ポケットモンスター 夢追う者と去る者 外伝 (Blueクラーケン)
しおりを挟む
ああ、悪の親玉するのはつらいよ 前編
ヘイ イラッシャーイ
私の名はアカギ。賭け事は好きではない。
昔はギンガ団という悪の組織を率いていたが、とあるトレーナーにその野望を潰えた。
「お、こっちこっち。まったてぜ」
今ではレインボー団のときの付き合いで「悪の組織のボスで飲み会しない?」とかいう意見が出たため、断り理由もないので参加したのだが
「まだサカキさんは来てはいないのか?」
一番歴史の古い、組織だったはず。
「まあ、いいじゃねえか。先におっぱじめても、時は金なりだぜ!!」
フラダリというこの男、前話した時はこんなにはっちゃける人ではなかったのだが
そのときアクア団のボスだった、アオギリが私に耳打ちで
「フラダリの旦那は今SNS?っていうインターネットでコラ画像が大量に出回っているのを見てな、この間さ精神疾患になっているって診断されたんだよ」
道理でビールを飲みながら、泣いているなんて器用なことができるんだと思ったがそういうことか
「今は、情報社会ですからね。下手打って、顔出ししたら玩具になるんでお互い気を付けましょう」
ああ、あの男の二の舞にはなりたくはないな
「それよりアカギさん何か注文しますか?」
ああ、すまない。ギリにメニューを渡されたので取り敢えず生と塩焼きの鮭を注文した。
やはり、塩焼きの鮭は皮が絶品。サクサクと音を奏でながら油が出る、そこにビールを流し込む。
「…うまい」
「よ、アカギの大将も飲んだことだし、お互いに悩みでも愚痴ろうぜ」
ギャハハハともう一人で五杯は飲んでいるな。フラダリはどれほどの闇を見たものか
「…では私から話すとしよう」
さっきまで炒めギンナンをもくもく食べていた男がトップバッターを飾る。確かゲーチスとか名乗っていたな
「私にはNという息子がいてな、ゆくゆくは組織を継いでこの世界を支配する計画をもっていたのだが」
フフフ、と不気味に笑いながら、ゲーチスは話す
「それがどぉだい!! 新米トレーナーに負けて私の野望は打ち砕かれた。
だが私の可愛いNがいるからいいもんとか思っていたのに「もう貴方は必要ない」って
ゴミを見る目で去ってしまったんだよぉぉぉ」
よっぽど辛かったのであろう、この居酒屋で度数の高い越後武士を頼むほど心はすり減っていたのだろう
「今じゃあ、そのNってのが裏のトップでそのカリスマ性でかつてのどの組織よりも利益と人材を有しているって話だぜ」
「N、N、私のくぁぁぁわいいえーーーーぬぅぅぅっ!!!!」
おっとゲーチスの心がロードローラーで潰れてしまった。後でコンクリートで整地しよう
「すまん、遅くなった」
この中で唯一の遅刻者、サカキが来たようだ
「遅かったですね。渋滞にでもあったのですか?」
アオギリが質問する。まあ当然だな
「いや、家政婦の仕事でな、思っていた以上に頑固な汚れが見逃せなくて終わるのに時間がかかった」
サカキよ、お前それでいいのか。元々は悪の親玉だぞ貴様。
「あ~だから、服の上にエプロンを捲いているのですね納得です」
アオギリ、納得するべきところを間違えているぞ
そしてサカキ貴様も「これが俺の正装だ!」と胸張っていうことじゃない。
「何、お前ら灰汁(アク)抜きでもされたのか?」
過去の自分が覗き込んでいたら絶望するだろう。俺なら鳥になるぞ。
「さっすがアカギの旦那。悪と灰汁をかけてるんなんてオッシャレ…うぇえええ」
フラダリよ、吐いて良かったな。危うくそこにあったジョッキを使って、お前でキャッチボールしていたからな。
無論、ミットは貴様自身だが
「ゲロを吐くなら、『自分吐いていいっすか?』って言ってほしかった。丁度この私お掃除マイスターたるサカキがここにいるのだから」
何、ドヤ顔でお掃除マイスター名乗ってんだよ。
「まっじっすか!!しゃぁぁっっあああ
お掃除マイスターがいるなら酒ガンガン行こうぜ!!」
やめろ、ここをゲロの巣にしたいのか貴様
「サカキさんは何呑みます?」
アオギリが話題を変える為サカキ注文を促す、格好はあれだが常識人だ。
この雰囲気をガラッと変えてくれるだろう
「店員さん。ぶどうジュースをくれないか」
・・・・!?
