人間嫌いのヒーローアカデミア (丑こく参り)
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一人の少年の日常

処女作ですけどよろしくお願いいたします


人の考えとは、主に二つある。

 

一つは性善説、もう一つは性悪説である。

 

俺は人には悪しかないと考えている。

 

何故かって?

 

それは、人の心が分かるからだ。

『生物の心の声を聞き、記憶を見る』

 

それが俺の個性『悟り』

 

この個性は生まれつき俺が持っていたものだ。

 

そして、初めて心の声を聞いたのは父だった。

 

初めは何を言っているのかわからなかった。

 

でも、だんだんと何を言っているのかわかってきた。

 

『こんな子供はいらない。』

 

『早く死んでしまえ』

 

それは、俺に対する憎しみの言葉だった。

 

初めて見た記憶は母だった。

 

それは、己の快楽のために俺を産んだ時の様子だった。

 

つまり、俺は望まれて産まれてこなかった。

 

ただの己の欲望と快楽の末、産まれたにすぎなかった。

 

俺はこの時、親を信じられなくなった。

 

その後、親は逮捕された。

 

逮捕したのは『ヒーロー』だった。

 

この人たちは善人だと思った。

 

その期待は裏切られた。

 

『金が手に入った。』

 

『早く女で楽しみたい。』

 

それは、己の欲のために正しい事をしている偽善者だった。

 

俺はこのとき『ヒーロー』を信じられなくなった。

 

===================

 

「はあ……。」

 

六道 さとりは深いため息をついていた。桜色の髪は腰ほどに伸ばし、空色の左目に桜色の右目のした女のような顔立ちをしていた。さらに、耳にはヘッドフォンを付け、身長は150cm程しかなく、まるで女の子のようだった。

これだけの要素を持ち合わせているのにモテないのは理由がある。

「あ、さとりさん。おはよう!」

『格好いいなー。付き合いたいなー。』

「……………」

女子生徒が挨拶してきたがさとりは無視して靴箱に行き靴をおき、教室に向かって行ってしまった。

彼はあの一件以降人を信じられなくなってしまったのだ。その為、数人程しか友人がいないのだ。

 

「あ、おはよう、さと君。」

「おはよう、 出久。」

教室に入ったさとりに挨拶してきたのは、緑の天然パーマの少年だった。彼の名前は緑谷 出久。さとりの数少ない友達のひとりだ。

彼は幼稚園からの友達で「ヒーローになる」という夢を叶えようとひた向きに頑張っているため好感が持てるのだ。

 

もう一人幼稚園からの幼なじみがいるが、そっちは上昇志向が強く、聞くに堪えない心の声をしているためほとんど無視している。

 

「ねぇ、さと君は何処の高校に行こうとしているの?」

「俺は雄英高校、かな。でもあそこの試験は精神干渉系の個性に向かないから五分五分かな。」

 

そんなこんな、話していたら先生がきて、HRがはじまった。

 



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邂逅

「さて、帰るか。」

さとりは帰り支度をして学校を出た。

彼は非常に極端な性格をしており、帰るならさっさと帰る。敵対したら容赦なく叩き潰す、そういう難儀な性格をしているのだ。

 

 

===================

「ふ~ん、ふふ~ん、ふは~ん。」

夕暮れ時の街をさとりは耳にヘッドフォンを付け鼻歌を歌いながら帰り道を帰っていた。

(さて、今日のご飯は何にしよう。)

さとりは夕食のご飯のことを考えていた。

彼を産んだ両親が捕まった後から親戚に預けられ其処で育てられている。その親戚はヒーローで帰りが遅いためさとりがご飯を作ることがおおいのだ。そのため、彼の家事スキルは高く、大抵のことは一人でなんとかしてしまうのだ。

 

「ふは~ん……ん?何かおかしいな。」

(この道、さっき通ったよな。)

さとりは歩いていた道のりの中で奇妙な既視感を感じ、立ち止まり辺りを見回した。辺りには閑静な住宅街がひろがっていた。

彼は人の目を気にして過ごして来たため「いつも」と違う事には非常に敏感なのだ。

 

(この感じ、何か嫌な予感がする……!早くにげないと……!!)

