遊戯王ARC-V Rーe:birth (深海の破壊大帝)
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スタンダード次元編
序章 異物の動かす振り子


初投稿です。


 一人の少年が母親と一緒に窓越しに行われる戦いを見ている

 桜が舞う小川の上に架かる橋の上、鋼鉄で出来た赤と青の鎧武者

 そしてその主人である白い制服を着た大柄な少年

 少年は自らの腹心を呼ぶために二体の鋼鉄の武者に指示を出す

 

「俺は超重武者ワカONIとソード999をリリースし、超重武者ビックベン―Kをアドバンス召喚!!」

 

ビックベン―K「ウオオオォォォ!!」

       DEF3500

 

 現れたのは先ほどいた二体よりも巨大で白と橙を基調としたカラーリングの鋼鉄の武者

 

「さぁ、遊矢!!

 この男、権現坂の一撃を受けて見よ!!

 ビックベン―Kで遊矢にダイレクトアタック!!」

 

 鋼鉄武者、ビックベン―Kは主の命を聞き届け

 背中のバーニアを吹かしながら薙刀を振るい突撃するが

 

「リバースカード、超カバーカーニバル発動!!」

 

 突如響く第三者の声、ビックベン―Kの前に現れるのは

 

EM(エンタメイト)ディスカバー・ヒッポ「カバー!」

            DEF800

 

 この場に似つかわしくないシルクハットをかぶったピンク色のカバと

 

カバートークン(橙)「カーバ」

        DEF0

カバートークン(黄)「カバ」

        DEF0

カバートークン(青)「カァバァ」

        DEF0

カバートークン(緑)「カバアァァ!!」

        DEF0

 

 サンバ衣装を纏った4匹の色とりどりのカバたち

 カバたちは主を守るためにビックベン―Kの注意をそらす為に激しく踊る

 

「くっ!それを伏せていたか・・・

 相変わらず抜け目のない、だったら緑色のカバートークンを攻撃だ!!」

 

ビックベン―K「ハァァァ!!フンッ!!」

 

カバートークン(緑)「カバアアババァァァ!!」

 

 ビックベン―Kが薙刀を振り下ろすと緑のカバートークンは絶叫を上げて消滅した

 

「あったり前だろ、権現坂?伏せカードがブラフだけなんてそうそうないって

 さぁ、次の手はどうする?」

 

 飄々とした態度で橋の先にある門の上に月をバックに立つ少年

 昇と同じ白い学生服をマントのように羽織りうっすら笑う、緑と赤の混じった髪をもつその少年

 榊 遊矢は対峙する親友、権現坂 昇に挑発するように急かす

 

「俺はこれでターンエンド、さぁどこからでもかかってこい!!」

 

 飄々とする遊矢と熱く拳を握る権現坂

 そんな2人を観戦している少年は母親とその隣にいる中年代の男

 彼らが居る決闘(デュエル)塾、遊勝塾の臨時塾長、柊修三に質問する

 

「ねぇ?なんで、モンスターじゃなくてトークンを攻撃したの?

 それに相手のお兄ちゃんのモンスター守備表示みたいだけど、召喚したモンスターは攻撃表示かセットしかできないんじゃないの?

 そもそも、守備表示なのになんで攻撃しているの?」

 

「ははっ、質問攻めだな。

 じゃあ1つずつ答えていくぞ~

 超重武者ビックベン―Kは召喚時に守備表示になる効果を持っていて、さらに守備表示のまま攻撃できるんだ。

 おまけに守備表示のまま攻撃するとき守備力を攻撃力として計算してバトル出来るんだ」

 

「えぇ!?それって実質攻撃力3500のモンスターってこと!?」

 

「その通りだ!

 それに表示形式そのものは守備表示だから、ミラーフォースみたいな、攻撃表示に効果を及ぼすカードにも強いんだ!

 

 それと遊矢の使った超カバーカーニバルなんだが、デッキ、墓地、手札からEMディスカバー・ヒッポを特殊召喚し、さらにカバートークンを自分フィールドに可能な限り特殊召喚出来るカードなんだ。

 さらに相手はこのターン、カバートークン以外攻撃対象にできなくなっている。

 

 まぁ、代わりにカバートークンが存在する限り、遊矢はエクストラデッキからモンスターを特殊召喚出来なくなっているがな。

 さぁ、ここから遊矢がどう返すか・・・見ものだな。」

 

「俺のターン、ドロー

 さぁ、このターンで幕引きと行こうか!

 俺はマジックカード、ミニマム・ガッツを発動

 俺のモンスターを1体、ディスカバー・ヒッポをリリースして、ビックベン―Kの攻撃力を0にする」

 

ディスカバー・ヒッポ「ヒポッ!」

 

 ディスカバー・ヒッポは主人の勝利の為に爆走し、自分の体の3倍はあろうかというビックベン―Kに突撃する、残った仲間が勝利を掴むと信じて

 そして、ディスカバー・ヒッポの決死の特攻を受けたビックベン―Kは自身の動力部に違和感は覚えたが平然とした様子だった

 

ビックベン―K ATK1000→0

 

「何と無駄なことを・・・ビックベン―Kは守備表示、攻撃力を下げたところで無意味だ!」

 

 決死の特攻で散った仲間の献身を無駄にするようなまねをする遊矢に権現坂は憤る

 だが、月の光を背に腕を組む遊矢は不敵に笑っていた

 

「それはどうかな?

 リバースカードオープン!トラップカード、反転世界(リバーサル・ワールド)!」

 

「何!?それは最初のターンから伏せられていたカード!!」

 

「言っただろ?伏せカードがブラフなんてそうないってさ

 このカードの効果でフィールド上の効果モンスターの攻守は逆になる!」

 

 ビックベン―Kが感じていた違和は遊矢のその言葉を受け、動力部の暴走と言う事態となって発現する

 自身の体に膨大なパワーが宿るのを感じるが、その有り余るエネルギーはビックベン―Kの堅牢なボディを内側から破壊していく

 

ビックベン―K DEF3500→0

        ATK0→3500

 

「なっ!?ビックベン―Kの守備力が0に」

 

「これでフィナーレだ!

 行け、カバートークン!ビックベン―Kに攻撃だ!」

 

 カバートークン達は遊矢の命令を受け、暴走するビックベン―Kに向かっていく

 ビックベン―Kは迎撃しようとするが制御の利かない体では見かけによらない軽やかさで舞うように動く、カバートークン達を捉えることは出来なかった

 

「カバートークンの攻撃力は0、攻守0同士ならば戦闘ダメージはないぞ、遊矢!!」

 

「いや、そうでもないんだな~これが」

 

 憤る権現坂に対して飄々と答える遊矢は自身の足元に伏せられているカード

 アクションカードに手を掛ける

 

「よし、アクションマジック、エクストリーム・ソード

 フィールドのモンスター1体の攻撃力を1000ポイントアップ!」

 

「なんだと!?」

 

 ビックベン―Kの攻撃をかわし続けていたカバートークン達の内の一体が背後に回り込み、いつの間にか持っていたナイフをビックベン―Kの中心、動力部に突き刺す

 

ビックベン―K「グオッ!!」

 

「くっ!だがビックベン―Kは守備表示、ダメージはな」

 

「ミニマム・ガッツのもう1つの効果

 効果対象モンスターが戦闘で破壊され相手の墓地に送られた時

 そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える」

 

「なっ!?」

 LP1000

 

「ジャストキル達成だ。」

 

――パチンッ!

 

 そう言って遊矢が指を鳴らすと、カバートークン達は遊矢の下に下がり

 暴走状態に追い打ちを掛けられたビックベン―Kは爆散し、権現坂を吹き飛ばす

 

「うおおぉぉぉ!!」

 LP1000→0

 

 体を打ちつけて転がる権現坂、そのライフポイントが0になると、月夜の橋舞台は光と共に崩れていき、無機質なドーム状の空間にかわる

 

「おいおい、大丈夫か、権現坂?」

 

 手を伸ばす遊矢だがそれに権現坂は待ったをかける

 

「勝者の情けなどいらぬ。これも俺が未熟だっただけのこと、心配は無用だ」

 

 何ともないとばかりに起き上がる権現坂、それに苦笑いする遊矢

 これがこの塾の何時もの光景である

 そのいつもの光景を見ていた少年、山城タツヤは興奮した様子で修三と自分の母親に言う

 

「すごい!!あんなに強力なモンスターをトークンで倒すだなんて!!」

 

「あらあら、この子ったら

 ふふ、息子もこの調子ですし、塾長さんよろしくお願いできますかしら?」

 

「はい、任せてください!

 我らが遊勝塾の熱血指導で立派なデュエリストにしてあげますともハッハッハッ!!」

 

 目標が出来たことで瞳を輝かせる少年タツヤと

 息子の未来が広がったことに喜ぶ母と新たな生徒を迎えることが出来たことに笑う修三

 喜びがあふれるその空間、それを横目で見つめる視線の先

 榊遊矢の胸中は焦りに近いものが渦巻いていた

 

『山城タツヤの塾見学、つまり第1話冒頭か・・・

 はぁ~あの様子だとだいぶ展開が変わりそうだけど、どうなることやら』

 

 内心でため息を吐く遊矢、いや榊遊矢になってしまった者

 そう、これは紡がれた物語に入り込んでしまった異物の物語

 そして、その異物によって運命を変えられた者たちが紡ぐ物語

 止まってしまった振り子が再び動き出す物語、その物語の序章なのである




思えば、これが最初の中断デュエルだった


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謎の決闘者 狂った道化師

たぶん遊戯王世界はカード1枚を買うにしても莫大なお金がいる。


――質量を持ったソリッドビジョンの実現により生まれたアクションデュエル――

――モンスター、そしてデュエリストが一体となったこのデュエルは人々を熱狂の渦に巻き込んだ――

 

「巻き込まないでほしかったんだけどな・・・」

 

「ん?どうしたの遊矢?」

 

「いや、なんでもないよ、柚子。」

 

 目の前のピンク髪の少女、『柊柚子』が俺に話しかける

 いかん、独り言が口から洩れたようだ

 

 俺がこの世界に来てから記憶で言えば10年と言ったところだろうか

 これが本編と同じ世界観なら世界が再構築されたのも10年ほど前なのだろうか?

 

 『遊戯王ARC―V』遊戯王テレビアニメシリーズ第5作目にして

 新たな召喚法『ペンデュラム召喚』が登場し、主人公 榊遊矢はその召喚法を使い、別次元からの侵略者と戦いながら

 父 榊遊勝から受け継いだ『エンタメデュエル』で人々に笑顔を与えながら成長していく

 大まかな流れで言ったらこんな所である。

 だが、問題は主人公 榊遊矢の正体――

 

「ちょっと遊矢!?」

 

「ん?な、何だよ、柚子?」

 

「本当に大丈夫?妙に考え込んじゃって」

 

「い、いや、今日来てくれたあの子、入塾したんだろ?

 修三さんと俺だけで講師の人数足りるのかな~って思ってさ」

 

「ん~そうね。

 たしかに2クラスに分けて講義するのも・・・これ以上は厳しいわね。

 講師のバイト募集の張り紙でも出そうかしら?となると出せるバイト代は・・・

 いや、でも講師を増やしたって場所が・・・」

 

 どうやら柚子を思考の海に沈めることに成功したようだ

 これなら10分は戻ってこないだろう

 

 俺の10年より前の記憶

 それはこの世界と似たような世界がアニメとして放送されていた世界である

 この世界の様にデュエルが様々な物の中心となっている世界ではなく、

 ただの普通のカードゲームとして存在する世界、OCG次元とでも呼ぼうか

 俺はその世界で生きる、ただの遊戯王好きの男だった

 

 今や覚えているのはそれだけ、死んだ記憶もなければ、時空の狭間に落ちたわけでもない

 いや、記憶がないだけかもしれないが・・・

 とにかく気づくとこの世界に居て『榊遊矢』となっていた。

 物語の主人公である『榊遊矢』に、つまり

 

「おーい!遊矢!!お客さんだぞ」

 

 厄介事が舞いこんで来るわけだ

 大声でこの休憩室に入ってきた、この遊勝塾の塾長代理『柊修造』

 そして、その後ろから入ってきた黄色と黒の縞模様のスーツを着た揉み上げとサングラスが特徴的な男

 

「やぁやぁ、キミが榊遊矢君ですか~お会いできて光栄です。

 あ、申し遅れました。

 ワタクシ、アクションデュエルの現役チャンピオン

 ストロング石島のマネージャー兼プロモーターをしております

 ニコ・スマイリーと申します。」

 

 胸に両手をクロスさせた独特のお辞儀をする胡散臭そうな風貌の男『ニコ・スマイリー』

 やっぱり来たか・・・

 

 原作との相違点として俺以外に挙げられるのはまず、遊勝塾の経営が傾いていないことだ

 もちろん、最初は広告塔兼塾長である『榊遊勝』が失踪し閑古鳥が鳴いていたのだが

 元々若干コアなOCGプレイヤーだった俺が臨時講師として教え出してから、生徒の人数が回復というか、若干オーバー気味になってしまったのだ。

 卑怯者の息子のレッテルはどうしたんだ?

 まぁ、エクストラデッキを使う召喚法を教えている塾がまだ少ないのもあるだろうが。

 

「LDSのイメージキャラクターを務めるストロング石島の、そのファン感謝デーにぜひ遊矢君をお招きしたいのです。」

 

「俺が、ストロング石島と?」

 

「そう!戦えるのです。

 3年前の戦いを貴方に継いで欲しいのです!」

 

 独特の口調と仕草でそれとなくこちらを煽ってくるニコ・スマイリー

 チャンピオンのプロデューサーの名は伊達じゃないな

 煽っているが嫌味さは感じない

 

『ストロング石島』現役アクションデュエルチャンピオンにして

 レオ・デュエルスクール、通称LDSのイメージキャラクター

 3本の角のようなヘアースタイルと肩パットを装着したマッチョな大男

 世紀末な風貌だが性格は誠実で堂々としている

 使用デッキは『バーバリアン』となかなかコアな人

 

 3年前、原作通り、彼との王座決定戦で当時チャンピオンだった榊遊勝が失踪したことにより

 ――チャンピオンに『なってしまった』男

 

「ほれ、この通り、準備は万端整っております。」

 

 そう言い

 ニコ・スマイリーの懐から出されるファン感謝デーのポスターの端っこに、ご丁寧に顔写真付きで『≪スペシャルマッチ≫ 伝説再び―榊遊勝の息子 榊遊矢君がチャンピオンに挑戦!!』と書かれている。

 

 逃げ道を潰してきているな、こいつ

 まだ一般には未公開だろうが、デュエリストとしてなら受けない訳がない

 受けるの了承したら大々的に配布するつもりなんだろう

 

「どうするの、遊矢?」

 

 不安そうにこちらを見つめてくる柚子

 俺は少し考えようとしたら、突如として勢いよく扉が開いた

 

「ならん!!遊矢を倒すのはこの俺!権現坂昇だ!!」

 

「あ~ら、まだ帰って無かったのか、権現坂」

 

「3年前のことを持ち出したあげく、遊矢を当て馬にし見世物にしようなどという卑劣な考え

 この男、権現坂が許さん!!」

 

 勢いよく登場した権現坂、鼻息荒く興奮している様は暴れ牛か暴走機関車の様だ

 

「お~っと、これは権現坂道場の跡取り、権現坂昇君ではありませんか。

 さすが遊矢君、御顔が広いようで・・・」

 

 権現坂の事を知っているということは、俺のことはいくらかリサーチ済みか

 さすがレオ・コーポレーション

 

「たしかに、現役チャンピオンであるストロング石島と、ジュニアユースクラスである遊矢君では実力に差があることではありましょう。

 ですが、ワタクシは観客をあっ!と言わせるような、実にいいデュエルが出来ると確信しているのであります。」

 

 確信ねぇ・・・と言うことはあれの事も知っていそうだな、このニコちゃん。

 

「まぁまぁ、落ち着けって権現坂

 ニコちゃんもこう言ってくれていることだしさ

 それに俺が『当て馬』ぐらいにしかならないと思ってんの?」

 

「うっ、それは・・・」

 

「それに受けるか受けないかは遊矢君の気持ち次第、どうしますか遊矢君?」

 

 俺の言葉で少しは頭が冷えた様子の権現坂と煽り全開のニコ・スマイリー

 そして心配そうに見つめてくる柊親子

 まぁ、受ける気ではあるが・・・

 

「で、報酬は?」

 

「はい、もちろんご用意させていただいております。

 ご承諾くださいましたら、お礼としてレオ・コーポレーション社製の最新式リアルソリッドビジョンシステムをお納めさせていただきます。」

 

「「MA☆JI☆SU☆KA☆!!」」

 

 目に星入れて興奮する柊親子

 まぁ、型落ちの奴を修理して使っているんだから仕方がない

 この前は柚子が操作パネルぶっ叩いて壊したから、修理するのに苦労したし・・・

 渡りに船とはこのことだな

 

「わかった、了承しよう。

 ついでにうちの型落ち品を買い取ってくれると助かるんだが?」

 

「おぉ~なかなかに商売上手ですね、遊矢君

 わかりました、手配しましょう。」

 

 即決し握手を求めてくるニコちゃん

 まぁ、『いくらで』とは言ってないし強制もしていないから当たり前か

 数万にもなれば十分だろう

 商談成立の合図としてこちらも握手に応じる

 

「ところで別に勝ちそうになったら、わざと負けろとは言わないよね、ニコちゃん?」

 

「えぇ、もちろんでございます。

 チャンピオンはそういうのはお嫌いですからね、狂った道化師(マッド・ピエロ)殿」


――ワアアアアァァァァァァァァァ!!

 沸き立つ観衆、跳び立つバルーン、踊るチアガール、応援のためのフラッグや幟まで出ている

 会場である舞網スタジアムは超満員、そしてこれから行われるのは

 

「いよいよ、本日のメインイベントのお時間がやってまいりました。

 チャンピオンのストロング石島に挑戦いたしますのは~

 あの伝説のデュエルスター榊遊勝の一人息子、榊遊矢君であります!」

 

 ニコ・スマイリーの司会で今か今かとボルテージを上げる観衆

 人々が望むのはチャンピオンの新たな栄光の1ページか、卑怯者の息子の粛清か

 

「このスペシャルマッチはアクションデュエルの公式ルールに則って行われます。

 フィールド魔法 辺境の牙王城を発動!」

 

 ニコ・スマイリーの手にカードが現れ光が漏れる

 無機質で殺風景だったスタジアムに一瞬にして、鬱蒼とした森とそれに囲まれた岩の城が出現した

 

「見てください、この本物と見まごうばかりのリアルな質感!

 これがLDSの誇るソリッドビジョンシステムです!!」

 

―コツッ!

 歓声や司会、BGMが鳴り響く中でも存在感のある足音

 発生元は森の中に立つ城の天辺

 そこには3本の角のような紫色の髪をし目に赤いペイントをした、蛮族の王と呼ぶにふさわしい大男が立っていた

 

「おぉっと!!あの城の上に現れたのはー!!

 この3年間、アクションデュエルの頂点に君臨し続ける

 最!強!王者!!ストロング!石島だ!!」

 

「ウオオオォォォォォォ!!」

 

―ウオオォォォォォ!!

 ニコの紹介と共に力強い雄叫びを上げるチャンピオン ストロング石島

 観客たちもそれに合わせて歓喜の雄叫びを吠える

 が、そんな中でなかなか乗り切れていない集団もいた

 

「す、すごい盛り上がりね、お父さん・・・」

 

「そ、そうだな、柚子・・・」

 

「うむ、さすがは現役チャンピオンと言ったところだな。」

 

 柊親子は石島ファンのノリに気押され、権現坂はいつもの調子である

 

「で、遊矢の調子はどうなんだ?」

 

「それがね

 ちょっと準備してくるって、すぐに控室出ていっちゃったから、よく分からないの」

 

「準備とはなんだ?」

 

「さぁ~?私に聞かれても分からないわよ」

 

「さぁ!その最強王者に挑むのは若きチャレンジャー!榊!遊矢ー!!」

 

「おっ!やっと遊矢の登場か・・・って、あれ?」

 

 対戦者が昇ってくるはずの階段、修造がそこに目を向けたが誰の影もなかった

 

「ゆ、遊矢君!どうぞ!!」

 

 ニコが名前を高らかに宣言するが遊矢の姿はどこにも見当たらない

 会場の誰もが3年前と同じか、逃げたのか、やっぱり親子そろって卑怯者だと罵りはじめ

 それが柚子の癇に障り、罵る者に何処からか出したハリセンで殴りかかろうとするが

 

『おいおい、カメラさ~ん、何処映してんの~?』

 

「「「遊矢!?」」」

 

 突如として会場のスピーカーから発せられる少年の声

 

『卑怯者だとか何だとか勝手に言っちゃってくれてさ~

 あの親父と俺とは何にも関係ないよ。』

 

「この声は・・・まさか!?」

 

 スピーカーから流れる声に城の天守で堂々と仁王立ちしていた石島に動揺が走る

 

『お~い、まだ見つけらんないの?

 こっちだってば!こっち』

 

 会場に備え付けられたカメラが声の主の姿を捉えようとあちこち映し出す

 観客たちも何処だ何処だと、会場を見渡し始める

 

「さっさと出て来い!榊遊勝の息子!!チャンピオンに対する礼儀も知らんのか!!」

 

 動揺を隠そうと石島は怒りの声を上げて、何処ともしれない声の主にぶつける。

 

『おや、チャンピオンもお分かりでない?仕方がないなぁ~』

 

 その返答があった後、石島は背後に異様な気配を感じその場から飛びのく

 そこに居たのは口が三日月の様に裂けた白い仮面を付けた黒いピエロ

 

「貴方の後ろだよ」

 

「やっぱり、てめぇか!!狂った道化師(マッド・ピエロ)!!」

 

 怒りが混じる声で黒いピエロの名を叫ぶ石島

 その名を聞いた観客たちにも動揺が走る

 

狂った道化師(マッド・ピエロ)だって!?」

 

「あの、大会荒らしの・・・」

 

「なんであいつが居るんだ?」

 

「ななな、なんとー!

 あれは7年もの間、各地の大会に出没し、無敗を誇る謎のデュエリスト!!

 狂った道化師(マッド・ピエロ)だー!!」

 

「おや、俺ってば有名人?チャンピオンに名前を憶えてもらっているなんて光栄だなぁ~」

 

 茶化すようなセリフを吐く、狂った道化師(マッドピエロ)に石島は怒りを表す

 

「て、てぇめぇ!忘れたとは言わせんぞ!5年前の屈辱を!!」

 

「5年前?あぁ、あの大会に居た大男さんか・・・

 トラップモンスターで嵌め殺しにしたんだったかな?

 いやぁ~立派になったねぇ~」

 

「そうだ!息子を引っ張り出せば榊遊勝が出てくると思ったが、まさかお前が出てくるとはな!!

 ディスクを構えろピエロ野郎!!あのときの借りを利子をつけて返してやるぜ!!」

 

「おやおや、もしかしてニコちゃんってば、チャンピオンにも伝えてないのかな?

 人が悪いねぇ~」

 

「なに?」

 

 ディスクを起動させ臨戦態勢に入る石島だが狂った道化師(マッド・ピエロ)の言葉でニコをにらむ。

 

「あ、いや、その」

 

「まっ、いっか!では盛大にネタばらしと行きますかね!!」

 

 狂った道化師の黒い衣装と白い仮面が取り払われ

 白を基調とした舞網中学の制服を着崩した赤と緑の髪を持つ少年が姿を現す

 

「どうも~狂った道化師(マッド・ピエロ)こと、榊 遊矢

 チャンピオンの招待にはせ参じました。」

 

 仰々しく見事な礼をする遊矢

 突如明かされた長年謎に包まれてきた大会荒らしの正体に石島も観客も

 そして、柚子たちも動揺を隠せない

 

「お前が・・・榊遊勝の倅?

 あの、狂った道化師(マッド・ピエロ)がこんなガキだと・・・

 だったら、俺はこんな子供に負けたのか・・・?」

 

 動揺を隠しきれない石島、これでは前に進まないなと思い喝を入れる

 

「子供だからって馬鹿にしないでくれるかな?

 デュエルの世界で年齢なんて大した差にならないはずだよ

 どんな相手でも最後は勝ったか負けたかでしょ?」

 

「くははははは!!そうだな!だったら、今度は勝たしてもらう!

 5年前の俺と同じだと思うと痛い目を見るぞ!!」

 

「そうそう、ノリが悪いと倒し甲斐がないからね、っと!」

 

「おぉっと!いきなり意外な展開になりましたがとにかく役者はそろいました。

 さぁ、双方手札を5枚ご用意を!

 戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が、モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い、フィールド内を駆け巡る!

 見よ、これぞデュエルの最強進化系!アクションー!!」

 

 2人がデュエルディスクを展開したのを見計らい

 ニコがオーバーなアクションで開始の宣言をする

 世界を巻き込む、始まりの戦いの合図を

 

 

 

「もう、まったく遊矢ったら・・・そんなに前からそんなことをしていたのね。」

 

「うむ、俺も初耳だったぞ。」

 

「いや~俺も知らなかったんだよ~

 遊矢がそんなことをしているなんてさ

 それに情け容赦無用で大会を荒らしまくるって噂の賞金稼ぎ、狂った道化師(マッドピエロ)なんてさ」

 

 正体をばらした後、柚子と権現坂は修造に詰め寄っていた

 もっとも修造が答えることが出来たのはそんな、当たり障りのない事だったが

 そして渦中の人である遊矢もニコがオーバーアクションで司会をしている中

 別のことを考えていた

 

(このデュエルがペンデュラム召喚が初めて世に出るデュエル・・・

 つまりペンデュラムさえしなければ、ややこしい事態を加速させずに済む。)

 

「それにこんな大事なデュエルなのに・・・

 大事なカードをデッキに入れ忘れるなんて、

 枚数制限でエラーが出たらみんなに笑われちゃうわ。」

 

「ん?それはどういう事だ、柚子?」

 

「それがね。」

 

(そして、今回用意したデッキはペンデュラムモンスターになりそうなカードを)

 

「星読みの魔術師と時読みの魔術師を」

 

(抜いてきた!!)

 

「入れ忘れていたから、戻しておいたわ」

 

 舞台の流れは1人の意志程度じゃ変えられない

 それを知らない役者は高らかに開演の幕を上げる

 

「「『決闘(デュエル)』!!」」

 




いつの間にかチャンピオンに因縁を作ってしまった俺
ただの小遣い稼ぎの活動だったのに、なぜこうなった?
げっ!?何で抜いたはずのこいつらが!?
まぁ、来てしまったものは仕方がない
さぁ!ショータイムだ!
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『開演告げる鐘 ペンデュラム召喚』 


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開演告げる鐘 ペンデュラム召喚

本作のアクションデュエルのルール
・基本マスタールール3と同じ
・アクションマジックは共通効果として
(1) このカードが手札にあるとき相手ターン中でも発動できる。
(2) アクションカードは手札に1枚しか加えられない。
・アクショントラップは共通効果として
(1) このカードが手札にあるとき発動しなければならない。
(2) アクションカードは手札に1枚しか加えられない。
上記の効果を持っています。
・アクションカードの位置は基本ランダムでスポーンします。(オリジナル)
・フィールド魔法ゾーンはアクションフィールドが置かれている状態の為、互いに使用不可。



「「『決闘(デュエル)』!!」」

 

「先攻後攻はチャレンジャー、お前が決めな。」

 

「では、遠慮なく先攻で行かせてもらおう、っか!!」

 

 開始と共に遊矢は走り出す

 石島の背後にあったアクションカードを回収し、すぐさま備え付けられていた下降用のロープで逃走する

 

「くっ!?てぇめぇ!逃げる気か!!」

 

「そんな狭いところで戦ってられないだけさ

 俺は速攻魔法、手札断殺を発動

 互いのプレイヤーは手札を2枚選んで捨て、その後2枚ドローする。」

 

「おおっと、遊矢君

 ここでお得意のアクションカードを奪取してからの手札交換だ!

 先攻のドローできないデメリットもこれで帳消しだ!」

 

「さらに俺は、EM(エンタメイト)セカンドンキーを召喚」

 

セカンドンキー「ブルルッ!」

       ATK1000

 

 滑車で移動する遊矢の下に並走するように現れる、ハットと蝶ネクタイを付けた茶色いロバ

 遊矢はそれを確認するとロープから飛び下りてセカンドンキーの背中へ着地する

 

EM(エンタメイト)セカンドンキーの効果発動

 このモンスターが召喚、特殊召喚に成功した時、デッキからセカンドンキー以外のEM(エンタメイト)モンスターを墓地に送ることが出来る。

 俺はデッキからEM(エンタメイト)ジンライノを墓地へ送り、カードを1枚伏せ、ターンエンド

 さぁ!チャンピオン様のお手並み拝見と行きましょうか!!」

 

「ほざけ!すぐにとっ捕まえてやる!!

 俺のターン、ドロー!

 俺は魔法カード、蛮族の狂宴LV(レベル)5を発動!

 墓地か手札からレベル5の戦士族モンスターを効果を無効にして2体まで特殊召喚する。

 来い、バーバリアン1号!2号!」

 

 バーバリアン1号 DEF1800

 バーバリアン2号 DEF1500

 

 現れる赤と緑の鬼の様なモンスター

 足場がない場所に出現したため飛ぶ術のない彼らは、重力に従い落下するが彼らに恐怖はない

 彼らは自身の主が王を呼ぶための贄として呼ばれたのだから

 主の勝利を信じてこの身を投げだす

 

「このターン、こいつらは攻撃できねぇが、俺はこいつらをリリースしてアドバンス召喚」

 

 2人の蛮族の魂が光となり森に降り注ぐと、

 バキバキと木を折り砕く音と地響きを立てながら巨大な影が歩いてくる

 

「密林の奥地から、巨木をなぎ倒し現れるがいい。

 未開の王国に君臨する蛮族の王!バーバリアン・キング!!」

 

バーバリアン・キング「ウガアァァァ!!」

          ATK3000

 

 巨大な鉄製の棍棒を振るい鎧を身に纏った巨大な鬼、

 バーバリアン・キングの登場に観客が沸き立つ

 

「でたー!!いきなりチャンピオン石島のエースモンスターの登場だ!!」

 

―うおおおぉぉぉぉ!!

 

「親父には逃げられたが、お前は逃がさねぇ!

 さらに自分フィールド上に攻撃力2000以上のモンスターが居ることにより、

 手札のオーバーレイ・ブースターを守備表示で特殊召喚」

 

オーバーレイ・ブースター「ハッ!」

            DEF0

 

「さらにバーバリアン・キングの効果発動

 1ターンに1度、自身以外の自分フィールド上の戦士族モンスターを任意の数、リリースすることによりバーバリアン・キングの攻撃回数をリリースしたモンスター分増やす。

 俺はオーバーレイ・ブースターをリリース、そしてバトルだ!

 行け、バーバリアン・キング!セカンドンキーに攻撃!!」

 

バーバリアン・キング「ウオオォォォ!!」

 

 近未来的な鎧を身に纏った赤い戦士が現れるが、すぐに蛮族の王の糧となり消える

 そして主の命に応え蛮族の王が小さなロバをその棍棒で叩き潰そうとするが

 

「だから逃げているつもりはないって

 トラップ発動、キャトルミューティレーション

 自分フィールド上に存在する獣族モンスター1体を手札に戻し、同レベルの獣族モンスターを手札から特殊召喚する。

 来い、EM(エンタメイト)ロングフォーン・ブル!」

 

ロングフォーン・ブル「ブモッ!!」

          DEF1200

 

 セカンドンキーから降り、

 手札へと戻した遊矢は代わりに角が電話の様になっている2本足の青い水牛を呼び出し、

 その水牛ロングフォーン・ブルは迫る棍棒を華麗な技で捌いた

 

「ロングフォーン・ブルの特殊召喚成功により、

 デッキからEM(エンタメイト)モンスター、ヘルプリンセスを手札に加える。」

 

「ちっ!だったらその仔牛に攻撃だ!やれ、バーバリアン・キング!!」

 

「そうはいかない。

 墓地のジンライノの効果発動

 自分フィールド上のEM(エンタメイト)カードが戦闘および効果で破壊される場合、代わりにこのカードを除外できる。」

 

ロングフォーン・ブル「モオオオォォ!!」

 

 再び振り下ろされる蛮族の棍棒

 だが小さな水牛は仲間からもらった雷の力で筋肉を隆起させ棍棒を弾き飛ばす

 

「くっ!?だがバーバリアン・キングはこのターン、もう1度攻撃できる」

 

 たたらを踏み、倒れそうになるバーバリアン・キングだが踏みとどまり、その勢いのまま棍棒をロングフォーン・ブルに振り下ろす

 雷の力も消えたロングフォーン・ブルは2度目の攻撃には耐えきれず破壊された

 

ロングフォーン・ブル「ブモオオォォォ!」

 

「決まった!攻撃力3000のバーバリアン・キングがロングフォーン・ブルを粉砕!!

 ですが守備表示だったため、遊矢君へのダメージはゼロ!!この窮地を脱しましたー!!」

 

―すっげー!さすが狂った道化師(マッドピエロ)

―あのチャンピオンの攻撃を防ぎやがったぜ?

―俺だったら何もできずワンキルだよ

 

 始まる前は侮蔑し罵っていた観客たちも、2人の攻防にいつしか見入っていた

 そのことを遊矢を良く知る者たちはうれしく思うと同時に遊矢の知らない一面に驚かされる

 

「流石だな遊矢!

 それでこそ、この男、権現坂が倒すべき相手!」

 

「すっごい、トラップ1枚で凌いじゃった。」

 

「あぁ、それに攻撃を防いだだけじゃなくて手札補充まで・・・」

 

 困惑でどよめいていた会場が驚きと戦いの熱で静まり返るが

 負け越している男は驚く暇もなかった。

 

「くっ、仕留められなかったか!俺はカードを1枚伏せターンエンド。」

 

「俺のターン、ドロー

 さぁ~て、前座はこれくらいにして役者を揃えてショーの本番と行きますか。

 俺はEM(エンタメイト)フレンドンキーを召喚、

 さらにEM(エンタメイト)モンスターの召喚に成功したことにより、手札のEM(エンタメイト)ヘルプリンセスを特殊召喚、

 さらにさらにフレンドンキーの効果で墓地のレベル4以下のEM(エンタメイト)モンスター、ロングフォーン・ブルを特殊召喚」

 

 森の奥から登場する灰色のロバに乗った青い水牛と紫の服の少女、

 紫の少女ヘルプリンセスはロングフォーン・ブルの角にある電話でどこかと話し中の様だ

 

フレンドンキー「フンッ!」

       ATK1600

 

ヘルプリンセス「ハァ~イ♡」

       DEF1200

 

ロングフォーン・ブル「ブモ」

          DEF1200

 

「ロングフォーン・ブルの効果でデッキから2枚目のフレンドンキーを加え

 さらにもう一つ、速攻魔法、超カバーカーニバルを発動し

 デッキからEM(エンタメイト)ディスカバー・ヒッポを特殊召喚!」

 

 同じように現れる灰色のロバ、

 その背にはピンク色のカバが乗っておりヘルプリンセスたちの居るあたりに着くと

 ピンクのカバ、ディスカバー・ヒッポは雑に落とされ

 2体目のフレンドンキーは遊矢の下へ走っていった

 

ディスカバー・ヒッポ「ヒポッ!?」

          DEF800

 

「おおっと!これはすごい!!遊矢君、一気に4体ものモンスターを召喚だ!!」

 

「ふん、だが雑魚どもをいくら呼んだところで俺のバーバリアン・キングには勝てん!」

 

「おやおや、LDSのイメージキャラクターとは思えない発言だ。

 問題!俺のモンスターのレベルは幾つと幾つ?」

 

「レベル?・・・まさか!?」

 

「来ますよ~これは!!」

 

「ふっ、俺はレベル3のディスカバー・ヒッポとフレンドンキーの2体とレベル4のロングフォーン・ブルとヘルプリンセスの2体でオーバーレイ!」

 

 4体のモンスターはそれぞれ光の球となり、

 地面に空いた宇宙空間のような穴の中に2つずつ吸い込まれていく

 

「2体のモンスターずつでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!

 現れろ、虚空の海を泳ぎし海竜、虚空海竜リヴァイエール!

 魔の世界の指揮者、交響魔人マエストローク!」

 

 現れるのは、宙を泳ぐライトグリーンの体色の海竜と小さな魔人の指揮者

 

リヴァイエール「グオオォォォ!!」

       ATK1800 ORU2

 

マエストローク「ふん!」

       ATK1800 ORU2

 

「エクシーズ召喚だと!?」

 

「なんとー!遊矢君が繰り出したのはエクシーズモンスターだ!

 それも2体、連続召喚ー!!LDSでも出来る人間は少ない高等技術を易々やってのけたー!!」

 

(これで高等技術ねぇ?)

「俺はリヴァイエールの効果発動

 オーバーレイユニットを1つ使い、除外されているレベル4以下のモンスターを特殊召喚する、俺はジンライノを特殊召喚」

 

 リヴァイエールが自身の周りを回っていた光を飲み込むと、時空の穴を開きその中から雷太鼓を背負った犀、EM(エンタメイト)ジンライノを連れて戻ってくる

 

リヴァイエール ORU2→1

 

ジンライノ「フゥー!!」

     DEF1800

 

「さらにマエストロークの効果発動、

 オーバーレイユニットを1つ使って相手の表側攻撃表示モンスターを裏側守備表示にする。」

 

マエストローク「はっ!」

       ORU2→1

 

 マエストロークの指揮棒に光が灯ると、マエストロークはそれを振るい軽快な音楽と共に音符がバーバリアン・キングを取り囲み、魔法陣を描き出す

 魔法陣に捕らわれた蛮族の王はカードに封じ込められてしまう

 

「なんだと!?」

 

「バーバリアン・キングの守備力は1100ポイントしかない。

 バトル、行け!マエストローク、セットモンスターに攻撃!」

 

 マエストロークは指揮棒をレイピアの様に構え突撃する

 カードから解き放たれるバーバリアン・キングだが防御姿勢が取れずにいた

 

「おぉっと!!このままではチャンピオン!

 エースを撃破された上にダイレクトアタックを受けてしまうぞ!」

 

「ちっ!?くそっ!!」

 

 石島は何かないかと自分の周囲を探す

 

(くそっ!あの野郎、最初のターンでこの辺のアクションカードを取って行きやがったな!!)

「うおおおぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 目当てのものが見つからない石島は一か八か牙城の天守から飛び降りる

 そしてマエストロークの剣がバーバリアン・キングの無防備な首を刈り取ろうとする、だが

 

「へぇ~さすがチャンピオン、存外しぶとい」

 

 マエストロークの剣はバーバリアン・キングがとっさに動かした棍棒によって受け止められていた

 そして、その後ろには石島が飛び降りた先にあった塔の上から、回収したアクションカードを発動させ、着地した姿があった

 

「へへ、俺はアクションマジック、奇跡を発動させてもらったぜ!

 これでバーバリアン・キングの戦闘破壊を無効にし、タメージを半減する。

 もっともバーバリアン・キングは守備表示だがな!」

 

「だったら、間髪入れずにリヴァイエールで攻撃だ!」

 

バーバリアン・キング「グワアアアァァァ!!」――バンッ!!

 

 無慈悲に放たれる風のブレスにより、

 2度目の奇跡が起こる暇もなく王者の象徴である蛮族の王は砕け散ってしまった

 

「バーバリアン・キング!!」

 

「俺はこれでターンエンドだ。」

 

「お、俺のターン・・・」

(くっ!震えている!この俺が!?次のカードがドローできねぇ

 何故だ、このデュエルは榊遊勝の倅を使って本人を引っ張り出し、あの日の屈辱を晴らし、この俺が名実ともに最強のチャンピオンだと証明するためのものだったはずなのに・・・

 あのガキが狂った道化師(マッドピエロ)で、なんで俺が追いつめられてんだ。

 セットカードを使えば、あいつのモンスターを減らすことは出来るが、次のターン防ぎ切れる気がしねぇ・・・)

 

 石島の心はバーバリアン・キングが倒されたことにより折れかけていた。

 遊矢の奇天烈な戦法に5年前の狂った道化師(マッドピエロ)から受けたトラウマともいえるものが重なってしまい、勝利へのヴィジョンが見えなくなってしまった。

 

「やっと、チャンピオンを動かしたと思ったら、即行で戦意喪失?がっかりだねぇ~」

 

「なんだと!!」

 

 リヴァイエールの背に乗った遊矢は地で蹲る石島を見下す

 

「手札もある、ライフもある、負けが確定したわけじゃない。

 それなのに未来を恐れてドローが出来なくなるなんて、チャンピオンどころかデュエリスト失格だねぇ~

 やっぱり、ただのチンピラにチャンピオンは荷が重かったのかな?」

 

「・・・・・・」

 

 石島は遊矢の煽りを受けても何も返せない、

 大敗の記憶は錘となって彼に圧し掛かっていた

 

――ガンバレー!!チャンピオンー!!

 

「!?」

 

 彼の耳に届く少年の声

 

――そうだ、負けるなー!ストロング石島―!!

――立ってー!チャンピオンー!!

――イーシジマ!!イーシジマ!!イーシジマ!!イーシジマ!!イーシジマ!!

 

 それを旗に次々に上がる石島への声援

 

「おっと!会場の皆さんからチャンピオンへの盛大な石島コール!!

 そうだ、立ってくれストロング石島!デュエルはまだ終わっちゃいないぞ!!」

 

「やれやれ、これじゃ俺、完全に悪役だな。

 まぁ、仕方がないか。

 さぁ、どうするチャンピオン?

 観客の皆さんの声援に応えて『俺』と戦うか、過去に蹲ってうちの『親父みたい』に応えないか?」

 

――!!

 

「このままじゃ、貴方は『卑怯者』以下の負け犬だ」

 

 石島の中で何かがこみ上げて来る、それは罵倒による怒りではなく

 

――ウゥ・・・ウオオオオオォォォォォォォォォォォ!!

 会場を揺らすかのような雄叫び

 石島は叫ぶ、過去を振り払うために、過去(榊遊勝)など忘れて目の前の(榊遊矢)と戦うために

 自身の中に芽生えた闘争心を叫び出す

 

「ドロオオォォッォ!!」

 

 力強い石島のドロー、そして石島は走り出す。勝利へのピースを揃えるために

 

「リヴァイエール!」

 

 その行動を見て遊矢もリヴァイエールで駆ける、次の石島の行動が予測できた為に

 

「嘗めるなよ!小僧!!俺は勝負の前に逃げ出すような卑怯モンじゃねぇ!!

 スタンバイフェイズに俺も使わせてもらうぜ!

 速攻魔法、手札断殺をな!!

 互いのプレイヤーは手札を2枚選んで捨て、デッキから2枚ドローする!オラアァ!!」

 

(やっぱりか、っと)

 

「これは!両名とも同時にアクションカードをゲット!!

 そして、そのまま手札断殺の効果で捨て、ドローした!!」

 

「さらにメインフェイズ1開始時に魔法カード、強欲で金満な壺を発動!

 エクストラデッキから裏側表示のカードを3枚または6枚、裏側表示で除外することで3枚につき1枚ドローする。

 ただし、このカードの発動後、このターンの終了時まで俺はカード効果でドローできねぇ。

 俺は6枚除外し2枚ドロー!!」

 

 主人の復活に応え、彼と共に戦うカードたちの全てが彼の勝利のために力を貸す

 

「さらに俺は魔法カード、増援発動

 デッキからレベル4以下の戦士族モンスター、切れぎみ隊長を手札に加え召喚」

 

 背に矢を受け満身創痍ながらも、鋭い眼光を携えた壮年の戦士が現れ遊矢を睨む

 

 切れぎみ隊長 ATK400

 

「切れぎみ隊長の効果、このモンスターが召喚された時、

 墓地のレベル4以下のモンスターを1体、効果を無効にして守備表示で特殊召喚出来る。

 俺はマグネッツ1号を特殊召喚」

 

マグネッツ1号「ふん」

       DEF500

 

 隊長の隣に立ち並ぶ青い躰に緑の槍を携えた戦士

 その力は貧弱だが彼は新たな仲間を呼ぶため自らのマグネットパワーを使う

 

「魔法カード、ダウン・ビート!

 マグネッツ1号をリリースし、デッキからマグネッツ1号と同じ種族・属性を持ち、レベルが1つ低いモンスターを1体特殊召喚

 俺はヒーロー・キッズを特殊召喚し、さらにヒーロー・キッズが特殊召喚されたことにより、自身の効果でデッキからヒーロー・キッズを2体特殊召喚だ!」

 

 マグネットパワーが宇宙服のようなスーツを身に纏ったヒーローの卵たちを呼び寄せる

 

 ヒーロー・キッズ DEF600

 ヒーロー・キッズ DEF600

 ヒーロー・キッズ DEF600

 

「まだだ!魔法カード、死者蘇生!

 蘇れ、蛮族の王!バーバリアン・キング!!」

 

バーバリアン・キング「グオオオオォォォォォォ!!」

          ATK3000

 

 大地を割り、雄叫びを上げる蛮族の王

 王者のエースの復活に会場の人々も雄叫びを上げ復活を祝う

 

「戻ってきたー!!

 我らがチャンピオン石島のエース、バーバリアン・キング!!

 王者、ストロング石島!此処に完全復活だー!!」

 

――うおおおぉぉぉぉぉぉ!!

 

「いくぞ!

 俺はバーバリアン・キングの効果を発動し、キング以外のモンスターすべてをリリース

 バトルだ!バーバリアン・キングで虚空海竜リヴァイエールに攻撃!

 これで終わりだ!狂った道化師(マッドピエロ)!いや、榊遊矢ー!!」

 

 仲間の意志を背負い蛮族の王は動き出す、主人の勝利の為に

 

(これがショーならチャンピオンの大逆転でカーテンコールだけど)

「生憎とヒーローショーは終わりだよ!ここからは俺の大脱出ショーだ!」

 

「ほざけ!戦士族モンスター、バーバリアン・キングを対象に永続トラップ、バーバリアン・レイジ発動!

 対象モンスターの攻撃力は1000ポイント上がり、対象モンスターが戦闘で破壊したモンスターは墓地に送られず手札に戻る。」

 

バーバリアン・キング ATK3000→4000

 

「攻撃力4000の5回連続攻撃!榊遊矢ー大ピンチー!!

 2体のエクシーズモンスターを攻撃されれば敗北してしまうぞー!!」

 

「そうはならないんだな~これが・・・すまないな、リヴァイエール・・・

 俺は墓地のEM(エンタメイト)ユニの効果発動、

 このカードとユニ以外のEM(エンタメイト)、ヘルプリンセスを除外してこのターンの戦闘ダメージを1度だけ0にする。」

 

 巨大な棍棒がリヴァイエールに叩きつけられようとするが、遊矢は仲間に詫びを入れて飛び降りる。

 リヴァイエールは最後の務めと自ら棍棒に向かって突進し、遊矢はリヴァイエールが自身の楯になるのを見届ける

 

 すると、森の中から蔦を使って1本角が生えたポニーテールの少女

 EM(エンタメイト)ユニがターザンジャンプで現れ、落下する遊矢をキャッチし、EM(エンタメイト)ユニは遊矢を抱えたままヘルプリンセスが用意していたトランポリンの上に落下

 衝撃を消すと見事に着地し、2人は仕事を終えると遊矢に向かってウインクをして退場した

 

「だったら、今度は交響魔人マエストロークを攻撃」

 

「マエストロークはオーバーレイユニットを身代りに魔人エクシーズモンスターを破壊から守る効果があるけど・・・今回は使わない!

 代わりに手札のEM(エンタメイト)バリアバルーンバクの効果発動

 自分のモンスターが相手モンスターと戦闘を行うダメージ計算時、このカードを墓地に送り互いの戦闘ダメージを0にする。」

 

 バーバリアン・キングの棍棒がマエストロークへ振り下ろされ、その衝撃が遊矢を襲おうとするが

 遊矢の掲げたカードから、紫色の獏の姿をした風船が現れ、巨大に膨らみながら衝撃を受け切り、紙ふぶきを撒き散らしながら軽い音を立て破裂した

 

「まだ、バーバリアン・キングの攻撃は3回残ってるぜ!EM(エンタメイト)ジンライノに攻撃!」

 

 紙ふぶきを鬱陶しそうにしながら棍棒を振り払い、ジンライノを遊矢に向かって弾き飛ばす

 ジンライノは途中でカードに変化し遊矢の手に戻ってきた

 

「これでお前を守るモンスターはいねぇ!

 終わりだ、バーバリアン・キングでダイレクトアタック!!」

 

「いや、いるさ!

 墓地のバリアバルーンバクの第2の効果発動、相手のダイレクトアタック宣言時

 1ターンに1度だけ手札のEM(エンタメイト)モンスターを捨てて守備表示で特殊召喚出来る。

 戻ってこい!EM(エンタメイト)バリアバルーンバク!」

 

 バリアバルーンバク DEF2000

 

「だったらそいつに攻撃だ!」

 

 再び現れる紫の風船、バーバリアン・キングが棍棒で叩き割ろうとするが

 突如、雷を纏った犀、ジンライノが現れ棍棒を弾き飛ばす

 

「バリアバルーンバクのコストで捨てたジンライノの効果で戦闘破壊を無効に

 戦闘破壊されなきゃ、バーバリアン・レイジのバウンス効果も発揮しない。

 さぁ、どうする?」

 

(くッ!?奴の手札にはまだ、EM(エンタメイト)モンスターが残っている。

 バーバリアン・レイジの効果でバリアバルーンバクを戻してしまうと効果をまた使われる、だが・・・)

「俺は攻撃するぜ!バーバリアン・キングでバリアバルーンバクに攻撃!!」

 

 バーバリアン・キングがバリアバルーンバクを叩きつけると

 バリアバルーンバクは萎みながら遊矢の手札に戻って行く

 

「あの手この手で防ぎやがって、さすが卑怯モンの息子ってとこかぁ?

 カードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

「褒め言葉として受け取っておくよ、俺のターン、ドロー」

(さすがチャンピオン、楽しませてくれるな・・・やっぱりデュエルはこうでなくちゃ

 それにしても、ヒーロー・キッズにオーバーレイ・ブースター、それに切れぎみ隊長か・・・)

 

 遊矢は原作との差異を考えていた

 前の2枚はいい

 主役格が使っていたカードとはいえ、物語の根幹に関わるような三幻神やナンバーズの様なカードではないのだ

 この世界に有っても不思議じゃない・・・問題は最後の1枚

 

(たしかあのカードは第10期のカードだったはず・・・

 まぁ、漫画版やこの時点では登場していないカードを使っている俺が言えた話じゃないけど

 おっと、また考え込むところだった・・・

 さて、地味にさっき逃げ回った時にアクションカードを入手したけど、手札が微妙だな・・・)

「俺は、2体目のフレンドンキーを召喚して効果でロングフォーン・ブルを特殊召喚。」

 

 本日2回目の登場の目つきの悪いロバと3回目の水牛

 ロングフォーン・ブルは少し疲れ気味だがまだやる気は十分である

 

 フレンドンキー ATK1600

 ロングフォーン・ブル DEF1200

 

「ロングフォーン・ブルの効果でユニを手札に加える」

(あのセットカードは、チャンピオンのこれまでの使用カードからして高確率でバーバリアン・ハウリング

 

 戦士族モンスターが戦闘、または効果の対象になった時、相手モンスター1体をバウンスしてその元々の攻撃力分のダメージを与えるカード。

 

 チャンピオンの手札は現在0、攻撃のチャンスだけど、ハウリングと合わせて考えると迂闊に手出しは出来ないか・・・

 まぁ、まずは手札交換と行くか。)

「魔法カード、手札抹殺を発動

 互いのプレイヤーは手札を全て墓地に送り、捨てた枚数分ドローする。

 俺はアクションカードも含めた5枚のカードを捨てる。」

 

「まだドロー系カードを仕込んでやがったか・・・

 アクションカードを手に入れておくんだったぜ。」

 

「それはお気の毒に、俺は5枚のカードをドローぉ!?」

 

 飄々と皮肉る遊矢だが、ドローしたカードを見て素っ頓狂な声を上げる

 なぜならそこに含まれていたのは、このデュエル開始前に楽屋でデッキから外したカードだったからだ

 それも『彼』にとって見慣れた物であり、遊矢としては初めて見る

 下半分が魔法カードの様に緑色となったモノへと変化していた

 

(星読みと時読み!?

 どうしてここに!?自力で投入を!?ってネタに走っている場合じゃない!!

 おまけにオッ素まで、オッPに変わってるー!?他のカードは!?)