この男、ネタで言っているのか?
しかし空気はガラッとかわったよ。畜生
「サカキの旦那、ワインと間違えてるんじゃないっすかああ。それぶどうジュースっす」
フラダリがネタかもしれないと注意してくれた。でかした。
しかしお前もう何本目だ、後ろのジョッキの屍は既に 20本は逝ってるぞ
「・・・・そうだな、ついうっかりしていたよ」
そういって席から立ち、店員さんに何か話している
「んもぉ。サカキの旦那はオチャメだなぁ」
そうだな。お前が飲んだ酒の請求額はお茶目じゃすまないがな
「しかしサカキさんがあんなボケをしてくるとは正直意外でした」
アオギリの言う通りだ。俺も正直終始驚いている(フラダリとゲーチスを見ながら)
「いや、すまない。ちょっと店員さんに頼み事をしていてね」
年下であろう店員にもちゃんとお辞儀をするとはなかなかできることじゃない。
俺には到底無理難題なことだな
「いえ、大人の対応をみせてもらいました。参考になります。」
アオギリが礼をいう。
「私はまだまだ道半ば、まだまだ見本となれる人にはなっていません」
とんでもない、是非とも貴方のツメごとあの二人の口に放り投げたいくらいだ
そうこうしている内にサカキがさっき頼んでいたであろうワインが来た
「…/」
呑む仕草一つ一つが絵になってしまうな
なのに
「サカキちゃんどうお?楽しんでるゥゥゥゥゥ 」
誰が見ても貴様が一番楽しんでいると思うぞ
「エヌ、どうしてなの?お父ちゃんは寂しいよぉ」
どうやらゲーチスの精神は死神にもってかれていたようだ。仕事が速い
「ゲーチスノォ、ダンニョー。いつまでうぇ、しょうぇないでゲンキになりまおぇぇぇ」
貴様に学習というプログラムは登載されていないのか
「…ここは私の出番の様だね」
サカキさんがイキイキとしながらゲロを片付けてくれている。悪の組織の時代よりやりがいを感じていないか
「ホントォ。ゴメンネェ。サーカキサーン。このフラダリィ、ハンシェシマース。」
フラダリは酒を飲みすぎると化学反応で外国人に変異するのか
「…偶にはこういう雰囲気も悪くはないな」
アカギは騒がしいこの空気を楽しみつつ、塩湯でされた枝豆を口に放り込んだ
「…そ言えば、隅にいるその男はこっちに参加しないのか?」
サカキがまだ会話に参加しない男に注目を向けた
「ああ、彼はマグマ団のボスですよ。」
同じ地方で活動をしていたアオギリがつぶやく
「私とは真逆の目的を掲げていたのですが、結局は過ちを悟って今は土木建設で精を出しているそうです」
「ま、私も似たようなもんですけどね」アオギリはそう言ってコルコル・アグリコールを飲む
「…ふう。いい酒は少しずつだけ、ゆっくり楽しむのが長く酒と付き合うコツだな」
酔ってきているのか、まあ、その言葉は理解できるが。
まずは
「おい、そこの。こっちで話でもしないか。愚痴ぐらいなら聞いてやる」
……
あれ?これでも丁寧口調にしたのに、返事がない
ん?耳にイヤホンをしている??
近づいてそのイヤホンをとって私の耳に掛けると
「『…ハリボテエレジー2.0が一着。二番バーニングビーフ。三着ピンクフェロモン。』しゃぁぁぁおらぁぁ万馬券じゃぁぁ「何している貴様」…あ」
どうやらこの場で競馬を聞いていたらしい。くたばれ
「いやあ、はは。ここの支払いを払おうと一発ツモでもしようかと」
大丈夫だ。一発ツモはしたぞ、お主の評価が下落したがな
「ハリボテエレジー2.0が来なかったら素寒貧になる所でした」
何故に一番オッズが高い奴を選んだのか気になるがやめておこう
「これで心置きなく飲めるってもんよ!」
マツブサと名乗った後、店員さんに亭主のおすすめ焼き鳥セットと梅のチューハイを頼んだ
「…ぷふぁ。うめえ。五臓六腑に染み渡るぜぇ」
よっぽどうれしかったのがジャンジャン、チューハイを頼んでいる
「居酒屋は値段たけぇ、割には量が少ないが酒と焼き物は安くて旨い。」
文句を言いつつ、ガツガツ食べている。器用な奴だな
「でもこの人競馬好きですけどこう見えて1児のパパですからね」
「「!?」」」
アオギリがつぶやく
そ、そんな馬鹿なことがあるか。悪の親玉で子を持つって結構なことだぞ!
