てさぐれ! ケムリクサ(口調編) (シベリア!)
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てさぐれ! ケムリクサ(口調編)
ケムリクサの単発ギャグものです。
拙い出来かもしれませんが、笑ってみて頂けると幸いです。
昔々、ある所に、大変仲の良い6人の姉妹がいた。
6人は水を求めて見知らぬ土地を歩き回り、たまぁ~に出てくる赤色の霧から逃げ回ったり、たまぁ~に襲ってくる赤色のムシを力を合わせて撃退したり、色々大変ながらも楽しく生きていた。
しかし、そんな6人にも悩みがあり……
「えっと……りく……じゃない、りなりゃん?」
「私はりつだよ、りょうちゃん」
「ありゃ~、また間違っちゃったか」
「声で大体分かるでしょ」
「その辺、私には分からないんだよなぁ、匂いも……あんまり変わんないし」
6姉妹の長女がすんすんと鼻を鳴らす。
6姉妹は全員同じ顔、同じ匂い、同じ髪型、同じ口調だったので、何度も何度もお互いの名前を間違えてしまう。
「りっちゃんはさ、どうやって声、聞き分けてるの?」
「どうやって……聞こえ方が違うとしか……」
「うぅ~ん、やっぱり分かんないなぁ……」
「まあ、私も匂い、分からないからおあいこだよ」
「でもこの先困らない? りっちゃんだと思ったらりなちゃんだったり、
りんちゃんだと思ったらりょくちゃんだったり、今まで何度もあったでしょ?」
「そ~だねぇ、この前、名前を間違えられて、りんが泣きそうになってたし」
「何とかなんないかなぁ」
「そうだねぇ、何か策は……」
2人がう~んと考え込み……
「そーだっ! 声の違いが分からないなら、喋り方を変えれば良いんだ!」
基本大雑把な三女がぽんっと手を叩いた。
……
…………
………………
10分後、部室。
何の部室かはあえて明言を避けよう。
「はい、そんな訳で今日はみんなの口調を考えてみよう」
「相変わらず唐突だなオメーら」
「こういうの、りつりょう体制って言うんだって」
「りょくは色んな事知ってるね」
「いや、私も……そこまで詳しく知ってる訳じゃないけど……」
「この部屋、色んな形の物があるね。 じゅるり……」
「あ、ちょっと! 私が調べるまで食べないでよ! 新しい文字が見つかるかもでしょ」
「食べても後で出せるし、大丈夫っしょ」
「そういう問題じゃないの! 全く……それで、どうやって口調決めるの?」
「えっと……りっちゃん、どうしようか?」
「りょうちゃんは、何か良い考え、無いの?」
「全く無い」
「胸張って断言すんな!」
「とにかくみんなでてさぐってこーぜ!」
「「「「「………………」」」」」
「……全員無言かよっ!? 何でも良いから何か言えよ!」
「いや、これ下手な事言ったら自分で使う羽目になりそうじゃん」
「そう言えば、その辺決めてなかったな。 どうすっぺ?」
「今の……りょくが言ってた、『じゃん』っての、良い感じじゃない」
「びやぁっ!? 拾われたぁっ!?」
「あ、ごめん……余計な事、だったのかな?」
「うんうん、りんのファインプレーだよ。 早速一個口調が決まったね」
「りょくちゃんは今後喋る度に『じゃん』ってつけると……」
「ちょっと待ったぁっ!! これからずっと語尾にじゃんってつけないといけないの!?
何か凄く馬鹿っぽいじゃん!!」
「りょくちゃんは時々『じゃん』ってつけてたから、大丈夫だよ」
「ほいそんじゃ次の案、誰かあるか?」
「「「「「………………」」」」」
「……やっぱ無言かよっ!? 何か言えよ!」
「とりあえずルール変えよう。
提案した本人が口調変えさせられるんじゃ迂闊に喋れないよ」
「そうかも……じゃあこうしよう」
基本大雑把な三女が部室の奥から古びた箱を引っ張り出す。
『カード川柳用』と書かれたその箱であるが、6姉妹全員が漢字を読めないため、誰もその箱の中身が何のための物かが分からない。
「確かこの……えっと……」
「ペン」
「そうそう、ぺんっていうのので文字が書けるんだったよね?
