絶剣の少女と怪物狩りの少年 (小説大工の源三)
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第一話リンクスタート

SAO第一話ですどうぞ


2022年10月6日

Side竜翔

 

僕はSAO制作に協力した報酬としてSAOの製品版を見て呟いた。

 

竜翔「さてとSAOを始めるとしますか。」

  『リンクスタート!!』

 

Sideシュバルト

 

シュバルト「やっぱりβ版と空気は少し違うかなぁ?」

 

(以下シュバ)

 

???「もうログインしてたんだな竜翔。」

 

そう言って隣に現れたのは幼馴染の1人蒼魔だった。

 

シュバ「そっちも早いね蒼魔。」

 

蒼魔「まぁな宿題も終わったしな。プレイヤーネームはβ版と同じか?」

 

シュバ「うん。それなら蒼魔はテリーのまんまなの?」

 

テリー「まぁそれしか浮かばなかったからな。」

 

シュバ「あはは、β版と名前変える人の方が多いんじゃないかな?」

 

テリー「そうかもな、そろそろ狩りに行こうぜ。」

 

シュバ「そうしよっか。時間も勿体ないし」

 

 

    少年達移動中…

 

 

 

  ブモォォォ…

 

フィールドに出れば至る所に青い猪が蔓延っている。がしかしそれよりも高い層のモンスターを相手にした僕達の敵ではなかった。

 

シュバ「やっぱりフレンジーボアじゃ物足りないなぁ。」

 

テリー「しょうがないさ。始まったばかりなんだし。」

 

効率良くソードスキルを使って順調に狩り進めていると、後ろから声をかけられた。

 

???「あの!すいません!」

 

シュバ「はい、なんですか?」

 

僕が振り向くとそこには2人の女性プレイヤーだった。

 

???「お二人の動きを見ていると慣れているなと思って、もしかしなくてもベータテスターですか?」

 

テリー「ああ、そうだが。」

 

???「もし良かったらボク達にソードスキルの発動の仕方教えてくれませんか?」

 

シュバ「もちろんいいよ。ね、テリー。」

 

テリー「ああ、いいぜ。」

 

???「やったぁ!自己紹介するね、ボクの名前はユウキでこっちがフィリアよろしくお願いします。」

 

フィリア「よ、よろしくお願いします。」

 

シュバテリ「「ああ、よろしく(な)。」」

 

       

 

 

 

─────────────────────────

 

ひとまずどっちかどっちの担当をするか決めることにした。

僕はどっちでも良いのだが、

 

シュバ「とりあえずユウキは僕で、テリーがフィリアでいい?」

 

このように決めた。理由とかは特にない。

 

テリー「ああ、異議なし。」

 

ユウキ「ボクもそれでいいよ。」

 

フィリア「私も大丈夫。」

 

シュバ「それでは練習開始!!」

 

三人「「「オー!」」」

 

 

     少年少女練習中…

 

ユウキは僕の説明をすぐに理解して、軽々とソードスキルを発動してフレンジーボアを倒す。

 

ユウキ「でやぁぁぁっ!」

 

ブモォォォ……

 

シュバ「だいぶ速くソードスキル発動出来るようになったね。」

 

ユウキ「シュバルトの教え方が上手からだよ!」

 

シュバ「ユウキの理解力がすごいからだよ。」

 

ユウキ「えへへ、ねぇ一つ質問があるんだけどいい?」

 

シュバ「いいよ。」

 

ユウキ「シュバルトってさぁもしかして竜翔?」

 

シュバ「そうだけど。ってなんで僕のリアルネームを!?……!君、もしかして木綿季!」

 

ユウキ「そうだよ。竜翔ゲームでもその名前なんだね。」

 

シュバ「これしか名前しっくり来なかったんだよ。」

 

ユウキ「あはは、ボクはその方が分かりやすくていいけど。」

 

シュバ「そっかでもユウキはリアルと同じじゃ……『リンゴーン×3』ん?これは強制転移!?」

 

突如鳴り響いた鐘の音に僕はユウキに説明する間もなく、

 

ユウキ「えっ!」

 

強制転移させられてしまった。

 

シュバルト&ユウキsideout

 

 

 

 

 

Sideテリー&フィリア

 

少し時間はかかったもののフィリアは短剣ソードスキルを難なく使い熟し、フレンジーボアを倒した。

 

フィリア「やぁぁっ!」

 

ブモォォォ……

 

テリー「だいぶコツは掴めたみたいだな。」

 

フィリア「テリーの教え方が上手かったからだよ。」

 

テリー「どういたしまして。どうする?このまま『リンゴーン×3』」

 

フィリア「何この音?」

 

テリー「何か嫌な予感がするな。」

 

その予感が的中し、オレ達は強制転移にさせられてしまった。

 



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デスゲーム開始

遅くなってしまいましたネタが固まらずどうしようか悩んでしまった…


シュバ「……ここは、はじまりの街だね。」

 

強制転移された先はプレイヤー誰しもが訪れるはじまりの街だった。

 

ユウキ「何でここに強制転移したんだろう?」

 

シュバ「さぁてね……何かヤバイ気がする」

 

テリー「シュバルトもここに強制転移させられたのか」

 

シュバ「うん……これはおかしいよ。」

 

テリー「何か異常でもあったのか?」

 

フィリア「テリーこれ見て!」

 

テリー「どうし!!何っ!」

 

シュバ「テリー、何があっ(ユウキ「シュバルトこれ見て!!」何っ!!」

 

シュバテリ「「ログアウトボタンがない!!」」

 

ユウキの言う通りメニュー画面にある筈のログアウトボタンがなかったのだ。

突然、空が赤く染まりsystemannounceの文字が浮かんだ。そして紅い巨大なローブが空中に現れる。

 

男1「何だ、何だ。」

 

男2「あれ、GM?」

 

男3「顔がないぞ。」

 

???「プレイヤーの諸君ようこそ私の世界へ」

 

テリー(私の世界?GMなら自分で作った世界だから間違いないが。)

 

???「私の名前は茅場晶彦、この世界を操作できる唯一の存在だ。」

 

シュバ(な、どういうことだ、こんなこと僕は聞いてないぞ。)

 

茅場「諸君も気付いているとおりログアウトボタンがなくなっているがこれはSAO本来の仕様だ。」

 

男1「仕様だとふざけるな!」

 

茅場「自発的なログアウトはできない。また、外部からのナーヴギアの停止あるいは解除も不可能。このことが試みられた場合諸君らの脳はナーヴギアによって破壊される。」

 

ユウキ「ね、ねぇ、シュバルトこれって本当なの……?」

 

震える声で僕に尋ねてくる。

 

シュバ「うん、電子レンジと同じ原理だ。マイクロウェーブで脳みそを沸騰させれば一撃だよ……」

 

茅場「このゲームからログアウトする方法はただひとつゲームをクリアすることだ。」

 

男2「ひゃ、百層だとふざけんな!ベータテストでさえまともに上がれなかったんだろう!?そんなこと無理に決まってるだろ!!」

 

茅場「最後に諸君らにプレゼントをする。ここが現実だということを認識してもらうためにね。」

 

突然プレイヤー達の体が光輝いた

 

シュバ「アイテム『手鏡』?くっ、何だまぶしい…」

 

突如自分のアバターが光り輝く。

その光が収まり、

 

ユウキ「ああ!これボクの顔だぁ!」

 

テリー「どういうことだ。」

 

フィリア「何で……アタシ達の顔が?」

 

テリー「ナーヴギアは顔全体を覆うからだが体は……」

 

シュバ「多分ボディのチェックとかあっただろ多分それだ。」

 

茅場「これでソードアートオンラインのチュートリアルを終了する。」

 

女1「嫌ぁぁぁぁ!!個々から出してぇぇぇぇ!!」

 

男2「ふざけるなぁぁぁぁ!!出せぇ!個々から出せぇぇぇぇ!!」

 

はじまりの街は悲鳴でいっぱいになった。

ある者は叫び、またある者は地面を掘っていた。

まるで地獄絵図だった。

そんな光景から目を逸らして、この場を離れる。

 

ユウキ「これからどうするの?」

 

シュバ「テリーと一緒にこれから次の街を目指す、安全な道も知っている、2人は僕達に着いてくる?」

 

ユウキフィリア「「うん!!」」

 

テリー「装備は大丈夫だな。」

 

ユウキフィリア「「大丈夫!!」」

 

シュバ「よし、次の街に出発だ!!」

 

 

僕らは行くこのデスゲームを終わらせるために…

 

 

 



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アニールブレイド

僕らは今目的の武器、アニールブレードを三本手に入れるために『ホルンカ』に向かっている

 

ユウキ「ねえこれから何するの?」

 

シュバ「えっと、今向かっている町で受けられるクエストで三、四層まで使える武器を入手するんだ」

 

テリー「フィリアは別クエになるがまあ四人で挑めば余裕だろう」

 

フィリア「あたしだけ武器違う…」

 

一人だけ武器の違うフィリアが落ち込む

 

テリー「いや俺も短剣は使うからそこまで落ち込まなくても」

 

シュバ「あはは……ん?あれってキリト!おーい!」

 

僕は少し離れた場所にいるキリトを見かけたので彼も誘って一緒にアニールブレードを入手すると考えた。

 

キリト「シュバルトじゃないか」

 

ユウキ「知り合い?」

 

テリー「ああ、同じβテスターのキリトだ」

 

ユウキ「ボク、ユウキですよろしく!」

 

フィリア「あたしはフィリアよろしくね」

 

キリト「ああ、よろしく頼む」

 

シュバ「キリトもアニールブレードだよね?一緒にやる?」

 

キリト「そうだな効率も考えると協力した方がいいな」

 

テリー「相変わらずだなそういう所」

 

シュバ「パーティーギリギリだね」

 

─────────────────────────

 

シュバ「ここでクエストが受けられるフィリアは別の場所だから…テリーここの受けたらフィリア連れてってあげて」

 

テリー「わかった」

 

フィリア「お願いね」

 

 

少年少女クエスト受注中

 

ユウキ「みんなに同じ場所で目的のアイテムを入手するんだね!」

 

シュバ「ねえキリト索敵スキルある?」

 

キリト「ある」

 

シュバ「よかった、まだとってなかったから」

 

キリト「お前隠密とったのか」

 

シュバ「後々必要になってくるからね」

 

キリト「まあな」

 

テリー「受けて来たぜ」

 

フィリア「さっそく目的のアイテムを入手しにレッツゴー」

 

 

 

 

僕達は目的のアイテムをドロップするネペントが涌く森へ向かう

 

ユウキ「フィリアが必要なアイテムもここで手に入るの?」

 

シュバ「うん、確かネペントの花弁だから」

 

テリー「花付きってそんなに湧かないから大変だ」

 

キリト「そろそろ出てくるぞ」

 

ネペントキシャァァァァァ

 

フィリア「ねぇいきなり出たんだけどしかも2体」

 

シュバ「あッれれ~おっかしいぞ~( ̄▽ ̄;)」

 

テリー「まぁラッキーだと思っとけ」

 

ネペントの花弁のドロップ率は低くないから二人の分はすぐ獲得できる筈。

 

ユウキ「せぁぁぁぁあ!」

 

フィリア「やぁぁぁぁあ!」

 

ユウキは『ホリゾンタル』、フィリアは『サイド・バイト』でネペントの花付きを切り裂く

 

フィリア「あ!ドロップした!」

 

シュバ「ほいっと」

 

テリー「せいっ」

 

シュバ「こっちもドロップした?」

 

テリー「ああ」

 

もう片方は『スラント』と『バーチカル』で仕留めた

 

キリト「また出てきたぞ!」

 

息つく間もなくネペント実つきが飛び出す。

ふと僕の中で一つの考えが浮かんだ。

これ、実つきの実叩き割って集めたら効率良いんじゃ…この人数なら全滅はない筈だし

 

シュバ「ねぇキリトこれわざと実を割って呼び寄せた方が効率良いんじゃない?」

 

キリト「うーんβテストでも三人居れば問題なかったからやってみるか?」

 

テリー「時間がもったいないやろう」

 

意見が纏まったみたいだし行動に移すとしますか

 

シュバ「ユウキ、フィリアこれからネペントの量が増えるけど、いける?」

 

ユウキ「大丈夫!」

 

フィリア「あたしも!」

 

二人の返事を聞いた僕は実つきネペントの実を叩き割る

 

キリト「集まってきた、集まってきた」

 

シュバ「HPに気をつけて!」

 

「「「了解!!」」」

 

少一時間

 

キリト「あらかた片付いたな」

 

シュバ「お、ドロップしてる人数分足りるなこれは」

 

テリー「戻るか」

 

ユウキ「そうだね」

 

フィリア「目的のものも手に入ったし」

 

 

 

 

 

ホルンカ

 

シュバ「アニールブレード入手!」

 

ユウキ「これって何層まで使えるの?」

 

シュバ「三、四層まで使える」

 

ユウキ「じゃあこの層だと強い方なんだ」

 

テリー「おーい短剣もらってきたぞ」

 

フィリア「ハントダガーって言うんだね」

 

キリト「ごめん待たせた」

 

少し長くNPCハウスにいたキリトが戻ってきた。何があったかは聞かないでおこう。

 

シュバ「どうする?このままパーティー組んだまま明日、素材狩りに行く?」

 

キリト「そうだな……そうするか。みんなまたな」

 

 

 

─────────────────────────

 

次の日

 

 

シュバ「では、素材狩りに行く!」

 

テリー「一応鍛治屋に行って必要な素材は確認済みだ。足りないものがあるなら言ってくれ」

 

ユウキ「えっと……野良狼の爪が足りないね」

 

フィリア「あたしは……青猪の牙がない」

 

キリト「ならそれを狩りに行く方針ってことか」

 

ハントウルフとフレンジーボアはそこら辺に出るから問題なしだね。

 

シュバ「この人数ならばすぐ終わるね」

 

 

 

少年少女ハンティング中

 

 

ユウキ「たくさん集まったね」

 

