モンスターの生態調査報告 (白竜)
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火竜編(完結)
火竜リオレウス その生態と幼き命


最初に調査したのは飛竜の一種、今回その生態に迫ろうと思う。


リオレウス 別名 火竜

飛竜の一種で、全身が赤い鱗に覆われている。

気性は荒く、近づくのはハンターですら危険である。

ハンター達の武器であろうと生半可な斬れ味ではその身に傷をつけることもできず、さらにはリオレウス自身が高い耐久力を持っていることから、討伐の難易度は非常に高い。

また、同じく飛竜で緑色の鱗を持つ雌火竜リオレイアとは雌雄の関係にあり、普段は別々の生活域を持つが、時期が来ると番になり巣で生活。

卵が生まれた際はリオレイアが卵を守り、リオレウスが縄張りの見張り、外敵の駆除を行い卵から幼体が産まれるのを待つ。

リオレウスは縄張りを侵し、危害を加えんとするものを容赦なく殺害しようとする凶暴さ、そしてそれを可能とする強さを持っている。

特筆するべきはその攻撃力である。

 

 

 

大柄な体を持ち、かつ外敵を威嚇するような外観を持つ草食竜アプトノス。彼らは基本群れで生活し、自らの危機を悟ると群れごと安全な場所へと移動する習性がある。

そこに一つの赤い影が空から迫って来るのにまだどの個体も気づいてはいない。

そして、リオレウスが空から群れめがけ急降下する。

アプトノス達が気づいた頃にはもう遅い。

リオレウスの足の鋭い爪は容易にアプトノスを切り裂いた。

いくら大きな体を持っていても成体の火竜とは比べ物にならない大きさ、そして力の差により抵抗も出来ずに絶命した。

 

それに、仮に生きていたとしても死は逃れられないのだ。

リオレウスの足からは出血性の毒が分泌されており、爪により深く傷ついた傷口からは大量の血が溢れ、すぐに動けなくなり、死に至る。

アプトノスには元より喰らわれる以外道はなかったのだ。

 

アプトノスは一頭でリオレウスの腹を満たすのに十分な大きさを持っている。しかし、この火竜は逃げるアプトノスの一頭に超高温の火炎ブレスを吐く。

そのブレスに当たってしまったアプトノスは苦しむ間も無く焼け死んでしまった。

 

そのブレスは火竜の内臓の一つ、火炎袋から放出されている。

その威力はとても高く、あまりの高温に本人の喉も焼けてしまうほど。

ただしその火傷は高い治癒力によって一瞬で治ってしまう。

 

 

そしてアプトノスの死体の片方を平らげると、もう一頭を掴み、そのまま巣へと飛び去って行ってしまった。

 

圧倒的強者のこの飛竜を人は空の王者と呼ぶ。

 

... 巣にて

そのリオレウスの妻であるリオレイアにアプトノスを渡した。リオレイアもまたアプトノスを食べ始めるが、少しだけ残していた。

そしてリオレイアがアプトノスの肉を咀嚼しながら見た先には数匹のリオレウス、リオレイアの幼体が空腹の状態で待っていた。

 

 

 

 




殆どが生態(公式設定)の説明になってしまいましたね...
次回からは戦闘などの描写がもっと入れられればと思っています。


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雌火竜の育児と火竜の巡回

どうやらこのリオレウスには子供が居るらしい。
今回はその火竜夫婦流の子育てに迫ろうと思う。


火竜リオレウスの雌にあたる雌火竜リオレイア

その特徴的な部分がいくつかある。

まずリオレウスと違い、鱗は緑色であり、顎に棘が生えている。

そして凶暴性はリオレウスよりも低いが、強さに関してはむしろリオレウスよりも危険な場合がある。

 

リオレイアの主な攻撃は空中ではなく地上で行われる。

その強靭な脚力を生かし突進、噛み付くなどの行動を行う。

火炎ブレスを吐く能力も高く、地上で数発連続で吐いたり、更には強力な高出力火炎ブレスを吐く場合もある。 その威力は地面を火の海にしてしまうほどだ。

 

そして尻尾には毒があり、叩きつけるように振り回して攻撃したり、強靭な脚力を活かし宙返りして攻撃することもある。

そのどうやらハンター達の間ではサマーソルトと言われているらしい宙返り攻撃の威力には大抵の生物は耐えきれない。

その陸上での戦闘スタイルから空の王者と対に陸の女王と呼ばれる。

 

そんな雌火竜が現在行っているのは子供の食事だ。

リオレイアの顎の棘は哺乳器の役割で、咀嚼した肉を棘から子供に食べさせることができる。

 

 

 

一方その頃リオレウスは縄張りの見回りを行っていた。

子供達に危害が加わらないよう巣に近づくものは攻撃しなければならない。

 

そして、火竜の目はならず者どもを見逃さなかった。

 

狗竜ドスジャギィ。

体長は2〜3mと比較的小柄で、鳥竜種の中型モンスターに位置する。

彼らは手下のジャギィを連れており、その強さはジャギィとは比べ物にならないほど高く、ハンターでない人間や、草食竜にとっては危険な存在だ。

 

リオレウスは彼らの元へ一直線に飛んで行くと、火炎ブレスを吐いた。ジャギィ達はギリギリのところで反応し避けるも爆発により吹き飛ばされてしまう。

 

そしてリオレウスは咆哮する。その王者の姿に圧倒されたドスジャギィ達は一目散に巣へと逃げて行った。

 

 

無事にドスジャギィとその手下を追い払ったリオレウスだが、リオレウスの仕事はまだまだ残っている。

 

見回り途中に出会った敵を撃退しただけなのでまだ見回りは継続しなければならないのだ。

と、ここでリオレウスが何か見つけたようである。

 

それは人間だった。どうやら新参のハンターらしく、装備は鉄鉱石でできた片手剣にレザー防具を一式着用している。

 

依頼でアプトノスを狩り生肉を剥ぎ取りたいようだがそこは新参のハンター、アプトノス一頭にも手こずっているようである。

 