 

 遊矢は慌ててディスクを確認する

 そこには丁度、分りやすい差異が判るカードが存在していたからだ

 遊矢はそのカード、ロングフォーン・ブルのテキストを確認するが、そこにはそれまで使っていたものにはなかった『ペンデュラムモンスター以外の』という制約が1文追加されていた

 

(マジかよ・・・)

 

 突如始まった遊矢の不審な動きに、他の観客は今までのデュエルからまた何か始める気かと期待していたが、彼を良く知る者たちからは遊矢が焦っていることは丸わかりだった

 

「遊矢のやつ・・・・何をしているのだ?」

 

「なんか、トラブったのかなぁ?もぉのすごく手札が悪くなったとか?」

 

「いや、修造殿、その考えの線は薄いだろう。

 遊矢のデッキはどんな手札が来ても、なんだかんだ動けるように調整されているはずだ。」

 

「う~ん、なんだかD―パットのルール確認画面を開いてるみたいね?」

 

「ホントだ、でも遊矢ってルールにだいぶ詳しい筈だぞ?俺よりは・・・」

 

「いや、お父さん、それ、塾の講師としてシャレになってないわよ・・・」

 

 元凶がコントをしている中、遊矢はどうにかいくつかの確認事項を確かめ終えていた

 

(よし!ルールについては何か、項目追加されていたし

 後はあいつに丸投げすれば、メガネマフラーがどうにかしてくれるはず・・・)

 

「どうした、榊遊矢?

 ルールの穴を突くようなプレーを散々しておいて、今更確認など・・・

 俺をおちょくっているのか!」

 

(さすがに不審に思われたか・・・それっぽいことで誤魔化そう。)

「いや、ショーの前の点検は大事なもんでしょ?」

 

「ショーだと?」

 

「そう、俺が貴方を倒す。世紀の大スペクタクルショーさ!

 まずは下準備、魔法カード、ミニマムガッツ発動!

 自分フィールド上のモンスター1体をリリースし、相手の表側表示モンスターの攻撃力を0にする。

 俺は、ロングフォーン・ブルをリリースし、バーバリアン・キングの攻撃力を0にする。」

 

ロングフォーン・ブル「ブモオオオォォォ!!」

 

「ハっ!バーバリアン・キングをどうかしてくるってのは分ってんだよ!

 トラップ発動、バーバリアン・ハウリング!

 戦士族モンスターが攻撃、効果の対象となった時、相手モンスター1体を手札に戻し、その元々の攻撃力分のダメージを与える!

 フレンドンキーには消えてもらうぜ!」

 

バーバリアン・キング「グオオオオオォォォォォォォォォ!!」

          ATK4000→0

 

 ロングフォーン・ブルが全力でバーバリアン・キングの脛に体当たりを慣行する

 バーバリアン・キングの鎧をも破壊しバーバリアン・キングはその痛みで蹲るが、第2陣とばかりに突撃姿勢を取っていたフレンドンキーに向かって、怒りの叫びを上げフレンドンキーはその声量に吹き飛ばされてしまう

 その衝撃は遊矢まで脅かそうとするが、青い雨合羽が遊矢を守り代わりに吹き飛ばされていた

 

EM(エンタメイト)レインゴートの効果

 俺に効果ダメージを与える効果を持つカードが発動した時、手札のこのカードを墓地に送ることでそのカードで発生するダメージを0にする」

 

「ちっ!これも防ぎやがったか・・・

 だが、これでお前のモンスターは全部消えた!

 バーバリアン・キングの攻撃力は0になっちまったが、そのカードの効果はエンドフェイズまでだ!

 役者がいなけりゃ、ショーなんて出来ないだろ!!」

 

「あれ~俺はさっき下準備って言ったんだけどな~?

 残念、ショーの本番は此処からなんだよね!」

 

「なんだと?」

 

「さぁ、ショータイムだ!

 俺はスケール8の時読みの魔術師とスケール1の星読みの魔術師をペンデュラムゾーンにセッティング!」

 

「なっ!?モンスターを直接魔法・罠ゾーンに置くだと!!」

 

 蒼天の空に伸びる2本の光の柱、

 その中に白き星を司る魔術師と黒き時を司る魔術師が浮かんでいく

 蒼天の空にいつしか巨大な魔法陣と振り子の様な物が現れ、2人の魔術師の間を静かに大きく揺れ動く

 

「な、何が起きている・・・!?」

 

「魔法・罠ゾーンの左右両端に設置されている

 ペンデュラムゾーンにペンデュラムモンスターを設置することで、1ターンに1度、その設置されたペンデュラムモンスターに書かれたペンデュラムスケールの間のレベルのモンスターを手札またはエクストラデッキの表側表示のペンデュラムモンスターから可能な限り特殊召喚出来る。

 つまりこれで俺は手札のレベル2から7のモンスターを可能な限り特殊召喚可能となった!」

 

「な、なんだ!その召喚法は・・・?」

 

 融合、シンクロ、エクシーズ、近年台頭してきたこれらの召喚法とは全く異なる特殊な召喚法―

 ――それは邪悪なる龍によってもたらされた異界への扉

 

「揺れろペンデュラム、開演の鐘となれ!

 告げよ!新たなる歴史の1ページを!!『ペンデュラム召喚』!!」

 

 天空から流星のように光が降ってくる

 その光の中に居るのは機械的な鋼殻を持つ赤い地を駆けるドラゴン

 

「現れろ!2色の眼を持つ、新たなる竜!オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン!!」

 

オッドアイズP「ギュオオオオォォォォォォ!!」

       ATK2500

 

「へっ!同時召喚ったって、1体だけかよ!!」

 

「あぁ、1体で十分だからな。

 もう貴方のフィールドに伏せカードはなく、手札もなく、墓地で効果が発生するカードもない!

 オッドアイズの爆進はもう止められない!!

 バトルだ!オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンでバーバリアン・キングに攻撃!!」

 

 オッドアイズは駆ける、勝利へのロードを、だがそれを相手が黙ってさせるはずもなく

 

「いや!まだ、この俺が居るぜ!!アクションカード!はつ」

 

「おっと、説明してなかったな!

 ペンデュラムモンスターはペンデュラムゾーンで発動している時、魔法カードとして扱われ、

 さらにペンデュラムゾーンでセットされている時にのみ効果を発揮するペンデュラム効果を持つ!

 星読みの魔術師は自分のペンデュラムモンスターの戦闘時、相手はダメージステップ終了時まで魔法カードを、時読みの魔術師はトラップカードを、それぞれ発動できなくなる効果を持つ。」

 

「なんだと!?」

 

「言っただろ、止められないって!!くらえ!螺旋のストライクバースト!!」

 

 オッドアイズの赤黒い螺旋を描く熱線が蛮族の王の鎧を溶かしつくし、その身を消し飛ばしていく

 

「さらにオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンの効果

 このモンスターのモンスター同士での戦闘で発生する相手へのダメージは倍になる。

 さらにミニマム・ガッツの効果により、戦闘破壊されたバーバリアン・キングの元々の攻撃力分のダメージを与える。」

 

「合計ダメージ、8000だと!?」

 

「新たなる時代の幕開けにふさわしく、派手に散りな!!リアクション・フォース!!」

 

 赤黒い螺旋は蛮族の王の力を巻き込みそれを増幅

 肥大化したエネルギーは石島を盛大に吹き飛ばした

 

「ぐわああああああぁぁぁぁぁぁ!!」

LP4000→0

 

――静寂

 

 その決着がついたとき会場を包み込んだのは歓声でもなんでもなく静寂であった。

 

 ありえないものを見たからだ チャンピオンが年端も行かない少年に負けたからだ――

 

 初めて見るモノを見たからだ 新たな召喚法が世に知れ渡った瞬間に立ち会ったからだ――

 

 熱い戦いに心が躍ったからだ 誰もがまだこの戦いの終わりを告げたくなかったからだ――

 

「―――けっちゃーく!!」

 

 誰もが「ハッ」っとしたその一言で現実に引き戻された

 

「互いに先を譲らない激戦!

 チャンピオンを打倒し、新たなる召喚法と時代の幕を開いたのは

 狂った道化師(マッドピエロ)こと榊―!!遊矢―!!」

 

 ニコが告げたその名、ありえないものを見せてくれた、心躍る戦いを見せてくれた、

 デュエルに新しい風を吹き込んでくれた少年に群衆がもたらしたのは

 

――ワアアアアァァァァァァ!!

 

 盛大な喝采であった

 




やっちまった・・・
大観衆の前でペンデュラム召喚をしてしまった俺はその場を何とかごまかした
だが、これで厄介ごとの種は向こうからやってくることは明確
だったら、先手を打たせてもらう!
次回、遊戯王ARC-V Rーe:birth
『舞台裏で動く者たち』


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舞台裏で動く者たち

関係者以外誰も擁護しない榊遊勝と
無名の中学生に負けたのに熱狂的なファンがいるストロング石島
どこで差がついたのでしょうか?


「やっちまった・・・」

 

 舞網第二中学校の昼休みの屋上

 榊遊矢はストロング石島とのデュエルの後のことを思い返していた


「チャンピオン・・・」

 

 光あふれるスタジアムから暗い通路に入って行こうとするストロング石島に俺は呼びかける

 

「よせ!勝ったお前から言われるとむずがゆくて仕方ねぇ。で、なんだよ?」

 

 ストロング石島、彼には一つ言っておかなければならないことがある

 本編では2話以降の彼の姿は欠片もなく、

 マネージャーであるはずのニコ・スマイリーは遊矢のデュエルをプロデュースしていた

 彼について語ったのは権現坂の兄弟子ぐらいではないだろうか?

 まぁ、つまり彼は落ちぶれたのだろう

 

「じゃあ、石島さん・・・貴方にはこれだけは言っておこうと思いまして、

 すいませんでした、ごめんなさい。」

 

 そう謝罪しなければならない

 たとえあの頭のネジの吹き飛んでしまった

 覇王竜のたくらみの1つでしかなかったとしても、榊遊勝は俺の父親なのだから

 

「なぜ、謝る・・・」

 

「俺の父親がしでかしたこと、

 そして、貴方の知らないペンデュラム召喚を使って勝ってしまったこと・・・」

 

 この世界のデュエリストレベルは低い

 ここまでデュエルモンスターズが普及している世界でありながら

 ルールすらまともに分かっていないものも多いくらいだ

 まぁ、いわゆる コナミ語が難解な物もある為、俺も完璧に把握してはいないのだが、

 調整中のカードとかもあるし

 

 おまけにOCGと違い

 エクストラデッキを使用した召喚法はここ2年くらいにこの世界に普及し始めたばかりである

 つまり、カードプールそのものは9期まであるのだが、

 大半のプレイヤーは3・4期の融合なしというプレイスタイルである、だいたいが力技だ

 

「お前が勝った、それはどうしようもない事実だ。

 それを謝るなら相手にとっての侮辱に当たるぞ?」

 

「誰も知らない、出来たばかりのルールで勝つなんてフェアじゃないと思っただけです。」

 

「はっ、デュエル中はふざけたような態度を取っているくせに意外と真面目だな・・・

 道化師を名乗っていることだけはある。

 それと、お前の親父の事だが・・・」

 

 榊遊勝の事、これはやっぱり歯切れが悪い

 それはそうだろう

 一般的には逃げた榊遊勝の方が卑怯者として非難されているが、

 裏では彼に対するアタリの方が当時は強かった

 『空席に座ったお飾り』『賊』『賄賂疑惑』等々挙げればきりがない

 

 だがこの3年間、チャンピオンの座を守り通してきたのだ

 それもカードパワーとしては低い方の≪バーバリアン≫デッキで、純粋にすごいと思う

 彼の見た目や言動に反して誠実な性格やファンとの交流も積極的に行っているのも大きいだろう

 このスペシャルマッチの前にも抽選で当たったファンとの交流デュエルをしていたし

 

「あれは・・・この3年間、俺を縛り付けていた鎖だった!

 お前との5年前のデュエルも確かに気がかりだったが、

 純粋に俺が弱かっただけだ、悔いはねぇ。」

 

 気にはしていたのか

 苦紋様の土像とカース・オブ・スタチュー、サイバー・シャドー・ガードナー、宮廷のしきたり

 それと攻撃強要カードで嵌め殺ししたせいか、

 トラップコンボに対してトラウマがある様な印象をライブラリで受けたけど

 

「だが、榊遊勝と・・・

 あの世紀のデュエルスターと戦わずして、チャンピオンなんて名乗っていられなかった!

 空席に座っているだけという気持ちにさせられて!

 居心地が悪いってありゃしなかった!!」

 

 あぁ、やっぱり、彼の中でも『榊遊勝』と言う存在はスターなのか・・・

 卑怯モンとさんざん言っていたが、あれは憧れの裏返しの様な物か

 当の本人は『エラーカードを使ってデュエルを強制終了させる』

 という手段をとる、割と本当に卑怯者なのだが・・・

 

 あの日、榊遊勝は突然姿を消した

 漫画版の様に世界を巻き込んだ一大イリュージョンをしたわけじゃないだろう

 この世界消えてないし

 

 原作通りなら

 空間転移装置を勝手に使用して、目的地とは別の次元に行き、

 のうのうと暮らした後、本来の目的地にたどり着くも足を悪くして

 イケメン女子を松葉杖にしていることだろう

 

 列挙しているだけでどれだけ考えなしなんだ・・・

 せめて石島さんとデュエルしてから行ってくれ

 

「貴方は榊遊勝に勝っていますよ。」

 

「何?」

 

「だって、貴方は声援に応えて立ち上がったじゃないですか。」

 

「!!」

 

「榊遊勝は自分のファンの期待を裏切りました。

 それはスターとして、いや、エンターティナーとして失格です。

 そして、挑まれた決闘(デュエル)を放棄した。

 チャンピオンとしてもデュエリストとしても最低な行いをしたんです。

 

 だけど、貴方は声援に応えて立ち上がり、デュエリストとして俺と戦った。

 榊遊勝よりも貴方がチャンピオンとして相応しい姿を見せたんです。

 父さんが今どこで何をしているかなんて、分かりませんが

 相応しくない奴が座っている椅子なんて、蹴り倒してやった方がいいと俺は思いますよ。」

 

 石島さんは何だかぽかんとした顔をしている

 さっきまでの焦燥が嘘のようだ、いいことだが何か変なこと言ったか?

 

「お前・・・実の父親に対して随分、辛辣だな。」

 

 あぁ、そのことか

 

「当たり前じゃないですか、あの人がいなくなってから随分苦労したんですよ?

 学校じゃ、卑怯者の息子として虐められるし。

 自分で塾作ったくせに看板が居なくなったから潰れかけるし。

 講師として残っている人はルール把握してないし。

 

 まぁ、虐めてきた奴にはきっちり仕返ししたし、

 塾の方は俺が臨時講師することでなんとかなっていますがね。」

 

「ははっ、お前らしいっちゃ、お前らしいな

 と言うかその残っている講師は講師として大丈夫なのか?」

 

「駄目ですね」

 

――ハッ!クッシュン!!

 

 どこかでくしゃみが聞こえたような気がしたが、

 どうにか石島さんは軽口が出せる程度には持ち直したようだから気にしないことにしよう

 

「話がそれましたが、

 貴方はいない人をいつまでも追いかけるよりも、超えるようにするべきだと思いますよ?」

 

「ガキが良く言うぜ。

 でも、俺はお前に負けたんだ、これまでの様にはいかなくなるだろうな・・・」

 

 やっぱり自分の境遇が判っているな

 この街の住人は負けた者に対してはかなり辛辣だ、弱者にとことん冷たい

 おまけに派手な戦法を見せないとヤジが飛んで来るレベルなので、

 俺に負けたことで今後かなり苦労を掛けてしまうだろう

 予防策は張っておいたが、なにより・・・

 

「俺の悪名は割と知られているし、常勝無敗の人間なんてこの世に誰もいませんよ

 それに必死で応援してくれるファンを持つ貴方なら大丈夫。」

 

「!?」

 

「だいたい、デュエルは本来『勝っても負けても楽しいもの』でしょ?

 今日のスペシャルマッチ、お客さんは楽しんでくれたみたいだしよかったじゃないですか。

 貴方はどう思いますか、ストロング石島?」

 

 プロにとってデュエルはショーだ

 一番優先させることは観客を楽しませる事

 仕組まれた八百長でもストーリーがあれば観客は楽しんでくれるだろう

 

 だが、本気と本気のぶつかり合いの方が演者としては楽しい

 今回は、かつての王者の子供が今の王者に挑む前振りがあり、

 実は子供が王者に土をつけていたと分り、結果としてリベンジマッチになり、

 その中で逆転劇や新要素の発表が成された

 良くできたショーになったと思うよ、これは役者を集めたニコ・スマイリーの一人勝ちだな

 

「あぁ、そうだな・・・俺も楽しかった。」

 

 そう言い、石島さんは拳を付き出してくるので、俺もそれに応え、彼の拳に自分の拳を合わせる

 

「次は負けん」

 

「次も負けませんよ」

 

「ハハッ!このヤロウ

 だが、あの最後のペンデュラム召喚だったっけか?

 あれ、お前の想定外だったんじゃないか?」

 

 やっぱりばれていたか、試合中にルール確認画面開いていたら当然か。

 

「えぇ、そうですよ。

 本来あの3枚はデッキに入れていませんでした。

 どうも少し目を離した隙に混ぜられてしまったようで。」

 

「気をつけろよ・・・

 珍しいカードを狙ってくる奴は山ほどいるんだ。

 にしても、突然入れられたカードの割によくも・・・

 まぁ、アンだけ言えたもんだなぁ?ピエロ野郎」

 

 そう、あのデュエルが終了した時 

 ややこしい事態を避けるためLDSに全て擦り付けようと

 新型デュエルディスクをお披露目する海馬社長のごとく演説しこの退場口に逃げ込んだ

 大半の人間がデュエリストであるためか、あの海馬節が受けてまた客が湧いていた

 

「新しい召喚法なんて、マスコミの恰好の的だ。

 それを初めて使った人間として、1週間は付きまとわれるだろうな。」

 

「マジですか・・・では、とっとと退場することにしますか。

 では、チャンピオン

 ニコちゃんに報酬の件、しっかりしといてと伝えておいてくださいね、では!!」

 

「はっ、調子の良い奴だな、まったく・・・」


 石島さんに言われた通り、会場出たらマスコミがごった返していたから

 デュエリストの謎の身体能力を駆使して、

 ビルから飛び降りたり壁を登ったりなんかして振り切った

 何も知らずに出て行ったら捕まっていたから、やっぱり見かけによらずいい人だな

 

「さて、放課後はどのルートで帰るか・・・」

 

「お~い!榊遊矢ー!!」

 

 Dパットでマスコミが張っていなさそうなルートを調べていると、

 屋上の扉が開かれ馬鹿っぽい声が木霊する

 

「おっ!いたなぁ~

 この俺様に探させるなんて、どういう了見だぁ?榊遊矢~」

 

「別に?お前をわざわざ、探すつもりもないからな、沢渡」

 

 沢渡シンゴ、基本茶髪に特徴的な金髪の前髪が特徴の男

 結構、二枚目な顔をしているのに残念な言動が台無しにしている

 馬鹿で高飛車だが誰でも分け隔てなく接するため

 よくヨイショしてくる取り巻き三人や、

 学校で疎まれている不良っぽいのとデータ好き、不幸体質の3人を子分にしている

 

 デュエルをするたび、対策を打ってくるという

 デュエリストとしては珍しいタイプで、俺も参考にしているくらいだ

 なので、頭の出来は悪くはない・・・筈

 

「おい、お前失礼なこと考えてなかったか?」

 

 なぜ、ばれたし

 

「あっー!やっぱり考えていやがったな!!」

 

「お前どんな勘をしているんだよ・・・で、何の用だ?」

 

「ふぅ、んなもん、わかんだろ?

 ストロング石島とのデュエルで使った・・・え・・えと・・・ぺ・・・ぺん?」

 

「ペンデュラムカードの事か?」

 

「そう!それ!ペンデュラム!!そいつを俺によこしな!」

 

「ふぅ~ん、ほらよ。」

 

「うおっ!あっぶねぇな!?」

 

 こいつカード手裏剣(コンクリートに刺さる)を取りやがった

 

「って、何だ、このカード?

 モンスターカードなのに下半分が魔法カードみたいに緑だぞ?

 それにテキスト欄が2つ付いてる?こんなの見たことがない・・・」

 

「その2枚がペンデュラム召喚に必要なペンデュラムモンスター、

 星読みの魔術師と時読みの魔術師だ。

 というか、知らずに欲しがったのか?

 お前だってスペシャルマッチ見てただろう?

 会場に来てなくてもテレビで生中継されてただろし。」

 

「うぅ~五月蠅いな!追試で見れなかったんだよぅ!!」

 

 あ、やっぱり馬鹿だ。

 

「って、こんなレアカード簡単に渡しちまって良いのかよ?

 って言うかここに描かれているモンスター見覚え有るんだが、こんなんだったか?」

 

「あー、何か唐突に書き換わった。」

 

「はっ?ニュースではLDSがスペシャルマッチ用に用意したカードとか言ってたぞ?

 どういうことだよ?」

 

「そんなの俺が教えてもらいたいね。

 家にあったカードも何枚かペンデュラムカードになっていたし、

 他にもペンデュラムカードに関するテキストが追加されているカードもあった

 おまけにルールブック見たら

 いつの間にかペンデュラム召喚に関する記述が追加されていたし、意味が分かんねぇよ。」

 

「マジかよ!・・・・本当だ!!なになに・・・・」

 

 沢渡は自分のDパットを取り出して、ルールブックを熟読し始める

 相変わらず、いちいちリアクションが大げさだ

 

「へぇ~こうやるのか

 っていうか、お前の話を信じるとペンデュラムカードはお前しか持っていないってことか?」

 

「そうかもな

 EM(エンタメイト)や他の魔術師もなっていたから一概に言えないけど。」

 

「それって、ずるじゃねぇか!!」

 

「そぉ~なんだよぉ~

 でさ、そいつらをお前に預けるからさ

 LDSにペンデュラムモンスターの開発をたのんでくれないか?」

 

「はぁ?なんでそんなこと

 お前が独占してりゃ、使いたい放題じゃねぇか?」

 

「お前だって、ズルって言ったじゃん

 それにペンデュラム召喚があったところで、必ず勝つわけじゃないし。

 それに遅かれ早かれ、LDSはペンデュラムモンスターを自力で開発するだろうしな。

 それに・・・」

 

「それに?」

 

「デュエルはフェアじゃなけりゃ、俺が楽しめないだろ?」

 

 俺のその言葉を聞いて、沢渡はぽかんとしている・・・なんだよ。

 

「お前って、やっぱり戦闘狂だな・・・」

 

「やっぱりって、なんだよ!?やっぱりって!」

 

「あっ!戦闘狂で思い出した!!

 お前、大会荒らしの賞金稼ぎ狂った道化師(マッドピエロ)だったらしいな!

 なんで黙っていたんだよ!!」

 

 やっぱりお前も聞いてくるか、柚子たちに散々質問攻めされたっつうのに・・・

 

「言う必要がなかったからな。

 まぁ、始めたきっかけはただの小遣い稼ぎさ。」

 

 そう、俺がこの世界で初めてぶち当たった壁は、カード物価の高さだ

 パックで当てる分には何の問題もないのだが

 シングル買いだと、どうしても10万単位で金が吹っ飛ぶのだ

 

 素性を隠した理由は始めた当時の年齢が低すぎたことと、

 榊遊勝の息子であるということを隠す為である、下らないことで悪目立ちしたくないし

 

「ここ三年は、生活費や塾の運営費にも当てているがな。」

 

 さすがに7年も続けていると、金があぶれてくるので

 余った金は潰れかけた遊勝塾の経営費や塾からの支給金と言うことで、間接的に家に入れている

 原作通りになるか判らないが、あの親父がいつ戻って来るかわからない以上、

 チャンピオン時代に稼いだ金と母さんの内職費だけで生活を続けていくのは厳しいのだ

 

「そ、そうか・・そうだったな・・・すまん。」

 

「いいんだよ、謝るなんてらしくない。」

 

「っと、話が変わるがなんでこのカードを俺に預けるんだよ?

 悪用されるとか考えなかったのかぁ?

 こんな激レアカード売っぱらっちまうかもしれないぜ~?」

 

 ひらひらカードで呷ってくる沢渡、確かにこいつならそういうことしそうだが・・・

 

「そいつら2枚だけなら、デッキに投入したところで大して役に立たないし、

 お前がそのカードを売ったとしてもLDSが血眼になって探し出すだろうさ。

 第一、俺がお前に『預けた』だけのカードを売ったら

 最終的に被害を被るのはお前だけさ、何の問題もない。」

 

「うっ!?それもそうか・・・

 はぁ~それならLDSから褒章貰った方がましだな、わかったよ。

 この俺様、沢渡シンゴが届けてやるよ!大船に乗ったつもりでいな!!はっはっはっ!!」

 

 うっ、とか褒章とか言わなきゃいいのに

 まぁ、カードだし乗っているのが泥船でも流れて勝手に岸につくだろう

 

――キーン、コーン、カーン、コーン

 

「やべ!もう予鈴じゃないか!?早く戻ろうぜ。」

 

「あぁ、あ~それとこいつは前金だ。」

 

 ランニングスタイルで走り出そうとする沢渡に、

 どうせ来るだろうと思って用意していた紙袋を渡す

 この世界に売っているとは思わなかったが・・・まぁ、甘党のこいつには丁度いい

 

「こ、これは・・・

 あのパティスリー・ターミナルで即売り切れの幻のプリン!トリシューラじゃないか!!」

 

 沢渡の目がこれでもかというばかりに輝いている、やっぱりツボだったか

 

「ちゃんと渡したと確認できれば

 マドルチェシャトーの『ティーチャーグラスフレ・メェプルと共に』も買ってきてやるよ。」

 

「マジか!!ヤッフッー!!

 この俺様に任せておきな!その代り約束忘れんなよー!!」

 

「はいはい、まったく調子の良いやつ・・・」


 レオ・コーポレーションの地下に造られた観測室

 そこでは先日観測された強力な召喚反応について、寝る間も惜しんで調べられていた

 さらに、遊矢がペンデュラムカードは

 LDSがデモ用として用意したものと発言してしまったため、相談所への問い合わせが殺到

 

 さらに世界中で所持していた一部のカードが

 ペンデュラムカードやペンデュラムに関する効果に書き換わる事案が発生

 結局答えられる場所もここしかないため、勤めの職員たちは表への対応にも追われていた

 

「社長、やはり、全サーバーデータのルールブックが改変されています。

 さらにEM(エンタメイト)や魔術師モンスターがペンデュラムモンスターに何枚か書き換わる他

 ペンデュラムと名のつくカードなどにペンデュラム召喚やペンデュラムカード、

 ペンデュラムスケール、ペンデュラムゾーンに関する効果が出現したとの報告も」

 

 サングラスに黒スーツの大男が

 室内でも何故かたなびいている長いマフラーを巻いた細身の青年に話しかける

 青年は赤いフレームのメガネに液晶の光を移しながら、分かっていたという風に応える

 その表情は口元を組んだ手で隠している為、うかがい知ることは出来ない

 

「やはりか・・・」

 

「はい、こんなことは初めてです。

 ディスクの個別用のものまでも・・・履歴すら残っていません

 それに所持していたカードがいきなり書き換わるなど、まるで・・・」

 

 LDSが管理するデュエルモンスターズの管理サーバー

 それは蟻の子1匹通さないとばかりの

 厳重な警備と何重もの鋼鉄の隔壁に隔てられ、

 数秒おきに書き換わる何十桁のパスワードと強力なファイアーウォールに守られたものであり、

 社長である青年すら立ち入ることが困難な代物である

 

 そんな管理サーバーに見られた異常

 多数の承認許可が必要なルールブックと登録されたカードデータ-の改変

 さらにデュエルディスクに登録されている個別のサーバーまでも改変を受けて、

 何千枚もある世界中のカードが書き換わる

 それは、まるで初めからそうであったかのように世界そのものが上書きされたかのようだ

 

「どういたしましょうか?」

 

「改変についてはそのままでいい

 それよりも、今は一刻も早くペンデュラムカードの開発に専念しろ。

 書き換わったカードについては、実験用のカードが流出してしまったとでもしておけ」

 

「はっ!

 ですが、実働データが少なすぎます

 開発にはかなりの時間を要するかと・・・

 問い合わせのあったカードを一時回収するにしても、回収しきるだけで一週間はかかるかと」

 

「・・・・・・」

 

 男の言葉を聞いて青年は無言で返す

 その威圧は屈強な大男も内心震え上がるほど恐ろしいものだったが、

 突如管制室に響き渡った能天気な声がそれをぶち壊す

 

「おーい!社長ー!!」

 

「沢渡か・・・」

 

「そう!レアなカードに愛されたグレートな俺様、沢渡シンゴの登場だ。」

 

 青年の威圧などなんのその

 自分のペースを崩さない沢渡にその場にいた全員はある意味尊敬の念を抱く

 

「何の用だ。」

 

「そら、社長に届けモンだ、ちゃんと渡したぜ?」

 

 沢渡の投げたカードを何の苦も無く後ろ手で受け取った青年は、一瞬目を見開く

 受け取ったカードは今回の事の発端である2枚のカード

 『星読みの魔術師』と『時読みの魔術師』のカードだったからだ

 

「どうしてこれを?」

 

「渡した奴曰く、ソイツをしばらく預けておくからペンデュラムカードを制作しろだとさ。

 あぁ、できたら真っ先にこの俺様に使わせろよ?

 この天~才デュエリストたる俺様にかかれば、どんなカードでも使いこなしてやるからよ!」

 

「ふふ・・・」

 

 沢渡が未だ自分のことをアピールし続けるが、

 彼は自身の手に握られた2枚のカードに視線を落とし薄く笑うばかりで聞いちゃいない

 

「やはり・・・榊遊矢・・・彼とは一度会ってみる必要があるようだな。」

 

 そう言い、彼『赤馬 零児』はメガネの位置を直し

 その奥の鋭い眼光をこの場に居ない道化師の少年へと向けるのであった

 




どこの世界でもマスコミてぇのはしつこいねぇ
スクープのために俺に血眼、ところが捕まらないんだなぁ~これが
なに、ちびっこたちがペンデュラム召喚が見たいって?
やれやれ、生徒たちにリクエストされたんじゃ、答えないわけにはいかないな
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『遊矢先生のパーフェクトペンデュラム教室』で、また会おうぜ


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遊矢先生のパーフェクトペンデュラム教室

多くの閲覧とお気に入り登録、感想、誤字報告ありがとうございます
これからも気ままにやっていきますので、お付き合いくださいませ

ペンデュラム説明回です
自分で書いていて思ったけどなんてややこしいんだ・・・
ペンデュラムがゲシュタルト崩壊しそう


「ふぅ~何とか撒いたな。」

 

 どんな世界でもマスコミっていうのはしつこいね

 学校終わりに校門、裏門どちらにも大勢ひしめき合っていたし

 学校を取り囲むようにすべての道に待ち伏せしてたから、

 木や屋根を乗り継いで帰るハメになった

 

 それでも追ってくるから、

 車やらモノレールやらの上を伝い、ここ遊勝塾の屋上にたどり着いた

 さて、とっとと講義の準備しなくちゃな

 

「これが1週間か・・・気が滅入りそうだ。」

 

「はぁ~ただいまぁ~」

 

 講師用の休憩室に疲れた顔の柚子が入ってきた

 かなり遠回りのルートでたどり着いた俺より遅いとなると

 どうやら、マスコミたちに質問攻めにされたようだな

 

「お~お帰り、柚子。」

 

「お帰りじゃないわよ!自分だけさっさと帰っちゃってさ!」

 

「あんまり、ぷりぷりするなよ~可愛い顔が台無しだぞ?」

 

「もう!お世辞なんて言ったって、騙されないからね!!

 それで、どういう事なのよ?」

 

「どういう事って?」

 

「惚けないでよ!あのペンデュラム召喚の事よ!!

 星読みと時読みって、あんな特殊なカードじゃなかったでしょ!?

 学校じゃ、皆に邪魔されて聞けなかったけど!きっちり説明してもらいますからね!!」

 

 すごい剣幕だ

 というか権現坂から聞いたけど、

 あの2枚、勝手に入れたの柚子だから、半分以上柚子のせいなんだよなぁ

 

「それが俺にもさっぱりさ。

 突然、カードが書き換わったとしか言えないね。」

 

「はぁ?カードが書き換わるなんて、そんなこと起きるわけないでしょ?」

 

「実際に起きたんだから仕方ないだろ?

 それに変化が起きたのは2枚だけじゃなく、

 デッキの中の他のカードや家に置いてあったカードにもだ。

 

 ペンデュラムモンスターになっていたり、

 ペンデュラムモンスターに関する効果が追加されていたりしてた。

 まぁ、そのあたりの謎は沢渡伝いにレオ・コーポレーションに丸投げしたから、

 そのうち判るでしょ。」

 

「えぇ~沢渡にぃ~・・・」

 

 沢渡の名前が出たことで柚子の表情が、怒りの表情から怪訝なものに変化する

 沢渡の普段の言動から当然ともいえるが、

 柚子からしてみたら沢渡に頼んだことそのものが気に入らないのだろう

 

 俺はすでに、このスタンダード次元で出会えるキャラとは赤馬親子を除き、接触している

 不測の事態や、敵に回られるのを回避するためだ

 

 よって、沢渡とも中学の初めで出会って柚子も沢渡と何回かデュエルしている

 馬鹿だが頭が回る沢渡と

 感情によって実力がぶれる柚子との対戦結果は柚子が負け越しているので面白くないのだろう

 まぁ、融合なしの『幻奏』と『帝』ではしかたがないことだけど

 

「高級デザートで、釣ったから大丈夫。

 問題の星読みと時読みも預けて来た、この騒ぎもすぐに収まるさ。」

 

「ペンデュラムの事もあるけど、遊矢?

 貴方が大会荒らししていたのが、余計に拍車かけていると私は思うけどぉ?」

 

「さぁ~て、今日の講義内容の確認と行こうかな!」

 

「あっ!こら、話をそらすな!!」

 

「はぁ~どうしたもんかなぁ~?

 って、遊矢、来ていたのか!?」

 

 話をそらすのに失敗したので

 柚子にまた言及されそうになったが、丁度いいタイミングで修造さんが入ってくる

 なにやら、考え込んでるがどうしたのだろうか?

 

「やぁ、修造さん。

 ため息なんかついてどうしたんです?」

 

「いやな?塾の前を張っているマスコミも問題なんだが、

 塾生たちがペンデュラム召喚に興味津々でさ

 AクラスもBクラスも見せてくれって言ってきているんだ

 で、どうしたもんかと思ってな~?」

 

 原作と違って遊勝塾にはそれなりの塾生が居る

 A、Bの2クラスで30人ずつ、というか遊勝塾の敷地的にこれで定員ギリギリだ

 ちなみに俺が上中級者用のAクラス、修造さんは初心者用のBクラスを担当している

 

 しかし、まいったな

 デュエルするにしても狭い屋上や

 塾生が観戦室に入りきらない地下では納得しないだろうし

 外でやる手もあるがマスコミが邪魔だ

 

 いや、マスコミは記事が書ければそれでいいのだから

 塾生たちと共に見せてやればこの騒動は早く収束するか?

 

「うん、修造さん

 今日は2クラスとも野外講習ってことで、外でペンデュラム召喚の実演をしましょう。」

 

「いいのか!遊矢!?」

 

「えぇ、記者達は記事を書ければ去っていくだろうし

 1度記事になった出来事を遅れて書くようなのもいないと思うから、

 ここで情報全出ししてしまいましょう

 あぁ、相手は柚子、よろしくな。」

 

「えぇ!?私?」

 

「なんだよ、仮にもエンタメデュエリスト目指してるんだろ?

 記者が居るくらいでビビるなよ~

 じゃあ、俺はAクラスにこの事を伝えてきましょうかねぇ。」

 

「あっ!ちょっと!!遊矢!?

 もう、勝手なんだから・・・」

 

 休憩室から逃走した俺はAクラスの教室の前に来ている

 外から聞こえてくる塾生たちの話題はペンデュラムのことで持ち切りの様だ

 

「よぉ~す!みんな元気かー!!」

 

「あっ!遊矢お兄ちゃんキター!!」

 

「遊矢兄ちゃん、昨日のしびれるぅ~召喚法!いったい、なに?なに?」

 

 俺が教室に入るなり駆け寄ってきた2名のちびっこ、鮎川 アユと原田 フトシ

 原作にも登場した遊勝塾の生徒だ

 ただ俺の影響か、この2人はこのクラスの中でも指折りのデュエリストになっている

 

 フトシのデッキは原作では『らくがきじゅう』という未OCGの恐竜族っぽいデッキであったが

 この世界の彼のデッキはまさかの『壊獣』である

 相手フィールドも巻き込んだ超大型モンスターを使ったパワーデュエルを得意としている

 

 アユのデッキは原作どおりの『アクアアクトレス』だが

 アクアリウムカードを揃えることに拘っていた原作と違い

 徹底したアドバンテージ稼ぎデッキになっている

 最近『バージェストマ』を投入したらしく、さらに拍車がかかっている

 彼女にそこまでさせるのは俺の影響か柚子のせいか

 

「そんなに迫らなくてもすぐに教えてやるよ

 みんな、すまないが今日の講義は予定を変更して、野外講習することになった!

 場所は河川敷

 俺と柚子がデュエルしてペンデュラム召喚もしっかり見せてやるから、筆記具忘れるなよ!」

 

―ホント!やったー!!

―チャンピオンと遊矢センセーのデュエル凄かったもんねー

―ペンデュラム召喚、楽しみだなー

 

 うちの塾生は小学生中心だ

 中学生の俺が教えているというのもあるが

 LDSとの住み分けと言う面と修造さんの教えられるキャパシティのため

 これくらいの年齢層となっている

 

 LDS以外でエクストラデッキを使った召喚の仕方を教えている所が少ないのと

 気軽さもあって、アユ曰く小学生の間で結構人気らしい

 ちなみにエンタメデュエルを教えるというフレーズは事実上、停止状態だ

 修造さんは渋っていたが、プロ用の魅せデュエルは小学生にはキツイのだ

 

 っと、考えごとしながら見渡していたら

 準備をしている塾生たちの中に見慣れない青い髪の子を発見する

 

「ん?君が、今日から入った子かい?」

 

「は、はい!僕、山城タツヤっていいます。

 よろしくお願いします!」

 

「はは、元気がいいな。

 それにセンセーなんて言われているけど、そんな大したもんじゃないから緊張することはないよ

 みんなも、仲良くしてやってくれよー!」

 

――はーい!!

 

「うん、いい返事だ。

 タツヤもこれからよろしくな!」

 

「はい!よろしくお願いします!!」

 

 俺が声をかけたことで、話すきっかけが出来たのか他の子がタツヤに声をかけている

 原作では年齢の割に知識が豊富な子だったが、

 引っ込み思案な感じだったから友達が少なかったのか?

 さっきも目上と話しているから緊張しているというより、

 話慣れてないからと言う感じだったし、でもこの調子だと問題ないだろう

 

 そういえば彼のデッキは未OCGの『エンタマシーン』と言うデッキだったが

 この世界ではどうなんだろうか?


 案の定、俺が外に出ると記者が詰め寄ってきたが

 「そんなに聞きたいなら今から実演するからよく見ておけ!!」

 と一蹴したら大人しくなったので、生徒たちと共に引き連れて移動する

 

 河川敷に到着してしばらくしてから、柚子がこっちに走ってくる

 どうやら記者たちに質問されるのが嫌で、

 デッキ調整か何かやって時間を潰していたら遅れてしまったと言ったところか

 

「おっ!お待たせー!!」

 

「遅いぞ、柚子!何やってたんだ!」

 

「うん、ごめん、お父さん。

 デッキ調整してたら遅れちゃって・・・」

 

「おいおい、しっかりしてくれよ、柚子・・・

 でもまぁ、これ以上生徒たちを待たせるのもなんだから、早く準備をしろ。」

 

「うん。」

 

 柚子は上がっていた息を整え、Dパットをデュエルディスクに変形させる

 柚子のデュエルの腕は気分次第でかなり差が激しい

 気が滅入っているとかなり弱くなるが、今回は大丈夫そうだ

 今回はペンデュラム召喚の実演試合と言う感じだが、

 相手がそれなりに強くなければ生徒たちにその優位性を伝えにくい

 

「待たせたわね、遊矢!」

 

「ふぅん、気合は十分のようだな!開始の宣言をしろ!柊ィー!!」

 

「デュエル開始ィー!!って、何やらすんだ!!」

 

 なんで、別次元のネタ判るの?まぁいいか

 

「「決闘(デュエル)」」

 

「先攻は、私からよ!

 私は速攻魔法、手札断殺を発動

 互いのプレイヤーは手札を2枚捨て、2枚ドローする。」

 

 俺も2枚捨てて2枚ドローする

 俺は手札交換でアドバンテージだが、柚子は手札が減ってディスアドだ

 

 と、思っていたら突如小型のUFOが俺たちの間に墜落

 中から2頭身くらいのいかにもな宇宙人が出て来た

 

「墓地に送られたイーバの効果発動よ。

 このカード以外の自分フィールド上か墓地の天使族、光属性モンスターを2体まで除外し、

 除外した枚数につき一種類、

 デッキからイーバ以外のレベル2以下の天使族、光属性 モンスターを手札に加えるわ

 私は墓地の幻奏の音女エレジーを除外して

 デッキからレベル2の幻奏の音女スコアを手札に加える。」

 

 宇宙人イーバは大勢に注目されているのに気づくと、柚子にカードを投げ渡し逃げ去って行った

 

「さらに手札のヘカテリスの効果で

 このカードを捨てて、

 デッキから永続魔法、神の居城 ヴァルハラを手札に加えそのまま発動。」

 

 河川敷に速攻で建てられる神の居城、柚子の常套句だ

 塾生たちは見慣れたものだが、記者たちはなにやら驚いている

 いや、永続魔法が発動しただけだろ

 

「ヴァルハラの効果発動

 自分フィールド上にモンスターが居ない時、

 手札から天使族モンスターを1体、特殊召喚出来るわ。

 来て、幻奏の音女アリア!」

 

アリア「はっ!」

   ATK1600

 

 神の居城に現れるオレンジを基調とした衣装を身に纏った

 音符のような羽根を持つ天使、透き通るような声だ

 

「カードを2枚伏せて、ターンエンドよ。」

 

「俺のターン、ドロー!

 いいのか柚子、通常召喚しなくて?」

 

 まぁ、残っている手札1枚は手札誘発のモンスターだが

 

「ふふふ、動揺させようったって無駄よ!

 リバースカードオープン!

 永続トラップ、スピリットバリア

 そして、奇跡の光臨!

 奇跡の降臨の効果で除外されている天使族モンスターを1体、特殊召喚!

 現れなさい!幻奏の音女エレジー!」

 

エレジー「ふっ」

    ATC2000

 

 アリアに続き現れる紫の衣装に身を包んだエレジー、その声は美しいがどこか物悲しい

 

「うおぉぉ!出た!

 柚子姉ぇちゃんの鉄壁コンボ!」

 

「特殊召喚されたアリアが居る限り、

 幻奏モンスターは効果の対象にならず、戦闘で破壊されない。

 そして、エレジーが居る限り特殊召喚された幻奏モンスターは効果では破壊されない。

 柚子お姉ちゃんのモンスターは2体とも特殊召喚されたモンスターだから効果範囲内。」

 

「そうそう

 さらに手札のスコアは幻奏モンスターが戦闘を行うダメージ計算時、

 手札から墓地に送って相手モンスターの攻撃力、守備力を0にする。」

 

「なるほど!

 それにスピリットバリアは自分のモンスターが居る限り、

 自分への戦闘ダメージを0にするカード・・・攻撃するだけ無駄ってことか。」

 

「うおぉ!!すごいぞ、柚子!!熱血だー!!」

 

 フトシとアユがタツヤを交えて解説している

 確かに厄介なコンボだが、早々に手の内を明かしたのは解説の為か?

 いや、あの感じはコンボが決まって調子に乗っているな・・・

 攻撃もしていないしスコアを持っているのだから

 スピリットバリアまで晒すこと無かっただろうに・・・

 

「柚子、調子に乗り過ぎ。

 そんなんじゃ、生徒たちに馬鹿にされるぞ?」

 

「ふふん、だったらこの布陣、崩してみなさいよ!」

 

「じゃあ、遠慮なく行かせてもらおうかな。

 さぁ、みんな、お待ちかね。

 遊矢お兄さんのペンデュラム解説の時間だ。

 まずは手札のペンデュラムモンスター、

 EM(エンタメイト)トランプ・ガールと曲芸の魔術師をペンデュラムゾーンにセット。」

 

 神の居城に光の柱が2本出現し

 その中に3等身のピエロ衣装を纏った少女と極彩色のピエロ衣装を纏った魔術師が現れる

 

「ペンデュラム召喚をするためには

 まず、魔法・罠ゾーンの第1スロットと第5スロットに

 ペンデュラムモンスターを表側表示でセットする必要があるんだ

 ペンデュラムモンスターをセットした時点で、そのスロットはペンデュラムゾーンに変化する。

 さらにこの時、セットしているペンデュラムモンスターは魔法カード扱いとなる。

 

 まぁ、フィールドに残り続けるから永続魔法やフィールド魔法みたいな感じだ

 あぁ、だからって普通の魔法カードみたいに

 ペンデュラムモンスターを魔法・罠ゾーンで伏せることは出来ないぞ。

 

 あと、これはカードの発動扱いになるから、

 魔力カウンターみたいな、魔法カードを発動することに反応するカードは反応するぞ」

 

「や、ややこしいカードだな・・・」

 

 修造さんが頭から湯気立ててる

 いや、小学生の塾生たちより先に貴方がまいってどうする

 

「さて、俺はEM(エンタメイト)フレンドンキーを召喚し、

 効果で墓地のレベル4以下のEM(エンタメイト)、セカンドンキーを特殊召喚。」

 

フレンドンキー「ブルルッ!」

       ATK1600

 

セカンドンキー「ブヒィー!」

       DEF2000

 

 おなじみ、灰と茶色のロバコンビ

 そしてセカンドンキーの背中には体がギターの形をした亀が背負われている

 

「セカンドンキーの効果発動

 召喚、特殊召喚時、デッキからEM(エンタメイト)モンスターを墓地に送る。

 だが、俺のペンデュラムゾーンにカードが2枚存在することにより、

 墓地に送らず手札に加えることが出来る。

 よって、俺はデッキからEM(エンタメイト)ギタートルを手札に加える。」

 

 セカンドンキーの墓地肥やし効果、普通に便利だが限定条件でサーチに変わる

 ペンデュラムがこの世界に誕生する前は、この限定条件は

 『魔法が2枚自分フィールド上に表側表示で存在する場合』だった

 

 他のカードも似たようなもんだ

 フィールド魔法と永続魔法でも行えていたので

 汎用性が薄れたことで実質的に弱体化したと言ってもいい

 おのれぇ、覇王龍!

 

「さらに魔法カード、ペンデュラム・アライズを発動。

 自分フィールド上のモンスター1体を墓地に送って発動

 デッキからコストにしたモンスターと同じレベルの

 ペンデュラムモンスターを1体、特殊召喚する

 俺はレベル4のセカンドンキーを墓地に送り、

 同じくレベル4のEM(エンタメイト)ペンデュラム・マジシャンを特殊召喚。」

 

ペンデュラム・マジシャン「はっ!」

            DEF800

 

 ハットをかぶった赤い衣装のイケメンマジシャン

 手に持つ装飾の付いた振り子も相まって催眠術師の様だ、効果は催眠とは関係ないが

 ちなみにペンデュラム・アライズもペンデュラムが登場する前は

 『墓地に送ったモンスターと同名以外の同レベルのモンスターをデッキから特殊召喚する』

 という割とヤバい効果のカードだった

 

 OCGなら制限か禁止級だな

 図書館デッキでサモプリから図書館して、エクゾディアかき集めたりしてたのに・・・

 

「ペンデュラム・マジシャンの効果発動、

 このカードが特殊召喚に成功した場合、

 1ターンに1度だけ、自分フィールド上のカードを2枚まで対象にして破壊し、

 破壊した数だけペンデュラム・マジシャン以外のEM(エンタメイト)モンスターを手札に加える。

 ただし同名カードは1枚まで。

 俺はペンデュラム・マジシャン自身とペンデュラムゾーンのトランプ・ガールを破壊」

 

 ペンデュラム・マジシャンが振り子を揺らす

 すると何処からともなく

 ペンデュラム・マジシャンの持つものと同じデザインの巨大な振り子が現れ

 ペンデュラム・マジシャンとトランプ・ガールを破壊して消えて行った

 マ、マハードォー!

 

「俺はデッキからEM(エンタメイト)リザードローとユーゴーレムを手札に加える。

 そして、ここで曲芸の魔術師の効果が発動する。

 

 ペンデュラムモンスターがペンデュラムゾーンにある場合、

 魔法カードとして扱うということは当然、

 モンスター効果とは別に魔法カードとしての効果、ペンデュラム効果を持つ

 曲芸の魔術師のペンデュラム効果は自分フィールド上のモンスターが効果で破壊された時、

 ペンデュラムゾーンのこのカードを特殊召喚出来る、という効果だ

 来い、曲芸の魔術師!」

 

曲芸の魔術師「はっ!」

      DEF2300

 

 光の柱から解き放たれる道化師

 いろいろ動いているせいか、柚子がちょっと引き気味だがまだこれで終わりじゃない

 おっと、言い忘れていた

 

「ペンデュラムモンスターがフィールドで墓地に送られる場合は、

 墓地じゃなくてエクストラデッキに表側表示で加わるんだ

 よって、フィールドのモンスターを墓地に送るのが

 コストのカードのコストとしては使えないぞ。」

 

「えっ!?じゃあ、どうやって呼び戻すの?」

 

 タツヤがもっともな質問をしてくる

 まぁ、さすがに特殊すぎる動きだからな

 

「なぁに、いずれわかるさ、いずれな。

 ペンデュラムゾーンのカードはフィールド魔法みたいに自力で張替は出来ないが

 ゾーンが空いてるなら話は別だ。

 俺はEM(エンタメイト)ギタートルとリザードローを

 ペンデュラムゾーンにセッティング。」

 

 再び現れる光の柱

 その中にはギターのような躰を持つ亀とカードの襟を持つ燕尾服を着たトカゲ

 

「ギタートルのペンデュラム効果

 このカードが発動している状態で

 もう片方のペンデュラムゾーンにEM(エンタメイト)カードが発動した場合

 デッキから1枚ドローする。

 

 さらにリザードローのペンデュラム効果、

 もう片方のペンデュラムゾーンにリザードロー以外のEM(エンタメイト)カードが存在する場合、

 このカードを破壊しさらに1枚ドローする

 そして空いたペンデュラムゾーンにEM(エンタメイト)ユーゴーレムをセッティング!」

 

 ギタートルの腹の弦が引き鳴らされると、リザードローは退場し

 代わりにUの字を上下にくっ付けたかのような、

 灰色の煉瓦で出来たゴーレムがせり上がってくる

 

「さぁ!役者はそろったことだし、ここでお待ちかね。

 ペンデュラム召喚の時間だ。

 

 ペンデュラム召喚は

 手札とエクストラデッキの表側表示で加わってるペンデュラムモンスターの内

 ペンデュラムゾーンにセットされているペンデュラムスケールの間の数値のレベルのモンスターを

 1ターンに1度、可能な限り特殊召喚する召喚法だ。」

 

「遊矢お兄ちゃん、ペンデュラムスケールって何?」

 

「ペンデュラムモンスターのペンデュラム効果欄の両端に書かれている数字のことさ。」

 

 アユが質問してきたので

 これから呼び出すモンスターのうち1体であるペンデュラムモンスターを塾生たちに見せる

 こう、分からないことを質問してくれるのはありがたいね

 

「セットされているペンデュラムスケールは1と6

 よって呼び出せるモンスターはレベル2から5だ。」

 

「2から5?それって!?」

 

 どうやら柚子は察したみたいだな

 コツコツやっていた仕込の意味を!

 OCGでは出来なくなったこの動き、久しぶりに暴れようじゃないか!

 

「さぁ、クライマックスだ!ペンデュラム召喚!!

 手札からレベル3、EM(エンタメイト)エクストラ・シューター

 そして、エクストラデッキからレベル3、EM(エンタメイト)リザードロー

 レベル2、EM(エンタメイト)トランプ・ガール。」

 

 天から落ちてきた光の中から現れる、パチンコを持った少年、トカゲの紳士、道化師の少女

 

 エクストラ・シューター DEF1100

 リザードロー      DEF600

 トランプ・ガール    DEF200

 

――すげぇ!