これにみんなが考えた口調を書いていって、
最後に一枚ずつ配って決めるってのはどうかな?」
「6分の1で自分に当たるのか……でも、さっきよりは話が出しやすいかも」
「じゃあさっきりょくちゃんが考えた『じゃん』って書いて……」
「考えた訳じゃないって!」
「じゃあルールも決まったところで、誰か何かないか?」
「はい!」
「おっし、じゃありなの考えた……新しい口調!」
「にゃあ!」
「ド直球!?」
「あるけど! そういう口調のいるけど!」
「し、四六時中語尾ににゃあって……」
「やべぇ腹捩れる! 腹痛ぇっ!!」
「ちょっとりなちゃん、試しにやってみて」
「今日も一杯食べて、お腹いっぱいだにゃあ」
「あははははははっ!!」
「赤ムシが出たにゃあ! りなが齧ってやるにゃあ!」
「腹痛ぇっ! やべ、死ぬぅっ!!」
「待ってりな! 6分の1で自分に刺さるんだよ! 良いの?」
5女は無言でサムズアップした。
「採用!」
「異議無し!」
「はいはい、2つ目の口調は『にゃあ』と……
なんだろう、この会議終わったら私ら凄い情けない集団になってる気がする」
「りょくちゃん、そこは笑える集団って言うべきだと思うよ」
「長女! こういう時は長女が真っ先に留めるべきだし!
何で真っ先に親指立てて採用何て言うんだよ!」
「いやぁ、長女って言ったって最初に起きただけだからねえ」
「そうだけどさぁ」
「誰もお姉ちゃんって呼んでくれないし……」
「オレは結構呼ばれてるぞ」
「そうだねぇ、りく姉は……何と言うか、お姉ちゃん指数が高い感じだよねぇ」
「時々どん臭いけど」
「うっせぇな、お前らが痛みに鈍感なだけだろ」
「私達にとって、りくは大事な姉さんだよ」
「お、おぅ……わ、分かってりゃ良いんだけどな……」
「りんちゃ~ん、私は?」
「りょうも大事な姉妹だよ」
「やっぱり姉だとは思われてない!? 私長女だよね!?」
「りょうちゃんは……何と言うか、りょうちゃんって感じだよね」
「鉄パイプ持って突撃するイメージしか無いな」
「お姉ちゃんと言うより……蛮族?」
「りくちゃ~ん、皆が虐めるよ~」
「はいはい、頼りにしてるよお姉ちゃん」
「おら、そろそろ別の案出せ、誰かいねぇのか?」
「じゃあ……はい!」
「おっし、それじゃあ……りんが考える、新しい口調」
「じゅげむじゅげむごこうのすりきれかいじゃりすいぎょのすいぎょうまつうんらいまつふうらいまつくうねるところにすむところやぶらこうじのぶらこうじパイポパイポパイポのシューリンガンシューリンガンのグーリンダイグーリンダイのポンポコピーのポンポコナーのちょうきゅうめいのちょうすけ……とかどうかな?」
「長いっ!」
「長すぎ!」
「本当に残念な姉だし……」
「りんちゃ~ん、例えば赤霧が出たり、
赤ムシと戦ってる最中にその口調を使うとしてさ……」
「赤ムシだぞー、食べちゃうぞー!」
「食べないでくださーい!」
「ああっ! じゅげむじゅげむごこうのすりきれかいじゃりすいぎょのすいぎょうまつうんらいまつふうらいまつくうねるところにすむところやぶらこうじのぶらこうじパイポパイポパイポのシューリンガンシューリンガンのグーリンダイグーリンダイのポンポコピーのポンポコナーのちょうきゅうめいのちょうすけが危ない!」
「ぶはっ!」
「ちょ、反則……」
「じゅげむじゅげむごこうのすりきれかいじゃりすいぎょのすいぎょうまつうんらいまつふうらいまつくうねるところにすむところやぶらこうじのぶらこうじパイポパイポパイポのシューリンガンシューリンガンのグーリンダイグーリンダイのポンポコピーのポンポコナーのちょうきゅうめいのちょうすけ! 今助けに行くぞー!!」
「あははははははっ!!」
「破壊力スゲェ!!」
「笑いで戦争が止めれるよ! 赤ムシも捧腹絶倒だよ!」
「てか口調じゃなくて呼び名になってる!」
5姉妹が腹を抱えて笑い転げる。
「駄目……かな……」
「うんうん、りんは頑張って考えたよね」
「捧腹絶倒だったな」
「いやぁ笑った笑った。 笑ったけど……駄目だろこれ」
「流石に実用性無さすぎ、却下で」