さとりはこの奇妙な感覚から逃げ出そうとして走り始めた。が、

 

「逃げられたこまるよ、六道 さとり君。」

「……!?」

突如、さとりの目の前の空間に黒い靄が生まれ、その中から黒いスーツを着た男が出てきた。さとりは同様して後ろに後退りをした。

(この男はヤバい……!!まるで心臓に銃を突き付けられているような、圧倒的な威圧感がある……!!こいつの挙動、言動一つ一つに警戒してないと……殺される…!)

「まあ、そんなに警戒されたら困るなぁ。まあ、初見の相手に警戒することはとても素晴らしいよ。しかも君、僕の一語一句警戒しているよね?」

(な、何でわかったんだ!?)

男はまるで友人に話しかけるような口調でさとりに話しかける。その上、さとりの心を読んだかのようにその心意気を褒め称えた。

さとりの男の言葉に驚き、さらに恐ろしい物を感じとり、さらに後ろにさがる。

 

「それで……あんたは何者だ?ヒーロー…のような気配はしてないけど、あんたはヴィランだな?」

さとりは自身の恐怖を押し込めて、目の前の男に話しかける。

ヴィラン、それはこの超人社会の中で個性を悪用して犯罪を犯す犯罪者を指す言葉だ。大体の(表に出る)ヴィランはチンピラ程度の相手であり、ヒーローやサイドキックでも相手出来ると言われている。

(けど、この男は違う。決して表に出ない、いや、表に出せないヴィランの類いだ……!)

「ほぅ…よく心を読まずにその結論に達したね。君は本当に頭が言い。」

「それで、俺に何のようだ?まさか…俺をあんたの組織の中に入れ、何て言わないよな。」

「そこまで予想を立てるとは……。でも、不正解だよ。僕は君に…これを打ち込む為さ!!」

(まっず…!!)

男は急に声を荒げたと思いきや目にも止まらない速さで

さとりに近づき、いつの間にか手に持っていた注射器を動揺して反応が遅れたさとりの心臓の近くに打ち込んだ。

さとりは急に近づいてきた男の攻撃を受け、地面に倒れこんだ。

 

「ガッ!?お前、一体、なにを…?」

「ふっふっふっ、何に、直ぐに分かるさ。それでは僕は退散させてもらうよ。」

「ま、まちやが…れ!!」

男は含みのある笑い声と言葉を残し、さとりの前からきえさった。

(あの男、一体何者だったんだ?それに直ぐ分かるって…?)

さとりは地面から起き上がり、男の言葉について考察していた。

そして、男の言葉道理に変化は直ぐにおき始めた。

「ぐ、アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?」

(熱い、体の中が溶けてしまいそうなほど熱い!!………あっ。)

突然、さとりの体の中からとてつもない熱が生まれ、さとりは地面に倒れこみ、凄まじい悲鳴をあげ、その意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ、覚醒の時だ、『悟り』六道 さとり君。いや、『龍』龍崎 さとり君。」

 




個性『悟り』
生物の心の声を聞き、記憶を見る複合型の個性。(生物の心の声の聞く=異形型 記憶を見る=発動型)
人が多い場所では無制限に声を聞いてしまうため、常時ヘッドフォンをつけている。

なお、この個性は能力の一部しか出ておらず本来の個性の形は不明


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目覚める龍

(ここは、何処だ……?確か俺はあの男に何かを注入されたんだよな…。となると病院か…はたまた死後の世界とか言うものか?)

さとりは地平線の果てまで真っ白で何も無い空間で目を覚まし、この状況を整理していた。

 

(体は動かない。声も出せない。意識だけある。…本当に何なんだ?おい!誰かいるのか!?返事をしてくれ!!)

自分の置かれている状況を整理したさとりは意識の中で出来る限りの大声をだした。

 

ー問おう、少年。

 

(なっ!?)

