていいんですか?第二位は勿論第三位以下も強いですよ?」

 

「あ〜大丈夫大丈夫、何せ大将がいるからな。大将の右手の力の前じゃあ超能力者なんて雑魚だよ雑魚」

 

「ほないどすなぁ〜、超電磁砲やら一方通行だか知りませんがどうせ上里はんに触れられたらお終いどすえ」

 

「そうですね。その幻想殺しだって上里君と比べたら大した事ないです」

 

病理は超能力者を過小評価していいのかと尋ねるが少女達は評価を変える気は無い。何せ彼女達にとっては超能力者達など雑魚当然なのだから…ただし自分達ではなく上里という少年と戦った場合の話だが

 

「敵を甘く見ない方がいい獲冴(エルザ)絵恋(えれん)。彼等の戦闘能力は決して侮れない」

 

「大将はお堅いねえ……ま、そういうところ嫌いじゃないけど」

 

少年は巫女服の少女を獲冴と呼ぶとその少女達は叱られたと思ったのかショボンとする、周りの少女も黙り込むが彼はそれを気にしない

 

「で、次は何するんだ大将?全員で学園都市を攻撃して魔神の…えっと…オティヌス?だっけ?そいつを殺してそいつを匿ってた学園都市の奴らも殺すのか?」

 

「いやまだ早い、学園都市の実力は未知数だ。それに先に手に入れておきたい物がある」

 

巫女服の少女が次は何をすると尋ねると少年は学園都市のとある建物を見つめる…それは天空にまで届く巨大な建築物だった

 

「『奇跡』を起こす少女 鳴護アリサ(・・・・・)を確保する、それがローラさんから送られてきた指示だ」

 

「なんだ、人攫いかよ……楽な仕事だな」

 

「まあまあ…ええんとちゃいますか」

 

少女達は笑う、今回も簡単な仕事だなと内心で笑っていた。だが少年は笑わない、憎むべき敵の一人が学園都市にいるのだから

 

「待っていろ魔神オティヌス、そして魔神を匿う魔術師 アレイスター=クロウリーに垣根帝督。君達はぼくがこの世から抹消させてやる」

 

確固たる意志を持って少年はそう言い放つ、そしてその少年の元に銀髪に紫の眼の古代ローマ市民が来ていた服であるトーガを着こなした少女が近づいてくる

 

「なら上里様、超能力者…ひいては垣根帝督の相手は私がやりましょう」

 

「……いいのか宛那(アテナ)?」

 

「ええ、私は上里様の剣ですから…この蛇神宛那(へびかみアテナ)が超能力者達の首を献上して見せましょう」

 

「……分かった、なら君に任せるよ」

 

その少女…宛那は狂気の笑みを浮かべる、ホーホーと遠くで梟の鳴き声が聞こえた…まるでこれから起こる災厄を告げているかの様に

 

 

 

「ふんふんふふんふんふんふーん♪」

 

鼻歌を歌いながらローラ=スチュワート…いなコロンゾンはロンドンにあるランベス宮のバスルームにてジェット水流マッサージ風呂に修道服のスカートを両手でめくり風呂の縁に腰をかけながら浴槽に足だけを突っ込んでいた

 

「アレイスターめ…神の代理(メタトロン)神の王国(サンダルフォン)を引っ張り出すとはな…あの神の如き者(ミカエル)すら上回る程の力を持つ二大天使を科学の天使にするとは…不遜極まりないな」

 

コロンゾンは足湯の心地よさを感じながらも学園都市から感じた天使の気配に気づいていた。あれは生命の樹(セフィロト)の天使と同じ気配だと感じる。コロンゾンは生命の樹の深淵に潜む大悪魔、その天使達の気配を間違える事はなく学園都市がある方向へと目を向ける

 

「……まあいい、神の代理や神の王国では私を止められまい。精々必死に足掻くといい…それが無駄だと気づくその日までな」

 

コロンゾンは余裕の笑みを崩さない、それは絶大たる自分が負ける事はないと言う慢心なのか余裕な態度をわざと取っているのか…それは誰にも分からない

 

「さあ、理想送り(ワールドリジェクター)が動き出したぞ。どうする人間」

 

 

 

 

 

 

 




ついに理想送りが動き出す…そして案の定生きていた病理さん…アンタは切断王子の宿敵の某異次元人か。病理さんと上里君は暫くの間の敵キャラになるのでそう簡単にはフェードアウトしません。そして次の章はエンデュミオンの奇跡編です。この前の様にあらすじをお伝えします

「私はアリサ、鳴護アリサ。よろしくね」
『奇跡の少女』学園都市の無能力者ーーーー鳴護アリサ

「……歯を食いしばれよこの根性なしが」
『世界最大の原石』ナンバーセブンーーーー削板軍覇

「新たな天地を望むか?」
『理想送り』幻想殺しの対になる右手を持つ者ーーーー上里翔流

「私の全ては上里様の為に!」
『ギリシャ系の魔術師』上里勢力からの尖兵ーーーー蛇神宛那

垣根達が街中で出会ったのは歌を歌うのが大好きな少女、その少女に一目惚れした削板…そして突然襲いかかってきたイギリス清教の魔術師三人組、そして上里勢力と名乗る謎の集団も暗躍し……

こんな感じで削板君をメインにしてエンデュミオン編を書きたいと思っています、因みに宛那はオリキャラでなく原作で名前だけ出て来たキャラに苗字をつけてオリジナルの術式を使うキャラにしただけです。でもまずはインデックスとステイルの話とその後追憶のスネーク編を書きたいと思ってますので少々お待ちを…それから現実の都合上遅れる可能性もあるので……

次回もお楽しみに


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第四章 エンデュミオン 編
使い捨てキャラかと思った?残念時々出てくるキャラだよ


今回はサブタイ通りあの時のあのキャラが再登場、使い捨てキャラかと思ってましたか?残念時々出てくるキャラクターです(なお作者オリジナルキャラ)

さて今回はステイルとインデックスが学校に通うお話(序盤の描写のみ)、これで大覇星祭にインデックスが競技に参加できるぜ、なお今回はツッコミのオンパレードだけど気にしないでください。

後この小説はよく文字数が一万字を超えちゃうんですけど皆さんは長いとか思った事はないですか?それともこれくらいで丁度いいですか?



九月一日、楽しかった夏休みが終わり再び学校に通う始業式の日である。それは第七学区の柵川中学校も例外ではなくそこの生徒である佐天は退屈そうに頬杖をついていた

 

「あ〜今日からまた授業かぁ……嫌だなぁ」

 

「夏休みがずっと続けばいいですよね〜」

 

佐天と初春が夏休みが永遠に続けばいいのにと愚痴っているとガラガラと教室の扉が開き担任の教師が入って来る

 

「クオオォォォ!ギャオオオ!(はい、お前ら席につけ〜、ホームルーム始めるぞ〜)」

 

その教師は人間ではなかった、鳥と竜が混ざった様な姿で赤い皮膚を持つ教師…あだ名では「クック先生」と呼ばれている大怪鳥 イャンクック先生である

 

「……何で人じゃないモンスターが教師やってるんだろうね」

 

「今更じゃないですか?副担が「ヌルフフフ」とか言ってるタコな時点でこの学校終わってますし」

 

因みに副担は最高速度がマッハ20の黄色い変態タコである、佐天と初春のクラスの教師と副担はおかしい事で有名だがもう誰も気にしていない。なお副担は此間警備員に覗きの容疑で捕まった

 

「ギャオオオ!(今日は始業式の前に転校生を紹介するぞ!)」

 

「先生〜、それは男の子ですか女の子ですか〜?」

 

「いや何で言葉が分かるの初春?」

 

クック先生が転校生を紹介すると言う意味の咆哮をあげると初春がそれを理解し質問し佐天が何で理解できるのかと疑問に思う

 

「ギャァァァス!(男子一人と女子三人だ!皆仲良くするんだぞ!)」

 

「へ〜男の子と女の子なんですか…でもこの時期に転校生もなんて珍しいですね、そう思いませんか佐天さん」

 

「あー確かに…こりゃ何か裏で何かあったりして」

 

クック先生が男と女、それぞれ一人ずつだと叫ぶと初春がこんな時期に珍しいと呟き佐天が何か裏があるのではと考える

 

「クエェェェ!(もう入ってきてもいいぞ!)」

 

クック先生が扉に向かって咆哮すると扉が開き肩まで届く長さの赤髪に2メートルはあろう右目の下にバーコードの様な刺青をした少年と銀髪に緑目の可憐な少女が入ってくる。両方とも外国人だ

 

「初めましてなんだよ、私はインデックスて言うんだよ。好きな物は食べ物、私に食べられない物はないんだよ」

 

「……ステイル=マグヌスだ、普通にステイルと呼んでくれ。好きな物は煙草だ、煙草のない世界は地獄だと言っておこう」

 

(……銀髪の子は置いておくとして…隣の男の子凄い個性のデパートだね)

 

佐天がステイルのあまりの個性さに顔をヒクヒクとさせる…こりゃまた色濃いのがやって来たなと言わんばかりに…人外が担任と副担をやっている時点でおかしいのにまた変な奴がおかしいのが増えたと頭を抱える

 

「……ヤバい、ニコチンが切れて来た…だが学校では煙草は吸っちゃダメと小萌さんに言われているし…ココアシガレットで我慢するか」

 

「あ、私にも一本頂戴なんだよステイル」

 

「クエェェェ(私にも一本くれ)」

 

「いや今ホームルーム中だから!クック先生も生徒からお菓子を貰わない!ほら初春も風紀委員なんだから止めて!」

 

ステイルがニコチン切れを解消する為にココアシガレットを取り出し一本口に咥える。それを見たインデックスとクック先生がステイルからココアシガレットを一本貰いムシャムシャと口の中に入れて食べ始める、佐天は風紀委員である初春に止める様言うが…

 

「あ、私にもココアシガレット下さい」

 

「初春!?」

 

初春もココアシガレットを食べ始め佐天がブルータス、お前もか!と言わんばかりに頭を抱える。そんな時だドタドタと廊下を誰か走る音が聞こえたかと思うと再び教室の扉が開きその人物が教室に入ってくる

 

「お、遅れてすみません」

 

「あれ?ひょうか?どうしたの?」

 

入って来たのは霧ヶ丘女学院の生徒である筈の風斬だった、彼女は何故か佐天やインデックスと同じ柵川中学の制服を着ており佐天は何か嫌な予感を感じる…そしてその予感は的中したのだった

 

「初めまして、霧ヶ丘女学院から転校して来ました風斬氷華です!よろしくお願いします!」

 

「待て待て待て〜ぃ!」

 

にこやかな笑顔でそう言う風斬だか佐天が待ったをかける、全員の視線が佐天を見つめるが佐天は大声で叫ぶ

 

「いやおかしいでしょ!霧ヶ丘女学院といえば高校生ですよね!?なのに中学校に転校!?どう言うことですか!?」

 

「だって……霧ヶ丘女学院にいても友達いないし…ならインデックス達が転校する中学校に私も転校しようと思って…」

 

「理由が可哀想過ぎる!?だからと言って高校生が中学に転校しますか!?てかそもそもどうやって転校を…」

 

「あ、兄が学園都市の第一位兼学園都市統括理事会のメンバーなのでその権力を使って裏口入学しました」

 

「権力の無駄遣い!?」

 

風斬は友達が元いた学校には誰一人いないから友達がいるここに転校して来たと告げると佐天が可哀想な理由だなと叫ぶ、因みに風斬がここには入れたのは垣根がここの校長を権力で脅したからである

 

「ひょうかも一緒なんだね!嬉しいんだよ!」

 

「僕も助かったよ…知り合いがいないから緊張していたが君がいて気が楽になった」

 

「それは良かったです、これからずっと四人で昼ご飯とか食べたりしましょうね」

 

インデックスとステイルは風斬が来てくれて嬉しそうな顔をし風斬もニコニコと笑う。そんな時またまた廊下から誰かが歩いて来る音が聞こえ佐天がまたかと内心で呟く

 

(はいはい、どうせまた新しい転校生とかそこら辺でしょ?今度は誰が来るの?年齢詐称した御坂さんとか食蜂さん?おふざけでやって来た垣根さんて線もあるな…大穴でサービスマンとか屁怒絽(ヘドロ)とか?)

 

佐天が誰がやって来るのかと予想しているとコンコンとノックされクック先生が入って来いと鳴き声を上げる

 

「失礼します、今日からこの学校にやって来ました神裂火織と申しま…」

 

「ババア無理すんなぁーー!!」

 

「なあ!?ば、ババア!?失礼な私はまだ18歳です!」

 

「18歳で中学一年生な時点でもだいぶ無理があるよ!てか貴方絶対に38歳でしょ!」

 

「うるっせぇんだよ、ド素人が!」

 

神裂が柵川中のぱつんぱつんの制服を着て入って来たので佐天が無理すんなババアと叫ぶ、神裂が誰がババアだと何処から取り出したのか七天七刀を取り出して佐天を斬りかかろうとしそれをインデックス達が羽交い締めして止める

 

「ストップ!ストップなんだよかおり!」

 

「止めないでくださいインデックス!私は彼女を許さない!」

 

「落ち着くんだ神裂!くそ!聖人が暴れるとか洒落にならないぞ!」

 

「落ち着いてくたさい神裂さん!」

 

刀を振り回したまま暴れ回る神裂にインデックス達は必死に彼女を抑える…だが彼女の聖人としての力は凄まじく三人がかりでも押さえつけるので精一杯だ

 

「ギャァァァス…(あーもうめちゃくちゃだよ)」

 

「ですねー」

 

クック先生はやれやれと左右の翼を揺らし初春はうんうんと頷く。残りのクラスメイト達はこれから騒がしくなるなと思っていた

 

 

 

「いやすみません…ちょっと混乱してて…38歳とかババアとか言ってすみません」

 

「いえ私も危うく貴方を唯閃で佐/天にしようとしてすみません」

 

始業式が終わり今日は午前で学校は終わり、佐天と初春、インデックス達を加えた六人は第七学区の街中を歩いていた。神裂と佐天は教室での出来事について互いに謝り続ける

 

「まあ、皆でパフェでも食べて落ち着きましょうよ…あ、勿論奢りでお願いします」

 

「花飾りは随分図々しいんだね……」

 

初春はパフェを売っている店を発見しパフェでも食べて落ち着こうと飴玉を転がしたような声で呟く、なお彼女は自分でパフェを買う気は無いようだ

 

「相変わらず初春は黒春だね…あ、私席確保して来ますね。私はイチゴパフェだからね初春!」

 

「はいはい、分かりましたよ」

 

佐天がパフェ屋の席を確保しに行きインデックス達が店に入ってパフェを頼む

 

「すみません、ジャンボパフェ下さい」

 

「う〜ん……私はパフェ全種類を頼むんだよ」

 

「じゃあ僕はこの宇治銀時丼を一つ」

 

「む、なら私は鯛の茶漬けを一つ」

 

「じゃあ私はメロンパフェを、後佐天さんの分のイチゴパフェを」

 

それぞれの注文を言う五人、2名くらいおかしい注文をした魔術師がいたが気にしない気にしない、暫く待って出来たパフェを受け取ると佐天が座っている席に五人が座る

 

「あ、出来ました……て、何ですかその猫のエサ」

 

「失礼な…宇治銀時丼だよ、食べるかい?」

 

「食べたら早死にしそうなので遠慮しときます」

 

佐天が宇治銀時丼を見てドン引きするがステイルは気にしない、パフェ屋て何だっけ?と思う佐天はイチゴパフェを受け取って一口咀嚼する、なおステイルが宇治銀時丼を食べているの見ると見てるだけで吐きそうになる。まあムシャムシャとパフェをまるで飲み物の様に食べているインデックスもインデックスだが

 

「ほら、アリサ、シャットアウラ…私が作ったレディリースペシャル パフェバージョンよ。食べなさい」

 

「……うわぁ…パフェにマヨネーズ滅茶苦茶かけてる……」

 

「……これは犬のエサか?」

 

「口の中がミラクルワンピーーース!!!味の三千世界やーーーーッ!!!」

 

近くにピンクの髪の少女と黒髪の少女はツインテールの学園都市統括理事会のメンバーであるロリっ子に渡された美味しいパフェにとぐろを巻く様にマヨネーズをかけて味を台無しにしたレディリースペシャル パフェバージョン(犬のエサ(犬でも食べない))を見て顔を青ざめていた、なおレディリーに悪意はない。なおシャットアウラの父親には好評だった

 

「……まあ、猫のエサの方がマシだね」

 

「パフェて美味しいんだね…ま、今日はこれくらいにしておくんだよ」

 

佐天はその光景を一瞥し自分のイチゴパフェを貪る、なおインデックスはまだ3分と経っていないのにもうパフェ全種類を完食してお腹を摩っていた。そんな彼女らの前に誰かが声をかける

 

「あら、初春に佐天さん。それにインデックスさん達ではありませんの」

 

「あ、白井さんじゃないですか」

 

現れたのは風紀委員の腕章を肩につけた黒子…水槽を台車に乗せてやって来た事に全員が疑問に思っていたが佐天は気にせず手を振る

 

「なんか随分久しぶりに佐天さん達を見た気がしますわね」

 

「まあ、一ヶ月ぶりの登場ですからね…前に出て来たのは盛夏祭の時に台詞だけの登場でしたからね。読者ももう忘れてますよ」

 

「初春メタい事言わない」

 

黒子が久しぶりに佐天達を見たと呟き初春がメタい事を言い始めたので佐天が黙れと呟く…インデックスは水槽に目をやる

 

「ねえくろこ、その水槽は何を入れてるの?」

 

「ああ、ペットですの」

 

「ペットですか?一体どんな動物ですか」

 

神裂がどんなペットなのかと尋ねると水槽からザバーンとそのペットが頭を出す…その生物とは…

 

「ピラルクーですの」

 

「アイエエエ!?ピラルクー!?ピラルクーナンデ!?」

 

「あ、そのピラルクー私が金魚すくいでゲットして白井さんにあげた子ですか」

 

「詳しくは夏祭りの話を参照かも」

 

それは風斬が夏祭りであげたピラルクーだった、佐天が何故にピラルクーと混乱し風斬が嬉しそうな顔をする

 

「こうして風紀委員の仕事の合間に散歩をしてるんですのよ」

 

「ピラルクーて犬猫みたいに散歩するんですか?」

 

初春がピラルクーて散歩するのかと問いかける、その疑問に黒子が答える前にピラルクーが口を開く

 

「ピラルクーだって散歩ぐらいしますよ」

 

「「「「「「キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!」」」」」」

 

ピラルクーが喋った、それを見て発狂するインデックス達

 

「何でそんなに驚くんですか!変ですかピラルクーが喋ったら!」

 

「変だよ!現在進行形で変だよ!喋るピラルクーとか前代未聞だよ!」

 

「失敬な!日本昔話にもあるでしょう!昔々あるところに子供達に虐められていたピラルクーを助けた浦島太郎がピラルクーに乗って竜宮城へ行く話が!」

 

「それは亀だぁぁぁぁ!!!」

 

ピラルクーが自分が喋ったら変かと尋ね佐天が変だとはっきり告げる。ピラルクーは昔話にもこういうのがあった筈だと叫ぶがそれは亀だと佐天は反論する

 

「あ、あの…もしかして貴方は私がすくったピラルクーですか?」

 

「ん?おお!貴方は私をすくってくれたお嬢さんではありませんか!」

 

「やっぱりそうなんですね、でもどうして喋れる様に?」

 

「あー……白井殿の寮でビリビリしてる女性が目がしいたけの方に抱きつかれて「ふにゃー!」と奇声をあげた後電撃がビリビリと放たれそれが私が住む水槽に命中しそれが私の遺伝子を書き換え…まあ多分そんな感じでこうな風になりました」

 

「理由がアバウト!」

 

彼が喋れる様になったのは美琴がふにゃーした所為で漏電してそれがピラルクーに当たり遺伝子が変化した…との事らしい

 

「まあピラルクーの事は置いておくとして…インデックスさん達はどんな能力なんですか?」

 

「えっとね、私達は魔術…「おっと蚊が止まってますよインデックス!」げぶぅ!?」

 

「顔面を刀でフルスイングされた!?」

 

初春がインデックス達はどんな能力を持っているのかと尋ね、インデックスが魔術師と言いかけると神裂が七天七刀で顔面をフルスイング、佐天がそれに驚いた

 

(何口走ってるんですかインデックス!?魔術師て言っちゃダメでしょう!)

 

(あ、そうだったかも…テヘ☆)

 

(可愛いから許す)

 

(やかましいですよステイル!兎に角事前に考えておいた名前を言うんですよ!)

 

神裂がコソコソと耳打ちしながら自分達が徹夜で考えた能力を言うんだと二人に言うと二人は頷く

 

「僕は大能力者(レベル4)の発火能力だよ。大した事はない」

 

「私も大能力者の身体能力強化系の能力者です」

 

「私は大能力者の空想を実現させる能力『空想創造(ファンタジーイマジン)』なんだよ」

 

「私は正体不明(カウンターストップ)て言う強度不明な能力だね」

 

「え!?ほぼ全員大能力者なんですか!?凄いじゃないですか!」

 

佐天が全員が凄い能力者として凄えーと驚く、その顔を見て誇らしげな顔をするインデックス達

 

「でも大能力者なのに珍しくまともな性格なんですね…ほら、大能力者てあの人(・・・)みたいに変な人が多いのに」

 

初春が大能力者にしては珍しくまともな性格だなと呟き横目である人物を眺める、全員がん?と初春の視線の先に目を合わせる…そこにいたのは

 

「はぁはぁ……写影きゅん。この園児服を着て見てくれないかな?」

 

「誰か助けてぇぇぇぇ!」

 

桃色の布で胸を隠しただけの上半身にブレザーを引っかけている変態(ショタコン)が小学四年生の少年に園児服を片手に持ちながら涎を垂らしながら馬乗りになり、少年は助けてくれと叫ぶ

 

「……露出狂なんだよ」

 

「……ショタコンだね」

 

「……変態ですね」

 

インデックス達がドブを見る目でその変態…結標淡希(むすじめあわき)を見る、因みに彼女に襲われているのは美山写影(みやましゃえい)という少年である

 

「公共の場で何してるんですの!」

 

「ショタぁぁ!?」

 

黒子は淡希に空間移動からドロップキックを喰らわす、淡希の首がベキィ!と聞こえてはいけない音が鳴りそのまま吹き飛ばされてゴミ箱にぶつかり全身ゴミまみれになる。これが本当のダストシュート

 

「い、痛いわね…何するのかしら白井さん?」

 

「煩えですの、九月早々お縄につきたいんですの?」

 

「ふ、ショタコンを縛ることは出来ないのよ…そこにショタがいる限り!」

 

「名言のつもりですの?」

 

黒子が淡希にジト目を向ける、黒子は風紀委員になってからもう62回ほど職務質問を行い、23回ほど逮捕した人物でもある。なおいずれも「下校帰りの小学生の後をつける(本人曰くショタを背後から見守っていた)」やら「小学生誘拐未遂(本人曰くゲーム(意味深)に誘った)」、「座標移動で小学生の衣服を抜かし全裸にする(本人曰く能力の誤作動)」、「美山写影をペロペロした罪(本人曰く欲望に抗えなかった、後悔はしていない(キリッ)」…他にもショタ関連の事件で捕まっている常習犯だ

 

「…ちょっと待って、今妄想スタートするから」

 

「いきなり何言ってますの?」

 

「考えるのよ私…白井さんのツインテールを短髪に脳内変換、そして白井さんの服を園児服に脳内変換、そして白井さんを男の娘だと想像して…そう今目の前の白井さん(ショタ)は私を冷たい目で見下してる……ヤバイわ、ちょっと濡れてきちゃった」

 

「………マジで脳外科行った方がいいですわよ」

 

淡希は黒子のジト目を脳内変換でショタにそんな冷たい目で見下されていると想像し快感を味わっていた、黒子が更に冷たい目をするとふぉぉぉ!と大興奮するショタコン…だがここで写影がいなくなっている事に気づく

 

「あれ?写影きゅんがいないわ」

 

「彼ならとっくの前に逃げましたの」

 

「そう…残念ね…まあ仕方ないわ。なら私は学校帰りに寄り道してるショタがいないか見に行くとしますか」

 

淡希は獲物(写影)がいなくなったも知るや否や他の場所に行って次の獲物(ショタ)を探そうと自身の能力で何処かへと消える…え?過去のトラウマ?完全なショタコンとなったあわきんにそのトラウマは通用しねえ

 

「全くあの方は…何度捕まっても懲りないお人ですの」

 

「さて、白井殿。散歩兼パトロールの続きをしましょう。実は今嫌な予感を感じているのです…虫の知らせというやつですかな?」

 

「いや貴方は魚でしょ」

 

ピラルクーが虫の知らせでよくない事が起こると呟くと佐天があんた魚じゃんと突っ込む。するとインデックス達に見えない誰かが歩み寄りインデックスを両腕で抱えインデックスを椅子から持ち上げる。その光景は相手の姿が見えないせいでインデックスが一人でに宙に浮いている様に見えた

 

「!?インデックス!」

 

「……動かないでもらおうか」

 

ステイルがインデックスの名を叫ぶとインデックスの背後から声が聞こえた、その瞬間インデックスを両腕で拘束しているネクタイまで黒の全身真っ黒なスーツに閉じた両目が特徴的な二メートル近い逞しい身体の男性が姿を現す

 

「魔術師…ですか!」

 

彼の名は闇咲逢魔(やみさかおうま)、彼はインデックスの記憶の中にある抱朴子(ほうぼくし)を狙って学園都市に侵入してきた魔術師である

 

「姿を消す能力者…牧上みたいな能力ですの?それに右手に……弓?」

 

黒子は闇咲を自分と同じ常盤台の牧上小牧(まきがみこまき)という生徒と同じ能力かと考える、そして闇咲が右手に装着している弓に注目する。佐天と初春、風斬は何が起きているのか未だにわからず呆然としステイルと神裂は闇咲を睨む。闇咲はそのまま透魔の弦で姿を消しインデックスと共にこの場から去ろうと企むが瞬間黒子が闇咲の目の前に現れる

 

「!?」

 

「あら、空間移動を見るのは初めてですの?」

 

驚く闇咲を横目に黒子はインデックスに左手で触れ空間移動でステイルの横に現れる、闇咲は標的を逃したと舌打ちし右手の弓…梓弓を構えいつでも攻撃できる様にする

 

「そこの方、今すぐインデックスさんを拘束から解きなさい」

 

「すまないがそれはできない、私には時間がない…早く抱朴子を手に入れなければいけないのでな」

 

「なら仕方ありませんわね……ピラルクーやってしまいなさい」

 

「御意」

 

自分の警告を受け入れない闇咲に対し黒子は軽くため息を吐く、そしてピラルクーにやってしまえと命令するとピラルクーが水槽から出て尾ビレを足の代わりに立ち上がる

 

「え!?クララが…じゃなくてピラルクーが立った!?」

 

「…珍妙な魚だな…龍魚の類か?」

 

ピラルクーが二足歩行(?)で歩いているというシュールな絵面を見て佐天と闇咲が驚く、そのままピラルクーは闇咲と向かい合う

 

(仕方ない…衝打の弦で吹き飛ばして気絶させるか…)

 

闇咲がピラルクーを倒そうと考えていると、ピラルクーがパカッと口を開き闇咲が何をしているのかと考えたその時口から火炎放射が放たれ闇咲を火達磨にする

 

「ぎゃあああああ!?」

 

「「「「火を吐いた!?」」」」

 

「絶対こいつピラルクーじゃないですね」

 

地面をジタバタと転がる闇咲に驚くインデックス達、初春が絶対にピラルクーじゃないだろとツッコむ

 

「知らないのか?ピラルクーは火が吐けるという事を?」

 

「いやピラルクーは火吐けないよ!?」

 

佐天が絶対にこいつピラルクーじゃねえと叫ぶ、闇咲は梓弓を構えてピラルクーを倒そうと断魔の弦を放とうとするが…

 

「ピラピラピラピラピラピラピラピラピラピラピラピラピラピラピラピラピラピラピラピラピラピラピラピラピラピラピラピラピラピラピラピラピラピラピラピラピラピラピラピラピラピラピラピラピラピラピラピラピラピラピラピラ!」

 

「ぐえげはぶぇグぇばふぐぶえぇふ!?」

 

「拳を52回も打ち込んだ!?このピラルクーただ者じゃない!?」

 

オラオララッシュならぬピラピララッシュを闇咲に打ち込むピラルクー、闇咲はその魚臭い拳(ヒレ)を52回もその身に受け口から血反吐を吐きその拳の連打が終わるとドサッと地面に横たわる…彼の身体は魚臭くなっていた

 

「天に極星はひとつ、ふたつはいらぬないのだよ」

 

「どこの聖帝なんだ君は!」

 

ステイルのツッコミをピラルクーは聴いた後闇咲に近づくピラルクー、そして倒れこむ闇咲を見下ろす形でピラルクーは口を開く

 

「戦って分かった、君はこんな事をする人間ではない…何故こんな事をしたんだ?」

 

(いや戦って分かったて…一方的にボコっただけなんだよ)

 

「……私はある女を助ける為に抱朴子を欲している」

 

(そして唐突に何か語り始めたよこのおじさん…絶対にこれ回想に入るパターンだよ)

 

闇咲に何故こんな事をしたと尋ねるピラルクーに闇咲がある女性を救う為にやったと呟く、そして闇咲は自分語りを始める

 

 

ーーーあれはとある病院で出会った不思議な女との出会いから始まった…彼女の名は…ーーー

 

 

「長い!」

 

「そげぶ!?」

 

「「「「いやまだ回想始まったところなんですけど!?」」」」

 

回想が長いとパシンと闇咲の頬をヒレで殴るピラルクー、殴られた頬を抑える闇咲にえぇ〜と顔をするインデックス達

 

「長過ぎる!校長先生の話か!」

 

「り、理不尽だ…」

 

校長先生の話くらいに長いと怒るピラルクー、理不尽過ぎると嘆く闇咲…だがポンとピラルクーが闇咲を優しく抱きしめる

 

「だが大体の理由は分かった……その女性を救う為に頑張って学園都市まで来たんだな」

 

(いやあれだけの回想でどうやってわかったんですか?)

 

佐天があれだけで分かるのかと疑問に思うが敢えて言わない、抱きつかれた闇咲は魚臭いと内心思っていた

 

「安心しろ、私達がその女性を助けてやる」

 

(私達も巻き込まれたんだよ…)

 

ピラルクーが絶対に自分達がその女性を助けてやると闇咲に言う、インデックスは自分達も巻き込まれるのかと心の中で呟いた

 

「……本当か?本当に彼女を救えるのか?」

 

「ああ、この嬢ちゃんならその呪いとやらも解ける。だから誘拐なんてしなくてもいいんだ」

 

闇咲は自分が助けたいと思っていた女性を助けられるのかと尋ねる、ピラルクーがそれに頷くと闇咲は瞳から涙を溢れさせる

 

「今は私の胸の中で存分に泣くといい」

 

(魚の胸で泣く男性とか凄くシュール)

 

初春が目の前の光景を見て凄くシュールだな〜と内心で思っていた。そして一頻り闇咲が泣き続けた後ピラルクーはインデックスの方を向く

 

「そこのお嬢さん、彼が言う呪いとやらを解く事は出来るかな?」

 

「ま、まあ出来なくはないけど…どうやってその女の人がいる所まで行くのかな?学園都市の外には出られないんじゃあ…」

 

「安心しろ、私の友人の一人 垣根に外に行きたいといえば了承してくれる」

 

(……もう何も突っ込まないぞ僕は)

 

インデックスは学園都市の外には行けないと言いかけるがピラルクーは垣根に頼めば行けると呟く、ステイルは何故垣根と友達なのかと尋ねたりしない

 

「ちょっと待ってくださいよ!学園都市の外に行くて本気ですか!?」

 

(お、風紀委員として外に行くのは止めるのかな?)

 

初春がバンとテーブルを叩いて立ち上がる、佐天が止めるのかと驚いた顔で初春を見る

 

「外に行くなら私も連れて行ってください!秋葉原のアニメイトに寄りたいので!」

 

「「「「ズコッー!!」」」」

 

「……初春は欲望に忠実ですわね」

 

ただ秋葉原に行きたいだけだった、それを聞いて黒子以外の四人が転ける。黒子の冷ややかな眼差しを初春に向ける

 

「うへへ…これでゴブリン×ドワーフのBL本が買えます」

 

「何そのキッツイBL本!?そんなの人間やめてる奴しか見ない本だよ!?」

 

「え?佐天さんゴブドワ知らないんですか?」

 

「何その略し方!?」

 

初春は腐女子である、しかも人外でも行ける口である、上条×一方にハマっているが最近は一方×上条でもいいかな〜と思っている彼女である

 

「さあ、超音速旅客機に乗ってその女性がいる病院まで行くとするか」

 

「待ってくださいですのピラルクー!飼い主を置いて行くペットなんていませんですのよ!」

 

「……この流れは絶対私達も行かなきゃいけないんだよね」

 

「……行くしかないか」

 

「…救われぬ者に救いの手を…それが私の魔法名ですからね」

 

「……じゃあ私もついて行きます」

 

「……始業式からこんな目に合うなんて…絶対今年は厄日だよ」

 

「ゴブドワゴブドワ〜♪」

 

かくして六人は超音速旅客機に乗ってその女性がいる病院まで行きインデックスの魔術によりその女性が呪いから解けたのは言うまでもない。そして超音速旅客機に乗った神裂とステイルが科学に対するトラウマが植え付けられたのは別の話である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?俺の出番は?」

 

「……今回出番はなしですか…」

 

主人公とヒロインの出番はこれだけである

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「「……もう一日たったのに誰も自分達を助けに来てくれない件について」」」」」」

 

なお上条達は未だ誰にも助けてもらえていなかった、彼らは本当に不幸だった

 

 

 

 

 

 

 




ピラルクーが単なるモブか使い捨てと思ってましたか?残念、黒子のペットとして出てくるキャラでした!なおかなり強い模様、この作品の似てるキャラとしては魔強化那由他ちゃんとこのピラルクーは同じ性質持ちです(ギャグキャラだから強い)。後いきなり闇咲さんを出したのは変だったかな?でもここくらいしか出すタイミングなかったんだよなー。結局少し雑になっちゃったし…でもご安心を、また闇咲さんは出てくる予定です

今回は殆どていとくんと縦ロールちゃんの出番はなかった…主人公とヒロインなのに…なお次回も今回と一緒な模様。誰でもいいから上条さん達を助けてあげて

そして次回はスネーク誕生秘話、今明かされるスネーク誕生の歴史、ミサカネットワークネタを書けたらいいなと思ってます、そしてアステカのあの人達も出るよ

次回もお楽しみに


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こちらエツァリ、応答せよスネーク

六月二十三日は作者にとって忘れられない記憶が三つできました、一つはゴジラ キング・オブ・モンスターズを母と一緒に見に行ったのですが…あれもうマジ最高、言葉に言い表されないほどの映像に度肝を抜かれました、ネタバレになるのでこれ以上は言いませんが…ラドンは二代目ゴマすりクソバードでした

二つ目は硲舎佳茄の声優こと竹達彩奈さんが梶裕貴さんと結婚した事ですね、あれは本当に驚きました…そして最後にその六月二十三日が母の誕生日て事です、ゴジラ見に行った日に声優二人が結婚して母の誕生日て…最高の誕生日プレゼントじゃないですか

話が脱線してすみません。今回は前回で言った通り17600号がスネークになったのか分かる話です、ギャグ多めの過去編となります。この小説が始まるほぼ一ヶ月前の出来事、スネークとお粥が交差する時物語は始まる

あのほぼ空気なアステカの人達も登場、原作とキャラが違う?ギャグ小説だから仕方ないね



「暑くなってきましたね……とミサカは服をパタパタさせながら呟います」

 

六月の上旬、妹達の一人 17600号は第七学区の街中を目的もなく歩いていた

 

「最近面白そうな学園都市の都市伝説も聞きませんし、面白い噂もありません…退屈ですね。とミサカは呟きます」

 

彼女は噂や都市伝説の真偽を確かめると言う趣味があるのだが最近はそう言ういいネタがないのか退屈していた

 

「面白いネタはないものですかね…とミサカは……ん?」

 

17600号がいいネタはないかとボヤいていると彼女はある人物を発見した…その人物とは

 

「今日も御坂さんは可愛いですねー、お!上条さんと手を繋ぎましたね!羨ましいですけど御坂さんの笑顔が見られたので上条さんナイスです!」

 

「…………」

 

電信柱に隠れて双眼鏡で遠くを歩いている美琴と上条をストーカーしている男性を17600号は発見してしまった。褐色肌に黒髪の男性は双眼鏡越しに上条に手を繋がれて頬を赤くする美琴を見て興奮していた…それを見た17600号は懐から携帯を取り出し耳に当てる

 

「もしもしポリスメン?」

 

これが後に17600号がプロスネークと呼ばれるきっかけを作り出した人物 変態ストーカーことエツァリとのファーストコンタクトである

 

 

 

「いやー、まさか妹さんに見つかってしまうとは…自分はアステカから来ましたエツァリと申します」

 

「よく爽やかに挨拶ができますねこの変態ストーカー野郎が、とミサカは冷たい目で見下します」

 

17600号は取り敢えず変態ストーカー(エツァリ)をボコボコにした、エツァリと名乗った男は和かに笑いながら自己紹介をするが馬乗りになった17600号は冷たい目で見下ろす

 

「さて…警備員(アンチスキル)の詰所にこのストーカーを連れて行くとしますか…とミサカは死刑判決を下します」

 

「それだけはやめて下さい。自分これでも風紀委員や警備員の皆さんに追いかけられた事があるんです。捕まりたくないんです」

 

「黙れよ変態、とミサカはジト目で変態を見下します」

 

警備員の詰所に連れて行こうとするとエツァリはそれだけはやめても反抗する、変態に拒否権はないと冷たい目を向ける17600号…そんな時グウゥゥ〜と腹が鳴った音が響いた

 

「…もしかして貴方お腹空いてるんですか?」

 

「……ええ、とミサカは俯きながら返事をします」

 

エツァリがお腹空いてる?と尋ねると若干恥ずかしげに頷く17600号

 

「なら自分の家で食事でもどうです?実は今日の昼ご飯が鍋でして…その代わり警備員に突き出すのはやめて欲しいのですが…」

 

「……仕方ありませんね、その取引に応じてあげましょう。とミサカは鍋を食べてみたいという欲求を隠しながら了承します……じゅるり」

 

「あ、はい…自分の家はここからすぐ近くですので(自分から言っておいてなんですが…御坂さんの妹さん警戒心が薄すぎでは?)」

 

涎を垂らしながら頷く17600号、それを見たエツァリは「あ、この子ちょろいわ」と内心で思いつつも17600号を連れて自分の家へと向かう

 

 

 

「ここが自分が自宅です」

 

「……ボロっちいアパートですねとミサカは本音を漏らします」

 

二人が辿り着いたのは第七学区にあるオンボロアパート、因みにここにはあの幼女にしか見えないとある高校の先生が住んでいて今もグースカいびきをかきなからビールの空き缶とタバコの匂いが充満した部屋で寝ているのだが二人はそれを知らない

 

「この部屋が自分()の家です」

 

「そうですか、なら遠慮なく入らせてもらいます」

 

17600号は遠慮する事なくやや雑に扉を開ける…そして扉を開けると彼女の目の前に全裸の褐色肌の男性がいた、しかもその男性のマンモス(意味深)まで丸見えだ

 

「おお、もう帰ってきたのかエツァリ。で、その女は誰だ?」

 

「………キュウ」

 

「妹さんんんんん!!!」

 

フルチンのままエツァリに言葉をかける変質者、それを見た17600号はパタンキューと気絶し地面に倒れかけそれを支えるエツァリ

 

「何をしているテクパトリ!」

 

「フルティン!?」

 

そんな変質者の頭部にドロップキックを命中させたのはエツァリや変質者と同じく黒髪に褐色肌の少女、テクパトルと呼ばれた男性はそのままマンモスを晒したまま床に倒れる

 

「いきなりナニをするショチトル!?」

 

「喧しい!初対面の女にその粗末なモノを向けるな!このフルチン裸族野郎!」

 

「フルチンではない!フルティンだ!」

 

「いや両方とも同じ意味ですよ」

 

テクパトルはショチトルと呼んだ少女にいきなり蹴るなと叫ぶが喧しいと一蹴される、エツァリはその光景になれているのか溜息を吐きながら17600号を揺さぶって起こそうとする

 

「…その少女…妹達(シスターズ)か?」

 

「ええ、確か17600号さんと名乗っていました」

 

「こいつがアレイスターが言っていた…」

 

「何全裸でマッスルポーズしてるんだ、この女が目覚める前に早くパンツだけでも履け」

 

ショチトルな問いに頷くエツァリ、テクパトルが全裸で真剣な顔をしショチトルはそんな変質者にブリーフを投げる

 

「……んん?何か変なモノを見た気がします…とミサカは夢を見ていたのかと疑問に思います」

 

「ああ、お前は夢を見ていたよ。だからその夢は悪夢だから忘れろ」

 

「はい……で、お姉さんは誰ですか?」

 

「私か?私はお兄ちゃ……エツァリとそこの変質者と共にアステカからやって来たショチトルだ」

 

ショチトルは先程の光景を夢だと思っている17600号に早く忘れた方がいいと言いながら自己紹介をする

 

「そして俺はブリーフ派のテクパトルだ!」

 

「……何でブリーフ一丁なんですか?」

 

「……テクパトルは裸族なんです、でもお客さんの前ではブリーフだけは履きます」

 

テクパトルは裸族である、17600号が汚物を見る目でテクパトルを見るが本人はそれに気づかない

 

「まあいい、鍋がそろそろ出来上がる時間だ…早く席に座れ」

 

「ゴチになります、とミサカは初めて食べる鍋に興味を示しながら席に座ります」

 

17600号は光の速さで床に座り込む、どんなけ鍋食いたいんだよと内心で呟くエツァリとショチトル、そして17600号は気づく。この部屋の奥に一人の女がパソコンを弄っている事に

 

「おいトチトル、飯の時間だぞ」

 

「ごめん待って、今ブログとツイッター更新してるから。それが終わったらYo○Tubeに動画送らなきゃいけないから」

 

「あ、彼女はトチトルと言います。実は彼女人気Yo○Tuberでして…現在我々の生活費は彼女が稼いでるんですよ」

 

その女もやはりエツァリ達と同じ褐色肌に黒髪だった、彼女もアステカ出身なのだろうと17600号は考える。しかも何気に職業は説明

Yo○Tuberと聞いて無表情ながらも驚いた様な顔をする

 

「Yo○Tuberですか、とミサカは驚きの眼差しで彼女を見ます」

 

「因みに送ってる動画の内容は学園都市の能力者の喧嘩や学園都市の製品や能力についての説明です。それだけで何十万人も彼女の動画にお気に入りをしているぐらいです」

 

「……それ学園都市の法律上大丈夫なんですか?とミサカは外部の人間に学園都市の情報を漏洩していいのかと尋ねます」

 

「ああ、ご安心を。ちゃんと統括理事長に許可は貰いました」

 

Yo○Tubeに上げた動画が学園都市の情報の漏洩にならないのかと尋ねるがエツァリはアレイスターからの許可は取っていると笑う

 

「ほら、鍋が出来たぞ。肉は少ないから早い者勝ちだ」

 

「!これが鍋ですか!とミサカは初めて食べる鍋に大喜びしながら箸を近づけます……じゅるり」

 

ショチトルが鍋をテーブルの真ん中に置き蓋を開けると香ばしい匂いが漂い17600号が涎を垂らす…彼女は箸を使って肉を取ろうとするがパシンとショチトルの箸で手の甲を叩かれる

 

「何をしている貴様、最初は野菜からだと決まっているだろうが!」

 

「あ、はい…申し訳ありません…とミサカは謝罪します(これが噂に聞く鍋奉行ですか…)」

 

ショチトルは鍋奉行である、トチトルも席に座り白菜やしいたけを貪り始める…17600号も野菜類を食べ始めエツァリとショチトルも野菜類から食べ始める…だがテクパトルはそれを無視して肉を口の中に入れた

 

「お、美味いなこの肉」

 

「何最初に肉を食べてるんだテクパトルぅぅうううううううううううううううううううううううううううううう!!」

 

(それ自分のセリフ…)

 

エツァリがテクパトルに言うべきセリフをショチトルが言ってしまいエツァリがショボくれる。それを見ていた17600号はもう我慢できないと箸で肉を掴み口の中に頬張る

 

「貴様もかぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「戦場にはルールなど存在しないのだよ、とミサカは肉を貪りながらドヤ顔をします」

 

「上等だ、貴様ら二人を鍋奉行の名の下に粛清してやる!」

 

ショチトルは木製の刀身の両側面に細かい石の刃をいくつも並べた剣 マクアフティルを取り出す

 

「粛清の時間だ!鍋の神よ!ケツァルコアトルよ!私に力を!」

 

「ミサカの実力を見せてあげます、とミサカは完全武装で挑みます」

 

「ふ、我が筋肉と月のウサギで止めてくれるわ!」

 

「え!?ちょ月のウサギはやめて!それ私の骨が黒曜石になっちゃうから!」

 

「……食事くらい静かに食べられないんですか貴方達は?」

 

エツァリは静かに食事できないのかと鍋を食べながら呟く、隣の部屋から「はわわ!お隣さんが喧嘩してるのです!?」と幼女教師の声が聞こえた。エツァリは今度菓子折りを持って謝罪しに行こうと考えた

 

 

 

 

1 :VIPにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka17600

今日アステカの4人と鍋を食べた。美味しかった

 

2:VIPにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka10032

俺もお姉様と上条さんと昼飯食った

 

3:VIPにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00001

>>2 何それ羨ましいんだけど、感覚共有しろよ

 

4:VIPにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka10854

てかアステカの4人て誰よ?

 

5:VIPにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka17600

知らん、初対面の奴らだ

 

6:VIPにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka08254

ちょw初対面の奴らと鍋食うとかおま、ビッチかよ

 

7:VIPにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka17600

よしテメェ殺す、お前の居場所は知ってるからすぐ行ってその眉間に鉛玉ぶち込んでやる

 

8:VIPにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka08254

え?…ああ!窓に!窓に!……ぐぎゃぁぁぁ!!?

 

《08254さんがログアウトしました》

 

9:VIPにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00028

はや!?しかもダゴン!?

 

10:VIPにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00765

アイエエエ!?ダゴン!?ダゴンナンデ!?

 

11:VIPにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka10032

まあ冗談はこれくらいに…で、どうしてそいつらと鍋食ったんだよ?

 

12:VIPにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka17600

成り行きで、全員変な奴だった、お姉様のストーカーに裸族、鍋奉行、Yo○Tuberのアステカだった

 

13:VIPにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00009

いや何その組み合わせwww凄いなww

 

14:VIPにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00619

それなwww

 

15:VIPにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka11028

そんなことより黒子たんペロペロしたいお!

 

16:VIPにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka20000

セロリたんペロペロしたいお!

 

17:VIPにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka10033

セロリたんに踏まれたいお!

 

18:VIPにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00000

それなら俺だってていとくんに「エロい事しないの?」て言われたいお!

 

19:VIPにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00008

はあ?何言ってんだ?みさきちの胸に埋もれる一択に決まってんだろ!

 

20:VIPにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka14536

>>19 お前ドリーの姉御に殺されるぞ

 

21:VIPにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka09216

縦ロールちゃんペロペロ!

 

22:VIPにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka11111

かー、分かってねえなお前らは…カミやんとお姉様、みさきちと4P一択しかねえだろうが!

 

23:VIPにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka15550

じゃあむぎのんは俺が貰っていきますね

 

24:VIPにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00102

ソギーは俺の婿、異論は認めない

 

25:VIPにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka07324

浜ちゃんは俺の嫁、異論はない

 

26:VIPにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka10032

いつの間にか変態が集まってきたな、取り敢えず20000号は処刑

 

27:VIPにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka17600

>>26 異議なし

 

28:VIPにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka20000

俺の扱いだけ悪くない?なんで?泣くよ

 

29:VIPにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka10032

>>28 黙れ変態

 

30:VIPにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka17600

>>28 黙れ変態

 

31:VIPにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka09980

>>28 黙れ変態

 

《20000さんがログアウトしました》

 

32:VIPにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka05996

20000号メンタルクソ弱マジワロスwwあ、俺は木原くン派です

 

33:VIPにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka10032

まあ、そいつらは良い奴らでよかったが今後は知らない人についていくんじゃないぞ

 

34:VIPにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka17600

分かってる、今回はたまたまだ。それにあいつらに会うのはこれっきりだ

 

35:VIPにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka09980

それならいい。じゃあ俺はていとくんのストーキン…じゃなくて観察してくる

 

《09980さんがログアウトしました》

 

36:VIPにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka10032

9980号も中々ヤバイな…じゃ、俺も上条さんが捨てた紙パックをクンカクンカしますか

 

《10032さんがログアウトしました》

 

37:VIPにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka17600

お前も十分ヤバイよ…さて、俺もそろそろ家に帰りますかね

 

《17600さんがログアウトしました》

 

 

 

「ふう、ネットワークでの会話は長引いてしまいますね…とミサカは呟きます」

 

ミサカ板でのやりとりを終えた17600号は夜道を歩く、ふと彼女は気づく…人が少ない…いな自分以外の人の気配もしない事に

 

(……不気味ですね、もしやこれは何らかの能力でしょうか?)

 

彼女がそう考えたその時背後から誰かの足音が聞こえる、彼女が背後を振り向くとそこには黒いローブを着た映画に出て来そうな悪い魔法使いの様な風貌のイギリス人男性だ…片手には西洋剣が握られていた

 

「初めまして御坂美琴(・・・・)、私はリチャード=ブレイブ。イギリス清教の魔術師だ…と言っても何の事か分からないだろうが…即決に言おう。君を殺しに来た」

 

(魔術師……?それに何故お姉様の名を…まさかミサカとお姉様を間違えている?)

 

魔術師と名乗った男を睨む17600号、どうやら彼は17600号を美琴と思い込んでいる様だ

 

「君には恨みはないが…最大教主の命だ。それに君を殺せば私の破滅の杖(レーヴァテイン)を処分しなくてもいいと言われたのでね。悪いがここで死んでくれ」

 

「ッ!?」

 

リチャードが杖を振るうと紅蓮の炎が17600号を襲う、その炎は本来ならば燃える筈がないアスファルトを燃焼させた。その光景に目を見開く17600号

 

(アスファルトを!?それがあの男の能力!?)

 

彼女は知る余地もないが炎は能力ではなく魔術であり、更にその能力がどんな物でも燃焼させる能力とは知る筈がなかった…せめてもの抵抗にオモチャの兵隊を取り出してリチャードに弾丸を撃ち込む17600号だが紅蓮の炎がその弾丸を焼き尽くし攻撃は一切届かない

 

「ははは!そんなものかね超能力者!ならば私の破滅の杖の前に散るがいい!」

 

紅蓮の炎が17600号に迫る、彼女はその炎に焼かれ死を覚悟した直後、リチャードが握っていた西洋剣がバラバラに分解され紅蓮の炎も分解された直後に消えてしまった

 

「な!?私の破滅の杖が…!?」

 

驚きのあまり目を見開くリチャードに何が起こったのか理解できない17600号…そして彼女の肩に誰かがポンと手を置き17600号が背後を振り返る…そこに立っていたのは

 

「へ、変態ストーカー…?」

 

「いやそこはエツァリと言ってくださいよ」

 

その人物とはエツァリ、彼は17600号を自分の後ろに隠れさせると黒曜石のナイフを取り出しそれをリチャードに向ける

 

「そのナイフ…貴様学園都市の雇われ魔術師か!」

 

「ええ、その通りです」

 

リチャードは歯嚙みをしながら予備の破滅の杖を取り出す、エツァリはそれに対し何の反応も示さない。リチャードは破滅の杖から炎を放ちエツァリ共々17600号を殺そうとした瞬間、剣の刃がリチャードの腹部に勢いよく突き刺さった

 

「……な?」

 

「え……?」

 

エツァリは何もしていない、リチャード自らが(・・・)が破滅の杖で自らの腹を突き刺したのだ。自分でやった筈なのに驚くリチャード、何が起こったのか理解できない17600号。その事態を起こしたであろうエツァリはただリチャードを見つめるのみ

 

「な、ぜ…破滅の杖が…?ま、さか…貴様の術式…?」

 

バタリと地面に倒れるリチャード、エツァリはそれを見届けるとスーツの襟にナイフを戻す。17600号はエツァリのスーツの襟にホルスターがあり、そこに丸めた皮の書物が突っ込んでいた

 

「今のは貴方の能力ですか…?とミサカはホルスターに突っ込んである物を気にしながら問いかけます」

 

「いえあれは『原典』による…と言っても貴方には分からないでしょうね」

 

エツァリはそう返すとキャンピングカーが二人の近くに止まる、キャンピングカーの扉が開き現れたのは昼間に鍋を一緒に食べていたショチトル達

 

「仕事が早いなエツァリ、こいつが学園都市に不法侵入したリチャード=ブレイブか」

 

「これが破滅の杖か…ビタミンB2を使い霧吹きで対象にルーンを刻み燃えやすくするだけの霊装か…お粗末なものだな。マリアンの奴が聞いたら怒り狂うだろうな」

 

「そうね、自分が作った破滅の杖ならこんな小細工は要らないて叫びそうね」

 

ショチトルがリチャードを止血し始めテクパトルとトチトルが破滅の杖を眺める、そして三人がリチャードをキャンピングカーに乗せるとエツァリもキャンピングカーに乗ろうとし慌てて17600号が声をかけようとする

 

「あ、あの…助けてくれて……」

 

だが彼女がお礼の言葉を言う間も無く扉が閉まりそのままキャンピングカーは何処かへ行ってしまう…17600号は去っていくキャンピングカーを見つめていた…

 

 

 

「遅いな17600号の奴…門限はとっくの前に過ぎているというのに」

 

「まあまあ、少しくらいいいじゃないですか。とミサカ19696号は心配性のお父様に喋りかけます」

 

第七学区のとある家にて、17600号とホームレスミサカこと19696号の親代わりである絶対能力進化計画の研究者であった天井亜雄(あまいあお)が帰りが遅い17600号の心配をしていた

 

「まさか誘拐か!?不味い!早く芳川の奴に連絡を…!」

 

「もちつけ、心配し過ぎですよとミサカは呆れて呟きます」

 

19696号ははぁと溜息を吐いてそんな天井を見つめる、するとドアが開く音がし17600号が帰ってくる

 

「!遅かったじゃないか17600号!心配したんだぞ!」

 

「………」

 

「?どうかしましたか17600号?とミサカは問いかけます」

 

二人は17600号に声をかけるが17600号は反応を示さない、心配する二人をよそに彼女は自分の部屋に行きガサガサと何かを漁り始める

 

「……反抗期…なのか?」

 

「いやそれはないかと…とミサカは声をかけます」

 

あわわと震え始める天井に19696号はポンポンと背中を叩く、すると段ボールを被った17600号が二人の前に現れる

 

「今日からミサカはある男性の張り込みを始めます、とミサカはパンと牛乳を持って家から飛び出します」

 

そう言って彼女は家から出ていく、突然の出来事に唖然とする二人…そして天井が口を開く

 

「……17600号が不良になってしまった」

 

「ちょ!大の大人が涙目にならないでください!とミサカは泣きそうになっているお父様を慰めます!」

 

 

 

彼女は一週間程オンボロアパートの近くに潜伏しエツァリ達の行動を見張っていた

 

「……出て来ましたね、とミサカは双眼鏡越しに目的の人物を見つめます」

 

双眼鏡越しに映ったのはエツァリ、何処かへと向かうエツァリの後を段ボールを被りながら17600号は後をつける

 

「?誰かいたような……気の所為ですか」

 

(段ボールのお陰で絶対にミサカが後をつけていても気づかれませんね。とミサカは改めて段ボールの有用性に気付きます)

 

途中でエツァリが振り返るが段ボールの中に潜んで道のど真ん中で立ち止まる、エツァリは気の所為かと再び歩み始める…この段ボールはステルス機能でもあるのだろうか

 

(これであの変態ストーカーが何者なのか暴いてやります、とミサカは息巻きます)

 

彼女は何故あの時エツァリが現れたのか、彼の正体は何なのか探る為に彼の後を尾行していた…そして暫く歩いているとエツァリが曲がり角を曲がる、一定の距離を保ったまま17600号がその角からひょこっと顔を出す…だがそこは行き止まりでありエツァリの姿はなかった

 

「え?変態ストーカーは何処に?とミサカは周囲を見渡します」

 

17600号がキョロキョロと周囲を見渡す、だが何処にもエツァリがいない事に首を傾げかけたその時

 

「自分をお探しですか?」

 

「ひゃあ!?」

 

背後にエツァリがいた、驚いた17600号は急いでエツァリに向き合う

 

「こんな所で何をしているのでしょうか17600号さん?」

 

「い、いえ何も…とミサカは誤魔化そうと…あれ?今ミサカの事を17600号と呼びましたか?」

 

エツァリが自分の事を検体番号で呼んだ事に驚く17600号、自分の名前は名乗ってない筈だしそもそも妹達の事は学園都市でも知っている者は多くない…なのに何故エツァリは知っているのかと首を傾げる17600号だが…ふとある事に気付く

 

「……まさか、お父様や芳川さんみたいな絶対能力進化計画の関係者ですか?」

 

「いいえ、自分はあの計画とは一切無関係です。ただ自分達は統括理事会のメンバーが一人、親船最中さんの護衛を務めていますのでそう言った事には詳しいんですよ」

 

親船の護衛の一人と聞き17600号は納得する、統括理事会の一人の護衛なら妹達の情報くらい知っていてもおかしくないだろう

 

「それとあまり自分達の事を詮索するのはオススメしません、危険な目にあってしまいますよ」

 

エツァリは柔和な表情でそう言うと唇に人差し指を当てる、そしてそのまま立ち去ろうとするが17600号はエツァリの肩を掴む

 

「待ってください、ミサカはまだ貴方に言わなければならない事があります。とミサカは肩を掴みながら言います」

 

「なんしょうか?」

 

17600号はゆっくりと口を開きあの夜に言いたかった言葉を口に出す

 

「助けてくれてありがとうございます、とミサカは感謝の一言を告げます」

 

「……いえ、あれも仕事なので」

 

「それでもミサカを助けてくれた事には変わりありません、とミサカはエツァリさん(・・・・・・)の瞳を見続けます」

 

「……そうですか」

 

頭を下げる17600号を見てエツァリがクスッと笑う、そのまま彼女に背を向けたまま手を振りながら去っていく

 

「また会えますか?」

 

「ええ、何せ地球は丸いですからね。また会えますよ」

 

彼女の問いかけにエツァリはキザったらしく答えながら彼女の方を振り向かず歩み続ける…17600号はその後をずっと眺めていた

 

 

 

「ただいま戻りました」

 

「早かったなお兄ちゃ…エツァリ、あの女に忠告してきたのか?」

 

「ええ、それに彼女に感謝の一言も言われましたよ」

 

「そうか、それは良かったな」

 

ショチトルと全裸でベンチプレスをしているテクパトルに17600号との会話を話すエツァリ、奥でトチトルはパソコンをカチャカチャ弄っている…しかしそれは滞空回線から送られてくるデータだ

 

「特に異常はありませんかトチトル?」

 

「ええ、特に異常はないわ」

 

「なら今日は何もしなくていいですね」

 

彼らが所属していた組織 翼ある者の帰還は二年程前までは学園都市に攻撃を仕掛けていたのだが垣根とオティヌスの二人に壊滅状態まで追い込まれ指導者だった老人は組織を捨て逃亡、見捨てられたエツァリ達は垣根との取引で学園都市の雇われ魔術師になった過去がある、別に彼らは学園都市を恨んでいないし組織よりも居心地がいいこの学園都市を気に入っていた

 

「さて、今日は寿司でも食べに行きますか」

 

「回らない方か?」

 

「回る方です」

 

そうやって彼らが軽口を叩いているとコンコンと扉が叩かれる音が聞こえエツァリがその扉を開ける…そこには

 

「やあ先程ぶりです、とミサカは片手を上げて挨拶します」

 

「「「「」」」」

 

そこにいたのは17600号、彼女を見て固まるアステカの魔術師達

 

「…何故ここに?」

 

「言ったじゃないですか、また会えますか?て、とミサカはボケたエツァリさんにジト目を向けます」

 

「こんなに早いんですか!?まだ半日どころか一時間も経ってないんですよ!?」

 

あまりの早過ぎる再開に驚くエツァリを他所に17600号は口を開く

 

「ミサカはあの夜の戦いを見て思いました、あの時エツァリさんが現れなかったらミサカは殺されていたと…とミサカは事実を語ります。そこでミサカは思いました。「あ、そうだ。自分が強くなれば襲われても返り討ちに出来るんじゃね?」、とミサカはドヤ顔で言います」

 

「そ、そうですか…それが自分とどう関係しているのでしょうか?」

 

「つまり、あの発火能力者を倒したエツァリさんは強い能力者て事になりますよね」

 

「いや能力者じゃ…まあそこは置いておきまして…一応学園都市の魔術師の中ではトールさんやブリュンヒルデさん、土御門さん達と並べられる程強いとは自負していますが…」

 

ペラペラと喋り続ける17600号にエツァリが何か嫌な気配がすると感じる…そして彼女はエツァリに向けてこう言った

 

「だから弟子にしてください師匠、とミサカは上目遣いで頼みます」

 

「もう師匠呼び!?いえ自分は能力者でないですし能力なら御坂さん…貴方のお姉さんの方が…」

 

「お姉様ですか?「え?能力の精度を上げたい?簡単よ、こう丸みをつけてぐがぁぁ〜としてポン!とすれば簡単に精度があがるわ」という訳の分からない説明をするお姉様に教えてもらえと?」

 

「…それは無理ですね」

 

「ですからお願いしますよ師匠、とミサカは有無を言わせない様言葉を続けます」

 

「そんな…ショチトル達も何か言ってください」

 

弟子にしてくださいと頼み込む17600号に困惑するエツァリ、彼は仲間に助けを求めるが

 

「寿司屋でラーメンを食べるか」

 

「ねえショチトル、何故寿司屋に行ってわざわざラーメンを頼むの?」

 

「流石に外で全裸は恥ずかしいからスーツを着ておくか」

 

「助けてくれないんですか!?」

 

誰も助けてくれなかった、アステカは薄情な奴らばかりである

 

「と、言うわけでこれからよろしくお願いしますね師匠」

 

「……何故こうなった」

 

エツァリは頭を抱える、ただ自分は美琴のストーカーをしていて時々美琴に寄ってくる小蝿(海原)を原典で排除したり上条や食蜂とデートをする美琴の顔を見て笑っていただけなのに何故こうなったのだろうか。そう考える間にも17600号はキラキラと眼を光らせてエツァリを見つめている

 

「……まあ、出来るだけやってみますか」

 

彼は渋々ながらも弟子入りを認めた、それを聞いて無表情ながらも嬉しそうな顔をする。それを見てエツァリは頬を緩めた

 

 

 

『こちらスネーク、お姉様が上条さんと食蜂さんの手を繋いで歩いています、ミサカは無線機片手に師匠と連絡を取ります』

 

「こちらエツァリ、引き続き尾行を続けてください」

 

そして二人は今デートの最中の美琴達をストー…スネークしていた

 

(彼女に師匠と呼ばれる様になってもうすぐ二ヶ月経ちますね)

 

ほぼ強引に弟子が出来たエツァリは超能力や射撃に関しては詳しくないので隠密活動について教えてみたら彼女は段ボールを被れば誰にも気づかれることなく尾行出来る様になったのだ。それは某スネークを連想させる姿だった為妹達からはスネークと呼ばれる様になった

 

(……師匠というのも案外いいものかもしれませんね)

 

エツァリはそう思いながら笑う、そして弟子からの通信が入る

 

『こちらスネーク、お姉様達のデートの邪魔をしようと害虫(海原)が湧いてきましたがどうしましょう?とミサカはバズーカを構えながら許可を今か今かと待ちます』

 

「こちらエツァリ、その男はぶち殺しても構いません、散り一つ残らずこの星から抹消してください」

 

『了解です、とミサカは引き金を引きます』

 

ドカーンと爆発音が響く、今日も美琴達のデートは平和だ、何故なら彼らの背後には美琴達のデートを邪魔する連中(主に海原)をデリートするストーカー達がいるのだから

 

 

 

 

 

 

 




リチャード?あいつは単なるかませだよ(無慈悲)あの人をこの小説で出してもていとくん達に瞬殺されるから仕方ないね。なおこの小説のエツァリさんは土御門やトール(雷神状態)とほぼ同格レベル…なおさらリチャードが勝てる要素が一つもなかったです(無慈悲)

アウレオルスさんと姫神と比べるとあまり感動系ではないこの二人ですが…それは作者の力量不足です、すみません。ただ一言言わせてください…この二人はストーカップルです。この二人が陰ながらミコっちゃん達のデートを見守って海原から守っていたんです。後ミサカネットワークはあれで良かったでしょうか?結構難しかったです

さて次回から漸くエンデュミオンの奇跡編スタートです

次回もお楽しみに


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奇跡も超能力もあるんだね

さあエンデュミオン編スタートです、原作とは大幅に違う点がありますがそこは二次創作だからと大目にみてください。作者はハッピーエンドが好きなんです

そして漸く理想送りが本格的に動き出す


学園都市の第七学区のある家にて一人の少女が荷物を背負いながら靴を履き何処かへ出かけようとしていた

 

「また路上ライブをしに行くのかアリサ」

 

「うん、行ってくるねシャットアウラお姉ちゃん」

 

その少女に話しかけたのはシャットアウラ=セクウェンツィアという黒い長髪の少女、アリサと呼ばれた鴇色の髪の少女はニッコリと笑いながら扉を開けて外へ出て行く。シャットアウラはそれを見送った後ダイニングキッチンに入りそこでコーヒーを飲んでいる彼女の父親 ディダロス=セクウェンツィアが娘に話しかける

 

「不満か?アリサがアーティストを目指している事に?」

 

「いや…そうじゃない。ただ申し訳ないだけだ…単にアリサの歌が聴けなくて残念なだけだ」

 

「そうか…あの時からだな。お前が音楽が聴けなくなったのは…」

 

親子の会話がダイニングキッチンに響く、先程の少女…鳴護アリサはディダロスの養子だ。三年前のあの事故…俗に言う『89の奇跡(・・・・・)』で見つかった謎の少女。ディダロスが機長を務めていたオリオン号で発見された身元不明戸籍不明の記憶喪失の少女。引き取り手のなかった彼女をディダロスは養子に迎え彼女を一時的に預けていた孤児院から名付けられた「鳴護アリサ」と言う名前で自分の養子に戸籍に登録している

 

「…もうあの事件から三年間か…早いものだな」

 

「……うん」

 

二人は昔を懐かしむ様に天井を見上げる、彼等は三年前のあの事件をつい昨日の様の出来事の様に思い出し始めた

 

 

 

「左翼エンジン脱落!も、もう駄目です! 機長ッ!」

 

「諦めるな!まだやれる事はある筈だ!」

 

航空事業系企業 オービットポータル社のスペースプレーンであるオリオン号は現在墜落しかけていた、オリオン号は開業記念試験飛行にてオリオン号は機長らも含む88人を乗せて宇宙旅行へと旅立っていた、そして地球に戻る際スペースデブリにぶつかってしまいエンジンブロックに損傷を受けてしまい現在に至るのだ

 

「もう無理ですよ機長!」

 

「最後まで希望を捨てるな!私達は乗客の命を預かっているんだ!そう簡単に諦める訳にはいかない!」

 

もう無理だと諦めコックピットから逃げ出したい副機長だが機長…ディダロス=セクウェンツィアは最後の瞬間まで決して諦めない

 

 

(お願い…誰でもいいから皆を助けて…私の大事なもの、全部あげるから…皆に奇跡を)

 

機内で一人の少女…シャットアウラ=セクウェンツィアが手を合わせて祈る、彼女はオリオン号にいる人全てを、父親を誰でもいいから救ってくれと願う…そしてその願いは成就し奇跡が生まれた

 

 

「もう無理です機長!奇跡なんて起きない!起きる筈がないんだ!」

 

「……もうこれまでか」

 

泣き喚く副機長に自分の命運もここまでかと目を瞑るディダロス…だが急にオリオン号を巨大な揺れが襲う

 

「ッ!?なんだ今のは!?何処か爆発したのか!?」

 

「い、いえ何処も爆発していません!」

 

突然の出来事に混乱する二人…そして副機長がふと窓の外を見ると…オリオン号の先端に誰か立っていた(・・・・・・・)

 

「な…!?き、機長!あそこに人が…!」

 

「何!?」

 

そこに立っていたのは西洋の魔女の様な服をした14歳くらいの少女だった、彼女は暴風が吹き荒れるこの大空を平然と歩きコックピットの窓の近くまで歩み寄る、そしてオリオン号の壁をすり抜けてコックピットに彼女は侵入した

 

「どけ」

 

彼女は副機長に邪魔だと呟くと副機長のシートベルトが勝手に解除され彼女に押しのけられ床に転がる、彼女は機械類を一瞥し手をかざす…それだけで不安定だった機械が安定しだしオリオン号が勝手に動き始める

 

「な…!?こ、これは…」

 

「科学には少々疎いが…魔術で操れば問題ない」

 

ジグザグに飛ぶ、90度からの急降下から急なカーブ等普通ではありえない動きをするオリオン号、しかも不思議な事に機内は揺れ一つ起こらない…この不可思議な光景に副機長は圧倒され声も出ない…だがディダロスは少女に口を開く

 

「き、君は一体…?」

 

「私か?私はオティヌス、盟友からこの旅客機を救う様頼まれた元魔神だ」

 

 

乗客達は驚いてはいたが揺れが収まった事から助かったのかと安堵し始める、シャットアウラも自分の祈りが叶ったのだと笑みを浮かべかける…そして彼女は気づく、自分の真横の床に全裸の少女が倒れている事に

 

「え……?」

 

その長い桃色の美しい髪を持つ少女は床に倒れたまま死んだ様に動かない…シャットアウラはシートベルトを解除して席から離れその少女に駆け寄る

 

「貴方大丈夫!?」

 

「…………ぅ」

 

シャットアウラの声に反応したのか少女はゆっくりと目を開け始める…その桃色の瞳にシャットアウラが映りシャットアウラは証書が無事な事に安堵する

 

「……ここは何処?」

 

「え?」

 

「……何も思い出せない…私は…誰?」

 

奇跡は生まれた、ただその奇跡が乗客を助ける前にもう一つの奇跡が生じた為その奇跡が本来奪う筈だったシャットアウラの大事な物(父親)は奪われなかった。これが俗に言うオリオン号の『89(・・)の奇跡』である

 

 

 

 

「今日もいい天気だな〜そう思わないか潤子ちゃん」

 

「ええ、そうですわね」

 

九月六日 晴天の下、垣根と帆風が朗らかに笑いながらいい天気だと笑う

 

「お前らもそう思うだろ?」

 

「「「「「「…………」」」」」」

 

垣根は後ろを歩く上条達に同意を求めるが彼らはジト目を垣根に向けるだけで何の返事もしない

 

「あ?何でそんなに態度悪いんだよ」

 

「……別に、普段通りですけど?」

 

「そうよ、別に磔にされたまま何日も放置された事なんか気にしてないわよ」

 

「そうよぉ、別に怒ってないんだからねぇ」

 

(あ、皆さん怒ってますね)

 

帆風はあの時放置した事を根に持ってるなと気づいた、まあ確かに助けに来たのに存在を忘れられて放置されれば怒るだろう

 

「ま、いいや。潤子ちゃんは何処か行きたい場所ある?」

 

「「「「「「いや少しは気にしろよ!」」」」」」

 

「こいつら面倒くせえ」

 

「あはは……」

 

垣根はそんな上条達をさらりと無視するが彼等は無視するなと叫ぶ、それを見て面倒くさそうな顔をする垣根に曖昧に笑う帆風

 

「俺らはずっと待ってたてのに…なんか褐色肌の外人と段ボール被った妹達の誰かが来てくれなかったら飢え死ぬかと思ったわ!」

 

「へー、良かったじゃん助けてもらえて。ラッキーだったな」

 

「…反省の色なしとはいい度胸だなァていとくン」

 

反省の色を見せない垣根に上条達は手首をゴキゴキと鳴らしながら垣根に詰め寄る、それを見てはわわ!と慌て始める帆風…その時彼女の耳に心地よい歌声が聞こえた

 

「あら…?これは歌でしょうか?」

 

「……この歌…まさか」

 

帆風が何処から聞こえてくるのかと首をキョロキョロさせると遠くに人集りが見えた、垣根はこの歌に聞き覚えがあるらしくその人集りに向かって行く…帆風達も慌てて垣根の後を追う、垣根はその人集りを押しのけて前の方まで向かう…そこにいたのはピアノを弾きながら歌を歌う鴇色の髪の少女だった

 

「〜〜♪〜〜〜♪」

 

「……やっぱりか」

 

「垣根さんの知り合いですか?」

 

「いや初対面だ、ただ名前は知ってるがな」

 

垣根はやはり彼女だったかと頷き帆風が知り合いかと尋ねるが垣根は首を振る、上条達も垣根の近くに辿り着き彼女の美声を間近で聞く

 

「〜♪〜〜〜〜♪」

 

彼女は歌う、彼女の奏でるピアノの旋律と彼女の美声が周囲一帯を支配する…その歌声に引き寄せられ集まり始める人々…それはセイレーンの歌声に誘われるかの様…そして彼女は歌を歌い終わると大勢の人が拍手を鳴らす。まさにそれは拍手喝采

 

「ありがとうございました!」

 

「いい歌でしたね」

 

「そうだな……ん?」

 

少し照れながら手を振る彼女、帆風はいい歌だったと感動の笑みを浮かべながら同意を求め垣根もそれに頷く…そこで垣根はふと横目である人物達を発見する

 

「最高なんだよアリサ!アリササイコー!略してアリサイコー!」

 

「よ!学園都市一の歌姫!未来のアイドル歌手!」

 

「「「アリサ!アリサ!アリサ!アリサ!アリサイコー!!!」」」

 

「……恥ずいですの」

 

「あはは…」

 

インデックスと佐天がノリノリでペンライトを振りながらアリサと呼んだ少女に歓声を上げ、ペンライトを両手に持って見事なオタ芸を披露する神裂とステイル、初春の三人。それを見て溜息を吐く黒子と曖昧に笑う風斬がいた

 

「……お前ら何やってんの?」

 

「あ、とうま達も来てたんだね」

 

「「!?か、上条当麻!?」」

 

六人に気づいた上条が何してんだと声をかける、インデックスは上条達も来ていたのかと笑うがステイルと神裂はビクッと震えペンライトを隠す

 

「やややややあ、上条当麻…元気かな?こんな所で会うとは奇遇だね」

 

「なあステイル、神裂と一緒にオタ芸をしてなかったか?」

 

「お、オタ芸ですか?そんなもの知りませんね。ええ知りません、知らないたら知らないんです」

 

「隠すのに必死ね」

 

上条がオタ芸してた?と聞くと二人は大慌てで言い訳をするがバレバレである

 

「あ、実は私達『鳴護アリサファンクラブ』なんですよ。私がNo.2で佐天さんがNo. 1、インデックスさんがNo.3でステイル君達も会員なんです」

 

「…へェ、お前らもアイドルとか興味あンのか」

 

「ええ、なんたってアリサさんの歌はネット上でも大人気ですからね。何せあのエンデュミオンのイメージソングを歌うらしいですからね…何でもエンデュミオンのオーナー兼統括理事会のメンバーの一人が推薦したとか何とか…」

 

自分達は鳴護アリサファンクラブ(会員7名)だと教える初春、佐天は彼女があのエンデュミオンのイメージソングを歌うと教えへぇ〜と上条達がその少女 アリサを見る。彼女はピアノのチューニングをしていた

 

「いや〜本当に素晴らしい曲なんだよ、詩にスペルを乗せてるわけでもないし、精神感応(テレパス)でもない…正しく彼女は天才だね」

 

「全くです、もし彼女が聖歌を歌うとなれば神からの加護も他とは桁違いになるかもしれません」

 

「おい君達、ここは科学サイドなんだ。魔術サイドの事は置いておいて今は彼女のCDを買いに行こう」

 

ステイルがCDを買いにアリサの元へ向かう

 

「すみませんCD三つくださいなんだよ」

 

「いや一つでよくないかにゃーん?」

 

「何を言ってるんです麦野沈利、聴く用と観賞用、保存用に決まってるじゃないですか」

 

「そうですわよ麦野さん、わたくしもゲコ太グッズを手に入れる時もいつも保存用と観賞用を買ってますしね」

 

「俺にはよく分からん世界だな」

 

垣根達は携帯に彼女の曲をダウンロードし佐天達はCDを買う、それを見たアリサは朗らかに笑った

 

「皆ありがとう、それに貴方達もいつも私のライブに来てくれてありがとう」

 

「ふ、アリサのライブなら例え天国だろうが地獄だろうが行く自信があるんだよ」

 

「例えテロリストが邪魔をしてもそいつらを焼き殺して僕は君の歌を聴く」

 

「それぐらいのファンですから、私達は」

 

「わたくしはインデックスさん達程ではないですが…貴方の歌を聴く為なら風紀委員の仕事をサボってもいい気がしますの」

 

「私もインデックス達と同じくらい貴方の歌大好きです」

 

インデックス達はニコニコと彼女のファンならばどんな場所でも歌を聴きに行くと笑い、インデックス達の話を聞いて頬を赤くするアリサ

 

「あ、もうこんな時間なんだよ!タイムセールが始まっちゃう!」

 

「何だと!?もうそんな時間か!」

 

「では皆さん御機嫌よう、私達は戦場(スーパー)へと向かいます!」

 

「あ、わたくしもピラルクーの散歩の時間ですの」

 

「あ、私もクロちゃんのお昼ご飯作らないと…兄さんは外で食べるから要らないよね」

 

「あ!私達もむーちゃん達と遊びに行く約束してたんだ」

 

「私も風紀委員の仕事があったんでした!」

 

インデックス達はそう叫ぶと全速力で第七学区のスーパーを目指す、黒子も散歩の時間だと言って空間移動で姿を消し風斬は垣根にご飯は外で食うのかと確認を取るとそのまま家に帰って行く。佐天と初春も用事があったらしく手を振りながら立ち去る…この場に残ったのは垣根達とアリサのみとなった

 

「それにしてもいい歌だったにゃーん」

 

「ありがとう、それで貴方達もあの子達と同じファンクラブの人達ですか?」

 

「いや俺らは単なる仲良しレベル5(絶滅危惧種)です」

 

「………え?超能力者…?」

 

アリサが垣根達もファンクラブの会員かなと笑いながら尋ねる、垣根が超能力者だと言うとアリサが固まる

 

「ああ、俺は超能力者の第一位 垣根帝督だ」

 

「俺は超能力者の第二位 上条当麻。で、こっちが俺の彼女の超能力者の第五位 御坂美琴と第六位 食蜂操祈だ」

 

「俺は第三位の一方通行だ」

 

「私は第四位の麦野沈利、よろしくね」

 

「俺はナンバーセブン 削板軍覇だ!宜しくな!」

 

(が、学園都市の最強の七人が私の歌を…?これはお姉ちゃんに自慢しなきゃ)

 

超能力者が自分の歌を聴いていたと知り家に帰ったら姉に自慢しようと密かにアリサは思った

 

「私はアリサ、鳴護アリサ。よろしくね」

 

アリサは超能力者達に自己紹介をしながら手慣れた手つきでピアノを片付け始める

 

「しかし沢山の人がいる場所で自分の歌を歌うなんて凄いな、見かけによらず根性あるな」

 

「根性かどうかは分からないけど…私は歌を歌うのが大好きなんだ。私は歌う事しか出来ないけど…そんな私の唯一の長所で誰かを笑顔にしてみたいんだ。私の夢は私の歌で学園都市の皆を笑顔にする事なんだ」

 

アリサは自分は歌を歌う事しか取り柄がない、ならそれを伸ばしていつか学園都市の皆を自分の歌で、自分の唯一の力で笑顔にすると言う夢を語る。そして聖母の如き笑みを浮かべると彼女の周りが後光の様に光っているような幻覚が見えた…

 

「「「「「ぐああああぁぁぁぁ!!!目がぁぁ!目があああぁぁぁ!!!」」」」」

 

「えぇ!?急に女王達が倒れましたわ!?」

 

「ど、どうしたの?!」

 

「ま、まさか魔術師の襲撃か!?おのれ魔術師!」

 

すると突然手で目を抑えながら地面に倒れジタバタする上条、美琴、食蜂、麦野、一方通行。それを見た帆風とアリサが何が起こったのかと驚き削板は魔術師の仕業かと叫ぶ

 

「ああ、気にすんな。鳴護っちの輝きに目が潰れただけだ」

 

「え!?どう言う状況!?」

 

「簡単に言うとバルス食らったムスカ大佐みたいな状況だよ。鳴護っちの浄化の光でこいつらの汚い部分が浄化されてるんだよ…多分な」

 

まるで「人がゴミのようだ!」やら「あ~あ~目がぁ~、目がぁ~!!」と言う名言を持つ天空の城の王族の末裔のように目を抑える上条達…彼らはアリサの夢を語る無垢な輝きによりその眼を潰され彼女の光によって彼らの煩悩が浄化されているのだ

 

「あれ?でも女王達よりも煩悩の塊で不純の極みである垣根さんは何故浄化されないんですか?」

 

「傷ついた、その一言が俺のピュアピュアなハートを傷つけた。俺もう二度と潤子ちゃんと口聞かない」

 

「え!?う、嘘ですよ!垣根さんはわたくし達の中で一番心が綺麗です!」

 

帆風は一番の煩悩の塊である垣根は何故浄化されないのかと疑問に思う、それを聞いた垣根は帆風からそっぽを向き二度と口を聞かないと告げる。それを聞いた帆風は慌て始めるが垣根がそっぽを向いたまま笑っている事に気づくと揶揄っているのだと気づき頬を膨らませながら垣根の背中をポコポコと殴る

 

「くそ…まだ目がチカチカする…」

 

「俺の反射をすり抜けるなンてなァ…」

 

「てか純粋な少女が夢を語るときて本当にキラキラが出るんだな…てっきり漫画とかの描写だけかと思ってたにゃーん」

 

上条達はのろのろと立ち上がる、まだ目の痛みが消えていないのか視界がはっきりとしないが彼らはあるものに気づいた。削板がアリサを見たまま硬直している事に

 

「あ?何してンだ削板」

 

「………した」

 

「え?今なんて言ったのかしらぁ?」

 

小声で何か呟いた削板に垣根達はん?と耳を削板に近づける、アリサは首を傾げて遠目で削板を見る…そして垣根達が削板に近づくと彼は口を開いた

 

「……一目惚れした」

 

「「「「「「「………は?」」」」」」」

 

「………!」

 

アリサに一目惚れしたと呟く削板に呆けた顔をする上条達、垣根は目をキラリン!と輝かせて惚れ話=カップリング!と携帯電話を片手に削板の話に耳をすませる

 

「俺はあいつに一目惚れしてしまったらしい」

 

「待て、待てよ、待ってくださいの三段活用。え?何?軍覇はあの子に惚れたってことか?」

 

「ああ…そう見たいだ…顔を見ているだけで心臓がバクバクするし胸がドキドキする…これが……恋!」

 

「……根性馬鹿が恋をしただと…?頭の中まで筋肉で出来てそうなこいつがか?あり得ねえにゃーん、てか興奮し過ぎて爆発させんじゃねえよ」

 

一目惚れををした!と言って削板は興奮のあまり能力の爆発が起きカラフルな煙が上条達の視界を覆う、アリサは何が起こっているのかと首を傾げ上条達は興奮する削板をどう宥めるか考えていたが垣根が削板の両肩を両手で掴む

 

「俺はお前の恋を全力で応援するぜ軍覇、この俺がお前と鳴護っちをくっつけてやるよ」

 

「!本当か帝督!」

 

「当たり前だ、俺はカプ厨で超能力者の第一位だぞ?削板×アリサていう新カップリングに喰いつかないわけがねえだろうが!」

 

どうやら彼のカップリング魂に火を点火してしまったらしく垣根も削板と同じくらい興奮していた。それを見て溜息を吐く帆風達

 

「なら文通が出来るぐらいの仲まで取り持ってくれ!」

 

「ああ!任せとけ!この俺にかかれば恋愛のABCをクリアさせる事なんざ朝飯前……え?文通?恋人とかじゃなくて?」

 

「バッ……!いきなり恋人とか早過ぎるだろ!まずはお互いのことを良く知ってからじゃないとダメだ!だから文通から始めたいんだ!」

 

「……あ〜一昔前の少女漫画みたいにな、オッケー分かった。まあ文通から始まる恋てのもいいよな。うん」

 

削板の昔の純愛物のような価値観にあのカプ厨である垣根ですらたじろいだ

 

「で、削板はあの子ともし付き合ったら何がしたいんだにゃーん?」

 

「そ、そうだな…こ、恋人の定番の…あれだろ、あれ」

 

「あれじゃ分かンねえよ削板くンよォ?ちゃんと言ってくンねェとなァ?」

 

「そうよぉ〜具体的に何をしたいのか言ってくれないと私達は理解出来ないんだゾ☆」

 

(削板さんを揶揄う気満々ね)

 

麦野と一方通行、食蜂が削板に恋人になったら何がしたいと尋ね削板が顔を赤くする、美琴はそんな三人にジト目を送る

 

「あ、あれだ……恋人の定番で言われてる…お互いの体と体が触れ合う…あれだ…」

 

「お〜!そんな事がしたいなんで大胆だにゃ「そう!恋人繋ぎだ!」……は?」

 

「くそ!恥ずかしいから言わせないでくれ!」

 

「……あのぉ削板さん…もしかして手を繋ぐだけでお終いなのかしらぁ?」

 

「そ、それだけじゃない!恋人になったらあの…キ、キキキキ……ああ!この先は恥ずかしくて根性なしの俺じゃあ言えねえぇぇぇ!!」

 

「……え?こいつ本当に高1か?中1じゃなくて?」

 

「…削板さんはこの中で一番の純粋な心の持ち主ですわね」

 

削板は恥ずかしそうに恋人繋ぎをしたいと呟き麦野がえ?と目を点にする。彼は更にその先のキス…と言おうとしたが顔を真っ赤にして恥ずかしくて言えなかった。垣根と帆風はこいつ本当に高校男子?と内心で思った

 

「皆なんの話をしてるの?」

 

「いやくだらない雑談だにゃーん」

 

アリサが気になって喋りかけてきたが麦野がなんでもないと言って返す、流石の麦野も「こいつ、お前の事が好きみたいだにゃーん」とは言わないらしい

 

「なあ、軍覇……エロい事したくねえの?」

 

「……そのエロい事て何なんだ?」

 

「……あの削板さん、赤ちゃんはどうやって出来るか知ってますか?」

 

「それくらい知ってるぞ!コウノトリが運んでくるんだよな!」

 

「「………」」

 

垣根がエロい事しねえの?と聴くと削板はエロい事て何?と首を傾げる、帆風が削板に赤ちゃんはどうやって出来ると確認すると削板は自信満々の笑みでコウノトリが運んで来ると言い垣根と帆風は「あ、こりゃダメだ」と頭を抱えた

 

「ねえ皆」

 

「!な、ななななんだ!?」

 

「落ち着けよ削板」

 

アリサが話しかけてきた事で軍覇がアリサの方を向いて身体をカチコチになりながら話しかける、そんな彼に一方通行がペシッと頭を叩く

 

「良かったらお昼一緒にどうかな?実はレディリーさん…統括理事会の人に今度の大覇星祭で流すBGMを作曲して欲しいて言われてるんだけど…その内容が「能力者同士の熱いバトルを連想させる曲」でね…私は無能力者だから能力を使ったバトルを連想出来なくて…でも超能力者の貴方達なら分かるんじゃないかと思って…ダメかな?」

 

彼女は今度の大覇星祭で流すBGMの作曲に悩んでいるようで超能力者である削板達に色々聞きたいらしい…それを聞いた削板はこれだ!と力強く首を音速の二倍の速さで縦に振り周囲に爆風が生じる

 

「全然大丈夫だ!なあ皆!」

 

「本当!?ありがとう!」

 

「ははは!これぐらい当たり前だ!俺達は人の役に立つ事が好きだからな!」

 

(((((((下心丸見え……)))))))

 

これはアピールチャンスとばかりにいい笑顔を見せる削板、それを見て垣根達は白い目を向けていた

 

 

 

「ここが学園都市ですか…案外簡単に入り込めましたね」

 

第七学区のとある街中に真っ白なトーガを着た銀髪紫目の少女が歩いていた。この街では目立ち過ぎる服を着ているのにも関わらず周りの人間は彼女を一切気にしない…まるで彼女が見えていないかの様に

 

「さて、標的は何処でしょうか?まあいいです。時間はいくらでもあります…ゆっくり時間をかけて超能力者を皆殺しにし後から来る上里様達と合流し「奇跡の子」を捕獲しましょう」

 

 

 

第七学区のとあるスーパーにて、両手に荷物を持ったインデックス達がホクホク顔でスーパーから出てきた

 

「卵6パックゲットなんだよ」

 

「それに二割引きの肉も手に入りました…今日は焼肉ですね」

 

「ふ、魔導書図書館に聖人、そして身長が高い僕…僕達が揃えば戦場(タイムセール)を制する事など容易いものだ」

 

彼等は今日の夜は皆で焼肉パーティーだと笑う…なおタイムセールではインデックスが魔術を使い敵兵(おばちゃん)達の動きを阻害し神裂が聖人の身体能力の高さを活かして食材を取る、そして高い場所にある食材はステイルが取る…これが彼等の戦法である…こらそこステイルいらないとか言わない

 

「そろそろスーパーのタイムセールからデパートのタイムセールに行ってみないか?」

 

「ダメだよステイル、デパートは魔境なんだよ。聞いた話によるとデパートにいるおばちゃん達は口から炎を吐いて新参者を焼き殺すらしいんだよ」

 

「何!?口から炎を吐くのか!?…おばちゃんとは恐ろしいな」

 

そうインデックスとステイルが軽口を言い合う…そんな仲、インデックスがピタリと立ち止まる

 

「どうかしましたかインデックス?」

 

「……これは人払いだね、その証拠に私達以外誰もいないんだよ」

 

「「!?」」

 

インデックスに言われるまで神裂とステイルは人払いが発動している事に気付かなかった。神裂とステイルは急いで荷物を地面に置き七天七刀とルーンを刻んだカードを取り出す…そして三人の頭上に無数の真空刃が飛来する

 

「!七閃!」

 

神裂はそれをワイヤーで切り裂く、だが今度は無数の石飛礫がインデックス達を取り囲む様に四方八方から飛んで来る、それをインデックスは光の障壁で防御

 

「……ウンディーネ、逆月の象徴により万物から抽出されしものよ…」

 

「!?くそ…!吸血殺しの紅十字!」

 

しかし今度は竜巻の如き渦巻く水が頭上から迫る、それに対しステイルは両手から二つの炎剣を放つ吸血殺しの紅十字で相殺しインデックス達の頭上で水蒸気爆発が起こる。インデックスはその衝撃が届く前に障壁を張り自分達と荷物を守る

 

「……今の魔術は…まさか!」

 

ステイルは今の魔術に心当たりがあるらしく顔を硬ばらせる…そして水蒸気爆発によって生じた煙が晴れていくと三人の見える範囲に三人の少女が立っていた…金髪に青い目、スタンダートな魔女服を着た少女、茶髪に探偵服に似た魔女服を着た少女、濃い緑の髪の妖精の様な魔女服を着た少女…そして全員が胸元に赤い十字のブローチをつけていた

 

「赤い十字のブローチ…イギリス清教所属の証…つまり彼女らはイギリス清教からの刺客という事ですか」

 

神裂は冷静に彼女らを見入る、そしてステイルが彼女らに口を開いた

 

「メアリエ…それにジェーンにマリーベートまで…」

 

「お久しぶりですね師匠(・・)、いえ今は背教者と呼ぶべきですか」

 

最大主教(アークビショップ)からの名により貴方方を殺しに来ました」

 

「ついでに私達はししょーより強いと言うことを証明してあげますの」

 

金髪の少女…メアリエ=スピアヘッドはニコリともせずステイルの事を師匠と呼んだ、そうこの三人はステイルからルーン魔術を教わったステイルの弟子なのだ、メアリエに続いて緑髪の少女 ジェーン=エルブスと茶髪の少女 マリーベート=ブラックホールはステイルに話しかけた後三人はそれぞれの武器を構える

 

「「「さあ、お覚悟はよろしいですか師匠/ししょー」」」

 

「………く!」

 

ステイルの弟子三人がインデックス達に一斉に襲いかかる、それを見たステイルは両手に炎剣を作り出す。神裂は刀を握る手の力を強めインデックスはいつでも魔術を放てる様にする…こうして魔術師達の戦いは幕を開いた

 

 

 

「はぁ〜食べた食べた〜ありがとね垣根くん。ご飯奢ってもらって!」

 

「……あ、うん……大食いなんだな鳴護っちて」

 

アリサはお腹をさすりながら垣根に礼を言う、それだけなら普通の光景なのだが彼女のテーブルには大量に重ねられた皿の塔が出来上がっていた…

 

「……インデックス並みの痩せの大食いだったンだなオマエ」

 

「あはは…よくお姉ちゃんにも言われるよ。普段は我慢してるんだけど奢りて聞いてつい…あ、すいませんパフェ1つください」

 

「俺は好き嫌いなく沢山食べる女子は好きだぞ!」

 

一方通行が呆れた顔をするとアリサは照れながらも食後のデザートを食べる、ご飯とデザートは別腹とはよくいったものである

 

「そういえば貴女てあのエンデュミオンのイメージソングを歌う歌姫なんですてねぇ」

 

「うん。と言っても実力じゃなくてエンデュミオンのオーナーさんの推薦なんだけどね」

 

「オーナーの推薦?」

 

「オーナーさん…レディリーさんて言う人なんだけど、昔から私に親身にしてくれてたんだ。それでエンデュミオンが完成した時には歌を歌って欲しいて言ってきて…最近になってそれが実現したんだ」

 

「レディリーて…あの『89の奇跡』で有名なオービット・ポータル社の社長兼統括理事会のレディリー=タングルロード?凄い大物じゃない」

 

美琴はアリサがあの子供社長と影で言われるレディリーと知り合いであることに驚く

 

「レディリーさんと初めて出会ったのは孤児院に預けられてから3日後ぐらいだったかな?レディリーさんは記憶喪失の私を気にかけて会いに来てくれたんだよ」

 

「?記憶喪失?」

 

「うん、実は私三年前からの記憶が一切なくてね、何でもお姉ちゃんが言うにはいつの間にかお姉ちゃんの近くで倒れてたんだって…それに私がオリオン号に乗った記載もないらしくて…」

 

「……辛くなかったのか?」

 

「まあ…辛いと言うよりは…混乱したよ、自分は一体誰なんだって…でも孤児院の皆は私に優しく接してくれて…鳴護アリサていう名前もつけてくれた、それにレディリーさんもこんな私の為にエンデュミオンの歌姫ていう大舞台に立たせてくれたし、私には血は繋がってないけどお姉ちゃんとお父さんもいる、それにファンの皆もいるしね、だから私は幸せだから辛くなんかないよ」

 

自分は記憶喪失だとアリサが告げると上条が記憶をなくしてしまって辛くはないかと尋ねる、だが彼女は笑って家族や施設の皆、レディリーやインデックス達の様なファンの皆がいるから辛くないと笑顔を見せる。それを見て削板は泣いた

 

「うおおおおおお!なんていい話なんだ!凄く感動した!」

 

「泣くときも五月蝿えんだなお前は…」

 

暑苦しく大泣きする削板に麦野が呆れる…その直後、いきなり店内の電気が消え店内が暗くなった。停電かと店内の人々が騒ぎ始め、窓の外を見ると周囲一帯が闇の世界となっていた、外には一切の光がなく闇しか見えない

 

「停電でしょうか?」

 

「マジかよ…そうだミコっちゃん、火花バチバチさせてよ。懐中電灯代わりにするから」

 

「感電させるわよ」

 

「しゃーねえにゃーん、私の原子崩しを光代わりに…」

 

帆風が停電かと首を傾げる、垣根は美琴の能力が起こす火花を懐中電灯の代わりにしようとにこやかに言うと美琴はざけんなと睨む。麦野が仕方ないと原子崩しを携え灯り代わりにしようとしたその矢先パリンとガラスが割れる音がした

 

「!?何だ今の音は!?」

 

上条が席から立ち上がって音がした方を振り向く、窓のガラスが粉々に砕けガラスの破片が周囲に飛び散っていた…幸い誰もその近くにいなかった為被害者はゼロ…だがその窓ガラスの近くにあったテーブルの上に一人の少女が立ち尽くしていた

 

「見つけたわ「奇跡の子」。それに超能力者」

 

彼女はアリサを一瞥した後、虚空へと手を伸ばす…するとそこから黒い塊が生まれそれが鎌の形となる、突然現れた少女に店内の人が出口へと向けて逃げる中垣根達は彼女を見据えたまま動かない

 

「テメェ……魔術師だなァ」

 

「ええ、私は蛇神宛那(へびかみアテナ)。上里様の命により鳴護アリサを確保しに来た、そしてお前達の首を取りに来た上里勢力からの尖兵でもあるわ」

 

「上里…だと?」

 

垣根達は立ち上がりながら宛那を見据える、彼女は淡々とした声でアリサを確保し垣根達を殺すと宣告する。そして上里という名前に垣根が反応する

 

「上里て…俺の対になる右手を持っていう奴の事か?」

 

「は…笑わせるわね、上里様と貴方みたいな雑魚が同列?侮辱以外の何者でもないわ」

 

「……先輩が雑魚ですて?」

 

「……笑えない冗談力ねぇ」

 

宛那は上条の事を雑魚と称し美琴と食蜂はその一言に苛立つ、自分の彼氏を馬鹿にされた怒りを何とか抑えながら宛那を睨むが宛那は何の反応も示さない

 

「さて、殺し合いを始めましょう。私が欲するのは鳴護アリサの生け捕り、それに貴方達八人の首。貴方達は私に勝てるのかしらね?」

 

「舐めてやがるな、一介の魔術師如きが超能力者に勝てるとでも?」

 

「私をそこらの魔術師と同じにしないでくれる?私の実力は去鳴(サロメ)や獲冴と同格の力を持つ魔術師なのよ?」

 

七人の超能力者を前にしても彼女は余裕の笑みを崩さない、実際彼女は強いのだ、魔術師としての実力は高くこの停電も全て彼女が起こしたもの。その実力は神裂の様な聖人と互角に戦える程…だが彼女は何を思ったのか手にしていた闇の鎌を消した。そんな彼女の行為に超能力者達は目を丸くする

 

「なンのつもりだ?降参のつもりか?」

 

「まさか、ただ私よりも貴方達を倒すに相応しいお方が来たから私の出る幕はないと武器をしまっただけよ」

 

一方通行は降参かと呟くが宛那は自分よりも強い人物が来たと微笑む…そしてカツン、と上条達以外誰もいなくなった店内に靴音が響いた。垣根達は首をその音が聞こえた出口に向ける…そこには上条と同じくらいの歳の茶髪の少年が立っていた

 

「始めまして超能力者(レベル5)、魔神と共にこの世界に仇なす存在にしてぼくらの敵対者」

 

その声は優しそうな声色、その言動の節々に退廃的な雰囲気が漂っている…そんな彼の雰囲気に全員が唾を飲み込む

 

「………お前は何者だ」

 

上条はそう口に出した、それは自分の対になる者に対しての問いかけ、その問いに彼…上里翔流(かみさとかける)はこう答えたのだ

 

「どこにでもいる平凡な高校生さ」

 

その一言と共に彼は肩を鳴らそうとするも音は鳴らなかった…彼は気にせず自分の右手(・・)……上条が持つ右手(イマジンブレイカー)と対にして対極であるその右手(ワールドリジェクター)を垣根達に向ける

 

「さあ開戦の狼煙をあげようか、きみ達のこの世界からの消失という狼煙を」

 

 

 

 

 

 




宛那と戦うと思いました?残念上里君でした。個人的に上里君は好きなんですよね…でも世間では浜面と同じくらい嫌われてて悲しい…上里君の人気上がれー。そして理想送りの能力はチート、ていとくんの未元物質でも縦ロールちゃんの新能力でも願望が重複してるから理想送りには勝てない…魔神を新天地に送った一撃ですからね、現状ではていとくん達は上里君に勝てません

宛那の術式は今はまだ秘密です、ただ名前の通りアテナに関する術式と言っておきましょう。因みにアテナのCVは石原夏織さん、容姿は某神殺しのアテナ様(でも声はアニメオリジナルキャラのアテナの母親 メティス)、そして上里君のCVはリゼロのスバル君の声の人 小林裕介さんですね

次回もお楽しみに!



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今夜はスパークリング!ゴーゴー!

上里君とのガチ戦闘になると思った?そんなことするわけないでしょ、まだエンデュミオンですよ?勝てるわけないでしょ。上里君との決着は随分先です

今日温泉に行ったら大柄なお兄さんがガムボールをサイクリングに見立てたゲームで大当たりというゴールにガムボールをゴールインさせてガム3個ゲットするシーンを目撃しました。その人二千円以上使い果たして漸く頂点(ゴール)にガムを入れたんですよ…それを見てた観客の皆さんも大盛り上がりで隣にいたお婆さんなんかチップとして千円あげてたぐらい…なお自分の婆ちゃんは柿ピーを何個もあげて母はちんすこうをプレゼント、自分はみぞれ玉をプレゼントしました。人間こんな事でも大盛り上がりできるんだなーと感動しました

話が脱線してしまい申し訳ありません。さて今回はギャグ多め、恋愛描写ありです。お楽しみに。なおタイトルは母が決めました。



あの右手は危険だ、美琴はそう感じた。美琴はかつて自分の能力を消した上条に喧嘩を売りまくって一方的に上条を攻撃していた事がある。だから彼女は上里の持つ理想送りが上条の幻想殺しと似たものだと本能的に理解できたのかも知れない。あの右手は上条と同じ…いやそれ以上の得体の知れない何かだと彼女は直感で理解した。故に彼女の取った行動はシンプルだった

 

「喰らえ!」

 

彼女はコインを指で弾き超電磁砲を1メートルも離れていないであろう上里へ向けて放つ、超電磁砲の余波だけで店内のテーブルや椅子、窓ガラスが粉々に砕けその衝撃のあまり付近にいた上条達の体勢が崩れる…そんな強力な一撃を前に上里が取った行動は右手を突き出す、ただそれだけだった

 

「新たな天地を望むか?」

 

上里がそう呟くと同時に超電磁砲が上里の右手…理想送りに触れる、直後上里を死に至らす一撃は右手に吸い込まれる様に消えた

 

「………え?」

 

美琴は思わず呆けた声を出してしまう、それは自分の一撃が防がれたことではなくその右手の能力だ、上条の幻想殺しとは違う能力の無効化…否無効化というのは正しくないだろう。まるで超電磁砲をこの世界とは違う別の場所へ送ったかの様な光景に垣根を除いた全員が唖然とする

 

「『新天地』…と言ったら理解出来るか?」

 

「新天地…世界の容量の限界を100%と定義すると、 人の意識の中で構築された世界は100%の内のほんの20%~30%だけしか使われていない。新天地はその空き容量で構成された世界…そこにミコっちゃんの超電磁砲を送り込んだんだな」

 

「……知っていたか」

 

理想送りは幻想殺しの様に異能を打ち消すのではなく新天地と呼ばれる場所へ送る能力だ。そして幻想殺しとの大きな相違点は幻想殺しが異能…超能力や魔術しか打ち消せないのに対し理想送りは条件さえ揃えば魔術や超能力は勿論コンクリートだろうが石鹸だろうが位相、そして人間だろうが消し飛ばし神すらも凌駕する究極の一撃なのだ

 

「さあどうする超能力者?きみ達の攻撃はぼくには一切届かないぞ」

 

彼のその言葉は虚勢でも自慢でもない。それが事実なのだと淡々と告げているだけだ。麦野は原子崩しを上里へと放つ、上里の右手で消し飛ばされる、一方通行のベクトルで強化した暴風が上里を襲う、上里の右手で消し飛ばされる、上条が召喚した魔女狩りの王が上里を焼き尽くそうとその巨腕を振り下ろす、上里の右手で消し飛ばされる

 

「何度やっても結果は変わらないぞ」

 

上里はそう呟きながら一歩ずつ上条達へと歩み寄る、彼には垣根達のあらゆる能力も通じない。帆風の天使崇拝や垣根の覚醒した未元物質、竜王の顎すら上里の理想送りには敵わないだろう…垣根はそう考えながら携帯を取り出し上里に見えない様にポチポチとボタンを押し誰かへメールを送る

 

「皆……」

 

「俺の後ろにいろ、絶対にお前を守ってやる」

 

アリサはどういう状況なのか分からずに怯えていたが削板がアリサを自分の背後に隠す、削板は上里にすごいパーンチを放つがやはり理想送りで消し飛ばされてしまう…上里はゆっくりと右手を垣根達に向けながら近づく。あの右手に触れたら最後垣根達はこの世界から永久に追放される…その直後垣根達の姿は突如消えた

 

「……何?」

 

上里は何が起こったのかと周囲を見渡す、垣根達は何処に消えたのかと上里が首を動かす中宛那が口を開いた

 

「……今のは魔術ですね、恐らく学園都市の魔術師が転移魔術を使ったのだと思われます」

 

「だが幻想殺しは転移魔術の効果も打ち消す筈だ、なのに何故転移出来た?」

 

「恐らく幻想殺しに干渉するものではなく、この世界に干渉するものかと思われます」

 

「……成る程、魔神の力か」

 

上里は魔神が何かしらの行動を起こしたのだと理解する、兎に角標的が消えたのならここにいる意味はないと思ったのか上里は踵を返しファミレスから立ち去ろうとする

 

「追わなくていいんですか?」

 

「別に構わないさ、鳴護アリサを狙うならエンデュミオンでのライブの時に拐えばいい。垣根帝督達もその場に現れる筈だ、その時狙えばいいだけだ」

 

上里は宛那にそう言うとファミレスから立ち去り光一つない街の中へと消えていった

 

 

 

「……ここは?」

 

上条が周囲を見渡しながらそう呟いた、彼らがいたのは何かしらの建物の中だ

 

「ここは第十二学区にある私達の拠点だよ」

 

奥から声が聞こえ垣根達が声が聞こえた方を振り向く…そこに立っていたのはオティヌスだった

 

「よお、助かったぜオティちゃん」

 

「いきなりメールが来たと思ったら骨船でここまで移動させて欲しいと書いてあって驚いたぞ全く」

 

「そうか…オティヌスさんの骨船でわたくし達を移動させたんですね」

 

帆風は上里から逃げる為に垣根が携帯でオティヌスにメールを送っていたのだと気づく、確かに骨船なら上条の幻想殺しの影響を受けず上条ごと上里から逃げる事が出来たのだ

 

「第十二学区ていうと…神学系の学校を集めた所だよな」

 

「ああ、と言っても第十二学区は裏では魔術師が集まる溜まり場の様なものだ」

 

オティヌスが言うには第十二学区は裏ではオティヌスの様な魔術師が集まる場所らしい、ここで蚊帳の外だったアリサが口を開く

 

「あの……助かったの?」

 

「ん?……ああ、レディリーのお気に入りの娘か。安心しろ、恐らくだが理想送りからは無事に逃げ切れたと思うぞ」

 

アリサは先程の状況を理解しておらず今もどう言う状況なのか理解できない、だがあの恐ろしい力を持つ少年から逃げ切れたのかとオティヌスに尋ねオティヌスは頷いた

 

「そっか…なら家に帰ってもいいかな?」

 

「それはやめておいた方がいい、あいつらはお前を狙っていた様だ。家に戻ればあいつらが襲ってくるかもしれない…今日の所は家に帰らない方がいいな」

 

「いやでも…鳴護さんの家族も心配してるんじゃない?それに家族も襲われるかもしれないし…」

 

「それは安心しろ、今お前の家にブリュンヒルデとトールが向かっている。お前の家族に何かあれば二人がお前の家族を守る筈だ」

 

オティヌスは今日の所は家に帰らない方がいいと教え既に自分の部下がアリサの家族を護衛に向かわせたと呟く

 

「え…じゃあ今日は何処で過ごせば……」

 

アリサがオティヌスに何か言おうとした時垣根が口を開く

 

「じゃあ軍覇の家に泊めて貰えばいいじゃん」

 

「「………え?」」

 

垣根の一言にアリサと削板が固まった、帆風達も何を言ってるんだこいつという目で垣根を見る

 

「……確かに盟友の言う通りだな、超能力者の家に泊まらせて護衛にするか…いい考えだな」

 

「な、ちょ…おい!帝督流石にそれは…!」

 

「えっとつまり…男の子の家に…」

 

オティヌスが納得したと頷くと削板が顔を赤くして無理無理と垣根に訴える、アリサも何か言おうとするが垣根はにこりと笑う

 

「てな訳でオティちゃん鳴護っちと軍覇を軍覇の家まで送ってやってくれ」

 

「了解だ」

 

二人が有無を言う前にオティヌスが骨船で二人を削板の家までて輸送する、少々強引なやり方に唖然とする上条達だが帆風はジト目で垣根とオティヌスを見つめる

 

「……お二人共、もしかしてわざと削板さんの家に鳴護さんを泊まらせようとしてましたの?」

 

「あ、バレた?」

 

「ほう、察しがいいな。実はメールでこんな事が書かれていてな」

 

帆風の推測に垣根が笑って正解だと返す、そしてオティヌスが携帯を帆風に見せつける

 

『オティちゃん、理想送りが攻めて来た骨船で助けてくれ。そしてそれを利用して軍覇の家に鳴護っちを泊まらせたんだけど協力してくれる?』

 

と書かれていた、それを見た帆風は溜息を吐く

 

「……垣根さんはあの非常時でもブレないんですね」

 

「言っただろ、俺には常識は通用しねえて」

 

「おい盟友、頼まれた通りにやったんだ。報酬は払えよ」

 

「分かってるて、後日じゃがバター30個送ってやる」

 

「交渉成立だな」

 

垣根がじゃがバターを後日送ると言う、それを聞いたオティヌスは微笑むと垣根と手を握る

 

「さて、ピンセットで軍覇の家にある滞空回線に接続して映像を見るとするか…ふふふ、どんなカップリング映像が見れるか楽しみだ」

 

「……削板さんドンマイですわ」

 

 

 

小萌先生のアパートにてインデックス達は焼肉を食べていた

 

「焼肉美味しいねこもえ」

 

「そうですねー」

 

インデックスがムシャムシャと大盛りご飯に焼肉を載せて箸を進ませる、小萌も美味しそうに焼肉を貪る。ステイルは魔女狩りの王で焼肉を焼き神裂がご飯をよそる

 

「で、ステイルちゃんに聞きたい事があるのですよ」

 

「何ですか小萌さん?」

 

「あそこでてるてる坊主みたいに吊るされてる女の子達(・・・・)は誰なのですー?」

 

小萌が箸を自分達の部屋に吊し上げられているメアリエ、ジェーン、マリーベートに向ける…彼女らはステイルに敗れ小萌の部屋に吊るされているのだ

 

「てかさ、この子達は馬鹿なのかな?聖人であるかおりと擬似魔神である私に勝てるとでも思ってたのかな?」

 

「よしなさいインデックス、あの三人はきっと頭が悪いだけです。だから私達に勝てないのに挑んで来たんです」

 

「まあ、三人がかりでも僕を倒せない時点で何故インデックス達に勝てるのかと思ったのか疑問だね」

 

と、散々な言われようをされるメアリエ達、メアリエ達はジィーとインデックス達が食べている焼肉を見つめていた

 

「………食べたいのか?」

 

「!…べ、別に食べたいと思ってませんよ」

 

「そうか、なら全部食べてしまうか」

 

「「「あぁーー!?」」」

 

ステイルが焼肉を彼女達の目の前にチラつかせる、彼女達は涎を垂らしながらも我慢するがステイルが彼女達の前で焼肉を食べ彼女達は悲鳴をあげる

 

「ほら皆もこの馬鹿弟子の前で食べよう、それが何よりの罰になる」

 

「分かったんだよ…あ、この団扇で匂いを嗅がせたらもっと食べたくなるかも」

 

「いいですね、そしてなるべく彼女達の顔の近くで食べましょう」

 

「「「この外道がぁぁぁぁぁ!!!」」」

 

ステイル達はそう言いながらムシャムシャと彼女達のすぐ近くで焼肉を貪る、メアリエ達を包むかの様に美味そうな肉の匂いが漂う…そして幸せそうな顔で焼肉を食べるステイル達にメアリエ達が涎をダラダラと垂らす

 

「ほら、この肉が食べたければイギリス清教が今どうなっているか教えろ」

 

「こ、この…!私達はこんな拷問には屈しませんよ!」

 

「そうです!私達には魔女の誇りがあるんです!ししょーなんかに負けない!」

 

「焼肉なんかに絶対に負けないですの!」

 

メアリエ、ジェーン、マリーベートは焼肉を使って誘惑をしてくるステイルを睨みつける、そして……

 

 

「ほう?現在イギリス清教は理想送りという右手を持つ少年 上里翔流を筆頭に学園都市を滅ぼそうとしているのか」

 

「しかも鳴護さんを捕まえようとしてるなんて…ファンとして見過ごせませんね」

 

「早速ていとく達に明日知らせないとね」

 

ステイル達は馬鹿弟子達から聞き出した情報を聞いて何やら話し合いをしていた、メアリエ達は「焼肉には勝てなかったよ…」とムシャムシャと体育館座りで焼肉を食べていた

 

「……焼肉美味しいですね」

 

「……私達イギリス清教に帰れないな」

 

「……これも全部ししょーが悪いんですの」

 

「まあまあ、折角焼肉を食べているのですから元気出すのです」

 

ズーン、と擬音が出ていそうなぐらいの暗いオーラを出すメアリエ達に小萌が焼肉を彼女達の皿に置いてあげる、その優しさにメアリエ達は涙ぐむ

 

「で、何でお前達がここに来たんだ?はっきり言ってお前達の様な雑魚が僕らを倒せるとは思えないんだが」

 

「酷い!酷いです師匠!私達がまるで雑魚みたいないい様です!」

 

「いや実際雑魚だったよね?ステイルの炎剣を爆発させた一撃を喰らって目を回して気絶してたよね」

 

「うわぁぁぁん!本当の事言わないでくださいよ!私達だって強いんだもん!ししょーが強すぎるだけだもん!」

 

「幼児退化してるぞジェーン!」

 

ステイルが何故こんなクソ雑魚(馬鹿弟子達)が自分達を殺しにと純粋に疑問に思う。それを聞いて酷いと叫ぶメアリエと幼児退化し始めたジェーン、それを宥めるマリーベート…もはやカオスである、前回の敵キャラの風貌は何処へ行ったのか

 

「は、君達はルーンもろくに使いこなせないんだろ?ならルーン魔術の天才である僕に勝てる筈がないだろう」

 

「「「黙れ、教え方下手な癖に何偉そうにしてんだよ。このロリコン」」」

 

「よし、今から少し出かけてくるよ。何心配いらないさ…少しこのゴミ達を川に捨ててくるだけさ」

 

「「「ごめんなさい、舐めた口聞いてすみませんでした」」」

 

メアリエ達が強気な発言をステイルに言うがステイルはこいつら沈めてくると真顔で言うと彼女達はジャパニーズ土下座をした

 

「で、この子達はどうするの?学園都市に引き渡すの?」

 

「そうだな、明日土御門の奴に引き渡すとしよう」

 

「「「待ってよ師匠/ししょー、何でも言うこと聞くからそれだけはご勘弁を!」」」

 

「僕は君達に何もして欲しくない、だから土御門に引き渡す」

 

「「「そんな!どうせその土御門て人が私達に乱暴するんでしょ!ウ=ス異本みたいに!」」」

 

「安心しろ、あいつは義妹に夢中なシスコン軍曹だ。手を出される心配はない」

 

メアリエ達が引き渡すのらめぇ!と叫ぶがステイルは真顔で焼肉を食べる、この師匠冷たいや

 

「あ〜!そんな事言っていいんですか師匠!じゃあ言っちゃいますよ!師匠の秘密を!」

 

「……僕の秘密だと?」

 

「ええ!聞いてくださいインデックスさん!師匠は私達が着替えをしてる時に私達の部屋に入って来て私達の裸を見たんで……」

 

「うおおおおい!!それはいちゃダメだろ!僕のキャラがおかしくなる!」

 

メアリエが顔を赤くしながらステイル(師匠)に裸を見られたと叫ぶ、ジェーンとマリーベートも顔を赤く染めながら明後日の方向を向く。ステイルがそれは言うなと叫ぶ

 

「………見損ないましたよステイル」

 

「今まで見た事ない冷たい目!?」

 

「だ、大丈夫ですよステイル君。貴方くらいのお年頃は思春期真っ盛りな時期ですから…でも覗きはダメだと思うのです」

 

「違います!僕は覗きなんてしてない!あれは事故なんだ!」

 

神裂からは冷めた目で見られ小萌からは生暖かい目を向けられ誤解だと叫ぶステイル、そして彼は気づいた…自分の背後から凄まじい殺気を感じたのだ

 

「い、インデックス?」

 

「…………」

 

彼の目には今までにない程の怒りのオーラを纏ったインデックスが映っていた、そんな彼女を見てメアリエ達はガクガクと震えお互いの身体に抱きつき合う

 

「……ねえステイル」

 

「な、何でしょうかインデックスさん?」

 

インデックスはニコッと笑顔をステイルに見せる、だが目は笑っていない…ガクガクと生まれたとの子鹿の様に震えるステイルに彼女は笑ってこう告げた

 

「お前死刑な」

 

「」

 

直後第七学区の街中に咀嚼音と男の悲鳴が響いた、それは停電が起こる2、3分前の出来事だった

 

 

 

「摩訶般若波羅蜜多心経 観自在菩薩・行深般若波羅蜜多時、照見五蘊皆空、度一切苦厄。舎利子。色不異空、空不異色、色即是空、空即是色。受・想・行・識・亦復如是。舎利子。是諸法空相、不生不滅、不垢不浄、不増不減。是故空中、無色、無受・想・行・識、無眼・耳・鼻・舌・身・意、無色・声・香・味・触・法。無眼界、乃至、無意識界。無無明・亦無無明尽、乃至、無老死、亦無老死尽。無苦・集・滅・道。無智、亦無得……」

 

削板は般若心経を唱えながら座禅を組んでいた、全ては心を無にする為。普段の彼なら腕立てを一万回程して汗ダクダクになっている筈…なのに彼は腕立てをしない…何故なら自分に家に自分以外の人がいるからだ

 

「あの…軍覇くん」

 

「!な、なんだ!?」

 

「お風呂上がったよ」

 

「そ、そうかじゃあ次は俺が入るな!」

 

声をかけられた削板はビクッと体を震わせて振り返る…そこにいたのは削板の家のお風呂に入っていたアリサだった、風呂上がりな為ホカホカと体から湯気が出ていた…彼女の鴇色の髪は濡れておりそれにエロスを感じた削板はお風呂に行くと叫んで音速の二倍の速さでお風呂へと向かった

 

(うおお!落ち着け削板軍覇!変な行動をとれば嫌われるぞ!冷静になれ!冷静になるんだ!)

 

削板は音速の二倍の速さで服を脱ぎ服を洗濯籠に入れシャワーで頭を洗う。そしてお風呂にザバーンと浸かる

 

「帝督の奴め…いきなり女の子を泊めるなんて順序が速過ぎるだろ…まだ付き合うどころか告白すらしてないのに」

 

削板は風呂に入りながらどうアリサに接すればいいのか悩む、そしてふと気づくこの風呂は先程アリサが入っていた…そう削板が考えた瞬間鼻から赤い液体が溢れそうになった

 

「うおおお!落ち着け俺!素数を数えるんだ!いくぞ!1!2!3!4!5!6!7!8!9!10!」

 

削板は鼻を押さえながら素数を数え始める、もう彼の顔は逆上せた様に真っ赤だった。その頃アリサは削板の家のソファーに座りながら携帯でメールを打つ

 

「ごめんねお姉ちゃん、今日は友達の家に泊まるから帰れないんだ……これでいいよね」

 

彼女はメールを送信した後ソファーに寝っ転がる、そして周囲を見渡す…ダンベルやバーベル、トレーニングマット、バランスボール、腹筋ワンダーコア&スマートワンダーコア、ランニングマシンなのが置いてあり床には飲みかけのプロテインが置いてある

 

「……男の子の家てこんな風なのかな?」

 

アリサがそう呟く、彼女は男友達がいない。故に男の家に来た事などない。精々父親の部屋に入った事ぐらいだ…その父親の部屋は飛行機の模型やら世界地図、アダルトな雑誌しかなかった

 

「それにしてもあの二人て何者だったんだろう?」

 

彼女はふと自分を狙って現れた蛇神宛那という少女と上里翔流という少年は何者かと考える、学園都市の人間とは考えにくい。それに上里の能力は超能力とは違う気がした…でなければ超能力者の一撃を防げるわけがない

 

「……「奇跡の子」……か」

 

アリサは二人が言っていた「奇跡の子」という言葉を気にかけていた、もしかしてあの二人はディダロス(お義父さん)シャットアウラ(お姉ちゃん)しか知らない自分の不思議な力(・・・・・)を知っているのかと考える

 

「………」

 

彼女は寝転がったまま天井を見上げ今日起こった出来事を思い返す、その時ふと削板が言った言葉を思い出した

 

 

『俺の後ろにいろ、絶対にお前を守ってやる』

 

 

「………!!」

 

彼女はその言葉を思い出した途端ボンと顔を赤くした、そして急に立ち上がってその考えを消す為にブンブンと頭を振るう

 

「ふぅ…お風呂はやっぱり気持ちいいな……て、何をしているんだ?」

 

「ひゃあああ!?な、なななんでもないよ!?」

 

削板がお風呂から上がり部屋に入ってくる、ビクッとアリサが体を震わせ何でもないと首を振る。それを見て削板は首を捻った

 

(あうう……よく考えれば今この家には削板くんと私しかいない…つまり男女二人だけなんだよね…うぅ、意識したら恥ずかしくなって来た)

 

(くっ…やっぱり恥ずかしいな…くそ帝督め、明日あったらすごパ食らわせてやる)

 

お互いどう接すればいいのか分からない二人は顔を赤くしながら思考する…そんな様子を垣根はピンセット越しに見ていた

 

「お〜イイね、最高だねぇ!当麻達とは違う初心っぽい反応がたまらねえ!ヤベェよ、俺は重度の上琴病のレベル5だと思ってたけど削アリに目覚めそうだ…」

 

「じゃがバター旨し」

 

「紅茶を持って来たぞオティヌス、垣根」

 

((なにこのカオス))

 

アリサと削板の初心の反応を見て興奮する垣根にじゃがバターを貪るオティヌス、そんな二人に紅茶を渡す加群…偶々現場に居合わせたウートガルザロキとシギンは混沌だと思ったそうな

 

 

 

「よっす軍覇!いい夢は見れたか?」

 

「すごいパーンチ!」

 

翌朝、垣根と帆風達は削板の家を訪れチャイムを鳴らし削板とアリサが出てくるのを待つ、そして扉が開き垣根がいい夢は見れたかと尋ねる…その瞬間削板はすごいパーンチを垣根に放ち垣根は未元物質の翼でそれを防ぐ

 

「いきなり酷いじゃねえか…ていとくん悲しい」

 

「黙れ!昨日はよくも有無を言わさずにアリサを俺の家に預けたな」

 

「まあそんな事より何か進展あった?エロい事した?」

 

「すごいパーンチ!」

 

垣根はいい笑顔でエロい事した?と尋ね削板がすごいパーンチを放つ、そして再びそれをガードする垣根…よく見れば削板の目元にはくまが出来ていた…いきなり好きな女性と同じ家で寝るのが恥ずかしかったからだろう

 

「……おはよう皆」

 

「あ、おはようごさいます鳴護さん……あら?目元にくまが…」

 

アリサも少し遅れて家から出てくる、彼女にもくまが出来ていなかった為アリサもいきなり男子の家に行くのは緊張したのかもしれない…垣根はそれを見て脈アリかと笑う

 

「さあて、鳴護っちの家に鳴護っちを送り届けねえとな」

 

垣根はそう言うと全員でアリサの自宅まで向かう、昨日急な停電が起こった事で暫くパニックになっていたがここは学園都市、時々美琴の漏電で停電になる事は珍しくない。そんな時の為に停電対策はバッチリな為僅か20分で停電から回復した。だが昨日の停電は美琴が起こした訳でも何かしらのトラブルが起こったわけでもなくどうして停電が起こったのか分かっていないらしく学園都市は昨日の停電の話で持ちきりだった

 

「ま…オティちゃんからの報告だと何かしらの術式によって停電が起こったらしいがな」

 

垣根はそう言うと全員がやはり魔術かと納得する、アリサだけは術式…?と頭を傾げていたがあまり気にしていない…暫くたわいのない会話が続き漸くアリサの家に着く

 

「ありがとね送ってくれて」

 

「いや、これくらい当然の事だ!」

 

「それに……昨日は泊めてくれてありがとう」

 

「………おう」

 

(((((あらやだ、何この一昔前のラブコメ的な雰囲気は)))))

 

(お二人共いい雰囲気ですわね)

 

(いいね、この甘ったるい空間…嫌いじゃない)

 

アリサは昨日の事を思い出して顔を赤くしながら削板に礼を言い削板も顔を逸らしながら頷く…それを見た垣根は携帯で二人の写真を撮る

 

「ただいま〜!」

 

「っ!おかえりアリサ!昨日はいきなり友達の家に泊まると聞いて驚いた……ぞ…?」

 

アリサが玄関の扉を開ける、するとドタドタと二階から彼女の義姉であるシャットアウラが降りてくる、彼女は笑って出迎えるがアリサの横に削板がいる事に気付き表情が固まる

 

「あ、この人は昨日泊めてもらった削板くんだよ」

 

「初めましてお姉さん!俺は削板軍覇と申し……」

 

アリサが削板を紹介し削板が挨拶しようとしたその瞬間、シャットアウラの飛び蹴りが削板の顔に炸裂する

 

「私の妹にナニをしたぁぁぁ!」

 

「そげぶ!?」

 

「軍覇!?」

 

「お、お姉ちゃん!?」

 

飛び蹴りを喰らい10メートル程削板が吹き飛ばされた、垣根達はええー!?と驚きの顔をしアリサは何してるの!?と驚きの顔をする。削板は鼻血を流しながらも立ち上がろうとするがその前にシャットアウラが削板の胸倉を掴む

 

「昨日の夜私の妹にナニをした!?純粋無垢なアリサを騙してあんな事やこんな事をしたのか!?許さんぞ貴様ぁぁぁ!!」

 

「な!?ご、誤解だ俺は何も…」

 

「黙れ!変なハチマキと変なTシャツ野郎!アリサに手を出す下郎は悪・即・斬だ!」

 

勘違いをしたシャットアウラは削板の顔面に拳を何度もぶつける、このお姉ちゃん怖いや。そして何事かとディダロスも現れる

 

「何をしているシャットアウラ!?」

 

「聞いてくれ父さん!こいつが昨日アリサが言っていた友達だ!アリサはこいつの家で夜を過ごしたらしい!」

 

「………それは本当か?」

 

ディダロスから凄まじい殺気が放たれる、それを肌で感じて垣根達はビクッとなる…そして一歩一歩削板に歩み寄るディダロス、そして彼は鬼の様な形相で削板を見下ろしながら告げた

 

「私の娘に手を出す奴は……ターミネートする!」

 

ーーーデデンデンデデン!ーーー

 

「ター○ネーター!?」

 

某近未来からやって来た殺人アンドロイドの曲がディダロスの背後から流れ彼の背後に二体の異形な生物が出現する

 

「行けミーモス、ハルドメルク。娘に手を出す下郎をターミネートしろ」

 

「いやT-1000じゃないのかよ!」

 

「てか古龍と金属生命体を手懐けてるこのオッさン凄え!」

 

「ちょ…!一旦落ち着いてお父さん!お姉ちゃん!私の話を聞いてよ!」

 

金属生命体と液体金属を操る龍が削板に襲いかかる、上条は某液体金属で出来たアンドロイドではないのかと叫び一方通行はこのオッさんできる!と叫ぶ。アリサの叫びが周囲に響いた

 

 

 

「「すみませんでした」」

 

ディダロスとシャットアウラは土下座を削板をした、あの後アリサが昨日起こった事を説明し二人は削板は自分の娘/妹を守ってくれていた削板に申し訳ない事をしたと土下座しているのだ

 

「いや俺も女の子を入れたのは流石にやり過ぎだと思っていたので大丈夫だ(全部垣根が悪いんだけどな)」

 

「もうお姉ちゃんとお父さんも人の話くらいちゃんと聞いてよ!(まあ帝督くんが全ての元凶なんだけどね)」

 

削板とアリサは土下座している二人を宥める、二人は土下座を解いて垣根達を見る

 

「いや本当に申し訳ない事をした…娘を助けて貰ったというのに」

 

「私の妹を助けてくれて感謝する」

 

「いや人として当然の事をしたまでです、ねえ皆さん」

 

帆風はにっこり笑って垣根達に同意を求める

 

「しかし変な奴らに襲われたか…これでは明日のエンデュミオンの公開ライブは延期になるかもしれないぞ」

 

「確かに…一応レディリーさんに連絡を入れて警備を強化しておく様言っておくか?」

 

「そうだな、娘の晴れ舞台を変な奴らの所為で邪魔させてたまるか」

 

ディダロスが明日のライブは無事に行えるのかと疑問に思い、シャットアウラがレディリーにこの事を伝えようとディダロスに言うとディダロスは頷く

 

「そういや明日がエンデュミオンのオープン記念だったな…レディリーも張り切ってたからな」

 

垣根は自分の同僚で魔術師でもあるレディリーが明日を楽しみにしていた事を思い出す、アリサを溺愛しているレディリーの事だ、警備を厳重にしてでもアリサの晴れ舞台を中止にする事はないだろう

 

「で、削板君だったね?」

 

「はい!削板軍覇です!」

 

「……本当に娘に変な事はしていないだろうね?」

 

「は、はい!天地天命に誓い何もしていません」

 

「……それならいいんだ、まあ仮に変な事をしていたら……」

 

削板に本当に手を出していないんだなと睨むディダロス、もし嘘をついたら…とディダロスの脅しと共に彼の背後に金属生命体と龍が現れる

 

「もうお父さんたら!軍覇くんはそんな事しないよ!」

 

「まだ会って一日の男の何が分かる、男というのは心の奥底に獣が住み着いているんだよ…そうあの頃の私の様に」

 

アリサは削板はそんな事をしないと叫ぶがディダロスは真剣な顔で男には獣が住んでいるのさと呟く

 

「そうだぜ鳴護っち、男には二種類いる。スケベがむっつりスケベかに分かれてるんだ。因みに俺と当麻はスケベでアー君や軍覇がむっつりスケベだ」

 

「よくこのタイミングでバラせるなお前…てか俺はスケベじゃねえ!美琴と操祈限定のスケベだ!そこんとこ間違えんじゃねえ!」

 

「俺もむっつりスケベじゃねェぞていとくン!」

 

垣根はこの世の男はスケベかむっつりスケベだと言うと上条は自分は美琴と食蜂限定のスケベだと力強く叫び美琴と食蜂は顔を赤くし他のメンバーは軽く引いた

 

「聞いてくださいお父さん!」

 

「貴様にお義父さんなど言われたくないわ!」

 

「いやそう言う意味じゃなくて…俺はアリサには手を出さないので心配する必要はない…」

 

「何だと!貴様私の妹には魅力がないと言いたいのか!?」

 

「えぇ……」

 

削板がお父さんと呼べばディダロスに怒られ、手を出さないといえばシャットアウラに怒られる…削板は何を言えばいいのかと悩む、その後二人はアリサに「お父さんとお姉ちゃんの馬鹿!大嫌い!」と言われ二人は血反吐を吐いて倒れ冥土帰しの病院に搬送された

 

 

 

ここは第二十三学区にある制空権保全管制センター、ここに上里と宛那はセンターの中を歩いていた…廊下には時折血を流して倒れる警備員らしき男達が見える…上里達がやったのではなく上里の仲間達が倒したのだろう

 

「やあ絵恋、準備はいいか」

 

「ええどすえ、学園都市の無人兵器 『六枚羽』と『10本脚』の制御は完了どす」

 

センターの中にある広い空間に絵恋と獲冴を含む少女達が集まっていた、彼女達の近くにはHsAFH-11…通称『六枚羽』と呼ばれる無人攻撃ヘリやHsWAV-15…通称『10本脚』と呼ばれる装輪装甲車が置かれていた

 

「後はトライデントの連中と合流し明日エンデュミオンで開かれる鳴護アリサの公開ライブを襲うだけだな」

 

「ええ、トライデントの兵力は約2万人…それだけの人数があれば警備員(アンチスキル)を抑える事など容易でしょう…問題は超能力者や学園都市の魔術師ですが…」

 

「問題ない、獲冴や宛那達に超能力者達は任せておく…「奇跡の子」はぼくが確保しに行くよ」

 

彼等は制空権保全管制センターに置かれた六枚羽や10本脚と言った兵器を奪い取り明日のエンデュミオンのライブでアリサを攫うつもりなのだ…しかもトライデントと合流して更に戦力を増加する気だ。上里は宛那と会話を終わらせると彼は六枚羽を見据えながら口を開いた

 

「さあ作戦を始めようか、この学園都市を破壊し尽くすぞ」

 

 

 

 

 

 

 




削板×アリサもいいものです、なおオティちゃんはじゃがバターをあげれば大抵の言うことは聞いてくれます、オティちゃんマジちょろイン。削板さんはエロいシーンを見たら鼻血とか出しそうですよね

さて上里君が暗躍する中ていとくんはカップリング魂を久しぶりに発揮し色々と台無しに、そしてディダロスさんもシャットアウラさんも大分キャラ崩壊してるな……後エンデュミオン編は5話では終わらない気がします、長くなったらすみません

次回もお楽しみに


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みんなが宇宙(に歌を聴きに)キター!

漸くテストが終わりました…そしてお気に入り数を見たら何故か増えてた……何故に?まさかこれは魔術師の仕業!?おのれ魔術師!もしくはこれもアリサちゃんの奇跡のお陰?ともあれお気に入りしてくれた方々には感謝です…もう40話だしそろそろ章管理した方がいいかな?

さて今回は急展開ですね、何せテスト終わりで急いで書き上げましたから……てかエンデュミオンで上里君が出てきたのはここぐらいなんじゃ…さて今回は削板君の過去(捏造)やレディリーさんがアリサちゃんに会った日を書きました



レディリーはオービット・ポータル社の社長室にて音楽を聴きながら書類を書き上げていた…その曲はアリサが歌っている曲だ。曲名は「グローリア」

 

「……もう三年…早いものね、あの子もすっかり大きくなって…明日にはエンデュミオンの歌姫としてデビュー…感慨深いものね」

 

レディリーは机に飾ってある写真を見ながらそう呟く、その写真にはシャットアウラ、ディダロス、その二人の真ん中にいるアリサ、照れ臭そうな笑みを浮かべているレディリーの姿が映っていた

 

「……だからこそ、明日のライブは誰にも邪魔させないわ」

 

レディリーはそう確固たる意志を持ってそう呟くと引き出しからフリントロック式の銃を取り出す、上里が昨日アリサを誘拐しようとした事はオティヌスから聞いていた…だが彼女は明日のライブを中止にさせるわけにはいかなかった

 

「アリサは明日を楽しみにしてる、それを邪魔させる訳には行かないのよ…この命をかけてでもライブは成功させてみせるわ。それが私の罪滅ぼし」

 

レディリーはそう呟くと椅子から立ち上がり部屋から出て行く、そして彼女は三年前の出来事を思い出す

 

 

『お姉さんは誰?』

 

『……レディリー、レディリー=ダンクルロードよ』

 

孤児院で彼女とアリサは出会った、レディリーは元々八百年前から生き続ける予言巫女(シビル)だった、十字軍の遠征の際に傷ついた兵士から「アンブロシア」と言う果実を食べた事により不老不死となった。彼女は八百年近く自分がどうやったら死ぬか考えていた。オリオン号の墜落事故は彼女の八百年の生の中の自殺の一つに過ぎなかった、結局オリオン号は魔神によって墜落は防がれてしまったがその時たった一人の少女の願いが奇跡の存在を産み落とした…それが鳴護アリサだ

 

『お姉さんは私は会いに来たの?』

 

『……ええ、貴方に会いに来たの……』

 

首を傾げるアリサにレディリーはそっと歩み寄ると彼女を抱き締めた、突然の出来事に困惑するアリサにレディリーは笑いかける

 

『……貴方は私の罪の具現化、そして私が償わなければいけない子…』

 

『?』

 

『ふふ、貴方には何を言ってるのか分からないでしょうね。それでいいの…貴方は分からないままでいいのよ』

 

アリサはレディリーの言っている事が分からなかった、レディリーはそんなアリサに微笑むと彼女から腕を離す

 

『また会いに来るわ』

 

レディリーはそう一言言うとアリサから踵を返してその場から立ち去る…それをアリサはずっと眺めていた…レディリーが孤児院の門を出てそのまま門の前に止めていた黒い車に乗ろうと歩いていたがふと歩みを止めて孤児院を取り囲む壁にもたれかかっている一人の少年に声をかける

 

『よおレディリー、気分はどうだ?』

 

『……分からないわ、何せ八百年も感情を表に出したことがなかったんだもの…あの子に抱いてる感情が罪悪感なのか単なる興味本位なのかすら自分でも分からない…それくらい自分の感情の事すらわからないのよ私ていう存在は』

 

その少年は中学生時代の垣根だった、彼は軽く笑みを浮かべながらレディリーに話しかけレディリーは複雑な表情を浮かべる

 

『それが人間て奴だ、俺だって自分がどう思ってるのか分からなくなる時があるしな…ま、答えはゆっくり考えればいいんじゃねえの?』

 

『……そうね、不老不死ではなくなってしまったけど…私には考える時間は沢山ある』

 

レディリーはそう呟きながら車に乗り孤児院を後にする、垣根は車を見届けた後護持院を一瞥しその場から去って行く

 

『……アリサ、貴方は私が絶対に守ってみせる。それが私に出来る唯一の罪滅ぼしなのだから』

 

彼女はそう言って遠い目で青空を眺める、たった一人の少女を守る。それが八百年の生の中で見つけた自分のやりたい事だった

 

 

 

インデックスとステイル、神裂は馬鹿弟子(メアリエ達)を連れて上条の学生寮の部屋の隣の部屋…土御門の部屋の前にいた

 

「と言う訳でこいつらを連行して来たぞ」

 

「うにゃー、ご苦労様だにゃーステイル。じゃ後はこいつらをブタ箱に入れるだけだぜい」

 

「「「本当に突き出されたぁぁぁ!」」」

 

ステイルが縄で縛り付けた馬鹿弟子を土御門の部屋の玄関に放り出すと土御門はうにゃーと言いながら自分の部屋の奥に連れて行こうとし必死にメアリエ達は抵抗する

 

「「「助けて師匠/ししょー!」」」

 

「……安心しろ、お前達の事は一日くらいは覚えておいてやる」

 

「「「全然安心できない!」」」

 

「まあ安心しな、殺したりはしないからにゃー。そう言えばトールが「誰でもいいから喧嘩してー!」て叫んでたからこいつらを生贄に捧げるかにゃー」

 

メアリエ達は師匠(ステイル)に助けを求めるがステイルは知るかと言わんばかりに無表情だった、土御門は同僚の戦闘狂いの男の娘(トール)にメアリエ達を戦わせようと笑みを浮かべ嫌だと足をジタバタさせるメアリエ達だがステイル達はそれを気に留めない

 

「「「やめて!どうせ酷い事するんでしょ!同人誌みたいに!同人誌みたいに!」」」

 

「人聞きが悪いにゃー、俺は嘘つきだがそんな最低な事はしないぜい」

 

「どうだか……シスコンな君の事だから義妹に手を出してたりするんじゃないか?」

 

「……………………」

 

「……何故無言なのですか土御門」

 

ステイルが義妹(舞夏)に手を出してるんじゃないかと尋ねると土御門は何故か無言になる、神裂が何故無言なのかと問いかけるが土御門は答えない…その反応を見てインデックス達はある答えにたどり着く

 

「……もしかしてもとはる…まいかとヤったの?」

 

「や、ややややヤった?!何の事かわかんないにゃーだぜい!?そ、そもそもこの天才陰陽師の俺が義妹に手を出すとでも!?」

 

「……その動揺の仕方…もしかして本当に義妹に手を…?うわマジか…」

 

「そんな吐瀉物を見る目で俺を見るな!違うからな!本当にそういうのじゃ…」

 

「喋らないでほしいかも」

 

「おおう!?インデックスの目が絶対零度の吹雪みたいに冷たいんだぜい!」

 

ヤったのかとインデックスが聞くと土御門は必死に弁明するがそれが逆に信憑性を増す…インデックス達はブリザードに等しい冷たい目で土御門を見下す様な目を向け土御門はうにゃー!と叫ぶ

 

「……土御門、私達の半径500,000km以内に近寄らないでもらえますか?」

 

「そんなに!?もう俺日本に住めないぜい!」

 

「……気持ち悪」

 

「……幼女趣味とか…死ねばいいのに」

 

「……義妹に手を出す人間のクズですね」

 

「わぉ!ここには土御門さんの味方はいない様だぜい!助けてカミやん!この幻想をぶち殺してくれ!」

 

救われぬ者に救いの手を(Salvere000)という魔法名を持つ神裂ですら土御門に軽蔑の目を向けられメアリエ達から唾を吐かれる土御門…彼はもう泣きたい気分だった。そんな時彼の懐に入れてあった携帯が鳴り出し彼は涙目で携帯を手に取る

 

「誰だ!今土御門さんは心に傷を負ってボロボロなんだぜい!………え?……それは本当か?分かった、すぐ現場に向かう」

 

土御門は段々と真面目な顔になっていき急いで携帯を閉じると何処かへ向かおうとする、そんな彼にインデックスが声をかける

 

「どうしたのもとはる?」

 

「……第二十三学区にある制空権保全管制センターが上里翔流とその仲間達に襲われそこに配備してあった「六枚羽」と「10本脚」ていう兵器が盗み出されたんだぜい」

 

「「「な!?」」」

 

「今グレムリンのメンバー全員が上里勢力の行方を追ってる、俺も出動命令が出されたから悪いが今日はそいつらを引き取れない。別の日を当たってくれ」

 

制空権保全管制センターが上里とその仲間達に襲撃されたと言うとインデックス達が目を見開いて驚く、土御門はそのまま学生寮のエレベーターを使って一階へ降りていく…それをインデックス達は呆然と眺めていた

 

 

 

「ごめんね軍覇くん、お姉ちゃんとお父さんが迷惑かけて」

 

「いや大丈夫だ、アリサの父さんも姉ちゃんもアリサの事が心配だったんだろ。そう思えばいい家族じゃねえか」

 

シャットアウラとディダロスが病院に搬送された後、削板以外の全員はアリサの家を後にしたが削板はアリサの家に上がり込んでいた。彼は応接間にあるソファーに座りながら申し訳なさそうな顔をして謝るアリサに平気だと笑いかける

 

「…うん、お姉ちゃんとお父さんは凄く優しいんだ…記憶喪失の私を養子にして本当の娘みたいに可愛がってくれて…感謝してもしきれないよ」

 

「……いいよな、家族がいるて」

 

アリサはそう言って少し複雑な顔をして笑う、削板はそれを見て少し頬を緩ますと天井を見上げ昔を懐かしむ様に呟く

 

「……実はさ、俺は家族に捨てられたんだよ」

 

「……え?」

 

「……俺の能力は帝督達みたいな開発した人工的な能力じゃなくて自然と発言した天然の異能でな、村の皆に気味悪がられてたな」

 

突然の昔話にアリサが目を丸くする、削板は気にせずポツポツと自分の過去を話し始める

 

 

その少年は異常だった、他の人にはない不思議な力があった。念じれば周囲がカラフルな煙を出して爆発し身体が鋼の様に硬かった…誰が見てもその少年は普通ではなかった

 

『ねえ知ってる?削板さん所の息子さん…屋根から落ちたのに怪我一つもなかったんですて…』

 

『聞いた聞いた、後田中さん所の章ちゃんが投げた石で怪我してもすぐに血が止まったとか…』

 

『それにあのガキ大将があの子を大勢で虐めてた時いきなりあの子の周囲が爆発して大怪我を負ったらしいわよ…』

 

村の皆は当然削板を化け物を見る目で見ていた、人間とは異物を排除する生き物だ、それは幼き日の上条と似ていた…だが上条と異なる点は削板は自分の力を自分を毛嫌いする者にその力を振るい暴力で物事を支配していた事だろう

 

『俺は何も悪いことしてねえのにあいつらは俺を虐める、なら俺も力ずくでやらせてもらう』

 

それが彼の考えだった、自分に石を投げた子供を殴って骨を折った、陰口を言っていた子供を見えない力でぶん殴った、自分を大勢で虐めて来た子供達を爆発で吹き飛ばした、その復讐に来た大人を馬乗りになって顔面を腫れ物だらけにした…そんな事を繰り返し次第に彼に誰も近寄らなくなった。実の家族でさえ彼をいない者扱いしていた

 

『ねえ貴方…何であの子はおかしいの?○○はまともな子なのに…』

 

『……あいつは俺達の子じゃない、化け物だ…俺達の息子は○○だけだ』

 

『でも…○○は学校で虐められているのよ、あの子の弟だからて理由で……○○がこんな目にあうなら…あんな子産まなきゃよかった』

 

『……疲れてるんだ、もう休みなさい』

 

両親でさえも削板を見捨てた、削板はより一層村で大暴れした、その度に弟のいじめも大きくなり家族との溝は深まり村の皆は彼から遠ざかっていく…それを感じる度に削板は癇癪を起こす子供の如く大暴れした

 

『私達は学園都市の研究者です、御宅の息子さん…原石の少年を学園都市に引き取らせてもらえませんか?』

 

『……金さえ払ってくれればあんな奴でよければ持って行ってくれ』

 

削板は学園都市に強制的に連れて行かれた、誰もそれを止めなかった。寧ろ誰もが喜んでいた…削板は思った、自分は何も悪くない、悪いのは自分を認めないこの世の中だと

 

彼は学園都市に来てからも暴れまくった、引き取られた孤児院でも暴れ子供達を傷つけその能力を研究する為無理矢理変な実験をさせようとする研究所の研究員達を半殺しにした…そんな時彼はヒーローに出会った

 

『よお、お前が「世界最大の原石」か』

 

『……誰だよ』

 

『俺は垣根帝督、よろしくな』

 

『……俺の前からすぐに消え失せろ』

 

それが垣根との出会いだった、馴れ馴れしく接する垣根とそんな彼に拳を突き出し見えない力を放出する削板、それを垣根はヘラヘラと笑いながら避ける…それを見た削板は驚いた後苛立った、この技を避けた者はいなかったし笑っているのが気に食わない。削板は垣根の笑みを消す為に彼に拳を振るう、だが垣根は笑いながら削板の拳を避けていく…それを一時間程続け等々削板はバテてしまった…垣根も息切れしてはぁはぁしていたが

 

『…や、やるな…流石世界最大の原石…未来の超能力者な事はあるな…』

 

『……何で俺に構うんだよ』

 

削板は垣根を睨む、何故自分に近寄って来たのかと、それを聞かれ垣根はふと笑う

 

『友達になりたくてやって来た』

 

『……は?』

 

『だから友達になろうぜ!』

 

『……失せろ』

 

笑顔で友達になろうと笑う垣根、それを聞いた削板は驚きそして飽きれ顔になり失せろと一言言うとその場から立ち去った…その日から垣根はちょくちょく削板の前に現れた

 

『なあ、遊ぼうぜ』

 

『お前一人で遊んどけ』

 

何度も何度もやって来る垣根に毎度の如く削板は垣根を攻撃する、それでも懲りない垣根に削板は鬱陶しく感じつつも村では感じた事のない感情を胸の中で感じていた

 

『よお、此間はよくもやってくれたなぁ』

 

『へへへ、仲間をこ〜んなに連れて来てやったぜい』

 

『ぶっ殺してやんよ!』

 

以前削板に喧嘩を売て返り討ちにされたスキルアウトが他のスキルアウトを引き連れ百人程の大人数で削板を襲って来た、彼は無感情に拳を振るおうとする…その時

 

『ちょっと待ったぁぁぁ!!』

 

『『『!だ、誰だ!?』』』

 

何処からか大きな声が聞こえスキルアウト達が何事かと思った瞬間背後から爆発が起こり何十人もスキルアウトが吹き飛ばされる…そこに立っていたのは垣根だった

 

『お前…何でここに?』

 

『て、テメェ何者だ!!?』

 

『俺か?俺はそいつの友達だよ』

 

垣根はそう言った後白い槍を形成しそれをスキルアウト達の横腹に当てて吹き飛ばしていく、更に謎の爆発や見えない力による押さえつけがスキルアウト達を襲いスキルアウト達は成すすべなく蹴散らされていく…削板はその光景を呆然と見ていた…垣根が最後のスキルアウトを倒した時削板は垣根に声をかけた

 

『……何で俺を助けたんだよ』

 

『あ?友達だからに決まってるだろ』

 

その一言が削板の心に深く刺さった、友達…村にいた時はおろか学園都市に来てからも一人も友達が出来た事はなかった彼にとってその言葉は意外な程胸を打たれた

 

『……俺は化け物なんだ、父ちゃんも母ちゃんもそう言ってた…そんな俺が友達なんて…出来る訳ねえ…どうせお前もすぐ俺の事を化け物て言って俺の前から消えるんだろ』

 

『……馬鹿かテメェは?』

 

どうせ垣根もいつか自分の目の前から消える、そう削板が呟くと垣根は呆れた顔をして削板を見る

 

『お前が化け物だぁ?お前は人間だよ、そこら辺にいる奴と同じでな』

 

『!?』

 

『確かに普通の奴が持ってない力がお前にはある…だがそれだけだ(・・・・・)、他は皆と変わらねえ…だからお前は化け物なんかじゃねえよ』

 

垣根のその言葉を削板は一言一句聞き逃さず聞いていた、そして彼は最後にこう言ったのだ

 

『もしお前が皆に化け物て言われても俺はお前の友達でいてやる、だから安心しろ、お前はもう一人じゃねえ』

 

自然と涙が溢れていた、彼は初めて自分を肯定された気がした。削板は嗚咽を漏らしながら自分に手を差し伸べた垣根へと手を伸ばした…それから削板は変わった、弱い者を助け強くなる為に努力を重ねた…自分が憧れたヒーロー(垣根)に近づく為に

 

 

「てな事があってな、今の俺があるのは帝督のお陰なんだ……て、なんで泣いてるんだアリサ?」

 

「うぅ…だって…予想以上に辛い過去で…良かったね、友達が出来て…」

 

自分の過去の話を聞いて啜り泣くアリサに削板は泣くなとハンカチを渡しアリサはそれで涙を拭く

 

「……ごめんね急に泣いちゃって」

 

「いや俺こそ突然昔話してごめんな」

 

「うんん、軍覇くんの過去の話が聞けて私は良かったよ」

 

「そうか」

 

二人は笑いながら会話を続けアリサはふとカレンダーを眺める…九月八日に大きな丸が描かれてありその日はエンデュミオンの公開ライブだ

 

「明日、エンデュミオンで大勢の人の前で歌を歌うんだ…少し緊張してたけど軍覇くんのお陰でその緊張がほぐれたよ。ありがとね」

 

「そ、そうか?俺なんかで緊張を和らげてくれたのか…なんか嬉しいな。あ、俺そろそろ帰るわ」

 

二人は少し顔を赤くしながら語り合う、削板はその空気に耐えられなくなったのか家を出ようとするがアリサが帰ろうとする削板の手を軽く握る、削板はアリサを驚いた目で見る中アリサが口を開いた

 

「もし来れたら私の歌を軍覇くんに聞いてほしいな…ダメ?」

 

「……おう、聞きに行く、絶対にどんな事があっても根性でエンデュミオンのライブに行ってお前の歌を聴くよ」

 

「……ありがとう」

 

削板はライブを絶対に聞きに行くと頷くとアリサはニコッと笑う、それを見てより顔を赤くした削板は急いでアリサの家から逃げるように去っていた

 

「……明日のライブ、頑張らなくちゃ」

 

アリサは胸に手を当てながらそう呟いた

 

 

 

「削板さんをアリサさんの家に一人で置いて来て良かったんですか垣根さん?」

 

「いいんだよ、ヘタレの軍覇には少し大胆なくらいが丁度いい」

 

帆風と垣根は上条達と別れた後、本当に削板をアリサの家に置いて来て良かったのかと垣根に尋ねる帆風

 

「そういうものなのでしょうか?」

 

「そういうもんなんだよ」

 

帆風はそういうものなのかと納得したように頷く、垣根のやり方は少々強引だが結果的にそれが功を成す事が多い、帆風が知る限りでは上条が美琴と食蜂と付き合えたのも誉望が猟虎に告白出来たのも垣根のお陰だった

 

「……明日だよな、エンデュミオンのライブて」

 

「?そうですが何か?」

 

垣根が唐突にエンデュミオンのライブは明日かと尋ねると帆風は首を傾げながらも頷く、垣根は空を見上げ口を開く

 

「……上里の野郎は明日確実に鳴護っちを攫いに来るだろうな」

 

「……!?」

 

上里は明日必ず現れると告げる垣根に帆風は目を見開く、垣根は帆風の方へと振り向かずに空を見上げながら言葉を続ける

 

「上里の理想送りは最強の異能だ、俺の未元物質でも潤子ちゃんの能力でも勝てる確率は……ゼロに等しい」

 

「…………」

 

「だからこそ、二人で上里の野郎を足止めしねえとな」

 

「………え?」

 

帆風は垣根が何を言ったのか理解できなかった、垣根の事だから自分一人で頑張るというと思っていたから一緒に戦おうと言われ帆風は驚いた

 

「……え?何その反応?俺変な事言った?」

 

「いえ…垣根さんの事ですからまた自分一人で戦うのかと」

 

「……潤子ちゃんが言ったんだろ、一人で抱えこむなて…何、俺一人で戦えて事?無理無理、理想送りとか無理ゲーだわ」

 

垣根は帆風が病理との戦いの時に一人で抱えこむなと言ったから一緒に戦おうと言ったのだと言う、それを聞いて帆風は暫し呆然とし…笑った

 

「……はい!一緒にあの上里とかいう方を倒しましょうね!」

 

「いや倒すのは無理だろ…だってあいつの右手は魔神ですら抗えなかったレベルの異能なんだぞ?」

 

「大丈夫です!わたくしと垣根さんなら絶対に勝てますよ!」

 

「……はぁ、その自身がどこから来るのか知りてえよ」

 

帆風が自分達なら上里を倒せると笑い垣根は何を根拠にそんなことが言えるのだとやれやれと首を振りながら笑う

 

 

 

九月八日、エンデュミオンの公開ライブの日がやって来た。エンデュミオンの周囲には人々で溢れ多くの人がエンデュミオンの中に入っていく

 

「おー、凄い人数だにゃーん」

 

「でもよォ、もうエンデュミオンの上では客が集まってンだろ?俺達行けなくね?」

 

「安心しろ、俺の統括理事会の権力で上まで行ける筈だ」

 

「……こういう時にしか権力使わないよなお前て」

 

一方通行は自分達は上には行けないと呟くが垣根は自分の権力でなんとかすると笑う、上条はこいつしょうもない事にしか権力使わねえなと思った

 

「いいじゃないですか、今回は削板さんがアリサさんの歌を聞く為に上に行かなければ行けないんですから」

 

「そうよ先輩、浜面さんとあともう一押しで付き合えそうな麦野さんと打ち止めの貞操を狙ってる一方通行みたいに削板さんは彼女の気配すらいないんだからこの機を逃すと一生彼女ができないかもしれないんだから」

 

「そうよぉ、削板さんは私達の中で一番恋人ができなさそうな人なんだからそれくらいしないと彼女は未来永劫できないわぁ」

 

「……御坂と食蜂は俺をなんだと思ってるんだ?」

 

「「根性馬鹿」」

 

帆風が偶にはいいじゃないかと笑い、美琴と食蜂はこれを逃せばもう恋人が出来るチャンスはないと真顔で酷いことをいい削板は泣きそうになっていた

 

「ま、削板の恋愛事情なんざ知ったこっちゃねェがあいつの歌は聞きてえし早く行くぞ……ァ?」

 

一方通行がふと頭上を見上げる…太陽が照らす雲一つもない空にいくつかの黒い影が見える…それは10個のタイヤに機関銃やミサイルを装備し主砲たる戦車砲の様に細長い砲塔をもつ装輪装甲車が空から落ちて来た。その名もHsWAV-15…通称「10本脚」がエンデュミオンの内部へと続く道に何台も着地し人々は恐怖に駆られる

 

「あれは…!?」

 

「……やっぱり来たか、お前ら構えろアレは上里の野郎が学園都市から盗んだ兵器だ」

 

驚く削板に垣根は上里の仕業だと告げると全員が驚く、10本脚はエンデュミオンの周囲にいる人間達を標的と捉えると機関銃やミサイル、主砲である戦車砲に似た砲塔を動かし周囲一帯を破壊し始める

 

「無差別攻撃か…鳴護っちを捕まえる為になりふり構わねえてか?…ムカつくぜクソが」

 

上里の狙いはアリサ一人の筈だ、なのに何故無関係な人々を狙う?垣根は上里がとった行動が気に入らなかった、上条達も怒りの目を10本脚に…正確に言えばここにいない敵である上里に向ける。そして空から轟音が聞こえ頭上を見上げるとそこには何機ものヘリが飛んでいた…機体の左右に機銃やミサイルなどを搭載するための「羽」を持つ最新鋭の無人攻撃ヘリ HsAFH-11…通称「六枚羽」が空を縦横無尽に駆け機銃から弾丸を発射する

 

「つまんねえ玩具を出しやがって…自分達は遠くから眺めてるだけてか?」

 

「……そうでもないらしいわよぉ麦野さん」

 

麦野は六枚羽が放った摩擦弾頭(フレイムクラッシュ)やSRM21を原子崩しで相殺しつつ空の六枚羽を狙う…だが六枚羽は砂鉄と高圧電流を使った20メートル四方の面を電磁エリアにする対ミサイル兵器によって原子崩しの軌道を逸らす事で攻撃を防ぎ摩擦弾頭を連発し地上の10本脚も機関銃を超能力者達に向けて放つ、人々は兵器群から逃げ惑う…更に垣根の視界に敵の増援が映り込んだ

 

「……どうやら上里は病理とも繋がってたらしいな…いや病理が上里と繋がったて言うべきか?」

 

それは病理の時にも現れたトライデントの連中だ、あの時の様にEqu.DarkMatterを装備している。ただあの時と違うのはその数、エンデュミオン一帯の空を埋め尽くさんばかりの数だ、ざっと1万人近くはいるだろう…しかも全員がEqu.DarkMatterを装備している。もうこれだけの兵力は警備員では止める事は不可能だ、超能力者なら止められるだろうが時間がかかればその隙にアリサを攫われてしまう

 

「……時間はねえな、ここは俺と潤子ちゃんに任せてお前らは鳴護っちを助けに行け」

 

「な…!?これだけの数をたった二人で?!無茶よ!」

 

「それにどうやって行けばいい!きっとエンデュミオンの内部のエレベーターは機能を封じられてる!上に行く方法はねえぞ!」

 

「安心しろ、行く方法ならある。そこにいるんだろツッチー、当麻達をヘリポートまで案内してくれ」

 

「了解だにゃー」

 

ここは自分と帆風に任せろと叫ぶ垣根、だがどうやってアリサがいる場所…宇宙まで行くのかと上条が叫ぶと背後に土御門が現れる

 

「!土御門…!?」

 

「質問は後にしろ、俺はお前らをヘリポートまで連れて行く。ここは先輩に任せておけ、早くしないと鳴護アリサの身が危ない」

 

土御門は説明よりも早くヘリポートに行くぞと言うと有無を言わさず駆け出し始める、上条達は垣根と帆風を見る。二人は早く行けと無言で頷き上条達は決意を固めて二人から離れ土御門の後を追う

 

「いつもの根性で鳴護っち(お姫様)を助けろよ軍覇!」

 

「あとは頼みましたよ!」

 

「………おう!」

 

垣根と帆風はそう言うと10本脚と六枚羽、トライデントの兵士達と交戦を開始する、10本脚がミサイルを放ち垣根は多才能力を発動させ電撃でミサイルを迎撃、座標移動で10本脚のタイヤに物体を転移させ動きを封じる、六枚羽が頭上から摩擦弾頭や弾丸を降り注がすが原子崩しで相殺し六枚羽の機体に命中させ爆発させる、トライデントの兵士達はEqu.DarkMatterから羽を生やし襲いかかるが帆風が彼らの胴体に蹴りや拳を命中させ一撃で仕留めていく

 

「早くここを片付けて女王達の後を追いましょう垣根さん!」

 

「……いやそれは無理かもしれねえな」

 

「え…?」

 

早くケリをつけようと叫ぶ帆風だが垣根が弱気な発言をしそれに驚く…だが何故垣根がそんな事を言ったか帆風は理解した、彼女の視界にある人物が映ったからだ

 

「……上里翔流?」

 

「やあ、また会ったね垣根帝督と……誰だったかなきみは?」

 

その人物は上里、彼は垣根が放った炎を理想送りで消し飛ばすと二人を見据え肩を鳴らそうとするが今回も肩は鳴らなかった

 

「……まあいいか、今からいなくなる奴の名前を覚えてたて無駄だしね」

 

「……お前が鳴護っちを攫いに行ったんじゃねえのか?」

 

「攫うとは人聞きの悪いな、ぼくらは彼女を保護するんだ。魔神が潜む学園都市からね…それに彼女を保護するのはぼくじゃなくて宛那が上手くやるさ」

 

アリサを攫いに行ったのは上里ではなかったのかと垣根が呟くと上里は攫うのではなく保護するの間違いだと告げる、上里は右手を二人に向け牽制するが垣根と帆風は臆する事なく上里へと立ち向かう

 

「「超能力」は未元物質。「魔術」は未元物質、「天使の力」は未元物質、未元物質は「超能力」、未元物質は「魔術」、未元物質は「天使の力」」

 

神の神秘(ラジエル)

 

「新たな天地を望むか?」

 

未元物質と天使崇拝、そして理想送り…三つの強大な能力を持つ者達の戦いが今ここで火蓋を切った

 

 

 

「凄い沢山の人ですわね…でも最前列近くに来れてよかったですね婚后さん、湾内さん」

 

「そうですね泡浮さん…それにしてもよくこんな特等席を取れましたね婚后さん」

 

「まあ、わたくしにかかれば席取りなど容易い事ですわ」

 

エンデュミオンの内部では地上の出来事など全く知らない人々がアリサのライブが始まるのを今か今かと待ちわびていた…それを赤い歌姫の衣装を着たアリサはモニター越しで見ていた

 

「わぁぁ…沢山の人でいっぱい!」

 

「うふふ、それだけ貴方の歌を聴きたがってるて事よアリサ」

 

「……嬉しいな、もしかして夢じゃないのかな?」

 

アリサはこれは夢かとほっぺをつねる、痛覚を感じこれは夢ではないと理解した。そんなアリサを見てレディリーは微笑んだ

 

「夢なんかじゃないわ、これは貴方が掴み取った夢の現実よ…ほら、みんな貴方を待ってるわ…早く行きなさい」

 

「はい!」

 

アリサはステージに向けて歩いていく、それを笑みを浮かべたままレディリーは見続けていたが懐に入れていた携帯が鳴り始め真顔に戻ったレディリーがそれを手に取る

 

「何かしらレイヴィニア?……そう、上里勢力が攻めてきたのね。今貴方はグレムリンのメンバーと黄金夜明のメンバーと共にトライデントの部隊1万人と交戦中、垣根はトライデントの部隊1万人と上里と交戦中…オティヌス、脳幹、メイザースは木原病理と交戦中…更にエンデュミオンの迎撃用兵器のコントロールが奪われた?まあいいわ、こっちは私に任せなさい」

 

レディリーは同僚のレイヴィニアから情報を教えられると電話を切る、そしてフリントロック式の銃を何処からか取り出すと会場に向けて歩き出す

 

「何処からでもかかってらっしゃい、アリサの夢は邪魔させないわよ」

 

 

 

(……軍覇くんこの会場にいるかな?)

 

アリサがステージに立つと観客達からの大歓声を浴びペンライトが激しく揺れる、彼女は観客達に微笑みながら削板の姿を探すが人が多くて見つけられず彼女はマイクを手にとって口を開き歌を歌い始める…曲名は「telepath〜光の塔〜」

 

 

 

宇宙空間、そこは普通の人間では動く所か生きる事さえ許されない死の空間…そんな場所をエンデュミオン向けて宇宙空間を動く黒いモヤの様な存在がいた…それは黒い霧で構成された蛇と表現するしかないだろう、その闇の蛇の上に乗っているのは宛那、彼女は霊装の力を借りて宇宙空間でも平然と活動できエンデュミオンに向けて闇の蛇を動かす

 

「鳴護アリサを確保する、それが私の上里様から与えられた使命…鳴護アリサは誰にも渡さない」

 

宛那はそう呟くと更に蛇の移動速度を上昇させる、理想送り、上里勢力、超能力者、学園都市…そして削板軍覇、鳴護アリサを巡って様々な者達の思いが交差する物語はいよいよ極相へと向かい始めた

 

 

 

 

 

 

 

 




急展開過ぎたかな……それに少し回想を入れすぎたかも、削板君の過去は捏造ですが上条さんと似ていて、でも少し違う感じを出す為に頑張りました。というかかまちーのキャラは謎が多過ぎて困る。それが魅力の一つだけど

さて次回は宇宙空間で繰り広げられるレディリーvs宛那、地上での垣根・帆風vs上里の激戦、そして等々ヒロインの前に現れた削板君…上条さん達はオマケです、そして何とあのキャラもまさかの参戦です

次回もお楽しみに!


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奇跡を飲み込む闇の蛇

お気に入りが500を超えた…だと?何故かエンデュミオン編に入ってから増えた…これが…アリサちゃんの奇跡?もしくは魔術師の仕業?どちらにしても嬉しいです

今回は戦闘描写多目です、でも中途半端が多いかも…そして前回言った通りあのキャラがゲスト参戦、気になるゲストは読んでからのお楽しみです

そしてオリジナルの霊装と術式が出ます、あと宛那は原作でいうむぎのんやヴェントさんみたいな敵キャラです…簡単にいうと上里君の前では猫を被ってて本性はむぎのんやヴェントさんに近いです



土御門の後を追って上条達が辿り着いたのはとあるヘリポート、そこにはスペースシャトルに似た宇宙船があった

 

「土御門…これは?」

 

「こいつはバリスティック・スライダー、学園都市製の次期主力輸機関コンペだにゃー。宇宙エレベーターのエンデュミオンには負けちゃったがこいつならエンデュミオンの宇宙ステーションまで辿り着ける筈だぜい」

 

バリスティック・スライダーという宇宙船に乗ればエンデュミオンの最上部の宇宙ステーションに辿り着けると土御門が言う、それを聞いて上条達はバリスティック・スライダーを見上げる…そして土御門は何処からか宇宙服を人数分取り出して上条達に渡す

 

「てな訳で宇宙にレッツゴーだにゃー」

 

「軽いなオイ」

 

土御門は軽く宇宙に行ってらっしゃいと笑いながらいい上条は軽いなと呟く、削板は天を見据えながら口を開く

 

「……待ってろよアリサ、すぐ助けに行くからな」

 

全員が宇宙服に着替えた後宇宙船に乗り込み内部の椅子に座りシートベルトをかける

 

「そういえばもし敵に攻撃されたらどうするんだ?流石の俺でも宇宙空間で生き残れるか不安なんだが…」

 

「安心するんだにゃー、何せこの宇宙船には秘密兵器が搭載されてるからにゃー」

 

「「「「「「秘密……兵器?」」」」」」

 

攻撃されても兵器なのかと上条が尋ねると土御門は秘密兵器があるから大丈夫だと告げる、上条達は秘密兵器?と首を傾げ機首上部にある物資搬出用の開閉ハッチからドンドンと誰かがハッチを内側から叩く音がしたが土御門以外それに気づかなかった

 

「じゃ、逝ってらっしゃいだぜい」

 

「「「「「「字が違う」」」」」」

 

バリスティック・スライダーがエンデュミオンに向けて空を飛翔する、それを土御門はサングラス越しに眺めていた

 

「……後は頼むにゃーカミやん達」

 

 

 

上里の理想送りが帆風の神の神秘による呪文を消し飛ばしていく、垣根は不意打ちで地面から未元物質の槍を生やし上里の身体を穿とうとするが上里が地面に右手を触れると大地が大地ごと未元物質の槍が新天地へと送られる

 

「地面ごと消し飛ばすのかよ…」

 

理想送りの規格外さに驚きながらも垣根は形成したカブトムシ型自律兵器を上里へと向かわせる、カブトムシ達は電撃や火炎、原子崩し等の攻撃を放つが上里は右手を横に振るい撫でる様に異能に触れ消し飛ばしていく。カブトムシは能力を放つ事で上里を攻撃するが上里は難なくカブトムシ達に接近すると理想送りで触れて新天地まで送ってしまう

 

(くそ……あいつ俺の未元物質の素粒子まで消し飛ばしてやがる)

 

垣根は上里の周囲に未元物質の素粒子をばら撒きオジギソウの様に攻撃しようとしていたが上里の右手…正確には彼の影に触れると全て消えてしまった

 

(あいつの影に少しでも触れたらアウト、さっきから心理掌握の力で洗脳を試みてるが…一切効かねえ…やっぱり理想送りにはこんな小手先の技じゃあ倒せねえか)

 

心理掌握も理想送りの何らかの力で通じず、不意打ちをしようとしても上里に悟られる…故に上里に攻撃を与えられない

 

「なら……神を見る者(カマエル)!」

 

帆風はカマエルをその身に降ろすと音速を超える超高速移動で上里の背後に接近、そのまま回し蹴りを上里に叩き込もうとするが上里はそれに気づき右手を帆風の身体に当てようとする

 

「な……!」

 

「新たな天地を望…」

 

だが右手が触れる前に帆風の姿が忽然と消え上里の右手は帆風がいた場所をすり抜ける、そして帆風は垣根の横に立っていた

 

「……座標移動ですか?」

 

「ああ、それとむやみやたらにあいつに接近しない方がいい。あいつは当麻と同じで前兆の感知が使える様だからな」

 

前兆の感知…攻撃の際の瞬きや呼吸のリズム、微細な筋肉の動きなど『本人の意図しない微弱な動き』からこれから行おうとしている攻撃を察知する技術。恐らく上里は上条と同じ無意識でこれを行なっている…帆風や垣根のほんの一瞬の動作でどんな攻撃、何処から攻撃を仕掛けてくるか察してしまう、それに理想送りが加わればまさに最悪の一言だ

 

「ぼくばかりに集中していていいのか?きみ達の敵は他にもいるぞ」

 

しかも上里だけが相手ではない、六枚羽や10本脚、トライデントの兵士達が弾丸やミサイル、摩擦弾頭、Equ.DarkMatterの羽が二人を襲い垣根は窒素装甲の壁を自分達を包み込む程のサイズで展開し攻撃を防ぐ、更に窒素の壁を窒素爆槍の窒素の槍に変換し六枚羽に命中させ墜落させていく

 

「たく、250億もするんだぞあのヘリ…どう弁償してくれるんだコラ」

 

「ぼくには知った事じゃないね」

 

垣根は原子崩しを上里を取り囲む様に展開し放射、上里は少し立ち位置を変え避けられる原子崩しを避け避けれない原子崩しは右手で消し飛ばす、垣根は右手から竜王の顎を顕身させると竜の口が大きく開きそこから竜王の殺息が放たれる

 

「……竜の口から竜王の殺息を吐くとは中々洒落てるじゃないか」

 

上里はそう言いながらも右手をかざし竜王の殺息に理想送りをぶつけ消し飛ばす…だが上条の幻想殺しの様に処理が追いついていないのか先程の攻撃の様に消しきれていない…だが上里は焦らず右手を捻る事で光線が真上へと逸れる

 

神の力(ガブリエル)

 

帆風はカマエルからガブリエルへと力を変え水翼を上里へと放つが理想送りで消し飛ばされる、更にエンデュミオン付近の水場から水を大量に集めウォーターカッターの様に上里へと放つがそれも右手により防がれてしまう

 

「そんなのぼくに通じないと言った筈だが?」

 

「ええ、でもこれでいいんです(・・・・・・・・)

 

「なに……?」

 

帆風がこれでいいと笑い上里が訝しむ様な顔を見せ…直後地面から生えた未元物質の槍が上里の腹にめり込んだ

 

「がぁ!?」

 

上里は上へと吹き飛ばされ地面に叩きつけられる、上里は腹を抑えながらなにが起こったのかと考える

 

(何故攻撃に気付かなかった…?まさか…)

 

「ガブリエルは「神の伝令」という役割を持つ…つまり情報の送受信に長けていてな、それを潤子ちゃんは利用してお前の前兆の感知を乱したんだよ」

 

「……成る程」

 

上里は右手で口から垂れ流れた地を拭う、ガブリエルの能力なら確かに攻撃の察知を外すことは可能だろう、ガブリエルの能力は上里にとって脅威だった、だが勝てない程ではない

 

「……もうぼくに勝ったつもりでいるのか?」

 

「んなわけねえだろ、いくぞ潤子ちゃん。第二ラウンドといこうじゃねえか」

 

「はい!」

 

上里はその程度で倒せると思うなと二人を睨みながら言い、垣根は未元物質を覚醒させその翼を振るい空間を切断、そこから空間の「断面」が上里に向けて落下する。当然上里は理想送りでそれを消し飛ばす、だが帆風によって前兆の感知が乱された今が好機とばかりに垣根は魔術・超能力が入り混じった弾幕を上里を覆い尽くす様に放ち上里は異能を撫でる様に横に一閃する事で大多数の異能を消し飛ばすが撃ち漏らした攻撃を喰らい僅かばかりにダメージを食らう

 

「……流石は超能力者の第一位、一筋縄ではいかないか。そこのきみもぼくの想像以上だったよ」

 

「は、最初の威勢はどうした理想送り」

 

上里は思ったよりもやるではないかと垣根と帆風の評価を改める、だが自分が負けるとは思っていないのか右手を掲げ二人に接近する…二人は迎撃の為に己が能力を全力で振るう、その余波で周囲が破壊される…人々はそれを呆然と眺めていた

 

 

 

宛那はエンデュミオンの内部に侵入した後アリサがいる場所に向けて歩いていた…だがふと足を止め自分の背後を見る…そこにはレディリーが立っていた

 

「まさか統括理事会のお前が直々に来るとはな」

 

「並の相手じゃ貴方に勝てそうにないもの、私が出るしかないじゃない」

 

意外そうな顔をする宛那にレディリーは見下す様な笑いを向ける、そして懐からフリントロック式の銃を取り出す

 

「貴方如きにアリサのライブの邪魔はさせないわ」

 

「……上里様からの命令を果たす」

 

宛那は闇から生み出した鎌を、レディリーはフリントロック式の銃を構えお互いの敵を見据える…そして宛那から先に動き鎌を構えながら突進しレディリーの首を切断しようと鎌を振るう、だがレディリーはそれを避けると宛那の額に狙いを定め引き金を引く、直後銀色の光弾が宛那へと放たれ宛那はそれを鎌で弾く

 

「……アルテミスの術式か」

 

「あら分かっちゃった?アルテミスの銀の矢は女を苦痛なく殺す…そのエピソードを取り組んだ魔弾よ」

 

アルテミス…ギリシャにおける月の女神でありその矢は女を苦痛なく殺すと言われている。レディリーの術式が一つ「アルテミスの魔弾」は対象が女であれば威力を増す魔弾を放つ術式だ、彼女は引き金を引き続け魔弾を連射し宛那はそれを弾いていく

 

(威力はかなり高いな、当たり所が悪ければ即死するだろうな…だが当たらなければどうということはない)

 

宛那は魔弾を弾きながらそう考えレディリーへと接近、レディリーの首を切り落とそうとするもレディリーは空いている右手を動かし懐から自動式拳銃を取り出し引き金を引く。その銃口から黄金の光弾が宛那目掛けて発射された

 

「!?」

 

宛那は急いで魔弾を避ける、魔弾はエンデュミオンの壁に命中すると爆裂し壁に大きな焼け跡を残す

 

「……アルテミスとは違う術式…アポロンに関する術式か」

 

「ええ、まさかアルテミスの魔弾だけが私の術式だと思っていたのかしら?」

 

アポロン…太陽神でありアルテミスの兄または弟と呼ばれるギリシャの神、その矢は男を苦痛なく殺し疫病を齎す黄金の矢と言われている、レディリーはその逸話を再現し高威力な炎の魔弾や状態異常を起こす魔弾、太陽の矢を放つ攻撃術式 「射陽の神弓」というレディリーのもう一つの術式である

 

「さあ、このまま死になさい」

 

レディリーは自動式拳銃の引き金を引き続ける、黄金の光弾が銃口から放たれ続け宛那はそれを鎌を回転させ盾にする事で攻撃を防ぐ、レディリーはニヤリと笑うとアルテミスの魔弾を発射。銀の魔弾が背後から宛那に迫る

 

「チェックメイトよ」

 

銀の弾丸が宛那の身体を穿った、宛那の短い悲鳴が響く、ドサッと倒れる宛那…だがレディリーは油断せずに二つの銃口を並べ動かなくなった宛那へと魔弾を連射・速射。全身穴だらけになった宛那を一瞥するとレディリーは不敵に笑う

 

「さて侵入者は片付けたから私はアリサの歌を聴きに聞こうかしら」

 

レディリーが二つの銃をしまいアリサがいる場所へと向かおうとする…その時自分の胸から黒い刃が生えた

 

「……ごふっ」

 

レディリーはその刃を呆然と眺めた後口から血反吐を吐き出す、そして恐る恐る背後を見てみるとそこには闇の鎌を携え傷口を再生している(・・・・・・・・・)宛那が見えた

 

「嘘……でしょ?あれだけの傷を…再生して……まさか貴方自分の身体を…」

 

「我が身は全て上里様の為に」

 

宛那はそう言うと何か呟こうとしたレディリーの腹に蹴りを叩きつけ壁に激突、一撃で意識を刈り取られたレディリーが床に倒れる…それに目もくれない宛那はアリサを確保する為にステージへと向かう

 

「……この調子ならこれ(・・)を使うまでもないわね」

 

彼女はそう言って懐から取り出したアメジストで出来た蛇の装飾品を一瞥し懐にしまった

 

 

 

大二十三学区のエンデュミオンから遠く離れた場所にて、グレムリンのメンバーと黄金夜明の魔術師、そしてレイヴィニアがEqu.DarkMatterを装備したトライデントと交戦していた

 

「……ふん、ウジャウジャと湧いて出てくるなこいつらは」

 

レイヴィニアはそう言いながら杖を片手で構えドーム状の光の爆発がいくつも発生し兵士達を蹴散らしていく、召喚爆撃とは儀式系の魔術に必要な聖堂や儀式場を建設設置する手間を省き本来より威力が減衰する分、発動速度を高めた術式だ、だが生半可な魔術師では自爆する恐れがある危険な術式でレイヴィニアはそれを1ミリのズレもなく全く同じ動作で術式を扱う事で制御を可能としている

 

「……面倒くさくなってきたな、早く帰ってマークを泣かせでストレス発散でもするか」

 

サラリと彼女がパワハラ発見をし遠くで彼女の部下が恐怖でその身を震わせたが彼女は気づかない、何発も召喚爆撃を発生させ兵士達を蹴散らすレイヴィニア、他にもグレムリンのメンバーであるトールは両手両足のグローブから長さ数メートル程のアーク溶断ブレードを噴出しEqu.DarkMatterごと敵を切り裂き、ブリュンヒルデという「聖人」と「ワルキューレ」の混ぜ物(ヘル)が振るうクレイモアが敵兵を蹴散らす

 

「ほらほら!もっとしっかりやんなさいよウェスコット!」

 

「やれやれ…年寄り扱いが荒いねえフォーチュン」

 

黄金夜明の魔術師達がトライデントの兵士達を蹴散らす、アニーがヤッキンとボアズに見立てた白と黒の棍を使い巨大なシャボンに似た薄い膜の球体を背後に出現させ味方の魔術を強化する、アーサーがタロットカードを投げEqu.DarkMatterの翼を切り裂き敵を地に落とす、黒い箱の形をした自己情報無限循環霊装(アーキタイププロセッサー)に術式を突っ込み何が起こるかわからない魔術を放つ

 

『無駄だ、我々には勝てない』

 

「チッ!」

 

レイヴァニアを囲む様に兵士達が翼で浮遊しながら銃を向けレイヴィニアを撃ち殺そうと狙いを定める、レイヴィニアが舌打ちしながら兵士達を迎撃しようとする…だが兵士達は何処からか放たれた魔術により吹き飛ばされる

 

「!?…お前らは……」

 

レイヴィニアが向いた先にいたのはインデックスとステイル、神裂…そして何故か一緒にいるメアリエ達だった

 

「初めまして明け色の陽射しの首領 レイヴィニア=バードウェイ。助太刀に来たんだよ」

 

「……魔道書図書館か、何故ここに来た?」

 

「僕らは鳴護アリサのファンなんだ、ファンがアイドルが攫われるのに指を咥えて見てるだけな筈がないだろう?」

 

「その通りです、決してライブに見に行けなかった怒りを発散しに来たのではありません」

 

「そうだよ、アリサを攫うなんて許さないんだよ。これは八つ当たりじゃなくてアイドルを守る為の聖戦(ジハード)かも」

 

「………まあ、戦力が増えるのならよしとするか…理由はともかく」

 

レイヴィニアは何故ここにと尋ねると彼らはアリサが攫われるのを防ぎに来たと告げる、だが本音はエンデュミオンのライブのチケットが取れなかったのでライブが聴けない憤りをトライデントにぶつけたいだけだった、レイヴィニアは理由はアレだが戦力が増えた事に頬を緩ませる

 

「……トライデントて確かイギリス清教と協力関係にある組織でしたよね?」

 

「……絶対私達も敵認定されますよね…全部ししょーの所為だ」

 

「……でもししょーに「戦わなければ殺す」て脅されてるし…やるしかないよなぁ」

 

メアリエ達はステイルにトライデントを攻撃しないと殺すと脅されていた、だがトライデントを攻撃すれば自分達の組織 イギリス清教にステイル達と同じ背教者として狙われる…彼女達にとって両方ともバットエンド真っしぐらだ…ステイルはそれを「今死ぬのと後で死ぬのどっちがいい?」と魔女狩りの王を背後に出現させられながら究極の二択を迫られ彼女達は泣く泣く後者を選んだのだった

 

「「「ええい!こうならヤケだ!やってやんよチクショー!」」」

 

「……あいつら可哀想だな」

 

涙目で敵に魔術を放つメアリエ達にトールは哀れみの目を向けていた

 

 

 

宇宙空間にてエンデュミオンに向けて進んでいくバリスティック・スライダーの内部では上条達が広大な宇宙をコックピットで眺めていた

 

「……凄えな」

 

削板が思わず目の前の空間を見て呟いてしまった、それ程宇宙は無限に広がる大空間で星々が輝く美しい光景だったからだ…だがそんな幻想は囂々たるアラームが鳴り響き赤いランプが点灯し始めた事で打ち消される

 

「な、何よこのアラーム!?」

 

「……ねえ上条さん、私今危機察知力が全力で鳴り響いてるんだけどぉ」

 

「……奇遇だな、俺もだよ」

 

美琴が何事かと叫び上条と食蜂が嫌な感じがすると呟く…すると目の前のモニターにはエンデュミオンの外壁部分からミサイルの様な発射口が映し出された映像が映りその端っこにワイプの様に土御門の顔が映る

 

【その通りだぜいカミやん!只今バリスティック・スライダーはエレベーターに装備されたアンチ・デブリミサイルに捕捉されたみたいだぜい!】

 

「「やっぱりか!」」

 

「どうすンだよ土御門!この船には武器なンざねえンだろ?!」

 

「こんな所でゲームオーバーとか巫山戯んじゃねえぞ!」

 

土御門が笑顔でミサイルの目標にされたと呟き上条と食蜂は予感的中したと項垂れる、一方通行と麦野がどうすんだと叫ぶか土御門は笑顔を崩さない

 

【言ってなかったかにゃー?バリスティック・スライダーには秘密兵器があるてな】

 

「……秘密兵器?それで一体どんな兵器なんだ?」

 

【ふふふ…見ればわかるぜよ!さあ出番だぜい!】

 

削板が秘密兵器とは何かと尋ねると土御門は見てからのお楽しみと言わんばかりに笑みを浮かべる、そして力の限り叫ぶと開閉ハッチが開き始めそこから一人の人物が現れる

 

「喟然、漸く出番か…待ちくたびれたぞ」

 

その人物は緑の髪のオールバックに白いスーツを着た青年だった、彼は右手にアゾット剣を握りながらをバリスティック・スライダーの上を生身(・・)で歩く

 

「お、お前は……アウレオルス!?」

 

「怡然、久しいな超能力者達よ。垣根帝督と帆風潤子はいないようだが…まあいいだろう」

 

彼の名はアウレオルス=イザード、黄金錬成(アルス=マグナ)を完成させた錬金術師であり姫神と共にローマ正教に戻った魔術師でもある…そしてアウレオルスが現れたと同時にミサイルがバリスティック・スライダー向けて迫り来る…それに対しアウレオルスはアゾット剣をミサイルに向ける

 

誤爆せよ(・・・・・)

 

その一言でバリスティック・スライダーに向かって来たミサイルは全て爆発を起こす、だが次々とミサイルが飛来しバリスティック・スライダーを取り囲む様に向かってくるミサイルの雨にアウレオルスは跳躍し宇宙空間をふわふわ浮きながらアゾット剣を向ける

 

「来たれ紅蓮の炎よ、吹雪け絶対零度、招来せよ雷の雨、吹き荒れろ暴風、ミサイルよ機能停止しろ」

 

アウレオルスの黄金錬成により紅蓮の炎がミサイルを飲み込む、絶対零度の吹雪がミサイルを氷漬けにする、虚空から降り注ぐ雷がミサイルを爆破する、突然吹き荒れた暴風がミサイルの軌道を逸らす、突如としてミサイルの動きが止まる…そんな不可思議な現象が宇宙空間で起こりアウレオルスはミサイルからバリスティック・スライダーを守りきった

 

ミサイルを撃つな(・・・・・・・・)

 

アウレオルスがそう言うとミサイルを発射する発射口からミサイルが発射されなくなった。アウレオルスはそれを確認すると地上へ向けて自由落下し始める

 

「……嫣然、負けるなよ超能力者達」

 

そう言い残してアウレオルスは宇宙空間から消える、それを見届けた上条達はアウレオルスの期待に応える為にエンデュミオンを見据える

 

 

地上にアウレオルスが戻ってくるとすぐそばに姫神が歩いてやって来る

 

「ご苦労様。どうだった?」

 

「楽な仕事だったな…それにしてもすまんな、折角学園都市に来たと言うのに鳴護アリサのライブに行く事が出来なくて」

 

「仕方ないよ。チケットはここでしか手に入らないし来た時には売り切れだったから」

 

「…暗然、今度もしライブがあったら学園都市にチケットを貰える様交渉しておくとしよう。その為に今回の仕事を受けたのだからな」

 

「……うん。二人で一緒に見に行こうね」

 

「……ああ」

 

笑みを浮かべる姫神にアウレオルスは微笑む、二人は空を見上げ超能力者達が勝つ事を祈るとこの場から離れ何処かへと去って行った

 

 

エンデュミオンのステージにてアリサの歌声が周囲に響く、それを聞いて観客達は歓声を響かせペンライトを大きく振り会場内は熱気に包まれる

 

「……凄いなアリサは」

 

「……ああ」

 

そんな会場の雰囲気にシャットアウラとディダロスは嬉しそうに微笑む。自慢の妹/娘がこんな立派な場所でデビューして二人は誇らしげにしていた(シャットアウラは音楽を聴くと苦しむので耳栓をはめている)。アリサは歌を歌いながら周囲を見渡す…ここに来ている人達全員が笑顔でアリサの歌に聴き惚れていた

 

(……これで夢が叶ったかな?皆私の歌で笑顔になってるよね…嬉しいな)

 

アリサはそう思いながらも必死に観客達を見入る…だがその観客の姿にやはり削板はいない

 

(……やっぱり来れなかったのかな?)

 

そうアリサが思いかけた時会場の扉がゆっくりと開いているのを視界に捉える

 

(もしかして軍覇くん…?)

 

だが現れたのは少女だった、銀の髪に紫の眼を持つトーガを着た少女だ…アリサは彼女を視界に入れ凍てつき歌を歌うのをやめてしまった

 

(な、なんで……あの時の子が……?)

 

急に歌を歌わなくなったアリサに観客達は何が起こったのかと疑問に思う、だが次の瞬間宛那の身体を闇が包み一気に跳躍、アリサのすぐ近くに着地すると闇の鎌をアリサの首元に当てる

 

「動くな、生け捕りが命なので殺しはしないが……四肢を切断されたくはないだろう?」

 

「あ……ああ……」

 

「「アリサ!!」」

 

宛那の脅しを受けアリサは声を震わす、シャットアウラとディダロスがアリサの名前を叫ぶ、観客達が混乱と恐怖の叫び声を漏らし始める…一人の観客が外に出ようとするが…扉は全て閉まっており外に出る事は叶わない

 

「貴様らは人質だ、この娘が言う事を聞かぬ様なら…一人ずつ殺す」

 

宛那のその脅しに全員が凍てつく、こいつは本気だ、逆らえば殺されると理解する…会場にいた観客達は顔を青くし何人かの子供達が泣きじゃくる…あの笑顔で溢れていた会場が一変して恐怖に支配されてしまった…だがそれもすぐに解けた

 

「……今夜は星が綺麗ね だからきっと届く〜」

 

「……む?」

 

「……アリサ?」

 

突然アリサが歌い始め宛那は眼を丸くする、シャットアウラも妹の行動に眼を見開く…すると会場にいた人々の恐怖が薄れ泣いていた子供達も泣くのをやめる

 

(私は皆に泣いて欲しくない…笑ってて欲しいんだ。それをこんな所で、こんな人に皆の笑顔を奪わせたりしない)

 

「……動くなと言うのがわからないのか?」

 

泣いて欲しくない、その一心でアリサは歌を歌う…宛那は苛立ったのか鎌を振るおうとしアリサのマイクを持つ右手を切断しようとする…直後ステージの真上にある照明が宛那目掛けて落下した

 

「……何?」

 

アリサはそれに気づき横へジャンプする事で照明を回避する、回避が遅れた宛那に照明が当たり照明の破片と宛那の血が周囲に飛び散った

 

「………アリサ」

 

その時よろよろと胸から血を流すレディリーが会場に現れる、血を流しながらも漸くここに辿り着いたのだろう

 

「……「奇跡」が起きたんだ」

 

奇跡、アリサが起こす人為的に近いもの。彼女はそれが起きたのだと理解し助かったと安堵する…だがステージに落ちた照明が黒いモヤの様なものに吹き飛ばされアリサは驚愕する…そこには血だらけの宛那が立っていた

 

「……これが奇跡か、成る程最大主教が欲しがるだけはある…だが私には届かないぞ」

 

「……嘘」

 

宛那の傷口は再生していた、肉が無くなったところはブクブクと周囲の細胞が泡立ち再生し骨が折れていたら嫌な音が響き骨が再生していく…その人外染みた超再生能力にアリサは半歩後ろに下がる

 

「なんだあいつは……肉体再生の類の能力者か?」

 

「……違うこの感じ…あの時と同じ…」

 

シャットアウラが何かの超能力かと考えるがディダロスはあの時…オリオン号事件の時に現れたオティヌスと似ていると感じた

 

「蛇とは死と再生の象徴、ギリシャのアテナとは蛇。メデューサはアテナの母たる メティスを語源としアテナはメデューサと同一とされる。アテナ・メデューサ・メティスは三相一体の神。つまりアテナとは蛇…そして冥府の象徴たる梟はアテナの使い…つまりアテナは翼ある蛇…ドラゴン」

 

宛那がそう呟くと彼女の背後の闇から無数の闇で出来た蛇と梟が形成される。そして彼女が持つ鎌は更に禍々しく変貌し彼女の紫の瞳が闇色に輝く…すると周囲一帯が石化し始めステージに近い場所にいる観客の足がじわじわと石になり始める

 

「!?石になってる!?」

 

「メデューサは見たものを石化させる…と言われてるが正確には恐怖で身体が石の様に硬くなったと言われてる…それが時代と共に石化という能力になった…まあ石化の方が扱いやすいのでこの様な能力にしているがな」

 

アリサが目の前の光景に絶句し石化し始めた観客も恐怖に駆られる…宛那がその光景を見て愉悦に暫し浸っていたがアリサの足に眼をやった

 

「ふむ、この私に逆らったのだ。両足を切断するが悪く思うなよ」

 

「え……?」

 

そう言って宛那は鎌を大きく振り上げる、アリサは目の前の光景を理解できなかった

 

「「アリサぁぁぁぁ!!!」」

 

アリサの耳に家族の声が響いた、そして理解した…自分の足はあの鎌で切断されるのだと

 

(………助けて軍覇くん)

 

アリサは眼を固く閉じて自分のヒーローの姿を脳裏に映し出す、そして宛那の鎌が処刑台のギロチンの様に振り落とされ彼女の足を切断…することはなかった

 

「すごいパーンチ!」

 

「な!?」

 

「……あ」

 

バゴーン!という大きな音が響いたかと思うと会場の閉じられた扉が派手に吹き飛ばされステージまで吹き飛んだ、それを見て宛那が驚きアリサはその扉の先にいた人物を見つめた

 

「……遅くなったなアリサ」

 

「……来てくれたんだね…軍覇くん」

 

その男は超能力者で最も暑苦しく根性がある漢。その名もナンバーセブン 削板軍覇である。彼は自分の背後に上条達を引き連れて会場の中に入り…床に倒れこむアリサを一瞥した後彼女のすぐ横で鎌を構えている宛那に眼を向け…音速で宛那の正面に現れ宛那の顔面に拳を突きつけた

 

「げばぉ!?」

 

宛那はその一撃をまともに喰らいステージの壁に大激突、壁に亀裂が入り大きな穴が開く。その光景を見て観客達が驚く中美琴と食蜂が大声で叫ぶ

 

「早くここから逃げてください!ここは危険です!」

 

「ここは今から私達の戦場になるから巻き込まれたくなかったら早く逃げるんだゾ!」

 

その声で観客達は全員その場から駆け出して会場から逃げていく…この場に残ったのは超能力者達とアリサ、シャットアウラとディダロスだけだ

 

「アリサ!無事か!?」

 

「怪我はないかアリサ?!」

 

「……お姉ちゃん…それにお父さんも……うん大丈夫だよ」

 

駆け寄って来たディダロスとシャットアウラにアリサが大丈夫と微笑む、そしてアリサは削板の方を向く

 

「……悪いな、ちょっと遅くなっちまった」

 

「ううん…最高のタイミングだったよ」

 

二人がそう言って笑いかけたその時の穴の中から無数の蛇と梟が削板目掛けて襲いかかる

 

「!チッ…すごいパーンチ!」

 

削板はすごいパーンチを放ちそれに命中した蛇と梟達は一撃で消滅する、だが生き残った梟がダイヤモンドすら切り裂く爪で削板に斬りかかる、梟は実は凶暴な鳥であり日本でも人が梟に殺されたという事件がある程の肉食の鳥だ…当然宛那の生み出した梟は普通の梟の比ではないほどの強さを誇る…だが

 

「そんな攻撃は効かん!」

 

削板の身体に斬りかかっても逆に梟の爪が折れた、そして削板を中心に爆発が起き梟と蛇が蹴ちらさせる

 

「出てこいよ根性なしが、動物達に頼って自分は見てるだけなんて性根が腐ってるな」

 

「……暮亜(くれあ)と同じ原石か…厄介だな」

 

宛那は穴から出てくると削板を睨む、削板も宛那を睨む…そして宛那は鎌を構えると削板に向けて跳躍、削板の頭を刈り取ろうとするも削板は後ろへジャンプする事で回避、宛那の鎌の刃が地面に突き刺さり削板のすごいパーンチが宛那目掛けて放たれる。宛那はそれを巨大な闇の蛇を作り出す事で盾の代わりにし攻撃を防いだ

 

「……根性なしの癖にやるじゃねえか」

 

「ほざけ、私は上里様の命を遂行する。その障害となるものには死を与える」

 

宛那がそう言うと石化の邪眼を削板に発動させ削板の足を石化し始める…動きを止めてその隙に首を刈り取ろうと考える宛那…だがこの程度では削板は止められない

 

「効かーん!」

 

「な……!?」

 

削板は原石の力で石化した足がバキバキとヒビが入り崩れ落ち元の足に戻る、それを見て仰天する宛那は一瞬だが動きを止めてしまいその隙をついて削板は強化された拳を宛那の腹に叩き込もうとするが宛那は鎌でその拳を受け止める

 

「うおおおお!!」

 

「……チッ」

 

削板が力を更に込めると鎌全体に亀裂が走り宛那は方を手放して真上へと跳躍、鎌を粉砕した削板も宛那を追う様に上へとジャンプし宛那に拳を振るう

 

「そう何度も喰らうと思っているのか」

 

宛那はそう言うと両手を下へと動かす、その動きはまるで削板の身体を押し付けている様に見えた…直後削板は見えない力により床へと押し付けられた

 

「がっ……!」

 

「アテナは神話上で島を槍で突き刺して投げ飛ばし巨人 エンケラドスを圧殺死させた逸話を持つ、私が操るのは重力、重力に押し潰されるがいい」

 

宛那の重力操作により押し潰されかける削板…だが削板はこの程度で屈したりしない

 

「うおぉ……うおおおおおおおおおおおおッ!」

 

削板は力を振り絞って手足に力を入れ少しずつだが床から立ち上がり始める、それを見た宛那の眼が見開かれる

 

「な……通常の重力の何百倍だぞ?!速さがないからすぐに潰れたりはしないが動ける筈が…」

 

「は…こんな程度で倒れる程の根性なしじゃねえんだよ俺は…根性を舐めんじゃねえ」

 

そう言いながら削板は日本の足で床に立ち拳に正体不明のエネルギーを込める…そして右腕を大きく振るい宛那はそれを闇の壁で防ごうとする

 

「超……すごいパーンチ!!!!!」

 

すごいパーンチとは比べ物にならない威力の念動砲弾が宛那へと向かい宛那の闇の壁を一蹴、宛那は派手に吹き飛ばされ床に激突し何回もバウンドを繰り返し壁に激突する

 

「がっああああぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

そのまま床に倒れこむ宛那、削板は倒れた宛那には目もくれずアリサへと駆け寄る

 

「アリサ〜!敵は倒したぞぉぉ!!」

 

「うん!見てたよ!」

 

削板に笑みを見せるアリサ、削板は頷こうとしてアリサの衣装に眼をやりその派手な衣装に眼を奪われ言葉を失った

 

「……で、あの女はどうする?」

 

「拘束しておいた方がいいンじゃねえか?」

 

「その意見に賛成だにゃーん、何処かに縄はないかにゃーん」

 

上条達が宛那を拘束しようと何処かに縛る物はないかと探し始める…すると宛那がゆっくりと立ち上がった

 

「……まさかこれを使う羽目になるなんてね」

 

そう言って彼女が取り出したのは……アメジストで出来た蛇の装飾品だった、それを見たレディリーがあれは霊装だと気づく

 

「!早くあれを破壊しなさい!」

 

「!?レディリーさん?」

 

レディリーが早くあれを破壊しろと叫ぶが時既に遅し。宛那が蛇の装飾品が胸に当てる…そして装飾品は宛那の胸に吸い込まれ融合していく…そして宛那を闇色の光が包む

 

「な!?なんだあれは……!?」

 

削板が何事だと叫びアリサが無言で削板の服の袖を掴む…全員がその光景を瞬きせずに見ていた…そして光が消えるとそこに立っていたのは純白のトーガが黒一色のエジプト風の服装に変化し頭頂に赤い円盤を載せその円盤にアメジストの蛇がくっ付いていた…そして宛那の右眼のみが太陽の様にオレンジ色に光り輝き右手には灼熱の赤黒い炎が宿っていた…宛那はしばし無表情だったがふとその顔を歪んだ笑みに変貌させた

 

「……これが神威混淆(ディバインミクスチャ) セクメト=アテナの力か……ああ、漲る……漲るぞぉぉぉぉ!!!」

 

神威混淆、コロンゾンが作り出しし最悪の霊装、人と融合させる事で他者との間の無理解・不寛容を物理的な攻撃力に変換するという恐ろしい能力を持つ。そして宛那はこの霊装と相性が良かった、彼女は狂人だ。上里の為なら自らの首を差し出し彼の為なら何千人でも殺せる狂信者なのだから…だが彼女はそれをおかしいと思うことは無い、全ては上里への愛故の行動なのだから…

 

「これなら!これで!私はもっと上里様のお役に立てる!ああ上里様上里様!私は去鳴や獲冴のよりも貴方様を愛しております!故に!上里様の障害となるクソ害虫の糞野郎どもは灰燼にします!それが私の貴方へと捧げる愛なのです!」

 

エジブトの破壊神とギリシャの戦いの女神の名を持つ霊装と融合した宛那…蛇神宛那 SA(セクメト=アテナ)に戦慄する削板達…彼女は先程とは格が違う…だが削板は一歩も下がらない…惚れた女の前でその様な醜態を晒すわけにはいかないのだから

 

「そうだ、俺は…俺達はこんな所で立ち止まってる暇はねえんだ……」

 

削板はそう呟くと一歩前へと進み宛那を睨む、そして恋した少女を守る為にその強敵へと挑む

 

「……来いよ宛那、俺の根性で!お前を止めてみせる!!!」

 

「私を止められるものか!上里様の為に貴様らを皆殺しにし奇跡の子を回収する!それが私の神命なのだ!!!」

 

今まさにここで世界最大の原石と最強最悪の霊装と融合せし魔術師が激突する

 

 

 

 

 

 

 

 

 




アテナと聞けば皆さんが連想するのは美しく優しい女神…かもしれませんがそれは誤りです、ギリシャ神話におけるアテナは残酷そのものです。例えば自分よりも織物が優れていると自称し織物対決で自分の好みでない織物を作ったアラクネーに怒り彼女の織物を破壊しその恐怖のあまり自殺した彼女を蜘蛛へと変化させその弟を蛾へと変えました。そしてメデューサの髪が蛇な理由がメデューサが自分の髪をアテナより綺麗といった為、蛇に変えられそれを抗議しに来た姉達も怪物に変えたという逸話もあります…こうしてみると全然優しい神様じゃねえ…まあでもこれでもまともな方です、他のギリシャ神話の神と比べたら…(白目)。本当にギリシャ神話の癒しはハデスとヘスティア様だけです

そしてセクメトですが…実はアテナと共通点が多いです、アテナはゼウスの頭をヘーパイストスが斧でかち割って生まれセクメトはラーの右目より生まれた…両方ともまともな生まれ方してないな。更に戦いの神としての側面を持ちセクメトは自分が殺した人間の血を好みアテナも戦場を好む…そしてラーはエジプト神話において最も重要な神でゼウスはギリシャ神話の神王…意外と共通点が多い…のでオリジナルの神威混淆としてセクメト=アテナを出して見ました

さて次回は宛那との決戦、セクメト=アテナの実力と削板君の大活躍にご期待ください!……え?上条さん達の影が薄い?それは削板君がメインだからですよ。彼らは引き立て役です

次回もお楽しみに!


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愛とはこの世で一番強い力を生む力

ウルトラマンタイガを見て面白そうで今後が楽しみです、他にも今期はDr.ストーンやとある科学の一方通行、彼方のアストラもあって楽しみが沢山…全く今期は最高だぜ!後今日は七夕ですね、貴方の願い事はなんですか?

今回は物理戦メイン、削板君が女子と殴り合いをします。原作のド派手な魔法戦もいいけど偶には熱い拳の殴り合いもいいよね

阻害君は根性でどんな事も出来そうだから困る、後後半から戦闘描写が凄くなるけど原作もこんな感じじゃないかと作者は考えてしまった。音速を超えるなんてフツーフツー、フィアンマさんなんか地球を破壊できるて書かれてたし神威混淆は20巻でも猛威を振るってたからこれくらいはしないとね。

そして削板君の根性がうまくかけてるか作者は不安です



蛇神宛那は父親と母親の顔を知らない、彼女は孤児だった。養護施設の前に赤子だった彼女は籠の中に入れられて置き去りにされていた。彼女は捨て子だった、親にもせめてもの情があったのか「蛇神宛那」という名前が書かれた紙が一緒に添えられていた

 

彼女は施設では孤立していた、その日本人離れした銀色の髪と紫の瞳の所為で施設の子供達に化け物扱いされていた…小学校へ行っても、中学校へ行っても、高校に行っても変わらないと思っていた…だがそんな彼女の前に彼は現れたのだ

 

「やあ、君変わった髪の色だね」

 

「………え?」

 

彼は彼女を拒絶しなかった、彼は彼女と同じ図書委員だった。彼は目立つ容姿の宛那とは対照的に地味だった、何処にでもいる高校生…だが何処か違う…それが彼女の上里への第一印象だった

 

「……上里君は私の髪型気にしないの?」

 

「別に、綺麗な髪だとしか思わないよ」

 

上里は彼女を色眼鏡で見ない、変な髪の色の女とか捨て子と呼ぶクラスメイト達と違い彼は蛇神宛那をみてくれる…それが宛那は嬉しかった

 

(……上里君だけだよ、私と普通に接してくれるのは)

 

彼女はそんな上里に恋心を抱いていた…そして六月の上旬…上里の右手が覚醒したあの時…宛那は魔術師としての才を得た…その力を手にした時宛那は誓ったのだ。この力を惚れた相手(上里)の為に使うと

 

「そしたらいつか……上里君は私を選んでくれるかな?」

 

 

 

エンデュミオンのライブ会場で削板と宛那は睨み合う、両者の戦う理由は非常に似ていた。宛那は上里の為、削板はアリサの為…自分が恋した異性の為に二人はこの場に立っていた

 

「………ッ!」

 

宛那が動いた、両手に宿らせた赤黒い炎が更に激しく燃え音速の速さで削板へと迫る

 

「うおぉぉぉぉぉ!!!」

 

対する削板も音速の速さで拳を振るう、炎の拳と正体不明の力を纏った拳の激突。利用者の拳は拮抗し周囲の床に亀裂が走る…だがじわじわと削板の拳が後ろに下がり始める

 

「な………!?」

 

「ふ!」

 

宛那は更に力を込めて削板の拳を押し返す、そして削板の体勢が崩れるとその身体に拳を叩きつけて吹き飛ばす

 

「ぐ!?」

 

なんとか足に力を込め後ろに飛ぶのを堪えた削板、彼は反撃とばかりに右ストレートを放つ。だが宛那はそれをいなし削板の腹に足蹴りを命中させる

 

「がっ!?」

 

よろめいた削板に宛那は削板の身体に雨の様に拳を連打、一つ一つの拳の衝撃は空から落ちてきた隕石の激突に匹敵するその威力に削板は風に飛ばされた葉っぱの様に吹き飛ばされた

 

「削板!?くそ!」

 

「お前達の相手はこいつらだ」

 

上条が吹き飛ばされた削板の名を叫ぶ、そして上条が宛那に殴りかかろうと駆け出そうとするが宛那が指を鳴らすと宛那の影から無数の黒い炎で出来た蛇と梟、ライオンが出現する

 

「我が眷属達と戦っていろ。まずはあの男から先に殺す」

 

宛那はそう言うと未だに倒れたままの削板の元へと駆け出す、上条は目の前に現れたライオンに右手と触れ消滅させるが直後に蛇や梟、別のライオンが襲いかかりそれの相手をする所為で近づけない。美琴も食蜂を守りながら蛇達を蹴散らし一方通行も麦野も蛇達の相手で精一杯だった

 

「死ね」

 

宛那はそう言うと炎を纏った闇の鎌で削板を斬り裂こうとする、だが削板はそれを両手で受け止めその刃を折る

 

「まだまだぁ!こんなもんで俺は負けるわけにはいかん!」

 

「暑苦しい男だな、そんなにもあの女が大事か?」

 

「ああ!惚れた女の前ではカッコつけたいからな!」

 

「……ほう?だが私も負けるわけにはいかんのでな、上里様の為にも貴様らを鏖殺し「奇跡の子」を捕らえる!」

 

宛那はそう叫ぶとガトリングガンの如き拳の連打を放つ、削板もそれに対抗する為に拳を音速の二倍で振るい宛那の連撃に猛攻。拳と拳が激突しその余波で会場が破壊されていく、そして宛那の右拳が削板の顔面に直撃。宛那はふと笑うが直後油断した宛那の顔面に削板の左ストレートが炸裂

 

「ごぶぁ!?」

 

宛那は思わず後ろへと後退し顔面を右手で触る…鼻血が流れ舌を噛んだのか口からもポタポタと血が落ちる…宛那は乙女の顔を殴った削板に怒りの眼を向ける

 

「……嫁入り前の乙女の顔を殴るなど…非常識極まりないな」

 

「…確かにそうかもな、だがお前は自分の意思で俺と戦ってるんだ。つまり傷つく覚悟があるて事だろ?」

 

「……それもそうだ、私は上里様の為なら自らの顔を剥ぐ覚悟もある…この程度など軽いものか」

 

削板が戦う覚悟があるなら傷つく覚悟もある筈と言うと宛那はごもっともだと拳を構える、宛那が腕を振るう…それだけで灼熱の炎の波が削板に迫る。削板は口から音響兵器に似た咆哮と共に謎の波動が放たれ炎の波をかき消す、ならばと宛那は無数の闇の刃を作り出しそれを投擲

 

「すごいパンチガード!」

 

その刃の雨を磁力戦線(オーロラガード)と呼ばれる蜃気楼のような謎波動を纏った拳で弾いていく。そして刃を弾きながら宛那へと迫り右ストレートを放つが宛那は跳躍しそれを回避、そして右目を大きく見開きそこから太陽光の光線を発射、人を焼き殺すどころかエンデュミオンを蒸発させかねない程の威力を秘めたその一撃を削板は赤青黄色のカラフルな爆発を背負いその光線を受け止める

 

「超すごいガードぉぉぉぉぉ!!!」

 

右目からの光線を削板は両腕に力を込めて踏ん張る、所々から超すごいガードの煙が破れ太陽光線が漏れ出すが削板はそれを自分の手で穴が空いた部分を塞ぐ。直後焼け付く様な痛みが削板を襲い削板は思わず叫び声を出しそうになるが必死に堪える

 

「渋といな…さっさと消え失せるがいい!」

 

宛那が更に光線の威力を高め超すごいガードが削板の手では抑えきれない程崩壊が広がる…削板もこれ以上は限界だと諦めかける

 

「させるか!優先する!原石を上位に!魔術を下位に!」

 

「……む?」

 

上条が幻想片影で光の処刑を発動、優先順位を入れ替え削板の超すごいガードで太陽光線を受け止められる様にした。宛那はその事に眼を細めるが削板が叫び声をあげて超すごいガードを殴りつけ宛那へと太陽光線ごと吹き飛ばす

 

「ふん」

 

宛那は背中から梟の翼を出現させ飛翔、それを回避すると足に炎を宿らせ削板へとドロップキックを放つ、削板はそれを腕をクロスさせて防御し宛那の足を受け止めるとクロスを解き宛那の足を右手で掴みハンマー投げの様に宛那を壁へと投げ飛ばす

 

「ぐぅ!」

 

壁に激突した宛那は苛立ちつつも自らの炎をライオンの様な荒々しい鉤爪に変化、削板へと音速で迫るとその鋭利な鉤爪で斬りかかり削板も蜃気楼の様な謎波動を拳に纏って鉤爪とぶつけ合う

 

「……凄い、これが……超能力者」

 

アリサは目の前の光景に見惚れていた、それはまるで漫画の世界の様、拳と拳の激突、炎と謎の波動の衝突、能力による攻防一体…そんな光景を見てディダロスとシャットアウラは冷や汗を流しているがアリサには不思議と恐怖はなかった

 

(……軍覇くんなら勝ってくれるよね)

 

アリサは削板を信じていた、絶対に勝ってくれる、宛那なんかには負けないと彼女は奇跡(勝利)を信じていた

 

「くそ!キリがねェな!」

 

「倒しても倒しても湧いてきやがる!」

 

「これは術者本人を倒さなきゃいけないとかそう言うタイプみたいね!」

 

「もう!本当にしつこいんだゾ!」

 

一方通行は強化した足で蹴りを放ちライオンの頭を粉砕する、麦野の原子崩しが空中を縦横無尽に飛び回る梟を撃ち殺す、美琴の電撃の壁で蛇達が黒焦げになる、食蜂のフリーズドライに似た現象でライオンも梟も蛇もボロボロと崩れ去る…だが数は一向に減らない…影という影、闇という闇から蛇達は無限といっても過言ではない程溢れ出てくるのだ

 

「……頼むぜ削板」

 

上条は蛇達を右手で触れて消滅させながら宛那と戦う削板を一瞥する

 

「ふん!」

 

削板は一蹴りで宛那の近くへと移動し宛那は翼を羽ばたかせれ空中へと逃げる、だが削板は空気を蹴って空中歩行で宛那へと近づく

 

「空気を蹴っているだと…?」

 

「空気を蹴るくらい普通だろ?」

 

削板の右ストレートが宛那へと迫り宛那は鉤爪をクロスさせその一撃を防ぐ。そして宛那が鉤爪を振るい削板の体の表面を浅く裂き血が滲み出る

 

「すごいパーンチ!」

 

削板のすごいパーンチを宛那は軽くいなしながら炎の鉤爪を振るう、その度に削板の体を裂き血が流れるが削板が力を込めると血は止まる。宛那の拳が振り下ろされ削板の頭部に当たり脳震盪を起こすが根性で踏ん張り宛那の顎にアッパーを叩き込む、宛那は痛みを堪えながら翼を羽ばたかせ床に降り立つと左目を大きく見開く

 

「石化せよ」

 

そう言った直後削板の体全体が石になり始める、だが削板が力を込めると身体から赤青黄色の爆発が発生し石化した表面が粉々に吹き飛ぶ。ならばと宛那が闇から生み出した毒蛇が削板を丸呑みにしようと大口を開けるも彼は両手でその顎を受け止めそのまま真横に引き裂き蛇は闇へと帰った

 

「隙だらけだぞ」

 

宛那は赤黒い灼熱の炎を纏った脚で削板を蹴りつける、削板はそれを右腕で防ぎカウンターを放つが宛那はひらりと避け鳩尾に拳を叩きつけ削板を吹き飛ばし床にめり込ませる

 

「見抜いたぞ、貴様はその怪力とその能力こそ厄介だが…武術など身につけていない…我流の戦い方なのだな」

 

削板は武術など知らない、彼はがむしゃらに筋肉を鍛えているだけでありボクシングや空手の様な武術の心得はない…それを戦いの中で見抜いた宛那。彼女は更に両手の炎の火力を上げ鉤爪を更に鋭くする

 

「この霊装も身体に馴染んできたところだ、ウォーミングアップはもうおしまいといこう」

 

宛那は霊装の力を十二分に発揮出来る様になったと呟くと両手を広げ片足を思い切り地面に叩きつけ跳躍、一瞬で削板へと肉薄し彼の身体に炎を纏った拳を何百発も叩き込む、一発一発がナパーム弾2、30発に匹敵する威力で身体に命中する度に小規模な地震に匹敵する程の振動が周囲を破壊していく

 

「あははははは!これがセクメト=アテナの本領だ!」

 

ラッシュ、ラッシュ、ラッシュ、ラッシュ。連続して放たれる拳が削板を襲う、削板は反撃する暇もなく拳の連撃に派手に吹き飛ばされる、それでもなお立ち上がる削板に宛那は下段回し蹴りを放ち削板の足の骨を折る

 

「がっ!?」

 

呻く削板など気にせず宛那はガラ空きになった腹に鉤爪を突き刺す、鈍い音がした。それは炎の鉤爪が削板の身体を貫通した音だった

 

「削板あああァァァァ!!!!」

 

上条の叫びが会場に響く、ごふっと削板は血反吐を吐き出しその血が宛那の顔に思い切りかかる、それを不快に思ったのか宛那は顔をしかめながら削板を突き刺した右手を振るい削板を壁へと激突させ削板は床に倒れこむ

 

「宛那ぁぁぁぁ!!!!」

 

ーーーグギィガアアアアァァァ!ーーー

 

上条が宛那の名前を叫ぶと彼の腕が変化し始め竜王の顎(ドラゴンストライク)へと変貌させる、それで周囲の蛇達を消滅させ竜王は宛那へと向かう宛那はそれを一瞥し翼で飛翔、竜王の顎も宛那を目掛けて空へと首を伸ばすが宛那の方が速い

 

「その竜については最大主教から聞いている、あらゆる魔術、霊装、超能力を破壊すると…だがその竜が脅威なだけで貴様自体は大した脅威ではない」

 

宛那はそう言うと無数の闇の刃を放射、竜王はそれを飲み込む又は破壊していくが宛那は右手に眩い光を、左手に漆黒の闇を展開し両掌を合わせゆっくり開いていくと頭上に闇と光が混ざり合った混沌の球が出現する

 

「西洋人にはエジプト神話が理解できずギリシャ神話を対応させ解釈した…それがこの霊装の本質、お互いがお互いを諦めてしまう悪意を火力へと変化する。お前達には私の行動は一切理解できない、私もお前達の行動は一切理解できない。それでいい、それこそがこの球の威力を高めるのだから」

 

宛那は混沌球を竜王へと叩き落とす、竜王はそれを丸呑みにしようとし顎を広げる…そして混沌球と竜王は激突し竜王が喰らおうとするが混沌球に無数の亀裂が入るだけで消えていかない…それ程この球には絶対な質量があるのだ…だが竜王の顎は更に力を込める

 

ーーーグギィガアアアアァァァ!!ーーー

 

バキン!と竜王が球を噛み砕いた、光の粒子となって消えていく球を見て竜王は次は宛那を飲み込もうとするが肝心の宛那がいない

 

「な!?何処に…」

 

上条が何処へ行ったと周囲を見渡す…だがその返答は自分の背後から聞こえた

 

「お前の後ろだよ」

 

言葉と同時に放たれた遠心力を最大限に生かし威力を高めた回し蹴りが上条の腹へとめり込む。上条は自分が蹴られたと理解したと同時に壁に激突し意識が一瞬飛んだ

 

ーーーグギィガアアアアァァァ……ーーー

 

竜王の顎は上条の意識がほんの僅か無くなった瞬間に存在が保てず粒子となって消えていく……上条は立ち上がろうとするが激痛が走り痛みを堪える…宛那の蹴りで肋骨にヒビが入ったのかもしれない

 

「先輩!」

 

「上条さん!」

 

美琴がコインを弾き超電磁砲の発射準備の構えをとる、食蜂がリモコンを向け美琴の精神に介入、最大の必殺技 液状被覆超電磁砲(リキッドプルーフレールガン)を宛那へと放つ、だが宛那は右掌を広げそこから太陽の紅炎(プロミネンス)と見間違える程の火柱が出現し液状被覆超電磁砲のコインを焼失させその余波で美琴と食蜂をステージの床まで吹き飛ばす

 

「チッ……化け物が」

 

麦野が0次元の極点で宛那の背後へと出現、原子崩しを無数に放つが宛那の側面に黒い穴が誕生し原子崩しはブラックホールに吸い込まれる光の様に吸い込まれていった

 

「な……!?」

 

驚く麦野に宛那は思い切り彼女の腹に拳を叩きつける、麦野の身体がくの字に曲がりその場に倒れこむ…宛那は右手の鉤爪でトドメを刺そうとするが一方通行が放った暴風を反対の左手で受け止める

 

「調子に乗ンなよクソが!」

 

二段蹴りの容量でエンデュミオンの床を砕き砕いた床の一部分を思い切り蹴り飛ばす、それだけで超電磁砲以上の速度で床の一部が進み衝撃波となって宛那を襲う。宛那は衝撃波に向けて左の手で扇ぐ、それだけで衝撃波が蹴散らされる

 

「霊装の本領を発揮してしまえば…こんなものか」

 

宛那はそう言うと右目を大きく見開く、そして一方通行の周囲が大爆発を起こし床や壁が融解する…それはフレアそのもの、そして爆煙が晴れるとそこには床に倒れこむ一方通行の姿が…

 

「酸素をなくしてしまえば貴様でも対処できまい」

 

その爆発のせいで殆どの酸素がなくなり酸素濃度を低下させて酸欠を起こした一方通行にそう言う宛那、ほんの3分で宛那は超能力者を片付けそれを見たアリサ達は戦慄する

 

「ま、だだ……俺がいるぞ宛那」

 

「まだ立ち上がるか、渋といものよ…だがお前一人で何が出来る」

 

上条は立ち上がりまだ戦えると叫ぶが宛那は上条一人で何が出来ると皮肉げに笑う、美琴と食蜂は床に倒れ気を失い、麦野も意識を保っているので精一杯、一方通行は酸欠で気を失った、削板も足を折ってしまえば動けない…宛那は勝利を確信した

 

「何故そこまで奇跡の子の回収を阻止しようとする?貴様らにとって赤の他人だろう?」

 

「赤の他人じゃねえ、アリサは俺達の友達なんだ…助けるのは当たり前だ」

 

「……は、友達……か、人間ではない存在(・・・・・・・・)を友達と呼ぶのか貴様らは」

 

「……どう言う意味だ?」

 

その言葉に反応したのはシャットアウラだった、宛那は今こう言った、アリサは人間ではないと、シャットアウラはどう言う意味だと宛那に尋ねディダロスは目を見開く…アリサは自分の正体を知っているのかと宛那を瞬き一つせず見ていた

 

「…シャットアウラ=セクウェンツィア、貴様はオリオン号で祈った筈だ。自分の大事なものと引き換えに皆を助けてくれ…とな」

 

「……何故それを知っている」

 

「そんな事はどうでもいいだろう、その願いが奇跡を生んだ、お前の"音楽を認識する脳の機能"と引き換えに生み出された奇跡の具現化…それが鳴護アリサ、お前だよ」

 

「……奇跡の具現化?」

 

「心当たりがある筈だ、お前の周りで奇跡は起こった事はないか?普通ではあり得ないような自体が起こった事がある筈だ、そうまるで奇跡の様な現象が」

 

アリサはシャットアウラが失ってしまった音楽を認識する脳の機能を媒体に生み出された奇跡の結晶だと宛那は笑いながら言う、アリサは今まで自分の周りで起こった事件を思い出す、確かに宛那の言う通り奇跡と呼べる現象が起こっていた

 

「だがその奇跡は代償がある、必ず誰かが怪我をしてしまう、等価交換というやつだな、奇跡で大多数を救う代わりに一人が犠牲になる…所詮貴様の奇跡はその程度だよ」

 

宛那は見下した様にアリサを嘲笑う、所詮奇跡などそんなものだと…上里とは比べ物にならないと言わんばかりに嘲笑う

 

「しかし馬鹿な奴らだな、人間でない奴と人間の友の様に扱い助けようとするなど…馬鹿げている、お前達は船や動物を擬人化させて発情しているオタクか?奇跡の擬人化と友達とは全く笑わせる」

 

「テメェ………!」

 

宛那の心無い言葉にアリサは涙をこぼしそうになる、自分は人間ではない、それは心の奥底で分かっていたのかもしれない…自分は人間じゃない、ならあの少年に恋してはいけなかったのか?アリサの悲痛な表情を見て上条が叫ぼうとした時

 

「取り消せよ」

 

「!?」

 

その言葉を放ったのは削板だった、宛那は目を見開く、削板の足は折れている筈だった、なのに彼は両足で立って宛那を睨んでいる

 

(まさか…折った骨をくっつけたのか?あり得ん、そんな事できる筈が…)

 

「……取り消せよさっきの言葉、アリサに言った言葉を」

 

削板は宛那を見据えながら口を開く

 

「人間じゃない?だからどうしたんだ?人間じゃないから仲良くしちゃいけないのか?奇跡の具現化?だからどうした、アリサは人間だ、俺達と同じ楽しい事があれば笑うし悲しい事があれば泣く…どこにでもいる女の子だ…少なくともお前にそんな事を言う言われない」

 

アリサは削板の言葉を聞いて目を見開く、彼は立っているだけで辛い筈なのにそれを堪えてまで宛那と戦うとしている…何がそんなに彼を奮い立たせるのかアリサには理解できない

 

「何故だ、何故立ち上がれる?!何故諦めない?!」

 

「は、決まってんだろ」

 

宛那のその問いに削板は顔に笑みを作ってその言葉を呟いた

 

「好きだから、アリサが好きだから。だから俺は折れねえんだ」

 

アリサはその言葉を聞いて顔を赤くした、愛の為に自分は根性を奮い立たせて宛那に立ち向かっているのだと、愛とは根性、根性とは愛だ。アリサを守る為なら何度でも立ち向かう

 

「……ならばそのボロボロの身体で何処まで立ち向かえるか見せてもらおうか」

 

宛那は炎の鉤爪の火力を上げ炎の翼を漆黒の闇を噴出する翼へと変化、今の削板が一撃でも喰らえば死んでしまうかもしれない…それでも彼は止まらない

 

「……歯を食いしばれよこの根性なしが」

 

削板は最後の力を振り絞って宛那へと迫る、宛那の鉤爪が削板を狙う、それを削板は紙一重で避け宛那の胴体に拳を突きつける。宛那は痛みを堪えながら左手の鉤爪を振るい下ろす、それを避けて至近距離からすごいパーンチを放つ削板、その衝撃を足に力を入れて踏ん張る宛那に削板は音速を超える動作で宛那に詰め寄り宛那の頭部を掴み床に叩きつける

 

「おのれぇ!」

 

宛那は反撃とばかりに周囲の闇という闇から蛇を無数に召喚、削板に襲いかかられるが削板はそれを謎の爆発で薙ぎ払い宛那へと殴りかかる、それを避ける宛那に追いかける削板

 

「……何でそこまで頑張るの軍覇くん」

 

それを見てアリサは何故自分の為に頑張るのかと呟く、自分は人間ではないのに、何故ここまで頑張れるのかと…

 

「決まってるじゃない、貴方がそれだけ好きなのよ」

 

「!レディリー……さん?」

 

その問いに答えたのは血で赤く染まった服の腹の部分を抑えながらアリサに近づいてきたレディリーだ、彼女はそれだけアリサが好きなんだろうと呟く

 

「でも私は人間じゃ…」

 

「それでも彼は貴方が好きなんでしょう、それにそれも言ったら私も同じよ、八百年以上も生きてる人間…それは人間と呼べるのかしらね?でも垣根は言ってたわよ、私は人間だってね」

 

レディリーはそう言って笑うと削板と宛那の戦いを見る…削板が圧倒的に不利だ、セクメト=アテナを打ち破るには削板にも圧倒的な力が必要だ、それこそ覚醒した未元物質か天使崇拝レベルの力が

 

「信じなさいアリサ、彼の勝利を、奇跡が起こると……」

 

「……奇跡」

 

レディリーには削板の勝利を信じることしか出来ない、誰も削板を助ける事ができないなら奇跡を信じるしかないと…だがアリサは違った、奇跡を待つのではない、起こす(・・・)のだと

 

(……お願い、私の全てを犠牲にしても構いません…だから軍覇くんに…私の好きな男の子に勝利を……お願い、勝って軍覇くん)

 

アリサは両手を合わせ祈る、削板の勝利を…その為なら自分を犠牲にしてもいいと…彼女がそう祈った時その奇跡は起こった

 

(……何だ?何か分かんねえが…何か…何かを掴めそうな気がする)

 

宛那との戦いの中削板は自分の中の何かが変わる気がした、否理解したという方が適切か、自分の能力、自分でも一切理解できずどんな力か分からなかったその能力…それを何か掴んだ気がする

 

(…この力が何なのかは分かんねえ、だが…使い方は分かる…何で今分かったとかそんな事はどうでもいい…)

 

何故今理解できたのか、何者かの意図があったのか単なる偶然か…彼にはどうでもよかった。重要なのはたった一つだ

 

(アリサを守れるのならそれでいい)

 

恋した少女を守れるのならそれでいい、その力に何かしらの代償があったとしても構わない、アリサを守れるのならそれも受け入れる。削板は力の片鱗を掴んだ、直後削板の周囲が爆ぜ宛那が吹き飛ばされる

 

「なぁ……!?」

 

宛那は吹き飛ばされ床をバウンドし壁に激突する事でようやく止まる、そして削板を見る…彼の周囲には蜃気楼に似た赤青黄のエネルギーが充満していた。そのエネルギーは削板を包み込むように彼の周囲に漂っていた

 

「……何が起こった?」

 

宛那のその問いに削板は答えない、彼は両手を広げ彼は説明できないその力を具現化し武器として顕現させようとする、連想するのは自身が真っ先に思い浮かぶ最強の姿…彼の脳裏には垣根の姿が思い浮かぶ、正確には彼の力の根源たる翼だ

 

(……そうか、帝督も当麻も…誰かを守る時はこんな気持ちだったのか)

 

垣根が覚醒した未元物質を展開する時はいつも決まって守るべき何かがあった

 

自動書記の時はインデックスの幸せとステイルと神裂の思いを、アウレオルスの時はアウレオルスのインデックスを守りたいという気持ちを、ガブリエルの時は上条の両親を守る為に、木原病理の時は自分達を守るために

 

上条もそうだった、竜王の顎を覚醒させた時もアウレオルスの信念を守りたかったから、ガブリエルの時も自分の家族を守る為、今だってアリサを守る為に竜王の顎を出現させた

 

(これが大事な人を守る為の力か)

 

削板もアリサを守る為にその力を解放した、削板の目が一瞬発光しその瞬間彼の背に力が集結し赤青黄の煙の柱として形成された。それは煙を圧縮し背中にただくっついているだけとも四枚の翼にも見える…アリサはそれを見てこう呟いた

 

「天、使………?」

 

その一言と削板が宛那へと肉薄し拳を放ったのは同時だった、削板の拳が宛那の腹にめり込み宛那は音を置き去りにして吹き飛ばされた

 

「がっああああああああああああああああああああああああああああああああッ!?」

 

宛那は背中に激痛を感じた、その痛みは自信がエンデュミオンの内部の壁、もしくは天井を破壊しているからだと気づく間も無く宛那の視界に黒い空間が映った…星々が瞬く夜空…違う宇宙空間。そこに宛那は浮いていた

 

(な、何が起こった!?何も見えなかった!?気づいたら痛みが襲いそしてエンデュミオンから宇宙に浮いていた?どういう事だ!?)

 

削板が取った行動は実にシンプルだった、ただ宛那を殴る、それだけだ。だがその行動をとった彼には速さという概念はなかった、そして宛那との距離というものを無視して殴りつけた様に第三者からは見えた。そして単に殴りつけただけでエンデュミオンの内部から宇宙空間まで吹き飛ばす桁違いの威力という事しか理解できなかった

 

「…………」

 

彼の背中の翼が音を立てて広がる、それは今にも大空に飛び立とうとする鳥の様、それを見てアリサは削板に口を開く

 

「………頑張ってね」

 

「………おう」

 

その短い会話だけで十分だった、翼が羽ばたいたかと思うと削板の姿は一瞬で消え動いた時に起こる風圧がまるで台風の如き暴風を撒き散らしていた…アリサは微笑む。絶対に削板が勝つと信じて

 

 

「!?」

 

宛那は嫌な予感を感じ両手をクロスさせる、それと同時に削板の拳がクロスさせた両手に命中し宛那は吹き飛ばされるも翼を羽ばたかせそれを何とかその場に止まった

 

(まただ…いきなり現れたぞ…瞬間移動?いな、違う…ただ単に早いだけだ…音速や光速などという次元ではない…これが世界最大の原石…)

 

その余りの桁違いさに宛那が苛立つ、だが負けるとは思っていない。セクメト=アテナの力があれば原石の力など打ち砕いてやると言わんばかりに鉤爪を削板に振るう、だが削板の身体にぶつかると同時に炎の鉤爪が音を立てて砕け散った

 

「は………?」

 

宛那が目を見開いたと同時に削板は宛那の背後へと回り宛那にすごいパーンチを放つ、それを宛那は左手の鉤爪で打ち消し右手の鉤爪を再生。右目から太陽光線を放つが削板はそれを翼でガードし反対側の翼を宛那の腹に突き出し宛那を吹き飛ばす

 

「ぐあっ……!」

 

そのまま宛那は月まで落下していき月面に激突、大きなクレーターが出来その中心に宛那は横たわっていた。そして月面に削板が着地する

 

「立てよ、これくらいじゃあお前は倒れねえだろ」

 

「馬、鹿な…何だこの力は…それに何故宇宙空間にいるというのに息が出来る(・・・・・)!?」

 

「?そういえば何でだろうな、まあそんな小せえ事よりもお前と決着をつける方が先決だな」

 

削板は何故自分が宇宙で息が出来るのかと疑問に思うがそんな事はどうでもいい、今は宛那を倒す方が優先だと呟く

 

「……私は負けるわけにはいかない、上里様の復讐の為に!私は負けぬ!」

 

「来いよ、宛那。俺の根性、俺のアリサへの愛てのを見せてやる」

 

上里の為に戦う者(宛那)アリサの為に戦う者(軍覇)が同時に動いた、二人の拳が月面にてぶつかり合い月面に亀裂が入る。そして二人は何度も何度もお互いの身体に拳を刺突させ血を吐き出しながらお互いの敵に拳を振るう

 

「俺はお前に勝つ!アリサを守る為に!」

 

「私は負けない!上里様の為に!」

 

「俺の根性でお前に勝つ!」

 

「私の全ては上里様の為に!」

 

一方的な会話をしながら二人は殴りつけるのをやめない、削板の拳が宛那の顔面に当たる、宛那の鉤爪が削板の体を裂く。互いに傷ついても削板はその力で傷口を止血し宛那は傷口を再生する

 

「私は奇跡の子を回収する!それが私の使命なのだ!」

 

「そんな事はさせん!アリサは俺がこの手で守ってみせる!」

 

「何故だ!何故そこまであの女を守る!」

 

「好きになった女を守るのは当然だろうが!」

 

拳と拳の激突、炎を纏いし拳と説明不可のエネルギーを纏った拳。二人は音速を超えた挙動で動き彼らが動く度に月面が破壊され亀裂が入っていく…何度も何度も拳が激突しその余波で起こった衝撃波で更に地形が破壊される、宛那の太陽光線は翼で防がれ石化の蛇眼も全身を覆い尽くす説明不可の力に阻まれる。音速を超えた速度で放つ闇の刃も背中の翼を振って薙ぎ払われる

 

「これが超能力者第七位…これが世界最大の原石の力……」

 

「いや違うな、これは根性よりも凄え力…愛の力で奴だ。覚えとけ」

 

「……愛、か。だが愛なら私も負けない!上里様への愛は去鳴にも獲冴にも誰にも負けない自信がある!私の行動は全て上里様の為!」

 

「……じゃあ何でお前はあいつを止めねえんだよ」

 

「何?」

 

削板はこの力は愛のなせるものだと叫ぶと宛那も上里への愛なら誰にも負けないと叫ぶ、だが削板はじゃあ何故上里を止めないと言い宛那は目を見開く

 

「俺は復讐に溺れかけた奴を知ってる、そいつは苦しそうだった、俺には復讐したいて思ったことがないから分かん!上里て奴が何をそんなに恨んでるのかも知らない!もしかしたら俺達が悪いのかもしれない!だがそれに無関係な奴を巻き込むのはおかしいだろ!」

 

削板は垣根が木原への憎悪に取り憑かれた姿を知っている、それはとても辛そうだった。上里もきっと同じなのだろう。何か許せない事があって学園都市に攻撃を仕掛けているのかもしれない…だが無関係な人達を巻き込むのはおかしい筈だ、アリサにしても、アリサのライブを聞きにエンデュミオンに来た人達も、地上でトライデント達の攻撃を受けている人達も無関係な筈なのに…何故巻き込んだのか…それに

 

「なんで止めてやらない!お前は上里て奴が好きなんだろ!?なら止めてやれよ!復讐なんてそいつが辛いだけなんだよ!本当に好きならそいつの行動を肯定するんじゃなくて否定してやれよ!好きな奴が間違えを起こしているなら止めてやるのが愛てもんじゃねえのかよ!」

 

それは詭弁かもしれない、上里には上里の事情があるかもしれない。それは削板の一方的な主張かもしれない、相手の考えを間違っていると一方的に言っている様なものだ

 

「知った様な口を聞くな!貴様に何がわかる!あの時から上里様は……上里君(・・・)は変わり果ててしまった!願ってもない力の所為で周囲の女の子達の人生が捻れ上里君の人生も狂ってしまった!それもこれも全ては魔神の所為!そして魔神達が『採点者』として見ていた幻想殺しに介入し過ぎて理想送りを誕生させてしまう結果となった垣根帝督の所為だ!」

 

「……帝督の所為で理想送りが誕生した…だと?」

 

「そうだ!最大主教の話では魔神は幻想殺しは歪められた世界を正す為に存在する『世界の基準点』だった、上条当麻は魔神達の採点者だった…それを垣根帝督が歪めた!故に魔神達は失望し幻想殺しの代わりとなる力…理想送りを誕生してしまった、そんな魔神達の身勝手で上里君の人生が滅茶苦茶になった!だから私は許さない!理想送りを誕生させた魔神達も!それを作るきっかけになった垣根帝督も!上条当麻も!学園都市も全部全部破壊して破壊し尽くしてやる!全ては上里君の平穏の為に!」

 

垣根が上条と接触した所為で魔神達の計画から大きくズレが生じ幻想殺しは使い物にならないと判断した魔神達が幻想殺しの代わりとなる力を望んだ、それが理想送り。それを宿した所為で自分の恋した男の子の人生が狂ったと叫ぶ宛那、だから彼女は魔神達も垣根も上条も学園都市も許さない。彼女の怒りは全てを焼き尽くし灰燼にするまで止まらない。上里が平凡な高校生に戻るまで彼女は殺戮をやめないのだ、まるでエジプト神話のセクメトの様に、ギリシャ神話のアテナの如き執念で…だがそれを聞いて削板はこう返した

 

「馬鹿なのかお前は」

 

「な…!?」

 

ただ簡潔に削板は馬鹿と返した、その答えに宛那は目を見開く。それを無視して削板は口を開く

 

「確かにそれは魔神て奴らが悪いな、勝手に当麻に期待して自分達の役に立たないと思ったら別の奴に頼る…トンデモねえ根性なしな奴らだ…だが帝督を責めるのも当麻を責めるのも筋違いだろ!」

 

「そんな事あるか!垣根帝督の所為で理想送りが生まれた!上条当麻が垣根帝督とさえ合わなければ上里君は不幸にならなかった!垣根帝督がいなければこんな事には「巫山戯んな!」!?」

 

「帝督がいなかったら俺は変われなかった!当麻も不幸のままだったかもしれない!確かにお前らには全ての元凶かもしれねえが…俺らにとって帝督は大事な友達なんだ!」

 

削板は垣根と上条、そして学園都市を恨むのは筋違いだと叫ぶ、そして垣根を全否定した宛那に削板は拳を振るう。それを宛那は回避し削板に怒りの咆哮をぶつける

 

「お前らの友情なんざ関係ないんだよ!上里君の人生滅茶苦茶にした罪は未来永劫地獄で贖いやがれ糞野郎共がぁぁぁぁぁ!!!」

 

宛那の絶叫と共に彼女の背に生えた右側の闇の翼が光の翼へと変貌する、右の光の翼と左の闇の翼…混沌の両翼で飛翔し削板は四枚の翼を羽ばたかせ宛那を追尾する。宇宙空間で黒と白の流星と赤青黄の流星が激突を繰り返す、宛那は掌から太陽に匹敵する熱量を誇る火球や全てを焼き払うプロミネンスを放射。削板は火球を拳で弾く、プロミネンスは口から放った謎の波動で相殺する。再度二人は激突、3回ほど激突を繰り返した後宛那は闇の刃を放つ、その数は数十万…だが削板は翼を横に振るう事で全て粉砕する

 

何度も何度と彼らは激突を繰り返し宇宙空間を駆ける、削板が放った謎の波動を彼女は左手で防御、削板が放ったすごいパーンチも宛那は右手から放つ太陽光線で相殺する。何回も攻防と激突を繰り返し宛那はエンデュミオンの前方へと現れ削板もエンデュミオンに背を向ける形で彼女の前に現れる

 

「これで終わりだ……」

 

宛那はそう言うと翼が何十メートルにも広がり両手を頭上へと掲げる。そして生み出されたのは黒と白が混ざり合った球体…それは上条へと放った魔術だが規模が桁違いだった。その大きさは半径30キロメートル、もはやその大きさは擬似天体と表現するしかない…それを削板目掛けて放ったのだ

 

「エンデュミオンごと消えてなくなれぇぇぇぇ!」

 

宛那のその一撃は避ければ背後にあるエンデュミオンを破壊し尽くしアリサ達も死んでしまうだろう、だから削板は避けない。そう宛那は思っていた…事実削板は避けなかった。彼は右手に力を集中させその右手でその擬似天体を払いのけた

 

「……は?」

 

宛那の気の抜けた声と共に払いのけられた擬似天体は爆散、その衝撃波は宛那にも届き周囲に散らばっていたスペースデブリが吹き飛ぶ…宛那は自分の最大の技がまさか払いのけられるとは思ってもみなかった宛那は呆然としその隙を削板は見逃さなかった

 

「終わりだ…ハイパーエキセントリックぅぅ……」

 

「!くそ!」

 

宛那は削板が拳を構えたことから大技が来ると察し自身を覆う様に光と闇の翼を繭の様に丸め防御態勢に入る。更に何重にも闇の障壁を展開しその一撃を堪える様にする

 

「ウルトラグレートぉぉ……」

 

削板は翼を思い切り羽ばたかせ一瞬で宛那を覆う闇の障壁へと肉薄、その凄まじいエネルギーが込められた拳を障壁へと思い切り突きつけると闇の障壁は飴細工の様に砕け散り光と闇の翼に守られる宛那の姿が露わになる

 

「ギガエクストリームぅぅぅ……」

 

削板はそのまま翼に拳を激突、それだけで宛那を守る最後の障壁が粉々に砕け散った。宛那の眼が大きく見開かれ迎撃の為に拳を振るおうとするがもう遅い

 

「もっかいハイパーぁぁぁぁ…」

 

削板の目が発光する、彼の背の翼が何十メートルも巨大化し更に力がその右手に込められる。その光景を見て宛那は理解した、その力が一体なんなのかを…

 

(ま、さかこの力は原石とAIM拡散力場の…?あり得ない…天然と人工が混ざり合っているなど…いや、そう言うことか?なら超能力者とは……科学における人工天……)

 

「すごいパーンチぃぃぃぃぃぃ!!!」

 

宛那の思考を遮る様に削板の拳が宛那の左頬に激突、宛那の身体は猛スピードで突っ込んできたトラックに激突したかの様に地球の方向へと派手に吹き飛ばされ地上へと堕ちていく

 

「削板軍覇ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

彼女は隕石の様に堕ちていった、彼女の身体は炎に包まれ地上へと墜落していく…身体は火に包まれ少女の姿は見えない、宇宙空間には彼女の怨嗟の声が響く。宇宙空間に佇むのは勝者(削板)ただ一人

 

 

それは一人の少年の根性()が狂愛の少女に打ち勝った瞬間だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




愛の力で敵を倒す、根性と奇跡で覚醒して強敵蛇神宛那SAを撃破。とまあ戦闘描写はかなり雑だったと思います。上条さん達が軽く撃破されましたし…ただ言い訳をさせてもらうなら神威混淆て新約のボスですし新約のボスまで対抗できる様になってるのは今の所縦ロールちゃんとていとくん、上条さんと今回覚醒した削板君だけですし…

あと削板君は偽典 とある自販機の存在証明にて削板君のAIM拡散力場を観測しようとした那由多ちゃんの能力でも【まともに観測できない】と言っていました、つまりAIM拡散力場はあるのはあるのかと作者は解釈しました。他にも姫神さんの吸血殺しのAIM拡散力場で吸血鬼がやって来ると言う話からやはり原石にもAIM拡散力場に似た何かが出ているのかもしれないと自己解釈、レイヴィニアが新約2巻で「天然モノ」の能力は、あらかじめ環境に合致した設定を施されている と語っていますので魔術と違い原石は火花を生み出さない。だからアレイスターは原石をモデルに超能力を生み出したのかな〜と考えてみたり

後作中でも言ってましたが原作より早く理想送りが生まれたのはていとくんが上条さんと関わったから。魔神達はていとくんがこの世界の住人でないことに気づいてたので「あ、こいつのせいで採点者の方向性ズレるんじゃね?」て原作よりも早く失望した魔神達のせいで理想送りの誕生が早まりました。それが覚醒したのは六月の初めてだけです。つまり上里君が暴挙に出たのも全てていとくんの所為です

さて次回はエンデュミオン最終話、まさかの展開の最後にあいつが登場…果たしてその人物の正体とは?

次回もお楽しみに!


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世界の真ん中で叫びたい、君が好きだと

今回でエンデュミオンの奇跡編は終わりです、今までよりも一話多い長編は如何でしたか?そして今回途中で「え?」て展開がありますが…先に言っておきます、作者はハッピーエンドしか書けない下手くそです、だからバッドエンドにはならないのでご安心を

さて最後に出て来る皆さん大好き(?)あのヒロインが登場……あの人皆好きですよね?


「……宛那は負けたようだな」

 

上里は頭上の果てにあるエンデュミオンを見上げそう呟く。仲間がやられたと言うのに淡々とした口調だがその言葉の奥には仲間がやられた悔しさが滲み出ていた…上里は右手を下げ垣根と帆風の方を向く

 

「今回はぼくらの負けの様だ…ローラさんからも回収に失敗したら「奇跡の子」の事は諦めろと言われてるしね…ここは引くとしよう」

 

「おいおい……逃すと思ってんのか?」

 

「確かにそう簡単にきみ達から走って逃げるとは思ってないさ…でもぼくがここから逃げ切る方法がないとでも思っていたのか?」

 

垣根は逃げようとする上里を逃がさないとばかり翼を広げる、だが上里は懐から何かを取り出し頭上へと投げる。二人が何を投げたとその物体を見た瞬間それが眩い光と爆音を流し思わず目と耳を塞いでしまう

 

「ッ!スタングレネードか!」

 

上里が投げたのはスタングレネード、二人が目を開けるとそこには上里の姿はなかった

 

「……逃げられた…いや見逃されたて言うべきか?」

 

垣根が悔しそうに吐き捨てる、上里には例え宛那が負けていたとしても戦闘を続ける余力があった筈だ。それなのに逃げたということは余程自分達を舐めていると垣根は感じた…だが帆風は何か疑問があるのか首を傾げる

 

「でもスタングレネードがあればわたくし達の視界を潰してその間に右手で触れる事が出来たでしょうに…何故しなかったんでしょう?」

 

「それは多分考えちゃいけないやつだと思うぞ」

 

二人は軽口を言い合いながらも上里の脅威から逃れた事に安堵する、そして二人はエンデュミオンを見上げ仲間達の帰還を待つ

 

 

 

宛那を撃破した削板は翼で宇宙空間を移動しエンデュミオンのステージまで戻ってくる、そこには削板の姿を見て笑顔になるアリサと削板に駆け寄って来る上条達の姿が見えた

 

「やったな軍覇!勝ったんだな!」

 

「てかその翼…ていとくンの事笑えねえなオイ」

 

「第二のメルヘン現る、かにゃーん?」

 

「と言うか削板さんに翼は似合わないわね」

 

「似合うのは垣根さんだけよねぇ〜、削板さんはやっぱり根性て言ってる方がいいわぁ」

 

「……当麻以外勝利の歓声はなしかよ」

 

削板は苦笑し駆け寄って来る仲間達の間をすり抜けてアリサの元へと向かう

 

「……勝ったんだね軍覇くん」

 

「ああ、何とかな」

 

アリサはにこりと笑い削板も笑みを返す、それと同時に背から噴出されていた赤青黄の煙の翼が薄れ消えていく

 

「……消えちゃたね」

 

「だな…ま、別にいいさ。また強い奴と戦う時には自然と出し方がわかると思うからな」

 

アリサは消えた翼を見て笑う、削板はまた出せばいいだけだと笑う

 

「助かったわ第七位、貴方のお陰でアリサは攫われずに済んだ…ライブは中止になっちゃたけど…また別日にすればいいわ」

 

「おう……て、あんた腹から血が出てるけど大丈夫か?」

 

「平気よ、これでも三年前にアレイスターからアンブロシアを取り出されるまで不死だったのよ?もう取り除かれて魔力も作り出せる様になったとはいえ未だに不死性は残ってるわ…ま、微々たるものだし精々傷口を再生するのが限度…て所かしらね」

 

「……何かサラッと凄い事聞いちゃった気が」

 

削板がレディリーを見て平気なのかと尋ねる、レディリーはこれくらいで自分は死なないと笑う。アンブロシアを取り除かれたとはいえ不死の体質はほんの僅かだが残っている。と言っても脳を撃たれれば死ぬし失血死でも死ぬ。ただ傷の治りが早いだけであるが

 

「さて…早くお客様を地上へと連れ戻しましょう」

 

「そうだな。君達も手伝ってくれ…私とシャットアウラが地上へ降りる為の装置を起動…」

 

レディリーとディダロスは早く残っている観客達を地上へ帰さなければと言い、ステージから出ようとし削板達もその後をついて行こうとする…だが削板は気づく、アリサが一歩も動こうとしない事に(・・・・・・・・・・・・)

 

「……アリサ?何してんだ?早くここから出ようぜ」

 

「………ごめん、無理なんだ」

 

削板が早くここから出ようとアリサに言う、だがアリサはにっこりと微笑んでそれはできないと笑う。その笑顔は美しくも儚げで…全員がその言葉を聞いて目を見開く

 

「あ、アリサ?そんな変な冗談を言っている時じゃないんだぞ?」

 

「……冗談じゃないよお姉ちゃん。私は皆と一緒に行けないんだよ」

 

「何を言っている!こんな時にそんな冗談を!」

 

「…………お父さん」

 

シャットアウラとディダロスはこんな時に冗談はよせと言うがアリサは儚げな笑顔で冗談ではないと首を振る、そして全員が気づいた。アリサの身体をよく見ているとアリサの身体が透けている(・・・・・)事に

 

「透、けてる…?どう言う事だよアリサ」

 

「……宛那、て人と言ってたよね。私が起こす奇跡は等価交換て…奇跡が起こる代わりに誰かが傷つく…それが私が起こす奇跡」

 

尋ねる削板にアリサは笑みを崩さず奇跡について話す、彼女が起こす奇跡は常に誰かが傷つく事で起こる…そして今回起こった削板の能力の覚醒という奇跡の代償は……

 

「私は軍覇くんの勝利を願ったんだ…だから軍覇くんは強くなってあの人を倒したんだ……その時願っちゃったんだよ…私の全てを犠牲にしても構わない……てね」

 

「………まさか」

 

「うん、今回の奇跡の代償は私自身(・・・)。だからこうして消えちゃうんだよ」

 

その代償はあまりにも大き過ぎた、一人の少女の消失。それが削板が得た勝利への代償だった

 

「……嘘だろ」

 

「嘘じゃないよ、そうじゃなかったら私は消えかかったりしないもの」

 

「な、何か手がある筈だ!消えなくてもいい方法が……」

 

「無理だよ、そんな方法はないしあったとしてももう間に合わない…受け入れるしかないんだよ」

 

必死にそれを否定する削板、何か助かる方法があると叫ぶがアリサは首をゆっくりと横に振る

 

「……何故だ、何故笑っていられるんだアリサ!?お前どう言うことか分かっているのか!?」

 

「うん、分かってるよお姉ちゃん。消えるてことは皆と2度と会えなくなるてこと…それくらい分かってるよ」

 

「なら尚更だ!何故笑顔でいられる!?何故なんだアリサ!」

 

シャットアウラがどう言うことか理解しているのかと叫ぶ、アリサはちゃんと理解していると頷く。それを見たディダロスが何故笑顔を浮かべていられると叫ぶ…それを聞いてアリサはゆっくりと口を開く

 

「だって最後くらい笑っていたんだもん、辛気臭い顔よりも笑ってた方が…皆と安心して消えれるから」

 

「「!」」

 

「……アリサ」

 

アリサの笑みは寂しげだった、心の中では消えたくない、皆と一緒にいたい、もっと歌いたい…そう思っているだろう、だがそれらの感情を抑え込みせめて消える間際まで笑顔でいようとしているのだ…それを知ったシャットアウラとディダロスは目を見開きレディリーは眼から涙を流した

 

「……今までありがとうお姉ちゃん、私お姉ちゃんと一緒に過ごせてよかった。私は忘れないよお姉ちゃんと一緒に服を買いに行ったりお父さんに内緒でパフェを食べに行ったこと…お姉ちゃんの服を選ぶセンスが壊滅的で笑っちゃたな」

 

「……私もだ、初めて妹が出来て一緒に買い物に行けて楽しかった…私もお前が妹でよかった。後誰の服のセンスが壊滅的だ」

 

「お父さんも…お父さんと知り合えてよかった。私の誕生日に必ずケーキを買ってきてくれてありがとう。実はお姉ちゃんよりも誕生日プレゼントが少しだけ値段が高いことは気づいてたよ」

 

「……私もだよアリサ。君と出会ってよかった。後そのことはシャットアウラの前で言うな」

 

アリサが加速に最後を迎える前に言い残していたことを呟く、シャットアウラ(お姉ちゃん)ディダロス(お父さん)の家族で良かったと。二人はそれを聞いて自分もそう思っていたと涙を床に落としながら呟いた

 

「レディリーさんもこんな人生最初で最後の大舞台に立たせてくれてありがとう…私の夢を叶えさせてくれて本当に感謝してます」

 

「……そんな優しい事を言わないでよ、貴方が生まれたのは私のせいなのよ?あのオリオン号の事件だってわたしが自殺の為に意図的に起こしたの、下手したら乗客全員が死んでたかもしれないあの事故を起こした犯人に感謝される資格は…「知ってました」え?」

 

「何となくレディリーさんは私の正体に気づいてるんだろうな〜て思ってましたから。流石にあの事件を起こしたのにはびっくりですけど…それでも、貴方がいなければ私は生まれる事はなかった。昔のレディリーさんの事は知りません…でも私が知っているレディリーさんはいい人です」

 

「………貴方て本当に優しい子ねアリサ」

 

レディリーに感謝をするアリサにレディリーは自分はそんな事を言われる資格はない、オリオン号の事件を起こしたのは自分だと暴露するがアリサはそれを知ってもなお感謝しそれを聞いてレディリーが涙を流しながら頬を緩ます

 

「当麻くん達も助けに来てくれてありがとう、ここにいない帝督君も潤子ちゃんにもありがとうて伝えておいて…あの二人にもお別れを言いたかったけどね」

 

「………ごめん、俺達が宛那を奇跡なしで倒せていたらこんな事には」

 

ここに来ていない垣根と帆風にも感謝の言葉を伝えてくれとアリサは笑う、それを聞いて上条は自分達がもっと強ければこんな事にならなかったと頭を下げる

 

「そんな事言ったて過ぎた時間は変わらないよ。それに観客の皆を、私の大事な家族を助けてくれただけで嬉しいんだ」

 

アリサはそんな上条に観客と彼女の家族を助けてくれただけでも充分だと伝える

 

「……情けねェ話だ、超能力者の第三位なンて大層な肩書きを持ってンのに一人の友達も救えねェなンてな」

 

「そうね、私らがもっと強かったら…友達を失わなくて済んだのにな……」

 

「……そんな顔しちゃダメよ二人共、鳴護さんは笑って最後を迎えたいんだから私達も笑ってないと…安心して……鳴護さんが消えれ……ないでしょ……」

 

「美琴なんて泣いてるじゃない、まあ私は我慢力があるから全然……泣いて……ないんだけど…」

 

「……操祈も無理すんなよ、泣いてんじゃねえかお前ら」

 

一方通行と麦野がアリサを救えなかった事に自分自身を責め、美琴と食蜂は最後まで笑っていようとするが涙が勝手にこぼれ出てしまう。アリサは最後に削板の方を向く

 

「……軍覇くん以外はごめんだけどここから離れてくれるかな。そうじゃないと恥ずかしくて言えないから」

 

「…………分かった」

 

アリサが少し頬を赤くして削板以外この場から離れてくれと頼む、上条はそれを聞き入れアリサから背を向けてこの場から去る。他の面々も上条の後に続いていく…シャットアウラとレディリーは何度もアリサの方を振り返っていたがディダロスは一度も振り返らなかった

 

「……ごめんね一人残しちゃって」

 

「いや、それで何で俺だけ残したんだ?」

 

削板は何故自分一人だけ残したのかと尋ねる、アリサはそれを聞かれて笑った

 

「軍覇くんに最後に言っておきたい事があって残ってもらったんだ」

 

「俺に言いたい事……?」

 

「うん、あの時さ軍覇くんはこう言ってくれたよね…私の事が好き、て」

 

「……!お、おう…最初に会った時から…好きだった」

 

アリサが宛那との戦いの時に自分の事を好きと言っていたと言うと削板は顔を赤くしながら頷く、それを見てアリサは頬を染めながら削板の耳元に口を近づける

 

「……私も軍覇くんの事が好きだよ、友達としてじゃなくて異性として」

 

「!」

 

アリサはそうはっきりと削板の事が友達ではなく異性として好きだと告げる、それを聞いて削板は一瞬呆然としその言葉の意味を理解し頭から実際に湯気を出し顔を赤くする。アリサは照れ臭そうに削板に笑いかける

 

「最後の最後で素直になれてよかった、もうこれで……思い残すことはないな」

 

「……本当にいいのか?このまま消えても」

 

「………………」

 

削板の事が好きだと伝えられこれでもう思い残すことはないとアリサは寂しげに笑う、だが削板は本当にそうかと尋ねる。削板には分かっていた、アリサの今の言葉は嘘である事に

 

「本当の本当に……これでいいのか?こんな終わり方で納得してるのか?」

 

「………するわけないよ、本当は……本当はね……もっとお姉ちゃんとお父さんと…!友達の皆と……!軍覇くんと一緒にいたかった………!」

 

アリサは心からの言葉を呟きながら目から涙を溢れさせる。初恋の相手(削板)に自分の本当の気持ちを、感情を削板に泣きながら叫ぶアリサ。家族と友達、恩人の前では決して見せなかったその感情を削板だけに彼女は見せた

 

「もっとお姉ちゃんとお父さんと一緒にご飯を食べたり買い物に行きたった!レディリーさんと一緒にライブのことで話し合いたかった!皆でカラオケとか一緒に遊びに行きたかった!軍覇くんと一緒にいたいよ!本当は消えたくない!皆と一緒にいたい!皆の横で生きていたい!」

 

彼女の気持ちを押さえつけていた心のダムは崩壊していた、削板に抱きつき彼の胸で涙を流すアリサ…削板は無言で彼女を腕で抱きしめていた

 

「最もっと皆といたかった!皆と毎日笑いあって恋話して買い食いして…そんな日常を過ごして!歌手になって学園都市の人だけじゃない、世界中の人を笑顔にしたい!それに、初めて好きになった男の子と一緒に手を繋いで歩きたかった!」

 

ボロボロと溢れる涙、彼女は奇跡の存在だ。だが彼女は普通のありふれた人間だった、友達と遊んだりおしゃれをしたり、自分の趣味に没頭しつつも好きになった人と愛を育みたい…そんな何処にでもいる少女なのだ

 

「私…消えたくない、軍覇くんの事もっと知りたいよ!こんな所で消えるなんてやだ!」

 

「……俺もアリサの事をもっと知りたい、だから消えて欲しくない」

 

削板も眼に涙を浮かべる、彼もアリサに消えて欲しくなかった。今の状況が夢だったらいいと思った…だがこれは幻想ではなく現実なのだ…だから彼はたった一人の少女も救えない自分の無力さに拳を握りしめる

 

「でも私はこの世から何も残さずに消えるわけじゃない……私が残した歌はこの世界に永遠に残る、私が消えても私の音楽の才能はお姉ちゃんに戻る、皆の記憶に私がいる…私が生きた証は残るから」

 

彼女が歌った曲、削板達と過ごした時間は消えないとアリサは笑う…それらが残っている限り何の心配もないと彼女は笑う

 

「…忘れない、絶対に忘れねえからな。俺は死んでもアリサと過ごした時間は忘れない…どんな事があっても根性…いや俺の愛て奴でアリサの記憶は忘れたりしねえ」

 

「………嬉しい」

 

削板はアリサをもっと強く抱きしめる、アリサも嬉しいと笑う。アリサの身体は全身がもう光の粒子となって消えかけ足からゆっくりと消え始める

 

「……軍覇くんと会えてよかった」

 

「……俺もアリサに会えてよかった」

 

二人は強く強く抱きしめながらそう呟く、離したくない、別れたくない…そんな思いが強く滲み出ている…だがアリサの身体は残酷にも下半身は消え去り上半身しか残っていない

 

「……最後に、最後に軍覇くんにあげなきゃいけないものがあるんだ…受け取ってくれる?」

 

「?何をくれるん…」

 

あげなきゃいけないものがある、アリサはそう言い削板は何をくれるのかと考えた瞬間、彼女の唇と削板の唇が重なった

 

「!???!?!!!?!!?あ、アリサ!?」

 

「……ふふ、私の初めてだよ」

 

彼女はそう言って顔を羞恥と嬉しさで染め上げていく…削板もいきなりの出来事に頭がパンクを起こしアリサの様に顔を赤く染めていく。二人とも初めてだった、ファーストキスの味は削板とアリサには何の味か分からなかった

 

「……私幸せだったよ軍覇くんと出会えて、初めて恋して…私は十分過ぎる程幸せだった」

 

アリサはそう削板に向かって満面の笑みを浮かべながら涙を流す…涙が頬を伝い床に落ちていく…アリサの身体はもう完全に消えゆく瞬前で削板の腕から彼女の体温も感触も消えていく

 

「アリサ……」

 

「さよなら」

 

花が散る様に彼女は最後まで笑って無数の光となって消えた、鳴護アリサだった光の粒子が風に乗った鱗粉の様に削板をすり抜けて空気に溶けていく

 

「………じゃあなアリサ」

 

愛しい人への今生の別れの言葉を呟く、そして削板は初めて大声で哀しみの涙を流した

 

 

 

宛那が目覚めたのは何処かの森の中だった、彼女はボンヤリとした眼でここは何処かと目をこすり…自分の状況を思い出しはっとする

 

「ここは何処だ…私は第七位に敗れ何処かへと落ちた筈…あの軌道から見て日本列島の何処かだと想定できるが…場所の特定は厳しいか」

 

彼女は冷静にここは何処かと考察するが鬱蒼と木々が生える森など日本中にいくらでもある…それに何故自分が宇宙から落ちて五体満足で生きているのかと推察し自分の近くに落ちていた

 

「……成る程神威混淆がダメージを抑えたのか」

 

それは無残な残骸となったアメジストで出来た蛇の装飾品、削板との戦いで相当な負荷を置い宇宙からこの森への激突で耐えきれなくなり自分の体から排出され残骸として出てきたのだろう

 

「…さて、どうやって上里君……上里様と連絡を取ろうか」

 

宛那はそう言ってどうやって上里と連絡を取ろうと考えていると後ろから気配を感じ振り返る、そこにいたのは…

 

「いたいた、いましたよ皆さん」

 

「……学園都市の人間か」

 

そこに立っていたのは白衣を着た女性…宛那は知らないがその女性は木原唯一という脳幹の弟子だ、彼女が宛那を発見したと叫ぶと森の中から何人かの人間が現れる

 

「お、お前が理想送りとかゆう奴の仲間か」

 

「気をつけろよ数多、魔術師てのは俺ら科学者の範疇を超えてくるからな」

 

「見つけたの唯一お姉ちゃん」

 

現れたのは数多、乱数、円周…この三人も木原であり四人は宛那を取り囲む様に四方を囲む。宛那は自分にもう魔力がない事に気付き自分の頭に指を当てピストルを撃つ仕草をする

 

「……チェックメイトというやつか」

 

「そういう訳です、と言うわけで貴方を学園都市まで連行しますのでご同行お願いします。あ、暴れたらこちらとしても手荒い事をしなければいけませんので素直に従ってくださいね」

 

唯一は何処からか取り出した手錠を宛那の両手に嵌める、そして宛那は何か思う様に頭上を見上げる

 

 

「なんで止めてやらない!お前は上里て奴が好きなんだろ!?なら止めてやれよ!復讐なんてそいつが辛いだけなんだよ!本当に好きならそいつの行動を肯定するんじゃなくて否定してやれよ!好きな奴が間違えを起こしているなら止めてやるのが愛てもんじゃねえのかよ!」

 

 

「……は、それが出来たら苦労はしないさ」

 

宛那は削板に言われた事を思い出し皮肉げに笑う、そして唯一に引っ張られる形で学園都市へと連行されていった

 

 

 

垣根と帆風はエンデュミオンの入り口付近で上条達を探していた、上にいた人達は既に帰還しておりエンデュミオンの入り口は人で溢れ全員が生きて帰れた事を安堵していた

 

「……出てくるの遅えなあいつら」

 

「そうですね…あ、あれ女王達じゃないですか?」

 

帆風が人波の中から上条達を見つけ出し垣根と共に近づく、二人が上条達に近づくと彼らは暗い顔で俯いており二人は何かあったのかと考える

 

「そんな顔をして何かあったんですか?」

 

「てか鳴護っちは何処だ?はぐれたのか?」

 

垣根がアリサは何処だと尋ねると削板以外が顔を俯ける、削板が代表してなにがあったのか知らせる為に口を開く

 

「……アリサは消えた、もう2度と会えない」

 

「……!?」

 

「!……そうか、つまり俺らは救えなかったて事か」

 

削板のその言葉に帆風は口元に手を当てて驚き垣根は運命(原作)を変える事は出来なかったのかと空を見上げる。全員が涙を堪えるなかディダロスが口を開く

 

「……アリサは幸せ者だな、こんなにも悲しむ人が沢山いて……娘の事をそんな風に想ってもらって私は嬉しく思う」

 

「……ディダロス」

 

アリサの父親としてこんなにも自分の娘を想ってくれる友達や人達がいて嬉しいと笑う、そんなディダロスにレディリーは無理して笑っているのだと察する

 

「……情けねえな、たった一人の女の子を守るていう幻想すら守れねえのかよ俺は」

 

上条が悔しそうに自分の右手を見る、一方通行も麦野も美琴も食蜂も助けられなかった事を悔いる。垣根と帆風はその場にいなかった為何も言う事が出来ない

 

「………アリサ」

 

この中で一番アリサを救えなくて悔しい思いをしているのは削板だろう、初恋の少女を救えなかった事に……

 

「アリサ、俺もっと強くなるからな。もっともっと強くなるから…もう誰も失わない様に強くなるからな…だから見守っててくれないか」

 

「……軍覇」

 

削板はもっと強くなりたいと願う、もう誰も失いたくない、だから強くなりたいと…垣根はそんな削板を見て俯く…そんな彼らの前にある一人の少女が歩み寄って来ているのだが誰もそれに気づかない

 

「私は認めない……認めないぞこんなの!何故アリサが消えなければならなかっんだ!アリサは…私の妹は何か悪いことでもしたのか!?」

 

シャットアウラの絶叫に周囲の人々は驚くがシャットアウラは気に留めない、垣根と帆風が何か言おうとしたその時二人の肩に誰かがトントンと叩いてきて二人は誰かと振り返り…まるで幽霊を見た様な顔をする

 

「お、おい…お前ら後ろ……」

 

「み、皆さん…後ろを見てください…」

 

垣根と帆風が後ろを見ろと全員に言うが誰も聞いていない、彼女はそれを気にせず全員の方へと歩き始める

 

「皆、私生きて……」

 

「私は信じている、アリサは消えてなどいない!アリサは…アリサは私の心の中で生き続けている!」

 

「おーい、お姉ちゃん?生きてるよ、心の中じゃなくてすぐ近くで生きてるよ?ほら後ろ向いて」

 

シャットアウラは自分の背後で聞き覚えのある声がしたが取り敢えず無視し言葉を続ける

 

「私はいつでもアリサと一緒だ。今までそうだった、そしてこれからも…」

 

「うん、だからこっち向いてよ」

 

「……そうね、こんな所でイジイジしてたらアリサに笑われちゃうわね」

 

「皆気づいてて無視するの?」

 

さっきから後ろ五月蝿えな、誰か騒いでるのかとシャットアウラとレディリーは思うが取り敢えず二人は気にしない

 

「アリサ…お前に一つ隠していた事があるんだ」

 

「……アイアンクローしたら気づくかな?」

 

「お前が冷蔵庫に入れて食べるのを楽しみにしていたあのプリンを食べたのは…父さんじゃなくて私なんだ!」

 

「………は?」

 

シャットアウラが今までディダロスがアリサのプリンを食べたと言っていたが実は食べたのは自分だと告白する、それを聞いて背後にいる人物にほんの僅かに青筋が浮かぶ

 

「父さんの所為にしたのは私が悪い!だが食べてしまった事は後悔もしてないし反省もしていない!」

 

「………」

 

「やはりお前の仕業だったのかシャットアウラ、勝手に父さんの所為にするな、と言うか反省しろ」

 

「ふ、あんな美味しそうなデザートを食べないでいるなど無理だ…それに「私の物は私の物、妹の物は姉の物」と言うだ…」

 

全く反省していないシャットアウラは自信満々にそう言う、それを聞いて背後の人物は無言でアイアンクローを放つ

 

「あだだだだだだだだ?!?」

 

「シャットアウラ!?」

 

「ねえ、お姉ちゃん?私のプリンを食べたのはお姉ちゃんだったんだね…今からアイアンクローをかけるけどいいよね?答えは聞いてない」

 

「ちょ!?誰だ今そう言う悪ふざけをするタイミングじゃ……ない…」

 

痛みに呻くクソバカ姉を見て彼女はドス黒い笑みを見せる、削板が誰だとシャットアウラの背後の人物を見て戦慄する、上条達もまるで幽霊を見た表情になりアイアンクローをかけられたシャットアウラも後ろを見て目を見開いた…その人物は…鳴護アリサ

 

「ま、プリンの事は置いておいて…皆ただい…」

 

「「「「「ぎゃあああお化けぇぇぇ!」」」」」

 

「あ、あああアリサ!?もしや化けて出たのか!?私がプリンを食べたから?!」

 

「し、塩を持っていないか!?」

 

「佐藤ならあるわ!」

 

「うぃーす、佐藤です」

 

「「誰!?」」

 

アリサが笑いかけて何か言おうとすると上条達はお化けと叫ぶ、シャットアウラはプリンの恨みで化けて出たと叫びレディリーはディダロスに佐藤を渡そうとし垣根と帆風は誰だそのおっさんと叫ぶ

 

「……ア、リサ?……本物なのか?」

 

「そうだよ」

 

削板がアリサ本人なのかと問いかけると彼女はにっこりと笑って頷く

 

「だがお前は消えた筈だ…俺はお前の最後を見届けたんだぞ…」

 

「そうだよ、私は消えたよ。ただ誰かが蘇らせてくれただけ」

 

アリサは自分は確かに消えたがその直後に誰かが自分を再び生を与えたのだと笑う、蘇らせたと言う単語に垣根の脳裏にある人物が浮かんだ

 

「まあ何が何だか私にもよく分からないけどこうして生きて…」

 

アリサの言葉は続かなかった、それを言う前に削板がアリサに抱きついてきたからだ

 

「良かった……!生きていてくれて…良かった!」

 

「……うん、私も軍覇くんとまた一緒にいられて嬉しい」

 

涙を流しながらそう叫ぶ削板にアリサも眼から涙を溢れさせながら頷く、垣根はほぼ反射的に携帯を取り出しその光景を写真に撮った

 

「……どう言う事だ?アリサは消えたのでは…?」

 

「…いいじゃないそんな事、生きててくれた。それ以外に言う事はある?」

 

「……ないな」

 

ディダロスが何故と考えるがレディリーは生きてただけでそれ以外の説明はいらないと笑う、それもそうだとディダロスもつられて笑った

 

「アリサぁぁぁ!」

 

「うお!?」

 

「軍覇くん!?ちょお姉ちゃん?!」

 

「生きてたんだな!良かった!本当に生きていて良かった!」

 

削板を突き飛ばしシャットアウラは涙を流しながらアリサに抱きつく、アリサはそんな姉を見てくすりと笑う

 

「……何がなンだが訳が分かンねえなコレ」

 

「…消えたと思ったら実は生きてた…おいおい、そこらの御都合主義な小説でももっといい展開になるぞ…どう言うことだにゃーん」

 

「……いいじゃねえか、ハッピーエンドなら御都合主義でもなんだってさ」

 

「そうよ、確かに色々納得いかないけど…見なさいよ鳴護さんと削板さんの笑顔…それが見れたからいいじゃない」

 

「そうねぇ、納得力が湧かないけど…こう言う終わり方もいいんじゃなかしら」

 

一方通行と麦野はどう言う事なのかと首を傾げる、だが上条達は最後に笑える(ハッピーエンド)のなら理由なんかいらないと笑う

 

「……よし、俺も根性入れ直すか」

 

削板は何か決心したように両目を閉じ頬を両手で叩く、そして目を開いて立ち上がるとディダロスとシャットアウラの方を向く

 

「お父さん、お姉さん!一つお願いがあります!」

 

「……改まってどうしたのかね」

 

「俺が言いたいのは一つ!俺はアリサの事が好きです!だから!俺とアリサの交際を認めて下さいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」

 

「ぐ、軍覇くん!?」

 

削板は決意を込めた大声でシャットアウラとディダロスにアリサとの交際を認めて下さいと叫ぶと音速の二倍の速さで土下座をする、頭が地面に激突し周囲一帯に亀裂が入りアリサがええ!?と驚く。垣根と帆風は思った「それは結婚をする時に言うセリフなんじゃ…」と

 

「「………」」

 

「おい、潤子ちゃん…あの二人の目が怖いんだけど…阿修羅みたいな顔してるぞ」

 

「ですね…これは削板さん殴られるかもしれませんね」

 

瞬き一つせずディダロスとシャットアウラは削板を見つめる、削板の顔に冷や汗が流れる…アリサは二人がなんと言うか緊張して耳をすます

 

「…君は娘を守ってくれた、それは感謝しよう…だがこれとは話が別だ」

 

「…そんな事の為に助けたんじゃありません、好きな奴を守るのに理由はありませんから」

 

「…貴様に私の妹が幸せにできると思うか?」

 

「分かりません…俺は根性しか取り柄がないし、高校生の問題も解けない馬鹿だし実は中学生の勉強も出来ないかもしれない、将来の夢も特に決まっていません……でも」

 

アリサの父親と姉、二人の睨むような目を一身に受けてなお削板は二人の目を見据えてこう答えた

 

「俺はアリサが好きです、絶対に幸せにします…だから交際を認めて下さい!」

 

「軍覇くん……」

 

「「………」」

 

その魂からの言葉を聞いてディダロスとシャットアウラは口元を緩ませる

 

「……もし娘を泣かせてみろ、超能力者だろうがドラム缶に詰め込んで東京湾に沈めてやるからな」

 

「絶対にアリサを幸せにしろ…もし出来なかったら…お前の指を切り落とす」

 

交際を認めるとも取れるその言い方に削板が頭を上げてディダロスとシャットアウラを見る、二人は笑って削板を見ていた

 

「ありがとうございますお義父さん!お義姉さん!」

 

「誰がお義父さんだ!馴れ馴れしい!」

 

「誰がお義姉さんだ!そこまで気を許したわけじゃないぞ!」

 

「……私の家族でめんどくさいなぁ」

 

ギャーギャー騒ぐディダロスとシャットアウラを見てアリサは笑う、だが垣根は何か考えるような顔で先程から何も喋っておらず帆風が気になって声をかけてみる

 

「どうかしましたか垣根さん?」

 

「いや……鳴護っちを蘇らせた奴について考えててな、まあ実は心当たりがあるんだが」

 

「!?本当ですか!」

 

「まあな、だが何故助けたのか理解できねえんだ…鳴護っちは幻想殺しと関係ねえ筈だからな…それに何故干渉したのかも理解できねえ」

 

垣根はアリサを蘇らせた人物について心当たりがあるようで帆風が驚く、だが垣根は何故助けたのかとそこを疑問視し考える

 

「……分かんねえ、やっぱりアレか?神様(・・)の考えは誰にも理解できない、て奴か?」

 

 

 

エンデュミオンのアリサが歌を歌っていたステージにてある人物が立っていた、痩せこけた細い身体に皺は枯れた古木の様に固まっている、そんな身体を覆い尽くす様に紫の法衣を着た木乃伊の様な老人、彼は杖の代わりに剣を床に突き刺していた

 

「珍しいわね、僧正(・・)が善意だけで女の子を救うなんて」

 

「いいじゃろうネフテュス(・・・・・)、儂かて神様らしい事はしたいものじゃよ」

 

「別にいいけど…鳴護アリサの生存がどれだけ現実世界に影響をもたらすか理解してるの?」

 

「さあの、後の事は人間達がなんとかするじゃろ」

 

「………そういう性格だからいつまで経っても悟りを開けないのよ」

 

その老人…僧正に声をかけてきたのは全身を包帯で巻いただけでほぼ全裸の長い銀髪に目下に涙型のタトゥーがある褐色の肌を持つ女性…ネフテュスが僧正に話しかける

 

「まあいいじゃろう、たった一人の少女を救った…それだけでよかろうて」

 

「まあね、悲しい涙よりも嬉しい涙の方が私も好きだからね。貴方にしてはいい事したわね」

 

「さて……見ているかアレイスター?」

 

僧正はステージの上を見上げる、僧正が見据えているのは滞空回線…そして滞空回線を通じて僧正とネフテュスを見ているかもしれないアレイスターに僧正は話しかける

 

「色々とお主には言わなければいけない事があるが…まず最初にこれだけは言わせてくれ」

 

僧正は上を向きながら聞いているかもわからない、滞空回線があるかも分からないのにアレイスターへ自分の言葉を伝える

 

「済まなかったな」

 

それは僧正が今まで言いたかった言葉、僧正はそれを微笑みながら呟く

 

「お主には儂を殺す権利がある、だがもう少し待ってくれ。儂とネフテュスにはやらなければならぬことがある…それが済んだら殺しても構わんよ」

 

僧正は自分にはやらなければならない事があると呟く、それが終わったら自分を殺してくれても構わないのだと伝える

 

「……いずれ儂らはまた表舞台に出てくる、その時にまた会おう」

 

僧正は自分の言いたい事を言い終わったのか剣をついて何処かへ行こうと歩き始める、それを見たネフテュスも僧正の背後を歩いていく

 

「さて暫くは様子見かの…コロンゾンやエイワスの動きは全く読めん。かと言って理想送りは儂らの天敵じゃからの」

 

「そうね、理想送りは垣根帝督達に任せるとして私達の優先課題は私達以外の魔神を止める事(・・・・・・・)だからね」

 

僧正とネフテュス、二人の魔神は何か話し合いながら唐突にエンデュミオンから消えた。この二人の介入により消えゆくはずの奇跡は助かった、これによりエンデュミオンの奇跡は幕を閉じたのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クカァァァ(また転校生が来たぞー)」

 

「……イギリスから来ましたメアリエ=スピアヘッドです」

 

「……同じくイギリスから来たマリーベート=ブラックホールです」

 

「……以下同文でジェーン=エルブスです」

 

「「「」」」

 

なお三馬鹿弟子達はイギリス清教に離反したと見てインデックス達と同じ反逆者になった、もう帰る場所がなくなってしまった三人に小萌は「実は柵川中学校て所に学生寮があるのですが、転入して見てはどうなのです」の言われ三人は藁にすがる気持ちで柵川中学に転入して来た。インデックス達は口をポカーンと開けたまま三馬鹿弟子を見ていた

 

(((こうなったのも全部師匠/ししょーの所為だ、絶対にいつか復讐してやる)))

 

果たして三人の復讐が成就する日は来るのか?いや無理だろう(断言)

 

 

 

 

 

 

 

 




確かにヒロインが出て来るとは言った、でも女だとは言ってない(ナ、ナンダッテー?!)、さあ原作と違い僧正さんは一体どんな事をしてくれるのか…ま、暫くは僧正さんとネフテュスさんは出てこないんですけどね

僧正・ネフテュス「「おい」」

さて次回は…とある科学の一方通行アニメ化記念でエステルちゃんを登場させる話ですね、タイトルは「完全死霊(ネクロマンサー)」編とでも言いましょうか

「……先生と呼んでいいだろうか?」
「魔術師」ローゼンタール家の23代当主ーーーー
エステル=ローゼンタール

「これが俺の新しい力て奴だよ三下」
「一方通行」超能力者第三位ーーーー 一方通行(アクセラレータ)

「やっほう。殺しに来たよ、第三位(アクセラレータ)
第三次製造計画(サードシーズン)」一方通行暗殺の為に送り込まれた少女ーーーー番外個体(ミサカワースト)

「最高にして最強、そして至高…それがこの最高傑作「応竜(おうりゅう)蚩尤(しゆう)」だ!」
「完全なるゴレムを目指す者」暴走する害悪ーーーーイサク=ローゼンタール

言っておきますが作者は「とあセラ」はあまり知りません、だからあまり期待しないでほしいなーとか思ってみたり。でも頑張って書きます。ただ菱形兄妹は出ない可能性大(てか元ネタと大幅に違うから原作を知ってる人はツッコミは無しでお願いします)

では次回もお楽しみに!



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第五章 完全死霊 編
お酒は飲んでも飲まれるな


一応言っておきます、作者はまだ高校生です。だからお酒は飲んだことはありません。だからこれは全てお酒を飲んだらこうなるのかな?と思って書いた妄想です

キャラ崩壊が激しいけどお酒のせいだから仕方なし、ほら新約2巻でも上条さんはお酒を飲んだせいでベロンベロンになってたし…と言うわけで今回はお酒ネタです


「どうしてこうなった……」

 

垣根は珍しく困惑した様な表情をしていた、彼がいるのは垣根の自宅。今日は風斬は「インデックス(友達)の家(小萌のアパート)で焼肉食べて来る」と出かけており、フロイラインも何処かへ行ってしまったので上条達とエンデュミオンでの戦いの慰労会として自宅で楽しく遊ぶ……筈だったのだが

 

「うへへぇ〜垣根さんも一緒に飲みましょうよぉ〜」

 

「……誰だよお酒買ってきた奴」

 

「「「お前だろ」」」

 

「そげぶ!そげぶ!そげぶ!」

 

「てか私以外の超能力者の女性陣の胸が大きいのは嫌がらせかゴラァ!」

 

「うぇぇ!美琴が怖いよぉ〜!」

 

テーブルに突っ伏して「鬼でも酔い潰れちゃう!神変奇特酒」と描かれた缶を片手持った帆風が赤い顔でそう叫ぶ、それを見て項垂れる垣根、酔っ払っている上条達…何故こうなったか、少しばかり時間を遡ってみよう

 

 

 

「よし!皆今日はお疲れ様!今日は俺の奢りだ!」

 

「「「「「「「お〜!」」」」」」」

 

垣根達はテーブルに座りながら缶ジュースを軽く当ててからジュースを飲み始める、彼等は今日エンデュミオンで起こったとある事件を無事に解決しその慰労会を垣根の自宅で行っていた

 

「ごくごく……ぷはぁ!この日の為に生きてるてもんよ!」

 

垣根が缶ジュースを飲み干す、全員が今日の疲れを癒す様にジュースを飲む

 

「おい垣根、菓子がねえぞ」

 

「あ、しまった昨日クロちゃんが全部食べたんだった…おい、誰がお菓子買ってくるかジャンケンで決めようぜ」

 

「ジャンケンかよ…くそ、不幸な上条さんがとびっきり不利じゃねえか」

 

麦野がツマミがないと文句を言うと垣根は昨日フロイラインが「最近出番がないからやけ食い」と言って家にある菓子類を全滅させたことを思い出す、ジャンケンで勝ってくる人を決めようと垣根が提案すると上条が俺が負けるんですよね、知ってますと溜息を吐く

 

「ほら行くぞ、最初はパー!ジャンケンポン!」

 

垣根は口でパーと言いながらチョキを出し上条は「グーじゃないのかよ、てかパーで言っておきながらチョキかよ」と内心で呟く。そして気になる勝負の結果は…

 

「俺が負けた……だと?」

 

「負けてしまいましたわ…でも垣根さんとわたくしだけ…運命を感じますわ」

 

「……上条さんが勝っただと?」

 

垣根と帆風はチョキを出して他のメンバーがグーだったので負けてしまった、帆風は垣根と一緒だなんて運命かと笑い上条は自分が勝った事が信じられなかった

 

「くそ…俺は買い物に出たくねえ、悪いが絶対に潤子ちゃんに勝ってやる!」

 

「最低な事言ってンぞていとくン」

 

垣根は絶対にお菓子を買いに外に出たくないと叫び一方通行が最低だなと冷たい目で見る、だがジャンケンでは二分の一で負けてしまう。だから垣根は最後の手段に出た

 

「こうなったら…デュエリスト同士デュエルで決めようぜ!」

 

「いやわたくしはデュエリストでは…というかいつの間に決闘盤(デュエルディスク)を腕に装着したんですの?」

 

垣根はデュエルだ!と右手にデュエルディスクを装着する、それを見て驚く帆風を無視して垣根はデュエルを始める

 

「俺のターンドロー!俺は「夏休み最後の日なのに終わってない宿題の山」と「修学旅行の前日にインフルエンザにかかった少年C」、「僕引きこもりをやめて引きこもりニートになります」を召喚する!」

 

「どれもロクでもねえカードばっかりじゃねえか!てかそれモンスターか!?」

 

「そして俺はこの三体のモンスターをリリース!」

 

「召喚してすぐにアドバンス召喚!?垣根さんて遊○王のルール知ってるの!?」

 

垣根は山積みになった沢山の宿題とマスクをつけて布団の中でゴホゴホ咳を立てる少年、カチャカチャとパソコンをいじるデブを召喚。更にそれをリリースしアドバンス召喚を行う、その行動に上条と美琴はツッコミざるを得なかった

 

「現れろドジリスの天然竜!…あ、間違えた。オシリスの天空竜!」

 

「グオオオオオオ!!!」

 

「「「「「「凄いの来ちゃった!」」」」」」

 

「モンスターではない、神だ!」

 

「いやそのセリフはオシリスじゃなくてオベリスクですわ!」

 

召喚したのはまさかのオシリスの天空竜。垣根は某社長のセリフを決めポーズを取って叫び帆風は呼び出すモンスターが違うと突っ込む

 

「ははは!勝てばよかろうなのだ!行けぇオシリスの天空竜!ダイレクトアタックだ!」

 

垣根の命令により邪神イレイザーの攻撃が上条にダイレクトアタック、上条は派手に吹き飛ばされる

 

「わたくしじゃありませんの!?しかもオシリスからイレイザーに変わっていますよ!?」

 

「俺のデュエルに常識は通用しねえ」

 

「こンなのデュエルじゃねェ……」

 

帆風が何故上条を攻撃した、何故オシリスから別のモンスターに変わっていると叫ぶ、キメ顔で迷言をほざく垣根に一方通行が溜息を吐いた

 

「てな訳で潤子ちゃんお菓子買ってきてねー」

 

「納得いきませんけど…分かりましたわ」

 

帆風は納得がいかなかったが仕方ないとお菓子を買いに出て行く、一方上条はイレイザーが自壊した事により流れ出した血で上条は沈みそうになっていた

 

「大丈夫先輩?」

 

「ああ…幻想殺しがなかったら死んでたぞ…邪神イレイザー恐るべし」

 

「やっぱりラーかオベリスクの方が良かったか?ま、いいか小腹が空いたしなんか食うか」

 

美琴が大丈夫かと上条に尋ね上条は幻想殺しがなければ死んでいたと笑う。垣根は小腹が減ったと笑いながらポテチを取り出し封を開けちまちま食べ始める

 

「て、オイ!お菓子あるじゃねえか!」

 

「……あ、本当だ」

 

「じゃあ帆風が買いに行った意味ねえにゃーん!」

 

垣根は削板にお菓子あるだろと言われ「あ、そういえば非常用のお菓子を隠してたんだ」と思い出す、麦野はお前巫山戯んなと叫ぶ

 

「まあまあ、細かい事は気にすんなよ。どうせお菓子なんてすぐになくなるんだからさ…まあ潤子ちゃんには帰って来たらてへぺろしないとな」

 

(潤子先輩可哀想なんだゾ…)

 

(なんでこんな奴に惚れてるんだろ潤子先輩)

 

美琴と食蜂はこんな奴惚れる要素ある?と首を傾げる、垣根は他にお菓子がないか家の中を探してくると行って立ち上がり何処かへ行く

 

「…ちょっとお花を摘んでくるにゃーん」

 

「?帝督の家にはお花畑があるのか?」

 

「いやメルヘンな垣根でも流石にお花畑はねえよ、麦野さんが言ってるのは別の意味だよ」

 

麦野がお花を摘みに行った後美琴と食蜂は何か変な物置いてないかなーとリビングを見て回る…すると冷蔵庫の中にジュースが入っていた

 

「まだジュースあったんだ…ちょうど飲み干したところだしこれを飲みましょう」

 

「いいわねぇ、上条さん達は何味がいい?」

 

美琴がこの缶ジュースを飲もうと言って10本ほど入っていた缶ジュースを食蜂と共にテーブルに置く、上条達は好きなジュースを選び蓋を開け飲み始める

 

「ん?初めて飲むなこれ…」

 

「結構美味しいじゃないのぉ」

 

「垣根さんも最初にこれを出せば良かったのに」

 

「でも変な味だな、これ本当にジュースか?」

 

「……この匂い、これ木原くンがよく飲んでる…」

 

上条と美琴、食蜂はジュースを美味しそうに飲んでいたが削板は変だなと怪しみ一方通行は数多が飲んでいたアレに匂いが似ている事に気付き一口飲んだ後缶をよく見てみる

 

「……おい削板、ここ読ンでみろ」

 

「む?何々「悪酔いぶどう」……お酒?て!これはジュースじゃなくて酒か!」

 

「……いやなンでていとくン家に酒があンだよ」

 

「なあ未成年は飲んじゃダメなんだろ?捕まるのか?俺達捕まるのか?」

 

「いやバレなかったら犯罪じゃねえンだよ…お前らもなんか言ってやれ」

 

削板と一方通行はこれはジュースではなくお酒だと気づく、削板は捕まるのかと慌てるが一方通行はバレなければいいと呟き上条達に同意を求めるが…

 

「ふぇ?なんか言っらかアクチェラレータ?」

 

「なんでよ!なんで操祈はたった一年でボインボインになるの!?世の中不条理だ!巨乳なんか死んでしまえ!操祈以外!」

 

「うぇぇぇ…私だって好きで大きくなったんじゃないわよぉ…その所為で影でしいたけおばさんて言われてるんだからぁ…私はまだ中学生よぉぉぉ!!!」

 

「もう酔っ払ってる!?」

 

もう出来上がっている上条達を見て一方通行はどんなけ酒弱いんだよと叫ぶ、その声を聞いて麦野と垣根が戻って来た

 

「どうかしたかにゃーん、てこの匂い…酒か?」

 

「おい、俺の缶酎ハイ勝手に飲むなよ」

 

「てかなンでていとくンの家に酒があるンだよ」

 

「あ?決まってんだろ飲むためだよ、時々アレイスターとかがここを飲み会の場所にするからな。時々俺も飲まされるんだよ」

 

垣根はここは飲み会の会場になりやすいんだと缶を一本取って蓋を開けお酒を飲み始める、麦野も平然とビールの缶を開けゴグゴクと飲んで行く

 

「おい!お前ら何飲んでるんだ!捕まるぞ!」

 

「あ?私もう18なんだけど?」

 

「俺も17だぞ」

 

「いや両方とも未成年じゃねえか」

 

「いいんだよ、私は中坊の時から酒飲んでるし今でも浜面と時々飲むし」

 

「俺もアレイスターから仕込まれてるから平気だ、因みに俺が好きな酒はワインだ」

 

麦野と垣根は飲酒経験がある為平然と酒を飲んでいるが未成年で酒を飲むなと意外と常識人な一方通行は思った

 

「てかお前らは酔わねえんだな」

 

「ベクトル操作すれば酔わねェだろ」

 

「根性でアルコールの効果を受け付けない!」

 

「うわお前らチート過ぎ」

 

「「「第一位に言われたくねえ」」」

 

そう軽口を言い合っていると扉が開く音がし帆風が帰ってくる

 

「ただいま戻りました…て、どうしたんですか女王達?」

 

「俺はタケノコ!俺はタケノコ!」

 

「世の中は理不尽だ!不公平だ!巨乳死すべし慈悲はない!あ、操祈は別よ?」

 

「うえええん!最近ドリーに会ってないよぉ!久しぶりにドリーに会いに行きたい!」

 

「本当にどうしたンだろうなァ…」

 

帆風は色々と暴走している三人を見て目を丸くする、一方通行は酒癖悪過ぎと呆れた目で三人を見ていた

 

「あ、ここにお菓子置いておきますね」

 

「ありがとな。で、こいつらどうする?部屋に監禁してどんな行動を起こすかモニタリングしてみる?もしかしたらエロい事するかもしれねえぞ」

 

「死ね、取り敢えず氷風呂に突き落として酔いを覚ますのが一番だにゃーん」

 

「根性だ!根性でアルコールを消すんだ!」

 

「お前ら解決する気ねェだろ」

 

垣根達が上条達をどうするかと相談し合う中帆風は部屋の隅にお菓子を置いてなんの話かと尋ねようと考えた時、ふとある物が目に入った

 

「あら?まだジュースがあったんですね」

 

「そげぶ!そげぶ!そげぶ!そげぶ!そげぶ!」

 

「一番ムカつくのはウチのママだ!なんであんなに大きいのに私は小さいんだ!その無駄にでかい胸を少しは私に寄越せてんだよぉぉぉぉぉ!!!」

 

「うえええん!さっきから美琴も上条さんも構ってくれないのぉ!私の事嫌いになっちゃった!?ぴぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

馬鹿三人がクソ五月蝿え中帆風はジュースだと思い込んでいるお酒を手に取る、そして蓋を開けどんな味なのか試してみる

 

「皆さんも飲んでいるようですし…わたくしも飲んでもいいですよね」

 

そう言って彼女は一口飲んでみる……そして暫く帆風は無言を貫き彼女の口から小さく声が漏れる

 

「………ヒック」

 

帆風のそんな出来事に気づかず、垣根達は上条達を上の部屋に連れて行こうとするが三人は暴れて言うことを聞かない

 

「俺の将来の夢は冷蔵庫になることでしゅ!」

 

「なんで皆私より大きいのよぉ…皆なんて大嫌いよ…胸が大きい奴は大嫌い!でも操祈と先輩は大好きなのぉぉぉ!!!」

 

「ねえねえ!構ってよぉ!!!操祈に構って構って!美琴ぉ、上条さぁん!!うぇぇ!!」

 

「こんな醜態をこいつらが晒すとか…ぷはっ、たまんねえなオイ!写メに撮って後日こいつらに見せたらどんな反応するかな?」

 

「殺されるからやめといた方がいいぞていとくン」

 

喚く三人を見て腹を抱えて笑いを堪える垣根、三人の醜態を写真に撮り部屋に運ぼうと思ったその時

 

「か〜き〜ね〜さ〜ん!どーん!」

 

「うお!?」

 

垣根の横腹に帆風の頭部がクリティカルヒット、垣根は帆風に押し倒される形で床に転がり帆風の胸が垣根を押し付ける

 

「へ?いや何をしてるのかな潤子ちゃん!?」

 

「えへへ〜垣根さんの身体て意外と逞しいれすぅー、ずっとスリスリしててもいいですかね?」

 

スリスリと垣根の身体を頬で甘える様に撫でる帆風、垣根がなんと表現したらいいのか分からない表情で一方通行達に助けを求める…一方通行はふとテーブルに置いてあったお酒を見るとその酒は全て蓋が開けられ空き缶となって床に散らばっていた

 

「……結構な飲みっぷりだにゃーん」

 

「一番酒を飲ませたらダメなのはこいつだったンだな…」

 

麦野と一方通行は若干引いた目で帆風を見つめる、帆風は猫の様にスリスリと垣根の頬を自分の頬で撫でる

 

「垣根しゃんも一杯どうぞー」

 

「いや一旦落ち着「ブツブツ言わにゃい!」ごぶぅ!?」

 

帆風は無理矢理垣根の口にお酒を流し込む、口から溢れ出るお酒が彼の服を汚し垣根はジタバタするがそれを見て帆風はニコニコと笑う

 

「あ〜しまったれす、口渡しでお酒を飲ませればよかった〜。でももうお酒がありませんねぇ〜」

 

「あ、危ねえ…俺の初めてが奪われるところだったぜ……」

 

「困りましたねぁ〜あ、麦野さんが新しいの買って来てください〜見た目おばさんだから買ってこれますよねぇー?」

 

「……喧嘩売ってんのか?この第四位の麦野沈利をパシろうなんざ一万年早…」

 

帆風が麦野にお酒買って来いと言う帆風、普段の彼女からは信じられない言葉だが麦野は断りを入れようとしたその瞬間、帆風は自分の拳を床に叩きつけ床に大穴が空き周囲に亀裂が入る

 

「……買ってこないとこうですよ〜?」

 

「三十秒以内に買ってくるにゃーん!」

 

「むぎのんェ…てか俺ん家が…」

 

帆風の笑顔を見た麦野は冷や汗を流しながらお酒を買いに行った、そこには年上とか超能力者のプライドはなかった。垣根はそんな麦野に哀れみの目を向ける

 

 

 

「ありがとうございました!……あーバイトて面倒くさいて訳よ、でもフレメアに玩具買ってあげたいし神華(しんか)とデートも行きたいし…バイト頑張りますか」

 

フレンダはコンビニでのバイトに明け暮れていた、妹の玩具代や彼氏とのデートの費用を稼ぐ為にこうして頑張っている…今日も頑張るぞと彼女か気合いを入れ直した時店の自動ドアが開き麦野が来店する

 

「む、麦野?」

 

フレンダが困惑した様な声を出すが麦野は一切構わずお酒をレジに置く

 

「おい!これを買うからさっさと会計を済ませろゴラぁ!」

 

「え?!てか麦野は18だからお酒なんて買っちゃダメて訳…」

 

「煩え!フレ/ンダにされたくなかったら早く会計済ませェ!」

 

「ええ!?まさかのバイトで命の危機!?」

 

「私だって命がかかってんだ早くしろやぁぁ!」

 

そんなこんなでコンビニで有りっ丈の缶酎ハイを買い麦野は店を出て行った。フレンダは未成年にお酒を売ってしまった事を後悔しバイト辞めようかなと本気で考えた

 

 

 

こう行った経緯で帆風は酔っ払ってしまったのだ、その後も麦野が買って来た缶酎ハイを飲みまくり完全に出来上がってしまいベロンベロンになってしまった

 

「あれぇ?垣根さんが三人に見えましゅう〜あはは、垣根さん逆ハーレムだぁ〜」

 

「……潤子ちゃん胸が当たってるんだが…」

 

「当ててるんですよぉ〜、もしかして脱いで欲しいですか?」

 

「やめて、俺潤子ちゃんのそんな姿見るの耐えられない」

 

デレデレと垣根に酔っ払った勢いで後ろから胸を当てる帆風に心を心頭滅却して煩悩を消している垣根…因みに上条達は眠ってしまっている

 

「ねえ垣根さん、いつも「エロい事しないの?」とか言ってるのになんでわたくしに手を出さないんですか?」

 

「……いや俺は当麻達のそう言うシーンが見たいだけで自分がしたいとは思った事ねえし」

 

「うわ童貞が言うセリフだにゃーん」

 

「童貞とくン(笑)」

 

「お前ら童貞に喧嘩売ったな、童貞舐めんなよ。三十歳過ぎたら魔法使いになれるんだぞ」

 

帆風がやたら胸を強調しながら手を出さないのかと上目遣いで尋ねてきて垣根は目を逸らす、麦野と一方通行が童貞と馬鹿にするがこいつらも人の事は言えない

 

「わたくしならいつでもバッチコイですわよ、いつでも狼になっても構いません」

 

「少し自重してくんない?」

 

「え〜?何で好きな人が目の前にいるのに自重しなきゃいけないんですかぁ?わたくし垣根しゃんが大しゅきでしゅからぁ、こんな事するのは垣根しゃんだけですよぉ…」

 

「……よくそんな恥ずいセリフが言えるな」

 

帆風は照れもせずニコニコと好きな人の前では甘えたいと笑顔を垣根に見せる、不覚にもドキッとする垣根

 

「もう7時を過ぎたな…当麻は俺が学生寮に運ぶとして美琴達はどうするんだ?」

 

「私が運んでやるにゃーん、0次元の極点を使えば一発よ」

 

「俺は帰ンぞ、打ち止めとか木原くンが待ってンだろうしなァ」

 

削板は上条を肩に担いで学生寮へ連れて行こうとし麦野は酔い潰れた美琴と食蜂の襟口を掴み引きずる様に歩く、一方通行は缶コーヒーを飲みながら家に帰ると呟く

 

「てなわけで垣根は帆風を送ってやれ、んじゃまた慰労会やろうな」

 

「じゃあなていとくン」

 

「またな帝督!」

 

「おう……さて、潤子ちゃんは俺が寮まで送るしかねえよな」

 

「やっらぁ〜♪垣根しゃんと一緒に帰れるなんて嬉しいなぁ〜♪」

 

全員が立ち去った後垣根は帆風を寮まで送るかと呟く、それを聞いて帆風はニコニコと笑う…無邪気な顔だと垣根は微笑んだ

 

 

 

「ねえ垣根さん、本当にわたくしを寮に連れていくだけなんですか?それとも……垣根さんのエッチ!」

 

「酔うと性格が変わるな潤子ちゃんは…」

 

垣根は帆風を背中におぶって街中を歩いていた、別に未元物質の翼で移動したり座標移動を使えば早かったのだが帆風が長く一緒にいたいと捨てられた子犬の様な顔をした為垣根は仕方なく寮まで歩いていく事にしたのだ

 

「あ〜またお腹空いてきましたねぇ…馬刺しお願いします!」

 

「ねえよ、てか耳を甘噛みするな」

 

「にゃんにゃんにゃん?」

 

「もう人語すら話さなくなった」

 

甘えてくる少女というのは可愛いかもしれないが今の彼女は酔っている、彼女の酒臭さに垣根は顔をしかめる、明日の授業でバレやしないかといらぬ心配まで考える

 

「うにゃ〜垣根さんの背中は落ち着きますねぇ」

 

「………なんで俺がこんな事しなきゃならねえんだよ」

 

背中を頬で撫でる帆風に垣根は眉をピクピクさせながら呟く、周りの人々の視線が痛いが流石にお酒を飲んでいるとバレてはいないだろう…もし何かあったとしても心理掌握の能力を使えば何とかなる…そう考えていたその時だった

 

「あら垣根じゃない」

 

「げぇ」

 

「げぇとは何よ…て、なんでお祭りにいた彼女を背負っているのかしら」

 

垣根が出会ったのはテレスティーナ、テレスティーナの顔を見た瞬間垣根は嫌そうな顔をしテレスティーナがなんだその顔はと睨んでくるがふと視線を帆風へと移す

 

「……ねえその子顔赤くない?」

 

「……風邪じゃないんですかねぇ」

 

「……まさか、お酒を飲ましたんじゃないでしょうね?」

 

「……感のいいおばさんは嫌いだよ」

 

テレスティーナがジリジリと垣根に歩み寄る、垣根がこれは不味いとジリジリと後ろに下がる…そして垣根はある方向に指を指す

 

「あー!あんな所に金髪美青年がいる!」

 

「嘘!?何処何処!?」

 

「本当なのですかー!?」

 

「そのイケメンは何処にいるんじゃん!?」

 

垣根がそう叫ぶとテレスティーナと偶々近くを歩いていた教師二人がそれに反応する、だがそんなイケメンはおらずテレスティーナが垣根の方を向くと垣根は何処にも見当たらなかった

 

「………垣根ェ!」

 

テレスティーナ(○○歳 独身)の怒り狂った声が街中に轟いた

 

 

 

「あ、危ねえ…捕まる所だったぜ」

 

「ぶぅ〜なんで座標移動を使ったんですかぁ」

 

垣根は逃げきれてよかったと冷や汗をハンカチで拭う、テレスティーナに捕まるとお尻ペンペン百回やら熱湯風呂に叩き落とされたりするので垣根は逃げれて安心していた

 

「ふぁ〜眠たいれすぅ」

 

「そうかい、ならさっさと寝な」

 

「ふぁい、でも眠る前に服を着替えますねぇ」

 

「……何俺の前で堂々と脱ごうとしてんの?」

 

帆風はパジャマに着替えるため服を脱ぎ始めるがそれを垣根の目の前でしようとし垣根がやめろと制する

 

「ふふ、見られても構いませんよ?」

 

「はしたないからやめなさい、年頃の女の子がそんな事しちゃいけません」

 

「とか言いながらチラチラ見てるくせにぃ〜」

 

「……見てねえよ」

 

そう言いつつ垣根はチラリチラリと帆風を見たりしている、流石童貞とくン。帆風は中々自分の思い通りにいかないからかぶぅと頬を膨らませ…垣根の腕を掴み自分の元へと引き寄せる

 

「へ?」

 

「えい」

 

帆風は引き寄せた垣根を自分のベットへと突き飛ばす、垣根がベットに倒れこみすぐに起き上がろうとするが帆風が垣根にのしかかり起き上がれない様にする

 

「じ、潤子さん?…何をしようと?」

 

「え〜?垣根さんが素直にならないから…ヤッちゃおうかと」

 

「……やるて何を?」

 

「察してください」

 

そう言って彼女はニッコリと笑ったのだった、垣根は彼女が何をやろうとしているのか理解し顔を青ざめ彼女が何をしようとしているのか理解する

 

「誰かヘルプミー!俺襲われちゃう!ヘルプー!ヘルプー!」

 

「大丈夫です、優しくしてあげますから」

 

「目がガチだ!どうせ乱暴するんだろ!」

 

「ええ、同人誌みたいに」

 

垣根は帆風の拘束から抜けようとするが帆風の力には勝てず逃げられない、このままでは貞操を奪われかねない…そう考える垣根の脳内に天使と悪魔が争っていた

 

 

『これはチャンスだぞボーイ、ヤッちまえよ』

 

『こんな可愛い子がこうまでしてくれてるのにヤらないなんて据え膳もいい所よ?』

 

(両方共悪魔だった!)