一方リオレウスは空からその光景を眺めていたが、脅威とは認めず去っていった。

 

リオレウスの巣から近くはないが遠いというほどでも無い場所の蜂の巣で食事をとっているのは牙獣種の青熊獣アオアシラだ。

大きめの体格だが、はちみつが好物なのでリオレウスの脅威にはなり得ない。

 

そのためリオレウスは構うことなく見回りを続けようとした、が。

 

 

 

 

 

そのときリオレウスは妻リオレイアの咆哮を聞き逃さなかった。

 

 

 




前半リオレイアの生態になってましたね...
いやまあリオレイアも火竜ですし?
ということで今後もリオレウスとリオレイアの生態になると思います。
ちなみにリオレウス達が暮らしているのは一応孤島のつもりです。


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王と女王、それと蛙

縄張りの巡回の途中巣から妻リオレイアの咆哮を聞きつけたリオレウス。
一体巣で何が起こっているのだろうか。


リオレウスの耳に聞こえたリオレイアの咆哮

 

リオレイアとリオレウスはお互いを非常に大切にしていて、見捨てるようなことはない。更には巣には自分の子供もいる。

リオレウスは飛行中、身を翻し、巣へと飛んだ。

 

 

 

巣ではリオレイアが大型のモンスターと格闘していた。

大きく発達した顎、赤い外殻、強靭な脚力。

そんな特徴を持ったそのモンスターは鬼蛙テツカブラだった。

 

テツカブラ

通称鬼蛙。

両生種に属する大型モンスター。

強靭な脚力による跳躍力はまさに蛙のようだ。

だがその大きな顎により地面を掘り、戦闘の際は岩盤ごと巨大な岩を持ち上げ盾にしたり、大きな岩を咥えて噛み砕きその破片を敵に飛ばすなどの攻撃手段を持つ。

 

慣れない者にとってはその俊敏性や岩や顎を使った攻撃に翻弄され、非常に厳しい相手となる。

 

リオレイアは巣へと侵入したテツカブラに対し非常に怒っていた。

テツカブラが穴を掘っているとうっかり巣に出てしまったのだ。

 

すぐにリオレウスは敵を倒さんと空から襲いかかる。

崖に面した巣は空を飛べるリオレウス達にとっては戦いやすく守りやすい場だ。

 

リオレウスが急降下し爪によってテツカブラを切り裂かんとするが、テツカブラは大きく横に跳躍しそれを躱した。

 

間髪入れずリオレイアはテツカブラに向かって突進を始める。

大抵の生物はリオレイアの突進を躱そうとするのだがなんとこのテツカブラは岩盤ごと数メートルの岩を掘り返し立てる事により攻撃を防御せんとしたのだ。

 

リオレイアにとっては目の前に急に壁が現れたように見えていることだろう。リオレイアは急停止することを余儀なくされた。

 

その隙にテツカブラの側面に回り込んだリオレウスから火炎ブレスが飛んできた。

岩を掘り返したテツカブラはそれを避けることはできなかった、が、純粋な破壊力によって傷こそついたもののテツカブラに火はあまり効く属性ではなく大きく怯むことはなかった。

 

そして再びテツカブラは岩を掘り今度は口に咥えた。

リオレイアはリオレウスのブレスを受けている隙にリオレウスの反対側の側面へと回り込んだが、それを見たテツカブラはリオレイアの方を向くと咥えていた岩を砕いた。

 

直径1mほどもある岩の破片の多くがリオレイアに当たる。

これには陸の女王リオレイアとてその威力に怯んでしまう。

リオレイアが怯んだ際に岩に当たり立っていた岩は倒れて崩れてしまった。

 

怯んだリオレイアに対しテツカブラは異臭のする体液を吐きかけた。それを浴びたものはその異臭により持久力を大きく削がれてしまうのだ。

 

リオレイアはダメージと体液により疲労し火炎ブレスも吐くスタミナを残していなかった。

 

しかし、その様子を見たリオレウスが大きく吠える。このテツカブラはリオレウスを怒らせてしまったのだ。

 

空の王者リオレウス。その怒りは凄まじく、火炎ブレスや全身の力が大きく上がり、その怒りによる戦闘能力の上がり方は数あるモンスターの中でも最強クラスとさえ言われている。

 

リオレウスは後ろに下がりながら飛び始めた。

 

その怒りにテツカブラは少し怯むも、負けずに吠え返し怒りに燃える。その尻尾は大きくなり、棘は見えなくなる。

 

リオレウスはテツカブラに対し数発の火炎ブレスを撃ち込む。テツカブラは跳躍し避けようとするも焼けた先を狙った火炎ブレスに被弾してしまう。

 

怒りによって強力になった火炎ブレスをまともに食らったテツカブラは、いくら火があまり効かないとはいえ、かなりの破壊力に火傷とダメージを負ってしまい、そのダメージにテツカブラは大きく怯む。

 

リオレウスが一瞬で近づき、怒りによって炎が漏れ出す口によって噛み付く。

その高温の噛みつきによってまたも大きく負傷してしまうテツカブラだが、それを大きく横に転がることによって振りほどいた。

 

テツカブラは怒りによって更に素早くなった動きで岩を掘り出すとそれをそのまま飛行中のリオレウスに投げつけた。

 

急な攻撃であったためリオレウスは避けることができず被弾してしまいバランスを崩して地面に堕ちる。

 

そしてそれを見ていた疲労していたリオレイアが咆哮する。リオレウスが傷ついた事により怒りが疲労を凌駕したのだ。

 

テツカブラに向かって突進する勢いで走り寄るとそのままの勢いで横に回転し尻尾を叩きつけた。

その衝撃によりテツカブラは怯み隙を晒してしまう。

 

その隙の内に地面にいたリオレウスが再度飛び立ち火炎ブレスを撃ち込む。

が、それはダメージを与えようとしたものではなかった。

当然テツカブラは後ろに跳び回避する。 が

 