さとりの心の声に反応したのか野太い男の声がさとりの脳内に直接響いた。そして、声の主はこう切り出した。

 

ー君は何のためにヒーローを目指す。

 

(何なんだこいつは?だけれどこの状況なら答えるしかないな。)

さとりは考えをまとめ、答えた。

 

(人を憎んだからだ。)

 

さとりの回答はまるで怨敵に対する反応に似たような口調で質問に答えた。

さとりのオリジン。それは誰よりも人を憎んだが故に誰よりも人に憧れたものだった。

彼の両親はヴィランであり、ヒーローに捕まった。その際、ヒーローとヴィラン。どちらも対して変わらない事がわかってしまった。

そして、親戚の家に預けられ、育てられていた時に『自分は人間として壊れている』ことに気がついてしまった。

彼が気がついて直ぐに行ったこと。それは人を観察する事だった。人を観察して自分の壊れている箇所を理解するためだ。

そして、多くのことを学び人間らしさを取り戻していった。けれど『人間を好きになれない』ことだけは治らなかった。

だからこそ『誰かの為に力を振るえる』ヒーローに憧れたのだ。

 

ー 人の体を失くしてまでの願いか?

 

(当たり前だ。何かを得るには犠牲が必要だ。)

 

ー 力が欲しいか?

 

(ああ。欲しい。あの恐怖を、あの絶望を越えれる力が欲しい!!)

 

ー なら行け、少年。

 

(え、んな!?)

突如、さとりの体は浮きはじめ、彼が驚いている間に白い世界から放りだされ、意識を失くした。

 

 

==================

 

 

「はぁ、はぁ……。な、何だったんだあの夢は。」

さとりはまるで悪夢にうなされたように冷や汗をかきながら病院のベッドに起きた。

この病院はさとりが意識を失くした場所から程近い大きな医療施設である。

 

「先生!!患者さんが起きました!!」

何処からか看護師と思われる人の声がきこえた。おそらく、直ぐにでも医者がくるだろう。

(あれ?心の声が聞こえてこない?)

ふと、さとりは今までヘッドフォンをつけることで聞こえなくしていた声に違和感を持ち、ベッドから立ち上がり、腕についていたチューブを引き抜き、近くの鏡に歩いていった。

(…そこまで長く眠っていなかったのか。けど歩きづらいし目線も高いな。)

そうさとりは考えながら鏡までたどり着いた。

 

(なんだ…これは…。)

そして鏡に写った己の姿に絶句した。

鏡に写っているさとりの姿は、全身が元気そうな褐色をしており、瞳孔は縦に割れ、左目は金色、右目は銀色をしており、髪の毛は腰あたりまで垂れ下がり、その色も雪のような白髪、耳は歪ながらも尖っており、頭には後ろに伸びた角が二本はえている上、黒い鱗に覆われた尾まである。更に身長も伸びており、150センチ程だった身長が10センチ程のびている。

(本当に何があったんだ!?)

 

「と、君、ベッドから動かないで。一時間程意識を失っていたとはいえ、ちゃんとした検査を受けてもらわないと。」

「…わかった。」

病室に入ってきた医者の意見を素直に受け入れベッドに腰かける。

 

「さとり!?大丈夫だった!?」

突如、病室のドアを勢いよくあけ、一人の少女が入ってきた。

その女性は身長が前のさとりより少し大きく、両腕に桜色の翼が生え、翼の色より少し濃い色をした、可愛らしい少女である。

彼女の名前は六道 鳥歌《ちょうか》さとりの親戚であり『ソングヒーロー セイレーン』という歌手兼ヒーローである。

「大丈夫だ鳥歌。何か見た目は変わっているけど問題ない。そして抱きつこうとするな、他の人の迷惑になる。」

「他何て今はどうでもいいわ!本当にどこも問題ないの!?何でそんな姿になっているの!?」

「あぁうるさい。取り敢えず静かにできないのか!」

鳥歌は矢継ぎ早にさとりに質問をし、それをさとりはスルーして鳥歌に注意する。

鳥歌は誰よりもさとりを愛しており、ある意味過保護に育ててきた。そのため、さとりに何かあったら仕事を放り投げてでもさとりの元に駆けつけて来てしまうのだ。

 

(母親としてはそれでいいけどヒーローとしてはアウトだろ…。)

さとりがうんざりとした顔で鳥歌を見ていると医者が話しかけてきた。

「ここに運ばれて来る前、何があったか覚えているかい?」

「ーその話し、私にも聞かせてくれないかい?」

病室ののドアが開き、そこから骸骨のようなガリガリの男が現れた。無論、さとりや鳥歌には知り合いではなく、見たことすらない。

「あぁ、失敬。私の名前は八木 俊典。オールマイトの事務所で働いている者だ。」

「「!?」」

八木と名乗る男は重々しい口調で自分の存在について話す。

オールマイト。それはこの超人社会の中で多くの人を助け、多くのヴィランを捕まえてきたナンバーワンと言われているヒーローの名前だ。つまり、この男は自らを『オールマイトの関係者』と言ったのだ。