シュバ「これより武器の強化について説明する!」

 

テリー「武器の強化にはパラメータがある。《鋭さ》《速さ》《正確さ》《重さ》《丈夫さ》」

 

シュバ「《鋭さ》は文字通り鋭くすることで攻撃力を上げる、《速さ》は攻撃時のスピードを上げる、《正確さ》はクリティカルの位置に攻撃をアシストする、《重さは》武器を重くする、攻撃時に怯ませることも可能になる《丈夫さ》は武器の耐久力を上げる」

 

シュバ「まあこれは人それぞれ、好きに強化してくれ」

 

一通り説明し僕達は武器を強化し終えた。

 

僕は鋭さ+3速さ+3

 

テリーは鋭さ+3正確さ+2重さ+1

 

ユウキは鋭さ+3正確さ+1速さ+2

 

フィリアは鋭さ+2丈夫さ+2正確さ+2

 

となった

 

 

 

 

 

 

 




コペルがいないのはシュバルト達が居てMPKをすることが出来なくなったから。
それ以降の彼の行方はご想像におまかせします。


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シュバルト暴走

シュバ「ふわぁ~」

 

目を覚まし大きなあくびをするのは、シュバルトという少年なのだが、彼は一つ問題を抱えている。

 

シュバ「料理スキルを取りたいけど空きがないんだよなぁ」

 

そう趣味スキルである料理スキルを取ろうとしている。

現在シュバルトのスキルは片手剣、軽金属装備、隠密を取っている。

そして朝一番に考えることがこれである。なんとも呑気な少年だ。

 

シュバ「次の層に行ったら少しスキルに余裕が持てるから、それまで我慢かな」

 

装備を整え宿屋の階下のロビーに行く。

 

 

シュバ「まだみんな起きてないんだ」

 

まだ誰もここには知り合いはいないようだ。

 

シュバ「今日って確か攻略会議の日か……」

 

ボスの事や今後の活動方針を考えていると、上から足音が聞こえてきた。

 

ユウキ「おはよう~」

 

シュバ「おはよう」

 

ユウキ「まだ二人は起きてないんだ」

 

シュバ「そろそろ起こしに行こうかな……」

 

ユウキ「そうだね。ボク、フィリア起こしに行ってくる」

 

シュバ「僕はテリーを起こしてくる」

 

少年少女起床中

 

テリー「ふわぁ……眠い」

 

フィリア「今日はどうするの?」

 

シュバ「今日の夕方攻略会議が広場で行われるらしいから、とりあえず午前中はレベリングをして午後は会議まで自由にしようかな」

 

テリー「まぁそれが妥当だな」

 

 

こうして今日の活動方針を決めた僕達。まさか攻略会議で一波乱があるとは予想もしていたのだった。

 

─────────────────────────

 

 

シュバ「テリースイッチ!」

 

テリー「了解」

 

僕達は今迷宮区でコポルドの群れと戦っている。今回のボスの取り巻きの対処の練習の為だ。僕とテリーは感覚を取り戻す為とレベリングだけど。

 

 

ユウキ「うーん難しいなあ」

 

シュバ「確かに片手剣だと刺突が少し難しいからね」

 

基本、刺突属性の武器は細剣、片手槍、両手槍が主だが、片手剣、特に短剣だとなかなか刺突する際にブレたり危険が伴ったりする。

 

フィリア「基本あたしが攻撃をパリィして、ユウキにとどめをさしてもらうのが安全かな?」

 

テリー「まぁそれが良いと思う」

 

シュバ「よしこの調子でお昼までレベリングを続けよう」

 

 

このまま僕達はコポルドを狩り続けた。

結果

 

僕がレベル8

 

テリーがレベル8

 

ユウキがレベル7

 

フィリアがレベル7

 

となった。

 

そろそろお昼の時間帯になり戻ろうとすると、隠し扉のようなものがあった。

 

ユウキ「なんだろうこれ」

 

テリー「一層の迷宮区にこんな扉があったか?」

 

シュバ「なかったね。情報屋からもここの場所の話しは聞いてない」

 

フィリア「行ってみる?」

 

一応安全マージンは取ってあるし、ポーションも余裕がある。行くか行かないか悩む。

 

テリー「行くか?俺としては気になるし、それに……」

 

テリーが少し言いずらそうに

 

テリー「フィリアの目がキラキラしてるし……」

 

そういえばフィリアってこういったお宝探しみたいなのが好きだったっけ。

 

シュバ「よし行くか!」

 

ユウキ「やった」

 

ユウキが喜ぶ後ろでフィリアが小さくガッツポーズをしていた。そんなに行きたかったのか……

僕らは隠し扉を開く。

すると奥に黄色と青の大きなコポルドが出現し、それと同時に扉も閉まってしまった。

 

シュバ「これはマズったか?」

 

テリー「レベル的には問題はなさそうだが」

 

黄色のコポルドナイトゲルプと青のコポルドナイトブラウのレベルは11倒せないレベルではないが、HPゲージが二本、少しばかりきつい。

 

シュバ「まず二手に別れよう。僕とユウキが黄色、テリーとフィリアは青を狙って行こう」

 

相手の武器は黄色が曲刀、一層のボスと同じ武器だ。

 

シュバ「全員相手の様子を伺ってチャンスだと思ったら攻撃!なるべく隙を作らないよう注意して!」

 

「「「了解」」」

 

 

 

 

─────────────────────────

 

シュバside

 

 

こうして黄色の動きを観察してみると、スピードは遅いが攻撃力は高い、だが単発のソードスキルしか使って来ないのでソードスキルは容易にパリィできる。

 

シュバ「とりあえず僕が攻撃をパリィするから、その隙にユウキはソードスキルを叩き込んで」

 

ユウキ「わかった!」

 

ゲルプが曲刀ソードスキル『リーパー』で切りかかってくる、それを『スラント』で切り上げゲルプの体制を崩しユウキとスイッチをする。

隙だらけとなったゲルプの体めがけて『ホリゾンタル』を放つ。直ぐさまスイッチをし『バーチカル』で追い討ちをする。それを繰り返し、ゲージが残り一本になると2体は大ジャンプし下がる。

 

シュバ「パターン変わるぞ!注意!」

 

─────────────────────────

 

テリーside

 

テリー「フィリア!俺が攻撃をパリィする。その隙に攻撃を叩き込め!」

 

フィリア「うん!」

 

俺はブラウの動きは、スピード方で攻撃力は高くないようだ。その分通常攻撃が連続して振るわれる。

そこまでSTR値は高くないのでソードスキルで弾ける。

俺が『バーチカル』で弾きスイッチでフィリアと交代し『アーマー・ピアス』で怯ませ、その隙を『ホリゾンタル』で追撃。これを繰り返し、ゲージが残り一本になるとブラウは大ジャンプし下がる。

 

シュバ「パターン変わるぞ!注意!」

 

─────────────────────────

 

シュバside

 

「グルルルァ!」

 

ゲルプが唸り声を上げると目が紅く光り、2体の持つ武器が変わる。2体同時にこちらへ走ってくる。

黄色が片手斧、青が片手棍と一撃が重い武器となる。

 

 

シュバ「2体連携か……」

 

ユウキ「これきついんじゃない……」

 

確かにボスが連携してくるのはかなりきつい。

 

テリー「切り離してくのがセオリーだが。どうする」

 

確かに切り離して戦うのがセオリーだが、この場合は1体、1体が重い武器になりパリィすることが困難になる。

それが同時となると確実にこちらが削られる。

 

シュバ「僕が黄色の方を引き受ける。三人は青い方を頼む」

 

ユウキ「大丈夫なの?」

 

シュバ「ソードスキルの対処さえすればいける」

 

フィリア「死なないでよ」

 

シュバ「当たり前だ!」

 

僕はそう叫びゲルプへ剣を振るう。

ゲルプの重単発ソードスキル『グラウンド・ショック』を放つがそれを、斧の柄を『ホリゾンタル』で反らし『レイジスパイク』で反撃をする。『ログスラッシュ』は『スラント』で弾く。

ソードスキルを弾いては反撃、かわしては反撃を繰り返していると、突然青い方がこちらへ跳んできた。

 

まさか三人が殺られた……?

 

後ろを振り向くと、三人はスタンの状態異常になっていた。

 

テリー「ぐっ………」

 

不味い今ゲルプがテリー達の方へ向かおうとしている。HPゲージを見るとイエローゾーンに突入していた。

 

このままだと三人が殺される……

一人で抑えなければならない状況となってしまった。スタンの時間は5秒、それだけあれば僕のHPゲージをゼロにするのは容易い。

僕は足下にある小石を黄色に投げつけタゲをこちらに向ける。2体の同時攻撃が僕を襲う。

青い方の攻撃のスピードがこちらの反応速度を上回り、黄色の方の攻撃が僕の武器を弾き飛ばす。

僕のHPゲージがイエローゾーンへ突入し同時ソードスキルが放たれる。

 

 

 

死ぬのか?僕はこんなところで。何も出来ずに終わるのか?

 

プツン

 

その時何かが僕の中で切れた

 

─────────────────────────

 

テリーside

 

ブラウの相手をしていると突然『サイレントブロウ』を放ち俺達は壁まで殴り飛ばされる。すぐに反撃をしようとするも、スタンの状態異常が左上に表示されていた。

 

不味いこのままだとシュバルトが殺される

 

状態異常が早く治れと祈るなかシュバルトの様子が変わった。まるで別人のようにボス2体を攻撃し始めた。

 

テリー「あいつ、動きが変わった……」

 

ユウキ「何があったの……」

 

俺達はスタンが終わっているのにも気づかずシュバルトの戦いを見続けていた。

 

─────────────────────────

 

殺される?んなことさせねぇ。

あのモブ2体の動きは全部見切った今度はこっちの番だ。

 

「グルルルァ!」

 

シュバ?「うるせぇよ……モブはモブらしく蹂躙されてりゃいいんだよ」

 

シュバルトの雰囲気が普段のふんわりとした時とは一転して、不良のような口調になり戦い方も、台風の如く周りを吹き飛ばすように武器を振り回す。

ゲルプの斧を叩き上げ、ブラウの棍に飛びのりソードスキルを放つ。

2体のコポルドナイトの表情が若干怯えの色に変わる。再びゲルプが吠える。その咆哮に怯む事なく突撃をするシュバルト、その戦いは20分にも満たない時間だったが、彼の戦いを見ていた三人にとってはとても長い時間に感じられた。

 

 

HPゲージをすべて削りきり、戦闘が終了すると同時に彼を暴れさせていた意識がなくなった。

 

─────────────────────────

シュバルトside

 

シュバ「はぁ……はぁ…ふぅ」

 

コポルドナイトを無事に倒すことができたようだ。

ラストアタックボーナスを確認する前に三人の様子を見に行ったら、目の焦点が合っていなかったので、おもいっきり手を鳴らした。

 

テリー「シュバルトお前大丈夫か……」

 

シュバ「うん、生きてるよ」

 

ユウキ「突然動きが速くなって、攻撃が当たらなくなって」

 

フィリア「そしたらボスのHPがなくなってて」

 

反応は三者三様のようだ。

確かに僕の動きはキレを増して動いた気がする(・・・・)。自分でもどう動いたか覚えていなく、記憶が曖昧でどうなったのかすら理解してない。

 

テリー「そういえばラストアタックボーナスはどうだった?」

 

テリーに聞かれ、メニューを開きアイテム欄を確認する。

 

シュバ「えっと『シルバーガントレット』と『コポルドファーマント』だね。性能は五層まで使える」

 

これを誰に装備させたら良いか考える。籠手はテリーで、マントはどうしようか。

マントにはある程度の打撃、斬擊耐性がある。

 

ユウキ「どっちもシュバルトが装備したら?倒した本人なんだし」

 

シュバ「でもあれは僕が無茶をしたから……」

 

フィリア「良いんじゃない。シュバルト次の層でかなり難しいクエスト受けようとしてるみたいだし」

 

テリー「そうだな。お前が次の層で、高難易度のクエストを受けるのはβの時に知ってる」

 

三人からの意見に僕はこの装備を利用することにする。

 

シュバ「わかった。次の層で死なないようにこの装備を使わしてもらうよ」

 

もう昼を過ぎていたので迷宮区から出て町に戻ることにした。道中は問題無く進み、何事もなく大きなハプニングがあったものの午前の予定を無事終えることができた。

 

 

 

 

 



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攻略会議





シュバルトside

 

迷宮区から無事帰還し昼食をとる予定なのだが、コポルドのボスを一人で相対した時の記憶が曖昧なのだ。

自分は二重人格(・・・・)だという話しを聞いたことがない。もし二重人格なら怖い自分の意識のないところで何かしていると思うと……この先は考えないでおこう。

僕は忘れるために頭をブンブンと振った。

 

ユウキ「どうしたの?」

 

シュバ「ううん、ちょっと嫌なこと考えててね……」

 

テリー「なんかあれば言えよ。ここにいるのはお前の味方だからよ」

 

僕の回りは良い人達だな。

これからも大切にしないと。

 

フィリア「この後どうする?攻略会議まで時間があるけど」

 

元々の予定は会議まで自由時間なのだが。僕はもう少しレベルを上げておきたい。ステータス的なレベルではなくただプレイヤースキルを上げたい。

圏内では攻撃してもコードがあるので、プレイヤーに直接ダメージを与えられない(・・・・・・)、それを利用してできる圏内戦闘というものがある。

相手はテリーに頼んである。

 

シュバ「戦闘訓練かな?」

 

ユウキ「どうやってやるの?」

 

シュバ「街中ではコードが発動してダメージが入らないのを逆に利用してやる、圏内戦闘っていうんだ」

 

テリー「それをやろうと思ってな」

 

ユウキ「それ、ボク見学してもいい?」

 

フィリア「あたしも!」

 

その後僕らは圏内戦闘でプレイヤースキルを上げていった。

 

─────────────────────────

 

シュバ「そろそろ攻略会議の時間だ」

 

テリー「ああ、お前ら準備はできたか」

 

ユウキ「うん」

 

フィリア「あたしも問題なし」

 

僕らはトールバーナの噴水へ向かう。

 

ユウキ「何人くらい集まると思う?」

 

シュバ「1レイド分くれば多い方だろうね」

 

こんなデスゲームで戦いにくる人の方が少ない中で集まるのだろうか。

そんなことを考えながら歩いていると、近くの噴水広場に着く。

 

テリー「んーと……俺達含めて四十六人だ。1レイド弱か、これでも集まった方だろ」

 

シュバ「うん。思ったより集まったね。それが《勇気ある行動》なのか、はたまた《遅れるのが嫌》なのか。どっちかというと僕は前者だけど」

 

テリー「それは何で」

 

シュバ「このデスゲームの開発に携わって何もしないで見てるよりはって感じかな」

 

ユウキ「責任感じてるの?」

 

シュバ「ん?……ああ、まあ確かにそうだね。ぶっちゃけると二人を連れてきたのもそれが理由だし。あと関係者が何もしてないって言われるのが面倒」

 

フィリア「そっか」

 

テリー「とりあえず始まるまで座ってようぜ」

 

手頃な場所に座り会議が始まるのを待つことにした。

それから数分たつとキリトが来たのだが、その後ろにはなにやらフードを被ったプレイヤーがいた。

 

キリト「やっぱりお前らも来てたのか」

 

シュバ「まあね。それと後ろの人は?」

 

キリト「成り行きで」

 

テリー「その成り行きは聞かないでおこう」

 

キリト「そうしてくれると助かる」

 

一体二人に何があったんだ?