その横には既に滞空したリオレイアがいた。

 

リオレウスが吐いた火炎ブレスは隙を作るためのものだったのだ。

 

リオレイアに気づいたテツカブラ、だが既に遅かった。

リオレイアは空中で宙返り、その圧倒的な威力により尻尾の棘が突き刺さり毒を受け、更にテツカブラは横転させられてしまう。

 

そこにリオレウスが飛びかかり、爪で首筋を切り裂いた。

毒の影響もあり大量の出血を起こす。

溜まっていたダメージと合わせて間もなく動くこともできずテツカブラは息絶えた。

 

リオレイアとリオレウスは巣を守ることに成功し、更に沢山の肉を入手できた。

リオレウス達も傷は負ったが、結果的には勝利を収めることができた。

 

このように、いくら王者達とはいえ野生の生活は一筋縄では行かないようだ。

 

 

 




テツカブラのロックブラスト!
こうかはばつぐんだ!
このテツカブラは強すぎる気がしますけど実際こんぐらい強い気がするんですよね。


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火竜達の後始末

なんとか危機を乗り越えたリオレウス達。
巣に平和な時間が流れる。


リオレイアとリオレウスは巣での戦闘が終わった後の片付けをしていた。

テツカブラが持ち上げた痕や火炎ブレスの着弾した痕などで巣の地面は凹凸だらけで寝る場所がなかったからだ。

 

 

 

地面を足踏みしたりしてなんとか地面を平らにしているところらしいのだが、巣に子供達の姿が見当たらない。

 

と、ここで巣の隅の見えにくい場所からリオレイアが子供を連れて来た。

テツカブラが来た事を察知したリオレイアが目立たない所に子供を隠したのだ。

 

そして巣を平らにする理由がもう1つ。

この子供達はある程度育ち、よちよちとではあるが少しだけ歩けるようになっているらしい。

 

 

子供が歩いた時、段差などで転んだりすると、大人なら問題のないところでも、骨折などの怪我をしてしまう可能性があるのだ。

 

そうなると、他の子供が歩けるようになった時一頭だけ歩けなかったりと、いざという時に生存しにくくなってしまう。

 

 

そうならぬようにできるだけ巣を安全にしているのだ。

 

 

と、リオレイアが往復して子供を運んでいる途中に、もう動いて良いことを知った子供達がよちよちと隅から出てきた。

そして足踏みして地面を固めているリオレウスを見ると、子供達も真似して地面をてちてちと踏み始めた。

 

その周辺はすでに踏み固めた後なので止める理由も無いと、リオレイアも地面を踏み固め始めた。

 

どしんどしんと足踏みするリオレイアとリオレウス

よちよちと足踏みする子供達

 

とても平和な時間であった。

 

 

 

日もそろそろ沈もうかという頃にその作業は終わった。

子供達も疲れて空腹の状態で巣の真ん中のくぼみで休んでいる。

さて、食事の時間、と行きたいところだが親達は堅い殻に包まれたテツカブラを上手に解体する必要があった。

 

まず表面の殻をリオレウスが爪でなんとか裂く事で甲殻に裂け目を作った。

 

次にリオレイアとリオレウスが頑張って切れ目から甲殻を咥えて両方向に引っ張った。

 

手で押さえることが難しい上に、しっかりとくっついていて剥がしにくいので、同時に引っ張ることで引き剥がすのだ。

 

そうすることで体から甲殻を引き剥がすことに成功した。

....真ん中あたりだけ。

 

そうなのだ、いくら甲殻が繋がっているからといって全部がまとめてペリッ!と行くわけはないのだ。

 

結局何回も剥がす事になり、終わる頃にはリオレウス達はかなり疲れていた。しかし休めない、お腹は空いたし、「ぴい」「ぴい」「がおー」と子供達が急かしているので、さっさと食事時間にすることにした。

 

リオレイアは、アプトノスよりガーグァの物に近い肉質の肉を食いちぎって咀嚼すると、顎の棘から子供達に順番に食べさせてやった。

 

...おそらくリオレイアはそのまま飲み込みたい気持ちだっただろう。

 

リオレウスは先に食事を始めていた。

 

多分妻に申し訳ないと思っているだろう。

 

途中からリオレイアも一緒に食べ始めた。

しばらくするとリオレイアもリオレウスも食べ終わった、が、まだ肉は残っている。

恐らくあと1日〜2日は持つことだろう。

 

もうすっかり日は落ちていた。

リオレイアはそのまま子供の近くで眠りについた。

 

リオレウスはどうかというと巣の周りに火炎ブレスの痕跡と自らの匂いを残し始めた。

マーキングの一種のようで、おそらく肉の匂いにジャギィが惹きつけられそうなのでしているのだろう。

 

リオレウスの痕跡が残っているのに近づくような馬鹿者はあまりいないのだ。

 

この作業を終えるとリオレウスは巣の入り口付近で眠りについた。

 

色々あったが最後は平和な時間を過ごせたようだ。

 

 

 




今回はほのぼの回でしたね。
テツカブラって両生類(蛙)っぽいですし鶏肉みたいな味しそうですよね。


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子竜達の特訓と自然

あれから何ヶ月か経過した。
今こそ飛ぶ時だ。


テツカブラにより荒らされた巣を踏み固め肉を解体したその後眠りについたあの日からしばらくがたった。

人間が抱えられる程度の大きさだった子竜達は今ではドスジャギィ程の大きさになっていた。

しかし、その戦闘能力は王、又は女王と呼ぶにはあまりにも貧弱で、ドスジャギィにも負けるほどだろう。

 

これでは自然界で生き残ることはとてもできない。火炎袋も生成されているぐらいの成長の程度だが満足に火を吐くことはとてもではないができなかった。

 

生まれて約1〜2ヶ月程

子竜達の特訓が始まった。

 

夫リオレウスはパトロールで忙しいので、妻リオレイアの方が子竜達の指導役となっている。

まず最初の特訓は噛み付くことからだった。

 

