この世界は間違っている。 (零ーzeroー)
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プロローグ「逆行」
「見つけ出せ反逆者を!」
けたたましい声と多くの足音が夜の森を木霊する。それらから逃げる 2人の少年少女がいた。
少年は東和国出身の犬塚 露壬雄、少女はウェスト公国出身のジュリエット・ペルシア。 彼らは交際していることがダリア学園の生徒である狗神 玲音に露見したことによって追われる身となってしまった。
なぜ彼らは交際しているだけで追われる身となってしまったのか、それは彼らの祖国東和国とウェスト公国が敵対関係にあったからだ。交際などすれば、祖国への反逆行為とみなされてしまう。
露見してしまったことにより一部の生徒を除いた学園のすべての者達に裏切り者のレッテルを貼られた露壬雄とジュリエットは、ダリア学園から追放されてしまった。
そして彼らにさらなる危機が舞い降りた。ダリア島にいた東和国の過激派に彼らの交際の件が露見してしまった事だ。過激派はウェスト公国のことをより一層嫌っており、捕まれば最悪殺される可能性がある為、露壬雄達は過激派から逃亡しなければいけなくなった。
しかし、その逃亡劇も長くは続かなかった。元々ダリア島の面積が小さかったのと、過激派が島内に潜んでいることを知っていた為、学園の敷地から生徒に出ないように規制がされていた。その影響で学園の敷地外に生徒が露壬雄達2人しかいなかったからだ。
その為発見は時間の問題だった。
「…行き止まりか。」
「…そうね。」
露壬雄達の前には、崖しかなかった。見るだけでも高さは20〜30メートルはある。こんなところから落ちれば、どうなるか予想がつく。だが逃げようにも、慣れない山を逃げていた為、彼らにそのような力はもう残っていなかった。
「見つけたぞ!」
「敵国の女と交際など、祖国への反逆と変わりない。故に万死に値する!」
そこへ憤怒の形相で過激派の男達が現れた。
「最後に何か言っておきたいことがあるか?」
過激派の男達の中でもリーダー格の男の言葉に露壬雄とジュリエットは答えた。
「「俺(私)達は間違ったことなどしていない!」」
「お前たちに殺されるくらいなら、」
「理不尽な世界に殺されるくらいなら、」
「「この崖から落ちて死ぬ方がましだ(よ)!!」」
露壬雄とジュリエットはそう答えると手をつなぎ、崖から飛び降りた。
「「「な!?」」」
過激派の男達は呆気にとられていたが、大きなものが水に落ちるような音で我に帰り、急いで崖の下を覗いた。
そこには、月明かりのみが輝く海しかなかった。
「リーダーどうしますか?」
男の内の1人がリーダー格の男に尋ねる。
「構わん。何しろこの高さから落ちたのだ。生きていたとしても、長くは持たない。しかし、万が一のことを考えてこの崖から近い陸に登れる場所に見張りを配置するように伝えておけ。」
「「ハッ!」」
………
……
…
ーペルシア、
世界を変えるって言ったのに、
お前を守るって言ったのに、
結局俺は何もできなかった。
本当にごめん。
ーもし次があるならば、
今度こそは…お前を…必ず……
この世界は間違っている。
プロローグ「逆行」
「……はっ!」
目が覚めると俺は、ベッドの上にいた。
「ハァ…ハァ…。」
とても嫌な夢を見た。俺とペルシアの関係がばれて、最後には自殺すると言うとても酷いものだった。
喉はカラカラに乾き、呼吸する度に痛みを発する。
この夢が正夢にならないように、これまで以上にペルシアと会う時は周囲の警戒を怠らないようにしよう、と決意を新たにし制服に着替えようとしたその時違和感を感じた。今いるこの部屋は、ダリア学園の黒犬の寮の部屋ではない。
この部屋は、
「…俺の実家の自室?」
なんで俺がこんなところにいるんだと怪訝に思いながら、ベッドから起き上がる。ベッドから降りた途端、視界が低いことに気づく。ふと自分の体を見る。そこで俺に最大の驚愕が襲う。
「なんで、俺の体小さくなっているんだ!?」
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