 

因みに天使の姿はロシア成教のワシリーサ、悪魔はアメリカ大統領のロベルトだった。両方共ヤッちゃえよとグーサインしてくるのでこいつら使えねえと垣根が思った時頭上から堕天使が二人降ってきた

 

『ようこそロリコン(こちら側)の世界へ、歓迎するのである』

 

『貴様のその理性を…ゼロにする!』

 

(黙れロリコン共)

 

アックアと騎士団長がロリコンの世界へようそこと親指を立てる、垣根は全員ふざけんなと未元物質の翼で全員八つ裂きにし現実世界に帰還する

 

(……まあ、愛されるてのは嬉しいが…こういうのはまだ早いとていとくん思うの…だから断らねえとな)

 

「あ〜潤子ちゃん?まだ俺らにはこう言うのは早いと…」

 

垣根が断りを入れようと思ったその時ふと気づく、帆風が先程から何も喋らない事に

 

「むにゃ〜垣根さん……」

 

「…寝てる」

 

寝てしまった帆風を見て垣根はホッと息を吐く、垣根は帆風をベットに寝かせる

 

「……さて、もう帰るとするか」

 

垣根は色々と疲れたから家に帰って寝ようと踵を返す、そこで垣根は気づいた。入鹿が扉の前に立っている事に

 

「「…………」」

 

二人は暫し無言で目を見つめ合う、そして垣根が電光石火の如く部屋の窓を開けて翼を広げ空へと逃げた…入鹿は暫く垣根が立ち去った窓を見つめたのち寝ている帆風を一瞥する

 

「んん〜〜……垣根さぁん〜」

 

「……まさかお二人共…大人の階段を……?」

 

そう言って入鹿は床に崩れ落ちたのだった

 

 

 

 

『俺はタケノコ!俺はタケノコ!』

 

『世の中は理不尽だ!不公平だ!巨乳死すべし慈悲はない!あ、操祈は別よ?』

 

『うえええん!最近ドリーに会ってないよぉ!久しぶりにドリーに会いに行きたい!』

 

 

『俺の将来の夢は冷蔵庫になることでしゅ!』

 

『なんで皆私より大きいのよぉ…皆なんて大嫌いよ…胸が大きい奴は大嫌い!でも操祈と先輩は大好きなのぉぉぉ!!!』

 

『ねえねえ!構ってよぉ!!!操祈に構って構って!美琴ぉ、上条さぁん!!うぇぇ!!』

 

 

「あははは!どうだよこれ!滅茶苦茶笑えるだろ!」

 

「「「その動画を消せえぇぇぇ!!!」」」

 

後日垣根は携帯で撮った醜態を晒す上条達の写真とピンセットでその動画を見せ大笑いし、その動画を消せと上条達が大暴れしたのは語るまでもないだろう

 

「……俺大人になってもコーヒーしか絶対に飲まねェ」

 

「…俺も酒は飲みたくないな」

 

「…ま、飲むにしても程々が一番だにゃーん」

 

 

 

「う〜ん、昨日何か凄い事をした気がするんですが…覚えてませんね」

 

帆風は昨日の出来事を全て忘れていた、なので何故垣根が自分と会った時に頬を一瞬赤くしたのか理由がわからなかった。なお常盤台では彼女が大人の階段を登ったと言う噂が広まっていた、勿論ソースは入鹿。そして帆風を性的な意味で好きな常盤台の女子達が垣根に奇襲を仕掛け返り討ちにされたのは言うまでもない

 

 

 

 

 

 

 

 

 




もし自分が縦ロールちゃんに迫られたら絶対そのまま流されちゃう(断言)、手を出さないていとくんはマジで紳士(ロリコン)の鑑。案外雑だった、でもネタとしてからしか浮かばなかったから仕方ないね

さて次回は青ピ君の謎に迫る回です、謎に包まれた青ピ君の謎を追え!そして明らかなる真実とは一体?て感じのお話を書きます、それが終わったら新章を始めます

次回もお楽しみに!


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イルカと言う名のイルカショーですが何か?

今回は青ピ君がメイン、多分ここだけの限定オリジナルのカップリングが出ると思います(原作での接点が一切なし、ほぼ強引)

さて今回は青ピ君のネット上で囁かれるあの説を取り入れています…まあ実を言うと青ピ君て本当はこの小説のレギュラーキャラになる予定だったんですよ…でもキャラが九人になるから青ピ君は外れたんです…青ピ君ごめんね、でも作者は青髪ピアス君大好きです


「ねえ、青ピの本名て知らない?」

 

事の始まりは昼休みの時間に吹寄の言った一言だった

 

「いきなりどうした吹寄?」

 

「あいつの本名て私達知らないわけじゃない、それて友達としてどうなのかと思って」

 

「確かににゃー、俺もあいつか超弩級のド変態て事しか知らないぜい」

 

「俺も性癖まみれのドMオタクて事しか知らないんだよな…」

 

「あいつが救ェね程の変態て事は誰でも知ってる事だろうが」

 

「そうなのよね、私も変態で少しキモいて事しか知らないわ」

 

何気に酷い悪口を言い合う四人、この場に青ピがいたら涙を流しているだろう

 

「……で、あいつの名前でなんなの?」

 

「?いや青ピの本名は青髪ピアス……は!?」

 

「…気づいた様ね上条」

 

「?どう言うことかにゃー?」

 

「なンの話なンだよ…俺らにも分かるよう教えてくれ」

 

吹寄が青ピの名前はなんだっけと尋ねると上条は無意識的に青ピと呼んでしまい何かに気づいた顔をする、土御門と一方通行は何の事かわからず首を傾げる

 

「…土御門、あいつの名前をフルネームで言ってみなさい」

 

「青ピのフルネーム?青髪ピアス……は!?」

 

「…成る程、そォ言う事か」

 

土御門と一方通行は漸く吹寄と上条が何の事を言っているのか理解し顔を強張らせる

 

「そうよ。私でもあいつの事を青髪ピアスて呼んでしまうの…でもそれはあだ名みたいなもの…なのに私達はそれをさも名前の様に言っている」

 

「つまり…どういうことだってばよ?」

 

「分からない?私達はあいつの名前を青髪ピアスだの錯覚していたのよ!」

 

「「「ナ、ナンダッテー!?」」」

 

吹寄が今まで自分達は青ピの本名を知らなかったんだと叫ぶと上条と土御門、一方通行は驚愕する、その驚きっぷりは背後に落雷が落ちる幻影と幻聴が聴こえる程だ

 

「確かに俺も青ピの本名を知らねえな…カミやんは知ってるか?」

 

「いや俺も知らねえぞ…でも小萌先生なら知ってるんじゃないか?」

 

「だな、小萌てんてーなら知ってるだろ」

 

「甘いわよ上条に一方通行、ショートホームルームの時間を思い出してみなさい」

 

上条と一方通行が小萌先生なら知ってるんじゃ…と言うが吹寄は首を振って否定しショートホームルームを思い出せと言い二人は今朝のショートホームルームを思い出す

 

 

『じゃあ出席取るのですよー、青髪ピアスちゃん!』

 

『はーい!ここにおるで小萌先生!』

 

『そんな事言わなくても分かってるのですよー、じゃあ次は…』

 

 

「……先生も青髪ピアス呼び……だと?」

 

「……もう青髪ピアスが本名なんじゃないかしら」

 

(ま、俺も一方通行て名前みたいに呼ばれてるが…それは俺の能力名なンだよなァ)

 

上条が先生も本名を言ってなかったなと今更ながら気づく、吹寄は青髪ピアスが名前なのではと呟く

 

「…これは調べてみる必要があるな、友達の本名を知らないなんて恥ずかしいぜい」

 

「同感ね、これは早急にあいつの名前を知る必要があるわ」

 

「だな、何としても青ピの秘密の名前を探ってみようぜ」

 

「最悪拷問してでも吐かせてやンよ」

 

四人は互いに見つめあった頷く、全ては名前を知らない友達の名前を知る為に…彼らはそう言って教室に戻ってきた青ピに詰め寄る

 

「丁度いいところで来たな青ピくゥン」

 

「ん?なんなん?ボクに何か用?」

 

「お前の名前を教えるんだにゃー」

 

青ピは何事かと首を傾げる、土御門が名前を教えてくれと言うと青ピは戸惑った様に口を開く

 

「え?ボクの名前は藍花悦(あいはなえつ)やで、確か入学初日にカミやん達に教えた筈なんやけど…覚えとらんかったん?」

 

「「「「…………」」」」

 

青ピが呆気なく自分の名前を教える、と言うか彼は入学初日に上条達に名前を教えていた。その事実に上条達は固まった、その場には気まずい空気が流れたのだった

 

 

 

「「てな訳で俺達は青ピの名前を忘れてただけだったん(ン)だよ」」

 

上条は笑いながら今日起こった出来事の顛末を垣根達に話す、その話を聞いて垣根達は笑いもしなかった

 

「…友達の名前を忘れるとか最低だにゃーん」

 

「友達の名前はしっかり覚えないとダメだぞ!」」

 

「「でもそんな先輩/上条さんが大好き」」

 

麦野と削板に友達の名前くらい覚えておけと言われしまう上条、だがそんな上条を美琴と食蜂は可愛いと思っていた

 

「いやさ、俺らは青ピの名前は秘匿されていて俺達はそれを知ろうと探っていたら裏の世界に足を踏み入れてしまい、謎の組織と対立するかと思ってたのに余りにも呆気ない終わり方で驚いたんだよ」

 

「なんだその厨二病みたいな展開は…」

 

「てっきりこんな展開になると思ったんだけどなー」

 

 

『カミジョウ、貴様はここで死ぬーのだ!』

 

 

上条の脳裏には自分に鉄砲を向ける黒いマントとパンツ以外何も衣服を着ていない仮面をつけた男の姿が過る

 

「いやその人誰ですか先輩」

 

「悪の組織のボスだ」

 

「雑魚力溢れる悪の組織のボスねぇ」

 

「……ま、そんな事よりも実は俺この一件である事に気付いてな」

 

上条は青ピに関して何か気づいたことがあると呟き垣根以外が首を傾げる

 

「気づいた事……ですか?」

 

「ああ、名前は単純に忘れてただけなんだが…よく考えれば俺達てあいつのプライベートとか知らなくね?」

 

「そう言われてみれば俺も青髪の生活とか全く知らないな」

 

「あいつが変態て事ぐらいしか知らねにゃーん」

 

上条が青ピのプライベートは全く知らないと呟くと垣根を除いた全員が確かに…と頷く

 

「なあお前らは青ピの秘密とか知らねえのか?どんな些細な事でもいいから。例えば幼女を誘拐しかけたとか道端で女子高校生に蹴られて「ありがとうございます!」て叫んでたり、幼女に踏まれてハァハァ興奮してたりでもいいから」

 

「上条さんは普段から青ピさんをどの様な目で見ているのですか?」

 

「?青ピはド変態だろ?」

 

「………否定はしませんわ」

 

上条はどんな事でもいいから教えてくれと言うと全員が必死に青ピに関する事を思い出そうとする、そんな中垣根が口を開いた

 

「俺は知ってるけど」

 

「……え?」

 

「俺は青ピのプライベートとか知ってるぞ」

 

垣根があいつのプライベートなら知っていると呟くと全員が垣根を見つめる

 

「マジで知ってるのかよ垣根?」

 

「当たり前だ、俺は滞空回線で学園都市のほぼ全ての人間のプライベートを監視してる男だぞ、お前らが学園都市にいる限りお前らにプライベートなんざねえ」

 

「問題発言が聞こえた気がするけど…まあいいわ、青ピさんについて知ってるのね」

 

垣根は学園都市にいる限り滞空回線で上条達の私生活やら学校生活、自宅でのあんな事やこんな事も丸裸だと笑う。全員思った、こいつ悪意がない分ストーカーよりもタチ悪いな

 

「で、何が知りたいんだ?青ピの彼女?あいつの趣味?あいつの能力?なんでも聞きな」

 

「……え、ちょっと待ってよていとくン。今彼女て言わなかったか?」

 

「言ったがどうかしたか?」

 

「…それだとまるで青ピの野郎と付き合ってる女性がいる風に聞こえるにゃーん」

 

「いやあいつ彼女いるけど」

 

「「「「「「」」」」」」

 

垣根が青ピは彼女がいるんだと言うと全員があり得ねーと言う顔をする、彼らにとって青ピに彼女ができるなど地球が明日滅ぶよりも信じがたい事なのだ

 

「う、嘘だろあの青ピが?青ピだぞ?嘘だろ、嘘でしょ、嘘なんでしょの三段活用だぜ」

 

「なンだと…となるとバカルテットの中で唯一彼女がいないのは俺だけ…だとォ?」

 

「…青ピのクセに生意気だにゃーん、今度締め上げる」

 

「…嘘は良くないと思うの、だって私なら青ピさんだけはないわ」

 

「同感、私も青ピさんだけはないんだゾ」

 

「わたくしも丁重にお断りしますわ」

 

「……女性陣からの扱いが不遇過ぎる、ドンマイ青ピ」

 

上条と一方通行が驚き麦野は今度あったらぶん殴ると拳をポキポキし始める、常盤台の三人は青ピと付き合うなんて余程の変わり者とサラリと青ピを酷評する

 

「なんなら見に行くか?あいつ今日はバイト休みだし彼女とデートに行くらしいからな。因みに場所は第十五学区の天体水球(セレストアクアリウム)だ」

 

「…何故垣根さんは詳しく知ってますの?」

 

「俺はカプ厨だからな、これくらいは知ってて当然だ」

 

ならデートを見に行こうと携帯片手に絶対カップリング写真を撮る気満々の垣根がそう提案する、帆風は何故そこまで知っているのかと尋ねると垣根はカプ厨として当然とキメ顔をした

 

 

第十五学区のガラス張りの高層ビル…その中にある巨大水族館 天体水球。水棲生物の観察よりもデートスポットとしての人気が高い、近年では垣根やアレイスター、メイザース、レイヴィニア達の趣味嗜好によりラギアクルスやらカイオーガ、大海獣、時空破壊神ゼガン、ダガーラ、グッピー等が飼育されている

 

「ん〜愛愉ちゃんこうへんなー、少し早く着きすぎたかもなしれんな〜」

 

青ピは学生服のまま携帯で時間を確認し早く来すぎたかと呟く

 

「青ピのクセにデートなんて…今度学校で会ったらしばいてやる」

 

「リア充しやがって…青/ピにしたやろうか」

 

「チッ…リア充がァ…死ね」

 

「お前らて青ピに何か恨みがあるの?」

 

「お静かに…誰か来ましたわよ」

 

垣根達は影から青ピを観察していた、因みに隠れているつもりだが電柱の背後に八人が隠れ首を縦一列に並べてひょっこりと顔を出しているので怪しさたっぷりである、現に子供は垣根達を指差し何人か警備員を呼ぼうとしたが食蜂が心理掌握で洗脳する事で事なきを得た

 

「お〜い!」

 

「お、愛愉ちゃんこっちやでー!」

 

「ごめん青ピ君、待った?」

 

「いいや今来たところやで」

 

やって来たのは綿菓子のようなふわっとしたチョコレート色の髪に美しい脚線美を持つ足が特徴的な女の子…少女を見た上条はえ?と声を漏らした

 

「…ん?あいつ…蜜蟻か?」

 

「確かにあの人は蜜蟻さんねぇ」

 

「?知り合いなの?」

 

美琴が上条と食蜂に知り合いかと尋ねる、すると二人ではなく帆風が代わりに説明する

 

「彼女は蜜蟻 愛愉(みつあり あゆ)、わたくしと女王が昔所属していた研究施設の先輩でして…確か上条さんと同じ高校でしたよね」

 

「ああ、友達だよ。美琴と操祈と付き合う前はボーリングとかによく誘われてたけど最近は会ってなくてさ…まさか青ピと付き合ってたとは……まさか弱みを握られてんのか?」

 

「お前どんなけ青ピを信用してねえんだよ」

 

帆風が蜜蟻について簡単に教える、上条は最近会ってなかったけど青ピと付き合っていたのかと驚く

 

「お、あいつら水族館に入っていくな…俺らも後を追うぞ」

 

「行くぞ17600号、エツァリ」

 

「「OK」」

 

「……あれ?ナチュラルに知らない人がいますわ」

 

垣根は青ピ達が建物の中に入ったのを見るとスネークとお粥を引き連れて建物に入って行く、帆風はいつの間にかと思ったが垣根の知り合いは変人ばかりなのであまり気にしなかった

 

 

「わあ…見て青ピ君アザラシ可愛いよ」

 

「せやな〜でもあのラッコちゃんもキュートやで」

 

「あ、でもペンギンも可愛いね」

 

「確かにペンギンもキュートやなあ…でも愛愉ちゃんの方が何倍も可愛いで」

 

「もう青ピ君たら……」

 

アザラシとかペンギンがいるコーナーで楽しそうにしている青ピ達、ペンギンが可愛いと呟く蜜蟻に青ピは君の方が可愛いと言い彼女は頬を赤く染める

 

「……殴りたいあの笑顔」

 

「同感なんだゾ」

 

「今すぐここでミンチにしてやろうか」

 

「まあ恋愛は人それぞれだしいいんじゃないか…しまったな、俺もアリサを連れて来ればよかった!」

 

青ピのそんな行動を見て美琴と食蜂は焼き豚にしてやろうかと呟き麦野もミンチか・く・て・い・ね状態だった。削板は彼女(アリサ)を連れて来ればよかったと後悔する

 

「わぁ〜アシカもいますよ垣根さん」

 

「ここは結構揃ってるからな〜あっちは深海魚コーナーだけど見に行くか?」

 

「…師匠このミミズみたいに細長いお魚さんはなんて魚ですか?とミサカは問いかけます」

 

「な!?なんて卑猥な魚を置いてるんですかここは…!」

 

「…お前らも水族館デートしてんじゃねえよ」

 

垣根と帆風は楽しく水族館デートじみた雰囲気を出しエツァリはチンアナゴを見て卑猥だと目を閉じる、それを見て訝しむ17600号…上条は青ピのこと忘れんなよと溜息を吐く

 

「でも色んな魚がいるんだな…今度美琴と操祈のデート場所で来てみるか……て、ん?あれは……嘘だろ!?」

 

上条がここをデートの場所に選ぼうかと考える、そしてある生き物を発見してしまう

 

「お、おい大変だお前ら!凄い生き物がいたぞ!」

 

「あ?なンだよ、ゴジラでもいたのか?」

 

「いやゴジラじゃねえけど…凄いビックネームな奴だ!」

 

「?ビックネーム?一体どんな生き物だ?」

 

上条が指差した方向を全員が見る…指をさした場所にいたのは4本の触手が蠢く単眼の生物…その姿はまさに触手神…その生物の名前は……

 

「クウウウゥゥゥゥ!」

 

「「「「「「イ、イリス?!」」」」」」

 

「もう学園都市てなんでもありだな」

 

「だ、誰かガメラを呼んできてください!」

 

そう邪神イリス、 平成ガメラ三部作の3に登場したラスボスである。イリスの出現に大慌てする上条達、垣根も何でもありだなこの世界と白い目になり帆風はロリコン・ショタコンで有名な亀に助けを求める

 

「クウウウゥゥゥゥ!」

 

イリスに勝てるのかと上条達が考えているとイリスの両手がイリスの頭を鷲掴みする、そしてゆっくりと首を持ち上げた(・・・・・・・)

 

「イリスかと思ったか?残念、俺様だ」

 

「何やってんのフィアンマ」

 

イリスの正体はイリスの着ぐるみを着たフィアンマだった

 

「はい!と言う事で毎度お馴染みのネタで登場した俺様だが……まずお前らに一つ言うことがある!」

 

フィアンマはイリスの着ぐるみを脱いだフィアンマが真面目な顔になり上条達に話しかける

 

「蜂蜜食べよ〜」

 

「「「うん食べるー!」」」

 

「迷いなく行った!?」

 

フィアンマが笑顔で蜂蜜を取り出すと上条と美琴、食蜂が笑みを浮かべながらフィアンマから蜂蜜を貰う。それを見て麦野が行くのかとツッコミを入れた

 

「「「「いただきます!」」」」

 

ペロッとフィアンマ達は自分の指に蜂蜜をつけその指を口の中に入れる、その瞬間驚いた表情にフィアンマはなりめを見開いてお互いの顔を一瞥し…また蜂蜜がついた指を舐める…そしてまた驚いた表情になり互いの顔を見合わせる…そしてまた指を舐める

 

「いやその表情は何だよ!美味しいか不味いのか分かんねえんだよ!」

 

「「「「……ビミョー」」」」

 

麦野が美味しいのか不味いのかと尋ねると上条達は微妙な味と呟く、そして蜂蜜を食べ終わった後フィアンマが顔を歪める

 

「馬鹿め!引っかかったな!その蜂蜜は毒なんだよ!」

 

「「「な、何だって!?」」」

 

「自分の身体を見てみるといい」

 

「くっ、毒なんて卑怯だぞ…て、あれ?何ともないぞ」

 

「そうだ、お前らの身体は何ともない…それは何故だと思う?」

 

フィアンマがその蜂蜜は毒だと笑う、驚く上条達だが身体には何の異常もない。それを訝しむ上条達にフィアンマが腕を組んで口を開ける

 

「それはお前達の母親が健康な身体に産んでくれたからだ」

 

「「「!」」」

 

「そんな立派な身体にしてもらった事に感謝するがいい、お前達の母親が、そして養ってくれた父親がいなければ今のお前達はいないのだ…感謝するといい」

 

「「「うぅ…お母さん…お父さん!産んでくれてありがとう!」」」

 

(なんだこの茶番)

 

フィアンマが両親に感謝しろと言うと泣きながら両親に感謝する上条達、垣根は何だこれと思った

 

「さあ!お父さんとお母さんに感謝の歌を歌おう!」

 

「「「うん!」」」

 

「さあ垣根達もご一緒に!」

 

「「「「「歌わねえよ」」」」」

 

フィアンマはマイクを取り出し感謝の歌を歌おうと叫ぶ、それに同意しマイクを受け取る上条達…もはやカオスだった。因みに四人の目は♪の様な形になっていた

 

「「「「あー母さーん父さーん♪」」」」

 

「ヤイ♪ヤイ♪」

 

「何故か出て来たサービスマン!?」

 

フィアンマ達が歌うとそれに合わせていつの間にか現れたサービスマンが衣服をめくり上げて陰部を露出しては服を戻しまた露出を繰り返す

 

「「「「あー感謝してーます♪」」」」

 

「ヤイ♪ヤイ♪」

 

「きゃああああああああ!!!!」

 

今度は尻を垣根達に向けて陰部を露出するサービスマン、それを見て麦野が叫んだ。なお帆風は垣根に目を塞がれている為何も見えない。そしてサービスマンは一方通行へと近づき彼の頭に自分の服をめくってかぶせ自分の陰部を目の前で見せつける

 

「思う存分……見てね♡」

 

「オラァ!!!!」

 

「とあセラ!?」

 

一方通行はベクトルで強化した拳でサービスマンの顔面を殴った、吹き飛ばされるサービスマン…それを見た麦野が一方通行に両手の親指を立てる

 

「一方通行ナイス」

 

「ふ…中々の歌唱力だったぞ。流石超能力者(レベル5)だ」

 

「へ、お前も凄かったぜフィアンマ」

 

「あんた意外と良い奴じゃない」

 

「また今度皆でカラオケでも行きましょう」

 

そんなサービスマンのサービス(意味深)が終わると同時にフィアンマ達も歌い終わった様でお互いに握手をしていた

 

「で、ここで何してんのフィアンマ?」

 

「ああ、俺様が以前観覧車を壊したせいでここでタダ働きをしていてな…今日はイリスの着ぐるみを着ている」

 

「まだそのネタ引きずってんのかよ」

 

フィアンマは以前インデックスと共に壊した観覧車の弁償でここでタダ働きしていた

 

「因みに俺様がイリスの着ぐるみを着ていたのはイリスが朱雀をモチーフにしているからだ、何せイリスとミカエルが司る方位は南だからな。因みに朱雀もミカエルも火と関連すると言う共通点もある」

 

「へーそうなんだー…てか詳しいなお前」

 

「特撮は男のロマンだ、て脳幹の奴が言っていたぞ。では俺様は次の仕事があるので失礼するぞ、後ここのイルカショーは凄いぞ、ぜひ見てみるといい」

 

フィアンマはそう言い終わるとイリスの着ぐるみを再び着用し垣根達に手を振りながら去って行く

 

「垣根さん、青ピさん達がイルカショーに行こうとしてますよ」

 

「早く追いかけましょう、とミサカは提案します」

 

「そうか、皆行くぞ」

 

エツァリと17600号が青ピ達がイルカショーのコーナーへ行こうとしていると言うと垣根達は慌てて青ピ達を尾行する

 

 

「本日はイルカショーへようこそ!俺様がイルカショーのお兄さんだ!」

 

「またしてもフィアンマ」

 

イルカショーのお兄さんはフィアンマだった、フィアンマはホイッスルを鳴らしイルカ達を呼び出す

 

「この五体のイルカちゃんが皆さんに芸を見せてくれます!」

 

フィアンマがそう言って呼び出したのはホオジロザメ、シャチ、マンボウ、リュウグウノツカイ、ダイオウイカだった

 

「イルカいねえじゃねえか!これじゃ【イルカいないでショー】じゃねえか!」

 

「イルカがいないのにイルカショーて…」

 

イルカがいねえじゃんと叫ぶ垣根にイルカショーて何だっけと考える帆風…観客もイルカはいないのかと残念がっていた

 

「ではまずはイルカちゃん達と触れ合いタイムです、ではそこのカップルとそちらのカップルさんこちらへ来てください!」

 

「へ?ボクら?」

 

「やったわね青ピ君」

 

(ナイスフィアンマ)

 

フィアンマが青ピ達に手を向けこっちに来てイルカ達と触れ合おうと言う、垣根はカップリング写真を撮るチャンスと携帯を構える

 

「ではイルカちゃんの頭をなでなでしてあげてください」

 

「…あのお兄さん?これイルカちゃうねん、ホオジロザメやん」

 

「小さい事は気にするな、ほら早く撫でろ」

 

「嘘やろ……」

 

フィアンマが早く撫でてやれと脅すと青ピは渋々ホオジロザメの頭を撫でようとする…もしかしたら人に慣れていて甘えん坊なのかもしれないと青ピがホオジロザメにそんな幻想を抱き…撫でようとした腕をその幻想ごとパクリと喰われた

 

『案の定喰べられちゃった!』

 

「あ、青ピ君!?」

 

ですよねー!と叫ぶ垣根達に悲鳴をあげる蜜蟻、観客達もヤバいんじゃねこれと悲鳴をあげ始めフィアンマが聖なる右を使おうとすると青ピが喰われていない方の腕でそれを制する

 

「物騒な事はせんでええで、この子はただ怖がっとるだけなんや」

 

「……青ピ君」

 

「ほら、君も怖がらんでええで…ほら怖くない怖くない」

 

青ピはホオジロザメの頭部を左手で撫でる…怖くないと呟きながらホオジロザメを撫で続ける

 

「大丈夫やボクは守備範囲は広いんや…ボクぁ落下型ヒロインのみならず、義姉義妹義母義娘双子未亡人先輩後輩同級生女教師幼なじみお嬢様金髪黒髪茶髪銀髪ロングヘアセミロングショートヘアボブ縦ロールストレートツインテールポニーテールお下げ三つ編み二つ縛りウェーブくせっ毛アホ毛セーラーブレザー体操服柔道着弓道着保母さん看護婦さん

メイドさん婦警さん巫女さんシスターさん軍人さん秘書さんロリショタツンデレヤンデレチアガールスチュワーデスウェイトレス白ゴス黒ゴスチャイナドレス病弱アルビノ電波系妄想癖二重人格女王様お姫様ニーソックスガーターベルト男装の麗人メガネ目隠し眼帯包帯スクール水着ワンピース水着ビキニ水着スリングショット水着バカ水着人外幽霊獣耳娘まであらゆる女性を迎え入れる包容力を持ってるんやで…ホオジロザメを擬人化して萌えっ子にしたら…こんなん痛ないわ!」

 

「何言ってんだあいつ」

 

青ピは自分の守備範囲を舐めるな、ホオジロザメなど擬人化して萌えっ子に脳内変換すれば痛くないと叫ぶ…それを聞いて上条は何言ってんだこいつ?と冷たい目を向ける

 

「そうやこの子はホオジロザメやない…スク水ツンデレオレっ娘なんや!そう思えば…この痛みも快楽へと変わる!」

 

「!?(なんだこの人間…私の噛みつきを喰らっても泣き喚かないだと…あ、あり得ん!)」

 

「ほら可愛いでホオジロザメちゃん!」

 

そう言いながらホオジロザメを撫で続ける青ピ、ホオジロザメが驚いた様な顔をし次第にホオジロザメの噛みつきが緩んでいく

 

「……(可愛い…か、私には無縁の言葉だと思っていたが…面白い男だ)」

 

「…心開いてくれたみたいやな」

 

「大丈夫青ピ君?!」

 

ホオジロザメは噛みつきをやめ青ピから離れていく…蜜蟻は大丈夫かと尋ね青ピは大丈夫だと笑う

 

「…これが命がけの触れ合い…か、では他にやりたい人はいるか?」

 

(((絶対にやりたかねえ)))

 

その後シャチが火の輪をくぐったりダイオウイカがお手玉したりホオジロザメが空中でバク転を三回繰り返したり、リュウグウノツカイがフィアンマのマフラーになったりフィアンマがマンボウをサーフィンボードの代わりにするなど様々な芸があったがどれも地味だった

 

 

 

「いやぁ楽しかったなあ愛愉ちゃん」

 

「ええ、とっても楽しかったわ」

 

デートの帰り道、青ピと蜜蟻が笑いながら歩いている、それを遠くから尾行して見ている垣根達

 

「…なんだ青ピは愛愉の弱みとか握ってるとかじゃなかったのか」

 

「でも愛愉さんが青ピ如きと付き合ってる理由がわからないわねぇ…だって青ピさんよ?」

 

「だからお前ら青ピに恨みあんの?」

 

上条が弱みを握っているわけではないのだと安堵し食蜂は何故青ピなんかと付き合っているのかと首を捻る

 

「……ねえ覚えてる?一年前のあの日の事」

 

「…覚えてるで」

 

(あれ?回想に入りそうな展開になって来ましたわ)

 

蜜蟻が唐突に昔の事を覚えているかと尋ね青ピが頷く

 

「あの日自暴自棄になってた私を青ピ君が慰めてくれたんだよね」

 

「まあ可愛い女の子が泣いとったら助けるのが男の性て奴やからな…たく、カミやんたら酷いわ。フラグ乱立させておいて彼女作ったらカミやんに惚れてた女の子達がどうなるかも考えてないやなんて」

 

(……え?惚れてた?)

 

上条は青ピと蜜蟻の話を聞いて固まった

 

「一年前上条君が第五位としいたけ女…食蜂操祈と付き合ったて聞いて自暴自棄になってた時に青ピ君が止めてなかったら私達は付き合ってなかったと思うのよね」

 

「でもあの時は驚いたわ、なんせ身体中にダイナマイト巻いてカミやん家に突撃してカミやんと無理心中しようとしとったんやからな」

 

(え、なにそれ怖い)

 

蜜蟻はあの時ダイナマイトを全身に巻きつけて特攻しようとしていた所を止められなければ付き合っていなかったと青ピに笑って話す、だが上条は全く笑えなかった

 

「つまり…あの二人が付き合う原因を作ったのは…上条のフラグ体質の所為だったのかにゃーん」

 

「え!?上条さんのせいなんでせうか!?てか愛愉て俺の事好きだったの!?」

 

上条が初めて知ったと頭を抱えて驚く…すると両肩にポンと誰かな手が触れ上条がびくりと震える、そして恐る恐る背後を振り向くとそこにはにっこり笑顔の美琴と食蜂の姿が

 

「「ちょっと向こうでO☆HA☆NA☆SIしましょう」」

 

「」

 

上条は彼女二人に引きずれて行った、その後向こうの方から上条の叫び声と電撃が唸る音、ムチの音が響いたが垣根達は気にしない事にした

 

「私上条君の事が初めて出会った時から好きだったんだけど…今は青ピ君の方が大好きよ」

 

「カミやんより好きとか嬉しいわ、まあでも愛愉ちゃんが惚れるのはわかるで。カミやんはフラグ体質なのは腹立つけどええ奴やし優しいし一応料理はできるし…ボクなんかが勝てる要素一つもないわ」

 

「そんな事ないわよ、青ピ君はオタクで変態でドMの大能力者だし。インパクトだけなら上条君に劣ってないわ」

 

「……フォローになってないで」

 

蜜蟻は青ピのいい所を言うが全くいい所ではないと青ピが突っ込む、蜜蟻は冗談だとにこやかに笑った

 

「さて、俺はカップリング写真が取れて満足できたし帰るとするか、これ以上の尾行はあいつらの邪魔になるしな」

 

「いや尾行している時点でアウトでは?まあ、わたくしもそろそろ門限ですので失礼いたしますわ」

 

「俺も帰ってコーヒー飲むか」

 

「私も家で鮭弁食うわ」

 

「俺は今から学園都市を5周してから帰って寝る!じゃあな皆!」

 

これ以上の尾行は野暮だなと垣根が言うと彼は踵を返して立ち去ってしまう、帆風達も青ピの秘密が知れたからもう満足と家や寮への帰り道を歩き始める

 

(お、ていとくん達は帰ったみたいやな。全く人のデートを覗き見するなんて悪趣味やでほんま…普段ならイルカショーの時点でキスぐらいしとったのに…ほんまお邪魔虫やったわ)

 

なお青ピは垣根達がいる事を最初から気づいていた、それでも彼らに構わなかったのは自分の彼女を見せつける機会だと思ったからだろうか

 

「なあ愛愉ちゃん」

 

「何、青ピ君?」

 

「ボクと付きおうて良かったと思ってる?」

 

「?当然じゃない、そんな当たり前な事聞いてどうしたの?」

 

「いやなんもない、変な事聞いてごめんな」

 

青ピが蜜蟻に自分と付き合えて良かったかと尋ねると彼女は微笑んで頷いた。それを見て安心したように笑う青ピ

 

(カミやん、君のフラグ体質はこれからも続くと思うけど今の彼女二人を一途に想うてあげてな。ボクから言えるのはそれだけや、女の子一人だけでも恋愛は難しいのにカミやんは二人もいるんや…頑張りいや)

 

青ピはそう内心で上条を応援しながら愛愉と肩を寄せた…本来の歴史ならば超能力者の第六位となる少年はこの世界では彼女持ちのリア充だった

 

 

「ねえ、先輩のフラグ体質て何なの?何でそんなにフラグを乱立させるの?ねえ?」

 

「もしかして今でもフラグを立ててるんじゃないでしょうねぇ…もしそうなら……頼むから私達を犯罪者にさせないでねぇ」

 

(彼女二人の愛がグラヴィティ……でも可愛いから凄く嬉しい、やっぱり俺は幸せだー)

 

なおその応援されている少年は絶賛不幸中(幸福中)だった

 

 

 

 

 

 

 

 




こんな水族館はないわ(断言)。フィアンマさんは笑いも戦闘もいける扱いやすいキャラ、はっきりわかるね。ミコっちゃんとみさきちはヤンデレ(かどうかはわからない)、上条さんは原作よりある意味幸せ

さて次回から漸くエステルちゃん登場、とあセラのアニメも始まったしこれからエステルちゃんが出て来るSS増えるかな?まあとあセラはあまり読んでないのでうまく書けるか不安ですが頑張ります!

では次回もお楽しみに!


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一方通行「俺はロリコンじゃねェ!巨乳が好きなンだ!」

さあ完全死霊編のスタートです!タイトルがギャグぽいので今回はギャグの方が多いですが…ちゃんとシリアスありますよ!そして皆さんとあセラ見ましたか?まさか最初はアニメオリジナル回とは…とあセラは人気でるな

エステルちゃんとミサワちゃん登場回、ややキャラが不安定ですがそこは気にしないでください。では本編どうぞ



薔薇渓谷(ローゼンタール)家という魔術師の一族がいる、彼等は「完全なるゴレム」…つまり完全なる魂魄と完全なる肉体を持つ神と同等の存在であるケテルを目指す家系だ

 

その始祖たるオベド=ローゼンタールは完全なるゴレムを目指す為に人間の死体に擬似魂魄を植え付ける…すなわち死霊術を行い人間の脳を持つゴーレムを作り出した…それによりローゼンタール家は異端とされ東洋に追放されたのだ

 

そのローゼンタール家の四代目当主たるイサク=ローゼンタールは道教の跳屍術という魔術を取り込み、独自の死霊術を開拓した…そして五代目であるネイサン=ローゼンタールはそれを基礎とし「ナンバーズの悪霊」と呼ばれる最強の擬似魂魄を誕生させたのだ

 

だがそのナンバーズの内の一体 檮杌には悪魔が潜んでいた…それは過去の亡霊、完全なるゴレムを作り出そうとする者、それが現代に蘇りその野望を実現しようとしていた

 

 

「ああ、素晴らしい…これが科学と魔術の融合…これなら私の目的が達成される」

 

その男…正確には檮杌に宿っていた悪魔がとある場所で笑った、彼のすぐ近くには二人の男女の姿があった…彼等は怯えながらもその男の野望を完成させる為に必要なある物を作り上げていた…逆らえば彼等の命はない

 

「棺桶…素晴らしい物を作ってくれたね幹比古君、蛭魅君…そしてここにはいない我が子孫(・・)よ。これでローゼンタール家の悲願 完全なるゴレムの完成に大きく近づいた」

 

その男は笑っていた、だが菱形幹比古(ひしがたみきひこ)菱形蛭魅(ひしがたひるみ)という兄弟は全く笑えなかった…自分達がある魔術師と共同で作っていた平和の為の結晶がこの男…いな過去の亡霊(・・・・・)によって悪夢の兵器に成り果てようとしているのだから

 

「さあ時は来た、後はこの棺桶に相応しい能力者を入れるだけ…まあもう目処はついているのだがね」

 

彼はそう言って笑う、彼が求めるのは強能力者や大能力者の様な低レベルな能力を持つ能力者ではない…最低でも超能力者(・・・・)並みの出力がなければならないのだから

 

「さあ墓を荒らしに行こう、過去の超能力者(・・・・・・・)の死体を手に入れよう」

 

 

 

「木原くンよぉ〜、今日はファミレスで肉食おうぜェ」

 

「あ!?肉ばっかり食おうとすんな!野菜食え野菜!」

 

「じゃあミサカはプリンにアイスクリームにパフェにチョコレート!てミサカはミサカはデザートを要求…」

 

「「ダメだ!デザートは一つまで!」」

 

「ガビーン!てミサカはミサカはショックを受けてみたり!」

 

九月十六日の夜七時、一方通行は保護者の数多と居候の打ち止めと共に近所のファミレスまで歩いていた

 

「そろそろ大覇星祭の時期だなー、運動音痴だからて諦めんなよ」

 

「誰に言ってやがる、やるなら本気でやるに決まってんだろうが」

 

「安心して一方通行、ミサカが筋肉痛になった貴方をマッサージしてあげるから。てミサカはミサカは当日にどうせ筋肉痛になるであろう一方通行を安心させる言葉を言ってみたり」

 

「なンで筋肉痛になる前提なんですかねェ?」

 

「「だってモヤシじゃん(て、ミサカはミサカは事実を告げてみたり)」」

 

「よし挽肉のお時間だ、覚悟はいいか」

 

一方通行が能力を発動させて数多と打ち止めに拳骨でもしようかと考えていたその時、ピクリと嫌な気配を肌で感じた

 

「……ァ?」

 

「?どうしたの一方通行?てミサカはミサカは問いかけてみたり」

 

打ち止めが可愛らしく首をこくんとさせて何事かと一方通行に尋ねるが一方通行はそれに応じない、一方通行が感じたこの感触はこれまで経験したある出来事の際に感じたものだった…その出来事とは魔術に関するものだ

 

(この嫌な感触…魔術だな)

 

一方通行はそう判断すると敵が何処にいるのかキョロキョロさせる、数多も嫌な気配を感じ取ったのか周囲を警戒する。そして何処からか爆発音が聞こえた

 

「え!?何の音!?ミサカはミサカはビックリしてみたり!」

 

「……下がってろ」

 

一方通行が打ち止めを守る様に彼女の正面に立つ…彼はイギリス清教の刺客か上里勢力の尖兵の魔術師かと考える…一人の少女がビルから飛び降り三人の目の前に現れた

 

「……!」

 

そのマントを羽織った少女はショートヘアの金髪にエメラルドの如く輝く瞳を持つ可憐な少女だった。そのエメラルドの左眼の下には泣きぼくろがあった、一方通行はその少女を美少女だと認識したが誰がみても彼女は美少女だと思うだろう

 

(まあ、美少女だからて敵なら容赦しねェがな)

 

そう一方通行はその少女を敵と判断し先手を撃とうとする、だがまた爆発音が聞こえその動きを止める

 

「…くっ!無差別に周囲を攻撃しているのか!」

 

(……こいつは敵じゃねェのか?)

 

焦った顔を見せる彼女を見て一方通行はこの少女は敵ではないと判断し直す、少なくとも彼女の目的は一方通行ではない

 

「貴方大丈夫?てミサカはミサカは突然現れた女の子に問いかけてみる」

 

「……どっかで見た事あるなお前…確かどっかの研究施設のスーパーバイザーだったような…」

 

「!早くここから逃げて!あいつに巻き込まれる!」

 

打ち止めはそんな不審者同然の少女に声をかけ数多は何処かでこの少女を見たことがあると首を傾げる、そんなお気楽な二人に早く逃げろと叫ぶ少女…だが今度は近くで爆発が起きそして爆煙からそいつは現れた

 

「……ンだよあのヘンテコな機械は?」

 

それは機械だった、特徴的なのは球状のコックピット部と下半身の触手状マニピュレーター。そんなヘンテコな機械はマニピュレーターからアルミ缶を取り出しそれを近くの道路に投げる…瞬間そのアルミ缶を基点に爆発が起きその衝撃で歩いていた人々が吹き飛ばされる

 

「あれは量子変速(シンクロトロン)か?しかも大能力者並みの…」

 

「確かアルミを基点に重力子(グラビトン)を加速、周囲に放出する能力だよね?てミサカはミサカは自分の博識さを胸を張って言ってみたり!」

 

「そうだ…だが量子変速の大能力者は釧路帷子(くしろかたびら)しかいねえ筈だ…それにあれは機械…なんで機械が能力を使えんだ?」

 

「それは恋査さん達みたいな感じじゃないの?てミサカはミサカは納得のいく説を言ってみたり」

 

「違えな、第一恋査は作るのに経費がかかるしありゃあ薬味先生しか作れねえ代物だ。だから恋査とは違う仕組みの筈だ」

 

打ち止めと数多はその機械について話し合う、能力は量子変速と断定できるも何故機械が能力を扱えるのか不思議がっていた…だが一方通行には分かる、あれは魔術が関わっていると

 

「呑気に話している場合か!?あの棺桶(・・)から早く逃げるんだ!」

 

「…棺桶だァ?……まあいい、まずはゴミの掃除が優先だ」

 

少女が言った棺桶とやらも気になるがまずはあの機械を片付けるかと一方通行は溜息を吐いて機械に歩み寄る、それを見た少女が目を見開く

 

「な!?棺桶に近づくのは危険だ!」

 

少女は一方通行を止めようとするが数多が彼女の襟首を掴みその動きを止める

 

「安心しな嬢ちゃん、ウチの息子は強えぞ。何せ俺が能力開発をしたんだからな」

 

(また数多の親バカが始まった…てミサカはミサカは呆れてみたり)

 

数多は自分の息子なら心配はいらないと笑う、打ち止めはやれやれと首を振る。一方通行は棺桶と呼ばれた兵器に接近すると兵器が一方通行の存在に気付きマニピュレーターから無数のアルミ缶が発射される

 

「!?避け……」

 

「心配いらねェよ」

 

一方通行は回避行動を取らない、少女が逃げろと叫ぼうとするがその前に一方通行は心配はいらないと呟き…アルミ缶が爆裂した

 

「!?」

 

少女は爆煙に包まれた一方通行を見て声にならない叫びをあげようとする…だが爆煙が晴れそこに無傷の一方通行が立っているのを見て驚愕する

 

「たく…こんなチンケなガラクタで俺を殺せるとでも思ってンのかよ」

 

一方通行はそう笑いながら棺桶に近づく、棺桶はアルミ缶を無数に放つが一方通行にダメージは通らない。そして一方通行は大きく腕を振るいコックピット部に当てる、普通の拳なら棺桶の頑強な機体に傷一つつけられない…だが一方通行の拳がコックピット部に命中すると機体に大きく亀裂が入る

 

「大した事ねェな」

 

彼はそう言うと腕を横に振るいマニピュレーターを全て切断する、バチバチと切られた部分から火花が散り棺桶が一歩後ろに下がる…逃げようとでも思ったのかもしれないがもう遅過ぎた。一方通行はコックピット部を足で蹴りつける、それだけで棺桶はサッカーボールの様に勢いよく吹き飛んでいった

 

「……アウレオルスやガブリエルと比べると雑魚当然だな…まあ、ンな事はどうでもいいンだ…本題はオマエだよ」

 

彼はそう一言呟くと唖然としている少女に近づく、そして彼女を見下ろしながら口を開く

 

「全部話せ。洗いざらいだ」

 

「……!わ、私は……」

 

少女が何か言おうと思ったその矢先、彼女のお腹から可愛らしい腹の虫が鳴った音が聞こえた

 

「「「「…………」」」」

 

その場には気まずい雰囲気が流れた

 

 

 

「ムシャ…私は…ガブゥ、エステル…ゴクゴク……ローゼンタール…モグモグ……。簡単に言えば…パクパク…魔術師……ゴクン、だな」

 

「喋るのか食べるのかはっきりしたら?てミサカはミサカは呟いてみたり」

 

「すみませーん、追加でビール頼みまーす!」

 

「ついでにコーヒーもよろしくゥ」

 

その少女…エステル=ローゼンタールはステージ定食を頬張りながら自己紹介をし打ち止めが呆れた表情で食べるのか喋るのかどちらかにしろと溜息を吐く

 

「ふぅ…食事を奢ってもらってすまないな」

 

「別に構わねえよ、嬢ちゃんがあのヘンテコな機械に追われてた理由を教えてくれればな」

 

「……そうだな、私は先程言った様に魔術師…また学園都市の外の能力者だと思ってくれて構わない」

 

数多は笑いながら詳しい話を教えてもらおうと笑いエステルは頷きながら口を開く、彼女は魔術師の存在を三人が知らないと判断し能力者みたいなものだと教える(実際は一方通行と数多も魔術師と関わりがあるが)

 

「私は何年か前に学園都市の「プロデュース」という団体のスーパーバイザーとして呼ばれた…まあ実験内容は教えてもらえなかったがね」

 

「「プロデュース」…確か第一位がぶっ潰した団体の一つだな。そういやその団体に協力してた魔術師がいたて聞いたが…お前か」

 

「私は実験内容は聞かされていなかった、聞いていたら誰があんな実験に協力するものか。まあそれはいい、私はプロデュースである兄妹と出会った、名前は菱形 蛭魅と菱形 幹比古という」

 

「……聞いた事があるなァ、確か「身体を大きくすれば能力の出力も上がる」て説を出した兄妹だな」

 

数多と一方通行は菱形兄妹の名前を聞くとそれに反応した、確かプロデュースが出した犠牲者の無念を無駄にしない為に安全かつ犠牲者を出さない様にプロデュースの研究を引き継ぎ研究していた研究者二人だ

 

「名前だけなら聞いた事がある、まあ唯一から危険性はないて聞いてたがな…そうか、その兄妹と協力している魔術師がいるて聞いていたが…テメェの事か」

 

「ああ、私は親友である蛭魅とその兄の幹比古と共に棺桶…先程私を襲っていた機械を製作していた」

 

「え?じゃあ貴方はその兄妹さん達に裏切られたて事?てミサカはミサカは尋ねてみる」

 

「いや…話はそう簡単ではないんだ」

 

エステルは自分は菱形兄妹と棺桶という機械の制作をしていたと呟く、打ち止めは先程襲ってきた機械は菱形兄妹が仕向けたのかと尋ねるとエステルは首を横に振る

 

「……私の家…ローゼンタール家にはナンバーズの悪霊という擬似魂魄がある…その内の一つ檮杌の中に潜んでいた何か(・・)が私を狙っているんだ」

 

「ナンバーズの悪霊だァ?ンだよその御大層な名前は」

 

「…中国には四凶という怪物がいる、檮杌・混沌・窮奇・饕餮…その名を冠した擬似魂魄をナンバーズの悪霊と呼んでいる…そのナンバーズの悪霊の一体であった檮杌には擬似魂魄ではない何かがいたんだ…そいつは棺桶の完成と同時に棺桶に入った死体に憑依し暴走を始めた」

 

エステルはそこまで説明すると瞼を閉じてあの時の光景を思い出す、暴走する棺桶にエステルは手も足も出ずに床に倒れ伏し菱形兄妹が棺桶のマニピュレーターに拘束される…その後エステルは密室に閉じ込められ他のナンバーズの悪霊を奪い取られた…その後なんとか脱出し逃走したのだが檮杌はそれに気付き先程の棺桶を追っ手として放ったのだ

 

「…恐らく蛭魅と幹比古は生きている筈だ、私を襲っていた棺桶は作られて間もない新型だ。なら檮杌はあの二人に新たな棺桶を作らせているに違いない」

 

「……で、オマエはどうしたいんだ?」

 

「決まっている、私は親友を助けに行く。檮杌と蛭魅達はこの街のどこかにいる筈だからな」

 

エステルは菱形兄妹は生きていて檮杌に棺桶を作らされていると推測する、言う事を言ったのかエステルは椅子から立ち上がる

 

「助けてくれた事には礼を言う、だがこれ以上一般人を巻き込む訳にはいかない。いつか助けてくれた借りとここの代金は払いに来る」

 

「意外と律儀なんだね、てミサカはミサカは呟いてみる」

 

エステルは三人に頭を下げるとそのまま踵を返しファミレスから去ろうとし…三歩進んだ所で動きを止め一方通行達は何故立ち止まったのかと首を傾げる

 

「……す、すまないが最後にドリンクバーで紅茶を飲んでもいいか?」

 

「…いいンじゃね?」

 

エステルは最後にドリンクバーに行ってもいいかと尋ね一方通行はガクンとしながらも勝手に飲めばいいと気怠げに答える、エステルはドリンクバーに向けて歩いて行く

 

「……変な奴」

 

「……一応脳幹先生にメールしとくか」

 

「ねえ、さっきの出来事て警備員(アンチスキル)に言わなくていいの?て、ミサカはミサカはまともな事を言ってみたり」

 

「…警備員には通報すンじゃねェぞ、警備員には荷が重いだろゥしな」

 

一方通行はエステルを変な奴と評価し数多は携帯を弄って脳幹へメールを送る、打ち止めは警備員に通用しなくていいのかと言うが一方通行は首を横に振った

 

「すまないな、やはり紅茶だけでなくカルピス、コーラ、メロンソーダ、オレンジジュース、アップルジュース…その他諸々も淹れてきてしまった」

 

「いやどンな飲むんだよオマエ……」

 

ドリンクバーから戻ってきたエステルはテーブルにいろんな種類のジュースを置く、一方通行は飲み過ぎだとエステルに言おうと彼女の方を向く。そして一方通行の目には全身ずぶ濡れで下着が透けて見えたエステルが映った

 

「はァ!?オマ……!なンでずぶ濡れなンだよ!?」

 

「ああ、いつもの事だ気にするな」

 

「いや気にするよ!てミサカはミサカは叫んでみたり…と言うか一方通行もガン見しない!てミサカはミサカはむっつりスケベに指をさしてみる!」

 

「み、みみみみ見てねェし!」

 

「嘘おっしゃい!ミサカは知ってるよ!貴方が本棚の裏に隠してるエッチい本の……」

 

「それを言うな打ち止めァァァァ!!!!」

 

エステルはいつもの事だと全く恥ずかしがる素振りを見せず一方通行が飲んでいたコーヒーを数多に向けて吐き出す、そんな顔を赤くする一方通行に打ち止めがガン見するなと叫び一方通行は見ていないと叫ぶが打ち止めが本棚に隠している本の事を店内で叫ぼうとした為一方通行が言うなと叫んだ

 

「貴方の部屋にあるのは巨乳な女の人の本ばっかりだよね!てミサカはミサカは大声で暴露してみたり!ミサカは貴方がロリコンだって信じてたのに!てミサカはミサカは泣きそうになってみる!」

 

「俺はロリコンじゃねェ!てかオマエくらいの歳の奴を好きになる奴はロリコンじゃなくてアリスコンプレックスっうンだよ!」

 

「貴方はミサカの事が性的に好きじゃなかったの!?てミサカはミサカは尋ねてみる!」

 

「あ、いやそれはねェわ。俺は妹としか思ってないから。オマエを見て性的に興奮するとかねェから」

 

打ち止めがロリコンだから自分の事が好きではないのかと叫ぶ、一方通行は真顔でそもそもロリコンじゃないし異性として思ってないとはっきり告げると打ち止めの血管からブチッと音が聞こえた

 

「カチーン!ミサカは怒ったよ!ミサカを怒らせるとどうなるか教えてやる!てミサカはミサカは一方通行の性癖をミサカネットワークに暴露してみたり!」

 

「打ち止めオマエだけは許さない!」

 

「数多!木原神拳だぁ!てミサカはミサカは某ポ○モンのトレーナーが如く命令してみる!」

 

「おうよ!受け取れ一方通行!これがさっきお前にかけられたコーヒーの恨み!」

 

「アベシ!?」

 

打ち止めは胸を張ってミサカネットワークに一方通行の性癖を暴露したと告げる、ブチ切れた一方通行はプラズマを作り出しファミレスごと打ち止めを消し飛ばそうとするが数多の拳を受けて吹き飛ばされる

 

「ぶ、ぶったな…ていとくンにもぶたれた事がないのに!」

 

「甘ったれるなよ一方通行!親が子供に手を出さないと思ったら大間違えだ!時に叱り時に褒める!それが子供を立派に育てる親なんだよ!」

 

「へ…上等だぜくそったれ!第三位の実力を見せてやらァ!」

 

一方通行が殴られた頬をさすりながら某ガンダムのパイロットの様なセリフを吐き数多はこれは愛の鞭だと笑う、そんな二人は店内で大暴れしようとしそれをみた店員が駆け寄ってくる

 

「あ、あのお客様…他のお客様の迷惑になりますのでお静かに……」

 

「「部外者は引っ込んでろ!」」

 

「は、はいぃぃぃぃ!!!」

 

「さてと…ミサカはどっちが勝つかミサカネットワーク内で賭け事でもしようかな。てミサカはミサカは悪い笑みを浮かべてみたり…とりあえず一方通行が勝つ方に五万円賭けてみる」

 

一方通行と数多、チンピラ不良とヤクザ者にしか見えない二人に睨まれ店員は店の奥に逃げていった。打ち止めはネットワーク内でギャンブルを行なっていた

 

「……これが学園都市の家族の日常とやらか…さてドリンクバー全種類お代わりするか」

 

エステルはこれが学園都市の普通なのかと勘違いしながらドリンクバー全種類をお代わりしに行く…エステルはドリンクジャンキーだった

 

 

 

その後一方通行と数多の殴り合いの末、一方通行が何とか勝利したがその後打ち止めがミサカネットワークで性癖を暴露した事により何人かの一方通行派の妹達が「その性癖をミサカ達がブチ殺す!」と銃器を構えて襲来し、挙げ句の果てに20000号がロシアからやって来てファミレスで一方通行を性的にご馳走になろうとした所為でファミレスが半壊した

 

「あ〜店壊しちゃったな…経費で落とすか」

 

「なンの経費だよ」

 

一方通行と数多はリビングのソファーに座りながらコーヒーを飲んでいた。数多はファミレスの店長から渡された修理費を横目に経費で修理費を支払うかと呟き一方通行がやめろと返す。因みにエステルと打ち止めは木原家のお風呂に入っている

 

「しかし木原くンも魔術師の事知ってたンだな」

 

「当たり前だ、木原一族は何年も前から魔術師と関わり合いがあるからな。俺はトールて奴と仲良くしててな、時々殴り合いのガチンコ勝負してんだよ」

 

「そォなのか」

 

一方通行は数多も魔術について知っていたのかと呟くと数多はまあなと苦笑する、因みにそのトールなる魔術師とは50戦中25勝25敗と引き分けていた。しかも雷神ではなく全能神とのトールとの戦いでも勝った事がある。数多さん強いや

 

「ま、俺はあんま深くは関わってねえつもりだよ。お前と違ってな」

 

「そりゃ良かった、木原くンもガブリエルみてェな怪物と戦ってンのかと思っちまったぜ」

 

「お?何?俺の事心配してくれたのかよ?かー!優しいね一方通行!惚れちゃいそうだぜ!」

 

「…俺はホモじゃねえンでやめてくれませンかねェ」

 

「おい、ガチで引くなよ、冗談だ冗談。だから距離を取ろうとするな、あまたん泣くぞ」

 

一方通行が数多が自分達の様な危険な目にあっていなくて良かったと呟くと数多がからかう様に笑う。そんなんじゃねえよと一方通行は軽口を言いながら笑う

 

「で、お前て本当にロリコンじゃなかったんだな。お父さんびっくりだぞ」

 

「……なンで俺がロリコン認定されてるんですかねェ」

 

「いやだってお前セロリじゃん」

 

「違ェよ、俺は巨乳が好きなンだ。俺はロリコンじゃねェ、ノーマルなンだよ」

 

ずっとロリコンだと思ってたと数多が笑うと一方通行は何故皆自分の事をロリコンだと思うのかと溜息を吐く

 

「いや俺は別にお前がロリコンでも構わねえぞ?」

 

「そこは構ェよ、殴ってでも性癖を変ェようとしろよ。何で肯定すンだよ」

 

「いや、人の好みは人それぞれだろ?因みに俺はバニーガールの巨乳美人が大好きだ」

 

「……バニーガールか、でも競泳水着もエロくね?」

 

「あ、それ分かる。でもチャイナドレスも捨てがたいんだよなー」

 

そう親子揃って女子には聞かせられない会話を続けているとリビングの扉が開きお風呂から上がったエステルが入ってくる

 

「すまないが牛乳を飲ませてくれないか、風呂上がりの牛乳はかかせられない質でな」

 

「ァ?別にいいけど……よォ」

 

一方通行は言葉をなくした、エステルは下着以外何も身につけていなかった。白のショーツとブラ…それ以外は生まれたままの姿だ。しかもちゃんと乾かしていないのか髪が濡れたままだ…それが何処と無くエロい

 

「……………」

 

「おーい、鼻血出てるぞ。てか人間て本当に興奮すると鼻血て出るもんなんだな」

 

「……なんでオマエ下着姿なンだ?」

 

「替えの服がないからな、まあそんな事より牛乳を……」

 

「そンな事じゃねえ!いい歳した女の子が見知らぬ男の前でそんな破廉恥な姿を晒してンじゃねえ!」

 

一方通行の鼻から血が流れる…そして一方通行は何故下着姿なのかと尋ねるとエステルは替えの服がないからと簡潔に返す、冷蔵庫を開けて牛乳を飲もうとするエステルに一方通行は大声で叫ぶがエステルは牛乳を飲んでいる為何も答えず飲み終わると一方通行の方を向いて口を開いた

 

「しかし替えの服がないからな…洗濯が終わるまでこの姿でいるしか……」

 

「なら替えの服を着ろ!俺の服貸してやるから!」

 

「いや…男物の服を着るのは流石に……それに貴方の服のセンスは壊滅的だから嫌だ」

 

「はァ!?俺の服のセンスの何処が壊滅的なンですかねェ!?」

 

「……………はッ」

 

「鼻で笑ったな?上等だコラ、女だからて容赦しねェぞ」

 

一方通行が自分の服を貸してやると言うとエステルはダサい服たがら遠慮しとくと返す、その言葉にカチンときた一方通行は自分の服の何処が壊滅的だと叫びエステルは鼻で笑う。まるで「あ、この人自分のセンスの無さに気づいていないのか。可哀想に」と言わんばかりに…まあ実際その通りなのだが

 

「……そういや打ち止めは何処だ?いつもなら「何女の子の裸をガン見してるの!?てミサカはミサカはドロップキック!」て言うパターンなのに…まだ風呂にでも入ってんのか?」

 

 

「……大きな山が二つ……て、ミサカはミサカは実力の差を見せつけられて項垂れてみたり」

 

打ち止めは風呂場にてお湯の中でブクブクしていた。彼女は自分の真っ平らな平地とエステルの大きな二子山を見て実力の差を思い知らされたのだった

 

 

 

 

とある研究施設、そこには黄緑色の液体が満たされた大きな培養器があった…その培養器の中には一人の少女がいた

 

「……ロックを解除しろ」

 

「はい」

 

培養器の近くにいた何人もの研究者の内リーダーの様な男がパソコンを操作する男に命令する、パソコンを操作する男がエンターキーを打ち培養器の蓋が開きそこから黄緑色の液体が溢れる…そして培養器からその液体で全身を濡らした全裸の高校生くらいの少女が培養器から現れた

 

「……お前が番外個体(ミサカワースト)か」

 

「……へぇ、貴方がミサカのお父様て奴なの?でも何でトカゲ(・・・)が喋れんの?」

 

奥から現れた人物に少女…番外個体は笑いかける、その現れた人物は…人ではなかった(・・・・・・・)。トカゲだ、それも普通の小さなトカゲではない…300センチはあろう巨大トカゲ…コモドオオトカゲ、別名コモドドラゴンと呼ばれるトカゲだ

 

「私は人間だよ、まあ脳だけだかね…これも全てあのクソ餓鬼…第一位の所為だ…才人工房(クローンドリー)での屈辱…忘れはせぬぞ。さて本題に入ろう。番外個体よ、貴様にはある任務をやってもらうぞ」

 

「はいはい、一方通行並びにその他超能力者の抹殺でしょ?分かってるての…で?具体的にはどうやるの?まさか大能力者レベルのミサカが馬鹿正直に化け物軍団に勝てるとでも思っちゃってる?」

 

「まさか、大能力者が超能力者の様な怪物に勝てるわけがなかろう…なぁに、心をへし折ってくれればそれでいい」

 

「……つまり精神攻撃しろって事だよねぇ?いいねぇ、ミサカそう言うの大好き」

 

元人間のそのコモドオオトカゲはニヤリと笑うと番外個体もいやらしく笑う…それにつられて研究者達も笑みを浮かべる

 

「これは復讐だ、私はあの憎き垣根帝督を、君達は「絶対能力進化(レベル6シフト)計画」を棒に振った一方通行、及び妹達の保護に回った超能力者に対する……な」

 

学園都市の何処かの闇で外道が笑う…垣根帝督によって学園都市は眩い光で照らされ暗部や木原一族の脅威は無くなった……だからと言って悪は完全に消えた訳ではないのだ

 

「一方通行…それに垣根帝督に麦野沈利、削板軍覇、上条当麻、御坂美琴(おねーたま)、食蜂操祈……ついでに帆風潤子…ああ、早く全員殺したいなぁ〜♪」

 

学園都市の闇が生み出したクローンは超能力者達に子供の様な無邪気な笑顔で牙を剥くのだった

 

 

 

 

 

 




最後に出てきたコモドオオトカゲは一体誰なんだー?ヒントを出すなら新約11巻に登場した脳幹先生にぶち殺されたあの人です(ほぼ答えを言った)。そしてミサワちゃんがなんかヤンデレぽい

エステルちゃんはドリンクジャンキーなのはオリジナル設定、ドリンクバーでずぶ濡れになったら下着姿になるのは原作のままです。そして檮杌(の中の人)が言っていた過去の超能力者とは一体?

因みにコモドオオトカゲの姿は昔やっていたゲームの百獣大戦 アニマルカイザーに出てきた脱獄の首領 ジョーカー。身体が真っ二つに割れてそこから死神が出てくるコモドドラゴンです

次回もお楽しみに!


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エステル「私はもしかしたらMかも知れない」

今回もギャグ成分多めです。この作品はキャラの性格改変が多いですが…理由は自分が原作通りにキャラがかけないからです。ならいっそ魔改造してギャグキャラにすればいいじゃない。それが作者の考えです

それと僕来週から就職の為に学校へ行かなければならないので投稿が遅れるかもしれません…楽しみにしている読者の皆様には申し訳ありません…

では完全死霊編第二話をどうぞ



「何じゃんよこれは……」

 

黄泉川愛穂(よみかわあいほ)は困惑していた、彼女ら警備員達は昨日怪しい機械が街中を爆破していると通報を受け駆けつけたのだがその機械は既に何者かにより破壊されていたのだ。警備員達はその機械…棺桶を回収し分解してどんな機械か調べていたのだが…

 

「よ、黄泉川さん……なんで機械の中から死体(・・)が出てくるんですか?」

 

「分からないじゃん…だがこの機械がまともじゃないて事は分かるじゃんよ」

 

黄泉川の同僚である鉄装綴里(てっそうつづり)が少し怯えた様に声を漏らす、黄泉川は機械から現れた謎の死体を一瞥する

 

「……おい、才郷。この男の子…つい最近行方不明になった男子生徒に似てないか?」

 

「……確かに似てるな」

 

「でもそんな子がなんでこんな機械に入ってるのよ?」

 

才郷良太(さいごうりょうた)杉山枝雄(すぎやまえだお)がこの死体は行方不明になっていた男子生徒ではないかと話し合う。その話を聞いた城南朝来(じょうなんあさこ)が何故棺桶に入っていたのかと首を傾げる

 

「……亀山、お前はテレスティーナと手塩、佐久にこの件を連絡してくるじゃん」

 

「分かった」

 

黄泉川は最近になってロシアの軍人 エカリエーリャと国際結婚した亀山琉太(かめやまりゅうた)にそう命令すると彼は頷いて携帯を取り出す…険しい顔をした黄泉川に鉄装が話しかける

 

「テレスティーナさんや手塩さん達を頼るなんて…それだけこの事件は一筋縄ではいかないて事ですか?」

 

「……ああ、この事件は学園都市の深い闇が関わってる…そう直感が告げてるじゃん…こんなにヤバイと感じたのは特力研の一件以来じゃんよ……」

 

黄泉川は以前自分が関わった事件を思い出し冷や汗を流す…そして変色した男子生徒の死体を見て悲しそうな表情になる

 

「可哀想に……こんな変な機械に棺桶代わりに詰め込まれて兵器として利用させられて…」

 

黄泉川は目を閉じて男子生徒に手を合わせる、他の警備員達も黄泉川と同じ様に男子生徒に黙祷の意を捧げる……暫くして黄泉川が目を開けこう呟いた

 

「…一体、この学園都市で何が起きようとしてるじゃんよ?」

 

 

 

後日、一方通行はエステルを連れて第七学区のとあるファミレス(決して昨日一方通行達が潰したファミレスではない)に訪れた、一方通行が目を向けると店内の奥で手を振る垣根達が見えた。一方通行が予め呼んでおいたのだ

 

「悪りィな呼び出して……」

 

「いいって事よ、魔術が関係してるんなら仕方ねえしな」

 

一方通行がテーブルの席に座ると同時に全員に済まなそうに言う、垣根は気にするなと笑った

 

「その方が魔術師さんですか?」

 

「ああ…私がエステル=ローゼンタールだ。お前達は誰だ?」

 

「紹介が遅れたな、俺は学園都市の第一位 垣根帝督だ。で、この子が帆風潤子ちゃん。後は馬鹿共だ」

 

「誰が馬鹿だ垣根!俺は此間テストで85点取ったんだぞ!小萌先生も「つい最近まで伊能忠敬も知らなかったお馬鹿ちゃんが成長しましたねー」て褒めてたんだぞ!」

 

「てか垣根さんは私達の事を他人に紹介する時は馬鹿にしなきゃダメな病気なの!?」

 

垣根が毎度の如く自分自身と帆風だけはまともに自己紹介し上条達の自己紹介をまともにしない際で上条と美琴がキレた、だがエステルはそんな事は気にせず垣根の名前を聞いて目を見開いていた

 

「垣根帝督…確か「プロデュース」を潰した超能力者か…私は会った事がなかったが…そうか貴方があの実験を壊してくれたのか」

 

「まあな、アレイスターに頼まれてよあのクソみたいな研究者達を倒しに行ったんだよ…まあ何人かは逃しはしたのが気がかりだが…」

 

「これは頼もしい、貴方の様な人から力を貸してもらえれば蛭魅達を助ける事が出来るかもしれない」

 

「俺だけじゃなくて上条達も強いぞ。何せ俺と同じ超能力者だからな」

 

「何!?まさかここにいる全員が超能力者だったのか……何と言う幸運だ」

 

垣根がここにいる全員(帆風を除く)が超能力者だと告げるとエステルが目を見開く、彼女はこれなら菱形兄妹を助けられると希望を抱いた

 

「……所で、ずっと気になっていたのだが私の横に座っているもやし…間違えた色白もやしは何者なんだ?昨日の棺桶を一撃で倒す実力といい超能力者と面識があるといい只者ではない様に見えるが…」

 

「誰が色白もやしだ、俺は超能力者の第三位だよ」

 

「……なん…だと…?超能力者だったのか…?服のセンスが壊滅的なのに?」

 

「喧嘩売ってンだな、そうなんだな。その喧嘩買ってやンよ」

 

エステルが一方通行は何者なんだと尋ねると一方通行は自分は垣根と同じ超能力者だと告げる。エステルが服のセンスが悪いのに超能力者なのかと驚き一方通行が青筋を立てる

 

「表出ろよ、格の違いを見せてやンよ三下ァ」

 

「……は、素敵な服(大笑)を着ている奴が何を言う…蛭魅に「服のセンスいいね」と言われた私の実力を見せてやろう」

 

一方通行とエステルが睨み合いながら店の外へ出て行こうとする…そんな馬鹿二人に垣根は背中から出現させた二枚の未元物質の翼で二人の鳩尾に叩きつけた

 

「「 くぁwせdrftgyふじこlp!?」」

 

「うわぁー痛っそ」

 

二人は鳩尾を抑えながら床下を転がる、上条は痛そうだなーと呟く。店員は愚か店の中にいる人々は誰も気にしない

 

「喧嘩すんなら外でしやがれ、店の迷惑も考えろよ」

 

「「いや外でやる気満々だったよ!?話聞いてなかった!?」」

 

「俺にお前らの常識は通用しねえ」

 

「「単なる理不尽だ!」」

 

「お客さん煩いですよ」

 

「そうよぉ、店長の言う通りなんだゾ」

 

「店の人に迷惑をかけるとは根性がねえ奴らだな」

 

「「虐め!?これ虐めだよね!?」」

 

垣根が喧嘩は外でやれと言うが二人は最初から外で喧嘩するつもりだった、二人は抗議するが垣根は自分にその常識は通じないと笑い二人は理不尽過ぎると叫んだ。すると店長に怒られ食蜂と削板に冷たい目で見られた

 

「じゃあ審判は俺がやるよ。ほらさっさと表出ろよ」

 

「勘定は一方通行がやってね、貴方がここに呼んだんだしいいでしょ?」

 

「……泣いてもいィか?」

 

上条が審判は自分がやると言って立ち上がると美琴が一方通行に無慈悲にもレシートを渡す、一方通行はもう泣きそうだった。ともあれ一方通行とエステルはファミレスの外に出て近くにあった空き地的な場所で睨み合う

 

「は、私に挑むとはいい度胸だ服ウル○ラマン」

 

「ウル○ラマンの何が悪りィてンだよ、ウル○ラマンは凄ェンだ。俺は凄く尊敬してるね、特にメビウスとオーブは永遠の名作だ。絆とは何か、正義とは何かてのが凄く伝わってくるンだぜェ」

 

「うわっ、いい歳した奴がそこまでウル○ラマンを熱く語るとか……ダサ」

 

「ウル○ラマンの何処がダセェンだァァァァ!!カッケェだろゥが!男の子の永遠の憧れだぞゴラァ!」

 

「おーい、チンピラぽくなってるぞアー君」

 

エステルが皮肉げに一方通行の服を馬鹿にする、それに対し一方通行がウルトラマンについて熱く語り始めエステルが煽った所為でチンピラの様に一方通行が怒る

 

「俺の事を馬鹿にするだけじゃァ飽き足らず、ウル○ラマンも馬鹿にするとはいい度胸だよオマエ…取り敢えず愉快なオブジェ決定な」

 

「は、私の新しい死霊(下僕)にしてやろうか」

 

(な、なんて目力なのでしょう…睨み合っているだけで火花が散ってますわ…それに一方通行さんにあれだけ啖呵を切れるなんて…エステルさんはそれだけお強い魔術師という事なのでしょうか?)

 

一方通行が悪党の様な笑みを浮かべエステルも笑い返す、二人が視線をぶつけ合うとそれだけで火花が散る…帆風はエステルは超能力者に匹敵する程強いのかとゴクリと唾を飲んだ

 

「………あ」

 

「?どうかなさいましたかエステルさん?」

 

「………」

 

エステルが突然何か思い出したかの様に小さく声を漏らし帆風がどうかしたのかと尋ねる、エステルは段々と顔色を悪くし始めダラダラと汗を流す

 

「あの……実はですね…私の魔術は死霊術なんだ…簡単にいうと死体を操る魔術でして…」

 

「それがどうしたンだ?」

 

「……実は私今操れる死体がないんだ……てへぺろ☆」

 

「「「「「「「………」」」」」」」

 

エステルが自分は今操れる死体がないんだと可愛らしく舌を出す、垣根達はそれを見て「あ、この子アホの子だ」と理解した

 

「……へェ、つまり今オマエは戦闘力ゼロの三下て事かァ」

 

「…おい、まて。なんだその悪い笑みは…ま、まさかとは思うが幼気な私に手を出そうて訳じゃないよな?」

 

一方通行が猛禽類が獲物を見つけた様な笑顔を浮かべるとエステルが引きずった笑みになる、一方通行が前に一歩歩く事にエステルが一歩後ずさる。もうエステルは泣きそうだった

 

「悪りィが、こっから先は一方通行だ。侵入は禁止ってなァ!大人しく尻尾ォ巻きつつ泣いて無様に元の居場所へ引き返しやがれェ!!」

 

「ちょ!?まさか本気でやる気か!?」

 

「ひゃはっはははは!無様に泣き喚きやがれェ!」

 

背中に竜巻を背負ってエステルに接近しエステルがそれを見て逃げる、それを見て一方通行が笑う

 

「ンだァその逃げ腰は。愉快にケツ振りやがって誘ってンのかァ!?」

 

「ひゃあああ!ちょ、見てないで助けてくれぇ!」

 

エステルは垣根達に助けを求めるが……

 

「大覇星祭で潤子ちゃんは何にでるの?」

 

「わたくしは借り物レースですわ。垣根さんは?」

 

「ねえ先輩向こうでクレープ食べない?」

 

「賛成〜☆」

 

「仕方ねえなぁ…俺が奢ってやるよ」

 

「あ、もしもしアリサ?いやお前の声が聴きたくなってな」

 

「鮭弁美味ぇ」

 

「誰も聞いてないぃぃぃぃ!!?」

 

誰もエステルの助けに答えなかった、エステルは必死に逃げるが小石に蹴躓き地面に倒れてしまう…そしてエステルの近くに一方通行が現れニヤリと笑う

 

「……は、話し合おう、そうすれば分かり合える筈だ」

 

「………」

 

「な、何故無言なんだ!?わ、悪かった!謝ろう!謝るから許してくれないか!?」

 

「……遺言はそれでいいか?」

 

エステルが涙目で一方通行を説得するが彼はなんの反応も示せずただ笑うだけ…エステルは謝るから許してと叫ぶが一方通行は悪魔の様に笑う

 

「覚悟はイイかァエステルくゥゥゥゥンよォ!!」

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

ボゴボコと竜巻の翼がエステルを叩く、エステルはモグラ叩きのモグラの様に竜巻の翼で殴られ地面に埋まっていく…それを見た垣根は「あれ?それやられるの俺じゃね?」と思った

 

 

 

「これが1世代前の超能力者の脳髄か……」

 

檮杌と菱形兄妹がいるのは第十学区のとある研究施設にいた…彼が眺めているのは培養液に浸してある二つの死体だった

 

「かつての第一位と第二位の死体……確か天候を操る超能力と金属を操る超能力だったな。とある木原によって殺されその死体を後々解剖する為にこうして保管していたらしいが…これは私に是非使ってくれと言っている様なものだな」

 

かつて強大な力を持つ超能力者(レベル5)がいた、一人は天候すら操り暴風や落雷、大雨等の自然現象を発現させる超能力者。もう一人は金属を形成し周囲一帯の金属も操れる超能力者…そんな二人の超能力者に目をつけたとある木原の一人はそんな強大な能力がなくなってしまう(・・・・・・・・)のをよしとせず二人を殺してしまった。その死体をこの研究施設に保管していたのだ

 

「……さて、確かこの第十学区は「特例能力者多重調整技術研究所」という研究施設があったな」

 

檮杌は何か思いついた様に笑う、特例能力者多重調整技術研究所…通称 特力研。一方通行もそこに入れられそうになったが数多が先に保護した事により難を逃れた…その特力研では無数の子供達が実験の所為で死んでおり数多曰く「死体は処分せずそのままホルマリン漬けにする胸糞悪い場所」との事

 

「そこなら生きのいい死体がありそうだ。それにここは墓場がある…棺桶の数は足りないが…まあいい下僕共が出来上がるだろうな」

 

檮杌は特力研にある死体や第十学区の墓場に眠る死体達を呼び覚まし自分の下僕にしようと企んでいるのだ…そんな恐ろしい檮杌の考えを菱形兄妹は止める事は出来なかった。逆らえば殺される…自分達は檮杌の恐ろしい企みを震えながら見ている事しか出来ないのだ

 

「だがこの二つの死体も代用に過ぎない…本当の目的は今の超能力者…過去とは比べ物にならない能力の持ち主達…その死体が欲しいのだから」

 

檮杌は…いな檮杌に宿る魂魄はケラケラ笑う、過去の超能力者は単なる代用品なのだ。彼が求めるのは垣根達 現代の超能力者の死体…それさえ手に入れば彼は絶対能力者(レベル6)に…いやそれさえを超えた完全なるゴレム…そう『神』になれる

 

「さあ、この死体を回収して早く棺桶に入れよう」

 

「「…………」」

 

そう言って檮杌は死体を回収して菱形兄妹を連れて研究施設を立ち去った…その後第十学区の墓場や特力研の被害者の子供達が眠る墓場が何者かによって掘り起こされたとスキルアウトからの通報が警備員に入った

 

 

 

「ごめんなさい、もう服の事を馬鹿にいたしませんから許してください」

 

「分かりゃいィンだよ、分かればなァ…二度と俺の服の事馬鹿にすンじゃねェぞ」

 

エステルは地面に埋まったままそう一方通行に謝る、一方通行は何故か得意げな顔で許してやると言う。他人から見れば幼気な少女をチンピラがボコっているだけにしか見えなかった

 

「……やり過ぎじゃねアー君?エステルちゃん震えるぞ」

 

「いいンだよ、俺の服を馬鹿にしたンだからなァ……たく、この服の何処がダセェンだよ……お前らもそォ思うだろ?」

 

垣根が流石にやり過ぎだと言うと一方通行は自分の服を馬鹿にしたから仕方ないと言い、自分の服の何処がセンスが悪いんだと呟きながら全員に同意を求める…だが返ってきたのは

 

「いやアー君の服のセンスは悪いのは事実だろ」

 

「………ェ?」

 

「てかさ、前から言おうと思ってたけど…その服マジでダサいぞ」

 

「………はィ?」

 

「それがオシャレだと思ってる時点で人として底辺だと思うわよ」

 

「私も美琴と同意見なんだゾ。流石にその服のセンスはないわぁ」

 

「シンプルに言えばダサいだにゃーん」

 

「……流石の俺でもダサいと思うぞ」

 

「申し訳ありませんがわたくしでもその服は流石に……」

 

「………………」

 

垣根に服のセンスが悪いのは事実だと言われ一方通行が固まる、更に上条からもその服はダサいと言われ一方通行が呆けた声を出す。残りの全員からもダサいだのセンスがないと言われ一方通行の思考が停止した

 

「……俺の…服を選ぶ……センスが悪い……だと?いやそンな筈はねェ…俺の服は美的センス極まってる筈だろ?」

 

「いやクソダセェ服着てそれはねえだろ…寝言は夢だけにしろよ」

 

垣根に完全に否定され一方通行は嘘だと膝を地面につけ項垂れる…そんな筈はない、自分の美的センスが壊滅的だなんてあり得ないと頭を振り一方通行は削板を見る

 

「俺がクソダセェ服着てるて言うなら削板はどォなるンだよ!こいつの服もクソダセェだろゥが!」

 

「いや俺の服は結構流行ってるらしいぞ?モツ鍋がそう言ってた」

 

「嘘だろオイ!?この一昔前の服の何処がイインだよ!?」

 

削板の服の方がダサいと一方通行は叫ぶが削板はこの服が意外と人気があると言うと一方通行が嘘だと叫ぶ、因みに彼の服はスキルアウトに大好評である。少なくとも一方通行の服よりはマシである

 

「なら上条のそのツンツンヘアーの方がダセェ……」

 

「「あ?先輩/上条さんの髪型の何処がダサいの?黙れよ美的センス壊滅クソ野郎」」

 

「」

 

一方通行が上条の髪型をダサいと言いかけるも美琴と食蜂に罵言を吐かれ言葉を失った、ならばと麦野の方を向き彼女に向かって口を開く

 

「ならむぎのんはどうなンだよ!?むぎのんなンか単なるBBAじゃ……」

 

「誰がBBAじゃラリアット!」

 

「ねぼし!?」

 

一方通行が麦野はババアだと叫ぶが麦野はラリアットを一方通行の頭にヒット、ゴキッと聞こえてはならない音が響き一方通行が泡を吐いて倒れる。え?反射?ギャグ補正ギャグ補正

 

「次BBAて言ってみろ……テメェの粗チン切り落とすぞ?」

 

「そ、粗チンじゃねェし!ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲だし!」

 

麦野が次言ったら男の尊厳を切り落とすと脅し一方通行は自分のナニはネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲だと叫ぶ

 

「じゃあていとくンはどゥなンだよ!スーツの下にセーターとか変なファンション過ぎるだろゥが!」

 

「それが似合う俺ってマジイケメルヘン」

 

「確かに似合ってるけどよォ…!でも変な服装なのには変わり……」

 

垣根の服装はどうなんだと叫ぶ一方通行に垣根はこれが似合うのは自分がイケメルヘンだからだと笑う、一方通行がまた何か言おうとした時帆風がポンと一方通行の肩に手を置いた

 

「一方通行さん……それ以上垣根さんの服装を馬鹿にしたら……脳味噌ブチ撒けますよ?」

 

「……ア、ハイ。すみませンでした」

 

帆風が怖い笑顔でガチの殺意を一方通行にぶつける、一方通行は身体をガクガクさせながら謝る。潤子ちゃん怖いや

 

「たく……おい大丈夫か?あのアホがボコスカ殴って悪かったな」

 

「………」

 

麦野は地面に埋まったままのエステルを大根を抜く感じで抜き出し、エステルの服についた泥を払いながら一方通行のアホがすまないと謝る…だがエステルは無言だった

 

「?どうかしたかにゃーん?」

 

「……私はあの男に竜巻でボコボコにされた、地面に埋まる程何度も殴られた」

 

エステルは下を向いたままブツブツとそう言い始め何が言いたいのか麦野は分からず首を傾げる、そしてエステルは顔を上げて麦野に顔を見せる

 

「それが堪らなく興奮してしまったんだ…//」

 

「………へ?」

 

麦野が一瞬なんと言ったか理解できなかった、エステルの顔は赤く染まっており凄く興奮しているのが分かる。麦野は目を点にしながらもエステルに恐る恐る口を開く

 

「……それはどう言う意味かにゃーん?」

 

「何回もボコボコ叩かれていく内に痛みが快感に変わっていってな……分かるか?激しい痛み程気持ちよくなってしまうんだ!」

 

「ちょっと何を言ってるか分からない」

 

エステルの口から涎が垂れるが彼女は一切気にせず興奮気味に語る、一方通行に叩かれて痛みが快感に変わった、そう彼女がとてもいい笑顔で話すと麦野は何言ってんだこいつと白い目を向ける

 

「なあ私は一体どうしてしまったんだ!?教えてくれ!私の身体に何が起こったんだ?!」

 

「知らないし知りたくもねえ」

 

エステルは麦野の身体を揺さぶる、この快感は何なのだと尋ねるが麦野はそれに答えない。というより答えたくない…だがそんな二人の前に二人のバカが現れる

 

「ああ、それ何となく分かるわ。私も先輩と喧嘩して睨まれた時ゾクゾクした事があるから……//」

 

「私も……上条さんに怒声を浴びられた時…凄く身体が震えて興奮しちゃたのぉ……//」

 

「ここにも変態(ドM)がいた……」

 

美琴と食蜂が上条に睨まれたり怒声を浴びた時を思い出したのか頬を染め頬を両手で抑える…麦野はそんな変態二人を冷たい目で見下ろした

 

「ねえ潤子先輩もそうでしょ!?」

 

「潤子先輩も私達と同じよねぇ!?」

 

「え?え?え?」

 

「おいやめろ変態二人、潤子をお前らと同列にするな」

 

帆風は突然話題を振られどう反応すればいいのか分からず挙動不審になり麦野が帆風を巻き込むなと馬鹿二人に拳骨を食らわす

 

「潤子先輩も垣根さんに虐められたいでしょ!?」

 

「え?虐められる?垣根さんに?」

 

「そうよぉ!何でもいいから想像力を働かして考えてみるんだゾ!絶対に興奮する筈よぉ!」

 

帆風は垣根に虐められるシーンを想像してみろと言われ想像力を膨らます……そして暫くすると帆風の頭から湯気が出始めポンと電子レンジでチンした卵の様に爆発が起きた

 

「うぅ〜〜そんな、大胆過ぎますよ垣根さん〜」

 

「何を想像したんだ帆風ぇぇぇぇ!!!?」

 

麦野が倒れた帆風に近づき歩み寄る、一体彼女はどんな妄想をしたというのか

 

「……なんか先輩に怒られる妄想しただけで凄く興奮して来たんだけど…」

 

「奇遇なんだゾ…私も今凄く興奮してるわぁ」

 

「ああ…まだゾクゾクする、こんな快感は産まれて初めてだ…」

 

「エステルだったかしら?何だかあんたとはズッ友になれそうだわ…携帯の電話番子を交換しましょう」

 

「そうだな、二人とは蛭魅以上の親友になれる気がする」

 

「こんな所で同時に会えるなんて凄い偶然力よねぇ…いやもしかしたら運命なのかしら?」

 

変態三人は身体をビクンビクンさせながらお互いの携帯番号を交換する…科学(変態)魔術(変態)が交差する時友達が出来る

 

「あ、もしもしアリサか?」

 

『うん私だよ、どうかしたの削板くん?』

 

「一つ言っておきたい事があってな……アリサは綺麗な心のままでいてくれ」

 

『??それってどう言う意味?』

 

「大した意味じゃねえよ、じゃあなアリサ」

 

削板はそんな変態達の会話を聞くに耐えなかったのか、癒しを求めてアリサの声を電話越しで聴きアリサは綺麗なままでいてくれと呟き電話を切った

 

「くそ…超能力者は変人ばっかだにゃーん!まともなのは私と削板しかいねえのか!?」

 

(……麦野も人の事言えないぞ)

 

麦野はそう言って超能力者にはまともな奴が自分と削板しかいないと叫ぶ…鮭を狂った様に食べている鮭ジャンキーの麦野も相当変人なのではと削板は思ったが口に出さなかった

 

「……なあ、そろそろ話を戻さねえか?エステルはその友達を助けに行きたいんだろ?こんな所で時間を潰してていいのか?」

 

「!?しまった忘れていた!くそ、もやしの所為で忘れていた!」

 

「もやして言うンじゃねェ…またボコボコにされてェのか?」

 

上条が菱形兄妹を助ける為に自分達は話し合っていたんじゃなかったのかと呟くとエステルはハッとした顔をする。一方通行(もやし)の所為で忘れていたと言うと一方通行がまたボコボコにするぞと脅す…それを聞いてエステルの顔が赤くなる

 

「!?ま、また私をボコボコにするのか?!」

 

「……いやなンで少し興奮気味なンだよ?」

 

「こ、興奮などしていない!」

 

エステルが期待した様にまた竜巻の翼でボコボコにするのかと叫ぶと一方通行が何故興奮してるんだと呟く、エステルはハッとして興奮してないと返した

 

「兎に角、その檮杌とやらに宿ってる何者かを倒さねえ限りその兄妹は助けられねえんだろ?ならさっさと倒しに言った方がよくね?」

 

「垣根さんの言う通りですわ、一刻も早く兄妹さん達を助けに行った方がよろしいかと…」

 

「そうだな、くっそ服がクソダサいもやしの所為で手間取ってしまった……」

 

「……もォ一度実力の差を教えた方がいィみたいだなァ」

 

垣根と帆風が早く助けた方がいいと提案するとエステルがそれに頷く、そして一方通行の方を向いてわざとらしく挑発し一方通行がその挑発に乗りもう一度コテンパンにしてやろうかと呟く、それを聞いてエステルは嬉しそうな顔になる

 

「取り敢えずピンセットで情報収集から始めると……」

 

垣根がピンセットを取り出そうとした瞬間、その女の声が響いた

 

「ラッキー☆全員揃ってるみたいで探す手間が省けたよ」

 

「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」

 

全員が声が聞こえた場所を振り向く、そこに立っていたのは白いピッタリとした戦闘服を着た美琴とよく似た顔立ち(・・・・・・・・・・)の少女が立っていた

 

「やっほう。殺しに来たよ、第三位(アクセラレータ)

 

少女は笑って一方通行を殺しに来たと笑う、その辺りにも無邪気な声に全員に戦慄が走る

 

「……オマエは誰だ?」

 

一方通行がそう少女に問いかける、その問いを聞いて少女は愉快そうに笑みを浮かべ口を開いた

 

第三次製造計画(サードシーズン)で言えばミサカの事が分かるんじゃない?」

 

ミサカと言う一人称に全員が妹達を連想する…だが彼女達はこの様な笑みを浮かべただろうか?困惑する一同の中で唯一垣根がゆっくりと口を開いた

 

番外個体(ミサカワースト)……」

 

「お?第一位はミサカの名前を知ってるぽいね……て、あれ?なんであのオッさん達しか知らないミサカの名前を知ってるのかな?まあいいか…どうせここで全員死ぬんだし」

 

番外個体は何故自分の名前を知っているのかと首を傾げるがまあいいかと興味をなくす、そして2センチ程度の鉄釘を取り出し掌で踊らす…そしてその鉄釘が音速以上の速度で射出される

 

「……チッ!」

 

垣根は背中から爆発的に三対の翼を展開、その内の一枚で音速以上の速度で迫る鉄釘を翼でぶつけあらぬ方向に飛ばす…それを見て番外個体は口笛を吹く

 

「ワォ、流石第一位だね。音速くらいなら軽々対応しちゃうか〜。でもお生憎様、ミサカもこの程度で倒せるとは思ってないんだよ」

 

彼女はそう行って笑うと同時に周囲一帯に何体もの駆動鎧が空から飛来した

 

「……何よこいつ」

 

美琴が思わずそう声を漏らした、その駆動鎧(パワードスーツ)は5メートル前後の巨体を誇る蟷螂の様な鎌の様な部位と人間の様な腕が一対あり、後ろ足二本で直立している。腹部側面の装甲からは半透明の羽が展開され背後には巨大なドラム缶の様な物が背負われている。前脚保護カバーの側面には「Gatling_Railgun(ガトリングレールガン)」と書かれていた

 

「こいつは第五位(おねーたま)の能力 超電磁砲(レールガン)を機械的に再現し超越する為に生み出された駆動鎧…その名もFIVE_Over(ファイブオーバー).Modelcase_”RAILGUN” (モデルケース・レールガン)だよん☆」

 

FIVE_Over…純粋な工学技術で、基となった才能を超えることを想定して作成された兵器の総称。この美琴の能力を元に作られたFIVE_Overは単純な威力だけなら美琴の超電磁砲をも上回る威力を誇っている…更に

 

「更に残念なお知らせ!FIVE_Overを動かしているのは自律AIではなく人間の脳を演算コアにしてるんだよね〜。つまり、この中にはミサカ達とは無関係な人間が搭乗してます!」

 

「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」

 

番外個体はFIVE_Overの中には無関係な一般人が搭乗していると叫ぶ、その一言で超能力者達はFIVE_Overを最大威力の攻撃で粉砕しよう。と言った行動が取れなくなる、そんな超能力者達を見て番外個体は悪魔の如き微笑を浮かべる

 

「ねえどっちを選ぶのかなぁ?このまま無関係な一般人を見殺しにして助かるか、このまま殺されるか…好きな方を選んでね☆」

 

FIVE_Over達は超能力者達を殺す為に左右の鎌の内に1門ずつ取り付けられているGatling_Railgun(ガトリングレールガン)を向ける…そして番外個体がこう呟いた

 

「てな訳で、精々苦しみ踠いて死んでね超能力者(レベル5)

 

 

 

 

 

 

 

 

 




まさかのGatling_Railgunの登場…しかも単純に強いだけではなく中に一般人を閉じ込めて人質としても扱うと言う外道兵器…ヒーローにはこう言った方法が一番効きますからね(暗黒微笑)

エステルちゃんはM…最初は一方通行さんとはケンカップルぽく書こうと思ったのに……どうしてこうなった?

さあ番外個体ちゃんとGatling_Railgun達にていとくん達はどう切り抜けるのか?そして等々檮杌に宿る人物が本格的に動き出す…次回もお楽しみに!


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彼らを襲うのは過去からの亡霊

前書きでとあるに関係ない話を一つ、最近勇者であるシリーズにハマってます自分。でも自分携帯ゲームしない派ですからゆゆゆいも幻想収束もしないんですよ…したら絶対にはまって現実生活に支障を起こすので…はぁ、中学生の頃だっならなぁ…後とあセラ第2話最高でした。一方通行さんがカッコよくて大興奮しました

さて今回は番外個体ちゃん&魔改造Gatling_Railgun戦…であると同時にラスボス戦の登場回でもあります…そしてコモドオオトカゲの正体が明らかに…!まあ何人かはお気づきと思いますがね

さて今回で漸くラスボスの名前が明らかに…!そしてラスボスの棺桶の規格外さにご注目!次回から熱くなる展開…なのに就活で学校へ行かねばならん…だから遅くなるかもです。本当に申し訳ない

そして今回のラスボスですが…とある特撮の映画のラスボスがイメージなのですが…知ってる人いるかな?


その機械…棺桶は巨大だった、全長32メートルの巨大兵器と表現すべき棺桶の全身にはガトリング砲やキャノン砲、ミサイル等の砲門や砲塔が取り付けられ頭部に当たる場所には牛の様な角を持つ竜の形状をした顔がある固定砲台と言うべき棺桶に檮杌は歓喜する

 

「いい…実に良い!器としては理想的だ、この棺桶に先程入れた超能力者の死体…私の新しい擬似魂魄「応竜」と「蚩尤」が加わればもう私に敵う者などいなくなるだろう」

 

だがこの兵器は単なる科学兵器ではない、過去の超能力者の死体をこの棺桶に組み込み檮杌の死霊術を使う事によりその能力を増幅する。科学と魔術の融合…それによって生まれた禁断の兵器…それがこの「応竜・蚩尤」だ

 

「だがこの「応竜・蚩尤」は足掛かりに過ぎない。私の目的は今の超能力者の死体を手に入れる事…これは単なる私の新しい依り代に過ぎない…」

 

そう言って檮杌…いな檮杌に宿っていた霊魂が宿っていた肉体から分離し応竜・蚩尤へと入り込む…直後応竜・蚩尤の目が光り音を立てて起動、その鈍重な機体がゆっくりと動き出す

 

「さあ行くぞ下僕達、この日私は完全なるゴレムを完成させるのだ」

 

応竜・蚩尤がそう呟くとナンバーズの悪霊である窮奇・混沌・饕餮の擬似魂魄が組み込まれた棺桶が起動し応竜・蚩尤の後に続く。そして第十学区で掘り起こした能力者の死体達も動き出し後に続いていく……それを菱形兄妹は見ているしか出来なかった

 

 

襲来した番外個体とGatling_Railgunの集団を前にどう攻めるか思考していた、Gatling_Railgunは中に一般人が搭乗しているなら迂闊に手が出せず番外個体も妹達の一人…下手に傷つけたりは出来ない

 

「……!攻撃来るぞ!」

 

垣根がそう叫んだ瞬間、Gatling_Railgunの左右の鎌に備えられた三つに束ねられたガトリング砲が回転し始め、電磁力で金属砲弾が射出される

 

「くっ……!」

 

垣根は金属砲弾を未元物質の翼で防御、帆風も天使崇拝で降ろしたカマエルの高速移動で弾丸を避ける、上条は異能が関わっていない攻撃には幻想殺しは不利と見たのか一方通行の能力を使い弾丸を掻い潜る用に避ける。美琴は食蜂を抱えながら弾丸を雷撃の槍で相殺、一方通行はエステルを庇いながら反射で弾丸をGatling_Railgunに返すのではなく斜め横に飛ばす、削板はすごいパーンチで弾丸を蹴散らし麦野は0次元の極点で回避する

 

「ねえねえどうしたの?避けてないで早く破壊してごらんよ!」

 

番外個体はケラケラ笑いながら叫ぶ、それが出来ないと知っていてわざと超能力者を挑発するのだ。Gatling_Railgunが1秒間に66発もの弾丸を放射し周囲の地面を破壊していく。Gatling_Railgunは見ただけで三十体はいる…そんな弾丸の雨あられに超能力者達は防戦一方だった

 

(くそ……下手に攻撃したら無関係な人間が死んじまうからな…透視能力(クレアボイアンス)でも確認したが番外個体の言う通り全機に人間が搭乗してやがる)

 

透視したところGatling_Railgun全機には全て人間が搭乗している、全員が気を失っており番外個体か彼女の仲間かは分からないが誰かが一般人を攫って無理矢理中に押し込んだのは明白だった

 

「私の能力を勝手にこんな兵器に使って…!著作権の侵害で訴えてやるわよ!」

 

「それに単純な威力だけなら美琴以上よねぇ…でも砂鉄の剣や電撃自体は操れない様だけどぉ」

 

「取り敢えず腕の部分を破壊すれば良いんだが…あのロボット、腕を狙おうとしたら人質に当たる様に微調整してやがる」

 

美琴は食蜂を腕で抱えながらGatling_Railgunの猛攻を避けながら話す、麦野も原子崩しで腕のガトリング砲を破壊しようと企むがGatling_Railgunはそれを察して腕の位置を微調整し腕を破壊しようとすれば人質にも当たる様にしてくる為迂闊に攻撃できない

 

「人質なんてなんて根性なしなんだ!正々堂々かかってこい!」

 

「やーだよ!正々堂々やったらミサカが負けるしねー、これが悪の美学て奴だよ第七位」

 

削板は音速を超える速さで弾丸を避けながら番外個体に叫ぶが彼女は嘲笑うだけ…ならばも削板は回避をやめ捨て身の覚悟で一体のGatling_Railgunへと駆け出す、何発も美琴の超電磁砲を超える威力の弾丸をその身に喰らうが彼はその痛みを堪えGatling_Railgunへと肉薄、その腕で閉じ込められた人を助けようとするが…

 

「無駄だびょん☆残念でした〜♪」

 

「な……!?」

 

番外個体の小馬鹿にする声と共にGatling_Railgunは羽を羽ばたかせて空へと飛翔する、それを見て驚く削板に何体ものGatling_Railgunが削板へ銃口を向け弾丸を何千発も削板へと命中させる

 

「がっあああああああああああああ!!!?」

 

「削板!くそ!」

 

上条はGatling_Railgunへと駆ける、兵器相手には自分の幻想殺しは役に立たない。だが幻想片影なら役に立つ

 

「優先する!肉体を上位に!弾丸を下位に!」

 

光の処刑、優先順位を変更するその魔術に削板を襲っていた弾丸は彼の肉体に傷は愚か衝撃も与える事はない。それを見て上条はこれでGatling_Railgunの最大の武器を奪い取ったと安堵するが

 

「甘〜〜〜い!チョコレートよりも甘過ぎるよ第二位!」

 

番外個体のそんな声と共にGatling_Railgunの頭部からレーザー兵器が出現する…その砲身にはこう書かれていた「Melt Downer」と

 

「なっ!?原子崩し……だと!?」

 

「ギャハ☆まさかおねーたまだけの能力だと思った?残念!原子崩しも実装されてるんだよねこれが!」

 

上条が目を見開き番外個体は歪んだ笑みを向ける…原子崩しの力を再現しただけでファイブオーバーの定義に合致していない…言わば威力のみを再現した擬似メルトダウナーといったところか。だが威力だけなら本物並みである上に弾丸でない為に光の処刑の効果も受けない

 

「くそ!」

 

上条は擬似メルトダウナーを避ける、麦野の原子崩しであれば消せるが擬似メルトダウナーは科学技術で再現されたもの…幻想殺しでは消せない。未元物質の翼で空へと逃げるも何体ものGatling_Railgunが擬似メルトダウナーを放ちそれを上条は必死に回避する。砲塔は一本、だが敵は何体もいる…緑の光線が空へ無数に放たれ避ける上条。更にダメージが与えられない筈の弾丸を敢えて地面に撃ち続ける事により足場を不安定にさせ擬似メルトダウナーを当てようとする

 

「チィ……!面倒くせェ奴らだ」

 

一方通行は擬似メルトダウナーを上の方へと反射させ攻撃を防ぐ、彼には弾丸も擬似メルトダウナーも反射できる為脅威ではないが中に人質がいるなら迂闊には攻撃出来ない

 

「なんという威力だ…これが学園都市の技術…」

 

「感心してる暇があンならオマエも手伝いやがれェ!」

 

「無理無理、私は肉体労働は得意じゃないんだ。頑張れ応援してやろう」

 

「……オマエを盾にしよォかな」

 

「おい、まて。私を盾にしたも意味はないぞ。そもそもお前には反射があるだろう。だからお願いします、盾にしないでください」

 

一方通行はエステルに手伝えというがエステルは自分は働きたくないと呟く、一方通行は無言で彼女を盾にしようとしエステルは即座に謝罪する

 

「案外余裕そうじゃん!ならこれはどうかな?Dark Matter起動!」

 

「……!?それは……!」

 

番外個体がそう叫ぶとGatling_Railgunの前脚から尖った有機的な翼が展開される。それを見た垣根が目を見開く

 

「まさかその兵器……病理の…!」

 

「ピンポーン!大正解!木原病理から貸し与えられた兵器てミサカは聞いてるよん」

 

このGatling_Railgunの製作者は病理だと垣根は気付き舌打ちする、厄介な物を作りやがったと言わんばかりに

 

「ほらほーら!早く倒さないと!そうじゃなきゃ貴方達が死んじゃうよ?!ほら早く壊しなよ!中にいる一般人ごとさぁ!」

 

番外個体は甘過ぎる超能力者達を見て笑う、本気を出せばGatling_Railgun等一瞬で破壊できる筈の超能力者達は中に人がいるという理由だけで破壊できない…中にいる人を傷つけない様に…それが番外個体の笑みの理由だ。偽善者気取りの怪物達が自分達の命を取るか他人の命を取るか…その天秤が揺れる表情を見たいと心の底から思っていた

 

「偽善者ぶるのはやめたら?所詮人間なんて自分以外はどうでもいいんだからさぁ!貴方達だって同じでしょ!?まさか自分一人の命と引き換えに世界を守る!とか漫画とかのこっ恥ずかしいヒーロー気取ってたりする!?そんな訳ないでしょ!」

 

番外個体は歪んだ笑みを浮かべながら叫ぶ、自分では超能力者には勝てない。なら心を折ってしまおう。二度と能力が使えなくなるほどまで完膚なきまでに心を破壊しよう…それが番外個体の考えだ

 

「夢を見てんじゃねーよバーカ、貴方達は怪物だ、人を蟻を潰す感覚で殺せる能力を持った怪物なんだよ。そんな怪物がヒーローなんかになれる訳ないんだよねぇ!」

 

「ほら早く殺しなよ!その蟷螂の中にいる一般人を!他人を助ける為に自分を犠牲にするとか馬鹿げてるでしょ!それにどうせこいつらは勝っても負けてもミサカが後で殺すんだからさぁ!結果は同じてことだよ!」

 

「あ、それともミサカを殺す?そうすれば一般人は助けられるかもねぇ〜。でもいいの?ミサカは好きで産まれてきたんじゃないんだよ?ミサカは被害者だ、貴方達のね。貴方達を憎む奴等がいるからミサカは産まれた、貴方達がいなかったらミサカは産まれてこなかったのに……」

 

番外個体は長々と心を折る為の言葉を喋り続ける、超能力者達は反論せずに番外個体の話を聞いていた。そして番外個体は一呼吸ついて笑みを見せながら最後の言葉を言う

 

「全部貴方達の所為だ、ミサカが産まれてきたのも、一般人が巻き込まれたのも…全部貴方達の所為だよ超能力者(レベル5)

 

そう番外個体が言い終わるとGatling_Railgunの砲撃の音以外の音が一切消えた。超能力者達は何も言葉を発しない。番外個体が心が折れたかなと薄っすらと笑みを浮かべる…だが垣根が口を開いた

 

「………だから何だ(・・・・・)?俺ら何も悪くねえじゃん」

 

「………へ?」

 

番外個体が呆けた声を出した、その予想外の回答に番外個体は混乱してしまった

 

「全部俺達の所為?それは俺らを恨んでる奴等の責任転嫁だろ」

 

「……え?」

 

垣根のその言葉に番外個体は混乱する…自分が思い描いていた展開と違う。他の超能力者達も概ねそんな顔だ、動揺する番外個体に垣根が笑う

 

「まさかその程度の揺さぶりで俺らの精神を壊せるとでも?余程舐めてる様だな」

 

(な、んで……今ミサカは優位に立ってる筈…なのになんでこいつは余裕の笑みを浮かべている?!)

 

垣根のその笑みを見て思わず番外個体が一歩後ろへと退がる、自分が優位な筈なのに何故か自分が追い込まれている気がする…そんな筈はない…ある筈がないのに番外個体の不安は消えない

 

「……せ、殺せGatling_Railgun!早く超能力者達を殺せ!早く!」

 

焦る番外個体は不安を取り払う様に大声で叫ぶ、その言葉と共にGatling_Railgunは銃口を向ける……だが直後超能力者を殺す為に向けていた銃口がガクンと下がった

 

「………え?」

 

停止したGatling_Railgunを見て番外個体が目を見開く、何故停止したのかと混乱する彼女を見て垣根が口を開いた

 

「漸く関節部から侵入させた未元物質の素粒子が効果が効いたみたいだな」

 

「……そ、粒子……?」

 

「そうだ、関節部の僅かな隙間から素粒子を侵入させ回路を破壊する事で機能を停止させた…それだけだよ」

 

Gatling_Railgunの関節部から未元物質の素粒子を侵入させ回路を破壊し機能停止させる。これにより人質を無事に保護できる。仮に自爆機能があったとしてもその回路ごと破壊されている…もう二度とGatling_Railgunが動くことは無い

 

「………け!動け動け動け動け!!!動けよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

番外個体はGatling_Railgunに動けと命令する、だが兵器達が動き出す事はない…冷や汗をダラダラと流す番外個体…これで完全に立場は逆転してしまった

 

「これでお前は終わりだ、大人しく降伏しろ!」

 

「なンでオマエが偉そうに言ってるンですかねェ……」

 

何故かエステルが偉そうに番外個体に指をさして降伏しろと叫ぶ、一方通行は何もしてねえ奴が偉そうにするなとジト目で見る。だが番外個体はピクピクと震えているだけ…だが狂った様な笑みと共に狂気の笑い声を漏らす

 

「あひゃひゃひゃひゃひゃ!!!この程度で!こんな程度でミサカが止まるてでも思ってんの!?止まるわけないでしょうが!」

 

「……だよな」

 

この程度では番外個体は止まらない、彼女の使命は超能力者の抹殺、それが彼女が生まれた理由、存在理由なのだから…彼女は鉄釘を構え音速を超える速度で射出する。それを垣根は翼で弾きながらこの程度では終わらないかと呟く

 

「さあ!第二ラウンドだよ!もう人質なんかどーでもいい!貴方達を一人でも殺す!ミサカの実力を見せてあげるよ超能力者(レベル5)ゥゥゥゥゥゥ!!!」

 

番外個体がそう言って叫ぶ、もう彼女は止められない。覚悟を決めて彼女を倒そうと超能力者達が構えたその時

 

『やれやれ…飛んだ期待外れだよ番外個体』

 

「……え?」

 

「……この声は……まさか…」

 

突然何処からか声が聞こえた。その声を聞いて番外個体と垣根の顔が固まる。番外個体は自分を生み出した男の声が何故聞こえるのだと固まり垣根は自分が殺した筈の男の声がした事で固まっていた……その男の名は…

 

『久しぶりだな垣根帝督、あの時貴様に殺された時の恨みは1ミリたりとも忘れた事はないぞ』

 

「なんでテメェが生きてんだよ……蠢動俊三(しゅんどうとしぞう)!」

 

『どうでもいいだろうそんな事は…さて、番外個体…貴様の役目は終わった、御苦労だったな』

 

その男の名は蠢動俊三、かつて才人工房に深く関わっていた男にして垣根に殺害された筈の男。垣根が何故生きているのかと叫ぶが蠢動はそれを無視し番外個体に話しかける

 

「ま、待ってよ!ミサカはまだ負けてないよ!これからが本番……」

 

『言い訳は効かない、まあ本当は貴様が勝つなど一切考えてはいなかったが……貴様の本当の役目はこれだよ』

 

番外個体はまだ自分は終わってはいないと叫ぶが蠢動は有無を言わさず無感情な声で死刑判決を下す。その直後番外個体の身体から何かが破裂した音がし彼女の胸の辺りの服が弾け血が噴水の様に吹き出る

 

「「「「「「「「……は?」」」」」」」」

 

超能力者達の呆けた声が周囲に響く、エステルは声さえ出せなかった…血を流している番外個体本人でさえ状況が正しく理解できていなかった

 

「……な、に……これ?」

 

『お前の心臓に埋め込んでおいた小型爆弾だよ。死んで役に立て肉人形』

 

自分の胸を押さえる番外個体に蠢動は無感情な声で呟くと声が聞こえなくなる…番外個体は薄れゆく意識の中何故自分がこんな目にあうのかと思考する…そんな中で自分がこんな目にあう元凶である超能力者達に目を向け彼らに口を開く

 

「貴方、達の……所為……だ…」

 

番外個体はそう告げるとパタリと地面に倒れ動かなくなった…彼女が倒れた地面に赤い染みの様なものが広がっていく……

 

「……ざけんじゃねえぞ蠢動ゥゥゥゥッ!!」

 

垣根の叫びが響く、結局は番外個体の運命は決まっていた。彼女は自分達に負ける前提(・・)で蠢動の掌で踊らされていたのだ。Gatling_Railgunの中に人質を搭乗させて超能力者の動きを封じ殺せたらそれでよし、負けても彼女を自爆させその死に様を超能力者に見せつけれたらよし…そんな事の為に彼女は蠢動に産み出されたのだ

 

「……なんだよ、これ…なんなんだよ!」

 

上条の叫びが轟く、まるで番外個体の命を駒の様にしか思っていない蠢動に怒りの咆哮をあげる上条…他も同じ様に唇を噛んで怒りを露わにしていた

 

「…まだだ、俺の能力なら助けられる…」

 

一方通行は番外個体に近づく…彼の能力は攻撃だけではない、ある程度の治療や応急手当ても可能とする…その力で番外個体を助けようとする一方通行だが垣根が片手で彼の肩を掴む

 

「……無理だ」

 

「……止めンじゃねェ…まだ助けられるかも知れねェだろ」

 

「……無理だ、もう助からねえよ」

 

垣根がもう助からないと言うと一方通行は番外個体を一瞥する、彼女は確かに自分達の敵だ、自分達を殺そうとした敵だ。だが死んでもいい存在ではない

 

「……なンなンだよ、その蠢動て野郎はよォ…こいつの命をまるで使い捨てみてェに扱いやがって……人間を…命をなンだと思ってやがるンだ!?」

 

「それが蠢動俊三のやり方だ…あいつはみさきちの能力を自分のものにする為に殺そうと考えてた男だ。番外個体のことなんざハナから使い捨ての駒としか見てなかったんだよ」

 

「……クソ野郎がァ……!」

 

一方通行は蠢動という男が許せなかった、番外個体を捨て駒としか見ていないその男に怒りの声をあげる…垣根や一方通行ですら死者の蘇生は不可能だ…だがそんな冷たくなっていく番外個体の身体にエステルが近づく

 

「どいてくれ、私がなんとかする」

 

「ァ……?」

 

エステルが二人を押しのけて番外個体の身体に触れる、そして服から札の様な物を取り出しそれを番外個体に貼り付ける

 

「……死霊術か?」

 

「厳密にはそれの応用だ、それと同時に回復魔術で心臓を治し血液を補充すれば……もしかすればだが助かるかも知れない」

 

エステルは死霊術を応用した蘇生術でもしかしたら番外個体を助けられるかも知れないと告げる、そして番外個体に札を貼りなんらかの儀式を行おうとする

 

「……潤子ちゃん、天使崇拝で神の薬(ラファエル)を降ろしてくれ」

 

「……え?」

 

「神の薬は癒しの天使だ、回復魔術なんか目じゃない癒しの力がある…心臓を元通りにするくらいなんてことない筈だ」

 

「は、はい!」

 

垣根が帆風に天使崇拝でラファエルを降ろして心臓を治せと指示すると帆風は頷きラファエルをその身に降ろしエステルと共に番外個体の蘇生に取り掛かる。垣根も座標移動を使って冥土帰しがいる病院に番外個体を送り届けようとしたその時、ボコっと背後から音が聞こえた

 

「……ぁ?」

 

それは腕だった、普通の腕ではない、腐り果てた様な茶色く変色した腕…まるで死人の様…いや違う。あれは本物の死体の腕なのだと垣根は直感で気づく。その腕だけではない。様々な地面から大小様々な腐敗した腕が突き破る様に現れそしてその腐り果てた死体が超能力者達の目の前に現れる

 

「……おいおい、これは何処のゾンビのハザードだよ」

 

それはゾンビの群れだった、服も何も来ていない中・高生くらいの男女の死体…腐乱死体から完全に骨だけの死体まで様々だ、だが一つだけ言えることがある。その死体は全て能力者(・・・)

 

「これは……死霊術!?しかも私の…ローゼンタール家の!?」

 

エステルがこれは自分の家に伝わる死霊術だと気づく。だがこの死霊術はローゼンタール家の者しか扱えぬ筈…その筈なのに自分の目の前には数を疑う程の無数のゾンビ軍団がいる…混乱しているのはエステルだけではない、超能力者達もゾンビ軍団に驚愕する

 

「き、気持ち悪ぃ!なんなのよこれぇ!?」

 

「ちょ…私こんなグロいの無理なんだけど…!」

 

美琴と食蜂がそう叫んでしまったのも無理はない、ゾンビの中には腹から腸やら内臓が丸出しの存在もいるのだから気持ち悪くて当然だ

 

「何がどうなってるんだ!?これも蠢動て奴の仕業なのか!?」

 

「……いや違うだろ…蠢動て奴は科学サイドだ、これは明らかに魔術だろ……て事は魔術師が犯人だろ!」

 

削板がこのゾンビ軍団も蠢動の仕業なのかと叫ぶが麦野はそれを否定する、ゾンビ達はゆっくりとした動きで超能力者達に歩み寄り近づいてくるが麦野はゾンビ達を原子崩しで蹴散らす

 

「くそ何がどうなってる!?なんだよこのゾンビは!?」

 

垣根がそう言いながらも未元物質の翼で烈風を起こしゾンビを吹き飛ばしているとポケットに入れておいた携帯が鳴り始める…垣根は片手でそれを掴み通話に出る

 

「何だ!俺は今忙しいんだ!」

 

『垣根か!?やはりお前達の所にもゾンビがいるのか!?』

 

「!?レイヴィニアか!?これはどういう状況だ!?」

 

『分からん!さっきマークを調教…ゴホン!鞭打ちをしていたらな、突然ゾンビが現れたんだ!くそ!こっちはパトラシアを守りながらで精一杯だというのになんだこの数は!』

 

電話の相手はレイヴィニア、どうやら彼女もゾンビ軍団に襲われているらしい…電話からも爆発音が聞こえるあたり彼女は魔術を使って迎撃中なのだろう

 

『くそ!お兄ちゃ…垣根も駄目か!オティヌスも脳幹も全員駄目だった!この場は私とマークで乗り切るしかないか!』

 

「おい待てレイヴィニア!もしかしてゾンビ達は超能力を使ってくるか!?」

 

『ああ!発火能力や風力使いやら…まあ平たく言えば能力者のゾンビが沢山だ!』

 

垣根がゾンビ達は能力者かと尋ねるとレイヴィニアはそうだと返す、垣根は自分達を襲っているゾンビ達を見る…やはりこちらのゾンビ達も火や風、水等の能力を操っている…やはり能力者の死体を何者かが操っているとみて間違いないだろう

 

『そう言えば脳幹からの情報なんだが…テレスティーナ達…警備員に一時間前に第十学区のスキルアウト達からの通報があったそうだ!』

 

「どんな内容だ!?」

 

『何でも第十学区の墓場が荒らされたとか何とかだ!テレスティーナが調べた所、特力研の墓場も荒らされていたらしい!』

 

「じゃあこのゾンビ達は第十学区から掘り出された死体てことか!」

 

レイヴィニアが脳幹から聞いた情報を話し垣根がそれを聞いてこのゾンビ達は第十学区の死体だと理解する、それなら何故このゾンビ達が能力を使えるのか分かる

 

『もういいか!私も自分の身は自分で守らなければならないからな!て、おいマーク!パトラシアだけを連れて逃げるな!私を一人にするな!後で覚えておけよマーク!亀甲縛りの刑にしてや……』

 

垣根はレイヴィニアがまだ何か言っているのにもかかわらず通話を切る、そして携帯をポケットに戻し未だ番外個体の素性を行なっているエステルと帆風の肩を掴む

 

「当麻!アー君!軍覇!むぎのん!ミコっちゃん!みさきち!少しの間堪えててくれ!俺は潤子ちゃん達を冥土返しの所まで送り届ける!」

 

「分かった!だけどすぐに戻ってこいよ!」

 

上条が早く帰ってこいと叫ぶと垣根は頷きながら座標移動で番外個体とエステル、帆風ごと消える…それを見た上条達は能力を使ってゾンビ軍団の相手を取る

 

「すごいパーンチ!」

 

削板のすごいパーンチが放たれ死体達が派手に吹き飛ばされる、その衝撃で死体の腕や足がもげ地面に転がり骨死体は骨を砕かれ骨のかけらが地に落ちる…だが腕や足がなくなってもゾンビ達は削板へと向かい骨死体は破壊された骨を無理やりくっつけて再び歩き出す

 

「うわぁぁぁ!!再生能力と不死身の組み合わせとか最悪力高過ぎない!?こんな無理ゲーはお断りよぉ!」

 

「それにグロい!内臓がグチャってなって目が飛んできて…簡単に言うともう吐きそう!」

 

「何言ってんだお前らは!私の原子崩しで死体ごと消滅させれば解決だろうが!御坂の電撃で身体ごと焼き払うなり食蜂のフリーズドライで破壊すればいいだろ!」

 

美琴と食蜂が肩を抱き合いながらゾンビ達に怯える、それを麦野が能力で再生できない程まで破壊しろと叫ぶ

 

「再生力が凄い?だからどうした?俺の幻想殺しに触れられたらお終いだろ」

 

ーーーグギィガアアアアァァァ!ーーー

 

竜王の顎(ドラゴンストライク)がその顎を開きゾンビ達を貪っていく…だが竜王が食べているのはゾンビ達に宿る魔力とゾンビ達を操る術式だけ…もう完全な死体に戻ったゾンビ達は地面に倒れ二度と動き出す事はなかった

 

「…………」

 

そんな中一方通行だけは何の行動も行わなかった、彼は自分の両手を見ているだけで何の行動も起こさない

 

(……俺の能力じゃあ番外個体(あいつ)を救えなかった…結局…俺は…あの頃から変わってねェじゃねェか!)

 

一方通行が思い出すのは自分が小学生になった頃のこと、能力が発言し同い年くらいの少年を傷つけてしまったこと…自分の能力を危険視したのか或いはどれくらいの能力なのか確かめる為か戦車やら軍事ヘリ、武装した人間に囲まれた時彼はこの世に自分の居場所がないと理解した。あの頃から自分は周りを拒絶していた…垣根()が現れるまで

 

「……結局…俺はていとくンみてェなカッコいい奴にはなれねェのかよ」

 

「!?一方通行!後ろ!!」

 

そう呟いた彼の背後には五体のゾンビが襲いかかっていた、反射があると知っていながらも上条が一方通行に向かって叫ぶ…だが一方通行は右手を広げ風を操る。周囲の風を操ることにより動きを封じられたゾンビ達をそのまま薙ぎ払う

 

「……クソが」

 

一方通行はそう吐き捨てる様に呟くとゾンビ達を風で搦め捕り上空へと舞い上げる…そして一方通行が上条に向けて叫ぶ

 

「魔女狩りの王でこいつら全員焼けェ!」

 

「!?お、おう!」

 

上条は言われた通りに魔女狩りの王を出し3,000度の灼熱の炎が一方通行が操る風に触れその炎が風を伝い灼熱の嵐と化す。ゾンビ達は断末魔の様な声を叫びながら魔女狩りの王の炎により灰と化された

 

「……これでゾンビ共は全滅……だなァ」

 

一方通行はこれでゾンビは全て倒したと呟く…上条達もこれで一安心だと安堵したその直後…空から声がした

 

「ほう?我が下僕達を倒した様だな」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

全員が空を見上げる…そして空から巨大な人工物が飛来。隕石の様に落下するそれをみて超能力者達が目を見開く、そしてその巨大な機械が地面に落下すると凄まじい程の衝撃波が発生し上条達は吹き飛ばされそうになる…砂の煙が消え視界が晴れていくとそこにはガトリング砲やキャノン砲、ミサイル等の砲門や砲塔が取り付けられ牛と竜を合成した様な頭部を持つ機械がいた

 

「初めまして超能力者の諸君。私はイサク…イサク=ローゼンタール(・・・・・・・)。ローゼンタール家の4代目当主だ」

 

その機械…いな棺桶に憑依した霊魂だけの存在たるエステルの先祖 イサク=ローゼンタールはそう告げる。超能力者達はその巨大な棺桶を見る…一方通行に至っては昨日破壊した棺桶とは比べ物にならないその巨体に漠然としていた

 

「私の目的は君達を殺し君達の死体を回収する事」

 

「……私達の死体を回収するだと?」

 

「そうだ、君達程の能力者ならより一層私は「完全なるゴレム」に近づく…君達は礎だ。私が神となる為のな」

 

イサクはそう言うと頭部の目と中央のコアの様な部分を赤く光らせる。それと同時に台風の様な暴風が発生し周囲の大地から無数もの金属の槍が出現する

 

「さあ、始めよう。この応竜・蚩尤の性能をテストさせて貰おうか」

 

その一言と共に科学と魔術が醜悪に混ざり合った悪夢の機械が超能力者達に襲いかかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 




応竜・蚩尤のイメージは劇場版ウルトラマンジードに登場したラストジャッジメンター ギルバリスです。ほらとあセラに出てくるDAは歪んだ正義じゃないですか、ギルバリスも歪んだ正義掲げてるのでそれをイメージして見ました。因みにイサクのCVは個人的に三木眞一郎さんですね…本当は小西克幸さんが適任かと思いましたが…あの人は黒妻さんの声やってるから…

原作ではこんな事が出来るか分からないけどゾンビの大集団とかマジバイオハザード…てかイサクさんの口調がわからん。そして番外個体ちゃん…かませみたいになってごめんね。なお先に言っておきますが…僕は番外個体ちゃんは嫌いじゃないですよ!ただ今回は扱いが雑になっただけなんです!これも全部蠢動俊三て奴が悪いんだ!

応竜・蚩尤の気になる能力とは?そしてていとくんと縦ロールちゃんがいない今一方通行達に勝ち目はあるのか?

次回もお楽しみに!


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ヒーロー、それは自分の道を信じる者

履歴書書くのが難しい(白目)、後工場見学も行かないと(白目)。たくやる事が多くて小説書く暇がないな!(白目)

応竜・蚩尤の名前の由来は中国の神 蚩尤とそれを殺す応竜と呼ばれる龍から名前を取りました。蚩尤は弓や槍、刀等の金属武器を作り出したと言われ中国の神でも最強クラスの実力を誇りそんな神すら殺してしまった応竜…まさにボスの名前に相応しい強さです。また応竜の歳をとった姿が四神の長である黄龍であると言われ蚩尤はあの日本神話のトリックスタースサノオの原型である牛頭天王の元ネタとも呼ばれています…まあ、そんな大層な神様と竜の名前を持っていますが…今までのボスの中では一番弱いです(アウレオルス=ペンデックス=木原病理>ガブリエル>宛那>応竜・蚩尤)

今回はオリジナル設定やオリジナル能力のオンパレードです。後ブックオフでとあセラの一巻から6巻までを立ち読みしてイサクの口調を調べて来ました…私じゃなくて俺だったですね…うわぁ恥ずかしい、全然違うじゃないですか…では白熱のバトル戦をお楽しみください



第七学区のとある病院、番外個体はエステルと帆風の尽力により無事に助かり今はベットの上で眠っていた

 

「ふむ、命には別状はなさそうだね。血液も補充したし心臓も元通りだ。これも君達のおかげだね」

 

冥土帰しがそう言うと帆風とエステルが息を吐く、彼が安心というなら絶対に安心だ。そんな風に二人は思ったのだ

 

「ところでリアルゲコ太先生、この病院は安全なのか?見た所外にバイオハザードも真っ青な量のゾンビで溢れてるんだが?」

 

「大丈夫だとも、この病院にはメイザース達が張ったいざて時の防御結界があるからね。超能力者クラスの攻撃でもない限りこの病院に一歩も入れないよ。あと僕はリアルゲコ太先生じゃないんだけどね」

 

「それは安心です、これならエステルさんも番外個体さんもここなら安全ですね」

 

垣根がこの病院はゾンビに襲われないのかと外を覗きながら呟く…外には病院に入り込もうとするゾンビ達の姿が見える、だが見えない壁に弾かれる様にゾンビ達は病院に入る事は愚か傷つける事も出来ない…冥土帰しがここは防御結界が張ってあるから安全と言うと帆風が安堵する

 

「それにしても貴方は何者なんだ?魔術と聞いても驚かないから魔術の関係者だとは思うが…貴方は一体?」

 

「僕は医者だよ、それ以下でもそれ以上でもない」

 

エステルが冥土帰しは何者なのかと尋ねると彼はただの医者だと告げる、だが垣根がそれを聞いて笑う

 

「いやいや、何を言ってんだよ先生。貴方ほどの魔術師(・・・)がただの医者な筈ねえだろ」

 

「魔術師…?先生が……」

 

「………」

 

「ああ、そうだよ。なあアラン=ベネット(・・・・・・・・)先生」

 

垣根が冥土帰しの事をアラン=ベネットと言うとエステルが驚愕の顔になる

 

「!?アラン=ベネットだと!?あの黄金夜明の!?」

 

「黄金夜明て…あのメイザースさん達と同じ!?」

 

「…………ふむ」

 

黄金夜明と聞いて帆風も驚く、冥土帰しは目を細めて垣根の方を向く

 

「……垣根君、嘘をつかないで欲しいね。僕はアラン=ベネットと言う人物ではないよ?」

 

「うん知ってる、ジョークだよジョーク」

 

「「ズコッー!!」」

 

冥土帰しが嘘を行くなと呟くと垣根が舌を出す、帆風とエステルは嘘だったのかと転んでしまった

 

「まあ僕の事はどうでもいい。垣根君と帆風君は早くお友達の所に戻ったほうがいいんじゃないのかな?」

 

「!そうでした!早く女王達を助けに行きましょう垣根さん!」

 

「そうだな、エステルちゃんはここで待機してな。後は俺らに任せるんだ」

 

「分かった……私は何の役にも立たないからな…私はここで待って……」

 

冥土帰しが早く上条達のところに行ったほうがいいと言うと帆風と垣根はその通りだと頷く、エステルにここに残っていろと言うと彼女がそれに頷こうとしたその時。爆音が響いた

 

「「「!?」」」

 

「……これは不味い」

 

驚く三人とは対照的に冥土帰しは冷静に言葉を呟く

 

「防御結界が破られた様だね…もしや超能力者クラスの兵器でも出てきたのかな?」

 

結界が破られたと呟く冥土帰し、彼らが知る余地がないが結界を破ったのはナンバーズの悪霊の三体 窮奇・混沌・饕餮だ。それ以外にも大能力者レベルのゾンビ達が病院内に侵入し垣根と帆風をターゲットにしている

 

「……垣根君、帆風君」

 

「ああ、病院の中に入ったゾンビ達を一掃すればいいんだろ?」

 

「女王達の所へ行きたいところですが…病院の中にいる皆さんを見捨てる訳には行きませんね」

 

「………すまないね」

 

垣根と帆風は上条達の所へ行くのは後回しで病院をゾンビ達から守ろうと、二人は駆け出し病院内に入ったゾンビ達を迎撃しに行く。それをエステルは見ている事しか出来なかった

 

「……やはり私は足手まといか」

 

そう彼女か呟いた時だ、エステルと冥土帰しがいる病室に何者かが入り込んでくる。ゾンビかとエステルが身構えるが入り込んできた人物達を見てエステルが目を見開く

 

「蛭魅!それに幹比古!?」

 

「……エステルか」

 

入って来たのは蛭魅に肩を貸してもらいながら引きずる様に歩く幹比古だった自分の友人である蛭魅とその兄である幹比古が現れて驚くエステル、幹比古はエステルの姿を見ると少し頬を緩ませる

 

「無事だったのか!」

 

「ああ……だがあいつ…檮杌に脅されて棺桶を作ってしまった。その棺桶には過去の超能力者の遺体が二つも組み込まれている」

 

「何だと……?二つも死体を組み込んだのか?それも超能力者だと…?」

 

「……すまないエステル、君と一緒に作り上げてきた僕らの平和の為の機械は……悪魔の兵器になってしまった」

 

「……幹比古」

 

幹比古は自分達が学園都市の平和の為に作り上げた棺桶はイサクの手によって悪夢の兵器になってしまったと告げ目から涙をこぼす

 

「…エステルっち、檮杌…いえ檮杌に宿っていた人物の名前はイサク=ローゼンタールよ」

 

「!?イサクだと!?馬鹿な…何世紀も前の人物だぞ!……いや、今はそんな事はどうでもいいか…兎も角イサクがこの事件の元凶なんだな?」

 

「ええ……ごめんなさいエステルっち。私達には止める事は出来ない……こんな事親友の貴方に頼むべきではない事は分かっているけど…お願い、棺桶を破壊して…」

 

蛭魅は自分の親友(エステル)に棺桶を破壊してくれと頼む、エステルや兄と共に苦難を乗り越え作り出した棺桶をこれ以上破壊の為の兵器にしない為にも…彼女は涙を流しながらそう言ったのだ…蛭魅のその言葉にエステルは頷く

 

「………分かった、私に出来る精一杯の事をしよう。私が棺桶を……イサク=ローゼンタールを止めてみせる」

 

「…………ありがとう」

 

「………先生、蛭魅と幹比古を頼む」

 

「分かったよ、君も気をつけるんだよ」

 

エステルは冥土帰しに菱形兄妹を頼むと言うと冥土帰しは任されたと頷く、エステルはそのまま病室から飛び出し病院内を駆ける。途中で襲いかかるゾンビ達をエステルはゾンビ達の間をすり抜けるように駆け抜け出し病院の外へと脱出する

 

「……しまった、イサクが何処にいるか分からない…さてどうする?」

 

エステルはイサクが何処にいるのか分かっていない事を思い出し頭を抱える。菱形兄妹も知らないだろうしどうしたものかと考える…そんな彼女に声をかける人物が

 

「イサク=ローゼンタールは現在一方通行達と戦闘を行なっている」

 

「!?誰だ!?」

 

エステルの背後に立っていたのは長い銀髪の男だった、彼を警戒するエステルだが男は構わず言葉を続ける

 

「私に構っている暇などないぞ。イサク=ローゼンタールは強敵だ、垣根帝督と帆風潤子がいない彼らでは勝てるかどうかわからない…急ぎたまえ」

 

「……その話は本当か?」

 

「本当だとも、さあ早く行けエステル=ローゼンタール。超能力者に手を貸してやってくれ」

 

男はイサクは先程の場所にいると告げるとエステルは本当なのかと睨む、男は気にせず早く行けと告げる

 

「……信じてみよう、それが本当なら教えてくれて感謝する」

 

「待て、これを持っていけ」

 

「?これは……舜帝(しゅんてい)の剣か?」

 

男から投げ渡されたのは刀身がひび割れた両刃の短剣…舜帝の剣という霊装でありこれで死体に貼られた符を傷つけることで、疑似魂魄を強制的に分離させることができる霊装だ

 

「正確に言えば舜帝の剣を強化した霊装だ、それならばイサク=ローゼンタールの霊魂を完全に斬り裂きこの世から消滅させる事が出来るだろう」

 

「……一つだけ聞かせてくれ、何故お前は私に手を貸す?」

 

「君に手を貸すのではない、私は超能力者に死なれるのは困るだけさ。だが私が手を貸すのもあれだ…彼らには強くなってもらわないといけないからな」

 

「……まあいい、この剣ありがたくお借りするぞ」

 

男がその剣ならばイサクの魂ごと斬り裂けると告げるとエステルは何故ここまで協力すると尋ねる、男はエステルに手を貸しているのではなく超能力者の為に手を貸しているだけと呟く。エステルは舜帝の剣を片手で持ちながら一方通行達がいる場所へと走り去っていく

 

「……エステル=ローゼンタール、君は一方通行のヒロインになれるかな?」

 

その男…アレイスターはそう呟くとその場から立ち去っていった

 

 

 

「はぁ……はぁ……!」

 

人皮挟美(ひとかわはさみ)は街中を走っていた、突如街中に現れたゾンビ達から必死に逃げ回っていた

 

「もうなんなのよこれ!私は今日普通に友達とカフェに行ってただけなのに……なんなのよ!」

 

彼女は理不尽に怒る、何故こんな目に会うのかと…だがそんな彼女の怒りも襲いかかる理不尽には無意味だった。脇道からゾンビが現れ彼女に襲いかかる

 

「……あ」

 

彼女は他人事の様に自分の喉笛を噛み千切ろうとするゾンビを見る…彼女は「ああ、死んだな」と内心思いせめて痛みなく死ぬ様祈る…だが彼女が死ぬことはなかった

 

「そぉい!」

 

「わぉ!数多のパンチ凄い!てミサカはミサカは驚いてみたり!」

 

「!?」

 

突然現れた刺青の男…数多と彼にしがみつく幼女…打ち止めが狭美の目の前に現れ数多の右ストレートがゾンビの顔面に命中。ゾンビの頭部がまるで国民的アニメの喋るパンの様に吹き飛び首無し死体となったゾンビはそのまま地面に倒れる

 

「怪我はねえかい嬢ちゃん?」

 

「あ……は、はい…助けてくれてありがとうございます」

 

「礼はいい、あと2メートル走った所にある建物に乱数が…変な格好のオッさんが民間人を保護してる場所がある。そこにいけば安全だぜ」

 

数多は狭美にここから先に行けば木原が街の人達を守っている場所があると教える。狭美は礼を言いながら頭を下げて数多が教えた場所へと走っていく

 

「ねえ数多、一方通行は何処にいるんだろうね?てミサカはミサカは疑問をぶつけてみたり」

 

「さあな、多分この状況を解決する為頑張ってんじゃねえの?」

 

「ぶぅー、またミサカを放ったらかしにして危険な事してるのね。てミサカはミサカは負担を露わにしてみたり」

 

「まあまあ、そう怒りなさんな。あいつにもあいつの考えがあるんだからよ」

 

数多と打ち止めはそう軽く会話をしながら逃げ遅れた人がいないか探す為にゾンビの巣窟となった街中を走る。そんな二人の前に数十体のゾンビが地面から現れる

 

「ゲームみたいに現れた!?てミサカはミサカは驚いてみたり!」

 

「沢山出てきたな。まあいい、全員殴り倒してやるぜ」

 

怯える打ち止めに数多が拳をぶつけ殴りつけようと考えたその時

 

「ニョルニーーールッ!!」

 

ゾンビ達は黄金の閃光に焼き切られ消滅した、呆気にとられる打ち止めだが数多は今の攻撃は誰によるものか理解し笑みを浮かべる

 

「よお、トールじゃねえか」

 

「やっほーあまたん!」

 

肩にストールを纏い黄色と黒を基調としたぴったりとした上着とズボンを着用した腰まである長い金髪の少年が立っていた、数多は彼に声をかけるとその少年も笑って手を振る

 

「知り合いなの?てミサカはミサカは尋ねてみたり」

 

「おう、俺はトール。よろしくな」

 

「お前もゾンビ狩りに来てたんだな」

 

「まあな、オティヌス達は向こうでゾンビ狩りもとい無双ゲームしてるぜ」

 

「はは、マジか。魔術師て本当にチートだなオイ」

 

打ち止めに軽く挨拶をするトール、数多はオティヌス達が向こうでゾンビ達を蹴散らしていると聞いて笑うが彼もトールも話し合いながら拳をゾンビに当て続け蹴散らす無双をしているのでこいつらもチートである

 

「でも流石に数が多いな…こりゃ親玉倒さないとダメなヤツじゃね?」

 

「ま、何とかなるだろ。俺の自慢の息子が解決してくれるさ」

 

 

 

応竜・蚩尤ことイサク=ローゼンタールは超能力者達をその巨体で見下ろしていた

 

「……さて、そろそろ檮杌の口調は終わりにするか。この()がローゼンタール家の悲願を叶える!その為にテメェの死体が必要なんだ。てな訳でさっさと死にやがれ」

 

イサクは本来の喋り方に戻ると応竜・蚩尤の身体を動かし周囲の風を操作。一方通行達に風の刃を放つ

 

「風力使いの能力か…!」

 

「この力……まさか超能力者(レベル5)並みの強度!?」

 

「チッチッチッ……お前らと一緒にすんなよ。お前らの前時代の超能力者の死体を組み込んだ棺桶…それにより格段に能力が上がりその実力はお前らとは一線を画する能力だからよ!」

 

美琴が自分達と同じレベルの能力かと叫ぶとイサクは超能力者以上の能力だと告げる。彼は暴風を操るだけに留まらず空からウォーターカッターを数十個降らし更に空を暗雲で覆い落雷を発生させる

 

「!?風力使いの能力じゃないのか!?」

 

「そんなありふれた能力なんかじゃねえよ、こいつの能力は「天象操作(クライメットレイン)」。落雷・豪雨・暴風…様々な天候を操る能力だ」

 

削板が風力使いの能力ではないと気づくと自慢する様にイサクが能力について話す、天象操作という能力の証明をする様に落雷を一方通行達に放ち美琴と麦野が能力で逸らす

 

「そしてもう一つの能力が…これだ」

 

イサクがそう呟くと周囲の地面から金属で構成された杭が出現し一方通行達はそれを避ける。更に応竜・蚩尤の周囲に金属剣が形成、それが一斉に投擲され麦野が原子崩しを壁状に展開し金属剣を防ぐ

 

「な……能力が二つだと!?」

 

「これがもう一つの能力…「金属加工(メタルファクトリー)」。ありとあらゆる金属を生み出し操る能力」

 

金属加工と呼ばれるその金属操作能力に上条が驚く、通常能力者は一つの能力しか使えない。垣根の多才能力は無数の能力を使っている様に見えるが垣根本人の能力は「未元物質」のみであり基本一人一個の能力である。だがこの応竜・蚩尤は二つの能力が扱える…天候を操る能力と金属を操る能力。この二つの能力で一方通行達を攻撃してくるのだ

 

「どうだ?これがお前らの()の超能力者の能力は!?」

 

「!私達の前の超能力者…?」

 

食蜂はイサクの言った前の超能力者という単語に反応する、イサクは攻撃をやめ一方通行達へと口を開く

 

「なんだ知らないのか?お前達…現 超能力者よりも前に超能力者はいた。まあ当然だな。まさかとは思うが超能力者は今の世代しかいないと思っていたのか?」

 

「ーーーッ!それは……」

 

イサクの話ではこの棺桶に組み込んでいる死体は自分達よりも何年も前に存在した超能力者の死体だという、確かに学園都市は50年以上も前から存在した。それならば自分達よりも前に能力者はいた筈だし自分達よりも前の超能力者がいてもおかしくはない

 

「「天象操作」と「金属加工」はかつての第一位と第二位の能力だったそうだ。それをとある木原一族の者がその能力が失われない様にその能力者二人を殺害し死体をホルマリン漬けにして保存していた…それを回収して俺が有意義に使わしてもらってるのさ」

 

「…能力が…失われるだァ?どういゥ事だ?」

 

イサクがこの死体はかつての第一位と第二位と自慢げに語る。だが一方通行はそれよりも能力が失われるというところに反応しイサクに問いかける

 

「…成る程、貴様達は知らないのか。能力の損失(・・・・・)について何も」

 

「能力の損失……?」

 

「いいぜ教えてやる、超能力てのはな俺にはよく分からんが子供にしか使えねえんだよ」

 

イサクは余裕の表情で能力の損失について話し出す

 

「超能力は子供にしか扱えない、故に大人になれば能力は消えてしまう…それは超能力とて例外ではない。だからその木原は強力は能力が消えるのを許せず当時の第一位と第二位を殺しその能力を発動させる為だけの装置として保存していたのさ」

 

テレスティーナ=木原=ライフラインという女性がいる。彼女は「能力体結晶」…つまり体晶の投与実験の第一被験者である。だから彼女は能力者なのだろう。だが彼女が能力を使っているところは誰も見たことがない。別に何に立たない程の強度の低い能力と言うわけではない。単に大人になった使えないだけだ。これは他の大人の能力者も当てはまる。学園都市は50年以上も前から能力者はいた…だが大人が能力を使っている所は誰も見たことがない…つまり大人は超能力が使えなくなってしまうのだ

 

(そういえばママが「私も能力者になろうと思ったんだけどこの歳じゃ無理て言われたのよね〜」て言ってたけど…こういう事だったの)

 

美琴は母が昔言っていた言葉を思い出しイサクの話した内容が真実なのだと理解した。イサクは言いたい事を言い終わったからか風の刃や落雷、地面からの金属杭を放ち超能力者達はそれを避ける

 

「さあテメェらの死体でさっさと完全なるゴレムにならせてもらうぜ、てな訳でさっさと死ねや」

 

イサクは単に能力だけでなく全身に付属されたガトリング砲やキャノン砲から弾丸を発射、更にミサイルを何発も放ち上条達を攻撃する。挙句には地面からゾンビ達を呼び出す等能力だけに頼らず上条達を全力で殺しにきている

 

「くそ!竜王の顎!」

 

ーーーグギィガアアアアァァァ!ーーー

 

「は、異能を喰らう竜か…だがそれの対処法も熟知している」

 

上条は竜王の顎を顕現させ応竜・蚩尤を破壊しようと竜王が大口を開く…だがイサクは冷静にガトリング砲やキャノン砲、ミサイルを竜王の口に集中して放つ

 

ーーーグギィガアアアアァァァ!!?ーーー

 

「その竜は異能しか喰らえない!物理的な強さもあるかもしれんが…口内にこれだけの弾丸をぶち込めば動けまい!」

 

「くっ………!」

 

絶叫をあげる竜王に苦しげな顔をする上条、それに対しイサクは笑いながら攻撃を続行。次々と竜王の口内に撃ち込まれる銃弾の嵐に竜王は悲鳴をあげていく

 

「まだ……だ!こんな鉛玉で……俺は負ける訳ねえだろ!」

 

ーーーグギィガアアアアァァァ!ーーー

 

上条の叫びを肯定するかの様に竜王が咆哮を轟かせる、そして銃弾の嵐を耐えながら竜王はその口を大きく開き応竜・蚩尤を噛み砕かんとする…だがそんな彼の横腹に突如地面から生える様に現れた金属杭が身体に命中する

 

「がっあああああぁぁぁぁ!?」

 

銃撃ばかりに集中していた所為で金属杭を避けるのが遅れ上条は派手に吹き飛ばされる、同時に右手から顕現していた竜王も虚空へ溶ける様に消えていき上条は地面に倒れこむ

 

「まず一人」

 

「当麻!?テメェよくも……!」

 

削板が音速の二倍の速さで接近し応竜・蚩尤を殴りつける、だがイサクは金属加工の能力で金属の壁を形成し防御。更に天候操作の能力で風の刃や落雷を削板へと集中攻撃させるが彼はその全ての攻撃を耐えきり金属の壁を破壊し応竜・蚩尤の機体へと拳を突きつける

 

「ぬお!?くそが……俺は痛くねえが棺桶に異常が起きたらどう責任とってくれんだよ!」

 

イサクは削板の身体を穿とうと一斉に金属の杭を地面から放つ、だが彼の肉体はそんな杭では貫けず逆に身体に当たった杭が破壊される…イサクは暴風を応竜・蚩尤に纏ってその巨体を浮かし後方へと移動。削板はそれを追うが応竜・蚩尤の口が開くとそこから黒い霧の様なものが噴射し削板の視界を覆う

 

「……砂鉄?目くらましのつもりか?だがそんなもの……俺には効かん!」

 

削板の拳が地面へと直撃、その衝撃波で砂鉄の霧が四方八方へと吹き飛ばされ視界が晴れる。そして削板が応竜・蚩尤へと近づくと拳を大きく振るい機体を粉々に破壊しようとする…だがイサクはそれを見て笑っていた

 

「……まさかさっきのは単なる目くらましだと思ってんのか?」

 

その言葉と共に削板の身体の内側(・・・・・)から細く短い黒い槍の様なものが肉を破って現れた

 

「な………?」

 

「先程の砂鉄の霧はお前の体内に砂鉄を入れる為の罠だ。今頃身体の内側は血で溢れてるだろうなぁ」

 

幸いなのか心臓には槍に貫かれていないらしい…削板は口から血を吐いて倒れその場にゆっくりと倒れる。それをイサクは一瞥して前方へと足を動かし削板をついでとばかりにその巨大な脚で踏みつける。それを見た一方通行の頭からブチッと何か切れる音がした

 

「テメェ…俺のダチに何しやがンだァァァァ!!」

 

叫びと共に周囲一帯の風を支配し、空に高電離気体(プラズマ)を形成しようとする…だがイサクは天候操作で風の動きを乱しプラズマの形成を妨げる。風の刃や落雷、ウォーターカッターを一方通行に放ち一方通行はそれを反射で応竜・蚩尤へと返す。それを金属加工で形成された金属の盾で防ぐイサク

 

「私らを忘れてんじゃねえぞ!」

 

「む?」

 

麦野が応竜・蚩尤の背後へと出現し原子崩しを連射、それを機体の周囲に電撃の膜を生み出し原子崩しの軌道を逸らす。だが麦野はニヤッと笑いイサクが不審がったその瞬間。無数の超電磁砲が応竜・蚩尤へと飛来する

 

「ッ!?これが狙いか!」

 

超電磁砲の弾丸はコインではなく金属加工でイサク自身が生み出した金属杭。それが応竜・蚩尤を穿たんとばかりに放たれイサクは風を纏って空へと逃げる、だが美琴と食蜂は液状被覆超電磁砲(リキッドプルーフレールガン)を放ち上空の応竜・蚩尤へと真っ直ぐ放った

 

「なッ……!?」

 

ドッカーン!とド派手な爆発音が響き応竜・蚩尤の姿が爆煙に隠れる…美琴と食蜂はそれを見てハイタッチ

 

「どんなもんよ!私と操祈の合体必殺技ならそんな機械スクラップ同然よ!」

 

「さて…削板さんの傷を止血しますか」

 

食蜂は削板に近づきリモコンを削板に向けてボタンを押す、彼女の能力は水分を操る能力者だ。洗脳だけでなくこういった止血にも応用できる…彼女がその能力を発動しようとした直後、美琴と食蜂の頭上から巨大な突風が舞い降りてきた

 

「「は?」」

 

ダウンバーストと呼ばれる現象に近いそれは少女二人を軽く吹き飛ばし地面へと激突させる。美琴と食蜂は叫ぶ間も無く意識を刈り取られ地面へと力なく倒れた

 

「は、驚きはしたが…あの程度の攻撃で俺の応竜・蚩尤を倒せるとでも思ってんのかよ!」

 

「テメェ……ッ!」

 

空から勢いよく地面へと落下する応竜・蚩尤。機体に付属されたガトリング砲やキャノン砲の一部は折れ曲がっていたり破壊されていたりと使い物にならなくなっているが被害はそれだけだ。麦野は美琴と食蜂を倒したイサクに怒りを向け原子崩しを放とうとするが

 

「おっと、お前も寝てろよババア」

 

「がっ……!?」

 

イサクが放った鉄球が麦野の腹にめり込む。麦野の身体がくの字に曲がり彼女は吹き飛ばされ建物にぶつかりそのまま地面に倒れる

 

「むぎのん……オマエ!」

 

「おいおい、そう怒るなよ第三位。お前もあいつらと同じく気絶させた後仲良く殺して俺の野望の為に使ってやるからよ」

 

仲間を倒され怒る一方通行に対しイサクはヘラヘラと笑う。一方通行は地を蹴り応竜・蚩尤へと接近しようとする、それに対しイサクは天から降り注ぐ雨の量を増大しこの地一帯を集中豪雨へと天候を変え一方通行の視界を塞ぐ。イサクの姿が見えなくなった一方通行は立ち止まり周囲を見渡す

 

「隠れてねェで出て来やがれェ!」

 

イサクは姿を隠しながら金属剣を四方から放ち一方通行は反射でそれを跳ね返す。だがいくら反射しても相手に当たらなくては意味がない…とここで雨の勢いがなくなり始め視界がクリアになっていき自分と向かい合う様に立ち尽くしている応竜・蚩尤の姿を見つける

 

「見つけたぜクソが!スクラップにしてやんよ!」

 

一方通行は笑みを浮かべながら大地を蹴り応竜・蚩尤へと一瞬で迫る。応竜・蚩尤は動く事はなくそのまま一方通行の手が応竜・蚩尤に触れその機体をスクラップにする…その瞬間ガクッと一方通行の腕が、いな身体が地に落ちた

 

「がぁ……!?は……!?」

 

一方通行は自分の手を喉へと伸ばす…呼吸が出来ない、これは能力の弱点の一つである酸欠だと気づくのに数秒遅れた

 

「お前の反射は俺の応竜・蚩尤じゃあ破れねえよ。その点だけは誇っていいぜ…だがお前は無敵て訳じゃねえ。酸素を無くしちまえば人間は死ぬんだぜ?」

 

天候操作を使った風の操作、それを応用し応竜・蚩尤一帯の酸素濃度を低下させていたのだ。応竜・蚩尤は完全な機械な為酸素がなくとも行動可能。イサクも霊体である為酸素など必要ない…これが金属加工や天候操作による風と雷、雨が通じない一方通行に対して唯一の突破口なのだ

 

「分かったか超能力者?このイサク様にかかればテメェらなんか虫ケラ以下なんだよ。そうこの応竜・蚩尤の前ではなぁ!」

 

イサクは応竜・蚩尤の両手を広げながら倒れ伏した一方通行を見下ろす、超能力者如きに崇高なる自分が負ける訳がないとそれが当然だと言わんばかりに叫ぶ

 

「最高にして最強、そして至高…それがこの最高傑作「応竜・蚩尤」だ!」

 

イサクはそう叫ぶと一方通行の身体を踏み潰そうと巨大な脚を動かす、そして踏みつけた瞬間に反射により跳ね返されイサクは舌打ちする

 

「チッ……反射はまだ生きてんのか。まだ死んでねえとなると少しばかり風を操って酸素を補給してんのか?まあいいか、ここら一帯を爆撃すれば酸素も消し飛ぶだろ!」

 

イサクはそう言うと応竜・蚩尤の口を開きそこからミサイルを覗かせる。そのミサイルは燃料気化爆弾と呼ばれる兵器で燃焼により酸素をなくし一方通行を殺そうとしているのだ

 

「まあ感謝しろ、貴様らの死体は俺が「完全なるゴレム」になる為に役立つんだからな。光栄に思え」

 

「ーーーッ!?」

 

もう言葉も出せない一方通行にそう言って笑うイサク、そしてミサイルが発射されようとしたその時。何匹もの頭部に札が貼り付けられた鳥が勢いよく応竜・蚩尤へと頭部へと突っ込んで行きミサイルに激突する

 

「なっ………!?」

 

イサクが驚いた声を出した直後、札が貼り付けられた鳥達はミサイルに激突した直後札を輝かせ爆散する、それによりミサイルは応竜・蚩尤の口の中で爆散し応竜・蚩尤の頭部を破壊する

 

「あああああアアアアぁぁぁぁぁぁぁぁァァァ!!?」

 

最高傑作の頭部がなくなった事に叫ぶイサク、その驚きのあまり演算を放棄してしまい天候操作の影響が消え小降りだった雨は消え暴風も止んだ…一歩一歩退がっていく応竜・蚩尤を呆然とした顔の一方通行が眺めていた。そんな彼に駆け寄る様に誰かが走ってくる音が聞こえ彼はゆっくりと首を動かし駆け寄って来た人物を眺める

 

「……エステル?」

 

「無事か一方通行!?」

 

一方通行の目の前に現れたのはエステルだった、彼女は舜帝の剣を右手に持ち左手に複数枚の札を携えていた

 

「……さっきの鳥はオマエの魔術か」

 

「ああ、お前達の戦闘の余波で何匹かの鳥が死んでいたからな…可哀想だが私の死霊術で操らせてもらった」

 

何とか立ち上がった一方通行にエステルがそう気まずそうな顔で呟く、そして頭部を失った応竜・蚩尤が二人の方へと向き直しイサクが怒りの声を上げる

 

「貴様ァ…!俺の子孫が俺の野望を邪魔立てするとは!何を考えているのだ!」

 

「黙れ!私はお前とは違う!私は完全なるゴレムなど求めてはいない!お前の様な死者を冒涜する非道は許さない!」

 

「ほざけ!それでも貴様ローゼンタール家の当主か!?完全なるゴレムこそが我ら一族の悲願!それを邪魔立てする貴様なぞローゼンタール家の当主ではない!」

 

「それがどうした!私は学園都市に来て大切な事を学んだ!友ができその友を死者を操ることしか出来ぬ魔術で助けた!その時私は気づいたんだ!死霊術で死者を操るということは死者への冒涜だと!故に!私は人の死を弄ぶ貴様を許す訳にはいかない!」

 

「黙れぇ!小娘が俺に盾突きやがって…!楽には殺さんぞ!地獄すら生温く感じる本当の恐怖というやつを教えてやろう!」

 

過去のローゼンタール家の当主と今を生きるローゼンタール家の当主の主張が響きあう、イサクは完全なるゴレムを完成させることこそがローゼンタール家の悲願と叫び、対するエステルは死者への冒涜は許さぬと叫び返す。互いに平行線の舌戦の後イサクは怒りに身を任せ全門のガトリング砲やキャノン砲から銃弾を射出、更にはミサイルや落雷や風の刃がエステルへと迫る。対するエステルはそれを防ぐ手立てはあらず目を瞑ろうとするが一方通行が彼女を守る為に彼女を抱き寄せ反射でそれらの攻撃を防ぐ

 

「あ、一方通行!?その近いというかその…」

 

「何赤くしてやがンだオマエは……早く逃げやがれ…ここは俺がなンとか「それは出来ないな」…ンだと?」

 

エステルが急に抱き寄せて来た一方通行に頬を赤くし一方通行が戦闘中に何やってんだと息を吐く、そして彼女にここから離れる様言うが彼女はそれを拒否し一方通行が目を見開く

 

「悪いがそれは出来ない。あいつ…イサク=ローゼンタールは我が先祖…つまり身内だ。身内のしでかした事は身内がなんとかする…だからイサクは私が倒さなければならないんだ!」

 

「……寝ぼけてンのか?あいつは俺ら超能力者と互角以上に戦える化け物だ。オマエ如きに倒せるかよ」

 

「それはやって見ないと分からないだろう!それに一方通行も酸欠で死にかけていた癖に…だからここは私に任せろ!なに心配することは無い!先程何者かは知らんが舜帝の剣を貰ってな!これでイサクを斬り刻んでやる!」

 

先祖のしでかした事は子孫である自分が解決すると告げるエステル、一方通行は無理だと言うが彼女の決意は固かった…だが一方通行は気づいていた。彼女が強がっている事に

 

(足を子鹿見てェにプルプルさせてよォ…バレねえとでも思ってンのかこいつ?今にも逃げ出してェのを我慢してンのバレバレじゃねェか)

 

彼女の足は震えていた、彼女は叶うならこんな相手とは戦いたくなかった。彼女は世界を救う為に自分の命を捧げられる様な聖女でもなければ世界を滅ぼせる力を持つ悪魔と戦う勇者でもない。単なる魔術が使えるだけの女の子だ…なのに何故こんなにも強がるのかと一方通行は思っていた

 

「さあ来いイサク!ここからは私が相手になろう!」

 

「ほざいたなローゼンタール家の恥晒しが!この応竜・蚩尤の前で散れぇ!」

 

応竜・蚩尤へと舜帝の剣を見せつけるエステル、イサクはそんな短剣で自分は殺せぬと嘲笑い地面より百を超えるゾンビの群衆を招来させる。戦力的にも実力的にもエステルの方が不利…だが彼女は逃げない、学園都市を守る為に彼女は退く事は絶対にない

 

(……そゥか、こういう馬鹿を……ヒーローて呼ぶンだったなァ)

 

一方通行は昔を思い出す、あれは自分が子供だった頃…能力の所為で誰とも関われなくなった時…孤独な自分の目の前に現れたヒーローの事を

 

 

『よお、お前が一方通行か?へぇ…案外普通じゃねえか』

 

『あ、隣座っていい?いやぁ暑くて暑くて敵わねえや…お前もそう思うだろ?』

 

『え?初対面の癖に馴れ馴れしい?は、俺には常識が通じねえからな』

 

『ほらお前も飲むかコットンキャンデーソーダ、美味えぞ』

 

『は?自分に関わるな?そんな事言われたらていとくん余計に関わりたくなっちゃうなぁ』

 

『え?反射?そんなもん自分でコントロール出来るようになれや。そしたら誰も傷つけずに済むだろ?』

 

『しゃあねえな…俺が誰も傷つけられない様に能力の練習に付き合ってやるから感謝しろよ』

 

『何でこんな真似するかって?決まってるだろ?俺がメルヘンだからだよ』

 

『お前が化け物だぁ?おいおい…馬鹿を言うのも大概にしろよ。お前は化け物なんかじゃねえ単なる能力が強いだけの非力なもやしボーイだ』

 

『例え世界中の人間がお前を化け物て呼んでも俺はお前を化け物なんて呼ばねえ。だって俺らは友達だからな』

 

『そうだ友達なら渾名で呼び合わねえとな…そうだな、俺の事はていとくんと呼べ、俺はお前の事をアー君て呼ぶから』

 

『じゃあなアー君、また明日な〜。明日はサッカーでもしようぜ!他の友達も誘ってくるからよ!』

 

 

思い出したのは化け物(自分)に恐れずに友達になろうと歩み寄って来た垣根(馬鹿)。一方通行は彼に憧れていた。彼みたいな優しいヒーローになれたらと…だが自分には彼みたいなヒーローにはなれないと心の中では諦めていた

 

(でもよォ…違えンだよ…俺は確かにていとくン見てェなヒーローになりたかった…でも俺は俺だ(・・・・・)。俺はていとくンには慣れねえし、ていとくンも俺にはなれねえンだ)

 

それは自分だけの現実(パソーナルリアリテイ)。一方通行だけの正義。他人とは考えが違うかもしれない、他者から見れば悪党かも知れない…だからどうした?自分の信じる道を突き進め、何故なら彼は一方通行(アクセラレータ)なのだから

 

(俺はエステル(こいつ)の正義をあンな悪党に踏み躙らせたくねェ…だから俺があいつを倒す)

 

エステルを守りたい、そう一方通行が思った時彼の心の中に熱い何かが広がった…それて彼はその何かを理解し……笑った

 

(そォか、これが……守るべき力か)

 

直後一方通行達に銃弾の嵐と落雷と風の刃が降り注ぐ、反射が使えない様酸素濃度も低下させた。これで一方通行が酸欠になり演算が出来なくなったらエステルと一方通行は仲良くミンチだとイサクは笑う

 

「あははははははは!!!俺に刃向かうからこうなるんだよ馬鹿が!…あ、一方通行の死体も消し飛んだかもな…まあいいか」

 

「あ、一方通行……」

 

イサクは上機嫌で笑い上条は二人が立っていた所を見続ける、爆煙の所為で何も見えないがあれだけ喰らえば死んでいるだろうとイサクは興味なくし倒れた超能力者達を回収しようと考えたその時、ブワッと衝撃波が発生し爆煙が搔き消え無傷(・・)の一方通行とエステルが露わになった

 

「!?な、に…!?無傷だと!?それに何だその()は!?」

 

イサクが目にしたのは一方通行の背から生えた黒い渦巻く正体不明のエネルギーで構成された翼だった。エステルも驚いた様にその翼を見入り一方通行は翼を一瞥した後翼を軽く動かす…それだけでイサクの周囲にいたゾンビ達は横に裂かれ単なる死体となって地に崩れた

 

「……は?俺の下僕が…どうなってんだよ!?」

 

呼び出したゾンビ達は全員が強能力者(レベル3)以上の能力者ばかりだった。それに加え何十人も大能力者がいた…それをほんの一瞬で全滅した。意味が分からないとイサクは恐怖する

 

「……」

 

一方通行は双翼を倒れた超能力者達の身体に近づける、翼が超能力者達の身体を触れるか触れないかの距離で通過すると傷を負っていた彼らの身体が治り始めていく…上条は気づく。これは細胞分裂を促進させているのだと

 

「な、何なんだその力は!?」

 

「見て分かンねェのかよ」

 

イサクはその翼が天使の力(テレズマ)と酷似している事に気付いていた、だが天使の力でもないその力は何なのだと恐怖に駆られながら叫ぶ。そんなイサクに一方通行は笑いながらゆっくりと告げる

 

「これが俺の新しい力て奴だよ三下」

 

イサクは応竜・蚩尤の身体を動かしキャノン砲やガトリング砲から銃弾を連射・速射した。あの翼は危険だ、早く殺さねばと本能的に察した。だが一方通行は右手を応竜・蚩尤へと向け軽く掌を開く…それだけで銃弾はガトリング砲とキャノン砲の銃口へと反射されガトリング砲とキャノン砲が爆裂する

 

「ああああぁぁぁぁ!!!」

 

ならばと落雷や風の刃、ウォーターカッターが頭上から降り注ぐ、一方通行は見上げる事なく翼を棍棒の様に振り回し攻撃を全て薙ぎ払った。エステルはその光景を唖然とした顔で見ていた…そんな彼女の方を一方通行は向き彼女に笑いかける

 

「……オマエの覚悟は見せてもらった。こいつは俺に任せろ」

 

一方通行は彼女にそう言った後応竜・蚩尤を見据える、それ紅き眼光に怯えたかの様に応竜・蚩尤の機体が背後へと退がっていく

 

「悪りィが、こっから先は一方通行だ」

 

黒き天使がイサクへと一歩一歩近づく、イサクはそれを見て一歩一歩背後へと退がる。優劣はひっくり返った。ここから先は単なる蹂躙、過去の亡霊を屠る時間だ

 

「幽霊は幽霊らしく地獄へ堕ちて自分の罪を悔ィ改めやがれェ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回は学園都市に大人の超能力者がいない理由を個人的に考えて見ました。SS2で美鈴さんは自分は能力者になれないと言っていたので恐らく大人(恐らく二十歳以上)は能力者にならないのだと判断。そしてアニメオリジナルで登場したテレスティーナさんは体晶の被験者だと言われており、なら当然能力がある筈です。なのに劇中では一切披露しなかった…つまりこれは大人になれば能力がなくなるからでは?と個人的に思ったのです

それに学園都市は五十年以上も前からありますしその頃から能力者がいたとすれば超能力者もいた筈と勝手に考えました。当然一方さんみたいな当たりはいなかったのだろうけども当時の科学者からすれば超能力者は希少。だから大人になる事で能力がなくなるのは許せずとある木原(原作キャラでないオリジナルキャラ)が当時の第一位と第二位を殺害。それをイサクが応竜・蚩尤に組み込んだ。という設定でございます。

なお天候操作は一方さんの能力と似ており(一方さんもベクトルを操って風を操りプラズマを作り出す)、金属加工はていとくんの未元物質に似ています(金属加工は金属を無から作り出す。未元物質はこの世に存在しない物質を生み出す)。これは作者がていとくん達の旧世代感を出すためにこんな能力にしたからです

さて次回は等々完全死霊の最終回。覚醒した一方さんがイサクぶっ倒してお終いです。次回もお楽しみに!


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先生(超能力者)」と「弟子(魔術師)

志望動機書くのがキツイ(白目)、しかも書き直す可能性もあるから…しかも三時間書いててもやり直しの連続で未だに完成しない…そして企業に見学に行きたくても自転車で行くと遠いし自転車がパンクしてて動かせない。そもそも三年近く自転車に乗ってねー(白目)。全く…就職て大変だぜ(白目)

そしてお気に入りを見て見たら600超えてた、そして投票数が35個になった…これはとあセラが放送してるから?とあセラ効果なのですか?もしくは魔術師の仕業か?おのれ魔術師!ともあれ嬉しいです、これからもこの作品を応援宜しくお願いします!

今回で完全死霊編は終了でございます!イサクとの決着の後はほのぼのギャグ。そして一方さんに新しい家族が…!?どうぞお楽しみに!



イサクは怯えながら一方通行を見つめていた、先程まで自分が優位だったのに今は自分が追い込まれている事にイサクは理解できなかった

 

(な、何故だ?何故俺が追い込まれている?俺はイサク=ローゼンタールだぞ?今最もこの世界で一番神に近い男なんだ…そんな俺が何故目の前の超能力者に恐怖している?)

 

自問自答しながらも応竜・蚩尤は一歩一歩後ろへと後退する、自分は神に最も近い筈…なのに何故目の前の男に臆しているのかと

 

(そ、そうだ…確かにこいつは強い…だが俺は超能力者達をさっき蹂躙したんだ…!たかが翼を出した程度でやられるわけがねえ!あの翼は見掛け倒しだ!)

 

イサクはそう思い込み残ったガトリング砲やキャノン砲から銃弾を連射させる、それを一方通行は片手を広げる事で反射させる。その隙にイサクは天候操作で落雷を収束させ今までの落雷とは文字通り桁違いな大きさの落雷…いな雷霆とでも言うべき電撃を放つ

 

「これで消えてなくなれぇぇぇ!!」

 

その電撃は一方通行どころか周囲に倒れている上条達の肉体すら一欠片も残すこともなく消滅させる程の威力を秘めている。その雷霆を一方通行は翼を弓の様にしならせ翼の先端を勢いよく雷霆にぶつける。それにより雷霆は消し飛ばされた

 

「……は?」

 

イサクは自分の最大の大技が軽く消し飛ばされたのを見て呆気にとられる、だが一方通行は冷静に翼を横に振るい応竜・蚩尤の機体に命中させる

 

「がっはぁ……!?」

 

応竜・蚩尤は派手に吹き飛び建物に激突し建物を破壊しながらその瓦礫に埋まれる、瓦礫を押しのけて応竜・蚩尤が立ち上がりイサクは金属加工で百を超える金属剣を形成。それを一方通行へと撃ち放つも一方通行はそれを無造作に翼を振るう事で全ての剣を砕いた

 

「嘘だ!あり得ない!この応竜・蚩尤の能力が効かぬ相手等…!」

 

「煩ェよチンピラ、オマエはただ酔ってただけだ。自分の能力じゃねェ他人の力になァ。所詮は借り物の力…他人の能力に他人が作った機械…オマエは単なる人から奪った玩具を見せびらかして威張ってる小物なンだよ」

 

イサクは天候操作でダウンバーストを一方通行へと放つ、その突風でさえも一方通行が頭上へ手を掲げる事でその突風を一点に収束され巨大な風の球となり応竜・蚩尤へと投げ飛ばす。応竜・蚩尤はその球に命中し機体から火花が散る

 

「お、俺が小物だと!?そんな事はない!俺は神だ!ローゼンタール家の唯一の悲願を達する天才なんだ!」

 

「オマエの事なンざ知るかよ。だがオマエは俺のダチに手を出した…その報いは受けて貰うぜェ」

 

イサクは一方通行の言葉を否定するかの様に空から六条ものウォーターカッターを放つ、それを軽々と反射した一方通行は翼をまるで鞭のようなしなりを見せ応竜・蚩尤の機体を叩きつける、その一撃一撃は機体に亀裂を入れその度に火花が散る…ヨロヨロと退がる応竜・蚩尤に一方通行は右翼を思い切り上へと振り上げ勢いよく振り下ろす。イサクは天候操作で暴風を自分に当てて吹き飛ばす事でそれを回避する

 

「おのれぇ…!調子に乗るなよクソ餓鬼が!」

 

イサクは雷霆を何発も一方通行に放ち更には地面から金属杭を形成し刺し殺そうとする、だが金属杭は一方通行の身体に当たる前に粉々に砕け雷霆は翼にあたって霧散する。イサクのあらゆる攻撃はもう一方通行には意味を成さなかった

 

「巫山戯るなぁ!なんなんだその力は!?何故この強化された「天候操作」と「金属加工」が通じぬ!?」

 

「ンなの簡単だろゥが、誰かを守る力とただ壊すだけの力…どっちが強いかなンて明白だろ?」

 

イサクは無数の金属剣や地面からの金属杭、落雷、風の刃、ウォーターカッターを放ち一方通行を攻撃するが彼はそれらの攻撃に対し翼で軽く振るう。それだけで全ての攻撃があらぬ方向へと反射され吹き飛ばされてしまう。これが一方通行の守る為の力、イサクの力など単なる暴力、簡単に言えば棍棒を振るう蛮族と姫君を守る騎士ぐらいの差はあるだろう

 

「これが守るべき力て奴だ、オマエには何百年経っても分かンねェだろうがな」

 

これがイサクと自分の決定的な差だと一方通行は嘲笑う、イサクは躍起になって天から雷霆を落とし続けるが一方通行はそれを翼で破壊するのみ…そんな繰り返しの中一方通行が口を開く

 

「オマエのその「天候操作」とか言ゥ能力は確かに応用性が高ェ…だが基本その能力は落雷・豪雨・暴風の三種類を操るだけの能力だ。それに今の雷霆見てェに落雷に力を偏らせると豪雨と暴風は使えねェ、又は威力が弱まる見てェだな」

 

「!?」

 

一方通行は天候操作の弱点を見抜く、天候操作は一つの気候に偏れば他の気候が弱体化又は操る事が出来なくなる。イサクはそれを見抜かれた事に驚き一歩退がってしまう…その隙を一方通行は見逃さなかった

 

「これで終わりだ」

 

「がぁ!?」

 

一方通行が右手をゆっくりと下げると応竜・蚩尤の機体が地面に叩きつけ地面へとめり込ませる。動けなくなった応竜・蚩尤へと一方通行は一対の黒い翼を百を超える鋭い杭の様に分断させ応竜・蚩尤を狙う、それは応竜・蚩尤の周囲一帯に絨毯爆撃の様な攻撃を仕掛けた様で容赦なく応竜・蚩尤を破壊する為にその杭をぶつけていく

 

「ガァアアアアアあああああぁぁぁ!!?」

 

イサクの叫びが響く、応竜・蚩尤はもう全身がボロボロで所々火花を散らす部位が見える…それでもなお天候操作で雷霆やダウンバースト、ウォーターカッターを放つが翼を振るう、ただそれだけの行動で呆気なく防がれてしまう

 

「おのれ……おのれぇぇぇぇ!!」

 

千を超える金属剣を形成するとそれを一方通行に放つのではなく未だに地面に倒れている上条達へと放つ

 

(あいつには勝てない!こうなったら他の奴らを殺してその死体だけでも回収してやる!)

 

一方通行に勝てないと踏んだイサクは上条達を殺してその死体を回収しようと企む。だが一方通行はそれを見逃す筈がなく黒い翼を裂いて鋭い黒い羽を出現させそれを金属剣へと放つ、その数は金属剣と同じく千を超えその速さは音速よりも速い、そして狙いを仕損じる事はなく全ての金属剣に命中しそれを打ち砕く

 

「な……!?馬鹿な!?」

 

「だから言っただろゥが、この力は誰かを守る力だってな」

 

これが守るべき力、ただ破壊するだけの圧倒的な力とは違う、大切なものを守り抜く強き力だ。イサクにはそれが何故強いのか分からないだろう

 

(何故だこの俺が押されている!?おれはイサク=ローゼンタールだぞ?!俺はローゼンタール流とも言うべき死霊術の基礎を作り上げた偉大な魔術師なんだ!それがこんなクソ餓鬼如きにィィィィ!!)

 

イサクは応竜・蚩尤の機体に風を纏わせ宙に浮き後方へと全力で後退する

 

「!?逃げる気か!?」

 

「逃げるのではない!これは戦略的撤退だ!こんな失敗作では勝てるわけがない!あの使えない兄妹め!今度はこの応竜・蚩尤よりも強い棺桶を製作してやる!」

 

イサクは勝てないと察知し逃げる事を選んだのだ、菱形兄妹を貶しながら彼は風を纏って全力で逃げる…だが逃げれるわけがなかった

 

「逃げれると思ってンのか?」

 

「なっ!?」

 

一方通行は音速の数十倍の速度でイサクへと追いつき応竜・蚩尤の機体に触れる、驚くイサクに構わず一方通行は片手で応竜・蚩尤を持ち上げ地面へと叩きつける

 

「……俺らもやるぞ」

 

上条が立ち上がりながらそう呟く、その言葉を聞いて麦野達も立ち上がる

 

「一方通行だけ良いところ見せて終わりとか癪だしな…俺らであいつの装甲を破壊するぞ」

 

「確かに…私らがただやられるだけで終わりてのもアレだしな」

 

「よし…俺らも根性出して頑張るか」

 

「そうね…行くわよ操祈」

 

「分かってるわぁ、美琴こそ足引っ張らないでよ」

 

彼らは一方通行を援護する為に上条は右手を竜王の顎へと顕身させ、麦野は原子崩しを収束させ束ねて放ち、削板の超すごいパーンチを、食蜂と美琴は液状被覆超電磁砲(リキッドプルーフレールガン)を放ち、竜王の顎が、原子崩しが、超すごいパーンチが、液状被覆超電磁砲が応竜・蚩尤の機体へと命中する

 

「な………!?貴様らぁ!」

 

機体がその超威力の能力により破壊され応竜・蚩尤に組み込まれていた死体が地面に転がる。これにより応竜・蚩尤は完全に破壊されイサクはもう二度と「天候操作」と「金属加工」を操る事が出来ない……しかし

 

「これで終わったと思うなよ超能力者ゥゥゥゥゥゥ!!」

 

「「「「「!?」」」」」

 

破壊された応竜・蚩尤の機体から青白く輝く光が現れる…それはイサクの霊魂だった。彼は破壊される瞬前に応竜・蚩尤と自分の魂を切り離し機体から抜け出したのだ

 

「俺は諦めんぞ!俺は完全なるゴレムを完成させる!その為にまた再び学園都市に訪れる!」

 

イサクは霊魂状態のまま空へと飛び去る、彼は凄まじい速度で上空へと移動して行く

 

「今度こそ貴様らの息の根を止めてやる!貴様の死体を散々陵辱し尽くしてやろう!覚悟しておけ!」

 

イサクはそう捨て台詞を吐し出して空の彼方へと消えていく…これだけ距離を取られれば美琴と食蜂の液状被覆超電磁砲も届かず、麦野の0次元の極点で瞬間移動しても逃げてしまうだろう…だが一方通行はイサクを逃さない

 

「エステルゥ!」

 

「!?」

 

一方通行はエステルの方へと振り向く、彼の赤い目はエステルと彼女か握っている短剣を見つめていた。その視線だけでエステルは自分が何をすべきが理解した

 

「飛ばすぞ!」

 

「……ッ!分かった!」

 

一方通行がエステルの手を握る、そして一方通行はエステルを回転をつけて空へと投げる。投げつけた速度は音速の数十倍を超えていただろう。通常ならばエステルはその速度に耐えきれず死んでいた筈だった。だが彼女の身体を覆うように天使の力に似た力が纏わり付き彼女の身体を強化していた。彼女は短剣…舜帝の剣を右手で握りしめながら逃げるイサクを視界に確認する

 

「逃がさんぞイサク!」

 

「!?ば、馬鹿な……」

 

呆気にとられるイサクにエステルは勢いをつけたまま舜帝の剣を振るう、その短剣の刃は紙を断つ様に容易くイサクの霊魂を二つに斬り裂いた

 

「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ーーーー!!?」

 

耳をつんざく様な断末魔が轟く、斬り裂かれたイサクの霊魂は淡い光となって溶ける様に消え始める…こうして何百年も続いたイサクの野望は同じローゼンタール家の者によって終止符を迎えたのだった

 

「……さてこの後はどうする?」

 

彼女はそう言って今更ながら自分の置かれた状況を確認する、自分は今空にいる…その後どうなって無事に地面に降り立つのかと考えもしかしてこのまま永遠にお空を飛び続けるのかと考え始めたその時

 

「よォ」

 

「!?あ、一方通行!?」

 

一方通行が黒い翼を羽ばたかせながら彼女の横を飛行していた。それを見て驚くエステル、そんな彼女の肩を掴み一方通行は抱き寄せるかの様にエステルを引き寄せる

 

「ちょ……!?一方通行!?」

 

「あンま喋ンな、舌噛むぞ」

 

エステルが顔を赤くして何か呟こうとするが一方通行が黙れと言葉を遮る、そして一方通行が黒い翼を勢いよく羽ばたかせる。直後済まさじい速度で二人は移動し一瞬で元いた場所へと移動していた

 

「え?は?な、何…?」

 

「……いい手慣らしにはなったなァ」

 

未だに困惑するエステルに自身の背から出現した黒い翼を撫でる一方通行。それと同時に噴出されていた黒いエネルギーが弱まってき黒い翼は消滅してしまった

 

(あれは天使の力……?いや違う……これが超能力者……凄まじいな)

 

エステルはただただ圧倒されていた…これが超能力者、自分とは住む世界が違いすぎる

 

「………一方通行」

 

「……なンだ?」

 

エステルは一呼吸ついてから一方通行に話しかける、訝しげな顔を向ける一方通行に彼女は口を開いた

 

「ありがとう」

 

「………ッ。は……別にオマエの為にやったンじゃねェよ!」

 

太陽の様に笑うエステルを見て一方通行は視線を逸らす、彼女を見ていると何故か身体がくすぐったくなったのだ…そんな素直ではない一方通行を見てエステルはくすくすと笑う。そんな二人の前に上条達が手を振って駆け寄ってくる

 

「やったな一方通行!」

 

「最近カッコいい所がなかったけど今回は珍しくカッコよかったわよ!」

 

「そうねぇ、一方通行さんにしては珍しく主人公力が高かったんじゃない?」

 

「るせェな、俺はいつだってカッコいいだろゥが」

 

上条達が一方通行を揶揄う様に肩を組み合いながら喋り合う、その一方通行の顔は本当に楽しげで…エステルはそれを一瞥すると彼らから背を向け歩き始める

 

「………ァ?エステル?」

 

一方通行が気付いた時にはエステルは影も形もなくなっていた

 

「……あいつ……チッ、別れの挨拶ぐらいしろよ」

 

一方通行は舌打ちをすると何処に立ち去ったのか知れない少女に向けて口を開く、この言葉は届かなくてもいい。ただ彼自身の気持ちを素直に出したいだけだった

 

「またな、エステル」

 

 

 

「見てください垣根さん…ゾンビ達が」

 

「……どうやらアー君達が親玉を倒した見てえだな」

 

垣根と帆風は次々と地面に倒れ腐り始めるゾンビ達を見て一方通行達が親玉を倒したのだと理解する、恐らく街中でも無数のゾンビ達が消滅しているだろう

 

「……このゾンビ達は墓で眠っていた死体なんだ、だから冥福を祈ろうぜ」

 

「……ですわね」

 

二人は目を閉じてゾンビ達に手を合わさる、彼らは被害者だ。イサクにより無理矢理動かされていた死体達の冥福を二人は祈った

 

 

「………うぅ…ここは?」

 

「おや、目が覚めたんだね」

 

「………アンタ誰?」

 

番外個体は病室で目を覚ましここは何処かと起き上がる、それを近くの椅子に座っていた冥土帰しが声をかけると彼女は警戒した目で冥土帰しを睨み右手から電撃を発生させる

 

「安心しなさい、僕は医者だよ」

 

「どうだか…ミサカの身体を解剖とかするんじゃないの?」

 

「しないよ、僕は医者だ。患者の身体は治すが傷つける真似はしない」

 

「……まあいいか、もうミサカは組織に見捨てられたしねー。さてこれからどうしようかなぁ」

 

番外個体は冥土帰しに興味をなくしたのかバサッとベットに倒れこむ、蠢動には見捨てられた。もう自分はあの組織からは用済みなのだろうと判断しこれからどう過ごすか思考を巡らせる番外個体…そんな彼女に冥土帰しは笑いながら告げる

 

「それなら僕に一ついい提案があるんだがね」

 

「?」

 

 

菱形兄妹は病院の窓からゾンビ達が倒れたのを見ると安堵の息を吐き出し、安心のあまり床に崩れ落ちる

 

「……良かった、イサクは無事に倒されたようだ」

 

「やったねお兄ちゃん。私達の発明がこれ以上悪用されることはないね」

 

「……ああ、だがもう棺桶に関するレポートや製造法は破棄しなければな…もう二度とこんな事件が起きないように」

 

「……そうだね、エステルっちには申し訳ないけどね」

 

幹比古は今後このような事態を起こさぬ為にも棺桶に関するレポートや製造法は破棄しなければと呟き蛭魅もそれに頷く、協力してくれたエステルには悪いがもうこんな事を起こさない為には必要な事なのだ

 

「……まあそう残念がるな、僕達は生きている。学園都市がある限り僕らは研究を続ける…そうだろう?」

 

「……うん、よし!じゃあ早速新しい研究課題でも考えますか!」

 

「それでこそ僕の妹だ…さて、これから忙しくなるな」

 

二人はそう笑いながら次の研究課題は何にするか考える、一度失敗してもそこで立ち止まらない。その失敗を活かし成功するまで諦めないのが菱形兄妹の信念だ

 

 

「見て見て数多!ゾンビ達が消滅していくよ!てミサカはミサカは叫んでみたり!」

 

「お、本当だな。どうやら俺の自慢の息子かその友達が事件を解決したみてえだな」

 

打ち止めが言った通りゾンビ達が消滅していき数多は一方通行が事件を解決したのだと微笑む、トールはゾンビ達が消えたのを確認するとホッと息を吐く

 

「ふぅ……ようやく消えてくれたか…実は俺ゾンビとか苦手なんだよな」

 

「え?怖いの苦手なの?てミサカはミサカは驚いてみる」

 

「そうなんだよな〜、俺スプラッター映画とかお化け屋敷が苦手でさ…内心ビビりまくってたんだぜ」

 

「それでもゾンビに殴りかかるてお前凄えな」

 

実はトールはゾンビ等のホラー系が苦手なのだが彼はそれを耐えて殴っていたのだ、その事実に驚く数多と打ち止め

 

「……さて、今日は一方通行が帰ってきたら肉でも食わせてるか……ん?」

 

数多は今日は肉の日だなと笑っていると、ふと自分の携帯が鳴っていることに気づき携帯を手に取る。電話の相手は冥土帰しだった

 

 

暗い下水道の中を一匹のコモドオオトカゲと複数人の研究員達やそれを護衛する傭兵達が歩いていた。番外個体を垣根達へと送り込み自分達は高みで見物していた蠢動達だ

 

「作戦は失敗か……まあいい、私達の様な優秀な人材は学園都市の外の組織からは喉から手が出る程欲しい逸材なのだからな」

 

「そうですね蠢動さん」

 

蠢動達は学園都市から逃げ外の組織に身を寄せる気なのだ

 

「覚えていろ垣根帝督、貴様の首は必ずやこの私が……」

 

蠢動がそう忌々しげに言葉を吐き出したまさにその瞬間、背後で蠢動の部下達の悲鳴が響いた

 

「「「「「ぐわぁぁぁぁぁ!!?」」」」」

 

「!?な、なんだ!?何が起こった!?」

 

部下達の断末魔を聞いて急いで背後を振り返る蠢動、傭兵達が銃口を悲鳴の先に向け銃を乱射する…だがその弾丸は白い翼(・・・)によって弾かれた

 

「な、ぜ…何故ここにいる垣根帝督(・・・・)ぅぅ!?」

 

「残念ですが私は垣根帝督であって垣根帝督ではありませんよ」

 

現れたのは衣服のみならず身体まで真っ白な少年だった、その姿は蠢動の憎き怨敵である垣根帝督そのものだった。彼は背中から生えた白い三対の翼を振るい傭兵達の首を全員切り落とし蠢動のみを残して研究員達と傭兵達を全滅させる

 

「私の名前はカブトムシ05、学園都市の超能力者の第一位 垣根帝督自身を模した自律兵器です…マスターからは白垣根と呼ばれますがね」

 

その少年の名はカブトムシ05、垣根が操るカブトムシ軍団のリーダー格であり最も垣根の未元物質の扱いに慣れている個体。彼は無表情で蠢動へと歩み寄り蠢動は一歩ずつ退がり始める

 

(こいつは未元物質で身体を構成している…故にこの身体が持つバクテリアの毒は通じない…まさかこんな所で私は終わるのか?嘘だ、あり得ん!)

 

蠢動は自分はこんな所で死んでいい人間ではないと頭の中で考えるも白垣根はそれを逃がすわけがなかった。だがこれは因果応報なのだ。今まで彼が行ってきた悪事が利子をつけて帰ってきた。ただそれだけである

 

「くそ!くそくそくそくそくそ…!クソォォ!!」

 

「………」

 

せめてもの抵抗にと白垣根に飛びかかる蠢動…だが白垣根は無表情で翼を振るいコモドオオトカゲの首を切り落とした。ゴロゴロと赤い血を撒き散らしながら転がる首…それを無表情で見つめた後彼は踵を返して歩き出す

 

「……こんな下衆相手にマスターの手を煩わせる事はありませんからね」

 

彼はそう言いながら人間体での姿を崩し白いカブトムシの姿になって、更に大きさを縮小化し始める…そうして彼は下水道の深い闇の中へと消えていった

 

 

 

「さあ準備はいいか一方通行、打ち止め…家族(・・)が増えた事を祝って今日は焼肉パーティーだ!」

 

「「うぇーい!!」」

 

数多家では事件解決と新しい家族(・・・・・)の歓迎会を開いていた。数多と一方通行、打ち止めはコップをぶつけ合いその中身をゴグゴクと飲み干す…なおコップの中身はお茶である

 

「……何でミサカも」

 

そう呟いたのは番外個体だった、彼女は冥土帰しに自分を引き取ってくれる人に心当たりがあると言われ連れてこられた場所が数多達の家だったのだ

 

「畜生あのヤブ医者め…今度あったら鉄釘をあの頭に打ち込んでやる」

 

何が悲しくて殺そうとした相手の家に住まねばならぬのかと番外個体は歯噛みする、絶対に今度冥土帰しに会ったら鉄釘を飛ばしてぶち殺してやると番外個体は決めた

 

「にしてもさ……アナタは何も言わないんだね」

 

「ァ?まあ、俺は寛大で広い心の持ち主だからなァ…一度殺そうとしてきた奴程度なら許してやンよ…て、オイ!それは俺の焼肉君だろゥが!」

 

「へへーん、これはミサカのものだもんねー!てミサカはミサカは一方通行に見せびらかす様に焼肉を頬張ってみたり!ううん…デリシャス!」

 

「くそったれが!じゃあ俺はオマエのプリンを食べてやらァ!」

 

「いや全然寛大じゃないじゃん」

 

番外個体がそれでいいのかと一方通行に質問する、一方通行は自分は優しいからなと呟くも打ち止めに肉を取られブチ切れる…何処が寛大な心の持ち主なのかと番外個体は突っ込んだ

 

「ええ!?嘘だよね?!嘘でしょ!?嘘なんでしょ!?の三段活用!てミサカはミサカは冷蔵庫に走っていく一方通行を制止してみた……あぁ!?ミサカのプリンがぁぁ!?」

 

「あひゃひゃひゃひゃ!オマエのプリン美味かったぜェ!」

 

「……こんな奴をミサカは殺そうとしてたの?なんか悲しくなってきた」

 

打ち止めが自分のプリンを食べられて泣き始め、一方通行は自分の肉を食べた罰だと笑う。そんな小物臭い一方通行を見て番外個体はこんな奴を殺そうとしていたのかと頭を抱える

 

「それにオマエみてェな雑魚は俺の敵じゃねェからな。また襲いかかったきても平気だしな」

 

「うわ、上から目線だよコイツ…言ってる事は小物臭いのにクソ強いから本当にミサカアナタの事嫌い」

 

「は、オマエに嫌われたって構わねェよ」

 

一方通行が番外個体等敵ではないと本人の目の前で言い彼女は嫌いと呟く、一方通行は嫌いでも構わないと笑いながら焼肉を貪り数多に野菜を食べろと木原神拳を喰らい吹き飛ばされた。それを見て番外個体は笑った

 

「痛ェな木原くン……チッ、仕方ねェな。少しくらい野菜も食ってやンよ」

 

一方通行はそう言って箸で人参を取ろうとした時、ピンポーンと玄関からチャイムが鳴る音が聞こえ一方通行は立ち上がって玄関まで歩く

 

「チッ…今は焼肉パーティーだてのに…」

 

そう言いながらも一方通行は玄関の扉を開ける

 

「どちら様ですかァ?要件をさっさと言いやがれ……」

 

「やあ、早速だが家に上がらせてもらうぞ」

 

「」

 

そこに立っていたのは背中に登山でも行くのかと言うぐらいの大荷物を背負ったエステルだった、驚き過ぎて固まっている一方通行に構わず彼女は家の中へと入り焼肉パーティーが行われている応接間まで歩く

 

「お、この肉美味そうだな。食べさせてもらうぞ」

 

「お、嬢ちゃんも焼肉食いに来たのか?まあ食べろ食べろ」

 

「あ、エステルだ!てミサカはミサカは喜んでみたり!」

 

「……ああ、あんたがミサカを助けてくれたエステルて奴?別にミサカは助けてくれなんて言ってないけど…感謝してあげるよ」

 

「…………いやおかしィだろォ!?」

 

普通に焼肉を食べるエステルに彼女の事を一切気にしない数多達に一方通行はツッコミを入れる

 

「?どうしたんだ一方通行?肉食べないのか?」

 

「あ、食います。俺は肉が大好きだからなァ〜…て!そうじゃねェンだよ!てかエステル!オマエ学園都市から居なくなったンじゃねェのかよ!?」

 

「?等々服のセンスだけでなく頭をおかしくなったのか一方通行?」

 

「誰の服のセンスが悪ィだと!?…まあそれは置いておいて…オマエあの場から居なくなったじゃねェか」

 

「ああ、あれは私が住んで居た蛭魅達の家に置いたあった荷物を取りに行ったんだよ」

 

「紛らわしい事しやがって……ン?なンで荷物を取りに行ったンだよ?」

 

エステルは学園都市から去ったのではなく荷物を取りに帰っただけらしい…一方通行は何故荷物を取りに帰ったのかと尋ねるとエステルは真顔でこう返した

 

「今日からここに住むからな」

 

「へェ〜……え?今なんて?」

 

「今日からここでお世話になります、飯は三食付き、テレビも風呂も頼むぞ」

 

エステルがここに住むと言うと一方通行が固まる、エステルは更に図々しく注文を重ね唖然とする一方通行だったがハッとした顔でエステルに叫ぶ

 

「な、何言ってやがンだオマエ!?てかどうしてここに住むンだよ!?」

 

「恩返しだ、私は一方通行に世話になった。だから恩を返したい…だが私は戦闘力はクソ雑魚だし戦闘では役に立たない。だからこの家に居候させてもらう」

 

「いや意味が分かンねェ!どうやったらそんな考えになるンだ!?オマエの頭沸いてんのか!?」

 

「む、聞き捨てならんな。頭が湧いてるのは服のセンスがいい(笑)の一方通行の方だろう。それに確か蛭魅が教えてくれた漫画にはこう言ったシュチュエーションが男には一番のご褒美と聞いていたのだが」

 

「誰が(笑)だ!?それにそんなシュチュエーション俺は望ンでねェ!なあ木原くンもなンか言ってやってくれよ!」

 

恩返しとしてここに住むと訳の分からない事をほざくエステルに一方通行が数多に助け舟を求める…しかし

 

「お〜いいんじゃねえの?俺的には大歓迎だぜ。二人目の娘が出来た気分で」

 

「て事は私はお姉ちゃん!?てミサカはミサカは満面の笑みで叫んでみたり!」

 

「いや見た目的に妹でしょ…ミサカも別にいいよ、一応命の恩人だし…べ、別に感謝なんかしてないけど」

 

「マジで!?もしかして俺がおかしいのか!?」

 

数多達はエステルがこの家に住むのを歓迎していた、嘘だー!と一方通行が頭を抱える

 

「と言うわけでお世話になるぞ一方通行。喜んでもいいぞ」

 

「オマエマジでぶん殴ろうかな」

 

「!ま、まさか私に恩返しという名のそういうプレイを…?だ、だが仕方ないな…そんなプレイをしても……いいぞ」

 

「いやそんな事しねェし!てかなんで嬉しそうにしてンだよ!」

 

偉そうに言うエステルに一方通行が殴ろうかこいつと握り拳を見せつけるとエステルが興奮する、それを見て一方通行がツッコミを入れる

 

「……あー、一方通行?あまたんはそう言った事にはとやかく言わねえが…打ち止めに悪い影響を与えるなよ?」

 

「いやしねェからな!何本気になってンだよ木原くン!?」

 

「……最低、てミサカはミサカは冷たい視線で見つめてみたり!」

 

「だから誤解だって言ってンだろ!?」

 

「あ、喋りかけないでくれる?後ミサカと半径1メートルの範囲に入らないで」

 

「」

 

数多は一方通行から目を逸らしてそう言い、打ち止めは冷たい目を一方通行に向ける。番外個体に至っては引いた目で一方通行から距離を取る…一方通行がどう弁解していいのか分からず途方に暮れる…そんな彼にエステルが肩を叩く

 

「ドンマイ」

 

「全部オマエの責任だろゥがァァァァ!!畜生!不幸だァーーーー!!」

 

優しい笑顔を見せるエステルにそう叫ぶ一方通行、彼は思った。上条よりも自分の方が不幸なのではと

 

 

「たく……酷い目にあったぞ」

 

一方通行は疲れた顔でエステルが泊まる部屋へと案内する、彼は数多達に誤解を解くまで話を続け気づけば10時だった。結局肉を食いそびれ散々な目にあった彼は疲れながらもエステルを部屋へと案内する

 

「ほら、ここが空いてる部屋だ。好きに使ェ」

 

「すまんな」

 

「……本当に済まねェと思ってンなら帰ってくンない?」

 

「だが断る」

 

「ブン殴るぞオマエ」

 

部屋の電気をつけて背中の荷物を置くエステル、一方通行は寝ようと自分の部屋に戻ろうとしたその時

 

「待ってくれ一方通行」

 

「あ?なンだよ」

 

「……私はお前と出会って分かった。自分はまだまだ未熟で弱いのだと」

 

「…ま、超能力者と比べるもンじゃねェと思うがなァ」

 

「だが足手まといだったのは事実だ…だが私は恩を返さないといけない。だからもしお前が困っていれば助けたいと思っている…だがこのままではなんの助けにもならない」

 

そこでだ、とエステルが呟き一方通行に向かって笑いながら口を開く

 

「私を鍛えてくれないか一方通行」

 

「……は?」

 

今日何度目か分からない一方通行が呆けた声を出した。何を言ってるんだこいつという目でエステルを見つめる一方通行

 

「お前が鍛えてくれれば私も強くなれる、そんな気がする。てな訳で明日からよろしく頼むぞ」

 

「……待てよ」

 

「安心しろ、弟子として食器洗い、家事洗濯も任せておけ。偶にでもいいから修行をつけてくれればいい」

 

「…おい、俺をおいて頂上を目指そうとするな」

 

「な、なんなら夜の相手でも……//」

 

「オマエはどンな目で俺を見てンだよ」

 

一方通行は顔に手を当てる、ドウシテコウナッタと言わんばかりに…出来るならエステルの襟首を掴んで窓からポイ捨てしたい。だがそんな事をしたら数多達から何と言われるか…それに垣根達からも何か言われるかもしれない…一方通行は1分近く悩んだ後溜息を吐いてエステルに話しかける

 

「……強くなれるか分かンねェぞ」

 

「!……ああ、構わない!宜しく頼む一方通行!」

 

「……面倒くせェ事になったなァ」

 

弟子にしてやってもいいと一方通行が呟くと笑顔になるエステル、一方通行も口では面倒くさいと呟くがエステルの笑顔を見て彼も苦笑する

 

「そうだ!弟子になったんなら一方通行と呼び捨てにしてはダメだな!師匠とかどうだ?」

 

「なンかステイルと被るからバツ」

 

「じゃあウルトラマン(笑)とか服のセンスがいい師匠(笑)はどうだ?」

 

「敬う気ゼロだろオマエ」

 

エステルがどんな風に呼ぶかと色々と考え口に出すが一方通行はダメだと首を振る、そんな中エステルはいい案を思いついた様に暫く固まり口を開く

 

「……先生と呼んでいいだろうか?」

 

「……それならまァ…許す」

 

先生はどうかと聞かれ一方通行はそれならいいと頷く、それを聞いたエステルは頬を緩める

 

「そうか、ならこれからよろしくな「先生」」

 

「……もし逃げたら覚悟してけよ「弟子」」

 

こうして超能力者の先生と魔術師の弟子といった奇妙な関係が出来上がった。それを影で見ていた数多は嬉しさのあまり感涙し打ち止めは「ヒロインポジとられた…てミサカはミサカは…」と落ち込んでいた…それを見ていた番外個体はこの家には自分しか常識人がいないと溜息を吐いた

 

 

 

 

 

「てな訳で早速缶コーヒーを買ってこい弟子」

 

「ただのパシリだなそれは。私はそんな事の為に弟子になったのではないぞ服のセンス(笑)の先生(センスない)」

 

「……これは教育だ、聞き分けの悪いクソ弟子に対する愛の鞭てヤツだよォ」

 

「え!?く、黒い翼は流石にやり過ぎだと思います先生…」

 

「エステルくゥゥゥゥゥゥン!」

 

「ひゃああああああ!!!?」

 

なお、こんなやり取りがこれから数多家で続く様になるのだが……その話はまたの機会という事で

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




イサクさんと蠢動はかませ。はっきり分かるね。そしてエステルちゃんの弟子化と番外個体の居候化…うん無茶苦茶だな。それにしても書く時間がなくて文章が雑になってるか心配だなぁ〜

さて次回は待ちに待った「大覇星祭」編!学園都市だけじゃない!イギリスの女王達やらバチカンの神の右席、アメリカ大統領やフランスの聖女様、ロシアの変態さんも総登場だ!そして何やら影で蠢く怪しい影…てな訳で新章スタートでございます!

「lnvm壊ynvnvjyksl」
超電磁砲(レールガン)」学園都市の超能力者 第五位ーーーー
御坂美琴

「afvcbvhl滅nvnonv」
心理掌握(メンタルアウト)」学園都市の超能力者 第六位ーーーー
食蜂操祈

「グギィガアアアアァァァ!!!」
幻想殺し(イマジンブレイカー)」学園都市の超能力者 第二位ーーーー上条当麻

「お前は俺で俺はお前だ」
「????」幻想殺しの奥に潜む謎の存在ーーーー神浄の討魔

さて波乱の予感がする大覇星祭編…ていとくん達は普通に大覇星祭を楽しむ事が出来るのか!?次回は一旦ギャグ書きます

次回もお楽しみに!


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第六章 大覇星祭 表・裏 編
貴方はとある派ですか?SAO派ですか?自分はゆゆゆ派です


等々な質問、貴方はとあるとSAOどちらが好きですか?自分は両方好きですがどちらかと聞かれたらとあるですね。でもSAOも好きです。でも最近ゆゆゆにハマってます。ゆゆゆの女の子達可愛過ぎ。特に風先輩と樹ちゃんがマジカワ。ふういつのカップリングなんか泣ける

さて今回はサブタイでわかるあの作品との(勝手に)クロスオーバー。これはあくまでとあるです、今回限りです、単なるネタです…予防線は張った(意味不明)。所々設定矛盾とかキャラ崩壊があるかもですがこれはギャグですので大目にみてください



VR(バーチャル・リアリティ)とはご存知だろうか?日本語では仮想現実と訳される言葉で現物(オリジナル)ではないがユーザの五感を含む感覚を刺激することにより機能としての本質は同じであるような環境を理工学的に作り出す技術またはその体系の事をVRと呼ぶ

 

スタンリイ・グローマン・ワインボウムと呼ばれる文豪の短編小説「Pygmalion's Spectacles」に出てきたゴーグル型のVRシステムがバーチャル・リアリティのコンセプトの先駆けとも言われ。このバーチャル・リアリティを様々な作品が取り扱った程であり有名なものでは映画なら某見た目は子供、頭脳は大人な名探偵。アニメや小説ならソードでアートなオンラインの作品が有名である

 

では何故この話をしたかというと、今回垣根が超能力者と一緒に遊ぼうと用意した機械がまさにそのVRだからである

 

 

「てな訳で今日はVRをしたいと思います、イェーイ!」

 

垣根がラッパを吹き帆風がにこやかにカスタネットを叩く、上条達は「また垣根の暴走が始まった」と頭を抱える

 

「……VRて…電撃文庫にはもうそのジャンルはあるのよ?」

 

「おっとメタ発言は禁止だぞ、まあ御託は置いておいてですね!お前らはVRに興味はないのか!?」

 

「まあ確かにやって見たいとは思うけど…」

 

「だろ!なら今日はVRで遊ぼう!もうすぐ大覇星祭なんだ、今日くらいしか遊べる日はねえぞ!」

 

美琴が軽くメタい発言をして垣根がそれを注意する、上条もVRに興味があるのか興味なさげな雰囲気を出しながらも内心ワクワクしていた

 

「てな訳で俺は早速学園都市の外の友達からVRの機械を譲って貰ったんだ!」

 

「……なんか嫌な予感がする」

 

「言っておくがこの機械は凄えぞ、現実と見違える程の素晴らしい出来だからな…VRだけの技術力なら木原一族を上回る天才だからなあの人は」

 

垣根がそう言ってダンボールから出したのはヘッドギアの様な機械。それを垣根は全員に見せつける

 

「じゃーん!こいつの名前はナーヴギア!そして俺らがやるゲームの名前は「アルヴヘイム・オンライン」。通称はALO…」

 

『勝手にクロスオーバーすんな!』

 

「ユージーン!?」

 

垣根がその機械の名前と遊ぶゲームの名前を叫ぶ、それと同時に上条達は垣根に飛び蹴りをかまし垣根はサラマンダーの将軍の名前を叫びながら吹き飛ばされる

 

「何電撃文庫の超人気作とクロスオーバーしようとしてんだよ!てかどうやってナーヴギアとALOを手に入れたんだ!?」

 

「茅場っちとはマブダチだから」

 

「茅場っち!?ヒースクリフ団長とそんな親しげな仲なの!?」

 

「あり得ないわぁ!あの団長がこんなメルヘンと仲良くなれる筈がないもの!」

 

垣根は自分の親友である茅場晶彦からナーヴギアもALOも貰ったのだと言うと美琴と食蜂が嘘だと叫ぶ、それを聞いてやれやれと垣根が首を振る

 

「なら証拠を見せてやるよ、潤子ちゃん」

 

「かしこまりました」

 

垣根が帆風に指示を出すと帆風は何処から取り出したのかプロジェクターを取り出し、垣根の家の壁にある映像を映し出す

 

『初めまして超能力者の諸君、私の名前は茅場晶彦だ』

 

『マジモンの茅場さんキタァー!?』

 

(垣根さんの交友関係は他作まで及ぶのですね)

 

(俺の交友関係に常識は通用しねえ)

 

その映像に映った男は茅場晶彦本人だった、彼を見て驚く超能力者達を他所に彼は言葉を続ける

 

『私とていとくんは古い付き合いでな、SAOのベータテスターをして貰った事もある。今回は私の後輩である須郷君が開発したALOのベータテスターを君達に頼みたいのだ』

 

(ていとくん呼び!?何処まで親しげなんだにゃーん!?)

 

『では諸君らの健闘を祈る…それとこのゲームはデスゲームではない』

 

茅場は垣根の事をていとくんと呼び自分の後輩が作ったゲームのベータテスターをやって欲しいと頼み込む、最後にこれはSAOみたいなデスゲームではないと言うとそのまま映像は消えた

 

「と言うか帝督はSAOのベータテスターだったのか?」

 

「まあな、ああ懐かしいぜ…キリトと一緒にボス狩ったり、キリトがアスナとイチャイチャしてるカップリング写真を撮って二人に追いかけられたり、キリトの浮気現場とも言える彼女以外とのカップリング写真を撮ってそれが証拠でキリトがアスナに折檻されたり…いい思い出だぜ」

 

垣根はそう言いながら昔の事を思い出す、ベータテスターの時に知り合った全身真っ黒な服を着たちょっとカッコつけてる風な少年 キリトの事を、最初は出会った時は「え?この作品とあるじゃないの?」と困惑していた垣根だが話し合う内に仲良くなりいつの間にか彼とパーティを組むようになっていた。そしてSAOが発売された時にはキリト以外にもクラインやらディアベル、エギル、キバオウらと一緒にパーティを組んで大暴れしたり、キリトの女性関係に首を突っ込んで写真を撮ったりと色んな事をした

 

「いやぁ、やっぱりとあるもいいけどSAOも最高だな。キリアスはいいぞ、勿論上琴も上食な」

 

「わたくしはベルクーリさんに会いたいですわ」

 

キリアスも最高ですと朗らかな笑顔で呟く垣根にベルクーリ団長に会えないかなとウキウキする帆風、そんな二人に呆れつつも上条達はナーヴギアを装着し床に寝転がる

 

「じゃあ準備はいいか?」

 

「大丈夫ですわ」

 

「じゃあ…ダイレクト・リンク!」

 

「「「「「それは川原礫先生の別作品!」」」」」

 

垣根がナーヴギアを被って某加速する世界の仮想世界へダイブする時のボイスコマンドを叫ぶ、なお上条達はリンク・スタートの掛け声でダイブした

 

 

上条達がダイブした仮想世界はRPGでよくありそうな大きなお城がある城の城下街だった

 

「お〜凄えリアルだな」

 

「本当ね…てかここALOなのにドラクエぽくない?」

 

「確かにねぇ…名前が四文字までしか入力できないんだものねぇ」

 

そうそれぞれの感想をこぼす上条達、なお彼らのステータスは

 

とうま Lv 1

HP15

MP0

 

みこと Lv 1

HP14

MP18

 

みさき Lv1

HP10

MP15

 

となっている

 

「……オイ、なンで俺の名前は「もやし」なンだよ?」

 

「仕方ねえだろ、四文字しか入力出来ねえんだからよ」

 

「うおおお!これがゲームの世界か!凄いな最近の科学て!」

 

何故自分の名前がもやしなのかと麦野に怒る一方通行にそれしか思いつかなかったと返す麦野、削板は町の建物を触ったり地面を叩いたりしてはしゃいでいた。因みに彼らのステータスは

 

もやし Lv1

HP2

MP11

 

しす"り Lv1

HP22

MP5

 

く"んは Lv1

HP30

MP0

 

と何故か一方通行だけ体力がゴミだった

 

「どうだ潤子ちゃん、これが妖精の国だぞ。凄えメルヘンだろ…まさにここは俺の為にあるような世界だ」

 

「はい、とってもお似合いですわ垣根さん」

 

背中から未元物質の翼を展開しながら決めポーズを取る垣根と笑顔の帆風…そんな彼らのステータスだが

 

ていとく Lv85

HP365

MP653

 

ほかせ" Lv71

HP296

MP468

 

と高ステータスだった

 

「て、おい!なんで二人だけLv高えんだよ!?」

 

「須郷…じゃなかった、オベイロンを脅して高ステータスにしてもらっただけだよ」

 

上条が何故そんなにステータスやLvが高いのかとツッコむと垣根は真顔でオベイロンを脅したと返す、オベイロンは泣いていい

 

「さて、ここで一つ簡単なゲームをしよう」

 

「ゲーム?何をする気だ帝督?」

 

「簡単な事だよ、今から二チームに別れてもらう。そのチームにはどちらが先にカルト魔術師集団を倒すのか対決してもらう」

 

「へぇ〜面白そうだにゃーん、垣根にしてはまともね」

 

垣根がこれから二チームに別れてどちらがこのゲームの序盤のボス カルト魔術師集団を倒すか競争しようと提案する、それを聞いて麦野は珍しく垣根がまともな提案をしたと頷く

 

「当麻とミコっちゃん、みさきちがAチーム、軍覇とむぎのん、アー君がBチームだ。じゃあ頑張ってくれ」

 

「?わたくし達は参加しないのですか?」

 

「まあな、何せ俺はネットの友達と一緒にパーティ組もうて頼まれてるからな。潤子ちゃんも一緒に行くだろ?」

 

「はい!垣根さんが行くならわたくしも御一緒いたしますわ!」

 

Aチームは上条と美琴、食蜂。Bチームは削板と麦野、一方通行と垣根が告げる。垣根と帆風は垣根のネット友達とパーティを組むので参加しない

 

「お〜い!ていとくん!早く来いよ!」

 

「ていとくん、早く早く〜!」

 

「お、噂をすればなんとやらだな。俺の友達が呼びに来たみてえだ」

 

「ご友人の方ですか、どんな方なのか気になり……」

 

背後から垣根を呼ぶ声が聞こえ潤子は背後を振り向く、垣根の友人はどんな人物なのかと興味を持って振り向いたのだが…その人物達を見て潤子は固まった

 

「お、その子が今日一緒にパーティ組む女の子か?俺はキリト。よろしくな」

 

「私はアスナていうの、よろしくね」

 

「………サイン頂けますか?」

 

黒い服を着た少年と青色の長い髪の少女が帆風に朗らかに笑う、帆風は二人の名前を聞いてとっさに色紙とサインペンを取り出しサインが欲しいとねだってしまった

 

「えぇ…?いや俺らは別に有名人じやないんだが…」

 

「いえいえ!何を言っているんですか!?超有名人ですよ!それとアニメ第3期お疲れ様でした!4期も期待してます!」

 

「あはは……4期があったとしたら俺は殆ど廃人状態なんだけどな」

 

「そして私とアリスちゃんの正妻戦争が始まるんだよね、3期は出番が少なかったから頑張るよ!」

 

「……とあるも4期があるといいな」

 

謙遜するキリトと興奮する帆風、4期こそ活躍するぞと息巻くアスナに対し垣根は4期来ないかな〜と溜息を吐きながら呟く。4期が来ないと垣根帝督(原作)の活躍が見れないからだ

 

「さ、早く行こうぜていとくん。クライン達も待ってるぜ」

 

「そうだよ、今日は皆で闇神ベクタを皆でフルボッコにするんだから」

 

「そうだな、ユージーンやユウキ、ベルクーリ団長、カーディナル、アドミニストレータ、ユージオ達にも声かけた?全員であいつの心折ろうぜ」

 

「わぁ、絶対ベクタさん殺す気満々ですね。まあ止めませんけど」

 

そう言って垣根達は仲間達が待つ場所へと向かって行った、その後もうパーティと言うより軍団と言った方が適切な程の大人数で闇神ベクタことガブリエル・ミラーをガチでフルボッコにして殺しては蘇らせて殺すの繰り返しをするのだがどうでもいい事だろう。ガブリエルに慈悲はない

 

「……いいな、俺もキリトさんとパーティ組みたかったな…」

 

「私もアスナさんと話したかったな…」

 

「ほら〜そんな事言わない☆折角同じチームにはなんだから他の男と女の事を考えちゃダメなんだゾ☆」

 

「……俺もキリトさンみてェなカッコいいヒーローになりてェ」

 

「私はアスナよりもシノンの方が好きだにゃーん。あの悲しい過去と向き合うシノンは涙なしでは語れないのよね」

 

「俺はキリトよりもクラインの方が好きだな!キリトも根性あるがクラインの漢らしさが俺は大好きだぞ!」

 

上条と美琴が自分達も行きたかったと不満そうに呟き食蜂がそんな事言わないと二人に抱きつく、麦野と削板は自分の好きなキャラクターについて呟き始め一方通行は尊敬の眼差しでキリトを見ていた

 

「さて…じゃあ俺達も頑張るとしますか」

 

「やるからには根性を出し尽くすぜ!」

 

「とあるのキャラクター人気ナンバーワンの美琴先生の実力を見せつけてやるわ」

 

「ハッ……確かに幻想収束では負けちまったが…人気投票ではお前が上だとは言ェそれが勝敗を決するとは限らねェンだよ!」

 

「ふふふ、人気第七位の実力を見せてあげるわぁ。私達の人気力を舐めないで欲しいんだゾ☆」

 

「は、言うじゃねえか食蜂。人気投票だけが全てじゃねえて教えてやるよ」

 

上条達と一方通行達が目線をぶつけ合いパチパチと火花を散らす、これは負けられない戦いだ。彼らにとってこのALOはゲームであってゲームではなくなった。絶対に勝ってやると六人は心に誓ったのだ

 

「さあ行くぞ美琴、操祈」

 

「ええ、頑張るわよ!」

 

「偶には私も本気力を出すんだゾ」

 

上条達は一方通行達から背を向けて一歩前に歩く、その時彼らは吐き気がして口元を押さえ咳き込む…そして掌を見るとその手には血が付いていた

 

「「「え……?えぇぇ!?ナンデ!?」」」

 

三人が急いでステータスを確認すると何故か三人毒状態になっていた。それを見た麦野が汚物を見る目で三人を見つめる

 

「はぁ……等々ヤり過ぎて性病に全員なったのかにゃーん」

 

「おい!毒を性病扱いするなよ!てか俺はまだ童貞だ!」

 

「私だって一度もシてないのよ!これは性病なんかじゃないわ!」

 

「そうよぉ!処女力全開の私がヤった訳ないでしょ!」

 

「……いや食蜂は見た目からしてビッチに見ェるだろ」

 

「「「黙れ貧弱ロリコンもやし」」」

 

「」

 

麦野が毒を性病扱いしてキレる童貞と処女達。一方通行が鼻で笑う様に食蜂は処女に見えないと笑うが上条達に罵倒され黙り込む

 

「くそ…何でスタート時点でいきなり毒状態なんだよ…このゲームバグってんじゃねえか…だぁー!不幸だーーー!」

 

「ハッ…これは俺らの勝ちで決まりだなァ…行くぜむぎのん、削板」

 

不幸だーーー!と叫ぶ上条を尻目に一方通行は笑いながら彼らから背を向け一足早くカルト魔術師集団の所へ行こうとする。そしてその途中で一方通行は通行人と肩をぶつけてしまう

 

「おっ…悪りィな」

 

そして一方通行のHPがゼロになってしまい一方通行は死んでしまった、そして一方通行の姿は消えそこには一つの棺桶が出現していた

 

「いやなンでだァァァァ!!?」

 

「……もやしだから仕方ねェにゃーん」

 

名前がもやしだと体力ももやしになるらしい、早く教会で蘇生しないと一方通行は役に立たない

 

「おお、一方通行よ。死んでしまうとは情けないにゃーん」

 

「待ってろ一方通行!すぐ蘇らせてやるからな!」

 

「おィ!俺を教会まで連れてけよ削板ァ!」

 

麦野がこれくらいで死ぬとかダサっと笑い、削板はダッシュする。一方通行は教会に自分を連れて行けと叫ぶが馬鹿には聞こえない

 

「さて……ちょくら私は行ってくるにゃーん」

 

「ちょっと待てよむぎのん!助けてくれませンかねェェ!?」

 

「まあ、落ち着くにゃーん。蘇生したくても金が少ねえからな…だからモンスターを倒して金を稼いでくるんだよ」

 

「そこには欲望に取り憑かれたモンスター(人間)しかいねェよ!」

 

そう行って麦野が入って行ったのはカジノだった、彼女遊ぶ気満々である。一方通行は誰も自分を助けてくれないのかと頭を抱える(棺桶状態でどうやって頭を抱えるのかは疑問だが)

 

「やっほー、もしかして困ってる?もし良かったらこの情報屋に頼ってみない?」

 

「む?」

 

全力ダッシュしていた削板は軽く街の中を5周くらい周り一方通行を助ける方法を探していた。そんな彼に声をかける少女が…その名は

 

「私はカプ厨の心理定規。どんな情報でもお金さえ出せば教えてあげるわよ」

 

「「「いや確かに中の人は同じだけども!」」」

 

心理定規は某SAOの鼠の情報屋の真似をしていた。確かに声は同じなので違和感はない、それにツッコむ上条達

 

「おお!教えてくれるのか!なら教えてくれ!どうやったら一方通行は蘇るんだ!?」

 

「…そうね、昔死者すら蘇らせる蘇りの石という秘宝があったの…でもその秘宝は現在はここから東に行った所にある悪魔要塞 バーチカンを収める邪天将軍アーックアが持っているとされているわ」

 

「…つまりそのアーックアを倒せば一方通行は助けられるんだな!」

 

「いやそンな御大層なアイテムじゃなくてもいィンだよ!」

 

「無理よ、貴方のLvではアーックアには勝てないわ」

 

「やってみなきゃ分かんねえだろ!」

 

「そう…決意は固いのね……ならこれを持って行きなさい」

 

心理定規は蘇りの石なら死者すら蘇らせると呟き削板が悪魔要塞バーチカンに向かおうとする、そんな削板に心理定規は笑いながらあるアイテムを授ける

 

「これはユグドラシルの葉。例え死んでもこれを使えば一回だけ蘇る事が出来るわ」

 

「それだァァァァ!それを使って俺を蘇えらせろ!」

 

一方通行はユグドラシルの葉を使って自分を蘇らせろと叫ぶ、だが削板は貰ったユグドラシルの葉を今食べ始める

 

「おう!ありがたく使わせてもらうぜ!」

 

「食べンなァァァァ!!せめてアーックア戦で使えェェェ!」

 

「気をつけなさい、それとアーックアの弱点は頭よ」

 

「違ゥ!アーックアよりも削板の頭の悪さの方が弱点だァ!」

 

削板はユグドラシルの葉を食べ終わるとそのまま悪魔要塞バーチカンへとダッシュする、一方通行は役に立たないパーティのメンバーに頭を抱える

 

「……そっちも大変なんだな」

 

「お前らも人の事言えンのか?」

 

上条達が一方通行に歩み寄る、彼等はどうやれば今の状況を解決できるか思考していた。そして上条はいい案が浮かんだように一方通行に話しかける

 

「手を組まないか一方通行」

 

「あン?何言い出すンだよ」

 

「教会に行けば俺らの毒の治療もお前の蘇生も出来る。だかここは一時共闘しようぜ」

 

「……確かにあの馬鹿共を待つよりはいィかもなァ…だが何するきだァ?俺は動けねえしお前らも動けねえだろ?」

 

「は、任せろ。伊達に補習を自主的にやってる訳じゃねえんだよ」

 

共闘宣言をする上条に一方通行は死体の自分と毒状態の上条達に何が出来ると尋ねる、それに対し上条は不敵に笑い一方通行の棺桶に乗る

 

「な!?何すンだ上条ォ!死者の冒涜か!?」

 

「違えよ、ほら美琴と操祈も乗れ。こうして馬車代わりにすれば歩かずに済む」

 

「成る程!棺桶を馬車代わりにするのね!」

 

「でも馬がいないと進まないんじゃないかしらぁ?」

 

「大丈夫だ、そこら辺も対策済みだ」

 

上条は棺桶を乗り物の代わりにして教会へ行こうと企む。だが肝心の馬がいない…そこで彼は縄を取り出しカウボーイの様に縄を振り回す

 

「何やってンだ?こんな街中に馬がいるわけ…」

 

「別に馬じゃなくてもいい…だろ!」

 

「ぐぇ!?」

 

「「心理定規さんの首に縄を引っ掛けた!?」」

 

上条が馬の代わりに選んだのは心理定規、彼女の首に縄を引っ掛けて締め付ける。彼女は自分の首元に手を伸ばし縄を外そうとするが外せない

 

「ほら動くんだ!俺達を教会まで運んでくれ!」

 

「流石先輩!私達に出来ない事をやってくれる!」

 

「そこにシビれる!惚れちゃうぅ!大好き!」

 

「……済まねェな心理定規」

 

「ぐぇぐぇがぁ!(絶対に殺す!特に上条!)」

 

グイグイと縄を引っ張る上条にそんな上条を見て叫ぶ美琴と食蜂、一方通行は棺桶の状態で心理定規に謝るが彼女の眼は怒りに燃えていた…そして心理定規は苦しみながらも一歩一歩前へと進んでいく

 

「これで教会まで行けるだろ?」

 

「取り敢えずお前は一回原作のヒーローに謝ってこい」

 

ドヤ顔で言う上条に一回原作の上条に謝ってこいと呟く一方通行…そこで美琴と食蜂はある事に気付く

 

「……あれ?教会の方向と違わない?」

 

「……と言うか心なしか街から出ようとしてる気が…」

 

そう心理定規は町の外(・・・)へ出ようとしていたのだ。そして彼女は街から出てフィールド内を上条達を連れて彷徨い始める…しかも心なしかモンスターが出そうな場所へ向かっている

 

「おい!?教会はここじゃないですのことよ心理定規さん!?」

 

「…怒ってンだよ、お前らがこんな事するから」

 

「そんな訳ねえだろ!心理定規さんがそんな事する訳ないだろ!」

 

「その信頼感は何処から来るンだよ」

 

そう上条と一方通行が言い合っているとモンスターが正面に現れる

 

【ホッピングゾンビが二体現れた!】

 

「何この敵!?ポゴスティックに乗ってる!?」

 

「斬新力高過ぎねぇ」

 

「ヤベェ…俺達武器とか買ってない…」

 

「おいどォすんだよ!いきなりゲームオーバーとか笑ェねえぞ!」

 

ホッピングしながら現れたゾンビ達に戸惑う四人、武器も何もない彼等には対抗手段がなく逃げる事しか出来ない

 

「おい!心理定規さん!早く動け!動くんだ!」

 

「…………はっ」

 

【返事がない、ただの心理定規の様だ】

 

「ほら見ろ!ブチギレてンじゃねェか!」

 

「違うて言ってんだろ!心理定規さんはそんな奴じゃねえ!」

 

「お前は心理定規の何を知ってンだよ!」

 

早く動いて自分達を逃がしてくれと叫ぶ上条だが心理定規は薄ら笑いを浮かべたまま地面に座り込んだまま動こうとしない

 

「くそ何か道具はねえのか!?」

 

「くそ!こンなバカップルを信じた俺が馬鹿だった!」

 

「!?先輩!道具が一つあったはこれを使って!」

 

「!?本当か!?よし使わせてもらうぜ!」

 

美琴がたった一つだけ道具があると叫び上条はその道具を装備する事にする、その道具とは……

 

「は!ありがたく使わせて貰うぜ心理定規さん(・・・・・・)!」

 

「………え?」

 

「………ェ?」

 

その武器の名前は心理定規、呆気に取られる心理定規と一方通行を無視して上条はホッピングゾンビ達に心理定規を振るう

 

【会心の一撃!ホッピングゾンビ達に186のダメージ!】

 

「ぐぇぇ!?」

 

「メジャーハートォォォ!!!」

 

心理定規の一撃は凄まじく、ゾンビ達を一撃で倒してしまった程だ。一方通行は心理定規の名前を叫ぶ

 

「ふぅ…助かったぜ」

 

「これも心理定規さんのお陰ね…」

 

「彼女には感謝しないとねぇ」

 

「だな…心理定規さん。いきなり乱暴な扱いしてすみませんでした……」

 

上条達は心理定規に感謝し感謝の意を伝えようと上条の右手で掴んだままの彼女を見る。そして心理定規は白目を向いたまま泡を吹き出しピクリとも動いていなかった

 

【返事がない、ただの屍の様だ】

 

「「「………」」」

 

「……オイ、まさか死」

 

「違う、寿命がジャストフィットしただけだ。なあ美琴、操祈」

 

「そうね、タイミングが重なっただけよ。ねぇ操祈」

 

「そうよぉ、タイミング力が重なっただけなんだゾ」

 

「嘘つけ!テメェら全員警備員に自首しろ!」

 

「煩えな、お前も屍なんだから喋んじゃねえよ」

 

 

その頃、各地では心理定規の死に気づいた者達がいた

 

「!?……心理定規の気が……消えた?」

 

く"んは Lv79

HP498

MP103

 

「いやどンなけ強くなってンだよ削板ァ!」

 

削板はしんぴのよろいとドラゴンキラーを装備し邪天将軍アーックアの頭に剣を突きつけていた。どうやら彼も心理定規の死に気づいた様だ

 

「ふ……心理定規はもうこの世にはいないのである。そしてここには蘇りの石もないのである」

 

「何!?」

 

「蘇りの石はもう既に堕天王 フィーアンマ様が……」

 

そう言って力尽きるアーックア、もう既にカルト魔術師集団よりも強そうなボスを倒しているのだから彼がカルト魔術師集団を殲滅した方が早いのでは?とツッコんではいけない

 

 

「!?潤子ちゃん…」

 

「ええ…心理定規さんが…」

 

二人は闇神ベクタを十字架に磔にし火炙りにしながらパーティ全員で石を投げたり、足を切り落としたりとヒャッハーしていた最中に心理定規の死に気づいたのかハッとした顔になる

 

「ははは…!お前達はいずれヴァルゴにその首を切り取られる!そう無様に死んだ情報屋の女の様になぁ!」

 

「情報屋の女…だと?それは心理定規ちゃんの事かぁぁぁぁ!!!」

 

「…許しません!貴方だけは絶対に許しません!」

 

死んだ心理定規を嘲笑うベクタことガブリエル、そんな彼に激怒した垣根と帆風は十字架から彼を外しそこら辺にあったコインランドリーのドラム式洗濯機にガブリエルを放り込む

 

「うおおお!連コイン連コイン!!」

 

「ついでにレモン汁もサービスいたしますわ!」

 

「ぐわぁぁぁぁ!!?目がぁぁぁぁ!目がぁぁぁぁ!」

 

※ドラム式洗濯機に人を入れてはいけません

 

そしてドラム式洗濯機が破裂し水飛沫が二人にかかる、そしてドラム式洗濯機があった場所からヒースクリフが現れる

 

「君達が中に入れたのはこの「綺麗なガブリエル」かな?それとも「汚いガブリエル」かな?もしくは…この「普通のガブリエル」かな?」

 

『いえ、どれもいらないです』

 

「そうか、ならば殺す!」

 

「「「ぎゃあああああ!!!」」」

 

きこりの泉の様に綺麗なガブリエルと汚いガブリエルを両手に持つヒースクリフ、だが全員が要らないと言うとヒースクリフは手に持った片手剣でガブリエル三人をぶち殺し垣根達に襲いかかってくる

 

「は!あの時以来だなヒースクリフぅ!」

 

「そうだな、あの「ラーメン争奪戦」以来の戦いだ」

 

「いやなんですかその戦い!?」

 

 

場面は変わって上条チーム、上条は棺桶をソリ代わりにし心理定規の屍をオールの様に扱いカルト魔術師集団が潜む闇の祭壇へと向かっていく

 

「あれが闇の祭壇か…いよいよボス戦だな」

 

「心理定規さんの犠牲は無駄にしないわぁ」

 

「行くわよ、待ってなさい魔術師!」

 

そうして闇の祭壇内部へと入って行く上条達、そして内部の奥に回復の泉があるのを発見した

 

「お!回復の泉だ!これで毒も蘇生も出来るぞ!幸福だ!」

 

そう言って棺桶を滑らせながら回復の泉の中に入る四人、そして上条と美琴、食蜂は毒状態が治りHPが全回復し一方通行は蘇生した

 

「漸くかァ、これで共闘は終わりだな」

 

「そうだな、ここからは敵同士だ。お互い頑張ろうぜ」

 

そう言って上条達は一方通行から離れて行こうとする、そんな上条の肩を一方通行が掴む

 

「待てよ、心理定規は置ィてけ」

 

「は?何言ってるんだ一方通行?心理定規は俺達の武器…ゴホンゴホン!仲間なんだ、俺達が最後まで心理定規の面倒を見る」

 

「とンだ死者の冒涜だな、死者を武器にしようなンざ人の心がねェのかオマエ」

 

「原作で一万人近く殺した奴に言われたくないわね」

 

そう言って一方通行は心理定規の上半身を、上条は心理定規の下半身を掴みながら心理定規を奪い合う。そんな醜い争いに美琴が心理定規の右手を、食蜂が左手を掴む事で加わる

 

「悪いけど心理定規は私の武器よ、こればっかりは操祈にも先輩にも譲れない」

 

「心理定規は私のなんだゾ!」

 

「俺のだってんだろ!俺が最初に手に入れた武器なんだから!」

 

「武器扱いしたなオマエら!心理定規を物扱いするオマエらに心理定規の事は任せられねェ!」

 

心理定規と言う名の武器を奪い合う四人、そんな醜い四人の前に忍び寄る影達が…

 

【カルト魔術師集団が現れた!】

 

「やるんだよステイル!かおり!こいつらを邪神ローラ様に捧げるんだよ!」

 

「「仰せのままに、教主様〜」」

 

何処か見たことがある魔術師三人を筆頭に沢山の魔術師集団が未だ争っている上条達に襲いかかる…そして彼らはある決断をした

 

「分かったよ、一旦落ち着こう。俺は心理定規の下半身、一方通行は上半身、美琴が右手と右足で食蜂が左手と左足でいいな?」

 

「チッ…仕方ねェな。それで手を打ってやる」

 

「やったわ、二刀流よ、キリトさんみたいね」

 

「わぁい!」

 

「「「えええー!?分解したぁぁぁ!!?」」」

 

教主達は上条達が心理定規の身体を分解した事に驚く、上条は下半身を、一方通行は上半身を、美琴は右手と右足を、食蜂は左手と左足を武器にしてカルト魔術師集団へと己が武器を振るう。それだけでカルト魔術師集団は吹き飛ばされポリゴンの塊になって霧散して行く

 

「いやっほぉぉぉぉ!!!無双ゲームだコレ!たのすぅぅいぃぃぃ!!!」

 

「オラオラどォしたンだよ魔術師?!もっとかかって来やがれェ!」

 

「斬る斬る斬る斬る斬る!斬って斬って斬って!あははは!なんか楽しくなって来た!砂鉄の剣よりも使いやすいわねこれ!」

 

「ゲームの中なら私の身体能力の低さはなくなる!つまり私の無双力ターンて事よねぇ!ここから先はずっと私の時間よぉぉ!!」

 

心理定規の身体を武器に無双しまくるアホ共、人間の身体を振り回して血塗れになる姿は狂ってるとしか言いようがない。こいつらがラスボスと言われても違和感はない

 

「はわわ…ま、不味いんだよ…逃げるが勝ちかも!」

 

「「お、お待ちを教主様ぁ〜!」」

 

危機を察して逃げる教主達、だがこのバーサーカ達が逃すわけがなく追いかける四人…そんな圧倒的な力を振るう上条達の前にさらに圧倒的な力を持つ存在が現れる

 

「ギガデイン」

 

その一言と共に無数の雷撃が迸りカルト魔術師達がこんがり焼肉になた後ポリゴンとなりて霧散する。上条達は何者かと電撃が放たれた場所を見るとそこには麦野が武器を持って立っていた

 

「よお待たせたな一方通行」

 

「むぎのん…その武器は……」

 

「ああ、こいつか(・・・・)?ちょっとカジノで勝ちまくってな。買ってきたんだよ」

 

彼女の手にはある武器があった。その武器は金髪に緑の目、緑の服を着た王様の様な人物だった…その名も

 

「この妖精王オベイロンをな」

 

「「「いや何武器になってるんすかオベイロン閣下ぁ!?」」」

 

「てか妖精王を買うてどォ言う事だ!?」

 

そうこの世界 ALOの支配者 妖精王オベイロンだ、それを買ってきた麦野は容赦なくオベイロンを振るい雷撃を放つ

 

「グボアァァァ!!ゔ、ヴァカな!?この僕が!?この世界の支配者である僕が!?あり得ない!これは夢だ!夢なんだ!ゼロにする!ゼロにする!ゼロにするぅぅぅぅ!!」

 

「オイ落ち着けよ閣下!色々と混ざってンぞ!」

 

血・よだれ・鼻水・汗・涙・小便を垂れ流すオベイロン。彼は泣き叫びながらこれは夢だと現実逃避を行い一方通行はそれを見て落ち着けと叫んだ

 

「ちょっと妖精王とか反則じゃない!卑怯よ卑怯!」

 

「正々堂々普通の武器で戦いなさいよぉ!」

 

「落ち着け!相手は二人だ!俺達の心理定規なら勝て……」

 

上条が落ち着けと叫んだその時、天井が何らかの攻撃によって破壊され天井から岩が降り注ぐ。それを心理定規の体の一部やオベイロンで防御する五人…そしてその天井には削板が浮かんでいた

 

「堕天王を倒したのでこいつを装備して助けに来たぞ一方通行!麦野!」

 

「「「嘘おおお!!?」」」

 

彼が手に持っていたのは堕天王 フィーアンマ…つまり魔王的なラスボスキャラである。それを振るうと暗黒のエネルギーが放出されカルト魔術師達を消滅させていく

 

「これで三対三だな!そして武器の性能なら俺達の方が上だぜェ!」

 

「俺達の心理定規を舐めるな!いいぜ一方通行!お前が俺らに勝てると思ってんなら!まずはその幻想をブチ殺す!」

 

「さあ私のオベイロンの前に跪くにゃーん!」

 

「チッ……!オベイロンとか武器じゃないじゃない!そんなの反則よ!」

 

「いやお前達の武器も武器じゃないだろ」

 

「それもそうねぇ〜」

 

互いの武器をぶつけ合う超能力者達、もう彼らはカルト魔術師集団の討伐など忘れていた。ただ目の前の敵を倒す。それだけしか考えていなかった

 

 

「ひぃーん!何でアルバイトしてただけなのにこうなるのかな!?」

 

「だから嫌だと言ったんです!VRなどと言う怪しげな機械を被ってやるバイトなど!」

 

「仕方ないだろう!時給920円と高かったんだから!」

 

「割に合いませんよ!超能力者相手にそんな金額は端金も同然です!」

 

実はこの魔術師集団の教主と側近はインデックス達がバイトで役をやっていた。インデックス達は半泣きでこんな危険な職場で働いたのを後悔する

 

「「「あー!!!不幸だぁーーー!!」」」

 

 

その頃の現実世界にて窓のないビルに垣根と帆風、現実世界でここまでやって来たキリト達がオフ会を開いていた

 

「えー、ではこれからガブリエル討伐のオフ会を始めたいと思います!」

 

『おー!』

 

「主催はこの人!アレイスター=クロウリーです!」

 

「どうも茅場君と合同で研究をしているアレイスターだ。今日は皆楽しんでくれたまえ…では……乾杯」

 

『乾杯!!!』

 

上条達の死闘の事など誰も知らず全員楽しそうに日付が変わるまでオフ会は続いたと言う

 

 

(……出る出番を失ってしまったス)

 

(誉望さんとVRデート……///)

 

なお彼らはALOでずっと出番をスタンバイしてました

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




SAOのクロスオーバーというより銀魂じゃね?と思ってしまった作者です。作者はジャンプが好きですから。因みにSAOで一番好きなキャラはリズベットとリルピリンです。自分はゆゆゆの犬吠埼風部長役の内山夕実さんや縦ロールちゃん役の津田美波さん、リズベット役の高垣彩陽さんみたいな男の子みたいな声が出せる女性声優さんが好きです

勝手にクロスオーバーみたいな事をしてどうもすみませんでした、咄嗟に思い浮かんだのがこれしかなくて…そしてゴーグル君と猟虎ちゃんは単なるオチです。さて次回は久し振りにカップリング回にしようかと考えてます。垣根君の右手の竜が新たな能力な目覚め新たな被害者が!?

次回もお楽しみに!


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(カップリング)は世界を救う、いや本当にガチで

今回はカップリング特集、マイナーなあのキャラから初登場のあのキャラからレギュラーキャラまで…とにかくカップリング大特集のギャグ編なのです!

そして今回と前回のテーマはずばり「とある以外とのコラボ」。てな訳で今回は第2弾、最後の少しだけコラボします。因みに前回のSAOと今回コラボするのは出版社繋がりです。SAOも面白いですけど今回コラボするのも面白いんですよねー…アニメ化してないけど(ボソッ)でもかなり人気があるので皆さんご存知だと思いますよ

今回はやや暴走気味…それでもオッケーならどうぞお読みください!



「最近カップリングが足りないぃぃぃ!」

 

「いきなりどうしましたの垣根さん?」

 

垣根帝督(カプ厨)は叫んだ、この世界に(カップリング)が足りないと。最近の彼にに足りないものは(カップリング)だ。最近ヤケに魔術師の事件に関わったりただ遊ぶだけでカップリング写真を撮れていない。これはカプ厨として唯識事態である。故に彼は大覇星祭は明日だと言うのにしょうもない計画を立てたのだ

 

「その名もカップリング大作戦!学園都市中のカップル達から恋人未満親友以上の奴らのカップリングを撮りまくってやる!」

 

「……垣根さんは平常運転ですわね」

 

そう言って帆風は溜息を吐く、だが彼女は彼を止めたりしない。自分が言っても垣根は止まらないだろう。何故なら彼は垣根帝督なのだから

 

「でも都合よくカップリング写真が撮れるとは思えませんが…どうなさるおつもりで?」

 

「簡単さ、こいつを使わせてもらう」

 

「?こいつ?」

 

帆風が都合よくカップル達がイチャイチャするものかと呟くと垣根はニヤリと笑う、そして未元物質の義手である右手を崩し始め右肩から天使の姿をした竜を呼び出す

 

「あ、ドラちゃん」

 

「その略し方はやめなさい。某猫型ロボットを連想しちゃうから…こいつは知ってると思うが竜王の顎だ。だがこいつは他の竜王の顎とは違う能力(・・)を備えているのさ」

 

「違う…能力?」

 

ドラちゃんこと天使型竜王には幻想殺し以外の能力もあると垣根がドヤ顔で言うと帆風は首を傾げる

 

「そう、こいつは俺の自分だけの現実(パーソナルリアリティ)に影響を受け新たな能力を会得した…その名も『純愛空間(ラブファントム)』!」

 

ーーーキュラアアァァァ〜!ーーー

 

「ダサいですわね」

 

純愛空間という新能力の名前を聞いて帆風はシンプルに、単純にダサいなと思った。だが垣根と竜は満足げだった

 

「こいつの羽にカップリング対象を当てればどんな奴もカップリングを見せてくれる。例えそれがギルガメッシュだろうがゴジラだろうが関係ねえ。俺の竜王の顎…いやセルピヌスは世界を(カップリング)で染め上げるぞ」

 

ーーーキュラアアァァァ〜!ーーー

 

能力は至ってシンプル、羽を当てた対象二人にカップリング現象を起こさせる。ただそれだけである。だがその能力の効果は何者にも抗えず、当たってしまえば怪獣王だろうがサーヴァントだろうが黄金バットだろうがなろう系主人公だろうが大満開友奈だろうがウルトラマンだろうが仮面ライダーだろうがコロンゾンだろうがエイワスだろうが関係ない。皆平等にカップリングを発生させる。それがこの能力なのだ

 

「これが純愛空間(ラブファントム)、ここはもう潤子ちゃんが知る世界じゃねえんだよ!」

 

ーーーキュラアアァァァ〜!ーーー

 

「……もうツッコミませんよ」

 

三対の翼を展開してドヤ顔をする垣根とセルピヌス、帆風はツッコむことをやめた

 

「さて、まずは実験台を探すか……お、いたいた」

 

垣根が発見したのはベンチに座っている誉望と猟虎。まるで猛禽類が獲物を見つけた様な顔になった垣根を見て帆風は被害者になるであろう誉望と猟虎に手を合わせた

 

「さあ行くぜ、セルピヌス!羽を飛ばすだ!」

 

ーーーキュラアアァァァ〜!ーーー

 

「ドラちゃんはポ○モンですか?」

 

某トレーナーの様にセルピヌスに命令する垣根、セルピヌスは自分の羽を二枚誉望と猟虎に飛ばし二人の眉間に羽をが突き刺さる

 

「「痛ぁぁぁぁぁ!!!?」」

 

「……これなら何が起きるのでしょうか」

 

眉間に羽が突き刺さった事により痛みに悶える二人、そんな二人を哀れな目で見つめる帆風…だがピタッと二人の動きが止まり誉望と猟虎は肩と肩をくっつけ合う

 

「もう俺らが結婚して60年も経つスね、猟虎」

 

「そうですわね万化」

 

「……俺、猟虎と結婚出来て幸せっスよ」

 

「………わたくしもですわ」

 

「……お年寄りの夫婦?」

 

「いいねいいね!これはアレだ!結婚して幸せな日々が続いて老人になっても未だにその愛と情熱が燃えているて事ですね!?萌えるわぁ!!」

 

ーーーキュラアアァァァ〜♪ーーー

 

まるで老夫婦の様な会話をし始める誉望と猟虎、そののほほんとした幸せオーラに垣根とセルピヌスは身を悶えさせる、そして二人の眉間に突き刺さった羽は音を立てて崩れ始め正気に戻った二人はハッとした顔になる

 

「え?!なんスか今のは!?」

 

「は、はわわ…わたくしと誉望さんがけ、けけけけけけけ結婚…?それに名前呼び…はう」

 

「猟虎おおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!?」

 

猟虎はテンパりすぎて頭から煙を出して気絶する、どうやら二人が先程の様にのほほんとした光景を見せるのはまだ早い様だ

 

「さて!肩慣らしはこれくらいにして次のターゲットを探すぞ!」

 

ーーーキュラアアァァァ〜!ーーー

 

「……はぁ」

 

そう言ってウキウキと次の獲物を探し始める垣根とセルピヌス、帆風はこれから先程の様な目に合う被害者達を哀れんだ

 

 

次に垣根がターゲットに選んだのはこの二人だ

 

「やっぱり牛乳は、ムサシノ牛乳だな!なあミイ」

 

「そうですよね、ムサシノ牛乳は世界一の美味しさですから」

 

「見つけ〜た♪」

 

ーーーキュラアアァァァ〜♪ーーー

 

「固法先輩、黒妻さん逃げてください」

 

黒子の先輩風紀委員である固法美偉(このりみい)とビックスパイダーというスキルアウトのリーダーである黒妻綿流(くろづまわたる)がムサシノ牛乳を歩きながら飲んでいた。そんな二人見つけ目をピカリーンと輝かせる垣根とセルピヌス。帆風は前もって合掌した

 

「ほれ!恋の矢(ラブアロー)発射!」

 

「もうネーミングセンスには突っ込みませんわ」

 

セルピヌスから放たれた恋の矢が二人の尻に突き刺さった

 

「「ああああぁぁぁぁぁ!!!」」

 

「うわぁ……」

 

凄惨な光景に思わず引き顔になる帆風…尻を抑えていた固法と黒妻だが暫くすると叫び声が止まり黒妻が固法から背を向け始める

 

「悪いなミイ、俺はこの馬鹿げた抗争を止めてくる」

 

「待って先輩!行っちゃダメ!あそこに行ったら先輩は……!」

 

「ああ、死ぬだろうな…だがよ、これ以上誰かを泣かせるわけにはいかねえんだ…分かってくれミイ」

 

「そんな……先輩」

 

(……あ、これ戦争映画でよくあるパターンですわ)

 

(成る程…そういう流れか!いいね!最高だね!)

 

まるで戦争物の恋物語の様な展開に垣根は目を輝かせて写真を撮りまくる、だが固法と黒妻のカップリングはまだ続く

 

「……もし生きて帰れたら俺は……いやこれ以上は何も言わねえ」

 

「先輩………」

 

「じゃあなミイ、必ず帰ってくる」

 

「先輩……先輩!!!」

 

(どうなるんですの…黒妻さんは死んでしまうのですか?それとも…)

 

(ヤベェ…続きが気になる!)

 

そう言って黒妻は遠くへと走り去ってしまう、そんな黒妻を見て固法は涙をこぼす。周囲の人達は「え?何が起こってるのコレ?」と不思議な目を向ける。帆風も急展開に胸をドキドキさせる

 

「……抗争が終わりを告げて2年、あの人は私の前に現れなかった…」

 

「……先輩、早く帰って来ないと私おばあちゃんになっちゃいますよ」

 

固法は青空を見上げながらそう呟く、帆風と垣根がごくっと唾を飲み込む。もしや黒妻は死んでしまったのかと…だがそんな彼女の背後にその人物はやって来た

 

「へぇ、おばあちゃんのミイか。それも見て見たい気がするな」

 

「!?………お帰り、なさい…先輩」

 

「ああ、ただいまミイ」

 

(うおおおお!!感動の再会シーンやでコレ!)

 

(…胸がキュンてなりましたわ)

 

最愛の人が生きて帰って来てくれたことを喜び抱きつく固法、それを見て涙を流す垣根とセルピヌス。帆風の胸はときめいていた…だが敢えて言おう、ここは公衆の場である。そして羽の効果がなくなれば…どうなるか御察しの通りである

 

「「…………///」」

 

(はいその羞恥の顔も頂きましたー!)

 

「ミ、ミイ?今のはきっと能力者の所為なんだ!おのれ能力者!」

 

「え、ええそうですね!おのれ能力者!」

 

能力が切れたことにより自分達が今までどんな事を公衆の面々でやっていたか理解し顔を赤くする二人。二人は大慌てで言い訳をするがふと気づく、黒妻のスキルアウトのメンバーである蛇谷が二人を呆然と見ていることに

 

「……」

 

「へ、へへへ蛇谷君!?ち、違うのよさっきのは…!」

 

「そ、そうだぞ蛇谷!さっきのはだな…!」

 

「……お二人ともお幸せに!」

 

「「いや話を聞いて!?」」

 

蛇谷はヤケにいい笑顔で幸せになってくれと親指を立てる、そして笑顔のまま二人の前から走り去ろうとし二人は慌てて追いかける。それを見届けた垣根はにっこり笑う

 

「さて次行こうか」

 

 

次のターゲットは公園にいたとある二人だ

 

「ほらマーク、もっといい声で啼けよ」

 

「ちょ!?ボスやめてくれませんか!?」

 

(……ドSがいますわ)

 

レイヴィニア=バードウェイが部下である恐らく30代前半の男性 マーク=スペースを四つん這いにさせ彼の尻に足を乗せていた。彼女の顔は嗜虐的で溢れ出るドSオーラを纏っていた

 

「実はレイヴィニアはマークさんみたいなおじ様系が好きでな。ああやってマークさんを虐めることで興奮してるんだぜ」

 

「うわぁ…ドSでおじさん好きとか…」

 

「そんなレイヴィニア達のカップリングを見せてもらおうじゃねえか」

 

垣根はそう言ってセルピヌスの羽根を発射する準備をする、だが流石はレイヴィニア。セルピヌスが羽を放つ前に垣根達の気配に気づく

 

「!?お兄ちゃ…垣根か、何をしようとしてるのか分からないが…逃げるか」

 

「ですね!」

 

「あ、逃げましたわ」

 

羽を放った直後にレイヴィニアとマークは一目散にその場から逃げ出す、普通ならば羽は二人に当たらずカップリングならず、となるであろう…だがそんな常識が通用しないのが垣根帝督である

 

「甘いぜ二人共、逃げても無駄だ。その羽は過去のお前らに当たる」

 

「「いやぁぁぁぁ!!?」」

 

「え!?さっきまでお二人がいた場所に羽が向かったらいつの間にか逃げた筈のお二人が戻って来て命中していますわ!?」

 

何を言っているか分からないだろうから説明しよう、羽は二人が先程までいた空閑に命中すると逃げた筈の二人がいきなり現れ二人の鼻に鼻フックの様に羽が突き刺さったのだ

 

「俺の羽からは決して逃れらねえ。逃げたとしても因果律を超え過去のお前らに羽を当てる。過去は未来、未来は過去。過去に当たれば未来にも当たる。ただそれだけだ」

 

「チート過ぎません!?」

 

つまりレイヴィニアとマークが少し前までいた空間に羽を突き刺すことにより因果律に作用し、過去の二人に羽を突き刺しそれを未来にまで影響を与え二人の未来を変える。それがこの羽の能力の一つだ。そしてマークは先程と同じ様に四つん這いになりレイヴィニアがマークの尻を踏みつける

 

「ほらほら!今どんな気持ちだ!?幼女に虐げられて興奮しているのかこの変態め!」

 

(…これはレイヴィニアさんのドSを満たす為のカップリング…?)

 

(いや違う…!マークさんを見ろ!)

 

靴をグリグリとマークの尻に食い込ませるレイヴィニア、そんな暴君の様な彼女にマークはムクッと起き上がって上からレイヴィニアを見下ろす

 

「なんだその目は?調教が足りんようだな、立場を分から「黙れ」!?」

 

レイヴィニアの言葉を遮ってマークがレイヴィニアを押し倒す、当然の部下の反抗に驚くレイヴィニアにマークは口を開く

 

「大人を舐めてると後悔しますよ?」

 

「……ッ!…ハッ!やって見ろよマーク。所詮お前など私の足元にも及ばないのだぞ?」

 

「……そうですか」

 

「え?おい何もしないのか?」

 

レイヴィニアはマークの低い声に怯えながらもやれるものならやって見ろと挑発する、マークはそんなレイヴィニアを黙って見つめた後彼女に何もせずに立ち上がり彼女は何もしないのかと尋ねる。それを聞いてマークが薄く笑う

 

「おや?何かして欲しかったのですか?」

 

「!?…は、腑抜けが…私に逆らえんだけだろうが」

 

「…そろそろ強がるのはお辞めになった方がいいですよボス」

 

「つ、強がってなど…「嘘ですね」!?」

 

強がるレイヴィニアにマークはまるで子供を見る目で彼女を見下ろす、その視線にドキッとするレイヴィニアの心情を知ってか知らずかマークは口を開く

 

「貴方はずっとこうなる事を期待していたのでしょう?私がいつか貴方に乱暴をする事を期待して」

 

「な、何を言う!?私はそんな事考えて…」

 

「では先程の顔はなんです?まるでおあずけをくらった子犬みたいな表情でしたよ」

 

「くぅ……」

 

自分に虐められるのを期待していたのではと言うマークに顔を若干赤くして狼狽するレイヴィニア、マークはそんな彼女の顎をクイとあげる

 

「そうそう、その顔の方が可愛らしいですよボス」

 

「!?な、何を言っているんだお前は//」

 

「素直になったらどうですボス?私に虐めてくださいと言えば虐めてあげますよ?」

 

「わ、私は虐めて欲しくなんかぁ…」

 

「はぁ……残念です」

 

「ぁ……」

 

マークはレイヴィニアの青い瞳を見つめたまま彼女自身が虐めて欲しいと言えばその願いを叶えると笑う、だがレイヴィニアが言葉を濁しているとマークは首を振って彼女の前から立ち去ろうとする…それを見た彼女は暫く恥とプライドどちらを取るか考え…マークの服の袖を掴む

 

「……ださい」

 

「……大きな声で言ってくださいボス」

 

「……い、虐めて、ください……///」

 

「ふ、とんだドMですねボスは…」

 

(キタコレ!これは主従逆転パターンや!ドSかと思わせて実はツンデレドM!表ではマークさんにキツく当たるドSお嬢様!そして裏では夜な夜なマークさんに首輪をつけられて四つん這いで散歩をさせられてるレイヴィニアを想像してしまった!)

 

(……アレ?何故わたくしは何故こんなにも興奮を…?)

 

顔を真っ赤に染め上げ虐めてくださいと呟くレイヴィニア、それを見てマークが微笑む…そんな光景を写真に撮る垣根にそれを見てときめく帆風…そして恋の矢の効果が切れレイヴィニアとマークは正気に戻り自分が何を言ったか理解したレイヴィニアは怒りと羞恥で染めマークの尻をぶっ叩く

 

「何をさせるか貴様ぁ!」

 

「すみませーん!」

 

吹き飛ばされるマーク、垣根と帆風はレイヴィニアの怒りがこちらに向く前に走り去って逃げた

 

「全くお兄ちゃ…垣根め!次会ったら覚えていろ!…さて、随分勝手な事を言ってくれたなぁマーク」

 

「ひ、ひぃ!?(私はあんなセリフを言うつもりはなかったんですよ!?全部垣根さんの所為です!)」

 

「覚悟はいいな、なら死ね」

 

「お、お助けぇぇぇ!!!」

 

レイヴィニアは杖をマークに向けマークは自らの死を覚悟する…だがいつまで経っても攻撃が来ないので不思議に思ってマークは目を開けてみる。レイヴィニアは顔を赤くしながらマークかれ目を逸らしていた

 

「な、なあ……い、虐めてくれないのか…?//」

 

「え、えぇ……」

 

赤い顔で虐めないの?と涙目で呟くレイヴィニア、そんなドSお嬢様の反応にマークは困惑した

 

 

お次のターゲットは上条と美琴、食蜂…ではなくそんな彼らをストーキングしているある二人

 

「おー、いい表情ですねー」

 

「お姉様のあんな顔は中々見れませんねー、とミサカは写真を撮ります」

 

ストーカップルであるスネークことミサカ17600号とアステカの魔術師エツァリ。このストーカップルのカップリングを見ようと垣根は羽根を発射させようとする

 

「さて…今まで恋の矢Ⅰと恋の矢Ⅱを見せた…これから見せるのは恋の矢IIIだ」

 

「IIIもあるのですね…で、羽根を放たないのですか?」

 

「いやもう放ったぞ」

 

「え?」

 

帆風は慌ててエツァリ達を見るが彼らに羽は突き刺さっていない…どう言うことかと帆風が首を捻ねった直後二人の首元に羽が突き刺さる

 

「「あぅ!?」」

 

「え!?いきなり刺さった!?」

 

「俺があいつらに羽を放ったのは現代じゃねえ、10秒先の未来…つまり今だ」

 

「未来攻撃も出来るんですの!?」

 

つまりそれは回避不可の攻撃、未来に攻撃を仕掛けるのだからそれを防ぐ手段はない

 

「もうそれチートてレベルじゃないですわよ…なろうでもないです」

 

「安心しろ、セルピヌスが未来攻撃や過去への干渉が出来るのはカップリングだけだ。つまりカップリングを起こす事しか出来ない攻撃て事だ」

 

「無駄に凄い能力なのに……それを戦闘に活かそうとしてくださいよ」

 

なおこの攻撃はカップリングを起こす事しか出来ない。そしてエツァリはいつの間にか花束を両手に持っておりそれを17600号に向ける

 

「好きです、結婚を前提に付き合ってください」

 

「……本気で言っているのですか?とミサカは問いかけます」

 

「ええ、自分は貴方を愛しています」

 

「……ミサカはクローンなのですよ?とミサカは薄く笑います」

 

「それがどうしたんですか?自分は貴方が好きなんです」

 

「…それはお姉様の代わり…としてですか?とミサカは皮肉げに笑います」

 

そう言って17600号は皮肉げに笑う、自分は御坂美琴のクローンなのだ。13万ほどで作れる動く肉塊、エツァリは自分を美琴の代わりとしてしか見ていないと皮肉げに呟くが

 

「いいえ、違います。自分は御坂さんよりも、貴方が好きなんです」

 

「……無理して嘘をつかなくてもいいんですよ、とミサカは悲しげな「嘘ではありません」!?」

 

その強い言葉に反応してエツァリの顔を見る17600号、彼の顔は真剣そのものだった。彼は口を開いて言葉を綴る

 

「御坂さんの代わりなんかじゃない、自分は貴方と言う一人の『人間』が好きなんです。クローンとかそんなの関係ない。自分は貴方が好きなんです」

 

「……貴方は馬鹿なのですか?とミサカは問いかけます」

 

「馬鹿でも構いません、貴方と一緒に居られるなら」

 

「……訂正します、貴方は大馬鹿野郎です。とミサカは涙を流しながら貴方に抱きつきます」

 

そう言って彼女は涙を流しながらエツァリに抱きつく、エツァリも17600号を抱きしめる…そんな二人を優しく包み込むように彼らの周囲には雪が降っていた

 

「……ヤバイ、尊すぎて泣けてきた」

 

「…何で雪が降っているのか気になりますが…涙が止まりませんわ」

 

ーーーキュラアアァァァ〜!(泣)ーーー

 

その二人の声に垣根と帆風、全アステカが泣いた。そして効果が切れると17600号は無表情な顔を真っ赤に染め急いでエツァリから離れる

 

「す、すすすすみません!何故か分かりませんがこの様な失礼をしてしまい申し訳ありません!とミサカは土下座をします!」

 

「いえ、平気ですよ17600号さん」

 

「な、何故師匠は平気な顔をしているのですか?とミサカは顔を赤くしながら問いかけます」

 

土下座をする17600号ににこやかなスマイルを向けるエツァリ、彼女は何故平気なのかと問いかけるとエツァリは笑って答える

 

「だって本当に事ですからね、貴方が好きと言うことは」

 

「え?今なんと…とミサカは…」

 

「自分は貴方が好きです、そう言ったのですよ」

 

「………えええええ!!?」

 

(急展開キタコレ!)

 

(…どうしましょう、何故か興奮しているわたくしがいますわ)

 

いきなりの告白に慌てた顔(無表情)をする17600号、エツァリは彼女の両手を握って彼女のハイライトのない瞳を見つめる

 

「もしよければ…自分と付き合ってくれませんか?」

 

「え?あ……え?えぅと、その…ええっと…」

 

「……ダメ、ですか?」

 

「いえこちらこそ喜んで!不束者ですがミサカでよければ!とミサカは混乱しながらOKを出します!」

 

「……どうやら俺はまた一つ、この世界に(カップリング)を生み出したらしいな」

 

「垣根さん……」

 

「ん?どうした潤子ちゃん?」

 

垣根が自分の蒔いた種のおかげでカップルが出来たと誇らしげな顔をしている中、帆風は真剣な顔を垣根へと向け口を開く

 

「カップリングて……いいですね」

 

「………ふ、ようこそこちら側の世界へ」

 

ーーーキュラアアァァァ〜♪ーーー

 

帆風はカプ厨に目覚めた、垣根は新たな同士に手を差し伸べる。それを祝福するかの様にセルピヌスはコーラスの様な咆哮を響かせた

 

 

「さてお次のターゲットは…!」

 

「あちらの方達です!」

 

ーーーキュラアアァァァ〜!ーーー

 

もう完全にノリノリな垣根と帆風、セルピヌスが次のターゲットに選んだのは少し小太りな少年と常盤台の制服を着たウェーブのかかった栗毛の髪の少女だ

 

「はい!今回のターゲットは常盤台の一年生 湾内絹保(わんないきぬほ)ちゃんと馬場芳郎(ばばよしお)君のカップルです!」

 

「わぁ!見事に釣り合わないお二人ですわね!でもそこがいいと思います!」

 

ーーーキュラアアァァァ〜!ーーー

 

マックスでハイテンションな二人と一匹が自分達のデートを監視しているとは知らずに笑いながら歩く馬場と湾内、そんな二人を垣根達とは別に後を追う二人の少女がいた

 

「湾内さん、ファイトですわ」

 

「中々お似合いの二人ですわ」

 

友達のデートを心配してついて来た泡浮と婚后がいた。そんな状況にも関わらず垣根は関係なしとばかりにセルピヌスの羽を放つ…そしてなんやかんやで羽は二人の背中に命中した

 

「「痛っ」」

 

「わ〜いつの間にか刺さってました〜でももう驚きませんよ?」

 

「これはなんかそう、まあ〜パーとしてグニャとして…あれだ…グワッ!とまるみをつけて刺したんだよ」

 

それは説明できない力だった。あやふやな力でこう羽をグワーンと飛ばし訳の分からない力で突き刺す、そんな感じの力だった。そして効果が現れたのか馬場が何処かへと走り去り湾内が近くの電信柱の前に立つ。そんな彼女を取り囲む様に六人ほどの不良が登場する

 

「へへへ、ネーチャン可愛いねー。俺らと三輪車でドライブしない?」

 

「こ、困ります…わたくしはこれから用事が…」

 

「まあまあ、お堅い事を言わず俺らと行こうぜ!」

 

(これは過去の再現?成る程二人の馴れ初めを再現してるのか!)

 

(成る程…と言うかあの不良さん達は何処から現れたのですか?)

 

湾内は男達に怯え男達は無理矢理湾内を連れて行こうとする…そんな不良達の前に馬場が現れた

 

「待てい!」

 

「あぁん?なんだこの豚は?」

 

「豚ではない……ポークと呼べ!」

 

「いやポークは豚だろ!」

 

「まあ細かい事はいい…彼女を離さないと酷い目に遭うぞ」

 

「あ?舐めとんのかこの豚は?ワイら怒らせたらどうなるか教えたらぁ!」

 

決めポーズを取る馬場に不良達は何故か持っていた鉄パイプを握りしめながら馬場へと走る、そんな不良達を見て馬場が不敵に笑う

 

「奥義 ひき逃げアタック」

 

「「「「「「ぎゃぁぁぁぁ!?」」」」」」

 

いつの間にか馬場は大型トラックに乗り込んでそのトラックで不良達を踏み潰した。紙の様にペラペラになった不良達は突風に飛ばされていく。そしてトラックから降りた馬場は湾内に近づく

 

「大丈夫ですかお嬢さん?」

 

「え、ええ…助けていただきありがとうございます…あのお名前は……」

 

「名乗る程の者ではありません…単なる通りすがりの豚こと馬場芳郎です」

 

顔を赤くしながらも馬場の名前を訪ねる湾内、彼は名乗るほどの者ではないといいながらも名前をちゃっかりと名乗る

 

「……は!わたくし達の最初の出会いを何故か分かりませんが再現してしまいましたわ!?」

 

「おや本当だ……あの時の不良も何故かここに来ていたし…今のは一体?」

 

「何が何だか分かりませんが…婚后さん!写真は撮りましたか?」

 

「完璧ですわ、湾内さんの恥じらい顔はちゃんとカメラに収めましたわ」

 

何が起こったのかと周囲を見渡す湾内と馬場、そして湾内の写真が撮れてホクホク顔の泡浮と婚后、垣根と帆風はそれを見届けた後さらなるカップリングを求めその場を去った

 

 

次に辿り着いたのは窓のないビル、次のターゲットは学園都市の統括理事長 アレイスター=クロウリーだ

 

「お次は学園都市の一番のお偉いさんですか!でもどうやって窓のないビルに入るおつもりなんですか?」

 

「入る必要はない、生きているのなら、神様だってカップリングにして見せる」

 

垣根はそう言うとセルピヌスに羽を発射させる、その羽は物理的質量を持たず窓のないビルの外壁をすり抜け中へと入っていく

 

「はぁ、子育てとは大変なのだな。赤ん坊のおむつの履き替えやら食事やら…ローズは大変だったと今更ながら理解した」

 

その頃アレイスターはリリスの子育てを頑張っていた、リリスが復活してから何年も経ち何故かずっと赤ん坊のままのリリスの世話をしているわけだが…この変態オヤジ、未だに子育てになれないのである

 

「はぁ…こんな時にローズがいてくれれば…ローズはいい女だった。料理は美味いし私の様な変人でも受け入れてくれたし…それに夜の相手も上手かったな。私の尻の穴に棒をねじ込んでSMプレイを嗜ん…」

 

そう卑猥な独り言を呟いていたアレイスターの尻の穴にセルピヌスの羽が奥まで突き刺さった

 

「そうこんな感じぃぃぃぃ!!!?」

 

アレイスターは激しい痛みのせいで大きく飛び跳ね尻を両手で抑えながら床に転がる

 

「尻が…!尻が…!二つに割れてしまうぅぅ!!」

 

『あら、それは元からじゃない』

 

「それはそうだ!……え?」

 

尻が二つに割れると叫ぶアレイスターに何者かが彼に声をかけアレイスターが固まる、その声には聞き覚えがあった。急いで背後を振り向くとそこにはとある女性が立っていた…その女性を見てアレイスターは口を開く

 

「………ローズ?」

 

自分の妻の名前を呟く、その一言を聞いたその女性…ローズはにこりと夫に微笑むと花弁が散る様に光となって消えた。それはまるでアレイスターを元気づける様に彼は思った。先程の光景は夢か幻か…アレイスターにはどちらでもよかった

 

「……ふ、さてこれくらいでへこたれる訳にはいかんな」

 

『お父さんお父さん、早くご飯ご飯〜と代筆中』

 

「はいはい、すぐ行くから待っていろ」

 

そう彼は呟いて娘に食事を届ける為に立ち上がる、そしてもう一度ローズがいた場所を見つめ微笑んだ後リリスへの元へと向かった

 

 

「ふ、先程放った恋の矢Ⅳは生と死すら覆す。カップリング対象が死んでる?なら逆に考えるんだ。蘇らせればいい…てな。まあ一時的なもんで大した能力じゃねえがな」

 

「いや死者蘇生の能力とか前代未聞ですからね?」

 

帆風はどうしてこの人はそんな凄い力をカップリングというしょうもない事に使うんだろうと疑問に思った。それだけの力があれば世界征服とか余裕そうなのにと心の中で思うが逆にこういう馬鹿が持っていた方が世界が平和になるのかも知れないと帆風は納得した

 

「さて恋の矢の最後の技 恋の矢Ⅴの能力を教えてやろう」

 

「最後の能力…どんな能力ですの?」

 

「ふ、聞いて驚け!世界線を越える能力だ!」

 

「……つまり?」

 

「ざっくり言うと並行世界、別世界、異次元…ありとあらゆる世界線を越えその世界に行ける能力て事さ」

 

「うわチートですね」

 

最後の恋の矢の能力はまさかの世界移動能力と聞き帆風が目を丸くする。というかもはやカップリング関係なしである

 

「これで別世界に行ってその世界でカップリング写真が撮れる、て訳さ」

 

「流石垣根さんですわ」

 

いな、こんな御大層な力もカップリングにしか使わないのがこの馬鹿である。二人はそう言うとセルピヌスから羽根を毟り取り自分の首元に突き刺す…それと同時にこの世界から二人が消えた

 

 

この世界には勇者がいる、彼女達はバーテックスと呼ばれる怪物からこの世界を守っている。その勇者の一人でもある土居球子(どいたまこ)伊予島杏(いよじまあんず)はバーテックスの上位個体 スコーピオン・バーテックスの尻尾の針に突き刺されようとしていた

 

「くっそ……旋刃盤が…!」

 

「タマっち先輩……!」

 

「安心しろあんず…!タマが絶対に守ってみせるからな!」

 

球子は己が武器である旋刃盤を盾にしてスコーピオン・バーテックスの針を防ぐ…だが徐々に亀裂が入りもう破壊される瞬前だった。二人は死を覚悟して目を瞑る…だがいつまで立っても痛みは襲ってこない…疑問に思って二人が目を開ける…そして二人が目にした光景は……

 

「いやぁ〜いい海老が手に入ったぺ」

 

「海老フライにするぺ」

 

「「ええ!?バーテックスを揚げてる!?」」

 

垣根と帆風がスコーピオン・バーテックスを巨大な鍋で揚げていた。海老フライならぬバーテックスフライである。それを見て驚く球子と杏

 

「ちょ…何してるんだ!?てか誰!?」

 

「ていとくんです」

 

「帆風潤子と申します…あ、よかったら食べますか?」

 

「……あ、これ美味しいよタマっち先輩!」

 

「何食べてるんだあんず!?……あ、本当だ。美味いなこれ。こりゃタマらん」

 

バーテックスフライは意外としゃりしゃりしてて美味しかった by土居球子&伊予島杏

 

「お〜い無事か珠子、杏……てバーテックスが揚げられている!?」

 

「うわぁ〜、美味しそうだね!」

 

「食べちゃダメよ高嶋さん」

 

いつの間にか彼女らの仲間の勇者 乃木若葉(のぎわかば)逹もやって来た。若葉は自分達の敵が揚げ物にされている事に驚き高嶋友奈(たかしまゆうな)は美味しそうとバーテックスフライを眺め郡千景(こおりちかげ)は食べちゃダメと彼女の肩を持つ

 

「どうだ、お前らもこれ食わねえか?美味えぞ」

 

「む…美味いな意外と…そうかバーテックスは揚げ物にすれば美味しくなるのか…て、お前逹は誰だ?」

 

「わたくし逹並行世界から来ました。わたくしは帆風潤子、こちらの方が垣根帝督と申します」

 

「へぇ…潤子ちゃんとていとくんかぁ。私は友奈。よろしくね」

 

「……郡千景よ、本当に美味しいわね」

 

「え?そんなに美味しい?そっか…それなら」

 

もぐもぐと戦闘中なのに揚げ物を食べ始める勇者逹、それを聞いて嬉しく思った垣根はハチマキを巻いて屋台を設置する

 

「ここで俺はうどん屋を開く!」

 

「「「「「揚げ物屋じゃなくて!?」」」」」

 

「俺に常識は通じねえ…それにお客さんも来たしな」

 

「あ、本当です。オープン初日からこんなにもお客さんが来るなんて…流石垣根さんですわ」

 

「え?お客さん…?」

 

友奈がこんな所にお客さんが来るのかな?と思い背後を見ると後ろから無数の星屑が襲来していた

 

「「「「「いやお客さんじゃなくて敵!」」」」」

 

「でもあいつら金持ってなさそうだな…無銭飲食はお断りだ」

 

「ではわたくしがお引き取りして来ますね」

 

敵じゃんと叫ぶ勇者逹に対し垣根は客じゃないのかとそっぽを向く、そして帆風が星屑逹を追い返す為にトコトコと星屑逹の元へと歩き始める

 

「ダメだ!バーテックス逹に近づ……」

 

神の力(ガブリエル)

 

若葉は帆風を止めようとしたその直後、帆風はその身にガブリエルを宿し天体制御で夜へと変え、空高くに地平線の果てまで覆う巨大な魔法陣を展開する

 

「「「「「……へ?」」」」」

 

「『神戮』発動ですわ」

 

直後空から星屑逹に向けて火の矢の豪雨が降り注いだ。一発一発が星屑逹を容易く屠る威力を込められておりその数億を遥かに超える。その一撃により四国へ攻め入っていた星屑及びバーテックス逹は全滅した。ついでに世界各地にいた星屑逹も殲滅しておいた

 

「ふぅ…無銭飲食はダメ絶対、ですよね皆さん」

 

「「「「「ア、ハイ」」」」」

 

勇者逹は思った、「あ、この人デタラメだ」と。垣根はバーテックスフライをうどんの中に入れバーテックスうどんを作っていた

 

「あ、そうだ。写真撮っていい?今時百合カップルはなかなか見なくてさ…そこの百合カップルさん」

 

「た、タマ逹はカップルなんかじゃ…」

 

「カップルじゃなくて姉妹です」

 

「あんず!?」

 

(わぁ、アンちゃん積極的〜!)

 

(私も高嶋さんを性的な意味で食べたい)

 

(おい)

 

垣根が百合カップルの写真を撮ってもいいかと尋ねる、それに対し球子はカップルじゃないと否定するが杏は真顔でカップルではなく姉妹ですと笑い球子は赤面した

 

「いいね、最高だね!あ〜赤面顔とか癒されるんじゃ〜」

 

「撮るな撮るな!てかお前らは何をしに来たんだ!?」

 

「カップリングを求めてここまで来ました」

 

そうドヤ顔でパシャパシャと百合カップル逹の写真を携帯に収める垣根、そんな時帆風が持っていた携帯が鳴り響き帆風は電話に出る

 

「はい、こちらうどん屋です…あ、はいご注文承りました」

 

「ん?出前の依頼か?」

 

「はい、天の神という方と神樹様という方がバーテックスフライを食べたいと注文が入りました」

 

「「「「「何考えてるの神様逹!?」」」」」

 

天の神(ラスボス)神樹様(ロリコン)もバーテックスフライが食べたいのかと勇者逹はツッコミを入れる、神の考える事は人間には分からないものである

 

「んじゃ、出前行って来まーす」

 

「わたくしも出前に行ってまいりますわ」

 

垣根はそう言って三対の翼を展開し高天原にいる天の神の所へ、帆風は神樹様の所へダッシュする

 

「……結局あいつら何者だったんだ?」

 

球子の問いには誰も答えなかった

 

 

その後バーテックスフライを食べた天の神はその美味しさに舌鼓を打ち、自分でも最高の揚げ物を作る為に毎日スコーピオン・バーテックスを揚げては試食しているらしい。その所為で食あたりを起こし天に召された

 

神樹様はバーテックスフライを食べたと同時にその美味しさのあまりに散華してしまい、その散華と共に放出された力で世界は元の世界へと再生させ枯れ果て崩壊したその体は石油となった

 

その後の勇者逹はうどんを食べて余生を過ごした、そしてタマっち先輩とあんずんは姉妹の様に幸せに暮らしました。そして死ぬ時も一緒に仲良く天に召されましたとさ、めでたしめでたし

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところでいつになったら元の世界に帰れるのですか?」

 

「……帰り方が分からないて言ったらどうする潤子ちゃん」

 

「……垣根さんの馬鹿」

 

その後二人はちゃんと帰れました

 

 

 

 

 

 

 

 

 




のわゆアニメ化しねえかなー、というわけで今回のコラボは勇者であるシリーズの「乃木若葉は勇者である」でした。作者は妄想で時々「上条さんがもしのわゆやわすゆの世界にいたらどうフラグを立てるのかなー」て想像しちゃうんですよ。絶対上条さんのことだから死亡キャラに生存フラグと恋愛フラグを立てるぞ(確信)

ていとくんの竜王の顎の新能力はあの天使型のドラゴンの原作での能力が羽を突き刺す事による洗脳をカップリング発生能力に変えるだけの力に置き換えただけです。因みにセルピヌスという名前はメソアメリカの神話に登場する竜天使 カンヘルの創造主から

最初はもはや準レギュラーのゴーグル君と猟虎ちゃん、次に固法先輩と黒妻さん、そしてレイヴァニアちゃんとマークさん、まさかの湾内さんと馬場君。まさかのローズさんと再会(?)したアレイスターにコラボでタマあん(ただし要素はほぼゼロ)…もはやカオス

次回は大覇星祭なので頑張って書くぞー!次回もお楽しみに!


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運動会、それは戦である(大嘘)

さて今回から「大覇星祭」編のスタートでございます!最初はほぼギャグですが…ちゃんとシリアスの為の布石もあります。そして今まで登場してきたキャラ&初登場キャラが大参戦

まだ一話目だからあんまり面白くないかもだけど是非楽しんでくださいね!後履歴書書くのとか面接練習て難しい…色々将来が不安になってきた


大覇星祭、学園都市に所属する全学校が合同で行う超大規模な体育祭。能力者が己が力を振るう繰り広げる大運動なのでわざわざ外部から運動会を取材しに来る。上条逹のとある学校から美琴逹の常盤台中学、インデックスが通う柵川中学まで参戦する学園都市の一大イベントの一つで夜にはナイトパレードもある

 

九月十九日はその大覇星祭の初日だ、上条刀夜と上条詩菜はとある夫婦と一緒に学園都市に訪れていた

 

「いやぁ、いつ来ても混雑してますねここは…あ、旅掛さんは学園都市に来るのは初めてでしたか?」

 

「いや…一応来たことがあるんだが…大覇星祭は仕事の都合で来れなくてな…今回が初めてだ」

 

「あらあら、そうなんですか」

 

「そうなのよ詩菜さん、私の旦那たら一回も美琴ちゃんの活躍を見てないのよ」

 

御坂美鈴(みさかみすず)御坂旅掛(みさかたびかけ)とそう仲良さげに話す上条夫妻、実は刀夜は旅掛と、詩菜は美鈴と交流があり前から四人で学園都市に来られる様に話し合っていたのだ

 

「しかし刀夜さんとこの息子さんと俺の美琴が付き合ってるとはねぇ…世界は案外狭いな」

 

「ですね、しかも当麻の奴美琴ちゃん以外との女の子とも付き合ってて…いやはや息子ながら節操のない奴です」

 

「でもその娘て美琴ちゃんの親友兼彼女なんでしょ?なら別にいいと思うんだけどねー」

 

「あらやだ、美鈴さんは心が広いんですね」

 

「それに彼女が二人とか中々の修羅場になりそうですしね!」

 

四人はそう軽く会話をしながら大覇星祭の開会式が行われる会場の一つ サッカースタジアムまで辿り着き、四人は空いている席を探す…だが何処もかしこも満席で空いている席が何処にもない

 

「見事に空いてないわね…」

 

「あ、あそこ空いてますよ」

 

詩菜がある部分だけ四人分のスペースがある事に気付き四人はそこに向かう、そこにはジャージを着た老婆やら法衣を着た老人、女の子の様な子供、病弱そうな女やスーツを着たオッさん等の個性が強そうな人達が周りにいた

 

「あの〜ここの席で座ってもいいんですかね?」

 

「ああ、構わんとも!ささ、早く座れ!」

 

「ありがとうございますお婆さん」

 

刀夜が老婆に座ってもいいかと尋ねると老婆は笑って頷く、詩菜が微笑んで老婆に感謝すると四人は席に着く。そろそろ大覇星祭が始まるので四人ともワクワクと始まるのを待っていると刀夜に誰かが話しかける

 

「む、お前逹はあの時の…」

 

「あ、確か貴方はあの時海でお会いしたフィアンマさん」

 

「あら貴方もここに来ていたんですか?」

 

「まあな、マタイの奴がどうしても見たいと言うもので護衛としてな」

 

その人物の名前はフィアンマ、フィアンマはとある人物の護衛で学園都市にやって来たと呟くと刀夜逹が座っている席の上の席…法衣を着た老人の隣の席に座る

 

「すまんなフィアンマ、神の右席総出で護衛してくれて」

 

「まあお前はローマ教皇(・・・・・)なのだからな、これくらいの護衛は当然だ」

 

「へえ、そこのお爺ちゃんはローマ教皇なのね……て、え?ローマ教皇?」

 

美鈴が戸惑った顔で老人…マタイ=リースを見る、そう彼こそはローマ正教のトップ ローマ教皇であるマタイ=リースその人である

 

「……ろ、ローマ教皇だったんですか?」

 

「そう固くなるな、私はそうやってかしこまられることが苦手でな。バチカンの子供達の様にマタイと呼び捨てにしても構わない」

 

「……流石の俺でもそこまで親しげには言えねえな」

 

ニコニコと笑うマタイにどう反応すればいいのか分からない上条夫妻と御坂夫妻。そんな気まずい空気の中に隣の老婆が話しかけてきた

 

「ま、気楽に接するのが一番だ若いの。私もイギリスの女王(・・・・・・・)だが部下からドロップキックをよく食らうしな」

 

「「「「イギリスの女王!?」」」」

 

「あ、因みに私はフランスの影の支配者です」

 

「「「「影の支配者!?」」」」

 

「私はロシア成教の総大主教だ」

 

「「「「そんなに若いのに!?」」」」

 

「あ、因みに俺はアメリカの大統領ね。まあこんなかじゃあインパクトに欠けるがな」

 

「「「「大統領!?」」」」

 

老婆…エリザードは自分はイギリスの女王だと正体を明かすと四人は先程と同じように驚く、更には病弱な女…傾国の女や少年…クランス=R=ツァールスキー、オッさん…ロベルト=カッツェがそれぞれ偉い人と知ると自分達はとんでもない人物逹が居合せる場所に座ってしまったのだと理解した

 

「ど、どうします刀夜さん?こんな偉い人逹と一緒にいたら競技どころの騒ぎじゃありませんよ?」

 

「何かヘマしたら不敬罪で処刑されそうね…」

 

「……なんて場所に座っちまったんだ俺達は…」

 

「ま、まだ間に合う筈です!今からでも他の場所に…」

 

四人は慌てて他の場所へ移動しようとするが…もう遅かった

 

「おいババア!学園都市から招待されたのに何ジャージ着てんだ!公式の場だぞ!?」

 

「お母様、飲み物買ってきたし」

 

「学園都市にもこんなに面白い雑誌があるなんて…あ、今週の私の星座占い一位ね」

 

「ウィリアム、ほら一緒に座りませんか?フフフ…」

 

「こ、怖いのである……」

 

「ははは、アックアは愛されてますねー」

 

「……愛が重た過ぎんのよ」

 

「ねえアウレオルス。インデックスちゃん逹も競技に出るみたい」

 

「ほう、ならば応援しないといけないな」

 

「ねえサーシャちゃん、この超機動少女(マジカルパワード)カナミンの衣装を着てくれないかしらぁ?」

 

「第一の問いですがそんなもの公衆の面前で着れる訳がないでしょう!この変態!」

 

エリザードの娘であるイギリス王女三姉妹や公式の場でジャージは辞めろと叫ぶ騎士団長、目に光がないウィリアンに抱きつかれ困った顔のアックアにそれを見て和かに笑うテッラと溜息を吐くヴェント、競技が始まるのを楽しみに待つアウレオルスと姫神、カナミンの服を持ってサーシャに迫るワシリーサ…と沢山の人物逹が四人の近くの席に座ってしまい逃げたくても逃げれなくなった

 

「……逃げるタイミングを逃しちゃいましたね刀夜さん」

 

「……そうだね母さん」

 

「……なあ今世界に足りないものでなんだか分かるか?」

 

「……救い、じゃないかしら」

 

ローマ教皇、フランスの影の支配者、アメリカ大統領、ロシア成教のトップ、イギリスの王家勢揃いといった各国のトップが揃う中で一般人の刀夜・詩菜・美鈴・旅掛は震える事しか出来ない。もし少しでも無礼をしたら命がなくなるんじゃね?と怯えながら考える

 

「あ〜やっぱりジャージは楽でいいな」

 

「だから早く着替えろってんだろクソババア!」

 

「アックア、例え相手が病んでいても…その愛には向き合うのだぞ」

 

「………分かっているのである」

 

「もうクランスちゃんでもいいわ!この服を着てくれないかしら!?」

 

「それは女物だろう!?私は男だ!」

 

「あ〜ビールサイコー!ローズラインがいないと静かだからいいわ〜」

 

「ゴホゴホ……ゲホッ!?ヤベェ吐血した。輸血輸血」

 

そんな上条夫妻と御坂夫妻の気持ちを知らずにエリザード逹は楽しげに話し合っていた

 

 

 

所変わって上条逹が通う学校 とある高校にて上条はクラスメイト全員に演説を行っていた

 

「おいテメェら!俺らは俺の愛しの彼女の美琴と操祈と同じ赤組になれたんだ!つまり!この大覇星祭は何が何でも優勝しなければならない!何故なら勝利の女神(俺の彼女逹)が味方陣営にいるのだから!」

 

「「「へぇ……(け、自慢かよ…死ね上条)」」」

 

「もし優勝できたら!お前らに焼肉を奢ってやる!」

 

「「「へい!分かりました!必ずや我らが勝利をもぎ取りましょう上条さん!」」」

 

「声が小さい!いいえお前ら!返事はYESかはいだ!異論は認める!」

 

「「「イエッサー!!」」」

 

「だれがイエッサーと呼べと言った!お前らの耳は節穴か!罰としてお前らには焼肉食べ放題の刑だ!」

 

「「「パネェす!一生ついていきます上条さん!」」」

 

上条は自分の彼女逹と同じ赤組になれた喜びからか士気を高める為演説する、だがクラスメイト逹はリア充である上条に反感を持っている為言うことを聞かない…だが上条が焼肉を奢ると酒と掌を返しやる気に満ち溢れる。そのせいでいつもよりおかしくなっているクラスメイト逹と上条…それを見て吹寄が頭を抱える

 

「……はぁ、士気が上がっていいことなのだけれど……はぁ」

 

「フッキー元気だしな、まあこれは流石のボクも流石にドン引きやね」

 

「カミやんは彼女の事になると熱い男だからにゃー」

 

「……まァ士気が高ェのは良い事だろ」

 

「…と言うかこのクラスて地味に凄くない?超能力者の第二位と第三位がいるし…あ、これ勝利フラグね」

 

吹寄は今更ながら馬鹿(上条)アクセロリータ(一方通行)が超能力者である事を思い出した。この二人がいれば絶対勝利確定じゃねと彼女は思った

 

「おい吹寄、オマエ俺の事なンて書いて一方通行て読みやがった?」

 

「……さて、私達も気合い入れて頑張るわよ!」

 

「無視すンなよ、てか吹寄おでこDXになるンじゃねえ」

 

吹寄は一方通行の言葉を無視し彼女は耳に掛けていた髪を完璧な形でオールバックにしてそれをヘアピンで固定する…これが彼女の本気の姿 吹寄おでこDXである

 

「行くぞテメェら!大覇星祭(ジハード)の時は来たりぃ!この大覇星祭(ラグナロク)を無事生き残り勝利を我が手に!」

 

「「「イエッサー!」」」

 

「……もう突っ込まないぜよ」

 

「愛愉ちゃんも見に来るらしいし頑張るで!」

 

「この昨日買った健康グッズの効果を試すときね!」

 

「…コーヒー飲みてェ」

 

とある高校は今日も平常運転である

 

 

「さあ行くわよ操祈、折角先輩と同じ赤組になれたんだから…勝利を狙うわよ」

 

「えぇ、そうね美琴…まあ何かあっても私の改竄力でどうにかなっちゃうんだけどねぇ」

 

「……垣根さんはとある高校の二年生…つまり同じ赤組……これはいい所を見せないといけませんわね」

 

彼氏にいい所を見せる為かメラメラと燃え上がっている美琴と食蜂、帆風も本気モードな為いつもの縦ロールではなく三つ編みで大会に臨むようだ

 

「あの帆風さんのやる気に満ち溢れた姿…初めて見ました」

 

「御坂さんもやる気十分のようですわね…わたくし逹も頑張りますわよ湾内さん、泡浮さん!」

 

「「はい!」」

 

「……ま、わたくしも頑張りますけど…インデックスさん逹が敵で残念ですの」

 

入鹿と婚后逹はやる気十分なのだが黒子はショボンと落ち込んでいた、彼女の親友であるインデックス逹が敵である白組なので残念がっているのだ

 

「まあまあ、敵同士ならお互い激しくぶつかり合っていきましょうよ!自分も頑張りますから」

 

「ピラルクー…そうですわね、頑張りますわ」

 

(((え、何あの魚…二足歩行で話してる)))

 

なおピラルクーも一応常盤台所属である(雄だが)

 

 

柵川中学が集まる場所にて白組であるこの学校は常盤台やとある高校といった強豪校に勝てるかと不安がっていた

 

「いやぁ、そりゃそうだよねぇ…なにせ相手は御坂さん逹がいる常盤台に第一位・第二位・第三位がいる高校でしょ?勝てるわけないじゃん」

 

「でも第七位の削板さんがいる学校は白組で良かったですね」

 

「それに私達もいるから大丈夫だよ佐天さん」

 

「ふ、僕の魔女狩りの王で燃やし尽くしてあげよう」

 

「私の七天七刀の斬れ味…見せてあげます」

 

「ふ、パン食い競争なら負けないかも」

 

佐天はもう負けたやんと落ち込み初春が励ます、風斬やステイル、神裂も自分達がいるから大丈夫だと笑いインデックスはパン食い競争で早くパンを食べたいと涎をこぼす

 

「師匠!私達も頑張りますからね!」

 

「ふふん!成長した私達の力見せてあげますよ」

 

「びっくり過ぎて腰を抜かさないでくたさいね!」

 

「あー、きたいしてるきたいしてるー。がんばるんだぞー(笑)」

 

「「「何ですかそのリアクションは!」」」

 

三馬鹿弟子ことメアリエ、マリーベート、ジェーンがステイルに向けて偉っそうにやけに自信満々で自分達の活躍を期待しておけと告げるが、ステイルは棒読みで頑張れよーと応援し三人はプンスカと怒る

 

「ま、まあこっちには大能力が三人いますしね…柵川中学も強いとは思うんですけど…相手が超能力者だからなぁ…」

 

「諦めきゃダメだよるいこ、主は私達が諦めなければ奇跡を起こしてくれるんだよ!」

 

「そうですよ佐天さん!当たって砕けろです!」

 

「砕けちゃダメなんじゃないかな?」

 

佐天を励ますインデックスと初春、だがステイルは初春のファローにツッコミを入れた

 

 

「ふぁぁ…中々盛り上がってんじゃねえか…面白くなってきたねぇ」

 

とある高校の二年生が集まる場所にて垣根はそう呟いた、彼はニヤニヤと携帯をいじりなから開会式が始まるのを待っていた

 

「エリザードの婆さんやマタイさん逹も招待したから負けられねえしな。大人気ねえが全力で第一位の実力を見せつけてやる」

 

そう彼が呟いた直後だ、アナウンスが鳴り響いた

 

『とある高校の垣根帝督君と常盤台中学の帆風潤子さん、選手宣誓を始めますので学園都市統括理事長 アレイスター=クロウリー様の所までどうかお越し下さい』

 

「お、そろそろ時間か…なら派手にやりますかね」

 

彼はそう言ってアレイスターが立つ朝礼台まで向かう

 

 

「これより選手宣誓を始める、代表者である超能力者 第一位垣根帝督と常盤台の大能力者 帆風潤子は前に来なさい」

 

「はい」

 

「おうよ」

 

アレイスターがそう言うと垣根と帆風は朝礼台へと上がりアレイスターと向き合う、垣根にとってアレイスターは何度も会った事がある相手だが帆風は会うのは初めてだった

 

(この方がアレイスター=クロウリー…科学サイドの元締めにして偉大なる魔術師…初めて見ましたが…只者ではありませんわね)

 

帆風はそう内心で考える、垣根から話は聞いていたが不思議な人物だ。自分では太刀打ちできないのでは?と思う程の強者のオーラが彼から見え隠れしている

 

「では、開会式の各学校の校長逹の話を削って私がここで開会式の挨拶をするわけだが…学園都市の生徒諸君及びわざわざ外からいらしたお客さん逹にまず挨拶の言葉を送ろう」

 

アレイスターはマイクを取りながらそう呟く

 

「私はアレイスター=クロウリー、学園都市の統括理事長だ。初めて見た者も多いだろう。なにせ私は常日頃窓のないビルに住んでいるからな…さて、選手宣誓を始めようか」

 

「はぁい、先生僕達は一生懸命バックダンサーをする事を誓います!」

 

「違いますわ、確かえっと……あぁ、昨日まで別世界にいましたから内容を忘れてしまいましたわ」

 

「……何をやっているんだ君達は」

 

巫山戯る垣根と内容をど忘れした帆風にアレイスターが呆れた顔をする

 

「まあとにかく!皆頑張るぞー!おー!」

 

「投げやりですわね…ではわたくしも……おー!」

 

「……ご来客の皆様誠に申し訳ありません。この馬鹿二人には構わずこれから始まる競技をお楽しみ下さい」

 

投げやりに言葉を言う垣根と帆風をアレイスターは横目で見つつ観客逹に競技を楽しんでくれと笑いかける

 

「ではこれより大覇星祭を始める、生徒の諸君は頑張ってくれたまえ。だが熱中症にならないようにしたまえよ?」

 

アレイスターがそう言うと帆風と垣根は元の場所へと戻る…こうして大覇星祭は始まりを告げたのだ

 

 

午前10時30分、最初の競技はパン食い競争。様々ね中学の生徒逹が沢山集まり競技を始めようとしていた…だが知っての通りパン食い競争では意外と難しい…物干し竿から紐付きの洗濯挟みで人数分のパンが吊るしあるのだが手で掴まずに口でパンを咥え取るのは至難の技だ…だがそれを軽く成し遂げられる人物が柵川中学にはいた

 

「頑張って下さいインデックス!」

 

「負けるなぁぁぁぁぁインデックス!」

 

「ファイトだよインデックス!」

 

インデックスは全力疾走でパンが吊るされている場所まで走る、だが彼女よりも早い女子逹が彼女を追い抜いていく…インデックスは魔術の知識は豊富だが身体能力は然程高くない…だがそれを補う程の力が彼女にはあった

 

「ふぅ、やっと到着かな…さて…狙いよし」

 

先にパンを吊るされている所まで来ていた女子逹だが口で咥え取るのは難しいのだろう…だがインデックスは可愛らしいその口をモンスターの様に大きく開け飛びかかる。それは冷酷無比の一言、まるで獲物に襲いかかる狼そのものだ。彼女は一発でパンへとかじりつきゴールへと向かう

 

『おっと〜凄いぞインデックス選手!一発でパンを咥えた!?だが食べ切るまでゴールへついてもゴールした事にはならない!それに彼女が咥えているのはビックメロンパン!そう簡単には飲み込めなぁぁぁぁい!』

 

そうマイクで叫んだのは大覇星祭の司会役 扶桑彩愛(ふそうあやめ)。彼女は小柄なインデックスが半径30センチもある巨大メロンパンを食べれるのかと叫ぶがインデックスは何の迷いもなくゴールまでトコトコと可愛らしく余裕たっぷりに歩き、ゴールテープ目の前でメロンパンは口に吸い込まれる様に消えた

 

「飲み物なんだよ、パンは」

 

『おおっと!?名言ぽいセリフが出ましたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!インデックス選手余裕の一位だぁぁぁ!』

 

聖母の様な笑みを浮かべパンは飲み物だと笑う、インデックスの活躍によりパン食い競争は見事に柵川中学が一位だった

 

「凄いよインデックス!流石暴食擬似魔神!」

 

「流石インデックスだ!流石暴食擬似魔神!」

 

「私は信じていましたよインデックス!流石イビルジョーです!」

 

「褒めてるの皆?」

 

「「「流石暴飲暴食のインなんとかさん!」」」

 

「……君達は許さないんだよ」

 

「「「ギャァァァス!?」」」

 

風斬とステイル、神裂逹は流石インデックス!と彼女を讃える、インデックスは褒めてるの?とクビを傾げた。そしてインデックスを揶揄う様に三馬鹿弟子達は彼女を馬鹿にするがインデックスはそんな馬鹿共の頭を丸かじりにしメアリエ逹は悲鳴をあげる

 

「でもあのパンを一気飲みしたのは驚きましたね」

 

「ふふん、私は普段は食事量を抑えてるけど食べるときは食べるからね。パンは飲み物なんだよ」

 

「流石イビルジョーさん、パナいです」

 

佐天にドヤ顔をするインデックス、彼女にとってパンなど食べ物ではなく飲み物でしかない。食に関する戦いなら彼女は無敵なのだ

 

「さあ!次は飴食い競争だね!全部の飴と白い粉を吸い尽くしてやるんだよ!」

 

「「「それは後の人が困るからやめて!」」」

 

「あはは…私は玉入れだからまだ出番はないかな」

 

「私はおたま競争ですね」

 

「「「うぅ…頭が痛いよぉ〜」」」

 

そう言って彼女は次の戦争(競技)へと走り去っていく、ステイル逹は暴走する彼女を止める為インデックスの後を追う。佐天と初春はそれを見て半笑いした。なお三馬鹿弟子はインデックスに齧られた部分を涙目で抑えていた

 

 

続いては上条逹の高校とスポーツ関連のエリート校の棒倒しだ。相手校の生徒であるモブ逹は相手は弱小校ととある高校を侮っていた

 

「へ、あいては弱っちい能力者しかいねえんだろ?俺らの相手じゃないぜ!」

 

「でも超能力者が二人いるとか先生は言ってなかったか?」

 

「余裕だろ、超能力者は二人しかいねえんだからさ。こっちはほぼ全員が強能力者で大能力者も何人もいるんだぜ?」

 

「ま、そうだな!身構えるだけ無駄…「お、おい!」あ?何変な声出して……ひぃ!?」

 

モブ逹は自分達はエリートだからヨユーヨユーと上条逹を侮っていた、だがモブの一人がある部分を指差しながら怯え何事かとモブがそこを見る…そして恐怖の感情に支配された

 

「な、なんなんだあいつらは…」

 

それは猛者の風格だった、上条逹はまるで戦場へ向かう兵士逹の様に熱くされど冷たい目でモブ逹を見つめていた…その光景に戦慄するモブ逹、上条逹の背後は炎が吹き上がる幻覚が見えていた

 

「お前ら…覚悟を決めろ」

 

「「「イエッサー!」」」

 

「ここは俺達の戦場であり死に場所だ……行くぞ。赤組に勝利を」

 

「「「勝利を!」」」

 

「さあエリート校だろうがなんだろうがあいつらは俺らの敵だ…全力で叩き潰すぞ」

 

「「「ラジャー!」」」

 

上条の言葉に先導されクラスメイト逹の士気が上がっていく…そして上条は最後の言葉を告げる

 

「さあ!この戦いに勝てば焼肉を奢ってやる!さあ焼肉ウォーズの時間じゃぁぁぁぁぁ!!!」

 

「「「焼肉万歳!焼肉神の加護あれ!」」」

 

さあ戦いの狼煙は上がった、戦士逹は戦う。戦の後に勝利の宴を開く為に…クラスメイト逹の超能力が次々と放たれモブ逹を吹き飛ばしていく

 

「行くぞ!」

 

ーーーグギィガアアアアァァァ!ーーー

 

「悪りィがこっから先は一方通行だ!」

 

「うおおお!愛愉ちゃん見とってな!これが藍花悦の漢道やでぇぇぇぇ!!!」

 

場ヲ区切ル事(それではみなさん)

 

紙ノ吹雪ヲ用イ現世ノ穢レヲ祓エ清メ禊ヲ通(タネもシカケもあるマジックをごたんの)シ場ヲ制定(うあれ)

 

界ヲ結ブ事(ほんじつのステージはこちら)四方ヲ固メ四封ヲ配シ至宝ヲ得ン(まずはメンドクセエしたごしらえから)

 

折紙ヲ重ネ降リ神トシ式ノ(それではわがマジックいちざのナカマを)寄ル辺ト為ス(ごしょうかい)

 

四獣ニ命ヲ(はたらけバカども)北ノ黒式(げんぶ)西ノ白式(びゃっこ)南ノ赤式(すざく)東ノ青式(せいりゅう)

 

式打ツ場ヲ進呈(ピストルはかんせいした)

 

凶ツ式ヲ招キ喚ビ場ニ安置(つづいてダンガンをそうてんする)

 

丑ノ刻ニテ釘打ツ凶巫女(ダンガンにはとびっきりきょうぼうな)其ニ使役スル類ノ式ヲ(ふざけたぐらいのものを)

 

人形ニ代ワリテ此ノ界ヲ(ピストルにはけっかいを)

 

釘ニ代ワリテ式神ヲ打チ(ダンガンにはシキガミを)

 

鎚ニ代ワリテ我ノ拳ヲ打タン(トリガーにはテメエのてを)

 

「相手校が可哀想ね」

 

上条は右手から竜王の顎を形成しモブ逹を蹴散らす、一方通行も黒い翼を発動し襲い来る能力を破壊する。青ピもくるくるとバレリーナの様に回転し敵陣へと突っ込み土御門が放った魔術が敵の棒を吹き飛ばす…余りの蹂躙劇に吹寄は敵に同情した

 

「青ピ君頑張ってぇ!」

 

「頑張るのだぞ兄貴ー」

 

「負けるな一方通行!」

 

「惚れちまいそうだぜ一方通行!」

 

「頑張って〜!てミサカはミサカは応援してみる!」

 

「……なんでミサカもこんな所に来なきゃダメなのさ…ああ、早く帰ってクーラーで涼みたい」

 

「「フレーフレー先輩/上条さん!」」

 

観客席では蜜蟻や舞夏、エステル逹、美琴と食蜂が上条逹が上条逹を応援していた

 

「……大覇星祭はいつ見ても凄かったが…今年はそれ以上だな母さん」

 

「ですね…と言うか当麻さん張り切り過ぎてオーバーキル過ぎますね」

 

「あのもやしみたいな子背中から翼が生えてるわね…あれも能力なのかしら?」

 

「てか相手の高校の奴ら漫画みたいに吹き飛ばされて星になってるのに誰も気にしねえのが凄えや」

 

上条夫妻と御坂夫妻はただただ目の前の光景に圧倒されていた、特に竜が暴れ狂いモブ逹をお星様にしたり黒い翼がモブ逹をボールの様に吹き飛ばしす光景は凄惨の一言に尽きる

 

「よし!頑張ったなお前ら!大覇星祭が終わったら焼肉パーティーじゃあ!」

 

「「「うす!ゴチになります!」」

 

「焼肉くンよォォォ!」

 

「なあカミやん!ボクの彼女も連れてってええか?」

 

「なら俺も舞夏を連れてくるんだぜい!」

 

「……私もいくから日程教えなさいよね」

 

試合後、上条は勝利を祝い後日焼肉パーティーを開く事になった。男子も女子もノリノリであの吹寄も満更ではなさそうな顔をしていた

 

 

「お〜、やるじゃねえか当麻逹〜敵さんが可哀想だ。ま、同情はしねえがな」

 

垣根は街中にある大きなテレビジョン越しで上条逹の活躍を見ていた、彼はフランクフルトを齧りながらクスクスと笑う

 

「さぁて、俺が出る競技の時間はまだまだ時間あるし今の内に食べ歩きしますか」

 

そう言って口笛を吹きながら次の店の食べ物を食べようとする垣根、そんな垣根の背後から誰かが迫って来た

 

「見つけましたわ!わたくしの勝利条件を!」

 

「え?」

 

帆風が恐るべき速さで垣根へと迫っていた、垣根は目を丸くして何事かと呟く。そんな垣根の襟首を帆風は掴むと猛ダッシュで垣根を連れて駆け出す

 

「ぐえ!?ちょ、潤子ちゃん!?」

 

「説明は後回しでお願します!」

 

そう言って帆風は垣根を片手で持って先程の棒倒しが行われた球技場とは違う競技場へと向かう。垣根は苦しげに叫ぶも帆風はそれを気に止める事はない。そして帆風は競技場へと辿り着きゴールテープを垣根と共に切った

 

「やりましたわ!一位ですよ垣根さん!」

 

「……成る程、四校合同借り物競走か…俺が指定されたものだったて訳か」

 

帆風は運営委員の高校生からスポーツタオルとドリンクを貰いながらそう叫ぶ、垣根は借り物競走だと理解し納得した

 

「あ〜首痛えな、許可ぐらい取って欲しかったぜ」

 

「申し訳ありません、ですが急がないとビリになるかもしれないので…」

 

「ビリどころかまだ誰も来てないんですけど」

 

垣根は襟首を掴まれたせいで首が痛いと愚痴を言いだし帆風がえへへと笑う、可愛らしかったので垣根は許そうと思った。これが男だったらぶん殴っていたところだった

 

「で、指令書にはなんで書かれてたんだ?」

 

「ああ、これですわ」

 

「これね、まあ俺を選んだって事は「超能力者」とか「イケメルヘン」「美少年」辺りかな?」

 

そう言いながら垣根は指令書を開く、そこに書かれていたのはこうだ

 

『残念なイケメン』

 

と、簡潔に書かれていた。それを見た垣根は固まりそれを握り潰しポイ捨てする

 

「え?垣根さん?」

 

「………俺はイケメルヘンだもん」

 

少し顔を膨らませながら怒る垣根を見て帆風は首を傾げる、その後四校合同借り物競走の2年の部で美琴が食蜂と上条と仲良く手を繋いで一位を取った。指令書の内容は「貴方が一番好きな人」、美琴は淀みのない笑みで上条と食蜂の事を世界一愛してると表彰式のインタビューで答えたので垣根はムカついたので未元物質の翼を羽ばたかせ烈風を起こし二人を空の果てまで吹き飛ばした。

 

なお美琴に選ばれなかった可哀想な御坂夫妻はヤケ酒を飲んでいた

 

 

第七学区のとある場所にて車椅子に乗った女が不気味な笑みを浮かべながら街中にあるテレビジョンで大覇星祭の生中継を見ていた

 

「いいですねぇ、絶好のデモンストレーション日和ですね〜。これでこそ今日まで『諦め』ず作戦を待った甲斐があったてものです」

 

彼女の名前は木原病理、かつて超能力者逹を苦しめた強敵でありマッドサイエンティストである。彼女はニコニコと退廃的な笑みを浮かべながら車椅子を動かす

 

「確か外装代脳(エクステリア)は第七学区のある場所に隠されているんですよねぇ〜。蠢動ちゃんもこれを隠しながら維持するのは大変だったんでしょうね」

 

蠢動は密かに彼女と繋がっていた、以前彼女が学園都市に侵入出来たのも彼のお陰と言っても過言ではない。だが蠢動は病理の駒の一つだ、イサクの件で死んだ様だが病理はその事について何とも思っていない…寧ろ死んでくれて清々していた

 

「蠢動ちゃんは帝督ちゃんの悪口しか言ってませんでしたからねー、まあ外装代脳を維持していてくれた事には感謝しますがね」

 

彼女は外装代脳が保管されている場所へと向かう、だが保管場所へ行く前に仕入れなければならないものがある

 

「食蜂操祈への干渉は外装代脳があれば完了ですが…御坂美琴への完了は妹逹が必要不可欠ですからねー。さてどう手に入れましょうかねー…んん?」

 

そう彼女が悩んでいた時だ、病理の視界の端にあるものを捉えた

 

「師匠、今日は大覇星祭ですがお姉様逹の尾行は続けるんですね。とミサカは質問します」

 

「当然ですよ17600号さん、ストーカー道は一日にしてならず。千里の道も電球の影から。ですよ」

 

「カッコいいです師匠、とミサカは尊敬の眼差しで師匠を見ます」

 

そこにいたのはエツァリとミサカ17600号ことスネークだった、それを見つけた病理は口元を大きく歪めた

 

「……見・つ・け・ま・し・た・よ〜♪」

 

 

 

 

 

その後暫くして警備員にとある通報が入った、街中に褐色肌の青年が倒れていると…そしてその青年…エツァリの近くにいた筈の17600号は何処にも見当たらなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




学園都市の運動会(大覇星祭)て滅茶苦茶危険ですよね、よくあれ死人が出ないな…能力とかバンバン使ってきてるのに…観客逹も興奮しないで止めてあげてよ。て原作で見て思いましたね。特に常盤台の人達は平気かもだけど上条さん逹の高校は能力が弱い人が多いんだからハンデくらいやれよ先生方ぁ

そして再び登場した病理さん…彼女は何を企んでいるのか?そして出オチになってしまったエツァリさんとスネークの運命はいかに?