今まで肉をしっかり食べる事も無かった子竜達は、今日をもってリオレイアが肉を代わりに噛み砕いてもらうことを辞め、自分で肉に食らいつかなければならない。

少なくとも、餓死するまでに。

 

リオレイアが雑に切り分けた肉を子竜達の目の前に置いていく。

 

子竜達の完全に発達しきらない歯ではなかなか噛み切ることが難しいようだ。

しかし子竜達は必死に食らいつく。

 

いつまでも甘える事は出来ない事は生まれた直後から彼らは分かっていた。

 

約1時間後、3匹の子竜達はなんとか腹を満たすことができた。

 

簡単な特訓ではあるが、子竜達にとっては大変な問題なのだ。それに、こうやってうまく肉に噛み付くことができれば、ある程度のモンスターとは戦って対処することができる。

 

次に始まったのは飛行訓練だった。

飛ぶことが実はかなり大切なのだ。

危険な敵に遭遇した時は逃げることができるし、火竜種は陸上を常に歩行するのはあまり得意ではないから移動する際に必須だった。

 

リオレイアは子竜の1匹を咥えると、大きな翼を広げて飛び立った。

 

この時子竜は初めて巣以外の世界を知った。

草を食む草食竜、青い海、ジャギィの群れ

あらゆるものが新鮮な経験だった。

 

しかし、このまま飛んでいても特訓ではない

 

リオレイアは大きく飛翔し高くに上ると、咥えていた子竜を落とした。

子竜はこうなる事はわかっていたから飛ぶ時の風、親の動き、色々なものを見て飛ぶ準備をしていた。

しかしいくら王達の子とていきなり飛ぶことができるはずもなく、かなり弱々しい動きで翼を動かすも落下を遅くするのがせいぜい。

 

このままでは死んでしまう、飛ばなければ。そんな野生から根付いた強い本能が子竜を突き動かした。

大きく翼を広げて羽ばたく。成功したのだ。飛ぶことに。

とは言っても所詮子竜の羽ばたき、ふわふわと下降していく。

 

そこをずっと見ていたリオレイアが咥えてそのまま巣へと飛んで行った。

 

まだまだ飛べるとは言えないが"合格"したのだ。

ちなみに、見ていたとは言ってもリオレイアは子竜が危なくなっても助けるつもりは全く無かった。

 

そんなテストを残りの2匹にも受けさせた。

彼らはかなり優秀で全員がテストに合格した。これはそんなにあることではない。

このテストで大怪我をしたり、はたまた死んでしまう子竜も多くいるのだ。

 

しかし、何度かチャンスをなどとそんな甘えた事は許されない。ここで失敗する奴は近いうちに死ぬのだ。

それが野生の掟だった。

 

次の特訓は火を吐く訓練だ。

 

しかしこの特訓ではさっきのような無茶はしばらくしない。何故ならまだ火炎袋も発達しきっておらず、また吐いた後火傷した喉を癒す再生力もあまり身につけていないからだ。

 

リオレイアは炎のブレスを吐くコツを教えるだけにとどめた。

子竜達が飲み込めているのかどうかはわからない。

 

と、リオレウスが帰ってきた。アプトノス一頭を掴んで巣に放り投げてきた。

 

子竜達はすでに1つ目の訓練でお腹いっぱいといった感じだったのでリオレイアとリオレウスが2人で食べた。

 

さて、特訓の続きである。

次は雄雌個別訓練だ。

 

リオレイアの特技宙返り攻撃のコツを2匹の雌に教える。

なおまだ飛べもしないので習得できるわけもなかった。

 

リオレウスは雄に爪の使い方について教えた。

高いところから急降下して爪で切り裂く技をだ。

 

やはり、飛べないので子竜はよくわからなかった。

 

 

 

そんな特訓の日々がしばらく続くのである。

 




投稿までにかなり時間が空いてしまいました。
ちょうどいいので作中でも何ヶ月か経過させました。
子リオレイア子リオレウスは可愛いですね。


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子供達の巣立ちと影

火竜の子供はもう成長していた。
巣立ちの季節が来た。


あれから子竜はまた成長した

生後数ヶ月、彼らはかなり大きくなっており、巣もそろそろ手狭になろうかという体長、その大きさは親の半分以上に達していた。

その翼は飛ぶのに不自由しない程になり、親の教えはもはや完全に理解していた。

 

親はそろそろ子を自然へと送り出さんとしていた。

ただ、もう少し時間が必要であった。

なぜならいくら大きくなったとはいえ実際の狩りはまだしたことがなかったし、更に言えば教えてもいなかったからだ。

 

親は数日送り出す前の最後の特訓をさせるのだ。

 

親の火竜達が火炎ブレスを吐き、木を焦がす。

それを真似し、子達も立派に成長した火炎袋から火炎ブレスを吐き出し木を焦がして見せた。

その威力は弱い草食竜を確実に殺せる威力があった。

 

リオレウスにしかできないことを子供のリオレウスにさせ始める。

 

親が空に向かって大きく飛翔する。

そしてそのまま悠々と大空を羽ばたき始めた。

その姿は雄々しく、生態系の頂点、即ち王としての堂々たる風格を持ち、真っ青の空に深紅の竜が翔けるその景色はまさに真なる強さを感じさせるものであった。

 

そして強い風を吹かせながら巣へと舞い戻ってくる。

そんな火竜に触れるものは微塵も残ることはないだろう。

 

子のリオレウスたちもそれを真似する。

親よりは小さくとも確かに威厳を感じさせるその姿は王の息吹を感じさせた。

 

実際の戦闘においてこの飛翔能力は大いに役に立つことだろう。

 

次に動いたのは雌火竜達だ。

彼女たちはしなやかな動きをもって地上を駆け、同じ地を踏むものを逃さず屠る力がある。

 

親の雌火竜は子供に得意な技を練習させた。

それは宙返りする攻撃だ。

それによって尻尾に当たってしまった者は毒に侵されそれ自体の威力により重大なダメージを受けることだろう。

 