――あっと、言う間に5体並んだ!

――今って2ターン目だよね?

 

「クライマックスって・・・

 フレンドンキー以外、守備表示じゃない。

 それでどうやって私の布陣を崩すのかしら?」

 

 攻撃が意味のないコンボを構築しておいて良く言うよ・・・

 まぁ、折角構築した布陣なんだから、それはそのままにしておいてあげよう

 

「俺はエクストラ・シューターの効果発動。

 1ターンに1度、エクストラデッキのモンスターを除外し、

 自分または相手フィールドのペンデュラムゾーンのカード1枚を破壊し

 相手プレイヤーに300ポイントのダメージを与える。

 俺はエクストラデッキのペンデュラム・マジシャンを除外して

 ギタートルを破壊し柚子に300ポイントのダメージだ。」

 

 ギタートルが水色の光の球となり、柚子に向かって射出される。

 

「きゃ!でも、こんなんじゃ、まだ!」

 LP4000→3700

 

「そう、まだ終わらない!

 俺はレベル3のエクストラ・シューターとリザードローでオーバーレイ

 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!

 来い、虚空海竜リヴァイエール!」

 

リヴァイエール「ギャアアアァァァァ!!」

      ATK1800 ORU2

 

 黒い渦から出て来た薄緑色の宙を舞う海竜

 リヴァイエールはオーバーレイユニットを食らい異次元へ行ってしまった仲間を呼び出す

 

「リヴァイエールの効果発動

 1ターンに1度、オーバーレイユニットを使い除外されている

 レベル4以下のモンスターを1体特殊召喚する。

 戻ってこい、EM(エンタメイト)ペンデュラム・マジシャン!」

 

 リヴァイエール ORU2→1

 

ペンデュラム・マジシャン「ふん」

            DEF800

 

「まだ、出てくるの!?」

 

「ペンデュラム召喚自体はモンスターを並べるだけの召喚法にすぎない

 だから、そこからどうやって勝利に繋げるかはデュエリスト次第・・・

 

 オーバーレイユニットとして取り除かれた、ペンデュラムモンスター

 EM(エンタメイト)リザードローはフィールドで墓地に送られたわけではないので

 エクストラデッキに加えず、そのまま墓地に送る

 さらに俺は空いたペンデュラムゾーンに

 オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンをセッティング。」

 

 このデュエルで何本立っただろうか、光の柱の中に浮かび上がる2色の眼を持つ赤い竜

 

「また!?でも、ペンデュラム召喚って1ターンに1度のはずじゃ・・・」

 

「おいおい、今まで何を見て来たんだ?

 ペンデュラム効果を使うために決まっているでしょうが。

 オッドアイズのペンデュラム効果はエンドフェイズにこのカードを破壊して、

 デッキから攻撃力1500以下のペンデュラムモンスターを手札に加えるって効果だ。」

 

「そう、それだったら・・・

 私をこのターンで倒すことを諦めたってことね!」

 

「何を勘違いしているんだ・・・もう、柚子に次のターンは回ってこないぜ!

 勝ちを確信しても次のターンへの布石は怠ってはならない。

 デュエリストとして当然のことだ!

 

 俺はEM(エンタメイト)トランプ・ガールの効果発動

 1ターンに1度、俺のメインフェイズに融合モンスターカードによって決められた、

 このカードを含む融合素材を墓地に送り、融合召喚を行う!」

 

『融合!!』

 

「俺はEM(エンタメイト)モンスター、トランプ・ガールと

 レベル5以上の闇属性モンスター、曲芸の魔術師を融合。

 狂乱の嵐をまき散らせ!融合召喚!EM(エンタメイト)ガトリングール!!」

 

ガトリングール「ハハhハハハhHHHHッ!!」

       ATK2900

 

 狂った笑い声を上げながら登場した黒スーツを着た屍鬼(グール)

 デフォルメされてはいるが

 手に持つ物騒なガトリングガンと凶悪な表情が可愛らしさを消している

 

「俺のフィールドにモンスターが融合召喚されたことにより

 ユーゴーレムのペンデュラム効果発動!

 自分の墓地かエクストラデッキの表側表示のペンデュラムモンスターの中から

 EM(エンタメイト)、オッドアイズ、魔術師モンスターの内、1体を手札に加える

 俺は墓地からリザードローを手札に加える。

 

 さらにガトリングールが融合召喚されたことにより効果発動、

 フィールド上のカード1枚につき200ポイントのダメージを与える。」

 

「なっ!?」

 

「俺のフィールドはモンスターが4体とペンデュラムカードが2枚、

 柚子のフィールドはモンスター2体と魔法、罠ゾーンに3枚の合計11枚

 よってダメージは2200!」

 

 ガトリングールが弾倉に弾がセットされたことを確認すると、それを柚子に向かって乱射する。

 

「きゃああぁぁぁぁぁ!!」

 LP3700→1500

 

「ガトリングールはペンデュラムモンスターを融合素材にした場合

 さらに相手モンスター1体を破壊しその攻撃力分のダメージを与える効果を持っているが

 アリアとエレジーの効果で残念ながら使えない。」

 

「ひゃ~普通だったら、これでゲームエンドだよ。」

 

「くっうぅ・・・それは残念だったわね。

 私のライフはまだ1500ポイントも残っているわ・・・」

 

「心配しなくても削り切ってやるよ!

 俺は速攻魔法、ユニゾン・チューンを発動

 互いの墓地の中からチューナーモンスターを1体除外し、

 俺のフィールド上のモンスター1体をこのターン、

 その除外したチューナーのレベルと同じにしてチューナーモンスターとして扱う。」

 

「チューナー!?そんなの一体何時・・・って、あっ!?」

 

「柚子お姉ちゃんが発動させた

 手札断殺の時に、セカンドンキーと一緒に墓地に送ってたんだ・・・」

 

「そういうこと

 俺は墓地の貴竜の魔術師を除外して、レベルは同じなので変わらないが

 フレンドンキーをこのターン、チューナーモンスターとして扱う。」

 

「チューナーってことは・・・」

 

――シンクロ!!

 

「俺はレベル4のEM(エンタメイト)ペンデュラム・マジシャンに

 チューナーとなったEM(エンタメイト)フレンドンキーをチューニング。」

 

 フレンドンキーが3つの光の輪となって、ペンデュラム・マジシャンはその輪をくぐる

 彼の体が星となって並ぶと眩き光の中から閉幕を告げる漆黒の爆撃機が出撃する

 

「シンクロ召喚!現れろ、ダーク・ダイブ・ボンバー!!」

 

 ダーク・ダイブ・ボンバー ATK2600

 

 OCGでも猛威を振るった末に禁止行になってエラッタされて戻ってきた暗黒爆撃機

 エラッタされても止めくらいにはなる

 

「ダーク・ダイブ・ボンバーの効果発動

 1ターンに1度、自分フィールド上のモンスターをリリースして、

 そのモンスターのレベル×200ポイントのダメージを与える。

 俺はレベル8のガトリングールをリリース!」

 

 ダーク・ダイブ・ボンバーは

 ガトリングールのガトリングに、まだ弾が残っていることを確認すると

 それを奪い爆弾を取り付ける

 ガトリングールはガトリングガンを涙目で取り戻そうとするが、

 無慈悲にもそれは柚子に向かって放り投げられるって、爆撃するんじゃないのかよ!?

 

 

「えっ!?ちょっと、まっ!!」

 

 ガトリングールはガトリングを何とかして取り戻そうとそれを追いかけ、柚子に飛びつく

 爆弾付ガトリングと涙目の屍鬼(グール)が迫り、混乱する柚子だが

 

――チュッドオオォォォォォン!!

 

 LP1500→0

 

 爆弾は柚子とガトリングールを巻き込み大爆発した


「あはははっ!すごい!すごい!」

 

 笑い声が響く

 その発生源はまだ、あどけなさが抜けきらない中性的な容姿をした水色の髪の少年

 何かの見世物を見たように、実に愉快そうに手に持つチョコレートを齧りながら

 対岸を見つめている

 

「うぅ・・・負けた・・・・1ターンキルぅ・・・・」

 

「ゆ、柚子姉ちゃんは頑張ったよ、うん・・・」

 

「そ、そうだよ。

 ただ、相手が悪かったっていうか・・・

 あっ、そうだほら!このハネワタっていうカードなら柚子お姉ちゃんにぴったりかも!」

 

「す、すごいです!流れるようなワンターンキルでした!!」

 

「ははっ、みんなもコンボが決まったからって調子に乗って、

 使う必要のない伏せカード公開しちゃだめだぞ?」

 

「ぐはッ!」

 

「ゆ、柚子ー!!

 おい、遊矢!!柚子にトドメ刺さないでやってくれよー!!」

 

 負けたショックでいじける柚子、それを宥めるフトシとアユ

 1キルに興奮気味のタツヤや塾生たち、さっきのデュエルの反省点を解説する遊矢

 それを聞き、倒れた柚子を助け起こす修造

 騒がしくも楽しげな遊勝塾の面々を見て、苦虫を噛み潰すかのようにまたチョコレートを1齧り

 

「シンクロ、エクシーズ、そして融合!!

 1番大きい、LDSっていうところにしようと思ったけど、決めた!」

 

 少年はまたその顔に笑みを浮かべる

 

「榊遊矢・・・僕を楽しませてよね?」

 

――獲物を狙う猟犬の様に

 




負けたぁ・・・(泣)

信じられるか、これ、2ターン目なんだぜ?

遊矢兄ぃちゃん、やり過ぎ

柚子お姉ちゃんも、早く元気出してよ~

そ、そうだ!また遊勝塾に新しい仲間が来るんだよね?

そうだな
でも、仲間になるかどうかはまだわからないけどな?

負けたあぁぁ~!!(大泣)

あぁ!もう、柚子、五月蠅い!
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『融合使い 紫雲院素良』

みんな・・・これって、ちゃんと予告になってるのかな?


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融合使い 紫雲院素良

日刊ランキング1位習得?お気に入り件数1600越え?・・・・どういう、ことだ。
皆様の応援ありがとうございます。
これからも、完結目指して頑張っていきます。

残酷な描写タグは念のためつけておこうか・・・・


 ペンデュラムの実践講義は予想以上の結果をもたらした

 どうも、血で血を洗うスクープ合戦を制したのは、あのデュエルをひっそり生で実況していたフリールポライターだったらしく、礼金として多額の褒賞金がこちらに支払われたのだ

 まぁ、肖像権とかでとやかく言われないための、口止め料だろう

 

 それより数日後、スペシャルマッチの出演料ということで、最新式リアルソリッドビジョン装置がレオ・コーポレーションから、業者付きで送られてきた

 それと同時に遊勝塾で使われていた旧式の装置も引き取ってもらうことになった

 契約通りだが、契約書に書かれている金額は、故障を繰り返している物の引き取り額とは到底思えないものだった

 どうも、あのデュエルはレオ・コーポレーションに随分な利益をもたらしたらしい

 面倒事押し付けたのに随分な対応だ

 

 色々な思惑が交差した結果得たお金だが、それを判っていないのが目の前に・・・

 

「嘘・・・あの、オンボロがこんなに・・・?」

 

 目が「$」になっている柚子だ

 

「柚子、まさかと思うけど・・・

 今、設置してくれているソリットビジョン装置が型落ちしたら、LDSに売りつけようとか思っていないよな?」

 

「そ!?そんな、わけ・・・ないじゃない?」

 

 なぜ、疑問形で返す

 

「はぁ~言っておくけど、これはスペシャルマッチが成功した報奨金込みなんだから

 実際、あんなオンボロ引き取らせたら、逆にこっちがお金払うことになると思うぞ?」

 

「うっ!わ、分かってるわよ・・・」

 

 絶対嘘だ、凄く落胆してる

 

 なぜ、中学生の俺たちがこんなことを話しているかと言うと、修造さんはこういう事にとことん向いていない性格だからだ

 金遣いが荒いというわけではないが、精査や情報収集などがずさんなため、余計な金がかかることがある

 その点、柚子は守銭奴なため安心できる

 

「と、ところで!最新式って、今までのと何が違うの?」

 

 強引に話を変えて来たな、まぁいいか

 

「う~ん、要約するとリアルソリッドビジョンの硬度を変えられるようになったらしい

 それと五感で感じやすくなっているみたいだな。」

 

「硬度を変える?って、それって、もしかして!!」

 

「あぁ、これまで危ないから塾生たちには

 アクションフィールド内に入れてやれなかったが、これでフィールド内で直接観戦させられるようになったな。

 それにトレーニングの方も走り込みみたいなのより、1ランクアップしたものが出来るようになる。」

 

「それはいいわね!生徒たちも喜ぶわ~!」

 

 舞い上がる柚子

 だが、遊勝塾が現在、直面している問題は他にもある

 

「そういえば、講師のバイトを依頼する話はどうなったんだ?

 結構な前金が出来たんだから、1人くらい雇っても大丈夫だろ?」

 

「う~ん、どうしようかしらね~?

 お父さんの伝手を頼ってもいいけど、忙しそうな人ばっかりだし・・・

 かと言って、まったく無名の人にいきなり生徒たちを任せるわけにもいかないし・・・」

 

 修造さんの同期はかなり凄腕のプロデュエリストぞろいだ

 修造さん自身、かなりの腕前なのだが『戦士ビート』なので戦い方がかなり泥臭い

 そのくせ、榊遊勝の弟子としてショープロを目指していたのであんまり売れなかった

 

「そうだな。

 いきなり、やってくれって言っても無理な話だし

 ある程度の腕がないと、講師としては成り立たないしな。」

 

 机上理論ならインフェルニティエンタープライズニルループとか考えられるのだ

 だが、そんなのは少し行き過ぎた奴らの領域であり、小学生にそれをいきなり理解させようとするのは無茶だ

 難解なカード効果やルールを教えるには

 ある程度、実戦経験のあるデュエリストじゃないと無理だろう

 

「はぁ~どこかに、丁度いい人はいないかしらねぇ~

 強くて、頭良くて、優しくて、低賃金でも講師やってくれる人~」

 

「おいおい、それはいくらなんでも無茶言いすぎだろ・・・」

 

――コンコンッ!

 

 ん、ノック?修造さんなら、そのまま入って来るだろうし業者の人か?

 

「柚子お姉ちゃんー」

 

「あれぇ~休みなのに、遊矢兄ぃちゃんまでいるぜ?」

 

「こんにちは、柚子さん、遊矢先生」

 

 フトシ、アユ、タツヤのちびっこトリオじゃないか

 今日は休講しているのにどうしたんだ?

 

「ん?お前達、今日は休講日なのにどうしたんだ?」

 

「最新式のソリッドビジョン装置がどういうものかと気になりまして・・・」

 

「そうそう。

 で、見学ついでに試させてもらえないかな?って」

 

 なるほど、子供は好奇心旺盛だね~わしにも覚えがある

 っと、フトシの奴、一心不乱に鼻を動かしているがどうしたんだ?

 

「この匂いは・・・あっ!マドルチェ・シャトーの紙袋だ!!」

 

 こいつ、ロゴが死角になってるはずなのに紙袋がどこのものか当てやがった!?

 缶詰で包装紙も取ってないのに・・・

 

 沢渡への報酬ついでに買った柊親子への差し入れだったが・・・

 修三さんは食べられそうにないな、これは

 

「ばれたんだったら仕方ないな

 柚子、またダイエットに悩まなくって済みそうだな?」

 

「ふ、太ってないわよ!?」

 

 いや、前にトリシューラ・プリン買ってきた時

 6個入りセット独り占めしてたから、絶対太っているだろう

 「高人気」「高カロリー」「高価格」の3拍子の名は伊達じゃない

 いや、そもそも俺のせいか

 沢渡用と一緒にちょくちょく差し入れしているし

 

「じゃあ、俺!プチシスタルトもーらい!」

 

「私はピョコレート貰うね?」

 

「ぼ、僕はバトラスクを戴きます。」

 

「あぁもう!こうなったら私も食べるわよー!マジョレーヌは貰ったわ!!」

 

「じゃあ、僕はそのミルフィーヤ貰っちゃおうかな。」

 

 思い思いのお菓子を取って行くちびっこと柚子の後に続く、聞き慣れない少年の声

 柚子の後ろから、ニュっと手が伸びてきて予告されたお菓子が消え去った

 

「うん、これ美味しぃ~!!」

 

 すかさず口に放り込まれたお菓子

 当の下手人は暢気に感想を言っている、こいつは・・・

 

「はっ!はっ!柚子、ここに今って、いたぁー!!」

 

 息を切らせた修造さんが入って来るなり少年を指差す

 どうやら勝手に入ってきたようだ

 

「お、お父さん落ち着いて!ほら、深呼吸、深呼吸」

 

「はぁ~ふゅ~はぁ~ふゅ~」

 

「修造さんはしばらく喋れそうにないな・・・で、君は?」

 

「僕?僕はね、紫雲院 素良!」

 

 元気よく名前を答える少年、紫雲院素良

 水色の髪を一括りにまとめ、翡翠色の瞳をした幼さの残る少年だ

 そして彼こそが、遊戯王ARC―Vにおける最も警戒しなければならない重要人物

 

「榊遊矢って、君のことだよね!河川敷のデュエル見てたよ!

 すごかったな~すっかり僕、君のファンになっちゃった!」

 

「俺のファン?」

 

「そ!だからねぇ~僕、この塾に入りたいんだけど~

 いいかな?いいよね、はい決定!」

 

 猫なで声で可愛らしくも強引に事を進めようとする素良

 だが、それに対して柚子が黙っているわけもなく

 

「ちょっと!?

 勝手に決めないでよね、うちは今」

 

「柚子。」

 

「何よ、遊矢?」

 

「話だけでも聞いてやろうじゃないか

 決めるのはそれからだ。」

 

「わ、分かったわよ・・・」

 

 柚子はしぶしぶと言った感じに引き下がる

 塾を管理している身としては不法侵入をするような問題児は勘弁願いたいんだろう

 俺としても危険物をそばに置くような真似はしたくないのだが、逆に勝手に動かれる方が面倒というのがあるのだ

 

「さて、まずは住所と通ってる学校の名前を答えてもらおうか?」

 

 普通なら無難な質問

 この世界ではよく分からないが、こいつの事情を知っている身としては直球の質問をしてみる

 さぁ、どう答える?

 

「学校?僕はもう卒業しているよ?住所は・・・今は無し!」

 

「えぇー!!それってどういうこと!?

 あっ!?まさか・・・もしかして、成人されている方ですか?」

 

 素良の答えに対して、勘違いを発動させる柚子

 いや、どんだけ若作りだよ

 

「違う違う、僕は13歳だよ

 学校は・・・そう、飛び級ってやつ

 で、今はデュエリストとして腕を磨くために武者修行中ってとこかな?」

 

 地味に判明する素良の年齢、まぁジュニアユースに登録されていたし当然か

 俺の1つ下って言っても、見た目年齢はそれ以下に見える

 栄養失調じゃないのか?

 

「へぇ~でも、うちは小学生向けの決闘(デュエル)塾だ

 武者修行中の寄り道なら物足りないんじゃないのか?

 強くなりたいんだったら梁山泊塾や権現坂道場、それこそLDSの方を勧めるよ。」

 

「えぇ~あそこも行ってみたけど、全然面白くなさそうなんだもん。

 僕はね、強い人が好きなんだ。

 そして、榊遊矢、君は此処の人たちの中でも指折りだ。

 だから、僕はここに来たんだ。」

 

 本心・・・なんだろうな、この反応は

 

「へぇ~掻い摘んで言うと、お前は俺と決闘したいからここに来たってことだな?」

 

「そうだよ!僕は君と戦いたいんだ!」

 

「ふ~ん・・・おい柚子

 さっき言っていた都合のいい講師の件、どうにかなりそうだな。」

 

「えっ!?ちょっとまさか・・・」

 

「あぁ、素良も別に俺と戦えれば塾生にならなくてもいいんだろ?」

 

「へっ?それは別にかまわないけど・・・」

 

「じゃあ、ひとまず、お前の希望は叶えられるな。

 今度は俺たちからお前への希望だ。

 お前、講師をやってくれないか?」

 

「ちょっと遊矢!?」

 

「さすがの俺もそれは簡単に容認できんぞ!?」

 

 柊親子が異議を唱えてくる、まぁ、当然だが

 

「3食おやつ付き、寝床も用意する。

 代わりに遊勝塾で塾生たちに対して講義をしてもらう、どうだ?」

 

「僕は別にかまわないよ、ただし」

 

「俺と決闘させろってか?いいぞ

 どちらにしろ、人となりとデュエルの腕を確かめる必要があるからな。」

 

 柊親子の抗議をそっちのけで、話がとんとん拍子に進んでいく

 リアルソリッドビジョンの試運転もできるから一石で四鳥くらいになるな

 

「すいませーん。

 装置の取り付け終わったんでサインもらえますか?」

 

 丁度良く取り付け作業が終わったらしい

 さあ、行こうか

 

「あぁーもう!!遊矢ー!!」

 

「遊矢先生と武者修行中のデュエリストとのデュエル!」

 

「なんだか、しびれるぅ~デュエルの予感!」

 

「なんだか、得した気分だよね~」

 

 しれっと退出した遊矢と素良、そしてそれを追いかける柚子と続くタツヤ、フトシ、アユ

 修造だけが置いてけぼりを食らった

 

「お、おい!?俺を置いて行かないでくれよ~!!」

 

「あの、サイン・・・」

 

「あ、はい・・・」


「勝負はアクションデュエル、子供たちもいるから硬度は最弱で」

 

「別にいいよ、そんなこと僕は気にしないし」

 

 地下のデュエル場

 改装は済んだみたいだが見た目はいつもと変わらない

 いい仕事をしてくれる、さすがレオ・コーポレーションの業者だ

 

「もう、なんでこんなことに・・・・」

 

『あ~俺もよく分からんが・・・仕方ないから始めるぞ

 ところで、アクションフィールドは・・・これでいいのか?』

 

 アナウンスで修造さんがアクションフィールドのことで聞いてくる

 特に指定はしてなかったはずだが

 

「うん、それでお願い!

 僕の力を試すんだから、アクションフィールドくらい僕が選んでもいいよね?」

 

 こいつの仕業か、まぁ別に問題はない

 どうせ、あのフィールドだろうし

 

「いいよ

 その代わり、お前の全力を見せてもらうか。」

 

『よし、じゃあ始めるぞ!

 アクションフィールド、スウィーツ・アイランド発動!』

 

 無機質なドーム状の空間が、光と共に一変する

 ケーキの山、マカロンの石畳、チョコの噴水、ジュースの滝・・・見ているだけで胸焼けしそうだ

 

「うはっ~想像以上だよ!僕の好きなお菓子がいっぱい!」

 

「お菓子がいっぱい!」

 

「美味しそ~!!」

 

「僕は、ちょっと・・・」

 

 ちびっこはタツヤだけが難色か

 取っていたお菓子もラスクだったし、甘すぎるモノは苦手なのか?

 

「俺はあまり長居したくないな・・・とっとと始めよう。」

 

「あは!じゃあ、よろしくお願いね?」

 

「「決闘(デュエル)!」」

 

「先攻は俺みたいだな

 俺はEM(エンタメイト)ギタートルとリザードローをペンデュラムゾーンにセッティング。」

 

 お菓子の国に光の柱が出来る

 その中に居るのはギターのような躰を持つ亀と紳士風のトカゲ

 おなじみのドロー加速要因だ

 

「ギタートルのペンデュラム効果

 1ターンに1度、このカードがセットされている状態で、もう片方のペンデュラムゾーンにEMが発動されたことにより1ドロー

 さらにリザードローの効果、もう片方にEM(エンタメイト)カードがあることにより、このカードを破壊して、さらにドロー

 そして、空いたペンデュラムゾーンにEM(エンタメイト)オッドアイズ・ライトフェニックスをセッティング。」

 

 リザードローが居なくなった後の光の柱に入れ替わりで現れるのは、炎の様な羽根を持つ赤い鳥

 そして、2本の柱の間に現れる巨大な振り子

 ファンサービスだ、最初から飛ばしていくぞ

 

「これで、ペンデュラムスケールは3と6

 揺れよペンデュラム、異界への道を指し示せ!ペンデュラム召喚!

 レベル4、EM(エンタメイト)ペンデュラム・マジシャン!」

 

ペンデュラム・マジシャン「ふん」

            DEF800

 

「おぉ~これがペンデュラム召喚!近くで見ると迫力あるな~」

 

 観光地の見世物みたいな感想だな

 まぁ、最初のターンだし・・・うまく行くかわからないけど、これ伏せるか

 

「特殊召喚成功によりペンデュラム・マジシャンの効果発動

 自分フィールドのカードを2枚まで破壊し、破壊した枚数に付き1種類、デッキからEM(エンタメイト)モンスターを手札に加える。

 俺はペンデュラム・マジシャンとライト・フェニックスを破壊して、デッキから、リザードローとレインゴートを手札に加える。

 カードを2枚伏せて、ターンエンドだ。」

 

「えっ?モンスターいなくなっちゃったけど、良いの?」

 

「さぁ~どうだろうな?」

 

 素良が召喚しなくていいのかと聞いてくるが

 あからさまに罠を貼ったのだから答えるわけがない

 まぁ、ちびっこたちと柚子も困惑しているけど

 

「ねぇ、ねぇ、柚子姉ぇちゃん?

 なんで、遊矢兄ぃちゃんモンスター召喚しなかったの?」

 

「そ、そんなこと私が判るわけないでしょ・・・」

 

 いや、そこはちょっとは考えてくれ、デュエリストなんだから・・・

 

「もしかして、僕を嘗めてる?

 そんなあからさまな罠なんて、かる~く乗り越えちゃうんだから!

 僕のターン、ドロー

 僕は永続魔法、トイポットを発動。」

 

 素良の隣に現れる巨大なガチャガチャ

 装飾の目のような部分や長い舌を模したレールなど、蛙の様な見た目だ

 

「トイポットはね

 1ターンに1度、手札を捨ててデッキからカードを1枚ドローできるんだ。

 そして、それをお互いに確認して確認したカードがファーニマルモンスターなら、手札からモンスターを1体、特殊召喚出来るんだ

 違った場合は墓地にポイ、でもまだ効果は使わないよ

 

 まずは手札から魔法カード、ワン・フォー・ワンを発動

 手札から1枚、モンスターカードをポイして、デッキからレベル1モンスターを特殊召喚」

 

 ワン・フォー・ワン、あのデッキなら相性がいいカードだな

 アニメでも漫画でも使って無かったが・・・ストロング石島の使用していたカードといい、俺の影響か?

 だけど、素直には通さない

 

「じゃあ、俺はワン・フォー・ワンにチェーンして、手札のモンスターカード、増殖するGの効果発動」

 

「は?」

 

「「きゃあああぁぁぁぁぁ!!」」

 

「「うげ~・・・」」

 

 俺の背後にあるグミで出来たピラミッドの隙間から無数に顔をのぞかせる黒い影

 柚子とアユは絶叫し、タツヤとフトシも嫌な顔してる

 というか、素良も素で驚いてるみたいだな

 

「このカードの効果は1ターンに1度、相手のターンでも発動できる

 このカードを手札から墓地に送って発動、このターン相手がモンスターを特殊召喚するたびに俺はカードを1枚ドローする。」

 

「ドロー加速カード!?

 うぅ・・・仕方ない、ワン・フォー・ワンの効果でデッキからレベル1のファーニマル・マウスを特殊召喚」

 

ファーニマル・マウス「ちっ!」

          ATK100

 

 素良の前に現れるドーナッツを持った羽の生えたハムスター

 可愛らしいが、女子組はGの方が気になるようで黄色くない悲鳴を上げている

 

「増殖するGの効果で1ドロー」

 

 背後のグミのピラミッドからデッキの上に目にも留まらない速度で飛びかかってくる黒い影

 そして、勝手にドローされて俺の手元に飛んでくる

 さすがカイバーマン以上の攻撃力を持つG・・・ただものじゃない

 

「な、なんでそんなカード入れてるのよー!!」

 

「えぇ~便利だろ、これ。」

 

「た、確かに便利だけど・・・その・・・うっ・・・」

 

 柚子が便利だといいつつ、怯えている

 まぁ、そりゃそうか・・・OCGではおなじみのこのカードであるが、ソリッドビジョンがあるこの世界では誰も使いたがらないカードだ

 

「う~ん、ドローさせるのは怖いけど・・・

 このターンで決着を付けちゃえば問題ないね!

 僕はファーニマル・マウスの効果発動

 このカードがフィールドに表側表示で存在する限り1度だけ、自分のメインフェイズにデッキからファーニマル・マウスを2体まで特殊召喚出来る

 来い、2体のファーニマル・マウス!」

 

ファーニマル・マウス「ちっ」

          ATK100

 

ファーニマル・マウス「ちゅー」

          ATK100

 

「モンスターが特殊召喚されたので1ドロー」

 

「この効果を使ったターン、僕はエクストラデッキからデストーイモンスターしか特殊召喚出来ない。」

 

「デストーイ?」

 

 タツヤが疑問を口にする

 まぁ、「ファーニマル」じゃなくて、いきなり違うテーマの名前を口にされれば当然か

 あのデッキは3種類で1セットだが、このスタンダード次元ではそれを知っている人間は俺を除いていないだろう

 

「さらに墓地のエッジインプ・シザーの効果

 手札を1枚、デッキトップに戻すことでこのカードを守備表示で特殊召喚

 来い、エッジインプ・シザー!」

 

エッジインプ・シザー「ゲヘッ!ゲへへへへー!」

          DEF800

 

 現れたのは、複数の鋏が密集したような姿をした悪魔

 持ち手の部分が暗くなっており、その中かららんらんと光る赤い目が覗く

 

「特殊召喚により1ドロー」

 

「まだだよ、さらにトイポットの効果発動

 手札を1枚捨てて1ドロー

 さっき手札から戻したから、もう分かってるよね

 引いたカードはファーニマル・オウル

 そして、このカードを特殊召喚する。」

 

ファーニマル・オウル「ポー!」

          ATK1000

 

「増殖するGの効果でドロー」

 

「ファーニマル・オウルの効果発動

 このカードが手札から召喚、特殊召喚された時、デッキから融合を1枚手札に加える」

 

「「「「融合!?」」」」

 

 おいおい、そんなに驚くことか・・・って、LDSでもないのに融合を使えるのは珍しいか

 

「だったら、その効果にチェーンして速攻魔法、超カバーカーニバル発動だ。

 デッキ、手札、墓地からEMディスカバー・ヒッポを1体特殊召喚して、さらに自分フィールド上にカバートークンを可能な限り、特殊召喚出来る」

 

ディスカバー・ヒッポ「カバー!」

          DEF800

 

カバートークン(橙)「カーバ」

        DEF0

カバートークン(黄)「カバ」

        DEF0

カバートークン(青)「カァバァ」

        DEF0

カバートークン(緑)「カバァ~ン」

        DEF0

 

「へぇ~壁モンスター立てるカード伏せてたんだ

 でも、無駄だよ!このカードでみんな壊してあげる!!」

 

 現れた五色のカバを見て嘲笑する素良

 融合のカードを見せつけて、口角を吊り上げる

 

「僕は魔法カード、融合を発動!

 フィールドのエッジインプ・シザーとファーニマル」

 

「おっと、そうはいかないな。

 融合の発動にチェーンしてトラップカード、スウィッチ・ヒーローを発動

 お互いのフィールドのモンスター数が同じ場合、そのコントロールを全て入れ替える。」

 

「なっ!?」

 

 五色のカバたちはジャンプすると素良のモンスターを回し蹴りで俺のフィールドに蹴り飛ばす

 そして、そのまま素良を挑発するように腰振りダンスを開始する

 

「ウザッ!」

 

「さすがヒッポ達、いい仕事してくれる

 それで、お前のデッキにヒッポ達を融合素材にできるモンスターはいるのかな~?」

 

「・・・・・・」

 

「いないのなら、融合はフィールドが埋まってるから不発になり、墓地に送られる。」

 

 空しく消えていく融合のソリッドビジョンを呆然と見つめる素良

 俺はその辺に落ちていた、チョコレートを齧りながら挑発する

 う~ん、それっぽい味がするけど美味しくないな、ただ甘いだけだ

 

「どうした、まだ何かするのか?」

 

「・・・・・・ターン、エンドだ。」

 

 素良のエンド宣言と共にチョコを食べ終えた俺の前にアクションカードが出現する

 なるほど、このフィールドではお菓子を食べるとアクションカードが出現する仕組みか

 さっき大量にGが走り回っていたし、美味しくもないから食べる気がしないけど

 

「俺のターン、ドロー

 俺はペンデュラムゾーンに2体目のリザードローをセット

 ギタートルの効果でドローして、さらにリザードローの効果で破壊して1ドロー

 さらにファーニマル・マウス2体をリリースして

 オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンをアドバンス召喚」

 

オッドアイズP「ギャアオオオォォォォォ!!」

       ATK2500

 

 現れる、2色の眼に未発達の翼のような突起を持つ赤い竜

 かなり意地悪なコンボだが・・・さぁ、どう抜けてくるかな?

 あぁ~そういえばこれ試験だから、ちょっとは動けるように手助けしてやるか

 

「俺はカードを2枚伏せ、魔法カード、手札抹殺を発動

 互いのプレイヤーは手札を全て捨て、捨てた枚数分だけドローする

 俺の手札はアクションカード含めて4枚だから、捨てて4枚ドローだ。」

 

 しばらく呆然としていた素良だったが

 突然、その辺に落ちていた飴玉を引っ掴み、それを口の中に放り込むと勢いよく噛み砕く

 

―ガリッ!

 

「ちっ!あんまり僕を嘗めるなよ、遊矢!

 僕もアクションカードを含めた3枚のカードを捨てて、3枚ドローだ!」

 

 面白くないものを見たような、鋭い目で遊矢を睨み

 出現したアクションカードを引っ掴んで、そのまま手札と共に墓地に叩きつける素良

 もはや、最初のような可愛らしさはない

 そこに居るのは、ただ獲物を狙う1匹の凶暴な獣だ

 

「僕は今、墓地に送ったエッジインプ・チェーンの効果発動

 このカードが手札、フィールドから墓地に送られた場合、1ターンに1度、デッキからデストーイカードを1枚手札に加える。

 僕はデッキからデストーイ・サンクチュアリを手札に加える。」

 

(デストーイ・サンクチュアリ・・・となると素良のやろうとしてくることは・・・

やっぱり、そう簡単にコンボは決まらないか。)

「俺はスケール1のEM(エンタメイト)ユーゴーレムをペンデュラムゾーンにセッティングして

 手札から2枚目のペンデュラム・マジシャンをペンデュラム召喚だ。」

 

ペンデュラム・マジシャン「ふん」

            DEF800

 

 光と共に遊矢のフィールドに現れる、振り子の魔術師

 それと同時に出現した巨大な振り子がファーニマル・マウスとギタートルを砕く

 

「ペンデュラム・マジシャンが特殊召喚されたことにより効果発動

 ギタートルとファーニマル・マウスを破壊してデッキからEM(エンタメイト)マンモスプラッシュとカレイドスコーピオンを手札へ

 さらにカードを1枚伏せて、ファーニマル・オウルを守備表示にしてターンエンドだ。」

 

「うわぁ~遊矢兄ぃちゃん、意地悪だな~」

 

「そうだね。

 オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンはモンスターと戦闘を行う場合、相手に与える戦闘ダメージを倍にするから

 モンスターゾーンを開けるためにディスカバー・ヒッポで唯一攻撃表示のオッドアイズに攻撃したら

 3400ものダメージを受けることになる。」

 

「あのファーニマルって、モンスター達も融合素材を揃えるためにいっぱい出てくるみたいだけど

 レベルが全体的に低そうだからリリースしてモンスターゾーンを開けるっていうのも難しそうだよね。」

 

「そうね。

 あのままじゃあの子、まともに動けないわ。」

 

「解説、ごくろうさん

 さて、どうする素良?

 安心しろよ、カバートークンが居る限り呼び出した俺はエクストラデッキからモンスターを特殊召喚出来ないからさ。」

 

「ちっ!!どこまで嘗めてるんだよ!ドロー!!」

 

「別に嘗めてないさ

 俺はお前の本気を見たいだけ・・・うん、やっぱり美味くないな。」

 

 ロールケーキを1本丸ごと齧りながら言う遊矢

 だが、その態度が癪に障ったのか、素良は激情に駆られて動き出す

 

「そう、だったらお望み通り見せてやるよ!僕の本気を!!

 墓地のファーニマル・ウィングの効果発動

 1ターンに1度、自分フィールド上にトイポットが存在する場合

 墓地のこのカードとウィング以外のファーニマルモンスター、ファーニマル・マウスを除外して発動する。

 デッキから1枚ドロー、さらにトイポットを追加で破壊し、もう1枚ドローだ!」

 

 手の付いた極彩色の羽根の様なモンスターがトイポットを解体し、素良に3枚ものカードを持ってくる

 

「そして、トイポットが墓地に送られたことにより効果発動

 デッキからエッジインプ・シザーかファーニマルモンスターを手札に加える。

 僕はファーニマル・ベアを手札へ

 さらに永続魔法、デストーイ・サンクチュアリを発動!」

 

 またもや飴を齧り喰らった素良がカードを発動させると、お菓子だらけの世界の中に夜が訪れる

 そしてその夜を照らし出す多数のライト、それを発しているのはおもちゃ箱の中身をぶちまけた様な騒がしくも散らかった建物、教会と言うよりも城の様だ

 

「このカードは手札を1枚捨てエクストラデッキからデストーイモンスターを2体、墓地に送って発動できる。

 僕は今、手に入れたアクションカードを捨てて、エクストラデッキのデストーイ・チェーン・シープとシザー・ウルフを墓地に送る。

 これで僕のフィールドに存在する融合モンスターはデストーイモンスターとして扱うようになった。」

 

「肝心の融合モンスターが居ないみたいだけど、どうするんだ?」

 

「焦るなよ。

 さらに僕は魔法カード、融合識別(フュージョン・タグ)を発動

 自分フィールド上のモンスター1体を対象とし、エクストラデッキの融合モンスターを相手に見せる。

 このターン、対象モンスターを融合素材とする場合、その見せたモンスターと同名カードとして融合素材にできる。

 僕はディスカバー・ヒッポを対象にデストーイ・シザー・ベアを見せる。」

 

 ディスカバー・ヒッポの首にタグ付きの首輪が巻かれる

 そのタグには腹から鋏が飛び出したクマのぬいぐるみが描かれていた

 

ディスカバー・ヒッポ「ヒポッ!?」

 

「これでディスカバー・ヒッポはシザー・ベアとして融合素材にできるようになった。

 後悔するなよ・・・僕はさらに魔法カード、魔玩具融合(デストーイ・フュージョン)を発動!

 自分フィールド上、墓地からデストーイ融合モンスターによって決められた融合素材モンスターを除外し融合召喚を行う!

 僕は墓地のデストーイ・チェーン・シープとシザー・ウルフ

 そして、シザー・ベアとして扱うディスカバー・ヒッポを融合!」

 

 墓地から這い出た、鋏や針が突き刺さったボロボロのオオカミのぬいぐるみと、鎖で吊り下げられた羊のぬいぐるみが、ディスカバー・ヒッポを混沌とした渦の中に引きずり込む

 

ディスカバー・ヒッポ「ヒィ!?ヒポオオオォォォォォ!!」

 

「悪魔宿りし非情の玩具よ、哀れな捕らわれし獣を飲み込み、刃向う愚民を根こそぎ滅ぼせ!融合召喚!!」

 

――ズドドオオオォォォォォン!!

 

 混沌の渦から巨大な何かが落ちてくる

 熊のぬいぐるみのような中心の後ろから2本の首が生えたような異様な姿

 見る者に驚愕を持って笑顔を与える玩具は、歪に交じり合い、破壊を持って恐怖を与える兵器となって降臨する

 

「現れ出でよ!レベル8!全ての玩具の結合魔獣!デストーイ・マッド・キマイラ!!」

 

マッド・キマイラ ATK2800

――きゃはははははhhhhh

――うははhっははははhh

――ひゃひゃひゃやhhyhy

 

「でか!?」

 

「なに・・・あれ・・・」

 

「なんか怖い・・・」

 

「遊矢・・・」

 

「マッド・キマイラの攻撃力は、元々の持ち主が相手となる、自分フィールドのモンスターの数×300アップする。

 このカバどもは、元々は遊矢のだからマッド・キマイラの攻撃力は1200アップ!」

 

 マッド・キマイラ ATK2800→4000

 

「僕を馬鹿にしてくれた遊矢にはキツイお仕置きをしたい所だけど、まずは僕のモンスターを返して貰うよ。

 マッド・キマイラでエッジインプ・シザーに攻撃!

 何を伏せてるか知らないけど、マッド・キマイラが戦闘を行う場合、相手はダメージステップ終了時まで魔法、トラップ、モンスターの効果を発動できないよ!」

 

 マッド・キマイラの正面の熊の口から砲弾が発射されエッジインプ・シザーを吹き飛ばす

 

「マッド・キマイラが戦闘で相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、そのモンスターの攻撃力を半分にして自分フィールドに特殊召喚できるけど

 モンスターゾーンが全て埋まっちゃってるから、発動できない。」

 

「うちのカバートークン達は本当にいい仕事するなぁ」

 

「ウザいだけだよ。

 手札のファーニマル・ベアの効果発動

 1ターンに1度、このカードを手札から捨ててデッキからトイポットをセットする。

 僕はこれでターンエンドだ!」

 

「いいね、化けの皮が剥がれて来たじゃないか。

 俺のターン、ドロー

 さて、十分に活躍してくれたカバートークン達もそろそろ、退場の時間だ。

 俺はファーニマル・オウルをリリースしてEMカレイドスコーピオンをアドバンス召喚」

 

カレイドスコーピオン「クルル」

          ATK100

 

 傷つける鋏は仲間を守る盾に、毒持つ針は役者を照らし出すスポットライトに変わった蠍が登場し

 その尻尾のスポットライトでオッドアイズとカバートークン達を照らす

 

「なに、これ?」

 

「役者は退場も派手にってな。

 カレイドスコーピオンの効果

 1ターンに1度、自分フィールド上の表側表示モンスターを対象として発動

 そのモンスターはこのターン、相手フィールド上の特殊召喚されたモンスターすべてに1回ずつ攻撃できる。

バトル!オッドアイズでカバートークン4体に攻撃」

 

 オッドアイズは気遣うかのように弱めのブレスをカバートークン達の足元に向けて撃ち

 カバートークン達はその足元で爆発した爆風に乗り退場していった

 

「カバートークン達が居なくなったことにより、マッド・キマイラの攻撃力は元に戻る。」

 

 マッド・キマイラ ATK4000→2800

 

「でも、そのモンスターじゃ

 マッド・キマイラには勝てないよ!はぐっ!残念だったね。」

 

 無駄な足掻きだと、馬鹿にしたように素良はスナック菓子を貪り食い、アクションカードを手にする

 だがそんなことは遊矢は百も承知だ

 

「だけど、これで俺はエクストラデッキのモンスターを使えるようになった

 俺はスケール4のEMマンモスプラッシュをペンデュラムゾーンにセッティング」

 

 闇夜に浮かび上がる光の柱、灰色の土人形の隣に上ってくるのは紫色の毛皮を持つ太古の獣

 

「これでスケールは4と1、手札からレベル2のEMトランプ・ガールをペンデュラム召喚だ。」

 

トランプ・ガール「ははっ」

        DEF200

 

「そのモンスターは!?」

 

「河川敷のデュエルを見てたって言うなら、分かるだろう?

 お前が融合で勝負してくるなら、俺も同じ土俵で戦ってやるよ

 トランプ・ガールの効果発動

 1ターンに1度、自分メインフェイズに融合モンスターカードによって決められた

 このカードを含む融合素材モンスターを自分フィールドから墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 俺はEM(エンタメイト)モンスター、トランプ・ガールとオッドアイズモンスター、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンを融合

 現れろ、EM(エンタメイト)オッドアイズ・メタル・クロウ」

 

 道化師の少女と二色の眼の竜が混じり、新たなモンスターが産声を上げる

 その姿は重厚な鎧を身に纏い、鋭い鋼の鉤爪を持つ人狼

 

メタル・クロウ「グオオオォォォォォォン!!」

       ATK3000

 

「攻撃力3000・・・」

 

「そうだ。

 そしてこいつは、自身の攻撃宣言時に自分フィールド上の全てのモンスターの攻撃力を300ポイントアップさせる効果を持つ、次のターンでその不細工な玩具も終わりだ。

 おっと、俺が融合召喚したことでユーゴーレムのペンデュラム効果が発動する。

 墓地またはエクストラデッキの表側表示のEM(エンタメイト)ペンデュラムモンスターの中から1枚を選び手札に戻す

 俺はギタートルを戻し、ターンエンドだ」

 

「僕のターン、ドロー

 次のターンだって?そんなの渡すわけないじゃん

 墓地のエッジインプ・シザーの効果で手札を1枚デッキトップに戻し、このカードを特殊召喚」

 

エッジインプ・シザー DEF800

 

「トイポットをリバースして効果発動

 デッキトップのカードはもちろん、ファーニマルモンスターだ。

 来い、ファーニマル・ドッグ!」

 

ファーニマル・ドッグ「わん!」

          ATK1700

 

 天使の羽根が生えた子犬のぬいぐるみといった装いのモンスターが現れるが、それは無情の悪魔を呼ぶための供物でしかない

 

「ファーニマル・ドッグの効果

 1ターンに1度、手札からこのカードが召喚、特殊召喚された時

 デッキからエッジインプ・シザーまたはファーニマル・ドッグ以外のファーニマルモンスターを手札に加える。

 僕が手札に加えるのは、ファーニマル・ペンギン」

 

「どれだけ、手札を増やす気だよ」

 

「こんなのほんの序の口さ。

 墓地の2枚目のファーニマル・ウィングの効果を使い

 ファーニマル・マウスとこのカードを除外し、さらにトイポットを墓地に送ることで合計2枚ドロー」

 

(本当はエッジインプ・シザーを手札に加えて、シザー・ウルフでボコボコにしてやりたいけど、あのワンコロが邪魔だな)

 

「さらにトイポットの効果でファーニマル・ベアを手札に加える。

 そして、永続魔法、デストーイ・ファクトリーを発動

 このカードは自分の墓地の融合またはフュージョンと名の付く魔法カードを1枚除外し、1ターンに1度、デストーイ融合モンスターを特殊召喚する。

 僕はフィールドのエッジインプ・シザー、ファーニマル・ドッグと手札のファーニマル・ペンギン、キャットを融合」

 

 デストーイ・サンチュクアリの扉が開かれ、デフォルメされたペンギンと猫が鋏の悪魔と共にベルトコンベアで謎の機械に放り込まれる

 

「悪魔の爪よ!餓えた牙よ!冷たき心よ!忍び寄る足よ!

 今、一つとなりて新たな力と姿を見せよ!

 融合召喚!現れ出ちゃえ!レベル6!すべてを引き裂く密林の魔獣!デストーイ・シザー・タイガー!」

 

 機械が停止し、仕上がったのは継ぎはぎだらけの虎のぬいぐるみ

 だがその腕は鋏が突き刺さって体に繋がっており、腹からも巨大な鋏が生え、口の部分からは謎の紅い目が光を放っている

 それはデストーイ・サンクチュアリの中から這い出し、狂った産声を上げる

 

シザー・タイガー「うはははははっははhhh」

     ATK1900

 

「シザー・タイガーは自分フィールドのデストーイモンスターの攻撃力を

 自分フィールドのファーニマルとデストーイモンスターの数×300ポイントアップさせる。」

 

 シザー・タイガー ATK1900→2500

 マッド・キマイラ ATK2800→3400

 

「それだけじゃない

 このカードの融合召喚に成功した時、融合素材モンスターの数まで、フィールド上のカードを選択して破壊する

 やっちゃえ、シザー・タイガー!その犬っころとセットカード3枚を破壊だ!」

 

「やらせない。

 トラップ発動、ブレイクスルー・スキル

 相手フィールド上のモンスター1体の効果をターン終了まで無効化する」

 

 シザー・タイガーの腹の鋏が伸び、メタル・クロウと遊矢のセットカードを挟み込もうとするが、メタル・クロウは強固な手甲を装備した腕を振り上げ、その鋏をたたき折る

 

「ちっ!やっぱり防ぐか・・・」

 

「シザー・タイガーの効果が消失したことにより、デストーイモンスターの攻撃力も元に戻る。」

 

 シザー・タイガー ATK2500→1900

 マッド・キマイラ ATK3400→2800

 

「融合素材として墓地に送られたファーニマル・キャットの効果により、墓地の融合を手札に

 さらにファーニマル・ペンギンの効果

 デストーイの融合素材としてこのカードが墓地に送られた場合、デッキから2枚ドローして、その後1枚を捨てる。」

 

「融合を手札に加えたか」

 

「そうだよ!しっかり見せてあげるよ、僕の本気を!

 融合発動、手札のファーニマルモンスター、ファーニマル・オクトとエッジインプモンスター、エッジインプ・DTモドキを融合!

 悪魔の使者よ!偽る者よ!今、神秘の渦で一つとなりて新たな力と姿を見せよ!

 融合召喚!現れ出ちゃえ!レベル8!自由を奪い闇に引き込む海の悪魔!

 デストーイ・ハーケン・クラーケン!」

 

 混沌の渦の向こうから浮上する紫の烏賊の姿の悪魔

 その触碗の先は鋭い鎌となっていて哀れな獲物を待ちわびている

 

ハーケン・クラーケン「ゲへへへッ!」

          ATK2200

 

「ハーケン・クラーケンの効果発動

 このターン、ハーケン・クラーケンのダイレクトアタックを封じる代わりに、相手モンスター1体を墓地に送る。

 消えちゃってよ、オッドアイズ・メタル・クロウ」

 

――ザシュ!

メタル・クロウ「ギャオオオォォン!!」

 

「「「「うっ!?」」」」

 

 ハーケン・クラーケンの鎌がメタル・クロウを惨殺する

 見ていた柚子たちはその凄惨な光景を見て、顔を青ざめさせる

 

「はははっ!これで遊矢、君のモンスターは雑魚と壁モンスターだけだ。

 そして、ハーケン・クラーケンは2回攻撃が出来る。

 終わりだよ!バトル、デストーイ」

 

「バトルフェイズ開始時にトラップ発動!死魂融合(ネクロ・フュージョン)

 

「何!!死魂融合(ネクロ・フュージョン)!?」

 

「墓地の融合素材モンスターを裏側表示で除外することで、融合召喚を行う」

 

「墓地のモンスターで、相手ターンに融合するだって!?」

 

「俺は墓地のEM(エンタメイト)モンスター、レインゴートとレベル5以上の闇属性モンスター、曲芸の魔術師を裏側で除外して融合

 さぁ!存分に暴れな!EM(エンタメイト)ガトリングール!」

 

ガトリングール「ハハhハハハhHHHHッ!!」

       ATK2900

 

 玩具の姿をした刃物を持つ悪魔たちの前に現れる、機関砲を持った屍鬼

 早く撃ちたくてうずうずしているが、まだその時ではない

 

「うげぇ~!!でたー!?」

 

 柚子もなにか言っているが、今は気にしている時ではない

 

「ガトリングールの効果発動

 それにチェーンしてユーゴーレムのペンデュラム効果を、さらにチェーンして、マンモスプラッシュのペンデュラム効果を発動する。

 チェーンの逆処理によりマンモスプラッシュの効果

 融合モンスターが自分フィールド上に特殊召喚された時

 エクストラデッキの表側表示のオッドアイズペンデュラムモンスターを特殊召喚する。

 来い、EM(エンタメイト)オッドアイズ・ライトフェニックス」

 

ライトフェニックス「クエェー!!」

         DEF1000

 

「ユーゴーレムの効果でエクストラデッキのトランプ・ガールを手札に加え

 最後にガトリングールの効果、フィールド上のカード1枚に付き、相手に200ポイントのダメージを与える。

 フィールドのカードは全部で12枚、よってダメージは2400ポイントだ。」

 

 待ってましたとばかりに火を噴くガトリングールの機関砲

 素良はそれを受けて大きく吹き飛ばされ転がる

 

「うわああぁぁぁ!!くっ・・・うぅ・・・やって・・・くれるね。」

LP4000→1600

 

「まだ終わらないぞ。

 ガトリングールはペンデュラムモンスターを融合素材にして召喚された時

 相手モンスターを1体破壊し、その攻撃力分のダメージを与える。

 俺はデストーイ・マッド・キマイラを破壊する。」

 

「やった、遊矢先生の逆転勝ちだ!」

 

「そうは・・・いかないんだよ!