「そうだねぇ……」
「みんな……ごめん……」
四女がしょぼーんと首を垂れる。
「落ち込むなって、手探るってのは没ネタも楽しんでこそだろ」
次女が四女の肩をぽんぽんと叩いて励ました。
「りょう、アレが姉指数だよ」
「そっかぁ、私に足りてないのはああいうのか……」
「んじゃ次のネタ誰かあるか?」
「はい」
「おっ、りょうか」
「これで姉指数を取り戻すよ」
「んじゃあ長女の威厳を賭けて……りょうの、新しい口調」
「だわさ!」
「だ……だわさ……?」
「いや、決して駄目って訳じゃないけど……」
「残念なネタじゃない」
「にゃあの破壊力が凄すぎたな」
「でもまあ、他と区別するだけなら悪く無い感じ?」
「じゃあ、採用すっぺ」
「そうだね、3つ目は『だわさ』と……まあ、『にゃあ』よりマシかなぁ……」
「待って! 待って! 待って! このネタ続きがあるから! 捧腹絶倒だから!」
「え、聞きたいか?」
「……いや、別に」
「あの柱、美味しそうだな」
「聞いてよ! 絶対面白いから! これが面白く無かったら長女返上で良いから!」
「分かった分かった、仕方ねぇな……はい、りょうちゃんの、新しい口調」
「だわな!」
「大して変わってない!」
「だからりょうちゃんはいつまで経ってもりょうちゃんなんだよ」
「もうりつりょう体制止めて、りく姉がリーダーで良いんじゃないかな」
「え、やだよ面倒臭ぇ」
「りなは食べれれば何でも良いかな」
「え、あの……りょうは頑張ってると思う」
「もう私の味方はりんちゃんだけだよ……」
「どうする? 4つ目『だわさ』にするか?」
「『だわな』と『だわさ』じゃ被ってるじゃん」
「んじゃ2つ併記でいくか」
「了解、『だわさ』または『だわな』と……」
「あと3つか……だんだん考えるのが面倒になってきたな」
「りくねぇねは他のみんなと喋りかた違うから、
無理して口調変える必要無いんじゃないかな」
「あ、んじゃああと2つで良いのか。 それならイケそうだな」
「それなら、6人中5人が特徴的な口調してれば、
最後の1人は特徴的じゃなくても判別つくんじゃない」
「りなちゃん賢い!」
「ふふ~ん! りなちゃんは賢いんだ」
「じゃあ4つ目は『りく姉っぽく』、5つ目は『なにもなし』と……」
「あれ、『なにもなし』をりく姉が引いたら、
りく姉っぽい口調の娘が2人になるんじゃ……」
「増えるりく姉さん……悪くない」
「りんちゃん!? りんちゃ~んっ!?」
「りんねぇね、りくちゃんは増えないよ」
「そうだね、ごめん」
「そろそろこの会議も飽きて来たし……んじゃ、オレから」
「りくちゃんが考えた、新しい口調は?」
「クポ!」
「く、くぽ……」
「何か分からないけど、危険な香りだねぇ」
「りく姉、試しにやってみて」
「押してからさらに強めに押すクポ。 ドクっと来るクポ。
したら丸いの出るから選ぶクポ、したらすげぇ光るクポ」
「ちょ!?」
「は、反則! それ反則!」
「似合わないし絶対!」
「いや、誰がやっても合わないよ絶対」
「りょうちゃん、ちょっとやってみて」
「あの赤いの、また出てきてくれないクポ~? もっと戦いたいクポ~」
「あははははははっ!!」
「右から襲ってきたら……こうクポ! 下から出てきたら、こうやって、こうだクポ!」
「りょうちゃんが可愛くなってる!?」
「糸目とクポの相性が……ぶふっ! 駄目、もう限界ぃっ!!」
「腹が捩れて戦い所じゃねぇよ! 却下却下!」
「はいっ!!」
「りつの、新しい口調」
「ぴょん!」
「にゃあと被ってるだろ!?」
「りつはウサギだぴょ~ん! さみしいと死んじゃうぴょ~ん!」
「似合わねぇーっ!!」
「は、破壊力が半端じゃない……」
「りん……みんなが虐めるぴょん……」
「大丈夫、どんな口調でもりつ姉さんはりつ姉さんだから」
「でも、意外とイケんじゃね、インパクトあっし」
「待った! 地雷枠をこれ以上増やされたら溜まったもんじゃないよ!」
「ええ~。じゃありょくが何か考えろよ」
「本当は『じゃん』もやめてほしいんだけどな……」