親がそれをしてみせる。

その姿はしなやかで、かつ堂々たるもので、それに圧倒されぬものなど竜、人間を含め、誰もいないだろう。

 

子供達も宙返りをしてみせる。

やはり威力は十分ではないが草食竜、そして小型、中型の肉食竜は問題なく屠れる威力があった。

 

親の教えは問題なく子供達が習得していた。

もう巣を発っても問題がない強さだった。

 

 

今日も火竜の見回りの時間だ。

縄張りを荒らす不届き者を発見しておくことが自分達の身の安全につながるので、毎日欠かさず見回りをしている。

 

そして、いつもなら1人なのだが、今日は子供達が付いてきている。

三頭の子供ーー雌火竜二頭に火竜1頭ーー

は、見回りと、狩りを教えてもらっているのだ。

飛竜たちは大抵の場合目がいい。

空から獲物や敵を見つけるためにそうなっているのだ。

子供達は沢山の生き物などを見つけ、危険か、そうでないか、獲物かをしっかり見ていた。

アイルー ーー獣人族の一種で無害ーーや

ジャギィ ーーたまに勇敢なのかはたまた馬鹿なのか、喧嘩を売ってしまう個体もあるが、火竜達にとっては基本無害 ーーや

アプトノス ーー草食竜で無害、肉は多く、美味で獲物に向いているーーをはじめとした、様々な生物を見つけた。

 

 

見回りが大体済んだ。

そして次は狩りの練習だ。

さっき見つけたアプトノス、それを狩らせる気だ。

子竜たちにも及ばない程度ではあるが、大柄で、数ヶ月前までは狩る事は出来なさそうな相手であったが、今は子竜たちにとっても十分獲物として圧倒できそうであった。

 

狩りは基本爪によって行われる。

理由としては一つは当たりさえすればかなりしくじっても毒によって仕留め切ることが可能なこと、

そしてもうひとつはブレスを吐くのは狩りとしては消耗が大きすぎることだ。

火竜種の身体は火、熱に対する耐性が高い、が。

自身のブレスに関してはあまりの高熱により火傷を負ってしまう。

すぐに治癒するので問題はないが、狩りでブレスを使うのは少々消耗が激しいのである。

子供ともなればなおさらである。

 

親は手本を見せる。しかし子供達はあまりそれを見ている余裕がない。なぜなら群れに攻撃を仕掛けるとすぐさま逃げていき、狩りがそれ以上は難しくなるからだ。

 

子供たちのはじめての狩りが始まった。

まず親が向かった。とは言ってもその次の瞬間には子供たちも後をついて行っていたのでほとんど同時だった。

まず親の火竜は爪により一頭を急襲した。

一撃で首に深く食い込み、即死した。

 

子供達が真似をする。

まず1頭目 、火竜

 

爪によって襲いかかるも狙いが外れる。

もがき脱出したアプトノスは逃げようとする。

それに一生懸命追いすがり、噛み付く。

アプトノスは一生懸命もがくが、毒と牙により間も無く動かなくなった。

 

残りは雌火竜二頭である。

二頭で組むのはなぜかと言うと強いとは言え火竜は雌より雄の方が強く、主に狩りをするのは雄なので、今はそこまで一頭で狩りをする意味がないからだ。

 

一頭が爪を食い込ませる。

もう一頭は地上に降りその場で回転し、尻尾を当てる。

だがそこまで威力がなく、もがき続けている。

宙返りはもう一頭に当たってしまうのでできない。

なので噛み付くことにした。

二頭に爪で掴まれ、噛み付かれたアプトノスは抵抗できず死んでしまった。

 

狩りは問題なく出来そうだと判断した親の火竜は今度は獲物を運ぶ訓練をさせる。

三頭のアプトノスを三頭に持ち運ばせようとしているのだ。

 

 

爪の鋭さなどが目立つが、実は掴む力がとても強いのだ。

新大陸とよばれる大陸がある。

そこでの調査によるとアンジャナフと呼ばれる竜との縄張り争いにおいてアンジャナフを掴み上げ落とすと言う戦い方をしている姿が報告されているらしい。

 

そんな力を使って獲物を運ばせようとしている。

 

しかしそんな火竜達に迫るものがいた。

 

突然火球が飛んでくる。それは当たることはなかったが地面に爆煙が広がり辺りを焦がした。それに気づいた竜たちは一斉に空を見上げる。

 

彼は大きく、黒みがかった甲殻。

そして黄金の紋様が刻まれた翼を広げる。

 

それは二つ名を持った竜だった

その名は「黒炎王」

通常種を凌駕する爆炎を操り更には飛行能力も上昇している。

 

圧倒的な強さを誇る王の中の王。

ハンター達の中でも特別な許可がなければクエストの受注さえ許されない強大なモンスター

黒炎王リオレウス。

彼らがお互いの姿を見るとお互いに大きく咆哮した。




また間が空きました。
もう結構終わりが近いです。


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王と王

表記は孤島に元々いた方(主人公?)をリオレウスや火竜
黒炎王は黒炎王と表記します

この特訓の途中、リオレウスは孤島へと来ていた黒炎王と遭遇してしまう。
咆哮の轟音が戦いの開始を告げる。


《黒炎王》

強力な爆発を起こす火炎ブレス

黒い強靭な甲殻

通常よりも遥かに高い飛翔能力

その個体の全てが通常種を凌駕する。

まさに王の中の王。

故に《黒炎王》という二つ名が付けられるのだ。

 

リオレウス、彼が対峙する相手は彼の思っている以上に分の悪い相手だった。

 

子竜達は飛んでその場から離れる。

親もそれを望んでいた。

黒炎王と戦うことにより自分だけでなく子供達が危険に晒されるのを恐れているからだ。だから自分が死んででも子供達を逃がそうとしている。

 