 アクションマジック、ミラー・バリア!

 このカードの効果で、マッド・キマイラはこのターン、効果じゃ破壊されない!」

 

 ガトリングールの銃弾がさらにマッド・キマイラをハチの巣に変えようとするが

 歪んだ鏡のようなものが、マッド・キマイラを覆い銃弾を防いでいた

 そして、ガトリングールの銃弾はついに弾切れを起こした

 

「ちっ!これを防いでくるのか・・・」

 

「はははっ!残念だったね。

 そいつがそのうち現れるだろうと思ってとっておいたのさ。

 最後の反撃も無駄に終わったね。」

 

「くっ!?」

 

「まぁ、中々楽しめたよ。

 この僕に本気を出させたこと、褒めてあげる。

 これで終わりさ!行け!ハーケン・クラーケン!カレイドスコーピオンを切り刻めー!!」

 

 カレイドスコーピオンに迫る無数の鎌、遊矢はそれを呆然とそれを見つめるだけ

 

「・・・・・・・・・・・な~ん、ちゃって!!」

 

 という事はなかった

 

「相手モンスターの攻撃宣言時に、トラップ発動!立ちはだかる強敵!!」

 

「何!?」

 

「さらにチェーンしてオッドアイズ・ライトフェニックスの効果発動

 自身をリリースし、自分フィールド上のEM(エンタメイト)モンスターの攻撃力を1000ポイントアップさせる。

 この効果は相手ターンでも発動できる。

 ガトリングールの攻撃力を1000ポイントアップ!」

 

 ライトフェニックスは自身の姿を炎へと変え、ガトリングールの弾の尽きた機関砲に宿る

 シリンダーは高速で回転し、火花を散らし、炎を噴き上げる

 活気が戻った相棒にガトリングールも嬉しげだ

 

「さらに立ちはだかる強敵の効果で、お前は俺の選択したモンスター、もちろんガトリングールと戦ってもらうぞ

 お前の攻撃表示モンスター全てでな!!」

 

「なんだって!?」

(僕のライフは1600、ハーケン・クラーケンを破壊されたら・・・)

 

 あまり知られてない事だったが、スタンディングデュエルでも長考時間は3分と決められている

 だが、アクションデュエルではとっさの判断力が求められるため、30秒と短く設定されている

 そして、バトルステップは攻撃が着弾するまでと言う、ごく短い間である

 

 素良は急いで自分の足元のラムネ菓子を大量に口に押し込み、アクションカードを出現させ発動させる

 

「アクションマジック!回避ぃー!!モンスターの戦闘を無効にするー!!」

 

 ガトリングールは早速試し打ちだとばかりに、鎌の迫るカレイドスコーピオンの前に躍り出て

 ハーケン・クラーケンの鎌を撃ち落とす

 

「おおぉー!よく躱したな

 だが次はそう上手くいくかな?

 忘れてないよな?その烏賊モドキは2回攻撃が出来るってことを!」

 

 邪魔をされたハーケン・クラーケンは無謀にも怒りで我を忘れて、勝てないはずのガトリングールに立ち向かっていく

 

「くっ!?」

 

 素良は急いで、近くにあったジュースの滝に飛び込む

 だがジュースは炭酸が混じっていたのか、彼の鼻や目を刺激する

 それでも一定の量を飲み込んだことでアクションカードが彼の下に出現した

 

「がはっ!!うっ、アクションマジック、奇跡!!

 戦闘ダメージを半減させ、その戦闘によって自分のモンスターは破壊されない!!うわっ!?」

 LP1600→750

 

 涙目でジュースまみれになりながら、アクションカードを発動させた素良の奮闘によって

 身の程を知らない海の悪魔は、その触手を炎の弾丸に焼かれるだけに留まるが

 悪魔の召喚者である素良に流れ弾が何発か降り注ぐ

 だが、不死鳥の力が宿った機関砲の弾は尽きることがない

 

「ま、まて!シザー・タイガー!!」

 

 仲間の仇だとばかりに密林の襲撃者は、敵に立ち向かっていく

 だが、それは愚行以外の何物でもない

 

――きゃああぁぁぁぁぁぁ!!

――助けてくれえぇぇー!!

――よくも俺の友達をおおぉぉぉぉ!!

 

 素良は急いで近くにあったチョコの噴水に頭を突っ込む

 だが、そのチョコレートは熱を持っており、体感度が最小になっているとはいえ

 いきなり、口の中に入れた素良は咽せて吐きそうになるのを抑えて飲み込む

 

「がはっ!?・・・ごふっ!・・はぁはぁ・・・アクション・・・・マジッ・・ク・・・

 回・・避・・・シザー・・・・タイガーの・・・攻撃を・・・無効にする・・・」

 

 弾の尽きることのない相棒に上機嫌のガトリングールは、狙いもそこそこに乱れ打ちする

 その何発かは、シザー・タイガーの足元に着弾し、シザー・タイガーは転んだことによって火だるまになるのは避けられる

 

――お父さぁぁぁん!お母さぁぁぁん!!

――この子だけは!この子だけは!どうか、命だけは!!

――お前だけは!お前だけでもおおぉぉぉぉぉ!!

 

 

――勝てない相手に無謀にも立ち向かうモンスター

――そして、その後ろで逃げ惑う自分

 

 それは素良の脳裏にあるものを連想させる

 

「はぁはぁ・・・・ア・・・クション・・カード・・・・」

 

 もつれた足が絡まり、その場に倒れ込む

 もう掴むことのない希望に縋るが、目の前の破壊の狂気に魅入られた悪魔は待ってはくれない

 そして、歪な悪魔の玩具が砲塔を、それに向けたことが合図となる

 

「時間だ。」

 

――ドルルルルウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!

 

 無数の炎の弾丸が玩具の悪魔に風穴を開けて行く

 ガラクタとなったそれが崩れ落ちる寸前に見た素良の光景は

 破壊と勝利に酔う、悪魔の姿――その様は

 

――ハハハハハhhhッハハハハハッはハアッ派はhhッはアァァァ!!

 

 自分に重なって見えた

 LP750→0


 

 炎に焼かれたお菓子の国が光となって消えていく

 デュエルは終わったが修造も柚子たちも、目の前で繰り広げられた壮絶な光景に声が出せない

 素良は未だに床にうつ伏せになったまま動かない

 

(アクションマジック、キャンディ・シャワー

 相手のモンスターを守備表示にするカード

 最後に取られてたら、まだ分からなかったな。)

 

 自分の手札に最後に余ったアクションカードを見て、そんなことを考える遊矢

 そして、その足をゆっくり素良に向って進める

 

「俺の勝ちだな、素良・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

「試験の結果だが・・・・まず、お前は性格に難ありと判断した。

 弱いものを甚振ろうとするような、ゲスい考えが見え隠れしている。」

 

「・・・・・・・・」

 

「普段のアレは、キャラづくりか何か?それとも二重人格?まぁ、どっちでもいいか。」

 

「・・・・・・・・」

 

「だが、最後まで諦めないで足掻いたことは、デュエリストとして及第点だ。」

 

「・・・・・・!!」

 

「性格の方も・・・まぁ、普段、あれだけ隠せてるんだから問題ないだろう

 実力の方は申し分なし。」

 

「えっ?ちょっと、遊矢、それって・・・・」

 

 柚子が遊矢の言葉で我に返り、声をかける

 その質問の答えは、遊矢が素良に手を差し伸べたことで返される

 

「これからよろしく頼むよ、同僚。」

 

 遊矢が素良に掛けた言葉、その言葉に素良が返した返事は

 

―ドスッ!!

 

「ぐおぉ!?」

 

―無言の腹パンだった

 

「何上から目線で言ってくれてんだよ!このド外道!悪魔ー!鬼ー!!」

 

 立ち上がった素良はよほど頭に来たのか、普段の冷静さもなく子供らしく感情を露わにする

 

「ごほっ!ごほっ!何するんだよ!このチビ助が!!」

 

「ちびって言う方が、チビなんだよ!

 いいか!次は絶対!僕が勝つんだからな!!でかい態度、取ってるんじゃないぞ!!

 同僚ってなら、僕と遊矢は対等だろ?」

 

「はんっ!チビのくせにでかい口を叩くなよ!

 同僚でも先輩と後輩の関係だ!それに次も勝つのはこの俺だ!!」

 

「僕だ!!」

 

「俺だ!!」

 

「僕だ!!」

 

「俺だ!!」

 

「僕ー!!」

 

 突如始まる子供の喧嘩に柚子は呆れてものも言えない

 タツヤ達は2人の剣幕に声をかけられずにいた

 

「はぁ~これから、我が遊勝塾はいったいどうなってしまうんだ・・・」

 

 蚊帳の外の修造だけがモニターに映る2人の喧嘩する姿に、これからの不安を感じていた

 




不死鳥!機関砲!
これがフェニックスガトリングコンボだ
フハハハハッ!!(想定していたものではない)

何がフハハハハッ!だよ!この悪魔!鬼畜!ゲスー!!

ゲスはお前には言われたくないよ

ふんっ!ところで僕が住む所ってどこ?

えっ?俺の家

はっ!?

次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『嘘つきたちの夜』


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嘘つきたちの夜

書いている途中でいいサブタイトルが思いついたので変更しました

遊矢と素良の後日談と名前しか出なかった遊勝の出る過去編です。
書くにあたって、遊勝のデュエルを見返してみましたが
あれって、ユーリが言っていたようにだんだん腹立ってきそうなんですよね


 デュエルアカデミア

 「遊戯王デュエルモンスターズGX」に登場するデュエリスト養成校である

 世界各地に姉妹校があるが物語の舞台になる本校は、絶海の火山島に建っており、いわくつきの場所が多々あるという場所だ

 「遊戯王ARC―V」でも4つの次元世界の1つ、融合次元に存在するがそこはGXとは違い、生徒に洗脳教育を施しアカデミアに絶対の忠誠を誓わせ、少年兵に仕立て、各次元へ侵攻している侵略者の本拠地

 

 そして、俺の隣を歩いてる、この紫雲院 素良はそのデュエルアカデミアの兵士

 

 素良とデュエルし、家へ持ち帰る粗方の資料をまとめた俺は素良を連れて家へ向かっていた

 

「ねぇ、遊矢?僕の泊まる場所を用意するって言っていたけど、それってどこなの?

 僕、君に付いてこいとしか言われてないんだけど?」

 

「ん?あ~俺の家だ。」

 

「はぁ?」

 

「家には今、母さんと俺、それから犬や猫しかいないからな

 部屋が余りまくっているんだよ。」

 

「へぇ~っていうか、僕が泊まるってお母さんには説明したの?」

 

「一発でOKだとさ。

 心配しなくても結構広い家だし、家事とか手伝えとも言わないから、ゆっくりしてくれ。」

 

「そうさせてもらうよ・・・・・嫌なもの思い出しちゃったし・・・・・・」

 

「ん、なんか言ったか?」

 

「なんでもない。

 そういえば、遊矢のお父さんって」

 

「あっ、ここが俺の家だ。」

 

 2階建の一軒家、広いが素良が何か動いた時にはすぐに気付けるだろう

 この世界の素良が本当にアカデミアの尖兵なのか、漫画版の様な望みの未来のために戦っている使者なのかは不明だ

 ただ、デュエルの際に見せた最後の表情、あれは何か嫌な物を思い出してしまった表情だ

 いや、嫌な物を自覚したと言った方が正しいか・・・とにかく、こいつには性格とは別の秘密がありそうだ

 

「ただいま、母さん。」

 

「お~お帰り、遊矢、その子が話の子かい?」

 

 切れ長の目をしたオレンジ交じりの金髪の女性『榊 洋子』

 昔は伝説と呼ばれたスケバンデュエリストだったらしいが、その時に榊遊勝と出会い、結婚したらしい

 ぶっちゃけ、見た目だけなら俺の記憶があるときから、ほとんど変わっていない

 一体何歳なんだと聞きたいが、怖いので聞いてない

 

「あぁ、旅のデュエリスト、紫雲院 素良っていうんだ

 うちの塾の子達に、いろいろ教えてもらおうと思ってスカウトしたんだ。」

 

「よ、よろしく・・・」

 

「へぇ~どんなゴツイのが来るのかって思ってたけど、可愛い子じゃないかい。

 よろしくな、素良君

 自分の家だと思って、ゆっくりして良いからね。」

 

「は、はい、ありがとうございます・・・」

 

 うん?ぶりっこするかと思ったけど、なんか、たじたじだな

 

「さぁー!腹減ったろ?

 ご飯出来ているから、手を洗ったらテーブルにきな。」

 

 そう言い残し、母さんはキッチンに向かう

 まぁ、この後もいろいろ仕事が残ってるし、早く食べるか

 

「ん?どうしたんだ、素良?上がらないのか?」

 

「あっ、いや、ほら僕ってずっと旅してたからさ、こういうの久しぶりで・・・」

 

「ふ~ん、お前も随分可愛いとこあるじゃん。」

 

「失礼だな、僕は何時だって可愛いよ!」

 

「自分で言うか、普通・・・」

 

 あっ!そういえば、素良って・・・


「うん、洋子さん、これ美味しいよ!」

 

「あ・・・うん・・それはよかった、御代わりもして良いからね。」

 

「うん、ありがとう!」

 

 うわ~塩じゃけにチョコソース、みそ汁に練乳、煮物に蜂蜜、ご飯にカスタード・・・

 昼のスウィーツ・パラダイスといい、見てるこっちが胸焼けしてくるな

 いつの間にか、素良の調子戻ってるし、さっきまでのは糖分不足か?

 

「お前、よくそんな食べ方できるな?」

 

「ええ~良いじゃん、別に」

 

「まぁ、いいけどさ・・・・病気になるぞ?」

 

「僕は、これの方が美味しいからいいの!

 あっ、さっきは聞きそびれたけどさ

 遊矢のお父さんの榊遊勝って、どんな人?」

 

 父さん?なんでこいつが・・・って、まぁ、塾の名前になってるしな

 

「父さんはね、素敵な人だったよ。

 いっつも、デュエルで人を笑顔にすることばかり考えていた。

 そして、あたし達もそんな榊遊勝の姿を見るのが大好きだった。」

 

「デュエルで、笑顔に?

 そういえば、あの塾のポスターの所にエンタメデュエルって書かれてたけど、あれってなんなの?」

 

 あ~休憩室に張っている古いポスターか

 今の遊勝塾は生徒が溢れかけなんで、宣伝用のポスター廊下ぐらいにしか張ってないんだよな

 モンスターが書かれているだけの地味な奴だけど

 あの古いポスター結構でかいから、それで興味持ったか

 

「あ~言ってしまえば、ショープロ用の魅せデュエルだな。」

 

「魅せデュエル?」

 

「勝ち負けよりも、お客を湧かせるような派手な演出やプレイングをするやり方だ。

 物語になぞらえてプレイしたり、効果的な使い方よりもソリッドビジョンの動きに重点置いたりしてな。」

 

「へぇ~でも、それってデュエルしている方は本気じゃないってこと?」

 

「そうだな、大抵ショープロの人はもっと実力が高い人が多いな。

 好きでやってる人もいるし、普通にやったらランキングに載れないから、仕方なしにやってる人もいるけど。」

 

「でも、榊遊勝は違った。

 華麗なプレイングと巧みな話術、そしてモンスターと共にフィールド内を駆け巡る躍動感

 まさに、アクションデュエルの革命児だったのよ!それでね」

 

 あ~また始まったよ、母さんの惚気話

 確かに榊遊勝がアクションデュエルの革命児だったのは間違いじゃない

 だけど、俺は別にあの人を尊敬しているわけじゃない

 いや、怒りすら覚えているのだ


 あの3年前の王座防衛戦の前夜の事だ

 

「こんな所に居たんだね、父さん。」

 

 思いつめた顔で土手に座り込む壮年の男性

 赤い奇術師風の衣装に身に纏った俺の父さん『榊 遊勝』だ

 

「遊矢か、どうしてここに?」

 

「探し物は得意だからね。」

 

 そう言い胸のペンダント、羽根の様な装飾の付いたクリスタルで出来た振り子を見せつける

 

「父さんこそ、どうしたのさ?

 夜中にこんなところで座り込んで、明日は大事な試合なんでしょ?」

 

「あっ・・あぁ・・・・そうだな。」

 

 歯切れが悪い答え、聞かなくてもわかる、いや、俺は知っている

 赤馬零児に赤馬零王の事を聞いたんだろう

 『赤馬 零王』レオ・コーポレーションの元社長にして、融合次元のデュエルアカデミアの支配者、プロフェッサーだ

 このスタンダード次元にリアルソリッドビジョンを作り出した大天才であり、父さんの親友

 

「どうしたのさ、思いつめた顔をして、明日の試合の事?」

 

「い、いや、実はだな、遊矢

 お父さんの親友が何か事件に巻き込まれたみたいなんだ。」

 

 巻き込まれたんじゃなくて、巻き起こしている方だと思うけど

 

「えっ!?大変じゃん!」

 

「あぁ、大変みたいなんだ。

 お父さんも彼の力になりたいんだが、そうするとしばらく戻れなくなってしまうかもしれなくてね。」

 

「えぇ~いやだよ、俺、父さんと離ればなれになるの

 事件って言うなら、警察に任せておこうよ~」

 

 赤馬零王によるアカデミアの乗っ取りと次元侵略

 それは父さんが一人向かったところで止められるものじゃない

 それどころか、貴方が動いた結果、そのしわ寄せは他の人たちに降りかかるだろう

 

「それに父さんはチャンピオンなんだよ?

 どこかに行っちゃったら、ファンの人たちが悲しんじゃうよ。」

 

 常に「デュエルで笑顔を」と言っているこの人なら、ファンの人のことを持ち出せば心が動くはずだ

 

「そ、そう・・・だな・・・・」

 

「そうだよ。

 ほら、明日は試合なんだから早く寝てよ。

 チャンピオンが寝不足で実力が出せませんでしたなんて、恥ずかしいだろ?」

 

「あぁ、分かった。

 遊矢、先に戻ってなさい。

 父さんはもう少しここに居るよ。」

 

「うん、じゃあ、お休み、父さん。」

 

「あぁ、お休み、遊矢・・・」

 

 これが俺が父さんを見た最後の記憶

 

 翌日の朝、俺の部屋の机の上に手紙が置いてあった

 

「 遊矢へ

 

 最初に謝っておこう、昨日の話は嘘なんだ、すまない

 本当は父さんの親友が大きな事件を起こそうとしているみたいなんだ

 でも、もしかしたら、父さんと話せば押し留まってくれるかもしれない

 彼が事件を起こせば、多くの人が悲しむことになるだろう

 

 だから、私は行くことにした

 もしかしたら、もう2度と会えないかもしれないが、私は必ずお前たちの下に帰ってくる

 それまで母さんをお前が守ってくれ、頼んだぞ、遊矢

 

                                    父さんより 」

 

―ドンッ!

 

 俺は手紙を読み終え、拳を壁に叩きつける

 赤馬零王は貴方が何か言ったところで止まるような相手じゃない

 相手は失ったものを取り戻すためには何でもやる狂人なんだぞ

 いくら親友が、いや、赤馬零王にとっては貴方すらも、ただの張りぼてにしか見えてないかもしれないのに

 

――うぐ・・・・ぐす・・・・・

 

 怒りを抑えた俺は一階に降りた、すると泣き声が聞こえてくる

 誰かなど考えるまでもないだろう

 

「・・・ゆう・・・・・や・・・・・・」

 

 母さんだ

 いつもの気丈な表情はどこへやら、子供の様に泣きじゃくっている

 その手元には手紙が握りしめられていた、内容は俺のと似た様な物だろう

 

「お・・・父さん・・・が・・・うぐ・・・・」

 

「うん、俺にもあったよ、父さんからの手紙が・・・・」

 

「どうして・・・あの人は・・・・うわ・・・ん・・・」

 

 泣きながら俺を抱きしめる母さん、安心させるため俺も抱きしめ返そうとするが・・・

 

 一瞬それを躊躇する

 

 俺にその資格はあるのか?

 愛するものが離れてしまった悲しみで泣いている、この人を

 本当の息子ではないこの俺が・・・

 その悲しみを受け止めることが出来る・・・いや、していいのか?でも

 

「うわああぁぁぁぁぁぁん!」

 

 あぁ、父さん、貴方は「デュエルで笑顔を」なんて言う資格はないよ

 貴方のエンタメデュエルを見るのを待っている、多くのファンの人も

 今日この日、貴方と戦うことを待ち望んだ王者への挑戦者であるストロング石島も

 そして、なにより・・・

 

「うわ・・・ぐっ・・・・わああぁぁ・・・」

 

 貴方を最も愛してくれる人を悲しませるなんて・・・

 

「・・・泣かないでよ、母さん。」

 

「うぐ・・・・」

 

 俺は母さんの肩に手を置き、互いの顔が見えるようにする

 

「父さんが言ってたじゃないか、泣きたいときは笑えって・・・

 母さんがそんなに泣いていると、俺まで泣きたくなっちゃうよ。」

 

「・・・・・・・」

 

「それに手紙に書いてあったんだ、必ず戻るって

 だからさ、父さんがいつ戻ってきてもいいように笑顔でいよう?」

 

「うぐ・・・そうだね・・・・息子に諭されるなんて、あたしもヤキが回ったね・・・」

 

 涙をぬぐって笑顔を作る母さん、悲しみを押し殺した悲しい笑顔だ

 

「うん、その方が母さんらしいよ・・・」

 

 俺は湧き上がる感情を押し殺して笑顔を作る

 その感情は悲しみじゃない、怒りだ

 

 あの晩、父さんを無理にでも止めておけば・・・

 俺に、自分の秘密を話す勇気があったら・・・

 

 母さんにこんな笑顔をさせないで済んだのに・・・

 

 起こるかもしれない未来、それを知っていてどうなるっていうんだ!

 結局何も変えられないじゃないか!!

 

 自分への怒りが俺の中を駆け巡る

 もしかしたら、その怒りがいつしか世界を焼き尽くしてしまうかもしれないけど

 

「さぁ!朝ごはん作るわよー!

 お父さんが食べられないのを悔しがるくらい豪華なの作っちゃうからねー!!」

 

 俺は母さんを悲しませないために、良い息子を演じるために、今は笑顔でいよう


 

「ねぇ~?なんで、僕が遊矢の部屋になんか、行かなきゃなんないの?

 僕は早く休みたいんだけど~」

 

「講義に必要な資料を渡すだけさ。

 明日、いきなり渡されるよりましだろ?」

 

 僕の前を歩く男、榊 遊矢

 アカデミアの生徒でもないのに融合召喚を使いこなして、本気の僕を倒した

 このスタンダード次元では考えられないくらい、異常な強さを持ったデュエリスト

 そして・・・僕の本性を知って受け入れてくれた、変な奴

 

「ほら、入りな。」

 

「うん、うわぁ・・・」

 

 所狭しとファイルの並んだ本棚

 パソコンやプリンターやコピー機なんかが並んでいる机

 デッキレシピやコンボパターンの書かれたメモ

 学生の部屋っていうより、教師や研究者の部屋みたいだ

 

「すぐにまとめるから、座って待っててくれ。」

 

 そういうと、遊矢はパソコンを起動させ何かを打ち込んでいく

 手持無沙汰になった僕はふと、さっき洋子さんに言われたことを思い出す

 

――自分の家だと思って、ゆっくりして良いからね

 

――きゃああぁぁぁぁぁぁ!!

――お父さぁぁぁん!お母さぁぁぁん!!

――この子だけは!この子だけは!どうか、命だけは!!

 

 それと同時に頭の中に響く、悲鳴

 

――これからよろしく頼むよ、同僚

 

――助けてくれえぇぇー!!

――よくも俺の友達をおおぉぉぉぉ!!

――お前だけは!お前だけでもおおぉぉぉぉぉ!!

 

 遊矢に昼間言われたことも思い出すけど、それが頭の中に響いた恨み言にかき消される

 僕はそれを飲み込むために、飴玉を口に入れる

 

 今日まで、その悲鳴が心地の良いものだった、壊すのが面白かった

 

 でも、今は、それがとても不快で頭から離れない

 黙っていると、その不快な悲鳴が響いてくるので遊矢に話しかける

 

「ねぇ?洋子さんは、あぁ言ってたけどさ

 遊矢はお父さんのこと、どう思ってるの?」

 

 遊矢はこちらを向かず、パソコンに打ち込み続ける

 気にはなった、遊矢は「魅せデュエル」というものに大して興味はない

 それは遊矢のデッキを見れば明らかだ

 なのにどうして、お父さんの開いた遊勝塾で講師をしているのか

 それにあの塾で、エンタメデュエルを教えていたのは過去の話になっているのも

 

「恨んでるよ。」

 

 帰ってきた答えは一言だった

 

「勝手にどっか行って、いろんな人に迷惑かけて、母さんを悲しませて・・・

 あの人は一晩でいろんな人の笑顔を奪っていったんだ。

 だから俺は、あの人を許せない。」

 

 淡々とした声、感情を押し殺している感じだ

 

「でも、まぁ、潮時だったのかもしれないな。」

 

「えっ?」

 

「実は父さんのデュエル、飽きられてきてたんだ。

 父さんのデッキってさ、手品をモチーフにしているんだけど

 長く愛用しすぎて、種が割れちゃってさ。

 それに、デュエルで笑顔をっていつも言ってたけど、対戦相手はそうじゃなかった。」

 

「えっ?どういうこと?」

 

「素良、お前の好きな物や人が見世物のダシに使われたら、どう思う?」

 

 遊矢の質問、そんなの答えは決まってるじゃないか

 

「ムカつくよ。」

 

 神聖な融合召喚やアカデミアが見世物になるなんて、僕には耐えられない

 なぶり殺しにしたくなる

 

「そうだよな・・・父さんのデュエルはまさにそんな感じだった。

 相手の行動の全ては自分のショーの一部や一幕にすぎない、って感じで

 だから、対戦相手やそのファンからは受けが元々よくなかったんだ。

 父さんの本心は別にして、相手も最初の数ターンは驚かされていたけど、だんだん腹立ってくるみたいでさ。

 まぁ、ショープロが本気でぶつかり合おうとする相手にいつもの調子でやったら、そうなるよな。」

 

 遊矢と真逆だ、遊矢のデュエルは本気で相手を叩き潰そうとしてくる気概を感じられた

 なのに僕は・・・

 

「別に父さんは本気を出さなかった訳じゃないんだ

 ショー風になるのも、父さんの言い回しや相手を自分のペースに乗せていただけで

 ただ、対戦相手やそのファンはふざけていると思った人も多かった、それだけさ。」

 

「・・・・・・」

 

「そして、王座防衛戦で失踪したことで父さんの株は大暴落

 アクションデュエルのパイオニアとして伝説にはなったけど、同時に卑怯者の代名詞にもなった

 っと、ほら、これが資料だ。」

 

 渡される紙の束、結構いろいろ書いてるな

 でも分からない、デュエルって・・・・

 

「ねぇ、遊矢?」

 

「ん、なんだ?」

 

「デュエルってさ、勝つのが楽しいんじゃないの?」

 

「それは『勝って、楽しかった』っていうんだ。

 それだけで満足しているんじゃ・・・デュエルの楽しさの半分くらいしか、解っていないな」

 

 

――翌朝

 

 「デュエルの楽しさ」そのもう半分ってなんだろう?そんなことを考えながら眠った次の日

 

「おぉ~素良君、おはよう!」

 

「おはようございま~す。」

 

 あくびをかみ殺し挨拶をする、あれ?洋子さんが先に食卓に座っている?

 

「おぉ~素良、起きたか。」

 

 エプロン姿の遊矢がキッチンから顔を覗かす、何してんの?

 

「素良君、今日はねぇ~遊矢が朝ごはん作ってくれたのよ。」

 

「えっ?」

 

 テーブルに並んだ朝食、トマトソースのかかったオムレツに付け合わせ

 何かが練り込まれたパン、コーンがいっぱい入ったスープ、これを遊矢が?

 

「じゃ、じゃあ、頂くね。」

 

 僕はとりあえずパンに、はちみつをかけようとしたが遊矢に止められる

 

「まった、一回それ、何もつけずに食べてくれないか?」

 

 また説教か、でも作ってくれたお礼代わりにパンを少しかじってみる

 

―甘い

 

「えっ?なにこれ!?」

 

 もう一齧りする、やっぱり甘い、菓子パンってわけじゃないのに

 それに砂糖やチョコレートみたいな甘さじゃないし。何か独特のにおいがする

 

「お~口に合ったみたいだな。

 それは玉ねぎ練り込んで作った、オニオンブレッドだ。」

 

「玉ねぎ!?玉ねぎってこんなに甘いの!?」

 

「まぁ、物は試し、全部1回そのままで食べてくれないか?」

 

 いわれるままにトマトソースのかかったオムレツを食べてみる

 さっきと違った爽やかな甘さが伝わってくる

 スープも飲んでみると一緒に口に入った粒コーンを噛んだら、優しい甘さが飛び出す

 

「うまくいったか

 オムレツにはフルーツトマトのソースを、そのスープに入っているコーンも糖度の高い品種だ。

 ポタージュにしようと思ったけど、朝からは重いからコンソメスープにした。」

 

「おぉ~本当においしいねぇ~

 でもさ、遊矢?何で全部、甘めの味付けなんだい?」

 

「なに、昨日の素良を見て、甘味以外あまり感じてないんじゃないかなって思ってさ。」

 

「!?」

 

 確かにそうだ、僕はアカデミアの訓練の中ではクッさい、レーションしか支給されなかった

 唯一違ったのは、嗜好品として支給される飴玉ぐらいだ

 だから、僕はいつしか甘いもの以外、美味しいと感じなくなっていた

 

「えっ!?そうなのかい・・・」

 

 洋子さんは心配そうな目で見てくる

 なんで、昨日会って、突然転がり込んできた居候なのに、なんでそんな目が出来るの?

 

「まぁ、何があったとは聞かないけどさ

 食べるっていうのは人を良くすることって良く言うじゃん?

 出来るだけお前がうまいと思うものを作ってやるよ

 お前のこと知り合いに話したら、専用メニューいっぱい考えてくれるってよ。」

 

「えぇ~遊矢、ミッチーと昨日、話したのかい?ずっるーい!!」

 

「母さん、そうやってがっつくから、未知夫が苦手意識持つんだよ・・・」

 

 やっぱり僕は君のことがわからないよ、遊矢

 でも、僕はこの騒がしい食事の時間が、今が楽しいと思った、それだけは確かだ

 




さぁー!次はカードに愛されたグレェーィトな俺!沢渡シンゴの活躍だ
なに、LDSの人間が襲われている?犯人はエクシーズ使い?
そんなの俺が軽くひねってやるよ!
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『暗躍する反逆』
って、お前は・・・榊遊矢!?


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暗躍する反逆

グレート沢渡さんVS不審者その1

 突然なのですが、今後の展開について皆様にご協力をお願いしたいことがあります。
 それは、かなり先の話なのですが赤馬零児の弟、零羅の使う「CC」デッキについてです。

 未OCGカードなので効果もアニメ的な効果(モンスター化する魔法カード等)が多いため、類似カードをモデルにOCG仕様に仕立て直したんですがメインモンスターである「CC 隻眼のパスト・アイ」を持ってくる手段が少ないことと、EXデッキの枚数制限的にコンセプトが生かし切れないので、効果を少し盛ったり、各召喚法の属性対応モンスターを1つにまとめ
 また、それに伴って名前を少し変えた物を仮で作りました。

 オリカ状態になるので、盛った効果を削除するか、統合したカードを元に戻すかについてアンケートを実施させてもらいますので、ご協力お願いします。

 結果次第ではOCG仕様にした効果以外はすべて削除、統合したカードも元に戻して書かせていただきますのでお願いします。
 活動報告にメインに入る「CC」関係カード、「ペルソナ」カード、EXデッキに入るカードの3つに分けて制作したカードを置いておきますので、投票してくださる際は読んでから投票してくれると嬉しいです。

 アンケートに完全にアニメカードを希望する欄を設けました
 また、ご意見によってはアンケートの最終結果でも効果をアニメ寄りにすることがありますが、代わりに初期の「RR」のような感じで「CC」としてはかなり動きづらくなるので、ご容赦ください


 倉庫街の屋根の上、黒い影が手元を見ている

 そこにあるのは羽根を模したLDSのバッチ

 忌々しい物を潰すかのごとく、力強く握りしめる

 

 影がふっと目を上げると、ゴーグル越しの目が驚愕で大きく開く、その目線の先には

 

「なぜ、ここに・・・」

 

 紫がかった赤髪を二房に結い上げた、舞網第二中学の制服を身に纏った少女『柊 柚子』が居た


 舞網市内にある倉庫街、今は特に使われていない倉庫の中で、楽しげな声が聞こえていた

 

「いやぁ~やっぱり沢渡さん強すぎっすよ!」

 

「うん、あの男子たち瞬殺だった、ありがとう、沢渡さん」

 

「いいってことよー!!

 このてぇんさいデュエリストにしてカードに愛されまくった男!

 沢渡シンゴに喧嘩を売った罰を与えただけさ~!」

 

「ていうか

 また、ねねちゃん、ガラの悪いのにからまれたの?」

 

「でも、あいつらも馬鹿な奴らだよな~

 ねねちゃんも、めっちゃ強いのに」

 

「そうそう、次期LDS融合コースのトップデュエリストだもんな~」

 

「僕のデータによると

 今日、光焔さんに絡んできた奴らは、隣町の不良デュエリストグループだそうですよ」

 

「げっ!結構ヤバい連中じゃん・・・」

 

 寂れた倉庫の一角でソファーやダーツの的が設置されている場所

 そこに7人の少年少女がお菓子やジュースを飲みながらしゃべっていた

 

(やれやれ、榊遊矢の奴に押し付けられたときはどうなるかと思ったが、結構有能なやつらじゃねぇか)

 

「心配するなよ!

 その時は俺たちでぶっ潰せばいいのさ!

 あいつら結構強かったから、俺も楽しめそうだ・・・」

 

 黒門 暗次、シンクロコースの次期筆頭になるであろう男

 榊遊矢と同じ性質なのか、強い奴と戦えるからと、危険な笑みを浮かべていやがる

 

「うん、その時は私もできるだけ、頑張ってみる」

 

 光焔 ねね、融合召喚の使い手

 普段はおどおどしているくせに実は強い

 昔はとっとと負けたいとか思っていたらしいが、今はあいつの影響か、若干好戦的だ

 

「僕のデータによると、勝率は90%を超えていますね。」

 

 帝野 皇一郎、エクシーズを織り交ぜた高度なプレイングセンスを誇る奴

 こいつの情報収集力は大いに役に立つ

 

「マジかよ!」

 

「強過ぎっしょー!」

 

「さすが、沢渡さん!」

 

 柿本、大伴、山部、俺の昔からの子分

 俺をいつも褒め称える可愛い奴らだ

 

「沢渡ー!居るー?」

 

 ん、この声は・・・

 

「あっ、やっぱりいた!」

 

 柊柚子、一体この俺様に何の用だ?

 

「あっ!柚子さん」

 

「ねねちゃんもいたのね、暗次君や皇一郎君も」

 

「おう」

 

「ご無沙汰しております。」

 

 さっきからわかる通り、この新入り三人は元遊勝塾の塾生だ

 中学に上がる際、LDSに移籍したが、榊遊矢に俺しかLDSに知り合いがいないからと、面倒を押し付けられた

 だが、今となっては、なかなか良い取引になったと思う

 

「で、この俺様に何の用だぁ?柊柚子ぅ」

 

「もちろん、今日こそあんたをボコボコに叩きのめしてやるのよ!」

 

「はぁ?つまりデッキ調整に付きあえってことか?

 やめとけ、やめとけ、お前程度がこの俺に勝てるわけないじゃん」

 

「むぅ、あんた!デュエリストだったら挑まれたらちゃんと応じなさいよ!!

 あんたぐらいに勝てなきゃ、遊矢をぎゃふんって、言わせられないじゃないの!!」

 

「あいつ、また、なんかやったのか・・・」

 

「遊矢せんせー、何やったんだろう?」

 

「ふむ、柊さんのデッキと榊先生の性格から推測すると・・・バーンでの1ターンキルあたりかと」

 

「あぁ~やりそうだな~遊矢センセ・・・」

 

「っていうか、それなら沢渡さん」

 

「ただの八つ当たりの的ってこと?」

 

「とんだ、とばっちりだな・・・・」

 

 察しが付いた、沢渡の取り巻き達の同情の視線にいたたまれなくなった柚子は、沢渡をどうにか勝負に引っ張り出そうと急かす

 

「あうぅ・・・そ、そんなこと無いわよ!

 あっ!分かった!私に負けるのが怖いのね!この百流デュエリスト!!」

 

「はぁ~それなら俺に負け越している、お前は何流なんだよ・・・

 だが、そこまで言われちゃ、黙っていられないな!

 いいぜ、腹ごなしに付きあってやるよ!」

 

『待て!!』

 

 誰だ!?折角こっちがノって来たのに邪魔しやがって!

 目を入口の方に向けると、そこに居たのは夕日の光で浮かび上がった黒い影

 そいつはゆっくりと、柊柚子の隣に歩み寄る

 

「下がっていろ」

 

「はぁ?何、あなた!?」

 

 柊柚子に面識はなさそうだ、一体誰なんだこいつは?

 黒と濃い青の髪をぼさぼさに伸ばして、顔はゴーグルと防塵マスクで隠していてわからねぇ

 夏も近いのに、紅いストールを巻いて、体をすっぽり覆うマントを着ていやがる

 ・・・どう見ても不審者だ

 

「あっ!?沢渡さん!こいつ、最近噂になっているLDS狩りですよ!」

 

 帝野がこの不審者の正体に当たりを付ける、LDS狩り?

 

「制服組がもう何人も被害を受けているらしいです!

 情報によると強力なエクシーズモンスターを使って来るとか!」

 

「LDS狩りのエクシーズ使い?この人が・・・

 でも、これは私のデュエルよ!いきなり割り込んで!邪魔しないで!!」

 

 すごい剣幕だな

 まぁ、俺とデュエルしに来たのに邪魔されちゃ仕方ないか

 だが、やっこさんは柊柚子の話を聞いていないようで、ゆっくりと手で制する

 

「もう・・・キミを傷つけたくない」

 

「えっ?」

 

 プリンセスを助けに来たナイト気取りか!

 そいつに絡まれたのは、俺だっつうの!

 

「はっ!LDS狩りだか何だか知らないが・・・

 制服組を何人も屠っているなら、柊柚子より楽しめそうだ。

 この俺が軽くひねって!社長の前に突き出してやるよ!!」


『『決闘(デュエル)!!』』

 

 あぁー!もう!いったい何なのよ、この人は!?

 LDS狩りだか何だか知らないけど、私のデュエルの邪魔をして!

 私のこと知っているような口ぶりだけど

 私はこんな人知らないし、変なこと言っているし、わけわかんない!

 

「先攻は俺の様だな・・・俺は手札5枚、全てのカードを伏せる!」

 

「えっ!?」

 

「はぁ!?おいおい、突然しゃしゃり出て来た割には、それだけかい?」

 

 何この人、沢渡の言う様に5枚全部伏せるなんて・・・

 

「沢渡さん、ハーピィの羽根帚っすよ!」

 

「ノン、ノン、そんなカードじゃ面白くないだろぉ?

 俺が見せてやるよ、持ってるやつのデュエルをな!

 魔法カード、汎神の帝王を発動

 手札の帝王と名の付く、魔法かトラップを墓地に送ることで、デッキから2枚ドローする。

 俺は始源の帝王を墓地に送って、2枚ドロー

 

 さらに墓地の汎神の帝王を除外して効果発動

 デッキから帝王と名の付く魔法、トラップカードを3枚見せ、相手はその中から1枚選ぶ。

 そのカード1枚を自分の手札に加え、残りはデッキに戻す。

 俺が選ぶのは、帝王の深怨3枚だ。」

 

「ちょっと!それって選択になってないじゃない!」

 

「いいんだよ、そういう効果だからな。

 さあ、どれを選ぶ?」

 

「・・・右のカードだ。」

 

「オゥーケィ!そして、すかさず発動、帝王の深怨

 1ターンに1度、手札の守備力が1000で攻撃力が2800か2400のモンスターを相手に見せ、デッキから帝王の深怨以外の帝王マジック、トラップカードを手札に加える。

 俺は手札の冥帝エレボスを見せて、デッキから帝王の溶撃を手札に加える。

 

 さらに魔法カード発動、ワン・フォー・ワン

 手札のモンスターを1枚捨て、デッキ、手札からレベル1モンスターを特殊召喚する。

 俺は冥帝エレボスを捨て、デッキから天帝従騎イデアを特殊召喚」

 

イデア「はっ!」

   DEF1000

 

「さらにイデアの効果発動

 こいつが召喚、特殊召喚された場合、デッキからイデア以外の攻撃力800で守備力が1000のモンスターを守備表示で1体、特殊召喚する。

 来い、冥帝従騎エイドス!」

 

エイドス「ふん!」

    DEF1000

 

 沢渡に傅く、白銀と漆黒の鎧を身に纏った騎士たち

 さっき見せたエレボスを捨てたってことは、壁ってわけじゃなさそうね

 

「エイドスが召喚、特殊召喚されたターン、俺は通常召喚とは別にアドバンス召喚を1回行えるようになった。

 

 まだまだいくぜ!永続魔法、帝王の開岩

 こいつは1ターンに1度、俺が表側表示でモンスターのアドバンス召喚に成功した時、デッキからそのモンスターとカード名が異なる、守備力が1000で攻撃力が2800か2400のモンスターを1体、デッキから手札に加えることが出来る。

 ただしこのカードの発動中、俺はエクストラデッキからモンスターを特殊召喚出来ない。

 

 まぁ、俺のエクストラデッキにカードは端から1枚もないがな!

 そして、俺はイデアをリリースして、邪帝ガイウスをアドバンス召喚!」

 

ガイウス「ウオオォォォ!!」

    ATK2400

 

「邪帝ガイウスの効果発動

 アドバンス召喚に成功した時、フィールド上のカード1枚を対象として発動し、そのカードを除外する。イービル・ホール!」

 

ガイウス「ハアァ!」

 

 邪悪な瘴気を身に纏う皇帝が、それを球体の様にして飛ばすと伏せられていたカードの1枚を消し飛ばす

 除外されたのは『幻影死槍(ファントム・デススピア)』?聞いたことないカードね

 

「この効果で除外されたカードが闇属性モンスターの場合、相手ライフに1000ポイントのダメージを与える効果があるが・・・永続魔法みたいだな、ただのブラフか?

 だが、これで終わりじゃねぇ

 墓地に送られたイデアの効果発動

 除外されている帝王マジックかトラップを1枚、手札に戻すことが出来る。

 俺は汎神の帝王を手札に戻し、さらに永続魔法、帝王の開岩の効果によってデッキから氷帝メビウスを手札に加えるぜ。」

 

「流石、沢渡さん爆アドっすねー!」

 

「おっと、これだけで終わらないぜ。

 魔法カード、帝王の凍気を発動

 自分フィールド上に攻撃力2400で守備力1000のモンスターが存在する場合、フィールドにセットされたカード1枚を対象にして発動し、それを破壊する。

 さらに墓地からこのカードと別の帝王魔法、トラップカードを除外することで、さらにセットされたカードを破壊できる。

 俺はお前の右端のセットカードを破壊し、追加で帝王の深怨と共に除外し、真ん中のカードを破壊だ!」

 

 ガイウスの瘴気が選択された2枚のカードに纏わりつくと、それは凍りつき砕け散った

 

「あははは!なす術なしか?

 でも、これで残りの2枚も破壊してやるぜ!

 俺は冥帝従騎エイドスをリリースして、氷帝メビウスをアドバンス召喚!」

 

メビウス「ハッ!」

    ATK2400

 

 漆黒の騎士が消えて、代わりに出てくる青い鎧を身に纏った氷の皇帝

 進撃に邪魔な伏せカードを破壊するために、その手に吹雪を纏わせるって、えっ!?

 

「メビウスの効果

 このカードがアドバンス召喚に成功した時、フィールド上のマジック、トラップカードを2枚まで選択し、破壊できる!フリーズ・バースト!」

 

 伏せカードに襲い掛かる猛吹雪、やっぱり!!

 ただのスタンディングデュエルなのに!?アクションデュエルじゃないのに!?

 

「どうして風を感じるの・・・?」

 

「俺はトラップカード、幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ダーク・ガントレットを発動

 その効果で俺のデッキから、ファントムと名の付くマジック、トラップカードを1枚墓地に送る。

 俺が墓地に送るのは幻影騎士団(ファントム・ナイツ)トゥーム・シールド!」

 

「やっと、効果を使って来たか・・・だが、無意味な効果だったようだな?

 俺の2体の帝のダイレクトアタックでお前は終わりさ。」

 

 沢渡の言う通り、これで伏せカードは全滅、この人を守るカードは

 

「いや、終わりじゃない、俺たちは!

 こんなところで終わるわけにはいかない!!

 破壊され墓地に送られたトラップカード、やぶ蛇の効果発動!!」

 

「な、何!?破壊されたことで発動するトラップだとぉ!?」

 

「このカードが相手のカードでフィールドを離れ、墓地へ送られた場合または除外された場合発動できる。

 俺のデッキ、エクストラデッキからモンスター1体を特殊召喚する!

 来い!幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ダスティローブ!!」

 

 ダスティローブ DEF1000

 

 現れたのは魔術師風のボロボロで薄汚れたローブ

 中には顔の様な物がある青白い炎が燃えていて、幽霊みたいね

 

「ちっ!やっぱり、破壊しすぎたのが仇になったか・・

 だが、そんな雑魚で防ぎ切れると思うなよー!バトルだ!

 邪帝ガイウスでダスティローブを攻撃だ!」

 

 闇を凝縮したエネルギー弾が、煤けた外套を消し飛ばす

 

「せっかく呼んだのに呆気なかったな?

 そら!氷帝メビウスでダイレクトアタックだ!」

 

「これで相手は2400のダメージです。」

 

「LDS狩りも案外、大したことないな。」

 

「「「強すぎっすよ!沢渡さーん!!」」」

 

 メビウスはさっきとは比べものにならないくらい、冷たい気を溜めこんでいる

 寒い・・・やっぱり、このデュエル変よ!?

 

「俺は墓地よりトラップカード、幻影騎士団(ファントム・ナイツ)シャドー・ベイルとダーク・ガントレットの効果発動!」

 

「また、墓地から発動するトラップだとー!?」

 

「シャドー・ベイルは相手のダイレクトアタック宣言時、通常モンスターとして守備表示で特殊召喚出来る。

 ダーク・ガントレットも俺のフィールドに何もカードがない場合、相手のダイレクトアタック宣言時、効果モンスターとして守備表示で特殊召喚出来る。」

 

 シャドー・ベイル   DEF300

 ダーク・ガントレット DEF600

 

「この効果で特殊召喚されたダーク・ガントレットの守備力は俺の墓地のファントムと名の付くマジック、トラップ1枚に付き300上昇する。

 俺の墓地のファントムカードは2枚、よってダーク・ガントレットの守備力は600アップ。」

 

 ダーク・ガントレット DEF600→1200

 

 現れたのは漆黒の馬に跨った亡霊の騎士と堅牢そうな手甲を装備した上半身だけの鎧

 さっきから、この人のカード不気味な物ばかりね・・・

 

「この効果で特殊召喚されたこいつらは、フィールドを離れた場合除外される。」

 

「ちっ!だが、その程度の守備力でメビウスの攻撃は止められないぜ!

 氷帝メビウスでダーク・ガントレットに攻撃だ!」

 

「墓地の2枚目の幻影死槍(ファントム・デススピア)の効果発動

 自分フィールド上の闇属性モンスターが戦闘または効果で破壊される場合、このカードを墓地から除外することで、破壊を免れる。」

 

 ボロボロの槍が突然飛んできて、メビウスの攻撃を邪魔する

 なんだかこの人の戦い方・・・ちょっと遊矢に似ている?

 

「ちっ!エクシーズ召喚の為の素材をフィールドに残しちまったか

 俺はカードを1枚伏せ、ターンを」

 

「ちょ、ちょっとまって!沢渡!このデュエルすぐにやめなさい!!」

 

「はぁ?突然何言っているんだよ、柊柚子?」

 

「そうっすよ、柊先輩」

 

「デュエリストとして、理由もなく途中でやめちゃダメって、遊矢せんせーも言ってました。」

 

「そ、そうだけど!このデュエルは普通じゃないわ!

 アクションフィールドでもないのに、こんなにはっきり風や衝撃を感じるなんて!!

 その人のデュエルディスク、見たことない形しているし・・・

 きっと、違法改造されたとかで、衝撃体感装置がおかしくなっているのよ!」

 

 遊矢に聞いたことがある

 地下デュエルって言って、衝撃体感装置に細工をしたり、増幅装置を使ったりして、命の危険がある危険な違法デュエルがあるって

 この人が地下デュエルのデュエリストだったら、沢渡は・・・

 

「はっ!だからなんだって言うんだぁ?

 折角、面白くなってきた所なんじゃねぇか!

 邪魔すんじゃねぇ!ターンエンドだ!」

 

 あぁ、もう!あの馬鹿!!

 

「俺のターン、ドロー

 なかなかに歯ごたえがあるようだ、だったら俺のデッキの真価を見せてやる。

 俺はレベル4のシャドー・ベイルとダーク・ガントレットでオーバーレイネットワークを構築!」

 

「来るか!」

 

 2体のモンスターが紫の光となって、混沌の渦の中に落ちる

 そしてその渦の中から、暗雲が湧き出て、雷が木霊する

 

「漆黒の闇より、愚鈍なる力に抗う、反逆の牙!」

 

 暗雲の中に蠢く影、それは理不尽を破壊し穿つ漆黒の反逆者

 

「今、降臨せよ!エクシーズ召喚!ランク4!ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン!!」

 

ダーク・リべリオン「ギャアアアァァァァァァァァ!!」

         ATK2500 ORU2

 

 暗雲を振り払い翼を広げる竜

 何このモンスター・・・聞いたことがないわ!?

 

「お、おい、帝野!?

 なんだよ、あのモンスター、見たことも聞いたこともねぇぞ!?」

 

「・・・分かりません。

 幻影騎士団(ファントム・ナイツ)なんてカードも、あのモンスターも、僕ですら聞いたことがありません。」

 

「そんな、帝野君も知らないなんて!?」

 

「仰々しく登場した割には、攻撃力2500か

 帝たちの攻撃力は2400、100ぽっちのダメージなんて蚊に刺されたようなもんだ。

 それとも、ただのこけおどしかぁ?」

 

「エクシーズモンスターの真の力は、己の魂たるオーバーレイユニットを使って、相手を滅することにある。」

 

「ふっ、生憎とエクシーズの講義は、さんざん聞いているから結構だ!」

 

「ならば、たっぷり味わうがいい

 ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンの効果発動!

 オーバーレイユニットを2つ使い、相手の表側表示モンスター1体の攻撃力を半減させ、その数値分、ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンの攻撃力をアップさせる。」

 

 ダーク・リベリオン ORU2→0

 

「おっと!効果は使わせないぜ。

 永続トラップ、帝王の溶撃を発動!

 俺のエクストラデッキにカードが存在せず、自分フィールド上にアドバンス召喚したモンスターが居る場合にこのカードを発動できる。

 このカードがマジック、トラップゾーンに存在する限り、アドバンス召喚されたモンスター以外のフィールドの表側表示モンスターの効果は無効化される。

 これでその黒蜥蜴の魂とやらは、無駄になったってわけだ。」

 

「いや、無駄になどさせない!

 墓地のトラップカード、幻影騎士団(ファントム・ナイツ)トゥーム・シールドの効果発動」

 

 光を取り込んだダーク・リベリオンにマグマが襲い掛かるけど、それを鎖の付いた鋼の盾が防いだ

 また、墓地で効果が発動するトラップ!?

 

「自分のターンに墓地のこのカードを除外することで、相手フィールドの表側表示のトラップカードの効果をこのターンの終了時まで無効にする。

 これで帝王の溶撃の効果は無効になり、ダーク・リべリオンの効果は有効だ!

 喰らえ、トリーズン・ディスチャージ!」

 

 ダーク・リべリオンの翼が展開し、メビウスに向かって雷が放たれる

 

メビウス「ウオオォォォ!?オオォォォ・・・」

    ATK2400→1200

 

ダーク・リベリオン ATK2500→3700

 

「ちぃい!?」

 

「バトルだ!ダーク・リベリオンで氷帝メビウスに攻撃!