次回もお楽しみに!


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鼻からスパゲッティは食えますか?

今回もギャグテイスト多めです。ですが次回から真面目に若干なるかと……ギャグが面白くなかったらごめんなさい

今回も登場キャラ多めです。それとオリアナさんも出てきますが原作と違い敵キャラじゃないのであんまり出番はないです。オリアナファンの皆さんごめんなさい

そして皆さん大好き とあレーのあのお爺ちゃん登場



「はぁい!皆さん楽しんでますかぁ!?あ、改めまして自己紹介させて頂きます!私は扶桑彩愛(ふそうあやめ)!今回の大覇星祭の実況を務めさせて頂いております!」

 

上半身はビキニ、下半身はぶかぶかのズボンを着た薄着の女子…扶桑彩愛はそう拡声器に似た形の特殊なマイクでそう叫ぶ。彼女は大覇星祭の実況役でありサッカースタジアムの実況席に座りながら放送を続ける

 

「そして私と一緒に実況をして下さるのがとある中学で先生をしていらっしゃる木山春生(きやまはるみ)先生とバチカンからいらっしゃったビアージオ=ブゾーニさんです!」

 

「初めまして、木山春生だ。よろしく頼む」

 

「初めまして学園都市の諸君、私はビアージオ=ブゾーニだ」

 

そして彼女と共に実況をおこなうのは、垣根の多才能力を完成させるのに協力した木山春生とローマ正教の司教 ビアージオ=ブゾーニだ

 

「いやぁ木山先生はかの第一位と共同で多才能力という能力の開発に尽力した人物として有名ですね!」

 

「そう褒めるのはやめたまえ…あれはていとくんあっての成功だよ…それにしても暑いな。脱ぐか」

 

「ちょお!?何脱ごうとしてるんすか?!ここ一応公衆の面々すよ!?」

 

「何、私の様な貧相な身体を見ても欲情する人などいないだろう」

 

木山は暑いというだけの理由で人前で服を脱ぎ始め扶桑がそれを必死に止める、だが天然の露出狂である木山を止めるのは至難であり木山は脱ぐのを止めようとしない…ビアージオは懐からロザリオを取り出し煩悩を退散させようと神に祈る

 

「「……ゴクッ」」

 

「「おい」」

 

「え、いや今のは違うんだ母さん!確かにエロかったけども…」

 

「そうだ!それに男にはあれを見過ごすのはかなりキツい!」

 

「あらやだ刀夜さんたら…これはお仕置きが必要ね」

 

「そうですね詩菜さん…丁度手元にネギがあるのよ…使います?」

 

「「え?ちょ…ネギを何処に突き刺そ……アアァーー!?」」

 

木山のスリップショーを見て生唾を飲み込む刀夜と旅掛、それを見た奥さん逹は「何私達がいるのに他の女に見惚れてるんだ?あぁ?」という黒いオーラを出しながら二人の尻にネギを突き刺した

 

「そしてこちらのオジさんがビアージオさんです!何でもローマ正教の偉いさんだとか!」

 

「オジさんではなぁい!私はビアージオ=ブゾーニだぁ!」

 

「あ、すみませんアナゴさん」

 

「ぶるぁあ!私が好きなネタは大トロだぁ!間違えないでくれたまえフグ桑君!」

 

ビアージオはぶるぁあ!と某人造人間の様に叫ぶ、そんなインパクト大な二人の実況を加え扶桑は口をマイクに近づける

 

「さて!本日の午前の部が終了したと言う事でまず結果を発表したいと思います!パン食い競争ではイギリスから留学してきたインデックス選手が2位との間に大きく差をつけて1位となりその後の飴食い競争でも堂々の第1位に輝きました!」

 

「あれは凄まじかったね…イギリス恐るべし」

 

「だがシスターとしてあの暴食はダメだぁ、まだまだ修行が足りんな」

 

扶桑は午前の部の結果発表を伝え始める、インデックスはパン食い競争の後飴食い競争に出場し全ての飴と小麦粉を吸い込むと言う某ピンク玉も真っ青の行動で1位になった

 

「そして棒倒しではとある高校が圧倒的な実力差で優勝しましたね!」

 

「まあ第二位と第一位がいる高校だからな…仕方ない」

 

「だがあの金髪サングラスの活躍も素晴らしかったと私は思うぞ!ぶるぁあ!」

 

続いて棒倒しの結果について伝える扶桑、刀夜と旅掛はあの蹂躙はアリなのかと思った

 

「そして借り物競争では常盤台の三年生 帆風潤子選手が第一位の垣根帝督を借り物として連れてきた事で1位を取りました!」

 

「まあ彼は後でブチ切れて第二位・第五位・第六位が吹き飛ばされたが…まあいいだろう。リア充死すべし慈悲はない」

 

「色欲の罪は重いからなぁ、リア充に人権などないのだ。ぶるぁあ!」

 

「それは私もよくやった!と思いました!」

 

リア充死すべし慈悲はない、三人は美琴逹を吹き飛ばした垣根にグーサインをする

 

「そして垣根帝督が参加しました騎馬戦では垣根選手はマジモンの馬を用意して更に学生以外の選手とチームを組んで優勝しました!」

 

「まさか騎馬戦如きに黒竜丸を呼ぶとはね…それにダークドレアムとエスタークとか反則じゃないか」

 

「だが勝てばいいのだよ、私は垣根帝督がとった行動は間違っていないと思うぞ。ぶるぁあ!」

 

常識が通用しない垣根はたかが騎馬戦の為に宝の地図のダンジョンに行き黒竜丸を捕獲し、更にはエスタークを10ターンに倒し仲間にし、ダークドレアムをも倒し騎馬戦で勝つという願いを叶えてくれた

 

「他にも男子障害物走でも垣根選手は六枚の翼で空を飛行する事により障害物を一切無視しゴールしました…一応聞きますけどこれってありなんですか?」

 

「アリだね、何故ならここは学園都市だから。学園都市に常識は通じない」

 

「ぶるぁあ!それは魔術も同じ事!常識に囚われてはいけないのだ!ぶるぁあ!」

 

「との事です、流石超能力者の第一位」

 

他にも10キロ走でぶっちぎりの優勝を果たした削板や綱引きにて百人対一人で百人を空の彼方へと舞い上げた削板、大玉転がしで50個の大玉を口から放つ咆哮だけで相手チームの後方にあるゴールラインに叩き込んだ削板といった各競技の優勝者の名前が挙げられる

 

「さて!ここからは一旦お昼休憩です!両親とご飯を食べるもよし!友達と食事を取るのもよし!各自自由行動です!」

 

「私は生徒逹とご飯を食べてくるよ」

 

「ぶるぁあ!私はテッラ殿が弁当として作ってくれたフランスパンとブドウジュースを食べよう!」

 

扶桑が食事の時間だと告げると木山は自分の生徒逹の元で食事を取ろうと実況席から立ち何処かへ立ち去っていく、ビアージオは実況席で食事を取る気なのか持参したフランスパンとブドウジュースを取り出し食べ始める

 

「では私も友達と食事の約束があるのでこの辺で失敬させていただきます!では良い食事の時間を!」

 

 

 

「あ〜疲れた。全く大変ですのことよ」

 

「お疲れ様です先輩」

 

「あ〜もう動きたくないんだゾ」

 

「運動とかマジダリィ…」

 

「当麻逹とは敵同士だが正々堂々戦うぞ!」

 

「私は大覇星祭に参加してねえからつまんねーにゃん」

 

休憩時間になった上条逹は上条夫妻と御坂夫妻が待っている喫茶店へと向かう、辿り着いたのはこぢんまりとした喫茶店だ。扉を開け中を覗くとほぼ満席だった

 

「うへぇ…流石大覇星祭、街の中混んでるもんな…」

 

上条が思わずそう呟いてしまう、大覇星祭はどの喫茶店やレストランも涼しさを求めてどこもかしこも満席だ。故にこんなボロい誰も来なそうな喫茶店でも満席なのだ(酷い)

 

「おーい当麻〜!こっちだこっち〜!」

 

「女王逹もこちらですわ」

 

「おー美琴〜!パパだよ〜!」

 

「当麻さん〜こちらですよー」

 

窓側の席から声が聞こえ上条逹が振り向くとそこには逆立ちでチーズフォンデュを食べる垣根の姿が

 

「「「「「どんな状況!?」」」」」

 

「ははは〜!面白いねていとくんは〜!」

 

「こんなのまだ序の口ですぜママさん。本気の俺は穴からスパゲティを食べれる!」

 

「マジか!お前面白いな!」

 

上条逹がどんな状況なのかと叫ぶ、御坂夫妻は大笑いしながら垣根に拍手を送る。上条夫妻は曖昧に笑うだけ

 

「そうです!垣根さんは凄いんです!」

 

「……あの、君は止めないのかい?」

 

「?なんで止めなきゃいけないんですか?」

 

「……そうか」

 

刀夜は止めなくていいのかと帆風に言うが彼女は首を傾げるのみ…刀夜は悟った、彼女はまともに見えるだけで少しズレていると

 

「何してんだよ垣根ぇ……」

 

「てかママもパパも何してるの…」

 

「え〜?チーズフォンデュ持ってきたから食べる?てていとくんに言ったら彼が逆立ちで食べ始めて…面白いわねー彼」

 

美鈴はそう言って笑う、なおプロパンガスの持ち込みは禁止だ

 

「まあ座れよお前ら…立ったまま話すとか常識知らずかよ」

 

「「「「「お前に言われたくねえ!特に今の状況でチーズフォンデュ喰ってるお前には!」」」」」

 

「俺に常識は通用しねえ」

 

垣根が逆立ちでチーズフォンデュを食べながら上条逹に呆れた目を向ける、それに対し上条逹はお前には言われたくないと叫びながらも席に座る

 

「君が美琴の彼氏の上条君ね、美琴や詩菜さんから話は聞いてるわよ」

 

「おー、君が刀夜さんの息子さんか…いい目をしてるな。昔の俺にそっくり…じゃないな、うん…だが美琴ちゃんが言ってた通りの奴だな」

 

「お義母さん、お義父さん。美琴は貴方方になんと言ってましたか」

 

「ちょ!?絶対言わないでよ?!」

 

上条が普段美琴は自分の事を御坂夫妻にはどう言っているのか尋ねてみる、美琴は顔を赤くして絶対に言うなと美鈴と旅掛を睨みながら放電する

 

「あ、聞いちゃう?貴方の事を宇宙一愛してるて毎回必ず言ってくるのよ。私やパパなんかよひもずっと好きて言われちゃって…あらやだ目から汗が流れてきちゃった」

 

「……俺もだ…はは、なんだか視界が歪んでるぜ」

 

「………美琴、好き」

 

「ふにゃ!?」

 

御坂夫妻は長年可愛がって愛情を注いできた娘に自分達よりも、出会ってから2年経つか経たないかの彼氏の方が愛してると言われ涙を流していた。そんな二人にハンカチを渡す刀夜

 

「ちょ…デタラメ言わないでよ!私か先輩と操祈を愛してるて言ったの!操祈が抜けてるわよ!」

 

「……美琴、結婚しよ」

 

「俺も世界で一番お前らを愛してる」

 

「ふにゃ!?」

 

美琴が両親の言葉に訂正を入れ、自分が愛してるのは上条と食蜂だけだと叫ぶ。それを聞いて食蜂と上条は美琴に抱きついた。抱きつかれて美琴はショートを起こし漏電を起こしその電気が刀夜にヒット。刀夜は黒焦げになった

 

「さて、すみませーん店員さん!注文したいんすけど!」

 

「はい、ご注文はお決まりですか?」

 

「ご注文はうさぎです」

 

「そんな品物はございません」

 

「知ってます、コットンキャンデーソーダ頼みます」

 

「わたくしも同じ物をお一つ」

 

垣根と帆風はコットンキャンデーソーダを注文する、一方通行逹も自分達が食べたい料理を注文しウェイトレスが厨房に去っていく

 

「しかし大覇星祭は凄いなー。あんなに能力を派手に使うんだからな。よく死人が出ないな」

 

「まあこれがこの街の日常だからな。それにこの作品は基本ギャグだし」

 

「まあ当麻さん、それは言っちゃいけない言葉ですよ」

 

そう上条親子が雑談をしている最中、ウェイトレスがコットンキャンデーソーダを持ってくる

 

「こちらご注文のコットンキャンデーソーダでございます」

 

「……いや俺らが頼んだのメロウコーラなんだけど」

 

「そんなものはございません。美食屋に依頼をなさって下さい」

 

「……冗談も通じないのかねこの店は…嘘だよ。コットンキャンデーソーダであってるよ」

 

垣根はそう言ってコットンキャンデーソーダをストローで飲み始める。帆風もチュルチュルとソーダを飲み始める

 

「やっぱり飲み物は暑い日に飲むのが格別だよな。生きてるて実感する…そしてその時に飲む飲み物がこのソーダ…まさにメルヘン」

 

「アイスも美味しいですわよ。まあこの時期だとカップアイスよりもアイスキャンデーの方が冷たくて美味しいですよね」

 

「マジでそれな。全くアイスてのはマジでクール&メルヘンだぜ」

 

(帆風も大分垣根色に染まってきたにゃーん)

 

麦野は帆風をジィーと見つめながら「昔は純粋だったのにな〜」と昔を懐かしむ。純粋な頃の彼女はどこへ

 

「で、当麻君に操祈ちゃん。娘とは何処までヤッたのかしら?」

 

「「ブフッゥ!?」」

 

「あらあら、旅掛さんと刀夜さんの顔がびしょびしょだわ」

 

「「………」」

 

美鈴が手をグーにして親指を人差し指と中指の間から出す…通称フィグ・サインをし、上条と食蜂は驚きのあまり旅掛と刀夜の顔面にコーラを吹きかける

 

「な、なななな、何を言うのでせうかお義母さん!?か、上条さんはまだ美琴の接吻しかしてないですのことよ!?」

 

「わ、わ、わわわ私だってき、キス以外した事ないしぃ…それにまだ早いていうか…そのタイミング力というか…」

 

「わ、私だってそういうのは時期早かな…とか思ってるし…で、でも二人が望むなら…」

 

「見て下さい、あそこにいるのがヘタレカップルです」

 

「わ〜、見てて楽しいわね。まあ私もパパと付き合い始めた時はそんなんだったから何も言えないけど」

 

顔を赤くして何やらゴニョゴニョ呟くバカップル、それを指差して美鈴と茶化し合う垣根。そんな三人を見て美鈴は昔の事を懐かしむ

 

「懐かしいわ…私がパパと出会ったのは高学生の頃…」

 

 

『いけない!遅刻遅刻!』

 

これは美鈴が中学三年生の頃、彼女は口にトーストを咥え道を走っていた。あと10分で授業開始のチャイムが鳴ってしまう。このままでは遅刻確定だ…そう思って曲がり角を曲がった時、誰かとぶつかってしまう

 

『キャ!?』

 

トーストを咥えたまま道端に倒れる美鈴、少し怒った目でトーストを咥えたまま自分とぶつかった人物を睨む彼女の前にいたのは…

 

『美味しいお茶漬けを食わせてやるど!』

 

緑色の物体に沢山の足が生えた三つ目の生き物……そう、お茶漬け星人だった

 

 

「それが初めてパパと出会った瞬間だったのよね〜」

 

「「「お義父さん/パパ出て来てないけど!?」」」

 

「おい違うだろママ!俺とママが出会ったのは自動販売機の近くに落ちてた500円玉を取り合いになった時だろ!」

 

「どンな状況だよ」

 

なお美鈴と旅掛の最初の出会いは美鈴が中学三年生、旅掛が高校二年生の時であり、自動販売機の下に置いていた500円玉を争奪しあったのがきっかけで知り合った。その後も残り最後の一つになったクリームパンやラムネを奪い合ったり喧嘩しあっていた。その後なんやかんやあって二人はマフィアに攫われ協力し合ってマフィアのボスの娘とヤクザのボスの息子を結婚させ事無きを得た。その後旅掛がプロポーズし二人は結ばれた

 

「ちょっと待ってくれにゃーん!そのヤクザの息子とマフィアの娘て…ニセコイじゃねえか!」

 

「まあ、美鈴さん達はそんな物語みたいな出会いがあったんですね」

 

「でも私達も負けてませんよ…私が母さんと出会ったのは高校一年生のあの時…」

 

「え?私の言った事無視するのかにゃーん?ねえ?無視ですか?」

 

 

『あらあら、このままだと遅刻だわ』

 

彼女は竜神詩菜、彼女は口にフランスパンを咥えながら走っていた。彼女は急ぎ足で曲がり角を曲がり彼女が咥えていたフランスパンの先端が歩いていた人の顔面に突き刺ささった

 

『げふぅ!?』

 

『まあ大変…大丈夫ですか?』

 

それが竜神詩菜と上条刀夜の出会いの瞬間だった

 

 

「ちょっと待って!?ちょっと待ってください!ちょっと待ってよの三段活用!なんで母さんはフランスパンを咥えてんの!?」

 

「フランスパンて美味しいのよ」

 

「知らねえよ!」

 

「まあフランスパンなら仕方ないな、フランスパンは美味いしな」

 

「父さんまで!この天然夫婦め!」

 

上条は何故フランスパンを咥えていたのかと叫ぶ、それに対し詩菜はニコニコと美味しいからと簡潔に答え刀夜もそれに頷く。この天然夫婦の思考は理解できないと上条は頭を抱える

 

「まあ落ち着けよ当麻、早く飯食えよ」

 

「そうですわ、早く食べないと休憩期間は終わってしまいますわ」

 

ブリッジをしながらかき氷を食べる垣根、そんな垣根を見ながらフランクフルトを齧る帆風を見て上条は色々とツッコミを入れたくなったが我慢した

 

「あ〜たく、初日からこんなにも(ツッコミが)忙しいなんてな…」

 

「そうだな、だが私達は(大覇星祭の競技を)応援しているぞ」

 

「………ありがとよ」

 

色々と噛み合ってない部分はあるが上条親子は笑い合いながら昼食を食べる。それを垣根はブリッジした状態で微笑みながら上条親子を見ていた

 

 

「いやぁ食べた食べたなんだよ。飴もパンも美味しかったんだよ」

 

「……僕と神裂は委員会の人達に謝るので忙しかったけどね」

 

「まあ、インデックスの暴飲暴食は今に始まった事ではありませんからね」

 

満足げに腹を撫でるインデックスと溜息を吐く神裂とステイル、そんな三人の後について行くメアリエ達こと三馬鹿弟子。因みに佐天と初春は二人で食事を取りに行き風斬もクロイトゥーネと一緒にご飯を食べに行くと言って別れ三人は何処で食事を取ろうか店を探していた

 

「でも何処も満席だね、まあ一旦公園で飲み物でも飲んで落ち着……ん?」

 

「どうしたのステイル?」

 

インデックス達は公園で休憩を取ろうと考え公園に足を踏み入れる…そこでステイルは見つけてしまった

 

「一発芸します、その名も人体切断マジックなのですねー。ではアックア、助手を頼むのです」

 

「任せるのである」

 

「お〜!余興としては面白そうだな。いいだろうやって見せろテッラ」

 

「頑張るのだぞ二人共!」

 

「おい馬鹿止めろ!それはシャレになんねえだろ!」

 

人体切断マジックをする為に箱に入るテッラ、そしてアスカロンを構えいつでもテッラが入った箱を切断しようとするアックア。それを見て大笑いするフィアンマとマタイにそれを止めようとするヴェント

 

「でよー、俺はその時言ってやんだんだよ…「ローズライン、お前最近太ったか?」てな。で、それを言ったらドロップキックを喰らったんだよ」

 

「あはははは!本当かそれは!面白いじゃないか!そう言えばウチの騎士団長も此間酔っ払って便器の中に顔を…」

 

「ゼロにする!」

 

アメリカ大統領とイギリスの女王がくだらない話で笑いあい、エリザードが騎士団長の話をしようとすると騎士団長がエリザードに飛び蹴りを放って物理的に黙らせる

 

「ゴホゴホ…ゲボォア!?」

 

「大丈夫か?全く…フランスの聖女様が情けないし」

 

「これでイギリスの方がフランスよりも優れていると分かったわね」

 

「……イギリスの料理はクソ不味いくせに、よくそんな事が言えますね」

 

「「よし、表に出ろ。第三次世界大戦を起こそう」」

 

傾国の女とイギリスの第二王女と第一王女が目から火花を散らしながらキャットファイトを始めようとしていた

 

「クランスちゃん、サーシャちゃん。この小悪魔ベタメイドと海魔王ベタメイドを着てみる気は…」

 

「第一の問いですが…死ねこの変態が!」

 

「ぶはぁ!?ご褒美キタコレ!」

 

「ワシリーサ!?」

 

ロシア成教のド変態ワシリーサは両手に持ったゲテモノメイドシリーズの二着をクランスとサーシャに着させようとしてサーシャの飛び蹴りを喰らい惚けた顔で吹き飛ばされた

 

「……ツッコミきれないよ」

 

「なんだこのカオスは…」

 

「イギリスの王家の皆様ぇ…」

 

「「「うわぁ……」」」

 

流石のインデックスも目の前の状況を理解できない。ステイルと神裂も目の前の光景を見て死んだ魚の様な目になる、メアリエ達も同じ様な目でフィアンマ達を見る

 

「む、インデックス達ではないか。どうだお前達もオルソラ嬢のご飯を食べに来たのか?」

 

「良かったら。一緒に食べる?」

 

「あ、あいさに先生!これは一体どういう状況なのかな?」

 

「晏然、単なる一発芸大会だ。気にしなくとも良い」

 

「ふん!」

 

「あー!見事に切断されちゃいましたよ私!」

 

「「「流血沙汰起こしてるけど!?」」」

 

「「「エリマキトカゲさーーーん!?」」」

 

アウレオルスと姫神が現れインデックス達にオルソラが作ったシチューを差し出す、だがインデックスはこれは何かと尋ねるとアウレオルスは単なる一発芸大会だと笑う。その瞬間にテッラがアックアのアスカロンでテ/ッラにされた

 

「でもご安心を!こうすればくっついちゃうんです!」

 

「これが神秘のマジックショーなのである!」

 

「凄いですウィリアム!結婚しましょう!」

 

「神裂さん!私と結婚して下さい!」

 

「第三王女はあの筋肉ムキムキの男の人が好きな様ですね…て、あれ?今騎士団長が私に告白したような…気の所為でしょうか?」

 

テッラは無事身体をくっつけアックアと共に観客一同に頭を下げる、ヴィリアンはそのままアックアに抱きつこうと音速の速さでアックアへと突進。アックアは二重聖人としてのスピードで逃げる。それをエクスカリバーを取り出したヴィリアンが追いかける。そのインパクト大な光景の所為で騎士団長の告白は届かなかった

 

「チクショー!」

 

「いだぁ!?」

 

騎士団長はその苛立ちをエリザードの尻に飛び蹴りする事で解消した

 

「まあ、インデックス達もここで食べて行くがいい。オルソラ嬢が向こうで食材を沢山作っているかるな」

 

「ふふふーんなのでございますよー。沢山作り過ぎちゃって困っていたのでございます」

 

「いただきますなんだよ!」

 

「「決断早!?」」

 

「「「流石インなんとかさん!」」」

 

アウレオルスが昼食を食べていけと言った瞬間、インデックスは光の速さでシチューを食べ始める。それを見て驚くステイルと神裂、三馬鹿弟子も流石インデックスと驚いた

 

「む!禁書目録め…俺様に大食いを挑むとはな!神の右席の力見せてやろう!」

 

「あら〜ならこれは私も頑張ってサーシャちゃんに良いところ見せないといけないわねー」

 

「ははは、大食いなら負けないぜ!アメリカ大統領の意地を見せてやる!」

 

「ゴホゴホ…私に大食いで挑むとは…ゲボ…ふふふ、絶対に私が負けますよ?」

 

「大食いか…ならば!この私がイギリス王家の底力を見せてやろう!」

 

インデックスに対抗するべくアメリカ、イギリス、バチカン、ロシア、フランスのリーダー格の五人がインデックスに挑む…その光景を冷めた目で見るステイルと神裂

 

「ステイル=マグヌス、向こうでシチューでも食べながらインデックスの事を話そうではないか」

 

「……煙草を吸いながらでいいのなから構わないが」

 

「神裂さん。良かったら。マカロン食べる?」

 

「!…ありがたくいただきます」

 

ステイルと神裂はアウレオルスと姫神と共に昼食を食べ始める。そして取り残された三馬鹿弟子はどうしようか周囲を見渡していた

 

「……私達要らない子だ……えぐっ」

 

「……ぐすっ」

 

「泣くなよメアリエ、ジェーン。私まで泣きたくなる…ひぐっ」

 

半泣きを始めたメアリエ達に後ろから誰かが声をかける

 

「あら、貴女達なに泣いてるのかしら?」

 

その女性は金髪で胸は組んだ腕に乗せてもはみ出るほど…服といいその胸といい、彼女は動く18禁だ…だが今の彼女達には自分達に声をかけてくれた聖母に見えた

 

「「「……うわぁぁぁぁん!」」」

 

「よしよし…お姉さんの胸の中でゆっくりお泣き…三人とも一辺にベットの上で相手してあげてもいいのよ?」

 

「オリアナ…折角いい雰囲気なのですから淫らな方向に話を持っていかないで下さい」

 

「あらごめんなさい、お姉さんの悪い癖だわ」

 

そう言って存在がセクハラな女性 オリアナ=トムソンは自分に抱きついて胸に埋もれている三人を纏めて持ち上げ、バルビナと共に学園都市の出店で売りに出す霊装を確認しているリドヴィアとバルビナの所までお持ち帰りした

 

 

「じゃあな当麻、午後の部も頑張るんだぞ」

 

「私達も応援しますからね」

 

「またねていとくん!今度も面白い曲芸期待してるよ〜!」

 

「次は俺も裸踊りするから期待しとけよ!」

 

垣根達は上条夫妻と御坂夫妻から別れ次の競技がある場所へと向かう、美琴と食蜂、帆風は常盤台の生徒なので向かう場所は違うが途中までは同じ道を垣根達と一緒に行くつもりらしい。なお削板は午前の部で出場し過ぎたので午後の部は出ないらしい

 

「う〜つまらん!アリサと同じ白組なのはありがたいがアリサと同じ競技が出来なくて悲しいぞ!」

 

「と言うか何で軍覇は鳴護っちと一緒にご飯を食べなかったんだ?」

 

「……親父さんとお姉さんに「親子の時間邪魔すんじゃねえぞゴラァ」て昨日メールで脅されてな」

 

「……ドンマイ」

 

削板はアリサと飯を食べたかったがディダロスとシャットアウラに水を差すなと脅されていたので一緒に食べれなかったのだ。なおその所為でアリサは不機嫌で一日中ディダロスとシャットアウラを睨んでいた事を削板は知らない

 

「さて…俺も午後の部の競技頑張りま……あ?」

 

垣根が何か言おうとした時、彼の携帯が鳴り響き彼は携帯を取り出し通話ボタンを押す

 

「はいもしもし、こちら葛飾区亀有公園前派出…え?そんな冗談はいい?釣れない爺さんだな…で、ご用件は?…………分かった」

 

「?どうかなさいましたか?」

 

「……悪い、用事が入った」

 

垣根は巫山戯ながら通話相手を茶化す、だが暫く通話相手の話を聞いていると彼の表情が硬くなっていく…垣根は用事が入ったと言うと未元物質の翼を展開し帆風の手(・・・・)を握る

 

「……え?」

 

「潤子ちゃんも道連れだ♪」

 

「え?え?……ええぇぇぇ!?」

 

困惑する帆風の手を握りながら垣根は空へと飛翔、そのまま何処かへ飛び去っていく…それを唖然とした顔で見ていた超能力者達だがハッとした顔になって垣根が飛び去った方向を追いかけようとする

 

「バ垣根の野郎…どこ行く気だ!」

 

「だけどぉ、垣根さんのスピード力は速いわよ…どうするの?」

 

「安心しなァ、こンな時に役に立つ男…出番だぜ削板タクシー」

 

「任された!」

 

削板は上条達をおんぶの様に五人全員背負うと音速の二倍の速度で垣根を追いかけ始める

 

「先輩!今私達風になってる!」

 

「いやっほー!飛ばせ飛ばせ!俺達は風なんだ!」

 

「風になってるわ!気持ち良いわぁ!」

 

「「「つまり俺/私達は風の神だぁ!」」」

 

「そんなに身を乗り出してると看板に頭をぶつけるぞ」

 

その後、彼等は看板に頭をぶつけ地面に落ちたのだがそれは語らなくともいいだろう

 

 

垣根はとある人気のない路地裏に着地し翼を消す、そして掴んでいた帆風の手を離すと帆風は顔を赤くして垣根に話かける

 

「か、垣根さん…こんな所で何をする気ですか…?」

 

「……待ち合わせ…だな」

 

「え?待ち合わせ?…こんな路地裏でですか?」

 

帆風は待ち合わせと聞いて残念そうな顔をしながらも何故こんな路地裏で?と怪しむ…そんな二人の前に誰かの足音が聞こえ二人は背後を振り向くとそこには白衣を着た老人が立っていた

 

「やあ垣根君、待たせたかなぁ?」

 

「いや、今来た所だよ幻生の爺さん」

 

「そうかい、なら話の続きといこうじゃないか」

 

「……あのこのお爺さんはどちら様でしょうか?」

 

「……木原 幻生、絶対能力進化計画の提唱者。そういえば分かるだろ」

 

「!?……あの実験の?」

 

その老人の名は木原幻生(きはらげんせい)、あの絶対能力進化計画の提唱者であり数々の実験を行なったマットサイエンティストである。帆風は警戒心を抱きながら幻生を睨む。そんな彼女を見て幻生は笑う

 

「そんなに身構えなくてもいい。僕は今は垣根君一筋だからねぇ。一方通行君にも興味はないよ、無論絶対能力進化計画もね」

 

「……信じられませんわね、それと垣根さんは私の物です」

 

「勝手に物扱いしないでくれる?それと俺二人の物になった記憶ないけど」

 

微笑を浮かべる幻生に少し目を細めて睨む帆風…垣根は早く話を進めてくれと溜息を吐いた

 

「……まあ、それは置いておくとして…先程垣根君には言った通り…病理君が学園都市に侵入した」

 

「!?……あの人が、ですか?」

 

「ああ、病理君に勝てるのはオティヌス君やメイザース君、脳幹君と君達だけだ。アレイスターは今別件で忙しくてねぇ…何でもロシアで手に入れた羊皮紙の解読とか言っていたが…」

 

「ま、簡単に言えば病理を倒してこいて事だろ?」

 

「そう言うことだねぇ、大覇星祭中に申し訳ないが…やってくれるかな?」

 

病理が学園都市に忍び込んだと伝えると帆風は驚きの顔になる、幻生は少し申し訳なさそうな顔をして仕事を引き受けてくれるかと尋ねる…二人は顔を見合わせながらも頷く

 

「……分かりましたわ、病理さんはわたくし達が倒しましょう」

 

「…パパッと終わらせて大覇星祭に出るから問題ねえよ」

 

「……頼もしいねぇ、だが問題はそれだけじゃない…実はね…病理君は妹達の一人 17600号を攫った様なんだ」

 

「「!?」」

 

引き受けてくれた二人に感謝したのか不気味な顔を少し緩める幻生、だがすぐに表情を固くし17600号が攫われたと告げると二人は驚愕する

 

「……病理の野郎…人質でも取ったつもりか?」

 

「さあね…兎に角最優先事項は病理君の撃破と攫われた妹達の保護だ。頼むよ」

 

「……分かった、新情報が入ったら連絡寄越せよ」

 

「……後で入鹿さんに怒られますわね…ああ、運動会くらいこんな面倒な案件に関わりたくなかったですわ」

 

垣根と帆風はそう言うと幻生から踵を返して路地裏を駆けていく。それを見届けた幻生は二人とは反対方向に歩き出す…その途中で口を開く

 

「……ああ、そうそう。君達にも事の詳細を携帯にメールで送っておくよ上条君達(・・・・)

 

そう言って幻生は闇の中に姿を消した…そして幻生が完全にいなくなった後近くのゴミ捨て場からひょこっと上条達が顔を出す

 

「……今の話は聞いてたか皆」

 

「ああ、バッチリだぜェ。どうやらていとくン達は俺達抜きで危ねえ事をする見てェだな」

 

「たく…あのイケメルヘンが…私達も少しは頼れよ…たく」

 

「さてと……じゃあやりますか」

 

「大覇星祭に出なかったら皆に何言われるか分からないけど…私の改竄力で何とかしてあげるわぁ」

 

「……さて、友達の手助けをしてやるか」

 

かくして超能力者達は動き始めた、全ては17600号を助ける為に。そして病理を倒す為に…だが彼らは気づかない…垣根や帆風、幻生さえも気づけなかった。それこそが病理の誘導だと言う事に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




幻生お爺ちゃんは味方キャラです、さあ次回から本格的な戦闘描写になる……かもしれない

とあレー三期はいつ放送するんですかねー?やっぱりとあセラが終わってからかな?ソギーとかドリーの声優とか滅茶苦茶気になる。それにアニメで八体の竜王の顎を見て見たいし…早く放送しねえかなー

それとウルトラマンタイガを見て思った事、次回ガピヤ星人サデスの弟が出てくるて聞いてかなり興奮してます。てかあいつ弟いたんかーい

次回もお楽しみに!



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乙女の心は冷たい雨に隠されて…

今回のお話は前回のギャグテイストと比べシリアス多め、ギャグ少なめでございます。そして前回まで全くなかった戦闘描写があります

さて病理さんは何を企んでいるのか?17600号は無事なのか?そして彼女の企みとは一体…そして最後には読者の予想を超える出来事が…続きは本編で!



垣根と帆風は妹達の一人 17600号と一緒にいたと言う男性 エツァリに会いに薬味久子の病院に来ていた

 

「えっと……お粥さんの病室は何処だ?」

 

「……こっちの角を左に回って二番目の病室ですわね」

 

二人は道に迷いながらもエツァリがいる病室に辿り着き扉を開ける、その部屋にはベットで上の衣服を脱いで上半身裸のエツァリと彼の背中に聴診器を当てている薬味、そして彼女の側にいる二人のナース姿の女性がいた

 

「おっす、今いいか薬味先生」

 

「あら帝督ちゃん、久しぶりね」

 

「垣根帝督久しぶりです」

 

「よお、ていとくん。久しぶりだな」

 

薬味に加えナースの二人も垣根に手を挙げる、髪の長い方の女性は男臭い言葉で喋り、もう片方の女性は機械の様に無表情で話す

 

「垣根さん、この御二方は?」

 

恋査(れんさ)、男ぽい喋り方をするのは恋査 29号でもう片方が恋査 28号だ」

 

「28号と申します」

 

「俺は29号だ、こんな見た目だが中身は男だ。間違えないでくれよ」

 

「この二人は私の四十人の助手の一人で私の患者でもあるのよ」

 

帆風がこの二人は誰かと尋ねると垣根が簡潔に説明し29号と28号も軽く自己紹介する

 

「さて、垣根帝督は「アステカお粥さん」から事情を聴きたいようですね」

 

「……自分の名前はエツァリなのですが…」

 

「悪いな、こいつ患者にフレンドリーなあだ名を付ける癖があってよ」

 

「……教えてくれエツァリ、お前と17600号に何が起こったのかを」

 

垣根はアステカお粥さんことエツァリに何が起こったのか尋ねる、彼は目を深く閉じ大きく息を吸い込み口を開く

 

「……あれは17600号さんと一緒に御坂さん達を探して尾行しようとしていた時でした」

 

「いきなりツッコミどころですけど敢えてツッコミませんわ」

 

「……いきなり車椅子に乗った女性にいきなり攻撃されたんです、自分も17600号さんも抵抗しようと思ったのですが…いきなり意識がなくなってしまって…そして気づいたらこの病室のベットで寝ていました…自分が不甲斐ない所為で17600号さんを攫われてしまいました……本当に申し訳ありません」

 

「謝る事じゃねえさ、寧ろあの女とやりあってよく生きてたもんだ…恐らくその意識を刈り取られたて能力は心理掌握だな、あの野郎め…初見殺しの技使いやがって…」

 

エツァリは自分が不甲斐ないせいで17600号を攫われて申し訳ないと頭を下げる、だが垣根は首を横に振ってよく頑張った方だと笑いかける

 

「さて…少しお前の頭の中を覗かせてもらうが…いいよな」

 

「……ええ、構いませんよ」

 

垣根は手元に白いカブトムシを形成し、そのカブトムシに心理掌握を実装させる。それによりエツァリの脳内を能力で覗き病理と出会った時の詳しい情報を手に入れる

 

「……成る程、場所は第七学区の人通りが少ない場所か…行くぞ潤子ちゃん」

 

「……はい」

 

垣根は襲撃された場所を特定しそこに行って病理が何処へ逃げたか特定しようと動き出す、帆風は垣根の後を追い病室から出て行く

 

「……17600号さん、どうかご無事で…」

 

エツァリは自分の弟子の無事を祈る、薬味はエツァリの心情を察したのか恋査二人を連れて席を立ち病室から無言で立ち去る

 

「いいのですか先生、アステカお粥さんを一人にして?」

 

「……人間にはね、一人になりたい時があるのよ。今の彼には考える時間が必要なの」

 

「……先生の考える事は難しくて分かんねえや」

 

三人はそう語り合いながら廊下を進んで行く、薬味達はエツァリだけに構っている時間はない。この病院には大覇星祭で怪我をした生徒達も多く来ているのだから

 

 

「さて、どうやって17600号を探すんだ美琴?」

 

「まさかぁ、姉妹の直感力で分かる〜とかそういうオチじゃあないでしょうねえ?」

 

「そんな訳ないじゃない…私が調べるのはこれよこれ」

 

上条達は公園のベンチに腰掛けながらどうやって17600号を探し出すのが考えていた、美琴は携帯端末を全員に見せつけ不敵に笑う

 

「私は携帯端末を使って書庫(パンク)にハッキングを仕掛けられるのよ?街中の監視カメラの情報を手に入れることなんか朝飯前よ」

 

「凄ェな、お前将来犯罪者になれるぞ」

 

「黙らっしゃい」

 

そう言いながら美琴は携帯端末を人差し指で触れ捜査する、だが指の動きよりも大量かつ高速のやり取りが画面の中で展開されている…高速で駆け抜ける記号や文字列がスクロールしていく。彼女はそれを一切気にしない

 

「……見つけたわ、午後12時03分。ここのカメラの端に一瞬だけど病理が映ってるわ」

 

美琴が見つけた街中にあるとある監視カメラの映像を上条達に見せる、その画面の端に一瞬だが女の子を背負った病理の姿が見えた

 

「この道だと……あいつが向かっているのは第二学区だなァ」

 

「その様だな、私らも急いで追いかけるぞ」

 

「よし!根性出して走って追いつくぞ!」

 

一方通行がその頭脳で病理の逃走ルートを割り出す、麦野もそれに同意し削板は走って追いかけようと考えるが食蜂がそれに待ったをかける

 

「待ちなさい、こんな時はタクシーよ。こんな事もあろうかとタクシーの運転手を洗脳してたのよぉ」

 

「デカした食蜂!」

 

「「流石俺/私の操祈!」」

 

「えへへ〜///」

 

食蜂は既にタクシーの運転手を洗脳済みだと公園の近くに待機させていたタクシーを指差す、一方通行は(自分は長距離を走りたくないので)賢明な判断をした食蜂にナイスと指を鳴らし上条と美琴は食蜂に抱きついた

 

「さあ!運転手さぁん、出発なんだゾ!」

 

「了解シマシタ、食蜂様」

 

瞳の中に星のような光が浮かんでいる運転手は食蜂に恭しく一礼すると六人をタクシーに乗せてタクシーを動かす

 

「目的地は第二学区!垣根よりも一足早く病理を見つけ出すぞ!」

 

「「「「「おお!」」」」」

 

 

垣根と帆風はエツァリと17600号が襲撃された場所にたどり着くと垣根が白いカブトムシ達を地面に置く、カブトムシ達は緑に輝く眼を赤い眼に変え心理掌握の能力を発動させる。心理掌握の物的読心(カテゴリ044)で残留思念を読み取っているのだ

 

「……成る程、病理が向かったのは第二学区か」

 

「分かるんですか?」

 

「カブトムシ達に残留思念を読み取らし、そこから得た情報を纏めて病理の逃走ルートを計算した。その結果あいつは第二学区を目指してると仮定したんだ」

 

「……第二学区、ですか…あまりいい思い出はありませんね」

 

「……まあ、才人工房があった所だしな」

 

第二学区に病理が向かっていると言われて帆風は苦虫を噛み潰したような顔をする、第二学区には才人工房の跡地がある。帆風にとってあそこは垣根の出会いの地でもあり同時に嫌な思い出の地でもある…だが今はそんな事を気にしている場合ではない

 

「ですが、今はそんな事よりも17600号さんの事です。彼女を早く助けなければいけません」

 

「だな……早いとこあの女を捕まえて大覇星祭に戻らなくちゃ……!」

 

垣根が早く戻ろうと言いかけた時、二人目掛けて謎の炎が飛来し二人はそれを地を蹴って飛び跳ねる事により回避する。炎が放たれた軌道の先には一人の男が立っているのを垣根と帆風は目視した

 

「……リチャード=ブレイブ」

 

「初めまして、私はリチャード=ブレイブ。元 イギリス清教の魔術師だよ」

 

「……元、ですか?」

 

その男の名前はリチャード=ブレイブ、何の因果かかつて17600号を殺そうとした魔術師が垣根達の目の前に立ち塞がったのだ

 

「私はあのアステカの魔術師に敗れ学園都市の奴らに牢へと幽閉された…だが木原病理とかいう女が私を解放したのだ…全ては私の復讐の為に」

 

「……復讐だと?」

 

「ああ、私をこんな目に合わせたあのアステカの魔術師を殺しあの女…御坂美琴の模造品を殺す!それが私の目的なのだよ!」

 

彼が行おうとしている事は八つ当たりだ、エツァリは彼が学園都市に侵入し17600号に手を出そうとしたから倒したまでであり、17600号はそもそもの被害者だ。それを一方的に因縁をつけるその醜悪さに流石の帆風も顔を顰める

 

「……下衆の極みですわね」

 

「なんとでも言うがいい小娘、私の霊装 破滅の枝(レーヴァテイン)に焼き尽くされよ!」

 

そう言うが早いかリチャードは西洋剣を振り回し剣先から紅蓮の炎を帆風へと放つ、彼女は天使崇拝(アストラルバディ)で神の力を降ろし氷の壁で炎を塞き止める

 

「……チッ、天使の力(テレズマ)で構成された氷はそう簡単には燃やし尽くせないか…だがこれならどうだ?」

 

リチャードは薄く笑うと剣を大きく振るい炎の波を発生させる、それで氷の壁を飲み込み垣根と帆風を焼き尽くそうと企む。だが垣根が帆風を自分ごと未元物質の羽を繭のように閉じる事により炎の津波を防ぐ

 

「この世に存在しない物質…それは流石にどうすれば燃やしやすくなるか分からんな」

 

彼の破滅の枝の能力の正体はビタミンB2を霧吹きで木材(eihwaz)干草(wunjo)などのルーンをスタンプの様に標的に刻印する事により、極端に燃焼しやすくし燃やし尽くすという霊装だ。故に天使の力で構成された氷の壁や未元物質はどうやったら燃焼しやすく壁なるのか分からない為、破滅の枝でも焼き尽くす事は不可能なのだ

 

「……だが人体は燃やせる。すぐに貴様らを灰にして復讐を遂げる」

 

「舐めてやがるな、だがお生憎様俺達も時間はねえ…速攻でケリをつけてやる」

 

不敵な笑みを見せるリチャードに彼を一瞬で倒そうと垣根は未元物質の翼を、帆風はガブリエルの力が漲った拳を構える…だがそんな三人の前にとある人物が空から声をかける

 

「その必要はない、お前達は早く木原病理を追うといい」

 

「「!?」」

 

「何者だ!?」

 

空から黒いスーツを着た筋肉質な男が落ちていた、男は右腕に装着している梓弓という霊装から弓を引いて弦の音を鳴らす。男の足元に風が収集し足場となり男は無事に地面へと着地する

 

「私は闇咲逢魔(やみさかおうま)、私の大事な女性を助けてくれたインデックス(恩人)達に礼を言いに大覇星祭に来たら、幻生と言う老人に君達を助ける様言われ捜魔の弦で怪しげな気配を感じここまで来た。ここは任せて君達は早く連れ去られた少女を助けに行くといい」

 

闇咲は梓弓をリチャードへと向けながら垣根達にそう話す、彼は自分の大切な人を助けてくれたインデックス達の友人である垣根を行かせる為にここは自分が引き受けると言っているのだ。垣根と帆風は驚いていたもののお互いの顔を見合わせその場から走り去る

 

「な…!?逃げただと!?くそ!待て!」

 

「ここは通さないと言った筈だ」

 

「雑魚に用はない!ここで燃え尽きろ!」

 

リチャードは慌てて垣根達を追おうとするが闇咲が行く手を阻む、邪魔をするなと炎を放つリチャードに対し闇咲は風魔の弦で空気の塊を作り出し跳躍し回避。あの炎は風すらも焼き尽くす、ならば当たらなければいい

 

「断魔の弦!」

 

「舐めるな!」

 

圧縮空気の刃が無数に放たれリチャードはそれら全てを焼き尽くす、だがそれに気を取られている隙に闇咲の姿が忽然と消えた

 

「透魔の弦及び衝打の弦!」

 

「むう!?」

 

空気による光の屈折を利用して、光学的に姿を隠す透魔の弦で姿を消し、その状態でガラスを容易く粉砕する衝撃波を放ちリチャードは防御出来ずに吹き飛ばされる

 

「ぐぅ……中々やるではないか…だがこの私には破滅の枝がある…勝てるとは思わぬ事だ」

 

「私を見くびるなよ」

 

風を操る魔術師と炎を操る魔術師が激戦を繰り広げる、炎が吹き荒れ風が荒ぶる。この地は科学の町から一転して魔術が飛び交う決闘の場となったのだ

 

 

「ありがとねぇ。もうお仕事に戻っていいわよぉ」

 

「ハイ、畏マリマシタ食蜂様」

 

タクシーから降りた上条達は第二学区に辿り着く、そこで食蜂がリモコンを地面に向けて何らかのボタンを押し地面から情報を得ろうとする

 

「……成る程ねぇ、病理は17600号を抱えたままこっちに向かったみたいねぇ」

 

「凄えな操祈!将来は探偵になれるぞ!」

 

「流石私達の嫁だわ!」

 

「見た目は中学生、頭脳は明晰!その名はメガロポリス 食蜂操祈なんだゾ!」

 

「そォいうのはいいから早く動け」

 

病理が何処へ向かったか突き止めた食蜂を褒める上条と美琴、それでえっへんとドヤ顔をする食蜂を一方通行は無視して先へと進む

 

「……この方角…もしかして病理が向かってるのは才人工房?」

 

病理の行く道を辿っていくうちに食蜂は病理が何処へ向かっているのか気づく、そこはかつて自分が所属した研究所でありいい思い出が殆どない場所だ

 

「才人工房て…確か食蜂がガキの頃所属してた場所だったかにゃーん?」

 

「「ロリみさきちタン……ハァハァ」」

 

「おい!状況を考えて興奮しろよ二人共!妹達が攫われてるのに欲情するとか最低だな!」

 

「「……ごめん」」

 

美琴と上条は食蜂の子供の頃の姿を想像して興奮する、そんな不謹慎な二人を怒鳴りつける削板…普段根性しか言わない彼が珍しくまともな事を言ったのだった

 

「才人工房はドリーやみーちゃんと出会った思い出の場所なんだけど…嫌な研究者しかいなかったのよねぇ〜。しかも生まれて初めて垣根さんに出会った場所」

 

「「うわ可哀想」」

 

「ていとくンが聞いたら泣くぞ」

 

食蜂が初めて垣根と出会った場所と言うと上条と美琴は可哀想な目で食蜂を見る、一方通行は流石に可哀想だと垣根に同情した

 

「…でもなんであんな所に?封鎖されてる筈だしあんな場所にいても何にも発見力しないだろうし…」

 

「…当然機材も無くなってるだろうしな、隠れ家にしてももっとマシな場所がある筈だ」

 

「何考えてやがンだ病理の野郎は…」

 

食蜂達は病理が何を考えているのか分からなかった、狂人の思考は理解し難いが病理は更にその上をいく…頭脳明晰な超能力者と言えど答えには辿り着けない…だが削板がふと口を開く

 

「もしかしてそこに何か隠してあるんじゃねえか?なんか危険な道具とかをさ」

 

「……確かに廃棄された研究施設に何かを隠している可能性力もあるわねぇ…もしその仮説が本当なら妹達を攫ってその機械で何をする気なのかしら?」

 

「どちらにしてもロクな事じゃないわよ。あの女のことだもの…早く助けに行かなきゃ」

 

削板の意見を聞いて食蜂はその可能性もあると頷く、美琴は早く行かねば17600号が危ないと全員を急かす…そんな美琴を見て上条が笑いかける

 

「大丈夫だ、きっと17600号を助けられるさ」

 

「その根拠は何処から出てくるのよ先輩」

 

「決まってんだろ、俺がいるからだ。それに美琴と操祈がいれば百人力だからな。絶対に助けられる」

 

上条は自分と美琴と食蜂がいればどんな敵も倒せると笑いかける、それを聞いて二人は面食らいながらも上条に笑いかける

 

「……先輩て本当に熱血バカよね」

 

「全くね、そんな所がいいんだけどねぇ」

 

「む、俺は最近補習を受けてるから頭は良くなってきてるんでせうよ?」

 

三人はそう言って笑い合う、それを見ていた一方通行達もこのバカップルが…と思いつつも口元を緩ませ才人工房へと走る…だが気づかない、もう病理の計画は実行段階へと進んでいる事に

 

 

「ふふふ……これで良し、外装代脳の制御に成功。更に私が操る心理掌握を外装代脳てパワーアップ…これで彼女の精神的多重プロテクトを破る事が出来ますね」

 

才人工房、その地下深くに隠された秘密の実験室にて巨大な脳が培養液の中に浮いていた。これが外装代脳(エクステリア)、食蜂の大脳皮質の一部を切り取って培養・肥大化させた巨大脳だ

 

「あとはウイルスを打ち込めば病理さんの実験は成功です」

 

彼女はそう言って自分の身体を作り変え心理掌握を扱える様にする、その心理掌握を外装代脳で強化し眠らせたまま床に寝転がしてある17600号に目を向ける

 

「リミッター解除コードも手に入りましたし、これで彼女達(・・・)の暴走も防げるでしょう…さて楽しい楽しいお遊び(実験)の始まり始まり〜♪」

 

彼女はそう笑いながら車椅子を動かし17600号へと迫る、そして彼女の脳に直接ウイルスを打ち込もうとしたその瞬間

 

「そうはさせないぞ」

 

「!?……チィ!」

 

突如放たれた炎の斬撃が病理を襲う、彼女はそれを巨大化させた腕で防ぐ。腕は焼け焦げ燃え朽ちるも直ぐに反転物質(アンチマター)を供給し復元させる…そして病理は炎の斬撃を放った人物の方へとクルリと車椅子を動かす

 

「久しぶりですねー加群ちゃん。お元気でしたかー?」

 

「そう言う貴様も息災の様だな」

 

「はい、それは勿論。何せ病理は人間である事を『諦め』て不滅の肉体を手に入れましたからねー。この身体は便利で病理さん的には凄く有難いのですー。本当に帝督ちゃん様々です」

 

「そんな使い方をされていると思うと垣根が哀れでならんな」

 

彼は木原加群、魔術師にして科学者、教師にしてヒーローである。彼は幻生からメールを受け取り病理が取りそうな行動を予測し彼女の位置を突き止めここまで辿り着いたのだ。加群のその執念に病理は素直に感心する

 

「加群ちゃんは私のストーカーなんですか?でも残念ながら病理さんは恋愛事には興味ないので………ご・め・ん・な・さ・い〜!」

 

「…私は貴様の様な性根の腐った女など好みではない。下らん妄言を二度と言えぬ様その口を焼いてやろうか?」

 

「いやん、そんな激しいプレイもお断りですよ。それに外装代脳や妹達を傷つけたくないので…全力で加群ちゃんをここから引き離します!」

 

病理はニヤリと笑うと車椅子から立ち上がる、そして右腕をイエティの巨腕へと変貌させ左手の指先に五個のオレンジ色の脳を形成、更に左腕にスカイフィシュのヒレを発生させる

 

「それそれそぉれ!」

 

「………」

 

念動力で生み出した力をスカイフィシュの腕で掴み取りそれを投げ飛ばす病理、加群は跳躍する事により念動力の力の塊を回避。加群は伸ばした右手の人差し指と中指の間から顕現する紅蓮に燃える炎を纏った真紅の光の刃で病理へと斬りかかるが病理はそれをイエティの巨腕を振り下ろし加群を床へとめり込ませる

 

「効かんな」

 

だが加群には竜血の鎧という術式がある、頑強な肉体を得た加群にはこの程度の攻撃など痒い程度しかない。それに加群には攻撃特化の勝利の剣(レーヴァテイン)がある。勝利の剣でイエティの巨腕を斬り裂き病理の首を狙うが彼女は床を蹴り跳躍して避ける

 

「燃えよ勝利の剣(レーヴァテイン)

 

「形態参照 ファントムキャット」

 

勝利の剣の火力が更に増す、だが病理は人型の肉体を崩し3メートルはあろう巨大な猫へと変身を遂げる。そして空気に溶けるかの様に姿を消し始める

 

「……光学迷彩か」

 

加群はそう呟くと剣を頭上に掲げる、そして剣の長さを15メートルサイズまで巨大化し周囲をデタラメに斬りまくる、そして何かを裂く感触を得たのと姿を消した病理が姿を現したのは同時だった

 

「痛いですねー、でもこんな雑な方法でどこにいるのか調べるなんて野蛮じゃないですか?」

 

「………」

 

「無視とは酷いですね…形態参照 コンガマトー」

 

問答無用と斬りかかる加群に対し病理は猫の姿から巨大な翼竜へと変貌、天井が低い為高くは飛べないが加群の剣を避けるには十分なスピードを得て加群の勝利の剣を交わし加群から距離を取る

 

「形態参照 アスワング」

 

次に病理は人型の姿に戻り彼女の口から上の犬歯が1.5メートルはあろう巨大な牙へと生え変わり彼女の爪が鋭いナイフの様になる。そして全身にトカゲの様な鱗が生える

 

「では反撃開始なのです!」

 

病理の爪が加群の体へと迫る、加群はその爪を紙一重で避けながら病理の身体を斬り刻むが反転物質ですぐに再生されてしまう。彼女の爪が加群の身体へと命中、だが加群の竜血の鎧で肉体は傷一つ負うことはない。反撃と言わんばかりに加群の勝利の剣が病理の肉体を両断する

 

「甘いんですよ!」

 

「…………ッ!」

 

だがそれがどうしたのだと病理は左右に分かれた身体の右側の足を動かし加群を蹴りつける、加群は横に大きく吹き飛ばされ床を転がるが即座に立ち上がる。病理は加群へと跳躍しサーベルの如き牙を加群の首元に突きつけようとする…だが加群は床に勝利の剣でルーンを刻み床を爆破させる

 

「な……!?」

 

「燃え尽きろ!」

 

驚く病理に向かって加群は爆破に巻き込まれながらも勝利の剣の光刃を伸ばし病理の首を切断…彼女の身体は炎上し肉体はかけら残さず燃え尽きた

 

「……」

 

だが加群は勝利の余韻に浸ることなどなかった、病理がこんなあっさりと負けるはずがない。そう理解している彼は口を開く

 

「どうせ今倒したのは分裂体なんだろう?」

 

『ありゃりゃ…バレてましたか』

 

何処からともなく聞こえてきた声、それは病理の声だった。彼女の本体は最初からここにはいなかった。エツァリを倒した所から加群に倒されるまでの彼女は全て偽物だったのだ

 

「何が目的だ、妹達を攫うといったお前を隠す為のカモフラージュを使って何を企んでいる?」

 

『……ふふふ、カモフラージュ…ですか。ねえ加群ちゃん、貴方いつから間違った答え(・・・・・・)を信じていたんですか?』

 

「……何?」

 

加群は17600号を攫ったのは彼女本体の居場所を隠す為のカモフラージュだと考えていた。だが病理はそれを聞いて笑った…まるで自分のことを理解していないと言わんばかりに

 

『まあ確かに自分の居場所を隠す為という目的もありますよ?でもそれが一番じゃない…本当の目的は…そこに眠っている妹達ですよ、まあそれも計画の要に必要てだけですがね』

 

「……どういう事だ?」

 

『ネタバレはここまでですー。後は見てからのお楽しみて事で!』

 

病理はそう言い残すともう声は聞こえなくなった…加群は何が目的なのかと思考しながらも17600号を救出しようと彼女に顔を向け…固まった

 

「………何?」

 

17600号は汗を流していた、それも尋常ではない程の汗の量だ。露の様に大きな汗の塊を見て加群は何事かと駆け足で近づく

 

「ハァハァ……し、しょう……た、すけ…」

 

 

この時、世界各国に治療と研修の為に派遣されていた妹達が全員倒れた。それは学園都市にいた妹達も例外ではなくある者は街中で、ある者は施設の中で…全員が同時に気を失ったのだ…そしてミサカネットワークも病理が操る心理掌握の力で侵食されていく

 

「これは不味いね/return」

 

ミサカネットワークの中で彼女(・・)はそう呟いた、彼女には実体はない。彼女は人ではなく第三の存在である。現在彼女は心理掌握の力に洗脳されかかっていた

 

「しっかしあの病理てクソ売女は何が目的なんだろうね?/escape」

 

彼女は洗脳されつつも病理の真意は何かと思考する…そして彼女の思考が病理に侵食される寸前で彼女は最後にこう呟いた

 

「ま、いいか。最後は私達のヒーロー(ていとくん)が解決してくれるでしょ/return」

 

彼女は垣根がどうにしてくれると考えるとゆっくりと意識を闇の中へと手放した

 

 

「「…!?」」

 

才人工房へ向かっていた美琴と食蜂の身体が大きく震えた、彼女達は何が起こったのかと自分の身体に目を向けようとする…その瞬間世界が歪み始めた

 

「ど……た……み…と!?そ…にみ…きまで?!」

 

(せ、んぱい……?あれ?見えない?先輩も操祈も…?あれ?)

 

(聞、こえない……目の前が暗い…2人共……何処にいるの?)

 

彼女達の耳は微かに愛する者の声が届いた、だが彼女達の視界は真っ黒に塗り潰され身体が沈んでいくような感覚に陥っていく

 

(暗い、怖い…助けて……)

 

(あぁ…もう何も……考えられ…)

 

2人の思考は冷たい水の中に落ちるように沈んでいく……もう誰の声も聞こえないし届かない、その身を触られていてもその温もりも伝わらない…そして彼女達の身体にミサカネットワークから溢れ出た正体不明の黒い力が2人を依り代として注がれていく

 

 

「実験第一段階はクリア!では第二段階へと移ります!」

 

第二学区のとあるビルの屋上にて、病理は嬉々とした顔で地面に倒れた美琴と食蜂を眺めていた

 

「第五位と第六位を絶対能力者(レベル6)に迫らせる事で2人は一瞬だけ絶対能力者へと到達しその力を見ることが出来るのです…ま、その後は心身共に限界を迎え個体としては破滅、余波で学園都市も崩壊しちゃうんですけどねぇー」

 

外装代脳は食蜂の大脳皮質の一部から作り出したもの、ならば食蜂の脳を外装代脳で鑑賞しミサカネットワークから溢れたエネルギーを食蜂に注ぐ事も可能だ、そして美琴にもそのエネルギーを注ぐ事で2人は絶対能力者へと近づくのだ

 

「ま、科学に犠牲は付き物。仕方ないと『諦め』ましょう。学園都市も能力者も無関係な人達も消え去ってしまいますが…ま、帝督ちゃんと潤子ちゃんは無事生き残れるでしょうから私には痛くも痒くもありません」

 

彼女の目的は垣根と帆風だけ、それ以外が死のうが生きようが病理の知った事ではない。故に彼女はこんなトチ狂った事が出来るのだ

 

「さて、第五位 御坂美琴と第六位 食蜂操祈は天上の意思に到達できますかねぇ?」

 

 

「おい!美琴!操祈!返事をしてくれ!」

 

「退け上条!退かねェと何も……」

 

急に地面に倒れた2人の身体を揺さぶる上条、一方通行は上条にそこを退けと叫び上条を押しのけて美琴と食蜂の容態を調べようとしたまさにその時、二人の身体から凄まじい力が放たれ上条達はその力により吹き飛ばされた

 

「がっ……!?」

 

上条達はその力に吹き飛ばされ地面を転がる、二人の周囲には爆煙が生じ二人の姿を隠すかの様に煙が包んでいる…同時に空は暗雲に染まり風模様もおかしくなり始める。上条はゆっくりと顔を上げて美琴と食蜂が倒れていた場所を見る

 

「………美琴?操祈?」

 

バチバチと空気が焼ける匂いがする、ポツポツと雨が降り始めた…そして爆煙が晴れ始め超能力者達の視界にある存在が映り込んだ

 

「lnvm壊ynvnvjyksl」

 

「afvcbvhl滅nvnonv」

 

そこにいたのは美琴と食蜂であって美琴と食蜂でない存在だった。髪の毛が逆立ち、2本の巻き角が生え体を囲む様に羽衣をまとった美琴と額から天を穿たんばかりに真っ直ぐ伸びた角に天女の如き羽衣を巻いた食蜂…その姿はまさに雷神と水神だった

 

「……な、んだよ…その姿は……」

 

「「nyujjtl破ouvyalklt」」

 

上条の問いに二人は答えない、二人の口から漏れる言葉はかつて戦った天から堕ちてきた天使と同じノイズのかかった言語のみ…上条は大きく体を震わせ絶叫の如き悲鳴を上げる

 

「……なんなんだ、なんなんだよこれはあああああぁぁぁぁッ!!!!」

 

その叫びは雨の音によりかき消される、絶望の風が吹く、空を覆う暗雲の様に二人の少女の心は閉ざされ愛しい者の声も届かない。かくして学園都市に二体の科学の天使が顕現したのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




さて次回の敵キャラは雷神化美琴と水神化操祈です!水神化操祈はオリジナル形態ですがもう今更なので気にしないでください。水神化操祈の容姿はミコっちゃんと同じですが角のモデルはFateの酒呑童子の角を更に伸ばした感じと羽衣は羽衣伝説で天女が羽衣を着ている姿そのものです

そして今回は2回目の病理さんと加群さんの戦闘でした。人外の姿を真似る病理さんと単純な強さを誇る術式を振るう加群さん。加群さんは10分間だけしか戦えませんがその間ならねーちんとブリュンヒルデさん、トール君(雷神)ともいい戦いができますからね。実はかなりの強キャラです

さて次回は雷神化美琴と水神化操祈との大バトル。そして更なる驚きの展開が…

次回もお楽しみに!


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竜は愛しき人を守る

履歴書の文字全然均等に書けねぇ…丁寧にかせても10行埋めるの難し過ぎる…いやぁ履歴書と難しいけど面接の練習もキツイ…これをこなして働いてる今の人達で凄いな…尊敬します

さて、今回は雷神美琴と水神操祈の戦闘ですが……あんまり強く書けませんでした、それに少々雑いかもしれない。そして一言、いつからミコっちゃんとみさきちがラスボスだと錯覚していた?



空が曇りポツポツと雨が降り始めるも、大覇星祭の競技に参加していた生徒達は気にせず競技に熱中していた

 

「…あらあら、今日の天気では晴れていってたのに…」

 

「天気予報が外れたのか…傘とかカッパを持ってくれば良かったな」

 

「あれ?でも学園都市の天気予報も晴れだったわよね?確か学園都市の天気予報て樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)とかいうスーパーコンピュータで天気を確実に当てるんじゃなかったけ?」

 

「……確かに、なんか妙だな」

 

上条夫妻と御坂夫妻は突然降った大雨を気にする、学園都市の天気予報は他の天気予報と違い樹形図の設計者…別名 超高度並列演算処理器(アブソリュート=シミュレータ)で地球上の空気の分子ひとつひとつの動きまで正確に予測する事で確実に天気を当てる天気予報ならぬ天気予言を行なっている…なのにそれが外れるなどおかしいのだ

 

「…それよりさっきから競技を見ているが当麻達がいない様な気がするな」

 

「確かに…ウチのミコっちゃんもいないわ」

 

「……便所に行ってんじゃね?それともサボりとか見つけてねえだけとか」

 

「……それならいいんですけどね」

 

刀夜と美鈴は先程から上条達の姿が見えないのを訝しむ、旅掛は心配のし過ぎだとこぼすが詩菜はガブリエルの一件を思い出しまたあんな事件に関わっていないといいのだがと上条達を心配する…彼女はまだ知らない、まさかガブリエルの時の様な事件に自分の息子が関わっていることに。詩菜の不安を煽る様に学園都市に雷鳴が鳴り響いた

 

 

『えー、雨が降ってきましたが競技は中止になりません。どうか皆様風邪にならない様ご注意下さい』

 

『ぶるあぁぁ!出来るだけ濡れない様にするのだぞぉ!』

 

『まあ気をつけたまえしっかし土砂降りになりそうだな』

 

扶桑達は実況席で雨でも頑張って競技をする様にとエールを送る。木山は突然降ってきた雨を見て本降りにならないといいのだがと呟く

 

『むぅ…この雨、天使の力(テレズマ)に似た気配を感じるな……気の所為か?』

 

『?テレズマ?何ですかそれ?』

 

『気にするなぁ、単なる十字教の単語だ』

 

魔術師であるビアージオはこの雨が普通でないと何となく察する、だが人体には異常はなさそうなので放置する事にした

 

『……この雨、AIM拡散力場と同じ感じがするな……幻生さんに聞いてみるか』

 

 

サッカースタジアムで上条夫妻達の近くで競技を見ていたフィアンマ達は突然降ってきた雨に対して魔術を使う事で濡れるのを防いでいた

 

「聖なる右の力の維持が出来て良かったな…これで濡れずに済む」

 

「お前さ…もう少しその力を有意義に使わない?」

 

「優先する。人体を上位に、雨粒を下位に」

 

聖母の慈悲は厳罰を和らげる(T H M I M S S P)

 

「私と姫神を決して雨で濡らすな」

 

「わあ。雨に当たってるのに全然濡れてない」

 

フィアンマは第三の腕を傘代わりにして濡れるのを防ぎ、ヴェントは風を纏って雨粒を弾く、テッラは光の処刑で優先順位を変更しアックアは聖母の慈悲で雨を防ぐ。アウレオルスに至っては黄金錬成を使って雨で濡れない様にしていた

 

「……あのお前達?私達もその力で濡れない様にしてくれないか?一応私はローマ教皇なのだが?」

 

「そうだ!私はイギリスの女王だぞ!」

 

「私はフランスの影の支配者です…ゴホゴホ!」

 

「私は構わないからサーシャとワシリーサを濡らさない様にしてあげてくれ」

 

「俺もその素敵な力を使ってくれよ!俺は大統領なんだぜ!?」

 

諸外国の偉いさん方は雨でずぶ濡れだが神の右席は気にしない。とはいえ流石にぞんざいな扱いをしてはいけないと思ったのかテッラは光の処刑で自分と同じく濡れない様にさせる

 

「すみませんテッラ殿…ウチの馬鹿ババアがご迷惑を…」

 

「いえいえ、困った時はお互い様ですねー」

 

「あ〜でも私はサーシャちゃんに抱きしめて暖かくして欲しかったな〜」

 

「…………」

 

「サーシャ!?無言でバールを握りしめて何をしようというのだ!?」

 

「……殺す」

 

騎士団長はテッラに頭を下げテッラは困った時はお互い様だと笑いかける。ワシリーサはサーシャに抱きついて体を温めて欲しかったなーと呟き等々限界点を超えたサーシャは名状しがたきバールでワシリーサを殺そうとしてクランスに止められる

 

「……気づいているであるかフィアンマ」

 

「……当たり前だ、この雨の中に天使の力に酷使した力…垣根の未元物質と酷似した力が混ざっている事ぐらい気づいているさ」

 

「……ま、私の天罰術式と違って人体に害はなさそうだけど…なんなのかしらねコレ?」

 

「敵からの攻撃…ではなさそうですねー。ですが異常事態なのは確かです」

 

神の右席はこの雨に不思議な力が混ざっているのに気づいていた。ワシリーサや傾国の女、クランス、マタイ達といった魔術に長ける人物達でも気付くことが出来ず、四大天使の力を持つ神の右席の面々でしか気づく事が出来なかった雨に四人は不安を覚える

 

「……何か良からぬ事が起こっているな。一般人に被害が及ばなければいいのだが」

 

フィアンマはこの雨が今の所は人的被害がない事を確認しつつも警戒を緩めない。傘代わりにしている聖なる右でいつでもあの暗雲を破壊できる様にフィアンマは身を構える

 

「……まあそう大事な事態にはならんだろう。何せこの街には超能力者がいるのだからな」

 

 

その雨の異常はインデックスも気づいていた。その雨に垣根の未元物質と酷似した力が混ざっている事にインデックスは一発で気づいていた

 

「……かおり、ステイル。気をつけておいた方がいいかも…」

 

「……ええ、この気配…忘れはしません。初めて垣根帝督て出会った時、翼から感じた気配に似ています」

 

「念の為に気をつけておいた方がいいだろうね」

 

彼等は絶賛玉入れの最中だが球を投げながらそんな会話をするだけの余裕があった。インデックスが即興で考えついた「十二使徒マタイの伝承」を基とした術式を使い適当に玉を投げれば籠の中にボールが勝手に入っていくのでただ投げるだけの仕事だ。そこ為話すだけの余裕がある

 

「玉入れが終わったらこの雨の原因を調べてみるよ。ステイルはもとはるに連絡して協力要請をして、かおりは私と一緒に対抗策を練って」

 

「任せてくれ」

 

「分かりました」

 

「……でも、私達が出る出番はないと思うんだよ。だってこの街にはていとく達がいるもん」

 

インデックスは一応の指示を出すが自分達の出る幕はないと思っていた。何せこの街には自分やインデックスの先生すら救ってくれたヒーローがいるのだから

 

「玉入れて楽しいね佐天さん、初春さん」

 

「……凄い、マシンガンの如く玉を拾って投げて籠の中に入れてるよ」

 

「……見てください敵チームの顔…もう半泣きですよ」

 

「「「師匠達ズルい…こっちは全然入らないよぉ」」」

 

風斬は残像が見える程の速さで玉を投げまくる。それは阿修羅の腕、どんどん玉が過去の中に入っていきそれを見て佐天と初春は顔を引きずらせる。なお三馬鹿弟子は一つも玉を入れられないでいた

 

 

 

雨が強く降る、大地に雨粒が当たり弾けて辺りに飛び散る。時折暗雲の中から稲妻が走り地上へと飛来し轟音を轟かせる…大雨の中上条達はその場に立ち尽くして目の前の存在を凝視していた

 

「oavuyaj敵okvj駆vblj除atvggly」

 

「zlkvafkort掃fjo討lnvn開yjvurp始u」

 

目の前に立つのは雷神と水神と化した美琴と食蜂。彼女らは人外の様な姿になって敵意の目で上条達を眺める。一方通行と削板は彼女らの身体やこの雨から自分達が発現した翼に酷似した力を感じ取った

 

「……分かるか一方通行…この力」

 

「あァ……間違いなく俺らと同じ『力』だ」

 

二人の頬に冷や汗が流れる、自分達の『羽』と同じ力を持つ美琴と食蜂の力を上条や麦野よりも理解していた

 

「ykln攻nokv始okcelg」

 

「!?攻撃が来るぞ!」

 

美琴が口からノイズのかかった言語を話すと同時に暗雲から雷が落ちて来る。麦野の一声により全員が急いでその場から離れる。直後に落雷が飛来し地面に大きなクレーターを出現させる。そのあまりの威力に一方通行は目を見開く

 

「なッ!?威力高過ぎだろ!?」

 

今の美琴が操る電撃や電磁力は通常の数十倍にも匹敵する。それを軽々と操る美琴に一方通行は戦慄する

 

「oafkvslh壊ln」

 

矢継ぎに落雷を放つ美琴、それは雷の雨だった。第二学区に降り注ぐ雷の雨は一方通行の反射膜に当たっても美琴に跳ね返るのではなく横に逸れるだけ…削板は謎のエネルギーを両手に纏ってはたき落とす、麦野は原子崩しを展開して電撃を逸らし0次元の極点で回避する、上条も己が右手を雷へと向け霧散させていく

 

「tjeiy攻fuvnlgs」

 

ここで食蜂が動いた、彼女が口をゆっくりと開けると口から謎の言語が綴られる。それと同時に上条達の脳に直接浸透するかの様な激痛が走り全員が頭を抱える

 

「な……!?」

 

上条は無意識に右手で頭を抱える、そして右手が頭に触れた途端ガラスが割れる音が響き激痛が唐突に消える

 

「まさか、今のは……」

 

上条は気づいた、今の激痛は食蜂が起こしたのだと。だがその能力の威力は桁違いだ。今までの食蜂の能力なら一方通行や削板、麦野に何の影響も与えられなかった。それをこうして激痛を与えているのだ…それだけで彼女の今の能力は普段の数十倍と上条は理解した

 

「止めてくれ二人共!どうしちまったんだよ!」

 

「「sjealo対ynaj象obl変lvib更ave」」

 

上条は二人に向かって叫ぶ、だが彼の声は二人には届かない。返ってきたのは美琴の手から放たれた雷撃の槍と食蜂の精神攻撃だった。上条は右手で雷撃の槍を消し激痛を消す為に頭に触れる

 

(どんなけパワーアップしても俺の右手が触れれば消せるみたいだな……なら)

 

「美琴と操祈の身体に触れれば終わりて事だろ!」

 

どれだけ強力になってもそれが異能である限り、上条が持つ幻想殺しの敵ではない。美琴と食蜂もかつてのインデックスの様に身体に触れれさえすれば元に戻るはずだと信じ二人へと走り出す

 

「うおおおおぉぉぉぉぉ!!!」

 

「bzafslm雷ikvjm放oafjq」

 

「ynjoxm妨aobcjv害bokvnleadljg」

 

上条へと迫る落雷に雷撃の槍、それらを彼は右手で消しあるいは避けて二人へと接近。脳に直接激痛が走ろうが右手を軽く頭に当てて痛みを消し去る。雨がより一層激しくなる。まるで上条の行く手を阻むかの様に…だが上条は止まらない、ひたすら真っ直ぐに美琴と食蜂目指して大地を駆け抜ける

 

「届けぇぇぇ!!」

 

二人へと幻想を殺す右手を伸ばす上条、その手は美琴が放った雷撃の槍を破壊し二人の身体に後少しで届く…その瞬前で脇腹に水球が命中し上条は横に吹き飛ばされる

 

「が、ッあああああぁぁぁぁ!!?」

 

何度も地面をバウンドしビルの壁に激突、そしてビルの一部が崩れその瓦礫に上条は埋もれてしまう、美琴は吹き飛ばした上条の事など気にせず一方通行達へと落雷を降り注がせる。食蜂も精神的苦痛ではなく降り注ぐ雨の水を集め水球として放つ

 

「noujo対okvxlahleycnkty象kvnagnt」

 

「fcnlxvgi殲afulonlbcevxskll滅oulabvcu」

 

「チッ……なンつう攻撃だ…回避しきれねェ!」

 

降り注ぐ雷の雨に弾丸の如き水球、一方通行は反射のお陰で傷一つないが雷が地面に激突し爆煙が生じ美琴達が見えない、削板は素手ではたき落せる量を超えその身一つで何とか堪える。麦野も原子崩しでは逸らしきれないと見て0次元の極点で遠方へと移動する

 

「……使うしなねェみてえだな」

 

「ああ、俺達も本気でいかねえとな」

 

一方通行と削板はこのままでは拉致があかないと考え一方通行は背中から黒い翼を、削板は赤青黄の煙で構成された4枚の翼を展開する。削板は音速の何十倍もの速度で美琴と食蜂へと迫りそれに美琴が反応し空から削板を埋め尽くさんばかりの雷を降り注がす

 

「うおおおお!!!根……性!」

 

削板は頭上へ向けてすごいパーンチを放つ、雷は見えない力に粉砕され霧散し暗雲に大穴が開く。食蜂はノイズのかかった声を出して削板へ向けて水の刃を放つ。地面を容易く削り人体を切断するその刃は削板の前方に高速で移動して現れた一方通行によって反射される

 

「さっさと目ェ覚ましやがれ!」

 

そう言って背中の翼を百に分裂、棍棒の如き百の黒き翼は二人へと迫る、美琴は周囲に電撃のバリアを張るが黒い翼はそれを容易く破り翼の先端が彼女らを捉える。凄まじい音と爆煙が発生し二人の姿を見えなくする

 

「……やったか?」

 

「…削板、それはフラグて言うンだぜ」

 

爆煙が晴れるとそこには無傷で宙に浮かぶ美琴と食蜂の姿が見えた。彼女らは無感情に落雷を降り注がせ水球を飛ばす、一方通行は黒い翼でそれをガード、削板は腕をクロスさせる事で攻撃を耐え抜く

 

「少し手荒になるが…根性を入れ直してやる!」

 

削板は美琴と食蜂へと接近しその拳を振るう、対して美琴は電撃を纏った腕で削板の拳を受け止めようとするも受け止めきれず後方へと吹き飛ばされる

 

「onlaefnk何ovxok?!」

 

「いくぞ…すごいパーンチ!!!」

 

吹き飛んだ美琴はビルに激突する前に空中で踏み止まり自身の周囲に無数の雷撃の槍を形成し削板へと投擲、削板は防御ではなく攻撃を選びすごいパーンチで雷撃の槍を蹴散らし美琴へと真っ直ぐ向かっていく…だが美琴は周囲にあった金属片を動かしそれを超電磁砲として放ちすごいパーンチと激突・爆裂させる

 

「lkoblbo救lnynv援nl……!」

 

「オマエの相手は俺だぜェ!」

 

食蜂はいくつもの水球を作り出し削板へ放とうとするが一方通行が黒い翼を棍棒の様に振るい、食蜂はそれを水の壁を作る事で防御。一方通行へと水の柱を数十本放つが反射でそれを横へと逸らし食蜂へとその手を伸ばす

 

「悪りィがここで気絶してもらうぜ!」

 

ベクトル操作で血液・生体電流の操作を行い気を失わせようとする…だが食蜂は大きく口を開きノイズの悲鳴を上げる

 

「glevaynlnojlykv狂xynyuvxdahllilcokv!」

 

「なァ……!?」

 

それはセイレーンよろしく人を狂わす声だった。今までの激痛を与える攻撃ではなく五感を惑わし狙いを狂わせる…狙いが狂った一方通行の手はあらぬ方へと向かいその隙に食蜂は距離を取る

 

「uykl撃afklk破vulgk!」

 

「jo圧svklkvxvnl砕celxvsckvhylcj!」

 

美琴と食蜂が同時に悲鳴の如きノイズの咆哮を叫ぶ、すると二人の姿が変化し始め美琴の角が合体しそこから第三の目が出現する。食蜂の角は更に伸び∞文字の形に変形させる。更に両者共背中から濃縮されたエネルギーの塊で構成された翼を顕現させる

 

「……おいおい、垣根といい一方通行達といい…超能力者は覚醒すると翼が生える法則でもあるのかよ!」

 

麦野は思わずそう悪態を吐く、美琴の翼は雷鳥(ガルダ)を連想させる物質化したAIMと電熱融解した金属を融合させて構成させた翼。対して食蜂は白鳥(ハルピュイア)の様な美しさを秘めた青く輝く実体化したAIMと圧縮した水の塊が混ざり合った四枚の翼。それらの翼は神々しさと禍々しさが混沌の様に混じっていた

 

「「cnyuykyuslxrj反hoavr撃ynlbgrv」」

 

「み、こと……みさ、き…」

 

恋人二人の変わり果てた姿を見て瓦礫に埋もれた上条は小さく呻いた

 

 

垣根と帆風は第二学区を駆ける

 

「この雨…AIM拡散力場の力が混じってやがる…しかもこの純度…こりゃ想像以上にヤベェな」

 

「それにこの暗雲も怪しい気配を感じます、恐らくこの先に感じる謎の気配の正体がこの事件の元凶かと」

 

「ならさっさと倒すに限るな」

 

二人はこの異常事態に気付き、第二学区から怪しい気配を発する存在へと近付こうとしていた

 

「おっと、そうはさせませんよー」

 

「「!?」」

 

垣根と帆風目掛けて降り注ぐ黒い羽の雨、二人はそれをバックジャンプで回避し羽を飛ばしてきた人物を見る、背中に黒き三対の翼を生やした女性…木原病理はニンマリとした笑みを浮かべ垣根達を見ていた

 

「お久しぶりなのです、元気でしたか帝督ちゃん、潤子ちゃん」

 

「今テメェの顔を見て元気が無くなったよ」

 

「右に同じですわ」

 

「あら、つれない反応ですねー。病理さん悲しくなってしまいます」

 

病理を睨みつける垣根と帆風、それを見てあからさまな嘘泣きをし始める病理。二人は気付く、この雨の元凶は病理だという事に

 

「テメェだな、この雨の元凶は」

 

「あ、バレちゃいました?まあ、この雨の直接な原因を作ったのは私ですよ?でも…この雨を降らせているのは私じゃない」

 

「……どういう事です」

 

病理は悪魔の如き微笑を浮かべる、そして一息ついてから垣根達に真実を伝えるのだ

 

「この雨を降らせているのは第六位ですよ。ついでに雷を鳴らしているのは第五位です」

 

「……御坂さんと女王が…?」

 

「……まさか、テメェ……」

 

「ええ、帝督ちゃんの考えている通りです」

 

この事件の元凶は美琴と食蜂だと告げると帆風は目を大きく見開き驚愕する、そして垣根が病理の考えている事を予想し病理がにっこりと笑う

 

「私の目的はただ一つ、絶対能力者とはどれ程の力を発揮するのか?それが見て見たいだけなんです」

 

「………それだけですか?それだけで…こんな事を?」

 

「ええ、だって調べたいのが研究者としての性ですから。二人だって同じでしょう?もっと色んな事を知りたい、相手の事をもっと知りたい…人間はと知識欲の塊です。ですから私が行おうとしているのは人間として普通の事なんですよ。規模は桁違いですが」

 

病理はただ見て見たいのだ、絶対能力者(レベル6)の力の片鱗を、だから美琴と食蜂を実験動物として選び学園都市を大きく巻き込んで自分の知識欲を満たす為だけ(・・)にこんな事をしたのだ

 

「……それだけで俺らの大覇星祭を邪魔したのか?……巫山戯んじゃねえぞコラ」

 

「いつだって私は大真面目ですよ?まあ、帝督ちゃん達には邪魔をされるとあれなので…ここで私と遊んでもらいましょう!」

 

垣根は背中から三対の白い翼を展開、帆風もカマエルの力を宿し病理へと迫る、対して病理は黒い翼で空を飛翔しながらも外装代脳で得た心理掌握の力を使い美琴と食蜂の深層心理を誘導していく

 

「ふふふ、さてまだ17%の強さしか引き出していない様ですが…後どれくらいで絶対能力者になるんですかねぇ?」

 

病理のそんな呟きは第二学区に降り注いだ雷の音に掻き消された

 

 

「tbjynfelg雷elegvn雷ynleyyks雷onva」

 

「oevb狂vulejn乱leln」

 

降り注ぐ雷、雷、雷。視界を埋め尽くす雨、脳に直接響く激痛。第二段階(Phase 5.2)なった美琴と食蜂にイサクと宛那をも圧倒した一方通行と削板の黒い翼と赤青黄の翼ですら防御するのが精一杯だった

 

「ぬ、おおおおおぉぉぉぉ!!」

 

「チッ……急に勢いついてきたじゃねェかこいつら……!」

 

削板は赤青黄のカラフルな爆破を盾にして空から降り注ぐ落雷絡みを守り、一方通行は黒い翼を暴挙に専念させる事で水球を防ぐ。もし二人が普通の能力者ならば精神攻撃である激痛に苛まれ演算がまともにできずここで死んでいただろう。だが削板は能力者ではなく原石だ、故に激痛で能力が使えないということはない。対して一方通行は激痛に苛まれ反射が弱まってしまったが黒い翼は演算を必要としない、それを利用して黒い翼で水球から身を守っているのだ

 

「mlkckl優bfkvy位ynj」

 

「cnlvylk勝lnvnv定ouvdnj」

 

天使達は攻撃を緩めることはない、確実に一方通行を殺す為に更に威力を上げていく…天から無限に降り注ぐ雷と水球が二人を埋め尽くす…それを防ぐ事しか出来ない一方通行と削板、だが攻撃が二人に集中している為麦野は瓦礫に埋もれた上条の元へと0次元の極点を使って現れる事が出来た

 

「おい大丈夫か上条!?」

 

「麦、野の……か」

 

麦野は原子崩しを上条に当てない様に丁寧に瓦礫に向けて放つ、瓦礫は見事に融解し彼女は上条を瓦礫の山から救出する

 

「悪い…助かった」

 

「礼はいいからさっさとあの二人にお前の自慢の右手で触れてこい、お前の右手ならあいつらに起こった異常も破壊できるんだろ?」

 

「……言われなくても」

 

麦野が美琴と食蜂を元に戻せと言うと上条は即座に頷き二人の元へと駆ける、彼の幻想殺しはどんな異能をも打ち砕く。この右手にかかればインデックスを縛り付けていた呪縛もアウレオルスの黄金錬成も一方通行の反射でさえも打ち消す異能殺しの一撃だ。美琴と食蜂が何かの力で操られているのならそれを破壊すればいい、彼にはそれが出来る幻想殺し()がある

 

「何処のどいつかは知らねえが…俺の美琴と操祈に手を出すつもりなら…その巫山戯た幻想をぶち殺す!」

 

幻想片影で削板の原石の力を再現しその音速の二倍の速度で二人へと迫る、二人がそれに気づいたのは上条の右手があと少しで届くその寸前だった。もう何をしても上条の手は美琴に届く

 

(これで終わりだ!)

 

幻想を終わらせる力(幻想殺し)が雷神と化した美琴に触れた、触れた箇所の表面から美琴を覆っていた謎の物質が消え始め上条が安堵しかけたその時

 

「onlbalkvt修yklka復yuilbsyxl」

 

「………………え?」

 

何事も無かったかの様に(・・・・・・・・・・・)触れた箇所は元通りに戻った。それを見て上条は何が起こったのか分からなくなった。そして上条目掛けて一筋の落雷が放たれた

 

「!?う、おおおぉぉぉ!!?」

 

上条はそれに反応し右手でその落雷を消す、その隙に美琴と食蜂は翼を羽ばたかせて空へと飛翔し上条から距離を取る

 

「消せなかった…?俺の…右手でも……?」

 

幻想殺しで消せなかった異能は意外と多い、聖なる右や竜王の殺息、この世界ではなかったが魔女狩りの王もその内の一つだ。そう美琴と食蜂の今の状況もそれに酷似している。要するに消しても即座に再生してしまうので幻想殺して触れても無駄なのだ

 

「okvj危onlt」

 

「oafj破yoojjy」

 

幻想殺しの届かない空中へと逃げた美琴と食蜂は落雷と水球を上条目掛けて無限と称しても過言ではない程の量を放つ、上条は咄嗟に竜王の顎を顕現させ竜王が咆哮を轟かせると落雷と水球は全て消滅する。だが二人は竜王の顎が届かない場所へと更に逃げる

 

ーーーグギィガアアアアァァァ……!ーーー

 

「届きさえすれば…絶対に助けられる!」

 

そう竜王の顎は今までも幻想殺しでは消去できなかった光を掲げる者(ルシフェル)神の力(ガブリエル)ですら喰らい消し去ったのだ。ならば美琴と食蜂の呪縛を解くぐらい簡単な筈だ…そう思い上条は竜王を二人へと向けた瞬間、二人を包むオーラが変質する

 

「「oklelkvmout滅v…nadlhteo滅oklnokvyoj…oklnyxvyoktlo滅lkontッokonjk!」」

 

「な……!?」

 

美琴と食蜂の角が頭部から分離した、彼女らの頭上に現れたのは緩やかに回転する天使の光輪。更に頭部に影の様な何かが張り付く…その姿はまさに異形な天使そのもの。翼と更に肥大化し数十メートルに逹する…これが第三段階(Phase 5.3)、第二段階とは桁違いの力を扱う姿だ

 

「……マジで何なンだよこれはよォ!」

 

「そろそろ……限界……だ!」

 

一方通行と削板ももう限界だった、何千何万回も落雷と水球を喰らい、たった今進化した二人の攻撃は更に威力が上がった…もう防ぐのもキツい。カラフルな爆発の間から落雷が漏れ削板の身体を焼き水球が黒い翼の間をすり抜け一方通行の肌を切り裂く

 

「くそ……!」

 

麦野の0次元の極点ですら何処へ逃げても逃れられない程の攻撃が襲ってくる。更に雨自体も豪雨などのレベルで収まらない程になり雨粒が地面に当たる度に地面に亀裂が入りそのを直接人体に食らうと時速115km/hの野球ボールを当てられた程の痛みが走る

 

ーーーグギィガアアアアァァァ……ーーー

 

竜王ですら上条の周囲に降り注ぐ雨と落雷、水球を消すので精一杯だった、アウレオルスの時と違い垣根の元へ行った竜以外の他の6匹の竜が出る気配はない…

 

「……そうだ、心理掌握を使って二人の心理を覗くことは出来ないか?」

 

上条は心理掌握を使って二人の心を読む事は出来ないのかとふと考えつく、幻想片影で心理掌握を発動させ二人の心の奥底を覗こうとする…美琴には電磁バリアで弾かれるかと思ったがすんなりと心の声が聞こえてきたので上条は意外そうな顔を仕掛けるが同時に上条の頭の中に入ってきたノイズのかかった声に上条は耳を塞ぎたくなる

 

『ou司lxvklyvuoxvlkgy令vkyyt』

 

『ynlaokl達yklnyuvoyvyok成akyxvuty!』

 

(な、んだこれ…頭が割れそうな…全く理解できねえ…)

 

意味の分からないノイズのかかった言語、上条はそれを聞いて耳を塞ぐ、この世のありとあらゆる騒音雑音を集めたかの様な響きに耐えられなかった…だがふとノイズのかかった言語ではない声が聞こえた

 

『……け……』

 

『…た………』

 

(……美琴と操祈の声?)

 

『………助、…けて』

 

『た、すけ……上…さ…ん…』

 

(!俺を呼んでるのか!?)

 

それは間違えなく上条の愛する二人の声だった、二人は助けを求めていた。まるでそれは何も見えない暗い部屋で一人で泣きじゃくる子供の様な小さく弱々しい声…二人は上条に助けを求める

 

『何にも見えない…ねえ、ここは何処なの?何なのこれ?何でこんな目に合わなきゃいけないの?』

 

『今日は三人で楽しく大覇星祭を楽しむ筈だったのに…暗い、暗いよぉ…助けてよ上条さん…』

 

第二学区に正体不明の黒い球体が出現する、それは操祈と美琴が異世界から引き出したエネルギーで構成されていた

 

『助けて、助けてよ…先輩……もう1人は……嫌。早く助けてよ……先、輩…』

 

『……上条さんなら…きっと…助け、て…くれる筈よねぇ…だって貴方は私の…ううん、私達の…ヒ……ロー…』

 

2人の声が徐々に遠ざかっていく。2人の人格が別次元の存在へと変わっていく。それと共に球体が巨大化し降り注ぐ落雷と豪雨が強まっていく…それを上条は眺める事しか出来ない

 

「な、んでだよ……」

 

上条は思う、何故こんな事になった?自分達は大覇星祭を楽しみたかっただけなのに…何故こんな事になったのかと

 

「巫山戯るな!俺らが何をしたっていうんだよ!こんなのおかしいだろ!何で…何で美琴と操祈がこんな目に合わなきゃいけないんだよ!?巫山戯んな巫山戯るな巫山戯るなぁ!」

 

今の彼はヒーローではなかった、ただ目の前の理不尽を受け入れられない平凡な高校生だった。そしてこんな事態を招いた病理に怒りと憎悪を向ける…自分にもっと力があれば美琴と操祈を助け、病理を倒せるのに

 

(力が…力があれば…もっと俺に…帝督みたいな力があれば……畜生!畜生ぅぅ!!)

 

力を求める上条、力があれば病理を倒し2人を救えるのにと…

 

(そんなに力を望むのか?)

 

「!?……誰だ…!」

 

突如頭に鳴り響く声、上条は周囲を見渡すが誰もいない…だがまた声が聞こえる

 

(俺はお前だよ、神浄討魔(・・・・)

 

(……俺?)

 

上条はいつの間にか暗い闇の中にいた、そして背後にいたのは上条と全く同じ姿をした人物。彼は上条と顔を見合わせるとクスリと笑って右手(・・)伸ばす

 

(力が欲しいんだろ?なら貸してやるよ。というか元々お前の力なんだけどな)

 

神浄の右手から現れたのはスカイブルー、レモンイエロー、ショッキングピンク、エメラルドの色彩。それらが上条の右手へと向かい竜王がそれらの色彩を飲み込む

 

ーーーグギィガアアアアァァァ!?ーーー

 

「がぁぁぁぁ!!?」

 

「精々その力に飲み込まれないよう頑張ることだな」

 

その色彩が身体の中に入った途端苦しみ悶え始める上条と竜王、それを見た神浄は踵を返して闇の中へと消えていく…それを見た上条は去りゆく神浄に口を開く

 

「ま、て…お前は…一体…?」

 

「……はぁ、ちゃんと言っただろ?」

 

神浄は呆れた顔をしながら上条へと身体を向ける、そして最後にこう告げるのだった

 

「お前は俺で俺はお前だ」

 

その言葉を最後に上条の意識は暗転した

 

 

 

「グギィガアアアアァァァ!!!」

 

「「「!?」」」

 

「「okvka何ynla…?」」

 

突如豪雨の中に鳴り響いた咆哮、一方通行達はおろか美琴と操祈ですら驚き咆哮が聞こえた場所を見入る。同時に全員が冷や汗をかき始める…そして一方通行達は見た、雨の中を何かが飛び去った姿を

 

「……ドラゴン?」

 

それは絵本に出てきそうなドラゴンそのもののシルエットだった。その影は球体へと真っ直ぐ飛びその右手(・・)を向け…球体を斬り裂いた

 

「グギィガアアアアァァァ!」

 

それと同時にガラスが砕けるように破壊される球体、バラバラと何かに変質する球体…謎の影は咆哮を上げながら暗雲へと突っ込む…そして暗雲に向けて右手(・・)を振るい暗雲を斬り裂いた

 

「!雲が消えていくぞ!?」

 

斬り裂かれた場所から徐々に暗雲が消滅していく…雨と落雷は止み暗雲で隠されていた太陽が見え始める…それによりその謎の影の正体が露わになる

 

「グギィガアアアアァァァ!!」

 

「……なンだアレ?」

 

ワニのような大顎にコウモリのような翼、そしてスカイブルー、レモンイエロー、ショッキングピンク、エメラルドという不可思議な色合いを持つ身長2メートル程のドラゴンだった。その竜はジロリと美琴と食蜂を睨むと竜は音速の何倍もの速度で2人に迫る、それを見て美琴は周囲の金属を集め超電磁砲を放つ。その超電磁砲は通常の何十倍の威力を秘めていた…だがその竜は右手を伸ばしその四肢から飛び出した鉤爪で超電磁砲を切断、斬り裂かれた超電磁砲は光の粒子となって消えていく

 

「……あれは、上条の…」

 

麦野はあの右手は幻想殺しだと気づく、超電磁砲はその右手で消されるが何発かはドラゴンに命中する、だがそれを喰らってもドラゴンは無傷だった。そしてドラゴンは右手を美琴と食蜂に軽く触れさせる…それだけで2人を蝕んでいた何かが消え2人は元の姿に戻る

 

「グギィガアアアアァァァ…」

 

右手と左手で生まれたままの姿となった美琴と食蜂を優しく掴むドラゴン…地面にゆっくりと2人の少女を置く

 

「……まさか、オマエ……上条か?」

 

「…………」

 

一方通行の声にそのドラゴンは何も答えない、だが一方通行達は理解した、このドラゴンは自分達の友だと

 

「…す、凄えな当麻!お前ドラゴンになれるのか!?」

 

「……まあ、右手が竜になるくらいだしな…」

 

削板は目を輝かせてドラゴンを魅入る、麦野もこいつなら何でもありだなと呆れる

 

「…なンにせよ、これで一件落ちゃ…」

 

一件落着、そう一方通行が言いかけた時だった、突如ドラゴンが顎を大きく開け咆哮する

 

「グギィガアアアアァァァ!!!!!」

 

「「「!?」」」

 

そのまま翼を広げある方角を睨みながらドラゴン…上条は憎悪の唸りを上げて空を飛翔する。そう、まだ終わっていない

 

「おい!何処に行く気だ!」

 

一方通行の言葉は上条には届かない、彼は止まらない。自分の敵を全て排除するまで止まらない。そして彼は誰が敵か誰が味方か理解していなかった。ただ分かるのは美琴と食蜂を害する存在を滅ぼす。それだけ

 

「グギィガアアアアァァァ!!!」

 

その為なら世界も滅ぼせる(・・・・・・・)、まず手始めに美琴と食蜂を苦しめた病理を殺す、その次に2人に害を与えそうな敵を殺す、最終的には美琴と食蜂以外の人類を滅ぼす…そんな可能性すらある

 

「グギィガアアアアァァァ!」

 

「……先、輩……?」

 

「……上条、さん?」

 

美琴と食蜂は目を覚ましていた、2人は薄っすらと開いた目で空を飛ぶドラゴンを見つめ愛する人の名を呟く…だがその声は神浄の力に溺れた上条には届かない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




バーサーカーと化した上条さん、因みに姿は新約22巻リバースで見せたドラゴン態のスカイブルー、レモンイエロー、ショッキングピンク、エメラルドの四色の姿です。てかなんか色々展開が雑な気が…多分作者は疲れてるんですね…寝よう

さあ、次回は多くのキャラを巻き込んだ上条さん暴走回、アックアさんからキャーリサ等々強敵が上条さんに挑み掛かる。そしてドラゴンの暴走を止めるのは……

次回もお楽しみに!


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竜を救うのは力ではなく愛する者の言葉

今回も割と雑いかもしれません…それにまた評価が下がってて若干テンションが下がってます…もしかしてこの小説てそんなに面白くない?

まあそんな事は置いておいて…今回は上条さんの暴走…フィアンマさん達とバトルしたりていとくんとバトルします。でもその戦闘描写が雑かも…ああ、かまちーの文才が欲しい

そして最後ら辺にあのキャラがご登場…そして大覇星祭にはまだ続きがあるのです



垣根と帆風は暗雲が突如として消えた事に気付き、病理との戦闘を中断して空を見入る

 

「……暗雲が消えた……?」

 

「……何が起こったのです?こんな事起こる筈がないのに…」

 

垣根は暗雲が消えた事を訝しむ、病理ですら何が起こったのか分からないらしい…一体何が起こったのか垣根が考え始めたその時、血を揺るがす程の大咆哮が轟いた

 

「グギィガアアアアァァァ!」

 

「「「!?」」」

 

三人は空を目を見開いて空を見上げる、そこにはワニのような大顎にコウモリに似た翼、スカイブルー、レモンイエロー、ショッキングピンク、エメラルドの体色を持つ約2メートル程の大きさのドラゴンが飛翔していた

 

「……上条…さん?」

 

「……おいおい、どういう事だよアレは…!」

 

帆風と垣根はあのドラゴンが上条だと察した、姿形は違っても長年共にいた友人を見間違う筈がない。上条は大きく吠えた後病理目掛けてダイブ、その右手の鉤爪で病理を切り裂こうとする

 

「!?形態参照 フロッグマン!」

 

病理の足に鱗が生え足の指の間の水掻きが出来る。その強化された脚力で大きく飛び跳ね後ろへ5メートル程退がる、直後に上条の鉤爪が地面をバターの様に裂き地面にクレーターが出来る。即座に病理は反転物質で形成された杭をスカイフィッシュの左手で投げ放つ。だが上条は右手で杭を消滅させる

 

「これは……まさか、幻想殺し…?まさかこのドラゴンは……」

 

「グギィガアアアアァァァ!」

 

病理の言葉など聞きたくないとばかりに上条はその鉤爪を振るう、それは病理を引き裂く為の刃、病理はそれを跳躍して避ける。そして何度も何度も回避するが上条は音速の速度で病理に爪を振るう

 

「ふ、ふふ…あはは!前から思ってましたが貴方のその力は面白いですね!帝督ちゃんと潤子ちゃん程ではありませんが興味が湧きました!」

 

病理はこの状況を楽しそうな顔をして笑う、今回はただ美琴と食蜂を暴走させるだけの予定だったが…もう少し上条で遊ぼうと邪悪な笑みを浮かべる

 

「では、遊びましょうか第二位。形態参照 サンダーバード」

 

「グギィガアアアアァァァ!」

 

巨大な鳥へと変貌する病理、彼女は音速の何倍もの速度で空を駆ける。上条も病理を追う為に翼を広げ病理と同じく音速の何倍もの速さで空を引き裂かんばかりに飛行する

 

「……追うぞ」

 

「……ええ」

 

垣根は翼を広げ帆風はガブリエルの翼を展開せずとも飛行できる能力を引き出す、二人は何が起こっているのかまだ半分も理解していなかった。だがこれだけは分かる、上条(友達)を止めなくてはならない。それだけで二人が上条を助けに行く理由は充分だった

 

 

「お、雨が止んだみたいだな」

 

「……と言うより雲が消えていってない?」

 

「……なあ母さん、これって…」

 

「……ええ、あの時と同じ」

 

旅掛は雨が止んだと笑うが美鈴は雲が放射状に消えていく現象を不可解だと首を傾げる。その光景を見て刀夜と詩菜はガブリエルとの戦いで見たあの不思議な光景を重ねる。生徒達もその現象を訝しんでいたその時だった

 

「グギィガアアアアァァァ!」

 

『!?』

 

その轟く咆哮に全員が空を見上げる、空には二つの影があった。一つは黒き巨大な鳥の姿、そして四色の体色を持つドラゴンだ

 

「グギィガアアアアァァァ!!」

 

「あははははははははははは!!」

 

鳥は狂った様な笑い声を上げドラゴンは怒りの咆哮を轟かせる、二体は互いの身体をぶつけ合いながらサッカースタジアムへと降り立つ。上条は右手を大きく振り上げ鉤爪を振るう、幻想殺しであるその腕は反転物質という異能で出来た病理を消し去る、だが病理は地を蹴りその右手から逃れる。病理は口を開いて雷撃を放ち反撃に出るも上条の外殻には一切の傷はない

 

「グギィガアアアアァァァ!」

 

『……!み、皆さん早くスタジアムから逃げてください!冷静に落ち着いて!巻き込まれない様に早く逃げて下さい!』

 

目の前の大怪獣バトルに生徒達や先生達、観客達は呆然と眺めていたが扶桑はいち早く正気に戻り避難指示を出す、全員が彼女の言葉で正気に戻りスタジアムから逃げ始める…それは旅掛と美鈴も同じだった

 

「おいおい!リアルでの大怪獣バトルはシャレになんねぇて!」

 

「そんな事言ってる暇があったら早く逃げる!て、え!?何ボーとしてるんですか詩菜さんと刀夜さん!?」

 

旅掛と美鈴は急いで荷物を片付け始めに逃げる支度をする。だが詩菜と刀夜はドラゴンを眺めており何をしているのかと美鈴が叫ぶ

 

「グギィガアアアアァァァ!」

 

「あははは!第四位の原子崩しでも傷一つ追わないとか…それにその身体能力…面白い!」

 

病理はサンダーバードの姿で原子崩しを乱射、ドラゴンは右手の幻想殺しで原子崩しを消し去るも対処しきれなかった原子崩しが何発か身体に命中。だがそれでもその身体にダメージはなかった。病理は大きく口を開け極太の原子崩しを放つも上条はそれを右手で消し去る…それを見て刀夜と詩菜はドラゴンの正体に気づく

 

「……当麻、なのか?」

 

「当麻………さん?」

 

「グギィガアアアアァァァ!」

 

詩菜と刀夜はあのドラゴンが自分達の愛する息子だと理解する、姿形は違えど両親である二人が気付けぬ筈はなかった。ドラゴン…上条は両親の事など気付かず爪を振り回す。病理はそれを容易く避け回避に専念する

 

「ハァ!」

 

「……ほう?」

 

だが突如として病理の右の翼が切断された、右の翼は地面へと落下し病理は最初は不可思議な顔をしたがすぐに何が起こったのか理解し刀夜達がいる観客席へと顔を向ける

 

「悪いけど今日は大覇星祭の日であって大怪獣バトルの日ではないの。そんなに怪獣バトルがしたいんなら宇宙にでも行けし」

 

「……魔術師…ですか、私の反転物質をこうもあっさりと…」

 

「反転物質…確か垣根の未元物質と似て非なる物質だったか?まあ未元物質だろつが反転物質だろうが…このカーテナ=オリジナルに斬れないモノはないし」

 

病理の翼を切断したのはイギリスの第二王女 キャーリサ。彼女は自分の肩にカーテナ=オリジナルを軽く当てながら病理を睨む、フィアンマ達も立ち上がり病理を睨んでいる、そんな光景を前にしても病理は鳥の顔でヘラヘラ笑っている。呆気にとられる刀夜達を無視してキャーリサは病理と会話を進める

 

「で、何が様だし。大覇星祭を滅茶苦茶にしようて魂胆か?ドラゴンなんて大それた怪物を連れてきて」

 

「そもそもその怪物を何処で手に入れたのか俺様は一番気になるのだがな」

 

「いやぁ、こんな魔術サイドの強敵の面々の皆様と話すと緊張しちゃいますねー。でも残念ながら病理さんの実験は失敗なんですよねー。それにこのドラゴンは私のじゃありませんよ」

 

キャーリサは大覇星祭を台無しにするのが目的なのかと尋ねる、フィアンマはドラゴンという神話の世界の生物を見て何処から連れてきたのかと疑問に思う。だが病理は自分の遊びはダメになったと首を振り横目で上条を見る

 

「それにこのドラゴンは……第二位らしいですよー?」

 

「!?第二位…つまり上条当麻という事か!?」

 

「!?や、やっぱり当麻なのか!?」

 

病理がこのドラゴンは上条だと教えるとフィアンマは珍しく驚愕の顔をし刀夜はやはりと納得する。一同が驚く中病理は様子を見ているのか動こうとしない上条を一瞥する

 

「……さて、病理さんは勝ち目のない戦はしない主義ですからね。撤退するとしますか…丁度ここにいい()がいますし」

 

病理はそう言うと上条へと向き直る、上条は咆哮を上げて再び戦闘態勢になる。だが病理は翼を広げ突風を巻き起こしサッカースタジアムの地面から土埃が発生し視界を塞ぐ。上条は思わず目を瞑ってしまいその隙に病理は大空へと飛び立つ

 

「では皆さん御機嫌よう。無事あの第二位から生き残れる事を祈っています」

 

病理はそう言い残し空の彼方へと消える、途中で姿まで消えた事から光学迷彩の様な力も使ったのかもしれない…そして土埃が晴れた時フィアンマ達の目に映ったのは唸り声を上げながらこちらを睨みつける上条の姿だった

 

「……おいエリザードの婆さんよ」

 

「……何だ大統領」

 

「……これてさ、ヤバくね?」

 

「………ああ、ヤバイな」

 

イギリス女王とアメリカ大統領は今の状況を見てこれてヤバくね?と考えた。何せ目の前で唸っている上条はまるで敵を見る様な目で自分達を睨んでいるのだから

 

「……暴走している様ですねー」

 

「……その様であるな。差し詰めなんらかの要因でドラゴンになれたもののその力に溺れ手当たり次第自分の敵とみなした存在を攻撃する…そんな感じであるな」

 

「……これて結構なピンチじゃない?」

 

テッラは上条は暴走しているのだと見抜く、アックアは自分の影からアスカロンを取り出し構えヴェントはハンマーを取り出し口の中から鎖と十字架を垂らす。騎士団長もロングソードを構える。ワシリーサはサーシャとクランス庇う様に前に立つ。傾国の女とマタイは刀夜達を危険から守る様に四人の前に立つ。アウレオルスは姫神を庇う様に前に立ちアゾット剣を握り締める

 

「何があったか知らんが…正気に戻るがいい(・・・・・・・・)

 

アウレオルスはそう言い放ち上条を元に戻す言霊を放つ。だが上条の身体に変化はない、やはり幻想殺しの所為で黄金錬成の言霊を受け付けないのだ

 

「……当然、やはり無理であったか。フィアンマ、私は後援に徹する。あの少年を頼むぞ」

 

「いいだろう、俺様も自分が認めた相手が暴走する姿など見たくないのでな。ぶん殴ってさっさと元に戻してやるさ」

 

フィアンマはそう言うと第三の腕を出現させる、そしてその腕を振るう事でサッカースタジアムの中央に移動し聖なる右を上条へと振るう

 

「グギィガアアアアァァァ!?」

 

聖なる右の攻撃により上条は大きく吹き飛ばされるが空中で踏み止まり、フィアンマを睨みつけ音速で駆け左手の鉤爪を振るう。だがその鉤爪をアックアはアスカロンで防ぐ

 

「まさか本当にアスカロンで竜と戦う事になるとは思っても見なかった」

 

「グギィガアァァ!」

 

悪竜を切り裂く為の大剣を構えながらアックアは二重聖人の力を活かしその常人を超える腕力で上条を地へと落とす。アックアはそのまま地面へと降り立ち得意の高速移動で上条へと迫る…だが上条もアックアと同じ速度でアックアへと迫り幻想殺しが宿る右手の鉤爪をアックアへと向ける

 

「むぅ!?」

 

「いかん、アックアよこっちに来い(・・・・・・・・・・・)!」

 

アウレオルスは黄金錬成で自分の近くにアックアを移動させる。上条はアウレオルスを攻撃しようと翼を広げ鉤爪を向けるが…

 

「優先する。大気を上位に、竜を下位に」

 

「グギィガアアアアァァァ!?」

 

上条の動きが止まった、テッラの光の処刑による優先順位の変更で上条を束縛した。その隙にキャーリサと騎士団長が迫る…だが上条は幻想殺しで光の処刑の束縛から解き放たれ尻尾で二人を吹き飛ばす

 

「「ぐぅ…!?」」

 

ヴェントは暴風を上条へと放つ、幻想殺しでそれを打ち消すがその一瞬だけ上条の動きが止まる。その隙にフィアンマが背後からミカエルの剣で上条に斬りかかる

 

「グギィガアアァァァ!」

 

「何!?」

 

だがその剣は上条の肉体を斬り裂く事はなかった、金属音が鳴り響き上条の身体は傷一つなく剣をその身で受け止めていた。そして幻想殺しでその剣に触れガラスの音を鳴り響かせながら粉々に砕け散った

 

(こいつ…聖人並みの身体能力に俺様の聖なる右すら防ぐ外殻…なんだこの力は?聖人か?いや…そんな次元じゃない…これは十字教では収まりきれない力だ)

 

聖人と同格の身体能力、聖なる右を防ぐ外殻、そしてあらゆる異能を打ち消す幻想殺しを持つ…フィアンマはその異常な身体能力と防御力に驚愕すると同時に気づく、これは十字教では説明出来ないと。上条はフィアンマに幻想殺しを振るおうとするが突如光り輝く剣が飛来し上条は幻想殺しでそれを打ち消す

 

「……禁書目録か」

 

フィアンマの目に映ったのは無数の光の剣…豊穣神の剣を携えたインデックスと側に立つステイルと神裂の姿が見えた

 

「……とうま」

 

「グギィガアアアアァァァ!」

 

インデックスには分かる、今の上条は怒りで我を忘れていると…なら自分が止めてみせよう。かつて上条達が自分を助けた時の様に、彼女は聖ジョージの聖域を展開する

 

「……行くよ、かおり、ステイル!」

 

「了解です……唯閃!」

 

「……魔女狩りの王(イノケンティウス)!」

 

彼女の掛け声と共にステイルは魔女狩りの王を顕現させる、神裂も神すらも殺す術式を発動、インデックスも聖ジョージの聖域から竜王の殺息を放つ。上条は地を蹴り空へと逃げる事で竜王の殺息と魔女狩りの王から逃れる。だが空に逃げても神裂が上条の頭上から迫る

 

「はぁぁぁぁ!!!」

 

「グギィガアアアアァァァ!」

 

上条を拘束しようとした鋼糸(ワイヤー)を上条はその身の怪力で引き裂く、神裂は七天七刀で上条の胴を斬り裂く、だがその外殻に傷は一つもつかない。だがそれで良かった、上条が動きを止めたほんの一瞬でインデックスは魔術を起動させる

 

「放て!」

 

天から降り注ぐ50の灼熱の矢、かつてガブリエルが放った『神戮』を模した魔術 硫黄の雨は大地を焼くが放たれ上条を攻撃する。それに対し上条は右手で防ぐ、だが魔女狩りの王が上条をその手で掴み取る

 

「グギィガアアアアァァァ!?」

 

魔女狩りの王は幻想殺しで触れても再生する、そしてその身は3,000度の業火だ。火傷こそしないが今の上条の状況は溶鉱炉に放り込まれた鉄の様な状態だ。熱くて熱くて堪らないだろう

 

「グギィガアアアアァァァ!」

 

「……やはり押さえつける事は無理か」

 

だが魔女狩りの王を幻想殺しで打ち消し再生する一瞬をついて上条は拘束から逃げる。そしてインデックスへと鉤爪を向けるがそれをフィアンマが聖なる右で押さえ込む

 

「今だ!やれアックア!」

 

「分かった!」

 

幻想殺しと聖なる右が拮抗する、その隙にアックアが上条の背中へと斬りかかる。だがそれに気づいた上条は横へと飛ぶ事で回避

 

「優先する。竜を上位に、重力を下位に」

 

「グギィガアアアアァァァ!?」

 

テッラがそう呟いた次の瞬間竜の身体が宙に浮かんだ。上条の身体は重力から解き放たれ宇宙空間にいる時の様に常に浮かび続ける様になったのだ。当然上条はそれを打ち消す。だがキャーリサがカーテナ=オリジナルで次元を切断し残骸物質を上条の頭上に降り注がし上条は残骸物質に埋もれる

 

「グギィガアアァ!?」

 

「全次元切断術式の副作用で生まれた残骸物質はその手では打ち消せない様だな。これでもう動けないし」

 

「…ソーロルムの術式が効かないなら私の出番は一切なかったですね…」

 

「エクスカリバーちゃんも出してたのに使うタイミングがありませんでしたね」

 

残骸物質は幻想殺しでは消せない、それを利用し残骸物質で上条を生き埋めにするキャーリサ。だが上条は聖人に匹敵する力で残骸物質を押しのけ始める…だがもう遅かった

 

「これで終わりだ上条当麻」

 

フィアンマは己が右手を振るう、同時に第三の腕から凄まじいエネルギーが放出され上条がいた大地を残骸物質ごと焼き払う。その爆風によりインデックス達は吹き飛ばされないように必死に堪える

 

「ちょ!?やり過ぎじゃないかな!?」

 

「なぁに、これくらいの火力がないと倒せんさ。垣根もこの威力の攻撃を耐え切ったのだからな…」

 

インデックスはやり過ぎと叫ぶがフィアンマはこれくらいで十分だと笑う。旅掛と美鈴は目の前のファンタジーの様な光景を見て仰天していた

 

「……映画とかよりも凄ぇ」

 

「……大覇星祭よりも凄い」

 

「……当麻は無事なのか?」

 

刀夜は上条の身を案じる、あの攻撃を喰らって無事なのかと…だがその予想は悪い意味で当たってしまった

 

「グギィガアアアアァァァ!」

 

『!?』

 

「な……!?あの攻撃を喰らっても…まだ動けるのか!?」

 

爆煙を引き裂いて上条は現れた、その外殻は少々焼け焦げてはいるがまだ動ける。唸り声を響かせフィアンマ達を睨む。少し焦り始めるフィアンマ

 

「不味いな…このままでは……」

 

「ううん、もう私達の役目は終わりみたいだよ」

 

「何……?……成る程そういう事か」

 

インデックスがもう自分達の出番は終わりだと呟くと訝しげな顔をするフィアンマだったが即座にその理由に気づいた。全員が二人の視線の先を見るとそこには二人の男女が立っていた

 

「……漸く追いついたぞ」

 

垣根帝督と帆風潤子。学園都市の最強の二人がこの場に現れた。その姿を見ただけで全員が安堵する…垣根ならなんとかしてくれると

 

「さてと…当麻。そろそろおいたの時間は終了だ」

 

「力尽くでも止めてみせますわ」

 

「グギィガアアアアァァァ!」

 

覚醒した未元物質の翼が展開され帆風はサンダルフォンをその身に宿し背中に白い翼を顕現させる。対する上条も翼を広げ悪竜もかくやという表情で唸り右手の鉤爪を構える。3人は暫し睨み合った末音速を超える速度で地を駆けた

 

「第二十二章第一節。『竜王の殺息(ドラゴンブレス)』発射」

 

「はあぁぁぁぁ!!」

 

「グギィガアアアアァァァ!」

 

垣根がいつの間にか取り出した遠隔制御霊装を使って天使の竜から竜王の殺息を発射、上条はそれを幻想殺しで受け止める。そして動きが止まった瞬間に帆風が上条の腹部に拳を突きつけ真上へ吹き飛ばす

 

「グギィ……グギィガアアアアァァァ!」

 

翼を広げ空中で踏み止まり帆風へ向けて流星の様に突撃する上条、帆風はサンダルフォンの翼を広げ鉤爪を回避、垣根は霊装を使っていくつもの魔術を放ち多才能力を使って超電磁砲や原子崩しを放ち、座標移動でいくつもの物体を上条の頭上へと放つ。だが上条はそれを少し身体を動かすだけで避け幻想殺しを天使の竜へとぶつける。幻想殺しと幻想殺しのぶつかり合い。互いに同じ力である竜の鉤爪と竜は力の拮抗を見せる

 

「グギィガアアアアァァァ!」

 

ーーーキュラアアァァァ……ーーー

 

「……やっぱり無理か」

 

だが天使の竜は所詮は上条から漏れ出した力の一部、神浄の力を引き出した幻想殺しには敵わない。天使の竜は薄っすらと消え始め虚空へ溶け消える。だがそれすらも垣根は見据えており未元物質で構成した白いカブトムシを始めとする無数の自律兵器達が誕生し上条へと迫っていく

 

「グギィガアアアアァァァ!」

 

上条は幻想殺しを大きく振るい翼を広げ飛んできた自律兵器を30ほど破壊する、だが垣根が新たに作り出す方が早く自律兵器達は実装された超能力者の能力や座標移動、天衣装着等の超能力者に届きうる能力を発動し上条を攻撃する。上条は幻想殺しで異能を打ち消し撃ち漏らした攻撃もその外殻で防ぐ

 

「…やっぱりあの外殻…何らかの異能の力で構成されてるな。セルピヌスの力なら解けたかも知れねえが…暫くは出せねえな」

 

「それにあの身体能力…神裂さんみたいですね」

 

「……流石、『神の子』か」

 

垣根は外殻が何らかの異能で構成されていると見抜き、帆風が身体能力も何処と無く神裂を連想させると呟く。その時垣根がボソッと神の子と呟いたが誰もそれに気づかなかった

 

「グギィガアアアアァァァ!」

 

「……ま、あんなけ硬いんだ…そう簡単には傷つかねえだろ」

 

垣根へと飛来する上条に対し垣根は未元物質の一翼を刀の様に振るう、幻想殺しと覚醒した未元物質の翼が激突。その衝撃波だけでサッカースタジアムの地面に亀裂が走り突風が生じる程、二つの力は拮抗しあい異能である未元物質の翼すら幻想殺しの力でも打ち消せないのか存在を保っている

 

「……は、全力でやればフィアンマの聖なる右とまともにぶつかっても壊れねえ翼だ。そう簡単に壊せると思うなよ」

 

幻想殺しで少しずつ打ち消しても即座に再生していく翼、六枚ある内の一枚に手間取っている隙に残りの五枚の翼が上条へと迫る。上条は右手を少し捻る事によって未元物質の翼の軌道を逸らしその隙に翼で大気を叩き槍の如く先端で突き刺そうとしていた翼を回避する

 

「空に逃げられてはわたくしでは追えませんが…こういう事も出来ますのよ?」

 

帆風はそう言って競技に使っていたであろう棒倒しの棒を掴み取りそれを音速を超える速度で投げ飛ばす。それは当たりさえすれば人間の身体なら肉塊にし弾けさせ建物すら破壊する砲弾の様な威力だった。それを上条は右手ではなく左手で粉砕する

 

「グギィガアアアアァァァ!」

 

このままでは拉致があかないと思ったのか上条は地面に降り立ち真っ向から二人をねじ伏せる事を決める、自律兵器達が上条に集まるも上条はそれを幻想殺しで破壊する、更に背後から来た自律兵器達も自らの尻尾で粉砕、幻想殺しだけでは対処できないのなら左手や両脚、時にはその鋭い牙が生えた顎、更には翼で叩くなどの体全体を使って自律兵器を蹂躙する

 

「グギィガアアアアァァァ!!!!」

 

破壊、粉砕、噛砕、損壊、撃滅、破砕、撃砕、破摧、撃破、取潰、全滅。ドラゴンの猛撃により数百は超えるであろう自律兵器達は壊滅した。上条は咆哮を上げ僅かに形が残っていた自律兵器の残骸を右足で踏み潰す。そこには圧倒的な力が滲み出ていた、流石最強の生物として知られるドラゴンの姿をしているだけはある…だがドラゴンは十字教では悪魔の象徴。そのドラゴンを打ち破るのは天使だ…ならば科学の天使である垣根が上条を倒せぬ道理はない

 

「調子に乗るなよ、さあ第2ラウンドと行こうじゃねえか!」

 

「グギィガアアアアァァァ!」

 

垣根はアルミで出来たスプーンを三つ放り投げる、そこで量子変速(シンクロトロン)を発動させスプーン…正確にはアルミを基点に重力子(グラビトン)を操作。重力子を加速させ周囲に放出し爆弾の様に扱うのがこの能力だが…垣根が量子変速を使えば多才能力のお陰で超能力者並みの強度を得る。故に垣根は加速・放出ではなく重力子を増大させ巨大なブラックホールを三個形成した

 

「グギィガアアアアァァァ!」

 

だがそのブラックホールも所詮は異能、幻想殺しを振るい呆気なくブラックホールを打ち消す上条。だが次に放たれたのは超電磁砲の雷撃、火炎放射(ファイヤースロアー)の火炎、水流操作(ハイドロハンド)の水球、風力使い(エアロシューター)の風の刃が上条の四方を囲む様に放たれる

 

「グギィガアアアアァァァ!!?」

 

打ち消す間も無く上条は火炎と雷撃、水球、風刃に命中し空中で大爆発が起こる。爆煙に飲み込まれ上条の姿が消える…だが翼が広がった際に生じた風によって爆煙が吹き散らされ無傷の上条が現れる

 

「グギィガァ……」

 

「あ?何だ?」

 

だが上条は大した傷を負っていないのに苦しげに呻いていた、それを見て垣根が訝しむ…そして上条は体を大きく震わせ両腕で身体を抱いてその顎を開く

 

「グギィガアアアアァァァ……グoギィaxガアアlksoアアァvnlanァァnlagvx!!!」

 

上条の咆哮にノイズが走る、その咆哮が轟くと同時に上条の何かが決定的に変わった…そうこの場にいる全員は感じた

 

「か、垣根さん……これは一体?」

 

「……あれ?これかなりヤバイ感じ?」

 

垣根と帆風ですら恐怖に駆られる程の何かに上条は変質しようとしていた、その場にいる全員をその威圧だけで殺しかねない何かに上条はなりかかっていた

 

「……まさか、これは…俺らみたいなオシリスの時代とは違う…ホルスの…」

 

上条がなろうとしているのは垣根達(オシリスの時代)とは違うステージ(ホルスの時代)になろうとしている。それこそ神浄。彼は神すら超える存在になろうとしていた…

 

「グギbrkldajアアxlfjdアァlnyncnlgbァ!!」

 

「と、当麻……」

 

刀夜が息子の名を呟くが上条は何の反応も示さない。もう誰も上条を止める事は出来ない、神浄となった上条は平等に死を与え学園都市は崩壊する…

 

「「先輩/上条さん」」

 

「……グギィoklガjvnvugyアvoァykv?」

 

そんな彼の前に奇跡が舞い降りた

 

「……ミコっちゃん、みさきち」

 

二人は垣根の横を通り過ぎる、垣根は二人の糸に気づいたのかふと笑って未元物質の翼を消した

 

「え?垣根さん?何を…」

 

「俺の出番はもう終わりて事さ…黙って見てようぜ」

 

垣根はそう言って地べたに座り込む、それを首を傾げながらも帆風も美琴と食蜂を見つめていた

 

「グgギィvnoガアlnytァァnlgァ…?」

 

「落ち着いて先輩…ここにはもう敵はいないから」

 

「そうよ、だからリラックスしましょ」

 

美琴と食蜂の姿を見て上条は先程とは打って変わって静かになり動きを止める。そもそも彼が暴れていた理由は美琴と食蜂に仇なす可能性がある者達を排除する為だ…ならば彼が愛する二人に手を出す道理はない

 

「先輩て本当に私達が関わると向こう見ずというかバカになるというか…まあ一言で言うと愛が重いのよね」

 

「そうねぇ、思えばデッドロックから私を守る為に必死だったし…本当にこういう所は変わってないのよねぇ」

 

「グギィvガアアlnvnlmvyjbアアァtoojァァ」

 

美琴と食蜂が上条に抱きついた、上条のノイズが段々と薄れ始める。パタンと上条の尻尾が地面に垂れる…側からでも上条が大人しくなり始めたのが理解できた

 

「……成る程、力ではなく言葉で、いやあの場合は愛か?」

 

「…時に拳を時には花、て奴ですかねー?暴力では解決しないこともある、て事ですか」

 

「……いやそんなもんどうやって気づけば良かったのよ」

 

アウレオルスとテッラは上条を止めるのは力ではなく愛する者の言葉だったのかと頷く、ヴェントはそんなもん分かるかと呟く

 

「もう終わりにしよう先輩、もうそんな力を振るわなくてもいいから…ね?もう敵はいなくなったんだから…3人で大覇星祭を楽しみましょう」

 

「そうね…同じ赤組なんだから頑張らなきゃ。今は白組に負けてるんだから」

 

「グギィガynアアアototアァjァァ……」

 

ドラゴンの身体に亀裂が入る、外殻が崩れ始める

 

『……愛されてるんだな、お前。だからしっかり守り抜いてやれよ上条当麻。お前の大事な女達をさ』

 

上条の中で誰かがそう呟いた、上条の身体が完全に崩壊し身体を構成していた外殻はスカイブルー、レモンイエロー、ショッキングピンク、エメラルドの四色の光となって霧散する…元の姿に戻った上条は美琴と食蜂に抱きつかれたまま笑みを浮かべていた

 

「……悪いな二人共…つい我を忘れてやらかしちまった」

 

「「……お帰りなさい先輩/上条さん」」

 

幻想(悪夢)は崩れ去った、上条は美琴と食蜂の頭を撫でて二人は顔を赤く染める。そんな自分達だけの世界に行っている3人にインデックスがわざとらしくコホンと咳き込み3人はインデックスを見る

 

「……さてと、まあ暴走が解けたみたいだから一件落着…て言いたい所なんだけど…ねえとうま。大覇星祭を台無しにしちゃったていう自覚はあるのかな?」

 

「う……!」

 

「「………」」

 

インデックスの「私、怒ってるんだよ」オーラにビビる上条、そして上条が暴走する原因を作った二人は全力で目を逸らす

 

「まあ、餅つけよインデックス。大覇星祭はすぐに始まるさ」

 

「餅なんてついてないよていとく。というかこんな事態になって何事もなかったように始められると思ってるの?」

 

落ち着けという垣根にインデックスは落ち着ける筈はないとジト目で呟く、何せドラゴンが生徒達や観客の目の前に現れたのだ。混乱は避けられない…だが垣根は笑みを浮かべる

 

「あー、その点は平気だ。なあアウレオルス?」

 

「当然、私に任せるがいい」

 

垣根がアウレオルスの名を告げると彼は頷いてアゾット剣を天に掲げる

 

「魔術師や超能力者達を例外とし学園都市に住む人々と学園都市に訪れた人々の記憶からこの事件の事を忘れさせよ」

 

アウレオルスがその一言を告げるとフィアンマ達魔術師には何の変化も起きないがアウレオルスの近くにいた刀夜達の目が虚ろになる。記憶を書き換えられているのだろう、そう先程の事件を忘れなにごともなかったかの様に大覇星祭を始めるだろう

 

「……憮然、これくらいしか今回私は役に立たなかったな」

 

「いや。凄い事をサラッとしたよ?」

 

「……黄金錬成てやっぱり凄いんだよ」

 

これによりすぐにサッカースタジアムに人が戻り、大覇星祭の競技の続きが行われるだろう。これで何もかも元通り、後は破壊されたサッカースタジアムをアウレオルスの黄金錬成で戻すのみである

 

「……あ〜疲れた…今日の競技はサボろ」

 

「垣根さんがサボるのならわたくしも」

 

垣根と帆風は疲れたのか今日は競技に出ないと告げてサッカースタジアムから立ち去っていく。フィアンマもそろそろ人が戻ってくるからか観客席に戻りマタイの横に座る

 

「……あぁ、垣根とかインデックス達に迷惑をかけたみたいで…なんかカッコ悪いな俺」

 

「まあ確かに…暴走したしね…まあカッコいい訳はないわ」

 

「その通りねぇ、他の人から見たらカッコ悪いわね」

 

「うぅ…いつになく辛辣」

 

上条が今回いいとこ無しだと呟くと美琴と食蜂はその通りだと頷く、彼女二人の冷たい反応に上条が血反吐を吐きかけるが二人は笑って告げたのだ

 

「「でもそんな先輩/上条さんが私達は大好き」」

 

太陽の様な優しい笑みでそう告げた美琴と食蜂、上条は一瞬呆気にとられ……笑みを浮かべた

 

「……若いなぁ」

 

「…私も昔はあんな時代があってな…あれは十七の夏…」

 

「ババア無理すんな」

 

マタイがその光景を見て微笑みエリザードご自分も昔はあんな恋愛をしていたと自慢しかける、そんなエリザードに騎士団長は辛辣な言葉をかける…そして生徒達と観客達がサッカースタジアムに戻って来た、恐らく他の場所でも生徒達と観客達が戻ってきているのだろう

 

「……さあ始めるか!」

 

「「ええ!」」

 

トラブルは合ったものの大覇星祭は無事に再開した

 

 

「……つまらない結末ね、わらわの予想では学園都市が滅びると思ったのに…まさか小娘如きに説得されるとは…」

 

一人の少女が学園都市を見下ろしていた、彼女は縦ロールに赤い薔薇をつけた12歳程の少女だった…彼女は全てを見下しながら先程の結末に不満を露わにしていた

 

「……まあいいわ、所詮は戯れ。神浄が予想よりも早く動き出したのは喜ぶべき事なのだから」

 

そう言って彼女は笑みを漏らす

 

「それにわらわのお気に入りのイレギュラー達も見れた事だし…悪くはなかったかもしれないわね」

 

そう言って彼女は踵を返す、その整った顔立ちにそぐわぬ凍える様な笑みを浮かべながらこう呟いたのだ

 

「あの二人はエイワスよりも座り心地のいい椅子になりそうね…ふふふ、待っていなさい。貴方達は必ずわらわの物にしてあげるわ」

 

 

 

午後六時三十分前、大覇星祭一日目の競技が終わり残るは夜のお楽しみ ナイトパレードのみとなった

 

「ううん…なんか大変なものを見た気がするんだが…何か忘れてる様な」

 

「刀夜さんもですか?私も何かとんでもない出来事をが合った気がするのですが…思い出せないんです」

 

上条夫妻は頭を抱えながら何か忘れているかもと首を傾げる、そんな二人を訝しげな眼で旅掛と美鈴は見る

 

「あの二人昼からああだけどどうしたのかしらね?」

 

「さあな、何か昼にあったのかもな…それよりもここの店のピラフ美味え」

 

刀夜達は垣根から教えてもらった少々値段がお高いレストランにいた、ここのピラフは美味かった

 

「あ、そろそろ花火の時間ね」

 

「花火か…いいねぇ」

 

「……当麻さん達も見ていますかね」

 

「……見ているだろうさ」

 

四人が窓に視線を向けると窓には夜空に浮かぶ花火が見えた

 

 

「おー、やっぱり綺麗だなナイトパレードは」

 

六時三十分ジャスト、夜空に赤青黄緑…様々な彩りの花火が咲き誇る、そして煌びやかな装飾がされた山車がパレードを始め幻想的な雰囲気を作り出す

 

『更に!今回は特別にこの第一位の垣根帝督が作った自律兵器達が夜空を飛んじゃうぞ☆』

 

『わたくしと垣根さんも翼を羽ばたかせて空を飛んでいますよー!もしわたくし達を見つけたら幸せになれるかも知れません』

 

垣根が作った自律兵器である翼竜型やカブトムシ型、トンボ型が空を駆ける…上条達には見えないが垣根と帆風も空を飛んでいるらしい…そんな通常運転な垣根に3人は呆れる

 

「……あんな事があったのに垣根はいつも通りだな」

 

「だからじゃない?悪い事を忘れさせる為に盛り上げようとしてるんじゃないかしら」

 

「垣根さんの事だからあり得るわねぇ…でも皆忘れてるから意味がないから多分単純に垣根さんがやりたいだけに思えるんだゾ」

 

上条はいつも通りの親友の事を考え笑う、美琴と食蜂はそれが垣根らしいと同じく笑う

 

「……美琴、操祈」

 

「?どうしたの先輩?」

 

上条が空を見上げながら二人に話しかけ二人は首を傾げながら上条を見る、上条は二人の顔を見つめながら口を開く

 

「もしまた俺が暴走してたら…今日みたいに止めてくれよな」

 

そう言った上条の顔を見て二人はくすりと笑う

 

「当然じゃない、だって先輩は私達の彼氏だもの」

 

「彼氏を止めるのが彼女てものなんだゾ、上条さんだって私達を助けてくれたじゃない」

 

「……そっか、そうだよな」

 

バーンと花火が夜空にまた一つ咲いた、花火が三人を明るく包み込む。それは三人を祝福する祝砲の様だった…こうして夜は過ぎていく…大覇星祭はまだ終わらない……

 

 

 

 

 

 

 

 

「……大覇星祭……ねぇ」

 

擦り切れ黒いゴシックロリータを着たボサボサ頭の金髪の褐色肌の女性が街中を歩く、彼女はオイルパステルを片手でクルクルと回しながら独り言を呟く

 

「……禁書目録にローマ正教、ロシア成教、イギリス王家の人間…科学サイドに魔術サイドの連中が集まりすぎだろ」

 

彼女は苛立ちながらそう告げる、彼女は学園都市が嫌いだ。科学の町の癖に魔術サイドとも縁がおりあろう事が魔術サイドの人間が行き来しているこの場所が嫌いだった

 

だからぶっ壊す(・・・・・・・)

 

彼女はオイルパステルを片手で粉々に握り潰した。彼女の目には強い憎悪が宿る

 

「エリスを殺した騎士派が憎い、エリスを見殺しにした学園都市が憎い、その過ちを繰り返そうとする奴らが憎い」

 

彼女は過去の過ちを繰り返そうとしている現状が気に入らなかった、だから壊しに来たのだ。魔術サイドと科学サイドを再び分裂させる為に

 

我が身の全ては亡き友のために(Intimus115)

 

そう彼女は告げて街の闇に消えていった。まだ大覇星祭に迫る脅威は……まだ終わらない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




この上条さんはリバース時とは違い四色全部だから身体能力も防御力も二倍以上だからクソ強いです。ですので倒すのではなく愛する人であるミコっちゃんとみさきちに説得されて元の姿に戻るという今までのラスボス戦とは違った終わり方です。そして自分なりにリバースで見せたドラゴン態について考えてみました

22巻でアレイスターが上条さんの事を「神の子」と呼んでいました。恐らく神の子とはイエス様(とあるないでは明言はされていないが聖人とは彼の事でほぼ間違いない)ではなくラー・ホール・クイトではないかと思います。つまり上条さんの力とはハディートではなくラー・ホール・クイトなのかも知れません。つまり神浄とはホルスの時代の存在と考えられます。まあかまちーの事だからそんな訳ないのだろうけど…作者的にはそう考えています

そして最後に出て来たゴシックロリータさんとかあのエイワスを椅子にする少女…そして大覇星祭は終わらないといった通り…今回の話は科学サイドのお話です。そして大覇星祭は原作では魔術サイドのお話でしたが…とあレーでは科学サイドの事件もありました…つまり次回は魔術サイドの事件が発生します、その名も「大覇星祭・裏」編です


「超能力者だからとか無能力者だからとかそんなの関係ねえ…俺が助けたいから助かるんだ」
無能力者(レベル0)」スキルアウトの少年ーーーー浜面仕上(はまずらしあげ)

「返してもらうぞ、そいつは私の大事な友達の妹なんでな」
原子崩し(メルトダウナー)」学園都市の超能力者 第四位ーーーー麦野沈利(むぎのしずり)

「大丈夫、私は平気だから…にゃあ」
人的資源(アジテートハレーション)」フレンダの妹ーーーーフレメア=セイヴェルン

「私は宛那とは一味違うぞ」
上里勢力からの第二の刺客ーーーー獲冴(エルザ)

次回から始まるのはもう一つの大覇星祭の物語、表では出てこれなかったキャラ達も大集合。今回は影が薄かったむぎのんが主人公なお話です、ギャグは挟みませんが裏自体が大分ギャグ向けなので…セーフです

次回もお楽しみに!


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運動会と体育祭の違いて何ですか?

今回は大覇星祭・裏編の第1話です!そして章管理なるものを使い章分けをして見ました!そして今回はパロディのラッシュです。シリアス?そんなもの知らないな

普通の運動会や体育祭にはない競技が行われていますがこの小説は常識が通用しないので気にしないでください。さて読者の皆さんはツッコミきれるかな?



大覇星祭 二日目。初日に起こった事件は垣根達を含む魔術師達等の一部の人間しか覚えていなかった。生徒達は二日目の競技に笑って取り組み観客達も盛り上がる

 

「カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!」

 

二日目の最初の競技であるカバディでは垣根が対戦相手を圧倒し見事に優勝した、なおこの競技は能力の使用はアリなので三対の翼を駆使した八連撃で何人もの対戦相手を沈めた。決勝戦にて戦った相手 カルナは強かったが垣根は負けなかった…決まり手はセルピヌスの頭突きだった

 

「くっ……俺の鎧を貫通するとは…アルジュナに勝るとも劣らない男だな貴様は」

 

「お前も強かったぜ…流石はインドの英雄だ」

 

「ふ、また戦おう垣根帝督」

 

「次も勝ってやるよ」

 

黄金の鎧を来たインドの英雄は垣根と固く握手を握る、因みにカバディの起源はマハーバーラタまで遡る。だが別にカルナがカバディをやったと言う記述はない

 

『まさかあのサーヴァントを倒すとは…恐るべし垣根帝督!てか誰がカルナを呼んだんですか!?は!もしやジナコさんが!?』

 

『落ち着きたまえ、彼は私のサーヴァントだ』

 

『それはそれで凄いですよ!?この先生何者?!』

 

扶桑が実況席で叫ぶ、彼女も昨日の一件を忘れている人の一人だ。だが彼女の隣にいるビアージオや木山は忘れてはいない

 

『さて!続いての競技は観客参加型の競技!「水鉄砲で相手の服をスケスケにしちゃえ!」です!』

 

『ぶるぁぁぁ!なぁんだその破廉恥な競技は!けしからんぞ!』

 

『この競技は是非とも女性に参加してほしいものだ。理由?男の服が透けて喜ぶ人はいるのか?』

 

続いての競技は「水鉄砲で相手の服をスケスケにしちゃえ!」、水鉄砲で服を濡らしてエロスを生むだけの競技である。なお発案者はメイザース、これを考えた後彼はミナにビンタされた

 

「成る程…つまり私が出る幕だということか!」

 

「ババア無理すんな」

 

「年を考えろし」

 

「優しく言って…老廃棄物はおとなしく座っていたら?」

 

「ふふふ…寝言は夢の中で言わなきゃダメですよお母様」

 

「娘達が辛辣!?」

 

エリザードが自分の出番だと立ち上がるが騎士団長はやめておけと首を振る、彼だけでなく彼女の娘達も心にグイグイ刺さる言葉を言いエリザードのライフはゼロになった

 

『そしてこの競技は強制的に超能力者の第四位 麦野沈利さんが参加します』

 

「はぁ!?なんで私が参加しないといけないんだよ!?」

 

『そういうルールなんです、因みに決めたのは垣根帝督です』

 

「帝督ゥゥゥゥゥゥ!!!」

 

そしてこの競技は垣根の案により強制的に麦野が参加する、麦野は思った。必ず、かの邪智暴虐の垣根を殺さねばと決意した。麦野には大覇星祭の競技の決め方など知らぬ。だが自分を巻き込んだ垣根を殺すと誓った

 

「お、麦野が出るなら俺も出ようかな」

 

「よし、競技頑張るぞー。おー!」

 

「麦野……」

 

浜面が麦野が出るのなら自分も参加すると立ち上がる、麦野はそれを聞いて垣根ナイスと心の中で思った。フレンダはそんな麦野を見て溜息を吐く

 

「よっしゃあ!かかって来いや!原子崩しで塵にしてやる!」

 

「おい麦野、この競技で使っていいのは水鉄砲だけだぞ」

 

浜面が一緒に出るのでやる気満々になった麦野は水鉄砲を構えながらも原子崩しを携えいつでもバチューン!出来る様にする。それを見て浜面はそれはやっちゃダメだと笑う

 

「さて……どんな人達がこの競技に出て来るんだろうな?」

 

「さあな、まあさっさと片付けてや…「ビチャ」あ?」

 

麦野が何か言いかけると彼女の足元に何かがベシャと音を立てて落ちる、何かと二人が落ちたものを見るとそれはあんパンだった

 

「あんパンあんパンあんパンあんパンあんパンあんパンあんパンあんパンあんパンあんパンあんパンあんパンあんパンあんパンあんパンあんパンあんパンあんパンあんパンあんパンあんパンあんパンあんパンあんパンあんパンあんパンあんパンあんパンあんパンあんパンあんパンあんパンあんパンあんパンあんパンあんパンあんパンあんパンあんパンあんパンあんパンあんパンあんパンあんパンあんパンあんパンあんパンあんパンあんパンあんパン」

 

「怖っ!?呪詛か何かよ!?」

 

あんパンを投げて来たのは両手にヤマ○キのあんパンを持った男 山崎 退(やまざきさがる)。彼はあんパンあんパンと壊れたスピーカーの様に呟きあんパンを投げる

 

「なんで…なんでさっきカバディやってたのに俺は出れなかったんだよぉ!」

 

「知らねえよ!テメェは向こうでバトミントンでもやってろ!」

 

「ミントン!?」

 

山崎は何でカバディの時に出番がなかったのかと恨み言を叫びながらあんパンを飛ばす、麦野はんな事しるかと原子崩しを放ち山崎を遥か彼方へと吹き飛ばす

 

「ふぅ……てかさっきの奴水鉄砲使ってなかったけどいいのか?」

 

「さあな…しかしあんパンを飛ばすなんて…勿体ねえことしやが…「ベシャ」ん?」

 

浜面が何か言っているとまた何か足元で潰れる音がする、二人はまたあんパンかと思って足元を見ると…そこにはう○こだった

 

「うきゅ」

 

「あ、あいつは…寿限無寿限無ウンコ投げ機一昨日の新ちゃんのパンツ新八の人生バルムンク=フェザリオンアイザック=シュナイダー三分の一の純情な感情の残った三分の二はさかむけが気になる感情裏切りは僕の名前をしっているようでしらないのを僕はしっている留守スルメめだかかずのここえだめめだか…このめだかはさっきと違う奴だから池乃めだかの方だからラー油ゆうていみやおうきむこうぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺおあとがよろしいようでこれにておしまいビチグソ丸!?」

 

「名前長ぁ!?てかよく言えたな浜面ぁ!?」

 

そうう○こを投げたのは寿限無寿限無ウンコ投げ機一昨日の新ちゃんのパンツ新八の人生バルムンク=フェザリオンアイザック=シュナイダー三分の一の純情な感情の残った三分の二はさかむけが気になる感情裏切りは僕の名前をしっているようでしらないのを僕はしっている留守スルメめだかかずのここえだめめだか…このめだかはさっきと違う奴だから池乃めだかの方だからラー油ゆうていみやおうきむこうぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺおあとがよろしいようでこれにておしまいビチグソ丸という猿だった。ビチグソ丸は両手でう○こを投げ麦野達を攻撃する

 

「この猿野郎が!ナイトミュージアムのオマキザルと仲良く悪戯でもしてろ!」

 

「うきゅ!」

 

麦野は原子崩しを放ちビチグソ丸は慌てて逃げていく、はぁはぁと肩で息をする麦野…そんな彼女の肩に誰かが手を置いた

 

「サービ……」

 

「させねえよ!」

 

「ごふぅ!?サービスが出来ないとは…む、無念…」

 

サービスマンがサービス(意味深)をしようとするが麦野がさせるかとキン肉バスターを食らわす、サービスマンはサービスが出来なかった事に後悔しながら息絶えた

 

「やあ、大変だったみたいですね麦野沈利。私も大変でしたよ」

 

「お前誰だ!」

 

「ですよね!?」

 

「たく……この競技はどうなってんだよ…なあ浜面」

 

査楽が麦野に声をかけるが麦野は誰だお前とラリアットを査楽にかます。競技が始まって一分足らずでもう四人も撃破した麦野はこの競技は何なのかと浜面に問いかける

 

「ん?何か言ったか麦野?」

 

『や、やられたー』

 

「10人以上倒していらっしゃる!?」

 

浜面は水鉄砲をクルクルと回しながら10人以上の人数を撃破していた、全員びしょ濡れで地面に倒れていた。麦野はいつの間にと驚愕した

 

「何これくらいスキルアウトなら当然だ。スキルアウト五箇条!なせば大抵なんとかなる!」

 

「それは勇者部五箇条だろ!?」

 

浜面は力強くスキルアウト五箇条の一つを叫ぶ、なお他の言葉は「ちびっこと雨の日の捨て猫には優しくしなければならない」「やっぱりムサシノ牛乳は最高」「ゴミ拾いやボランティア活動には積極的に」「困ったらとりあえずカバディ」

 

「行くぞ!スキルアウト……パンチ!」

 

「いやそれもうもろ勇者パンチ!」

 

「じゃあ…賢者の拳を受けてみよ!」

 

「それは力の賢者のセリフだろ!」

 

浜面のパンチでノックアウトされていく参加者達、もう水鉄砲を使ってすらいない…この競技て一体…

 

「あらん、いい男じゃない…お姉さんの好みだわ」

 

「む?」

 

そんな浜面無双をする浜面の目の前に現れたのは…セクハラお姉さんことオリアナ=トムソンだった

 

「この競技…お姉さん向けの競技だと思うのよねぇ…だって今日は暑いんだもの。見てみる?下着までビショビショよ?」

 

「あ、服の着替えが欲しいのならすぐ近くに服屋があるぞ」

 

「あらそう、ならすぐにお買い物に行かなくちゃ…て、違う!貴方私の話聞いてた?興奮しないの!?」

 

「いや…まあ確かにアンタは綺麗だと思うけどさ…戦い(競技)の最中に欲情するなんてダメだろ」

 

「……正論ね、この子性欲強そうな顔をして意外と鋼メンタルね」

 

「まあ毎日ゴミ拾いとトレーニングをしてるからな!」

 

「関係あるのそれ?」

 

オリアナが得意の色仕掛けを仕掛けるが浜面には効果はいまひとつだった。浜面が色仕掛けに耐えられたのもゴミ拾いとトレーニングのお陰だった

 

「……まさか私の色仕掛けを破る人間がいるなんてね…あのフィアンマですら「後もう少しで…おお!見えた!」て油断したのに…まあいいわ、お姉さんの実力を見せてあげる」

 

オリアナはそう言いながら浜面へと迫り拳を突きつける、浜面はそれを自らの腹筋で防ぐ。オリアナがその逞しい腹筋を見て口笛を吹く。即座に繰り出されるオリアナの回し蹴りを左腕でガードする浜面、浜面の正拳突きがオリアナの顔面へと放たれるが彼女は左手で拳を受け止める

 

「やるじゃない、お姉さん興奮してムラムラしちゃうわ」

 

「伊達にトレーニングしてないからな!俺ら無能力者は能力が役に立たない分筋肉を鍛えないといけないからな!目指せ筋肉マスター!」

 

「いいわね、そういう熱血…嫌いじゃないわ」

 

拳と拳がぶつかり合う度に飛び散る汗、二人は笑いながら拳で殴り合う。それはまるで何かの格闘技の決勝戦の様だった

 

『てか水鉄砲使えや!』

 

扶桑が思わず叫ぶ、さっきからこいつら全然水鉄砲使ってねえと。あんパンやらう○こ、原子崩しに筋肉と競技の内容を完全に忘れている二人に頭を抱える。そんなオリアナと浜面の熱いバトルだがそんな二人だけの世界に行っている浜面とオリアナの前にバケツを持った麦野が現れる

 

「そいやー!」

 

「「わぶぅ!?」」

 

『バケツ!?なんで皆さん頑なに水鉄砲使わないんですか!?水鉄砲嫌いなんですか!?』

 

『……優勝は麦野君だな』

 

バケツ一杯の水が二人の服を濡らす、水で濡れたせいでオリアナの豊満な胸が透けて見える。それを見て歓喜する男達、なおその男達の中には刀夜と旅掛がいたので詩菜と美鈴はケツの穴にネギを差し込んでおいた。浜面も服が濡れてその逞しい筋肉が透けて水も滴るいい男状態になっており会場にいたホモ達が歓喜した

 

「何すんだよ麦野…折角いい試合してたのに」

 

「いやこれ水鉄砲の競技だぞ…何殴り合ってるんだにゃーん」

 

「あらら…服がびしょ濡れね…股まで濡れちゃってるわ」

 

「お前は一々言葉をエロくしないと死ぬ病気にでもかかってんのか?」

 

オリアナは色セクシーポーズで卑猥な単語を含めた言葉を言い、麦野がいちいちセクハラ発言をするなと呟く

 

「あらやだ怖いわ…じゃあね坊や、また縁があったら戦いましょう」

 

「おう!またなお姉さん!」

 

浜面とオリアナはビショビショのまま固い握手を握る、それを見て観客達が惜しげない拍手を送る…麦野は思った…「何だこれ?」と

 

 

 

「わぁ、麦野のお姉ちゃん凄い。にゃあ」

 

「……あれ?水鉄砲使う競技なのよね?何で誰も使ってないの?」

 

「……それよりも浜面と互角に戦っていた女は凄いな」

 

観客達にて駒場とフレンダ、そしてフレンダの妹であるフレメアは先程の競技を見てそれぞれの感想を口に出していた

 

「しっかし今年の大覇星祭の競技て変なのが多いて訳よ、やっぱり垣根の所為なのかも」

 

「……垣根帝督は型破りな性格だからな、変な競技にするのは致し方ないかもしれない」

 

「でも面白いから私はあのお兄ちゃん好き。にゃあ」

 

フレンダと駒場は垣根の所為で変な競技が多いなと呟く、だが駒場の膝の上に座っているフレメアには大好評の様で競技を楽しんで見ていた

 

「次は何をやるのかなお姉ちゃん、お兄ちゃん。にゃあ」

 

「さあね…結局また変な競技だと思うわよ」

 

「……だろうな」

 

フレメアが目をキラキラさせながら次の競技は何かと呟く、それを見てやれやれと首を振る保護者達…そしてアナウンスから次の競技が告げられる

 

『え〜次の競技は「おままごと」だ』

 

「「もはや競技ですらねぇー!?」」

 

「にゃあ。おままごととか楽しそう」

 

 

続いての競技はおままごと、この競技は赤組、白組関係なしでやる競技で得点は入らない。ざっくり言うと観客達を笑わす為の芝居の様なものだ。参加者は垣根、帆風、オティヌス、オッレルス、シルビア、馬鹿弟子三人、婚后、馬場、誉望、猟虎、博士、入鹿の14人だった

 

『…凄い面子だな』

 

『なぁぜローマ正教のメンバーがいないのだ!?ぶるぁぁぁ!』

 

木山は凄い面子だと呟きビアージオは何故自分達の組織のメンバーはいないのだと叫ぶ。なお選ばれた理由は垣根の気まぐれである

 

「え〜では配役はおままごとをやっていくうちに決まっていく。それまでお前らはそこに立てろ」

 

「……学園都市にまた金を借りにきたらこんな目にあった」

 

「……ふむ、私はオジギソウの改良をしていたんだがな」

 

「ししょー達の身代わりにされた。ししょー絶対に許さない」

 

何名か不安を露わにしているがそんなの関係ねえとばかりに垣根はおままごとを始める

 

「俺は当選お父さん役だ、でお母さん役だが…」

 

「!?(お、お母さん!?そ、そんな…まだ結婚は早いですわ!?で、でも垣根さんが望むのなら…わたくし!)は、はい!喜んで…」

 

垣根がお母さん役は…と言いかけると帆風はまだ中学生なのに、と顔を赤らめる。だが決意をし頑張りますと顔を上げたその時

 

「オティちゃんお母さん役頼むわ」

 

「任された」

 

「」

 

「帆風さん……」

 

オティヌスがお母さん役に決まり帆風は呆然と立ち尽くした、入鹿はドンマイと肩を叩く

 

「なあ母さん、娘のロールちゃんはまだ帰ってこんのか?」

 

「もうそろそろ帰るんじゃないか?」

 

「ろ、ロールちゃんて変な名前……て、わたくしですか!?」

 

垣根が未元物質で形成したちゃぶ台に座りロールちゃんはまだ帰って来ないのかとオティヌスに言う、帆風は変な名前だと笑うがそれが自分だと気付き慌ててちゃぶ台に近づく

 

「え、えっと…ただいま〜…これであってますの?」

 

「おお、よく帰ってきまちゃたねロールちゃん。寄り道しなくて偉いでちゅね」

 

「おうがいはしまちたか?爪切りは?」

 

「え…?よ、幼稚園児なのでしょうか?ま、ママぁ、晩御飯はなぁに?」

 

帆風に赤ちゃん言葉で接する垣根とオティヌス、幼稚園児の役かなと帆風が納得し晩御飯は何かと尋ねる

 

「じゃがバターだ、それにじゃがバターご飯にじゃがバターうどん、じゃがバターコロッケにじゃがバターじゃがバター。まだまだあるぞ」

 

「……じゃがバターばっかりですのね」

 

「それより長男で外科医のDr.オッレルスと次女で銀行員のシルビアはまだ帰らんのか?」

 

「「外科医!?銀行員!?」」

 

オティヌスが両手にじゃがバターを出して晩御飯はじゃがバター尽くしだと笑い、あははと曖昧な笑みを浮かべる帆風、そして垣根が言った役名にオッレルスとシルビアはどんなハイスペック家族なんだと驚く

 

「た、ただいま戻りましたDr.オッレルスです!俺、成功しませんので!」

 

「銀行員のシルビアだ。やられたらやり返す、木馬責めだ!」

 

「なんかこれ聞いたことありますね!?」

 

オッレルスとシルビアは昔見たことがあるドラマの真似をして事なきを得た。そんな二人を見て入鹿はツッコミを入れた

 

「……と言うか長男と次女?わたくしは何歳の設定なんですの?」

 

「長女は今年で三十路」

 

「三十路!?」

 

因みに帆風の役の年齢は三十路だった、つまり垣根とオティヌスは30代に赤ちゃん言葉をしていたのだ

 

「なあお父さん、末娘のミツーコはまだ盗掘に行ったきり帰って来ないのか?」

 

「盗掘!?この婚后光子が犯罪者の役ですの!?」

 

「ああ、さっき馬場警部から捕まったて連絡が入った」

 

「しかも逮捕されてた!?」

 

婚后の役は末娘の怪盗ミツーコ役、婚后はこの自分が犯罪者かと扇子で顔を覆って嘆く…そんな彼女の手を馬場が軽く握り垣根の所まで連れていく

 

「失礼します、ミツーコさんをお連れしました」

 

「おお、馬場警部…ミツーコは何の罪を犯したんだ?」

 

「いや盗掘て言ってましたわよね垣根さん?」

 

ボケる垣根にツッコミを入れる入鹿

 

「いやぁ、彼女はとんでもないものを盗んでいきました」

 

「その盗んだものとは?」

 

「僕の心です、なので娘さんを僕にください!」

 

「「どうぞどうぞ」」

 

「軽い!」

 

馬場がキメ顔で婚后は自分のハートをキャッチしたと告げる、そして垣根とオティヌスに彼女を嫁にくださいと頭を下げると二人は軽くオッケーし入鹿が突っ込む

 

「え…?なっ、え?ば、馬場さ…え?!あ、…えっと…な、くぁwせdrftgyふじこlp!?」

 

「あ!ミツーコが倒れた!?お、オペの用意!心臓マッサージ!ヒーヒーフー!ヒーヒーフー!」

 

「ストッーーーーープ!産まれる産まれる!」

 

婚后が顔を赤くして倒れオッレルスがオペをしようとするがそれは出産だとシルビアが蹴りを入れる、そんな茶番の中垣根は誉望と猟虎の名前を叫ぶ

 

「おぉい!執事の誉望にメイドの猟虎!早く来てくれ!」

 

「執事にメイド!?え?!もしかしてこの家でお金持ちなんですの!?」

 

「は、はい!なんっスかご主人様!?」

 

「め、めめめめメイド!?な、なんでございましょうかご主人様!?」

 

「ペットのメアリエとマリーベート、ジェーンには餌をやったのか?」

 

「「「ペット!?」」」

 

執事とメイド役の誉望と猟虎にペットであるメアリエ達に餌はやったかと尋ねる、そのペット役にされたメアリエ達は驚愕する

 

「ペ、ペット…?私達が?」

 

「これって絶対に犬とか猫、鳥だよなぁ」

 

「でもセリフを考えなくて済むから楽ですわね」

 

最初は驚いたが「まあ、ペットの役の方が楽か」と納得する3人、だが甘い。垣根帝督という常識外れがそんな犬役とか猫役を選ぶはずがないのだ

 

「ね、ねえ垣根さ……パパぁ…メアリエとマリーベート、ジェーンて犬と猫、鳥だっけ?」

 

「何言ってるんだロールちゃん、邪神ガタノゾーアにカイザーギドラ、マザーレギオンに決まってるだろ?」

 

「「「ハイ、斜め上キターーーー!」」」

 

「というかペットが一体でも地球を滅ぼせそうな奴ばっかりじゃないですか!?」

 

帆風がペットは犬猫鳥だったかと尋ねると垣根は首を振りガタノゾーアとカイザーギドラ、マザーレギオンに決まってるだろ告げる。それを聞いて予想外と転ぶ三馬鹿弟子になんでだーと叫ぶ入鹿

 

「さっきから煩いぞ運転手の入鹿。お前は早く乗り物を用意しろ」

 

「運転手!?……ま、まあ普通の役ですね…はい、高級リムジンを…」

 

「馬鹿たれ、俺の乗り物といえばメガギラスに決まってるだろうが!」

 

「何故!?あれトンボですよ!?」

 

「俺には常識は通用しねえ」

 

垣根は運転手の入鹿に早くメガギラスを連れてこいと叫ぶ、入鹿はなんでトンボなんだよとツッコミを入れる

 

「して…新しい使用人はまだ来ないのか?」

 

「そうだな、博士とやらは遅いな」

 

(…あのお爺さんは使用人の役なんですか…)

 

垣根とオティヌスが新しい使用人は遅いと露骨に博士に早く出てこいアピールをする、そして博士がホイール・オブ・フォーチュンに乗って現れ垣根とオティヌスを跳ね飛ばした

 

「「ちくわ!?」」

 

「垣根さーーーーん!?」

 

「初日から人身事故起こした!?」

 

二人を跳ね飛ばした博士はホイール・オブ・フォーチュンから降りて二人に近づく

 

「愛車に傷がついた!どう責任を取ってくれるんじゃ我ぇ!」

 

「「かまぼこ!?」」

 

「更に追い打ち!?」

 

博士は愛車に傷をつけた二人にスタンガンをお見舞いする、あばばと全身に電撃が流れ骨格が見える垣根とオティヌスは真っ黒焦げになり入鹿は酷いと叫んだ

 

「これぞ博士エレクトリカルパレードだ」

 

「……つ、ツッコミが追いつかない」

 

「てか垣根さんが気絶したらどうやってしめるんスか!?」

 

両手にスタンガンを持って決め台詞を吐く博士、もうわけがわからないよと頭を抱える入鹿…発案者の垣根が気絶してしまい慌て始める誉望

 

「取り敢えず水でもぶっかけましょう」

 

「な!?何をしているんだ君!?垣根帝督に水をかけたら…かけたら!」

 

入鹿は早く目を覚ましてくれと垣根に水をかけようとする、それを見た博士がそれを止めようとするが時既に遅く入鹿は水を垣根にかける…そして垣根の姿が段々と変わり始める

 

「垣根帝督に水をかけたらルギアになってしまうんだ!」

 

「ギャアァーース!!」

 

「確かに超能力者(エスパー)だけれども!」

 

垣根はルギアへと変貌し口にエネルギーをチャージしルギアビームを発射する

 

「うわぁぁぁ!!?エアロブラストじゃなくて映画版の光線を放ってきた!?」

 

「よ、誉望さぁん!」

 

「お金を借りに来ただけなのにぃ!」

 

「オッレルスは後で木馬責めの刑だ!」

 

ルギア(垣根)の放ったルギアビームが地面に命中し爆裂する、そして大爆発により見えなくなった帆風達…爆煙が晴れ観客達の目に映ったのは…タケノコだった

 

『ツッコミきれるかぁぁぁぁぁ!!!!』

 

『ぶるぁぁぁ!!?』

 

扶桑はマイクをビアージオの顔面に叩きつけた

 

 

『え…第四の競技はですね…リレーです。よかったようやくまともなのだ…』

 

ビアージオにボコボコにされ全身包帯まみれの扶桑はようやくまともな競技だと息をついた。第四の競技はリレー…内容はシンプル、赤組と白組同士で競い合い買った方に点数が入る。それだけだ

 

『赤白組で各6人がこのサッカースタジアムを一人ずつ半周し先に全員ゴールしたのが優勝です』

 

『白組からは三人のモブと超能力者の第七位 削板軍覇と霧ヶ丘女学院の結標淡希と観客席から助っ人 アックアさんだ』

 

『対する赤組は…ぶるぁぁぁ!上条当麻、御坂美琴、食蜂操祈、一方通行、垣根帝督、そして…吹寄制理だぁ!』

 

白組からは削板と名前なんて特にないモブ3人と助っ人のアックア、ショタコンが参加し、赤組は委員長ぽいのに委員長ではない吹寄と垣根達超能力者が参加する

 

「へ…俺はアンカーだ。未元物質の翼で宇宙の彼方まで羽ばたいてやる!」

 

「おー、行くのはゴールだけにしろよー」

 

「あァ…だりィ」

 

「……運動なんかしたくないわぁ」

 

「私達がフォローするから頑張りましょ!」

 

「……私以外全員超能力者…」

 

赤組は吹寄以外余裕の表情を浮かべており勝つのはこちらだと確信していた

 

「よし皆!ここらで根性を出して赤組に勝つぞ!」

 

「ショタはいないのかしら?ショタ…ショタ…えへへ」

 

「私は傭兵である、名前はアックアである。本名はウィリアム=オルウェルである」

 

削板が腕を上げてカラフルな爆発を起こし、淡希はショタはいないかと観客席を見渡しアックアは準備体操をしていた。トップランナーは吹寄と淡希だった、吹寄は赤色のバトンを、淡希は白色のバトンを右手に持ちながらクラウチングスタートの構えになる

 

『では位置について…用意…ドーン!…て言ったら走って下さいね』

 

『そのネタはいらないよ』

 

『ええ、分かってます冗談ですよ冗談』

 

扶桑が用意ドーン!と叫び二人が走り出そうとする…だがその直後にこう言ったら走れよと言って二人はガクッとこけた。気を取り直して二人は再びクラウチングスタートの構えを取る

 

『では用意…ドーン!』

 

(例え相手が大能力者でも単純な身体能力なら食らいつけ…)

 

吹寄は身体能力で相手に食らいついてやる…そう考えていた。だか淡希は走ったりせず座標移動で次のランナー アックアの所まで移動する

 

「………え?」

 

『へ?』

 

呆然とする吹寄と扶桑、そんな二人に淡希は笑みを浮かべこう呟いた

 

「能力は使っちゃダメなんて言ってなかったでしょ?」

 

『き、汚ぁ!?』

 

思わずそう叫ぶ扶桑、一瞬呆けていた吹寄だが早く一方通行にバトンを渡さねばと走る。それを見て淡希は余裕の表情でアックアにバトンを渡す…そしてアックアが頷いた直後にアックアは次のランナーの背後にスタンドの様に現れた

 

「……え?」

 

『ふえ?』

 

驚く白組のランナーと扶桑、その二人にアックアは真顔で呟いた

 

「私は聖人であると同時に、『神の右席』でもあるのだよ」

 

『いやさっぱり意味が分かりません!』

 

靴底と地面の間に薄い水の膜を張り体を滑らせる高速移動の術式、それに加えアックアの聖人としての身体能力。アックアが半周するまでにかかった時間は一秒も満たない。あまりの驚きにモブAは体を固めてしまった

 

「どうしたのだ少年、バトンを受け取らぬのか?」

 

「!あ、は…はい!」

 

アックアにそう言われ走るモブA、モブAは戸惑いながらも歓喜した、これで白組の優勝だと。だが赤組にもまだ秘密兵器が残っている事を彼は忘れていた

 

「ハァハァ…頼むわよ一方通行!」

 

「は……誰に言ってンだ吹寄ェ…楽勝に決まってンだろ」

 

漸く半周した吹寄が一方通行にバトンを渡す、一方通行は口元を大きく歪めながら背中に黒い翼を顕現させる。そして音速の何倍もの速度で駆け出し上条へとバトンを渡す

 

『……こっちもこっちでやりたい放題だ』

 

「頼ンだぜ上条」

 

「ああ!任しとけ!」

 

上条は一方通行から託されたバトンを持って走る、だが上条はアックアや一方通行の様に高速移動は出来ない。モブAは自分の方が先にモブBにバトンが渡せると油断した…そんなモブAに上条は口を開く

 

「優先する。大気を上位に、人体を下位に」

 

「……え?」

 

モブAの動きが止まった、理由は簡単だ。上条の幻想片影による光の処刑だ。これにより動きを封じられたモブAはその場から一歩も動けない。上条はモブAを余裕で追い越し美琴にバトンを渡す

 

「頼んだぜ美琴!」

 

「任せなさい!」

 

美琴は普通に駆け出した、彼女は普通に早い、音速ではないが普通に早い。身体能力が高い。何故なら胸がないから抵抗を受けにくいからだ

 

「誰がペチャパイじゃゴラァァァァ!!」

 

怒り狂った咆哮を轟かせる美琴、怒り狂いながらも食蜂にバトンを手渡す。そしてモブAは光の処刑の束縛から解けモブBにバトンを渡そうとする

 

「頼むぞモブB!」

 

「………」

 

「…おいモブB?おい!?」

 

だがモブBはそれを受け取ろうとしない。理由は簡単だ。彼の目には()が浮かび上がっていた。よく見ればモブCも同じ様に目に星が浮かび上がっている

 

「ふふ〜ん、私の心理掌握にかかれば洗脳なんて容易いわぁ〜」

 

『ひ、卑怯だ!?こっちも卑怯だ!』

 

食蜂は走りながらそう叫ぶ、心理掌握で洗脳して仕舞えばモブBとモブCはもう走れない。そして食蜂は1メートル走っただけでもう体力がなくなっていた

 

『てかあんたらさっきから能力使って妨害してて超能力者としてのプライドはないんですか!?』

 

「「「「プライド?何それ美味しいの?」」」」

 

「……ごめんなさい」

 

扶桑のプライドはないのかという叫びに上条達は勝てばいいんだよと超能力者特有の顔芸を披露する。それを見て垣根は若干引き吹寄は何故か謝った

 

「や、ヤベェよ…このままじゃ負け…「諦めるな!」!?そ、削板さん…」

 

「まだ負けていない!俺が代わりに走ってやる!諦めるのはまだ早い!」

 

諦めかけたモブAに削板が自分が代わりに走ると熱く叫ぶ、それを聞いた食蜂はヤバイと全力疾走をする、そして途中で吐いた。モブAは削板にバトンを託し削板が走る。そしてあっという間に食蜂を追い抜きモブBの分まで走り続くモブCの分まで走り残りはアンカーである自分がゴールすればいいだけとなる

 

「か、垣根さぁ……ん…ぱ、パスよぉ〜」

 

「おう、後は任せろ」

 

ここで漸く食蜂が垣根にバトンを渡す、それと同時に未元物質の翼を展開し音速を超える速度で垣根が飛翔する。垣根は削板に一瞬で追いつく。それを見て削板は更にスピードを加速させ垣根も限界まで翼を羽ばたかせる。並行する様に二人はゴールへと目指す

 

「勝つのは俺だぞ帝督!」

 

「いや勝つのは俺なんだなこれが!」

 

音速でゴールテープを目指す二人、速度はほぼ同じだった。そして切られるゴールテープ…扶桑はマイクを手に持ちゴールした人物の名を告げる

 

『優勝は……ウートガルザロキさんです!』

 

「第七位かていとくんのどっちかがゴールすると思った?残念俺でした!」

 

優勝はウートガルザロキだった

 

「「「「「「何でだぁぁぁぁ!!!」」」」」」

 

「ペプシマン!?」

 

麦野を除いた超能力者達は仲良くウートガルザロキにドロップキックをかました

 

 

「にゃはははは!やっぱり大覇星祭て面白い!にゃあ!」

 

「今年の大覇星祭は滅茶苦茶て訳よ」

 

「……そうだな」

 

フレンダと駒場、フレメアはリレーが終わった後飲み物を補充する為に自動販売機から飲み物を買っていた

 

「でもお姉ちゃんとお兄ちゃんと一緒に見れてよかった!大覇星祭も面白いけど私は二人と一緒に見れた事が嬉しい!にゃあ」

 

「もうフレメアたら…そんな事言ったてジュースとサイダーと飴玉しか出ないわよ!」

 

「……結構出るな」

 

そんな和気藹々と楽しそうに会話をする三人…そんな彼等彼女等に迫る怪しい影が一つあった

 

「……あいつが大将が言ってた幼女か…」

 

白いセーターと極端に長い真っ赤なプリーツスカートを着た一昔前の不良か巫女に見える彼女は古く錆びついた10円玉が詰まった2Lペットボトルを背中のベビーキャリーから取り出す。まるで幼子をあやす様に持ったそのペットボトルを一瞥し彼女は怪しく笑った

 

「コックリさん、コックリさん、おいでください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




パロディのラッシュ過ぎぃ!元ネタ分かる人いるかなぁ?因みにままごとでていとくんが乗り物はメガギラス、て言ってた理由は中の人が俳優として「ゴジラ×メガギラス G消滅作戦」のS1の職員役として出ていたから。博士エレクトリカルパレードの元ネタは三匹のオッさんの則夫エレクトリカルパレードです。

パロディネタが多すぎてわけわかめな人も多いでしょう、多すぎで逆に笑えないという人もいたでしょう。ごめんなさい作者は才能がないんです

次回もギャグが多めですが…シリアスもちょこちょこ入れていこうと思ってます

次回もお楽しみに!


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獅子舞は有名、バロンダンスはマイナー

今回はギャグが多め…な筈ですがシリアスが混じってます。そして相変わらずなギャグセンス…空知英秋先生や澤井啓夫先生、山内泰延先生、増田こうすけ先生を見習いたい……あの人達は凄い発想力だから

そして前回登場した獲冴さんの魔術ですが…本家そのままのこっくりさん…と言うわけではありません。例を呼び出す、その一点のみを強化したなんちゃってコックリさんです。まあ上里勢力には凄い魔術師の人達が沢山いるから獲冴さんもこれくらい強くしなきゃね



「ふぅ…疲れたな。水分補給水分補給」

 

浜面は観客席に座りながら買ってきた水をがぶ飲みする。タオルで体の汗を拭きながら今やっている競技 Wii Sp○rtsを眺めていた

 

「あれ?フレメア達は何処へ行ったんだ?」

 

「なんか飲み物買いに行くてさ」

 

「ふーん、そうなのか」

 

シャケ弁を買ってきた麦野はフレンダ達がいない事に気付き何処へ行ったのかと浜面に尋ねる、浜面は自動販売機に飲み物を買いに行ったと言うと麦野は納得して浜面の隣の席に座る

 

(……フレメア達がいない。そして絹旗達もいない…つまり……浜面と二人きりて事じゃねえか!)

 

麦野は顔に出さないように脳内でガッツポーズを取る。何を話そうかと麦野が悩んでいると浜面が先に口を開いた

 

「やっぱり大覇星祭ていいな、皆が一致団結してるて感じがしてさ」

 

「え?あ……そうだな、まあ運動会とか体育祭てこんな感じじゃね?」

 

「まあそうだけどさ…俺こんな雰囲気好きなんだよな」

 

「へー」

 

飲み物を飲みながら話し合う二人、浜面は競技で盛り上がっている生徒達を見て笑う

 

「俺さ…無能力者だったから大覇星祭を楽しめなかったんだけどさ…今の大覇星祭は無能力者も楽しめて…なんかいいよな」

 

「……まあな、垣根は超能力者だろうが無能力者でも平等に接するからな」

 

「……師匠のお陰で色々と変わったよ学園都市は…俺も師匠に出会わなければチンピラみたいな事やってただろうし…だからさ俺は師匠みたいな奴になりたいんだ」

 

「……へぇ」

 

浜面は自分を変えてくれた垣根みたいな人間になりたいと拳を握りしめながら麦野にそう語る、それを聞いて口元を緩める麦野

 

「だから俺教師になりたいんだ。俺不良でろくに学校に通ってなかったけど…こんな俺でも教師になって学園物の熱血教師みたいに生徒達と友情を深めたいと思ってるんだ」

 

「……あ〜確かに浜面に似合いそうだよな熱血教師みたいなの」

 

「だろ!だから俺は今頑張って勉強してるんだ!そう、家庭科の先生になる為に!」

 

「いや体育教師じゃないんかーい」

 

浜面は自分は教師になりたいと麦野に告げる、麦野は体育教師は浜面に似合いそうだと笑いかけたところで浜面は家庭科の先生になると告げ麦野は似合わないと転んだ

 

「実はさ…俺ピッキングが得意だろ?つまり手先が器用て事だ。手先が器用=家庭的=家庭科の先生だろ?」

 

「いやその考えはおかしいにゃーん」

 

「まあ家庭科の先生でも体育教師でもどっちでもいいんだけどな。俺は人の役に立てればそれだけで嬉しいんだから」

 

「……浜面は変人だな」

 

「ははは、変人の集まり(超能力者)には言われたくないな」

 

手先が器用=家庭科の先生というよくわからない考えに麦野は笑う、変人だと笑いながら告げる彼女に浜面はメルヘン・彼女二人持ち・もやし・根性・運動音痴・ビリビリと変な奴らしかいない超能力者の一人に言われたくないと笑う。それを聞いて麦野は浜面の頭をぶん殴った

 

「あの変人達と一緒にすんな。私は一番まともだにゃーん」

 

「痛ぇ…まああの中ではマシだけどさ…シャケ弁を常日頃食べてる奴もどうかと思うぞ」

 

「シャケ弁は国民食&完全食なんだよ」

 

シャケ弁を常に食べている麦野も変人だろと言う浜面に対して麦野はシャケ弁は日本の主食だと宣う麦野、はっきり言おう。日本の主食は米である

 

「それにしてもフレンダ達遅っせえな…何かあったのか?」

 

「フレンダの事だから鯖缶でも馬鹿買いしてその場で馬鹿食いしてんだろ。それで遅えんだよきっと…たく、フレンダは本当にサバジャンキーだよな」

 

「………シャケジャンキーの麦野が言うか」

 

フレンダ達が帰ってくるのが遅いと呟く浜面に対し麦野はフレンダが鯖缶を馬鹿食いしているんだろとシャケ弁を馬鹿食いしながらそう返す。お前も人のこと言えねえよと浜面は思いながらもフレンダの事だからあり得ると納得する

 

「……お、次の競技は「獅子舞」だってさ」

 

「マジで今年の大覇星祭は頭湧いてんじゃねえの?」

 

 

 

「ゲヘヘ!悪りぃ子は居ねえがー!」

 

「垣根さん、それはなまはげです。そして垣根さんが着ているのは獅子舞ではなくバロンです」

 

垣根は頭部はふさふさとした白い毛、人毛で作られた顎髭に金と目打ちされた皮で装飾された仮面をつけた姿…そうインドネシアのバリ島で知られる聖獣 バロンの姿をして踊りをしていた。その名もバロンダンスをしていた。だが言っている事はなまはげである

 

「ゲヘヘ!泣く子は居ねえがー!泣くんだったら雪超獣 スノーギランが氷漬けにしちゃうぞー!この西洋かぶれどもめー!」

 

「垣根さん、それは伝説怪人 ナマハゲです」

 

バロンダンスを踊りながら垣根は自分の背後に玉乗りするスノーギランが現れる、それを見て帆風はナマハゲ違いだと突っ込む

 

「さっきから煩いぞ魔女 ラムダ!食べてやろうかぁ!?」

 

「あ"ぁ"?」

 

「ア、スミマセン。調子ニ乗ッリ過ギマシタ」

 

垣根は帆風の事をバロンと永遠に戦い続ける魔女の名で叫ぶ、それを聞いて帆風が低い声を漏らし垣根にメンチビームを放つ。それを見て垣根はバロンの姿で土下座した

 

「というか何故垣根さんはバロンダンスを…?」

 

「獅子舞と言えばバロン、これ鉄則な」

 

「……成る程」

 

(((いや納得するのかよ)))

 

帆風がそもそも何故バロンダンスをしているのかと尋ねると垣根は獅子舞=バロン、これ常識と返す。それを聞いて頷く帆風…周囲の人はこの二人を理解できない。垣根と帆風には常識は通用しない

 

「でも垣根さん、これは獅子舞なのですから普通に獅子舞をして頂かないと困ります」

 

「……仕方ねえな、ならこの沖縄の守護神達と一緒にライオン・ダンスを…」

 

「ライオン・ダンスは中国ですしググルシーサーとキングシーサーはシーサーですわ」

 

「ならばコマさんとコマじろうで…」

 

「それは狛犬ですわ」

 

垣根はキングシーサーとググルシーサーを呼び出してライオン・ダンスを踊ろうとし帆風がそれはシーサーだと突っ込む、ならばと今度はコマさんとコマじろうを呼んで踊ろうとする垣根にそれは狛犬だと突っ込む

 

「もう、そろそろちゃんと獅子舞を踊ってください」

 

「……いやそもそも大覇星祭…体育祭みたいなもんに獅子舞とかおかしくね?」

 

「今更ですわ、ままごととか水鉄砲がある時点で体育祭ではありませんわ」

 

「まあこの獅子舞の競技考えたの俺なんだけどさ」

 

「……やっぱり垣根さんて凄い考え方の持ち主ですよね」

 

「だろ?俺には常識は通用しね…あ〜駄目だ、これ暑い。もう脱ぐわ」

 

垣根はこんな暑い日差しの中でこんな暑苦しい格好してられるかとバロンを脱ぎ出す。そしてパンツ一丁の垣根がバロンの中から現れ帆風は思わず携帯のシャッターを切った

 

「……まあ暑いですからね、仕方ありませんわ……パシャパシャ」

 

「……帆風さん、落ち着きましょう。そして写真を消しましょう」

 

「やめてください入鹿さん、この写真は永久保存いたしますので」

 

「……ああ、垣根さん(メルヘン)の所為で帆風さんまで頭がおかしくなってしまった」

 

パシャパシャと写真を撮り続ける帆風、それをやめてくれと入鹿が肩を持つが帆風は撮影をやめない。それを見て入鹿は目を左手で覆った

 

「さて…真面目に獅子舞に着替えてきますか」

 

垣根はそう言って獅子舞に着替える為に着替え室まで急ぐ、帆風はほぼ全裸で駆ける垣根を最後まで撮影していた

 

「……は!いつの間にか垣根さんの写真を撮っていました!?」

 

「……もう末期ですよ帆風さん…病院行きましょう。あのカエル先生なら治してくれます」

 

どうやら無自覚だった帆風はいつの間に!?と叫び入鹿は病院に行けと呟く。そんなコントじみた事をしている二人の前に着替え終わった垣根がやって来た

 

「悪い悪い、さあ頑張って踊るぞ」

 

垣根が着替えて着たのは獅子舞…ではなく黒い身体に胸や背びれ、目など体の随所が炎のように赤く発光しており蒸気を常に纏っている怪物…いな怪獣王の着ぐるみを着ていた

 

「……暑くないですかそれ?」

 

「いや突っ込む所そこですか!?なんでバーニングゴジラ!?」

 

因みにバーニングゴジラの重さは130キロ、更に炭酸ガスの噴射ギミックがあるので着ぐるみの中にガスが充満して酸欠になりやすい。実際映画撮影時にこの着ぐるみの中に入っていたスーツアクターは4回酸欠を起こした。そんな着ぐるみに垣根は今入っている

 

「ふ…はっきり言ってバロンより暑いしガスが充満してて…ぶっちゃけ死にそうです。助けて」

 

「じゃあ着ないでもらえます!?」

 

「だが断る!」

 

「なんでさ!ああもう!この人嫌いです!」

 

入鹿の叫びがサッカースタジアムに響き渡る、頑張れ入鹿、負けるな入鹿。世界中が君のツッコミを待っている。君しかこの二人にツッコミを入れられない。だから死ぬな、君が死んだら猟虎とゴーグル君との約束はどうなる?このボケを耐えれば赤組は勝つのだから!

 

次回 入鹿 死す デュエルスタンバイ!

 

「「イワーーーーーーーーーーク!」」

 

「勝手に殺すなぁぁぁぁあ!!!」

 

 

 

そんな馬鹿騒ぎを垣根と帆風がやらかしてブチギレた入鹿が小烏丸を振り回している頃、一方通行はコーヒーを飲んでいた

 

「ふゥ……やっぱりコーヒーはブラックだな」

 

そう言いながら空き缶を捨てもう一度自動販売機でブラックコーヒーを買う為にお金を入れブラックコーヒーのボタンを押す。だが何度押してもコーヒー缶が出てこない

 

「あ?ンだよ…壊れてンのかこれ?」

 

一方通行が美琴の様に「常盤台中学内伝 おばーちゃん式ナナメ四五度からの打撃による故障機械再生法」を使用かと思ったその時、自動販売機がドアの様に勢いよく開き一方通行はそれに当たって吹き飛ばさせる

 

「ねぼし!?」

 

「ははは!驚いたか一方通行!これが木原神拳 弐ノ型 自動販売機をガーンと開いて一方通行にダメージを与えるだ!」

 

「まンまじゃねェか!てかいつの間にそこにいたンだ!?」

 

「昨日からスタンバイしてたんだぜ!だから昨日は応援に行けなかったのさ!」

 

「暇人か!」

 

自動販売機から数多が現れ木原神拳の威力はどうだと笑う、一方通行は昨日から自動販売機の中にいたと聞いて暇なのかと叫んだ

 

「因みにミサカ達もいるよ!てミサカはミサカは宣言してみたり!」

 

「どうだ!?驚いたか師匠!?」

 

「……やっと出られた」

 

更に自動販売機の中から打ち止めとエステル、やや疲れた顔の番外個体が出てくる。よくこの人数が入れたなと一方通行は驚いた

 

「あ、一方通行もコーヒー飲む?」

 

「あァ、悪ィな」

 

「いいって……昨日からずっとあそこの中いてさ…漸く出れたよ」

 

「……すまねェ」

 

「いやいいって……はぁ」

 

コーヒーを差し出してきた番外個体に素直に感謝しつつ謝る一方通行、番外個体は疲れ果てたため息をこぼす

 

「それよりカラスの死体を通じて見ていたが凄かったな一方通行!リレーとかフルチン体操とか!」

 

「おい待て、リレーは兎も角そのフルチン体操はした覚えがねェぞ」

 

「ねえ一方通行、ゲコ太味のシュワシュワサイダーが飲みたい!てミサカはミサカは小さい外見を最大限に利用した駄々っ子交渉術を行使してみたり!!」

 

「いやそもそもゲコ太てどンな味なンだよ」

 

エステルが目を輝かせて凄かったと叫ぶが一方通行はフルチン体操はしていないと彼女の頭を叩く、打ち止めがサイダーを勝手とわざとらしく涙目になり一方通行は舌打ちしながらも自動販売機でそのサイダーを買う

 

「ほらよ」

 

「わぁい!ありがとう一方通行!てミサカはミサカは感謝して…美味い!」

 

「おィ、礼を最後まで言い終わってから飲めよ」

 

「まあまあ、落ち着け師匠。お子様にキレたってどうしようもないだろう」

 

打ち止めはお礼を言い終わらないうちにサイダーを飲み始め一方通行が少し眉をピクピクさせる、そんな一方通行をエステルが宥める

 

「いやしっかし自動販売機の中は案外暑いな…ほら凄い汗だ」

 

「それは自動販売機の中に入らないと分かンねェ事だな…て、おい!透けてる!ブラが透けてる!」

 

「む?ああ、本当だな。まあ自然に乾燥するだろ」

 

「いやオマエはもう少しは恥じらいてもンをだな……!」

 

一方通行はエステルに何か話そうとして彼女の方を向く、そこで気づいた。エステルの服が汗で透けている事に。顔を赤くして別方向を向く一方通行に対しエステルは首を傾げて一方通行に近づく…そんな二人を嫉妬の目で打ち止めは眺めていた

 

「………胸か」

 

「ら、打ち止めさん?今ミサカがネットワークから嫉妬の感情を拾い上げたのですが…」

 

「……ここにも巨乳がいたな…チッ、死ねばいいのに…てミサカはミサカは…」

 

「ら、打ち止めさぁん!?」

 

ハイライトオフでブツブツと呟く打ち止め、番外個体は凄まじい嫉妬と負の感情がネットワーク内に流れ込んできたことから頭を抱える。それを食べ物で例えるならくさやとドリアン、賞味期限が3年過ぎた食パン、腐海の瘴気が混ざり合った様な感情だ

 

「へ、へい!そこのお似合いのお二人さん!イチャイチャしないでくれませんかね!?そこのちびっ子上位個体からの嫉妬の感情でミサカ苦しい!これはアレだね!腹痛みたいなもんだよ!」

 

「あ"ぁ?誰の胸が地球平面説だぁ?」

 

「ミ、ミサカそんな事言ってないっすよ!?」

 

番外個体がイチャイチャすんのやめろと叫ぶ、ブチ切れ寸前の打ち止めは誰の胸が真っ平らだと番外個体を般若も裸足で逃げ出す様な目で睨む。ひぃ!とビビる番外個体は助けを求めるべく一方通行達を見るが…

 

「ァ?誰がイチャイチャしてンだよ?眼科行けよ」

 

「……変な物でも拾い食いしたのか番外個体?」

 

「安心しな、骨は拾ってやらん」

 

「いや助けてよぉぉ!そして骨も拾ってよ!いや死にたくないけどさ!」

 

冷たい同居人達に全番外個体が泣いた、そして後ろからジリジリと迫る打ち止め。彼女の指先は怪しく蠢いていた…まるで番外個体の胸を揉みしだいてやると言わんばかりに…

 

「だ、誰でもいいからヘルプミー!」

 

番外個体がそう叫んだその時、誰かが走ってくる音が聞こえた。四人がその音が聞こえる場所を振り向くと目に映ったのは全力疾走する垣根と帆風、そして黒いマスク・スーツ・マントを着て小烏丸(ライトセーバー)を携えた入鹿だった

 

「ズー…コー…、ズー…コー…」

 

「「「「だ、ダース・ベイダー!?」」」」

 

入鹿は怒りのあまり暗黒面(ダークサイド)に覚醒した、彼女は右手に携えたライトセーバー(小烏丸)を振るい垣根と帆風に斬りかかる。そんなシスの暗黒卿から必死に逃げる二人

 

「お、落ち着いてください入鹿さん!話せばわかりあえる筈です!」

 

「……次回 垣根&帆風死す デュエルスタンバイ!」

 

「根に持ってる!?根に持ってるよね!?入鹿ちゃん落ち着けて!」

 

波動操作(フォース)と共にあらんことを」

 

呼吸音と共に放たれる斬撃、垣根と帆風はそれを避ける避ける。三人は一方通行達の横を素通りして廊下を走り抜ける

 

「……あいつらは未来に生きてンだなァ」

 

「「「……同感」」」

 

一方通行はやっぱり垣根の周りは何が起こるか分かんねえやと呟く、全くだと頷く三人。やはり垣根帝督には常識など通用しない

 

「たく……そゥだ、確かあっちの自動販売機でカオスコーヒーが売ったンだったな…買いに行くか」

 

「カオスコーヒーてなんだ?」

 

「牛乳を混ぜたブラックコーヒーだよ」

 

「いやそれコーヒー牛乳じゃん!」

 

エステルがカオスコーヒーとは何かと尋ねると一方通行は牛乳を混ぜたコーヒーだと簡単に説明する。番外個体はそれはコーヒー牛乳だと突っ込んだ

 

「………あ?」

 

曲がり角を曲がった所で一方通行はそれを見た、それは自動販売機の前に倒れたら大きな体格の男子と金髪の女子だった…そして床には血が付着している

 

「…!?おい!大丈夫かオマエら!?」

 

「どうしたのー?……て、え!?だ、誰か倒れてるよ!?てミサカはミサカは……」

 

「マジかよ!?救急車呼ばねえと!」

 

一方通行が床に倒れこむ少年と少女に近づく、一方通行は二人に両手を当てて息をしていることを確認する。数多は携帯を取り出し病院に連絡を入れる

 

「おい大丈夫かオマエら!?て……オマエらは……!?」

 

一方通行は床に倒れた二人の正体に気づく…その二人の名前は……

 

 

「ズー…コー…、ズー…コー……何処へ行ったんですか?」

 

小烏丸を握りしめながら入鹿はそう呟く、彼女は抹殺対象を見失ってしまい首をキョロキョロさせながら必死に探す。そして別の場所へと走って行く

 

「……ふう、何とか誤魔化せたな」

 

「ええ……今度から入鹿さんをからかうのは程々にしないといけませんね」

 

入鹿が立ち去ったのを確認して草むらから垣根と帆風が現れる、二人はもう今度から入鹿を怒らせないようにしようと心に決め近くのベンチに腰掛ける

 

「はぁ〜疲れた…何で獅子舞やってたら入鹿ちゃんに追われるのさ」

 

「そもそも獅子舞やってる時点でおかしいですわ」

 

「……でも潤子ちゃんも楽しかっただろ?」

 

「………まあそうですわね」

 

二人はベンチに腰掛けながらそんな会話を続ける

 

「いや本当さ…潤子ちゃんがいて良かったよ本当に」

 

「!?え、なっ…?!い、いきなり何を!?」

 

「ほらさ、潤子ちゃんて俺らの中じゃ唯一の癒しキャラじゃん?」

 

「え?い、癒し?」

 

「そう、癒し。ほら超能力者て俺以外(・・・)変人しかいないだろ?」

 

垣根がいきなり帆風の事を癒しキャラと言い帆風がは?と怪訝な顔をする。垣根は自分以外の超能力者て変人だろ?と自分を差し置いて上条達を変人扱いする…おまいうである

 

「ロリコンもやしにリア充、シャケジャンキーに根性馬鹿、デレデレに両性愛者な女王…な?見事に変人しかいねえ」

 

(垣根さんも立派な変人ですよ)

 

「だからさ…潤子ちゃんしかいねえんだよ、俺の知り合いの中では潤子ちゃんぐらいしか清純キャラがいないの。分かる?」

 

「せ、清純キャラ?」

 

「そう!清純キャラ!ジ○リのヒロインとかみたいな清純キャラ!それが俺の知り合いにはいねえんだよ!」

 

「は、はぁ……」

 

俺の周りには清純キャラがいない!と叫ぶ垣根に珍しく帆風が引いた

 

「だから潤子ちゃんは唯一の清純キャラ(心のオアシス)なんだよ!頼むからあの上条達(馬鹿達)みたいにならないでくれ!」

 

「は、はい…分かりましたわ(変人にしたのは垣根さんの所為なのでは……?)」

 

垣根は帆風の肩を激しく揺さぶってあの変人達みたいにはなるなと叫ぶ。だがその上条達を変人にしたのは垣根本人である

 

「……で、いつ競技に戻るんですの?」

 

「そうだなー、次の競技になるまでここでサボタージュするか」

 

「……次の競技が始まるまでですか…つ、つまりそれまでこうして垣根さんと二人きり…」

 

垣根はぐだーとベンチにもたれかかる、帆風は次の競技までこうして二人きりかと顔を綻ばせる

 

「か、垣根さん?お疲れでしたら……その、ひ、膝枕とか……」

 

帆風が顔を少し赤らめて膝枕でもどうかと尋ねようとしたその時

 

『ーーー見ぃつっけた』

 

地面から女の声が聞こえた、二人はすぐさま自分達の足元を見る。地面には掌サイズの茶色い泥がへばりついていた…その泥の中央にギロギロ、ギョロギョロとせわしなく動く眼球と垣根と帆風の目線が重なった

 

「「!?」」

 

二人はベンチからすぐさま飛び跳ね眼球から距離を取る。そんな二人をあざ笑うかの様に眼球が目を細め笑っているかの様な目になる

 

『うふ。うふふ、うふうふうふふ。超能力者の第一位に神の力の身体に入り込んだ能力者…丁度固まっててくれて嬉しいわぁ』

 

その声は妖艶であり錆びついていた。例えるなら喉を潰した歌姫の退廃的な声…そして一転

 

『丁度私の近くにいるし、ぶっ殺しやすくて手っ取り早くて助かるな』

 

粗暴の声色が響いた直後眼球はボロボロと土塊と化す。そして同時に響く誰かの足音、垣根と帆風が同時に振り向くとそこに立っていたのはゴシックロリータを着こなした金髪の女性

 

「……シェリー=クロムウェル」

 

「おや、私の名前を知ってんのか。嬉しいねぇ第一位様に知っててもらえるなんて」

 

「………魔術師、ですか」

 

「ああ、ご名答。私はイギリス清教の魔術師だ。さっき言った通りテメェらを殺しに来た」

 

魔術師…シェリーは右手に持ったオイルパステルをクルクルと回しながら垣根達を殺しに来たと笑う

 

「……イギリス清教はわたくし達の抹殺を企んでいますのね」

 

「いや違えよ、単なる私の独断だよ」

 

「え……?独断?」

 

「そう独断。単に私は戦争を起こしたいだけなんだよ。魔術サイドと科学サイドの間でどデカイ戦争をな」

 

帆風はイギリス清教は自分達の命を狙っているのかとシェリーに問いかける。だがシェリーは自分が戦争を起こしたいだけだと笑って返す。それを聞いて帆風は一瞬彼女が何を言っているのか理解できなかった

 

「戦争を……起こす?」

 

「そう戦争だ。その火種が欲しいんだよ。その為にまず科学サイドの人間をぶっ殺して科学サイドの奴らに魔術サイドの事を知らしめねえといけねえ。だから殺す」

 

「……何を言って…今科学サイドと魔術サイドの仲は友好な筈です!なのになぜそんな真似を…!?」

 

だからこそだよ(・・・・・・・)

 

「!?」

 

憤る帆風にシェリーは恐ろしいほど冷静な口調で、されど奥には憎悪が含まれたたった一言で帆風を黙らせた

 

「魔術サイドと科学サイドは交わるべきじゃねえ。手を繋ぎあったらダメなんだよ。あの時の悲劇を繰り返す事になる。だから私が今の魔術サイドと科学サイドの関係をぶっ壊す」

 

淡々とした、されど激情に駆られた言葉を呟くシェリー、その有無を言わさない言葉に帆風が黙る…だが垣根は平然と言葉を綴る

 

「……20年前に学園都市とイギリス清教の間で「新たな能力者を作り出す」て一時期に手を組んだ奴らがいた。まあそいつらは騎士派に殺されたみてえだが…唯一の生き残りの名前はシェリー=クロムウェル…そうお前だよ」

 

「!?だから貴方は……」

 

「……チッ、知った口を叩いてんじゃねえよガキが」

 

シェリーは大きく舌打ちして垣根を睨む、その事など思い出したくもないと言わんばかりに彼女は頭を掻き毟る

 

「……御託はどうでもいい。テメェらを殺せばそれだけで充分な火種になる…てな訳で死んでくれよ」

 

そう言いながらシェリーは懐からある物(・・・)を取り出す、それは純金とダイヤで組み上げられたハゲワシの装飾品だった

 

「……それは?」

 

神威混淆(ディバインミクスチャ)、霊装名はワチェット=レト…さあ起動しろ」

 

シェリーは自分の胸にハゲワシの装飾品を軽く当てる…それだけでシェリーの胸にゆっくりと装飾品が飲み込まれていく…直後彼女の身体が怪しく光り二人は目を細める…そして光が収まるとそこには古代エジプト風の黒いドレスを纏いハゲワシのティアラを頭につけたシェリーが現れる

 

「さて……開戦前の狼煙を上げるか」

 

シェリー WR(ワチェット=レト)は手に持ったオイルパステルで地面に魔法陣を描く。直後鳴り響く轟音、激しく振動する大地

 

「な、何が起きて……」

 

「おいおい嘘だろ」

 

現れたのは全長100メートルはあろう巨体を持つ岩の巨人…ゴーレムだ。その巨大ゴーレムの頭部に立ち尽くすシェリーは垣根と帆風を見下しながらゴーレム…ゴーレム=エリスに命令を下す

 

「やれエリス。目の前のガキ共をぶっ殺せ」

 

ーーーヴオ"オオオオオォォォォォッ!ーーー

 

「チッ………!」

 

「………!」

 

岩巨人がその命に従い垣根達へと大きく腕を振り下ろす。その拳は万物を押し潰す死の鉄槌……それが垣根と帆風に襲いかかる

 

 

 

「浜面ァ!麦野ォ!」

 

「ぁ?一方通行じゃねえか?どうしたんだ?」

 

「どうしたんだよ旦那?」

 

観客席で競技を見ていた浜面と麦野に一方通行が走って来る、それを怪訝な顔で見る二人だが一方通行は焦った顔で二人に叫ぶ

 

「いいから早く来い!」

 

一方通行は二人の手を握ってベクトル操作で強化した足で廊下を駆ける

 

「な!?ちょ何すんだよ旦那!?」

 

「るせェ!黙ってついて来やがれ!」

 

浜面が何をするのかと叫ぶが一方通行は黙ってろと返す、30秒とかからずサッカースタジアムの出口に到着した一方通行達はサッカースタジアムの前に止まっている救急車に近づく

 

「は、救急車…?誰か怪我したのか?」

 

「……そうだよ、しかもお前らの知り合い(・・・・)がな」

 

「…………は?」

 

三人は救急車に近づく、そして浜面と麦野が目にしたのは…担架で運ばれる駒場とフレンダの姿だった

 

「……!?駒場!?フレンダ!?何があった!?」

 

浜面が二人に駆け寄る、すると二人はゆっくりと目を開け浜面を見る

 

「……浜…面か」

 

「ああ!何があったんだよ!?……おい、フレメアは?フレメアはどうしたんだよ?」

 

「……フレメアは……連れ去られた(・・・・・・)

 

「……連れ去られた?」

 

フレンダがフレメアは連れ去られたと呟くと麦野がそれを呆然とした風に呟く

 

「……いきなり襲われ…舶来を…攫われた…高校生くらいの女だった…守りきれず…すまない」

 

「……いや、教えてくれてありがとう」

 

「………麦野」

 

「………何だ」

 

駒場から襲撃した犯人の特徴を知り拳を握り締める浜面、フレンダが麦野に話しかけ麦野がフレンダの青い瞳を見つめる

 

「……フレメアを……助けてあげて」

 

「………何言ってやがるフレンダ、友達の妹を助けに行かねえ訳がねえだろ」

 

「……………ありがと麦野」

 

二人を乗せた救急車は病院へと向かう、それを見届けた麦野と浜面は救急車から背を向ける

 

「……おい、何処行く気だオマエら」

 

「決まってるだろ、フレメアを取り返しに行くんだよ」

 

友達(フレンダ)と約束したからな」

 

そう言って二人は0次元の極点で何処かへと消える、それを見た一方通行は懐から携帯を取り出し誰かに通話をかける

 

「………チッ、なンで出ねェンだよていとくン」

 

 

 

「あ〜怠いな、なんで私が子守の真似事をしなくちゃいけねえんだよ」

 

獲冴はフレメアを背中におぶりながらそう呟く、彼女の片手には10円玉が入ったペットボトルが握られており、他から見れば小さい子を寝かしつけているように見えるかもしれない…だが事実は彼女がフレンダと駒場を襲いフレメアを誘拐し気絶させたのだ

 

「さてさて、無能な宛那とは違って私は大将の役に立つぞ」

 

彼女は片手でペットボトルをジャグリングの様に空中に放り投げもう片方の空いた手で掴む動作を繰り返す。そして右手でペットボトルを掴みニヤリと笑う

 

「さあ行こうか天満大自在天神(・・・・・・・)。学園都市なんざ私一人で充分だ」

 

彼女はそう笑いながら歩み続ける、そんな彼女の背後には紫電を纏し悪霊が浮遊していた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




シェリーさんまさかの神威混淆を使用…こりゃ原作より強くなるぞ(白目)。まあ主人公とヒロインと戦うんだったらこれくらいしないと。そうじゃなきゃ戦争なんて起こせないからね(白目)

そして獲冴さんの魔術で呼び出されたのは…まさかのあの人…ならぬあの怨霊だった!?こりゃ獲冴さん強いな…何せ天満大自在天神ですからね…因みに個人的解釈では怨霊はエステルちゃんから「制御下にない残留思念は地縛霊」と明言していましたし、ロシア成教は悪霊を狩るゴーストバスターズ…つまり悪霊は存在します。なので天満大自在天神の場合は「強すぎるあまり魔術師では退治できず封印されている=その分霊または本人を10円玉に宿らせて将来する」…言ってしまえばどんなに強い悪霊をもこっくりさんで呼び出せる。それが獲冴さんの術式……何それチートやん。でもこれくらい出来そうなのが禁書のキャラ(白目)

次回もお楽しみに!


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土塊の巨人は全てを砕き破壊する

さて大覇星祭・裏編の第3話、シェリー=クロムウェル戦でございます。彼女は原作でも一応強かったのでそれを再現できる様頑張りました。でも原作のままだと魔強化ていとくんと縦ロールちゃんには勝てないのでシェリーさんも魔強化してみました(白目)


今日のウルトラマンタイガを見てまさか久しぶりにクトゥルフ神話を題材とした怪獣が出るとは思いませんでした…モチーフはシエアガですね、因みに今回の舞台となった九頭流村ですが…元ネタは九頭龍、因みにクトゥルフは日本語に直すと九頭龍と書くらしいです

そして最後は満を辞してこの章のラスボスも登場。今回は神威混淆尽くしです



ゴーレム=エリスの拳が大地を抉る、垣根と帆風は地を蹴り跳躍しそのハンマーの如き一撃を回避する

 

「チッ…!その巨体に見合ったパワー…厄介だなこりゃ」

 

「ですが壊してしまえば…!神を見る者(カマエル)!」

 

帆風は天使崇拝でカマエルをその身に降ろす、そしてカマエルの天使の力が行き渡った拳をエリスに激突させる。その拳の威力は大地にクレーターを空け山に風穴を空ける一撃。それをゴーレム=エリスは耐え切った

 

「なっ……!?」

 

ーーーヴオ"オオオオオォォォォォッ!ーーー

 

自らの拳の一撃を防がれたことに戸惑いを隠せない帆風、そんな彼女にエリスは無慈悲にも拳を突きつける。爆音が鳴り響き帆風は近くの地面に激突する、それにより爆煙が生じクレーターが形成させる。人体を容易く血で汚れた肉塊に変えるその拳の一撃を喰らっても帆風の身体は五体満足だった。だが無傷ではない、彼女は血反吐を吐きながらも立ち上がりエリスへと拳を突きつける。だがやはり同じ亀裂が入るだけで完全に破壊することは出来ない

 

「潰せ」

 

ーーーヴオ"オオオオオォォォォォッ!ーーー

 

シェリーの言葉通りにエリスはその巨体を支える大足を上げ帆風へと振り下ろす。だがその足が帆風を踏み潰す瞬前に垣根が目にも留まらぬ速さで覚醒した未元物質の翼でエリスの四肢を、胴体を切断する

 

「潤子ちゃんの拳はダメでも…俺の翼なら切断出来るみたいだな」

 

垣根はそう言って笑う、だが切断され地に落ちる筈のエリスの岩石の身体が直後停止する。垣根と帆風がそれを疑問に思う前にエリスの身体を構成していた岩石が再び結合し元の姿に戻ってしまう

 

ーーーヴオ"オオオオオォォォォォッ!!!ーーー

 

「マジか…自動再生とか巫山戯んな!」

 

雄叫びを轟かす岩巨人に垣根は悪態を吐きながらも音速で翼を振るいエリスの身体を切断し続ける。圧倒言う間にエリスは細切れになるがそれでもなお即座に修復・結合してしまう

 

「無駄だって分かんねえのか」

 

ーーーヴオ"オオオオオォォォォォッ!ーーー

 

冷たくシェリーがそう呟くと雄叫びを上げながらエリスが垣根へと走る、ただ走るだけ。そんなごく普通の行動さえも100メートルの巨体となれば地面が振動する攻撃と化す。ふらつく足場の中垣根は振り下ろされた拳を翼で飛翔する事で回避する

 

「まだです!一回で砕けないなら百回だって千回だって叩き続けます!」

 

空中へと逃げた垣根へと拳を振るおうとするエリス、だが帆風がエリスの間合いに入り込み連続して拳をエリスに放つ。秒間何十発、いな何百発も拳をマシンガンの如く放ち一撃では砕けなかった岩石の身体を少しずつ砕いていく…だが砕いた瞬間に再生し修復してしまう

 

「無駄てことが分かんねえのか!?このエリスに勝てる訳がねえんだよ!」

 

シェリーはそう叫びながらオイルパステルで空中に魔法陣を描く。それと同時に帆風の足元に無数の岩石の腕が出現し帆風の全身を掴み取り拘束する

 

「……!?」

 

岩の腕で拘束され身動きの取れない帆風にエリスのアームハンマーが放たれる、衝撃波と爆音が生じ帆風がいた場所にエリスの拳が突きつけられる。ゆっくりとエリスが拳を上げるとそこには横たわる帆風の姿が見えた

 

「潤子ちゃん!」

 

垣根は太陽を背にして翼を広げ紫外線を腐蝕光線へと変換。眩い光がエリスを包みその身を溶解させていく…だがシェリーは頭部から地面へと飛び降りエリスを盾にして腐蝕光線から身を守る

 

「は……小細工しやがって」

 

オイルパステルで描く魔法陣、大地が隆起しそこから一対の巨腕が飛び出し天空に佇む垣根へと岩の腕が飛来する。さながらそれはロケットパンチ、垣根はそれを念動力(テレキネシス)で岩の拳を掴み取り見えない力で粉砕する

 

「く…まだです!神の番人(ザフキエル)!」

 

帆風が降ろしたのは座天使達の指揮官であるザフキエル、帆風の身体が天使の力で構成された炎で燃え上がり帆風は回し蹴りを放つ。その強化された足はエリスの太い足を砕きエリスは地面へと倒れる

 

「……エリスの足が破壊されただと?」

 

「遠心力ですよ」

 

ザフキエルの能力は遠心力を増大させる能力だ、これなら超能力にも暴風車軸(バイオレンスドーナツ)という能力がある。だがそれとは桁が違う、遠心力を何十倍にも増大させる。それが燃え盛る車輪である座天使の指揮官たるザフキエルの力だ

 

「……だが何度壊そうが、何度斬り裂こうが…エリスは何度だって再生するぞ」

 

やはり何度も再生する岩の巨体…それを見て顔を強張らせる帆風…だが彼女は拳を握るのを止めない

 

「諦めません!諦めてしまえばそこで終わりです!ですからわたくしは絶対に諦めません!」

 

「……そうか、なら死ね」

 

エリスがその拳を振り下ろす、帆風も右拳に天使の力を込めてエリスの拳に放とうとする…だがその直後セルピヌスがエリスの拳に喰らいついた

 

ーーーキュラアアァァァ!!ーーー

 

ーーーヴオ"オオオオオォォォォォッ!?ーーー

 

「な!?」

 

セルピヌスがエリスに噛み付いた途端、ボロボロと身体が崩壊し始める。そうゴーレム=エリスは異能だ。なら幻想殺しであるセルピヌスが打ち消せない道理はない

 

「どんなに強力な魔術だろうが異能なら幻想殺しで破壊出来る…違うか?」

 

「垣根さん……ならそれを早く使ってくれれば苦労しなかったのでは?」

 

「それは言っちゃダメだぜ」

 

垣根がドヤ顔で威張るが帆風はジト目で早く幻想殺しを使えば良かったのにと呟く、垣根は帆風から目を逸らした

 

「……はっ、確かに私のエリスは異能を打ち消す力とは相性が悪りぃみたいだな…」

 

シェリーはエリスは幻想殺しと相性が悪いと認める、それを認めた上で彼女は笑っていた(・・・・・)

 

なら(・・)何度でも作り直せばいいじゃねえか(・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

そう彼女が呟くと彼女は再びオイルパステルで空中に魔法陣を描く。それだけで再び地面が隆起し先程と同じ100メートルの岩巨人が誕生する

 

ーーーヴオ"オオオオオォォォォォッ!!!ーーー

 

「……潤子ちゃんのパンチも防ぐ防御力に圧倒的な怪力、そして破壊しても再生する異常な再生力に加え完全破壊しても術者がいる限り何度でも作り直せる…あ、これチートや」

 

「……見た所あの人はゴーレム形成に特化しています…しかも地面から岩の腕を形成し動きを止め確実にあの岩巨人のアームハンマーを必中させる……これだから魔術師は…」

 

「私らから見たら魔術と超能力両方使えるお前らの方がズルいんだよ」

 

再誕したゴーレム=エリスを見て垣根と帆風はチートだと呟く、それに対しシェリーは魔術と超能力その両方が使えるお前らよりはマシだと呟く

 

「……確かにこのゴーレムは倒せそうにないな」

 

「ええ……ですが、術者本人(・・・・)を倒せばこの岩巨人も動きを停止させる筈です」

 

エリスは倒せない、ならシェリー自身を攻撃し倒してしまえばいい。そう二人は判断する。術者本人を倒せばその魔術であるエリスは消滅する…それしかエリスを完全撃破する方法はない

 

「……俺が支援する、頼むぞ」

 

「ええ」

 

岩巨人は唸り声を上げながら二人へとアームハンマーを放つ、帆風は地を蹴り跳躍しエリスへと駆ける。垣根はその場から動かずそのままアームハンマーに激突する…シェリーはオイルパステルを空中に走らせ魔法陣を描き大地から岩の腕を顕現させ彼女の四肢を抑え込もうとする

 

「させねえよ!」

 

それをエリスのアームハンマーを未元物質の翼で防いでいた垣根が二本の翼を伸ばし岩の腕を切断。残りの4枚でアームハンマーを破壊し地を蹴りエリスへと跳躍した帆風の周囲に三対こ翼を伸ばし何十枚もの薄い羽へと変貌させその羽がエリスの周囲を囲うように揺れ動く

 

「行きます!」

 

「ああ!」

 

未元物質の翼が縦横無尽に高速で動く、帆風はそれに飛び乗って上へと跳躍、そして跳んだ先に現れた未元物質の羽を再び足で蹴り今度は斜め下に、そして再び未元物質の羽を足場にし今度は真下へと跳躍、そして今度は上に…それを音速で行い何回も繰り返す

 

「……速過ぎて見えねえ……くそ、これが狙いか!」

 

鈍重過ぎるエリスと音速を捉える事が出来ないシェリーでは帆風の動きを捉える事が出来ない。辛うじて白い光がエリスの周囲を駆け巡る残像しか視認出来ない…そして彼女の背後を取った帆風は両足に力を込め薄い羽を思い切り蹴飛ばす

 

「はああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

この一撃が決まればシェリーを一撃で撃破出来る、それでエリスも完全に破壊され自分達の勝ちとなる。そしてこの一撃はシェリーには防げない…帆風は勝利を確信し…直後背後から飛んできた大岩に激突し吹き飛ばされる

 

「が、っああぁぁぁ!?」

 

地面へと激突、何度も何度もバウンドしその度地面へと激突し何十メートルも吹き飛ばされたところで漸く彼女の動きが止まる…それを目視したシェリーは薄く笑う

 

「姿が見えない……なら全方位を防御すればいいだけだ。高速回転する礫岩による全方位防御…これならどんな攻撃だろうが防いでみせる」

 

エリスを中心とした360度に高速で回転する礫岩が浮遊していた、それらはエリスを守る様に高速で飛び交う…それはあらゆる攻撃からシェリーとエリスを守る鉄壁の防壁であると同時に敵を肉塊にする範囲攻撃でもある。その威力は凄まじく防御力が低下している未元物質の薄い羽とはいえ破壊してしまう程だ

 

「お前らじゃあ私を傷つけることは愚か、エリスを倒す事も出来ねえんだよ!お前らは地面に這いつくばってるのがお似合いなんだよ!」

 

「……はっ、舐めてやがるな。だから油断が過ぎるんだよ」

 

垣根がそう言って笑う。シェリーがそれを疑問に思う前に彼女の胸に白い槍が身体を突き破って現れた

 

「………な?」

 

ブスブスと突き刺さる大量の槍、磔刑に処されたのが如くシェリーは未元物質で構成された槍により宙に浮かび地面へと落下する

 

ーーーヴオ"オオオオォォォォォッ…………ーーー

 

術者が倒された事により音を立ててエリスが崩壊していく、垣根は未元物質の素粒子を薄い羽からばら撒いておりそのばら撒いた素粒子がエリスの身体に侵入しシェリーの足元に忍ばせ槍へと変えてシェリーを刺したのだ。先程の攻撃は帆風を囮とした罠だったのだ

 

「……わたくしを囮にするなんて酷いですわ垣根さん」

 

「そういう潤子ちゃんも気づいてた癖に」

 

「当たり前ですわ、何度わたくしが垣根さんと一緒に戦ったと思ってますの?」

 

帆風がにこっと微笑むと垣根も笑い返す、だがこの程度ではシェリー=クロムウェルは終わらない

 

「……まだ終わってねえぞ」

 

「「!?」」

 

二人の背後に形成された巨大な岩の拳が二人に振り下ろされる、二人は地面を蹴ってその拳を回避する。垣根は地面に倒れているシェリーを見る。術者は倒れているのに何故まだ術式が起動しているのかと訝しむ垣根…だが帆風は強化された嗅覚で気付いた。あそこに倒れているのはシェリーではない(・・・・)

 

「それは偽物ですわ!」

 

「なに!?」

 

垣根が地に横たわるシェリーをもう一度よく見るとボロボロとシェリーだった何かが壊れ始める…黒いゴシックロリータと金髪は汚らしい泥色に変わり全身が泥となって溶ける…泥人形。あれはシェリーの姿を模造した泥人形だったのだ

 

「泥人形と私の区別もつかないようじゃテメェに芸術を理解する脳みそはねぇみたいだな」

 

ビシッ、と破壊されたエリスの胴体を構成していた岩石に亀裂が入りそこからシェリー本人が現れる。そう頭部にいたのは偽物(フェイク)、エリスの胴体に彼女は潜んでいたのだ

 

「さあ悪夢はまだ終わらせねえぞ」

 

ーーーヴオ"オオオオォォォォォッ!ーーー

 

「「………!」」

 

シェリーはそう言ってオイルパステルで魔法陣を描く、そして再び姿を現す最強の岩巨人 ゴーレム=エリス。冷や汗を流す垣根と帆風に向かってその岩巨人は地を穿つアームハンマーを放ったのだった…

 

 

 

「なあ麦野、飛び出したはいいけどさ…何処を探せばいいんだ?」

 

「分かんねえからこうして走ってんだろうか!」

 

麦野と浜面は第七学区を走り回っていた、フレンダと駒場を出撃した犯人がまだこの辺りにいるかもしれない…少なくともまだ遠くには行っていない筈だと推察している

 

「でも手がかり一つねえんじゃどうしようもないだろ!」

 

「だからって黙ってられるかよ!大事な友達を傷つけられてその妹を誘拐されて!浜面はなんとも思わねえのかよ!」

 

「んなわけねえだろ!俺だって犯人の奴の顔面を殴って整形してやりてえよ!でも落ち着かねえと解決するもんも解決しねえだろ!」

 

麦野はフレンダと駒場を傷つけられた事に、フレメアを攫われたことに強い憤りを感じていた。浜面も彼女と同じ気持ちだ、だが怒っているだけでは何も解決しないと浜面は叫ぶ

 

「でも何もしねえよりはマシに決まってんだろ!」

 

麦野がそう叫び返したその時、コロコロと何処からか10円玉が転がってくる…それを何故か立ち止まって眺める二人…そして10円玉がパタンと地面に倒れ…10円玉から声が聞こえた

 

『聞こえてるかー?』

 

「……なんだこれ?」

 

『お〜聞こえてるぽいな。即興にしては良かったみたいだな。じゃざっくり自己紹介といこうか。私は獲冴。金髪のチビは私が預かってる』

 

「!?テメェがフレンダ達を!」

 

『どうどう、怒りなさんな。待つのも面倒だからな。こっちから招待してやるよ。場所は第十九学区の廃工場…早く来ないとこのチビがどうなるか分かんねえぞ』

 

声の主は獲冴、彼女は楽しげな口調で早く第十九学区の廃工場に来ないとフレメアがどうなるかどうか分からないと笑う。そして10円玉から声が消える

 

「おい!テメェ巫山戯てんじゃねえぞゴラ!」

 

麦野が落ちていた10円玉を掴み取るが10円玉からは何も聞こえない…舌打ちして10円玉を地面へと投げつける

 

「………行くぞ浜面」

 

「お、おう…」

 

麦野は浜面の方を掴み0次元の極点で第十九学区へと向かう、浜面は麦野に何か言おうとするが途中で止め彼女と共にその場から消えた

 

 

 

ーーーヴオ"オオオオォォォォォッ!ーーー

 

エリスが拳を地面へと激突させるごとに地震の様な振動と地響きが響く。垣根と帆風はその拳を避けながら攻撃を加えるが流石は神の肉体を再現した岩巨人、並大抵の攻撃ではビクともしないその装甲に圧倒的パワーを前に二人は蹂躙されるしかない

 

「おいおいこんなもんか超能力者、もっと頑張ってくれよ!」

 

エリスの頭部に立ち尽くすシェリーは二人見下ろしながらそう呟く、彼女は何もしなくてもいい。なにせエリスが二人を倒せばそれでいいのだから、自分はただエリスに指示を送ればそれで全てが終わる…だから彼女は見ているだけでいいのだ

 

「お前らじゃ何百年、何千年経ってもエリスを倒すことなんざ出来ねえんだよ!さっさと諦めて潰れろ!」

 

エリスの右拳が地面へと激突、クレーターを形成するその一撃を垣根は翼を広げ飛翔することで避け翼を羽ばたかせ烈風と羽をマシンガンの如く放つ。それをエリスは左腕で防御、続く帆風の神の神秘(ラジエル)の天使の魔術で炎や氷、雷などの魔術砲を放ち装甲を破壊する…だがエリスは近くにあった建物を破壊しそれを材料に身体を再生させる

 

「くっ……まだです!神の如き者(ミカエル)

 

ミカエルを降ろし右手から光り輝く炎の剣を顕現させる、それを振り下ろしエリスを一刀両断。だが即座に元通りに接合、左腕をゆっくりと勢いよく帆風へと放つ

 

「はぁ!」

 

ミカエルの炎の剣を振るいその拳を破壊、そのまま炎の剣を振るいエリスの上半身を切断。だがまたしてもエリスの身体は再生してしまった

 

「これなら……どうだ!」

 

垣根は多才能力で発動した超電磁砲で無数の超電磁砲を放つ。それを喰らい装甲に亀裂が走りバラバラと砕ける身体…追い打ちに原子崩しや一方通行の能力で生み出されたプラズマがエリスを襲う。そんな猛威の攻撃を食らってもなおエリスは倒れない

 

ーーーヴオ"オオオオォォォォォッ!ーーー

 

「くそ…どれだけ高威力の技を叩き込んでもまた再生しちまう…かと言って幻想殺しで破壊してもシェリーがいればいくらでも作り直せる…たく、面倒な相手だぜ」

 

「ですが……完全無欠、と言うわけではなさそうですわね」

 

「と言うと?」

 

「岩巨人の装甲も垣根さんの翼なら切断可能ですしわたくしの拳でも何百発も喰らえば壊れます…それにあの岩巨人を一体以上作り出そうとしない…つまり作り出せないのではないでしょうか?」

 

「……成る程な」

 

悪態を吐く垣根だが帆風はシェリーの術式の弱点を把握していた、エリスは一体しか作れない。作れるのならわざわざ一体にしておく理由はない。二体以上出して量で押し切ればいいのにそれをしない…いな出来ないのだ

 

「ああ、確かに私はエリスを一体しか作れねえ…二体以上作ると崩壊するからなぁ…これだけはワチェット=レトを使う前と同じだ…精々岩の腕を作ったり岩石で身を守るので精一杯だ…でもよ」

 

シェリーは帆風の考えを肯定した上で笑う、それがどうしたと言わんばかりの獰猛な笑みで

 

逆にこんな使い方があると思わなかったのか(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

そう言ってシェリーはオイルパステルで魔法陣を描く…それと同時にエリスの身体が崩壊し始める…二体目を作ろうとした所為でエリスの身体が崩れたのだ…そしてそれと同時に周囲の大地が揺れ始めそして地面に亀裂が走り二人の足元が沈んでいく

 

「「な!?」」

 

「地盤沈下てヤツだ、土塊に埋もれて死にやがれ」

 

それは通常の地盤沈下とは違う法則で発生する、シェリーが発動した魔術は垣根と帆風を中心とした半径10メートルを範囲とした大地に大穴を開けシンクホールを形成し地下へと落とす技…その深さは何千メートルにも逹する

 

「なっ……!くそ!」

 

「ふっ…!」

 

垣根は未元物質の翼で空中に止まり、帆風もガブリエルの翼を使わない空中浮遊で落下を防ぐ。安堵する二人だがふと周囲に暗くなり二人はそれを疑問に思い上を見上げる…二人の目に映ったのは山の様に巨大な岩石が大穴目掛けて落下してくる姿だった

 

「「…………は?」」

 

比喩ではない、正真正銘山の如き大きさの岩石が大穴目掛けて落下している…このままでは二人は岩石に押し潰される

 

「地盤沈下で消滅させた土塊を岩石に変換しそれをお前らに落とすことによって押し潰す。結局お前らには穴に落ちて死ぬか、押し潰されて死ぬか…それしか残ってねえよ」

 

シェリーがそう言った直後だった。穴の深淵から途轍もない重力場が発生し二人は穴に吸い込まれ始める…二人はそれから逃れようと上を目指すが岩石が逃げ道を塞ぐ、更に不安定な状況下からなのか座標移動も発動出来ない

 

「チェックメイト、あばよ超能力者」

 

シェリーは穴を覗きながら皮肉げに笑って踵を返す、二人は巨大岩石を破壊しようと未元物質の翼で砕く、魔術砲での破壊を試みるが巨大岩石は破壊できない

 

「…!やはり、ダメですか……どうすれば!」

 

「……無理だな、俺と潤子ちゃんの攻撃じゃビクともしねえらしい」

 

「そんな……こんな所で終わ「でもな」」

 

俺と潤子ちゃんが力を合わせたら(・・・・・・・・・・・・・・・)どうだ?」

 

覚醒した未元物質でも天使崇拝でも破壊不可能、垣根はそう判断する…だが自分達の力を合わせればどうだと彼は笑いながら呟き帆風が目を見開く

 

「力を……合わせる?」

 

「一回やっただろ?病理の時に俺の未元物質を重ねて槍にして病理に突き刺したヤツ」

 

「……アレですか、あの技をもう一度やろうと言うことですか?」

 

「いや……それより強い合体技をやってやろうぜ」

 

病理の時にやった技をもう一度やるのかと尋ねる帆風に垣根はそれより強い合体技をしてやろうと笑う

 

「……言っておきますけど失敗したら岩に押し潰されて終わりですのよ?」

 

「だからこそだろ、失敗できないて分かってたら成功率も上がる…と思う。それに脳幹先生なら絶対にこう言っている筈だぜ…「合体技は……男のロマンだよ」てな」

 

「……確かにいいそうですけど…はぁ、こんな時でも垣根さんは垣根さんですね」

 

この絶体絶命のピンチで賭けるのかと呆れ笑いをする帆風、彼女は垣根に笑いかけてまっすぐ岩石を見つめる

 

「いいですわ、わたくしと垣根さんの持てる力を全て合わせ岩を…そしてあの女の人を止めてみせましょう」

 

「そのいきだぜ潤子ちゃん、さて…俺も頑張りますかね」

 

垣根はそう言って笑った後真顔になる、そして未元物質の翼を切り離す(・・・・)とその六枚の翼を帆風の身体に纏わせる…そして翼が変形していく……そして岩石が二人に炸裂する

 

 

シェリーは余裕の表情で道を歩く、垣根と帆風は死んだと確信して目を瞑り笑みを浮かべ歩く…だが直後ピクンと身体が震えた。怯えたように背後を振り向くシェリー、その目に映ったのは大穴に入っていく巨大岩石…その巨大岩石に亀裂が入り破壊されそこからプラチナブロンドの髪をなびかせる少女が飛び出した

 

「な!?」

 

驚くシェリーの事など帆風は気にせず両足で大地へと降り立つ、そしてまっすぐシェリーを睨みつける…シェリーは目の前を見て服装が変わっているのに気づいた。帆風が先程まで着ていた常盤台の体操服ではなく純白に薄く発光する白きドレスとなっており、そのドレスは童話や絵本に出てくるお姫様が着こなす美しく可憐な妖精の如きドレス。背中には小さな小さな天使の羽のような翼が装飾品の様にピクピクと動いている。そして何よりも異色なのはそのドレスに似合わぬ拳や足に纏わせた純白の籠手とグリーブ、そして頭を守るように装着された双翼の翼が象られた兜…それは姫ではなく戦姫。戦場を駆ける戦乙女そのものだった

 

「なんだその姿は…」

 

「そうですわね……未元装着(ダークランペイジ)…いえ天衣物質(マタードレス)………未元天衣(ダークドレス)…これにしましょう。こっちの方がいいネーミングですわ」

 

垣根の未元物質を鎧のように纏う事により防御力だけでなく攻撃力も最大限までに高める合体技。単に垣根と帆風の力を足したのではなく何倍…いや何十倍、何百倍にも引き出す…それが未元天衣だ

 

「……チッ、所詮はカッコだけだろ!」

 

シェリーがオイルパステルを走らせ魔法陣を描き岩の巨大な拳が帆風の左右に現れる。そしてその二つの拳が帆風に迫り彼女を潰そうとする。対して帆風は逃げる事なくそのまま拳に押し潰された、それを見てシェリーは笑みを浮かべ…そして重なり合った両拳が砕け中から無傷の帆風が現れ目を見開くシェリー

 

「な、無傷だと……!?」

 

「残念ですが…貴方のその魔術も岩巨人も貴方が囚われている過去の記憶(幻想)も、わたくしの未元天衣には通用いたしません」

 

帆風は右拳で握りしめながらシェリーを見る、お前では自分を倒せない。諦めろとでも言うかのように…だがシェリーは諦めずオイルパステルを走らせ岩の腕を帆風に伸ばす。彼女はそれを回し蹴りを放つ事により一掃しシェリーへと拳の衝撃波を放つ。それを土塊の防壁で防ごうとするも呆気なく破壊されシェリーが吹き飛ばされる

 

「が、っは……くそ!舐めやがってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

ーーーヴオ"オオオオォォォォォッ!!ーーー

 

シェリーの叫びと共にゴーレム=エリスが再び姿を現わす。主人(シェリー)の危機を察したかのように岩巨人は轟く咆哮を叫びながら100メートルある巨体を唸らせ赤き眼で帆風を睨む。シェリーはエリスの頭部に立ち尽くしエリスに命令を叫ぶ

 

「やれエリス!あの女を殺せ!」

 

ーーーヴオ"オオオオォォォォォッ!ーーー

 

「……………」

 

命令に従い彼女へ拳を突きつけるエリス、そのアームハンマーは圧倒的な破壊をもたらす死の一撃…それに対し帆風は両手を構え精神統一する

 

「甘えよシェリー=クロムウェル。そんな人形じゃ今の潤子ちゃんを止められねえよ」

 

多才能力で発動させた風力使いの力で大気を足場にし宙に浮く。そして空中からシェリーを見下ろしながら彼は笑う

 

「今の潤子ちゃんにお前の常識(幻想)は通用しねえぞ」

 

目を瞑り精神統一していた帆風は目を勢いよく開きサンダルフォンの力を降ろす。放つは最大の一撃…大きく息を吸い身体を回転させる…瞬く間に彼女は白き風纏う竜巻となりゴーレム=エリスの拳に激突する

 

「はあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

エリスの拳が削られていく…それはまるで風化した岩の様に…そしてエリスはその竜巻に巻き込まれ身体を消滅させていく…シェリーもその竜巻に呑まれドレスを切り刻まれていく

 

ーーーヴオ"……オ……オォォ………ォ……ーーー

 

「があああああああああああ!!?」

 

竜巻の中から二つの悲鳴が轟く、そして竜巻が消えた後に残ったのはエリスだった土塊。そしてエリスの術者たるシェリーが横たわっていた…彼女の霊装であるワチェット=レトも粉々に砕け力を失っていた

 

「………ふう」

 

帆風はエリスとシェリーを倒したと知るとその事に安堵し息を吐く、それと同時に未元天衣が光となって消え元の姿に戻る…そしてふらりとした彼女の身体を垣根が支える

 

「大丈夫か潤子ちゃん?」

 

「……ええ、大丈夫ですわ…でも…少し疲れてしまいました」

 

「だろうな。ま、シェリーを倒したんだ。もう安心していいだろ。頑張ったな」

 

帆風は自分を支えてくれた垣根に感謝し笑いかける、垣根もよく頑張ったと帆風の頭を撫で彼女は少し頬を赤く染めながら嬉しそうにより一層笑う

 

「く、はは……あはははは……」

 

そんな二人を嘲笑うかの様にシェリーが笑う、それを訝しげな目で見る帆風と垣根

 

「何笑ってやがる」

 

「これが笑えずにいられるか。何せお前らの足止めに成功したんだからな」

 

「………足止め?」

 

シェリーは自分の役目は終わったと言わんばかりに笑みを浮かべる…その直後垣根の携帯が鳴り響く。垣根は携帯を取り出して通話に出る

 

「はいはい、こちら垣根だ。今こっちは取り込み中なので掛け直して…『巫山戯てる場合じゃねェンだよていとくン!』……アー君?」

 

電話の主は一方通行だった、彼の焦っている声を聞き垣根は眉をひそめる

 

「なんでそんなに焦ってんだ?」

 

『焦るに決まってンだろ!何度も電話したのに繋がらねェンだからな!いやそれよりも大変なンだ!麦野のダチのフレンダと浜面の仲間の駒場が魔術師に襲われた!それにフレンダの妹のフレメアがそいつに攫われたンだよ!』

 

「「!?」」

 

「はっ………!」

 

一方通行がフレンダと駒場が魔術師にやられ、フレメアが誘拐されたと電話越しに叫び驚愕する帆風と垣根…それを見てシェリーは笑う

 

『いいから早く来てくれ!麦野と浜面がその魔術師を探しに勝手にいなくなっててな!早く探さねェと!』

 

「ああ、すぐに行く待ってろ」

 

垣根は通話をやめると笑い続けるシェリーに歩み寄り彼女の襟首を掴む

 

「テメェ……足止めったよな?他にも仲間がいんのか?答えろ!」

 

「……ああ、学園都市に潜り込んでたのは私一人じゃねえ。もう一人上里て奴のシンパの…名前は忘れちまったがもう一人魔術師が学園都市にいる」

 

「「!?」」

 

もう一人魔術師が学園都市にいると吐き驚く二人、そんな二人を見てシェリーは更に笑みを深くする

 

「私としてはどっちでもよかったんだよ。私がお前らを殺すのでもあの女があのガキを殺すのでも…どちらにせよ戦争が起こる。それで私の願いも叶うんだからな」

 

シェリーはそう言って笑う、自分が垣根と帆風を殺すのもよし。獲冴がフレメアを殺すのもよし。両方とも成功してもよし。どちらにせよシェリーが望む魔術サイドと科学サイドの戦争は始まるのだから

 

「さあ……戦争のカウントダウンが始まったぞ」

 

 

 

第十九学区の廃工場に麦野と浜面は辿り着きその中へと入った…その中は暗闇で窓から差し込む薄い太陽の光しか光源がない…そんな工場の中心にドラム缶の上に座る獲冴と鎖で繋がれたフレメアがいた

 

「フレメア!」

 

浜面がフレメアの元へと駆け出そうとするが麦野がそれを制す、相手は魔術師だ。一般人の浜面では相手にならないと思っての考えだった

 

「テメェが魔術師か…舐めた真似しやがって…ぶっ殺してやる」

 

「はは、口だけは達者だな…だが私にお前は絶対に勝てない…そうだろ天満大自在天神(・・・・・・・)?」

 

原子崩しを携える麦野に対し獲冴はニヤリと笑い自身の背後に悪霊を顕現させる。その名は天満大自在天神…生前は菅原道真と呼ばれた霊を呼び出す

 

「死ね」

 

麦野が原子崩しを放つ、緑の閃光は獲冴へと迫り…軌道を変えた(・・・・・・)

 

「あ?」

 

「おいおい……天神様の事も知られねえのかよ学園都市の奴らは?」

 

眉をひそめる麦野に明らかに舐めた顔をする獲冴。そして指を鳴らすと天満大自在天神が放電し始め空から稲妻が降り注ぐ。麦野はそれを原子崩しで軌道を逸らす

 

「く……!?」

 

麦野は内心舌打ちする、美琴の様な雷を操る敵とは相性が悪いと自覚しているからだ。だがそれだけでは獲冴は終わらない

 

「まだだ…これでは終わらせないぜ!」

 

彼女がそう言って取り出したのは緑の小麦を象った装飾品を取り出す…それを見た麦野は以前戦った宛那を連想する

 

「まさか、それは……!」

 

「ああ、宛那と同じ神威混淆の一つ…オシリス=ハデスだ」

 

獲冴はそう言って笑いながら自分の胸にオシリス=ハデスを突き刺す、そして胸に吸い込まれ彼女の服が変わっていく…古代エジプトの王が着ていた服となり右手には小麦に包まれた10円玉が詰まったペットボトルを持つ

 

「これが神威混淆か…力が漲ってきやがる。さて一丁大将の為に頑張りますか」

 

そう言って彼女は笑う。全ては上里翔流の為に彼女は自分の持てる全てを賭けてでも彼女は戦うのだ…かくして超能力者と無能力者、魔術師との戦いが火蓋を切られたのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




シェリーさんは猛威を振るってたけど覚醒した縦ロールちゃんには呆気なく負けたご様子。でも獲冴さんと手を組んでたからていとくんと縦ロールちゃんを引きつけて足止めしてた時点でもう役目を終わらせている…中々の策士ですね

そして獲冴さんも神威混淆を使うという…困ったときは神威混淆、ボスが弱い?なら強くすればいいじゃない。それが作者の考えです。気に入らない方がいたらごめんなさい。因みにワチェット=レトは術者本人は弱いですが異能生命体はクソ強くなるという霊装。術者本人の攻撃力という点では神威混淆の中では一番弱いです。なおオシリス=ハデスもワチェット=レトと似た様な効果です

未元天衣のモチーフはブラッククローバーのノエルの「海神戦乙女の羽衣鎧」と文ストの新双黒の「月下獣羅生門・黒虎絶爪」ですね。未元物質の防御力と天使崇拝での力を全力以上で発揮できる。更に覚醒した未元物質が起こす物理法則も発揮出来るチート性能…しかと今回発揮したのはまだ一部という…また出す予定なのでお楽しみに


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男も女も愛すべき人の為に強くなれる

浜面てカッコいいよね(唐突)、実は僕上条さん一方さん浜面の中では意外にも浜面が一番好き。CVも好きだし滝壺のためにヒーローになれる点が好き。まあ他の二人と比べるとアンチが多いけど…僕は好きですね。まあ滝壺さん一筋の癖に何ハーレム築いてんだよ、とか思ったりするけども…

むぎのんも最初は「麦野?あ、あのビームでるおばさんか」て印象だったけど今では好きなキャラの一人です。やっぱり自分とあるで嫌いなキャラなんて殆どいないんじゃないかな?ただし蠢動とニコライ(ロシア成教の人)、テメェらはダメだ

さて今回は獲冴vsむぎのん&浜面…浜面がカッコよくかけてるか不安です



「さあ行くぞ超能力者、大将の為の礎となれ」

 

獲冴 OH(オシリス=ハデス)は右手を麦野と浜面に向けると虚空から無数の包帯が出現し包帯は槍の形となって二人に襲いかかる

 

「な!?包帯を操る能力か!?」

 

「……そういや浜面は魔術の事知らなかったな」

 

麦野は今更ながら浜面が魔術の事を知らない唯の一般人である事を思い出した。彼女は浜面が怪我をしない様に原子崩しで包帯の槍を迎撃し焼き払い獲冴を狙う。だが獲冴を狙った原子崩しは背後に佇む天満大自在天神の力により原子崩しの軌道が変わり獲冴から逸れていく

 

「無駄だぜ、お前の能力は電子を操る力だ。いくら威力が高くても…天満大自在天神の前じゃあ意味はねえよ」

 

獲冴はそう宣言する、天満大自在天神がいる限りお前の攻撃は絶対に自分には届かないと。それに苛立った麦野は更に原子崩しを放つがやはり天満大自在天神の力により逸れてしまう

 

「くわばらくわばら、て知ってるか?」

 

「……確か雷除けのまじないだったか?それがどうしたってんだよ?」

 

「くわばらてのは桑原、天神こと菅原道真の故郷の名だ。怨霊となった菅原道真は復讐の為に雷を落としたが桑原には雷を落とさなかった…その逸話の再現だよ」

 

「?どう言うことだ?」

 

(……成る程、つまり私の原子崩しを雷に見立ててあいつに当たるのを阻止してるのか…私や御坂の天敵じゃねえか)

 

浜面は獲冴が何を言っているのかさっぱり分からなかったが麦野は理解した。要するに菅原道真…天満大自在天神が故郷に雷を落とさなかった逸話から術式を構築し麦野の原子崩しを逸らしているのだと

 

「浜面は下がってろ!あいつは超能力者並みの実力者だ!お前じゃ手も足も出ねえ!」

 

「!……でもお前一人で戦わせるわけには…!」

 

「心配すんな!私は第四位だ、一人くらいなんとかなる!」

 

「へぇ…言うじゃねえか。ならどこまで持つか楽しみだ!」

 

浜面に下がる様叫ぶ麦野、獲冴はペットボトルの蓋を開け何枚か10円玉を取り出しそれを空中へと放り投げる

 

「コックリさん、コックリさん、おいでください…招来 建勲」

 

宙に投げられた10円玉が紅蓮の炎を纏う、コックリさんの術式で呼び出したのは比叡山焼き討ちを行なった戦国時代の武将 織田信長の霊を呼び出し10円玉に宿したのだ。炎の弾丸となった10円玉は麦野へと向かう

 

「チッ…建勲だがなんだか知らねえが…邪魔だ!」

 

麦野はそう言って原子崩しを放つ、原子崩しの威力は並大抵の物質を軽く破壊する程だ。だが炎の弾丸はその原子崩しを突き破って麦野へと迫る

 

「な……!?」

 

0次元の極点ですぐさま回避する麦野、だが自分の原子崩しを破られた事に驚愕を隠せない

 

「何驚いてるんだ。オシリス=ハデスで強化してるとはいえ祀られてる神様だぞ?そんなビーム如きに負ける筈がねえんだよ。なにせ神仏を焼き払った魔王の炎なんだからな」

 

獲冴はそう言って笑いながら10円玉に建勲の炎を宿らせマシンガンの如く放つ。その一発一発が原子崩し以上の威力を持ち下手をしたら液状被覆超電磁砲並みの威力があるかもしれない。麦野はそれを0次元の極点で避け続けながら死角から原子崩しを放つがどれも天満大自在天神の力で捻じ曲げられてしまう

 

「コックリさん、コックリさん、おいでください…招来 豊国大明神」

 

次に呼び出したのは一夜で城を作り上げた逸話を持つ天下人 豊臣秀吉の霊を呼び出し麦野が0次元の極点で転移させた瓦礫の雨を一瞬で空中に作り上げた城壁で防ぐ

 

「なめんな!」

 

「……ッ!」

 

全方位から原子崩しを放ち獲冴はそれを天満大自在天神の力で逸らす、だが麦野は能力も何も使わず走って獲冴に接近する。獲冴は天満大自在天神に命令し稲妻を降り注がせるが麦野はそれを原子崩しで逸らす

 

「その亡霊が私の原子崩しを逸らせるのなら私も同じ事ができる筈だよなぁ!」

 

「マジか…やっぱり超能力者てイかれてやがんな」

 

獲冴は包帯の槍を形成し彼女へと迫らせる、それを原子崩しの壁で防ぎ彼女の顔面を殴りつける

 

「が、ぁ!?」

 

後方へと退がる獲冴、だが麦野は追撃を止めず何度でも彼女の顔に拳で殴りつける。がら空きの腹に蹴りを叩き込み首を掴んで獲冴を投げ飛ばす

 

「ぐ……調子に乗んな!」

 

彼女がそう言ってペットボトルを振るうとコンクリートの地面からブドウやザクロの実がついた木々が生えその枝先が槍や杭の様に麦野に迫る。それを0次元の極点で避け遠距離から原子崩しで焼き払う…そんな一瞬の間に獲冴は新たな霊を呼び出す

 

「コックリさん、コックリさん、おいでください…招来 東照大権現」

 

呼び出すのは生前は徳川家康と呼ばれた霊、薬師如来を本地とするその霊はあらゆる傷を治癒する能力を持つ。獲冴はそれの力を使って殴られて赤くなっている場所を治癒する

 

「ふぅ…怪我してたら大将に心配かけるからな。それに怪我してたら他の奴らに大将を取られちまうからな」

 

(あいつ……戦闘中でも自分の身体の心配をしてやがる…どういう神経してんだよ)

 

獲冴の戦いで傷を負ってそれが後に残らない様に治癒する姿を見て浜面は憤りを感じる。フレンダと駒場を傷つけてフレメアを攫った挙句、今度は自分と麦野を攻撃して当の本人は傷つきたくないと考える…そんな考えが浜面は許せなかった

 

「余裕ブッこいてんじゃねえぞ!」

 

能力が効かないのなら拳で倒す、麦野は拳を大きく振るい原子崩しの反動を利用した高速移動で一気に詰め寄る…そんな彼女を見て獲冴はほくそ笑んだ

 

「コックリさん、コックリさん、おいでください…招来 武振彦命」

 

獲冴が呼び出したのは独眼竜と呼ばれた武将 伊達政宗。かの霊は麦野の目の前に現れて日本刀で麦野に斬りかかる、それを麦野は原子崩しを振るいまるでレーザーソードの様に扱い日本刀ごと武振彦命を切断する。霧散していく武振彦命を尻目に獲冴へとドロップキックを放つ

 

「チッ!」

 

ペットボトルを盾にしてドロップキックを防ぐ獲冴、だが麦野は空中で半回転し牽制として原子崩しを五発放つ。当然逸らされるがその反動で麦野は獲冴から離れた地点へ着地、拡散支援半導体(シリコンバーン)を投げそこに原子崩しを命中させ光線を拡散。無数の光線が獲冴を呑み込まんばかりに迫り獲冴は天満大自在天神の力で逸らす

 

「そっちに気を取られてんじゃねえよ!」

 

「な……!?」

 

背後に現れた麦野が正面の原子崩しに意識を向けていた獲冴に周り蹴りを放ち彼女を5メートルほど吹き飛ばす、獲冴は廃工場の壁に激突し肺から酸素を吐き出す。麦野は更に追撃を行おうと走り出そうとするが足が動かない事に気付き足元に目を向けると足は地面から這い出た包帯に足を絡まれ抜け出せないでいた

 

「お返し、だ!」

 

「ぐっ!?」

 

身動きの取れない麦野に獲冴は接近すると先程のお返しとばかりに麦野の顔面に蹴りを放つ、倒れかける麦野に空中から包帯を出現させ両腕を拘束しそのままサンドバッグの様に麦野を何度も殴りつける

 

「さあ…そろそろ殺すか」

 

そう言って獲冴は包帯を自分の右腕に巻きつけ槍の様な形状にする。その包帯の槍を麦野の身体に向け心臓の位置に狙いを定める

 

「あばよ超能力者」

 

その一言と共に包帯の槍は麦野の心臓を狙う

 

 

 

「くそ!こいつ自体が囮とはな!すっかり騙されたぜ!」

 

垣根が叫ぶ、帆風は未元物質の紐で縛って拘束したシェリーを肩で担いで垣根の隣を走る…二人は魔術師を追って消えた麦野と浜面の行方を探す。上条達も同じく麦野と浜面を探している様だが一向に見つからない様だ

 

「は、無駄だ。あの女は頭悪そうだが上里とか言う奴の為なら何でもする女だ…いくら探しても無駄だろうな」

 

「……………」

 

シェリーは獲冴は上里が関わればヘマなどしない奴だと笑いながら告げる。彼女のいう通り美琴は学園都市のカメラの映像から二人を探そうとしているが麦野と浜面が一方通行の前から去った時間帯からどのカメラも機能停止していた…垣根と帆風には知る余地はなかったがそれは獲冴が呼び出した天満大自在天神の電撃でカメラだけをピンポイントに機能停止させたのだ

 

「私としてはお前らを殺すのでも良かったが…まあ保険をかけておいて正解だったな。超能力者が魔術師に殺されたとなれば科学サイドも魔術サイドを敵視するだろうしな…当然戦争が起こる。これで私の目的は果たされるのさ」

 

シェリーは麦野が殺されれば科学サイドと魔術サイドの戦争が起こると笑う、そうすればもう2度と関わり合い重なり合う筈はない。エリスの悲劇は繰り返されないと満足げに笑う…そんな彼女を見て帆風は一言呟く

 

「本当にそれでいいと思ってるんですか?」

 

「あぁ?」

 

「わたくしは20年前のことなど知りません。ですが貴方が学園都市の方とお友達になった事は分かります」

 

帆風は20年前の事件など知らないし何の関わり合いもない。そんな当たり前の事をほざく帆風をジロリと見つめるシェリー

 

「科学サイドと魔術サイド…確かにこの二つは交じり合ってはいけないのかもしれません」

 

「は、その通りだよ。今更分かっても遅え…」

 

「でも分かり合えないことはありません」

 

「……あ?」

 

帆風の言った言葉をシェリーは理解出来なかった。帆風はただ淡々と言葉を綴っていき垣根とシェリーはそれを黙って聞いていた

 

「だって貴方とそのお友達は友達になれたんです。なら魔術サイドの皆さんもわたくし達と仲良くなれない道理はありませんわ」

 

「……分かってねえじゃねえか!お前みたいなのがいるからエリスの時と同じ過ちを何度でも繰り返すんだよ……!」

 

シェリーとエリスが友になれた様に、きっと魔術サイドも科学サイドも仲良くなれる。そう垣根のお陰で学園都市がイギリスやバチカンの魔術サイドと友好を結んでいる様に。シェリーはそんな帆風に分かっていないと怒りの眼を向ける。そんな考えの奴がいるから過ちは繰り返されるのだと

 

「いいえそんな事はありませんわ。少なくとも過ちを何度も繰り返すほど人間というのは愚かではない筈です」

 

「馬鹿か!人間は何度でも同じ過ちを繰り返すんだよ!核だの人種差別だのそれらが一度でも繰り返されなかったことはあんのか!?ねぇだろうが!」

 

「でもわたくしは信じています、お互い住む場所を隔離するのではなく手と手を繋いで分かり合える…そんな日が来るのを」

 

「分かんねえ奴だな!そんなもん幻想に過ぎねえんだよ!そんなもんが実現してたらエリスはなぁ、死ななくて良かったんだ!」

 

あくまで自分の夢物語を語る帆風と自らの感情を吐き出すシェリー、帆風の語る言葉は正論ではなく自分の理想だ。対してシェリーが語るのは正論…だが帆風は自分の意思を曲げない。例えそれが夢物語でも単なる空想でも…魔術サイドも科学サイドも、誰もが笑ってられる世界の方がいいからだ

 

「……お前は知らねえだろうがな、学園都市には学校に通ってる魔術師がいる。そいつらは魔術サイドだの科学サイドだの関係なしにこの学園都市での日常を楽しんでんだよ」

 

垣根がそう言って脳裏に浮かべるのは学校に通って毎日楽しそうにしているインデックス達、彼女達は本来は魔術サイドにいるべき存在。だが彼女達は今科学サイドである学園都市で青春を謳歌している

 

「魔術サイドの人間は魔術サイドに、科学サイドの人間は科学サイドに…そんな誰が決めたわけでもねえ下らねえ境なんざクソくらえだ。俺はそんな魔術と科学の領分とかいがみ合いは興味ねえんだよ。和平してハッピーエンド。それで充分だ」

 

垣根はカプ厨だ、上琴や上食、ステイン、オッシルが好きだ。だがカップリングと同じくらい人が笑っている顔が好きだ。人が笑っていない世界など地獄でしかない。魔術と科学がいがみ合ってそれで悲しむ人がいるならそんな争いなど終わらせてやる、科学と魔術が手を組んでそれで人が笑顔になるなら喜んで垣根は魔術と科学を結ぶ架け橋になろう

 

「俺は人の不幸が大嫌いだ、だから今の学園都市と魔術サイドの関わりは好きなんだよ。アレイスターの魔術嫌いはまだ治んねえがリリスが戻って来てあいつにも笑顔が戻った。氷華もインデックスと友達になれて良かった…だから今の関係は絶対に壊させねえ」

 

「垣根さん……」

 

だからこそその関係を壊そうとする獲冴が許せなかった。自分の欲の為に魔術サイドと科学サイドの関係を壊そうとする獲冴を何としても止めようと呟く垣根のその顔はいつになく真剣そのものだった

 

「………」

 

その横顔を見ながらシェリーは昔 あの少年(・・・・)と交わした話を思い出しながら

 

 

『シェリー、僕ね魔術サイドの皆ともお友達になりたいんだ』

 

エリス=ウォリアーはそう笑顔で呟いた。当時は内気だったシェリーは笑顔の少年に首を振った

 

『……無理よ、魔術サイドと科学サイドは常にいがみ合ってるもの…今は手を結んでても…掌返しがいつ始まるか分からないよ』

 

だからこそだよ(・・・・・・・)!確かに僕もさ魔術て最初に聞いて疑問に思ったけど今はシェリーに魔術を教えてもらって納得してる!何事もまずは知ることが大事なんだよ!』

 

だがシェリーの言葉を聞いても彼の考えは変わらない。彼は朗らかな笑みでシェリーに語りかける

 

『僕らはきっと分かり合える!その為にはお互いを知ることから始めないと!互いのことをよく知ってお互いの良い所や悪い所を知ってから初めて僕らは分かり合えるんだよ!』

 

『……出来るかな』

 

『出来るよ!だって僕とシェリーはこうして友達になれたんだもん!僕らに出来たなら魔術と科学も出来るよ!僕とシェリーで架け橋になれば後の人達もそれに賛同してくれる!僕らはその最初の一歩を踏み出すんだ!』

 

エリスの考えは子供らしく純粋無垢だった、だからこそシェリーはエリスの考えを聞いて笑ったのだ…彼とならいつかその夢を実現出来るかも知れないと

 

『……なら頑張らないとね』

 

『うん!だからもっとシェリーから魔術の事を教えて欲しいな!僕も学園都市について教えるから!』

 

 

「………エリスみてえな馬鹿がこんな所にもいたのか……頭の中お花畑な奴らだな」

 

「ま、俺と潤子ちゃんはメルヘンなんでね」

 

「勝手にわたくしをメルヘンにしないでください」

 

亡き友と目の前の二人を重ねるシェリー、垣根と帆風は科学サイドの人間でも関わらず魔術が使える…つまり魔術と科学が交わった能力を持つ…そんな二人だからこそ魔術と科学の架け橋になれるのかもしれない…そう自分で考えてシェリーは笑った

 

「………お前らみたいな奴が20年前にいたらエリスは…いや言わないでおくか。過去は変えられねえんだしな」

 

もう一度だけぐらいなら信じてみよう。亡き友の意志を目の前の二人が果たせるのかほんの少しだけシェリーは興味が湧いた

 

「……たく、私は本当に信念がコロコロ変わるもんだな…我ながら嫌になる」

 

シェリーがそう皮肉げに笑い目を瞑る。そんな彼女を見て帆風が微笑んだ直後。第十九学区の場所から緑色に光る柱がブワッと音を立てて空に昇った

 

「!?」

 

思わず足を止めて帆風はその光の柱を見入る。天を穿たんとばかりに放たれたその二つの光の柱、その色は緑で何処か見覚えがあった…そしてその二つの緑の柱の横には巨大な黒い太陽が佇んでいた

 

「………まさか」

 

垣根がそう呟くと光の柱は徐々に薄れ消えていく…だが今のではっきりと分かった。自分達が探している人物は第十九学区にいると

 

 

 

銃声が鳴り響いた、カランと地面に弾丸が落ちた。その弾丸をつまらないものを見る目で一瞥した獲冴はその目で自分を撃った人物へと顔を向ける

 

「……私の狙いはお前じゃねえんだけどなぁ」

 

「知るかよお前の勝手なんか」

 

撃ったのは浜面だった、彼は同じスキルアウトの半蔵から貰ったレディースの小型の拳銃だ。使い勝手が悪い拳銃だが浜面にとってこれはもしもの時の護身用なのだ、手の馴染む拳銃など持っていたら余計な血が流れる。それを嫌って彼は敢えて使い辛いこの拳銃を持っている…願うなら使わずに済むように…だがそれでも彼がこの拳銃を抜いたのは他でもない、友達(麦野)を守る為である

 

「俺のダチからその薄汚え手を離しやがれ」

 

「……ムカついた。本当なら超能力者だけを殺す予定だったが…お前もついでにこの女と同じく処分してやる」

 

拳銃を向けながらそう獲冴に向けて言う浜面に彼女は苛立ち包帯を空中に出現させ槍の如く放つ。それを彼はスポーツ選手並みに鍛え上げた身体の身体能力を活かし避ける。そして引き金を引き弾丸を放つ

 

「はっ」

 

それを盾の様に展開した包帯の壁で防ぎ浜面の足元にブドウとザクロの木々を出現させ浜面を串刺しにしようとする、だが浜面はそれを直感で感じ取り避け三連続で引き金を引き3発弾丸を放つ。それをブドウとザクロの実を弾丸のように飛ばす事で相殺し弾丸に当たらなかったブドウとザクロの実は地面に着弾と同時に爆裂、浜面はその爆発に巻き込まれ吹き飛ばされる

 

「がはっ!?」

 

地面に倒れた浜面に空中から次々と包帯の槍が彼を襲い彼は転がる様に横に避ける。そして手早く拳銃の弾倉を交換し引き金を引きまくる。それを獲冴はペットボトルを振り回し野球のバットの様に弾丸を打ち返す

 

「んな玩具でやられるわけねえだろ、天満大自在天神」

 

天満大自在天神は空から稲妻を落とす、廃工場の天井を突き破って飛来する稲妻を浜面は何とか避けるも獲冴がペットボトルを持って突進するなを目にし懐からある物を取り出す

 

「変……身!」

 

ペットボトルが浜面の無防備な腹に届く瞬間、黒い手がペットボトルを掴む。驚いた顔で獲冴が浜面を見ると彼はヒーロー染みた黒いプロテクターがついた灰色のライダースーツの様なボディースーツとフルフェイスヘルメットを着用した浜面が立っていた

 

「…駆動鎧(パワードスーツ)てヤツか!」

 

「違うな…これは正義のヒーローの姿てヤツだ!」

 

浜面はそう言ってペットボトルを掴んだまま獲冴を天井へ投げ飛ばす。天井へ投げ飛ばされた獲冴は空中で半回転して天井を足で蹴りつける。その勢いで浜面へと弾丸の如く迫り浜面は地を蹴りその攻撃を避ける。そして今だに麦野を拘束している包帯を掴むと駆動鎧のパワーを活かし包帯を引き千切る

 

「無事か麦野!?」

 

「……何で助けやがった」

 

「決まってんだろ、友達だからだよ」

 

そう言って浜面は獲冴と向き合う、獲冴は廃工場の床に出来たクレーターの中心部に立ちペットボトルの蓋を開け10円玉を七枚か取り出す

 

「コックリさん、コックリさん、おいでください…将来 平将門」

 

呼び出したのは天満大自在天神と同じ日本三大怨霊の一人 平将門。10円玉が七枚なのは彼の影武者の数からだろう。見るからに危険を感じさせる毒々しい邪気を10円玉に纏わせ浜面に狙いを定める。彼は最大速度で駆け出し攻撃を避けようとしそれを追尾するべく七つの凶星が彼の後を追う

 

「チッ!訳の分かんねえ能力だな!コックリさんとか占いじゃねえのかよ!」

 

「私のは霊を呼び出す、その一点を強化して工夫して術式にしたんだ。普通のコックリさんと一緒にすんなよ。これは私だけの魔術なんだならな」

 

「だぁ〜!術式だの魔術だの俺にはよく分からん!だがその力でフレンダと駒場を傷つけて麦野を殺そうとしたのは分かる!俺は絶対に、お前を許さない!」

 

浜面は魔術の事など知らない、だが大事な友達を傷つけられるのをよしとしない。例え相手が未知の力を使う相手でも、自分では決して勝てない相手でも、浜面は退かない

 

「うおおおぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

跳躍。大ジャンプし浜面は廃工場の壁際の二回の柵を掴む。そして軽業の様に身体を捻り足で壁を蹴りつけ地面へと着地。七つの凶星はその動きに対処できず壁に激突し壁が綺麗さっぱり消滅する。その威力に冷や汗をかきながらも浜面は獲冴へと駆ける…そのスピードは聖人の様な高速移動でも削板の様な音速の何倍でもないただの駆動鎧で強化されただけの速さだ。だが普通の人間が走るのよりは速い

 

「これでも喰らいやがれ!」

 

「!?」

 

浜面の右ストレートが獲冴の顔面に炸裂する。獲冴は後方へ3メートルほど吹き飛ばされる。その拳の威力は銃弾ほどで攻撃速度とそのパワーが合わされば常人など肉塊になるほどだ。だが流石は神威混淆。その拳を喰らってもなお精々思い切り鉄パイプで殴られた程度の痛みしか感じていないだろう。彼女は鼻から流れる赤い血を拭い浜面に怒りの眼を向ける

 

「……お前が初めてだよ。ここまで私を怒らせた奴はなぁ!」

 

「!?」

 

怒声と共に濃い殺気が廃工場の中に充満する、浜面がそれに驚いた一瞬で獲冴は浜面に接近。浜面の腹に蹴りを1発、よろけた所に拳を叩き込む

 

「がぁ…!?」

 

「おいおい。へばってんじゃねえぞ!」

 

バットを振る様に思い切りペットボトルをスイング、フルフェイスヘルメットに亀裂が走る…だがこのくらいでは彼女の怒りは収まらない

 

「もっと力を出せよ天満大自在天神!最も恐れられる怨霊の一人ならこいつを焼き殺せるぐらいの雷霆を落としやがれ!」

 

獲冴が人々が天神様と崇める存在に無礼極まりない言葉で命令する。彼女にとって上里こそが全て。神様だろうが何だろうが上里よりは下なのだからわざわざ敬語を使う必要がない。そんな傲慢な願いも顔色一つ変えず天満大自在天神は空からゴロゴロと轟雷を響かせ電撃を集め特大の雷霆を落とそうとする

 

「消し炭になりやがれ!」

 

「ま、じか……」

 

それは浜面ただ一人を狙う為に一点に集中させた死の雷だった。光ったかと思うとそれは勢いよく浜面目掛けて放たれ浜面の命を刈り取る…筈だった

 

「させるかぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

麦野が目の前に立ちその雷をいくつもの原子崩しを空中に携え全力で逸らした。廃工場を逸れ大地を焦がす雷霆…獲冴は舌打ちする

 

「……無事か浜面」

 

「麦、野…」

 

「たく無茶しやがってよ…お前自分が無能力者だって忘れてんじゃねえか?」

 

麦野は両腕で浜面を持ち上げて廃工場の端っこの方にゆっくりと下ろす

 

「……無能力者だからなんだってんだよ」

 

「……あ?」

 

「俺は麦野みたいに凄え能力なんか持っちゃいねえ…でも、だからてお前と一緒に戦うなてルールはねえだろ」

 

「………」

 

「お前だって…超能力者だって人間だ。決して万能じゃねえ。だからこそ人は他の人を頼るんだ(・・・・・・・・・・・・・・・)

 

浜面は麦野を一人で戦わせたくなかった、そんな彼の言葉を聞いて麦野は漸く理解した。フレンダと駒場が傷ついてフレメアが攫われて怒りで我を忘れていた。その所為で冷静さを失い獲冴に不覚を取ったのだと

 

「……ごめん」

 

「……何謝ってんだよ」

 

「私が冷静さを欠いた所為で浜面も傷を負った…それを誤ってんだよ」

 

「そんな事かよ、こんな怪我路地裏の喧嘩と比べればマシだぜ。それに俺は嬉しいんだよ」

 

麦野が浜面に謝罪の言葉を呟くと浜面は気にしていないと笑う

 

「俺みたいな無能力者でも超能力者を助けられるんだって、それが分かって俺嬉しいんだ」

 

「……馬鹿だな、お前は最初から役に立ってるよ…ま、そこで休んどけ。後は私があいつをぶっ倒してフレメアを助けてやるからよ。お前は後ろで私の大活躍を眺めて後で讃えろ」

 

「………ああ、今からお前を讃える言葉を考えとくぜ」

 

麦野はゆっくりと立ち上がって獲冴へと近づく、対する獲冴は不敵な笑みを浮かべながらペットボトルの蓋を開け飲み口を麦野へと向け悪霊を降ろす

 

「コックリさん、コックリさん、おいでください…招来 建勲」

 

紅蓮の炎を纏った10円玉がペットボトルの飲み口からガトリング砲の様に勢いよく放たれる。一発一発がコンクリートの地面を抉り人体など燃やし尽くしてしまう程の火力だが麦野は原子崩しの壁を展開する事でガードする

 

「ほらよ」

 

「天満大自在天神!」

 

右手を軽く振るうと数十発の原子崩しが獲冴へと放たれる、それを獲冴は天満大自在天神の力で逸らす。だが逸らした直後に背後に麦野が現れ彼女の回し蹴りを喰らって吹き飛ばされる

 

「がぁ!?くそ!」

 

獲冴の包帯の槍とブドウとザクロの木々が麦野を串刺しにしようと迫る。それに対し麦野は原子崩しを横に振るい包帯の槍と木々を焼き切る。飛んできたブドウとザクロの実は原子崩しの壁で防ぎ0次元の極点で獲冴…ではなく天満大自在天神の背後に接近する

 

「な!?」

 

「お前に効かねえなら…こっちを攻撃してみるか!」

 

天満大自在天神がいる限り獲冴には攻撃が届かない、ならいっそ天満大自在天神から倒せばいい。そう考えた麦野は無防備な天満大自在天神に原子崩しを放ち身体に穴を開け光の粒子となって消える

 

「これでもう原子崩しは逸らせねえよな?」

 

「は!一度くらい倒した程度で粋がるんじゃねえ!また呼び出せばいいだけだ!コックリさん、コックリさん、おいでください…招来 天満大自在……」

 

また獲冴が天満大自在天神を召喚しようと言葉を言い始めたその瞬間、銃声が鳴り響き獲冴の背中から血が飛び出る

 

「へ……俺を忘れちゃ困るぜ」

 

「ナイスフォローだ浜面!」

 

「て、テメェぇぇぇぇ!!!」

 

浜面がほくそ笑むと麦野が賞賛を送る。獲冴は目を剥き出しにして絶叫し麦野に包帯の槍とブドウとザクロの木々で攻撃する。だが麦野は0次元の極点でそれを避け獲冴の真上に現れドロップキックを顔面に喰らわす

 

「がばあぁぁぁ!?」

 

地面に倒れた獲冴は憎々しげな顔で隠し持っていた10円玉を投擲、前もって宿らせておいた平将門の黒い呪詛を纏った凶星が麦野へと迫り彼女はそれを原子崩しで相殺する

 

「くそ…!コックリさん、コックリさん、おいでください…招来 建…」

 

「させねえよ!」

 

次の怨霊を呼び出そうとする獲冴だが唱え終わる前に麦野は拳を突き出し彼女の顔面を殴りつけ吹き飛ばす

 

「が…!?」

 

「そんなもんか、この前の宛那て奴の方が強かったぞ」

 

宛那は獲冴と違った、彼女は正々堂々とたった一人で超能力者六人に挑んできた。だが獲冴は違う、自分一人をおびき出し人質をとって仲間を傷つけて、自分より弱い浜面をいたぶる…そしてその力も悪霊…誰かの力を借りているだけだ。そんな奴が強いわけがない

 

「確かに宛那て奴よりも一味違うようだな。お前の方が遥かに弱えからな」

 

「ッ!?私が…宛那よりも?……ざけんなァ!」

 

宛那より弱い、その一言にキレた獲冴は激情に身を任せて包帯の槍やブドウとザクロの木々で攻撃、だが攻撃は一撃たりとも麦野にら当たらない

 

「私は宛那みてえな愚図とは違う!あいつは…いや私以外の奴らとは違うんだ!私は大将の幼馴染だ!他の奴らなんざ所詮は他人だ!だが私だけは違う!去鳴は所詮義妹、私こそが大将の一番信用されてるんだよ!」

 

「………哀れだなお前」

 

「あぁ!?」

 

獲冴は上里の幼馴染だ、義妹(去鳴)顔見知り(宛那)とは違い彼と過ごした時間は自分の方が長い。だから上里にとって自分は特別な存在だと獲冴は思い込んでいる。それを麦野は哀れだと呟いたのだ

 

「上里がお前の事をどう思ってるかなんざ知らねえ、だがお前のそれは単なる独りよがりだろ…そんな女はモテねえぞ」

 

「……おいおい、その頭は腐ってんのか?んなわけねえだろ…どうやら馬鹿は殺さねえと治らねえみてえだな!」

 

麦野の言葉に激昂した獲冴はペットボトルから一枚の10円玉を取り出し、それを飲み込んだ(・・・・・)

 

「は!?お前何して…」

 

「黙ってろ!私は一番大将の役に立つんだ!それを証明させてやる!コックリさん、コックリさん、おいでください…招来崇徳院!」

 

彼女は自らの身体を依代として日本最大最凶の怨霊神にして最強の妖怪 天狗の王たる天狗道に堕ちた太陽神の血を引く一族の者をその身に降ろす…獲冴の背中から黄金の光が炸裂し彼女の背中から鳶の翼の形状に似た金色の翼が出現する。そして廃工場の穴の空いた天井から天空に出現した直径六十メートル程の黒太陽が佇む

 

「これが日本最大最凶の怨霊神…崇徳院だ!」

 

崇徳院…日本国最強の怨霊神にして金色の翼を生やした天狗。それを獲冴はその身に降ろしたのだ。オシリス=ハデスの力と崇徳院の力が合わさりあいかつて戦った宛那に匹敵する程の力を麦野は感じた…だが彼女は怯えたりしない

 

「は、はははは!どうだ!これが崇徳院!私が呼び出せる最凶の悪霊だ!この力があれば私は無敵なんだ!超能力者なんざ虫みてえに潰してやる!」

 

実際その力の前では超能力者 第四位である麦野も蹴散らせれるしかないだろう。それ程までに崇徳院は最凶の怨霊なのだ。その強さは御使堕しで現れたガブリエルと同格。それに神威混淆の力が合わされば…無敵だろう。だが麦野は笑みを崩さない

 

「……馬鹿だなお前、私が負けるわけねえだろ」

 

「あ?」

 

麦野は笑みを浮かべながら獲冴に宣言する、この戦いで勝つのは獲冴(お前)ではなく自分だと言いたげに

 

「私はフレメアを助けに来たヒーローだぞ?悪党にヒーローが負けるわけねーだろ」

 

「……は、面白え遺言だな……死ね」

 

そう言って獲冴は上空に佇む黒太陽から太陽のかけらを落とした。そのかけらは周囲一帯を焼け野原にする程の火力を誇る…当然自分は崇徳院の加護で無傷だが麦野、浜面、フレメアは骨も残らず焼き尽くされるだろう。例え原子崩しで壁を張っても防ぎようはない

 

「……………」

 

そんな絶大な威力を誇る攻撃を前にしても麦野は笑みを絶やさない…もう彼女は垣根や一方通行、削板と同じ位置に立っていた。彼女が言った通り、麦野はフレメアを助けに来たヒーローだ。だからこそ彼女は気づいていた。自分の新たな力(・・・・)

 

太陽のかけらが廃工場に着弾し周囲が焼き尽くされ爆煙が生じる。獲冴の視界が白い煙で何も見えなくなる…それを翼を羽ばたかせ風を起こし煙を吹き飛ばす…そこで見えたのは融解され尽くした廃工場だった(・・・)場所

 

「………は、ははは…あはははは!ざまぁみろバーカ!私に歯向かうからこうなるんだよ!」

 

獲冴はケラケラと腹を抱えて笑う、自分の気の触ることを言うからこんな目にあうのだと

 

「あははははは!……さて、宣戦布告はこれぐらいでいいか…早く帰って大将に知らせなきゃな」

 

そう言って獲冴が踵を返し背中を向けたその時だった、視界の端から緑色の閃光が自分目掛けて飛んでくるのが見え彼女はそれを身体を捻る事で避ける。その光線は避けた先にあった建物を破壊して穴を開ける…獲冴はそれを見て恐る恐る背後を見る

 

「う、そだろ……あれを喰らって死なねえわけが…」

 

獲冴の視界に映ったのは緑色の繭だった、獲冴は確信する。あの中に麦野がいると

 

「……う、うう…にゃあ?ここは?」

 

鎖に繋がれていた筈のフレメアは麦野の0次元の極点により浜面の近くに転移させられていた。彼女は寝ぼけた眼を擦りながら目の前にいる自分の姉の知人を見て一言呟いた

 

「にゃあ?……天使??」

 

フレメアが、そして浜面が見たのは麦野の背に突如として出現した緑色の放出する翼…緑の粒子を周囲へと振りまくその翼は幻想的で同時にジェット機のジェット排気口から噴出されるエネルギーの様にも見える…それを見たフレメアは天使と思わず呟いてしまった

 

「成る程ね、一方通行や削板のあの翼と同じ力て奴か…一方通行といい削板といい…この翼て奴は【何かを守る時に発現する力】なのか?…ま、どうでもいいか。獲冴(テメェ)をぶっ飛ばせるなら」

 

そう言って笑いながら麦野は背中から勢いよく原子崩しの翼を噴出する、それはさながら火山の噴火の様、勢いよく噴出された翼は天空を穿ち空へと昇る緑色の光の柱となった

 

「……さあ行くぞ魔術師、これが超能力者の第四位 『原子崩し(メルトダウナー)』麦野沈利の力だ」

 

「…翼が生えたくらいで調子に乗んな。私には崇徳院の力があるんだ…その翼ごとお前の身体をへし折ってやるよ」

 

空に浮かぶ黒太陽の黒い炎が更に勢いよく燃え上がる、それとは逆に徐々に元の大きさに戻っていく緑の光の翼、睨み合うは超能力者と魔術師、黄金の翼を持つ者と緑光の翼を持つ者、科学の天使と怨霊の力を宿した少女、女と女同士の仁義なき戦いが今幕を開ける

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




コックリさんで呼び出した霊達は日本三大悪霊の平将門、天満大自在天神、崇徳院(崇徳上皇)。そして戦国武将の織田信長(正確にはそれを神格化した神号)などです。因みに獲冴が武将の霊や三大悪霊を呼んだのは「戦国武将とか強そうじゃね?あと日本三大悪霊とか強そう」という理由だったり

天満大自在天神はあの天神様出会う有名な菅原道真の名前であのインドラ(帝釈天)と梵天(ブラフマー)より授かった名前だとか、因みに平将門は菅原道真の生まれ変わりとも言われています(マイナーな説だけど)。他にも小猫丸などの有名な刀を多く所持し大蛇を仕留めた武勲にも溢れる逸話、天女を母に持つなど実に多彩な逸話がある人物です。因みに崇徳院の翼の色が金なのは八咫烏と同一視される金鵄から来ているのでは?と作者は推測しています。何せ八咫烏は神武天皇を導いた神、何より崇徳上皇は太陽神 アマテラスの血を引く天皇家の一族。翼の色が金色なのは太陽と関わり合いがあるからと見て間違いないでしょう…とあるに関係のない話をして申し訳ない

さて次回は覚醒むぎのんと獲冴(崇徳院纏い状態)です。どちらも強いのでお楽しみに

次回もお楽しみに!


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黒き太陽を掻き消す眩い緑の光

今回で大覇星祭・裏は終了となります。いやー長かったですね…そして自分は企業見学に行ってきて緊張して疲れました。はぁ…態度とか大丈夫だったかなー?

そう言えばとあレーであの竜王の顎の天使の姿をした竜には魅了の力以外にも物体を塩化する力があるらしいですね…つまりカンピオーネ!のヴォバン侯爵の「ソドムの瞳」みたいな能力てことか(知らない人は検索してね)

まあそんな事より…知ってますか?今度発売するとあるマガジンでなんと!「とある科学の未元物質」が連載するらしいですよ!?主人公は勿論垣根帝督!ていとくんが漸く主人公に!マジかよおい!エイプリルフールネタとかじゃなくて!?やったぜやっほーい!嬉し過ぎて昨日は一日中ニヤニヤしてました



頭上には黒く燃え盛る太陽が不気味にも浮かぶ、そんな妖しげな太陽の下で獲冴と麦野がお互いを睨みつけながら向き合う

 

「……行くぞ」

 

麦野は右手を振るい数十発の原子崩しが獲冴に向かっていく、対して獲冴は周囲を覆う様に電磁バリアを形成しそれを防ぐ

 

「怨霊神てのは自然災害の化身だ。なら雷を操るのは当たり前だよなぁ」

 

そう言うと上空から稲妻が麦野の目掛けて放たれる、その一発一発が天満大自在天神の雷霆に匹敵する程…だがそれを麦野は原子崩しの球体をクルクルと自分の周囲で回転させ雷霆の軌道を逸らす

 

「そんもんかお前の力でのは?大した事ねえな」

 

「舐めてられるのも今の内だぜ」

 

獲冴は頭上から槍の如き鋭き氷の柱を形成、更に鎌鼬や紅蓮の炎、先程見せた稲妻に魔力で形成した岩礫を隕石の如く投擲する。氷に炎、風、雷に岩礫。様々な攻撃が麦野を襲うが彼女は背中の翼を盾の様に扱う事でそれを防ぐ

 

「今度は私の番だ」

 

獲冴の全方位に凡そ数万の原子崩しの閃光が獲冴を襲う。彼女はそれを自身の周囲に発生させた紫の炎を紅炎(プロミネンス)を彷彿とさせる極細レーザーとして放ち原子崩しとぶつけ合い相殺する

 

「威力は互角、て所か…」

 

そう言って麦野は数万もの原子崩しを束ね一本のレーザーソードを形成する。それを手で持つのではなく右手の近くに浮遊させ右手の動きと連動させる。先程の数万の原子崩しを収束させたその光剣は万物を容易く裂き灰燼も残さない威力を誇る。例え未元物質だろうが今のこの原子崩しには焼き切る自身があった

 

「剣か…だが私にもそれに似た力はあるぞ」

 

そう言って彼女が虚空より取り出した一本の刀…それは草薙剣と呼ばれる神剣だ。崇徳院を主祭神とする安井金比羅宮は縁切りの聖地として知られる。同じく草薙剣は縁切りに使う祭具でもある。勿論本物ではなく偶像の理論を応用して即興して作り上げた贋作だが獲冴は草薙剣を握りしめるとそれを横薙ぎに振るう。直後に麦野が右手を振るいレーザーソードもそれに連動して動き草薙剣とレーザーソードがぶつかり合う

 

金属音を鳴り響かせて二つの剣が拮抗する、万物を断つ筈のレーザーソードは草薙剣を断ち切れず、また日本に登場する刀の中で一番名の知れた神剣もレーザーソードを断ち切れずにいた。片や万物を断ち焼き尽くす電子の剣。片や悪縁を断ち良縁を結ぶ水神の尾より見つけし神剣。麦野が右手を振るい押し退けようとするが獲冴はオシリス=ハデスから無限とも言えるほどの膨大な魔力を草薙剣に流し込みレーザーソードを断とうとする。どちらも譲れぬ攻防を繰り返しある時は獲冴の服にレーザーソードが軽く触れ服を焼き焦がし、草薙剣が麦野の頬を切り裂き赤い筋から血が流れる

 

「「はあああぁぁぁぁぁ!!!」」

 

だが両者も退く気はない。剣がダメなら翼だと獲冴は崇徳院の黄金の翼を、麦野は背中から噴出する翼をぶつけ合う。その衝撃が第十九学区を破壊し遠くから戦いを眺めていた浜面とフレメアの所まで爆風が吹き荒れる。その光景は日本の大魔縁と西洋の天使の戦いだ…もはや人が辿り着ける領域ではない

 

「まだだ!日本最強の大魔王の力はこんなもんじゃねえだろ!もっと力を!」

 

「そんなもんか大魔王てのは?ならこの勝負は天使である私の勝ちみてえだな」

 

彼女達は自分の持てる力全てを出し切って戦闘を繰り広げる、天から降り注ぐ流星に似た岩礫、虚空より放たれる空間ごと刈り取る鎌鼬、地を焼き焦がす空より飛来する天雷、大地を融解する灼熱の火炎、万物を凍てつくさんばかりの冷気を放つ氷柱…それらを麦野は0次元の極点で避けるのではなく数万を超える原子崩しの閃光を放つ事でその自然災害を連想させる魔術を相殺させる

 

「ほらよ」

 

麦野はレーザーソードを投擲する、獲冴はそれに驚くも投擲された剣を避け草薙剣の剣を握る力を強める。自ら武器を捨てた理由は分からないが邪魔なレーザーソードがなければ勝つのは自分だと確信し草薙剣から白銀に輝く光が発生しそれをレーザービームの様に放つ。その光は麦野の首を斬り落とす…そう獲冴が確信したと同時に彼女は背後からの大爆発に飲み込まれる

 

「な……!?が、ああぁぁ!!?」

 

爆発の原因は先程投げたレーザービーム、収束していた数万の原子崩しが剣の形を保てず崩壊し大爆発を起こしたのだ。その一撃たるや爆発した起点を中心に半径20メートル以内にあった建物や地面などが全て消し飛び大きなクレーターが形成されてしまう程だった。麦野は翼を繭のようにして防御し浜面とフレメアは麦野が展開しておいた原子崩しの防御壁によって無事だった

 

「す、凄え威力だな…流石は超能力者だぜ…」

 

「に、にゃあ……」

 

余りの威力に浜面は腰を抜かすかと思った、フレメアに至っては目の前の出来事を理解できず呆然としていた…だがそんな一撃を喰らってもなお獲冴は五体満足で立っていた

 

「やるじゃねえか…だが私はこんなくらいじゃ死なねえよ」

 

「そうかい、ならあと何十発、何百発でも撃ち込んでやるよ」

 

再び麦野は獲冴を覆うように数万の原子崩しの閃光を放つ、獲冴はそれを迎撃する為に紅炎の如き灼熱の炎である紫のレーザーを放つ。紫炎と翠光が激突し着弾と同時に爆発を起こす。それで生じた煙を利用し獲冴は高速で麦野の背後を取り草薙剣で斬りかかる

 

「ふん!」

 

「な!?」

 

対して麦野は獲冴がその行動を取ると読んでいたかの様に草薙剣が振り下ろされた軌道に原子崩しの壁を展開しており、草薙剣はその壁を切断したものの麦野はその隙に剣から逃れ草薙剣が空を切る。そして麦野はブースターの様に足に原子崩しを携えその勢いで足を動かし超スピードで放たれた回し蹴りが獲冴をくの字に曲げる

 

「が、ぁあ!?」

 

獲冴が派手に吹き飛び地面に激突する、口から血を吐き出し今ので骨にヒビが入ったと獲冴は理解した…だが彼女は攻撃の手を緩めず空に浮かぶ黒太陽より太陽のカケラを落とし麦野を焼き殺そうとする

 

「あの太陽は私の原子崩しじゃあ相殺するのは難しいな……ま、この翼ならなんとかなるか」

 

そう入って麦野は生物の翼と言うより、斜め上に伸びるスポットライトに近い形をした形状の翼を動かしそれを盾にして太陽のカケラを防ぐ。そして翼から勢いよくエネルギーを噴出させ空へと飛び立ち翼から緑のエネルギーを球体状にして放つ。また翼の形状を変化させ鉤爪の様な形にして獲冴を引き裂こうとし獲冴はそれを黄金の翼でガードする

 

「これが学園都市、超能力者……人間じゃなくて化け物じゃねえか!」

 

「化け物じゃねえよ、私らは人間だよ。少しだけ性格がおかしくて変な能力を持ってるだけのな」

 

空中で草薙剣とレーザーソードで斬り結びながら獲冴がそう叫ぶ、麦野は真っ直ぐに獲冴の目を見つめながら自分達は人間だと返した

 

「喰らえ!」

 

何千もの稲妻が天から飛来する、それを原子崩しで逸らす麦野、隙を晒した麦野に草薙剣を横薙ぎで振るう獲冴だが麦野のレーザーソードがそれを受け止める。そして麦野は普段は生存本能でセーブがかかっている原子崩しの本来の威力を引き出す為にセーブを一瞬だけ外す。翼が生えた状態では原子崩しの威力が通常よりも数倍威力が上がっている…更にそのセーブを解けばその威力は絶大の二言に尽きる

 

「うおらぁ!」

 

「な……!?剣が!?」

 

その最大威力となった原子崩しのレーザーソードが草薙剣の刀身を切断した。折れた草薙剣を見て呆然とする獲冴だが麦野はそんな彼女の腹に蹴りを喰らわし地面へと吹き飛ばす

 

「が、ぁ!」

 

地面に穴を開けて倒れる獲冴、だが怒りの眼で麦野を睨み折れた剣を地面に突き刺す

 

「はぁ……はぁ、これなら…どうだ!」

 

その言葉と共に大地が揺れる、そして地が割れて現れたのは頭部が八つある巨大な大蛇だった

 

「……おいコラ、流石にそれは反則だろ。何でもありだな魔術て」

 

八岐大蛇(やまたのおろち)、流石の麦野も超有名な怪物の名前くらいは知っている。嵐神であるスサノオに討伐された日本神話最大の怪物。だが獲冴が呼び出したのは本物の八岐大蛇と言うわけではなくその姿を模した身体を水で構成した紛い物だ

 

「安徳天皇て知ってるか?草薙剣を抱いて海の中で身投げした天皇だ…まあ日本史勉強してたら知ってるかもな」

 

「ああ、平家と共に滅んだあの天皇か…それがどうした?」

 

「実はな安徳天皇てのは魔術師の間では八岐大蛇の生まれ変わりとして有名なんだよ」

 

「……は?」

 

そもそも草薙剣というのは八岐大蛇の尾から発見された天叢雲剣が名前を変えたものだ。そして安徳天皇は八岐大蛇の生まれ変わりと言う説があり、それに深く関わっているのが崇徳院である。崇徳院は国家転覆の呪いを書き込んだ経典を竜宮城に投げ込みそれを受け取った竜宮の神が安徳天皇(八岐大蛇)を送り込んだという説もあることから獲冴が八岐大蛇を召喚したのもそれが理由と見られる

 

ーーーシャアアアァァァァッ!ーーー

 

八岐大蛇が鎌首をもたげ八つの口を開きそこから灼熱の炎が放たれる。麦野はそれを0次元の極点で回避、即座に八岐大蛇の背後に現れ原子崩しを八岐大蛇に放つ。それを八岐大蛇は八本ある尻尾を振るう事により相殺し口から砂鉄を吐き出し砂鉄を固める事で剣の形にして麦野へと投擲する

 

「!?チッ!」

 

翼を拡張し飛行しやすい形状に変えて音速で空中を移動し鉄剣を回避、音速で逃げる麦野を鎌首を持ち上げて火炎放射を放つ。八筋の火炎放射が麦野を焼き殺そうと迫り麦野はそれを避ける。そんな麦野に獲冴のドロップキックが炸裂する

 

「が……!?」

 

「気を取られ過ぎなんだよ!」

 

八岐大蛇の攻撃は囮だった、獲冴はそう言って再び新しい草薙剣を取り出して麦野を斬ろうとする。それを即興で作り上げたレーザーソードで防御し麦野は獲冴の腹にパンチを喰らわす、獲冴の顔が痛みで歪むが彼女はそれを耐えて草薙剣をバットの様にフルスイング、麦野はレーザーソードでそれを受け止めるが衝撃で地面近くまで落下してしまう

 

ーーーシャアアアァァァァッ!ーーー

 

八岐大蛇は口を大きく開き火炎放射ではなく巨大な火球を放つ、それは小規模の太陽かと思う程の大きさでそんな馬鹿デカい火球が八つも麦野に迫っているのだ。麦野はレーザーソードを投擲しそれを起爆させる事でその小太陽を爆発で消滅させる

 

ーーーシャアアアァァァァッ!!ーーー

 

八岐大蛇は口から火炎放射、超高圧水流、毒の息吹、雷撃を放ち麦野はそれを翼でガード、だが驚くべきスピードで八岐大蛇が地面を進み一番左の首が首を伸ばし麦野を飲み込もうとする

 

「その図体でよくそんなに走れるな!」

 

レーザーソードを振るい彼女を飲み込もうとしていた八岐大蛇の首の一つをそれで切断する。ドサッと音を立てて首が地面に転がる、だが首だけでも動き斬り落とされた八岐大蛇の首は麦野に飛びかかってその牙で噛み潰そうとする。流石の麦野もそれに驚きレーザーソードを投擲しグサリと八岐大蛇の額に突き刺さり爆裂し首の残骸が周囲に飛び散る

 

ーーーシャアアアァァァァッ!ーーー

 

首一つ失っても八岐大蛇の戦意は消えず逆に興奮しているかの様に唸りを上げる。吐き出される雷撃に火炎放射、超高圧水流を麦野は上手く掻い潜り八岐大蛇に接近し靴の下に原子崩しをロケットの様に放ち右から三番目の首まで跳躍しレーザーソードでその首を斬り落とす。更にレーザーソードの刀身を伸ばし更に右の首を二つ切断する

 

ーーーシャアアアァァァァッ!ーーー

 

四つの首を切断され頭部が残り四つとなった八岐大蛇は舌を鳴らしながら麦野を睨む、獲冴もただ見ているだけではなく天から稲妻、氷柱、鎌鼬、岩礫を放ち、地からは火柱を発生させ麦野はそれを回避しつつも八岐大蛇の身体を斬り裂いていく

 

ーーーシャアアアァァァァッ!ーーー

 

左から四番目の首が咆哮を上げて麦野にその顎を広げる。麦野は臆する事なくレーザーソードを振るい首を縦に両断、八岐大蛇の首の一つが縦に裂け首が胴体に繋がったまま絶命する

 

ーーーシャアアアァァァァッ!!!ーーー

 

残った三つの首は特攻のつもりなのか鋼の様に硬い体を振るい麦野を押し潰そうとする、麦野はそれを0次元の極点で回避し八岐大蛇の真上に現れると数万の原子崩しを放ち八岐大蛇を全方位から飲み込み光が炸裂し八岐大蛇の姿が光に飲み込まれ消えていく…だが

 

ーーーシャアアアァァァァッ!ーーー

 

「……凄えな」

 

身体は原子崩しで焼き滅ぼされ肉体が灼け爛れ首が一本になっても麦野を倒そうと首を伸ばし火炎を吐き出す。その姿を見て麦野は驚きつつも愚直なまでに自分に挑み掛かる八岐大蛇に敬意を持ちレーザーソードでその首ごと胴体を一刀両断、切断された八岐大蛇はその肉体を単なる水に戻し地面を濡らした

 

「……お前のとっておきのペットは倒したぞ、後はその草薙剣(玩具)だけだな」

 

「……は、馬鹿だなお前」

 

そして麦野が頭上を見上げ残るはお前だけだと獲冴に宣告する、だが獲冴は勝ち誇った顔をして笑っていた

 

罠にかかったな(・・・・・・・)

 

そう言って獲冴は黄金の翼を羽ばたかせて遠くへ移動する、そして崇徳院の力で生み出した黒太陽が麦野目掛けて天より落ちてきた(・・・・・)

 

「は?」

 

そのあまりにも大規模な攻撃に麦野は呆然とする、そして理解する。あんなものが直撃したら第十九学区どころか学園都市そのものが消滅してしまう

 

「これで学園都市が消えれば大将が殺そうとしている魔神も死ぬ!それで私は大将に褒められる!最高じゃねえか!」

 

最初の災害じみた魔術攻撃も草薙剣による斬撃も、八岐大蛇の召喚も、全てはこの術式を完成させる為の時間稼ぎに過ぎない。これが直撃すれば学園都市が、麦野の好きな人も、仲間も友達も全部綺麗さっぱり消えてしまう

 

「……巫山戯やがって」

 

麦野はそう言って浜面とフレメアの正面に現れる、麦野の0次元の極点を使えばこの二人を連れて学園都市から移転して避ける事も出来るだろう。そうすれば自分達だけは生き残れる…だが麦野はそんな事はしなかった

 

「……学園都市は私が私らしくいられる最高の居場所でな。それを見捨てる程私は腐っちゃいねえんだよ」

 

今の(・・)原子崩しでは何万発撃っても黒太陽は破壊できないだろう、ならば原子崩しの最大威力をセーブしている生存本能を解き最大威力で放てばいい。だが失敗すれば麦野の身体は消し飛ぶ…そのリスクを冒してでも彼女は学園都市を、目の前の少年と幼女を守る為に原子崩しを放つ決意をする

 

「なあ、浜面……私さお前の事…」

 

「麦野……?」

 

「……やっぱなしで、この言葉は今日のフォークダンスで言うわ」

 

麦野は浜面に告白をしようかと思うが、やはり今日の夜のフォークダンスで言おうと決意し、その為には絶対に学園都市を守り死なない様に全力を尽くそうと決意する

 

「行くぞ、これが私の………全力だああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

生存本能という鎖から解き放たれた原子崩しは今までで最大の威力を誇っていた、天を穿とうと緑の極太の柱が天へと目指し空を駆け上る…その途中で隕石の如く落下する黒太陽と激突し激しくぶつかり合い拮抗する

 

「な……!?黒太陽と…拮抗してる?!だと!?」

 

黒太陽は学園都市を消し炭にするほどの威力を誇る、そんな黒太陽と同格の威力を誇る攻撃などありえないと獲冴は狼狽える

 

「う、おぉぉ…うおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

最初は拮抗し合っていた黒い太陽と翠光の柱だが徐々に翠光の柱が黒太陽を空へと押し上げていく

 

「な!?わ、私の黒太陽が……!?」

 

黒太陽が翠光の柱を押し上げ黒太陽を眩い光で呑み込まんとする、それを見て驚く獲冴に麦野は笑みを浮かべる

 

「その力は所詮は怨念だ、怨念…恨みてのは確かに強い力だ……だがな恨みよりも強い()ってもんがあるんだよ」

 

その一言と共に翠光の柱が黒太陽を穿ち黒太陽が破裂し黒き花火が空中に咲いた。黒太陽を貫通した原子崩しは雲を貫き成層圏まで到達した…そして光の柱が細まっていき麦野がその場に片膝をつく

 

「はぁ……身体は消し飛ばずに済んだ様だな」

 

「麦野!?大丈夫か!?」

 

「む、麦野のお姉ちゃんのビーム凄い!」

 

全身から汗を流す麦野に大丈夫かと尋ねる浜面、そして先程の原子崩しを見て目をキラキラと輝かせるフレメア…獲冴は冷や汗を流しながら黒太陽が原子崩しに押し負けたことに目をキョロキョロと動かして必死に思考を巡らせる

 

(私の中で最高の威力を誇る黒太陽が…神威混淆のアシストもあったのに…嘘だ、ありえない、あっちゃいけない…嘘だありえないあっちゃいけない…)

 

獲冴の思考は停止状態だった、何を考えても勝てるビジョンが浮かばない。こんなの聞いてない、自分一人で学園都市を消し去るつもりだったのに、これでは上里に失望される…そんな考えが脳によぎるなかで麦野が彼女を見て嘲笑う

 

「何をすればいいか分かんねえて顔だな。所詮お前はその程度だよ。怨霊(人様)の力を借りてイキがってただけの奴…そんな奴が本当の意味で強いわけねえだろ」

 

「!?」

 

「お前は偽りの強者だ、強い奴の力を借りて自分が強くなってた様に錯覚してるだけのな…そんな奴が私に…能力を使い続けて鍛え続けてきた奴に勝てる訳がねえ!」

 

「……ま……、…まれ、黙れぇぇぇ!!!」

 

麦野の言葉に苛立ったかの様に獲冴がペットボトルを破壊して自分が知りうる限り、呼び出せる限りを尽くして数百を超える10円玉に怨霊達を宿らせる…建勲、豊国大明神、東照大権現、武振彦命、平将門、天満大自在天神などの今までの怨霊達や新たに呼び出した怨霊達が無数に宿り黒き星々の様に麦野に迫る

 

「……悪足掻きか」

 

数百の星々、されどたかが数百(・・)だ、万を超える閃光には数で劣る。呆気なく黒い流星群は光の閃光に飲み込まれ獲冴へと向かっていく

 

「ちく、しょう……畜生……チィクショウゥゥゥゥゥゥうううううううううううううッ!!!」

 

光に飲み込まれる瞬間まで彼女は悔しさの咆哮を轟かせ、そして光に飲み込まれ消えていった…それを見届けた麦野は力を使い果たしたのか翼が消え地面に倒れそうになる

 

「大丈夫か麦野!?」

 

「浜、…………面」

 

浜面が麦野を支えて地面に倒れるのを防ぐ、麦野はゆっくりと浜面の顔を見て微笑んだ

 

「勝ったぞ」

 

「ああ、見てたよ…凄えな麦野は、あんな化け物に勝っちまうなんてさ」

 

「まあな、何せ私は……超能力者の第四位だからな」

 

獲冴に勝ったことを驚く浜面に当然だと笑って返す麦野、そんな二人にフレメアが駆け寄ってくる

 

「お姉ちゃん凄かった!もう一回あの翼見せて見せて!にゃあ!」

 

「……ああ、また見せてやるよ」

 

もう一度あの翼が見たいとねだるフレメアにいつか見せてやると軽く頭を撫でる麦野、フレメアが無事で本当に良かったと麦野が心の中で呟いていると浜面が麦野を両腕で抱き抱える

 

「……は?」

 

「疲れただろ?大して俺は動いてないしな。ついでに怪我してないか病院に確かめに行こうぜ」

 

「な、ななななななぁ!?//」

 

「おー、浜面大胆ー。にゃあ」

 

俗に言うお姫様抱っこをされて顔を赤くする麦野、そんな事など一切気づかずに浜面は怪我がないか確かめる為に病院に急ぐ。フレメアはヒューヒューと口笛を吹く真似をしながら浜面の後を追う

 

 

 

「あらら、獲冴はん負けてしもうたわ」

 

学園都市に侵入したカトンボのような無人機からの映像を見ていた有村絵恋(ありむらえれん)は敗北した獲冴を見てそう一言呟いた

 

「えらい息巻いとったわりには呆気ない終わりかたどすな…全く宛那はんといい獲冴はんといい…上里はんの恥晒しもいいところやで」

 

そう言ってパソコンを操作し画像を消す絵恋、学園都市に送り込んだUAVも今頃自爆して痕跡も残っていないだろう…彼女は仲間が敗れたと言うのにそれを悲しむどころか蔑んでいた。獲冴や宛那達が負けると上里の評判が落ちるとでもいいたげに

 

「……まあええんやけどね、うちには関係のない事どすし。それに計画もそろそろ実行段階どすからな〜役立たずは消えてもらった方がよろしいですなあ」

 

そう言って彼女は机の引き出しからある建造物が描かれた羊皮を取り出す…それを眺めてクスリと笑った

 

「さて次はロシアの司教さんに頑張ってもらいましょか」

 

 

 

学園都市を襲撃したシェリーは無事に垣根と帆風の尽力で捕まりレイヴィニア達に引き渡した。もう一人の襲撃犯である獲冴も瀕死で倒れていた所をトールとブリュンヒルデに確保された。これでもう何も事件は起こらない

 

「「じゃん、けん、ぽん!あいこでしょ!」」

 

「……なあ、三人で踊った方が良くないか?」

 

「「先輩/上条さんは黙ってて!これは美琴/操祈と私の戦いだから!」」

 

「………うす」

 

「「いくわよ!今度こそ……!じゃん、けん、ぽん!……あぁ!?またあいこぉ?!」」

 

美琴と操祈はどちらが先にフォークダンスで上条と踊るかじゃんけんで激闘を繰り返していた、上条は三人で踊ろうと提案するが一蹴され上条は黙り込む。彼女達は何度もあいこを繰り返しながら仁義なき戦いを繰り広げる

 

「な、なあアリサ…よ、よよ良かったら一緒に踊らないか!?」

 

「…………うん!」

 

「……父さん、拳銃と鉛玉はないのか?あの野郎の眉間に撃ち込む用の」

 

「奇遇だなシャットアウラ…ここにライフルがあるぞ」

 

「……うん、問題なく弾は入ってるわね…それじゃあ…()りますか」

 

削板が根性と勇気と愛を出し切ってアリサをフォークダンスに誘いアリサは顔を赤くして頷く、それを見たシャットアウラとディダロス、レディリーは拳銃やライフルを構えて削板の頭を某パンのヒーローの様に吹き飛ばそうと狙いを定める

 

「なあ師匠!一緒にフォークダンスとやらを踊ってみないか!?」

 

「……別にいいけどよォ、俺なンかでいいのか?」

 

「ああ!私には師匠しか(男の知り合いが)いないからな!」

 

「………誤解を招く言い方はやめろ」

 

エステルにフォークダンスを誘われた一方通行は「やれやれ仕方ねェな付いて行ってやりますかァ」といった風にエステルに手を引っ張られていく、その顔は満更でもなさそうでそれを見ていた打ち止めは思わず持っていた缶ジュースを握り潰し番外個体がひぃと身体を震わせる。因みに数多は木原一族の打ち上げでビールを飲んでいた

 

「ねえねえステイル!踊りに行こ!あ、ステイルの次はかおりだからね!」

 

「……ふ、やれやれ仕方ないな…行こうじゃないか(やっほぅい!インデックスにダンスに誘われたよー!ありがとう主よ!感謝します!アーメン!)」

 

「行ってらっしゃい二人共」

 

「……師匠だけ青春を謳歌しててズルい」

 

「……私達の裸見た癖に…許しませんわ」

 

「……どうするメアリエ、ジェーン?ししょー達を襲う?」

 

「「賛成」」

 

内心素っ気ない顔をするステイルだが内心ではヒャッホーとインデックスに誘われて舞い踊っていた、それを見た三馬鹿弟子は魔術で二人の踊りの妨害をしてやると黒い笑みを浮かべる

 

「いつもよりも多めに回しておりまーす!」

 

「ちょ垣根さ…!?フォークダンスはクルクルと回って踊る踊りではありませ…て、速すぎませんこれ?!」

 

「わ〜竜巻が起きてる、凄いなー(棒読み)」

 

垣根は帆風と手を繋いで踊っているがクルクルとその場を二人で回っているだけ、回転速度が速すぎて竜巻が起こるほどでそれを見た入鹿はすげーと棒読みで呟いた

 

「フォークダンスか…私も若い頃母さんとよくやったな」

 

「いつも刀夜さんは最後らへんでこけてましたものね」

 

「ちょ…!?恥ずかしいから言わないでくれ!」

 

「あはは、心配する事はないさ!俺なんか転んでばっかりだったからな!」

 

「いや誇れる事じゃないからね」

 

上条夫妻と御坂夫妻はフォークダンスを見ながら昔を思い出す、自分達の若い頃もこんな風に踊っていたなーと過去に浸っていた

 

「ウィリアム、一緒に踊りましょう。有無は言わせない」

 

「離せである!強制連行するなである!」

 

「すまん我が友よ…貴方の給料をゼロにする!と言われてしまっては…仕方ないだろう?」

 

「私も首元にエクスカリバーを突きつけられて脅されたんだし…仕方ないし」

 

ハイライトオフのヴィリアンが強制的にアックアをフォークダンスに誘う、逃げようとするアックアを押さえつけている騎士団長とキャーリサ、フィアンマとエリザード達はアックアの無事を祈って手を合わせた

 

「ねえクランスちゃん、私とサーシャちゃんとどっちと踊りたい?」

 

「すまんが私は踊る気は…」

 

「仕方ないわねぇ…じゃあ行きましょうかサーシャちゃ…ごふぅ!?」

 

「第一の問いですが…誰が行くと言ったクソババア!」

 

クランスが踊る気は無いというとワシリーサはじゃあサーシャと踊ろうと彼女の手を握ろうとする、そしてサーシャの名状しがたきバールの様な何かにぶん殴られて気絶した

 

 

「たく……騒がしい奴らだな」

 

「ははは、でもそれが学園都市だろ?」

 

「……言えてるな」

 

浜面とフォークダンスを踊りながら麦野が呆れた様に呟く、それがいつものことだと浜面が笑うと麦野も笑い返す

 

「いやー今日は散々な目にあったけど…フレンダも駒場も比較的軽傷で入院とかせずに済んで良かったな!」

 

「てかあのカエル顔の医者有能過ぎんだろ」

 

駒場とフレンダは比較的軽傷で治したのがカエル顔の医者だったのでもう外を歩ける筈だ、本当にあの医者はリアルブラックジャックではないのだろうか?もしくはスタンドにクレイジーダイヤモンドでもいるのだろうか

 

「……で、麦野はあの時なんて言おうとしたんだ?」

 

「え?」

 

「ほらあの女と戦ってた時、なんか俺に言おうとしてたじゃん。なんだったのかなーと思ってさ」

 

「………ああ、あれね…あれはな…」

 

黒太陽を原子崩しで迎撃した時何を言おうとしたのかと浜面が尋ねる、麦野はしろどもどろになりながらなんと言おうか悩む

 

(私はお前の事が好きなんだよ……なんて言えるか!)