すると会場のステージの方で一人のよく通る叫び声と手を叩く音が広場に流れてきた。

その声は例えるならこれから強大な敵に立ち向かおうとする勇者のようだった。

確かにこれからそれの会議をするのだが、妙に合っている。

 

???「はーい!それじゃ、五分遅れだけどそろそろ始めさせてもらいます!みんなもうちょい前に……そこ、あと三歩こっち来ようか」

 

声の主は、長身の各所に金属防具を煌めかせた片手剣使い(ソードマン)だった。

ステージの上へ助走なしでひらりと飛び乗る。その装備と行動からするにかなりのレベルを上げているのだろう。

 

フィリア「妙にあの人役にはまってるね」

 

ユウキ「それの為の装備と髪なんでしょ。なんというか……はまり役だね」

 

女子二人はステージ上の男に対して警戒のような人間観察をしている。まあネトゲはすぐ人を信じ込むのは少々危ないからいいことなのだが。

 

???「今日は、オレの呼び掛けに応じてくれてありがとう!知ってる人もいると思うけど、改めて自己紹介しとくな!オレは《ディアベル》、職業は気持ち的に《ナイト》やってます!」

 

噴水近くの一団がどっと沸き、口笛や拍手が起きる。それに混じって「本当は《勇者》って言いてーんだろ!」などという声が飛ぶ。

 

テリー「騎士(ナイト)様ねぇ……」

 

フィリア「どうしたのテリー?」

 

テリー「いやなんとなく胡散臭げだなって」

 

テリーの言う通りそこはかとなく胡散臭い。なんというか、これから共に攻略をする人物を疑うのは悪いのだろうけど、ああいうタイプは裏と表の使い方がうまい。

攻略には前向きなんだろうが、攻略とは別に他の目的がありそうだ。

それに彼の姿何処かで見覚えがあるが、思い出せない。

 

ディア「さて、こうして最前線で活動している、言わばトッププレイヤーのみんなに集まってもらった理由は、もう言わずもがなだと思うけど……今日オレ達のパーティーが、あの塔の最上階へ続く階段を発見した。つまり、明日か遅くとも明後日には、ついに辿り着くってことだ。第一層の……ボス部屋に!」

 

どよどよと、まわりのプレイヤー達がざわめく。かくゆう僕も少々驚いた。僕達がコポルドの隠しボスと戦っていた間にすでに攻略されていたとは知らなかった。(コポルドの隠しボスの部屋は十八階だった)

 

ディア「一ヶ月。ここまで、一ヶ月かかったけど……それでもオレ達は、示さなきゃいけない。ボスを倒し、第二層に到達して、このデスゲームそのものがいつかきっとクリアできるんだってことを、はじまりの街で待っているみんなに伝えなきゃならない。それが、今この場所にいるオレ達トッププレイヤーの義務なんだ!そうだろ、みんな」

 

再び拍手喝采。今度は彼の仲間以外も手を叩く者もいるようだ。

 

テリー「すごい奴だな。カリスマスキルCでもあるのか?」

 

シュバ「さすがに言い過ぎかな?せいぜいD+くらいかな」

 

ユウキ「唐突にFateの話しないで着いてけない」

 

シュバ「ごめん」

 

少しすると後ろから制止をかける声が上がる

 

???「ちょお待ってんか、ナイトはん」

 

やはり全員が全員、納得したというわけではないようだ

 

 

 

 

 

 



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モヤットボール

コロナが怖いですね……
皆さんも健康に気を付けて生活してください。


シュバルトside

 

???「ちょお待ってんか、ナイトはん」

 

そんな声が低く流れたのは、その時だった。

歓声はぴたり止まり、前方の人垣ふたつに割れる。空隙の中央に立っているのは、小柄ながらがっちりとした体格の男だった。

彼の装備は革の上に分厚い金属片を縫い付けたスケイルメイル、この層ではそこそこ使えるランクの物だ。

しかしその髪型がとても個性的だった。

 

シュバ「モヤットボール?」

 

テリー「ブフォ‼️」

 

あっ、テリーが吹いた。

 

ユウキ「ねぇ、モヤットボールって何?」

 

フィリア「えっとたしか○内エ○テIQサプリに使ってたボールだった気がする」

 

フィリアは知ってるみたいだ。

知らない人が多いのかな?あれ結構面白かったな。

※ちなみに作者は知らないです。

 

???「そん前に、こいつだけは言わしてもらわんと、仲間ごっこはでけへんな」

 

この唐突な乱入に、ディアベルはほとんど表情を変えなかった。むしろ余裕溢れる笑顔のまま、手招きしながら言う。

僕は疑問を抱かざるをえなかった。なぜディアベルは突然の乱入に余裕溢れる笑顔(・・・・・・・)を保っていられることを。ただでさえこの状況でリーダーを演じているのが大変なことなのに。普通は少しは動揺する筈だ。

まるで予定通り(・・・・)に物事が進んでいるかのように。

いや深読みし過ぎか。初対面の人に対して失礼だね。

 

ディア「こいつってのは何かな?まあ何にせよ、意見は大歓迎さ。でも、発言するなら一応名乗ってもらいたいな」

 

???「わいはキバオウってもんや」

 

なかなか勇猛なキャラネームを名乗ったサボテン(モヤットボール)頭の片手剣士は、するとか目で広場の全プレイヤーを睥睨した。

その視線が隣に座る黒衣の剣士の上でほんの一瞬停止した──ような気がした。

 

シュバ「ねぇキリト彼と知り合いなの?」

 

キリト「知らないな。なんなら名前も初めて知ったし」

 

そしてキバオウは時間を掛けて一同を見渡し終えると、いっそうドスの利いた声で言った。

 

キバオウ「こん中に、五人か十人ワビぃ入れなあかん奴らがおるはずや」

 

ディア「詫び?誰にだい?」

 

ディアベルは様になった仕草で両手を持ち上げる。そちらを見ることなく、キバオウは憎々しげに吐き捨てる。

 

キバオウ「はっ、決まっとるやろ。今までに死んでった二千人に、や。奴らが何もかんも独り占めしたから、一ヶ月で二千人も死んでしもたんや!せやろが!!」

 

ざわついていた約四十人の聴衆が、ぴたりと静かになった。キバオウが何を言いたいのかが、やっと理解したのだろう。

誰も何も言わない。何か言えば《奴ら》の一員にされてしまうと怖れているのだろう。

言いたいことはあるが今はまだ様子を伺うとしよう。

 

ディア「キバオウさん。君の言う《奴ら》とはつまり……元ベータテスターの人たちのことかな?」

 

キバオウ「決まっとるやろ」

 

スケイルメイルをじゃらじゃら鳴らし、キバオウは背後の騎士を一瞥してから続けた。

 

キバオウ「ベータ上がり共はこん糞ゲームがはじまったその日に、ビギナーを見捨てて消えよった!奴等はボロいクエストやウマイ狩り場を独占して、自分らだけポンポン強なってその後もずーっと知らんぷりや。こん中にもおる筈やで、ベータ上がりの卑怯者が!!そいつらに土下座させて、溜めこんだ金やアイテムを全部吐き出してもらわんと、パーティーメンバーとして命は預けれんし、預かれん!!!」

 

どうどうした宣言に声を上げる者はいなかった。

僕は以前テリーと一緒にアルゴからある情報を購入した。それは元ベータテスターの人数とその死亡者数。

時間が掛かると思ったが彼女はたったの3日でその数字を示した。

三百人。これがベータテスターの死亡者数だ。

しかし壇上の男キバオウは死亡者二千をニュービーだ思い込んでいるのだろう。

 

???「発言いいか」

 

僕は立ち上がり反論しようとすると、人垣の左側から豊かなバリントンが、聞こえた。

その声の主の姿はとても大きく、推測するに身長は百九十はあるだろうか。背中に吊っている両手用戦斧(ツーハンド・バトルアックス)がとても軽そうに見える。

 

???「俺の名前はエギルだ。キバオウさん、あんたの言いたい事は、元βテスターが面倒を見なかったからビギナーが沢山死んだ、だからその謝罪と賠償をしろ、ということか?」

 

キバオウ「そ……そうや」

 

エギル「このガイドブック、あんただってもらっただろう?いろんな街の道具屋で無料配布されているからな」

 

キリト「無料配布だと?」

 

シュバ「どったのキリトくん?」

 

キリト「あの鼠が無料で情報を提供するとは思えないんだが……金取られたし」

 

テリー「多分あいつなりの方法でやったんだろ。キリトの金はそれの制作費なんだろうな」

 

キリト「そうか……」

 

僕達は壇上に意識を戻す。

 

─────────────────────────

ユウキside

 

キバオウ「貰たで。それがなんや」

 

エギル「配布していたのは元βテスター達だ。いいか!情報は誰にでも手に入れられたなのに沢山のプレイヤーが死んだ。それは彼らがベテランだったからだと俺は考えてる。ベータテスターが面倒を見た見なかったを追及してる場合じゃないと、俺は思うんだが」

 

エギルさんの話しが終わると同時に隣に座っているシュバルトが立ち上がり声を上げる。

 

シュバ「僕も一ついいかな?」

 

僕はその場から壇上へ歩きディアベルよりも高く飛び、着地する。

 

シュバ「僕の名前はシュバルト『元ベータテスター』だ。キバオウさんあんたは死んでいった二千人が全員ニュービーだと思い込んでいるんだろうけど、その中にベータテスターが何人死んだと思う?」

 

キバオウ「し、知らんわんなもん!」

 

シュバ「三百人だ。三百人のベータテスターがニュービーに混ざって死んでいったんだ。鼠から買ったから間違いはない」

 

さらに彼はキバオウを責め立てる。

 

シュバ「キバオウさんあんたがベータテスターに謝罪として金やアイテムを差し出せとか言ったけどさぁ、そんなことして戦力ダウンしてなにがしたいんだい?ボスを倒す確率だって確実に下がるのにさ」

 

彼の顔は笑っていたが、その笑みがとても冷たかった。

 

キバオウ「そ、それは……」

 

キバオウは反論意見も出せずに狼狽える。

 

シュバルト「なにも言えないならさ、さっきの無責任な発言はやめて欲しいな」

 

しばらく沈黙が場を包む。

 

ディア「よし!会議を再開しよう!」

 

ディアベルはそう言って会議を仕切り直す。

 

シュバルトは壇上から降りてこちらに戻ってくる。

 

ユウキ「お疲れ様。かっこよかったよ」

 

テリー「しかしまぁおまえがここまで感情的になるなんてな」

 

シュバ「いちばん怖いのは無知なことだからね。彼に悪い印象を抱かれても死なないで欲しいのと、ちょっとムカついたからかな」

 

その後アルゴの攻略本に記載されている、情報を確認して次の日に攻略を開始すると決まった。

 

シュバ「とりあえずパーティーは僕、ユウキ、テリー、フィリア、キリトは決まってるとして」

 

一言もしゃべらないフードのプレイヤーがいたのだが。

 

キリト「あんた、アブレたのか?」

 

???「……アブレてないわよ。周りがみんなお仲間同士みたいだから遠慮しただけよ」

 

それをアブレたって言うんだよね……

 

ユウキ「ならさ、ボク達と組まない?あと一人でフルパーティーだから」

 

???「ならそっちのリーダーさんから申請するなら受けてあげないでもないわ」

 

う~んなんだろう会ったことないのになんか知ってる人がいるような気もしなくもない、変な感じだなぁ。

 

僕はフードのプレイヤーにパーティー参加申請を出した。フードのプレイヤーは素っ気ない仕草でOKを押すと、視界左側に六つ目のHPゲージが出現した。

【Asuna】。それがフードのプレイヤーの名前だった。

 



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イルファング・ザ・コボルドロード

シュバルトside

 

 

その後、ディアベルが自身の指揮能力でチーム分けと役割分担を平行して行い、結果(タンク)部隊が二つ、高機動高火力の攻撃(アタッカー)部隊が三つ。そして、長ものの支援(サポート)部隊が二つ出来た。

 

ディア「君たちは遊撃部隊で狩り漏らしのコボルドを頼む」

 

シュバ「了解した」

 

まあ、個人的な集まりで装備品もばらけてるからね。遊撃部隊は妥当だね。

 

アスナ「いいの、ボスにほとんど攻撃出来ないじゃない」

 

テリー「別に問題はないだろ。それだけあいつに自信があるんだろう」

 