 いけ!その牙で氷河を砕け!反逆のライトニング・ディスオベイ!」

 

 漆黒の竜が紫電を纏って飛翔する

 その雷は咢の鋭い牙に集約し、弱ったメビウスを容易く貫き、沢渡はその衝撃で大きく吹き飛ばされる

 

「うわああぁぁぁぁ!!」

 LP4000→1500

 

「「「「「「沢渡さーん!!」」」」」」

 

「沢渡!!」

 

「俺は墓地の幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ダスティローブの効果を発動

 このカードを除外し、デッキからダスティローブ以外の幻影騎士団(ファントム・ナイツ)カード1枚を手札に加える。

 俺は幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ダーク・ガントレットを手札に加え、カードを1枚伏せ、ターンを終了する。」

 

 あぁ、やっぱり!こうなるんだったら、力ずくでも止めとくんだったわ!

 

「へ・・へへへ・・ははは・・・」

 

 えっ?沢渡の奴笑っている?どうして、こんな危険なデュエルしているのに!?

 

「強いじゃないか・・・お前ぇ!

 流石、制服組を何人も倒していることだけはある・・・

 でも甘ちゃんだなぁ~あいつだったら平然と、1キル狙ってくるんだよ!ドロー!」

 

 沢渡・・・確かにやりそうだけど・・・

 

「俺は墓地の冥帝従騎エイドスの効果を発動

 1ターンに1度、このカードを除外しエイドス以外の攻撃力800で、守備力1000のモンスターを1体、墓地から守備表示で特殊召喚する。

 戻ってこい!天帝従騎イデア!」

 

イデア「はっ!」

   DEF1000

 

「魔法カード、汎神の帝王発動、手札の帝王の開岩を捨て2枚ドロー

 さらに汎神の帝王を墓地から除外して、効果発動

 俺が選ぶのは帝王の深怨2枚と帝王の烈旋だ、さぁ、選びな!」

 

「俺は帝王の烈旋を選ぶ。」

 

「デッキ圧縮を嫌ったかぁ~?

 でもなぁ、そのドラゴンを消し去るにはこいつで十分だ。

 帝王の烈旋発動、このターン、アドバンス召喚の為のリリースに1度だけ、相手モンスター1体を使うことが出来る!」

 

「何!?」

 

「俺はお前のフィールドのダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンと俺のフィールドのイデアをリリースして、アドバンス召喚!

 来い!天帝アイテール!!」

 

 アイテール ATK2800

 

 寂れた倉庫が荘厳な皇室に変化する

 沢渡の後ろに巨大な玉座が置かれ、それに座るのは白銀の女帝

 他の帝たちなんて目じゃないぐらい大きい

 

「このカードがアドバンス召喚に成功した場合、デッキから帝王魔法・トラップを2種類墓地に送ることで、デッキから攻撃力2400以上で守備力1000のモンスターを1体、特殊召喚する。

 俺はデッキから真源の帝王と進撃の帝王を墓地に送って特殊召喚

 さぁ、出番だ!光帝クライス!」

 

 天帝に呼び出された光の帝

 彼は天帝に呼び出されたことを大仰な仕草で感謝する

 

クライス「ふんっ!」

    ATK2400

 

「クライスは召喚、特殊召喚された時、フィールド上のカードを2枚まで選択し破壊できるが・・・

 俺の永続トラップ、帝王の溶撃の効果で特殊召喚されたクライスの効果は無効だ

 だが、本来なら召喚、特殊召喚したターン攻撃できない効果も無効になってるぜ

 

 そして、アドバンス召喚に成功したことにより、帝王の開岩の効果発動

 デッキから、魔帝アングマールを手札に加え、墓地に送られたイデアの効果で除外されている汎神の帝王を手札に戻す。

 

 さらに墓地の真源の帝王の効果発動

 こいつは帝王マジック、トラップを1枚除外して通常モンスターとして守備表示で特殊召喚できるぜ

 俺は帝王の烈旋を除外して、真源の帝王を特殊召喚」

 

 真源の帝王 DEF2400

 

「さらに魔法カード、カード・アドバンスを発動

 俺は自分のデッキの上から5枚までを確認し好きな順番でデッキの上に戻す。

 だが俺の目的はこれだけじゃねぇ

 帝王の溶撃の効果で、イデアの効果が無効になっちまっているからエイドスを呼びだせなかったが、これでアドバンス召喚権を得た

 俺は真源の帝王をリリースして、魔帝アングマールをアドバンス召喚だ!」

 

アングマール「ハァハハハハ!」

      ATK2400

 

 アイテールの陰の中から、悪魔の皇帝が現れる

 ボロボロの赤いマントを翻し、沢渡に自らの魔力を分け与える

 

「アングマールの効果発動

 アドバンス召喚に成功した場合、墓地の魔法カード1枚を除外し、デッキから除外したカードと同名カードを1枚手札に加える。

 俺は墓地の永続魔法、進撃の帝王を除外し、同名カードを手札に加え、発動!

 これで俺のアドバンス召喚されたモンスターは効果の対象にもならず、破壊もされねぇ」

 

 これなら、あのドラゴンが効果をまた使えるようになっても、防ぐことが出来る!

 

「駄目押しだ!

 フィールド魔法、真帝王領域を発動

 俺のエクストラデッキにカードが存在せず、俺のフィールドにのみアドバンス召喚されたモンスターが居るとき、お前はエクストラデッキからモンスターを特殊召喚出来ない。」

 

「なんだと!?」

 

 特殊召喚されたモンスターの効果の無効化、エクストラデッキからのモンスターの特殊召喚の封印、さらに自分のモンスターへの耐性付与

 沢渡、あんた、遊矢に負けず劣らずやり過ぎよ!?

 

「ははっ!やっと、その澄ました態度を崩せたぜ!」

 

「くっ!?トラップ発動、幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ダーク・ガントレット!

 デッキから幻影騎士団(ファントム・ナイツ)トゥームシールドを墓地へ送る。」

 

「壁モンスターを増やすつもりかぁ~?

 さぁ、バトルだ!いけ、アングマール!」

 

アングマール「ハッ!」

 

「くっ!墓地の幻影騎士団シャドー・ベイルとダーク・ガントレット2枚の効果発動

 ダイレクトアタックを受けるとき、こいつらはモンスターとして立ち上がる!」

 

 シャドー・ベイル   DEF300

 ダーク・ガントレット DEF600

 ダーク・ガントレット DEF600

 

「そうだな、そうするしかないよなぁ!

 だが、ダーク・ガントレットの効果は帝王の溶撃の効果で無効だ。

 まぁ、有っても役には立たないがな!

 アングマールとガイウスでダーク・ガントレット2体を、クライスでシャドー・ベイルを攻撃だ!」

 

 光の皇帝と闇の皇帝たちの攻撃によって、彼を守る亡霊の騎士と闇の手甲は消滅した

 そして、まだ天の皇帝の攻撃が残っている

 

「手品のタネも品切れのようだな!

 アイテールでダイレクトアタックだ!行けー!」

 

 アイテールの翳した錫杖から閃光が放たれ、彼の目の前で爆発し吹き飛ばす

 ちょっと!大丈夫なの!?

 

「ぐわああぁぁぁぁぁぁ!」

 LP4000→1200

 

 吹き飛んだ拍子に彼の顔を隠していたマスクとゴーグルが飛ばされる

 一体どんな顔をって、えっ!?

 

「えっ・・・どういうこと?」

 

「せんせー?」

 

 私たちの下にさらされた彼の顔は、一瞬、見間違えるほどに遊矢に似ていた

 でも、遊矢ならこんなデュエルは絶対しないし、なにより・・・

 

「お、お前は榊遊矢!?って、違うか・・・随分と似ているな、身内か?」

 

「遊矢?誰だそいつは・・・俺はユートだ。」

 

 『ユート』それが彼の名前・・・でも、どうしてこんなことを?

 

「へぇ~ユートねぇ~名前まで似てるじゃねぇか

 他人の空似にしちゃぁ出来過ぎだぜ。

 じゃあ、自己紹介ついでに教えてくれないか?

 お前、なんでLDSを狙っているんだよ?」

 

「・・・・・・」

 

「だんまりか・・・でも、お前、何かに追い詰められているな?」

 

「!?」

 

「何故わかったって顔してるな

 お前にそっくりな奴に言われたんだよ、デュエルには人となりが出るってな。」

 

 そうね、確かに彼のプレイスタイルは非常に余裕がない

 いつ負けてもおかしくはない、ギリギリのプレイングばっかりだったわ

 

「それになにより、お前はデュエルを楽しんでいない。」

 

「楽しむ・・・」

 

「そうさ、お前はこの俺とデュエルして面白くはないのかぁ?

 このカードに愛された天才デュエリスト、沢渡シンゴと戦えてさぁ?」

 

「・・・・・・」

 

 そう、彼のデュエルは全然楽しそうじゃない

 遊矢なら、どんな逆境に立たされても楽しそうにデュエルをするのに、彼は・・・

 

「お前は燃えないのか?強敵との戦いに!

 お前は面白くないのか?相手の繰り出すプレイングが!

 お前はわくわくしないのか?逆境を変えるかもしれない、次のターンのドローが!」

 

「俺は・・・」

 

「お前が何を背負っているかは俺は知らねぇし、関係ねぇ!

 だがな、そんな全然面白くなさそうな顔でデュエルされても、俺が面白くねぇんだよ!」

 

 沢渡の何時もの自分本位の持論

 でも、遊矢も言っていたわ、デュエルは自分が面白いからやるんだって

 

「だったら、お前に聞く、これに身に覚えがあるか?」

 

「あれって?」

 

「LDSのバッジ?」

 

 ユートの手に握られていたのはLDSの入塾記念で送られるバッジ

 でも、どうしてそんなものを?

 

「お前達とアカデミアの関係はなんだ?」

 

 アカデミア?

 

「そ、それはLDSに入学した時にもらえるバッジです。

 LDSの生徒ならだれでも持っていますよ?」

 

「そうだぜ、アカデミアとか聞いたことないし、なぁ?」

 

「はい、僕のデータでもアカデミアなんてグループ聞いたことがありません。」

 

 沢渡の代わりにねねちゃん、暗次君、皇一郎君が答える

 私だって聞いたことがないわ

 

「そうか・・・」

 

「で、そのアカデミアがお前に何したんだよ?」

 

「俺の仲間がアカデミアに攫われた

 俺はそれを追っている、それだけだ。」

 

 悲しそうに言うユート、だからあんなに余裕がなかったのね

 でも、それとLDSに何の関係が?

 

「へぇ~じゃなにか、今、俺とデュエルしている理由も仲間の為っていう事か?」

 

「そうだ、奪われた仲間は必ず取り戻す!

 そのために俺は『此処』に来た!」

 

 声を荒げるユート、よっぽどさらわれた人は大事な人だったのね

 

「はっ!バカバカしい

 つまり俺も、制服組の奴らも、お前の勘違いで襲われたってことか?」

 

「そ、それは・・・すまなかった。」

 

「謝るくらいなら、襲撃なんかするなっつぅの!

 で、どうするんだ?デュエルはこのまま続けるのか?」

 

「・・・・・・」

 

「墓地の攻撃を防ぐカードは使い果たした

 手札も1枚、でも、次のターン逆転できるカードじゃなさそうだなぁ?

 ってことは、賭けるのは次のドローだけだ。

 絶体絶命の崖っぷち、でも、お前はこの状況が楽しくはないのか?

 次のドローからできる勝利への道筋を思い浮かべてよ

 わくわくはしねぇのかって言ってるんだよ。」

 

 沢渡・・・遊矢みたいなこと言っているわね

 ユートの方を見ると・・・

 

 さっきまでの険しい表情を解いて、笑みを浮かべていた

 

「ふっ、そうだな・・・

 俺もお前に勝ちたくなった!

 だが、俺のディスクはリアルダメージが発生するようになっている、後悔するなよ!」

 

「崖っぷちの奴が何言ってやがる、勝つのは俺だ!」

 

「いや俺だ、ドロー!

 よし、俺は手札を1枚伏せ、魔法カード、命削りの宝札を発動!

 このターンの特殊召喚を封じる代わりに、デッキから手札が3枚になるようにドローしエンドフェイズに全ての手札を墓地に送る。

 俺の手札は0だから、3枚ドロー!」

 

「へぇ?ドローカードを引き当てたか」

 

「あぁ、どうやら俺のデッキも、まだ諦めたくはないらしい

 さらにセットしていた魔法カード、闇の誘惑を発動

 デッキから2枚ドローし、その後、手札の闇属性モンスター1体を除外する。

 除外しない場合は手札を全て捨てる。

 俺はデッキから2枚ドローし、サイレントブーツを除外する。

 俺はカードを4枚全て伏せて、ターンエンドだ。」

 

「またガン伏せ!?」

 

「おいおい、負けたくないっていう割にモンスターを引き当てられなかったのかよ

 お前、持ってないねぇ~」

 

「ふっ、それはどうだろうな。」

 

「何を伏せようがこの俺様には通用しねぇぜ!

 俺のターン、ドローだ!

 俺は墓地の冥帝エレボスの効果を発動する。

 手札の帝王マジック、トラップを墓地に送ることで、墓地の攻撃力2400以上で守備力1000のモンスターを手札に戻す。

 俺は汎神の帝王を捨てて、氷帝メビウスを手札に戻す。」

 

「流石っす、沢渡さん!」

 

「これで、あの人のカードを一掃できますね。」

 

 そうね、前のターンに手札に戻った光帝クライスと氷帝メビウスで伏せカードはすべて破壊できるわ

 

「だが、簡単に通すわけがないだろう?

 永続トラップ、王宮の鉄壁

 互いのプレイヤーはカードを除外することが出来なくなる。」

 

「なっ!?墓地効果多い癖にそんなカードを!?」

 

 でも、シャドー・ベイルはこれで無限に復活できるようになったわ

 肝心のシャドー・ベイルが居ないけど・・・

 

「だったら、こうだ!

 相手フィールド上にマジック、トラップカードが2枚以上あるとき、手札の氷帝家臣エッシャーは手札から特殊召喚出来る。」

 

 エッシャー DEF1000

 

 氷の様な鎧に身を包んだ僧侶の様なモンスターが現れる、その身を主と皇帝へ捧げるために

 

「そして、エッシャーをリリースして、氷帝メビウスをアドバンス召喚!」

 

メビウス「フンッ!」

    ATK2400

 

「まずは、その邪魔なカードを破壊してやるぜ!

 王宮の鉄壁とセットカードを破壊だ!」

 

「させない!トラップカード、スキル・プリズナー!

 選択したカードを対象としたモンスター効果を無効にする!俺は王宮の鉄壁を選択!

 これはお前のモンスターを対象にした効果ではない

 よって、進撃の帝王の効果では防げないぞ!」

 

 王宮の鉄壁の前に現れたバリアが、メビウスの吹雪を弾き返した!

 

「ちぃ!帝王の開岩の効果で炎帝テスタロスを手札に加える。

 だが、相変わらずモンスターはいないようだな!バトルだ!

 いけ!魔帝アングマールでダイレクトアタックだ!」

 

 これが通れば、沢渡の勝ち

 

「いや、魂は永遠に不滅だ!

 トラップ発動、エクシーズ・リボーン!

 墓地のエクシーズモンスターを復活させ、このカードをオーバーレイユニットとする。

 蘇れ、我が魂の竜!ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン!」

 

ダーク・リベリオン「ギャオオオォォォォォン!!」

         DEF2000 ORU1

 

「だが、俺のモンスター4体の攻撃には耐えられねぇだろ!

 アングマール!ダーク・リベリオンを攻撃だー!」

 

 アングマールが魔法で作り出した剣がダーク・リベリオンを一閃の下で切り裂き、破壊した

 これでユートのモンスターは0、セットカードも1枚だけ、もう

 

「魂で強くなるエクシーズモンスターも、その魂が使えなけりゃ、壁くらいにしかならないな!」

 

「いや、俺たちの魂はまだ繋がっている・・・

 何時だって、何処でだって・・・例え・・・

 

 世界を越えてでも!!

 

 トラップ発動!エクシーズ熱戦!!」

 

「何!?」

 

「エクシーズモンスターが戦闘で破壊された時、自分のライフを1000払い発動する。

 互いのプレイヤーは破壊されたエクシーズモンスターのランク以下のモンスターを1体エクストラデッキから見せる。

 そして、攻撃力の低いモンスターを見せたプレイヤーは、相手が見せたモンスターの攻撃力と、自分が見せたモンスターの攻撃力の差分のダメージを受ける。」

 LP1200→200

 

「なーにー!?俺のエクストラデッキにカードはねぇ!?」

 

「だったら、俺が見せたモンスターの攻撃力分のダメージを受けてもらおう!

 俺が選択するのは、ランク3幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ブレイクソード!攻撃力2000だ!!」

 

 ユートの頭上にボロボロにひび割れた剣が現れ、沢渡に向かって飛んでいく

 

「俺の・・・勝ちだ!」

 

 その剣は沢渡の目の前に着弾し、沢渡を強く吹き飛ばす

 

「ぐわあああぁぁぁぁぁ!!」

 LP1500→0

 

「「「「「「沢渡さーん!!」」」」」」

 

 ねねちゃんたちが吹き飛ばされた沢渡を助け起こそうと走っていく

 ユートはすまなそうに顔を伏せ、この場から立ち去ろうとするけど、ちょっと待って!?

 

「待ちなさい!

 あなた、私のこと知ってるみたいな感じだったけど、私はあなたを知らないわ!どういう事なの!?」

 

 ユートはこっちを振り向いて、しゃべろうとするけど

 

「君は――」

 

 桜色の光が私の目の前に溢れて、晴れたときには――

 

「えっ!?」

 

――彼はどこかに消えていた・・・


「お~い!柚子ー!!」

 

 修三さんから柚子がどこかに向かったと聞いた俺は、沢渡の父親が管理している倉庫に向かっていた

 あそこは今は物置ぐらいにしか使われていないので、沢渡一味のアジト的なものになっている

 柚子の奴は修三さんの話だと悪い顔していたらしいので、大方デッキ調整がうまくいったので沢渡をボコりに行ったんだろう

 まぁ、逆にやられてメソメソして帰ってくるのが最近のパターンだけど

 

 ペンデュラム誕生後に柚子が沢渡の所に行く、形が違うし、時期も違うような気がするけど・・・

 柚子が茄子と会合している可能性が高い

 

――ドオオォォォォォン!!

 

 噂をすれば何とやら、沢渡たちがいつもいる倉庫の方で爆発音が聞こえる

 

「柚子ー!!沢渡ー!!大丈夫かー!!」

 

「えっ!?あっ!遊矢!?」

 

 この反応・・・やっぱり、茄子いや、ユートと会ったんだな・・・

 

「沢渡さーん!」

 

「しっかりしてください!」

 

「あぁ・・うぅ・・・痛いから・・揺らさないで・・・お願い・・・」

 

 沢渡の取り巻き達が、怪我している沢渡をブンブン振っている

 いや、ダメだろ、あれ

 

「柚子、何があった?

 沢渡のやつ、怪我しているみたいだし、さっきの爆発音も・・・」

 

「私も何が何だか・・・」

 

 柚子のブレスレットの事、俺とユートの事、それに伴うアカデミアの侵略行為とズァークのこと、頭が痛くなる問題の数々に俺は未来に不安を覚えた


 

「見える・・・見えるわ・・・・」

 

 暗い一室の中、魔法陣の上に安置された水晶玉の上で振り子が揺れている

 

「あのお方の未来が、また揺れ動いた。」

 

 意志を持つかのように輝きが変わり続ける水晶をフードを被った小柄な少女が見詰めている

 

「世界・・・王・・・・竜・・・・反逆者・・侵略者・・・・・旅人・・・」

 

 少女の目には何が映っているのか、うわ言のように様々な単語を呟いてゆく

 

「確かめねばならないわ!」

 

 少女が突如決意したように立ち上がる、その目は狂信の色が浮かんでいた

 

「待っててね、わたしのマジェスティ・・・」

 




いい・・・デュエル・・だったろ・・・ガクッ

「「「「「「沢渡さーん!!」」」」」」(泣)

いや、気絶しただけだから、早く病院に連れて行こうぜ?

っていうか、最後のあれいったい誰なのよ!?

あ~なんというか、俺専属の占い師・・・かな?
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『小さな預言者 方中ミエル』

だから、ミエルって誰なのよ!?



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小さな預言者 方中ミエル

先行登場、暴走占い少女、これは占術姫デッキなのか・・・?

えっ、クイズ野郎?

『街角、デュエルクイズー』という番組で、たまたま遊矢が街を歩いていたら回答者に選ばれて、デュエルに関する問題だったので『九庵堂 栄太』より先に全問答えてしまったため、彼の逆恨みでデュエルすることになり

「さっきから何をしているんだい?
 クイズ・フロンティアにクイズ以外のアクションカードなんてないんだよ?
 なのに、君はそのクイズを間違え続けて1ターンでもうライフ300ポイント!
 なにをしたって、僕が勝者になる以外の正解なんてないんだよ!」

「勝手に絡んできて何言ってるんだよ・・・
 カードを1枚伏せて、魔法カード、大逆転クイズ発動」

「だ!?大逆転クイズ!?」

「このカードは自分フィールド上のカードと手札のすべてのカードをすべて墓地に送り発動する。
 デッキトップのカードを確認し、それがマジックかトラップかモンスターかを当てる。
 正解すれば、俺とおまえのライフを入れ替える。」

「ははっ!バカだねェ!
 今まで1問も正解できていない君が、そんなのに正解できるわけないじゃないか!
 僕が勝つ。これ正解。君が逆転する。それ不正解。
 結果なんて変わらないんだよ!」

「そんなにクイズが好きなんだったら、ここで俺も1問、お前にクイズを出してやるよ。」

「はぁ~?君がこの僕にクイズ~?
 いいよ、どんな問題もこたえてやろうじゃないか」

「じゃあ問題だ、俺のデッキに魔法以外のカードは入っている。○か、×か?」

「えっ!?」

「答えは×だ。
 よって、大逆転クイズの答えは魔法カード
 俺が正解したことにより、俺とおまえのライフは入れ替わる。」

「えええぇぇぇぇ!?」

「そしてフィールドから墓地に送られた黒いペンダントの効果で、お前のライフに500ポイントのダメージだ。」

「そ!そんなクイズがあるか!!」

「いや、これ、デュエルでしょ」

明晰塾の全員『『『『これは、ひどい・・・』』』』


 ユートがこのスタンダード次元に来た

 それはつまり、この世界がアニメ版のARC―Vストーリーに沿っていることを意味する

 ただこの次元に居るデュエリストである可能性もあったが柚子から聞いた

 

≪もう・・・キミを傷つけたくない≫

 

≪俺の仲間がアカデミアに攫われた

 俺はそれを追っている、それだけだ。≫

 

 と、これらの言葉から、エクシーズ次元がアカデミアに襲撃され、瑠璃が連れ去られたことは確実だ

 同時に、素良もアカデミアの一員で確定だろう

 素良の精神の不安定具合から、専門家でないので確証はないが戦争中毒症に近い感じがした

 警戒レベルを上げる必要があるな、何時あの量産型機械犬軍団が押しかけてくるかわからないし・・・

 

「どうした、遊矢も柚子も元気がないじゃないか?」

 

「いや、俺の方は今日、素良に何を作ってやるか考えていただけさ」

 

「わ、私も何でもないわよ・・・」

 

 嘘が下手だな柚子は、そんな反応だと権現坂が余計に心配するじゃないか

 まぁ、俺は柚子が何を悩んでいるかはだいたい察しが付く

 

「柚子・・・沢渡が怪我したこと、まだ気にしているのか?」

 

「えっ!そ、そんなこと無いわよ!

 なんで、私があんな人の話を聞かない馬鹿の心配なんてしなくちゃなんないのよ!?」

 

「うん?遊矢、沢渡の奴が怪我をしたというのは聞いたが、それが柚子とどう繋がるのだ?」

 

「あぁ、沢渡が怪我した時、柚子はそばにいたみたいでさ

 どこかの違法改造されたディスクでデュエルを挑んでくる奴と沢渡がデュエルして、自分はそれを止められなかったって悔いているのさ」

 

「なるほど・・・すまない。

 柚子、ぶしつけな質問だったようだな・・・

 この男、権現坂、心の底から反省し、謝罪する。」

 

「や、やめてよ、権現坂!

 本当にそんなのじゃないわよ!」

 

 原作では遊矢とユートを見間違えて、それをずっと気にしていたみたいだけど

 ユートが名乗っていることにより、それはなくなった

 代わりに、親しくなった沢渡が怪我をしたことを気にしている

 

 あの沢渡の事だ、怪我が治ったらあっけらかんと戻って来るだろう

 ただそれまで柚子のメンタルは落ち込んだままか、はぁ~

 

「なぁ、柚子?デュエルを続行したのは沢渡なんだろ?

 それに怪我だって、大きい怪我で打撲程度で済んだんだから、そんなに気にするなよ」

 

「う、うん、そうね・・・」

 

 駄目だこりゃ、これは何か大きな刺激を与えてやらないとって、うん?

 俺たちの目の前に黒いフードを被った小柄な人影が立っている、その手にはリンゴ型の水晶、あれは・・・

 

「ご無沙汰しておりますわ、わたしのマジェスティ」

 

 フードの人物は俺に綺麗なお辞儀をする

 ただ、いきなりの陛下(マジェスティ)呼びに権現坂も柚子も面を喰らっている

 

「ゆ、遊矢?この御仁はいったい何者なのだ?」

 

「それにマジェスティって、いったい・・・」

 

「あら、貴方達はマジェスティと一緒に居るのに、このお方を取り巻く運命が見えていないようね。

 だったら、よく聞きなさい!

 このお方は数多の人々の運命を変え、世界を滅ぼすほどの覇者にも、数多の人々を導く賢者にもなられる御方よ!」

 

 いや、こんな街中でそんなこと大声で言わないでほしいのだけど

 

「そして、わたしはこのお方の混沌とした運命を読み解き、正しき運命に導くべく、天が遣わした預言者!方中ミエルよ!!」

 

 フードを取り露わとなる強いウェーブをかけたオレンジ色の髪をリボンでまとめた少女『方中 ミエル』

 原作では榊遊矢をダーリンと言いながら猛アタックをかけるストーカー癖と妄想癖がある少女だったがなぜこうなった・・・


 ミエルとの出会いは3年前、俺の父さん、榊遊勝が失踪した直後のことだ

 手紙の内容から赤馬零王がらみの事だろうとは思うのだけども、ただの失踪かもしれないということで警察に連絡した

 次元を超えているのなら見つかることはないだろうが、そこから繋がるストーリーがアニメ通りと言う可能性も不明だった

 

 そこで、手さぐりになるよりはましだろうということでミエルが通っている『海野占い塾』で占ってもらうことにした

 

 結果と言えば散々な物だった

 

 カード占いでは何故か、シャッフル中にすべてのカードが突然の強風で飛ばされ

 ホロスコープでは星座板が大回転を起こし

 水晶占いでは、ことごとくその水晶球が割れるというポルターガイスト並みの怪現象が発生した

 

「すいません、海野塾長

 壊れてしまった道具は弁償させてもらいます。」

 

「いえ、これも私どもが未熟だっただけの事、どうか御気になさらず」

 

 口元をベールで覆い隠している典型的な占い師の格好をした美女、海野塾長

 気にするなとは言ってくれたが、遊矢の未来を見ようとした彼女の水晶球がひとりでに割れたのを完全に忘れていた俺が悪いのだ

 

「それにしても、貴方の様な幼子が私どもを頼ってくるというのも珍しい話ですが、貴方を取り巻く運命はあまりにも混沌としておりますね・・・

 私でさえ、それしか貴方の行く末は分かりません。」

 

「いや、まだ先はよく分からないと分かっただけでも十分です。」

 

「それは・・・あぁ、でも、あの子なら・・・」

 

「あの子?」

 

「はい、最近入って来たばかりの子ですが、運命を見透す良き目を持った、占い師としての才覚溢れる子なのですよ。」

 

「海野先生?」

 

 声のした方を振り向くと、同年代にしても小柄な方であろう少女、方中ミエルが立っていた

 

「ちょうどよかった、実はあなたに頼みたいことが、あっ!?」

 

「待て!!危ない!?」

 

 ミエルは突然、腰のポシェットからリンゴ型の水晶を取り出して俺を見始めた

 原作では何か見えていたミエルだったけど、この世界の、ましてや幼いミエルがそうなるとは限らない

 他の塾の人たちの様に、あの水晶が割れたら、素手のミエルは大怪我必至だろう

 俺と海野塾長は急いで止めようとしたのだが

 

「見える・・・・・見えるわ・・・・・」

 

 水晶は砕けることはなく淡く発光しているかのように輝き、彼女はうわ言のように呟き出す

 

「混沌の中で揺れる振り子・・・・揺れ動くたびに数多の人々もその運命を変えていく・・・」

 

 絶対小学生のつぶやく言葉じゃねぇ!!

 

「き、君、何を言って・・・」

 

「まさか・・・見通せたというのですか!?この少年の未来を・・・」

 

「そして、今!!」

 

「おうっ!?」

 

 ミエルは突然、顔を上げ頬を上気させて、大声を上げて俺を見つめてくる

 

「ミエルの運命も揺れ動いたわ!

 今日は運命の輪を動かす人に会えると占いに出ていたけど・・・そう、貴方の事だったのね・・・

 誰も垣間見ることのできなかった貴方の未来を、ミエルだけが見ることができた・・・

 そうよ!これは!天から、あなたを正しき方向へと導けとのお告げなのよ!!」

 

 少し早い中二病どころじゃない!?破滅の光に取りつかれたレベルだー!!

 

「きっと、ミエルはこの使命を果たすために生まれて来たのねー!

 一生ついていくわー!マイ、マジェスティー!!」


 その後、抱きついてきたミエルを他の占い塾の人と共に引きはがすこと1時間、その日はそのまま帰ったが

 次の日から、ミエルは俺が一人の時にたびたび出没し、どこかへ行こうとか、どこかへ行けとか、いろいろ言ってくるようになった

 

 半信半疑だったけど、海に向かえば釣りの人と会合し、山に向かえば忍者兄弟と会うことが出来た

 いまいち、所在がつかめないメンツと会えたのは助かった

 中学に上がってきてからは、その回数は減っていたのだが・・・

 

「今日は、貴方様の運命に揺れが生じたので、ご報告に」

 

 やっぱりか・・・原因は十中八九、柚子がユートと会ったことだろう

 実を言うとペンデュラム召喚についても、ほのめかすことを言われていたので警戒していたのに、結局やってしまった

 だから、ミエルの言葉はかなりの信憑性を持ち、今後の指針を決めるきっかけになる

 

「希望を失った国から来る反逆者、歪んだ絆の街の旅人、太陽なき場所からの侵略者に、お気を付けください。」

 

 やっぱりか・・・かなり脚色されているが、エクシーズ、シンクロ、融合のそれぞれの次元の事だろう

 

「ちょ、ちょっとあなた!いきなり現れて、何変なこと言ってるのよ!?」

 

 まぁ、事情を知らない人間からすれば、ミエルはかなり変な人だ

 いや、俺から見ても変な奴だ

 普段は俺が一人になった時に現れるミエルが、柚子たちと一緒の時に現れたのは何か訳があるのだろうか?

 

「あぁ~あなたね・・・ミエルのマジェスティに不幸を告げる花は・・・」

 

「えっ?」

 

「ふぅ~ん・・・あなた、ミエルとデュエルしましょ?」

 

「えぇ!?突然何を・・・」

 

「貴方が運命に抗う力を持っているか、ミエルがデュエルで見定めてあげるわ。

 これもマジェスティの臣下たるものの努めよ。」

 

「もぉー!わけわかんない!良いわよ!やってやろうじゃない!!」

 

 澄ました言い方が気に入らなかったのか、柚子はムキになって挑戦を受ける

 おいおい、沢渡とデュエルできなくて消化不良だったんだろうけど、年下にあたるなよ

 でも、まぁ、暗くなっているよりはましか・・・

 ただ、こんな街中でミエルにデュエルさせるわけにはいかない、迷惑になるからな


「遊矢、俺は何がなんだかよく分からんのだが・・・」

 

「まぁ、それは俺も良くは分かっていないんだけどさ

 ミエルのデュエルは一見の価値ありだと思うぞ、権現坂」

 

 かなり開けた場所に移動した俺たちは、遠巻きに柚子たちのデュエルを観戦することにする

 まぁ、少し離れたところで、あのモンスターの大きさからして逃れることは出来ないのだけど

 

『『決闘(デュエル)!!』』

 

「まずは小手試しとして、先攻後攻はコイン占いで決めましょう。

 表はドラゴン、裏には悪魔、どちらかあなたが当てたら先攻後攻を選ばせてあげる。」

 

「良いわよ、私は悪魔を選ぶわ。」

 

「悪魔ね・・・それじゃ」

 

 ミエルはコインを跳ね上げ、手の甲に落とす

 隠していた手がどけられると、そこにはドラゴンの絵柄が表を向いていた

 

「ドラゴンよ。

 残念ながら、貴女には先を見通す力はないようね。」

 

「なによ・・・2分の1を外しただけじゃない・・・」

 

「先攻はミエルが頂くわ。

 ミエルはモンスターを伏せ、カードを1枚セットしてターンを終了するわ。」

 

「えっ?伏せただけ・・・」

 

「そうよ。

 このモンスターが開くとき、貴方は運命の選択を迫られることになるわ。」

 

「さっきから、運命運命って、何を言ってるのよ!」

 

「ふふふ、さっきのコインで貴女は悪魔を選んだ。

 それは不安や心配、今の自分を変えたいといった気持ちの現れよ。」

 

「・・・・・・私は魔法カード、幻奏の第1楽章を発動

 自分フィールド上にモンスターが居ない時、手札、デッキからレベル4以下の幻奏モンスターを特殊召喚出来るわ

 でも、このターン、私は幻奏モンスター以外を特殊召喚出来なくなる

 デッキから、幻奏の音女アリアを特殊召喚」

 

アリア「はっ!」

  ATK1600

 

「あら、だんまり?図星だったって所かしら?」

 

「五月蠅いわよ!少し黙ってなさいよ!!」

 

「ふふふ、怒らない怒らない、そんなんじゃ運命の女神は微笑んでくれないわ。」

 

 う~ん、これはもうミエルのペースに乗せられてしまったな、凡ミスしないといいけど

 

「ぬぅ!私はさらに速攻魔法、光神化を発動

 手札から天使族モンスターを攻撃力を半分にして特殊召喚するわ

 現れなさい!幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト!」

 

モーツァルト「フフフ、ハッ!」

      ATK2600→1300

 

 華やかな赤いドレスを身に纏った青い肌の女性

 その背の羽根や白目がなく複眼のようにも見える青い眼を見ると、まるで蝶の様だ

 にしても、攻撃表示か・・・

 

「プロディジー・モーツァルトの効果発動

 このターン光属性モンスター以外を特殊召喚出来なくなる代わりに、1ターンに1度、手札の光属性、天使族モンスターを1体特殊召喚するわ。

 来なさい、幻奏の音女エレジー!」

 

エレジー「ふふっ」

    ATK2000

 

「エレジーがフィールド上に居ることで、私の特殊召喚された天使族モンスターの攻撃力は300ポイントアップ!」

 

 モーツァルト ATK1300→1600

 エレジー   ATK2000→2300

 アリア    ATK1600→1900

 

 柚子の定番の相互効果による破壊不能戦術

 光神化のデメリットである、エンドフェイズに破壊されてしまう効果もエレジーの効果で無効化した

 攻撃力もライフ4000なら伏せモンスターありでも丁度なくなる数値だけど・・・

 

「おぉ!この攻撃が通れば、アリアとエレジーのダイレクトアタックで勝負が決まる!」

 

「さぁ~て、そう簡単に行くかねぇ~?」

 

「バトルよ!プロディジー・モーツァルトでセットモンスターに攻撃

 グレイスフル・ウェーブ!」

 

 プロディジー・モーツァルトの振るう指揮棒に合わせて音符が躍り、ミエルの伏せモンスターが露わになる

 それは大きなコインを抱えた土の精霊の少女

 少女はプロディジー・モーツァルトの操る音符によって破壊されるが、その場には大きなコインが残されていた

 

 コインノーマ DEF1400

 

「ふふ、ここでリバースした占術姫コインノーマの効果が発動するわ。」

 

「リバース効果モンスター!?」

 

「このカードがリバースした場合、手札、デッキからレベル3以上のリバースモンスター1体を裏側守備表示で特殊召喚出来る。

 ミエルが伏せるのはこれよ、守備力3000の禁忌の壺」

 

「何ですって!?そんなモンスターをそんなに簡単に!?」

 

「それだけじゃないわ。

 このカードには4つの禁忌の力が宿っているの

 1つは、私はデッキから2枚ドローする効果

 1つは、フィールドのマジック、トラップカードを全て手札に戻す効果

 1つは、相手フィールドのモンスターを全て破壊する効果

 1つは、相手の手札を確認し、その中からカードを1枚選びデッキに戻す効果

 このカードが表になった時、ミエルはこの4つの効果の中から1つを発動できるわ。」

 

「なっ!?どれも禁止カードと同じ効果じゃない!!」

 

「ふふ、でも安心しなさい。

 コインノーマの効果を使用したこのターン、私は占術姫モンスターの効果しか使えないわ。

 さぁ!運命の選択よ!強大な壁に立ち向かい、勇気を示すか!

 怖気付きつつも思案し、智を示すか!あなたは、どちらなのかしら?」

 

「そんなの決まっているわ。

 エレジーでセットモンスターに攻撃よ!」

 

 禁忌の壺 DEF3000

 

 エレジーの攻撃に反応して現れる悪魔や鬼のレリーフが掘られた不気味な壺

 それはエレジーの声による衝撃波を受けて柚子の方へそれを跳ね飛ばす

 

「んっ、なによ、このくらい・・・」

 LP4000→3300

 

「おめでとう、見事に勇気を示したわね、褒めてあげるわ。」

 

「貴女に褒められても嬉しくないわ

 私はカードを1枚伏せて、ターンエンドよ。」

 

 やれやれ、怖い怖い

 さすが占い師、うまく柚子の行動を誘導している

 

「なぁ、権現坂?お前はあの2人のデュエルスタイルどう思う?」

 

「う、うむ・・・柚子はアリアとエレジーの効果で幻奏モンスターに戦闘と効果に対する耐性を与え、リバースカードを伏せた

 攻撃後の返しとしては、中々にいい手じゃないか?

 ミエルと言う少女の方はまだわからんが、守備力3000のモンスターを呼び寄せた

 2人とも形は違うが、防御がうまいと思うが・・・」

 

「まぁ、そうだな

 でもな、ミエルのあのデッキだけど・・・ものすごく攻撃的なんだぜ?」

 

「なに?どういう事だ?」

 

「まぁ、見ていればわかるさ。」

 

「ミエルのターンよ、ドロー

 手札からこのモンスターを召喚するわ

 現れなさい、マンジュ・ゴッド」

 

マンジュ・ゴッド「ウオオオォォォォ!」

        ATK1400

 

 現れたのは泥のような緑色の躰に無数の腕を生やしたモンスター

 ゴッドの名を冠している光属性の天使族のモンスターだが、どう見ても沼地の魔神王と同系統の存在の様な気がする

 

「このカードが召喚、反転召喚に成功したとき、デッキから儀式モンスターか儀式魔法1枚を手札に加えることが出来るわ。

 ミエルはマンジュ・ゴッドの効果で儀式魔法、聖占術の儀式を手札へ」

 

「儀式!?」

 

「さらに手札の魔神儀(デビリチャル)―キャンドールの効果発動

 1ターンに1度、手札の儀式魔法を相手に見せることで、手札のこのカードとデッキの魔神儀(デビリチャル)モンスター1体を特殊召喚するわ。

 さっき手札に加えた聖占術の儀式をあなたに見せて、手札からキャンドールをデッキから魔神儀(デビリチャル)―タリスマンドラを特殊召喚」

 

キャンドール「キャハハハハ」

        DEF0

 

タリスマンドラ「キャアアアアァァァァァ!!」

       DEF0

 

 轟々と燃える炎を灯す蝋燭のモンスター、だが元気な炎と違い下の蝋燭は今にでも死にそうな顔をしている

 ミエルの出した、もう一体は五月蠅く悲鳴を上げる首飾りを付けた植物の根っこの様なモンスター

 ただ、あまりの首飾りの五月蠅さに根っこは顔の横を抑えている、耳があるのか?

 

「デッキからタリスマンドラが特殊召喚されたことにより、デッキから儀式モンスター、聖占術姫タロットレイを手札に加えるわ。」

 

「儀式魔法と儀式モンスターがそろった!?」

 

「ふふ、そうよ。

 ミエルは手札から儀式魔法、聖占術の儀式を発動

 この効果でフィールドのレベル4の魔神儀(デビリチャル)―キャンドールとレベル6のタリスマンドラをリリース

 これでリリースしたモンスターのレベルが9以上になったわ。

 これにより、レベル9の聖占術姫タロットレイの儀式召喚を執り行うことが可能となる。」

 

 2人の間に現れる魔法陣の描かれた祭壇

 そこには9つの水晶が生えており、中心には棺の様な物が安置されている

 キャンドールとタリスマンドラはその身を炎へと変え、9つの火の玉となって水晶の間に灯っていく

 

「全てを見通す太古の巫女よ

 古の秘術によりて、今、蘇れ!儀式召喚!」

 

 魔法陣はミエルの言葉を受けて、一気に燃え上がり

 その中から金色の装飾がされた紫のドレスを纏う、巨大な占い師の様なモンスターが姿を現す

 

「レベル9、聖占術姫タロットレイ!」

 

タロットレイ「レイ・・・」

      ATK2700

 

「攻撃力2700・・・」

 

「タロットレイの真価は攻撃力ではないわ。

 タロットレイの効果発動

 1ターンに1度、フィールド上のセットモンスターを表側守備表示にするか、表側表示モンスターを裏側守備表示にするわ。

 ミエルは禁忌の壺を裏側守備表示に変更」

 

 タロットレイの両脇に浮かぶ人形のようなものが、禁忌の壺をカードに押し込め、そのままそのカードを伏せなおす

 

「えっ!?それじゃ・・・」

 

「そうよ、禁忌の壺を反転召喚

 その効果でフィールドの全てのマジック、トラップカードを手札に戻すわ。」

 

 禁忌の壺 ATK2000

 

 再び現れた禁忌の壺の中から、猛烈な突風が巻き起こり、2人の伏せカードを吹き飛ばす

 

「あっ!?」

 

「ふふふ、その反応だと、ダメージを軽減させるカードかしら?

 でも、これで貴女のモンスターは丸腰よ?バトル!

 禁忌の壺でプロディジー・モーツァルトに攻撃よ。」

 

 禁忌の壺の中に潜むナニカがプロディジー・モーツァルトに体当たりを仕掛ける

 壺形モンスターの中にいるあいつは、いったい何なんだろうな?

 

「あう・・・でも、プロディジー・モーツァルトは特殊召喚されたアリアの効果で破壊されないわ!」

 LP3300→2900

 

「だったら、タロットレイの攻撃も受けてもらおうかしら。

 タロットレイでプロディジー・モーツァルトに攻撃よ。」

 

 タロットレイのスカートから剣が飛び出してくる

 破れている様子もないし、異次元にでも繋がっているのか?

 

「きゃああぁぁぁぁ!」

 LP2900→1800

 

「バトルフェイズ終了、メインフェイズ2に移るわ

 レベル9のタロットレイを対象に速攻魔法、星遺物の胎動を発動

 タロットレイとは種族、属性の異なるレベル9モンスター2種類を1体ずつ特殊召喚するわ。

 現れなさい、機怪神(デウス)エクスクローラー、サブテラーマリス・ボルティニア」

 

 地面の中に巨大な2つの気配が現れる

 2人の間に巨大な紅い球体が地面から覗き、その周囲に無数の赤黒い触手が湧き出る

 そして、その周囲には鮫のように地面を泳ぎ回る何かが獲物を狙い徘徊していた

 

 エクスクローラー DEF3000

 ボルティニア   DEF3000

 

「また、守備力3000のモンスター!?」

 

「そんなに心配しなくても、星遺物の胎動で呼び出されたモンスターはエンドフェイズに破壊されるわ。

 ミエルはカードを1枚伏せて、エンドフェイズ、ボルティニアと機怪神(デウス)エクスクローラーは破壊されるわ。」

 

 巨大な2つの気配は、深く地面に潜り込みその気配が失せる

 だが、ただで終わるはずもない

 

機怪神(デウス)エクスクローラーの効果発動

 フィールドのこのカードが戦闘、効果で破壊された場合

 デッキからこのカードとは、元々の種族、属性が別のレベル9モンスターを1体、手札に加えるわ

 機怪神(デウス)エクスクローラーは地属性、昆虫族、よってミエルはデッキから風属性、ドラゴン族の星遺物の守護竜メロダークを手札に加えるわ

 

 さらにタロットレイの効果発動

 自分のエンドフェイズ、手札か墓地のリバースモンスターを1体裏守備表示で特殊召喚するわ

 ミエルは墓地から機怪神(デウス)エクスクローラーをセット、これでミエルのターンは終了よ。」

 

 機怪神(デウス)エクスクローラー、守備状態ならあんな感じで地面に埋まったままだが攻撃表示になるとこの一帯を覆うような巨大な体が出現する

 ただのソリッドビジョンでも巨大すぎて迷惑な存在だが、リアルソリッドビジョンで召喚されればかなりの被害が出そうな気がするが、禁止にはなっていないので、ある一定量の大きさのモンスターしかリアルソリッドビジョンでは質量を完全には与えられないのかもしれない

 

「うぅ~む、儀式使いだったのか・・・

 それに、あれほど高レベルで巨大なモンスターを易々と使いこなすとは・・・侮れんな。」

 

「いや、ミエルの注目する点はそこじゃないよ、権現坂」

 

「ん、どういう事だ?」

 

「ミエルはデュエリストだけど、本業は占い師だからな。

 相手の人相、思考、心理状態を読むのがうまいんだ。

 だから、ほぼ自滅に近い形で柚子のライフはすでに半分を切っている。」

 

「なるほどな・・・強固な守りを言葉巧みに誘導することで、崩させたわけか」

 

 まぁ、1ターン目をすべて守備表示にしていれば、ダメージは少なくて済んだんだろうけど

 伏せているカードは1ターン目から伏せ続けているものだろう

 多分あのカードだろうし、アドを取るかライフを取るかぐらいしか違いはないか・・・

 

「私のターン、ドローよ。」

 

「スタンバイフェイズに永続トラップ、星遺物の傀儡を発動よ。

 このカードは自分フィールド上の裏側表示モンスター1体を表側攻撃表示または守備表示に変えるわ。

 星遺物の傀儡の効果で機怪神(デウス)エクスクローラーを表側守備表示に変更」

 

 エクスクローラー DEF3000

 

 再び現れる、巨大な紅い球体と無数の触手

 だが、さっきまでとは違いプロディジー・モーツァルトがその触手に絡め取られる

 

モーツァルト「はっ!?ううぅぅぅ・・・」

 

「えっ?何よ、これ!?」

 

「機怪神エクスクローラーがリバースした状態でモンスターゾーンに存在する限り、相手フィールドのモンスターが発動した効果は無効化されるわ」

 

「何ですって!?」

 

「さぁ、どうするのかしら?

 迫られた選択は、速やかに答えを出さないといけないわ。 

 運命は待ってくれないもの」

 

「だったら、まずはその厄介な儀式モンスターを倒させてもらうわ!

 私はアリアとプロディジー・モーツァルトをリリースして、アテナをアドバンス召喚!」

 

アテナ「ふんっ!」

   ATK2600→2900

 

 天から舞い降りる月の光の化身たる女神

 たしかに、禁忌の壺とタロットレイを破壊できれば、有利になるかもしれないが・・・

 

「バトルよ!アテナでタロットレイにこうげ」

 

「タロットレイの効果発動よ。

 アテナを裏守備表示にするわ。」

 

「なっ!?」

 

 それは現状じゃ悪手だ

 

「ふふ、タロットレイの表示形式変更効果は相手ターンでも発動できるのよ?

 それに、対象は別にミエルのモンスターでなくてもいいの

 ちゃんと知らないモンスターの効果は確認しないとだめよ?」

 

「・・・・・・」

 

 柚子は何も言わない

 効果や墓地の確認はデュエルディスクを使えばすぐにできる

 それを怠り、熱くなりすぎてミスをするなんてと、冷静になった頭が後悔をし始めたんだろう

 

「・・・カードを2枚伏せて、エレジーを守備表示に変更・・ターン・・・エンドよ」

 

 エレジー ATK2300→DEF1200

 

「じゃあ、ミエルのターンね、ドロー」

 

「まだ、まだ終わりじゃないわ!トラップカード、戦線復帰!

 墓地からモンスターを守備表示で特殊召喚するわ!

 戻ってきて、幻奏の音女アリア!」

 

アリア「はっ!」

   DEF1200

 

 崩れた布陣をすぐに元に戻すか

 ほったらかしだった昔に比べれば、成長したな柚子

 

「ふふ、じゃあ、まずはこれで運試しと行きましょうか?

 魔法カード、貪欲で無欲な壺を発動

 メインフェイズの初めにこのカードは発動できる。

 墓地の種族の異なるモンスター3体をデッキに戻してシャッフルし、2枚ドローするわ

 ミエルの墓地の雷族のサブテラーマリス・ボルティニア、炎族の魔神儀(デビリチャル)―キャンドール、植物族の魔神儀(デビリチャル)―タリスマンドラをデッキに加えてシャッフルし2枚ドローよ。

 そして、このターン、ミエルはバトルフェイズが行えないわ。

 まぁ、出来たとしても意味がないわね。」

 

「そう、じゃあ!私をこのターン、倒すのは無理ってことね!」

 

「あら、別にそんなことは言ってないわ。

 それに、あなたはあなた自身の力で終わりを迎えることになりそうよ・・・

 墓地の聖占術の儀式を除外して効果発動

 デッキから、占術姫モンスター、2枚目のタロットレイを手札に加え

 

 さらに儀式の下準備を発動

 デッキから、儀式魔法とそこに記載された儀式モンスターを手札に加えるわ

 手札に加えるのはもちろん、聖占術の儀式とタロットレイよ。

 

 さらにタロットレイの効果で禁忌の壺を裏守備にして、再び反転召喚

 リバース効果で2枚ドローするわ」

 

 ここでミエルは手札を一気に回復してきたか

 柚子の残りの伏せカードは3ターン目のことを考えると、スピリット・バリアあたりか

 だが、バトルフェイズが出来なくなっているミエルの前じゃ無意味なカードになってしまっているな

 

「さぁ、ここが運命の分かれ道よ

 魔法カード、一撃必殺!居合ドローを発動よ。」

 

「い、一撃必殺!?」

 

「そう、このカードは手札を1枚捨て、相手のフィールド上のカードの枚数だけ、ミエルはデッキの上から墓地へ送り、1枚ドローするの

 そして、ミエルが居合ドローを引いたら、それを墓地に送ってフィールドのカードを全て破壊

 その後、この効果で破壊され墓地に送られたカードの数×2000ポイントのダメージを与えるわ。」

 

「なんと!?まさに当たれば一撃必殺の効果!!」

 

「でもまぁ、専用構築でもないと当てるのは難しいよな~」

 

「だが、柚子のライフはすでに1800

 柚子のフィールドのアリアとエレジーは効果で破壊されないとはいえ、それ以外にも7枚ものカードがあるのだぞ!?

 悠長には構えてられん。」

 

「カウンターの手段でも持ってないと、どう構えていても仕方ないだろ?

 今は相手のターンだし、柚子の手札は0、墓地で効果が使えるカードもないんだから」

 

 それに、きっとミエルの狙いは手札のカードを墓地に送ることだろうしな・・・

 

「ふん!そんなギャンブルカード、簡単にあてられるわけないじゃない!」

 

「そうね、でもこのカードで運命に幕を下ろした方が幸せかもよ?ドロー

 引いたカードは魔神儀(デビリチャル)の創造主―クリオルター、居合ドローではないわ」

 

「それは残念だったわね!」

 

「そう・・・とても残念だわ・・・

 でも、ミエルはマジェスティの臣下として、未来を見通す者として、これからあなたに残酷な運命の結末を突き付けなくてはならないわ・・・」

 

「何を言っているの!?