 

麦野は顔を赤くしながら「お前の事好きなんだよ」なんて言えるわけがないと首をブルンブルンと振る、それを見て浜面はキョトンと首を傾げる

 

「どうかしたのか麦野?」

 

「べ、べべべ別にい!?なんでもねえし!」

 

心配して声をかけてきた浜面に麦野はなんでもないと笑って返す、そして心の中で何を言えばいいのか悩んでいると浜面が笑って声をかける

 

「俺さ、麦野にフォークダンスに誘ってもらえて嬉しいんだよ」

 

「………へ?」

 

「だって麦野は俺の初めての女友達だからな!女子にフォークダンスに誘われるのなんて人生初だし…本当にありがとな麦野!」

 

「は、初めて……は!まあ私もお前にはいつも仲良くしてもらってるしな!と、特別な意味はねえからな!」

 

「?」

 

浜面が生まれて初めて女子に囮に誘われて嬉しいと笑いかける、麦野はそれを聞いて耳まで赤くしてツンデレる。それを遠くから見ていたフレンダ達は溜息を吐く

 

「はぁ…麦野たら素直じゃないて訳よ」

 

「麦野も麦野ですがそれに気づかない浜面も超浜面です」

 

「ま、あの超鈍感が気づくのは無理だろ…果たしてむぎのんと付き合うのは何年後になるんだろなぁ〜」

 

「そんなヘタレなむぎのと鈍感なはまづらを私は応援してる」

 

「……まあ、なんだ……頑張れ」

 

「にゃあ!」

 

フレンダ達はそんなヘタレな麦野(友達)を応援している

 

(……いや、このままじゃダメだ。いつまでたっても進展しねえ…なら勇気を出して…)

 

「な、なあ浜面!」

 

「ん?」

 

このままでは一生友達のままだと麦野は考え、それではダメだと勇気を出して浜面に声をかける…そう告白の為に

 

(私は翼を出したんだ!だから告白も出来る筈!あの削板も出来たんだ!私に出来ない道理はねえ!)

 

「浜面…実は私はお前の事が……!」

 

(おお!ついに麦野が告白を…!)

 

翼を出したあの時の様に告白してみせると息巻く麦野、フレンダがそれを見て驚きに震える、あのヘタレが告白をする気になったと誰もが驚いた

 

「す、好…「あ、いたいた〜!」……は?」

 

「いたわねあの時の助けてくれた人!」

 

「あんたは…麦野が病院に入院した時にいた地面に転げて俺が運んだ人じゃないか」

 

麦野が告白をしようとした瞬間、それを邪魔する声が響き麦野が声がした方を向く。その声をかけた人物は魔術師 ダイアン=フォーチュンだった

 

「じ、実は貴方を探してて…ねえ、わたしと次に踊ってくれない?」

 

「………あ"?」

 

(((((し、修羅場……!?)))))

 

(大体修羅場だと思う、にゃあ)

 

顔を赤くして浜面をフォークダンスに誘うダイアン、そんな恋する乙女の顔を見て麦野がビキィと青筋を立てる音を鳴らしてダイアンを睨みながらドスの効いた声を出す。フレンダ達は修羅場だこれ、と理解した

 

「テメェ……なに浜面に手を出そうとしてんだ?あぁ?」

 

「は?あんたには関係ないじゃない、ほらオバさんは帰った帰った」

 

「上等だよ、表出ろ。お前の薄汚えクソ×××に焼きを入れてやるよ」

 

「上等よ、ぶっ○してあげるわ。このダイアン=フォーチュン様がね」

 

(((((こ、怖え!!)))))

 

(浜面が置いてけぼり、にゃあ)

 

ダイアンと麦野の視線がぶつかり合いバチバチと火花が散る、それを見てフレンダ達が恐怖で足を生まれたての小鹿の様にプルプルさせる

 

「お、おい?どうしたんだよ麦野にダイアンさん?」

 

「待っててね浜面、ちょっとこのクソビッチに焼きを入れてくるから」

 

「はぁ?ビッチじゃないしそっちこそババアじゃない、オバはんは夜の街に行って股でも開いてなさい」

 

「上等だよコラ、テメェのその×××に原子崩しを入れてヒィヒィ言わしてやる。穴という穴から汗を吹き出させてやるから覚悟しとけ」

 

「は、黙りなさいこの××。ダイアン様を怒らせたらどうなるか思い知らせてやるわ」

 

浜面は二人を宥めようとするが二人はニコニコと笑いながら睨み合う、もう二人の放つ威圧だけで人が殺せるんじゃないかと言わんばかりのオーラに流石の浜面も汗をダラダラとかく

 

「神の祈りは済ましたか?」

 

「それはこっちのセリフよ」

 

「じゃあいいな………?」

 

「ええ、構わないわよ」

 

「よろしいならば戦争だ」

 

「ぷーくすくす、たかが超能力者が黄金夜明の魔術師であるダイアン=フォーチュン様に勝てると思わないでよね」

 

「関係ねえよ!!カァンケイねェェんだよォォォ!!何が魔術師だ、何が黄金夜明だ!!つけ上がってんじゃねえぞクソビッチ。テメェなんざ指一本動かさなくても100回は殺せんだよォおおおおおッ!」

 

戦いの火蓋は落とされた。原子崩しが狂った様に飛び回り、自己情報無限循環霊装(アーキタイププロセッサー)と呼ばれる黒い箱の形をした霊装に術式を突っ込み箱の中から黒い龍蛇が現れる。麦野とダイアン、二人の攻撃でフォークダンスが行われている場所を無茶苦茶に破壊される

 

「うそーん!?ここまで大規模破壊するのあの馬鹿二人!?あり得ないて訳よ!」

 

「と、兎に角ここは超危険ですから超逃げましょう!」

 

「その通りだな!て、あー!?私のイルカちゃんにビーム掠った!?」

 

「私はそんなむぎのと知らないお姉さんを応援できない」

 

「……逃げるぞ」

 

「にゃあ!」

 

フレンダ達は命の危険を感じその場から逃げる、他の踊りを踊っていた連中もそれを暴れる二人を見て逃げ始める

 

『そんなまだ先輩と踊ってないのに!』

 

『不幸なんだゾ!』

 

(でもこれでどちらかが傷つかずに済む…ありがとう麦野さん!)

 

『凄いジャーンプ!』

 

『お、お姫様抱っこで抱かれたまま軍覇君と一緒に空を飛んでる!?』

 

『『『く、クララ…じゃなくてアリサが飛んだ!?』』』

 

『わぁ!?ビームがいっぱい飛んできたんだよ!』

 

『そ、そんな…まだそんなに踊ってないのに…不幸だぁー!』

 

『『『やーなかーんじー!!』』』

 

『ああ、メアリエとジェーン、マリーベットが原子崩しに当たって吹き飛んでしまいました!』

 

『メルヘンニゲール!』

 

『ただ空を飛んで逃げてるだけですわ!?』

 

『に、逃げましょう佐天さん!』

 

『ふえぇん!なんでこんな時にしか出番がないのさー!』

 

阿鼻叫喚地獄とはまさにこのことだろう、原子崩しやダイアンの術式で吹き飛んで何人もお星様になった、全員が逃げ惑い恐怖に駆られるなか浜面は逃げずにこう呟いた

 

「……なんで喧嘩をし始めたんだあの二人?」

 

翌朝まで二人の仁義なき争いは続き、常盤台の寮監に「煩いぞ貴様ら」と一瞬で首をカクンと曲げられ二人は沈黙したとさ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今までのボスとは違いほぼ互角じみた戦いをしているのは崇徳院が強いからです、調べれば分かりますが…崇徳院は日本で一番有名な怨霊なのでこれくらいはしなきゃと思い頑張って書きました

そして次回からは新章のスタートです!タイトルはズバリ「御使堕し・(リターン)」です!ロシアにてあの司教と以前戦った天使…そして新たな天使との激戦を繰り広げます!

「ロシアはとっても恐ロシア〜」
未元物質(ダークマター)』 超能力者第一位ーーーー垣根帝督

「皆さん、ロシアの寒さを舐めすぎですよ」
天使崇拝(アストラルバディ)』全体論の超能力者ーーーー帆風潤子

「これで私はロシア成教を…いや!世界すらも牛耳れる!」
『ロシア成教司教』ロシア成教の裏切り者ーーーーニコライ=トルストイ

「「「「bvnokvzj排onvaov除igoks」」」」
『四大天使』火水土風を司る天使達ーーーー神の如き者(ミカエル) 神の力(ガブリエル) 神の薬(ラファエル) 神の火(ウリエル)

次回は安定のギャグ回です。次回もお楽しみに!


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第七章 御使堕し・再 編
帆風「君の名は?」垣根「ギルガメッシュです(大嘘)」


今回のお話は某有名な映画の要素を加えたパロディです。ぶっちゃけ暴走気味。作者の理性のハンドルがぶっ壊れたので作品もぶっ壊れです。因みに作者が好きな新海誠さんの映画はサマーウォーズです



「時は満ちた…これより我が『K計画』を実行段階に移す」

 

真夜中の学園都市、とあるビルの屋上に佇む黒い影は何らかの呪文を呟きとある術式を完成させる

 

「さあ…私の為に楽しい物語を見させてくれよ?」

 

 

 

「ふぁぁぁ〜よく寝たぁー」

 

朝6時、垣根は目を覚まし布団からガバッと起き上がった。そして気づいた、ここは自分の部屋ではないと

 

「あ?何処だここ?」

 

周りをキョロキョロと見渡すとベッドの周りにはゲコ太のポスターやぬいぐるみ、ソフビなどが置かれており机にもゲコ太の鉛筆やノート、下敷きが置かれていた。そして隣のベッドを除くとそこにはスヤスヤと寝ている入鹿の姿があった

 

「むにゃ……帆風さぁん〜、それは垣根さんじゃなくて犬のフンですよー」

 

「……俺はフンじゃねえぞ」

 

何故ここに入鹿がいるのか気になったがそれよりも垣根はある事に気づく、まずは声が何故かいつもより高い事と胸が異様に重いのだ

 

「まるで胸に重い肉でもついたみてえだな…あ、もしかしてスイーツの食い過ぎで太ったか?」

 

そう言って何気なく垣根は自分の手を胸に持って行き、もにゅとたわわな果実(・・・・・・)を揉んだ

 

「………はい?」

 

思わずもきゅもきゅとそのたわわな果実を揉みまくる。垣根は視線を下げて胸を見る。目に映ったのはたわわに実った明らかに女の子のオッーパーイであった

 

「……え?え??え???」

 

垣根は急いで立ち上がって部屋の中にあった鏡を覗いて見る。鏡に映ったのはボインボインなナイスバディにプラチナブロンドの長い髪、それに宝石の様に綺麗な灰色に近い眼を持つ美少女が鏡に映った

 

「……潤子ちゃん?え?どういう事?」

 

鏡に映ったのはムニュムニュと胸を弄りながらもほっぺをつねる帆風(垣根)、頬に痛いのが走った事から夢でない事は分かる…

 

「………何処の都会の少年と田舎の少女だよ」

 

某映画を思い出しながらそう呟きながら自分の…いや帆風の額に手を当てる。これからどうすればいいのか…いやそれよりも大事なのは

 

「……どうやって服を着替えるかだよなぁ」

 

垣根はカプ厨でメルヘンだが一般常識くらいは理解している(それを守るかどうかは別問題だが)。いくら友達でも女子の身体は見れない…そこで垣根はそこら辺に置いてあった白いハンカチで目を塞ぎパジャマを脱ぎ始める

 

「……いや前から思ってたけどさ、潤子ちゃんて大きいよな〜…何処がとは言わねえけど」

 

帆風本人が聞いたら顔を真っ赤にして怒るであろう事を垣根は服を脱ぎながら呟く、パジャマを脱ぎ終わりハンガーにかけてあった制服を取って制服を着てスカートを履く…女子の服の着方は分からないがなる様になった

 

「……で、縦ロールにはどうやってするの?」

 

ここで重要な事に気付いた、縦ロールにするにはどうしたらいいのか?垣根は暫く考えるがもうめんどくせえやと長い髪をゴムで一つ結びにする

 

「うん、こうやってよく見るとやっぱり潤子ちゃんて美人だよな〜。スタイルもいいし胸もでかいし…文句なしの美人さんだな…そんな女の子の体になった俺…は!つまりメルヘン×美少女=メルヘン美少女てことか!?」

 

自分の身体が美少女になったからかハイテンションな垣根、帆風の身体を動かして鏡の前でふざけていると入鹿が目を覚まし布団から身体を起こす

 

「ふあぁ〜おはようございます帆風さん」

 

「!?ぐ、グーモーニング入鹿ちゃん!」

 

「?なんで英語なんです?」

 

首を傾げる入鹿だが寝起きの為かそんなに怪しんではいない、フゥと息を吐く垣根だがふと自分の携帯が着信音を鳴らしている事に気付く

 

ーーーゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコ♪ーーー

 

「着信音までゲコ太なのか…流石ゲコラー」

 

携帯を手に取って誰からの電話かと確認すると垣根は目を見開く、電話をかけてきたのは垣根帝督(・・・・)。つまり垣根自身だ

 

「……もしかして」

 

垣根は急いで通話ボタンを押し携帯を耳に当てる、そして携帯から聞こえた声は

 

『もしもし!今電話に出ているのはわたくし…いえわたくしの身体の中にいる垣根さんですか!?』

 

「……マジであの映画じゃん」

 

予想道理の展開に垣根は映画かよと溜息を吐き出した、それを見ていた入鹿は首を傾げる

 

 

「……で、俺の身体はどうだい潤子ちゃん?」

 

「えっと…意外と筋肉があって逞しくて…美形なんだと思いました…て、何を言わせるんですか垣根さん!」

 

「おおっと、俺の身体で顔を赤くしないでくれ。自分で言うのもなんだが凄く気持ち悪い」

 

とあるファミレスで垣根と帆風がそんな会話をしていた、一応説明するが垣根の身体にいるのは帆風であり帆風の身体にいるのは垣根である。ああややこしい

 

「…で、どうする潤子ちゃん?俺達身体が入れ替わってるみたいなんだけど?」

 

「……そうですね、このままではダメでしょうし何か元に戻る方法を探さないと」

 

「……ティアマト流星群が関係してないかなー?」

 

「?ティアマト流星群がどう関係してるんです?」

 

「あ、ごめん。あの映画知らないのか…今の発言は忘れてくれ」

 

「?」

 

垣根は某映画の入れ替わりの原因を呟いてみるが帆風はその映画を知らないのか首を傾げる、それを見て垣根はその言葉は忘れてくれと言った

 

「あ〜困ったな。どうして俺らだけこんな風になったんだろうな?」

 

「……実はその事で言わなければいけないことがありまして…」

 

「ん?」

 

「実は…わたくし達だけではないんです」

 

「……何が?」

 

「入れ替わっているのはわたくし達だけではないと言うことですわ」

 

帆風が入れ替わっているのは自分達だけではないと呟く、その言葉と共にファミレスに4人の人物達が入ってくる

 

「……アー君達じゃん」

 

一方通行とエステル、軍覇とアリサが現れ首を傾げる垣根。何故ここに四人がと考えているとアリサが首を開いた

 

「よお!おはよう帝督!」

 

「……ん?」

 

アリサから削板(・・)の様に明るい声で挨拶し、それに違和感を覚える垣根…それに気づいた様に削板は顔を赤くして答える

 

「あ、私の身体で喋ってるのは軍覇君だよ」

 

「……ぇ」

 

「因みに私は先生ではなくエステルだ」

 

「……で、俺が一方通行だよ」

 

削板(アリサ)から告げられた一言で垣根は気づく、お前らもあの映画みたいな状態になっているのかと。つまりアリサの身体にいるのは削板で削板の身体にいるのはアリサで。一方通行の身体にいるのはエステルで、エステルの身体にいるのは一方通行で…もうややこしいのレベルを超えている

 

「……お前らもあの映画の影響を受けたのか?」

 

「ンな訳あるかァ!!!」

 

「せ、先生!私の声でそんな声を出さないでくれ!私はそんな不良ぽくないぞ!」

 

映画の影響でも受けた?と垣根が尋ねると一方通行はエステルの顔で顔芸じみた真似をし、エステルがやめてくれと宥める

 

「朝気づいたらなんか胸に違和感を覚えてな、それに部屋も違うし鏡を見たら身体がアリサになってるし…驚いたぞ」

 

「私も驚いたよ、だってダンベル持ったまま立って寝てたんだもん、その所為で驚いて手からダンベル離して頭に当たって痛かったよ」

 

「いやどんな寝方してんだよ削板ァ」

 

「今の私はアリサだよエステルちゃん」

 

「いやそれは私ではなく一方通行だ」

 

「……だぁ!ややこしいな!」

 

垣根は頭を抱える、自分達二人だけでも面倒なのに更に四人追加だ。余計ややこしくなっただけでなんの解決にもならない

 

「やっぱりていとくンでも解決策は分かンねェのか」

 

「ああ、さっぱりだ。これが超能力なのか魔術なのか…俺でも分からねえ」

 

「それは困ったな…アリサの身体では筋トレするとアリサに余計な筋肉がつきそうで筋トレが出来ないからな」

 

一方通行、垣根、削板の順で喋り三人とも困った顔をする。だが他人から見ればエステル、帆風、アリサという美少女達が可愛らしい顔でため息を吐くという光景に見える筈だ

 

「しかし鳴護っちとエステルっちの顔で軍覇とアー君の言葉が出るて斬新だな。あまりにも似合わなすぎて笑えるわ」

 

「その言葉そっくりそのままていとくンに返すぜェ」

 

「そうだな!帆風はそんな言葉を言わないから違和感が凄いぞ!」

 

「安心しろ、自覚はある」

 

にゃははと帆風の顔と声で笑う垣根、どんな姿になっても垣根は垣根だなと一方通行と削板がエステルとアリサの顔でため息を吐く。その仕草は可愛らしいが中身は男である

 

「……そう言えば先生に聞きたいことがあるのだが」

 

「なンだ?」

 

「……この状態でトイレに行く場合はどうしたらいいのだ?」

 

『………あ』

 

エステルの何気なく言った一言で全員が凍てつく、そう男と女の身体では色々と違う。トイレがいい例だ

 

「あ、あの…わたくしも先程から我慢しているのですが…どの様にすればいいでしょうか」

 

「わ、私も……」

 

帆風とアリサが照れ臭そうに手を挙げる、それも垣根と削板の身体でだ。思わず一方通行は吐きそうになった

 

「……はあ、仕方ねえな。俺がレクチャーしてやるよ」

 

「おいコラていとくン、オマエが今女子だって忘れてンじゃねえか?」

 

「忘れてねえよ、知ってる上で男子トイレに入ってレクチャーしようと考えてるんだよ」

 

「ド変態じゃねェか」

 

垣根はじゃあ俺が教えてあげようと席を立とうとして一方通行に肩を掴まれる

 

「大丈夫、俺が手取り足取り男の子の身体の事を教えてあげるんだゾ☆」

 

「食蜂の真似すんじゃねえよこのオカマ野郎」

 

「というかわたくしの身体でそんな恥ずかしいポーズをしないでくださいまし」

 

垣根は食蜂の真似をして可愛らしく舌を出す、それを見て帆風は頬を赤くし一方通行は青筋を立てる

 

「おいおい…アー君もしかして嫉妬か?自分がやっても俺みたいに可愛くなれないからて嫉妬してんだろ?」

 

「……ァ?」

 

垣根がそう言うと一方通行の顔から表情が消える。普段のエステルから想像できない様な顔に垣根以外が全員がビクッとなる

 

「何調子乗ってやがンだていとくン、言っとくけどお前の元の姿でやったらただ単純に気持ち悪ィだけだから。帆風の姿だからセーフなだけだからな」

 

「それを嫉妬と言うのだよ一方通行君、俺の今の身体はナイスボディのJC。エステルっちもかなりのスタイルだが…可愛らしい美少女である潤子ちゃんには叶うまいよ」

 

「ァ?舐めンじゃねえぞ俺の弟子を、言っとくけどエステルはマジで羞恥心ねェから。家で毎回ラッキースケベが発生してるからな。お堅いお嬢様の帆風じゃ出来ねえ事をやってくれるお色気要員だぞ?峰不二子もびっくりだ」

 

「はぁ?サービスシーンだけが全てじゃねえんだよ。安易なエロほど寒いもんはねえよ。それに俺はお色気キャラよりも清純な女の子が好みなんだ。はい論破」

 

「頭沸いてんのかクソメルヘン、言っとくけど帆風よりエステルの方が俺基準では上だから。金髪で巨乳とか王道ヒロインじゃねえか。はい論破」

 

「はぁ?プラチナブロンドの何が悪いんだ?縦ロールもいいだろ?それが分かんねえのかこのロリコンクソもやし。はい論破」

 

「煩え黙れメルヘンカプ厨。はい論破」

 

「後半ただの悪口じゃないかな?」

 

何故か垣根と一方通行の口喧嘩が始まった、それも垣根は帆風の、一方通行はエステルの良いところをさも自分の自慢の様に言い合う。後半になるにつれて悪口になり始めアリサはこのままでは収集がつかなくなると二人を宥める

 

「か、垣根さんたら…わたくしの事をそんな風に思っていたんですの……」

 

「……サービスシーンとはなんだ?」

 

帆風は垣根の顔を真っ赤にしエステルは二人がなんの話をしているのか理解できず、一方通行の顔で首を傾げる

 

「おい落ち着けよ一方通行、帝督!今はそんな事言ってる場合じゃないだろ!」

 

「軍覇君……」

 

削板が喧嘩している二人の仲裁に入る、アリサはよくぞ空気を読んでくれたと自分の彼氏を褒めようと口を開いた直後

 

「それにこの中の女子で一番可愛くて優しくて根性あるなのはアリサだって分かりきってるんだからそんな事で口論するなよ!」

 

「軍覇君!?」

 

削板は帆風やエステルよりもアリサの方が可愛いと大声で叫んだ、アリサはそれを聞いて全然空気読めてないじゃん!火に油を注いでどうするの!?と怒る気持ちと自分をそんな風に思っていてくれて嬉しいという気持ちの板挟みにあった

 

「は?寝言は寝て言えよ軍覇、潤子ちゃんが一番だから。精々お前らは二番だから」

 

「……久しぶりにカチーンときたぜェ、表出ろよ」

 

「誰が何を言おうとアリサが宇宙で一番の根性ある美少女だ!異論は許さん!」

 

垣根、一方通行、削板は目からメンチビームが出てるんじゃね?と思う程の眼力で睨み合う。絵面だけなら美少女達が不良顔負けのメンチを切っている絵面に見える為ファミレスの人達は驚いた顔で三人を見ていた

 

「ちょ、垣根さん達!?落ち着いてくださいまし!」

 

「こんな所で喧嘩はダメだよ!」

 

「黙ってな潤子ちゃん、鳴護っち…男には戦わなきゃいけない時があるんだ」

 

「いや今の君達は女だぞ?」

 

帆風とアリサが宥めるがもはや一発即発の状態だ、垣根が立ち上がり目を細めこう言い放ったのだ

 

「逆ナンして誰がより多くの男を落とせるか勝負しようぜ!」

 

「「「なんで!?」」」

 

逆ナンで勝負だ!と叫ぶ垣根に女子(体は男)全員がなんでだよとツッコむ。だが一方通行と削板はそれを聞いてやる気を出す

 

「はン、ンなもん楽勝だな。俺の魅力に堕ちねえ男はいねェよ!」

 

「いやその身体は私のなんだが!?」

 

「この根性あるアリサの身体ならどんな男もイチコロだぞ!俺の勝ちだな!」

 

「え!?軍覇君本気なの!?」

 

一方通行と削板は立ち上がって勝つのは自分だと笑い、エステルとアリサはやめてくれと叫ぶ

 

「じゃあ今からスタートな!」

 

「俺が優勝してやンよ!」

 

「根性ぉぉぉぉ!!!」

 

「「「ちょっと待ってぇぇぇぇ!!」」」

 

ビュオオオ!!と疾風の如くファミレスから出て行き逆ナンをしに行く三人、帆風達は馬鹿達の後を追いかける…その時ファミレスの店長は思った…

 

(あいつら金払ってねぇ!!)

 

 

「さて、どうやって逆ナンするかな?」

 

垣根は街中に来てどうやって逆ナンをするか考えていた、すると後ろから声をかけられた

 

「よう、そこのお嬢さん」

 

(お、ナンパかコレ?)

 

垣根はナンパかと期待を込めて背後を振り向く、そこに立っていたのはメイザースだった

 

「もし良かったら俺と一緒に人生という名のマイウエーを飛ばしてかない?」

 

「いい歳こいて何ナンパしてんだ既婚者」

 

「ねぼし!?」

 

車にもたれ掛けながらカッコつけてナンパするメイザース、垣根は取り敢えず金的を思い切り蹴り飛ばしてやった

 

「な、何をするんだお嬢さん…て、あれ?よく見たら垣根とよく一緒にいる…」

 

メイザースがヨロヨロと股間を手で押さえながら何か言おうとすると、ポンとメイザースの肩に誰かが触れメイザースが後ろを向くとそこには満面の笑みを浮かべているミナの姿が

 

「……少し向こうでO☆HA☆NA☆SIしましょうか。ア・ナ・タ」

 

「………はい」

 

笑っているのに眼はハイライトオフのミナに引き摺られる様にメイザースは路地裏に連れて行かれる。そしてその後路地裏からオッさんの叫びが響いたが垣根は見なかったフリをした

 

 

その頃の一方通行

 

「ねえ、そこの君!もし良かったら俺に金を貸してくれないかな!?」

 

「さっさと元いた場所に帰りやがれェ!」

 

「そげぶ!?」

 

一方通行はお金を借りに学園都市にやって来たオッレルスに絡まれるも、ベクトル操作で強化した足で金的を攻撃しオッレルスを地面に倒れさせ悶絶させる

 

「オッ〜レ〜ル〜ス〜?」

 

「し、シルビア!?何故三角木馬を…」

 

「問答無用だゴラァ!!」

 

「イヤァァァァァァッ!?」

 

そして瞬間移動の様に現れたシルビアにオッレルスは三角木馬の刑に処された。その場にオッレルスの悲鳴が轟く…一方通行は見て見ぬ振りをして他のターゲットを探しに行く

 

 

その頃の削板

 

「ゲヘヘ、俺は渋井丸拓男(しぶいまる たくお)。略してシブタク、君可愛いねぇ〜俺と一緒にバイクでドライブ…」

 

「下心丸出しの奴にはついて行かん!根性入れ直して出直してこい!」

 

「ケバブ!?」

 

学園都市にやって来たいつかのシブタクを削板は凄いパーンチ(物理)を金的にクリーンヒットさせた。豚は股間を抑え涎を垂らしながら失禁。その後シブタクはアンチスキルに連行された

 

「そこのお嬢さん、俺と夜明けのコーヒーでも飲みに行きま…」

 

「ヤバそうな男にはついて行かん!」

 

「ジャグジャグ!?」

 

「ウホッ、いい女。ねえ私とホテルにでも…」

 

「レズはホモ!はっきり分かるなパーンチ!」

 

「レズゥ!?」

 

「僕と契約して魔法少女になって…」

 

「俺は魔法少女なんかにならーーん!!!」

 

「わけがわからないよ!?」

 

その後もチャラそうな男やクレイジーサイコレズ、人外にナンパされるも削板は拳でそれを退治していく…その姿を見た人々はその光景を目に焼き付けのちにこう語り継がれる…「拳王亜利沙」と

 

 

夕暮れ時、垣根と一方通行、削板は公園のブランコでゆらゆらと揺られながら黄昏ていた

 

「……それで結果は?」

 

「「「……一人も誘えませんでした」」」

 

「うん、何となく予想はしてたよ」

 

「私もだ」

 

帆風が結果を尋ねると三人はダメだったと、ズーンという擬音が似合いそうな落ち込みぶりで呟く。アリサはこうなる予想をしていたのか苦笑いを浮かべる

 

「……まあ、アレだな。今は勝負よりもどうやって元に戻るかだもんな」

 

「……ああ。勝ち負けなンざどーでもいい。早く元の身体に戻らねえとな」

 

「………そうだな」

 

三人はそう言って元の身体に戻る方法を考える、そこで垣根はある方法を思いつく

 

「そうだ!この現象が異能の力によるものなら幻想殺しが効く筈だ!」

 

「!?確かにこんな時に役立つそげぶマンがいるじゃねェか!」

 

「確かに当麻君の力なら何とかなるかも!」

 

上条の幻想殺しならこの入れ替わりを解けるのでは?と垣根が叫ぶと全員がその手があったかと頷く。垣根は急いで携帯を取り出し上条に電話をかける

 

「あ、もしもし当麻?済まねえけど急いでこっちに来て…」

 

『その声は帆風か?なんか垣根みてえな喋り方だな…あ、悪いけど俺今忙しいからいけねえんだわ』

 

「………はい?」

 

『今美琴と操祈のプールに来てるから。凄えんだよ二人の水着姿…あの二人は人間じゃねえよ、現実に現れた天使なんだよ…操祈のあの蜂蜜みたいな綺麗な長い金の髪に豊満な胸、美琴の栗色の髪に小さいけど確かにある胸…そしてほぼ半裸の肢体!それを彩る水着!あ、ヤベェ鼻から鼻血()が…てな訳で俺はこの眼で二人の天使の姿を焼き付けなきゃならねえから!じゃあな!』

 

プツン、と上条は美琴と食蜂の事を大声で自慢した挙句に用件を聞かずに電話を切った。無言で垣根が携帯をしまいゆっくりと全員の顔を見渡す

 

「……今度皆で当麻にお礼参りにいくか」

 

『異議なし』

 

これで有効的な手段がなくなってしまい途方に暮れる垣根達、そこでエステルがいい考えを思いついたのか口を開く

 

「そうだ、少々魔術的な考えになるが一つだけ方法がある」

 

「なンだ?」

 

「今の私達の状況は魔術による【呪い】だと考えるのはどうだろうか?例えば童話に出てくる荊姫や人魚姫、白雪姫、かえるの王さまなどの呪いの様にな」

 

エステルが言うにはこの入れ替わりは童話の様な呪いの可能性がある、との事らしい。それを聞いて帆風はハッとある考えにたどり着く

 

「……そうか、分かりましたわ!この呪いを解く方法が!」

 

「!マジかよ!流石潤子ちゃん!で、その方法てのは!?」

 

「はい、キスですわ!」

 

『………はい?』

 

帆風が呪いを解く方法が分かったと叫び、垣根が期待を込めてその方法を尋ねると帆風はキスだと答えた。それを聞いて目を丸くする垣根達

 

「……何でそんな結論になった?」

 

「白雪姫も荊姫もかえるの王さまも皆キスしたら戻るからですわ!」

 

「……荊姫はそうだが白雪姫はキスしてないし、かえるの王さまは壁に叩きつけてかえるから元の姿に戻っただけなのだが…」

 

「まあとにかく、キスをしてみましょう!」

 

「いやそれ潤子ちゃんがしたいだけ…「アリサさん?」ア、イエナンデモ……」

 

帆風がにっこり笑顔で童話のヒロインや王子様はキスしたら元に戻ると笑う、エステルがそれは荊姫だけだと教えるが帆風は兎に角試してみようと垣根の身体を押さえつける

 

「さあ…口づけを」

 

「え!?ちょ!?お、落ち着こう!先ずは落ち着こう!」

 

「大丈夫ですわ。責任は取りますから」

 

「全然大丈夫じゃねえ!」

 

帆風が垣根に唇を近づける、垣根はそれから逃れようともがく。いや美少女から口づけなんてご褒美ですやんと思うだろうがちょっと待ってほしい。今の垣根の身体は帆風だ。そして口付けの相手は中身は帆風、身体は垣根…つまり垣根から見れば自分が自分に口づけされると言うシュツエーションなのだ。そんなもの罰ゲームでしかない

 

「おい!アー君に軍覇!どっちでもいいからヘルプミー!」

 

垣根は一方通行と削板に助けてくれと叫ぶ、だが一方通行も削板もエステルとアリサに肩を掴まれて身動きが取れなくなっていた

 

「おい何してンだエステル!?」

 

「私がキスをすればこの呪いが解けるのなら…やってみる価値はあるだろう?」

 

「ざけンな!自分に自分をキスされるとかどンな罰ゲームだよォ!?」

 

「お、おいアリサ!やめてくれ!」

 

「わ、私だって恥ずかしいんだよ…でも元に戻る為にはこうするしか……」

 

「いやだぁぁぁ!!!アリサにされるならまだしも自分が自分に口づけとか嫌だぁぁぁ!」

 

一方通行も削板もエステルとアリサに強引に口づけされそうになっていた、もう他から見れば一方通行と削板が嫌がる美少女達に無理矢理キスしている様にしか見えない

 

「では………いただきます」

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

そんなカオスな垣根達のやり取りを双眼鏡越しに覗いている怪しげな影がとあるビルの屋上にいた

 

「くくく…私が考えた計画『K計画』は大成功の様だな」

 

その人物は黒いタキシードに蝶ネクタイをつけた肥満の中年男性…イギリスの騎士派の重鎮 ホレグレス=ミレーツだった

 

「私の術式は完璧だ、あの三組は私が術式を解除しない限り決して解けぬ…」

 

そうホレグレスが呟いた直後だった

 

「へぇ、なら無理矢理にでもお前に解除させるしかねえみたいだな」

 

「!?何奴!?」

 

ホレグレスの背後に立っていたのは土御門だった、彼は拳銃をホレグレスに向けながら不敵な笑みを見せる

 

「まさか騎士派の重鎮がいるとはな…単刀直入にいうぞ。お前があの六人の入れ替わりに関与しているのか?」

 

「……そうだとも。我がK計画には三組のカップルまたはそれに近い仲の男女が必要だったのでな」

 

「……何が目的だ?」

 

土御門はホレグレスに垣根達の入れ替わりの事件の犯人はお前かと尋ねる、ホレグレスはその通りだと笑みを浮かべ何故こんな事をしたのか土御門が尋ねる…するとホレグレスは予想外の一言を告げる

 

「目的はただ一つ。カップリングが見たい、それだけだ」

 

「そうかカップリングを……へ?」

 

「そう!私は何を隠そうカプ厨なのだよ!」

 

「マジか!?」

 

自分はカプ厨だと豪語するホレグレスに土御門がマジかと拳銃を落とした。まさかこんな事件を起こした理由がカップリングが見たかっただけなど天才陰陽師である土御門も予想外だった

 

「先日日本のとある映画を見て思ったのだ!入れ替わりこそ至高!なら学園都市のカップル、そして付き合っちゃえよお前ら!みたいな男女に私が考えた術式をかけ身体と身体の入れ替わりをさせようと!」

 

「……因みに俺はサマーウォーズ派だぜい」

 

「そして案の定私の計画通りだった!男子は身体が女の子になれば当然の如く胸を揉んでいた!滝君の様に!女子は身体が男の子になれば下半身のあそこに触れて顔を赤くした!三葉ちゃんの様に!つまり私が言いたい事は…新海誠監督サイコー!という事だぁぁぁ!!」

 

「……お前頭おかしいだろ」

 

甲高い声でそう叫ぶホレグレス、それを見て土御門はぶっちゃけ引いた

 

「見るがいいあの三組を!あともう少しで口づけしそうだぞ!ああ…いい、実にいい!こんな展開を私は待ち望んで痛んだ!男が女の身体になって元女の男に攻略されて堕とされて心も女に染まっていく…ああ…エクスタシーィィィィィィッ!!!」

 

「もう撃っていいよな?答えは聞いてないが」

 

顔を真っ赤にして両腕で身体を抱きしめクネクネと動くホレグレス、それを見て生理的に寒気がたった土御門は引き金を引いてホレグレスの身体に穴を開けた

 

「あ………殺しちゃったぜい。これじゃあ術式が解けないにゃー」

 

土御門はドジっ子だった。これで垣根達は二度と元の身体に戻れず一生身体が入れ替わったまま人生を終えるのであった

 

「テヘペロだにゃー☆」

 

 

 

 

「という夢を見たんです」

 

「いやどんな夢だよ」

 

ファミレスで帆風はこんな夢を見たと垣根に笑いかけた

 

「てか長えよその夢、よく覚えてたな」

 

「ええ…まさか垣根さんがわたくしの身体を弄るなんて…喜べばいいのか怒ればいいのか分かりませんわ」

 

「いや現実の俺はそんな事してねえから。夢の中の俺だから…でもそれが夢でよかったな」

 

「ええ、本当に夢でよかったですわ」

 

二人はそう笑いながら夢で良かったと頷く、そう話し合っていた時、いきなりファミレスに上条達が入って来て垣根と帆風が座っているテーブルまで走ってやってくる

 

「助けてくれ垣根!朝目が覚めたら美琴の身体になってたんだけどどうすればいい!?それにミコったんのパーフェクトボディに自分がなってるかと思うと興奮して胸の高鳴りが止まらないんだ!どうしたらいい!?」

 

「私も気づいたら操祈の身体になっちゃってたの!?どういう事なのこれ!?それにしても胸デカッ!?ホルスタインじゃない!やっぱり操祈は神が作った最高傑作ね!」

 

「私も朝目を覚ましたら妙に胸が軽いな〜て思って胸を触ったら胸がなくて…鏡で見てみたら上条さんの身体になってたんだゾ!それで半裸になって見たら凄くイケメンに見えて思わず鼻血が出ちゃったのよぉ!」

 

「「」」

 

食蜂(美琴)上条(食蜂)美琴(上条)の身体が入れ替わっていた。垣根と帆風は呆然とした顔をする

 

 

「ふははははは!これよりK計画を開始する!学園都市をカップリングで染め上げるのだぁ!!」

 

ホレグレス(カプ厨)による学園都市K(カップリング)計画はまだ始まったばかりである……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




まさかのホレグレスさんカプ厨化。まあ敵よりはマシだよね。因みにカエルの王子様として有名な作品 かえるの王さまですがあれは原点だと壁に叩きつけられて元の姿に戻るらしいです…つまりキスされて戻るのは後世によるアレンジです。因みに白雪姫もキスされて目覚めたわけではありません。荊姫(眠れる森の美女)だけはキスで目覚めるらしいですが

さて次回は以前頼まれた番外編に出て来たキャラをもう一度出して欲しい、と言われたので即興で作ったアウ姫回。まさかのあのとあるに関係ないキャラも出てくるかも?

次回もお楽しみに


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ソシャゲとガシャと課金は三位一体

明日から発売されるとあるマガジンに掲載される「とある科学の未元物質」が気になり過ぎて興奮が収まらない作者です

今回はアウレオルスさんと姫神さん、そして青ピ君。そして以前の勝手にクロスオーバー回からまさかのあの二人が参戦です。こんなのありかよ、無茶苦茶だなこの小説とのツッコミはなしで。この作品には常識は通用しないだけです



第二十三学区の鉄身航空技術研究所付属実験空港に一機のビジネスジェットが着地する。そしてジェット機の扉が開くと複数人の男女がジェット機から降りてくる

 

「また来たぞ学園都市…俺様達が遊びに来たぞ!」

 

「久しぶりの有休だからてはしゃいでるわねフィアンマの奴」

 

「まあ我々にも休息も必要です。ですが程々にですよー?」

 

「さて、私は筋トレ道具を買ってくるのである」

 

彼らは神の右席、ローマ正教の暗部中の暗部にして最高戦力。そんな肩書きを持つ四人は有給を取って学園都市に休暇を過ごそうとやって来たのだ

 

「ふむ、やはり学園都市は何度来ても物珍しさを感じるな」

 

「うん。バチカンよりも近代的だもんね」

 

アウレオルスと姫神もジェット機から降りて学園都市を見渡す。そして二人が降りた後にローマ教皇であるマタイもゆっくりと降りる

 

「さてお前達、これからは各自自由行動だ!ゲーセンに行くもよし、ショッピングを楽しむもよし、カラオケに行くもよし!自分達が行きたい場所に行くのだぞ!」

 

「「「「「はーい」」」」」

 

「遠足か!」

 

マタイが号令をかけてまるで引率の先生の様にアウレオルス達に指示を出す、その光景を見てヴェントは遠足に来た幼稚園児かと突っ込んだ

 

「財布はあるか?忘れ物はないか?困り事があったら私に電話するように。では解散、絶対に学園都市の人々に迷惑をかけないように、集合場所はここだぞ」

 

「「「「「はーい」」」」」

 

「……幼稚園かよ」

 

はぁと溜息を吐くヴェントを後にマタイ達は個人の行きたい場所へと足を進める

 

「ふははは!まずは学園都市中のゴミ掃除といこうではないか!覚悟しろ学園都市に潜むゴミよ!俺様が一つ残らず掃除し尽くしてやるわ!」

 

「パン屋さんに行ってどんなパンがあるのか食べ比べしたいのですねー。後お酒の飲み比べも」

 

「腹筋ワンダーコア&スマートワンダーコアを買ってくるである」

 

「私はゲーセンに遊びに行くぞ、学園都市のゲーセンを制覇してやる」

 

「快然、私達は学園都市を散歩してこよう」

 

「うん」

 

「……はぁ、私は弟へのお土産買ってくるか」

 

フィアンマはゴミ拾いへ、テッラはパン屋さんへ、アックアは筋トレ道具を買いに、マタイはゲームセンターに、アウレオルスと姫神は散歩に行ってしまいヴェントは溜息を吐いて学園都市にしかなさそうなお土産を探しに行った

 

「歓然、それにしてもやはり学園都市は珍しさで溢れているな」

 

「そうだね。ここでしか見れないものが沢山があるね。特にアレ(・・)とか」

 

「む?」

 

周囲をキョロキョロと好奇心に溢れた目で眺めているアウレオルスに姫神があるものを指差す、そのあるものとは…

 

「くそがぁぁ!!あいつらまた会議サボりやがって…なんで私だけがこんなに苦労しなければならない!」

 

「ほら。学園都市特有の同僚に振り回される人」

 

「……あれは何処にでもいるぞ」

 

姫神が指差した相手はトマス=プラチナバーグだった。彼は今月8回目の垣根達の会議サボりに頭を悩ましていたのだった

 

「苦労していそうな人だな…」

 

「うん。あの人とっても苦労してそう」

 

アウレオルスと姫神がトマスを可哀想な人見る目で見て、踵を返して立ち去る

 

「で。これから何処に行くの?」

 

「快然、とあるカフェでインデックス達と待ち合わせをしているのだ。早く行かねばな」

 

アウレオルスはインデックス達と会う約束をしており、早く行こうと姫神の手を引いて待ち合わせ場所へと急いだ。姫神は手を繋がれて頬をほんの少し赤くして彼の手に導かれるまま道を歩く

 

 

『ごめんね青ピ君!急用が出来ちゃって…今日のデートいけないの』

 

「ええよ、急用なら仕方ないしなー。気にせんといてや」

 

『ごめんね…今度埋め合わせするから…』

 

青ピこと藍花悦は自分の彼女である蜜蟻とのデートの待ち合わせの場所で待ち合わせよりも30分早く来て彼女を待っていたのだが、彼女は急用で来られなくなってしまい青ピは怒ることなくまたデートをしようと笑って電話を切る

 

「……はぁ、ああは言ったけど暇になってしもうたな〜。カミやんも今日はデートらしいから無理やろしツッチーは舞夏ちゃんの手料理を食べとるんやろなー」

 

青ピは今日は何をして過ごそうかと考えて頭を抱える

 

「ああ〜空から女の子が置いて来たりとかしたら面白いのになー」

 

そう彼が呟いた直後だ、彼の耳にとある声が聞こえて来た

 

「ここは何処なんだー!?タマ達は確か丸亀城でうどんを食べてた筈なのに!?」

 

「お、落ち着いてタマっち先輩!これはきっとアレだよ!異世界転移だよ!」

 

「ん?なんや?」

 

二人の少女の慌てた声を青ピは聞いて声の方向へと体を向ける、そこには卵色の長い髪の少女と栗色の髪の少女が何やら喋り合っていた

 

「というか此処はどこなんだ?香川ではなさそうだし…それに四国以外バーデックスに滅ぼされたのに…おかしいぞ」

 

「いやそもそもここは私達がいた世界じゃないのかも…ほら小説とかでよくある転移とかみたいなやつじゃないかな?」

 

青ピには彼女達が何を言っているのかさっぱりだが二人が困っている事は分かった、困っている人がいるのなら放って置けない彼は不審者扱いも覚悟して二人に話しかける

 

「なあそこの君達、何か困り事かいな?」

 

「!?た、助かった!実はタマ達ここが何処か分からなくてな!ここは何処なんだ?」

 

「ここは学園都市やで、その口ぶりからするといきなりここに来たみたいやけど何があったん?」

 

「分からん!いきなり気づいたらここにいたんだ!なああんず!……あんず?」

 

栗色の少女が青ピに話しかけられて安堵の顔をする、青ピにここは学園都市だと言われ「学園都市?」と首を傾げながらいきなりここに来たのだと言って相方の少女に同意を求めるが、横にいた少女がいない事に気付く

 

「あんず!?何処だ!?何処に行ったんだ!?」

 

「……その杏ちゃんて子はあそこにおるで」

 

「え?」

 

少女は慌てふためいて杏という少女を探すが何処にも見当たらない…そこで青ピがある場所を指差し少女がその方向を向くと…

 

「ああ、いいよ〜可愛いよ〜!やっぱり幼女て可愛いな〜」

 

「あんずぅぅぅぅぅ!!?」

 

「……あの子はロリコンか」

 

偶々ここの近くに遠足に来ていた幼稚園児達を彼女はうっとりとした顔で眺めていた。流石ロリリングハイツ伊予島さん

 

「こらぁぁぁ!あんずの浮気者!」

 

「……はっ!つい幼女の魅惑に惑わされちゃってたよ」

 

「全く!あんずはタマだけ見てればいいんだぞ!」

 

「もうタマっち先輩たら!タマっち先輩はいつでも私の一番だよ」

 

「……!?!ふ、ふん!そんな言葉でタマの機嫌を良くしようとしてもダメなんだからな」

 

「……この子達はミコっちゃん達の同類か」

 

その百合百合しい雰囲気を見て青ピは彼女達は美琴と食蜂の同類だと理解した

 

「あの〜百合百合しい雰囲気壊して申し訳ないんやけど…君達迷子なんやろ?」

 

「迷子じゃなくて異世界転移…は!てことは何かチートな能力が!」

 

「まあ異世界転移とかそう言うのは置いておくとして…もし良かったらボクが君達の助けになるで」

 

「ええ…なんかやましい事でもあるんじゃないか?」

 

「失礼やな、ボクは一応彼女おるし他の女の子に手え出したりせえへんよ」

 

「え!?彼女さんいたんですか!?てっきり彼女いない歴が年齢かと思ってました…」

 

「君達失礼やね…まあ、よく言われるけども」

 

タマっち先輩と呼ばれた少女が胡散臭げな目で青ピを見るが、青ピは自分は彼女持ちだとさりげなく自慢すると杏という少女にさりげなく毒を吐かれ青ピの心は傷ついた

 

「ああ、ボクは藍花悦て言うんや。君達は?」

 

「タマは土居球子だ」

 

「私は伊予島杏ていいます」

 

「球子ちゃんに杏ちゃんやね。で、二人はこれからどうしたいん?」

 

「「とりあえずうどんが食べたい(です)」」

 

「……うどん?」

 

青ピがどうするのかと聞くと二人は迷わずにうどんが食べたいと返した。てっきり元の場所に帰りたいと言うと思っていた青ピは目を丸くして驚く

 

「タマ達はうどんを食べようとしていたらここにいてな、まだうどんを食べてなかったんだぞ」

 

「だからうどんが食べたくて…近くにうどん屋さんはないんですか?」

 

「……うどん専門店はないやろうけど…ファミレスやカフェならあると思うで?」

 

「「じゃあそこで!」」

 

「……最近の女子はうどんが好きなんかな?」

 

うどんうどんと連呼する球子と杏に青ピは最近の女子はうどんが好きなのかと考える、敢えて言おう、そんなことはない。香川はうどん県、はっきり分かるね

 

 

「ふむ…では私はカフェラテとサンドイッチを注文しよう」

 

「私は。イチゴパフェを」

 

「かしこまりました」

 

アウレオルスと姫神はとあるカフェで食事を注文しウエイターが頭を下げて厨房へ戻る。姫神はコップに入った水を飲んでアウレオルスに口を開く

 

「……で。インデックスちゃん達はまだ来ないの?」

 

「ああ、あと一時間後(・・・・)に来る筈だぞ」

 

「そう。あと一時間後……て。え?」

 

アウレオルスが一時間後に来るというと姫神は頷きかけ、すぐに驚いた顔をアウレオルスに向ける

 

「待って。なんで一時間後に来るの?」

 

「私達が約束の刻よりも一時間前に来たからな」

 

「……なんで一時間早く来たの?」

 

「日本では10分前行動という言葉があるらしいのでな、早めに行っておいた方がいいかと思ってな」

 

「………早過ぎ。だよ」

 

アウレオルスが約束の時間より早く来ていた方がいいと言うと姫神は早く来過ぎだと溜息を吐く、そうこうしている内にウエイターが注文した食事を持って来て姫神はパフェをスプーンですくい口の中に入れる

 

「美味いか?」

 

「うん。美味しい」

 

「歓然、それなら良かった」

 

アウレオルスがそう言って頬を緩ます、そして彼もサンドイッチを咀嚼する

 

「お〜、丁度空いとるやんか」

 

「ここにうどんがあるのか!?」

 

(あ、あそこに幼女がいる…可愛いな〜)

 

カフェの扉が開き青ピ達が入って来た、青ピは丁度空いている時間だった事に喜び球子達は席に着くなりうどんを注文する

 

「……カフェにうどんはあるのだな」

 

「最近のカフェは侮れないね。飲み物だけじゃなくて食べ物まであるんだから」

 

アウレオルスはカフェにうどんがあるのかと純粋に驚く、姫神は最近のカフェ凄えと思った

 

「いや〜しっかしタマげたな。この学園都市て場所は。近未来的と言うか…タマ達がいた世界では考えられない程ハイテクなんだな」

 

「せやろ、学園都市は外よりも30年以上も発展しとるからな」

 

「でもその割にガラケーなんですね」

 

「学園都市ではガラケーの方が便利なんや」

 

(ふむ、見た所あの少年は学園都市の外から訪れた少女達を案内しているのだな)

 

学園都市の発展した科学を見て興味津々な球子にこんなにも発展してるのに何故今だにガラケーなのかと首を傾げる杏、アウレオルスはその反応を見て外からの人間だと察した

 

「しかし世の中アニメみたいな事がホンマにあるんやね、異世界転移とか…まあ超能力がある時点であんま驚かんけどね」

 

「いや私達からしたら超能力も凄いですよ、火を出したり雷を操ったり、瞬間移動も出来るなんて…本当に小説の世界にやって来たみたいです」

 

「まあタマ達もバーテックスとかいう漫画みたいな敵と戦って来たんだけどなー」

 

「ボクからしたら君達みたいな女の子が勇者なんてド○クエみたいな職業についてたのが驚きや。まあ勇者というより魔法少女に近いんやろうけど」

 

お互いの世界のことについて話し合う三人、青ピからしてみたら四国以外の世界が滅びるなど信じれないし球子と杏から見れば超能力を科学で生み出すなど信じられない。だが三人はそういう世界なのだと理解する

 

「まあこっちは平和やけどそっちは大変なんやね」

 

「そうでもないぞ、天の神ていうラスボスが食中毒で死んだから平和になったしな」

 

「……食中毒で死ぬラスボスてなんやねん」

 

「あはは…それは私も思いました」

 

ラスボスが食中毒で死ぬとか情けないやられ方やなと思う青ピとそれに頷く杏、球子は注文した肉ぶっかけうどんを啜っていた

 

「うまぁい!このうどん美味すぎる!こりゃタマらん!学園都市は料理も美味いのか?!」

 

「あ、口の周りにつゆがいっぱいついてるよタマっち先輩」

 

「わざとだぞ?だってこうしておけばあんずがタマの口を拭いてくれるからな!」

 

「………!た、タマっち先輩たら!」

 

「……ウエイターのお兄さんー、ボクのコーヒーまだなん?甘いこの空気から解放されたいから急いで持って来てーな」

 

アウレオルスは思った、あああの少女二人はデキているなと、別にアウレオルスは同性愛を否定はしない、十字教の教えなら否定されるかもしれないが愛があるのなら年の差も性別など関係ないだろう

 

「……なにせ私を救ったヒーローも彼女が二人いるという色欲魔なのだからな」

 

「……世も末だね」

 

彼女二人持ちの上条を思い出してアウレオルスと姫神は遠い目で窓の外を見る、所詮かっこいいヒーローなど物語の中にしかいないのだと

 

「それにしても勇者て女の子ばっかりなんやなー、それ男にとっては理想郷(エデン)やん」

 

「いえいえそうでもないですよ、天の神倒したら今までの税金返せとか住民の皆さんが手のひら返しして、それの鎮圧とかで大忙しでしたから」

 

「うわ、なんなんそいつら。今まで守ってもらって来たのに用が済んだらポイ捨てとか人間のクズやん」

 

「特に酷かったのは千景の…ああ、タマ達の仲間の一人だ。そいつの住んでた村人達が最低でな…千景が勇者じゃなくなったから今までヘコヘコしてた奴らが千景にイキり始めてな、それに千景の父親も勇者じゃなくなったら金が入らないじゃないかて千景に酷い暴言吐いて千景が泣いちゃてな」

 

「……その村は滅びとけばいいんとちゃう?」

 

「因みにその父親の金的にタマが蹴り喰らわして完全に潰してやった。村の奴らはブチ切れした若葉と友奈に半殺しにされてたなー」

 

「………(無言のグーサイン)」

 

「あ、あはは…あの時の皆の形相を見たら多分バーテックスも裸足で逃げるよ…」

 

その時の若葉と友奈の怒りや凄まじく、精霊をその身に降ろす切り札を使った時よりも絶対強くなってるだろ、と思ってしまう程の力を発揮した勇者二人の活躍によりその村は地図から消え村人達は半殺しにされた。その時の二人の顔はあのレオ・スタークラスターでさえも尻尾を巻いて逃げるぐらいの鬼の如き形相だった。杏はそれを思い出し苦笑いするが彼女も村人にイイ笑顔で鉄パイプを振り回していたのだから何も言えない

 

「で、その千景ちゃんて子大丈夫なん?そのクソ共に罵言吐かれて心傷ついとんのとちゃうの?」

 

「……まあ、なんだ…心が傷つくどころか心が壊れちゃってな…一時期は丸亀城の寮に引きこもってゲームばかりしてたんだが…若葉と友奈が慰めに行ったらそれ以来二人に依存してる」

 

「……ていとくんが聞いたらビュオオオオオオウ!て言いながら写真撮りそうな案件やな」

 

なお若葉さんに依存する様になった千景ちゃんをひなたさんが見ると、目のハイライトが消えて「私の若葉ちゃんがNTRた…消さなくちゃ」と包丁を持って突撃しかけたので杏と球子が全力で止めた

 

「そっちも色々と大変なんやな〜。まあこっちもこっちで色んな事件が起こるんやけどね」

 

「例えばどんな事件だ?」

 

「能力を使った銀行強盗事件や無能力者狩り…まあ能力が弱い人達を虐める奴らによる暴行事件とか…後こないだ大覇星祭でドラゴンと化け物が大怪獣バトルしとったな」

 

「「いや最後の事件おかしくない!?」」

 

(唖然、この少年はあの事件の事を忘れていないのか?)

 

青ピが学園都市でも強盗事件や暴行事件、それに大覇星祭で起こったドラゴン襲撃事件について話し二人はどんな事件だよと突っ込んだ

 

「ドラゴンまで出てくるのか…この世界はもうなんでもありだな」

 

「因みにどこかの海で天使が現れたとかいう話も聞いたことあるなー」

 

「て、天使…この世界はバーテックスより恐ろしい存在が沢山いるんですね」

 

自分達の世界よりもこの世界の方がヤバいんじゃね?球子と杏はそう思った

 

「まあボクには関係ない話やけどなー、ボクは友達と違って大能力者やし彼らと違ごうて厄介事には巻き込まれへんしね」

 

「友達…お前友達いたのか?てっきりぼっちかと思ってたぞ」

 

「……君は遠慮てもんがないんやね、ボクかて友達はおるわ。でなその友達が凄いんや、超能力者ていう学園都市に七人しかいない能力者なんやねどな。全員性格がイっちゃってるんや」

 

「い、イっちゃってる?どう言うことですか?」

 

「簡単に言うと全員人格破綻者やね。第一位はメルヘンでカプ厨、第二位は彼女二人持ち、第三位はロリコンもやし、第四位はシャケジャンキー、第五位と第六位は第二位と付き合ってる上に君達みたいな百合属性。第七位はド根性…意味分からへんやろ」

 

「……キャラが濃そうて事は理解したぞ」

 

「……ひなたさんがまともに見えるぐらいの人達ですね」

 

自分の友達は人格破綻者、と曖昧に笑いながら呟く青ピになんだそいつらマジでヤベェと若干引きかけている球子と杏…その話を聞いてアウレオルスは眉をピクッと動かし口を開く

 

「概然、聞き捨てならんな少年。確かに彼らは人格が破綻している変人だが私の教え子を救ってくれた恩人だ。悪く言うのは許さんぞ」

 

(なんか知らないオッさんが話に入り込んできたぞ)

 

「頑然、私は18歳だ、オッさんではない」

 

「いやナチュナルにタマの心を読むな!てか18歳にしては老け過ぎだろ!?」

 

アウレオルスがインデックス(自分の教え子)を救ってくれた恩人達の悪口は許さない、と青ピを軽く睨む。それを見て青ピは両手を軽くあげて笑う

 

「誤解させてもうたみたいやな…ボクは別にカミやん達が嫌いやないで。ただの軽口や、別に悪気はないんやで…不快に思ったならホンマすんません」

 

「……いや私も年下にムキになってしまった、謝る必要はない」

 

「こっちも女の子と喋ってて気分ようなって喋り過ぎてしもうたわ…で、お兄さんはカミやん達と知り合いなん?」

 

「まあな、彼らとは一度殺しあった事がある仲だと言っておくか」

 

青ピは上条達との知り合いなのかと尋ねるとアウレオルスは頬を緩めて頷く、その際殺し合いという不吉な単語が出で球子と杏がん?と顔になったが杏は気を取り直して口を開く

 

「あの…一つ聞いていいですか?その超能力者の皆さんてどんな能力なんですか?」

 

「第七位は説明出来ない力を扱う、第六位は心理掌握…また精神操作能力やな、第五位は超電磁砲…簡単に言うと電撃操る能力や、第四位は原子崩し…まあ全身からビーム放つ能力て思えばええよ、第三位の一方通行の能力はベクトル操作、第二位は幻想殺し、あらゆる異能を打ち消す対異能の能力や。そして第一位 垣根帝督の能力は未元物質。この世に存在しない物質を操る能力で」

 

「へ〜強そうな能力ばっかりだな…て、ん?垣根帝督…何処かで聞いた事が…」

 

青ピから名前を聞いて球子は垣根の名前を聞いて、どこかで聞いた覚えがすると頭を抱える。杏も首を傾げて思い出そうとし…二人はある記憶を思い出す

 

 

『ここで俺はうどん屋を開く!』

 

 

「「あ!バーテックスフライの人!」」

 

「いや。バーテックスフライて何?」

 

バーテックスフライの人だと思い出した二人に姫神が何それとツッコミを入れる

 

「なあその垣根て翼が背中から生えてる残念なイケメンの事か!?」

 

「え?なんや二人共ていとくんと知り合いなん?」

 

「て、ていとくん?でもまさかあの人てこの世界の住人だったなんて…」

 

垣根はこの世界から自分達の世界にやって来たのかと驚く二人、そんな二人にアウレオルスが口を挟む

 

「愕然、君達も垣根帝督に救われた者なのか」

 

「ええ、以前私とタマっち先輩を助けてもらって…て、君達も?」

 

「うん。私達も彼に救われたから。それに私達以外にも色んな人が彼に救われてる」

 

「まあていとくんは色んな人を助けとるからなー、フットワークも軽いし異世界も行くやろ」

 

「いやフットワークの軽さと異世界行けるかは別じゃないか?」

 

「まあていとくんには常識は通用せえへんから」

 

ていとくんならいつか異世界行くと思っとたで、と呟く青ピにうんうんと頷くアウレオルスと姫神。この人達は垣根をなんだと思っているんだろうと球子達は思った

 

「でも、ここにあいつがいるなら助けてくれたお礼が言えるな。あいつタマ達が礼を言う前にいなくなってたからさ、いつかお礼が言いたいなと思ってたんだよ」

 

「ならボクが電話でていとくんここに呼んだろか?この時間帯なら街中でカップリング写真撮っとるやろし」

 

「本当ですか、ありがとうごさいま……」

 

杏が青ピにありがとうございます、と言おうとしたその瞬間。カフェの近くの宝石店から爆音が生じ五人は窓から外の様子を眺める…目に映ったのは爆音が生じた宝石店の窓を割って出て来た六人くらいの大きな袋を背負った男達だ

 

「早いとこずらかるぞ!警備員(アンチスキル)が来ちまう!」

 

「……宝石。強盗?」

 

姫神が言った通り彼らは宝石強盗だ、彼らは逃走用に用意していたであろう車に宝石を詰めた袋を入れ込んでいる

 

「ひゃっはー!これだけの金があれば暫くはいくら課金しても懐が痛まねえぜ!」

 

「俺この金でゆゆゆいのUR 結城友奈ちゃんを当てるんだ!」

 

「パズ○ラで課金してレア当てるぜぇ!」

 

「モ○ストガシャ引き放題キタコレ!」

 

「拙者課金するでござる!」

 

「世の中はソシャゲと課金、ガシャで出来ている」

 

「て、全員課金する気満々じゃないか!」

 

「強盗した理由がしょうもなさ過ぎます!」

 

「課金ダメ絶対、良い子はああなっちゃいかんよ」

 

宝石強盗達が強盗をした理由は単純(シンプル)、ソシャゲで課金する為の軍資金が欲しかったから。ただそれだけである。その余りにもしょうもない理由に球子と杏は転けるが勇者としての正義感からか宝石強盗達を止めようと動く。そんな二人を青ピが肩を掴んで止める

 

「ちょい待ちタマちゃん、あんずん、心配ないで」

 

「なんでだ!あのままじゃあいつら逃げるぞ!」

 

「大丈夫や、何せあいつらを止めるヒーローはもう来たんやから」

 

青ピがそう言って窓の外を眺めると何か車が走ってくる音が聞こえる、宝石強盗達も不審に思って音が鳴る方へ首を向ける…そして彼女の目に映ったのは

 

「………」

 

「「なんか磔にされてるぅぅぅ!?」」

 

リアカーの上に十字架を刺し、その十字架に磔にされた上に口の中一杯に鯉の刺身を詰め込まれた垣根だった。しかもそのリアカーを引いているのは尾で歩いている鯉達だった。その鯉達はソシャゲ廃人達の近くでリアカーを止めるとリアカーから磔になったままの垣根を地面に叩き落とす。そして鯉達のうちの一匹が垣根に唾を吐きながら口を開く

 

「あんさん、今度鯉料理よりもフグ料理の方が美味い言うたら…その脳みそブチ抜きますで」

 

そう言うと鯉達はリアカーを押してこの場から立ち去る

 

「うぅ…鯉にはコイ毒ていう危険な毒があるじゃねえか…ならフグの方を喰いてえよ」

 

そう言って涙目で立ち上がる垣根、そんな彼を見て宝石強盗達は明らかに怯えた顔になる

 

「な!?あいつは超能力者(レベル5)の第一位 垣根帝督!?馬鹿な何故ここに!?」

 

「な、垣根帝督だと!?あのメルヘンでカプ厨と言われる超能力者随一の変人か!?」

 

「なんとなく始めたソシャゲで、なんとなくレアなキャラやカードを手に入れる事で有名な垣根帝督か!?」

 

「どうも、垣根ていとくんです」

 

動揺する宝石強盗達に笑いかけながら歩み寄る垣根、だが宝石強盗達はこれしきで諦めたりしない

 

「ま、まだだ!俺達はソシャゲで課金をするんだ!こんな所で負けるわけにゃいかねえ!」

 

「そうだ!俺は友奈ちゃんを当てるんだ!」

 

「我ら爆死すともソシャゲは死せず!」

 

「世界はソシャゲより生まれ、課金へと終わる…これ即ち万物の(ことわり)なり」

 

(ソシャゲと課金)のサイクルは停止しない!」

 

「だからよ、止まるんじゃねえぞ…」

 

「名言ぽく言ってますけど…ただの全員ダメ人間じゃないですか!」

 

宝石強盗達はまるで漫画の主人公の様な決め台詞を吐き垣根を睨む、それは悪党に挑むヒーローにも見えるが彼らはただソシャゲがしたいだけの宝石強盗である

 

「行くぞお前ら!ソシャゲ廃人の恐ろしさとくと見せてやれ!」

 

「「「「「イエッサー!」」」」」

 

「なああんず…タマ達は何を見ているんだ?」

 

「これがソシャゲの業の深さだよタマっち先輩」

 

垣根に臆する事なく挑み掛かるソシャゲ廃人達、だが垣根は笑みを浮かべながら三対の純白の翼を顕現する

 

「たく、口を開けば課金、課金、課金てうっせえな。ソシャゲてのは楽しむもんだろうが。人様に迷惑かけてんじゃねえよクソボケ」

 

「黙れぇ!貴様に何が分かる!お目当のキャラがガシャで出ない我々の気持ちが分かるのかぁ!?」

 

「知るか、目当のもんが当たらない、それを含めてソシャゲてもんは楽しいんだろうが。そんな事も忘れちまったお前らに俺が喝を入れてやる」

 

垣根は翼を羽ばたかせ烈風を発生させる、その風で動きを止める廃人達。その一瞬で垣根は両腕をクロスさせ翼の先端を廃人達に向ける

 

「ここでお別れだ………死ね」

 

『なっ…!?』

 

その瞬間、六枚の翼が廃人達を捉えた

 

「カップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングカップリングッ!!!」

 

「「「「「「ギャアアアアァァァァァァァァァッ!ソシャゲ万歳!!」」」」」」

 

「お前らに足りないもの、それは常識、キャラに対する愛、現実に支障を乱さない様ゲームをやる気持ち、計画性、 両親に対する気遣い、友達、メルヘン…そして何よりも……」

 

ーーーカップリング愛が足りない!

 

翼による打撃の連撃が容赦なく彼らを襲い、廃人達は翼による打撃で全身を殴打され口から血反吐を吐いてドサドサと北斗の拳のモヒカン達の様な倒された方で倒れる、そんな彼らを垣根は一瞥しドヤ顔で叫ぶ垣根

 

「す、凄い…何が凄いのか分からないけどとにかく凄い!」

 

「つ、翼の連続攻撃カッコいい〜!!」

 

「当然、それが垣根帝督という男だ」

 

「流石カプ厨。無茶苦茶強い」

 

「そこに痺れる憧れるぅ!」

 

うおおお!と目を輝かせる球子と杏、流石は超能力者だと何故かドヤ顔をするアウレオルスと姫神

 

「あ!今がチャンスだよタマっち先輩!お礼を言いに行くチャンスだよ!」

 

「!そうだなあんず!目の前にいる今がチャンスだ!」

 

二人は今しかお礼を言うタイミングはないと思いカフェから飛び出して垣根に近づく、そして二人が口を開こうとした瞬間、球子と杏の姿が消えた(・・・)

 

「……え?」

 

青ピは球子と杏が消えた事に戸惑い目を見開く、その直後にアウレオルスの携帯が鳴り響く

 

「む?フィアンマからか?」

 

アウレオルスが携帯電話を取り出し通話ボタンを押す、そして携帯から焦ったフィアンマの声が聞こえてくる

 

『アウレオルスか!?大変だマタイの奴がゲーセンの格ゲーでコンボ技を決めすぎて相手の不良達が怒ってマタイを路地裏に連れて行こうとしている!今すぐ来てくれ!』

 

「「何してるのローマ教皇」」

 

どうやらマタイが調子に乗ってコンボ技を連発し次も俺のターン状態を格ゲーでやってしまい、相手の不良がブチ切れて路地裏に連れていかれそうになっているらしい。本当に何してるんだローマ教皇

 

「すまんな少年、私達は上司を救いに行かなければならない」

 

「私の魔法使いのステッキ(スタンガン)が紫電を纏うよ」

 

アウレオルスと姫神は代金を支払ってカフェから飛び出して行く、さっきまで五人いたのに自分一人になってしまった青ピはさっきまで向かい合って座っていた少女達の事を考える

 

「お、青ピじゃん。お前今日は一人なのか?」

 

「ていとくん…」

 

「ん?考え事か何かか?…あ、俺コットンキャンディーソーダ一つで」

 

カフェに入って来た垣根がウエイターにコットンキャンデーソーダを注文する、青ピは無言で垣根を見てそして口を開く

 

「なあていとくん、一つ言ってきたい事があるんやけど」

 

「?なんだよ」

 

「いつか前に君に助けられたていう二人の少女が君にありがとうて言いたいて言ってたで」

 

「へぇ〜二人の女の子か、あーでもな。誰か分かんねえや。そういう子達は一杯助けて来たから」

 

「せやろな、実はさっきまでここにおったんやけどいなくなてしもうたからボクが代わりに伝えとこうと思ってな」

 

「そうか、もっと早くこればよかったか?」

 

青ピがその少女達の代わりに垣根にお礼の言葉を伝える、垣根は早くこれば良かったと溜息を吐きながらコットンキャンデーソーダを飲む

 

「……君達の気持ち伝えといたでタマちゃん、あんずん」

 

青ピはそう言って窓の外を眺めて笑った

 

 

 

 

「「はふぅ!!」」

 

「え!?タマちゃんとアンちゃんが落ちて来た!?」

 

「ゆ、友奈か…て、ここは丸亀城か?」

 

「て事は…戻って来ちゃたみたいですね」

 

球子と杏は丸亀城の食堂の天井から床へと頭からダイブした、その音を聞きつけて友奈が駆けつけてくる。二人は頭を抑えながら元の世界に戻った事を理解する

 

「……またお礼言いそびれちゃったね」

 

「そうだな…、でも今回みたいにあっちの世界にまた行けるかもしれないしそん時お礼を言おう!またあっちの世界のうどんも食いたいしな!」

 

「……うん、そうだねタマっち先輩」

 

「??二人共なんの話してるの?」

 

またお礼が言えなかったとしょぼんとする杏だがまた行けた時に今度こそ言おうと笑いかける球子、彼女の笑う顔を見て杏もにっこりと微笑む。そんな友人二人を見て友奈は首を傾げる

 

「さて!もう一杯うどんを食べるかあんず!」

 

「えぇ…そんなに食べると太っちゃうよタマっち先輩」

 

「私もうどん食べたい!」

 

今日もこの世界は平和である…一部を除いて

 

 

 

「………」

 

「なあ千景…そろそろ離れてくれないか?」

 

「……………やだ」

 

「私の若葉ちゃんに……やはり消さなくては」

 

「あ!?またひなちゃんがダークサイドに堕ちちゃってる!?」

 

「……止めに行くか」

 

「……そうだね」

 

その後、球子と杏は全力で日本刀を持って突撃しかけた巫女さんを羽交い締めして動きを封じた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




アウ姫要素が薄い、殆どタマあんの後日談になってしもうた。これは作者のミスですな。本当にごめんなさい

因みに作者は妖怪ウォッチ真打で妖怪ガシャを引いて目当ての妖怪がでなくてキレた事があります。水虎が中々当たらなくて…あいつさえ揃えばやまタン仲間になるのに…て、結局友達に譲ってもらいやまタン解放できたんですけどね…因みにイッカクは妖怪ウォッチ元祖やり始めて3日後にガシャ引いたらでました。それから回復キャラに困らずにすみ今でもイッカク使ってます

作者はゲームはガチ勢ではなく趣味でやってますからガチの人には勝てないのですたい、ポケモンでも自分の好きなポケモンでパーティ組むから伝ポケばっかりで試合とか出せないし、だからバトルツリーみたいな場所は苦手です。妖怪ウォッチもレア度と自分が好きな妖怪でパーティ組んでますから。因みにパーティは黒鬼、山吹鬼、イッカク、犬神、イザナミ、心オバアです

関係のない話してすみません…次回からは「御使堕し・(リターン)」が始まります。ご期待ください

次回もお楽しみに!


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スカイダイビング(パラシュートなし)

始まりましたロシア編もとい御使堕し・(リターン)編。第1話なのでギャグ要素強めです。モチーフとしては原作の旧約14巻を元ネタにしてパロディ化しました

そしてニコライさん強化、ただし今までの敵さん(シェリーさん、獲冴さんとか)と比べると弱い方です。ただ一方的にやられる雑魚キャラではなくなったてだけです

とあるマガジンを買って読んで見ました、そしてとある科学の未元物質を読んで思った感想。「また木原キャラ出てきたよ」ですね。相似という恐らくは木原一族であろう謎の男にていとくんの少しだけ垣間見る事が出来た複雑な表情。そしてヒロインである杠 林檎というキャラ…続きが楽しみでしょうがありませんね。それにこの作品のせいで更にていとくんが好きになってしまった。どう責任を取ってくれるんですかねぇかまちー先生ぃ!?(歓喜)



「はっははははは!!やったぞ!これで計画の要は手に入れた!」

 

「………ッ!」

 

ロシア成教の本拠地にある男の歓喜に満ちた叫びが轟く、彼の名はロシア成教の司教 ニコライ=トルストイ。そして彼の目の前に倒れているのがロシア成教の総大主教 クランス=R=ツァールスキーとシスターワシリーサだ

 

「馬、鹿な……!ニコライ…貴方いつの間にそんな力を…!?」

 

「時代とは変化するものなのだよワシリーサ、お前が魔女の力を借りるならば私は王子の力を借りた。貴様がヒロインなら私は物語の主人公だ…意味が分かるか?」

 

床に倒れながら歯ぎしりするワシリーサの頭部をニコライは踏みつけながら笑う、そんな彼の横には灰色の狼と全身が火で包まれた鳥、金のたてがみを持つ馬が寄り添っていた。そして彼の右手は鋼で出来た剣を携えている

 

「そもそも主人公の妻であるワシリーサが私に勝てるわけがないだろうに…馬鹿な奴だ」

 

グリグリとワシリーサの頭を踏みつけながら嘲笑うニコライ、だが興味をなくしたのか彼女の頭を思い切り蹴り付け壁へと突き飛ばす

 

「がっは!」

 

「ワシリーサ!?」

 

「ふははは、貴様達は這いずりながら私がロシアを、いや世界を手に入れる瞬間を見届けるがいい」

 

そう言ってニコライは笑いながら自分の近くに倒れていた少女 サーシャ=クロイツェフを左手で襟首を掴む、そしてそのまま引きずり去っていく

 

「さ、サーシャ、ちゃ……ん」

 

ワシリーサはサーシャへと手を伸ばす、だがその手はサーシャには届かずそのまま力尽きて腕は床に引き寄せられるかの様に落ちた

 

「ふふふ、これでピースは全て揃った。聞こえているか上里翔流(・・・・)?こちらの準備は万全だぞ」

 

『ああ、分かった。すぐに実行に移そう』

 

ニコライの手に持った遠隔通信用霊装から聞こえてきたのは上里の声だった。彼は欲望に満ちた笑みを醜悪に浮かべながらロシア成教の本拠地の廊下を歩く

 

「さあ世界は変わるぞ。私の有利な方へとな…ふふふ、ふっははははは!あっははははは!!」

 

 

 

「なあ潤子ちゃん」

 

「なんです垣根さん」

 

とあるファミレスにて、麦野はいつも通り持ち込みのシャケ弁を頬張り一方通行はコーヒーを飲む。削板はアリサの写真を眺めて緩んだ顔をし上条と美琴、食蜂はお互いにあーんをしあってイチャイチャしていた。そんなカオスな空間の中で垣根がコットンキャンデーソーダを飲みながら週刊少年コニャックを読みながら帆風に声をかける。声をかけられた帆風はどうせしょうもない事なんだろうなーと思いながら適当に相槌を打つ

 

「俺と付き合ってくれ」

 

「ええ、いいですよ…………え?今なんと?」

 

「俺と付き合ってくれて言ってるんだけど?」

 

「…………はい?付き合う……付き合う…て、えええ!?つ、つつつつつ付き合うぅ!?」

 

ふぇぇ!?と顔を真っ赤にしながら帆風があわわと動揺する、いきなりの告白に彼女は目をグルグルさせながら困惑する。そして垣根の告白を聞いた上条達は固まっていた

 

「て、帝督…付き合うてのは…あれか?」

 

「それ以外に何があるんだよ」

 

「え、あ、あの垣根さんが……ええ!?嘘でしょ!?明日は巨大隕石が学園都市に降り注ぐの!?」

 

「?何をそんなに騒いでんだよ。騒ぐ程じゃねえだろ」

 

「「「「「「いや騒ぐだろ!!」」」」」」

 

削板がそれは告白かと尋ねると垣根がそうだと頷く、それを聞いて美琴があの垣根が!?と驚き垣根が驚き過ぎだと真顔で言うが全員が驚くわと反論する

 

「か、垣根さんがわ、わわわたくしにぷ、プロポ……あふぅ」

 

「じ、潤子先輩ぃ!?嬉し過ぎて気絶しちゃったわよ!?」

 

「戻ってこい帆風ぇ!まだ昇天するには早過ぎんぞ!」

 

帆風は嬉しさのあまり口から帆風の姿に似た翼が生えた魂を出してしまう。そのまま天の国へ旅立とうとする帆風の魂を美琴と麦野がキャッチ・アンド・リリースして事なきを得た

 

「……ダメか?」

 

「いえ、バッチコイですわ」

 

「そうか、じゃあ今すぐ行こうぜ」

 

「え?えぇ!!?い、いきなりそんな…破廉恥な事以外なら…いいですけど…」

 

垣根が付き合ってくれないのかと呟くと帆風はキリッとした顔でOKをだした。それを聞いて垣根は笑うと席から立ち上がり帆風について来てくれと言う、それを聞いて帆風はいきなりデートかと驚きつつも満更でない顔でついていく

 

「……なあ、一つ言っていいか一方通行」

 

「……なンだ?」

 

「……俺達と帆風ちゃんはもしかしたら何か勘違いしてるんじゃねえか?」

 

「……奇遇だなァ上条、俺もそゥ思ってる」

 

上条と一方通行は気づいた、これはもしや勘違いなのでは?と…そしてその予想は当たっていた

 

 

帆風は垣根の後を追う様に彼について行く、これから何処に行くのか、今から何をするのかとドキドキしながら帆風は彼の後ろを歩く

 

(これがデート、ああ…もうわたくし…死んでも悔いはありませんわ)

 

「ついたぜ、ここだ」

 

「ふぇ!?もうついたんですの!?て、これは…窓のないビル?」

 

二人が辿り着いたのは窓のないビルと呼ばれる建物だ。帆風は何故こんな所にと首を傾げる、すると二人はいつの間にか窓のないビルの建物の中にいた

 

「え!?い、いつの間に!?」

 

「ここには俺の未元物質で作り出したカブトムシがいるからな、その実装された能力は座標移動(ムープポイント)。まあつまりそのカブトムシがあわきんの代わりに窓のないビルの案内人をしてるのさ」

 

これは垣根が作ったカブトムシによる座標移動の空間移動、そのカブトムシが窓のないビルに入る人達をその能力で転移して建物の内部へと案内するのだ

 

「やあ、やっと来たか垣根帝督、帆風潤子」

 

「遅くなって悪いなアレイスター」

 

「え?統括理事長さん…?」

 

コツコツと靴音を鳴らしながら現れたのは魔術師 アレイスター=クロウリー。彼は柔和な笑みを浮かべながら二人へと近づく、アレイスターを見て帆風はなんでアレイスターの所に自分を連れて来たのかと考える

 

(な、何故統括理事長がここに…?デートの途中なのに…ま、まさかデートではなかったとか!?)

 

「すまないな帆風潤子、実はわざわざ来てもらったのには訳がある」

 

「え!?いやそんな…ええっと用と言うのは?」

 

「垣根帝督から何も聞いていないのか?」

 

「ああ、ここで言った方がいいと思ってな」

 

デートではなかったのかと動揺する彼女にアレイスターが急に呼んですまないと詫びる、そしてまだ話の内容を伝えていなかったのかとアレイスターが垣根を見ると垣根はそうだと笑う

 

「全く君は…先に話した方が楽だったんじゃないのか?」

 

「いや当麻達が居たからさ…まあ今頃あいつらもツッチー達に捕まってる(・・・・・)頃だろうけど」

 

「それもそうだな、ならここで言った方がいいか」

 

(ここで言った方がいい……そ、それってまさか…!?)

 

垣根とアレイスターの会話を聞いて帆風の脳裏にある考えが走る

 

(ま、まさか結婚の話!?皆さんの前で恥ずかしくて言えなかったのと…統括理事長にこの歳でも結婚できるように直談判を!?)

 

発想がブっ飛んでいた、流石は大能力者、普通の人なら考えない様な事も考えついてしまう…そして彼女の脳裏である映像が浮かぶ

 

 

『アレイスター!俺はこの歳でも結婚するぜ!結婚年齢は男子は18歳、女子は16歳なんて常識は俺達の愛の前には通用しねえ!』

 

『……ふん、そうか。ならば私を倒してから結婚するがいい!』

 

 

(な、なんて……きゃあぁぁぁ!恥ずかし過ぎますよ垣根さん!でも嬉しい…!そこまでわたくしの為に…)

 

もう一度言おう、考えがブっ飛び過ぎである。垣根も垣根だが帆風も充分常識が通用しない

 

「ではいいな、これよりロシア成教で起こった内乱について説め…」

 

「で、ではこの一撃で決めさせて頂きます!全てはわたくしと垣根さんの幸せの為に!ていやー!」

 

「やこど!?」

 

「アレイスター!!?」

 

アレイスターがロシア成教で起こった内乱について説明しようとした瞬間、暴走して天使の力(テレズマ)を右拳に集中させアレイスターの鳩尾に叩き込みアレイスターはギャグ漫画の様に吹き飛んでいった

 

「何してんの潤子ちゃん!?」

 

「え?わ、わたくし達は統括理事長と将来を賭けて戦うのではなかったのですか?」

 

「なんでそうなってるの!?俺はただ潤子ちゃんにロシア成教で起こった内乱の話を聞いて欲しくて連れて来ただけだぞ!?」

 

「……え?内乱の話を聞くだけ?え?では付き合ってほしいというのは…?」

 

「いや普通について来てくれて意味だけど…」

 

「……あ」

 

垣根がなんで殴るのさと叫ぶとえ?違ったと首を傾げる帆風、自分はただアレイスターの話しを聞かせる為に呼んだだけだと言うと帆風は自分が勘違いしていた事を理解し顔を赤くし始める

 

「あ、あ………あああああぁぁぁぁ!」

 

「え?!何この辺にあるチューブとかコードとか引きちぎってんの!?」

 

「あぁ!穴があったら入りたい!いえ消えてなくなってしまいたい!」

 

顔を真っ赤にしながらチューブやらコードを引きちぎる帆風、それを見てなんでさと驚きの声を上げる垣根…その後も帆風の暴走は鳩尾を抑えたアレイスターが来るまで続いた

 

 

「本当に申し訳ありませんでした」

 

「い、いや気にしていないから構わない。では本題に戻ろうか」

 

帆風がジャパニーズ土下座をアレイスターにする、アレイスターはそこまでしなくていいと若干引きながら呟く。そしてアレイスターはコホンと息を吐くと真面目な顔になって口を開く

 

「昨日、ロシア成教の司教 ニコライ=トルストイがロシア成教に反旗を翻し総大主教 クランス=Rツァールスキーとシスター ワシリーサを倒し、更にサーシャ=クロイツェフを攫ってその後複数の部下と共に行方をくらませたそうだ」

 

「サーシャ=クロイツェフ…確か御使堕し(エンジェルフォール)の時にガブリエルが宿っていた器の少女でしたわよね?」

 

「ああ、そうだ。何故ニコライ=トルストイがサーシャ=クロイツェフを攫ったのか分からないが…よくない事を企んでいるのは理解できる」

 

「それで俺達にロシアに行ってニコライのクソ野郎をぶっ倒してこいて事だろ?」

 

昨日ロシア成教の本拠地にてニコライが反旗を翻し総大主教とロシア成教の最大戦力とも言えるワシリーサを倒した。その後ガブリエルの器となったサーシャが連れ去られた様だ。つまり垣根達にニコライを倒してサーシャを救出する様ロシアに行ってくれという事だ

 

「はぁ…大覇星祭で頑張ったかと思えば次はロシアですか…」

 

「すまないがこちらにも色々と事情があってな。学園都市の最大戦力である超能力者を投入せねばならないほど危険な事件だと思ってくれ」

 

「成る程ね…そう言うなら仕方ねえな」

 

帆風がまた事件かと溜息を吐き出す、アレイスターがそれ程の大事件なのだと言うと垣根はそれなら仕方ないと納得する

 

「では、早速だが第二十三学区の国際空港に向かってくれ。超音速旅客機の手筈はしてある。他の超能力者達も既に誘拐して搭乗済みだ」

 

「用意がいいな、じゃあロシアに行くとしますか」

 

「ま、待ってください!」

 

「?どうかしたか帆風潤子?」

 

超音速旅客機の手筈は済んでいるからすぐにロシアに行けとアレイスターが言う、だが帆風は待ってくれと叫ぶ

 

「少々時間をください!すぐに荷物を整えますので!」

 

「……成る程、女の子は色々と用意する事が多いだろうしな。いいだろう荷造りくらいの時間はあるからな。垣根帝督、座標移動の力で彼女を寮まで連れて行き荷造りを手伝ってやれ」

 

「分かった、じゃあ行くぞ潤子ちゃん」

 

「は、はい!」

 

荷造りをしたいと叫ぶ帆風にアレイスターは頷くと垣根に寮まで連れて行く様に言う、垣根はそれに頷くと帆風を連れて窓のないビルから消える。それを見届けたアレイスターはくすりと笑う

 

「……やはりあの二人を見ていると面白いな」

 

 

 

荷造りを終えた帆風と垣根は第二十三学区の国際空港に辿り着く、そしてアレイスターが用意した超音速旅客機へと乗り込む

 

「待たせたな、暇だったか当麻達」

 

「……上条さん的には説明もなしに誘拐されて旅客機に監禁された事を説明して欲しいんでせうが」

 

「あ、潤子ちゃんは俺の横ね」

 

「あ、はい…(垣根さんの横!?やった!ロシアに行けてよかった!)」

 

「「「「「「ナチュラルに無視をすんなゴラァ!!」」」」」

 

いきなり拉致監禁された上条達がジロリと垣根を睨むが垣根はそれを無視して自分達が座る席を決める、帆風が垣根の隣の席と知って内心大はしゃぎしていると上条達は無視すんなゴラァ!と怒鳴る

 

「俺と美琴と操祈はいきなり魔術師達に催眠ガスとか投げつけられて意識を失ったかと思ったらなんで俺達は旅客機に乗ってんだよ!説明しろよ!」

 

「俺の場合は反射があるからなのか、ミナとかいうババアとメイザースのオッさンに胴上げでわっしょいわっしょいされながら旅客機まで運び込まれたンだぞ!」

 

「俺はアリサの写真が浮いてたらその後を追ってきて見たら旅客機に監禁された!」

 

「シャケが貰えるからて言われてついてきて見たらなんだこの仕打ちは!」

 

「……軍覇とむぎのんは警戒感持とうぜ」

 

垣根は上条達はともかく、麦野と削板には少しは警戒しろと溜息を吐く。今時の子供でもおやつで怪しい奴について行く事もないというのにこいつらは…と垣根は思った

 

「まあ簡単に言うとロシアで事件発生、解決にし行くぞ。それ行けていとくんと愉快な仲間達、て事だ」

 

「また事件かよ…てかその言い方やめろムカつく」

 

垣根が分かりやすく説明すると納得する上条達、そして垣根と帆風がシートベルトをすると垣根は上条に声をかける

 

「ああ、そうだ当麻。なんでお前の隣がアー君なのか知ってるか?」

 

「嫌がらせか?我が天使達の間に座らせないようにする為の嫌がらせか?」

 

「おいコラ上条くゥン、俺を嫌がらせ扱いすンじゃねえ。泣くぞ」

 

「チチチ、違えよ。アー君だけを仲間外れにしない為さ」

 

「「?」」

 

「まあ動き出したら分かるさ」

 

上条は自分の隣が一方通行なのは嫌がらせだろと言うと垣根は一方通行を仲間外れにしない為だと笑う、その意味が分からず首を傾げる二人に垣根は超音速旅客機が動き出せば分かると意味深に笑う

 

「さて、楽しい空旅の始まりなのです」

 

超音速旅客機が動き出す、上条達はロシアで事件を解決しに行くと聞いても「あ〜なんか機内食でないかなー?」とか「暇潰しに映画でも見るか」などと考えていた…そんな事をする余裕がないと言うのに…

 

(あ、天使の力で体を強化しておいた方がいいと思うよ)

 

(はい?)

 

垣根がそう帆風にアドバイスした瞬間、超音速旅客機は離陸し空へと旅立った

 

 

「ニコライ=トルストイーーーそれが今回の俺達の敵の名前だ」

 

垣根達が超音速旅客機で座っている席は1番高級なファーストクラスのど真ん中の席を陣取っている。足を伸ばしてもまだスペースが余る余裕を持つその席で垣根は優雅に寛ぎながら片手に雑誌を持ちながら今回の事件について説明する

 

「ロシア成教の司教で悪い噂しかない様な男らしい、だが実力はそこそこあるみたいだな。まあ司教クラスだから当然だが俺達の敵じゃねえ…だがそれは昔の話だ」

 

「今のあいつは以前とは異なる魔術を扱うらしい、ワシリーサとクランスを倒した際に使っていた術式は恐らくイワン王子に関する逸話を再現したものと推測されている」

 

「イワン王子てのはロシアの有名な民話の主人公でな。「蛙の王女」や「イワン王子と火の鳥と灰色狼」などの作品の主人公だ。そして民話「竜王と賢女ワシリーサ」では竜王を殺してその娘 ワシリーサを嫁に取る…これが俗に言うペルセウス・アンドロメダ型神話てヤツだな」

 

垣根が次々にニコライについて、ニコライが扱う術式について、その術式の元となった民話の事を話す

 

「ペルセウス・アンドロメダ型神話というと…確か日本でいう八岐大蛇を退治した須佐之男命の様なお話ですわよね?確か龍蛇を殺してお姫様を手に入れる…そんなお話ですか?」

 

「その通り、日本にはそういった話は少ねえけどな。まあそれは置いておくとして…当麻達話聞いてる?」

 

「「「「「「ーーーおごごごごごごごごごごごごごごごごぶぶっ!!」」」」」」

 

帆風がペルセウス・アンドロメダ型神話について答えると垣根は満足げに頷く、そして上条達に話しかけるも彼らは答えられなかった。何せこの超音速旅客機は時速七〇〇〇キロ(・・・・・・)の速度で移動しているのだ。それが生み出すGで上条達の内臓は思い切り圧縮されている。例えるなら超大型力士(150キロ)に思い切り踏み潰される様なものだ。当然言葉をまともに出せる状況ではない。逆に何故垣根と帆風は平気なのかと言うと帆風は天使の力を纏い身体能力を強化している為この程度のGならば耐えられる身体になっているから、垣根の場合も何らかの魔術を使ってこのGから身体を守っている

 

「こんな時に魔術てあらやだ便利。奥さんも使ってみませんこと」

 

「ではわたくしも…て、そんな冗談よりもいいんですかこのまま女王達を放置して」

 

「いいんだよ、いいんですよ、いいだろの三段活用だ。じゃあ話を戻すぞ」

 

「「「「「「うげごっ!?」」」」」」

 

垣根は呻き声の様な声を出す上条達を無視して言葉を続ける

 

「恐らくニコライの目的は連れ去ったサーシャ=クロイツェフを媒体として利用した怪しげな術式を行う気だろうな」

 

「「「「「「ぎぎぎぎぐぐっ!」」」」」」

 

「まあ最低でも神の力(ガブリエル)の召喚程度なら出来そうだな。ガブリエルなら大抵の魔術師や化学兵器の相手にすらならないし俺らでも勝てない事はねえが苦戦はするだろ」

 

「「「「「「おおおおおええええっ!?げぼおおおおぉぉぉ!!?」」」」」」

 

「おーい、吐くなよー?汚えからな。もし吐いたら旅客機から空へパラシュートなしのスカイダイビングの刑な」

 

(鬼畜ですわね)

 

垣根はニコライが連れ去ったサーシャについて話すが上条達はもう吐く瞬間の顔になっていた。もう吐瀉物が口の中にあるのではと思うほど気分が悪そうな顔をしもう吐く3秒前という顔つきだ。垣根は笑いながら吐いたら突き落とすと脅す

 

「が、は、は……で、俺らは、そのニコライて俺達を、こんな旅客機に乗せる、原因を作ったクソ野郎をシバけば、いいんだな?」

 

「上等、だよ…くそったれ…ブ・チ・コ・ロ・シ・か・く・て……うぇつぷ!」

 

「根性なしめ…絶対に殴り飛ばして…うぇぇ」

 

「皆さんもう既に瀕死状態ですよ」

 

流石超能力者と言うべきか彼らは何とか会話ができる様になっていた、言葉は途切れ途切れだが自分達がこんな旅客機に乗る原因を作ったニコライに殺意を抱きながら彼等は吐き気を堪える。帆風は大丈夫かこれ?と不安になる

 

「畜生、手ェ離せよ上条ォ。反射が使ェねから俺もこのGに耐えられねェンだよ」

 

「お前一人だけ仲間外れにしねえぞ一方通行。俺らは友達なんだから同じ苦しみを味わおうぜぇ?」

 

「くそ…力一杯に俺の肩を掴ンで離さねェよこいつ…」

 

「あ、死んだ筈のお婆ちゃんだ。お〜いお婆ちゃん元気ぃ〜?なんでお川の向こうにいるの〜?」

 

「それは三途の川よ美琴ぉ!ダメ戻って来なさいぃ!美琴カムバック!」

 

「あ〜赤い川でシャケが泳いでるー、ちょっと熊と一緒に取ってくるわ」

 

「あ、アリサが川の向こうで花嫁衣装を着て…え?式を挙げよう?」

 

「……カオス、ですわ」

 

超能力者いる所カオスなり、超能力者が集まればそこは混沌(カオス)と化すのだ。ファミレスであれ誰かの家であれ旅客機であれ超能力者が集えばそこはカオスとなる。それがお約束なのだ

 

「ま、俺から言える事は一つ。ニコライ倒してさっさと学園都市に帰ろう。以上だ…てな訳で皆で野球拳やろうぜ!」

 

「そう、だな…てか帰りもこの旅客機使うのか?出来れば普通の飛行機を用意してもらいたいんでせうが」

 

「……(口から魂がひょっこり出ている)」

 

「お、金太郎さんじゃねえの。あ、この熊アンタのダチだったのか。いやーこの熊と仲良くシャケ取っててよ、良かったら一匹いるか?」

 

「うふふー、聞いてよお婆ちゃんー。私のね、彼女のね、操祈がね今日寝言で「ミコったん可愛いー。レロレロしたいー」て可愛らしく寝言言ってたのー。私嬉しくてつい操祈の唇にキスしちゃった。てへ☆」

 

「なんですてぇぇぇ!!?そんなイベント力が私が寝てる間に発動してたの!?ああ!なんで寝てたのよ私のお馬鹿…て、早く三途の川から戻って来なさぁい!」

 

「ありがとう皆!俺…いや俺とアリサは絶対に幸せになるからな!だからお義父さんもお義姉さんも安心してください!」

 

「……ツッコミ切れない」

 

帆風はもうツッコミを入れる事をやめた。いくら突っ込んでも捌き切れない。それが超能力者だからだと哲学の域に達した帆風…その時機内のスピーカーから音が聞こえる

 

ーーーギエピー!!!ーーー

 

「「「「「「穴久保ピッピ!?」」」」」」

 

「し、しまった。雷ポケモンは水に弱い!」

 

「これでぼくはミュウスリーだっピ!!」

 

某くにおくんのノリのポケモン漫画のデプピッピの音声がいきなり流れて驚く上条達、垣根と帆風はその漫画の()言を叫ぶ

 

「さて、もう時間がねえな。お前ら辛かったら深呼吸してみろ。ほら吸ってー」

 

「「「「「「すー」」」」」」

 

「吐いてー」

 

「「「「「「はー」」」」」」

 

「更に吐いてー」

 

「「「「「「はー」」」」」」

 

「もう一回吐いてー」

 

「「「「「「はー……」」」」」」

 

「もっと吐いてー」

 

「「「「「「は、は……はー」」」」」」

 

「じゃあ吐いてー」

 

「「「「「「はー…て、これ以上吐いたら死ぬわぁぁぁぁ!!!」」」」」」

 

上条達はこれ以上酸素を吐いたら死ぬ!と叫ぶと垣根はそりゃそうだろと笑う。帆風はそれをみて笑いながら理解した。ああ、こうやって皆の気持ちを落ち着かせているのかと…だがそんな訳はなかった

 

「じゃあ、行くか。案内するからこっちに来い。全員シートベルトを外せ」

 

「え?ど、何処へ行くおつもりですか?」

 

垣根がそう言ってシートベルトを外して通路へと向かって行く、帆風は訝しむが上条達と共に垣根について行く。扉を開け細い通路を歩き、頭がぶつかりそうなほど低いハッチを潜り、金属が剥き出しの周囲から轟々と音がする所まで辿り着く

 

「あ、わたくしこれからどうなるか分かりましたわ」

 

「?どういう事かしらぁ潤子先輩?」

 

帆風は理解した、これからどうなるのかと。そして垣根は上条達にリュックサックの様なものを渡す

 

「これ着ろよー、着たかー?じゃあ行くぞー」

 

垣根達はリュックサックのベルトを体に巻きつける、両肩の他に腹や胸にベルトを固定させるゴツい仕組みで全員がそれの固定器具を留めていく

 

「よし、ではロシアへの第一歩を踏み出しましょうか!」

 

垣根はそう言って掌に壁についている缶詰の蓋ぐらいの大きさのボタンに叩きつける。ごうん、と妙な音が響きガハッと機体の壁が大きく開き、その向こうには朝焼けの空が広がっていた。真下には白銀の雪面が見える

 

「「「「「「………はい?」」」」」」

 

「……ですよね」

 

「はい、スカイィィィダイビングゥゥッ!!」

 

目が点になる上条達、やっぱりかと溜息を吐く帆風、ハイテンションな垣根…そして烈風が吹き荒れその風に彼らの体は拾い上げられ、垣根達は大空へと放り出される

 

「「「「「「うぎゃあああああああああああああああああああああああああッ!!?」」」」」」

 

クルクルと360度視界が回転し赤く染まった空が、雪面が、激しく移り変わる。手足をバタバタと動かすと体は訳の分からない方向に回転する…帆風はもうどうとなれ、と諦めたように脱力し垣根はウッホホーイ!と叫ぶ

 

「「「「「「垣根ぇぇぇぇ!!殺してやる…!このクソ野郎!地上に着いたらモザイクかかるまで殴りまくってやるぅぅッ!!!」」」」」」

 

垣根と帆風のリュックサックが爆発しパラシュートか開く。上条達は垣根に怒りの咆哮を轟かせながら地上に降りたら覚えていろと叫ぶ…だが一向に彼らのパラシュートは開かない

 

「あ、当麻達に渡したのパラシュートが開かない不良品だったぽいわ。めんご☆」

 

「「「「「「嘘だろ!?やっぱお前絶対に殺してやるうゥゥぅぅぅぅッ!!!」」」」」」

 

てへ☆と可愛らしく舌を出す垣根を見て上条達は地上へと落下していく

 

「ちょ!?大丈夫なんですか垣根さん!?女王達死んじゃいません!?」

 

「大丈夫だ、何せこの小説はギャグ小説だからな。死なない死なない、それに真下は雪だからクッションになると思うよ。多分な」

 

「全然大丈夫な理由になってませんよ!?」

 

「てな訳でロシア編、始まり始まり〜♪」

 

ロシア上空でそんなやりとりが繰り広げられている事など誰も考えもしないだろう。これから彼らが落ちる場所の名前はエリザリーナ独立国同盟と言うのだが垣根以外誰もそれを知らない…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




まあこの小説はギャグだから死んだらしないでしょ(無責任)。それにレギュラーキャラがそうそう死ぬ事はないですしご安心下さい。上条さん達は死にませんよ(無事とは言ってない)。因みにロシアとの時差は六時間。ていとくん達が出発したのが昼前ぐらいなのでロシアは今5時か6時くらいの時間帯です

そしてイワン王子ですが…これはロシアでは有名な民話の一つであのワシリーサを妻にするお話もあるくらいです。興味が湧いたら調べて見てください。面白いですよ

さて次回はエリザリーナ独立国でていとくん達が大暴れ、な展開にしたいなーとか考えてみたり

次回もお楽しみに!


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ロシアの寒さはとっても恐ロシア〜

今回もギャグ成分多め、そして新約のあのキャラが登場します

夏休みも終わり来週から学校にまた行かなくちゃ…夏休みて全然休んだ気にならない…履歴書とか書いてたからほぼ学校に毎日行ってましたからね。しかも初日からテスト…疲れるなぁ。それにまだ履歴書の本番書いてないし…ああ、不安しかない(白目)

では夏休み最後の投稿、ぜひ楽しんで読んでください



「あ、兄さんからメールだ」

 

インデックス達とランチを食べていた風斬がそう呟く。それを聞いてムシャムシャとパンにかじりついていたインデックスと黙々とおにぎりを食べるステイルと神裂、野菜サラダを上品に食べている黒子とその横で餌を食べるピラルクーが反応する

 

「ていとくからメール?」

 

「うん。えっとね…今皆と一緒にロシア上空でスカイダイビングやってるんだって」

 

「相変わらず意味が分からないな」

 

「もう突っ込んだら負けですわ」

 

今ロシアの空でスカイダイビングをやっていると風斬が言うと、ステイルと黒子はいつもの様に訳が分からんとこぼす

 

「ほら画像もありますよ」

 

「確かにスカイダイビングをしていますね…ですが何故上条当麻達はパラシュートを開いていないのです?」

 

「なんでも渡したパラシュートが不良品で開かなかったみたいですよ」

 

「ふーん、まあでもとうま達なら大丈夫だよ。核爆弾でも死ななそうだから」

 

インデックスはさりげなく毒を吐きながらスープをがぶ飲みする。それを誰も否定しないのも超能力者なら上空から紐なしスカイダイビングしたぐらいでは死なないと理解しているからだろう

 

「しかしロシアか…何故垣根帝督達はロシアに行ったんだ?」

 

「休日だからスキー等の遊びの為に行ったのか、もしくは……魔術関連か」

 

「……ていとく達の事なら後者の方が当たってるかもね」

 

インデックス達は垣根達は何らかの事件を解決する為にロシアに行ったのでは?と推測する

 

「まあでもていとく達なら平気なんだよ」

 

「ですね、心配するだけ無駄というものです。ご飯を済ませてボーリングにでも行きましょう」

 

「見ていろよ神裂、ストライクを華麗に決めてやる」

 

だがインデックス達は心配したり不安になったりしない、彼らならどんな事件でも解決してくれる。そう信じているからだ…だから三人は黒子達と一緒に遊ぶ事を優先する

 

「因みにボーリングていうのはね、ピンを災いや悪魔に見立ててそれを沢山倒したら災いから逃れられるていう宗教儀式の一種なんだよ」

 

「へー、そんな事も知ってるんだねインデックスは」

 

「流石インデックスさんですの」

 

「えっへんなんだよ、まあこれくらいシスターとしては常識だからね」

 

ボーリングについて豆知識を語るインデックスに純粋に凄いと褒める風斬と黒子、インデックスはえっへんとない胸を張って鼻を伸ばしていた

 

「あんまり褒めないでくれ風斬、彼女はすぐに調子に乗るからな」

 

「むう、何さステイル。私は調子に乗ったりしないもん」

 

「いやしているでしょう。そういう所を治さないと一人前のシスターにはなれませんよ」

 

「ムキー!かおりまで!一人前のシスターになんかなれなくていいもん!皆と一緒に居られれば半人前だろうがシスター失格だろうがどうでもいいんだよ!」

 

ステイルがあまり褒めると調子に乗るから褒めるなと呟き、神裂もその通りだと頷く。それを聞いてインデックスは皆と入られるなら一人前になれなくてもいいと叫ぶ

 

「まあ、お姉様もいらっしゃる事でしょうし心配する事はありませんわね」

 

「それにいざという時のブレーキ役の帆風さんもいるし大丈夫でしょう…でも帆風さん最近兄さん達の所為で壊れかけてるからな〜少し不安かも」

 

黒子と風斬も心配する事なく食事を続ける、風斬は義兄の事を一切心配しないで今日の晩御飯は何にしようか考えていた

 

 

上条達は某犬神家の一族の様に両足を突き出して、上半身は逆さに突き刺さった状態で雪面に埋もれていた

 

「犬神家……」

 

「な?だから言っただろ、この作品はギャグだってな」

 

帆風が偶然でこうなるのかと驚いていると垣根はギャグだからな、と笑いながら返す。そして未元物質でカマキリ型の自律兵器を形成しカマキリ達に上条達を引っこ抜かせる

 

「お〜い、大丈夫かお前ら〜?」

 

「ハッ!?ぜ、前世の俺が見えた気がする」

 

「いやお前の前世てなんだよ当麻」

 

上条が前世が見えた!と叫ぶとお前の前世は何だったんだよとツッコむ垣根

 

「た、確か俺の前世は緑の着ぐるみみたいなパジャマを着て枕を抱いてる男の人だった!」

 

「いやそれあべし、お前の中の人だ」

 

「わ、私も前世が見えたわ…カレーが苦手なイタかわ系女子が私の前世よ!後、佐天さんの前世だと思わしき女性が「トナカイは架空の動物ですよね?あんな空飛ぶ生き物いるわけないじゃないですか」て言ってるのも思い出したわ!」

 

「それはサトリナ、ミコっちゃんの中の人な。そしてそれは佐天さんじゃねえ。伊藤かな恵さんだ、そしてそれはトナ回だ」

 

「「「「………」」」」

 

「いや何か言えよ」

 

上条と美琴は自分の前世の記憶を言うが垣根はそれは中の人だとツッコミを入れる。そして一方通行達は無言だったので何か喋れよとツッコむ

 

「そんな事よりも…ここは何処でしょう?」

 

「ああ、言ってなかったな。ここはエリザリーナ独立国同盟て所だよ」

 

「エリザリーナ独立国同盟…聞いた事あンぜ。ロシアのやり方に納得できず独立した小国の集まりだよな」

 

「そうだ、俺はそこの立役者と知り合いでな。その立役者に頼んでここに降りる事を許可してもらったんだ」

 

垣根がここはエリザリーナ独立国同盟だと教え、自分がここで降りてもいい様に許可を取ったのだと笑う

 

「ならスカイダイビングした意味力は何なのかしらぁ?許可を貰ったらここら辺で降りた方が良かったんじゃない?」

 

「え?勿論お前らの面白い顔が見たかっただけですけど何か?」

 

「「「「「「垣根ェ!!」」」」」」

 

「あ、ははは…流石垣根さん。ブレませんわね」

 

食蜂がスカイダイビングした訳は何かと尋ねると垣根は上条達の面白い顔が見たかっただけ、とそう暴露し上条達は巫山戯んなと叫んだ。それを見て半笑いを浮かべる帆風

 

「さて、そろそろお出迎えが来る筈なんだが…遅えな」

 

「お出迎え…なんか悪い予感がする様な気が今までの経験からピンピンするのでせうが」

 

「奇遇力ね上条さん、私も嫌な予感力がピンピンするんだぞ」

 

「私の危険察知メーターがビリビリしてるわ…」

 

垣根がお出迎えが遅いなと呟くと上条達は何か嫌な予感がすると呟く、何処からかエンジン音が聞こえ垣根達が振り返ると一台の大型車が走って来た。そして車が垣根達の近くで止まり運転席から一人の男性が降りる

 

「学園都市からやって来た超能力者達だな、俺達はエリザリーナさんからお前達を連れて来る様に言われて来た」

 

「おお、ご苦労さん。確かアンタは…元 ロシア兵士のグリッキンだったけ」

 

「ああ、さあ乗ってくれ。エリザリーナさん達がお前達を待っている」

 

その男 グリッキンが垣根達に車に乗る様に言うと垣根達はそれに従って車に乗る。大型車は垣根達を乗せエリザリーナ達が待つ場所へと車は向かう

 

 

エリザリーナ独立国同盟はロシアに周囲を囲まれた国である。これではせっかく独立しても人員や物資のやり取りにロシア政府からの許可が必要な状況になってしまう…それを解決する為に小さな国をいくつか繋げることによって ロシアの外の東ヨーロッパの国々までのルートを自力で構築しており、 その長さは驚くべき事に300km程。それによりロシアの間接的支配から逃れ、ロシアからは疎んじられているが学園都市がエリザリーナ独立国同盟に支援をしている為迂闊に手を出せない状況下にある

 

「……ご機嫌はいかがですかロシア成教の総大主教さんにワシリーサさん」

 

「ええ、だいぶ良くなりました。ありがとうございますエリザリーナさん」

 

「いえいえ、私の姉さんと仲良くして貰っているそうなのでこれくらいは当然です」

 

エリザリーナが今いるのは広場の近くにある四角い石の建物…軍事施設だ。そこにワシリーサとクランスはいた

 

「さて、帝督ちゃん達はまだ来ないのかしらねー?」

 

「先程グリッキンに垣根帝督達を迎えに行くに行かせましたから時期に来る筈です」

 

エリザリーナがそう言った直後だった、バァン!と垣根と帆風がクルクルと回転しながら回る亀に乗りながら石壁を破壊しワシリーサを亀で吹き飛ばした

 

「亀ラップ!?」

 

「ワシリーサァ!?」

 

キラーン!とワシリーサはお空の彼方まで吹き飛ばされてお星様になった。そして亀になりながら垣根と帆風は亀ラップを歌う

 

「YO!そこの道行く兄ちゃん♪姉ちゃん♪この時代突き進む スタイル 確立 独立♪」

 

ぱちんぱちんと指を鳴らしながら垣根がラップを歌う、帆風はリズミカルに太鼓のバチで垣根の頭を殴打する

 

「時代の反響♪一人の絶叫♪」

 

「僕ガメラじゃなくてカメーバだよ」

 

「この亀社会に生まれた俺達若者♪それでも耐え抜く俺のスピリットデメリット♪」

 

垣根が歌うと乗っている亀がガメラじゃなくてカメーバだよと教える、そしてズコドンドンと帆風が垣根をバチで頭を殴る

 

「これって友情?愛情?亀参上♪EYAーーー♪」

 

「そしてカメーバは捨てましょ♪地獄の底に♪お眠り下さい♪永遠に♪」

 

「ギャァァ!!?ガニメェ!?ゲゾラァ!?」

 

「この矛盾の中で生きてるていとくん達の苛立ち♪許せなくやるせなく亀助け人生♪」

 

帆風は乗っていたカメーバを掴んで地面へと叩きつける、そしてカメーバは首の骨がへし折れ死亡。帆風が自転車(補助輪付き)に乗りその後ろに垣根が乗る

 

「さぁ立ち上がるなら今♪道進むなら今♪こらって友情?愛情?亀参上♪EFAーーー♪」

 

「理不尽な貴婦人なキャベジンが全開♪」

 

「なんで亀ラップなんです?なんで亀ラップなんです?」

 

帆風はペダルを漕ぎながら何故亀ラップなのかと問いかける、すると垣根はひょっとこのお面をつけて答える

 

「なんでかな〜?」

 

「なんででしょう?」

 

「それはね、それはね」

 

「なんです?なんです?」

 

「メルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘンメルヘン」

 

「え?!本当なんですか!?」

 

垣根は掌をパタパタさせながらそう教え、帆風はそれに驚き縦ロールがビョーンと伸びる

 

「嘘嘘、本当はね本当はね」

 

「なんです?なんです?」

 

「だーくまたー、だーくまたー」

 

「……ランペイジドレスー」

 

垣根の問いに呆然とした帆風の縦ロールの中からニシキヘビがニュルリと出てくる

 

「奥義 ニシキヘビマシンガン」

 

「痛いでちゅ痛いでちゅ!?」

 

ニシキヘビが弾丸の如く発射されガブガブと垣根に噛み付く、見ているクランスとエリザリーナはドン引きしていた

 

「ミラクル痛いでちゅ」

 

「縦ロール、縦ロール」

 

「ならばはっちゃけろ〜、はっちゃけろー」

 

「た、縦ロー…縦ロー……テーロール!」

 

Teh(テー) ROLL(ロール)。シナモンロール作りに最適です」

 

猫じゃらしで鼻をくすぐりくしゃみをしてしまう帆風、その際言ったテーロールと叫ぶ。そして垣根はシナモンロールを持ってドヤ顔をする

 

「スキ有りです!ぎゅー!」

 

「ひゃわぁ!?」

 

帆風が垣根に思い切り抱きついてハグをする、驚く垣根は白いカブトムシになって目を赤く輝かせる

 

「ピーポーピーポー♪ここにハグ魔は来ませんでしたか?」

 

「来てませんわ」

 

パトランプを頭につけた垣根がそう言うと帆風は口笛を吹きながら嘘をついた

 

「テメェ如きが俺の相手が務まると思ったのか?身の程をわきまえろ。余程愉快な死体になりてえようだな」

 

「ありがとうございます!わたくしにとってその言葉…ご褒美です♪」

 

垣根がペストマスクを被りながらそう告げる、それを聞いて帆風はぐるぐるメガネに日ノ本鉢巻をつけてありがとうございますと叫ぶ。その時カブトムシとなった垣根の背中から白いトンボが現れる。そのトンボは「おひらき」と書かれた紙を帆風に渡す

 

「ダダー☆ダダー☆」

 

「ん〜〜〜〜仕方ない子だな潤子ちゃんはーーーーー」

 

やだやだと駄々を捏ねる帆風(ただしその仕草は某三面怪人)、そして垣根は仕方ないと笑う

 

「じゃあ最後でメルヘンロードを走り切ろうぜベイベー!潤子ちゃんだけ特別なんだゾ☆」

 

「そんな特別だなんて…うれ(しー)でございまーす!うれ(しー)でございまーす!」

 

「「パラレルやっちゃってーー!!!パラレルやっちゃってーーー!!!」」

 

パフパフ、ボンボン、ガンガンガン、ズンドコズンドコと派手な音を鳴らして補助輪付きの自転車は加速する…そしてそのまま自転車は崖の下へとダイブする

 

「「パラレル行っちゃうよぉぉぉ!!」」

 

その後、バキッグシャと鈍い音が二つ聞こえたがクランスとエリザリーナは無視する事にした

 

「……最近潤子先輩がぶっ壊れ始めた件について」

 

「……ああ、昔の潤子先輩は遠い遠い思い出の記憶力の中に…」

 

美琴と食蜂は今の自分達の先輩を見て、昔と悪い意味で変わってしまった悲しみで涙を流していた

 

 

「ではニコライについて説明させて頂きます」

 

包帯ぐるぐる巻きの垣根と帆風、そんな二人を全力で見ないようにしている上条達、ロシア成教の総大主教であるクランス、ロシア成教のシスター ワシリーサ、エリザリーナ独立国同盟の立役者であるエリザリーナと会議を始めていた

 

「あれ?俺達の心配誰もしないの?おかしくない?」

 

「崖から落ちたんですよ?心配してもいいと思うのですが…」

 

「「「「「「この作品はギャグだから死なないて言ってたのは誰でしたっけ?」」」」」」

 

「「」」

 

垣根と帆風が心配してよと言うが上条達はギャグだから死なないて言ってただろ、と冷たく返し二人は絶句する。何気にスカイダイビングの件で根に持っていた上条達であった

 

「私とワシリーサ、そしてサーシャがいつもの様に学園都市のTS〇TAYAでレンタルした映画を見ていた時でした」

 

「ちょっと待て、え?TS〇TAYAにレンタルしに行ったの?ロシア成教の総大主教が?」

 

「はい、ロシアにはTS〇TAYAは少ないので…学園都市ならアレイスターから貰ったカードで半額になってお得ですし」

 

総大主教からTS〇TAYAと言う単語が出るとは思わなかったからか、上条が驚くがワシリーサに「少し黙ってなさい」睨まれ上条は黙る

 

「その直後いきなり扉を破ってニコライが私達に襲って来たのです。私は術式を唱える間も無くやられてしまい、頼みの綱のワシリーサもイワン王子の術式の前に敗れサーシャも倒されてしまいました…そしてサーシャを連れ去られたのです」

 

「そして私達は本拠地から逃げ出して辛くもエリザリーナ独立国に辿り着いたて訳よ」

 

クランスとワシリーサが事の顛末を伝える、そして次にエリザリーナが口を開く

 

「調べた所、ニコライが使う術式はイワン王子が主人公として活躍する民話「イワン王子と火の鳥と灰色狼」である事が分かりました」

 

「で、その何とか王子のお話はどんな内容なんだにゃーん?」

 

「この物語はイワン王子が灰色の狼に自分の馬を喰われ、その狼が馬の代わりに王子のお供をするお話です。その狼は何度も王子に火の鳥や金のたてがみの馬を手に入れる際にそれ以外持ち帰るなど忠告するのですが王子は火の鳥の際は金の籠を、馬の際は金の轡を持ってきてしまい捕まって最初は金のたてがみを持つ馬を、馬の次はエレーナ姫を引き換えに目的の品物を渡すと言われました。ですが王子は金のたてがみの馬もエレーナ姫も、火の鳥も全て自分の物のしたかった。それで灰色狼が最初はエレーナ姫に、次は馬に変身し代わりに引き渡される事でイワン王子は火の鳥、金のたてがみの馬、エレーナ姫を得た…そして王子は彼の兄達に殺されてしまいますが灰色狼は王子の肉をついばもうとした鳥を捕まえその母鳥に死の水と命の水を持ってこいと脅し、その水をかけ王子は蘇生、兄二人を罰し王子は姫と幸せに暮らす…ざっくり言えばそんなお話です」

 

「……その王子様は随分と欲張りなんだな。だが狼は根性あるな!」

 

エリザリーナが「イワン王子と火の鳥と灰色狼」について説明すると削板は王子は欲張りだと非難し、狼はそんな王子の為に頑張って献身する根性の持ち主と褒める

 

「ニコライの術式はそんなどんな存在にも化けられる灰色狼、世界各地に伝わる火の鳥伝説…不死鳥(フェニックス)や鳳凰、不死鳥の原型たるエジプトのベンヌの要素を取り入れた火の鳥、雷の如き速さで走る金のたてがみの馬、そしてイワン王子の魔剣 サモショークを扱うものよ…はっきり言って超能力者でも苦戦しそうな魔術ね」

 

「そんなにも強ェのかよ、そのニコライてクソ野郎は」

 

「いえ…以前のニコライは……貴方達どころかエリザリーナさんにも劣るプライドだけしかない魔術師でした。それがいきなりアレだけの術式を…」

 

「つまり裏がある…何者かがニコライさんを裏から操っている。そんな事も考えられると…そう言う事ですか?」

 

ワシリーサがニコライの術式について説明し、その力は垣根達でも苦戦はするだろうと言う。それに一方通行が眉をひそめながら言うとクランスは急にニコライが力を増したのだと告げると帆風は何者かが裏で糸を引いているのではと呟く

 

「その可能性もあります、ですから油断しないでくださいね。ニコライは言って仕舞えば小物で小悪党にも満たないプライドだけが取り柄の魔術師ですが…今の力は未知数です」

 

「分かってるさ、それに俺らもいきなりこんな場所連れてこられた原因のオッさんにムカついてんだ。顔面整形するつもりでそいつをぶん殴ってやる」

 

「「「「「右に同じ」」」」」

 

「ニコライを血祭りにあげるぞー、盆踊りの準備はバッチリですかー?」

 

「何故盆踊りですの?」

 

「……血気盛んな子供達ですね」

 

クランスが決して油断しないようにと告げると上条は頷く、そしてニコライを血祭りにあげてやると全員がやる気に溢れる姿を見てエリザリーナはクスリと笑った

 

「私達も手を貸したいのだけどまだ傷が癒えてなくてね…代わりにロシア成教の魔術師を案内役として連れてって頂戴な」

 

「え?いいのかそんな事して、ここもいつニコライの部下が来るかもしれねえのに」

 

「だって貴方達ロシアの地理知らないでしょう?ここは素直に聞いてくれると嬉しいわ。と言うわけで入ってきなさいサローニャ」

 

「はーい。このサローニャちゃんをお呼びですかー?」

 

ワシリーサが案内役として自分達の仲間の魔術師を同行させると言い、手を叩きながらサローニャと呼ぶと奥から白い肌に金髪の緑色の服と膝上まである革のブーツを着用した帆風と同い年くらいの少女が入って来る

 

「はーい、初めまして学園都市ちゃんの超能力者の皆。私はサローニャ=A=イリヴィカ、気軽にサローニャちゃんて呼んでいいよ。短い間だけどよろしくちゃんね」

 

「はい、よろしくお願いしますサローニャさん」

 

帆風が笑って頭を下げるとニコッとサローニャも笑い返す

 

「じゃあ頼むわサローニャ、精々帝督ちゃん達の足を引っ張らないようにね」

 

「私が足を引っ張る前提ちゃんですか…まあ仕方ないか」

 

ワシリーサが精々足手まといにならないようにと笑うとサローニャが頷く

 

「現在ニコライが潜伏しているのはこの地点です、近くの住民を魔術を使って強引に追い出しこの建物にいるとの事です」

 

エリザリーナがそう言って何処からか地図を取り出す、そしてある地点に赤丸をつけここにニコライがいる事を教える

 

「恐らくここで何らかの魔術的な儀式を行っている筈です…しかもその触媒はサーシャ=クロイツェフ」

 

「……あいつか」

 

上条が思い出すのは自分の右手で触れてとある少女から追い出した大天使(ガブリエル)、そしてその大天使が器として宿っていた少女こそがサーシャだ

 

「この子があの御使堕しで神の力のテレズマを宿した少女…でしたよね?私はあまり詳しくは知りませんがニコライは彼女を使って神の力を召喚しようとしているのかもしれません」

 

「またあのクソ天使と戦うかもしンねェて事かよ…チッ、面倒くせェな」

 

一方通行がまたガブリエルと戦わなければならないのかと舌打ちする、そこでサローニャが手を叩く

 

「はいはいちゃん、ならさっさとそこに攻め込んでニコライ達をぶっ倒せば早いんじゃないですか?」

 

「……それだ!サローニャだったよな、お前頭いいな!」

 

「……天才、かどうかは置いておくとして…それもひとつの手ね。超能力者という核兵器以上の戦力が手元にある以上…時間を取るのが一番の無駄だものね」

 

早く潰した方がいいとサローニャが身もふたもない事を言うと削板が天才さと叫ぶ。天才かどうかはさておき、変な真似をされるよりも先に先制攻撃を仕掛けると言う点はいいかもしれないとエリザリーナは考える

 

「じゃあ話は早いな、俺らが今から速攻でニコライのクソ野郎をぶっ倒しに行く。これで決まりだ」

 

「ですわね……さっさと終わらせてロシアのお土産でも買って帰りましょう」

 

「……頼もしいわねぇ帝督ちゃん達は」

 

ワシリーサが垣根と帆風を見てそう呟く、そして垣根達が今からすぐにニコライの本拠地へ向かおうとしたその直後

 

「あ、待っててください。ロシアの寒さに耐える為に持ってきた外套とマフラー、ニット帽を着てきますので」

 

「あ、俺もダウンコート着てこよっと」

 

「は?何言ってんだよお前ら。ロシアの寒さなんてガブリエルとかと比べたら大した事ねえだろ」

 

「寒さに負けるなんて情けねェな」

 

「ふふん、寒さなんて上条さんと美琴との愛の力でアツアツで吹き飛ばしてやるんだゾ☆」

 

「もう操祈たら…///」

 

垣根と帆風は着替えに個室に入り外套やダウンコートを着る、そんな二人を見て情けないなと鼻で笑う上条達…そんな六人を見てクランスは呟いた

 

「……この先の展開が私には読めた」

 

 

そして垣根達がエリザリーナ独立国同盟から出発し、徒歩でニコライのアジトへと向かい初めて三分が経った

 

「さ、寒ィ…こ、こンなにロシアて寒いのか…!?てか右手を離せ上条ォ!反射で寒さを跳ね返せねェだろうが!」

 

「一人だけズルはさせねぇ…お前もこの寒さを味わえ!」

 

「こ、こんな極寒力なんてぇ…私達の愛の前には……ごめんなさい、やっぱりロシアの寒さには勝てなかったのぉ」

 

「だ、大丈夫よ操祈…抱き合えば…私と操祈の温もりで暖かく…なりませんよね、はい」

 

「……厚着すればよかった」

 

「根性を入れれば寒くなど……あ、やっぱり無理だ。寒いぃぃぃぃぃ!!!」

 

「……だから言ったのに」

 

案の定上条達はロシアの寒さに敗北した、垣根はだから言ったのに…と冷たい目を上条達に向ける

 

「皆さん、ロシアの寒さを舐めすぎですよ」

 

「そうだねー、ロシアの寒さちゃんを舐めたら…凍死しちゃうよ?」

 

「ロシアはとっても恐ロシア〜」

 

「「「「「「………寒っ」」」」」」

 

帆風とサローニャが呆れた様に呟き、垣根はこんな時につまらないダジャレを呟く。そんな寒過ぎるダジャレの所為で発生した吹雪が上条達を包み上条達は氷の彫刻になってしまった

 

「そんな漫画みたいに!?」

 

「安心しなさい縦ロールちゃん。こんな事もあろうかと熱々のお水ちゃんを入れたヤカンちゃんを持ってきたよ!」

 

サローニャは熱々の熱湯が入ったヤカンを上条達にかけて氷を溶かそうとする。そして氷が溶けて熱湯が直接上条達に当たる

 

「「「「「「あ、アツゥイ!!!熱い熱い熱い熱い熱い!?いややっぱり寒…て、やっぱり熱…でも寒いぃぃぃ!!?」」」」」」

 

「……なんか不安になってきましたわ」

 

「あ、潤子ちゃん冷凍みかん食べる?」

 

「何故こんなに寒い所で冷凍みかん…勿論食べます」

 

熱い、寒いと繰り返す上条達に嬉々とした顔で熱湯をかけるサローニャ、垣根と帆風はそれを眺めながら冷凍みかんを咀嚼していた

 

 

 

南は赤、西は青、東は黄、北は緑…そんな彩りのとある部屋に鎖で天井に繋がれた少女がいた…その少女を見て笑うのは中年の男…ニコライだ

 

「さあ、儀式を始めるぞ。まんまとやってきた超能力者達を皆殺しにする為に…殺戮の天使を呼び出すのだ」

 

ニコライがそう命じると部下達が何らかの呪文を唱える。その少女…サーシャの下にある魔法陣が血の様に赤く輝く。サーシャは呻き声を上げる

 

「さあ今ここに再誕せよ、神の力(ガブリエル)!貴様には我が計画を実行する駒になってもらおう!」

 

莫大な天使の力が部屋に充満する。サーシャを型として天使の力が実体化しようとサーシャを基点に収縮する。そのあまりのエネルギーにニコライは歪んだ笑みを浮かべる

 

「さあ神の力…いなミーシャ=クロイツェフよ!私の命に従うのだ!そうすれば貴様を元の座…ミカエルの力と交わった状態ではない正常な状態に戻してやろう!」

 

「………ynoucajn了vkosy解eln」

 

天使は顕現した、その天使はノイズのかかった声を出しニコライの命に従う。今ここに殺戮の天使は再びこの世に姿を現したのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




なんか最近縦ロールちゃんがぶっ壊れてる気がする…なんでだ?(作者のせいです)。まあそれでも他のメンバーよりは彼女はまともです。はっちゃけるのはていとくんが関わっている時だけですから

サローニャちゃんて可愛いと思う人は手を挙げて下さい、あの子可愛いけどもう出てこないのよね…全くかまちーは魅力あるキャラを書きまくるから困る

さて次回は等々バトル描写ありの戦闘回…になる予定です

次回もお楽しみに!


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司教の思惑

さて今回はギャグ少なめのバトルパートです(ギャグがないとは言っていない)

ニコライは原作だとかませでしたがこの作品ではそこそこやります(かませですが)。フィアンマさんに思惑見透かされて馬鹿にされて核ミサイル撃つ小物ですがとんでもないことをします(小物ですが)

重要なので二回言いましたぜ



「ここだな」

 

垣根達はニコライがいると推測される場所に辿り着く、そこには恐らくはロシアの軍事施設と思われる建物があり見張りも何人か建物周りにいた

 

「どォするていとくン、俺らなら雑魚共を一掃して中に侵入する事なンざ30秒もありゃ行けるぞ」

 

「……そうだな、様子見てたって何の役にも立たねえし、突撃あるのみか」

 

「……わたくし達て頭がいい割には脳筋思考ですわよね」

 

一方通行が見張りを倒して潜入するかと呟き垣根がそれを肯定する。帆風は超能力者は削板以外頭が良い筈なのに脳筋だな〜と苦笑いを浮かべる

 

「で、あの見張りちゃん達をどうやって倒すの?派手な事したら中の人達にバレちゃ…」

 

そう言いかけたサローニャに対し垣根が取った行動シンプルだった。翼を展開しその内の一枚を羽ばたかせる事により羽を飛ばす、音速を超える速度で放たれた羽は寸分違わず見張り達の頭にぶつかる。そう刺さるのではなくぶつかる、だ。その一撃で脳震盪を起こした見張り達は悲鳴を上げる事なく地に伏せる

 

「これでいいだろ?」

 

「……わぉ、流石ていとくんだね」

 

垣根がこれでいいかと笑い、サローニャは流石…と感心する。これで外の見張りは無力化した、そうして彼等は建物の中に侵入する。時折魔術による罠があるがそれを上条や一方通行を盾にする奥義 レベルファイブガードベントで罠を掻い潜っていく

 

「て、待てよオイ!俺らは仮面ライダーガイじゃねえンだよ!」

 

「近くにいたお前らが悪い」

 

「王蛇気取りかお前!?」

 

ガードベントにするなと叫ぶ一方通行に対し垣根は某外道ライダーのセリフをキメ顔で呟き、それに上条がツッコむ

 

「あ、今度は大岩ちゃんが転がってきたよ」

 

「出番だミコチュウ!10万ボルト!」

 

「ピカピカチュ~!て、何言わせんのよ!」

 

転がって来た大岩は美琴が放った電撃で破壊する、律儀に某電気ネズミの鳴き声を真似しながら放ち食蜂と上条はそれをボイスレコーダーで録音する

 

「ほ〜、本当にピカチュウみたいですな」

 

「因みに俺の今の手持ちはヌケニン、ソーナンス、バンギラス、ピカチュウ、ビークイン、ルカリオだぜ…因みに俺はイベルタルで潤子ちゃんがゼルネアスな」

 

「……確かにそのポケモンと皆さんのイメージがピッタリ合いますね…主に能力的な意味で」

 

ヌケニンは弱点以外の攻撃を受け付けない。ソーナンスは反射、バンギラスはビーム、ピカチュウは電撃、ビークインは子供達を操って攻撃、ルカリオは遠距離から放つ拳を放つ…等々上条達の能力と共通点が多い

 

「いや待てよ垣根、バンギラスは私も好きだから許すがなんでお前らはイベルタルとゼルネアスなんだよ」

 

「決まってるだろむぎのん、ゼルネアスの元ネタは生命の樹(セフィロト)だし天使崇拝(アストラルバディ)の能力を持つ潤子ちゃんにはピッタリだ。それに幻想的な美しさ…て意味でもピッタリだろ?」

 

「う、美しさ……//」

 

麦野の問いに垣根は生命の樹が元ネタだからだよと返す、その際に美しいと言った事から帆風が嬉しそうに顔を赤くしたのに垣根は気づかない

 

「じゃあお前がイベルタルなのは?」

 

「イベルタルの声がメガギラスだからな。トンボ=白いトンボ=俺。これ常識な」

 

「……そんな常識はないぞ帝督」

 

垣根は自分が作り出す白いトンボから超翔竜を連想し、その鳴き声とイベルタルの声が同じだからに決まってるだろと垣根がドヤ顔で言うと珍しく削板がツッコミを入れた

 

「さて…楽しいお喋りちゃんの時間はお終いみたいだね」

 

サローニャがそう言うと奥から黒いローブを纏った男女達が現れる、魔術師だと理解した垣根達は冷静に敵を見据える

 

「……かかれ!」

 

リーダーであろう男の声と共に魔術師達が垣根達に炎の、水の、雪の槍の、稲妻の魔術を放ち垣根は偶々近くにいた削板を肉壁にする事で防ぐ

 

「レベルファイブガードベント!」

 

「おい!」

 

削板はガードベントするなと叫ぶが彼の強靭な肉体は雑魚共の魔術如きでは傷一つつかなかった、そして魔術師達の魔術を削板を盾にしたまま防ぎ切ると麦野が飛び出し原子崩しを魔術師達の足元に放ち魔術師達はそれを慌てて避ける、その隙に彼女は回し蹴りや顔面にパンチを叩き込んでいく

 

「げぼぉ!?」

 

「がぁ!?」

 

「ぐぎぃ…!」

 

壁や床に激突して意識を手放していく魔術師達、基本魔術師はアックアや神裂達の様な肉体戦を行う魔術師ではない限り身体を鍛えない。そんな彼らが麦野に敵うわけがなくワンパンで沈んでいく、本当なら原子崩しで消し炭にできるが人を殺す気は無い為物理で倒していく麦野

 

(残る敵は三人、これなら楽勝だな)

 

麦野がそう考えてリーダー格の男魔術師に接近し拳を振るおうとした直後、麦野の右腕が唐突に真っ赤な鮮血が噴き出した

 

「……は?」

 

別に魔術師が何らかの魔術を発動したのでは無い、肉体が内側から弾けたのだ。麦野は何が起こったのか理解できなかった、そんな疑問に答える様にリーダー格の男が笑う

 

「超能力者とて能力者だ、能力者は魔術的な術式を行使すればその様な副作用に襲われる…知っているだろう?」

 

「ま、さか…テメェこれを狙って…」

 

「まさか我々魔術師がお前達と言う脅威に何の対策もしないと思っていたのか?時代とは常に変わる者なのだ」

 

発動する魔術は何でもいい、指先から淡い光を放つ、そんな役に立たない術式でもいい。何故ならどんな魔術でも能力者が使えば先程の様な副作用が起こる…それを狙っていたのだと麦野は考え…意識が混濁する

 

「麦野さん!」

 

上条の叫びすら麦野には遠く感じた、副作用の影響で意識が朦朧とする。そのせいで演算能力が低下し目に見えるマクロな物理現象の制御を大きく乱す…これでは原子崩しによる0次元の極点による回避も行えない…そんな彼女に男は火球を形成し放とうとする

 

「まず一人…」

 

そう言って火球を放とうとした直後だった、いつの間にか接近したサローニャが何かの粉を男に振りかける。男は咄嗟にそれを右手で防ぐがサローニャの蹴りが炸裂し男が吹き飛ぶ

 

「ぐぅ!?」

 

「ふぅ…ジムちゃんに通って筋トレしてた甲斐があったにゃ。で、大丈夫おねーさん?」

 

「あ、ああ…助かった」

 

サローニャが麦野を起き上がらせながら大丈夫かどうか尋ねる。麦野はサローニャを見てこいつ意外と格闘派だったのかと驚く、それに気づいたのかサローニャがニコッと笑う

 

「私が意外と格闘できて驚いた?まあ、魔術師でも一応身体を鍛えとけば不意打ちとかに有利ちゃんだからね、鍛えて損はないよ」

 

「成る程…」

 

そんな会話をよそに蹴りを喰らった男は立ち上がり、部下の一人である女に命令する

 

「ヴォジャノーイ!そいつらを殺せ!」

 

ヴォジャノーイと呼ばれた女性は水の槍をサローニャと麦野に放つ、一方通行が二人の前に立って反射でヴォジャノーイに返そうとするが斜め後方に逸れ、七色の光に分解される

 

「チッ、魔術は反射しようにも斜め後方に何故か行っちまうンだよなァ…ま、こいつら程度なら大した問題じゃねェか」

 

「がぁっ!?」

 

一方通行はヴォジャノーイをそのままベクトル強化した足で蹴りつけ、3メートルほど吹き飛ばす。そのまま壁に激突しズルズルと床に落ちるヴォジャノーイ、それを見て男は怯えた様に後ずさるがもう一人の男に命令する

 

「おい、ルサールカ!何をボーッとしている!早くこいつらを倒せ!」

 

「は、はい!」

 

ルサールカと呼ばれた男性は呪文を唱えると彼の周囲に水球が10個程浮かび、上条に放たれる。上条は一つ目の水球を幻想殺しで防ぎ軌道を変えて9個の水球が上条へと迫るが幻想片影で光の処刑を発動、優先順位を変更して水球を防ぐ

 

「な…や、やっぱり無理ですデュラハン!私には彼らを抑える事が出来ない!」

 

「チッ、使えん奴め……なら俺の術式で!」

 

デュラハンという名前、もしくはコードネームを持つ魔術師は何らかの黒い霧を掌から発生させる。麦野が先程の反撃とばかりに原子崩しを放とうとしたその瞬間、背後にいたルサールカから水球を喰らいデュラハンは床に倒れる

 

「な、ルサールカ…?」

 

「はぁい☆ご苦労様なんだゾ」

 

自分の部下の名前を呟いてデュラハンは意識を手放す、ルサールカの瞳には星が宿り食蜂の心理掌握で操られている事が分かる

 

「さあて、残った貴方には何処にニコライがいるか教えてもらおうかしらぁ」

 

「ハイ、食蜂様」

 

(…全員洗脳ちゃんしとけばよかったんじゃね?て、物凄く言いたいけど…言っちゃダメだよな〜)

 

リモコンを向けながら食蜂が呟くと恭しくルサールカが頭を下げる、サローニャは最初から心理掌握使ってればよかったじゃん。と、内心で思った

 

「コチラデゴザイマス」

 

「隠し扉……ね、自分だけ隠れる気満々じゃねえか」

 

廊下の道を少し進んだ先でルサールカが壁のある部分に触れる、そして魔術的記号をなぞると壁の一部分が空気に溶ける様に消えていく

 

「さて、この人はもう用済みねぇ、「気絶昏倒(カテゴリ030)」」

 

食蜂はリモコンのボタンを押してルサールカを昏睡させる、そしてそのまま放置した後隠し扉野崎にあった隠し通路を降り始める

 

「隠し通路か…ドラクエとか思い出すな!」

 

「ウキウキしてンじゃねェよ削板」

 

削板が隠し通路はそそる、と目を輝かし一方通行が落ち着けとベクトルチョップを削板の脳天に喰らわす…そして通路を抜け広い部屋に出るとそこには不敵の笑みを浮かべるニコライがそこに立っていた

 

「来たか超能力者達よ、わざわざそちら側がやって来るなど好都合だ」

 

「何ラスボスみたいなセリフ言ってんだよニコライ、雑魚が強がるんじゃねえぞ」

 

「ふ、雑魚かどうかは…その目で確かめてみるんだな!」

 

ニコライがそう叫ぶと火の鳥と金のたてがみの馬が顕現する、火の鳥と金のたてがみの馬が唸りを上げて垣根達に突進し全員がそれを避ける

 

「お〜、凄く強そうだね!てな訳で、実質役立たずちゃんの私は邪魔しない様に逃げるよ!」

 

「ちょ、アンタ…!?」

 

サローニャは自分は役に立たないなと戦線を離脱、踵を返して通路へと逃げる。それを美琴が止めようとするがもう既にサローニャは通路へと入って行った

 

「まあ、あいつのレーシーの術式は森がねえと役に立たねえしな。逃げた方がいいか」

 

垣根はそう言いながら翼を羽ばたかせ羽を飛ばす、ニコライはそれを鋼の剣 サモショークで叩いて落とす。これは恐らくサモショークの自動で敵を切り裂く力だろう。更に空いている片手に水が入った容れ物を取り出す

 

「これは死の水と命の水だ。死の水は貴様らを融解しドロドロに溶かし、命の水は私をミンチにしても再生させる…お前達に私が倒せるのか?」

 

ニコライはそう言って嘲笑う、この水がある限り自分は死なない。死ぬのはお前達だと嘲笑うのだ…火の鳥は全身を燃やしながら突撃を繰り返す、それはまるで流星の様に見える

 

「く!焼き鳥が!チョロチョロすンじゃねェ!」

 

一方通行が風のベクトルを操作し暴風を吹き荒らす、火の鳥はそれを軽々と避け口を開き炎の息を放つ。当然の様に斜め後方に弾くが視界が炎で遮られる、その隙に火の鳥は麦野へと突撃し彼女は0次元の極点で回避する

 

「は、狙いが甘過ぎだよ一方通行…鳥の撃ち落とし方てのはな…こうするんだよ!」

 

拡散支援半導体(シリコンバーン)を投げてそこに原子崩しを命中させ、無数の光線を火の鳥に放つ。当然の如く火の鳥を光線は貫き火の鳥は霧散、消滅するも即座に再生してしまう

 

「再生…本当に不死鳥ね」

 

思わず美琴が呟いた一言は的を射ていた、何度倒しても復活するのだ。倒した瞬間体は火に包まれ再生する…その様は正に不死鳥の名に相応しい

 

火の鳥の相手をしている麦野と一方通行、美琴とは別に削板と上条、食蜂は神速の如き速さで駆け抜け残像しか見えない金のたてがみの馬と交戦していた。上条と食蜂では馬に追いつかないが削板は音速の二倍以上の速度で駆ける事で追いつこうとする

 

「待てぇぇぇぇぇ!!!」

 

必死に馬を追いかける削板、馬は逃げるばかりで攻撃を全くしてこない…と思わせて急に立ち止まり後脚での蹴りつけを削板に放ち削板はそれを両腕をクロスさせてガードする

 

「む!中々の威力だな!」

 

鋼すらも蹴り砕き人なら容易く肉塊にする一撃を喰らって出たセリフがこれである、馬は攻撃が防がれたとするや否や走り出して再び逃げる。だが逃げた先にいるのは削板の原石の力を幻想片影で発動し馬に追いつける速度で走っている上条だった

 

「貰った!」

 

あらゆる異能を打ち消す右手を突き出す上条、それに対し馬が取った行動はシンプル。大気を蹴って(・・)空を走る事で上条の右手から逃れた

 

「「はぁ!?」」

 

「お、あの馬も空を歩けるのか!まあ根性があれば誰でも出来るよな!」

 

驚く上条と食蜂だが削板は自分も空を歩けるからか、然程驚かずに自分も大気を蹴って馬を追いかける

 

 

「ははは、どうかね私の術式は!?私は強いだろう!」

 

死の水を噴水の様に振りまくニコライ、それを跳躍して躱す帆風に翼で防御する垣根。帆風が音速で接近してもサモショークが音速に対応し帆風の拳を防ぐ、そして帆風の動きが止まった瞬間に死の水を彼女にかけようとして垣根の座標移動で彼女を転移させ防ぐ…それの繰り返しを先程から繰り返している

 

「厄介だな…ニコライ自身は雑魚同然だがサモショークによる防御と死の水による一撃必殺級の攻撃…面倒の一言だ」

 

サモショークは攻撃ではなく防御に専念し垣根と帆風の攻撃を防ぎ、死の水による一撃は即死に繋がる…まずサモショークで攻撃を止めて死の水で一撃死を狙う…それがニコライの戦法だった

 

「どうだ私の術式は?強いだろう、厄介だろう、手も足も出ないだろう?そのままもがいて死ね」

 

ニコライはそう言って笑いながら音速以上の速さで飛んできた未元物質の羽をサモショークで叩き落とす。その隙に帆風が回し蹴りを放つが死の水が守る様に帆風とニコライの間に出現し帆風は慌てて軌道を変えてそれを避ける

 

「無駄だ!貴様らに私は倒せん!絶対にだ!ふははは!貴様らはここで死ぬのだよ!」

 

ニコライは自分の勝ちを確信して笑う、それに対し帆風と垣根は焦る事なくニコライを見つめている

 

「……なんだその目は?私の勝ちは決まっているというのに何故冷静でいられる?」

 

「……馬鹿かお前、確かにその死の水は厄介だが…それだけだろ(・・・・・・)?」

 

「ええ、その水は非常に厄介ですが…まさかその程度でわたくし達に勝ったとでも?」

 

「………何?」

 

ニコライは二人を睨む、負け惜しみにしても腹の立つ言い方にニコライは歯軋りしながらも何故こんなにも冷静なのかと疑問に思う

 

「その顔じゃあ気づいてねえみてえだな、俺達が本気じゃない(・・・・・・)て事に」

 

「……は?」

 

「そのようですわね、わたくしが天使崇拝ではなく天衣装着(ランペイジドレス)である事にも気づいていない様ですし…本当にこの方はロシア成教の偉い人なのでしょうか?」

 

「それを言うなよ潤子ちゃん、どんな組織や会社にも無能の癖に偉い立場にいる人間てのはいるんだぜ」

 

自分達が本気で無いことに気づいていないのかと言われニコライは漸く気づいた、帆風は一度も天使を降ろしていない。垣根も未元物質を覚醒するどころか魔術や多才能力すらも使ってこない…ニコライは顔を赤くする

 

「ま、さか…遊びだったと言うのか!?さっきまでの戦いは!?」

 

「逆にお前如きに本気になるとでも思ってんのか?」

 

何故ニコライ如きに本気にならないといけないと失笑する垣根、それを見てニコライがブチ切れ死の水を二人に噴射するが垣根はそれを白いカブトムシを作り出して盾代わりにして防ぐ

 

「まあ、面倒なのは事実だしな。もう終わりにするか」

 

「ですね」

 

帆風は頷くと白いカブトムシをジャンプ台にして跳躍、ニコライに向かって拳を振り上げニコライは慌てて死の水を振りまこうとするが垣根が羽を飛ばし死の水と命の水で満たされた容れ物を破壊する

 

「はあぁぁぁぁッ!」

 

帆風の拳がサモショークを砕く、ニコライは信じられないと目を見開く。そして帆風は床に着地すると回し蹴りをニコライに叩き込む

 

「ぐげぇ!?」

 

吹き飛ばされて床に激突するニコライ、肺から酸素を吐き出し苦しげに顔を歪ますニコライ

 

「ぐ、火の鳥!金のたてがみの馬!早く私を助けに来い!」

 

火の鳥と金のたてがみの馬に助けを求めるニコライ、だがその頼みの綱の火の鳥と馬は…

 

「とりゃあ!やっと捕まえたぞ!」

 

「な!?」

 

削板が馬を羽交い締めして捕まえているのを見てニコライの顔が驚愕に染まる。更に火の鳥も一方通行が風のベクトルを操り風の檻を形成しその中に火の鳥を捉え風で切断し火の鳥が再生した直後にまた切断、そして再生し切断するを何度も繰り返していた

 

「ば、馬鹿な……私の術式が」

 

「確かに厄介だったが…アウレオルスやシェリーと比べると雑魚同然だったな」

 

「ええ、と言うか比較対象がおかしい気が…」

 

ニコライは部下達よりは強かっただろう、ワシリーサやクランスを退ける程の実力があるのだから…ただ何が悪かったかといえば…超能力者に戦いを挑んだ。それが運の尽きだった、そうとしか言えない

 

「みんなお疲れちゃん!さあ観念ちゃんしてお縄につきなさいニコライ=トルストイ!」

 

「大して活躍してねー奴が美味しい所を持ってこうとすな」

 

サローニャがいつの間にか横に立っており、さも自分の手柄の様にドヤ顔し取り敢えず垣根はハリセン(未元物質製)で頭を叩いた

 

「……………フッ」

 

「?何笑って……」

 

「…………ふ、ふふふ…ははははは!」

 

ニコライは暫く呆然とした顔をしいきなり大声で笑い始める、それに驚く垣根達を無視しニコライは狂った様に笑う

 

「ふはははははは!!!馬鹿め!まさかとは思うが私がニコライ様(・・・・・)だと思っていたのか!ならば作戦は成功だな!今頃神の力が儀式を成功させている所だろう!」

 

「!?まさか……テメェは」

 

垣根は目の前の男の正体に気づいた、この男はニコライではない…そしてニコライの身体が崩れ始め灰色の毛の狼が笑みを浮かべていた

 

「……灰色狼、民話の中での能力は姫や馬、鳥に化ける力…つまり変身能力。クソ、てことはこの建物はダミーか」

 

「そうだ、と言ってもお前らが倒した部下達は私を本物のニコライ様だと思っていた様だがな。敵を欺くにはまず味方から、と日本語では言うのだろう?」

 

灰色狼は民話の中では知略に長け、主人公である王子に様々なアドバイスを与え幾度なく救ってきた智慧者。恐らくこの建物をダミーにしようと考えたのもこの灰色狼だろう

 

「……科学サイドでいう高性能なAIみたいな奴だなお前は…いやアンドロイドか?無能な主人にそこまで奉公するのは」

 

「無能か有能かは貴様らが決める事だ、私はニコライ様に生み出された単なる魔力の塊。ニコライ様の役に立つ事だけが存在理由、私の役目は時間稼ぎ…その任も終わった。殺すなら殺せ」

 

灰色狼は科学サイドで言うならば魔力で構成されたAIやアンドロイドだ。作り出した当の本人とは違い灰色狼は殺すなら殺せと何の抵抗なく潔く首を差し出す

 

「……行くぞ」

 

「トドメを刺さなくてもいいのか?遠慮は要らん。やるならやれ、私は生物ではない、単なる喋る使い魔だ。慈悲などいらぬ」

 

垣根はトドメを刺そうとせずそのまま踵を返す、灰色狼は殺せと言うが垣根はそのまま歩いて去ろうとする…上条達も最初は戸惑っていたが垣根の様に彼等も灰色狼に構わず立ち去ろうとする

 

「……ふん、情けのつもりか…私などニコライ様の魔力供給がなければ数時間と持たぬ身…それならば貴様らの様な強者に殺されたかったのだがな」

 

灰色狼は不満げに呟き犬の様に寝転がる、そんな灰色狼にサローニャがニヤリと笑って近づく

 

「へいへい、狼ちゃん。ニコライの魔力提供がないと消えちゃうて本当?」

 

「……そうだ」

 

「へぇ……なら、あの方法ちゃんが使えるかもな〜」

 

「?」

 

訝しむ灰色狼に薄く笑うサローニャ、そんな一人の一体の会話など露知らない垣根達は外に出ようと通路を歩いていた

 

「ここがダミーだったて事は…ニコライは何処にいるんだ?」

 

「さあな、だがあのワンちゃんが言ってたにはやっぱりガブリエルが関係してるみた…」

 

上条と垣根が話し合っていたその瞬間、嫌な気配を全員が感じた。全身にねったりと絡みつくような不快感のある何か…それが殺意であると気づくまで時間はかからなかった

 

「!?この気配…まさか!?」

 

急いで通路を走る上条達、建物から抜け空を見上げると朝方だった筈の空が夜空へと変わっていた…そして天空には青い氷で構成された翼を持つ天使が佇んでいた

 

「onv鏖agokt殺ynvsy!!」

 

「……ガブリエル!」

 

上条がかつて自分の右手で倒した天使の名を告げる。だがかつてと近いガブリエルの白かった身体はドス黒く変色しており目は赤く発光している…無表情だったその容貌は憎悪と怒りで染め上げているかの様で口元には牙が生えている…その姿は天使ではなく悪魔そのものだった

 

「…前と姿が変わっている?」

 

「当然だな、まあそれも全部潤子ちゃんのせいなんだけど」

 

「わ、わたくしの?」

 

美琴が姿が変わっていると驚き、垣根はそれは帆風のせいだと言うと帆風がえ?と驚く

 

「潤子ちゃんの天使崇拝は超能力でもあり魔術でもある…その実態はアレイスターが密かに行った全体論の超能力て奴だ。あいつは天界を丸ごと歪めて能力を開発した…その際に天界にいた天使達は全て悪魔になった…ほらだからガブリエルの奴潤子ちゃんおもくそ睨んでるじゃん」

 

「yuonj殺toscgl」

 

「本当ですわ…殺意しか伝わってきません」

 

天使崇拝を発現する為にアレイスターが行なった能力開発のせいで天界の天使達は全て悪魔となった。ガブリエルはロボットの様に感情を持たない筈だがその目は帆風を睨んでいる様に見えた

 

「vnagnl攻yn撃o開yxrkiklagyorjfalb始」

 

ガブリエルは水翼から氷の破片を飛ばし雨の如く降り注がせる。垣根達は自分達の能力でそれを防御、その隙にガブリエルは天使の力で構成された氷の剣を振るい帆風を切断しようとする

 

神の代理人(メタトロン)!」

 

メタトロンをその身に降ろした帆風は地面や虚空から光り輝く白い炎の杭を出現させガブリエルを串刺しにしようとする、ガブリエルはそれを音速で回避し帆風から距離を取る。逃がさないとばかりに空中から炎の槍を展開するがこの槍の攻撃範囲は最大で半径300メートル、すぐに攻撃範囲から逃れたガブリエルは天空へと舞い戻りなんらかの儀式の言葉を呟く

 

「yxvoas星v辰not座vntj戻vmy正oxt位置ykvnyev元nvh戻oz」

 

「……星辰の座標を戻し正しい位置へ、そうすれば自分達の力も元に戻る?」

 

帆風がガブリエルが言った言葉を翻訳し彼女がなんと言ったのか口に出す、その直後星空が瞬き星の位置が変わっていく…そしてガブリエルの力が上昇…いな本来の強さに戻っていく

 

「awvz完onvt了syuvu残lnv四lsy大ag天yxagxz使cdjo召uslg喚hfa詠lkt唱kto開oktllm始lw」

 

ガブリエルは歌う、ノイズのかかった言語で何らかの呪文を綴る。そして垣根達は気づく。今ガブリエルがいるのは西だ。そして北、東、南からガブリエルと同じ気配を3つ感じた

 

「scbtowt降oksy臨okty元s凶lnyb天lksy罰」

 

「znla罰vnvm罰obgoz罰okv…罰onazッa!」

 

「神jokv罰ok!我ok悪vnls魔vnokt変lety貌ynsy原ls因onrbgobjy魔lot女ykv殺za!」

 

「……ニコライの野郎…誰に入れ知恵されやがった?」

 

召喚されたのは魚を模した杖を持つ風の翼を背負いし元・天使 神の薬(ラファエル)、次に土塊の翼を広げ黒革の背表紙も厚さが1メートルはありそうな巨大な本を持った元・天使 神の火(ウリエル)、最後に紅蓮の炎の翼を持ち巨大な剣を右手に、左手に黄金の天秤を持つ元・天使 神の如き者(ミカエル)…元は大天使だった悪魔達は帆風を睨みながらこの世界に顕現した

 

「voksy四lxta大yscy属okvxvkgfn性oielt揺fblojy修okv正ln完u了ynlbjo」

 

「lky足vno不osy完obvnlxo全vny『座』kv帰ykbs還不lkigv可bl」

 

「a莫ynl大okj力ynv必ony要ynax不wvks可elksy欠kvt」

 

「障oawxoz害oeg抹殺yklkslz契onsagf約eckgl果nvntv『座』yny戻okl」

 

天使達の言葉は帆風は理解できた。内容はこうだ。四大属性の揺らぎは直したがまだ不完全で本来の『座』には及ばない、すぐに莫大な力で補充しなければならない。その前にニコライとの契約を果たし自分達を殺そうとしているのだ

 

「……ハ、上等だよクソ野郎共。天使だろゥが悪魔だろゥがどっちでも構いやしねェ」

 

「私達の邪魔をするなら消し炭にする。それが天使でもね。ただそれだけよ」

 

「俺の根性とお前らの根性…どっちが上か比べ合うか!」

 

ポキポキと腕を鳴らす一方通行、麦野、削板。三人は背中から黒い翼、翠の翼、カラフルな赤青黄の翼を出現させる。三人共本気で天使達と戦う気だ

 

「四大天使……か」

 

「…怖いんですか?」

 

「まさか、面白くなってきたなて思っただけだ」

 

垣根はそう言って笑うと未元物質を純白に輝かせる。覚醒した未元物質の翼を広げ垣根は遥か天空に制止するガブリエルを見つめる

 

「さあ、かかってこいよ天使共。学園都市が誇る超能力者の力を見せてやる」

 

「「「「bvnokvzj排onvaov除igoks」」」」

 

一方通行は神の如き者(ミカエル)へ、麦野は神の薬(ラファエル)へ、削板は神の火(ウリエル)へと飛び立ち戦いを挑む。ガブリエルには垣根と帆風が二人で挑む。今ここに天界の天使と科学の天使達が交差し聖戦の狼煙が上がったのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




四大天使降臨とか原作でもなかったエゲツない展開、ニコライはメイザースさんの下位互換て事ですね。あれ?でもメイザースさんは御使堕しと同じ純度だからこっちの方が強いのか?まあでもニコライは小物で雑魚かませだからメイザースさんの方が上

灰色狼は科学的に言えばAI、ていとくん達が偽物と気づかない本物そっくりの思考をトレースし民話通りの知恵者という厄介者。多分本物よりも大物で強い。実はかませキャラではない。オリキャラのデュラハンとルサールカですがデュラハンは皆さんご存知、ルサールカはヴォジャノーイの妻と呼ばれる精霊です。まあとあるのヴォジャノーイは女だったのでこのオリキャラのルサールカは男ですが

さあそういえば悪魔になってたな〜こいつら。と作者も忘れかけてた元・天使達…次回は天使vs科学の天使…天使と天使の激突です

次回もお楽しみに!


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四大天使と人工天使

今日大雨のせいで学校が休みなのに学校に行った馬鹿がいるらしいですよ、しかもそいつ友達とカラオケ行ったらしいですよ休みだからて…たくそいつサイテーな野郎ですね









はい、それは僕のことです、まあそんな下らない話は置いておくとして…今回は四大天使vsていとくん達です。結構無理矢理なところがありますが気にせず読んでください

後これは単なる愚痴ですが…昔感想を送ってくれた人達が最近感想を書いてくれなくて悲しい。まあ別に個人の自由だからいいんですけど…僕の作品がつまんなくなったのかな?とか思って…はっきり言いますと自分感想が来るたびやる気が増して描くのが早くなるんです(個人的主観)。無駄な話をしてすみませんでした



ロシアでは現在の時刻は午前九時過ぎ…まだ朝空が広がっている時間である。にもかかわらず夜空が広がり星が瞬いていた。明らかな異変。そんな大異変の中に一際目立つのが上空に佇む四体の天使…いや悪魔(・・)達だろう

 

「lnfsy殲oulz滅okt」

 

右手に剣を、左手に天秤を持つ炎の翼の悪魔の名は神の如き者(ミカエル)、悪魔王すらも斬り伏せる剣を持つ最強の天使

 

「ayxyzl契nvslw約oklzo果qlm」

 

孔雀の様に広がる水晶の如き氷の翼が特徴的な悪魔 神の力(ガブリエル)、伝令を司り第六感すら狂わせる伝令の天使

 

「ntogld『座』onv帰yntwqlm還yxvsoecj」

 

黒革の1メートル程の厚さと大きさを誇る本を持つ今にも崩れそうな土塊の翼を広げた悪魔 神の火(ウリエル)、エデンの園の門を守る予言の天使

 

「xvld魔onv女ov最ont優vxv先ly抹ykt殺yk」

 

魚を模した杖を持ち背中には暴風の翼が生えた悪魔 神の薬(ラファエル)、悪魔を追い払う癒しの天使

 

「ふ、ふはは…凄い。凄いぞ……あの十字教最強の天使四体を私が…このニコライ=トルストイが意のままに操っているのか!」

 

とある雪原にニコライは立っていた。本当の拠点からでは上手く命令がしにくいと上里の仲間である絵恋から教わり仕方なしに外に出てきたニコライだが天気達の力を見て欲望に塗れた俗物的な笑みを浮かべていた。仮にも十字教徒であろう者がこの様な笑みをしてもいいのかと思うほどの笑みでニコライは口を開く

 

「感無量だ…これで私は無敵!上里翔流やその仲間達、イギリス清教の後ろ盾などもういらない!私と言う個人そのものが組織の様な存在なのだから!」

 

彼は慢心していた、四大天使を手に入れた自分は無敵だと。上里も上里勢力もイギリス清教もローラ=スチュワートの協力も必要ない。四大天使だけで自分は学園都市やイギリス清教、ローマ正教に並ぶ組織の枠組みになったのだからと

 

「これで私はロシア成教を…いや!世界すらも牛耳れる!」

 

ニコライは自分には誰も勝てないと笑った。そして同時刻。彼の四大天使(オモチャ)に超能力者達は戦いを始めた

 

 

「onv死ynv!」

 

「ハ、俺を舐めてンのか?」

 

ミカエルが剣を振るう、それを翼でガードする一方通行。黒い翼が棍棒の様に振り落とされそれをミカエルが天秤を掲げ天秤は右への傾く。翼が不自然に軌道を曲げ右へと逸れてしまい攻撃はミカエルには当たらなかった

 

「ァ?攻撃を逸らしやがったのか?」

 

天秤には攻撃を逸らす力があるらしい、そう判断した一方通行は天秤を警戒しつつもミカエルの右手の剣を危険視する。あれは自分の反射でも逸らし切れず自分の身体が切断される可能性すら感じる…あの剣は黒い翼で防ぐか回避しなければと判断する

 

「lnt戒oazuq!」

 

ミカエルがノイズのかかった声を上げると一方通行に向かって音速で飛来し剣で斬り裂こうとする、一方通行は黒い翼を盾にして防御。もう一つの翼でミカエルを攻撃するが天秤により軌道を逸らされる

 

「cno悪okt排aorl除oamdfe!」

 

一方通行から距離を取ってミカエルは剣に炎を宿す。その炎はミカエルの象徴たる元素 火。あらゆる存在概念を焼き尽くす炎である。それを剣に宿し一方通行へと一閃、盾代わりになっていた黒い翼が剣に斬られるも一方通行は剣を回避する。そして雪原が縦に切り裂かれ行きを一瞬で蒸発させロシアの深い雪の大地は汚らしい土の大地へと変わった

 

「……どンなけ威力高ェンだよ」

 

剣は大地へと当たっていない、単なる剣を振るった斬撃波と余波の炎で大地が裂け雪が溶けたのだ…その恐るべき威力に流石の一方通行も冷や汗を流す。だがこの程度で諦めるわけがない

 

「イイねえ、やり甲斐があるってもンだ。雑魚じゃ話になンねェからよ」

 

「blrzk死lnty!」

 

「ギャハハ、学園都市にいた頃じゃ俺に攻撃を当てられる奴なンざていとくンと上条だけかと思ってたが…世界てのは本当に広いなァ…だけどよ」

 

翼を広げ突進して来るミカエルに対し一方通行は右手を向ける、そしてゆっくりと右手を下へ下げるとミカエルの動きがガクン止まり下へと落ちようとしていた。慌てて一方通行の正体不明のベクトルから逃れるミカエルを見て一方通行は口を開く

 

「お前が俺に勝てるとでも思ってンのか?」

 

そう言って明らかな挑発の笑みを浮かべる一方通行、それを見てミカエルは剣を握りしめ一方通行を八つ裂きにする為に接近し一方通行は笑って黒い翼を横に振るう

 

 

「すごいパーンチ!」

 

「jynak防lmw御ugl」

 

削板は空中で凄いパーンチを放ちそれをウリエルは光の壁で防ぐ。そしてウリエルは自分の周囲に光の球を形成しそこから光線を放つ。ファンネルの如く空中を自在に動く光球から放たれる無数の光線、それを削板は赤青黄色のカラフルな爆発を背負って防ぐ

 

「okd森urblmfk羅lksy」

 

そして今度は荒れ狂う暴風が、天より落ちる落雷が、降り注ぐ雹の雨が削板を狙う。これに対し削板はその身一つで全ての攻撃を受ける

 

「効かーーん!!!」

 

落雷が直撃し感電しても、雹の雨が削板の身体を殴打しても、暴風が削板の皮膚を裂いても削板は顔色一つ変えない

 

「根性があればなんでも出来る!血が出ても止まるし拳はもっと強くなる!これが俺の能力…いや根性だぁぁぁ!!!」

 

彼の能力である原石は自分だけの現実を根性の思い込みで強化している。ウリエルは本をペラペラとめくり削板の心に攻撃を仕掛け廃人にしようとするが…

 

「む?精神系の力か?だがそんな小細工は俺には通用せんぞ!」

 

「……lks馬onlsy鹿lxs?」

 

その攻撃を削板は難なく跳ね除けてしまった、流石のウリエルも目を見開いて驚く。だが攻撃の手を緩める事はなく絶えず光球から光線が幾度なく発射される、それを削板は拳に蜃気楼の様な謎の波動を拳に纏う磁力戦線(オーロラガード)で地面へと叩き落としていく

 

「これが根性だ、根性があればどんな攻撃も効かねえしどんなに硬くても砕ける。それが根性て奴だ。お前にはそれがあんのか?なら見せてみろ…俺とお前の根性…どっちが上かな」

 

「ynlty消nlbyyrt」

 

「て、おい!?そこは真っ向から戦う流れだろ!逃げるなこの根性なしが!」

 

ウリエルは付き合ってられないとばかりに上空へと飛翔、それを根性なしと叫ぶがウリエルは気にせず上へと上がり本があるページを開き天に巨大な雷が形成される

 

「……プラズマか?」

 

これぞエデンの園の門を守る炎の剣、それは稲妻である。侵入する者を滅ぼす滅の剣は雷光の如き速さで削板へと放たれる。削板はおろかロシアのほぼ全土を焦土と化す一撃だ。それに対し削板がとった行動は…

 

「電気か…美琴や潤子も電気を使うよな…ん?まてよ?二人が使えるのなら俺も使えるかも知れねえな」

 

自分も電気を扱えるのでは?と考えた削板は自らの手を合わせそこから電気を帯びる。それを見て彼は笑った

 

「よっしゃあ…やれば出来んじゃねえか。やっぱ根性は偉大だな」

 

空気中の粒子が励起してプラズマ状態にして削板の拳がそれを纏う、本人も初めての試しだが上手くいった様だ

 

「行くぜ……スーパーウルトラメガエレクトロオーバードライヴマグネチックライトニングすごいパーンチ!!」

 

プラズマを纏った拳がウリエルの放ったプラズマと激突。光が瞬き空気が破裂し爆音が空に響く、プラズマ同士の激突により衝撃破が発生しウリエルもその爆風を喰らう…そしてウリエルが油断した瞬間削板が音速の二倍で迫り拳をウリエルの顔面に叩き込む

 

「oblblsガlnlgljoァjovwg!?」

 

地面へと激突するウリエル、四枚の翼を広げてウリエルを見下ろす削板。ウリエルは怒りの咆哮を上げて土塊の翼を乱暴に羽ばたかせ空へと舞い戻っていく

 

 

暴風の翼を纏った悪魔 ラファエルは風の刃を飛ばし麦野の原子崩しと撃ち合っていた。原子崩しを暴風の壁で防ぎ、自身の風の羽は原子崩しの壁で防御される。ラファエルは杖を振るうと台風の如き風圧と全てを薙ぎ払う暴風が放たれ麦野は0次元の極点で回避する

 

「tkobi滅obles殺nvgl」

 

「チッ、何言ってんのか全然わかんねえんだよ木偶人形!」

 

万を超える原子崩しが全方位からラファエルを狙う、ラファエルの視界全てを閃光で覆い尽くし逃げ道を塞ぐ。だがラファエルは焦る事なく杖を振るいそよ風が周囲一帯に吹く…それだけで原子崩しが霧散していく

 

(風で原子崩しを…電子を乱した?)

 

麦野が今の現象の事を考えていると再びラファエルが杖を振るう、そして麦野の近くに心地よい風が吹き目の前のラファエルの姿がいきなり消えて彼女の背後にラファエルが現れる

 

「な!?」

 

杖を振るい下ろすラファエルに対し麦野は原子崩しの剣でそれを防ぐ、今のは風が吹く場所に転移する術式か何かだろう

 

「vlazbu風yk」

 

「天使の術式てやつか…いや今は悪魔…面倒だから天使でいいか」

 

風が吹く、荒れ狂う鎌鼬が麦野の身体を裂こうと迫る。麦野は0次元の極点で移転してそれを避け翠光の翼がラファエルを焼き切ろうと真横に振り下ろされる。それに対しラファエルは自らの杖でそこ翼を受け止める

 

「ynvok愚royk愚vnobvy愚ynv」

 

「笑いやがって…余裕なのも今の内だかんな」

 

馬鹿にする様な笑みを浮かべるラファエル、麦野はそれに怒りつつも自分の翼を受け止める杖に驚いていた

 

「あの杖…天使の武器なだけあって簡単には壊せねえ様だな…」

 

あの杖はそう簡単には壊せない、それを本能で理解した麦野は原子崩しを数百も放ちラファエルはそれを風の盾でガード。ラファエルは杖の先から暴風を発生させ麦野はそれを原子崩しの壁で防ぐ

 

「キリがねえな。たく、厄介な奴を呼びやがったなニコライてクソ野郎は…しかもこいつと親父強さの奴が四体…頭痛くなってきた」

 

麦野は一体だけでもこの強さなのに同じくらい強い奴が後三体もいるのかと頭を抱える

 

「……ま、考えても仕方ねえ。さっさと倒して次に行くか」

 

「ynlno愚bynslsok行goblvr」

 

 

「……前の御使堕しとは比べ物にならない純度の天使の力(テレズマ)で構成されたガブリエル達とまともに戦えるとかマジか」

 

「まあ、皆さん翼持ちですからね…それに垣根さんが虚数学区を展開している影響でほんの僅かですが弱体化しているのも要因の一つかと」

 

そんな会話をしながら二人はガブリエルが放った数百数千の氷の刃を翼で、拳で弾いている。ガブリエルは背中の氷の翼を意図的に分解し氷の破片を持って二人を排除しようとするが二人はそれをもろともしない

 

「nvo範ylk定lnb下on準vmn了ono命令名(コマンド)『一掃』ーーー投lnv下」

 

夜空が瞬く、半径一キロの領域に降り注ぐ数千万の破壊の礫。火の矢の豪雨が大地を焼き尽くさんばかりに落ちる、神話を再現するその一撃は普通ならば防げない…そう普通(・・)ならば…だが

 

「邪魔だ!」

 

「消えてください!」

 

未元物質の翼が何百メートルも伸び、音速以上の速さで火の矢に刺突を繰り返し一突きで消滅させていく。帆風が宿したメタトロンの光の杭が火の矢と激突し対消滅を起こす。それにより神戮は全て防がれてしまう

 

「benvsv第njgo二lvs破。mek撃leo準備ln開lrt始ln。『一掃』再ynl投lm下nlで三十秒」

 

「チッ、面倒くせえ野郎だ…おい当麻。お前らはニコライをとっ捕まえてこい」

 

「え?でも居場所が…」

 

「それならもう特定済みだ…あいつはここからそう遠くない場所にいる」

 

再び神戮を落とそうとするガブリエルにうんざりした顔をする垣根、垣根はここの近くにニコライがいると呟いて上条達に捕まえさせにいく

 

「……私達は手を貸さなくていいの?」

 

「ハ、俺を舐めてないかミコっちゃん?俺は学園都市の第一位だぞ?」

 

「それもそうねぇ、でも潤子先輩は気をつけてね」

 

「お気遣い痛み入りますわ女王」

 

垣根は三人に探索魔術で特定したニコライの居場所を教えると三人はニコライを捕まえに走り出す、それを見届けた垣根と帆風はガブリエルが再び放った火の矢の迎撃を開始する

 

 

 

床が…いや部屋全体が揺れる。地上(・・)で四大天使達が暴れている所為でこの建物も大きく揺れグラスに淹れたお茶を飲んでいた上里は天井を見上げすぐに手元のパソコンに目を移した

 

「……苦戦している様だな。まあ彼の手腕では当然だが」

 

「そうどすなぁ、全くニコライはんは獲冴はんや宛那はん達以上に使えん駒やわぁ」

 

手を組んだ相手(ニコライ)に散々な言い方をする上里を咎める事なく絵恋はそれに同調する。その際に学園都市に捕まった仲間の事も馬鹿にするが上里は気に留めない

 

「そろそろ潮時とちゃいます?この要塞を地上に浮上させた方が…」

 

「いやまだ早い…ニコライが倒されてからコレを地上へと出そう」

 

「上里はんがそう言うなら…ウチは構いまへんよ」

 

絵恋はニッコリと笑う、そして上里の部屋から出て行く…そして扉が閉まる音がした後また扉が開く音がし上里が振り向くとそこには彼の義妹が立っていた

 

「……調子はどうかなお兄ちゃん」

 

去鳴(サロメ)か…何の用だ?」

 

「いや特に、お兄ちゃんの様子を見に来ただけだよ」

 

「そうか、なら出て行ってくれ。ぼくは今こう見えても忙しいんだ。どうやって学園都市を倒すか考えてるところでね」

 

「……分かったよ」

 

去鳴に割と冷たい態度で部屋から出て行く様に言って上里はパソコンの画面に映る天使と超能力者の戦闘に目を移す、そんな上里(義兄)に怒りもせず去鳴は部屋から出て扉を閉め…そして扉の前で呟いた

 

「……勘違い馬鹿お兄ちゃんめ」

 

 

ニコライは不満げだった、自分の最強にして最高の手駒である四大天使達が超能力者達を倒せず苦戦している事が腹立たしかった

 

「くそ!早く倒せ!お前達は主が創生した最強の天使達なのだろう!早くあのガキ共を殺せ!」

 

ニコライは手に持った赤青黄緑の四色の杖を振るってガブリエル達に指示を送る。だが天使達の攻撃を防ぐ超能力者達を見てニコライは歯軋りする

 

「なんだこの醜態は!?聖書に名を記されし天使達があんな餓鬼に…!?上里め!不良品をつかまされたのか?!」

 

自分の思い通りにならないとなればそれをすぐに他人(上里)の所為にするニコライ、そんな醜い大人の前に彼らは現れる

 

「お前がニコライ=トルストイか」

 

「!?だ、誰だ!?」

 

そこに立っていたのは上条と美琴、食蜂。三人はニコライを睨みながらゆっくりと足を進めニコライに近づく

 

「このオッさんが黒幕……はぁ、なんかやる気が失せたわ」

 

「同感、ワンちゃんが化けてた方がまだ威厳力があって黒幕感があったけど…本物は小物なのねぇ」

 

「だ、黙っていればいい気になって…許さんぞ!来い!ミカエル!ガブリエル!ラファエル!ウリエル!こいつらを殺せ!」

 

美琴と食蜂がこんな奴が黒幕かとため息を吐く、それにキレたニコライは杖を掲げて四大天使をここに向かわせ上条達を殺そうとするが…天使達は来ない

 

「な!?」

 

「当然だろ、一方通行達と今そいつらは戦ってるんだぞ…来れるわけねえじゃねえか」

 

「ぐぬぬ…使えん木偶人形めがぁ!」

 

ニコライは先程まで最強と呼んでいた天使達を木偶人形扱いし、それを聞いた上条はもうお前の言葉など聞きたくないと拳を握って走り出す

 

「!ま、待て!私はニコライ=トルストイだぞ!?ロシア成教の司教でこの世界を統べる王になる…」

 

ニコライの言葉の途中で上条は顔面に拳を叩き込む、ニコライの歯が何本か折れて地面に落ちる。彼の唇の端が切れて口から血が流れる。情けない声を上げて雪に倒れるニコライ、彼が手放した杖が雪に落ちる

 

「……これか」

 

上条が右手で杖に触れガラスが砕けた様な音と共に杖は色褪せ砕け散った。これでニコライの命令を天使達は聞かない…安堵した上条達だがニコライはニヤリと笑った

 

「馬鹿め、それが破壊されれば天使達は言う事を聞かず世界を滅茶苦茶にするぞ。貴様達の所為で世界が滅ぶのだ!」

 

「……滅びねえよ」

 

「……なに?」

 

ニコライの妄言を上条は切り捨てる、そんな事はないと断言する上条になにを…とニコライが歪んだ顔を向ける

 

「垣根達は天使なんかに負けないからさ」

 

 

ミカエルの剣が一方通行の首を狙って横薙ぎに振るわれる。それを一方通行は翼で防御しながら片方の翼から羽を飛ばしミカエルは天秤でそれをガードする

 

「onlチッsync!」

 

「くそ…渋とい奴だな」

 

一方通行もミカエルも実力は互角…いやミカエルの方が若干上回っていた、その為決着がつかない…ラファエルと麦野、削板とウリエルも似たり寄ったりだった

 

「だぁ!しつこ過ぎるだろ!もう台所の悪魔以上のしつこさだな、お前ら天使てのは!」

 

「lky辱onvy許ykl」

 

「超すごいパーンチ!」

 

「ynlo渋ykl!」

 

麦野の極太の原子崩しがラファエルへと放たれラファエルは杖を振るい暴嵐を巻き起こす、万物を穿つ光線(レーザー)と全てを吹き飛ばす大嵐(ストーム)の激突、二つの攻撃は衝撃波を巻き起こしながらぶつかり…対消滅を起こす。削板はウリエルに通常よりもはるかに高威力な念動砲弾(アタッククラッシュ)を放ちウリエルはそれを本のあるページを開きそのページを削板へと向けそこから不可視の太陽光戦を発射、念動砲弾と相殺させる

 

「ykt『一掃』nl再okv投lkg下lky」

 

降り注ぐ滅びの雨、その礫を破壊するべく帆風はメタトロンの杭を虚空から出現させ破壊し垣根は未元物質の羽を飛ばしたり烈風や白いカブトムシ達の砲撃で滅びの雨からロシアの大地を守る

 

「以前よりも強い上に前より仲間が少ないから少しキツイな…まあ潤子ちゃんがいるから平気だけど」

 

「そう言ってくれると嬉しいですわ」

 

垣根の虚数学区の展開で弱体化させても未だに猛威を振るうガブリエルに流石の垣根と帆風も冷や汗を流す、それに御使堕しで出現した時よりも遥かに強くなっている…恐らくこの夜空…つまりガブリエル達に有利な星空になっている事以外にも前は四大元素の歪みの影響でガブリエルはミカエルのフォーマットと混ざり合っていた所為で弱体化していた…だが今は理由は分からないがガブリエルは純粋な状態…何の混ざりがない水の天使の力で構成されていた

 

「……こりゃニコライじゃなくて誰かの差し金だな。誰かがガブリエル達のフォーマットを一時的に元に戻したみてえだな」

 

「成る程……純粋な状態に戻ったから強くなったのですね…」

 

「ああ、歪みがなくなったから本来の強さに戻った…てのもあるがこの中で一番強いのはガブリエルだろうな。何せ自分の属性強化の為に夜にしてんだからな」

 

「成る程…つまりガブリエルに関しては夜だから強くなっている……と言う事ですね」

 

ニコライではない誰かがガブリエル達の歪みを正し本来の『座』に戻した。垣根は心底余計な事をしたもんだと苛立った顔をする

 

「せめて妖精化みたいに弱体化出来ればいいんだけどな…あいつらの天使の力の総量を減らしたりとか」

 

「……総量を……減らす?」

 

「ああ、俺の虚数学区でも力が全然減らねえからもう少し弱体化すればアー君が楽だからな」

 

「……弱体化、総量を減らす…そうですわ、アレ(・・)を使えば……」

 

垣根が弱体化出来ればいいのにと呟くと帆風は少し思考する、そしていい案を思いついたと言わんばかりに笑う、彼女は大きく息を吸い込みメタトロンを解除し新たな天使を降ろす…その天使の名は神の力(ガブリエル)

 

「lnl天使vky力xvnoy!?!」

 

「ーーーー!?」

 

天使は物質的な肉体は持たない、天使とは天使の力の塊だ。そのガブリエルを構成する天使の力が一気に薄らいだ。そう帆風の天使崇拝は天使そのものをその身に降ろす天使専用の神降ろし。ガブリエルの天使の力をその身に降ろす事など容易、水属性の「天使の力(テレズマ)」が、その源であるガブリエルの総量が半分以上も帆風へと移った

 

「……成る程、ざっくり言えばアックアの真似か」

 

原作において神の右席であるアックアは自分の力全てを失う事でその身にガブリエルの半分以上の天使の力を詰め込んだ…それでも精一杯だったのに彼女は滝の様に汗をかくだけで済んでいる…それを見て垣根は笑った

 

「……凄えよ、俺でもそんな事出来ねえてのに…」

 

天使崇拝だからこそできた事、かつて神の力の身体に魂が入り込んだ彼女だから出来た事だろう…降ろす対象が顕現し抵抗しているからか通常の半分程度しか天使の力を発揮出来ないが…天体制御(アストロインハンド)を使うのなら充分だ

 

「これで…星の位置を……ズラします!」

 

天体制御を発動しガブリエルが自分の属性強化の為に夜空にした天空を元の朝空に戻してしまう、その為折角強化した属性が弱まりガブリエルの大威力を誇る大規模破壊術式 神戮も発動できなくなってしまった

 

「yuvo力lsonoがsag!?」

 

「kafg抜nvxz馬vno!?」

 

「wuojf理解vnlsybvo能kremj!?」

 

だがそれだけではない、火、水、風、土、四属性はそれぞれ力の端を担っていると同時に他の全ての属性に影響を与える…つまり水を司るガブリエルでも火や風を扱う事は理論上可能なのだ。そしてガブリエルは月を司る天使、月とは古代では魔術の源とされた、故にガブリエルは天使の中でも魔術に長けている、だからミカエル達の召喚が可能だったのだ。そしてミカエル達の属性強化も自分を強化する事で彼らの強化も担っていた…だがその強化も星空が変わった事で終わっている。ミカエル達は先程よりも総量の二割ほどの天使の力を喪失してしまった

 

「……理屈は分かンねえがチャンスみたいだな」

 

「そう見たいだにゃーん」

 

「正々堂々じゃねえのが残念だが…こっちも負けられないからな」

 

三人は今がチャンスだと理解する、天使達はこれしきで自分達が負けるものかと自分達の武器を一方通行達に向け攻撃を放とうとする

 

「「「vwole殲nvt滅ykvy!」」」

 

力が弱まった?だからどうした。彼らは四大天使だ、いくら弱体化したとはいえ並みの魔術師なら抗えず国をも滅ぼせる戦闘力を誇る、いくら弱まったとしても天使達は負けない。特にミカエルは天使の中でも最強の強さを誇る…ミカエルは悪魔の王すら断ち切る剣を掲げ一方通行を斬り伏せようとし…

 

神の如き者(ミカエル)

 

「nvxl何nlktvysl!?」

 

ミカエルの力が大幅に減った、帆風が天使崇拝でミカエルの天使の力を宿したからだ。ミカエルの全てを斬り伏せる剣の力が目に見えて弱まっていく…驚愕に染まるミカエルだが彼の胴体に黒い翼が直撃する

 

「kvuvzガjncafgァxvysl!?」

 

「おィ、俺を無視していいのか天使様?」

 

ミカエルは地上へと叩き落とされる、それを笑いながら見下ろす一方通行…それはまるで天使が悪魔を天空から見下ろしている様にミカエルは思えた

 

「nvsy屈vnljt辱koxsy絶tlysy許yuv!!」

 

ミカエルは炎の翼を広げ音速を超えた速度で一方通行へと接近し剣を振るう、それに対し一方通行も黒い翼を全力で振るいミカエルの剣とぶつけようとする。両者ともその速度は音速を超えていた、そしてミカエルの剣と黒い棍棒の様な羽が激突し…ミカエルの剣は叩き折れた

 

「nlulytluty!?」

 

「あばよ」

 

ミカエルは二つに裂かれた、腹部が抉り取られた様に消滅し剣の残骸と共に地上へと落ちていく…それは彼が倒した光を掲げる者(ルシフェル)が地獄へと落ちた場面を再現しているかの様だった。そしてミカエルは光の粒子となって虚空へと解けていった

 

「……ま、帆風がいなけりゃ負けてたかもな…そんなけお前は強かったて事だ。悪く思うなよ」

 

 

「vxvydag倒vulz」

 

「ハッ……ガンマン気取りか」

 

ラファエルは自身の周囲にいくつもの渦巻く風を携える。それは全てを斬り裂き穿つ風の弾丸だ。それをガンマンの様に構えてラファエルは麦野を狙う。麦野は自分の周囲に普通よりも威力を高めた数十発の原子崩しを携える…上空に風が吹く…ガンマンの如く構える二人…そして自身の敵めがけてラファエルは風の弾丸を、麦野は原子崩しを放つ

 

「「…………」」

 

風が吹く、二人は攻撃を放った後も自分の敵を見据え睨み合う…だがそれも長くは続かない

 

「………ッ!」

 

「bcvoニィynvt」

 

麦野の服が裂けそこから赤いシミが広がり始める…自分の攻撃が当たったのだとラファエルは確信しニヤリと笑いトドメを刺そうとし…バラバラと彼の四肢が地上へと落下した

 

「………nvnなvnv?」

 

「……終わりだな」

 

何が起こったとラファエルが考えた時には時すでに遅し、数万を超える原子崩しが全方位から放たれラファエルはその光に飲み込まれ消えていった

 

「私は相手に鉄砲を向けられても相手より早く原子崩しを撃つ自信がある…まあ早撃ちで私に勝てるとは思わない事にゃーん」

 

麦野はそう戯けてもういないラファエルに告げた

 

 

念動砲弾がウリエルへと放たれる、ウリエルは光の壁を作り攻撃から身を守りつつ火の玉を削板へと放つ。削板はそれをその身で耐えつつ拳を握りしめ念動砲弾を放つ

 

「すごいパーンチ!」

 

「oklwクッoj!」

 

削板はウリエルの攻撃を根性で能力を高めて防御する、そして根性を入れて念動砲弾の威力を上げる。ウリエルは距離を保ちながら本のページをめくり様々な魔術を放つ、だが削板には何のダメージもない

 

「遠くから攻撃してばっかりだな!お前には根性がないのか!?」

 

「kyxt舐kvzj!」

 

ウリエルは本を消し自分の近距離最強の武器である炎の聖剣を手に取る、そして土塊の翼を広げ削板へと音速以上の速度で迫る

 

「お、自分から向かってくるか…よし!ならこれからは(けん)(けん)のぶつかり合いだな!」

 

ウリエルの炎の聖剣と削板の謎の蜃気楼を纏った拳が激突する。袈裟斬りの様に削板に斬りかかる、それを拳で弾く削板。今度は唐竹割りの様に両手で剣を握り破壊力を高めて放つ、それを白刃取りする削板

 

「やるな!さっきは根性なしと言って悪かった!お前は中々根性があるな!」

 

「nvkv巫nvg山bvt戯klt!」

 

削板はウリエルを褒めるがウリエルには舐めているようにしか見えない、力を入れ削板を脳天から真っ二つにしたいウリエルだが削板は聖剣を両手で挟んだままウリエルの腹部に蹴りを入れる

 

「すごいキック!」

 

「nvxvjグnvt!?」

 

吹き飛ばされるもウリエルは土塊の翼を広げ空中で静止する、そして削板は挟んだままのウリエルの聖剣を投げ捨て拳を構える

 

「これが最後の一撃だ…耐えられるもんなら耐えてみやがれ」

 

「nvuvt舐uvkt舐nyksァntァkァァkvj!」

 

ウリエルの怒りの叫びが空に響く、翼を広げ突進するウリエル…だがその動きを削板は見切っていた

 

「ハイパーエキセントリックウルトラグレートギガエクストリーム…もっかいハイパーぁぁぁすごいパーンチ!!!」

 

削板の目の前にまで接近したウリエルを襲ったのは凄まじいほどの正体不明のエネルギーを纏った削板の拳だった。その拳はウリエルの顔面へと放たれ頭部を柔らかい木の実を潰す様にグシャと潰しその余波で雲が衝撃で吹き飛ばされる

 

「……俺の勝ちだ」

 

ピクピクとウリエルの身体が動き腕が削板の体へと伸び指先が動く…だが光の粒子となってウリエルは完全に消滅し削板は自分の勝ちだと笑った

 

 

「馬kvgv鹿gfdb……神kvy如kyvj者nt…神kvsvnso薬ksy…神krys火nvj…悪夢nvy」

 

ガブリエルは自分と同格の力を持つミカエル達がやられた事が信じられなかった。これは悪い夢だと言いたげに消滅した仲間がいた場所に視線を動かす

 

「……さて俺らも片付けますか」

 

「ですわね」

 

「!?」

 

だがガブリエルは忘れていた、自分も化け物を相手にしているのだと。白い天使の様な翼を広げる垣根にガブリエルと同じ天使を降ろす帆風…更にはミカエル達を倒した超能力者まで来てしまってはガブリエルに勝ち目はない…そう判断したガブリエルは氷の翼を広げ空へと飛翔する

 

「逃げる気か」

 

ガブリエルは自我のないロボットの様なものだ、故に形成不利となれば逃げる。ただ逃げるだけではない。南極の氷を全て溶かし自分の属性強化に使う…そう考えているのだ。そうすれば垣根達にも勝てると信じて…その自分の行いのせいで世界が滅びようがガブリエルの知った事ではない。ガブリエルの目的は自分本来の『座』に戻る事、その為なら何をしてもいい…そう御使堕しの様に…

 

「ま、逃す気はねえけどな…行くぞ潤子ちゃん」

 

「ええ……神の王国(サンダルフォン)

 

だが二人がガブリエルを逃がす訳がない。垣根の未元物質の翼が垣根から分離し帆風の右腕へと巻きつき翼の先端が重なり合い槍の様な形状となる。そして帆風はサンダルフォンを降ろす。以前病理を倒したあの技をガブリエルに放つ気だ。天使の力と未元物質、ことなるエネルギーが混じり合い融合し凄まじいエネルギーが誕生する

 

「nvvtなuglvtyr……」

 

「終わりです」

 

莫大なエネルギーの塊である純白の槍がガブリエルを貫いた。直後槍から純白の光がガブリエルを飲み込みガブリエルの身体を崩壊させていく

 

「kihrjまた…人kvso負nvt……」

 

その一言と共にガブリエルは消滅、元の位相 へと消え去った

 

「……これで終わりです」

 

「……だな」

 

一方通行と削板、麦野が雪原へと降り立ち翼を消す、垣根も敵がいなくなったからか力を抜き帆風もホッと息を吐き出す

 

「これで後はニコライのクソ野郎をとっ捕まえるだけだな」

 

 

 

上条達が侵入した軍事施設…正確にはその地下にある建物(・・)にいた上里はドローンから送られてくる映像を絵恋のパソコンで眺めていたがガブリエル達が倒されると上里はパソコンを閉じ椅子から立ち上がる

 

「……絵恋」

 

「はいな」

 

「もうニコライには用はない……要塞を浮上(・・)させろ」

 

絵恋にそう言った後上里は扉を開けてどこかに行こうとする、それを絵恋が首を傾げて声をかける

 

「何処へ行く気どす?」

 

ゴミ掃除(・・・・)

 

そう言って上里は地上へと向かう、絵恋は軽く手を振って上里を見送る…そんな絵恋と上里を去鳴は複雑な顔で見ていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




案外呆気なかったなガブリエル達…これは彼らが弱いのではなく作者の実力不足です。本当にすみません…でも一応弱体化させましたし、ミカエルなんか特に弱体化させられてた…つまりそうでもしないと苦戦しちゃうからなんですよね…流石は十字教の天使、特にミカエルはクソ強いのでこうでもしないと倒せないから仕方ないね

ガブリエルが他の天使達を召喚できたのは自分の属性を強化する夜に変えたからと召喚に有利な星の配置にした事、そして上里達の儀式でガブリエルから別のフォーマット(ミカエルのテレズマ)が取り除かれていたことが理由です。劇中では説明し切れませんでしたのでここで解説しました

さて次回は上里が動き出す?ロシア編の最後をお楽しみに


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お土産は慎重に選びましょう

御使堕し・再編はこれにて終わりです。今回は前半がシリアス、後半がギャグです。前半は上里の動きに注目して後半で笑ってください

後今日温泉で四年ぶりにある友達と再会したんですよ。すっかり印象変わってて名前とか忘れて変な名前言っちゃった、いやぁ四年も見ないと変わるもんですなー



「ば、馬鹿な!?四大天使達が……ま、負けた!?」

 

ニコライは唖然とした顔で上空を見上げる、彼が散々最強の駒と自慢し、垣根達に苦戦していれば役立たずと罵った四大天使(オモチャ)は垣根達により完全にこの世界から消滅したのだった

 

「あ、あり得ない……聖書に記されし天使が…それも普通の天使ではない十字教最強にして崇高な天使達…あのミカエルやガブリエルが…」

 

ガクッと雪に膝をつけニコライは白い顔になる、自分の切り札は全滅した。これでは自分はロシア成教に裏切り者として捕まり処刑される…勿論今までの地位を失う…その事実に気づいた時ニコライは頭を抱えて叫ぶ

 

「く、そ……くそ、くそ、くそ、くそ、くそ…クソがァ!!何処だ!?何処で間違えた!?このニコライ=トルストイの人生は完璧だった筈!?何処で躓いたというのだぁぁぁぁ!?」

 

「……これが全てを失った者の末路…こうはなりたくはないわね」

 

「同感なんだゾ…こんな大人には絶対になりたくわないわぁ」

 

頭を掻き毟っては毛を毟り取り、充血した目をギョロギョロと忙しなく動かすニコライ、彼は完全に発狂していた。それを見て美琴と食蜂がドン引きする

 

「ニコライ、アンタの幻想は終わった。大人しく投降しろ」

 

「……投、降?投降だと?このニコライ=トルストイがか?馬鹿を言うなよ小僧。私はロシア成教の司教だ…まだきっと私を欲しがる輩がいる筈…私はそれを探して旅立とうではないか…」

 

「……完全にイかれてるわね」

 

ニコライはギョロリと血走った目を上条に向け口元からネチョとした唾液を垂らす…その目は完全にイかれていた。もう彼の思考は平常ではない

 

「ふひ、ふひひひ…今度こそ私は世界を牛耳る王になってやる…いや王など生温い…神だ、私は新世界の神になってやる…」

 

「……発狂力し過ぎて厨二になっちゃてるんじゃないかしらぁ」

 

訳のわからないことを口走るニコライを見て食蜂が半歩下がる

 

「悪いけどそんな野望ちゃんもここまでだよ」

 

「……?」

 

ニコライが向けた視線の先にいたのはサローニャだ。彼女は背後に灰色狼を従えながらニッコリとした顔で笑う

 

「灰色狼ではないか…そうだ、お前がいたな…早くそいつらを殺せ」

 

「…………」

 

「あー、それは無理ちゃんだね。もう狼ちゃんのコントロール権はサローニャちゃんにあるんだなー」

 

「……なに?」

 

ニコライが灰色狼の存在を思い出し殺せと命令するが灰色狼は動かない、主人の命を聞いてもだ。サローニャはニッコリと笑ってニコライと上条達の疑問に答える

 

「私の術式は森の妖精「レーシー」。ここの近くには私が管理する森があるからね。そこに狼ちゃんを連れてってギャンプルで勝って貴方の支配権を無理やり私に移行させた…そう言うこと」

 

「……盗人め」

 

「盗人でも構わないよん、こんないい使い魔は滅多に手に入らないしね。変身から策謀まで役に立つ…こんないい使い魔が手に入るなら泥棒ちゃんだってするよ。それに自分の意志を貫くのが魔術師ちゃんてもんでしょ」

 

彼女の術式は「森の支配者であり、そこに住むすべての動物達の王」であるというレーシーの伝承を基にした彼女が支配する森で「酸素と二酸化炭素のやりとり」をすれば支配下におけるという術式だ。ただし本来は昆虫や爬虫類など、脳の構造が単純な生物の制御を行うだけだが例外的にギャンブルで勝てば強制力を持って支配下に置くことは可能なのだ、それを利用して灰色狼を自分の使い魔に彼女はしたのだ

 

「さてロシア成教司教 ニコライ=トルストイ。貴方を裏切りの罪で捕縛するよ」

 

「ふん、小娘如きが私に勝てると思うか?」

 

「ふふふ、それはどうかな?今のサローニャちゃんには狼ちゃんがいるし上条ちゃんや美琴ちゃん、操祈ちゃんもいるんだよ?」

 

「「「人をあてにするな」」」

 

「……はぁ」

 

サローニャはカッコよく言いつつも結局は上条達を脅しにし三人にツッコまれ灰色狼はため息を吐く、ニコライは歯軋りしながら後退するが誰もニコライを逃がすつもりはない…せめてもの足掻きとニコライが走ろうとした時

 

「やあ、また会ったね上条当麻」

 

「「「!?」」」

 

「!お、おお!助けてくれ上里翔流(・・・・)!」

 

ザクザクと雪を踏みしめる音が聞こえ、ニコライの背後から上里がゆっくりと歩いて現れる。上条達は驚愕に顔を染めニコライは味方が来たと安堵する

 

「上、里…翔流!!」

 

上条の右手に宿る能力 幻想殺し(イマジンブレイカー)、それの対になる能力 理想送り(ワールドリジェクター)を右手に宿す少年 上里翔流。上条は上里を睨む、上里の顔からは何の感情の気配も掴めない。そんな彼にニコライは歩み寄って彼の背後に隠れるように上里の後ろに移動する

 

「さあどうするお前達!上里が来た以上お前らの勝ち目はないぞ!」

 

つい先程までは自分にはもういらないと叫んでいた上里に情けなく頼り縋るニコライ、上里はそんなニコライは無感情な冷たい目で見つめると彼の肩に右手(・・)を置く

 

「…………ぇ」

 

「もうきみは用済みだニコライ=トルストイ。今まで協力してくれて感謝する。お礼と言ってはなんだが…殺さないであげるよ」

 

なにが起こっているのかさっぱり分からないとでも言いたげな顔でニコライが上里に顔を向ける、上条はこれからなにが起こるのか理解し何か叫ぼうとし…その前に上里が口を開いた

 

新たな天地を望むか(・・・・・・・・・)?」

 

瞬間ニコライは上里の右手に吸い込まれるように右手に彼の左半身が飲み込まれた

 

「あ"あ"あ"あ"あ"あ"ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「「「「!?」」」」

 

ニコライが絶叫する、指先からニコライの身体は吸い込まれていきその光景に上条達が目を剥いた。そしてニコライは上条達へと助けを求める

 

「た、助けてくれ!い、嫌だ!新天地などという得体の知れない場所に行きたくない!頼む助けてくれ!何でもする!反省もするしお前達が望むものを与えてやる!だから助けてくれ!頼む!私はこんなところで……」

 

喚きながら絶叫を上げる、左半身が理想送りに飲み込まれ右半身も右手に吸い込まれていく…ニコライは涙を流しながら右手を上条達へと必死に伸ばす、上条はそれを見て一瞬戸惑いそれでもニコライに手を伸ばそうとした瞬間にニコライは完全に右手に飲み込まれこの世界から消滅。事実上の死を迎えた

 

「………」

 

上条がそれを見て唖然とし…怒りの目を上里に向ける、確かにニコライはクズで外道で悪党だ。だからと言って上里の行為は許せなかった。上里はその目線に気づき上条に目を合わせる

 

「……なんで彼を新天地に送った、て顔をしているね上条当麻」

 

「当たり前だ!」

 

「ああ、実に偽善者らしい考えだよ。そんな事を考える暇があるならこの世界の何の役にも立たない迷惑しか巻き起こさない魔神を殺そうと思ってもいいのに…やはり学園都市は魔神の所為で腐敗しているな……やはり滅ぼした方がいいか」

 

上里はニコライを消した事に怒るよりも魔神(オティヌス)を殺す事を考えた方がいいのにと冷たく呟く、そして学園都市はオティヌスの所為で腐敗していると考えやはり学園都市は消し去った方がいいと告げる

 

「……やっぱりお前は俺の敵だよ上里翔流」

 

「残念だ、ぼくと同じ魔神の被害者であるきみとなら分かり合えると思ったのに…本当に残念だ…このハーレム肯定野郎」

 

上条はやはりこの男とは分かり合えないと理解し右手を握りしめる、上里も上条を睨みつけて肩を鳴らす…一発触発な空気の中、上条が拳を握りしめ走ろうとしたその瞬間。大地が振動した

 

「!?」

 

ロシアの大地がひび割れる、ゴッ!!という轟音が増したから響き渡る。上条達の体は宙に浮いていた…いな、違う。彼らが立っていた雪の大地が地盤を大きく崩す様に持ち上がったのだ。重力が一瞬だけ感じなくなった、そして彼らが立っていた場所が崖のように切り立った

 

「「「「!?」」」」

 

不味いと感じた四人は崖のように切り離され上空へと浮かぼうとする大地から飛び降り、地面から切り離されなかった部分へと着地する…上里はそんな上条達を見下ろしていた

 

「また会おう」

 

そう言って上里の姿は大地が空へと近づくほど見えなくなっていく…上条は上里に何か言おうと口を開けるがその時にはもう上里の姿は見えなくなっていた

 

「くそ…………ん?」

 

上条が悔しそうに唇を噛む…そして空から紙が落ちてきたのに気づき上条はその上条を掴み取る

 

「………これは?」

 

それは何かしらの文字が書かれた羊皮紙(・・・)だった、上条には何も読めないが魔術に関わるものだとは分かり後で垣根に聞こうと懐にしまった…その羊皮紙が後に役立つ事など露知らずに

 

 

 

「!あ、あれは……!?」

 

振動は垣根達にも伝わっていた、そして雪の大地から出現したそれ(・・)を見て唖然とする

 

「……こんなもんを隠してやがったのか」

 

それは縦横の長さがおよそ15kmに及ぶ巨大な十字架型の形状に中央だけ円形の形をした巨大な建築物だった。恐らくはロシアの地下鉄なども取り込んでいるであろうその浮上する要塞を見て垣根達はゆっくりと空へと浮かび上がる様を見ている事しか出来なかった

 

「……嘘、だろ……!ラピュタは本当にあったんだ!」

 

「こんな時に冗談を言わないでください!」

 

「そんな怒らなくても……まあジョークはこれくらいにして…あの建物…ベツレヘムの星やラジオゾンデ要塞みたいなもんか?」

 

垣根が某天空の城に出てくる少年のセリフを帆風に言うと帆風は冗談を言う場合ではないと怒る、それを垣根が悪い悪いと軽く謝り…そして真剣な目で浮上要塞を見入る。それを見た垣根は原作におけるフィアンマのベツレヘムの星やグレムリンのラジオゾンデ要塞に酷似していると思った

 

「あの野郎……あれで戦争でも起こす気か」

 

だがベツレヘムの星とラジオゾンデ要塞と決定的に違うのは武装の有無だ。ベツレヘムの星とラジオゾンデ要塞は武装がほぼ一切ゼロだったの対しアレには大砲やらキャノン砲やらの武装が見える…あれは完全に戦争向けの要塞なのだと垣根は理解する

 

「……空飛ぶ要塞ね…まあガブリエルとかを見た後だと……迫力不足に見えるのよね」

 

「いや建物が空を飛ぶのも充分凄いと思うぞ!」

 

「ま、アレ見て驚かねェ俺らがおかしいンだけどな」

 

そんな会話を続けている間にも要塞は浮上し続ける…恐らくは上空3000メートルを超えただろう。だがまだ浮上を続ける…恐らく大気圏スレスレまで

 

「……もう手が出せねえな」

 

もう未元物質でも攻撃が届かない距離に要塞が行ってしまうと垣根はそう呟いた、あの高度ではどんな攻撃も当たらない…唯一の例外は神戮なのだろうがそれを使う余力が今の帆風にはない

 

「……ニコライの裏にいたのは上里だったのか、ならあのガブリエル達から別のフォーマットを取り除いたのも、ニコライにガブリエルを召喚する術を教えたのも上里…いやコロンゾンか」

 

上里が裏にいたと分かりこの騒動を巻き起こしたのは誰かと垣根は理解する、彼の脳裏には椅子にもたれかけて微笑む金髪の女の姿が目に浮かんだ

 

「どうするていとくン、あの要塞を追いかけるのか、それともこのままエリザリーナ独立国に帰るか…どっちだ?」

 

「……帰るしかねえだろうな。その前に当麻達を迎えに行くか…あいつらニコライは捕まえてるよな?」

 

一方通行の問いに垣根は帰るしかないと答える、そして踵を返し上条達の所へ行こうと歩み始める

 

「………………」

 

帆風は無言で空に浮かぶ巨大な要塞を見上げる、帆風はあの建物がいずれ自分達の前にまた現れると予感していた…暫く要塞を見つめ……垣根達の後を追ってその場を後にした

 

 

 

エリザリーナ独立国に戻った垣根達はニコライがこの世界から消え新天地へと上里の手で追放された事、上里が巨大な要塞を地下で建設していた事をエリザリーナ達に話した

 

「…そうか、ニコライは上里達がロシアの地下でそれを建設している時から繋がっていたのか」

 

「馬鹿な奴ね…あんな連中と組めば切り捨てられるて分かりきってる筈なのに…本当に馬鹿な奴」

 

クランスとワシリーサは裏切ったとはいえ無残な最後を迎えたニコライにほんの少し同情した様な顔を一瞬見せた。だがその顔も一瞬で消え失せ口を開かせる

 

「恐らくその浮上要塞に未だに捕まったままのサーシャが捕らわれているのでしょう」

 

「多分そうね、て事は上里達はまたガブリエルを…もしくは四大天使をまた召喚するかもしれないわね」

 

「……マジかよ、いい加減にしろよ」

 

未だに敵の手にサーシャが捕らわれたままであるとクランスが告げ、エリザリーナが恐らくまたガブリエルを召喚する気だろうと推測すると麦野がいい加減にしろとうんざりした顔になる

 

「ですが皆さんのお陰でニコライの暴走を止める事が出来ました…その事に深く感謝しています」

 

クランスはそう言うと頭を垣根達へと下げる

 

「貴方方がいなければロシア成教は…ひいてはロシアがどうなっていたか分かりません…本当にありがとうございます」

 

「いいて、俺らは当然の事をしたまでだからな」

 

クランスが再度お礼を言うと垣根はそんな事しなくていいと笑う。それを聞いて頭を上げたクランスは笑みを浮かべたまま口を開く

 

「また何か浮上要塞について分かった事がありましたら学園都市に連絡します…」

 

「ああ、頼むぜクランス」

 

垣根達は席から立ち上がってクランス達に背を向ける、そんな彼等の背をクランスは見つめていた。そして垣根達は建物の外に出る

 

「さて…どうやって帰る気なんだ?」

 

「ああ、アレ(・・)だよ」

 

上条がどうやって学園都市に帰るのかと尋ねると垣根がある場所を指で指す…そこにあったのは行きも利用したあの悪魔の乗り物…超音速旅客機がいつの間にかエリザリーナ独立国にあった

 

「「「「「「………」」」」」」

 

「何処へ行く気だ」

 

上条達は逃げる様に超音速旅客機から遠ざかろうと走り出す、だが垣根は未元物質で作り出した白いクワガタムシを六体製造し、その顎で上条達を拘束する

 

「離せ!俺らはもう二度とあんな地獄の乗り物にはならないんだ!」

 

「あんなのに乗るくらいなら海を泳いで学園都市に帰った方がマシよ!」

 

全員が必死に超音速旅客機に乗るまいと暴れる、だがクワガタムシ達の拘束は緩まず上条達は席に無理やり座らせられる

 

「マジかよ……またあの地獄を体感するのかよ…」

 

「最悪だぜクソ……てかていとくン達は?」

 

麦野がまたこの地獄を体感するのかと明らかに嫌そうな顔をし一方通行も毒を吐く、だが一方通行は垣根と帆風が超音速旅客機に乗っていないことに気がつく…そして一方通行の肩に白いカブトムシがちょこんと乗った

 

『一方通行さんの疑問に私が変わってご説明します』

 

「おお、05じゃねェか」

 

カブトムシ05は上条の右手に触れられて反射が使えない一方通行の肩で羽をパタパタさせながら、何故垣根達がいないのかその疑問に答える

 

『マスターと帆風さんは今ロシアの首都 モスクワでお土産を買いに行っています』

 

「「「「「「何してんのあいつら!?」」」」」」

 

モスクワにお土産を買いに行ったと05が言うと上条達ははぁ!?と叫ぶ、何自分達だけロシア満喫する気だゴラァとレベル5特有の顔芸を披露しながらギリギリと歯軋りする

 

「あいつゥ……!!」

 

「ブ・チ・コ・ロ・シ・か・く・て・い・ね」

 

「潤子先輩ぃ…今度会ったら無理やりスイーツを食べさせて太らせてやるんだゾ☆」

 

「……嫌がらせに垣根さん家に爆竹投げ込むか」

 

「いいな、俺も手伝うぜ美琴」

 

「……俺もアリサの為に土産が買いたかったのに」

 

削板以外の五人は垣根と帆風に怒りのボルテージを上げていく…徳に麦野、食蜂、美琴はヒロインとしてその顔はどうよ?と言えるぐらいの般若の如き顔になっている、多分これを原作の一方通行が見たらちびる

 

『あ、後マスターから伝言があります。聞きますか?』

 

「……なんだよ」

 

05が伝言を聞くかと尋ね上条が頷く、そしてバタバタと羽を動かして05が伝言を伝えた

 

『あ、超音速旅客機のスピードをアレイスターに頼んで通常の五倍にしてるからな。ジェットコースター以上のスリリングをていとくんがお前らにお届け♪楽しんでゆっくりしていってね!!!』

 

「「「「「「死ねぇぇぇ!!!」」」」」」

 

その巫山戯た伝言に上条達がブチ切れだ。上条達は激怒した。必ずかの常識が通用しない暴君を八つ裂きにして肉塊にして100回ほどぶち殺さなければと…だが無常かな、彼らがそれを実行する前に超音速旅客機が離陸した、凄まじいGが彼らを襲う

 

「「「「「「うごげぇぇぇぇぇ!!!?か、垣根ェェ…!!絶対にいつかぶっ殺すぅ!!」」」」」」

 

その一言と共に気を失い白目を剥く六人…05は垣根から貰った昆虫ゼリーをムシャムシャと食べていた

 

 

 

翌日、垣根は垣根家へと帰宅した

 

「ただいマーライオン〜」

 

「おかえりてーとく、お土産買ってきた?」

 

「お帰りなさい兄さん…それと何ですかそのマーライオンて……さよなライオンですか?」

 

垣根は台所で寛いでいた風斬とフロイラインがおかえりと笑いかける、垣根はフロイラインの頭を撫でながらお土産を風斬に手渡す

 

「ほら買ってきたぞ、ロシア名物のマカデミアナッツだ」

 

「いやそれハワイ!兄さんが行ってきたのはロシアだよね!?」

 

「冗談だよ冗談…本当はこれだ」

 

垣根がマカデミアナッツを渡すと風斬はこれはハワイの名物だとツッコむ。垣根は冗談だと笑い次の土産を渡す

 

「ほらロシア名物 白い恋人だ」

 

「それ北海道!確かに雪国だけども!」

 

今度は白い恋人を出して風斬にそれは北海道!とツッコミを入れられる、そして次に垣根が取り出したのは

 

「ほれ、味噌カツにひつまぶし、ういろう、天むすだ」

 

「それ全部名古屋だよ!」

 

「はぁ!?名古屋じゃねえよ全部三重県発祥だよ!何間違えてんだコラ!三重県の人達に謝れよ!」

 

「なんでキレてるの!?」

 

風斬が味噌カツにひつまぶし、天むす、ういろうを名古屋の名物だと叫ぶ。すると垣根は発祥は三重県だと本気でブチギレてしまう

 

「いいか!?名古屋はな三重県から色んなもんを奪ってそれをさも「自分の所の名物なんです〜」て思ったんだよ!あとナ○シマスパーランドも三重の施設なのに愛知の施設だと思われてんだぞ!なのに三重県人は起こらねえんだ!優しいね三重県人!」

 

「み、三重県に詳しいんだね……」

 

「いいか、今度間違えたら三重県人の代わりに成敗してやるからな。覚えとけよ」

 

垣根はそう言って本当のロシアの土産 マトリョーシカを机に置くと二階へと上がっていく…それを横目に風斬はマトリョーシカを手に取る

 

「……やっぱりロシアと言えばマトリョーシカだよね。でも…ピロシキが良かったな」

 

「私はビーフストロガノフ…ビーフ!ストロ!ガノフ!」

 

風斬は食べれる物が良かったな…と少し残念そうにういろうを食べる。フロイラインはビーフ!ストロ!ガノフ!と大声で叫んでいた

 

「さて…後でゴーグル君達にも同じ事をするとして…上里はあの浮上要塞で学園都市に攻めてくる事間違いなしだ…どうすっかな」

 

垣根は自分の部屋のベッドに寝転がりながらそう呟く、そして暇潰しに携帯ゲームでもやろうかと携帯を取り出し即座に投げ捨てた

 

「はぁ〜、そんな気分じゃねえや……ま、俺は難しい事考えるの苦手だし……ゴーグル君達に土産渡すついでにカップリング写真撮るか」

 

土産を持って垣根は窓を開けて翼を広げ飛翔、ゴーグル達をからかう為に学園都市の空へと飛び立った

 

 

「はい入鹿さん、お土産の東京ナナナです」

 

「ナナナ!?何ですかそれバナナじゃなくて!?てかそれロシアの土産じゃないですよね絶対!いやいただきますけど!」

 

入鹿はロシアの土産と言って東京ナナナを出してくる帆風にツッコミを入れる。朝からキレキレのツッコミである

 

「冗談ですよ、本当のお土産は水晶ドクロですわ」

 

「いやそれオーパーツ!?」

 

何処からか水晶ドクロを取り出した帆風、それを見て何故オーパーツ!?とツッコむ入鹿

 

「嘘ですわ、これが本当のお土産…ロシアの雪…あ、溶けてましたわ」

 

「もう単なる水でしょコレ!いりませんよ!」

 

「ではこの水で後で紅茶を淹れますね」

 

「淹れんな!」

 

ロシアの雪を出そうとするが当然の事ながら雪は溶けており単なる水と化していた。帆風はそれで紅茶を作ろうとし入鹿が全力でそれを止める

 

「あ〜帆風さんが段々おかしくなっている!これも全部垣根さんの所為です!ああもう!不幸だぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

その頃の上条と一方通行

 

「ヒコウキコワイヨ、ヒコウキコワイヨ、ヒコウキコワイヨ、ヒコウキコワイヨ、ヒコウキコワイヨ、ヒコウキコワイヨ、ヒコウキコワイヨ」

 

「あー、お空綺麗だねー。あははは、あはははは」

 

「……あかん、完全に壊れてるわ」

 

「叩いたら戻るわよ、きっと」

 

「カミやん達は昔の家電じゃないんだぜい」

 

「だ、大丈夫ですか上条ちゃん!?それに一方通行ちゃんも!?い、一体何があったのですー?!」

 

ガクガクと震えている上条に遠い目で空を見ている一方通行、完全にヤバイ人である。それを見て教室中の生徒達は合掌し小萌先生はガチで病院に連れて行こうかと考えていた

 

 

「…………」

 

「む、麦野の目が完全にイっちゃってる!?」

 

「ど、どうしたんですか麦野!?」

 

「ロシアで何があったんだ!?」

 

「そんなむぎのを私は心配してる」

 

「にゃあ、でも麦野のお姉ちゃんは大体こんな感じじゃない?」

 

「「「いや違うだろ!」」」

 

「フレメア、それはないよ」

 

呆然とシャケを生で食べる麦野を見てフレンダ達が大慌てする、フレメアはいつもこんな感じだと呟くが四人は全力で否定する

 

「お、麦野達じゃないか。こんな所で何してんだ?」

 

「よお、浜面じゃねえか。ゴミ掃除か?」

 

(((ふ、復活した!?)))

 

(はまずらを見たらトラウマを克服するむぎのを私は凄いと思う)

 

(にゃあ)

 

駒場や半蔵と共にゴミ拾いをしていた浜面が偶然麦野達の前に現れる、それだけで麦野は正気に戻り笑顔を浜面に向ける。それを見てフレンダと絹旗、黒夜がコケた

 

 

「おのれ超音速旅客機め!あんなGに負けない為に今の内に鍛えておく!」

 

「いい心構えだ第七位!だが俺と俺の子分三十人+矢文を背中に乗せたまま腕立て伏せが出来るとは流石だな!!」

 

「「「パネェす削板さん!」」」

 

「……もうツッコまないぞ」

 

削板はいつの日か超音速旅客機にリベンジする為に身体を鍛えていた、その特訓にノリノリで協力するモツ鍋こと横須賀とスキルアウト達。そんな彼らを冷たい目で見る矢文

 

「よし!このまま学園都市を三十週だぁぁ!」

 

「頑張れ第七位!お前が強くなればなるほど倒しがいがあるんだからな!」

 

「「「パネェす削板さん!」」」

 

「……あ〜、今日も空は青いなぁ」

 

 

常盤台の美琴と黒子の部屋にて、美琴と食蜂は布団を被ってペットの上で丸くなっていた

 

「……お姉様達、そろそろ外に出たらどうですの?もう授業が始まっていますのよ」

 

「い、嫌よ!お外怖い!またGが襲いかかってくるんだわ!私達押し潰されて死んじゃうのよ!どうせ死ぬなら操祈と先輩の三人で死ぬわ!先輩が来るまで私達はここから一歩も動かない!」

 

「ああ…思い出したくもないわぁ…あのG…ああ、嫌よあんなのもう二度と嫌よ……あんな思いは二度とごめんよぉぉ!!」

 

「……何があったんですの」

 

黒子が先輩二人を外に連れ出そうとするが二人は全力でそれを断る、無理に布団を取ろうとしたらフシャー!と猫の様な威嚇をするので手に負えなかった

 

「サボりをしている馬鹿な生徒二人はここか」

 

「り、寮監様!?」

 

「……全く、お前達と来たら…早く外に出ろ」

 

「「い、嫌です!お外は怖いし!寮監はもっと怖いし…どうせ彼氏がいる私達を虐めるんでしょ!?姑みたいに!」

 

「(ピギィ)」

 

(あ、地雷踏みましたの)

 

寮監が入って来て二人を起こそうとするが二人は起きない、それどころか寮監の逆鱗に触れてしまった

 

「誰が○○歳過ぎた売れ残りだ!」

 

「「ねぼし!?」」

 

超高速で布団を取り、そして二人の首を刈り取る寮監。二人は白目をむいて床に倒れ寮監に引きずられていった…黒子は二人に合掌した

 

 

 

「……さて。時は来た……理想送り(ワールドリジェクター)はもう止まらないぞ?どうする人間(アレイスター)、そして垣根帝督(イレギュラー)よ」

 

イギリス清教の最大主教(アークビショップ)ローラ=スチュワート…いな大悪魔 コロンゾンはランベスの宮にあるジェット水流マッサージ風呂の小型ユニットバスに足をつけながら鼻歌交じりにそう呟いた

 

「まあ、私としてはどんな結果でも良いのだけれど…楽しい方が好みでありける…おっと、好みだな」

 

悪魔はそう言って口元を歪めながらクスクスと笑う、全てはコロンゾンの掌の上。ピチャピチャと足をお湯から出してお湯を飛ばす

 

「ふふふ、理想送りが勝つか、はたまた学園都市が勝つか…どちらに転んでも……面白いのは変わりはない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




さあ…いよいよ新章からは理想送り…上里君との決戦です。イメージは原作におけるフィアンマ戦ですね。まあその前にギャグ挟みますけど…頑張って書かなきゃ

因みに三重県のギャグのくだりですが…味噌カツ、天むす、ひつまぶし、ういろうはマジで三重県が発注です。なんで知ってるのかて?僕三重県出身ですから、そしてクロちゃんが「ビーフ!ストロ!ガノフ!」て叫んだのを書いて完全に僕の中でのクロちゃんの声優が花守ゆみりさんになってしまった(結城友奈は勇者であるの三ノ輪銀ちゃんの声の人)

そして次回は新章 『理想送り』編です


『ぼく達は魔神に復讐する、ぼく達にはそうする権利はある。だから邪魔するなら君達も敵だ』
理想送り(ワールドリジェクター)』ーーーー幻想殺し(イマジンブレイカー)と対になる右手を持つ男 上里翔流(かみさとかける)

次回はギャグを挟み、新章「理想送り」編へと突入します。ぜひ期待して待っていてくださいね!

次回もお楽しみに!


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第八章 理想送り 編
同人誌には時々神作品がある


今回はギャグです。テーマはズバリ「同人誌」、とあるみたいな有名作品だと同人誌の数は多いですよね。特に有名なのは「いちゃいちゃレールガン」でしょうか?あの作品はマジで神ってます

色々と暴走して書いた、でも後悔はしてない。反省はしてます。では今回も思い切り笑ってくれれば嬉しいです



心理定規(メジャーハート)は今日 大覇星歳が行われた会場の一つであるサッカースタジアムで行われる同人誌即売会に段ボール箱を積んだ荷車を押しながらやって来た

 

「今年もやって来たわよ、そうこの学園都市のビッグイベントである コミックコロセウム…略してコミムに!」

 

「「いや略し方」」

 

コミックコロセウム、略してコミム。その略し方はどうなのかとゴーグルこと誉望と猟虎がツッコミを入れた

 

「悪いわね皆、私の趣味につき合わせちゃって」

 

「いつもの事っスからね」

 

「でも何で殆ど会ったこともない私達にも頼んだんだよ?」

 

「だって貴方達に頼めば手伝ってくれそうだって思ったんだもの」

 

心理定規が手伝いとして呼んだのは誉望達だけでなくインデックス、ステイル、神裂、黒子、風斬、三馬鹿弟子も手伝いに呼ばれていた

 

「で、コミムでしたか?確か同人誌なるものを売るようですが…同人誌とはなんですか?」

 

「同人誌て言うのはね、今ではアニメやら漫画の二次創作を書いてある本…てイメージがあるけど本当は文学や俳句やらのオリジナル創作を書いていた本のことを言うの。それが廃れた後はアニメとか漫画の二次創作、果てはオリジナルを書かれた本の事を同人誌、て言うようになったのよ」

 

神裂が同人誌とは何かと尋ねると心理定規は分かりやすく説明する、それを聞いてへぇと魔術師組は関心を持ったように心理定規の話を聞いていた

 

「因みに私が書いた本は当然カップリング本、そして値段は……0円、つまりタダよ」

 

「え?タダなの?お金とか取るんじゃないの?」

 

「いいえ、取らないわ。そもそも同人誌ていうのは非営利的の強い少部数の商業誌の事を同人誌(リトル・マガジン)で呼ぶの。ならお金を取る意味があるのかしら?私はただ多くの人にこの本を読んでもらってカップリングの尊さを知ってもらいたいだけ、お金なんてどうでもいいわ」

 

「……君は聖女か何かかな?」

 

心理定規はこの本は全てタダだと言うとインデックスが目をパチクリさせる、心理定規は自分はカップリングの尊さを世の中に知らしめたいだけでお金はどうでもいいと真顔で言うとステイルは聖女か何かかとツッコむ

 

「ですがその考えは素晴らしいです。この本一冊一冊を作るのにお金を沢山使ったのでしょうに…一切の見返りを求めないとは」

 

「因みに今回のラインナップは大人気の当麻×美琴×操祈の同人誌「いちゃいちゃイマジンメンタルレールガン」に一方通行×打ち止めの「君の心にラストレータ」 麦野×浜面の「超能力者でも恋がしたい」 土御門兄妹の「血の繋がった兄妹同士の恋て萌えるよね」…そして最新のカップリングである削板×アリサの「根性番長の秘密の文通」 垣根×帆風の「メルヘンですが何か?」 エツァリ×スネークの「ストーカーだけど愛さえあれば関係ないよね!」 ヴィリアム×ヴィリアンの「王女がヤンデレで私の貞操を狙っているのである」 インデックス×ステイルの「君の為に僕は生きて死ぬ」 一方通行×エステルの「師匠との禁断の恋」 誉望×猟虎の「ゴーグル」 青ピ×蜜蟻の「ボクの本名は藍花悦やで」…そしてイギリスのとある人物に頼まれた騎士団長×神裂の「騎士団長は告らせたい」てタイトルの同人誌を何千部も持ってきたわ」

 

『多いな!』

 

神裂が素直にその考えは立派だと言い全員が頷きかけた直後、心理定規が持ってきた本のタイトルを全て言い全員が多い過ぎるとズッコケた

 

「いくらなんでも多過ぎるんだよ!どんなけカップリング本を書くのさ!?」

 

「私のカップリング本の数は常軌を逸してるわ」

 

「私の兄さんみたいに決め台詞を言わないでください!」

 

心理定規はドヤ顔で決め台詞を言い放ち風斬がそれを聞いて自分の義兄を連想する、やっぱりカプ厨の友達はカプ厨である

 

「でも意外と人気が高いのよ、全部タダとはいえ全部売り切れちゃうくらいなんだから」

 

「マジですの…ではどんな本なのか拝見させてもらいますの」

 

黒子がそんなに人気なら読んでみたいと上条達のカップリング本を手に取る、そしてページをめくり……涙を流した

 

「え!?なんで泣いてるのくろこ!?」

 

「……神ってる、この本…マジ神ってますの」

 

「な、泣くほどなのかい!?ちょっと僕達にも読ましてくれ」

 

ステイルは「いちゃいちゃイマジンメンタルレールガン」の本を手に取る、そしてページをめくる…そこにはエロいシーンなどなかった。ただ純粋にデートを楽しんでいる三人のカップルの姿が綺麗な絵で描かれていた

 

「………あ、これは神ってる。主が舞い降りてるよこの作品」

 

「………尊い」

 

「……アーメン」

 

ステイルが真顔でこの作品には神の加護がついてるわとこぼし、神裂とインデックスは両手を合わせ神に感謝の一言を告げた

 

「すみません…同人誌というとエロい事しか書いてないかと思ってました…でもこの作品は違いますの…これは何というか……好き」

 

「語彙力が崩壊するほど…ああ、でもなんだろうこの作品…読んでると胸が苦しくなってくる」

 

「ふ、これが私の同人誌よ…エロなど不要、カップリングの尊さでハートを射抜く」

 

彼女の本にはエロだとかそういうシーンは全くない。なのに引き込まれるほどの尊さがそこにあった。その本を読んで全員が涙を流した

 

「こ、これは……!俺と猟虎の日常での俺らがまだした事がないデートが書かれている!?」

 

「は、はわわわ!垣根さんと帆風さんの作品…笑いありのギャグかと思わせて…最後でどんでん返しのラブストーリーでした!」

 

「な!?騎士団長が告るんじゃなくて神裂さんが告った!?まさかの展開!?」

 

「「俺はオマエが好きなンだよ!」…普段とのギャップがまた…エステルと打ち止め、両方のカップリングもいいですの!」

 

「エツァリさんがカッコいい…だと?」

 

各々がカップリング本を読んでいる中、心理定規は会場の自分が出店する本を売る場所に辿り着きテーブルを置いたり商品を置いたりと一人で淡々とこなしていた

 

「ふぅ…こんな感じかしらね。今回はいい場所に当たったし沢山のお客さんが来るから頑張らなくちゃね」

 

そう独り言を呟く心理定規の前にゾロゾロととある集団がやって来る

 

「おお、心理定規じゃねえか。久しぶりなのよな」

 

「あら、貴方達もやっぱり来たのね」

 

(ん?何処かで聞き覚えが…まあ気のせいでしょうね)

 

その声の主を神裂は何処かで聞いた事があるような…と思うがまあ気のせいだろうと削板とアリサのカップリング本を読む…するとポンポンと神裂の肩を誰かが叩いた

 

「あの……もしかして女教皇(プリエステス)ですか?」

 

「え?」

 

神裂が後ろを向くとそこに立っていたのは自分がかつて所属していた「天草式十字凄教」の仲間の一人のショートヘアーの少女 五和だった

 

「な、五和(いつわ)!?それに建宮斎字(たてみやさいじ)!?それに天草式の皆まで!?どうしてここに!?」

 

「いやそれはこっちのセリフなのよな女教皇…まさか女教皇も同人誌を?」

 

「いや私は心理定規さんのお手伝いに…て、今女教皇()て言いましたよね…もしや貴方達…」

 

天草式とまさかこんな所で再開するとはと驚く神裂、それを見て心理定規が神裂の横に立つ

 

「あら同人サークル「天草式」の皆さんと知り合いなの?」

 

「ど、同人サークル?」

 

「ええそうよ、彼等は同人誌を書くサークルの一つ。五年前に突如としてこの業界に降り立った異端児…それが天草式よ」

 

「えぇ!?天草式が同人サークル!?私が抜けた後に何があったんです!?」

 

いつの間にか同人サークルになっていた天草式に神裂が訳がわからないよと頭を抱える、そんな彼女に建宮が苦笑しながら口を開く

 

「いや〜、なんか驚かせてすまないのよな。実は俺達同人サークルデビューをしまして…これは俺達天草式のマイベストフレンドである垣根帝督からの「お前ら同人誌描けば?」の一言から始まり…今に至るのよ」

 

「貴方ですか垣根帝督!?」

 

天草式がおかしくなった原因は垣根かと神裂が叫ぶ、やっぱり垣根は頭がおかしいやとインデックスは再認識した

 

「でも売れ行きはいいんですよ!心理定規さんと違ってお金はとりますけどギリギリまで安くしてますし…あ、もし良かったら女教皇も読んでください」

 

「ど、どうも…」

 

五和が神裂に本を手渡す、神裂はそれを受け取ってタイトルを見る…タイトル名は「ドタパタ天草式 参」と書かれていた

 

「壱と弐は!?てかなんですこのコメディ感溢れる名前は!?」

 

「これは我ら天草式をモチーフにした笑いあり、涙ありのマンガなのよな。これは天草式と呼ばれる秘密結社が数年前に姿を消したリーダー カンザキを主人公のタテミヤとイツワ、そして愉快な仲間達が探しに行く話なよよな」

 

「ふむ、絵と内容は悪くはなさそうだね。うん、普通に面白いと思うよ」

 

ドタパタ天草式、タテミヤとイツワというダブル主人公が仲間達と共に行方不明になったリーダー カンザキを探すストーリーである。王道的ながらもギャグが入ったこの作品は学園都市では今少し話題のプチブレイク中なのだ

 

「まさか女教皇がいるとは思わなかったが今年こそ勝つのは俺らなのよな」

 

「今年こそ勝たせてもらいます」

 

「ふふ、負けないわよ」

 

(……何この雰囲気)

 

ビリリと視線をぶつけ火花を散らし合う天草式と心理定規。完全にバトル物展開じゃんとインデックスはツッコミざるを得なかった

 

「よしお前ら!頑張って女教皇達に勝つぞ!」

 

『応!!』

 

「いや私は別に貴方方の敵というわけでは…て、誰も聞いていない…」

 

天草式は負けてなるものかとテキパキと作業を始める、神裂は変な事になったと溜息を吐く

 

「ふふ、今年もやる気いっぱいの様ですね天草式の皆さんに心理定規さん…ですが今回は私達が勝ちますよ」

 

「!?お前達は…!?」

 

(またややこしいのが出て来た)

 

そう発言したのはラクロス部のユニホームの様な服を着たスカートから悪魔の尻尾の様な物を生やした中学生くらいの黒髪の少女だ。その後ろにも同じ服を着た少女が三人立っている

 

「貴方達は…同人サークル「新たなる光」のレッサーにベイロープ、ランシス、フロリス」

 

「新たなる光…イギリスの結社予備軍ですね」

 

「何でこの会場には魔術関係者が多いんだ」

 

またしても魔術関係者かと神裂とステイルが頭を抱える、何故学園都市はこうも侵入しやすいのか

 

「今回の同人誌は自信作です、そうそれがこの「東京ニャンダフル・ザ・ワンコ 其の五」です!」

 

「東京ニャンダフル・ザ・ワンコ?」

 

「新たなる光が書いている非擬人化の動物物語よ。犬猫達がのほほんと暮らす日常生活を描いた物語で動物達は決して人語を話さず鳴き声だけで話す…しかも犬猫だけでなくマッコウクジラからライオンまで出てくるわ」

 

「人気あるんですの?」

 

「一部のマニアと子供達には大人気よ」

 

東京ニャンダフル・ザ・ワンコ。東京都を舞台とした犬猫達の日常を描いた作品で犬猫だけでなく何故かマッコウクジラからライオンまで出てくる動物系漫画でよくある人語を話す動物が出て来ない珍しい作品だ

 

「カップリング?ギャグコメディ?そんなものはもう古い、時代は癒しです。そう今はアニマルセラピーの時代!この本で貴方の疲れを癒してみませんか?」

 

「今ならウチらの看板ペットである「スフィンクス」の肉球を触れるよー」

 

「そしてスフィンクスの絵が描かれた缶バッチもオマケについてくるわ」

 

「てなわけで買ってください」

 

「にゃー(へい、そこの可愛いシスターちゃん。肉球触ってみる?)」

 

レッサーが本を掲げて時代はアニマルセラピーだと笑う、ランシスは両手でスフィンクスという三毛猫のオスを抱えベイロープがその猫の絵が描かれた缶バッチを見せる。フロリスが棒読みで買ってくれと呟くとスフィンクスは可愛らしくにゃーと鳴き声をあげる

 

「くっ!何だその可愛い猫は…そんな猫がいたら思わず買ってしまうだろ!」

 

「あの猫…なんか私が先に見つけていたら同じ名前をつけて飼ってたかもしれないんだよ」

 

ステイルはスフィンクスの可愛さに思わず本を買いそうになってしまう、それを神裂は七天七刀をフルスイングさせる事で事なきを得た

 

「今回もいい同人誌ね。でも勝つのは私よ。今年もナンバーワン コミムチャンピオンに選ばれるわ」

 

「それはこっちのセリフよな。今年こそ俺達天草式がナンバーワン コミムチャンピオンになるのよ」

 

「それはこっちのセリフです。ナンバーワン コミムチャンピオンの栄光はは私達新たなる光が手に入れ、私達の存在を知らしめ英国に観光客を呼び寄せます」

 

「……ねえ白井さん、ナンバーワン コミムチャンピオンて何かな?」

 

「きっと一番凄い馬鹿て意味ですの」

 

ナンバーワン コミムチャンピオンとは、コミムで一番同人誌が売れた人のみ与えられる名誉ある称号なのだ

 

「因みに私は3年連続 ナンバーワン コミムチャンピオンよ」

 

「だがその伝説も今日まで…この天草式がナンバーワン コミムチャンピオンなのよ!」

 

「イギリス魂を見せてやりましょうベイロープ!ランシス!フロリス!」

 

「「「おー!」」」

 

熱い、熱血漫画かと思うほどの炎のオーラが背景として浮かび上がるほどだ。たかが同人誌でここまで熱くなれるのかとインデックスはすげーと思った

 

「で、そのなんとかチャンピオンになったら何がもらえるの?」

 

「?いやないけど」

 

「……え?」

 

「その称号が貰えるだけで何も賞品とかないわよ、ただ皆その称号の為に頑張ってるのよ」

 

「そうよな、寧ろ賞品なぞ不要なのよ。俺達はナンバーワン コミムチャンピオンの称号が目的。そしてその称号を手に入る事で…女教皇が帰ってきても恥ずかしくない様にしておくのよ」

 

「いやそんな称号に何の意味が…まあでも来週辺りに天草式に帰ろうと思ってましたが…」

 

「私達はナンバーワン コミムチャンピオンを取ることでイギリスにはこんな同人作家がいると知らしめイギリスまで私達の本を買いに来てもらう事が目的です…そしてイギリスの良さをもっと広める…これで私達の懐もイギリスの懐も暖かくなる!まさに一石二鳥!」

 

「……私にはよく分からない世界なんだよ」

 

変人ばっかりだな、そうインデックスは思ったのだった。そんなこんなでコミムでの仁義なき同人誌売りが開始されるのだった

 

 

「はいはい、「いちゃいちゃイマジンメンタルレールガン」と「君の瞳にラストレータ」ね。大事に読んでね」

 

「えーと、「メルヘンですが何か?」と「師匠との禁断の恋」だね。ひょうか持ってきて」

 

「うん、これとこれだね」

 

「浦上!対馬!ドタバタ天草式の壱と弐を持って来てくれ!」

 

「はい!」

 

「分かったわ」

 

「さあさあ寄ってらっしゃい見てらっしゃい!東京ニャンダフル・ザ・ワンコを買うと今ならうちのマスコットであるスフィンクスの肉球を三分間触り放題とスフィンクスの缶バッチがオマケについてきますよ!そして…フロリスが脱ぎます!」

 

「脱がねえよ馬鹿!」

 

「にゃー(ほら触んなさい。優しくしてね)」

 

コミムが始まって一時間が経過し、心理定規と天草式、新たなる光の同人誌は飛ぶ様に売れる。流石はチャンピオン候補なだけはある

 

「ねえショタの本はないのかしら!?え?それならフレンダ×加納の「彼氏はショタてわけよ!」があるですって?それは十八禁かしら?」

 

「ステイル君、ちょっとこのショタコンを消し炭にしてくれる?」

 

「了解した」

 

「ショタァァァァァァ!!!?」

 

「はぁはぁ…み、御坂さんのエッチい本があると聞いて……て、これ全部非エロじゃないですか!脱がないんですか!?」

 

「神裂さんお願い」

 

「七閃!」

 

「うぎゃあああああ!!?」

 

約2名変人がいたが結標淡希(ショタコン)は燃やされ、海原光貴(ストーカー)は斬り裂かれて肉塊になった

 

「ふう…結構売れてるスね」

 

「もうあれだけあった本がなくなってます」

 

誉望と猟虎が驚くほどに本は圧倒と言う間に売れてしまい、残り数はあと僅かとなっていた。天草式と新たなる光も似た様な感じだ

 

「ここまでは前回と同じ…でも最後まで油断しないわよ」

 

「ご注文は「騎士団長は告らせたい」でよろしいですの?」

 

「なんの!ここからが俺達の本当の戦いよな!五和、浦上、対馬、牛深、香焼、諫早、野母崎!天草式に古くから伝えられる人を引き寄せるフォーメーションをするのよな!」

 

『了解!』

 

「まだまだですよ!スフィンクスの肉球触り放題の時間を三分から五分に延長します!更にフロリスとランシス、ベイロープのスク水写真までつけちゃいますよ!」

 

「「「ざけんな!!」」」

 

「にゃーん(やれやれ猫使いが荒いぜレッサーちゃん)」

 

そしてすぐに同人誌は全て売り切れほぼ同時に三チームの本は完売した

 

「ふぅ…疲れたわ」

 

「…さ、流石に大変だったのよな」

 

「あ、暑いです……」

 

心理定規、建宮、レッサーは流石に疲れたのかぐでーとして机に倒れてだらーとする

 

「お疲れ様なんだよメジャーハート。はいお水」

 

「お疲れ様です建宮斎字、天草式の皆に的確な指示を送る手腕…お見事でした。流石は教皇代理です」

 

「にゃー(ご褒美に頬ずりをしてあげよう)」

 

インデックスが心理定規に水を渡し神裂が見事なチームプレイを実行した建宮を褒める、スフィンクスがゴロニャーンとレッサーに頬ずりする

 

「後は誰がナンバーワン コミムチャンピオンに選ばれるかね…まあ私に決まってるけど」

 

「寝言は寝てから言うのよな。ナンバーワン コミムチャンピオンは俺達なのよ。そしてそれを取って漸く胸を張って女教皇が帰ってきてくれるのよ」

 

(……やっぱり明日辺りに天草式に帰りましょう。そして全員学園都市に呼びましょう。うん、それがいいです)

 

「何言ってるんですか、こっちにはスフィンクスや脱ぎ要員のランシスがいるんです…勝つのは私達ですよ」

 

「なんで私ばっかりなんだよ!お前が脱げよ!」

 

全員がそうやってのほほんとしていた時だった

 

「ブヒィ、今日も沢山売れたんだな…これで暫く遊んで暮らせるんだな」

 

ブヒブヒと鼻息を荒くして呟く豚としか言い表せない…いや豚と呼ぶのも本物の豚に失礼な贅肉まみれの男を見てステイルが口に咥えていた煙草を落とす

 

「……なんだいあの体重200キロは超えてそうな肉ダルマは…?」

 

「確かあいつの名前は蝗 五郎(いなご ごろ)。色んなアニメやら漫画やらの二次創作の十八禁の本を書く同人作家よ。画力は私達以下、でもマニアックな性癖が趣向の本を書くから大人気な作家らしいわ」

 

「まあ簡単に言えば同人ゴロとか同人イナゴて奴なのよ。俺達と違ってオリジナル作品を書かず二次創作ばかりに手を出しいかがわしい本を売って儲ける…はっきり言ってああいう奴は好きじゃないのよな」

 

「それに作品に対する愛がないですしね。あ〜やだやだ。ああいった輩が一番レッサーちゃんは嫌いなんです」

 

心理定規達からの評価は散々で嫌悪感マックスな目で蝗を見る、インデックス達もそれを聞いてあまりいい顔はしない

 

「ブヒィ!今日は寿司特上に焼肉なんだな!やっぱり同人誌はサイコーなんだな!原作者からアイデアパクって利益は独り占め!サイコーなんだな!」

 

「……あんな大人にはなりたかねーですの」

 

黒子が氷点下の様な冷たい目を蝗に向ける

 

「で、でもいくら原作愛がないとはいえあれだけ売れるて事は一種の才能ですよ!」

 

「まあ、世の中結局はお金が一番大事だし…考えは人それぞれだしね」

 

五和があれも一種の才能だとその場の空気を変えようとしベイロープもそれに同調する、心理定規達は納得がいかないが我慢するかと思ったその直後

 

「いやぁ原作者様々なんだな!オリジナル作品とか考えるのや書くのは面倒くさいしその点二次創作ならキャラとか考える必要はないし…それに口調とか違ってもエロかったら問題なし!エロければ客も買ってくれるんだから本当に同人誌を売るのってチョロいんだな!楽に稼げるし…これなら一生働かなくても生活できるんだな!」

 

「「「(ブチィ!)」」」

 

(あ、逆鱗に触れたんだよ)

 

蝗が言ったセリフが彼女らの逆鱗に触れた。もう怒りを通り過ぎて悟りを開きかけな心理定規達の顔を見た一同は石化した様に動けなくなる

 

「……やる?」

 

「やるのよな」

 

「やっちゃいますか」

 

心理定規は腕をポキポキ鳴らす、建宮とレッサーはフランベルジェと鉄の手袋を取り出す、そして心理定規がゆっくりと蝗に向かって歩き出す

 

「ねえそこの貴方」

 

「ん?……むほぅ!?か、可愛いんだな!も、もしかして僕に惚れたのかな!?」

 

(うわぁ…女子に話しかけられる=惚れられたに繋げるて…気持ち悪いです)

 

(まだインデックスさんを見て鼻を伸ばしてるししょーの方がマシです)

 

(あの豚、豚の丸焼きにしていい?)

 

顔を赤くしてブヒブヒ言う蝗を見てメアリエ達がドン引きする、そして心理定規はニッコリ笑って蝗の人体の下半身にある急所に思い切りハイヒールで蹴りつけた

 

「同人誌馬鹿にしてるんじゃないわよキッーク!」

 

「ブヒィィィィィィ!!!?」

 

『ぅ!?』

 

『うわぁ……』

 

その光景を見て男性陣は自分の息子を両手で隠した。それを見た女性陣もドン引きしハイヒール越しに嫌な感触がした心理定規は露骨に嫌悪感で染まった顔をする

 

「きゃああああ!誰か助けて!この豚が私のお尻を触ってきたの!」

 

「ブヒ!?」

 

(嘘だ、思い切り嘘なんだよ!)

 

心理定規は大声で蝗に尻を触られたと叫ぶ、それを見てインデックスは冤罪じゃんと内心ツッコむ

 

「なんて最低な野郎なのよ!俺達はちゃんとその現場を見たぞ!この変態め!」

 

「レッサーちゃんの目は節穴じゃないんですよ!この豚野郎!」

 

(いやどう考えても節穴だよ!てかこれもうリンチだよね!?いいの!?)

 

建宮とレッサーがフランベルジェと鉄の手袋でボカスカと蝗を殴る、インデックスはもうこれいじめだと思った

 

「じゃあトドメの……ロケットランチャー」

 

「ブヒィィ!?死んじゃうんだな!それ死んじゃうんだな!?やめてください!なんでもしますから!お願いします!」

 

「じゃあもう二度と愛のない同人誌を描かないて誓うか?」

 

「破ったら鉄の手袋で貴方のその粗末な○○○をもぎもぎフルーツですよ?」

 

「ひぃぃぃぃ!!分かったんだな!もう二度と同人誌は書かないから許してほしいんだな!」

 

ロケットランチャーを取り出した心理定規を見て蝗が土下座する、建宮とレッサーが武器を向けながらもう二度と同人誌を書くなと脅すと頭を床に擦り付けながら描かないと宣言する蝗…それを聞いて心理定規達は笑みを浮かべて口を開く

 

「「「ラブ&ピース!」」」

 

「どこがですの!?」

 

「明らかに武器と力で脅したんだよ!」

 

黒子とインデックスのツッコミが会場内に響いた

 

 

 

『え〜では今年のナンバーワン コミムチャンピオンを発表したいと思います!』

 

コミムも終わりの時を迎え、今年のナンバーワン コミムチャンピオンを知らせるべく金髪オールバックに黒いスーツを着てサングラスをかけたちょび髭のナイスミドルな司会者がマイクを持って叫ぶ

 

(まあぶっちぎりで私の優勝でしょうね)

 

(勝つのは俺達なのよな)

 

(イギリスの為…負けられません!)

 

(……この台詞だけ聞けばスポ根マンガに見えるんだよ)

 

腕組みをしながら自分達の勝利を確信する心理定規、建宮、レッサー…そして司会者がナンバーワン コミムチャンピオンの名を告げる

 

『今年のナンバーワン コミムチャンピオンはアレイスター=クロウリーさんです!』

 

「ナンバーワン コミムチャンピオンの称号…とったどー!」

 

「「「予想外過ぎるダークホース!?」」」

 

まさかのアレイスターだった

 

『いやぁ、凄くエロかったです。絵も綺麗だし何より愛を感じましたねー。因みにこの同人誌の主人公の縦ロールの少女とホストみたいな格好をした主人公の先輩てモデルはいるんですか?』

 

「勿論だ、我が友と友に恋心を抱く少女をモチーフにしている…まあ私がその二人に「さっさと付き合ってエロい事しろよ」て妄想を膨らませて描いただけなんだがね」

 

『成る程、しかしこのヒロインの○○○のシーンとか清楚なお嬢様なのに△△△しちゃったりする所とかエロ過ぎるでしょ!特に××××してるシーンとかもう私の息子が起き上がっちゃいますよ!思わず前屈みです!』

 

「まあ仕方ないだろう……何せ男は…みんなエロいからな」

 

「「「………」」」

 

(…し、死んでる)

 

アレイスターは自分の知り合いを同人誌のキャラにしてエロい事をさせていた。インデックスはそれにドン引きしながらも隣で真っ白になって燃え尽きている心理定規達を見る

 

『では今年のコミムは終わりです!また来年もお楽しみに!』

 

「そうだな、次はミナとメイザースの本や脳幹と唯一君の本を描くのもありだな」

 

これでコミムは心理定規達の心に傷を残して終わりを告げたのだった。その後暫く心理定規達はエロに負けたショックで抜け殻のような状態になるのだが…冥土帰しがなんとかしてくれた

 

 

 

 

後日、自分達の同人誌を勝手に描いた事を知った垣根と帆風が窓のないビルに乗り込んでアレイスターをボコボコにした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




アレイスターさんは史実でもド変態クソ野郎だから親友とその親友に恋心抱く少女の同人誌描いてても違和感ない。だってあの人男性器の表現だけで3桁いく官能小説書いたり自分の精液を入れたフラスコを見せびらかせる人だから…

天草式と新たなる光の面々はていとくんの所為で同人サークルと化した。何やってんだこいつら。そしてスフィンクスは何故か新たなる光のペットに…

インデックス「私のスフィンクスが!?」

オティヌス「私の天敵が!?」

さて次回はキャラ崩壊マックスな展開、加群せんせーの怪しげな薬で縦ロールちゃん達が大暴走!?な展開にしたいです

感想乞食みたいですが…感想をくれたらやる気が上がるので感想をくれると嬉しいな(インデックスボイス)次回もお楽しみに!


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弱酸性レベルファイブ!

今回はあの公式が病気で有名な弱酸性ミリオンアーサーパロです。兎に角カオスです。パロ自体がカオスな上自分が書いたやつなのでもうカオスとしか言いようがありません

そして今回の主人公はまさかの木原乱数、誰得だよ誰得だよ(誰が得するんだよ、誰も得しねえよ)。色々とツッコミどころ満載ですが…気にせず読んでくれると嬉しいです


木原一族はマッドサイエンティストしかいない、垣根帝督のお陰で少しはまともになったが元からの性質が消えるわけではない。ただ学生を違法な実験に使わなくなった程度である

 

幻生は自分の身体を使ってヤベェ実験を繰り返しその度に生身の部分が減っていき今では身体の大部分がサイボーグ…サイボーグ G(ジー)ちゃんになっている(このあだ名をつけたのはドリー)。円周もカタカナの読み書きはできるが未だに漢字は書けない、唯一は垣根の所為で獣姦ルートまっしぐらで数多は子離れ出来ない父親になった、加群に至っては天然になりつつある…だがそれでも木原は木原。常人では考えられないような事件を引き起こす時もあるのだ

 

「此間実験の過程で出来た人格が変わる薬を誤って何人かの学生に飲ましてしまった。助けてくれ」

 

「何してるんですか加群さん」

 

唯一が呆れた顔を加群に向ける、幻生達も似たり寄ったりな顔をし円周のみ無邪気な顔でクレオンで紙に何か書いていた…これが実はマクスウェルの悪魔を完成させ夢の永久機関を作り出す方程式だとは誰も気づかないだろう

 

「復讐に使える思って自宅に置いてあったヤクルトに混ぜて飲ました…その時は人格が変わる効果があるとは知らなくてな…毒ではないのなら平気だろうと思っていたのだが…そのうちの一人の人格が変わってしまってこれはまずいと思ってな」

 

「本当に何やってるの加群おじさん」

 

配っていた時はそんな効果があるとは知らず、今になって後悔している加群に那由多は呆れた顔をする

 

「……私も木原の宿命からは逃れられなかったというわけか」

 

「言い訳になってないよ?全く加群君は…脳幹君に怒られてもしらないよ」

 

「まあまあ、今はそんな事より学生についてだろ…で、その薬は人格が変わるんだよな?どんな風に変わるんだ?」

 

「………見れば分かる」

 

幻生を宥めながら数多はどんな風に人格が変わるのかと尋ねる、すると加群が実物を見せると言って連れてきたのは…海原だった

 

「あ?クソ野郎(海原光貴)じゃねえか」

 

「はい、どうも僕は海原光貴です」

 

「……ん?」

 

美琴の追っかけストーカーを見て数多が目を細める、だが海原はそれに臆する事なく笑みを返す…それに違和感を覚える一同

 

「質問する、お前は御坂美琴が好きなんだな。彼女を第二位と第六位から寝取りたいと思った事はあるか?」

 

「ええ御坂さんの事は好きですよ、でも寝取りはしません。御坂さんがあの二人が好きなら僕はそれを応援するまでです」

 

「……あれ?もしかして綺麗な海原になってる?」

 

なんという事でしょう、あの寝取り宣言をしていた海原がこんなにも綺麗な海原にビフォーアフターしてしまった

 

「彼の場合はどうやら泥水のように汚濁していた心の汚れが漂白され、善人になってしまったようだ」

 

「……彼の場合は一生このままでいいね」

 

『異議なし』

 

もう海原は一生このままにしておくとして…幻生達はこの薬の恐ろしさにようやく気付いた。あの心の中もヘドロまみれの海原でさえ綺麗なジャイアンも驚愕の真っ白になってしまったのだ…他の人物が飲めばどんな事になるのか想像もできない

 

「…これは案外厄介な事件かもね…早速飲んだ人物達を確保して元に戻さなくては…海原君以外」

 

「そうだな俺の一方通行や打ち止め達も変にならないか心配だしな…海原はどうでもいいけど」

 

「まあどうなるか見て見たい気持ちもありますけどね…取り敢えず海原光貴はこのままで」

 

「私もそれがいいと思う、海原さんはこのままの方が学園都市は少しは平和になるから…で、誰が探しに行くの?」

 

取り敢えず海原は満場一致で一生このままにしておく事は決定事項。那由多が誰が探しに行くのかと聞くと今まで黙っていた乱数が口を開く

 

「そんなの加群に決まってんだろ、元はと言えば加群が撒いた種だ。落とし前くらい加群がつけ「いや無理だ」……はぁ?」

 

「私はこれから鞠亜と買い物に行く予定が入っている。更にその後はマリアンとも予定が入っていてな…すまない私は行けない」

 

「何リア充的な予定があるんだよ。テメェ生徒や友人とのデートと薬の被害者を見つける事どっちが大事なんだ」

 

「無論前者だ」

 

「もうお前科学者やめちまえ…じゃあ他に行ける奴はいるか?」

 

加群は自分はこの後予定があるから探しに行けないと言うと乱数はもう科学者なんかやめろと毒舌を吐く、そして代わりに行ける者を探そうとするが…

 

「すみません、私脳幹先生とデートという名の散歩に行かなければならないので」

 

「俺は早めに帰って一方通行達の飯作んなきゃいけねえんだよ」

 

「私も枝先ちゃんや春上ちゃんと遊ぶ約束があるから」

 

「私もこの後警策君と一緒にドリー君に勉強を教えなくちゃいけないからねぇ」

 

「分かってるよ、垣根お兄ちゃん。垣根帝督ならこう言うんだよね…「あ、ごめん。この後カップリング写真撮らなきゃいけないから行けない」」

 

「お前らやる気無さすぎるだろ」

 

乱数以外全員が用事(割としょうもない)がある為行けないと言い、乱数はそんな木原達を見て溜息を吐く

 

「分かったよ俺が行ってやるよ!」

 

「頼んだ」

 

「……はぁ、なんで乱数ちゃんがこんな事しなくちゃいけねえんだよ」

 

乱数はそう呟きながら加群(バカ)が作った薬を飲んだ被害者を探すべく部屋から出ようとする

 

「頑張って下さいね乱数さん」

 

「……なんかお前がそう言うと気持ち悪いな」

 

海原がそう言って微笑むと乱数は寒気を感じた

 

 

取り敢えず街中に出てきた乱数は誰が薬の被害者なのか探るべく、周りをキョロキョロ見る

 

「て、これじゃあ不審者じゃねえか…たく、誰に飲ましたかぐらい覚えとけよ」

 

そう愚痴を言っている乱数だがモーションキャプチャースーツに似た服にゴーグルと既に変な格好なので十分不審者だった

 

「あれ?アンタは海に行った時帰りに乗せてってくれた人?」

 

「あ?おお、第二位と第六位じゃねえか」

 

乱数に話しかけたのは上条、その横には食蜂も立っていた

 

「んだよ、デートですか?いいご身分だな。俺なんか彼女の「か」の字もねえのに」

 

「いやでも彼女がいるとお金が凄いかかりますのよ?まあ、それを補って美琴と操祈は可愛いしマジ天使だから必要経費として割り切ってますけどね…ああ、本当に美琴と操祈は可愛いなぁ」

 

「もう上条さんたらぁ!人前で恥ずかしい事言わないでよね!」

 

「あはは、悪い悪い!」

 

「一発殴らせろよ、乱数神拳見せてやる…て、馬鹿共に付き合う時間はなかったんだ。お前ら変な奴とか見なかったか?」

 

乱数は殴りたい気持ちを抑えて上条達に変な奴はいなかったかと問いかける

 

「いえ、見ませんでしたよ…目の前に変な服着たオッさんはいるけど」

 

「見てないわねぇ…変な服のヤバそうな人は目の前にいるけどぉ」

 

「よし、お前らやっぱ殴るわ」

 

「ごめんなさい冗談です、デート前なので殴らないでください。それにしても美琴の奴遅いな」

 

「そうねぇ、何やってるのかしら」

 

乱数がポキポキ腕を鳴らすと上条達はジョークだと慌てて首を振る、そして美琴が来ないと二人が不審がっていると

 

「ん?お前らの彼女走ってやってきたぞ?」

 

「本当だ、おーい美琴〜!こっちだぞ!」

 

「!んんんん!!!」

 

「あらぁ?口がリスみたいに膨らんでるわぁ…」

 

何故か口を膨らませた美琴が走ってやってくる、リスやハムスターの頬袋の様に中に何か入れているのかと乱数は考えた

 

「おまひゃへ(お待たせ)!」

 

「何食ってんだ?」

 

「ふぇんぱい達もたへる(先輩達も食べる)?」

 

そう言って美琴は口の中に手を入れ中のものを取り出す…そして出てきたのは…操祈が海に着ていった水着だった

 

「「「………はい?」」」

 

「皆食べないの?ならまた私が食べちゃお」

 

「うおおお!!?何やってるんです!?何やっちゃてんの!?何してるの!?の三段活用!」

 

「水着は食べ物じゃないわよぉ!?」

 

「……あ、加群?薬の被害者見つけたぞ、どうやって治すんだ?え?時間が立たないと治らない?ざけんなよ」

 

呆然とする一同の前でまた水着を食べようとする美琴、それを全力で止める上条と食蜂

 

「離してよ!先輩や操祈だって水着があれば食べるでしょ!?好きな人の肌に触れた水着なら尚更!」

 

「ねえよ!?流石の俺でもそれはしないわ!」

 

「ちょっと正気力大丈夫!?」

 

「いいから食べさせてよ!」

 

「「ダメです!!」」

 

「……ふぅん、ならいいわ。食べないわ」

 

絶対に水着は食べさせないと上条と食蜂が言うと美琴は冷たい目でもういいと力を抜く、それでホッと息を吐いた二人…だがこれくらいで変態は止まらない

 

「水着は食べないわ……代わりに二人を性的に食べるけど」

 

「「……え?」」

 

「その前に…先ずは味見から」

 

美琴の舌が伸びた、舌の長さはギネスだと最大10センチだ。だが美琴の今の舌は3メートルほどの長さだった。もう人間というより赤舐めやカメレオン、オオナズチの舌だろというほどの舌で上条と食蜂の全身をレロレロする

 

「はぁはぁ……やっぱり先輩と操祈ていい味がするわねぇ…あ、ちょっと向こうの路地裏に行かない?え?なにも変なことなんかしないわよ…ね、行きましょ?……レロ」

 

「ひっ!き、今日のミコっちゃんはなんかヤバイ!あ、俺実は補習があるんだった!てな訳でばいなら!」

 

「わ、私も帆風先輩とカラオケに行く予定があったの忘却力してたわ!だからバイビー!」

 

「煩いわね!取り敢えず二人ともパンツ脱ぎなさいよ!さあパンツ!レロレロしてあげるから!だから早く脱ぎさいよ!」

 

「「ぎゃああああ!!!こ、これ以上はラメェ!え、エクスタシスになっちゃう!あっ、ら、ラメェ……ラメェェェェ!!!」」

 

流石の上条と食蜂も頬をピクピクさせながら苦笑いを浮かべ、じりじりと後ずさる…そして用事があるからと逃げ出そうとするが美琴のひゃくれつなめが炸裂し二人はパンツを舌で脱がされそうになる

 

「……南無」

 

乱数はうわぁ…とドン引きしながら犠牲となった上条と食蜂に手を合わせて他の被害者を探しにいく

 

「人格が変わるだけなんだよな?じゃあなんで舌が長くなるんだよ…てか加群(あいつ)は何ていう薬を作りやがったんだよ」

 

「あ、乱数だ!てミサカはミサカは手を大きく振ってみる!」

 

「……打ち止め(ラストオーダー)か」

 

乱数に話しかけてきたのは打ち止めだ、その背後にはエステルも立っている。この近くのゲームセンターで遊んでいたのだろう

 

「打ち止め、この人は?」

 

「数多と同じ一族の人だよ!てミサカはミサカは教えてみたり!」

 

「数多さんと…初めまして、私はエステル=ローゼンタールだ」

 

「ああ、よろしくな嬢ちゃん…そういや一方通行はいねえのか?」

 

乱数がエステルに挨拶をした後、打ち止めに一方通行はいないのかと尋ねる

 

「それがね、あの人朝からいないの。てミサカはミサカは内心心配しながら言ってみたり」

 

「先生の事だから心配はないと思うのだが…また変な事件に関わっているのではと心配でな」

 

「そうか……て、ん?あそこにいるの一方通行じゃねえか?」

 

「「え?」」

 

打ち止めが少ししょんぼりした顔で告げエステルも不安そうな顔をする、それを聞いた乱数は何かの事件に巻き込まれたのか…と考えるが一方通行が歩いているのを見つけた

 

「ああ!一方通行!こんな所にいたんだね!てミサカはミサカは手を振ってみる」

 

「……おゥ」

 

「む?どうしたのだ先生?元気が無いように見えるが?気分でも悪いのか?」

 

「そンなンじゃねえよ。ただ考え事してただけだ」

 

「考え事?てミサカはミサカは首を可愛らしく傾げてみたり」

 

「なんなのだその考え事とやらは?」

 

一方通行はやけに難しい顔をして何か考えており、エステルと打ち止めがそれを見て首を傾げながらどんな事かと問いかける

 

「『砂漠で水分を失った際おしっこを蒸発させて、その水分ならぜひ補給したいランキング』を考えてたンだよ」

 

「「………」」

 

(薬の被害者発見)

 

砂漠で水分を失った際おしっこを蒸発させて、その水分なら是非補給したいランキングなるものを考えていたといい笑顔で告げる一方通行。それを聞いてエステルと打ち止めは思考停止した

 

「因みに一位はエステル、二位は打ち止め、三位は木原くン、四位はていとくん、五位は番外個体だ」

 

「……こんなにも嬉しくない一位は初めてだ」

 

「ど、どうしちゃったの一方通行?てミサカはミサカはドン引きしながら恐る恐る尋ねて見たり」

 

「因みに俺の将来の夢は烏骨鶏になる事だ…ウッコココココココココココッウッココ!!ウッコココッコッコッココーケコッコー!」

 

「「一方通行!?」」

 

「重症だなこりゃ」

 

突如鶏の鳴き声を発する一方通行に驚きを隠せない二人。もうこいつダメだと乱数は溜息を吐きながら取り敢えず数多から習った木原神拳をアレンジした乱数神拳で一方通行をバットで殴る

 

「コッケェ!?」

 

「問答無用で殴った!?てミサカはミサカは突然のバイオレンスに驚きを隠せず戸惑ってみたり!」

 

奇声を上げながら吹き飛ぶ一方通行、だがその顔は歓喜で顔を赤く染めていた

 

「イイねェ、最高だねェ乱数くゥン!打ち止めにエステルもこのロウソクを使って俺を責めろよ!」

 

「「ロウソク!?」」

 

エステルと打ち止めにロウソク責めを要求する一方通行、それを見て二人は更に困惑する

 

「責めておくれよォォォォ!!!!」

 

「こ、こんなの一方通行じゃない!てミサカはミサカは……ふにゃあああ…」

 

「ら、打ち止め!?予想外な光景にキャパシティダウンしてしまった!?」

 

紅潮した顔で舌を出しながら叫ぶ一方通行を見て打ち止めが気絶しエステルは彼女の身体を揺さぶる

 

「さあ!早くそこのバットで殴ってくれよ!今なら反射をオフにしてやるからよォ!」

 

乱数は背後でそう喚く一方通行を無視して足早にその場から立ち去る、なんで薬飲んだ奴は変態になるのかと

 

「加群の奴…なんて恐ろしい兵器作り出しやがったんだ…帰ったらあいつキン肉バスターだな」

 

絶対に帰ったら加群に筋肉バスターをかける、そう心に誓う乱数なのであった

 

「ナイスちんちん!」

 

「ふわぁぁぁぁぁ!!?」

 

「……また変態か」

 

卑猥な単語と男の嬌声が乱数の耳に届き、また変態の登場かと乱数は声がした方へ顔を向ける…そこに立っていたのは赤髪の神父が筋肉ムキムキのマッチョになったインデックス…いなインデックス大納言とも言うべき存在に股間を下から掬い上げるように鷲掴みして連続強打していた

 

「もう原型がねえて言うより別人じゃねえか!」

 

もう魔術よりも魔術(物理)を使いそうな感じのインデックス大納言を見て思わずそう叫ぶ乱数、ステイルは身体をピクピクさせながら地面に崩れ落ちる

 

「い、インデックス?なんでそんな筋肉ムキムキにビルドアップしたのですか?」

 

「おい……インデックス『様』だろうが!様をつけろ!」

 

「え!?い、インデックス……様?何故そのような姿に?」

 

「知らん、気がついていたらこうなっていた…だが丁度いい。この筋肉()で学園都市を制圧しおまんじゅう工場を建設してやろう」

 

「お、おまんじゅう工場!?」

 

神裂は変わり果てたインデックスの姿と言動に混乱する、インデックス大納言は腕をポキポキならし笑みを浮かべる

 

「この力で超能力者だろうが捻り潰してくれるわ!そして学園都市をおまんじゅう都市に改名する!」

 

「お、落ち着いてください!取り敢えずおまんじゅうを買ってきますから待っていてください!」

 

神裂は音速を超える速度でまんじゅうを買いに行く、インデックスはダブル・バイセップスのポージングをしながら神裂を待つ事にした

 

「顔はそのままで首から下がガチムチ…いやどうしたらああなるんだよ」

 

乱数はもう科学の域超えてるだろと愚痴る、流石はトップクラスの木原だと思う。頭とその使い所と才能の無駄遣い感はハンパないが

 

「インデックス!まんじゅうを買ってきました!」

 

「おう、遅かったな。まあいい寄越せ」

 

「は、はい!どうぞ!」

 

神裂が買ってきたまんじゅうをインデックスに手渡す、それを一口で飲み込むインデックス…そしてふと神裂に笑いかける

 

「ど、どうですか?美味しいですか?」

 

「……かおり」

 

「インデックス……?」

 

神裂に微笑むインデックスを見て乱数は元に戻ったかと淡い期待をする…そして

 

「このまんじゅうゲロ不味ィィィィッ!!!」

 

「い、インデックスゥゥゥゥ!!?」

 

(爆発した!?)

 

食べたまんじゅうが爆死するほど不味かった為インデックスの身体は爆発四散してしまった。しかも何故か一瞬周りの背景が某ライダーシリーズで使われる栃木県栃木市岩船山採石場跡になった

 

「へ……ヘマしちまったぜ…」

 

「喋らないでくださいインデックス!これ以上喋ったら…!」

 

「死なないでくれインデックス!」

 

(いやさっき爆発四散したのになんで五体満足なんだよ?それに赤髪はさっきまでそこでピクピクしてただろ…あ〜ツッコミ所多過ぎィ!)

 

何故か五体満足で地面に倒れているインデックスに寄り添う二人、もう乱数はツッコまない事にした

 

「最後にこれだけは言わせてくれ…」

 

「「!」」

 

「私は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇかぎり、その先に私はいるぞ! だからよ、止まるんじゃねぇぞ…」

 

「「い、インデックス……うわあああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」

 

(何この茶番)

 

某オルガの様なセリフを言ってそのまま眼をゆっくりと閉じ動かなくなるインデックス、それを見て神裂とステイルは喉が潰れるほどの声で叫びを轟かせる

 

「これが……世界を救った代償がこれかぁ!!!」

 

(お前はどこの犬先輩だ)

 

ステイルは某勇者部部長のセリフをパクり、その怒りの咆哮と共に魔女狩りの王を顕現させる。もう付き合いきれないと乱数はその場を後にした

 

「確かヤクルトて5個入りだから…後一人か」

 

乱数は後もう一人見つければ終わりだと少し頬を緩ませ、すぐに元の顔に戻す

 

「海原に第五位、第三位、そして禁書目録…海原以外学園都市の重要人物ばっかりじゃねえか…となると怪しいのは垣根の野郎か?」

 

今までの薬の被害者の事を思い出し、次は誰かと推測する乱数…怪しいのはメルヘンこと垣根だと推測した

 

「よし、垣根に電話かけるか」

 

携帯を取り出し垣根に通話をかける乱数、暫くして携帯から垣根の声が聞こえた

 

『どったの乱数君?』

 

「あ〜大した用じゃねえんだけど…お前今どこにいる?」

 

『俺?俺は………にいるぜ』

 

「え?何処にいるて?聞こえなかったんだが」

 

乱数が何処にいるのかと再度尋ねる、そして誰かが乱数の肩を触る

 

「俺は乱数君の後ろにいるぜ」

 

「……乱数神拳!」

 

「やこど!?」

 

取り敢えず乱数神拳を垣根の顔面にお見舞いし拳を垣根の顔にめり込ませる、垣根は派手に吹き飛ばされ地面をバウンドする

 

「イテテ…何すんだよ!」

 

「反射反応だ…ま、その対応だと薬の被害者じゃなさそうだな」

 

「薬?何の話だ?」

 

「いやこっちの話だ…忘れろ」

 

垣根ではない、そう判断した乱数は次の目星の人物を呼び出そうと携帯を取り出す

 

「あら、こんな所にいましたの垣根さん」

 

「お、潤子ちゃんじゃん。何かあったか?」

 

「いや実は…聞きたい事があって」

 

「聞きたい事?」

 

乱数は嫌な予感がして携帯を弄る指を止める、帆風の様子はいつも通りだが何か嫌な気配がする…そう一方通行達と同じ気配がするのだ

 

「あ、あの垣根さんは………子供は何人欲しいですか?」

 

「………」

 

爆弾宣言にあの垣根ですら固まった

 

「わたくしは三人欲しいですわね。女の子が二人、男の子が一人です。名前は垣根さんが決めてください。わたくしってあんまりネーミングセンスがないので。えへへ、どっちに似ると思います?わたくしと垣根さんの子供でしたら、きっと男の子でも女の子でも可愛いですよね。それで庭付きの白い家に住んで、大きな犬が飼いたいですわ。犬の名前はわたくしに決めさせてくださいね。垣根さんは犬派ですか?猫派ですか?わたくしは断然犬派です、あ、でも、垣根さんが猫の方が好きなら、勿論猫を飼うことにします。わたくし、犬派は犬派ですが動物ならなんでも好きなので。だけど一番好きなのは、勿論垣根さんです。垣根さんがわたくしのことを一番好きなように。そうです、垣根さんはどんな食べ物が好きなんです?どうしてそんなことを聞くのかって思うかもしれませんけど、明日からわたくしがずっと垣根さんのお弁当を作ることになるから、いえ明日から一生垣根さんの口に入るものは全部わたくしが作るので、やっぱり好みは把握しておかないと。好き嫌いはよくないです、でも喜んでほしいって気持ちも本当なので。体液はいれないので安心して下さい。愛情はたっぷり入ってますが。最初くらいは垣根さんの好きなメニューで揃えたいって思いまして。お礼なんていいです、彼女が彼氏のお弁当を作るなんて当たり前ですから。でもひとつだけお願いします。わたくし『あーん』ってするのが、昔から憧れなんです。だから垣根さん、明日のお昼には『あーん』ってさせてください。照れて 逃げないでくださいね。そんなことをされたらわたくし傷つくので。きっと立ち直れません。ショックで垣根さんを殺してしまうかも。冗談です。それで垣根さん、怒らないで聞いてくださいわたくし、才人工房(クローンドリー)にいた頃に気になる殿方がいて。いえ浮気ではなく、垣根さん以外に好きな殿方なんていませんわ。ただその人とは垣根さんと出会う前に知り合ったというだけで、それに何もないです。今思えばくだらない人でした。喋ったこともないので。喋らなくてよかったと本当に思います。ですがやっぱりこういうことは最初にちゃんと言っておかなければ誤解を招く可能性もあるので。そういうのってとても悲しいと思います。愛し合う二人が勘違いで喧嘩になっちゃうのはテレビドラマだけで十分です。もっともわたくしと垣根さんは絶対に仲直りできるに決まってるけど。垣根さんは今まで好きになった女の子とかいますか?いるわけないでしょうけど気になった女の子くらいはいますよね。いてもいいんです全然責めるつもりありませんから。確かにちょっとは嫌ですが我慢しますそれくらい。だってそれはわたくしと出会う前の話ですよね?わたくしと出会た今となっては他の女子なんて垣根さんか らすればその辺の石ころと何も変わらないに決まってます。垣根さんをわたくしなんかが独り占めするのは他の方々に申し訳ないですが仕方ありませんよね。恋愛ってそういうものですから。垣根さんが私を選んでくれたのは運命です。他の方々のためにもわたくしは幸せにならなくては。ですがあまり堅いことは言わず垣根さんも少しは他の女の子の相手をしてもいいですよ。だって可哀想ですから、わたくしばっかり幸せになったら。垣根さんもそう思いますよね?」

 

「……うんっ! そうだなっ!」

 

(うわぁぁ…)

 

帆風はそう早口で4分間話し続け花の様な笑顔を垣根に向ける、垣根は取り敢えず相槌を打った

 

「という事で、結婚しましょう結婚しようよ結婚してして結婚しなきゃ結婚しなさい結婚するべき結婚しやがれ結婚結婚結婚結婚結婚結婚結婚結婚結婚結婚結婚結婚レッツマリッジ!わたくし垣根さんのためなら絶対なんでもします!垣根さんと一緒に必ず幸せになります!!」

 

「え!?ちょ…!!?これどういう状況!?ドッキリ!?ドッキリだよな!?そうだと言ってくれ!何処かにカメラを抱えたアー君とかドッキリ大成功て書かれた看板を持った当麻が隠れてるんだろ!?もういいから!早くネタバレしてくれ!いやほんとお願いします!」

 

状況が理解できない垣根に帆風は何処から取り出したのか文化包丁を逆手に…つまり刃の方を手に持って垣根に襲いかかる。それを乱数が後ろから羽交い締めにする

 

「ストォォォォォォォォップ!!はい少し落ち着きましょうねお嬢ちゃん!」

 

「離してください!」

 

「ダメだ!ヤンデレを離す訳にはいかねえ!」

 

「ヤンデレ?そうですね、確かに恋の病をわずらっていますわぁ」

 

「目がヤバイよ!レイプ目なんてレベルじゃねえぞ!」

 

レイプ目通り越して深淵を覗き込んでいるかの様な深き闇の如き瞳を見ながら乱数は叫ぶ、ヘラヘラと帆風は笑いながら天衣装着(ランペイジドレス)のパワーで乱数を吹き飛ばす

 

「さあレッツマリッジ!」

 

「……に、逃げるてばよ!」

 

「逃がしません!」

 

垣根は三対の翼を広げ大空へと飛翔して音速を超える速度で逃げる。帆風もニッコリと笑いながら爆走し地上から垣根を追いかける…その光景を見て乱数は頭を抱える

 

「……垣根、初めてお前に同情してやるよ」

 

 

 

加群の被害者全員を見つけ終わり、乱数は疲れ切った顔でタピオカミルクを飲む

 

「疲れた…俺の折角の一日が加群の所為で台無しだぜ…絶対あいつ殴る」

 

そう言いながらもタピオカミルクをストローで啜り思い出に耽る乱数、昔の自分なら他人の為にこんな事をするとは露にも思わなかっただろう

 

「……変わったもんだな俺も」

 

昔の彼はオリンピックの祭典を観てカビを使った集団陶酔・洗脳を考える様なヤベー奴であった。それで自分の目的は世界平和なのだから笑えない。今思えばどうしてオリンピックの祭典で集団洗脳を考えるんだよ、マジで頭イかれてるだろ昔の俺、と考えるほどだ

 

「ま、ウート君や認めたくはねえが垣根の野郎のお陰で俺が変わったのは事実だ…こっちの方が楽しいしな」

 

因みにウートガルザロキとは初対面の時に同じ幻覚使いとして勝負した事があり、その先に「気持ち悪い汗だくだくの太ったオッさんにハグされてディープキスされる」という幻覚をウートガルザロキにかけて自分の勝利…だと思ったのだがそれは実はウートガルザロキが見せた幻覚でウートガルザロキも同じ「オカマに貞操を奪われる」という幻覚をかけられ返り討ち…されたと思わせて乱数がウートガルザロキに「タコに触手責めされる」幻覚を見せ今度こそ勝利…と思わせてウートガルザロキは「スライムに身体を拘束されて快楽堕ちされる」幻覚を見せ逆転勝利…と見せかけて乱数が…と無限ループに陥り相打ちになった過去がある。なお最終的にオティヌスが二人をバレーボールにする事で事なきを得た

 

「まあ、優しい乱数ちゃんは細かい事は気にせず許してやるとしますかね」

 

乱数はそう言って笑い、そして彼は夕映えの街中を一人歩くのだった

 

 

 

 

 

後日、乱数は厄介事を押し付けた加群にパイルドライバーをお見舞いさせ首の骨をへし折った。他の木原達には食事に乱数が培養したカビを仕込んで下痢を起こさせ半日ほどトイレに籠らせた

 

「いい話で終わると思った?チッチッチ、乱数ちゃんがいい話で終わらせるわけねーだろバーカ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ここで元ネタを解説したいと思います。弱酸性ミリオンアーサーを知らない人もいるでしょうしね

ミコっちゃんが上条さんとみさきちをレロレロする…これは弱酸性ミリオンアーサーに登場する技巧アーサー(元々は拡散性ミリオンアーサーのキャラで拡散性ミリオンアーサーのシナリオを考えている人はかまちー)が弱酸性では下着を食べたり女子にセクハラをするのが元ネタ。因みに技巧アーサーの声優はミコっちゃんと同じ中の人

一方さんがドMになったり鶏になる…元ネタは富豪アーサー(元々は乖離性ミリオンアーサーのキャラ。ドMではない)。弱酸性ではドMだったり変態だったりホモだったりする。そして中の人は一方通行さんと同じ中の人

インデックス大納言…元ネタは妖精エル(元々は拡散性ミリオンアーサーのキャラ)が筋肉ムチムチになった姿 エル大納言。やっぱり中の人はインデックスと同じ声優さん

ヤンデレ縦ロールちゃん…これは弱酸性ではなく少年ジャンプで連載されていた漫画 めだかボックスの過負荷の花こと江向怒江ちゃんのセリフを改変したもの、なんでもBLEACH20話分の会話量で早口でも四分半言い終わるのにかかるとか…それを2ページに収める原作者さんすげー、鬼滅の刃の半天狗の過去を2ページで理解させるワニ先生並みに凄い。で、この怒江ちゃんは昔ながらのヤンデレで滅茶苦茶可愛いくてめだかボックスで作者が一番好きなキャラ。なおこれだけ弱酸性と関係ない

今回も笑ってもらえましたか?次回より理想送り編へと突入するので暫くシリアスが続くかと…でも早く書けるか不安なので更新が遅くなるかも…

次回もお楽しみに!