フィリア「これからどうする?」

 

シュバ「この六人で軽くスイッチとPOTローテの練習をしよう」

 

アスナ「スイッチ?……ポット?」

 

すると少し離れた位置にいるアスナが訝しそうに呟く。どうやらかなりの初心者のようだ。

後で説明することを伝えると、彼女はしばらく沈黙し、頷いたかもわからないくらい微細な動きで頷いた。

 

 

 

 

 

 

─────────────────────────

 

次の日

 

昨日のボス攻略会議と同じ広場にはすでに人が集まっていた。

 

 

ディア「みんな今日は第一層のボスを討伐する!」

 

これから僕達はフロアボス『イルファング・ザ・コボルドロード』を討伐する。

レベルは十分、装備のメンテナンスもバッチリだ。

ただ不安要素としてはボスの予想外の行動である。

あの茅場がβテストと同じ設定にしている筈はないと思う。

 

「おい」

 

すると後ろから友好的とは言いがたい声が聞こえ、振り向く。

モヤットb……げふんげふんキバオウが立っていた。思わず驚いて声をあげそうになる。

僕はあまり彼と顔合わせはしたくはなかったのだが。

 

キバオウ「ええか、今日は後ろに引っ込んどれよ。ジブンらは、ほとんどサポするだけやからな」

 

キリト「…………」

 

キリトはあまり口上手ではないのか、無反応だ。

 

キバオウ「大人しく、狩漏れた雑魚コボルドの相手しとけや」

 

そのままキバオウは身を翻し自分のパーティーへ戻った。

 

アスナ「何あれ」

 

ユウキ「感じ悪ーい」

 

フィリア「あんな人とパーティーなんて組みたくないね」

 

テリー「βテスターは調子に乗るなってことか?」

 

シュバ「さぁてね。ねえキリト、キバオウと何かあった?」

 

キリト「実は俺のアニールブレードを買い取ろうとしてたんだよ」

 

シュバ「ボス戦前なのになんで?それと何コル?」

 

キリト「わからないな、およそ四万コル」

 

テリー「ならおかしいなそんだけの大金があるならあいつの装備が一新しないとおかしい。裏で誰かが買い取ろうとしているのを手伝ったのかもな」

 

テリーのその発言に僕は疑問が浮かぶ。

誰がキバオウに買い取りの依頼をする人物が誰なのかと何故買い取ろうとしたのかだ。

まずそれができる人なんて……いやいる、彼ならキバオウに買い取りの依頼をする可能性がある。

彼がその依頼をしたなら昨日の会議でキバオウが乱入して来ても動揺しなかったこともつじつまが合う。大分こじつけだけど。

そういえば昨日、キバオウを論破するためにアルゴかなりプレッシャーかけたと思うその発言で。ごめん、今度何か奢るから許して。

心の中でこの場にいない彼女に謝罪をする。

 

 

 

シュバ「ねえキリト本当にアニールブレードを買い取ろうとした人物だけど、多分ディアベルだと思う」

 

キリト「なんでだ?」

 

シュバ「昨日の会議でキバオウが乱入しても動揺しなかったでしょ、多分あれディアベルの中では確定事項だったんだよ。キバオウに買い取りの依頼する代わりに、テスターの恨みを言うっていうさ」

 

テリー「理由としては薄そうだが、可能性としてはありだな」

 

キリト「なるほどな、ディアベルの動向に気を付けて見るよ」

 

僕ら三人はディアベルの動きに注意することにした。

すると壇上に立つディアベルが声を再び上げる。

 

ディア「みんな、いきなりだけど──ありがとう!たった今、全パーティー四十六人が誰一人欠けることなく集まった」

 

とたんに大勢の歓声が広場の空気を揺らす。次いで滝のような拍手。まるで勇者とその大勢の仲間達のようだ。

一同を笑顔でぐるりと見渡してから、騎士はぐっと右拳を突きだし、さらに叫ぶ。

 

ディア「今だから言うけど、オレ実は一人でも欠けたら攻略を中止しようと思ってた!……そんな心配、みんなへの侮辱だったな!オレスゲー嬉しい……こんな最高のレイドを組むことが出来て!」

 

笑い声、口笛が聞こえたり同じように右手を突き出す者がいる。

しかしこれは少し盛り上げ過ぎではないかと思わずにはいられない。緊張し過ぎれば恐怖になり楽観は油断を生む。β時代なら油断しても問題はないが、今は違う、死ねば本当に死ぬ。そんな状況だ、気を引き締めすぎることがちょうどよい。

集団を見渡すとエギル率いるB隊は、厳しい表情をしていた。いざとなったら彼らを頼ることとしよう。

E隊のキバオウは、こちらに背を向けたままで表情が見えない。

 

ディア「みんな……オレから言うことは一つだけだ!」

 

右手を腰に当て、銀色の長剣を天高く上げ

 

ディア「勝とうぜ!」

 

 

─────────────────────────

 

ボス戦が始まってからどれくらい経っただろうか、僕らは取り巻きのルインコボルド・センチネルの相手をしている。前に隠しボスと戦う前にモブとして湧いていたルインコボルド・トルーパーとは比べ物にならないほど強い筈だがこのゲームではほとんど初心者の女性陣は的確に攻撃を弾き、隙をついて喉元の弱点を攻撃する。

 

シュバ「ナイス」

 

ユウキ「この調子で行こう」

 

王様コボルドのゲージの一本目がなくなる。最前列でディアベルが「二本目行くぞ!」と叫ぶ。

すると追加のセンチネルが飛び降りてくる。

遊撃部隊だというのに近くにいる一匹を切る。

 

アスナ「スイッチ!」

 

アスナがそう叫びキリトと交代する。いままでほとんど無口だった彼女が叫ぶところは初めて見た。

テンションが上がってきたのだろう。

そしてコボルドの王様とその衛兵対フルレイドのプレイヤーの戦いは、怖いほど順調に進んでいる。

ボスを見るとすでに二本目のゲージがなくなり、三本目のゲージを半減させていた。    

すると背後からダミ声が聞こえた。

 

キバオウ「アテが外れたやろ。ええ気味や」

 

シュバ「どういうことだい?」

 

キバオウ「ヘタな芝居すなや、こっちは知っとんのや、ジブンがこのボス攻略部隊に潜り込んだ動機っちゅうやつをな」

 

こちらを睨み付けながら吐き捨てる。

 

キリト「動機……だと?ボスを倒す以外に何があるって言うんだ」

 

キバオウ「何や、開き直りかい。まさにそれを狙っとったやろが!わいは知っとんのや。チャン聞かされたで……あんたらが昔、汚い立ち回りでボスのLAを取りまくっとたことをな!」

 

僕らはキバオウの言葉に絶句せずにはいられなかった。

何故ニュービーの彼がその情報を知っているのか、誰から聞いたのか。

 

シュバ「おい、それを誰から聞いた。そしてその情報をどうやって入手した……」

 

僕は少し脅し気味に問い詰める。するとキバオウはあっさりと吐いた。

 

キバオウ「ディアベルはんや、えろう大金積んで《鼠》からベータ時代のネタを買ったんや」

 

ここで一つあり得ないことがある。アルゴは例え自分のステータスを売っても、ベータテスト関連の情報は絶対に売ることはない。

つまりディアベルがベータの情報を知っているということは、彼自身がベータテスターというわけだ。

 

シュバ「ダウト。アルゴはそんなこと絶対に売らない」

 

キバオウ「はん!そんなこと言ってゴマカソウなんて百点早いわ」

 

彼のその言葉に僕は冷たくに吐き捨てる。

 

シュバ「あっそ……」

 

僕は目の前のセンチネルに止めを刺し、ボスを見ると所持していた骨斧と皮盾を同時に投げ捨て、後ろ腰へ右手を持っていく。

そこで僕は嫌な予感と一つ疑問を抱く。

何故隠しボスが湾刀を使っていたのか。隠しボスなら謎の武器を使っててもいい筈だ。隠しボスが違うなら……

不味い……ボスの武器は攻略本と違う……おそらく曲刀の派生武器である()だ。

僕はみんなに指示を出す。

 

シュバ「ユウキ、フィリア、アスナ!センチネルは任せた!テリー、キリト!僕達はボスに全力でソードスキルを放ちにいくぞ!」

 

キリト「お、おいどうした?」

 

テリー「まさかボスの情報が違うことに気づいたのか?」

 

シュバ「ああ!ボスの武器は湾刀じゃない、野太刀だ!」

 

僕達は武器を構えてボスへ突撃する準備をする。そしてボスが囲まれ状態を認識すると刀専用ソードスキル旋車の発動体制に入ろうとする。それに気づかないディアベルはソードスキルを放つ。

 

キリト「だ……ダメだ!下がれ!!全力で後ろに飛べー!」

 

キリトの必死な叫びもボスが始動させたソードスキルのサウンドエフェクトにかき消される。

僕はテリーと同時にホリゾンタルで相殺しようと試みる。

 

シュバ「ぅおおお!」

 

テリー「はあああ!」

 

その試みが成功し、ソードスキルを無事に阻止することに成功する。

そしてその隙にディアベルのソードスキルも発動し命中する。

 

ディア「あれ?君たちはセンチネルの担当の……「いいから一旦下がれ!」わ、わかった……」

 

攻撃部隊はディアベルの指示でコボルド王から離れる。

離れたところで僕はディアベルに耳打ちをする。

 

シュバ「ディアベルあれは攻略本とは違う武器だ下手すれば殺される」

 

ディア「……知っているのか君は」

 

シュバ「ああ、あれは十層の敵が使う武器の刀だ。ソードスキルの種類もある程度は覚えてる。あなたにそれを伝える」

 

僕は彼に十層の敵が使っていたソードスキルの種類を話す。あまり時間がないので手短に。

 

ディア「わかった。それとさっきは助かった、君たちが相殺してくれなかったら殺られていただろう」

 

シュバ「お礼は後だ指示を頼むよリーダー」

 

ディア「それなんだけど、君がしてくれないか。話を聞く限り君は敵のソードスキルについて詳しい、だから的確な指示が出来るのではないかな」

 

少し悩んだ。僕は野良プレイヤーだ。そんな奴の指示を誰が聞くのだろうか。

するとディアベルが周りに向かって声を上げる。

 

ディア「みんな聞いてくれ!ボスの武器が情報と違う!だけど、そのことを対処できる人がいる!指揮はその人に任せるからきちんと指示通り戦ってくれ!」

 

ディアベルの指示に周りのプレイヤー達は叫び声で応じる。

もうこうなったらやるしかない!

僕は脳をフル回転させて情報を引っ張り出す。βで使われていた刀専用ソードスキルは四つ。最初に放った旋車、次に切り上げる浮舟、そして浮舟などからコンボで繋がる緋扇、そして居合系の辻風だ。他にもいろいろあるがこの四つだけは確実に使うと判断する。

スキルの硬直から脱してボスが再び暴れようとする。

 

シュバ「攻撃の種類は最低でも四つだ!一つはさっき使った範囲一回転する攻撃!次に切り上げるやつ!さらにコンボで繋がる三連撃!最後に居合切りだ!きっちりガードすれば大ダメージは受けない!まだあるかもしれないから深追いはしないように!」

 

「「「おう!」」」

 

そこからは堅実に攻撃を重ねていく。

浮舟などのソードスキルを僕とテリーとキリトや壁部隊が相殺し、その隙を攻撃するの繰り返しが続いた。

突然ディアベルが飛び出してきた。コボルド王は体制をすぐに建て直し、浮舟を発動する。それによってディアベルは上へ吹き飛ばされる。そしてコンボで緋扇が追撃でディアベルにクリティカルヒット、彼のHPが三回大きく削れる。

 

シュバ「ディアベルどうして!?」

 

キリト「何で深追いなんかしたんだ」

 

ディア「たはは、ちょ、調子に乗っちゃったみたいだな……でもシュバルトさん……キリトさん……二人ならわかるだろ」

 

LAB(ラストアタックボーナス)

それをディアベルは狙ったのだ。

 

ディア「後は……頼む……ボスを……倒して……くれ」

 

無機質な音とディアベルはポリゴンの残骸と音と共にポリゴンの残骸と化した。

 

「ディアベルさんが死んだ……」

 

「どうすればいいんだよ……」

 

ディアベルが死んだことで、レイドの士気がみるみる下がっていく。

 

ユウキ「ちょっとみんな!」

 

フィリア「落ち着いて!」

 

テリー「ひとまず下がれ!」

 

プレイヤー達は三人の声も届いていない。

 

シュバブツン

 

彼は……あいつは僕達にボスを倒せと言った。だから……(オレ)はやつを殺す!