「俺は構いません。…俺をこの体にした男の正体がなんなのか知りたいからな。それなら、多くの情報を持っていそうな人間はちょうどいい。……他言無用だぞ?」

「HAHAHAHA!!問題無いさ六道少年。私は口が固い方なのだよ。」

(何かオールマイトに似た口調だな…。まあいっか。)

「じゃあ話し始めるか。」




六道 鳥歌《ろくどう ちょうか》

ヒーローネーム 『ソングヒーロー セイレーン』

個性:セイレーン

鳥の異形型と音に関する発動型の複合型
鳥と同じように空中戦を得意としており、空中での戦いならオールマイト以上。
更に歌を歌うことで傷を癒したりする事などができる。ただし、歌は様々種類があるが一度に一つしか歌えず自分には効果がない。
ヒーローランキングでは11位



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学校

「……てな訳だ。」

さとりはこれまでの時系列を簡単にまとめ、鳥歌たちに伝えた。

無論、あのよく分からない夢については何一つとして話すことはなかった。

 

「その…黒スーツの男って何者なのかしら…?さとりをこんな姿にしたのよ?絶対に見つけて倒してやる…!」

「それはいいけど、先生。俺に打ち込まれた薬は何か分かるか?」

「わからない。何せ私とてそんな効果のある薬は知らないのだからな。そもそも、その薬はおそらく有史以来初なのでは?」

だろうな、とさとりは考え、一人黙りこんでる八木に話しかける。

 

「なあ、あんたは何かしているのか?」

「………、あぁ、私もそんな事ができる薬は知らないな。」

「まあ、それはともかく。今日はもう帰っていいよ。健康そうだし、後で変わった個性について申請しとけばそれでいいよ。」

「わかった。ありがとな。」

「ありがとうございます!!」

そういってさとりと鳥歌は病室を出ていく。」

 

 

 

「八木さん…あなた、知っているのでしょう?彼の体を変えた黒スーツの男が誰なのか。」

「…えぇ。でも彼が関わっていい内容じゃないですから。」

「そうかもしれないね。でも、教えておくのもまた重要なことなのだよ。これは患者に末期ガンだと宣告するのと同じさ。どんなにつらいことだとしても伝えなきゃいけないことだってあるのさ。」

「………はい。」

 

 

============

俺は家に帰り、直ぐにベッドの中に入り眠り込んで翌日、普通に学校に行く。

だが、ここでアクシデントがおきる。

 

『すげぇイケメンだな…』

『私、好みかも…。』

『あんな奴、この学校にいたか?』

 

この格好は予想以上に目立つと言うことだ。

(心の声が聞こえない分まだましか…元々目立ってたし。お、あそこに緑谷がいるな。)

さとりは気配を消しながらこっそりと近づき耳元で両手を鳴らす。

 

「うわぁっ!?」

「お、驚いたな。おはよう、緑谷。」

「え、あなた誰!?」

「俺だよ俺。さとりだよ。まあ、色々あってこんな姿になっているけどな。」

「え、何があったの!?」

「いちいち説明するのは骨が折れるし、まぁ、個性だと言えば分かるかな。」

「さとり君の個性は精神系の個性だったはず…。いや、生みの父親は異形型だったらしいし、それが突然出てきたのかな…。いやでも…」

(あー、こいつ、こうなると止まらないからな…。)

「そんな事より、さっさと教室にいこうぜ。」

「う、うん…。さとり君、何かテンション高いね…。いつものヘッドフォンも着けてないし…。」

「この姿になってから心の声が聞こえてこないしいいんじゃね?まぁ、人間は嫌いだけど。」

 

そんな話しをしながら教室にいった。

 

それから数ヵ月後、遂に雄英高校の試験日になった。




なお、緑谷は『ワン・フォー・オール』を昨日、継承しています。

そして、継承した住宅街のすぐとなりの道路でさとりはあの薬を『オール・フォー・ワン』に打たれています。


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