「ほう、お子さんをお持ちですか。羨ましいですなあ」
サカキさんもその話題に食いつく
「いやいや、奥さんとは団を率いた頃からの付き合いでね。出来婚ってやつですか、」
どうやら、子供は今年小学校に入学したらしい
「昔は悪の組織のボスをして悪いことしていましたが、
子を持つとあの時にはなかった安らぎと手をつないだ時の温かさが妙に心地よい」
急に親父の顔をしながらかつての行いを申し訳なさそうに語る
「今では家庭を守るため、仕事をしているのさ」
照れくさそうに、そう述べた。
競馬をしていたのは結婚指輪を買うための資金を得るためだった
「…いい人になりましたね。マツブサ。」
アオギリは友を見るようにマツブサに言う
この安らか空気。昔の俺なら吐き気がしていたが案外悪い気はしないな
ああ、さっきまでが嘘の様だ。手持ちにユンゲラーがいたら私は今来たと記憶を改竄したい
だが、そんな時も奴が全てを破壊する。
~長くなるのでここで一旦CMでーす~
悪の親玉って怖いやつ多いけど、現実的な話で見ると厳しいよね経営って。
因みにこの居酒屋もソーナンスが経営している会社の傘下で、サカキさんが貸し切り予約を行いました。
酒の説明
越後武士:日本酒で一番アルコール度数が高い酒でした。しかし酒税法により現在では日本酒のリキュールと名乗らなくてはいけなくなりました。
リキュールはスピリッツに(蒸留酒)に果実やハーブを加えて香味を移して、砂糖などの着色料などで調整した合成酒のことである。
アルコール度数は46度
コルコル・アグリコール
南大東島で若い女性が起業した誕生したお酒。サトウキビの絞り汁を原料としている。
生産は一年に一度。アルコールを抑えたものは25度と飲みやすくなっている。
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
悲しみなんてない世界
「今日は一日中雨か…」
行きつけのBARで一人呟く。店の中にいても空から落ちてくる水の音が聞こえる。大雨なのだろう
「ソーナンス」
Masterであるソーナンスはお客が飲み終えたグラスを拭きながら相槌を打ってくれる。
久々の休日だというのに天気はご機嫌がよろしくなかった。
自宅で過ごしても良かったのだが、それはそれで時間を無駄にしているような気がしてここにいる。
(ニャースは出張でガラル地方に赴いているから、話し相手がいない…)
ニャースだって忙しい、そんな事は解っている。しかし話せる相手が居ないと気が滅入ってしまう。ソーナンスがいるが、表情が掴み取れないし、何言っているかよく分からない。
(まだ帰る時間としても早すぎるし、どうしたものか)
悶々としている中、より一層雨の音が聞こえた。
なんて事はない、お客が来店してからなのだろう。
この店は通好みの内装をしていて、Masterの良くも悪くも読み取れない表情が相まって人気な店だからな。
「…そこの席良いですか…」
覇気の無い声で俺の隣のカウンター席に腰掛け者は、人間だった。
黒の長髪、散髪に行っていないのか、目元まで髪が垂れているため表情がつかみにくい
それがこの人間なりのオシャレなのかもしれない。
珍しいわけではないのだが、この男何か変や感じがする。
外見は人間なのに、内側からドス黒いものが噴き出している。
(正直に思う、気味が悪い)
そんな考えを起こしていると、男は注文を言う
「…ダイキリを一つ砂糖は多めでお願いします」
注文の時だけ顔を上げ、それ以外は下を向く。
こっちはまで気分が凹んでしまうのはある意味才能だろう。
「…ソーナンス」
少しの沈黙が店を包み込んでいたが、注文していたものが彼の手元に置かれる。
【希望】という名前を持つダイキリ。別に好きな物を飲むのはその人の自由なのだが…男がそれを飲んでいると逆の意味になっているのではないのかと感じてしまった。
「なぁ、少し俺と…話をしてくれないか?」
私は男がどうしてそこまで闇いものを抱えてしまったのか気になった。
今まで見てきた、傍にいてくれた者達とは根本的に纏う物…オーラがいびつに歪んでいた。
だがそれ以前に一つの過ちを犯していた
(あ…)
私はポケモン人間の言っている言葉は理解できるが、言葉を発することは出来ない。