 

シュバ「お前らぁ!戦えるやつは立ち上がれ!これからディアベルの敵討ちだ!」

 

オレは声を上げ突撃する。攻撃をかわして反撃してかわして反撃してかわして反撃してかわして反撃してかわして反撃して。隣ではキリトやテリー達パートナーメンバーが攻撃してるのが見えた。

お前ら……オレにはもったいないくらい、いいやつらだな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どのくらい経ったのだろうか、キリトがコボルド王のソードスキルを相殺しようとした途端刃がくるりと半円を描いて、真下に回りキリトを吹き飛ばす。

上下ランダムで発動する幻月だ。しかしキリトが追撃をくらう前にB隊のリーダー、エギルが両手斧のソードスキルワールウィンドで攻撃を弾く。そしてボスが大きくノックバックする。

 

エギル「大丈夫か!」

 

キリト「ああ、すまない助かった」

 

エギル「いいってことよ。ダメージディラーにタンクやられたら今回の俺の役目なくなちっちまうからな」

 

ボスゲージが残り僅かになり、後少しで倒せるといったところで一瞬気が緩んだのか一人が足をもつれさせた。しかし彼のいた場所が悪かった、ボスゲージ真後ろだったのだ。

それによりコボルド王は囲まれ状態を感知し垂直に飛び上がる、旋車を発動準備をする。

オレはおもいっきり跳躍する。するとテリーとキリトも同じように飛んでいた

オレ達はソニックリープでコボルド王を切りつける、そして地面に叩きつけられるような形でコボルド王は落下する。

 

シュバ「全力攻撃(フルアタック)いけぇー!」

 

いままでの鬱憤を晴らすように全力攻撃を叩き込む。

 

テリー「みんな最後だ行くぞ!」

 

「「「おう!」」」

 

オレ達はコボルド王にとどめを刺しにソードスキルを発動させる最初にユウキとフィリアのバーチカルとアーマー・ピアス、オレとテリーのスラントがヒットしてコボルド王は少し怯んだ。

 

キリト「アスナ、最後の一撃一緒に頼む!」

 

アスナ「了解!!」

 

そして二人のソードスキルがコボルド王のHPをすべて消した。

イルファング・ザ・コボルドロードはその体を幾千幾万のポリゴン片へ変えて爆散させた。

 

 



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ビーター

遅れてすみませんでした……
課題やら準備やらであわただしくなり、執筆の時間が取れずにいました。
それと設定を削除しました。
少し変更するのと最後にした方がいいんじゃないと思い、書き直しをすることにしました。


ついに第一層ボス、イルファング・ザ・コボルドロードを撃破した。

しばらく沈黙が続いたが一人の「やった」の声を皮切りにレイドメンバーの喜びの声がボスフロアに響いた。

 

「「「よっっっシャァァァァァァ!」」」

 

ハイタッチする人、拳をぶつけ合う人抱き合う人様々な反応をする人達がいた。

 

シュバ「ふぅ……終わった……?(まただ、ディアベルの最後を看取ってからの記憶がない)」

 

ユウキ「終わったんだよシュバルト!」

 

嬉しそうにユウキはシュバルトに飛び付く。

 

シュバ「うわぁ!」ドサッ

 

僕はは突然のことに対応できず倒れる。ユウキの髪が少しくすぐったくて、モゾモゾしている。

隣を見ればフィリアがテリーにハイタッチをしていた。

すると背後から大きな人影がゆっくりと近付いて来た。

振り替えるとソコには両手斧使いのエギルが立っていた。

 

エギル「……見事な指揮だったぞ。それに素晴らしい連携だった。congratulation、この勝利はあんたらのものだ」

 

シュバ「あなたが居なかったらまた犠牲者が出ていたかもしれない。だからお互い様さ」

 

エギルはそう言って拳を突き出す。

僕はその拳に自分の拳をコツンとぶつける。

その時だった。

 

「なんでだよ!」

 

突然そんな叫び声がシュバルトの背後で弾ける。半ば裏声のような、悲痛な叫びの主にプレイヤー全員の視線が集まる。

声の主はディアベル率いるシミター使いの男だった。

 

「なんでディアベルさんを見殺しにしたんだよ!」

 

彼の他にもC隊のメンバーが、顔をぐしゃぐしゃにして立っていた。

 

「ボスの使う技がわかっていて攻略本に載せていたなら、あの人が死ぬこともなかったんだ!」

 

血を吐くような叫びに、他のレイドメンバー達がざわめく。「そう言えばなんでだ?」「ベータテスターも僅かにしか知らないのに……」などの声が生まれ、徐々に広まる。

僕はその疑問に頭髪が印象的な男が答えると思ったが、違った。

金属をひっかくような金切り声で叫ぶ別のプレイヤーだった。

 

「オレ……オレ知ってる!あいつ元ベータテスターだからだ!ボスの攻撃パターンとか旨い狩り場とかほとんど知ってて隠したんだ!」

 

その言葉にシミター使いは更に憎悪を両目に滾らせ僕を睨む。そして何かを叫ぼうとしたとき、エギルのメンバーのメイス使いが冷静な声で言った。

 

「攻略本に記載されている情報はベータテストのだって書いてあっただろう?彼がベータテスターなんだから、知識も攻略本と同じなんじゃないか?」

 

するとシミター使いは納得いかないのか憎悪溢れる言ってはいけない一言を言った。

 

「あの攻略本が嘘なんだ……アルゴっていう情報屋が嘘の情報を書き込んで売ったんだ!あいつも元ベータテスターだから本当のことを言わないんだよ!」

 

ユウキ「君たちねぇ……」

 

テリー「ふざけるなよ……」

 

エギル「お前ら……」

 

僕も彼らと同じように何かを言おうとすると、キリトが後ろから無感情な声を出して僕達を制する。

 

キリト「元ベータテスター、だって?……俺をそこにいる素人と一緒にするなよ」

 

キリト?君は何を……言ってるの……

僕のそんな思いを他所に続ける。

 

キリト「いいか、よく思い出せよ。SAOのCBT(クローズドベータテスト)はとんでもない倍率の抽選でその千人の中から本物のMMOプレイヤーは何人いた?ほとんどがレベリングも知らない初心者だ。なんなら今のお前らの方がましだ。だが俺は違う俺がボスのソードスキルを知っているのはベータテスターの中でもトップクラスの実力者だからだ。だから刀スキルを知っていたんだよ。そこの代理指揮官は情報を買って知っていただけの雑魚だ」

 

キリトは『自分は最強だ』見たいなことを言った。

なんでだ……君は僕を庇う理由はないはずだ……それなのに何故?

 

「……なんだよ、それ……」

 

僕を糾弾した男が掠れ声で再び叫ぶ。

 

「そんなのチートじゃねえか!ただのチーターじゃねえか!」

 

すると周囲からチーターだのベータのチーターだ、という声が幾つも湧き上がり、それが混ざりあって《ビーター》という単語が生まれた。

もう無茶苦茶だチートはただデータを改ざんすることで、アインクラッドではチートなんて出来ようもない。出来てせいぜいバグを利用することくらいだろう。

 

キリト「《ビーター》……いいなそれ。これから俺は《ビーター》だ。元テスターごときと一緒にするなよ」

 

キリトはボスのドロップアイテムしかもLBA(ラストアタックボーナス)であろう装備を出現させる。

 

キリト「二層の転院門は、俺が有効化(アクティベート)してやる。ついてくるなら死ぬ覚悟はしておけよ」

 

そう言ってキリトは玉座の後ろにある扉を開けて、奥へと進んでいった。

 

シュバ「みんなキリトの後を追うけどいいかな」

 

ユウキ「大丈夫だよ」

 

テリー「あいつには少し言いたいことがあるからな」

 

フィリア「あたしも彼に聞きたいことがある」

 

僕らは先に進んで行ったキリトの後を追う。すると後ろからC隊の一人が声をかけてきた。

 

「なんであいつの後を追うんだよ」

 

シュバ「何も知らない君達に一つ言っておく。キリトはベータテスターへのヘイトを全部自分で引き受けたそれだけだよ。彼は悪人ではない」

 

そう言って進んだ。後ろから後を追ってくる気配を感じたので振り向くとアスナもキリトを追いに来ていた。

 

─────────────────────────

 

シュバ「キリト」

 

僕は目の前の黒衣の少年に声をかける。

 

キリト「なんで来たんだよ」

 

ユウキ「死ぬ覚悟があるやつはついてこいって言ったよね」

 

キリト「そうだけどさ……」

 

テリー「お前は一人で背負い込み過ぎだ」

 

フィリア「そうじゃないなんて言わせないよ」

 

キリト「……」

 

アスナ「なんでそんなことしたのよ。言いたい人は言わせておけばいいのに」

 

キリト「あのままだとベータテスターと初心者達との間に溝ができるからだ」

 

淡々とキリトは答える。その姿は少し寂しげだった。

 

シュバ「あんなことしたからパーティーに入れてくれる人は限られるね」

 

キリト「俺は元々ソロだからな。あまり問題にはならない」

 

シュバ「とりあえず突然だけど一つキリトとアスナに言わなければならないことが一つある。公言しないで欲しい」

 

キリト「わかった」

 

アスナ「いいわ」

 

シュバ「僕はこのSAOの製作に携わったことがある。因みに担当は・SS(ソードスキル)と味覚エンジンだ」

 

その事実に二人は驚いた顔をすると、数秒固まり叫んだ。

 

キリト「じゃあソードスキル全部知ってるのか!」

 

アスナ「味覚エンジンなら料理スキルで何を調合したらいいとかわかるの!」

 

シュバ「そりゃあね。エクストラスキルの場所とか獲得方法は知らない。味だけだからわかりません」

 

さすがに二人に問い詰められるよね。エクストラスキルの獲得方法は晶彦さんしか完璧に知らない。僕はプレイヤーになるから聞かなかったんだ。

 

キリト「なら、これからのレイドリーダーシュバルトがやればいいんじゃ……」

 

シュバ「断る」

 

アスナ「なんで?」

 

シュバ「そういうのは慣れてないからね。僕は少数人数の指揮が限度だよ。小さなギルドくらいだろうし」

 

グループならまだしも、僕は集団の前に立つことは得意ではない。それに一応ギルドは創るつもりだ。

 

アスナ「キリト、エギルさんとキバオウから伝言がある」

 

キリト「へぇ……なんて?」

 

エギルならまだわかるけど、キバオウがねぇ……なんだろう想像がつかない。

 

アスナ「エギルさんは『二層の攻略も一緒にやろう』ってキバオウは……」

 

アスナは小さく咳払いして告げる。

 

アスナ「……『わいはわいのやり方でクリアを目指す』だって」

 

キリト「……そうか」

 

アスナ「それとあなたにお礼をしに」

 

キリト「……クリームパンとお風呂の?」

 

なんだよそれ……何があったか気になるけど、聞かないでおこう。知らぬが仏って言うし。

 

アスナ「それもあるけど……私……この世界で初めて目指すもの、追いかけたいものを見つけたの」

 

キリト「へぇ…………何?」

 

アスナ「内緒」

 

キリト「そっか……」

 

シュバ「さて……湿っぽい話はこの辺にして、一つ相談したいことがあります」

 

キリト「どうぞ」

 

シュバ「とりあえずギルドを設立したいのですが、キリトにアスナの二人をスカウトしたいです」

 

アスナ「あなたさっき言った『小さなギルドくらいだろうし』って設立するつもりだから言ったの?」

 

シュバ「それはまぁ」

 

ユウキ「ボク達も四人で話し合って決めたからね」

 

フィリア「せっかく知り合ってパーティーを組んでボス攻略も果たしたからね」

 

テリー「それでどうするんだ?」

 

キリト「そうだな……少し考えさせてくれ」

 

アスナ「私も」

 

シュバ「そっか。なら連絡ちょうだい……ってアスナとはフレンド申請してなかったね」

 

僕はそう言いながらアスナに申請する。彼女は少し戸惑いながらもフレンド登録をする。

その後アスナは下に降りて、キリトは階段を上る。 

これからどうなるのだろうか、リーダーであるディアベルが死に、残されたプレイヤー達は。分裂、必至だろう。それを僕が気にしても致し方ない。

僕達は僕達で戦う。それでいいだろう。今はまだ。そんなことを考えながらキリトが登った階段を歩く。

次は第二層。この層にはエクストラスキルが二つある。過去に入手したあのスキルを手に入れよう。

 

 



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スキル『モンスターハンター』

シュバルトside

 

アインクラッド第二層

 

僕は今あるエクストラスキルを入手するために、隠されている場所へ向かっている。

 

シュバ「そろそろ着くはずなんだけど……あった」

 

そこには古ぼけた小屋があり、注意して見ないと森に隠れて見つからない。

しかしβテストの時よく見つけたな僕は。

扉をギィ~と軋む音を立てて開けると、そこには両目にバンダナを巻き右腕は荒々しい爪後がついている年老いたNPCがいた。どうやらβテストとNPCは変わらないようだ。ただクエスト内容が変わってる可能性は捨てきれない。

 

「誰だ……もしや試練に挑む者か」

 

クエストフラグがたった。

 

シュバ「はい挑みます」

 

「ならリオレガスを狩猟してこい。場所は裏のの扉から出て山を登れば生息してる。それとそこにあるナイフを持っていきな」

 

そう言っておじいさんは眠る様に動かなくなった。

βテストは鳥竜種を十匹狩猟するだけで良かったが大型の竜を狩猟することに変更されていた。

 

 

 

─────────────────────────

 

あれから数十分、ようやく目的地に着きリオレガスが来るのを待つ。

翼が羽ばたく音がし空を見上げると蒼く硬い鱗に包まれた火竜が現れた。ネームは《Raoregas》HPゲージは表示されない。

まあ従来のモンハンもHPゲージは表示されてない作品が多いから納得だ。

地面に降り息を思い切り吸い込む。

僕は既に耳を塞ぎ咆哮に耐える準備をする

 

「━━━━━━━━━━ッ!」

 

とても大きな咆哮だ。これだけで吹き飛ばされそうだ。

 

シュバ「勝負だリオレガス!」

 

僕はアニールブレードを構える。

リオレガスは青い火球を三連続で吐き出す。

それをステップで避け、頭部切りつけるが硬い鱗が攻撃を通さない。

 

シュバ「かったいなぁ。やっぱり翼から部位破壊した方がいいか」

 

僕は一気にリオレガスの横まで走り、壁にジャンプ。さらに壁を蹴りリオレガスの上をとりそのまま落下の勢いを乗せて背中を串刺しにする。さらにおじいさんからもらったナイフで何度も刺したり抉ったりする。途中暴れ出すがしがみついて耐える。一定回数刺すとリオレガスは体勢を崩し倒れる。

ここぞとばかりに僕はリオレガスをソードスキルで滅多切りにする。

しばらくしてリオレガスの動きが鈍くなる。ようやく瀕死になったようだ。

尻尾を切断して多数の部位破壊をしたから瀕死になってないとつらかったけど。

すると別の方向から鳴き声が聞こえた。

 

シュバ「えっ嘘でしょ……」

 

後ろを振り返ると紫色の火竜が降りて来る。そしてリオレガスよりも大きい咆哮をする。その音に僕は壁にまで吹き飛ばされる。

 