そして戦いが始まる。

様子を見るリオレウス、まず仕掛けたのは黒炎王の方だ。

小手調べとばかりにブレスを放つ。

火竜はそれをさっと跳びのきそのまま空中にで羽ばたく。

黒炎王もそれを見ると翼を大きく広げ空中にその身を浮かばせる。

 

火竜は一気に距離を詰め黒炎王に詰め寄り、構える黒炎王に口を開け食らいつく。

 

しかし、鱗の隙間に入り込んだ歯は傷をつけたが、ほとんどは甲殻に弾かれてしまう。

それにより怯んだ火竜に黒炎王はブレスを吐き当てると火竜はその威力に驚く。

 

これまで生きていた中で妻のブレスが流れ弾として飛んできたことなどがあるリオレウスだが、そういった他の種のブレスとは格が違う威力のものであったからだ。

 

なんとか態勢を立て直した火竜は足でブレスを吐いた黒炎王の頭を蹴りつけ、一気に飛翔し空へと飛び立ち、黒炎王もそれに続き空へ向かう。

 

空ーーまだ雲の下ではあり、火竜種としては低い方であるが飛べない人間にとっては十分高いーーにたどり着いた火竜達は早速戦闘を再開する。

 

火竜はさっきの戦いにおいて理解したことが二つあった。

 

一つは弱点部位自体は自分とそう変わらないということである。頭や尻尾、その辺りの部位であればダメージが加えられるという事が考えられる。

 

 

もう一つは火竜リオレウスは黒炎王に勝てないということであった。

 

軽く交戦しただけで悟ったのだ。目の前の竜こそが王の中の王で、自分は格下の存在だということを。

しかし負けられない理由があった。それは子供を守るということだった。

 

大空で竜たちが吠える。そして火竜が飛びかかり、頭を狙って攻撃を仕掛ける。

噛みついたり、足で攻撃したりするのは空中では体勢を崩しかねず、危険だが、ブレスは自分を超える炎の使い手である黒炎王には効かないと判断したのだ。

 

黒炎王はブレスにより迎え撃とうとしたが迷いなく向かってくる火竜の速さに反応できず頭を蹴られた衝撃で明後日の方向にブレスを外してしまった。

頭に足の爪が食い込む。頭は甲殻も厚いが、衝撃自体には十分ダメージを受けているし、甲殻の隙間に爪が食い込み傷をつける。

 

しかし深手にはならず態勢を立て直した黒炎王は負けずに首に噛み付き、火竜の方は必死に抵抗しそれを引き剥がす。

ここで火竜は一旦距離をとり、そんな火竜に黒炎王がブレスを二発連続で吐く。

一発をかわし、もう一発をもろに受けてしまい、火竜は腹部の方の甲殻が焼けこげる。

 

しかし火竜もブレスを扱い、火に強い甲殻を持っているため、大したダメージにはなっていない。

火竜もまけじと連続でブレスを吐き、黒炎王に火球が飛んでいくがある程度距離があるため、黒炎王は瞬時に体制を変え横の方に一気に飛び、ブレスをかわす。

 

火竜は黒炎王に何発もブレスを吐く。

追われながら何発も火球を放たれた黒炎王は何発かを受けてしまうが、ほとんど意にも介さず飛び続け今度は上空に向け急上昇する。火竜もそれを追い上昇を始める。

火竜が放つ火球が雲を撃ち抜き、ついには黒炎王は雲を貫き大空へとたどり着く。

 

追っていた火竜も雲に突っ込み、大空に突入する。が、雲を突き抜けた火竜を火球が待っていた。

頭からもろに火球の爆発を食らってしまった火竜は無視できないダメージを負い、鱗の一部がはげ壊れる。

ハンター達にとっての部位破壊である。

 

火竜は大きくひるみながらも勢いだけで昇り続け同じ青き大空に辿り着く。

それが王として君臨するものの意地であった。

 

そして火竜が勢いを捨てず捨て身で飛びかかった。

爪での攻撃だろうと予想していた黒炎王は反応が遅れ、体当たりをもろに受けつかみかかられる。

 

そして火竜は羽ばたくのをやめ、大空から地上目掛け落下を始める。

 

風を切り、二頭は落ちていくなか必死の攻防を始めた。

 

黒炎王が大きく翼を動かし重心を変え、ブレスを吐きつけ、若干ではあるが怯ませ隙を作ることによりなんとか位置を変えようと試みる。

火竜はそれに必死に抵抗するも、耐えきれず上下の位置を変えられてしまう。

 

しかし地上まで10秒もない中、火竜も決して諦めない。

火竜は自分が上に行くのではなく黒炎王を下に退けるという形で位置を変えようとする。

そのためにまず火球を何発も吐き、あてるが怯まない黒炎王の首に必死で噛みつく。

流石にそれに怯んだ黒炎王を火竜は全力で足を使い投げるように強引に下に引き摺り下ろす。

それはもう地上まで数秒というところであった。

地上の直前で火竜は足を離し飛び、そのまま黒炎王は地上に叩きつけられた。

 

火竜は勢いを殺しきれず、少し離れたところに着地をしようとするも失敗し、転倒する。

 

そして、土煙が立った。

 

空が晴れた後には傷だらけの黒炎王が立っていた。

落下の寸前で翼を広げ翼の力と、足を離し飛び立った火竜の力で若干ではあるが衝撃を和らげたのだ。

 

そして黒炎王は限界まで力を溜め、ブレスを放とうとする。

 

その時、何者かが黒炎王に突進し黒炎王を転ばせ、その黒炎王に何発もの火球が飛んできた。

 

そこにいたのは陸の女王、雌火竜リオレイアと子竜たちであった。




火竜リオレイア一頭の力ではとても黒炎王を倒すのは無理だ。
しかし、リオレウスには家族がいた。
火竜と雌火竜は黒炎王を討ち倒し、王の座を取り戻せるのか。


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天と地の領域

子竜たちはリオレイアを連れて戻ってきた。
天から降りてきた夫リオレウスと黒炎王。
リオレイアと子竜たちは早速黒炎王に攻撃を開始する。
火竜と雌火竜、そして子供達の力で黒炎王を討つ事が出来るのか。