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空中要塞

理想送り編…スタートです。この作品は常にギャグとシリアスが交差する時 物語は始まるスタイルで書いてますが…今回はギャグとシリアスが入り交じってます。ただシリアスの度合いの方が高いかも

そして今回は上里勢力のあの子が登場、それに怒涛の展開が待ち受けています


「ふむ……上条当麻がロシアで回収した羊皮紙(・・・)…ロシア成教の手でまとめられた不出来なもの…だがこれは垣根帝督と帆風潤子の成長に役に立ちそうなアイテムだ…利用させてもらうか」

 

窓のないビルでアレイスターは誰に言うでもなくそう呟いた。そんなアレイスターとその娘 リリス以外誰もいない場所に誰かの足音が響く

 

「やあアレイスター、やけに生き生きとしているね」

 

「……冥土帰し(ヘブンキャンセラー)か」

 

「これも垣根君のお陰かな?昔よりも正規に満ち溢れた目をしているよ」

 

「……ふ、そうかもしれないな」

 

その人物の正体は冥土帰しだった、彼はにこやかにアレイスターに笑みを向けるとアレイスターも笑みを返す

 

「で、何の用だ?私はこう見えても意外と忙しいのだが」

 

約束していたもの(・・・・・・・・)が出来たから持ってきてあげたんだよ」

 

「……ほう」

 

アレイスターは目を細めて冥土帰しを見つめる、冥土帰しは右手に持っていた鞄から6個のチョッカーを取り出しアレイスターに渡す

 

「前から頼まれていた演算補助デバイスだよ、いきなりもう一つ作れと言われた時は焦ったが…漸く完成したよ」

 

「おお、漸くか…」

 

演算補助デバイス、超能力者達の脳波をミサカネットワークにリンクさせるための変換器だ。超能力者達の能力を更に強化する為に垣根が提案した物であり以前から冥土帰しに作らせていたのが漸く完成したのだ

 

「バッテリーを作るのに時間がかかってね、後脳波をリンクさせるのも難しかったよ。後能力を全力で使っても三十分は持つ筈だよ」

 

「三十分か…長いな」

 

「まあ医療目的じゃなくて戦闘用に作った物だからね。さてと、僕は用事が済んだ事だし帰らせてもらうよ」

 

冥土帰しはそう言うと鞄を持って窓のないビルから立ち去ろうとする

 

「ああ、お疲れ様だった。報酬は約束通り「ビキニ服を着たナース」の写真を君の机の引き出しに……む?」

 

「ふむ、ビキニ服を着たナースか…どんな写真なんだろうね……どうかしたかいアレイスター?まさか報酬が惜しくなったのかね?」

 

「そんな訳ないだろう…ただ、一つ気になることが出来ただけだ」

 

「気になること?」

 

アレイスターが怪訝な顔をしながら口を開く

 

「……魔術師が学園都市に侵入した」

 

 

 

「チッ、クソガキが…何が「つぶつぶが飲みたいの!てミサカはミサカは可愛い外見を活かしておねだりしてみたり!」だよ」

 

「ははは、まあいいじゃないか先生」

 

ザクロつぶつぶジュースが飲みたいとだだをこねた打ち止めの要求に応えるべく、一方通行とエステルは真夜中の道を歩いていた

 

「所でこのザクロつぶつぶジュースとやらは美味しいのか?」

 

「巷では大人気なンだってよ」

 

「ほう!そうなのか!なんだか私も飲んでみたくなってきたな!」

 

「……また今度お前の分も買ってやンよ」

 

「やったー♪」

 

そんな軽い会話を続ける二人、そんな会話をしている二人だが自分達の背後を誰かがゆっくりと後をつけているのには気づいていた

 

「……先生」

 

「…ああ」

 

バッと勢いよく背後を振り向く一方通行とエステル、一方通行は右手を突き出し風を操り背後の人物を攻撃する。だがその人物は軽く跳躍するだけでそれを回避する

 

「……へ、気づいてたんだね。びっくりだよ一方通行ちゃん」

 

「ちゃん付けは気持ち悪ィな…で、誰だオマエ?」

 

「私は去鳴(サロメ)、上里翔流の妹だよ」

 

「……ンだと?」

 

襲撃者の姿は褐色の肌に半透明のレインコートを二枚重ね素足で歩くツインテールの銀髪を円盤状に巻き束ねた少女だった

 

「ああ、勿論義理のね」

 

「去鳴……聞いた事があるぞ…あの終末思想カルトの教祖及び教徒達を一人残らず鏖殺し、数多の凶悪犯罪者集団を殺してきた存在…『絶滅犯』 去鳴…そうかお前が…」

 

「おー、科学に疎い魔術師にも私の名は知れ渡ってるのか。嬉しいなぁ」

 

「……上里のクソ野郎の命令で学園都市の奴らを皆殺しにでもしにきたのか?」

 

絶滅犯、警察にすらターゲットにする者達の性質やあまりの余罪の多さから「捕まえた方が損をする」と匙を投げられ警察すらも捕まえようとしない凶悪犯罪者である。確かいつか前にマスメディアから抹消された筈だが今でも調べれば容易に検索に引っかかるほどの知名度を持つ…そんな絶滅犯が一方通行の目の前に現れ彼は苦虫を噛み潰したような顔で去鳴を睨む

 

「やだなー、なんで罪もないパンピーを殺さなきゃなんないのさ。普通に無抵抗のパンピー襲ったってつまんないでしょ?せっかく手の中に猟銃があるのに、牧場で呑気に草食ってる羊を狙うなんてマナー違反だよ。それは単なる動物虐待っしょ」

 

「……イかれてンな」

 

「まあね、でもそれは一方通行ちゃんや他の超能力者も一緒でしょ?皆頭がイカれてる」

 

「先生を…先生の友達を侮辱するな!」

 

彼女にとっては魔術師や犯罪者以外の一般人を狙うのは動物虐待(・・・・)と同じなのだ、去鳴は自分も頭がイカれているが一方通行達も同じだと笑いエステルが怒りをその顔に染め上げる

 

「まあそンな事はどうでもイイ、オマエは何しに俺らの目の前に現れた?」

 

一方通行がそう尋ねると去鳴はニッコリと笑ってこう告げたのだ

 

「お願いしにきたんだ。私のお兄ちゃん…上里翔流を私と一緒に思い切りぶん殴ってくんない?」

 

「「…………はっ?」」

 

一方通行とエステルは数秒間絶句し呆けた声を口から出したのだった

 

 

 

「て、訳でこいつをここに連れてきた」

 

「はぁーい超能力者の皆、私は去鳴。まあ気軽に話しかけてきてよ」

 

「「「「「いや喋れるか!」」」」」

 

「あ、このポテチまいうー」

 

「垣根さんはちゃんとことの重要さに気づいてください」

 

一方通行は上条の家に垣根達を集め去鳴を紹介する、軽くピースをしながら笑う去鳴にツッコミを入れる上条と美琴、食蜂、麦野、削板。垣根は上条のポテチを勝手にパーティー開けにして貪っており帆風がため息を吐く

 

「縦ロールちゃん、ため息すると幸せが逃げるらしいよ」

 

「馴れ馴れしいですわね貴方…」

 

去鳴もポテチを食べながら横に寝転がりながらそう言い、帆風がそれを見て状況が分かっているのかと呟く

 

「で、お前は俺らと一緒にあのハーレム否定野郎こと上里のクソ野郎を倒そうと提案しにわざわざ学園都市に潜入したてことか?」

 

「うんそうだよ、あのクソ馬鹿お兄ちゃんが順当に堕ちていくのを見逃せなくてね。かといって私の言うことは聞かないだろうし言おうと思っても他の売女に邪魔されるからね」

 

仲間…と言うより上里のシンパと言うべき女子達の事を売女と去鳴は貶すように言う。それを聞いて上条は引きずったような笑みを浮かべる

 

「ば、売女て…仲間なんだろ?」

 

「少なくとも私はあいつらの事を仲間だなんて思ったことはないよ。私にとっては自分の初恋の相手(お兄ちゃん)を狙うライバルであり、そんな馬鹿野郎(クソ馬鹿お兄ちゃん)が間違った考えを起こそうとしてるのに止めようともしない砂糖漬けと一緒にされるのは心外っしょ」

 

「ひ、酷い言い様だな…」

 

去鳴にとって絵恋や宛那達は自分と同じ男性(上里)を狙う恋のライバルであり、自分の復讐の為に魔神や関係のない学園都市を狙う馬鹿(上里)に盲目的に従う馬鹿という認識だ。それらと一緒にされるのは不愉快だと眉を顰め去鳴は少し不機嫌そうな顔をする

 

「まあ、いいや。話を戻そうか。私に何とかお兄ちゃんを止めたい、だから貴方達と協力してお兄ちゃんの目を覚まさせてやるんだ。お前のしてる事は間違ってる、てね」

 

「……成る程ね」

 

去鳴は真面目な顔にしてなんとか自分の義兄を止めたい、と真摯に垣根達に語りかける。その目は嘘を言っているようには思えない…そう垣根達は判断した

 

「……どうする?」

 

「はっ、どうするも何も…オマエの中じゃ答えはもう決まってんだろ?」

 

「ま、私もお前らと同意見だけどな」

 

「私は先輩の考えに従うわ」

 

「私も右に同じなんだゾ☆」

 

「当然俺もだ!」

 

「やれやれ…ここには本当にお人好しが多いな」

 

「わたくし達もですわよ垣根さん」

 

垣根達の考えは同じだった、彼等は全員微笑みを浮かべ去鳴へと笑いかける

 

「……皆」

 

去鳴が頭を下げようとした次の瞬間

 

『だが断る』

 

「いやそういうネタはいいから!」

 

全員ジョジョ顔になって某作家のセリフを言い、去鳴はテーブルに思い切り頭をぶつける

 

「ねえ私本気で言ってるの!ネタでもギャグの前振りでもなんでもないの!何でそれが分かんないかなこのお笑い芸人達は!?」

 

「やられたらやり返す、ギャグ返しだ」

 

「意味が分かんないよ!あぁ!本当に超能力者は異常者揃いだよ!」

 

垣根がドヤ顔で意味の分からない言葉を言い去鳴がツッコむ。絶滅犯などと恐ろしげな異名を持っている割に彼女はツッコミ役だった

 

「まあ親睦会を含めて…皆でカラオケ行こうぜ!」

 

「ヘ○ラをやっつけろ!を歌うわよ!」

 

「ヘ○ラ ヘ○ラ ヘ○ラ ヘドロの中から生まれたヘ○ラ〜♪トンボも 鳥も 皆○し〜♪空も野原も全滅だ〜♪」

 

「何エゲツない歌詞を楽しそうに歌ってるの!?てかヘ○ラをやっつけろ!とか懐かしいなオイ!」

 

食蜂が何処から取り出したのか、カラオケのマイクを手に取りながら某日本一爽やかに皆殺しと歌う歌を歌い又しても去鳴がツッコミを入れる

 

「俺サマの歌を聞きやがれェ!!!」

 

「オマエらのハート、溶かし尽くしてやるぜえぇええー!」

 

「根性!」

 

「それ明らかに違うスピンオフだよね!?」

 

某とある偶像の様にマイクを片手に歌い始める一方通行達、もうツッコミ切れないよと去鳴は肩で息を吸う

 

「たく、ここにはまともな奴らがいやしねえな」

 

「全くですわ」

 

垣根はヒゲメガネをかけながらバランスボールに乗りながらピロピロ笛を3本咥えていた、そのまま息を吐くとピーと音を立てながら紙筒が伸びていく。そして両手に持ったスリンキーを両手で端を持ち遊んでいた。帆風はそんな垣根を見て頬を赤くしてうっとりしていた

 

「……」

 

去鳴の中の何かがキレた。去鳴はスポーツバッグに大量な武器を詰め込んである中の一つのチェーンソーを取り出し鎖を回転させる。そしてチェーンソーを超能力者達に向ける

 

「外的御供、我は海神マナナンに武具捧げ彼の恩恵求める者なり」

 

パキンとチェーンソーを素手で破壊した、それにより去鳴の術式 「外的御供」が発動しチェーンソーの特性と破壊力が彼女自身に上乗せされる

 

「……さ、去鳴さん?」

 

「……ああ、安心して。これはツッコミだから」

 

ニッコリ笑顔で手刀を振り上げる、慌てて全員がそれを避けると手刀が床に当たる…それだけで上条の部屋の窓ガラスが衝撃波だけで割れ床に亀裂が入った

 

「死ねぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

『絶対ツッコミじゃねえ!』

 

殺意度マックスのツッコミが超能力者達を襲う

 

 

 

黄金夜明が現在活動の拠点としているのは第三学区の高級ホテルの最上階。最上階全てがメイザース達だけの貸切であり今の黄金夜明の拠点なのだ。そこでとある人物達(・・・)の尋問を行なっていた

 

「そろそろ話したらどう?蛇神宛那、獲冴」

 

「「…………」」

 

尋問しているのはダイアン=フォーチュン、だんまりを決め込んでいるのは以前削板が倒した上里勢力の魔術師 蛇神宛那と麦野が倒した獲冴だった。獲冴は腕を組んだままお前らに喋る事など一つもないと言わんばかりにダイアンを睨みつけ宛那は深く目を閉じ瞑想をしているかの様にピクリとも動かない

 

「……はぁ、私じゃダメみたいね」

 

ダイアンは自分ではダメだと首を振ると席から立ち上がり、部屋から一旦出る。そして部屋の外に出ると待機していたメイザースとオティヌス、脳幹の顔を見る

 

「やっぱり私じゃダメだったわ…後は頼むわ」

 

「いいだろう、ここから先は俺達に任せろ」

 

宛那達は椅子に座らされ魔術的な記号を記したロープで椅子に拘束されている。束縛した魔術師の魔力を封じてあるので逃げられる心配はない。メイザースは扉を開け他の二人と共に部屋に入る

 

「誰が行く?」

 

「私に任せておけメイザース。この人情派刑事 オティヌスに万事任せろ」

 

「いや刑事じゃないよね君?」

 

人情派刑事 オティヌスがマントを翻しながら椅子に座り、二人の前に二つの丼を置く

 

「まあ腹が減ってんだろ?食えよ」

 

「魔神……は、刑事ドラマの見過ぎだろ。カツ丼で私達がゲロるとでも思ってんのか?」

 

「誰がカツ丼だと言った?これはカツ丼よりも美味いものだぞ」

 

「……何?」

 

そう言ってオティヌスはゆっくりと丼の蓋を開ける…そして丼の中身は…

 

「さあ食え、ほかほかじゃがバター丼だ」

 

「「じゃがバター!?」」

 

「あいつ…あの馬鹿、じゃがバターを出す刑事がこの世の中のどこにいる」

 

「いや彼女は刑事じゃないよね」

 

じゃがバターだった、流石じゃがバター大好きオティヌスさんである。それを見てメイザースと脳幹が軽く頭に手をやった

 

「さあ食え、美味いぞ」

 

「「ぶふ!?」」

 

「やってる事が非人情派なんだけど」

 

そう言ってオティヌスは二人の頭を両手で掴み、丼に二人の顔面を埋める。ふがふがと苦しみ悶える獲冴と宛那、それを見てニコニコと笑うオティヌス…因みにこの行動は悪意などなく純粋に百%の善意からの行動だ

 

「どうだ?じゃがバターは世界一の美味さだろ?今ならこれにケチャップかマヨネーズをかける権利を与えてやろう」

 

「ぷはぁ!?……いるかこんな烏の餌!巫山戯てんじゃねえぞこのクソ魔神!」

 

「はぁはぁ…流石に…これはない」

 

笑顔でケチャップとマヨネーズもいるかと笑うオティヌス、二人はざけんなと丼から顔を上げオティヌスを睨む

 

「はぁ、退けオティヌス。お前のじゃがバター好きを他人に押し付けるな。ここからは俺がやる」

 

メイザースはそう言ってオティヌスをどかしで自分が椅子に座る。そしてスタンドの光を二人に浴びせる

 

「いい加減吐いたらどうだ!上里に関する情報を言わねえとアレだぞアレ…処すぞ!」

 

「は、下手くそだな。全然怖くないぞ」

 

「……もしかして君達刑事ドラマにハマってたりする?」

 

テレビでよくありそうなチンピラみたいな脅しに脳幹はため息を吐く

 

「さっさと吐けよ!俺はなぁお前らに構う時間などない!昨日はぶっ潰れるまでウェスコットと飲んでたらミナから張り手食らうし、小遣い全部競馬で使ってスッカラカンになったからミナの財布から一万抜こうと思ってそれがバレてミナにそげぶされるわ、ミナのへそくりでエアーガン買ったら頭突きされるわ…これも全部お前らのせいだ!」

 

「人のせいにすんなよ!全部お前の自己責任だろうが!」

 

「……私が言うのもなんだが…下衆だな」

 

メイザースが妻に張り手を食らったり、そげぶされたり、頭突きされたのは宛那達のせいだと叫ぶと二人はお前の自業自得だよと睨み返す

 

「今日もミナに「お前最近太った?」て言ったらミナがゴミ虫を見る目で俺を見て俺の下半身にある息子を思い切り蹴ったんだ…これも全部お前らのせいだ!」

 

「人のせいにすんじゃねえよこのロクでなし!」

 

「ロクでなし魔術師と妻から渡された離婚届(アカシックレコード)。なんつって」

 

女性に言ってはいけない言葉ランキング一位の言葉を言ってしまい、ミナに股間を思い切り蹴られてしまったメイザース。それすらも宛那のせいにして獲冴がブチ切れ寸前になる

 

「ああそうです!俺は好きになった女に迷惑しかかけれないまったくダメなオッさんですよ!略してマダオ!」

 

「おい、宛那達じゃなくてあいつが吐いてるぞ」

 

「……」

 

宛那達が吐くのではなくメイザースが自分で自分の事を暴露する、その光景にオティヌスと脳幹は冷たい目でメイザースを見る

 

「俺だってな頑張ってるんだよ!パチンコや競馬で一山当ててミナをディナーに誘おうとか考えてんだよ!でも当たんねえんだよ!全部外れるんだよ!偶にヤケクソになってナンパするけどいつもミナに妨害されて折檻されるし…俺の人生てなんなんだよ!偉大な魔術師?んなもんで妻を養えたら苦労はしねえよばーか!頑張って小説を書きました!投稿しました!でも人気は減るし評価は最近辛辣だし心が挫けそうです!人気な作家の文章を見て自分なりにアレンジしても無駄でした!やっぱり一流には敵いません!どうしたらいいんですか!?」

 

「もう途中からメイザースの言葉じゃなくなってるね。別の作者(人物)の気持ちの暴露じゃないか」

 

大人気なく大泣きするメイザース、それを見てドン引きの獲冴だが宛那は一息ついて口を開く

 

「そんな事はないのではないか?」

 

「!?」

 

「貴方がそんなにダメで甲斐性なしでクズなマダオならそのミナとかいう女は貴方を見捨てているはずだ。なのに未だ見捨てられない…それはミナとやらも貴方を愛しているからではないか?」

 

「………ッ!」

 

「だからそう卑下するな、貴方に何かしらの魅力があるからこそその女は見捨てないのだ…そして今度さりげなくデートに誘うといい。それでミナとやらの期限も治るはずだ…そして小説に関しては……うん、諦めろ。他の方とは年季も才能も違うのだ。つまり要約すると大して面白くないつまんねー作品しかかけない奴という事だ」

 

宛那のその言葉にメイザースは深い衝撃と感銘を受けた、そして清々しい顔で席を立ち宛那に一礼する

 

「………ありがとうございます」

 

安らかな顔でお礼を言いオティヌスと脳幹の近くへと戻るメイザース、その顔はいつになく綺麗で…オティヌスはそんなメイザースを見て微笑む

 

「何懐柔されてるんだ!」

 

「ひでぶ!?」

 

ドロップキックを炸裂させるオティヌス、メイザースは派手に吹き飛ばされ壁に大激突。首が曲がってはいけない方向に曲がるが気にしない

 

「全く君達は……仕方ない私が行くとしよう」

 

脳幹はトコトコと歩き椅子の上に登る、そして葉巻を咥えながら宛那達の瞳を見つめる

 

「さあ、話してもらおうか。上里翔流の目的について」

 

「は、誰が話すかよ犬っころ。人語が話せても所詮は畜生みたいだな。魔神を匿う外道共と一緒にいる時点で里が知れてる」

 

「……外道、か。そうかも知れないな。私もかつては数え切れないほど命を殺めた…外道と呼ばれても仕方ないかも知れない」

 

獲冴の言葉を否定せず自分の事を外道と称する脳幹…だが彼は再び口を開く

 

「だけど全員が外道ではない、垣根帝督や帆風潤子、その他の超能力者。そして娘を救う為に運命に抗ったアレイスター、この学園都市に住まう生徒達…彼ら彼女らは決して外道などではない…私の事はいくらでも侮辱しても構わない。だが我が友とその親友、そして学園都市を馬鹿にする事は温和な私でも…許さないよ」

 

口調は穏やかだがその言葉の奥には揺るぎない意志があった。自分の親友(アレイスター)とその友、そして学園都市を馬鹿にするのは許さない…獲冴はそれに気圧される

 

「……そうだな、我らも上里様…いや上里()を馬鹿にされたら激怒する…学園都市を、貴方の友を侮辱した事、獲冴に代わって謝罪しよう」

 

気圧された獲冴の代わりに宛那が頭を下げる、そして彼女の闇色の瞳がまっすぐ脳幹の瞳を見つめ…口を開ける

 

「ずっと疑問に思っていた。自分達は正しい事をしているのかと。だが言ってしまったら上里君に嫌われるかも知れないと恐れ言えなかった…だからこの様な暴走をさせてしまったのかも知れない」

 

「………」

 

「だから話そう、上里君の罪をこれ以上増やさない為に…私達の…上里君の計画全てを」

 

「!?あ、宛那!?テメェ裏切る気か!?」

 

宛那は怖かったのだ上里との絆が絶たれる事を、だが削板の言葉を聞いて殴れた時気づいた。恐れていては何も変えられない、相手に嫌われる覚悟で当たらないと何も変わらないのだと…宛那はこれが裏切りと知りながら計画を話すと告げ獲冴が逆上する

 

「煩い黙っていろ小娘」

 

「がぁ!?」

 

宛那の細い首に噛み付いて噛み殺してやろうとする獲冴、それをオティヌスは片手で獲冴の頭を掴み机へ頭をねじ伏せ…その机を貫通させ部屋の床へとめり込ませる

 

「暫くそこで頭を冷やしているといい…で、その計画とやらは何だ小娘…いや蛇神 宛那」

 

「……ああ、上里君が考えた恐るべき計画。それは…」

 

宛那が話そうとしたその瞬間、脳幹の携帯が鳴り響く

 

「……取ったらどうだ?」

 

「……申し訳ない」

 

脳幹は背中のアームで携帯を掴み通話ボタンを押す

 

「何だね唯一君。今は君に構っている時間はないの…」

 

『違います先生!外を…学園都市の南側の外を見てください!』

 

「……外?」

 

唯一の焦った声が響きそれを聞いた脳幹は首を傾げる、メイザースは何事かとテラスへと続く部屋の扉を開けテラスへ出て南側の空を見上げる…そして彼は目を見開く

 

「……何だあれは」

 

それは巨大な空飛ぶ要塞だった、外見は建築様式の違う、複数の聖堂や神殿をかき集めて作られた様に見える石材等で構成され大砲やキャノン砲が剥き出しになった要塞…ロシアで垣根達が見た上里の浮遊要塞である

 

「……Hanging Gardens of Babylon」

 

「……今何と言った?」

 

「Hanging Gardens of Babylon。それがあの浮遊要塞の名だ」

 

Hanging Gardens of Babylon…即ちバビロンの空中庭園。だが実際のバビロンの空中庭園とは違い本当に空を飛んでいた

 

「バビロン…神の門。まさかあれはメソポタミア神話をモチーフにした魔術要塞…」

 

「それだけではない、浮遊能力は要塞下面に200~300個ほど設置されたガスタンク状の球体に溜め込んだ魔術的意味を持つガス…つまり科学と魔術を融合させた要塞だ…上里君はあれで学園都市を破壊する気だ」

 

「…具体的にはどうやってだ?」

 

「あの要塞を学園都市にぶつける(・・・・・・・・・)。至極簡単かつそれだけで学園都市を滅ぼしてしまう恐ろしい一撃だ」

 

上里はあれを学園都市にぶつける気なのだ。あの要塞は普通のガスで浮遊しているのではない。魔術的な意味を持たせた魔術と科学が融合して誕生したガスだ…当然爆発はガ通常のス爆発とは比べ物にならない。そしてあれだけの巨大な建物が学園都市にぶつかればそれだけで学園都市は壊滅してしまう…それはまさに単純かつ最強(シンプル・イズ・ザ・ベスト)。シンプルだからこそ防ぐのが難しい恐るべき兵器なのだ

 

「あれこそが上里翔流の秘策……予想以上に桁外れだな」

 

脳幹がそう呟く、あれを破壊するのは厳しいと…獲冴は浮遊要塞を見て笑った

 

「これで大将の悲願はまた一歩近づくんだな…これで学園都市と復讐対象の1人である魔神も殺せる…でも、私も大将のために働きたかったな」

 

Hanging Gardens of Babylonの激突に巻き込まれ、自分も死ぬかもしれないというのに獲冴は自分の心配よりも上里の役に立たないことに腹立っていた…

 

「大丈夫だよ獲冴、私が貴方達を助けに来たから」

 

「!?その声は…琉華!?」

 

いつの間にか部屋の中に海賊帽子にミニスカートを着用し黒薔薇をデザインしたファッション眼帯をした少女 豊山琉華(とやまるか)が立っていた。驚くメイザース達をよそに彼女は手に持ったカトラスで獲冴と宛那の縄を切り裂き二人を自由にする

 

「上里君の指示で助けに来たんだよ」

 

「大将が…やっぱり私は大将にとって必要な女らしいな!」

 

琉華達の足元に魔法陣が描かれる。それが転移の術式である事にメイザースは即座に理解した

 

「その魔法陣…まさかレグバ=アティボンか!?」

 

「正解♪てな訳でばいなら〜。もう二度と会う事はないと思うけど」

 

ポンと音を立てて三人はこの部屋から姿を消した

 

「逃したか……」

 

脳幹は苦虫を噛み潰したような顔をする、だがHanging Gardens of Babylonを黙って見ていたオティヌスはふと言葉を漏らす

 

「……空が…変わっていく」

 

Hanging Gardens of Babylonを中心として何らかの魔法陣が広がっていく、それはどんどん広がっていき明るかった空が暗闇へと変貌していく…夜だ。太陽は沈み月が空に佇む。昼夜の逆転。通常ではあり獲ないその現象に三人は心当たりがあった

 

「……神の力(ガブリエル)か」

 

ガブリエル、垣根達と二度戦った天使…今は悪魔だがそれが三度又しても現れたのだとメイザースは理解した

 

「……ガブリエルだけじゃない…見ろよ」

 

オティヌスが指差したのはHanging Gardens of Babylonの要塞下面から溢れ出る白い何か(・・・・)だ…その白い何かは学園都市へと迫って来ている

 

「……上里翔流め、本当に戦争を起こす気なんだな」

 

 

 

「……ねえ、初春。あれ何?」

 

「?どうかしたんですか佐天さん?」

 

初春はパフェを食べる手を止めながら佐天が指差した方を見る、南の空にとても巨大な浮遊する建物があった

 

「……学園都市の新しい技術のパフォーマンスか何かでしょうか?」

 

「そうなのかなぁ?まあいいか、取り敢えず写メでも撮ろう」

 

そう言って佐天が携帯を取り出し浮遊する建物を撮ろうとした時だった、彼女は気づいてしまったのだ。その建物の下面から何か白い物が溢れ出ている事に

 

「………あの白いのもパフォーマンスなのかな?風船?それにしては大き過ぎるし…何かの機械とかかな?」

 

そう佐天は学園都市の住人らしい言葉を呟く…だがそれはすぐに覆される。その白い何かが近付いてくれば来るほどそのシルエットがはっきりしてくる…それは人型だった

 

「……え?人間……違う」

 

それには()が生えていた、佐天の脳裏に過るは学園都市の超能力者 第一位…垣根の翼に似てるなぁと思うがあの超能力は垣根ただ一人のものだ。なら第一位の力を模した人型のアンドロイド?違う、明らかに有機的でとてもロボットには見えない

 

「……天使」

 

隣にいる初春がそう呟いた、案外的を射ているかもしれないと佐天は思った。街中にいる何人かは写メを撮っている…だが佐天と初春はいつの間にか冷や汗をかきはじめていた

 

『私達は実はね魔術師なんだよ!るいことかざりは友達だから話すけど他の人には言っちゃダメなんだよ!』

 

何故だか分からないが佐天と初春の友人の言葉を唐突に思い出した。その直後だった、人型の一体は手に持った光り輝く剣の先をビルへと向ける…そして剣先から光線が放たれそのビルの屋上から3階までを派手に破壊した

 

「「!?」」

 

最初は唖然とした顔でその爆破されたビルを見ていた人々、次にその顔を恐怖に染め蜘蛛の子を散らすように逃げ始めた

 

『na異端lgofk者onvjy鏖nynvj殺dfjy』

 

人型…天使達はそう呟くと学園都市の至る所に降り立ち手に持った剣を振るい建物を破壊し人々に刃を向ける。弓を持った天使達は上空から人間達を射殺そうと矢を番える

 

「に、逃げよう初春!」

 

「は、はい!」

 

佐天と初春も顔色を変えて逃げる、だがそんな二人の目の前に一体の天使が降り立ち二人の行く道を遮った

 

「「………ぁ」」

 

「uvt異端oasl死nlkv」

 

無情にも天使が持つその剣が振り上げられ…そして二人を斬り裂く為に振り下ろされるのだった

 

 

 

上里翔流はHanging Gardens of Babylonのとある部屋でモニター画面に映った天使達の暴虐を眺めていた

 

「これでいい、魔神を匿う学園都市はその文明ごと消失する。そしてオティヌスを殺せば終わりだ」

 

彼の目は無感情そのものだった、学園都市の人々が死のうとも彼の心は揺るがない…魔神に復讐する。ただそれだけの信念で彼は動いていた

 

「さあどうする垣根帝督、そして上条当麻。きみ達が愛する学園都市が天使達に蹂躙されているぞ」

 

そう言って上里は口元を歪めるのだった。まだ学園都市を襲う天使達は序の口に過ぎない、上里はそう心の中で呟きながら映像を眺めるのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




天使の軍団…襲来(白目)でもご安心を、ミカエルとかウリエルとか名前がある天使は一体しかいないから…それでも人の手で倒すのはきつい、核兵器じゃないとあんまり効果がない、大能力者クラスじゃないと勝てない…うん数の暴力だこれ(白目)、天使軍団の実力を簡単に例えるならソルジャーレギオン+ギャオス・ハイパー+ドビシ+インペライザーですね…良かった、ギャラクトロンは混ざってない(それでもハード)

あのみさきちが歌っていた歌ですが…すごくツッコミどころが満載です。気になった方は調べてみて下さい

そしてまたお前かガブリエルぅ!もう3度目だよこいつ!原作よりも登場回数多いな!?本当にいい加減にしろよ!そして佐天さんと初春の運命は!?死んだらダメだよ!佐天さんは無能力者の唯一の希望なんだ!人気ランキングでも上位なんだ!初春も死んだらダメだよ!全国のファンが泣いてしまう!だから絶対に死んじゃダメだ!次回 佐天&初春死す! デュエルスタンバイ!(おい)

さあどうなら次回…お楽しみに!


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それでも町は回ってる

今回はていとくん達大活躍…ではなく学園都市の色んな人達にスポットライトが当たる予定。多分登場人物は過去最高で多い、だから作者もワケワカメ状態です。なおこの章はほぼオールキャストの予定です

強いのは主人公やその仲間達だけじゃない、学園都市は天使なんかに絶対に負けない…そんなイメージで書きました。読みにくかったらすみません…なおシリアスで書きましたが少々ギャグ染みてますのでご注意を



浮遊要塞 Hanging Gardens of Babylonから天使が送り来られる数分前、垣根達は去鳴の怒涛のツッコミ(物理)から逃げ回っていた。その時にふと空を見上げ空に以前ロシアで見た浮遊要塞を見つけたのだ

 

「あれは……あの時の!」

 

「ッ!Hanging Gardens of Babylon!?」

 

上条が上里が乗って逃げたあの要塞だと目を見開き、去鳴も要塞を見て険しい顔をする

 

「あのクソ馬鹿お兄ちゃんめ…もうあの計画を実行したのか!」

 

「おい去鳴、何だその計画てのは」

 

「……さっき話そうとしてたんだけどね、君達がボケるから話せなかったんだよ」

 

白い目で麦野を見つつ去鳴はHanging Gardens of Babylonについて、そして上里の性格について話す

 

「クソ馬鹿お兄ちゃんの計画はまず捕らえたサーシャ=クロイツェフからガブリエルを召喚し、天界の門を開く事で天使達を召喚する…ミカエルとか聖書に記される天使達は呼び出せないけど無数の天使達は呼び出せる筈だよ」

 

「またガブリエルか…しつこい奴だな」

 

「天使達の戦闘能力は…まあ超能力者達からすれば雑魚同然だけど…数が多いんだ」

 

「……多いてどれぐらいなんだ?」

 

「多分億はいくんじゃないかな」

 

「億!?万とかじゃなくて億の単位かよ!」

 

サーシャを媒体としたオリジナルの術式でガブリエルを召喚し、そのガブリエルに天界の門を開かせ名も無き天使達を十僕として召喚する。その数は億と聞き上条は驚きを隠せない

 

「天使達は君達を殺す為ではなく、学園都市に住んでる人達を皆殺しにする為に召喚したんだよ」

 

「!?そんな!わたくし達ならばいざ知れず何故無関係な人々を巻き込むんですか!?」

 

「クソ馬鹿お兄ちゃん曰く魔神を匿ってる街に住んでる奴らも同罪、らしいよ」

 

「……そんな」

 

帆風が自分達なら上里の敵対者として狙われるのは分かる。だが無関係で魔術のことも何も知らない人々が狙われるのは理解できないと帆風が頭を振る

 

「それが今のお兄ちゃんだよ。魔神達に復讐出来るのなら何だってするんだよ」

 

「……なら俺達が上里の歪んだ幻想をぶち殺してやる!」

 

上条が自分に右手を握りしめそう宣言した、まさに次の瞬間太陽に照らされていた空が暗転し月が登る。世界は夜へと変化した。そして要塞の下面から無数の天使達が溢れ出てくる

 

「!?天使達!」

 

天使達が翼を広げ飛翔しながら学園都市へと侵入し街の至る所へ降り立った。そして五体の天使が垣根達の近くへと降り立ち手に持った武器を垣根達に向ける

 

『uoagl標o的nvorxv発yks見nlxj!』

 

「!?くっ、早速やって来たか!」

 

去鳴は急いでスポーツバックから野球バットを取り出して腕で砕く。外的御供で野球バットの力を付加し更に武器を破壊し力を高めようとした瞬間

 

「邪魔だ」

 

垣根の背から爆発的に展開された三対の翼の内2枚の羽が二体の天使へと迫る、その天使達は反応が遅れ一体は焼け爛れた様に身体が崩れ、もう一体は霧の様に蒸発し消えていた

 

「「「「afjnなvt!?」」」」

 

「は、ガブリエルと比べると…大した事ねえな」

 

驚愕する天使達だが垣根は右手から竜王の顎を出現させ、竜の咆哮を周囲に轟かせる

 

ーーーキュラアアァァァ〜!ーーー

 

その咆哮を天使達が聴くと彼等の身体が下半身から徐々に塩へと変化していく、それはまるで堕落都市 ソドムに住んでいたロトの妻が決して振り返ってはならないという約束を破ってしまい塩の柱へとなった様に天使達は塩の彫刻と化してしまった

 

「これで一丁上がり、てな」

 

ーーーキュラアアァァァ〜!ーーー

 

「……チート過ぎしょ」

 

垣根の余りの桁違いな能力と強さに若干引き気味な去鳴、帆風はそれが垣根帝督なのだとポンポンと肩を叩く

 

「さて…俺らはさっさとあの要塞に乗り込んで上里の野郎をぶん殴ってやるか…べ、別にハーレム築いてるからそれが羨ましいとかていとくん思ってないんだからね!勘違いしないでよね!」

 

「なンだそのツンデレみたいな言い方は…まあハーレム築いてる様なクソ野郎はぶん殴らねェとな」

 

「俺も殴るぞ!複数の女と恋人関係にあるなんて言語道断だ!漢なら生涯一人の女を愛するべきだ!」

 

「私もハーレム野郎はムカつくにゃーん。だから強めに殴るか」

 

垣根、一方通行、削板、麦野が「ハーレム野郎はブチ殺し!」と息巻いていた。多分この人達は純情なのだろう

 

「その通りだぜ、ハーレム築いてる様な最低クソ野郎なんかに俺達は負けない!」

 

「「「「いやお前もハーレムを築いてるだろ!この最低クソ野郎!」」」」

 

「ゲボォ!?」

 

「「先輩/上条さん!?」」

 

(あ、そう言えば忘れがちですけど上条さんも女王と御坂さんと付き合ってる最低クソ野郎でしたわ)

 

(……もうやだこの超能力者)

 

上条が腕をポキポキさせながらハーレムを築いてる最低クソ野郎をぶん殴ると決意する、そして四人にお前も上里と同じだよと蹴りを入れられた

 

「ちょっと何すんのよアンタ達!先輩はハーレムを築いてるんじゃないの!私達がダブルヒロインなの!」

 

「ハーレム築いてる様な最低ビチクソ野郎と上条さんを一緒にして欲しくないんだゾ!」

 

「いやうちのお兄ちゃんはそもそもハーレム築いてないし、誰にも好感抱いてないし、どちらかといえば義妹でツンデレキャラという私がお兄ちゃんのメインヒロイン…て、そんな事はどうでもいいんだった」

 

去鳴は思わずツッコもうとするがなんとか堪える、今はそんな事をしている暇などない

 

「分かってるの?今天使達が学園都市を襲ってるんだよ?人間なんて天使からしたら虫けら同然。蹴散らさせるのが天地の定め…早く助けに行った方が「いや大丈夫だ」…は?」

 

「学園都市は天使なんかに負けるほどヤワじゃねえ…この超能力者第一位の垣根帝督が保証してやる…それに俺らしか上里のクソ野郎を倒せねえんだ…雑魚の相手は他の奴らに任せる」

 

「ちょ……本気!?天使相手に人間なんかが勝てるわけないじゃん!正気じゃないよ!」

 

去鳴は人間如き(・・)が上位者たる天使に勝てる筈がないと叫ぶ、そうそれが当たり前だ。天使は強大な力を持つ存在…普通ならば人間に太刀打ち出来る相手ではない…そう、普通ならば(・・・・・)、だが

 

「だから言ってんだろ、学園都市を舐めるなて」

 

垣根はそうはっきりと言い放った、そう天使程度ではこの街をどうにかする事など出来ないのだから

 

 

天使の剣が佐天と初春の身体を両断する…まさにその瞬間、剣を握る腕にヒュンという音が響き細長い看板が天使の腕の一部を押しのけて割り込むように出現し天使の腕は剣を持ったまま地面に落ちた

 

「notyなxosf?」

 

天使は何が起こったのかと思考を巡らせようとした矢先、トンと肉を裂く音と共に首元に紙切れが一枚出現する。同時に天使の首が重力に従って地面に落ち佐天と初春の足元を転がる

 

「間一髪でしたの」

 

「!し、白井さん!」

 

ヒュンと空気を裂く音と共に二人の背後に現れたのは黒子だ、佐天は今の現象が黒子の空間移動(テレポート)による攻撃だと理解し嬉しさのあまり黒子に抱きつく

 

「ありがとうございます白井さん!本当にもう死ぬかと思いましたよ!大好き!愛してます!」

 

「むぐぅ!?ちょ、佐天さん今はそんな巫山戯ている場合ではありませんの!」

 

「とか言って興奮してるんでしょ、白井さんはクソレズですから」

 

「……じゃあ初春は今後絶対に助けませんわ」

 

「……きゃー、たすけてくれてありがとうございますしらいさーん。だいちゅき、あいしてる」

 

「……ぶん殴られたいんですの?」

 

棒読みで挑発する初春に青筋をピクピクさせながら今度絶対に殴ると黒子は決意する、そして今だに空から舞い降りる天使達を一瞥する

 

「…学園都市はいつからメルヘンランドになりましたの?」

 

「超能力者 第一位もびっくりな光景ですね」

 

黒子はそう軽口を呟きながらも鉄矢を構えいつでも天使を倒せる様に身構える、剣を構えた天使達が黒子達に迫る

 

「佐天さん、初春…貴方達は早くここから逃げるんですの」

 

「!そ、それって白井さんが私達の囮になるって事ですか!?」

 

「そうですの、わたくしは風紀委員…いえ風紀委員である前に二人の友達ですの。大事な友達をこんな得体の知れない化け物に殺されるなんて絶対に許しませんの…ですからお行きなさい。絶対に二人を守ってみせますので」

 

「……白井さん」

 

黒子は自分が囮になっている間に早く逃げろと二人に言う、それを聞いた佐天と初春は黒子を黙って見つめたのち覚悟を決めた顔で佐天は近くに偶然に落ちていた金属バットを、初春はパソコンを起動させる

 

「!?二人とも何を……」

 

「水臭いですよ白井さん!友達を置いて行けるわけないじゃないですか!私も力を貸しますよ!」

 

「周囲の警備ロボのコントロールを奪いました。これで非力な私でも活躍できますよ!」

 

「……全く貴方達は…危なくなったら下がるんですのよ!」

 

天使の群れにバット一本で殴りかかる佐天と瞬間移動を駆使する黒子。初春はパソコンをカチャカチャさせながら警備ロボを天使達にぶつけていく…こうして天使達への少女達のささやかな抵抗(レジスタンス)と共に他の場所でも天使達に挑む者が現れた

 

 

「兎に角撃ちまくるじゃん!子供達が安全な場所まで避難し終わるまで全力であの化け物共を食い止めるんじゃん!」

 

『了解!』

 

黄泉川率いる警備員(アンチスキル)達は銃弾を乱射し天使達の足止めを行なっていた。当然たかが銃弾程度で天使達を殺せるどころか傷を負わせる事ですら不可能だ…実際天使達は銃弾を喰らってもケロっとしている

 

「せ、先輩〜全然効いてませんよ〜」

 

「構わん!兎に角撃ち続けるじゃん!」

 

鉄装が弱音を吐くがそれをかき消す様に黄泉川が叫ぶ、警備員達は一丸となって天使達に銃弾の雨を当て続ける。才郷も杉山も城南も亀山も佐久も手塩も必死に天使に弾丸を当てる…だが天使達はそれを気にせず剣先から電撃を放ち警備員達を盾ごと吹き飛ばしていく

 

「くっ!?本当に……あいつらは何者なんだ!生体兵器かアンドロイド…いやそんな類ではないことは分かるが…何なんだあれは!?」

 

「……分からないじゃん、でも似た様なものは見た事がある…あの機械の中に入れられていた生徒の死体…あれと同じ雰囲気じゃん」

 

「た、確かあの…上部からは棺桶(・・)て呼ばれてた代物ですか?何でも体を大きくする事で能力を…正確にはAIM拡散力場を大きくして能力を強化するとか」

 

「ああ、でもあれはそれだけでは説明がつかないと私は思ってた…あの天使みたいな奴らはその説明できない部分と一緒な感じがするじゃん」

 

以前イサク=ローゼンタールが棺桶のプロトタイプに入れていた死体を思い出す黄泉川。それが魔術とは彼女は知らないが天使を見てそれを思い出す…だが何の解決策にもならない

 

『nrntv断k罪nvxot!!』

 

天使達が剣を頭上へと掲げ空に巨大な紅蓮の神槍を形成しようとする。それはローマ正教の最終兵器であるグレゴリオの聖歌隊と全く同じでありながらその威力は桁違いだ。何せ天使と人間では扱う力が違う…あの神槍は火の天使の力で構成された学園都市の一区を消し炭にする程の火力を秘める

 

「……終わりか」

 

警備員の誰かがそう呟いた、誰もがあの槍に焼き尽くされ死ぬのだと自らが死ぬビジョンを頭の中で思い描く…だが彼等が死ぬ事はなかった

 

「そう簡単に死ぬと思うな、お前らは学園都市の治安を守る大人達なのだろう?」

 

空中でドーム状の光の爆発が起きた。その爆発に巻き込まれ形成寸前だった紅蓮の神槍は搔き消える…唖然とした顔をする警備員の前に一人の金髪の少女が歩いてやってくる

 

「全くそんな顔をするなよ、まあいいか。私がお前達の助っ人にやって来てやったぞ。感謝しろ」

 

「……子供?」

 

「子供扱いするな。私は一応この街の理事長…トップの一人なんだぞ」

 

彼女の名はレイヴィニア=バードウェイ、明け色の陽射しのボスである魔術師にして学園都市の理事長が一人。彼女はクルクルと杖を回しながら光の爆発を発生させ天使達を虫けらの様に殲滅していく…12歳の少女が起こすその惨劇に目を丸くする黄泉川達

 

「…能力者か?」

 

「違うな、私は魔術師だよ」

 

「ま、魔術……?」

 

「詳しい説明はこの戦いが終わったらしてやる…マーク」

 

「はい」

 

レイヴィニアは杖を玩びながらニヤニヤと悪どい笑みを浮かべる、横で見ていたマークは流石ドSだと内心で呟く

 

「天使と戦うとはな…ふふふ、ヤコブにでもなった気分だ」

 

「残念ながらカマエルはいませんがね…さて私も死ぬ気で頑張りますか…そうでもしないと天使相手に私の実力では死にますからね」

 

「何お前は死なないさ、お前は私の下僕兼ペットなんだからな…まだまだイジメ足りないからなぁ」

 

「……このドSめ」

 

マークは天使達に勝ってもレイヴィニアに椅子代わりにされるし、負けたら死あるのみとなんの罰ゲームだよと泣きそうになっていた。そんなマークを見て興奮のあまり顔を赤く染めて嗜虐的な笑みを浮かべるレイヴィニア。そして杖をくるりと掌で回転させながら彼女は自らや生き様(魔法名)を告げる

 

「Regunm771…さあ来いよ天使。人間の可能性てやつを見せてやろう」

 

 

 

天使達に挑んでいるのは何も警備員だけではない、この街のはぐれ者とされるスキルアウト…その中の一グループである駒場率いるスキルアウト達は天使相手に銃や能力ではなく拳で挑みかかっていた

 

「はぁ!せいや!とう!来いよ化け物!剣なんか捨ててかかって来い!」

 

「……浜面無双だな」

 

「にゃー、カッコいいー」

 

ドラゴンライダーを着用した浜面はその強化れた肉体で正拳突きを天使の腹に命中させ吹き飛ばす、次は蹴りを天使の頭部に当て天使の首からゴキッと嫌な音が響く。そして天使達に囲まれればバイクに乗って突撃をする…そんな行動を繰り返していた

 

「はっ!悪いが俺はこんな所でくたばらねえぜ!蛇谷!ムサシノ牛乳だ!」

 

「へい!」

 

黒妻はその鍛え抜かれた鋼の如き肉体で天使達を殴る蹴るのラッシュを繰り出していた。だが浜面と近い駆動鎧で強化をしていない彼には当然疲労が出る…だがムサシノ牛乳を飲めば回復する。何故ならムサシノ牛乳は偉大だからだ

 

「うおおおお!!!根性!根性!こぉぉぉんじょぉぉぉぉぉぉううううう!!!オラオラどうした怪物が!もうくたばってんのか!?そんなんじゃ第七位どころかこの内臓潰しの横須賀も倒せねえぞ!」

 

「……もうこいつ絶対に人間やめてるだろ」

 

横須賀のパンチをモロに喰らえばたったの一発で天使の身体を貫通し天使達は天使の力(テレズマ)となって消滅していく…鬼神の如き活躍を見せる横須賀を見て矢文はこいつ本当に人間かと引いていた

 

「くそ、数が多過ぎるぜ!これじゃあ何体倒してもキリがねえ!」

 

浜面が回し蹴りで天使の首をあらぬ方へと曲げ天使はそのまま地面に倒れる。だが一向に数が減る様子はなく寧ろ空から舞い降りる数の方が圧倒的に多い

 

「済まねえな浜面…ここから抜け出せたら隠し家に垣根から貰ったマジモンの武器が取ってこれるんだがこの数じゃあ抜け出せねえ」

 

「いいんだよ半蔵。この化け物には銃なんか効く保証はねえんだ。なら俺の拳で倒すまでだ!」

 

浜面はそう拳を握りながら宣言する、武器に頼るな己の拳を信じろ…そう浜面が心の中で呟いた直後だった

 

「何熱くなってるんですか浜面。少年漫画の主人公ですか?」

 

「暑苦しくてたまんねぇな」

 

「まあそれが浜面らしいて訳よ」

 

「私はそんなはまずらを応援してる」

 

「!?お前ら!?」

 

空から絹旗が拳を振り上げ窒素装甲(オフェンスアーマー)で守られた拳で天使を殴りつける。その拳は天使の身体を貫通し一瞬で押し潰すほど…更に黒夜の窒素爆槍(ボンバーランス)が天使の頭部を穿ちフレンダのミサイルが天使達の動きを止める

 

「助太刀に来ましたよ浜面」

 

「お前ら…俺達の為に……やっぱり持つべきものは大切な仲間(ダチ)だな!」

 

「……流石、浜面の友だな」

 

「よし!大能力者が助けてくれるんだ!無能力者(俺ら)も気合入れんぞ!」

 

「しゃあ心強え仲間が力を貸してくれんだ、俺らも頑張らねえとな蛇谷!」

 

「だが大能力者よりも俺が多くの怪物を倒すぞ!根性だぁぁぁ!!!」

 

((((いや浜面/はまずらが死んだら麦野が怒り狂うだろうからそれを阻止する為に来ただけなんだけど…まあいいか))))

 

スキルアウトと大能力者、互いに協力し合って天使達と光線を開始するのだった

 

 

『学舎の園』、常盤台中学や枝垂桜学園を含めた5つのお嬢様学校が共同運営する場所だ。当然ここも天使達の襲撃に遭っていた。ほぼ全員が強能力者と言っても女子、異形の化け物を前に逃げ惑うしかない…だが一部の生徒は臆せず立ち向かう

 

「ここで逃げては名家の名折れ!この婚后光子がお相手いたしますわ!」

 

婚后が天使達の身体に触れ、触れた箇所に噴出点を生み出し空の向こう遥か彼方まで吹き飛ばす。四方八方から剣を掲げて刺し殺そうとして来た天使達に対しては地面に触れる事で地面に噴出点を作り出しその周囲にいた天使達を吹き飛ばす

 

「はぁ…現実に天使とか本当にいるんですねぇ…ああ、こいつら見てるとあの垣根帝督(クソ野郎)を思い出す」

 

入鹿は軍用懐中電灯の光を収束させた光の剣 小烏丸で天使をバッサバッサと斬り裂いていく、光剣を手に持った剣士は次々に襲い掛かる天使達を切断、弓を構え矢を射ろうとする天使達は右眼の義眼からのレーザーで頭部に穴を開け撃ち落としていく

 

「ふぅ…中々やりますね婚后さん」

 

「弓箭先輩こそ…ですがあまりにも数が多すぎますわね」

 

「本当です…ああ、でも見てるだけであのクソ第一位を思い出す…まあその殺意でまだ頑張れそうですが」

 

「そ、そうですか…(どれだけ第一位を嫌っているのでしょう…)」

 

そう二人が軽口を言い合っていた時だ、天使の一体が未だ逃げ切っていない常盤台の一年に狙いを定め矢を射り、その矢が少女の頭を穿とうとする

 

「「!?」」

 

間に合わない、そう二人が思った時。その矢を誰かが掴み取った

 

「ふ……間に合いましたね」

 

「……海原…光貴」

 

そう変態スモーカーこと海原がその矢をキャッチしたのだ。矢を射った天使は第二射を放とうとするも天使の頭を貫通する様にコルク抜きが出現し天使は地面へと落下する

 

「待たしちゃったかしら?」

 

「貴方は…結標淡希」

 

結標が入鹿の横に座標移動で現れ入鹿に笑いかける、助けに現れた海原と結標に入鹿は感謝の目を向けて……いなかった(・・・・・)

 

「不法侵入ですよ貴方達…」

 

「こんな時に言います?それに僕は日課の御坂さんの観察…偶々ここに立ち寄っただけですよ」

 

「私は白井さんが落としたハンカチを届けに来ただけよ」

 

「結標さんはいいです、そこのストーカーは後で警備員行きです」

 

ジト目で海原と結標を見る入鹿、取り敢えず海原はムショにぶち込もう、入鹿はそう思った。まあ、この天使達から生き延びたら、だが

 

『ふ、僕を忘れてたりしないかな?』

 

「!?ば、馬場さん!」

 

空から一体の機械…T:MT(タイプ:マンティス)が飛来する、そしてT:MTから声が聞こえる…声の主は馬場だった

 

『泡浮ちゃんと湾内ちゃんから話は聞いたよ、微力ながら力を貸そうじゃないか』

 

『さあ馬場君、私が作ったT:MTを使いこなしてみたまえ!』

 

『博士ー、私にもT:MTみたいな機械を貸してくださいよ』

 

『査楽、君はラジコンで遊んでいなさい』

 

『辛辣!?』

 

T:MTが鎌を振り上げて天使の一体を両断する。結標の座標移動で天使達の身体に物体を転移させ肉を引き裂く、婚后も入鹿も負けじと天使達を攻撃する

 

「kvnv舐nlty!!」

 

「!?婚后さん!」

 

「!?」

 

天使が剣を婚后へと振り下ろす、婚后はそれに気づくが自分ではそれを防ぐことは出来ないと直感で理解し目を瞑りかけた…その瞬間

 

「ふん!」

 

「zegctyガno!?」

 

寮監がドロップキックを天使に喰らわせ天使を5メートルほど吹き飛ばす、寮監は拳を強く握りしめ天使達の顔を殴って頭を吹き飛ばしていく

 

「……私の生徒に手を出さないで貰おうか」

 

寮監の姿が消えた、そしていつの間にか天使の首を両手に持っていた。首をなくした天使の身体はその事に気づくのに数秒かかり自分が倒されたと気づいた途端光となって消滅した

 

「…化け物相手なら生徒と近い加減する必要はあるまい…覚悟しろ化け物共。ここが貴様らの終端と知れ」

 

(((……寮監て、一体何者なんだ?)))

 

寮監は規格外だった

 

 

「「やっぱり俺らには無理だぁぁぁ!!」」

 

ウートガルザロキと乱数は天使達から逃げ惑っていた、二人は幻術使い、人相手なら厄介極まりないが所詮効くのは人…天使にはカビを使った幻覚も魔術による幻覚も通用しない

 

「あいつらぁ…!俺達を囮にしやがって!俺はスマートなやり方しか出来ないてのに!」

 

「その通りだぜくそったれ!俺らみたいなひ弱な男子にこんな仕事させんなっての!」

 

天使相手では何も役に立たないウートガルザロキと乱数は必死に逃げる、だが二人はあまり運動が得意な方ではない…もう既に天使に追いつかれる瞬前だ

 

「シギン!お前の『助言』で助けてくれ!」

 

『諦めろ、と助言しよう』

 

「ざけんな!」

 

「は、そんな女に聞いたって無駄だぜウート君。こんな時は科学の文明に聞くのさ!ヘイ!Siri!」

 

「乱数君も巫山戯てんだろ!」

 

シギンもSiriも役に立たない、そして天使の剣が彼らへと迫る

 

「うわあぁぁぁぁぁ!!!?こんな所で終わりとか笑えなさ過ぎるだろ!」

 

「ヘイ!Siri!?ヘイお尻!?」

 

もうダメだと二人が諦めかけたその時

 

「ミョォォォォォォォォォォォルニィィィィィーーーーール!!!」

 

10本のアーク溶断ブレードが天使達を一瞬で消し炭にする。そして金髪の少年が華麗な着地を決める

 

「よう!囮ご苦労様だなウート君、乱数ちゃん」

 

「は、はは……流石グレムリンNo.2。天使を一撃かよ…」

 

「やっぱり凄えわ魔術師て」

 

二人はヘナヘナと力を抜いて地面に倒れる、そんな二人に那由多とブリュンヒルデがやって来る

 

「乱数おじさん、ウートさん大丈夫?」

 

「無事か二人共」

 

「おう…何とか無事だぜ」

 

ウートガルザロキが二人にそう言って笑いかける、他の木原も魔術師達も続々と二人の近くに謝る

 

「ほ、ほ、ほ…このポイントまでよく引き寄せてくれたね二人共」

 

「まあでも大の男が悲鳴上げて逃げてる姿はシュールだったよ」

 

「五月蝿えぞ幻生のジーさんにマリアン」

 

茶化すように幻生とマリアンが笑っていたが乱数が五月蝿えと一蹴する

 

「さて…オティヌスも脳幹ちゃんもいねえが…俺らだけで頑張りますか」

 

「鞠亜や私の生徒を守る為に…全力でいかせて貰おう」

 

「さて面倒ですが…やりますか」

 

「学園都市を守る…それが我々の使命だ」

 

トールはアーク溶解ブレードを、加群は勝利の剣を、唯一はサンプル=ショゴスを、ブリュンヒルデはクレイモアを構える

 

「行くよ円周ちゃん!私のトンファー流で道を切り開く!」

 

「うん、うん。分かってるよ、上条お兄ちゃん。こういう時、『上条当麻』ならこう言うんだよね…「まずはその幻想をぶち殺す!」」

 

「……『多才能力(マルチスキル)』発動。ふふふ、帝督君にカブトムシを1000匹ほど借りておいてよかったね」

 

「この超電磁砲の力を模した最新式駆動鎧(パワースーツ)の力を見せてあげるわ」

 

「………」

 

「何か喋った方がいいよ投擲の槌(ミョルニル)、と助言しておこう」

 

「ほほほ。我が主人オティヌス様の為にこのロキ、骨を粉にして働きましょう!」

 

「…なあ、ヨルムンガンド。俺らの出番で何気にこれが初めてじゃね?」

 

「言うなよフェンリル。悲しくなるじゃねえか」

 

「……頑張る」

 

那由多、円周、幻生、テレスティーナ、投擲の槌、シギン、ロキ、ヨルムンガンド、フェンリル、ヘルも目の前の天使の集団を屠る為に己が魔術を起動させる…そして天使達が襲いかかる…その瞬間

 

「では一番槍はミサカ達が貰いますね、とミサカは宣言してみます」

 

『!?』

 

銃弾が天使達を襲う、そして四体の天使が一瞬で分解された

 

「派手なパーティだな、俺らも混ぜてくれ。俺の月のウサギが火を噴くぜ」

 

「この画像をyo○tubeに上げたら再生回数上がるかな?」

 

「トチトリ、テクパトル…真面目にやれ」

 

「お待たせしましたトールさん達」

 

「待たせたな…と、ミサカは有名な決め台詞を言います」

 

エツァリ率いるアステカ魔術師四人と妹達(シスターズ)の一人 ミサカ 17600号が鋼鉄破り(メタルイーター)と黒曜石のナイフを構える

 

『おっと、僕らも忘れちゃ困るね。ねえ蛭魅』

 

『そうだねお兄ちゃん』

 

空からミサイルが降り注ぎ天使達はそれを剣で斬り裂く、だが見えない力で天使達は雑巾絞るの様に握り潰され消滅する。一瞬で天使を撃破した三体の機体は建物の屋上へと降り立つ

 

「……あれは窮奇に混沌、饕餮!ナンバーズの悪霊の三体を取り組んだ棺桶!?じゃあ今の声は…!」

 

『はぁーい、待ってなかったと思うけど僕らも助けに来たよー』

 

『ふふふ、こんな時もあろうかと密かに回収しておいた窮奇に混沌、饕餮の三体が役立つ日が来たみたいだねお兄ちゃん!』

 

窮奇、混沌、饕餮…何も超能力者並みの出力を持つ兵器が天使達の前に立ち塞がったのだ

 

『あ、君達は別の場所に助けに行った方がいいんじゃないかな。うん』

 

『ここは私とお兄ちゃんに任せて他の場所に行って学園都市の皆を助けに行って!』

 

幹比古と蛭魅がここは窮奇・混沌・饕餮(自分達)には任せて他の場所の救助に迎え、と棺桶越しに伝える

 

「……その方が効率がいいな。ここは任せたぞ菱形兄妹」

 

『任せといて!エステルっちとの共同開発で完成した棺桶…イサクには悪用されたけど今度こそ本来の目的の為に使うんだ!』

 

『かかって来なよ天使、僕と蛭魅…そしてエステルの叡智の結晶の力を見せてやる』

 

ーーー目標、捕捉、仕留メマス。念動能力(サイコキネシス)ヲ起動シマスーーー

 

ーーーターゲット捕捉。透明認識(ステルスハイド)ヲ起動シマスーーー

 

ーーー窮奇、混沌トノ視覚共有完了。遠隔射出(アスポーツ)デノ補助ヲ行イマスーーー

 

全員が各自に学園都市に襲来した天使達の撃退へと向かう、天使達は追おうとするが三体が立ち塞がる

 

『さあやっちゃえ窮奇、混沌、饕餮!天使なんか蹴散らしちゃえ!』

 

『nltyn排nxl除ngafnxz!』

 

 

「皆〜!落ち着いてください!焦らずに逃げてください!決して他の人を押さないでください!」

 

アリサは街中で逃げ惑う人々に避難指示を出す、彼女のお陰で人々は徐々に落ち着きを取り戻していく…襲いかかる天使達はレディリーが2丁拳銃で撃ち落としていく

 

「ディダロスとシャットアウラはアリサのことを頼むわ!私はここを食い止める!」

 

「分かった!」

 

「……さて、天使達?親子三人の楽しい食事を邪魔した罪は重いわよ?死になさい」

 

とはいえ、その親子の食事をストーキングしていたレディリーが言えた義理ではない。レディリーは2丁拳銃を構えて天使達のこめかみに弾丸を撃ち続ける

 

 

「先生、ここは私達にお任せください」

 

「俺らの先生に手ェ出そうとしてんじゃねえぞ怪物が!」

 

第十三学区の病院に襲来した天使達だが狙った相手が悪かった、理事長の一人 薬味の護衛である恋査28号と29号が垣根の未元物質を発動した為天使達は成すすべなく返り討ちにされたのだった

 

 

「あははは!そんな鈍い動きでボクを捕まえられるとでも思っとるんか?」

 

青ピはバレリーナの様にクルクルと回転しながら高速で天使の攻撃を掻い潜る。しかも両腕に蜜蟻を抱えた状態でだ

 

「目ぇ回したりせえへんか愛愉ちゃん?」

 

「だ、大丈夫よ青ピ君…うぇ」

 

「もう大分グロッキーやな…しゃあない、早いとこ何処かに隠れやんとな」

 

「ご、ごめんなさい…」

 

「ええって、彼女に振り回されるのが彼氏の務めや…あ、この場合はボクが振り回しとんのか」

 

そう会話しながらも天使から逃げ続ける青ピ、その速度と不規則な動きで完全に天使から逃れる二人…もし上条達がこの場にいたらこう思うだろう…「お前本当に何者なんだよ」と

 

 

他の場所でも天使達の暴虐を許すまいと風紀委員(ジャッチメント)警備員(アンチスキル)…それだけでなく一般人である生徒達やスキルアウトも協力して天使達に挑む。確かに天使は強い…だがガブリエルと比べれば遥かに弱くまだ人の手で倒す事は可能だ。一人では倒せずとも協力すれば倒せる…学園都市はたかが天使に負けるほど弱くはなかった

 

 

「……流石学園都市に住んでる奴らは肝が違うな…さて、これなら暫くは大丈夫だろ。ならさっさと元凶を叩いて終わらせるとしようぜ」

 

垣根は多才能力で発動した鳥瞰把握(プレデター)で見た学園都市での現状を見て笑う、鳥瞰把握を解除すると頭上のHanging Gardens of Babylonを見上げる

 

「問題はどうやってあそこまで行くかだな。…飛ぶか」

 

「いや上条さん達は飛べないでですの事よ?」

 

「なンで飛べねェンだよ…役立たずが」

 

「翼ぐらいだせにゃーん」

 

「根性出せば翼は生えるぞ!」

 

「「「いや普通無理だよ」」」

 

どうやってHanging Gardens of Babylonまで行くか悩む垣根達…そんな時、空からプロペラ音が鳴り響く

 

「困ってるかにゃーカミやん」

 

「!?そ、その声は……」

 

「そう、困った時の土御門さんですたい」

 

超音速ステルス爆撃機 HsB-02の扉を開けて土御門がそう笑い返す、土御門は縄ばしごを投げこれに乗れと言いたげにする

 

「このHsB-02であの建物まで送っててやるにゃー。さあ早く登るんだぜい」

 

「流石ツッチー!義妹に手を出す男は行動力が早いぜ!」

 

「……それは褒めてるのかにゃー?」

 

HsB-02に垣根達が乗り込むとHsB-02は時速7000キロの速度でHanging Gardens of Babylonへと接近する

 

「学園都市を甘く見過ぎだな上里、お前が考えてる以上に…学園都市は弱くねえぞ」

 

 

 

「……天使達では相手にならないか……絵恋」

 

「はいな」

 

上里は天使達が蹴散らされていく様子を見ても顔色を一切変えない

 

「ガブリエル…ミーシャ=クロイツェフを出現させろ。そして暮亜(クレア)府蘭(フラン)琉華(るか)冥亜(クレア)に命令しておいてくれ…神威混淆(・・・・)を起動しろてね」

 

「分かりましたえ上里はん」

 

そう言って通信機を取り出して上里勢力の少女達に命令を伝えていく絵恋。上里はパソコンの画像に映る人々の必死の抵抗を見ながら呟いた

 

「それが無駄な抵抗だと今に分かるさ、それを受け入れるか受け入れないかはきみ達次第だけどね」

 

 

 

 

 

 

 

 




天使達は強い…でも学園都市の皆も強いぞ!なお、これが十字教徒だったら全滅してる(旧約4巻だと十字教徒は天使に勝てないのだとか)。まあ学園都市は科学と超能力の街だから関係ないよね!それでも銃弾は効かないというチート性能だけども

さあ次回は突入空中要塞!四人の上里勢力の女の子が今までラスボス格だった神威混淆を纏って大暴れしたり、三度のガブリエルが襲来したりと大荒れな模様…ぶっちゃけ書き切れるか不安だけど…なるべく早く書きますぞい!

次回もお楽しみに!


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幻想か、理想か

今回もややギャグ要素がありますがシリアスです。後今回出てくる上里勢力の女の子達はオリキャラではありません。ちゃんと原作に名前が出てきている人達です…まあ詳しい描写とかなかったから半端オリキャラと化すしてるけど(やっぱりオリキャラじゃねえか)

そして強敵が何人も出現。神威混淆から大天使、そして理想送り…かつてないボスラッシュを前に学園都市の運命はいかに?



HsB-02に乗り込んだ垣根達はほんの数分足らずでHanging Gardens of Babylon間近へと接近していた

 

「もう直ぐあの建物の上空に着くぜい。速度を弱めるからいつでも飛び降りる用意をするんだにゃー」

 

「ロシアの時と同じですわね」

 

「そうだな、あの時はこの時の為の予行練習だったのかも知れねえな…お前ら俺に感謝しろよ」

 

『黙れ、殺すぞ』

 

(…これからお兄ちゃんと取り巻きバカ達と戦うのにこの緊張感のなさ…逆に尊敬するよ)

 

垣根はロシアでのスカイダイビング(パラシュートなし)での経験が活かせるなと和かに笑う、それに対し上条達は親指を下に突き立てて垣根を睨む。それを見て去鳴はため息を吐いた

 

「カウントダウン始めるぜい、1…今だにゃー!」

 

『カウント早えな!』

 

「知らないのにゃー?男は1と0だけ覚えてれば生きていけるんだにゃー」

 

「ていとくんが一番乗りだい!」

 

「わたくしも垣根さんに続きますわ」

 

垣根と帆風が一足早く扉から飛び降りる、二人共パラシュートなしでHanging Gardens of Babylonへと落下していく。それを見て唖然とする上条達

 

「!?ッ!クソ出遅れた!俺らも続くぞ!」

 

上条達も扉から落下していく、彼等はパラシュートありで飛び降りたのだが当然の如くそのパラシュートは開かなかった。去鳴の耳には「不幸だー!」と上条達の声が聞こえてきたが聞こえないフリをした

 

「あ、お嬢ちゃんのはちゃんとパラシュートが開く筈だにゃー」

 

「うん…ありがとう」

 

去鳴は土御門から渡されたパラシュートを背負いながら飛び降りる、パラシュートはちゃんと開いた。そして去鳴は自分より先に飛び降りた垣根達の様子を見る

 

「いやっほぉぉぉぉぉ!!俺今風になってるぅ!」

 

「ロシアでスカイダイビングをやっておいて良かったですね。前よりコツがつかめています」

 

『ぎぃやああああぁぁぁぁぁッ!!!目が、目が回るぅぅぅ!!』

 

「……超能力者て芸人の集まりなの?」

 

去鳴は超能力者は芸人集団じゃないかと内心で思いながらHanging Gardens of Babylonへと落下していく…それを遠目に土御門はHsB-02の扉を閉めそのままHanging Gardens of Babylonから離れ学園都市へと帰還する

 

 

無事Hanging Gardens of Babylonへと降り立った垣根達、上条達は地面へ激突し犬神家になっているが取り敢えず無事に侵入する事は出来た

 

『いや無事じゃねえよ!俺/私ら犬神家になってんだろうが!』

 

「じゃあ行くか」

 

「はい」

 

『無視すんなやゴラァ!』

 

「……緊張感ないなぁ、本当」

 

去鳴は超能力者を見てそう思った、油断や慢心だらけじゃないかと…そして去鳴が一歩踏み出そうとしたその瞬間、去鳴の頭部めがけて雪の矢が放たれた

 

「!?」

 

去鳴は拳でその矢を破壊する、外的御供でその矢の特性を吸収しつつ矢を放ったのが誰か理解する

 

「……好応(スノウ)か」

 

「はぁーい、そうですよー去鳴ちゃんー。いけませーんね。上里ちゃんを裏切るなんてー。これは死刑確定ですねー」

 

青いマフラーを巻いた白い短髪の少女 好応が弓矢を構えて建物の背後から現れる、好応だけでない。無数の少女達が垣根達の前に現れた

 

愛燐(アイリーン)傘厘(キャサリン)鎖仁(サニー)賑多(ニギータ)牧納(マキナ)姪龍(メロン)雷矛(ライム)麟堕(リンダ)。他にも取り巻きバカが沢山だね…」

 

褐色肌の妙齢の黒髪の女 愛燐、傘を持った大学生くらいの青髪の女 傘厘、占い師風な服装をした茶髪の少女 鎖仁、不気味な笑顔を浮かべている小学生ほどの歳のグレー髪の少女 賑多、鍬と藁を両手に持った赤髪の幼女 牧納、二十代後半であろう道場服を着た緑髪の女 姪龍、ランドセルを背負い槍を持った黄色の髪の少女 雷矛、男を惑わす色香を放ったピンク色の髪の大人 燐堕……他にも様々な年齢の女達が現れる。その数 50

 

「てな訳でー、死んでくれるとありがたいでーす」

 

「上にゃんに仇なす奴らはぶち殺だにゃーん♪」

 

「死になよ、その骸を私の傘置きにしてやる」

 

「私の占いは百発百中…貴方達が負ける確率は…100パーセントよ」

 

「うへへへへ〜♪」

 

「グチャグチャにしてウチの牧場の家畜達の餌にしてあげるよ!」

 

「我の婚約者(フィアンセ)に害なす者全て…滅殺する!」

 

「あはは!雷矛強いんだもん!上里さんの為に雷矛頑張るんだもん!」

 

「パンがないならパンツを食べればいいじゃない」

 

「……チッ、面倒な魔術師ばかりか…仕方ない、お兄ちゃんや府蘭みたいな幹部クラスまでは体力温存したかったけどやるしかな…」

 

この場にいる上里勢力の女達の実力は大能力者(レベル4)クラスまで匹敵する、超能力者とはいえ油断は禁物。去鳴はスポーツバックから破壊する武器を選ぼうとするが垣根がその手を抑える

 

「ここは俺に任せな」

 

「!?いやいくら超能力者の第一位でもこの数は不利だよ!?」

 

「安心しろよ、だって今月の星座俺の星座が一番運勢が悪いて書いてあったから」

 

「いや何一つ安心できないよ!?てか悪かったらダメじゃん!」

 

垣根は翼を展開しながらカキネネットワークに接続し多才能力(マルチスキル)を発動、30人ほどいる魔術師達の前に立つ

 

「ではー。死んでもらいまーす!」

 

「アタシらに一人で挑もうとかマジ愚策にゃーん、まあいいにゃ、ここがお前の墓場だにゃー!」

 

「私の番傘で死ね!」

 

「貴方達の敗北は運命なのよ!」

 

「うへへ〜!」

 

「馬の餌がいい?それとも牛の餌?どちらか選べ!」

 

去死吧(死ね)!」

 

「雷矛の槍でモズの早贄みたいに串刺しになっちゃえ!」

 

「お前のパンツは何色だ?」

 

武器を構えながら襲いかかる女達、それに対し垣根は不敵な笑みを浮かべる

 

水竜軌道(アクアナビゲーター)

 

「ですぅぅぅぅぅぅーーーッ!?」

 

物質生成(クリエイション)

 

「へにゃぁぁぁぁぁ!!?」

 

希土拡張(アースパレット)

 

「いぎゃぁぁあ!?傘で、傘で防げない!?」

 

液化人影(リキッドシャドウ)

 

「うへへ!!?」

 

噴出球体(ボルカニックボール)

 

「あれぇぇぇぇぇ?!?予想大外れぇ!?」

 

量子変速(シンクロトロン)

 

真的假的(マジで)!?」

 

絶対等速(イコールスピード)

 

「うそーん!?」

 

微細構築(ミクロステラクチャー)

 

「パンツぅ!?」

 

「あーもう、めんどくせえ…爆発オチで終わらすか」

 

「「「爆発オチなんてサイテー!!?」」」

 

一分もかからなかった、多才能力で発動した数々の超能力で好応達を蹴散らす。そして残りのモブ達は未元物質の爆発で吹き飛ばし全員犬神家にした

 

「…………」

 

「流石垣根さんですわ」

 

「……チート過ぎンだろ」

 

「「「「「ないわー、瞬殺とかないわー」」」」」

 

何も言えない去鳴にドン引きする一方通行達、帆風のみ垣根無双を見て微笑んでいた

 

「友情、努力、勝利…それを具現化した男が俺なのさ」

 

『何処がだよ!』

 

兎に角上里勢力の半数は垣根の力で一瞬で撃破したのだ、これで残りは50人弱だ

 

「でもまだ安心は出来ないよ、ほぼ大半の取り巻きバカはこいつらと同じ雑魚だけど……府蘭、琉華、暮亜、冥亜だけは別格だよ。以前戦った宛那や獲冴と同格の実力者だからね」

 

「じゃあその四人だけには注意しねえとな、後は雑魚だから軽く蹴散らせばいいか」

 

府蘭、琉華、暮亜、冥亜だけは他の上里勢力の女達とは格が違うと警告する去鳴。垣根達は頷きながらHanging Gardens of Babylonの建物の中に入る

 

「おっと!残念だけどここから先はこの夢厨(ミューズ)ちゃん様が通さな…」

 

「邪魔だ退け!」

 

「夢厨ちゃん様の出番ここでしゅーりょー!?」

 

黒いキャミソールに猫耳をつけた桃色の髪の少女がここは通さない と、強者感を出すが垣根の未元物質の翼を横に振るって夢厨は吹き飛ばされて壁に埋まった

 

「まさか夢厨を一撃とはな…だがこの捕食女王 瑛魅(エイミ)からは逃れられんぞ!」

 

「へいへーい♪このコスプレ少女 沢井織雛(さわいオリビア)ちゃんが上里君に変わってお前達をお仕置きしちゃうぞ☆」

 

「この大型トラックでお前らをぶっ潰す!」

 

「ハンマー投げ選手 零紋(レモン)が相手だ!」

 

「よくも私の鎖仁を倒してくれたわね!姉であるこの私が相手になるわ!」

 

「この殺人パティシエである米璃(ベリー)様の焼き菓子で昇天しやがれってんだい!」

 

「わらわがいる限りここは通さんぞ!」

 

「ウ"ウゥゥ!汚い匂いだぞ…上里様の敵め!噛み殺してやる!」

 

黄色と黒のゴスロリを着た少女 瑛魅と超機動少女カナミンのコスプレをした少女 織雛、大型トラックに乗った少女 出洞(デボラ)、陸上競技の選手のような格好をした少女 零紋、先程倒した鎖仁の双子の姉の占い師である恋因(レイン)、イカやタコのような触腕を生やした姿の少女 診華(ミルカ)、四足歩行で歩く縦ロールの金髪に赤いドレスの少女 芽李(メリー)…他にも数々の実力者達が垣根達の前に立ち塞がるが…

 

「いいぜモブABC以下略達!お前らが徒党を組めば俺らに勝てると思ってんなら…先ずはその幻想をぶち殺す!」

 

「悪ィがここから先は一方通行だ!モブ共は元いた場所に帰りやがれェ!」

 

「モブの癖に長え台詞喋りやがって!モブはモブらしく「イーイー」言ってろ!ショッカーポジが!」

 

「邪魔よ!そしてモブのくせに数が多いのよ!ヤケに個性的だけどいきなりだから覚えにくし!」

 

「名前もヤケに痛々しいしぃなんかダサいわぁ!キャラ付け力高過ぎよぉ!出直して来なさい!」

 

「根性!」

 

『ぐげぇぇぇぇッ!?私達の出番これで終わりとか酷くない!?』

 

上条が竜王の顎(ドラゴンストライク)を七体右手から出現させ少女達をその幻想殺しの能力の具現化たる咆哮で吹き飛ばす。一方通行は竜巻を作りだし少女達を暴風で舞い上げ床に叩き落とす、麦野は数十を超える原子崩し(メルトダウナー)で少女達をギャグ漫画の様に吹き飛ばす、美琴と食蜂は合体技である液状被覆超電磁砲(リキッドプルーフレールガン)をぶちかまして少女達を空の彼方へと吹き飛ばす、削板は根性による赤青黄のカラフルな特撮的な大爆発で倒す…瑛魅達では相手にならなかった

 

「……あれぇ?目がおかしくなったのかなぁ?一応そこら辺の魔術師なんか目じゃない程強い取り巻きバカ達が壁や床にめり込んでる…あはは、眼科行こうかな」

 

去鳴はもう目の前の光景が信じられず、軽く現実逃避をし始める。彼女の目は死にかけていた

 

「コホン。さて、気を取り直して…クソ馬鹿お兄ちゃんがHanging Gardens of Babylonの何処にいるか教えるね」

 

「ああ、そういえばノリで来たわいいものの何処にいるか分かんなかったからちょうど良かったぜ」

 

「ノリって…もうツッコむのもめんどくさいや。お兄ちゃんがいるのはHanging Gardens of Babylonの最下層。つまりこの建物の一番下のエリアだよ」

 

去鳴はHanging Gardens of Babylonの最下層に上里がいると教える

 

「成る程…つまり下まで行けばいいんですのね」

 

「でも最下層に降りるまで全速力で行っても十五分はかかるよ?当然エレベーターやらエスカレーターなんかはない。歩き続けるしか辿り着く方法は…」

 

「いえご安心を、ショートカットする方法がございますので」

 

「へ?ショートカット……」

 

最下層まで辿り着くのに十五分はかかる、そう去鳴は言うが帆風は近道があると微笑む。それに去鳴が何か言おうとしたところで帆風は自らの拳を床へと叩きつけ床に大穴を開ける

 

「これでショートカット出来ますわ」

 

「「「「「「「」」」」」」」

 

「流石だな潤子ちゃん、これで早く上里の野郎の所まで行けるな」

 

「えへへ、垣根さんに褒められると嬉しくて体がくすぐったいですね」

 

まさかの力技に開いた口が塞がらない去鳴達、垣根は一切気にせず帆風の事を褒めると彼女は頬を赤くしながら照れ隠しの為一足早くに大穴へと飛び込みそれに垣根も続く

 

「……もうどうにでもなれ」

 

去鳴も後に続き上条達も穴から飛び降りる。飛び降りた先でも帆風はまた床に穴を開け垣根と共にその穴に飛び込んでいく

 

「…確かにこれだと早くクソ馬鹿お兄ちゃんの所に辿り着けそうだね」

 

「だな…まあ余計な体力を使わないんだから結果オーライじゃね?」

 

「……そうなんだろうけどさ…なんかラストダンジョンを通らずにラスボスに挑むみたいでなんか嫌じゃん」

 

去鳴はそう言いつつも穴から飛び降りて次の階層へと進む、今は私事よりも上里を止める事が優先だと理解しているのだろう

 

「では次の階層に行きますわよ」

 

帆風がそう言って拳を振り上げまた床に穴を開けようとしたその瞬間、垣根が帆風の身体に抱きつく

 

「へぁ!?か、かかか垣根さん!?こんな皆様の前で堂々と襲われるのは恥ずか……!」

 

帆風が顔を赤くしてそう呟くが垣根は彼女に抱きついたまま未元物質の翼を展開、それを繭状に閉じると同時に青白い光線から自分と帆風を守った

 

「!?こ、この光線は!?」

 

「………来たか」

 

驚きの声を上げる帆風、垣根は未元物質の翼を広げ襲撃者()の顔を見る。

 

銀髪に紫の眼を持つ古代ローマの服装であるトーガを着た少女 蛇神宛那(へびかみアテナ)

 

オレンジがかったボサボサの長い髪に白いセーターと極端に長い真っ赤なプリーツスカートを着た少女 獲冴(エルザ)

 

服装は背中の大きく開いたエプロンに似た白いワンピースに、両足がガーターベルト付きの白いストッキングと地味だが黒髪に南国に生えていそうな巨大な華が左右の側頭部に咲いており、背中一面も色とりどりの花弁が咲き乱れる少女 田妻暮亜(たずまクレア)

 

白装束で額の三角布をハート型に切り取ったいかにも幽霊な雰囲気を…いな正真正銘の幽霊な長身の少女 御霊冥亜(ごりょうメイア)

 

無線機を大量に詰めたリュックを背負いながら首筋に自前のインプラントをぶち込んで、 巨大風船片手に年中無休で遊覧飛行している未確認パジャマ少女 烏丸府蘭(からすまフラン)

 

黒バラをデザインにした眼帯をつけたカトラスとマスケット銃で武装し、海賊帽子にミニスカートという海賊を模した服装の少女 豊山琉華(とやまルカ)

 

以前倒した筈の二人と新たなる刺客が四人…計六人の少女達が垣根達の前に立ち塞がる

 

「そんな…暮亜達は兎も角、獲冴に宛那まで!?捕まってた筈なんじゃ…」

 

「五月蝿えよ裏切り者、対象の義妹のくせに魔神側に寝返りやがって…ここで死ね」

 

会話など不要と宛那以外の全員は懐からある物体…そう神威混淆(ディバインミクスチャ)だ。宛那も複雑な顔をしてアメジストの蛇の装飾品 セクメト=アテナを取り出す、獲冴も以前使ったエメラルドの小麦を象った装飾品 オシリス=ハデスを、暮亜は純金とダイヤでできたバラの装飾品 イシス=デメーテルを、冥亜は黄金で出来たオベリスクの装飾品 ラー=ゼウスを、府蘭は純金とダイヤで構成されたハゲワシの装飾品 ワチェット=レトを、琉華は銀で構成された大熊の装飾品 テフヌト=アルテミスを胸に差し込む…そして六人は光に包まれ最強の姿となる

 

「……またこの姿になるとはな」

 

「いいねぇ、力が漲ってきた!さああの時のリベンジマッチと行こうぜ麦野沈利!」

 

「上里さんに楯突く人達は……駆除します」

 

「上里君は私を助けてくれた恩人なの…その恩人を害する貴方達は絶対に許さない」

 

「そうなのです、そう言うわけで私達が相手になるです」

 

「まあそんな訳で死ぬ覚悟をしてね」

 

宛那達は全員が古代エジプトの服装に似た姿となり、圧倒的な魔力をその身体に宿す。その圧倒的なパワーとプレッシャーに上条達は飲み込まれかける、それ程までに神威混淆の本領を発揮した宛那達が強いと本能で理解しているからだ…宛那の時ですら苦戦したのに宛那と同格が五人もいる…だがあの頃の自分達とは違う、そう自分に勇気付けて上条達は一歩前に出る

 

「根性入れ直すぞ」

 

「…やはり貴様の相手は私…か」

 

削板は両手で自分の頬を叩き根性を入れ直しながら翼を展開する、宛那は闇の鎌を構えながら削板との間合いを詰める

 

「さああの時の屈辱…何十倍にして返してやるよ」

 

「ほざいてろ、もう一度返り討ちにしてやんよ」

 

獲冴は天満大自在天神を背後に出現させ黄金の翼を展開する、対して麦野は緑の翼を出現させ笑みを浮かべる

 

「……覚悟は…いいよなァ?俺もお前らの下らねェ復讐ごっこに付き合わされンのも我慢の限界なンでなァ」

 

「そちらこそどうなのです?私達に殺される覚悟は出来ましたか?と言うわけでミメティックプレデターやっちゃうのです」

 

ミメティックプレデターと呼ばれる府蘭の細胞質の怪物の群れが一方通行に襲いかかる。それぞれの個体はワチェットの息子であるホルスやレトの息子と娘であるアポロンとアルテミスの力を持つ隼や狼、熊となって一方通行に襲いかかる。それに対し一方通行はニヤリと笑って黒い翼を顕現させる

 

「わたくしの相手は貴方ですか…幽霊とは物理攻撃が効かなそうですわね」

 

「そう、私は貴方の攻撃なんか効かない…でも私の攻撃は貴方に届く…つまり私無双て事ね」

 

冥亜はそう笑いながら自分の身体を巨大化させる。そうこれはヒトダマの様に発光する『香炉』と呼ばれる小型ドローンから匂いの配合を変え巨大化したのだ。しかもゼウスの変身能力によりドンドン姿が肥大化し巨人と比喩なしに呼べるぐらいの巨体と化す。それに対し帆風は臆せず拳を構える…その身に宿すは神を見る者(カマエル)

 

「で、残った貴方達が私達の相手ですか?まあ私達が勝つのは明白ですけど」

 

「それに5対2の方がどれだけ絶望的な力を持ってるか伝わりやすいしね」

 

「舐めてるわねこいつら…さっさと片付けて上里の所に行きましょう先輩」

 

「そうだゾ、この自意識過剰系女子共をぶっ倒すんだゾ」

 

「よし!ここは俺の竜王の顎で…」

 

琉華と暮亜に対し去鳴を入れた五人がかりで倒そうと考える上条達…だが垣根が上条の肩を掴む

 

「ここは俺一人で充分だ、当麻とミコっちゃん、みさきち、サロメルは上里のクソ野郎を倒しにいけ」

 

「!?何言ってるんだ垣根!さっきは雑魚共だったから良かったけど今回の敵は訳が違う!あの宛那と同格の強さを持った奴らが二人もいるんだぞ!?」

 

「おいおい当麻…俺を誰だと思ってやがる?俺は学園都市の超能力者の第一位 垣根帝督だぞ?二人がかりでも負ける気がしねえよ…俺を信じろ」

 

垣根は自分を信じて先を行け、と笑いかける。上条達は何か言おうとするがその前に一方通行達の声が聞こえる

 

「そゥだ!早く行きやがれェ上条!お前があのハーレムクソ野郎をぶっ飛ばしてこい!」

 

「このハーレムクソ野郎のシンパ売女共は私らが倒す!お前はクソ野郎をぶん殴るだにゃーん!」

 

「お前らで根性なしに喝を入れてこい!お前達なら出来る筈だ!何せお前らは俺が認めた根性の持ち主だからな!」

 

「早く行ってください女王達!ここはわたくし達に…お任せ下さい!」

 

仲間達の声が聞こえる、その声を聞いて上条は暫し目を瞑り…右手の拳を握り締める

 

「分かった、絶対に俺が上里の野郎を倒してくる…だから絶対に負けるなよ垣根!皆!」

 

「誰に言ってやがる三下ァ!この俺が負けるわけねェだろ!」

 

「私の心配をするなんざ100年早いんだよ!それよりも自分の心配をしとけ!もし倒せなかったら焼肉奢れよ!」

 

「おう!絶対に負けないから安心して行ってこい当麻!」

 

「わたくし達なら大丈夫ですわ、こんな所で負ける筈がありませんから」

 

「てな訳で行ってこい、もし負けたらお前らの恥ずかしい画像学園都市にばら撒くからな」

 

上条達は上里がいる場所目指して駆け出す、獲冴達は行かせるものかと攻撃を行おうとするも垣根達に妨害されてしまった

 

「お前らの相手は俺達だ…せいぜい楽しませてくれよ?」

 

「上等です、貴方達を駆除して上里君の贋作である上条当麻を殺しに行きます」

 

「ハッ、言ったなこの妖怪花女!」

 

上条達がもう見えなくなった所で垣根達 超能力者(レベル5)と宛那達 神威混淆(ディバインミクスチャ)が激突した。科学の天使と魔術の悪魔…果たして勝つのは天使か悪魔か

 

 

同時刻、学園都市上空に1匹の天使が襲来した

 

「alnvo『座』nvkty帰slk還cegv」

 

その天使の名は神の力(ガブリエル)、かつては上条に敗れ、再臨した際も垣根と帆風に敗れた大天使が再びこの世界に顕現したのだ

 

「k天orbc界nv門nvy天使boo招lxlar来d」

 

学園都市に新たな天使が招来する、名もなき無銘の天使達…座天使(スローンズ)智天使(ケルビム)…この二体の上位天使が学園都市に襲来する

 

『rqslbged殺kglvuyz』

 

「よ、誉望さん……!」

 

「な、なんなんスかあの化け物は……!」

 

「……見た目通りに私達を助けに来た天使…て、訳じゃないでしょうね」

 

心理定規達はガブリエル達を襲い来る天使達を撃退しつつ逃げながら空を見上げ呟いた。あの怪物達は今自分達が相手をしている化け物とは比べ物にならないと直感で気づく

 

「vna皆klny殺rkivkigl」

 

ガブリエルがノイズがかかった声を放つ、それは無機質ながらも聴く者に恐怖を齎す…正にその姿は死の天使。

 

『『『tjlko堕n落bo都市goj壊sjaad滅hg』』』

 

ガブリエルが、智天使が、座天使が、天使が学園都市を襲う。いくらレイヴィニアやトール、窮奇達が強かろうが所詮個々の強さでしかない。ガブリエルの総数は億を超え倒しても倒しても湧いてくる…これが真の絶望。今までの戦いは前座に過ぎない…これからが本当の絶望の幕開けなのだ

 

 

 

琉華の元々の能力はブードゥー教の神格 十字路に住まい、交通や扉、境界や運命などを司る特別な神 レグバ=アティボンを師事した能力だ。レグバ=アティボンはあらゆる儀式、あらゆる時間に存在すると定義しその応用で主観時間を制御している…それがテフヌト=アルテミスの強化により時間を自在に操り月の弓矢を操る能力へと変化している

 

暮亜の能力は原石で植物を操る能力だ。更にその影響で細胞の性質がほとんど植物のものにまで変質し首だけになっても活動できるほどの生命力を持っている。更に藻類や生塗りの「接合」を凶悪に拡大させ金属やプラスチック…つまり現代兵器すら取り込みその性質を利用しミサイルやチェーンソーを構築、挙句は彼女のイメージで新しいモノにも昇華できるという性能を持つその原石はイシス=デメーテルにより更に強化されていた

 

「弾速を加速、対象の動きを低速、植物の成長及び動きを加速、対象の能力の速度を低速」

 

琉華の時間操作の能力により暮亜の原石で形成する植物の形成スピードを早めその動きを加速させる。更に琉華が持つ銀色に輝くアルテミスの弓と化したマスケット銃から放つ魔弾の弾速を加速させる。それとは真逆に垣根の動きを遅くし垣根が放つ未元物質の羽の動きを鈍くする

 

「私がこの葡萄の樹に接合させたのは地対地ミサイルとガトリングガン…つまり地対地ミサイルの威力を秘めた爆発を起こす葡萄の実をガトリング砲の様に放つて事です」

 

暮亜の説明した通り、彼女の両肩から生えた一対の葡萄の樹からガトリング砲の様に実が放たれそれが地面にぶつかる度に大爆発を起こす…琉華の加速によりその実が瞬く間に実を実らせまた実を飛ばす

 

「は、強えな…だが、その程度じゃあ俺には勝てねえよ」

 

 

垣根は琉華が放った青白い魔弾を翼で避ける、低速でスピードが遅くなっているというのに魔弾を避け続け背後から軌道を変えて迫る魔弾を翼で殴りつける事で搔き消す。暮亜は草の刃(リーフブレード)で構成されたチェーンソーを振り回すが垣根は未元物質の翼を振り下ろす事でチェーンソーを破壊する。彼の顔から笑みは消えない

 

 

「…やはりわたくしの拳…と言うより物理攻撃全般や魔術は効かないようですわね」

 

「そう、幽霊である私に貴方の攻撃は届かない。でも私の攻撃は貴方に届く…つまり私の勝ちは揺るがないということ」

 

帆風が何度も冥亜を殴りつけるも彼女の拳は空を切るばかり、ラジエルの魔術攻撃も身体を透き通るばかり…そう幽霊である冥亜にはありとあらゆる攻撃が通用しないのだから

 

「ほら、この様に私の攻撃は当たりますよ」

 

冥亜は右手からは灼熱の太陽光線を、左手からは雷霆を放ち帆風はそれを紙一重で躱す

 

「……拳も魔術も通用しない相手…どうやって倒したらいいのでしょうか」

 

帆風はどうやれば冥亜を倒せばいいのか今までの経験と知識をフル回転させる、そんな彼女を嘲笑う様に冥亜は拳を振り下ろした

 

 

「オラオラ、どうしたよ麦野沈利!?あの時みたいに私を倒すんじゃなかったのか!?」

 

「……煩えな」

 

天満大自在天神が放った雷撃を麦野が軌道を逸らす、獲冴はあの時よりも遥かに上回る数の雷撃を放ちそれを防ぐ事しかしない麦野を見て笑みを浮かべる。あの時の屈辱を返すチャンスだと獲冴は確信した

 

 

「行くのですホルス達、アポロンとアルテミス達。ゴーゴーなのです」

 

太陽の如く輝く右眼に月の様に静かに輝く左眼を持つ鳥 太陽神 ホルスを模した怪物に黄金の毛並みを持つ狼…狼のアポロン(アポロン・リュカイオス)、白銀の毛皮持つ熊の怪物 アルテミス…それらが一方通行に襲いかかるが彼は臆せずに黒い翼を横に振るい怪物達を一瞬でかけらも残さず消し飛ばす

 

「こンな程度かオマエの玩具わよォ」

 

「……ほざけです」

 

小馬鹿にする様に笑みを浮かべる一方通行に苛立った府蘭は更に怪物達を生み出していく。それを何度も翼を横に振るう事により一掃していく一方通行…そんな行動が何度も繰り返される

 

 

「……またお前と戦うことになるとはな宛那」

 

「私もだよ削板軍覇…貴様に倒され色々と思うことがあったが…上里君を見たら、どうしても逆らえないんだ…」

 

「…………」

 

「私は弱くズルい女だな。これが間違っていると知りながらも…貴様風にいうなら根性なしだな」

 

宛那の鎌と削板の拳がぶつかる、それだけで削板には分かる。宛那が今どんな感情で鎌を振るっているのか…悩み、後悔…複雑な感情が渦巻いているのが分かる

 

「……ああ、そうだなお前は根性なしだよ。だがお前はまだそれがおかしいて思ってる時点でまだ他の奴よりはまともだ」

 

「…………」

 

「だが俺はお前を止めるぞ、俺も守りたいものがあるからな」

 

「……ふ、実に…貴様らしい言葉だ」

 

鎌と拳が激突を繰り返す、二人の静かで激しい戦いはまだ終わらない

 

 

上条達は最下層へと辿り着き、広い大部屋へと足を踏み入れる…そこにその少年は立っていた

 

「やあ、やっぱりぼくの相手はきみか…そんな予感はしてたよ」

 

上里翔流、上条の右手 幻想殺し(イマジンブレイカー)と対になる右手 理想送り(ワールドリジェクター)を持つ男。魔神に復讐せんが為に学園都市を滅ぼさんとする男は無機質な顔を上条に向け、義妹である去鳴に向ける

 

「去鳴…きみは頭が少し狂っているがぼくの妹だと思っていたとのに…血が繋がっていなくても本当の兄妹の様だと思っていたのに、本当に………残念だ」

 

「……クソ馬鹿お兄ちゃんが、何でこんな間違った事が正しい事だと思ってるんだよ…何の罪もないパンピーを殺して…本当に変わったねお兄ちゃん」

 

上里は義妹()が自分を裏切った事を悲しく思っているのか彼の無表情な顔がほんの僅かに揺らいだ、去鳴も変わり果てた義兄(お兄ちゃん)を見て寂しげな表情をする

 

「……だがそれも全て魔神の所為だ、ぼく達を狂わしたのも皆魔神の所為だ…だから魔神を殺して平穏を取り戻す」

 

「魔神を全滅させて理想送りが消滅しても周りの取り巻きバカが元に戻る保証はどこにもないじゃん…ううん、寧ろ理想送りだって…」

 

「試して見たら分かる事だ。去鳴、これはぼくの為だけじゃない。お前や皆の為なんだ。だからぼくは魔神や魔神に協力する者を新天地に送るか殺さなくちゃいけない」

 

「……聞く耳を持たない……か、もういいよ。私からはもう何も言う事はないっしょ」

 

上里に何を言っても彼は信念を曲げないだろう。去鳴は踵を返して上条の後ろへと下がる

 

「私はお兄ちゃんの味方、だからアンタ達と協力して戦う事は出来ない…私に出来るのはここまで。後はアンタ達の好きにしてよ」

 

「……ああ、ここからは俺の好きにさせてもらう」

 

上条はそう簡潔に言うと美琴と食蜂と共に眼前の上里を睨む

 

上里(こいつ)にも自分なりの正義があるのは知ってる、垣根みたいに皆に慕われるヒーロー何だって理解ぐらいはしてる)

 

上里翔流は垣根や上条達と同じくヒーローなのだろう、でなければ上里勢力の少女達に好かれる理由がない

 

(だけどあいつは筋違いな復讐の所為で自分を……方向性を見失ってる)

 

そんなものはヒーローとは言わない、去鳴のあの悲しげな表情を見た上条はもう既に決意を固めていた

 

(去鳴がお兄ちゃんて呼んでた頃の優しい頃のあいつに戻してやる!俺が、俺達が上里翔流の歪んだ復讐心(幻想)をぶち殺す!)

 

彼は自分の右手を力強く握りしめた、彼の力の根源たる右手(イマジンブレイカー)を今まで以上に心強く感じ彼は上里を見据える

 

「………」

 

対する上里も幻想殺しの対である理想送り(ワールドリジェクター)を広げる。ブラックホールの様に上条も、美琴も、食蜂も何もかも吸い込んでやるとでも言いたげに

 

「「………行くぞ」」

 

直後、二人のヒーローが駆け出した。そのヒーロー達はお互いに右手を前へと突き出し必殺の拳を相手へと向ける

 

幻想殺し(イマジンブレイカー)理想送り(ワールドリジェクター)。互いに魔神が生み出した能力同士が牙を剥いた瞬間だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




果たして勝つのは幻想殺しか理想送りか?そしてていとくん達の勝負の行方はいかに?次回で行けるところまで行けたらいいなと思ってます

やっぱり感想が貰えるとやる気とモチベーションが上がりますね。これからも応援よろしくお願いします!

次回もお楽しみに!


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ハイヤーセルフ

今回は上里vs上条の決着が着く予定です…それと同時に上条さんの右手と神浄討魔についてyo○tubeで見た考察を取り入れてあります…かなりごちゃごちゃしてて長いですが…楽しんでいただけたら嬉しいです。後、今回はほぼ上里と上条さんの戦闘描写以外はサクサク終わります

そして自分グリッドマンのライトノベル買って読んで見たんですよ…そして思った事。これ一部か!まだ出る予定なのかよ!?しかも値段がお高い!(役1500円)…お小遣いが…足りない!でも内容は凄く良かったです。スカイヴィッターとバスターボラーの合体 大空武装超人 スカイバスターグリッドマンとか原作で見られなかった合体が見れたり、ガイヤロスα、ガイヤロスσ、ガイヤロス∞というオリジナル怪獣が見れて満足…こりゃ次回も期待しますわ…ただ、お金が…(泣)



絵恋は最下層の大部屋の柱の影に隠れて上里と上条の戦いを見物していた

 

「ふふ、馬鹿どすなぁ…あないな上里はんの劣化能力で上里はんに勝てる筈がないのになぁ」

 

絵恋は上条の事を馬鹿にしていた、自分が慕う人と似た様な力を持つ男。だがその力は上里と比べて劣る程度のもの…それが絵恋の上条に対する認識だった

 

「まあ、私が出る幕はないでしゃろなぁ。上里はんはあないな男に負ける筈がありまへんから」

 

絵恋はそう言って上里と上条の戦いを傍観する、絶対に上里が勝つと疑う事なく彼女は微笑んで上里の顔を見ていた

 

「新たな天地を望むか?」

 

上里の右手が伸びる、それは万物を飲み込むブラックホールだ。上条を新天地へと送りこの世界かれ消失させる恐ろしい右手…そんな右手に対し上条が取った行動は

 

魔女狩りの王(イノケンティウス)!」

 

「!?」

 

上里と上条の間に炎の巨神が君臨する、その名も魔女狩りの王。3,000度の熱量を誇る火の王は巨大な拳を上里へと振り下ろす…その一撃に対し上里は臆する事なく自身の右手を炎の拳にぶつける

 

「新たな天地を望むか?」

 

その一言で魔女狩りの王を右手で吸い込んでいく、所詮これも上条の能力。願望の重複に該当する者の被造物すらも新天地へと送る右手に魔女狩りの王は無念にも吸い込まれてしまう…だが、時間は稼げた

 

「うおおぉぉぉぉぉぉッ!」

 

真横から上条が迫る、真っ直ぐに右手を向けて上里をなぐりつけようとする。それに対して上里は愚策だと嘲笑い右手で上条に触れようとし…背後から迫る超電磁砲(レールガン)に気づいた

 

「!?」

 

「行っけぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

超電磁砲が上里に迫る、当たりさえすれば上里の身体など消し炭すらも残らないだろう…そう、当たりさえすれば…だが

 

「新たな天地を望むか!」

 

即座に右手を超電磁砲に向け超電磁砲を新天地へと追放する、その一瞬の隙を見計らって上条は右手を上里の顔面に叩きつけようとする

 

「甘いな」

 

「な…!?」

 

だが上里はそれを軽いステップで回避する、拳を避けられて驚く上条に上里は理想送りで触れようとしたその瞬間

 

「『気絶昏倒(カテゴリ030)』」

 

「………っ!?」

 

頭の中に猛烈な違和感が生じる、即座に自身の右手で頭に触れる上里。理想送りは自身も能力の対象内だが「願望の重複」さえなければ能力は発動しない。良くも悪くも「魔神に復讐する」事しか考えていない上里は理想送りで新天地に送られる事はない。故に頭の中の異常を右手で消し去る事が出来た

 

「…上条さんと同じで私の心理掌握も効かないみたいねぇ。新天地とかにこれで送れると思ったのに」

 

「残念だったな、欲望まみれのきみ達と違ってぼくは欲がないんだよ。平凡な高校生だからな」

 

「超電磁砲の速度に反応できて、なおかつ変な右手を持ってる奴の何処が平凡な高校生なのよ」

 

上里は右手を横に振るい上条はそれをバックジャンプする事で回避、左手から原子崩しを放つがやはり理想送りで消し飛ばされてしまう

 

「優先する、大気を上位に、人体を下位に」

 

「そんなもの、効くわけないだろう」

 

光の処刑で上里の動きを封じようとする上条、だが上里は右手は常に大気に触れている。術式の影響を受けた大気を…正確には大気に作用している術式の効果を全て吸い込み上里は動きを封じられる事はなかった

 

(光の処刑もダメか、天罰術式も同じだろうし未元物質も削板の力も効かない…クソ、無茶苦茶だなあいつの能力!)

 

幻想殺しが幻想を破壊して現実を呼び戻す盾とするならば、理想送りは対象を異世界(幻想)へ送り、現実を否定する矛だ。能力は真逆にして性質は同じという異質なこの能力を見て上条は何かに気づく

 

(……確かあの力は俺の幻想殺しと同質な力なんだよな。確かに似てる(・・・・・・)。俺は異能の破壊、あいつは異世界に追放する能力…一見違うようで似てる。いやそれを言えばフィアンマの右手やアリサだって)

 

幻想殺しと理想送りは同質の力だ、何せ幻想殺しと理想送りは同じとある神格の《退魔師(・・・)》の側面なのだから。そしてフィアンマやアリサと似た様な力でもある

 

「1発でダメならこれならどう!」

 

何発も超電磁砲を放つ斉射超電磁砲(バルカンレールガン)…いな食蜂と協力して1発1発が液状被覆超電磁砲(リキッドプルーフレールガン)に匹敵する力を秘めた液状被膜斉射超電磁砲(バルカンリキッドプルーフレールガン)が上里目掛けて放たれる

 

「ふん……」

 

それも新天地へと追放してしまう理想送り、やはり美琴や食蜂の一切の攻撃を無効化してしまう。その右手の前には垣根の未元物質(ダークマター)や帆風の天使崇拝(アストラルバディ)、フィアンマの聖なる右、アレイスターの霊的蹴たぐりすらも無力なのだから

 

「これが理想送り、くそったれな魔神(神様)がぼくに勝手にくれた(呪い)だよ」

 

上里はそう苦々しげな顔で呟く、上里はこんな力を望んでいなかった。全ては憎き魔神の所為だと上里は唇を噛みしめる。だが魔神が理想送りを生み出してしまう原因を作ったのは…

 

「全部きみのせいだ上条当麻、君が垣根帝督なんかと親しくしなければ…魔神達はきみだけしか見ていなかった!ぼくが理想送りなんて変な能力が自分の右手に宿る事もなかった!皆が魔術師やら原石とかいう変な力に目覚めなくてもよかった!ぼくらは皆平凡な…でも普通な人生を歩んでいたのに…きみの、きみ達のせいで狂った!」

 

全ては上条、そして垣根の所為だと叫ぶ上里、もし上条が垣根と友達にならなければ自分達はこんな間に合わなずに済んだ。全部お前達の所為だと叫ぶ上里に対し上条は口を開いた

 

「お前………………馬鹿だろ」

 

「な、に……!?」

 

「黙って聞いてれば俺の所為だの垣根の所為だの…馬鹿としか言いようがねえよ」

 

ただ一言、お前は馬鹿だと上条は上里に告げる、それを聞いて上里は目を見開く

 

「魔神達が俺に失望して理想送りが出来てお前に宿った?それのどこに俺の非があるんだよ、俺は垣根と友達になっただけだ…そんなの勝手に魔神て奴らが俺に勝手に期待して勝手に失望しただけじゃねえか。俺や垣根は何にも関係ねえだろ」

 

「だから言ってるだろ!きみ達が友達にならなければ魔神達はきみしか興味を持っていなかった!なのにきみ達が…」

 

「煩えよ、俺が誰と仲良くしようが俺の勝手だろ。例え神様だろうが関係ねえ、俺は垣根と友達なんだ。学園都市までに来るまで疫病神て言われてた俺に唯一話しかけてきてくれたのがあいつなんだ…あいつはな、俺の一番の親友なんだ。それを悪く言うんなら…絶対に許さねえぞ」

 

垣根が上条の初めての友達だった、一つ年上だが関係ない。垣根と出会った事が上条の人生の中での一番の幸福、そう上条は本気で思っている。彼がいなかったら自分は一生不幸だったかもしれない、疫病神のままだったかも知れない、彼女が出来なかったかも知れない、一方通行達と友達になれなかったかも知れない…そう上条は思っている

 

「あの時俺は嬉しかったんだ、疫病神の上条当麻として扱わずにたった一人の人間 上条当麻として接してくれる垣根が…あいつのお陰で今の俺がいる。あいつのお陰で学園都市での生活が楽しくなった…上里、お前が垣根を殺すて言うなら…俺は全力でお前を倒すぞ」

 

「……は、下らない。友情ごっこをするのは別にいい。だけどその下らない友情ごっこの所為でぼくらを不幸にするのはやめろ!きみ達の所為でぼくらは……!」

 

上条は強い意志を込めてそう宣言する、だが上里も気迫とその声に秘めた怒気と殺意は負けていない

 

「この一撃で決着をつける」

 

「望むところだ」

 

上条は駆け出す、右手(イマジンブレイカー)を上里へと伸ばし彼の幻想を粉々にぶち殺す為に。上里も右手(ワールドリジェクター)を幻想殺しへと伸ばす。幻想を殺す右手と異界へ追放する右手…この二つの同質の力が激突する……そして

 

「ずっと疑問に思ってたんだ、ぼくの理想送りときみの幻想殺し…この二つの力が重なり合えばどちらの能力が優先されるのかてね」

 

上里の声が響く、上条の声はしない

 

「だがよくよく考えれば分かりきっていた。魔神はきみでは魔神達を救えないと無意識化で考え、その代わりに理想送りが誕生したんだったな…そう「あらゆる魔術師の夢」である幻想殺しよりも遥かに高性能であれと願われ誕生したこの右手はね」

 

美琴と食蜂は目を見開いた、目の前の光景(・・・・・・)が信じられないと言わんばかりに。対して絵恋は当然だと言わんばかりに微笑みを浮かべる。去鳴は目を瞑った

 

「幻想殺しと理想送りが衝突したら幻想殺しよりも理想送りの能力の効果が優先される(・・・・・・・・・・・・・・・・)筈なのにね」

 

上条の右手は右腕ごと消失していた(・・・・・・・・・・)。服も右腕部分だけ消し飛ばされており彼の右腕は、今まで幾多の強敵を打ち負かして来た右手(イマジンブレイカー)は存在していないのだと理解出来た

 

「「先輩/上条さん!!?」」

 

数秒遅れて血が噴水の様に噴出する、幻想殺しは世界から消失した。何故か新天地に行かずに残った(・・・・・・・・・・・・・・)右腕以外の上条の身体を見て上里は疑問を抱くももう一度触れればいいだけだとその考えを忘れる

 

「これで終わりだ、ぼくらと同じ魔神の被害者 上条当麻。……新たな天地を望むか?」

 

その理想送りの発動の言霊を投げかけた。そして上里の右手(ワールドリジェクター)が上条の身体へと触れようとしていた…美琴と食蜂が手を伸ばすが……届くには遅過ぎた、上里の右手が上条に触れ……そして

 

 

 

「終わりです」

 

暮亜はそう呟いた、琉華と協力して垣根と戦っていた、そして垣根を自分の植物の蔓で全身を拘束し琉華の時間操作で垣根周辺の時を止め完全に動きを完封した

 

「…………」

 

時を止められた垣根は声を出す事すら出来ない、まるで死んだ様に黙っている。だが死んではいない。そして死ねない。このまま垣根は未来永劫時を止められたまま過ごさねばならない生き地獄を味わう事になるのだ

 

「案外呆気なかったね」

 

「そうですね、まあ所詮上里さんの敵じゃなかったて事ですよ。さっさと他の超能力者達も倒しに行きますよ」

 

彼女達はそう言って他の超能力者達を倒しに行こうと垣根から背を向けるが…

 

「いいのか、俺を放っておいて」

 

「「!?」」

 

琉華と暮亜は声がした方に振り向く、そこに立っていたのは垣根(・・)だった

 

「な、何故…!?貴方はそこで時が止まって…」

 

「ああ、あれは未元物質で俺そっくりに作った偽物だよ、俺そっくりのメルヘンだっただろ?」

 

時を止めたのは垣根が未元物質で作った自分そっくりの自律兵器だった。それを聞いて目を見開く暮亜と琉華…あれが偽物?背中から三対の未元物質を展開し未知の物理法則を駆使し多才能力まで使用し自分達を苦戦させたあれが偽物だとは二人にはとても信じられなかった

 

「ち、チート……」

 

「チート、ね。それを言ったら上里の野郎がよっぽどチートだろ…まあ、俺はこの未元物質(能力)を気に入ってるけどな」

 

垣根はそう言って笑い左手を左ポケットに入れ、右手を軽く開く。そして未元物質の翼を純白に輝かせる

 

「そ、の…翼は………!!」

 

「カッコイーだろ、勝利宣言をしにきたぜ」

 

そう言って垣根が右手でVサインを作る、それを見て歯噛みする二人だが…ふと笑った

 

「?何笑ってやがる?」

 

「気づかないんですか?確かに貴方は強い、でも私達は六人(・・)いるんですよ?すぐに他の超能力者達を倒して仲間達が集まってくる…いくら貴方でも六対一じゃ敵いこありません」

 

暮亜達六人で垣根と戦えば勝てる、そう暮亜は断言する。神威混淆で極限まで強化された自分達相手ならいかに垣根でも敵う筈がない…そう考える。だがこの考えは獲冴達が一方通行に勝つことを前提にしている。もしその前提が覆ればどうなる

 

「がっあ!?」

 

「「!?」」

 

近くの壁に何かが激突した、何事かと暮亜と琉華が壁を見るとそこには白目を剥いて床に転がる獲冴の姿があった

 

「え、獲冴!?」

 

「悪いな。少し力を込め過ぎちまったにゃーん」

 

当然の如く獲冴を吹き飛ばしたのは麦野だ、彼女は翠の翼を消しながらゆっくりと垣根の方へ歩いてくる

 

「ど、どうやって獲冴を……」

 

「0次元の極点で獲冴(こいつ)を引き寄せてから拳や蹴りを喰らわしてボコボコにした。ただそれだけよ」

 

獲冴の能力の最大の特徴はコックリさんによる霊召喚能力だ。それを神威混淆で強化している…だがそれ以外の攻撃は包帯を形成し槍にしたり盾にしたりする程度しか本人の戦闘能力はない。なので麦野は0次元の極点で彼女を自分の近くに瞬間移動させ拳や蹴りなどの肉体戦で速攻で獲冴を倒したのだった

 

「因みにトドメは原子崩しでブーストをかけて強化した脚を腹に思い切り食らわして、気絶してもらったにゃーん」

 

笑顔でエゲツない事を暴露する麦野、常人なら内臓が破裂している筈だが神威混淆で強化された肉体となっていた獲冴は気絶程度で済んだ

 

「むぎのんだけじゃねえ、他の奴らももうお前らの仲間を倒してる頃だぜ」

 

垣根はそう言って首を動かす、目線の先にあったのは一方通行が府蘭が創造したホルスやアポロン、アルテミスを模した神獣を黒い翼で一掃しそれを見た府蘭は信じられないと言わんばかりに目を見開いている光景だった

 

「美学が足りねェな三下ァ、神獣(こいつら)がどンなに強かろうが俺には関係ねェ。それに雑魚に任せて自分は優雅に眺めてるだけなンて巫山戯過ぎなンだよ」

 

「ひっ………!」

 

その言葉と共に黒い翼の先端が府蘭目掛けて振り落とされる、それは判子やスタンプを紙に捺す様に床へと押し付け府蘭を床にめり込ませたまま床を突き破り一気に各層の床を突き破り最下層の床に府蘭を叩きつける

 

「あ、う………」

 

そのまま府蘭は意識を手放す、オシリス=ハデスと同じくワチェット=レトは配下の存在が強くなるだけで術者本人は然程強くない、その点を一方通行に突かれ府蘭は敗北したのだった

 

「これが超一流のダークヒーローの美学てヤツだ」

 

「いやどこら辺がダークヒーローなんだアー君?」

 

垣根は軽くツッコみながら削板の戦闘を見る、削板と宛那は鎌と拳を激しくぶつけ合い火花を散らしながら互角の接近戦を見せつける

 

「やっぱりやるな宛那、それに前より迷いがねえ分技のキレが凄え!」

 

「……は、どの口が言うか。お前こそ以前よりその翼を使いこなしているではないか」

 

宛那が大きく鎌を横に振るう、削板はそれを左腕でガード。だが宛那は鎌を捨て両手を合わせテニスボールサイズの太陽球を形成しそれを削板の腹部にぶつけ爆裂させる

 

「ぐぅ……!?」

 

削板は呻き声を上げかけるが根性を入れる、どんな攻撃も来るとわかって仕舞えばどんな攻撃も通じない。そうそれこそが彼の原石による思い込み。来るとわかっていれば核だろうが魔術だろうが大した傷にはならない

 

「行くぜ宛那!ハイパーエキセントリックウルトラグレートギガエクストリームもっかいハイパーすごいパーンチ!」

 

「闇へと帰れ!」

 

削板は凄まじいエネルギーを纏った拳を、宛那は闇の力を纏った拳をぶつけ合う。拳がぶつかり合った瞬間、一瞬時が止まったかと思うほど静寂が訪れ…一秒立ってその静寂は崩れ激しい爆音が響く…それが拳と拳の激突だと理解するのに数秒かかった…削板と宛那、互いの拳をぶつけ合ったままその場で立ち尽くしていたが宛那が口を開く

 

「…………また、勝てなかったか。やはり強いな」

 

そう言って地面へと倒れる宛那、勝者はただ黙って倒れた敗者を見つめる。そして削板は彼女から離れ仲間の元へと向かう

 

 

「成る程、 貴方が無敵だった理由…それは匂いの配合にあったんですね」

 

「!?何故それを!?」

 

帆風は神の正義(ザドキエル)をその身に宿し、慈善と慈悲、そして記憶を司る天使としての力で彼女の脳内を覗く事で弱点を知った。帆風は彼女を倒すには匂いをなくす必要があると知り彼女は神の正義から神の監視者(ザフキエル)へと天使を変える

 

「雨よ降り注いで下さい」

 

ザフキエルはにわか雨を司る智天使だ、その雨により冥亜が巨大化する匂いの配合を乱す事により冥亜は見る見る小さくなり始め…すぐに元の姿に戻る

 

「っ!例え巨大化が解けてもまだ神威混淆の雷霆と太陽を司る能力が!」

 

そう言って太陽光戦と雷霆を放つ冥亜、だが帆風はそれを超高速スピードで避ける。音速を超える速度で床を、大気を蹴り一瞬で冥亜の背後へと迫る

 

「ザフキエルを宿した今の私は最強最速、目では決して捉えられないとお考え下さい」

 

「な!?は、早過ぎる!?」

 

ザフキエルは最速の智天使として知られる、故に天使崇拝で降ろせる天使達の中では最速のスピードを持つ天使だ。一時的になら光速にも達するそのスピードは正に最強最速を名乗るに相応しいだろう

 

神の如き者(ミカエル)………ミカエルは悪魔祓いの側面を持ちます。幽霊である貴方との相性は……効果ばつぐんですわね」

 

ミカエルの燃え盛る聖なる剣を具現化し、それを片手に持ち、冥亜へと天衣装着(ランペイジドレス)で強化した脚で縮地の如く迫り彼女の身体を斜めに斬り裂いた

 

「そ、んな……この私が…役に、立てなくて…ご、めん、なさい…上、里…さ……」

 

「……ご安心を、峰打ちですわ」

 

そう言って冥亜は床へと倒れる、浄化はされていない。暫くの間動けなくしただけだ

 

「う、嘘です…冥亜達がこんなにも呆気なく…?げ、幻術か何かですこれは…」

 

「そ、そうよね…これはきっと悪い夢」

 

暮亜と琉華はこれは何かの間違いだと否定の言葉を探す、だが分かっていた。これは変えられない現実だと…そんな二人を見て垣根が笑った

 

「狩る側の狩人から狩られる側の獲物に変わった気分はどうだお二人さん?」

 

垣根は左ポケットに左手を突っ込んだままそう尋ねる、六枚の羽が暮亜と琉華へと狙いを定める。今の二人は狩人(垣根)に狩られる獲物(弱者)でしかない…そう二人は本能で直感するのだった

 

「これが超能力者(レベル5)だ、地獄に落ちても忘れるな」

 

その言葉と共に白い凶器が音速を超えて放たれたのだった

 

 

勝った、そう上里は確信した。自分の忌まわしき右手と対とされる目の前の敵の右手を消し飛ばしたのだ。何故か右手以外が新天地に行かなかったが大した事ではない。ただ一度、もう一度上条の身体に触れるだけで上条はこの世界から消失する…絶対的な確信があった

 

「これで終わりだ、ぼくらと同じ魔神の被害者 上条当麻。……新たな天地を望むか?」

 

その一言で全て終わる筈だった、決着はつき後は美琴と食蜂も新天地に送り残った連中も片付け垣根帝督を殺す。なのに上条は新天地へと送られなかった(・・・・・・・)

 

「……な?」

 

何が起こった、上里がそう疑問に思う前に上条の肩の断面から何か(・・)伸びた。それは見えない右手だった

 

「な……!?」

 

上里はその見えない力が危険なものだと判断し理想送りをその見えない力に触れさせた…なのにその見えない力は新天地に追放されず逆に上里の右手を掴み握り潰そうとする

 

「があ"あ"ああああぁぁぁぁぁぁッ!?」

 

痛みに絶叫する上里、だが幸いなのか握り潰される事はなく上里はその見えない力に地面へと投げ飛ばされる。改めてその力を上里は見る

 

ーーーゾゾゾゾゾゾゾぞゾゾゾゾゾざザザザザザザザザザザざザザザザザざザザザザザ!!ーーー

 

と、存在しない筈の傷口の向こうに見えない力が集束していく。それを見て上里は幻想殺しや理想送りの力が霞んで見えた。あれはそれ程莫大な力なのだと

 

(透明な…『何か』、ま…さか……幻想殺しはこの力を封印する為の…いわば付属品、なのか?だとしたら、こんな莫大な力を封印するのに幻想殺しの大半の力を使っていた筈…幻想殺しが理想送りよりも劣っていたんじゃない…この力を封じていた為に本来の性能が発揮できなかっただけだった(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)んだ!)

 

この力には理想送りは通用しない、上里はそれを理解した。そしてその見えない力の渦を起点に赤黒い魚卵の房を連想させるポリゴンのような三角面の泡の集合体が噴き出した

 

「な!?」

 

その泡は卵の殻だった、ビキビキと魚卵の房に似たポリゴンに一斉に亀裂が入りそこから竜王の顎の竜に似た生物達が誕生する

 

『『『『『グギィガアアアアァァァ!!』』』』』

 

「……冗談…だろ」

 

それが幻想殺しや理想送りが持つ《退魔師》とは真逆の力である《魔術師(・・・)》としての側面の力だった。このドラゴン達1匹1匹が上里を噛み殺しこの浮遊要塞を破壊する程の力を秘めていると上里は理解した

 

(……聞いてないぞローラさん…こんなの絶対に…勝てる訳が……)

 

上里が内心でそう呟いた時、上条がゆっくりと顔を上げた。ただそれだけで上里は冷や汗を流す、来るという予感だけあった、それがどんな事かは分からないが警戒すべき何かが起こる…その瞬間だった

 

「……邪魔すんなよ神浄討魔(かみじょうのとうま)

 

彼は『見えない何か』と魚卵から誕生したドラゴン達を自らの力で握り潰した。肩口に集束した莫大な力、その上から出現した竜王の顎(ドラゴンストライク)が口を開き丸呑みし咀嚼したのだ

 

『………!?』

 

その光景を誰もが唖然とした顔で見ていた。何が起こっているのか誰も理解できなかった。上条が誰と会話しているのかすらも分からなかった

 

「…大覇星祭の時お前は俺に竜に変身する力を貸してくれたな…アレはお前の力であり俺の力(・・・)だったんだな」

 

上条は誰か(・・)に会話を続ける

 

「テメェが何者か知らねえ、でもよ…でしゃばってくんな。俺は俺だ(・・・・)。お前は確かに俺だが俺が上条当麻なんだ。お前が出てくる必要はねえ」

 

そして上条は告げるのだった

 

「俺の邪魔を二度とするんじゃねえ。お前は俺がお前を使いこなせる日まで決してその力は使わねえ…引っ込んでろ。この戦いにはお前の出番はない」

 

ーーー………言うようになったじゃねえかーーー

 

低次の自己(上条当麻)高次の自己(聖守護天使)である神浄討魔を従えた…これ即ち上条当麻が"真の意思"に目覚めた瞬間だった。肩口から右手が伸びる、肉体が再生したのだ

 

「…新たな力を捨てて…幻想殺しを戻した?」

 

信じられない、あれだけの力を捨てて理想送りに消し飛ばされてしまう幻想殺しを取り戻した?否、違う。確かにその右手は今までと同じ幻想殺しだ、性能もほぼ一緒…だが出力は違う(・・・・・)。もう神浄討魔を封印していた分のパワーが幻想殺しに戻って来ている。神浄討魔(高次の自己)を従えた今の上条にはそれだけの出力を引き出す事が出来る

 

「な、ぜ…何故なんだ!御都合主義過ぎるだろ!何で…このタイミングで都合良く強くなれる!?そうか、これも魔神の……!」

 

「違えよ…これは……守る力(・・・)だ」

 

「……守る力?」

 

憤る上里に上条は淡々と口を開く

 

「俺は学園都市を、友達を、恋人を守る。その為の力だ…お前みたいにただ壊すだけの力よりも、誰かを守る力の方が強いに決まってるだろ…誰かの手助けなんかじゃない。力を手に入れるのは…いつだって自分自身なんだよ…それはお前だって同じだ」

 

「……なに?」

 

「お前は魔神が理想送りを与えたと思ってる、でもきっと違う。魔神がお前を選んだんじゃない。俺と同じ…幻想殺しが俺を選んだように…理想送りもお前を選んだんだ」

 

「……理想送りが…ぼくを?」

 

上里が理想送りに選ばれたのではない、理想送りが上里を選んだのだ。上条と同じその魂の輝きに惹かれその右手に宿った…それだけだ

 

「……俺は守るぞ上里、学園都市も友達も恋人も全部俺の力で守ってやる」

 

右手を握りしめながらそう宣言する上条、それに対し上里は笑った

 

「なにを馬鹿なことを…知らないのか?今地上をガブリエル…ミーシャ=クロイツェフが、智天使が、座天使が、天使達が襲っていんだぞ?学園都市の人間が天使達に勝てる筈がないだろう!」

 

そう、ガブリエル達が学園都市を襲っている。それは変えようのない事実だ。垣根達なら天使達を倒せるだろうがもう遅い。天使達は今頃学園都市を焼け野原にしている筈だ…だが上条の顔色は変わらない

 

「確かに学園都市だけじゃあ天使は倒せないかもしれない…ああ、学園都市だけ(・・・・・・)…だったらな」

 

「……何?」

 

そう不敵に上条は笑い上里は目を細めた

 

「上里、お前に見せてやる。絆の力てやつをな」

 

 

 

ガブリエルは氷の剣を手に持ち、視界に映った心理定規達を斬り裂こうと剣を振るう。三人が目を閉じて自分達の死を覚悟する…その時だった

 

「邪魔だ、失せろ神の力」

 

「elxglギャsycnlアkvtアアnvglァァhyァsyァァァvnnvty!?」

 

「………え?」

 

ガブリエルの身体が真っ二つに両断された。ガブリエルの身体が天使の力に戻り消えていく…それを呆然とした顔で見つめる心理定規。ガブリエルを斬り裂いたのはたった一振りの巨大な剣だった

 

「危ない危ない、間一髪だったな貴様ら」

 

「あ、アンタは誰っスか?」

 

いつの間にか背後に男が立っていた、その男は全身を赤を基準とした服を着た赤男と呼ぶに相応しい服装をしていた…更に髪まで赤髪で目だけは黄色に鋭い眼光を放っていた

 

「俺様はフィアンマ、俺様の親友 垣根帝督と学園都市の危機と聞き助けにやって来たぞ」

 

彼の名はフィアンマ、神の右席のリーダーにして垣根の親友だ。そして助けに来たのは彼だけでない

 

「フィアンマ。早くこの天使達…いえ、堕天使達を駆除するのですねー」

 

「たく、厄介事に巻き込まれたわね…ああ、めんどくさいたらありゃしないわ」

 

「だが…この様な暴挙見過す理由はないのである」

 

左方のテッラ、前方のヴェント、後方のアックア…神の右席全員が学園都市の為にバチカンからやって来た…いな、彼らだけではない

 

「おお、我らがローマ正教の盟友たる学園都市よ!この女王艦隊を率いてこのビアージオ=ブゾーニが助けに来たぞ!アニェーゼ!砲弾をセット!ファイヤーだ!」

 

「てな訳で聖バルバラの神砲に砲弾をセットです!ローマ正教の盟友、学園都市を攻撃する天使は皆殺しです!」

 

『『『ファイヤー!!』』』

 

「行きますよアンジェレネ!天使は皆殺しです!」

 

「美味しいチョココロネを提供する学園都市を攻撃するなんて…例え天使でも絶対に許しませんよ!」

 

街中に小型化した女王艦隊が何隻も現れる、砲塔から砲撃を行い天使達を蹴散らし指揮官たるビアージオが十字架を振り回して天使達を鏖殺していく

 

 

「一本足の家の人喰い婆さん、幸薄く誠実な娘のために力を貸してくださいな髑髏のランプをくださいな。不実な継母達を焼き殺す、炎を噴き出す髑髏のランプを」

 

炎が吹き荒れる、ワシリーサの童女のような歌声に呼応し千切れた影を纏う人食い魔女の老婆が出現し髑髏のランプから激しい炎を出し天使達を焼き払ったのだ

 

 

「ゼロにする!」

 

「全軍突撃!」

 

騎士団長のソーロルムの術式で天使達の剣が、弓が力を失う。その隙にキャーリサ率いる騎士達が天使達に剣を喉笛に突き刺していく

 

「ウィリアム!?ウィリアムは何処ですか!?」

 

「……バーサーカーがいるわ」

 

ヴィリアンがエクスカリバーを振り回しながら天使を蹴散らす、その姿を見てリメエアが溜息を吐いた

 

 

「金を借りに来ただけのつもりだったが…ここで恩を売って今までの借金チャラにしてもらうのもありだな」

 

「何ふざけた事を抜かしやがるオッレルス!ちゃんと金は返せよ!」

 

オッレルスが説明できない力で天使達を纏めて吹き飛ばす、どさくさに借金をチャラにしようとするダメ夫にシルビアは天使達を八つ裂きにしながら怒声を上げる

 

 

「悪いな、私もこの街に少し興味が湧いてるんだ…踏み潰せエリス」

 

ゴーレム=エリスが天使達を踏み潰す、エリスを操るのはシェリー。彼女は笑みを浮かべながらオイルパステルを手でクルクルと回した

 

 

「くっ……もう限界、ですの…」

 

『klty終nlzg』

 

抵抗虚しく天使達に追い詰められた黒子達、天使の内の一体が剣を掲げて斬り裂こうとしたその時…

 

「そうはさせん」

 

ズバッ、と風の刃が天使を引き裂いた。そして黒子達の近くに一人の男が着地する

 

「闇咲逢魔、恩人の為に助太刀するぞ」

 

「や、闇咲さん!」

 

彼は闇咲逢魔、以前インデックスを狙った魔術師である。彼の左手の薬指にはめた指輪が光を受けて輝いた

 

「それに助けに来たのは私だけではないぞ」

 

その言葉と共に、火柱が吹き上がり三体の巨人が君臨する

 

三位一体・魔女狩りの神(トリプル・ハイパーイノケンティウス)…とでも呼称しようか」

 

その術式は神裂が天草式の身の回りのあらゆる要素を魔術に応用する術式を駆使し、ルーンの配置自体を魔法陣とし禁書目録であるインデックスの知識を総動員し強化したステイルの魔女狩りの王…その名も三位一体・魔女狩りの神だ

 

「……遅いんですのよ」

 

「待たせたね皆…僕らが助けにやって来たよ」

 

「よく持ちこたえてくれました…ここから先は私達におまかせください」

 

白い修道服を着た少女が一歩前へ出る、その威圧感を肌で感じ天使達は一歩後ずさる

 

「私の友達を散々痛めつけたんだもん…覚悟はいいよね?やっちゃえイノケンティウス」

 

インデックスの声に応じるかの様に三体のイノケンティウスが天使達へと襲いかかった

 

 

「はぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

風斬は髪と瞳を黄金に染め上げ、背中から巨大な翼を顕現させ手に持った翼と同じ物質で出来た黄金の剣で智天使と座天使達を斬り裂いていく

 

「私の友達に…私の居場所に……手を、出すな!」

 

天翔ける流星の如く彼女は飛翔する、その黄金の流れ星に斬り裂かれた天使達は光の粒子となって消滅していくのだった

 

 

「……あんまり美味しくない、ていとくのご飯の方が美味しい」

 

フロイライン=クロイトゥーネはそう言って咀嚼していた天使の肉片を吐き出す。そして軽く腕を動かし天使達の身体の内側から膨張させ体を引き裂いた

 

 

「やってくれたな上里翔流…だがたかが天使如きでこの魔神をどうにかできると思ったか」

 

「まあ、街は滅茶苦茶だけどね…後で直すのが大変そうだけどね」

 

「それは俺達の管轄違いだ…気にするな」

 

黄金夜明の魔術師達が天使達を蹴散らす、脳幹もA.A.A.からミサイルやドリルで天使達を虐殺しオティヌスは主神の槍を振るうだけで天使達が吹き飛びメイザースが召喚したミカエルに斬り裂かれていく

 

 

「………ふん」

 

アレイスターは衝撃の杖(ブラスティングロッド)を一振りする、それだけで窓のないビルを覆い尽くさんばかりに群がっていた天使達は一掃された

 

 

「派手に暴れているな…俺様達もエントリーしに行くか」

 

そう言ってフィアンマは第三の腕を振るい、テッラ達と共に学園都市の何処かへ移動する。それを呆然と見つめていた誉望と猟虎

 

「す、凄い能力っスね…」

 

「ですわね…」

 

そんな二人とは対照的に心理定規は目を細め呟いた

 

「……彼、面白いわね」

 

 

上里の誤算は学園都市だけを相手にしていると思っていた事、学園都市が築き上げてきた絆を見くびっていた事だ

 

「お前達が相手をしてるのは学園都市だけじゃねえ。ローマ正教、ロシア成教、イギリス王室…他にもいる筈だ。お前は知らなかったんだ。学園都市の絆の力に」

 

「……だから何だと言うんだ」

 

天使達がやられるとは想定外だった。だが上里は揺るがない

 

「天使達を倒そうが無駄だ!ぼくの理想送りは学園都市の全員を、ローマ正教だろうが神の右席だろうが関係なく万物を新天地へと送り世界から消失させる!どちらにせよローマ正教達も消し去る予定だったんだ!予定が早まっただけだ!」

 

そう言って上里は右手を握りしめる、自分の障害は全てこの手で消し去ってみせると言わんばかりに…それに対し上条も右手を握る

 

「……もう話す事はない…これで終わりにしようぜ上里」

 

「ああ、きみの敗北という形でね!」

 

上里と上条は同時に駆け出した。上条は前と同じ様に拳を上里へと振るう。それを見て上里は笑った

 

(馬鹿の一つ覚えだな…さっきの失敗から何も学んでいないのか…きみの幻想殺しはぼくの理想送りには通用しない!今度こそ終わらせる!)

 

グーの上条に対し上里は掌を広げジャンケンのパーの様に手を広げる。これで終わりだ…そう思って右手を上条へとぶつけ…そして上里の指が上条の拳とぶつかり折れた

 

「……な?」

 

自分や指が折れ曲がった、理解出来ない…何故折れたのかではなく何故上条が消えないのかという事に

 

(……そ、うか…あの時幻想殺しが消えたのは…あの「見えない何か」の力を封じる為にその力の大半を使っていたからだ…だが今はその謎の力を封印する必要がない…だから幻想殺しを100パーセントの力で使っているのか!)

 

幻想殺しは神浄討魔を封印する為にその力の大半を使っていた。だが上条はそれを従えている…故に神浄討魔を封印する為に力を割く必要はない。だから幻想殺しの今の出力は理想送りの力を相殺するだけの力を秘めている

 

「これで終わりだ上里翔流」

 

「!?」

 

上条が大きく腕を振る、上里は目を見開く

 

「テメェが、テメェらの復讐の為に他の誰かを不幸にしてもいいと思ってんなら」

 

上条当麻の腹の底から、激情の言葉が溢れる。それに逆らわず彼は右の拳に自分が持てる全ての力を乗せる

 

「まずはその幻想をぶち殺す!」

 

上条の右拳が上里の顔面に炸裂する。鳴り響く轟音。上里の顔に叩き込んだその拳は上里を大きく吹き飛ばし何度も床を激しくバウンドする……上里は意識が明暗する中最後に見たのは自分を殴り倒した上条当麻(ヒーロー)の姿だった

 

それを最後に上里の意識は薄れ視界は暗闇に落ちた

 

 

 

 

 

 

 

 




案外呆気なく倒されたな獲冴達…まあこれは彼女達が弱いのではなく、ていとくん達が強過ぎるだけ…仕方ないね。因みにザフキエルを宿した状態の縦ロールちゃんは某最強最速の光の巨人イメージです…あ、分身とか巨大化は流石にしません

そしてとある考察で見たところ、新約22巻で現れたポリゴンの魚卵はハディートの側面《魔術師》、リバースの神浄討魔は上条さんの聖守護天使…つまり高次の自己らしいです。もしそれが本当ならそれを考えたかまちーも凄いけどここまで考察した動画主て一体何者なんだ…

次回で理想送り編は終わりの予定です…そして等々アイツらが動き出す予定です…どうぞお楽しみに

次回もお楽しみに


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光を掲げる者

さあ、上里翔流との戦いはこれにて終わり…理想送り編完結…とはいきません。上里との戦いは終わりですが…まだ後日談が残っていますからね…むしろその後日談が大事になる…かもしれない

そして等々あいつらが登場、そして久しぶりにあのお二人が!怒涛の展開が続きますのでどうぞお楽しみください



夢を見た、まだくそったれな右手がなかった頃…自分が平凡な高校生だった頃の夢だ。幼馴染の獲冴と偶に会って軽口を言い合い、園芸部の暮亜を見て委員の仕事を頑張ってるなと思ったり、引きこもりだった絵恋を学校に連れ出したり、同じ図書委員の宛那と委員の仕事をしたり、義妹の去鳴とご飯を食べたり…平凡で代わり映えしない生活…でも充実した日々を送っていた

 

だがそんな日常は崩れ去った。あれは上里が中学三年生の頃だろうか…急に右手に違和感を感じた。今までとは何かが違う…そんな感じがした…そしてそれが気のせいではないと気づくのに時間はかからなかった

 

ある時、町の不良が上里にカツアゲしようと鉄パイプで彼を殴ったのだ。殴られた箇所は焼け付く様に痛かった。痛みに呻く上里を気にせず狂った様に鉄パイプで殴る不良…上里は苦し紛れに右手を不良へと伸ばし…触れてしまった

 

「や、めろ……やめてくれ!」

 

その一言が悪夢の始まりだった。その一言共に不良は右手に吸い込まれ始めたのだ

 

「………え?」

 

上里がそう呆けた声を出した瞬間、不良の悲鳴が轟く

 

「な、何だよこれ!?す、吸い込まれる!?な、何なんだよお前!?た、助けて…誰か助けてくれ!!」

 

不良の情けない叫び声が轟く、それを呆然と眺めるしかできない上里

 

「こ、この化け物!お、お前は化けも…」

 

その罵りと共に不良は世界から消失した

 

「あ、あ……」

 

その時は理想送り…そんな名前すらもない自分の恐ろしい右手を上里は一瞥する。不良を殺したのだと思った。自分が殺した…そう思うだけで上里は左手で口を押さえ吐き気を堪えた

 

 

この右手は何なのかと自問自答する日々が続いた、それに他にも問題の種があった…獲冴や宛那、暮亜と言った自分の知人達が変な力に目覚めたのだ

 

「大将…今日さ10円玉でコックリさんの真似事をして見たらさ…なんかマジモンの幽霊…みたいなもんが出てきたんだよ」

 

「上里君…最近私おかしいの…こんな黒い霧が何故か出てきちゃって…他にも物が突然石になったり蛇とか梟が暗闇から出てきたりするの…これ何なのかな?」

 

「あ、の…上里さん…実は…私の身体から…お花が生えてきたんです」

 

まるで上里の右手の異変に連動する様に変な力に目覚め始めた宛那達…まるで自分と同調する様に変な力に目覚めていく女の子達を見て上里はこれも自分のせいではないのかと考え始めた

 

 

そして何故か右手の異変と共に上里の周囲に事件が起き始めた。魔術師という変な連中に追われる女の子を助けたり、地縛霊を助けたり、科学者に追われる女を助けた…そして何故かその女の子達は上里に惹かれてしまうのだ

 

「……これも…この右手の仕業…なのか?」

 

 

気味が悪かった、自分を慕う女の子達が怖かった。この右手の所為ならこの右手を消して早く元に戻さないてはいけない…そう思う共に別の考えが上里の中にあった

 

(この右手がなくなれば…ぼくと彼女達の繋がりはどうなるんだ?)

 

右手によって彼女達が惹かれ慕っているとすれば…この右手がなくなれば自分には価値がないのだと上里は考えてしまった。だから怖かった。この右手が自分の全てな気がして、誰も本当の自分を見ていないのだと錯覚し始めた

 

「そんな事ないよお兄ちゃん、癪だけど皆お兄ちゃんの内面に惹かれて慕ってるんだよ…私と同じでね(ボソッ)」

 

義妹(サロメ)はそう言うが上里には信じられなかった、右手で繋がれた歪な偽りな繋がり…とても気持ち悪く上里は思った。そんな関係を早く断ち切りたい…でも断ち切れば彼女達との繋がりはなくなる…そんな気持ちの板挟みに上里は苦しんだ

 

 

「貴方が理想送りでありけるのね」

 

「……貴方は?」

 

上里は一人の女と出会った、黄金をとかして髪にした様な長い金髪にサファイヤの如く煌めく碧眼、ピンク色の修道服…可笑しな格好に変な口調な女だった

 

「私はローラ=スチュワート。イギリス清教の最大主教なりけるのよ」

 

「……イギリス清教?」

 

「貴方は知りたいのでしょう、その右手について…私が教えてあげてもよくってよ」

 

上里はローラから全てを聞かされた。その右手に宿った能力は理想送り(ワールドリジェクター)。本来は幻想送りと呼ばれる上里の対となる能力を自分達の救済として見ていた魔神と呼ばれる存在が今代の幻想送りに垣根帝督と呼ばれる男が接触したせいで方向性が変わりそれを魔神達は失望したのだと言う

 

そして魔神達は「幻想殺しにすがり続けても安心は得られない」と無意識に思った事により、理想送りと呼ばれる幻想殺しに変わる力が出現しそれが上里の右手に宿ったのだという

 

「……ふ、ざけるな…巫山戯るな!その魔神とかそんな巫山戯た存在の勝手でぼくの…ぼくらの人生が変わったのか!?」

 

上里は激怒した、高々個人達の勝手な考えに自分達は振り回されているのかと。巫山戯るな。自分達は魔神とやらこ道具ではないのだ

 

「元凶は魔神、だがきっかけは学園都市に住まう垣根帝督とアレイスター=クロウリーなりけりよ…さあどうする上里翔流?貴様はこの話を聞いて何がしたい?」

 

ローラの囁きは正しく悪魔の囁きだった、上里の激情が全体に流れ怒りに支配される…そして重々しく口を開く

 

「復讐…してやる…」

 

「ぼくらを勝手に巻き込んだ魔神も!きっかけを作った垣根帝督も!学園都市を作ったアレイスター=クロウリーも!全部ぼくの右手で復讐してやる!」

 

ニヤリとローラが笑った、全て計画通りだと…そんな事を知らない上里はただ悪魔の掌で踊るのだ…踊らされていると知らずに、ただただ大悪魔の傀儡となり踊り続けるのだ…背後で悪魔が笑みを浮かべているのに気づかずに

 

 

「………ぁ」

 

「目が覚めた?お兄ちゃん」

 

上里は目をゆっくりと開ける、視界に映ったのは自分を見下ろしている去鳴だった。頭に生暖かく心地よい感触があった…何かを枕にしている様だ…すぐに分かった。自分は去鳴に膝枕されているのだと

 

「……何をしているんだ去鳴?」

 

「お兄ちゃんに膝枕してる」

 

「……いやそういう事じゃなくて」

 

上里はふっと思う、去鳴と兄弟らしい会話をしたのはいつぶりかと…ローラと関わった時以来だろうか…だが自分が先程まで上条と戦っていたことを思い出しハッとした顔で上里が起き上がる

 

「上条当麻は!?ぼくはあいつに負けた筈だ!?あいつは今どうしている!?」

 

上里は自分は上条に負けた、自分を倒した上条は何処にいると去鳴に尋ねると去鳴は困った様な顔をする

 

「えっとね……あそこ」

 

去鳴が指を指した場所を上里が首を動かして見る、彼の目に映った光景は……

 

「おら!テメェの犯した罪の重さが分かったか!もっと火の勢いを激しくしろアー君にむぎのん!」

 

「おゥ!薪を火の中に入れてェ、火力を上昇、上昇ゥ!」

 

「お前らが熱くて苦しもうが関係ねえよ!!カァンケイねェェんだよォォォ!お前らが熱つかろうが、火傷になろうが!私には一切カァンケイなィィィんだよ!」

 

『助けてぇぇぇぇ!!!』

 

「……えぇ」

 

獲冴、絵恋、琉華、府蘭、冥亜、暮亜の六人が釜茹での刑にされていた、一方通行が薪を入れながら大気を操り釜の火力を上げる。麦野が薪を割って一方通行の近くに置く。そして垣根は片手に鞭を持ちながらブーメランパンツ一丁にパピヨンマスクをつけた垣根が獲冴達に蜂蜜をかけていた

 

「こ、の……垣根、帝督!テメェ変態か!いや変態だな!」

 

「俺は変態じゃねえ、そして俺の名は垣根帝督じゃねえ…俺の名は鳥人メルヘンだ」

 

「いや変態じゃねえか!何が鳥人メルヘンだ!」

 

「ノン ノン、メル♡ヘン。もっと愛を込めて」

 

「「「「「「込めるか!」」」」」」

 

垣根改め鳥人メルヘン…一体彼の正体は一体…?

 

「……何故私は釜茹でにされない」

 

「お前は根性あるからな!俺が見逃す様に帝督に言ったんだ!」

 

「……感謝しよう。流石にあの刑罰は…堪えられないからな」

 

「あはは…確かに釜茹での刑にされたくないですものね」

 

「いや、それ以前に貴様は第一位があの様な格好をしていて何も思わないのか?」

 

「……垣根さん、いい身体してるなぁーとしか思いませんわね」

 

「……イかれてる、イかれているな貴方は」

 

宛那は巻き込まれなくてよかった…と息を漏らすと共に帆風はおかしいと彼女は思った

 

「…何があったんだ去鳴」

 

「垣根帝督達がお兄ちゃんが倒された直後にこの場にエントリー、獲冴達を簀巻きにしてた、釜を持ってきてその中に獲冴達と絵恋を入れる、火炙りの刑。オッケー?」

 

「……成る程、さっぱり分からない」

 

要約すると垣根達が獲冴達を簀巻きにして引きずって連れて来た(宛那は普通に歩いてやって来た)。そして絵恋も簀巻きにして釜で獲冴達を火炙りにする。そして垣根はメルヘン仮面というわけだ

 

「おーい、サーシャて子を見つけて来たぞ」

 

「あ、ガム食べる?」

 

「クッキーもあるわよぉ」

 

「第一の解答ですが私はガムは嫌いなのでいりません、第二の解答ですがクッキーはいただきます」

 

上条達がガブリエル召喚の為の触媒になっていたサーシャを見つけ連れて来た。食蜂のクッキーを小動物の様に咀嚼するサーシャ。美琴は悲しそうな顔でガムを噛む

 

「お、目が覚めたのか上里。タピオカ飲むか?つぶつぶだぞ」

 

「いやブーメランパンツ一丁で何をやっているんだい垣根帝督」

 

「俺は垣根帝督じゃねえ、鳥人メルヘ…もうこのキャラ付けいいや。そーです。私が垣根帝督です」

 

「最後までキャラを貫けよ」

 

垣根はバタフライマスクを投げ捨てワインレッドのスーツを着用する。下着も着ずに素肌にスーツだ。誰もツッコまない

 

「で、ぼくをどうする気だ?拷問でもするのか?」

 

「拷問がお望みなのか?なら俺の知り合いが働いているオカマバーの人達にフレンチキスをしてもらうとかどうだ?」

 

「それはガチで嫌だな、やめてくれ。いやほんとお願いします。初めては普通に女の子がいい」

 

割とガチ目に土下座する上里、オカマとのキスがファーストキスだなんて普通に死ねる

 

「……て、おい。なんだこの展開は…ギャグ漫画か?ぼくは敵だぞ、罵るなり殴るなりそう言ったアクションがあるんじゃないのか」

 

「あ、もしかしてお前ドM?殴られたいとかそういう性癖ですか?」

 

「違う、ぼくはそんな性癖なんかない」

 

あくまで巫山戯続ける垣根に上里は少し苛立つ、だがふと垣根は真顔になり口を開いた

 

「俺らは別にお前らを殺したいわけじゃねえ。お前も魔神の被害者だからな。だが学園都市を滅ぼそうてのは納得いかなかったらカチコミに来た、でも命までは奪う気はねえよ」

 

「俺も見当外れな復讐をしようとしているお前をぶん殴りたかっただけだしな、命までは取ろうとしねえよ」

 

「……甘い奴らだ」

 

垣根達は上里達の暴走を止めたかっただけで殺す気はなかった。なんと甘い連中なのだろうかと上里は思った

 

「それが超能力者ていう頭がおかしい連中だよお兄ちゃん。常人の私達には到底理解できないよ」

 

「……そうだな、このクレイジー達の思考は平凡な高校生なぼくには一ミリも理解できないよ」

 

『おいコラ』

 

さらっと毒を吐く兄妹達を睨む超能力者達、帆風は思う。二人の言う通りだと

 

「まあそンな事はどうでもイイ、さっさとこの要塞を止めろ。このままだと学園都市に激突するぞ」

 

一方通行がこのHanging Gardens of Babylonの動きを止める様に言う…だが上里は下を向き唇を動かす

 

「……無理だ、Hanging Gardens of Babylonはもう止まらない」

 

『…………はぁ?』

 

「……やっぱりね」

 

垣根達はその言葉の意味が理解できなかった。だが去鳴はなんとなく予想していた様で困った様な顔をする

 

「それはどういう事かしらぁ?」

 

「止まらないんだよ、この要塞はね。元々緊急停止する様なシステムなんかついてない。きみ達にコントロールを奪われると厄介だからね…この要塞には学園都市に激突する…そのコマンドを実行する事だけしか出来ない」

 

「……つまり、どう言うことだ?」

 

「……簡単に言うとこの要塞は学園都市にぶつかる以外の選択肢はない、て事だにゃーん」

 

削板は飲み込めていなかったがそれ以外の全員が理解した。このHanging Gardens of Babylonを止める方法はない。何故なら上里達ですらこの要塞を止める事は出来ないのだから

 

「…この計画を考えたのはローラさんだ。ぼくらが負けてきみ達に停止方法を教える…彼女はこうなる事を予想してそういう術式にしておいたんだろうな」

 

「………コロンゾンめ、クソみてぇな事しやがって」

 

垣根はイギリスで大悪魔が嘲笑っている姿が目に浮かんだ。あの(悪魔)がやりそうな事だ。もうこの要塞を壊す以外しか止まる方法がない

 

「だがこの要塞は15kmもあるんだ…それに防御術式による耐久度強化で核を2,30発食らっても破壊できないんだ…もう無理だ。学園都市は滅びる…きみ達が努力しようがしまいがね」

 

「………ッ!アンタねぇ!」

 

上里の言い方に美琴が怒りのあまり放電しながら上里の襟首を掴もうとする。だがそれを垣根が止める

 

「そんな事したってこの要塞は止まんねえぞ。無駄な事する暇があるならその頭働かせてこの状況を乗り切る手段を考えろ」

 

「………分かったわよ」

 

垣根にそう言われ美琴は上里を睨みながらも、彼へ手を出すのをやめる

 

「……なあ、このデカブツを学園都市に落とす時…お前らはどうやって逃げるつもりだったんだ?」

 

「……何を言っている?」

 

「いやさ、お前らがこのデカブツと心中するなんて考えられねえからさ、脱出プランでもあるんじゃねえかなと思ってな」

 

「………この層…最下層に脱出用コンテナがいくつかある」

 

上里がこの層に脱出用コンテナがあると告げる、上里は上条達が脱出する為にその事を聞いたのかと思った。だから上条が次に言った言葉の意味が理解できなかった

 

「なら、お前らはそれに乗ってここから逃げろ」

 

「………は?」

 

上里は上条が何を言ったのか理解できなかった。上条は強引に上里の身体を起こし彼を引きずる様に歩き出す。垣根達も獲冴達を縄で引きずりながらコンテナまで目指す

 

「な、んで…」

 

敵である自分達を助けようとする、そう上里は問いかけようとした。その前に垣根が口を開けた

 

「それがヒーロー(上条当麻)だからだよ」

 

脱出用コンテナの前に到着した垣根達は扉を開け中に上里達を押し入れる。上里に去鳴、宛鳴と獲冴達総勢 九人が入るにはギリギリだったが無理やり押し込めばなんとか入りきった

 

「……良いのか…?」

 

「何が」

 

「ぼく達は学園都市を滅ぼそうとしたんだぞ、今でもきみ達を恨む気持ちがある…そんな人間を助けても良いのか?」

 

「そうか」

 

上条は笑った、何故彼が笑ったのか上里には理解できなかった。ただ分かった、彼は…いや彼ら(・・)は自分とは比べ物にならない程遠い場所に立っているのだと

 

「なら、学園都市に来いよ。敵としてじゃなくて観光客として、色々案内してやるよ」

 

そう言って上条はコンテナの扉を閉め外側からロックする。直後に短いレールを滑ってコンテナが大空へと投げ出されコンテナはだんだんと小さくなっていく…それを上条は見送っていた

 

「ていとくン、他の連中もコンテナにいれて脱出させたぞ。後はこの個人用の一機だけだ」

 

「そうか、ならサーシャはこれに乗って脱出しろ」

 

「第一の問いですが私がそれに乗ればていとくん達はどうやって脱出するのですか?」

 

「俺らはこのHanging Gardens of Babylonを止めなきゃいけねえ。だからまだ帰れないんだよ」

 

「……そうですか…貴方達の健闘を祈ります」

 

サーシャはそう言うと一人用のコンテナに乗り込み、内側から扉を閉めロックをかける。そして地上目掛けて落下していく

 

「……で、この建物をどうやって破壊する気なんだにゃーん?」

 

「壊すだけ、ただそれだけだ。シンプルだろ」

 

「成る程、その方が俺的には分かりやすいな」

 

「あァ、シンプルでイイな」

 

垣根はHanging Gardens of Babylonを破壊すればいいと麦野に答えながら笑う、削板と一方通行もそれを聞いて笑う

 

「野蛮力高過ぎねぇ…まあ戦闘力皆無な私には関係のないけどねぇ」

 

「私と操祈の散弾液状被覆超電磁砲(リキッドプルーフレールショットガン)ならこんな建物完全に破壊出来るわ」

 

「わたくしも建物相手なら全力で拳を振るう事が出来ますわ」

 

そう言いながらも食蜂はリモコンを持ち、美琴は手持ちのコインを確認する、帆風も軽く身体を動かす…それを見て上条が笑った

 

「ああ、やろうぜ皆!俺達でこのデカブツをぶち壊そうぜ!」

 

『おう!』

 

 

Hanging Gardens of Babylonが学園都市に激突するまで残り僅か。Hanging Gardens of Babylonが激突するのを防ぐ為に七人の超能力者と一人の大能力者がその行く手を阻んだ。垣根達は翼を広げ宙に浮き上条達は白いカブトムシに乗る事で宙に浮いていた

 

「俺らの最大火力をそのままアレにぶつける…それだけだ。準備はいいかお前ら?」

 

垣根が純白の翼を羽ばたかせながら上条達に問いかける、それに全員が頷く。そして垣根は未元物質を覚醒させ通常形態よりも遥かに高火力となった太陽光を変換した殺人光線と竜王の顎(セルピヌス)を、上条は7匹の竜王の顎を、一方通行は黒い翼を棍棒の様に振るう、削板は超すごいパーンチを、麦野は極限まで威力を引き出した原子崩しを、美琴と食蜂は散弾液状被覆超電磁砲を、帆風はガブリエルを宿し夜に変え神戮をHanging Gardens of Babylonへと放つ

 

それぞれが放った攻撃は通常の建築物なら影も形も残さず消滅させてもなおお釣りが余る程の威力を誇っていた。だがHanging Gardens of Babylonは上条の攻撃以外の一切の傷を受けていなかった(・・・・・・・・・・・・)

 

「な…効いてない!?」

 

「……チッ、コロンゾンの野郎…防御術式でも構築してやがったな」

 

恐らくはコロンゾンが施していたであろう防御術式に垣根達の攻撃は阻まれたのだ。だがそれが魔術なら上条の幻想殺しで破壊すればいい…そう考えたその瞬間、Hanging Gardens of Babylonの落下スピードが加速した

 

「っ!?厄介な真似を!」

 

コロンゾンはこの防御術式が何かの拍子で起動すればHanging Gardens of Babylonの動きを加速する様に細工でもしていたのだろう。このスピードなら後三分で学園都市へと衝突してしまう…そうすれば学園都市はこの世界から消えてしまう

 

「そんな事……させるかよ!」

 

垣根はそう叫ぶと純白の翼を広げ浮遊要塞へと突き進む。そして下面に翼の先端を突き刺し押さえつけるかの様に力を込める。だがそれでも全くHanging Gardens of Babylonのスピードは弱まらない

 

「く、そ……!」

 

垣根が悔しげな声を出す、自分一人ではこれで限界なのかと…だが垣根帝督は一人ではない。一方通行が黒い翼で浮遊要塞を押さえつける。削板が両手で動きを抑えようとする。麦野が数万発の原子崩しを放つ事で動きを阻害させる。美琴と食蜂の液状被覆超電磁砲が流星の様に何発も撃ち込まれる、上条の竜王の顎が外装を喰らっていく、帆風はミカエルの巨大な剣を具現化し剣を突き刺す…それでもなお動きは止まらない

 

(くそ……止まらねえ!このままじゃ…街が…)

 

上条は焦る、このままでは学園都市が、学園都市に住まう人々が、上条の友達が全てなくなってしまう

 

(ダメだ、そんなのは絶対にダメだ!学園都市を、皆を、俺が、俺達が絶対に守るんだぁぁぁ!!!)

 

ーーーグギィガアアアアァァァ!!ーーー

 

上条の意思に同調する様に竜王の顎達が叫びを轟かせる。だがこのままでは学園都市に激突してしまう…そんな時上条の中で何かが目覚めた

 

(……ッ!そうか、退魔師(幻想殺し)の力だけじゃ足りないのなら…魔術師(幻想片影)の力も使えば……!これなら…いける!)

 

退魔師の力だけでは足りないのなら魔術師の力も使えばいい。そう思った上条は幻想片影で発動できる最強の能力を顕現させる…それは今まで発動出来なかった異能

 

(今なら使える、あいつを…神浄討魔を従えた今なら…この力を使いこなせる!)

 

その力を発現出来る様になったのはアウレオルス戦の後だった。アウレオルスが顕現させた堕天の王、悪魔王をその身に宿す…上条の背中に12の黒いスパークが迸る

 

「来い光を掲げる者(ルシフェル)!」

 

黒い雷光が上条の背で弾けた、雷光の速度を得た上条が右手から顕現せし七体のドラゴンを引き連れながら浮遊要塞へと激突した

 

「!?その翼は……!」

 

光を掲げる者、神の如き者に敗れた元天使である堕天使にして悪魔の王。ルシフェルとはサマエルやベルゼブブ、ベリアルとも同一視される偉大なる悪魔にして光の竜であるとされる。古代まで遡るとメソポタミアの天の主神 エンリルに叛逆せし怪鳥 アンズーに起源が遡るとされる。またエジプト神話の不死鳥の起源たるベンヌやカナン神話の太陽神に叛逆せし明けの明星 シャヘルなどがルシフェルの前身という説もある

 

「うお"お"お"お"お"お"お"お"おおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

ルシフェルは悪魔の王として悪しきイメージが強いが神智学において「内なる光・導き手」とされ人間の永遠不変を望む傲慢なる神から人間を救済する為に堕天したのだとされる。また日本においても護法魔王尊としてその名が知られ金星から飛来し人間の魂を進化させたサナト・クマーラと同一視される。そして護法魔王尊はかの源義経に武術を教えた鞍馬天狗だとされる…この様にルシフェルとは単なる悪ではない英雄的な一面を持つ

 

「……は、当麻には負けてられねえな!」

 

「ええ、そうですわね!」

 

ルシフェルは例え地に堕ちようとも人間を救済する為に勝つ事を諦めなかった、共に戦う同士を奮い立たせ神に挑む…その姿はまさに今の上条の様…そしてルシフェルはヨハネの黙示録において七本の首を揃えた赤き竜(レッドドラゴン)だとされる。右手から七本の竜王の顎を顕現させルシフェルの象徴たる六対の翼を展開した今の彼はまさに人類を救済するルシフェルが遣わした化身と言っても過言ではない

 

「いっ………けぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

ーーーグギィガアアアアァァァ!ーーー

 

ーーーボオロロロロウウゥゥ!ーーー

 

ーーーグラギイイィィィ!ーーー

 

ーーーグラアアアアァァァァァ!ーーー

 

ーーーガギィアアアアア!ーーー

 

ーーーヴヴヴヴヴヴヴ…!ーーー

 

ーーーギィヤハハハハハ!ーーー

 

竜王の顎達が口から黒き雷霆を放つ、黒い雷霆が迸る度にHanging Gardens of Babylonに亀裂が走る。防御術式はもう完全に崩壊していた

 

「これでトドメだ!」

 

垣根が三対の翼を数百メートルまでに巨大化させ、それを縦横無尽に振り回し建物をナイフでチーズを切断するかの如く切り裂いていく。そして瓦礫の雨と化した浮遊要塞が学園都市へと降り注ごうとする

 

「させるか!」

 

上条の一二枚の黒き雷光の翼が五月雨の様に刺突し瓦礫の雨を粉砕していく。僅かに撃ち漏らした瓦礫は帆風達が能力を使って破壊していく…そして最後に残ったのは巨大な瓦礫の破片だ…目視でも数km程度の大きさはあるだろう…だが上条は左手に黒雷の剣を形成する

 

「これで……終わりだァァァァッ!!!」

 

剣を振るった、剣を振るった音が雷鳴が鳴り響く。フラッシュの如く閃光が走る。瓦礫はかけらも残さず融解し蒸発して消えた…もう瓦礫の一欠片も残されていない…

 

「……終わったんだな」

 

それを確認した上条はゆっくりと目を瞑り黒い雷光の翼が唐突に消え地上へと落下し…白いカブトムシに落ちた。そして操祈が気を失った上条の頭を自分の膝に乗せる

 

「お疲れ様なんだゾ私達の王子様(上条さん)

 

「……お疲れ先輩」

 

二人のヒロイン(美琴と操祈)はそう言って安らかな寝顔の上条の頭を優しく撫でた

 

 

 

学園都市から遠く離れたとある場所、そこに上里達は不時着していた。コンテナの扉を蹴り飛ばし強引に外へ出る去鳴、そして彼女の次に上里が外へと出た

 

「……」

 

太陽が澄んだ空に眩い光を放っている。そんな普通な光景が上里には美しく感じた

 

「くそ!超能力者達め!よくも火炙りにしてくれたな!」

 

「ほんまやわ!焼け死ぬかと思ったわ!」

 

「み、水を……誰か、水………死ぬ」

 

「誰か暮亜に水をプリーズなのです!」

 

「琉華、海賊ぽい格好をしているのだから水くらいだせないの?」

 

「無理だよ!冥亜こそ幽霊なんだから気温を下げてみてよ!」

 

「…幽霊は関係なくないか」

 

「……宛那以外煩いなぁ」

 

自分を慕う少女達の騒がしい声が聞こえる、

それが上里には心地よかった。右手の所為で失った筈の日常がそこにあった

 

(…右手のあるなしは関係なかったんだ)

 

例え彼女達は上里に理想送りがあろうとなかろうと慕ってくれる。上里は確信が持てた。自分が今までやって来た事はなんと無駄な事なのだろうか…分かりきっていた事ではないか、自分は何を怯えていたのか…そう思うと上里は自分を自分で鼻で笑った

 

(……上条当麻、きみはこれを教えたかったのか?)

 

上条の事など上里には分からない、それ程まで上里と上条では見ている場所が違うのだ。上里は微笑むと後ろの少女達の方を向く

 

「…去鳴、宛那、獲冴、絵恋、暮亜、琉華、府蘭、冥亜…こんなぼくについて来てくれてありがとう」

 

『!?』

 

戸惑った目を向ける少女達に上里は言葉を続ける

 

「ぼくはこれから自分がやって来た罪の償いをしたい…だから手伝ってくれるか?ぼくの仲間として…ぼくの償いを手助けしてくれるか?」

 

上里のその澄んだ眼を見て呆然とした少女達、だが即座にその顔に笑みを浮かべ上里の問いに答えようとしたその瞬間、上里の右腕が肩の所から切断された

 

「………!?」

 

後方より放たれし一撃は容赦なく右腕を切り離す、理想送り、上里の力の象徴たる右手を失った上里は大地に赤い血を撒き散らし声にならない悲鳴を上げる。だが彼は左手で傷口を押さえ後方を振り返る…そこに立っていたのは一人の少女だった。だがその風貌は歪だった

 

継ぎ接ぎだらけのドレスに生気のない青白い豊満な身体、濃いピンクの髪には赤と青の二色が混ざったリボンを付けその眼は緑に輝いていた。その異質な雰囲気に只者でないと全員が察し上里のみその正体に気づく

 

「…………………魔神?」

 

「正解、あたくしは魔神 ゾンビちゃんなのだ☆」

 

魔神が一柱 ゾンビ、ブードゥー教のルーツであるヴォドゥンにて信仰される「ンザンビ」と呼ばれる神であり、あのゾンビの元ネタとなった神の名を名乗る魔神

 

「君が上里翔流(ワールドリジェクター)ちゃんか、全くコロンゾンめ。あたくし達の零れ落ちた『願い』をこんな子供の右腕に宿すなんて…困っちゃうわ」

 

ゾンビ少女はそう言いながらも笑う、さもこの状況が愉悦とばかりに

 

「な、にが目的だ?」

 

「決まってるじゃない、貴方の抹殺よ。あたくし達をその右手とやらで新天地なる場所に送ろうとしている貴方を、ついでにそのお仲間さん達を殺しに来てあげたのよ。神様直々に殺しに来るなんて君達はとても光栄だね☆」

 

おちゃらけた様子で殺すと宣言するゾンビ、だがその言葉に偽りはない。殺される、上里は確信した。目の前の存在は本当に神様の様な存在なのだと嫌とも理解した

 

「さあ。ここで死んでもらおうか☆」

 

そう言ってゾンビが手を伸ばした瞬間だった、去鳴達が上里の前に立ちゾンビから上里を守ろうとする

 

「お兄ちゃんに手出しはさせないよ」

 

「大将は私達が守る!」

 

「上里さんには指一本触れさせません!」

 

「上里君に手は出させないぞ!」

 

「!?み、皆!?」

 

上里は目を見開いた、そして叫ぼうとした。自分など見捨てて逃げろ、と…だがそう言っても彼女達は聞かないだろう…何故なら全員が上里の事を慕っているのだから…上里が死ぬぐらいなら自分達が死ぬ、死んでも上里を守り抜く…それが彼女達の信念だ

 

(違う、ぼくは女の子達に守ってもらいたいんじゃない!ぼくが彼女達を守…)

 

直後血の華が咲いた、宙を舞う赤い飛沫が世界を彩る…それは去鳴達の血だった、彼女達は血塗れの身体で地面へ倒れる。上里は絶叫する

 

「あ〜あ、また殺しちゃったか〜。さっきも君を慕う女の子達が襲いかかって来てさ〜まあ全員この子達みたいにしたんだけどね」

 

死んでいるのか生きているのか上里には分からなかった、だが気付けば上里はゾンビへと左手を握りしめながら声を上げて突進していた…それは恐怖に駆られての行動なのか、去鳴達の敵討ちなのかは彼には分からない

 

 

 

 

結論から言うと上里は当然ゾンビに返り討ちにされ死にかけていた。もうあと一撃でも喰らえば死ぬだろう…彼の周囲は赤く染まり鉄の匂いが漂っていた

 

「これで終わりか〜じゃ、死んでもらいますかね」

 

ゾンビはそう言って上里へと拳を振り下ろそうとする…だがふとそれを止める

 

「……やっぱりやーめた、この失血量じゃ死ぬだろうし…さっさと隠世に帰りましょ」

 

ゾンビはそう言ってトドメを刺さずに消えてしまった、神の気まぐれといった所か。だが上里はどの道この出血量では死ぬ…意識が朦朧とし始めた時、誰かが歩く足音が聞こえた

 

「……だ、れ……だ」

 

足音からして二人だろうか、上里は全く動かない身体を必死に動かそうとするが動かない。そして何者かの声が聞こえる

 

「生きておったか……儂らの被害者 上里翔流よ」

 

「他の少女達もすぐに病院に送れば助かりそうね」

 

そんな会話が聞こえる、薄れゆく意識の中上里は何者かしれない人物達に声をかける

 

「……貴方、達は…一体?」

 

その問いに彼は、否()は答えた

 

「儂は僧正、真なる『グレムリン』にかつて所属し一人の垣根帝督(少年)のお陰で自らの過ちに気づき、その罪を償おうとネフテュスと共にグレムリンから離脱し他の魔神達を止める為各地を放浪する愚かな魔神じゃよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




この小説だとゾンビちゃんは死なずにボスキャラになるよ、やったねゾンビちゃん!そしてていとくん達がハードモードになった(白目)。そして僧正さんとネフテュスさん味方ルート。上里はこれからどうなるのか!?

因みにゾンビのモデルはあの最近有名なアニメ ゾンビランドサガのヒロイン 源さくらですね。声は以前(勝手にクロスオーバーさせて)登場させたタマっち先輩こと土居球子と同じ声の人 本渡楓さんです。いやゾンビと言ったら最近有名なこれかな?と思いまして

さあ次回はギャグなしで上里のその後を書きます。果たしてこれからどうなるのか上里は?そして彼の前に一人の女の子が…理想送り編はまだ終わらない…因みに鳥人メルヘンの元ネタは超人パピヨンです

次回もお楽しみに!


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輝きを失った理想

理想送り編第2部(的な何か)スタートです。今回の主人公は上里翔流、理想を失った彼がまたヒーローに返り咲く物語。そして彼が出会った一人の少女との物語

ま、こんな真面目なシリアスな前書きですけども今回はギャグだけどな!シリアス感を出してギャグにする…自分には常識など通用しないのだぁぁぁ!!


帆風と垣根はアレイスターに呼び出され窓のないビルにいた

 

「で、何の用だアレイスター?」

 

「なに、君達に渡したいものがあってね」

 

「渡したい…もの?」

 

帆風が首を傾げる、アレイスターは懐から何かを取り出す…それは一枚の羊皮紙だった

 

「これは上条当麻がロシアで手に入れた羊皮紙だ。これには四大天使の情報が記されている。ロシア成教が纏めた不出来な物を私なりに訂正し書き加えておいた…読むといい」

 

そう言って帆風にその羊皮紙を渡す、帆風はロシア語で書かれている文字を日本語に自分なりに翻訳する

 

「……ミカエルにガブリエル、ラファエル、ウリエルについて事詳しく書かれていますね」

 

「まあな、何せ神の右席達に頭を下げてその羊皮紙に彼らが司る天使達の情報を書いてもらったのだからな」

 

「へー、フィアンマ達がね……それ程までに俺達に見せたいもんなのか?」

 

「ああ、何せそれがあれば君達は……特に帆風潤子は…いやここから先はまだ言わないでおこう」

 

そう言ってアレイスターはニヒルに笑う、相変わらず何を考えているのかいまいち読めないと垣根が溜息を吐くが何も聞かないでおいた。悪巧みしているわけではないとアレイスターを信じているからだ

 

「後以前頼まれていた演算補助デバイスが完成した、ついでに持っていくがいい」

 

「お、すっかりその存在を忘れてたぜ。俺も読者も作者もな」

 

「メタな発言はやめろ」

 

アレイスターは垣根に六個の演算補助デバイスを中に入れたアタッシュケースを投げ渡す。垣根はそれを一対の未元物質の翼でキャッチする

 

「……で、真面目な話をするが…あいつら(・・・・)はどうなった?」

 

「……上里翔流及び上里勢力の女達(・・・・・・・・・・・・・)の事か」

 

昨日、冥土帰しが務める病院に百人を超える少女達と一人の少年が緊急搬送された。カエル顔の医者が百人を超える患者のオペを担当し全員の命を奇跡的にも救い、少年と八人の少女達以外は別の病院に入院する事となった

 

「上里翔流は目を覚ましたようだ…だがそれ以外は…もしかしたら二度と目を覚ます事はないかもしれん…そう冥土帰しは言っていた」

 

「……そう、ですか…」

 

帆風が俯く、敵とはいえ思う所があるのだろう…垣根も内心は平常を装いながらと上里に手を出した人物に怒りを向けていた

 

「……垣根帝督、そして帆風潤子…これは私の憶測だが…上里翔流達を狙ったのは『魔神(・・)』かもしれない」

 

「「!?」」

 

アレイスターの憶測に二人は目を見開く、魔神…魔物達の神ではなく魔術を極め神の領域に至った者。魔術界の金字塔的存在の名が出て垣根はおろか帆風も驚きを隠せない

 

「恐らく魔神は自分達の脅威となる可能性がある理想送りを潰したのだろう…私の憶測だがな」

 

アレイスターはそう告げる、これは自分の憶測だと…だが二人にはそれが真実だと思えた

 

「……チッ、魔神共が…元は自分達が撒いた種の癖に…ムカつくぜ」

 

「……同感ですわ」

 

垣根と帆風は怒りを隠せない、元は自分達が勝手に上条に失望したせいで誕生した理想送り…それを宿してしまった、それだけの理由で上里の命を奪おうとしたのだ…許せるものではない

 

「……兎に角、今は彼女達が目を覚ますまで待つしかないな」

 

 

 

上里翔流が目を覚まして目に映ったのは白い天井だった

 

「……病、院……か?」

 

上里は寝ていたベットから上半身を起こす、緑色の病衣を着ている事に気付いた上里はやはりここが病院なのだと理解する

 

「やあ、目が覚めたようだね」

 

「……貴方は?」

 

「僕は医者だよ、皆からはカエル顔の医者だとか冥土帰しだとか言われてるがね」

 

冥土帰しが扉を開けて病室に入ってきた、本当にカエルみたいな顔だなと失礼なことを思う上里

 

「ああ、右腕(・・)の手術は終わってるからね。全く何があったらあれだけ綺麗に切断出来るんだろうね?まあそのお陰で接合が楽だったんだがね」

 

「……右腕?」

 

上里はふと自分の右腕を見る、ゾンビと呼ばれる魔神に切断された右腕が綺麗にくっついていた。右手は普通に動いた

 

「……ぼくはどうしてここに?」

 

「さあね、気づいたら君()が病院の近くに倒れたんだよ」

 

「…………」

 

上里の脳裏にはあの嗄れた声が蘇った、確かその声の主も魔神と名乗っていた…名は僧正。もう一人の女性らしき声はネフテュスだっただろうか?

 

「聞いているのかい?」

 

「……ええ」

 

上里は自分がここにいるのは僧正が自分をここまで運んでくれたのだろうかと考える、そして上里は自分の仲間である少女達の事を思い出す

 

「そうだ…皆は!去鳴や宛那、獲冴達は!?ぼくと一緒にいた筈の女の子達は!?」

 

「……落ち着いて聞いてね」

 

上里の質問に冥土帰しは表情を暗くする、そしてゆっくりと口を開ける

 

「君の友達は…未だに目が覚めないんだ。もしかしたら…二度と目を覚まさないかもしれない」

 

「………え?」

 

上里の思考が一瞬消えた。上里は唇を震わせる

 

「ど、どういう事ですか?」

 

「分からないんだ、何故彼女達が意識を戻さないのかね。肉体的には問題ない筈なのに目を覚まさない…まるで見えない力が働いているかのように」

 

上里は冥土帰しが何を言っているのか理解できなかった、そして気付いた。この病室にいるのは自分と冥土帰しだけでない事に

 

「…………ぁ」

 

この病室には10個のベットがある。扉に近い方に上里と空きのベットが一つ。そして残りの8個に目を深く閉じたままの去鳴達が死んだ様に眠っていた

 

「………死んではいないよ、彼女達は息はしてる。だがそれだけだ(・・・・・)

 

「…………」

 

「医者である僕もこんな症状は初めてだよ、全く理解できない……科学では証明できない魔術(・・)が関わっているんだろうね」

 

ゾンビが何か細工をした、上里には確信があった。あの魔神が去鳴達に何かしたのだろう…だが上里には何も出来ない、幻想殺しと違いこの右手では去鳴達を新天地に送ることしか出来ない…酷い言い方をするならば上里は無力だった

 

「………僕も医者として精一杯の事はするつもりだよ…でもこればっかりはね……」

 

冥土帰しはそう俯いて呟いた、医者以前に患者を助ける事が出来ない罪悪感が顔にでるのを上里に見られたくないが為に

 

「……ぼくのせいだ、ぼくが復讐を考えたせいで…去鳴達が……」

 

上里は焦点の合わない目で去鳴達が眠るベットを凝視する。自分の復讐に彼女達を巻き込まなければ…いやそもそも自分と関わらなければ…自分がやってきた事はなんだったのか…上里は頭の中でそれを永遠に自問自答する

 

「…君のせいではないよ、僕は君の事は知らないが彼女達が…そして君がこんな目にあったのは彼女達をこんな目に合わせた犯人が全て悪いんだからね」

 

「………違う」

 

「?」

 

冥土帰しは上里を気遣ってそう言うが上里は頭を振ってそれを否定する

 

「全部ぼくのせいだ。ぼくが彼女達を巻き込んだから、魔神に復讐しようとしたから、ぼくが皆の盾になれなかったから、守られる事しか出来なかったから、この右手に全てを頼っていたから…全部………ぼくのせいだ」

 

上里は目元をその忌まわしい右手で覆った、流れる涙を見せない為に、そしてこの右手で自分という存在をこの世界から消失出来たらいいのにと破滅願望を抱えて…だが上里は新天地に消える事はなかった

 

「……少し外の空気でも吸って来たらどうだい?幸い君は殆どの傷が完治してる…外を散歩して辛い気持ちを安らげるといい」

 

「…………」

 

上里は冥土帰しの言葉を聞くとベットの隣にあったロッカーから自分の服を取り出す。それを着替えてもう一度去鳴達が眠るベットを見って…逃げる様に病室から立ち去っていた

 

「……………」

 

そんな彼を冥土帰しは黙って見つめていた

 

 

上里翔流はただただ歩いた、目的もなく学園都市の街並みを歩く。目的地やどこに行くかなど決めていない。ただ虚ろな目で街中を歩くだけだ…

 

(……なんでぼくだけ無事だったんだろう…いっその事ぼくも彼女達と同じ…いやぼく一人だけ皆みたいな状態になってれば良かったのに)

 

今の上里の中に蠢いているのは自己嫌悪、後悔、嘆き、絶望…この世のありとあらゆる負の感情を混ぜ合わせたかの様な黒い衝動だ。もう死んでしまいたい、上里はそう心の中で呟いた

 

「………………」

 

上里は幽鬼の様な足取りでフラフラと歩く、何人か街を歩く人達とぶつかるが彼は気にしない、背後の怒声や心配する声も彼には届かない

 

(……屋上からの飛び降り、川に飛び込む、首を吊る…どれにしたら確実に死ねるだろうか)

 

もう魔神に対する復讐心も薄れた、守りたかった人達も守れなかった。もう生きる理由が見つからない。上里のありとあらゆる表情は死滅し心は折れ目は死んだ。そんな彼が死に場所を求め彷徨っているとふと声がきこえてきた

 

「おい、お前無能力者だな?」

 

「な、なんですかいきなり!」

 

「………」

 

上里は声が聞こえた方に首を動かす、そこには4、5人程度の高校生くらいの男女達が12歳くらいの少女を囲んでいた…上里は知らないがこの男女達は無能力者狩りという無能力者(レベル0)を見下し甚振ることを趣味とする者達である

 

「いやなぁ、今がチャンスなんだわ。あの忌まわしい第一位達も此間の事件のせいで手が回らねえと思うからよ…このチャンスに俺らのゲームを久しぶりにやろうと思ってな」

 

「てか、此間の事件でも無能力者は役立たずだったじゃん?だから学園都市に要らないゴミ達を掃除しておこうと思ってさ」

 

「わたし達て本当にボランティア精神に溢れてるよね〜進んでゴミ掃除をしようとしてるんだからさ」

 

そう言って下品な笑みを浮かべながらケラケラ笑う無能力者狩り、それを見た上里は無意識に彼らの元へと動いていた。別に上里の心の中の負の感情が消えたわけではない、だが目の前に困っていて助けを求めている人がいれば助ける…腐ってもそのヒーローの性質は変えられない

 

(………は、女の形をしていれば何でも救ってしまう…ぼくのクソッタレな性質は…変わらない…のか…)

 

そう思いながらも上里は無能力者狩りの一人である男の肩に右手で触る、その男が訝しげな顔をして振り向くと同時に上里はその男の顔面に右ストレートを食らわした

 

「が、っあ!?」

 

突然の不意打ちを男が避けられる筈もなく2、3メートル吹き飛ばされて男は地面を転がった。突然の出来事に目を丸くする4人だがすぐに怒りの目を上里に向ける

 

「テ、メェ!何しやがる!」

 

「……弱い者いじめをしようとしてた不良を殴っただけだ」

 

「……上等よ、そうやって正義ぶってるその面がいつまで続くか見ものだわ」

 

女は頭上に巨大な氷の塊を形成する。その女の強度(レベル)大能力者(レベル4)だと上里は知らないし知る意味もない。氷の塊が上里を押し潰そうと放たれるが上里は右手を動かし氷の塊に触れる。氷塊が右手に吸い込まれ消失する様を見て無能力者狩り達は顔を驚愕に染め上げる

 

『な………!?』

 

「……ぼくの能力は触れた物体を有機・無機関係なく消す力…とでも言っておこうか」

 

驚く無能力者狩り達に上里はこの能力は触れた物体を消す力だと宣告する。それを聞いた無能力者狩り達は顔を青くする…つまりあの手に触れられれば自分達の命はないと察したのだ

 

「どうする?きみ達は…世界から消えたいのか(・・・・・・・・・・)?」

 

「………ッ!に、逃げるぞ!」

 

勿論ブラフだ。いや実際上里の理想送りならそれが可能だがこれは超能力ではない。だが氷の塊を消した事、これを事前に見せておくことにより信憑性を増す…あっさりと嘘を信じた無能力者狩り達は怯えながら足早に立ち去っていく

 

「……」

 

上里はそれを無表情で眺めながら踵を返しその場から立ち去ろうとする。そんな彼に無能力者狩りに囲まれていた少女が声をかける

 

「あ、あの……!」

 

「……何かな」

 

上里は見る者が見たらゾッとしそうな程冷たい虚ろな目を少女に向ける。だが少女は怯えずに和かに上里に笑いかけた

 

「助けてくれてありがとうございますお兄さん!お姉さんやマークさん達がいない時に悪そうな人達に囲まれてどうしようかと悩んでいたので助かりました!」

 

「……気をつけた方がいい、世の中いい人だらけとは限らないからな」

 

「ええ、テオドシアさんにも言われましたよ。「貴方は純粋無垢過ぎて人を疑う事を知らない」て、失礼しちゃいますよね。一応その人が悪い人がいい人かぐらい見分けがつくのに!」

 

……この少女は何なのだろう、上里はそう思った。一度喋り出したら止まらないのか?空気が読めないKYなのか、それとも自分の様な変人にまで声をかける優しい子なのか…上里には分からなかった…だが関わるべきではないと判断しその場から立ち去ろうとする

 

「あ、ちょっと待ってください!せめてお礼だけでも!お姉さんやマークさんを呼ぶまで少し待っ…」

 

「お礼なんていらない、きみを助けたのもぼくのクソッタレな性質の所為なんだ。それにぼくは感謝されるほどの善人でもない」

 

「え?クソッタレな性質…?て、足早に立ち去ろうとしないでください!助けてもらったらお礼をする!そう帝督さん(・・・・)から教わったんですよ!」

 

「………帝督?垣根帝督か?」

 

上里は無視を決め込もうとしたが彼女が言った帝督という単語に反応してしまう。そしてタイミングがいいのか悪いのか…上里の腹からぐううぅ〜と音が響く

 

「………………」

 

思わず立ち止まってしまう上里。彼が病院に搬送されて数日経つ。その間何も食べずに眠っており今の今まで何も口にしていない…腹が減っても仕方ない

 

「……お腹空いてるんですか?」

 

そうキラキラとした目で尋ねてくる少女、さもお礼が出来るチャンス!と言わんばかりに。上里は面倒な事になったと天を仰いだ

 

「私美味しいお店を知ってるんです!助けてもらったお礼にそこに連れて行きますね!」

 

「いやいい……」

 

「遠慮しないでください!こう見えても私お金持ちですから!」

 

いや幼女にご飯を奢ってもらうなど男としての尊厳が…と上里が心の中で呟くが彼女は一切気にしない。学園都市の住人は変人しかいないのか。上里はガチでそう考えた

 

「あ、私はパトリシア=バードウェイていいます。こう見えても博士号も持ってるんですよ。今は唯一先生の所でお勉強中ですけど…あ、お兄さんは?」

 

「……上里、上里翔流」

 

そう素っ気なく言葉を交わす上里、目の前の少女が実は学園都市の理事長の妹だとか、木原一族の中で1、2を争う優秀な科学者の助手だという事を彼は知らない…そしてパトリシアはその美味しい料理を出すお店に向かう為に笑顔で右手を上げる

 

「へい、タクシー」

 

「!?」

 

幼女が普通にタクシーを呼んで、タクシーを止めてタクシーに乗った。そして困惑する上里をパトリシアが手を引っ張ってタクシーに乗せてタクシーは目的地までタイヤを走らせる。タクシーのゲシュタルト崩壊である

 

なお辿り着いた場所は第十学区。因みにタクシーの初乗り運賃は560円で500メートルごとに200円プラスされる。合計金額は約6000円オーバーだったがパトリシアは顔色一つ変えず6000円を運転手に渡した。それを見た上里は最近の幼女は金持ちなのかと驚愕した

 

 

第十学区…学園都市の中で一番治安が悪い学区であり、配送業者がわざわざこの学区を迂回して目的地に向かうという逸話すらある危険地帯…歩く人達も髪色がド派手な赤だったりピンクだったり、髪型はスキンヘッドやモヒカンと奇抜なファッションだったり、耳ピアスは当然として肩パットや鼻ピアス、舌ピアスをしていたり、メガネやコンタクトレンズ感覚で傷痕やタトゥーが普及しているヤベー学区でもう学園都市と言うよりヒャッハーなバイクを乗り回している汚物は消毒だー!な世紀末といった方が適切かもしれない

 

だが、そんな世紀末真っしぐらなヤベー場所をパトリシアは和かな笑顔で街行く人に手を振っている

 

「あ、スキンヘッドさん髪切ました?」

 

「お、分かるか嬢ちゃん。此間髪切ったんだよ」

 

(何故普通に話しかけれるんだ…と言うかよく髪切ったて分かるな、と言うか切るだけあるか?)

 

そう上里は疑問に思うも彼女はコミ力モンスターなのかと上里は無理やり納得する

 

「着きましたよ、ここが美味しい料理がある場所です」

 

着いたのは立体駐車場だ。第十学区の隠れた名所 別名屋台尖塔。立体駐車場に停まっている車全てがワゴン車やキャンピングカーを改造した屋台で一棟のビル内に400~500もの店舗が詰め込まれている。万が一の為に排ガスを逃がすための換気扇や空調ダクトなどは必要以上に増設され不規則に並ぶLED電球の照明と合わせてビル自体がどこか手作り臭の漂うジャンクな雰囲気で満ちている

 

「……明らかにヤベー場所に見えるんだが」

 

「ええ、ヤベー場所ですよ?拳銃(モデルガン)の取引からヤベー白い粉(砂糖)。汚れ仕事のボディガードからお薬キメたねな人もいますから」

 

「お薬飲めたね、のリズムで言わないでくれ」

 

そう言いながら二人は設置されている緩やかなスロープを使って階層を移動する。目指すは最上階、燕尾服を着こなしたマスターが営むコーヒーショップや屋台なのに着物のお姉さんが懐石料理を出してくる店、漫画肉を提供する店など珍しい店が立ち並ぶ場所だ

 

「ここです、ここが美味しい料理を提供してくれるお店ですよ。で、あの人がこの出店の店主です」

 

「………」

 

その店の店主は邪悪なウド鈴木じゃね?とでも言うべき長い顔に身長2メートル越えの巨漢だった。ほぼ全身に刺青をした料理人と言うよりカジノのボスと言われた方がしっくりくる風貌だ

 

「あら、また来たのねパトリシアちゃん」

 

「お久しぶりですライブベアラーさん」

 

ライブベアラー、オカマ口調で麻薬なバナナ食べてフェラ顔になるヤベー料理人である

 

「いつものください」

 

「ええ、分かったわ。前菜のエレキバナナにスープの腸詰めワームの煮込みスープ、肉料理は般若パンダの蒸し焼き、魚料理はゴールドシュリンプの天ぷら、メインディッシュのメテオガーリックの餃子、サラダはポイズンポテトの煮物、デザートはニトロチェリー、ドリンクは太陽酒のフルコースで良かったかしら?」

 

「ええ、お願いします」

 

「おい、ちょっと待て。色々待って」

 

ライブベアラーは上里の声を聞く事はなくフルコースを作る為に厨房に行く。暫し二人でフルコースが出来上がるのを待つ

 

「ここの料理、全部美味しいのにお値段はなんと千円ポッキリなんですよ」

 

「…………手放しで喜べない値段だな」

 

寧ろここまで安いと逆に不安になるレベルである。一体この値段でどうやって元を取っているのか気になるが上里は聞いて見たりしない。世の中知らない方がいい事がある

 

「ライブベアラーさん、毎回疑問に思うんですけどこの食材てどうやって仕入れてるんですか?」

 

(やっぱりこの子はKYだな)

 

「サニーちゃんに依頼してるのよ」

 

(そしてあんたも普通に答えるんだな)

 

なんやかんやあって上里とパトリシアははフルコースを食べた。言葉で言い表せられないぐらい美味かったら、三つ星レストランのディナーがこのフルコースと比べるとカップラーメンとステーキの差があるくらいに美味しかった

 

「ご馳走様でした!また来ますね!」

 

「ええ、今度はマークちゃんとレイヴィニアちゃん達も連れて来てね」

 

なお、ライブベアラーは毎回マークが来る度に口説いている。そしてその度にマークは毎回最上階から飛び降りて逃げている

 

「美味しかったですか上里さん?」

 

「……美味かった、だがあの安さのせいで色々と不安なんだが…」

 

「大丈夫です、帝督さんはもっとヤベー食べ物食べてますから」

 

「……具体的には?」

 

「毒化したフグ鯨を此間やけ食いしてましたよ。翌日下痢して学校を休んだとか」

 

「逆に下痢で済んだのが凄いな」

 

毒化したフグ鯨を食べても垣根は死なない、何故なら常識が通用しないからだ。なおその時一緒に食べていた帆風はケロッとしていた

 

「………まあ、悪くなかったかな」

 

上里はそう言って少しだけ口元を歪ませる。それを見たパトリシアが笑った

 

「あ、やっと笑ってくれましたね」

 

「………え?」

 

「上里さん、私を助けてくれた時から怖い顔してましたから。今初めて笑ったんですよ」

 

「………」

 

確かに今日初めて笑ったかもしれない、去鳴達が目覚めないというのに、先程まで自殺でもしようかと考えていた筈なのに…何故笑えたのか……それは自分に向かって笑いかける純粋無垢なこの少女のお陰だろう

 

「………きみは凄いな」

 

「?何がですか?」

 

「……いや、何でもない」

 

上里はそう言ってパトリシアから目を離した、パトリシアは首を傾げる…スロープを使って階層を降りる二人、何分かかけて地上へ到着した

 

「……ご飯を奢ってくれてありがとう」

 

「いえ、最初に助けてもらったのはこちらですから」

 

「……君のお陰で少し冷静になれた、感謝するのはこちらの方だ」

 

上里はパトリシアに礼を言いながら冷静になった思考で現在の状況を理解する。去鳴達がなぜ目覚めないのかは分からないがゾンビが関与しているのは分かる。ならゾンビを見つけだし倒す。そうすれば去鳴達の目も覚めるかもしれないと上里は考える

 

「あ、大学に行く時間ですね。こう見えて私は今学園都市でも結構重要なプロジェクトの責任者なもので…」

 

「君本当に12歳?」

 

最近の幼女て凄えな、上里はそう思った

 

「では上里さん、また会えたらいいですね」

 

「………ああ」

 

パトリシアはそう言って上里から背を向けて走っていく、途中でスキルアウトの男性に話しかけその男性のバイクに一緒に乗って上里の視界から消えていく…やっぱり彼女はコミ力モンスターだった

 

「……あの魔神、ゾンビの手がかりを探さないとな」

 

上里はそう独り言を呟いて何処かへ歩き出そうとした瞬間、背後から声をかけられた

 

「ここにいたか上里翔流」

 

「……………きみは…」

 

そこに立っていたのは一人の少女だった、魔女のような服装にマントを着た眼帯をつけた金髪緑目の少女。 その少女の名前を上里は知っていた

 

「魔神……オティヌス」

 

「性格には()がつくな…私は魔神の力を失った単なる魔術師オティヌスだよ」

 

かつて上里が狙い、そのついでに学園都市を滅ぼそうと考えた元凶がそこに立っていた。だが不思議と怒りの感情はでなかった

 

「お前と話をしに来た」

 

「………話?」

 

「ああ、お前は私を憎んで学園都市を滅ぼそうとした…つまり事の元凶は全て私にある」

 

「………それがどうした?」

 

「なに簡単な事だよ上里翔流」

 

オティヌスは淡々とした口調で上里にこう告げたのだ

 

「お前と和解をする為に話し合いに来たのさ」

 

 

 

『いひひ。ひひひひひひひ』

 

暗闇から笑い声が聞こえる。その場の雰囲気は異様だった。まるで戦中での余計な悲壮感や形のないデマの様な人をおかしくさせる空気で充満していた。

 

『いひ、いひひ』

 

その暗闇にいたのは変色した新聞紙、ダクトテープ、酒瓶の破片、押しピン等で構成された奇怪なドレスを着こなし小柄ながらも豊満な肢体と魅惑の姿だが翼、尻尾、七色の髪、大きく裂けた口、額に大穴と非人間的な異形さを秘めている少女だった。彼女は生命ではなく器物、「命に似た何か」だ。生命の樹の逆位置たる邪悪の樹をなぞり構成されたその命に似た何かはある存在をその眼で見つめていた

 

「あ、もうここら辺でいいですよ。乗せてくれてありがとうございます」

 

「いいってことよ。俺らスキルアウトは子供には優しくしねえといけねえしな!じゃあ大学の仕事頑張れよ!」

 

「はい、お気をつけて〜」

 

それは金髪碧眼の少女だった。歳は12歳くらいで純粋無垢な顔をしている。悪魔は笑った。この少女を自分の手で汚さねばならないのかと

 

「ひ。ひひ……いひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ!」

 

それが悪魔にとって楽しみで、面白くて、愉悦で、狂った様な笑いを上げるのが仕方なかった。そして虚空に溶ける様にゆっくりと彼女の姿は透明になっていき…そして最初からなにもいなかった様に彼女は姿を消した…その場の異様な雰囲気は消えない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




やっぱりとあるの主人公のヒロインは幼女だよね(とある科学の未元物質のヒロインも幼女、一方通行も打ち止めという幼女がヒロインだし上条さんや浜面にもレイヴィニアやフレメアという幼女が…ああ、かまちーはロリコンなのか(失礼))。まあ何気に原作でもこの二人関わりあるし違和感ゼロですよね。ライブベアラーをご存じない人は是非検索を、あの人滅茶苦茶濃いキャラですから…

因みに個人的にパトリシアのCVは「ウルトラ怪獣擬人化計画」のマガジャッパや「俺が好きなのは妹だけど妹じゃない」の永見涼花役の近藤 玲奈さんですかね。妹キャラて点で似合いそうですしとあると双璧なす作品SAOでも出てきたからとあるにも出て欲しいと個人的に熱望しています。因みに上里君達をボコボコにしたゾンビの個人的CVである本渡楓さんとは乃木若葉は勇者であるで共演しており、タマっち先輩とあんずん(近藤玲奈さんの役)とは姉妹みたいに仲いいのにこの作品だとあんずんが上里君のヒロインでタマっち先輩がボスキャラという意外な展開になっている…因みに作者が一番好きなキャラは犬吠埼姉妹です(関係ない)

そして次回は上里とオティヌスの話し合い。今まで隠してたあの人物とかの裏話とかを説明…そして最後に現れた謎の存在の正体とは?そして狙われた少女とは?

次回もお楽しみに!


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その少女は悪魔に魅入られて…

何故かお気に入りが増えてて作者嬉しい。今回はオティヌスの過去とかほんの少しだけ色んなキャラの小話を書きました。だから色々と雑だけど気にしないでね!そして上里はツッコミ役

そして今回はオリジナルの霊装が登場。そして前話の最後に出て来たあの子が本格的に参戦しますよ


第七学区にある公園、子供達の遊び場にして奥様達の秘密の密談と言う名のおしゃべり会が行われるこの場所は毎日決して多くないが少なくもない人数の女子供がいる今日は平日とはいえもう午後だ。子供達が遊びに来てもおかしくない時間帯…なのに公園にはたった二人の人物しかいなかった

 

「………で、ぼくをここに連れて来た要件は?」

 

「言っただろう、話し合いがしたいと」

 

公園のベンチに腰掛けるのは平凡な高校生を自称する上里翔流。ベンチの背もたれの部分に器用に座っているのが魔神の座を廃棄した魔術師オティヌス。この異質な二人しか公園にはいない

 

「話し合い……か」

 

「ああ、話し合いだ。ここで和解しておいた方が幸先が楽そうだしな…もうここで全ての遺恨を断ち切ろうと思ってな」

 

オティヌスが上里を見下ろしながら告げる、上里はどんな内容が彼女の口から出るのかと目を細める

 

「はっきり言うが私を狙うのは色々とおかしいんじゃないか?」

 

「…………は?」

 

「いや、確かに私は元魔神だ。だが…お前の理想送りに関わったのは他の魔神だ。と言うか私は全く関わってないよな?私は理想送りを型作るための願いなどしていないし…ぶっちゃけ私は同じ肩書きを持ってるから狙われた感が半端ないんだが」

 

「…………」

 

「なあ、私を狙った理由はなんなんだ?もしや魔神だから、て理由だけで私を狙ったとか…そんな訳ないよな?」

 

「………………………………………………」

 

「図星か」

 

上里は目を逸らした、オティヌスはジト目で彼を見つめる

 

「い、言い訳を言わせてもらおう。ぼくはローラさんから垣根帝督が上条当麻と関わったから幻想殺しの方向性が変わりこのままではいけないと思った魔神達がこの右手を作ったと聞かされていた」

 

「……それで?」

 

「……いや、だからその…まあアレだ。きみもそれに関わってたんじゃないかなーと思ってまあ…疑わしきは…罰せよという日本の単語があって…」

 

「もう死ねよお前、いやもうここで殺すわ」

 

オティヌスは黄金で出来たやり 主神の槍(グングニル)を取り出した。それを天へと掲げ雷霆を上里へと放つ。上里はそれを理想送りで消し飛ばした

 

「危なっ!?ちょ、ぼくを殺す気か!」

 

「ああ、そうだが何か?私は勘違いでお前新天地とやらに送られそうになったんだ。殺されても文句は言えまい。という訳で死ね」

 

上里はオティヌスに非難の声を上げるがオティヌスは気にしない。その後も雷霆や雹の雨、風の刃が襲ってくるも理想送りで全て防いだ

 

「……まあ戯れはこれくらいにしておくとして…本題に入るか」

 

「戯れて……まあいい、話すなら話してくれ」

 

攻撃するのを飽きたかの様にオティヌスがベンチに腰掛ける。上里も溜息を吐きながらもオティヌスの横に座る

 

「……お前はあくまでも偶然で理想送りが宿ったと勘違いしている」

 

「………何?」

 

「理想送りは魔神の願いから生まれた能力だ。だが何故その能力は貴様の右手に宿ったのか?簡単だよ、お前の魂の輝きに魅入られたからさ」

 

「……魂の輝き?」

 

唐突にオティヌスは理想送りが上里の右手に宿ったのは偶然ではなく、理想送りが上里の魂に引き寄せられたのだと告げる

 

「幻想殺しが上条当麻の神浄討魔の魂の輝きに惹かれ定着した様に、理想送りもお前の魂の輝きに惹かれた。そうだろう、神里翔流(かみのさとかける)

 

神里翔流、神の里…つまり神が望んだ世界 新天地を鳥が空を飛ぶ様に魚が流れる様にその世界を自在に支配する者。つまりは神の国の支配者たる真名。存在を否定せずに肯定し新たな世界を望む者に救いを差し伸べ世界の理すらも捻じ曲げる…正に理想の能力を定着するに相応しき真名

 

「お前は天然のダイヤだ、お前の信念は「迷いながらも抱いた理想を現実に押し潰される事なく為し遂げさせる」…その右手が示す通り理想を送るヒーロー…理想を肯定しそれを成し遂げる手助けをする事で相手を救う…成る程、上条当麻とお前は似ている様で対照なのだな」

 

歪んだ理想を否定する事で救う上条とは違い、上里は理想を肯定しそれを叶える事で救う…同じ結果を生みながらもやり方は真逆…だが両者とも右手に持つ能力の名がその本質を表している点では一致する

 

「……ぼくはそんな御大層な存在じゃない。女の形をしていれば助けてしまうクソッタレな性質なだけだよ」

 

「いや案外それが普通かもしれないぞ?漫画とかラノベとかアニメを見ろよ、男なんて大体かませか死亡キャラばっかりだが女のキャラは救済ありとか多いだろ?現実でも美少女かハゲで太ったおっさんが道端で困ってたらどっちを助ける?しかも助けた方がヒロインになるとしたらお前はどっちを選ぶ?」

 

「その二択は極論じゃないか?」

 

「で、実際はどっちを選ぶ」

 

「………美少女でオナシャス」

 

巫山戯ているのか真面目なのか分かりかねる会話を続ける二人、オティヌスは主神の槍をペン回しの様に回転させながら口を開く

 

「まあ、難しい事を言ったが貴様は困っている人間がいたら見過ごせない、だから助けてしまう。それが偶々女で好意を持ってしまった。という訳だ…お前がハーレムを築いていたのは右手のせいではなくお前の人柄のせいだな」

 

「……別にハーレムなんか築いた覚えはない」

 

「だが女共がお前に好意を抱いたのはぶっちゃけどうでもいい。重要なのはここからだ、何故お前の周囲ばかりに不可思議な事が起こったのか?これはある意味アレイスターの計画(プラン)に酷似している」

 

「……どういう意味だ?」

 

オティヌスの言ったアレイスターとのプランとの酷似という言葉に上里は反応する

 

「学園都市は上条当麻を成長する為だけに作られた箱庭だ。神浄討魔を成長させる為だけに学園都市は悲劇が起こりやすい舞台となっていた…」

 

「……それとぼくが何の関わりがある?」

 

「ここからが確信だ、何故アレイスターは学園都市を悲劇の舞台にしたのか?それは上条当麻が「拳で悲劇を解決することで最も輝く存在」だからだ」

 

「………何?」

 

オティヌスの言葉に目を見開く上里、オティヌスは言葉を続ける

 

「もし仮に上条当麻が特撮愛好家ならばスーツアクターやらの育成機関になっていた。サッカー好きな少年ならばプロのサッカー選手を育成する施設になっていた…つまり学園都市がこうなったのは「上条当麻の自由な(テレマ)が手本となった」からだ……だが学園都市を作ったのは50年前(・・・)だ。上条当麻はまだ生まれてすらいない。なのに何故アレイスターは学園都市を超能力育成機関にしたのか?…決まっているアレイスターには幻想殺しが誰に行き着くか、そしてその行き着いた先の人物がどんな性質を持つか理解していたからだ」

 

「………そんな事が可能なのか?」

 

「さあな、私はやった事がないから知らん。だがローラ=スチュワートはお前に理想送りを宿した事は理解していた様だがな」

 

「………どういう事だ?」

 

「疑問に思わなかったのか?ローラ=スチュワートが何故お前の前に現れたのか?何故理想送りの正体を知っていたのか?それこそ理想送りを作り出した本人でしか知り得ない事を」

 

「!?ま、まさか…………!?」

 

「そうだ…魔神達の願いに指向性を与え理想送りを作り出した張本人…それこそがローラ=スチュワート…いな大悪魔 コロンゾン。ただ一人だ」

 

コロンゾン、生命の樹の30のアエティールの内、10番目の「ザクス」にわだかまる深淵(アビス)の主。 それこそが理想送り誕生の元凶だとオティヌスは語る

 

「奴は知っていたのだろう。願いが生み出す能力について…そう、理想送りの対たる上条当麻の幻想殺しや右方のフィアンマの聖なる右、そしてお前が以前捕まえようとした鳴護アリサ…それらと同一である原石、魔術、超能力とは違う種別である第四の力の誕生の仕方をな」

 

「……第四の力…?」

 

「それは願いの集積体とも言う、人の願いとは主観を歪める。複数の願いが同一の指向を与えれば因果律にする干渉する力となる。そう例えば鳴護アリサはオリオン号の乗組員や乗客全てが助かりたいと願った事でオリオン号に施されたレディリーの術式とシャットアウラの歌が象って誕生した集積体。聖なる右はローマ正教徒20億人全員の…いや十字教徒全ての願いが集積した神の如き者の名に相応しい万能な絶対的な力。幻想殺しは全ての魔術師達の怯えと願いが結実したもの…そして理想送りは魔神達の幻想殺しに代わる救済の願いが集積体となった」

 

願い、または祈り。無数の同一の願いが指向性を持つと因果さえ狂わせ力が誕生する。それが理想送り。聖なる右やアリサ、幻想殺しと同一なる力だ

 

「コロンゾンは魔神達の溢れた願いに願いに自らの力で別の指向をつけ理想送りを誕生させた。だが誰に宿るかは分からなかったが誰に宿ったかは分かった。そうアレイスターが上条当麻に幻想殺しが予期していたようにな」

 

「……じゃあぼくの周りに事件ばっかり起きたり、女の子を助けてきたのは…」

 

「コロンゾンの仕業だろうな。アレイスターと同じく舞台を整え上里翔流という自分の手駒となるべき存在を手にいれる為だけに悲劇を作っていた…そう考えるべきだろう」

 

「……………ッ!」

 

その事を聞いて上里は静かに憤る、事の全ての元凶が自分の近くにいたのにそれに気づかなかった自分、そしてそんな自分を見て嘲笑っていたであろうあの女狐に

 

「自分を責めるな、あいつは大悪魔、人を誑かす存在だ…騙されたお前に一切の非はない」

 

「……下手な慰めはいらないさ」

 

「……卑屈な奴だな、まあいいじゃがバターでも食って落ち着け」

 

「いやなんでじゃがバター?」

 

「じゃがバターは偉大だ、じゃがバターは美味い、ほら早く食え」

 

慰めのつもりかオティヌスは上里にじゃがバターを渡す、上里は嫌そうな顔をしたがオティヌスはそれを一切気にしない

 

「……昔、とある貴族の少女がいました」

 

「……唐突に何を言い出す?」

 

「その少女は母親と父親、色々と残念な兄との四人暮らしでした」

 

唐突に始まったオティヌスの語りに上里は不審な目で彼女を見る。だがオティヌスは話を続ける

 

 

その少女は疑問に思っていました、何故世の中は不公平なのかと。食べ物が食べられなくて困っている人がいるのに有り余る食べ物を食べきれずに捨てる人がいる。誠実で優しい人が領主の息子に殺されてもその領主の息子は何の御咎めもない事。善人が虐げられ悪人が蔓延るこの世界を疑問に思っていた。何故神様はこんな世界にしたのかと

 

『神様は不公平だ、何で不幸な人と幸福な人に分かれている?』

 

『ーーー、それが人間て生き物なんだよ』

 

『そんなの理解できない、私が神様なら全員を平等にする』

 

『ーーーは子供だな〜、神様なんている訳ないのに』

 

彼女は人の痛みが理解できた、全人類を自分が導きたいとは思わない、ただ全員が不幸にならず幸せになって欲しいだけだ。そんな考えを兄は笑いながらも微笑ましく思っていた

 

そんな兄妹に起きた悲劇、二人の両親が何者かに殺されたのだ。犯人はすぐ分かった、町のならず者だった。彼が両親を殺した理由は「自分が気持ちよく酒を飲んでいる時に父親と肩をぶつけたから」というしょうもない理由だった。そんなつまらない理由で男は父親を家までつけ一緒にいた母親も殺したのだ。幸い兄妹達は家にいなかった為難を逃れた

 

『……母さん、父さん』

 

彼女は貴族だった、父も母も由緒正しい家柄だ。家には兄妹だけでも生活できる金があった。だがその金も親族と名乗る大人達が家に乗り込み奪っていってしまった…兄はそれに申し立てるも殴られて床に倒れ大人達が財産や金目になりそうなものを奪うのを見ているだけだった…そんな光景を彼女は冷めた目で見ていた

 

『ああ、世界は荒んでいる。これではダメだ、これでは父さんと母さんの様な被害者が出るばかりだ…私が何とかしないと』

 

この世の中は腐っている、だから自分が変えなければならないと決意した。例えどんな方法を使ってでも、自分のあらゆるものを犠牲にしてでも…その後彼女は魔術を知り、魔術を極めた魔神なる存在を知る。そして世界を変えるべく魔神になる事を決意した

 

長い道のりだった、彼女は自分が得意な魔術は北欧系だと長年魔術を行使して理解していた。だからこそ彼女は北欧系の魔術の深奥を知り尽くしその智慧を知っていった。後はチャンスだけだ、一万年にあるかないかの希少なチャンスを巻き続けた

 

『待つんだーーー!こんな真似はもうよせ!』

 

『……兄さん』

 

彼女の実の兄が彼女を止める為何度も立ち向かって来た、何度も兄と戦い勝つか撤退するかを繰り返し…その希少なチャンスが訪れる日がやって来た…幸いな事に兄はそのチャンスを棒に振った

 

『……これで誰も不幸にならない幸福な世界になるんだ』

 

そう言って彼女は自分の片目を抉り取り、デンマークのとある島にあるとある城が浮かぶ泉に片目を投げ入れた。そして近くにあった樹に縄を括り付け…自らの首を絞め自分の腹に槍を突き刺した

 

『この状態で9日間生きていれば………私は魔神になれる』

 

これが儀式だ、北欧の主神に深く関わるエピソードを元にした儀式。北欧系の深い知識と魔術師としての素質、そして一万年に一度のチャンス、これらが無ければ成り立たない儀式…そして儀式は成功し彼女は晴れて魔神となり…世界は魔神となった彼女の容量に耐えきれず滅んだ

 

『………は?』

 

少女は何が起こったか分からなかった、何故自分は真っ黒な世界に一人佇んでいるのかと。そして理解した自分という存在に世界が、宇宙が耐えきれなかったのだと…ならばまた新しい世界を作ればいい

 

『…違う、これは私がいた世界じゃない!』

 

何度も何度も世界を作り変え、作り替えた世界からまた本来あるべき世界の姿を取り戻そうと試行錯誤する少女、だがその能力のために世界の本質が見えないため元の世界に戻る事が出来ない。何度世界を作り直しても僅かな疎外感や違和感は拭い去ることは出来ず、元の世界に変えるために途方もない程こ世界の再生と創造を繰り返した彼女は孤独な迷宮に取り残された迷子の様だった

 

『……帰りたい、帰りたい…あの世界に』

 

彼女は元の世界に戻る為に魔神の力を自分自身の為だけに使う事にした。当初の全人類を救いたいという理想は既になく数億の時を生き者の世界に戻るためにその智慧を働かした。そんな永劫とも言える時間の中で彼女はふと気になる存在が現れた事を知る

 

『……今の気配は?』

 

それが何なのか彼女には分からなかった、だが何かしらの気配を感じとりその気配を探した。そしてたどり着いたのは学園都市と呼ばれる場所だった…そしてその気配の人物を見つけた

 

『……お前か』

 

『……へ?魔神、オティヌス?』

 

その男は何故か自分の魔神としての名前を知っていた。そして何故か彼女はその男とじゃがバターを食べていた

 

『……おい人間。何だこれは?』

 

『じゃがバターですが?』

 

『何故こんな物を私に食べさせようとしている?』

 

『オティヌスと言えばじゃがバターだから』

 

『引っ叩くぞ貴様』

 

だがじゃがバターは美味かった

 

『おい、遊びに来たぞ人間』

 

『また来たのか?オティちゃん』

 

『誰がオティちゃんだ、誰が』

 

彼女…オティヌスは度々彼の元へ訪れる様になった。自分と同じ気配がする彼といると元の世界に戻るという目的すら忘れるほどだった

 

『…で、このゲームはどんな内容なんだ?』

 

『百姓一揆をモチーフしたゲームだ、1、2人で悪代官を倒す為忍者とかと戦うファミコンゲームだな』

 

『一揆なのに一人なのか?』

 

 

「おい、結局何の話をしているんだ?」

 

「盟友との馴れ初めの話だが?」

 

「ぼくが何故そんな話を聞かなければならない」

 

上里はどうでもいい話を長いこと聞かされてうんざりした顔をする

 

「まあ簡単に言うとだ、私が望んでいたのは元の世界ではなく理解者だったんだな〜て盟友と出会って理解したと言うことだな」

 

「それならそうと最初から言え」

 

上里は呆れた様に息を吐く、そんな呆れ顔の上里をスルーしてオティヌスは話を続ける

 

「盟友は悲劇を好まない性質のヒーローだ。何が何でもその盟友が救いたい対象を助ける…アレイスターもその対象だった。その結果盟友は自分の右腕と引き換えにアレイスターの娘を取り返した、自己犠牲とまではいかないが…盟友の行動は常軌を逸している所がある…まあヒーローとはそんなものだと思うがな」

 

「……そんなヒーローにお前も救われた口か」

 

「そうだな、盟友と出会ってから私は救われていたと言っても過言ではない。盟友は凄いぞ、絶対に友達になれない様な奴らと普通に仲良くなるしな」

 

「……垣根帝督の事を滅茶苦茶褒めるんだな」

 

垣根の事を大袈裟に褒めるオティヌスに上里がジト目で彼女を見るが彼女は気にしない

 

「他にも誰にも存在を気付かれず独りだった風斬氷華を義妹にしたり、窓のないビルに閉じ込められていたフロイライン=クロイトゥーネに自身の脳みそを複製した未元物質で製造した脳みそを食べさせたり、バチカンまで乗り込んでフィアンマ達とガチンコファイトしたり、イギリスに不法侵入して王室派と騎士派と星のカ○ビィをプレイして友達になったり、学園都市の理事長達とベイブ○ードしたり…」

 

「最初の二つ以外まともじゃないな!」

 

「仕方あるまい、盟友はカプ厨のイケメルヘンだからな」

 

「答えになってないぞ!」

 

上里が一つ以外全部おかしいと叫ぶがオティヌスはカプ厨のイケメルヘンだから仕方ない、と首を振る

 

「まあこの世に存在しない素粒子を引き出したり、その素粒子でカブトムシの形をした自律兵器を作り出す奴だ…常人の頭ではその思考は理解できんさ」

 

「……ツッコミ疲れた」

 

上里はそう言って疲れ切った顔をする、復讐で歪んでいただけで彼は本来はツッコミ役だったのかもしれない

 

「さて…まあ色々と脱線してしまったが…お前の仲間が目覚めないのは恐らく何者かの仕業で間違えない。先程冥土帰しの病院や他の病院に入院しているお前の仲間達を見た時何らかの術式の気配があったからな」

 

「……そう言う事は先に言え」

 

サラッとオティヌスが重大な情報を言うが言うのが遅いよと上里が頭を抱える。ぶっちゃけオティヌスの過去の話とか誰得だよと思った

 

「……恐らくその術式をかけたのはぼくに接触して来た魔神…ゾンビとか言う奴だろう」

 

「ゾンビ…ブードゥー教の至高神ンザンビか。諸動物の母にして貧しい人に味方する正しく慈悲深い神、邪悪な事や悪行などはせず、宇宙の秩序の管理と維持を行なう神。太陽とも同一視され人間の個性すらも作ったとされる偉大なる神。そしてゾンビ伝承の起源にして不思議な力を持つものの総称…成る程厄介な神の名を持つ魔神だな」

 

「……そんなにヤバい神様なのか?」

 

「ああ、ンザンビは不思議な力を持つものの総称…つまりそれに魔術も含まれる(・・・・・・・)。正直言ってどんな術式を扱うのか同じ魔神である私ですら検討がつかない。そもそも魔神の座を捨てた私と魔神であるゾンビでは格が違う」

 

オティヌスですら勝てないと断言する程の実力者なのだと上里は目を見開く、上里は自分はそんな敵に勝てるのかと自信をなくしかけるが右手で自分の頬を殴る

 

「……弱気でどうする、去鳴達を…大事な仲間達を助けるためなら魔神だろうが何だろうがぶっ飛ばしてやる。それに最初の目的は魔神だったんだ、今更臆してどうする上里翔流」

 

そう自分に言い聞かせる上里、それを見てオティヌスが笑う

 

「……それでこそだ、不屈の意志、諦めない心…それこそがヒーローだ。やはり盟友の目に狂いはなかった。貴様もヒーローだよ上里翔流」

 

 

パトリシアはとある大学まで走っていた、親切なスキルアウトが乗せてくれたバイクから大学近くで降りれば間に合う…その筈だったのに

 

「………?」

 

ふと背後から誰かの気配がした、パトリシアが後ろを振り向くと…誰もいなかった。そうパトリシア以外誰もいないのだ(・・・・・・・)。文字通りパトリシア一人だけ、それ以外の人の影はおろか気配すらもしない…流石のパトリシアも不安な気分になる

 

『いひひ……』

 

「!?」

 

そんな時背後から不気味な笑い声がした、急いで振り返るが……誰もいない。空耳かとパトリシアは安堵の息を吐き向き直す…そして

 

『いひひ。初めましてお嬢さん、ひひ』

 

「!?」

 

自分の顔の目の前にその少女は翼を羽ばたかせながら宙に浮いていた。大きく裂けた口にクラゲの様に広がった七色の半透明な髪、額にある人の指くらいなら余裕で入りそうな大穴と異形染みた容貌に人外の者らしきウーパールーパーの羽の様な翼に軟体動物の触手の如き尻尾…そして何よりもその悪意に満ちた不気味な笑みがパトリシアの眼前にあった

 

「きゃああぁぁぁぁ!!?だ、誰なんですか貴方は!?」

 

『いひ。私はクリファパズル545と申します。以後お見知り置きを〜ひひ』

 

クリフォパズル545と名乗ったその悪魔は自分から距離を取るパトリシアの前に一瞬で現れ彼女を恐怖に駆らせる

 

『ひひひ。実はコロンゾン様(・・・・・・)に上里翔流の抹殺を命じられましてね。どうやって殺そうかなーて悩んでたんですよ』

 

「か、上里さんを!?」

 

『いひ、そうですよぉ。そんな時に貴方が上里翔流と仲良くしてるじゃないですか。これはもう貴方を使って上里翔流を殺すしかないな〜と思いこうやって接触しに来たんですよ』

 

そう言って笑うクリフォパズル545。それを聞いてパトリシアは更に後ずさるが悪魔から逃れることは出来ない

 

『いひひ。と言うわけで貴方に憑依してコロンゾン様の命令をさっさと果たしちゃう事にします。いひひひ!』

 

そう言ってクリフォパズル545は右手を自分の胸の中に入れる。そして胸をたゆんたゆんと揺れさせパトリシアが何をしているのかと疑問に思い…そして胸元から銀色に輝く鳥の装飾品を取り出した

 

『ひひひ。これはトート=ヘルメス!エジプトの偉大なる月を司る魔術神 トートとアポロンすら欺くトリックスター ヘルメスの力が混ぜ合わさった最強最悪の神威混淆なのです!』

 

トート=ヘルメス。エジプトの死者すら蘇らせラーの真名を知りその力を奪い取ったイシスの魔術の師である神 トート。そして錬金術とも深い関わりがありかのオーディンとも同一視される多彩な神格持つ神 ヘルメス。その神の力が合わさった最強最悪の霊装、それがトート=ヘルメスだ

 

『いひひ。てな訳で貴方の力……お借りします!』

 

「あ、ああ………あああああああぁぁぁぁ!!?」

 

クリフォパズル545はそう笑うとトート=ヘルメスをパトリシアの胸元に押し付ける。それだけでパトリシアの胸の中にトート=ヘルメスが入り込み…直後パトリシアが苦しげな絶叫を上げる

 

『いひひ!更にぃ〜私も憑依しちゃいますよぉ!』

 

「がぁ!?がああああああああ!!!?」

 

クリフォパズル545もパトリシアの胸の中に入り込んでしまう。更に苦しげな声を轟かすパトリシア…これが本来の神威混淆と彼女の運用方法。神威混淆使用者に憑依し、無理解・不寛容を拡散させる…それこそが正しい使い方なのだ

 

「た、す………て。か………さと……ん…」

 

彼女は手を伸ばした。誰かに助けを乞う様に必死に手を伸ばし……その意識が途切れた

 

 

 

「……ゾンビについて教えてくれて感謝する。ここからはぼく一人でなんとかする」

 

「……そうか、勝手にしろ。だがもし自分一人では限界だと思えば私達が力を貸してやらんことも無い」

 

「………お人好しだな、君も君以外の奴らも」

 

「それが学園都市に住んでる奴らと言うものだ」

 

上里はオティヌスとの会話を終えそのまま何処かへ立ち去ろうとする。そんな上里は黙って見ていたオティヌスだがふと何かに気づき声を上げる

 

「っ!?伏せろ!」

 

「!?」

 

その声にいち早く反応した上里は即座に伏せる、そして上里の頭が先ほどあった所に銀色の光が通り過ぎ近くにあった建物を破壊した

 

「何者だ!?」

 

オティヌスがそう叫ぶと誰かが二人の目の前に現れる。その襲撃者の正体を見て上里は目を見開いた

 

「………パトリシア?」

 

現れたのはパトリシア=バードウェイだった、だが何故彼女が襲撃を?と考える前に上里の目がいったのは彼女が来ている服…まるで古代エジプトの神官が着る様な衣服に頭についた銀色の鳥の冠。そして二体の蛇が巻きついた黄金の杖だった

 

『「はぁい上里さん、私はパトリシア=バードウェイですよぉ」』

 

パトリシアの声だ、同時に何か違うと思った。一人の声にも二人の声にも聞こえる不思議な声。はっきりと聞こえるのになんと言ったか分からない。上里は思った彼女はパトリシア本人なのかと?だが同時に彼女はパトリシアだと言う確信があった…なのに疑ってしまう

 

「なんだ……これは?」

 

上里が思わず呟いてしまう、すると今度はパトリシアではない誰かの声が響く

 

『いひひ。悩んでますかぁ?』

 

「ッ!?誰だ!」

 

『ひひ。私はクリフォパズル545と申しますぅ。コロンゾン様からより貴方の抹殺を頼まれこうして現れました』

 

「……コロンゾン、あの便所ブラシめ。神威混淆をレイヴィニアの妹に仕掛けやがったか」

 

オティヌスが舌打ちする、これでは便所ブラシ(コロンゾン)に自分の同僚の妹を人質に取られた様なものだと

 

『いひひ。さあどうします上里翔流?このままパトリシア=バードウェイに殺されるのがお望みですか?それとも貴方と仲良くなった女の子を切り捨てて殺す事で生き延びる事を選ぶか…どちらか好きな方を選んでください』

 

そう言ってクリフォパズル545は究極の選択を上里へと突きつけた。自分の死かパトリシアの死か…どちらかを選べと

 

「く…………ッ!!」

 

その悪魔の選択に上里は表情を歪める。そんな上里を見てパトリシア(クリフォパズル545)は笑った

 

『「いひひ。さあ上里さん、私と一緒に楽しい、楽しい殺し合い(遊び)をしましょう」』

 

そう言ってパトリシアは二体の蛇が絡みついた黄金の杖を振り上げるのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




オティヌスの過去とかは適当です、オッレルスが没落した貴族とか書かれてたから元は裕福な家の生まれだと解釈、そこから何故魔神になったのか推測しこうなったわけです。そして願いの集積体は某考察を見て取り入れました…聖なる右はあの動画を見るまではフィアンマの右手がミカエルの右手と似てるから偶像の理論でミカエルの力が引き出せてるのかな?と思ってたけど全然違ったみたい…恥ずかしい

そして現れたこの章の真のラスボス クリフォパズル545。ヒロインに憑依して主人公(上里)と戦わせるというある意味王道的(なのか?)な展開を作り出したボスキャラ、そして本編では運用されなかった神威混淆の使用者の憑依もこの作品では行うと言う…はっきり言ってこれまでの神威混淆を使って来た敵とは一味違います

そしてトート=ヘルメス、この二柱の名前は魔術界でもかなり有名でトートは言葉だけで世界を創造した魔術師、イシスがオシリスを蘇生する際にアヌビスと共に手助けをしたほどで月を管理する者で太陽が沈んでいる間はトートが世界を支配するのだとか。ヘルメスは生まれてすぐにアポロンの牛を盗むというとんでもない野郎。そしてゼウスの前で堂々と「自分は盗んで無いよ」と言い張りゼウスに「こいつの嘘つきの才能と窃盗の才能を伸ばそう」と英才教育を受け後にアポロンと自分が作った竪琴とアポロンの杖を交換した…これが商売の始まりとも言われている…そしてヘルメスはオーディンとも同一視され錬金術とも関わりがあり、後にトートとヘルメスはヘレリズム時代に融合され「ヘルモポリス」となり更に錬金術師ヘルメスとも複合しヘルメス・トリスメギストス(三重に偉大なヘルメス)という偉大なる錬金術師になったのだとか…トート=ヘルメスは神威混淆の中でも屈指の強さを誇る霊装です

さあ次回はトート=ヘルメス戦、上里はパトリシアを救う事ができるのか?因みにオティヌスの過去編に出て来た「一人二人なのに百姓一揆なのか?」と言うゲームの元ネタは「いっき」と言うゲームです

次回もお楽しみに!


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神の里を翔ける流転

お待たせしました、今回は上里+a達vsパトリシア(クリフォパズル545)戦でございます。トート=ヘルメスは最強の神威混淆と作者は設定していましたので強力な能力の数々やクリフォパズル545の卑劣な策など頑張って考えながら書きました

そして個人的な内容ですが…面接落ちた(白目)、毎日面接練習してたのに、努力してたのに…それが一切の無駄になりましたよ…受かると思ってたらその幻想をぶち殺された…これが本当の幻想殺し…なんちゃって…はは………はぁ(溜息)


パトリシアが左手に握りしめている黄金の杖は頭には翼があり柄に2匹の蛇が巻きついている…その杖の名は伝令使の杖(ケーリュケイオン)と言い、ヘルメスが所有する杖の名だ。眠っている人の目を目覚めさせ、目覚めている人を眠りに誘い、死にゆく人は穏やかになり、死せる人は生き返るという生と死を操る魔法の杖だ

 

そんな杖を上里へと向け永遠の眠りへと誘おうとするパトリシア。だがオティヌスが主神の槍(グングニル)を振るい穂先から雷霆を放ちパトリシアはそれを伝令史の杖で防いだ

 

『「邪魔しないで下さいよオティヌスさん、私は上里さんを殺すのが目的なんですからぁ」』

 

「悪いが邪魔させてもらうぞ、上里翔流が死んでは困る奴らがいるのでな」

 

オティヌスはそう言うと槍を構えて上里を守るかの様に前に立つ

 

(いしゆみ)

 

オティヌスを基点に、巨大な翼とも華とも言えぬ、不気味で得体の知れない紋様の形が出現。世界を弩の弦として10発の矢を放った。そしてその矢は威力はそのままに打ち上げ花火の如く分裂し星の数程の豪雨と化してパトリシアに降り注ぐ。数の概念すら無視した文字通りの必殺の矢がパトリシア目掛けて降り注ぐがパトリシアはゆっくりと口を開く

 

『「止まって消えろ」』

 

次の瞬間必殺の矢の動きが止まった、そして矢が大気に溶ける様に消えていった。それを見たオティヌスがほんの僅かに驚愕する

 

「何………?」

 

そんなオティヌスを見て小馬鹿にする様にパトリシアが笑い声を上げる

 

『「いひひ!トートは言霊で世界を創造したんですよぉ?なら私も言葉で全てを支配しても問題ないでしょう?」』

 

それはアウレオルスの黄金錬成(アルス=マグナ)と似た力だ。言葉で世界を歪め自身が言った言葉を本物にする…それがトート=ヘルメスの力の一つだ

 

『「更にぃ!これはヘルメスの力ですぅ!」』

 

左手に持つ杖を振るうとパトリシアの身体がオティヌスの目の前に現れる。そしてそのまま杖を横に振りオティヌスは主神の槍で杖を防ぐ

 

「…瞬間移動の様なものか」

 

『「正解〜、ヘルメスは境界の神にして旅人の神、道祖神の様な神ですからねぇ。でも…単なる空間転移とは違うんですよね〜これが」』

 

そう言うとパトリシアは上里が立っていた場所へと現れ、上里はパトリシアが立っていた場所に現れる。オティヌスはその光景を見て目を見開きながら悟る。これは空間と空間の交換だと

 

『「暴風で吹き飛べ」』

 

パトリシアの右手から高層ビルを豆腐の様にボロボロにする暴風を発生させる。オティヌスは槍を振るい同じく暴風の壁を形成し攻撃を防いだ

 

『「幾千の剣よ、穿て」』

 

その言葉と共に千を遥かに越す鋼で出来た無骨な剣が出現。風切り音を響かせながら二人に放たれそれを槍を振り回し全てを破壊し防御するオティヌス

 

『「ラーの陽光よ、焼き尽くせ」』

 

天より放たれし光の柱はオティヌスが槍を投げる事により相殺する。莫大な力と力がぶつかり合い頭上にて大爆発が起こるもオティヌスの右手にはいつの間にか槍が握られていた

 

「今度はこちらから行かせてもらうぞ」

 

オティヌスは主神の槍を天へとかざし天より流星を降り注がせる。パトリシアはそれを言霊で爆発させる、だがその隙に接近したオティヌスが槍をパトリシアの体へと刺突、それを伝令史の杖を振るい上里と自分の位置を交換し主神の槍が上里を貫こうとしオティヌスは慌てて軌道を逸らす。その隙にパトリシアは紅蓮の炎を丸で鎌首をもたげる蛇の様にオティヌスへと放ちオティヌスはその炎の蛇を左腕で殴りつける事で破裂させる

 

『「いひひひ。中々やりますねぇ…ですがこれならどうです?重力による圧殺!」』

 

その一言で上里とオティヌスにのしかかる重力が何十倍にも増幅し二人は地に倒れ臥す

 

「「がぁ……!?」」

 

『「ギロチンにてその首を斬首せよ」』

 

パトリシアは地に倒れ臥した二人に虚空より出現したギロチンで首を撥ねようとする、だがそれより先に上里が口を開く

 

「あ、新たな天地を望むか?」

 

理想送りにより上里達を押し潰さんばかりにのしかかっていた重力が消失した、即座に立ち上がったオティヌスが骨船(こつせん)で転移し二人の首を撥ねる筈だった死の刃から逃れた

 

『「あ〜、上里さんの能力を忘れてました〜。全く私たらドジっ子、てへ☆」』

 

「……神威混淆を使うとここまで性格が変わってしまうのか?宛那達はここまで変わらなかったが」

 

「いやこれはあの悪魔…クリフォパズル545が憑依した影響だろう。どちらにせよあの悪魔をパトリシアから抜き取れば解決する」

 

言動や行動が本来のパトリシアの性格とは全く違うと上里が呟く、オティヌスはクリフォパズル545が憑依した影響だと推理する

 

『「ひひ。その通りですぅ、この私を取り除けばこのお嬢さんは助かりますよぉ〜、まあ。貴方達にそれが出来たらの話ですがね…いひひ!」』

 

「上等だ、その喧嘩買ってやる」

 

「挑発に弱いな君」

 

クリフォパズル545がわざとらしく挑発するとオティヌスは青筋を立てながらその挑発に乗ってしまう。こいつチョロいな、と上里は思った

 

「弩!」

 

『「矢が通過する空間とオティヌスの頭上の空間を交換!」』

 

10発の矢がパトリシアへと放たれる。超長大レールガンの如き必殺の矢をパトリシアは矢が通過する空間とオティヌスの頭上の空間を入れ替える事によりパトリシアを撃ち抜く筈だった矢がオティヌスへと襲いかかる

 

「!?……チィ!」

 

オティヌスは舌打ちしながらも矢を槍で打ち消す、左手で矢を殴る事により粉砕、魔術による迎撃を行い主神の槍をパトリシアへと投擲。それに対しパトリシアは言霊を呟きながら指を鳴らす

 

『「月の神たる我が命ずる、時よ止まり給え!」』

 

その瞬間学園都市からパトリシア以外の全ての時が停止した。学園都市全土の生き物と物体の時間が止まり動かなくなった世界でパトリシア一人が動き主神の槍をオティヌスの背後へと移動させる

 

『「そして時は再び動き出す」』

 

主神の槍が背後からオティヌスへと迫る、それに気づいたオティヌスは右手を主神の槍の穂先へと伸ばす。グチャと肉が潰れる音が響きオティヌスの右腕に槍が突き刺さり彼女の顔が苦痛に歪むがオティヌスは迷わず右腕から主神の槍を引っこ抜き血が噴き出し地面が赤く染まる

 

『「いひひ!大丈夫ですかぁ?痛そうな顔をして…病院に行った方がいいですよぉ、ひひ!」』

 

「問題……ない、この程度傷のうちに入らない」

 

『「強気ですねぇ………でもいつ迄続きますかね?いひひひ」』

 

強がるオティヌスを見てパトリシア(クリフォパズル545)は嘲笑った。オティヌスは痛みを堪えながら全てを焼き尽くす火焔を、万物を凍てつかせる吹雪を、消し炭すら残さない威力を誇る雷霆を、全てを吹き飛ばす颶風を、人を簡単に融解する毒霧を、街一つなら簡単に崩壊させる流星群をパトリシアに放つがパトリシアは言葉一つでそれらを消滅させてしまう

 

『「さてお遊びは終わりにしましょう。アポピスを屠る言霊の刃よ、敵を両断せよ!」』

 

そして青く発光する刃がオティヌスと上里に放たれた、その一撃はどんなに強固な防御術式で守られた要塞も豆腐を日本刀で裂く様に切り裂くであろう斬れ味を誇る。オティヌスは迎撃の為主神の槍を振るおうとする…だが

 

「寒にして湿、続けて温にして湿」

 

『「な……!?」』

 

上里とオティヌスを守る様に暴風と水の壁が二人の目の前に展開される。万物を裂く筈の言霊の刃はその防壁を突破する事はなかった

 

「パイルバンカー 発射」

 

『「!?壊れろ!」』

 

無数の槍がパトリシアへと飛来する、パトリシアは慌てて言霊で全ての槍を破壊する…が、更に銃弾やミサイル、レーザービームが飛来しパトリシアはそれらを言霊で防御する

 

「……遅いぞ脳幹、メイザース」

 

「これでも急いで来た方だよ」

 

「だがいいタイミングだっただろう?」

 

救援に来たのは右に重心を傾けて立つ古いスコットランド式軍服の上に魔女のとんがり帽子や外套を羽織り、マフラーを巻いた中年の男 サミュエル=リデル=マグレガー=メイザース 。そして木原一族の一人である葉巻を咥えたダンディな声で喋るゴールデンリトリバー 木原脳幹。オティヌスと三人で行動することが多い彼等が駆けつけたのだった

 

『「おお、私一人に過剰戦力過ぎませんかねぇ?私泣いちゃいますよぉ?」』

 

「黙れ悪魔が、俺達は容赦などせん。三人がかりでお前を捻り潰してやろう」

 

「三人がかりとは少々汚いが…悪魔相手なら致し方あるまい」

 

「これで形勢逆転だなクリフォパズル545」

 

パトリシアは余裕な口調だが明らかに顔色からは余裕が消えていた。最強の三人が揃った今クリフォパズル545に勝機はない様に思えた…だがパトリシアは杖を構える

 

『「ひひ。まさか三人揃えば勝てるとでも思ってたりしますぅ?…心外ですね。いひひ…千を超える刃よ、敵を全て殺し尽くせ」』

 

「ふん、温にして乾、続けて温にして湿」

 

パトリシアが放った言葉が魔術となって三人に襲いかかる、幾千の刃が迫るがメイザースを中心として浮かぶ赤い杖、青い杯、黄色の盤、緑の短剣の内杖と短剣が動き短剣がメイザースを中心に防護円を描き烈風が発生しそれに火炎を上乗せすることで炎の竜巻となり幾千の刃を焼き尽くす

 

「私を忘れてはいないかい?」

 

『「……攻撃から身を守れ盾よ。昼の灼熱の砂漠と夜の凍土たる砂漠の嵐を此処に」』

 

脳幹はA.A.A.(アンチアートアタッチメント)から砲弾や銃弾、レーザービーム、パイルバンカー、鋭利な刃物が投擲・発射しパトリシアは盾を創造し攻撃から身を守る。そして指を鳴らして灼熱と吹雪が混ざり合った嵐が周囲に破壊を齎しながらオティヌス達へと突き進む

 

オティヌス(オーディン)が扱う武器が(グングニル)(オティヌスの弩)だけと思うなよ。主神の剣(グラム)!」

 

オティヌスが取り出したのは黄金の剣だった、その霊装の名は主神の剣。シグルドの父 シグムンドが持っていたと言われるオーディンの加護が込められた魔剣。オーディンにその魔剣は砕かれ後にシグルドが鍛え直し悪竜を殺したとされる魔剣の名を持つ霊装。神話での持ち主はシグルドだがこの魔剣はオーディンが与えた物だ、ならばオティヌスが扱ってもおかしくはない。その黄金の剣は炎と氷の嵐を一刀両断し紫の斬撃がパトリシアと飛び放たれる

 

『「いひ。斬撃波は消滅しなさい」』

 

その一言と共に斬撃波が消滅してしまう、そしてパトリシアは脳幹と自分の位置を交換しメイザースの心臓に伝令史の杖を突き刺そうとするが象徴武器(シンボリックウェポン)達が自動的に動きその一撃を食い止める

 

『「自動防御ですかぁ?」』

 

「第三位の様に反射は出来んが…弩くらいまでなら防ぎきれるぞ」

 

メイザースはそう笑いながらパトリシアを象徴武器で跳ね飛ばす、パトリシアは空間転移で距離を取り雷霆を放つがオティヌスが主神の槍で起動を無理やり変える。その隙に脳幹がドリルを伸ばしパトリシアを貫こうとする

 

「す、凄い……これが学園都市の最大戦力」

 

上里は三人の強さにただただ圧倒された。一人一人の強さは勿論、連携でパトリシアを追い込んでいく様を見て上里はこれが自分がかつて相手にしようとしていた敵なのかと生唾を飲み込んだ

 

(強い……!ぼくの理想送りが触れる前に倒されてしまいかねない…これが…学園都市!)

 

オティヌスが主神の槍を投擲、伝令史の杖でそれを防ぐが杖に亀裂が走りバラバラに砕け散る。簡易れず銃弾や砲弾、ミサイルの豪雨が降り注ぎパトリシアは空間の交換で銃弾の豪雨をオティヌス達に降り注がせるがメイザースがそれを炎の波で相殺する。そして脳幹は巨大なドリルを砲弾の如く発射しパトリシアの腹部に命中し彼女の身体がくの字に曲がる

 

『「ごぼぉ!?」』

 

そのまま吹き飛ばされ建物に激突、建物を崩壊させながら瓦礫に埋めれる…それを見て上里が慌てて叫ぶ

 

「お、おい!彼女を殺す気か!?」

 

「これでも配慮はしている方さ、神威混淆は使用者の肉体を強化するからな。あの程度では時間稼ぎにしかならないよ…メイザース」

 

「分かっている」

 

脳幹があの程度では足止めにしかならないと上里に告げる、そしてメイザースは杖、杯、盤、短剣の四つの象徴武器がクルクルとメイザースを中心に回転し始め赤、青、黄、緑の四色に発光し象徴武器同士がぶつかり合う事で聞き惚れる様な美しい音を鳴り響きメイザース達の頭上に白い光が展開される

 

「温にして乾は破れど、温にして湿、寒にして湿。もって三種の相生となす。しかして四界の表層に純粋な元素なし、切り離された寒にして乾は最大の干渉力を持って世の調和をかき乱す。火より出ずる土よ、絶大なる相生でもって意味を補強し元素の破壊者を打擲せよ!!」

 

これがメイザースの象徴武器(シンボリックウェポン)を使って行う攻撃の中で最大出力を誇る一撃だ。だがこれを攻撃ではなくメイザースは悪魔と天使達の召喚を簡略化させる為にその莫大な力を召喚儀式の為に使用する

 

「来い。神の如き者(ミカエル)神の力(ガブリエル)神の薬(ラファエル)神の火(ウリエル)……そして蝿の王(ベルゼビュート)

 

超能力者達と激戦を繰り広げた剣を持つモノ(ミカエル)百合()の花を携えるモノ(ブリエル)冒険者を守護するモノ(ラファエル)地獄の()門を守るモノ(リエル)…四種の高次生命体を召喚し、それだけに飽き足らず魔王(サタン)渦巻く蛇(レヴィアタン)と肩を並べる最強の悪魔が一柱 糞山の王(ベルゼビュート)がメイザースの背後に出現する

 

『「い、ひひ…まさか四大天使と蝿の王をこうもあっさりと召喚してしまうとは……」』

 

「やれ」

 

メイザースの命令と共に四大天使と蝿の王が攻撃を放つ、火焔と氷水、暴風と土塊の魔術が飛び交いドス黒い呪詛がパトリシアへと放たれパトリシアの周囲が大爆散を起こす

 

『「きゃあああああああぁぁぁッ!!!?」』

 

パトリシアとクリフォパズル545の合わさった悲鳴が轟いた、爆煙で姿は見えないが三人には倒したという確信があった

 

「後はパトリシアに憑依した悪魔を分離させればいいだけだな」

 

メイザースはそう笑ってパトリシアが倒れているであろう場所へと歩き出す…そして地面が水銀に変質しメイザースの胸を穿ち背中から水銀の槍が飛び出した

 

「………なに?」

 

『「いひひ☆なーんちゃって♪まさかあの程度で倒したと思ってましたぁ?」』

 

顔を驚愕に染めるメイザースを嘲笑うかの様に爆煙が晴れ汚れ一つない無傷のパトリシアが現れる

 

「な、んだこれは……?」

 

『「ひひひ。これは錬金術ですよ、錬金術。ヘルメスとトート、そして錬金術師 ヘルメスが融合された緑玉板(タブラ・スマラグディナ)を記した偉大なる三重の魔術師(ヘルメス・トリスメギストス)。かの魔術師の究極の錬金術を再現したのが今貴方に喰らわした攻撃の正体ですよ」』

 

メイザースはタロットカードに人格を写すことで、意思を持つ「原典」だ。その不死性で並大抵の攻撃はメイザースには通用しない。なのにその特性を貫通してメイザースに傷を与えたのだ

 

「ま、さか……その錬金術は…理すらも、変えてしまうのか?」

 

『「ええ、そもそも錬金術において万物は四大元素で構成されています。それを原典に当て嵌れば破壊するのも容易という訳です。いひひ」』

 

理すら歪める錬金術、その恐ろしさを理解したオティヌスが即座に攻撃を仕掛けようとする…そんなオティヌスにパトリシアは笑みを浮かべて周囲の大地を水銀に変え無数の槍でオティヌスの身体を串刺しにした

 

「がっ………!」

 

「オティヌス!くっ……!!」

 

脳幹はドリルを一直線にパトリシアに放ち、パイルバンカーを彼女へと降り注がせる。それに対しパトリシアは自分の周囲に存在する酸素以外の元素を水銀の盾に変換させ攻撃を防ぎきり、水銀の盾を水銀で構成された大蛇に変化させ宙を泳ぐ様に脳幹へと迫らせその顎に脳幹か噛み付かれ鮮血が舞った

 

「ぐぅ………っ!?」

 

激痛のあまり咥えていた葉巻が地面へと落ちた、水銀の蛇はそのまま首を動かすと地面へと脳幹を叩きつけボールの様に脳幹は地面を何度もバウンドし地面に倒れ臥す

 

『「にひひ。元魔神に黄金夜明の魔術師、学園都市随一の科学者も大した事ありませんでしたねー。ああ、私が強過ぎるだけですか。いひひ!」』

 

パトリシアTH(トート=ヘルメス)の力は強大だった。脳幹、オティヌス、メイザースすらも一蹴する程の力を秘めた存在。正しく神威混淆の切り札の名に恥じない

 

『「さて…先ずは犬ころから殺しますかぁ」』

 

水銀の蛇が再び脳幹に狙いを定める、鎌首をもたげて脳幹(獲物)を睨んでいたが銃口から放たれた銃弾の様に脳幹へと飛びかかり脳幹の首をねじ切ろうと鋭利な牙を伸ばすが…

 

「新たな天地を望むか」

 

上里の右手が水銀の蛇を新天地へと消し飛ばした、右手に吸い込まれるように消えていく水銀の蛇をパトリシア(クリフォパズル545)は首を傾げながら不思議そうに見ていた

 

『「あれれ?何で助けたんですぅ?その犬ころは貴方の味方ではないのに…というか貴方の復讐の対象じゃなかったんですかぁ?」』

 

「………関係ないさ」

 

クリフォパズル545のその問いに上里は関係ないと告げた、脳幹がゆっくりと瞼を開き自分の目の前の少年を見つめる

 

「復讐だとかはもうどうだっていい、ぼくはあの頃の様に、復讐に囚われていた今のぼくよりも困ってる女の子達を助けてた頃のぼくになる」

 

上里はもう復讐には囚われていなかった、何よりパトリシアをクリフォパズル545から助け出す為に戦った脳幹達を見捨てる事など出来なかった

 

「ぼくはお前を倒す…お前が取り付いている女の子、パトリシアを助ける為に」

 

『「きひひ。面白いですねぇ、所詮は今日一日会っただけの少女なのに」』

 

「……そうだな、確かに今日会っただけかもしれない…だが彼女はもう既にぼくの一部なんだ(・・・・・・・・・・・・・・・)

 

『「………はぃ?」』

 

「今日出会って、会話して、食事して、仲良くなって、笑いあって、励まされて…もう彼女はぼくという存在の一部なんだ。今ここに倒れてるオティヌスだって長い時間ベンチで会話した、そこのゴールデンリトリバーと変な服着たオッさんとは関わり合いがないけど…見捨てていい理由にはならない」

 

上里は自らの力の象徴である右手を握りしめながらクリフォパズル545に宣言したのだ

 

「ぼくは救うぞ、クリフォパズル545…いいか、どこにでもいる高校生はな、困っている人を見つけたら最後、それだけでいつでもヒーローになれるヤツの事を言うんだ」

 

脳裏に思い出すのは自分を倒した理想送りの対となる右手を持つ男。あの男はあの時は自分では決して追いつけない場所にいた…だが今の上里ならば上条と同じ所に立てる気がした

 

「覚悟しろ、一発屋」

 

上里はクリフォパズル545へと告げる、これが、これこそが上里翔流の生き様だと

 

「お前にどこにでもいる平凡な高校生の自由度ってものを見せてやる」

 

『「……きひひ。なら救って見てくださいよぉ。私は全力で殺しにいきますので!」』

 

その言葉を合図にパトリシアは言霊を呟き灼熱の業火と幾千の氷刃が上里へと迫った

 

(炎と刃、どちらかを防げばどちらかの攻撃にあたり死ぬ…これで終わりです)

 

そうクリフォパズル545は笑みを浮かべるが上里は右手を炎へと伸ばし、炎に触れる直前で口を開いた

 

「新たな天地を望むか」

 

その一言と共に炎は右手へと吸い込まれる。だが完全に吸い込み終わるのに時間がかかりその間に幾千の氷刃が上里の身体を貫く……事はなかった

 

「ふっ………!」

 

『「な、なに!?」』

 

上里は炎が完全に右手に吸い込まれない内に身体を回転する。当然右手に吸い込まれていた炎も右手と連動して動き炎の壁となって幾千の氷の刃を防いだ

 

(ま、まさか理想送りをあの様に使うなど…ですがもっと数が増えればどうですかね!)

 

『「いひひ!中々やるじゃないですか!でも無駄ですよぉ!」』

 

火球、水流レーザー、鎌鼬、バウンドしながら迫る雷の球、鋼の剣、灼熱と吹雪の嵐…いくつもの魔術が放たれるも上里はそれを右手で吸い込みながら身体を捻って吸い込んでいる途中の魔術で他の魔術を迎撃する

 

(……パトリシアの攻撃は多彩かつ強力だが…欠点がないわけじゃない…実際あの言霊が言った言葉を実際に再現するなら…何故死ね(・・)と言わない?)

 

アウレオルス=イザードという錬金術師の黄金錬成は言った言葉を全て再現し、死ねといえばあの垣根でさえも死んでしまった。パトリシアの言霊による魔術は黄金錬成と非常に酷似していた…だが彼女は一言も死ねとは言っていない…火焔や嵐などの強力だが即死系ではない攻撃ばかり使っていた。つまりそれは

 

(神話におけるトートが創造した物しか作れない…トートは死者を蘇らせる事は出来ても創造による死を与える事は出来ない…そう言う事か)

 

あくまでもトートが創造した森羅しか扱えないと上里は推察する。そしてヘルメスの空間操作も黒子や結標の空間移動や座標移動の様に人体に直接物体を転移してトドメを刺すと言うやり方を行っていない…つまり場所と場所の入れ替えしか出来ないのだ

 

(錬金術も何かと等価交換して水銀を作り出していると考えられる…タネが分かれば怖くない)

 

上里は駆け出した、自ら右手でパトリシアに憑依した悪魔を切り離す為に…だがクリフォパズル545は上里に向けてある事実を告げる

 

『「いいんですかぁ?その右手に触れたらこのお嬢さんも新天地に消えちゃいますよぉ?」』

 

「!?」

 

その言葉を聞いて上里は動きを止めてしまった、そしてそのまま地面から形成された水銀の槍に上里の腹部が貫かれた

 

「ごがああああああああぁぁぁぁぁ!!?」

 

くねくねと生物の様に動く水銀の槍はぽいっとゴミを捨てる様に上里を地面へと放り投げる、刺された箇所から鮮血が飛び散り上里が苦しげな声を上げるのを見てクリフォパズル545は笑った

 

『「きひひ。貴方の理想送りにこの身体が触れたら私が憑依している宿主ごと消える…まあでもたかが小娘一人の命なんて軽いですし一思いにやったらどうです?……やれるならね。ひひひ」』

 

クリフォパズル545は上里がそんな真似を出来ないことを知った上で嘲笑いながら挑発する。クリフォパズル545にとって上里が攻撃を仕掛けてくることを見越してのパトリシアへの憑依だったのだ、こうなる事を予想した上でパトリシアを人質に取った…悪魔の名に恥じない卑劣な行いだった

 

『「さあどうします上里翔流、このまま失血死で死ぬか、死ぬ前に私ごとお嬢さんを新天地に送るか…どちらかお好きな方をお選びください…いひひ」』

 

どちらにせよ上里翔流は失血死で死ぬ、これでコロンゾンの命は完遂した。ついでに何人かの命も刈り取っておくかとクリフォパズル545は頭の中で考え始める

 

(く、そ……これで…終わり…なのか?結局ぼくは…誰も……)

 

上里は荒い息を吐き出しながらパトリシアを見つめる、槍で貫かれた箇所が焼ける様に痛む。意識が朦朧とする中上里は自分は誰も助けられないのかと右手を必死にパトリシアへと伸ばしながら呟いた

 

(去鳴達も、パトリシアも………結局、ぼくは誰も救え……)

 

そう上里が諦めかけたその時

 

(諦めるなくそ馬鹿お兄ちゃん!)

 

(まだやれるよ上里君)

 

(まだ終わってねえだろ大将!)

 

(諦めなはんな上里はん!)

 

(ファイトです上里さん!)

 

「……去鳴?宛那?獲冴?絵恋?暮亜?」

 

彼の耳に届いたのはこの場にいる筈のない眠ったままの少女達の声だった

 

「ど、うして……声が?」

 

(私達はずっと上里君の近くにいました、例え意識がなくても…心はずっと貴方のそばにいました)

 

(どんな原理が分からねえけど…大将の事だしまあなんでもありだろ!)

 

仲間達はずっと彼の側にいた、それを聞いた上里の目が見開かれる

 

(ここで諦めるなんてお兄ちゃんらしくないっしょ!)

 

(そうです!上里さんならまだいけます!)

 

(ウチを助けてくれた時みたいに、あの女の子を救うんやなかったんどすか?)

 

(そうだぜ大将!諦めるのはまだ早え!)

 

(私達も力を貸します、だから立ち上がって下さい上里君)

 

彼女達の激励の言葉を聞き上里は身体に力が溢れるのがはっきりと分かった。それは不思議な力による身体の回復ではない。仲間からの応援を聞き根性で身体を動かせようとしているのだ

 

(私達がついてる!だから負けるなお兄ちゃん!)

 

(一度くらい大きな過ちを犯したからってここで終わる貴方じゃないでしょう?)

 

(目の前に助けたい女の子がいるから上里はんは持てる力全て出し切って助けるんやろ?)

 

(だから立ち上がって下さい、上里さん(ヒーロー)

 

(あのガキを救えるのはあんただけなんだぜ大将!)

 

ゆっくりと、確実に上里は起き上がっていく、それを見たクリフォパズル545の目が丸くなる

 

(負けちゃダメだよ上里君!)

 

(貴方ならいけますわ上里様!)

 

(頑張って上里さん!)

 

(あの子を助けてあげて!)

 

去鳴達だけではない、上里に自らの意思で彼の後をついてきた少女達の声が聞こえる。もう彼は一人ではない、彼は、百人を超える少女達の思いを背負って目の前の邪悪に立ち向かう

 

(((だから立ち上がれ!上里翔流(ヒーロー)!!)))

 

「……分かってるさ」

 

上里が立った、それを見て目を見開くオティヌス達。だがパトリシア(クリフォパズル545)は嘲笑うのみ

 

『「そんなに苦しんで死にたいんですかぁ?ならさっさと殺してあげますよ…ひひ」』

 

そう言うとパトリシアは水銀の槍を創造しそれを上里へと放つ。その槍に貫かれ上里は死ぬとパトリシアは予想していた…だが

 

内的御供(・・・・)、我は海神マナナンに武具捧げ彼の恩恵求める者なり」

 

『「……はい?」』

 

上里は水銀の槍を自らの拳で殴り破壊した。右手の理想送りではなく左手のなんの変哲もない拳で、である。目を丸くするパトリシアをよそ目に上里は懐から十円玉を取り出し口を開く

 

「コックリさん、コックリさん、おいでください…招来 東照大権現」

 

コックリさんを元とした術式を行使し東照大権現を呼び出し、腹部の傷を癒し始める…それを見たクリフォパズル545は驚愕を露わにする

 

『「そ、それは貴方の仲間の…!?ど、どう言う事です!?貴方は魔術は使えない筈!?一体全体どういう!?」』

 

「なに、簡単な事さ」

 

何故仲間の魔術が使えるのかと狼狽えるクリフォパズル545、そんな彼女に上里はそっけなく答えた

 

ぼくが与えた能力(・・・・・・・・)を一時的に皆に貸して……いや返して貰ってる(・・・・・・・)だけさ」

 

『「……はい?」』

 

神里翔流、神の里(神の国)を翔ける者にして流転する者。因果すら捻じ曲げ自らの側にいる者達の因果を歪め異常な力を与える(原石)。それこそが宛那達が得た力の正体である

 

「ぼくが与えた力なら逆に返してもらう事も出来るだろ?」

 

『「い、ひひ…り、理解できませんよ」』

 

だがクリフォパズル545は早く殺さねば不味いと判断したのか水銀の槍を無数に放つ。それに対し上里は宛那の闇の鎌を形成し飛来する槍を悉く破壊する

 

「ミメティックプレデター」

 

府蘭の恐竜に似た姿の怪物達が数体出現し、上里はその内の一体の背に乗りパトリシアへ向けて怪物達を走らせる。地を唸らせながら獰猛な顎を開き迫り来る怪物達にパトリシアは空間転移でそのまま逃げようとするが、ガシッ、と何かに足を掴まれる

 

『「なっ!?」』

 

彼女を掴んでいたのはアスファルトを突き破って生え出した植物の蔦だった。暮亜の持つ原石の力を使いパトリシアを植物の蔦で拘束する

 

(ま、不味いですぅ。これじゃあ転移しても蔦で動けない!)

 

彼女の空間操作は場所と場所との移動だけで自分だけを移動させる事は不可能。つまり拘束されたまま空間転移しても拘束されたままだという事だ

 

(し、しかしこのお嬢さんに憑依している限りは手出し出来ない筈…!理想送りをすればこのお嬢さんも新天地に追放されますしそれは避けたいですもんねぇヒーローさん…けひひ)

 

パトリシアに憑依している限り、理想送りが使われる事はないとクリフォパズル545は高を括っていた…だがその慢心こそが命取りになるとは彼女は思わなかった

 

『「きひひ!アポピスを討ち滅ぼす刃よ、言霊にて刃を研ぎ澄まし太陽を飲み込まんとする蛇を幾重に斬り裂け!その刃の数は十!」』

 

その言葉と共に巨大な銀色の刃が十も現れ、上里を斬り裂こうと迫る。どれかに理想送りで対抗すれば残りの九の刃に切断される…そうパトリシアは笑みを浮かべるが…虚空より飛来した十の矢がその言霊の刃を破壊した

 

『「な……!?弩!?」』

 

「おいおい…私の事を忘れるなよ」

 

『「くっ…こうなれば蔦に拘束されたまま別の場所に転移を…」』

 

してやったとオティヌスが嘲笑を込めた笑みをクリフォパズル545に向ける。クリフォパズル545はヘルメスの空間転移で怪物達から逃れようとするも…

 

「大地の繁栄は転じて腐敗と化す。いでよ、広がれ、この一つ。全てを腐らせその内より産声を上げる悪魔の王よ。すなわち『蠅の王』。我が前に立つ不遜の輩へ正当なる粛正を」

 

『「!?は、発動しない!?これは…蝿の王による魔術消去(マジックキャンセラー)!?」』

 

「ハッ、目には目を、悪魔には悪魔を。同じ種族に一杯食わされるのはどんな気分だ?」

 

蝿の王による術式の消去を行ったメイザースは悪魔には悪魔だと笑う。ぐぬぬと歯ぎしりをしながら錬金術を行使しようとするが

 

「……やれやれ、こんな事はしたくなかったのだがね…まあ、まあロボットに自爆は付き物だから致し方ないな」

 

『「!?機械よ、その場で停止せよ!」』

 

脳幹から切り離されたA.A.A.がブースターから火を噴き出しながらパトリシアへと飛んでいく。自爆はロボットの定番だと笑う脳幹の自らの武器を捨てる一撃にパトリシアは言霊にて迎撃する

 

「今だ上里翔流!脳幹が与えたチャンスを不意にするな!」

 

「……ああ」

 

オティヌスのその叫びに上里は力強く頷いた、怪物達が唸りを上げてパトリシアへと近づく。迎撃とばかりにパトリシアが怪物達の足元の地面を水銀に変え、その水銀の杭で串刺しにして倒すも上里は怪物の背から飛び降り地面へと着地、その右手をパトリシアへと伸ばす

 

(ふ、フェイクですよ。理想送りを使ったら私ごとパトリシア(宿主)が消えるんですから使うなんて事はしませんよね…?そうに決まってます。あれは脅し…早くこの宿主から憑依を解いて逃げないとお前も道連れだぞ。みたいな脅しですよ。ええ、きっとそうに決まってます)

 

クリフォパズル545は右手は単なる脅しだと自分を納得させるように心の中で呟く、だが右手は確実にパトリシアの体へと伸びている

 

(……脅し、ですよね?まさか本当に…いやいや正義のヒーローがそんな真似…いやでも、まさか本当に…いやいや!ギリギリまで近づけようて魂胆でしょうきっと!)

 

段々近ずく右手を見てクリフォパズル545は焦るが単なる脅し、単なる脅しと必死に何度も心の中で呟く…だが右手は確実にパトリシアの体に触れる距離まで迫る

 

(………脅し、脅し、脅し、脅し…脅しに決まってますよ!これは絶対に脅……)

 

そう自分を納得させる様に心の中で必死に叫ぶクリフォパズル545…上里の右手はパトリシアの体に触れた

 

『「……………ぇ?」』

 

「………………新たな天地を望むか(・・・・・・・・・)

 

その一言が能力解放(理想送り)のトリガーだった、パトリシアの古代エジプトの神官服を模した礼装による服がその右手に吸い込まれ始めた。右手を基点として発生したブラックホール染みたその吸引力はパトリシアに憑依していたクリフォパズル545ですら掃除機に吸い取られるゴミの様にその右手に吸い寄せられる

 

『「きひ!??!?!?!!!?!?ま、まさか本当に発動するなんて!?本気でこのお嬢さんごと新天地に送る気ですか…!?」』

 

「その点については心配いらないさ、何故なら彼女は新天地に追放されない(・・・・・・・・・・)からな」

 

『…………はぃ?』

 

クリフォパズル545が上里を非難する様にパトリシアがどうなってもいいのかと叫ぶ、だが上里は至って冷静にパトリシアは消滅しないと告げる。クリフォパズル545はそのセリフを聞いて一瞬上里が言った意味を理解できず…そして即座に理解した

 

『……ひひ?お嬢さんとの憑依が解けてる?わ、私の体とトート=ヘルメスの霊装だけがその右手に吸い込まれている(・・・・・・・・)!?』

 

彼女の言う通り、トート=ヘルメスとクリフォパズル545のみがその右手に吸い込まれているのだ。一方でパトリシアの肉体は吸い込まれる様子がない…霊装と悪魔を吸い込んでいる右手が触れているのにも関わらずだ…それを見てクリフォパズル545は気づいた

 

(そ、そんな…吸い込む対象を…新天地へと追放する対象を選別している(・・・・・・)!?そんな機能は理想送りにはなかった筈…ま、まさか理想送りに追放する人物の選択という新たな力が……!?)

 

「これで終わりだクリフォパズル545」

 

クリフォパズル545の思考を遮るかの様に上里が口を開いた

 

「彼女から、パトリシアの身体から出て行け」

 

『い、いひひ……!ま、まさかこの私が…』

 

その断末魔を最後に、パトリシアに憑依していた悪魔(クリフォパズル545)神威混淆(トート=ヘルメス)ごと上里の理想送り(ワールドリジェクター)により新天地へと消え去ったのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




上里の名前の真名はほぼ強引です。獲冴達が異常な能力(魔術・原石)を手に入れたのは理想送りの影響でも魔神の影響でもなく、上里の真名だと自分は睨んでます、そして理想送りが願いの積集体ならば神里翔流は原石。これは上条さんの幻想殺しと神浄討魔みたいな感じですね

クリフォパズル545の個人的なCVは高橋李依さんですかね。このすばのめぐみんやリゼロのエミリア、異世界チート魔術師の吾妻凛の中の人です。クリフォパズル545は高木さんみたいなからかい系女子てイメージなので…

さて無事ヒーローに返り咲き、パトリシアを助け出した上里。次回で理想送り編は終了。面接落ちたせいでモチベーションが低下し続きを書くのが遅れるかもしれませんが早めに書きます

次回もお楽しみに!


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叛逆へのカウントダウン

理想送り編最終回、等々あの二人が本格参戦。ギャグと思わせてシリアスな怒涛の展開です

何故かお気に入りが増えてる…これは上里が人気なのかパトリシアちゃんが人気なのか、クリフォパズル545が人気なのか…どれだか分かんねえな

今回はパロディの大乱闘スマッシュブラザーズ


パトリシアはまるで長い夢から覚める様にゆっくりと眼を開く。最初に映ったのは自分の顔を見下ろしている男の顔、最初は寝ぼけ眼のせいでぼんやりとして誰か分からなかったが目がはっきりしてくるとそれが誰かパトリシアは気づいた

 

「…………上里さん?」

 

「漸く目が覚めたみたいだな」

 

寝ぼけた声でパトリシアが彼の名前を言うと上里は優しげな顔でパトリシアに笑いかけた。そしてパトリシアは気づいた、頭部に生暖かい感触があるのを…そして上里は自分の頭を見つめている…つまり膝枕である

 

「て。ひ、膝枕ぁ!?ななな何をやってるんですか上里さん!?」

 

「何って……膝枕だが?」

 

「それは分かります!私が言いたいのはそうじゃなくてぇ!何で私を膝枕してるのかて事ですぅ!」

 

パトリシアが顔を真っ赤にして上里に喚き立てるが上里は顔色を崩さない

 

「後、風邪をひかない様にぼくの制服をシーツ代わりにかけてあるぞ」

 

「あ、お気遣いどうも…じゃなくて!膝枕の理由を私は聞きたいんです!」

 

話をナチュナルに逸らす上里にツッコミを入れるパトリシア

 

「クリフォパズル545を倒した後、きみが目覚めるまでそっとしておこうと思って膝枕してた」

 

「ああそう言う事ですか……て、それでも膝枕なのは納得できません!」

 

「ぼくの去鳴(義妹)は昼寝する時はいつもこうしてたんだが」

 

「それは貴方の妹さんがおかしいだけです!」

 

パトリシアの怒涛のツッコミが炸裂、それを聞いても上里は無表情。苦笑するオティヌス達

 

「で、何処にも異常はないか?身体の何処かがおかしかったり、変な感じがする所はないか?悪魔に取り憑かれた悪影響とかはなさそうか?」

 

「え?……あ、大丈夫です」

 

上里にそう言われてパトリシアは漸く思い出した、自分はクリフォパズル545と名乗る人外染みた少女に取り憑かれたという事を。その間の記憶が一切パトリシアはないが悪い夢を見ていた様な心地の悪さはまだ胸の中に残っていた

 

「上里さん……私が眠ってる間に何があったんですか?」

 

「簡単に説明するなら悪魔に取り憑かれたきみがぼくの命を狙ってきた、それをオティヌス達が止めようとして返り討ち(笑)。ぼくの右手で逆転なう。だな」

 

「「おい、お前ちょっと来いよ」」

 

上里が砕けた口調でそう軽く説明する、その説明に納得のいかないオティヌスとメイザースがこっちに来いと言う

 

「本当の事だろう?きみ達はボロクソに負けた。ぼくは勝った。何も間違ってない」

 

「よし、その喧嘩15円で買ってやる。バレーボール決定だクソ野郎」

 

「上等だ小僧。上里翔流の三枚おろしにしてウェスコットに食わしてやる」

 

「こらこら、やめろ二人共」

 

上里がふんす、とドヤ顔でオティヌスとメイザースを挑発。二人はやろう、ぶっころしてやる、と青筋を立てて憤慨し主神の槍と象徴武器片手に上里にO☆HA☆NA☆Slしようとした所を脳幹がA.A.A.に装備しておいたハリセンで止める

 

「こいよオティヌスにメイザース!武器なんか捨ててかかって来い!」

 

「野郎、ぶっ殺してやぁぁる!!!」

 

「野郎オブクラッシャー!」

 

「コマンド○好きだね君達」

 

「の、脳幹さん。それじゃあ伏字でも隠せてませんよ?」

 

某映画の如く顔芸を披露しながら主神の槍と象徴武器をかなぐり捨てて上里に襲いかかるオティヌスとメイザース。それを見て上里が右手を握りしめながら殴りかかるその一瞬

 

「喧嘩、よくない」

 

「「「デネブ!!?」」」

 

「えぇぇぇぇ!!?筋肉ムキムキの頭に袋を被ったおじさんにラリアットされた!?」

 

全裸に近い格好で顔部分に「罪」と書かれた袋を被った変態が上里にラリアットを放つ。一瞬で撃破され地面に倒れる上里達を見てその怪人はこう言った

 

「喧嘩、ダメ絶対。お兄さんとの約束だぞ!」

 

((君/貴方は誰だ……?))

 

そう言ってその場から立ち去っていく変態。それを見てパトリシアと脳幹は何だ今のは……と心の中でツッコんだ

 

「痛てて…首が曲がったかと思ったよ」

 

「大丈夫かい?まあそれは兎も角、オティヌス達を挑発する様な事はやめなさい」

 

「はいはい、反省します、反省しました」

 

「それ絶対に反省してない人が言うセリフだね」

 

なおオティヌスとメイザースは未だに死んでいる。首があらぬ方向に曲がっているが…まあ魔神と原典だから死なへん死なへん

 

「本当に大丈夫なんですか?」

 

「ああ、これくらい何とも………て、パトリシア。ぼくの制服をちゃんとかけておいた方がいいぞ」

 

「へ?」

 

パトリシアは上里を心配してシーツ代わりにかけていた制服をどけて上里に近づく、だがそれを見て上里は決してパトリシアの方を見ようともせず制服をかけていなさいと告げる。それを聞いたパトリシアはどう言う意味かと首を傾げ……そして妙に肌寒いのに気づく。何故かと頭を下げて自分の身体を見ると…服がなかった(・・・・・・)

 

「……………はい?」

 

パトリシアは一切の服を着ていなかった。つまり生まれたままの姿である。しかも下着も着ていなかった。一瞬パトリシアは脳の思考が追いつかず硬直し…顔を茹でタコの様に真っ赤にする

 

「きゃああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」

 

「………まあ気持ちは分かるよ」

 

神威混淆は解除、または破壊されると使用者が着ていた古代エジプト風の服は消滅する。それ以前に使用者が着衣していた衣服も使用と同時に消えてしまうので…こうなる事は当然だった。だから上里は制服を彼女の身体にかけていたんだ

 

「か、上里さんの変態!この視姦魔!痴漢!変質者!幼女趣味!ロリコン!異常者!ペドフェリア!セロリ!スケベ!一方通報!エッチ!変態性欲!異常性欲!アクセロリータ!ケダモノ!見損ないましたこのペドフェリア!」

 

「解せぬ」

 

パトリシアは思いつく限りの罵言を上里に吐き捨てる。上里はそれを聞いて喜ぶ様な変態ではないので軽くショックを受ける

 

「やーい、上里はロリコン。セロリセロリ〜!お前の義妹ブラコン〜!」

 

「ロリコン菌が感染るからこっち来んな。はいバリアーバリアー。エンガチョー」

 

「お前らだけは絶対に許さない」

 

「はいはい、君達落ち着こうね」

 

「「「まさかのドリル!?」」」

 

いつの間にか復活したオティヌスとメイザースが上里を挑発、上里は野郎オブクラッシャー!と二人を殴りかかろうとし三人仲良くドリルでぶん殴られた

 

「ふん!」

 

「ぱ、パトリシアさん?それは故意であってぼくはやりたくてやったんじゃなくて…」

 

「へー、わざとじゃないなら幼女の生まれたままの姿を見てもいいんですねー私知りませんでしたー」

 

「うぐっ」

 

そっぽを向くパトリシアに何とか弁解する上里、だがパトリシアは頬を膨らませて話を聞こうとしない

 

「い、言っておくがぼくは幼女趣味じゃ…」

 

「やーいロリコンロリコン。一方通報(アクセロリータ)のセロリやぁい」

 

「オティヌス、お前絶対ぶっ殺す」

 

「後はこうして……よし、上里が裸のパトリシア(幼女)を襲っている様に見える加工した画像をミサカネットワークのみさったーに投稿してっと…」

 

「やめてください、それ社会的にぼくが死ぬやつだから」

 

メイザースがミサカネットワークに加工した画像を送ろうとし、上里が全力で土下座してそれを阻止しようとする

 

「あ、ごめーん。間違えて押しちゃった。てへぺろ☆」

 

「私もメイザースから貰ったお前の画像を盟友達に一斉送信しちゃった。てへ☆」

 

「よし、殺す。もうお前ら絶対に殺す。お前らが泣いてもぼくはきみ達を殴るのをやめない」

 

てへぺろ☆と少女(何億歳)と変な服着たオッさんが舌を出す。可愛いと言うより腹が立ち殺意が湧いたので上里は近くに落ちていた鉄パイプを拾い握りしめる

 

「スクラップの時間だオティヌスくゥゥゥン!メイザースくゥゥゥン!」

 

「上ァァァ里くゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!」

 

「くかきけこかかきくけききこかかきくここくけけけこきくかくけけこかくけきかこけききくくくききかきくこくくけくかきくこけくけくきくきくきこきかかか――――――!!」

 

「あーもう滅茶苦茶だな」

 

脳幹はそう呟きながら右脚で頭に触れた

 

「……くすっ」

 

そんな上里達を見てパトリシアがくすりと笑った

 

「?何がおかしいんだ?」

 

「いえ…皆さんとっても仲良いんだな、て思って」

 

『何処をどう見たら仲良く見えるんだ?』

 

「そう言うところですよ、そう言うところ」

 

パトリシアが笑いながら仲良いなと言うと脳幹を除く全員が何処がだよと突っ込む。そんな三人を見てそう言うところだとパトリシアはくすくす笑う

 

「………まあ機嫌が直ってくれたなよしとするか」

 

「あ、裸を見たのは許してませんよ。ええ、一生許しません」

 

「……デスヨネー」

 

「「ザマァ」」

 

「やっぱりお前ら新天地に送るわ」

 

これで機嫌も治るだろうと上里は笑いかけるがパトリシアは冷めた目でそれはないと無情にも告げる。オティヌスとメイザースがそれを聞いて嘲笑い上里は腕をポキポキ鳴らす

 

「でも本当に最初の頃とは見違える程元気になりましたね上里さん」

 

「ファ○クユー!」

 

「「ファ○クユー!」」

 

「……元気になり過ぎなんじゃないかな?」

 

上里は青筋を立てながらオティヌスとメイザースに向け両手の中指を立てて挑発し、対するオティヌスとメイザースも同じく青筋を立てながら中指を立てて挑発する

 

「上等だよこの痴女に服のセンス0オッさん」

 

「誰が痴女だ。さてはアンチだなオメー」

 

「粋がるなよ小僧。お前なんかな俺が本気出せば瞬殺だぞ?さてはアンチだなオメー」

 

「ムカついた、竹○房を新天地に送るついでにお前らも新天地に送ってやる」

 

そして三人の仁義なき闘いの火蓋が切られた

 

「ッゾオラ――――ン‼ア"ォ"ア"ー!!」

 

「喰らえ!チェスト竹○房ォ"ーイ"!!…あ、誤チェストでごわす」

 

「竹○房ゥァア"ーッ!」

 

上里はお腹が空きすぎてトラックに乗り込み竹○房に突撃する。メイザースが巨大化し竹○房を殴って破壊する。オティヌスは竹○房を弩で破壊したと思ったらそれは竹○房ではなくKADK〇AWAだった。だがオティヌスは全く悪びれない…と、もうやりたい放題だった

 

「………(プチィ)」

 

(あ、脳幹さんがブチ切れた)

 

その破壊行為に等々脳幹がブチ切れてしまった、脳幹は死んだ魚の眼で暴れまわる上里達達に近づいていき……そして

 

 

「反省したかね?」

 

「「「はい」」」

 

全身真っ黒焦げになり頭がアフロヘアーになった上里達が正座で地面に座っていた。脳幹は別の生き物を見るような眼で三人を見つめていた

 

「……このゴールデンリトリバー怒ると怖い」

 

「だろ?脳幹は怒らせると怖いんだ」

 

「普段温厚な奴ほどキレると怖いからな」

 

上里達はもう二度と脳幹を怒らせない事を心の中で誓った

 

「で、反省しましたか変態の上里さん」

 

「あのもう反省したんでその呼び方やめてもらっていいっすか?」

 

「嫌です、一生このネタでゆすり続けるつもりですから」

 

「……さいですか」

 

ニッコリ笑顔で死刑判決を下すパトリシア、上里は人生オワッタと白眼を剥く

 

「……でも、私を助けてくれたのは本当に感謝してますよ上里さん」

 

「…………別に感謝される事じゃない。ただぼくがやりたい事をやった。その過程できみを助けた…それだけの事さ」

 

パトリシアは笑ったままクリフォパズル545から自分を助けてくれてありがとうと上里に告げる。それを聞いて上里は感謝される程の事ではないと微笑む

 

「あ、でも裸見た事は絶対に許しませんよ」

 

「……もういい加減許してくれないか?」

 

「無理です、乙女の裸を見て許されるとでも思ってるんですか変態(ヒーロー)

 

「……凄く嬉しくない呼ばれ方だ」

 

だが例え命の恩人でも裸を見られた事は絶対に許さない、パトリシアは笑っていたが目は1ミリも笑っていなかった

 

「おーい!無事かパトリシア!」

 

「あ、お姉さんだ」

 

何処からパトリシアを呼ぶ声が聞こえた、上里が振り向くと猛ダッシュでパトリシアと同じ金髪碧眼の少女と黒いスーツを着た男性が走っている姿が見えた

 

「……誰だ?」

 

「あいつはレイヴィニア=バードウェイ。パトリシアの姉で私達と同じ学園都市統括理事会のメンバーの一人だ。で、横にいるのがマークだ」

 

レイヴィニアとマークの事を知らない上里にオティヌスが軽く説明する

 

「ミナからパトリシアが神威混淆に乗っ取られ暴れているという連絡を受けて急いで来たぞ!で、パトリシアは無事……なの……か?」

 

「………ぱ、パトリシア嬢…そ、その格好は(・・・・・)…?」

 

「はい?格好……?お姉さんにマークさんも何の事を言って…………ぁ?」

 

レイヴィニアとマークがパトリシアの格好を見て硬直した、何故かとパトリシアは首を傾げるが即座に理解した…自分が裸の上に上里のだぼだぼの制服だけしか着ていないからだ

 

「………あ〜、こりゃ傍から見たら事後だな」

 

見方によれば男女の営みの後にも見えなくはない格好をパトリシアがしていたのだ。暫く石像の様に硬直していたレイヴィニアとマークだったがレイヴィニアは何を思ったのかふっと笑みを浮かべマークに右手を伸ばす

 

「おいマーク、拳銃(チャカ)を寄越せ」

 

「はい」

 

「いやそれ拳銃じゃなくてバズーカ砲!?」

 

マークがバズーカ砲をレイヴィニアに手渡す、レイヴィニアは笑みを浮かべながら弾が入っているか確認。上里へと狙いを定める

 

「ま、待ってくれ!ぼくはきみの妹に手を出していな…」

 

「おいレイヴィニア、そいつは幼女に手を出したロリコンだ。撃ち殺せ」

 

「おいオティヌス、キサマァ!!」

 

「ボス、ロリコンなど社会のゴミです。ゴミ掃除してしまいましょう」

 

「おい、あんたもロリコン臭がするぞ!あんたの方がロリコンだろ!」

 

「おいクソガキ、私の何処がロリコンだ。ボスこいつ殺しましょう」

 

上里は勘違いだと弁解しようとするがオティヌスが指を指して「こいつロリコンです」、と嘘の情報を告げ上里が怒るがレイヴィニアとマークは確実に上里をロリコン認定している

 

「私の妹に手を出した事は万死に値する……ここで死にやがれクソ野郎が」

 

「だから違うって!話聞けよドSつるぺた幼女!」

 

「はい爆死決定」

 

「地雷踏んだぁぁぁぁぁ!!?」

 

話を聞かないレイヴィニアに上里が彼女が一番気にしている事を叫び、レイヴィニアは上里を殺す事を決定した

 

「遺言はないな、あばよロリコン」

 

「こんなアホみたいな終わり方あるの!?」

 

「お、お姉さん!私の話を聞い……!」

 

レイヴィニアは引き金を引いた、バズーカ砲から対戦車ロケット弾を発射。ロケット弾が上里に命中し大爆発が起こった

 

「うわあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

「か、上里さぁぁぁぁん!?」

 

某電気ネズミに負ける悪の組織の下っ端の様に吹き飛ばされていく上里、パトリシアが叫ぶ声は彼には届かず彼は夜空の星になった

 

「た〜ま〜や〜」

 

「へっ!きたねえ花火だ」

 

「……哀れだね」

 

オティヌスは花火を見る時の掛け声を、メイザースは某エリート王子のセリフを言う。脳幹は哀れんだ目で飛んで行った上里を見ていた

 

 

「うぅ……服がボロボロだよ」

 

上里はボロボロになった服で路地裏を歩いていた…ギャグ補正という能力で死ぬ事はなかった様だ

 

「………で、ぼくの後ろにいるきみ達(・・・)は誰だ?」

 

上里はそう言ってその場に立ち止まる、背後にいるであろう存在に問いかける様に…

 

「おお、気づいていたか」

 

「……その声、あの時の……あんたが魔神 僧正て奴か?」

 

上里が後ろを振り向き彼の目に映ったのは木乃伊の様に痩せこけた細い身体に枯れた古木を連想させる固まってい皺、そして紫の法衣を来た杖を…いな剣を杖代わりにしている老人と長い銀髪に目下に涙型のタトゥー、褐色の肌に全身を包帯で巻いただけの痴女がそこに立っていた

 

「いかにも儂が僧正じゃ」

 

「……何故ここに魔神がいるのだとか、色々言いたい事があるけど…一つだけ聞かせてくれ」

 

「何かしら?」

 

僧正が肯定する様に首を頷く、上里はそれを確認すると一つだけ質問したいと告げネフテュスが笑みを浮かべる

 

「何故ぼくを助けた?」

 

「そうじゃのぉ…儂ら魔神の被害者であるお主を見殺しにするのが嫌じゃったのと…お主が儂ら魔神に対する理想送り(特攻)を持っておるからじゃな」

 

「………何?」

 

何故自分を助けたのかと尋ねると僧正は笑みを浮かべる、上里を助けたのは魔神に対する特攻…理想送りがあるからだと告げる

 

「儂ら魔神は隠世と呼ばれる位相に普段は潜んでおる…そこで幻想殺しが我々の救いになる事を望んでいた……だがイレギュラー…垣根帝督の所為で幻想殺しの方向性が少し歪んでのぉ」

 

「それで危機感を覚えた私達魔神達は幻想殺しに代わる救済を望んだ。それをコロンゾンが利用し願いの積集体…それが貴方の右手」

 

「……それとぼくがどう関係ある?」

 

「いやお主に直接的な関わりは一切ない(・・・・・・・・・・・・・・・)。これは儂とネフテュスからの頼みじゃよ」

 

「……どういう事だ?」

 

上里が首を傾げると僧正は少し間を空けてから口を開く

 

「………儂とネフテュス以外の魔神はこの世界に見切りがついたのじゃ。幻想殺し…上条当麻は役に立たない。なら一旦この世界を滅ぼして(・・・・・・・・・)新しい幻想殺しの誕生を待とう。そう魔神達は決めたのじゃ」

 

「………は?」

 

「魔神達は上条当麻を、そして垣根帝督をこの世界ごと抹消して次の世界で自分達の救いを作ろうとしているの」

 

魔神達は上条では自分達の救いにならないと判断した、だから世界ごと上条当麻を、ひいてはイレギュラーの原因となった垣根帝督を滅ぼそうとしているのだ。それを聞いた上里は思わず固まってしまう

 

「世界を滅ぼす?………巫山戯てる」

 

「その通りじゃ、儂らは判断したが誰も聞く耳を持たず…儂とネフテュスは真の「グレムリン」から離脱を決意しゾンビが生み出した術式「鏡合わせの分割」で弱体化し世界を放浪しておった」

 

「この世界を守る為には魔神達を新天地へと送るしか他ないの…だから、力を貸してくれないかしら」

 

「頼む……この様な歪な世界に、アレイスターの娘の命を自らの我儘で奪った一人である儂が言うのもあれじゃが…儂は償いをしたい。その為にはこの世界を消す訳にはいかぬ…だから手を貸してくれ」

 

僧正とネフテュスが頭を下げる、上里はそんな二人を見つめていた

 

「………もう一つだけ質問いいか?」

 

「……なんじゃ?」

 

「何故そこまでしてこの世界を守りたい?」

 

上里がそう質問すると僧正は一瞬表情を固め…苦笑した

 

「気付かされたのじゃよ…あのイレギュラーに、世界の無限性を………な。儂ら魔神なんぞ居なくても世界は回っていける…その事に儂は気づいた」

 

「………そうか」

 

上里は目を瞑る、脳裏の中に自分の仲間である少女達との思い出が流れる…そして目を開け自分の右手を一瞥する

 

「ぼくはこの右手が与えられた意味が分からなかった…何故ぼくを選んだのか。だけど漸くその答えが見つかった気がする」

 

上里の頭に浮かんだのは今日出会い、たった今助けたばかりの金髪碧眼の少女…彼女の優しげな笑みを思い出し上里は頬を緩ます

 

「なんて事はない、誰かを助ける為にこの右手が与えられたんだ。この答えが違っていてもいい。ぼくはそう信じてるから」

 

理由なんてそれだけで充分だと上里は頷く、そして僧正とネフテュスに目線を移す

 

「……ぼくも協力するよ」

 

「…………感謝する」

 

僧正は笑った、ネフテュスも笑った

 

「…だがぼくら三人だけで魔神を一掃出来るのか?いくらあんた達が強くても敵の魔神の方が数が多いんだろ?いくらぼくの右手の一撃で倒せても魔神の攻撃に1発当たればゲームオーバーだぞ」

 

「その点の心配はいらないわよ。なんでこんな重要な話を学園都市でしたと思ってるの(・・・・・・・・・・・・・)?」

 

「……?」

 

だが上里は自分達だけで魔神達を倒せるのかと尋ねる、するとネフテュスはだからこの話を学園都市でしたのだと告げる。意味がわからず首を傾げる上里を他所に僧正は頭上を見上げ空に向かって…いな空気中に散布されているナノデバイス(・・・・・・)に笑いかける

 

「聞いておるのじゃろアレイスター?今言った話の通り儂らは魔神を打倒しようと考えている…そこでお主の力を、学園都市の力を借りたい。厚かましいのは重々承知しておる…頼む。力を貸してくれ」

 

 

「………………………」

 

その話をアレイスターは滞空回線(アンダーライン)で聞いていた。魔神と手を組む、少し前までのアレイスターなら考えられない事だ。寧ろ魔神が現れればすぐ様脳幹を向かわし対魔術式駆動鎧で駆除しただろう

 

「……ふっ」

 

だが今の彼は違う、脳裏に自分の親友が笑っている顔を思い出しふっと笑みを浮かべた

 

「願ってもない話だ、調子に乗った魔神達にお灸を据えてやるか」

 

アレイスターは僧正達と手を結ぶ事に決めた、親友なら垣根ならきっと同じ事をするだろうと頭の片隅で思いながら

 

「だが事が全て片付いたら次はお前達の番だぞ僧正にネフテュス。思い切り拳骨食らわしてやるから覚悟しとけ」

 

学園都市と魔神二柱、理想送りの結託。これにより世界は大きく動き出した

 

 

 

『う、うう……ひひ。何とか逃げ延びましたねぇ。いひひ』

 

クリフォパズル545は生き延びていた、理想送りにより新天地に送られる前に咄嗟にパトリシアから分離し、彼女の能力である実体化し人間の前に姿を現す際に「出産」の儀礼・魔術的記号を得る必要があるのを逆手に取り、非実体化し「流産」の儀礼・魔術的記号を得る事で学園都市の何処かにある路地裏のゴミ箱の中へと移動する事で理想送りから逃げられたのだ

 

『いひひ。とは言え私の命運もこれまでですねぇ…任務が失敗したと知られればコロンゾン様は私を消滅させるでしょうし…そもそも神威混淆が全滅した今、私の利用価値はないですからね〜ひひ』

 

例え生き延びたとて自分に明日はないと自嘲するクリフォパズル545。コロンゾンにとって自分は計画の駒の一つでしかない…クリフォパズル545は大人しく自らの運命を受け入れ死を待つ事にした…だが

 

「いや案外諦めるのはまだ早いかもよ?」

 

『ひひひ……?誰ですぅ?』

 

カツカツ、と何者かが歩いてくる音が聞こえクリフォパズル545は音が聞こえる方へ振り返る。そこに立っていたのはコットンキャンディーソーダをストローで飲んでいる垣根だった

 

「探したぜクリフォパズル545。いやぁ消滅したんじゃないかとヒヤヒヤしたぜ」

 

『垣根、帝督……?何故ここに?私に止めでも刺しに来たんですか?』

 

「いや寧ろその逆だよ、お前に死んでもらうと困るんだ」

 

『?』

 

自分を殺しに来たのかとクリフォパズル545は笑みを浮かべながら尋ねる、だが垣根は首を振って死んでもらっては困ると言い困惑するクリフォパズル545…そんな彼女に垣根は笑みを浮かべる

 

「なあクリフォパズル545、お前俺と潤子ちゃんの魔術アドバイザーになってくんない?」

 

『…………………………………はいぃ?』

 

大悪魔の掌の上で踊らされるのもここまでだ、ここからは誰も先が見えない一寸先の闇。悪魔と神達への叛逆の時は来た、ここから彼等の快進撃が始まる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




アレイスターは魔神 僧正とネフテュス、上里と同盟を結んだ。ていとくんはクリフォパズル545をアドバイザーにした。パトリシアちゃんも結構Sぽかった。オティヌス達と上里が交わる時、ギャグが生まれる…以上今回の話のまとめでした

これにて理想送り編は終幕、新章『魔神』編に移りたいと思っています。そして毎度恒例の次回予告風な何かです


「案外学園都市の超能力者(レベル5)の第一位てのも大したことなかったなぁ」
「魔神」魔術を極め神の座へと辿り着いた者ーーーーゾンビ

「教えてやるよ魔神、これが俺の…人間様の力だぁぁぁぁぁ!!」
未元物質(ダークマター)」超能力者達を統べる最強の能力者ーーーー垣根帝督

「わたくしは諦めません」
天使崇拝(アストラルバディ)」不屈の意志を持つ者ーーーー帆風潤子

「あ、ああ………あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!」
「学園都市統括理事長」魔神に最も近いた男ーーーーアレイスター=クロウリー

次回もお楽しみに!


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第九章 魔神 編
大抵の男子の初チョコは母親


今回はギャグ回です、内容はバレンタイン、時系列は滅茶苦茶。本編と関わりは一切なし。そして今回はまさかのあのキャラがお菓子作りの先生に

因みに自分は義理チョコなら女子に貰った事があります(親族ではない)。貰った時は嬉しかったです。味?苦かったです、でも嬉しかった


【簡単☆サンドリヨンのお菓子教室♪】

 

誰でも簡単に美味しいお菓子が作れるように皆さんにお菓子作りの授業を行うよ♪彼氏の為に、好きな人に、いつもお世話になっている人に、皆さんの大事な人に美味しいお菓子を作ってあげませんか?それにもう時期バレンタインの季節♪彼氏さんや好きな人にチョコレートを送ってもいいかもしれません

 

作るお菓子 シフォンケーキとチョコレート

 

場所 第十二学区の高崎大学の調理室

 

時間 10時から12時まで

 

用意 特にありません

 

お金 無料

 

講師 サンドリヨン

 

 

そんなチラシを持って帆風は第十二学区にある高崎大学にやって来た。無論、垣根にチョコレートをプレゼントする為である。なおシフォンケーキは自分が食べる用である

 

「ここですわね……あら?御坂さんに女王達もいますわ」

 

調理室に入ると知らない女性達の他に帆風の見知ったメンバーがいた、美琴に食蜂、麦野、アリサ、エステル、猟虎、インデックス…顔見知りが集まっていた

 

「あ、帆風先輩も来てたんですか?」

 

「ええ、女王達も来てらっしゃったんですね」

 

「麦野さん達もいるし凄い偶然力ねぇ」

 

食蜂と美琴の近くの席に座り、食蜂は知人達の方を向く

 

「シャケをチョコレートに入れたら美味しくなるかしら?」

 

「あ、あはは…絶対やめた方がいいですよ」

 

「日頃のお礼に先生や打ち止め達にシフォンケーキとチョコレートを作ってプレゼントするぞ!」

 

「……ほっ、見知った方々がいて助かりましたわ」

 

「私の手作りを普段お世話になってる人達にプレゼントするんだよ!」

 

麦野はシフォンケーキとシャケの魔融合を作ろうと考え、アリサがやめた方がいいと止める。エステルは一方通行と木原家に日頃のお礼をしたいとちゃんとした理由を述べ猟虎は知ってる人がいて良かったと安堵の息を吐く。インデックスは皆にプレゼントしたいと考えていたがその中に三馬鹿弟子は含まれていない

 

「で、このサンドリヨンて誰?学園都市外部の人らしいけど」

 

「サンドリヨン……灰かぶり姫、つまりシンデレラですね…恐らく偽名、となると…魔術関連の方かもしれませんわね」

 

「もしそうなら…なんで魔術師がお菓子作りを教えるのかしらねぇ?」

 

そう三人で言い合っていた時だ、ガラガラと教室の扉が開き宝石の様な金色の髪に美しい色白の肌、スラリとした美しいボディラインの整った顔立ちの女性だ。ダイバースーツに似たコルセットを芯とし薄い膜を何重にも重ねた様な身体のラインがハッキリと解る奇怪なドレスを着込んでいる

 

「本日シフォンケーキとチョコレートの作り方を教えるサンドリヨンよ。よろしくね」

 

サンドリヨンと名乗ったその女性は軽く挨拶をし帆風達を眺める

 

「貴女達が何故、何の目的でシフォンケーキとチョコレートを作りに来たのかは聞かないでおくわ。それぞれの理由がありそうだしね…でもこれだけは言っておくわ」

 

何故かシフォンケーキの筈なのにサンドリヨンは歴戦の猛者感的なオーラを発生させる

 

「遊び感覚で来たなら帰りなさい……さもないと…死ぬわよ貴女達」

 

「いやたかがシフォンケーキとチョコレート作りで死ぬ事はないでしょう…」

 

言い過ぎだと帆風が笑うが後に彼女は後悔する…本当に命懸けなのだと

 

「……まあいいわ、早速調理を始めましょう。さて先ずはシフォンケーキの作り方から教えるわ」

 

黒板にシフォンケーキの書き方をチョークで書き綴るサンドリヨン、一通り書いたところで帆風達の方を向き口を開く

 

「まず最初に卵黄に砂糖を加えたものを湯煎しながらかき混ぜてからサラダ油をなじませながら入れて水を入れるわ。そして小麦粉(薄力粉)とひとつまみの食塩を加えて、粘りけが出ない程度にまんべんなく混ぜる事。これ結構重要よ」

 

「割と普通の授業なのね」

 

「魔術師だから怪しい薬みたいな作り方をすると思ったけど案外まともねぇ」

 

割とまともな説明で美琴と食蜂は拍子抜けだと内心で呟く

 

「次に別のボウルを用意してそれで卵白に砂糖を少量入れて角が立つまで泡立てる事。目安はそうね…ひっくり返しても落ちない程度までがベストね。で、用意した卵黄生地に三分の一ずつ分け泡が消えないようにしつつまんべんなく混ぜてから専用の型に入れるわ。大体160~180℃で約40分間焼き上げるの」

 

「成る程…分かりやすい説明だにゃーん」

 

「レシピ通りにちゃんと作れば完成出来ますしね」

 

「レシピをメモしておかねば…もし家で作る時の為に覚えておいてそんはないからな!」

 

「なんか霊薬を作るみたいで面白いんだよ!」

 

サンドリヨンの説明を聞いて麦野達はこれなら自分達でも出来ると頷く

 

「焼きあがったら型を逆さにしてワインボトルなどに中央の穴を刺し込んで常温になるまで置いておくこと。最後にケーキ用ナイフかスパチュラを使ってゆっくりと型から取りはずせばシフォンケーキの完成よ。後は生クリームを添えるなり生地に果実を加えたり、水のかわりに紅茶やジュースを入れて好みの味をつけるのもよし。そこら辺は貴女達の好きにしていいわ」

 

「……説明を聞いているだけでシフォンケーキが食べたくなってきましたわ」

 

「これを作れば誉望さん喜んで食べてくれるでしょうか?」

 

「じゃあ先ずは卵を割る所から始めましょう…」

 

帆風と猟虎がそう雑談を言い合っているとサンドリヨンが卵を割る所から始めよう…そう言いかけたその時、また扉が開き一人の女性が現れる…その外見は十歳前後の少女でチアリーダーのような服装に背負うタイプの学生カバンという珍妙な服装をしている、サンドリヨンとは違ったベクトルで注目を集める姿だ

 

「サンドリヨン殿、頼まれた品物を持ってきたぞ」

 

「ああ、悪いわね手裏さん」

 

彼女の名は近江手裏(おうみしゅり)、甲賀の忍びである。見た目こそ十代前後の少女だが実年齢は30歳らしくその事で垣根に「ロリおばさん」と揶揄われ垣根を暗殺しようとしかけたくノ一である

 

「ついでになんだけど()をここに連れてきてくれないかしら?」

 

「ああ、分かった」

 

(鶏……?生みたての新鮮な卵を材料に使うのでしょうか?)

 

帆風は生みたての卵を材料にするのかと考える…そして手裏がその鶏を連れて来た

 

「グギェェェェェェ!!!!」

 

『……………』

 

その鶏は巨大だった、赤いトサカに白い体…これだけなら普通…だが大きさはなんと15メートルも誇り首が四つ生えている鶏じゃなくて怪物だろ、と言っていい異形な鶏だった

 

「こいつの名前はキングコッコ。捕獲レベルは87だ。こいつの卵は美味いぞ」

 

「いや「美味いぞ」じゃなくて!何なのよこのモンスターは!?」

 

「さあ、みんなこの鶏を倒して新鮮な卵を手に入れよう」

 

「話聞きなさいよ!」

 

美琴の質問を華麗にスルーしてサンドリヨンはキングコッコを閉じ込めていた檻の鍵を開ける…そしてキングコッコが四つ首からうなり声を上げながら帆風達を睨む

 

「さあ最初の課題だ。キングコッコを倒してキングコッコの卵を手に入れろ。さあファイトだ」

 

『これお菓子作りじゃねえ!』

 

 

20分が経過した、アリサの奇跡でキングコッコがバナナの皮で滑り、奇跡の代償として食蜂が盛大にこけてパンツ丸見えになった。美琴は即座に食蜂のパンツの色を確認し写メに取りキングコッコに電撃をお見舞いしキングコッコを気絶させた…するとキングコッコの肛門から無数の卵が溢れ出て来た

 

「さあ卵を割るわよ」

 

「ま、まさかお菓子作りで戦闘になるなんて考えてもみなかったんだよ…恐るべしお菓子作り」

 

キングコッコを倒した後は普通に卵を割って、レシピ通りに砂糖とサラダ油を混ぜた卵黄に薄力粉を入れてかき混ぜた。後は食塩を入れるだけだ

 

「普通は食塩を入れるのだけど私は特別な岩塩を使っているわ」

 

「岩塩……?シフォンケーキの生地に岩塩て合うのかな?」

 

サンドリヨンは自分はこだわりで岩塩を入れると告げるとアリサはそれ合うの?と首を傾げる。そして再び扉が開き手裏が岩塩…正確にはその元となる怪物を連れて来た

 

「ブクブクブクブク……!」

 

「これは岩塩蟹、捕獲レベルは92。滅茶苦茶硬い甲羅は岩塩で出来ており、ダイヤモンドを鼻で笑う防御力を秘めている」

 

「だ、か、ら!普通の食材を使いなさいよ!てか92てサラマンダースフィンクスと同じ強さじゃない!」

 

現れたのは灰色の甲羅を持つ銀色の蟹だった、大きさは10メートル程だが右手のハサミは刃渡り3メートルと肥大化しており逆に左手は1メートルにも満たない大きさだった

 

「さあまた頑張って倒してね」

 

『だからこれお菓子作りじゃ……!』

 

あえて言おう、お菓子作りでモンスターと戦ったりしない

 

 

「ふぅ……やっと倒し終わりましたわ」

 

岩塩蟹は強かった、麦野の原子崩しを喰らっても甲羅で耐え抜き、美琴の超電磁砲でさえハサミで掴んだ程だった。だが帆風がザフキエルを宿した拳を放つ事により漸くノックダウンした程だ

 

「さて岩塩を入れた事で次はかき混ぜてみましょう」

 

帆風達は泡立て器でボウルの中の卵黄をかき混ぜ始める。それが終わったら別のボウルに入れておいた卵白に砂糖を少量入れ同じくかき混ぜる。それも終わったらいつの間にか出来上がっていた卵黄生地に三分の一ずつ分け泡が消えないようにしつつまんべんなく混ぜ合わせる。そして最後に型に入れてレンジでチンした

 

「なんか描写が雑力な気がするわねぇ」

 

「そこは気にしないで。さて…出来上がるまで少々時間がかかるし…暇だから私が何故パティシエになったか教えましょう」

 

「唐突に始まる自分語り」

 

サンドリヨンは暇だからと何故自分がパティシエになったのかを語り始める

 

「あれは二年前だったかしらね、私は学園都市に住む黒小人(ドヴェルグ)に呼び出された時の事だった」

 

 

『……ここか』

 

サンドリヨンが訪れたのは第十二学区のとある教会を模した建物だった。建物の中に入り階段下の隠し扉を通って彼女は昔の鍛冶場の様な場所に入った

 

『いらっしゃい、アンタがフランスの魔術師 サンドリヨン?』

 

『お前が黒小人のマリアンとやらか?』

 

『その通り、私が現存する超希少な黒小人の一人 マリアン=スリンゲナイヤーよ』

 

『……確か北欧神話の霊装を作る手がかりを私に聞きたいと聞いているが?』

 

マリアンは黄金製のやっとこを肩に軽く当てながらそう呟く、サンドリヨンはさっさと用事を済ましたいのかマリアンを軽く睨みながら口を開く

 

『そーなんだよ。私が作りたいのはフレイアの鷹の衣なんだけどさ…服とか鍛冶屋の仕事じゃなくて洋服屋じゃん。だから作れなくてさーだから灰かぶり姫の服装してるアンタから話を聞けばなにかヒントが見つかるかなーと思ってね』

 

『……そうか、ならさっさとしろ』

 

『話が早くて助かるよ』

 

 

『成る程、成る程。漸く分かったよ』

 

『……何かヒントが見つかったのか?』

 

『まあね、鷹の衣は私じゃ絶対に作れない!て事が分かったよ。やっぱり黄金で服を作ろうて自体が無理なんだ。いやーまいったねこりゃ、トールの妻 シヴの為に黄金のかつらを黒小人が作ったて逸話から服も作れるかもて思ったけど…やっぱり服は無理だわ』

 

『……つまりお前も私も時間を無駄にしたという事だな…帰らせてもらう』

 

やはり服を鍛冶師が作れるわけがないやと大笑いするマリアン、それとは対照にサンドリヨンは冷たい顔でその場から立ち去ろうとする…それを見たマリアンは慌ててサンドリヨンを引き止める

 

『いやちょい待ちちょい待ち!折角手伝ってくれたんだからさ一杯くらい飲んできなよ。トールが此間いい酒くれてさー、ミョルニルと飲もうかと思ってたけどアイツ今日はいないんだよねー』

 

『……酒、か………一杯だけだぞ』

 

『お、話が分かるね。飲もう飲もう!』

 

マリアンは蜂蜜酒を取り出し、ワイングラスにその黄金の液体を注ぎ込む。サンドリヨンは暫し考えた末ワイングラスを口元に近づけた

 

 

『『ウェェェイ!!』』

 

二人は完全に出来上がっていた。茹でタコの様に顔を真っ赤にして床には何本もの蜂蜜酒の空き瓶が転がっていた

 

『っうかよぉ!ペルシの奴はロリコンかよ!鞠亜ばっかり構いやがってよぉ〜生徒に手ぇ出してんじゃえよ変態教師が!』

 

『そうだーそうだー、もっと言ってしまえ!』

 

『いやぁ愚痴を言うとスッキリするなぁ!でさでさ!私の特技て何か分かる?』

 

『え〜?なんだろなんだろ?』

 

『ふふん、正解は人体を改造して家具にする事だよ〜それを私のコレクションにしてそれを眺めたり使ったりして癒されてるんだ〜』

 

『わぉ、性格歪んでるぅ!』

 

そうケラケラ笑いながら呂律が回ってない舌ではしゃぎまくる二人、完全な酔っ払いである

 

『じゃあ私も改造して家具にしてみてよ!』

 

『えぇー?いいんでござるかぁ?じゃあやっちゃうよぉ〜希望は何?』

 

『テーブル!テーブル!テーブル!』

 

『オッケー!じゃあテーブルにするよぉ!』

 

酒の勢いで自分をテーブルに改造する様に叫ぶサンドリヨンに金の工具を持って改造しようとするマリアン。そして部屋に肉が潰れる音とビチャと何か液体が床や壁に付着する音が聞こえた

 

『うわぁ!本当にテーブルになってる〜あはは!私はテーブルだぞぉ!』

 

『うぇい!じゃあテーブルに酒を零しちゃおう!汚せ汚せぇ〜!』

 

『おいやめろよこの〜』

 

『『うひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!』』

 

 

翌日

 

『………やっちまった』

 

『……おい、どうしたら元の姿に戻れる?』

 

正気に戻ったマリアンは昨日自らがやってしまった過ちを後悔し頭を抱える。サンドリヨンはどうやったら元に戻れるのかと尋ねる

 

『……身体のレシピを作って料理みたいにアンタ自身を組み立て直すよ』

 

『そんな人を料理みたいに』

 

 

「思えばこれがきっかけで料理に目覚めたのよね」

 

「いや寧ろその流れですと料理を嫌悪するパターンでは?」

 

「因みに未だにマリアンとは友好を続けてるわ」

 

「自分解体した奴とよく仲良くできるな」

 

これが料理に目覚めたきっかけだとサンドリヨンが言うと猟虎が突っ込む。麦野は自分をテーブルに改造した奴と未だに友達続けるとか…と若干引いた

 

「そして製菓の才能があった私は製菓の道を極め、等々自分自身の肉体すらも分解し、組み立て直す技術を手に入れ自分の身体のレシピを使う事で幼女にも、老婆にもなれる料理人間になったのよ」

 

「それは製菓とは関係ないと思うのだが」

 

「と言うかもうそれ人間技じゃないよね」

 

製菓の道を極めた副作用として自分の体を分解し、組み立て直す事でどんな姿にでもなれるも豪語するサンドリヨン。全然製菓関係ねえじゃんとエステルとアリサは引きずった笑みを浮かべる

 

「さあ、そろそろシフォンケーキが焼けた頃だ。シフォンケーキは私が出しておくから貴女達はチョコレートを作りなさい」

 

『はーい』

 

帆風達は次にチョコレートを作る為の準備をしにかかる

 

「じゃあチョコレートだけど…カカオの所から始めるわね」

 

「……ねえ操祈、これってカカオを作る所から始める〜とかじゃないわよね?」

 

「流石にそれはないわよぉ、多分カカオマスを作る所から始まるんだゾ」

 

「どちらにしても時間がかかり過ぎですわ」

 

帆風達三人はシフォンケーキの前例からまた信じられない様なチョコレートの作り方をするのだろうと予測。それを裏付ける様に青いドレスを着た二十代前後の肩まである金髪に白い肌が特徴的な女性が大理石で出来たリング状を後ろで組み立ている

 

「おーいサンドリヨン!リングはこんな感じでいいかー?」

 

「ええそれでいいわ、ありがとうサフリー」

 

サフリー=オープンデイズは仕事を終えたのか扉を開けてその場から去っていく。一体リングをチョコレート作りの何に使うのか全員がツッコミたかった

 

「じゃあカカオを渡すわ」

 

「なんだ、やっぱりカカオマスを作る所から…」

 

サンドリヨンから渡されたもの、それは直径30センチはあろう茶色い丸い球体に血走った目と獣の如き牙が生えた食べ物なのか生き物なのか分からない存在Xだった

 

「じゃあ調理開始!」

 

『せんせぇ!?これなんですか!?』

 

ツッコミ所が多過ぎた

 

「これはチョコレートの原材料 禍禍滃(カカオ)よ、知らないの?」

 

『私達が知ってるカカオじゃない!?』

 

「はぁ……貴女達無知なのね…仕方ないわ、私が禍禍滃の歴史について教えてあげる」

 

全員が自分達が知るカカオではないと叫ぶ、サンドリヨンはそれを聞いて呆れながらも帆風達に禍禍滃と呼ばれたチョコレートの原材料らしき何かの歴史について語り始める

 

「まず禍禍滃の生産地である日本について…」

 

「ちょっと待つにゃーん!カカオの生産地はアメリカ辺りだろ!?」

 

「それはフェイクよ」

 

「フェイク!?」

 

禍禍滃の生産地は日本だという意外な事実を教えるサンドリヨン、そして更に驚きの事実を語り始める

 

「豊臣秀吉て知ってる?」

 

「天下を取ったお猿さんよねぇ?」

 

「ええ、豊臣秀吉が織田信長に小姓として使えていた頃、寒い朝の事…秀吉は信長の為に懐であるものを暖めてたの」

 

「知ってますわ、草履ですわよね」

 

「いいえ違うわ」

 

「え?秀吉が暖めてたのは草履なのでは?」

 

「いいえ、秀吉が暖めていたもの……それは」

 

猟虎があれ?間違ってた?と首を傾げる。他も同じ反応だ。サンドリヨンは「こいつら歴史のテスト赤点だろ」と内心思いながら正解を答える

 

「この禍禍滃よ」

 

『ちょっと待てぇぇぇぇ!!!』

 

「信長は秀吉が暖めていた禍禍滃でチョコレートを作り食べていた甘党なのよ。禍禍滃を暖める事で秀吉は出世していき後にそれを妬んだ明智光秀が「自分も禍禍滃暖められるもんねー!」と調子に乗った結果本能寺の変が起こったのよ」

 

「どんな歴史改竄!?てかそこからどうして本能寺の変に繋がった!?」

 

「禍禍滃を竃で焼こうとしたら引火してどかーんしたのよ」

 

「んなアホな!?」

 

※本能寺の変については諸説あります

 

「で、取り敢えず禍禍滃を切って中にあるチョコレート色の体液…液体を採取するのよ」

 

「体液!?体液て今言いませんでした!?やっぱりこれ生き物なんですの!?」

 

「……口を動かさないでさっさと切る!」

 

「誤魔化されましたわ!?」

 

帆風が自分の手の中で蠢く禍禍滃を見てやっぱり生き物じゃん!と叫ぶ。サンドリヨンはそれをスルーした

 

「ま。別にチョコレートが作れるのなら構わねえけどな…べ、別に浜面にあげたいから頑張るてわけじゃねえぞ!?フレンダ達のついでだ!ついで!」

 

「誰に言い訳してるんだ麦野さんは?」

 

「麦野さんはツンデレなんだよエステルちゃん」

 

ツンデレな麦野を放置してエステルとアリサが包丁で禍禍滃の皮を剥こうと皮に包丁の刃を当て…そして包丁が刃こぼれした

 

「「……あるぅれぇ?」」

 

変な声を出すエステルとアリサ、そんな二人を見てサンドリヨンが口を開く

 

「あ、禍禍滃は特製の出刃庖丁がないと切れないわよ」

 

「それを最初から言いなさいよ!」

 

「あ、包丁が粉砕力されたわぁ」

 

特製の出刃庖丁じゃないと切れないと事実を告げるサンドリヨン、それを聞いてブチ切れる美琴に刃が折れた包丁を握る食蜂

 

「ダメです!市販の包丁じゃ歯が立ちません!」

 

「原子崩しだと蒸発しそうだし………なんだこの食べ物(?)」

 

どうやって禍禍滃の皮を突破しようか考えたその時。ざくっと音が聞こえ帆風が振り返るとインデックスが七天七刀で禍禍滃の皮を貫き体液をボウルの中に入れていた

 

「アンギャァァァァァ!!?」

 

「ふう、いざという時の為にかおりから刀をパクっておいてよかったかも」

 

「あ、インデックスさん。次私にも貸してくれませんか?」

 

「いいよ。らっこも使ってね」

 

『………………』

 

インデックスと猟虎を覗く一同は顔を見合わせながら頷く。どうやら考えは一緒のようだ

 

『インデックス(さん)、次その刀貸してくれませんかー!』

 

「いいんだよ!!」

 

 

その頃の神裂火織

 

「ステイル、小萌さん。私の七天七刀知りませんか?漬物石の代わりにしていた筈がなくなっていて…」

 

「知らないね、小萌先生は?」

 

「知らないのですー」

 

「成る程……なら犯人は……三馬鹿弟子ですね!」

 

「「「何故そうなる!?」」」

 

 

無事禍禍滃から体液(生き血?)を採取した帆風達はそれを入れたボウルを持って大理石のリングの上に立っていた

 

「これからチョコレート作り最終工程に入るわ」

 

(((いや大理石のリングがチョコレート作りにどう関係してるの?)))

 

一体大理石のリングで何をするのかと疑問に思う帆風達、だがその疑問を吹き飛ばすような指示がサンドリヨンの口から出た

 

「まずは禍禍滃の体液をリングに落とすわ」

 

『落とすの!?』

 

「いいから早くしなさい」

 

サンドリヨンは禍禍滃の体液をリングの床に垂れ流した。帆風達はなんでそんな事するの!?とツッコむが早く同じ事をやれと睨むサンドリヨン。渋々全員が体液を垂れ流す…するとリングの上に落とした体液達がボコボコと泡立ち始める

 

「こうして体液をリングの上に放置すると…」

 

そして体液が膨張し始め、全員がばら撒いた体液が宙を舞う。そして空中で全ての体液が一つになり巨大な生物と化す

 

「ボゴゴボゴ!」

 

「キングカカオドラゴン。捕獲レベル350のモンスターよ」

 

『いやキングカカオドラゴンていうよりキングゲスラ!!?』

 

某チョコ大好き怪獣に似た姿のチョコレート色のドラゴンが黄色く光る眼で帆風達をギロリと睨む

 

『我を食さんとする愚かなる人間共よ。我が逆に喰ってやろうぞ』

 

「しかも喋りましたわ!?」

 

『この世は食うか食われるか…それは我も貴様らも同じ事よ…さあかかってくるがよい。貴様らの骸に死してなお消えぬ恐怖を教えてやろう』

 

しかも流暢な言葉で喋ってくるこのチョコレート。いやチョコレートなのか生物なのかすらも分からない

 

「キングカカオドラゴンは攻撃すればするほど甘みが増すわ。頑張って攻撃して痛めつけてやりなさい」

 

サンドリヨンは攻撃すればせるほど美味しくなると告げると頑張れと親指を立ててゴングを鳴らす。帆風達はもうどうとでもなれと色々と吹っ切ってキングカカオドラゴンに挑む

 

『はっ!愚かなり!貴様らが食するのは我が極上の血肉ではない!貴様らのその口が味わうのは敗北というなのビターチョコレートだ!』

 

「チョコ如きが煩いわよ!先輩の為に美味しいチョコレートを作るんだからぁぁぁ!」

 

「偶然力で落ちてた鉄パイプで叩いてあげるわぁぁぁぁぁ!!」

 

「関係ねえよ!!カァンケイねェェェんだよォォォォ!!ドラゴンだろうがキングゲスラだろうが浜面の為にやってやんよォォ!」

 

「先生と数多さん達の為にも勝たせてもらうぞ!」

 

「私(以外の皆が)不幸になっても構いません。どうかチョコが作れる奇跡を下さい」

 

「チョコレート風情が生意気かも!私の10万3000冊から編み出した魔術(物理)でコテンパンにしてやるんだよ!」

 

「誉望さんの為……やらせていただきます!」

 

「……神の如き者(ミカエル)

 

チョコレートと少女達の仁義なき争うが今始まった

 

「ふ……これだからお菓子作りはやめられないわ」

 

サンドリヨンは少女達の戦いを見てそう呟いた…はっきり言おう。これはお菓子作りではない

 

 

三時間後、漸く倒したキングカカオドラゴンはドロドロのチョコレートになった。そのチョコレートを型に入れて各自好きな形のチョコレートを作った

 

「出来上がりましたわ!」

 

帆風が作ったのは粒状のチョコ。因みに美琴と食蜂は大きなハート型、麦野はシャケの切り身を中に入れたもの、エステルは板チョコ型のチョコ数枚、アリサはダンベル型、インデックスは恐らくは天使を模したであろう天使像のチョコ、猟虎はチョコクッキーだった

 

「これで授業は終わりよ、シフォンケーキと一緒に持ち帰ってね」

 

サンドリヨンはそう言うとドレスをはためかせながら教室の扉を開けて立ち去ろうとする。その前に一度だけ帆風達の方を向く

 

「あばよ!」

 

(柳○慎吾?)