 貴方はバトルフェイズを行えず、アリアとエレジーは戦闘でも効果でも破壊されず、効果の対象にもならないのよ!」

 

「・・・・・・居合ドローを引けなかったことにより、デッキから墓地に送った枚数と同じ枚数のカードを、墓地からデッキに戻す

 墓地に送られたのは9枚、よって墓地から9枚のカードを選びデッキに戻すわ」

 

 ミエルは何も答えない

 占い師としての矜持か、その手に揃ったカードをじっと見つめ、そこに示された意味を読み解き、淡々と動き出す

 

「禁忌の壺と機怪神(デウス)エクスクローラーをリリースして、モンスターを裏守備表示でアドバンス召喚

 そして、墓地のトラップカード、黒猫の睨みの効果を発動よ

 このカードを除外して、フィールドの占術姫モンスターを含む、表側表示モンスター2体を裏側守備表示にするわ

 聖占術姫タロットレイとマンジュ・ゴッドを裏側守備表示に・・・」

 

「な、何をして・・・」

 

 まったく意味が分からないと言った様子の柚子

 リバース効果モンスター2体をリリースしてまで呼び出して、アドバンス召喚されたモンスターも裏守備で

 さらに、裏守備にする意味がないタロットレイまでセット状態にしたんだ

 あらゆるカード効果を熟知している奴じゃないと、この行動の意味は分からないだろう

 

「私のフィールドの表側表示モンスターが、裏側守備表示になった時

 自分フィールド上に表側表示モンスターが存在しない場合、手札のサブテラーマリス・ボルティニアは特殊召喚出来るわ」

 

 ボルティニア DEF3000

 

「また、守備力3000のモンスター!?」

 

 再び現れた地面を突き進む、未だにその姿を見せないモンスター

 だが、その突き進んだ先からはバチバチと何かがはじけ飛ぶような音が聞こえている

 

「ボルティニアは自らの効果で裏側守備表示になれるわ」

 

 謎のモンスターはさっきまでよりも深く地面の中に潜り込む

 

「そして、星遺物の傀儡の効果で表側守備表示にリバース・・・」

 

――ゴゴゴッ!

 

「な、何!?」

 

――ドオオォォォォン!!

 

 柚子の目の前の地面が爆ぜる

 その中から現れたのは青白い巨大な体を持ったモンスター

 そのモンスター、サブテラーマリス・ボルティニアは宙返りをしてミエルのフィールドに舞い降りる

 電気を纏い、浮遊をする姿はまるで龍の様だ

 

ボルティニア「シャアアアァァァァァァ!!」

      DEF3000

 

「なんて大きさ・・・って、あっ!?私のアテナが!?」

 

「ボルティニアのリバース効果よ。

 相手フィールドの裏側守備表示モンスター1体のコントロールを次の私のエンドフェイズまで得る。」

 

「なんと・・・アドバンスセットはモンスターゾーンを開け、この効果を使う事への布石であったか!?」

 

「アテナを反転召喚」

 

アテナ「ふんっ!」

   ATK2600

 

「自分のモンスターの効果ぐらいわかっているでしょ?

 そして、私のタロットレイは天使族モンスター、この意味わかるわよね?」

 

「そ、そんな、まさか・・・」

 

「儀式魔法、聖占術の儀式を2枚発動、セットされた星遺物の守護竜メロダークとフィールドのサブテラーマリス・ボルティニア、この2体をそれぞれの儀式の供物と捧げ、儀式召喚!

 現れよ!聖占術姫タロットレイ!!」

 

 タロットレイ ATK2700

 タロットレイ ATK2700

 

 漆黒の守護竜と雷を纏う地龍が炎で焼かれ、その中から姿を現す、人の運命を見通す太古の巫女

 そして、月の女神は本来の主に向かって天の使いが舞降りたと、その手に持つ槍から祝砲を放つ

 

「きゃ!?あううぅ・・・」

 LP1800→1200→600

 

「天使族モンスターが召喚、反転召喚、特殊召喚された時、相手ライフに600ポイントのダメージを与える効果

 さぁ、これでお終いよ、自らのモンスターの力で幕を引きなさい

 セットされている聖占術姫タロットレイを反転召喚、アテナの効果で600ポイントのダメージを与えるわ」

 

「きゃあああぁぁぁぁ!!」

 LP600→0


 講義が終わった後の遊勝塾の屋上

 生徒たちが元気良く帰っていく声を耳にしながら、私は夜空を仰いだ

 ここはビル街から少し離れているからか、今日は星が良く見えるわ

 

≪貴方の運命の先に待つのは、貴方が原因で誰かを傷つけてしまう未来≫

 

 誰か・・・私が原因で、また誰かが傷つくというの?

 

≪運命は変えることは出来ない、けど、選ぶことは出来る。

 でも、運命を選び取るには強い意志と力が必要よ。

 あなたが、誰も傷つけたくないというなら、強くなりなさい。≫

 

 『強さ』あのミエルって子の言っていた言葉が頭の中を反芻する

 たしかに、私は遊矢みたいな異常なデュエルタクティクスはないし、沢渡みたいに何百回と負けてもそれを糧にできるほど心が強いわけでもない

 それでも、自分でもまあまあ強い方だって思ってた

 

 でも、遊矢に聞いたらあの子はデュエル塾じゃなくて占い塾に通っているらしい

 プロデュエリストを目指している私が本業が占い師の子に負けた

 それも、終始翻弄されっぱなしのぼろ負け・・・

 

「はぁ~・・・」

 

「おー柚子!ここに居たのか」

 

「遊矢・・・」

 

 屋上の扉を開けて入ってくるその人、榊遊矢

 この塾を開いた伝説のエンタメデュエリスト、榊遊勝の一人息子で私の幼馴染

 もう長く一緒に居るのに、何時まで経ってもよく分からない不思議な人

 

 融合、シンクロ、エクシーズの各召喚法を十全に使いこなして

 新たな召喚法、ペンデュラム召喚もすぐにマスターしたデュエルの天才

 

 デュエルスタイルは遊勝おじさんのように、エンターテインメントを意識したものではなく、苛烈で容赦がない

 でも、全力でデュエルする姿は相手すら引き込んで熱狂させる、私の憧れ

 

「どうした?こんな所で膝を抱えて、随分としおらしいじゃないか」

 

「う、うん・・・」

 

「・・・ミエルに言われたこと気にしているのか?」

 

「少し・・・私が弱いとみんなを傷つけることになっちゃうのかなって・・・」

 

 そう、沢渡の時も私が無理やりにでも止めていれば、怪我をしなかった

 もし、あの子の言うようにこの先誰かを傷つけるのなら、私は如何したらいいの?

 

「なぁ、柚子・・・お前は強くなったらどうしたい?」

 

「えっ?」

 

 いきなり何を言うの、遊矢は

 私は自分が弱いから悩んでいて・・・

 

「強くなるっていうのは、同時に敵を作るってことだ。

 現に俺なんて、何人居るかわからないくらい居るだろ?」

 

 それは、大会荒らしなんてしてたからじゃ・・・

 

「俺の父さんなんて見てみろよ

 強かったけど、敵を作り過ぎて、今じゃこの街の負の象徴みたいになってるんだぜ?

 で、柚子のしたい事にはそんな数の敵は必要なのか?」

 

「じゃあ、遊矢はどうなの・・・?」

 

「俺?もちろん必要だよ。

 負けて悔しい、俺を絶対倒してやる、俺の方が強いんだと証明してやる、そんな気持ちで組まれたデッキはまさしくその人の最高で本気のデッキだ。

 俺はそんな奴と全力でデュエルがしたい、だからデュエリストやってるんだからな。」

 

 うわぁ~・・・なんてバトルジャンキーな答えなの

 

「柚子が目指しているのはエンタメデュエリストだろ?

 ただショーとしてお客さんを楽しませたいなら、そんなに強くなる必要はないじゃないか

 相手の人と合わせて、華やかな場を作っていればいいんだからさ」

 

「そ、それは・・・」

 

 そうかもしれないけど、デュエリストとしてそれでいいの!?

 

「あ~でも、相手と合わせるっていうのも結構技量と知識はいるから、うん、強いに越したことはないか・・・

 でも、いくら強くなったからって、ショーデュエルのノリでガチ勝負を望んでいる人と対戦しちゃだめだぞ?

 快く思ってくれない人もいるからな。」

 

「遊矢、それって・・・」

 

 遊勝おじさんの事じゃ・・・

 

「そう、俺の父さんの事だ。

 2、3ターンで決着ついたらいいんだけど長勝負になるほど、相手からの印象は自分は父さんのショーのダシに使われているんじゃないかって思われて

 その人のファンの人たちも自分の好きな人が猿回しの猿みたいに扱われてると思っていたらしいからな。」

 

 3年前、私とお父さんが見に行った、ストロング石島との王座防衛戦の観客たちのおじさんへの批難はそれは酷いものだった

 飛び交う罵詈雑言におじさんを擁護してる人は誰も現れず

 観客たちの怒りに、お父さんも私も震えて何も言えなかった

 いつも「デュエルで笑顔を」って言ってくれていたおじさんは、密かに人々からの怒りを買っていた

 

「強くなるには、強い人なりのマナーや態度がある。

 じゃないと、相手が気持ちよくプレイできないからな。

 それがプロっていうものだ。」

 

「う、うん・・・そうね、でも、それ私にできるかしら?」

 

「う~ん、別に強くなる必要がないんだったらいいんじゃね?

 ショーデュエルなら相手の人もお前に合わせてくれるだろうし・・・」

 

「でも、あの子の占いじゃ!」

 

「占いは所詮占いさ、当たるも八卦当たらぬも八卦ってね。」

 

「でも、もしかしたら遊矢も、私の所為で傷ついちゃうかもしれないのよ!!」

 

 そんなの絶対イヤ!私の目の前で塾の子達や権現坂、お父さんも、遊矢も・・・

 誰かが傷つくのなんて見たくない!!

 

「だったら、俺が蹴散らしてやるよ。」

 

「えっ・・・」

 

「柚子の目の前で誰かを傷つける奴も、柚子を傷つける奴も、みんな俺が倒してやる

 あー俺のことは心配するな、柚子の運命に巻き込まれて傷つくほど、やわじゃないからな。」

 

「遊矢ー!何してんのー!そろそろ、帰ろうよー!」

 

 素良が遊矢を呼びに来た、結構時間経っちゃったみたいね

 

「お~う!じゃあな、柚子!明日また学校で」

 

「うん、おやすみ、遊矢・・・」

 

「あぁ、おやすみ、柚子」

 

 別れを告げて駆けだす彼、素良もそれを追おうとするけど、私は素良を呼び止めた

 

「ねぇ!素良!!」

 

「ん?なにさ、柚子?」

 

 未来だとか運命だとか分らない

 でも、あんなことを言われたら、守ってもらうだけじゃ悔しいから

 

「私に融合を教えて!!」

 

 強くなろう

 強くなって、お客さんも、相手も、そして自分も

 心の底から笑い合えるような、そんなデュエリストになろう




ぐすっ!よかったぞー!柚子ー!!熱血だー!!
でも、俺も、もう少し頼ってくれないかな・・・
えっー!!LDSの理事長がくんの!?しかも、交流戦の申し出!?
ちょっと、遊矢ー!勝手に話を進めないでくれよー!!
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『強襲 LDS』
って、一戦目から遊矢!?少しは手加減してくれよ・・・


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襲来LDS

前から行っているアンケートなのですが、調整したままでもかまないという人も多いのですが、やっぱりアニメカードほぼそのまま使用しようと思ってます。
ただ、完全にテキスト不明なカード(地属性CCC)はセリフから引用するのでご了承ください。

あと、どういう裁定になるかわからないカード(パスト系速攻魔法)はカウンターをされた場合や特殊召喚数のカウントは発生するのかなど、テキストからは読み取れないので手順的にも台詞的にも全く同じになるようにOCG的なものに変更したものを使用しようかなと思っています

活動報告の「アンケートの途中経過」に使用しようと思っている2枚のカードの効果を載せているのでご意見やもっといい言い回しがあったらそっちにお願いします


 高速道路を1台の白いリムジンが走っている

 その車内ではサングラスをかけた大男とワインレッドカラーのスーツを着こなし、紫色の髪を独特の形にカールさせた女性が向かい合っていた

 

「交渉のご成功

 おめでとうございます、理事長」

 

「ありがとう、中島

 これでまた一つ、計画が前に進んだわ。」

 

 女性『赤馬 日美香』はほくそ笑む、だが中島と呼ばれた大男はサングラス越しだが、若干表情を険しくさせていた

 

「今回の買収の成功は、社長も大変喜んでおられます・・・ですが」

 

「ですが・・・何だというのですか?」

 

「はい、実は交渉の妨げになってはと思い、連絡を控えていたのですが

 いくつか気になる事件が起こっておりまして・・・」

 

「事件?」

 

「はい、まずはここ最近、LDSの教員を主に狙った襲撃事件です。

 犯人は目撃者の証言によるとエクシーズ使いらしく、またその使用カードも見たことがないものであったと

 デュエルディスクは違法改造されたものが使われているらしく、アクションフィールドでもないのにリアルなダメージが感じられたとの話です。

 また、行方不明者も何人か出ている為、現在警察と協力して調査中です。」

 

「なんですって!?

 まさか、敵からの、あの人からの攻撃がもう始まったというのですか!?」

 

「いえ、社長は違うとおっしゃっておりました。

 敵からの攻撃にしては規模が小さすぎると

 ただ、来訪者である可能性は極めて高いともおっしゃっておりました。」

 

「そうですか・・・わかりました。

 迅速に事態の収拾を図りなさい!」

 

「はっ!

 それともう1つ、2週間ほど前に新たな召喚法が発見されました。」

 

「新たな召喚法?」


「零児さん・・・新しい召喚法とは、私達が知っている、融合、シンクロ、エクシーズとは別の

 まったく新しい召喚法が現れたということですか?」

 

 レオ・コーポレーションの一室

 社長室であるそこで社長である赤馬零児と、LDSの理事長であり零児の母親の日美香が対談していた

 

「その通りです、母様

 それは2週間前、突然出現しました。」

 

 部屋が暗くなり、スクリーンが下りてくると、そこにはストロング石島と榊遊矢のスペシャルマッチの映像が映し出される

 

≪揺れろペンデュラム、開演の鐘となれ!告げよ!新たなる歴史の1ページを!!『ペンデュラム召喚』!!≫

 

「ペンデュラム召喚?」

 

「ペンデュラムカードと言う

 特殊なモンスターカード2枚を使って、上級モンスターもリリースなしで同時に何体も召喚できるという今までになかったものです。

 また、この召喚の際、膨大な召喚エネルギーも検知されています。」

 

「まさか、それもあの人が?」

 

「いえ、それはないでしょう

 ペンデュラム召喚を最初に使ったデュエリストは間接的にではありますが、我々とコンタクトを取ってきました。

 それも、オリジナルカードを貸し出すという行為までとって、量産せよとの要求を」

 

「それは・・・それでそのペンデュラム召喚を使ったデュエリストと言うのは、いったい誰なのです?」

 

 映像は切り替わり、舞網第二中学の制服を着崩した少年、榊遊矢の画像とデータが表示される

 

「市内にある遊勝塾と言う、デュエル塾に所属する14歳の男子、榊遊矢です。

 今年度の公式な対外試合の成績は、ほぼ全勝・・・

 少なくある敗戦も変わったデッキを使ったために起きた手札事故ぐらいです。」

 

「なんと・・・これほどのデュエリストが、我がLDSの外に居るなんて・・・」

 

「それだけではありません

 彼はLDSの所属が一切ないにもかかわらず、融合、シンクロ、エクシーズを自在に使いこなしています。」

 

「何ですって!?」

 

「また、先ほど公式の記録の成績を言いましたが、彼の非公式な記録も存在しています。」

 

「非公式?どういうことですか?」

 

「彼の裏の顔は『狂った道化師(マッドピエロ)』と言う、7年前から各地の大会に出没し優勝を果たして賞金を手に入れて行くという、いわゆる大会荒らしです。」

 

 またスクリーンの映像が切り替わり、そこに表示されたのは白塗りの仮面に黒い道化師服を着た人物の写真

 デュエルした時のものしかないためか、その姿は炎などに照らされて不気味に映り込んでいた

 

「大会荒らし・・・それを7年前から現14歳の少年がやっていたというのですか?」

 

「事実です。

 そして、彼は、あの榊遊勝の息子です。」

 

 冷静にデータを見ていた日美香の目が見開かれる

 

「榊遊勝!?

 まさか、彼が敵と手を組み息子を!?」

 

「いえ、それならば我々にペンデュラムカードの量産をさせるのはおかしい。

 榊遊矢の行動原理にはいささか不明な点がいくつかありますが、彼と友好を築くのは大きくプラスに働くことでしょう。」

 

「わかりました。

 大会荒らしをしているということは、多額の褒賞をちらつかせれば動くことでしょう。

 ついでに彼の所属するデュエル塾ごと、我々の傘下に・・・」

 

 今後の計画を立てほくそ笑む日美香だったが、零児がそれに待ったをかける

 

「いえ、ことはそう、うまく進みそうにはありません」

 

「それは、どういう事です?」

 

「彼の個人資産は7年もの間に出た大会の優勝数からすると、膨大な物であり、また彼自身も誰かの下に付きそうにない破天荒な性格をしています。

 また、彼の所属する遊勝塾はジュニアクラス向けのものであり、彼はそこの講師と言う形で在籍しているようです。」

 

「講師?中学生の彼がですか?」

 

「あり得ない話に聞こえるでしょうが、本当です。

 さらには、ジュニアユースに上がった生徒は、それぞれのデュエルスタイルに合った他のデュエル塾に輩出しており、我がLDSにも何人か在籍しています。

 そして、遊勝塾から移籍した生徒のデータがこちらです。」

 

 表示されるLDSに在籍する3人のデータのほか、様々な塾に在籍する生徒のデータが表示され、それを見た日美香は我が目を疑う

 

「なっ!?全員、勝率8割強ですって!?」

 

「はい、そのため彼の塾は他のデュエル塾から優秀な人材を輩出すると一目置かれており、またLDSとは教育方針の違いなどもあり、買収するのは難しいかと」

 

「・・・では、どうしろと?」

 

「まずは、彼に良き印象を持ってもらう事から始めましょう

 そこで母様には、これを彼に返すついでにやっていただきたいことが・・・」

 

 日美香に差し出されたのは、物語の始まりとなったきっかけであるカード

 『時読みの魔術師』と『星読みの魔術師』

 時間と空間を司る魔術師たちが主の下に帰る時が来た

 混沌を極める世界は、暗雲の中をひたすら突き進む


 学校を終えた俺たちは今日の授業のプログラムを確認する

 素良には融合召喚を戦術にしている子達を別クラスとして編成し、それを任せるようにした

 融合召喚はエクストラデッキを使う召喚法の中では1番初めに広がったので、この世界での使用率は割と高めだ

 俺の持ちクラスの半分ほどが素良の方へ移ったので、Bクラスの生徒の何人かを昇級させれば入塾希望者の受け入れも可能になるだろう

 

 そういえば、柚子が塾生に交じって素良の講義を聞いているようだけど、まだ「目がくすんでいるわ」とか言われていないのに柚子は素良から融合召喚を習い出したらしい、ミエルに負けたからか?

 

「ところで、権現坂?

 デュエルはまた生徒たちが来てからでいいんだよな?」

 

「うむ、新たな修行の成果、存分に見せてやろうぞ!」

 

「へぇ~権ちゃんも、遊矢に負けて悔しい組?」

 

「ご、権ちゃん・・・まぁいい、当たり前だろう

 男として、勝負ごとに負けたままと言うのは示しがつかん」

 

 権現坂はたまに俺とここでデュエルをして、生徒たちに他流試合と言う名の見学をしてもらっている

 権現坂のデッキはフルモンスターデッキなので、かなりピーキーで戦術幅も限られてくるが今回はどんな手を編み出したのだか

 俺が、ふと窓の外に目を向けると、そこには白塗りの長いリムジンが止まっており、そこから出て来たかなり派手な髪形の女性が塾の中に入っていくのが見えた

 これはまさか・・・

 

「ゆ!遊矢ー!LDSの理事長がお前に会いに来たぞー!?」

 

 やっぱりか・・・沢渡は原作の様に騒いでないというのになぜあの人が来るんだ・・・

 

「失礼しますわ。」

 

 ドアを乱暴に開けて飛び込んできた修造さんの後ろから、赤や赤紫色が特徴的な女性が入ってくる

 赤馬 零児の母親、赤馬 日美香だ

 LDSの理事長にして、夫が失踪したためか、原作ではかなりのヒステリックな性格と強引さを持ち合わせていた人物だったが、この世界ではどうなのだろうか?

 

「突然の訪問、申し訳ありませんわ。」

 

「いえ、とり合えずソファにどうぞ

 俺に用があるという話でしたが、どのような内容ですか?」

 

「では失礼して、まずはこれをあなたにお返ししますわ」

 

 赤馬日美香が差しだしてきたのは、アタッシュケースの中に丁寧に収められた2枚のカード

 星読みの魔術師と時読みの魔術師、これを返しに来たか・・・

 預けたときと同様、沢渡経由で俺に渡せばいいようなものをわざわざ、理事長が届けに来るか・・・

 

「ちょっと失礼」

 

 俺はデュエルディスクのソリッドビジョンの調整モードを起動し、2枚のカードをモンスターゾーンに置く、するとちゃんと見慣れた2体の魔術師が現れた

 さらに今度はペンデュラムゾーンに2枚のカードを差すと、ちゃんとペンデュラムスケールの状態とデュエルディスクは認識した、本物で間違いないようだ

 

「確かに

 で、わざわざLDSの理事長さんが、こんなところに来た理由はただカードを返す為ではないんでしょう?」

 

「あら、随分と榊君は疑り深いのね

 まぁ、そうですわね、貴方達、入ってきなさい」

 

 空きっぱなしだった扉から出て来たのは3人

 紫色の髪を北斗七星型のヘアバンド(?)で止め上げた目付きの悪い少年

 褐色黒髪で動きやすそうな服装をした少女

 竹刀を担ぎ、いかにもな剣士やってますという雰囲気を出した少年

 

「彼らはジュニアユースクラスだけど、我がLDSの誇る融合、シンクロ、エクシーズの各コースのエース

 彼らとのデュエルをしてもらいたいのです。」

 

「ほう~つまり、他流試合の申し込みと言うわけですね。

 ですが、遊勝塾はジュニアクラス向けの塾なので、彼らには少し物足りないのでは?」

 

「いえ、対戦相手には榊君たち、ジュニアユースの子たち同士でデュエルをしてもらいたいのです。」

 

「それはそれは、確かにここにはジュニアユースクラスは、他流の権現坂を除いてちょうど3人

 でも、俺と素良は講師、柚子は事務員的な立ち位置に居ますがよろしいので?」

 

「えぇ、彼らに稽古をつけるつもりで挑んでもらって構いませんわ。」

 

 うん?嫌味のつもりで言ったはずなのに、かなり好意的な言葉が返ってきた

 かなり地を我慢しているか・・・あのメガネマフラーは何を考えているのやら

 沢渡経由で接触してみたが、怪しまれたか?

 

「では、開始は生徒たちが集まってからと言うことで、それまで隣の休憩室でおくつろぎください

 あぁ、対戦相手はどうします?

 そちらが最初に決めてもらって構いませんよ?」

 

「そうですか、ではあなた達、最初に誰が行きますか?」

 

 日美香理事長の言葉に反応し、今まで黙っていた3人の内、目付きの悪い少年が早い者勝ちだと前に出る

 

「僕が行こう。

 僕はLDS、エクシーズコース所属、志島北斗!

 対戦相手には榊遊矢、いや狂った道化師(マッドピエロ)、お前を指名する!」

 

「ほぉう、いきなり俺か?」

 

「そうだ!僕は現在40連勝中でね。

 君を栄えある41番目の獲物にしてあげるよ。」

 

「へぇ~40連勝中ね・・・わかった。

 じゃあ、柚子、来客用の休憩室に案内してくれ、お茶と菓子でも付けてな」

 

「う、うん・・・どうぞ、こちらです」

 

 赤馬日美香とLDS三人衆は部屋を出て行き、扉が完全に閉まったことを確認すると俺は肩の力を抜く

 

「はぁ~やっぱ慣れない交渉ごとなんてするもんじゃないな・・・

 悪い権現坂、今日は相手できなさそうだ。」

 

「う、うむ、俺は構わぬが・・・」

 

「なぁ、俺って一応、塾長だよな?」

 

 あっ!しまった、修造さん、置いてけぼりだった


『まぁ、始まってしまったものは仕方がない

 さぁ!2人共、熱血で頑張っていいデュエルを見せてくれ!

 フィールド魔法、コスモ・サンクチュアリ発動!』

 

「へぇ~僕にピッタリなフィールドを選ぶなんて、気が効くじゃないか!」

 

(修造さんの事だから、北斗って名前から連想しただけなんだろうな~)

 

『『決闘(デュエル)!!』』

 

 さぁ、始まりましたわね

 榊遊矢、零児さんはあぁ言っていたけど、私はこの目で見ないと信用ならないわ

 このデュエルで貴方が我々の敵なのかどうか、見極めさせてもらいましょう

 

「さぁ北斗、貴方の力を見せておやりなさい!」

 

「先攻は僕が頂く

 僕はセイクリッド・グレディを召喚!」

 

セイクリッド・グレディ「ハッ!」

           ATK1600

 

「セイクリッド・グレディの召喚に成功したことにより、手札のレベル4のセイクリッドモンスターを特殊召喚出来る

 来い、セイクリッド・カウスト!」

 

セイクリッド・カウスト「フン!」

           ATK1800

 

 山羊の意匠の魔術師に呼び出される半人半馬の弓兵、2体の白銀の星騎士はその力を高めるため、自らに新たな星を灯す

 

「セイクリッド・カウストの効果発動

 1ターンに2度まで、セイクリッドモンスターのレベルを1つ変動させる

 僕はカウストとグレディのレベルをそれぞれ1つ上げる。」

 

 セイクリッド・カウスト LV4→5

 セイクリッド・グレディ LV4→5

 

「僕はレベル5となったセイクリッド・カウストとグレディでオーバーレイ!」

 

 星騎士たちがその身に宿した新たな星と共に、また宇宙の混沌へと帰っていき

 その混沌から銀河の名を持つ新たな騎士が誕生する

 

「星々の光よ!今、大地を震わせ、降臨せよ!

 エクシーズ召喚!ランク5、セイクリッド・プレアデス!」

 

セイクリッド・プレアデス「ハハアァァァ!!」

            ATK2500 ORU2

 

「僕はこれでターンエンドだ。」

 

 素晴らしいわ、北斗!

 1ターン目からランク5の上位ランクのエクシーズモンスターを召喚するなんて

 さすが、我がLDSの誇るエクシーズコースのエースね

 

「伏せなしでエクシーズモンスター1体を出しただけか・・・このターンで終わっちゃうかもね?」

 

 えっ?

 

「そうねぇ

 手札補充もせずだったから、手札後3枚だし、防いでも次のターン持たないかもね。」

 

「うむ、それに事前にエクシーズを使うと公言してしまった以上、遊矢の奴はどんな対策をしてくるか判らんしな」

 

 何を言っているのこの子達は?

 

「ちょっと、あなた達!それはどういう事かしら?」

 

「そうだぜ

 あのセイクリッド・プレアデスは1ターンに1度、オーバーレイユニットを使ってフィールド上のカードを1枚、手札に戻す効果を持っているんだ。

 しかも、相手ターンでも使える奴をな」

 

「そうよ!

 いくら北斗がキザで小物っぽいからって、すぐに負けるとは思えないわ!」

 

 真澄と刃が北斗の擁護に入る

 そうよ、我がLDSきってのエリートがそんな簡単に敗北するなどあり得ないわ!

 

「だって、僕なんか僕のターンなのに強制攻撃で迎撃されて、ライフ4000を消し飛ばされたし」

 

「それって素良がアクションカード取って無かったら、もっとダメージ有ったわよ

 私なんてこの前、融合、シンクロ、エクシーズ、ペンデュラム全部使われてのバーンでの1キルよ。」

 

「俺なんぞ、元が攻撃力0のトークンにやられたぞ・・・」

 

「な、何だそれ!?」

 

「あなたたち、普段何やっているのよ・・・・」

 

 何、その無茶苦茶な内容は!?

 一体彼はどんなデュエリストだというの!?

 

「俺のターン、ドロー

 プレアデスか、セイクリッドの常套手段だな」

 

「へぇ~僕のセイクリッドモンスターの事を知っているようだね。

 だったら、この僕に早くも怖気づいたのかい?

 噂に聞く狂った道化師(マッドピエロ)も、所詮僕の敵じゃなかったってことか、ははははっ!」

 

「いや、ただバックもないから、簡単に処理できそうだな~って思っただけだけど?」

 

「はっ?」

 

「俺は永続魔法、炎舞―天璣を発動

 こいつは1ターンに1度までしか発動できないけど、発動時にデッキからレベル4以下の獣戦士族モンスターを1体手札に加えることが出来る。

 俺が手札に加えるのはEM(エンタメイト)ヘイタイガー

 

 さらにスケール6のEM(エンタメイト)リザードローをペンデュラムスケールにセッティングして魔法カード、デュエリスト・アドベント発動

 1ターンに1度、自分または相手フィールド上のペンデュラムゾーンにカードがあるときデッキからペンデュラム魔法またはトラップか、ペンデュラムと名の付くペンデュラムモンスターを手札に加える。

 俺はデッキから通常魔法、ペンデュラム・アライズを手札に加える。

 

 そして、EM(エンタメイト)ドクロバット・ジョーカーを召喚」

 

ドクロバット・ジョーカー「はははっ!」

            ATK1800

 

「このモンスターの召喚に成功した時、デッキからドクロバット・ジョーカー以外のEM(エンタメイト)モンスターか、オッドアイズモンスター、魔術師ペンデュラムモンスターの内、1体を手札に加える。

 俺はEM(エンタメイト)ペンデュラム・マジシャンを手札に加え、ペンデュラムゾーンにセッティング!」

 

 遊矢の両隣に現れる光の柱、そこに居るのは振り子の魔術師と赤いトカゲの紳士

 その下には2と6に見える奇怪な模様が浮かび上がる

 

「スケールは2と6、これで俺はレベル3から5のモンスターをペンデュラム召喚できるようになった

 揺れろペンデュラム、異世界へ通ずる扉を開け!ペンデュラム召喚!

 現れろ!EM(エンタメイト)ヘイタイガー!セカンドンキー!」

 

 夜空から2つの流星のごとき光が落ちてくる

 その中から現れるのは、赤い軍服を着た虎の兵隊と茶色いロバ

 そして、振り子は遊矢のモンスター達に加護を与える

 

「ペンデュラム・マジシャンのペンデュラム効果発動

 俺がペンデュラム召喚を行ったことにより、俺のフィールドのEM(エンタメイト)モンスターの攻撃力がエンドフェイズまで1000ポイントアップする。

 ついでに、獣戦士族であるヘイタイガーは炎舞―天璣の効果で攻撃力がさらに100上がる」

 

 ヘイタイガー       ATK1700→1800→2800

 ドクロバット・ジョーカー ATK1800→2800

 セカンドンキー      ATK1000→2000

 

「なっ!?攻撃力2800が2体だとー!?」

 

「それと、特殊召喚されたセカンドンキーの効果によって、デッキからEM(エンタメイト)モンスターを墓地に送る。

 だが、俺のペンデュラムゾーンにペンデュラムスケールが2枚セットされているため、このカード、EM(エンタメイト)バリアバルーンバクを手札に加えることが出来る。

 

 さぁ、バトルだ。

 どうせ、バウンス効果を使うんだろ?

 手札に戻すなら、モンスターを戦闘破壊した時、デッキからEM(エンタメイト)モンスターを手札に加える効果を持つヘイタイガーがお勧めだぞ?」

 

「くっ!?僕はプレアデスの効果でEM(エンタメイト)ヘイタイガーを手札に戻す!」

 

セイクリッド・プレアデス「フンッ!」

            ORU2→1

 

 プレアデスの剣にオーバーレイユニットが宿り、それを振るうと無数の流星の様な光がヘイタイガーを包み、その身をカードへと戻し遊矢の手札に戻してしまった

 

「だが、まだドクロバット・ジョーカーが居る。

 ドクロバット・ジョーカーでセイクリッド・プレアデスに攻撃」

 

 ドクロバット・ジョーカーは帽子の中から導火線に火の付いた爆弾を取り出し、それをセイクリッド・プレアデスへと投げつける

 セイクリッド・プレアデスは迎撃態勢を取り、爆弾の衝撃に耐えようとするが、プレアデスに当たる前に爆弾は突然無数に分裂し、それが連鎖爆発していきプレアデスを跡形もなく消し飛ばした

 

「ぐぅ!?」

 LP4000→3700

 

「おっと、俺のモンスターはもう1体居るぞ

 セカンドンキーでダイレクトアタックだ。」

 

 セカンドンキーの猛突進が北斗を轢き飛ばす

 

「ぐわああああぁぁぁぁぁぁ!!」

 LP3700→1700

 

「バトルフェイズ終了、メインフェイズ2だ

 魔法カード、ペンデュラム・アライズ発動

 自分フィールド上のモンスターを1体墓地に送り発動、デッキからそのモンスターと同レベルのペンデュラムモンスターを特殊召喚する。

 俺はセカンドンキーを墓地へ送り、2体目のペンデュラム・マジシャンを特殊召喚」

 

ペンデュラム・マジシャン「ふん」

            ATK1500

 

「ペンデュラム・マジシャンの特殊召喚により効果発動

 自分フィールド上のカードを2枚まで破壊し、デッキから破壊した数までペンデュラム・マジシャン以外の同名以外のEM(エンタメイト)モンスターを手札に加える

 俺はペンデュラムゾーンとモンスターゾーンのペンデュラム・マジシャン2枚を破壊し、デッキからEM(エンタメイト)ロングフォーン・ブルとホタルクスを手札に加える。」

 

 断頭台のごとく揺れる振り子がペンデュラム・マジシャンを破壊する

 だが、マジシャンたちに悲壮などない、自らの命は新たな仲間の呼び水となり、その魂は消えることがないのだから

 

「スケール5のEM(エンタメイト)ホタルクスをペンデュラムスケールにセッティング

 ここでリザードローのペンデュラム効果を発動、もう片方のペンデュラムゾーンにEM(エンタメイト)カードがあるとき、このカードを破壊しデッキから1枚ドロー

 カードを1枚伏せ、ターンエンドだ。

 ターン終了と共にドクロバット・ジョーカーの攻撃力は元に戻る。」

 

 ドクロバット・ジョーカー ATK2800→1800

 

 遊矢のターンが終わり、そのタクティクスを目撃した日美香は開いた口が塞がらなかった

 

「これがペンデュラム召喚・・・」

 

 なんという・・・まるで北斗が歯が立っていないわ

 いえ、これはペンデュラム召喚が使えるからと言うよりも・・・

 

「お、おい、何なんだよあいつ

 あれだけ動いていやがるのに手札がまだ4枚もありやがる・・・」

 

「下級モンスターだけで、上位ランクのエクシーズモンスターを倒した!?

 なんて、むちゃくちゃな・・・」

 

「なんだか遊矢のモンスター、サーチ効果やドロー効果ばっかりね?」

 

「元々、遊矢はサーチカードは多用していたけど、フィールドのアドバンテージを少なくしてまでサーチしたってことは何かドローしたいカードがあって、デッキ圧縮してるってことかな?」

 

「いや、ただ、エクストラデッキにモンスターを溜めているだけではないのか?

 セイクリッド・プレアデスの手札に戻す効果は1ターンに1度だから、対処できなくなるほど大量にモンスターを呼ぶためかもしれん」

 

 真澄と刃が恐れおののく中、遊勝塾の子達は冷静に戦術分析をしている

 ありえないわ・・・

 LDSの、それもジュニアユースクラスとはいえ、エクシーズコースのトップの成績の北斗をこんなにあっさりと追い込むなんて

 こんなの業界ナンバーワンのLDSの看板に傷が付いてしまうわ

 なんとかしなさい!北斗!!

 

「馬鹿な・・・ありえない・・・この僕が・・・」

 

「おいおい、戦意喪失なんてしないでくれよ・・・子供たちも見てるんだからさ~」

 

「くっ!僕のターン、ドロー

 僕は永続魔法、セイクリッドの星痕を発動!」

 

 北斗は夜空から流星が一つ落ちてくるのを見るや否や、走り出す

 

「このカードは僕がセイクリッドモンスターをエクシーズ召喚した時、1ターンに1度ドローできるようになるカードだ!

 さらに相手フィールド上にのみモンスターが居るとき、手札のセイクリッド・シェアトは特殊召喚出来る!」

 

セイクリッド・シェアト「シェア!」

           DEF1600

 

「さらにセイクリッド・ソンブレスを通常召喚!」

 

 水瓶の様な物を持った小さな騎士と星の力を受け継いだ乙女が現れる

 それと同時に北斗は流星の落下地点であろう場所に着き、目的のものを探し出す

 

「どこだ!どこだ何処だ!?

 あの流星は確かにこの辺に落ちたはず・・・」

 

「お探し物はこれかい?」

 

 北斗の背後から声が聞こえる、誰かは見なくても判るだろう

 このフィールド内にいるのは北斗を除けばただ一人、榊遊矢だけなのだから

 遊矢は北斗の背後の神殿の屋根の上に腰掛け、アクションカードを見せつけていた

 

「ど、どうしてだ!?なぜ、お前がそんなところに居る!?」

 

 遊矢がさっきまでいた場所に目を向けると、そこにはドクロバット・ジョーカーがいそいそとトランポリンを片付けている姿があった

 それを見た北斗は、遊矢が何をしたのかを確信する

 

「まさか・・・ジャンプして、流星を空中で掴んだのか!?」

 

「そういうこと、ほら、さっさとプレイしろよ

 時間制限で負けてしまうぞ?」

 

「クソッ!僕はセイクリッド・ソンブレスの効果発動

 墓地のセイクリッドモンスターを1体除外することで、セイクリッドモンスター1体を墓地から手札に呼び戻す!

 僕はグレディを除外してカウストを手札に戻し、さらにこの効果を使ったことにより、ソンブレスの効果でセイクリッドモンスターを召喚する

 来い、セイクリッド・ポルクス!」

 

セイクリッド・ポルクス「フンッ!」

           ATK1700

 

「さらにセイクリッド・ポルクスが召喚に成功したターン、通常召喚とは別にセイクリッドモンスターを召喚できる

 僕はセイクリッド・カウストを召喚!」

 

セイクリッド・カウスト「ハッ!」

           ATK1800

 

 星の乙女に導かれ、双子座の剣士、射手座の弓兵が次々に現れ、弓兵は自身と星の乙女に前のターン同様、新たな星を宿らせる

 

「カウストの効果で、カウストとソンブレスのレベルを1つ上げる!

 さらにシェアトは自分の墓地かフィールドのセイクリッドモンスターと同じレベルになることが出来る

 僕はシェアトをポルクスと同じレベルに変換!」

 

 セイクリッド・カウスト  LV4→5

 セイクリッド・ソンブレス LV4→5

 セイクリッド・シェアト  LV1→4

 

「レベル4とレベル5のモンスターが2体ずつ」

 

「そうだ!僕を本気にさせた事、後悔させてやるからなー!!

 僕はレベル4のポルクスとシェアト、そしてレベル5のカウストとソンブレスでオーバーレイ!

 エクシーズ召喚!現れろ!!ランク4、セイクリッド・オメガ!

 ランク5、セイクリッド・プレアデス!!

 

セイクリッド・プレアデス「フンッ!」

            ATK2500 ORU2

 

セイクリッド・オメガ「デュア!」

          ATK2400 ORU2

 

 再び降臨した星雲の名を持つ騎士とその隣に並ぶ半人半馬の守護騎士

 そして、彼らが呼び出されたことで北斗の手に1つの光が灯される

 

「セイクリッドの星痕の効果で1枚ドロー

 そして、セイクリッド・オメガの効果発動

 オーバーレイユニットを使い1ターンに1度、僕のセイクリッドモンスターはこのターンマジック、トラップの効果を受けなくなる!」

 

 セイクリッド・オメガ ORU2→1

 

「これで伏せカードがあっても問題ない!それにそのペンデュラム効果と言うのもマジックカードの効果扱いらしいな!

 これで、僕のモンスターを止められるカードはなくなった!!

 プレアデスの効果でドクロバット・ジョーカーを手札に戻す!」

 

 セイクリッド・プレアデス ORU2→1

 

「おや、いいのか?

 次のターンでまたサーチ効果が使えるぞ?」

 

「次のターンなんてない!!

 お前のフィールドはがら空きも同然!このターンでお仕舞だ!!

 バトル!セイクリット・オメガでダイレクトアタック!」

 

 星雲の半馬騎士はその手に紋章を出現させそれを遊矢に放とうとするが、光の柱に捕らわれていた電球の様な腹を持つホタルが立ちはだかる

 

 EM ホタルクス DEF1600

 

「なっ!?馬鹿な、ペンデュラムゾーンに居るモンスターは魔法カード扱いのはず!?」

 

「永続トラップ、ペンデュラム・スイッチの効果

 1ターンに1度、自分のペンデュラムゾーンのカード1枚を対象にし、それを特殊召喚する。」

 

「くううぅぅぅ!!だったら、オメガでホタルクスを破壊だ!!」

 

「手札のEM(エンタメイト)バリアバルーンバクの効果

 ダメージ計算時にこいつを手札から捨てることで、モンスター同士の戦闘ダメージを互いに0にする。」

 

「はーははははっ!!血迷ったか!!

 守備表示のモンスターでダメージが発生するわけがないじゃないか!

 ダメージはこれから発生するんだ!行け、プレアデス!!ダイレクトアタックだ!」

 

「いや、これでバリアバルーンバクの2つ目の効果が使える。

 相手のダイレクトアタック宣言時、手札のEMモンスター、ヘイタイガーを捨てて墓地のバリアバルーンバクを守備表示で特殊召喚する。」

 

 バリアバルーンバク DEF2000

 

 セイクリッド・プレアデスの剣が遊矢に迫るが、その前に現れた紫の獏の形をした風船に邪魔をされ、その切っ先が届くことは叶わなかった

 

「こ、これも防ぐのか・・・

 ならば、僕はセイクリッドエクシーズモンスター1体を素材にさらなるエクシーズ召喚を行う!

 セイクリッド・オメガ1体を素材にオーバーレイ!

 眩き光もて降り注げ!エクシーズ召喚!

 現れろ!ランク6、セイクリッド・トレミスM7(メシエセブン)!」

 

 星雲の騎士が再び混沌の渦へ戻ると、その中から夜空の翼を広げ巨大な竜の様なモンスターが降臨する

 

セイクリッド・トレミスM7(メシエセブン)「ゴオオオォォォォ!!」

           ATK2700 ORU2

 

「これでターンエンドだ!」

 

「じゃあ、俺のターンだ、ドロー

 俺はスケール3のEM(エンタメイト)シールイールをペンデュラムスケールにセッティング

 そして、ペンデュラム効果発動

 1ターンに1度、相手フィールド上の表側表示モンスター1体の効果をこのターン無効にする

 対象はもちろん、プレアデス」

 

 次に光の柱の中に浮かぶのは口に×字のシールを張り付けたオレンジ色のうなぎ

 それが、その口からバッテンシールを飛ばそうとする

 

「な、何!?」

 

「オメガを残しておけばシールイールの効果を防げたのにな

 さぁ、どうする?このタイミングならまだ効果は扱えるぞ?」

 

「うぅぅ・・・プレアデスの効果でペンデュラム・スイッチを手札に戻す・・・」

 

 セイクリッド・プレアデス ORU1→0

 

 プレアデスにシールがはりつけられる直前、オーバーレイユニットを取り込んだプレアデスはペンデュラム・スイッチのカードを遊矢の手札に戻す

 だが、それはもう最後のあがきでしかない

 

「ドクロバット・ジョーカーを召喚し効果発動

 2枚目のホタルクスを手札に加え、ペンデュラムスケールにセッティング

 これでスケールは3と5になった

 俺は手札からEM(エンタメイト)ロングフォーン・ブル、エクストラデッキからEM(エンタメイト)ペンデュラム・マジシャン2体とホタルクスをペンデュラム召喚!」

 

 黒い奇術師の隣に降り注ぐ4つの光

 角が電話になった蒼い水牛、腹が電球となったホタル、2人の振り子の魔術師がそれぞれの光の中から現れる

 

 ドクロバット・ジョーカー ATK1800

 ペンデュラム・マジシャン ATK1500

 ペンデュラム・マジシャン ATK1500

 ロングフォーンブル    ATK1700

 ホタルクス        DEF1600

 

「4体同時召喚だと!?

 だがさっきと違い、攻撃力が僕のどのモンスターよりも遙かに下のモンスターばかりじゃないか!」

 

「おいおい、エクシーズ使いのくせに攻撃力でモンスターを判断するなよ。

 それに、俺がストロング石島戦の時に使ったモンスターを忘れているようだな?

 俺は、レベル4のホタルクスとドクロバット・ジョーカー、そしてペンデュラム・マジシャン2体でオーバーレイ!

 モンスター2体ずつでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!

 来い、交響魔人マエストローク!恐牙狼ダイヤウルフ!」

 

 遊矢の作り出した混沌の渦の中から現れるのは星の騎士たちと違い、統一感の無いモンスター達

 1つは小さな魔の国の指揮者、そしてもう一つは全身を金剛石の様な装甲で覆われた巨大な狼

 

マエストローク「ふんっ!」

       ATK1800 ORU2

 

ダイヤウルフ「ウオオオォォォォォォン!!」

      ATK2000 ORU2

 

「な、なにー!?」

 

「2体のエクシーズモンスターの効果発動

 オーバーレイユニットを1つ使い、マエストロークでプレアデスを裏側守備表示に変更

 そして、ダイヤウルフで俺のフィールドの獣族、鳥獣族、獣戦士族モンスターのうち1体と相手カード1枚を破壊する

 ロングフォーン・ブルとトレミスを破壊する。」

 

マエストローク「はっ!」

       ORU2→1

 

ダイヤウルフ「グオオオオアアアァァァァァァ!!」

      ORU2→1

 

 マエストロークが音符を操り、ダイアウルフが咆哮する

 魔力の宿った咆哮はセイクリッド・プレアデスをカードに封印し、セイクリッドトレミスM7(メシエセブン)の機能を麻痺させる

 そしてそこにロングフォーン・ブルはタックルを仕掛け、その身と引き換えにトレミスを瓦礫の山に変える

 

(裏守備じゃ、手札のオネストの効果も使えないじゃないか・・・)

「そ、そんな・・・エクシーズ召喚を極めて、40連勝で、1度もダメージを受けたことのない僕が・・・」

 

「40戦もしてダメージを受けてない?

 随分と格下ばっかりと戦って来たんだな

 それでいい気になっていたのか?」

 

 遊矢の高揚が冷める

 それは最後に足掻き何かやるのかと思っていたのに、北斗は頭を垂れ、ただ「あり得ない」と喚き散らすだけで、諦めてしまっているからだ

 

 だが、そんな北斗にも運だけは味方してくれたのか

 彼に向って流星が一つ降り注ぎ、それを見た彼はすぐさまそれを掴んだ

 

「はははっ!!どうやら、幸運の星はボクにめぐっているようだ!

 まだ、僕は負けていないぞー!!ははははっ!」

 

 だが、その手にした赤い流星は青い流星に打ち抜かれ、粉々になってしまった

 

「は?」

 

「アクションマジック、コスモ・アロー

 相手がドロー以外で手札にカードを加えたとき、その加えたカードを確認し、魔法カードなら破壊する

 よって、お前が手札に加えたアクションマジック、ティンクル・コメットは破壊させてもらった。」

 

「なんですとー!?」

 

「やれやれ、次はメタられても動揺しない精神を身に着けてもらってからデュエルしたいね

 バトル!マエストロークでセット状態のプレアデスに攻撃!」

 

 セイクリッド・プレアデス DEF1100

 

 カードの封印から解き放たれたプレアデスだったが、時すでに遅くその胸には深々と魔人の指揮者の剣が突き刺さり破壊された

 そして、ゆっくりと歩を進め、北斗の前に立ったダイヤウルフを彼は見上げる

 

「あ・・・あぁ・・・」

 

「はぁ~恐牙狼ダイヤウルフでダイレクトアタック」

 

 主人の飽きれ交じりの攻撃宣言に、ダイヤウルフもその牙で噛み付くことも、爪で引き裂くこともせず

 北斗を見下ろした後、邪魔な小石を払うかの如く、前足で突き飛ばした

 

「うわあああぁぁぁぁ!!」

 LP1700→0

 

「まったく、こんなんじゃ、満足できないぜ・・・」

 




せっかく、カイザーコロシアムとか入れていたのにな~

やっぱり、対策していたのか・・・

さぁ、次は私、融合コース所属の光津真澄が相手よ!

へぇ~融合か、だったら柚子、君が出たらどうだい?

えぇ!?私!?

うん、LDSの融合なんて軽くのしちゃってよ
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『幻の合奏』

いいわ、私の新しい力見せてあげる!


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幻の合奏

アニメカードを使うことになったから、デッキに合いそうなカードをと思い、とりあえず悪魔族で検索したらLV5・6の地属性と水属性の悪魔が「漆黒の魔王」と「フィッツジェラルド」しかいねぇ・・・

ジェムナイト純正VS融合幻奏(覚えたて)です

完全純正でエクシーズもなしのジェムナイトって動かすのが難しい
そして柚子のデッキにはまだ、歌姫は入っていません


 なんだというの!?

 榊遊矢はペンデュラムだけではなく、エクシーズもあれ程高度に使いこなすなんて!?

 

「まったく、なんなんだよ?40戦のノーダメって

 エクシーズコースなら帝野が居たはずだろ?あいつとはデュエルしたのか?」

 

「うっ!帝野!?」

 

「その調子じゃ避けていたみたいだな。

 格上と戦ってデッキを鍛えてこそのデュエリストだぞ

 カードに使われっぱなしじゃ、デュエリスト失格だ」

 

「うぅ・・・」

 

 榊遊矢が北斗と共に戻ってきた

 

「さっきのデュエルは何ですか!北斗!!」

 

「あ・・・理事長先生・・・」

 

「あまりにも無様な負け方、しかも相手からは説教を受ける始末

 LDSエクシーズコースの名が汚れてしまったわ!」

 

「はい・・・すいません・・・」

 

 北斗は膝を付き首を垂れる、しかし負けてしまったモノは仕方ない

 でも、次はなんとしても勝たなくてはLDSの沽券に関わるわ!

 

「次は貴方の番よ、真澄!何としても勝ちなさい!」

 

「はい、理事長先生」


 まずは一勝、とはいってもこれはただの交流試合だから、塾の存亡とかかかっていないので気楽なもんだ

 

「お疲れ様、遊矢」

 

「おつかれーでも、あんな相手じゃ物足りなかったんじゃない?」

 

「あぁ、エクシーズの使い手って聞いたからカイザーコロシアムとか入れてたんだけどな~」

 

「うわ~それってあれでしょ、互いに相手フィールド上のモンスターの数までしかモンスターを出せなくなる奴」

 

「なるほど、それでフィールドのモンスターを少なくしていたのか」

 

「引けなかったから、ゴリ押しちゃったけどな」

 

「でも、次はそうはいかないわよ!」

 

 談笑している俺たちに気の強そうな少女の声が掛けられる

 振り向くとそこには、褐色黒髪で赤い目をした少女が立っていた

 

「私は融合コース所属の光津 真澄

 さぁ、私の相手は誰がしてくれるのかしら?」

 

 デュエルディスクを構え、臨戦態勢と言った風な光津真澄

 別に俺は連戦でも構わないんだが・・・

 

「融合ねぇ~素良、同じ融合使いとしてやってみるか?」

 

「LDSの融合なんかと一緒にしないでよ

 さっきの遊矢みたいになったら可哀そうだから、ここは僕の弟子一号に任せようかなぁ~?」

 

「えぇー!私!?」

 

 弟子一号と呼んで素良が振り向いた先に居たのは予想通り柚子

 たしか原作では、メンタルボロボロの状態で戦って、柚子はぼろ負けしていたけど

 すでに融合を習っている柚子と光津真澄の初戦か、あまり結果が予想できないな

 まぁ、素良が推薦しているんだ

 メインデッキに融合モンスターを投入するとか、大ポカはしないだろう

 

「あら、あなた良い目の輝きをしているわね

 相手にとって不足はないわ」

 

「ほら、相手もノリノリだよ?」

 

「わ、わかったわよ!良いわ、やってやろうじゃない!」


「ねぇ、さっき輝きがどうのって言っていたけど、なんなの?」

 

「私のパパは宝石商なの

 私も子供の頃から、たくさんの宝石を見て来たわ

 本物の輝きを持つ、本物の宝石をね」

 

「へぇ~」

 

「だから私にはわかるの、人の持つ輝きもね。

 あなたの輝きはまだ、小さいけど、磨けばもっと輝くでしょうね」

 

「そ、そういわれると照れちゃうな~

 じゃあ、貴女から見て、遊矢はどうなの?」

 

「あら?彼女の割に彼の事が分からないの?」

 

「そんなんじゃないわよ、ただの幼馴染ってだけ

 私が一方的に憧れているけど、遊矢が何考えてるのかなんて昔から分からないわ。」

 

「そう、でも彼は私にもよく分からないわ。

 彼の輝きは虹の様に何色にも輝いているけど、まるでブラックダイヤの様に全てを飲み込むような恐ろしさがあるわ

 まるで呪いの宝石ね、あなたは危険な人が好みなのかしら?」

 

「だからそんなんじゃないって!もういいわ、始めましょ!」

 

「ふふ、照れなくてもいいじゃない」

 

『よーし!じゃあ、始めるぞー!