シュバ「ガハッ……ティ◯レックスかよ……」

 

名前を見ると《Raoregas Alternative》リオレガス亜種のようだ。

亜種は紫色の火球を五連続で吐き出す。二発が僕に三発が通常種に当たり通常種が力尽きた。亜種が通常種倒したみたいだが素材は手にはいるようだ。

僕は装備が燃えているので二、三回転がり火を消す。

とにかくこいつも狩猟しないといけないな気がする。

 

シュバ「とにかくセオリー通り狩猟しよう」

 

すると突然翼で強風を起こす。

 

シュバ「ぐっ……うぁぁぁぁぁぁあッ!」

 

僕はまい上げられ亜種の足にわしづかみされ振り回される。回転して酔うことはないがそれでも気持ち的な問題で酔いそうになる。

 

シュバ「離せぇッ!このッ!」

 

僕は亜種の腹に剣を突き立てる。するとさらに暴れだし僕は投げ飛ばされ再び壁に叩きつけられる。

 

シュバ「ガハッ……パワーがおかし過ぎる……」

 

僕はポーションを飲みながら作戦を立てる。やつの行動パターンはランダム、だが一つの括りとして作られていてそこから場所、亜種がおかれている状況に応じて変化する。それがわかったから後は先読みしつつ追い詰めて、嵌める。

 

シュバ「こっちだ!」

 

僕は壁を蹴りまた背中に飛び乗る。

そして背中をナイフで何度も刺して体勢を崩そうとするが亜種は通常種よりも激しく暴れダウンを取られまいと抵抗する。

僕は背中から放り出されてしまう。

 

シュバ「くそッやっぱり逃げれば良かったか」

 

今さら毒づいても意味がない。

 

「━━━━━━━━━ッ!」

 

特大の咆哮僕は飛ばされないよう剣を地面に突き立て必死に耐える。

ポケットからピックを取り出し投げる。投擲スキルはないがピックそのもののダメージは入る。

ピックは亜種の口内へ呑み込まれ次の瞬間、暴れだした。僕の目論見通り喉に突き刺さる。

 

シュバ「これが最後のチャンス逃したら死ぬ!」

 

僕は亜種の喉筋目掛けて《ソニックリープ》を放つ。

僕の一撃は亜種の顎から喉筋を通り、腹部をそのまま通過して尻尾まで切り裂く。そしてポリゴンが砕け散る音を立ててリオレガス亜種は消えた。

 

シュバ「はぁっ……はぁっ……はぁっ……終わった?」

 

ドサリと僕はその場にへたり込む。

 

シュバ「だぁぁぁぁぁ!疲れたぁぁぁぁぁ!」

 

何?あれ?予想外過ぎるよ!突然亜種が出てきて、通常種焼き殺して、そのまま狩猟続行とかないよ!

 

シュバ「とりあえず報告しに行かないと」

 

僕はふらふらした足取りでさっきの小屋へ歩いて行った。

 

─────────────────────────

 

「どうやら狩猟……いや、亜種を狩猟してきたな」

 

僕が帰って来たのを振り返らずに判断する。しかも亜種を狩猟したことを把握していた。

 

「お前さんは儂の予想を上回る実力者のようだな。通常種だけなら渡さないつもりだったが亜種を狩猟したなら話は別だ」

 

そう言っておじいさんはあるものを棚から取り出してきた。

 

「こいつはクラッチクロー。移動や化け物どもにしがみつく時に使いな」

 

僕はクラッチクローを受け取りそのまま腕に装着する。

そしてスキル獲得画面が表示される。

 

シュバ「ようやく手に入った……」

 

スキル『モンスターハンター』

 

簡単に言えば歴代のモンハンのスキルが使用できる。

例えば毒無効や麻痺無効などのスキルを獲得して付け替えたりする。因みにスキル1つにつき熟練度100いるので最大一度に10個のスキルをつけれる。武器スキルを取らなくてもこのスキルに内蔵されているのでほとんどのソードスキルを使用可能。それぞれの武器に専用のソードスキル、狩技が使用できるが性能を上げるには一定回数使用して再び此処に戻る必要があるのが厄介ではあるが。

 

「お前さんにはまだ教えることがあるが今はその力をある程度使いこなしてからだ」

 

シュバ「わかりました」

 

「名乗るのが遅くなったな、儂はグラインガーだ。お前さんは」

 

シュバ「シュバルトです」

 

グラ「シュバルトまた来いよ」

 

シュバ「ええ、またいずれ」

 

 

─────────────────────────

 

タラン

 

シュバ「ようやく帰って来たー!」

 

キリト「どうしたシュバルト」

 

シュバ「キリトにアルゴどうしたのさ?」

 

キリト「実はな……」

 

キリトはアルゴに教えてもらった隠しスキルを獲得しに行くようだ。

そのスキルの名前は『体術』。簡単に言うと格闘スキルだ。

一応モンハンスキルには体術程ではないけど格闘攻撃時に少しプラス補正がかかる。

 

シュバ「とりあえずキリト頑張れ」

 

キリト「おう?」

 

体術スキルか……アルゴのひげペイントってもしかして体術スキルのひげ筆師匠が原因か?

まぁ聞く必要なないけどさ。

そのままテリーがとったけ宿屋に向かう。

 

シュバ「ただいま~」

 

ユウキ「お帰り!」

 

シュバ「出迎えご苦労」

 

ユウキ「どんなスキル獲得したの?」

 

シュバ「これだよ」

 

僕はユウキにスキルを見せて詳細を話す。

 

ユウキ「それ玄人向けのスキルだね……」

 

シュバ「おまけに死にかけたしさ……」

 

ユウキ「あまり無茶はしないでよ」

 

シュバ「わかってるよ」

 

テリー「戻ったぞ」

 

フィリア「ただいま」

 

「「お帰り」」

 

テリー「はぁ……もうあんなスキル獲得はやめだ……」

 

フィリア「ふふっでも可愛かったよ」

 

テリー「やめろ、恥ずかしい」

 

何があったんだ?

 

シュバ「テリー何があったのさ」

 

テリー「ひげ、体術」

 

シュバ「OK把握」

 

ユウキ「ちょっとボクわからないんだけど」

 

フィリア「実はね」

 

フィリアがことの顛末を話している間にテリーが僕の獲得したスキルを聞いてそれで1日が終わった。

 

       

─────────────────────────

 

次の日

 

僕はある店を探している。

モンスターハンター獲得クエストから戻ろうとしたときにグラインガーさんに教えてもらった場所で今回獲得した素材が使って武器を作ってもらえるらしい。

 

シュバ「確かここを右に曲がって行けば……あったけどなんだこれ扉があるけど鍛冶屋があるとは思えないんだけど」

 

僕が扉を開けるとそこには階段があったのだが、とても深く一層まで降りそうなくらいあった。

 

シュバ「とりあえず降りてみるか」

 

僕はその階段を降りる。想像通り深く降りきるとそこには赤い文字でアリストテレスの店と書かれていた。

 

シュバ「哲学者?」

 

 

アリストテレスと言えば自然科学の哲学者だったはず、名前は関係ないかもしれないけど。

 

「いらっしゃい話はグラから聞いとる。お望みの武器はなんだ?」

 

扉を開けるとそこには老人が座っており、その後ろには熔鉱炉が真っ赤に燃えている。

メニューが開かれる。

 

シュバ「えっとCアックスで」

 

アリ「あいよ」

 

僕はリオレガス種の素材とアニールブレードと店売りの盾を渡しアリストテレスはアニールブレードを熔鉱炉に放り投げる。

そして熔けて出てきたアニールインゴットをリオレガス種の素材とあわせて叩く、盾も同じように叩く。

 

アリ「レガスアックスだな。思う存分ふるいな」

 

シュバ「ありがとうございます」

 

アリ「おう、また来いよと言いたいところだが、儂が作ってやれる武器はそいつが最高峰だ。今後それより強いのが欲しいなら別の職人に頼め」

 

シュバ「はい」

 

この武器の性能を見てみると強化試行回数が20回、五層まで使える性能だ。

 

シュバ「一応アルゴにモンスターハンターのスキルを教えておこう。恨まれるのは怖い」

 

─────────────────────────

 

再び宿屋ロビー

 

するとアルゴが座っており、僕が帰って来るとこちらに手を振る。

 

アルゴ「ようシュバ坊、なんだ体術以外のエクストラスキルっテ」

 

僕はアルゴにモンハンスキルの詳細と入手方法と場所を伝える。

 

アルゴ「こいつハヤバいスキルだナ。オレっちもすぐに攻略本に載せとくヨ」

 

シュバ「よろしく」

 



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砕けた剣

投稿が遅くなってしまいました
すみません


そろそろ素材も貯まってきたことだし強化をしに行くかな。場所はアリストテレスさんとこでやったほうがいいと思うし。まぁなんとなくだけどね。

 

シュバ「こんばんは~」

 

アリ「おう来たかい少年」

 

シュバ「ええ、武器強化お願いします。回数は5回耐久2に鋭さ2、重さを1で」

 

メニューを見るとアニールブレイドが強化できない表示になっていた。

 

アリ「あいよ」

 

アリストテレスさんはレガスアックスを手に取りカンカンとハンマーを勢いよく振り下ろす。

 

アリ「そら、出来たぞ」

 

シュバ「ありがとうございます」

 

アリ「そうだ、お前さん亜種の素材は余っているんだろう?そいつを使えば剣一つ作ってやらんこともないが」

 

戦力を上げたいので僕は作ってもらう。

 

シュバ「お願いします」

 

アリ「おし!なら素材を寄越しな」

 

僕は素材を渡し、武器の製作を依頼する。

素材を受け取ったアリストテレスさんは鉄床(アンビル)を叩きしばらくすると武器が姿を現すが、なにやら不完全の形だ。

 

アリ「すまない未完成品になっちまった。何処かでこいつを研磨して叩き直さないとな」

 

手渡しで武器を手渡される。

刃はガタガタで柄も握れるような形をしていなくとても武器とは言えない。

昨日アックス以上の武器は作れないって言ってたから予想はしていたが。

ただ何かイベントがあるかと思ったので頼んだ。

これが後々強い武器になればいいけど。

 

シュバ「ありがとうございます」

 

アリ「おう。死ぬなよ」

 

僕は扉を開き階段を上がった。

 

─────────────────────────

 

僕が街に戻るとユウキ達がこちらに向かってくる。

歩く度にアホ毛がぴょこぴょこ揺れてかわいらしい。

 

ユウキ「ねぇシュバルト、これから素材を取りに行くんだけど手伝ってくれる?」

 

シュバ「いいけど。なら宿屋のストレージに荷物整理してくるよ」

 

ユウキ「わかった。二人にも伝えてくるね」

 

ユウキはそのままテリーとフィリアがいるところへ走る。

ここは鍛冶屋がないのだが最近プレイヤースミスが出てきたらしく、そこでユウキのアニールブレイドを強化するつもりだ。

ただあまり僕はプレイヤースミスを深く信頼していない。

β時代に騙されたという話が一時期流れ、NPCに頼んでいた。

ちなみにテリーは騙されたらしい。

その時のテリーはとても落ち込んでいたがある方法(・・・・)で取り戻し事なきことを得た。

その方法自体は広まりはしなかったが……

そうこう考えているうちに準備が終わり僕は背中にレガスアックスを背負いロビーで待機する。

 

フィリア「お待たせ~」

 

テリー「準備は万端だ」

 

ユウキ「それじゃあフィールドにレッツゴー!」

 

─────────────────────────

 

ユウキside

 

ボク達は今フィールドで武器の強化素材を取っている。

《昆虫種のの羽》、《昆虫種の針》、《強青猪の牙》、《化け野良狼の尻尾》だ。

昆虫種の素材はウィンドウワスプから、強青猪はブレンドボアで化け野良狼はワイルドウルフだ。

どれもボク達のレベルなら簡単に倒せる。でも油断すると足下をすくわれかねないから相手の動きをきちんと見る。それはシュバルト(竜翔)からこの世界で戦う時に教えてもらったことだ。

 

ユウキ「結構集まったかな?」

 

シュバ「かなり手に入ったね。しかもレアドロップがある」

 

シュバルトのストレージを見せてもらうと風切りの毒針と。

 

ユウキ「どんなものなの?」

 

シュバ「簡単に言うと確率で敵mobを一撃で仕留めれる代わりに攻撃力や与えるダメージが極端に低いんだ」

 

ユウキ「ドラクエにある毒針と同じだね」

 

シュバ「だね。まあ1ダメとかにはならないけどね」

 

かなりのネタ武器だ。ドラクエならかなり重宝する時期の武器だがアインクラッド(ここ)だとほとんど出番がないだろう。

 

テリー「どうした?」

 

シュバ「アインクラッド版毒針が手に入った」 

 

テリー「ネタ武器かよ」

 

シュバ「まぁ2つあるからいる?」

 

テリー「フィリアにやってくれ、俺じゃあ扱いきれない」

 

シュバ「そうだね、短剣スキルがあると確率やダメージがあがるみたいだし」

 

シュバルトはフィリアを呼びトレード画面を出し毒針を渡す。

 

フィリア「ありがと、使う機会がほとんどないと思うけど」

 

シュバ「同感、これ作った人に心当たりがあるけど……」

 

シュバルトは思い出すように遠くを見つめる。

 

シュバ「さてまだまだ時間がかかりそうだ。チャカチャカ集めよう」

 

ボクは再び剣を握り締めモンスターに向かって走る。

 

 

─────────────────────────

 

街についてボクは噂のプレイヤースミスの店に行き、強化してもらう。

だけどそのプレイヤーは「お買い物ですか?それともメンテナンスですか?」とあまり強化をしたくない様子だった。

何かあるのかな?