 

某有名人のセリフを言った後サンドリヨンは扉を閉めて立ち去って行った。ともあれこれで全員プレゼントする品物が完成したわけだ

 

「後はこれをプレゼントするだけですわ」

 

「先輩に渡したらどんな反応をするか楽しみね」

 

「絶対に驚く筈なんだゾ」

 

「……浜面甘い物平気…だよな?」

 

「ダンベル型なら喜ぶかと思ったけど…軍覇君なら間違えて筋トレに使って溶かしちゃうかも」

 

「きっと打ち止めと番外個体は喜ぶぞ!先生はどうか分からないが!」

 

「美味しそうなんだよ…じゅるり。ハッ!?ダメだよ私食欲に負けたら!これはステイル達の分なんだから!……でも一口だけなら(ボソッ)」

 

「早速誉望さんの所に持って行きましょう」

 

戦場(お菓子作り)から無事に帰還した少女達…だが、乙女達の戦いはこれからが本番だった

 

 

 

「あぁ…ドキドキしますわ…垣根さんに無事に渡せるでしょうか…その前に心臓が破裂しないか心配ですわ」

 

帆風は公園にて垣根との待ち合わせをし彼が来るのを待っていた。手には綺麗に包装をしたチョコレートの容れ物がある

 

「はぁ…ファイトですわわたくし!」

 

そう意気込んだ所で垣根が歩いてやって来た

 

「おーす潤子ちゃん。おまたー」

 

「あ、垣根さん!来てくれたんですね!」

 

「いやそりゃ呼ばれたから…で、何の用?」

 

「えっと……ですね、それはその……あの…えっと。ち、ちち…チョコを…バレンタインなので…垣根さんに…その…ごにょごにょ」

 

「?」

 

帆風が垣根にどうなって渡せばいいか悩む。それを見て首を傾げる垣根…そこで帆風は気づく。垣根が大きな紙袋に沢山の何かを入れている事に

 

「……垣根さん、それなんです?」

 

「ああ、これか?チョコレート(・・・・・・)だ。今日はバレンタインだからな」

 

「………はい?」

 

垣根が笑いながら言うと帆風はん?と固まった

 

「ほら俺って自分で言うのもなんだけどイケメルヘンじゃん?だから女の子に凄くモテるんだよ。だから今年()こんなに沢山貰ってさー。いやーこんなに食えねえよ。困った困った…あははは!」

 

「……………」

 

ブチィ、と帆風の中の何かがキレた。恐らく100個は貰っているであろうチョコレートを自慢げに見せびらかす垣根の事など一切忘れ帆風は手に持っていたチョコレートの容れ物の包装を破く

 

「……あ?それチョコレートか?あ、もしかして俺にくれ……」

 

帆風は垣根の目の前で自らが作った粒状のチョコを全て口の中に入れ込み、ハムスターの頬袋の如く様にチョコを頬張った

 

「え!?何やってんの潤子ちゃん!?」

 

「煩いですわ!垣根さんにあげるチョコレートなんてありませんわ!ええ、ありませんとも…ないんですよぉぉぉ!!!」

 

「え!?ガチで泣いてる!?え!?え!??おい!誰だ潤子ちゃんを泣かした奴は!?」

 

(((お前だよお前)))

 

泣きながらチョコレートを頬張る帆風に困惑しながらもきっとこれは何者かの謀略に違いないと垣根が誰が犯人だと叫ぶ。街行く人はお前だよとツッコんだ。チョコレートの味は塩っぱかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ていとくんはイケメルヘンだからバレンタインデーとかチョコ沢山貰ってそう。上条さんも意外と女子から貰ってそう。一方さんとソギーは論外です

次回もギャグ編です。まさかのあのモブと言っても過言じゃないあのキャラが主役に!?ヒロインは佐天さん!?な感じのお話で提供します

次回もお楽しみに!


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弱者の気持ち

今回の主人公はまさかのあいつです。そしてヒロインというか今回の準主人公は佐天さんです。そして一万字超えと長くなりすみません。後佐天さんが黒子の事を「白井さん」ではなく「黒子」呼びですが原作(とあレー)でも大覇星祭後ら辺から黒子呼びだから時期的にオッケーな筈です

こいつが主人公て誰得だよ、誰も得しねえだろ。そんな事より早く魔神編始めろや、と思った方はすみません。何となく思いついたので…では楽しんで読んでもらえれば嬉しいです。後ナインボール77様二百回目の感想ありがとうございます!


介旅初矢(かいたびはつや)異能力者(レベル2)である。能力名は量子変速(シンクロトロン)。簡単に言えばアルミ缶を爆弾に変える能力でごくありふれた能力である

 

彼は不良達にカツアゲや暴行を受け虐げられていた弱者だ。彼は彼を助けてくれない風紀委員達を逆恨みし「力のある奴はみんな殺す!」と無差別爆破をしようとしたが強度が低い為当然行えず、むしゃくしゃした彼は偶々通りかかった男に鬱憤を晴らすべく超能力を使って襲いかかった…それが超能力者の第一位とは知らずに…

 

「……一人で襲って来たから相当な実力者だと思ったら単なる蹴り1発で撃沈とか…これは流石のていとくんもびっくりだ」

 

「つ、強い…このホスト崩れ」

 

「ホスト崩れじゃねえ、イケメルヘンだ。別名 超能力者第一位 垣根帝督とも言う。覚えとけ」

 

介旅は垣根の蹴りを1発喰らっただけで撃沈した、能力を使わずとも倒したのだ。何処かのもやしと違い垣根は身体能力も高いのだ

 

「く、くそ…強い奴はいつもこうだ……僕はいつもこうして地面にねじ伏せられる…強い奴なんて…みんな死んじまえばいいんだ!」

 

「…………」

 

それは虐げられた者の叫びだ、だがどうせこの男は自分の声に一切応じず何言ってんだお前とかなんとか言って身体を踏みつけて甚振るんだろ…そう介旅は思っていた…だが垣根は何を思ったのか暫く黙り懐から携帯を取り出す

 

「あー、もしもしアレイスター?実は頼みがあるんだが…実は………」

 

(…警備員(アンチスキル)に通報してるのか?)

 

そして通話を終えたのか携帯を閉じ懐にしまう、そして介旅の方を向いて垣根が口を開いた

 

「お前、一日限定で風紀委員になるつもりない?」

 

「…………は?」

 

こうして介旅初矢は1日体験で風紀委員になった

 

 

「いや訳がわからないよ」

 

柵川中学の一室にある『風紀委員活動第一七七支部 JUDGMENT 177 BRANCH OFFICE』と書かれた部屋の前に一人立つ介旅。何故こんな事になったのか訳がわからないよ状態だ

 

「指紋・静脈・指先の微振動パターンの認証登録は既に済んでいるとか…プライバシーのへったくれもないな」

 

介旅はもうここいらで帰ろうかと思ったが逃げ出したとあの第一位に知られれば、何をされるか分かったもんじゃないので意を決して部屋の中に入ってみた

 

「美偉………」

 

「黒妻さん……」

 

「………」

 

ラブコメが目の前にあった、スキルアウトらしきガタイのいい男と風紀員らしきメガネの巨乳が抱き合って自分達だけの世界にゴーしていた。二人の背景は薔薇の花びらが舞い散る幻影が見えた気がした

 

「「………あっ」」

 

「………失礼しました」

 

介旅の存在にやっと気づいた二人、介旅は扉を閉めて帰ろうとした。それを慌てて扉を開けて出て来た

 

「ち、ちょっと待って!貴方が体験しに来た介旅初矢君ね!私は固法美偉よ!今日1日よろしくね!」

 

「お、俺は黒妻綿流だ。よろしくな!」

 

「……よろしく」

 

必死になって呼び止める固法に黒妻。明らかにめんどくさそうな顔をする介旅、第三者がいればこう思うだろう…「こりゃダメだ」と

 

 

介旅を支部の中に入れた後、固法と黒妻は肩を寄せ合いながらデートに行った。窓から二人がバイクに乗って学校から出て行くのを冷めた目で介旅は眺めていた

 

「……風紀委員がスキルアウトと付き合うとかもう世も末だな」

 

そう介旅が呟いたその時だった

 

「いや、でもスキルアウトにも良い方と悪い方がいますから。それに黒妻さんは良い人ですからね」

 

「!?い、いつの間に!?」

 

「最初からです。つまり私はあのバカップルの甘ったるい空間に何分もいた訳です…それを見てすぐに逃げ出した貴方とは違って」

 

「……大変だな」

 

介旅に話しかけて来たのはパソコンをカチャカチャと弄る頭に花飾りを乗せた少女だった。介旅はこの少女を花女と勝手にあだ名をつけた

 

「私の名前は初春飾利です、よろしくお願いしますね……えっと、隠キャメガネさん」

 

「おいコラ、誰が隠キャメガネだこの妖怪ラフレシア女。まあ隠キャだけども」

 

「あぁん?誰が妖怪ラフレシア女ですか、まあ確かに腐女子ですけども」

 

介旅は初春の事をラフレシア、初春は介旅の事を隠キャメガネとあだ名をつけた

 

「確か今日1日風紀委員の体験をする介旅 初矢さんでしたね。見かけによらず意外と物好きなんですね。風紀委員の体験がしたいなんて」

 

「好きでやるわけじゃない、不本意だが今日1日よろしく頼む妖怪ラフレシア女」

 

「は、は、は。誰が妖怪ラフレシア女ですかこの隠キャメガネが。メガネカチ割るぞゴラァ」

 

「は、は、は。抜かせラフレシア。その頭の花引っこ抜くぞゴラァ」

 

「これは造花ですぅ」

 

ははは、と笑いながらもメンチビームを目からビームする二人。相性は水と油の様だ

 

「う〜い〜は〜る〜!今日もこの佐天さんがやって来………て、え!?知らない男の人とメンチビーム切ってる!?」

 

初春の親友である佐天が毎回恒例のスカートめくりをする為に支部に入ってくる、だが親友と知らない男がメンチビームを切っているのを見てその考えを吹き飛ばした

 

「ちょ、初春!?何メンチビーム切ってるの!?そっちのお兄さんも落ち着いて!」

 

「佐天さん話してください、そいつ殴れません」

 

「何でそんなに殺意力高いの初春!?そんなキャラじゃなかったよね!?」

 

「佐天さん、こいつはセブンスミストで女の子にカエルの人形を渡してその中にアルミ缶仕込んで私を能力で攻撃する…そんな気がするんです」

 

「いや何訳のわからないこと言ってるの初春!?」

 

佐天が初春を羽交い締めして介旅から距離を置かせる、ふしゃー!と猫の様に威嚇し合う二人。もう何処からツッコめばいいのか分からないと頭を抱える佐天

 

「ふー、ふー……失礼取り乱した。僕は介旅 初矢。1日だけ風紀委員を体験しに来た」

 

「そうなんですか、あたしは佐天涙子ていいます。よろしくお願いします介旅さん」

 

「こいつにさん付けなんて必要ないですよ佐天さん。隠キャメガネで充分です」

 

「黙れ妖怪ラフレシア女」

 

にっこりと笑う佐天を見て「あー、この子綺麗だなー。唯一の癒し」と心の中で呟く介旅

 

「あ、初春。そう言えば黒子は?」

 

「白井さんならピラルクーの散歩です」

 

黒子はピラルクーの散歩中である

 

「で、風紀委員の仕事て何だ?パトロールか?それともパトロールか?」

 

「パトロールしか頭にないんですかこの隠キャメガネは…まあパトロールとか書類整理しかないですけど」

 

「いやそこは嘘でも他にもある、て言おうよ初春」

 

介旅がどうせ風紀委員の仕事なんてパトロールしかないだろ、と皮肉げに言い初春はその通りだと頷く

 

「じゃあ隠キャメガネさん…介旅さんにはパトロールでもお願いしましょうかね。私は外を歩きたくないのでここから指示しますから」

 

「ざけんなよ妖怪ラフレシア女」

 

「うっせ隠キャメガネ」

 

(な、何故にこの二人は初対面の筈なのに犬猿の仲なの?)

 

再びメンチビームを目からビーム、する二人。それを見て佐天が顳顬を抑える。正直言ってこの二人にあまり関わりたくないと思う気持ちが彼女の中にあった

 

(……心配だからあたしも後をついてこうかなー)

 

だが佐天涙子はお節介である、それが彼女の美徳でありトラブルに巻き込まれやすい欠点であるのだが彼女はそれを自覚していない

 

 

初春が支部で買い置きしてあったパフェを貪りながらパソコンを弄る中、介旅は風紀委員の腕章をつけて第七学区をパトロールする。何故か後ろに佐天が付いて来ている

 

『佐天さん、もしそこの隠キャに猥褻行為をされたら股間潰していいですからねー』

 

「おい聞こえてるぞラフレシア」

 

「大丈夫だよ初春、金属バットで撲殺するから」

 

「何それ怖い」

 

二人のインカムから初春が猥褻行為をされない様にと佐天に言い、誰がするかクソボケ、このラフレシアが。と介旅が顳顬をピクピクさせる。佐天は金属バットを振るい回しながらこれで撲殺するからヘキーヘキーと笑っていた

 

「それに介旅さんてそんな事する度胸もなさそうですし…童貞臭は半端ないですけど」

 

「ど、ど、ど、ど、童貞ちゃうわ!」

 

「そんなボケなくても……」

 

初春とは相性は悪かったが自分とはまずまず会話できる様だ。そう佐天は判断した

 

「そう言えば介旅さんは何で風紀委員に体験しに来たんですか?」

 

「通り魔してそれが第一位と知らずに返り討ちにあって何故か今に至る。かっこ丸」

 

「……予想外の回答でした」

 

何故風紀委員に体験に来たのかと佐天がさりげなく尋ねると介旅は簡潔にそれを告げる。佐天は予想外過ぎたと頬をピクピクさせた

 

「たくっ、何で僕が風紀委員の体験なんかしなきゃいけないんだ。無能な奴らの無能な所を見て何になるってんだ」

 

「……風紀委員が嫌いなんですか?」

 

「ああ、嫌いだとも。不良にボコられても助けに来ない。そして不良達が立ち去ってから都合よく来て「何かあったんですか?」。そう聞いて来やがる…何で早く来ないんだよ、全然守れてないじゃないか。守るべき弱者を守れずヒーローぶる風紀委員なんか大嫌いなんだよ」

 

まだ一度だけなら偶然、偶々、間が悪かった、運が悪っただけと信じられたかもしれない。だがそれが何回も…3回も4回も5回も続けばそれが偶然なのかと信じられなくなる。虐めは終わらず風紀委員は助けに来ず、誰も自分を助けようともせず、漫画の様にヒーローは現れない…そんな環境が彼の性格を、性質を大きく歪めるのは難しくはなかった

 

「結局は学園都市にとって僕みたいな異能力者なんていなくてもいいのさ。超能力者だとか大能力者みたいなエリートだけがいてもいい街だ。あいつらは自分達より強度が低い奴()を見下しているんだ。そんな奴らばっかりなんだよこのくそったれな街は…」

 

そう介旅が独り言の様に佐天に語っていたその時、佐天が口を開いた

 

「でもそんな人ばっかりじゃないと思いますよ」

 

「………は?」

 

嫌な人ばかりではない、そう佐天が言い目を丸くする介旅

 

「確かに強度(レベル)が高い人達の中にはそんな考えを持ってる人も一杯います。自分の能力()に酔いしれてる人だっています。例えば海原光貴とか海原光貴とか海原光貴とか海原光貴とか…」

 

「海原光貴ばっかりじゃないか」

 

確かに介旅の言う通り、学園都市にはそんな奴もいる。例えば美琴のストーカーしてる変態とか寝取り宣言をして黒子に負けた大能力者とか、自分が大能力者だから、常盤台の理事長の孫だからと周囲を見下すエリートとか…全て海原(ゴキブリ)であるが気にするな

 

「でも全員が全員そんな考えならとっくの前に学園都市は無能力者や弱能力者が今よりもっと虐められて…最悪人死もあったかもしれませんから」

 

「……何故そう言える?」

 

「だってあたし知ってますから、全員がそんな考えを持ってないて」

 

「……なに?」

 

「実はあたし無能力者だから何度もあたしよりも高位の能力者に暴行を振るわれた事がありまして…」

 

「………ぇ?」

 

全員が悪い人ではないと告げる佐天に何故そんな事が言えるのかと介旅が睨みながら尋ねる。佐天はニッコリと笑いながら自分も高位の能力者に虐げられていたと言い介旅が目を丸くする

 

「酷い時なんか強姦未遂された事もあるんですよ。あの時は本当に人生終わったかと思いましたねー」

 

そう笑えない事を笑っていう佐天、介旅は彼女が自分と同じ弱者なのに何故自分と違うのかと疑問に思う

 

「でも、そんな時必ずいつも御坂さんや食蜂さん…それに超能力者の方々が助けてくれたんです。いいえ御坂さん達だけじゃない黒子も風紀委員の方にも、一般人にも、中にはスキルアウトの方にも助けてもらいましたね」

 

「……っ!」

 

自分とは真逆だ、介旅はそう思った。自分とは違い毎回誰かに助けてもらっている。風紀委員だけではない超能力者や自分を助けてくれなかった道行く人とは違い助けた一般人、挙句にはスキルアウトまで…彼女はどれ程運がいいのだろう。自分にはない幸運だと羨ましく思った

 

「もしみんながみんな、「自分より強度が低い奴は見下してもいい」なんて考えなら学園都市はとっくの前に今よりも荒れてますよ。昔の漫画のモヒカンがヒャッハーな世界みたいに…でも、そうならないのはみんなの中には善意の心があるからなんです」

 

「……善意?」

 

「はい、どんな人にも善意がある。ただそれを隠している人もいる…でもいざという時には助けようとする…人の善意なんてそんなものですよ」

 

「………君、妖怪ラフレシア女よりも頭の中お花畑なんだな」

 

「え!?なんでですか!?」

 

誰の心にも善意がある、普段はそれを隠しているか見えないだけできっとある。そうでなくては学園都市が、ひいては世界がただ人の悪意だけしかないならとっくに滅んでいる筈なのだからそうで佐天が笑顔で言う。それを聞いて介旅はお花畑だと呟いた

 

(こいつは運が良かったからそう信じたるだけだ、善意なんてない。都合よく人は助けてくれないんだ。あったとしても心の中では何か考えている…そうに違いないんだ)

 

介旅はこいつは運が良かっただけだ、無能力者だがこいつは偶々強い奴らと知り合いだったから助かったんだ。そう介旅は考え佐天の話を切り捨てた

 

「…この町の奴らは君が思ってる程綺麗じゃない」

 

「そんな事ないですよ、誰だって悪い所もいい所もあるんですから。あたしだって初春のスカートいつもめくってパンツ見てますし」

 

「いやそれはおかしい、というか性犯罪だ」

 

「だが私はやめる気はありません(キリッ)」

 

「ダメだこの子……」

 

佐天は絶対に初春のスカートをめくるのをやめる気は絶対にない!と宣言する。介旅はこの子はもうダメだと空を仰いだ

 

「まあ僕には一生縁のない言葉だ、誰も僕を助けてくれなかったし僕も誰も助けるつもりはない…というか僕は生まれてから一度も人助けなんかした事がない」

 

「うーん、でもそんな事ないと思いますよ」

 

「……どういう意味だ?」

 

「貴方が人助けをした事がない、て思っていても無自覚で助けてる事はあると思うんです。例えば道を尋ねられてに道を教えたりとか、落ちてた消しゴムを拾ったりだとか、空き缶を拾ってゴミ箱に捨てたりだとか…そんな小さな事でも人助けなんです。例え貴方が人助けをしてないと思っても影で誰かを助けてるかもしれません。人生なんて案外そんなものかもしれませんよ?」

 

「……馬鹿馬鹿しい」

 

普段の何気ない行動やさり気ない行動が人助けに繋がっているかもしれない、そう佐天が笑う。彼にとってその笑顔は太陽の様に明るく直視できず顔を背ける

 

『あ、隠キャメガネさん。聞こえてますかー?』

 

「なんだ妖怪ラフレシア女」

 

『実はですねー、貴方がいる学区の近くに小学生が買ってる犬ちゃんが逃げ出したみたいでして…見つけて保護してくれませんか?』

 

「それ完全に風紀委員の仕事じゃなくて何でも屋かスケット団、勇者部の依頼だな」

 

『いいから早く動けよ隠キャメガネ』

 

「黙れ妖怪ラフレシア女、花毟り取るぞ」

 

初春からの通信で犬を見つけて保護してほしいと連絡が入り、口喧嘩する初春と介旅。兎も角、介旅と佐天は犬を探す事になった

 

「確か名前はガーディーでしたっけ?おーい、ガーディーちゃーん!」

 

「…呼んでも来るわけないだろう」

 

佐天は大声で犬の名前を叫ぶ、介旅は呼んでも来る筈がないとアホを見る目で佐天を見るが…

 

「ワフッ!」

 

「あ、この子がガーディーちゃんですかね?名札にもガーディーて書いてあるし」

 

「うせやろ?」

 

マジで犬が呼び声に応じてやって来た。この犬マジチョロ犬である

 

「確保ー!この脱走犯めぇ!後は飼い主の所に連れて行くだけですね!」

 

「ワフッ?」

 

「……まあ、探し回るよりはさっさと見つけた方が楽か」

 

探し回るよりはマシだと納得したのか介旅は何もツッコまなかった

 

 

「はい、お嬢ちゃん!逃さない様にね」

 

「お姉ちゃん、お兄ちゃんありがとう!もう逃げ出したらダメだよガーディー!」

 

「ワフッ!!」

 

女の子に佐天が抱えていた子犬を渡す、少女の腕の中で子犬がパタパタと尻尾を振りながら女の子の頬を舌でペロペロ舐める

 

「じゃあねお姉ちゃん!お兄ちゃん!」

 

「ワフッ!」

 

手を振りながら二人から走り去って行く女の子。子犬も尻尾をパタパタさせていた。佐天も手を大きく振りながら笑顔で女の子が立ち去る所を見守っていた

 

「うぅーん、やっぱり人助けて気持ちいいですね」

 

「……そういうものか?」

 

「そういうものなんです、誰だって「貴方の行動のお陰で一人の命が救われました」て言われたら嬉しいでしょ?少なくとも「貴方の行動の所為で一人の命が失われました」て言われるよりは」

 

「……極論だがそうだな」

 

佐天は「役に立たない」、と言われるよりも「役に立った」と言われる方がいい。そう極端な事を言う呟き、それに介旅は思わず賛同してしまった

 

「なんかあたしずっと偉そうな事ばっかり言っててすみませんね。無能力者の私がこんな事言えた義理はないかもしれないのに…別に介旅さんを馬鹿にしてるとかじゃないんですよ!」

 

「……ああ、分かってるさそれぐらい。それに分かった。君にあって僕にないものが」

 

介旅は短い時間だが佐天と関わってなんとなく彼女のことを理解した、彼女は確かに無能力者だ。だがそれを理由に彼女は悩んだりしない。友達の為になれるのなら無能力者だろうが何だろうが御構い無しに自分の持てる力全てを出し切るのだろう。ただ強度が低いから、自分が弱者だからと最初から諦めている介旅(自分)とは違うのだと介旅は気づいていた

 

「結局僕はずっと弱者なんだ、君みたいに強くなれない」

 

「……そんな事ないですよ」

 

「慰めはいらない」

 

「慰めじゃないです。だってあたしも介旅さんの気持ちは多少なりとも分かるんですよ?」

 

「………え?」

 

介旅の気持ちが分かると佐天が言うと介旅は驚きのあまり目を丸くする

 

「あたしも無能力者ですから能力の事で悩んだ事もあります。無能力者て存在に価値があるのかとか、あたしは無価値なんじゃないかって…でも御坂さんと食蜂さんはこう言ってくれたんです」

 

 

『無能力者が無価値…?そんな訳ないじゃない。そもそも超能力なんて力の一種よ。私は超能力者(レベル5)だけど万能な人間じゃない。私には私なりのいい所があって、佐天さんには佐天さんのいい所がある…例えば胸とか…(ボソッ)。それにたかが能力や強度なんかで人を無価値扱いする訳ないじゃない』

 

『その通りなんだゾ、所詮超能力は超能力。一種の才能みたいなものよねぇ。佐天さんには運動神経がいいとか料理が上手とか私達にはないいい所が一杯あるじゃない。それにお胸なんか私が中1の頃より大きいしぃ(ボソッ)。少なくとも私と美琴、初春さん達は貴方の事を無価値だなんて思ってない。だからそんなつまらない事で悩む必要はないんだゾ』

 

 

「その一言であたしが悩んでたものがどうでもよくなったんです。強度だとか能力だとかどうでもいい。あたしはあたしだ、一生無能力者でも構わない。ただ友達と仲良く遊んで馬鹿やれればそれでいいんです」

 

「…………」

 

そう朗らかに笑う佐天を見て介旅は呆然とした、そしと同時に理解した。これこそが彼女と自分の違いなのだと

 

「さ、早くパトロールに戻りましょう!」

 

「………ああ」

 

もしかしたら、第一位は自分にこれを教える為に風紀委員の体験をさせたのかも知れない。そう彼が思うほど彼女は介旅の価値観を塗り替えた。佐天が早くパトロールに行こうといい介旅がそれに頷きかけたその瞬間、街の建物の一つが爆発を起こした

 

「「!??」」

 

突然の爆発に背後を振り向いて驚く佐天と介旅、街行く人々も大パニックを起こし悲鳴を上げながら逃げる…爆発したのはとある無人の貸しビル、そこから武装した集団が現れる…その姿は学園都市の平和を守る警備員に似ている…だが何か違う。いうなれば警備員の闇が凝縮した様な連中だ

 

「我々はDAアラウズ!垣根帝督に壊滅させられたDAの生き残りにして、それよりも完全なる『絶対正義』を掲げる組織!我等はこの学園都市の闇なる部分を滅ぼし悪の化身である垣根帝督を滅殺する!」

 

DA、その構成メンバーは過剰な制圧活動で学生を半身不随にした後に行方不明になっていた者、 『警備員』の兵器をテロリストの敵対組織に横流し、テロリストの殲滅を図った者と言った行き過ぎた思想や行動理念に傾倒した正義を履き違えた屑共の集まりである

 

「我等はこの第七学区にて垣根帝督を討ち滅ぼす事を決めた!諸君らにはその為の人質、もとい生贄となってもらおう!だが心配する事はない!これは『正義』の為なのだから!我々は『悪』の象徴たる垣根帝督を殺す事でこの街の膿を消し去るのだ!」

 

「な、何言ってるんだあいつら……?」

 

狂っている、そうとしか言いようがない。あいつらの言っている事は間違っているとしか断言出来ない、なのにDAアラウズはさも自分達が正義の使者だと思い込んでいる様だった

 

「我等は正義を執行する!その為にこの少女は誉れな生贄となるのだ!」

 

そう言ってDAアラウズの隊員は一人の少女を右手で持ち上げる…それは先程子犬を抱き抱えていた少女だった

 

「さっきの子!?」

 

佐天が思わず叫ぶ、恐らく子犬と一緒に帰る途中でDAアラウズの奴らに捕まったのであろう

 

「離してよ!」

 

「ワフッ!ウゥゥゥゥ!!!」

 

「ええい暴れるな!お前は大人しく垣根帝督が来るまで待っているがいい!そして犬っころ!獣畜生には我々の崇高なる正義が理解出来ないと見えるな!」

 

暴れる女の子の腹に拳を叩きつけ強制的に黙らせる隊員、呻き声を上げて涙を流す少女を助けようと子犬が隊員の足に噛み付く…だが隊員はその子犬を蹴りつけ壁に激突させる

 

「ひ、酷い…あ、警備員の癖に…横暴過ぎる」

 

介旅は隊員が今行なった非道を見て驚きの目を向ける、これが大人の、警備員のする事なのかと

 

「ふん!我等の正義を理解出来ないガキと犬っころめ!ガキは殺す訳にはいかないが…獣畜生なら死んでもいいだろう!」

 

ガチャ、と銃口を子犬に向ける隊員。子犬はよろけながらも立ち上がり少女を助けようと隊員に近づく…それを見て隊員が口元を歪めた

 

「馬鹿め、逃げればいいものを…やはり獣は愚かだな。自らの悪行を地獄で悔い改めるがいい!」

 

「ガーディー!逃げてぇぇぇぇ!!」

 

隊員は迷わず引き金を引こうとする。少女の懇願など知ったことか、何故ならこれこそが正義(・・)なのだから。自分達に刃向かう者こそ悪、自分達の行いは全て正義。その歪んだ考えの元隊員は引き金を引き子犬の脳天を撃ち抜こうとした…その瞬間だった

 

「やめ、ろぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

「な……!?げぶぅ!?」

 

『な!?』

 

「………あいつ!」

 

佐天が隊員へと何かを投げた、隊員は佐天の声を聞き佐天の方へと振り向いた瞬間…その何かが頭部に思い切り激突し一瞬で意識を刈り取る。少女を掴んでいた手が力を失って少女を離し少女は地面に落ちる…その何かとは金属バットだった

 

「な!?おのれ!小娘!我等の正義の執行を邪魔しおって!」

 

DAアラウズ達は佐天へと銃口を向ける。佐天は予備の金属バットを構えて恐れずに大声を上げる

 

「正義、正義、正義、正義…………何処が正義だって言うの!?女の子を痛ぶって!子犬を殺そうとして!そんな奴らの何処が正義て言うの!」

 

「我等は絶対正義!それに刃向かう者達は悪!何故そんな事も分からない!」

 

「そんなの絶対に分かりたくない!貴方達なんか正義じゃない!単なる暴力を振るう情けない大人よ!女の子を助けようとした子犬の方がよっぽど正義て思えるくらいにね!」

 

「ち、畜生以下だと!?このDAアラウズがか!?巫山戯けた事抜かしやがって!ならば貴様も悪だ!我等が断罪してやろう!」

 

ガチャと銃口を佐天へと一斉に向けるDAアラウズの隊員達。怒りに震えながらも自分達が駆除すべき悪を見つけてご満悦と言った表情だった…佐天は恐怖で足を震えさせながらも未だ呆然としている少女に向かって叫ぶ

 

「早く子犬を連れて逃げて!」

 

「!。う、うん!行こうガーディー!」

 

「ワフッ!」

 

子犬を抱いて逃げていく少女を見て安心した顔をする佐天、そんな彼女の横にいる介旅は銃口を向けられて冷や汗をダラダラと垂らしているが

 

「お、おい!なんでこんな真似をした!?と言うか僕を巻き込むな!」

 

「……だって放って置けないじゃないですか。女の子の目の前でペットが殺されるなんて…絶対にそれを阻止しなきゃ、て思ったら思わず身体が動いていたんです」

 

怯える介旅に佐天はそう告げる、佐天は天使騒動の時も臆せず天使達に金属バットを振るう度胸があった。だが介旅はその時は体を震えさせて逃げ惑っていた…そんな彼が銃口を向けられて恐怖しない訳がなかった

 

「な、何でだよ…何で人の為に、他人の為に命を張るんだよ」

 

そんな介旅の問いに佐天は簡単に、さも当たり前だと言うようにこう答えた

 

「助けたい、てあたしが思ったから。それ以外の理由なんてありませんよ。確かにあたしは無能力者だけど…人を助けられない理由にはならない!あたしは、例え力がなくても!誰かを助けたいんです!」

 

それが彼女の確固たる意志……自分だけの現実(パーソナルリアリティ)だった。例え能力が使えなくても誰かを助けたい…それが彼女の行動理由だった

 

「……だからあたしは」

 

佐天が金金属バットを構える手の力を強める。DAアラウズ達は何が来ると身構える…ごくっと唾を飲み込む介旅…そして佐天はカッと目を見開いて叫んだ

 

「全力で逃げます!」

 

ビュオオオオ!と擬音が似合いそうな速度で彼女は猛ダッシュでDAアラウズから逃げた

 

「………へ?」

 

『……………え?』

 

思わず固まる介旅とDAアラウズ。そしてハッとした顔で介旅は佐天を追いかける。その後でDAアラウズ達も二人を追いかける

 

「おぃぃぃぃ!!!?戦わないのかよ!」

 

「無理無理!金属バットで銃持ちの大人を倒せると思います!?」

 

「うん、無理だな!でもあの流れで逃げるか!?散々カッコいいこと言っておいて!?」

 

佐天は勝てる筈がないだろと最初から逃げの一択だった。散々カッコつけてたのに逃げるのかいと介旅はツッコむ

 

「そうだ!妖怪ラフレシア女なら逃げ道を教えてくれるかもしれない!」

 

「その手があった!初春ーー!助けて!」

 

介旅は初春にDAアラウズから逃げる道を教えてもらおうと叫び、佐天がそのアイデア頂きとインカム越しに初春に助けを求める

 

『………スピー』

 

「「寝てんじゃねえよこのクソラフレシア!」」

 

寝ていた、肝心な所でつかえねー野郎だった

 

「だぁー!しかも漫画でよくありがちな路地裏に逃げ込んだら行き止まりだと!?」

 

「こんな展開は漫画だけでいいのに!こんなの現実で起こると絶対に死んじゃうんだから!」

 

しかも逃げ込んだ路地裏は行き止まりだった、当然DAアラウズ達が逃げ場のない佐天と介旅を見て笑みを浮かべる

 

「ネズミが自分から罠に入ったか。愚かだな。だがそれが悪の末路なのだ」

 

DAアラウズは迷う事なく銃口を二人に向ける

 

「ちょ、そんなもの食らったら死ぬだろ!?一応は警備員じゃないのか!?」

 

「安心しろ。銃弾に当たってもお前達が死ぬ事はないからな」

 

「……は?」

 

「そう安全なんだ。なにせ性能試験では何発浴びせても的になった生徒は死ななかった!ちゃんと生きたまま罪を全身で理解できる安全な武器だ!」

 

それはつまり、それだけの苦痛を与えてもその生徒は死ななかった(・・・・・・)と言うことになる。死ぬ程の激痛を与えながらも決して死ぬことが出来ない生き地獄を与えると言うことだ

 

「正義を理解できない悪め、お前も我々が正しい導いてやろう!」

 

「…………ッ!」

 

殺される、介旅はそう思った。こんな所で、こんな変な理由で自分は死ぬのかと

 

(死にたくない……!こんな所で…終わりたくない!なんでこうなった!?弱者は生きる価値もないのか!?巫山戯るな!)

 

だが頭の中でいくら叫ぼうが結果は同じだ、介旅はDAアラウズに殺される。もう彼は心の何処かで諦めた…だが

 

「……諦めない」

 

彼女は、佐天涙子は諦めなかった

 

「こんな所であたしは死なない!」

 

彼女は最後の瞬間まで希望を捨てない、それがどんなに薄い糸でも、叶う確率が低くても…諦めたりしない

 

「あたしが死んだら初春も黒子も、御坂さん達も、アケミ達が悲しむから!絶対にお前らなんかに殺されてたまるかぁぁぁぁ!!」

 

「………!?」

 

その諦めない心に介旅は突き動かされた、隊員達は醜い足掻きだと嘲笑う

 

「安心しろ、死にはしない。自らの罪を理解させる為に痛みしか感じない身体してやろう」

 

そう言って隊員達が引き金を引こうとした瞬間、介旅はポケットに入れておいたある物体を空中へと投げた

 

『……?』

 

それはスプーンだった、目くらましのつもりかと隊員達は思う。だが彼らは忘れていた。超能力の中にはアルミを爆弾へと変えてしまう能力がある事を。そのアルミ製のスプーンは空中でぐにゃりと曲がり爆発を起こす

 

『なっ!?』

 

「……僕の強度は異能力者だ、爆弾並みの威力は出ない…でも大人を吹き飛ばすくらいの爆発は起こせるぞ」

 

「介旅さん……」

 

覚悟を決めた、この少女と共に助かる為に(・・・・・・・・・・・・)。どれだけ醜くても、悪足掻きでも最後まで諦めない

 

「さあ来いよ…スプーンはまだいくらでもあるぞ」

 

懐からスプーンを大量に出す介旅、一つ一つは弱くともこれだけの数なら大人を吹き飛ばすくらい訳がない…それを見て一歩後ずさる隊員達…いける。そう二人が希望を持ちかけたその時

 

「落ち着け同志たちよ」

 

その男は黒い鎧の様なアーマーを装着した巨漢だった、他の隊員達とは比べ物にならないほどその威圧感は桁違いだった。男は量子変速など恐れることはないと隊員の前に立つ

 

「私にはこのアーマーがある。複合金属で構成された装甲に内部に詰めた衝撃吸収ジェルでどんな攻撃も無効化できる。たかが爆風など恐るるに足らず。さあ目の前の悪を排除しよう」

 

そう言って男が取り出したのはサスマタだ、ただし通常とは違い人が感電死する量の電気を放っているが

 

「さあ悪よ、我々に断罪されるがいい」

 

「「……!」」

 

これまでか、そう二人が考えた…

 

「よお、面白そうだな。俺も混ぜてくれよ」

 

『!?』

 

そのヒーローはやって来た、白き翼を広げ路地裏へと降り立ち二人を守るように前へと立った。彼を見たDAアラウズ達は怒りの形相となる

 

「垣根、帝督ゥ!?」

 

「まーだ、生き残りが嫌がったか。自分を正義だと勘違いしてる悪党以下の連中が。正直お前らみたいな存在が一番の悪だよな、だからさっさと刑務所で一生を終えろ」

 

「ほざけ!同志たちよ!この悪の化身を我等の手で断罪……」

 

「煩えよ」

 

垣根はそう言って翼を横に振るった、ただそれだけで謎の爆発が発生し数十人はいた隊員が吹き飛ばされ一瞬で意識を刈り取られる

 

「が、ッはァ?!」

 

リーダー格であろう巨漢は辛うじて意識を保ったままだったが何が起こったか理解できなかった。地に倒れ臥す彼に垣根が歩み寄り笑みを彼に向けた

 

「よお、お前の事は覚えてるぜ。俺がDA本部を壊滅させた時真っ先に俺の強さにビビって逃げ出した腰抜けだよな?」

 

「ヒッ……?!」

 

「あの頃とは違って俺の姿を見てビビって逃げなかったのは評価してやる…だがな」

 

そう言って彼は三対の翼を顕現させる

 

「ここでもう一度絶望しろコラ」

 

翼で人体を殴打した音が響いた、垣根は翼を消して介旅と佐天へと歩み寄る

 

「よお、無事かお二人さん」

 

「ど、どうして垣根さんがここに?」

 

「実は最初からストーキングしてました」

 

「「犯罪だぁ!?」」

 

垣根には常識は通用しない

 

「………で、風紀委員の体験やって見てどうだった?面白かったか?」

 

「………」

 

そう言ってニヤニヤ笑いながら聞いてくる垣根に介旅は暫し無言になりながらもその問いに答える

 

「……まあ、悪くはなかった…かな?」

 

「……そうかい。それは良かった」

 

そう言って垣根はくるりと踵を返し、翼を展開して空へと飛翔する。そのまま飛んで行って消えて行った

 

「……警備員に通報してこいつらの身柄確保したら支部に帰るか」

 

「……ですねー」

 

二人は警備員に連絡し、警備員が現場にやって来てDAアラウズを逮捕し二人から事情聴取した後、佐天と介旅は支部へと帰る為に道を歩いた

 

「いやー、今日は災難でしたねー」

 

「軽いな、あんな目にあったのにノリ軽いな」

 

「いやこれでもあたし天使から友達守ったり、魔術師と出会った事ありますから。あんなもの序の口ですよ。いや本当にマジで」

 

「君の人生は凄いな」

 

そう軽口を言い合う二人

 

「……今日はありがとう」

 

「何ですか突然?」

 

「君のお陰で勇気が持てた。今度僕を虐めてくる奴らにこのスプーンを投げつけて爆発を起こしてやるよ。さっきのイカれ集団と比べたら不良なんて可愛いもんだしな」

 

「おー、いいんじゃないですか?ガツンとやれば不良達ももう二度と手を出して来ないかもしれませんしね」

 

この一件で前とは変われた気が介旅にはあった、今度不良達に脅されても逆にこのスプーンを爆破して撃退してやろう…そんな気概を彼は考えていた

 

「まあ、これも風紀委員の体験なんかさせた第一位のお陰だと感謝してやらん事もない…だけど僕をボコボコにした事は一生恨み続ける」

 

「あはは……」

 

それはそれ、これはこれだ。今度会ったら全力でドロップキックしてやる。そう介旅は決意した

 

「あ、そうだ。介旅さん、あたしとメアド交換しません?」

 

「……いいけど」

 

佐天が携帯を取り出しメアド交換しようと笑いながら言う、介旅は頷きながら自身のメアドを教え彼女のメアドを登録してある事に気づいた

 

(あ、そう言えば人生初のメアド交換だ。しかも女子と…なんか嬉しい)

 

「これでよし、と。また何かあったら連絡してくださいね!」

 

ニッコリと微笑む佐天に内心ドキッとした介旅はその感情を隠す様に彼女から目を背ける

 

「さ、早く支部に帰りましょう!帰って寝て仕事をサボってた初春のスカートをめくりましょう!」

 

「いやそれは犯罪……まあいいか」

 

介旅は夕日に染まる大空を眺める…雲一つないその大空を眺めて初めて介旅は世界の広さについて知った気がした

 

「……風紀委員か……僕でもなれるかな?」

 

汝の欲する所を為せ、それが汝の法とならん…介旅 初矢。彼の変化が学園都市に何を齎すのか…それは誰にも分からない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




まさかの介旅初矢とか誰が予想しただろうか?こいつが主人公とか誰も得しねえだろ。て書いてて思いました。ただ幻想御手が起きないこの世界では彼はどうなるのかと思い書いてみました。そして書いてて思った、佐天さんカッコいい

こういったマイナーなキャラを出すのは好きです。さて次回は等々始まった『魔神』編です。初っ端からシリアス、かと思わせてギャグ…と思わせてやはりシリアスな展開な予定です。ただ今執筆中なのでお楽しみに待っていて下さい

次回もお楽しみに!


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魔神 ゾンビ

お待たせしました、魔神編第一話でございます。今回は前半がギャグで…後半辺りからシリアスでございます…そして最後に意外な結末が…一応タグに残酷な描写があるし、念の為のアンチ・ヘイトもあるし大丈夫……だよね?不安ですわー。因みに今回シュメール神話系の要素があります(魔術師の名前、霊装の名前など)

さてそれではどうぞお楽しみに下さい


『……という訳で魔神 僧正と魔神 ネフテュス、そして理想送り(ワールドリジェクター) 上里翔流と手を組む事になった』

 

「へー、そりゃいいな。魔神二柱と理想送りが味方サイドにいるとは心強え。て事はこちら側の全力は俺とお前、オティちゃん、メイザース、脳幹先生、フィアンマ、オッレルスと上里達加えて十人か」

 

『そうだな』

 

垣根は夜空の下、アレイスターと通話をしていた

 

『……その件で君に重大な任務を果たしてもらいたい』

 

「重大な任務?」

 

『そうだ、君にしか出来ない……だが私は君にこんな真似をさせたくない』

 

「……なぁアレイスター」

 

アレイスターは重大な任務を垣根にしてもらいたいと言うが、親友にこの様な事をして欲しくないのか少し迷っている様だった…そんな彼に垣根は真剣な声色で口を開く

 

「言ったよな?俺は俺がしたい事をするって。俺は俺の意思でお前の計画の駒になってるんだ(・・・・・・・・・・・・・・)。だから迷う事はねえ。なんでも命令しろ。それが学園都市の…当麻逹の日常が守れるのならなんでもするさ」

 

『……そうか、そうだったな…君は…垣根帝督と言う男はそう言う考えの持ち主だったな』

 

何処か寂しげな声色でアレイスターが呟いた、そして彼は意を決して彼にその任務の内容を告げた

 

『………垣根帝督、君には死んでもらう(・・・・・・)

 

死んでくれ、そう言ったアレイスターに垣根は一瞬固まり…そして笑みを浮かべた

 

いいぜ(・・・)、それがあいつらの為ならな」

 

『………すまない』

 

「謝る事はねえよ、それが俺の任務なんだろ?」

 

そう言って垣根は通話を切った、そして夜空を見上げる

 

「……今日も星が綺麗だねぇ」

 

 

帆風は常盤台の自分の学生寮にてとある羊皮紙と睨み合っていた…アレイスターが渡した四大天使について書かれた羊皮紙だ。魔術に肩足を踏み入れた彼女でも解読は困難だろう…だが今の彼女には優秀なアドバイザー(・・・・・・)がいた

 

『いひひ。これは神の如き者について書かれた文献ですねぇ。これが今しているのはミカエルについて…』

 

「……成る程」

 

クリフォパズル545、コロンゾンが生み出した人工悪魔。消滅する筈だった彼女を垣根が使い魔として契約し帆風にこうして魔術について教えているのだ

 

(きひひ。な〜んで私がこんな真似をしなきゃいけないんですかねー。まあ消滅するよりはマシですけど…はぁ)

 

そう内心でブツブツ不満を呟きながらも羊皮紙の説明を行うクリフォパズル545。意外と仕事は真面目にやるタイプなのかも知れない

 

『しっかし、よく四大天使についてまとめられていますねぇ。神の右席が総出で自分達が司る天使について書いただけはあります。それに自分達が扱う術式まで…企業秘密とかしなくていいんですかね?』

 

「それだけ神の右席の皆さんがわたくしと垣根さんを信頼していると言う事ですわ。でもわたくしではこの羊皮紙を解読できなかったでしょうし…御説明ありがとうございますクリフォパズル545さん」

 

『……いえこれも契約の内ですから。ひひ』

 

クリフォパズル545は帆風潤子という人間が苦手だった。太陽の様に眩しい笑みを悪魔に向けてくる…これは契約で仕方なしにしているのにこうまで感謝されると心がムズムズするからだ

 

(はぁ…やりにくい。垣根帝督といい、この人といい…何を考えているのか分かりませんねぇ)

 

何度目か分からない心の中で溜息を吐くクリフォパズル545

 

(まあでも、いつか隙を見て契約を破棄して自由の身になってみせますよ…きひひ)

 

そう内心でほくそ笑むクリフォパズル545、だが今はそれを実行できない…故に垣根から命令された指示「潤子ちゃんに羊皮紙の内容を全て教えこめ」。それを叶える為に羊皮紙の解読をし内容を説明する

 

『ひひ。これで漸く四分の三…て、所ですかねぇ。後は神の力に関する解読のみですぅ』

 

「やっとですわね……さて、この調子で覚えますわよ」

 

『ちゃんと内容を覚えているんですかぁ?』

 

「当然ですわ、授業でも一度聞いた内容は忘れない様にしておりますので」

 

『……そこいらの勉強と一緒にされると少々複雑な気分ですぅ』

 

テスト勉強気分で羊皮紙に記された四大天使逹の情報を覚えていく帆風、色々とおかしいとクリフォパズル545は思いながらも説明を続ける…と、ここで部屋に入鹿が入って来たので二人は解読を一旦やめる…この状況を入鹿に見られたら色々と不味いからだ

 

「何やってるんです帆風さん?」

 

「いえ特に何も…何かあったんですか入鹿さん?」

 

クリフォパズル545の姿は入鹿には見えない、だがそれだとただ帆風が虚空に向かって独り言を呟く痛い人だと思われかねないので彼女がある間は解読をしないと帆風は決めていた

 

「実は学び舎の園に侵入した不審者6名がいるそうですよ」

 

「……6名?」

 

「ええ、女三人に男三人だとか…全く学び舎の園のセキュリティーはどうなってるんでしょうかね。まあ帆風さんは平気だと思いますが…一応注意しておいて下さいね」

 

男女6名が学び舎の園に侵入したと聞き、帆風が目を丸くする…そして入鹿は扉を閉めて外へと出ていく

 

『いひひ。さて、邪魔者もいなくなった様ですしさっさと終わらせますよぉ』

 

「………そうですわね」

 

その侵入者とやらが気になるが自分はこの羊皮紙の内容を覚える事に専念しなければ、と羊皮紙の説明を聞く帆風…その侵入者逹が自分の知り合いだとまだ彼女は知らない

 

 

「……あり?ここは何処?」

 

「その声は……先輩?てか何ここ暗いんだけど」

 

「美琴もいるのぉ?てかここ何処よ…狭いわねぇ」

 

「お前もいるのかよ、てかなンだこの状況?」

 

「一方通行もいんのかよ…てか臭っ!?誰か屁こいただろ!」

 

「すまん俺が屁こいた!」

 

上条逹は謎の空間にいた。暗い、狭い…おまけに臭いときた(削板の屁)。ぎゅうぎゅう詰めで身動きが取れない

 

「なんで俺らはこんな狭くて暗い場所に…ん?」

 

上条がそう訝しむ中、携帯が鳴り響く。何とか携帯を取り出して通話ボタンを押し携帯を耳に当てる

 

『よお、ちゃんと6人全員いるか?』

 

「垣根!?て、この状況はお前の仕業か!」

 

『まあな、だが時間がねえ。手短に説明するぞ』

 

上条はお前の仕業かと文句を言おうとするが垣根の真面目な声色に全員がピクッとする

 

「……何だ?」

 

『学園都市にコロンゾンの手がかかった魔術師が侵入した、シュメール系の魔術師で名前はイナンナ=ムドケスダ。持ち込んだ霊装がヤバくてな…名前は『エンリルの鶴嘴』』

 

「鶴嘴…地面やコンクリートを砕くあのつるはしの事か?」

 

『ああ、この霊装の能力は大気、空気を媒体として呪力を最大範囲この学園都市の一学区までなら範囲内でな。呪力が混じった空気を吸うと霊装の使い手の命令に逆らえなくなるて言うヤバい代物だ』

 

エンリルの鶴橋、垣根の説明によれば古代の霊装らしくそれを使って今までも多くの都市が同族同士で殺し合う事で滅んで来たという。そんな恐ろしい能力を聞き全員が目を見開く

 

「んな…!?チート過ぎるだろ!」

 

『だが発動まで五時間はかかる。恐らく犯人はこの学び舎の園の内部にいる筈だ…ここには強い能力者が沢山いるしな…術者を見つけてくれ』

 

「おい、帝督は何で一緒じゃねえんだよ?」

 

『俺はイナンナの仲間の魔術師 ニヌルタ=ナンナルて野郎を追っててな。手が離せねえんだ…お前らしか頼める奴がいねえんだ…頼む』

 

削板の問いに垣根は別の魔術師を追っているからだと説明する、彼の頼みを聞き上条逹は目を見渡せ頷いた

 

「……分かったよ垣根、俺らがその魔術師を捕まえてやる」

 

『……ありがとなお前ら』

 

「……で、質問したい事があるんでせうが」

 

『なんだ?』

 

「………この暗くて狭い場所はどこなんだ?」

 

上条はここは何処なのかと問いかける、垣根は暫く黙り全員がん?となる。そして上条達がいる暗い箱の中にバシュシュ!という奇怪な音とオレンジ色の火花が走った。まるで導火線を火がなぞるかの様に、火薬を使って箱を解体した様だ。桃から生まれた英雄の如く左右に割れた箱から上条逹は外の世界を覗く

 

そこは細長いロッカーがたくさん並べられていた、そこは背もたれのないベンチが置かれた空間だった、そこは甘い匂いのする空間だった、そこは下着姿(・・・)の少女逹がそれが当たり前の様に世間話をしていた…はっきり言おう、ここは女子更衣室だ

 

『……………な、え?』

 

『……………………』

 

超能力者達と少女達の視線が交差する、お互いに無言、上条達は自分達が手押し台車の上に置かれた箱の中に詰め込まれていたことに気づいた。昔のリアクション芸人みたいな状況だ…この状況を作ったのは勿論あのホスト崩れのメルヘンクソ野郎である

 

不運だったのは二つ、上条が手に携帯電話を握っている事。これじゃ盗撮みたいだね。そして…ここが学び舎の園だったという事だろう

 

『死なす大道芸人式盗撮犯共がァァァあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!』

 

『いやァァァああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!世界一ダサい冤罪をかけられちゃってるぅぅぅぅ!!?』

 

ミッション ドキドキワクワク。女子だらけの学園で霊装を見つけだせ。女の子達に捕まったら殺されちゃうぞ☆割と命がけドキドキサバイバルの始まり始まり〜♪

 

 

取り敢えず上条達は逃げた、ええ逃げましたとも。少女達が放ってくる炎や氷、雷、包丁、投げ槍、日本刀、仏像、手榴弾を避けながら屋根の上を走る…てか後半の殺意度高杉

 

「巫山戯やがってあのクソメルヘン!」

 

「俺らになンて冤罪をかけやがンだあのくそったれがァ!」

 

「あいつ全裸にしてとろろぶっかけてやる!」

 

「殺す殺す殺す…絶対に殺すぅ!」

 

「殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺…殺意力満開なんだゾ☆」

 

「帝督ゥゥゥゥゥゥッ!!」

 

全員垣根に対する殺意度MAXだ。当然だね

 

「いたわ!あのド変態共!」

 

「待たんかいゴラァァァ!死なすから降りてこいやアァン!?」

 

「手の込んだことをしやがってこの変態とクソレズが!死なすから降りてこい!二回死なすから!」

 

「死なす死なす!」

 

こちらも殺意力MAXである、全員お嬢様らしかぬ言動と顔芸を披露。芸人の卵かな?中にはロケットランチャーを抱えている少女もいる。いやそれどっから調達して来た

 

「あの子達殺意力高過ぎぃ!?」

 

「あーもう!操祈をお姫様抱っこしながら走るのは厳しいわね!」

 

「いや食蜂を自分の足で歩かせたらいいんじゃねーのかにゃーん?」

 

「「だが断る(キリッ)」」

 

「お前ら余裕なンだろ、実は」

 

(いいなー、羨ましいぞ操祈)

 

美琴は食蜂をお姫様抱っこしながら走っていた、二人はこれをやめる気はない。上条は指を咥えてそれを羨ましそうな目で見ていた

 

「ッ!いい事を思いついた!光の処刑で地面に逃げ込めばいいんだ!」

 

「それよ!流石先輩!」

 

「ありがとうテッラのおじさん!アンタと出会えてて良かった!」

 

『いやそんな事で感謝されても…複雑ですねー』

 

そんな幻聴が聞こえてきたが無視無視、上条は光の処刑を発動する

 

「優先する。ーー人体を上位に、地面を下位に!」

 

スルスルと上条達の身体が地面の中に入っていく…息はできる、これなら見つからずに済む…そう喜ぶ一方通行達だったが…

 

「だぁぁぁぁ!!?右手がつっかえて地面の中に入れない!?ふ、不幸だぁぁぁ!!?」

 

「……そう言えば当麻の右手は幻想片影の効果を受けないんだったな」

 

そう、上条は右手以外が地面の中に入っても右手は光の処刑の恩恵を受けられないのだ

 

「畜生!俺だけ一人寂しく逃げなきゃいけないのかよ!不幸だーーー!」

 

「それでも俺達には光の処刑をかけた状態のままなンだな」

 

上条は泣きながら一人寂しく地面の上を走る、上条の後を地面の下から追う一方通行達

 

「見つけたわ!一人だけだけど関係ない!死なすわよ!」

 

「死なす死なす死なす死なす死なす死なす死なす」

 

「いやぁぁぁぁぁ!!?誰か助けてぇぇぇ!」

 

上条は久しぶりに不幸だった、珍しく不幸が仕事をした瞬間だった

 

 

「ふぅ、漸く羊皮紙の解読が終わりましたわ」

 

帆風は漸く羊皮紙の解読を終え、内容を全て把握したと呟きながら自動販売機の前に立ちドリンクを飲み干す…クリフォパズル545は羊皮紙の解読が終わるなりご主人様の家に帰ると消えてしまった

 

「…そう言えば学び舎の園に不審者がいると言っていましたね…全く警備は何を」

 

そう帆風が言いかけた次の瞬間だ、天井をぶち破って上条達がドテーンとコミカルな音を響かせて帆風の近くに落下してきた

 

「…………………」

 

『て、天井から落ちてくる系ヒロインだよ☆』

 

「いや、何をしているんですか皆さん」

 

帆風は頭を抱えた、何してるのこいつら…と。そして理解した不審者とは上条達の事かと。何故常盤台の生徒である美琴と食蜂も不審者に?と思ったがツッコむとキリがないのでやめよう

 

「……侵入した目的は?魔術絡みですか?」

 

「お、おう…潤子ちゃんの理解力の早さに上条さんもびっくりですよ」

 

「もう慣れましたから…」

 

理解力の早い帆風に驚きつつも上条達は学び舎の園に魔術師がいる事、そいつが持つ霊装が危険な事を伝えると帆風は顔を引き締める

 

「成る程、皆様はそれを探す為に潜入したという事ですか…変態という不名誉な呼び名を頂いてまで」

 

『それはクソメルヘンの所為だ!』

 

事情を理解した帆風、また怒りゲージが溜まり垣根に怒りを向ける上条達…と、ここで帆風がいい案を思いついたのか携帯を取り出し何処かへと電話をかける

 

「?何をしてんだ帆風?」

 

「いえ、魔術アドバイザーに少しお尋ねしてみようかと」

 

『?』

 

魔術アドバイザーに聞いてみよう、そう言った帆風の言葉の意味がわからず首を傾げる上条達…そんな彼ら彼女らをよそに帆風は耳に携帯を当て通話を始めた

 

 

『……はぁ、何なんですかねー。この状況は』

 

クリフォパズル545は困惑していた、これどういう状況?と

 

「むにゃむにゃ……夢は美味しいです」

 

『た、助けて下さい!し、締め付けられて…!』

 

「あれー?メガネは何処?」

 

ミシミシと万力を込めてカブトムシ05を抱きしめているフロイライン、助けてくれーと六本足をバタつかせる05、メガネメガネーと目を3にして手探りで床を触る風斬(なおメガネは彼女の頭の上にかけてある)…うーん、カオス

 

『はぁ……この家は変人しかいないんでしょうかねー……ん?』

 

そう溜息を吐いたクリフォパズル545だが、ふと家の電話が鳴りクリフォパズル545が受話器を取る

 

『もしもし、新聞の勧誘やら変な宗教勧誘なら間に合ってまーす』

 

『わたくしです、帆風です』

 

『貴方でしたか、で。何のご様子ですぅ?ひひ』

 

電話の相手は帆風だった、クリフォパズル545は何事かと尋ねる

 

『実はお聞きしたい事が…「エンリルの鶴嘴」という霊装をご存知ですか?大気や空気を媒体としてそれを吸った人達を思うがままに操る霊装らしいのですが』

 

『………はぃ?』

 

クリフォパズル545は呆けた声を出した、それ程までに彼女が何を言っているか理解出来なかったからだ

 

『いひひ。何言ってるんですぅ?そんな霊装がある訳ないじゃないですか(・・・・・・・・・)。そんなものコロンゾン様でも作れませんよ』

 

『……え?し、しかし現にその霊装が学び舎の園の中にあると…』

 

『そんな訳ないでしょう、霊装と言ってもそんな強力な力を持った物がある訳ないでしょう。基本魔術は等価交換…裏技でも使わない限りそんな事起こせる訳がないんです』

 

『…………』

 

『話は終わりですかぁ、では切りますよぉ』

 

ガチャン!と受話器を元の場所に戻すクリフォパズル545。何の話をしたかったのかとクリフォパズル545は考えるが一度振り向いてこの家の住人達の奇怪な行動を見てまた溜息を吐いた

 

 

プープーと通話が切れた音が聞こえる携帯をしまい帆風は何と言っていいか分からない表情で上条達の方を向く、彼等も同じ顔だった。エンリルの鶴嘴という霊装はない…なら何故垣根はそんな事を言ったのか?

 

「……どういう事なんだ?そんな霊装はない…?でも垣根は…」

 

上条がどういう事なのかと呟く、他の面々も同じ反応だった…その中で唯一帆風はどういう事なのか気づいた

 

「……そういう、事ですか」

 

帆風は両手の拳を強く握りしめた、まるで何かに苛立っているかのように…

 

「……まだ、まだ貴方の信頼に足るに欠けるとでも言うのですか?……いい加減にしてください……!貴方と言う人はいつもいつも…!」

 

煮え滾るマグマの如く怒りを爆発させる帆風、普段の穏やかな彼女からは想像できないその怒り様に上条達は戸惑う

 

「な、何でそんなに怒ってるんだ?」

 

上条が何故怒っているのかと尋ねると帆風は上条達の方へと顔を向ける

 

「気づきませんか?垣根さんの事です、皆さんを危険から遠ざける為に偽りの情報を流した(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)可能性があると言うことに」

 

『!?』

 

帆風が言った言葉を聞いて誰もが固まった、垣根帝督は普段は巫山戯きって上条達にスカイダイビング(パラシュートなし)をやらせたり、ガードベントさせる様な友達の事を何とも思っていない様に感じる…だが実は友達思いで誰よりも上条達の事を思っている事を彼らは知っている

 

そんな垣根の事だ。危険な事から上条達を遠ざける為にわざと嘘の情報を流し学び舎の園に送り込んだと考えられる…だとしたら、今彼は……

 

「ーーーーッ!まさかあいつ!?」

 

上条は急いで携帯電話を取り出し垣根へと通話をかける…だが当然の如く垣根に繋がる事はなかった

 

 

 

「さて、そろそろあいつらは俺の嘘に気づいた頃かね?」

 

垣根は第十一学区のコンテナ集合地帯のとあるコンテナの上に座りながらそう呟いた

 

「……悪いな皆、嘘ばっかりついてさ。でもまあ…許してくれよな」

 

垣根は携帯を取り出し今まで自分がとったカップリング写真を見て笑う、そして最後にカップリング写真ではなく自分や帆風、上条達と一緒に撮った全員で笑い合いながら巫山戯て撮った写真を見てくすりと笑う

 

「………じゃあな」

 

垣根はそう言ってそのコンテナの上に携帯を置く、それを名残惜しそうに見つめていたがコンテナの上から飛び降り地面へと着地し自分の標的へと目線を合わせる

 

「初めましてだな……なあ、魔神 ゾンビ(・・ ・・・)?」

 

「ええ、初めまして垣根帝督(イレギュラー)

 

その人物の名は魔神 ゾンビ、魔術を極め神の座へと至った者達の一人である

 

「思えば貴方の存在があたくし達の救済を狂わしたんでしたね」

 

ゾンビは語る、目の前に敵…いやそもそも敵とすら認識していないが、垣根がいると言うのに何やら語り始める…まるで垣根など恐るるに足りない存在だと言わんばかりに

 

「貴方と言う特異点(イレギュラー)が周囲の人間を良い方へと歪めていった。良い例がアレイスター、オティヌス…それ以外にも貴方に影響を受けた人物は多いですね」

 

「……別に良いだろ?皆が幸せなら」

 

いいえ(・・・)ダメに決まってますわ(・・・・・・・・・・)

 

皆が幸せになるのならそれで良い、そう言った垣根に対しゾンビはそれではダメだと一蹴した

 

「貴方のせいであたくし達を救済する幻想殺しの方向性が歪んだ…そのせいであたくし達の救済が台無しになりました……これも貴方のせいです」

 

「……お前ら魔神の望みは世界をより良くすることじゃないのかよ」

 

「最初は、ね。でも最早そんな事は二の次なのですよ。幻想殺しが手中に収まれば思うがまま世界を改変できますもの。もしダメならやり直せば良い。そしてまた改変すればいいんですよね」

 

「………哀れ、だな」

 

ゾンビは、いやゾンビ達(・・・・)は上条の事を単なる幻想殺しの付属品程度にしか思っていない。魔神達に取って必要なのは幻想殺しのみで上条当麻は、正確には彼自身の意思は必要ない。自分の親友に対する扱いに怒りを燃やしながらもかつては世界をより良くしたい。そんな願いを込めて髪へと至った者達の末路がこれかと垣根は哀れみの目をゾンビへと向ける

 

「さて、幻想殺しを歪ませる原因となった貴方を八つ当たりで殺した後はこの世界を一度壊しますか」

 

「んな事させねえよばーか。自分勝手もいい加減にしやがれくそったれが」

 

昼飯はラーメンにしよう並みの軽さで世界を滅ぼすと告げるゾンビ、それに対し垣根は絶対にそんな真似はさせないと三対の翼を顕現させその未元物質の翼を即座に覚醒。白い輝きを放つ純白の翼へと変化を遂げる

 

「この世界をお前らの勝手で好き勝手させるかよ」

 

「…前から思っていたんですが…何でこんな事をするんですか?貴方は異世界の魂を持つ者です。ならこの世界の住人をそうまでして何故守るのです?」

 

ゾンビには理解できなかった、何故こうまでして学園都市を、いや世界を守るのかと。そんな問いに垣根は口元を歪ませながら答えた

 

「………好きだからだよ、この世界(とある)が」

 

「………んん〜?」

 

「俺はさ、この世界が…とある魔術の禁書目録も、とある科学の超電磁砲も、上条当麻も、御坂美琴も、一方通行も、アレイスターも…全部好きなんだよ。キャラも設定も魔術とかも全部ひっくるめてな。カップリングの自由度は高いわ、悪人も含めて全員いいキャラしてるし、何より設定も面白い…俺はそんなとあるが好きだ」

 

「……ちょっと何言っているのか、あたくしちょっと分かりませんねー?」

 

「まあ。要するにだ」

 

彼はとあるが大好きだ、キャラクターも、設定も、全てが好きだった…だからこそ(・・・・・)。彼は悲劇が嫌いだった、原作を知っているからこそこれから起こる悲劇を無くしたいと思った、誰も不幸にならないハッピーエンドを目指した

 

「俺の友達に手を出そうってんなら俺は許さねえぞコラ、て事だよ」

 

だからこそ、幻想殺しの方向性が変わったから次の幻想殺しに期待を込めて世界を滅ぼす。そう言ったゾンビ含む魔神達の勝手を垣根は見過ごせなかった。絶対にそんな真似はさせないと

 

「……イカれてるんじゃないんですか貴方?」

 

「そりゃそうだろ、平和な世界で生きてた(別世界)人間がいきなり暗部堕ちして人殺して見ろ。性格とか歪むの確定だろ。俺はどっかの最初から人殺せるなろう系主人公じゃなくて単なる一般人なんだから当然だ」

 

「いえ、そういう意味ではなく…赤の他人をそうまでして助けたいんですか?」

 

「愚問だな、それがヒーローて奴だろ?」

 

イカれている、そうゾンビは判断した。こうまでして他人を守りたいかと…確かにその点では垣根は常人よりも狂っているかもしれない…だがそれこそ垣根の性質だ

 

「さあ、覚悟しろよ魔神。お前らのそのチンケな野望を俺がぶっ壊してやるよ」

 

「………はぁ」

 

垣根がそう宣言した瞬間、ゾンビがやれやれと溜息を吐いた。それは何かに失望したかの様にも、呆れている様にも見えた。訝しむ垣根にゾンビはゆっくりと口を開く

 

まさか(・・・)貴方程度があたくしに勝てるとでも(・・・・・・・・・・・・・・・・)?」

 

空気が重くなった、気温が下がった、そう錯覚する程の重圧感が周囲一帯を支配する。それがゾンビが放つ威圧感と殺意だと気づくのに垣根は数秒遅れた。威圧感と殺意だけでこれだ。何からの術式を行使したわけではない。ただ神が殺意を向けるだけ、それだけで常人ならば膝をつき許しをこい余りの恐怖に心臓が破裂しているだろう…だが垣根は笑みを浮かべるのみ

 

「……は、虫ケラ()にそんなに殺意を向けてくるとか…随分お怒りの様だな神様?」

 

「ええ、貴方には怒っていますよ…あたくしの救いの邪魔した貴方にはねぇ!!」

 

そう言いながら狂気の笑みを向けるゾンビ、垣根は左手をポケットに突っ込んだまま笑みを浮かべ続ける

 

「ですが嬉しくもあります!あたくしの手で貴方を殺す事でストレス発散が出来るからなのです☆!」

 

「ハッ、やれるもんならやって見ろよ」

 

垣根はそう言って指を鳴らす、するとコンテナ集合地帯全域に()が広がっていく、未元物質だ。未元物質が周囲一帯を白に侵食していく…そしてそこから生まれたのは白いカブトムシ、白いトンボ、白いカマキリ、白い恐竜…まだまだ複数の生物を模した自律兵器達が形を成していく。その数は百や千などを軽く超えていた…下手をすれば万をも超えるかもしれない…そんな兵器達が空を、地面を覆い隠さんばかりに出現したのだ。もしかすれば地下にも潜んでいるかもしれない

 

「まだだぜ」

 

更に垣根は自分自身の複製であろう白い垣根の姿を模した人形達を形成、その人形は背中に垣根と同じ三対の翼を広げている…それだけに止まらない。自律兵器の一部は2、30メートルまで巨大化を始める事で自分だけの現実を拡張し能力の強化を行う。更にカキネネットワークで垣根は多才能力を発動、更に「三位一体」の術式で魔術の行使を可能とし右手からセルピヌスを顕現させる

 

「自律兵器達約数万、俺の複製3000、更に俺は多才能力と魔術の使用が可能。更に幻想殺しの噴出点でもあるこいつがいるんだ…これだけ能力てんこ盛り盛りにすればアレイスターにも勝てると自負してるが…どうだ?」

 

「……滑稽…実に滑稽です。まさかその程度の実力(・・・・・・・)であたくしに勝つ気なのですか…片腹痛し、なのだ☆」

 

はっきり言おう、今の垣根の実力ならば弱体化したオティヌスやメイザース、脳幹にすら楽に撃破出来るだろう。それ程のポテンシャルを秘めているのだから当然だ…だがそれでもなおゾンビ(魔神)は余裕を崩さない

 

「まあ、暇潰し程度にはなりますかね?」

 

「抜かせ、ていとくんのまさかの大勝利を勝ち取ってやるぜ」

 

「えぇ〜?無理ですよ。だって貴方は人間、あたくしは神様ですから」

 

「人間を舐めてやがるな、人間の無限の可能性てのを知らねえのか?」

 

「知ってますよ?あたくしも元人間ですから、知った上でお答えしましょう。貴方は絶対にあたくしには勝てない」

 

「やってみなきゃ分かんねーだろ」

 

「ならご自由に、どうせ貴方はあたくしに殺される運命なので」

 

神と天使の会話が続く、ゾンビは暇潰しにはなってくれよと微笑み、垣根は笑みを浮かべながら翼を広げる。自律兵器達も複製人形達もゾンビへと襲いかかりセルピヌスが咆哮を轟かせてゾンビを噛み砕かんと首を伸ばす

 

「教えてやるよ魔神、これが俺の…人間様の力だぁぁぁぁぁ!!」

 

その言葉の直後にゾンビに白い津波が押し寄せて来た、まるでゾンビを巨大な海が飲み込まんばかりに…それを見たゾンビは軽く手を振り…そして

 

 

「!?皆見つけたわ!」

 

「本当か美琴!?」

 

「ええ、今から一時間前だけど…ほらこの角の監視カメラに垣根さんが映ってるわ!」

 

学び舎の園から抜け出した上条達は垣根が何処にいるのか調べる為、美琴が携帯ゲーム機で町の監視カメラをハッキングしデータを読み取り垣根が何処にいるか探っていた。そこで漸く情報を見つけたのだった

 

「ここは第十一学区…ていとくンが行った方向を考ェると…コンテナ集合地帯に向かってンのか?」

 

「確か彼処は無人…だったよな?戦うのなら一番向いてる」

 

「て事はやっぱり垣根さんは戦闘する気マンマンて事ねぇ」

 

「あの野郎…私達に騙して一人だけ戦おうって事かよ…あのホスト野郎が」

 

一方通行の頭脳でカメラの位置や場所、垣根が向かった方角から逆算して垣根がコンテナ集合地帯に向かっていると推測する。削板はコンテナ集合地帯なら戦うのに最適だと呟き食蜂と麦野がやはり一人で戦う気なのかと歯噛みしながら呟く

 

「…………ッ!」

 

「!?帆風先輩!?」

 

帆風は垣根が何処にいるか知った途端、扉を蹴り飛ばして第十一学区目掛けて走り出した。美琴が慌てて止めようとするが彼女はもう既に消えていた

 

(垣根さん……!貴方と言うお人はいつもいつも迷惑をかけて…!)

 

天衣装着では間に合わない、ならば天使崇拝にてザフキエルを降ろし超高速で移動する

 

(もう本気で怒りましたよ、貴方が泣くまで殴り続けます。泣いても殴るのをやめません。そのカッコいい顔をグチャグチャにするまで殴り倒します…こんな事を思うぐらい心配しているのに…貴方はいつも勝手な事ばかり!わたくしの気も考えないで!)

 

帆風は許せなかった、垣根が自分達を騙した事についてではなく、結局どれだけ強くなっても垣根には自分は隣に立つ程の信頼を、強さを得ていなかったのかと自分自身が許せなかった

 

(昔のわたくしならば貴方の隣には辿り着けなかったかもしれない…でも今は違う(・・・・)。今のわたくしなら貴方の隣に立てる…!)

 

昔の弱かった自分とは違う、垣根の隣に立つ為に力を手に入れた。全ては大好きな彼の為に

 

(わたくしは貴方を頼りにしています、だから垣根さんもわたくしを頼って下さい。貴方とならわたくしはどんな所までもお伴します)

 

第十一学区に到達した、コンテナ集合地帯まであと数十秒もかからないだろう

 

(さあ!教えてあげますわ垣根さん!わたくしは貴方にとってお荷物では…)

 

コンテナ集合地帯に辿り着いた、その瞬間だった。帆風の思考が消し飛ぶぐらいの光景が目に映った

 

「……………………………………………………………………………………………ぇ?」

 

白だけだった、コンテナ集合地帯はまるで大災害にあったかの様に綺麗さっぱり消滅しておりコンテナ一つもなかった。あるのは白い物質だけ…恐らくは未元物質の残骸だ、カブトムシ達や複製人形の残骸である手足や頭部が墓標の如く転がっていた

 

「…………………ぁ」

 

その白い世界で唯一の色を見つけた、赤い色(・・・)だ。血の様に赤い赤…いや血そのものだ。じゃあこの血は一体誰のもの(・・・・)

 

「…………ち、が……う。違う、違う…違う!」

 

頭の中では理解している、でも信じたくない。そんな筈がない、これはきっと敵の血だと帆風は信じたかった…そして次に映り込んだのは破れたワインレッドのスーツに茶髪の青年が原型を無くして倒れている姿だった

 

「……う、そ…嘘です、そんな事がある筈ないです…だって貴方は…貴方は…学園都市最強の超能力者の第一位なんですよ?」

 

死んでいた、生きている様子はない。手足は捥がれ下半身と上半身に切断され頭部はまるで装飾品の様に白いカブトムシの砲身である角を地面に突き刺しその砲身に飾り付けていた…趣味の悪いオブジェだ、本当にオブジェだったらよかったのに

 

「……な、んで…」

 

帆風の眼から熱い何かが流れた…涙だ

 

「……死ん、じゃったん…ですか?」

 

力なくよろよろと誰かの死骸へと歩み寄る帆風

 

「ねえ返事をしてくださいよ…ねえ、冗談なら笑えませんよ…」

 

彼女の手がその頭部に触れる。冷たい、唇が動く様子はない…もう彼は二度と自分に語りかけることはないだろう

 

「…………垣根さん」

 

もう我慢の限界だった、その場で泣き崩れる帆風…結局彼女は大事な人を守る事は出来なかった

 

 

 

 

 

 

 

今日この日、垣根帝督は『死んだ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回もお楽しみに!


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後悔、懺悔、憤激、そして…

前回ていとくんが呆気なくバトル描写無くやられたのは原作をイメージしたからです(オティヌスのかませにされた場面)。さてやられてしまったていとくんは一体どうなったのか?

今回もバトル描写はなし、でもギャグも(殆ど)なしです。ただ重い話が続くだけです。でも重いだけじゃないのでご安心を



「脳幹、垣根帝督の回収(・・)は終わったか?」

 

「ああ、ご丁寧に魔神は頭部だけを綺麗に残しておいた…相手にとっては嫌がらせのつもりなのだろうが…脳さえ残っていれば超能力は使える(・・・・・・・・・・・・・・・・)からね」

 

アレイスターは脳幹の言葉を聞いて軽く頷いた、親友が死んだというのにその顔は普段同様の無表情…そんなアレイスターの反応に苛立ったのかオティヌスが彼の襟首を掴む

 

「……おいアレイスター、なんだその反応は?盟友がやられたんだぞ?あ"ぁ?」

 

「落ち着けオティヌス」

 

「……ッ!?落ち着ける筈がないだろう!?私の盟友が、理解者がやられたんだぞ!?」

 

落ち着けオティヌス(・・・・・・・・・)。これは決定事項だ」

 

「ーーーーーッ!!」

 

アレイスターはそう冷たく言い放つ、だが内心の激情を抑えきれていないのか殺意がその言葉には滲み出ていた。オティヌスは思わずその手を離した

 

「……彼も怒っているんだよ」

 

「……オッレルス」

 

オッレルスがアレイスターを擁護するかの様に自分の妹に言い聞かせる。彼の横にいるフィアンマも感情を出さない様にしているが内心は怒りで沸騰している筈だ

 

「……脳幹、垣根帝督の様子は?」

 

「脳を腐らせずに脳の働きを続けられる液体に浸した機械に脳みそを三つに分けて収めてある。それと潰れた体の代用品として冷蔵庫より大きな機材を脳に直接繋いで一応は生命活動を維持してあるよ」

 

「……能力を吐き出させる為の装着として、か?」

 

「……まあそうなるね」

 

脳幹は垣根の現在の状況を説明し、メイザースが反吐を吐く様な声色で軽く脳幹とアレイスターを睨む

 

「何を考えているアレイスター?垣根帝督はお前の親友ではなかったのか?」

 

「……………」

 

「貴様は言ったではないか、復讐よりもお前は娘や親友と共にこの世界を生き「メイザース!」……ふん」

 

アレイスターを罵る様にメイザースが罵り声を言うが脳幹に大声で遮られ、彼は漸く喋るのをやめた

 

「……すまない、オティヌス、メイザース、脳幹、フィアンマ、オッレルス…出て行ってくれ」

 

「……分かった」

 

脳幹が代表してオティヌス達を先導して窓のないビルの一室から出ていく…去り際までオティヌスはアレイスターを睨んでいたがアレイスターは俯いたまま彼女の視線に気づくことはなかった

 

「くそっ……!アレイスターめ!一体何を考えている!盟友を無駄死になんぞに使いよって!」

 

「……無駄死にではないぞオティヌス」

 

オティヌスの怒声に答えたのはフィアンマだった、オティヌスはフィアンマを睨む。常人なら今の彼女に睨まれたら心臓が止まってしまうかもしれない…だがフィアンマは一切気にせず言葉を続ける

 

「魔神達は自らの無限の力故に世界を滅ぼしてしまう。だから意図して弱体化している筈だ…それを垣根に探らせたのだろう…何度か攻撃を受けさせて攻撃をさせて、その魔神を弱体化させている術式を探りそれを逆算し利用する事で魔神達を可殺可能にする…それが奴の目的だろう」

 

そんな事は知っている(・・・・・・・・・・)。私が怒っているのは何故盟友だったという事だ。盟友でなくとも私やメイザースでもよかった…」

 

フィアンマは魔神達の弱体化術式…鏡合わせの分割を逆算し可殺可能にする為だと告げるがそんな事はオッレルスには最初から分かっていた。彼女が怒っているのは何故垣根だったのかだ。自分やメイザースでもよかったのでは?そう言い切る前にオッレルスが代わりに口を開いた

 

「…結局彼は優し過ぎたんだよ。誰よりもね、良くも悪くもそれが垣根帝督だったんだ」

 

「……どういう事だクソ兄貴?」

 

「分からないかい?垣根帝督はね、皆が好きなんだよ。この街もこの世界も…全部ね。彼にとって俺やオティヌス達は日常の一部、つまり大事な人なんだ…だから傷つけたくなかった。だから自分が代わりに傷つこう…それで自分が死ぬ事になっても構わない…それが彼の心情だよ」

 

「……だから俺はあいつが気に食わん」

 

オッレルスは垣根は優し過ぎたと称した、それが彼のヒーローとの性質であり…欠点でもあった。それを聞いてメイザースが唇を噛んだ

 

「俺達黄金夜明並みの才能がありながらもあいつは下らん事ばかりに手を回しおって…俺の様なメイザースの紛い物のタロットまで助ける様な愚者だとは思っていたが……あの馬鹿者め」

 

メイザースは垣根が苦手だった、魔術の才能がありながらも能力者で、能力者の癖に魔術を使うわカプ厨やらでツッコミ所が多かったが何よりもメイザースが気に入らなかったのはその優しさだ。自分の様なサミュエル=リデル=マグレガー=メイザースを再現しただけのタロットカードすらも哀れんで救った男…その優しさが気に入らなかった。それと同時に自分にはない彼の何かに憧れていた

 

「……素直に悲しめばいいのに。君といい、アレイスターといい…本当に君達(・・)は不器用な人間だよ」

 

そう脳幹は呟いた、彼は気づいていた。恐らくオティヌス達も気づいているだろう。アレイスターが何故自分達を部屋から追い出したのか…見られたくなかったのだろう。自分がこれから起こす痴態を

 

「……はぁ、類は友を呼ぶとはよく言ったものだ…君達は変人だよ。垣根帝督、アレイスター=クロウリー」

 

 

アレイスターは一人部屋の中で立ち尽くしていた

 

「………」

 

思い出すのは一人の親友との思い出だった、最初は自分の計画(プラン)のスペアのしか認識していなかった、だが予想外の行動を見せる様になればイレギュラーとして認識し…気づけば親友の間柄になっていた

 

「………垣根、帝督」

 

思えば初めての友だったかもしれない。脳幹よりも気軽に話せ、アラン=ベネット(師匠)よりも親しくしていた。そんな彼をアレイスターは見捨てたのだ

 

「………ぁぁ」

 

最後まで垣根は自分の事を友として思っていただろうか?最後は憎んだだろうか…いや彼の事だ。そんな事はない…そう思うのは傲慢なのだろうか?答えてはくれない、今の彼は口が聞ける状態ではない

 

「……………あ…………ぁぁ」

 

幼き娘の死を知ったその日、日記に涙の染みを残したその『人間』は。最善しか導き出せない 『計画』を初めて本当に呪った。魔神撃破の為とはいえ友を生贄にする様な計画に、そんな計画を考えた自分自身を呪った

 

『今日から俺とお前は友達だぜ、アレイスター=クロウリー』

 

「あ、ああ………あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!」

 

『人間』の叫び声の様な泣き声が窓のないビルに響いた。生まれて初めて彼はこんなにも大声で泣いた。娘の死の時よりも、あの日垣根と友達になった時に流した嬉し涙や泣き声よりもずっとずっと大きな声で子供が癇癪を起こした様に泣きじゃくった

 

 

 

「案外学園都市の超能力者(レベル5)の第一位てのも大したことなかったなぁ」

 

ここは学園都市ではない。隠世と呼ばれる位相の一つだ。魔神達が潜んでいるこの場所でゾンビは垣根など大した事はなかったと呟く

 

「お〜、お疲れゾンビ少女」

 

「お、娘々(・・)。わざわざ出迎え?」

 

その謎の空間の奥から少女の声が聞こえた。現れたのは丈の短くぶかぶかの両袖な白のチャイナドレスに完全に青ざめた顔色、帽子を被り額に特異な符を貼っている少女だった…彼女の名は魔神 娘々(ニャンニャン)。魔神の中でも古参である一人だ

 

「まあね〜、暇だったから。で、どうだった?帝督ちゃんとの戦いは?」

 

「つまんなかったよ?所詮は人間。大した事はなかったな〜」

 

「でも人間ながらにあそこまで強いんだから少しは遊びがいがあると思うよ?少なくともわたしは遊んでみたかったな〜」

 

娘々は戦闘狂だ、故に人間ながらも魔神の域に少し近づいた垣根に興味を持っていた

 

「でも魔神にとって取るに足りない存在だよ☆」

 

「そうやって馬鹿にしてると足元掬われるよ?」

 

「平気、平気☆だってゾンビちゃんは強いから♪あたくしにかかれば全員雑魚確定なの」

 

「……はぁ」

 

これがゾンビの悪い癖だ、人を見下している。これが元々の性格なのか魔神になったからなのかは分からない…だが有頂天になるのがゾンビの悪い所だ

 

「まあ気をつける事だね。人間てのは…案外おっかないものだよ」

 

「ふーん?まあ心の片隅に覚えておくね。じゃああたくしは残りの八つ当たり相手…アレイスター達を殺してくるから☆」

 

「へいへい、たっく。なんでゾンビ少女なんだか…わたしやヌアダ、テスカトリポカみたいな戦闘向けの魔神が現世に行けばいいのに…チェ〜ジャンケンで負けなきゃ良かった」

 

再び現世へと消えていくゾンビを尻目に娘々はそう退屈そうに呟いた。あの時グーを出していれば…そうブツブツ呟きながら娘々はその場を後にした

 

 

 

「………垣根さん」

 

第十三学区のとある病室にて、その病室は照明が一つもなく明かりはその病室に置かれた医療機器が放つ薄い光だけだった。その部屋の中央には一つの機械が…いや一人の患者がいた。ネバネバした液体に脳を三つに分けられ収められており、その機会を置くかの様に冷蔵庫大の機械と接続されている…そんな機会の正面に帆風は立っていた

 

「……わたくしがもっと早くついていれば…貴方はこんな事にはならなかったのですか?」

 

垣根帝督、いや垣根帝督の脳と言うべきか。彼は一先ずは生きていた。だが人としては死んだも同然だった。喋る事も出来ずただ電気信号に命令されて能力を吐き出すだけの機械となれ果てたのだ

 

「………また来ますね」

 

帆風はそう言ってその機械から離れ病室の扉を開ける。病室を出た先には帆風を待っていた上条達がいた

 

「……垣根の様子はどうだった?」

 

「どうもなにも…垣根さんは喋れないんですよ?」

 

「……そうだな」

 

上条はそう言ったまま俯いた。全員なにを言ったらいいか分からない様だった。もしこの場に垣根がいたらなんとか場を盛り上げようとすることだろう…そう帆風はなんとなく思った

 

「……で、結局誰が垣根さんをあんな目に合わした訳?」

 

食蜂が口を開いた、誰が垣根を倒したのかと。この病院の医者であり統括理事会のメンバーである薬味も教えてくれなかった事だ。いや正確には彼女でさえも知らないのだ。一方通行も数多に聞いて見るも彼も知らず、削板もアリサを通してレディリーに聞いても知らない様子だった…つまり、統括理事会のメンバーや一応は暗部に関わっている木原一族でさえ垣根が何の為にその敵と戦ったのか知らなかったのだ

 

「……私も浜面に裏のつてを使ってもらったけど分からずじまいだったにゃーん」

 

「私も書庫にハッキングしてみたけど分からなかったわ」

 

「俺は土御門に聞いたが…あいつも初めて知ったらしくて混乱してた…多分演技じゃないと思う」

 

誰も誰が垣根を倒したのかと手がかりすら掴めなかった。帆風だって家族なら知っている筈と思い、風斬に連絡を入れた…だが彼女すらも義兄が何をしていたか知らず帆風から初めて義兄が今どう言う状況が知り混乱していたのだから

 

「……真相は闇の中…と言うことですわね」

 

恐らく知っているのはこの学園都市の支配者 アレイスター=クロウリー、またはオティヌスなどの存在だけだろう…そう帆風達が考えていたその時だった

 

「マスターを殺したのは魔神 ゾンビ。魔術を極め神の座へと至った魔術師です」

 

『!?』

 

誰かが廊下を歩いて来た、そして垣根を襲った敵の名を告げた。だが上条達が驚いたのはそこではない。今喋りかけて来た声が今あの機械の中で能力を吐き出すだけの道具となっている少年の声と全く同じだったからだ

 

「初めまして皆さん、この姿で会うのは初めてでしたね」

 

その少年は白かった、肌が白いとかそう言う次元ではない。全身が服を含めて真っ白なのだ。その色に見覚えはある。未元物質だ。垣根が扱う垣根だけの能力。そしてその少年の容姿は垣根帝督そのものだった

 

「……お前、は…?」

 

「カブトムシ05…いいえ、私は学園都市超能力者の第一位 『未元物質』 垣根帝督(・・・・)です」

 

垣根帝督、そう彼は名乗った。その『垣根帝督』はにこやかに、帆風達が知る彼がしなさそうな表情と丁寧な言葉遣いを続ける

 

「性格には2代目…と言った方がいいですかね?私はマスターが…初代垣根帝督が死んだ、もしくは活動できなくなった時に垣根帝督として活動する様に造られたんです…そうまさにこの時の為に」

 

『垣根帝督』は告げる。自分は垣根がいなくなった時の為の2代目の垣根帝督だと。『垣根帝督』はニコニコと笑いながら上条達に近づく

 

「マスターの命令通り、今日から私が『垣根帝督』を引き継ぎ……」

 

ダンッ!と上条が床を蹴り飛ばした。その右手が、幻想を打ち砕く右手が、真っ直ぐ『垣根帝督』へと伸ばした。異能で造られたその『垣根帝督』を殺す為に

 

「………危ないですね」

 

『垣根帝督』はその右手を軽々と避けた。その未元物質の根源である三対の翼を広げて避けたのだった

 

「……垣根じゃない」

 

「…………」

 

「お前は、俺が、俺達が知ってる…垣根帝督なんかじゃない!」

 

上条は目の前の『垣根帝督』を垣根帝督とは認めなかった。こんなのは自分達が知っている垣根とは違うと

 

「あいつは馬鹿だ!人のデートをいちいちストーキングするし、ラッキースケベ起こそうとするし、頭いいくせに馬鹿だし、メルヘンだし、カプ厨だ。他にも残念な所があり過ぎるし、とにかく馬鹿だ…でもな、それが、それこそが垣根帝督なんだ!お前みたいな紛い物とは違う!」

 

「………ええ、自分も理解してますよ」

 

そう断言する上条に対し『垣根帝督』は、カブトムシ05は頷いた

 

「私はただ垣根帝督の名を継いだだけです。ですが皆さんと過ごした垣根帝督にはなれない。それくらい分かってますよ、ですがこれはマスターの遺言です。自分に何かあったら学園都市を、『当麻達を頼む』。そう言われてましたから」

 

「……あの馬鹿が!」

 

上条は壁を強く殴りつける、結局自分は垣根のなんの助けになれなかった。友達なのに、彼を助けに行く事すら出来なかった

 

「……ゾンビ、それが垣根さんをあんな目に合わせた張本人ですのね?」

 

「ええ、ですが貴方方が手を煩わせる事はないと思います」

 

「……どう言う意味です?」

 

帆風がゾンビという奴が垣根を倒した輩なのかと尋ねる、それに頷く05だが帆風達が復習する事は出来ないといい帆風が眉をひそめる

 

「既に統括理事長達が動きました。アレイスター=クロウリー、サミュエル=リデル=マグレガー=メイザース、木原脳幹、オティヌス、オッレルス、右方のフィアンマ、上里翔流、魔神 僧正、魔神 ネフテュスら9人が魔神 ゾンビを討伐するべく出陣しました…貴方方の出番はないでしょう」

 

「……ンだよそれ、なンで最初から全員で戦わねェンだよ!ていとくンが無駄死にしたみてェじゃねえか!」

 

「いいえ、それは違います一方通行さん。マスターが魔神のパラメータを手に入れていなければ魔神 ゾンビは倒せないのです。マスターは自らを囮にして統括理事長達を必ず勝たせる為にあんな目にあったのですから…」

 

「………馬鹿野郎が!」

 

アレイスター達が討伐に行ったと伝えると一方通行が最初からそうやれと叫ぶ。05は垣根が負ける前提で戦った事で魔神を倒せる様になったのだと言うと削板が叫んだ

 

「帝督は根性あるけど馬鹿だ!根性出して仲間の為に活路を見つけても…死んじまったら意味ねえだろうが!本当に、本当に…馬鹿野郎だ!」

 

「……そうよ、死んじゃったら終わりじゃない。そんなので勝てても…全然、全然嬉しくないわよ!」

 

削板のその叫びに美琴も同調する、上条達もそれに同意するかの様に真っ直ぐ05を見る。だが05の表情は能面の様に変わらない

 

「…私に言われても困ります。私は『垣根帝督』で合って皆さんが知る垣根帝督ではありませんので」

 

「……分かってんだよ、分かってるから怒ってるんじゃねえか!お前にじゃなくて垣根に!」

 

05はただ与えられた指示に従っているだけだ。ならばこの元凶は病室で機械に繋がれてただ未元物質を吐き出すだけの装置となった垣根だ

 

「………落ち着きましょう皆さん」

 

そう言ったのは帆風だった、全員が彼女を見入る。垣根があんな状態になって一番悲しいのは彼女の筈なのに、彼女は一番落ち着いていた

 

「……わたくしだって怒っています。垣根さんにもアレイスターさん達にも…ですがここで何を言っても無駄です。ですので垣根さんが起きたら皆さんご一緒に垣根さんをボコボコにしましょう」

 

そうやってにこやかに彼女は笑った、後半部分だけ聞いているとボコデレ風のヒロインに聞こえるがつまりはこう言う事だ。垣根帝督は死んではいない。その内またカップリングがどうのとか言って自分達に話しかけてくる。そう言っているのだ

 

「どうせ未元物質を使って肉体を作ってわたくし達の目の前に現れるとかしそうですし、そうなった時に全員で馬乗りになって半殺しにすればよろしいんですの」

 

「ほ、帆風先輩もしかして…ブチギレ力限界だったりするぅ?」

 

「は、は、は…何当然の事を言っているんですか女王?わたくし血管がブチ切れそうな程怒っているんですよ?プンプンです」

 

『お、おう』

 

帆風の背後に般若が見えた、全員がドン引きする程のイイ笑顔な帆風。普段怒らない人ほど怒らせると怖い。はっきり分かるね

 

「………ですからわたくしもこんな所でしょんぼりするのはやめて何処かでストレス発散でもしましょう。そして垣根さんが目覚めたら半殺しにしましょう」

 

「……そうだな、垣根が元に戻ったらぶん殴るか。右手じゃなくて左手で」

 

「なら俺は血流逆流させて花火みてェに破裂させてやンよ」

 

「×××を原子崩しで焼き切ってやるにゃーん」

 

「電気あんま喰らわせましょう。電気がついてるから私が使ってもセーフよね」

 

「なら私はギ酸を垣根さんの顔につけてボコボコに腫れさせてやるんだゾ☆」

 

「兎に角本気で100発殴る!」

 

(上条さん以外殺す気ですね)

 

帆風の一言で上条達はなら垣根が元に戻った時にボコボコにしようと呟き合う、05はそれを若干引きながらも場の雰囲気が多少和らいだ事で微笑みを浮かべ病室の扉を見る

 

(マスター、こんかにも貴方の無事を祈っている人達がいますよ。無論私もです…だから、死んだりしないでくださいよ?垣根帝督は貴方だけなんですからね)

 

 

 

「うーん、やっぱり現世の空気は気持ちいいねー。さて今更だけど挨拶しますか」

 

ゾンビは第十七学区に姿を現れた。偶然にも垣根を倒した場所と同じコンテナ集合地帯だった。彼女は両手を広げ呟く

 

「ハロー世界、そしてグッバイ世界」

 

ゾンビは何者かと気配に気づき、視線をその気配の主へと向け…歪んだ笑みを浮かべる

 

「やあアレイスター=クロウリー、それに元魔神オティヌス。オマケに何人かのモブもいるわね」

 

アレイスター達がゾンビを睨みながら歩み寄る。それを面白そうに、愉快そうに歪んだ笑みを浮かべるゾンビ。フィアンマは第三の腕を出現させゾンビの背後のコンテナの上に出現。オッレルスは跳躍してゾンビの左のコンテナへと、オティヌスはいつの間にかゾンビの右へと移動していた。四種の象徴武器を空中に携えたメイザースとA.A.A.を装備した脳幹、そして衝撃の杖(ブラスティングロッド)を右手に握りしめたアレイスターが真正面に立ち塞がる

 

「あらら〜?垣根帝督じゃ歯が立たなかったから今度は大勢でいじめですか?かっこ悪い〜♪でもゾンビちゃんは負けないのだ☆」

 

「黙れよクソビッチが、死体は死体らしく地面の中で眠ってろクソが」

 

巫山戯るゾンビに対し唾を吐き出さんばかりに睨みつけるアレイスター。その目は絶対零度の氷河の如く冷たく、その眼の奥には火山の様な怒りで染まっていた

 

「あらん?そんなにお友達が死んじゃってショックなのかしらん?でもあたくしに当たるのは逆恨みじゃなくて?」

 

「知った事か、計画の内(・・・・)とは言え私は私の友達をあんな目に合わせたクソと喋る気はさらさらないんだ。さっさと死にやがれ」

 

「ワォ〜ゾンビちゃん怖くてビクビクしちゃう〜。うえーん…ま、貴方みたいな魔神になる事をやめた人間如きがあたくしに勝てる筈はなくてよ?てな訳でごめんなんだぞ☆」

 

普段の冷静な言葉遣いをかなぐり捨てる程アレイスターは怒っていた。これが自分が計画した通りだとしても、親友をあんな姿にしたゾンビを、そしてそんな目に合わしたアレイスター自信を許す事など出来ない

 

「お前はここで殺すよ魔神 ゾンビ。私の親友の仇を取る為にな」

 

「私もだ魔神 ゾンビ。盟友の尊厳をグチャグチャにしたお前をここで殺す」

 

「俺は垣根なんぞ正直どうでもいい…だが舐められっぱなしは性に合わんのでな」

 

「私もアレイスター程じゃないが怒ってるんだ。悪いが許す気はないよ」

 

「俺様も怒ってるんだ、ライバルを勝手に倒されて怒っている。簡単に死ねると思うなよ」

 

「俺も彼には借金をいつか返そうと思ってたんだ。こんな形での踏み倒しなんてごめんだよ」

 

「はぁ…こんな熱い展開……好み♪」

 

濃い殺意をゾンビへと向けるアレイスター、だがゾンビは意に返さない。寧ろ楽しそうにケラケラと笑った

 

「さあ遊ぼうか。精々楽しませてね?垣根帝督(イレギュラー)は10分くらいは持ったんだから、ゾンビちゃんを楽しませてね♪」

 

ゾンビはそうケラケラ笑う、そして両手を大きく広げる。こうして学園都市の最大戦力達と魔神との戦いが始まった

 

 

 

「ぼくらもいつでも動ける用意をしておくか」

 

「そうじゃな」

 

「ゾンビが油断した瞬間に作戦通り不意打ちしましょう」

 

そのすぐ近くで上里達はその戦いをビルの上から観戦していた、アレイスターの指示通り(・・・・・・・・・・・)いつでも不意打ちである術式(・・)をゾンビに撃ち込める様に身構える

 

 

 

垣根帝督の脳が収められたネバネバとした液体で浸してある機械…その液体の中から白い物体が誕生した…それは未元物質(・・・・)だ。だが固体でも気体でも液体でもない不安定な状態の未元物質だ…すぐに溶ける様に消えてしまった…一体何の為に作られたのか分からない…だがこれだけは言える。今は電気信号を出していないのに勝手に脳が能力を発動したのだ(・・・・・・・・・・・・・・)

 

 

様々な思惑が交差する盤上、果たして笑うのは魔神か、それとも人間か…それとも……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ていとくんは帝蔵庫君に進化した!どんな世界観でも帝蔵庫ルートなていとくんは泣いていい。さて次回は魔神vs.アレイスター+αです。白熱のアレイスター達の戦い、そして最後は衝撃な展開に…

次回もお楽しみに!


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世界の終わり、世界の始まり

今回はゾンビ対アレイスター達の戦いです。色々とやりたい放題…というか多作なら間違いなく最強キャラな奴等が複数人いますから大荒れになるな……ふ、でも作者の技量じゃアレイスター達の強さを十分に活かせないんだよな…他の作者様方はどうやったらあんなに面白く書けるんでせうか?因み今回の作品の文字数は9999字です。不吉ですね

そして遅れながらですが鬼滅の刃劇場版決定おめでとうごさいます!いやーまさか夢限列車編を劇場でやるなんて…普通劇場版と言ったらオリジナルが多いので珍しいですね。いやこれは期待するしかないでしょ。後本好きの下克上の声の人がゆかちーだからどうしても主人公がインデックスに見えてしまう…本好きだし接点多すぎだから仕方ないよね



激音が轟いた、コンテナが紙屑の如く吹き飛ばされる。第三の腕が巨大な剣を振るい説明出来ない力が吹き荒れる。(いしゆみ)の十矢がコンテナ集合地帯に破壊の限りを尽くし召喚された御使堕し並みの純度を誇る四大天使達が飛び交い、ミサイルや銃弾、ビームが乱射されかつて宇宙を作り出したビックバンと同じ熱量を誇る一撃が放たれる

 

「あひゃひゃひゃひゃ!こんな程度でゾンビちゃんは死なないよ!」

 

だがゾンビには一切の傷はない、防がれたのだ。あれだけの攻撃を全て。それだけでゾンビの力量を嫌でも理解出来る。だがアレイスター達は攻撃の手を緩めない

 

「ふん」

 

聖なる右、ミカエルの象徴たる力を秘めた願いの積集体でその右手を真横に振るう。それだけで世界を軽く滅ぼせる程の力が込められた見えざる一撃が放たれる。相手は魔神だ、この試練を越えるのにはそれだけの力がいる。その力を聖なる右は引き出し試練に見合った力を引き出した。それは軽く世界を滅ぼせる程の力だ…だが

 

「うひ、いいねぇその右手!面白いですわ!」

 

ゾンビは世界を軽く滅ぼせるその一撃をただの手刀で砕いた。軽く舌打ちするフィアンマ。過去最大の力を引き出した聖なる右。だがそれでも魔神には遠く及ばない。今のフィアンマの攻撃力が999とカンストしていようが魔神の攻撃力は無限なのだ。聖なる右とて引き出す力は無限ではない。何処かで限界が来てしまう

 

「成る程…流石は魔神。魔術を極めただけはある…だがこの程度で勝った気になるなよ」

 

フィアンマはそう言いながら第三の腕から浄化の熱線を放つ。地上のありとあらゆる不浄と地獄の悪魔を滅ぼす神話の一撃が繰り出されるもゾンビはそれを片手で弾く…だが

 

「甘いね」

 

「よよよ?!」

 

ゾンビの身体は後方へと勢いよく吹き飛ばされた。ゾンビは吹き飛ばされながらも身体を一回転させ衝撃の威力を緩和しその場で着地する

 

「う〜ん、その術式……位相に関する力なのかな?説明出来ない力て面倒だね」

 

「お褒めの言葉ありがとう」

 

オッレルスが操る術式北欧王座(フリズスキャルヴ)、その力は説明出来ない力だ。攻撃の範囲や威力の定義すら曖昧でそれ故何処まで回避すればいいのか、何が起きたのかも分からずノーモーションで放たれる為厄介極まりない特殊な力だ

 

「でも全く説明出来ないて訳じゃないよ?威力はこの中では大した事はあんまなさそうかな。まあ他の奴らの攻撃がマジハンパないだけだけどさ。それに曖昧な間合い、見えない攻撃、ノーモーション…これって私達魔神が操る位相と何となく似てない?」

 

「……ご想像にお任せするよ」

 

そう軽く言い合いながらもオッレルスとゾンビの間の空間からは爆音が鳴り響いている。オッレルスの説明出来ない力とゾンビの力が激しくぶつかり合っているのだろう。何千何万の攻撃が同時にぶつかり合い互いに相殺し合い、短い間隔で炸裂し合う為総体として一つの音となる

 

「私も混ぜろよ」

 

「俺を忘れられると困るな」

 

オティヌスが自身の武器であり象徴である主神の槍(グングニル)を投げつける、メイザースも天使達に命令し一斉にゾンビに襲いかからせる

 

「残念☆あたくしには効かないよ」

 

黄金のエネルギーを纏って飛来する主神の槍を右手の爪先でキャッチしそのままオティヌスへと投げ返し、天使達を素手で軽く頭部を殴る事で頭部を破壊し消滅させる

 

「チッ、やはりこの程度ではダメか」

 

「これだから魔神は……」

 

オティヌスは左手で主神の槍を受け止める、メイザースも再び四大天使を召喚する。愚痴を言いながらも二人はゾンビへと距離を取りそれをゾンビが訝しんだ直後彼女の方に青白いレーザーポインターが浮かんだ

 

「およ?」

 

直後天から青白い光が放たれた。衛星軌道上に浮かぶ学園都市の人工衛星がレーザーを放ったのだ。しかも脳幹のA.A.A.と同じ原理の特殊性だ。今日この日の為に用意しておいた脳幹の秘密兵器だ

 

「秘密兵器と切り札、レーザーは……ロマンさ」

 

そう呟く脳幹だがゾンビはそれを喰らっても平然としていた。彼女を中心とした空間がレーザーの命中を防いでいたからだ。空間そのものが歪みレーザーはゾンビには届かない。そしてゾンビが空へと何かしらの魔術を放ち…天からの光が消えた…人工衛星が破壊されたのだろう

 

「この程度で死ぬと思った?」

 

「まさか、これは時間稼ぎさ」

 

「時間……稼ぎぃ?」

 

人工衛星を破壊した事で余裕の笑みを浮かべるゾンビ、だが脳幹はこれは時間稼ぎだと告げる。それを聞いて首を傾げた直後だった。ゾンビに強力な熱量が襲いかかった。それは宇宙を作ったビックバンを連想させる一撃だった。あらゆる銀河、星雲を含めた世界を滅ぼすその一撃はゾンビにしか効かない。つまり世界を滅ぼす一撃をゾンビのみに命中させた

 

「航空支援式ビックバン爆弾…現実にはない私の頭の中で思い描いた架空の兵器だよ…それを霊的蹴たぐりで再現した」

 

その威力は確実に一掃し、吹き飛ばし、沸騰させて、細胞の一つ一つに至るまで執拗に汚染する恐怖の一撃だった。だがその程度でアレイスターが終わらせるわけがない

 

「更に衝撃の杖の効果 「魔術の効果を標的の想像の10倍に増幅する」を上乗せする」

 

つまりそれは宇宙を10回も作れる程の膨大な熱量。しかも相手がその威力の10倍を想像しそれに対応しようとしても更に10倍した威力を10倍にする。つまり威力は100倍。100回は宇宙を創造できる熱量となってゾンビに放たれる

 

「死ね」

 

その一撃を防ぐ事は垣根でも無理だろう。そんな一撃に対しゾンビは…軽く腕を振るった。それだけで莫大な熱量は霧散する

 

()?」

 

その一言に全てが込められていた。余裕、強さ、実力の差…全てが込められた言葉だった。並みの者ならその一言で戦意を喪失しただろう…だがアレイスターはそれすらも計算に入れていた

 

「成る程な、お前が扱う術式は『魔術を含めた神秘の操作』。違うか?」

 

「あらら、もうバレちった」

 

ゾンビ…ンザンビとは不思議な力を持つ者達全ての総称。つまり人や動物、物…この世のありとあらゆるものの性質を含んでいる。つまりは魔術もだ。それが彼女が放ったもの以外…アレイスターの魔術すらも支配下に置く。それが不思議な力である限り。彼女は万物の母と同じ名を持つ神。この世界全てが彼女の武器と言っても過言ではない

 

「その通り、この世界はぜ〜んぶ、私の物。私だけの箱庭。私だけの所有物。私だけの玩具。だから幻想殺しも私だけの為に使う。好きなだけ世界を改変してより良くして、ダメだったら壊す。その為の幻想殺しなんだもの」

 

ゾンビにとってこの世界は玩具箱だ、そこらに転がっている小石も、空き缶などのゴミも、コンクリートで作られた建物も、空気も、動物も、人間も全て退屈しのぎの玩具にして自分の武器の一つに過ぎない。だから彼女は魔神の中では一番力を振るうのに戸惑いがない。世界など壊せばまた戻せばいいのだから

 

「……小さい女だな」

 

ボソッと、アレイスターが呟いた

 

「ん?何が小さいのかな?ゾンビちゃん何の事か分かんなーい」

 

「何もかもだよ、器も夢も希望も何もかも小さい。いっそ哀れだよお前は。昔の私を見ているようだ。お前を見ていると昔の私がいかに小さかったか理解出来る程にな。だが少なくともお前よりはマシだった。お前の様に薄っぺらい目的ではなかったと断言できる」

 

「……なんか見下してるみたいであたくしムカつくんですけど」

 

「見下してるみたい、じゃない。見下してるんだよ、分かんねえのかクソ女」

 

「……カッチーンときました。貴方達もイレギュラーと同じ愉快なオブジェクトにしてやるのだ☆」

 

まるで昔の自分を見ている様だとアレイスターは呟く。見るに耐えないと言わんばかりの顔でゾンビを挑発しビキビキと青筋を立てるゾンビ。ゾンビは両手の中指を立てて固まった笑顔のまま周囲のコンテナを浮遊させる

 

「ぶっ潰れろ………です♪」

 

音速を超えた速度で放たれるコンテナ群に対しオッレルスは説明出来ない力でコンテナを跡形もなく破壊。フィアンマは右腕を振るう事で原子レベルで消滅させメイザースは象徴武器の自動防御で防ぐ。オティヌスは主神の槍で風を生み出し風の盾でコンテナを摩り下ろす事で防御、アレイスターも瞬間移動や空から落とす光の柱でコンテナを避けたり破壊していく。脳幹は音速以上の速度で動く物体を捉える力はない為全方位をデタラメに攻撃する事によりコンテナを破壊していく

 

「お〜粘るねぇ。でもいつまで持つのでしょう?」

 

ゾンビは空に浮きながら指先を動かしコンテナの流星群を降り注がせる。破壊された筈のコンテナもいつの間にか元通りになっており破壊してもまた修復されアレイスター達へと降り注ぐ。イタチごっこの繰り返しだ

 

「ほらほら!最初の勢いはどうしたんですの!?あたくしに勝つのではなくって!?」

 

ゾンビはそう嘲笑いながら両手を大きく広げる。コンテナだけではない、鉄骨や小石、吹いていた風、挙句はコンテナ集合地帯に潜んでいた鼠や虫達がアレイスター達目がけて襲いかかる

 

「チッ!」

 

霊的蹴たぐりは無機物には効かない。虫や鼠は一掃出来てもコンテナなどの物体を破壊する事は不可能だ。コンテナなどはメイザースに任せ自身はゾンビへと攻撃を仕掛ける

 

「いくぞ」

 

32、30、10という数字が手から火花の様に散る、そこから滲み出るようにフリントロック銃が出現する。銃弾をゾンビへと放ちゾンビはそれを片手でガード、再び手から1、27、5の数字が火花の様に飛び出しクレイモアが出現。それを大きく振るいゾンビの肉を穿つ。だがゾンビは右手から圧縮したエネルギー波を放ちアレイスターを大きく吹き飛ばす

 

「死んじゃえ」

 

アレイスターに降り注ぐコンテナの雨、アレイスターは数字を散らし無数の盾を出現。コンテナから身を守りつつ弓を形成し矢を放つ

 

「あれれ〜?おかしいね?あたくしを倒すんじゃなかったの?」

 

「煩い、少しぐらい黙ってやれ」

 

「い〜や〜で〜すぅぅぅぅぅぅ!!どーせあたくしが勝つのなら無理やりでも場を盛り上げませんと…そうでないとこれから死ぬ貴方方が可哀想ではありませんか…あ、よよよ」

 

「舐めているな、ムカついた」

 

手振り身振りで大袈裟な動きを起こすゾンビ、それを見てアレイスターが青筋を立てながら衝撃の杖を振るう

 

「10倍返しだ、ありがたく受け取れ」

 

天から青白い流星群が降り注いだ。それはアレイスターが創造したソドムとゴモラを滅ぼした天使の術式 神戮だ。ガブリエルが放った一掃ではなく彼が頭の中で思い描いた神戮。勿論本家とは違うが本家以上の威力を誇るその超弩級の一撃に対しゾンビは軽く笑いながらその一撃を消し飛ばす

 

「んんん?こんな程度なのかなアレイスターちゃんや?期待外れにも程があるよん☆」

 

ゾンビに攻撃は一切通らない。逆にゾンビの攻撃は致命的となる。故にゾンビは焦らない。このままいけば自分が勝つに決まっているのだから…だから解せない。何故アレイスター達は笑っているのか(・・・・・・・)

 

「何で笑ってるの?」

 

「ふ、そんな事にも気づかないのか」

 

「?」

 

アレイスターのその笑みの意図を理解出来ないのか首を傾げるゾンビ、それに対しアレイスターは嘲笑うかの様にこう呟いた

 

「お前と同じ魔神(・・)が私達の味方にいる事も分からないのか?」

 

「………ぁ?」

 

直後だった、巨大な土塊の腕がコンテナ集合地帯に出現した。同時にゾンビの足元のアスファルトが融解しゾンビの動きを封じた

 

「な……!?」

 

音速の限界を超え腕が振り下ろされた。それは大地の鉄槌だ。学園都市全域が、いや世界がその鉄槌を地面に叩きつけた衝撃が襲う。それはまるで地震。たった一撃で全世界に振動を齎した。そんな一撃をゾンビは両腕でその巨大な腕を支える事で防いだ

 

「ま、さか…この術式は……!?」

 

「その通りじゃよゾンビ」

 

ゾンビは声が聞こえた場所に顔を動かす、そこにいたのは法衣を着た木乃伊の様な人物…その名は

 

「僧ゥ正う"う"うぅぅぅぅぅ!!!!」

 

魔神 僧正。ゾンビ達、真なるグレムリンを裏切った魔神の一柱だ

 

「何故貴方がここにいるの!!?答えろ僧正!」

 

「償い、の為じゃよ。儂は贖罪の為アレイスターに味方をする。つまりお前達の敵という事じゃ」

 

「……!?こ、のクソガキ(・・・・)が!あたくしは魔神の中でも娘々や■■■■■と並ぶ最古参の一柱なのですよ?!新米が偉そうに!」

 

ゾンビは怒る、僧正が自分の邪魔をした事に、だがそれだけには止まらない

 

「対象フィアンマ、ブースト」

 

「!?こ、この術式は……」

 

甘ったるい女の声が鳴り響く。それと同時にフィアンマの聖なる右の出力が増幅し第三の腕がゾンビへと伸びる。ゾンビは見えない力で第三の腕を押さえ込もうとするが第三の腕は呆気なくそれを蹴散らしゾンビにその爪を振るいゾンビをド派手に吹き飛ばす

 

「がっあ……!?や、やはりこの術式は……!」

 

ゾンビは悟る。この術式は誰のものかを…そしてそれを肯定する様にほぼ全裸に包帯を巻いただけの女が現れる

 

「ハァーイお久しぶりゾンビちゃん」

 

「ネぇぇフぅテュスゥゥゥゥゥゥゥッ!!!!」

 

魔神 ネフテュス。僧正と同じゾンビ達を裏切った魔神の一柱だ

 

「この裏切者共が……よくのこのこゾンビちゃんの目の前に現れましたね…むしろ好都合。貴方達全員愉快なオブジェクトにして全世界晒し首決定だこのヤロウ☆」

 

そう口調は巫山戯ているが目を充血させながらギリギリと僧正とネフテュスを睨むゾンビ。だがそれを恐れる二人ではない

 

「対象アレイスター=クロウリー、ブースト」

 

ネフテュスが涙を流しながらアレイスターの能力を強化、アレイスターが衝撃の杖を振るう。再びビックバン爆弾を放つ気なのだと気づきゾンビはそれを止めようとするが

 

「させるわけないだろう」

 

オティヌスのその一声と共に弩の十矢が放たれ、召喚された蝿の王(ベルゼビュート)が襲いかかり、超高速回転したドリルが直線上に放たれ第三の腕が巨大な剣を携えゾンビへと振るう

 

「ぐ、ううう………!?」

 

ゾンビはそれら全てを防ぐと流石にその顔と声色に余裕がなくなってきた様だ。それを見てアレイスターは嘲笑う

 

「チェックメイトだ」

 

セリオンの術式、黙示録に現れる災厄の獣と同一される獣を基にした一撃。大地を汚染し破壊し尽くす大災厄の一撃にして獣の刻印。衝撃の杖にてその威力を10倍に…いな10倍すればどうなるのだろうと想像してしまったゾンビにより100倍へと変貌…絶大な威力となったセリオンの一撃をゾンビは両手で全力で防ぐ

 

「がぁぁぁぁぁぁ!!!?ま、魔神を舐めるなぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

だがその一撃すらも、ゾンビは不思議な力を支配する力でセリオンの一撃を跳ね飛ばした。雲に覆われていた空が真っ二つに割れた。それはさながらモーセの奇跡の如く

 

「は、は…ははは!どう!?ゾンビちゃんには貴方方の攻撃なんて届かない!届かないんだよぉぉぉぉぉぉ!!」

 

そう叫ぶゾンビ、今のが最大の一撃だと確信するゾンビ…だがアレイスター達の表情は崩れない

 

「何か勘違いをしているようだなゾンビ」

 

「な、に……」

 

そんなゾンビにアレイスターはゆっくりと口を開く

 

「これまでの攻撃…全てがお前が油断させる為の罠なんだよ」

 

「……………………な…………?」

 

その直後だった、ステルス術式を解除しオッレルスがゾンビの背後に姿を現した。彼は右手に光り輝く光の杭を携えていた

 

「………え?」

 

「終わりだよ」

 

グサッとゾンビの腹部にそれが刺さった。その術式の名は『妖精化』。かつて十字教が異教の神々を無力化・矮小化して妖精として扱うことで、神の座から引き摺り下ろしたのと同じくこの術式を打ち込まれた魔神は神の座から強制的に人間に戻されるのだ

 

「あぎゃあ"あ"あ"ああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!?」

 

絶叫するゾンビ、だがこれだけでは終わらせない

 

新たな天地を望むか(・・・・・・・・・)?」

 

「ーーーーーッ!?」

 

暗闇から声が聞こえた、ゾンビが振り向くとそこには右手(・・)を真っ直ぐゾンビへと伸ばす上里の姿が見えた

 

(いつの間に………!?いやそもそもこいつはあたくしが殺した筈じゃ…!?まさ、か…助けていたのか!?僧正とネフテュスが!?)

 

「言っただろう、チェックメイトだと」

 

困惑するゾンビに対しアレイスターは勝利を確信した笑みを浮かべる

 

「これが学園都市だ、じゃあな魔神 ゾンビ。孤独な世界で永遠に生き続けろ」

 

その宣言と共に上里の右手がゾンビの肌に触れる直前まで近づいた

 

 

 

第十三学区の病院にて、帆風の言葉により落ち着きを取り戻した上条達。そんな中05が帆風に歩み寄る

 

「帆風さん、統括理事長から預かっていた物があるのですが受け取ってくれますか」

 

「え………?アレイスターさんから?」

 

05は懐から何かを取り出し帆風に手渡した、それは二つの小さな赤い玉だった

 

「これをわたくしに……?」

 

「ええ、確か統括理事長は「来たるべき時に使う時が来る」と仰っていました」

 

「はぁ……で、これは何です?」

 

帆風は不思議な物を見る目で二つの赤い玉を手に取って眺める

 

「性魔術の応用…と言ってました。つまり何らかの魔術の霊装なのでしょう。確か効果は記憶と記憶の共有と聞いています」

 

「性魔術……?」

 

「性魔術とは簡単に言えば人間の交尾です」

 

「ーーーーー!!!?そ、それって…閨事…!?」

 

「ええ、つまりこの穴と指で表すと…」

 

性魔術について05が卑猥な単語を言うことで簡潔に説明。顔を真っ赤にする帆風に対し05は親指と人差し指で輪っかを作りその中に指を入れようとし麦野に飛び蹴りを喰らった

 

「卑猥な説明すんな、このクソカブトムシが!」

 

「え、でも分かりやすいでしょう?私何か間違ってましたか?」

 

「テメェには論理てもんが欠如してんのか!?やっぱお前垣根の分身だよ!」

 

未元物質()に常識は通用しません」

 

ニコニコとイケメンスマイルでこれ間違ってないでしょと笑う05。やはりこいつも垣根の一側面である

 

「ふふふ、では私はこれで………!?」

 

05が帰ろうとした瞬間だった、帆風達は同時にある方角を向く…その方角にあるのは第十三学区(・・・・・)…アレイスター達とゾンビが激戦を繰り広げる場所の方角へと顔を向けたのだ。彼ら彼女らは何かの気配を感じ取り本能的に顔を向けた

 

「……今、のは…」

 

帆風が無意識にそう呟いてしまった。冷や汗が流れてきた…何か良くないことが起ころうとしている…そう帆風達は感じ取った。そしてそれは現実になろうとしていた

 

 

 

上里の理想送り(ワールドリジェクター)がゾンビに触れる。まさにその瞬間、上里の動きが止まった

 

「ーーーー!?」

 

足が動かない、正確には足に見えざる力が働き足を空間に固定し動けなくさせられているのだ

 

「………うふふ」

 

そしてゾンビの腹部に突き刺さっていた筈の妖精化の光の杭が消えた。それを見て目を見開くアレイスター達…同時に脳幹と上里を除く全員の胸に光の杭が突き刺さった

 

「………な?」

 

急速に力が失われていく、それはまるでパンパンに空気を詰めた自転車のタイヤを釘で穴を開けて一気に溜め込んだ空気を解き放つ感覚に似ていた。アレイスター達の魔力と力が失われていきアレイスター達は地に這い蹲る

 

「!アレイスター!?」

 

脳幹がアレイスターに走って近づく。上里は何が起こったのか理解できなかった。ゾンビはただただ笑うのみ

 

「貴方が言ったんじゃん、ンザンビは"不思議な力を持つ者達全ての総称"てさ。だから妖精化の制御を奪って術式を逆算して無効化して打ち消した。更に妖精化の光の杭を作り出して貴方達に打ち込んだの。オッケー?」

 

ゾンビは自分の胸に刺さった妖精化の光の杭を即座に解析、それを掌握し無効化しアレイスター達に意趣返しに打ち込んだ。ただそれだけだと笑うゾンビ

 

「さて……形勢逆転したと思った?残念、ゾンビちゃんはこれくらいじゃ負けないのだ☆」

 

「くっーーー!!」

 

倒れ伏したアレイスターに嘲笑を向けるゾンビ、それを見て歯噛みするアレイスター

 

「さて…後は皆殺しにするだけだけど…一人一人ずつ殺すのももうめんどくさいな〜」

 

ゾンビは面倒な事が苦手だ、アレイスター達の魔力を封じ後は殺すだけだが脳幹と上里がそれをよしとしないだろう。ならばまずは二人を殺すしかない。そしてその後アレイスター達を殺し幻想殺し達も殺し……そう考えると面倒な気分になる

 

「やる事が多いて面倒……そうだ!全部一片にやればいいんですわ!あたくし天才!」

 

そう手を叩いて自画自賛するゾンビ、そして自分の胸をなぞり何かの仕草をする…そしてゾンビの力が高まっていくのが分かった

 

「力が高まって……いや違う!まさか鏡合わせの分割を解除して魔神本来の力を!?」

 

「イェース☆その通りなんだぜ僧正」

 

魔神本来の力……無限の力を封印から解除しようとするゾンビ…だがそんな事をすれば世界は崩壊(・・)してしまう

 

「どうせ滅ぼすつもりだったんだ、予定が少し早まっただけ…てな訳で貴方達の頑張りは無駄でした♪残念だったね!」

 

空に亀裂が走った、ゾンビの無限としか表現できない存在に世界の許容量が限界を迎えているのだ。後数十秒で世界は宇宙を含め粉々に砕け散るだろう

 

「く、そ………!!」

 

歯噛みするオティヌス、メイザース達も彼女と同じ様に悔しそうな表情をゾンビへと向ける。それを見てゾンビは嬉しそうに笑みを浮かべる

 

「無様な姿ね敗北者ちゃん達、この勝負あたくしの勝ちよん♪」

 

そう宣言するゾンビ、もう世界全体が揺れ亀裂が世界中に走る…そんな中アレイスターは…笑っていた(・・・・・)

 

「…………ここまでは予定通り(・・・・)、後は君達次第だ。垣根帝督、帆風潤子」

 

その呟きは誰も届くことはなかった。そして世界は音を立てて空間が割れ空が砕け散りその破片が地上波と飛び散る。大地は闇へと落ち混乱した人々は悲鳴を上げながら闇へと落ちていく…ゾンビはそれを見て笑う。こうしてゆっくりと世界を滅ぼす為に力をゆっくりと解き放っているのだから

 

「バイバイ、私の玩具(世界)

 

そのゾンビの一言と共に世界は滅亡した

 

 

病院内に無数に走る謎の亀裂、世界が音を立てて崩れていく音を上条達は聞いた

 

「な、なんですかこれは!?」

 

「亀裂!?幻想殺しで触れても…消えない!?」

 

「これは魔術でも科学じゃねェ…単なる現象(・・)か?まるでスタンドガラスの上に物を置いてスタンドガラスが物の重さに耐えきれなくなって割れる様な…」

 

上条が右手で亀裂に触れても元に戻る気配はない、一方通行はその頭脳で今起きている現象を理解する…そして亀裂は徐々に繋がり真っ黒な空間に染まっていく…そして食蜂と美琴の足元が完全に崩壊し二人は黒の世界へと落ちていく

 

「「あ…………」」

 

「!?ーーーーーッ!!!」

 

二人は上条へと手を伸ばす…だがその手は届くことなく美琴と食蜂は闇の世界へと消えていく…上条がそれを見て何か叫ぼうとし…彼のいた空間も崩壊し上条も闇の世界へと消えていった

 

「女王!御坂さん!上条さん!」

 

帆風が叫ぶ様に声を荒げるが誰からの返事もない…気づけば一方通行と麦野、削板の姿も消えていた

 

「帆風さん!!」

 

「!カブトムシさ……」

 

05は白い翼を展開させ帆風へと翼を広げ飛行し彼女へと手を伸ばしていた。帆風はカブトムシさん、そう言おうが口を開いた瞬間、彼女の足元も崩壊し帆風も闇の中へと落ちていく……05の手は帆風へと届かなかった…もう帆風の眼には漆黒の闇しか映らない…彼女は落ちる、何処までも深く…世界の深淵までも落ちていく

 

(か、きね……さ…………)

 

意識すら薄れ始めた帆風は最後に自分の愛しい人の名前を呟き…………思考が途切れた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「起きてください帆風さん」

 

帆風はその声で意識を取り戻した

 

「……うぅ?……ふぁぁ…よく寝ました」

 

「全く、夜更かしでもしてたんですか?」

 

「あはは…すみません入鹿さん、勉強を夜遅くまでしていたもので…」

 

「全く…夜更かしは美容の天敵なんですよ」

 

眠りから覚め寝ぼけた眼を軽く擦ってあははと笑う帆風、そんな彼女の机の横で少し怒った様にむくれ顔になっているのは幼馴染(・・・)で委員長の弓箭入鹿だ

 

「まあいいです、早く帰りませんか?」

 

「ええ、そうですわね」

 

そう言って帆風は席から立ち上がる。今日の授業の教科書が入った手提げ鞄を手に持って彼女は入鹿と共に教室から出た…空は夕焼けに染まっていた

 

「……………?」

 

「何してるんですか?ボサッとしてないで早く帰りましょうよ」

 

「あ、はい!すみません!」

 

何か忘れている…そう考える帆風だが入鹿に言われ慌てて彼女へと駆け出す…その三つ編み(・・・・)が走る度に揺れる

 

 

この世界には学園都市も、魔術も、超能力もない。この世界では帆風潤子は天衣装着(ランペイジドレス)天使崇拝(アストラルバディ)も持たない単なる中学三年生の少女である

 

 

 

 

 

 

 




次回から帆風ちゃんの学校生活が始まるよ!お楽しみに!(嘘予告)

さて真面目に言いますと、これはパラレルワールドでも並行世界でもありません。まあ次回になれば分かると思いますが…さてこれからどうやって逆転するのか?お楽しみに

そして白垣根(05)は真顔で交尾とかの話ができるタイプのイケメンです。やっぱり彼も垣根帝督て事です(笑)。そしてゾンビの口調はですわとかお嬢様口調になったり、普通の口調になったり、ギャルぽくなったりと変わったりします。そして一人称が「ゾンビちゃん」だったり「あたくし」だったりと変わったりします。これは彼女の気分によって変わったりします。ややこしいかもしれませんがご了承ください

注意、次回は今までとは桁違いにグロい描写が一部あります。ですがこれだけは言わせてください。自分は縦ロールちゃんが好きです、決して嫌いではありません、物語の都合状とちゃんとした理由でこうせざるを得なかっただけで彼女が嫌いというわけではありません。それだけは信じてください

次回もお楽しみに!


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無限に続く悪夢の中で

注意、今回はグロい描写があります。苦手な方はそこだけ読み飛ばしてください。ギャグ要素はほぼなし。最後ら辺には微笑ましいラブコメカップリングが…ただし微笑んで読めるとは限りません

あえて言っておきます、自分は縦ロールちゃんが大好きです。嫌いではありません。物語の都合上描写がそうなってしまっただけなんです。原作の二番煎じにはしたくない…この後の展開上こうするしかなかった…そんな思いで書いたらこのザマ…お気に入りや評価が減る覚悟で書きました…批判ばっか来ると覚悟して投稿しました



帆風潤子は平凡なとある中学校に通うごく平凡な中学生だ。毎朝6時に起き朝食を食べて学校に行く。休日になれば幼馴染の入鹿とその姉である猟虎、その彼氏である誉望達と何処かに遊びに行く。そんな平凡な日常を繰り返している

 

「行ってまいります」

 

両親にそう言葉をかけてから扉を開け外へと飛び出す帆風、手提げ鞄を手に持って学校へと小走りで帰って向かう帆風

 

「今日もいい天気ですわね…いい事がありそうですわ」

 

帆風は家の近くのバス停で10分ほどバスが来るのを待ち、いつもより2分ほど遅れて来たバスに乗り込む。殆どの席が空いておらず自分は6つ目で降りるのでつり革に捕まりバスに揺られながら空いた手で読書を楽しむ事にした

 

「あ、潤子ちゃんじゃないっスか」

 

「あら、誉望さん。この時間に会うとは珍しいですわね」

 

「ちょっと忘れ物したらバス乗り遅れちゃって…このバスに乗ったんっスよ」

 

帆風に話しかけて来たのは帆風が掴まっているつり革の近くの席に座っていた少年、誉望万化という幼馴染の猟虎の彼氏だ。彼は一つ年上の高校生で普段は一つ前の時間のバスに乗っているが今日は乗り遅れ偶然帆風と同じバスに乗った様だ

 

「何読んでるんっスか?」

 

「夏目漱石の「彼岸過迄」ですわ」

 

「あー、彼岸過迄っスか。名前だけは知ってるんスけど読んだ事ないっスね」

 

「他にわたくしが夏目漱石の作品でオススメするのは「吾輩は猫である」と「坊っちゃん」ですわね。後は小泉八雲の「骨董」やナサニエル・ホーソーンの「緋文字」、フョードル・ドストエフスキーの「罪と罰」もオススメですわね」

 

「へー、俺あんまり文字読むの好きじゃないんスけど今度猟虎と二人で読んでみるっス」

 

そう言ってたわいのない会話を続ける二人、その時バスのアナウンスが流れ自分が降りる場所の名前が聞こえた

 

「あ、わたくしはここで降りるので…では、また」

 

「学校頑張ってくださいっス」

 

帆風はそう声をかけてバスから降りて行く、誉望はバスの中から手を振った。帆風はそのまま歩いて学校へと辿り着き、三年二組と書かれたクラスネームプレートが目に入り教室の扉を開ける。先に学校に訪れていた入鹿に話しかける

 

「おはようございます入鹿さん」

 

「ええ、おはようございます帆風さん」

 

軽く手を上げて挨拶をする入鹿、そんな幼馴染を見て頬を緩め教科書を取り出し机の中に入れようとすると…机に何か入っていた

 

「?……これは?」

 

帆風は机の中にある手紙の様な物を取り出した、それを見て入鹿が驚いた顔をし、すぐに笑みを浮かべながら肘で帆風の肩を叩く

 

「あらら〜帆風さん、これって恋文てやつじゃないんですか〜?」

 

「………恋文」

 

つまりはラブレターである、それを聞いて帆風はラブレターを見つめる。入鹿はこのこの〜と揶揄ってくるが帆風は照れて頬を赤く染めたりしない…黙ってラブレターを見ていた

 

「皆おはよう、今日も頑張っていこう」

 

「あ、先生が来ましたね…席に座らないと…それと放課後楽しみですね帆風さん♪」

 

「………」

 

博士、と生徒達にあだ名をつけられた白毛のメガネをかけた理系な老人。彼が教壇に出席簿を開くと同時に入鹿はニンマリと笑って自分の席に座る…帆風はラブレターを手に持ったまま自分の席に座った

 

 

一限目は国語、国語の教師の名前は佐久辰彦という熊の様に大きな男性だ。羅生門の内容を事細かに教えてくれた

 

二限目は美術、美術の教師は不願竜造という男性、設計図を描くのが上手く上野城のミニチュアを作り上げた時は全員で感嘆の声を上げた

 

三限目は体育、帆風が一番得意とする教科で教師はステファニー=ゴージャスパレス。未だに彼女から組手で一本を取った事がない

 

四限目は保険、薬味久子という七十過ぎたババアの癖に見た目はピチピチという理不尽な存在が男子生徒にセクハラ発言をしながら黒板に文字を書き綴る

 

昼休みは入鹿と猟虎、一つ年下の皆から心理定規とあだ名で呼ばれる少女と一緒に弁当を食べた。因みに帆風の弁当の中身はウインナーに卵焼き、トマト、唐揚げだ

 

五限目は音楽、見た目は殺人鬼、中身は少し小心者な元有名交響楽団の指揮者の火野神作がベートーヴェンの第九交響曲「歓喜の歌」を指揮した

 

六限目は理科、「粘性・濃度と次世代演算装置の未来」という本を執筆した有名な教師である松定先生が空気砲の実験をした

 

そして放課後、帰りのホームルームが終わり帆風は帰り支度をしていると入鹿が声をかけて来た

 

「帆風さ〜ん〜、忘れてませんか?今日体育館裏でそのラブなレターの送り主が待ってるんですよ〜?早く行った方がいいですよ〜」

 

「……そう、でしたわね」

 

「?どうしたんですか?元気がない様に見えるんですが」

 

「………いえ、なんでもありません」

 

そう言って帆風は教室から出て行く…入鹿はそんな彼女を見て首を傾げた

 

(何か……大事な事を忘れている様な…なにを忘れているのか…分かりませんが……でも大事な人の事を…忘れている…そんな気がします)

 

何か忘れている、自分にとって大事な人を、誰だったか分からない、いつであったのか、どんな人物なのか…それすらも分からない。でもこれだけは分かる。自分はその人物が大好きだと言う事は分かる

 

(誰……わたくしが忘れているのは…誰なんですの?いやその人だけじゃない…もっと何かを忘れている気が……)

 

そんなもやもやした気持ちの中、帆風は体育館裏に辿り着く、そこには一人の男子生徒が待っていた。彼は顔を赤くしてカチコチになりながらも帆風に向かって口を開いた

 

「ほ、帆風さん!俺、入学式で貴方を一目見た時から好きになりました!一目惚れです!俺と付き合って下さい!」

 

「…………」

 

そう言って頭を下げる男子生徒、どう返事を返そうかと悩む帆風だがふと気づいた。スカートのポケットに何か入っている。帆風は無意識にポケットに手を入れ…それを取り出した。それは小さな赤い二つの玉だった

 

(……あぁ、そうでした。この時の為に、アレイスターさんはこれを託してくれたのですね)

 

帆風は思い出した、自分が好きな人物を、自分の友人達を、全てを思い出した。帆風はそれをギュッと握りしめると自分の三つ編みに触れる

 

(三つ編みも嫌いじゃないですが…垣根さん(・・・・)が褒めてくれたのはこれじゃありません)

 

彼が褒めてくれたのはこの髪型じゃない、彼は自分に何か物をくれた事はないけれど…あの髪型は彼が素敵だと褒めてくれたものだ。それだけで帆風はどんなプレゼントを貰うよりも嬉しかった。未だ答えを待っている男子生徒に向かって帆風はゆっくりと口を開いた

 

「すみません。わたくし、好きな人がいるので」

 

ピキッ、と何かに亀裂が走る音が聞こえた。帆風にはそれが分かった。世界が割れる音(・・・・・・・)

 

「ありゃ〜バレちゃったか〜。でも可哀想に。ずっとこのまま気づかなかったら幸せな生活を送れたのに」

 

神は体育館の屋根に悠々と腰掛け笑っていた。彼女は魔術を極め神の座へと至った者。そして世界を滅ぼした元凶である。名はゾンビ

 

「気づかなかったら家族も友人も何もかも失わずに済んだのに〜自らそれを捨てちゃうなんてね」

 

「わたくしにとって垣根さんがいない世界など偽物以外の何物でもないので」

 

「へぇ〜案外冷たいんだね」

 

「安心してください、自覚はありますので」

 

ゾンビは屋根から飛び降り地面へと着地する。そして帆風と向かい合い帆風はゾンビを睨む

 

「貴方を倒せば世界は元に戻りますか?」

 

「お、もしかしてゾンビちゃんを倒す気?脆弱な人間風情が?笑わせる☆」

 

「やって見ないと分かりませんわ」

 

「無理無理、貴方はあたくしには絶対に勝てない。たかが人間如きがあたくしに勝とうなんて片腹痛し、ですわ」

 

帆風は問いかける、お前を倒せば世界は元に戻るのかと。ゾンビは笑う。お前如きにそれが出来るのかと

 

「『幻想殺し』はあたくしが作った夢の世界で恋人達と夢のひと時を。アレイスター達は因果ごと世界から消し去りました。誰も貴方を助けに来てくれない。永遠(とわ)に一人で孤独な戦いを続ける事になりますがよろしくて?」

 

「上等ですわ。こう見えてもわたくし怒っていますのよ?目の前にわたくしが好きな人を傷つけた相手がいてその相手を許すほどわたくしは度量が大きくはないので」

 

「は、は、は…抜かしやがる♪でも暇潰しにはもってこいですし…いいですわ。特別にこのゾンビちゃんの玩具になる権利を与えましょう。精々精神が擦り切れて廃人にならないようにお気をつけて」

 

怒りの目を向けられてもゾンビはなんのその、逆にいい玩具を見つけたと大喜びだ。そして亀裂が入った世界が完全に崩壊し黒一色の世界となる…そして再びその黒だけの世界に色が現れる

 

「さて、貴方はどれだけ持つかな?数年?数十年?数百年?もしくは数千年、数万年、数億年?まあ、いいや楽しめれば☆」

 

 

 

帆風が目を覚ましたのは手術台の上だった、手足は動かない。拘束されているからだ。照明が眩しくて目を細める…そして一人の術衣を着た男性が帆風の目に映った。帆風は何か言おうと口を開いた。だが声は出なかった

 

(!喋れない!?これは…)

 

帆風が思考する前に、術衣を着た男が手に持っていた銀色に光るメスに似たナイフが帆風の皮膚を野菜の皮を剥くように皮膚を剥き始めたからだ

 

(ーーーーーッ!!!?)

 

激痛が走った、絶叫を上げようとした。だが口はパクパクと動くだけで悲鳴はでない。それを見て術衣の男は微笑む。その苦痛に満ちた顔こそが彼が見たかったものと言わんばかりに

 

男は帆風の全身の皮膚を剥き終わると次は痛覚神経を弄り始める。もう帆風には痛みしか分からなかった。舌を噛んで自殺する事も出来ない。男は大鉈の様な物で帆風の四肢を切り裂いた。ダルマになった彼女を男は引きずって何処かへと連れて行く。地面に擦り付ける度激痛が走った。もう思考するだけの余裕はなかった

 

(痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いーーーッ!!)

 

涙が出るのなら枯れるほどまで涙を流しているだろう。普段なら泣き叫ばない彼女でさえもう痛みの余り狂ってしまうほど泣き叫んでいた事だろう。だがそれすらもできない。自殺は愚か狂って楽になる事すらも許されない

 

「ほらよっと」

 

男は無色の液体が詰まった水槽の様な場所に帆風の身体を入れた。同時に焼け付く様な痛みが帆風の全身を襲った

 

(ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!???)

 

痛い、その概念すら超えた痛みが帆風の全身に走った。これが痛み、ならば今まで自分が経験してきた痛みなど痛みの内には入らないのではないか、そう思う程の痛みが彼女を襲った

 

彼女の身体は溶け始めていた、この液体は硫酸だった。全身が溶ける感覚など知りたくなかった…同時に帆風は安堵した。これで終われると

 

(か、きね……さ…)

 

そして視界がシャットアウトした

 

 

そして再び眼が覚めるとまた彼女は手術台の上に拘束されていた

 

(…………ぇ?)

 

声は出なかった、そして先程と同じく術衣を着た男が銀色のメスに似たナイフを手に持っていた

 

(ま、さか……)

 

帆風の脳裏に最悪の考えが浮かんだ、そもそもゾンビが一度自分を殺したぐらいで終わらせるような存在なのかと…そして術衣の男は帆風の腹を裂いた。そして帆風が激痛で苦しむ中腑をくり抜いて行く

 

(ーーーッ!?)

 

大腸、小腸、肝臓、腎臓、膵臓…体の中の臓器全てを取り出さんとばかりに取り出されていく自分の臓器…それを見て帆風は吐き気がした。もし吐けるのなら吐いていた。吐きたくても吐けない。彼女の今の気持ちを表すのなら『気持ち悪い』その一言だ

 

(気持ち悪……)

 

そして最後に術衣の男が手に取ったのは脈打つ自分の心臓だった。血で汚れた脈打つ心臓を見て吐き気がし…そして今度は脳天にナイフが突き刺さった

 

(ーーーーーッ!!!!)

 

そのまま頭蓋骨を開いて脳味噌が露わになる、どういう原理か分からないが見えない筈の自分の脳みそが帆風にははっきりと映った。そしてそのままナイフで脳みそをかき混ぜ始めた

 

(ーーーっ!!?)

 

痛みはなかった、脳みそには痛みを感じる器官がないのだから当然だ。だが自分の脳がかき混ぜられる所を見て気持ちがいいわけがなかった…そしてまた視界が暗転する

 

 

また眼を覚ますと今回は液体の中に帆風は閉じ込められていたが拘束されていなかった…いや拘束される必要がないと言った方が適切か。何故なら帆風には身体はなく脳味噌だけの存在だったからだ

 

(身体が……ない?垣根さんの様な感じでしょうか?でも先程よりはマシですわね)

 

マシ、この状態をマシだと言ってしまう程彼女は少し狂っていた。だがこの状態は先ほどの様な痛みはないのだから当然か。まあこの脳みその姿を見ていて気持ちが悪いのは変わらないが…

 

だがそんな幻想も術衣を着た男が現れた事で打ち砕かれる。彼は機械のボタンを押し液体の中に電撃が走った。帆風に絶え間のない激痛が襲う。ショック死すらできず自殺したくても噛みちぎる舌がない。ただ永遠と感じるほどの時間を激痛に襲われ…また意識が遠のいた

 

 

次に眼を覚まして帆風が立っていたのは森林の中だった…ジャングルの様な場所にいた事に驚くよりも手術台に拘束されていない事に安堵する帆風…だが背後から誰かに強く肩を掴まれた

 

「ーーー!?」

 

帆風が驚いて振り向いた瞬間、ゴリッブチッ、と帆風の人差し指を噛みちぎられた

 

「痛っ………!!」

 

民族衣装に赤いメイクの様なものを施した男が帆風の指を咥えていた、その男は帆風に馬乗りになって何やら叫ぶ。帆風にはその言葉が理解できなかった、言語というより奇声に近いその声に誘われて同じ様な姿をした男達が集まって来る

 

(この人達は…まさか、食人族?)

 

帆風の考えを裏付ける様に、その男達は帆風に群がり彼女の指を噛みちぎり、四肢を裂き眼を抉り、腹を切って臓器を口にする

 

「あ"、が!ぐぎぃ……!?がぁああ!!い、痛ぁっ…や、やめ…………!」

 

帆風の懇願の声も届かない、帆風は全身を貪られる感覚と共に意識を失った

 

「さぁて、後どれぐらい精神は持つのかゾンビちゃん、ワクワクしてきたぞ☆」

 

 

その後も帆風は様々な地獄を味わった、魔女狩りで十字架に磔にされ恐らくは十字教徒であろう人々に石を投げられたり糞尿を浴びせられたり、最後は斧で首を刈られて殺された。それだけでなく火の中に超時間放り込んで熱した岩を両手で持たされ、手足を縛れ泉の中に沈められ、塔の先端に縛られ落雷を浴びせられ、一月も水と食料を口にする事なく牢の中で衰弱死され、火炙りにされて殺された。それを何度も何度も繰り返した。もう数が数百回を超えた所から覚えていない。だが帆風の心は折れなかった

 

 

ゾンビは魔女狩りに飽きたのか、次に行ったのは某ゲームを連想させるかの様なゾンビに襲われる世界だ。死人達に襲われ帆風は食人族の時同様に全身を貪られた、しかも今度は自分もゾンビになってしまうウイルスに感染してしまうというオマケ付きだった、ゾンビになると堪え難い激痛が走り自分が生き残った他の人間に殺されるまで決して死ねない。その生き残りに殺されるまで何年も、何十年もその痛みに耐え続けなければならない…それを何百回と繰り返し…帆風はそれに耐え抜いた

 

 

これにも飽きたのかゾンビが次に用意した遊戯(世界)は人間ではない異形な者達に殺される世界だった。それは妖怪、時代は安土桃山時代辺りだろうか、妖怪達は人間の生き肝を好物とし帆風だけでなくその他の人間にも襲いかかり生き胆を帆風の眼の前で食べていく、当然帆風自身も妖怪達に襲われた。何度も何度も人が死ぬ瞬間を眼にした、それでも帆風の心が折れる事はなかった

 

 

次は宇宙の果てからやって来た旧支配者達に帆風が玩具にされる世界、ある旧支配者には永遠に石化され何百年も石化したまま過ごし、蜘蛛の邪神には糸でがんじがらめにされた後捕食され、蛆虫の様な邪神が放つ冷光に当てられ大理石の様に白化し凍結された、ある蛇神の怒りに触れ自らの腹を突き破って現れた額に三日月の紋章を持つ巨大な蛇に食い殺され、五芒星から出現した黒い炎に焼き殺されたり、とある地球外生命体に生きたまま脳を摘出され、特殊な円筒に入れて永遠に宇宙空間を飛び回った…それでも帆風の心は挫ける事はなかった

 

 

眼を覚ますとそこにはゾンビが帆風の顔を覗き込んでいた

 

「ねえ、メンタル強過ぎない貴方?普通何百年も生き続けたり、何千回も殺されたら精神おかしくなる筈なんだけどなぁ〜」

 

「………地獄に落ちろ」

 

「ワォ辛辣ぅ♪ゾンビちゃん怖い人は嫌いだぞ」

 

「貴方なんかに好かれたくもないですわ」

 

悪質な笑みを浮かべるゾンビに対し、帆風は今まで見た事ない程の冷たい眼をゾンビに向ける。それを向けられてもゾンビは笑みを崩さない

 

「もういい加減に諦めちゃえば?もう生きるのを諦めた方がいいよん」

 

「巫山戯ろ、ですわ。わたくしは貴方を倒すまで決して諦めませんので」

 

「えぇ〜この子面倒臭い〜。もうゾンビちゃんも飽きて来たていうか〜もう退屈なんだよ。新しい刺激がない」

 

「ならわたくしに殴り飛ばされて見てはいかがですか?」

 

「パスパス、ゾンビちゃんは人を殴ったり不幸にするのは好きだけど…自分が同じ事をされるのは大嫌いなんだ〜」

 

「この下衆が……」

 

巫山戯た事を抜かすゾンビにいつになく冷たく容赦無い言葉を吐きかける帆風、それを見たゾンビは彼女の心の支えを壊さなくては帆風は諦める事はないとようやく気付いた

 

(ん〜この子の支えて何だろう?友達?家族?いやいやそんな低俗なものじゃないでしょ。となると…垣根帝督(イレギュラー)かな?)

 

帆風潤子の心の支えは「垣根帝督に会いたい」。それを心の支えとし何千回殺されようがもう数えるのも馬鹿馬鹿しい年月を過ごしても折れなかった理由だ…垣根帝督に会いたい、その考えがある限り彼女は決して折れないだろうーーーーーーー逆を言えばそれさえ無くせば折れるのは容易とも言えるのだが

 

「なら次の世界(遊戯)はこんな風にしてみよう」

 

 

帆風が立っていたのは第七学区の街中だった

 

「……学園都市…?」

 

随分久しぶりにその光景を見た気がした。もう何百何千年も見ていなかった光景だ。懐かしさを感じて帆風は自分が悪夢の世界で長い年月を過ごしたのか嫌でも理解出来た

 

(……例えどんな責苦でもわたくしは決して諦めません。垣根さんに会うまでは絶対に…)

 

そう心の中で帆風が呟こうとした、まさにその瞬間だった。自分の視界の端にあった宝石店に、自分が探している男性が、垣根帝督(・・・・)がいた

 

「……………垣、根…さん?」

 

ホストの様な格好、整った顔立ち…間違いなく垣根帝督だ。帆風が見間違える筈がない。帆風はその姿を見て胸から何かがこみ上げた…そして同時に涙が溢れた

 

「……ね、さん……きねさん……かきね、さん、垣根さん!ああ垣根さん垣根さん垣根さん垣根さん垣根さん垣根さん垣根さん垣根さん!ずっと、ずっとずっとずっとわたくしは貴方に会いたかった!」

 

無意識に走り出した、彼に会える。自分の悪夢の様な世界を乗り越え漸く自分は彼と出会えたのだと…その喜びの気持ちのまま…彼の隣にいた金髪の女性が彼に声をかける

 

「ねえ帝督、この指輪なんか貴方に似合うと思わない?」

 

「お、いいな。操祈(・・)にも似合いそうだし…これにするか」

 

「………………ぇ?」

 

その女性は食蜂だった、二人はペアルックの指輪を手にとって笑い合っていた。どういう状況か帆風は理解出来ない

 

「ほら、俺がつけてやるよ」

 

「え!?……もう帝督たら強引力強過ぎよぉ」

 

「安心しろ、自覚はある」

 

垣根はそう言って優しく微笑むと食蜂の薬指にゆっくりとエメラルドが飾り付けられた黄金の指輪をはめていく…食蜂の白い頬がピンクに染まっていく

 

「ほらな、やっぱり操祈にはこれが似合うよ」

 

「……ありがと帝督」

 

「それはこっちのセリフだよ、お前のお陰で俺は闇から抜け出した。人殺しの俺に手を差し出してくれたのは…お前だけだよ操祈」

 

「それを言ったら、デッドロックから私を助けてくれたのは何処の天使様だったかしらぁ〜?」

 

そう言って二人は笑い合っていた、それは幸せな恋人達の青春の1ページ…そんな光景を帆風は静かに見ていた

 

吐き気がした、自分の好きな人が、自分が女王と呼んでいる少女と笑い合っている…酷い吐き気がして帆風は近くの壁にもたれかかった。今の自分はなんの干渉も出来ない。ただこの幸せ(地獄)を見ている事しか出来ない

 

 

また世界が変わった、今度は垣根が学生鞄を手に持って歩いていた。そんな彼に栗髪の少女が走り寄ってくる

 

「ちょっと!私を置いて先に行かないでよね!」

 

「お前が遅いから悪いんだよばーか」

 

その少女は御坂美琴だった、美琴は垣根の肩に寄り添う様にくっつく。垣根はそれに対して何も言わず抱き寄せる。美琴は頬を赤くして垣根と手を繋ぐ

 

「美琴たんは甘えん坊だな」

 

「美琴たん言うな」

 

そう軽口を叩きながら幸せそうに歩く二人、美琴は視線を垣根から外しアイスクリームの屋台を見つけ暫くそれに釘付けになる…垣根はそんな彼女を見て笑ってアイスクリームの屋台に近づきバニラアイスを一つ買う

 

「ほらよ」

 

「え、いいの?」

 

「ま、俺はお前の彼氏だし。彼女が食べたそうに見てたもんを買ってやるのは当然だろ?」

 

「……ありがと」

 

パクパクと小動物の様にアイスクリームを頬張る美琴、そんな彼女を黙って見ていた垣根は彼女の頬に軽く口付けした

 

「ふにゃ!?ち、ちょっといきなり何すんのよ!」

 

「悪い、つい可愛くてな」

 

「〜〜〜っ!!も、もう!」

 

いきなりの出来事に困惑しながらも大きな声を上げる美琴、垣根は可愛過ぎてつい手を出したくなったのだと笑った。それを聞いて美琴は顔を真っ赤にして…垣根から顔を背けた…が、にやけ顔だった

 

学生同士の仲良しなカップルの1ページ、それを帆風は口元を押さえ吐き気を我慢しながら黙って見ていた。全身から熱が引いていくのが分かった。嫉妬などという生半可な言葉では説明出来ない感情が帆風の胸の中に蠢いていた

 

 

また世界が変わった、何処かの家のリビングだった。いかにも高そうな家具や装飾品が置かれている…ソファーには金髪の女性がふっくらと膨らんだ下腹部を軽く撫りながら座っていた

 

「……あら、また動いた。お父さんに似てちょっとヤンチャな子なのかしら?」

 

「誰がヤンチャ坊主だ」

 

「違うの?」

 

「違くねえな」

 

そう言って笑い合う二人、帆風はその女性を知っている。心理定規だ。垣根は彼女に近づくとお腹に耳を当てる

 

「お〜聞こえる聞こえる。相当なヤンチャ坊主だな…いや女かもしれねえが」

 

「ふふふ、そうね……ねぇ、名前は何にする?」

 

「気が早えんじゃねえか?まあ俺はお前が決めた名前ならなんでもいいけどな」

 

「あら、それは困るわ…貴方に名前を決めて欲しいんだもの」

 

そう夫婦らしい会話を続ける垣根と心理定規、垣根は軽く彼女のお腹を撫でる

 

「俺は女の子が生まれてきて欲しいな」

 

「私は男の子がいいわね…でも、貴方と私の子なら性別は気にしないわ」

 

「奇遇だな、俺もお前と一緒だよ」

 

そう言って微笑み合う二人、それは幸せな夫婦達の生活の1ページ。床に膝をついて沈黙したままそれを見入る帆風…これはまやかし、ゾンビが作った偽りの世界だとしても…今までのどんな世界よりも、彼女の心を苦しめた

 

 

また新しい世界に帆風は立っていた、学園都市の何処かの歩道を垣根と頭に花飾りをつけた少女が二人マフラーをして歩いていた

 

「暖かいですね垣根さん」

 

「そうだな」

 

その少女…初春は少し照れ臭そうに垣根と一緒に歩く

 

「こうしてるとあったまりますね〜、それに恥ずかしさで火照りますし」

 

「そうだな、まあ俺はそんなエコプレイ興味ねーけど飾利が好きなら俺は付き合うぜ」

 

「ちょ!?まるで私がドMで人に恥ずかしい所を見られて興奮する変態みたいじゃないですか!」

 

「え?違うの?」

 

「違いますよ!」

 

ギャーギャーと騒ぎ立てながら反論する初春、垣根は指で耳を抑えて聞こえないふりをする

 

「だって佐天の奴にスカート捲られてもその時怒るだけでそれ以上は怒んねえし、本気で止めようともしねえからそういう趣味かとばかり思ってた」

 

「あれは佐天さんがいくら言ってもやめないから諦めてるだけです!興奮なんかしてませんよ!」

 

「そう、形ばかりの反論をするドMな飾利ちゃんなのでした」

 

「だからドMじゃありません!」

 

そう言って喚く初春、そんな彼女に垣根は笑みを浮かべながら彼女の口を自分の口で塞いだ

 

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!?」

 

「………これで少しは静かになったか?」

 

「〜〜〜ッ!!ず、ズルいですよ垣根さん!キスで無理矢理黙らせるのは卑怯です、反則です!」

 

「でも嫌じゃねえだろ?」

 

「そうですけど!こういうのは雰囲気とかムードとかが大事なんです!」

 

「俺にお前の常識は通用しねえ」

 

そう言ってニマニマと笑う垣根、初春は顔を真っ赤にしてポカポカと垣根を殴り続ける。それは恋人同士の幸せなデートの時間の1ページ…それを見て帆風は心の中の大事な何かが音を立てて崩れ始めたのを感じ取った

 

 

そこは結婚式場だった、そこにはこれから夫婦になる白いタキシードを着た青年と白いウェデイングドレスを着た少女がいた

 

「その服似合ってるぜオティヌス」

 

「お前も様になっているぞ帝督」

 

オティヌス、元魔神の黄金の様な美しい金髪とエメラルドの様に輝く碧眼の少女。彼女はウエディングヴェールを頭に乗せて微笑みながら垣根を見ていた

 

「……私はお前しかいなかった」

 

オティヌスがそう微笑みながら垣根に言葉をかける

 

「私は兄を捨て、世界を捨ててでも魔神になって世界をより良くしようとした。そして失敗して孤独になった。私はずっと一人だった。永遠とも思えるほどの時間を過ごした…そんな時お前と出会った。最初は主神の槍を製造する為の鍵としか認識していなかった。でもお前と触れ合う度に私はお前に惹かれていった…そしてお前は私を助けてくれた…その時気付いたんだ。私はお前に恋をしていたんだと」

 

「………おいおい、今そんな恥ずい事言わないでくれよ。聞いてるこっちが恥ずかしくなってくる」

 

「煩い、私だって恥ずかしいんだ」

 

そう言って太陽の様に眩しい笑みを浮かべるオティヌス、彼女を見て垣根も笑った

 

「"好き"という感情はお前の未元物質以上に説明できないものなのだな。どうして好きになったのか分からない……分からないのにお前が欲しかった、いつの間にかお前の事しか考えられない様になっていた……全く神を手篭めにするなど罰当たりな奴だよお前は」

 

「お褒めに預かり至極光栄です女神様」

 

垣根はオティヌスの白い肌に優しく触れる、そしてオティヌスの両頬を両手で抑え…小鳥が木の実を啄む様に口付けした。口の中で舌と舌と絡み合った…口を離すとネットリとした透明な糸が二人の口と口の間に出来た

 

「……帝督」

 

「……オティヌス」

 

愛おしげに見つめる二人、そんな空気の中扉が音を立てて開き金髪の男性…オティヌスの兄であるオッレルスが入ってくる

 

「…お楽しみの最中悪いけど式の時間だよ二人共」

 

「……タイミングが悪いなクソ兄貴」

 

「すまない、だが妹の晴れ舞台を早く見たいんだよお兄ちゃんは」

 

「へいへい、義兄さんの言う通り行きますか。ほら行くぞオティヌス」

 

「………ん」

 

垣根はオティヌスに手を差し伸べる。オティヌスは笑いながらその手を握り…垣根にエスコートされる形で自分達の結婚を祝福する人達の元へと向かった

 

 

そんな光景を見続けて帆風は等々我慢出来ずにその場で嘔吐した、嗚咽を漏らしながら胃の中にあるもの全てを吐き出さんばかりに吐いた。そこに乙女の恥じらいはなかった。お嬢様としての威厳と可憐さはなかった

 

「これで分かったんじゃない?」

 

とん、と帆風の肩をゾンビが優しく叩く。動かない帆風にゾンビは甘い囁きを口にする

 

垣根帝督(イレギュラー)にとって女なんて誰でもいいんだよ。自分にとって都合がいい女なら誰でも愛する軽薄な男なのさ。ああ、なんて可哀想なんだ。君が愛した男はなんて軽薄なのか。でも分かったでしょう、貴方がこんな目にあって会う価値がないと言う事に…だから諦めちゃいなよ。言っておくけどこれはまやかしや作り物じゃない。数多くある選択肢の中でイレギュラーが選んだ世界。つまりあり得たかもしれない世界て事だよ」

 

そう帆風に言い聞かせるゾンビ、帆風がこんな酷い目にあってでも会う価値などあの男にはない。垣根は女なら誰でも愛する軽薄な男だ、都合のいい女がタイプな下衆なのだと言い聞かせる。だから諦めろと笑いながら囁くゾンビ…だが、だとしても、それでも、彼女は諦めない

 

「……確かに世界が無限にあるとしたら、垣根さんは先程の様にわたくし以外の誰かを選ぶでしょう…ひょっとしたらわたくしなんか垣根さんは選んでくれないかも知れない」

 

「なら」

 

「でも、だとしても…わたくしは諦めません。わたくしは垣根さんが好きです、愛しています。その思いが決して伝わらないのだとしても、叶わなくても関係ありません。垣根帝督はわたくしの初恋の殿方です。彼の方に会うまでわたくしは諦めない!」

 

帆風の心は折れない、砕けない、壊れない、挫けない、曲げない。垣根に会うまでは決してゾンビに負けやしない。それが彼女の自分だけの現実(パーソナルリアリティ)だった。故にこの程度の絶望で彼女の心は負けやしない

 

「わたくしは諦めません」

 

その言葉こそ今の帆風を象徴するに相応しい不屈の言葉だった。それを聞いてゾンビは一瞬顔を固め…舌打ちした

 

「………チッ、いくら温厚なゾンビちゃんでもいい加減頭にきましたわ。いいでしょう、貴方はわたくしが直々に手を下して殺してあげます。そして何度でも生き返らせてまた殺しましょう。自らの死を何千、何万、何億回も繰り返せば諦めてくれるでしょう!てな訳で死に戻りを極めましょう!」

 

本性を剥き出しにして手刀で帆風の首を切り落とすゾンビ、一瞬で帆風の視界は真っ暗になり…気づけば闇の世界に立っていた

 

「さあ、ここからが本番!何度死ねば心が砕け散るんでしょうねぇ!?」

 

ゾンビに天使崇拝(アストラルバディ)も通用するか分からない。不利というレベルではなく単純に蹂躙されるだけであろう帆風…だが彼女の眼は死んではいない、勝てなくてもいい。諦めなければいいのだから

 

「こんな所でわたくしは折れません。こんな所で折れているようでしたらわたくしは決して垣根さんの横に並び立つ事は出来ませんので」

 

帆風潤子(少女)魔神 ゾンビ()に挑む。少女は揺るぎない想いを胸に抱き神へと叛逆した

 

 

 

 

 

 

 




………書いててわかった、縦ロールちゃんメンタル強過ぎない?上条さんレベルじゃないか。因みにていとくんならもう最初の段階で詰んでた。やっぱり縦ロールちゃんは主人公(ヒーロー)なんだなて分かりました…因みに作者はこれを書いてるだけで吐き気がしました。なら書くなよと思うかもしれませんが…作者は頑張って書き切りました

因みにグロ描写の元ネタは「フィアンマ「助けてくれると嬉しいのだが」トール「あん?」」と「魔女狩り(新約5巻の行間に書かれていたフロイラインに行った拷問)」「クトゥルフ神話(ガタノソア、イグ、ミ=ゴ、ルリム・シャイコース、アトラク=ナクア、クトゥグアの化身の一つ 生ける漆黒の炎)」「ぬらりひょんの孫 過去編」「バイオハザード」「映画 食人族」です。食人族は母にこの映画、滅茶苦茶グロいよて言われて調べて吐き気がしました

帝風以外のカップリング、普段ならいいカップリングやな〜て思う程度ですが…単なる縦ロールちゃんの心を折るための失恋またはNTRですね…皆さんも考えてください。自分にとって大切な人が他人に、しかも知ってる奴に取られたと…想像もしたくないわ…でもこれに耐えきった縦ロールちゃんて一体…

次回は意外な人達が登場。果たしてこんな絶望の淵みたいな状況から縦ロールちゃんは勝てるのか!?そして早く出てこいていとくん!そして次回は……帝風のラブコメありです

次回もお楽しみに!


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地獄か、天国か

今回はまさかのあの人物達と予想外過ぎるあのキャラが登場。そして待たせたな…今回はていとくんと縦ロールちゃんのラブコメだ。いや敵の目の前でイチャイチャすんなやとか言わないでください。恋愛描写下手だけど許して

それから調べて見たんですけど薔薇十字団て凄い著名人が勢ぞろいなんですね…なんとあのレオナルド・ダ・ヴィンチも所属していたらしいですし、アウレオルスの先祖 パラケルススも所属していたとか。それにあのシェイクスピアも所属し彼の作品を代筆したのは薔薇十字団だとか…とあるの新シリーズに薔薇十字団が出るのならパラケルススが出る可能性がある…つまりその子孫であるアウレオルスの再登場もある!?



垣根は世界を漂っていた、世界はめくるめくる変わり続ける。争いも差別もない平和な世界、戦乱で満ちた世界、科学が発展せず魔術が発展した世界、原始的な生活を送る原人達の世界…垣根は様々な世界を歩み続けた…だが誰も垣根の存在に気づけない

 

「………はぁ、どれだけ時間が経ったか…それすらも分かんねぇ。誰も俺の姿が見えねえみてえだし何かに触る事も出来ない…幽霊みたいなもんかね?」

 

事実幽霊の様なものだろう、人とぶつかれば相手は垣根の体をすり抜ける。建物もすりぬけられた。今の垣根はただ思考するだけの存在…もしかしたらAIM系思考体と同類になっているのかもしれない

 

「つまり氷華やエイワスのクソ野郎と同じ存在て事か…」

 

等々人外の域にまで来たかと垣根は自虐げに笑う。もう垣根は疲れていた、正確な時間は覚えていないが恐らくは何千年も世界を彷徨っている筈だ、死ぬ事も消える事も生きる事も出来ない。誰かと喋る事も触れる事も出来ない

 

「……退屈なもんだな。ずっと一人てのは…もう疲れた」

 

そう言って垣根はその場に座り込む、もう楽になりたかった。こんな生き地獄に疲れてしまった。これがまだゾンビを倒す為の戦いだったら良かった、まだ目的があるからだ、だが一向にゾンビは現れる気配はない…人間は目的がなければ生きていけない、ゴールのないゴールを走り切る事が出来ないように

 

「……はは、やっぱり当麻は凄えや。オティちゃんの世界に耐え切れたんだからな。俺には十回も耐えられねえよ」

 

もう垣根は諦めたかった、このまま目を閉じたら自分という存在概念が消えればいいのに…そう考えながら目を閉じ始めようとしたその時

 

『何黄昏てんだよ偽物()

 

「!?」

 

誰かの声が聞こえた、誰かに喋りかけられた。実に数千年に誰かに話しかけられた。その声をかけた人物は……垣根帝督(・・・・)だった

 

「な………!?」

 

『言っておくが俺はお前だが(・・・・・・)お前じゃねえぞ(・・・・・・・)。俺は垣根帝督、お前とは別の俺、まあパラレルワールドの…お前がいう原作てやつの垣根帝督だよ」

 

原点における垣根帝督。この世界とは違う世界、一方通行に二度挑み破れ、オティヌスに球体状にされ利用された垣根帝督、この垣根帝督(転生者)とは違う正真正銘の垣根帝督だ

 

『長ったらしい話なんぞしねえ、単刀直入に用件を言う…もうお前の役目は終わったんだよ偽物。だからお前の身体を寄越せ』

 

垣根帝督は告げる、それが正しいのだと言うように

 

『お前の代わりに俺がゾンビてヤツをぶっ殺してやる。まあ、そいつをぶっ殺した後は第一位…いやこっちの世界では第三位だったか?あのクソ野郎を殺した後、アレイスターもぶっ殺す。お前にはそれが出来る力がある』

 

垣根帝督は下品な笑みを浮かべる、並行世界で自分を散々な目に合わした者達への復讐を果たす為に紛い物(垣根帝督)へと詰め寄る

 

『さあ、その力と肉体をよこせ垣根帝督の名を騙る誰か。その力は垣根帝督(本物)である俺が使うに相応しいんだからよ』

 

 

 

「ほら!少しは抵抗してくれないかしら!さっきからあたくし退屈でしてよ!」

 

「ーーーーッ!」

 

ゾンビがそう叫ぶと同時に帆風の身体が爆散した、単なる肉塊となって弾け飛んだ帆風の肉体は鮮血を散らしながら醜い姿となる…確実に死んだ。寧ろこの状態で生きている方がおかしい…帆風はゾンビに殺されたのだ

 

なのに気づけば帆風は五体満足で黒一色の世界に立っていた。これは彼女の能力によるものではない、ゾンビが帆風を自らの意思で蘇生させたのだ。善意などではなくもっと彼女を痛ぶる為に、一度殺した程度ではゾンビは満足しない…既に帆風は一度や二度程度では済まないほどに何度も殺されている

 

一万回、これが何の数字か分かるだろうか?これは帆風潤子が魔神 ゾンビに殺された(・・・・)回数だ。最初は帆風はその身にザフキエルを宿し神速でゾンビに迫った。だがいつの間にか自分の身体が上半身と下半身に切断されていた。そのまま帆風は一度死に…また黒一色の世界に立っていた

 

ゾンビが時間を巻き戻したのか記憶をリセットしたのか…どちらにせよ魔神である彼女にとっては息を吸うのと同じくらい動作もない事だろう。帆風は何度も何度もゾンビに殺された。それがあまりにも一瞬過ぎて何が起こったのか理解できなかったが一万回も殺されると段々と理解できていく

 

(恐らく彼女が扱う術式とやらは…"魔術を含めたありとあらゆる物"。人であれ物であれなんでも自分の思い通りに操る魔術。そう仮定すれば今までの自分の死に方に納得がいく)

 

今までの帆風の死に様は多くはゾンビの手刀による惨殺だ。首を刈り取られる、上半身と下半身に裂かれる、左右に真っ二つに切り裂かれる…どれも避けようとした瞬間に身体が止まり切り裂かれてしまう。次に身体が先程のように破裂して臓器や血、肉塊を撒き散らしながら死ぬ死に方だ。これも急に身体が止まってその後に破裂する。他にも色々な殺され方をされたがどれも避けようとしたり、殺される瞬間に身体が止まるという共通点があった。恐らくゾンビが扱う術式は"人も物も魔術も自分の意のままに操る術式"だろう

 

(恐らく"人体"も操作可能。それを使って一時的に身体の動きを封殺する事も、身体を膨張させ破裂させる事も可能…恐らくアウレオルスさんの黄金錬成とは違い何の制限もなくその術式を行使出来る…弱点はなく即死の威力、そして必中の攻撃……これが『魔神』!)

 

この術式は発動に時間がかかる、何かしらの欠点がある、発動条件に縛りがある、弱点が存在する……そんなものは一切ない。これが魔神、勝ち負けというくだらない概念を超越した存在

 

「分かった?これが『魔神』。最初から貴方は諦める道しかないの。てな訳で降参しなさい」

 

「お断りですわ、わたくしこの程度では諦めませんので」

 

「……こっちの身にもなってよ、一方的なワンサイドゲームは好きだけどこんなに沢山やると飽きちゃう…だからさっさと諦めて心折れろよ!」

 

そう言ってゾンビは右腕を大きく振るう、それだけでソニックブームが発生し帆風の身体を斜めに切断する。そして次の瞬間にはまた五体満足で帆風は立っていた

 

「……それならもうこうやってわたくしを蘇らせるのをやめればよろしいのでは?」

 

「それだとゾンビちゃんの負けみたいじゃん、だから貴方が折れて敗北しちゃいなよ☆」

 

帆風はそう反論するがゾンビはそれでは自分が敗北した様に感じるから嫌だと告げる。そして帆風の身体が膨張し破裂。花火の様に飛び散り血や肉を周囲に飛び散らす。そして再び黒一色の世界に帆風は立っていた

 

「そろそろ諦めてくれないかな〜、もう大抵のあたくしが出来る殺し方し尽くしちゃったからそろそろつまんないの」

 

「……神の代理人(メタトロン)

 

帆風はメタトロンをその身に降ろす、ゾンビの周囲の地面と虚空から白く輝く炎の槍を出現させゾンビの全身を串刺しにしようとする。だが槍は全て動きを止め、軌道を変えて帆風へと突き刺さった

 

「がぁ………!!?」

 

昆虫標本の様に串刺しにされた帆風。そしてそのまま心臓に槍が突き刺さり…またゾンビと向かい合う形で立っていた

 

「これで何回目だったけ?もう覚えてないな〜。もうゾンビちゃん飽きちゃったな〜。だからそろそろ終わろうよ」

 

「ま、だ…ですわ。わたくしは、諦めません」

 

「……うわぁ、貴方本当に人間?諦めの早い現代っ子が多い中でここまで我慢強いとか…マジ引くわ」

 

ゾンビはそう言ってドン引きしているが帆風は一切気に留めない。何度でも何度でもゾンビを攻撃してやる。何度殺されても何度攻撃を防がれても必ず一矢報いる。そして世界を元に戻す…全ては垣根と会う為だけに

 

「さあ、かかって来なさい。人間の諦めの悪さを教えて差し上げますわ」

 

天使の力は悉くゾンビには通用しなかった。ミカエルの力は一蹴されガブリエルの神戮はそもそも夜という概念がない為使えず、ラファエルの癒しの力で回復する間も無く、ウリエルの風と炎、光の力も通じない。メタトロンもザフキエルもラジエルもザドキエルもカマエルもハニエルも何もかもゾンビの前では無力。切り札たるサンダルフォンも当然の如くゾンビには通用しない

 

それでも帆風潤子は諦めない、例え自分がゾンビに勝つ確率が0.000000000000000001%もなくても必ず勝ってみせる。全ては自分が恋した少年に会う為に、その揺るぎない信念を胸に彼女は拳を握る

 

「……調子に乗んな!」

 

グチャ、と帆風の身体が弾け飛んだ。人体に干渉し身体を内側から炸裂させたのだろう

 

「ならお望み通り何度もぶっ殺してあげる!何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度もねぇ!復活したら即座に殺す!それを何度も繰り返せば諦めないのを諦めてくれるでしょおおぉぉぉぉ!!?」

 

等々ゾンビはガチでキレた。本性を剥き出しにしてこれからは復活して即座に殺し、また復活させて即座に殺すという行動を繰り返すと告げた

 

「さぁて覚悟はいいですぅかぁーー!!?」

 

ゾンビが帆風に宣言した、だが帆風はゾンビの目の前にはいなかった(・・・・・)

 

「……ほへ?」

 

ゾンビは思った何故いないのかと、自分が誤って存在を消した?いやいやそんなヘマはしない。新たな世界を作ってそこに帆風を送ってしまった?いやそんな筈はない…なら何故帆風はゾンビの目の前にいない?

 

「………あれぇ?」

 

怒りを忘れゾンビはただただ頭を傾げた

 

 

帆風は白一色な世界に立っていた。ゾンビと共にいた黒一色の世界ではない

 

「………ここは…」

 

ここは一体何処なのかと呟こうとした時、背後から声が聞こえた

 

「ここはわらわが特別に、あなたとの会話をしてあげる為に作り出した空間ですわ」

 

「え……?どなた……」

 

どなたですか、そう答えようとした直後。帆風は背後の人物に突き飛ばされ態勢を崩した帆風は地面に四つん這いとなり、その背中に謎の人物が座る

 

「………中々いい座り心地の椅子じゃない。エイワスよりも座り心地はいいわね。気に入ったわ」

 

「いきなり椅子扱いですか!?」

 

初対面で椅子扱いは初めての経験だった、帆風は首を動かして自分の背中に座っている人物は誰かと見る。座っていたのは赤を基準としたドレスを着こなした薄い赤色の縦ロールが特徴的な10~12歳ほどの少女が足を組みながら帆風を見下ろしていた

 

「あ、貴方は?」

 

「わらわはアンナ=シュプレンゲル。気まぐれに『黄金』の設立許可を与え黄金夜明の種を世界中に蒔いた始祖の令嬢…そう呼ぶ輩もいるわね」

 

アンナ=シュプレンゲル、黄金夜明設立に深く関わる人物にしてかの薔薇十字の一因でもある人物。実在するかも定かではないと噂される女性だ

 

「……で、アンナさんは何故わたくしを椅子代わりに…?」

 

「誰が喋っていいと言ったのかしら?まあいいわ。椅子にしてる事自体には深い意味はないわ。あなたはわらわの椅子なんだもの、椅子に座るのに深い理由はいるの?」

 

「………」

 

帆風の事を椅子としか認識していないアンナ、帆風は一瞬思考を放棄しかける

 

「で、ではここは何処なのでしょう?」

 

「何度も同じ事を言わせるつもり?わらわが貴方に座る為に世界を作り出したの。貴方は頭の栄養が全てその胸に行くのかしら?」

 

「せ、世界を……?では、貴方は魔神…」

 

「わらわをあんな雑魚(・・)と一緒にしないでくれる?不快よ」

 

雑魚、魔神のことを彼女はそう評価した。それに驚く帆風だがアンナは不敵な笑みを崩さない

 

「本来なら惨たらしく殺してあげるのだけどあなたはわらわのお気に入りの一つなの。だから許してあげるわ。感謝なさい」

 

「は、はぁ……」

 

「さて、本題に入りましょう。あなたはゾンビに勝ちたい?」

 

「……ええ」

 

「そう、なら話は簡単よ。わらわが力を貸してあげるわ」

 

ゾンビに勝ちたいのなら力を貸してやろう、その言葉に帆風は大きく目を見開く。詳しい素性は分からないがアンナとやらは魔神を雑魚呼ばわりし、魔神と同じく世界(空間?)を作り出す程の実力を持った持ち主なのだ。彼女が力を貸してくれるのならゾンビにも勝てるかもしれない…そう帆風を考える…そして暫し考えたのち彼女はこう答えた

 

「丁重に断らせてもらいますわ」

 

帆風はその誘惑を自らの意思で断ち切った

 

「……理由は?」

 

「そう、ですね…貴方が信用出来ないのも理由の一つですが…一番の理由はあの魔神はわたくしの手で倒したいんです」

 

「……あなたでは絶対に倒せないわよ?」

 

「それでも、です。わたくしの好きな人をあんな酷い姿にした人物を…他の人の手を借りて倒す事だけはしたくないんです。わたくしの手だけであの女をぶん殴りたいんです」

 

例え自分の力では魔神(ゾンビ)を倒せなくとも。垣根の仇を取る為に他人の手なんか借りたくない。ゾンビは自分が倒さなければならないのだ。これは単なる帆風の我儘だ、彼女はそれを重々承知の上でそうはっきりと告げたのだった

 

「…………」

 

そんな子供の我儘の様な言葉を聞いて、アンナは押し黙る…そして彼女は笑った

 

「面白い、予想外の言葉よ。わらわの予想だとあなたはわらわに助けをこうと予想していたのに…垣根帝督といいあなたといい…わらわの予想の範疇を本当に超えてくれるわね」

 

その答えをアンナは気に入った。ニヤニヤと帆風を見て笑いながら手を叩く

 

「本当にあなた達二人は面白い。力ではエイワスの雑魚にも劣るけど面白さなら随一。薔薇十字に加えてあげたいくらいね。フランシス=ベーコンやレオナルド=ダ=ヴィンチ、ウィリアム=シェイクスピア…あの変人奇人達にも負けず劣らずのわらわが思わず笑ってしまう…本当に面白いわ」

 

「……3人ほど有名な人物の名前が出てきた事にわたくし驚いているのですが」

 

「驚く事はなくってよ。レオナルドもシェイクスピアもベーコンも薔薇十字の一員なのだから。そもそもシェイクスピアの阿呆の代わりに戯曲を書いてやったのはわらわ達薔薇十字なのよ?それに今の科学の原点はベーコンが作り上げたもの…薔薇十字とは今の世界に密接に関係する存在なのだから」

 

他にも薔薇十字の一員にはオティヌスが撃破したサンジェルマンやアウレオルスの始祖たるパラケルスス…他にも名だたる著名人が薔薇十字の一員として知られる

 

「誇っても良くてよ、わらわがこんなに気に入ったのは初めてなのだから。泣いてその誉れを喜び浸りなさい」

 

「………複雑ですわ」

 

そう高笑いするアンナ、椅子(帆風)は複雑な気持ちだった

 

「……さて。そろそろ無駄な会話はやめるとして…エイワス。さっさと用意した物を寄越しなさい」

 

『ああ、分かっているよ』

 

いつ現れたのか光り輝く天使が帆風の背後に立っていた。アンナはエイワスへと指示を出しエイワスはとあるものを取り出す。それはとある人間の右腕だった

 

「……右手?」

 

「ええ、垣根帝督(・・・・)のね。どう久しぶりに見たんじゃない?愛しい人の右腕…義手なんかじゃない本人の本当の右腕よ」

 

「……!?」

 

『知っているだろう?私が垣根帝督の右腕を代償にアレイスターにリリスを返してやった事を。その時の腕をずっと私と彼女で保存していたんだよ』

 

「……垣根さんの腕をどうする気ですの?答え次第によっては…」

 

垣根の右腕だと言われて帆風は全身から殺気を出した。悪用すると言うのならアンナ達の敵になると言わんばかりに。そんな帆風を見てアンナはやれやれと肩を動かす

 

「そう怖い顔しないの、四つん這いの状態で言っても怖くないわよ?…まあ、答えを言うとこの右腕を貴方の右腕に組み込む…まあ、融合て言った方が分かりやすいかしら?」

 

「……融、合?」

 

「ええ、アレイスターの思惑は確かに面白いけども…まだわらわにとっては刺激が足りないの。だからわらわが少し手を加えてあげようと思ってね」

 

『とはいえ、彼女もつい最近この考えを思いついたのだがね。アドリブというやつだよ。まさか嫌がらせのつもりで取っておいた垣根帝督の右腕がこんな形で役に立つとはね』

 

「……後で椅子になりなさいエイワス」

 

このエイワスの力が染み込んだ右腕(・・・・・・・・・・・・・・)を帆風の右手に組み込むのだと笑うアンナ。余計な事を言ったエイワスを睨みながら帆風の様子を伺うが帆風は黙って右腕を黙って見ていた

 

「……何か言うかと思ったけど無言とはこれもまた少し予想外ね」

 

「………ねさんが…わたくしの……中に?」

 

「?」

 

帆風の口から小さな声が聞こえ思わずアンナは耳をすます

 

「か、垣根さん(の身体の一部)がわたくしの体の中に!?え!?ちょ、そんな…わ、わたくし心の準備がまだ…!?」

 

「………わらわはどんな反応をしたらいいの?」

 

『おや、君が戸惑うなんて珍しい』

 

「右腕を見せてこんなにトリップするとは流石のわらわも予想すらできないわ…まあ、いいわ。エイワスさっさと組み込みなさい」

 

『分かった』

 

トリップする帆風を見て戸惑った顔をするアンナ、軽く息を吐きながらアンナは椅子代わりに座っていた帆風から降りて少し距離を置く。彼女はエイワスに命令しエイワスは言われるがまま垣根の右腕を光の粒子に変換して帆風の右腕に光の粒子を注がせる

 

「!?こ、これは……!?」

 

「アレイスターの考えていた計画(プラン)は悪くわないわ。でもね何故「神の代理人(メタトロン)」と「神の王国(サンダルフォン)」なのかしら?あなたのテレマには相応しい神格がいるのに…そこまで着眼点がなかったのかしら?だから仕方ないのでわらわが手を加えてあげますわ」

 

そう言って薄く笑うアンナ

 

「テレマの戦いと復讐の神である二重神 ホルスの一面 ラー・ホール・クイト。そして双児の兄弟である沈黙と内なる力の神 ホール・パアル・クラアト。この二神が揃えば魔神を超えた存在になれるわ…ただし一人ではその存在にはなれないのだけれど(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

そう言って不敵に笑うアンナ、それは新しい玩具を買ってもらった子供の様な無邪気な顔だ

 

「下準備は揃ったわ。後は垣根帝督と出会って互いの記憶を共有するだけよ」

 

「垣根さんと…?それに共有…?」

 

「そう、あなたはゾンビのお陰で一万回以上の死を経験している。そして垣根帝督は10万3000冊の魔道書の原典の知識がある。この二つが混ざり合った時。そして然るべき手順をこなせば…あなた達はゾンビに対抗し得る力を得る…わらわがここまで親切心を出してあげたんだから期待に応えなさい」

 

ここまでお膳立てをしたのだ。期待に応えられなかったら許さねえからな。と軽く脅す様に笑うアンナ

 

「でも記憶の共有とはどうやったら…?」

 

『いや君は既に持っているよ、記憶の共有ができるその霊装…アレイスターから託された小さな赤い玉がね』

 

「え?これですか?…でも使い方が……」

 

エイワスに言われ取り出したのは05から受け取ったあの赤い玉だった。確かに05は性魔術を応用した記憶の共有と言っていたが帆風には使い方が分からない。首をひねる帆風を見てエイワスは笑いながら彼女の耳元でその使い方について囁く

 

『ならば教えてあげよう。その使い方は…』

 

エイワスが使い方を教える。その言葉を聞いて帆風は一瞬何を言っているのか理解出来ず呆け…そして顔を一瞬で赤くした。顔から湯気が出るほどに

 

「え!?え!!?そ、そ、それって!?」

 

『初々しい反応だ。成る程、これはアレイスターがカップリングというのにハマる訳だ。私も少し興味が湧いた』

 

「……さて、そろそろ別の異分子(・・・・・)が垣根帝督を黒の世界に誘う頃かしら?さあ、お別れの時間よ。精々わらわ達を楽しませることね」

 

そんなアンナの言葉を最後に、帆風は白の世界から姿を消した

 

 

「嫌だ」

 

垣根は垣根帝督にそう言い放った

 

『あぁ?今何て言った?』

 

「嫌だ、て言ったんだよ」

 

そうはっきりと垣根帝督に言い放つ垣根、垣根帝督はジロリと垣根を睨む

 

『言うじゃねえか。さっきまで生きるのを諦めた様な顔をしてた癖に』

 

「……あぁ、確かにさっきまではもう楽になりたいて思ってたさ」

 

『なら…「でもさ」』

 

垣根帝督の言葉を遮って垣根は彼の顔を真っ直ぐ見つめながらこう答えた

 

「俺、まだ死にたくねえんだよ。単に死ぬのが怖いんじゃねえ。皆の幸せを取り戻したいんだ。ゾンビの好き勝手であいつらの幸せを壊されたまんまにしておきたくねえんだ」

 

アウレオルスの努力が叶った世界、アレイスターが娘を取り戻した世界、上条当麻が記憶を失わずに済んだ世界、一方通行に友達がと家族が出来た世界…こんな幸せな世界を好き勝手な理由で破壊されて、それを元に戻さないで死ぬなど嫌だ

 

「俺は世界を元に戻す。その前にくたばる訳にはいかねえんだ」

 

『……は、お優しい事で。俺はそんな事しねえぞ。やっぱりお前は偽物だよ』

 

「かもな、だが偽物でも構わねえ。皆が笑ってられるのならそれでもいい」

 

皆の幸せを守れるのなら偽物ぇも構わない、垣根はそう言うと垣根帝督は皮肉げに笑う

 

『お前にゾンビが倒せるのか?』

 

「無理かもしれない、だがやらないよりはマシだ」

 

『諦めなければ勝てると?夢物語だな』

 

「だろうな、だが諦めるよりはやってから諦めた方がいいに決まってる」

 

『…………カッコ悪いな、そんなのは垣根帝督()じゃねえ』

 

「安心しろ、自覚はある」

 

そう言葉を交わす垣根と垣根帝督…暫し両者は目を見つめ合う。そして垣根帝督は口を開いた

 

『…俺にも昔は守りたい女がいた。名前は杠林檎(ゆずりはりんご)

 

「……?」

 

『最初は一方通行の演算パターンを掴む為の道具だった…だがいつの間にかあいつを守りたいと思う様になっていた…大切な物を失って闇に堕ちた俺にまた一瞬の光を見せてくれた…俺にとってあいつはヒロインだったよ』

 

『……でも死んだよ』

 

自分の事について語り始める垣根帝督、淡々と自分がかつて守りたかった少女の名前を告げ彼女のことを話す時は少し楽しそうな顔をし…そしてまた無表情に戻った

 

『木原相似、あいつの所為で杠は死んだ。俺は希望を失った。だから決めた、一方通行をぶっ殺して第一候補になる事にした。まあ結局殺されて利用されて最後はバレーボールにされてポイ捨てだけどな…笑えるだろ?俺の人生て本当に何だっんだろうな』

 

「……お前」

 

『哀れんだ目を向けるんじゃねえ。不愉快だ、お前みたいな成功者には分かんねえよ。俺みたいな敗北者の気持ちがな…分かる筈がねえんだ。分かってたまるか』

 

そう自虐げに笑う垣根帝督、垣根は何か言おうとするが言うなと彼に睨まめる

 

『………正直お前が羨ましい、大事な物を守れて仲間がいて、誰が守れるヒーローのお前が妬ましい。お前みたいに俺も杠を守りたかった…だが俺には何も守れねえ。俺は結局誰かを傷つけて殺すだけしか出来ねえクソ野郎だ』

 

『だがお前は違えだろ、お前は俺と違って色んな奴を助けてきた。お前は俺みてえな悪党とは違うヒーローなんだ…だからこんな所で時間潰してる暇あんならさっさとゾンビて奴をぶっ倒しに行けよ』

 

「……垣根、帝督……お前」

 

垣根帝督は垣根の元に歩み寄り彼の襟首を掴んで自分の顔へ引き寄せる。そして厳しながらも激励を垣根に送る

 

『……はっ、なんで俺がこんな柄でもない暑苦しい真似しなきゃなんねえんだよ』

 

そう言って襟首を離し頭を掻く垣根帝督、そして垣根を見下ろしながら口を開く

 

『俺もあのゾンビて野郎は気に入らねえ、だから今回はお前から"垣根帝督"を奪うのは勘弁してやる。だがなこれだけは覚えとけ』

 

一旦一区切り着いてから彼はこう言った

 

『お前は俺みたいになるな、大切な物を死んでも守り抜け。守れねえ様ならまたお前から"垣根帝督"を奪いにきてやる。覚悟しときな』

 

仲間達を、友人達を…そして大切な女を守り抜け。さもなくばまた垣根の前に現れるぞと垣根は脅す。だがそれは垣根への激励の言葉だった。それを聞いた垣根は一瞬呆けて…そして笑った

 

「……お前ツンデレだろ」

 

『黙れクソメルヘンカプ厨』

 

「俺は垣根帝督だからお前もクソメルヘンカプ厨て事になるぞ」

 

『お前なんかと一緒にすんなクソボケ』

 

垣根帝督もほんの少し、ほんの少しだけだが口元を緩ませた

 

『お前が身体を取り戻せる方法はただ一つ。未元物質を使って肉体を複製すればいい。お前はそうすれば人間じゃなくなるだとか、反逆者に支配権を奪われるかもて思ってやらなかったみたいだが…そんな事言ってる場合じゃねえだろ…守りたいもんがあるならそれくらいの覚悟ぐらい決めろ』

 

そう言ってある程度助言し、垣根帝督は垣根の顔を見つめる

 

『早く行ってこい。精々足掻き苦しむ事だな。俺はお前のそんな様を見ててやるよ…お前がどんな結末を迎えるかを、な』

 

「……悪趣味な事で」

 

垣根は笑いながら立ち上がると垣根帝督に背を向けて何処かへと走り去る…垣根帝督は垣根が見えなくなった後ボソッと呟いた

 

『で、何見てやがる出歯亀が』

 

「出歯亀とは失礼ね/return」

 

少女の声が聞こえた、だが声の主らしき人物は何処にもいない。それもその筈、声の主は実体を持たない存在なのだから

 

『お前の言う通りあの野郎に喝を入れてやったぞ、これで満足か?』

 

「ええ/return。感謝するわ垣根帝督/return。実体のない私の代わりに帝督ちゃんに喝を入れてくれて/return」

 

『は、別にお前の為にやったんじゃねえ。俺の名を騙る偽物ならあれぐらいの敵に負けてんじゃねえ、て思ったから文句を言ってやっただけだ』

 

そう、彼女こそ垣根帝督に垣根にこんな所で諦めるなと喝を入れる様に頼んだのだ。彼女の名前はミサカネットワーク総体。ミサカネットワーク、その全体の大きな意思。それこそが彼女の正体だ

 

「君も素直じゃないねぇ/return、でもよかったの?/escape、帝督ちゃんの身体を奪わなくて/return」

 

『……お前には関係ねえ』

 

「ふーん?/escape。意外とツンデレなんだね君/return。でも/backspace、私そんなの嫌いじゃないよ/return」

 

そう言ってそっぽを向く垣根帝督、それを見てミサカネットワーク総体は笑った。正確に言えば彼女は肉体を持たないので笑っている様に聞こえているが正しいのだが

 

『……負けんじゃねえぞ偽物(垣根帝督)

 

そう言って垣根帝督は何処かへと消えていった

 

 

帆風はゾンビの目の前に立ってい、突然帆風が現れた事に一瞬驚くゾンビだがすぐに落ち着く

 

「成る程、少し復活するのに誤差が生じちゃったのか…ゾンビちゃんがミスるなんて珍しいな〜。まあいいか、早速殺してあげるよ♪」

 

ゾンビはそう言うとまた殺してやると笑いながら呟く、それに対して帆風はまた拳を強く握りしめる…そしてゾンビが攻撃を仕掛けようとしたその瞬間

 

「面白そうだな、俺も混ぜてくれよ」

 

「「!?」」

 

声が響いた。その声を聞いてゾンビは目を見開き、帆風は嬉しそうな顔になる…帆風は声が聞こえた方へと振り返る。そこには白い粉…未元物質の素粒子が形を成し何かを形成しようとしていた。それはすぐに人形になり色付き始める。服はワインレッドに、髪は茶髪…真っ白い身体はすぐに人の同じ色に変わっていく…そして最後に、少年の力の象徴たる純白の三対の翼を顕現させる

 

「……お久しぶりです、垣根さん」

 

「そうだな、久しぶり潤子ちゃん」

 

二人はそう言って笑い合った

 

「な、んで貴方がここにいる垣根帝督!?貴方はあたくしが殺して…!」

 

「脳を潰さなかったのが仇になったな、慢心してたお前の自業自得だよばーか」

 

「……っ!……まあ、いいですわ。貴方達二人一緒に心を折ってあげましょう!」

 

ゾンビは垣根が生きている事に驚くが帆風と共に殺し続けて心を折ってやろうと笑う。だが帆風はゾンビなど気にも止めず垣根へと近づく

 

「……垣根さん、今のわたくし達ではゾンビには勝てませんわ」

 

「珍しく弱気だな。まあ、その通りなんだが」

 

「ですが一つだけ勝つ手段があります」

 

このままでは勝てない、そうはっきり言う帆風にそれに賛同する垣根。だが彼女は勝つ方法が一つだけあると告げる

 

「……マジで?」

 

「大マジです…アレイスターさんがわたくし達の為にある物を残してくれましたから」

 

そう言って帆風は05から貰った小さな赤い玉二つを取り出す

 

「これは性魔術の応用で二人の記憶を共有する効果を持った霊装らしいです。これで垣根さんの10万3000冊の魔道書の記憶とわたくしの10000回の死の記憶が合わされば…ゾンビにも勝てる筈ですわ」

 

「……具体的にはどうやって?」

 

「それはこの霊装を使ってお教えしますわ。と言うわけでこの玉を口の中に入れてくださいまし」

 

「え?これ口の中に入れるの?飴ちゃんなの?食べて平気なの?」

 

「いえ食べるのではなく口の中に入れておいてください。決して食べない様に」

 

垣根は言われた通りに口の中に赤い玉を入れる。舐めても何の味もしなかった、食べ物でないのだから当然だが

 

「で、どうやって記憶の共有を……」

 

垣根がそう聞きかけたその時だ、帆風は黙ってゆっくりと垣根を抱きしめた

 

「っ!?じ、潤子ちゃ……!?」

 

帆風は垣根を見上げる形で顔を上げる。熱っぽい顔で垣根を見つめる帆風。その顔は今まで見た事がある彼女のどの顔よりも妖艶で色香に満ちていて…垣根は少し頬を赤くしてゴクリと生唾を飲み込む

 

「………暖かい、です。もう二度と離したくないほどに。…垣根さんが無惨な姿になった姿を見た時…胸の中に穴が空いたかと思いました。ゾンビが見せた世界で貴方が他の女の人と幸せそうにしているのを見て胸が苦しくなりました……」

 

そうブツブツと自分の胸の中の気持ちを露わにする帆風、彼女はニッコリと笑いながら垣根に告げる

 

「わたくし意外と嫉妬深い性格なんですね。初めて知りました…それ程までに…貴方が愛しいんです」

 

「……潤子ちゃん」

 

「ですから、もう二度と貴方を離しません。一人で何処かに行かせたりしません。これからはずっと、ずっと一緒にいたいです」

 

そうはっきりと意思を込めて帆風はそう言い放った

 

「わたくしは垣根さん、貴方が好きです。一人の殿方として初めてお会いした時からお慕い申しておりました」

 

そう言って帆風は自分の唇を垣根の唇にゆっくりと重ねた。帆風の薔薇色の唇が不器用ながらも押し当てられる。口の中で舌が絡み合う。互いの唾液を交換し合う。突然の出来事に垣根は驚愕のあまり目を見開く

 

その口付けと同時に垣根の頭の中に帆風の記憶が流れ込んでくる。彼女の10000回を超える死の記憶。彼女のあまりの惨い殺され方に顔を歪める垣根だが流れ込んで来たのは死の記憶だけではなかった。アレイスターの本当の計画、アンナとの会話…そして彼女がどれだけ垣根の事を想っているのか。そんな慕情の思いが流れ込んで来た

 

これがこの霊装の効果、互いに赤い玉を口の中に入れた対象二人が口付けする事により記憶を共有し合う能力。きっと帆風にも垣根の記憶が流れ込んで来ている筈だ。10万3000冊の魔道書の記憶と垣根の昔の記憶も

 

「「………………」」

 

二人は口内で絡め合っていた舌を離し、二人は唇を離した。両者とも頬を赤くし互いの身体を抱き合っていた。帆風はその豊満な肢体を垣根へと撓垂れ掛かりトロンと蕩けた目を向ける。そして微笑んでこう呟いた

 

「わたくし、今………とっても幸せです」

 

そうニッコリと、太陽の様に微笑む彼女を見て垣根は口をゆっくりと動かした

 

「……………俺も、こんなに幸せな気分になったのは……初めてだ」

 

帆風に負けず劣らずの笑みを浮かべる垣根。そして彼はずっと胸の奥に隠していた言葉を、感情を漏らす

 

「俺も、今まで隠してたけど………俺も潤子ちゃんが……好きだ」

 

その言葉を聞いた瞬間、帆風は一瞬固まり…そして目から一筋の涙を流した

 

「………嬉しい」

 

そう言って彼女が微笑んだ直後だった、二人の身体が爆ぜ、鮮血と肉片を周囲へと撒き散らした

 

「……あたくしの事忘れてませんか?」

 

その攻撃を放ったのはゾンビ、彼女はブチギレていた。自分をまるでいない様に扱い喜劇の様な行動をとった二人にムカついたのだ。くだらない茶番はもう結構だとゾンビは呟く

 

「充分楽しんだ?ならもういいでしょ、お楽しみタイムはしゅーりょーだクソが。これからは貴方達の恋が、幸せが、愛が瓦解するくらいの恐怖と絶望を教えてやる」

 

ゾンビは怒りの目で肉塊となった二人を見ていた。だから気づかなかった、二人がゾンビに殺された一瞬、笑っていた(・・・・・)事に

 

もう儀式はほぼ完遂していた、10000回の死の記憶により帆風と垣根の魂は生命の樹(セフィロト)のケテルへと到達し、完全なる魂魄を手に入れた。そして禁書目録の10万3000冊という魔道書の智慧を手に入れた。そして完全なる肉体は未元物質で形成すればいい…そして最後に一番大事なのが『死』だ

 

魔神とは『死』が密接に関わっている。例えば即身仏である僧正、首吊りのオティヌス(オーディン)、死者の守護神であるネフテュス、動く死体の起源となったンザンビ、クロウ=クルワッハに殺されたヌアダ、冥界へと連れ去られたプロセルピナ…魔神達は死と何らかの関係がある神格と同じ名を持つ

 

つまり魔神に至るには必ず死ななければならない。それも意味のある殺され方でなければならない。垣根と帆風の場合は致命者。長い苦しみの末、殺された者。自らの信仰のために命を失った者の事…これで儀式は完遂した

 

ゾンビの失敗はただ三つ、帆風が幾千の地獄を耐え抜いた事。そしてイレギュラーの介入。そしてアレイスターの計画だ

 

 

これにより世界に新たな産声を上げるのは二人の天使()。これにより始まるのは"神"と"神"の戦い。これから始まるのは神話の如き聖戦である…その戦いの審判は…………間もなく下る

 

 

 

 

 

 

 

 

 




魔神になる儀式、作中では明確に言われていませんが魔神達には目の色以外にも共通点があります。例えばプロセルピナは冥界に攫われ(これはギリシャ神話のペルセポネと同じ)、テスカトリポカは戦争(死)を司る神、娘々はキョンシー、忘れられた神(以前■■■■■と表現した)の元ネタはラヴクラフト御大…この方も死後にユゴス星から訪れた者が、ある重要な器官を持ち去ったと言われています…つまり魔神は全員死と関わりがある神格と過程できます。つまりていとくんと縦ロールちゃんが魔神になるには殺される必要があったというわけです

致命者とは殉教者と同じ意味(本当は少し違いますが)。二人の場合は信仰の為に死んだのではなく、何かを信じて死んだというだけですが儀式状の都合で便宜上致命者と呼びます。そして前からアレイスターが言っていたとある天使に二人はその神格を得る…それがアレイスターの計画…だったのをアンナさんが色々と破綻させてしまった(良い方に)。本来ならば科学の天使となる筈だった二人にテレマのとある神格を混ぜ合わせてしまった…そのせいで二人は魔術と科学が混じった魔神(正確には魔神に近い何か)に"神"化しました

10000回の死でケテルに到達できる、これはとある科学の一方通行でイサクが言っていた事です。これにより完璧な魂魄を、そして魔神は数多くの原典を読破しなければならない、それで禁書目録の智慧。そして完璧な肉体を…これで魔神へと達成できる…そう自分は考えました

さて次回は神と神の戦い。ゾンビとの決着編です。魔神…正確にはそれに近いものになったていとくんと縦ロールちゃんの活躍をお楽しみに


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その神の名は……

結構長く続いたvsゾンビ戦、終了です。神となったていとくんと縦ロールちゃんによるゾンビ蹂躙劇…もとい戦いに期待してください

そして今回も考察…というか雑学を、凄い長いです。長くてうんざりするかもですが最後まで読んでくれたら嬉しいです

そして書いてて気づいた。ゾンビてやっば小物なんだな、と。そんな小物なゾンビとていとくん&縦ロールちゃんの活躍を期待して呼んでください


メタトロンという天使がいる。その天使は36対の翼と36万5000の目を持つ世界と同じ広さの長身とされる太陽よりも燦然と輝く顔を持つ異形の姿の天使だ。あの神の如き者(ミカエル)より強大とされ神の化身とも称される

 

メタトロンという名の由来はミスラ、またはミトラスと呼ばれる光の英雄とも言われる。ミトラス教とは十字教の原点とされる宗教、その宗教の最高神こそがミトラス。彼は神の子、聖徳太子などの偉大な人物達のモチーフになったともされる。それが十字教に取り込まれ変化したのがメタトロンだ

 

十字教においてメタトロンはエノクという人間がエロヒム()によって天上に上げられ、天使になった姿とされる。つまり彼は人間でありながらも神の手によって天使になった稀有な存在だ。彼はラジエルの書を託されそれにより叡智を得た。それにより死する事なく天界へと引き上げられ天使となったのだ

 

そしてメタトロンの双子の天使である天にも届く巨大な天使 サンダルフォンもかつては人間だった。人間の頃の名は預言者エリヤ。サンダルフォンは生命の樹においてメタトロンと対をなす神の女性的顕現であるシェキナと同一視される。彼女もまた神の化身であるとされる

 

エノクは365年も生き続け、死ぬことなく天使となった。垣根は未元物質の身体にしたお陰で死を克服し、ゾンビの作った世界で数百年も彷徨っていた垣根。だからこそ彼はメタトロンになる事が出来た

 

サンダルフォンとは女性の天使だ。エリヤが生きながらに天界へと火の戦車に乗って昇り天使となったとされる。同じ女性であり何百年も生きた帆風だからこそかの天使の神格を得る事が出来た

 

そしてメタトロンとサンダルフォン、双子の天使が生きたまま天界へと上がり天使となった、つまり神が二人を人間としての生を終わらせ天使として転生させたと解釈し、それをベースに儀式を行った。二人はあえてゾンビ()に殺される事により、天界へと上げ天使()の領域へと到達させる儀式とした

 

その結果誕生し、世界に産声を上げたのは新たなる魔神…ではなく(・・・・)、魔神ともアレイスターが目論んだ科学の天使でもない全く新しい別の可能性だ

 

 

 

黒一色の世界は眩い光に包まれた、いや正確にいうと帆風と垣根が立っていた場所から発生した太陽の如く輝く炎の柱の光で闇の世界が眩い照らされているのだ

 

「ーーー!!!?な、なんなのこれ!?」

 

ゾンビは思わず叫んでしまった、そして気付いたのだ、あの炎の柱の中には自分と同じ魔神…正確には言えば魔神に近い気配の持ち主が二人いる事に

 

(まさか魔神へ至る儀式を…?いや、違う。これは魔神じゃない。もっと別の何か…ならば科学?アレイスターが生み出そうとした科学の天使?いいえ、それも違う。これは…この力は科学と魔術が合わさってる!?)

 

そうゾンビが思考を巡らせる中、炎の柱が忽然と消え失せる。そして炎の柱が存在した場所に垣根と帆風は立っていた。そして二人とも背中に()が出現していた

 

「え………?」

 

垣根はおかしくない、三対の純白の翼…正しく未元物質の翼だ。その羽に込められた力の質は桁違いだが元々生えていたものだ。それについては驚かない。彼女が驚いていたのは帆風の背から七色に色を変え続ける鮮やかな色彩の翼が出現していた

 

「虹の………翼?マルクトのセフィラの色と同じ…やはり貴女達は魔神に……?」

 

「いや違うな、正確には違うとも言えるしそうとも言える」

 

「わたくし達は魔術を極めた者(魔神)でありながら、それと同時に科学の人工天使(天使)でもあります。つまり魔術と科学の両方の性質を持つ神…とでも言いましょうか?」

 

「まあこんな御大層な事を言ってるが…出力や単純な力の差じゃ魔神以下(・・・・)だ。たく、何が魔神に勝てる様になる…だ、アレイスターの野郎騙しやがったのか?」

 

ゾンビの言葉を否定する帆風と垣根、垣根はこれでは魔神に遠く及ばないと呟くがそれを聞いてゾンビは内心眼を剥く。確かに出力はゾンビ達魔神には遠く及ばない。無限としか表現できない存在でもない。ギリギリ有限と表現できる程度の存在だ。オッレルスの様な半魔神やオティヌスの様な元魔神に近い存在だろうか…だがこの二人と圧倒的に違う点はただ一つ。その存在感と圧倒的な力、これに限りだろう

 

(確かに魔神みたいな出力はない…でもその代わり魔神の欠点である「無限」の存在じゃない。これならあたくし達と違い世界にいても許容量を超えて世界が壊れる事はない。それにオティヌスよりも圧倒的な力を持つ…いや、下手をすればアレイスターよりも…!)

 

魔神の欠点とも言える存在するだけで世界が崩壊する。それがこの二人には存在しない。世界の許容量ギリギリまでの力を持ち魔神と違い現世で行動できる。今の二人の出力はゾンビ達より低いとは言えアレイスター達以上の力を秘めている

 

(そうか、本来魔神になるのは一つの宗教においてその席は一つ。だがこいつらは無理やり二人に当てはめたんだ…!メタトロンとサンダルフォンが神の男性的顕現と女性的顕現として二人一組(ワンセット)とする事で二人で魔神の域に達した。だがそのせいで本来一人分の魔神の力を分割したせいで有限化。だからあたくし達みたいな出力はない…けどこれならあたくし達と違い現世で行動できる!)

 

そう考察した後ゾンビは怒りに打ち震える

 

「ふ、ざけんな…!何よそれ!ズルい!あたくし達だって現世で好き勝手したいのに…!なんで貴方達だけ…!絶対に許さない!」

 

八つ当たりもここまでくればいっそ清々しい、二人に怒りの目を向けるゾンビだが二人はそれに臆する事はない

 

「許さないのはこっちのセリフだよ、世界を滅ぼしやがって…巫山戯てんじゃねえぞコラ」

 

「黙れ黙れ…!ゾンビちゃんは魔神なんだぞ!?昔あたくしがどれだけ必死に数多くの原典を読破し、その内容を理解し必死に儀式を整えて自ら土の中に埋まって自殺して魔神になったと思ってる!?そんな簡単に魔神になられてたまるか!」

 

ゾンビは言うなれば「自分が人を殴るのはいいが、他人が自分を殴るのは決して許さない」性格だ。彼女は魔神に至るまでの辛い日々を思い出し、お手軽感覚で魔神になった二人を許せなかった

 

だが二人が魔神に近しい存在になったのはゾンビのせいでもある。彼女が帆風に10000回以上の死を与え、垣根に数千年の長い日々を生きさせたのが原因なのだから。それがなければ二人は神には至れなかっただろう。そもそも10000回の死を耐え抜き、決して諦めなかった垣根と帆風だからこそ神に至れたのだ。決して手軽に神の道へと至ったのではない

 

「ま、お前が怒鳴ろうが関係ねえ。俺や潤子ちゃんを散々甚振ってくれたんだ…覚悟は出来てるよな」

 

「上等じゃねえかです…!いくら強くなったとはいえ初戦は魔神以下の存在!返り討ちにしてやる!死ねぇぇぇ!!!」

 

ゾンビはそう宣言して万物を操る術式を展開、即座に二人の身体を破裂させようとする…だが

 

「悪いがそれはもう通用しねえ」

 

「なっ……!?」

 

二人の身体は破裂しなかった(・・・・・・・)。確かに術式を発動した筈なのにね二人の身体には効果が発動しなかった

 

「なにをした!?何故あたくしの術式が…!?」

 

間違いなく術式は発動した、なのに垣根達の身体には何の異変も起こらない。それに対し帆風と垣根は笑いながら告げる

 

「確かに貴方の術式は脅威ですわ。並大抵の方では太刀打ちすらできないでしょう…なにせ人体すらも操る術式なのですから…ですが」

 

「確かにお前の魔術は強力だ、何せ人体も操れるんだからな…普通なら対処できねえよ…だがな」

 

「「俺/わたくし達の未元物質にその常識は通用しねえ/しません」」

 

同時に言い放つ二人、もうお前の術式で自分達の身体は破裂したりなどしないとはっきりと断言する

 

「お前の術式は人体すらも操る。だがそれは普通の人体の話だろ?未元物質で形成された肉体を操る事が出来るのか?」

 

二人の身体は未元物質で出来ている。いや単純に未元物質で肉体全てを作っているのではない。身体を構成する元素 酸素、炭素、水素、窒素、カルシウム、リンと共に未元物質が新たに加わった。未元物質を身体の一部とする事で不死性を得、更に無限増殖しても他の垣根帝督に乗っ取られないという利点がある

 

「未元物質が身体を構成している元素の一つとなった事でお前の術式は通用しねえ。なにせ人体の中に未元物質があるんだ、お前の術式は万物を操れる…だがその常識は俺達の未元物質には通用しねえ」

 

今の未元物質はありとあらゆる魔術の法則を歪めてしまう。故にゾンビの肉体操作も通用しない。それを知ったゾンビは軽く歯噛みする

 

「だけどそれが何になる!あたくしは魔神!未元物質だか暗黒物質だか知らないけど魔神に敵う者などいる筈がない!」

 

ゾンビは手刀を振り回しソニックブームを発生、その衝撃波は容易に二人の肉体を切断できるほどの斬れ味を秘めている…だが未元物質の翼はそれをいとも容易く弾き返す

 

「おいおい…この程度の攻撃で俺の未元物質を破壊出来るとでも?」

 

垣根はそう言いながら翼の内一枚の羽の先端をゾンビへと高速で伸ばす、それはまるで槍の如き刺突、ゾンビはそれを右手で殴る事により破壊。残った5枚の羽で烈風を放ちゾンビはその風の軌道を操ろうとするが未元物質が混ざっている為か上手く操作できず自分に当たらない様にするので精一杯だった

 

(まさかあたくしが操れないなんて…!これが未元物質……!これがアレイスターの真の計画(プラン)!)

 

ゾンビはこのままでは不味いと考え、二人から距離を取ると黒一色の世界から垣根がゾンビに敗れた場所である第十一学区のコンテナ集合地帯へと世界を作り変えた

 

「キャハ☆ここでイレギュラーはゾンビちゃんに負けちゃったんだよね♪またボロボロにしてやるから覚悟しろ♪」

 

そう戯けた調子になるゾンビ、だがゾンビが世界を作り変えたの見て垣根は笑った

 

「やっぱりな、やっぱ俺の予想通りか」

 

「え………?」

 

ゾンビの術式(・・・・・・)、及びゾンビ自身の弱点(・・・・・・・・)だよ」

 

ゾンビの術式とゾンビ自身の弱点を理解した、そう垣根が言うとゾンビはぴくっと身体を震わせる

 

「なんでテメェは今世界を作り変えた?別に戦う為だけならさっきの世界でも良かっただろ」

 

「そ、それは貴方への嫌がら…」

 

「嘘だな」

 

そうはっきり断言する垣根、それを聞いてゾンビは作り笑いの笑みをピクピクと震わせる

 

「何故世界を作ったのか?簡単な事だ……ゾンビ、お前の術式は万物を操れる能力だ…だが万物を操るだけで万物を作り出せる(・・・・・・・・)て訳じゃねえ」

 

ゾンビの術式はあくまで魔術を含めた生命も物体も操れるといった破格の能力だ。だが逆を言えば操るものがなければ何も出来ないと言う事だ

 

「お前の術式は何かしらの物体を操る事しか出来ない…つまり、お前の近くに操れる物がないと能力を充分に発揮出来ないて事だろ?だから新しく世界を作ったんだ。自分の優位な世界を、な」

 

あの黒一色の世界では術式の力を発揮できない、そう思ったから世界を作ったのだ。帆風をあの世界で痛ぶっていたのは何もなくても帆風を殺せたからだ。だが今の二人の人体は破裂させる事が出来ず、腕を振るって起こす衝撃波だけではこの二人を殺せないと思ったからだ

 

ならば新しく世界を作り、自分に優位な世界にしてそこで垣根と帆風を殺そうと考えたのだ

 

「でもさ」

 

確かにこの場所(世界)ならゾンビの方が優位だ、それを知った上で垣根はゾンビに挑発する

 

「それってつまりこうやって優位に立たないと自分が負ける、て思ったて事だろ?」

 

逆を言えば、ここまで優位に立たないとゾンビは勝てない、そう思ってしまったんだろうと呟く。それを聞いてブチンとゾンビの何かがキレた

 

「その口を閉じやがれイレギュラーァァァァァァァァァ!!!黙ってればいい気になりやがって!あたくしを舐めてんじゃねぇぞぉぉオォ!!ぶっ殺してやるよおおぉぉぉ!!」

 

ブチ切れたゾンビは周囲のコンテナを能力で持ち上げて垣根達へと投げつけてくる。垣根は未元物質の翼で音速を超えて光の速さで飛来してくるコンテナから身を守る。帆風はザフキエルを宿し光の速度でコンテナの流星群を掻い潜る

 

「ほら、じっくりとその節穴で見なさい!これがあたくしの真の力!この力があればお前らなんか百回でも千回でも万回でも殺せるんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!」

 

狂気の目で怒り叫ぶゾンビ、飛んでくるのはコンテナだけではない。二人が立つ大地すらもゾンビの武器となり無数のコンクリートが形を変え槍となり二人を串刺しにしようとする…だが魔力で強化されたコンクリートの槍は垣根と帆風の体に触れた瞬間いとも容易く粉々になった

 

「この程度で殺せるとでも?」

 

たかが強化されたコンクリートの槍如きで未元物質は砕けない。例えそれがインデックスの歩く協会や聖ピエトロ大聖堂を障子の紙を破くよりも簡単に貫いてしまう程の威力だとしたも、だ。神と化した二人の肉体を穿つ事は叶わない

 

「ならこれはどう!?」

 

ゾンビは指を鳴らし小石を頭上へと浮かせマシンガンの如く光を越える速度で垣根へと放つ、それを帆風は垣根の頭上に現れ小石を全て左足を超高速で小石を蹴り砕く事により防ぎ切った

 

「んなバカな!?」

 

「今のわたくしならば光の速さ程度なら余裕で見切れます。どんなに速い攻撃も見えているのなら蹴り落とす事も容易です」

 

そう言ってのける帆風、神となった今の帆風は例え相手が光の速度を出そうがそれを見切る心眼を持っている。更にカマエルを宿せば軍神の如き力を発揮する

 

「な、んで…魔神であるあたくしがこんな、雑魚共にぃ……!」

 

何故魔術を極め神の座へと至った自分が魔神以下の存在である垣根達に苦戦するのか。そう考えるゾンビに垣根が嘲笑いながら告げる

 

「簡単だよゾンビ、お前が弱いからさ」

 

「弱い……?!このあたくしが!?」

 

「ああ、弱いね。断言するお前は俺が今まで戦ってきたどの敵よりも…弱い」

 

弱い、そうはっきりと断言する垣根にゾンビが青筋を立てながら睨む。自分は魔神だ、魔神である筈の自分が弱い筈などないと怒るゾンビに垣根は言葉を続ける

 

「アレイスターは自分の娘を奪った魔術を絶滅させる為にその人生をかけていた、フィアンマは歪みながらも世界を救おうと考えていた。オティヌスは自分の理解者を求めていた、ステイル=マグヌスは愛したたった一人の少女の為に悪人を演じた、アウレオルス=イザードは教え子を救う為に世界を敵にした、ミーシャ=クロイツェフは狂っていたが元の座に戻る揺るぎない信念があった、木原病理は1ミリも認めたくねえが俺を絶対能力者(レベル6)にする為暗躍してた、シェリー=クロムウェルは亡き親友の事を思い行動していた、上里翔流はお前ら魔神に対する復讐心の他に仲間達を元の平凡で普通な女の子達に戻したいという願いが、上里勢力の女達は上里の役に立ちたいという忠誠心があった。俺が今まで戦って来た相手はそれが歪んだ願いだとしても揺るぎない信念を持っていた」

 

アレイスターも、フィアンマも、ステイルも、アウレオルスも、ガブリエルも、病理も、シェリーも、上里達も全員揺るぎない自分達の信念を胸に垣根の前に立ち塞がって来た。そう、彼らは強かった。確固たる意志と叶えたい願いがある為に

 

「だがテメェはどうだ魔神 ゾンビ」

 

突き放すように冷たい眼をゾンビへと向ける垣根。帆風も同じ様な眼をゾンビへと向ける

 

「テメェは世界をより良くしたいだとか、不幸を消したい、誰を助けたい…俺が今まで倒して来た敵みたいな揺るがない願いを一つも持ってない。あるのは自分の欲求を満たしたいてだけの欲望だけだ。そんなお前が強いわけねえだろ」

 

「その通りです、少々認めるのは嫌ですが…木原病理という女は歪んだやり方ながらも垣根さんを絶対能力者にする。その意思を持ってわたくし達と戦いました…やり方や性格こそ腐っていましたが…そんな歪んだ信念でも彼女は強かったです。貴方みたいなただ力を振り回す様な小物(・・)とは違って」

 

二人にとってゾンビなどただ力を振りかざすだけの小物に過ぎない。そんな相手が今まで自分達が相手にしてきた強敵達よりも強い筈がない。いくら力が強くても心は弱い。そんなゾンビなど二人は恐れる筈がないのだ

 

「……小物?弱い?このあたくしが?否、否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否ッ!!そんな筈があるわけがない!この魔神 ゾンビが!魔神であるあたくしが弱い筈などある筈がない!矮小なお前達の妄言は聞き飽きた!殺してやる!今度こそ、殺してやる!」

 

断固それを認めないゾンビ、自分は弱くなどない。矮小と垣根と帆風を見下しながら自分は最強なのだと怒り狂った眼を向ける

 

「はっ、殺す殺す…さっきからずっと同じ事言ってるぜ?結果未だに俺らを殺せてない時点でお前の弱さは証明されてるんだよ」

 

「ーーーーッ!!!ま、た…また言ったな!?あたくしが弱いと!?このガキ…殺してやる!殺してやる!殺してやる!」

 

垣根の挑発を受けて狂った様に殺すと連呼するゾンビ、ゾンビの術式の影響を受けてコンテナと小石、風の刃、コンクリートの槍が垣根達を襲う。それを難なく防ぐ垣根と帆風

 

「死ね、死ね、死ね、死ねぇぇぇ!!」

 

数千の羽虫が羽を擦り付けた様な凄まじい轟音が周囲に鳴り響いた。それはゾンビが操る位相が動いた音だ。二人を位相で押し潰さんとゾンビが新たに作った位相が迫る。だが垣根は右手から天使の龍を顕現させその位相を喰らい尽くす

 

「サンキューセルピヌス、助かったぜ」

 

ーーーキュラアアァァァ〜!ーーー

 

セルピヌスはそのままゾンビを喰らおうとその顎を伸ばす、ゾンビはコンテナを2、3個ほどセルピヌスへと投擲。あらゆる異能は喰らえるが異能ではないものは直接噛みちぎる事しか出来ないセルピヌスにとってその攻撃は弱点でありそのまま胴体をコンテナに当てられ千切られる

 

「幻想殺しの噴出点であたくしに勝てるとでも思ったか!」

 

ゾンビはそう言って接近して来た帆風の拳を右手で受け止める。そして垣根が放った一翼を左手で掴み粉々に握り潰す。ならばと帆風は下段から蹴りを放ちゾンビはそれを両腕でガード、更に帆風はミカエルを降ろし光の剣を振り下ろしゾンビはそれを霧散させる。その隙に垣根が六翼を伸ばし高速でゾンビへと迫る。斬撃、打撃、刺突、月光を不可視の光線に変換、烈風、爆発…様々な攻撃がゾンビへと放たれるもゾンビはそれを全て防ぐ

 

「そんな攻撃聞くかぁぁぁぁ!!!」

 

「チッ………!」

 

「くっ………!」

 

腕を胸の前でクロスさせ大きく広げる、それにより衝撃波が生じ、帆風は後方へと吹き飛ばされ空中にいた垣根は翼を繭状に閉じて衝撃波を防ぐ

 

「は、は、は……ははははははは!これが魔神よ!あたくしが本気を出せばお前達なんか一瞬で殺せるのよぉ!」

 

それを見てゾンビは勝ち誇った様に狂った笑みを浮かべる、垣根は翼を広げると同時に羽根を複数枚放つもゾンビはそれを腕を振るうだけで吹き飛ばしてしまう

 

「この程度であたくしを倒せると思ってんのか!?あたくしは魔神!魔術で世界を操る者!そんなあたくしが貴様らに負けるなどあり得ません!神であるあたくしが脆弱な人間に…アレイスターが作った天使もどき達如きにぃぃぃぃ!!」

 

そう宣言するゾンビ、神である自分が負ける筈がない。帆風はゾンビのそんな言葉を聞いて眼を細めた

 

「……可哀想なお方」

 

「あ"ぁ!?」

 

「そうやって他人を見下す事でしか存在価値を見出せない…そんな貴方が可哀想だと思っただけです」

 

帆風は憐れみの目でゾンビを見つめた。他人を自分より下に見る事しか出来ないゾンビを本気で憐れむ帆風、そんな眼を向けられてゾンビの怒りの頂点が達した

 

「そんな眼をあたくしに向けるなぁぁぁ!!馬鹿をするんじゃない小娘が!」

 

ゾンビは激情に流されるがまま、帆風へと猛進し始める。両手を伸ばし帆風を引き裂こうとした、まさにその瞬間

 

かかったな(・・・・・)

 

「な……?」

 

垣根が右手に光の槍を形成し、その槍を力強く腕を振るう事で投擲しゾンビの胸に突き刺さる。自分の胸に光の槍が突き刺さった事に驚きのあまり呆然とするゾンビ…そしてその槍からゾンビの魔神としての力が急速に失われていく

 

「か"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!?」

 

自分の何かが別の何かに上書きされていく、そんな気色の悪い感覚に全身を襲われるゾンビ。堪らず叫び声を上げるが失われた力は戻ってこない

 

「これは『悪魔化』の術式だ」

 

垣根は悲鳴を上げ続け、こちらの声が聞こえているかも分からないゾンビに向かってそう呟く

 

「十字教は度々他の宗教の神々を悪魔へと貶められた。有名な例を挙げるならウガリット神話の最高神 バアル・ゼブルを糞の王(ベルゼブブ)にしたり、エジプト神話の神 アメンを炎侯爵(アモン)にしたりな。十字教てのは自分達の神を崇める為に他宗教の神々を貶めてきた」

 

「そして貶められた神々(悪魔)退魔師(人間)に敗北する、そして聖書においても悪魔の敗北は確定している。つまりこの術式の効果は『自分達が確実に勝てる様に相手を弱体化させる』術式てわけだ」

 

その術式は十字教の闇の部分を浮き彫りにした様な術式だ、十字教は他宗教の神々を悪しき者とし迫害しその地位を貶めた。例に挙げれば北欧神話でもオーディンとロキに十字教に都合のいい彼らの悪いエピソードを加える等の事をしてきた…それを再現したのがこの術式…打ち込んだ対象を自分が倒せる程まで弱体化させる…十字教の神と同一視されるメタトロンだからこそこの術式が扱えるのだ

 

「これでチェックメイトだ。今のお前じゃ俺達には勝てねえ」

 

「ま、さか…最初からこのつもりで…?」

 

ゾンビは自身の胸に手で押さえながら苦しげにそう呟く、垣根はうっすらと笑みを浮かべる

 

「当然、魔神と真っ向勝負で勝つ気なんかさらさらねえよ。あのコロンゾンでも魔神集団には逃げの一手だったんだからな。まともに戦うと勝ち目は薄い…だから弱体化させて倒す事にさせてもらった」

 

正面から挑んでは勝てない、ならば相手を弱くしよう。卑怯でも構わない、勝てばいいのだから

 

「今のお前は精々聖人以上、オッレルス未満の力しかねえ。その程度の実力なら今の俺達には楽勝な相手だ」

 

「魔神を舐めるなぁ!この程度のハンデなんがあってもお前らぐらいぶっ殺せるんだよぉぉぉ!!!」

 

嘲笑う垣根に未だ強がるゾンビ、垣根へと猛進し拳を振り上げる、だがその拳も帆風に難なく止められる

 

「ーーーッ!?」

 

「おやめ下さい、これ以上の抵抗は無駄と分かっている筈です」

 

「煩い!」

 

ゾンビはデタラメに拳を振るうが帆風はそれを難なく拳でいなす、ゾンビの術式がかかったその人体ならば容易く消失させる威力の拳を受け流す…否、吸収していた

 

(なっ…!?こいつの右手……あたくしの魔力を吸ってやがる!?)

 

帆風の右手にゾンビの術式が吸収されている事に気づくゾンビ

 

(まさか、こいつの神格はサンダルフォン(・・・・・・)だけじゃない!?これはエジプトのセト…違う、エジプトの枠はネフテュスで埋まっている!ならば…なんだ!?何なんだこいつの力は!?)

 

ゾンビは帆風の右手の力が分からなかった、自分の魔力を吸収する事、それしか分からない。一体この力はなんなのか?そうゾンビが思考する中垣根は笑って右手を大地へと触れさせる

 

「さて………そろそろお前が壊した世界を元に戻させてもらうぞ」

 

そう垣根が言うと右手からセルピヌスが顕現、世界が崩壊しガラスの様に粉々に砕け散る世界という名の背景。だがまた別の破片が集まり世界を作り直して…否、垣根達がいた世界へと戻していく

 

「それは…幻想殺しの基準点としての力!?それで世界を元に戻したというの!?」

 

垣根達がいる場所は変わらず第十一学区だが前とは違う点がある。ゾンビが世界を壊す前にアレイスター達と激戦を繰り広げた痕跡がある事だ

 

「さてと。もうお遊びは終わりにしようぜ魔神 ゾンビ。もうお前の下らねえお遊び(幻想)もここまでだ」

 

垣根はそう宣言すると幻想的かつ神秘的な純白の光を放つ白き翼を更に、より一層光り輝かせる。その神々しい翼は正に神

 

「ま、だ……だ。この魔神 ゾンビが!お前ら如きに負けてたまるかぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

最後に力を振り絞って垣根を殺す為に位相を作り出し操るゾンビ。数万の羽虫の様な雑音を響かせながら位相が垣根を押し潰そうとゆっくりと垣根に放たれる

 

「無駄だって分かんねえのか」

 

そんな位相による一撃を垣根は適当に翼を振るう事でその位相を破壊する

 

「なっ……!?」

 

位相を物理的に破壊するなどあり得ない、そうゾンビが目を見開く。正にその力は神…魔神の権能。だが魔神に出力が届かない筈の垣根が何故こんな事が出来るのかとゾンビが一瞬考えるがすぐにその答えに気づく

 

(そう、か!こいつらは二人で一人、そういう神なんだ!何も二人一組の神はメタトロンとサンダルフォンだけじゃない!ホルスとセト!あいつらも一対の神だった!だがこいつらの力はホルスとセトに近いが全くの別物…いや、待てよ。テレマ、テレマだ!テレマにはホルスとセトと同一視される神格が…)

 

ゾンビがそこまで思考を進めた瞬間、帆風の拳がゾンビの眼前に迫った

 

(そうか、こいつらの神格はメタトロンとサンダルフォンだけじゃなくて…こいつらはテレマのあの兄弟神の神格も…)

 

「これで……終わりです」

 

ゾンビの思考を遮る様に、帆風の自らの力の象徴であり、自分自身の力とも言えるサンダルフォンの力を降ろした拳がゾンビの顔面へと放たれ、彼女の顔にめり込んだ

 

「ゴぼッゲぶッガッはアァぁァァぁっ!!?」

 

吹き飛ばされるゾンビ、何度も地面へと激突しその度にゾンビの手足が腕があらぬ方向に曲がり首が曲がってはいけない方向に曲がる。最後は山積みになったコンテナの一部へと激突しその衝撃でコンテナが崩れコンテナがゾンビへと降り注ぐ。ゾンビはコンテナの流れに巻き込まれその姿が見えなくなった

 

「終わったな」

 

「ええ、そうですね」

 

悪神(ゾンビ)を倒した天使()達は翼を消して勝利の笑みを浮かべるのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 




メタトロンとサンダルフォンは神の化身(メタトロンが男性的化身、サンダルフォンが女性的化身)だと自分は思いました。多分ミカエルよりも神様に近い存在だと考えていますが…まあこの天使達はユダヤ教の天使ですからね…それに最初に聖書に現れたのはミカエルだから彼こそが神の正体かもしれませんが…因みにミトラス教とキリスト教は当時のライバルでもしキリスト教がミトラス教を出し抜いていなければ、キリスト教ではなくミトラス教が世界地図広まっていたと言われるほどです。因みにミトラス(ミトラ)は日本とも関わりがあり弥勒菩薩の元ネタがミスラです

そしてていとくんと縦ロールちゃんのもう一つの神格である「ラー・ホール・クイト(ホルス)」と「ホール・パアル・クラアト(セト)」ですが…実はセトとホルスは同一視されており一対の神であるとされています。オシリスのアイオーンでセトはキリスト教とユダヤ教では悪神とされ「サタン」となったとか。ですが本来はホルスのアイオーンを象徴すべき神

そして縦ロールちゃんの右腕の力…その力は彼女が司るホール・パアル・クラアト(エイワス)の力。現在分かっているのは吸収というその性質のみ…これから段々と明らかにしていけたらなーとか思ってる。因みに幻想殺しや理想送りとは全く違う系統の力なので誤解しない様に

そしてこれはとあるの考察動画の丸パクリですが…垣根帝督の名前の意味は

垣根=間を隔てるもの

帝=宇宙を統括する最高神(天上の神)

督=統率する、取り締まる

「督」は誰かを助けること、「垣根」と「帝」は心の垣根(限界)を超えて神となる…という事を意味しているのだとか。(考察した人凄い)。自分も考察で「垣根は限界を超えるて意味かな?帝督の帝は天帝と考えて神様になるとか?」て考えてましたが…この人のレベルは桁違いだったよ

因みにこの作品での縦ロールちゃんの(自分が勝手に考えた)名前の由来は

帆風は追い風の事、時を得た勢い。つまり翼持つ者(垣根)の追い風となり彼の補佐をし力となる意味

潤はうるおすこと、利益。つまり垣根の心を潤わせ彼の成長のきっかけ、または強化を起こす

子はキリスト教では「キリスト」つまり神の子の事。そして別の意味では愛する人。つまり彼女は神の子(キリストは唯一神のペルソナ、つまりサンダルフォンは神の化身であると仮定すれば同時に神のペルソナであるキリストとも同じ存在)、そして垣根のヒロインという事

これは自分勝手な妄想によるこじつけですが調べればこういう風な解釈ができました(あくまでこの小説に合わせただけです、本当の名前の由来はこれとは違うと思います)

次回もお楽しみに!


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思い通じ重なり合って二人は結ばれる

今回で『魔神』編は終わりです、そして次章へと繋ぐ伏線や久しぶりに登場するあの方など色々な要素が盛りだくさんです。楽しんでくれれば幸いです

そして今回で漸くていとくんと縦ロールちゃんが…気になる続きは本編で

後今日文化祭だったんですけど、文化祭の終わりにスペシャルゲストとしてパンサーが出てきたのに驚きました。皆興奮して自分全然握手できなかった…


「あちゃ〜、ゾンビ少女負けちゃったみたい」

 

隠世、そこに娘々達…ゾンビ以外の魔神達はいた

 

「ふん……だからこの私に任せればいいと言ったのに。あやつは戦闘向きの能力ではないのだから」

 

「オレ様ならあんなオレ様達『魔神』擬きなんぞ一捻りなのだが……残念だ。魔神の恥晒しめ」

 

「ほほほ、まあいいではございませぬか。ゾンビは魔神の中では最弱なのですから」

 

「それに彼女は品がない。この美しき私とは違って彼女は見窄らしい…ああ、彼女は見るに耐えない」

 

「■■■■■■■■■■■■■■■」

 

銀色の義手を左手に装着し光り輝く剣を銀の鞘に入れ腰にさした全身刺青の男…魔神 ヌアダ

 

褐色肌に黒髪、片足には義足の代わりにと大きな黒曜石の鏡を付けた男…魔神 テスカトリポカ

 

喪服を着た死体の様な青白い肌色にまるで雪の様に美しい白髪の美女…魔神 プロセルピナ

 

身体に禽獣、魚類等の様々な生物の要素を取り入れた太陽の如く爛々と輝く美青年…魔神 キメラ

 

正体不明、黒いクレヨンで描かれた棒人形の様な男か女なのかも分からない存在…魔神 忘れられた神(■■■■■)

 

彼等彼女等は仲間である筈のゾンビがやられたというのに笑顔で散々な評価をゾンビに下す

 

「……皆酷くない?ゾンビ少女だって頑張ってたと思うのに」

 

娘々は流石にその評価はどうなのかと、魔神達に呟く

 

「敗北者を何と言おうが私の勝手だろう?所詮奴はあの程度の輩にやられる弱者だったのだ」

 

「オレ様ならあんな無様なやられ方はしねえ。逆にあいつらを肉塊にしてやった筈だぜ」

 

「妾も同意見ですわ。魔神以下の者にやられるなど笑止千万。全くもって笑えませんわ」

 

「彼女は醜い上に弱い。ああ、同じ魔神として怒りが湧いてくる。あぁ、何故彼女は私の様に美しくないのか…哀れみすら出てくる」

 

魔神達のゾンビに対する評価は変わらない。それを聞いてゾンビは頭を軽く押さえる

 

「■■■■■■■■■■」

 

「お〜、■■■■■はゾンビ少女は力及ばずながらも頑張ったと思ってるんだね〜」

 

唯一■■■■■だけはゾンビに対しては高評価している様で、娘々はそれを聞いて笑う

 

「しっかしまさかあのイレギュラーとあの少女が覚醒するとはねー。びっくりだよ」

 

「■■■■■■■■■■」

 

「うんうん、流石の■■■■■でも驚きを隠せないみたいだね」

 

楽しげに娘々と■■■■■が話し合う中、他の魔神達も垣根と帆風の事について話し合う

 

「あやつらはゾンビを倒した事で有頂天になっているのではないか?魔神達を倒した自分達こそが強者だと」

 

「ならばオレ様がその考えをへし折ってやんねえとな。たかがあの雑魚倒した程度で粋がるな、てな」

 

「いいえ、ここは妾にお任せを…妾の術式で永久(とわ)に氷漬けにして差し上げますわ」

 

「だがあの翼は美しい…あの二人を殺した後に翼をもぎ取って私の背中に付け加えるとしよう。そうすれば私はもっと美しくなれる」

 

そう残虐な会話を続ける四柱の魔神達、そんな彼らの前にある人物達が現れる

 

「随分楽しげだな魔神共」

 

「「「「「ーーーッ!?」」」」」

 

「■■■?」

 

声が聞こえ、振り返る六柱の神々。そこに立っていたのは銀髪の男…アレイスター=クロウリー。その他にも脳幹やメイザース、オティヌス、オッレルス、フィアンマ、上里、僧正、ネフテュスが魔神達の前に現れたのだ

 

「……一つ聞くけどなんでここにいるの?ゾンビ少女が倒したんじゃなかったけ?」

 

「あのアバズレ程度に私達が負けると思うか?あれは垣根帝督と帆風潤子を覚醒させる為にゾンビに世界を壊させる為の演技だ。もっとも私以外はこの事を知らなかったがね」

 

「全く……君という奴は、私達には教えてくれても良かったんじゃないのか?」

 

「敵を欺くにはまず味方から。有名なことわざだろう?」

 

脳幹はジト目でアレイスターを睨むがアレイスターは悪戯ぽく笑みを返す

 

「で、貴方達は何しにここに来たのかな〜?」

 

「決まっているだろう、お前達魔神を倒しに来た」

 

「……は、笑わせる。ゾンビにすら負けた貴様らが我らに敵う筈がないだろう」

 

娘々の問いに簡潔に答えるアレイスター、それを聞いてヌアダが嘲笑う。だがヌアダの言葉を聞いてアレイスターは笑みを浮かべる

 

「……まさか、私達がお前達を倒す手段がないとでも思っているのか?」

 

「何……?」

 

アレイスターの言葉にヌアダが何か言おうとした瞬間、六柱の魔神達の胸に光の杭が突き刺さった

 

「「「「「「!!!?」」」」」」

 

驚愕のあまり眼を剥く魔神達、それを見てアレイスターは魔神を嘲笑う

 

「まさか私が単なる馬鹿だとでも思っていたのか?」

 

ゾンビとの戦いで更に正確な魔神のパラメータは手に入れた。それを元に妖精化の能力を更に強化。それを光を超える速度でフィアンマが放つ事により魔神達を無限としか表現出来ない存在から有限の存在にする

 

「これで形勢逆転だな『魔神』」

 

「……ありゃりゃ、『人間』を舐め過ぎたみたいだね」

 

「■■■■」

 

娘々と■■■■■は素直にアレイスター達を、人間を舐め過ぎていたと呟く。その他の魔神達は脆弱と見下している人間に一杯食わされた事に怒りで体を震わせる

 

「おのれぇ…!たかが人間風情がこの私に…!」

 

「だがこの程度のハンデでオレ様は負けんぞ!すぐに血祭りにあげてやる!」

 

「この屈辱、何億倍にて貴方達に返して差し上げましょう!」

 

「強く美しき私の力をそぎ落とすなど…万死に値するぞ……!!」

 

娘々と■■■■■とは対照的に、ヌアダ達は怒りの眼光をアレイスター達へと向ける。そしてヌアダは左腕に光の剣(クラウ・ソラス)を顕現させテスカトリポカは隠世の頭上に巨大な太陽を、プロセルピナは周囲の温度を下げ周りを凍て付かせ始め、キメラは全身を神々しくそしてより一層強く発光させる

 

「さて…ここからは流れ作業だ。私達全員で魔神達を各個撃破。その後上里翔流の理想送りで新天地に追放する」

 

『了解』

 

アレイスター達も武器を構え魔神達と相対する、アレイスターは衝撃の杖(ブラスティングロッド)を携え、フィアンマは聖なる右の力を、オッレルスは妖精化をより一層攻撃的に変えた変異型妖精化の500メートルの巨大な光の杭を頭上に展開、オティヌスは主神の槍を握り締め、メイザースは蝿の王を顕現させる、脳幹はA.A.A.のドリルやレーザーを魔神達へと向ける。僧正とネフテュスはあくまで補助に、上里はアレイスター達が倒した魔神を新天地へと追放出来るように身構える

 

「いくぞ魔神(クソ野郎)虫ケラ(人間)の力を見せてやる」

  

「ぬかせ!我等魔神の力を見せてやろう!」

 

『人間』と『魔神』は激突した、それは神話の再来の如き争いだった

 

神々の攻撃は凄まじい、その一言に尽きた。天より現れた太陽から国を消し飛ばす光の柱が放たれ、光の剣は如何なる万物をも斬り裂き、惑星規模の氷河期を発生させ周囲を凍て付かし、極彩色の眩い光が迸り、指先を百を超える宝貝(パオペイ)に変化させ、理解不能で正体不明で説明不可な『何か』が襲い来る

 

対する人間も神に負けるものかと攻撃を放つ、ねじくれた銀の杖で強化された宇宙を破壊し創生し直す程の熱量を秘めた爆弾が何十、何百倍もの威力となって放たれる。大天使の力の象徴たる右腕の空中分解した力の残滓である第三の腕に巨剣を握らせ天地を裂く。説明出来ない力と神をも貶める光の杭が神々へと牙を剥く。人間に味方するかつて神であった者の槍が森羅万象を操る。魔術師が召喚しせし悪魔と天使達が神々を滅ぼそうと動く。レーザーが、ミサイルが、弾丸が、砲弾が、パイルバンカーが、ドリルが、無数の機械兵器の数々が神を狙う

 

時間としてどれ程たったのか、人間と神々の戦いに終止符が打たれた。そう人間の勝利(・・・・・)という形で。魔神達は2名を除き(・・・・・)全員新天地へと追放されもう二度と現世へと帰還する事はない。垣根と帆風が倒したゾンビも新天地へ後に送られる事となる

 

こうして一人の少年の死をきっかけに始まった、人間と神々の戦いは幕を下ろしたのだった……

 

 

 

垣根帝督は正座をさせられていた。ゾンビとの戦いから一日が立ち、上条にそれを報告しに行ったらいきなり殴られ「正座してろクソメルヘンが」と唾を吐かれ、小一時間ほど待っていると養豚場の豚を見る目で垣根を見つめる一方通行達が上条の部屋へとやって来た。帆風はあははと笑っている

 

「……これは一体どういう状況なの?」

 

『煩え、黙れカス』

 

「」

 

(あはは……)

 

垣根が状況説明を頼むと帆風を除く全員に冷たい声で黙れと言われ、顔に痰を吐かれた。押し黙る垣根に苦笑する帆風

 

「垣根君、なんで上条さん達が怒ってるか理解してますか?」

 

「……あ、前の学び舎の園にお前らが潜入した時にこっそりトンボにお前らの様子を撮影しておいて、その映像をYo○Tubeに投稿した事に怒ってんのか?」

 

『違えよ!てか、お前そんなことしてたの!?』

 

垣根が何故上条達が怒っているのかと真面目に考える。そして自分が彼等が学び舎の園に侵入した時の映像を勝手に投稿したからかと言うと違えよと全員がツッコむ

 

「俺らが怒ってるのはな…お前が勝手に自分一人で戦った事についてだよ」

 

「……」

 

上条が自分達が怒っているのは、何も聞かされずに勝手に垣根が一人で戦った事だと告げる。垣根はそれを聞いて押し黙る

 

「お前が俺達の事をどう思ってるのかなんて俺達は知らない、でも俺達はお前が一人で傷つくのが嫌なんだ。お前は俺達を巻き込みたくないから、そう言う理由かもしれないけどな……お前は考えた事があるのか?俺達の気持ちを(・・・・・・・)

 

上条はそう、垣根に自らの本音をぶつける

 

「残された俺達の気持ちが分かるか?俺達がどんな気持ちでお前においていかれたかなんて。俺達はお前に信頼されていないのか、頼りにされていないのか。そう思うと悲しいんだよ」

 

「……別に俺はお前らの事をそんな風には思って…」

 

「お前が思ってなくても俺らはそう思っちまうんだよ」

 

垣根は反論しようとするが上条の言葉がそれを遮る

 

「お前はそんな風に思ってなくても、俺達はそう感じちまうんだよ。俺達は垣根の役に立てないのか、てな」

 

「先輩の言う通りよ、垣根さんはいつも一人で突っ走って一人で解決しようとする…私達の手も借りようともしないで」

 

「私達を危険な目に合わせたくない、そんな気持ちは理解できるけどぉ…それは貴方の勝手な理由であって私達はそれを望んでいないのよねぇ」

 

上条の言葉に同意する美琴と食蜂、それに連鎖する様に一方通行達も口を開く

 

「ていとくンはいつもそうだ、巫山戯てる様に見ェて一番俺達の心配ばっかしやがる。少しは自分の心配もしろってンだ」

 

「私らはお前が思ってるよりも弱くねえんだ、てか何自分の方が強いから私らを守んなきゃ?とか思ってんの?凄え上からでムカつくから原子崩しでドカーンしていい?」

 

「俺達がそんな守ってもらう事しか出来ない根性なしだと思われるのは心外だな!自分の身は自分で守れるぞ!」

 

上条達の言葉を聞いて垣根は押し黙る、彼はずっと下を向いたまま何も喋らない

 

「お前は背負い過ぎなんだよ、色々とな。本当は背負わなくていい俺達の事まで背負いこんでさ…ただえさえお前の悩みも重たいのに俺達のも背負ったら…いつか潰れちまう」

 

「…………」

 

垣根は背負い込み過ぎだと上条は言う、そして彼は垣根にこう言った

 

だからさ(・・・・)お前も俺達を頼れよ(・・・・・・・・・)

 

「ーーーっ!」

 

彼は言った、自分達を頼ってくれと。それを聞いて思わず垣根は顔を上げる。上条達は笑みを浮かべていた

 

「俺達がお前を頼る様に、お前も俺達を頼ってくれよ。俺達は友達だろ?友達なら助け合うのが当然じゃないか」

 

「……当麻」

 

そう言って上条が笑う、他の面々も上条につられる様に言葉を口にする

 

「まあ、垣根さんは私にとって恋のキューピッドみたいな人だし、助けてあげてもいいわよ。仕方なくだかんね、勘違いしないでよ」

 

「私は出来る限りのサポートならしてあげてもいいわぁ。ただし先輩と美琴が一緒なら、ね」

 

「俺とていとくンの中だ、助けてやるのが当たり前だろゥが」

 

「……私は別にどうでもいいんだけどね、まあ、他の奴らはお前の事大事に思ってるみたいだし?私も仕方なく手ぇ貸してやるよ…別にお前の為じゃねえからな?そこだけは勘違いすんなよ?」

 

「俺と帝督は親友だ!マブダチだ!そんな奴のピンチを見過ごす奴はダチなんかじゃねえ!て、事で俺も当然力を貸すぜ帝督!」

 

全員が垣根に力を貸す(約2名ほどツンデレな態度)と言った。その言葉を聞いて垣根は……笑った

 

「……お前ら……………………………………三下が手を貸してくれてもていとくん、全然嬉しくないんだけど」

 

『おい』

 

「冗談だよ、半分程な」

 

『半分は本気て事じゃねえか』

 

垣根が雑魚が力を貸してくれても嬉しくないと嘘泣きし、全員が青筋を浮かべキレそうになる。そんなコント染みた事をした後、垣根は顔を上げて彼らに笑いかける

 

「……まあ、でも、嬉しかったぜ。お前らがそう言ってくれて、な」

 

そう垣根が上条達に言うと彼らは全員驚いた顔をする

 

『か、垣根(さん)/ていとくん/帝督が純粋に感謝した…だと!?』

 

「お前ら俺をなんだと思っとん?」

 

「は、ははは……」

 

まさか垣根が感謝するだなんて…明日は流星群が地上に降り注ぐのかと震える上条達。垣根は「これ俺怒っていいよね?」と未元物質の翼を展開。帆風が落ち着いてと垣根を羽交い締めにする

 

「……ま、今度からは自分一人で行動するのを控えるよ。代わりに覚悟しろよお前ら。俺と一緒についていけば死ぬかもしれねえからな」

 

「いや割と今までも死にかけたんでせうが」

 

「てか、スカイダイビングで死ぬかと思ったんだけど」

 

そうジト目で垣根を睨む上条達、だがそれも一瞬ですぐ全員で笑い合う。それを見て帆風も笑った。そして垣根は笑顔のまま上条達にある事を告げる

 

「てな訳でお前ら。俺が今までお前らの代わりに払ってた金返してくれる?」

 

『……………え?』

 

垣根はじゃあ金返してね、と満面の笑みで告げると上条達の笑顔が固まる

 

「あ、あの垣根さん?お、お金とは何の事なのでしょうか?」

 

「なにって今までお前らが学園都市に迷惑をかけた時に俺がお前らの代わりに払ってやってた金だよ。ミコッちゃんがいつも蹴る自動販売機…あれの修理代及び、今度ミコッちゃんが蹴る時缶ジュースが出なかったら困るだろうから業者さんに頼んでわざとゴムが緩んだままにして貰ったり、アー君が風紀委員に職質されない様に風紀委員に頭を下げたり、みさきちが常盤台の生徒達をよく洗脳するもんだから洗脳された子達に謝罪に菓子折り持って謝罪しに行ったり、むぎのんの照れ隠しで原子崩し放って建物壊すし、軍覇は不良を倒す時勢い余って建物壊すし、当麻はフラグメイカーだし…それに戦闘で町壊すし…そんなこんなで色々とていとくんがお前らの代わりに金払ってやってんだよ」

 

『』

 

(は、初耳ですわ…)

 

新事実に全員が驚き固まった、まさか自分達の後始末を垣根がやっていたなんて…と冷や汗を流す上条達…そして垣根は悪い笑みを浮かべる

 

「てな訳でお金返してもらおうか」

 

『い、いくらですか?』

 

「えっと……こんなけだな」

 

垣根が電話のボタンをぽちぽちと押してとある数字を出す…それを見て上条達は顔面蒼白となる…もう万とか億とかの数字ではなかった

 

『か、垣根しゃぁん…?全部俺/私達が払わないといけないのですか?』

 

「え?お前ら言っただろ?困った時は自分達を頼ってくれて。俺もお前らの代わりに金払うのに困ってたんだ…だから全額金返してくれるよな?当然これからお前らが自分達の不始末は自分達で解説しろよ?」

 

『か、垣根様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?見捨てないでくださいましぃぃぃ!!!どうかこの哀れな虫ケラ目に御慈悲を!御慈悲をぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!』

 

泣いて垣根の足にしがみつく上条達、そんな情けない姿の上条を見て笑いながら写メを撮る垣根…帆風はそんな垣根を見ても胸がキュンとなったから自分も自分でヤベー奴だなと再自覚する

 

「……それでも、好きになったんだから仕方ないですわよね」

 

そうニッコリと微笑む帆風

 

『お願いします!それだけは勘弁を!靴舐めでも豚の真似でも何でもやるからこれからも自分達の代わりに金を払ってください!後始末もお願いします!この通りです!頼むからさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』

 

そんな情けなく号哭する上条達の声が周囲に響くのだった

 

 

「いや〜アレイスターめ。中々手の込んだ事しやがって」

 

「■■■■■■■■■■■■■■■」

 

魔神 娘々と魔神 ■■■■■は辛くもアレイスター達から逃れ現世に逃げ延びていた。ゾンビが他の魔神達に教えていた『鏡合わせの分割』で世界が破壊されない様にしながら二人は娘々が買ってきたアイスクリームを舐める

 

「■■■■■■■」

 

「そういや■■■■■はアイスクリームが好きだったよね、たこ焼きとか海鮮物は大嫌いだけど」

 

「■■■■■■■■■」

 

「でもさ、■■■■■てタコっぽいじゃん。同族嫌悪て奴?」

 

「■■■」

 

「いやタコじゃないて言われても…まあいいや」

 

そう楽しげに会話する娘々と■■■■■、彼等が今いるのは学園都市の第十学区の屋台尖塔。一番下の階で食べ物を買って咀嚼しながら二人今後の予定を決める

 

「さてさて、これからどうするか…わたしはゾンビ少女を倒した垣根帝督と帆風潤子と喧嘩しに行くけど…■■■■■はどうしたい?」

 

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■」

 

「成る程、じゃあここからは別行動だね。精々アレイスター達に見つかんない様にね」

 

「■■■■」

 

二人はアイスクリームを食べ終わった後、忽然と姿を消した。この魔神二柱が現世にどんな影響を与えるのか…それはまだ誰も分からない

 

 

 

学園都市から遠く離れた場所、そこに車椅子に座った女…木原病理が笑みを浮かべていた

 

「……ふふふ、帝督ちゃんが順調に成長している様で何より。それに魔術関連とはいえ絶対能力者(レベル6)に等しい存在になれた事は嬉しい事なのです。これが俗に言う息子の成長を見て喜ぶ母親…と言うものなのでしょうかね?」

 

そう車椅子を動かしながら顎に手を当てて考え込む病理。そして不気味な笑みを浮かべ彼女はこう呟く

 

「ではまた会いに行くとしますか、私の息子に」

 

車椅子が変形する、車輪が変形し蜘蛛の様な形となり脚の下にはブースターがありそこから勢いよく火を噴射し空へと浮かび上がる。そして勢いよくある方角へ向かう…その方角にあるのは…学園都市(・・・・)

 

「さあ、これで最後にしましょうか帝督ちゃん、そして潤子ちゃん。最後の実験と行きましょう」

 

 

 

垣根と帆風は二人きりで外を歩いていた

 

当麻達(あいつら)のさっきの醜態、ピンセットでアレイスター達にその一部始終をメールで送ったら全員笑い転げた、て返事が来たぜ」

 

「あは、あはは……それ動画にあげたりしないでくださいよ?」

 

「それは出来ねえ相談だ、何せさっきトチトリに送ったからな。今頃動画に上がってるだろ」

 

「………」

 

帆風は無言で手を合わした。垣根によってエツァリ達 アステカ組は焼肉パーティーが三日間続いた。特上寿司もピッツァもオマケで食べた。19090号が殆ど平らげたとか

 

「で、潤子ちゃん続きしねえの?」

 

「……?続き……とは?」

 

垣根が唐突に続きはしないのかと帆風に尋ねる、帆風は垣根が何を言っているのか理解できず可愛らしく首を傾げる

 

「いや惚けなくてもいいから。そういうの求めてないから。ほら、アレだよアレ。潤子ちゃんの告白(・・)の続き」

 

「……告白…?……………………………………あ」

 

告白の続きと言われ、帆風は垣根がなんのことを言っているのか思い出した

 

 

『………暖かい、です。もう二度と離したくないほどに。……垣根さんが無惨な姿になった姿を見た時…胸の中に穴が空いたかと思いました。ゾンビが見せた世界で貴方が他の女の人と幸せそうにしているのを見て胸が苦しくなりました…』

 

『わたくし意外と嫉妬深い性格なんですね。初めて知りました…それ程までに…貴方が愛しいんです』

 

『ですから、もう二度と貴方を離しません。一人で何処かに行かせたりしません。これからはずっと、ずっと一緒にいたいです』

 

『わたくしは垣根さん、貴方が好きです。一人の殿方として初めてお会いした時からお慕い申しておりました』

 

『わたくし、今…とっても幸せです』

 

『………嬉しい』

 

 

「あ、あぁ…ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「どっしたん?生理?」

 

「違います!違うんです!違うんですよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

「え?それは何、生理の事を言ってるのか、別の事を言ってるのかどっちなん?」

 

帆風は突然顔を真っ赤に染め上げ、ポンッと頭から湯気を出しながら両手で顔を覆い悲鳴の様な奇声を上げる。垣根のお巫山戯にもまともにツッコミが出来ないくらい彼女は半狂乱になっていた

 

「わたくしの大馬鹿!わたくしの大馬鹿!余計な事を言ったのはこの口ですか!確かにいいムードだと思いましたよ?もう流れに乗っちゃえ!と思いましたよ?もう死ぬかもしれないから言っちゃうか、と思いましたよ?他の女に取られるぐらいなら先に既成事実作ろっかな?て思いましたよ?でもそれを実際にしちゃダメでしょぉわたくしのお馬鹿ぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

取り敢えず彼女は近くの壁で顔ドラムした、今の彼女の気持ちは「穴があったら入りたい」ではなく「アイアンメイデンがあったら入りたい」だろう。即ち死にたいくらい恥ずかしい、という事だ

 

「ちょ、潤子ちゃん!?可愛くて綺麗なお顔が台無しになるからおやめなさい!」

 

「やめません!絶対に!ああ!わたくしなんという事を…!今すぐ垣根さんの脳内を弄くり回して忌まわしい記憶を消し去りたい気分ですわ!」

 

「内容だけ聞いてると凄いドメスティック!?」

 

その場の勢いであんな事を言うのではなかった、そう激しく帆風は後悔した。今すぐ術式で垣根の脳内を弄って記憶を消してやりたい。だが垣根と自分は神の座へと至っている。今更そんな能力は効かないだろう。因みに帆風がいくら顔ドラムしても彼女の顔は一切傷がつかないし逆に建物がもう風が吹けば崩壊する一歩手前の状態だ

 

「……いやでも、俺潤子ちゃんに告白されて俺凄え興奮してんだけど」

 

「……え?」

 

「だってアイドルみたいに整った可愛らしい顔にグラマラスな体型、声は美声、性格も文句なし、お嬢様、後輩属性、縦ロール……こんな美人に告白されて興奮しない男がいると思う?いやいないね、断言する、てか潤子ちゃん俺の好みドストライクだし」

 

「…………え、ええぇぇぇぇ!!?」

 

褒め殺さんばかりに垣根が自分が帆風の事をどう思っているのか言い、帆風が戸惑った声を出す。その瞬間を逃さず彼女の両腕を優しく掴む

 

「か……垣根さん?」

 

「潤子ちゃん、俺からも君に言いたい事がある…俺も君が好きだ。君に助けてもらった時から…君の事を好きになった」

 

「ーーー!?」

 

垣根の突然な告白に困惑する帆風、垣根は構わず言葉を続ける

 

「潤子ちゃんに告白されて……凄え嬉しかった、だから俺からも潤子ちゃんに言わせて欲しい」

 

そう一度間を空けてから垣根は一呼吸し、帆風の顔を真剣な眼差しで見つめながら耳元でこう囁いた

 

「俺も潤子ちゃんの事が大好きだ、こんな俺で良ければ付き合って欲しい。一生君を幸せにしてみせるから、絶対に君を守ってみせるから」

 

そう微笑みながら垣根が帆風へと告白する。それを聞いて帆風は目を潤ませながらゆっくりと垣根に微笑み返した

 

「はい……わたくしで良ければ喜んで」

 

そう言った後、帆風は首を垣根の方へとゆっくりと動かした……そして、二人の影が重なる………今日この日、学園都市に新しい恋人がひっそりと誕生したのだった

 

 

 

 

 

「でも、垣根さんがこんな告白をするなんて意外ですわね、てっきり空の上で月をバックに告白してその後、学園都市全体をライトアップしてその後啄む様に口付けをしてくるかと思ってましたわ」

 

「いや、俺そこまでメルヘンじゃねえから」

 

「後、いつもみたいに「エロい事しねえの?」と、大人なホテルに連れて行かれるのかと…」

 

「……無理、流石にJCに手を出すのは…それにキスでもこんなに恥ずかしいのにその先は俺には無理」

 

「……垣根さんのヘタレ」

 

「ゲフゥ!?」

 

そんなカップルの会話があったそうな

 

 

 

「…………やったな、垣根帝督。リリス、今日は赤飯だぞ」

 

『いや赤ん坊は赤飯食べれませんのよ。と代筆中』

 

そんな二人の様子をこっそり滞空回線で監視していたアレイスターは感涙を流した。そんな父親をジト目て見つめる赤ん坊(リリス)。彼は今日撮った映像を家宝にする事に決めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 




作者は恋愛描写が苦手なんです、そして書くだけでも恥ずかしいんです。だからこれが限界だった。許してください(土下座)。そして次回からは付き合い始めたていとくんと縦ロールちゃんにご注目を

そして次章『反転物質 編』の次回予告もどうぞ

「さあ、殺し合い(ケンカ)しようぜ☆」
「魔神」尸解仙により魔神となった者ーーーー娘々

「貴方とは二人きりで話したいと思っていたんですよ潤子ちゃん」
「科学者」垣根帝督の因縁の相手ーーーー木原病理

「……貴方は……辛くなかったんですか?」
神の王国(サンダルフォン)」神の座へと至りし者ーーーー帆風潤子

「潤子は可愛いだろ、お前らの彼女よりもな」
神の代理人(メタトロン)」科学と魔術の天使ーーーー垣根帝督

次回もお楽しみに!


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第十章 反転物質 編
通常攻撃がギャグでイケメルヘンなていとくんは好きですか?


衝動で書いた、後悔はしてる。反省もしてる…この人達との出会いはギャグでした。て、感じのお話です。てか最近最初の頃と比べてギャグのセンスとか劣化してる気がする…気の所為か?

所々おかしいかもしれませんが気にしないでください。何せ面接の練習とか忙しいので…では今回はローマ正教との出会いの話です


これは出会いの物語、ローマ正教、そして神の右席が垣根帝督と出会った始まりの日の物語である

 

 

「ふぁ〜今日もいい天気ですねー」

 

そうチョココロネを食べながら呟いたのは小柄な体型のシスターの少女 アンジェレネ。彼女は小動物の如くチョココロネを頬張りながら空を見上げていた

 

「本当ですねぇ、今日は雲一つないですし外で思い切りはしゃぎたい気分です」

 

そう返事を返したのはミニスカの様な修道服にチョピンという靴を履いた細かい三編みの赤毛のシスター アニェーゼ=サンクティス。彼女もパンをかじっていた

 

「二人共…何をのほほんとしているのです。もっと気を引き締めなさい」

 

そんな気が緩み過ぎている二人を窘めたのはスカート部分が短い修道服を着こなしガーターベルトに黒ストッキングを履いた背の高いシスター ルチア

 

「そうは言っても〜こんなにいい天気なんですからいいじゃないですかシスター ルチア」

 

「いけません!もし異教徒が攻め込んできたりでもしたらどうするつもりなのですか!」

 

「攻め込むて…そんな訳ねぇじゃねえですかシスター ルチア。昔ならいざ知らず、今時異教徒のカチコミなんてあると思ってるんですかシスター ルチア?」

 

「備えあれば憂いなし、という異国の猿共の言葉があるのをご存知ですかお二人共。異国の猿の言葉を受け入れるのは癪ですがその様な事態も想定しなければなりません」

 

もし何かが起こったらどうするのか、と少し怒りながら二人にガミガミ言い始めるルチア。アニェーゼとアンジェレネは両手で耳を塞ぎながら生返事で返す

 

「シスター ルチアは勤勉ですねー……あれ?あれは何ですか?」

 

「「?」」

 

アンジェレネの目にふと何かが映りそれを指差す、アニェーゼとルチアはその方向へと顔を向ける…彼女達の目に映ったのは学校の机と椅子の足に車輪がつき、そんな不思議な机と椅子が五つも聖ピエトロ大聖堂へ一直線へと迫ってくる異様な光景だった

 

「「「何故に学校の机と椅子!?」」」

 

しかもその椅子に座り机の上で何か書いている人物達がいた。学生服にぐるぐるメガネをかけ、頭には「受験合格」と書かれたハチマキをした垣根とアレイスター、メイザース、脳幹、オティヌスだった

 

「俺達はただ今受験勉強という大海原で悪戦苦闘している侍でござる」

 

「いとおかし、祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり、羅生門…ふ、国語は完璧だ」

 

これはペンですか(Is this a pen)?いいえ、それはキングギドラ(that is a KingGhidorah)です…英語はパーフェクト」

 

「36×86=893、2683×8=19632、π…胸のことだな。数学も完璧だ」

 

「……理科は浪漫だよ」

 

(つ、ツッコミ所が多過ぎて逆にツッコめない!)

 

日本刀を振り回しながら宣う垣根を筆頭に全員受験合格出来ない奴らばかりだった。特にメイザースは全問不正解だ

 

「ここでござるか、羽蟻婆怒(ハーバード)大学とやらは…」

 

垣根達はバチカン大聖堂に到着すると机から降り、聖ピエトロ大聖堂の中に入ろうとする。それを見たアニェーゼとアンジェレネが慌てて垣根達に駆け寄ってくる

 

「ちょっと待ってください!貴方達誰ですか!?」

 

「拙者達はこの大聖堂にて受験合格を祈れに来た侍でござる。ぜひ羽蟻婆怒に合格したくこの大聖堂に祈願しに来たで候。武士道とは()ふは民のため、受験合格する事と見つけたり」

 

「なんだ、単なる祈りに来た連中でやがりますか。変な乗り物出来たから驚いちまったです」

 

「だったら問題ないですね」

 

自分達は受験合格を祈願しにここに来たと垣根が言いそれをあっさりと信じるアニェーゼとアンジェレネ。そのまま垣根達を大聖堂の中に入れようとするが…

 

「いやそんな訳ないでしょうがぁぁぁぁぁ!」

 

『痛ぁ!?』

 

ルチアはいつの間にか手に持っていた大きな車輪をちゃぶ台返しよろしく勢いよく地面にぶつける。その車輪が破裂し車輪の破片が垣根達とアニェーゼ達のこめかみにヒット。これは聖カテリナの『車輪伝説』をモチーフとした術式で彼女はそれをツッコミとして扱った。垣根達(ついでにアニェーゼ達)は地面に倒れる

 

「どう考えても不審者でしょうが!こんな受験生はいません!」

 

「くっ……完璧な変装がバレるとは…やるな」

 

「いやどこら辺が変装なんですか!?」

 

ボケ続ける垣根にツッコミ続けるルチア、バレてしまっては仕方ないと垣根達は学生服を脱ぎ捨てて普段の服装になる

 

「自己紹介が遅れたな、俺は学園都市の超能力者(レベル5)の一人 第一位 垣根帝督だ」

 

「私はアレイスター=クロウリー、学園都市統括理事長をやっている」

 

「俺はサミュエル=リデル=マグレガー=メイザース。黄金夜明の魔術師の一人だ。訳あって現在は学園都市に住んでいる」

 

「私は木原脳幹、学園都市の科学者さ」

 

「私は『元』魔神 オティヌス。好きな食べ物はじゃがバターだ」

 

五人はそう戦隊モノの如く決めポーズを取ると、背後が爆発した。別に削板は関係ない

 

「が、学園都市…!?しかも魔神と黄金夜明の魔術師、ゴールデンリトリバーまで!?」

 

「私腹痛なので今日は早退させていただきます」

 

「逃げないでくださいシスター アンジェレネ!おのれ異教徒め、私達ローマ正教を潰しに来たのですか?」

 

アンジェレネは仮病で帰ろうとしたのでルチアは彼女の襟首を掴んで引き止める、そしてルチアはローマ正教を潰しに来たのかと垣根達を睨む

 

「おいおい、そんな眼をしないでくれよ…まさか、お前如きが俺を倒せるとでも思ってんのか?」

 

「………ッ!」

 

垣根に睨まれルチアは一歩後ずさる、悔しいが自分では目の前の垣根(異教徒)には勝てない。不覚にもそう感じてしまう程の威圧感を彼から感じたからだ、そんな彼女らの前に一人の老人がこの場に現れる

 

「……科学サイドである筈の学園都市の統括理事長と超能力者が魔術サイドであるここ、バチカンに何の用だ?」

 

「!?……教皇様!」

 

現れたのは現 ローマ教皇 マタイ=リース。厳格に満ちたその老人は垣根達を睨むのでも、恐れるのでもなくただ見つめていた

 

「アンタがローマ教皇か」

 

「いかにも、して用件はなんだ?単なる旅行というわけではあるまい。魔神に黄金夜明の魔術師、超能力者…そしてその名が偽りないのならあの魔術師 アレイスター=クロウリー…そんな名だたる大物がここにいるのだ…平和的な要件ではあるまい」

 

「ああ、その通りさ。だが安心してくれ、俺らの目的はローマ正教の撲滅でもアンタの命でもねえ。俺らが用があるのは神の右席だけだ」

 

「………神の右席、彼奴らの事か」

 

神の右席、その言葉にマタイは聞き覚えがあった。いや、聞き覚えがあるという表現は正しくない。ローマ正教の中でどれだけの人間が神の右席について知っているか、自分を含めても10人程度しかいないのではないだろうか

 

「……彼奴らに何の用があるのかは知らぬ、だがそれが私達ローマ正教…何より魔術の事も知らぬ無垢な教徒達に被害が及ぶというのなら全力でお前達を止めさせてもらう。例え私の命を引き換えにしてでも」

 

そう力強く宣言するマタイ、その決意に満ちた顔と言葉に偽りはない

 

「………宗教家の鏡みたいな人だな。アレイスター、ここは頼んだぞ」

 

「ああ、任された」

 

垣根がマタイの相手をアレイスターに頼むと四人は瞬間移動でその場から消えた。呆気に取られるアニェーゼ達、だがマタイは顔色一つ変えずアレイスターを見つめる

 

「私の相手はお前というわけか」

 

「ああ、そういう事になる。だが安心したまえ。何も魔術で戦うというわけではない」

 

「……どういう事だ?」

 

マタイがアレイスターに言葉の意味を訪ねる、するとアレイスターは懐から何かを取り出す…一瞬銃か霊装かとマタイは考えたがアレイスターが取り出した物は…3DSだった

 

「一緒にモ○ハンで一狩りしに行かないか?」

 

 

垣根達は聖ピエトロ大聖堂の通路を走る、神の右席達がいる場所まで走り続ける

 

「侵入成功と、案外楽には入れたな」

 

「魔術による空間転移ならば侵入は不可能だったかもしれないが、超能力である空間移動(テレポート)なら侵入は容易いだろうな」

 

そう軽口を言いながら通路を走る四人、そんな彼らの前に一人の男が立ち塞がる

 

「待てい!ここから先はこのビアージオ=ブゾーニが通さんぞ!」

 

メノラーを両手に携えた男 ビアージオ=ブゾーニが垣根達を睨む

 

「この異教徒の猿共と犬畜生め、このビアージオ=ブゾーニが来たからにはここから一歩も通さん!」

 

そう息巻くビアージオ、そんな彼に垣根達は構わず駆け抜け…彼の横を通り抜ける

 

「……………」

 

ビアージオはスルーされた、まるでいないものの様に扱われた。完全スルーされたビアージオは黙りこくる

 

「………ぶるぁぁぁぁぁ!!!」

 

そして怒りに身を任せてメノラーを地面に思い切り叩きつけるのであった

 

「…ねえ、さっきの人無視してよかったのかい?」

 

「あの様な雑魚に構う必要はない」

 

「中々手強そうだが俺達からすれば一撃で倒せるスライムだ」

 

「コットンキャンディーソーダ美味ぇ」

 

そんな会話をしながら走り続ける垣根達、そんな彼らだが突如として暴風が彼らを襲い、垣根は未元物質の翼を一翼だけ展開し暴風を防ぐ

 

「へぇ?その翼…科学も等々天使を工場で作り始めたの?」

 

「……その黄色い服、お前が前方のヴェントか」

 

「その通り、私は前方のヴェント。フィアンマの野郎からアンタ達を殺して来る様言われて来たの」

 

全身真黄色の服装をし、片手にハンマーを片手に持ち舌にはピアスをした異様な格好の女性…神の右席が一人 『神の火(ウリエル)』前方のヴェントだ

 

「さて…さっさとお仕事済ましちゃいますか」

 

ヴェントはそう言ってハンマーを振るい暴風が横薙ぎに放たれる、それをメイザースが短剣を振るう事で暴風の壁が形成されヴェントの攻撃を相殺する

 

「あらぁ、私の風を防ぐとは中々やるようね…でも、すんませーん!私には「天罰」がある!人間(・・)である貴方達には私に絶対に勝てないのよ!」

 

そう言いながら舌ピアスを見せつけながらベロを出すヴェント、まるで垣根達を挑発する様に…だがそこで彼女は訝しげに首を傾げる

 

「……ァ?何で昏倒しないのよ?」

 

そう呟くヴェント、彼女の術式は「天罰術式」。自身に悪意、敵意を抱いた者を距離・場所を問わずに問答無用で昏倒させる魔術。「何処の誰だろうが、神様に唾吐くものは許さない」という理屈で成り立っており、後遺症も無く無条件で大量の敵を無力化でき、大規模制圧には非常に理想的な術式。写真越しであれ、カメラ越しであっても人間(・・)であれば効力を発揮し敵味方関係なく無力化する強力無比な術式…なのに垣根達は昏倒する気配がない

 

「まさかアンタ達、悪意を抱いてないの?」

 

「いや私はお前のその格好を見て正直キモッて思ったぞ」

 

「俺も同感だ」

 

「というか攻撃をされた時点でいい感情は持ち合わせていない」

 

「ていとくん怒ってないよ?」

 

「じゃあ何で気絶しないのよ?」

 

ヴェントが何故気絶しないのかと問いかける、それに関して垣根達は簡潔に答える

 

「私元とはいえ神だし」

 

「俺人間じゃなくてタロットカードだし」

 

「私は人間じゃなくて犬だからね」

 

「俺はメルヘンだからな」

 

「おい!一つだけおかしいのがあるぞ!?他は納得したけど!」

 

脳幹は犬だから人間にしか効かない術式は通用しない、オティヌスは元 神だから通用しない、メイザースは人間ではないから通用しない。垣根はメルヘンだから通用しない、これが世の中の法則である

 

「俺はメルヘン、俺はメルヘン、未元物質にアンタの常識(術式)は通用しねえぜ、yo-yo」

 

「何でラップ口調なんだよ!くそ、兎に角私とお前らは相性が悪い事だけは分かった!」

 

ヴェントはこのままでは不味いと舌打ちする、そんな彼女の前に一人の男性が現れる

 

「どうやら苦戦している様ですねー、手を貸しましょうかヴェント?」

 

「!テッラか!」

 

全身緑のエリマキトカゲみたいな襟がある服を着た中年の男性 神の右席の一人 『神の薬(ラファエル)』 左方のテッラが壁をすりぬけて現れる

 

「丁度いいです、私の術式は未だに未完成なので貴方達を的にして調節するとしますかねー」

 

「的…だと?誰がボーリングのピンだ!」

 

テッラは小麦粉の粉をばら撒くとそれがギロチン状へと変形する。テッラは笑みを浮かべながら言葉を呟く

 

「優先する、小麦粉を上位に、人体を下位に」

 

ギロチンが垣根達に放たれる、垣根は未元物質の羽を盾にしてギロチンを防ぐ

 

「ほう?その翼…面白いですねー。ならば、優先する、小麦粉を上位に、翼を下位に!」

 

そう言ってギロチンを再度羽へと放つ、鈍い音を立ててギロチンが未元物質の羽へと命中し未元物質の羽に斬撃の後を刻む

 

「おや?切断できないとは…これはどういう事でしょう?」

 

「悪いな、俺の翼は単なる翼じゃねえ…純度の高い未元物質で形成されてんだよ」

 

「ふむ…成る程単なる翼ではありませんでしたか…それにしても科学の天使とは…存外、学園都市の能力者開発というのも私達 神の右席と同じなのかも知れませんねぇ」

 

そうニコニコと笑うテッラ、どう垣根を倒すか考えている様だ。だが敵は垣根一人ではない

 

「彼に気を取られている所悪いけど…チェックメイトだよ」

 

「んん?」

 

テッラが声が聞こえた方に首を動かすと、そこにはA.A.A.を装備した脳幹が葉巻を吸いながらテッラにドリルやレーザーの銃口など様々な武器を向けていた

 

「何のつもりですかー?まさかそんな玩具でこの左方のテッラを倒せると思っているのですかー?」

 

「まさにその通りだよ、君の術式は一つしか設定できないみたいだからね。それにこれは単なる科学の兵器じゃない。アレイスターに接続し彼の力を借りている…つまり魔術でもあるから君の術式じゃあ防げないよ?」

 

テッラの術式 「光の処刑」は優先順位を変更させるという極悪な性質を持つ魔術。単なる小麦粉で人間を輪切りにし、単なる小石で要塞を破壊し、核爆弾を落とされても無傷でいる…そんな事すら可能とする術式だ。だが未完成ゆえ一つしか優先順位を設定できず二つの異なる攻撃は防ぐ事が出来ないのだ

 

「成る程……ふふふ」

 

テッラは脳幹に武器を向けられながらでも笑みを崩さない、まるで秘策がある様に…そして彼はこう言った

 

「……降参なのですー」

 

「て、おい!」

 

降参するんかいとヴェントがツッコミを入れる、これで神の右席は二人倒した。だがここからが本番だった

 

「何をしているのであるか二人共」

 

「その声は…アックアですか」

 

現れたのは青系の長袖シャツを中心にゴルフウェアを連想させるスポーティな格好をした茶髪の逞しい肉体の持ち主男性 神の右席の一人 『神の力(ガブリエル)』 後方のアックアだ

 

「……私が相手になろう」

 

アックアは影から全長5mを超す巨大な金属棍棒(メイス)を取り出す、その先端を垣根達に向ける

 

「今ここで引くのなら見逃してもいいのである」

 

「へ、ハイそうですか。てこっちも引くわけにはいかねえんだ。そっちが引けば?」

 

「……ならば、力による解決をするまでである」

 

そう言ってメイスを構えるアックア、垣根は未元物質の六翼をアックアへと向け、槍の如く刺突しようと動かそうとするとオティヌスが垣根の肩に手を置く

 

「待て盟友、あいつの相手は私に任せろ」

 

「お、オティちゃんがやるのか?」

 

「ああ、対あいつ用の切り札があるからな」

 

そう言って一歩前に出るオティヌス、アックアは目を細めながらオティヌスへとメイスを向ける

 

「切り札…であるか」

 

「ああ、対お前専用のな」

 

「ふ、面白いのである。その切り札とやらがどの様なものかは知らないが…私に通用するといいのであるな」

 

「通用するさ、そして宣言しよう。お前は切り札を見た瞬間尻尾を巻いて逃げる」

 

「……ならば試してみよう」

 

そう言ってメイスを携えながら突進するアックア、その速度は音速を優に超える。神裂と同じ聖人であると同時に、聖母と同じ身体的特徴を持つ「二重聖人」。更に神の右席の術式として振るう「聖母の慈悲」。これにより魔術の講師を可能とし聖人としての超強力な肉弾戦と魔術戦を可能とする。だがオティヌスは骨船でとある女性を移転させる…その女性とは

 

「………会いたかったですよウィリアム」

 

「ーーーーーーッッッ!!!?だ、第三王女(・・・・)

 

現れたのは英国の女王の娘の一人である 第三王女 ウィリアン。物語のお姫様の様な容姿と格好の姫君が現れた事に動揺を隠せないアックア

 

「……あ、ありのままの事をお伝えしましょう!突然イギリスの王女が現れました!これは単なる空間魔術ではない…これが、魔神なのですねー!?」

 

「何で説明口調なんだ?」

 

アックアは何故ウィリアンが現れたのかと考える、目の前の彼女は幻覚ではない。本物のウィリアンだ。では何故ここに彼女が…?そう考えるアックアにウィリアンが口を開く

 

「……ねぇ、ウィリアム。久しぶりですね」

 

「え?あ、そ、そうであるな」

 

「私ずっと待ってたんですよ貴方が帰ってくるのをずっと、ずっとずっとずっとずっと…ずぅぅぅぅぅっと」

 

「え……?」

 

テッラとヴェントは理解した、「あ、この娘ヤベー奴だ」と

 

「なのに貴方は帰ってこない、ずっと私は貴方を待っているのに…」

 

「だ、第三王女?」

 

「だから私決めたんです、ちょっと恥ずかしいけど勇気を出す事にしました!」

 

そう彼女は顔を赤らめて体をもじもじさせながら熱っぽい声でアックア…ウィリアムにこう宣言した

 

「ウィリアムをボコボコにして上下関係をしっかりと体に理解させて、もう何処にも行かせない様に首輪をつけて飼う事にします♪」

 

「お、王女ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!?」

 

目に光はなかった、深淵の闇の如くドス黒い彼女の目を見てウィリアムは恐怖した。いや、これは誰でもビビる。魔神が素足で一目散に逃げるレベルである

 

「でも安心してくださいウィリアム、きっと貴方も痛みに慣れてその痛みが快楽になる筈です…で、貴方を家で飼ってそのまま式を挙げて籍を入れて…初夜に……キャ♪」

 

「全然安心できないのである!?」

 

両頬に両手を当てて身体をクネクネさせて頬を赤く染めたウィリアンを見てウィリアムは対照的に顔を青く染める

 

「だから……今からウィリアムに行う事は全て愛の鞭なので勘違いしないでくださいね♪」

 

ニッコリと普通から可愛らしい、今は絶望感半端ない笑みを見てウィリアムが後ずさる…そしてその場から音速で離脱した

 

(無理なのである!あれの相手は無理なのである!早くバチカンから逃げ出さねば!今の第三王女は絶対にヤベー奴である!)

 

そう音速を超えた速度で逃げるウィリアム、二重聖人である彼には誰も追いつけない。そうウィリアムは安堵していたが

 

「もう、何処に行く気ですかウィリアム?もしかしてデートのお誘いですか?」

 

「ッ!??」

 

ウィリアムの横にウィリアンがいた。音速を超える速度で走っているウィリアムの真横に、だ。流石の彼も彼女を化け物を見る目で見てしまう

 

「な、何故私についてこれて…」

 

「愛成せる技です♪」

 

「い、いやそれは…流石に無理…」

 

「愛成せる技です♪」

 

「い、いやでも……」

 

「愛成せる技です♪」

 

「それしか言えないのであるか!?」

 

そ音速を超えた速度で走りながらそんな会話をする二人

 

「さあウィリアム……私と一つになりましょう」

 

「ヒッ……!た、助け……アッー!?」

 

「「…………」」

 

テッラとヴェントは手を合わせて黙祷した。仲間の死を無駄にはしない

 

「まさか俺様以外の神の右席の全員を倒すとはな…成る程、科学サイドも侮れないな」

 

そんな声が聞こえた、垣根が背後を振り向くといつの間に現れたのか、全身赤い服を着た青年が笑みを浮かべ立っていた

 

「俺様は右方のフィアンマ、神の右席のリーダーであり、最も神上の座に近い者だ」

 

神の右席のリーダー 『神の如き者(ミカエル)』 右方のフィアンマ。彼は不敵な笑みを浮かべて垣根達を見据えていた

 

「成る程…お前は科学の天使か。実に興味深い」

 

「へ、ラスボスの登場てか」

 

魔術サイドにおいて最も天使の肉体に近い男と科学サイドにおいて最も天使の肉体に近い男。フィアンマは自らの力の象徴たる聖なる右が空中分解した姿である第三の腕を右肩から顕現させる。対する垣根も六翼の未元物質の翼を展開させる…こうして魔術の天使と科学の天使が激突した

 

 

「お、意外と上手いなマタイ。ミラルーツ相手にノーダメとは」

 

「わー、ローマ教皇てゲームお上手なんですね」

 

「まだまだ若い者には負けんよ。ほれ、尻尾切断だ」

 

「メイスて現実でもゲームでも割と使いやすいですね」

 

「……何仲良く異教徒とゲームしてるんですか貴方達は!?」

 

アレイスターとマタイ達は仲良くモ○ハンで一狩りしていた

 

 

聖なる右と未元物質が激突した、その衝撃で半壊する聖ピエトロ大聖堂。垣根は翼を広げ空中にて静止、脳幹達も華麗に着地する。フィアンマはいつの間にか地面に立っておりヴェントとテッラは瓦礫に埋もれた

 

「うぉ…やっぱ旧約のラスボスなだけはあるな。誰だよ高速回転ニキて言った奴」

 

垣根がそう愚痴を呟く、フィアンマは不敵に笑みを浮かべる

 

「さあ本当の力の意味を知ってもらおうか」

 

フィアンマが再度第三の腕を振るおうとしたその瞬間、溶ける様に第三の腕が虚空に消えてしまった

 

「…………しまった。使用制限を超えてしまった」

 

「何してんだフィアンマぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

うっかり聖なる右の使用制限を超えしまったフィアンマはてへと舌を出す、全然可愛くない

 

「説明しよう!右方のフィアンマの聖なる右はどんな相手も一撃で倒す、そんな能力なのだが人間であるフィアンマには聖なる右の力を完全には引き出せない、だから使用制限があるのだ!」

 

「お前誰だ」

 

「ローマ教皇だ!(大嘘)」

 

「嘘つけ、お前枢機卿だろ。顔が枢機卿ぽい顔だもんな」

 

「どんな顔だ!?」

 

ローマ正教の枢機卿 ペテロ=ヨグディスが聖なる右について説明しオティヌスがツッコミを入れた

 

「くそ……肩揉みや部屋の掃除、部屋の模様替え、ここへの移動、それに部屋に出たゴキブリを退治したりと使い過ぎのが原因か」

 

「肩揉みと掃除くらい自分でやれよバカヤロー!」

 

無駄遣いの所為で聖なる右が使用不可になってしまったフィアンマ、ヴェントが怒るのも無理はない

 

「へぇ、聖なる右はもう使えないのか〜?なら…」

 

(ま、不味いのですねー!フィアンマの聖なる右が使えない今こそチャンス!汚いのです!さすが異教徒きたない!)

 

普通はここでフィアンマを拘束するなり殺すなりしているだろう…だが垣根にはその常識は通用しない

 

「じゃあ皆で縄跳びしよう!」

 

『なんでだぁぁぁぁぁぁ!!!?』

 

思わず全員がツッコんだ。何故この状況で縄跳びに繋がるのか。多分彼がメルヘンだから

 

「さあ、縄跳びするぞぉ!皆であちょぼ、ウヘヘヘヘイィィィ!!」

 

「ごめん、失礼な事聞くけど…こいつマジで何だ?人間なのか?」

 

「学園都市の恥晒しこと超能力者 第一位 垣根帝督。ただのメルヘンだ」

 

「メルヘンというか単なる精神異常者なのですねー」

 

ヴェントとテッラも流石にドン引きだ、脳幹は単なる恥晒しですと簡潔に述べる。脳幹さんキツイや

 

「な、縄跳びだと……くっ、俺様が運動が苦手だと知っての行いか!俺様が日常生活の大半を聖なる右に頼りぱなしだから筋力が此間幼稚園児に腕相撲で負ける程と何故知っている!?」

 

「いや初耳よ!てか幼稚園児て、お前どんなか力がねえんだよ!?」

 

「俺様の腕力に常識は通訳しないのだ、へけっ☆」

 

「キモっ、死ねよ」

 

「すんませーん!」

 

「私の真似すんなフィアンマ、ぶっ殺すぞ」

 

右方のフィアンマ(○○歳 独身)、幼稚園児に腕相撲で負ける人生だった

 

「さあ、早く飛べよ!やらない奴は処刑!」

 

『怖ぇ!』

 

目ん玉つながりのお巡りさんが拳銃を乱射する様にガトリングガンから銃弾を乱射する垣根、ぶっちゃけ本官さんの方がマシ。一同渋々縄跳びに参加する

 

「ただしペテロ=ヨグディス、テメェはダメだ」

 

「何故に!?」

 

「煩え、さっさと失せろ。3秒以内だ。蜂の巣にされたくなければ3数える内に消え失せな」

 

「理不尽!?」

 

ペテロは逃げる、死にたくないからだ。自分はローマ教皇になる。その野望を叶える為に生き延びようと走り…

 

「1……はいゼロ!」

 

「ぎょえーーっっ!!」

 

『2と3はぁーーーー!!?』

 

「男は1だけ覚えてればいい。そうどっかのハードボイルドが言って気が……多分する」

 

ペテロは死んだ(死んでない)、何やかんやあって縄跳びは始まった

 

「いいかテメェら!縄に引っかかた奴は死刑だぞ、死刑!引っかかんなよゴラァ!?」

 

(((ぼ、暴君…)))

 

「誰が暴君怪獣タイラントじゃ!?じゃあ俺の相方と言ってもいい縦ロールちゃんは極悪のヴィラニアスかいな!?」

 

「今時誰も極暴ダックの事なんか知らないよ」

 

垣根は半壊した聖ピエトロ大聖堂の柱に縄を縛り、白いカブトムシの角にも縄を縛りカブトムシが縄を動かせる様にする

 

「行くぞテメェらぁ!引っかかったらぶっ殺すからな!?分かったか!返事はどした!?」

 

『おー』

 

いつもに増して壊れ気味な垣根、まるでブレーキの効かない暴走列車である。そしてカブトムシが角を動かせ縄もそれに連動して動く。縄を避ける為にフィアンマ達はジャンプ…だが早くも誰が足に縄を引っ掛けたらしく縄の動きが止まる。誰だとフィアンマ達が足を引っ掛けた人物を見ると……垣根が足を引っ掛けていた

 

「………………」

 

『………………』

 

押し黙る垣根とフィアンマ達、重苦しい沈黙が流れる。カブトムシも冷や汗を流している。汗なんてかかない筈なのに。すると垣根は未元物質の翼を展開

 

「悪・即・斬!」

 

「ぎょえぇぇぇっ!何故私ぃ!?」

 

『理不尽過ぎる!?』

 

垣根の理由なき暴力が既に死に体だったペテロを襲う。1分と経たずにペテロはモザイクがかかった

 

「さあ二回戦行くぞぉ!」

 

(((まだ続くのかよ……)))

 

帰りたい、そう全員思っていた

 

 

 

「メアド交換しよう」

 

「ああ、私のメールアドレスはこれな」

 

「今度はアレイスターさんの学園都市に私達が遊びに行ってもいいですか?」

 

「いいだろう、特別に私が許可を出そう。ついでに学園都市で使える商品券も渡しておこう、これでゲーム機でも買うといい」

 

「流石でやがりますね。よ、太っ腹!」

 

「……もうすっかり友達になってません?」

 

 

「成る程、アンタ達はローマ正教を潰しに来たのではなくイギリス清教の最大主教 ローラ=スチュワート…大悪魔 コロンゾンを倒す為にローマ正教に協力しに来た所、何故か大乱闘十字教ブラザーズになってしまったというワケ…いや、それなら普通にそう言えば…いや、普通に大乱闘十字教ブラザースになってたわね」

 

ヴェントがやれやれと首を振る、何故か同盟を結びに来た筈が大乱闘十字教ブラザースになってしまったのかと流石のテッラも呆れた

 

「アンタも苦労してるのね犬っころの癖に」

 

「まあね、それにしても君達の拠点を破壊してすまないね。修理代は学園都市から支払うよ」

 

「いい奴ねアンタ、いえいい犬かしら…それに比べ飼い主もとい仲間達と来たら…」

 

ヴェントが軽く脳幹の頭を撫でた後、ジト目を垣根達に向ける

 

「ウェェイ!俺一位!」

 

「くっ!この俺様が二位だと!?あり得ん!この右方のフィアンマが二位!?」

 

「優先する、メイザースを五位に、左方のテッラを四位に」

 

「なっ!?テメェコウラは卑怯だろテッラぁ!」

 

「むぅ、やはりレースゲームは苦手だ」

 

マ○オカートをしていた、すっかりフィアンマとテッラとも意気投合する垣根達にヴェントは呆れる

 

「なんなのあいつ、一応テッラて凄い異教徒嫌いなんだけど」

 

「まあ、それが垣根帝督と言う男さ」

 

苦笑する脳幹、それを見てヴェントは肩を落とす

 

「おい垣根帝督!次こそは俺様が勝つぞ!無論ゲームでも実力でもな!」

 

「ははは、返り討ちにしてやんよ。あ、そういえばお前世界を救いたいて言ってたじゃん?これ、バチカンの地域清掃のボランティア応募の紙。世界が救いたいならゴミ拾いから始めたら?……あ、無理ならいいぞ?まあ、ゴミ拾いも出来ない奴が世界救えるわけねーけど」

 

「何だと!?上等だ!ゴミ拾いだろうが何だろうがやってやる!」

 

「あー、私もう異教徒を的にするのやめてパン屋でも開きましょうかねー」

 

「案外お前パン屋向いてるかもな、まあ私はじゃがバター派だがな」

 

もう十年来の友かというぐらいの仲良しになった垣根達とフィアンマ達。今の状況を軽く説明するとこうである

 

 

右方のフィアンマ…ボランティア活動によりプロジェクト=ベツレヘムを断念

 

左方のテッラ…パン屋設立

 

後方のアックア…ストーカー被害続発

 

前方のヴェント…胃に穴が開きそう

 

 

ざっとこんな感じである。ともあれ今日のこの大騒動のお陰で本来起きる筈であったアビニョン事件や第三次世界大戦がなくなったのだが…それを知る事は垣根以外誰もなかった

 

「むきぃぃぃ!また二位だと!?この俺様が!?聖なる右を持つ俺様が!?」

 

「パン屋設立の資金は今まで溜め込んでいた給料で立てられるのですねー」

 

「……短時間で人てこんなに変わるもんだっけ?まあ私には関係ないけど」

 

コントロールを持ったまま憤るフィアンマ、パン屋を開く気満々なテッラ。そんな二人を見てヴェントは溜息をついた

 

「そういえば…誰か忘れていないかな?」

 

「あぁ?……確かに誰か忘れてる気が…まあ忘れるくらいなら大した事はないわ。それよりもアンタの連絡先教えなさいよ」

 

「おや、君電話を使えるのかね?」

 

「弟のせいで科学嫌いだけど皆持ってるから仕方なくよ、ほらこれ私のメアド」

 

何か忘れている気がしたがヴェントは忘れる程度なら大した事ではないと判断し、脳幹とメアドを交換する

 

 

 

「今度の金曜日には遊びに来るからな、菓子用意しとけよ」

 

「おK、絶対来いよ。約束だからな」

 

「科学の住人も案外話し合えるもんですね」

 

「ゲームは偉大です!ゲームさえあればどんな相手でも心が通じ合えるんですね!」

 

「……もうツッコミませんよ私」

 

こっちもこっちで凄く仲良くなっているアレイスターとマタイ達。ルチアは考えるのをやめた

 

 

その頃の忘れ去られたアックア

 

「ウィリアム……さあ、私と合体(意味深)しましょう」

 

「す、ストップなのである!合体はアクエリオンだけで充分なのである!」

 

ウィリアムはウィリアンに服を裂かれ、貞操を狙われていた。果たして彼は無事逃げ切り貞操を守りきれるのか?次回、「激走 逃亡生活 二十四時 アックアの貞操死す!?」来週の日曜の午前10時から放送予定、お楽しみに!(嘘予告)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




アレイスターほんと何もしてない(小並感)、ただおじいちゃんと孫(そう見えなくもない3人)と一緒にゲームしてメアド交換して今度遊ぶ約束しただけです。これにはルチアお姉さんも頭抱え

ヴェントさんが数少ないまともな人、アックア?ヤンデレに追っかけられてるよ。フィアンマも最初は挑発されてゴミ拾いしてみたらそれが段々楽しくなってボランティアマンに、テッラさんは多分パン作りしそうなキャラだと思う

さて次回はあの子ですね、あの子がウィリアン枠になるだけのお話の予定です

次回もお楽しみに!


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パトリシア=バードウェイは告りたい

今回はサブタイの通り、彼女がメイン主人公。ていとくんの活躍は一切なし。ヤンデレ、メンヘラありなお話です。愛とは何か、それを考えて書いてみた……愛てなんだろう(哲学)




「はぁ……」

 

可愛らしいため息が部屋に響く、声の主はパトリシア=バードウェイ。クリフォパズル545に憑依され神威混淆を無理やり発動され上里に助けられた少女である

 

「……おい、マーク。何故パトリシアはため息を吐いている?」

 

レイヴィニアが何故自分の可愛らしい妹がため息を吐いているのかとマーク(椅子)に尋ねる

 

「さあ?でも最近パトリシア嬢はため息を吐く事が多いようですね。昨日もため息を吐いている所を見ましたよ」

 

椅子(マーク)は最近ずっとあんな調子だと四つん這いの状態で答える

 

「何か悩み事でもあるのか?なら、この優しいお姉ちゃんが聞いてやるとするか」

 

「いや、ボスが優しいわけないじゃいですか。ボスは生粋のドS幼女…痛げぼぁ!?」

 

「やかましい」

 

余計な事を言った椅子(マーク)の腹を思い切り蹴り、レイヴィニアはパトリシアに歩み寄る

 

「どうしたパトリシア?何か悩み事か?この頼りになるお姉ちゃんが聞いてやらんこともないぞ」

 

「お姉さん……実は」

 

「うんうん。実は……何だ?」

 

妹まえではいいお姉ちゃんぶりたいレイヴィニア、そんな彼女を見て微笑ましく思うマーク。そんな二人を見てパトリシアも自分の悩みを打ち明ける

 

「……実は、私…好きな人が出来まして」

 

「「………What?」」

 

レイヴィニアとマークの思考が停止した、そして暫くしてからレイヴィニアが口を開いた

 

「……それを何処の馬の骨だ?お姉ちゃんが魔法使いの力でバラバラ死体にしてあげよう」

 

「ボス、もちついてください。ほらここに臼がありますので…」

 

「マークさんも落ち着いてください」

 

イイ笑顔でそう呟くレイヴィニア、マークは何処からか臼を持ってくる

 

「…マジかパトリシア?」

 

「大マジです、好きな人が出来ました」

 

「本当ですかパトリシア嬢」

 

「本当です、好きな人が出来ました」

 

「「……今日四月一日(エイプリルフール)じゃないよ?」」

 

「だから本当なんです、好きな人が出来ました」

 

何度も聞き返してしまうレイヴィニアとマーク、うんざりしたように何度も同じ言葉を言うパトリシア

 

「……早い!パトリシアには後20年早い!そんな破廉恥な事お姉ちゃん許しません!」

 

「いや、まだ好きな人が出来たて言っただけですよお姉さん、それに20年て私アラサーになっちゃいます。売れ残り(クリスマスケーキ)になってます」

 

「売れ残りになってもいい!いや、いっそパトリシアはずっと未婚のままでいろ!ずっとお姉ちゃんのそばにいてくれ!」

 

「おいコラクソ姉貴、妹離れしろ」

 

売れ残りになってもいいから結婚しないでくれ!と叫ぶレイヴィニアに青筋を立てるパトリシア。いくら温厚な彼女でも永遠に独り身でいろと姉に言われれば流石にブチギレる

 

「……ああ、ゲームの中の男キャラが好きになったんですね」

 

「違います、生身の現実の男性です」

 

「……同じ同学年の男の子ですか?まあ今時小学生同士のカップルもいますしね」

 

「いえ、自分より4、5上です。高校生です」

 

「………」

 

マークは現実から目を逸らそうと、まだ自分が納得できる範囲内の人物かと尋ねるが高校生を好きになったと言われマークが固まる

 

「こ、高校生だと!?ダメだダメ!年の差結婚などお姉ちゃん許しません!」

 

「何故もう結婚する流れなんです?いやしたいですけど」

 

「早まってはいけませんパトリシア嬢!その男の何に惚れたんです!?顔ですか!?金ですか!?それとも両方!?男は中身ですよ!」

 

「………命を助けてもらいました。それに裸も見られちゃったし…これは責任とって貰うしかないと思って」

 

「「なろうかよ!」」

 

自分の命を助けてくれたし、自分の裸も見られた。ならこれはもう責任とって貰うしかないと言うパトリシアに頭を抱える二人

 

「なんだ命を救ったて!?なろうの都合のいいヒロインか!なんだ裸を見られたってなろうの都合のいいラッキーイベントか!全部なろうにすればいいてもんじゃねえぞ!」

 

「どうせそいつは神様なり天使なりに貰った特典で「俺tueee!」て「悪者なら殺していいよね!」て敵キャラ殺してもヒロインからは「カッコいい!抱いて!」な都合のいい展開を望んでるクソ野郎なんですよ!」

 

「てか、なんだ転生て!異世界行くぐらいなら生き返って現実に生きろよ!空想に逃げるな!」

 

「コンビニ行く感覚で異世界に行き過ぎなんだよ!ゼロの○い魔や漂○教室を見習え!漂○教室は異世界転生じゃないけど!」

 

「……お二人は転生アンチですか?それにこれ以上言うとこの世界というか、この作品というか、垣根さんを否定しているみたいなので言わないでください」

 

暴走する二人を宥めるパトリシア、一旦二人が落ち着くのを待ってから話を再開することにする

 

「落ち着きましたか?」

 

「「……うん」」

 

「じゃあ続きから話しますね」

 

パトリシアが言うには、彼女が好きになった男性の名前は上里 翔流。もう今にも自殺しに樹海にGOする一歩手前だった彼を励ましていたら自分が悪魔みたいな存在に憑依されボスキャラになってしまった所、上里に物語のお姫様よろしく助けられ惚れの字になった。との事だ

 

「……おのれ上里翔流!私の可愛い可愛いパトリシアの心を奪いやがって!なんだ理想送り(ワールドリジェクター)てのは女の心も新天地(意味深)に送れるのか!?」

 

「……あのロリコンめ!まあ、そんな事よりパトリシア嬢は上里翔流をどれぐらい好きなのか教えてもらいたい」

 

「マーク!?何を言って……」

 

荒ぶるレイヴィニアを他所にマークがどれだけ上里が好きなのかと問いかける、レイヴィニアが何を言っていると止めようとするがマークが唇に指を当てて少し黙ってくれと支持する

 

(落ち着いてくださいボス、これはパトリシア嬢が上里翔流にどんな感情を向けているかチェックしているのです。もしかしたら親愛ではなく友愛かもしれません)

 

(な、成る程!流石だマーク!そうだ!何も親愛とは限らない!友愛かもしれんしな!)

 

そうまだ希望を捨てない二人、だがパトリシアの次の言葉が二人を絶望よりも深い深淵の闇へと誘った

 

「………監禁したいです」

 

レイヴィニアとマークの時が止まった、原因はパトリシアのその一言だった

 

「……なあ、マーク」

 

「なんですボス?」

 

「私は今パトリシアが「監禁したいです」て言った様に聞こえたが耳が悪くなったらしい。いい耳鼻科を知らないか?」

 

「奇遇ですねボス、私もボスと同じ言葉が聞こえました。でもきっと耳が歳のせいで悪くなったみたいなので今度一緒に耳鼻科行きましょう」

 

「?いえ、私は「監禁したいです」て、ちゃんと言いましたよ?」

 

「「嘘だと言ってよバーニィ!」」

 

二人は床に膝をついて両手で思い切り床を殴る。信じたくない、自分の妹が、ボスの妹が監禁したいですなんて言う筈がないと…だが悲しいかな、これって事実なのよね

 

「私の裸を見たんですよ?私凄く恥ずかしかったんですよ?それなのに責任も取らないとか馬鹿じゃないですか?それに上里さんには他の女の匂いが沢山しましたし…ハーレム?そんなもん なろう だけで充分です。ハーレムルートなんかありません。正妻だけで充分な筈。それに上里の服からはいい匂いがするし、あの匂いを私だけが独占したい…あぁそれなのにヒロイン多数とか今時の小説ですか……いっそ殺っちまうか」

 

「私の妹がヤンデレな筈がない」

 

眼のハイライトが消えた、ヤンデレ特有の超早口…完全にパトリシア=バードウェイはヤンデレである。ドウシテコウナッタ?