 アクションフィールド、オン!

 フィールド魔法、クリスタルコリドー発動!』

 

 アクションフィールドが展開され、殺風景だったデュエル場が色とりどりのクリスタルで出来た荘厳な宮殿の中と言った風に変化する

 にしても、あの2人、今日が初対面だよな?

 随分と仲良さそうだ、デュエル前なので音声が入っていなかったが何を話してたんだ?

 

『『決闘(デュエル)!!』』

 

「先攻は私ね。

 私は魔法カード、ジェムナイト・フュージョンを発動

 手札のジェムナイト・ルマリンとジェムナイトモンスター、エメラルを融合

 雷帯し秘石よ!幸運を呼ぶ緑の輝きよ!

 光渦巻きて新たな輝きと共に一つとならん!融合召喚!

 現れよ!勝利の探究者、ジェムナイト・パーズ!」

 

 碧と黄色の宝石の騎士が光の中で一つとなり、琥珀の宝石の騎士が生まれ出て雷型のトンファーの様な剣を構える

 

ジェムナイト・パーズ「ハー!」

          ATK1800

 

「カードを1枚伏せて、ターンエンドよ」

 

 パーズを融合して伏せ1枚、おまけに素材にエメラルを切るか

 となると、手札にモンスターが他に居ない?

 ジェムナイト・フュージョンの回収効果も使っていないし、手札事故一歩手前だな

 

「素良、あの子の1ターン目どう思う?」

 

「手札事故・・・かな?」

 

 あっ、やっぱり

 

「融合使いなのに融合してハイお終いじゃ、次のターン厳しくなるだけだよ

 呼び出したモンスターも下級モンスターのラインだし、やっぱりLDSの融合は大したことないね」

 

「いや、あのジェムナイトの爆発力は凄まじいぞ

 通常モンスターを利用したギミックでソリティア出来るし

 あのパーズだって、2回攻撃と破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与える効果を持ってるからな

 場合にもよるが1キルも可能だろう」

 

「へぇ~でも、それって柚子との相性悪くない?」

 

「そうだな。

 柚子のモンスターは破壊に対しての耐性が強い。

 戦闘破壊を介するあのモンスターでは、あの娘は厳しい戦いを強いられるだろう。」

 

(こいつら、真澄のデッキを即座に見ぬきやがった!?)

 

(こ、こわ~)

 

(膨大なカードの情報、一体、榊遊矢はどこでこれほどの知識を手に入れたというの!?)

 

 真澄のターンが終わって、柚子のターンだ

 ん?なんかごそごそしている所を見ると早速、アクションカードを見つけたみたいだ

 

「やったー、早速アクションカードゲット!

 さぁ、私のターンね、ドロー

 私はまず、カードを1枚セットして魔法カード、手札抹殺を発動

 互いのプレイヤーは手札を全て捨て、デッキから捨てた枚数と同じ枚数をドロー

 私の手札はアクションカード含めて5枚だから5枚捨てて5枚ドロー!」

 

「私は1枚捨てて1枚ドローよ」

(くっ!異次元からの埋葬が・・・でも、この手札なら次のターンで決められるわ)

 

「墓地に送られたイーバの効果発動

 このカード以外の墓地かフィールドの光属性、天使族モンスターを2枚まで除外して、デッキからイーバ以外の同名じゃないレベル2以下の光属性、天使族モンスターを除外した枚数分手札に加えるわ。

 私は墓地のアテナと幻奏の音女エレジーを除外して、デッキからレベル2の幻奏の音女スコアとレベル1のハネワタを手札に加える。

 

 さらに魔法カード、幻奏の第1楽章を発動

 自分のフィールド上にモンスターが居ない時、デッキ、手札からレベル4以下の幻奏モンスターを特殊召喚するわ。

 来て、幻奏の音女アリア!」

 

アリア「アー!」

   DEF1200

 

 柚子のメインモンスターの片割れ、赤い幻奏モンスターアリア

 相方のエレジーは現在除外中だが、どんなデッキにしたんだろうな?

 

「さらに速攻魔法、光神化を発動

 手札の天使族モンスターを攻撃力を半分にして特殊召喚する。

 現れて!至高の天才!幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト!」

 

モーツァルト「フフフ、ハッ!」

      DEF2000

      ATK2600→1300

 

「どうしたの?

 折角の最上級モンスターも攻撃力を半分にしては意味がないわよ!」

 

「攻撃力だけがモンスターの強さじゃないわ!

 プロディジー・モーツァルトの効果発動

 1ターンに1度、このターン私は光属性以外特殊召喚出来なくなる代わりに、手札から天使族、光属性モンスターを特殊召喚する

 出番よ!幻奏の音女タムタム!」

 

タムタム「キャハッ!タムタム」

    DEF2000

 

 赤い銅鑼とともに現れるドレスのような甲冑のような不思議な衣装を身に纏った少女、あのモンスターは

 

「タムタムの効果発動

 このモンスターが特殊召喚に成功した時、私のフィールドに他の幻想モンスターが居る場合、デッキか墓地の融合1枚を手札に加えるわ!」

 

「融合!?貴方も融合召喚を使うの!?」

 

「最近習ったばっかりだけどね。

 私はフィールドの2体の幻奏モンスター、幻奏の音女タムタムと幻奏の音姫プロディジー・モーツァルトを融合!

 魂の響きよ、至高の天才と共にタクトの導きにより力重ねよ!融合召喚!」

 

 柚子は素良と同じように胸の前で手を合わせ握りしめるポーズをとる

 光の渦の中から現れるのはチューリップの様な花を思わせるスカートの赤と黒とオレンジで彩られたドレスを着た女性

 仮面をつけ炎のようにうねる髪をたなびかせる、その姿は舞踏会に来た貴婦人の様だ

 

「今こそ舞台へ!幻奏の音姫マイスタリン・シューベルト!」

 

シューベルト「ホホホッ!フン、ハッ!」

      ATK2400

 

「ここで、融合素材となって墓地に送られたタムタムの効果発動

 自分フィールドの幻奏モンスターの攻撃力を500下げて相手に500ポイントのダメージを与える!

 私はアリアの攻撃力を下げて、貴女に500ポイントのダメージよ!」

 

アリア「ハッ!!」

   DEF1200

   ATK1600→1100

 

 アリアが勢いよく叫ぶと、それが衝撃となって光津真澄に襲い掛かる

 

「くっううぅぅ!」

 LP4000→3500

 

「バトルよ!マイスタリン・シューベルトでジェムナイト・パーズに攻撃!

 ウェーブ・オブ・ザ・グレイト!」

 

 マイスタリン・シューベルトの持つタクトからビームが放たれる

 ジェムナイト・パーズはそれに耐えきれず爆散し、その余波が真澄に襲い掛かる

 

「きゃああぁぁ!うっ、今のはちょっと効いたわよ・・・」

 LP3500→2900

 

「よし!ターンエンドよ!」

 

「良い気になるのもいい加減にしなさい!

 私のターン、ドロー

 私はジェムナイト・アレキサンドを召喚」

 

ジェムナイト・アレキサンド「フンッ!」

             ATK1800

 

「ジェムナイト・アレキサンドの効果発動

 このカードをリリースして、デッキからジェムナイト通常モンスターを特殊召喚するわ

 私はデッキからジェムナイト・クリスタを特殊召喚」

 

 白い鎧に様々な色の宝石をあしらえた騎士がその鎧を輝かせると、白銀の鎧に水晶を付けた騎士が代わりに現れる

 

ジェムナイト・クリスタ「ハッ!」

           ATK2450

 

「これで揃ったわ

 私はリバーストラップ発動!廃石融合(ダブレット・フュージョン)

 自分の墓地のモンスターを除外して、それを素材にジェムナイト融合モンスターを融合召喚する!」

 

「墓地融合!?そうはさせないわ!

 廃石融合(ダブレット・フュージョン)にチェーンして、マイスタリン・シューベルトの効果発動

 互いの墓地からカードを3枚まで除外して、1枚に付き200ポイント、このカードの攻撃力をアップする!

 私は貴女の墓地から、ジェムナイト・パーズ、アレキサンド、エメラルを除外!

 コーラス・ブレイク!!」

 

 シューベルトのタクトの導きで真澄の墓地から3枚のカードが現れ、それはシューベルトの持つタクトで粉みじんに切り刻まれる

 

 シューベルト ATK2400→3000

 

「な、何ですって!?」

 

「これで、貴女の墓地のジェムナイトは1体、廃石融合(ダブレット・フュージョン)は不発になるわ。」

 

「くっ!」

 

 できれば、ジェムナイト・フュージョンも潰しておきたかったところだが

 まぁ、融合を妨害できたし、そこまで求める必要もないか

 

「前のターンでも使えたくせに、わざわざこのタイミングで使うのかよ!

 おい!お前らの塾の連中はこんなのばっかりなのかよ!?」

 

「否定はしない。」

 

「まぁ、最初に自分のデッキの弱点から教えて行くからねぇ~」

 

「ぼ、僕の時もそうだったのかい!?」

 

「いや、あれはそうしようとしたけど、目的のカードが引けずに力押しになっただけ」

 

 北斗が真っ白になって固まっている

 弱点を突かれたからと言い訳するつもりだったのか?

 メタられた程度で、言い訳になんて出来ないと思うけど

 

「さぁ、これで貴女の手札は後1枚、どう出てくるのかしら?」

 

「くっ!私は負けてられないのよ!

 マジックカード、馬の骨の対価!

 その効果で効果を持たないモンスターであるジェムナイト・クリスタをフィールド上から墓地に送り、デッキから2枚ドローするわ。

 よし、私は永続魔法、ブリリアント・フュージョンを発動

 デッキのモンスターを素材にジェムナイトモンスターを融合召喚するわ!」

 

「デッキ融合!?」

 

「私はデッキからジェムナイト・ラズリー2体とジェムナイト・ラピスの3体のジェムナイトを融合!

 繁栄の碧き秘石達よ!光渦巻きて新たな輝きと共に一つとならん!融合召喚!

 現れろ!輝きの淑女!ジェムナイトレディ・ブリリアント・ダイヤ!!」

 

 3人の少女の姿の岩の精が光り輝く金剛石に吸い込まれる

 そして、生まれたのはこれまでのジェムナイトとは違い、身軽そうな軽鎧に短い赤いマントをたなびかせた女性騎士

 本来の攻撃力はジェムナイト中最大の3500を誇るがブリリアント・フュージョンで呼び出されたために、今は攻守ともに0だ

 

ブリリアント・ダイヤ「ハアッ!」

          DEF2000→0

          ATK3500→0

 

「そして、墓地に送られた2体のジェムナイト・ラズリーの効果が発動するわ!

 私の墓地の通常モンスターを1体ずつ手札に戻す

 よって、私は墓地からジェムナイト・ルマリンとラピスを手札へ

 

 さらに墓地のジェムナイト・フュージョンの効果発動、墓地のジェムナイトを1体除外してこのカードを手札に戻すわ。

 私はラズリーを除外して、ジェムナイト・フュージョンを手札にそして発動よ!

 碧き秘石よ!雷帯し秘石よ!今光となりて現れよ!融合召喚!

 レベル5!ジェムナイトレディ・ラピスラズリ!!」

 

ラピスラズリ「ハッ!」

      DEF1000

 

 金剛の女騎士の隣に立ち並ぶ青い少女の姿をしたモンスター

 騎士の名を持っているが、その姿はどちらかというと巫女の様だ

 

「ラピスラズリの効果発動

 1ターンに1度、デッキ、エクストラデッキのジェムナイトモンスターを墓地に送ってフィールド上の特殊召喚されたモンスターの数×500ポイントのダメージを与える。

 フィールドの特殊召喚されたモンスターは4体、エクストラデッキのジェムナイト・ルビーズを墓地に送って、2000ポイントのダメージをあなたに与えるわ!」

 

「させないわ!手札のハネワタの効果発動!

 このカードを手札から捨てることで、このターンの私への効果ダメージを0にする!」

 

 青の輝石巫女が放ったエネルギーは柚子の前に現れた天使の羽の付いた毛むくじゃらのモンスターに受け止められ、柚子には届かない

 だが、真澄は分かっていたという風な顔をしている、狙いは手札を減らすことか?

 

「まだよ!ブリリアント・ダイヤの効果発動

 1ターンに1度、表側表示のジェムナイトモンスターを墓地に送り、エクストラデッキから召喚条件を無視して、ジェムナイト融合モンスターを特殊召喚するわ。

 ラピスラズリを墓地に送って、出陣よ!ジェムナイトマスター・ダイヤ!!」

 

マスター・ダイヤ「オオォォォォ!ハアッ!!」

        ATK2900

 

 巫女が消えた場に現れるのは巨大で荘厳豪奢なるダイヤの騎士長

 その手に持つ7つの宝石が埋め込まれた大剣の内、赤い宝石が光を帯びる

 

「マスター・ダイヤの効果発動、墓地のレベル7以下のジェムナイト融合モンスターを除外することで、このターン、マスター・ダイヤはそのモンスターと同じ名前と効果を得る!

 私は墓地のジェムナイト・ルビーズを除外!これでマスター・ダイヤは貫通効果を得たわ!

 行け!マスター・ダイヤ!幻奏の音女アリアに攻撃よ!」

 

「・・・よし、ここは、私は手札の幻奏の音女スコアの効果発動

 幻奏モンスターがモンスターと戦うダメージ計算時、このカードを墓地に送って相手モンスターの攻守をターン終了時まで0にする!」

 

「ウオオオォォォォォ!!」

 

「アアアアァァァァ!!」

 

「ウォ!?グウゥ・・・」

 ATK2900→0

 DEF2500→0

 

 マスター・ダイヤの大剣がアリアに叩きつけられようとしていたが、アリアの声に吹っ飛ばされてしまう

 

「ぐううぅぅ・・・私はカードを1枚伏せて、墓地のジェムナイト・フュージョンの効果発動

 墓地のラズリーを除外して手札に加え、ターンを終了するわ」

 LP2900→1700

 

 見上げた特攻精神だねぇ~

 ライフを犠牲にしてまで、スコアを捨てさせたか

 顔は今も笑みを浮かべている、セットしているカードが罠だと言っているようなものだが、ブラフでも悲壮感がなければ逆転の一枚だと錯覚させることが出来るだろう

 柚子が攻撃しなかった場合、次の彼女のターンでラピスラズリの効果で彼女の勝ちになる可能性が高いだろうが

 

「いえ、貴女のターンはまだ終わらせないわ!速攻魔法発動!次元誘爆!」

 

 少し遅かったみたいだ

 

「な、次元誘爆!?」

 

「自分フィールド上の融合モンスター1体をエクストラデッキに戻して発動

 お互いにゲームから除外されているモンスターを2体まで選択し、それぞれのフィールドに特殊召喚するわ!」

 

「融合モンスターを捨てるというの!?」

 

「違うわ!一緒に戦うのよ!

 マイスタリン・シューベルトをデッキに戻して、除外されているアテナと幻奏の音女エレジーを特殊召喚するわ!」

 

アテナ「はっ!」

   ATK2600

 

エレジー「ふふ」

    DEF1200

 

「特殊召喚されたエレジーの効果で私の天使族モンスターの攻撃力が300アップ!」

 

 アテナ  ATK2600→2900

 エレジー DEF1200

      ATK2000→2300

 アリア  DEF1200

      ATK1100→1400

 

「くっ!私はラズリー2体を守備表示で特殊召喚するわ」

 

 ラズリー DEF100

 ラズリー DEF100

 

 柚子の布陣が完成した、そしてエンドフェイズなら真澄にはどうすることもできない

 

 マスター・ダイヤ ATK0→2900

          DEF0→2500

 

「私のターン、ドロー

 自分のフィールド上に幻奏モンスターが居るとき、手札の幻奏の音女カノンは特殊召喚出来るわ!」

 

カノン「フンッ!」

   DEF2000

 

「この瞬間、アテナの効果が発動!

 フィールド上に天使族モンスターが召喚、反転召喚、特殊召喚された時、相手に600ポイントのダメージを与える!」

 

 青系のショートドレスを着てメガネのようにも見える仮面を付けた女性が現れると、アテナの槍から光弾が放たれ、真澄に直撃する

 

「あうっ!?」

 LP1700→1100

 

「まだまだよ、アテナのさらなる効果発動!

 天使族モンスターのカノンを墓地に送って、墓地の天使族モンスター、幻奏の音女タムタムを特殊召喚して600ダメージよ!」

 

タムタム「キャハッ!」

    DEF2000

 

「うわっ!」

 LP1100→500

 

「そして、タムタムの効果で墓地の融合を手札に加えるわ」

 

「融合!?それじゃ!?」

 

「そう、これでフィナーレよ!

 融合発動、フィールドのタムタムと手札のアリアを融合!

 魂の響きよ、流れる旋律となりて、タクトの導きにより力重ねよ!融合召喚! 

 再演の舞台へ!幻奏の音姫マイスタリン・シューベルト!!」

 

シューベルト「オーホホホ!!」

      ATK2400

 

 光り輝く宮殿の中で、仲間たちに祝福されながら再臨したシューベルト

 真澄はその主である柚子の目を見て、憑き物が落ちたように微笑む

 

「ふふ、やっぱり、あなた良い目をしているわ・・・」

 

 シューベルトを祝うようにアテナが放った光弾が真澄を貫いた

 

 LP500→0


 そんな、ありえないわ!?あってはならないわ!!

 

 この世界の隅々にまでLDSの組織網を張り巡らせ、最高の技術、最高の力を持ったデュエリストを数多く育て上げるという私と零児さんの計画が・・・

 こんな小さな塾のデュエリストに負けるだなんて・・・

 

「真澄も負けちまったか・・・でも、良い顔してやがるぜ」

 

「えっ?」

 

 デュエル場ではなぜか、勝ったはずの柚子と言う少女が大泣きしており、それを真澄が宥めていた

 困惑した表情であったが、それはデュエルする前の刺々しい表情ではなく、年相応の少女の顔をしていた

 

「かっー!!俺も燃えて来たぜ!

 北斗の時はどうなるかと思ったが、あんなデュエルできるんなら早くやりたいぜ!

 あっ!安心しなよ理事長センセー

 俺は本当に強いからよ、必ず勝ってやるって!おーい!俺の相手はどいつだー!!」

 

 刃は榊遊矢たちの下へ竹刀を振り回しながら行ってしまった

 北斗も刃を交えて彼らと話している

 残された私は、何か空しさを感じていた

 




うわ~ん、やっと勝てたよ~(泣)

ちょっと、この子なんで泣いてるの!?

あ~勝ったの久しぶりだからな~うれしくて泣いてるんだろ

この子普段誰とデュエルしてるのよ・・・・

俺と沢渡

あっ・・・・

次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『極みの向こうへ』
じゃあ、次の相手は権ちゃん、よろしくね

うむ、任された!不動のデュエル見せてくれようぞ!!


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極みの向こうへ

平成最後の投稿、ほとんどデュエル描写だけなのになげぇ~
例のソリティアを入れたから仕方ないけど


「おーい!俺の相手はどいつだー!!」

 

 剣士然とした恰好の少年が竹刀を振り回しこちらに駆けてくる

 

「俺はLDSシンクロコースの刀堂 刃!

 さぁ!俺のデッキの錆になりたい奴はどいつだー!!」

 

 なんだか暑苦しい奴だ、こんな性格だったか?

 さて、こうなると順番的には素良の番なんだが・・・

 

「う~ん、僕は今回パス、代わりに権ちゃんやる?」

 

「ん、俺か?」

 

「おいおい、ちみっこいの、この俺にビビったのかよ?」

 

「別にそんなんじゃないよ、気乗りがしないってだけ

 権ちゃんは此処にデュエルしに今日来たんでしょ?

 相手が遊矢じゃなくてもいいよね?今日は遊矢とは出来なさそうだし」

 

「うむ、そこまで言われればしかたなし

 刃殿、この権現坂道場の跡取り、権現坂昇がお相手いたそう!」

 

「へぇ~デュエル道場の跡取りね、面白そうじゃん!

 いいデュエル見せてくれよな!」

 

「おう!権現坂道場に伝わる、不動のデュエル!とくと見せてやろうぞ!」

 

「へっ!言っておくが俺がさっきまでのお行儀のいいデュエルをすると思っていたら大間違いだぜ?

 何しろ俺は、あいつらと違って、本当に強いからな!」

 

「お行儀のいい?」

 

「な、なんだよ、なんで僕の方を見るんだよ!?」

 

 俺と素良が北斗を見る、こいつってそんなに行儀良かったか?

 デッキが素直で、テンプレだったという意味なら分かるが

 

「うぅ・・・ぐす・・・」

 

「ほら、もう!嬉しいのは分かったから、そろそろ泣き止んでよ!

 ジュニアクラスの子も見ているんだから、みっとも無いでしょ!?」

 

 おっ、柚子たちが戻って来たみたいだな

 あと真澄、柚子は勝ったの一カ月ぶりぐらいだから、思う存分泣かしておいてやれ


『お~し、2人共気合は十分なようだな!

 じゃあいくぞー!フィールド魔法、剣の墓場発動!』

 

 フィールド魔法が展開され、暗雲たちこめ、無数の剣が突き刺さった古戦場が現れる

 刃はそれを見て、獰猛な笑みを浮かべ、これから始まる戦いに胸を躍らせる

 

「へへっ!随分と粋なフィールドになったじゃねぇか!」

 

「うむ、では存分にし合おうぞ!」

 

「「『決闘』!!」」

 

「先攻は俺だ!

 俺は超重武者ダイ―8を召喚!」

 

 ダイ―8 ATK1200→DEF1800

 

 脚部のローラーで台車を引いたロボットが現れる

 その荷台の上には、腕鎧を組み合わせて作ったような巨大な機械が置いており、ダイ―8はそれを権現坂へ引き渡す

 

「ダイ―8は召喚、特殊召喚された時、守備表示となる。

 そして、俺の墓地に魔法、罠カードがないとき、ダイ―8のさらなる効果により、このモンスターを攻撃表示に変える事によりデッキから超重武者装留を手札に加える。

 俺はデッキから超重武者装留チュウサイを手札に加え、手札の超重武者装留イワトオシと共にダイ―8に装備する。」

 

 ダイ―8 DEF1800→ATK1200

 

 荷卸しされたチュウサイだったが4つある腕を動かして、ダイ―8の本体に無理やり背負われる形で装着され、さらに前方から青く巨大な梓弓が現れ、それもまたダイ―8に装着される

 2つの巨大な装備品に小柄なダイ―8の本体は埋もれてしまった

 

 

「手札から直接装備できるモンスターだと!?でもステータスが変わってねぇ?」

 

「チュウサイは相手の攻撃を装備モンスターに集中させる効果がイワトオシは貫通効果を持たせる効果があるが、俺の狙いはそれではない!

 チュウサイのもう一つの効果発動!

 このカードを装備しているモンスターをリリースすることにより、デッキより超重武者モンスター1体を特殊召喚する!

 現れよ、我が不動の象徴!超重武者ビックベン―K!!」

 

 ダイ―8が消え、代わりに現れるのは鋼の巨漢

 橙色の鎧を煌めかせて、刺又を地面に突き刺し仁王立ちする

 

ビックベン―K「べンケー!!」

       DEF3500

 

「いきなり守備力3500だと!?」

 

「ふふ、ビックベン―Kの力はそれだけではない!

 このモンスターが存在する限り、俺の超重武者は守備力を攻撃力として扱い、表側守備表示のまま攻撃できるのだ!」

 

「なっ!?ってことは実質、攻撃力3500のモンスターかよ!?」

 

「そういうことだ。

 さらにフィールドから墓地に送られたイワトオシの効果により、デッキから超重武者を手札に加える。

 俺は超重武者装留バスター・ガントレットを手札に加え、ターンエンドだ!

 さぁ、何処からでもかかって来るがいい!」

 

「てめぇら、そろいもそろって妙なカード使いやがって、俺のターンドローだ!」

 

 刃はドローしたカードを見て思わず笑みをこぼす

 そう、今の彼の手札は彼を必勝に導く、最高の手札だったからだ

 

「俺は手札からモンスターを1体捨て、マジックカード、ワン・フォー・ワンを発動

 こいつの効果でデッキからレベル1モンスターを1体特殊召喚するぜ

 来い、XX(ダブルエックス)―セイバー レイジグラ!」

 

レイジグラ「フン!」

     DEF1000

 

 赤いマントをたなびかせ、軽鎧を着た2足歩行のカメレオンが現れる

 

「レイジグラの効果発動

 こいつが召喚、特殊召喚された時、墓地のX―セイバーモンスターを手札に加えるぜ

 俺が手札に加えるのはXX(ダブルエックス)―セイバー フォルトロール!

 さらに通常召喚だ、来い、レスキューキャット!」

 

レスキューキャット「にゃ~」 

         ATK300

 

 古戦場に現れる一匹の子猫、頭には救命ヘルメットをかぶっておりその姿は非常に愛くるしくこの場に似つかわしくないものであったが、権現坂はレスキューキャットを見て苦い顔をする

 

「ぬうっ!?そのモンスターは!?」

 

「どうやらこいつの恐ろしさは知っているみたいだな、レスキューキャットの効果

 1ターンに1度、フィールドのこのカードを墓地に送ることで、デッキからレベル3以下の獣族モンスター2体を特殊召喚する

 来な!XX(ダブルエックス)―セイバー ダークソウル!チューナーモンスター、X―セイバー エアベルン!」

 

 レスキューキャットは器用に前足を使って首にかかっているホイッスルを掴み、それを吹く

 その音に呼ばれて出て来たのは大鎌を持ちフードで顔を隠した獣人と鋭い鉤爪の付いた手甲をした獅子の獣人

 それぞれの武器を権現坂に構え、闘志を燃やす

 

エアベルン「ガルル・・・」

     ATK1600

 

ダークソウル「グルル・・・」

      ATK100

 

「そして、自分フィールド上にX―セイバーモンスターが2体以上いるとき、こいつは手札から特殊召喚出来る!

 来い!XX(ダブルエックス)―セイバー フォルトロール!!」

 

フォルトロール「はあぁぁぁぁ!ふん!」

       ATK2400

 

 光り輝く模様の入った鎧を身に纏う騎士が刃の戦列に加わる

 だが、それだけでは終わらない、彼の本領はこれからである

 

「行くぜ!俺はレベル1のXX―セイバー レイジグラとレベル3のダークソウルにレベル3のX―セイバー エアベルンをチューニング!」

 

 エアベルンが3つの緑色の光の輪となり、レイジグラとダークソウルはそれに飛び込む

 彼らの中に輝く光が、一つに並ぶとき、眩きと共に戦いに魅入られた狂人がその2振りの刃を振り上げる

 

「光差する刃持ち、屍の山を踏み越えろ!シンクロ召喚!!

 いでよ!レベル7、X―セイバー ソウザ!」

 

ソウザ「ははははっ!!ふんっ!!」

   ATK2500

 

「おっと、まだ終りじゃねぇぜ!フォルトロールの効果発動!

 1ターンに1度、墓地からレベル4以下のX―セイバーを復活させる

 戻ってこい!X―セイバー エアベルン!」

 

エアベルン「グオオオォォォン!!」

     ATK1600

 

「チューナーを復活させたか・・・」

 

「その通りだぜ!

 俺はレベル6のフォルトロールにレベル3のエアベルンをチューニング!

 白銀の鎧、輝かせ、刃向う者の希望を砕け!シンクロ召喚!

 いでよ、レベル9!XX(ダブルエックス)―セイバー ガトムズ!!」

 

 再び差す光、それを引き裂き現れるのは白銀の鎧を身に纏った重戦士

 音叉の様な大剣を軽々と振るい、赤いマントを翻す

 

ガトムズ「はああぁぁぁ!ふん!!」

    ATK3100

 

「1ターンに2度のシンクロ召喚、なかなかやるようだな。」

 

「驚きもしねぇか・・・あいつはいったいなんなんだよ?」

 

 刃は観戦室に居る遊矢の方に目を向ける

 刃の問いに権現坂は笑みを浮かべながら答える

 

「壁よ・・・遙かな頂にある大きな壁・・・

 だからこそ男として挑みたくなる!あの頂を越え高みを目指すためにな!!」

 

「へっ!だったら、それには一足先に俺が挑ませてもらうぜ、てめぇを倒してな!

 俺は2体目のフォルトロールを特殊召喚!

 そしてその効果で墓地のXX(ダブルエックス)―セイバー レイジグラを特殊召喚するぜ!」

 

フォルトロール「ふん!」

       ATK2400

 

レイジグラ「ハッ!」

     DEF1000

 

「レイジグラの効果で墓地のXX(ダブルエックス)―セイバー フォルトロールを手札に加える

 そして、XX(ダブルエックス)―セイバー ガトムズの効果を発動

 自分フィールド上のXセイバーをリリースすることで、てめぇの手札を1枚ランダムに捨てさせる

 俺はフォルトロールとレイジグラをリリース!」

 

 フォルトロールとレイジグラの魂が総司令であるガトムズの剣に宿る

 ガトムズが大剣を振るうとそれは閃光となって、権現坂の4枚ある手札の内2枚を燃やす

 

「何、まさか!?手札にはフォルトロールが・・・」

 

「その通りだ!

 このコンボはてめぇの手札が尽きるまで続くのさ、何度でもな!!

 フォルトロールを特殊召喚し、その効果でレイジグラを特殊召喚しフォルトロールを手札へ

 ガトムズの効果でこいつらをリリースして、てめぇの残りの手札を捨てさせる。

 さらにフォルトロールを特殊召喚し、レイジグラを特殊召喚、フォルトロールを手札に加えるぜ」

 

 フォルトロール ATK2400

 レイジグラ   DEF1000

 

「俺の手札が・・・」

 

「まだ終わってねぇぜ!ソウザの効果でXX(ダブルエックス)―セイバー レイジグラをリリース

 これでソウザはダメージステップ開始時に戦闘するモンスターを破壊する効果を得た。」

 

 レイジグラをソウザが切り捨てる、その怨念はソウザの剣に宿りどす黒いオーラを纏わせる

 

ソウザ「ぐひひひぃ!」

 

「さぁ、その木偶の坊を叩っ切ってやるぜ!バトル!

 やっちまえ、ソウザ!ビックベン―Kに攻撃!」

 

 ソウザの狂刃がビックベン―Kに迫る

 刺又で迎え撃つビックベン―Kだったが、ソウザはいとも簡単にそれをいなし、ビックベン―Kに1撃、2撃と何度も同じところに斬りつけてゆく

 さすがのビックベン―Kの強固なボディも何度も同じところを傷つけられ限界を迎え、それをソウザは見逃さず貫いた

 

ビックベン―K「グワアアァァァ!!」バンッ!!

 

「くっ!?すまぬ、ビックベン―K」

 

「おらぁ!モンスターの心配している暇はねぇぞ!

 XX(ダブルエックス)―セイバー ガトムズでダイレクトアタックだ!」

 

 ガトムズが踏み込み、駆けるのと同時に刃はその背に背負う竹刀を一閃

 その剣圧で剣の墓場に隠されていたアクションカードが宙に浮く

 

「おらぁ!アクションマジック、エクストリーム・ソード

 戦闘するモンスターの攻撃力をそのバトルのみ、1000ポイントアップ!」

 

ガトムズ「オオォォォォ!!」

    ATK3100→4100

 

「これで終わっちまいなー!!」

 

 ガトムズの大剣が権現坂に迫る、だが、権現坂は逃げはしない

 いや、その場から動きはしない、自分のデッキが勝利せよと、自分の覚悟が負けるなと叫んでいるのだから

 

「俺は墓地のクリアクリボーの効果を発動する!」

 

「何!?」

 

「相手モンスターのダイレクトアタック宣言時

 墓地のこのカードを除外し、デッキからカードを1枚ドローする、それがモンスターならば特殊召喚し攻撃対象をそのモンスターに移し替える。

 俺が引いたのは超重武者テンB―Nだ!」

 

テンB―N「ハッ!」

     DEF1800

 

「さらにテンB―Nの効果により、墓地のテンB―N以外のレベル4以下の超重武者モンスターを1体、守備表示で特殊召喚する

 蘇れ、超重武者装留イワトオシ!」

 

 イワトオシ DEF0

 

 ガトムズの前に現れる天秤を担いだ緑の鋼の武者、そしてその天秤から巨大な梓弓が現れ権現坂への行く手を阻む

 

「ちっ!だったら、ガトムズ!そいつをぶった切ってやりな!」

 

 ガトムズの剣はテンB―Nを切り裂く、だがその余波すらも権現坂には届きはしない

 

「さらにフォルトロールでイワトオシに攻撃だ」

 

フォルトロール「はあっ!」

 

 フォルトロールの剣がイワトオシを鉄くずに変える、そしてその鉄くずの中から1枚のカードが権現坂の手の下にやってくる

 

「イワトオシがフィールドから墓地に送られたことにより、デッキから俺は2枚目のテンB―Nを手札に加える。」

 

「そうはさせるか!

 メインフェイズ2でガトムズの効果発動、フォルトロールをリリースしそのカードも捨ててもらうぜ!

 カードを2枚伏せ、エンドフェイズにダークソウルの効果でデッキのXX―セイバー フォルトロールを手札に加えるぜ

 ターンエンドだ」

 

「俺のターン、ドロー!!

 俺は墓地の無限起動スクレイパーの効果を発動する。」

 

「また墓地効果かよ!?」

 

「このカードを除外し俺の墓地の機械族、地属性モンスター5体をデッキに戻しシャッフル、その後2枚ドローする

 俺は墓地から超重武者テンB―N2体と超重武者装留イワトオシ、チュウサイ、バスター・ガントレットの計五枚のカードをデッキに戻し2枚ドロー!

 そして、相手フィールド上にモンスターが2体以上存在し、自分フィールド上にモンスターが居ない時、手札の超重武者テンB―Nは特殊召喚出来る。」

 

テンB―N「テンビーン!」

     DEF1800

 

「さらにテンB―Nの効果により、ダイ―8を守備表示で特殊召喚し、ダイ―8の効果でこのカードの表示形式を変更

 デッキから超重武者装留チュウサイを手札に加え、さらにこれをダイ―8に装備

 そして、チュウサイの効果によりダイ―8をリリース!

 再び現れよ!超重武者ビッグベン―K!!」

 

ビッグベン―K「フンッ!!」

       DEF3500

 

「また、そいつか!?」

 

「これが我が不動のデュエルよ!バトル!

 ビッグベン―KでX―セイバー ソウザに攻撃!!」

 

ビッグベン―K「ハアアアァァァァ!!デュリアァァァ!!」

 

 ビッグベン―Kの拳が大地を割り、その衝撃がソウザを襲い破壊する

 その余波も刃の下へ向かうが、彼の前には『X』の紋章の浮かび上がるバリアが張られていた

 

「そう簡単に通すかよ!速攻魔法、セイバー・リフレクト!

 自分が戦闘または効果ダメージを受けた場合、その数値分俺のライフを回復し、てめぇに回復した数値分のダメージを与える

 おらぁ!自分の攻撃を自分で受けやがれ!!」

 

「そうはいかんな!

 墓地の超重武者装留ビックバンの効果発動!」

 

「またかよ!?」

 

「自分フィールド上に守備表示の超重武者がいる時に相手がバトルフェイズ中にカード効果を発動した時、このカードを除外し、その効果を無効にし破壊する。

 さらにフィールド上の全てのモンスターを破壊し、お互いに1000のダメージを受ける。」

 

「なんだと!?」

 

 フィールドに膨大なエネルギーが蓄えられた爆弾が現れ破裂する

 その爆風は互いのフィールド上のモンスターを吹き飛ばし、刃もまた無数の剣を折り砕きながら吹っ飛ばされた

 

「ぐわあああぁぁぁ!!」

 LP4000→3000→2000

 

 息も絶え絶えとなった刃は痛む体に鞭を打ち立ち上がると、そこには自分と違い一歩たりとも動いていない権現坂と

 

「・・・・・・」

 LP4000→3000

 

ビックベン―K「ベンケー・・・」

 DEF3500→2700

 

 ビックベン―Kが立っていた

 

「な、なんでだ!?どうしてそいつは破壊されていねぇんだ!?」

 

「手札の超重武者装留ファイヤー・アーマーの効果よ

 こいつを手札から捨て俺の超重武者1体の守備力を800下げることで、ターン終了まで戦闘と効果で破壊されなくした。

 俺はこれでターンエンド、ビックベン―Kの守備力は元に戻る。」

 

 ビックベン―K DEF2700→3500

 

「うぅ・・・余計なダメージ喰らっちまったぜ・・・」

 

「このデュエル、無駄に動いたほうが負けとなるのよ。」

 

「へっ!ほざけ!俺のターン、ドローだ!

 よし、俺はX―セイバー パロムロを召喚!」

 

 パロムロ ATK200

 

 刃の前に出現するオオトカゲのモンスター

 その攻撃力は200と貧弱だが、このモンスターこそが刃の逆転への布石の1枚となる

 

「トラップカード発動、ガトムズの緊急指令!

 フィールド上にX―セイバーモンスターが居るとき、墓地のXセイバーを2体まで復活させる

 戻ってこい!X―セイバー ソウザ!!XX(ダブルエックス)―セイバー レイジグラ!!」

 

ソウザ「はははっ!」

   ATK2500

 

 レイジグラ DEF1000

 

「ならば、俺はガトムズの緊急指令にチェーンして手札の増殖するGを捨てその効果を発動

 このターン、相手がモンスターを特殊召喚するたびに俺は1枚ドローする

 ガトムズの緊急指令の効果により、モンスターが特殊召喚されたことで1枚ドロー!!」

 

「なにー!?」

 

 剣の墓場に無数に蠢く黒い影

 観戦席では少女たちの悲鳴が木霊し、少年の目が鋭くなるがデュエルに集中している2人には意識の外だ

 

「まさか、そのカードを使おうとする奴がいるとは思わなかったぜ・・・」

 

「俺は求道者よ

 高みへ上る為ならば、泥にまみれようが、蛇蝎のごとく嫌われようが構わん

 ただ俺は自分とデッキを信じて戦うのみだ!」

 

「はっ!だったらそのデッキごと切り裂いてやるぜ!

 特殊召喚したレイジグラの効果により、墓地のフォルトロールを手札へ

 自分フィールド上にX―セイバーが2体以上いることにより、フォルトロールを特殊召喚!」

 

フォルトロール「ふん!」

       ATK2400

 

「さらにその効果でチューナーモンスター、X―セイバー エアベルンを特殊召喚!」

 

エアベルン「ガオオオォォォン!」

     ATK1600

 

「俺はレベル6のフォルトロールにレベル3のエアベルンをチューニング!

 白銀の鎧、輝かせ、刃向う者の希望を砕け!シンクロ召喚!

 再びいでよ、レベル9!XX―セイバー ガトムズ!!」

 

ガトムズ「ハッ!」

    ATK3100

 

「増殖するGの効果により合計3枚のカードをドロー!」

 

「忘れちゃいねぇよな?

 ガトムズとフォルトロール、レイジグラのコンボはてめぇの手札が尽きるまで続く

 つまり!てめぇの手札がなくなんねぇなら、デッキがなくなるまで付き合ってもらうぜ!

 ガトムズの効果でレイジグラをリリースし、てめぇの手札を1枚捨てる

 そして、フォルトロールを特殊召喚し、その効果でレイジグラを復活!

 墓地のフォルトロールを手札に加えるぜ」

 

 フォルトロール ATK2400

 レイジグラ   DEF1000

 

「特殊召喚が2回行われたことにより、デッキから2枚ドロー」

 

「ガトムズの効果発動、レイジグラとフォルトロールをリリースしてカードを2枚捨てさせる

 フォルトロール、レイジグラを特殊召喚し墓地のフォルトロールを手札へ」

 

 フォルトロール ATK2400

 レイジグラ   DEF1000

 

「ガトムズの効果でレイジグラとフォルトロールをリリース!」

 

ガトムズ「ハアアァァァ!!」

 

 ガトムズは何度でも仲間の魂の篭った一撃を打ち続ける

 主の為、献身してくれる仲間の為に

 

「フォルトロールを特殊召喚、その効果で墓地のレイジグラを選択し」

 

「ならばその効果にチェーンし、手札のD.D.クロウの効果を発動

 このカードを手札から墓地へ捨て、相手の墓地のカードを1枚選択し、それを除外する

 俺はレイジグラを除外する、そして、フォルトロールの特殊召喚により1枚ドローさせてもらったぞ」

 

「な、なにー!?」

 

 気の遠くなるほど続くと思われていた剣技は突然、異次元より来襲した鴉によって止められた

 仲間を異次元へと追放され、拳を握りしめるガトムズだったが、その肩にソウザの手が置かれる

 その後ろではフォルトロールが分かっていると、その身をソウザの前に晒した

 

「だったらこうだ!ソウザの効果でフォルトロールをリリース!

 ソウザに破壊効果を付けるぜ

 さらにフォルトロールを特殊召喚し、その効果でダークソウルを特殊召喚!」

 

 フォルトロール ATK2400

 ダークソウル  DEF100

 

「特殊召喚により俺はさらに2枚ドロー」

 

「だがそいつも早速墓地送りになってもらうぜ!

 ガトムズの効果発動!フォルトロール、ダークソウル、パロムロをリリース

 てめぇの手札5枚の内3枚を刈り取ってやるぜ!」

 

 ガトムズは振るう、仲間の魂の一撃を、先人が道を開くための手助けになるようにと

 そして、主人である刃も相手の出方に備え竹刀を振るいアクションカードを手にする

 

「バトルだ!

 ソウザでビックベン―Kに攻撃!!

 さらにアクションマジック、エクストリーム・ソードの効果で攻撃力を1000アップ

 破壊耐性付けてもこれで反射ダメージはねぇぜ!」

 

ソウザ「ははああぁぁ!!」

   ATK2500→3500

 

 ソウザも主人の後押しを受けて思う存分剣を振るう

 ビックベン―Kは先ほどと同じく、迎撃するがソウザの剣技に押し負け破壊される

 

「はっ!手札に防げるモンスターはいなかったみたいだな

 だったらこの一撃で終わっちまいな!ガトムズでダイレクトアタックだー!!」

 

「俺は墓地のクリアクリボーと超重武者グロウ―Vの効果を発動!」

 

「来やがったか!!」

 

「相手のダイレクトアタック宣言時、墓地のこれらのカードを除外し効果を発動する

 グロウ―Vはデッキトップが超重武者だった場合、それを手札に加え、攻撃モンスターの攻撃力を0にする

 そしてクリアクリボーはドローしたカードがモンスターだった場合

 その場で特殊召喚し、攻撃モンスターと強制戦闘させる!」

 

「んなもん、何度も当たっかよ!!やっちまえ、ガトムズ!!」

 

 ガトムズは剣を構え突き進む、主の勝利をこの剣に誓うと

 

ガトムズ「ウオオオォォォォォォォ!!」

 

「当たる?なんのことだ

 このデッキは俺の覚悟の証だ!引くカードはモンスター以外ありえん!!

 ドロオオオォォォォォォ!!」

 

 権現坂のドローによって振りかぶられた腕がガトムズの横凪に払われた大剣を捉える

 本物ならばその手は大剣によって切り裂かれてしまうだろう

 ソリットビジョンでも怪我をしかねない行為だ

 

 だが、その漢は普通じゃなかった

 

――バキイィィィン

 

 響く破砕音、その後に続く甲高い金属音

 

「俺はグロウ―Vの効果でデッキトップのカードだった超重武者カゲボウ―Cを手札に加え、ガトムズの攻撃力を0にする!」

 

 ガトムズの大剣は根元から叩き折られていた

 

 ガトムズ ATK3100→0

 

「なっ!?」

 

 驚愕で固まるガトムズと刃、そして権現坂の背後には山のような巨大な威圧を持つ鋼の巨漢がガトムズに影を落としていた

 

 ビックベン―K DEF3500

 

「動かざること山の如し、我が心揺れることなく不動なり!!」

 

 ビックベン―Kは剣のおられた重戦士にバーニアを吹かし突撃し、その白銀の鎧に鋼の拳を叩きつけ、その余波が刃の下に暴風となって襲い掛かる

 

≪俺の墓地に魔法、罠カードがないとき≫

 

≪このデッキは俺の覚悟の証だ!引くカードはモンスター以外ありえん!!≫

 

「そうか、そういうことかよ・・・」

 

 荒れ狂う衝撃が迫る中、刃は考えていた、相手がどんなイカレた奴だったかを

 

「フルモンデッキかよ、一番イカれてるぜ、お前・・・」

 LP2000→0


「だー!!負けた負けたー!

 全力出して負けたのなんて久しぶりだぜ」

 

 刃は緊張の糸が切れたのか上を向いて大声を上げる

 だがその表情は、とても晴れやかな物だ

 

「うむ、俺も全力を出せた、いいデュエルであった!

 されど、互いにまだ道半ばの身、精進し、また戦い合おうではないか」

 

 権現坂はそう言い手を差し出す

 刃もそれに素直に応じ、強く握りしめあう

 

「はっ!次はそのでかい顔を大泣きさせてやるぜ!」

 

「おぉ!ならば、俺も刃殿とのデュエルで新たな不動の境地への光明が見えた

 次に会うときは刃殿が泣けるほどの強さを手にして見せようぞ!」

 

 互いに称え合い、再戦の約束をする刃と権現坂だったが、その様子を見て心をかき乱す者もいた

 

(なんてこと・・・LDSのエースが全敗・・・

 これほどのデュエリストが敵と手を組んだら、いや、敵の下にすでに居たらこの世界は・・・)

 

 赤馬日美香は考え恐怖する

 目の前にいるデュエリストたちの様な存在が敵に居たらと

 それは、自分たちでは対処できないものであることを目の前の結果が物語っている

 

(どうすればいいの?

 榊遊矢を取り込む?いや、零児さんは御せる存在ではないと言っていたわ

 人質や取引をしても、反感を買うだけ・・・あぁ、一体どうすれば・・・)

 

 取り乱しそうになる日美香の肩に手が置かれる

 彼女が振り向くとそこには彼女が唯一信頼できる息子がそこに居た

 

「安心してください、母様、次は私自身が出ます。」

 

「あぁ、零児・・・さん・・・」

 

 泣き崩れそうになる日美香を抱いて、零児は遊矢を見つめる

 そして、遊矢もまた零児を見据え、2人の視線は交差した




お前、何時入ってきたの?

最初から見ていたが?

修三さーん、日美香理事長が来たとき彼居た?

いや、黒服の大男ならいたが彼はいなかったぞ

そうですか、ということは不法侵入・・・
もしもし、ポリスメン?

待て!!
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『異次元の王と虹彩の竜』

・・町の遊勝塾なんですけど

だから、待てと言っている!!


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異次元の王と虹彩の竜

 いきなり、観戦室に入ってきた銀髪に赤縁メガネの青年

 パーカーを着ていて例の針金マフラーはしていないが、日美香理事長の事を母様と呼んでいたことから、彼が『赤馬 零児』で間違いないだろう

 

「すまないが、私ともう一戦してもらえないだろうか?」

 

「いきなり入ってきて、随分な言い草だな?

 レオ・コーポレーションの若社長さん」

 

「ほう、私の事を知っているのか。」

 

「いろいろ有名だからね、あんたは

 ジュニア、ジュニアユース、ユースの3クラスの全てで優勝して、最年少でプロデュエリストになって、その年で社長までやっているんだ

 耳に入らない訳がないさ」

 

「それは光栄だと受け取っておこう、それで私の相手なのだが」

 

「は~い、僕やりた~い!」

 

 素良が元気よく挙手するが、赤馬零児は首を振って俺を目で射抜く

 

「すまないが、私は君とデュエルがしたい、榊遊矢」

 

「ほ~う、俺と?」

 

「そうだ、先ほどの君のデュエルは見させてもらった。

 君のデュエルの腕はそこらに居るプロデュエリストなど、歯牙にもかけないだろう

 君はさっきのデュエル程度では物足りないんじゃないか?」

 

 程度呼ばわりされた北斗が隅っこで白くなって体育座りを始めるが、確かにさっきのデュエルでは物足りないと思っていたところだ、ちょうどいい

 

「いいぜ、その話乗ってやろう。」

 

「感謝する。

 アクションフィールドもそちらが決めて構わない。」

 

「アクションフィールドは修造さんが勝手に決めるから、ランダムの様な物さ

 互いに全力が出し合えるような、いいデュエルにしようじゃないか」

 

「あなた、うちの零児さんがどれほど強いのか、知らないのかしら?

 全力の零児さんにかかれば、あなただって・・・」

 

「やめてください、母様、私とて彼の全力が見たいのです。

 こちらもそれに応えなければ失礼になります。」

 

「うぅ・・・わかったわ、零児さん、頑張ってね。」

 

「はい、母様」

 

 親子仲のよろしいことで、互いに父親に苦労させられているな

 まぁ、同情はするが容赦はしない


『おぉ~本物の赤馬零児だ、初めて見た。

 さぁて、これで最後みたいだからな、2人共今日の〆に相応しい、いいデュエルを見せてくれよー!

 アクションフィールドオン!フィールド魔法、アスレチック・サーカス発動!』

 

 遊矢と零児、2人の周囲に光が満ち

 空中ブランコや回し車などが設置され、無数の玉の様な物が宙に浮いたサーカス小屋に変わる

 

「サーカスか・・・ここは君のホームではないのか?」

 

「そうでもないさ

 このフィールドの特徴としては、低い所にはアクションカードがスポーンしにくいって所か?

 まぁ、それぐらいしか知らないよ。」

 

「ほう・・・では、始めようか」

 

「あぁ」

 

「「『決闘』」」

 

「先攻は俺の様だな、ふん、はっ!!」

 

 遊矢はいきなり宙返りをすると、自分の後ろに有るトランポリンの上に着地

 落下の衝撃と体のばねを利用し、大きくジャンプし球形状の足場の上に着地する

 

「おっ?早速アクションカードだ

 速攻魔法、手札断殺発動、互いのプレイヤーはカードを2枚捨て、2枚ドローする。

 俺はアクションカードを含めた2枚のカードを捨てて2枚ドロー」

 

「こちらも手札を2枚捨て2枚ドロー」

 

EM(エンタメイト)ドクロバット・ジョーカーを召喚」

 

ドクロバット・ジョーカー「ははっ!」

            ATK1800

 

 髑髏の描かれた帽子を被る黒いマジシャンが笑う、戦いの始まりだと

 

「召喚に成功したことにより、デッキからEM(エンタメイト)モンスター、魔術師ペンデュラムモンスター、オッドアイズモンスターの内1体を手札に加える。

 俺はオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンを手札に

 

 そして魔法カード、ペンデュラム・コールを発動

 手札を1枚捨て、デッキから同名以外の魔術師ペンデュラムモンスター2体を手札に加える。

 俺はデッキから慧眼の魔術師と相克の魔術師を手札へ

 

 カードを1枚セットして、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンをペンデュラムスケールにセッティング

 そして、エンドフェイズ、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンのペンデュラム効果発動

 このカードを破壊し、デッキから攻撃力1500以下のペンデュラムモンスターを手札に加える。

 俺は攻撃力100のEM(エンタメイト)オッドアイズ・ユニコーンを手札に加え、ターンエンドだ。」

 

 静かに1ターンを終えた遊矢に対し、観戦室ではその静かな始まりに不気味さを抱いていた

 

「な、なんだか僕の時とは違い、静かじゃないか?」

 

「そうね・・・」

 

「なんだか不気味だな・・・」

 

「ペンデュラム召喚も出来たのにモンスター1体に伏せ1枚」

 

「墓地に置かれたカードに何か意味があるのか?」

 

「分からないわね・・・」

 

「その程度で、私の本気を受けるつもりなのか?」

 

「あぁ、これで十分だ」

 

「ふっ、私も嘗められたものだな。

 せいぜいこのターンで潰れないことだ!私のターン、ドロー

 私はマジックカード、おろかな埋葬を発動しデッキからモンスターカードを1枚、DDリリスを墓地へ送る。

 さらに永続魔法、地獄門の契約書を発動

 このカードは自分のスタンバイフェイズ毎に1000ポイントのダメージを受ける。

 さらに1ターンに1度、デッキからDDと名の付くモンスターを手札に加えることが出来る

 私はDDナイト・ハウリングを手札に加える。」

 

「DD?聞いたことないカテゴリね?」

 

「ディファレント・ディメンション、異次元って意味だよ。」

 

「異次元・・・どういうデッキなのだ?」

 

「そして、私は手札のDDスワラル・スライムの効果により、このカードと手札のDDケルベロスで融合が可能となる。

 自在に形を変える神秘の渦よ、地獄の番犬を包み込み、今一つとなりて新たな王を生み出さん!融合召喚!!