プレイヤーがボクのアニールブレイドを強化するために

ハンマーを振り下ろす、数回叩いているとボクのアニールブレイドが砕けた(・・・)

 

「すみません!」

 

ユウキ「え?あ、うん……」

 

「本当にすみません!強化分の手数料は全額お返ししますので……」

 

ユウキ「うん……」

 

「その……お詫びにスチールブレイドをお持ちになりますか?」

 

ユウキ「ううん……いいよ……」

 

ボクは何が何だかわからなくなって、フラフラと宿の方向へ向かう。

宿に着いたボクはシュバルトの部屋に行きノックをする。

 

シュバ『どうしたの?』

 

ユウキ「入っていい?」

 

シュバ『わかった』

 

ボクは扉が開いたことを確認するとシュバルトの胸に飛び込む。

 

シュバ「ユ、ユウキ?一体どうしたのさ」

 

ユウキ「砕けた……」

 

シュバ「え?」

 

ユウキ「ボクの剣が砕けたの!」

 

シュバ「なるほど、ユウキメニューを開いて」

 

ユウキ「うん……」

 

ボクはそのままシュバルトの指示通りメニューを操作する。

 

シュバ「それじゃあこの《コンプリートリィ・オール・アイテム・オブジェクタイズ》を押すんだけど、僕がこの部屋から出てから押してくれ」

 

ユウキ「わかった……」

 

シュバ「そしたら砕けたアニールブレイド(・・・・・・・・・・・)が出てくる」

 

そう言ってシュバルトは部屋を出る。

それを確認したボクは彼が指示したコマンドをタッチする。

すると突然アイテムがどっさりと出てくる。

 

ユウキ「ふぇ!?」

 

主に出てきたのは下着類そして服が山のように積みあがる。

 

ユウキ「シュバルトはこの中にボクの剣があるって言ったよね……」

 

ボクは山の中をごそごそと漁る。そして金属に触れた感触、それを引っ張り出すと手に握られていたのは先程破壊されたはずのアニールブレイドだった。

 

ユウキ「あった!あったよ!シュバルト!」

 

ボクは扉から飛び出しすぐ近くにいたシュバルトを部屋に引き込む。

 

シュバ「そ、それは良かったね……」

 

何故かシュバルトが顔を逸らす。少し考えてわかった。

ボクの背後には下着類などがあったからだ。

 

ユウキ「~~~~~~~~!」

 

バギィッ!

 

シュバ「ぐはぁっ!」

 

ボクはおもいっきり握り拳でシュバルトを殴った。

そしてシュバルトは扉を勢いよく開けて廊下の壁に激突する。

 

テリー「どうした!」

 

テリーが先程の音を聞いてこちらに走ってくる。

 

フィリア「何々!」

 

遅れてフィリアも到着し状況を把握する。そしてテリーがこちらを振り向こうとしたとき。

 

フィリア「テリー見ちゃダメェ!」

 

テリー「へ?『プスッ』ア"ア"ーー!イイッ⤴︎タァイ⤵︎目がぁー!」

 

フィリアの目潰しが炸裂。クリティカルで刺さりその場でもがく。

そして当事者のボクは

 

ユウキ「なんか二人ともごめん……」

 

 

 

 

 

 

 



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砕けた理由

今回は短めです


ユウキとフィリアでシュバルトとテリーの二人にダメージを与えて復活するのに一時間半が経過した。

 

シュバ「うーん、少し記憶が飛んでる気がする……」

 

テリー「フィリア……せめて『首グキッ』にしてくれ。この世界で目潰しは何故かギャグ補正でしばらく目眩ましデバフがかかる」

 

ユウキ「ごめんねシュバルトボクが先に片付けて置けば良かったよ」

 

フィリア「テリーごめん、とっさの判断で……」

 

シュバ「とりあえず何で砕けた剣が戻って来たのかを説明するけど……そろそろくるかな」

 

すると宿屋の扉が開く。入ってきたのはいつも通り黒ずくめのキリトと赤いフードを深く被ったアスナだった。

 

キリト「すまん遅れた」

 

そう言いながらシュバルトのとなりの席に座りその隣にアスナが座る。

 

シュバ「で、今回の話は強化詐欺についてだね。キリト達の方も被害があったみたいだしね。それでその鍛冶屋の情報とかあったら教えて欲しい」

 

チラリとシュバルトはキリトの方を見る。

 

キリト「ああ、俺の方もアスナのウィンドフルーレがやられた。方法はまだわからない」

 

シュバ「うーん情報が少ないからね……」

 

テリー「ネズハの関係者を探すか」

 

ユウキ「それで何でボクのアニールブレイドがストレージに入っていて戻ってきたの?」

 

シュバ「それがこの強化詐欺のキモなんだよね」

 

テリー「まぁ俺もβの時に同じ目にあったんだがな。まぁそのときはその鍛冶師が糾弾されまくって二度とログインしなかったって話なんだがな」

 

キリト「知らなかったんだけど」

 

シュバ「そりゃ君はNPCに頼んでいたからね。で、どうやって盗んだのかというと単純に武器スキル派生Modの《クイックチェンジ》なんだよね」

 

するとキリトは驚いた表情をした。

 

キリト「クイックチェンジ!?しかし何で鍛冶職の彼が使えるんだ?」

 

アスナ「それは彼に聞かないとわからないでしょう」

 

テリー「方法はクイックチェンジのコマンド画面をベンダーズカーペットで隠してエンド品とすり替えそのまま叩く、したら砕けてはい終わり」

 

アスナ「そんなに単純なのね……」

 

フィリア「単純だからこそっていうのもあるけど鍛冶屋職だからクイックチェンジにたどり着けなかったんだろうね」

 

シュバ「で何でユウキのストレージの中にあったのかというとね──」

 

シュバルトはロジックを説明する。するとβテスト組は納得した表情をし非βテスト組は驚いた表情をする。

 

キリト「なるほどなネズハはこの新アインクラッド初の《強化詐欺師》だったわけだ」

 

テリー「さすがに明日は出てこないだろうな」

 

シュバ「そうだね今日は解散、明日はどうする?」

 

キリト「明日って確かフィールドボス攻略だな」

 

アスナ「私は偵察隊に加わったけど、ただのでっかい牛だったわ。ラストアタックボーナスのことで頭ごなしな言い方されて参加しないって言っちゃった」

 

テリー「フィールドボスはそこまで苦戦しないだろう。ただなフロアボスはな……」

 

フィリア「問題があるの?」

 

テリー「特殊なスキルがあってな。それがかなり厄介なんだ」

 

ユウキ「なら明日はそれの練習にしよっか」

 



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セクハラ!

翌日、僕らはフィールドボスの攻略を見ていた。青いグループがディアベルの仲間であったリンド率いるドラゴナイツブリケード、緑グループがキバオウ(モヤットボール)率いるアインクラッド解放隊、巨漢ばかり集まっているのがエギルのパーティーそして最近攻略組入りしようとしているレジェンドブレイブス。

その戦闘を見ているのだが……

 

シュバ「ひどいね……これは」

 

テリー「ああ、何でタゲ取り散らしてんだよ……」

 

キリト「見事に連携が出来てないな……」

 

タゲ取りはバラバラ、フィールドボスはあっちこっち行ってまともに攻撃を入れられない。

かろうじてそれぞれのグループでソードスキルを叩き込んでいる。なかなか決着が着きそうにない。

互いに協力して攻略するならいがみ合っている場合でもないのにな……いずれどちらかが問題を起こしそうで怖い。

 

ユウキ「観察してるとこ悪いけど……」

 

フィリア「この層……」

 

アスナ「何でこんなにも……」

 

「「「牛系モンスターが多いの!」」」

 

女性陣の叫び声。

うん、わかるよ、僕も『なんで(こんなにも牛が多いの)さ』って思ったよ。これじゃあ魚◯国ならぬ牛◯国じゃないか!

 

キリト「仕方ないさここは牛が生息する地帯がテーマだから」

 

「「「それにしても多すぎるよ!」」」

 

この二層はいたるところに牛、牛、牛……とにかく牛しかいない。

こんだけいたら食材には困らないので料理スキルを上げるのには困らぬ。フフフ……(暗黒微笑)ステーキ三昧や!

 

テリー「それにシュバルトのステーキは旨いが飽きそうになる……」

 

シュバ「それは同感だよ……豚肉食べたい」

 

「「そうだね~」」

 

「「ステーキ!?」」

 

上はユウキとフィリア、下はキリトとアスナと叫ぶ。

あれ?もしかして二人とも食べてないのかな?

料理スキル取らないとまともに料理は作れないから仕方ないか。

 

キリト「シュバルト今日の予定が終わり次第ステーキを作ってくれ。もちろんただとは言わない、俺の持ってる肉を使ってくれ」

 

アスナ「私も!」

 

おおう……そんなに食べたいのか……ん?待てよ店売りの料理は?一応ここの料理は牛肉料理だけど……

 

シュバ「店売りのものはどうしたのさ」

 

キリト「飽きた」

 

アスナ「味気なくて……」

 

なるほどね……そりゃそうだ。一応リアルのほうが美味しいようには設定されてるからね、一部NPCの料理は。

 

シュバ「わかった、今夜僕らが借りてるホームで作るから来て」

 

そう言うと、ガッツポーズをする二人。

料理スキル取ればいいのに……

 

キリト「う……!?」

 

突然低い声をキリトが上げる。その隣でアスナが訝しげな表情を彼に向ける。

僕も少し気になった。

 

テリー「どうしたキリト、何かいたのか?」

 

キリト「ああ、昨夜ネズハを尾行したときに酒場で彼を待っていた奴らだ」

 

シュバ「それって……ネズハの仲間ってこと……」

 

キリト「アスナ、あそこの待機組三人の名前、知ってるなら教えてくれ。特にあのとんがり頭」

 

アスナ「えっと真ん中の人がオルランドさん……?だったかしら。それで右がベオウルフさん、左がクフーリンさん」

 

テリー「オルランド……シャルルマーニュ十二勇士か……」

 

キリト「ベオウルフ……イギリス辺りかな……《赤原猟犬(フルンディング)》とかステゴロだったり」

 

シュバ「ねぇ、一人……誰とは言わないけどすぐに死にそうな名前の人がいるんだけど」

 

ユウキ「そういえばあの人達もうギルド名もう決めてたみたいだよ。確か《レジェンド・ブレイブス》って言ってた」

 

レジェンド・ブレイブス伝説の勇者達か……ネズハの綴りはなんだ?《クイックチェンジ》が使えるから彼も英雄の一人のはず。もし綴りが──なら彼がクイックチェンジを使える裏付けになる。

そんなことを考えながらフィールドボスがリンドのソードスキルによって倒された。

 

シュバ「とりあえずあそこブレイブスが参加したてなのにここまで戦えるのは、強化詐欺で儲けたからなんだろうね。装備強化ならお金があればいくらでも出来る」

 

フィリア「そういうことね……」

 

僕等はフィールドボス討伐パーティーと入れ替わるように南部フィールドへ向かった。

 

─────────────────────────

 

アスナ「嫌!」

 

フィリア「来ないで!」

 

「「近づかないで!」」

 

ユウキ「頑張って~二人とも」

 

二人のソードスキルが巨大な上半身にあたる。そしてポリゴン片となって砕け散った。

 

「「こんなの……こんなの牛じゃない!」」

 

二人の言いたいこともわかる。

こいつらは半牛半人の化け物だもんな~

 

アスナ「頭が牛だけど」

 

ユウキ「八割人間だね」

 

テリー「ミノタウロス系はこういうもんだぞ」

 

アスナ「ミノタウロス?ギリシャ神話の」

 

キリトがアスナにミノタウロスの説明を少し話す。

その中にテセウスやラビリントスの話があり、僕はミノタウロスの本来の名前を思い出すがすぐに隅に追いやる。

 

キリト「それでトーラスの何がお気に召さないのですか?」

 

アスナ「だって服、着てないじゃない!セクハラよ!セクハラ!」

 

キリト「なるほど……」



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強化詐欺の理由

あれから数十分かけてミノタウロスを狩り、迷宮区を出て、戦闘を極力避けて最寄りの村であるタランの圏内に入る。

そこには、かなりの攻略組が休憩をしていた。

後ろではキリトがバンダナを、アスナがフーデットケープを被る。

アスナはともかくキリト、そこまで変装しなくてもいいんじゃないかな……

 

シュバ「僕達はこの後アルゴと迷宮区到着祝いするけど二人は?」

 

「「行く」」

 

早速アルゴの所へ行こうと踏み出そうとしたとき、何かが強く叩かれ砕け散る音が響き渡った。

 

アスナ「まだやってるのね……昨日、私やユウキにやった時に詐欺が見抜かれたのに、自粛するどころか店を出してるなんて」

 

フィリア「むしろ警戒してるんじゃない?武器が壊れたことがあるって噂が広まる前にって」

 

アスナ「なるほど……」

 

ユウキ「それでも図々しいことに変わりないね。別の街に来てお店出してるってことは詐欺を続けるんでしょ」

 

シュバ「やるんだろうけど、相手は選ぶだろうね」

 

キリト「ああ、彼らが攻略組入り目的なら攻略組は狙わないはずだ」

 

シュバ「特に解りやすいキバオウとリンドが率いる緑と青の人たちからはほとんどやらないと思う」

 

さっきから何も喋らないテリーが気になって後ろを振り向くと少し冷や汗をかいていた。

そういえばテリーは少し金属が叩きつけられる音がある事件から苦手だったな。急いでここから離れた方がよさそうだ。

僕は急ぎ足でアルゴの待つ場所まで歩く。

 

テリー「すまん……」

 

シュバ「ん……」

 

─────────────────────────

 

シュバ「それじゃあ……第二層迷宮区到着を祝って乾杯!」

 

「「乾杯!」」

 

アルゴ「いやー、まさかこんなに早く攻略が進むなんてナ!オイラ驚いたヨ」

 

アルゴが驚くのも無理はない。一層が一ヶ月なのに対し二層は5日でここまで進んだのだから。

僕は正直二週間ほどかかると思っていた。

 

テリー「それもそうだろう、二層の攻略レベルは7~8だったはずだ。それを越えたプレイヤーが多い」

 

キリト「それはまぁ数字上での話だがな」

 

ユウキ「二層のボスは何レベで倒したの?」

 

フィリア「あ、それあたしも気になる」

 

シュバ「確か最初はレベル5くらいだったね」

 

アスナ「無謀ね……」

 

うんそれはそうだ。僕とテリーは途中参加だからレベルは10くらいだった。

今の僕たちのレベルはミノタウロス狩りでかなり上昇した。結果、僕、テリーとキリトが14、ユウキが13、アスナとフィリアが12になった。

恐らくリンド隊、キバオウ隊も同じくらいだと思うので。

 

アルゴ「今回の攻略は平均10は行くだろうナ」

 

シュバ「安全圏内だけどボスには通用しないからね……」

 

テリー「しかも今回のボスは装備の強化が重要だからな」

 

テリーの言う通り、ここのボスが使うソードスキル《ナミング・デトネーション》は行動阻害がメインの技だ。それに対抗するには、装備強化が一番安全だ。

無論僕はソードスキルをほとんど覚えているので、避ける方針だ。

するとキリトが暗い顔をしていた。どうしたんだ?