転倒した黒炎王の首元にリオレイアが噛み付くも、硬い甲殻に阻まれうまく噛み付くことができず、もがく黒炎王に振り払われてしまう。

 

そしてそのまま黒炎王が起き上がり、すでに起き上がっていたリオレウスと乱入したリオレイア、子竜達を睨むと、黒炎王は大きく咆哮した。

 

それは、黒炎王が傷つけられ、黒き怒りに目覚めた事を表していた。

 

 

黒炎王が風を切って飛翔した。そして空中で火竜達の方を向くと火球をいくつもあまり正確に狙いもつけずに撃ち始めた。

 

乱れ飛ぶ火球に翻弄されリオレイア達や子竜達は火球に何発か当たってしまう。

 

たいした傷にはならないが、子竜達に流れ弾が飛んだことがリオレイアの怒りに火をつけた。

リオレイアは子に逃げるよう指示し、咆哮する。

口元からは強く火が溢れ怒りの強さが表れている。

そしてリオレイアとリオレウスが飛び立ち黒炎王を狙ってリオレウスは火球をいくつも撃ち始め、リオレイアはまっすぐ突っ込んだ。

二つの攻撃された黒炎王は一旦高い方に逃げることで難をしのごうとした。

 

だが相変わらずリオレウスは黒炎王めがけ火球を撃ち続け、リオレイアは黒炎王を追っている。

 

なので黒炎王は今度は地面に向けて急降下した。

そして地面すれすれまで来て着地すると見せかけ、また飛び立つ。

まっすぐと飛んでいたリオレイアは地面に衝突しそうになって慌てて体勢を崩しなんとか着地したものの、隙を晒してしまう。

 

その隙を見逃さず、黒炎王はリオレイアに攻撃を仕掛ける。

しかしそれをリオレウスが許さない。

火球程度なら耐えると無視していたのだが、それにより後方から突っ込んでくるリオレウスに気づかなかったのである。

 

そのまま突進し黒炎王の尻尾に噛みつき、そのまま黒炎王本体に衝突する。

それにより不意を突かれた黒炎王は大きく担当してしまう。

 

リオレイアがしっかりと体制を整えると、リオレイアはまた首に噛み付いた。黒炎王はもがくも後ろではリオレウスが一旦尻尾から口を離し、そして少し空中に飛ぶと、黒炎王の翼めがけ踏みつけるように急降下する。

 

そして黒炎王の翼膜が足の爪と衝撃で傷つく。しかし、それによって飛べなくなるわけではない。

リオレウスやリオレイアはとても飛行能力が高く、翼膜に傷がついても飛行が可能で、黒炎王に至っては通常の火竜と同程度の飛行能力になるだけである。

 

しかし、飛行能力を削ごうとした火竜の判断は正しい。

プロのハンターが黒炎王を狩猟する依頼が出された場合、翼を早急に破壊し、閃光玉と呼ばれるアイテムにより飛ぶことを許さないと言う作戦がとられることが多い。

 

黒炎王は翼や首に傷をつけられ大きく悶えると、足で地面を蹴りながら回転し、勢いで二頭を振り払う。

そして黒炎王の怒りがさらに激化する。

 

まず始めに振り向くと、翼に傷をつけたリオレウスに攻撃を仕掛けた。

翼をなんとか使って空中に上がった後、足でリオレウスの頭を蹴りつける。

痛みによりリオレウスは少し後ずさる。

そして蹴った衝撃で次はリオレイアの方を向き、何発ものブレスを吐く。 リオレイアは避けるも、火球の一発一発が爆発を起こし、その衝撃でリオレイアは甲殻や鱗が焼ける火傷をしていく。

 

そしてついに避けきれず火球にもろに当たってしまう。

でリオレイアの背中の鱗が何枚も剥げかかっていることが

その威力を物語っている。

 

それに対してリオレウスは怒るも、黒炎王が瞬時に方向を変え、向かってきてブレスの体制に入ったのを見ると吠えるのを堪え、身構える。

 

しかし黒炎王はすぐにはブレスを吐かず力を溜め、吐き出した。

そのブレスは岩のような形状だった。

それは火山地帯の火薬岩と呼ばれる岩と似ており、着弾し熱気を放ち、しばらくすると大爆発を起こすものである。

 

初めて見るそのブレスに驚き、リオレウスは飛び退くも自分には当たらず落ちたのを見て安心するが、直後異様な熱気に驚き急いで飛び立つが間に合わず、岩は大爆発を起こしそれに巻き込まれてしまう。

 

そしてリオレウスが空中で姿勢を維持できなくなり、地面に落ちたのを見ると黒炎王は飛び、空中からブレスを何発も放ち、全てがリオレウスに当たり、大火傷を負う。

 

火に耐性がない生物ならとっくに死んでいたであろう。

 

そんな黒炎王に対し、リオレイアは飛び立ち、果敢に突進する。黒炎王は正面から足で受け止めて突き飛ばす。

リオレイアはすぐに体制を整えまた突進するも、今度は上に昇ることによりかわされてしまう。

 

そして黒炎王の反撃が始まる。

 

黒炎王が上から力を溜め、ブレスを吐く。

突進をかわされ、体制を整え振り向こうとするリオレイアに容赦なく先ほどの火薬岩のようなブレスを吐く。

 

そのブレスが不幸にも翼を貫き、体で受け止める形となり、地上に墜落してしまう。

 

 

そして、そのまま大爆発に巻き込まれてしまう。

 

リオレウスが咆哮する。妻の無事を祈る。しかし、リオレイアは動くことはなかった。

 

リオレウスは今までのどんな時よりも強く怒った。

 

 

リオレウスは黒炎王に向かい、豪炎が漏れる口で大きな声で咆哮した。




妻を殺された怒りに震え、全力を超えた力で豪火を操るリオレウス。その力はギルドにおいてG級と呼ばれる強力な個体に迫るものとなっている。

王の最後の戦いが始まる。


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最終決戦。 火竜は飛び立つ

熾烈な争いを繰り広げる二頭の王
遂に最後の決戦が始まろうとしていた。


睨み合う両者。

 