ニャースの様に特殊な声帯と訓練をしたことがないからだ。
何故いつもなら気づいた事が今日に限ってそれが失敗してしまった。
男の口から出たのは衝撃を受けた
「ああ、わかった」
…通じている
それはポケモンの言葉を理解しているということになる。
人間とポケモンが共存して長い歴史が積み重なってきたのだろうか計り知れないが、例外として心が通じ合えた…パートナーの関係性を築いて者は、なんとなくであるが言わんとしていることがわかる。
私もその口だ。
しかしながらこの男は【言葉】そのものを理解している。歴史上初と言えよう
底知れない恐怖が私を包む、本当に人間なのか。
室温が高かった筈、体が冷えてしまった
「ソーナンス」
カルアミルクのホットが目の前に置かれる。気を使わせてもらったな
…少し渡されたカルアを口にする。砂糖を多めに入れてあるのだろう、温かさと糖分が体を巡り落ち着くを取り戻す。
正気に戻ったところで私は先程から気になった疑問を提示する
「アンタは何者だ?」
その男は低い声で静かに質問に答える
「…只の人間。世間の【普通】という曖昧なレッテルを張られた【普通】の男」
妙な言い方をしてはいるが、質問を答えてくれるのは収穫と言えよう。悪い人ではなさそうだ
だが、肝心な事が聞けていない。なぜ言葉が通じているのかだ
「なんで、言葉が通じているんだ。そして何故私はアンタの声を理解できてしまうんだ?」
こちらの言語で話していない。人間の言語だ
店にトレーナーが来ない訳ではない、だからと言って人間の言葉が頭で理解できる感覚はなかった。
不思議な感覚で又もや不安が包み込む、私は早く男の口から質問の答えが出ないかと待ち浴びている。
自然と目線が男の顔を伺ってしまう、しかし見えたのは口元
「悪いがそれは言えない」
はっきりと告げられる。けれど間を置かずに口を開いた
…代わりに一つ話を聞かせてあげようと
在る所に一人の人間が生を受けた。そいつには兄弟がいた、弟だ。優しい母親と滅多に怒らない父親とのごく普通の家庭で過ごしていた。
しかしその兄には家族とは違った。
産まれながらにして持病をもった。
だがその場所ではそれを普通の病として分類した。
違う所では障害者として扱うべきが
始めは彼も気にしていなかった。幼かったのが幸か不幸か作用して他者との違いを判断できずにいた。
けれども時が経ち、成長し青年にとなると気づいてしまった。己の身体を気味悪く見る周りの目を
いつしか人の目線が嫌いになっていた。両親に打ち明けようと試みたものの【考えすぎ】【気にしない】【あの人が出来るから】と言い放ち、青年は理解してくれない親に絶望する。
それは励ましという名の【呪い】。
バカのままでいた方が幸せなのかも知れない。
世間一般でいう【普通】から外れた存在だったのだ。
その時から青年の心は少しずつ壊れていたのかもしれない
いつもの光景が変わって自信を嘲笑うへと変貌して見えてしまう
でも誰にその悩みを相談できるというのだ?
また親に言った所で打ち明けた時と同じ言葉をかけるだけだ。
ならば悟られない様にただ自身の内にしまって置く道を選んでしまった。
悩みなんて無い様に振る舞い、見えない所で刻々と悪化していく身体を騙していく
生れてから十数年はたったある日。
誰かが言った。友達だった奴かもしれない、イベントでの一度であった奴からかも。
「貴方は強い人だね」
…違うこんな物を強さとは思えない。また傷つきたくなかった、そんなのが強さなら。
いらない、必要ない。
青年は心で否定はしてはいたものの、そいつには「そうだな」と作り笑いで凌いだ
またある日
青年はとある物を作ってもらい、外見は【普通】の人間になれる仮面を手に入れた。
最初は喜んで付けて、街中へ歩き人目を気にすることがない【自由】を初めて手にした瞬間だった。
しかしそれも更に塞ぎ込む結果へと繋がった
仮面には副作用として装着している間、激しい苦痛をその身に宿してまう。
身体の内側を電撃と暑さが蝕む。
それでも我慢して、日常を過ごしていく内に負債でいた心が顔を出してしまった。
ナンデオレガコンナコトヲシナクチャイケナインダ
フツウヲエルタメニクツウハホントウニヒツヨウナコトナノカ?
カメンヲツケタノガホントウノオレ?ナラツケテイナイオレハナニ?ダレナノ?