 

キリト「……アルゴ、迷宮区のマップデータだ」

 

アルゴ「いつも悪いナ、キー坊。規定の情報代は……」

 

キリト「マップデータで商売する気はないよ」

 

その後キリトがアルゴにレジェンドブレイブスを調査依頼してアスナもネズハの店を観察するのにバレにくい場所をそして僕はネズハの綴りを教えてもらった。

 

─────────────────────────

 

次の日、キリトとアスナはネズハの強化詐欺を観察した結果、話した通りクイックチェンジを使って詐欺をしていた。

 

シュバ「やはりか……別の方法だったら、考えるのめんどくさいからよかったよ……」

 

ユウキ「でも彼、やりたくなさそうだったよ。ボクが依頼した時に『お買い物ですか?それともメンテナンスですか?』って」

 

シュバ「それもそうだけど、彼の綴りが《Nezha》だからって言うのもあるよ。元々戦闘職だったんだろうね」

 

みんなはわかっていないのか首を傾げる中フィリアだけはわかっていたようだ。

 

フィリア「なるほど《哪吒》ね、彼も英雄になりたかったんだね……」

 

アスナ「哪吒?」

 

フィリア「うん、原作の中国語読みでそう読むんだ」

 

キリト「あ~あのナタ太子か」

 

テリー「でどうするんだ?」

 

シュバ「う~ん現行犯で捕まえたいけどね……僕はもう顔が広まっている可能性もあるし……しょうがない、僕が騙されて来るね」

 

 

─────────────────────────

 

次の日

 

シュバ「強化、頼もう」

 

そうぶっきらぼうに僕は急ぎ足で取って来たアニールブレード、を差し出す。それを訝るように見る。

 

ネズハ「アニールの+6の試行2回残しですか……S3、Q3。使い手を選びますね……」

 

シュバ「スピードでお願いする、ブーストも全部料金込みのマックスで」

 

ネズハ「解りました……料金は2700コルになります……」

 

僕はコルをすべて送り、クイックチェンジを使う為にウィンドウを開きっぱなしする。一度不審に思われたが、すぐに作業に戻る。

 

ネズハ「……2700コル確かにいただきました」

 

彼は手慣れた作業でウィンドウを操作する。僕は彼の動きを見逃さないように手を見続ける。恐らく搾取されたプレイヤー達は──ポリゴンの輝きとはいえそれは美しいものだ──炉を見続けてしまったのだろう。

そして彼の指がカーペットに並ぶ剣と剣の間の隙間を軽くつついた。

握られていた剣が、一瞬だけど確かに明滅したのだ。

僕はとても感心してしまった。こうも鮮やかにチェンジされると、制作に携わった者として笑いそうになる。

そして僕が渡したアニールとチェンジした、エンド品をハンマーで叩き続ける。十回目の叩く音が響くと同時にアニールブレードが砕け散る。

 

ネズハ「すいません!」

 

シュバ「謝らなくていいさ」

 

ネズハ「…………え…………?」

 

僕はクイックチェンジを使用して、アニールブレードを装備する。

 

シュバ「ごめんね、騙し返す真似をして」

 

─────────────────────────

 

ネズハ「まさか見破られるなんて……」

 

シュバ「ははは……まぁ過去に、βテストで同じ手口で盗られた知り合いがいて、今回の《新アインクラッド》でも仲間二人がやられたからね……」

 

ネズハ「謝って許されることじゃないですよね……せめて、騙し取った武器を返せればいいんですが……全部お金に換えてしまいましたから……僕にできることは……ああとはもう、これしか!」

 

ぶらりと立ち上がり走り出す。しかしその先にある建物の窓からアスナとユウキが飛び降りる。

 

ユウキ「君一人が死んでも何の解決にもならないよ」

 

ネズハは相手が数日前に一時的に騙し取ったプレイヤーだとすぐに気付いた。

罪悪感に顔をくしゃくしゃに歪ませる。

 

ネズハ「……もし、誰かが詐欺に気付いたら、その時は死んで償おうって、決めていたんです」

 

アスナ「ここでは自殺は詐欺よりも重罪よ、強化詐欺は依頼人への裏切りだけれど、自殺はクリアを目指すプレイヤー全員を裏切る行為よ」

 

ネズハ「どうせ……どうせ僕みたいなノロマはいつか必ず死ぬんだ!モンスターに殺されるのも自殺するのも、早いか遅いかの違いだけだ!」

 

そんな台詞に背後にいたキリトが小さく笑った。そんなキリトをアスナが睨んだ。

 

キリト「ごめん、君の言葉を笑ってた訳じゃないんだ。そっちのお姉さんも、ほんの一週間前に同じ事言ってたもんだからさ……」

 

ネズハ「え…………」

 

ネズハが虚を突かれたように眼を見張る。そして改めてアスナの方を見た。

 

ネズハ「あの……あなたは前線攻略集団のアスナさんですよね……?」

 

アスナ「なんで知ってるの?」

 

ネズハ「そりゃ、フードの細剣使い(フェンサー)と言えば有名ですし。最前線の女性プレイヤー3人のうちの1人ですし……」

 

アスナ「……そ、そう……」

 

ユウキ「既にそれ定着してるねアスナ」

 

キリト「もう『灰頭巾ちゃん』みたいな通り名がつく前に外したらどうだ?」

 

アスナ「大きなお・せ・わ、よ!それよりも君のバンダナこそどうなのよ」

 

キリト「お、俺だって気に入っているし」

 

アスナ「なら私がつけてあげるわ『スウェーデン侍』とか『ウクライナ寒い』とか」

 

キリト「……スンマセン、どっちもカンベンしてください」

 

2人が言い合っていると、ネズハがおずおずと口を挟んだ。

 

ネズハ「あの……さっき言ってた、アスナさんが『いつか死ぬ』って言ったことがあるって本当なんですか?」

 

キリトがアスナと出会った日のことを軽く話した話した。僕達も知らなかったので、ちょっと驚いたりした。

 

アスナ「正直言ってまだその気持ちは消えてないわ……だってまだ二層でゴールは百層。遥か上で辿り着いてやるって気持ちと、いつかどこかで力尽きちゃうって気持ちが心の中でせめぎ合ってる。でもね……

 

アスナは一息置いて再び話す。

 

アスナ「死ぬ為に戦うのはもうやめたの。生きる為に、ゲームをクリアする為に……って言えるほど前向きにはなれないけど、小さな目標があるだけでも見つかったから、その為に戦ってる」

 

ユウキ「君にも何かあったんじゃないのかな?目指していた何かが。だからあの始まりの街から出たんだよね?」

 

ユウキがネズハにそう言うが彼は直ぐには答えなかった。顔を俯けるも眼は閉じずに、じっと両足のレザーブーツを凝視している。それは街中用のシューズではなく、戦闘用の防具だった。

 

ネズハ「………確かに、ありました。目指したものが。でも、消えてしまったんです。この世界に来る前に。それよりも前……ナーヴギアを買ったその日に……僕は最初の接続テストでFNC判定だったんです……」

 

テリー「FNCか……」

 

フルダイブ不適合。フルダイブマシンは細かいチューニングをしなければならないほどデリケートな機械だ。最初に起動する時、自動調整機能を一度クリアすれば二回目以降はすぐにダイブできる。その自動調整機能で不適合判定がごく稀に起きてしまう。

 

ネズハ「僕の場合は視覚に異常が出てしまって……見ることはできるのですが、距離感が掴めないんです。鉄床の上の動かない武器を叩くことすら難しいんです」

 

シュバ「君が強化の手順をとても丁寧にこなしていたのはそう言う事だったんだね……」

 

ネズハ「そうですね……砕いてしまう剣に申し訳ないって気持ちも少しはありましたけど……僕がこんなこと言うのもなんですけど、よくすり替えのトリックを見破りましたね……」

 

シュバ「それは旧アインクラッドで知り合いがやられてたからね。それと同じだと思った。まぁ君の名前が『ナタク』だから確信になったよ」

 

ネズハ「……‼︎まさか、そこまで気付くなんて……」

 

シュバ「でもレジェンドのメンバー達はネズオって言ってたから、彼等は知らないってことだよねナタクの由来」

 

ネズハ「ネズハでいいですよ、元々そう呼んでもらうつもりで付けましたし」

 

それからネズハはレジェンド・ブレイブスの結成理由とその経緯を話す。

 

ネズハ「別に僕らはリアルで知り合いだと言うわけでもないですから、もう、抜けた方が良かったのかもしれません……でも、みんなが抜けてくれって言わないのを良いことに、僕はチームに居続けました。SAOならって思いもありました。このNezhaという名前もオルランド達への追従……おべっかというやつです。英雄の名前じゃないから仲間でいさせてくれっていう……」

 

テリー「……最初は投剣スキル上げてたのか?」

 

ネズハ「はい……遠近感が掴めなくても攻撃ができるので……」

 

フィリア「それでクイックチェンジが使えたのね……」

 

シュバ「それでこのクイックチェンジを使った詐欺方法は誰が考えたんだ?これは一時有名にこそなったけどこの新アインクラッドではもう忘れられた物だし……」

 

僕は核心に切り込む問いをする。その答えは意外なものだった。

 

ネズハ「僕達のメンバーでもない見知らぬ人だったんです……」

 

キリト「……えっ?なら一体誰が?」

 

ネズハ「酒場で僕の投剣スキルを諦めるっていう話合いをしていた時に、突然、それまで隅っこでNPCみたく全然動かなかった2人のプレイヤーが近づいてきて、1人が『そいつが戦闘スキル持ちの鍛冶屋になるなら、すげぇクールな稼ぎ方があるぜ?』ってそう言ってきたんです」

 

キリト「なんだそいつは……?」

 

ネズハ「名前はわからないです……すり替えのトリックだけ話してすぐどこかに行ってしまって……ただ雨ガッパみたいなフーデットケープをすっぽり被ってて……しかもなんか映画みたいに楽しげな笑い方をしてました……それでもう1人の方はニヤニヤと薄気味悪く笑って『強くなったらまた会おうぜ』って言ってたんです……」

 

ザザッ──

 

突然脳内に砂嵐のような音が響く。まるで昔あったカセットテープを再生したような気分だ。

 

『あーあ……お前の不注意で家族が殺されちまったなぁ?……』

 

『……お前はこの先、どうやって生きていくんだろうなぁ?』

 

沢山の悲鳴と足音、腹から大量の血を流す大人2人と自身に覆い被さるように倒れる子供。そしてニヤニヤと笑う男の姿が脳裏に浮かぶ。

 

ザザッ──

 

ユウキ「──ルト?─バルト?シュバルト?」

 

シュバ「……ユウキ?」

 

ユウキ「どうしたの?さっきから呼びかけても反応しなかったから」

 

シュバ「いや……なんでもないよ」

 

ネズハ達に気づかれないように表情を作り直す。

まさかあの男がこの世界にもいるのか……?

そんな不安を隅に追いやる。

 

アスナ「つまりその2人はブレイブスの話し合いにいきなり割り込んできてすり替えの方法だけ話してすぐに消えたってこと?」

 

ネズハ「……いえ……正確には、もう少しだけ話していきました。詐欺は詐欺だからダメだよなってブレイブスのみんなも否定的だったんです……そしたらもう1人の方がニヤニヤと笑ってたんです。楽しげに」

 

シュバ「楽しげに……笑ってた……?」

 

ネズハ「ええ。いつのまにか深刻な空気が一転していたんです。ブレイブスのみんなも僕も気づいたら笑ってたんです……そしてあいつはこう言ったんです。『ここはネトゲ、出来ないことはできなくなってる。つまり出来ることはやっていいんだぜ?なぁそう思わないか?親にもダメなことはダメだと言われてたしなぁ……?』って……」

 

アスナ「そ、そんなの詭弁よ!」

 

ユウキ「そうだよ!それならモンスターの横取りとか色々しても良いってことじゃないか!……行くとこまで行ったら……それこそプレイヤーを」

 

フィリア「ユウキ!落ち着いて!」

 

ユウキ「っ!……ごめん」

 

男の詭弁に対してユウキの叫びをフィリアは最後まで言わせなかった。ユウキは自分が何を言おうとしたのかを理解して、すぐに謝る。

無理もない彼女の言わんとすることはそう言うことなのだから。

 

キリト「その2人が言ったのはそれだけか……?」

 

ネズハ「あ……は、はい。僕らが頷くと、そのまま酒場を出ていきました……」

 

テリー「そうか……そうだ、アレがあったな」

 

そしてネズハは初めて強化詐欺をした時の仲間の反応を、そして後悔したことを話した。

するとテリーが話を切り出した。

 

テリー「ネズハ。今スキルに空きがあるか?」

 

ネズハ「いえ、3つとも埋まってます。《片手武器作成》、《所持容量拡張》、《投剣》です……」

 

テリー「そうか……もしお前が使える武器があると言ったらどうする?鍛治スキルを捨てることができるか?」



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