 

「……いけませんねボス、これはヤンデレ初期症状です」

 

「いや完全にヤンデレだろ」

 

「いえまだ間に合います!今から健全なカップル達を見せれば愛がどういうものかパトリシア嬢も理解する筈です!」

 

「……やってみるか」

 

まだ諦めるのは早いと叫ぶマーク、レイヴィニアは本当に上手くいくのかと訝しみながらも藁をも掴む思いでその賭けに乗る事にした

 

「で、アテがあるのか?その健全なカップルとやらに?」

 

「ええ、何組かアテがあります。そうですね最初に行くのは…」

 

 

 

所変わって第七学区の上条の学生寮にて、上条と美琴がそれぞれ、ポッキーの両端を加えて食べ進めていた…俗にいうポッキーゲームである。なお食蜂は二人の唇が当たる瞬間を写真に収める為シャッターチャンスを伺う

 

(どうしたんですかミコッちゃん?上条さんがこのまま唇奪っちゃいますの事よ?)

 

(ふ、ふにゃ…!わ、わかちぇるわよぉ、先輩のばかぁ)

 

(あぁ、いい。頬を赤らめてる美琴の顔は最高に可愛いわねぇ〜、これだけで食パン10枚は余裕で完食力なんだゾ)

 

いつも通りバカップルだった。食蜂は鼻から鼻血()が今にも流れそうだった。てか、何で目線だけで会話が成り立つんだこいつら

 

(ふ、今回も俺の勝ちだな。勝利の美酒ならぬ勝利の口付けは貰ったぜ!)

 

(あぁ、先輩に負けちゃう…で、でも先輩になら…イイ)

 

(美琴の恥じらい顔サイコー…それに上条さんもカッコいいし…眼福なんてレベルじゃないわぁ〜)

 

勝利を確信し顔をキリッとさせイケメンAAになる。それを見てドキドキしてふにゃーする美琴、もし上条が彼女の方に右手で触れてなきゃ部屋の中の家電が死んでた。それを見て思わず蕩け顔になる食蜂。上条の唇と美琴の唇が重なり合う、まさにその瞬間だった

 

「ダイナミックにお邪魔します!」

 

マークがガラス戸を破壊してエントリーした

 

「「「ふぉ!?」」」

 

驚きのあまり思わず上条と美琴ポッキーを割ってしまう、3人は驚きの目でマーク(不審者)を見るが彼は気にしない

 

「お入りください、ボス!」

 

「おう、普通にお邪魔するぞ」

 

ドーン☆とコミカルな音を立てて寮の玄関の扉を召喚爆撃で吹き飛ばし、レイヴィニア&パトリシアがご来場。吹き飛ばされた扉は上条達に命中し大きなたんこぶが出来上がる

 

「……何処が普通なんでせうか?」

 

「てか何でガラス戸割ったの?」

 

「……修理代請求していいかしらぁ?」

 

「さて、私達がここに来たのには訳がある」

 

『聞けよ人の話』

 

青筋を立てる3人を軽くスルーするレイヴィニア、これぞ彼女が永年『明け色の陽射し』のボスをやって来たからこそ培われたスリー力である(主にマークの有給をさせない為に彼の言葉をスルーし無理矢理有給をなしにする為)

 

「実はかくかくしかじかでな。説明する時間が惜しいからかくかくしかじかで理解しろ」

 

「え?お前の妹がヤンデレになったから、普通のカップルがどんなものか俺達に見せつけて欲しいだって?」

 

「そこで学園都市随一のオシドリカップルである私達を頼ってきたてワケね」

 

「成る程ねぇ、でもまさかあの上里のことを好きになるなんて物好きねぇ」

 

「いや、理解しろて言った私が言うのもなんだが…何故理解できた?」

 

かくかくしかじかで理解してしまう上条達、これも大体垣根てメルヘンが悪いんだ

 

「まあ、とにかく貴方方に普通のカップルというのをパトリシア嬢に教えて頂きたく…協力してくれませんか?」

 

「まあ、そういう事なら…単に俺達の事話すだけなら」

 

「ありがとうございます」

 

事情が分かった上条達は俺達に任せろとグーサインを出す。頼んだレイヴィニア達は本当にこいつら大丈夫かと内心思っていた

 

「パトリシアちゃん…だったか?まあ、好きな相手を束縛したいてのは分からなくもないけど…いきなり監禁は…なぁ?」

 

「……お兄さんには私の気持ちがわかりませんよ」

 

「いや分かるさ、俺だって美琴と操祈を束縛してる部分もあるしな。ほら、俺の彼女二人は美の女神の如く美しく可憐な漫画のお姫様みたいな美少女だろ?だからナンパしてくる男とかいるんだよ…まあ、全員漏れなく俺の黄金の右ストレートの餌食になったが」

 

パトリシアにそう真摯に彼女自慢をし始める上条、レイヴィニアとマークにとってはどうでもいい話だがパトリシアは興味ありげに耳を澄ましている

 

「でもさ、あんまり束縛し過ぎるのも上条さんは苦手なんですよ。束縛し過ぎて仲が悪くなって破局…なんて嫌だからな」

 

「成る程…でもナンパしてくる人達は殴ってるんですよね?」

 

「そりゃ当然だろ、人の女に手を出したんだからな。知らない男と楽しそうに話してても嫉妬するし、でも垣根達と話してても友達同士だから嫉妬はしない。まあ、束縛する=愛が重い=それだけそいつの事が大好きて事だから束縛したいて思うのは悪い事じゃない。実行するのはダメだけどな」

 

だから束縛したい、その気持ちはそれだけ相手が好きな証だといい話風に上条は言う。それに納得したのか何度も頭を頷かせるパトリシア

 

(いいんじゃないですかボス?)

 

(ああ、最初は何言ってんだこのウニ頭と思ったが…案外やるじゃないか)

 

レイヴィニアとマークはこれならパトリシアも考えを改めてくれるのでは?と期待する

 

パトリシアは次に美琴と食蜂に話しかける

 

「美琴さんと操祈さんにお一つお聞きしたい事があるんですけど…」

 

「何かしら?」

 

「答えられる範囲なら答えてあげるんだゾ☆」

 

そう二人がパトリシアに笑いかける、パトリシアも笑顔のまま口を開いた

 

「上条さんが凄いモテてて、何人か今でも二人から上条さんを寝取る(・・・)て考えてる人が何人もいる様ですが…それについてどう思っていますか?」

 

「「…………」」

 

((ば、爆弾投下しやがった!?))

 

美琴と食蜂の目から光が消える、何爆弾発言してんのこいつ!?とマークとレイヴィニアが冷や汗をかき始める

 

「……あ、うん…そうね……私達から先輩を寝取ろうとする奴がいたら…………………殺すわ」

 

(シンプルな殺意!)

 

「何言ってるのかしらぁ?私達と上条さんの愛という絆力は切れないのよぉ〜でも、もし仮にそれが切れちゃったら………うふふふ☆」

 

(怖えよこの女!)

 

光なき目でそう呟く美琴と食蜂、それを見てドン引きするマークとレイヴィニア

 

「もし上条さんが他の女の所に行ったとしたら…お二人はどうしますか?」

 

「「先輩/上条さんに夜這いして既成事実を作って、私達の事しか考えられない様に調教する。もう私達だけでしか満足できない体にする」」

 

((もうやだこの超能力者(レベル5)))

 

垣根といい、こいつらといい超能力者はまともな奴はいないのかと嘆くレイヴィニアとマーク。一方そんなヤバい発言を聞いた上条は…

 

「…二人ともそんなに俺の事を…涙でそう」

 

((何でお前は感動の涙流そうとしてんの!?))

 

感動のあまり泣いていた、こいつもこいつでヤベー奴である

 

「ほらねお姉さん、マークさん。普通のカップルでも私と同じ事を考えるですよ」

 

「………次のカップルの所に案内しろマーク!こいつらを選んだのは間違いだ!」

 

「はいボス!こんなヤンデレカップルを選んだ私が悪うございました!」

 

そう行ってマークはタロットカードを投擲、隣の部屋の壁を突き破ってマークはパトリシアを脇に抱えてレイヴィニアと共に立ち去っていく

 

「うにゃー!?部屋の壁が!?」

 

「おーなんだなんだー?!」

 

隣からシスコン軍曹と妹メイドの戸惑った声が聞こえてきた

 

「……ガラス戸と玄関の扉、そして壁まで破壊された……ふ、不幸だ」

 

 

マーク達が次に訪れたのは小萌とインデックス達が済むボロアパート、小萌の部屋の隣の部屋にいるエツァリ達に会いに来ていた

 

「最近エツァリさんと妹達(シスターズ)である17600号と付き合ったと聞きます。彼らなら普通のカップルらしさを見せてくれる筈です」

 

「だが妹達とは御坂美琴のクローンなのだろう?さっきのヤンデレさもあるかもしれない」

 

「クローンだからと言って全員同じ性格になるとは限りません。彼方のア○トラの登場人物達全員に怒られますよ」

 

ピンポーンと呼び鈴を鳴らすマーク、中からパンツ一丁のテクパトリが現れる

 

「フルティンかと思ったか?残念履いてますよ!」

 

「煩え、黙れ変態………まあいい、早くエツァリと17600号を呼んでくれ。二人に用があって来たんだ」

 

レイヴィニアがエツァリと17600号を呼ぶ様にいうとテクパトリは少し困った顔をする

 

「困ったな…あいつらは新婚旅行にグンマー帝国に行ったよ」

 

「「カップルじゃなくて新婚さんだった!?」

 

「わぁ、結婚おめでとうございます」

 

エツァリと17600号はグンマー帝国に新婚さんいらっしゃいしていた

 

「ちょっと待て待て待てぃ!結婚!?知らなかったぞ!?いつの間にあいつら大人の階段を一方通行(アクセラレータ)してたんだ!?」

 

「まあ、身内だけの小さな式だったがな…まあ身内ていっても17600号の妹達(姉妹)が20000人以上が来たんだけどな(笑)」

 

「小さな式てレベルじゃないですよね!?20000人とか収まり切れる結婚式場ないでしょう!?」

 

いつの間にか恋愛のABCのAどころか結婚(E)に達していたエツァリ達。まあ、妊娠(D)閨事(C)愛撫(B)はやっていないが

 

「てな訳でエツァリと17600号は今はいない…帰ってくれ」

 

そう言ってパタンと扉を閉めるテクパトリ

 

「仕方ありません、次のカップルの所に…」

 

マークが次の所に連れて行こうとした、その時だ。小萌の部屋の扉が開きインデックスとステイルが現れる

 

「ステイルー早く早く!早く昼ご飯食べに行くんだよ!」

 

「やれやれ…焦らせないでくれインデックス…ん?君達は確か…」

 

ステイルがマーク達がいる事に気づく

 

「確か明け色の陽射しの人達だったかな?何してるの?そんな身内がヤンデレになって困ってる顔してどうかしたのかな?」

 

「いや、どんな顔だ。てかよく分かったな」

 

「悩み事かい?神父として聞いてあげようか?」

 

「それが実は……」

 

マークがかくかくしかじかで二人に説明する

 

「成る程……まあ、愛て言うのは深いほど重いからね。ヤンデレになってしまうのは仕方ないかも」

 

「だが刃傷沙汰は不味いからね。神父である僕とシスターであるインデックスが導いてあげよう」

 

髪を染めてバーコードを刺青して、チャラチャラした格好をしてタバコを吸っている不良神父と暴飲暴食のイビルジョーこと半人前シスターに導かれたくなどないが状況が状況な為マークはあえて何も言わず二人を頼ることにした

 

「いいパトリシア?愛ていうのはね、与えてもらうだけじゃなくて与えるものなんだよ」

 

「与える……もの?」

 

「うん、愛を与えてくれる人は同じくらい愛を貰ってるの。親切な人ほど皆に好かれる。つまりそれだけ愛されてるて事なんだよ。多分かけるは皆に優しいから好かれるんだろうね」

 

「でもパトリシアはかけるの愛は独り占めにしたいんだよね?自分一人だけ愛してほしいんだよね?」

 

「………はい」

 

インデックスは目を軽く閉じながら祈る様に両手を重ねながら優しく説教する様に言い聞かせる

 

「それは悪い事じゃないんだよ、それだけパトリシアはかけるが好きて事なんだよ。でもね、愛ていうのは必ずしも一つじゃないんだよ」

 

「え………?」

 

「友愛、博愛、親愛、家族愛、兄弟愛。師弟愛…そして恋愛。世界にはいろんな愛があるんだよ。例えばパトリシアは男女の愛としてかけるが好きだけどレイヴィニアの事はお姉さんとして好きだし、マークは頼りになる大人として好きだよね?でもそれは全部同じ愛なのかと言われれば違う、でしょ?」

 

「……はい」

 

インデックスはニッコリと笑う、まるでその微笑みは絵画の中の聖母の如く

 

「なら大丈夫だよ、かけるは確かに他の子の事が好きかもしれない。でもそれは男女の愛ではなく友愛、仲間としての愛だよ。義妹は勿論家族愛…だからパトリシアが勇気を出して告白すればかけるの男女の愛はパトリシアが独り占め出来るんだよ」

 

そうパトリシアに言い聞かせるインデックス、レイヴィニアとマークは初めてインデックスがシスターなんだなて気づいた。ステイルは想い人の立派な姿を見て泣いた

 

「………おぉ神よ、彼女こそ天使なのですね」

 

「もう、大袈裟だよ。人を導くのがシスターなんだから」

 

跪き天に祈りを捧げるステイル、大袈裟だよと顔を少し赤くするインデックス

 

(これはやったんじゃないですかボス?)

 

(ああ、そうだな。最初はダメだと思ったがやるじゃないかシスター)

 

インデックスのお陰でパトリシアも心を改めてくれるかもしれない、マークとレイヴィニアはそう期待を込めた目でパトリシアを見る

 

「……つまり、夜這いして無理やり貞操奪えば上里さんのハートをキャッチ出来るて事ですね?」

 

「「さっきの話をどう聞いてたらそうなるんだぁぁぁぁぁ!!?」」

 

「………ごめんレイヴィニア、マーク。私の力じゃ彼女の愛は止められないんだよ」

 

いくら聖女の言葉でも、愛は止められない。そう恋とはいつでもハリケーンなのだから

 

「そうと決まれば早速睡眠薬と縄を用意しないと…ふふふ、でも愛の種類は一つじゃない…か、それを聞いて安心しました。なら他の奴らは私と上里さんの新婚生活を見せつけて血涙を流させてあげましょう」

 

「や、やったぞインデックス!刃傷沙汰は避けられそうだ!ヤンデレからメンヘラにもなったしこれでノー問題だ!」

 

「いや、メンヘラもメンヘラでヤベー事には変わりないんですけどね!?」

 

おめでとう!パトリシアはヤンデレからメンヘラに進化した!

 

「ごめんなんだよ…未熟な私じゃ彼女を救えないんだよ…情けない私を許して欲しいんだよ」

 

「い、いやこちらこそ無理な頼みですまん。他を当たるから気にしないでくれ!おい行くぞマーク!」

 

「はい!今度また菓子折りを持ってきますので!」

 

ピュ〜と風の如く立ち去るレイヴィニア達、落ち込むインデックスにステイルがポンと彼女の肩を叩く

 

「……インデックス、寿司を食べに行こう。勿論、回らない方だ」

 

「………いいの?」

 

「ああ、君が喜ぶのなら」

 

「………嬉しい」

 

回らない寿司屋に連れて行くとステイルが言うとインデックスは頬を緩める。そんな彼女を見て優しげに笑うステイル。その後彼の財布は氷河期を迎え小萌と神裂に頭を下げて小遣いを前借りする羽目になる

 

 

 

次にマーク達が訪れたのはデート途中の削板とアリサだ

 

「それで私達に会いに来たんですか?」

 

「たった一人の男を一途に想うなんてトンデモねえ愛情(根性)だな嬢ちゃん!」

 

愛情と書いて根性と読む漢 削板軍覇、学園都市の歌姫である鳴護アリサ。もうこの純粋無垢なカップルに頼るしかないとマークは決意する

 

「どうかお二人の力を貸してはもらえないでしょうか!このままではパトリシア嬢はメンヘラのままなのです!」

 

「私からも頼む。妹がヤンデレだったりメンヘラだったりすると…上里の奴と付き合うにしても後々困るだろうからな」

 

そう頭を下げるマーク、珍しく他人に頼み込むレイヴィニア…そんな二人に削板が言葉をかける

 

「別にメンヘラのままでもいいんじゃねえか?」

 

「私も別にそのままでいいと思うな」

 

「「……は?」」

 

「いや、そんなけ上里の奴を愛してるてわけだろ?ならメンヘラでもいいじゃねえか。そこに愛があるならな、そんな愛をお前らは否定するのか?」

 

メンヘラのままでいい、そう言った削板とアリサに驚愕の目を向けるマークとレイヴィニア

 

「愛てもんは人それぞれだ。それを否定する気はねえ。だがもし、嬢ちゃんが間違った方向に行きそうになったら姉ちゃんであるお前が止めればいい…それが姉妹てもんだろ」

 

普段根性しか言わない馬鹿である削板が真面目な顔でそう告げる、歪んだ愛のままでもいい、ただそれが間違った方向に行きかけたら止める。それが姉なのだと

 

「それにパトリシアちゃんも上里君の事が好きなら、こんな所で道草食ってないで上里君の所へ行って告白しちゃいなよ」

 

「!?」

 

「恋愛なんて早い者勝ちだよ、速く告白したもん勝ち。そしてら他の女の子達は上里君に手が出せなくなるんだから」

 

「な、成る程…」

 

「それに男なんて皆ロリコンて聞いた事があるから、パトリシアちゃんみたいな可愛い女の子が上目遣いで「お兄さん」呼びをしたら一発で即堕ちだよ。当麻君や帝督君だって付き合ってる子は年下だし、一方通行君もどうせロリコンだし。だから上里君もロリコンな筈だよ。あ、軍覇君はロリコンじゃないからね」

 

アリサもアリサで笑顔でパトリシアを諭す、確かに理が叶っているがその言い方はどうなのだろうか

 

「さあ!根性を出す時だぜパトリシア!勇気を出して上里に告白するんだ!安心しろ、お前なら出来る筈だ!」

 

「他の女の子に取られたくないのなら自分が積極的にアタックしなきゃ!大丈夫!パトリシアちゃんならきっと上手く行くよ!」

 

((なんで告白する流れになってんだ!?))

 

いつの間にかパトリシアが上里に告白する流れになっている事にツッコむマークとレイヴィニア

 

「…………分かりました、私……今から上里さんに告白しに行きます!」

 

((お前はお前で、なんで赤紙で軍隊に召集された兵士みたいな顔をしてんだよ!))

 

覚悟を決めた顔でパトリシアは強く頷く、それはまるで死地に向かう戦場の兵士の如く

 

「待っててください上里さん!今から貴方を、私のものにします!」

 

「頑張れよパトリシア!負けんじゃねえぞ!」

 

「応援してるからね!」

 

「「いや、ちょっと待てぇぇぇぇ!!」」

 

走って上里がいる病院まで向かうパトリシア、そんな彼女を追いかけるマークとレイヴィニア、3人に手を振る削板とアリサ

 

 

第七学区のとある病院のとある病室の一室にて、上里はリンゴの皮をペティナイフで剥いていた

 

「ほら、うさぎりんごだ」

 

「わあー、ありがとうお兄ちゃん」

 

「ありがとうございます上里君」

 

兎の様に見えるリンゴを去鳴と宛那に渡す上里、二人は笑みを浮かべてリンゴを咀嚼する

 

「皆元気になったみたいで良かったよ」

 

「まあね〜、こればっかりは私達の命を繋ぎとめてくれた冥土帰し先生と僧正さん達に感謝だね〜」

 

「全くだ」

 

そう楽しく談笑する3人、そんな時勢いよく扉が開かれパトリシアが病室に入ってくる

 

「「「!?」」」

 

「……………」

 

ビクンッと驚いた顔をする3人とキッと上里を睨んでいる様な目を向けるパトリシア、そのまま無言で上里達の方へと歩みを進める

 

(な、なんだ…!?怒ってるのか?!ま、まさか以前裸を見た事をまだ怒ってるのか!?)

 

上里は何をされるのかと恐怖でガクガクする、パトリシアは無言で上里に近づき顔を近づけ両肩に両手を置く。彼女の両目が上里の両目を捉える

 

「………上里さん」

 

「は、はい!ごめんなさい!あれは事故なんです!だからせめて一発で許してくだ……」

 

ビクビクしながら上里が許してください、そう言おうとした瞬間、上里の唇がパトリシアの唇で塞がれた

 

「ーーーーッ!!!?」

 

「〜〜〜〜〜〜///」

 

「「おぉー」」

 

キスされたと理解した上里は目を見開く、パトリシアは顔を赤くする。去鳴と宛那は目を輝かせてその光景を見入る

 

「…………」

 

「ぱ、パトリシア……?な、何を…?」

 

黙ったまま上里の唇から自身の唇を遠ざけるパトリシア、未だ困惑する上里は困惑しながら何か言おうとするが吃ってしまう

 

「………うぅ」

 

(えぇ!?泣き始めた!?何故に!?)

 

暫くパトリシアは無言で上里の顔を見ていたが急に泣き始める、それに驚く上里

 

「あーあー、泣かした泣かしたー、いけーないんだいけーないんだ。先生に言ってやろーと」

 

「上里君……最低です」

 

「すまない少し黙っててくれ二人共!ど、どうして泣いているんだ!?」

 

茶化す去鳴と冷たい眼をする宛那、上里は慌てながら何故泣いているのか尋ねる

 

「……だ、だって私が勇気だしてキスしたのに何の反応もないから…脈がないのかと思って」

 

「え……?それはどういう意味…」

 

「……好きです、私は、貴方の事が……上里さんの事が大好きです。だから、だから私と付き合ってください!」

 

パトリシアの一世一代の告白を聞いて上里は眼を見開いた、パトリシアは身体を震わせる。上里からの返答を聞きたい。でも「ごめん」と言われるかもしれないから聞きたくない。でも聞きたい。そんな相反する考えが彼女の頭の中を支配する

 

「……………」

 

上里は彼女の告白を聞いて…何も言わなかった。パトリシアはダメだったかと目尻に涙を浮かばせる

 

「……ぼくは誰とも付き合った事がない、そもそも誰かを本気で好きになった事がない」

 

「……?」

不意に、上里がそんな事を呟き始める、キョトンとするパトリシアを他所に上里は言葉を続ける

 

「それにぼくはいろんな女の子達に好意を向けられてきた、ぼくはそんな女の子達の好意を偽りのものと切り捨ててきた。そんなぼくに誰かと付き合う権利はないかもしれない」

 

でも、と上里は口を開く

 

「ぼくが全てを諦めて、死のうと考えていた時、きみがぼくを助けてくれた」

 

理想が消え、生きる気力がなくなり死のうと思っていたあの時。上里はパトリシアに救われた

 

「ぼくを助けてくれたきみを守ろうと思った、それが何の感情なのか今でもわからない…だから、一緒にこの気持ちが何なのか考えてくれないか」

 

「………それって」

 

上里がパトリシアに手をゆっくりと差し出す、その言葉の意味を理解しパトリシアは涙を流した。無論、悲しい涙ではなく歓喜の涙だ

 

「ぼくなんかでよければ喜んで。それにきみみたいな可愛い子ならぼくも嬉しいよ…周りからロリコン扱いされそうだが」

 

「…………上里さんの馬鹿」

 

上里はそう言って微笑んで、より一層顔を赤くしたパトリシアは上里の胸に自身の顔を埋める。そして照れ隠しかポカポカと軽く上里を両手で軽く殴る

 

「……今日はお赤飯だね〜」

 

「おや、お兄ちゃんラブな君のことだから怒り狂うかと思ってけど…平然としているね」

 

「いや〜確かにお兄ちゃん取られたのは悔しいよ?でも、誰と付き合うかはお兄ちゃんの自由だし、お兄ちゃんが幸せならそれでいいよ」

 

「成る程、同感だ。上里君が幸せなら私もそれでいいしね。しかし、あの時の女の子と付き合うとは…まさか上里君はロリコン…?」

 

素直に兄を祝福する義妹(去鳴)とロリコン疑惑を向ける同級生(宛那)。ともかく、二人はパトリシアと上里がくっついても平然としていた…彼女達(・・・)は、だが

 

「……で、宛那さん。後ろのあいつらどうする?」

 

「……それが問題だよね」

 

そう二人は病室の扉へと視線を向ける、その視線の先にいたのは……

 

『graaaaaaaaa………!!!』

 

某汎用人型決戦兵器の如く、獣化第二形態(ビーストモード)と化した上里勢力の女子(敗北者)達が四つん這いで扉の向こうから上里に抱きつくパトリシアを睨んでいた

 

『graaaaaaaaa……!!こ、ろす………殺すぅぅぅぅぅぅ!!!私の大将/上里君/上里様を奪う奴は粛清だaaaaaaaaaaaaaaa!!!!あのクソガキがぁaaぁぁaぁaぁaぁaaぁaaaッ!!!』

 

((……私達が上里君/お兄ちゃんとパトリシアちゃんを守らなきゃ))

 

今すぐパトリシアの喉笛に噛み付いて噛みちぎらんばかりの形相の獲冴達。自分達が二人の恋路をサポートしないとなと決意する去鳴と宛那。上里とパトリシアの恋路は始まったばかりである

 

 

 

 

「……姉の知らないところで妹は成長するんだなぁ、お姉ちゃん少しショック」

 

「……それを乗り越えて大人になるんですよボス、いい加減妹離れしましょう」

 

「というか姉より先に妹が彼氏を作ってしまった件について」

 

「……安心してくださいボス、私は年齢=彼女いない歴ですから」

 

「……自分で言って虚しくないのか?」

 

「……私も彼女が欲しいよ、ちくしょう。何だあいつロリコンかよ。私にも素敵な彼女が欲しい」

 

「……愚痴なら聞いてやるさ、シンデレラ片手にな。部下の悩みを聞くのもボスの役目だ…奢ってやる」

 

「……一生ついて行きますボス」

 

そんなコントじみた魔術結社のボスとその部下の会話があったそうな

 

 

 

 

 

 

 

 

 




上里君はロリコンじゃないよ、偶々告白されたのが幼女だっただけ!(人はそれをロリコンと呼ぶ)。でも男なんて皆ロリコンでしょ?(偏見)。今時のヒロインなんて殆ど幼女だし(作者が好きなロリ系キャラ とあるのレイヴィニア、SAOのシリカ、隣の吸血鬼さんのソフィー・トワイライト、終わりのセラフのクルル・ツェペシ、ブラック・ブレットのティナ、りゅうおうのおしごと!の夜叉神天衣、Z/Xの各務原あずみ、ゆゆゆの樹ちゃん…その他多数。勿論ロリキャラ以外も好き)皆さんも幼女好きですよね?

さて、次回から漸く反転物質 編スタート。次回からギャグと戦闘、シリアスが混じり合う予定です

次回もお楽しみに!


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悪魔、再び

今回はギャグが多めでお話短めです。簡単にいうとバカップル共の宴。男子は基本バカばっかりです。キャラ崩壊に注意

そう言えば昨日SAO四期を見てリビアの声の人がゆゆゆいの雪花ちゃんで驚いた、シャスターさんの声の人もアックアで驚いた。それだけです


とある女がいた、彼女はとある優秀な科学者の一族の生まれだった。彼女は幼い頃から『諦め』てばかりの人生だった。こんな歪んだ性格をしているから友達が作れない。だから『諦め』た、科学にしか興味がない性格だから恋人が作れない、だから彼女は全てを『諦め』た

 

彼女は色々なものを『諦め』た。自分でもうんざりするほど色々な事を『諦め』、相手を『諦め』させる『諦め』のプロフェショナルとなった。彼女には『諦め』しかなかった。それしか出来ない自分に心底呆れ、一生このままなのだと『諦め』ていた。そんな時に彼女は彼と出会った

 

彼は彼女が能力開発した少年だった、能力発現時から強度(レベル)は4。驚異的な能力だった。しかも無から物質を作るだけに飽き足らずその物質は既存のどの物質にも一致しない全く新しい新物質だったのだ。それを知った時、『諦め』てばかりの人生だった彼女はある決心をする

 

ーーーいつかこの子を超能力者(レベル5)に、いや、その先の絶対能力者(レベル6)に、更にその先の領域……神ならぬ身にて天上の意思に辿り着くもの(SYSTEM)にしてみせる

 

そう彼女は決意したのだ、例え人の道に反したとしても…絶対に、その願いだけは『諦め』ないと

 

 

 

十一月の中旬、一端覧祭の準備期間。その休憩時間に垣根達はファミレスに集まり昼食を取っていた

 

「いやー、しっかし驚いたな。まさか垣根の方から潤子ちゃんに告るなんて」

 

「普通は男子から告ると思うぜ?お前らみたいに女子から告られるなんて余程のイケメンしかされないんだよ」

 

「だがこれで帝督も俺達と同じリア充の仲間入りだな!ようこそ俺達の世界へ!」

 

上条が揶揄う様に笑い、垣根は自分のやり方が普通なのだと常識を語り、削板はリア充の領域へようこそと笑う

 

「潤子先輩もようこそ私達リア充の世界へ、リア充の世界では私達がリア充の先輩として後輩である潤子先輩に手取り足取り教えてあげるわ」

 

「わたくしが後輩……ですか。ふふふ、ではご教示宜しくお願い致しますね、女王、御坂さん」

 

「まあ、潤子先輩の垣根さんに対する愛情力なら教える事は何もないと思うんだけどねぇ〜」

 

美琴と食蜂は潤子を挟み込む様にそれぞれ彼女の左右に座り、揶揄う様に彼女の肩を軽く肘でこつく。照れ照れと顔を少し赤く染めながらニコニコと笑う帆風

 

「は、恋人なンざいねェ俺達に対する当てつけのつもりかァ?」

 

「浜面に告白できない私に対する当てつけかこの野郎」

 

このメンバーの中で未だ恋人がいない一方通行と麦野は嫌味か、と、頬杖をしながらジト目を向ける。それを見て垣根はニヤッと笑う

 

「おんやぁ?仕上の事が好きなのに告白できないヘタレむぎのんと同居人兼弟子の少女に恋心抱いてるロリコンが何かほざいておりますなぁ〜?」

 

「「喧嘩売ってんなら言い値で買うぞゴラ」」

 

「所詮二人は敗北者じゃけぇ、一生告白できず独り身で過ごすのがお似合いじゃ。ふぉほほほほ!」

 

「「よし、フライドチキンにしてやる」」

 

「ステイですわ、お二人共。落ち着いてくださいまし」

 

ムカつく笑顔で挑発する垣根、青筋をピクピクさせながら麦野と一方通行は能力ぶち込んでやろうかと考える。それを宥める帆風

 

「帝督さんも挑発しないでください、この二人煽り耐性低いんですから」

 

「えー?そんなこと言われてもていとくん分かんないなー?」

 

「…………帝督さん?」

 

帆風は垣根を諌めるがあくまで巫山戯る垣根、すると帆風は声色低くして彼の名を呼び垣根がビクッとする。上条達も帆風のそんな声を聞いてビクリとする

 

「……挑発しないでください、分かりましたね?」

 

「…………ハイ」

 

ニッコリ笑顔でそう呟く帆風、垣根は片言で返事を返した

 

「……付き合い始めて潤子が結構怖い一面を見せる様になった件について」

 

「当たり前ですわ、そうでもしないと帝督さんの暴走を諌められませんし」

 

垣根はコットンキャンディーソーダを啜りながら呟き、帆風は当然だとシュークリームを咀嚼しながら返す

 

「……ん?お前ら呼び方変わったのか?垣根は潤子ちゃんから"潤子"に変わったし、潤子ちゃんは垣根さん呼びから"帝督さん"呼びになったんだな」

 

「まあな、付き合ったんだからちゃん付けの必要ねえし」

 

「垣根さんていうのも他人行儀ですし…え、変ですか?」

 

「いや別に…新鮮だと思っただけだよ」

 

上条が垣根と帆風がそれぞれの呼び方を変えたことに気づき、それを指摘する。それを聞いて麦野がいい悪戯を考えたと言わんばかりに笑みを浮かべる

 

「なぁ、お前らさ……恋愛のABCて何処まで進んでる?」

 

「ぶほっ!?」

 

麦野のその問いに帆風は飲んでいた紅茶をマーライオンの如く噴射した、それが削板の顔面にジャストミート。ゲホゲホと咳き込みながら顔を赤くする

 

「な、な、な、なぁ!?」

 

「なぁ教えてくれにゃーん?お前ら何処まで進んだのかにゃーん?当然キッスはしたわよねぇ?」

 

「へェ〜俺も気になるぜェ。教えてくれませんかねェていとくーーーーンッ!」

 

(こいつら、親戚のおっさんみたいな絡みだな)

 

ニヤニヤと悪どい笑みを浮かべる一方通行と麦野、帆風ははわわ!と慌てながら何を言おうかと思考を巡らせる

 

「えっと、その、ええっと、あの、わ、わたくし達わぁ……」

 

(ふふふ…いいわね、この慌てっぷり。愉悦だわ)

 

(くけけ、この慌てぶり……イイねェ最高だねェ!さあ、ていとくンはどんな反応を見せてくれるンでしょうかねェ!?)

 

「子供に見せられない笑み浮かべてんぞお前ら」

 

オーバーヒート瞬前の帆風を見て悪魔の如き笑みを浮かべる一方通行と麦野、それを見て呆れ顔の上条達。そんな中垣根は平然と口を開く

 

「え?俺達が何処まで進んだか?んなもん、ABCを特に超えちまってるよ」

 

『!?』

 

「か、帝督さん!?」

 

ABCを超えている、垣根はそう言うと一同は唖然とする、それを聞いて帆風は顔の赤いまま垣根を見入る

 

「え、ABCを超えてるて…ど、どう言う意味だていとくン!?」

 

「そのままの意味さ、俺と潤子は恋愛のABCなんか付き合って初日に全部済ましたんだよ」

 

『な、なんだってー!?』

 

「ちょ、帝督さ……!」

 

ABCなど付き合って初日で全て達成した、と豪語する垣根。全員が驚く、帆風は何か言いたげだ

 

「もう潤子の身体の事なら隅々まで知ってる…そう、本人以上にな」

 

「か、垣根……お前ってやつは」

 

「今では何処を弄れば一番喜ぶかも把握してる、どんなプレイが好きかもな」

 

『そ、そのプレイとは!?』

 

本人以上に身体の事を理解していると、手をわちゃわちゃさせながら答える垣根、それを聞いて上条達はゴクリンコしながらどんなプレイなのかと質問する

 

「ふ、そのプレイはな…………」

 

垣根は勢いよく目を見開く、その勢いのまま言葉を放った

 

「鏡プレ…「言わせません!!」ひでぶ!?」

 

帆風のローキックが垣根の腹部に命中、垣根はぐえぇと呻き声を上げて沈黙した

 

「嘘を言わないでください、嘘を!まだAしかしてないでしょう!?どうしてそんな見栄をはるんですか!?有る事無い事言って恥ずかしいです!」

 

「ほ、本当は目隠しか言葉攻めか悩んだんだが…鏡の方が変態ぽいかな、て思って」

 

「シャラップですわ!」

 

今まで垣根が語ったのは嘘だった様だ。本当は垣根と帆風はAしかやってない

 

「なんだ、まだ童貞とくンのままかよ。つまんねェな」

 

「黙れアー君、ロリコンに言われる筋合いはない」

 

「はっ、童貞がカッコつける程寒いもんはねぇにゃーん」

 

「黙れBBA、一人寂しく部屋でオナってろ」

 

煽る一方通行と麦野、そんな二人に中指を突き上げる垣根。また喧嘩になりそうなので美琴が帆風に話題を振る

 

「でもAしかしてないてのが意外。チャラ男ていうか、女遊びしそうな外見と中身なのに」

 

「泣くぞミコッちゃん」

 

「いいえ、帝督さんはヘタレですから手を出さないのではなく、手を出すのに戸惑う人なんです」

 

「潤子、余計なこと言わないで、お願い」

 

帆風が垣根はヘタレだと言うと垣根が言わないでくれと言うが時既に遅し、いい事を聞いたと全員悪い笑顔を浮かべる

 

「へぇー?垣根てヘタレなんだー?いつも俺達にエロい事しねえの?て言ってくる癖に自分はヘタレなんだー?そーなのかー」

 

「すご〜い!君はヘタレのフレンズなんだね!」

 

「ヘタレ力が上条さんに感染るから近寄らないでくれませんかぁ」

 

「ヘタレ菌が感染っちまうなァ、こりゃベクトル反射バリアしねェとな…バリア、バリア!」

 

「今日からお前は垣根帝督じゃなくて、ヘタレ帝督だにゃーん」

 

「頑張れよヘタレ!あ、すまん間違えた!垣根!」

 

「…うわーん、潤子ぉ。皆がいぢめてくるのぉ〜」

 

「て、帝督さ……!?え、えへへへ」

 

全員の一斉悪口放射に垣根がうわーんと、帆風の胸に抱きつく。彼女の豊かな胸に顔を埋める垣根に垣根に抱きつかれて人前に出せない顔をする帆風…それを見て上条達は若干引いた

 

「えへへへ……帝督さんが私に甘えて…えへへへ、帝督さんが私に甘えてきてくれたぁ〜うへへ」

 

「…………ふ」

 

「おいこいつ確信犯だぞ」

 

トリップする帆風に彼女の胸に埋もれて笑みを隠す垣根、こいつわざとだぞと麦野は確信した

 

「いや〜、やっぱり潤子は優しいなぁ〜、やっぱ俺の彼女が一番可愛い」

 

『……あ"あ?』

 

(あ、地雷踏みましたわ)

 

垣根の言った一言によって上条、削板、一方通行がブチギレる

 

「何言ってんだ垣根?潤子ちゃんが一番可愛い?まあ、確かに可愛いかもしれないな…だが、一番は美琴と食蜂だ。異論は言わせない」

 

「アリサが一番可愛い、それが唯一の答えだ。有無は言わせない」

 

「何ほざいてるんですかねェこの三下供はァ?俺のエステルは凄えぞ。努力家だし、真面目だし、可愛いし、巨乳だし。はい論破」

 

「………あ?何言ってやがるテメェら。俺の潤子が一番に決まってんだろ。潤子はなぁ、神が作った最高傑作なんだよ」

 

彼女自慢を始める垣根達、全員自分の彼女こそが至高だと考えを曲げない

 

「えっと……先輩?落ち着いて…」

 

「そ、そうだぞ上条さん…」

 

「二人は黙ってろ、この巫山戯た迷い事(幻想)をぬかすクソ野郎を殴り倒すからな」

 

「て、帝督さんも落ち着いて……」

 

「潤子は可愛いだろ、お前らの彼女よりもな」

 

「は、美学が足りねェな。教えてやるよ、俺の愛弟子の凄さをよぉ」

 

「アリサと俺の愛をその身体に物理で教え込んでやろう!」

 

帆風達が止めようとしても彼らは止まらない、譲れないものの為に彼らが止まる事はない。凄まじい形相で睨みつける垣根達。今にも能力を発動して殺し合いが始まり、ファミレスを半壊しそうな雰囲気だ

 

「あ、見つけたわよ!早く学校に戻って一端覧祭の準備を手伝いなさ……ごめんなさい、ここは悪鬼羅刹の集会だったみたいね」

 

「おっすカミやんに先輩!可愛い彼女を連れて何をやっているのかにゃ…すまん、ここは悪魔の集いの場だったみたいだぜい」

 

「なんやカミやん、こんな所で彼女連れ込んでたんかいな!なら、ボクも愛愉ちゃんを連れて…すんまへん、ここは地獄の悪霊の集合地みたいやったわ」

 

吹寄達が上条と一方通行を連れ戻しに来たが、垣根達の顔を見て頭を下げた

 

「なあなあむぎのん、カミやんどうしたん?滅茶苦茶怖いねんけど」

 

「むぎのん言うな、なんか誰の彼女が一番可愛いかて言い争ってるのよ」

 

「うわ、何よそのショボっい喧嘩」

 

「いやショボくはないぞ吹寄、自分の彼女が一番可愛いと思うのが彼氏て奴なのさ」

 

「あー、それは分かるわ。ボクも愛愉ちゃんが一番可愛い彼女だって無意識に思ってるからなぁ」

 

「……恋人がいない私に対する当てつけかしら?」

 

そうほざくシスコン軍曹と青ピ、それを聞いて当てつけかと二人を睨みながら言う吹寄

 

「俺の潤子の可愛さは世界一…いや宇宙一だ!性格もよし!スタイルもよし!それに強い!どう見ても最高の俺の嫁だろ!だか潤子がNo. 1!」

 

「何言ってるんですかこのメルヘンは!どう見ても俺のマイラブリーエンジェル 美琴&操祈が銀河一可愛いだろうが!いい加減にしろ!」

 

「ほざきやがれ三下ァ!エステルはドジっ娘、ポンコツ系、アホの子、羞恥心ゼロ、金髪巨乳、忠犬、弟子…魅惑的な要素てんこ盛りなンだよォォ!!」

 

「俺のアリサはとにかく可愛い!可愛いとしか言えない!何故なら可愛いのが事実だからだ!可愛いを擬人化したのがアリサなんだ!」

 

そう言って能力なしで殴り合う四人、もやしな一方通行はボコスカと殴られていた。反射?幻想殺しと常識が通用しない奴と根性馬鹿には無意味なのです

 

「あー、もう先輩たら何やってんのよ」

 

「もう、恥ずかしいんだゾ」

 

「男て本当に馬鹿だよな」

 

「あ、あはは……」

 

呆れ顔な美琴と食蜂、麦野。苦笑いの帆風…そろそろ仲裁に入ろうかと思いかけたその時だ。垣根の携帯の着信音が鳴り響く

 

「……あ?んだよいい所なのによぉ」

 

垣根は片手で掴んでいたボロ雑巾(上条)を床への投げ捨てる、一方通行や削板もボロ雑巾となって死亡(死んでない)状態で床に転がっていた

 

「はーいもしもしー。こちらていとくんです。あ、脳幹先生?おう、今暇ですが何かー?」

 

ぐりぐりと上条の頭を足で踏みつけながらそう返事する垣根、ついでにとテーブルにあった飲みかけのお冷やを削板と一方通行にぶっかける。反射?お冷に未元物質を入れたから反射できない

 

「え?緊急事態?いや俺一端覧祭の準備があるんすけど…」

 

そう気怠げな顔をする垣根だが…次の瞬間表情が変わる

 

「……それは本当か脳幹先生?」

 

「………?帝督さん?」

 

気怠げな顔から一転、表情を引き締める垣根。声色も巫山戯た感じから真面目に変わる。その変化を見て何かあったのだと帆風は感づく

 

「……チッ、分かった。すぐ行く……悪いなおでこDX。当麻達暫く借りるぞ」

 

「え?」

 

吹寄の返答を待たずに垣根はそのままファミレスの出口へと歩み始める。会計を済まし店を出る垣根…慌ててそれを追いかける上条達

 

「おい待てよ垣根!?何があったんだ?!」

 

上条がそう叫ぶと垣根は歩みを止める、そして無表情で上条達の方に振り向くとゆっくりと口を開く

 

「………あの女が、木原病理(・・・・)が学園都市に侵入しやがったらしい」

 

『…………………!?』

 

木原病理が学園都市に侵入した、それを聞いて目を見開く上条達

 

「……あの人がまた……学園都市に?」

 

そう冷や汗を流しながら呟く帆風、上条達も全員事の重大さに気づき、顔を引き締める。何せ全員一度は病理に完敗しているのだ、気を引き締めるの当然だろう

 

「あの女が何をしに来たのかは分からねえ、だがどうせロクでもない事に決まってる」

 

そう断言する垣根、帆風も頷き返す。病理は決して放置していい存在ではない

 

「……一体、彼女は学園都市に何をしに来たのでしょう……?」

 

そんな帆風の問いに誰も答える事は出来なかった

 

 

第十学区、スキルアウトも立ち寄らない外れの路地裏で戦闘があった。木原一族とグレムリンの魔術師達が共闘し木原病理との交戦を始めたのだ。相手は一人、対してこちらは十数人。誰がどう見ても学園都市側の方が有利だった…のにも関わらず勝者は車椅子に座った女だった

 

「残念でしたね〜、皆で力を合わせれば病理さんに勝てるとでも?そう言う熱血系はマジで寒いです」

 

病理はそうケラケラ笑う、思いだけでは自分に勝つ事など出来ないとでも言いたげに

 

「く、そが………!!」

 

数多はそう罵言を吐く、病理と戦った者達吐く全員猛者揃いだった。木原一族からは体をサイボーグ化させた木原那由多、木原一族最年長の一人 木原幻生、幻覚のエキスパート 木原乱数、超電磁砲の威力を模した駆動鎧を装着したテレスティーナ=木原=ライフライン、数々の思考パターンをインプットした木原円周、そして格闘戦のプロ 木原数多。並みの軍隊ならたった一人でも壊滅しているほどの強さを誇る精鋭揃いだ

 

魔術師側も勝るとも劣らない凄腕揃いだった。乱数と同じく幻覚使いのウートガルザロキ、ディベートの達人シギン、現存する黒小人の一人 マリアン=スリンゲナイヤー とその相方 ミョルニル、聖人とワルキューレの混ぜ物(ヘル) ブリュンヒルド=エイクトベル、そして戦争代理人 トール。他にもフェンリルやヨルムンガンド、ヘル、ロキなど強者が揃っていた…

 

だが誰一人も病理には勝てなかった、彼女の背から出現した黒い翼の前には無力だった。トールも全能の力を引き出す前に不意打ちで倒され、あのブリュンヒルドさえ撃破されてしまった。数多の格闘術も未元物質と同じ硬度を誇る反転物質(アンチマター)の前には無力、10分と経たず彼らは全滅してしまった

 

「さてさて〜寄り道はここまで。私は私の目的を完遂させるとしましょう」

 

「も、く……てき、だと?テメェ……一体、何をしでかす気だ……?」

 

「そうですねぇ…強いて言うなら数多さん、貴方と似た様な事(・・・・・)ですよ」

 

「あ……?俺と……似た様な、事…だと?それはどういう…」

 

「無駄話もここまで、ではさようなら〜」

 

数多が彼女の真意を聞こうとするが彼女はそれに応じず、その場から車椅子を動かして立ち去ってしまった

 

「……くっ、狂人の思考が俺に理解できるわけねえか…取り敢えず連絡を…」

 

唯一この中で意識がある数多は携帯電話を取り出して脳幹に連絡を取る

 

「……脳幹先生か?悪い、全滅しちまった。回収班頼めるか?それと第一位の野郎に連絡をした方がいい。あの女を倒せるのは…あのガキだけだ」

 

それだけ言うと数多は通話を終えて、地面に倒れたまま携帯をしまう

 

「……はぁ、ダッセェな俺。一方通行にカッコいいとこ見せたかったのによぉ」

 

 

 

「脳幹先生の話だと木原一族とグリムリンの魔術師達が共闘してアイツの討伐に出向いたらしいが…結果は惨敗、アイツ一人に全滅だってよ」

 

「……急ぎませんと被害が広がりそうですわね」

 

帆風は早く病理を見つけて倒さねば被害者が出てしまうと焦る、何せ未元物質の反物質化した能力 反転物質(アンチマター)の実験材料に一般人を使う様な女だ、いつ学園都市の人々が巻き込まれても不思議ではない

 

「……丁度いいタイミングでやって来てくれたな」

 

「?て、帝督さん?」

 

「アイツと俺の因縁に決着つける時だ。あの時とは違う、今の俺は昔の俺とは一味違うんだ」

 

「…………」

 

そう言い放つ垣根、無表情な顔で明確な怒りと殺意を滲み出している。帆風はそんな彼の手を優しく握る

 

「……?潤子?」

 

「……先に言っておきますけど、帝督さん一人で戦うんじゃありませんよ?わたくしも一緒に戦うんですから」

 

「…………は、分かってるよ。あの時とは違うて言っただろ?憎しみだけでアイツと一人で殺し合ってたあの頃の俺とは違う。今の俺には頼りになる彼女(相棒)がいるんだからな。頼りにしてるぜ相棒」

 

「………ええ、わたくしも頼りにしていますわ。貴方はわたくしの愛しい人(パートナー)ですもの」

 

そう言って笑い合う二人、憎悪と憤りだけで病理に挑んでいた頃とは違う。今の垣根には彼女がいる。だから病理には絶対に負けない。そう彼は信じていた

 

「それにお前ら(・・・)の事も頼りにしてるぜ」

 

『!?』

 

「言ってただろ?『俺達を頼れよ』てな。だから言われた通りにお前らを頼る。一緒に病理を倒しに行こうぜ」

 

垣根のその一言に驚きを隠せない上条達、彼は以前上条が垣根に言った困った時は自分達に助けを求めてくれ。その一言を実行してくれたのだ。それは垣根が上条達を信頼していると言う事、共に戦って欲しいということ、その一言を聞いて彼等彼女等は笑ってこう返した

 

『任せろ』

 

たったの四文字に彼等彼女等の気持ち全てが詰まっていた。そしていざ垣根達が病理の元へと向かおうとしたその瞬間だった

 

「へぇ、仲間と協力して怨敵を討つ……か、う〜ん。燃える展開だねえ」

 

『!?』

 

頭上から声が聞こえた、振り返る垣根達。その話しかけてきた人物は建物のビルの上に腰をかけて座り込んでいた

 

「お、お前は……」

 

垣根はその姿を見て目を見開いた。彼女の姿に見覚えがある。とは言っても彼女に会った事があるわけではない。知識として知っているだけだ。そして先日アレイスターから彼女について報告があった。何でも魔神掃討の際に二柱の魔神を仕留め損なったと…確かその内の一柱の名前は…

 

「わたしは娘々(ニャンニャン)、魔神 娘々。尸解仙を極め魔神へと至った者、魔神の中でも最古のお姉さんだよ……おい、そこBBAとか言うな」

 

彼女の名は魔神 娘々。闘争に愉悦を求める戦闘狂(バトルジャンキー)、彼女は笑みを浮かべて立ち上あがり、垣根達がいる場所まで跳躍し、華麗に着地する。そして笑みを浮かべたまま彼等にこう言ったのだ

 

「さあ、殺し合い(ケンカ)しようぜ☆」

 

 

木原病理と魔神 娘々。科学の狂人と戦闘狂いの神が君臨し、学園都市に災厄と混沌を齎すのだった

 

 

 

 

 

 

 

 




病理さん三度!そして傍迷惑なトリックスター娘々登場!娘々て新約22巻で見る限り的でも味方でもないトリックスター(というかお邪魔虫?)。ただ、戦闘を求めそれを愉悦とする快楽主義者なのかも知れない…まあ、神の思考は凡人では理解できない、てことですな

この章は病理さんのある秘密が暴かれる回、そして彼女の知られざる一面が暴かれる…何故彼女はていとくんに執着するのか?それがこの章で明らかに

次回もお楽しみに!


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黒い聖母はただ邪悪に笑う

今回はほぼ病理さんメイン。戦闘シーンはないですが面白くなるよう努力しました。果たして病理さんの目的は何なのか…お楽しみに。それとトールとマリアンの声優がとあるifで決まったみたいですね

トール「よっしゃ!俺「SSSS.GRIDMAN」の内海将だぜ!まさかの声優で驚いた!てっきりキリトとかの声優だと思ってたけど悪くねえな!」

マリアン「私は「ウルトラ怪獣擬人化計画」のレッドキングだ!中々有名どころじゃん!」

今回の裏モチーフは「彼氏の家の家族に結婚報告をしに行く」です。意味わからん、て思う方があるでしょうが…多分読めばわかります

それと前回の話を送ったら一気にお気に入りが増えたのに驚いた。これは何?シャスタートさんとリビアさん効果?SAOの話題に触れたから?


魔神 娘々。魔神随一の戦闘狂にして快楽主義者、自らの愉悦を追い求める者。その為には他者や世界がどうなろうと知ったことではない。ただ今を楽しみたい、ある意味最も人間らしく、自己中心的かつ傍迷惑な性格な神だ

 

「……今の俺達にはテメェと構ってる暇はねえんだけどな」

 

「ええ?まあ、そう言わずに付き合ってよ。カミサマとジキジキに演武できるんだからさ。それに貴方もそこの女の子も神の座に至ってるみたいだし、カミサマ同士踊ろうぜ☆」

 

そう笑って返す娘々、こういった輩は絶対に何度言っても折れずに構ってもらえるまでちょっかいをかけるタイプだ。しかも娘々は魔神、たかがちょっかいだけで学園都市が消し飛びかねない力を持っている

 

(チッ、急いでるてのに……こんなタイミングで来るか普通!?これだからカミサマて奴は…!)

 

「さあどうするの?わたしと遊ぶ?遊ばない?どっちか選んでいいよ?」

 

選んでいいよて言っているが…実質これは一択なのだ。選んでも選ばなくても彼女と戦うことになる。最初から垣根達に選択肢など……ない

 

(なら、俺一人が犠牲になればいいか)

 

だが、被害を最小限にする方法ならある。垣根は一歩前に踏み出し娘々を見据えながら口を開く

 

「いいぜ、魔神 娘々。俺が遊び相手になってやる」

 

「!?て、帝督さん!?」

 

垣根は背中から未元物質を展開、純白の翼が発光し更に輝きを増す。最初から覚醒した状態で娘々に挑む気だ。しかも多才能力も発動し右手からセルピヌスも顕現させる

 

「お、最初から全力でやつ?いいね、そういう熱いの好きだよわたしィ☆」

 

娘々は垣根が自分と遊んでくれると知ってニコニコと笑う、その顔はまるで買ったばかりの玩具で早く遊びたいと思っている子供の様に無邪気だった。ただし、玩具(垣根)を本気で壊す気でいるが

 

(今の内に潤子達はここから離れろ、娘々の相手は俺がする。その間にお前等は病理を倒せ)

 

(!?ま、まさかお一人で魔神を相手にするおつもりですか!?いけません!魔神はわたくしと帝督さんの二人がかりでなければ倒せません!)

 

(別に潤子がいなくても勝てない、て訳じゃない。勝算が低いてだけだ。絶対に負けるわけじゃねえ…それに今は病理の事もある。あいつを放置すればどうなるか分からねえ…だから、あいつを片付けてきてくれ)

 

垣根は帆風の脳内にテレパシーで自分が娘々の囮になるから早く病理を倒しにいけと伝える、帆風は反論するが垣根は心配ないと返す

 

(で、ですが……)

 

(そんなに俺が心配なら早く病理を倒してこい、それで俺の所に帰ってきて一緒に戦えばいい。だから早く行け)

 

(ーーーッ!…無茶しないでくださいね!もし無茶したら絶交ですからね!)

 

(おお、それは困ったな。何が何でも無茶しねえ様に気をつけるぜ)

 

垣根は戯けたように笑う、帆風は垣根を信じてこの場を離れる事に決めた

 

「皆さん、今の内に行きますわよ」

 

「……分かった、無茶すんじゃねえぞ垣根!」

 

上条達がこの場を走って離れていく。逃げるのではない、垣根を信じてこの場を任せたのだ。娘々は黙って上条達が離れていくのを見ていた

 

「止めねえのか?」

 

「するわけないじゃん、全員で逃げるてのなら別だけど…君が遊んでくれるんでしょ?ならそれでいいよ、わたしはカミサマだからね。少しくらいは見逃してあげるさ」

 

そう笑いながら言う娘々、彼女としては楽しめればそれでいいのだ。一対多と言うのも面白い玩具…一対一の真剣勝負というのも風情がある、そう思っているのだろう

 

「それに貴方とは前から遊んでみたいと思ってたんだよね〜。この世界にとってのイレギュラー。それに未元物質ていう面白い能力…わたしにとって貴方は玩具箱。どんな楽しい攻撃(玩具)が飛び出してくるか楽しみだよ」

 

そう笑う娘々、彼女にとって垣根は敵ではなく遊び相手である。殺す気など毛頭もない。ただ彼女についてこれなければ死ぬ。ただそれだけである

 

「さあ、神様同士の演舞を始めようか!なんだか盛り上がって興奮してきたぞ☆この胸のときめき…そう!わたしはこれを求めていたんだよ!」

 

「は、興奮してきた…か。まあ丁度いい。お前にはテストの相手になってもらおうか。今の俺がどれくらい強いかのな。それに俺のダンスは激しいぞ?ついてこられるか?」

 

神と神の激突、神と神の戦い。それは宛ら神話の様な光景だった。神と神の対立は神話上では珍しくもない。魔神 娘々と魔術と科学が交わった天使 垣根帝督。二柱の神は目の前の敵を倒すべくその権能を振るうのだった

 

 

帆風達は垣根と娘々から離れた後、病理の居場所を探るべく美琴は所持している携帯ゲーム機を媒体に監視カメラなどをハッキングし病理の姿が映っていないかチェックする

 

「………第七学区には…いない、第十三学区にも……いないわ」

 

「もう既に全部の学区の監視カメラで調べたのに…影も形も見つけられないなんて…くそっ!何処にいるんだ!?」

 

何処にも病理のなんの痕跡も発見できなかった。まるで木原病理という存在そのものが消えてしまったかの様に…

 

「あの女は学園都市出身だ。科学の目の欺き方ぐらいは心得てんだろ…たく、厄介だな」

 

「カメラじゃ無理か…なら、根性出して全員で学園都市全部を見て回るしかねえか!」

 

「いや、そンな時間はねェ。それよりも早く病理と木原くン達が争った場所に行くぞ」

 

「?何で数多さん達が戦った場所に行くんだ?」

 

一方通行はそう言うと数多達が戦った場所である第十学区を目指そうと歩き出す、上条が何故行くのかと問いかける

 

「食蜂の心理掌握で足取りを探す、それに現場まで行けば僅かに残った病理のヤロウの匂いから帆風の天衣装着で強化された嗅覚で探知出来るかも知れねェだろ」

 

「成る程……その手がありましたか」

 

監視カメラ(科学の目)がダメなら超能力を使った調査を行う、食蜂と帆風の能力ならば病理を探し出すことが出来るかも知れないと彼は告げ納得する帆風

 

「急ぐぞ、痕跡が消える前にな」

 

「そうだな…走るぞお前ら!」

 

上条達は第十学区を目指して走り出す、途中で食蜂がへばって動けなくなったので、上条が食蜂を負ぶって走る事になった

 

 

 

木原病理は昔の思い出に浸っていた。その思い出はまだ垣根が幼かった頃…自分が能力開発を行っていた孤児院での思い出だ

 

『うん、いいですねぇ帝督ちゃん。随分能力の扱いに慣れてきた様ですね…感心感心』

 

『いやまだでしょ、慣れたて言っても槍とか剣とか武器系しか作れないし…カブトムシもまだ作れねえし、翼も出てこないから全然ダメだな』

 

『はい?カブトムシ?翼?』

 

『ヤベッ、つい口が滑った。今言った事は聞かなかった事にしてくれ』

 

『……ふふふ、帝督ちゃんは不思議な子ですね〜いや、不思議だからこそそんな能力なのかもですね』

 

病理は笑いながらその少年…垣根帝督の順調な成長を見て喜んでいた。だが少年は喜んでおらず、変な事を口走っては病理の首を捻らせる。それを必死に誤魔化しそれを見て彼女は笑う

 

(しかし、科学者として興味が尽きませんねー。この世に存在しない物質を作り出す…いや、引き出す超能力…他の皆さんは一方通行(他の子)にお熱の様ですが…病理さん的には帝督ちゃんが一番の実験のテーマですねぇ)

 

大抵の科学者は垣根にはあまり興味を示さない。何せ素養格付(パラメータリスト)に置ける「能力研究の応用が生み出す利益」では垣根帝督の超能力 「未元物質(ダークマター)」よりも、とある少年が持つ能力 「一方通行(アクセラレータ)」の方が期待度が高いのだ。二番手である垣根よりも一方通行の方が注目されるのが当然だ…だが病理だけは違った

 

(でも単なる破壊ていう科学の根源を表しているかの様な能力よりも、科学における創造を具現化した様な能力の帝督ちゃんの方が病理さん的には惹かれるんですよねぇ)

 

破壊よりも創造を好んだ、ただそれだけだ。破壊を齎すだけの能力などいくらでもいる。だが創造を司る能力は垣根だけだ、そこに病理は惹かれたのだった

 

『帝督ちゃんは超能力者になりたいですか?』

 

『まあな、強くねえと誰も守れねえしな』

 

『守る、ですか?帝督ちゃんは誰を守りたいんですか?』

 

病理は尋ねてみた、この少年は何を守りたいのかと

 

『全部だよ、全部』

 

『……全部、ですか?』

 

『そう全部だ、学園都市の皆も、世界中の人達も、全員悲劇から守れる様な強い能力者になりてえ、誰もが笑ってられる様な世界にして、その世界を守られる様な男になりたいんだよ』

 

彼が語った理想は夢物語だ、そんなのありえない、そう誰もが一蹴するだろう。だが病理はそれを聞いて微笑みを浮かべる

 

『……とっても面白い夢ですね、そんな素敵な夢が叶う様に病理さんは祈ってますよ〜』

 

『おう!絶対に叶えてみせるぜ病理姉さん!病理姉さんの期待に応えて超能力者の第二位にもなってやる!』

 

『いや、何で第二位なんですかー?そこは第一位て言ってくださいよ〜』

 

そう言って笑い合う二人、この頃が病理の中で一番暖かな時期だろう…そして、この会話の一ヶ月後、垣根が所属していた孤児院の子供達は皆死に、垣根は病理を恨む事になる

 

 

第十学区の外れにある路地裏に辿り着いた帆風達は能力で病理の痕跡を探し始めていた

 

物的読心(カテゴリ044)、今から1時間前の残留思念を抽出」

 

「…………」

 

食蜂はリモコンを地面に向けてボタンを押しながら病理の痕跡を探し、帆風は目を深く閉じて鼻を地面に押し付けんばかりに病理の匂いを探る

 

「…………見ぃつけた☆あの女は東に向かったみたいねぇ」

 

「わたくしもあの人の匂いを見つけましたわ、女王と同じく東へと匂いが続いています」

 

食蜂が痕跡を見つけたと笑い帆風も彼女の匂いを見つける、これで病理を辿る事が出来る

 

「東……か、でも何で東なんだ?あっちには特に重要は施設とかは無かったはずだが…」

 

「ンな事知るかよ、あいつをぶっ潰した後考えればいいだけの話だァ」

 

上条が東の方向には何も無かった筈と考え込む、一方通行は病理を倒した後に考えろと言って食蜂と帆風に痕跡を辿る様言おうとした、その矢先だった

 

「!身を守れ食蜂!」

 

「!?」

 

紫のレーザーが食蜂の頭部を穿たんとばかりに放たれた、食蜂はリモコンのボタンを押しコールドスリープに似た崩壊現象を発生させ、これにより紫のレーザーによる一撃を防ぐ

 

「……反転物質で作られた人形…ですか」

 

現れたのは全身真っ黒な異形の姿をした怪物達だ、エイリアン型にスカイフィッシュ型、イエティ型、ネッシー型…他にも様々なUMAの形状をした反転物質で形成された自律兵器達が路地裏に現れる…その数およそ数十体

 

「……足止め、ですか」

 

一体一体が町どころか都市を半壊出来る程の戦略兵器並みの戦闘力を誇るが、超能力者や帆風にとっては単なる少し強い程度の有象無象でしかない。だが厄介なのは病理からの供給で再生してしまう事だ。負ける事はないが先に進むのは難しい…足止めとしてこれ程便利な駒はないだろう

 

「……どうする?全部ぶっ倒すか?」

 

「いやそれは時間の無駄だにゃーん、一体一体倒しても元を叩かなきゃ何度でも再生する…でも、元を叩くにはこいつらを倒さなきゃいけない…クソゲーだなオイ」

 

削板が拳を握るが麦野がそれを制止する、彼女の言う通り自律兵器を倒すには病理を倒さねばならず、病理を倒すには自律兵器から逃れなければならない…

 

「チッ、仕方ねえ。誰かここに残ってこいつらを食い止めるしか…」

 

誰かを囮にするしかない、そう彼が言いかけたその時だ

 

「ならば、私が殿を務めよう」

 

『!?』

 

その声は上から聞こえてきた。瞬間、空から男性が落ちてきた、彼は華麗に地面に着地し両手の人差し指と中指の間紅い炎の剣を顕現させる

 

「貴方は……加群さん!?」

 

彼の名は木原加群、科学者でもあり魔術師でもある木原一族 異端の男。彼は右手に展開した自身の術式 勝利の剣(レーヴァテイン)を無造作に振るう

 

「ここは私に任せろ、お前達は病理の所へ急げ」

 

ここは自分に任せてくれ、そう彼は言い切ると両手の勝利の剣を構え、自律兵器達に斬りかかる。刹那赤い斬撃が自律兵器達に刻まれ即座に燃え上がり塵も残さず消滅する。反撃にと自律兵器は砲弾やレーザー、核シェルターすら穿つ拳を放つが…加群には通用しない、彼には竜血の鎧がある、大抵の攻撃なら跳ね返し一切の攻撃を受け付けないその防御の前には自律兵器達の攻撃など無力だ

 

だが加群も強力無比な術式をノーリスクで使っているわけではない。時間制限、それがこの二つの術式の欠点だ。10分過ぎれば魔力が底をつき使えなくなる上、魔力とは生命力。自身も衰弱してしまう諸刃の剣だ…本来は短期決戦向き、自律兵器達の様な長期戦向けは向かない術式…だが彼はそれがどうしたと言わんばかりに攻め続ける。全ては帆風達をここから逃がし病理の元へと辿り着かせる為の捨石になる為に

 

「早く行け、あの女の所に!」

 

「加群さん……はい!」

 

帆風は深く頷く、加群の覚悟を無駄にしない為に、彼女は加群から背を向けて走り出す。上条達もそれに続く。加群を心配して振り返ることなど一切ない。そんな無駄な事をする事自体が命をかけて自分達を逃がした加群に申し訳ないからだ

 

「…………」

 

加群はそれを見届けるた後、自律兵器達に斬りかかる。燃え尽き消滅していく自律兵器達。ならばと自律兵器達はアメーバの如く分裂して数を増やしていく…加群は両手の炎の剣を更に激しく燃やし威力を更に上昇させる

 

「来い化け物。私は死なんぞ、帰りを待つ生徒達がいるのでな」

 

そう言って加群は分裂して増殖していく自律兵器達に斬りかかる、彼の心は折れない。守るべきもの(生徒)がいる限りは

 

 

 

ここはとある孤児院の廃墟だ、そこに病理は車椅子に座りながら廃墟内を見て回っていた

 

「……何年振りでしょうか?懐かしいですねぇ〜」

 

廃墟内を見てそう呟く病理、彼女にとってここは昔の我が家の様なものだ。車椅子を動かしながら廃墟内をぶらつきニコニコと笑っている

 

「懐かしいですね〜、ここで皆とご飯を食べて、あそこの部屋で本を読み聞かせたり…今となっては昔の話ですが」

 

そう笑みを浮かべながら呟く病理、彼女の脳裏には楽しかった昔の出来事が思い浮かぶ…

 

「………まあ、私がこんな記憶を思い出してはいけないんでしょうけどねぇ」

 

だがそんな思い出を彼女はすぐに掻き消す。昔の記憶に浸っている暇などないのだから、何より思い出の中で楽しげに笑う子供達が死んだ原因である病理がこんな事を思うのも失礼なのだから

 

「さて、早く来てくださいね潤子ちゃん(・・・・・)。今回の目的は貴方なんですから…ふふふ」

 

そう怪しく笑って……彼女は目的の人物が来るまでの間、暇潰しに廃墟を徘徊するのだった

 

 

「こっちから匂いがします!」

 

帆風達は走っていた、帆風が地面から僅かに臭う病理の痕跡を追跡し食蜂がリモコンを地面に向けてボタンを押し残留思念を読み取る。それを繰り返して病理へと確実に迫っていく

 

「……!匂いが濃くなって来ました!近いです!」

 

帆風がそう叫ぶと全員気を引き締め直す。相手は自分達が一度負けた相手だ。全力で行かねばこちらが負ける可能性もある。油断せず全力を出し切って倒す、上条達がそう考えていたその時だった

 

ーーーオ"オ"オオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!ーーー

 

『!?』

 

それは唐突に現れた、その声はまるで地獄からの怨嗟の咆哮だ。アスファルトがひび割れそこから手が突き出る。地面から這い出て来たのは一人の女性だ…その女性を見て帆風は目を見開いた

 

「ーーーー!?魔神、ゾンビ(・・)!?」

 

その物の名は魔神 ゾンビ、つい先日垣根と共に帆風が倒した魔神だ。だが彼女は上里によって新天地に追放された筈…現世にいる筈がない。落ち着いて帆風がゾンビを観察するとある違和感に気づく

 

(……いや、力の質が違う…ゾンビ本人ではない?という事でしょうか?)

 

魔神 ゾンビそのもの、という訳ではない。単なる彼女の姿を模した人形…なのだろう。虚仮威しか、そう帆風が判断した直後、無数の手がアスファルトから突き出る

 

「!?」

 

ーーーオ"オ"オオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォッ!ーーー

 

ーーーア"あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!ーーー

 

ーーーヴあ"あああぁぁぁぁぁ……!!ーーー

 

現れたのは数多くの人型、かつて撃破したガブリエルや他の四大天使達、応竜・蚩尤、アウレオルス=イザード、自動書記(ヨハネのペン)、蛇神 宛那、獲冴、シェリー=クロムウェル、Gatling_Railgun…今まで彼らを苦しめた強敵だけではない。上里が追放した筈のヌアダ、テスカトリポカ、キメラ、プロセルピナといった魔神までもが現れる…ただし、全員本物ではない

 

(とはいえ……全員何かしらの能力を持っている様ですが)

 

だが単なる姿形だけを真似た人形…というわけでもない。どうやら全員能力が備わっている様でガブリエルは氷の剣を、ミカエルは炎の剣を、シェリーは土塊を形成し、応竜・蚩尤は風や雷を発生させる…どうやら全員オリジナルを模した能力が備わっているらしい

 

「まあ、魔術を再現している訳ではなく、科学でそれを再現している様に見せかけているだけの様ですが」

 

備わっているのは科学の能力…つまり超能力だ。一体一体に個別の能力を付加しさもオリジナルと同じ力を振るっている様に見せかける為のフェイクだ。ガブリエルなら氷を操る能力、ミカエルなら発火能力、シェリーなら大地を操る能力…そういった風に超能力を実装しているのだ…だが、だからと言って無力という訳ではない

 

(恐らく人形達は反転物質製…大元を叩かない限り何度でも再生する)

 

そう、先程加群が引き受けてくれたUMA型の自律兵器と同じで病理を倒さねばこいつらは倒せない。だがこいつらは帆風達を足止めする為に病理から指示を受けた人形達だ…帆風がどうしようかと悩んだ時、上条達が一歩前へ出る

 

「ここは俺達に任せとけ」

 

「ーー!?」

 

上条の一言を聞いて帆風は目を見開いた

 

「俺達がこいつらの相手をする、代わりに潤子ちゃんが病理を倒すんだ」

 

「任せたわよ潤子先輩、私達の事は気にしないで先に向かって」

 

「だから安心して潤子先輩は先に進んで欲しいんだゾ」

 

上条達はそう言って人形達を見据える、自分達が人形の相手をする事で帆風を病理の元へ向かわせる為に

 

「チッ、雑魚の相手すンのは面倒だが……ここは俺らに任せとけェ」

 

「てな訳でお前はさっさとあのクソ女の所に急ぐにゃーん」

 

「逃げる時間を稼ぐ為に足止めしようと考えるとはな…凄え根性なしだ」

 

一方通行と麦野、削板は背中に翼を顕現させ、その翼で人形達を薙ぎ払う。薙ぎ払らわれた人形達は宙を舞いバラバラに砕け散るが再び結合したり足りなくなった部分を再生させる…だが、道は開けた

 

「行け!」

 

「………はい!」

 

上条のその一言に深く頷きながら帆風は走る、天衣装着を発動し全力疾走を行った。風の如く大地を駆け一瞬で遠くまで走り抜ける帆風…それを見届けた上条は仲間達と共に反転物質で作られたかつての強敵や魔神を模した人形達を見据え右手を強く握りしめる

 

「行くぞ!」

 

『おう!』

 

ーーーオ"オ"オオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォッ!ーーー

 

ーーーア"あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!ーーー

 

ーーーヴあ"あああぁぁぁぁぁ……!!ーーー

 

人形達へと迫る上条達、対する人形達も叫び声の様な声を上げて上条達へと迫る。ガラスの砕け散る音が周囲に響く、雷撃が地面を破壊する、黒い翼が人形を叩き潰す…超常の戦いが今ここに始まった

 

 

 

彼女は廃墟の地下にある実験室にいた。そこはとても広い真っ白な空間だった…所々長年の手入れがされていなかったせいか誇りや汚れが酷いが彼女は気にしない

 

「ここも懐かしい、ここで帝督ちゃんの能力のテストをしたものです」

 

この空間は対能力者用のテスト空間だ。能力の強度を確かめる部屋で病理は主に垣根の能力の練習に使っていた。全力で能力を発揮しても強能力者(レベル3)ぐらいの能力なら耐えきる特殊な素材で出来ていたが時々垣根がその壁に傷をつけてテヘッと笑う垣根に拳骨を入れたのも微笑ましい記憶だ

 

「まあ、同時に帝督ちゃんにとっても、私にとっても忘れられない場所でもありますが」

 

そうここで孤児院の子供達は全員死んだのだ。子供達は垣根が殺したのだが直接の原因は病理の様なものだ…彼女は苦笑する

 

「皮肉なものですね、大事なものを守ると誓った彼が守れなかった後悔の念で翼を発現するとは…皮肉なものです」

 

彼女は車椅子を部屋の中心まで進ませる、そこまで進むとふと彼女は立ち止まり、背後の人物に声をかける

 

「貴方もそう思いませんか潤子ちゃん」

 

その人物はたった今病理の匂いを辿って地下室までやって来た帆風だ。彼女は病理を睨みながら口を開く

 

「……貴方の目的はあの時と同じ帝督さんですか?」

 

「いえ…残念ながら目的は帝督ちゃんてはないんですよこれが。まあ、帝督ちゃんが全く関係ない事もないんですけどね」

 

帆風は垣根にちょっかいを目的かと尋ねるが病理は首を横に振る、今回の目的は垣根と関係があるはあるが彼自体が目的ではないと笑う

 

「今回の目的は……潤子ちゃん、貴方です」

 

「………わたくし?」

 

「ええ、そうです。これはテストです、テスト。私は貴方に個人的な興味を抱いています。ですから貴方はどれだけ強いのかを確認する気でここに来ました…最初(・・)は、ですが」

 

「……最初、は?」

 

彼女の目的は帆風、彼女がどれぐらい強いのか、彼女の能力は本当に自分にとって魅力的なのか、それが本当に自分の興味対象なのか…確認しに来たのだ。だが、その目的よりも重大な事が出来たらしい

 

「……貴方、帝督ちゃんとお付き合いを始めたそうじゃないですか」

 

「……それが何か?」

 

もしや、「私の実験動物(帝督ちゃん)に手を出すんじゃねえです、この腐れビッチが。やっぱ殺す」とか言うんじゃないかと帆風は身構える。だが彼女が口にしたのは衝撃的な言葉だった

 

「そう怖い顔しないで下さいよ、私は喜んでるんですよ?あの帝督ちゃんと付き合ってくれて」

 

「へ?」

 

「だってお似合いじゃないですか、美男美女とはまさにこの事。おめでたい事です。いよ、お似合いカップル。ヒューヒュー!」

 

「あ、えっと……ありがとう、ございます?」

 

何故か付き合った事を祝ってくる病理に帆風は思わず感謝の一言を言ってしまう。もしこの場に上条達がいたらツッコミ間違いなしである

 

「何せ私は帝督ちゃんの母親みたいなものですから、息子がこんな綺麗な彼女ができて喜ばない親はいると思いますか?いないでしょう?」

 

「は、はぁ……」

 

もし垣根が聞いていたら「お前は母親なんかじゃねえ」と冷たい声で言いながら攻撃していた所だろう

 

「いやー、お母さん感激です。潤子ちゃんなら私も文句はありませんよ。親公認です、良かったですね潤子ちゃん」

 

「え……?そ、そうですね…」

 

帆風は今の病理についていけなかった、まさか病理がこんな反応をするとは考えても見なかったのだろう

 

「籍を入れたら垣根潤子ですか…いや、帝督ちゃんが帆風帝督になる可能性も…いや、でも両方とも変な名前になってしまいますね…」

 

「…………」

 

もう帆風は喋る気にもなれなかった、目の前のおばさんは何がしたいのかと頭を抱えそうになる

 

「いや嬉しいですよ、これはアレです。科学者的に言えば好きな動物と好きな動物が交尾して新種の動物が生まれて来たみたいな感じです。それを考えると帝督ちゃんと潤子ちゃんの子供がどんな子になるのか気になってきますねぇ」

 

そうニコニコと楽しげに笑う病理、だがふとその笑みを消し不気味な笑みを帆風に向け彼女は緩みかけた気を引き締め直す

 

「だから今回の目的は貴方が本当に帝督ちゃんに相応しいのか。それを確かめに来ました」

 

「………は?」

 

「貴方が帝督ちゃんの伴侶に相応しいか、帝督ちゃんの相棒として相応しいのかこの病理さんが直々に見定めてあげましょう」

 

帆風は病理が何を言ったか理解できない。いや、このマッドサイエンティストがなんでドラマでよくありそうな

 

「私の息子に相応しいか試してあげる」

 

みたいな事をするのかと

 

「てな訳で……病理さんも本気でいかせてもらいます」

 

「ッ!?」

 

直後空間全てが大爆発を起こした、反転物質を爆破されたのだ。帆風は即座にカマエルを降ろし身体能力を強化し無傷で済んだ。そして爆煙が消えるとそこには三対の黒い翼を生やした病理が立っていた

 

「貴方とは二人きりで話したいと思っていたんですよ潤子ちゃん」

 

病理はそう帆風に向かってにこやかに言った。帆風は拳を強く握りしめ構える

 

「ここなら誰にも邪魔されません。女同士の一対一のガールズトークと行きましょうか☆」

 

「……貴方みたいな人とのガールズトークはお断りしたいです」

 

そう言葉を交わし……病理は翼で大気を叩き帆風へと直進、帆風は床を足で蹴りつけて病理へと猛進。直後黒き翼と神の拳が激突し、ソニックブームが生じ床や壁、建物に亀裂が走る

 

「ふふふ、さあ、帆風ちゃん。お義母さんに貴方の全てを見させてくださいね」

 

かくして黒い聖母は笑った。その狂気的な笑みと深淵の如き眼はただ純粋に帆風だけを見つめていた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回の出来事を簡単にまとめるとこんな感じ

帆風「息子さんを私にください!」

病理「いいですよー、でも本当に相応しいか見定めるのでかかってこいなのですー」

帆風「分かりました!」

垣根「あれ?俺の出番は?」

大体合ってる(合ってない)、因みにもしていとくんが縦ロールちゃん以外の子を選んでたら病理さんは問答無用でその子殺してた。たてろーるちゃんは病理さんのお気に入りだからセーフでした

さて次回は物理での話し合いことガチの戦闘、娘々さんが演舞したり病理さんが怪獣になったり、ていとくんがメルヘンだったり、帆風ちゃんがガチで殴り合う予定


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戦いに飢えし女神と狂った科学者

今回はていとくんvs娘々&縦ロールちゃんvs病理おばさんという組み合わせの戦闘シーン満載でお送りします。どちらも手に汗に握る熱い戦いとなっております

娘々の術式はオリジナルです。ウィキペディアとかで調べてこんな能力を使いそうと考えました。病理さんも過去と比べ強化されています。ですがていとくんと縦ロールちゃんも強いですしこの二人も前より強化されております



娘々の術式は宝貝、指先を中国の正式出典のない数多くのアイテムに変貌させる術式。青龍刀やら斬馬刀、鉤鑲、釵、梢子棍、縄鏢、青龍偃月刀、多節鞭、錘、桃氏剣、朴刀、流星鎚…百を超える武器の数々に変貌し、更に飛び道具である峨嵋刺と圈が飛来する

 

垣根は翼を広げ飛翔する事で武具達を避け、垣根を斬り裂かんと迫る峨嵋刺と圈を羽で弾く。反撃とばかりに垣根も羽根を飛ばすが娘々は指先を動かし青龍刀や多節鞭で羽根を弾き返していく

 

「いいね!最高にハイて奴だよ☆楽しいねぇ!」

 

「こっちは全然楽しくねえんだよ!」

 

楽しそうに笑いながら指先を動かし武器を操作する娘々、垣根は苛立ちながら翼を動かし羽根をマシンガンの如く連射し翼を羽ばたかせ烈風を放つ。工房を何度も繰り返す両者

 

「やっぱり戦いは楽しィ☆貴方もそう思わない?」

 

「全然!こんな事する暇があるなら彼女とイチャイチャしたいです!以上!」

 

「つれないなぁ、まあ別にいいか。わたしが楽しめれば☆」

 

魔神が地上から宝貝を放射し、天使は空中から多才能力による超能力の一斉攻撃が放たれる。青龍刀や斬馬刀、青龍偃月刀などの武具が打ち上げ花火の如く天へと向かい、原子崩しや超電磁砲、発火能力による火炎放射、水流操作で水を操作し風力使いで冷やす事により氷の刃を形成、量子変速でアルミ缶をブラックホールに変える…等の無数の攻撃が流星群の様に降り注ぐ。武具と超能力の激突、互いに相殺しあい両者の攻撃はどちらにも届かない

 

「チッ……!」

 

「ヒュ〜、やるじゃん☆まだまだ序の口とは言えわたしと互角にやり合えるなんて…面白い!」

 

娘々は純粋に戦いを楽しんでいた、彼女は人間だからと他者を蔑んだり見下したりしない。自分を楽しませてくれればそれで充分、血肉踊る戦いができれば相手が誰であっても構わない

 

「さあ、もっとギア上げてくよ!宝貝なんて単なるお遊び!尸解仙は剣を体の代わりとして現世に残し仙人となる方法…剣解法によって尸解仙となれる…つまり剣もわたしの肉体みたいなものなんだよね」

 

娘々が指を鳴らす。すると娘々が指先を武器に変化させ放出した武具の内、青龍刀等の剣が宙に浮き始め垣根へと剣先を向け飛来してくる。垣根はそれらを翼で弾くが弾いても弾いても方向を変えて垣根へと進んでくる

 

(剣一本一本が娘々と同じ気配がする…つっても本人並みではねえが…油断ならねえな)

 

垣根は確信する、剣一つ一つが娘々なのだと、それぞれ彼女と同じ技量の武術を備えている…まだ垣根ら娘々の武術は見ていないし初戦は剣、人の体の動きを剣で完全に再現できる訳ではない…だが、それでも剣一つ一つが魔神なのだ、油断してはならない

 

「ま、所詮は異能。全部破壊すればいいだけだ」

 

そう呟くとセルピヌスを右手から顕現させる、以前は出す為に未元物質で形成された右手を一々崩さねばならなかったが、人体と未元物質が混ざり合い、人体と完全に融合した垣根の今の身体なら幻想殺しの噴出点であるセルピヌスを右手に宿せる様になった。何故かは分からないがあらゆる異能を打ち消す幻想殺しが未元物質に順応し未元物質のみ例外的に打ち消さなくなったのかもしれない

 

ーーーキュラアアァァァ〜!ーーー

 

顕現したセルピヌスは咆哮を轟かせながら自在に動く剣へと、あらゆる異能を喰い殺す顎を大きく開け噛み砕き消滅させていく。一瞬で全ての剣を消滅させたセルピヌスは娘々の次の獲物と定め彼女へと顎を開けて迫る。対して娘々は面白そうに笑みを浮かべる

 

「幻想殺しの噴出点……その翼といい、色んな能力が操れるのもいい…わたしの宝貝より種類が多いんじゃない?」

 

娘々はそう呟いてセルピヌスの頭部へと拳を叩きつけ、セルピヌスを吹き飛ばす

 

ーーーキュラアアァァァ〜!?ーーー

 

「異能を打ち消すのは厄介だけど…物理攻撃は打ち消せないでしょ?」

 

娘々は魔術だけが得意なのではない、武術の達人でもある。単なる拳の一撃が山を砕く。そんな一撃をモロに食らってもセルピヌスは怒りの眼を娘々に向ける

 

「お、わたしの拳を喰らって原形をとどめてるなんてやるじゃん。じゃあちょこっと本気を出しちゃおうかな?」

 

そう言って彼女は滑らかな足取りでセルピヌスへと接近、拳を構える

 

「セイ☆」

 

ーーーキュラアアァァァ〜!?ーーー

 

軽い一声と共に娘々はセルピヌスに鉈を振り下ろすように拳を打ち込む。娘々が放ったのは中国の拳法の一つ 形意拳 五行拳の型の一つ 劈拳(へきけん)。その振り下ろされた一撃は銘刀が木を斬り裂く様にバッサリとセルピヌスの頭部を左右に分けた…だが

 

ーーーキュラアアァァァ〜!ーーー

 

「おお、再生した!」

 

セルピヌスは左右に分かれた顔を接合し再生する、再び娘々に顎を大きく開け迫る。今度は垣根も多才能力の超能力を使った援護射撃を行う。だがその程度で娘々の快進撃は止まらない

 

「セイ☆セイ☆セイ☆セイ☆!」

 

五行拳の技である錐のように拳を突きあげ、ひねり込む技 鑚拳(さんけん)、槍で突き刺すように拳を打ち出す技 崩拳(ぽんけん)、片方の腕を上段受けのように上に引きながら、もう片側の拳で突くカウンター技 炮拳(ぱおけん)、拳にひねりを加えながら、内から外へ半月上の軌道で打ち払う技 横拳(おうけん)。四つの技が超電磁砲や原子崩し等の様々な攻撃を衝撃波だけで搔き消し、四つの技をセルピヌスに叩き込む事でセルピヌスは痛みに悶える

 

ーーーキュラアアァァァ〜!!!?ーーー

 

「……魔術も出来て拳法も出来るとか反則じゃね?」

 

「いやわたしは元からこっち寄り(拳法)だよ?ただ、興味本位で始めた魔術が結構才能あってさ。じゃあ魔術極めたるかー、て軽い気持ちでやってたらいつの間にか魔神になっちゃってたわけ☆」

 

「天才か」

 

何ともまあそんな軽い動機でよく魔神になれたものである

 

「でもいざ魔神になってみると退屈でさ、つまんないんだよね。魔神は最強の存在。だけどわたしとしては血肉踊る熱い戦いて奴がしてみたいのよ。でも他の魔神は魔神同士で戦う気ゼロで現世に来たら壊れるし…正直退屈してたわけよ…でも今は違う、こんなに楽しくなって来たのは久しぶり!さあ!もっと拳と超能力をぶつけ合おうか☆」

 

そう言って彼女は後ろ足にやや体重を乗せた構えを取る。そして縮地と呼ばれる空間移動に似た転移術式で垣根の正面に現れ、軽やかに前方に足を踏み込み鑚拳を放つ。対して垣根は六翼を繭の様に閉じて防御体勢に入る。更に一方通行の反射も使用する。念の為に両腕をクロスさせておく。三重の守りを娘々でも突破できないだろうと垣根は頭の隅でそう思う…だが、甘かった

 

「甘い☆そして緩い☆この程度でわたしは止まんないよ!」

 

未元物質の翼による防御壁、一方通行の能力による反射、未元物質で構成された両腕によるガード…娘々は軽々とそれらを打ち破って垣根の両腕に拳を叩き込み両腕を粉砕し、垣根の腹部に拳を命中。垣根を10メートルほど吹き飛ばしビルに激突させる

 

「ガア、アアアアアァァァァァァァァぁぁぁッ!?くそ、舐めんじゃ、ねえ!」

 

垣根は口から血反吐を吐き出しながらも娘々を睨みつけ、六翼の先端を娘々へと伸ばし攻撃する。だがそれを娘々は軽々と避けセルピヌスの噛みつきを縮地で避けてから新たな技を出す

 

「セイ☆」

 

技だけ見ればさっきも放った炮拳だろう、だが前とは違いその拳は炎を纏っていた。五行拳とは五行説に関連する名がつけられている。例えば劈拳は金行、鑚拳は水行、崩拳は木行、炮拳は火行、横拳は土行…娘々はそれぞれの拳が五行思想と関連する事からそれぞれの拳に五行の属性を付加できる。例えば劈拳ならば上質な金属で鍛え上げられた銘刀の如き斬れ味で敵を両断する…炮拳は灼熱の業火をその拳に纏い敵を灰燼へと化す強力な一撃となる

 

ーーーキュラアアァァァ〜!!ーーー

 

だがセルピヌスも負けているばかりではない、咆哮を轟かせると娘々の足を一時的に塩化させ動きを一瞬止める

 

「ん?なんじゃこりゃ?」

 

娘々が一瞬足へと意識を向けたその瞬間、セルピヌスは身体の鞭の様にしならせ娘々に自分の身体を打ち付けた

 

「おぉおう!?」

 

娘々は野球ボールの様に吹き飛ばされビルへと大激突、娘々にぶつかったビルが音を立てて瓦礫を雨の様に降らしながら崩壊する…だが即座に娘々は縮地を使って垣根の背後に現れ手に携えた青龍刀で垣根へと斬りかかり、垣根は翼を盾にして不意打ちを防ぐ

 

「今のは痛かったよ、久しぶりにあんな痛みを感じて…ゾクゾクしてるよわたしィ!」

 

「ドMか!」

 

垣根は残った5枚の翼で娘々を串刺しにしようとするが、娘々は青龍刀を自在に扱い翼を弾き飛ばし攻撃を防ぐ

 

「知らない?中国の拳法てさ…槍とかの武器術も得意て事」

 

「初耳だな!」

 

娘々は笑いながら青龍刀をまるで槍の様に扱い、刺突を繰り返す。垣根はそれを翼で何とか弾きながら後方へと下がる

 

「防戦だけじゃダメ、捨て身の覚悟で攻めて来てごらん」

 

娘々は演舞の如く踊る様に足を動かし刺突を何度も繰り返す。それはさながら刀身の流星群だ。垣根はそれを翼でなんとか弾くが捌ききれず垣根の身体はゆっくりと刃先で斬られていく

 

「ほらほら、最初の頃の勢いはどうしたの?」

 

「コイツ……舐めてやがるな。愉快な死体にしてやるから黙って嬲り殺されろ」

 

「ははは、やなこった☆」

 

揶揄う様に笑いかける娘々、垣根は原子崩しを数発娘々に打ち込むが彼女はそれを拳で叩き落とす。片手間に創造した白いカブトムシ達を襲わせるが彼女は軽々とカブトムシ達を破壊する。再生する間も無く未元物質の素粒子一つ残さずこの世から消滅させられてしまう

 

「そんな弱っちい玩具でわたしを止められるわけないじゃん☆もっと本気でかかってきなよ!」

 

「煩えぞこの戦闘バカ!」

 

娘々の動きは人の動きではない、龍を模した動きや鶴を模した動き、蛇を模した動き…十二形拳。五行拳の応用で12種類の動物の動きを模した必殺拳で垣根を撹乱しながら拳を叩き込む。だが垣根も黙って攻撃を喰らっているわけではない。反撃として翼による斬撃や打撃、刺突、烈風が娘々を襲い彼女の衣服と肌に傷を与えていく

 

「わたしが傷を負うなんて何万年ぶりだろうね!うんうん、この命のやり取り、死の淵を綱渡りで歩く様なこの感覚……サイコー!」

 

「マジでお前頭イかれてんな!」

 

自分が傷を受ける度に喜ぶ娘々、垣根はそれを見てドン引きしながら悪魔化の光の杭を放つ。当たりさえすれば娘々を撃破可能な程に弱体化させるその術式。当たってしまえば文字通りの一撃必殺の技だ…そう、当たれば…だが

 

「にゃはは!そんな遅い攻撃当たらないよ!」

 

娘々は軽々避ける、一応は音速を超えているのに余裕綽々と避ける娘々。何度も悪魔化の光の杭を放つがどれも避けられてしまう

 

「……猿みてえなヤツだな」

 

娘々の予想のできない挙動の前には悪魔化の光の杭は当たらない、故に弱体化も出来ない

 

「………さて、どうするかな?」

 

悪魔化をどうやって娘々に当てるのか、それを垣根は思考するのだった

 

 

 

神を見る者(カマエル)

 

帆風はカマエルをその身に宿す、天使の力は自身の格闘センスと拳の破壊力の向上。その拳の一撃は今や全力ならば山すらも砕く。山を砕く一撃を右ストレートで病理へと放つが…

 

「おお、凄いパンチですね」

 

病理は音速を超える速度で放たれた拳に余裕で対応し掌で受け流す。そして病理も蹴り上げる様に足を帆風の顔面へと叩き込もうとし帆風は左腕で足をガード

 

「甘い、ですわッ!」

 

帆風も足技を繰り出すが病理は跳躍して回避し、空中で背中の三対の翼を羽ばたかせ烈風を発生させ帆風の体勢を崩させる。更にその隙に紫色の原子崩しを帆風へと放ち、帆風は天衣装着で放電状態となり、それで原子崩しの軌道を無理やり逸らす

 

「やりますねぇ、流石帝督ちゃんが相棒として選んだ子です。やはり帝督ちゃんは女の子を見る目がありますねぇ」

 

「お褒めいただきありがとうございます。できればさっさとわたくしに倒されて欲しいのですが」

 

「うふふ、それは出来ない頼みなので〜す」

 

笑顔で帆風を賞賛する病理、帆風は目を細めながら病理の言葉を適当に受け流しつつ病理へと迫り回し蹴りを放つが病理はそれを右手で受け止めると帆風の顔面に拳を突き上げようとする…だが帆風は当たる直前に天衣装着で電撃を発生、病理は咄嗟に手を引き戻す、その隙をついた帆風の正拳突きが病理の腹部にめり込んだ

 

「ごば……!?」

 

軽く呻く病理、だが帆風はチャンスを逃さない。動きを止めた病理に帆風は嵐の如く拳打を叩き込む。1秒で何十発もの拳を病理に叩き込み一発一発の威力は人体なら一撃で消し飛ばすほど、数秒の間病理はその拳の乱れ打ちを喰らい続け身体の原型を無くし身体は破壊される…だが

 

「凄い威力ですねぇ、病理さんびっくりです」

 

彼女は死なない、体一つ壊した所でまた反転物質で新しい身体を複製すればいいだけなのだから。今の病理は反転物質が一欠片でも存在する限り不死身の存在と化している。故にこの程度では倒す事は出来ない

 

「………今までの敵とは違うベクトルで…人外染みてますわね」

 

上里翔流やアウレオルスの様な純粋な人間とも、ガブリエルの様に元から人外である敵とも、ンザンビの様に魔術を極め神になった人間とも、目の前の木原病理という女はどのジャンルにも属さない。自分の身体を自分で改造し自らの意思で人間を辞めた狂人、魔神達と同じ逸脱者だが魔神達とも違う存在…それが木原病理という存在なのだ

 

「厄介ですわね…本当に」

 

帆風はそう呟きながら、宿す天使の地下をカマエルからザフキエルに変更。自分自身の体が生み出す遠心力を何十倍にも増幅し拳や蹴りの破壊力を増大するカマエルとならぶ純粋な接近戦最強の能力。その力を活かし帆風は病理に拳を叩き込む、病理は翼を盾にし拳と激突させる、拳と激突した羽は数百枚の羽根になり衝撃を拡散させその隙に病理の回し蹴りが帆風の身体へと放たれる

 

「フッ!」

 

その拳による衝撃を帆風はザフキエルの力で自らの身体を回転させる事で完全に受け流す、そのまま回転しながら病理から距離を取り帆風は部屋の床を足で蹴りつけ亀裂を走らせ床を破壊する。そして床を破壊した事で瓦礫が生まれそれを手で素早く掴み取りそれを病理へと力強く思い切り投擲する

 

投げつけた瓦礫は音速を超える速度で病理へと迫る、しかもただの瓦礫ではない。帆風が投擲前に天使の力(テレズマ)を流し込み音速を超える速度でも瓦礫が消滅しない様にし病理にぶつかった際に起爆する魔力爆弾と化してある。そんな攻撃を前に病理は薄く笑って口を開く

 

「形態参照 ラーガルフリョゥツオルムル」

 

病理がそう呟くと彼女の身体が膨張し肥大化・巨大化し始まる。魔力爆弾と化した瓦礫を変貌した前脚で踏み潰し異形の怪物と化した病理は背に生えた巨大な蝙蝠の如き翼を天井に届くまで広げ、天井を破壊し瓦礫が雨の様に降り注ぐ

 

「……ここは思い出の場所なのであんまり壊したくないんですけどねぇ…まあ、被害の出ない争い事はないと割り切って『諦め』ますか」

 

異形の怪物の姿でそうほざく病理、彼女が変身を遂げたその姿は漫画やアニメなどに出てきそうなドラゴンだ。悪魔の如き皮膜型の翼、四肢で立つどっしりとした巨体、凶悪かつ凶暴そうな面相の狡猾な蛇にも邪悪な竜にも見える面相…聖書にでも出てきそうな邪竜が顕現したのだった

 

「……天使であるわたくしと悪魔の象徴である竜の貴方…中々皮肉が利いていますわね」

 

竜とは堕ちた天使、即ち悪魔の象徴である。サンダルフォンという天使の名を持つ自身に悪魔の象徴であるドラゴンで戦いを挑むなど何の皮肉か、帆風はそう思いながらミカエルを宿し右の掌から炎の剣を顕現させドラゴンへと斬りかかる。だがドラゴンはその鈍重そうな見た目とは裏腹に素早い動きで剣撃を避ける

 

「くっ……!意外とすばしっこい…!」

 

「ふふ、鬼さんこちら、手のなる方へ〜」

 

炎の剣を紙一重で避け続ける病理、病理はその鋭い剣の様な牙が生えた大口を開く。そして口から紫色の炎を吐き出す。帆風へとその炎の津波が迫り帆風はザドキエルの速さで超スピードで炎の津波から逃れる

 

その炎の威力は凄まじく一瞬にして地下室全域が燃え上がり融解する程だ、もはや逃れる場所はない。ならばと帆風は破壊された天井から上へと避難。彼女の後を追う様に病理は翼を広げ地上へと目指す

 

ドラゴンは翼を広げ空を目指し飛翔し、地下室から一気に地上へと飛び出す。その過程で廃墟となった孤児院が倒壊するが病理は気にしない。口を開き灼熱の業火を放つ

 

「炎…なら神の栄光(ハニエル)!」

 

帆風が降ろしたのはハニエル、能力は五大元素を支配する能力と調和・平和・愛情に関する能力。ラジエルの次に魔術向きの能力で帆風は五大元素を支配する力で炎の威力を弱くした後、周囲のアスファルトや大地を支配し粘土の様に柔らかくし自在に操り、病理の身体に絡みつくと一瞬で硬くなり彼女を拘束する。天使の力が付加されたその土の拘束は生半可な力では破壊できない

 

「……これは表層融解(フラックスコート)みたいな能力ですねぇ。まあでも、これくらいの拘束では病理さんは止まりませんが」

 

そう言って彼女は全身に力を込める、するとドラゴンの全身に黒いラインがその身に刻まれ紫色のオーラを纏う。万力を込め翼を広げるとアスファルトと土の拘束は呆気なく破壊され病理は咆哮を上げて前足を振り上げその鋭い爪で帆風へと振り下ろす

 

「ーーーッ!」

 

帆風は急いでそれを避ける、爪が引き裂いたが地面に刻まれる。帆風は距離を保ちつつ五大元素に干渉し鎌鼬や氷の刃、火球を放つが当然反転物質で構成された病理には傷一つつかない

 

「そんな攻撃で私を倒せると思いましたか!だとしたら心外です!」

 

そう言ってドラゴンの形相で病理は嘲笑う、帆風は虹色の翼を生やして空へと飛翔し病理から距離をとった。病理は翼を羽ばたかじて飛翔。帆風を追いかけながら口を開け火炎を放つ。ハニエルの力で火炎は消滅するが物理攻撃は弱められまいと病理は彼女を引き裂こうとする

 

「さあ、潤子ちゃんのその身体は私の爪にどれくらい耐えられるんでしょうねぇ!」

 

そう笑う病理、コンクリートをバターの様に容易く裂くその爪を振り下ろす…だが帆風の顔に焦りはない

 

「彼の者に愛しみの記憶を思い出させよ」

 

「うっ!?」

 

帆風がそう呪文を唱えると病理は振り下ろしかけた爪を空中で止め、もう一つの前脚で自らの頭を抑え苦しそうな顔をし空中で悶える。ハニエルのもう一つの力。対象に愛や調和を与える…この場合は相手の楽しかった頃の記憶を思い出させ思考を不意に奪うことで行動を阻害し隙を出させる能力…病理に楽しい記憶があるかは分からないが…能力が効いたからにらその様な記憶があるに違いない

 

(ですが、何故苦しそうな顔を?)

 

唯一帆風が気になったのは何故苦しい顔をしているのか、だ。誰しも楽しかった頃の記憶を思い出せば意識を忘却し思い出に浸り楽しそうな顔をする筈なのに…何故か病理は苦しげな顔だ…まるでその記憶そのものが自身にとって忌まわしいもの(・・・・・・、)とでも言いたげに

 

「くぅ……ふぅ……はぁ………!」

 

 

『病理せんせー!この絵本読んで!』

 

『センセー俺もこの本読んでほしい!』

 

『見てよ先生!これ俺が作ったんだぜ!』

 

『はい先生!これ先生の為に折った折り紙の鶴!毎日私達のお世話をしてくれてありがとね先生!』

 

『おぉ〜、皆さんありがとうございます』

 

『はは、病理姉さんは人気者だな〜これは流石のていとくんも嫉妬不可避』

 

 

「くっ……!小賢しい真似を!」

 

病理は頭を振り、ハニエルの術式を振り払う。怒りの眼で帆風を睨み口から毒霧を放射、毒霧に触れた建物が1秒と経たず融解して消滅してしまう。帆風はその毒霧から必死に逃れ翼を羽ばたかせ空へと逃れる

 

「まだまだ第1ラウンドですよ潤子ちゃん!さあ第2ラウンド開始です!」

 

「………上等ですわ」

 

病理はそう叫ぶとドラゴンの口から紫の炎を吐き出し、帆風は自らの切り札たるサンダルフォンを降ろす。ドラゴンと天使、神話を再現するかの様に両者は再び激突する

 

 

 

娘々は仙人としての権能から自身を数十人にまで分身。拳法や魔術の技量はそのまま、強さもほぼオリジナルと同格という破格の分身達は垣根に拳や魔術を嵐の如く放つ。垣根はそれを未元物質の翼で全て防ぐ

 

『『『にゃはは!さて、ここで問題。本物はどれでしょう?』』』

 

「チッ……本物と同じスペックの分身体とかそんなのアリかよ!」

 

垣根はそう言いつつも無数の娘々から逃れ空へと飛翔、太陽を背にして太陽光に含まれる赤外線を殺人光線に変換。元は人を焼き殺すのが精々だった殺人光線だが神となった今では周囲の大地に白い炎が発生しアスファルトや建物が消滅する程の威力となっている…これを喰らえば魔神とて傷を負うのは必然。分身ならば消滅するだろう…垣根はそう考える

 

『『『残念☆効かないよ!』』』

 

「なに!?」

 

だが殺人光線を喰らっても娘々達は平然とした顔で空を飛び、垣根へと向かってくる。垣根はそれに驚きを隠せないでいたが我に帰り、赤外線ではなく紫外線の法則を変えることにし、紫外線を腐食光線に変換。腐食光線も1秒足らずでシロナガスクジラを消滅させる程にまで強化されている。すると今度は娘々達は光線に当たると一斉に溶け始め一体の娘々のみしか生き残っていなかった

 

「テメェが本体か」

 

「そうだよ、分身達は攻撃力とかは完コピなんだけどなにぶん防御力が低くてね…まあ、これも一種の遊びだよ☆」

 

「あれで遊びか…まあ、俺も未元物質で分身作ればお前と同じ事が出来ると思うがな」

 

娘々は会話をしながら横拳を放つ、垣根は翼を盾にして防御。娘々の右手が翼に突き刺さると同時、その翼を無数の羽に変換しばら撒き衝撃が自分に伝わるのを阻害する

 

「だが、どうやって俺の殺人光線を防いだ?」

 

「ああ、さっきの?あれは仙人としての力の一端だよ、仙人は火で焼け死ぬ事はないのだから。太陽だって一種の火でしょ?」

 

仙人の能力は実に多彩だ、先程の様に分身したり、空を自在に飛び回り、水の上を歩いたり潜ったり、千里を見通したり、火の中で焼ける事はなかったり、獣を従えたりと多くの力を持つ。それでもまだ娘々にとっては数多くある術式の序の口なのだ

 

「でもこんなに沢山の術式を使ったのは久方ぶりだよ本当に、やっぱり楽しませてくれるねぇ!貴方て最高の遊び相手だね!」

 

「俺は玩具じゃねえ!それと俺は他人に遊ばれるより他人で遊ぶ方が好きなんだ!」

 

会話をしながらも二人は攻撃の手を緩めない、垣根はセルピヌスや翼、多才能力の超能力で娘々を攻撃、娘々はそれを軽々と防ぎ仙人の権能で姿と気配を完全に隠してしまう

 

「ステルスまで持ってんのかよ…」

 

姿も気配も完全に感じない…垣根は周囲に未元物質の素粒子をばら撒く。姿や気配が見えずとも身体は何処かにある筈…暫くして垣根は槍を一本形成し背後へと投擲。娘々は姿を現しその槍を弾く

 

「ありゃりゃ、流石にバレた?」

 

「バレバレだよばーか」

 

そう言って垣根は左手を向けそこから巨大な火の柱を発生させる。娘々は火の攻撃では自身を傷つけられないことを知っている為迷わず突進。火の柱を突っ走って垣根の首を手刀で切り落とそうとした瞬間…全身に寒気が走り、娘々は咄嗟に真横に全力で移動する…直後、娘々がいた場所に巨大な異形な手が通った

 

「………魔術は複製できないんじゃなかったけ?」

 

「昔の話だよ」

 

娘々は垣根の右肩に生えた歪な形をした第三の腕(・・・・)を見ていた。それはフィアンマのみが持つ彼の力の根源。それを垣根が扱っているのに娘々は驚いていた

 

「昔は超能力しか複製する事が出来なかったが…俺はお前ら魔神と同じ神の座に至った存在だ。なら魔術や術式を解析してそれを未元物質で複製しカブトムシ達に実装し、多才能力に組み込む事も容易て事だ」

 

メタトロンという神の座に至った垣根、今や彼の未元物質は魔術ですら複製し自身の力として扱う事が出来る。フィアンマだけではない、ありとあらゆる魔術師の術式すらも解析・複製しカブトムシに実装、多才能力として自身が扱う事も可能と更に未元物質の自由度を向上させていた

 

「……君てさ、色んな方面の人達に喧嘩売ってるよね。超能力者と魔術師の人達に謝ってきなよ」

 

「俺には常識は通用しねえ」

 

「わたしも大概だけど貴方も大概だと思うよ?」

 

「お前にだけは言われたくねえな」

 

「わたしも貴方だけには言われたくないなぁ…」

 

そう軽口を呟きながら娘々は再び拳を構える、垣根は第三の腕を横に振るう。娘々を撃破する為に聖なる右は莫大な力を引き出し衝撃波として娘々に放つ。娘々はそれを拳を突きつけ衝撃波を飛ばす事で相殺する

 

「まあ、楽しければそれでいいんだけど☆」

 

「すぐにその余裕面なくしてやる」

 

そう言って天使と魔神は再び激突した

 

 

 

病理は前脚を振り下ろす、帆風はそれを左手で受け止めながら右手で前脚を殴りつけ破壊する。だが前脚を破壊しても即座に再生してしまう

 

「う〜ん、やはり前とは比べ物にならないパワーですね。魔術サイドの力とはいえ…やはり興味深い」

 

病理はそう楽しげに喋りながら口から火炎を吐き出す。サンダルフォンでもドラゴン化した病理を倒しきる事は出来ない

 

(なら……アレ(・・)を試しますか)

 

そう帆風は考えると、サンダルフォンの力を解除すると一息ついて口を開ける

 

神の如き者(ミカエル)神の正義(ザドキエル)

 

「な……」

 

異なる天使を同時に降ろす。二重の天使降ろし。神へと至った帆風だからこそ可能となった天使崇拝の新たな力。ミカエルの圧倒的な攻撃力とザドキエルの超高速のスピード。二つが合わさることにより超高速の接近戦が可能となる

 

「行きます!」

 

ザドキエルの超スピードで病理の周囲を駆け巡る、ミカエルの剣でドラゴンの身体を斬り裂き一瞬でバラバラにする。だがすぐに黒い塊が空中に現れ人型となる

 

「まさか二つ同時に力が扱えるようになっているなんて…うんうん、成長は順調の様ですね」

 

病理はそう言いながら三対の黒い翼を広げ帆風へと接近する。爪を立てて帆風を引き裂こうとするも帆風は慌てない

 

「わざわざ貴方の方から近づいて来てくれてら助かりましたわ」

 

「!?」

 

そう帆風は呟いて、ミカエルからラジエルに天使を変更、転移の術式を用いて病理の背後へと移動し病理の左肩を掴む

 

「さあ……貴方は何処まで耐えられますか?」

 

ザドキエルから再びサンダルフォンに切り替え、帆風は全身から白き雷撃を放電する

 

「があ"あ"あ"あ"あ"あ"ああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」

 

白き雷が病理の全身を襲う。いや、彼女だけでない白い雷は病理だけに止まらず周囲一帯の空間に放電が広がっていく……反転物質がある限り病理は何度でも再生するのであればここら一帯にある反転物質全てを破壊すればいい(・・・・・・・・・・)。それを帆風は実行しようとしているのだ

 

「これで貴方を…反転物質全てを破壊し尽くせば…わたくしの勝利です!」

 

「ま、さか……こんなデタラメな手段に出るとは…病理さんでも予測できませんでしたよ!」

 

帆風は全ての反転物質を破壊すれば自分の勝利だと叫び、病理は流石に全ての反転物質を破壊されるのは不味いと思ったのか六翼の黒い翼の先端を向け帆風を穿たんとする。だがその翼も白き放電には耐えきれず消滅してしまう。病理の身体のみが帆風の放電を耐え切ろうと崩れた部位を反転物質に即座に再生する

 

「さあ、どちらが先に倒れるか我慢比べと……!?」

 

我慢比べといきましょう、そう帆風が言いかけたその時だった、脳内にスパークが走り鈍い痛みが彼女を襲う。病理からの攻撃かと帆風が考えた時、ふと気づけば帆風は知らない場所に立っていた

 

「……え?」

 

右手で掴んでいた筈の病理の姿はいない、空間移動で逃げたのか?いや、そもそもここは何処なのかと帆風は考え気づいた。所々に見覚えがある建物が見える事に

 

「……第十学区?しかし、こんな建物は無かった筈……いえ、この建物、何処かで」

 

帆風は目の前の建物を見て漸く思い出す、目の前の建物は病理が潜伏していた廃墟(・・)だと。だが老朽化し所々壊れていた筈の建物は新築の様に綺麗だった…まるで時間を戻した様に(・・・・・・・・)

 

「これは……一体?」

 

帆風がそう呟いた時だ、ふと聞き覚えのある声が聞こえた

 

『うへぇ、買うもん多過ぎだろ…どんなけ食うんだよあいつら』

 

「!?この声は……」

 

帆風はその声を聞いて声が聞こえた方へと振り返る。そこに立っていたのは…12、3歳くらいの少年だ…何処と無く垣根に似ている

 

「……小、さい…帝督さん?」

 

間違えない、この少年は垣根だ。他人の空似とか、垣根の弟だとか、垣根の幼い姿のクローンというわけでもない。正真正銘垣根帝督その人だ。そんな確信が帆風にはあった

 

「で、ですが…何故子供の垣根さんがここに…?ま、まさかこれは……」

 

帆風がある結論に達しかけたその時、幼き垣根に声をかける一人の女がいた

 

『御使いご苦労様です帝督ちゃん』

 

『お、病理姉さん。頼まれてたもん買ってきたぜ』

 

「………え?」

 

その声を聞いて帆風は思考を止めた、そしてその声の主を見て…再び固まる。その人物は先程自分と戦っていた相手で、垣根の因縁の相手…垣根の孤児院の皆を殺した人物だったからだ…そんな人物が何故、垣根に親しげに話しかけ(・・・・・・・・・・・)、垣根もそんな女に何故親しげに話しかけている(・・・・・・・・・・・)のか帆風には一切分からなかった

 

『本当助かりますよ、私買い物は面倒臭くていきたくないので…今晩は帝督ちゃんの大好きなクリームシチューですよ』

 

穏やかな口調で木原病理は垣根に微笑むのだった。その笑顔は帆風が見たことのない病理の顔だった。あの狂気に塗れた歪んだ笑みではなく、純粋に病理は楽しげに優しい笑顔を垣根に向けていたのだ。垣根もそんな彼女を見て笑っている…その笑みからは現在の病理に怨みを向けている垣根からは想像できない

 

「………これは、一体…どういうことですか?」

 

そんな光景を見て、思わず帆風は無意識にそう呟いたのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回は追憶の病理さん、つまり病理さんの過去編です。これで謎に包まれていた病理さんやていとくんの過去が明らかに!意外な事実と悲しい過去…驚きの展開を見逃すな。そしてショタていとくんを見れて縦ロールちゃんは大満足

帆風「ハァハァ…ショタ帝督さんかぁわいぃです」

垣根「……今寒気がした」

因みに縦ロールちゃんの今の状態はとあレーでいう木山先生の過去を除いたミコッちゃん状態です。つまり電撃によって電気的な回線が偶然繋がり病理さんの記憶を読んでいる状態て事です

次回もお楽しみに!


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堕ちた聖母

今回はメチャシリアスです、色々とおかしい所があるかもしれませんが…気にしないでください。ツッコミどころ満載かもしれませんが気にしないでください

今回は病理さんの過去、何故病理さんがていとくんばかりに構うのか、その秘密が明らかに!そしてあのキャラがほぼオリジナル設定で登場


帆風は暫く考え込んで気づいた。これは木原病理の過去の記憶なのだと

 

(恐らくこの帝督さんの年齢を考えるに…5、6年前ぐらいの記憶でしょうか?)

 

この記憶の垣根を見るに、小学5年か6年だろう。つまり最低でも5年前の病理の記憶なのだと推測する…だがそんな事よりも帆風はある事に注目していた…

 

(ショタな帝督さんが目の前に!可愛らしいです、愛くるしいです、ああ、帝督さんはショタでも素敵です!幼天使です!ショタ督さんです!)

 

そうニンマリと笑って幼い頃の垣根(帆風命名 ショタ督)を眺める帆風、お巡りさんこいつです

 

「おっと、わたくしの愛がスパークリングしかけていましたわ…何故こんな状況になったか考えなければ…」

 

気を取り直して帆風は今の自分の状況について考え始める、恐らくは自分の放電攻撃で病理の電気的な回線に偶然繋がり、彼女の記憶を読み取っているのだろう

 

(……あの人の記憶を読み取るなど大変不本意ですが、解除の仕方も分かりませんし一応見続けてみますか)

 

そう帆風は考えついた。現実世界の自分はどうなっているのか少し気になるがすぐに頭の片隅に追いやる

 

(恐らく現実世界のわたくしは今も放電攻撃を続けている筈。今のわたくしは一種の思念体…いわば魂だけの状態な筈。ならわたくしの身体が急に動かなくなって無抵抗に攻撃される心配はない……と思いますわ)

 

現実世界の自分は今は放電をし続けている筈、ならばこのまま記憶を見続ける事にしようと帆風は結論を出した

 

『ただいまー、ていとくんの帰還だぞお前ら』

 

垣根は病理と共に孤児院の中に入る、そして帰ってきた事を大声で言うと奥から十数人の幼い少年少女達が現れる

 

『あ、お使いお疲れ様ていとくー』

 

『道草せずにちゃんと帰ってきたんだね、偉いねていとく!』

 

『寄り道しなかったのかよ……賭けは俺の負けかよ』

 

『へへ、「帝督が寄り道するかしないか』の賭けは俺の勝ちだな!賭けのデザート献上を忘れんなよ!』

 

『くっそぉ〜かきねなら絶対に寄り道すると思ったのに…変な所で真面目だなこの不良メルヘン!』

 

『ていとくマジメルヘン(笑)』

 

『ていとくの癖に道草食わずに帰ってくるとは生意気だ』

 

『俺キレていい?』

 

帰ってくるなり散々な言われようの垣根、垣根は子供らしく無邪気な笑みを浮かべながら未元物質で槍を形成する。こいつ大人気ねえ

 

『まあまあ、落ち着いてください帝督ちゃん。ほらほら皆もご飯の用意をするので大人しくなっててくださいねー』

 

『『『はぁーい、病理せんせー』』』

 

『チッ……命拾いしたなお前ら、今日がクリームシチューの日じゃなかったら爆発をお見舞いしてたぜ』

 

病理がやんわりと喧嘩を収める、子供達は素直に言う事を聞き垣根もクリームシチューの日だからか言う事を聞く。病理はそんな子供達を見て笑みを浮かべながら車椅子を動かしてキッチンに入る

 

『さてと、昨日作って一晩寝かしておいたクリームシチューを温めて…提督ちゃんに買ってきてもらったこのお肉でハンバーグでも作りますか』

 

クリームシチューを取り出し、それをコンロに起き火を受け温め始める。その間に病理は垣根が買ってきたお肉を使ってハンバーグを作り始める

 

(……普通にお母さんみたいですわね)

 

普通に料理する病理の姿は何処にでもいそうなあふれた母親に見えた、現在の病理とは大違いだ。そんな病理の一面を見て帆風は目を大きく見開く

 

(…これも演技なのでしょうか?それとも…)

 

帆風は木原病理という女が分からなくなった、この記憶を見る前は単なる狂人だと思っていたが…この記憶を見ているとそれが正しいのか分からなくなってくる…現在の狂人である木原病理と過去の母親の様な木原病理…どちらが本当の彼女なのだろうか?

 

『はい、出来ました〜皆〜ご飯の時間ですよ〜』

 

『『『はぁぁい!』』』

 

『ではご一緒に、手を合わせましょう』

 

『『『いただきます!』』』

 

病理は出来たご飯を食堂へと持っていく。子供達はそれを見て大はしゃぎ。病理もそんな子供達を見て笑みを浮かべる。全員で手を合わせ一斉に食べ始める

 

「……演技には、見えませんわね」

 

帆風には病理の笑顔や子供達に対する扱いが演技には見えなかった。どうにも今の病理と過去の病理が重ならない。同一人物である筈なのに別人にも思えてしまう…帆風はさっぱり理解出来なかった

 

『美味しいですか帝督ちゃん』

 

『ああ、マジ病理姉さんの作った料理まいう〜。プロ並みだな』

 

『そんな事ないですよ〜ただ、料理と科学て似てる気がするんですよ。だから病理さんは料理が得意なのです』

 

そう病理の隣の席に座って楽しげに会話する垣根、病理はまるで母親の様な表情で垣根と話していた。それを見て少しむっとする帆風

 

「……昔はどうだったか知りませんが、今は帝督さんはわたくしだけのものですからね」

 

記憶の中の病理に言っても仕方ないが帆風はそう呟いた。まさか病理に嫉妬する日が来ようとは夢にも思わなかった

 

『病理お姉ちゃんのハンバーグ美味し〜!』

 

『病理姉ちゃんて料理も美味いし、家事洗濯もできるし、優秀な科学者だしいいお嫁さんになるな!』

 

『てか、将来僕のお嫁さんになってよ!』

 

『あー!ズルいぞお前ー!こいつのお嫁さんになるくらいならおれのお嫁になってよ!』

 

『じゃあ私も病理先生をお嫁さんにするー』

 

『うふふ、お嫁さんだなんて照れますねー』

 

『いや、でももう無理だろ。だって病理ねーちゃんてもうおばさ……』

 

男の子も女の子もいつの間にか病理を嫁にしたい発言をして、クスクスと病理が笑う。そんな時にある一人の男の子が病理はもうおばさん…と言いかける。するとその男の子の顔面がクリームシチューの中に埋まった

 

『……な・に・か・言・い・ま・し・た・か?』

 

『………イエ、ナニモ』

 

『なんだ、私の聞き間違いでしたか!あ、皆さんは何も気にせずご飯を食べてくださいね』

 

『『『うっす』』』

 

男の子の顔面をクリームシチューの中に叩きつけた病理はにっこり笑顔なのに、全く笑っている様に見えなかった。その顔を見て男の子はなんでもありませんと告げる。もし頭部を病理に掴まれていなかったら土下座していただろう。垣根を含めた子供達は病理にジロッと睨まれ大人しくご飯を食べ始める

 

『まあ、お嫁に行くかどうかはおいておいて…まあ、私も結構歳ですからねー。そろそろ相手が欲しいのです』

 

『てか、病理姉さんていくつ?俺の予想だともう三十越え…』

 

『帝督ちゃん?それ以上言ったらケツの穴に能力開発を行いますよ?』

 

『なんでもないっす』

 

垣根が失礼な発言をしようとしたが病理に睨まれ口を閉じた

 

『では…皆も食べ終わった様ですし…では手を合わせて…ご馳走様でした』

 

『『『ご馳走様でした!』』』

 

食べ終わった後、病理は一人で食器を片付け始め、台所で食器を洗い始める。鼻歌を歌いながら食器を洗う様は本当に母親の様だった

 

『俺も手伝うよ、病理姉さん』

 

『あら手伝ってくれるのですか?助かりますねぇ』

 

垣根が食器洗いを手伝いにやってくる、病理は垣根に食器を手渡し、垣根はスポンジに洗剤をつけて食器を洗い始める

 

『なあ、前から思ってたんだけどさ。病理姉さんはなんで孤児院なんかやってんの?』

 

『はい?』

 

『ほら、病理姉さんて木原一族じゃん?科学者のエリート一族出身のアンタがなんでこんな孤児院の院長なんかやってんの?』

 

垣根はそう病理に尋ねる、彼は帆風と同じく病理が孤児院の院長をやっている事に疑問を抱いているのだろう

 

『う〜〜ん、そうですねぇ。単純に研究に疲れたんですよ』

 

『疲れた?』

 

疲れた、その一言を聞いて垣根は、そして帆風は目を丸くする。彼女がまさかそんな事を言うとは思っていなかったからだ

 

『はい、病理さんは『諦め』のエキスパートです。それと同時にそれ以外の研究を全て『諦め』ました。『諦め』しか自分には才能がなかったんです。人は皆私のことを天才と言いますが…本当の天才、て言うのは加群さんや唯一さん、数多さん、幻生さん、脳幹ちゃん達みたいな人の事を言うんでしょうね』

 

『私なんて所詮は木原にとっての『凡人』、正しい研究者であれと自分で思っていても…木原としての性質なのか歪んだ考えや研究になってしまう。学園都市を守る為とはいえ何人もの人の心を折ってきたか…もう数えるのも馬鹿馬鹿しいくらいに他人の人生を壊してきました』

 

『私だって好きでこんな人生を歩んでるんじゃないんですよ、私は科学が好きですがこんなロクでもない研究がしたくて科学者になったんじゃない。もっと平和に…平和な世界を実現したかっただけなのに…どうしてこんなに人として歪んでしまうんでしょうねぇ『木原』て存在は…』

 

『結局木原は科学となんら変わりはありません。科学の本質とは生産ではなく破壊です。核兵器しかり、ダイナマイトしかり。科学は破壊の権化です。きっと木原もそんなんでしょうね。破壊する事しか出来ないから誰かを守りたい…そんな事は絶対に出来ない…そう思い知らされました』

 

そう嬉々とした顔で病理は語り出す、だが話の内容は彼女にとって喜ばしいものではない。『諦め』の道を極める為に彼女は何を犠牲にして、何を『諦め』、それでもこの道だけは『諦め』ずにいたのだろう?

 

『そんな時、私は数多さんの様に子供に能力開発をする事になりましてねぇ。私は何人かの少年少女の能力開発を担当する事になりました。その時に私が研究施設兼子供達に能力開発をする施設が立てられました』

 

『……それが、ここ』

 

『ええ、初めは面倒事を押し付けられたと思ったんですよね。子供の相手なんて疲れますし、面倒ですし…そう思ってましたよ。でも子供達と接する内にそんな考えは薄れ、子供達と触れ合うのがとっても楽しくなり始めたんです』

 

そう笑みを浮かべながら語り出す病理、それを黙って聞く垣根。帆風も話に耳を澄ませる

 

『私が能力開発を行った子は置き去り(チャイルドエラー)の子が殆どでした。知っていますか?置き去りを実験動物に非人道的実験を行う研究者はザラにいます……私は置き去り達を救いたいと思い、この施設を孤児院に変えました』

 

『私が引き取り、私が能力開発を行う事でその子達が凄い超能力を手に入れれば…もう迫害される事はないだろう…そう思って…そんな中、私が能力開発を行った子で凄い能力を発現した子がいました…それが帝督ちゃん。貴方です』

 

置き去り、入学費のみ払って子供を寮に入れ、その後に行方を眩ます事。学園都市に子供を捨てる親が後を絶たず、その為に研究者達の実験動物にされたり不当な扱いをされてしまう。そんな置き去りを病理は引き取り、自分が能力開発をして凄い能力を発現させればもうそんな不当な扱いはされなくなると思い、施設を孤児院にした。そんな中金の卵とも言える能力を発現したのが垣根だった

 

『帝督ちゃんは特別でした。私が能力開発した子の中では最優秀な子でした。数多さんの一方通行には負けてしまいましたが…彼に次ぐ程の貴重な能力…新物質による物質の創造。その能力に私は惹かれました』

 

『破壊が科学の本質というのならば…帝督ちゃん。貴方の能力は科学の理想(・・・・・)です。誰かを傷つける為の科学ではなくより良い世界を作る為の科学。そんな能力に私は希望の光を見つけたんです』

 

『科学を悪用してしまう木原である自分とは違い、能力(科学)を平和の為に使う事が出来る。そう思ったんです帝督ちゃんを見て』

 

そう綺麗な目で彼女はそう告げた。彼女の笑みは太陽の様に輝いている様に帆風は見えた。その顔には帆風が知る『狂人』木原病理の姿はない。どこか夢を見ている少女に思えた

 

『……俺はそんな大層な奴じゃねえよ。単なるカップリングが好きな変人だ』

 

『ええ、そうかもしれませんね。でも構いません。きっと貴方はその能力を悪用したりはしませんでしょう。きっと何かを守る為…自分がなすべき事を成し遂げる為に使う筈です。私はそう信じていますから』

 

『……過大評価過ぎるっての』

 

過大評価のし過ぎだと垣根は照れ隠しか病理から目を逸らした、そんな垣根を見て微笑ましく思う病理

 

『ふふふ、お手伝いありがとうございます帝督ちゃん。またお手伝い頼みますね』

 

『おう』

 

食器洗いを終えた後、垣根はキッチンから立ち去っていく。洗い物を終えた病理はそのまま、テレビがある大広間に移動する

 

『あ、病理センセー!この本読んで!』

 

『はいはい、いいですよ…ふむ、桃太郎ですか。これは何回も読み聞かせてますね…なら、特別に病理が即興で考えた桃太郎をお話ししましょうか』

 

『まじかよ!?即興でお話考えたの!?』

 

『聞きたい、聞きたい!』

 

『では…病理さん版桃太郎の始まり、始まり〜』

 

女の子が持ってきた桃太郎の絵本を見て病理は何回も同じものを読み聞かすのは退屈かと考え、即興で考えた新約 桃太郎を子供達に語る事にする。それを聞いて目を輝かせる子供達。そんな期待に溢れた子供達を見て病理は笑って物語を話し始める

 

『では、昔々ある所に桃太郎という筋肉隆々の身長2メートルを超える巨漢がいました。剣術家のお爺さんと少林寺拳法の達人のお婆さんに鍛えられながら育てられた桃太郎は、都を襲う鬼畜生供を退治すべく、ニホンオオカミ、ゴリラ、オウギワシを連れて鬼退治に…』

 

『『『凄えツッコミ所満載なんですけど!?』』』

 

そんなの桃太郎じゃねえ!とツッコミを入れる子供達、そんな子供達を見てくすりと笑う病理…そんな様子を見ていて帆風はつい頬を緩めてしまった

 

(今のあの人からは想像できませんわね…まさか、こんなにも楽しげな記憶があったなんて)

 

帆風は今まで病理は垣根の人生を狂わした血も涙もない狂人かと思っていた。だがこの記憶を見ていると単なる狂人ではないと思う様になった…そんな風に彼女が考えていると…世界が歪み、別の光景に変わり始めた

 

 

気づくと帆風は孤児院の外に立っていた、先程中にいた子供達は外でボールを蹴って遊んでいたり、鬼ごっこをしたりと遊んでおり、病理はそんな子供達を見て笑っていた

 

(……記憶の移り変わり、でしょうか?)

 

この光景は先程とは違う記憶だと帆風は直感で分かった

 

「……帝督さんは…いない様ですね」

 

帆風は垣根はいないのかと色々と見渡す、だが幼い頃の垣根の姿は見えない。ここにはいないのかと帆風は思い始めたその時だ

 

『あ!そこのお兄さん!私のボールとってくれませんかー!』

 

ボールがコロコロと転がり、コツンと白衣を着た男性の足に当たる。そのボールを蹴った少女がボールをとってくれとその男性に向かって叫ぶ。男性はそのボールを見て、ニヤッと笑うとボールを蹴り少女の顔面へと飛ばした

 

『あぅっ!?』

 

『『『!?』』』

 

『はぁ〜い、ちゃんと返してあげたよ。お兄さんは優しいからね〜』

 

そう不気味な笑みを浮かべて男性は笑った、突然の出来事に驚く病理と子供達。だがその動揺もボールが顔面に当たった女の子が泣き始めた事で何人かの男の子達が女の子へと駆け出す

 

『だ、大丈夫か!?』

 

『うぇえぇぇ…痛、い…痛いよぉぉぉ』

 

『お、おいおっさん!何しやがるんだ!』

 

『ん?返してて言ったから返してあげたんだよ』

 

痛みで泣く女の子を見ても、男の子に怒声を浴びせられても、その男はにっこり笑顔で自分何かしました?とでも言いたげな顔をする

 

『大丈夫ですか!?そこの貴方……!私の子供達になにを…!?』

 

病理が男性に怒声を浴びせようとした、だがその男の顔を見て病理は顔を固めてしまった。何故ならその男性のことを知っていたからだ

 

『………相似?』

 

『やあ、病理姉さん。久しぶりです』

 

その男の名は木原 相似(きはら そうじ)、病理の()であり、同じ研究者でもある男だ

 

『な、ぜ……ここに?』

 

『姉さんに会いに来たんだよ。でも、まさかこんな治安の悪い地区でこんなお子様の相手をしてるなんてね。僕も驚いたよ』

 

相似は子供達を一瞥し病理へと視線を向ける、病理は相似を軽く睨む

 

『ちょっと、怖いよ姉さん。なんでそんなに睨むのさ?』

 

『なんで、睨むの…ですか。貴方は、忘れたんですか?18年前、貴方が一人の少女を実験で殺したことを!?』

 

18年前、まだ十代後半だった病理は自分の当時の友人であった超能力者の少女がいた。彼女の超能力は珍しいもので、詳しい能力の詳細は不明だった。なので友人である病理とその弟 相似でその能力がどの様なものか調査していたのだ

 

だが能力の暴走を相似が誘発し、その少女は死んでしまった。病理は自分の友人の死を悲しんだ。だが元凶である相似はこう言ったのだ

 

 

『えぇ…あっさり死んだなぁ。まあいいか。新しい超能力者(モルモット)を探そっと』

 

 

彼は人の死など興味がなかった。この一件からだろうか、病理が彼を避ける様になったのは

 

 

『………あぁ、あの実験か。姉さんてあんなちっぽけな事をまだ気にしてたの?』

 

『ちっぽ………!?何を言ってるんです!命にちっぽけも何もないでしょう!?』

 

『チッチッチッ、甘いな姉さんは。僕にとってこの世には二種類の人間しかいないのさ。実験する人間か実験される人間。ね?シンプルでしょ?』

 

そう笑顔で言い放つ相似、その顔にはなんの悪意もかけらもない。子供の様な純粋な笑みを病理へと向けていた

 

『相似ッ……!!貴方は……!……いや、貴方にはなにを言っても無駄ですか…で、何の用です?』

 

病理は相似に何か言いたげな顔になるがこの弟にはなにを言っても無駄だと言いだしかけた言葉を飲み込む

 

『ああ、そうだった。どうでもいい話のせいですっかり忘れてたよ!実はさ、僕今度新しい実験に参加するんだ!』

 

そう楽しそうな顔で喋り始める相似

 

『『暗闇の五月計画』ていう置き去りを利用した計画なんだけどね、僕今度の主任になっるんだ!』

 

『それはおめでとうございます』

 

『うん、凄いでしょ!』

 

病理は興味なさげに返す、そんな態度をとる病理を見ても一切気にしない

 

『で、姉さんの所の置き去り…何人かくれない?実験サンプルは多い方がいいと思ってさ』

 

『…………は?』

 

相似が笑みを浮かべてそう言った、病理の顔から感情が消えた

 

『何を……言ってるんです貴方?』

 

『え?何その怖い顔?別にいいでしょ?置き去りなんて死んでもいい科学者に(・・・・・・・・・・・)とって丁度いい実験動物(・・・・・・・・・・)なんだからさ』

 

そうニッコリと笑って相似は言った、自分は何も間違ってことは言っていないのだとでも言う風に。まさに吐き気を催す邪悪、悪事を悪事と思わない下劣、畜生以下の外道である

 

『……帰ってください、私の子供達はそんな下らない研究に使っていいものじゃないんです』

 

そう冷たい声で病理は言い放った、それを聞いて相似は驚いた顔をし……何か失望した様に頭を振る

 

『……はぁ、姉さんはここまで腐ったのか。仕方ない今回は帰るよ、今回は……ね?』

 

そう言って白衣のポケットに手を突っ込みながら立ち去る相似、彼が完全に消えるまで病理は彼を睨み続けていた

 

『………せんせー、怖い顔してるよ?大丈夫?』

 

気づけば先程相似に顔面にボールをぶつけられた女の子に服の裾を掴まれていた。他の子供達も心配した目で病理を見つめていた

 

『……ええ、大丈夫です。怖がらせてすみません。病理さんは元気ですよー、おー!』

 

病理は子供達に心配をかけまいと、元気よく腕を上げる。それを見てクスクスと笑い始める子供達…そんな子供達を見て病理は笑顔を浮かべながら改めて決意したのだ。この子達は自分が絶対に守ると

 

(そう、今まで沢山のものを取り零してきた私だからこそ、もう絶対に取り零さない。この子達は学園都市の闇から…守ってみせる)

 

そう内心で固く誓う病理、そんな思いが帆風にも伝わってきた。この思いに偽りはないと理解した

 

(……なら、何故貴方は…帝督さんの友達を…?)

 

だから分からなかった、何故彼女が孤児院の皆に手をかけたのか。今の言葉に偽りはなかった、だが垣根の話では病理が孤児院の皆を殺したのだ。一体何があればこの病理が子供達を殺すのか…帆風には分からなかった。するとまた世界が歪み色が変わり始める

 

 

(また、記憶の移り変わりですか)

 

帆風が立っていたのは孤児院の入り口の前だ。病理は何処かに出かけるのかいつものパジャマではなくスーツを着ていた

 

『明日の朝には帰りますからねー、皆さんいい子で過ごすんですよー?』

 

『『『はぁい!病理先生!』』』

 

『任しときな病理姉さん、俺がこいつらの面倒を見るからよ』

 

『……帝督ちゃんが一番の心配なんですけどねぇ』

 

『ひでぇ!?』

 

『『『あはははは!!』』』

 

『うふふ、冗談です』

 

そう軽口を言って病理は手を振りながら車椅子を動かして孤児院から遠ざかっていく。口ではああ言ったが垣根は年の割にはしっかりしているし、料理を作れる子供達も何人かいるので然程心配していなかった…だが、何故か胸の中に少し不安が宿っていた

 

(……ま、気にし過ぎ…なんでしょうね)

 

そう思って病理は車椅子を進ませる、それが分水嶺だとは気付かずに

 

 

病理が行ったのは木原一族総出の宴会…というよりも研究成果の発表会の様なものだ。自分が能力開発した子供がどうなの、新しい論文がどうなのを無駄に長く語り合うつまらない時間だ

 

『はぁ、やっと終わりましたよ…あんな無駄な時間はもうこりごりです』

 

彼女はそう言って孤児院への帰路へとついた。腕時計で確認するともう朝の7時だった。もう全員起きている頃だろう

 

『皆さん、病理さんのお帰りですよ〜…て、あれ?』

 

病理が帰ってきたというのに誰も来ない、その後も何度もただいまと言ってみるが誰からの返事もない。何か嫌な感じがした病理は子供達の部屋を見回るがどの部屋にも子供達はいなかった

 

『……!?ゆ、誘拐!?い、いえ…そんな筈……いえ、まだ地下室を見てません…あそこにいるとは思いませんが…一応確認を』

 

病理は焦りつつも冷静を装い、地下室へと向かう。何故か地下室に近づく度に嫌な感じがするのだ。そして病理は地下室の対能力者用のテスト空間の部屋の扉を開け…目を見開いた

 

『こ、れは……一体?』

 

それは惨劇の光景だった、孤児院の子供達が全員無惨な死体となって転がっていたのだ。鮮血が白かった空間を染め上げ肉塊がゴミの様に散らかっていた…そしてそんな血生臭いグロテスクな空間に美しい天使の様な羽を生やした少年が倒れていた

 

『……帝督、ちゃん?』

 

その少年は垣根帝督だった、彼は病理が見たことのない羽を背中に生やしながら部屋の中央で死んだ様に倒れていた

 

『帝督ちゃん!なんですかこの状況は!?』

 

垣根からの返事はない、気を失っているのだ。そして病理が近づいて垣根に何か言おうとしたその直後だった

 

『いやぁ、その子凄いねえ病理姉さん。流石姉さんのお気に入りなだけはあるね』

 

『!?』

 

その声の主を病理は知っていた、そして理解した、この惨劇を作り出したのは…こいつだと。病理は顔を動かし後ろへと振り返りながらその男に呪詛の如き叫びを上げる

 

『木原ァ相似イイイイイイイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!!!』

 

『姉さん声を抑えてよ、煩いよ?』

 

木原相似は病理へとそう、笑顔を向けた

 

『貴方…何故、私の子供達に手を出したんです!?』

 

『いやさ、前に言ったじゃん。暗闇の五月計画で姉さんの子供を何人か貰いたいてさ。姉さんがダメって言ったから…じゃあ勝手に使わせてもらおうて思ったんだ』

 

そう笑顔で最低なことを抜かす相似

 

『まず手始めに、何人かの子供達を車の中に入れて第一位の演算パターンを無理やり植えつけて凶暴化させたんだ。ウチにも黒夜ていう問題児がいてさ…おっとそれは今はどうでもいいか。まあ、簡単に言えばそこの帝督君…だっけ?その子以外を全員洗脳してさ、その子に殺させようと思ったんだ』

 

『…!?何故です!?』

 

『だってこの子は第一位の一方通行の次に注目されてる第二位でしょ?なら、その子の精神をとことん追い詰めればどうなるかな〜て思ってさ。で、結果はその羽だよ。それと子供達全員死ねば姉さんも善人気取りやめて僕らと同じ世界に戻ってきてくれるかな〜て思ってさ』

 

つまりは、子供達が死んだのは全てこの男の自分勝手な理由ということか?そう思うと病理は全身から溢れんばかりの怒りが湧いた。こんな男に自分の子供達は殺されたのかと

 

『まあまあ、そんなに怒らないでよ姉さん。所詮は置き去りの命(・・・・・・)だよ?別に死んでもいいじゃん』

 

その一言がトリガーだった、病理は車椅子から鉈を取り出し車椅子を高速で移動させ相似の心臓めがけて身体に鉈を差し込んだ。肉を潰す感覚が鉈越しに伝わった。相似は口から血反吐を吐き出す

 

『グフッ………!?……ふ、ふふ。いいよ姉さん。その顔最高にいいよ』

 

血の繋がった実の弟を鬼神の如き怒りの形相で睨む病理、そんな姉の顔を見ても相似は笑っていた

 

『そうだよ、姉さん…姉さんには善人なんて似合わない…姉さんは狂ってるからいいんだ。そう、木原らしい姉さんは僕は好きだなぁ…』

 

そう、遺言を残す様に病理へと話しかける相似

 

『姉さんは人殺しだよ、そんな姉さんが誰かを抱きしめる権利なんてな…』

 

『もう黙りなさい』

 

病理は無感情に鉈を相似の身体から引っこ抜き、相似の首を切断した。弟の首が床に転がる…そして病理は気づいた。垣根が意識を取り戻し呆然と立ち尽くしている事に

 

『帝督ちゃん!?』

 

病理は鉈を投げ捨てて垣根に駆け寄る

 

『病理………姉さん、俺…皆を……この手、で…この翼で殺し……』

 

『しっかりしてください!貴方は何も悪くはありません!悪いのは……』

 

『違う、殺したのは俺…俺、俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺なんだぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!』

 

垣根はそう叫ぶと翼が更に巨大化し、周囲の空間が歪み始める

 

(これは……RSPK症候群!?)

 

能力者が自律を失い、自身の能力を無自覚に暴走させる現象(ポルターガイスト)。垣根は子供達を殺したトラウマと自信を責める過度なストレスによりRSPK症候群を引き起こそうとしているのだ

 

(これだけの規模をたった一人で!?)

 

そう病理が冷や汗をかく…このままでは第十学区が垣根の能力の暴走で崩壊してしまうと…だが、垣根は突然意識を失い、ピタッと能力の暴走も収まった

 

(……助かった?)

 

病理は垣根の脈を確認する、死んではいない。気絶しただけだろう…だがこのままでは垣根は子供達を殺した自責でまたRSPK症候群を起こしてしまうかもしれない…そのトラウマの記憶がある限り

 

『……ならそのトラウマの記憶を改竄(・・)するしかないですね』

 

ならばその記憶を改竄してしまいえばいい、と病理は一人で呟き垣根を両手で持ち上げ地下室のある部屋まで連れて行く…そこには学習装置(テスタメント)と呼ばれる機械がある。本来は技術や知識を電気信号として、脳に直接インストールする装置だが…病理はこれで垣根の記憶を改竄する気だ

 

『帝督ちゃんの記憶を改竄すればもうRSPK症候群は起きない筈……可哀想ですが、子供達の記憶を忘れ……』

 

そこまで言いかけて病理は学習装置を操作する指を止めた

 

(いえ…そもそも帝督ちゃん達は何故相似の下らない実験に付き合わされたのでしょう?)

 

病理は頭の中で思考する、何故こんな事になったのかと…そして一つの結論に辿り着いた

 

『……私のせいですか』

 

自分がいたから子供達は死ぬ羽目になった、自分が孤児院など開かなければ子供達は死ななかったのかもしれないのに

 

『……何が、置き去り達を助けたい…ですか…!全然助けてないじゃないですか!寧ろ助けられたのは私の方…!』

 

彼女は絶望した、結局自分には誰も助ける事が出来ないのかと…そしてベットの上に寝かせてある帝督を一瞥する

 

(…私と一緒にいればまた帝督ちゃんも危険な目にあうかもしれない)

 

それだけはダメだ、自分にはもう垣根しかいないのだから。だが自分に何ができる?何も守れない女に垣根を学園都市の闇から守れるのか?

 

(……全部『諦め』てきた私ですが…帝督ちゃんだけは『諦め』たく…ありません)

 

そう決意を固め、病理は学習装置を操作し直す。垣根の記憶を改竄し…二度と自分に関わらせない…いや、子供達を殺した犯人(・・)である自分を恨ませる為に

 

『……帝督ちゃんが殺した子供達は私が全員洗脳して帝督ちゃんを殺す様に仕向けました』

 

そう改竄した、敢えて子供達と過ごした記憶は消さないでおく。その方が病理に対する憎しみが大きくなるだろうから。それから色々と記憶を消したり改竄する。病理との楽しかった日々を…消去した

 

『……これでいい、私といると不幸になるのなら…嫌われればいい。なにせ私が子供達を殺した様なものですから』

 

そう彼女は笑った、相似があんな事をしたのも元は自分のせいだと思っていたから。なら、自分の罪を償う方法はただ一つ。垣根に殺される事だ

 

垣根はこの後学園都市の闇…暗部に身を堕とす事になるだろう。ならそんな闇の中でも負けない様に自分が憎悪の種になろう。復讐を果たすまで垣根はそれまで死なないだろうから

 

病理は泣いていた、自分の息子(・・)の記憶から病理と彼の楽しかった日々の記憶消す事に。だが『諦め』よう。それで息子が助かり、残酷な世界生き延びる糧になるのなら

 

『……結局、私も木原の宿命からは逃れられないんですねぇ』

 

そう悲しげに呟いてから、病理はボタンを押した。これで記憶の改竄が終わり…彼から病理との楽しかった日々の記憶が消される

 

『……さようなら帝督ちゃん』

 

そう涙を流しながら病理は車椅子を動かしながら地下室から立ち去っていた

 

 

これは彼女にとっての下らない人生における唯一暖かかった頃の思い出の終わり。この日、彼女は『優しかった母親』から『木原の狂った科学者』になる事を誓った。全ては…垣根帝督の為に

 

 

 

 

 

 

 




相似の事はまだよく分からないままなのでオリジナル設定で病理さんの弟にしときました。そしてこいつが全ての元凶。このシスコンめ!てか、縦ロールちゃんのセリフが殆どねえ(白目)

病理さんの暴走は良くも悪くも木原…だからでしょうかね。ていとくんに構ってた理由は単純明快、強くなって欲しいから。強くなって自分を殺して欲しいから。そんな歪んだ愛情故です

ん?色々設定とか展開がおかしい?安心してください、自覚はある。てか最近面接練習で忙しいから書く暇がない(白目)。少し更新が遅れるかもですがこれからも頑張るのでよろしくです!

次回もお楽しみに!


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さよなら

今回は病理戦決着です。縦ロールちゃんvs病理さんの最終決戦です。病理さんが最後にどうなるのか…是非お楽しみに

そしてこれは私事ですが……今週の火曜日に面接本番があるんですよ…うわぁ緊張するなぁ…てか、そろそろ面接合格しないとマジでヤバい…てな訳で頑張るぞ!




「こんな、事が……」

 

帆風は病理の記憶を…彼女の悲しい過去を、そして真実を知って涙を流していた。確かに病理は善人とは言い難い、加群の生徒を殺す為に罪もない男の子を洗脳し通り魔に仕向けたり、学園都市に何度も混乱を起こした。だがあの木原相似という男が子供達をあんな目に合わせなければ…彼女も狂わなかったのではなかっただろうか

 

「何故…この人は……」

 

帆風がそう言いかけた、その時だった。腹部に拳を突きつけられた様な激痛が走った

 

「かぁ……!?」

 

すると痛みと共に世界が消え始める、恐らく病理との電気的な回線が先程の激痛で途切れた事に

 

 

「かはぁ……!?」

 

帆風は地面を転がる、帆風は何が起こったのか分からなかったが空中に静止する病理の背中から一本の腕が生えているのを見て全て理解した

 

(放電を止める為、背中から腕を生やして腹部に突きつけ吹き飛ばした…そういう事ですか)

 

病理は左手で頭を押さえながら地面へと降り立つ、何故か苦しそうな顔をして帆風を睨む

 

「………潤子ちゃん、貴方私の記憶を見ましたんですか?」

 

「!?」

 

病理の言葉に驚きを隠せない帆風、病理は忌々しい顔をする

 

「……はぁ、今まで隠してた事が全部バレちゃったじゃないですかー。あのアレイスターでさえも知らなかった事なのにまさかバレてしまうなんて…病理さんうっかりです」

 

そうあくまで茶化した様な態度をとる病理だが今までと比べると少々余裕のない様に思える

 

「……質問、いいですか?」

 

「………どうぞ」

 

帆風は質問してもいいかと尋ね、病理は少し間を空けてから構わないと頷いた

 

「先程アレイスターさんも知らなかった…と言いましたがそれはどういう意味です?」

 

「簡単ですよ、子供達との楽しい時間を盗み見されない様に滞空回線を衝撃波で壊す装置を建物の中に配置してありましたから。滞空回線は衝撃や爆風に弱いですからね」

 

「…何故加群さんの生徒に通り魔を仕向けたのは何故ですか?」

 

「気に食わなかったんです、私と同じ様な事をしてるのに私と違って挫折しない彼に。だから彼も私が味わった絶望を与えようとしたんです…まあ、帝督ちゃんに妨害されましたが」

 

「何故学園都市を襲ってきたんですか?」

 

「憎かったんですよ、子供達か殺される間接的な原因になった学園都市が、置き去りを利用して実験を行う学園都市が許せなかった」

 

「そうですか…では最後の質問です」

 

いくつか病理に質問する帆風、そして最後に一番気にしていた事を質問する

 

「……貴方は……辛くなかったんですか?」

 

それが帆風が一番疑問に思っていた事だ、自分が元凶ではないのに垣根にわざと嫌われ、憎悪を向けさせ殺されようとしている…それが辛くないのかと尋ねる…そして病理はその質問に答えた

 

辛いに決まってるでしょう(・・・・・・・・・・・・)

 

そう病理は簡潔に言った

 

「帝督ちゃんと別れるのは辛かったです。本当は帝督ちゃんと一緒に過ごしたかった、でも、それではダメなんです…また、相似の時の様に私といれば不幸な目に合うかもしれない…それならいっそ恨まれた方がいい。その方がいいと私は『諦め』たんですよ」

 

そう悲しげな顔で病理は笑った。自分も他社も何もかもを『諦め』させてきた女の末路がこれだ。そう皮肉げに笑う病理を見て帆風は口を開いた

 

「……このお馬鹿さん!」

 

帆風は病理を睨みつけて大声で怒鳴った

 

「自分といればまた帝督さんが傷つく?そんなの憶測でしかないでしょう!そんな自分を悲劇のヒロインみたいにするだけの自己犠牲なんか要らなかった筈です!貴方が側にいて帝督さんの心の傷を治していく方法もあった筈です!」

 

「…………!?貴方に、貴方に何が分かるんです!その時の私の気持ちが貴方に分かるとでも言うんですか!?」

 

帆風のその叫びを聞いて、病理は一瞬目を見開き…即座に反論する為の口を開く

 

「子供達が死んだ原因である私といればまた帝督ちゃんが不幸になる!だから立ち去ったんです!」

 

「いいえ、違います!貴方は逃げたんです!自分の罪から!帝督さんの為と口で言いながらも、結局は自分の罪から逃げただけです!」

 

「違う!私は逃げてなんかいない!あれが、最適解だったんです!帝督ちゃんは私といれば、また不幸に…」

 

「自分の罪から逃げるなッ!!!」

 

「!?」

 

帆風の一喝が周囲に轟く、思わず病理が目を見開いて押し黙る

 

「貴方は逃げてるだけです!自分の罪からも、帝督さんからも!貴方がやっている事は全て八つ当たりです!学園都市を襲うのも、加群さんを意識するのも、女王達に手を出したのも…貴方の八つ当たりです!子供達を助けられなかった怒りを学園都市に向けて関係ない人まで傷付け、自分が子供達を助けられなかった怒りを同じく子供達と接している加群さんにぶつけ、帝督さんと本当は仲良くしたいのに自分の罪から逃げたせいで出来なくて、その怒りを女王達に向けた…貴方がやってきた殆どの行いは全て単なる八つ当たりなんです!子供の癇癪みたいな下らない行いなるです!」

 

「ーーーーッ!?」

 

病理が行なっていることは全て八つ当たりだと言い切る帆風、そこまで断言されて病理は何を言うのか悩む…だが病理は彼女が口を開くより先に喋り始める

 

「……ですが、貴方が帝督さんの為に動いているのは理解しています。行動こそ歪んでいますが…貴方の行動理由は帝督さんを思っての行動。それだけは…わたくしは素晴らしいと思います」

 

そう、いくら行動が歪んでいても、関係のない人を巻き込もうとも、その行動が尊敬できるものでないとしても…病理の今まで垣根にしてきた行いは全て垣根自身の為だった。そこだけは認めていると帆風は呟く

 

「だから納得できないんです、何故貴方は逃げようとするんですか?記憶を書き換えなくても…貴方が側にいれば帝督さんは暴走しない筈です…だって貴方は…帝督さんの母親なんですから」

 

「…………………………………私には、そんな資格はありませんよ」

 

帆風の言葉を病理は頭を振って否定した、自分にはそんな資格はないのだと

 

「貴方には分かりませんよ、私の気持ちなんて。ええ、貴方の言う通り私が側にいれば帝督ちゃんを救えたかもしれない…でも私にはそれができなかった…耐え切れたかったんです。貴方と違って…私は弱いんですよ。潤子ちゃんみたいに強くなかったんです」

 

自分には耐えられたかった、自分は帆風の様に強くなかった。だから仕方ないのだ、そう病理は言う…その顔はどこか儚げで哀愁が漂っていた…だが帆風はバッサリと切り捨てた

 

「それは言い訳ですよ病理さん(・・・・)、貴方はただ勇気がなかっただけです」

 

「………勇気?」

 

「ええ、貴方が一歩でも自分の罪を抱え込む勇気があれば…貴方はあんな決断をしなかった。自分が弱かったからではなく…貴方には勇気がなかった…それだけです」

 

強い弱いは関係ない、勇気があればそんな選択をとることなどなかった筈だと帆風は言った。ほんの一握りの勇気さえあれば病理は自分の罪を抱え込みながら垣根の心の傷を癒す道を選ぶことが出来ただろう…だが彼女は逃げたのだ、自分の罪の重たさに背負うことが出来ずに、安易な道を選ぶことで逃げたのだ。垣根からも、罪の重さからも、責任からも何もかもを

 

「結局貴方は心が弱かったから何もかも捨てて逃げ出した。全部貴方の自己責任、自業自得です。ですから自分を悲劇のヒロインみたいに言わないでください」

 

他者が聞けば冷たい言葉だと思うだろう、だがこれは正論だった。帆風は何も間違ってなどいないのだから

 

「……ふふ、厳しいですね潤子ちゃんは」

 

それを聞いて病理は自嘲地味に笑った、これが自分と彼女との差なのかと

 

「……確かに貴方の言う通りかもしれません。いえ、きっと貴方が正しいのでしょう」

 

そう病理は背中に展開した三対の黒い翼の内、四枚の翼を消す。そして彼女の身体に黒いラインが刻まれる。そして残った一翼の翼が巨大化し邪悪に輝く

 

「ですが、私は私が選んだ道を曲げるつもりはありません。間違っている?そんなのおかしい?それで結構。私は私が選んだ道を最後まで歩み続けましょう。例えそれが間違っていても、最悪の結果を生んでしまったとしても…これが私が…木原病理が選んだ道です。それを『諦め』たりしません」

 

それが彼女の答えだった、例え自分が選んだ選択が間違っていたとしても…もう今更選択肢を変えることなどできないし、するつもりもない。選んだのなら最後まで進み続けよう。その結果自分が死に、愛した者に最後まで憎まれ続けようとも…それが自分が選んだ道なのだから。それを茨の道とは思わない、自分がそんな道を選んでしまったのだから

 

「だから、手加減抜きで全力で殺しに来てください潤子ちゃん。今更同情して殺せないとかさむーい展開はなしですよ?」

 

「………それがお望みなら」

 

対する帆風も自身の背から展開されている虹色の翼を更に巨大化し、虹の輝きを増す。そして頭の上に七色に色を変える光輪が出現する

 

片や悪魔や堕天使を連想する漆黒に輝く黒き翼に身体中に悍ましい黒のラインが刻まれた病理()、片や丸で絵画に描かれし天使の如き美しい姿と美を超越した虹の翼を持つ帆風()…対称的な二人はお互いを睨みつけ…激突を始めた

 

「来なさい神の神秘(ラジエル)神の力(ガブリエル)!」

 

まず仕掛けたのは帆風からだった、彼女は天使崇拝(アストラルバディ)でラジエルとガブリエルをその身に降ろし、翼で飛翔しながら魔術による戦闘を行う。宙に現れし無数の魔法陣、そこから雷撃が迸り、火炎が放射され、暴風が吹き荒れ、大地は隆起し、吹雪が発生する超高等魔術が病理へと放たれ病理は音速を超える速度でそれらを回避していく

 

「甘い……ですわ!」

 

だがラジエルの天界の魔術はこれだけではない、レイヴィニアの召喚爆撃に似た光の大爆発や太陽よりも輝くプロミネンスの如き火柱、降り注ぐ流星群、次元ごと万物を裂こうとする斬撃波、意識を奪う魔の音色…十字教の様々な伝承を再現する神秘の一撃が病理へと襲う。一撃一撃がラジエルの魔術の膨大な知識とガブリエルの天体制御(アストロインハンド)で星々の配置を変え術式の強化を行う事で極限まで強化された一撃だ、たった一発で人一人を10回殺してなおお釣りがくる威力を誇る…だが

 

「甘いのはそちらですよ潤子ちゃん!」

 

病理は反転物質(アンチマター)により身体の構造を変え、恋査の様に他者の超能力を引き出す、一方通行の反射で魔術を逸らしながら病理へと迫り、ベクトル操作で強化された拳を彼女へと放つ

 

「ッ!?神を見る者(カマエル)神の監視者(ザフキエル)!」

 

それに対し帆風はカマエルとザフキエルを降ろす、ザフキエルの超スピードで拳を避けつつ、病理へと回し蹴りを放ち病理は翼でガードする。カマエルの身体能力の大幅な向上とカマエルの如き格闘術の修得、それに加えザフキエルの神速が加われば神速の格闘戦を可能とする

 

「はぁ!」

 

接近戦ならば聖人の一人や二人をも圧倒する力を宿した帆風はコンマ1秒で病理へと接近、その拳を思い切り病理へと叩きつける。それは丸で大砲の様な一撃。だが病理は翼を盾にし無数の羽根にしてばら撒く事で衝撃を拡散、もう一方の翼で槍の様に刺突し帆風は左腕で翼を殴りつけ粉砕する

 

「剛力ですねぇ…野蛮ですが力こそ全て。さっきの魔術と違って単純だからこそ対処に困りますねー」

 

魔術ならば一方通行の能力で反射すれば良い、だが帆風の拳は反射の演算を超える速度で拳を打ち込み無効化してくる。単純な強さ故対処が難しい…先程の魔術特化と違うベクトルで厄介だ

 

「ですが、この身体の前では無力です」

 

「ーーーッ!」

 

だが病理の身体は反転物質で構成されている、故に破壊されても即座に再生可能。しかも完全に消滅しても反転物質さえあれば何度も復活出来る。帆風もそれに気づいたのか新たな天使を宿す

 

神の正義(ザドキエル)神の如き者(ミカエル)!」

 

帆風が宿したのはザドキエルとミカエル、ミカエルは言わずとも知れる最強の天使、そしてザドキエルはあの堕天使アザゼルと同一とされるザフキエルを宿した。ザドキエルの能力は記憶に関する力だけでなく、アザゼルの人間に与えた叡智 武器や魔道具の創造の能力がある。帆風は数百の魔の武器を作り出し病理へと一斉に投擲する

 

「数が多ければいいてもんじゃないですよ」

 

病理はそれを翼で羽ばたき空を飛翔して避ける、帆風はそれを追尾する様に武器を投擲するが病理は悉くそれを避け、紫色の原子崩しを放つ。帆風はそれを作り出した鏡で反射。その隙に帆風はミカエルの炎の剣で病理を斬りかかる。病理は左手を大剣に変化させる事で帆風の剣を防ぐ

 

「なら、これなら……!」

 

ならばと帆風は左手を掲げ、空中に十数個の魔法陣を展開。そこから暴風や水流を放つ。ラジエルとガブリエルと比べると見劣りするがこれも強力な一撃で病理は左翼でこれを防ぎ、帆風は病理から距離を取る

 

「臨機応変に攻めて来ますねぇ…ですが、その能力はオールラウンダー系…つまり先ほどの二つより平均的に優れている分、何かに尖っていない。なら対処はしやすいです」

 

「……その様ですわね」

 

魔術特化のラジエルとガブリエル、接近特化のカマエルとザフキエル、器用万能のザドキエルとミカエル。どれも病理には通用しない…ならば

 

神の王国(サンダルフォン)神の代理人(メタトロン)!」

 

魔神としての帆風の名前でもある天使と垣根の魔神としての名の天使を降ろし、右手に巨大な剣を顕現させる。そして病理をサンダルフォンの力で結界に閉じ込め、メタトロンの力で結界ごと病理を光の杭で串刺しにしようとする

 

「!?くっ!」

 

病理は翼を繭上に閉じて光の杭から身を守る。帆風は右手の剣を天へと突き上げ空から無数の聖光を放ち病理を焼き尽くそうとする…だが病理は右翼の翼で聖光を防ぎ一方通行の能力で左翼が勢い良く羽ばたかれ竜巻が発生する。帆風はサンダルフォンの歌を歌う能力で自身の声を衝撃波に変える事で竜巻にぶつけ消滅させる

 

「まだ終わってませんよ!」

 

「!?」

 

病理は空へと飛び立ち、太陽を背にして帆風を見下ろす。そして反転物質の翼の隙間を抜けた太陽光が目に見えないレーザー光線となって帆風に降り注ぎ帆風の肌や服に所々傷を負う

 

「ッ!?」

 

「逃げても無駄ですよ、光からは逃げられない。私のレーザー光線は光の速度と同速。それに太陽が空にある限り攻撃から逃れる事は出来ません」

 

帆風は慌てて逃げようとするが光の速度からは逃げられない、この攻撃を防ぐには太陽が雲に隠れるなどして太陽が消えてしまわないといけないのだから

 

「でしたら…神の薬(ラファエル)神の栄光(ハニエル)!」

 

帆風が降ろしたのは癒しの天使 ラファエル、そして寵愛の天使 ハニエル。まずはラファエルの力で傷を治癒。更にラファエルを降ろした状態ならどんな怪我も自己再生出来る。そしてハニエルの五大元素を操る能力で地面を粘土の様に柔らかくし病理の身体に纏わせて拘束しようとするが病理はこれを反転物質の翼で振り払った

 

(……これは困りました、ラジエルとガブリエルの魔術戦も、カマエルとザフキエルの接近戦も、ザドキエルとミカエルの万能性も、切り札のサンダルフォンとメタトロンも決定打にならないとは…ラファエルとハニエルはどちらかというと攻撃的ではありませんし…弱りましたわ)

 

ラファエルとハニエルの能力は攻撃よりも、相手や味方の傷を癒したり、相手の気持ちを和らげ敵意をなくしたりなどの平和的な能力だ。攻撃には特化していない。ならばどうするかと帆風は悩む

 

「どうしたんです潤子ちゃん!?この程度で終わりですか!?そんな事じゃ病理さんは止められませんよ!」

 

そう叫ぶ病理、確かにこれでは病理を倒す事は出来ない。何故なら病理の肉体は反転物質で構成されており、病理自身は無尽蔵に反転物質を形成できる。この世から反転物質が一欠片も残さず消滅しない限り病理は決して死滅出来ないのだ。なら全ての反転物質を破壊すればいいだけの話…というわけでもない。もし学園都市以外の場所に反転物質を隠していれば何度でも病理は復活しまう

 

(なら一体どうすれば?周囲の反転物質全て破壊しても別の場所にあれば再び復活してしまう…どうすれば完全に病理さんを倒せ事が…)

 

そう、帆風が頭をフル回転して悩んでいた時だ。病理の身体に亀裂が走った

 

「おや………もう限界(・・)ですか」

 

そう何気もなしに病理は呟いた、だが彼女とは正反対に帆風は驚きの目を向ける

 

「な……!?限界とはどういう意味ですか!?」

 

「そのままの意味です。まさか未元物質を無制限に使えるとでも?」

 

「で、ですが貴方は言っていました!自我の崩壊は克服した、と!」

 

限界が来た、そう呟く病理。だが彼女は最初に出会った時言っていたではないか。自我の崩壊は防げる様になった、と

 

「あんなもの嘘に決まってます。まあ、1日や2日の連続使用なら大丈夫でしょうが…私の場合は全身を未元物質…いえ、反転物質で形成してますからね。もうそろそろ精神が自滅しそうなんですよ。いや寧ろ二、三ヶ月よく持った方ですよ」

 

最初から克服などしていなかった。ただ彼女は気合で精神の自滅を堪えていただけだ。全てはこんな所で死んでは垣根の成長に繋がらない、ただそれだけの理由で病理は精神の崩壊を防いでいたのだ

 

「……な、ぜ…それ程まで?」

 

「これも全て帝督ちゃんへの愛(・・・・・・・・)故ですよ。私の命なんてどうでもいい。私の命が帝督ちゃんの成長に繋がるなら…この命なんて捨ててあげましょう」

 

そうニッコリ笑う病理、やはり彼女は狂っている。全ては垣根の為に、彼女は自らの命を捨てようとしているのだから

 

「だから潤子ちゃんも私を殺す気でかかって来なさい。遠慮なんかいりません…でないと…死にますよ?」

 

「ーーーッ!」

 

病理は大地を蹴りつけ跳躍、音の速さで帆風へと接近、帆風は虹色の翼でそれをガード。大地を操って病理を拘束しようとするが病理はそれから逃れる

 

「……本当に戦うしか方法はないんですか?」

 

「ええ、もう私は助からないでしょうし…それに確かめておきたいんですよ。貴方に帝督ちゃんを任せていいのかどうか…とかをね」

 

帆風は何か言いたげな顔で病理を見つめるが病理はこれでいいのだと笑う、それに本当に帆風に垣根を任せられるかどうか確かめてとかねばならないと呟く。すると病理の翼が変形し紫の竜巻状の翼となる…それは一方通行のあの黒い翼と酷似していた

 

「な……!?」

 

「意外ですか?私が第三位のこの翼が使えるのに?今の私は第三位の能力の噴出点。この翼が能力の一部であるなら…使えない筈はありません」

 

そう言って病理は紫の翼を真横に振り回す、帆風は空へと飛び立つ事でそれを回避。周囲一帯の建物がそれだけで薙ぎ払われ破壊の限りを尽くす。だが病理は攻撃の手を一切緩めず紫の羽根をマシンガンの如く乱射。一枚一枚が帆風の肉体を裂く程の威力を秘めており、帆風は羽根を虹の翼を羽ばたかせる事で虹の羽根を飛ばし紫の羽根と相殺させる

 

「まだ終わってませんよ!」

 

「……ッ!」

 

紫の翼による横薙ぎに棍棒の様な振り下ろし、散弾の如き羽根の乱射、AIM拡散力場に干渉し帆風の身体に圧力をかける…様々な攻撃を仕掛ける病理。帆風はそれらの攻撃を巧みに避けていく

 

「ふふふ、言っておきますけど第三位の能力とは少し違いますよ?これは私なりのオリジナリティが加わってますから」

 

恋査の様に体の構造を組み替え、能力の噴出点として作用し能力を引き出す…だけではない(・・・・・・)。恋査と違い反転物質とその能力を融合させ更に能力を強化する。故に一方通行の黒い翼とは少し変質した能力と化している

 

「避けるのは上手いですねぇ…ですが、いつまで持ちますかね?」

 

帆風は全ての攻撃を回避し続ける、だが少しずつ傷を負い始める…その度にラファエルの力で回復していくがこのままでは時間の問題だ……帆風ではなく病理が(・・・)だが

 

(彼女の体は今でも徐々に崩壊へと向かっている…このまま逃げ続ければ自滅しわたくしの勝ちになります…)

 

そう、このまま帆風が病理から逃げ続ければ病理は自滅し死に至る。そうすれば帆風の勝ちだ…だが

 

(でも、そんな勝利は認めません。正々堂々病理さんが死ぬ前にわたくしが引導を渡してあげます)

 

だがそんな勝負の幕引きなど認めない、自分自身で病理を倒すと

 

(だから……わたくしも全身全霊で、貴方を倒させていただきます)

 

恐らく紫の翼は病理にとって最後の切り札の様なものなのだろう。ならば帆風も切り札を切らねば無作法というもの。故に帆風は二重の天使降ろしを超える切り札を発動する

 

「……天使達の完全体にして共有体たる隠匿されし神の真意よ、十のセフィラを掌握し、二十二のパスを通過し、三つの柱を超え、生命の樹(セフィロト)の深淵たる知識(ダアト)へと到達せん」

 

そう聖句を唱えた直後、病理の虹の翼の輝きが更に増した。その身に宿した天使は一体や二体などというけち臭い数ではない。聖句通りの生命の樹を守護する十体の天使達全てをその身に降ろす(・・・・・・・・・・)のだ

 

「……それが貴方の本気、ですか」

 

病理はそれを見て笑った、そして悟った、今の帆風は勝てないと。そもそも時間がもうない。あと十分と持たず自分の精神は崩壊し消滅するだろう…もう周囲にばら撒いておいた反転物質は消滅している…もう病理の負けは確定していた

 

(ですが、これだけは最後まで『諦め』ません。彼女なら安心して帝督ちゃんを任せられるか…見極める為には…手を抜く事など絶対に出来ないのです)

 

だがまだ終われない、帆風になら垣根を任せられると確信を得られるまで…病理は死ねない、死んでも死に切れない。例え幽霊などという非科学的な存在になってでも帆風が垣根に相応しいか見極めてやろう…ただそれだけを病理は考えていた

 

結局のところ、どれほど彼女が木原の性に飲み込まれ、狂人と化しても唯一変わらないものがあった。それが垣根への愛だ。それが歪んでいても、関係のない者を巻き込んだとしても、全ては垣根の為なのだ。何故なら彼女にとって垣根は守るべき存在だからだ

 

そんな彼女の思いに能力が答えた。何も窮地において強くなるのは主人公(ヒーロー)だけでない、時には悪も新たな力に開花する場合もある。今この時の彼女は、噴出点の元となっている一方通行よりも遥かな先に立っていた。病理の翼の色が変わっていく…紫から薄紫へと色彩が変化していく

 

「……さあ、これが最後の一撃ですよ潤子ちゃん。私か貴方…最後まで立っていた方が勝者です」

 

「ええ、望むところですわ」

 

帆風は右手に剣を顕現させる。その剣はミカエルの炎の剣とサンダルフォンの最後の剣、その他の天使達の権能を融合させた神秘の剣だ。対する病理は左右の薄紫の翼を大きく広げる。その翼には莫大なちからが込められており、一方通行や麦野の翼とは比較にならない力が収束している

 

両者は睨み合い、まるで西部劇のガンマンの様にいつ相手に襲いかかるか見定めている…両者は睨み合う。それが二人には永劫の時に感じた…だが、ふと風が吹き…それを合図に二人は一直線にお互いに突き進む。そして二人の身体が交差した

 

「……………………………ッ!?」

 

「…………………………………ふっ」

 

帆風の身体が斬り裂かれ、そこから血が吹き出し、思わず地面に膝をつく。それを見て病理は笑みを浮かべて帆風の方を向く…しかし、その笑みは勝利を確信した笑みではなく…自分の敗北(・・・・・)を認めた笑みだ

 

「………どう、やら…私の負け、みたいですねぇ」

 

そう呟いた後、病理の上半身と下半身を分けるかの様に上半身と下半身が吹き飛ばされた

 

「…………ふぅ」

 

帆風は汗を滝の様に流しながら一息ついた、予想以上に全ての天使を降ろすのに負担がかかった。暫くの間は天使が降ろせなくなるだろうし降ろせる時間も短い…病理との一騎打ちでなければ使用後の隙を突かれて死んでいただろう

 

「……成る程、これが『死』ですか。病理さんも等々死んじゃうみたいですねぇ。憎まれっ子世に憚るて言葉を体現してたこの私も死ぬ時は死ぬもんなんですねー」

 

下半身はそのまま消滅、上半身も下の方からサラサラと光になって消え始める。そんな自分の姿を見ても何処か他人事の様に喋る病理。そんな彼女の前に帆風が歩み寄ってくる

 

「合格です潤子ちゃん、貴方になら帝督ちゃんを任せられる……てな訳で帝督の事後は任せましたよ潤子ちゃん」

 

「……貴方に言われなくとも分かっていますわ」

 

「それと、これは多分ないと思いますが…もし、帝督ちゃんを悲しませたりしたら…地獄から這い上がってでも貴方に天罰を下してあげますのでくれぐれも帝督ちゃんを悲しませない様にしてくださいね?そうしないと…化・け・て・で・て・き・ま・す・よ?」

 

「……心へておきますわ」

 

そう言うと病理は憑き物が取れた様に孤児院にいた頃の優しげな笑みを浮かべる。そして空を見上げながら口を開いた

 

「………ねえ、潤子ちゃん。私の人生に意味はあったんでしょうかね?こんな『諦め』てばっかりの私の人生でも…何か意味が当たったんでしょうか?世界に何か残せたんでしょうか?」

 

「…ええ、貴方の人生には意味はありましたわ。貴方がいなければ帝督さんは未元物質を発現しなかったかもしれない。貴方がいなければ今の学園都市 第一位 未元物質 垣根帝督は存在しなかったかも知れません。確かにロクでもない人生だったかもしれませんが…確かに貴方の人生には意味はありました」

 

「そ、う……ですか……それなら良かった。私の人生は…無駄ではなかった。『諦め』てばっかりな人生でしたが…それも無駄、ではなかった…」

 

「ええ、決して無駄ではありません。それはそれはわたくしが認めますわ。だから、安心して消えてください」

 

自分の人生に意味はあったのか、と問いかける病理に帆風は貴方がいなければ今の垣根帝督はいなかったと返し、病理の人生に意味があったと肯定する。それを聞いて安堵したのか病理は涙を流しながら微笑む

 

「帝督ちゃん……どうか、どうか死んでしまった子供達の分まで…お幸せに…私の大事な、大事な息子」

 

そう病理は言い残して、病理は光となって消え去った。帆風の周囲に病理だった光が舞い散る…それを儚げに帆風は見つめていた

 

「…………さようなら、お義母様」

 

帆風はそう言って垣根のただ一人の母親の最後を看取ったのだった

 

 

 

 

 

「…………………」

 

垣根は娘々との戦いの最中にふと何かに呼ばれた様に首をある方角に向けた。その先には第十学区がある…そして垣根は無意識にこう呟いた

 

「…………………………病理(・・)姉さん(・・・)?」

 

何故そんな言葉が出たのか垣根にも分からない。なのに、何故か垣根は涙を一雫流していた。この感情が何なのか垣根には分からなかった。今も、そしてこれからもこの気持ちを理解する事は決してないだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 




最初の頃は単純な悪役として殺そうと思ってたのに…いつの間にかこんな役割になってたよ病理さん…やっぱ病理さんは悪役だけど敵キャラらしい魅力があるからかもしれない

そして次回は娘々との決着、こちらの方は短くなる予定。そして次回で反転物質編は終わりの予定です。てか早く1月になってとある科学の超電磁砲Tが見たいです

次回もお楽しみに!


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戦いの終わり

今回で反転物質編は終わりです、前半で娘々編終わり、後半は軽くギャグを添えて終わりたいと思います。そして今日は面接試験日…受かるかどうか…いや、マジで受からないともうヤバイんですよね(汗)。てなわけで大事な日だからこそ小説を投稿しました!

なお、今更ですが娘々の個人的CVは伊瀬 茉莉也さんですね、で■■■■■の個人的CVは武内駿輔さんで。さあ、反転物質編最終話どうぞ


帆風が病理との決着をつけた頃、垣根は何故か流れた涙を拭って娘々との戦いに集中する。娘々は仙人としての権能を行使し、数十人に分身しそれぞれが槍や剣を武器に襲いかかってきたり、形意拳で挑み掛かかってきたり、術式を展開したりと様々な力で襲いかかってくる

 

「あはは!どうしたの垣根帝督!こんなもんじゃないでしょ貴方の力は☆もっともっとわたしを楽しませてよ!」

 

「るせえぞこの戦闘狂!俺はテメェと違って戦闘狂じゃねえんだよ」

 

楽しげに笑う娘々に怒鳴る垣根、垣根は天罰術式で娘々達を昏睡させるのではなく動きを拘束、光の処刑で未元物質の素粒子から形成したギロチンで娘々 分身達を一掃。更に聖母の慈悲で魔神と似た様な力の出力を世界が壊れないギリギリまで引き出す。そして彼の右肩から生えた第三の腕に30から40キロはあろう巨大な光の剣を顕現させ、娘々へと振り下ろす

 

「おっと、中々の威力だけど…わたしは止まらないんだよなぁ」

 

娘々は無造作に足を蹴り上げ剣と激突、剣を蹴り砕いてから神速で垣根へと迫って垣根は繭状に翼を閉じ、娘々の正拳突きから身を守る。だが娘々はガトリング砲の如く拳打の連打を放ち翼を完全に破壊してしまう。そして翼の中から現れた垣根は一瞬で姿を消した

 

「およ?」

 

娘々がそれを見て何か思う前に彼女の顔面に右ストレートがめり込んだ。娘々は大砲の様に吹き飛び近くにあった建物を大破させながら瓦礫に埋もれた。右ストレートを放った垣根はニヤッと笑う

 

「成る程ね…これが『全能』か。こりゃトールが使いたがらねえ筈だ。あまりにも強過ぎるからな」

 

垣根が使用した術式はトールの「全能」という術式だ。対象との戦闘に絶対に勝てる位置に自動的に瞬間移動する術式、これを使えば大抵の敵に勝ててしまう…だが、そんな能力を持ってしても娘々は倒れない

 

「わぁ〜びっくりした〜。今のパンチは中々効いたぞ☆またゾクゾクしてきたよわたしィ」

 

娘々は鼻から血を流すだけでこれといったダメージはない様に見えた。鼻血を手で拭って自分の血を眺めて嬉しそうに顔を歪める娘々

 

「こんなに血を流したのはいつぶりかな?やっぱり戦いて最高だね!」

 

「……もうドM通り越していっそ清々しいな」

 

痛めつけられて、血が出ているのにそれを見て歓喜する娘々、それを見てドン引きする垣根。マジでなんなんだこいつと割と本気で垣根は思った

 

「さあ、行こうよ垣根帝督!更なる高みへ!わたしが負けるか、貴方が負けるか……究極の闘争と行こうぜ!」

 

「……このテンションにていとくんついていけないです」

 

テンションアゲアゲな娘々に呆れて頭を掻く垣根、どうにもこの魔神のテンションには流石の垣根もついていける気がしない

 

「ほら〜!行くよぉ〜!!」

 

娘々は指先を宝貝に変化、百どころか数万を超える武具となり垣根を穿たんとする。それに一本一本の硬度と斬れ味も前より段違いに上昇し、特殊効果が付加されている

 

「チッ!」

 

垣根は翼を広げ空へと飛び立つ、娘々も指先の方向を変え空を飛ぶ垣根へと武器の矛先を向ける。しかも武器の柄の長さが自動的に伸び射程範囲を広げてくる

 

「射程も変えられんのかよ!」

 

そう叫びながら垣根は第三の腕で娘々の全ての武器を一掃、破壊し弩を放つ。娘々は嬉々とした顔で弩の矢を拳で粉砕。更に垣根は未元物質でイギリス王家しか扱えない霊装 カーテナ=オリジナルを形成。全次元切断術式で娘々を斬り裂こうとするが娘々は本来防御不可な筈の斬撃を素手で破壊する

 

「霊装まで完全コピーか!でも、そんな玩具以下の道具じゃわたしは楽しませられないね」

 

「言ってろ!」

 

垣根はそう言ってカーテナ=オリジナルを戦乱の剣(ダインスレーヴ)に変化させる。そして位相のフィルターを斬り裂き、そこから北欧神話の炎巨人(ムスペル)の長 炎獄王スルトを召喚し、刀身七十メートルを越す燃え盛る巨剣を振りかざす

 

「甘いてば」

 

それを娘々は拳の衝撃波をスルトに当てるだけで撃破する。だが垣根は時間稼ぎの為、ギリシャ神話の全長100m以上を越す巨呪人 ティターンを、アステカ神話の10メートルを超える猫の身体にワニの頭部を持つ食人獣 オセロットを、聖書に登場する奈落の王 悪食王 アバドンを、黒髪から何十本の手が飛び出したドロドロの女性達 黒穢衆黄泉醜女、アーサー王物語に登場する白き獣 災厄獣 キャスパリーグ、ケルト神話の神殺しの邪龍 三日月龍 クロウ=クルワッハ…数々の災厄が襲いかかるが娘々はどれもたった一撃で消滅させてしまう

 

「来い。神の如き者(ミカエル)神の力(ガブリエル)神の薬(ラファエル)神の火(ウリエル)

 

垣根は戦乱の剣を投げ捨て、召喚術でミカエル、ガブリエル、ラファエル、ウリエルの四大天使を出現させ娘々へと襲いかからせるが娘々は虚空より一本の槍を取り出し、一瞬で四大天使をバラバラにしてしまう

 

「火尖槍、哪吒太子の獲物の一つである槍だよ。この槍結構扱いが良くてさ、重宝してるよ」

 

そうニコニコ笑いながら槍の穂先から炎を吹き出させる娘々、先程の青龍刀などの有象無象の武器とは格が違う。この火尖槍を名刀や名剣に例えるならば先程の武器全てはなまくらだ

 

「私が哪吒太子なら貴方は斉天大聖かな?さあ、そろそろ演舞も終劇(フィナーレ)と行こうか」

 

「だな、そろそろテメェとの下らねえ遊びに飽き飽きしてきたところだ」

 

娘々が火尖槍を構える、対して垣根は六翼を全て背中から切り離し、一本の白く輝く純白の槍へと姿を変える

 

「この槍ならテメェを倒すのに充分だろ?」

 

「へぇ……神様殺し(ロンギヌス)の槍の槍を擬似的に再現したのか…人の手だと千年経っても再現できないと思ってたのに…流石メタトロン。今の貴方なら十字教の全ての伝承を再現できるかもね」

 

「まあな、十字教関連なら大抵のことはできるだろな」

 

娘々はロンギヌスの槍を見て笑う、あの槍なら自分の身体を穿ち致命傷を与えるだろう。伝承では神の子が本当に死んだか確かめる為に突き刺した槍…それが起こした奇跡は数え切れない。ロンギヌスの目を治癒し、漁夫王に癒えぬ傷を与え、その傷をロンギヌスの槍のみが癒す、ヒトラーに未来を予知させるなどの様々な霊験を持つ…あの槍に突き刺さされれば娘々も無事では済まない

 

(まあ、だからこそ面白いんだけどね☆生と死の瀬戸際、それを肌身で感じるゾクゾクとワクワク感…堪んないねぇ!)

 

だがロンギヌスの槍に恐る娘々ではない、彼女は自分が下手をすれば死ぬかもしれないと思うと逆に興奮してしまった。そして舌舐めずりをし垣根へと火尖槍を構えたまま音速を超える速度で突進する

 

「ッ!」

 

垣根も同時に走り出す、同時に身体の構造を変化させ聖人や聖母、ワルキューレの身体的特徴を組み込む。それにより聖人と聖母の力を得て聖母の慈悲でその力を百パーセントで、同時にワルキューレの力も同時に扱える様にする。それにより音速を超える速度で走り抜け娘々と槍をぶつける

 

「はっ!」

 

「ーーーーーッ!!」

 

刺突、横薙ぎ、穂先からの炎…全ての攻撃を避け切ってロンギヌスの槍を娘々の身体に当てようとするが彼女の槍や拳に阻まれ傷一つつけることができない

 

だがこの槍は単なるロンギヌスの槍ではない、今の垣根は聖人以外にもワルキューレの要素も含んでいる。ワルキューレ、即ち北欧神話の戦乙女、つまり彼が持っている槍は主神の槍(グングニル)。その効果を発揮し天雷が、神火が、神風が娘々を襲うが娘々は火尖槍から噴き出る火炎で相殺してしまう

 

だがそれらの攻撃も全ては目くらまし、垣根は娘々の背後に座標移動で現れ死角をついて彼女を穿とうとする。だが裏拳が垣根の顔面に炸裂し垣根は吹き飛ばされ地面へと衝突する

 

「がはぁ!?」

 

「残念、読めてたよ」

 

娘々はそう言ってニヒルに笑う

 

「ほらほら、どうしたのかな!?槍の扱いへたっぴだぞ!そんなんじゃわたしには届かないよ!」

 

そうあくまで凄いのは槍、だが垣根の扱いがなってなければ意味がない。まさに宝の持ち腐れ…だが垣根は笑みを浮かべる

 

「ああ、そうだな。だがそれでいい。何せ時間稼ぎ(・・・・)になるんだからな」

 

「……?時間稼ぎ?」

 

娘々がそう首を傾げた直後だった、彼女の胸に光の杭が突き刺さった

 

「…………は?」

 

その杭は悪魔化の杭だった、悪魔化の効果が娘々の体内を侵食し魔力や魔神としての力が削ぎ落とされていくのを娘々は感じた

 

「…………いつの間に?」

 

「俺がロンギヌスの槍(こいつ)を形成した時にだ。この槍に注意を寄せれば悪魔化に気づかねえと思ってな。狙いは予想通り、まんまとテメェは嵌ってくれたよ」

 

「………成る程、こりゃ一杯食わされたか」

 

一本取られた、と娘々は頭を掻く。娘々は垣根が勝てるレベルまで力を削ぎ落とされた。火尖槍も先程までと比べると質が落ちている様に感じる…だが、それでも娘々は止まらない

 

「まあいいか、弱体化した状態で何処まで戦えるかも気になるし、続きやろうか!」

 

「……弱体化させられても笑ってるとか…もう尊敬するわ」

 

逆に娘々は弱体化してもどれだけ自分が強いのか気になり、笑顔で続きをやろうと火尖槍を構える。垣根は若干引きながらもロンギヌスの槍を構える

 

「ハァ!」

 

娘々は思い切り火尖槍を投擲、火尖槍が炎に包まれ炎の流星となって垣根へと音速を超えて迫る。垣根はそれをロンギヌスの槍で叩き落とす。その隙に縮地で垣根へと背後へと回り崩拳を放つ。垣根はそれをロンギヌスの槍で防御。しかし娘々は拳の連打を嵐の如くお見舞いし徐々にロンギヌスの槍に亀裂が走る

 

「なっ……!?チッ!」

 

垣根は座標移動で娘々から距離を取る、そして未元物質をロンギヌスの槍に供給し亀裂を修復する。更に垣根は娘々の足止めとして魔女狩りの王(イノケンティウス)を三体出現させる

 

「我雷公旡雷母以威声 五行六甲的兵成  百邪斬断 万精駆逐 急急如律令」

 

それに対し娘々は魔除けの雷法を唱える、魔除けとは即ち魔術破り、魔術殺しの一撃だ。娘々はその破魔の力を拳に宿しイノケンティウス達をたった一発の拳で消失させる。龍脈から力を得、消滅する筈がない筈だが娘々の拳はイノケンティウスと龍脈の縁すら破壊してしまった様だ

 

「……魔術殺しとか幻想殺しが泣くぞオイ」

 

「まあ、似た様な効果だけど…結局は魔術。幻想殺しに触れられたら打ち消されちゃうしね、でもまあ…面白いでしょ?これ使うの久しぶりなんだよ」

 

そう言って笑う娘々、彼女はにこやかな笑顔を浮かべたまま縮地で垣根に迫り、彼を殴りつけようとする…だが彼はそれを読んでいた

 

「神を磔にせよ」

 

その聖句を唱えると娘々は一瞬で光で形成された十字架に磔にされ、身動きが取れなくなった

 

「!?これはゴルゴダの十字架(The_ROOD)!?神の子を拘束した十字架を再現したの!?」

 

ゴルゴダの十字架は神の子を束縛した聖遺物、その術式はあらゆるものの束縛。そして神すら捕える神縛の霊装だ

 

(くっ……!?動けない…!これが…ゴルゴタの十字架の力…)

 

娘々は全身に力を込めるもゴルゴタの十字架はビクとしない。それもその筈、神の子さえ捕えた髪を拘束する術式だ。そう簡単に破られない。そして垣根は槍を構えある術式を発動する

 

「………これで決める」

 

神の子の処刑を再現した術式、効果としては天草式の聖人崩しに似ている。その術式の効果は読んで字の如く"神を殺す"。その槍に貫かれれば死に至るロンギヌスの槍の効力を全開放した術式 神子殺し(INRI)…それを身動きの取れない娘々へと矛先を向ける

 

「神子殺し!」

 

ロンギヌスの槍は雷光を纏う。そして垣根は一直線に娘々へと槍突撃(ランスチャージ)。雷光の速度で娘々の腹部をロンギヌスの槍で貫いた

 

「………ごぼっ!」

 

娘々は口から血反吐を吐く、弱体化した状態では絶えられる筈もなく娘々を完全に無力化した。彼女の手足がだらりと垂れ下がる。もう今の彼女では拳を握るどころか歩く事すら出来ないだろう

 

「安心しな、殺しはしねえよ。まあ、上里の野郎に頼んで新天地には送るがな」

 

「…………ふふ、ふふふ」

 

「あ?」

 

娘々は急に笑い出した、垣根が目を細める。もしや、まだ戦う力を残しているのかと垣根と疑い冷や汗を流しそうになるが…

 

「……ふ、ふふ…あははははははは!!あひゃひひひひ!…あ〜〜久しぶりだよ!負けた、負けた!これが敗北の味!すっかり忘れてたよ!いやぁ〜今日はいい戦いができたし、敗北も味わったし…全く学園都市は最高だぜ☆」

 

「……やっぱドMだろテメェ」

 

「安心して、自覚はない」

 

敗北して喜ぶ娘々、それを見てドン引きする垣根。娘々は垣根の言葉をパクってケラケラ笑う

 

「まあ、でもわたしィ、素直に捕まる気はないんだよねぇ」

 

そう娘々は呟く、すると彼女の足元から黒い液体の様な触手が湧き出てきた

 

「!?」

 

思わず垣根は後ずさる、その気色の悪い液体を見て本能的に逃げてしまったのだ。その液体は娘々を拘束していたゴルゴタの十字架を溶かし、液体が人型となり一人の青年が現れる

 

「……負■た、よ■だな娘々」

 

「うん、負けちゃったよ。でも面白かったからわたしは大満足☆」

 

「そう■、それは■い事だ。僕も…ソフ■クリームの食■歩きは終わった…美味■かった」

 

所々奇怪なノイズが青年の言葉に走っていた。まるでこの星の言語ではない様に

 

「……テメェも魔神か?」

 

「………■うだ、魔神……クトゥルフ。それが■の名前…今■はこれで……失礼す■」

 

「逃すと思ってんのか?」

 

その青年…とある神話の最高神とも司祭とも言われる宇宙から来たりし邪神と同じ名を持つ魔神。彼は動けない娘々を抱えてその場から去ろうとするが垣根はロンギヌスの槍を元の未元物質の六翼に戻し、ブーメランの様にクトゥルフへと投擲する

 

「■駄だ……」

 

クトゥルフは右手を無数の悍ましく名状しがたい触手に変貌、その見ただけで正気を削り取りそうな触手は未元物質の六翼を容易く弾き返す

 

「こち■は…敵意が…■いのに…まあ、■々と戦っ■後で■…仕方■いか…」

 

そう陰気な口調でブツブツと喋るクトゥルフ。彼は左手も触手の腕に変え鞭の様にしならせ垣根を攻撃、垣根はそれを未元物質の翼で防御。その隙にクトゥルフは自身の周囲の地面から黒い液体を溢れ出させる

 

「さら■だ、垣■帝督。また君とはいずれ会うだろう…その時は敵で■なく、味■か、■しく■敵のどち■かだろ■が……な」

 

そう言うとクトゥルフは娘々と共に黒い液体に包まれ…そして黒い液体が消えるとそこには誰もいなかった

 

「……逃げられたか」

 

そう呟く垣根、だが娘々は取り敢えず退けた。また学園都市に来るかもしれないがあれだけの傷を与えればすぐにはやっては来ないだろう。後は病理だが…そう考えていると携帯が鳴り始める…通話相手は帆風だ

 

「……こりゃ心配する必要はなかったかもな」

 

そう微笑んでから垣根は電話を耳に当てた…そして電話越しに帆風が伝えてきた言葉は彼が考えていた通りの言葉だった

 

 

 

こうして一人の科学者と一柱の魔神が起こした騒乱は幕を閉じた。魔神は重傷を負い敗退、科学者は死んだ。そして科学者の真意とたった一人の少年に注いだ愛情はたった一人の少女を除き誰も知る事はなかった

 

 

 

 

一端覧祭 当日。垣根と帆風は一端覧祭を二人で歩き回っていた。

 

「たこ焼き二つ」

 

「あいよ」

 

垣根がたこ焼きを作っている学生にたこ焼き二つを注文し、学生は手際良くパックの中に焼き立てのたこ焼きを入れてパックを輪ゴムで縛り垣根に手渡す

 

「潤子も食べる?」

 

「……ええ、頂きますわ」

 

帆風は病理の事を垣根に話していない、病理が消滅したとだけしか言っていない。彼女の秘密や垣根の過去を改竄した事などは一切彼には教えていない。何故帆風が垣根に真実を教えないのか、それは病理がそれを望んでいない様に帆風は思ったからだ

 

(……貴女の秘密はわたくしが一生秘密にしておきます…)

 

垣根(最愛の人)にもこの事を言う事は一生ないだろう。それを病理は望んでいないから。だから帆風も絶対に誰にも言わない。彼女の真実を知っているのは自分一人で充分だろう

 

(ですからご安心を、貴女の爪痕はわたくしの中で刻んでおきますわ…いつか世界から貴女の爪痕が消えても…わたくしだけは覚えておきますわ)

 

そう帆風は誓った、今亡き垣根の義母(はは)の事を決して忘れないと。だから彼女は心の中で病理が安心して眠れる様に祈った

 

(それと…貴女との約束も守りますわ、わたくしは一生帝督さんと添い遂げます…だから、化けて出たりしないでくださいね)

 

彼女は笑った。もし垣根とほんの些細な喧嘩をしただけでも化けて出てきそうだな、と。幽霊などオカルトを否定する筈の科学者がオカルトになるとか笑い話だが病理の場合マジで化け物な為全然笑えないのだから

 

「ん?食ってねえじゃん?なにダイエット?体重気にしてるお年頃?大丈夫、大丈夫。潤子は栄養が全て胸に行ってるから」

 

「ぶん殴ってもよろしいですか?」

 

でも、セクハラ発言してくる彼氏を殴る時は勘弁してほしい。帆風は体重を気にしていた。女には彼氏にローキックせねばならぬ時もある

 

「いてて…いや、なんか一周回って気持ち良くなってきた」

 

「…………」

 

少し気持ち悪い事を垣根が言ったが帆風は無視してたこ焼きを食べる。普通に美味しい

 

「そういや常盤台は何やってんの?」

 

「確か……メイド喫茶だったような」

 

「メイド喫茶ね…常盤台てお嬢様ばっかだから似合ってんだろうな…あ、因みに俺の高校は男女逆転喫茶な」

 

「……女性の方が男装をするのはまだいいですが…男性が女装するのはちょっと…」

 

「因みに一方通行はセーラー服着て鈴科百合子になってるぞ、なおツッチーはメイド服、青ピはピョン子の着ぐるみを、当麻は常盤台の制服を…因みに当麻の奴案外ノリノリでさ、制服はみさきちの、ブラジャーはミコッちゃんの奴着てニヤケ顔だったなあのオカマ野郎」

 

「……………ないですね」

 

「……………ないな」

 

取り敢えず上条は二人の中で変態認定を受けた、当然である。なお一方通行はクラスメイトの女子陣に「私らより可愛いじゃねえか!ぶっ殺す!」と半殺しにされた。土御門は足毛を剃らずにメイド服を着たのでクラスメイトの男性陣に窓から投げ捨てられた

 

「……では帝督さんも女装するんですか?」

 

「いや。俺学校有給取るからしないよ。だからこうして潤子と一緒に暇を潰してんだよ」

 

「……サボりですか?」

 

「サボりじゃねえ。サボタージュだ」

 

サボタージュ、つまり怠ける事、つまりサボりである。この男、一端覧祭が終わるまで学校に行かないつもりである。何故なら女装したくないし、女装した変態共を見たくないからだ。なお、男女逆転喫茶を提案し無理やり押し切ったのはこの男である、なのに発案者は参加しないのである。まさに外道

 

「で、潤子は?潤子のメイド服なら見てみてえんだけど…あ、堕天使エロメイドみたいな色物じゃなくて普通のメイド服な」

 

「いえ…わたくしはメイド喫茶には参加いたしません。どうにも帝督さん以外の殿方にその様な姿を見せたくありませんので」

 

「成る程、サボりか」

 

「サボりじゃありませんわ、サボタージュです」

 

因みに帆風もサボタージュであった。なおメイド喫茶の発案者は美琴と食蜂である

 

「しかし残念だな、潤子のメイド姿見て見たかったのに」

 

「それならいつでも帝督さんだけに見せてあげますわ。わたくしは帝督さんだけのものですので」

 

「………不意打ち」

 

垣根が帆風のメイド姿が見たかった、と呟くと帆風は満々の笑顔で垣根だけに見せてあげると告げる。垣根はその笑顔を見て帆風から目を逸らした

 

「でも、メイド服が似合うかどうかは分かりませんよ?」

 

「何言ってんだよ、似合うに決まってるだろ?潤子が着ればどんな布切れでもお姫様のドレスみたいに見栄え良くなるんだからな。所詮服は服だ。着る奴が可愛ければどんな服を着ても可愛くなるんだよ。なら大丈夫だろ、だって潤子は世界一の彼女だからな」

 

「……そういう所ですよ、帝督さん。そういう所ですよ」

 

「ん?なんか言った?」

 

「……いえ、何も」

 

今度は垣根が帆風なら何を着ても可愛いから絶対に似合う。そう真顔で歯の浮くようなセリフを呟き、今度は帆風が垣根から目を逸らした

 

「で、次は何処に行くお姫様?」

 

「ふふ、では次はここに行きましょうか王子様」

 

そう言って手を繋ぎながら楽しげに笑い合って歩く二人、こうして二人は一端覧祭を楽しんだ。そして一端覧祭が終わった後クラスメイト達にサボった罰としてラリアットを喰らったのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回は少し短めでした、次の投稿日は未定です。少し遅れるかもしれませんがなるべく早く投稿します

そして次回の章は「英国異変(イギリスパニック)編」になる予定です

「ようこそ、私のイギリスへ。招待するわ」
最大主教(アークビショップ)』ーーーーイギリス清教を支配する女 ローラ=スチュアート(コロンゾン)

(まさか、コロンゾンと敵対する事になるなんて…死亡フラグ立ちまくってるんですが)
『人工悪魔』ーーーー邪悪の樹(クリフォト)なぞり形成された悪魔
クリフォパズル545

「……まさか、こんな形で戻ってくる事になるなんてね」
『禁書目録』ーーーー10万3,000冊の魔道書の知識を持つ少女 インデックス

「……僕が君を守る、命に代えてでも。だから安心してくれ」
『炎の魔術師』ーーーー愛した少女(インデックス)を守る者ステイル=マグヌス

「立て少年!お前は彼女(インデックス)を守るのではなかったのか!?」
『謎の男性』ーーーーステイルを叱咤する男 謎の男

次回もお楽しみに!


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第十一章 英国異変 編
ハロウィン?日本人ならお盆でしょ


今回はハロウィン回です(今更)、いやもう過ぎとるやないかい、というツッコミはなしで。なにせ反転物質編を書いてたから書く暇がなくて…てな訳で今回はカオスなギャグ回です

因みに登場人物達の仮装は全員元ネタがあります(主にとあるのゲームでのそのキャラの仮装、中の人ネタ)。なお縦ロールちゃんだけは筆者のオリジナルで元ネタはドラクエ8の装備品だったりします


ハロウィン…本来は古代ケルト人が秋の収穫を祝い、有害な精霊や魔女、悪霊などを追い出す宗教的な意味合いのある行事だったが今では子どもたちがお化けに仮装して近くの家々を訪れてお菓子を貰う民間行事と化している

 

魔女やお化けに仮装した子供たちが近くの家を1軒ずつ訪ね、「トリック・オア・トリート(Trick or treat)」と言う。「お菓子をくれないと悪戯するよ」と言う意味で、お菓子を貰い、菓子がもらえなかった場合は報復の悪戯をする…そんな行事だ

 

そして近年では子供達だけでなく大人もハロウィンで仮装し、子供の様に楽しむ様になった。それは科学サイドである学園都市も例外ではない。10月31日、今宵は誰もが童心に還って楽しむ日である

 

 

 

『トリック・オア・トリート!お菓子くれなきゃデストロイするぞ!』

 

「の、ノリノリだな君達…」

 

第七学区のとある研究者が済んでいる家にて、その家の玄関で複数人の声が聞こえた。普通なら子供達がお菓子をねだりに来た微笑ましい光景なのだろうが…お菓子をねだりに来たのは全員中、高校生くらいの年代だったのだ。しかも全員気合を込めた仮装をしてノリノリで叫んでいるのだ。流石の研究者も若干引き顔である

 

「……皆さん、気合十分ですわね…」

 

「だな」

 

そんなノリノリでハロウィンを楽しむ上条達を見て苦笑する帆風と冷めた目を向ける垣根。二人は上条達の同類と思われたくないからか少し距離をとっていた。その研究者…天井亜雄(あまい あお)は引きながらも上条達にお菓子を渡す。因みにお菓子はマドレーヌだった

 

「済まねえな天っち、あの馬鹿達見て驚いただろ」

 

「い、いや…そんな事は……あるが、まあ、ハロウィンは子供達が楽しむ行事だ。超能力者達も子供なのだからはしゃぐのは突然…だが、迷惑はかけるなよ?」

 

「分かっておりますわ。もし、女王達が暴走したら殴り倒してでも止めますので」

 

二人は天井に頭を下げながらお菓子を貰う、因みに天井は自宅にニート科学者(吉川 桔梗)という同棲相手と言う名の寄生ニートが勝手に住み着いて追い出さずにいる苦労人である

 

「しかし、君達も気合が入った仮装だな。吸血鬼と魔女か…うん、似合っているぞ」

 

「まあな、これ作るのに結構時間かけたからな」

 

「お褒めの言葉ありがとうございます天井さん」

 

垣根の仮装は吸血鬼を模したもので、黒いマントに洋風の服装をした姿。帆風は魔女をモチーフにした黒と紫を基準とした服を着こなし、魔女らしく黒いとんがり帽子とマントを着ている。垣根も帆風も美少年と美少女な為、絵に描いたように似合っている

 

「……まあ、似合っていると言う意味では彼らもそうなのだが…だが、なんと言うか…まあ、うん…楽しんであるようで何よりだ」

 

天井はそう言って上条達を横目でちらりと見る

 

上条の仮装は日本の角が生えた装飾品を頭につけ、上条には似合わない黒い和服を着て懐に日本刀(ド○キで売ってた850円のプラスチック製の玩具)をつけた鬼の仮装。美琴の仮装はジャック・オー・ランタンを模しているであろうオレンジを主体とした魔女らしいドレスで頭には小さなとんがり帽子を被っている。食蜂は小悪魔の仮装らしく紫のドレスに小悪魔の羽を模した髪飾りをつけており、美琴と食蜂はペアルックなのか同じカボチャのお菓子入れを片手に持っていた

 

一方通行は地獄の番犬 ケルベロスを参考にしているのか黒いケモ耳をつけ、獣の爪を模したグローブを装着しトゲ付きの首輪をつけている。麦野は少し過激なチャイナドレスを着て、肌の所々を露出し頭にお札を貼っていた。恐らくはチョンシーだろう…だが何故か頭にはうさ耳をつけていたが…きっと浜面狙いだろう。そして削板は白い布を被っていた。そしてその布には眉毛と目だけが書かれていた。お前は何処のメギュド様だ

 

「……恥ずかしい」

 

「……ですね」

 

垣根と帆風は頭を抱える、こんな恥ずかしい格好の奴らと一緒にハロウィンを回らなければならないのかと。なお二人は二人だけで回ろうとしたが馬鹿共に捕まって現在に至る

 

「ハロウィンか……私は勉強ばかりしていたからそんな浮ついた行事に参加していなかったが…ふ、若い内にしておけば良かったな。いい歳したおっさんが仮装しても悲しいだけだ」

 

「……なんか、ごめん」

 

「いや、いい。ハロウィンを精々楽しんでくるといい。楽しむのも子供の仕事だからな」

 

自分も若い頃にハロウィンに参加しておけば良かったな〜と呟く天井、垣根と帆風はもう一度天井に頭を下げてから別の家にお菓子を貰いに行こうとする上条達の後を追っていた

 

「………さて、私も仕事の続きをするか」

 

天井はそう言って玄関の扉を閉めると応接間でやり残した仕事の続きをしようかと応接間に入る、そして応接間にはソファーにだらしなく寝転がったままNintendo ○witchで遊ぶ芳川(引きニート)がいた

 

「あ、ご飯まだ?」

 

「……………」

 

そろそろ本気でこいつ東京湾にコンクリ詰めで沈めたろかな、割と本気で天井はそう思いながら青筋をピクピクさせて芳川を見つめていた

 

 

 

「おい、この先の路地裏は立ち入り禁止じゃんよ。引き返すじゃん」

 

「こら!お前達それ以上の暴走は行かんぞ!演出の為に能力は使うな!」

 

「ちょ、ちょっとそこの貴女!流石に露出が過ぎますよ!」

 

ハロウィンは誰もが羽目をはずす日である。その為ついうっかり気が緩み過ぎて暴走してしまう学生がよくいる。しかもここは学園都市、能力者の街だ。金属バット振り回してヒャッハー!するのならまだいい。だが演出の為に発火能力がファイヤーして建物が炎上したり、電撃使いがスパークリングして何人か黒焦げになったり、水流操作で辺り一帯がびしょ濡れになったするのが学園都市のハロウィンの事件だ

 

だからこんな時に羽目を外さず、警備をし注意をするのが警備員の役目なのである。彼らは学生達に注意を呼びかけながら街を歩き暴走していないか監視しているのだ

 

「はぁ〜たく、羽目外しじゃんよ。まあ、楽しみたい気持ちは分からなくはないけど…」

 

「それにカップルが多いですしね…ふ、独り身の私には爆発して欲しいですよ」

 

「全くだ……これだかハロウィンは面倒なんだ」

 

そう溜息混じりで呟く黄泉川と鉄装、高梁。子供達が毎年のように暴走する為かもういい加減にしろと内心思っている

 

「てか、ハロウィンてなんじゃんよ。日本人ならお盆じゃん。イースターだのクリスマスだの…全部外国ばっかじゃん」

 

「あ〜私も彼氏欲しいです」

 

「早く仕事終わらして飲みに行きたい」

 

そうハロウィンなのに夢のない事ばかり言うダメな大人達

 

「あ、黄泉川先生。ハロにちわです」

 

「お、上条じゃんか。それとハロにちわてなんじゃんよ」

 

「ハロウィンでこんばんわ、略してハロにちわ」

 

「こんばんわの要素は何処行ったじゃん?」

 

「お空の彼方に」

 

「取りに行ってこい」

 

「あ、これ金平糖です。お星様みたいでメルヘンでしょ」

 

「ありがとうございます」

 

「関西のおばちゃんかお前は」

 

こんな風に軽くトークする上条と黄泉川、 垣根は鉄装と高梁に金平糖を配る

 

「お前らも仮装凄いじゃん。でも羽目は外し過ぎるなよ?お前らが暴走したら私らじゃ止められないじゃん」

 

「分かってる、暴走しねえように俺が見張っといてやるよ」

 

黄泉川は垣根達にも一応注意してから、また何処かのパトロールに立ち去っていく

 

「なあなあ、次は何処に行く?」

 

「慌てないで先輩、ちゃんと貰える場所は特定済みよ」

 

「もし仮に貰えなかったら、この腐った卵とペイントボール、こやし玉を投げてやるんだゾ☆」

 

「女王……いたずらにしては度が過ぎますわよ」

 

食蜂はにへーと笑いながら用意しておいたいたずらグッズを見せつける。悪戯小僧もびっくりなレベルの悪質さである

 

「お、あそこにいンのは神裂の野郎じゃねえか?」

 

「お、本当だにゃーん。おおい!神裂ぃ〜!」

 

削板が神裂を見つけ麦野が大声で彼女を呼ぶ

 

「あら、貴方達もハロウィンに参加していたんですね」

 

「まあな……て、ねーちん普段通りの格好じゃねえか。なんで?」

 

「……インデックス達にこのまま姿で充分仮装になってる、て言われました」

 

「それ遠回しに普段から仮装してるて事ですわね」

 

神裂ら仮装などしなくても年中痴女ってるなら仮装しなくても大丈夫。それがインデックス達の考えである

 

「で、インデックス達は?」

 

「ああ、あそこでお菓子を貰っていますよ」

 

そう言って神裂はある場所を指を指す。そこにいたのは…

 

『トリックオアトリート!お菓子くれなきゃ術式をぶち込むぞ!』

 

「はい、お菓子だよ」

 

白いドレスに白い猫耳、肉球、尻尾をつけた猫耳シスター姿のインデックス。黒い軍服に腕章をつけたステイル。風斬は白い和服に天冠をつけ死装束の格好をした幽霊の仮装だ。黒子は歌舞伎の黒子の黒い衣装の格好をし、フロイラインは頭部の後ろにでっかい唇の飾り物をつけ、佐天は豆腐を片手に持っているだけ、初春は頭にビオランテのソフビを置いていた。約3名おかしいのがいるが気にするな。なお三馬鹿弟子ことメアリエ、マリーベート、ジェーンはいつもの魔女の服装だ

 

「…割と普通だな」

 

「普通ですわね」

 

そう呟く垣根と帆風、するとインデックスがこちらに気づき駆け寄ってくる

 

「あ、ていとく達!見てみてこんなにお菓子が一杯なんだよ!」

 

「凄いじゃない!私達もこんなけ貰ったのよ!」

 

「おお、君達も結構貰ってるね。ふむ、ではどちらがどれだけ捉えるか競争してみないかい?」

 

「お、いいじゃねえかそれ!負けねえぞ!」

 

「じゃあ、勝負しませんこと?わたくしとインデックス達さんチームとお姉様達チームでどちらが多く貰えるか競い合いませんか?」

 

「ふふふ、まあ私達の友情力と予め何処から多く貰えるか計算済みなリサーチ力には勝てないでしょうけどねぇ〜」

 

そう楽しげに会話する上条とインデックス達

 

「どう、兄さん。幽霊らしい?」

 

「うん、幽霊ぽいぞ(まあ、幽霊みたいなもんだからな氷華は)」

 

「じゅんこ、見てください。二口女です」

 

「…女王達と比べるとお粗末ですが…似合ってますよ」

 

「じゃじゃーん!私は豆腐小僧です!(言えない、コスプレ用意出来なくて苦し紛れで豆腐持ってるだけで言えない)」

 

「私は英理加さんです。因みに今回の頭飾りは全て薔薇にしてあります」

 

「……取り敢えず佐天は仮装舐めてるのかにゃーん?そして花飾り、お前はどう見てもビオランテだ」

 

「「「で、どうですか私達の格好は!?」」」

 

「もっと根性出して学園都市を周り尽くしてお菓子を貰うぜ!」

 

「「「え!?全員スルー!?」」」

 

そう楽しげに会話するインデックス達と垣根達(約3名無視されているが気にするな)

 

「で、オマエのその仮装はなンだ?」

 

「ん?僕の仮装かい?ベイ中佐に決まっているだろう。あの吸血鬼の、カッコいいだろ」

 

「ゲームキャラじゃねえか」

 

因みにステイルが仮装しているのはとあるゲームの吸血鬼である

 

「じゃあ、僕らは次の所にお菓子を貰いに行ってくるよ。君達もいいハロウィンを」

 

「じゃあね皆!良い夜を!」

 

「こんなに沢山お菓子を貰って…虫歯にならないか心配です」

 

「それを見越して、歯磨きセットを用意しておきましたの」

 

「流石白井さん!」

 

「パンダ、凄い」

 

「ねえ、初春。私の豆腐小僧もキツイけど初春の英理加さんの方がキツイよ…素直にパックンフラワーかブラックローズドラゴンに…」

 

「私は英理加さんです」

 

「「「というか私達のセリフ少なっ!?」」」

 

インデックス達と別れ、垣根達はある場所に行きお菓子を貰いに行く

 

 

『トリックオアトリート!お菓子くれなきゃ超能力ぶち込むぞ!』

 

「……恥ずかしくねえのお前ら?」

 

来たのは第十二学区にあるグレムリンの秘密基地、気配の入った仮装をした上条達を見て若干呆れた様に呟いたのはトールだ

 

「あ?なによ、お菓子くれないの?なら超電磁砲ぶち込むわよ?」

 

「やるよ、やるからコイン構えんな」

 

軽く脅してくる美琴に頭を掻きながらトールは一応用意しておいたお菓子を渡す

 

「悪いなトール、この馬鹿共が」

 

「まあ、別にいいてことよ垣根ちゃん。ほら、彼女さんも食えよ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

トールは帆風にお菓子を投げる、帆風は右手でそれをキャッチしどんなお菓子かと見てみる…そのお菓子はリコリスだった

 

『……こんなタイヤのゴムみたいなお菓子要らね』

 

「おい、冗談だ。ジョークだよ。本当はこのバームクーヘンだ。だからリコリス捨てんな」

 

帆風すらもリコリスを道端に捨てようとしたのでトールは慌ててバームクーヘンを取り出す、因みにリコリスは北欧のお菓子である

 

「む?なんだ盟友か、そう言えば今日はハロウィンだったな。忘れていたぞ」

 

「お、年中仮装してる痴女…じゃなくてオティヌスじゃない」

 

「おい第五位、誰が痴女ィヌスだ。バレーボールの刑に処すぞ」

 

いきなり美琴がやって来たオティヌスに失礼な事を言ってしまう。まあ、彼女は普段から露出狂ぽい服装をしているので仕方ないが

 

「そうだ、私からもお菓子をやろう。ほら、じゃがバターだ。ありがたく食え」

 

「お菓子じゃねェぞ」

 

「じゃがバターはお菓子だ、そして主食でもある万能食…じゃがバターは完全食だ」

 

「お前は何処ぞのサプリと煮干し大好きな完全型勇者か」

 

オティヌスからじゃがバターを貰った一行は次のお菓子を貰いに行く場所に行く

 

 

『トリックオアトリート!お菓子くれなきゃ人体解剖を麻酔なしで生きたままやるぞ!』

 

「……それ、我々木原に対して言っちゃいますか」

 

次に貰いに来たのは第一学区の木原一族のとある研究施設だ。唯一は面倒くさそうな顔をして上条達を見ていた

 

「はぁ、悪戯されたくないですし…仕方ありませんね。このキャンディーをあげましょう」

 

唯一は溜息をつきながら白衣のポケットに手を突っ込み、そこから飴をばら撒く。地面に落ちた飴に群がる上条達…プライドはないのかこいつら

 

「悪いな唯一先生」

 

「いいえ、気にしないでください。彼らには実験サンプルになってもらうので」

 

「?それはどういう意味ですか?」

 

「ああ、第二位達に渡したのは私が開発した薬なんですよ。どんな効果があるのか分からないので彼らには実験台になってもらおうかと…あ、お二人には普通のキャンディーをあげますね」

 

そう言って悪い笑みを浮かべる唯一、流石木原だと垣根と帆風は苦笑いする

 

「唯一君、ホットドックはまだかな?」

 

「はぁ〜い、今すぐ先生の為にホットドックを買って来ますね!では、皆さんハロウィンを楽しんでくださいね」

 

研究施設の奥から脳幹の声が聞こえた、唯一が返事を返し先生の為にホットドックを買いに外へと出て行った…それを垣根達は見送った後、削板がボソッと口を開いた

 

「……犬が焼いた犬(ホットドック)食うのか…共食いか?」

 

「いや、ホットドックは犬の肉じゃねえぞ軍覇。まあ俺らも驚いたけど」

 

まあ、別に共食いではないのでとやかく言うまい、と垣根達は研究施設を後にし別の場所へと向かう

 

「オティヌスさん、脳幹さんと来ましたから次はメイザースさんですか?」

 

「いや、あそこだけは絶対に行かねえよ」

 

「?なんでですか?」

 

「だって黄金夜明のメンバーていつもギャンブルやってて金がねえし、お菓子持っていたら奪われるのがオチだしな。行っても骨折り損、どころか奪われるだけだ」

 

『納得』

 

ギャンブル狂いのメイザースがお菓子を持っているわけがない、と垣根が言うと全員が納得した

 

「じゃあ何処行くの?もう大抵の所は周り尽くしたわよ?」

 

「そうだな……何処がまだ行ってなかったけ……あ、あそこ行ってなかった」

 

ポン、と垣根は手を叩く。そして悪どい顔になり、全員にこれから行く場所のことを教える。すると帆風を除く全員がニヤッと笑う

 

「いいじゃない、なら早くそこに行きましょうよ」

 

「流石垣根さん、悪戯力が限界突破してるわねぇ」

 

「…悪魔ですわ、ここに本物の悪魔達がいますわ」

 

帆風はその余りにも嫌がらせとしか思えない内容にドン引きしていた

 

 

「はぁ、何がハロウィンですか…ハロウィンなんて爆発しろ!」

 

そう叫んだのは海原光貴、彼はハロウィンに参加することなく祖父から与えられた家の部屋で両手の中指を立てる。実は彼昨日美琴を自分と一緒にハロウィンに参加しませんか?」と誘ったのだが、美琴は断りの言葉の代わりにラリアットをぶちかまし、食蜂にトイレに流された。それなのでハロウィンには参加せず部屋で怒りを爆散していた

 

「ハロウィン爆発しろ!リア充なんて爆発しろ!上条当麻と食蜂操祈なんか○ね!ファック・ユー!」

 

そう汚らしい高音で叫ぶ海原、すると自宅のチャイムが鳴り誰が来たのかと海原はドアを開ける…そこにいたのは…美琴だった

 

「!?み、御坂さん!?どうしてここに!?ま、まさかやはり自分と一緒にハロウィンを回りたくなったんですか!?」

 

「トリックオアトリート!お菓子くれなきゃ悪戯するぞ!」

 

「……ふ、御坂さん。貴方になら悪戯されても構いません…てな訳で激しいプレ…じゃなくて、お仕置き…じゃなくて悪戯お願いします!ハァハァ!」

 

美琴になら悪戯されたいと海原は鼻息と息遣いを粗くする。だがそれを聞いて美琴は予想通りだとニヤリと笑う

 

「ふ〜ん、お菓子くれないんだ…なら、皆やっておしまい」

 

『御意』

 

「え?」

 

そう美琴が言うと、玄関から一斉に垣根達が海原の家に入って行く。驚きの余り固まってしまう海原

 

「お、この壺高そうだな。売ってその金を置き去りの子供達に寄付しよっと」

 

「あら、この絵画有名な画家の作品ですわね。売ったらアフリカの子供達に寄付しましょう」

 

「……美琴の盗撮写真があったわぁ〜、これは私の物に…ゲフンゲフン!処分力しておくわ」

 

「な、美琴の等身大フィギュアだと!?なんてけしからん!これは俺が預か…処分しておこう!」

 

「金持ちだから結構財布に金あンじゃねェか。赤い羽根募金に財布ごと入れるか」

 

「『御坂さん大しゅき日記』…気持ち悪、焼いて捨てよ」

 

「うおおおお!根性!根性!根性!」

 

「悪戯じゃなくて単なる強盗じゃないですか!」

 

そう叫ぶ海原、垣根と帆風、一方通行が売り捌く品物を鑑定し、上条と食蜂が海原が密かに集めた御坂グッズを押収し、麦野が変なコレクションを焼き払い削板が海原の家を破壊する

 

「ちょ!?そんな酷い事しないで…!!」

 

「はい、ちょっとアンタは黙ってなさい」

 

「あばばばばばばばばばばばばば!!!?」

 

美琴は止めようとした海原に電気ショックをお見舞いし全身黒焦げにして気絶させる

 

「よし、これで粗方強奪したぞ。これ全部寄付するか」

 

「でも本当に宜しいんですか?こんな強盗染みた事をして…」

 

「大丈夫、アレイスターがもみ消してくれる」

 

『権力、偉大、はっきり分かるね』

 

そう行って海原の家から立ち去って行く垣根達、暫くして目を覚ました海原が見た光景は荒地と成り果てた自分の家だった…後日、裁判所に訴えを出した海原だったがアレイスターによってもみ消されたのだった。権力て凄い

 

 

その後も小萌先生や木山先生、警備員の詰所などに訪れお菓子を貰っていく垣根達。一休憩の為、ベンチに座って貰ったお菓子を食べていた

 

「もう、貰える所は行き尽くしたな…でも、悪戯したのが海原だけでつまんねえな」

 

「……なら、わたくしに悪戯をしては?」

 

「え?エロい事していいの?」

 

「勿論、あそこにそういう建物がありましたから今すぐそこに…」

 

「おィ、イチャイチャしてンじゃねえよ」

 

もっと悪戯したいと金平糖を食べながら呟く垣根、ならば向こうのいかがわしいホテルで自分に悪戯(意味深)して見ないかと笑う帆風。一方通行はペロペロキャンディーを舐めながらそれを止める

 

「お、そう言えばそろそろアリサとの待ち合わせの時間だ。俺そろそろ抜けるわ」

 

「……そういや、俺も打ち止め達と一緒にハロウィンを楽しむていう約束があったんだ」

 

「私も浜面達とこれから会う約束してるにゃーん」

 

削板、一方通行、麦野はこれから他のメンバーとの待ち合わせの約束があるからここで別れると上条達に告げる

 

「そうか。で、何処で待ち合わせなんだ?」

 

「ここだ!この公園で待ち合わせしてるんだ!」

 

「ンだよ。俺と同じ場所かよ…」

 

「あ?お前らも私と一緒の場所かよ」

 

なんと三人とも同じ場所での待ち合わせだった。こんな偶然もあるのかと帆風がクッキーを小動物のようにカリカリと齧っていたその時、誰かが駆け寄ってくる音がした

 

「あ、軍覇君!お待たせ!」

 

「おお、アリサ!全然待って、ない……ぞ?」

 

削板はアリサの仮装を見て固まった、そんな削板を見てアリサは首を傾げる

 

「あれ?どうしたの軍覇君?」

 

アリサの仮装は露出の多い黒のドレス、背中に黒揚羽蝶の羽を着けた妖精の様な姿だった。それを見た削板は暫し硬直し…鼻から勢いよく鼻血を噴き出した

 

『削板が死んだ!?このひとでなし!』

 

「ええ!?ど、どうしたの軍覇君!?」

 

「あ、アリサの仮装が似合いすぎて…尊死するかと思ったぜ……ふ、やっぱりアリサは最高……だな、ゲフッ」

 

「軍覇君!?」

 

削板はそう遺言を言い残すとそのまま地面に力なく倒れた。アリサは涙を流して地面に倒れた削板の身体を抱きしめる。なお削板は死んでいない

 

「おーい!一方通行!お待たせー!てミサカはミサカは手を振ってみる」

 

「悪いね、遅くなっちゃたよ」

 

「チッ、クソガキ共が。人を待たせるんじゃ………ねえ、よ…」

 

一方通行も削板の時と同じく動きを固めた。だがそれは打ち止めと付き添いで来た番外個体に見惚れたわけではない。因みに打ち止めと番外個体の仮装は打ち止めが猫耳を生やし、肩に翼が生えた青いドラゴンの人形を乗っけた某ビーストテイマーの仮装をし、番外個体は赤い軍服の様な服を着て、片手にマスケット銃を持った某遊園地の秘書室長の仮装だ

 

「どうしたんだ先生?具合でも悪いのか?」

 

一方通行が魅入っていたのはエステルだ、彼女の仮装は恐らく打ち止めが選んだであろうナース服。ある部分が蠱惑的なまでに強調されている…何処とは言わないが

 

「……やっぱ巨乳は最高だぜェ、ロリ巨乳万歳」

 

「ん?何か言ったか先生?」

 

「いや何もォ、ほら早く行くぞ」

 

「はい!」

 

誤魔化しながらエステルを連れて街へと向かう一方通行、エステルは子犬の様に一方通行の後ろについて行く

 

「……チッ、やっぱ胸なのかよ。て、ミサカはミサカは舌打ちを…チッ!」

 

「…打ち止めさん、今日もまたご乱心…」

 

打ち止めは舌打ちしながら二人の後を追う、そんな打ち止めを見て頭を抱える番外個体。番外個体は苦労人である

 

(…流れ的に次は私の番、つまり浜面が仮装してくるんだな!どんな仮装なんだろう…)

 

麦野は浜面がどんな仮装をしてくるか思考する

 

 

『がおー、てな。今日の俺は狼男だ、お前を食べてやるよ。性的な意味でな』

 

『や、優しくしてね……』

 

 

(な、なんてな!そんな美味しい展開があればいいんだけどな!)

 

そう頭の中で妄想し顔を赤くする麦野、すると彼女の思いが通じたのか複数人の足音が聞こえる

 

「お、もうついてたのか麦野」

 

「!?は、浜面ぁ!」

 

麦野はパァァと明るい顔で浜面を見た、どんな仮装をしているのかな…と。そして麦野は固まった。悪い方の意味で

 

「どうした麦野?」

 

浜面はなんの仮装もしていなかった、ただ右手にゴミ袋、左手にゴミばさみを持っているだけだった

 

「……浜面、お前仮装は?」

 

「ん?ああ、ゴミ拾いしてたら仮装する暇がなくてな。この格好で着た。怪人ゴミ拾い男、てな!」

 

「…………………………」

 

麦野の幻想は静かに崩れた

 

「む、麦野?大丈夫?」

 

「…なんか超嫌な予感がします」

 

「奇遇だな絹旗ちゃん、私もだ」

 

「…むぎの、怖い」

 

「ふふん、このダイアン=フォーチュンも来てあげたわよ。感謝しなさい」

 

嫌な予感を感じ冷や汗をだらだら流すフレンダ達。危険察知能力が乏しいダイアンは何故か偉っそうにしていた。そしてフレンダ達の予感は的中した

 

「乙女の純情返せゴラぁぁぁぁぁ!!!」

 

「うお?!」

 

「「「「やっぱりこうなるのねぇ!?」」」」

 

「え!?なんでこうなるの!?」

 

プッツンした麦野が原子崩しを辺り一帯に乱射、浜面は難なくこれを避けるも、ドカーンとフレンダ達(とついでにダイアン)がお星様になった。なおフレンダの仮装はテケテケ、絹旗は赤ずきん、黒夜はブラックサンタ、滝壺はガゾート、ダイアンはシンデレラの仮装をしていた(だからどうした)

 

「はーまづらぁ!」

 

「え!?なんで怒ってるんだ麦野!?と、とにかくここは…逃げるんだよォォォーーーッ!」

 

「逃すかぁぁぁぁぁ!!!」

 

ドカンドカンと破壊音が鳴り響く、浜面はなんとか原子崩しを掻い潜りながら避け続ける、麦野は怒りのあまりスーパーむぎのんになって浜面を追いかけていった

 

「 こ れ は ひ ど い 」

 

「あ、あはははは……」

 

垣根は頭を抱え帆風は思わず苦笑い、あーもうめちゃくちゃだよ

 

「あ、俺達もそろそろ三人だけでハロウィンの夜を楽しんでくるぜ」

 

「じゃあね垣根さん、潤子先輩」

 

「お二人も楽しんでねぇ」

 

「おう、彼女とのランデブーの邪魔な奴らがいなくなって清々するわ」

 

「呉々も色んな人に迷惑をかけないでくださいよ」

 

上条達も垣根と帆風から立ち去っていく、こうしてお邪魔虫な上条達が全員いなくなった今、二人は漸く思う存分いちゃつく事が出来る

 

「たく……俺らの夜を3時間も邪魔しやがって…もう9時すぎじゃねえか」

 

「まあ、よろしいじゃありませんか。これからわたくし達だけで過ごせばいいんですもの。まだまだ夜は長いんですから」

 

「そうだな……」

 

上条達(お邪魔虫)がいなくなるや否や二人は肩を寄せ合う

 

「帝督さん………………………」

 

「潤子……………………………」

 

二人はお互いの顔を見合わせる、帆風は羞恥の余り顔を赤くしているが周囲に人の気配がない事を確認して自分の唇を垣根へと近づける…後少しで二人の唇が重なる、その瞬間

 

「やあやあ、いいムードだねお二人さん」

 

「「!?」」

 

ベンチの背後からひょっこりと銀髪緑目の魔女の服装をした少女が顔を出した、それを見て二人は驚きゴン、と唇ではなく額を重ねてしまった

 

「「〜〜ッ!?」」

 

二人はあまりの痛みに額を押さえながら地面を転がる。それを見てケラケラ笑う少女。帆風は額を押さえながらいいムードをぶち壊した少女を睨む

 

「…誰ですか貴方は、折角いいムードだったのに…」

 

「すまない帆風潤子、甘ったるい空気を感じてやって来たら君達が接吻しそうになっていたのでね、揶揄いに来たのさ」

 

そう帆風に睨まれても笑みを崩さない少女、そんな彼女に非難の目を向ける垣根

 

「…やってくれたなアレイスター(・・・・・・)。いくら友達でもやっちゃいけねえ事ぐらいあるんだぜ」

 

「そうですわ、いくらアレイスターさんでも…え?アレイスターさん?この少女が?」

 

垣根が目の前の少女のことをアレイスターと呼ぶと帆風は目をパチクリさせる。何故ならアレイスターは男だからだ、決して目の前の美少女ではない

 

「こいつは無限の可能性を秘めた人間だからな、美少女なアレイスターて分岐点もあったんだろ。で、女子の姿で仮装してんのかこのオカマは」

 

「ふ、中々可憐な美少女だろう?それに生理も既に迎えているから妊娠も可能だし、女性器も名器だと私は思う。先程オ○ニーして確かめたからな」

 

「「その一言で美少女が台無しだよ/ですわ」」

 

残念美少女ここに極まり、である。見た目は良くとも中身がおっさん。しかも変態ならば尚更だ。警備員さん、こっちです

 

「ハロウィンデートの邪魔だ、帰れセクハラ親父」

 

「まあまあ、落ち着きたまえ。そうだ、そこにいかがわしいホテルがあるから帆風潤子と一緒に三人でプレイしてみないか?」

 

「おい18禁用語ばっか言うんじゃねえ」

 

尻をフリフリさせながらいかがわしいホテルに二人を誘おうとするアレイスター、この男男も女もいける口かも知れない(意味深)

 

「リリスさんが泣きますわよ」

 

「安心しろ、新しい母親と父親が出来るからリリスも喜ぶさ」

 

「父親二人になるだろうが」

 

「いや、母親二人だ」

 

「どちらにしても娘さんグレますわよ」

 

グッと親指を立てるアレイスター、そんな変態に冷たい目を向ける垣根と帆風。ぶっちゃけこのクソ親父をデブのロリコンの目の前で全裸で放置したい衝動を必死に抑える

 

「は、別にいいだろう垣根帝督。今時ハーレムが主流なんだ。女の一人や二人や十人ぐらい養ってみせろ。そして夜は猿のように盛れ」

 

「俺はハーレム厨じゃねえ、メインヒロイン一筋なんだ。多くてもToL ○VEるみたいな二人ルートだ」

 

「帝督さん、伏字になってませんわ」

 

そろそろこいつ、ロリコンの巣窟に全裸で投げ入れてもよくね?ぶっちゃけ二人の堪忍袋の尾が切れそうだった

 

「まあ、君達はお互いムッツリそうだからな。一度性を知ってしまえば盛りのついた犬の様にお盛んになるだろうな…あ、ゴムをやろうか?」

 

((ブチッ))

 

二人の怒りゲージが限界突破した、絶対にアレイスター殺すマン&ガールになった

 

「なあ、アレイスター。お前にトリックオアトリートしていいか?」

 

「?別に構わないぞ。一応お菓子を持っているからな」

 

アレイスターは首を傾げる、この二人は何をしたいのかと…そして二人は口を揃えてこう言ったのだ

 

「「ライフ オア デス、命くれなきゃぶち殺しちゃうぞ♪」」

 

「……え?」

 

アレイスターは顔を青ざめる、そして漸く理解した。ヤベェ調子に乗り過ぎた、と

 

「さて、お前の命を貰うぜ♪」

 

「それが嫌なら…殺しますわ♪」

 

「ちょ、やめてくれ。私学園都市統括理事長ぞ?学園都市のトップぞ?」

 

「「遺言はそれでいいかセクハラクソ親父」」

 

「え、ちょっと…ご、ごめんなさい!調子に乗り過ぎましたぁぁぁ!ウブなカップルを煽りたかっただけなんです!だから許し…あああああああああああああーーーーーーッ!!?」

 

直後、メタトロンとサンダルフォンの力を解放した垣根と帆風の全力の一撃がアレイスターに炸裂した

 

 

ーーードッカーーーン!ーーー

 

「ん?花火?ハロウィンなのに?」

 

「まあ、結構風情があるんじゃない?」

 

「ハロウィンに花火て斬新ね」

 

上条達は突如、学園都市の空に咲いた赤い一輪の花火を見ていた。ピタッと上条の頬に何かしらの液体が当たった。上条は手でそれを拭って何かと見てみる。それは血《・》だった

 

 

 

「……今度からあの二人を揶揄う控えるとしよう」

 

「その方がいいと思うよ」

 

そう冥土帰しの病院のベットにて、全身包帯巻きのミイラ男状態になったアレイスター(♀)はベットで横になりながらそんなことを呟いた。冥土帰しはその通りだと頷く

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ベイ中尉とか分かる人おる?殆どのキャラは中の人ネタかとあるのゲームネタでした。そして汚い花火になったアレイスターさんに敬礼。ぶっちゃけとあるのキャラはイケメン、美少女揃いだからどんな仮装も似合うと思う。次回も時期外れなギャグ回予定です

いや〜漸く面接が終わった!これでゆっくり休める…と思いきや来週からテスト期間…うん、学校は休ませる気ねえな(白目)

次回もお楽しみに!


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合コン、それは男と女の戦場である

今回はデルタフォースの面々が合コンに行く話、そして一部別作品のキャラが出てくるよ。今回もおふざけ全開フルスロットルです。というか今更ですがとある科学の一方通行に出てきたイサクの声て寺島さんだったんですね…ウルトラマンタイガの声であの外道の声をやってたと思うとなんか意外ですね

そして私事ですが……また面接落ちた(2回目)、あれだけ練習して、頭が痛くても練習したのに…また落ちた。しかも自分を入れて4人同じ学校の人達と面接に行って…自分だけ落ちて他の人は合格…笑うしかねえや(白目)


「「「合コンに参加してほしい?」」」

 

「頼む!一生のお願いだ!メンバー俺しかいなくて困ってんだよ!助けてくれ!」

 

そうクラスの三バカ(デルタフォース)にお願いしたのは同じクラスメイトの喪部谷 傍尾(もぶたに わきお)。彼は合コンのメンバーが足りないからとデルタフォースの面々に合コンに来てくれと懇願されているのだ

 

「いやなぁ〜残念やけどボクら付き合うてる人がいるねんけど…」

 

「そうだぜい、悪いけどお断りする」

 

「知っている!知った上でのお願いだ!頼むよ!今回集まった子達全員美人でさ!俺付き合ってない歴

=年齢から卒業したいんだ!だから頼む!一生のお願いだ!」

 

「………はぁ、困ったな」

 

お願いします!と土下座する傍尾、それを見てどうしようかと悩む上条達。自分達には最愛の彼女がいるから合コンなど行きたくないし、行った事がバレれば彼女にご褒美(折檻)される。だがこのままでは傍尾が可哀想だ。ここまでされたら断るのも目覚めが悪い…等々上条達は折れた

 

「……分かった、俺達もその合コンに参加するよ」

 

「本当か!?助かるよ!」

 

嬉しさのあまり上条の両手を握ってブンブン振りまくる傍尾

 

「じゃあ、集合場所はオリャ・ポドリーダな!」

 

傍尾はそう言って足早に立ち去って行っていく

 

「「「面倒な事に巻き込まれたなぁ…………はぁ、不幸だ」」」

 

「……ドンマイとしか言いようがないわね」

 

はぁ、とため息をこぼす三人。それを遠くから見ていた吹寄はそんな彼らに同情した

 

 

 

午後七時、スペイン料理店 オリャ・ポドリーダにて上条と土御門、青ピ、傍尾の四人はテーブル席について女性陣を待っていた

 

「ああ…ドキドキするなぁ…」

 

(土御門、青ピ。分かってるな?)

 

(ああ、俺達は盛り上げ役に徹して、目立たない様にするんだよな?)

 

(分かっとるわ、まあ気楽に行こか)

 

上条達はそう小声でそう呟く、自分達がモテる訳には行かないので傍尾のサポートに回る考えの様だ

 

「あ、もう来てたんだ皆〜!」

 

そう言って現れたのは茶髪のショートヘアに白カチューシャの少女…確か上条達のクラスメイトだ

 

「やっほーモブちゃん、カミちゃん、ツチちゃん、アオちゃん!白カチューシャこと、簪 白美(かんざし はくび)ちゃんだよ〜。今日はアゲアゲで行こう〜!!」

 

(((こいつこんなキャラだっけ?)))

 

やけにテンションアゲアゲな少女…白美、上条達はこんな濃いキャラクラスにいたかと首を捻る。それに名前も先程彼女が言うまで忘れていた

 

「か、簪さん!学校ぶりです!」

 

「おっすおっす!学校ぶりだねぇ〜!ありゃ?僕のお友達まだ来てない?おかしいなぁ?」

 

しかもボクっ娘ときた、どんなけキャラ盛るんだよこいつ…と上条は心の中で思った

 

「お!来たよ来たよ!おーい!こっちだよ!」

 

友達が来たらしく、白美が手を振って彼女達を大声で呼ぶ。そして三人の少女達が上条達の前に現れる

 

一人は茶髪を二つに結わえた、元気良さげな常盤台の制服を着た少女。いかにもお姉さんキャラで女子力に溢れている中学生くらいの少女だ

 

もう一人が何と髪の色が頭頂から肩口までは桜色、そこから先は草色と珍妙な色の長い髪を二つに結わえた大学生くらいの少女だ。そして巨乳である

 

最後の一人(?)が白いボディに、ポニーテールの様に頭部から生えた尻尾(・・)。身体の中心には赤いコアがあり、顔は竜を模してある左腕が大剣、右手が鉤爪というロボット(・・・・)

 

(((……ん?)))

 

何かおかしい、そう思った上条達はもう一度女性陣を確認する

 

その常盤台の制服を着た少女は活発的で何処と無くオカン感が滲み出ている

 

その珍妙な髪の少女はエロい、皆から乳柱とか言われていそうだ

 

その白いロボットは赤いコアからソナー音を出して上条達をスキャンしていた

 

「「「なんかロボットがいるんですけど!?」」」

 

「ほら、皆座って座って〜!自己紹介するよ!」

 

ロボットが合コンにいる!そう叫ぶ上条達、そんな彼らのツッコミをスルーして白美は全員座らせる。そして自己紹介を始める

 

「はい、じゃあ改めて僕から!僕は簪 白美!改めてよろしくね!」

 

「次はアタシね、アタシは犬吠埼 風(いぬぼうさき ふう)。常盤台の三年で大能力者よ」

 

「私は甘露寺 蜜璃(かんろじ みつり)ていうの、今日はよろしくね」

 

【この世界をリセットする。それが我が使命、我が正義】

 

(((一人だけ!なんか違う!)))

 

ロボットだけ名前を名乗らない、てか世界をリセットとかヤベー事を言っている

 

「もう!ギャラちゃんたら!緊張しちゃて!」

 

「あ〜ごめんなさいね、この子シャイだから」

 

「この子はシビルジャッジメンター ギャラクトロンちゃんて言うの。凄く綺麗好きなのよ」

 

【リセットします】

 

白美、風、蜜璃達がそのロボット…ギャラクトロンのフォローをする。というか、ロボットに性別はあるのか

 

「じゃあ俺達も自己紹介だね、俺は喪部谷 傍尾。能力は草花創生(マッドプランター)!よろしくね!」

 

「わぁ!とっても綺麗な薔薇!」

 

傍尾はそう自己紹介をしつつ、能力で作りました薔薇の花を白美達に配る…ギャラクトロンのみそれを目からビームで焼き払ったが

 

(ほら、次は上条くん達だよ!頼むよ!)

 

「…上条当麻です、能力は幻想殺しです。どんな能力もこの右手で打ち消せます」

 

「へえ、能力を打ち消す能力…厨二心を唆る能力ですね…是非勇者部に誘いたいくらいだわ」

 

「勇者部?」

 

「あ、アタシが常盤台で作った部活です。部員は私を含めて六人だけど全員大能力者なんですよ」

 

「へぇ」

 

上条の能力に厨二心をくすぐられたのか、キラキラした目で上条の右手を凝視する風

 

「俺は土御門元春だにゃー。こう見えて格闘技が得意なんだぜい」

 

「そうなんだ!つまり土御門君て強いの?私強い殿方がタイプなの!」

 

「あはは、ミツちゃんはいつもそれだよね〜。自分より強い殿方としか結婚したくない〜て言ってるもんね〜」

 

「も、もう!そんな事皆の前で言わないでよ白美ちゃん!」

 

土御門の自己紹介に反応したのは蜜璃、彼女はふんふんと頷きながら土御門の筋肉を見定める。その途中で白美が揶揄いプンスカと頬を赤らめる

 

「あ、ボクは藍花悦や。よろしゅうな」

 

【リセットする】

 

「あはは……ギャラクトロンの事はあんまり気にしないで下さい。こいついつもこうなんで」

 

「そ、そうなん?」

 

青ピの自己紹介にギャラクトロンはリセットすると返す、風は苦笑いで気にしないでと青ピに言った

 

「じゃあ、さっきモブちゃんが能力を教えてくれたから僕達の能力も教えちゃおうかな〜。僕の能力は「絶対安定(オンリーセオリー)」。約束事を相手に絶対に果たせる能力だよ〜まあ、合コン限定だけどさ」

 

(((その超能力は一体何の役に立つの?)))

 

「アタシは女子力一閃(ビーストブレイド)、物体を大きく出来るわ。これでお肉とか食材を大きくしたら食費が節約出来るのよ」

 

(((何その能力、凄え欲しい)))

 

「私は無能力者だけど常人の8倍の筋力持ってます

!一歳の頃に15キロの漬物石を持ち上げた事があります!腕相撲では負けなしです!」

 

((((はち)倍娘……)))

 

【リセットします】

 

(((こいつさっきからそれしか言わねえな)))

 

自己紹介が済み、女性陣達はテーブルに置かれたお冷やを飲む…そして頭の中で思考を巡らせる

 

(さてと…誰狙いで行こうかな〜。 僕的にはカミちゃんがいいけどカミちゃんは恋人がいるし…てか、モブちゃん以外皆付き合ってる人ばっかじゃん…なら、モブちゃん狙ってこうかな〜)

 

(う〜ん、勇者部の依頼で合コンの数合わせで来たけど…あの藻部谷て人以外はやる気なさそうで助かったわね。下手に惚れられたらどうしようと思ってたけど杞憂だったみたい)

 

(やだわ……全員カッコいい。胸がキュンキュンしちゃう)

 

(リセットする)

 

白美は傍尾を狙いに定め、風は肉ぶっかけうどんを注文し、蜜璃はキュンキュンしながら店の全メニューを注文し、ギャラクトロンは胸のコアにエネルギーを溜める

 

(……さて、藻部谷のサポートをするか。でも、全員可愛い子ばっかりだな。美琴と操祈には敵わないけど)

 

(そうだにゃー、全員モデルみたいだぜい。まあ舞夏には敵わないけどにゃー)

 

(せやね、全員レベル高いわぁ…愛愉ちゃんには敵わへんけど)

 

そう頭の中で惚気る彼氏共。そして誰が傍尾と恋人になれそうか思考する

 

(取り敢えず、俺はあの常盤台の風て子かな?女子力高そうだし、お母さん属性高そうだし、いいお嫁さんになりそうオーラ半端ないしな。どうせ恋人にするならこんな子がいいんじゃ……!?)

 

そう考えたその時だ、背後から殺意の込もった視線を感じ、上条は背後を振り向く。そして上条達が座っている席から少し離れた席にその視線の主はいた

 

「……………」

 

『お姉ちゃんに手を出したら、オシオキします』

 

そんなカンペを上条に見せながら睨みつけて来たのは風と同じ茶髪の可愛らしい少女。彼女は風の妹 犬吠埼 樹(いぬぼうさき いつき)…彼女はお姉ちゃんが合コンに(依頼で)行くと聞いて見に来たのだろう…それだけなら可愛らしいのだが…彼女の両手にはワイヤーが握られていた

 

(怖えよ!そのワイヤーで何するおつもり!?)

 

『お姉ちゃんは渡しません』

 

上条は悟った、風だけは絶対に手を出さないでおこうと。それを視線で土御門と青ピに知らせる

 

(成る程…なら、あの甘露寺て人ならどうかにゃー?優しそうだし、胸もデカイし、可愛い…!?)

 

土御門がならば蜜璃ならばどうかと提案しかけたその時だ、上条の時と同じ鋭い殺意が込められた視線を感じ土御門は背後を振り返る。そしてやはり自分達の席から少し離れた席にとある男性が土御門を睨んでいた

 

『甘露寺に手を出すな、殺すぞ?』

 

そんなカンペを持った白と黒のボーダーが入った羽織を着たオッドアイの男性…伊黒 小芭内(いぐろ おばない)が土御門を睨む。しかも彼の首に巻きついている白蛇も睨んでいる

 

(へ、蛇を連れてやがるあの男…)

 

『馴れ馴れしく甘露寺と喋るな』

 

先程の妹といい、この男といい、この合コンは保護者付き添いなのか。そう土御門はツッコミたかった

 

(…なら、次のパターンもお察しやな)

 

青ピはなら次はギャラクトロンの保護者のターンかと考える、すると何処から視線を感じ青ピは振り返る。そこには青ピの想像通り何者かが青ピを凝視していた…

 

『尻出しトーマスじゃない、尻出しトマスだ』

 

『……見ないでくれ』

 

機関車のコスプレ(着ぐるみ?)をし、何故か下半身丸出しのトマス=プラチナバーグに駅長の格好をして乗っている亡本がいた

 

(((いやなんでいるの!?)))

 

これはラストジャッチメンターの出番じゃないのかとツッコミたい上条達。てか尻出しトマスてなんだ

 

『無限列車ならぬ戦闘列車と、魘夢ならぬトマスが融合した姿…それが尻出しトマスだ』

 

『久しぶりの再登場なのにこんな出オチとは……』

 

そんなカンペを見せた後、トマスは背中に亡本を乗せたままシュポシュポと煙突から煙を出して四つん這いで店から出て行く

 

「さあ、会話タイーム!自分の趣味とか語りあいましょーう!」

 

パンパンと手を叩いてそう叫ぶ白美

 

「じゃあ、俺の特技から!ガーデニングが趣味です

!好きな花はパンジーです!」

 

「俺は可愛い彼女…じゃなかった。好きなポケモンを見る事です。美琴(ピカチュウ)操祈(ビークイン)です」

 

「(カミやん…少しは自重しろよ)俺の趣味は義妹を愛で…ゴホン!妹と食事をすることだ」

 

「(ツッチーも自重しような)ボクの趣味は音楽(アニソン)鑑賞と人形(フィギュア)集めや」

 

男性陣が自分達の趣味を語った後、次は自分達の番だと白美が立ち上がる

 

「はいはーい!じゃあ僕達の番ね!僕の趣味はメモ帳に記録する事!日常であった事をメモに書き写すのが趣味なんだ!」

 

「アタシは部活動かしらね、樹や友奈、東郷、夏凛

、園子……ああ、樹がアタシの妹で他は後輩よ。皆同じ部活でね、地域清掃とか人の役に立つ仕事をするのが趣味よ」

 

「私は食べる事ね。大食い大会とかがあったら参加してるわ。前回はインデックスていういい食べっぷりでキュンキュンしちゃった女の子に負けちゃったけど今度は負けないわ!」

 

【人類をリセットする】

 

女性陣の趣味も聴き終えた所で先程風と蜜璃が注文した料理が大量にやってくる…主に蜜璃が注文した品だが

 

「わー、ここのうどんとっても美味しそうね!やっぱりうどんは国民食だわ!やっぱり四国はうどん!て、ここは学園都市(多摩地区)やろがい!」

 

(いや、ここスペイン料理店なのに何でうどんがあるんでせうか…?)

 

スペイン料理店でうどんを頼む女、それが勇者部部長 犬吠埼風である。香川県出身ならばうどんを食べねば無作法というもの

 

「うん、ここの料理はとっても美味しいわぁ〜」

 

(で、デッカいハニートーストをフォークでぶっ刺して一口…だと!?)

 

ブラックホールの様に次々と料理が蜜璃の口の中に消えていく。それはインデックス並みの暴食さでありながら一種の可愛らしさが滲み出ていた

 

『一杯うどんを食べるお姉ちゃん…しゅき』

 

『……ああ、今日も甘露寺は可愛らしい』

 

『あ、そこのお兄さんもあの合コンを監視してるんですか?』

 

『そういうお前もか』

 

『ええ、お姉ちゃんに悪い虫がくっつかない様に見張ってるんです』

 

『奇遇だな、俺も甘露寺に群がる塵がいないか見張ってるんだ』

 

(いや、なにカンペで仲良く会話してるんや)

 

姉がうどん(5杯目)を食べるのを見てホクホク顔の樹、一杯食べる(もう皿が机に大盛り)蜜璃を見てほっこりする伊黒。二人仲良くカンペで会話しだし青ピは内心でツッコむ

 

「もう!二人共ご飯ばっか食べないでよ〜折角の合コンなのに〜!もうギャラクトロンちゃんなんか言ってよ〜」

 

【この星の文明と、「食物連鎖」という間違った進化を選んだ生態系全てを、リセットする】

 

「もう〜ギャラクトロンちゃんたらそればっかり!風ちゃんツッコミお願い!うどん無料券上げるから!」

 

「え!?うどん無料券!?」

 

ギャラクトロンに何か言えと白美はいうが見当違いな(というより物騒な)事を言ってしまうギャラクトロン。それに見兼ねた白美が風にうどん無料券を渡しツッコミする様お願いする

 

「仕方ないわね〜、ツッコミは夏凛の役割なんだけど…やってみますか」

 

本来は部活の後輩がツッコミ役に適任だが、いないから仕方ないと風は席から立ち上がる。そしていつ取り出したのやらとても大きな大剣を持ち上げそれをギャラクトロンに振り下ろす

 

「女子力斬り!」

 

【ーーーー!!?】

 

(((アカン、アカン、アカン)))

 

まさかのツッコミ(物理)だった

 

「女子力斬り!女子力斬り!女子力斬り!これでトドメよパーテックス!」

 

(パーテックスてなんなんだぜい!?)

 

某サンダーブレスターの如くギャラクトロンに馬乗りになってツッコミ(振り下ろし)しまくる風。親の仇ばりに大剣でギャラクトロンの機体を傷つけギャラクトロンの白い身体をオイルまみれにしていく

 

「あはは、超ウケる」

 

「ウケてる場合か!?」

 

思わずツッコむ上条、暫くしていい汗かいた〜みたいな感じで汗を手で拭う風。そして尻尾が毟り取られ、両腕を捥がれ全身黒いオイルまみれなギャラクトロンが床に横たわっていた

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

【問題ない、少しメイクアップしてくる】

 

傍尾が心配そうな顔でギャラクトロンに話しかける

、すると漸くギャラクトロンが普通に会話しゆっくりも立ち上がるとボロボロの身体で女子トイレへと向かって行く

 

「……ギャラクトロンさん大丈夫かな?」

 

「あ、ああ…そうやな(てかメイクアップてどうするつもりなんやろ?)」

 

ロボットがメイクアップて何するんだよ、とツッコミたい衝動を抑える青ピ。そして10分後、ギャラクトロンはトイレから帰ってきた

 

「あれ、ギャラクトロンまつ毛変えた?」

 

【リセットする】

 

ギャラクトロンはギャラクトロンMK2にカスタマイズされていた

 

(((なんかグレードアップしてる!?)))

 

メイクアップとはグレードアップの事だった、 アイエエエエ!

 

「そういや上条くんは休日とか何してんの?」

 

「(こいつ全然驚かねえな…)俺?……そうだな、友達と一緒にゲーセン行ったり遊びに行ったりしてるな」

 

傍尾はギャラクトロンがメイクアップという名のグレードアップをしても笑顔を崩さない。ある意味こいつ大物なのでは?と考えながら上条は質問に答える

 

「へ〜?友達てあれだよね?ウチの高校の一つ先輩のカッキーちゃんの事でしょ?」

 

「(か、カッキーちゃん…?)ああ。垣根とはいつも一緒に遊んでるよ(本当は彼女も一緒だけど)」

 

「あー、その人常盤台でも有名ですよ。なんでも常盤台に不法侵入したり、寮監さんに2秒KOされたり、常盤台のエースと女王を揶揄ったりする事で有名な人ですよね。時々勇者部にも依頼とうどんを持ってくるのよ」

 

「ああ、あの天使さんの事?よく絵のモデルになってもらってるのよ。それに時々映画のチケットとか貰ったりして伊黒さん…あ、私の高校時代の先生ね。その人と見に行ったりしてるの?」

 

【私の創造主の事か】

 

風と蜜璃はあの人かと手を叩く、やはりと言うべきか垣根の知名度は高い様だ

 

『垣根さんはうどんをくれるいい人だし、お姉ちゃんに恋愛感情抱いてないのでセーフです』

 

『第一位は甘露寺が俺をデートに誘う口実を作ってくれるから感謝してる』

 

(保護者組からも信頼が厚いんやなていとくん)

 

保護者組からも好印象を持たれる垣根、もう垣根のコミ力は異常だろと青ピは思う

 

「……あれ?今ギャラクトロンさん垣根先輩の事創造主とか言わなかった?」

 

【私は未元物質製の人工知能(AI)ロボットだ。身体の殆どが未元物質で出来ている】

 

「「「驚きの新事実」」」

 

傍尾の質問に答える形でギャラクトロンから告げられた衝撃の新事実。ギャラクトロンは垣根の未元物質で作られていた。それに驚くデルタフォース。因みにギャラクトロンが作られた理由は

 

 

脳幹「カッコいいロボット作りたいなー」

 

垣根「なら、俺の未元物質を材料にイカすロボット作ろうべ」

 

脳幹「名案だっぺ、そうするっぺ」

 

垣根「なら、ドラゴンみたいなロボット作るべ」

 

脳幹「後大剣とビーム砲、後ロケットパンチも搭載したいべさ」

 

垣根「空も飛べる様にするっぺ」

 

脳幹「いいっぺ、いいっぺ。左腕が回転してクローにも大剣にもなる腕。右腕がビーム砲で更にロケットパンチも出来るっぺ」

 

垣根「なにそれ、カッコいいぺ!」

 

垣根・脳幹「「完成だっぺ!」」

 

 

こんな(馬鹿な)漢達の浪漫から誕生したのだ

 

【私の身体は未元物質の力で製造された新物質と未元物質で構成されている。故に純粋な科学だけではありえない能力も搭載されている。最新鋭の科学と科学ではない別の力によって製造されたハイブリットロボット。それが私】

 

「なにか凄い情報だけど…今日は合コンだからそんな話はナシナシ!さあ、ギャラちゃんが喋ったから次は蜜璃ちゃんのターンだよ!」

 

(いや、俺的にはその話を聞きたいんだが…)

 

何気に重要な事を話しかけたギャラクトロン、だがそれをあえて無視し蜜璃に話をさせようとする白美。土御門はえぇ…とサングラスがズレた

 

「え?私?じゃあ私も秘密を教えちゃおうかしら?実は私のこの髪の色ね…染めてるんじゃなくて大好物の桜餅を食べ過ぎたらこんな色になっちゃったの!」

 

「へ〜!?そんなんだ!初知り!じゃあ次は風ちゃんに…」

 

「「「いや、ちょっと待って!」」」

 

待て待て、とデルタフォースが叫ぶ

 

「桜餅を食べ過ぎで髪の色が変わった!?え!?何その特殊体質!?もう魔術師に呪いをかけられたて方がしっくりくるよ!?」

 

「え?でも私の友達の後輩は雷に当たって髪の色が黄色になったらしいし…おかしくないよね?」

 

「そいつもおかしいやろ!」

 

桜餅を食べ過ぎたり、雷に当たったら髪の色が変わる時点でおかしい。それなら毎日コーヒー飲んでるもやしは髪が白ではなく黒くなってる筈だ

 

「まあまあ、そんな話は置いておいて…アタシの番ね。アタシ実は……昔、告られた事があります!まあ、振っちゃったんだけどね」

 

「えぇ!?振っちゃったの!?何で?」

 

「いや、だって同年代の男子は、スマホでいやらしい画像見てたりで子供っぽいじゃないですか…アタシもう少し大人な男の人が好きなんで」

 

前に告られた事があると風がさりげなく呟く、それに上条が反応する

 

「確かに犬吠埼さんて中学生とは思えぬ包容力が感じられるし、モテるのも納得だな」

 

「え〜なんですかそれ。あ、もしかしてナンパのつもりですか?」

 

「いや、普通に褒めただけなんだけど…」

 

ナチュナルに褒めるとはとんでもねぇ当麻だ、その結果照れ臭そうに笑う風。そう言うどころだぞ上条当麻。そんなんだからフラグメイカーだのカミやん病だの言われるんだ

 

「それにしても甘露寺さん沢山食べるんですね」

 

「ええ、私常人の8倍の筋力持ってるけど、その分お腹が空きやすくて…もしかして、沢山食べる女の子嫌いだった?」

 

「そんな事ないっすよ。知り合いのインデックス(女子)も同じくらい食ってますし、美味しそうに食べる人て魅力的じゃないですか」

 

「あら、嬉しいわ。伊黒さんみたいな事言ってくれるのね」

 

そうパクパクとパフェを食べる感覚で焼肉ステーキを咀嚼する蜜璃。風といい、彼女といい、スペイン料理店なのに相変わらずスペイン料理を食べやしない。どうしてスペイン料理店に来たんだ

 

『……あのウニ男……殺します』

 

『蛇の呼吸…壱の型……!!』

 

保護者組がもう上条にブチギレ寸前だった、ワイヤーと日輪刀を構える二人…誰かこの二人止めろ

 

(そういうとこやぞカミやん…お前、そういうところやぞ)

 

(いつかカミやんが女子に背中から刺されへんか心配やわぁ)

 

ため息を吐く土御門と青ピ。そんなだから一級フラグ建築士と影で言われるのだと

 

「でさでさ、僕此間変な木乃伊みたいなおじいちゃんにさ、『な!?記録員!?儂の妄想で考えた存在が実在したじゃと!?』て驚いてたんだよ。何のことだろうね?」

 

「あ〜、それは怖いですね。後俺の怖い話なんですけど、実は3日前…」

 

そんな不穏な空気を他所に、傍尾と白美は会話を弾ませている

 

【リセットする】

 

ギャラクトロンは相変わらずである

 

「あ、コーヒー無くなっちまったぜい」

 

「あ、ボクもコーラ飲みきってしもうたわ」

 

「自分のカルピスもだ」

 

「あ、僕の紅茶もだ」

 

「あら、アタシも麦茶無くなってたわ」

 

「私も煎茶がもうないわ」

 

【オイル切れだ】

 

「あ、なら俺が全員のドリンクを持ってくるよ」

 

すると上条以外の全員のドリンクが飲み終わってしまったことに気づく。すると上条が立ち上がって全員のドリンクを取りに行こうとする

 

「いやそれくらい自分でしますって」

 

「そうよ、年下の男の子に持って来てもらうのも悪いしね」

 

「いや、大丈夫ですって。こう見えて俺友達とレストラン行った時のドリンク係なんで」

 

「カミやん、それパシリだにゃー」

 

自分の分は自分で取りに行くとガシッと上条が持っている風と蜜璃のコップを取ろうとする二人

 

「いや、いいですって。アタシが行きますから」

 

「そうよ、私の方が年上なんだから。私が皆の分まで取ってくるわ」

 

「でも女の子達に任せるのは男として…てか、蜜璃さんの力やっぱ強え!そして意外な事に犬吠埼さんも!」

 

そう言いながらコップを奪い合う三人、因みに上条は幻想片影で削板の力を発動しているのだが…蜜璃のパワーと風の女子力(物理)はビクともしない

 

「「「だから、俺/アタシ/私に任せて…!」」」

 

「お、おいカミやん!?それに二人も!そんなに引っ張ったら…!」

 

土御門が制止した時には時すでに遅し、どんなに力が強くとも削板の力は原石。上条の力の方が強く二人の身体を引っ張ってしまい2人の身体が上条の方に倒れる

 

「……あれ?」

 

「「あ……」」

 

バタン、と床に倒れる三人。偶然にも風と蜜璃が上条を押し倒す形で

 

『『………』』

 

無言で立ち上がる樹と蛇を伊黒。もう怒りの臨界点を超えて怒りを超えて無表情になっていた

 

「ご、ごめんなさい!大丈夫ですか!?」

 

「だ、大丈夫ですから!だから早く退いた方が…!」

 

「そ、そうね!」

 

三人とも顔を赤くしてその場から離れる…すると上条は背後に誰か立っている気配を感じ振り返る…自身の背後には二人の死神がいた

 

「満…………開!」

 

「日の呼吸……拾参の型…!」

 

満開して緑色の勇者服を着た樹と赫灼の刃と化した日輪刀を構える伊黒が立っていた。両者共目に一切の光がない

 

「い、樹!?」

 

「伊黒さん!?」

 

「よくもお姉ちゃんを……絶対に許しません!」

 

「貴様…甘露寺の胸をその身体で堪能したな。何とも羨ま……許さん!」

 

「ひ、ヒィイイ!!?上条さん大ピンチ!?」

 

片や絶対に姉離れ出来ないシスコン拗らせた妹(姉もしかり)、片や恋柱にガチ恋柱な蛇柱。そんな二人が上条絶対殺すマンと化した。これではもう手がつけれない

 

「お、おいどうするんだにゃー!?次回、カミやん死す!デュエルスタンバイ!状態だにゃー!?」

 

「お、落ち着くんやツッチー!」

 

「え?モブちゃんもあのパンケーキ屋好きなの?じゃあ今度二人で行かない?あ、これ僕のメアド」

 

「いいですね、行きましょう。あ、もし宜しければ映画もご一緒しませんか?あ、これ自分のメアドです」

 

「「お前らは何のほほんと会話してんだよ!」」

 

こんな修羅場でも傍尾と白美はのほほーんと会話を楽しんでいた。そして何気にメアドをゲットする傍尾。これは彼に彼女が出来る日は近いかも知れない

 

「覚悟はいいですか?いいですよね?答えは聞いてません!」

 

「死ね……お前は存在してはいけない生き物だ」

 

「ぎゃぁぁぁ!!?上条さんまさかの合コンで命のきけーん!?」

 

ハイライトオフな瞳で樹と伊黒はワイヤーと日輪刀で上条を上/条/当/麻にしようとする。それを見てまさか合コンが墓場になるなんて…と目を瞑る上条…だが、しかし

 

「お待たせしました」

 

レストランの店員がガスパチョを持ってきた。

誰もまだスペイン料理を頼んでいないのに(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)、だ

 

「え?まだ僕達スペイン料理頼んでないよ?」

 

「とあるお客様達からのプレゼントです」

 

「え?誰?」

 

「あちらの席のお方々です」

 

誰も頼んでいない注文に上条ブッ殺瞬前だった樹と伊黒も動きを止めた。全員が誰からだろうと思いながら店員が手を指したその場所を見る

 

そこにはニコニコと満面の笑み浮かべながらも目のハイライトオフな美琴と食蜂、舞夏が手を振って席に座っていた。そしてその横には両手を合わせる愛愉と小学生や幼稚園児の男の子の写真を片手で持って鼻血を流しながらニヤニヤしている淡希がいた

 

「「………on」」

 

「……アカン、死んだわ」

 

【オイルの代わりにこれでエネルギー補給しよう】

 

上条と土御門は「俺達、オワッタ」と万歳する。青ピは冷や汗をダラダラ流す。ギャラクトロンはその場の空気を無視してガスパチョを飲もうとする…そして、ガスパチョの中に仕込んであった時限爆弾が起動してしまう

 

『あ………………』

 

次の瞬間、全員の視界が真っ白に染まった

 

 

『続いてのニュースです。午後七時半過ぎ、第七学区のとあるスペイン料理店にて爆発物による爆発が発生。合コンに参加していた8名の男女とその保護者2名は病院に搬送されました。なお、それ以外に犠牲者はいないとの事です』

 

なお、美琴達は淡希の座標移動で爆発から逃れていた模様

 

 

 

 

 

 

 




因みに今回合コンに参加したキャラは

「結城友奈は勇者である」から犬吠埼 風

「鬼滅の刃」から甘露寺 蜜璃

「ウルトラシリーズ」からシビルジャッジメンター ギャラクトロン

でした。約1名おかしいキャラがいるが気にするな。なお簪白美ですが元ネタ…というより彼女は時々とあるの挿絵に出てくる白カチューシャの少女です。性格や名前はオリジナルです

さて、次回から英国異変編です。どんな展開が待ち受けているのかご期待ください

次回もお楽しみに!


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悪魔が潜む霧の都市

今回から新章 英国異変編スタートです!少しギャグ成分あり(気休め程度)、ほぼシリアス真っしぐらです。そして最初はステイン要素。この作品は作者のカップリング欲で出来ています

祝☆気づいたら評価が50になってた!&祝☆100話!評価をしてくださった皆様ありがとうございます!お気に入りも気づけば800超え…評価をつけてくれた人達とお気に入り登録してくれた人達には感謝の言葉しかでません!これからもよろしくお願いします!

今日からテスト期間だぜ…ははは、テスト勉強頑張らなくちゃ(白目)


その船は英国を目指して海上を進んでいた。インド洋から出て、南大西洋に出て北上し北大西洋に到達し、真っ直ぐ英国へと船を進める。

 

「………………」

 

エスコフィエ号という豪華客船…本来は莫き本裏蔵の所有物だが垣根が借りパクしたのだ。そんな豪華客船の船上にて海風を当たっている白い修道服…歩く協会を着た少女 インデックスがいた。

 

「………見えてきたね」

 

インデックスの背後から声をかけたのはステイル=マグヌス。彼はインデックスの横に並ぶと視線の先に見える島国…英国を見据えた。

 

「……まさか、こんな形で戻ってくる事になるなんてね」

 

「……………そうだね」

 

英国は二人の生まれ故郷だ、だがとある事情で暫く帰っていなかった…いや、帰れなかった。帰ればあの女狐…ローラ=スチュワート。否、大悪魔 コロンゾンが待ち伏せているからだ。

 

だが、二人には…いや、二人だけではない。垣根も帆風も上条達もアレイスター達も…全員がエスコフィエ号に乗って英国へと目指していた。

 

「……………」

 

インデックスはただ黙って遠くに見える生まれ育った島国を見つめる。自分の生まれ育った故郷。楽しい思い出が詰まった場所、されど自分の記憶を奪った諸元の根源が住まう国でもある。

 

「……大丈夫さ」

 

ポンッと、ステイルのインデックスの肩に優しく手を下ろす

 

「僕が君を守るよ」

 

そう言って優しく笑いかけるステイル、その顔を見て安堵の顔を浮かべるインデックス。

 

「………うん!」

 

インデックスもステイルに笑いかける、インデックスの右手がステイルの左手を強く握った。

 

何故彼等が英国を目指しているのか、それは1日前に遡る

 

 

「ローラ=スチュワート…コロンゾンが何やら怪しい計画を立てている事が分かった」

 

窓のないビル、そこに垣根達超能力者やオティヌス達の様な学園都市の実力者、そしてインデックス達が集められていた。そこでアレイスターが右手に三つの赤い宝石を見せつけながらそんな事を言ったのだ。

 

「これは上里勢力の少女 烏丸 府蘭(からすま フラン)の頭頂部に埋め込まれていたルビー…ピジョン・ブラッドだ」

 

かつてコロンゾンは三羽の鳩の血で描かれた陣の中より現れた。その逸話を再現し彼女はコロンゾンの霊媒(アバター)としての役割を持っていた。

 

「入院中、冥土帰しがこれを見つけ私が霊的蹴たぐりのガンマナイフで取り除いたものだ。これを魔術で調べた結果、コロンゾンの思考の一部をサルベージ出来た」

 

府蘭は本人すら知らずにコロンゾンの霊媒となっていた訳だが、コロンゾンの思考の一部も府蘭の後頭部のピジョン・ブラッドに伝わっていたのだ。

 

「モ・アサイアの儀という謎の計画が進められているらしい。それが何かは分からないがロクでもない計画には違いない」

 

アレイスターは一呼吸ついてから、こう呟いた

 

「全員でコロンゾンの思惑をぶち壊そう。もう、これ以上あの悪魔の好きにはさせない」

 

アレイスターの言葉に全員が頷いた。

 

「これから英国にここにいる全員で突入する、すぐに用意をしてくれ」

 

『了解』

 

アレイスターはそう言うと転移の魔術を使ってその場から消える。他の面々もすぐに用意をする為に足早に立ち去っていく…その場には垣根と帆風のみ残っていた。

 

「……等々、コロンゾンの野郎とも決着をつける日が来たか」

 

「……ええ。漸く、ですわね」

 

帆風は目を瞑って思い出す、コロンゾンの殺気を浴びて恐怖で身動きが取れなかった自分。そんなコロンゾンと相対できる垣根が遠い場所に立っていると感じた日…彼に追いつく為に必死にもがき…漸く彼の隣に追いつき…等々コロンゾンとの戦う日がやって来たのだ。

 

「……頑張りましょう帝督さん」

 

「勿論だ」

 

二人は互いの目を見てそう言い合った、コロンゾンは強敵だ。これまでの敵の中でも最強格に入るだろう…だが、帆風と垣根は一切の不安はない。自分達二人なら勝てると信じていた。

 

 

 

エスコフィエ号は段々と陸地に近づいていく。もう英国の領土は目と鼻の先だ

 

「……ついたな」

 

船内の個室で本を読んでいた垣根はそう呟くと本を閉じ、窓から見える陸地を見る。彼は立ち上がると船の廊下を歩き船上を目指す。

 

「……さあ、今日で終わりにしようぜコロンゾン。テメェが何を企んでるか知らねえが…んなもん知らねえ。俺達がぶっ潰してやる」

 

そう決意を固めながら船上へ出ると、船上で風に当たっている帆風を見つける。

 

「よお」

 

「……あ、帝督さん」

 

垣根は帆風に声をかけ、彼女は垣根に気づく。垣根は帆風の横に並び立つ。

 

「……不安か?」

 

「いいえ、帝督さんと一緒なんですもの。不安な筈ありませんわ」

 

「……そうか」

 

そう短く会話をして二人はその緑色の瞳で英国を見据える。ここまで来るのに長かった。コロンゾンとの因縁は思えばインデックスと出会った時から始まっていた

 

「……思えばわたくしが強くなりたい、そう思ったのはコロンゾンと出会ったからでしたわね」

 

コロンゾンの殺意を当てられただけで萎縮して動けなかった頃の自分とは違う。あの日から強くなる為の修行を重ね、魔術にも足を踏み入れ、神の座へと辿り着いた。

 

「あの頃の弱いわたくしはもういません。今のわたくしは帝督さんと同じ場所で、横に立って戦える」

 

もうあの頃の自分とは違うのだ、と心の中で言い聞かせ帆風は横にいる垣根の手を握る。それを見て垣根は笑みを浮かべた。

 

「大丈夫さ、俺達なら…いや、()となら絶対にコロンゾンに勝てるさ」

 

「………ええ、そうですわね」

 

垣根と帆風は微笑みあって互いを見つめる。エスコフィエ号の速度が遅くなった…何処かの陸地に船を止めるのだろう。

 

「さあ行こう。最後の戦いの地にな」

 

「はい」

 

 

 

エスコフィエ号から降りた垣根達はロンドンを目指していた。エスコフィエ号の中に予め入れておいた移動用霊装 月輪神馬(フリムファクシ)という北欧神話の夜の女神ノートが騎乗する神馬の名を冠したマリアン特注の霊装。馬車も馬自体も純銀で出来ており、その速度はリニアモーターの速度を超える。

 

ただし、かなり目立つのが欠点だがその欠点を同じく北欧神話のジークフリードの所有物が一つ 透明マント 隠れ蓑(タルンカッペ)の伝承を元にしたステルス術式で姿を隠し、欠点をカバーしていた。

 

『さて、作戦を話そうか』

 

アレイスターは遠距離通信霊装を使って全員に指示を出す。今回英国侵入に駆り出された人材は垣根達は勿論のこと、アレイスターやオティヌス、メイザース、脳幹という学園都市最強メンバーにインデックスとステイル、神裂と元イギリス清教メンバー達だ。

 

『私達はこれから首都ロンドンへと向かう。だが、ロンドンに潜むコロンゾンの元へ向かうには三重四色の最結界を突破しなければならない』

 

三重四色の最結界、ロンドン全体を覆う最奥の防御結界。かつて連合王国は三つの派閥、四つの地域が複雑に重なり合う特異な領域だった。故に全く同じ座標に三重四色を配置することで、Aの道をBが塞ぐの繰り返しが折り重なっている。 簡単に言って仕舞えば凄まじく巨大な壁が行ったり来たりを繰り返しており、下手に触れてしまえば中空に引きずり込まれ、莫大極まるプレス機に押し潰される。

 

暗号化されている為、結界の解除は魔神であっても不可。最結界を張った者ですら解除不可という鬼畜仕様で入ったら押し潰されて即死という難関極まりない結界だ。

 

「……多分私の考察だと、土地や空間に染み付いた規律に現実の斥力を与えた感じ…日本でいう猿田彦とかみたいな道祖神に似てるけど…基本的には会員に組織の秘密を守らせるよう強制するギルドの参入だね」

 

インデックスはその三重四色の最結界について、そんな結論を出した。要するに国民性や地域性などの『部外者』を遠ざける結界ということだ。

 

『もうすぐイングランドーロンディニウム大要塞の外縁だ』

 

そんなアレイスターの声が響く、インデックスが乗っている月輪神馬にはステイルや神裂の他に上条と美琴、食蜂が乗っている。上条は幻想殺しで月輪神馬を破壊してしまわないように手袋をつけていた。

 

『どうやって三重四色の最結界を突破するかだが…これは簡単だ、結界のコアは処刑(ロンドン)塔にある』

 

処刑塔、数多の罪人達を幽閉し、処刑した血と拷問、怨嗟の施設。現在は表向きは観光名所として処刑設備や英国王室の宝石類を展示している…だが、裏では必要悪の教会(ネセサリウス)の魔術師の拘束施設となっており、未だに拷問や処刑を行い続けている。

 

『処刑塔に潜入し、コアを破壊する。その為にまず処刑塔に潜入するチームと王室派と騎士派に合流するチームに分かれる』

 

英国の三大勢力のうち、王室派と騎士派は学園都市の味方だ。清教派はコロンゾンの息がかかっている為、味方にはなってくれなさそうだがたかが普通の魔術師なぞ彼らの敵ではない。

 

「しかし、誰が処刑塔に潜入するのですか?あそこは選りすぐりの魔術師達が常備滞在している筈…」

 

神裂が誰が処刑塔に潜入するのかと考える。処刑塔は神裂ほどの戦闘力はないものの、ステイルなら苦戦しそうな魔術師が滞在してるのだ。誰を向かわせる気なのかと首を傾げたその時…

 

「勿論、この上条当麻達(バカップル)だ」

 

『え?』

 

通信霊装からではなく、インデックス達が乗っている馬車からアレイスターの声が響いた。かと思うと上条達の横腹を蹴られ、びょーんと馬車から転がり落ちていく上条達。

 

「「「げふっ!?」」」

 

顔面から地面にキッスした上条達、これは痛い。

 

「え!?か、上条当麻!?御坂美琴も食蜂操祈も大丈夫か!?」

 

ステイルが三人の心配をする、そしてステイルは驚きの目で三人を蹴り飛ばした張本人であるアレイスターの方を向く。

 

「何故彼らを蹴り落とした!?」

 

「言っただろう?処刑塔の結界のコアを破壊してもらうと。だから彼らには囮になってもらったのさ」

 

そう悪びれもなく答えるアレイスター、インデックス達は「こいつ…外道だ」と内心呟いた。

 

「さあ、頑張ってくれたまえ上条当麻、御坂美琴、食蜂操祈」

 

「「「ざけんな!!」」」

 

アレイスターに向けて中指を立てながら放送禁止用語を叫ぶ上条達、だが数秒後魔術師らしき複数人に取っ捕まってしまい、簀巻きにされて処刑塔までドナドナされて行った。人生て何が起こるか分かんないね。

 

「………アーメン」

 

「「……アーメン」」

 

インデックス達は哀れすぎる上条達(子羊)に祈りを捧げるのだった。

 

 

 

「……来たようね。アレイスター=クロウリー、そして垣根帝督(イレギュラー)

 

スコットランドのキャッスルロックと呼ばれる岩山に建てられた古代要塞 エディンバラ城の地下深くにある迷宮にローラ=スチュワート(コロンゾン)は歩いていた。

 

「目的の物は回収した。後は儀式場()だけだ」

 

そう言って暗闇の中で笑う大悪魔、彼女の長い金の髪が触手の様に蠢き、ある物を絡め取っていた。それは剣と冠、笏、運命(スクーン)の石…スコットランド版のカーテナとも呼べる四種の霊装 オナーズオブスコットランドを髪で運んでいた。

 

「私はお前達を歓迎するぞ。自ら死地に飛び込んで来た事にな」

 

そう言って大悪魔は笑う。それは嘲笑、愚者を上から見下ろす笑みだ。愛しい人を抱きしめる瞬間の如く両手を大きく広げコロンゾンはこう呟くのだ。

 

「ようこそ、霧と魔術と闘争の都ロンドンへ」

 

 

拘束、捕縛された上条達はアレイスターの企み通り処刑塔内部にいた

 

「「「アレイスター、いつか殺す」」」

 

ブツブツとアレイスターへの呪詛を呟く上条達、まあ結果としては三重四色の最結界のコアが隠された処刑塔に潜入できたが、もう少しマシな方法はなかったのかと上条達は思う。それはそれとしてアレイスターは殺す。

 

「おい!さっさと出ろ!拷問(取り調べ)の時間だ!」

 

「今なんて書いて取り調べて読んだ?」

 

看守…ビーフィーターの男がそう叫ぶと牢の鍵を開け、上条達を拷問室まで連れていく。ここで逃げてもいいがコアがどこにあるか分からない上、どれだけの敵がいるか分からないので今は大人しく従う事にした。

 

「ほら、ここが拷問室だ」

 

上条達が入ったのは壁に血がこびりついた部屋。中には赤い血が付着した処刑設備が無造作に置かれている…恐らくこの部屋自体が心理的に拷問する者を追い詰める仕組みなのだろう。

 

「やあ、君達が侵入者か。こんな忙しい時期に…全く、大変だ大変だ」

 

そんな事を言ったのはぶかぶかの修道服を身に纏う幼い少年。だが、この少年からは血の匂いがする。

 

「僕はニクス=エヴァーブラインド。必要悪の教会の魔術師さ。まあ、痛いのが嫌だったら手っ取り早く情報吐いてよ」

 

彼の片目はガラスで出来ていた。恐らく霊装の類なのだろう。彼は右手で片目からガラスの義眼を引っこ抜くと左手に用意しておいた鏡の義眼を装着する。

 

「これは浄瑠璃鏡。閻魔が死者の善悪を見極める、死者を裁く鏡。これで君達は嘘がつけない、何故ならこの義眼は全てを見通すのだから」

 

拘束椅子に捕らえられた上条達、そんな彼らに向けてそう嫌らしく笑うニクス。確かにそんな霊装があれば嘘など意味がなくなる。だが、ニクスは思い違いをしている。別に上条達は素直に拷問を受ける義理はないのだから。

 

「……ま、素直に拷問受ける気はねえし…終わらせるか」

 

「なに……?」

 

ニクスが首を傾げたその時だ、上条の手袋をはめていた右手からショッキングピンク、エメラルド、スカイブルー、レモンイエローの色彩を持つ鉤爪の生えた爬虫類の腕となった。

 

「……!?」

 

その右腕は拘束椅子を破壊し、美琴と食蜂達の拘束椅子を触れただけで分解、破壊する。ニクスはその光景を見て後方へ跳躍し上条を睨みつける。

 

「……その右腕…なんなのか分からないけどヤバそうだね。これは本気を出さないと大変だ大変だ」

 

そう呟きながら、彼は浄瑠璃鏡の義眼を抜き取り、蒼い宝石で出来た義眼を装着する。

 

「これはオーディン=イミテーション。君達の攻撃を予知する義眼さ…まあ、そっちの変な腕の奴の未来は何故か見えないけど」

 

オーディンは片目をミーミルの泉に捧げ、知識を得た。そしてミーミルの泉にはミーミルという賢き巨人がおり、その巨人が首だけになった時、オーディンはいつもミーミルに相談事をしたという。その逸話を再現し攻撃を予知する霊装と化しているのだが…上条には幻想殺しがある為、未来予知出来ない。

 

「ふむ、これもダメか…なら、これはどうだい?」

 

次に装着したのは紫色の宝石で出来た義眼。その名もメデューサ=アイズ。万物を恐怖で石の様に硬直させる魔眼で、本家本元の能力を再現した能力だ。

 

「石化せよ!」

 

その一言と共に美琴と食蜂の身体がまるで恐ろしい物を見たかの様に恐怖のあまり硬直する。だが上条には当然の如く効かず、その鉤爪をニクスへと振るい、ニクスはそれを回避する。

 

「これも効かないか!なら、これなら!」

 

そう言って次に装着したのは赤い宝石で出来た義眼だ。

 

「これは奥の手の一つ、アシュヴァッターマン=プライド。下等生物を支配しあらゆる悪しき者から身を守るマハーバーラタの英雄の一人の能力さ」

 

そう自慢げに魔眼について話すニクス、そしてカッと義眼を光らせて霊装の力を発揮しようとする。

 

「武具など不要、真の英雄は眼で殺す。てね。じゃあさっさと終わらせて…」

 

そうニクスが言いかけた瞬間、上条の四色の色彩を持つ爬虫類の腕が消え、代わりに七体の竜王が顕現した。

 

ーーーグギィガアアアアァァァ!ーーー

 

ーーーボオロロロロウウゥゥ!ーーー

 

ーーーグラギイイィィィ!ーーー

 

ーーーグラアアアアァァァァァ!ーーー

 

ーーーガギィアアアアア!ーーー

 

ーーーヴヴヴヴヴヴヴ…!ーーー

 

ーーーギィヤハハハハハ!ーーー

 

「………あ、無理だこれ」

 

七体のドラゴンを見てニクスは悟った。こんなの勝てる訳ないだろ、と。

 

直後、竜王達が処刑塔の壁を突き破り外への顔を覗かせた。その轟音と竜王の咆哮を聞いた魔術師達は怯え逃げ惑う。

 

「ありがとなドラゴン達。またなんかあったら呼ぶわ」

 

ーーーグギィガアアアアァァァ!ーーー

 

ーーーボオロロロロウウゥゥ!ーーー

 

ーーーグラギイイィィィ!ーーー

 

ーーーグラアアアアァァァァァ!ーーー

 

ーーーガギィアアアアア!ーーー

 

ーーーヴヴヴヴヴヴヴ…!ーーー

 

ーーーギィヤハハハハハ!ーーー

 

消えていく竜王達に手を振る上条、竜王達もリズミカルに首を振って消えていく。仲良いな〜と美琴と食蜂が思っていると拷問室(だった場所)にメガネをかけた女性が現れる。

 

「あらあら、ニクスさんはやられてしまった様ですわね。どうしましょうあるぷすちゃん?」

 

その姿だけ見るなら若奥様に見える女性は、太いリードの先に繋がれたあるぷすちゃんという赤錆色のゴツい回転刃(・・・)に話しかける。

 

「……え?妄想癖のあるヤベーおばさん?」

 

「失礼ですわね、ワタシはキュティア=バージンロード。こちらは私の自信作 あるぷすちゃんですわ」

 

彼女はキュティア=バージンロード。悪名が高すぎて国外に派遣できない程の実力者で単純な戦闘力ならステイル以上の実力者だ。

 

「さて、これだけ暴れたんですもの…これは拷問じゃなくて処刑ですわね。ねえあるぷすちゃん」

 

そう言って彼女はリードを握り、回転刃を宙に浮かす。上条の身体など豆腐よりも柔らかそうに切れるその刃は高速で回転しながら「待て」をされた犬の様に主人からの命令を待っている。

 

「ふふふ、この子にはロイヤルとセレブリティな恨みが凝縮しておりますわ…その切断力を身を以てご堪能あれ。代金は…貴方方の命です」

 

「穢れ」は適切に転化せることができれば特別な力を宿す。その理論を元にイギリスの王侯貴族のロイヤルでセレブリティな恨みを刀の錆で固めた刃に付加する…そして生まれたのがキュティアの自信作 あるぷすちゃんだ。

 

「さあ!GO!ですわ、あるぷすちゃん!」

 

待っていました、と言わんばかりに回転刃が上条達に襲いかかる。その刃は無情にも上条達を斬り裂…けなかった。

 

「甘いわ!」

 

金属音が鳴り響く、なんと美琴が砂鉄の剣を形成し回転刃を受け止めたのだ。

 

「な!?あるぷすちゃんを止めた!?」

 

呆気にとられるキュティア。実はこの処刑塔に来る前に上条達はそれぞれの懐に魔法瓶を隠していた。その中に入っているのは水ではなく砂鉄だ。この様な建物の中には当然ながら砂鉄はない。なら自分達で持ち歩けばいいじゃないという雑な策だ。因みに持ち物検査は看守達から受けたが食蜂がリモコンなしで洗脳をした為、バレなかった。

 

「回転する刃……ね、生憎私の砂鉄の剣もチェーンソーみたいに回転させてんのよ」

 

そう言いながら回転刃を弾き返す美琴、リードを引っ張って回転刃を戻すキュティア。美琴は懐から一枚のコインを取り出し、それを宙に飛ばす。

 

「ねえ……超電磁砲(レールガン)て知ってる?」

 

「な…………!?」

 

キュティアへと右手を向け、その右手に向けて落ちてきたコインを指で弾く。超電磁砲。彼女の能力の代名詞であり能力名でもあるその一撃は、真っ直ぐキュティアへと飛来する。彼女はそれを防ごうと何らかの行動を取ろうとして超電磁砲に飲み込まれた。そして先程の竜王達が大暴れした所為で倒壊しかけていた処刑塔にトドメを刺した。

 

 

「あ〜、やっちまったかこれ?」

 

上条が頭をポリポリと掻く。彼らは瓦礫の上…処刑塔だった建物の瓦礫の上に立っていた。超電磁砲で完全に倒壊した処刑塔。幸いな事に一般人は誰一人いなかったが、英国王室の宝石類が瓦礫の下に埋まっているだろう。いったい損害賠償いくらになるのかしら?うふふ。と白目を剥きかける上条達。

 

「あら、上条さん〜美琴ぉ〜。これじゃないかしら結界のコアて」

 

食蜂は瓦礫の中からあるものを見つける。それは大きな丸いボールで。半透明な四色の大きな球体の中に、また四色の半透明な球体が入っており、更にその球体の中に同じ色の小さい球体が入っていた。マトリョーシカの様なこの球体こそが結界のコアだと上条達は理解する

 

「意外とあっさり見つかったわね。これを守ってる番人とかいると思ったのに」

 

「そうねぇ、私もこんなに呆気なく見つけて意外力過ぎるんだゾ」

 

「まあ、いいじゃないか。さっさと壊そうぜ」

 

えーい、と上条が軽いノリで軽く球体を叩く。するとバリンと呆気なく砕ける球体。それと同時に圧が消えた気配がした。三重四色の最結界が崩壊したのだろう。

 

「しかし、誰も襲ってこなくなったな」

 

「ま、沢山襲って来られるよりはマシよ」

 

「それよりも早く皆と合流して、アレイスターさんをブン殴りたいんだゾ☆」

 

「「激しくその意見に同意」」

 

そう言いながら処刑塔(跡地)から立ち去っていく上条達。そんな彼らを遠くから見ていた真っ赤な色のスーツとドレスの中間のような派手な服を着た少女 フリーディア=ストライカーズとガクガク震えている魔術師達がいた

 

「………勝てる訳ないじゃん、あんなバケモン」

 

あんなバケモノとは戦えないと気絶したニクスとキュティアを担架で運んで逃げるフリーディア達。そんな魔術師達に気づく事なく上条達はアレイスター達がいる場所を目指すのだった。

 

 

 

「……結界が消えた様だな」

 

現在アレイスター達は月輪神馬から降りて、襲撃して来た魔術師達と交戦していた。アレイスターは三重四色の最結界が消滅したことを感じ取った。

 

「さあ。待っていろコロンゾン。今日がお前の最後の日だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ニクスさんは原作だとかませだったんで結構活躍させました。でも、かませなのは変わらず。仕方ないね、若奥様もあるぷすちゃんもかませ、仕方ないね

さあ、次回もイギリス清教の魔術時が沢山登場(予定)。更にまさかのあの霊装が思わぬ形で再登場!?

次回もお楽しみに!


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目覚める災厄

英国異変編第2話、スタートです。今回は前回の後書きで言ったようにあの霊装が再び登場です。まさかの出番に驚いてくれたら嬉しいです。

そして今章のラスボスが早くも出現、そのボスの驚きの能力とは?まだまだ前半戦。英国異変編第2話スタートです!


トーキー=シャドウミントは困惑していた。彼はイギリス清教に仕える魔術師である。得意とする魔術は教会の鐘を魔術に転化する 鐘楼斉唱という術式だ。

 

その能力は銘文が刻まれた鐘を打ち鳴らす事で刻まれた銘文の効果を街の隅々まで及ばせ、更に複数の鐘を順番通りに鳴らし組み合わせる事で、銘文を複数繋げ新しい効果を生み出す術式だ。

 

今回はそれを応用した広範囲からの標的を定めた精密爆撃を発動した。これにより数々のイギリス清教に仇なす異教徒を断罪してきた…と言うのにだ。

 

「何故だ!?何故あの男には能力が効かない(・・・・)!?」

 

銀髪の男…アレイスターにはトーキーの鐘楼斉唱が効かないのだ。どんな攻撃も全くもって通用しない。それがトーキーが困惑している理由の一つだ。

 

「くそ!神は罪人を見逃さない/我らが父は邪悪を許さず/信仰は闇の中に火を与える/我らが主はあなたを選んだ。!」

 

もう一度魔術を放つも、やはりアレイスターには傷一つつかない。それを見て発狂せんばかりに頭を掻き毟るトーキー。

 

アレイスターの魔術無効にはちゃんとした理由がある。別に幻想殺しの様な特殊な異能による防御ではない。世界に広まっている近代西洋魔術の理論はアレイスターが構築した、言わば「アレイスター流魔術解釈」と言えるだろう。故に裏口や脆弱性を知り尽くすアレイスターには一切の近代西洋魔術、または近代西洋魔術の要素が含まれた術式に干渉や無力化、ひいては乗っ取ることが可能だ。

 

この魔術無効を打ち破るには天使や悪魔の様な人外の魔術、近代西洋魔術以前の無人自律霊装、独自の魔術理論を持つ魔術師しか打ち破る事しか出来ない。だが、それを実行できる技量を持つ者は…イギリス清教にはいない。故にアレイスターに魔術で傷を与える事はできない。

 

「残念だったな、私が考えた魔術で私が傷つく訳がないだろう」

 

そうアレイスターが宣言し、鐘楼斉唱の精密爆撃を放とうとするトーキーに霊的蹴たぐりでミサイルを放ち壁を吹き飛ばす。

 

C  R (右方へ変更)T T T L(左方へ歪曲せよ)!」

 

それ以外にも銀髪のシスター…かつては同じイギリス清教の仲間だったインデックスが強制詠唱(スペルインターセプト)という、ノタリコンを用い、相手の術式に干渉し暴走を起こす魔力を必要としない魔術。インデックスの得意技の一つである。

 

「〜〜〜〜〜♪♪♪」

 

更に10万3,000冊の魔道書の知識を活かした対象の信仰する教義の矛盾点を徹底的に糾弾し、相手の精神を破壊する魔滅の声(シェオールフィア)を奏でる。下手に魔術を行使すれば乗っ取られ自滅し、不用意に大勢で攻めれば矛盾点を疲れ自滅する…挙げ句の果てには

 

神よ、何故私を見捨てたのですか(エリ・エリ・レマ・サバクタニ)

 

万物を消失させる赤黒い光線が魔術師達を襲う、更に天空より50の灼熱の矢が降り注ぎ魔術師達を殲滅する…そう、彼女は魔神に最も近き者。魔力さえあればその魔道書の知識を活かし大魔術を行使可能なのだ。

 

インデックスだけでない、ステイルは魔女狩りの王(イノケンティウス)を顕現させ魔術師達を焼き払い、神裂は聖人の力で魔術師達を薙ぎ払う。メイザースはお得意の召喚術で十字教徒ならば絶対に勝てぬ四大天使を召喚し、蹴散らしていく。オティヌスも弩でゴミの様に魔術師達を吹き飛ばし、脳幹は対魔術式駆動鎧(アンチアートアタッチメント)を装着しミサイルや弾丸を速射し破壊の限りを尽くす…それだけで何百人はいただろうイギリス清教の魔術師やシスター達を一瞬で殲滅した。

 

「エステルの修行がてら、魔術について独学で魔術の解析出来る様になってて助かったぜェ」

 

一方通行の能力の反射は魔術を反射する事は出来なかった。だが、エステルと過ごす内に魔術について多く触れ、独学で解析する事で漸く反射する事が可能となった。

 

「帰ったらエステルの頭を撫でてやるか」

 

そんな事を呟く一方通行、彼は一度も攻撃など行っていない。なにせ相手が勝手に魔術を放ち、自ら自滅するのだから攻撃する必要がないのだ。

 

「根性が足りてねえな!鍛え直してこい!」

 

「無駄無駄無駄ァ!私がどれだけ理不尽な敵と戦ってきたと思ってんだ!私を倒してえなら大天使か上里勢力を連れて来い!」

 

削板のカラフルな謎の爆発が発生し、ギャグ漫画の様に魔術師達が空のお星様になる。麦野の原子崩しが周囲に乱れ呆気なく倒される魔術師達。

 

「たく……根性が足りてねえな、こいつらは」

 

「とんだ腰抜け共にゃーん」

 

そうほざく二人だが仕方ないだろう、削板と麦野の実力が圧倒的過ぎて並みの魔術師ではもう相手にならないほどの実力なのだから。

 

「くっ……!異教徒と科学サイドの尖兵め…!だがこの私、アンジュ=カタコンベを簡単に倒せると思うな!」

 

クラシックなメイド服を着た金髪の女性…アンジュ=カタコンベは複数のスーツケースを『棺』として扱い、操作し突進させる事でインデックス達を攻撃してくる。その速度は車以上の速度と大型トラックに匹敵する衝突を誇る。

 

「ま、当たればの話だけどな」

 

垣根は未元物質の壁を形成し、スーツケースの衝突を防ぐ。帆風もザドキエルをその身に降ろし超スピードで突進するスーツケースを避ける。麦野は原子崩しを3発アンジュに放ち倒そうとするが…

 

「甘い、ですよ!」

 

「な……!?」

 

スーツケースを盾にして原子崩しを防ぐアンジュ、イージス艦を輪切りにする威力を誇る原子崩しを単なるスーツケースで防がれた事に目を見開く麦野。

 

「シジルで名を刻み、テレズマを宿した私の子供達はそんな攻撃ではビクともしませんわよ!」

 

このスーツケース達はシジルで名を刻み、自走する事が出来る。本来はスーツケースの内部は味方を収納する超小型防音環境で、状況に応じ負傷した味方を回収したり、敵を捕獲するのにも用いる。だがテレズマを宿している為、並大抵の攻撃では傷一つつかない。攻撃にも防御にも転用できる武器。それがアンジュの術式だ。

 

「はっ、流石だなミス(・・) アンジュ」

 

「……あ"?今なんと言いました貴方?」

 

垣根がニヤリと笑ってアンジュの事を『ミス』と呼んだ。それに過剰なほど反応し青筋を浮かべるアンジュ。

 

「ミスて呼んだんだよ、ミス アンジュ。で、そろそろ婚活パーティーに参加した方がいいとていとくん思うの。そろそろ売れ残り(クリスマスケーキ)の時期だろ?」

 

「………殺す!」

 

実はアンジュ=カタコンベ。色々崖っぷちな立場で普通の男女の出会いに飢えており、もうすぐ○○歳になってしまう。そんな彼女をミス呼ばわりすれば話し合い(物理)が始まるのだ。

 

そんな彼女は垣根の挑発に乗り、スーツケースを全て垣根へと突進させ、彼女自身も垣根に突進する。とはいえ怒りで我を忘れる様なアホな真似はしない。怒りながらも氷の様に冷静な思考で自分をミス呼ばわりした垣根を殺そうと考えていた次の瞬間。

 

『きひひ。これも契約の内ですから…悪く思わないでくださいね〜。いひ』

 

「な……!?」

 

アンジュの背後に現れた黒い影が彼女の中に入り込む。アンジュは抵抗しようとするがすぐに目の光を失い、口だけが歪に歪んでいた。

 

『「これでいいんですか〜?きひひ」』

 

「ああ、完璧だ」

 

その黒い影の正体はクリフォパズル545、アンジュに憑依する事でアンジュの支配圏を得る他、クリフォパズル545は「人をおかしくさせる空気」そのものである為、彼女が現れた時点で魔術師達の結束を瓦解させる。

 

「おいオマエ…まさか、あいつらの仲間じゃねえのか?」

 

「そういうお前こそ、さっき魔術をわざとあいつらに外したんじゃねえのか?!」

 

「私が裏切り者ですって!?あんたが裏切り者でしょう!この背信者!」

 

「言ったな!ワタシの様な熱心な信者を背信者呼ばわりとは…!さてはお前が裏切り者だな!」

 

「ぼ、僕は味方だ!?何故、攻撃をする!?」

 

「白々しいぜこの裏切り者が!ぶっ殺してやる!」

 

「お、落ち着いてマリアンヌ!私は貴方の親友でしょ!?」

 

「ええ、落ち着いてるわよ?だから、私達を騙した貴方を親友である私が断罪するの」

 

クリフォパズル545の本質は『憑依』ではなく、集団の結束力を破壊し内部からの瓦解を促すその邪悪さだ。まさに邪悪の樹(クリフォト)をなぞり誕生した悪魔に相応しい能力だ。

 

『「いひひ。絆は簡単に壊れる。これが真理なんですよねぇ。きひ」』

 

「……やれって言った俺がいうのもなんだけど…えげつねえなこれ」

 

「………ですわね」

 

そう言ってアンジュの身体で嘲笑うクリフォパズル545。仲間同士で争い合う魔術師達とそれを催したクリフォパズル545に若干引く垣根と帆風。流石のアレイスターも僅かに頬を引きずり、インデックス達に至ってはドン引きしている。

 

「……やっぱり悪魔の力なんて借りるもんじゃないな」

 

 

 

そんなこんなでイギリス清教の魔術師達を撃破したアレイスター達は王室派と騎士派が待つ場所まで向かう。三重四色の最結界で閉ざされていた場所に入り込み、王室派と騎士派の面々が待っている場所に到着する。

 

「随分遅い登場だな…待ちくたびれたし」

 

「少々手間取ってな…だが、よく言うだろう?真打ちは遅れてくると」

 

王室派の指揮官を務めるキャーリサと騎士派の指揮官を務める騎士団長、そして偶々英国にヴィリアンに拉致監禁…招待されていたウィリアムがアスカロンを手に持って待っていた。

 

「さあ、これで役者は揃った。ここら一体の住民の避難は完了している。いくぞ学園都市の諸君、我が友よ。共に英国に巣食う悪魔を滅しようではないか」

 

「うむ、そうであるな」

 

騎士団長がそう宣言し、ウィリアムが同意とばかりに頷く。

 

「こちらはあのバカップル…上条当麻と御坂美琴、食蜂操祈がまだ来ていないが…その内来るだろう。さっさと行く…」

 

さっさと行くぞ…そうアレイスターが言いかけたその時だ。

 

「「「見ぃつけたぁぁぞぉぉぉ!!アレイスターぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」

 

「む……?誰…げぼぐばぶればぁ!?」

 

『!?』

 

そんな叫び声が聞こえ、アレイスターが不思議に思って振り返ってみると上条達が猛ダッシュしてからのドロップキックをアレイスターにお見舞いし、アレイスターは吹き飛ばされ近くの建物に激突、壁を突き破って建物の中に入っていた。

 

『「ええぇぇ……」』

 

流石のクリフォパズル545も困惑した声を出す、今いい空気だったのに何してるのこの馬鹿達。と人をおかしくさせる空気であるクリフォパズル545が空気を壊すなと突っ込んだ。

 

「よくも俺達を囮にしてくれたなァアレイスターくゥゥゥンよォォ!」

 

「ブ・チ・コ・ロ・シ・か・く・て・い・よ、このクソ野郎がぁぁぁぁ!!!」

 

「跪いて地を舐めて死ねぇ!そして生まれ変わってまた私に殺されろ!この変態力天元突破親父!」

 

一方通行や麦野の口調になった上条と美琴、おかしいテンションの食蜂。そのイッちゃってる顔を見てドン引きする騎士派の騎士達。キャーリサ達でも引き顔だ。だがアレイスターは何事も無かったかのように建物の瓦礫の中から起き上がる。

 

「さあ、行くぞ」

 

「「「オイぃぃ!何事も無かったかの様にすんなボケェェ! !」」」

 

「女王達が日に日にリアクション芸人になって言ってる気がする件について」

 

「安心しろ、あいつらは生まれながらのリアクション芸人だ」

 

リアクション芸人達のことは放っておいて、垣根達 科学サイドとキャーリサ率いる王室派と騎士派連合は清教のトップであるコロンゾンを撃破する為、コロンゾンの足取りを追う。

 

「で、コロンゾンが何処にいるのか分かんねえのか?」

 

「ああ、ランベスの宮には当然ながらいないし、ロンドン全域を隈なく探してもいなかった。地下鉄も一応調べたが…何処にもいない」

 

コロンゾンはロンドンのあらゆる場所を探しても、何処にもいない。そう残念そうに答える騎士団長。

 

「ロンドンにはいない………ならロンドン(・・・・)以外はどうでしょう?」

 

「!……それは考えていなかったであるな」

 

帆風のその言葉に目を見開くウィリアム、確かにコロンゾンがロンドンにいないならロンドン以外にいると考えるべきだった。

 

「流石だな潤子。やっぱり潤子は俺の自慢の彼女だな」

 

「えへへ。当然です、わたくし帝督さんの彼女なので」

 

「おい、誰かこのバカップルの口を閉じさせろ」

 

『「それが出来たら苦労はしませんよ…きひひ」』

 

そんな甘々な雰囲気を出す垣根と帆風に(未だ独身で神裂に想いを伝えられないヘタレな)騎士団長が青筋を立てて、誰か止めろと呟くがクリフォパズル545は無理だと一蹴した。

 

「なら、話は早いし。おい、コロンゾンが行きそうなロンドン外の場所を徹底的に探…」

 

探せ、そうキャーリサが言いかけたその時だ。突如アレイスター達の地面に黒い影が覆った。

 

「?なんだ……」

 

上条がふと上を見上げてみると…頭上には巨大な真球の巨岩が上条達を押し潰そうと迫っていた。

 

『………wats?』

 

思わずアレイスターと垣根、帆風以外の全員英語で(ほぼイギリス人だが)間の抜けた声を上げる。

 

「!か、回避…いや迎撃だ!」

 

キャーリサは咄嗟に回避する様に叫びかけるが、避けれないと即座に気づき真球の岩石を破壊しろと叫ぶ。その声に応じ麦野の原子崩しと美琴の超電磁砲、一方通行の暴風が放たれ岩石を破壊する。

 

「なんだあれは!?新手の魔術攻撃か!?」

 

キャーリサは愛馬 アレックス(処女厨)の手綱を握りながら飛来する岩石を避け続ける。まさにその様子は人馬一体。時速180キロの速度で岩石を避けながら何処から放っているのか確認する…そして、ロンドンの異変に気付く。

 

「な……」

 

ロンドンはいつの間にかエジプトを思わせる風景や構造物が出現していた。正確にはエジプトに似た風景や構造物だ。エジプトを知る者ならその違和感や違いに気付く筈だ…それはさながら西洋人から見たエジプトの様だった。

 

「……なんだあれ」

 

騎士派の騎士達も漸く何処から岩石を放っているのか理解した。クレーンや投石器のような形状の霊装が岩石を飛ばしてきているのだ。それを見て思わず垣根は目を見開いて呟く。

 

「……テヌフト=アルテミス(・・・・・・・・・・)?」

 

「え?」

 

テヌフト=アルテミス、上里勢力の一人 豊山琉華が使用した神威混淆(ディバインミクスチャ)…だが、あれは垣根が琉華を撃破すると同時に破壊された筈だ。

 

「コロンゾンの奴め、神威混淆を量産していたな…人と融合させるのではなく、地脈に接続している為蛇神宛那の様な戦闘力はないが…それでも厄介な霊装なのには変わらない」

 

本来の用途は人と融合させる為、地脈では1%しか力を引き出せない。だが、それでも並大抵の魔術師では相手にならない。

 

「ふん、愚かだなコロンゾン。俺達にそんなガラクタが通用すると思っているのか?」

 

「だとしたら舐めているな、私は元魔神だ。そんな玩具程度には負けん」

 

だが、ここにいるのはアレイスターや垣根などと言った猛者達だ。量産品に負けるわけがない…そう豪語するメイザースとオティヌス。

 

「……いや、あれ一体て訳じゃなさそうだぜ」

 

「?それはどういう意味だ帝督?」

 

削板が垣根の呟きがどういう意味か尋ねようとしたその時、地面が激しく揺れ、地下から数十のテヌフト=アルテミスが出現する

 

『は?』

 

テヌフト=アルテミスだけでない、他にも巨大なオベリスクの形状をしたラー=ゼウスやテムズ川から現れた全長300mを超える、戦艦サイズの巨大なワニ オシリス=ハデス。紫色の気色悪い薔薇を中核として葡萄の蔦が無数に生えた食人植物 イシス=デメテル。蛇の頭部を持つハゲワシ ワチェット=レト…五種の神威混淆が各種数十体以上もロンドンに出現するのだった

 

「……いや、作り過ぎだろ大悪魔」

 

「量産型とはいえ…数に限度がありますわよ…」

 

神威混淆のバーゲンセールに引き顔な垣根と帆風。アレイスターもこれは予想外だったのかうそーんと目を見開いている。上条達は「あれ?自分達が苦労して倒した敵さんの劣化版が一杯だ、わーい」みたいな顔をしていた

 

「……ふ、俺にはあんなの単なるガラクタでしかない(震え声)」

 

「……は、元魔神を舐めるなよ(震え声)」

 

「いや、滅茶苦茶震え声じゃないか」

 

脳幹が強がるメイザースとオティヌスにツッコミを入れる

 

「……ま、所詮は量産機だ。宛那達を相手にするよりはマシだ。相手は単なる図体がデカいだけの敵なんだからな」

 

いくら数が多くとも、質は宛那達の足元にも及ばない。頑張ればキャーリサや騎士団長でも撃破できる程度のレベルでしかない。

 

「は、上等だし。私のカーテナ=オリジナルの錆にしてやる。いくぞアレックス!」

 

ーーーヒヒィィィィィィィン!ーーー

 

愛馬にそう伝えると、嘶く愛馬。疾風の如く大地を駆け抜け降り注ぐ無数の岩石やラー=ゼウスが放つ「溶けた鉄のようなぬめりを持ち、同時に巨大な樹を思わせる」閃光をカーテナ=オリジナルの全次元切断術式で斬り裂く。イシス=デメテルの葡萄の蔦が地中から出現し襲いかかるがアレックスは素早い身のこなしでそれを回避、回避、回避。そしてキャーリサは射程範囲内に入った一体のテヌフト=アルテミスに斬撃を振るい、テヌフト=アルテミスを両断する。

 

ーーーガバァヴァァァァァ!ーーー

 

テムズ川からロンドンの街に陸地に四つん這いで上がってきたオシリス=ハデス数体、口から冥府の凍える息吹を吐き出しロンドンの街を凍て付かせ始める。

 

「行くぞ我が友よ!」

 

「うむ!」

 

騎士団長とウィリアムが音速を超える速度で駆け抜けた。騎士団長は三メートル越えの赤黒い長剣 フルンティングを、ウィリアムは大剣 アスカロンを構えオシリス=ハデスに挑みかかる。

 

「『切断威力』!」

 

「ふんぬ!」

 

ーーーガバァヴァァァァァ!?ーーー

 

なんでも斬り裂く切断威力でオシリス=ハデスの右前脚を切断、ウィリアムもアスカロンを横薙ぎで振るい左前脚を切断。オシリス=ハデスは戸惑いの咆哮を轟かす。

 

「「はあぁぁぁぁぁ!!!」」

 

『武具重量』で破壊力を増し、アスカロンの重量を活かしオシリス=ハデスの首を切断するのではなくハンマーの様に打ち砕く事でオシリス=ハデスを撃破する。

 

ーーーキィオオオオオォォン!!ーーー

 

空から急降下してくるワチェット=レト。口からシロナガスクジラを数秒で溶かし尽くす毒霧を吐き出すが垣根が翼を振るい烈風を放つ事で拡散される。

 

「お前の相手は俺だ、かかって来な」

 

ーーーキィオオオオオォォン!ーーー

 

恐れ知らずにも垣根へと襲いかかるワチェット=レト。垣根は空を駆け太陽を背にして太陽光を殺人光線に変換しワチェット=レトを焼き焦がす。

 

ーーーキィオオオオオォォン!?ーーー

 

身体中が燃え始めもがき苦しむワチェット=レト。垣根は翼の一翼を巨大化させ剣の様に振るいワチェット=レトの頭部を切断、首をなくしたワチェット=レトは地上へと落ちていった。

 

「さあ来いよ、格の違いを見せてやる」

 

垣根はそう宣言し、神威混淆達へと挑発。神威混淆達は咆哮を轟かせ、または攻撃を放つ事でその挑発に乗った。

 

 

メイザースにより召喚された神の如き者(ミカエル)の剣で斬り裂かれるラー=ゼウス。オティヌスも主神の槍を投擲しイシス=デメテルの中核たる紫色の薔薇を破壊する。キャーリサも全次元切断術式でオシリス=ハデスを真っ二つに両断する。テヌフト=アルテミスは聖母の慈悲で聖人の力を100%解放したウィリアムの渾身の一撃で全身を砕かれた。

 

垣根は未元物質の翼でラー=ゼウスを切断。帆風のカマエルを宿した拳でオシリス=ハデスを一撃で沈める。アレイスターはテヌフト=アルテミスを蹴り砕く。脳幹もパイルバンカーでイシス=デメテルを消し飛ばす。

 

美琴の超電磁砲がテヌフト=アルテミスを破壊。麦野の原子崩しがイシス=デメテルを焼失させる。削板のすごいパーンチがオシリス=ハデスの巨体を吹き飛ばし空中でバラバラに破壊された。一方通行のプラズマがラー=ハデスをカケラ残さず消滅させる。

 

インデックスの竜王の殺息(ドラゴンブレス)が一直線に放たれ、視線を動かし魔法陣を動かす事で横へと振るいラー=ゼウス、テヌフト=アルテミスを一気に数体切断し、消滅させる。ステイルは魔女狩りの王でイシス=デメテルを焼き尽くす。神裂は唯閃でオシリス=ハデスの首を切断した。

 

ーーーグギィガアアアアァァァ!ーーー

 

ーーーボオロロロロウウゥゥ!ーーー

 

ーーーグラギイイィィィ!ーーー

 

ーーーグラアアアアァァァァァ!ーーー

 

ーーーガギィアアアアア!ーーー

 

ーーーヴヴヴヴヴヴヴ…!ーーー

 

ーーーギィヤハハハハハ!ーーー

 

「うおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

上条の7体の竜王がラー=ゼウスを、テヌフト=アルテミスを、オシリス=ハデスを、イシス=デメテルを噛み砕き消滅させる。たった数分で数十体もの量産型 神威混淆が屠られ続ける…だが。

 

「………チッ、一向に数が減らねえな」

 

倒しても倒しても、地面から、テムズ川から、空から湧き出てくる神威混淆達。騎士団長は神威混淆や垣根達の攻撃に巻き込まれない様に騎士達を退却させていた。

 

「あれほど倒したのに…まだ尽きる事の知れない…強さは大した事ありませんが…これ程数が多いと少々キツイですわね…」

 

もう100体は倒した筈だ。なのにまだ尽きる事の知れない神威混淆達…倒してもまた現れ、それを倒してもすぐに現れる…この繰り返しだ。

 

(ですが、何かおかしい。これだけの量をコロンゾンさんとはいえ作れるのでしょうか?幻覚…という線も薄いです。幻覚ならとっくの前に気づいてる…それに、何処から神威混淆達は現れている?)