「はいそれじゃあ、りょくの新しい口調」
「えっと……ううんと……『なんだな』とか?」
「『なんだな』か……」
「りょくちゃん、ちょっとやってみてよ」
「残念な姉達なんだな、ロクなアイディアが出ないんだな」
「う~ん、あんまりインパクトが無いな……」
「そうかな、私は良いと思うけど」
「りんは優しいねえ」
「だかなあ、駄目なもんはハッキリ駄目って言うのも姉としての慈悲だ」
「りくちゃんはこういう所で姉指数を稼いでいるんだナ」
「私に足りないのはそういうトコかなぁ……って、
今りなちゃん、語尾になんだなってつけなかった?」
「……あ」
「りょくちゃん駄目だよ~、既存の口調を丸パクリしちゃ~」
「急にネタ振りされたんだから仕方ないって!!」
「もう面倒臭いから6番目『なんだな』で良いんじゃねぇか」
「はい! はいはーいっ!!」
「はい!」
「りなの、新しい口調」
「君は眼鏡かけるべきだ!」
「眼鏡!? 何それ!?」
「眼鏡……目の見え方を変える道具……だと思う、たぶん」
「へぇ。じゃああたしらも眼鏡をかけたらりょくちゃんみたいに見えるのかなあ?」
「眼鏡が見つかったら試してみるのも良いかも」
「でも、会う度に眼鏡かけろって言ってくる姉とか、正直想像したくないんだけど」
「う~ん、悪かねぇんだが、長いし……却下で良いか」
「はい!」
「りつの、新しい口調」
「やっと見つけたぞ、故郷を滅ぼした男よ!」
「だから長いっての!」
「はい!」
「りんの新しい口調」
「ドヤァッ!」
「日常会話に混ぜて良い台詞じゃないだろ!」
「短くしてみたんだけど……駄目かな?」
「会話の度にドヤ顔になるりん……新しいかも」
「はい!」
「三度目の正直なるか、りょうの新しい口調」
「ただしイケメンに限る!」
「またイケメンネタか!」
「鉄パイプに細いイケメンはいないって!!」
「急にイケメンが出てきて助けてくれるかもしれないでしょ!」
「現実見ろ長女!」
「だからアンタはいつまでたっても残念な姉なんだよ!」
「りんちゃ~ん……」
「えっと……急にイケメンが出てきたら……出てきたら……い、良いね」
「りん、駄目と思った時は駄目だって言っても良いんだよ」
そんなこんなで夜はふけ……
……
…………
………………
「全員カードは引いたな?」
「うん……泣いても笑っても一発勝負……」
「りつ姉、後で交換使用は無しだよ」
「『何も無し』来い、『何も無し』来い、『何も無し』来い……」
「まあ、私はどんな口調でも、戦えれば満足だからね」
「そういう意味では、りなも色々食べられれば満足だよ」
「んじゃあ1、2の、3で表にすっぞ……」
「1」
「2の……」
「「「「「「……3っ!!」」」」」」
6姉妹が同時にカードをひっくり返し……
「びゃあああぁぁぁーーーっ!!」
末っ子の断末魔の叫び声が部室に木霊した。
「んだよ、オレが『りくっぽい口調』かよ、面白みがねえな」
「増えるりく姉さんはお預けか……」
「りく姉は唯一無二の存在って事ニャー」
「りつ姉さんはどうだった?」
「私は語尾に『にゃあ』をつける事になったニャー。 りんはどう?」
「私は何も無しだった」
「一番の安全牌はりんに行ったか……じゃん。
私はこれからずっとこんな喋り方しなきゃいけないの……じゃん」
「とってつけたような言い方だナ。 ちゃんとやるんだナ」
「適応早っ!? ……じゃん」
「まあまあ、慣れるまではしばらるかかるだろうし、しかたないよ……だわな」
「そう言うりょくちゃんもぎこちないナ」
「何にせよ、これで判別がつく……つくか?」
「多少はマシになるかも……じゃん」
「まあ、色々やってみるしかないんじゃない……だわな」
「口調だけじゃなくて、他にも何あると助かるかもだニャー」
「そう言えば、最初の人が残したメモに気になる事が書いてあってね……じゃん」
「へぇ、興味あるなあ。 教えてよ……だわさ」
「コスプレっていうんだけど……」
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