答えの無い葛藤が襲い始めた。もう限界だったのかもしれない
だがそれも何とか抑え込む事に成功を果たした。
それは『抑え込む』だけで…消し去る事は出来なかった。
幼い頃に持っていた純粋無垢な心の湖は、いつからか己の心をしまい込むダムの役割に代わり、透明だった水は黒く変色していた。
「…」
私は唾を飲み込む事しかできなかった。飲み込む音でさえも、店中に響いているのではないか?と思うほど。
過去が己を雁字搦めにしてしまう
誰の言葉だったかは忘れてしまったが、話に出てくるその男はそうなのだろう。
男は口の乾きを潤す為かダイキリをグイっと一飲みし、また同じのを注文する。
淡々と話をしてはいるが、独り言の様に感じるのは何故だろうか。
こちらからに意見を求めたりすることはない。
男から見線を向いてくれてはくれない。
話は少し脱線してしまうかもしれないが人間の行動というものは『その人の気質や性格で出来るのではなく、置かれた状況によって決まる』
とある男が行った世界で一番危険な心理実験があった。
結果として人間の行動というものは『気質や性格などではなく状況が一番の影響をもたらす』だそうだ。
動物は種を尊重し、【団体】として愛する生き物だ。しかし人間は知能を手に入れ感情をより深く理解し、【個】を愛する生き物。
生きる為に種同士が戦うが、己の欲の為により多くの命を破壊するのは人間だけ。
これを進化と言うべきことなのだろうが、精神面では退化しているのを目をそらしているだけではないのか。
…本題に戻るとする
理解されず、本心を押し殺す状況を生み出してしまった。
彼はまるで道化師の様に明るく振る舞い、誰にも見られない影で涙を流す。とうに限界だった、だがそれでも歩き続ける。
救いはあると、止まない雨なんてないと信じて…
だがそんなことは無かった
新しい病まないが俺を襲った。
その事実を聞かせれ、また【普通】から遠ざる。
歩いていた足が崩れ体ごと地面へと倒れた…男に限界が来てしまった
おぼつかない体で後ろを振り返る、そこは後悔の塊がこちらへと迫っていたそうだ。抵抗する気力も無かった。むしろ楽にしてくれと懇願するように身を任せてしまう。
(どうにでもなれ)
明るかった青年の心は壊れ、虚無が包み込んでいった。
その顔は虚ろな表情を浮かべていた。
「…それでその男はどうなったんだ?」
話が終わり、恐る恐る口に出す。
話し手である彼は間を置き、ぷっと笑い出した
「いやまぁ。只の作り話ですよ、
オチ何て特に考えずに即興で作った…もしかして引き込まれちゃいましたか?」
酔っているのか。先程までの暗いオーラを纏っていた奴はとは思えない口調で驚きを隠せなかった。
「作り話とは思えない位、作りこまれてたんですけど!?」
お陰でカルアミルクが常温まで冷め切ってしまった。
呑むタイミングを計ろうとしてはいいたのだが、伺っているだけで口に運べることは出来なかった。
「すいませんねぇ。ちょこっとばかり短編などを書いている者でして。言葉がわかるのもね、忍び込ませた翻訳機をコンタクトで映して理解してたんですねぇ。手の込んでいるでしょ?」
そういいながら、左目辺りから透明なコンタクトレンズというものだっけか、人間が視力の矯正のために着けるあれ。
なるほど、翻訳機の進化は私の予想を遥かに進んでいた模様。
しかし解せない事がある。それを使っていたとしても相手だけが意味を理解できるのであって、相手からの言葉を私は理解しているのはどういう事なのか?
気づいた事で冷や汗がドバっと出始める
「話を聞いてくれてありがとう…マスターお礼にこれをこいつに飲ませてあげてくれ。驕りだ」
男は一言お礼をいいつつ立ち上がり、スマホを片手に何かを見せている。
一瞬あのソーナンスが強張った感じを出していたが、了承して作ってくれている
「んじゃ、俺はもう家に帰るとしますか」
こちらに背を向け、玄関へと歩む。自動ドアが開く。
来た時よりも更に雨が強く、さらには雷もなってきている。
こんな時に帰らんでもと思うが、それは個人の自由だから止めやしない。
「今日はありがとうな」
去り際、初めて見る笑顔
顔には左目が変色しているのが見えてしまった
その時雷が近辺で落ちてきただろう。激しい音とともに強烈な光が放たれ彼の表情に影がかかる
笑っている顔が、号泣している顔に。
私は残されたソーナンスと奢ってもらったエル・ディアブロ。
…悪魔の名を持つカクテルを片手に時間を経つことを祈りつつ、辛口の酒を胃に放りこむ。
ピリッとした酸味が心地よく体に回った
明記してはいないですが、主な視点はピカチュウであります。
ソーナンスはやっぱり便利なのだと痛感しています
…作り話はノンフィクションとなっています
目次 感想へのリンク しおりを挟む