 

予め様々な場所に隠しておいた。というのなら分かる。だが、あれだけ隠してあるなら最初から一気に全て出現させればいい筈だ。何故最初にそうしなかった?何処か怪しい、何かカラクリがある筈だ。

 

(……そういえば、このやり口。帝督さんでも出来そうですわね)

 

ふと思った、無尽蔵に強い戦力を送り続けるこの戦術は垣根でも出来るのではないかと。

 

(帝督さんの未元物質で白いカブトムシを量産し、更にそれぞれのカブトムシ達に女王達の能力を付加されたらどんな大国…いえ、地球を侵略出来そうですわね)

 

垣根の白いカブトムシ達に様々な能力を実装、強力な超能力を実装させ戦略の幅を広める、最近では魔術でも付加できる様になったと聞く。それに垣根が作った自律兵器は垣根からの未元物質の供給がある限り何度でも再生する。まさに無敵の兵隊だ。

 

(………まさか、いや…でも……)

 

帆風はある考えを思い浮かぶ、一瞬頭の中で否定しかけるが…それもありうると考え、帆風はホバリングしている垣根に向かって叫ぶ。

 

「帝督さん!透視能力で地中(・・)を除いてください!」

 

「あ?地中を?」

 

垣根は言われた通りに透視能力を発動し、地面を透過し地中を除く…そして地中に蠢くナニかを発見する。

 

「……おいおい、嘘だろ。巫山戯んな」

 

垣根が見たもの、それは百本の蛇の長い首に頭部が犬やジャッカル、ロバ、シマウマ、ワニ、ブタ、蛇、カバ、ツチブタと様々な動物の頭部が生え、背中には巨大な翼があり、筋肉隆々の巨体に尻尾はとぐろを巻く巨大な蛇。エジプト十字(アンク)二又の長杖(ウアス)を両手に持った怪物だった。

 

「……これが、この怪物が、あの神威混淆達を創り出していた元凶ですの?」

 

帆風は直感で気づいた。この怪物こそが、無限とも思える数のラー=ゼウスを、イシス=デメテルを、テヌフト=アルテミスを、ワチェット=レトを、オシリス=ハデスを増殖させているのだと。

 

 

「どうやら見つけた様だな」

 

コロンゾンは誰にいうでもなく呟いた。

 

「そいつを倒さねば量産型 神威混淆は無限に増殖し続けるぞ。どうする垣根帝督(イレギュラー)?」

 

嘲笑うコロンゾン。彼女は笑みを浮かべながら独り言を呟く。

 

「さあ、私が創り出した対アレイスター=クロウリー、垣根帝督専用霊装 神威混淆。そのシリーズ中 最"()"最悪の霊装…セト=テュポンをお前達は倒せるかな?」

 

最凶最悪の神威混淆 セト=テュポン。神威混淆の中で唯一、人と融合する事を目的てせず、全世界(・・・)の地脈…龍脈と融合する事を前提とする神威混淆の中で異質な霊装。セト=テュポンは今までの神威混淆とは桁が違う。セト=テュポンを倒さぬ限り、量産型 神威混淆は尽きる事はない…つまり、セト=テュポンを倒さねば垣根達に勝ち目は……ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




セト=テュポン。エジプト神話の悪神セトはテュポーンと同一化されており、キリスト教ではリヴァイアサンと同一化されています。更にセトは太陽を飲み込むエジプトの蛇神 アポビスとも同一とされています。テュポーンはギリシャのケルベロス、キマイラ、ヒュドラなどの父親…つまり化け物の父。故に他の神威混淆を増殖可能というチートを持っています。それでもまだ、力のほんの一旦に過ぎない

さあ、次回は更に物語が白熱化。どうすればこんなラスボスを倒せるのか?多分全章の中で一番大きなボスキャラだと思っています

次回もお楽しみに!


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開戦の狼煙は上がる

今週のウルトラマンタイガを見て思ったこと、珍しく倒された怪獣が遺恨を残してた事が驚きです。まさかあのゼットン単なるかませじゃなくて今回の為の伏線だったとは…このリハクの目をもってしても(以下略)。そしてパンドン殺したトレギア絶対許早苗

さあ、前回現れた最凶最悪の神威混淆 セト=テュポン。果たしてどの様な力を持つのか、どの様にして量産型神威混淆を倒すのか、是非お楽しみに



神威混淆。エジプト神話を理解できなかった西洋人が、ならばギリシャ神話に当てはめる事で解釈しようとした逸話から作られた霊装。太陽神 ラーならば主神ゼウス、月神 トトならば盗人の神 ヘルメス、冥界神 オシリスならば同じく冥府の神 ハデス、と言った風に西洋人はエジプトの神々をギリシャの神々に対応することで理解したのだ…例えそれが歪であっても、西洋人達はそれが正しいのだと理解したつもりでいた。

 

セト=テュポンとはエジプトの最強の軍神をギリシャ最強の怪物に対応させた神だ。

 

セトとはエジプトの兄たるオシリスを殺した兄殺しの神…としての逸話が有名だが本質は戦争の神、つまりは軍神。太陽(ラー)を喰らう悪蛇(アポピス)から太陽を守れるのはセトのみと言わしめられたほどの力を持ち、王家に信仰された武の神。後にはラーの息子であるホルスと習合されたほど。だが、後の神話の改竄により悪神へと堕ちた神であり、悪蛇と同一とされた。光を掲げる者(ルシフェル)と同じ明けの明星であり、エジプトでは鉱石はセトの骨と呼ばれていた。今でこそ神話のホルスの引き立て役、悪役だがどの神話でも共通するのは「偉大なる強さ」。フォラオの強さは彼の偉大なる強さだと言われている。そう、セトこそがエジプト神話最強の神なのだ。

 

テュポーンとはギリシャ神話最強の怪物として知られ、母たる大地母神(ガイア)の怒りから誕生せし三頭犬(ケルベロス)などの怪物の父で、その巨体は星空まで届き、腕を広げれば世界の果てまで届く。疲れを知らず声を発しただけで山々が揺れ動く。台風(モンスーン)の語源であり、地震の正体はテュポーンともされる自然災害を具現化したかの様な怪物。その強さにはゼウスでも叶わず破れ四肢を裂かれた、ゼウスが勝利したのは無常の果実を食べさせ力を失わせ、山に押し潰され封印された。そう、あのゼウスですらまともなやり方ではテュポーンには勝てなかったのである。

 

そしてテュポーンに恐れをなした神々は、動物に化けエジプトへと逃げた。故にエジプトの神々は動物の姿をしているのだと西洋人は解釈したのだ。つまりは、テュポーンこそが神威混淆…西洋人がエジプト神話を理解する事が出来た理由の一つ。そんな神の名をつけられた霊装…それがセト=テュポン。セトは十字教とも関連づけられ魔王(サタン)渦巻く蛇(リヴァイアサン)と同一とされた。

 

その強さは規格外、本来神威混淆は人間と融合するのが運用法だが、この霊装は龍脈に接続することで本領を発揮する神威混淆の中では異質な霊装だ。だが、接続するのは英国の龍脈だけではない、龍脈とは全世界に広がっている。そう、全世界の龍脈とセト=テュポンを結びつけ、無尽蔵かつ無限大な膨大な魔力を得るのだ。つまり、セト=テュポンと戦う事はこの星…地球と戦うに等しい。そう、相手は星だ。誰も星の事など理解出来ない。故にセト=テュポンは強い。

 

神威混淆の本質とは「他者との間の無理解・不寛容を物理的な攻撃力に変換する」事。そういう意味では誰も地球の事など理解出来ないのが当然。誰からも理解されない、それがセト=テュポンの戦闘力に変換されるのだ。例え神であっても地球…星の意思など理解出来ない。故にセト=テュポンを止める方法は…完全にセト=テュポンを破壊する、それだけだ。

 

 

 

「……こんなバカデカい敵、初めて見たわ」

 

透視能力で地中内に潜むセト=テュポンを凝視する垣根。1,000メートルはあろう巨体に翼だけで500メートルはありそうだ。腕を横に伸ばせば3.000メートルはあるだろう。正に山の如し。そうとしか言えない程の大きさ。巨大、それしか言いようがない。

 

(こいつがあの神威混淆達を量産したんのか?)

 

よく見ると下半身の目を深く閉ざし、とぐろを巻いた蛇が顎を開けるとそこからラー=ゼウスやイシス=デメテルなどの神威混淆達を生み出しているのだ。

 

(こいつを倒さねえ限り、無限に神威混淆を生み出し続けるのか…厄介だな。ま、カラクリは分かった。後はどうやって倒すか…)

 

そう垣根が考えていたその時だった。閉ざしていた眼をいきなりカッと見開き、下半身の蛇がジロリと垣根を睨んだのだ。

 

「!?」

 

思わず透視能力を解除し、その場から後方へ跳ねるように退がる垣根。いつの間にか冷や汗を流していた。

 

(あいつ……俺が見えてやがんのか!?)

 

気の所為というレベルではない、確実に目線があった。つまり、セト=テュポンは恐るべき知能を持っている。とぐろを巻いていた蛇は目を覚ますとより一層神威混淆達を増殖させ、地上へと送り込む。

 

「アレイスター!神威混淆(こいつら)をいくら倒しても無駄だ

!こいつらを作り出してる本体を叩かねえといくらでも増殖するぞ!」

 

「何!?」

 

アレイスターはそれを聞いて驚愕の顔を見せる。上条達も唐突なその叫びに驚きを隠せない。

 

「地中にあいつらを生み出してる本体がいる!まずはそいつから…」

 

垣根がそう言い始めたその時だった、突如視界が揺れた、いや違う。地面そのものが揺れ動いている。

 

「!じ、地震!?」

 

「嘘だろ!このタイミングでか!?」

 

上条と一方通行の戸惑った声が響く、自然災害にしてもタイミングが悪すぎる。何者の意思が関わっているのかと思いたくなるレベルだ。だが、垣根は地中へと目をやる

 

(あの怪物野郎が地震を起こしてんのか?)

 

テュポーンは地震の原因ともされる、ならば地震を起こすのは容易いだろう。これはセト=テュポンの攻撃だ。垣根はそう判断した。更に地震の直後に地面が隆起しそこからラー=ゼウスやイシス=デメテル、テヌフト=アルテミス、テムズ川からオシリス=ハデスが、天空からワチェット=レトが無数に出現する。

 

「これ以上の乱戦はキツいか…各自2、3人のチームになって逃げろ!こんな狭いところで乱戦はキツい

!一先ず各自が戦いやすい所で敵を迎え撃て!決して一人で戦おうとするな!」

 

アレイスターはそう指示を出すと全員2、3人のチームになって違う方向へと駆け出す。アレイスターは脳幹共に東の方角へ、上条と美琴、食蜂は南の方角へ、一方通行と麦野、削板は北の方角へ、キャーリサとウィリアム、騎士団長は西の方角へ、メイザースとオティヌスは東西の方角へ、垣根と帆風、クリフォパズル545は北東の方角へ移動していく。

 

「おい、何か解決策を知ってねえかクリフォパズル545!」

 

『「知らないですよ、それに知ってても教えたくありませんし…いひひ」』

 

「くっ、この悪魔使えねえ!使えねえ悪魔なんて単なる粗大ゴミじゃねえか!」

 

『「いや、忘れてませんか?私が元々は敵方だった事?無理矢理契約されてるだけなんですけど」』

 

アンジュに取り憑いたままそうほざくクリフォパズル545、垣根は役に立たないなと思いながらも何かやれる事はないか考える。

 

(セト=テュポンに辿り着くには地中を掘り進まなきゃなんねえ。でも、どうすればいい?)

 

そんな考え事の邪魔をするように前方にラー=ゼウスとイシス=デメテルの二体の神威混淆が現れる。

 

「ここはわたくしにお任せを!」

 

帆風は未元物質の翼を展開しようとしていた垣根に片手で制すると、天使崇拝で天使を降ろす。

 

「来なさい 神の正義(ザドキエル)!」

 

その身に宿すはザドキエル。記憶に干渉する力と人間に叡智を授けた堕天使 アザエルの武器や魔道具創生の力の二種の力を持つ天使。アザエルの力で無数の武器を創造し蔦を伸ばしてきたイシス=デメテルの蔦を切断、中央の薔薇から冒涜的な叫びが響く。ラー=ゼウスはその隙に閃光を放ち帆風を滅ぼそうとするが。

 

神の力(ガブリエル)!」

 

ザドキエルからガブリエルへと切り替え、ガブリエルの水翼で閃光を防ぐ帆風。

 

天体制御(アストロインハンド)!」

 

天体制御で時間帯を夜にし、ガブリエルの属性を強化。神戮を展開しラー=ゼウスとイシス=デメテルに火の矢を流星群の如く降り注がす。だがラー=ゼウスとイシス=デメテルはそれを耐え、閃光や蔦を伸ばしてくる。

 

「ならば……神を見る者(カマエル)神の監視者(ザドキエル)!」

 

その身に宿すは格闘の天使 カマエルと最速の天使 ザドキエル。カマエルの身体能力の大幅な向上とカマエルの如き格闘術。ザドキエルの超高速スピードと遠心力を強化する能力を持つ。この接近戦最強の天使をその身に降ろし、帆風は音速を超えた速度でラー=ゼウスれと駆け抜け回し蹴りを放つ。遠心力を10倍にして放ったその蹴りはラー=ゼウスの身体であるオベリスクを叩き割って一撃で破壊した。

 

イシス=デメテルは蔦で絡めて帆風を絞め殺そうとするが、蔦は引き切られてしまう。だが、イシス=デメテルは植物。何度引っこ抜こうが引きちぎろうが何度でも再生してしまう。物理攻撃では相性がいささか悪い…なので。

 

「来なさい 神の如き者(ミカエル)

 

その身に宿したのはミカエル、右手に紅蓮の炎を纏った剣を召喚。太陽の如き高熱を放つ炎を帯びたその剣でイシス=デメテルを袈裟斬り。即座に炎上し燃え尽きるイシス=デメテル。だが、テムズ川から陸に上がって来たオシリス=ハデスが唸り声を上げて垣根達に近づいて来た

 

それに対し帆風は、先程蹴り壊したラー=ゼウスのオベリスクの先端を一瞥すると、再びカマエルを宿し強化した腕力でそれラー=ゼウスの残骸を持ち上げオシリス=ハデスへと投擲。ラー=ゼウスの先端がオシリス=ハデスの身体を穿った

 

ーーーガバァヴァァァァァ!?ーーー

 

叫び声を上げるオシリス=ハデス、だが帆風は容赦なくメタトロンの光の杭で串刺しにしオシリス=ハデスを破壊する。

 

『「いひひ……お見事。本来の使用でない点と量産型故の質の低下もあるとはいえ、容易く神威混淆を屠るとは…きひ」』

 

パチパチとわざとらしく拍手を送るクリフォパズル545、それについて垣根は何か言いたげだったが、またしても地面が揺れテヌフト=アルテミスが三体

、ワチェット=レトが五体垣根達に襲撃し、ワチェット=レトは毒霧を、テヌフトは岩石を投擲する。

 

「……優先する、人体を上位に、岩を下位に。優先する、人体を上位に、毒を下位に」

 

魔術すら組み込んだ多才能力で光の処刑を発動し、岩石と毒霧を防御する垣根。そして右肩から第三の腕…聖なる右の力を顕現させ、腕を一振るいしテヌフト=アルテミスとワチェット=レトを一気に殲滅する

 

「……流石聖なる右、凄え能力だな」

 

垣根が聖なる右の有用性を改めて理解し、感嘆の息を漏らす。

 

「流石ですわ帝督さん…いえ、この場合はオリジナルの聖なる右を持つフィアンマさんが凄いと言った方がいいのでしょうか?」

 

「だな、こいつはあくまで複製品。オリジナルがいなけりゃ複製できなかったんだ。フィアンマ様々だな」

 

(いや、それでも本家と同じ出力…いえ、神様だからオリジナルよりも出力を引き出せる時点でおかしいと思うんですが…)

 

やっぱ垣根の未元物質の性能はおかしい、そう再確認するクリフォパズル545だった

 

「……で、どうしたらあの神威混淆を止められる?方法はあるんだろ?教えろ。これは命令だ(・・・)

 

『「……いひひ、命令なら…仕方ないですねぇ」』

 

悪魔とは契約を守る者だ、契約してしまえば彼女は契約主である垣根の命令に背く事は出来ない。渋々ながらクリフォパズル545は垣根の質問に答える

 

「恐らくあの神威混淆は龍脈と接続され、稼働しています。その龍脈の膨大なエネルギーから無数の量産型 神威混淆を増殖させているのでしょう。龍脈から切り離せば増殖能力は停止するでしょうが増産された神威混淆達は消えませんし、そうなれば自衛本能が働いて暴れ出すでしょうね」

 

(ま、龍脈を切り離す事なんて英国一帯の龍脈を切断しなきゃいけないですし、そんなの幻想殺しでも無理でしょう。それにあの神威混淆は全世界の龍脈と接続してる様ですし…ま、勝つのは難しいでしょうね…いひひ)

 

そう垣根と帆風に説明するクリフォパズル545。確かに説明すると言ったが全て話すとは言っていない。

 

(そもそもコロンゾンとの繋がりは切れてませんし、もしかしたらコロンゾンの元に帰れると希望を持っていましたが…もうダメですねこれは)

 

クリフォパズル545はまだコロンゾンとの繋がりが切れていない。故にもしかすればコロンゾンにまだ必要とされ助け出されるかもしれないと、希望を持っていたのだが…もうコロンゾンは自分を垣根サイドだと誤解し、垣根ごと自分を殺そうとするだろうと思考する。そう思いもう既にクリフォパズル545はコロンゾンに対し様付けはやめている。

 

(まさか、コロンゾンと敵対する事になるなんて…死亡フラグ立ちまくってるんですが)

 

自分、終わったな…と乾いた笑い声を出すクリフォパズル545。もう完全に垣根達のせいでコロンゾンと敵対された今、いつ消滅させられてもおかしくない。

 

「成る程ね……後はああして…うん、これなら大丈夫か…よし、アレイスターに連絡するか」

 

「え?でもわたくし達通信霊装はありませんよ?」

 

「携帯使えばいいだろ」

 

『「……戦場で普通携帯使います?」』

 

垣根は携帯電話を懐から取り出す。まさか戦地で携帯電話を使うと言う発想はなかったのか、やや驚く帆風と若干呆れるクリフォパズル545。

 

 

 

『て、訳だ。出来るか?』

 

「勿論だ、私に任せておけ」

 

アレイスターはそう言って通話を切る、それを横で見ていた脳幹が口を開く

 

「で、彼は何と言っていた?」

 

「神威混淆達を生み出している奴を龍脈から切り離す…だそうだ。その為には私とメイザースの力が必要らしい」

 

「成る程ね」

 

会話しながらも襲いかかってきたテヌフト=アルテミスとラー=ゼウスをA.A.A.や魔術で迎撃、撃破する二人。

 

「ここは任せた脳幹」

 

「ああ、任された」

 

アレイスターは転移を用いて脳幹の前から消える。脳幹は葉巻を咥えると地中から現れたイシス=デメテルにA.A.A.を向ける。

 

 

「やれ神の如き者(ミカエル)!」

 

ミカエルがオシリス=ハデスを炎の剣で斬り裂き、オシリス=ハデスは一刀両断され光となって消える

。オティヌスも弩で一気に十体の神威混淆達を撃ち穿ち消失させる。

 

「ふん、手応えがないな。つまらん」

 

「全くだ、これなら地中にいるという怪物を倒した方がいいんじゃないか?」

 

メイザースは退屈だと言わんばかりに手に持った杖をクルクルと回転させる。オティヌスも槍で地面を叩きセト=テュポンを倒そうかと考えていた。

 

「ここにいたかメイザース」

 

「アレイスターか、何か用か?」

 

アレイスターが空間を転移してメイザース達の元に現れる。

 

「少しお前に用があってな。一人で大丈夫かオティヌス?」

 

「私を誰だも思っている?そんなオッさんいなくても私一人であの雑魚共は充分だ」

 

「そうだな、こんなギャンブル狂いの親父がいなくても君一人なら余裕か」

 

「おい、怒るぞ俺」

 

そんなジョークを交えながらメイザースを連れてアレイスターは空中へと飛行術式で飛び立つ。直後にカンタベリー大聖堂の尖塔から赤い高圧放水が放たれる、術式で空飛ぶ相手を自動的で狙う迎撃術式 トマス=ベケットの血の奇跡だ。

 

「「邪魔だ」」

 

そんな迎撃術式を四種の象徴武器と衝撃の杖で叩き落とす二人。二人は空からロンドンの街を見下げる。

 

「つまり、ここら一帯の龍脈を一時的に切断すればいいんだな?」

 

「ああ、そうすればあの神威混淆達の親玉の増殖能力は停止する筈だ」

 

「だが、そうするも俺の存在も保てんぞ。何せ俺はタロットカード。メイザースであってメイザースでない者。龍脈を切断されれば俺は一時的に戦線に復帰できん」

 

「……メイザースは勇敢な男だった…と、ミナに伝えておこう」

 

「おい、殺すな」

 

アレイスターとメイザース、二人の魔術師がセト=テュポンと繋がる龍脈を断ち切ろうとしているのだ。

 

「全く垣根帝督にはいつも驚かされるな…まさかこんな方法を思いつくとは」

 

「ふん、だからこそイレギュラーなのだろう。だからコロンゾンは警戒し、お前は奴を鬼札としている」

 

「そうだな……そんな事よりも…出来るか(・・・・)?」

 

俺を誰だと思っている(・・・・・・・・・・)?」

 

二人は決して互いの方向を見ようとはせず、ただ地面を見下ろしていた。

 

「……メイザース、私はお前が羨ましかった。妻…ミナ=メイザースという「理解者」がいたお前が…私は羨ましかった」

 

「メイザースという男もお前を羨ましがっていたのだろう。お前の様に金があればミナに不自由のない生活を送らせてやれたのに」

 

黄金夜明時代、殺した側と殺された側になった二人

。その二人の魔術師は互いに互いを羨んでいた。自分にはない物を羨んでいた。

 

「私はお前が嫌いだメイザース」

 

「奇遇だなアレイスター、私もお前が嫌いだ」

 

アレイスターとメイザースの関係は水と油だ。アレイスターがメイザースを殺したという部分を除いても二人は互いを嫌悪していた。自分が欲しかったものを持っていたのにそれを捨てたアレイスター/メイザースが嫌いだった。

 

「「だが、それはそれ。今は龍脈を切断する事が優先だ」」

 

だが、そんな個人的な感情を切り捨てて…二人は龍脈の切断にかかる。

 

「秘匿されし四文字、人の口にて振動不能な聖なる四角。すなわち神そのものを示すYとHとVとHはあまりに遠く、矮小な人の身でその本質を推し量れるものでなし」

 

アレイスターがそう口ずさむと、彼の周囲の空間が光り始める。それは浄化の光、何処からともなく百合の香りが漂う。

 

「しかし人は救いを求める。自らの知でもって理解のできる救済を。ここに橋渡しを設けよう、SH(シン)の字を足して。聖五文字、YとHとSHとVとHとはすなわち『神の子』、父と子と聖霊の複合によりて人は救いを目にする事が可能なり!!」

 

そう叫び終えるとアレイスターの背に白き翼が、頭上には光輪が…天使化。十字教を嫌い、神に唾をつけた者がこの瞬間、純化したのであった。

 

「INRIとは始祖の十字に刻まれた四文字なり。その振動は死者にすら活を入れる。未だ途上のわが身を充足せよ。その聖なる羅列によりて我が肉体は純化せん!!」

 

メイザースも続けて聖句を叫ぶ、彼の背にも翼が出現し頭の上には光る輪が出現。二人の天使は象徴武器と衝撃の杖を構え同時に叫ぶ。

 

「「魔力とは、生命力より精製される力なり。魔術とは、その魔力によって表す現象なり。魔術とは全て、生命の奥底から湧き立つ始原の力にささえられるべし」」

 

二人は聖句を綴る、二人を基点に膨大な力が集まっていく

 

「「すなわち魔術とは人を大切に想う気持ちに形を与えし技術なり。それは時に人を癒し、人を傷つけ、人に寄り添い、人を遠ざけ、祝福と畏怖を表裏合わせた真の力ある術式群とならん。嬢も思いもなき者よここから去れ!」」

 

そう二人が叫び終えるとロンドンは純白な白に包まれた。

 

 

その白い光に神威混淆達は飲み込まれると徐々に光の粒子となり消滅し始める…龍脈を切り離す事により龍脈の供給を断たれ消滅してしまったのだ。

 

「……天使?」

 

アレックスに乗ったキャーリサはロンドン上空に佇むアレイスターとメイザースを見てそう呟いた。

 

白い光がロンドンを、英国を満遍なく飲み込む。それにより英国は一時的に龍脈から切断され、一部の術式が組み込まれた施設や霊装が使用不可になったり破壊されたりしたが、二人にとっては関係ない。

 

「これで増殖能力は停止した。後は大元の神威混淆を叩くだけだな」

 

アレイスターがそう言ってメイザースを横目で見る

。メイザースの身体は透き通り今にも消えそうだ

 

「これで俺は一時的に戦線には戻れない…精々死ぬなよアレイスター」

 

「分かっているさ。お前が早く戦線に復帰出来る事を祈っておこう」

 

「……ふん」

 

メイザースは一枚のタロットカードに変わった。これこそがメイザースの正体。タロットカードの形をした魔道書、龍脈の供給を遮られればこうなってしまう。これを承知でアレイスターは龍脈の切断を行なったのだ。

 

「……感謝するメイザース」

 

そう言ってアレイスターはメイザースのタロットカードを右手で掴み、懐にしまうのだった。

 

 

学園都市の窓のないビル、そこでリリスのお守り兼留守番を任されていたミナ=メイザースはある気配に気づいた。

 

「あな、た…?」

 

彼女とメイザースは所詮タロットカードが再現した人格の設定上の妻だ。だが、彼女は反応した。例えそれが偽りの設定でも、親愛の情があった事にはなんら変わりはなかったのだ。

 

 

『きひ』

 

アレイスターとメイザースが龍脈を切断した影響をクリフォパズル545はモロに喰らっていた。消滅こそ免れたがアンジュに憑依するだけの力を失いアンジュは地面に死体の様に転がる。クリフォパズル545は死を待つだけの存在と化した。

 

(はあ、はあ…限界、ですね…いひひ。いや、よくもったという方ですかね。あの時垣根帝督(御主人様)に拾われてなければ消滅してましたし…まあ、仕方ないですね)

 

別に生にすがりつく気は無い。元々自分は生命ですらない。そんな自分が生きたいと願うほど滑稽なものはないだろう。

 

『い、ひひ…ここら一帯に爪痕を残しました。貴方の未元物質なら読み取れるでしょう?そこから私の情報を採取して精々コロンゾンに一泡吹かせてくださいね〜』

 

どうせ死ぬなら、自分を作った大悪魔に一矢報いたい。地獄に一足先に待っていて同じく地獄にやってきた悪魔に嘲笑してやりたい。

 

『……後のことは任せましたよ?』

 

「……ああ、そうだな…なあ、潤子」

 

「……ええ、そうですね帝督さん」

 

もう思い残す事はないとばかりにうっすらと消えていくクリフォパズル545。そんな彼女に垣根と帆風は笑いかけ…とん、と地面を足で軽く叩いた。

 

ーーーパァン!!!!ーーー

 

軽く叩いた筈なのに、とんでもない衝撃がクリフォパズル545を襲う。その衝撃はクリフォパズル545の全身を貫き、コロンゾンとの契約を容赦無く引き千切り、消失させ新たな身体を再構築させた。

 

『…………は?』

 

クリフォパズル545は何が起こったのか理解できなかった。消える筈だった身体が消えない、垣根と帆風が何かしたのは分かる。だが何をしたのか…いや、そもそも何故自分を助けた(・・・・・・)

 

『な、ぜ……?何故助けたのですか?』

 

「お忘れですか?貴方はわたくし達の魔術アドバイザーだという事を?まあ、それを抜きに純粋に助けたかったというのもありますが」

 

「その職務を放棄して消えるなんざ認めねえ、お前は一生俺らに魔術のサポートをする社畜なんだよ…ま、これは言い訳だがな」

 

ただ助けたかったから助けた。そう告げる二人に呆気にとられるクリフォパズル545。

 

『……分かりません、作られた存在でしかない私にそこまでの…』

 

「作られたからなんだ」

 

クリフォパズル545の言葉を遮って垣根は彼女にこう言った。

 

「お前は俺と潤子の仲間(モノ)だ。つまり、俺達がお前の御主人様だ。俺達が決めた事に疑問を持つな。作られた存在だろうが関係ない、生まれてきたのなら人生を楽しめ、それがお前へ下す命令だ。分かったかクリフォパズル545」

 

クリフォパズル545は何も言えない、その言葉の意味を理解しながらもなんと言えばいいのか分からなかった。そんな彼女に帆風が優しく肩に手を触れた。

 

「大丈夫です。もう貴方を縛るものは何もない。貴方はもう自由です、だから貴方は貴方の人生を楽しんでください」

 

『………う、うぇぐ…ぅぅ……ふぁい!肝に銘じておきます!』

 

そう言って泣き崩れるクリフォパズル545。そんな彼女に母親の様に優しく背中を撫でる帆風。垣根もふと微笑んだ後、すぐに異変に気付き顔を上げる。

 

「…………来たか」

 

 

 

それは異変に気付いた。龍脈を切断され自身の力の供給が断たれたのだ。これにより自身の下僕たる量産型 神威混淆達は消滅してしまった。龍脈のエネルギー供給も断たれた今、増殖能力は使えない。怪物は怒った、それと同時に理解した。地上の敵は自身で排除するしかないと。

 

ーーーウ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"ォ"ァ"ァ"

ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"!!ーーー

 

セト=テュポンは天地を響かせる咆哮を轟かせる。そして怪物は地上を目指す。自身とコロンゾン(主人)の敵である者達を抹殺する為に。

 

ーーーウ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"ァ"ァ"ァ"

ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"!!ーーー

 

地面を突き破って百の首持つ上半身を地上へと出現させるセト=テュポン。半身だけでも並みの山々よりも遥かに大きい。そんな怪物が地上に咆哮を響かせる。これからが本番、開幕の狼煙が上がったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




セト=テュポン戦が始まると思った?残念次回だ、コンセプトは巨大な怪獣vs人類。モチーフはアニメゴジラやキング・オブ・モンスターズ、シン・ゴジラ…ぶっちゃけ言うとウルトラマンみたいな巨大な仲間がおらず、小さな人間だけでゴジラを倒す様なハード仕様。なお、小さいけどウルトラマン並みの強さを誇るバグキャラが味方にいるよ

そろそろステイルとインさんを活躍させたい、でもテスト中だから送れるか分からない…全く、テストなんて大嫌いなんだぜ、後、面接練習も(白目)

次回もお楽しみに!


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彼は姫君を守る騎士になりえるのか

今回はセト=テュポンの能力が遺憾無く発揮されます。そして今まで影だったステイルとインデックスが最後に活躍。そして謎の人物も登場します

呪術廻戦アニメ化するて知って驚いた、鬼滅といい、約ネバといい最近のジャンプは名作揃いですね。まあ、個人的には早く一月になってとあレーが見たいですけどね

そして今日からテストなので投稿が遅れます。ご了承下さい…てか、マジで英語と理科が自信ないんですけど(白目)。本当に…テストは嫌いだぜ


ーーーウ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"ァ"ァ"ァ"

ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"!!ーーー

 

セト=テュポンが吠える。蛇やジャッカル、ツチブタなどの様々な動物達の首から大音声を響かせる。その咆哮が衝撃波となり周囲一帯のロンドンの建物を吹き飛ばし騎士派の騎士達を、味方である筈の清教派の魔術師達すら吹き飛ばした。

 

ーーーウ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"ァ"ァ"ァ"

ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"!!ーーー

 

声の衝撃波だけでなく、セト=テュポンは腕を横に大きく振るう。ただ、腕を振るっただけ、それだけで建物が薙ぎ払われ粉々に砕け、風圧で人が吹き飛ばされる。

 

「……ただ、動くだけでも災害レベルか」

 

あれだけの巨体だ、動くだけでも地震に匹敵する振動が、台風に匹敵する暴風が発生するのだろう。正しく天災の化身。そこにいるだけで脅威たる天災の如し、セト=テュポンは正に天災に知性が宿った存在に等しいだろう。

 

遥か昔から人間は天災には敵わなかった。そんな天災に人々は神として崇め讃えることで天災から逃れようとした…だが、この天災からは誰も逃れられない。セト=テュポンは敵も味方も区別なく平等にその力を振るい殲滅する。その結果世界が滅んだとしてもセト=テュポンは気にしない。ただ、「己と主人の邪魔をする者を排除せよ」。その契約(コマンド)に従い破壊の限りを尽くすだけだ。

 

「ま、好き勝手にはさせねえけどな」

 

垣根はそう呟いて一瞬で白いカブトムシ、白いトンボなどの自律兵器を数千体も製造し、超能力や魔術を実装させセト=テュポンへと向かわす。

 

ーーーウ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"ァ"ァ"ァ"

ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"!!ーーー

 

だがセト=テュポンは白い自律兵器達へと巨大な腕を振るう、それだけで頑強なカブトムシ達が砕けた。即座に再生する事が出来ないほど粉々に粉砕される。更に百の首から火炎を放射し自律兵器達を蒸発させる。

 

「……流石にカブトムシ達だけじゃ無理か」

 

とはいえカブトムシ達は決して弱くない。未元物質で構成された身体は並みの超能力や魔術では傷一つつかず、大抵の破損も未元物質の供給で即座に回復してしまう…幻想殺しや聖なる右、理想送り、魔神などの圧倒的な力を持つ能力や人物でしか完全に破壊する事は不可能だろう…それを単なる腕力や火炎で行えるセト=テュポンが規格外なだけだ。

 

ーーーウ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"ァ"ァ"ァ"

ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"!!!ーーー

 

そして百の首が伸びた、伸びた首はセト=テュポンから逃げる魔術師達や騎士達を狙っていた。

 

「な…!?我々の切り札が何故我々を…!?」

 

「ひっ……!く、来るな!やめろやめろ!」

 

「来るな、来るな、来るな、来ないでくれ!」

 

「だ、誰か助けて……!」

 

無慈悲にも飲み込まれ、捕食される清教派の魔術師達。空を飛ぶ魔女達も杖を構える魔術師達も、負傷者を担いで逃げようとしていたシスター達も百の動物の首達の口の中に消えた。

 

「くっ…!無念だ…!」

 

「お前だけでも逃げろ!俺がここを食い止…」

 

「うわぁぁぁぁぁ!!!?」

 

「申し訳ありません騎士団長…」

 

槍や剣の霊装を構えた騎士達はある者は剣で斬りかかるも剣が折れ、そのまま飲み込まれ、誰かをかばって捕食され、忠誠を誓った者の名を呟いてセト=テュポンの腹の中に収まった。

 

「お前達…!くっ!怪物め、よくも私の部下を…!」

 

「追いつくのである、冷静さを失えばお前も彼らの二の舞になるだけである」

 

「分かっている!分かっているが…!」

 

騎士団長は剣を強く握るがそれをウイリアムが制止する、騎士団長は強く唇を噛む。

 

「……あの化け物、何が狙いだし…殺すだけならあの腕や火炎でいい筈…何故捕食した?何かしらの狙いがあるのか?」

 

キャーリサは殺すだけなら他の方法がいくらでもあった筈なのに、何故捕食を選んだのか疑問に思っていた。

 

『……セト=テュポン、かつて「ブライスロードの戦い」にてメイザースが身内の裏切りの粛清の為に召喚したテュホン=セトと似て非なるもの。奴は今、龍脈と切断され喪失した力を取り戻す為に通常の神威混淆同様、人を食らう事で人と融合し力を増幅しているようです』

 

クリフォパズル545が魔術アドバイザーとしての使命を果たす為、セト=テュポンについて説明する。龍脈という力の供給源をなくした今、人を食べて体内で融合し自身の力に変換しているのだと。

 

つまり食べれば食べるだけ、取り込めば取り込むほど無数の人格や思考、考えが複雑怪奇になる為、誰も考えを理解できずその分攻撃力が増幅する。なると恐ろしい性能なのだろうか。

 

「マジかよ…あれでも充分強いのに…更に強くなんのか……」

 

「流石はコロンゾンさんの切り札…ですわね」

 

これ以上捕食され強くなられるのは困る、それ以前に人が捕食されるのを見過ごせる訳がない。二人はメタトロンとサンダルフォンの力を解放しら白い三対の翼と虹の一対の翼を展開。音速を超える速度でセト=テュポンへと接近した。

 

ーーーウ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"ァ"ァ"ァ"

ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"!!!ーーー

 

それに気づいたセト=テュポンは百の首を伸ばし、鞭のように縦横無尽な攻めで垣根達を四方八方上下左右から狙う。だがその異なる動物の首達を二人は翼で切断、能力で破壊する。

 

ーーーウ"オ"オ"オ"オ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"!!ーーー

 

だがその首達は切断、破壊された直後に再生、復活を遂げ鎌首を伸ばし垣根と帆風に迫る

 

「マジか!」

 

慌てて首達を避ける二人、だがそれだけに終わらず首達は無数の火炎や火球を顎から放ち二人を焼き殺そうとする。当然翼を繭状にして防いだり、能力で防御する。その攻撃が自らの首に当たり首が破壊されるも即座に再生してしまうセト=テュポンの百の首。

 

「再生能力も厄介ですわね」

 

驚異的なまでのスピードで回復する首。超再生能力に単純な力、威力の高い炎。単純故に強い、それがセト=テュポンが神威混淆最凶たる所以なのだと帆風は理解する。

 

『御主人様達、こいつはもう既に沢山の人間を食らっています。当然数百人のバラバラな考えなんて誰も理解できない!だから力も瞬間出力だけなら魔神に匹敵するも予想できます!』

 

「要するに何が言いたい!?」

 

『御主人様達だけの力では倒せない!て事です!』

 

「分かりやすくてよろしい!」

 

神の座に至った垣根と帆風ですら、苦戦は必然。寧ろ敗北する可能性すらあるとクリフォパズル545は告げる。

 

「…確かにわたくし達二人だけなら勝てないかもしれませんわね…ええ、二人だけなら(・・・・・・)、ですが」

 

だが帆風は笑みを浮かべる、確かに自分と垣根だけなら勝てないかも知れない。だがセト=テュポンと戦っているのは自分達だけではない(・・・・・・・・・)

 

直後、セト=テュポンに緑色の無数の光弾が降り注ぐ。それはオティヌスが放った『弩』の10矢の散弾の雨だ。更にA.A.A.からミサイルや銃弾の雨霰が吹き荒れ、アレイスターは上空から無数の光を放つ衛星光波でセト=テュポンを襲う。

 

ーーーウ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"ァ"ァ"ァ"

ァ"ァ"ァ"ァ"!!!?ーーー

 

突然の豪雨の如き猛攻撃に怯むセト=テュポン。その隙をついて超能力者達や魔術師達が攻撃を仕掛ける。

 

一方通行がプラズマや暴風、自転エネルギーを利用して投擲した建物がセト=テュポンの身体にめり込み、麦野の数万を超える原子崩しがセト=テュポンの身体を余す事なく覆い、削板の超連続のラッシュ 一万回 超すごいパーンチがセト=テュポンに炸裂。美琴と食蜂の合体技 液状被覆散弾超電磁砲(リキッドプルーフショットレールガン)がセト=テュポンの身体を貫いた。

 

カーテナ=オリジナルによる全次元切断術式による切断攻撃、騎士団長とウィリアムの二人の斬撃が身体を斬り裂き、唯閃が右腕を切断し、切断された右腕が宙を舞う、霊的蹴たぐりでビックバン爆弾を発生させ衝撃の杖で何十、何百倍もの威力に変換した一撃がセト=テュポンを襲った。

 

ーーーウ"オ"オ"…ウ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"

ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"!!!ーーー

 

だが、セト=テュポンは驚異的なまでのスピードを誇る再生能力で傷を完治。その腕を振り回しアレイスター達を攻撃し始める。腕を振るい、百の首から火炎や咆哮による音の砲弾を、暴風を嵐の如く吹き荒らす…単純だが圧倒的な力を秘めた攻撃をセト=テュポンは振るう。

 

「あれだけの攻撃を食らってもくたばらねえのか」

 

流石の垣根でも動揺せざるおえなかった。あれだけの攻撃を集中砲火で浴びて、なお生き延びるなどあり得ないと。

 

だが、これしきで諦める者はいない。一方通行と麦野、削板は背から翼を展開。黒い翼が横薙ぎに振るわれ、緑の翼が身体を焼き尽くし、カラフルな翼が超高速で刺突を繰り返す。幻想殺しの竜達も百の首を噛み砕き潰していく…それでも、なおセト=テュポンは止まらない。

 

ーーーウ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"ァ"ァ"ァ"

ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"!!!!ーーー

 

「これじゃダメか……なら!」

 

上条は右腕からショッキングピンク、エメラルド、スカイブルー、レモンイエローの色彩が全身に広がっていき、ワニのような大顎とコウモリのような翼を持つドラゴンとなり、翼を広げ飛翔しセト=テュポンの頭上を取る。

 

『うおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!』

 

上条は大きく右腕を振るい、百の首の半数を腕の一振りで刈り取る。更に残った首達を顎から放つピンク、緑、空色、黄色の光線で消失させる…だが全ての首を消滅させようともセト=テュポンは倒れず、又しても破壊された部位から肉が溢れボコボコと再生し始める。

 

「もう一回…」

 

もう一度ブレスを吐き出そうとする上条だったが、セト=テュポンはそれを許さず巨大な手で上条を掴み万力を込めて上条を握り潰そうとする。

 

『がぁぁぁぁぁぁ!!!?』

 

「「先輩/上条さん!?」」

 

上条の身体から聞こえてはいけない音が響く。ドラゴンの外殻はギリギリセト=テュポンの怪力から守っていたが、外殻は既にひび割れ所々血が吹き出ている。

 

「その手を離しやがれ、この怪物野郎」

 

垣根は白い翼を刀の様に振り下ろし、セト=テュポンの巨大な腕を切断。上条を握り締めていた腕は上条を捕えたまま地上へと落下していく。

 

神を見る者(カマエル)神の番人(ザフキエル)

 

帆風はザフキエルの超スピードで高速スピンを行いながら、遠心力を何百倍にしカマエルの怪力でセト=テュポンを殴りつける。それだけでセト=テュポンの上半身の大部分を抉り、吹き飛ばし肉片にした。だが、残った部分がポコポコと肉が再生し始める。

 

「……やはり、これしきでは終わりませんか」

 

帆風の格闘戦最強の天使2柱の全身全霊の一撃を直撃してもセト=テュポンは止まらない。恐らく神戮や聖なる右で全身を吹き飛ばしてもほんの僅かに残った肉片から再生するだろう。そもそもセト=テュポンの下半身は未だ地面の中…いくら上半身を消し飛ばしても下半身が地中の中に入ればそこからまた再生してしまう。

 

「それにしても…何故下半身のみ地中から出でこないのでしょうか?」

 

帆風は何故下半身のみ地中から出てこないのか。それを考えていた…

 

 

ステイルはインデックスの右手を握ってロンドンの街を駆けていた。

 

「ねえステイル!なんで私達は戦場から離れていってるの!?」

 

「君をに危険な場所から遠ざける為に決まってるだろ!」

 

ステイルはインデックスを危険な目に合わせたくなかった。だから、セト=テュポンから遠ざけようとしていた。勿論彼女を安全な場所に隠れさせた後、戦線に自分一人で行くつもりだが。

 

「なんで!?私だって戦えるんだよ!」

 

「ダメだ!君をあんな化け物と戦わせる事なんて認めない!」

 

「心配いらないんだよ!私はステイルよりも強いんだから!だから心配…

 

「そんな事僕が一番分かってる!!!」

 

「!?」

 

インデックスの声を遮る様に、ステイルが大声を上げインデックスが驚きの顔をする

 

「ああ、分かってるさ!僕は君みたいに高等な魔術を使える訳でもないし、神裂みたいな聖人でも、垣根帝督みたいな超能力者でも、上条当麻みたいな凄い力を持ってない凡人なんだ!僕は弱い、守りたいと思う君よりも弱い…そんな僕だけど、君を守りたいんだ。だから、あんな怪物と戦わせない」

 

「ステイル………」

 

インデックスを危険な目に合わせたくない、それがステイルの望みだ。彼には特別な才能はない。死ぬ気で努力して天才と呼ばれる様になった凡人だ。インデックスや魔神の様に深い魔道書や魔術の知識があるわけでもない。聖人やワルキューレ、神の右席の様な特別な力がある訳でもない。上条や垣根、帆風の様な凄い力がある訳でもない。だが、それでも、彼は守りたいのだ。全ては自分が恋した少女を守る為に

 

「僕は君を守るてあの日から決めたんだ、だからもう二度と君を危険な目に合わせない。だから、あの化け物との相手なんか絶対にさせない」

 

そう強くインデックスの手を握って走るステイル、それが彼女の意思を否定する行為であっても彼は構わない。彼女が危険な目に遭わずに済むのならそれでいいのだから。

 

だが、そんな彼の行為を嘲笑うかの様に大地が振動し地面が大きく揺れる。

 

「くっ!?あの怪物が地震を起こしているのか!」

 

「……違う、さっきの振動よりも強い…まさかこれは

!?」

 

インデックスがそう言いかけた直後、近くの地面を突き破って巨大な蛇の頭部が出現する。

 

ーーーシャアアアァァァァァッ!!ーーー

 

「「!?」」

 

数百メートルまで首を伸ばした蛇はステイルとインデックスに鎌首もたげ見下ろす。二又に別れた舌を口から覗かせながら品定めするかの様な目で二人を観察する蛇…いな、セト=テュポンの下半身の蛇。蛇は暫く目を上下左右に小刻みに動かした後、その顎を開けた。

 

ーーーシャアアアァァァァァッ………オマエガ、禁書目録(インデックス)ダナ?ーーー

 

「な、喋っただと!?」

 

ステイルは蛇が喋った事に驚いた。まさか霊装が人間の言語を喋るなど思わなかったからだ。だがインデックスは冷静に、蛇の声を聞いて目を見開いた。

 

「……その、声…レイチェル?」

 

レイチェル、清教派の修道女。昔インデックスが記憶をなくす前に共に過ごし、遊んだ少女の名だ。その少女の声で蛇は喋っている(・・・・・・・・・・・・・・)のにインデックスは気がついた。

 

ーーーコノ声ノ小娘カ?誰ノ声カナド知ラヌ。(おれ)ハ貴様ガ知ル者ノ声ヲ選ンダダケダーーー

 

「選んだ…つまり、貴方は取り込んだ人間の声帯を利用して喋ってるんだね!」

 

セト=テュポンには会話機能はない、人工知性はあっても会話する必要がないからだ。インデックスは自身の友達を食べただけに飽き足らず、声帯を利用するセト=テュポンに憤る。

 

ーーークックックッ…ソレノナニガ問題ナノダ?我ハセト=テュポン。悪神ト怪物ノ名ヲ持ツ神威混淆デアルゾーーー

 

コロコロと声色を変えて喋る蛇。自分が吸収した者達の声で邪悪に笑った後、自らの顎を開く。その口内は紅蓮に染まり高熱火炎を吐き出そうとしていた。

 

「!退がれインデックス!」

 

ステイルはインデックスの前に歩み出ると、掌から炎剣を出現させる。

 

炎よ(Kenaz)ーーー、巨人に苦痛の贈り物を(PurisazNaupizGebo)ーーー」

 

ステイルの炎剣と蛇の顎から放たれし高熱火炎の火球が激突、爆風消火の応用で互いの炎を相殺し合い爆風を起こして消失する。

 

ーーー中々ヤルナ…ナラ、コレハドウダ?ーーー

 

今度は火炎放射をインデックスとステイルに放つ蛇

。ステイルは両手から炎剣を噴出し大声で叫ぶ。

 

灰は灰に(AshToAsh)ーーー塵は塵に(DustToDust)ーーー吸血殺しの(SqueamishBloody)紅十字( Rood)ーーー!!」

 

二つの炎の剣が火炎放射と激突、先程よりも激しい爆炎が吹き荒れその衝撃波で吹き飛ばされるステイルとインデックス。

 

「くっ…!大丈夫かインデックス!?」

 

「う、うん…私には歩く協会があるから…」

 

「そうか…なら、ここから逃げろ」

 

「え!?」

 

インデックスはステイルが言った言葉に驚く。

 

「あいつの狙いは君の様だ。そうだろう悪魔?」

 

ーーー……悪魔カ、ククク、相違ナイ。ソウダ、我ノ目的ハソコノ魔道図書館。コロンゾン様カラノ命ニヨリソコノ女ヲ…殺スーーー

 

そうギョロリとインデックスを見つめる蛇、インデックスは萎縮するがそんな彼女を安心させるかの様にステイルが微笑みかける。

 

「……僕が君を守る、命に代えてでも。だから安心してくれ」

 

そう呟くとステイルは蛇の前へと一歩踏み出す。それを見て蛇は目を細め笑った。

 

ーーー愚カ、実に愚カ。雑種ガ我ニ勝テルトデモ思ッタカーーー

 

「思ってなんかいないさ。でもな、引き下がれないんだよ。目の前に好きな女の子いるんだからな」

 

それだけ言うとステイルは両手から紅蓮の炎と青白い炎を形成し、蛇を睨みつける。蛇とはドラゴン、ドラゴンとは十字教では悪の象徴、倒すべき存在である。聖ジョージが悪竜を倒し、姫君を助け出した様に、騎士(ステイル)姫君(インデックス)を守り抜く為に悪竜(セト=テュポン)に挑む。

 

ーーー馬鹿ナ奴メ…身ノ程ヲ弁エロ。煉獄デ後悔スルガイイーーー

 

そう言って吐き出すのは灼熱の炎、人を一瞬で蒸発させ灰も塵も残さぬ煉獄の炎。ステイルはルーンカードをばら撒く。

 

世界を構築する五大元素の一つ、(MTWOTFF)偉大なる始まりの(TOIIGOIIOF)炎よ、それは生命を育む恵み(IIBOL)の光にして、邪悪を罰する裁きの光なり(AIIAOE)それは穏やかな幸福を満たすと(IIMHA)同時、冷たき闇を滅する凍える不幸なり(IIBOD)その名は(IINF)炎、その役は剣(IIMS)、顕現せよ 我が身を喰らいて力(ICRMMBGP)と成せ!来い!魔女狩りの王(イノケンティウス)!!!」

 

予め設置しておいたルーンカードによる魔法陣を展開し、魔女狩りの王を召喚。炎の王は燃え盛る拳を構え蛇を殴りつける。3,000度の火炎が蛇の皮膚を焼く…だが、

 

ーーー何カシタカ?ーーー

 

蛇は全くの無傷。魔女狩りの王はその名の通り熱い抱擁を蛇に行い、抱きついて身を滅ぼそうとするも蛇が万力を込めるとバラバラに引き裂かれる。再生し次は内部から焼き払おうと蛇の口内から中に入る…だが、蛇は美味しそうに逆に魔女狩りの王を飲み込む。ゼロから形成し復活を遂げた魔女狩りの王は、十字架に姿を変え自らを振り下ろすも爆風消火の要領で火炎をぶつけられ消滅した。

 

ステイルも炎剣を飛ばしたり、爆裂させたり、斬り裂いたりと自分に出来る限りの攻撃をする。自分が今まで積み上げてきた全てを、知識を総動員しセト=テュポンに挑んだ。巨体に触れただけでも全身の骨が砕かれかねない攻撃を避け彼は何度も攻撃を当てる。

 

だが、それでも、いくらやってもセト=テュポンは倒せない。超再生能力で焼こうが切ろうが、何度でも再生し、セト=テュポンの一撃一撃は魔女狩りの王を幾度と殺し、それを避けるのにステイルは全力を尽くす。魔女狩りの王の展開し続ける魔力も、避け続ける体力も尽き、魔女狩りの王は弱々しく風の前に消える種火の如く等々消滅してしまった。

 

「はぁ………はぁ……はぁ……!」

 

ステイルは片膝を地面ついて、荒い息を漏らす。もう体力は尽きた、魔力ももうない。だがステイルはセト=テュポンを睨むのをやめない。

 

ーーーシツコイ男ダ、呆レタ。サッサト死ネーーー

 

そう呆れた様に、冷たい目をするセト=テュポン、だがステイルは懐からルーンカードを出し最後まで抵抗する気でいた。

 

「もういいよステイル!もういいんだよ!貴方だけでもいいから逃げて!こいつは私が…」

 

「駄目だ」

 

インデックスは涙を流しながら、ステイルに懇願する。ここは自分が引き受けるから逃げてくれと。その必死の懇願を…ステイルは蹴り飛ばした。

 

「君は僕が守る。だから、早く逃げてくれインデックス」

 

「何で!何でステイルはそこまで私を守るの!死んじゃったら意味ないよ!カッコつけたって死んじゃったら…」

 

インデックスは問う、何故ここまで頑張るのかと。死んでしまえばそれで終わりだ。なのにここまで必死に抗うのかと。その問いに対しステイルは笑って答えた

 

「約束、だからさ」

 

「…約……束?」

 

約束、そうステイルは口にした

 

「君と約束した、君の事を決して忘れない、と。そして僕も君にこう言った『たとえ君は全てを忘れてしまうとしても、僕は何一つ忘れずに君のために生きて死ぬ』『ずっと君を守る』…てね」

 

かつて愛する少女(インデックス)の記憶を殺した時、ステイルは誓ったのだ。この約束を果たそうと。

 

「あの頃僕は君の記憶を消した。それは君を殺したのと同義だ。君が違うと言っても僕はそう感じている」

 

「それだけに飽き足らず、僕は君を苦しませた。だから、今度こそ、君を絶対に守る。例えこの身が死しても…君だけは守り通す」

 

揺るぎない信念こそが、少年を動かす動力だった。その力の名は愛。愛故に彼は戦う。愛した少女を守る為…彼は死ぬまで戦うのだ

 

ーーー茶番ハ済ンダカ?モウイイ死ネーーー

 

そう言って先程の数百倍の熱力を誇る火炎をチャージする蛇。ステイルは例え自分は死んでもインデックスだけは守るとルーンカードを構える。

 

「やめて!」

 

インデックスはそう叫びながら、両手を広げステイルを庇う様に前に躍り出た。

 

「!?インデックス!?何をして…」

 

「ステイルは勘違いしてるみたいだけど…愛する人を守りたい。そう思ってるのは貴方だけじゃないんだよ」

 

インデックスはステイルにそう微笑んだ。

 

「ステイルが私を守りたい様に、私だってステイルを守りたいんだよ…それに、軽々しく死ぬなんて言わないでよ」

 

インデックスは言葉を続ける、まるで聖女が罪を行なった者に説教をするかの様に

 

「ステイルが死んだら私は悲しいんだよ、辛いんだよ…自分一人だけで生きてるのが苦痛なくらい…ステイルだって私が死んで自分一人だけになったらそう思うでしょ?」

 

「………ああ」

 

「だから、自分を犠牲にしてでも私を守るなんて言わないで。次そんな事言ったらぶん殴るんだよ」

 

そうにっこり微笑んだ後、インデックスはステイルに抱きついた。その行動にステイルは目を見開いた

 

「インデックス…?」

 

「大丈夫だよ、ステイル」

 

インデックスはそう優しく言った。

 

「例え死が私達を分かっても。私達はずっと、ずっと一緒だよ。生まれ変わったて、絶対に私達は何度も一緒になれるから」

 

少し恥ずかしげに笑うインデックス、例えこの場で焼き殺され肉体がなくなっても…魂はずっと一緒だと、例え生まれ変わっても…自分達の愛は分かつ事は出来ないと

 

「……そうだね」

 

ステイルも笑みを浮かべてインデックスを抱きしめる。もう茶番は御免だと蛇は二人を焼き滅ぼす死の業火を解き放つ。二人はその死の業火を前にしても逃げ出さず、お互いの身体を抱き締めて最後の瞬間を待つ。

 

炎よ(・・)消えよ(・・・)

 

突如そんな言葉が二人の耳に届いたかと思うと、二人を焼き滅ぼす死の業火は二人の直前で消滅した。

 

「「………え?」」

 

ーーーナ!?ーーー

 

何が起こったのか誰も理解出来なかった、その現象を起こした本人以外は。

 

「全く、無様な姿だな」

 

ーーー!?ダ、誰ダオマエハ!?ーーー

 

ステイルとインデックスの背後にいつの間にか(・・・・・・)仮面をつけた男が立っていた。その男に蛇は戸惑った声を上げる。

 

「名乗るほどの者ではない…単なる通りすがりの錬金術師だ」

 

そう告げる謎の男、彼はステイルを仮面越しに見つめ叫んだ。

 

「立て少年!お前は彼女(インデックス)を守るのではなかったのか!?」

 

「!?」

 

そう叫ぶ男、その男の言葉にステイルは奮い立たされる。

 

「さあ立て少年!こんな所で立ち止まっている暇などない!愛した少女を守る為に目の前の邪悪を討ち滅ぼせ!」

 

その厳しくも熱い言葉でステイルの心は焚き付けられる。そうだ、こんな所で、終わってたまるかと。

 

「……誰か、知らないが…その通りだ。インデックスとの心中というのも悪くないが…それだと彼女との約束を破ることになってしまう」

 

魔力も体力も底を尽きている。否、まだ喋れる気力があるのなら、立ち上がりその気力すら魔力に変換しインデックスを守るべきだ。ステイルはルーンカードを右手に構え蛇を睨みつける。それを見て男は力強く頷く。

 

「当然。そうだ少年、まだ終わってなどいない。僭越ながらこの私も力を貸してやる」

 

謎の男は短剣を構える。その短剣は水銀で出来ていた。柄頭には赤い宝石が嵌っていた。

 

「行くぞ怪物……!」

 

ーーーマダ抗ウカ虫ケラ共ガ……!イイ加減滅ビヲ受ケ入レロ!ーーー

 

炎剣を構えるステイル、再び口内に炎をチャージする蛇。両者は睨み合う。果たして勝つのは姫君を狙う悪竜か、姫君を守る騎士か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




謎の男…一体誰なんだ(棒読み)、セト=テュポンの能力は単純、だからこそ強く厄介なのです。シンプルなパワー、再生能力、火炎攻撃…正しく怪物。こんな奴に一体どうやって勝つのか?

次回で英国異変編を出来れば終わらせられればな〜とか思っています。どうやってセト=テュポンを倒すのか、期待して待っていて下さい

次回もお楽しみに!


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苦難の果てで、君の笑顔が見れたなら

英国異変編フィナーレ、ステイルの格好良さとインデックスのヒロイン力を発揮したいと思い書きました。テストのせいで遅れちゃったぜ、ごめんなさい。今日でテストが終わり…で、来週から面接練習スタート…ふ、自分で本当に学生の鏡だな(白目)



謎の男の乱入により、窮地を脱したステイルとインデックス。蛇はそれを睨みながら火炎を再び吐き出す。

 

消えろ(・・・)

 

仮面の男がそう短剣を向けてそう呟くと、言った通りに火炎は消えてしまう。何度も何度も蛇は同じ攻撃を繰り返すがどれも無効化されてしまう。

 

「……その短剣にその声…君はアウレオ…」

 

「愕然、私はアウレオルス=イザードなどという錬金術師ではない。謎の仮面の男だ」

 

「いや、アウレオルス=イザードなんて言ってないし…やっぱり先生だよね?それにその短剣 アゾット剣でしょ、て事は黄金錬成(アルス=マグナ)…」

 

「私は謎の仮面の男、アウレオルス=イザードでもないし、黄金錬成も知らん。単なる流浪の錬金術師だ」

 

あくまで自らの正体を隠し続けるアウ…謎の男。彼は短剣…アゾット剣を構え次々に言霊を放ち黄金錬成で具現化させる。

 

竜王の殺息(ドラゴンブレス)を放て!」

 

アゾット剣の剣先から竜王の殺息を放ち、真っ直ぐ蛇に向かう。蛇は口から放射する熱線でそれを相殺

。ならばと口から暴風を放つ。

 

風よ(・・)四方に散れ(・・・・・)

 

そう謎の男が呟くと、風は四方へと散り消滅する。

 

ーーークソ!錬金術ノ大魔術カ!小賢シイ真似ヲシテクレル!ダガ、(おれ)ハソノ程度ノ攻撃デハ死ナン!ーーー

 

「当然、だろうな。お前はエジプトとギリシャの悪神が合わさった最強の怪物だ…だが、逆に考えるとしよう」

 

ーーーナニ?ーーー

 

黄金錬成では自分を倒す事は出来ないと宣言する蛇

、アウレオルスはそうだと頷きながらも、それなら発想を変えようと呟く。

 

来いゼウス=アモン(・・・・・・・・・)、太陽と雷の天空神よ、セトとテュポンを制し者達よ。一つになって私の目の前に現れろ」

 

そう謎の男が告げる、すると天から光が差し、そこから厳しい初老の男の顔付きをした羊の角を生やしウールの布を纏い、右肩を露出した存在が現れる。

 

ーーームウ"ウ"ヴヴヴヴゥゥゥゥゥッン!ーーー

 

ーーー!?ゼウス…イヤ、アメン・ラー…ソウカ、コイツハ ゼウス ト アメン ガ習合シタ神…ゼウス=アメンカ!ーーー

 

ゼウス=アメン、エジプトとギリシャの地の主神が習合された存在。それこそがゼウス=アメンである。太陽と雷、天候を司る最強の神にしてテュポンを、セトを撃ち破る者。セト=テュポンにとって天敵であろう存在概念が現世に出現したのだ。

 

「黄金錬成とは、()や悪魔を含む『世界の全て』を己の手足として使役し、操り、世界を改変する大魔術だ」

 

そう、黄金錬成とは世界を思うがままに支配し、改変し、操る偉大なる錬金術の秘奥にして秘術。残念ながらコロンゾンやセト=テュポンを倒す事は不可能だが神を操る事など容易い。故にこうして通常ならば召喚することすら不可能な存在概念を二柱召喚、更に複合させる事を可能とする。

 

「異国の神であろうと私の前では玩具に同じ、ゼウスであろうがアメン・ラーであろうが私の思うがままだ。故にゼウスとアメンを合わせる事など容易だ」

 

不可能を可能にする、それが黄金錬成。ゼウス=アメンは右手に万物を消失させる雷霆(ケラウノス)を、左手には巨大な太陽と見間違う程の輝きを放つ太陽球が形成される。

 

「神話同様、敗れ去るがいい怪物」

 

ーーームウ"ウ"ヴヴヴヴゥゥゥゥゥッン!ーーー

 

ーーー舐メルナ!ーーー

 

ゼウス=アメンが雷霆を槍の如く投擲、蛇は火炎で相殺しようとするが雷霆は蛇に向かって放たれたのではなく、セト=テュポンの上半身に命中し、上半身の百の首の大半を消滅させ蛇の火炎は左手の太陽球で防いだ。

 

ーーーウ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"ァ"ァ"ァ"

ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"!!?ーーー

 

ーーークッ!?我ガ半身ガ…!オノレ!ーーー

 

蛇はゼウス=アメンを睨む、ゼウス=アメンは雷霆を再び投擲、蛇は火球を放ちそれを相殺。それを幾度と繰り返す蛇とゼウス=アメン。

 

「ステイル=マグヌス、そしてインデックスよ。あの怪物を倒す為、二人の協力を得たい」

 

「……勝算はあるのか?」

 

「当然。策は用意してある。だが、被害が甚大ではない。故に垣根帝督達の力も必要になるだろう」

 

謎の男は倒す方法ならあると告げる、それに目を見開く二人。

 

「先ずはインデックス、君の知識を総動員しルーンカードでこのロンドン一帯に巨大な魔法陣を展開してもらう」

 

「ろ、ロンドン一帯を…?いや、組み立てるだけなら出来るけど…そんな沢山の数のルーンカードなんて何処に」

 

「作ればいい、私の黄金錬成でな。そしてステイル=マグヌス。お前は魔女狩りの王の制御に専念しろ」

 

ロンドン一帯に魔法陣を展開する、そしてそこから誕生するイノケンティウスの制御をステイルに任せると男は告げる

 

「……巨大な魔女狩りの王を出す気か?だが、地中内部にいる部分まで燃やし尽くせるかわ…」

 

「ふん、ステイル=マグヌス。お前にとって絶対必中の攻撃とはなんだ?」

 

「……は?」

 

突然そんな事を告げる男、ステイルはいきなり何を言っているのかと目を開く。

 

「追尾する攻撃か?それとも広範囲攻撃か?…否、そんなちっぽけなものではない。絶対必中とは逃げる場所がない世界(・・・・・・・・・・)の事を言うのだ」

 

そうステイルとインデックスに告げる男、男が何を言いたいのか理解できない二人を他所に蛇はゼウス=アメンに火炎を吐く。だがゼウス=アメンはそれを防ぎ雷霆を飛ばしてくる。

 

ーーームウ"ウ"ヴヴヴヴゥゥゥゥゥッン!ーーー

 

ーーー……チッ、ヤハリ、半身ガイナケレバ勝テヌカーーー

 

蛇はそう呟くと地面の中に潜り、地中の中に消えていく。謎の男が召喚したゼウス=アメンの相手は自分一人では相手が悪いと判断し逃げたのだ。

 

ーーーウ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"ァ"ァ"ァ"

ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"!!!ーーー

 

セト=テュポンは垣根達の猛攻を浴びながら咆哮を上げてステイル達へと百の首を向ける。アレイスター達へは全身から発生させる暴風で相手をし、百の首から火炎を放射する。

 

火よ(・・)逸れろ(・・・)

 

男の言霊通りに火の軌道が逸れ、明後日の方向へ火炎が向かう。だが同時に地面から突如現れた蛇が顎を大きく開きステイル達を飲み込もうとする。

 

「!くっ、転移せよ(・・・・)!」

 

そう叫ぶ事で男とステイル達をその場から転移し、蛇の攻撃を避ける。

 

「敵も学習し始めた様だな。このままでは危険だ。速攻に魔法陣を完成させねば…インデックス、魔法陣をどう描けばいいのか頭の中で考えろ」

 

「う、うん…今考えてるんだよ」

 

インデックスが思考する魔法陣は、以前出会った天草式に教えてもらった身の回りのあらゆる要素を魔術に応用する魔術。ただ配置するだけのルーンカードの配置を決め、結界の補強かつイノケンティウスの強化を行う。その為複雑怪奇な魔法陣を完成させねばならず、規模が大きいほど複雑になっていく。しかもロンドン一帯に魔法陣を展開するのだ。インデックスでなければ完成できないであろう。

 

ーーーウ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"ァ"ァ"ァ"

ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"!!!ーーー

 

ーーームウ"ウ"ヴヴヴヴゥゥゥゥゥッン!ーーー

 

セト=テュポンの拳の振り下ろしがゼウス=アメンの身体を打ち付ける。ゼウス=アメンは雷霆を剣状にして斬りつける。セト=テュポンの身体を斬り裂き焼き焦がしながら何度も何度も斬りつけ、切りつけた直後に再生し傷口を塞ぐセト=テュポン。セト=テュポンは両腕でゼウス=アメンを拘束しようと手を伸ばし、ゼウス=アメンも抵抗として雷霆の剣を消して両手をセト=テュポンに伸ばし互いの腕を掴み合い拮抗し合う。

 

ーーーウ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"ァ"ァ"ァ"

ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"!!!ーーー

 

ーーームウ"ウ"ヴヴヴヴゥゥゥゥゥッン!!ーーー

 

激しくぶつかり合い、互いの力をぶつけ拮抗し合う怪物と神。まさしくその光景は神話の再来、もしくは再現。神話上の戦いを再現するが如く。

 

「……凄いな、僕ら魔術師同士の戦いとは桁が違い過ぎる…本当にあの化け物を僕は倒せるのか?」

 

「惚けるなステイル=マグヌス。そんな暇などないぞ」

 

自分にセト=テュポンを倒す事など出来るのか、そうステイルは疑問に思う。

 

ーーーウ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"ァ"ァ"ァ"

ァ"ァ"ァ"ァ"!!!ーーー

 

ーーームウ"ウ"ヴヴヴヴゥゥゥゥゥッン!?ーーー

 

セト=テュポンの拳がゼウス=アメンが放った雷霆を殴りつけ消滅させ、ゼウス=アメンの顔面に拳をめり込ませる。そのままグチャとゼウス=アメンの顔を粉砕し、ゼウス=アメンの首から噴水の様に血が吹き出る。

 

だが、首が無くなろうとゼウス=アメンの身体は動く。神は首がなくなろうと死なず、それを身体で表す様にセト=テュポンに雷霆と擬似太陽と化した巨大火球を放とうとする。

 

ーーーウ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"ァ"ァ"ァ"

ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"!!ーーー

 

だが、セト=テュポンは地中からの下半身たる蛇の尾でゼウス=アメンの身体を拘束。万力を込め締め上げ身動きが取れない様にする。そして蛇で絡めて動けない様にしたまま百の首を全て閉じ口内に炎エネルギーを充満させチャージ。そして勢いよく口を開け火炎を放射。百の火を全て束ねる事で極太の火炎放射となりゼウス=アメンを下半身の蛇ごと焼き払った。

 

ーーーウ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"ァ"ァ"ァ"

ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"!!!ーーー

 

歓喜と勝利の雄叫びを上げるセト=テュポン。神話上の敵だった神は自らの手で葬った。そして焼失した下半身が驚異的なまでの再生速度で復活し始めた。

 

ーーークックックッ…見タカ、我ハ無敵、例エ神ヲ呼ボウトモ我二叶ウ事ハナイ。何故ナラ我ハ最強故二。理解シタカ雑種共ヨーーー

 

そう傲慢不遜に言い放つ蛇、ゼウス=アメンを屠って勢いづいている様だ。だが、仮面の男にとってゼウス=アメンなど単なる時間稼ぎの捨て駒(・・・・・・・・)に過ぎない。そしてゼウス=アメンはその役目を見事に果たした。

 

「………出来た」

 

ずっと目を瞑っていたインデックスはそう呟いた。彼女は今の今までロンドン一帯にルーンカードを配置し、過去類を見ない巨大な魔法陣を展開する為の魔法陣の配置図を頭の中で構築していたのだ。

 

「本当かい!?まだ五分しか経っていないのに…流石だな」

 

「うん、大体の配置図は出来たんだよ。後は先生の黄金錬成で配置すればいいだけだね」

 

「そうか、では君の頭の中を除き配置図を拝見させてもらおう…後、私は先生という人物ではない」

 

謎の男はアゾット剣をインデックスに向け、彼女の頭の中を除きルーンカードの配置図を確認する。そしてそのままアゾット剣を空に向け言霊を放とうとしたその瞬間。

 

ーーーサセヌワ!ーーー

 

蛇が地中から奇襲し、男を狙う。これ以上男の好き勝手にさせると不味いと理解し、殺そうと考えたのだ。咄嗟の不意打ちに男は反応が遅れそのまま蛇に飲み込まれかける…蛇は勝利を確認しほくそ笑み…直後白い何かに頭部を殴りつけられた

 

ーーーグゲボォォ!?ーーー

 

蛇は吹き飛ばされ建物に激突し瓦礫に埋もれる、そして蛇に攻撃した人物…垣根が白い羽を撒き散らしながら地上に降り立った。

 

「よお、アウレオルス。助けに来てくれたのか」

 

「憮然、私はアウレオルスではない。謎の錬金術師だ」

 

「あーはいはい、まあいいや。助けに来てくれてサンキュな」

 

まだ正体を隠す男、そんな彼に呆れながらも助けに来てくれた事に感謝する垣根。

 

「こいつは俺と潤子で足止めする。何かする気なんだろ?お前らはそれに集中してな」

 

垣根はそう笑って瓦礫を押しのけて垣根を睨む蛇の相手を取り、帆風はいつの間にセト=テュポンの上半身の相手をしていた。

 

ーーー邪魔ヲスルナ!ーーー

 

「そいつは無理な相談だ、あいつらの仕込みが終わるまで俺と遊んでもらうぞ」

 

ーーーナラバ貴様カラ殺シテヤル!ーーー

 

そう言って垣根に火炎を放つ蛇、垣根はそれを未元物質の翼でガード。ならばと鋭い歯を剥き出しにして噛み付こうとする蛇に対して翼を剣の様に振るう垣根。だが、切った瞬間から再生し切断が出来なかった。

 

「チッ、厄介な再生力だな…」

 

ーーー当然ダ、貴様モ排除サセテ貰ウゾ。我ガ主人ノ敵ヨーーー

 

「へ、やれるもんならやってみな」

 

そう言って翼を振るい烈風を起こし、蛇を細切れにする垣根。だがバラバラにされても即座に蘇る。太陽光を殺人光線に変え消滅させようとすると地中の中に潜り逃げてしまう。

 

「垣根帝督が足止めをしている今がチャンスだ。やるぞ二人共」

 

「……分かった」

 

垣根達が足止めしている今がチャンスだと呟き、天にアゾット剣を向ける。

 

ルーンカードよ(・・・・・・・)ロンドンの街に魔法陣を描け(・・・・・・・・・・・・・)

 

そう言霊を言うと天空より舞う様に現れた無数のルーンカード。雪の様にひらひらと舞い男が望む場所に落ち、魔法陣としての役割を果たす。

 

「ステイル=マグヌス。お前はこの巨大魔法陣で通常の様に魔女狩りの王を呼ぶがいい」

 

「ま、待ってくれ!こんな大きな魔法陣で魔女狩りの王を召喚した事なんてない!下手をすれば暴走して…」

 

「ならば、しない様にしろ。制御できなければ魔女狩りの王に焼き殺されるだけだ。最も制御出来ねばあの怪物に潰されて死ぬだけだがな」

 

自分にそんな事が出来るのかとステイルが呟く。だが男は何としても成功させろと冷たく返す。

 

「ここで限界を超えろステイル=マグヌス。でなければ君の大事な恋人(インデックス)は死ぬ。だからここで限界を超えろ。その命に代えてもだ」

 

「!?………………分かった」

 

「………いい返事だ、それでこそ彼女のパートナーに相応しい」

 

男は笑ってアゾット剣を振るい、何らかの術式で空を飛ぶ。そして建物の屋根に降り立ち蛇に向けて風の刃を放ち首を吹き飛ばす。

 

「仕込みは終わったのかアウレオルス?」

 

「……私は謎の仮面の男だ、仕込みは終わった。だがこのままでは甚大な被害が出る。だからまずはロンドンから人を避難させよう」

 

このままでは一般人、味方である騎士派の騎士達、そしてコロンゾンに操られていただけの清教派のシスターや魔術師達に被害が及ぶ。故にまずは避難させようと考え、男はアゾット剣を天を掲げる。

 

ロンドンの人々よ(・・・・・・・・)安全な地へと転移せよ(・・・・・・・・・・)

 

その言霊の命によりロンドンから全ての人々が消え失せる。一般人から魔術師まで、全員がロンドンから消え失せた…ただ、アレイスターや超能力者の様な一部の強者は残ってしまったが。

 

「……やはり、貴様達は転移出来ないか。無意識にお前達ならこれから来るであろう煉獄(・・)に耐え切れると無意識に考えているからであろうな」

 

「……おい、今なんて言った?」

 

「さて、私も獄炎に巻き込まれぬ様、防御を整えるとしよう。貴様らも精々焼け死ぬなよ。まあ、死んでも死なないとは思うがな」

 

「いや、無視すんなよ!」

 

不吉なことをさらっと言った男、垣根は男に何を言ったのかと問いかけるが男は無視し何処かへと消える男。垣根は再生し終わり、顎から火炎を放った蛇の攻撃を防ぎながら精神感応(テレパシー)でアレイスター達にこれから何かやばい攻撃が来る事を伝えるのだった。

 

 

ステイル=マグヌスは汗を流す、本当に自分にこんな大規模な魔法陣の制御が出来るのかと。

 

(出来るか…?インデックスや垣根帝督みたいな何の才能も持たない僕が…出来るのか?)

 

自分を信じられないステイル、そんな彼の手をインデックスがそっと握った

 

「!?インデックス……」

 

「大丈夫なんだよ、ステイルなら出来るよ。自分を信じて」

 

何処までもまっすぐにステイルを見つめる緑の眼、それを見ているとステイルは先程まで考えていた不安や恐れは無くなっていた。

 

(……そうだ、やらなきゃ…いけないんだ。僕は決めたんだ、今度こそインデックスを守ると…その為にはこんな所で立ち止まっている暇はないんだ…!)

 

恐れるな、自分には守るべき者(インデックス)がいる。故にこんな所で止まっている暇などない。進め、彼女を守る為に。

 

「……………」

 

彼は深く眼を閉じる、精神を集中させる為に。脳裏に思い出すはインデックスと過ごした楽しい思い出。これからもインデックスの笑顔を間近で見たい。だが、セト=テュポンを倒さねばそんな未来などない…故に覚悟を決めた、セト=テュポンを自らの手で倒すと。勇気を振り絞る、自分と彼女の未来の為に。全てはそう、愛の為に、少年は眼を見開き力の限り声を出す。

 

我が名が最強である理由をここに証明する(Fortis931)!」

 

それは彼の信念であり覚悟だ、彼が力を渇望する理由は一つ。恋した少女を守りたい、それだけだ。そして魔法名に刻まれた生き様を証明すべく彼は口を開く

 

世界を構築する五大元素の一つ、(MTWOTFF)偉大なる始まりの(TOIIGOIIOF)炎よ、それは生命を育む恵み(IIBOL)の光にして、邪悪を罰する裁きの光なり(AIIAOE)それは穏やかな幸福を満たすと(IIMHA)同時、冷たき闇を滅する凍える不幸なり(IIBOD)その名は(IINF)炎、その役は剣(IIMS)、顕現せよ 我が身を喰らいて力(ICRMMBGP)と成せ!君臨せよ!獄炎の断罪者、背教者を焼き滅ぼす王、炎の世界より来りし炎の巨人(ムスペル)………その真名は真・魔女狩りの王(イノケンティウス・グランド)!!!」

 

長き詠唱を歌う様に叫び、その声を轟かせる。それは裁きを下す巨神を呼ぶ聖句にして聖歌。少年の覚悟の象徴にして少女を守る彼の化身。その名は真・魔女狩りの王(イノケンティウス・グランド)

 

ーーーオ"オ"オ"オ"オ"オ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"!!ーーー

 

突如紅蓮に燃え上がるロンドンの街並み、炎が吹き上がり、街を火炎で覆う。それは宛ら聖書における地獄か、北欧の神々の黄昏の最後に炎の巨人の剣によって焼き払われる世界そのもの。ロンドンは今まさにそんな神話を再現したのだ。そんな神話の再現した炎の中から一体の巨神が蠢いた。それこそが真・魔女狩りの王。百万℃の熱量を誇る炎の肉体…それを除けば見慣れた魔女狩りの王と似ている。

 

だが確実に違うのはその大きさ、セト=テュポンと並ぶ程の巨体に背中に存在する神の如き双翼。頭部には紅蓮の炎で構成された天使の如き輪…その姿はまさに"神"。無数のルーンカードと大規模な魔法陣、それにより誕生した炎の巨人。それが真・魔女狩りの王だ。

 

ーーーオ"オ"オ"オ"オ"オ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"!ーーー

 

ーーーウ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"ァ"ァ"ァ"

ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"!!?ーーー

 

炎の巨人がセト=テュポンへと手を伸ばす、その超高熱火炎の両手でセト=テュポンの身体へと触れようとしセト=テュポンは慌てて自らの両手で掴む。だが、腕自体も百万℃の火炎で構成されており掴んだだけでセト=テュポンの腕が黒く染まり白い灰になって零れ落ちる。

 

ーーーウ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"ァ"ァ"ァ"

ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"!!!ーーー

 

だが、セト=テュポンは持ち前の超再生で焼け爛れた腕を再生し、炎の腕と拮抗する。真・魔女狩りの王が動く度に炎が吹き荒れ、ロンドンの建物が燃え尽きる。もしロンドンに人がいたら人々は一瞬で灰も残らず焼けていただろう。

 

(くっ……凄まじい力だ…維持するだけで精一杯…僕はこんなじゃじゃ馬を制する事が出来るのか?)

 

ステイルは真・魔女狩りの王を維持するだけで精一杯だった。自分の意思で動かす事は出来ず、精々真

・魔女狩りの王を暴れさせるので精一杯だ。

 

(くそ…もう限界だ…早くあいつを倒さなきゃいけないのに…もう維持……出来ない)

 

後もう一歩でセト=テュポンを倒せる、だがステイルの体力が持たない。意識が遠のいたその時、インデックスが彼の手を握った。

 

「!インデックス…!」

 

「大丈夫、ステイルは一人じゃない。私がついてるんだよ。だから、頑張れる。だってステイルは私のヒーローだもん」

 

そう言って微笑むインデックス。その彼女の笑顔を見てステイルのなくなりかけていた力が溢れた気がした。

 

「う、おおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!」

 

ステイルは力の限り叫び、自分の全魔力を持って真

・魔女狩りの王に命令を下す。それは真・魔女狩りの王の身体を崩し、炎の津波とする事でセト=テュポンの全身を焼き払う為だ。

 

ーーーウ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"ァ"ァ"ァ"

ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"!!!?ーーー

 

セト=テュポンの全身に絡みつく百万℃の真・魔女狩りの王の炎。瞬く間にセト=テュポンの身体を灰燼と化す。地中に逃げた下半身の蛇も蛇自ら開けた地中への穴を伝って炎が突き進み、地面の中で蛇を焼き殺す

 

ーーーウ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"ァ"ァ"ァ"

ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"!!!?ーーー

 

ーーーギャァァァァァ!!!?我ガコンナ所デ!?コ、コロンゾン様ァァァァァ!!?ーーー

 

断末魔を叫び消滅するセト=テュポン。怪物は塵一つ残さず、この世界から消え失せたのだった。

 

ーーーオ"オ"オ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ッ!!ーーー

 

勝利の雄叫びを上げ、真・魔女狩りの王はゆっくりと消えていく。ロンドンを覆っていた火炎も陽炎の如く消え始める。

 

「………やった、やったのか?」

 

ステイルはそう呟く、インデックスと男の協力があったとはいえ、セト=テュポンを倒したのが自分だとステイルは信じられなかった。特別な力を持たない自分が、あの怪物を倒したと実感が湧かなかった。そんな彼の肩を男が優しく触れる。

 

「欣然、良くやったなステイル=マグヌス」

 

そう告げる男、そしてずっと手を握っていたインデックスがステイルににっこりと笑いかける。

 

「ね、私が言った通りでしょ?ステイルなら出来るって」

 

「……そう、みたいだね」

 

ステイルは彼女に笑いかけた、そして彼女に一つだけ、こう問いかけた。

 

「インデックス……僕は、君のヒーローになれたかな?」

 

そのステイルの問いに、インデックスは驚いた様に目を見開き、そして和かに微笑んでこう言った。

 

「何言ってるの、ステイルは最初から私のヒーローなんだよ」

 

「………そうかい」

 

互いに笑い合う二人、それを見て謎の男は仮面を取ってその素顔を露わにする。

 

「…………」

 

謎の男…アウレオルス=イザードはステイルとインデックスに何も言わず、ただ笑みを浮かべてその場から立ち去って行くのだった。

 

 

 

「何とか勝ったな」

 

「ええ、そうですわね」

 

垣根と帆風は焼け野原になったロンドンの街を空の上から眺める。ロンドンの有名な観光名所や建物が無残にも焼け尽くされている。どれだけの賠償金を支払わなければいけないのか、それを考えると頭が痛くなる。

 

「……賠償金のこと考えたくねえなぁ」

 

「……インデックスさんとステイルさんは学園都市の生徒なので、アレイスター(一番偉い人)に責任を取ってもらいましょう」

 

「だな」

 

二人はアレイスターに全てを丸投げにする事にした

。だって自分達まだ子供だもん、だから大人を頼るんだもんと言い訳する。

 

「おぉーい!垣根!」

 

「お、当麻達やっぱ生きてたな」

 

地上から手を振っている上条達に気がつき、二人は地上へと降り立つ。

 

「やっぱ死んでなかったか、台所の黒い虫並みの生命力だな」

 

『五月蝿えよクソメルヘン』

 

そう軽口を言い合う垣根達、セト=テュポンという強敵を倒したせいか気が緩んでいる彼等。だから彼等に忍び寄る悪魔の影に気づけなかった

 

「たかがセト=テュポンを倒した程度で図に乗るなよ人間共」

 

『!?』

 

彼等の背後に立っていたのは宝石の如く輝く黄金の長髪、サファイアの如き青い眼。彼女の名はローラ

=スチュアート。本当の名は大悪魔 コロンゾン。彼女は微笑を垣根達に向けていた。

 

「だが、セト=テュポンは役に立った。奴のおかげでメイザースの本当の遺体から契約の縁を切る事が出来た。これで私は自由だ、これで私の本当の計画『モ・アサイアの儀』を行える」

 

そう笑うコロンゾン。垣根達は戦闘態勢に入る。

 

「戦う気か?無駄な足掻きだ、私には勝てない。弁えろ人間、お前達では逆立ちしても私には勝てん」

 

「やって見ないと分かんねえだろうが」

 

コロンゾンは最初に出会った時の様に殺意を垣根達に放つ、だが誰もそれに怯まず上条は逆にコロンゾンを睨む。それを見てコロンゾンは笑った。

 

「ほう、私の殺意には耐えられる様にはなったか。だが、私には勝てない。私はモ・アサイアの儀を成功させ私は世界を終わらせる(・・・・・・・・)

 

「……世界を終わらせる、ね」

 

コロンゾンは儀式を完遂し、世界を滅ぼすと宣言する。その発言に垣根は反応する。

 

「さあ来い、超能力者共。世界の終わりの前に、まずは貴様らに終わりを与えてやろう」

 

そう言って黄金の髪を触手の様に蠢かすコロンゾン

 

「……はっ、唐突なラスボス戦だな…まあいい、行くぞ潤子、お前ら」

 

「分かりましたわ」

 

垣根と帆風は神の力の象徴である翼を展開し、一方通行と麦野、削板も翼を出現。上条はドラゴン体になり美琴と食蜂はいつでも液状被覆超電磁砲を放てる様に構える。

 

 

これから始まるのは最終決戦、魔術と科学が交わるきっかけとなった事件を起こした黒幕たる大悪魔(コロンゾン)と数々の強敵を打ち倒してきた超能力者達(垣根達)。果たして最後に笑うのは悪魔か、人間か……それとも神か。

 

 

 

 

 

 

 




次章で長かったこの小説も最終章となります。有終の美を飾るよう頑張るぞ。でも長かったなー、最初はギャグ路線だったのに最近段々シリアスになってきた…まあ、最後は最初から決まってたんですけどね。そしてアウレオルスさんが言ってた絶対必中の攻撃…元ネタは「焦熱世界・激痛の剣(ムスペルヘイム・レーヴァテイン)」…知ってる人いるかな?

そして最終章 「世界崩壊(ワールドエンド)編」…是非お楽しみに。

「私は……この世界を愛している」
『大悪魔』ーーーー世界を愛し、滅ぼそうとする悪魔 コロンゾン

次回もお楽しみに!


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終章 世界崩壊 編
ズワイガニの甲羅にくっついてる黒いつぶつぶ、あれ寄生虫じゃなくてカ二ビルの卵らしいよ。


今回は軽く飯テロ回。蟹料理のお話です。コロンゾン戦前のお口直しなので文字数は少なめです。ギャグで心を和ませてからのラスボス戦に行きます

今回は三馬鹿弟子のターン。あの子達可愛い&豪華声優なのに原作に全然出てきませんよね…解せぬ。てか、とあるは豪華声優が多い…とあレーだと単なる脇役の不良にオッレルス役の島崎信長さんと松岡禎丞さん、コンビニ店員に内山夕実さん、常盤台のモブお嬢様に潘めぐみさんやら大西沙織さんとかの豪華声優使ってるんですよ?てな訳で、この小説だと散々な目にあってる彼女達がメイン回です



メアリエ=スピアヘッドとジェーン=エルブス、マリーベート=ブラックホールは魔女である。ステイルの弟子で通称 三馬鹿弟子。イギリス清教から裏切り者であるステイル達を抹殺しに来たのにろくな活躍もないまま、倒されなんやかんやあって小萌の家で居候している穀潰しである。

 

「あ〜退屈です。そろそろ本気で畳の目を数えるのも飽きて来ました」

 

「ししょー達はロンドンに行っちゃたし…何もすることがなくて暇だな〜」

 

「まあ、ついて行っても何の役に立たないし死にそうなので、どっちにしろ行かないんですけどね」

 

ロンドンにインデックス達が行っている今、構ってくれる人がいなくて退屈なのだ。小萌は教師の付き合いの飲み会に行った為、暫く帰ってこない、あまりにも退屈なのでテレビをつけることにした三人。

 

『今週も始まりました。親船の部屋です、本日のゲストは学園都市でボランティア活動をなさっている浜面仕上さんです』

 

『どうも、でも俺なんかがテレビに出演出来る日が来るなんて…感激だな』

 

『所で浜面さん、頭切りました?』

 

『いえ、髪は…て、頭!?頭切ったら死んじゃうでしょうが!』

 

浜面が学園都市統括理事会のメンバー 親船最中にそうツッコミを入れる。くそつまらなそうなので他の番組にした。

 

『続いてのニュースです、盗撮の疑いでイギリス人の男性 ホレグレス=ミレーツ容疑者が先程逮捕されました』

 

『被告は「私はカップリング写真を撮っていただけだ!」と意味不明な証言を言っており、警察は今後の捜査でさらなる余罪が明らかになる可能性があると…』

 

ニュース番組は嫌いなので他の番組にすることにした、何処か容疑者が見たことある顔のような気がしたが気にしないでおいた。

 

『本日アメリカ大統領のロベルト=カッツェ氏が秘書のローズライン=クラックハルト氏に「もうお前売れ残り(クリスマスケーキ)だな。俺が嫁に貰ってやろうか?」とセクハラ発言を行い、ローズライン氏に馬乗りされボコボコに顔の形が変わるほど殴られ病院に搬送されました。その後何故か支持率がアップした模様です』

 

なんでセクハラ発言して支持率が上がるんだよ、三人はそう思いながら別のチャンネルに変えた。

 

『本日は学園都市の歌姫 鳴護 アリサさんにインタビューをして見たいと思います!』

 

『どうも、鳴護アリサです』

 

『そう言えばアリサさんにはお付き合いをしている男性がいると聞きましたがどんな男性なのでしょうか?』

 

『えっとですね、一言で言えば「根性」ですかね。とっても強くて優しくて、漢気が溢れていて、でも少しお馬鹿で抜けてて、でもそんな所が魅力的で、筋肉が凄くていつも筋トレしてて、特に上腕二頭筋が…』

 

『………ええ、長くなりそうなので次のコメント行きたいと思います。学園都市統括理事会メンバーのレディリー=タングルロードさんです』

 

ただアリサが削板(彼氏)の魅力を語るだけの痛いトーク番組だったのでメアリエはテレビを切った。ろくな番組がありゃしねえ、そう思った三人。

 

『……はぁ、暇』

 

そう三人が呟いたその時だ、ピンポーンとインターホンの音が鳴った

 

「……ジェーン、取りに行って」

 

「……面倒ですの…マリーベート〜」

 

「……仕方ないなぁ」

 

マリーベートが面倒くさそうに起き上がって、ゴロゴロしている他の二人をジト目で見ながら扉を開ける。

 

「おっす小萌ちゃん!……て、あれ?小萌ちゃんとこで居候してる三魔女か」

 

「……確かトールさんでしたっけ?」

 

扉の目の前にいたのは、少し大きめな発泡スチロールの箱を抱えたトールだった。

 

「いやな、小萌ちゃんにこれをお裾分けしようと思ってな…小萌ちゃんは?」

 

「小萌さんなら飲み会行きましたよ」

 

「あ〜マジか。ま、いっか。お前らこの家で居候してんだろ?なら、これ小萌ちゃんに渡しといてくれよ」

 

そう言ってトールはマリーベートに箱を手渡す。マリーベートは箱を眺めながら顔を上げる。

 

「この箱の中身はなんですか?」

 

「ああ、ズワイガニだよズワイガニ。知り合いから貰ったんだが一人じゃ食い切れねえから小萌ちゃんにやろうと思ってな」

 

『蟹!?』

 

ZUWAIGANI。それは日本のグルメである。普段彼女達が食べているカニカマ(蟹の模造品)とは美味しさも味も一味も二味も違う高級グルメ。自然と涎が溢れ出るメアリエ達。

 

「んじゃ、ちゃんと小萌ちゃんに渡してくれよな」

 

「「「いや、ちょっとストップ!」」」

 

トールはそのまま帰ろうとする、そんな彼に慌てて起き上がったメアリエ達が待ったをかける。

 

「んだよ?俺こう見えても忙しいんだぜ?グレムリンのNo.2だからオティヌスが放ったらかしにしたままロンドンに行った分の書類書かなきゃなんねえんだよ」

 

そう面倒くさげに答えるトール。自由気ままな上司を持つと苦労するんだね。

 

「小萌さんの事さっきから馴れ馴れしい言ってますけど…どうやって知り合っんですか?」

 

「ああ、俺がバイトしてる居酒屋で呑んだくれて酔い潰れてた小萌ちゃんを俺が店長から頼まれてここまで送る事になったんだよ」

 

「……小萌さんらしいですわね」

 

ジェーンが呆れてそう呟く。見た目は子供なのに中身はおっさん。それが小萌なのだと再認識した。

 

「で、家まで送ってやったらさ。目を覚ました小萌ちゃんに絡まれてさ

 

『せんせーは出会いがないのですー!』

 

『上条ちゃん達はいい子ちゃん達だけど、リア充なんですー!リア充なんて爆発しちまえ!』

 

『もう誰でもいいからせんせーと付き合ってくださいー!ただし、優しい人限定でー!』

 

『もういっその事生徒達に単位を餌にして揺するしかないのですよー』

 

とか、危ねえ発言してたんだぜ?」

 

「「「……マジ引くわー」」」

 

その発言は教育者として流石にどうよ?とメアリエ達は思った。

 

「で、小萌ちゃんの愚痴聞かされてな。段々眠くなってきたんだよ。で、うっかり寝ちまったわけよ…そして目を覚ましたら俺は全裸で、同じく全裸の小萌ちゃんと一緒に同じ布団で寝てたんだよ」

 

『…………は?』

 

唐突に放たれたそのリトルボーイ並みの爆弾発言にメアリエ達は凍てついた。

 

「俺訳わかんなくてさ。俺が寝た後に何があったんだと頭を抱えたよ。でな、小萌ちゃんが目を覚まして俺を見たら滅茶苦茶顔を真っ赤にしてさ。『せ、責任とってくださいね…』て、見た目とは裏腹の大人の色香だしてさ…で、今の関係に至ると…ま、そんな感じだ」

 

『待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て』

 

一気にラブロマンスに変わっていく話、それも大人のラブロマンスだ、18禁の。

 

「じゃ、俺は帰るぜ。じゃあな」

 

「「「いや、待って!そんな爆弾発言して帰らないで!頭が混乱してるから!」」」

 

「………あ、これだけは言わせてくれ」

 

帰りかけたトールが、ふと思い出したようにメアリエ達の方を向く。

 

「今の話全部嘘だから、小萌ちゃんとはよく行くスーパーでセールやってる時出会ったんだよ。まあ、そういう訳で…じゃあな」

 

パタン、そう言って扉を閉めて去って行くトール。今までの話は嘘だった。それを聞いたメアリエ達はトールに軽く殺意を覚えた。

 

「と、兎に角このズワイガニは冷蔵庫にしまっておこう」

 

マリーベートがそう言ってズワイガニが入った箱を冷蔵庫に入れようとした時。ぐわっとメアリエとジェーンが彼女の肩を掴む。

 

「何してるんですかマリーベート?」

 

「え?いや冷蔵庫にこれ入れようと…」

 

「…マリーベート、貴方おつむ大丈夫ですか?」

 

「え!?何か私おかしい事言ったか!?」

 

困惑するマリーベート。二人はそんな彼女にこう告げる。

 

「小萌さんは帰りが遅くなる筈。師匠達もいない。なら、このズワイガニは私達が食べるべきです」

 

「そうなのです」

 

「は、はぁ!?お前ら正気か!?これは小萌さんのだろ!」

 

「チッチッチッ、ズワイガニの事を知っているのは私達だけ…つまり、食べてもノー問題です」

 

そう黒い笑顔でメアリエとジェーンが笑う。

 

「お前らな…普段からお世話になってる小萌さんやししょー達に悪いと思わねえのか!?」

 

「なら思い出してください…普段の私達の日常を」

 

マリーベートは思い出す、普段からお世話になっている人達との日常に。

 

 

『おい三馬鹿弟子。僕のスーパーのセールに行ってこい。30分いないでな、過ぎたら飯抜きだ』

 

『三馬鹿弟子、私の代わりにこの洗濯物をたたんでおきなさい。出来なかったら唯閃です』

 

『ねえねえ三馬鹿弟子〜、お腹空いたからご飯作ってよ〜。そうしないと頭ガブリンチョだよ』

 

『三馬鹿ちゃん達〜、これ勉強のテキストですー。今週中に終わらせて私に提出するのですよー。出来なかったこの量倍プッシュするのですー』

 

 

「……食うか」

 

あ、こんな奴らにズワイガニ食べさせる価値なかったわ。マリーベートは掌返しでメアリエ達と共犯になる事にした。やっぱりズワイガニの誘惑には勝てなかったよ。

 

 

「「「蟹パーディー〜蟹パーディー〜♪美味しい蟹を三等分〜♪」」」

 

ズワイガニ、それは冬の味覚の王様である。しゃぶしゃぶ、鍋、寿司と様々な料理に活かせる蟹社会のDIO様である、カーズである、ディアボロである。

 

「でも私蟹なんて食った事ねえよ…どうやって食べる?」

 

「ここは生で脚を食べたいですわね」

 

「賛成です、でもズワイガニの脚はハサミを除いても8本…三等分出来ませんね」

 

「ん〜、まあそこはじゃんけんでいいだろ」

 

マリーベートはそう軽く返す、マリーベートは蟹を食べたことが一度もない。ジャパニーズキャンサー ズワイガニ。イギリス人にとって珍味だ、是非食してみたい。

 

「蟹てどんな味がするんだろうな〜?カニカマしか食った事がねえから分からないな〜。なあ、メアリエ達はどんな味だと…」

 

マリーベートがそう笑いながら顔をメアリエとジェーンに向ける。そんなマリーベートの視界に映ったのはもぐもぐと蟹の脚(・・・)を食べるメアリエとジェーンの姿だった。

 

「……ん?」

 

ズワイガニを見てみる。ハサミ以外の蟹の脚がなくなっている。二人を見る、二人はそれぞれ4本ずつの蟹の脚を持って口の中に頬張っている。

 

「……おい、お前ら」

 

「……はい?どうしましたマリーベート?」

 

「何かあったんですか?…て、あれれ?蟹の脚がなくなってますねー(棒)。あ、さては貴方が一人で食べちゃったんですかー(棒)」

 

「最低ですマリーベート(棒)」

 

「いや白々しいわ!」

 

ごくりんこ、と蟹の生身を飲み込んで何事もなかったかのような顔をする。それに青筋を立てるマリーベート。

 

「お前らが食べたんだろうが!私のせいにすんな!てか、もうハサミしか残ってねえじゃねえか!」

 

「「ちょっと何言ってるか分かんないですね」」

 

「ぶん殴るぞ!」

 

きゃー、この人何言ってるの?怖ーい。とわざとらしく怯えるメアリエとジェーン。こいつらなぐってもいいかな、勿論グーで、とマリーベートは思った。

 

「というか、私達が食べたて言ってますけど…本当は貴方が食べたんじゃありませんの?」

 

「そうですよ、自分がした事を人のせいにするなんて最低です」

 

「……(殴りたい、このゲス顔を)」

 

あろう事か人のせいにするメアリエとジェーン。このゲス魔女二人を火炙りの刑にしてやろうかと本気で思った。

 

「まあ、マリーベートには特別にハサミだけはあげますよ」

 

そう言って蟹の前端にある鉗脚と呼ばれるをマリーベートに与えようとするメアリエ。

 

「当然だよ…さ、早くハサミよこせ」

 

「はいよ」

 

メアリエは言葉通り、蟹のハサミをマリーベートに手渡した…そう、ハサミの部分だけ(・・・・・・・・)を。

 

「………」

 

「さ、残った部分は私達が貰いますねー」

 

「わぁい、胴体と残った脚ゲットですー♪」

 

「おい、待てやゴラ」

 

ハサミとは前足の先端にあるペンチの様な部分を指す。故にマリーベートが貰ったのは鉗脚ではなく、何もないハサミの部分しか与えられなかったというわけだ。

 

「………ししょー」

 

自分だけ蟹の身が食えなかった。その悔しさで涙をボロボロと流すマリーベート。それを見てドヤ顔になる二人。下衆の極みである。

 

(さ、いくらでも泣きなさい。所詮この世は弱肉強食…さて、勝利の美酒ならぬ勝利の蟹を堪能するのです)

 

ほくそ笑みながらジェーンは蟹の甲羅を開く。その中に財宝の如く隠された身と蟹味噌を食べる為に…だが、彼女は見てしまった。

 

「……え?」

 

蟹の甲羅の中には身も蟹味噌も、何もかも入ってい(・・・・・・・・)なかったのだ(・・・・・・)

 

「……ま、さか…謀りましたねメアリエ…!」

 

ジェーンはメアリエを睨む、メアリエは笑みを浮かべる。

 

「ジェーン…一体いつから私が貴方の味方だと錯覚していました?」

 

「……何……だと……」

 

戦慄するジェーン、マリーベートだけでない。自分もこいつに騙されていたのだと漸く気づいた。

 

「既にその甲羅は空、中身は全て私が抜き取りこの様に蟹炊き込みご飯にしておきました……こ …これでズワイガニ……いえ、ひとつなぎの大蟹宝(蟹ピース)は私だけのもの。蟹食王に私はなったのです」

 

勝利を確信し満面の笑みを浮かべるメアリエ…いな、蟹食王 メアリエ。彼女は全ての蟹を愛する人が求め、大蟹食時代の覇者の印たるひとつなぎの大蟹宝を手に入れたのだ。

 

「既に甲羅の中の身も蟹味噌も私の物です(まあ、蟹味噌は要らないので後で捨てますがね)」

 

「くっ…蟹味噌まで!?(いやまあ、蟹味噌はグロいし気持ち悪いから捨てる予定だったんですが)」

 

蟹味噌不遇である。

 

「ジェーン、貴方は私の役に立ちました…お礼としてその甲羅は差し上げましょう…そう、その虚ろな宝箱を……ね」

 

「……………!!!」

 

勝ち取ったズワイガニの前足の身を食べながらそう宣言するメアリエ。ジェーンはただ、唇を血が流れるまで噛む。

 

「所詮貴方達など敗北者なのです」

 

ジェーンが開けたのはパンドラの箱、最後の希望があると一縷の望みをかけ、開いたがそこには何もなかった。そう、その最後の希望とはあると思う事。最初から箱は空だったのだ…そう、ジェーンが開けた蟹の甲羅の様に…

 

「蟹炊き込みご飯…ふ、大蟹食時代を制したのはやはり私…貴方達は指をしゃぶって私が食べるのを見ていなさい」

 

メアリエは蟹炊き込みご飯を頬張る。そしてメアリエはある事に気付く。

 

(……予想以上に薄味…美味なのは香りだけで…味は薄い…だと!?)

 

そう、蟹炊き込みご飯は名前こそ食欲が唆られるも実際は蟹の美味しい匂いがするだけの薄味のご飯なのだ。

 

(ま、まさか…蟹炊き込みご飯は名前だけの微妙な料理だった…!?ま、まあいいでしょう。何も食べられない他の二人よりはマシ…)

 

メアリエはそう思いながらジェーンの悔しそうな顔を見ようとし…ある事に気付いた。ジェーンが鍋の中に蟹の甲羅を入れて出汁を取っていた。

 

「な………!そ、その料理は…!?」

 

驚くメアリエに構わず、彼女はそのまま白菜としいたけ、豆腐、春菊、細かく切り刻んだ長ねぎ、豚肉を鍋の中に入れる。そして調味料を加え出汁の蟹の甲羅を抜き出しその美味な匂いを周囲に漂わせる。

 

「……ふ、蟹炊き込みご飯…確かに食指が踊る名ですが…所詮薄味のご飯。この蟹の王道料理 蟹鍋には敵いませんわ」

 

「か、蟹鍋だとぉ!?」

 

蟹鍋。それは至高の蟹料理。蟹の旨味は身だけではない。甲羅も出汁にできる…そして鍋とは冬にマッチングする料理…つまり、相性抜群。劇場版ドラえもんののび太とジャイアンの関係なのだ。

 

「貴方の蟹炊き込みご飯の薄味…濃い汁物がないと素材を生かせない…つまり、私の蟹鍋がなければ貴方の蟹炊き込みご飯は単なる雑魚なんですよ!」

 

「………っ!」

 

薄味のご飯は濃い汁物とベストマッチなのだ。心の友なのだ。のび太とジャイアンなのだ。故に蟹鍋と一緒に食べなければ単なる微妙な料理なのである。

 

「さあ、頭を下げなさい。そして

 

「ジェーン様を裏切ってしまい申し訳ありません。この蛆虫は調子に乗りすぎました。どうか許してください。ビューティフルでプリティーなゴッデス ジェーン様」

 

と言って土下座なさい。そうすれば貴方もこの蟹鍋を食べさせてあげてもいいのです」

 

「くっ…!」

 

「さっき貴方は言いましたね…"敗北者"と。ですが敗北者は貴方ですメアリエ。所詮貴方は前時代の遺物…新時代の王…いえ、蟹影である私には敵わないのですよ!」

 

蟹ノ葉隠れの里の52(カニ)代目蟹影 ジェーン。彼女は蟹食王であるメアリエの事を敗北者と告げる。怒りで歯をギリギリさせるメアリエ。

 

「さあ、どうしますかメアリエ?私に跪くか、その美味しくないご飯を食べるか…選びなさい」

 

そう言って微笑むジェーン、正しくその姿は美食の女王。メアリエがどうするべきかと悩む。このまま微妙な蟹炊き込みご飯を食べるか、頭を下げて蟹鍋のセットメニューにして美味しく頂くか…どちらを選ぶか。プライドか美食か…究極の二択で揺れるメアリエ

 

ーーーボスン、ザババァーーー

 

「「?」」

 

変な音が聞こえ蟹鍋の方から聞こえ、二人は蟹鍋の方を向く。そして二人の目に映った光景は…

 

「こうした方が美味そうだな」

 

マリーベートが蟹炊き込みご飯を蟹鍋の中にぶち込んでいた。

 

「「何やってんの敗北者(お前)ーーー!?」」

 

敗北者と書いてお前と叫ぶ二人、マリーベートは二人が作った蟹炊き込みご飯と蟹鍋を掻き混ぜて(錬成)して蟹雑炊を作り上げた(錬金)してしまったのだ。

 

「「この美味そうな匂い…ま、まさかこれは…この料理は…蟹雑炊!?ば、馬鹿な…!」」

 

蟹雑炊、蟹炊き込みご飯の欠点を補う蟹鍋とフージョンし、誕生した最強戦士(料理)…それが蟹雑炊だ。マリーベートは更に蟹雑炊に卵を割って黄身と白身を入れ掻き混ぜる。その一掻きだけで美味しそうな匂いが漂う。

 

「ま、マリーベート…貴方何を…?」

 

「ん?いや、この二つを混ぜたら美味しそうだな〜て思って混ぜてみたんだよ。食うか?」

 

「「うん、頂く…て、それは私のだ!!」」

 

思わずノリツッコミを叫ぶ二人、この二人実は仲良さげである。

 

「蟹炊き込みご飯は私の物ですよマリーベート!」

 

「蟹鍋は私のです!勝手に錬金しないで下さい!」

 

「まあまあ、これ食って落ち着けよ」

 

「「むがっ!?」」

 

プンスカと憤る二人の口に蟹雑炊をひと匙掬ったスプーンを入れるマリーベート。二人はもぐもぐと蟹雑炊を咀嚼し…目を見開く。

 

((お、美味しいだと!?))

 

そう蟹炊き込みご飯と蟹鍋の両所を併せ持つこの蟹雑炊は驚くほど美味しいのだ。卵の味も絡み合い完全無欠の蟹料理と化していたのだ…!

 

(く、悔しいけど美味しい…!認めたくないのに舌が…震える!作ったのはマリーベートなのに…!)

 

(完敗ですわ…まさか、マリーベートに一杯食わされるとは…蟹料理だけに)

 

マリーベートはそんな二人の心情など知らずに笑顔で蟹雑炊を掻き混ぜる。そして三つの茶碗に蟹雑炊をしゃもじでよそりメアリエとジェーンに茶碗を手渡す。

 

「ん」

 

「「……え?」」

 

「ほら、受け取れよ。お前らの分だぞ」

 

「「……え?わ、私達の…?」」

 

「お前達じゃなかったら誰の物になるんだよ…」

 

そうジト目を向けるマリーベート、二人は散々嫌がらせじみた行為をした自分達に何故こんな慈悲を与えるのかと訝しむ。

 

「な、何を企んでいるんですのマリーベート?」

 

「いや、企むも何も…私達ししょーの同じ弟子だろうが」

 

「「!?」」

 

同じ師に使える弟子だろ、ただそれだけの理由で蟹雑炊を分け合うマリーベート。あれだけの悪質な嫌がらせをした自分達にそんな事を言った。

 

「さ、早く食えよ。折角の料理が冷めちまうぞ」

 

そう笑みを二人に向けるマリーベート。二人は罪悪感から居心地の悪さを覚える。

 

(な、何故……こんなに優しくするの…?さっき私達がどれだけ酷い事したか忘れたの?)

 

(…私達だけ蟹の脚を食べた事が急に恥ずかしくなってきましたわ…)

 

今更ながら先程の自分達の醜さに気付く二人、そんなメアリエとジェーンに何者かが声をかける。

 

【そうだ少女達よ…先程の君達の行動は蟹パーティー道に反する行為だったのだ】

 

((!?だ、誰!?))

 

二人の脳内に直接響く声、気付くと蟹雑炊の頭上に半透明な身体の蟹が浮かんでいた

 

【私は蟹味噌の化身 ガニメ=ガンザ=ザニカ=キングクラブ=レイキュバス。先程この心優しき少女に食された蟹味噌である】

 

((な…!?蟹味噌の化身!?))

 

彼の名はガニメ=ガンザ=ザニカ=キングクラブ=レイキュバス。いつの間にかマリーベートが食べていた蟹味噌の化身である。

 

【蟹パーティーとは、争うものではなく楽しむものだ。蟹を奪い合い独占するより、分け合い一緒に食べる事が蟹パーティーの真髄にして基本。君達はそれを疎かにした、だが彼女は分け合う心を失っていなかったのだ】

 

そういきなり語り出すガニメ。

 

【…君達は良い友を持った。君達からあれほどの仕打ちを受けても、なお友として扱い蟹を分け与える姿は感服した。君達もそう思わんか?】

 

((…………))

 

いい友を持ったなと優しく語りかけるガニメ。その言葉を黙って聞く二人。

 

【ちゃんと謝るのだぞ、人とは絆、絆とは宝だ。彼女と言う才能の宝物()を大切にな】

 

そう言って天へと登っていくガニメ。それを黙って見届けるメアリエとジェーン。

 

【最後に一つだけ…ルールを守って楽しく蟹パーティー。これが蟹パーティーの鉄則だ】

 

そう言って消えていくガニメ。残ったのは蟹味噌の残りカスが付着した皿のみ。

 

「食べないの?」

 

「「……食べる」」

 

マリーベートにそう言われ床に座るメアリエとジェーン。三人は手を合わせて卓袱台に置かれた蟹雑炊を食べ始める。

 

「うん、やっぱ美味しいな蟹雑炊!」

 

「……そうね」

 

「そうですわね…」

 

美味しかった、蟹の出汁がよく効いた蟹鍋とほのかの風味を漂わせる蟹炊き込みご飯。その二つの欲張りセットである蟹雑炊は美味しかった。それに何より…皆で食べているから美味しいのかもしれない。

 

「「………マリーベート」」

 

「ん?なに?」

 

一杯目を食べ終わり、お代わりとして二杯目を注ぐマリーベートに二人は話しかける。マリーベートは何事かと首を傾げる。

 

「「……さっきは蟹の脚食べてごめん」」

 

「……ん!いいってそんな事!ほら、まだ沢山あるから沢山食べろよ!」

 

そう言って笑い合いながら蟹雑炊を食べる三人。三人で一緒に食べた蟹雑炊は今まで食べたどの料理よりも美味しく感じたのだった。

 

 

【そう、蟹とは皆で食べるからこそ美味しい…一人より二人、二人より三人…大人数な程美味しくなる…絆というスパイスが蟹の味をより一層美味にするのですから…】

 

メアリエとジェーンにそんな声が何処からか聞こえた気がした。

 

 

家の外は寒い、だが家の中は暖かい。それは単に蟹雑炊を食べて身体が温まっているからなのか、それとも…全員と一緒に食べる事で心の温度が上がっているのか…それは誰も分からない。

 

 

 

 

 

 

 

 




オ チ は な い (断言)。ただ蟹料理の事を書いてみただけ。なお作者は蟹あんまり食べた事ないです。作者は生臭い魚の刺身が大好きです(唐突)

ガニメ=ガンザ=ザニカ=キングクラブ=レイキュバスの名前の由来はウルトラシリーズの怪獣 大ガニ怪獣 ガンザと大蟹超獣 キングクラブ、宇宙海獣 レイキュバス、カニ座怪獣 ザニカと東宝シリーズのガニメから…全部怪獣関連です。CVは海馬瀬人社長でお馴染み 津田健次郎さんです

次回から終章 世界崩壊編スタートとなります。コロンゾンの思惑、ラスボス感、驚きの結末…それらを書きたいと思っております

次回もお楽しみに!


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悪魔は何故滅びを選んだのか

世界崩壊編スタートです。最初の戦闘回…なのに文字数が少なめです。いや最近文字数が少なくなってきて申し訳ない…でも、今までが異常だったのか?普通に一万字ぐらいあったからなー…もしかして一万字は多い?

そして今から企業見学だぜ…ふ、これで小説を送るのが遅れるな。全く自分て本当に就活学生の鏡だぜ(白目)


コロンゾンとの遭遇、それからの戦い。それは熾烈を極めると全員が感じていた。そしてその予感通り戦いは熾烈を極めるのであった。

 

「アイティエール・アバター。一なるLIL(リル)、二なるARN(アルン)、七たるDEO(デオ)、八たるZID(ズィト)、九たるZIP(ズィップ)、十三たるZIM(ズィム)、十五たるOXO(オクソ)、二十たるKHR(クフール)、二十一たるASP(アスプ)、二十五たるVTI(ウティ)、二十六たるDES(デス)…ほらほら、どうした超能力者達?早く倒さねばどんどん増えていくぞ」

 

コロンゾンは自らの髪で宙に文字を綴り、髪を天使を象る様に束ね、その髪に天使の虚像たる化身を投影する『アイティエール・アバター』を召喚。黄金の髪が天使となり動き出しその天使の力を行使して垣根達に襲いかかる。

 

その天使達は質も量も桁違いだった。一体一体が御使堕し(エンゼルフォール)で降臨したガブリエル並みの力を誇り、数は数百を超える。幻想殺しで触れれば消えるし、垣根と帆風にとっては雑魚当然だが何分数が多い。

 

「クソッ!いくら倒してもキリがねえ!」

 

ドラゴン体の上条は鉤爪を振り回し、幻想殺しで天使達を砕きながら叫ぶ。一方通行の黒翼が敵を薙ぎ払う、麦野の光線が豪雨の如く上空から放たれ天使達を焼き焦がし、削板の拳が天使達を吹き飛ばす。美琴と食蜂の合体技で天使を一体ずつ確実に屠っていく。

 

「ふ…流石に天使達は倒せるか…なら、これはどうだ?」

 

コロンゾンが放ったのは「RZIONR」と呼ばれる純粋属性の魔術。人間には決して到達不可能な領域の法則の魔術で火の中の火と呼ばれる炎の魔術で垣根と帆風を攻める。

 

「……ホルスの時代の魔術か」

 

「ピンポーン。正解だ」

 

ホルスの時代の術式を軽々と扱うコロンゾン。荒れ狂う炎の波を右手から顕身したセルピヌスで消滅させる。

 

「IDOIGO」

 

暴風が帆風に放たれる。その暴風は万物を斬り裂く刃の嵐、帆風はラファエルを宿し同じく暴風を放ち相殺しようとするもコロンゾンの暴風は軽く押し返す。

 

「なっ…!?」

 

帆風は慌ててそれを避ける、皮膚や服を軽く裂いたが帆風は回避する。そしてメタトロンを宿し光の杭を四方八方上下左右から展開しコロンゾンを串刺しにしようとする…が、コロンゾンは全て自分の髪で防御。

 

「LILACZA」

 

反撃として風の中の水と呼ばれる純粋属性を呼び出し、帆風に放つが垣根が空間転移で帆風の目の前に現れ六翼で防ぐ。その隙に上条が翼を羽ばたかせコロンゾンの背後を取る。

 

(大悪魔だかなんだか知らねえが、所詮はガブリエル達と一緒だ。魔力や天使の力(テレズマ)で構成された生命体なら…俺の幻想殺し(右手)で倒せる筈!)

 

幻想殺しはガブリエルをも元の場所(位相)に戻した追儺霊装でもある。この力ならばコロンゾンを消滅できると上条は思い拳を思い切り振るう。だが、

 

「イシス、オシリス、そしてホルス。あらゆる時代の先にいるこの私が、この程度で砕かれるとでも思うたか?」

 

「ーーーッ!?」

 

だが上条の拳はコロンゾンの左手で軽く受け止められた。上条はドラゴン体となり強化された自分の拳を受け止めたコロンゾンに目を見開く。

 

「この器は()だ。現在進行形の魔術現象でなく実態という結果を手に入れた超常。貴様の幻想殺しは我が肉に阻まれ効果を成さない…勉強になったか?」

 

驚く上条に対しコロンゾンは嘲笑う。ローラ=スチュワートという実態を得た肉の器がある限り幻想殺しは届かないのだと告げるとRZIONRで上条を吹き飛ばす。

 

「ぐうっ…!」

 

「ふむ、中々その力を使いこなしているな…だが、まだ未熟。その力を使いこなすには程遠いな神浄」

 

地面に倒れこむドラゴンを見下し、コロンゾンは自分に従属する天使達を更に呼び出していく。アイティエール・アバターの圧倒的な数と純粋属性の魔術に翻弄される一方通行達。まともにコロンゾンと戦えているのは垣根と帆風だけだ。

 

「正直言ってここまで強くなるとは予想外だったよ帆風潤子。だから認めてやる、お前は垣根帝督と並ぶイレギュラーだと。故にここで殺す。慢心も油断もなく貴様らを殺し私は世界を滅ぼす」

 

コロンゾンはそう言い終わるとレイピアを構える様に右手を動かし、口を開く。

 

「あらゆる数は等価。我が右の手に蘇生のヌイト、有限の域を越えて広がる数価(かのうせい)を見よ。我が左の手に復讐のハディト、極小点はあらゆる力を収斂・収束して一つの意味を作り出す。すなわちここにラー=ホール=クイトの円にて無限の加速から解放されし一撃を現世の表層に顕さん」

 

Magick:FLAMING_SWORD(フレイミングソード)。あらゆる理の結合を妨げて拡散するコロンゾンにとって相性が良い魔術。セフィロトの下降の力を利用しあらゆる対象を貫く一撃必殺の絶技。そんな一撃を帆風はザフキエルを降ろすことで遠心力を応用し、回避する。彼女を逸れた一撃はロンドンの土地を大きく削り込み、直線上のクレーターを形成した。

 

「避けたか、だがこれは避けきれるかな?」

 

そう言うとコロンゾンはレイピアを構えた様な右手で連続突きを放つ。閃光の如き一閃、宛ら流星群。垣根と帆風はそれらの一閃を弾くことで防ぐが弾くことで周囲の空間を抉り、真・魔女狩りの王(イノケンティウス・グランド)でただでさえ焼け野原となり、凄惨な光景と成り果てたロンドンの土地を容赦なく破壊していく。

 

(アウレオルスさんが住民を避難させてくれて良かったです…これで、思い切り戦える!)

 

アウレオルスがロンドン一帯の住民を避難させていなければ何百人もの死者が出ていただろう、そう思わずはいられない帆風。だが、誰もいないのなら思う存分戦える。帆風はガブリエルを降ろし神戮を降り注がせる。

 

「神戮か……下らんな」

 

コロンゾンは降り注ぐ火の矢の雨を連続突きで消滅させていく。その隙に垣根と帆風は懐に入り、垣根は翼を振るい帆風は拳をコロンゾンの身体に放つ。

 

「ぐっ……!」

 

左手で腹を抑えつつもコロンゾンはMagick:FLAMI

NG_SWORDを放ち垣根と帆風の身体の下半身を大きく削り込み、残った上半身が地面に落ちる。

 

「チッ…!」

 

即座に未元物質で欠損した人体を形成、再生させ、元に戻す。その隙にコロンゾンは二人から距離を取り再びMagick:FLAMING_SWORDを放とうとするが…

 

「させん!」

 

「ッ!原石が小賢しい!」

 

削板が拳を構え、超すごいパーンチをコロンゾンへと放つ。コロンゾンは鬱陶しそうに髪で跳ね返す。だが次の瞬間全方位から緑の光線…原子崩しがコロンゾンへと放たれた。

 

「チッ、小賢しい」

 

IDOIGOを防御壁として原子崩しから身を守るコロンゾン。だが、直後に一方通行が接近し黒翼が棍棒の様に振るわれる。

 

「甘い」

 

「な!?」

 

左手の人差し指で黒翼を受け止めるコロンゾン。そのまま右手で反射を突き破って一方通行を殴りつけ吹き飛ばし、再び原子崩しを放とうとした麦野にLILACZAを放ち牽制する。

 

「「喰らえ!」」

 

美琴と食蜂の液状被覆超電磁砲(リキッドプルーフレールガン)がコロンゾンへと放たれる。コロンゾンはそれを天使達を盾にして防ぎ、数体の天使達を二人へと送り込む。

 

「数が減ってきたな…アイティエール・アバター。九たるZIP、一なるARN、二十一たるASP………」

 

再び自らの髪に天使を投影し新たな天使を召喚するコロンゾン。長年蓄えた月光の力は底を見せず瞬く間に大量の天使達が誕生してしまう。

 

「雑魚が邪魔だ!失せろ!」

 

神の如き者(ミカエル)!」

 

翼を羽ばたかせ烈風や羽根を放つ、天使達は羽根に串刺しにされ烈風で切り刻まれる。帆風が降ろした天使の長の炎の剣が天使達を斬り裂く。だが、数は一向に減らず逆に増え続ける。

 

「どうした垣根帝督!貴様達の力はそんなものなのか!?だとしたら拍子抜けだ!」

 

「舐めてやがるな便所ブラシ、余程死にてえと見える。そうなら俺が祓ってやるよ」

 

垣根はトールの全能の力を発動、世界を移動させコロンゾンを目の前に移動。未元物質の六翼で構成された槍 神様殺し(ロンギヌス)の槍に幻想殺しの噴出点たるセルピヌスを纏わせコロンゾンを消滅させようと企むがコロンゾンは両手で槍を掴み取る。

 

「なっ!?」

 

「甘い、言っただろう幻想殺しは私の肉体には通じないと」

 

そう言ってコロンゾンは笑い、髪の毛を槍状に変換し髪の毛の先端から膨大な魔力を収縮させた光線を放とうとし…直後、自分自身の力の象徴たるサンダルフォンを降ろした帆風に拳を顔面に喰らい吹き飛ばされる。

 

「がぼっ!?くっ、やったな…!」

 

自身に拳を当てた帆風に怒りを向け、レイピアによる突きを思わせる仕草を帆風へと行う。それを基点にMagick:FLAMING_SWORDが帆風へと放たれるが帆風は正拳突きを放ち帆風の身体を破壊する筈のMagick:FLAMING_SWORDの一撃を自分の右腕と引き換えに粉砕した。

 

「な!?」

 

まさかMagick:FLAMING_SWORDを拳で防ぐとは思ってもみなかったのか目を剥くコロンゾン。その隙をついて帆風は即座にザフキエルを宿し遠心力を高めた回し蹴りをコロンゾンの腹に命中させる。

 

「げふっ……!」

 

コロンゾンは足に力を込めて吹き飛ばされるのを防ぐ。そして帆風にゼロ距離からのMagick:FLAMIN

G_SWORDを放とうとするが垣根が座標移動で彼女を即座に回収して回避されてしまう。

 

「この…調子に乗るなよ神の力を得ただけの人間崩れが!」

 

「「ッ!?」」

 

怒りの咆哮を上げるコロンゾンに一瞬だけ震える二人。その隙をついてコロンゾンはRZIONRを放ち二人は後方へと下がる。

 

「これならどうだ!」

 

コロンゾンはRZIONRとLILACZA、IDOIGOの三つの純粋属性を重ねて放つ合成術式をその場にいる全員へと放つ。三つの純粋な属性が混じり合い、相殺しあい爆裂する。その威力は大規模な爆発を起こし周囲一帯をクレーターに変えてしまうほどだった。

 

「………しつこいな」

 

垣根達は全員無事だった。垣根と帆風は翼を繭状に閉じる事で爆発を防ぎ、上条は美琴と食蜂の正面に立って幻想殺しで爆発を防ぐ盾となり、一方通行は反射で、削板は根性で、麦野は0次元の極点で上空へと逃げる事で爆発から逃れていた。

 

(仕方ない、ならば垣根帝督と帆風潤子対策に用意していたあの霊装(・・)を…)

 

コロンゾンは用意しておいた霊装を使うべきだと考え、ニヤリと笑う。コロンゾンが垣根と帆風対策に用意しておいたあの霊装ならメタトロンとサンダルフォンである二人を倒す事など容易い。

 

「さて、そろそろ私は()に行かねばならん。この切り札を使わせてもら……ッ!?」

 

コロンゾンの言葉を遮る様に空から降り注ぐ無数の光線や緑の矢、銃弾。それに気づいたコロンゾンは髪の毛を盾にすることで防ぐ。現れたのはアレイスターとオティヌス、脳幹。三人を見て苦々しげに舌打ちするコロンゾン。

 

「もう来たか……今は時間が惜しい…何より重要なのはモ・アサイア計画…ここは撤退するか」

 

そう呟いてコロンゾンは十数体のアイティエール・アバターを残して地面の中に沈んでいく。そして数十体の天使達がアレイスター達に牙を剥くがオティヌスの弩と脳幹のミサイルで蹴散らされ全滅した。

 

「無事かね?」

 

「ああ、一応な」

 

コロンゾンが撤退したことで安堵の顔をアレイスターに向ける垣根。

 

「………クリフォパズル545」

 

『きひ。はぁい何でしょうか御主人様?』

 

垣根は自らの影に潜んでいたクリフォパズル545を呼び出し、彼女に質問する。

 

「コロンゾンが言ってたモ・アサイア計画て何か分かるか?」

 

『……憶測ですが宜しいですか?』

 

「構わねえ、教えろ」

 

クリフォパズル545は頷き、口を開いた。

 

『モ・アサイアとはメイザースが自身がスコットランドとゆかりある貴族と名乗る時の根拠の一つですう。メイザースとはゲール語の古き言葉で「死後の人」、つまり由緒正しきハイランダーの末裔グランストラエ伯爵の証だと主張したんですよう』

 

「で、それがどうした?」

 

『もしかしたらですが…メイザースがスコットランドに固執していたのはエディンバラ城に隠されたある宝が関係している筈です』

 

メイザースが生前スコットランドに固執していた理由。三勢力四地域、ひいてはイギリス全体に関わる重要な何かがあった。そしてそれはエディンバラ城に隠されていたのだとクリフォパズル545は推測する。

 

『それは国家の剣、即位の冠、統治の笏、スクーン石のワンセット。スコットランド版のカーテナて所ですかね。今のイギリスなら支配権を奪うことが可能かもしれません』

 

コロンゾンが企むのはイギリス全土の支配権を得ること。そう推測するクリフォパズル545に頷く面々。

 

「最後にもう一つ。あいつが言ってた『船』て何か分かるか?」

 

『……船、となるとクイーンブリタニア号ですかねえ?英国王族が海上の所定のポイントで大規模な儀式を行うための移動神殿でヘリポート(祭壇)中央に霊装を接続すれば増幅・攻撃的に転化する機能が備わっています…もしかするとコロンゾンはスコットランド版のカーテナ…仮称するなら『オナーズオブスコットランド』を接続する気なのかもしれないですう』

 

「……成る程、奴の狙いは大体分かった」

 

垣根はそう呟くとアレイスター達へと顔を向ける。

 

「アレイスター、メイザースはまだ機能停止してんのか?」

 

「ああ、まだ暫くはタロットのままだ」

 

アレイスターはそう言って懐からメイザースであるタロットを取り出す。

 

「そうか…なら、仕方ねえ。コロンゾンを止めに行くぞ。あいつの狙いはクイーンブリタニア号だ」

 

目指すは英国王室専用の巨大豪華客船 クイーンブリタニア号。そこで全ての戦いの幕が降ろされる最後の決戦の地の名だ。

 

 

 

コロンゾンは黄金の髪でオナーズオブスコットランドと呼ばれる国家の剣、即位の冠、統治の笏、スクーン石を運んでいた。スクーン石は230キロもあるのに軽々と持ち上げているので並外れた怪力なのだと理解できる。

 

「私は自然にあるものを自然な形で運行したい、あたかも星が回るように。目的なんぞそれだけよ」

 

誰に言うでもなしにコロンゾンは呟いた。

 

「そもそもこの世界は上里翔流のイレギュラーな台頭が起こるくらい異常な状態なのだ…なのに何故世界は滅びぬ?」

 

上里翔流の存在自体が世界崩壊の前兆だったとコロンゾンは呟く。いやそもそも、本来起こる筈だった第三次世界大戦やオティヌスの暴走で世界は終わり、新たな世界が誕生する予定だった(・・・・・)

 

「何故滅びなかったか?簡単だ、不自然に踏み止まった者達がいるからだ。それが垣根帝督、一番の要因よ」

 

垣根帝督、それはこの世界のイレギュラーにして世界を存続させる要因の一つ。フィアンマも、オティヌスも、アレイスターも、メイザースも、誰も彼も垣根のせいでいい方向に変わってしまった。

 

「奴はそれが正しい事だと思っているのだろう。ああ、確かに人と人とが争わずに済む道は正しいのかも知れない…だが、もう遅い!そんな事をしても無駄なのだ!」

 

コロンゾンは叫ぶ、垣根の行為は無駄だったと。

 

「もうこの世界は限界だ、もう遅い。貴様がどれ程足掻こうと無駄なんだよ」

 

そう断言するコロンゾン。

 

「こんな血栓だらけの世界が自然な状態を保ちたるとでも思うかね?無理だ!貴様がいくら足掻こうともこの世界は…もう助からない」

 

それは余命を宣告された患者の命を救おうと無駄な手術を行う医者に近い。どんなに足掻いてももがいても…余命は変わらないのだから。

 

「だから、世界を救うのはイレギュラー(お前)ではない。私がそれを成し遂げる。歪みを消し世界を本来の在るべき形に戻す…私は世界を自然な形に戻す」

 

そう悪魔は宣言するのだった、愛しいあの頃に世界を、命を戻す為に悪魔はクイーンブリタニア号へと目指す。

 

「さあ、長かった狂った時代もこれにて終幕だ。私が本当の世界を取り戻してやる」

 

 

 

 

 

 

 

 

一人の悪魔がいた、悪魔はこの世界が好きだった。時の流れにより滅び行く人々が、それでもなお次の誰かへ引き継がれる命が、死と再生を繰り返す生命のサイクルが好きだった。

 

次の誰かにバトンタッチする為に命を育む者達、その者達の死を乗り越えまた次の世代を育てる人間達。悪魔は密かに人間に好感を寄せていた。深淵からいつも悪魔は人間達の世界を覗き込んでいた。

 

一体それはいつから狂ったのだろう。それは恐らく原石という最も古き異能が発現した時からだ。それが次第に原石という力に憧れ、生まれた技術…魔術が誕生した頃から狂い始めた。

 

魔術を極め神の座へと到達した人間 『魔神』。魔術の叡智を刻み龍脈から力を供給され不滅の存在概念と化した 『原典』、あらゆる異能を打ち消す魔術師の願いの収束した力 『幻想殺し』、死んだのに蘇ったアレイスターの娘 『リリス』、それを成し遂げた『エイワス』、そしてエイワスを従える魔術師 『アンナ』…そしてそれらと同じ存在である自分自身(・・・・)

 

悪魔は怒った。醜悪に個の残存にしがみつく愚者達に、他から貪り肥大する害悪に。例外的な救いなど認めない。人とは、命とは滅びがあるからこそ美しい。死に最後まで抗い次の命へ託す。それだから命とは美しいのだ。それを汚す邪悪を悪魔は許さない

 

「なら、私が全てを終わらせてやろう」

 

狂った世界に終止符を打つ。それが悪魔の使命、悪魔の野望、悪魔の希望、悪魔の願いだった。こんな世界は断じて認めない。魔術など、悪魔など、天使など、超能力など、異能など人間に、世界にそんなものは必要ない。全部終わらせてやる。全ては世界の為だけに。

 

そんな願いを込めた大悪魔はとある人間の魔術師に召喚された。その魔術師の名はサミュエル=リデル=マグレガー=メイザース 。どうやらこの男は悪魔と契約を結ぶようだ。

 

そして悪魔は再び別の魔術師に召喚された。その男はメイザースが破滅させる様契約した対象だった。男の名はアレイスター=クロウリー。悪魔とは別の考えで世界を救おうとする男だった。

 

悪魔はメイザースとの契約を果たす為に、そして自らの野望を成就させる為に、まずは肉の器を手に入れる事にした。悪魔はまずアレイスターの娘の一人 ローラという少女に目をつけ、彼女の名を騙る事にした。

 

悪魔は肉の器を得た後、アレイスターの娘の名前たるローラとメイザースがスチュワート朝の復権を望んでいた事からローラ=スチュワートと名乗る事にした。イギリス清教の最大主教となり悪行と善行を行った。それはメイザースとの契約が及ぼす影響を打ち消す為だった。

 

表面上は戯けながらも誰よりも世界の事を考え、世界をあるべき姿に戻そうと企んでいた悪魔。それは世界を救済しようとしていたフィアンマよりも、元の世界に帰りたがっていたオティヌスよりも、娘を取り戻そうとしていたアレイスターよりも強い意志なのかも知れない。

 

これは悪魔の物語、次の誰かへ託す為の物語。この物語が悪魔にとってハッピーエンドになるか、バッドエンドになるか…それは誰にも分からない。

 

 

 

 

 

 

 

 




コロンゾンは果たして悪なのか善なのか…新約22巻を(立ち読みで)読んで思った事です。アレイスターといい、オティヌスといい魔術師は良くも悪くも自分の願いを叶える為に他を巻き込みますからね。その過程で世界を、位相を壊してもよしと思える人達。ぶっちゃけコロンゾンもその類。世界を滅ぼす悪でもコロンゾンなりの正義がある…ぶっちゃけ理由があるだけまだマトモ感がありますね…いや、世界滅ぼされるのは嫌ですけど

自分最初は新約のラスボスがコロンゾンになると期待してたんですよ、でも巻ボスだったけどラスボスじゃなかった(ラスボスは神浄、つまり上条さん自身、まさかあなたの敵はあなた自身だとはこのリハクの目を持ってしても…)のでこの作品ではラスボスです。それにしても早くとあるの新刊が読みたいので1月になってほしいです

次回もお楽しみに!


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世界は終わるのか、それとも始まるのか

今回は戦闘描写多めです。最近寒くなって来ましたねぇ、皆さんも風邪をひかない様に気をつけてくださいね。てなわけで世界崩壊編第2話スタートです



「国家の剣…接続完了、即位の冠…接続完了、統治の笏…接続完了、スクーン石…接続完了…これでクイーンブリタニア号とオナーズオブスコットランドの接続は終わった」

 

クイーンブリタニア号に辿り着いたコロンゾンはヘリポート(祭壇)に国家の剣、即位の冠、統治の笏、スクーン石をセッティングする。

 

「44種のペンタクル、天使名のシジル、上下一対の正三角形。この辺はどうでも良い。よし、よし、よし。必要なものは揃っているな。エノクのタブレットが一揃いあればよい」

 

そうブツブツ言いながらヘリポートに魔術的儀式を行う為の準備を行う。

 

「ラインを潰されていなかったのは僥倖、これなら再起動の手間を取らずに済む。後はこの四つを祭壇に接続するだけ」

 

コロンゾンは国家の剣と即位の冠、統治の笏、スクーン石をクイーンブリタニア号と接続。それを確認しコロンゾンは笑みを浮かべる。

 

「クイーンブリタニア号とオナーズオブスコットランドの接続は完了した。これでモ・アサイアの儀を行えるな」

 

これで自分の計画が行える、そう思ってモ・アサイアの儀を発動しようとした…直後だった。

 

「やっほー、暗躍してるねコロンゾン!」

 

「!?貴様らは……」

 

いつの間にかクイーンブリタニア号に現れたのはスーツを着た男性とチャイナドレスを着た少女がコロンゾンの背後に立っていた。コロンゾンは即座に彼女達の正体を見破る。

 

「魔神 娘々と外なる神の名を持つ魔神か」

 

魔神 娘々と魔神 クトゥルフ。二柱が自身の面前に現れた事に一瞬驚き、怒りを露わにする。

 

「私の邪魔をしに来たか!何処までも目障りな奴らだ!」

 

「お〜怖い怖い、そんなに怒るなよ大悪魔」

 

「怒るなだと?ほざくなよ元 人間。元々世界が限界に達したのはお前達魔神も一因だろうが!」

 

「……正論、だな」

 

怒りと激情を露わにし叫ぶコロンゾン。クトゥルフはその言葉に同意し、コロンゾンの剣幕を見て流石の娘々も揶揄うのをやめる。

 

「お前達が好き勝手世界を弄ったせいで世界の限界を早めた!自分勝手で傲慢な神を騙る人間崩れ共が!」

 

「……耳が痛いね。悪魔の癖に正論言うとかどう思うクトゥルフ?」

 

「……正論としか思えない」

 

コロンゾンの言葉を聞いてもヘラヘラ笑っているだけの娘々と無表情のクトゥルフ。コロンゾンはこいつらに語りかけるのは無駄だと思ったのか髪をうねうねと触手の如く動かせる。

 

「お!ヤル気満々!?いいね、燃えて来たよ!」

 

「黙れ、お前らをさっさと殺してモ・アサイアの儀を始める」

 

コロンゾンはそう言うが早いか竜巻を発生させて何処かへと消えてしまう。敵が消えてしまった事に目を丸くする娘々。

 

「あれ?逃げた?」

 

「……違う、船の下だ」

 

クトゥルフに言われクイーンブリタニア号の甲板から地面を見下ろすとコロンゾンが立っていた。

 

「……どうやら、この船の上では戦いたくないらしいな」

 

「へぇ、よっぽどこの船が重要なんだねぇ…ま、わたしは戦えればそれで充分なんだけどね!」

 

娘々は甲板から飛び降りてコロンゾンの場所に降り立つ。クトゥルフも甲板から飛び降りる。

 

「お前は何がしたいんだ魔神 娘々。私が世界を滅ぼすのを止めにでも来たのか?」

 

「うんにゃ違うよ、わたしはただ強い奴と戦いたいだけ。それがわたしの望み。てな訳で来いよコロンゾン!」

 

「……僕は、彼女に無理やり…連れてこられた。本当は海の底で、寝ていたいのに…」

 

「……この異常者が」

 

喋るのも嫌だと言わんばかりにコロンゾンは髪で宙に文字をなぞり天使を髪に投影。アイティエール・アバターを召喚し純粋属性の魔術を二柱へと放つ。

 

「へぇ、これが純粋属性…とっても面白い、ね!」

 

「…………」

 

娘々は己の拳に呪力を滾らせ拳で天使や魔術を打ち破り、クトゥルフは両腕を触手へと変換し触手で全てを打ち破る。それを見てコロンゾンが舌打ちを鳴らす。

 

「くっ、やはりこの程度では魔神は倒せんか。ならば…」

 

アイティエール・アバターや純粋属性では魔神を撃破する事は出来ない。ならば自身が愛用する術式であるMagick:FLAMING_SWORDを放とうと右手を構えた瞬間。

 

「ク■ゥグア」

 

「!?」

 

直後地獄の炎を連想される業火がコロンゾンへと放たれた、コロンゾンは慌ててそれを回避する。逃げ遅れた天使達が塵も残さず消滅させる。その火力はロンドンを焼き払った真・魔女狩りの王(イノケンティウス・グランド)に匹敵する程だった。

 

(この術式は…外なる宇宙の…!)

 

「ハ■ター」

 

コロンゾンはクトゥルフが扱う術式を理解する、クトゥルフは再び魔術を放ち黄色い暴風がコロンゾンの身体を引き裂こうと真っ直ぐ放たれる。コロンゾンはMagick:FLAMING_SWORDを放ち暴風を相殺、背後から宝貝を展開した娘々をIDOIGOで吹き飛ばす。

 

「ア■ーム=■ー、ル■■・シャ■コー■」

 

「RZIONR!」

 

炎であるのに燃やすのではなく凍てつかせる灰色の炎と、万物を凍らせる青色の光を放つクトゥルフ。コロンゾンは炎の純粋属性でそれらを相殺。即座に触手を鞭のように扱い攻めてきたクトゥルフの攻撃をLILACZAで触手を切り裂いた。

 

「ガ■ノ■■ア」

 

石化を齎す呪詛が放たれた、コロンゾンはそれを回避するも髪の毛の一部に当たり黄金の髪が石に成り果てる。

 

「………やはり魔神は一筋縄ではいかないか」

 

「もしかして降伏宣言でもするの?」

 

「馬鹿にするな、私も少しばかり本気になる必要があると思っただけだ」

 

そうコロンゾンは笑うと空間を削り取りある一本の槍を召喚する。

 

「……霊装か?」

 

「ああ。対垣根帝督、帆風潤子対策に用意していんだがな…先にお前達で試すとしよう」

 

その槍は白い槍だった。穂先から赤い血の雫を滴り落とし不気味さと神秘さが滲み出ていた。

 

「……どのような霊装か分からないが気をつけろ娘々」

 

「平気平気、何たってわたしは魔神だよ?」

 

そう言ってコロンゾンの背後へと縮地で現れ、拳を振るう娘々。コロンゾンはそれを槍で防ぎ連続で刺突を放つ。娘々はそれを軽々避ける。

 

「遅い遅い、スロー過ぎて欠伸が出るよ」

 

「ほざけ」

 

娘々は両手の指先を宝貝の無数の武器に変化させコロンゾンを貫こうとする。それをコロンゾンは純粋属性の魔術で武器を焼き払う。

 

(何が狙いなのか分かんないけどさっさと殺すに限るよね)

 

娘々はさっさと終わらせた方がいいかと冷静に判断し、崩拳をコロンゾンの腹部に放ち容易く肉の器を貫通し貫いた。

 

「げふっ……」

 

そのまま地に倒れ臥すコロンゾン、コロコロとコロンゾンから離れて転がっていく槍。コロンゾンを中心に広がる血の池を見て娘々はトドメを刺そうと拳を振り上げたその瞬間。

 

「罠だ娘々!」

 

「え…?」

 

グサリと、コロンゾンの手から離れた筈の槍が娘々を貫いていた。

 

「……バーカ、引っかかったな」

 

ニヤリと笑うコロンゾン。その槍の穂先から溢れ出る赤い血が娘々の体に入り込み彼女の身体を蝕む。

 

「グゥゥ……!?こ、れは…垣根帝督の妖精化みたいは弱体化術式?いや、違う。これはあの……神様殺しの…槍?」

 

「正確にはかの聖人を殺したとされる槍と同一化される騎士王の聖剣と並ぶ聖槍だ」

 

その霊装はとある騎士王の物語に登場する聖剣とならぶ武器である。邪悪なる王を倒し、聖剣の鞘の加護をなくした騎士王を不義の息子と相打ちで終わらせるまでに至った伝説の槍。それはかのロンギヌスと同一とされる。その槍の名は……

 

「この槍の名は聖槍ロンゴミニアド。かのロンギヌスと同一とされたキングアーサーの聖剣 エクスカリバーとならぶ宝具。その効果を遺憾なく再現した神殺し…対魔神用霊装。本当は聖人…つまり三位一体(トリニティ)で聖人とは聖四文字(エホバ)。つまり始まりの聖人とは聖四文字。聖人の死を確かめた槍は即ち神を殺す槍。本来は聖四文字の化身であるメタトロンとサンダルフォンの神格を持つイレギュラー達を殺す為に用意した霊装だが…魔神にも効果は抜群のようだな」

 

神格を貫かれ娘々は神としての力を振るえなくなってしまう。身体の傷も聖槍の治癒不可の呪いから一向に塞がらない。

 

「さて…次はお前だクトゥルフ」

 

「……仕方ない」

 

クトゥルフはそう呟くと自身の身体を膨張させ、人型から巨大な触手で全身を構成された蛸や竜を連想する頭部に翼が生えた異形の姿の怪物と化した。

 

「それが貴様の真の姿か……」

 

「そ■だ…この■になると■語が乱■■てしまうが…仕方…な■」

 

30メートルは超える巨体となったクトゥルフを見て槍を構え笑うコロンゾン。数多の触手が鞭のように襲いかかるがコロンゾンはそれを槍で破壊する、そして赤い雫が舞い触れた箇所からクトゥルフの身体を蝕む。

 

「ぐ■……■いな…」

 

「ふ、貴様ら魔神ではこの槍を防ぐ事は出来ない。神である限りこの槍は貴様らの猛毒となる。皮肉だな、世界の毒たるお前達がこの聖槍の毒で倒されるのだから…まさに毒をもって毒を制すだな」

 

異形の姿で呻くクトゥルフ、それを見て嘲笑うコロンゾン。コロンゾンは髪の毛を触手の如く動かしながら髪の毛を地面へと突き刺した。

 

「さて、そろそろ計画を最終段階に移行させるか」

 

そう笑うとコロンゾンは自身が髪の中に蓄えた月の魔力を龍脈へと流し込む。そして髪に天使を投影し龍脈にアイティエール・アバターを送り込む。

 

「何を…し■■る?」

 

「何、大した事ではない。ただ、アイティエール・アバターを世界中(・・・)に送っているだけだ」

 

「な■、だ■…まさか、君は……!」

 

「そのまさかだ。私が髪に蓄えた力は龍脈を通じて広範囲に拡散する出来る。つまり龍脈の性質上、アイティエール・アバターは世界中のあらゆる場所(・・・・・・・・・・)に送りこめるということだ」

 

そうクトゥルフに告げ、退廃的な笑みを浮かべるコロンゾン。聖槍 ロンゴミニアドを構えクトゥルフへと赤い血が滴る穂先を向け、クトゥルフは唸り声を上げて触手をコロンゾンへと放つ。悪魔と邪神の攻防はまだ続く

 

 

同時刻 バチカンにて。地面に謎の黄金のラインが描かれ、その光のラインは魔術師達は愚か魔術と一切の関わりもない一般市民も見えた。

 

「な、何だこれは!?」

 

ビアージオは突然地面に描かれた謎のラインを見て驚き叫び声を上げる。他のローマ正教のシスターや魔術師達も彼と同じ反応をする。

 

「……これは何だフィアンマ」

 

「………ふむ、これは何者かが龍脈に干渉し、何らかの魔術を行おうとしている様だな」

 

ローマ法王であるマタイが神の右席のリーダーたるフィアンマに問いかけ、フィアンマは彼の質問に答える。

 

その直後、黄金のラインから無数の黄金の天使達…アイティエール・アバターが出現する。

 

「……ふん」

 

フィアンマは右肩から第三の腕を顕現させ聖なる右の力を発動し、一振りでバチカン市民に襲いかかろうとしていた天使達を一瞬で倒す。だが、倒した直後に黄金のラインから天使達が生まれてしまう。

 

「これでは倒してもキリがないな」

 

フィアンマはそう溜息を吐く、一体一体の質は御使堕しのガブリエル程度だが何分数が多い。その数なんと百数十体。しかも今なお黄金のラインから生まれ続けている。

 

「この数を裁くのは流石にキツいな…しかも龍脈に干渉しているのならこの天使達はバチカンだけではない、世界全土にあの天使達が現れているのだろうな」

 

「……なんたる事だ」

 

マタイが頭を抱える、バチカンだけでなくあの様な天使達が世界中に現れていることに。

 

「フィアンマ、ここは私に任せろ。私が『傷つけぬ束縛』であの怪物達を食い止めて…」

 

マタイがロザリオを構えそう覚悟を決めて告げる…そんなマタイの肩にフィアンマが軽く手を当てる。

 

「いや、その必要はないぞマタイ」

 

「なに…?」

 

「バチカンは俺様達が守る。そのほかの場所はそれぞれの奴らが守り通すさ」

 

フィアンマの言葉を理解できないマタイ、だが次の瞬間地面が振動し、地面を突き破り町の建物の一部を破壊しながら三隻の氷の巨船が出現する。

 

「怪物めが!私達ローマ正教を舐めるなよ!私の女王艦隊と自慢のシスター部隊で蹴散らしてやる!」

 

「てな訳で砲台用意です!撃て(ファイヤー)!」

 

「「ファイヤー!!」」

 

ビアージオ率いる女王艦隊が砲台から砲弾を発射し天使達を蹴散らす。アニェーゼ率いるシスター部隊の援護射撃や射撃の位置調整によりガブリエル級の強さを誇る天使達を屠る女王艦隊。

 

「優先する。小麦粉を上位に、天使を下位に」

 

「おらぁ!」

 

ある天使達は小麦粉のギロチンによる斬撃に引き裂さかれ、ある天使はハンマーに押し潰される。神の右席であるテッラとヴェントはその戦闘力を遺憾なく発揮しバチカン市民を守りながら天使達を駆逐する。

 

「これは試練…神が与えたもうた試練なのです。この怪物達から罪なき民を守る。そして私達からも死者を出さずにそれを成し遂げる。ああ、なんて素晴らしい試練なのでしょう、一体一体が大天使に匹敵するというのにそれらの襲撃にあって全員生き残るなど可能性はゼロに近い…だからこそ、私は燃え上がるのです!」

 

「燃え上がるのは勝手だけど貴方も手伝ってくれない!?お姉さん流石にこんな化け物の相手は出来ないから!」

 

何故かこの状況に興奮し勝手に燃え上がっているリドヴィア、そんな彼女を守りながら天使達の攻撃を避けるオリアナ…卑猥な言葉を言う暇のないくらい余裕がないようだ。

 

「はいはい、皆様〜こっちらに避難するのでございますよ〜」

 

非戦闘員であるオルソラは天使が襲い来る中でニコニコと笑いながら市民の誘導を行う。何体か彼女に向かって襲いかかる個体がいたが女王艦隊の砲撃や神の右席の攻撃で撃破される。彼女は敵が襲って来ても動揺しない、何故なら味方が助けてくれると信じているから自分のなすべき事を行えるのだ。

 

「見ろよマタイ、お前が出なくとも問題ない。俺様達ローマ正教はあの程度の敵には屈せぬよ。それにお前はローマ教徒の信頼が厚い。避難誘導でもした方がいいんじゃないか?法王様のありがたい言葉なら皆の不安も安らぐだろう」

 

「………分かった」

 

マタイは混乱する市民達を収める為に街へと急ぐ。フィアンマはそれを見届けた後聖なる右を振るい水平上にあった民家の上へと移動。聖なる右を振るって天使達を蹴散らす。

 

「考えが甘いなコロンゾン。確かにこの数と質は驚異だ。だが、この程度で諦めないのが人間だ」

 

この程度で人間は屈しない、止まらない。そうここにいない大悪魔に宣言するフィアンマ。

 

「俺様はバチカンから動けないが…まあ、垣根がいるなら心配ないだろう」

 

 

同時刻 オッレルスとシルビアが住むアパートメントにて。天使達が空を飛びながら街を破壊し人々に襲いかかる。シルビアはロープを振り回しながらシジルを描き天使の力を壁とし、空気を掴み取りそれを投げて天使達を圧殺する。

 

「チッ!倒しても倒しても湧いて来るわね」

 

思わず舌打ちする、オッレルスも北欧玉座で天使達に正体不明の攻撃を浴びせ消滅させながらシルビアの言葉に賛同する様に頷く。そして火の手を上げる街を眺める。

 

「ふむ……この数だと俺達のアパートメント以外も襲われているだろうね」

 

「だろうね、全く何処の誰だこんな馬鹿な事してんのは……」

 

「まあ、心当たりはあるがね…シルビア、俺は街の方へ行く。君には子供達を守って欲しいんだが」

 

「………はぁ、このお人好しが……じゃあ一つだけ約束しろ」

 

オッレルスが視線を向けた先には二人が住むアパートメントが、その建物に隠れている以前保護した子供達がいる。シルビアは夫のその頼みを聞いて溜息を吐いた後、一つ約束を彼にする様言う。

 

「絶対に帰ってこいよ馬鹿亭主」

 

「勿論だとも」

 

妻のツンデレ発言を微笑んで言葉を返すオッレルス。彼はそのまま北欧玉座の力を使い天使達を蹴散らしながら街を破壊する天使達を駆除しに行く。

 

「……たく、ロクでなしのダメ亭主の癖に…いざという時には頼りになってかっこいいから困るんだよ」

 

シルビアはそう呟いて、夫から頼まれた通り子供達を守る為にロープを振るう。オッレルスが帰って来るまで絶対にここは誰にも通さない、そう彼女は決めていた。

 

 

同時刻、学園都市にて。科学の街といえど地下深くには龍脈が流れている。そこを辿り学園都市中に黄金のラインが刻まれそこから天使達が出現してしまう。警備員(アンチスキル)が銃を片手に天使達を撃ち続けるが傷一つつかず、応援として駆けつけた駆動鎧を着た警備員達や四枚羽やHsAFH-11(六枚羽)が空からミサイルや弾丸を、HsWAV-15(10本脚)が砲撃を行うが天使達は倒れない。

 

佐天と初春は街の中を逃げ回っていた。襲い来る天使達の攻撃、魔術を放ったり剣で斬りかかったりと様々な攻撃を仕掛ける天使達…だが佐天達はそれらの攻撃を紙一重で避ける。

 

「うわぁぁぁ!?髪の毛切れた!ほら切れた!見てよ初春!ほんのちょっと髪の毛が!」

 

「少し黙ってくれませんか佐天さん!集中できな…あ!髪飾りが!」

 

「あ、初春が転がって行っちゃった!」

 

「いやあれは髪飾りですからね!?初春はこっちです!」

 

そう喚きながら逃げる二人、だが無情にも天使の剣が横に振るわれ二人を切り裂こうとした、まさにその時。

 

「させませんの!」

 

黒子が瞬間移動で二人の背後に出現、すぐさま佐天と初春の肩を持ち一緒に空間移動する事で凶刃から逃れる。

 

「無事ですか涙子、初春」

 

「く、黒子!ナイスフォローです!」

 

「流石白井さんです!」

 

感謝のあまり抱きつく二人、黒子は少し鬱陶しそうな顔をするが満更でもなさげだ。だが二人襲い来る天使達を見て黒子は持っていた鉄矢を天使達の頭部に移転させ、鉄矢が頭部を貫く…だが、天使達は動きを止めない。

 

「……最近の学園都市はこんなのばっかりですの」

 

攻撃が効かない。ならば二人と一緒に遠くへ逃げよう。そう考えていた時だ。

 

「喰らえー、とミサカは棒読みで叫びます」

 

鳴り響く銃声と天使達を襲う無数の弾丸、それを見て目を見開く黒子。

 

(い、今の声は…いえしかしお姉様は今イギリスに行っている筈…では何故…?)

 

一瞬だけ聞こえた声は自分が尊敬する常盤台の先輩の筈。だが今彼女は学園都市にいない…そう思って背後を振り向くと…そこには黒い肌の男性の隣に並ぶ御坂美琴がいた。

 

(……お姉様…じゃない、似てますが…違いますわ)

 

容姿だけならそっくり、だが違う。黒子には別人だと分かる。現に美琴なら超電磁砲を放つ筈なのに彼女はガトリング砲の引き金を引いている。御坂美琴本人なら絶対にしない行動だ。

 

「……ガトリング砲が効かないとかマジかよ。とミサカはドン引きします」

 

「自分のトラウィスカルパンテクウトリの槍も通用しないみたいですし…こんな怪物どうしろと…」

 

自分達の攻撃が効かないドン引きする17600号とエツァリ、ならばとエツァリは原典を、17600号はロケットランチャーを構える。

 

「逃げてください御坂さんのお友達の皆さん!ここは自分達にお任せを!」

 

「ここはミサカ達が足止めしますんで、とミサカはお姉様の友人の前で格好つけます」

 

「……感謝しますわ」

 

黒子は空間移動を使いこの場から逃げる。天使達がエツァリ達に群がって来る。

 

「全く、学園都市は本当にトラブルの倉庫ですね」

 

「でも嫌いじゃないですよ。と、ミサカはクールに告げます」

 

「そうですね、さあ。やれるだけの事はやりましょうか!」

 

二人は天使達の撃破など考えていない。暫くしたらトールや加群達の応援が来る。ここで重要なのは敵をどれだけ多く引き寄せ足止めするかなのだ。

 

 

天使達は警備員の装備や駆動鎧、四枚羽、超能力者の超能力では相手にならない。ならばここは自分達の出番だと木原の科学者達が、グレムリンの魔術師達が天使達に挑む。ガブリエル級とあって即座に倒せないが時間をかけて撃破する事は出来る。黄金夜明の魔術師達にとっては片手間で倒せる程度だ。

 

「おら!」

 

「燃えよ勝利の剣(レーヴァテイン)!」

 

全能の力を解放したトールの拳の一撃が天使を消し去る。加群の万物を燃やし尽くす炎の剣が天使を焼失させる。二人は天使達を一撃で仕留めていた。

 

「たく、全能使っても一向に数が減らねえな!全能使ったら経験値にならねえと思ってたが…これはある意味経験値が増えるかもな!」

 

「巫山戯てないで真面目にやれトール」

 

「いや全く巫山戯てないんだが、な!」

 

オティヌスも、メイザースも、脳幹も、ましてやアレイスターや垣根もいない。自分達だけで学園都市を守り抜けるのか…いや、守ってみせる。

 

「行くぜ加群!まだまだ暴れ足りねえ!」

 

「……そうか、無茶だけはするなよ」

 

「おう!」

 

一通り駆除した後は別の場所に群がる天使達を始末する。トールと加群は次なる敵を求め街を駆ける。

 

 

「新たな天地を望むか?」

 

天使達が上里の右手へと吸い込まれ消失する。上里はパトリシアを左手で軽く触れながら彼女を守るように力を振るう。

 

「去鳴、宛那!手助けは必要か!」

 

「大丈夫だよ、これくらいの敵余裕余裕…て、言っても下手すれば負けるレベルだけどね」

 

「全く…病み上がりにはキツイです」

 

去鳴は拳を振るい天使の頭部を潰す。宛那は闇の鎌を振るい敵を刈る。獲冴達も各々の力を振るい天使達を駆除する。

 

「油断するなよ上里翔流!それと私の妹に怪我一つさせてみろ!全身の皮を剥ぐからな!」

 

レイヴァニアの召喚爆撃が天使達をまとめて吹き飛ばす。マークはそれをアシストする。レイヴァニアの魔術と上里の理想送りで天使達を倒していく。

 

「か、上里さん……」

 

「大丈夫だパトリシア」

 

不安そうに上里の身体にしがみつくパトリシア。上里はそんな彼女を見て微笑みながら右手で彼女の頭を撫でる。

 

「ぼくがきみを守る。だから心配はいらないよ」

 

「………えへへ」

 

『おいコラクソガキ、テメェいい度胸してんな』

 

「ちょ!?何フレンドリーファイヤーしようとしてるんですか皆さん!?」

 

「「やめろ馬鹿!」」

 

「頼むから真面目にやってくれ!パトリシアも非常時にそんな事するな!」

 

パトリシアは笑う、全て計画通りだと。先程の不安な表情も仕草も全て演技だったのだ。それを知ってパトリシアに攻撃しようとする去鳴と宛那を除く上里勢力。マークと去鳴達が何やってんのあの馬鹿達と叫び、レイヴァニアは頭を抱える。

 

 

大悪魔と魔神の戦いはコロンゾンの勝利で幕を閉じた。バラバラになった肉片、その正体はコロンゾンに敗れ去ったクトゥルフの器。死んではいない。だが、即座には復活できないほど神格をロンゴミニアドで傷つけられた。娘々も力なく倒れるのみ。

 

「アハ、アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!アッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

 

狂った様にコロンゾンは不気味な笑い声を周囲に響かせる。そして不意に笑い声を止め自身の背後へと首を向ける。

 

「やあ垣根帝督。私の敵」

 

そこにいたのは垣根と帆風、アレイスター達。だがあくまでコロンゾンの目は垣根をまっすぐに見ていた。

 

「この世界は救いが多過ぎる」

 

コロンゾンは突然そう呟いた。

 

「『魔神』、『原典』、『アレイスター=クロウリー』、『エイワス』、『リリス』『アンナ=シュプレンゲル』…そしてこの私(・・・)大悪魔(・・・) コロンゾン(・・・・・)。この世界には時間の流れによる風化に逆らう例外的な救いが多過ぎる。それを私は認めない」

 

コロンゾンは両腕を左右へと広げそう呟く、だが眼だけは垣根へと真っ直ぐ見つめたままだ。

 

「垣根帝督。私はお前が嫌いだ。お前の様なイレギュラーの所為で世界の崩壊が早まった。頼むから死んでくれ、貴様のような者は生まれてさえ来るな、貴様が存在しているとこの世の理が狂う。故に私が今日ここで引導を渡す」

 

コロンゾンは笑みを消し血も涙もない様な無表情で告げる。直後コロンゾンから溢れ出る殺意。それを軽く受け流して垣根が口を開く。

 

「五月蝿えぞコロンゾン。俺は単なるカップリング大好きなイケメルヘンだ。お前が考えてる様なご大層な奴じゃない」

 

垣根もコロンゾンを見据え、こう返す。

 

「もうこんなつまんねえ事は終わりにしようぜコロンゾン」

 

垣根は左手をポケットに入れ、背中に純白の三対の翼を展開する。コロンゾンも聖槍を構え背中から深淵の宇宙を連想させる蝙蝠の翼に似た闇で構成された翼を出現させる。

 

「今日で全て終わらせてやる。イギリスも、人類も、世界も、()救って全員ハッピーエンド。それで全部終わりだ」

 

「甘い、やはり貴様は甘いよ垣根帝督。世界は滅びる。これは決定事項だ、世界をリセットし、魔術も超能力も原石も私自身も存在しない世界にする」

 

「話にならねえな」

 

「それが私達だろう?」

 

そう会話を交わした後、全員が戦闘態勢に移る。コロンゾンは邪悪な笑みを浮かべながら自身の周囲にアイティエール・アバターを出現させ自身の敵を排除しようとする。アレイスター達もある者達は武器を構え、ある者達は能力を展開し大悪魔へと立ち向かう。

 

世界を滅ぼさんとする大悪魔、世界を救わんとする人間達。果たして世界はどちらの結末を受け入れるのか。こうして世界と人類の存亡を賭けた最終決戦が始まりを告げるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 




ロンゴミニアド、アーサー王物語ではロンの槍と呼ばれるかのエクスカリバーとガヴェインのガラティーンでさえ通用しない悪王 ヴォーティガーンを倒したエクスカリバーを超える槍。かのロンギヌスの槍と同じ存在とされています。なんでも一撃で五百人吹き飛ばすとかそんなチートらしいです。なお、コロンゾン(ローラ)のCVは川澄綾子さんなのでコロンゾンがロンゴミニアドを使うと脳内で…

コロンゾン「最果てより光を放て……其は空を裂き、地を繋ぐ!嵐の錨! 最果てにて輝ける槍(ロンゴミニアド)!」

てなっちゃう。お前はどこの獅子王だ。まあ、中の人的にはノー問題だけども…ま、まあエクスカリバーじゃないからセーフ(アウトだろ)

かませになった魔神二人に合掌。ごめんね、でもこんな風にしか書けなかったんだよ…すまない

次回もお楽しみに!


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宇宙へ産声を響かせる人造の樹

今回でコロンゾン戦は終了です。随分駆け足気味だけど気にしないでください。そして今回で漸く、漸く五話からずっと言われ続けてたのに出番がなかったアイテムが漸く活かされる時!

今回のウルトラマンタイガ面白かったです。ニセベリアルとかゼロとか魅力的でしたね〜そして次回漸くラスボス怪獣出てくるのか〜楽しみだな〜


世界は黄金に染め上げられる。天使達が街を、都市を、村を襲い人に襲いかかる。それを食い止める魔術師達、だが天使達…アイティエール・アバターは一体一体がガブリエルと同じ強さを誇る。ロシアのワシリーサ、フランスの傾国の女でも足止めで精一杯、化学兵器などは一切通じずアメリカの様な大国でも天使達を足止めする事すら叶わらない。

 

唯一の例外は学園都市とバチカンで、神の右席や強い魔術師達の力により天使達を倒せていた。だが、それも時間の問題。天使達の方が圧倒的な数を誇るのだから。だが、誰も諦めたりしない。最後の最後まで抵抗し抗い続ける。それが人間の業であり美徳なのだから。

 

それに彼らは信じている。絶対に自分達は助かると。何故ならこの異変を解決してくれるヒーローを彼らは信じているからだ。そしてそのヒーローは実際にいる。英国にてこの異変を起こした元凶と戦っているのだ。

 

ヒーローが勝てばこの異変は終わる。だからヒーロー達は負けられない。自分達の勝利を信じている人がいるのだから。必ず勝って全員を救ってハッピーエンドにしてみせる。そんな思いで全員が大悪魔へたら立ち向かうのだ。そう、世界の命運は彼等に託されていた。

 

 

 

「Magick:FLAMING_SWORD。セフィラの下降により顕現せし力を浴びよ!!」

 

コロンゾンが最も愛用する術式が放たれる。その一撃をまともに喰らえば死体すら残らない。垣根達はそれを回避しコロンゾンに魔術や超能力といった攻撃を放つ。コロンゾンはそれを聖槍を振るって防御する。

 

「避けろ避けろ、醜く足掻くがいい。所詮貴様らの滅びは必然なのだから」

 

そう言って嘲笑うコロンゾン、アイティエール・アバターが無数に垣根達に襲いかかり一方通行は黒翼で蹴散らし、削板の超すごいパーンチや麦野の原子崩しがガブリエルと同等の力を持つ天使達を一撃で倒していく。美琴と食蜂の液状被覆超電磁砲(リキッドプルーフレールガン)で敵を吹き飛ばし上条の右手から顕現した竜王の顎(ドラゴンストライク)達が天使達を貪る。

 

オティヌスの弩の10矢が花火の様に空中で炸裂し、無数の弾丸となりて天使達を撃ち捨てる。脳幹のA.A.A.のドリルとパイルバンカーで敵を瞬殺する。遠方からサポートに徹しているキャーリサ達もカーテナ=オリジナルの斬撃で天使を切り捨て、騎士団長とウィリアムのフルンティングとアスカロンで天使を殲滅する。ステイルは魔女狩りの王を展開し天使達を焼き殺し、神裂は唯閃で天使を両断する。

 

垣根と帆風も神としての力を振るい、コロンゾンと戦う。垣根は聖なる右を展開し第三の腕に巨剣を握らせ斬り裂こうとし、光の処刑でコロンゾンを殺せる様優先を変え、人間以外にも通用する様にした天罰術式でコロンゾンの身体を肉体的に束縛したり、聖母の慈悲で100パーセントの神の力を発揮したり、竜王の殺息(ドラゴンブレス)や黄金錬成といった強力な大魔術を連発していく。帆風もガブリエルを降ろし神戮を五月雨の様に降り注がせる。

 

「甘いわ」

 

されどコロンゾンには届かず、聖なる右も光の処刑も、天罰術式も、聖母の慈悲も、竜王の殺息も、黄金錬成も、神戮もコロンゾンを傷つける事さえ叶わない。取り巻きの天使達を倒せても天使達をいくらでも増殖できるコロンゾンを倒さねば意味がない。

 

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!私は大悪魔 コロンゾン!私を倒せる者などこの世界には存在しない。全員平等に滅びるがよい!」

 

目に見えぬレイピアを構える仕草を行い、コロンゾンはMagick:FLAMING_SWORDを今一度放つ。だがアレイスターは三つのルビーをコロンゾンへと投擲。コロンゾンを中心に三角形を作り出す。するとコロンゾンのMagick:FLAMING_SWORDの軌道がよじれコロンゾン自身の身体を傷つける。

 

「なぁ!?こ、この魔法陣は…!?」

 

そう、この魔法陣はかつてアレイスターがコロンゾンを召喚する時に行った羽の鳩の血でもって描かれた陣を再現している。その能力は神殿を利用しコロンゾンのスケールをダウンさせ、総量を強引に押さえ込むという術式だ。

 

「汝の居場所はここになく、しかし我は正しき退去を許さず!!ここに意図して失敗する追儺の儀を執行する。大悪魔 コロンゾン、その力を万能の数11に裂きながら異なる世界に還るがいい!!」

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

 

『位相から位相へ、強引に押し戻す力』、その力を使いコロンゾンを裁断していく。その力によってコロンゾンの姿が消えてしまう。

 

「やったか!?」

 

そう叫んだのは誰であったか、全員がコロンゾンを倒したのかと期待した次の瞬間。

 

「なんちゃって☆」

 

グチャ、と金の髪が刃物の様にアレイスターの背後から突き刺さる。

 

「ごっ……?」

 

「アレイスター!!」

 

口から血反吐を吐くアレイスター、垣根は親友の名を叫ぶ。そしてアレイスターを背後から刺した消滅した筈のコロンゾンを睨む。

 

「だから言っただろう、貴様達は甘過ぎると。私が『ただの』悪魔なれば枠小化は成功していたるでしょう。人の手で致命傷を与えられた魔神共の様に…されど私は大悪魔 コロンゾン。生命の樹(セフィロト)の昇降を自在とする存在。降りる事で物理的な制約を増し、逆に安定させたのよ」

 

コロンゾンはセフィロトを上る事も下がる事も自在とする。故に枠小化など通用しない。これが大悪魔 コロンゾン。その狡猾さと実力は今まで戦った誰よりも強く、知略に優れる。

 

「貴様達の勝手気ままな悪魔の擬人化にはもううんざりよ。何が美女化だ、イケメン化だ、悪魔をなんだと思っている。大体貴様らはおかしい。昔は恐怖し恐れられたものを今は性欲や欲望のはけ口にするなど…悪魔なんぞより貴様達の方が余程悍ましいわ!ペットの猫に服を着せれば喜ばせられると思うなよ!」

 

「……コロンゾン、貴様…擬人化否定派か?」

 

「今聞く事がそれか?」

 

アレイスターが見当違いな言葉を口に出し、今はそんな事言う時じゃねえとコロンゾンはアレイスターの腹を足蹴りし吹き飛ばす。

 

神様殺し(ロンギヌス)の槍!」

 

「天使達の完全体にして共有体たる隠匿されし神の真意よ、十のセフィラを掌握し、二十二のパスを通過し、三つの柱を超え、生命の樹(セフィロト)の深淵たる知識(ダアト)へと到達せん…無限光(アイン・ソフ・アウル)!」

 

垣根は三対の翼を神様殺しの槍へと変化、帆風は切り札たる全天使の力を一身に降ろす能力を発動。コロンゾンへと接近し槍と拳を振るう二人。だが、コロンゾンは二人が近づくのを見ると笑みを浮かべ聖槍を振るう。二人はその槍から嫌な気配を感じ二人は慌てて後方へ下がる。

 

「その槍…まさか俺の槍と同じ…!」

 

「そうだ、こいつの名は聖槍 ロンゴミニアド。知名度は低いが聖剣より優れた武器として知る者のみ知るかの騎士王の武器の一つだ」

 

ニヤリと笑うコロンゾン、十字教の主神の化身であるメタトロンとサンダルフォンにとって聖四文字でもある原初の聖人の身体に突き刺した神殺しの槍は驚異極まりない。

 

(不味いですわね…遠距離からの攻撃は通用せず、かといって不用意に近づけばあの槍の危険に晒される…何か手は…)

 

竜王の殺息や神戮などの攻撃はコロンゾンには一切通用しない。かと言って近づけばあの槍の餌食にあう。正に八方塞がりだ。

 

「さあ、そろそろ死んでもらうぞイレギュラー」

 

そう言ってコロンゾンが純粋属性の魔術を放とうとしたその時。

 

「……『法の書』とは即ち星の外からもたらされる叡智なり。惑星の回転の外に本質は眠っている。正しき知識は障害物を取り除き、降り注ぐままの光を浴びる資格を得る」

 

「な……!?」

 

唐突に誰かの声が戦場に響く。コロンゾンはその声の主…インデックスを凝視する。彼女が語っているのは法の書の言葉だ…ただし、間違った読み方の、だが。

 

「天皇星より外の発見は占術に混乱をもたらした。だが冥王星は宇宙の運航妨げるものにあらず。例外たるツァダイは別にある。星辰を見よ、新たな時代は変わらず到来の瞬間を待ち詫びている」

 

間違った読み方をしたまま、法の書の一文を語り続けるインデックス。それを見てコロンゾンは彼女の目的を看破する。

 

「禁書目録、貴様…私の術式を誤読パターンで引きずらせて振り回すつもりか!?」

 

コロンゾンはインデックスに怒りの目を向ける。かつては自分の手元に置いていた存在が自分の邪魔をした事に怒ったのだ。即座に天使達がインデックスを切り刻もうと向かうが、突如地面から吹き出た三柱の炎の巨人により天使達は焼失する。

 

「僕がいる限りインデックスには指一本触れさせないぞ」

 

「チッ……!」

 

ステイルが三位一体・魔女狩りの王(トリニティ・イノケンティウス)を顕現させながらコロンゾンを睨む。コロンゾンは舌打ちしながらも純粋属性の魔術を放とうとするが…

 

「させませんわ!」

 

帆風はザドキエルの武器創造で対悪魔特攻の武器を創造しコロンゾンへと投擲。コロンゾンはそれを槍で破壊しインデックス達から狙いを帆風へと変更する、だがそれを霊的蹴たぐりで形成したクレイモアを握ったアレイスターにより阻まれる。

 

「さっきはよくもやってくれたなクソ悪魔。痛いじゃないか」

 

「お前も大概しつこいなアレイスター!」

 

クレイモアを聖槍で砕き、アレイスターを突き殺そうとするコロンゾン。アレイスターは背中から出現させた天使の翼を広げ空へと飛翔。直後に垣根が神様殺しの槍を向けて突撃してくる。

 

「IDOIGO!」

 

垣根に暴風を放ち、彼はそれを槍で防ぐ。その隙にコロンゾンはロンゴミニアドで垣根を貫こうとするがそれを帆風が阻止する。

 

「させませんわ!」

 

帆風はザドキエルの能力で創造した籠手を装着し、カマエルの格闘術とザフキエルのスピード、ミカエルの殲滅力を上乗せした拳で槍を掴み取る。

 

「!?」

 

「……この槍はわたくしの身体を傷つけねば発動しないのでしょう?ならば、傷がつかない様にすればいいだけです」

 

籠手で槍によって傷つくのを防ぐ事でコロンゾンの聖槍に対抗しようとする帆風、コロンゾンはならばと無防備な身体に狙いを定めるが帆風はその狙いを看破し両腕でそれを弾いていく。

 

(そんな籠手で私の攻撃を防げると思うなよ!)

 

コロンゾンは聖槍で右手の籠手を砕く、すぐに後方へと退がる帆風だがその隙を逃さず純粋属性の土を放つ…それに対し帆風は右手をその土に向ける。

 

「吸収します」

 

「なっ!?」

 

土が帆風の右手へと吸い込まれていく。ゾンビの時に見せた魔力吸収能力だ。すると垣根が右手から出現させたセルピヌスの口からコロンゾンが放った土を放射しコロンゾンはそれを避ける。

 

(あの右手…エイワスの…いや、ホール・パアル・クラアトの力の一端か。そして垣根帝督の右手の力はラー・ホール・クイト…成る程な)

 

コロンゾンはその正体に気づき、二人の性質を看破する。

 

「……まあいい、私にはこの聖槍 ロンゴミニアドがある。これがある限り貴様らは私には勝てない」

 

そう宣言するコロンゾン、この槍で貫けば全てが終わる。二人もそれが分かっているのか表情を硬ばらせるのだった。

 

 

「……何やってンだ俺」

 

一方通行はそう呟いた、あの時から全然変わっていない。垣根の隣で戦いたい、垣根の足手まといになりたくない、その一心で強くなったのにまだ垣根の役に立っていない。

 

麦野達も同じだった、いくら翼が生えようが必殺技を作ろうがコロンゾンには届かないのだ。自分達は何の役にも立てない。そう、諦めかけたその時だ。

 

「諦めるな!」

 

『!?』

 

そう大声で叫んだ者がいた。上条だ。

 

「俺達は垣根と同じ場所で一緒に戦いたいから強くなったんだろ!?なら、ここで諦めんな!今ここで限界を超えて…コロンゾンを垣根と一緒に倒すぞ!だから諦めてんじゃねえ!」

 

彼の魂からの叫びに諦めかけていた心を振るい上がらせる。そうだ、ここで終わらせてなるものかと。

 

「もし、まだ俺達が垣根の役に立てないと思ってんのなら…俺がその幻想をぶち殺してやる!だから行こうぜお前ら!友達を助ける為に!」

 

友を助けよう、その一言で一方通行達の胸に熱い何かが流れ込む。そして一方通行と麦野、削板の翼に変化が生じる。

 

「……上条の言う通りだ。やるぞお前ら」

 

「上等よ、私らの力をあの悪魔に見せてやる」

 

「根性…いや友情パワーで絶対なんとかする!」

 

一方通行の竜巻の如く渦巻く黒き翼が純白の白鳥の様な美しい翼へと変質した。麦野のスポットライトの様な光線状の緑の翼が薄いベールの様に透き通る緑の翼へと変質。削板のカラフルな二対の翼は一対へと減り、鷹の翼を連想する赤青黄の逞しい翼へと変化する。更に三人とも頭の上にそれぞれの翼の色と同じ天使の輪の如き光輪が出現する。

 

「……私達も行くわよ操祈」

 

「……ええ、そうね美琴」

 

そう言って二人は大覇星祭で顕現させた翼を展開する。美琴はガルダの如き物質化したAIMと電熱融解した金属を融合させて構成させた翼。食蜂はハルピュイアの様な美しい青く輝く実体化したAIMと圧縮した水の塊が混ざり合った四枚の翼…それを二人は更に変化させ美琴は自身の翼を黄金に輝く帯電したメタリックな鋼と雷の翼へと、食蜂はAIMと水で構成された蝶の羽の様な可愛らしい蒼い翼を展開する。

 

「コロンゾンに一矢報いるぞ」

 

上条もピンク、緑、青、黄の四色の色合いのドラゴンへと変身。咆哮を周囲に轟かせる。

 

「行くぞ!」

 

『おう!』

 

上条の叫びと共に全員がコロンゾンへと音の速さを超えた速度で駆ける。

 

「ッ!?」

 

コロンゾンは目を見開く。そして聖槍で一方通行達の攻撃を防御、上条は純粋属性の火の中の風で攻撃するが外殻によって阻まれる。

 

(こいつら…翼が変質している…守護天使と同化して翼の能力が強化されている…!上条当麻も私の純粋属性の魔術を喰らっても無傷とは…土壇場で番狂わせを起こしやがって!)

 

一方通行の白い翼がコロンゾンへと振るわれる、削板の謎の力がコロンゾンの全身を襲う、麦野はベールの様に薄い翼から放たれた光線がコロンゾンの黄金の髪を消し飛ばす、美琴は純粋属性の魔術すら吹き飛ばす威力の超電磁砲を1秒に数百発撃ち込み、食蜂はコロンゾンの脳内に常人ならば廃人になるであろう精神攻撃を与える。

 

「くっ……!邪魔だ超能力者共!」

 

聖槍を振るい一方通行達を後方へ吹き飛ばすコロンゾン、だが背後にドラゴンと化した上条が迫る。だがそれは読んでいると言わんばかりに聖槍を上条の腹部に突きつける。

 

「がぁ!?」

 

聖なる右ですら防ぐ外殻すら貫く聖槍。人間には効果は薄いがそれでも少しの動きを止められる筈だ。いくら幻想殺しでも槍に触れなければ能力を無効化出来ない…コロンゾンはふっと笑って槍を引き抜こうとし…顔を強張らせた。

 

(なっ……槍が…抜けない!?)

 

上条の身体に突き刺さった槍が抜けないのだ。どんなに力を込めようと槍は抜けず、コロンゾンは上条の意図を漸く理解した。

 

(ま、さかこいつ…最初からこうなるつもりだったのか!?自分の身体を囮にして…一歩間違えば死ぬというのに…!?この野郎…行かれてる!)

 

もしコロンゾンが心臓に槍を突き刺していれば即死していたのに、もしコロンゾンが痛ぶってやろうと考えていなければ死んでいたのに。上条は聖槍の動きを封じる為にだけに自分を犠牲にしたのだ。常軌を逸している、コロンゾンはそう思った。

 

「へっ、これで漸く触れるな」

 

「!?」

 

上条はゆっくりと自分の身体に突き刺さった聖槍に右手で触れる。ガラスが砕ける音が響き対垣根と帆風用に用意した霊装 聖槍 ロンゴミニアドはバラバラに砕け散り風化して塵と化した。

 

「チッ……!」

 

コロンゾンは自分の切り札を失い舌打ちする、上条は聖槍がなくなると同時に幻想片影(イマジンシャドウ)を使い、怪我を肉体再生(オートリバース)で治す。そしてコロンゾンを取り囲む様に翼を展開した一方通行達が取り囲む。

 

「チェックメイトだなァコロンゾン」

 

「…………………」

 

垣根と帆風を殺す切り札が失われた今、コロンゾンに勝機はない。そう判断した一方通行はこれで終わりだとコロンゾンに告げる。対してコロンゾンは無表情となり上条を黙って見つめ…そして、笑った(・・・)

 

「………モ・アサイアの儀…起動」

 

『!?』

 

そのコロンゾンの言葉と共に、クイーンブリタニア号のヘリポート(祭壇)に置かれたオナーズオブスコットランドが光を放つ。コロンゾンはニヤリと笑う。

 

「……始まった、始まったぞ。世界の終わりがな」

 

モ・アサイアの儀。コロンゾンが企む計画の要が起動してしまった。コロンゾンとの戦闘のせいですっかり存在を忘れてしまっていた。だが後悔しても時すでに遅し、もうモ・アサイアの儀は始まったのだ。世界崩壊の序曲と共に。

 

「最後まで足掻いた貴様達の蛮勇を認めて教えてやろう。モ・アサイアの儀とは私の最終目標である世界に存在する全ての位相を破壊(・・・・・・・・・・・・・・・)し、それによって世界を崩壊させて全てをリセットする…勿論純粋な科学の世界も私が住む生命の樹も、全てを終わらせ新しい世界を生み出す…それが私の望みだ」

 

勝利を確信したのかコロンゾンはそう笑いながら告げる。悪魔の目論見は位相を全て抹消し、世界を原初へと戻し新たな世界と時代、人類を生み出す事。それが悪魔の望みだったのだ。

 

「……それだと貴様もこの世界から消えることになるぞ」

 

それがどうした(・・・・・・・)?私の様な世界の循環の何の役にも立たぬ存在はいなくなってしかるべきだろう?」

 

アレイスターがコロンゾン自身もそれで消えてしまうと問いかける。だがコロンゾンはそれがどうしたと返す。

 

「……話にならん」

 

「別に貴様と対話をしたいなぞ考えた事もないわ、私はこの世界を守る。その為に不都合な存在は古き世界と共に消えてもらう。魔術も、超能力も、魔神も、エイワスも…そして私自身もな」

 

コロンゾンは自分でさえ嫌悪しているのだろう、時の流れの滅びに逆らう自分でさえも許せないのだ。コロンゾンは誰かを愛せない、自分自身を愛せない者が他人を愛する事は出来ない。

 

「……納得いかねえな」

 

垣根はそう呟きながら懐からある物を取り出す。それは黒いチョーカーだった。垣根はチョーカーを二つ取り出し一つを自分の首に、もう一つを帆風へと投げる。帆風はそれを受け取りチョーカー首につける。

 

「俺はお前のやり方が気にくわねえ。だから俺は俺の理由でお前を止める」

 

「……やってみろ」

 

コロンゾンは挑発する、もう何をしても手遅れなのだと確信した笑みを見せる。

 

「ここで漸く日の目を見たな、この演算補助デバイスがな」

 

冥土帰しに制作させていた演算補助デバイス。長らく日の目を見なかったこれが漸く活かされる日が来たのだ。

 

「準備はいいかクリフォパズル」

 

『はぁい、バッチグーですよ』

 

垣根の背後に現れたクリフォパズル545は頷き、二人が首にはめたチョーカーに自分との意識を繋ぐ。そして垣根と帆風がチョーカーのスイッチを起動させ能力強化モードへと移行。ミサカネットワークに接続されクリフォパズル545はミサカネットワークへと意識を沈めていく。

 

 

『はぁーい、ようこそお嬢ちゃん/retrun。スペシャルなゲストとして歓迎するわよ/retrun』

 

クリフォパズル545に語りかける謎の声、彼女の名はミサカネットワーク総体。ミサカネットワークの全体の意思である存在。彼女はミサカネットワークへとやって来たクリフォパズル545へと話しかける。

 

『きひひ。貴方が総体さんですか。要件は…分かってますね?』

 

『モチのロンよ/return。貴方は帝督ちゃんと潤子ちゃんの肉体を通して私に接触した/return。ミサカという窓口にね/return』

 

実態のない彼女だがクリフォパズル545には笑っているように感じた。

 

『ええ、私が訪れたのはご主人様を深淵を越えられるようにする為には新たな樹を想像しなければいけないので』

 

『ま、ミサカには魔術の事なんてさっぱりだけどさ/backspace…協力させてもらうよ/return。それに私は帝督ちゃん派だし/return、好きな男子の手伝いをしてあげたいからね/return…まあ、帝督ちゃんには潤子ちゃんという正妻がいるから無理なんだけどさ/return。あ、愛人ならどう?/escape』

 

『何の話をしてるんですか貴方』

 

クリフォパズル545は冷たい目を総体に向ける。まあ、実体はないので見た先にいるかは分からないのだが。

 

『まあ、そんな訳で力を貸すぜ/retrun。脳波を持たぬ思考体よ/retrun。あのクソ悪魔を倒す為に凄く面白い事をしてやろうじゃない/retrun』

 

『ひひひ、そうですねぇ。凄く面白くてド派手な事をやって目玉飛び出させてやりましょう。きひひ』

 

二人の少女は笑う、全ては一人の少年に勝利を捧げる為に。クリフォパズルは目を閉じ言葉を綴る。

 

『……我は10の球体のいずれにも居場所を持たぬ悪魔なり』

 

クリフォパズル545の言葉は続く。それは新たなる樹をこの宇宙へと生み出す言葉だ。

 

『故に印なき11番目の球体に居座る管理者とならん!!我が名はクリファパズル545、その数は真なる11、その意味は「邪悪という踏み台は善行を支えられる」!78枚の道筋をここに。未だ名もなき第三の樹全体を掌握する超越生命として契約者に力を与えん。かの存在に生存の道を授けよ、「深淵」の向こうにある叡智を!!!!!!』

 

その瞬間、宇宙に新たなる樹が誕生しその産声を響かせた。

 

 

「ーーーーッ!!!?これは!?」

 

コロンゾンはそれにいち早く気づいた。この世界に、この宇宙に新たな何かが誕生した気配を察したのだ。

 

「……出来たようだな」

 

「ですわね」

 

『うい。実験はひとまず成功って感じですかねえ?いまいち安全基準がぼやっとしていておっかない気もしますけど』

 

『まあ、でも仕方ないんじゃない?/escapeまだ未調整なんだし/retrun。て、あれ?/escape。もしかして私の声帝督ちゃんに届いてる?/escape』

 

「その声…総体か、久しぶりだな」

 

「貴方が総体さんですね、こうしてお会いするのは初めてですわね」

 

『そういえばそうだね/escape。初めまして潤子ちゃん/escape。これからもよろしくね/escape』

 

垣根と帆風はそうクリフォパズル545と幻影として垣根と帆風のみに見える総体に話しかける。そして二人が見ている世界は、別の何かが折り重なっいた。それは生命の樹でも邪悪の樹でもない第三の樹。クリフォパズル545がミサカネットワークの在り方を魔術的な解釈で定義することで成立した新たな第三の法則・図面。

 

「これが人造の樹(クロノオト)。『文明による魂の変化』を表した生命の樹(プラス)でも邪悪の樹(マイナス)でもない、科学という新しい価値観による「後世の魂の変化」を表した樹だ」

 

「きさっ、ま…ッ!!何をしたる!?こんな、これを、こんなものを世界に埋め込みたら『御使堕し(エンゼルフォール)』どころの変質じゃあ……ッ!!」

 

「すまないだろうな、だがこれでお前を倒せるようになる。だろクリフォパズル?」

 

『はぁい、これでご主人様達はアレイスターですら越えられなかった《深淵》を越え8=3位階『神殿の首領』へと到達しました。これを使いコロンゾンにダメージを与える事が可能となります』

 

世界に新たに誕生した法則。これによりコロンゾンを弱体化させる事が可能となる。例えばこの人造の樹を用いた一撃で仮初めの肉体(ローラ=スチュワート)からコロンゾンの実体()を解き放つ事も出来る。だが垣根は敢えてそれをしない。

 

「頼むぜクリフォパズル」

 

『了解……我は悪魔。血と肉の実態を持たぬ影。しかしクリフォトに潜む諸力を守るだけでなく、セフィロトの途上にて上昇しようとする修行者を阻む深淵を跨ぐ力を授ける事も可能なり』

 

その言葉と共に垣根と帆風の翼の色が変わる。純白と虹から青ざめたプラチナ。聖守護天使エイワスに匹敵する。いや二人の力を合わせればエイワスすら越える力を発揮する。これがサンダルフォンとホール・パアル・クラアト、メタトロンとラー・ホール

・クイトの神格を持つ二人の新たな力だ。

 

「馬、鹿…な。きさまらが、貴様ら如きが私の対になりけるなど!!ホルスの時代、magickを一つ振るうだけで粉砕できる。つけあがるなよ人間、そんな力に屈する大悪魔ではないッッッ!!!!!!」

 

コロンゾンは認めない。そんな程度で自分が屈するなどあり得ないと。自分は大悪魔、たかだか神格を得た程度の魔神擬きの人間風情に負ける筈がないのだ。それなのに、何故、何故自分は焦っている?見下している筈の人間に何故ここまで焦っている?自分が負けてしまうと認めているのか?否、否、否!こんな所で終われない!終わらせない!

 

「終われるか、終わってなるものか!私は、私はこの世界を救う!欠陥を取り除き、完璧な調和の取れた世界へと作り直すのだ!魔術など超能力など魔神など私が否定してなる!私自身を否定してでも、この世界を守る!」

 

「……前提から間違ってんだよお前は」

 

垣根はコロンゾンに憐憫を向ける。自分の存在すら許せない者に哀れみを向けた。

 

「……終わらせるぞ潤子」

 

「ええ」

 

言葉を交わし帆風はコロンゾンへと駆け出す。垣根と六翼をコロンゾンへと槍の如く刺突させる。それに対しコロンゾンは右手をレイピアのように構え、自身の必殺の魔術を放つ。だがそれを六翼は軽く砕きコロンゾンの身体を容赦なく打ち付ける。

 

「がっは……」

 

コロンゾンは倒れかける、だが足に力を込めそれを何とか堪える。だがそんな大悪魔に帆風が迫る。

 

「くっ……させるか!」

 

コロンゾンは脳幹へと目を向け、彼が扱うA.A.A.を一瞥する。A.A.A.はアレイスターの力を扱う噴出点だ。そしてアレイスターとコロンゾンの魔術は同質

…つまり、A.A.A.はコロンゾンの力(・・・・・・・)を扱う事も可能だ。

 

「記される事のない秘匿された召喚文、すなわち*****。***************************************」

 

人には発音不能かつ解読不能な声で呪文を唱える。その言葉と共に脳幹のA.A.A.が勝手に動き帆風へと標準を定め、彼女へと攻撃を仕掛ける。

 

「しまっ……!?」

 

脳幹の焦る声が響く、A.A.A.から帆風の足を止める魔術だ。帆風を隙を見せれば一撃必殺の術式を撃ち込み殺す。そう企み右手を構えるコロンゾン…だがA.A.A.から放った魔術は青ざめたプラチナの翼によって阻まれた。

 

「ーーッ!??垣根、帝督!」

 

「悪いな、俺の女には一指も触れさせねえぜ」

 

垣根を睨むコロンゾン、だが垣根にはコロンゾンなぞ眼中になく、帆風へと叫ぶ。

 

「やれ潤子!」

 

「はい!」

 

コロンゾンの懐へと踏み込み、右手に、ホール・パアル・クラアトの力が込められた。エイワスから授かった垣根の右腕だった腕に青ざめたプラチナの光が収束する。

 

「ーーーー!?」

 

その光を見たコロンゾンは右手を構え迎撃しようとする。だが、間に合わず帆風の右手がただ真っ直ぐコロンゾンの顔面へと迫る。

 

「もう終わりにしましょうコロンゾンさん。貴方は決して許せれない事をしました。でも、貴方にも守るものがあった。それは確かな事です。ただやり方が間違っていた。でもやり直す事はきっと出来る筈です…だから、一緒にやり直しましょう。皆に頭を下げて、もう悪さはしないと約束して…私達と一緒に世界をどうやって救うか考えませんか?」

 

そんな帆風の言葉と共に、大悪魔は一人の少女の拳に吹き飛ばされた。その一撃によって大悪魔の野望は完全に崩れ去ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 




漸く出番が出せたよ、ごめんね演算補助デバイス。最終回近くでの日の目で…そしてコロンゾン撃破。この作品で初の世界規模な事件を起こした奴かと思ったけどよく考えればガブリエルとかゾンビとか結構あったわ…ガブリエルは本人の仕業ではないとはいえ人類の姿の入れ替えを起こしたし、ゾンビの場合は世界を滅ぼしたし…あれ、なんかコロンゾンがしでかした事がマシに見えてくるぞ、おかしいぞ?

残る二話でこの作品を完結させる予定。次回世界がどうなるのか、そして最後はどうなるのか。……因みにエンディングだけは最初から決まってたんですが…この作品最初はギャグ路線だったのに最後はシリアスて決めてました。どのような結末になるのかは次回を是非見てください

次回もお楽しみに!


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また会う日まで…

世界崩壊編、最終回。今回は文字数多めです。分かりにくい設定ばかり出てきますがお気になさらずに

そして滅茶苦茶お気に入りが増えてて、評価が増えてて、そして閲覧数が伸びてて驚いた?え?何新手の魔術?こないだまで少なかったのに…何故に急に伸びた?何が起こったの?

お気に入り登録と評価をしてくださった方々や読んで下さった方々には感謝しかしていません。本当にありがとうございます!



神の座へと至った少女の拳が大悪魔の顔面にめり込む。大悪魔は大きく吹き飛び、何度も地面をバウンドしクイーンブリタニア号へと激突。船腹に穴を開けながら船内へと姿を消した。誰もがその光景を見て声を押し殺す。目の前の光景が事実なのかと自らの目を疑うほどだ。

 

「…………やったか?」

 

そう呟いたのはアレイスターだった。彼は本当にコロンゾンが倒されたのかと不安だった。だがアレイスターの心配した事態にはならず、コロンゾンがクイーンブリタニア号の船腹の空いた穴から出てくる事はなかった。

 

「………やった、やったんだな……?」

 

ドラゴンの姿から人間の姿へと戻った上条がそう呟く。空中を覆うように存在したアイティエール・アバター達はいつの間にか消えていた。それは天使達の主人からの魔力供給が断たれたからで、それが意味するのは…コロンゾンが倒されたという事だ。

 

『う、うおおおおぉぉぉぉぉぉッ!!!!』

 

静寂から一転、歓喜の悲鳴が周囲に轟く。騎士派の騎士達は高いを抱き合って喜び合う。キャーリサは当然だと言わんばかりにカーテナ=オリジナルを肩において笑みを浮かべ愛馬たるアレックスが嘶く。ステイルは嬉しさのあまり思わずインデックスを抱きしめ彼女を赤面させ、それを見た騎士団長(ナイトリーダー)はステイルに倣って神裂に抱きつき赤面した彼女にグーパンを食らった。

 

「す、ステイル!恥ずかしいからやめてよ!」

 

「嫌だ。暫く君の温もりを感じていたい」

 

「〜〜〜!!も、もうステイルは神父なのに肉欲に溢れ過ぎなんだよ///」

 

愛しい彼女の温もりを感じているステイル。そんな彼に離れてと口では言いつつもなんだかんや言って許すインデックス。

 

「やりましたねウィリアム!勝利を祝って明日私達の婚礼を行いましょう!」

 

「……ええ、そうであるな…て、第三王女!?いつの間に!?それに婚礼!?」

 

「ふふふ、言質はとりましたよ?聞きましたわよねお母様?」

 

「うむ、バッチリ録音したぞ。なあリメエア」

 

「ええ、バッチグーですお母様」

 

「は、謀られたのである!?」

 

ウィリアム=オルウェル、婚姻決定である。

 

「……………///」

 

「すみませんでした。つい興奮の余り衝動的にやっちゃって…許してくれませんか」

 

(((情けないっす、リーダー)))

 

「………」

 

顔を赤くして騎士団長から顔を背ける神裂、そんな神裂に土下座をする騎士団長。そんな情けないリーダーを傍目から見ている騎士達。キャーリサは騎士団長に冷たい視線を送る。

 

「ふん……やっと終わったか。なら早くじゃがバターを食べに学園都市に帰るぞ」

 

「やれやれ……最後の最後で足を引っ張ってしまって申し訳ないな」

 

オティヌスは主神の槍をしまいながらそうぼやき、脳幹は最後にA.A.A.をコロンゾンに操られてしまった事を申し訳なく思い俯いていた。

 

「…………終わったのか」

 

アレイスターはただ一言そう呟いた。その後爽やかな笑みを浮かべた。

 

「やったな帆風ちゃん!今回のVIPだ!」

 

「流石私の派閥の副官だわ!」

 

「垣根さんもナイスフォローよ!」

 

「やったじゃねェか帆風!ていとくンもな!」

 

「やるじゃねえかお前ら!」

 

「うおおおお!俺は今、猛烈に感動している!俺達の、皆の友情でコロンゾンを倒したんだ!」

 

上条達は帆風の元へと駆け出し、彼女の背をバシバシと叩く。コロンゾンを倒した彼女に賞賛の言葉を送る彼等彼女等に帆風は笑みを向ける。

 

「ええ、皆さんのお陰ですわ。本当にありがたいございます」

 

自分一人ではコロンゾンには勝てなかっただろう。勝てたのも上条達の、アレイスター達の、キャーリサ達の、そして最愛の人(垣根)のお陰だ。

 

「よし!全員で胴上げだ!」

 

『賛成!』

 

「え!?ちょ…!?スカート捲れ……!」

 

「………全く、騒がしい奴らだぜ…まあ、嫌いじゃねえけどな」

 

垣根は胴上げされる帆風とわっしょいわっしょいする上条達を見て笑う。その光景を見れて嬉しそうだった。それはそれとして胴上げされてスカートが捲れて純白の下着を晒す帆風の醜態を携帯で撮影し記録に残すのだが。

 

「ふう……潤子はやっぱり白だな、この写真は永久保存しておかねえとな」

 

「いや消してくださいましぃぃぃぃ!!!」

 

清々しい笑顔で携帯で撮影した写真を眺める垣根と顔を羞恥で赤く染める帆風。そんな光景を見て全員が笑い合っていた、その時だ。

 

「ふ、ふ、ふ……ふははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!」

 

『!?』

 

突如響く狂った嗤い声、その声はクイーンブリタニア号の内部から響いた。

 

「今の声は……まさか!」

 

聞き間違えようがない、この狂気の嗤いの声の正体は…全員がその正体に気づいた瞬間。クイーンブリタニア号の甲板にあるヘリポート(祭壇)から極太の光の柱が天へと昇った。

 

「あ、あれは……!?」

 

そう呟いたのは誰だったか、あの光が一体何なのかは誰も分からない。どんな能力なのかどんな効果があるのか、どんな事を齎すのか…だが、これだけは言える。絶対にロクでもない事が起こると。

 

「始まった、始まったぞモ・アサイアの儀が!もう止められない!世界は滅びるのだ!」

 

そう叫びながらクイーンブリタニア号の空いた穴からボロボロになったベージュ色の修道服と傷だらけの身体となったコロンゾンが現れる。大悪魔はニヤッと邪悪な笑みを浮かべながら両手を広げる。

 

「やっとだ、これで世界は本来の正しい正常な世界へと生まれ変わる。私が愛した世界になる…長年の願いが漸く成就される…あは。やっと、やっと、やっと、やっと…願いが叶った」

 

そう言ってコロンゾンは微笑んだ。ローラ=スチュワートと言う名の麗しき女の女神の如き美顔で微笑んだのだ。もし、仮に目の前の存在が大悪魔と知らなければその微笑みに心を奪われていただろう。それくらいの魅力が今のコロンゾンの笑顔にあった。

 

「無駄だったんだよ貴様達の足掻きは。確かに帆風潤子は私を下した。それは凄い事だ。この大悪魔 コロンゾンを倒したのだからな、誇れ。だが、世界は滅ぼすぞ、それが我が使命、我が正義、我が願いなのだからな」

 

例え倒されようとも世界は滅ぼす、そして新たに誕生させる。今度は魔術や超能力など一切の不純物のない完璧な調和が取れた世界にする。それが絶対に正しい事なのだから。例え自分が愛し夢見たい世界に自分と言う名の悪性がいなくとも…コロンゾンはその願いを叶えたいのだ、自分自身を犠牲にしてでも。

 

「願え!次の世界にもお前達が産まれる事を!その世界には魔術も超能力も原石も魔神も原典も奇跡も幻想殺しもエイワスも私も何もない!あるのは正しい命のサイクルだけだ!」

 

これでいい、これでいいのだ。病原菌を除けば世界は元に戻る。これでいいのだ、例え自分がいなくなっても世界は終わらない。これでコロンゾンが愛した守るべきものは守られるのだから。

 

「……ふざけやがって」

 

だが大悪魔の願いに反抗する者がいた。垣根だ。彼は許せなかった、世界を滅ぼそうとしているコロンゾンではなく、世界を滅ぼすという方法でしか世界(・・・・・・・・・・・・・・・・)を救えないと思い込んでいるコロンゾンにだ(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

「俺はそんな結末を認めない。そんなのお前が報わ(・・・・・)れない(・・・)。報われなさ過ぎる。世界中から敵対されて、自分が守るべきものの為に頑張って、その結果が自分と言う存在の消滅なんて認めない。お前がそれを幸せと思っても…そんなの俺は認めない。お前がその世界で存在して笑っていないのなら、俺にとってそんなのは最悪の結末(バッドエンド)なんだよ」

 

そんなのは幸せな結末(ハッピーエンド)ではない。コロンゾンが救われない。だから垣根はそんな結末を否定する。だからこんなクソったれな計画は止める。コロンゾンを救う為に(・・・・)

 

「……聞こえているかメイザース」

 

アレイスターは自身の懐に入れたメイザース(タロットカード)に語りかける。

 

「お前なら出来るだろう?偉大なる魔術師 メイザース。初めてお前に頭を下げる。頼む、垣根帝督の…親友の願いを叶えてくれ。我等にとって憎き敵である大悪魔コロンゾンが生まれたこの世界を、壊さないでやってくれ」

 

そうタロットカード(メイザース)に語りかけるアレイスター。その瞬間タロットカードが黄金の光を輝かせた。

 

「魔術に身を捧げた魂の一つがこれより告げる。

『黄金』の魔術師よその矜持を示せ、もはや形はなくとも我らの真髄は消えず。そのカードを束ねて記号を並べ、邪なる力の流入をここに阻止せん」

 

黄金の輝きを放つタロットカード。その光は徐々に人の形を取り始め、その光の中から声が漏れる。その呪文は彼ら『黄金』の大悪魔に対する往復の一撃だった。自分達を利用しようとしていた大悪魔に対する復讐の鉄槌だ。

 

 

直後、学園都市に待機していたダイアンが、ウェストコットが、アニーが。ミナを除く黄金夜明のメンバーが黄金の光を纏い本来の姿であるタロットカードに戻っていく。そして世界中に人工衛星からでも確認できる程の量のタロットカードがスコットランドを覆った。

 

「我らは『黄金』。長らく続いてきた悪習を取り除き、神秘に対する誤解を解いて、真に豊かな叡智と生活を捧げる世界最大の魔術結社なり!!邪なる力にさらされし民が目に前にいる。真に自由で制限なき術式を組み立てるときがやってきた。私はここに皆を編む、誰もが想う身近な誰かを守れる術式the Hermetic Order of the Golden Dawnとなれ!」

 

火花、飛沫。それは魔術を使った代償だ。どんな者もこれからは逃れられない。それは大悪魔とて同じ、なんと皮肉な事か。自分の駒として作り出した者達にコロンゾンの悲願は絶たれたのだ。

 

 

「…私の作ったモノが、最後の最後に牙を剝くか」

 

コロンゾンは上を見上げながらそう呟いた。ヘリポートから放たれていた光の柱はメイザースの術式で解除・消滅してしまった。そしてタロットカードから放たれた黄金の光は消え、そこにはマフラーを巻いた軍服の上に外套を羽織った男が立っていた。

 

「……ふん、お前の頼み…叶えてやったぞアレイスター」

 

「…………感謝する」

 

メイザースはアレイスターから顔を背け、アレイスターはそんな彼に笑いかける。

 

「これで終わりだコロンゾン」

 

垣根はコロンゾンへと歩み寄る。コロンゾンはショックのあまり地面へと横たわっている。

 

「お前の幻想(願い)は終わった。敗北者であるお前に言う要求は三つだ。もう悪さをしないと誓う、その言葉に責任を持て、お前が仕出かした罪を償え。この三つの要求を飲んでもらうぞ」

 

「……………それだけか?たったのそれだけか?」

 

そうコロンゾンに三つの要求を突きつける垣根、その世界を滅ぼしかけた自分にそんな罰と言えるか不安な罰を与えるのかとコロンゾンは訝しんだ。

 

「ああ、潤子も言ってただろ?『一緒に世界をどう救うか考えませんか?』てな。コロンゾン、テメェはもう不幸(一人)じゃねえ。俺達と一緒にこの限界になった世界を救おうぜ」

 

そうコロンゾンに右手を差し出す垣根。それを唖然とした顔でコロンゾンは右手を見つめる。この距離ならばあらゆる術式が垣根に命中する。油断しきっている今の垣根なら殺せる。だが、コロンゾンはそれを実行しなかった。

 

(……ああ、そうか。アレイスターの理解者がこいつだった様に…オティヌスの理解者がこいつだった様に…フィアンマの理解者がこいつだった様に…私の、この大悪魔 コロンゾンの理解者も……)

 

目の前の男はありとあらゆる存在の理解者だ。この男の前では聖なる右を持つ男も、魔神も、『人間』も考えを改めた。恐らくコロンゾンにとっても目の前の存在は理解者と呼べる存在なのだろう。

 

「……100年」

 

「あん?」

 

だが、悲しい事に、コロンゾンはその手を掴み、垣根の言葉を承諾する事はなかった。

 

「100年早くお前と出会っていれば…こんな結末にはならずに済んだだろうに…いや、最初に出会った時に…いや、それは過ぎ去った事…もう、手遅れなんだよ垣根帝督。私が手を出す出さない以前にな」

 

「……お前何言って……」

 

悲しげな笑みを浮かべるコロンゾン。垣根がそれを見て何か言おうとしたその矢先、世界全体に亀裂が(・・・・・・・・)走った(・・・)

 

『ーーーー!?』

 

何が起こったのか垣根達には理解できなかった。モ・アサイアの儀は停止した筈だ。ならばこれは一体どういう事なのか?アレイスターはコロンゾンに向かって声を荒げる。

 

「何をしたコロンゾン!?」

 

「……何もしていない。言っただろう?もう手遅れだと。もう遅かったんだよ」

 

そうコロンゾンはひび割れる世界を見上げ悲しげに呟く。

 

「……ま、さか…これがコロンゾンさんの言っていた世界の限界…?」

 

「そうだ帆風潤子。もう世界は限界点を既に超えていた。それを私のモ・アサイアの儀が早めた、攻めてこの様な悲惨な光景を見て生き地獄を味わう前に世界を終わらそうとしていたのに…全部台無しだ」

 

モ・アサイアの儀を止めた所で無駄だった。何せ世界はもう臨界点を超えていたのだから。モ・アサイアの儀はそれを早めただけ。決定打は既に決められていたのだ。

 

「これを止める手立てはないのですか?」

 

「ない。あったら既にやっている。これは空間が割れてるとかそういう次元じゃない。世界がひび割れているんだ。位相も例外なく…な」

 

騎士派の何人かが魔術を行使してみる。だが、うまく発動しない。これも恐らくコロンゾンが言った通り位相も破壊されているのだろう。魔術は位相に干渉し発動するもの。位相こそ魔術の源。故に位相が破壊されれば魔術も発動しない。

 

「終わりだよ、これで。世界はただ終わるだけ。新しく世界が生まれる事もない。…は、やっぱり私はどうしようもない悪性(クソ野郎)だ。守りたかった世界すら…守れないとは」

 

そう枯れた笑いをするコロンゾン。これ程頑張って努力した結果がこれか、やはり自分には世界を救うなど大それた事は出来なかったのか…そうコロンゾンは涙を流した。そして走馬灯の様に永遠と感じた自分の生涯を思い出す。そして最後に思い出したのは…人が魔術を作り出す以前。科学も魔術もまだ何もなかった時代、人間が人間らしく過ごしていた時代だ。

 

「ああ、そうか」

 

コロンゾンは魔術が嫌いだ、人間がその魔術を使った際に生まれる火花、飛沫で苦しむから。コロンゾンは科学が嫌いだ、科学はいずれ人類を滅ぼす可能性があるアポトーシスだから。結局、コロンゾンは世界だけでなく、その世界に住む人間達も好きだったのだろう。

 

思えば10万3,000冊の魔道書を頭の中に記憶するインデックスを幽閉せずに可能な限り自由にしておいたのは…メイザースの契約を破る為とはいえ善行を行っていたのは…世界だけでなく人類を、人を愛していたからではないのか?ならばコロンゾンが守りたかったものとは世界だけでなく…

 

「…………何故、今それを理解してしまったのだ。コロンゾン()

 

人間を守りたかったのだ。そう気づくのは…あまりにも遅過ぎた。遅過ぎたのだ。もうその事実に気づいたとしても手遅れだ。もう世界は滅びる。そしてコロンゾンは自分の存在が消えるその時まで自分が行った事を後悔し続けるのだ。

 

「………まだ、終わってねえ」

 

「ええ、まだ終わってはいませんわ」

 

そんな絶望が漂う中、垣根と帆風はそう呟いた。

 

「来いコロンゾン。まだ終わった訳じゃない。まだこの悲劇を回避する事が出来るかもしれない」

 

「無理だ……もう終わっんだ。世界は滅び…」

 

滅びる、そう言いかけたコロンゾンの襟首を垣根は強く掴んだ。

 

「巫山戯てんじゃねえぞコロンゾン。お前は世界を守りたかったんだろ?なら最後まで諦めんな!守りたいのなら最後まで守り通せ!どうせ死ぬなら最後まで意思を貫いてから死ね!」

 

そう力強く叫ぶ垣根。コロンゾンはその言葉を聞いて僅かに目を見開いた。

 

「……行くぞ潤子。俺達にやれる事はないかやってみるぞ」

 

「………はい」

 

二人は翼を展開しクイーンブリタニア号の甲板へと向かう。それを眺めているだけのコロンゾン。

 

「………俺達も行くぞ。何にも役に立てないかもしれねえけど、このままここでジッとしてるよりはマシだ」

 

上条達も垣根と帆風の後を追いクイーンブリタニア号の内部へと入って行く。

 

「私達も行くぞ、若者達だけでは心配だからね」

 

アレイスターも脳幹とオティヌス、メイザースを連れて彼等の後に続く。それを見ていたエリザードもカーテナ=セカンドを掲げ娘達と騎士達に向けて声を出す。

 

「私達も行くぞお前達!最早事態は英国だけに留まらない!学園都市と共にこの世界の危機を救う!分かったか!」

 

エリザード達は自分達で出来る事をやる為にクイーンブリタニア号ではなく、他の国と連絡を取る為に通信霊装で各国に協力要請を出す。

 

インデックス達もアウレオルスも世界崩壊を防ぐ為に自分達で出来る事をやっていく。それをただ呆然とコロンゾンは見ていた。

 

「……何故、何故諦めない?何故人は…滅ぶのを諦めない?」

 

そんなコロンゾンの問いに、ある人物が答えた。

 

「それが人間だからだよコロンゾン」

 

「………娘々、それにクトゥルフ」

 

先程倒した筈の娘々とクトゥルフがコロンゾンを見下ろしていた。

 

「人間て生き物はさコロンゾン、生き汚いんだ。自分が生きる為に何でもする。それは確かに汚いかもしれない…でも、それが人間の証明なんだよ」

 

「……人間の、証明」

 

「……そうだ、どんなに命の瀬戸際に追い込まれても決して諦めない。渋とく自らが生き残る道を考える…それが、人間だ」

 

人間は生に醜い程しがみつく、だがそれこそが人間なのだ。そう二人は語る。

 

「見なよコロンゾン。あの人間達の団結力…国も所属してる世界も違うのに皆頑張って世界崩壊を止めようとしてる…凄い事だと思わない?」

 

誰もが皆、共通の目的を前に一致団結し世界が滅ぶのを阻止しようとしている。その光景を見て娘々は微笑む。そしてコロンゾンへと視線を戻す。

 

「ねえ、アンタは世界を守る為にこれまでやってきたんでしょ?こんな所でボーとしてていいの?」

 

娘々はそうコロンゾンに呟く。こんな所で何もせずに見ているだけでいいのかと。

 

「アンタだって守るべき何かがあるんでしょ?アンタだって譲れない何かがあるんでしょ?なら立ち上がれよクソ悪魔。アンタはアンタの為すべき事やれよバーカ」

 

煽っているのか励ましているのか分からない様な言葉をコロンゾンに言う娘々。

 

「…………………」

 

コロンゾンはゆっくりと立ち上がる、そして幽鬼の如くクイーンブリタニア号へと向かっていく。ただその目だけは静かに、激しく燃えていた。

 

「さーてと、ワタシ達はどうする?ワタシがコロンゾンに倒された時、使い魔を世界各地に送って見てた映像だと僧正とネフティスは学園都市と英国、バチカン、ロシア、フランス、アメリカ以外の各国を天使達から守ってたみたいだけど…ワタシらも神様らしい事しとく?」

 

そう相方のクトゥルフに問いかける娘々。クトゥルフはジィーと娘々を見つめた後、踵を返して立ち去ろうとする。

 

「ちょっと、どこ行く気?」

 

「……………寝る」

 

クトゥルフはそう言って海がある方角まで目指す。娘々はそれを見て溜息を吐く。

 

「はぁ〜海の深淵に潜って昼寝する気?本当それ好きだな〜ま、いいか。人間達がなんとかしてくれるでしょ。神様なんていなくてもなんとかなるさ」

 

娘々はそう言ってその場から消えたのだった。

 

 

クイーンブリタニア号甲板にて、アレイスター達はヘリポートに置かれたオナーズオブスコットランドの解析を行い、少しでもこの事態に対抗出来ないか探り、インデックスは頭の中の10万3,000冊の魔道書の知識からこんな事態に対応する文献はないか探る 。

 

「くそ……魔神の力といえど位相を操る力だからもうこの状態では何の役にも立たねえ!」

 

「ーーーーッ!!!」

 

垣根と帆風ですら現在の状況をどうすればいいのか分からない。神ですらこの終わる世界をどうすることも出来ないのだ。まさに打つ手なし、徐々に世界は亀裂が大きくなり世界全体へと広がっている。

 

「……私にも出来る事はないか?」

 

「……よお、待ってたぜ」

 

コロンゾンが二人の背後から声をかける。垣根はコロンゾンの姿を見て笑みを浮かべる。帆風も微笑みながらコロンゾンを見ていた。

 

「……垣根帝督、お前にはこの状況を打破する考えはないのか?いつも私の予想を超えてきたお前だ、それくらいの考えはありそうなものだが」

 

「ご生憎様ねえよ…まあ、お前がやろうとしていたモ・アサイアの儀の正反対なやり方は知ってるけどな」

 

「正反対なやり方…?」

 

帆風が垣根が言ったモ・アサイアの儀の正反対なやり方と言う言葉に首を傾げる。

 

「その正反対なやり方てのは『プロジェクト=ベツレヘム』。かつてフィアンマが行おうとしていたやり方でな、大規模術式により世界の歪みを直し、正常にする計画…なんだが、これにはガブリエルの天体制御と聖なる右、ベツレヘムの星ていう巨大浮遊要塞が必要だ。ガブリエルと聖なる右は簡単に手に入るがベツレヘムの星を製造している時間はねえ、だから無理だ」

 

「……聖なる右もガブリエルも本来はそう易々と手に入る物ではないワンメイク物なのだがな」

 

そう呆れるコロンゾン、聖なる右を複製出来る未元物質やガブリエルの天使の力をその身に降ろし天使の権能を扱う天使崇拝がおかしいだけで、どれもそう簡単に手に入れる事は出来ねえよとツッコむ。

 

「今から世界の歪みを直す?いや遅過ぎる。なら新しく世界を作り直す?位相操作できねえし、なんの解決にもならない…クソどうしたらいい?」

 

垣根は第一位としての頭脳を働かせ思考するが解決策は見つからない。樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)と一方通行の演算能力を持つカブトムシ数百体と脳波を接続してあらゆる考えを模索するがどれも成功する可能性が0だった。

 

「くそ…!いい方法はねえのか!?このままじゃ世界が…!」

 

打つ手なしか、そう垣根が諦めかけたその時。

 

「いいえまだあるわよ」

 

『!?』

 

いつの間にか甲板に一人の少女と天使が船の柵の上に座っていた。

 

「だ、誰だお前ら…?」

 

上条は驚きを隠せていない声でそう呟いた。アレイスターは少女と天使の正体を知っているからなのか怒りで身体を震わせていた。

 

「エイ、ワス!それに貴様はアンナ=シュプレンゲル!何しにここに来た!?」

 

「煩いわねアレイスター。わらわ達が親切心でどうやったら世界が救えるか教えに来てやったというのに…教える気がなくなっちゃうじゃない」

 

「………何?」

 

世界を救う方法を教えに来た、そう確かに彼女はそう言った。その言葉に誰もが耳を疑う。

 

「それは本当ですかアンナさん?」

 

「ええ本当よ。わらわにとって世界がなくなるなんてどーでもいいんだけど、ここでわらわのお気に入りが消えるのは嫌だし、教えてあげるわ…ただし、それを実行するかどうかは貴方達次第よ垣根帝督、帆風潤子」

 

そうアンナは赤みの強い金髪縦ロールの先をくるくると弄びながら薔薇色の瞳で二人を見つめた。

 

「何を巫山戯た事を…」

 

「巫山戯てなどいないわ」

 

そうアレイスターの言葉を遮るアンナ、アンナは柵から降りて垣根と帆風へと歩み寄る。

 

「耳を貸しなさいわらわのお気に入り。わらわの解決策を教えてあげる」

 

そう二人だけに世界を救う術を教えるアンナ。それを聞いた二人は目を見開く。

 

「おい、何を教えたんだアンナ=シュプレンゲル」

 

「さあね?さあ、二人に聞くわ。貴方達が選べる選択肢は三つ。このまま世界が滅びるのを指を咥えて見ているか、この世界と友人知人を見捨てて貴方達だけわらわ達と一緒になるか、それとも新たな世界(・・・・・)の為の生贄となるか(・・・・・・・・・)。さあどれを選ぶのかしら?」

 

「生、贄…だと?」

 

アレイスターはその三つの選択肢の内、生贄になるか、それに反応した。それはどういう意味なのかと問いかける前にアンナが口を開く。

 

「生贄…人身御供。神への最上級の奉仕として捧げ物として人間を殺し与える事。または聖書では不満、憎悪、責任を転嫁する贖罪の山羊(スケープゴート)。または日本神話における死体から食べ物が産まれたウケモチ、ヴェマーレ族に伝わる神話 ココナツの花から生まれ、死して五穀を産んだハイヌウェレ。死してその死体から最高の武器 天叢雲剣をスサノオに残した八岐大蛇、ペルセウスに討たれその首が武器となり後に盾に組み込まれたメデューサ。時に神は生贄となり勝利、繁栄、豊穣などを祝福する。ならば、目の前の二柱の神を世界への生贄とすれば世界の歪みは元に戻る」

 

そう長々と小難しい話をするアンナ。上条達には半分も内容が飲み込めない。だがアンナが言わんとしている事は分かる。つまり、世界を救う為に垣根と帆風を生贄として捧げろ。つまり二人に死ね(・・)と言っているようなものなのだ。

 

「………いい加減にしろ、クソ女」

 

アレイスターが口を開いた、右手に衝撃の杖を持ちアンナを睨む。

 

「お前はまた私から奪うのか!エイワスを使ってリリスを奪い、垣根帝督の右腕を奪い、そして今度は我が親友とその女を奪うと!?巫山戯んのもいい加減にしろクソ女が!」

 

アレイスターは怒り、アンナへと魔術を放とうとする。そんなにアレイスターに垣根は一瞬で背後に回り手刀を首に叩き込み意識を刈り取った。

 

「が、ぁ?」

 

「……悪ぃなアレイスター」

 

「か、き……い、とく…?」

 

ドサリと船の床に倒れるアレイスター、それを見て唖然とする上条達。

 

「か、きね…?おま、何して……」

 

「悪いなお前ら。これしか方法がねえんだわ」

 

そう簡潔に垣根は言った。

 

「……そう、貴方は、いえ貴方達は生贄になる道を選ぶのね。ああ、残念だわ。わらわと共に来ればわらわの椅子とテーブルにしてあげるのに」

 

「それは願い下げだ馬鹿」

 

「丁重にお断りしますわ」

 

『まあ、そうだろうな』

 

二人に同意したエイワスにアンナは腹パンを放ち、エイワスの腹に穴を開けた。

 

「でも言ったはずよ?生贄になれば貴方達はもう二度と誰とも干渉できない。未来永劫途切れることのない世界を一生見続けることになると。それでもいいの?」

 

「ああ、それで世界が滅びねえなら安いもんだ」

 

「わたくしも同意見ですわ」

 

「……………そう」

 

アンナはその答えをどこか面白くなさげに聞くと、エイワスの元へと戻りそのまま現れた時同様唐突に消えていった。

 

「……さて、行くか潤子」

 

「……はい、何処までも御伴しますわ帝督さん」

 

二人はクイーンブリタニア号の近くに出現した大きな亀裂へと歩み始める。上条達は何となく二人が何をしようとしているの察する。

 

「おい!何しようとしてんだ垣根ッ!」

 

「………当麻」

 

二人の行く道を上条達が塞いだ。そんな真似は絶対にさせないと。自分達が阻止して見せると。

 

「そこを退いて来れませんか?」

 

「嫌だ!どうしても退いて欲しかったら俺達を倒してから……」

 

「なら、そうさせてもらう」

 

上条が言い終わる前に垣根が右手の人差し指を上条達に向ける。上条達が人差し指を見た瞬間、意識が遠のいていくのが分かった。

 

「こ、れは……操祈の…心理掌握?」

 

そう呟いたのは美琴。これは食蜂の心理掌握だと見抜いた。だが能力の強度が桁違いだ。電磁バリアに守られている美琴や反射が使える一方通行、幻想殺しで効果を無効化する上条。それらの守りを突き抜けて六人の意識を刈り落としたのだ。

 

「か、き………………ね…………………」

 

そう薄れゆく意識の中上条が垣根へと手を伸ばす。それを見た垣根は上条に優しく微笑んでこう呟くのだった。

 

「………またな(・・・)

 

その一言を聞いて上条の意識は完全に途切れた。それを黙って見つめるオティヌス、脳幹。倒れたアレイスターを肩に担いで持ち上げているメイザース。三人の方を向いて垣根は言葉を放つ。

 

「じゃあな、オティちゃんも脳幹先生もメイザースも、三人に会えて楽しかったぜ」

 

「……私もだよ。理解者(盟友)と出会えてよかった。さらばだ」

 

「……君に迷惑は何度もかれられたが…まあ、嫌ではなかったよ」

 

「…………ふん、精々自己犠牲の偽善に酔いしれるがいい」

 

三人に別れを告げ、次に垣根はコロンゾンの方へと向き直る。

 

「コロンゾン、お前に突きつけた三つの要求はやっぱ無しだ。代わりにお前には罰を与えてやる」

 

「………罰?」

 

垣根は一呼吸置いてコロンゾンにこう宣告した。

 

「生きろ、新しい世界で大悪魔としてではなく、単なる定命の命としてな。それがお前に与える罰だ」

 

「!?私に…生きろというのか?」

 

新しい世界で生きろ、それが罰と知り眼を見開くコロンゾン。そんな大悪魔から眼を離し二人は大きな亀裂の前に立つ。

 

「……怖くないか?」

 

「怖くなどありませんわ。貴方と一緒ですもの」

 

「……俺一人だけ生贄になってもいいんだぜ?」

 

「帝督さん一人だけなんて、そんなの絶対にさせませんわよ」

 

「……本当にいいのか?」

 

「いい加減にしないと怒りますわよ?」

 

亀裂の前でそう言い合う二人、帆風は垣根の手を握り彼に微笑んだ。

 

「わたくしは貴方と一緒じゃないとダメなんです。わたくしだけでも帝督さんだけでもダメ。わたくし達は二人で一人、最高のパートナーなのですから、だからどんな時も一緒です。ずっとずっとずっと…わたくし達はもう二度と離れたりしませんわ」

 

「………そうか、そうだな」

 

彼女の笑みを見て垣根も微笑んだ。

 

「帝督さんこそやり残した事はないんですか?」

 

「……やり残した事、ねえ」

 

垣根は瞼を閉じて思い出す。今までの人生を。上条と美琴、食蜂のカップリング写真を撮った。麦野と浜面の写真を撮った。一方通行と打ち止め、エステルの写真を撮った。削板とアリサの写真を撮った。アレイスターがリリスと共に笑い合う写真を撮った。自分が今まで撮影してきた写真を脳裏で思い出し垣根はくすりと笑った。

 

「ねえな。満月の様に満ち足りた充実した幸せな人生だったよ」

 

「わたくしもです。辛い事は確かにありましたが…帝督さん(あなた)と出会えた。それだけでわたくしは幸せですから」

 

そう笑い合って、二人は亀裂の中へと飛び込んだ。それは世界へ自らを捧げる贄だった。二人は亀裂の先にある空間に落ちていく。無限とも言えるその亀裂の先の闇へと、落ちる落ちる落ちる。そして二人の姿が見えなくなる。

 

そして、亀裂から光が溢れる。それは希望の光。地球だけに留まらず宇宙にも無数に空いた亀裂から光が漏れる。光は亀裂から無限に放射され世界を包み込んでいく。それは歪みを直す為に、世界を正常にする為に、コロンゾンが願っていた通りに世界があるべき姿に戻っていく。

 

「……そうか、漸く分かったぞ垣根帝督。お前の正体(・・)が」

 

コロンゾンは光に包まれて漸く気づいた。垣根帝督の正体に、彼はこの世界におけるイレギュラーだった。異なる魂を持つ者だった。だがそんな彼が何故この世界に現れたのかコロンゾンはずっと考えていた。その答えに漸く今気づいたのだ。彼の正体は、そして誰が彼をこの世界に呼んだのか。

 

「垣根帝督、貴様はこの星が、この世界が、この宇宙が呼んだ抑止力(・・・)だったんだな」

 

その呟きと共に、世界は光に包まれ新しく生まれ変わるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




この作品を書き始めた頃からこんな終わり方にするて決めてました。ていとくんの正体はこの星が宇宙が選んだ抑止力でした(どこのFateだ)。ちょっと御都合主義感がおるけど気にしないでください

次回最終回、少し投稿が遅れるかもですがお許しを…作者もリアルでは面接練習に追われ自由時間がない学生ですから(泣)

次回もお楽しみに!


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終わりよければ

今回で「カプ厨がていとくんに憑依転生しました」は最終回となります。長い間ご愛読頂きありがとうございます。作者の次回作も乞うご期待下さい。

今回はほのぼの系。最終回に相応しいように頑張って書きました。さてどんな終わり方になるのか?お楽しみに


「ふぁぁぁぁ〜〜〜、よく寝た」

 

上条当麻は眼を覚ました。彼は毎朝6時に眼を覚まし、服を着替え6時半には家族と一緒にご飯を食べている。

 

「さて、さっさと服を着替えてご飯を…おっと、その前に我が天使達を起こさねば」

 

そう言って彼は布団をめくりながら、自分のベットで寝ている栗色の髪の少女と蜂蜜色の髪の少女の頭を撫でる。

 

「おい、起きろ美琴、操祈。もう朝だぞ」

 

「んぅ……ふにゃ、おはよー当麻君」

 

「……ふぁぁ…おはよう当麻さん」

 

二人の名前は御坂美琴と食蜂操祈。上条の幼馴染であり、恋人だ。幼い頃から家が近い事もおり三人一緒に遊び、そんな関係を上条が高校に入るまで続けていたら、中学を卒業する時に二人同時に告白された。しかもどちらか選んでではなく両方とも選んでというまさかの選択肢で、勿論上条は歓喜の涙を流しながら頷いた。その事を親友達に話したら…

 

 

『……現実でハーレムてあるんやな』

 

『……流石カミやん。略してさすカミだにゃー』

 

『……実に貴様らしいというか…まあ、幸せにしてやりなさいよ」

 

『……結婚したら式に呼べよォ』

 

『二人養う覚悟なんて凄え根性してんな当麻!俺なら絶対に無理だぜ!』

 

 

一部からは若干少し惹かれていた。是せぬ。

 

「もう朝ですよ〜、一緒に朝ご飯食べに行きましょうね〜」

 

「「ん……(コクッ)」」

 

寝ぼけ眼を手で擦ってベッドから起き上がり、二人はパジャマを脱ぎ始める。慌てて上条は二人から眼をそらして自分も服を脱いで学生服に着替える。そして三人一緒に一階に降りる。

 

「お、おはよう当麻。それに美琴ちゃんに操祈ちゃんも」

 

「おはよう親父」

 

「おはようございますお義父さん」

 

「おはようございますお義父様」

 

新聞を広げ椅子に腰掛けているのは当麻の父 上条刀夜。ごく平凡のサラリーマンというが実は超有名企業の超優秀な営業マンである。

 

「あらおはよう当麻さん、美琴さん、操祈さん。朝ご飯が丁度出来た所よ」

 

台所から出てきた二十代前半に見える女性は上条の母 上条詩菜。ニコニコと笑いながら彼女は朝ご飯をダイニングテーブルに置いていく。

 

「「「「「いただきます」」」」」

 

五人は一緒に手を合わせ食事を食べ始める。今日の朝ご飯は目玉焼き、トマト、キャベツ、白米、味噌汁だった。

 

「聞いてくれ当麻。今度仕事でナイジェリア行くんだけどお土産は何がいい?」

 

「親父がいいと思ったやつならなんでもいいよ。でも変な物は買ってくんなよ。フンコロガシの死体買ってきてきた時みたいにまた母さんが怒るぞ?」

 

「ははは、気にし過ぎた当麻は!今度もまた凄く面白い物を…」

 

「あらあら刀夜さんたら…あら。こんな所に丁度いいお皿が」

 

「すいませんでした!」

 

空中で三回転して土下座する刀夜。これが大人のする事なのかと情けない父親の姿を上条は見下ろしていた。

 

ご飯も食べ終わり、三人は学生鞄を持って学校へ行こうとしていた。

 

「じゃあ行ってくるなー」

 

「行ってきますお義母さん」

 

「行ってきますねお義母様」

 

「ええ、三人共気をつけてね」

 

詩菜に見送られ三人は学校へと向かう。上条はとある学校(学校名不明)、美琴と食蜂は常盤台中学と別々の所なのだが途中までの道は同じな為、いつも一緒に登校している。するとお隣の家から何人かの男女が出てきた。

 

「あ、お姉様達もお兄様だ!おはよう!てミサカはミサカはお姉様にダーイブ!」

 

「おはよう里奈(りな)道行(みちゆき)先輩に迷惑かけなかった?」

 

「うん!道行お兄ちゃんと楽しく遊んでたよ!てミサカはミサカは笑顔で教えてみたり!」

 

「そっか、よかったね。道行先輩もありがとうございます」

 

「は……別にィ。このガキの世話なら慣れてるから平気だ」

 

美琴を小学生くらいにしたような容姿の彼女の名前は美琴の妹 御坂里奈。五人姉妹の一番末っ子だ。因みに長女は御坂亜衣(みさかあい)。現在大学生だ。そして巨乳。次女は美琴。三女が外国人の男性エツァリと交際してる中一の御坂望(みさかのぞみ)。美琴と同じく上条が好きな同じく中一の四女 御坂妹子(みさかいもこ)。そして両親が共に海外に出張している今、里奈を預けている人物の名前が目の前の白髪赤目の上条の同級生 木原道行だ。

 

「ほら、上条さっさと学校行くぞ。クソガキも気をつけて学校行けよ。転ぶんじゃねえぞ、怪しい奴について行くなよ」

 

「はーい!心配してくれてありがとー!て、ミサカはミサカは手を振って学校へと駆け出すのだー!」

 

「たくっ、転ばねェか心配だな」

 

この男、強面な外見とは裏腹に子供達には凄く優しいので男女問わず小学生達に好かれている。

 

「ふう…今日も騒がしいな君達は」

 

「全くなんだよ、とうま達はもう少し静かに出来ないのかな?」

 

そうため息を吐きながら上条達に近づいて来たのは近所の風斬という家にホームステイしている英国からやって来たステイル=マグヌスとインデックス=ディディカートゥスだ。

 

「おはよう二人共。相変わらず二人仲良く学校行くのか。はは、このバカップルめ」

 

「本当にお熱い二人ね、ヒューヒュー」

 

「愛情力高過ぎよぉお二人さん〜」

 

「「その言葉、そっくり返すよバカップル」」

 

上条の両腕にしがみついてイチャコラしている奴らにバカップルて言われてもブーメランである。

 

「ほら、こんな馬鹿な奴らは放って置いて早く学校に行くぞインデックス」

 

「そうだね、じゃあね皆」

 

そう行って二人が学校に行こうとした時、インデックス達がホームステイしている家…風斬家の扉がバンっ!と開き、眼鏡をかけ茶色の混じった黒髪で、長いストレートヘアから一房だけ束ねられた髪の少女…風斬氷華とその義妹 風斬=クロイトゥーネが慌てて出てくる。

 

「二人共お弁当忘れてるよ!」

 

「ん。弁当忘れてる」

 

「あ、本当なんだよ。ありがとねひょうか、クロイトゥーネ」

 

「すまないね風斬さん」

 

そんな風斬達を尻目に上条達はさっさと学校に行くべく道を歩き始める。因みに風斬は上条と道行と同じ高校なのだがドジっ娘の為、毎回ギリギリの登校をしてくる。

 

「おーい!先生ー!」

 

「……面倒なのが来やがった」

 

遠くから道行を呼ぶ声が聞こえる。ため息を吐く道行。走ってやって来たのは金髪緑目の少女だ。

 

「……なンか用かエステル」

 

「いいや、何も!ただ先生を見つけたから声をかけに来ただけだ!」

 

「…………」

 

エステル=ローゼンタール。小学生時代に不良に絡まれていた所を道行が助け、それ以来先生、先生としっぽを振るワンコの如く寄って来る様になった忠犬系女子である。

 

「そうだ。今思い出したんだが来週中間テストがあってな!またテスト勉強を教えてもらいに先生の家に行ってもいいか!」

 

「………好きにしろォ」

 

「ありがとう先生!ではまた!」

 

来た時同様手を振りながら走って去って行くエステル。嵐みたいな奴だと道行はため息を吐く。

 

「『だが嫌いじゃねェ、胸も大きいし可愛いし、そンな奴に好かれて嫌な筈ねェだろ』」

 

「『いつかあいつのたわわをこの両手でマッサージと嘯いて揉みまくってやるぜ』」

 

「『あいつの火照った声を聞いたら、俺の息子が一方通行だァ』」

 

「何巫山戯て事抜かしてンですかねェ、このバカップルさァァァァァン達はァァァァァ!!」

 

道行の声真似をして卑猥な事を呟くバカップル。取り敢えず道行はブチ切れた。

 

「あはは、道行先輩を揶揄うのは楽しいな〜じゃあね当麻君。また放課後」

 

「道行さんは反応が面白いから悪戯力が出ちゃうのよね〜。てな事で私達はこの辺で」

 

「おう、気をつけろよー」

 

V字型の分かれ道で上条と道行は左の方へ、美琴と食蜂は右の方へ進んで行く。そのまま上条と一方通行はとある高校へと進み、校門を通る。そして下駄箱に靴を入れ上履きに履き替え教室へと向かう。

 

「おお、おはよう!当麻に道行!今日も一緒に頑張ろうな!」

 

「朝っぱらから五月蝿ェぞ軍覇」

 

教室に入るなり大声で挨拶してきたのは道行と同じ小学校からの腐れ縁の削板軍覇だ。学ランのボタンを全て外し一昔前の番長の様に羽織り、頭にはハチマキをつけている。そんな彼の横で削板の幼馴染で彼女のアリサ=セクウェンツィアが苦笑いを浮かべている。

 

「あはは…おはよう当麻くん、道行くん。ごめんね軍覇くんが煩くて」

 

「いいて、この馬鹿が五月蝿えのは昔からだしな」

 

「だがもう少しばかり静かになンねェのかこの馬鹿は…」

 

「すまねえがそれは無理だ道行!何さ俺は生まれてからずっとこの音量だからな!まあ根性で耐え抜いてくれ!」

 

「そのオマエの根性で声を小さくする事は出来ないンですかねェ…」

 

そうため息をこぼす道行、豪快に笑う削板、そんな削板を見て微笑むアリサ。上条はそんないつも通りな三人を見ながら席に座る。

 

「カミやーーん!数学の宿題写させてえな!」

 

「また宿題忘れてきたのかにゃー青ピ?」

 

「全く、それぐらい自分でどうにかしなさい!」

 

「んな殺生な事言わんといてぇなフッキー、てな訳でカミやんお願いいたします。今度からあげクン奢るから」

 

「はぁ………仕方ねえな。ほらよ」

 

「おおきに!ホンマ助かったわカミやん!」

 

上条から数学のノートを借りて両手で拝む青ピ。そんな青ピを見てため息を吐くシスコン軍曹こと土御門元春に渾名は委員長、でも委員長は青ピこと吹寄制理。因みに上条は宿題で分からないところは美琴と食蜂に教えてもらっている。最近の中学生て賢いや。

 

「もし良かったら、今日デートに行かないっスか猟虎?」

 

「え!!?わ、わわわわわたくしと!?え、ええ構いませんよ…」

 

「あら、入鹿さんのお姉さん顔真っ赤じゃないヒューヒュー」

 

「心理さんて人の恋路見てるの本当に好きですね」

 

常にオドオドしている少女 弓箭猟虎。彼女をデートに誘ったのは休日に趣味で買ったゴーグルみたいな変な被り物をしていないと地味な少年でしかない 通称「ゴーグルが本体」こと誉望万化。顔を真っ赤にする猟虎を見て面白がっているのが獄彩 海美(ごくさい かいび)。その横にいるのが弓箭入鹿だ。

 

「削板軍覇ァ!今日の放課後俺と戦え!」

 

「……また来たよモツ鍋」

 

隣のクラスの横須賀が扉を勢いよく開けて果たし状と汚く書かれた紙を削板へと投げつける。また来たのかと頭を抱えたのがクラスメイトの原谷矢文。

 

「おーい馬場ちゃん。今日ボウリングいかね?」

 

「ごめんねトール君。実は僕今日婚合さんと湾内さん、泡浮さん達とのトリプルデートの予定でね。また誘ってくれるかな?」

 

「お、おう……流石馬場ちゃん。上条ちゃんを超えるハーレム王だぜ」

 

「てか、よくあいつ刺されないよね?それに美少女三人組はあんな小太り男の何処に惚れたんだか…人生て分かんないね」

 

「じゃがバター旨し」

 

彼女三人持ちの馬場芳郎。彼をカラオケに誘ったのは喧嘩屋 トール。解剖と図工(と加群先生大好き)マリアン=スリンゲナイヤー。とある高校の現社の教師 オッレルス=アースの妹ことじゃがバター系女子 オティヌス=アース。

 

「おはよう上条当麻(ハーレム肯定野郎)。昨日は彼女達とイチャコラしたか?」

 

「よう上里翔流(金髪幼女趣味クソ野郎)。当然だろうが。お前もパトリシアちゃんと一緒に風呂入ったのか?」

 

「勿論、やっぱり幼女て最高だな」

 

「死ねよロリコン」

 

「お前が死ねハーレム」

 

そう挨拶がてらに喧嘩を売って来たのが上里翔流。この二人はとても仲が悪い。ざっくり言えば同族嫌悪だ。上条は美琴と食蜂、二人と付き合ってるハーレム肯定野郎と12歳の幼女と付き合っている金髪幼女趣味クソ野郎…お巡りさん、こいつらです。

 

「はーい、皆さんお喋りはストップ。今日の授業を始めますよ〜」

 

そう言って教室に入って来たのは担任の木原 唯一。超有名な会社 木原コーポレーションの木原一族の一人で科学の教師をこの学校でやっている変わり者…にして性的対象が犬で、脳幹と名付けたゴールデンレトリバーの老犬「先生」と一線超えたヤベー女である。

 

まあ、他にも見た目36歳なのに18歳な教育実習生の神裂火織、通称 博士こと数学大好きな数学の先生辞儀 草(じぎ そう)。見た目幼女、中身おっさんな小萌先生。じゃんじゃん煩い黄泉川愛穂。道行の父親で子離れ出来ない 木原数多。授業中に居眠りばかりする芳川桔梗。そんな芳川の婚約者で苦労人な天井亜雄。他校の生徒 姫神秋沙と付き合っている英語教師(ロリコン)アウレオルス=イザード。ボランティア大好き俺様系歴史教師 フィアンマ=ミカエル。ギャンブル大好き校長 サミュエル=リデル=マグレガー=メイザース。その妻でダメ夫を鉄拳制裁する副校長 ミナ=メイザース。そして学校の理事長の下ネタ大好き卑猥親父 アレイスター=クロウリー…どれもこれもまともなのが天井しかいないのだ。この学校には上条含めてまともな奴が複数人しかいない。

 

「さぁて、ホームルームを始めます。では出席取ります。一席……」

 

唯一が出席簿を開いて出席を取っていく。今日もいつも通りの、そして楽しい学校生活が始まった。

 

 

「はい、では今日も一日お疲れ様でした。明日も元気よく学校に来てくださいね〜。さて、先生もさっさと仕事終わらせて定時に帰って先生とイチャコラを…へ、へ、へ」

 

帰りのホームルームが終わり、クラスメイト達は鞄を持って帰り始める。オティヌスとトール、マリアンの三人組はいつもの様にゲーセンに、馬場は部活のロボット工作部に向かい、上里は軽やかなステップでパトリシアが待つ小学校へと向かう。誉望は顔から湯気が出るほど顔を赤くした猟虎の手を引いて教室から出て行き、それをカメラ片手に追いかける海美、姉の尾行をする入鹿。削板もアリサを連れて日課のジムに行ってしまった…教室に残ったのは上条と道行だけだった。

 

「は〜本当一日が過ぎるのて早いよな」

 

「そォか?」

 

二人も荷物を鞄の中に入れると教室から出て、廊下を歩き下駄箱にしまってあった靴を上履きと交換し履き替える。

 

「道行はこの後どうすんの?」

 

「俺はスーパーに行って買い物して帰る予定だ。クソガキが今日の晩御飯はハンバーグがいいって昨日駄々こねやがってな…たく、贅沢なガキだぜ」

 

「でもなんやかんや言って作ってあげる道行て本当にロリコン(紳士)の鑑」

 

「おィ、紳士て言葉に悪意を感じンぞ」

 

「気の所為でせうよ」

 

そう楽しげに会話しながら歩く二人。ふと途中で上条が立ち止まり、空を見上げた。

 

「……なんか足りなくねえか?」

 

「あ?何がだよ?」

 

「……なんか、さ。足りねえ気がするんだ。何か分かんねえけど」

 

「いや、オマエが何が言いてェのか分かんねえよ。つまンねえ事言ってンなら置いてくぞ」

 

道行はそう言って歩き始める。上条は暫く虚空を見つめていたが…前を向いて道行の後を追いかけた。

 

 

途中で道行と別れ、彼は美琴と食蜂が待つ公園へと向かう。その途中である集団に出会った。

 

「あ、浜面パイセン」

 

「お、上条じゃないか。珍しいなこんな場所で出会うなんて」

 

高校三年生で生徒会長の浜面仕上と生徒会メンバーに出会った。同じく三年の副会長の麦野沈利。二年の庶務のダイアン=フォーチュン、アリサの姉で二年の書記のシャットアウラ=セクウェンツィア、会計のフレンダ=セイヴェルンがゴミ拾いをしていた。

 

「何してるんっスかパイセンにむぎのん」

 

「おい、浜面はパイセン呼びなのになんで私は渾名なんだ上条?○すぞ」

 

「プークスクス!麦野さんたら後輩から慕われてないじゃないのー!三年なのに!プークスクス!なっさけなーい!」

 

「おK、お前はオ・シ・オ・キ・か・く・て・い・ね」

 

「あ〜…また、浜面ガチ勢達の争いが始まったて訳よ……」

 

「はぁ……やれやれだ」

 

フシャー!と睨み合う浜面ガチ勢(麦野とダイアン)。そんな二人を見てため息を吐くシャットアウラとフレンダ。浜面はそんな二人に気づかず上条に近付く。

 

「良かったら上条もゴミ拾いしてかないか?町内会からの依頼でな、ここら辺の一体のゴミを拾ってるんだ。一緒に人の為になる事をして気持ちのいい汗をかかないか?」

 

「あ、すんません。俺これから彼女達との待ち合わせで…」

 

「そうか…それは残念だ。じゃあまた機会があったらな」

 

上条は浜面からの誘いに断りを入れその場から立ち去ろうとする。浜面はそれなら仕方ないと諦めゴミ拾いの続きをしようとする。

 

『ん?何してんだ麦野、ダイアン?』

 

『『このアマぶっ殺そうとしてる!』』

 

『こら、女子がそんな汚い言葉を使うな!それにこんな所で暴れたら周りの人の迷惑になるだろ!二人共いい歳なんだからそれくらいわかるだろう!』

 

『『………はい』』

 

『さす浜だな。あの暴れ馬達の手綱をしっかりと握っている』

 

『結局さす浜て訳よ』

 

遠くからそんな会話が聞こえてきた。上条は二人が待つ公園へと急ぎ、公園の自動販売機を蹴っている美琴と彼女のスカートを覗こうとしている操祈を発見した。

 

「いや何してんの美琴。そして本当に何してんだ操祈」

 

「あ、遅かったね当麻君。暇だったから自動販売機蹴ってたのよ。蹴ったら何か出てこないかな〜て思って」

 

「私はただスカートという大宇宙の中に輝く太陽を眺めていただけよ」

 

「それは犯罪だぞ美琴。そして操祈、お前の場合はガチで犯罪だしちょっと何言ってるか分かんない」

 

暇潰しに自動販売機を蹴るという器物破損などで訴えられそうな事をしでかす美琴、そして食蜂は色んな意味でアウトだった。

 

(まあ、そんな二人が俺は好きなんだけどな)

 

この男もこの男である。

 

「そういえばこの公園に来るのも懐かしいわねぇ。当麻さんがまだ中学生だった頃はよく皆でここで馬鹿な事してたわよねぇ」

 

「そういえばそうね、ここら辺で皆で遊んだりして…楽しかったわね」

 

「ああ、そうだな。俺達六人(・・)で…」

 

上条はこの公園での記憶を思い出す。上条、美琴、食蜂、道行、削板、麦野の六人組(・・・)でこの公園で花火をして町の人に怒られたり、落とし穴掘って道行をそこにダストシュートしたりと色んな事を皆と一緒にやっていたものだ。

 

「………六、人?」

 

「?どうしたの当麻君?」

 

美琴が上条に問いかける。どうかしたのかと。上条は軽く右手で頭を抑えながら口を開く。

 

「……なあ、俺達て本当に六人だけだったか?」

 

「?どういう意味かしらぁ?」

 

「そのままの意味でさ…なんか足りない気がするんだ。二人、後二人は俺達の輪の中にいた気がするんだ。それが誰だか分かんねえけど…なんか違う気がするんだ」

 

「???いや私達は六人だったよ当麻君?」

 

上条が自分達六人の他に後二人いた様な気がすると呟く。彼のその言葉を聞いて二人は心配そうな表情で上条を見つめる。

 

「もしかして当麻さん学校で疲れてるんじゃないかしらぁ?疲労力が溜まってるんじゃない?」

 

「そうね、操祈が言ってる事もただしいかもね…少し休んだ方がいいわ。もう今日はデートをやめて早く帰った方がいいわね」

 

「………すまん二人共」

 

美琴と食蜂はそう言って上条を連れて家に帰ろうとする。上条は軽く頭を抑えながら一人思いに耽る。

 

(なんなんだこの気持ち……分かんねえ…でも、何か忘れてる気が…何を忘れてるんだ?…それすらも分かんねえ、分かんねえけで…大事な事だってことは分かる)

 

大事な事なのに思い出せない。それが何なのか分からない。一体自分は何を忘れているのか、上条がそう思考していたその時だった。

 

「じゃ、俺帰るわ!またな!」

 

公園で遊んでいたであろう小学生の男子が友達にそう叫んでいた。またな…その言葉聞いて上条の頭の中で何かのピースが埋まった気がした。

 

 

ーーー………またなーーー

 

 

「あっ…………」

 

脳裏に浮かんだのは茶髪にホストが着そうなワインレッドのスーツを着こなしたい少年、プラチナブロンドの髪を珍妙な縦ロールにした少女だ。上条はその二人の事を思い出し涙を流した。

 

「………当麻、君?」

 

「………当麻さん?」

 

美琴と食蜂が急に涙を流し始めた上条に驚く。何故彼は泣いているのか二人には分からなかった。

 

「……そうか、そうだったのか……思い出した、全部思い出したぞ。……あの、馬鹿野郎共!」

 

「「!?」」

 

急に大声を出した上条にビクッとなる二人。上条は二人に構わず言葉を続ける。

 

「馬鹿な奴らだよあのメルヘンカップル!俺達の気持ちを考えずに勝手にこんな事しやがって…!」

 

「と、当麻君?どうしたの?」

 

「当麻さん…?何言ってるの?」

 

上条は涙を手で拭い、美琴と食蜂を見る。その彼の今まで見たことのない真剣な目を見て二人は背筋を正した。

 

「悪い美琴、操祈。今日は帰るのが遅れる。先に帰っておいてくれないか?」

 

「え?どうして…?」

 

行かなきゃ行けない場所があるんだ(・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

そう言うと上条は走り始めた。二人から離れ何処かへと走っていく。ただそれを呆然と見つめている美琴と食蜂。

 

 

上条は走った、ただただ走った。自分の目的の場所に行く為に。知り合いに出会っても無視して走り抜けた。

 

「………………」

 

上条は全てを思い出していた。学園都市の事、超能力の事、魔術の事、今はない自分の右手に宿った能力 幻想殺しの事、前の世界でも道行達と友達で美琴と食蜂と付き合っていた事、そしてこの世界にいない二人の事も。

 

「馬鹿だ、馬鹿だて言ってたけど…本当に馬鹿じゃねえか。俺達がお前がいなくなって悲しまねえとでも思ったのかよ!バ垣根!」

 

上条が走る理由は一つ。あの馬鹿の顔面に思い切り右手でぶん殴る。あのイケメンフェイスが崩れるまでだ。それぐらいしたっていいだろう。あいつは自分をこんなに泣かせてるんだから。

 

「あそこだ、あそこだけは…学園都市と、学園都市にもあった場所だから!」

 

この街は前の世界では学園都市という科学の街があった場所だ。学園都市の様に科学が発展していないのでエンデュミオンやら窓のないビルはない。だが、一つだけ変わらない場所がある。そこなら、そこならもしかして、きっと…

 

「はぁ……はぁ……はぁ………」

 

上条が辿り着いたのは鉄橋だ。何もない鉄橋、普通の鉄橋と変わらない。それは学園都市の第七学区にあった鉄橋だ。ここで良く付き合う前の美琴に電撃浴びせられたり、垣根に押すなよ!絶対に押すなよ!をされズボーンしたりと色んな事があった思い出の場所の一つだ…唯一ここのみ学園都市にあった頃と同じ場所と同じ姿をしているのだ。

 

今の時刻は逢魔時。昼と夜の移り変わり、闇と光が交わる時間。昼でも夜でもない世界。大きな災禍を蒙る刻と恐れられる時間帯だ。だが、上条の前に姿を現したのは…そんな魔物ではなかった。寧ろ逆な…二人の天使、いな神だった。

 

「!?」

 

その姿を見て上条は思わず涙を零しかけた。何故なら目の前に現れた二人の天使は…自分が探し求めた人物達だったからだ、

 

「……よく、俺の前に顔出せたな…はは、これで思い切りぶん殴ってやれるぜ」

 

上条はそんなセリフとは裏腹に笑みを浮かべ涙を流しながら二人の人物の顔を見る。忘れもしない、いや忘れられるわけがない。だって、二人は上条の…上条達の唯一無二の友達なのだから。

 

「久し、ぶりだな…垣根。帆風ちゃん」

 

「………ええ、お久しぶりです上条さん」

 

「だから言ったろ?『またな』てな」

 

そう上条に笑顔で返したのは垣根帝督と帆風潤子。世界を救う為の贄となり世界を新たに誕生させた生贄となった神である。

 

「な、んだよ…難しい事言っておきながら…結局、結局は戻ってこれたじゃねえか」

 

もう二度と会えないと言っておきながら…こうして会えているではないか。そう嬉しそうに呟く上条。だが二人は首を横に振る。

 

「いいえ、違いますわ。今のわたくし達は幻影。わたくし達であってもわたくし達でない。そんな存在。本来ならば一切介入できません。それを学園都市とこの世界に同じ場所にあったこの橋でのみ上条さんとほんの少しだけ出会える様に奇蹟を起こしただけですわ」

 

これは奇蹟だ。この鉄橋は学園都市と今の世界を繋ぐ文字通りの架け橋なのだ。全く同じ場所にあるこの橋だからこそ一時的に垣根達の幻影が投影されるが…それもほんの僅かな時間でしかない。

 

「難しい話はよく分かんねえよ…でも、これからここでまた会えるんだろ?」

 

そう期待を込める上条、だが垣根はそれを否定する様に首を横に振る。

 

「無理だ、言ったろこれは奇蹟だってな。もう二度とこんな奇蹟は起こせねえよ」

 

「そ、んな……」

 

上条の希望は見事に打ち砕かれた。ショックのあまり顔を俯ける。

 

「俺達はお別れを言いに来たのさ。もう二度と会えねえけど安心しろ。俺と潤子はいつも、いつもお前達を見守ってるからな」

 

「そうですわ。例え二度と会えなくてもわたくし達はずっと貴方達を見ていますから」

 

そう微笑む二人。それを見て上条は巫山戯んなとばかりに顔を上げる。

 

「嫌だ!垣根と、二人と会えなくなるなんて嫌だ!二人は俺の友達だ!勝手に生贄になっておいて勝手に会えなくなるとかざけんなよ!そんなの俺は認めねえ!そんな幻想を俺は認めない!」

 

そう嗚咽を漏らし涙を流しながら二人に叫ぶ上条。上条がそう言い終わると二人の姿が半透明になりかける。

 

「……おっと、もう時間か…」

 

「もう、ですか。もう少しお話をしていたかったのに…残念ですわ」

 

奇蹟はもう時間切れだ。彼らはまた座へ戻る刻が来たのだ。それは一瞬の儚い夢の如し。だが上条はそれを認めない。

 

「待ってくれ!行くな、行かないでくれ!」

 

上条が右手を伸ばす、垣根の体に触れようとする。だがその右手は垣根の身体をすり抜けてしまう。

 

「もう終わりだ当麻。お前の幻想は終わりだよ。大丈夫、俺らがいなくてもお前達なら大丈夫だ」

 

「ええ、女王と御坂さんとお幸せに」

 

そう言って垣根と帆風は消えた。上条はただ呆然とその場に立ち尽くす。

 

「………………くそ」

 

怒鳴りたかった、自分勝手なあの二人を。殴りたかった、自分の事を一切考えないあの二人を。説教したかった、俺達の気持ちを考えろと。叫びたかった、二人に対する不満を暴露したかった。それを押し殺して、上条はただ空を見上げてこう告げた。

 

「………俺は忘れねえからな、二人の事を」

 

 

 

ーーーねえ、帝督さんーーー

 

ーーーなんだ?ーーー

 

ーーーわたくしと一緒で本当に不満はないんですの?ーーー

 

ーーー当たり前だろ、寧ろお前とじゃなきゃこんな事しねえよ。好きな女と未来永劫一緒に生きれるなら本望だーーー

 

ーーーふふふ、確かにそうですわね。わたくしも帝督さん以外の殿方とならこんな事ごめんこうむりますわ……ねえ、帝督さんーーー

 

ーーー今度は何だよ?ーーー

 

ーーー………大好きです、わたくしは貴方だけを愛していますーーー

 

ーーー………俺もだよ。俺もお前だけを愛してるぜ潤子ーーー

 

 

 

上条は自宅のベッドで目を覚ました。当然の様に美琴と食蜂が自分の左右で寝ており川の字になっていた。

 

「………泣い、てたか」

 

上条は恐らく寝ている時に流したであろう涙を手で拭う。

 

「……あ、起きたの当麻君?」

 

「…………ああ」

 

「大丈夫?昨日泣きながら帰って来てご飯を食べずに寝ちゃったみたいだけど…」

 

「大丈夫、大丈夫さ。うん、そうだな確かに昨日夜飯抜いたからお腹減ったな〜。早く着替えて食べに行くか!」

 

「………当麻君」

 

空元気を出す上条を見て悲しげな顔をする美琴。その後も両親に昨日何かあったのかと尋ねられたが上条は何でもないと笑って返した。

 

上条は美琴に話しかけられても、食蜂に話しかけられても、道行に話しかけれても上の空だった。

 

「………」

 

上条は教室の席に座りながら青空を眺める。こんな姿も二人は見ているのだろうか?そう考えていた時だ、唯一が教室にやって来て両手を叩きながら全員に着席する様に告げる。

 

「はいはい、お静かに。今日は皆さんに嬉しいニュースですよ。なんと、このクラスに転校生が二人もやって来ます!」

 

その驚きのニュースに誰もが一瞬驚きのあまり固まり、大声を上げて喜ぶ。

 

「唯一センセー!それって男かいな?それとも女の子!?」

 

「なんとびっくり、とってもイケメンな男の子と可愛らしい女の子ですよ」

 

それを聞いて沸き立つクラスメイト達。だが上条はただ一人だけ窓の外を眺め転校生の話題など一切耳に入っていなかった。

 

「では、もう入って来てもいいですよ」

 

唯一がそう扉の向こうへ声をかけると、扉がゆっくりと開き二人の転校生が入って来た。ふと、どんな奴なのかと少し気になった上条が視線を転校生達へと移し…目を見開いた。

 

「では自己紹介をお願いします」

 

一人は茶髪で身長が高く整った顔立ちの少年。もう一人はプラチナブロンドの美しい髪を縦ロールにしたモデル顔負けの容姿の少女だ。

 

「わたくしの名前は帆風 潤子と申します。これからよろしくお願いします。因みに隣の方はわたくしの彼氏なので誰も手を出さないでくださいね」

 

「俺の名前は垣根 帝督。趣味は幸せそうな恋人達の写真を携帯で撮影する事です。後潤子は俺の彼女なので手を出そうとしたら半殺しにしちゃうぞ☆」

 

暫し呆然とし、また再び大声で叫び出す一同。

 

「え!?あの転校生二人付き合ってんの!?」

 

「美少年美少女カップルキマシタワー!」

 

「くそぅ!イケメンで可愛い彼女持ちとか氏ね!」

 

「見ろよあのたわわな巨乳…埋もれてぇ」

 

「垣根君…腐腐腐、またいいBLネタが追加ね」

 

騒然とするクラスメイト達、そんな中上条だけは垣根と帆風を瞬きを忘れてずっと見ていた。

 

「…………夢、じゃないよな?」

 

垣根と帆風の視線が上条と合う。二人はクスッと笑って帆風は上条に小さく手を振り、垣根は軽くウインクする。上条は目に涙を浮かべながら二人に笑い返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、今回の原稿も確かに受け取りましたよ鎌池先生(・・・・)

 

とある街中にある一軒家にて、某有名会社の某文庫レーベルの編集者をやっている三木という男性が身長の2.5倍はありそうな宝石のように美しい長い金髪を持つ女性から原稿を渡され彼女に笑顔を向けていた。

 

「しかし相変わらず鎌池先生は速筆ですね」

 

「そうかしら?私は原稿を書かないと飛行機みたいに墜落してしまうから書き続けているだけの事よ。それに完結作は今三木さんに渡した原稿が初めてであるにけるのよ。あ、そうそう。新作も三日後には完成する予定だからメールで送るわね」

 

「は、はは…(相変わらず速筆家だな〜他の作家さん方に見習わせたいよ本当に)」

 

彼女の名前はネット上ではかまちーなど言われている有名ライトノベル作家だ。インタビュー以外の露出はせずネット上では「北欧風の金髪美少女女子高生型インフルエンザウイルス」や「電撃のサーバーにある文章構成プログラム」と冗談で言われる事があるが…何と彼女は日本人ではないのだ。

 

「で、その新作でどんな物語なんですか?」

 

「そうねぇ。魔術や超能力、科学と様々な異能が飛び交うサイエンスとファンタジーの融合作。科学から生まれた超能力者でありながらも魔術の力も併せ持つ不思議な三対の純白の翼を持った少年が、同じく科学と魔術の力を併せ持つ少女と共に魔術サイド、科学サイドの敵達と戦う物語でなりけりね」

 

「それはまた…面白そうな作品ですね。それでその作品の タイトルは?」

 

「ええ、タイトルは……」

 

そう鎌池が三木に笑いながら次回作のプロットを語り、三木が面白そうだと頷く。そして鎌池はにっこりと笑って口を開く。

 

「『とある科学の未元物質(ダークマター)』。なんて名前はどうかしら?」

 

そう鎌池…本名 ローラ=スチュワートは三木に次回作のタイトルを告げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




何故介入不可と言われた世界にていとくんと縦ロールちゃんが介入出来たのか?それは一重に彼らに常識が通用しないからです。因みに上条さん以外前の世界の記憶は全員忘れています。アレイスターやオティヌスもその例外ではありません。

そしてこの世界でのアレイスター達の立ち位置が面白過ぎる。そしてこの世界でのかまちーの正体は…彼女(彼?)という事です。果たして彼女が前の世界の記憶を持っているのかいないのか…それは皆様のご想像にお任せします。

今回で「カプ厨がていとくんに憑依転生しました」は完結となります。今までご愛読ありがとうございました。次回作もよろしければ読んでください。ではまた会う日までさようなら


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偽典 特別番外 編
聖夜の夜の奇跡


ふ、完結したからもう更新されないと思いましたか?残念、今回だけのクリスマスプレゼントなのじゃ。てなわけでクリスマスプレゼント代わりの外伝をどうぞ。時系列はあまり気にしないでください。

ウルトラマンタイガの劇場版のキャストにフィアンマの中の人の森川さんがいて驚いた。そして闇落ちタロウ…ゼロといい、セブンといい。ウルトラの親子は息子が闇落ちしたら父親も闇落ちするルールあるの?後タイガの最終回は泣けた。ウーラー可愛かったです

フィアンマ「早く映画が見たいな!俺様が聖なる右でウルトラマン達を蹂躙するシーンをな!」

んなシーンねえよ、あってたまるか。お前は大人しく僧正に吹き飛ばされてろ。てなわけでクリスマス回をどうぞ!


12月24日、クリスマス・イブ…日本ではよくクリスマスの前夜だと誤解されているが、本当はクリスマス当日の夜を示している。これは教会暦が日没を日付の変更としている為だ。因みにクリスマスは神の子の誕生を祝う祭りであるが11月25日が神の子の誕生日という訳ではない。元々クリスマスとはミトラス教の太陽神 ミトラスの誕生を祝う冬至の祭りを十字教が転用したのだ。日本では恋人と過ごす日だと思われている…これはそんな聖夜のお話。

 

 

 

第七学区のとある商店街。そこには学園都市が品種改良で作りました大きなモミの木が飾られており、その木の先端には天使を模した飾り…クリスマス・エンジェルが置かれている。他にもリンゴを模した黄金のボールやキャンディケイン、モールやガーランド、黄金のベル、リボンや綿が飾られており色鮮やかに輝く電球が施されているクリスマスツリーだった。

 

「ふむ……中々いい聖樹じゃないか。智恵の樹の象徴に相応しい美しさだ」

 

「まあ、こういう所に結構金かけてるからな学園都市て」

 

そんなクリスマスツリーの樹の下で並んで喋っているのは垣根とステイルだ。この二人はこの樹の下で待ち合わせをしており、ある人物達が来るのをここで待っているのである。

 

「……で、僕が来た時にはここにいたようだが…いつからここで待っていたんだ?」

 

「約束の時間の四時間前ぐらいだな」

 

「長いな」

 

「お前も約束の二時間前に来てたじゃねえか」

 

待ち合わせの時間は12月25日になる瞬間。つまり真夜中の0時。本来の意味であるクリスマス・イブ(クリスマス当日の夜)の時間に二人は待ち合わせしているのだ。

 

「しかしクリスマス・イブにダブルデートとは……中々洒落た事を考えたね垣根帝督」

 

「だろ?」

 

ダブルデート。二組のカップルが一緒にデートする事。二人きりの時と違い相手への配慮や気配りが必要だが相手の新しい一面が知れたり、新鮮なデートが出来るとメリットもあるデートの仕方である。

 

「まあ、彼女(インデックス)と二人きりになれないというデメリットがあるが…別に別の日にイチャイチャすればいいだけだからね」

 

「デートなんざいつでも出来るが、ダブルデートはそうそう出来ねえしな」

 

そうステイルと垣根が話している間に、二人の少女が垣根達の元へと走ってやって来る。

 

「お待たせステイル!待ったかな?」

 

「お待たせしましたわ帝督さん」

 

やって来たのはステイルの彼女の水銀のごとき美しい銀髪に宝石の様に輝く緑の目を持つ小柄な少女 インデックスと垣根の彼女のプラチナブロンドの縦ロールに翠緑玉(エメラルド)の様な美しい緑の目の少女 帆風潤子だ。

 

そんな二人の服だが、帆風はショート丈に仕立てたピンク色のフレアトレンチコートに白色のロング丈のボックスワンピースを着用し、大人の女性らしさと可愛らしい少女らしさを併せ持つ彼女らしい服装だった。

 

インデックスは白のショート丈のダッフルポケットファーコートに淡いピンクのワンピースを着こなしており、彼女の愛くるしい容姿と神秘的な雰囲気と見事にマッチし、子供が読む絵本に出て来そうな妖精の様だった。

 

「…………天使(エンジェル)、いや妖精(フェアリー)か。ああ、神よ。インデックスという(貴方)が作った美の最高傑作をこの目で見れて眼福です」

 

「……美の女神(ヴィーナス)て潤子の事を言うんだろうな。可愛いとか美しいとかそう言う次元じゃねえ…帆風潤子という存在が美て言う概念なんだ」

 

「……面を向かってそんな事言われたら照れちゃうかも」

 

「うふふ、ありがとうございます帝督さん」

 

自分達の彼女の余りの可愛さに涙を流すステイルと垣根。頬を赤くしながらインデックスがステイルから顔を逸らす。帆風はニッコリと微笑む。

 

「さあ、早速四人でクリスマスを楽しむとしましょうか」

 

「だな、クリスマスダブルデート楽しもうぜ」

 

「夜の街をカップル同士で出歩く…うん!楽しみだねステイル!」

 

「……ああ、とても楽しみだ」

 

そう言って四人はクリスマスツリーから離れ、クリスマスの夜のデートを始めた。

 

 

 

「え、クリスマスてキリストさんの誕生日じゃないの?て、ミサカはミサカは驚いてみる」

 

「そうだ。クリスマスはキリスト様の誕生を祝う日であって誕生した日ではないんだ」

 

「へー、ミサカも知らなかったなー」

 

木原宅にて、エステルがクリスマスが原初の聖人の誕生日でない事を告げ打ち止めと番外個体は目を見開いて驚いていた。

 

「何話してンだオマエら?」

 

「おお、先生。この二人に魔術サイド視点から見たクリスマスについて説明していたんだ」

 

「そォか。じゃ俺はもう寝るわ。オマエらも早く寝ろよ」

 

「え?まだ10時なのだが…早くないか?」

 

一方通行はもう寝ると呟くと自分の部屋に向かおうとしエステルがやや困惑する。それに対し一方通行は彼女達の方へと振り返りこう一言。

 

「だって早く寝ねェとサンタさンが来てくンねェだろうが」

 

「「……え?」」

 

そう不良顔負けな凶悪な顔面でそう告げる一方通行に目を点にする打ち止めと番外個体。

 

「今年も悪い事しなかったし……来てくれるよなサンタさン」

 

「……うん、貴方はとっても優しいもんね!て、ミサカはミサカは動揺を隠しつつそう相槌を打ってみたり!」

 

「……そ、そうだよ。貴方はとっても優しいからきっと貰えるよ!」

 

あははと引き攣った顔で笑う二人になんの違和感も感じず一方通行は自室へと入っていった。そして番外個体がゆっくりと口を開く。

 

「……あの人高校生なのにサンタさん信じてるんだね」

 

「い、意外過ぎるよ。てミサカはミサカは戸惑いを隠せなかったりする」

 

一方通行、彼は未だにサンタクロースを信じてる。毎年数多クロースが彼が寝ている間にプレゼントを置いているからだ。だが、最悪な事に今日は…出張の所為で数多クロースが家にいない。

 

「あれ?そう言えばエステルは?てミサカはミサカは首を傾げてみたり」

 

「え?いない…?さっきまでいたのに?」

 

打ち止めと番外個体が先ほどまでいた筈のエステルがいない事に気付く。一体どこに行ったのかと首を二人が首を傾げるなか、エステルは自分の部屋で服を脱ぎ紫の下着を露わにしながらタンスの中から数多にこの日の為に貰った服に着替えようとしていた。

 

(この服を着るのが日本におけるクリスマスの恒例だと言っていたが…本当だろうか?)

 

エステルはそう考えつつも数多から貰った服を着替えるのだった。

 

 

その頃一方通行はベットで横になりながら布団を深くかぶって窓の外を眺めていた。

 

(……あいつらの前ではサンタさンを信じてるみたいにいったけど…本当はいねェンだよなサンタさンは…)

 

サンタクロースを信じている(と勝手に一方通行は思っている)打ち止め達の前だからこそ、夢を壊すようなことを言わなかっただけで本人はサンタクロースの正体が数多クロースだと知っている。だが、心の何処かではサンタクロースを信じているのだ。

 

(……来てくれる訳ねェよな。本物のサンタさンなんて…)

 

そう思って窓の外から目を離し寝ようとした瞬間…窓の方から何かの気配を感じた。

 

(!?誰かの気配!?)

 

一方通行が驚いて窓の外を見てみると…そこには赤い服を着て白い大きな袋を担いだ人影が見えた。月が雲に隠れているせいで明かりがないので姿がはっきりと見えないが…誰かいるのは間違いない。

 

(ま、まさか本物の……サンタさン!?)

 

その人物が閉めていた筈の窓を開け一方通行の部屋に入ってくる。

 

(い、いたンだ!本当に、本当にサンタさンはいたンだ!)

 

ガバッと布団を足で蹴り飛ばし一方通行は素早く起き上がる。それを見てサンタクロースらしき人物がビクッとなる。

 

「さ、サンタさン!俺、アンタと会いたかっ…」

 

そして、雲に隠れていた月が姿を現し…その人物…ミニスカサンタコスをしているエステルの姿が露わになった。

 

「………ぁ」

 

「………」

 

そのミニスカサンタコスはやけに露出が多かった。それもその筈、それは単なるミニスカサンタコスにはあらず、かのロンドンのデザイナーが手がけたゲテモノメイド服シリーズである『ミニスカサンタコスメイド』なのだ。最早メイド服の原型が無さすぎる、というより完璧に露出の多いミニスカサンタコスである。

 

その格好のせいでエステルの瑞々しい白い肌が露出し、ムダ毛一つない美脚の脚線美に服の上からでもはっきり分かるほど強調されている豊満な胸。そしてサンタコスが似合う純金を溶かしたかの様な金髪にキラリと光る緑の目。単純に、シンプルにいうなら「エロ可愛い」だ。

 

「………め、メリークリスマス」

 

「………メリークリスマス」

 

そう言ってからエステルは懐から何か取り出す。何かのメモ用紙の様だ、エステルはそのメモ用紙に書かれた内容を見て頷き一方通行に自信満々にこう告げた。

 

「ぷ、プレゼントは私だ。是非御堪能あれ」

 

「誰の入れ知恵だァァァァァ!!!」

 

無論数多である。

 

「な、何かおかしかったか先生!?私は数多さんから貰ったメモに書いてあった通りに…」

 

「それが間違いなンだよエステルゥ!取り敢えず木原くンは帰って来たら殴る!」

 

そうギャーギャー騒ぐ一方通行に何か自分やっちゃいました?と首を傾げるエステル。その騒ぎを聞きつけ打ち止めと番外個体が一方通行の部屋の扉を勢いよく開ける。

 

「何騒いでるの!?てミサカはミサカは駆けつけてみた……ぁ」

 

「虫かなんかが出たの……ぁ」

 

打ち止め達が見た光景、それはミニスカサンタコスをしたエステルをベットに無理やり横にして押し倒している様にも見える一方通行だった。

 

「………けつ。不潔!不潔不潔不潔不潔!エステルに無理矢理そんな事するなんて不潔だよ一方通行!て、ミサカはミサカは泣きながら駆け出してみたりィィィ!!!」

 

「………あ、どうぞミサカ達にはお構いなく。二人は続きをしてね」

 

「ご、誤解だァァァァァァ!!!!」

 

「せ、先生……こんなに顔が近いと……照れる」

 

「照れンなァァァァァァァァァァ!!」

 

クリスマスでも一方通行の家は騒がしい。なお一方通行の本当のクリスマスプレゼントはジャコウネコの糞から採取した未消化のコーヒー豆 「コピ・ルアク」であった。

 

 

 

クリスマスだけあって街中はキラキラと光のデコレーションが施され、真夜中だというのに光で満たされ幻想的な空間となっていた。

 

「わぁ〜!とっても綺麗だね!ステイルもそう思うでしょ?」

 

「ああ、確かに綺麗だ…だが、君の方がもっと綺麗だよインデックス」

 

「〜〜〜!!そ、そんなお世辞なんかに照れたりしないよ!」

 

ステイルの言葉に顔を赤くしながら目を瞑り顔を逸らすインデックス。それを見てほっこりする垣根と帆風。

 

「やっぱこそこそ隠れてデートを見て楽しむより、堂々と眺めてる方が気持ちいいな」

 

「その言葉はどうかと思いますが……見ててホカホカするのは事実ですね」

 

さり気なくストーカー発言する垣根だが帆風はその程度では驚かない。

 

「で、これからどこに行くんだい?」

 

「ああ、あそこだよあそこ」

 

垣根が指差したのはある建物だ。

 

「………スイーツ、バイキング?」

 

「あ、インデックスの目が獲物を視界に捉えた肉食獣になったぞ」

 

スイーツバイキングという看板が目に入り、肉食獣の如き眼光を放つインデックス。

 

「ダブルデートの定番、スイーツバイキング!これを食べなきゃダブルデートと言えねえ!」

 

「100パーセント君の趣味だろ?」

 

「早く入ろうよ皆!じゅるり」

 

「……イビルジョーさ…いえ、インデックスさんも乗り気ですわね」

 

スイーツバイキングの店にダッシュするインデックスと垣根。甘党二人を見て溜息を吐くステイルと帆風。

 

 

「「いただきまーす!!」」

 

垣根とインデックスのバイキングプレートにはロールケーキ、ドーナツ、マカロン、モンブラン、プリン、エクレア、シュークリーム、チョコレート、苺ショート、バームクーヘン、ソフトクリーム、パフェ、クレープ、チーズケーキ…見てるだけで胸焼けしそうなスイーツ地獄がその皿に顕現していた。

 

「……強欲と暴食の極み、だね」

 

「……見てるこっちが吐きそうです」

 

ドン引きするステイルと帆風。二人の皿にはほんの少しの量のスイーツしか置かれていない。

 

「モグモグ……美味しい!このケーキもマカロンもエクレアも、全部美味しいんだよ!」

 

「ふ、この甘ったるいスイーツの数々…嫌いじゃないわ!」

 

インデックスは両手に持ったフォーク…ダブルフォークをケーキやエクレアに突き刺し口の中に放り込む。それはさながらブラックホール、もうイビルジョーというよりバキューモンやマガタノオロチなんじゃないかな、と思うぐらいの暴食ぷりだ。垣根も垣根で某ピンク玉の如くパクパクと食べていく。

 

「あ、もう食べ終わっちまった。おかわりに行こーっと」

 

「私も!今度はあのどデカイホールケーキを丸ごと食べてるんだよ!」

 

「……胃の中ブラックホールなのかい?ドラ○もんからミニ・ブラックホールを貰ったのかな?」

 

「……いえ、あの二人はアクジキング、ウーラー、ネオ、オストガロアですわ」

 

「漫画・ゲームのラスボス格ばかりじゃないか」

 

甘いもの(スイーツ)は別腹…という言葉があるが二人は別腹どころか別宇宙なんじゃないのかとガチで思う帆風とステイル。そう考えている合間からまた大量なスイーツを皿に乗せた二人が帰ってくる。

 

「う〜〜〜〜ん!!ここのスイーツて本当に美味しいねていとく!」

 

「その分高いんだけどな。ま、俺にとっては雀の涙に等しい端金だし気になんねえけどな」

 

「ふーん、そっか高いのか…またステイルと一緒に来ようと思ったのにな…」

 

「そうか。なら俺が安くて美味しいスイーツバイキングの店を紹介してやろうか?」

 

「!いいの!?ありがとていとく!」

 

そんな楽しげな会話をするインデックスと垣根、それを見てステイルは微笑む。

 

「……やっぱり彼女は食べてる時が一番幸せそうな顔をしているな」

 

なお、この店の店長は二人の暴食の悪魔の所為でスイーツが食い荒らされて涙目である。

 

 

 

「ふはは!貴様らを祝ってやるぅ!」

 

パンパンとクラッカーを鳴らすフィアンマ。聖ピエトロ大聖堂内を聖なる右で魔力で構成されたモールやリースで飾り付ける…ぶっちゃけ能力の無駄使いである。

 

「今日はクリスマスだ!無礼講だ無礼講!礼儀とか信仰とか全部捨ててハジけるぞ!」

 

「………ガキかあいつ」

 

はしゃぎ回るフィアンマを見て右手で頭を抱えるヴェント。

 

「あいつが神の右席のリーダーとか…タウ○ワークで新しい職場探した方がいいかしら」

 

「まあまあ、取り敢えず私が作ったクリスマスケーキを食べるのですねー」

 

「お前見た目によらず女子力高いなテッラ」

 

ヴェントに自作のクリスマスケーキを差し出すテッラ。今回のクリスマスパーティーのケーキを作ったのは彼である。

 

「やっぱ美味えなテッラが作ったケーキ…てか、アックアがいないけどどこ行ったの?」

 

「彼ならイギリスの第三王女に拉致られたのですねー」

 

「……アックアはいい奴だったわ」

 

アックアはヴィリアンに連行された。可哀想なウィリアム。ヴァントは仲間の冥福を祈り合掌した。

 

「ふ、たわいない…お前では相手にならんなペテロよ」

 

「くっ……馬鹿な!この私が…負けた…だと!?」

 

「……いい歳したオッさん達が何やってんだよ」

 

スマブラでペテロに勝ったマタイがドヤ顔する。信じられぬと言わんばかりの顔のペテロ。ヴェントはオッさん達が何やってんだと白い目を向ける。

 

「ねえ。見てアウレオルス。私。似合ってる?」

 

「……当然、似合っているぞ姫神」

 

「……そう。目の前で言われると…照れる」

 

姫神はいつもの巫女服ではなくサンタコス(ミニスカではない)を着ていた。それを似合っているとアウレオルスが告げ姫神は無表情な顔を赤く染まる。

 

「うむ、このケーキは美味いな。姫神も食べてみるといい」

 

「うん。食べてみるね」

 

小動物の様にケーキをフォークでちょこちょこと食べ始める姫神。それを見て微笑むアウレオルス。

 

「ははは!メリークリスマス!メリークリスマス!メリークリスマス!メリーィィィクリスマァァァァァァス!!!」

 

半狂乱でクラッカーを鳴らしながら一輪車に乗るフィアンマ。フィアンマと共に一緒にクラッカーを鳴らすアニェーゼとアンジェレネ、リドヴィア、ビアージオ。そんなアホ共を見てため息を吐くルチアとオリアナ、ヴェント。厨房でケーキやローストターキーを作るテッラとオルソラ

 

「やれやれ…この光景を見ていると私がいない間にローマ正教は変わったのだと実感するな」

 

そう呆れた様に言いつつも笑みを隠せていないアウレオルスを見て姫神も微笑んだ。

 

(そうだね。でも貴方も変わったんだよ?だって初めて会った時は…そんな風に笑ってなかったもん)

 

初めて会った時は無愛想な人だと思った。それからとっても優しい人だと気付いた。そ!から恩人から好きな人に変わった。姫神の人生で最も嬉しい事、それは彼に出会えた事、そして今日この日を過ごせる事だろう。

 

「………好きだよ。アウレオルス」

 

「……ん?何か言ったか?」

 

「……ううん。別に」

 

ローマ正教の夜はまだ、長い。

 

 

 

「あれれ?ていとくとじゅんこがいないんだよ?」

 

「え?……さっきまで後ろにいたはずなのに…はぐれてしまったのかな?」

 

「それはていとく達が迷子て事?それとも私達が迷子て事?」

 

「……どっちでも同じ様な事だと思うんだが」

 

はぐれてしまったのなら仕方ない。ステイルもインデックスも学園都市の道を完全には覚えていない。ついでに携帯も持っていない。

 

「……仕方ない、僕らだけでそこら辺を歩こう。もしかしたら途中で出会えるかも知れないしね」

 

「そうだね」

 

インデックスはステイルの言葉に頷き、左手をステイルへと差し出す。それを見てキョトンとするステイル。

 

「……その手はどういう意味かな?」

 

「分からないの?手を繋ごう。て、事なんだよ」

 

「!?て、手を!?」

 

「……私と手を繋ぐのが嫌?」

 

「い、いやそういう訳じゃないが……」

 

単に恥ずかしいだけなのだが、このシャイボーイはそれを口に出せないでいた。

 

「ほら、男の子だったらシャキッとして!行こうステイル!」

 

「ーーーッ!?…敵わないな、君には……」

 

ステイルの手を握り、引っ張って歩き始めるインデックス。それを見てステイルが微笑む。

 

「あ!あそこに美味しそうなたい焼き屋さんが!」

 

「ま、まだ食べるきかい!?」

 

はしゃぐインデックスに戸惑いながらも笑っているステイル。そんな二人を遠くから垣根と帆風が眺めていた。

 

「ふ、「ある程度一緒に遊んだら、後は隠れて二人きりだけに」計画は成功だな」

 

「ネーミングセンス」

 

帆風は余りにもその作戦のネーミングセンスが悪くてツッコむ。

 

「さて、俺達も自分達だけのデートを楽しむとするか」

 

「はい」

 

インデックスとステイルが遠くへ行くのを見届けたところで二人も自分達だけのデートを楽しむ事にした。

 

「潤子はどこに行きたい?」

 

「そうですわね…ただ、このまま帝督さんと街を歩いていたいですわ」

 

「無欲だなぁ潤子は……」

 

そう言いながらも垣根は帆風の望んだ通りに彼女と並んで歩く。そこでふと気づく、真冬の真夜中とだけあって肌寒い筈なのに全然寒くない事に。

 

「もしかして帝督さん能力使ってますか?」

 

「まあな、未元物質の素粒子をばら撒いて寒気を熱気に変換してんのさ」

 

「未元物質の万能性の高さ」

 

「俺の未元物質に常識は通用しねえ」

 

最早未元物質は何でもありである。

 

「でもやめてもらえませんか?確かに寒くないのはありがたいですが…今日はこの寒さを帝督さんと一緒に味わいたい気分なんです」

 

「えー?でも寒いし「帝督さん?」…おっす」

 

クリスマスの日ぐらいその寒さを一緒に感じたいと帆風が言うと露骨に嫌な顔をする垣根。それに対し帆風が優しく微笑む。優しい笑みなのに怖い、それに垣根は屈した。

 

「それに寒いのならこうすればいいんですわ」

 

「……最近大胆だな」

 

帆風はぎゅーと垣根の右腕に抱きつく。引っ付けば二人とも温まる、そう言う意味だろう。肉体的な意味でも温まるし、羞恥的な意味で精神的に熱くなると言う意味でも。

 

「はぁ〜こうして帝督さんと二人きりで歩いてるだけで幸せです。それもクリスマスの夜に…」

 

帆風は垣根と歩くだけで嬉しかった。好きな人と並んで歩く。それだけで幸せだった。

 

「………飛ぶか」

 

「え?」

 

だが、垣根はただ歩くだけでは物足りないと思ったのか未元物質の翼を展開。三対六翼の白き翼が背に現れ、帆風の手を強く握ったまま空へと飛翔する。

 

「て、帝督さん?一体何を…?」

 

「まあ黙って見てろ」

 

垣根は帆風を掴んだまま空へと目指し、ある程度の高さまで行くと帆風をお姫様抱っこして顔を近づける。垣根の顔を間近で見て頬を赤く染める帆風。

 

「ほら、見てみろよ。綺麗だろ」

 

「あっ………」

 

ふと下を見上げる。帆風の眼に映ったのは美しい光を放つ学園都市の街並みだ。真夜中だと言うのに昼にも負けぬ輝かしいネオンやイルミネーションの光。白から赤などの色鮮やかな色の光で地上は覆われていた。

 

「綺麗…………」

 

「だろ?上からじゃなきゃ見れねえ景色もある。メルヘンな景色だろ?」

 

「くすっ……メルヘンかどうかはさておき…確かに素敵な景色ですわね」

 

そう白い息が口から漏れしながら帆風は微笑む。その空から眺める学園都市の美しさに魅了されながら自分を抱いている愛しい人の温度を間近で感じていた。そしてふと頬に冷たい感触がして、すぐに頬が濡れた感触になった。

 

「……雨?いえ、これは……」

 

ヒラヒラと空から舞い落ちる天使の羽の如き白い氷塊…雪。雪が降ってきたのだ。

 

「へぇ……ホワイトクリスマスか」

 

正確にはホワイトクリスマスとは12月24日か12月24日のどちらかに積雪がある事をホワイトクリスマスと呼ぶ。だから雪が降っているだけではホワイトクリスマスとは言わないのだが…それでも幻想的な事には違いない。

 

 

「あ!見て見てステイル!雪なんだよ!」

 

「本当だ……綺麗だね」

 

街中を歩いていたステイルとインデックスは雪が降ってきた事に気付く。

 

「クリスマスに雪なんて…始めてなんだよ!」

 

そう言ってぴょんぴょん跳ねながら喜びを露わにするインデックス。無邪気な彼女を見てステイルは更に笑みを深くする。

 

「ねえ、ステイル」

 

「なんだい?」

 

「来年もこうして一緒にクリスマスを過ごそうね。今度はていとく達抜きで、二人きりで…ね」

 

「………勿論」

 

来年もクリスマスにデートをしよう。そう言うインデックスにステイルの心は舞い上がっていた。来年も彼女と過ごせる、それがとっても嬉しかった。

 

(僕のクリスマスプレゼントは…君の笑顔さ、て言うのはキザてヤツなのかな?)

 

 

ヒラヒラと雪が空を舞う空の上、虚空に佇む三対の雪よりも白い翼を持つ天使、その天使に抱かれた姫君。地上にいる人々がその光景を見れば誰もが美しいと言うだろう。

 

「……なあ、潤子」

 

「……なんでしょうか?」

 

二人は地上ではなく淡い光を放つ月を眺めていた。垣根はふと月から視線を外し帆風を見つめる。帆風も垣根の目を見つめる。

 

「この雪も、月も、下の景色も綺麗だけどな…やっぱりお前の方が綺麗だよ」

 

「………ありがとうございます」

 

そう言って帆風は微笑みながら垣根の顔へと自分の顔を近づけ…唇と唇を重ねた。

 

「……ふふ、わたくしなりの帝督さんへのクリスマスプレゼントです」

 

「……そうか、じゃあ俺からも潤子へのクリスマスプレゼントを」

 

そう言って今度は逆に垣根が帆風の顔へと近づき、唇と唇を重ねた。その二人の姿を月は優しく見守っていた。唇を重ねていた時間は10秒ほど、垣根と帆風はその時間が無限に感じた。暫くして唇を離し垣根が笑みを浮かべた。

 

「来年も一緒にクリスマスを過ごそうな」

 

「ええ、来年どころか一生、クリスマスだけでなく毎日を、ですが」

 

そう空の上で永遠の愛を誓う帆風。それを聞いて垣根の心が温かくなる。もう二人は冬の寒さを感じていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




リア充爆発しろ(あいさつ)。ステインと帝風、おまけとしてエステル通行、アウ姫でした。一方止めも好きですがまだまだ数は少ないエステル通行を増やす為に書きました。エステルちゃんはサービスシーンが他のキャラより描きやすい、姫神さんはヒロインらしさが描きやすいんですよ。

とあレー三期の映像をPVを見て映像化した削板を見てやっとレベル5全員がアニメ化したな、と思いました(第6位?知らんな)。声は誰なんでしょうかね?やはり小野大輔さんとか細谷 佳正さんらへんでしょうか?やっぱり1月10日が待ち遠しいですね

それと新作なんですが…思ったより読者の皆様の人気がよろしくなかったので後数話送ってそれでも人気がなかったら別の新作を送ろうと思ってます。幸いネタはまだいくらでもありますし(プロットを考えるのは得意)候補としては乃木若葉は勇者であるの高嶋友奈ちゃんがレイオニクスになってガメラと一緒に戦う大怪獣バトル物か、乃木若葉は勇者であるの主人公 若葉ちゃんに憑依したオリ主のギャグぽい物語、もしくは若葉ちゃん自身の逆行物。上条さんが乃木若葉は勇者であるの世界にオティヌスと一緒に転生する話。もしくは犬神に憑依して風先輩の胸にドボーンするギャグ小説…どれがいいですか?ま、全部勇者であるシリーズなんだけどな(白目)

初めてアンケートなるものをやってみた。アンケートに参加してくれたら嬉しいです。でも、皆様が多く選んだ回答が必ずしも連載するわけではないので、あくまで皆さんがどんな作品を求めているのかを知りたいだけなのでそこら辺はご了承ください

ではまた別の小説でお会いしましょう。よいクリスマスをお過ごし下さい。


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