二頭とも既に満身創痍と言えるほどに疲弊し、傷ついていた。

しかし、どちらも退く気など無かった。

 

縄張りを守るため

縄張りを奪うため

 

一度始めここまで行ってきた戦いから逃げられるはずもなく。

 

しかし何よりも大きな理由があることは、草を焼き焦がし、自らの喉をも焼き切るほどに強烈に燃え盛り口元より漏れ出る火竜の炎が物語っていた。

 

戦いは始まろうとしているし、終わらんとしていた。

 

先程の咆哮とうってかわりただ炎が燃え盛る音が聞こえるこの空間を、黒炎王の火球が切り裂いた。

 

当然火竜はその火球を飛翔しかわすと、逆にいくつもの火球をはきかえす。

それに同じように黒炎王が応える。

 

大量の火球が大空を翔る二頭の間で交わされた。その火球は躱され、地面にぶつかる度に大爆発を起こし瞬く間に植物を焼き払う。

その威力はそれを当然のように撃ち交わしている二頭ですら当たればただでは済まない火力だった。

 

火竜種の火球(ブレス)は元より自らの喉を焼き焦がしながら行うものであり、この大火力を何度も何度も撃って平気でいられるはずはなかった。

 

この調子では自らの体が持たないといち早く察した黒炎王は自らが放った火球と共に、火竜が放った火球を掻い潜り火竜に突っ込んだ。

 

しかし火竜も限界が来ることに気付いていないわけではなかったし、むしろ黒炎王のこの突撃を待っていた。

 

相手に向かっていき接近戦で決着をつけようとすることはこの状況では最善と言える判断ではあるが、同時に通常の戦いであれば短絡的とも言える判断なのだ。それはいうまでもなく大きな隙を晒し、相手に"迎撃"のチャンスを与えてしまうからである。

 

火竜にチャンスが与えられた。

 

噛み付いてくるならば

たとえば上昇し頭を踏みつけてしまうか?

それとも躱して首元に噛み付いてやるのもいい。

 

脚を使って攻撃してくるか?

爪による攻撃は後ろに飛び退くなどして避けてしまえば大きな隙になるはずだ。

 

もしくは接近戦と見せかけフェイントで火球を飛ばしてくるか?フェイントということで攻撃すると見せかけ後ろに回ってくるかもしれない?

 

とにかく、そんな一瞬の思考の時間が火竜に与えられた。

 

 

そして黒炎王の間合いに火竜が入り、火竜は身構える。

 

そして黒炎王は攻撃する  と見せかけ、横を通り過ぎ背後から攻撃しようとしてくる。

しかし火竜はそれも予想していた。尻尾で攻撃しようと尻尾を振りかぶり空中で大きく回転し横に薙ぐ。

しかし当たらなかった。ならば爪で攻撃してくるはずだ!

回転し真後ろを見た火竜は"見上げた"。そこには翼を大きく振りかぶる黒炎王がいたからだ。

 

鳥や飛竜は翼で攻撃することはあまりない。

なぜなら翼は空を飛ぶための大事な部位で、頑丈というわけでもないからだ。

 

ーーーーーしかし、黒炎王は翼が頑丈である。

その為に強い飛翔能力があるのだ。

そんな黒炎王であることが前提の攻撃方法に火竜は対応できなかった。

 

火竜に翼が叩きつけられ、同時に黒炎王が羽ばたくのをやめた。

 

二頭はどんどん下降していく。黒炎王はこのまま地面に叩きつける気だ。 戦略的に上を行っていた筈の火竜がいつのまにか下にいる。

しかしただやられるわけではなかった。

王としての誇り、そして妻の死による怒りが火竜にとてつもない馬鹿力を与えた。それにより火竜は強引に体を回転させ振り解いた。

 

そしてあろうことか火竜はその場で勢いよく宙返りをした。

それは亡き妻リオレイア "陸の女王" の技だった。

 

火竜の尻尾が勢いよく黒炎王に当たり、思わぬ攻撃に大きく怯んだ。

その隙を見逃さない火竜が背中と右翼の翼膜に爪を食い込ませ完全に上をとった。

 

二頭が落下する。翼を封じられ首に噛み付かれている黒炎王に反撃の余地はない。 火竜は全体重をかけ、捨て身の攻撃を仕掛ける。

つまり、二頭は大きな音を立て、地上に激突した。

 

砂煙が立つ。

しかしその中からぼろぼろになった火竜が足を引きずりながら出てきた。

 

砂煙が晴れた時、そこには黒炎王が横たわっていた。

動く様子はない。

 

火竜は勝ったのだ。

この地を、誇りを、守り抜いた。

 

ボロボロになった火竜は足を引きずり、妻の亡骸のもとにたどり着いた。 そして火竜は寄り添った。

その時空からいくつかの羽音がした。

子竜達である。

全てが終わったことをかぎつけ、戻ってきのだ。

空の王者リオレウスは子供達を見た。

そして認めた。彼らが次の王者達であることを。

 

リオレウスは天に向かって咆哮をした。

その声は島中に響き、海を渡っていくようであった。

 

そして、息を引き取った。

その最期は雄々しく、猛々しく。

まさに"王"にふさわしいものだった。

 

子竜たちは息を引き取った両親の元にしばらくいたあと、やがて大空へ飛び立った。

それは未来へと飛び立つ翼か。

 

彼らは成長しきったわけではない。

これからも経験を積み重ね、成長していく。

 

父に守られた命を、与えられた命で彼らは目指した。

 

両親の背中を、王者の道を。

 

そして、果てなき空を。

 

 

 

 

 

 

 

 




これにて火竜の生態調査を終了するものとする。
彼らは王者として空を飛ぶことだろう。
燃えるが如き両親の意志を心に宿して。


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