 生誕せよ!DDD烈火王テムジン!」

 

 不気味に蠢くスライムが三つ首の番犬と交じり合い、炎の様なオーラを纏う赤い剣と盾を持つ王へと生まれ変わる

 

烈火王テムジン「フンッ!」

       ATK2000

 

「いきなり融合か・・・」

 

「これで終わりではない!

 私はレベル3のチューナーモンスター、DDナイト・ハウリングを召喚

 このカードの召喚に成功した時、墓地のDDモンスター、DDリリスを攻守0にして特殊召喚する。」

 

 零児のフィールドに牙だらけの大口が現れ、その中から花の様な印象を受ける女悪魔が這い出てくる

 

 DDナイト・ハウリング ATK300

 DDリリス       DEF2100→0

            ATK100→0

 

「私はレベル4のDDリリスにレベル3のDDナイト・ハウリングをチューニング!

 闇を切り裂く咆哮よ、疾風の速さを得て新たな王の産声となれ!シンクロ召喚!

 生誕せよ!DDD疾風王アレクサンダー!!」

 

疾風王アレクサンダー「ハッ!」

          ATK2500

 

 DDナイト・ハウリングとDDリリスの作り出した光を切り裂き、緑色のマントをたなびかせながら風纏う王が烈火の王と共に並び、王たちはさらなる王を呼び出す為に剣を掲げる

 

「烈火王テムジンの効果を発動、このカード以外のDDモンスターが特殊召喚された場合

 墓地のDDモンスターを1体特殊召喚する。

 蘇れ、DDケルベロス!」

 

DDケルベロス「グルル・・・」

       ATK1800

 

「そして、DDD疾風王アレクサンダーの効果を発動

 このカード以外のDDモンスターが召喚、特殊召喚された場合、自分の墓地のレベル4以下のDDモンスターを呼び戻す。

 戻れ、DDリリス!」

 

 DDリリス ATK2100

 

「DDリリスが特殊召喚されたことにより、その効果で墓地のDDモンスター、DDナイト・ハウリングを手札に加える。

 私はレベル4のDDリリスとDDケルベロスでオーバーレイ!

 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!

 この世の全てを統べるため、今、世界の頂に降臨せよ!エクシーズ召喚!

 生誕せよ!ランク4、DDD怒濤王シーザー!」

 

怒濤王シーザー「ウオオオォォォォ!!」

       ATK2400

 

 大剣を空へと掲げ、青く重厚な鎧を煌めかせる王、怒濤王シーザー

 その様を見ていた観戦室の面々も驚愕する

 

「なんか・・・全然違う、もしかして本物?」

 

「遊矢以外に3つの召喚法をこれほどまでに使いこなすとは・・・」

 

「そうよ、零児さんの実力よ」

 

「これで終わりではない!

 墓地のDDネクロ・スライムの効果を発動

 墓地のこのカードと融合素材モンスターを除外しDDDモンスターを融合召喚する。

 私は墓地のDDネクロ・スライムとDDゴーストを融合

 冥府に蠢く物よ、満たされぬ魂にその身を与え、真の王として生まれ変わらん!融合召喚!

 いでよ!神の威光伝えし王!DDD神託王ダルク!」

 

神託王ダルク「ハアアァァァァァ!フンッ!!」

      ATK2800

 

 大きな翼を翻し、悪魔へと堕ちた聖乙女が王となって降臨した

 零児のフィールドのモンスターの総攻撃力は9000を超え、攻撃力1800のドクロバット・ジョーカーだけではとても耐えられるものではないが、遊矢の表情は崩れることなく飄々としていた

 

「ほ~う、こんなに王様がいっぱいいると壮観だね。」

 

「そうだろう

 DDDとはすなわち、ディファレント・ディメンション・デーモン

 異次元をも征する王の力、たっぷり味わうがいい!バトル!!

 烈火王テムジンでドクロバット・ジョーカーに攻撃」

 

 烈火王テムジンの攻撃によって、ドクロバット・ジョーカーは切り裂かれ、その風圧によって球体の上に居た遊矢はその下の回し車の上に落下する

 

「いやまったく、危ないじゃないか」

 LP4000→3800

 

「そんなことを言っていられるのも今の内だ!

 行け!怒濤王シーザー!ダイレクトアタックだ!」

 

怒濤王シーザー「ウオオオォォォ!!」

 

 大剣を構え迫るシーザーだが、遊矢は回し車を器用に回し安定させながら、何の気後れもなくカードを発動させる

 

「そうはさせない

 永続トラップ、EM(エンタメイト)ピンチヘルパー

 1ターンに1度、相手のダイレクトアタックを無効にし、EM(エンタメイト)モンスターを効果を無効にし特殊召喚する。

 来い、EM(エンタメイト)マンモスプラッシュ!」

 

マンモスプラッシュ「パオオォォ!!」

         DEF2300

 

 シーザーの前に薄紫の毛長のマンモスが現れ、噴出した水で怒濤の王を返り討ちにする

 

怒濤王シーザー「グオオォォォ!?グゥ・・・」

 

(攻撃が止められたか・・・あのモンスターの効果、そして、彼の手には不明なカードが1枚・・・ここは)

「私はバトルを終了し、カードを2枚伏せターンを終了する。」

 

「おやぁ~攻撃してこないのかい?まぁ、いいか

 俺のターン、ドロー

 俺はスケール5の慧眼の魔術師とスケール3の相克の魔術師をペンデュラムスケールにセッティング!」

 

 遊矢のフィールドの両端に立ち上る光の柱

 その中にはフードを被り、その眼を仮面で覆った魔術師と不思議な装飾をされた大盾を構える魔術師が鎮座している

 

「これでレベル4のモンスターが同時召喚可能となったか・・・」

 

「おいおい、そう急かすなよ

 慧眼の魔術師のペンデュラム効果発動

 もう片方の自分のペンデュラムゾーンに魔術師またはEM(エンタメイト)カードがある場合、このカードを破壊し、デッキから慧眼の魔術師以外の魔術師ペンデュラムモンスターを置く

 俺はスケール8の時読みの魔術師をペンデュラムスケールにセッティングする。」

 

 慧眼の魔術師が消え、代わりに現れる時を見つめる黒装束の魔術師

 その下にある数字の様な紋様も5から8へ変化する

 

「これで、俺のエクストラデッキには表側表示のペンデュラムモンスターが3枚、よってこのカードが発動できる。

 魔法カード、ペンデュラム・ホルト

 このカードの発動後、このターン、俺はこれ以降デッキからカードを手札に加えることが出来なくなる代わりにデッキから2枚ドローする。

 そして儀式魔法、オッドアイズ・アドベントを発動!」

 

「儀式だと!?」

 

「俺の手札、フィールドのペンデュラムモンスターを儀式モンスターのレベル以上になるようにリリースし墓地か手札からドラゴン族儀式モンスターを儀式召喚する

 俺はレベル6のEM(エンタメイト)マンモスプラッシュと手札のレベル1のEM(エンタメイト)オッドアイズ・ユニコーンを儀式の供物として捧げ、墓地に封じられた竜を呼び覚ます。

 さぁ、地の底に眠りし竜よ、その2色の眼に星をも統べる力を宿せ!!」

 

 サーカスのステージの地面が隆起し、地を割りながら黒き影がその巨体に見合わず浮かび上がってくる

 

「儀式召喚!大地の力宿る戒めの竜、オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン!!」

 

オッドアイズG「ギャオオオォォォォォォォ!!」

       ATK2800

 

 その黒い影、オッドアイズ・グラビティ・ドラゴンは周囲に一緒に浮かんだ破片を打ち払う様に咆哮する

 金、橙、黒で彩られたその竜は零児すらも威圧されるほどのプレッシャーを放つ

 

「まさか、君が儀式まで使うとは・・・」

 

「驚いてくれてなによりだよ

 さて、そっちが1ターンに3つの召喚法でモンスターを呼びだしたんなら、俺は5つの召喚法で迎え撃とうじゃないか。」

 

「5つだと・・・!?」

 

「まずは、グラビティ・ドラゴンの効果だ

 このカードの特殊召喚時、相手フィールドの全ての魔法、トラップカードを手札に戻す

 この効果の発動に対して、相手はカード効果を発動できない。」

 

「何!?」

 

「ライズ・グラビテーション!」

 

 零児のフィールドの伏せカードと契約書が反重力に晒され浮かび上がり、零児の手元に戻ってゆく

 

「くっ!?」

 

「そして墓地の貴竜の魔術師の効果発動

 オッドアイズ・グラビティ・ドラゴンのレベルを3つ下げて、このカードを墓地から特殊召喚する

 来い、チューナーモンスター、貴竜の魔術師!」

 

貴竜の魔術師「はっ!」

      DEF1400

 

 グラビティ・ドラゴンの上に現れる白い導師服の少女、その手に持つ杖の紅い宝石がらんらんと輝く

 

「レベル4となったグラビティ・ドラゴンにレベル3の貴竜の魔術師をチューニング

 2色の眼に写る七つの星よ、流星となって降り注げ!」

 

 貴竜の魔術師の作り出した輪の中に大地の竜が飛びこみ天へと昇っていく

 眩き極光と共に転生した竜は炎を纏いて流星となりフィールドに降臨する

 

「シンクロ召喚!星紡ぐ戦の竜、オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン!」

 

オッドアイズM「ギャアアァァァァァァ!!」

       ATK2500

 

「メテオバースト・ドラゴンの効果発動

 このモンスターが特殊召喚された時、ペンデュラムゾーンのモンスター1体を特殊召喚できる。

 俺はレベル7の相克の魔術師を特殊召喚」

 

相克の魔術師「ふん!」

      ATK2500

 

「これでレベル7が2体・・・」

 

「その通り、俺はレベル7のオッドアイズ・メテオバースト・ドラゴンと相克の魔術師でオーバーレイ!

 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築

 六道八獄踏み越えて、絶対なる力、2色の眼に焼き付けろ!」

 

 大地が割れ、流星の炎に焼かれたサーカス小屋が今度は強烈な冷気に包まれる

 混沌の渦から、氷の様に美しくも吹雪よりも過激な魔竜が姿を現した

 

「エクシーズ召喚!全てを凍てつかせる永久の竜、オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン!」

 

オッドアイズA「ガアアァァァァァ!!」

       ATK2800

 

「そして、お待ちかねのペンデュラム召喚だ

 俺は手札からスケール1の星読みの魔術師をペンデュラムゾーンにセッティング!

 これでスケールは1と8となり、レベル2から7のモンスターを同時に召喚できるようになった。」

 

 ここに再び、主のもとに始まりを告げた2人の魔術師がそろった

 魔術師たちの間で揺れる振り子はその速度を速め、天空に光のアークを描き出す

 

「揺れろペンデュラム、異界へ繋がる扉を開け!ペンデュラム召喚!

 現れろ!レベル4慧眼の魔術師、EM(エンタメイト)ドクロバット・ジョーカー、レベル6EM(エンタメイト)マンモスプラッシュ、そしてレベル7、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン!」

 

オッドアイズP「ギャオオオォォォン!!」

       ATK2500

 

 慧眼の魔術師       DEF1500

 ドクロバット・ジョーカー DEF100

 マンモスプラッシュ    DEF2300

 

「マンモスプラッシュの効果発動

 デュエル中に1度だけ、ドラゴン族融合モンスターを融合召喚できる。

 俺はペンデュラムモンスターであるマンモスプラッシュとオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンを融合

 疾風迅雷、その2色の眼に写る歯向かう者を平伏させよ!」

 

 オッドアイズの赤い装甲が雷を帯びて緑と白を基調とした機械的な物へと変化する

 未熟な翼のような突起も4つのスタビライザーの様な物になり、凍てついた世界に紫電を迸らせる

 

「融合召喚!雷の力帯びし竜、オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン!」

 

オッドアイズV「グオオォォォォ!!」

       ATK2500

 

「よもや、これほどとは・・・」

 

 驚愕に目を見開く零児、観戦室でも前代未聞の5召喚連続使用に空いた口が塞がらなくなっていた

 

「そんな・・・馬鹿な・・・」

 

「融合、エクシーズ、シンクロ、ペンデュラムに儀式まで・・・」

 

「本当に5召喚やりやがった!?」

 

「むちゃくちゃね・・・」

 

「ひ、ひぇ~」

 

「遊矢、すごい・・・」

 

「うむ、それでこそ俺が越えるべき頂に立つ男よ!」

 

「ボルテックス・ドラゴンの効果発動

 特殊召喚時、相手の攻撃表示モンスター1体を手札に戻す

 まずは厄介な、そいつには退場願おうか!」

 

 遊矢が指差した先に居るのはシーザー

 ボルテックス・ドラゴンはシーザーに向かって電気を帯びて突撃、シーザーは感電で苦しみながら消えて行った

 

怒濤王シーザー「グオォォァアァァァァ・・・・」

 

「く!?」

 

(シーザーの効果を使わせなかった、直感で避けたのか?さすがだな)

「まだ終わりじゃないぞ

 俺はレベル4の慧眼の魔術師とドクロバット・ジョーカーでオーバーレイ

 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!

 来い、鳥銃士カステル!」

 

カステル「クワアアァァァ!」

    ATK2000 ORU2

 

 遊矢が召喚したのはテンガロンハットを被り、猟銃を構えた鳥人

 カステルは自身の周囲に飛ぶオーバーレイユニットを即座に2つ猟銃に装填する

 

「カステルの効果発動

 オーバーレイユニットを2つ取り除き、このカード以外のフィールドの表側表示カードを1枚選択し、持ち主のデッキに戻す。

 神託王ダルクにも消えてもらおうか」

 

 カステル ORU2→0

 

神託王ダルク「グワアアァァァ!」

 

 カステルの放った風の弾丸が神託王ダルクを零児のデッキに吹き飛ばす

 あまりもあっさりと処理されてしまった異次元の王たち、だが零児には驚く暇すら与えられない

 

「バトル、カステルで烈火王テムジンを攻撃」

 

(攻撃力が同じモンスターで攻撃、相打ち狙いか・・・いや)

 

 零児は跳ぶ、次々と異常とも思える身体能力を発揮し球形の足場を飛び跳ね、あっという間に空中ブランコの乗り台にまで辿りつくとそこに存在していたアクションカードを発動させる

 

「アクションマジック、ハイ・ダイブ!

 このターン中、私のモンスター1体の攻撃力を1000ポイントアップさせる!」

 

「おっと、そんなことしなくても攻撃は中止だ。

 ついでに攻撃力アップも消すとしよう

 ボルテックス・ドラゴンとアブソリュート・ドラゴンの効果を発動

 まずはボルテックスの効果で俺のエクストラデッキの表側表示のペンデュラムモンスターを1体デッキに戻し、このカード以外のカード効果の発動を無効にし破壊する

 俺はマンモスプラッシュをデッキに戻し、ハイ・ダイブを無効にする!パラライズ・シャウト!!」

 

 ボルテックス・ドラゴンは翼を展開し電気エネルギーを増幅、光弾として撃ちだし、零児の発動させたハイ・ダイブを焼き消した

 

「何!?」

 

「さらにアブソリュートの効果でオーバーレイユニットを1つ使い、カステルの攻撃を無効にする。」

 

 オッドアイズA ORU2→1

 

 銃を構えるカステル、そしてそれを迎撃しようとする烈火王テムジン

 だがその両者の間に巨大な氷塊が出現、突如現れた氷塊にテムジンは炎を纏う剣でそれを破壊しようとするが、その剣が当たる前に氷塊が割れ、中から2色の眼の黒竜が姿を現す

 

オッドアイズG「グルルオオオォォォォォ!!」

       ATK2800

 

「アブソリュート・ドラゴンが攻撃を止めた後、墓地か手札のオッドアイズモンスターを特殊召喚出来る

 俺はこの効果でオッドアイズ・グラビティ・ドラゴンを呼び戻した。」

 

「なんだと!?」

 

「さぁ、堪えきれるかな~?

 ボルテックス・ドラゴンで烈火王テムジンを攻撃、迅雷のボルテックス・シュート!!」

 

 先程よりも強力になった電気エネルギーはプラズマ化し、光線となって烈火王テムジンを撃ち抜く

 瞬く間に光の中に消えたテムジンは叫び声をあげる事すら敵わず、消滅した

 

「ぐおぉぉぉ!!」

 LP4000→3500

 

 ボルテックス・ドラゴンの凄まじい一撃の余波を受けた零児は、吹き飛ばされるがその先でアクションカードを発見する

 

「アブソリュート・ドラゴンで疾風王アレクサンダーを攻撃!永結のアブソリュート・ゼロ!!」

 

 放たれようとしている絶対零度のブレス、まともに食らえばアレクサンダーは粉々にされるであろう

 

「くっ!私はアクションマジックをはつ―!?」

 

 いきなり零児の体を襲う異常、とてつもなくカードが重くなり、あわや落としそうになる。何とか踏みとどまるが、異常は全身に及び、立ってるのもやっとの状態だ

 

(なんだ!?体が異常に重い、まるでいきなり何かに押さえつけられたような・・・

 押さえつける、加圧、重力!?)

 

 聡明な零児の頭がこの異常現象の原因を突き止める

 そう、グラビティ・ドラゴンである

 

「おっと、アクションカードを使いたいんだったら使用料を払ってもらおう

 グラビティ・ドラゴンがモンスターゾーンに存在する限り、相手がカード効果を発動する為には500ポイントのコストが発生する。」

 

「な、に・・・!?くっ!

 私はライフ500を払い、アクションマジック、回避を発動

 オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴンの攻撃を無効にする!」

 LP3500→3000

 

 放たれるアブソリュート・ドラゴンの攻撃

 それを疾風王アレクサンダーは自身の剣を犠牲にして零児を守り切る

 だが、剣を失った疾風王をすでに大地の竜は捉えていた

 

「追撃だ、グラビティ・ドラゴンで疾風王アレクサンダーに攻撃!超重のグラビティ・ハリケーン!!」

 

 疾風の王は残された風の力で守ろうとするが、重力波の嵐の前では風は役に立たずひしゃげ潰され破壊された

 

「ぐうぅぅ・・・」

 LP3000→2700

 

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンドだ。」

 

 苛烈に攻め立てた後で、静かにエンド宣言する遊矢、3体の竜を従え佇む姿に零児は悪魔の幻覚を見た

 だが、冷静さを取り戻すと疑問が湧いてきた

 なぜ、これほどの力を彼が持つのかと

 

「予想以上だ・・・君のやることなすこと、全て私の想像を超えている。

 だが、君はどこでこれほどの力を手に入れた?

 君のお父上も柊修造もエクストラを使った召喚法も儀式も使っていなかったはずだ。」

 

「独学と言っておこうか

 別に難しい話じゃないだろ?ルールブックにやり方の説明は載っているんだし

 後はカードさえあれば、誰にだってできるさ」

 

「ふっ、確かにそうだな

 折角だ、もう一つの疑問も解消しておこう

 君はお父上の事をどう思っている?」

 

「・・・何故そんなことを聞く」

 

「私は彼の事を現在のアクションデュエルの隆盛を築き上げたパイオニアとして、心から尊敬している。

 だが、君のデュエルスタイルは彼とまるで真逆、容赦の一欠片も感じられない」

 

「へぇ~若いのに父さんの事をそこまで良く言う他人にあったのは初めてだよ。

 まぁ、たしかにアクションデュエルを流行らせたという点じゃ尊敬できるかもね。

 父親として、デュエリストとしては尊敬できないけど」

 

「!?なぜだ、彼は素晴らしいデュエリストだった!

 周りがアクションデュエルの腕を磨く中で、自分も負けじと腕を磨き続け、それが今のアクションデュエルの隆盛へと繋がった!」

 

「腕を磨くなんて、デュエリストとして当たり前の事だろ?

 それに父さんのデュエルスタイルはマジックショーじみたものだったからね。

 真剣に向き合っている相手からしたら、ショーのダシに使われたように感じて、たまったものじゃないだろうさ」

 

「だが、彼のエンターテインメント・デュエルは大勢の人々を楽しませていた!」

 

「あれは『楽しんでいる』んじゃない、『面白がっている』っていうんだ

 それにデュエリストとして、観客優先で相手を蔑ろにして、何処に尊敬できる要素があるんだ?

 父親としてもそうさ

 手紙一枚置いてハイさよなら、な~んてどうよく思えばいい?」

 

 おどけた調子で答える遊矢、だがその言葉には静かな怒りと侮蔑が零児には読み取れた

 

「それに、その点じゃ俺たちは似た者同士じゃないのか~?」

 

「なに?」

 

「数年前、大々的にニュースになっていたよな

 レオ・コーポレーション社長『赤馬 零王』謎の失踪って」

 

「っ!?黙れ!!」

 

 その名が出たとき、零児の感情が爆発した

 彼にとってその名は母を悲しませ、世界を狙う憎むべき敵の名なのだから

 

「はは、怖い怖い

 さぁ、こんな湿気た話はやめにして、デュエル再開と行こうじゃないか

 お前のターンだ、父さんの事を尊敬しているんなら、ここからどう俺を楽しませてくれるんだ?」

 

「くっ!私のターン、ドロー!

 私はライフを500払い、マジックカード、手札抹殺を発動

 互いのプレイヤーは手札を全て捨て、捨てた枚数だけデッキからカードをドローする

 私はアクションカードを含めたカード6枚を捨て6枚ドロー!」

 LP2700→2200

 

 アレクサンダーの攻撃時、密かに持っていたアクションカードを零児はここで活用する

 だがそれは遊矢も同じことで、彼は自分の足場の回し車を調整しアクションカードを手にする

 

「俺もアクションカードを含めたカード2枚を捨て、2枚ドローする。」

 

「5つの召喚法を使う君に応えて、私も新たな力を使うとしよう

 私はスケール1のDD魔導賢者ガリレイとスケール10のDD魔導賢者ケプラーで、ペンデュラムスケールをセッティング!!」

 

 零児のフィールドに現れる2本の光の柱

 その中には天体望遠鏡の様なモンスターと天球儀の様なモンスターが浮かび上がる

 

「来たか・・・

 だが、ペンデュラムカードの設置もカード効果の発動とみなされる

 よって、お前には合計1000ポイントのライフを支払ってもらおうか」

 

「ぐっ・・・」

 LP2200→1700→1200

 

「これで、後使える効果は2回だ

 効果を繋げて戦うタイプのそのデッキで、堪え切れるかな~?」

 

「ならば、その2回でグラビティ・ドラゴンを無力化すればいいだけの事!

 我が魂を揺らす大いなる力よ、この身に宿りて、闇を切り裂く新たな光となれ!」

 

 けたたましい機械音を上げながら2つの装置が潤動する

 天には無数の線が描かれ、異界への新たな門が開かれる

 

「ペンデュラム召喚!出現せよ、私のモンスター達よ!」

 

 異界の門を潜り抜けて降臨するのは2体の巨大なクリスタルで出来たペンデュラムの様なモンスターと威風堂々と赤いマントをたなびかせた偉大なる王の一人

 

「レベル7DDD制覇王カイゼル!

 地獄の重鎮たる王をも超えた2体の超越神!DDD死偉王ヘル・アーマゲドン!!」

 

 制覇王カイゼル      ATK2800

 死偉王ヘル・アーマゲドン ATK3000

 死偉王ヘル・アーマゲドン ATK3000

 

 突如として使われた遊矢だけしか使っていなかったペンデュラム召喚を零児が使用したことで、この場の全員の目が見開かれる

 だが、遊矢だけは心底嬉しそうに笑いそれを迎え撃とうとする

 

「はははっ!そうだ、そう来なくちゃな!!

 だったらそれを俺は全力で迎え撃とう!カウンタートラップはつど――」

 

――ビイイィィィィ!!

 

「なに!?」

 

「緊急停止のブザー!?」

 

 鳴り響くブザー、アクションフィールドが解除され、零児のディスクに彼の部下、中島からの通信が入る

 

「なに、マルコが?」

 

 零児は苦虫を噛み潰したような表情をし、遊矢を一瞥すると背を向け早足で歩き始める

 

「この勝負・・・預ける。」


 夜の闇に消えていくリムジンのテールライトを眺めながら、俺は遊勝塾の屋上で零児の手を考える

 

(カイゼルにはペンデュラム召喚された時、俺のフィールドの表側表示カードの効果を無力化する効果があったな

 それはボルテックス・ドラゴンの効果で止めるとして、次に死偉王2体でカリ・ユガを出して、完全に無力化する算段か・・・)

 

 そして、彼の墓地のカードのことも考え、俺のライフをあのまま消し飛ばすようなコンボを予測する

 

(手札抹殺でヴァイス・テュポーンが墓地に送られていたな

 となると、テュポーンの効果でエグゼクティブ・テムジンを出してネクロ・スライムの効果でダルクを再び融合

 テムジンの効果でナイト・ハウリングを呼び出して、エグゼクティブ・アレクサンダーを出せば、攻撃力6000、3500、2800のモンスターが並ぶ

 手札が1枚残っていたが、あれは予備として取っていた3体目の死偉王かな?

 スワラル・スライムの効果で特殊召喚すれば、さらに3000か)

 

 エクゼクティブ・テムジンの効果も考えれば、アクションカード対策もされた盤面だ

 よくもまぁ、ドローしたカードでひっくり返すコンボを思いついたもんだ

 できていればの話だがな

 

「今回は勝たせてもらったぜ?

 次はもっと楽しいデュエルをしようじゃないか、赤馬零児・・・」

 

 俺は最後に発動させようとした、カードを月に掲げた


「残念だったわね、零児さん

 あと少しで、榊遊矢を倒せていたというのに・・・」

 

 レオ・コーポレーションに向かうリムジンの中、日美香は零児の盤面からこのターンで遊矢を倒せていたと残念がるが零児は違った

 

「いえ、あのデュエル、私の負けです、母様」

 

「どうして!?零児さんのモンスターの効果は・・・」

 

「カイゼルの効果を無効にされ、カリ・ユガをエクシーズ召喚出来れば、確かに私にも勝機があったでしょう

 ですが、彼が最後に発動させようとしたあのカードは・・・」

 

 消え失せるソリッドビジョンの中、彼の脳裏に焼き付いた遊矢の最後の1枚、それは

 

「神の宣告

 ライフを半分払い、マジック、トラップの発動、またはモンスターの召喚、反転召喚、特殊召喚を無効にし破壊するカード」

 

「なっ!?それでは・・・」

 

「はい、私のペンデュラム召喚は無効にされ、ボルテックス・ドラゴンの効果をすり抜け、手札に残したヘル・アーマゲドンをスワラル・スライムの効果で呼び出し攻撃しても、アブソリュート・ドラゴンの効果で攻撃を止められていたことでしょう。

 そうすれば、残りライフ200となった私が次のターン生き残れるとは思えません」

 

「そんな・・・零児さんが、負けた・・・」

 

 放心する日美香だったが、零児は自分が負けたことよりも気になっていることがあった

 

(なぜ彼は攻撃力が高い、ダルクやアレクサンダーではなくシーザーを最初に戻したのだ?

 公の場で、私がシーザーを使ったことはない

 彼がシーザーの効果を知ることはない筈なのに・・・)

 

 シーザーにはデッキから契約書を手札に加える効果が備わっている

 それを嫌ったと考えたら納得いく話ではあるが、遊矢はシーザーの効果を確認した様子がなかった

 それはつまり、初見のカードの効果を当てたということになる

 

(・・・いや、ただの偶然か・・・もしそうなら彼は)

 

 初めから自分のカードのことを知っていたことになるのだから

 ありもしない荒唐無稽な考えを捨てて、今直面している問題を零児は問う

 

「今はそれよりも、中島、マルコ襲撃事件の詳細を報告せよ。」

 

「はっ!発生しましたのは、舞網市内NLD38地区

 発生時刻は17時54分、かなり強い召喚反応を検知しました。」

 

「召喚方法は?」

 

「エクシーズです。」

 

「そうか、ならばまだ遠くには行っていないはずだ、何としても見つけ出せ!!」

 

「はっ!」

 

(そして榊遊矢、この借りはいつか必ず・・・)

 

 遊矢がそうであったように、零児もまた彼との再戦を夢想する

 

 これで序章は終わり、新たな1ページが捲られた

 その先の物語は、まだ誰にもわからない




LDS、ならば俺が相手だ!!

やめろ隼!!ここは俺たちの戦場じゃない!
彼らは俺たちの敵じゃないんだ!!

ここは俺の戦場だ!邪魔をするならユート、ここで貴様も倒す!

次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『鉄の意志と鋼の強さ』
もう俺は、だれにも傷ついてほしくないんだ!!


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舞網チャンピオンシップ編
鉄の意志と鋼の強さ


 お待たせしました、ついに登場、鎧の不審者、そして最長回です(ターン数が)
 お相手は出番数カットでありながら絶大なインパクトを放ったあの人です
 あと、アンケートの方は締め切らせていただきました、ご協力ありがとうございました


ブラック企業社長と悪徳取り立て屋のデュエルを見た子供たち

「すげー痺れたぜ!遊矢兄ちゃんと赤馬零児のデュエル!!」

「うん、すごかったよね~いろんな召喚法のモンスターが出てきて♪」

「よし、俺は決めた!俺は全召喚を使いこなすデュエリストになるぜ!」

「えっ!?でも、君ってガイアナイトとかダンシング・ソルジャーとかしか持ってなかったよね?
 効果なしで遊矢先生みたいにするのはきついんじゃ・・・」

「いや、俺は決めた!何せ、俺には必殺のカードがあるんだからな!!」

 これがのちに「創星王」と呼ばれるデュエリストの始まりである


「見ろよ、臆病者の子供が歩いてるぜ?」

 

「あぁ、逃げた榊遊勝の子供だ」

 

 夕日の街を一人の少年が歩いていく

 道行く人々は少年を見て覚える感情は侮蔑、嘲笑、苛立ち、嫌悪、拒絶、蔑み、軽蔑・・・

 

 様々な悪意に晒された少年の顔は逆光で見えはしない

 

 ただひたすらに前を向き、その歩を進めていく

 

「おい!!」

 

 少年の歩みが止まる、そこに居たのは年若いながら鍛え上げた肉体を持つガラの悪い少年

 

「お前、卑怯者の息子なんだってな?

 親父が逃げたんだ、代わりにお前が戦えよ?」

 

「なんだ、お前は・・・?」

 

「俺はストロング石島の代わりだ。

 なんだよ?嫌か?親父みてぇに逃げるってか?」

 

「俺とデュエルがしたいのか?」

 

「はっ!誰がおめぇなんかと、デュエルがしたいと思うんだよ

 逃げた榊遊勝の代わりに、俺がてめぇに天罰を与えてやろうとしているってだけよ!」

 

「そうか・・・だが、デュエルだというならいいだろう、相手になってやる!」

 

「ははっ!卑怯者が何ほざいていやがる!」

 

「「『決闘(デュエル)』!!」」

 

 その言葉が響いた直後、夕焼けの街は闇に包まれた

 

『『『うわああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』』』

 

 闇の中から悲鳴が木霊する

 数分ののち、闇は晴れ、町はまた光を取り戻す

 

「なんだ、この程度か・・・」

 

 闇が晴れても少年は変わらぬ位置で立っていた

 その前にはガラの悪い少年が恐怖でその顔を凍らせて転がっている

 

 そして、周囲にいる人々も少年へ向ける感情が変わっていた

 

 驚愕、畏怖、恐れ、困惑、衝撃・・・

 

 恐怖の感情に染められ、少年を化物のように見て怯える人々

 少年と目を合わせた者はその意識を手放し地に伏せる

 

「さぁ、次はだれが相手をしてくれるんだ?」

 

 大仰な仕草で振り向いた少年は、戦いを求めて嗤っていた


「うぅ・・・ん・・・」

 

 目が覚めると、まだ外は暗い、まだ日は昇ってないみたい

 時計を見ると午前4時くらい、2度寝するには少し遅いわね・・・

 

「昔の・・・夢・・・」

 

 おじさんが失踪した次の日、街の人々の遊矢の見る目は悪意のみとなっていた

 ほとんどの人は直接何かを言ってくることはなく、蔑み嘲笑するだけだったけど

 権現坂の兄弟子だった人が遊矢にデュエルを挑んだ

 

「いったい何をしたのよ、遊矢・・・」

 

 デュエルが始まってすぐ、遊矢はフィールド魔法を発動したみたいだった

 それは深い闇の様な物で、どう声をかけようかと迷っていた私はその闇の外にいて、デュエルの内容を知ることは出来なかった

 ただ覚えているのは、闇に捕らわれていた人たちは皆、恐怖で固まっていたことだけ

 イライラしていたのか、あの後も悪口を言って来た人たちにデュエルを挑んでいってたっけ・・・

 

「そのおかげで、誰も遊矢に悪口言わなくなったんだけど・・・」

 

 いつもちょっとやり過ぎよね

 権現坂と一緒に止めるの大変だったんだから・・・

 

≪あれは『楽しんでいる』んじゃない、『面白がっている』っていうんだ≫

 

 遊矢の言葉が頭の中で反芻する

 言い過ぎだとも思ったけど、遊矢の言う様に心の底から楽しんでみていた人たちは少なかったのかもしれない

 あのスタジアムで、おじさんを擁護してくれる人は誰もいなかったのだから

 

「はぁ~プロって難しいな~・・・」

 

≪そうだ、奪われた仲間は必ず取り戻す!    

 そのために俺は『此処』に来た!≫

 

 そういえば、そのユートっていう遊矢に似た人、大事な人を取り戻すためにLDSを襲撃してたんだったわね

 あの夕日に照らしだされた遊矢の表情はユートに似ていた

 大事なものを守れなかった、そんな表情・・・

 

「今は、どこに居るのかしらね?」


 夜の街の屋根の上

 群青のコートをたなびかせ、一棟のビルを見つめている

 その表情はマスクとゴーグルで判断しづらいが眉間にしわが寄っていることから、険しいことが分かる

 

「LDS・・・」

 

「お前もこっちに来たのか、隼・・・」

 

 青いコートの青年、俺の仲間『黒崎 隼』

 彼は妹の瑠璃が攫われてから変わってしまった

 瑠璃を取り戻すためには手段を選ばず

 人をカードにすることにも戸惑いを覚えない、冷徹な性格へと

 

「ユート、何か情報は掴めたか?」

 

「いや、なにも・・・LDSの生徒はアカデミアの事は何も知らないようだ。」

 

「そうか・・・ならば、もっと上の奴、赤馬零王の息子を引きずり出すしかないな!!」

 

 獲物に狙いを定め、隼のゴーグルの奥の鷹の様な目が光る

 狂気に染まるその姿に俺は目を伏せる、これでいいのかと

 

「なぁ、隼、赤馬零王の息子を引きずり出すために、何をするつもりだ?」

 

「知れたこと、奴の部下どもをデュエルで倒し、奴らをカードにして叩きつける!!」

 

「なっ!?そんなことをすれば、俺たちはアカデミアと同じになってしまう!

 やめるんだ!隼!!」

 

「五月蠅い!!瑠璃を助け出すためには、こうするしかない!!」

 

「此処は俺たちの戦場じゃない

 あのころの様な・・・まだデュエルが楽しかった、あのころの様なデュエルが出来る場所だ!!

 俺たちの事情を持ち込むべきではないんだ!!」

 

 そうだ、この世界はまだ人々が楽しくできる世界なんだ、戦場になどさせてはならないんだ!

 

「甘いなユート、もうそんなことが言える時ではない!!

 瑠璃が連れ去られたその時から・・・邪魔立てするならユート!貴様と言えども倒す!!」

 

 ゴーグルとマスクを取り、血走った金色の目が俺に向けられる

 俺はもう誰も傷つけたくはない

 だが、暴走する隼を止めるには、やるしかないのか・・・

 

 一触即発の空気が漂う中

 

「おや~屋根の上で何をしているのかな?お二人さん」

 

 空気を読まないハスキーボイスが俺たちに掛けられた

 

「何者だ、貴様」

 

「それはこっちが聞きたいね、不審者さん

 僕はマルコ、LDSで講師をしている者だ

 さっきの会話、聞かせてもらったけど、君たちが最近起こっている襲撃事件の犯人ってことでいいのかな?」

 

 そう言い、フラメンコダンサーの様なフリルの付いた紫のシャツを着た長髪の男『マルコ』はどこから取り出したのか、赤いバラを俺達に向ける

 

「講師・・・ならばちょうどいい!!

 貴様!俺とデュエルをしろ!!」

 

「ふふ、すぐに逃げるかと思っていたけど、それは願ったりかなったりだ

 いいよ、ただし、僕が勝ったら君たちを拘束させてもらうよ?」

 

 ディスクを展開させるマルコと隼

 まずい、俺は屋根から飛び降り2人の間に割って入る

 

「待て、隼!!

 もう、俺の目の前で誰も傷つけさせはしない!

 デュエルをするなら俺が相手になってやる!!」

 

「君、僕がやるって言っているのに無粋なことしないでくれるかな?

 彼を下したら、君も相手をしてあげるからさ」

 

「そうだ!

 こいつを始末したら、邪魔をするお前も片付けてやる!!

 黙って、そこで見ていろ!!」

 

「くっ!」

 

 もはや止められないか!?

 

「「『決闘(デュエル)』!!」」

 

「先攻は僕からだ

 僕は竜魔導の守護者を召喚!」

 

竜魔導の守護者「はっ!」

       ATK1800

 

 マルコの隣に現れる青き竜の鎧を着た魔導士

 竜魔導の守護者は彼の勝利の鍵となるカードを呼び出すために杖を掲げる

 

「竜魔導の守護者が召喚、特殊召喚された時、手札を一枚捨てることで、デッキから融合かフュージョンと名の付く通常魔法を手札に加えられる。

 僕は融合のカードを手札に加えるよ。」

 

「融合!!」

 

「あの男、融合使いか!?」

 

 まずい、LDSの講師と言うだけでも問題なのに融合使いだなんて・・・

 今の隼は怒りに支配されている、融合使いと分かったのならカードにする以前に殺しかねない

 だが、俺にはもう止められない

 決闘は始まってしまった・・・また、俺は・・・

 

「さらに効果発動

 エクストラデッキの融合モンスター、異星の最終戦士を見せることでその融合素材モンスター、魔力吸収球体を墓地から裏側守備表示で特殊召喚するよ

 カードを2枚伏せて、ターンエンドだ

 さぁ、君のターンだよ?」

 

「ふざけた奴だ、俺のターン、ドロー」

 

「この瞬間、僕はリバースカードを使わせてもらうよ。

 永続トラップ、星遺物の傀儡

 このカードの効果は1ターンに1度、自分の裏側表示モンスターを選択し、表側攻撃表示か表側守備表示に変える

 よって、僕は魔力吸収球体を表側守備表示に変更!」

 

 魔力吸収球体 DF900

 

「俺はRR(レイド・ラプターズ)―スカル・イーグルを召喚」

 

 スカル・イーグル ATK1000

 

「さらにRR(レイド・ラプターズ)―コールを発動、自分フィールド上のRR(レイド・ラプターズ)モンスター1体の同名モンスターを手札、デッキから特殊召喚する。」

 

「おっと、待ってもらおうか

 魔力吸収球体の効果発動、相手ターン中に魔法カードが発動したとき、このカードをリリースすることで、その発動を無効にし破壊する。」

 

 RR(レイド・ラプターズ)―コールから魔力を吸い取り、浮かび上がった髑髏が肥大化する

 髑髏の幻影がカードに喰らい付き破壊すると、本体である赤黒い水晶は容量オーバーとなり砕け散る

 

「表示形式変更はこのためか・・・」

 

 なるほど、融合素材の効果を活かしたのか

 だが、隼はこの程度では止められないぞ

 

「ならば、俺は手札のRR(レイド・ラプターズ)―ペイン・レイニアスの効果発動

 自分フィールドのRR(レイド・ラプターズ)モンスターを1体選択し、その守備力か攻撃力のどちらかの低い方と同じ数値のダメージを受けることでこのカードを特殊召喚する。」

 LP4000→3500

 

 ペイン・レイニアス DEF100

 

 白と錆色の鋼鉄の鷲の様なモンスターが隼をつつくと、その手札からまるまるとした緑色の機械的な鳥が現れる

 

「この効果で特殊召喚されたペイン・レイニアスは対象モンスターと同じレベルとなる。」

 

 ペイン・レイニアス LV1→3

 

「俺はレベル3のRR(レイド・ラプターズ)―スカル・イーグルとペイン・レイニアスでオーバーレイ

 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!

 現れよ!RR(レイド・ラプターズ)―デビル・イーグル!!」

 

デビル・イーグル「キュオオオォォォォォォォ!!」

        ATK1000

 

 宵の帳と共に赤と黒に彩られた悪魔の怪鳥

 隼は次のターンで一気に勝負を付けるつもりか!?

 

「スカル・イーグルを素材としてエクシーズ召喚されたモンスターは攻撃力が300ポイントアップする。

 さらにデビル・イーグルに装備魔法、ラプターズ・アルティメット・メイスを装備し、さらに1000ポイントアップさせる、バトルだ!!」

 

 デビル・イーグル ATK1000→1300→2300

 

 デビル・イーグルが光り輝く棍を掴み、高く舞い上がる

 だが、舞い上がった空には輝く月ではなく、漆黒の太陽が鎮座していた、これは!?

 

「おっと、そうはいかないよ

 速攻魔法、皆既日食の書、フィールド上の全てのモンスターには裏側守備表示になってもらおうかな。」

 

 日食の魔力がフィールドを支配し、全てのモンスターはカードに閉じ込められる

 悪魔が持った輝く棍も空しく転がり、砕け散った

 これで反転召喚しても攻撃力は元の1000、フィールドに残すには心許無い数値になったか

 

「くっ!俺はカードを2枚伏せ、ターンを終了する。」

 

「エンドフェイズ時、君のモンスターは表側表示になり、その枚数分、君はカードをドローする。

 表になったのはデビル・イーグル1体だから、1枚ドローしたまえ」

 

 デビル・イーグル DEF0

 

 マルコを睨みながらドローをする隼、敵から送られた塩など嘗めたくないと表情に出ている

 

「さぁ、僕のターンだ、ドロー

 僕は再び、竜魔導の守護者の効果を発動し、異星の最終戦士を見せ、墓地から融合素材の魔力吸収球体を裏側守備表示で特殊召喚

 さらに魔法カード、増援を発動し、デッキからレベル4以下の戦士族モンスター、ダーク・ヒーロー ゾンバイアを手札に加える。

 そして、魔法カード、融合を発動するよ!」

 

「来るか!?」

 

「手札のダーク・ヒーロー ゾンバイアとフィールドの魔力吸収球体を融合

 闇駆ける英雄よ、魂宿る石をその手に、輝く光の中で生まれ変われ!融合召喚!!

 カモーン!マイフェイバリットモンスター!異星の最終戦士!!」

 

 マルコのフィールドに降り立ったのは黄金の躰に最低限の鎧を付け、肥大化した右腕に鉤爪を、左肩にキャノン砲を装備した恐ろしげな戦士

 彼が降り立ったことで、発生した衝撃波で竜魔導の守護者が弾き飛ばされる、何だ!?

 

「異星の最終戦士の特殊召喚に成功した時、このカード以外の自分フィールド上のモンスターはすべて破壊される。」

 

異星の最終戦士「グオオオアアァァァァァァ!!」

       ATK2350

 

「そして、このカードがフィールド上で表側表示で存在する限り、お互いにモンスターを召喚、反転召喚、特殊召喚することは出来なくなる。」

 

「なっ!?」

 

「凄まじい効果だ・・・」

 

 自分もモンスターを出せなくなるという諸刃の剣を躊躇なく使うとは・・・

 

「僕はモンスターをセット

 そして、星遺物の傀儡の効果で表側攻撃表示に変更する

 現れよ、ライトロード・モンク エイリン!」

 

エイリン「フン!はあっ!!」

    ATK1600

 

 異星の最終戦士の隣に並ぶ、浅黒い肌の光の御使いである女性

 拳を唸らせ、仲間の戦路を阻む者を見据える

 

「バトルだよ!

 エイリンで表側守備表示のデビル・イーグルに攻撃!」

 

「させるか!トラップカード発動!RR(レイド・ラプターズ)―レディネス

 このターン、俺のRR(レイド・ラプターズ)は戦闘で破壊されない!」

 

「残念だったね!

 エイリンに攻撃された守備表示モンスターはダメージ計算前に持ち主のデッキに戻ってしまうのさ!」

 

「なんだと!?」

 

 デビル・イーグルは空へと逃げようとするがエイリンはそれを許さず、高く跳躍して先回りし、蹴り飛ばす

 落下したデビル・イーグルは光とともにカードへと戻り、隼のデッキへと戻ってしまった

 特殊召喚を封じられた隼は召喚権を使ってのセットしかできない

 これを狙ってのコンボか・・・

 

「さぁ!まずは、キツイお仕置きと行こうか!

 異星の最終戦士でダイレクトアタックだ!」

 

「墓地のRR(レイド・ラプターズ)―レディネスは自分の墓地にRR(レイド・ラプターズ)モンスターが存在する場合、このカードを除外することでこのターン、自分が受ける全てのダメージを0にする。」

 

 風の障壁が隼を覆い、異星の最終戦士の拳を弾き飛ばす

 その様を見たマルコは、たはは、と自嘲気味に笑う

 

「やっぱり、そう簡単に通させてはくれないか~

 エイリンの効果でエンドフェイズにデッキからカードが3枚墓地へ送られる。

 ターンエンドだよ」

 

「くっ!俺のターン、ドロー

 俺はモンスターをセットし、カードを1枚セット、ターンエンドだ」

 

流石の隼も、この状況では防戦一方か・・・

 

「僕のターンだね、ドロー

 僕はエイリンでセットモンスターに攻撃

 もちろん、効果でそのモンスターにはデッキに戻ってもらうよ」

 

 リバースして現れたのはペイン・レイニアス、だが前のターンのデビル・イーグルと同じように蹴り飛ばされる

 

「ちぃ!?」

 

「さぁ、これで君を守るカードはないかな?

 異星の最終戦士でダイレクトアタックするよ!」

 

 黄金の戦士の拳が隼に叩き込まれる

 隼はその衝撃で吹き飛ばされ、地面を何度も転がる

 くっ!やはりこうなってしまったか!!

 

「ぐぅ・・・はぁはぁ・・・」

 LP3500→1150

 

「大丈夫か!?隼!!」

 

「アクションフィールドでもないのに、これほどのリアルダメージが・・・

 やっぱり、報告にあったように君たちのデュエルディスクは何か細工されているようだね?

 エンドフェイズ、エイリンの効果でデッキの上からカードを3枚墓地へ送って、ターンエンドだよ」

 

「くっ!俺は諦めるわけにはいかない!ドロー!!

 俺はマジックカード、強欲で貪欲な壺を発動!!

 デッキから10枚のカードを裏側表示で除外し2枚ドローする!

 

 さらにトラップカード、無限泡影を発動!

 このターン、相手フィールド上の表側表示モンスターの効果を無効にし、さらにこのカードと同じ縦列のマジック、トラップカードの効果も無効にする!

 これで異星の最終戦士と聖遺物の傀儡の効果は無効だ!

 

 さらにRR(レイド・ラプターズ)―ミミクリー・レイニアスを召喚し、こいつを対象にトラップカード、R(レイド)R(ラプターズ)R(レプリカ)を発動

 デッキからもう1体、ミミクリー・レイニアスを特殊召喚する!」

 

ミミクリー・レイニアス「クルル・・・」

           ATK1100

 

ミミクリー・レイニアス「キュオオオォォォ!」

           DEF1900

 

「さらに永続魔法、RR(レイド・ラプターズ)―ネストを発動!

 自分フィールド上にRR(レイド・ラプターズ)モンスターが2体以上いる場合、デッキからRR(レイド・ラプターズ)モンスター1体を手札に加える。

 俺はRR(レイド・ラプターズ)―ファジー・レイニアスを手札に加える。

 ファジー・レイニアスは自分フィールド上にファジー・レイニアス以外のRR(レイド・ラプターズ)が居る場合、手札から特殊召喚出来る。

 来い!RR(レイド・ラプターズ)―ファジー・レイニアス!」

 

 ファジー・レイニアス DEF1500

 

 次々に現れる鋼鉄の翼たち、ここから隼の反逆が始まる

 

「窮地に立たされて、ここで巻き返すか・・・なかなかカッコいいじゃないか!」

 

「五月蠅い!!

 俺たちはどんなに追い込まれても、そこから立ち上がり、最後には敵を圧倒し殲滅する!

 そして、奪われた仲間を・・・瑠璃を・・・必ず取り戻す!!

 俺はレベル4の鳥獣族モンスター、ミミクリー・レイニアス2体とファジー・レイニアスでオーバーレイ!!」

 

 鋼の鳥たちが混沌の中に飛び込む、その混沌の奥から聞こえてくるのは甲高い怪鳥音

 

「雌伏のハヤブサよ、逆境の中で研ぎ澄まされし爪を上げ、反逆の翼!翻せ!!」

 

 闇夜の中で鈍く光る鋼鉄の爪、隼の怒りを体現したように赤く光る目

 

「エクシーズ召喚!現れろぉぉぉ!!RR(レイド・ラプターズ)―ライズ・ファルコン!!」

 

 夜空に舞う4枚の翼を持った鋼の怪鳥、ライズ・ファルコンはマルコを威嚇するようにけたたましく鳴き声を上げる

 

ライズ・ファルコン「キュオオオオォォォォォォォォォ!!」

         ATK100 ORU3

 

「攻撃力100・・・厄介な効果を持っていそうだね。」

 

「ライズ・ファルコンの効果発動

 1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除き、相手フィールドの特殊召喚されたモンスター1体の攻撃力を自らの攻撃力に加える!」

 

 オーバーレイユニットを取り込んだ、ライズ・ファルコンが全身の噴出孔から炎を掃出し身に纏う

 その様はまるで火の鳥だ

 

 ライズ・ファルコン ORU3→2

           ATK100→2450

 

「行け!ライズ・ファルコン!!

 異星の最終戦士に攻撃!ブレイブクロー・レボリューション!!」

 

「おっと、そう簡単に通さないよ!

 僕の手札がないときに相手が攻撃してきた時、デュエル中に1度だけ、墓地のタスケナイトを特殊召喚する事でバトルフェイズを強制終了させる!」

 

タスケナイト「タスケー!!」

      ATK1700

 

 異星の最終戦士にライズ・ファルコンの爪が届く寸前、赤い重厚な鎧を着た戦士が張り手でライズ・ファルコンを弾き飛ばす

 モンスター効果を無効にしたのを利用したのか!?

 

「くっ!?俺は墓地のミミクリー・レイニアスの効果を発動

 このカードが墓地に送られたターン、このカードを除外することでデッキからRR(レイド・ラプターズ)カードを1枚手札に加える

 俺はデッキからRR(レイド・ラプターズ)―ブースター・ストリクスを手札に加え、ターンエンドだ!!」

 

「僕のターン、ドロー

 僕は墓地のトラップカード、スキル・サクセサーを除外し効果を発動

 異星の最終戦士の攻撃力をエンドフェイズまで800ポイントアップさせる。」

 

 異星の最終戦士 ATK2350→3150

 

「バトルだよ!行け、異星の最終戦士!ライズ・ファルコンに攻撃だ!」

 

「させるかー!!

 手札のRR(レイド・ラプターズ)―ブースター・ストリクスの効果発動

 相手がRR(レイド・ラプターズ)モンスターを攻撃対象にしたとき、手札のこのカードを除外することで、その攻撃モンスターを破壊する!!」

 

 異星の最終戦士がライズ・ファルコンに向かっていくが、ライズ・ファルコンはブースターを全力で噴かせ、体当たりを仕掛ける

 

異星の最終戦士「グワアアアァァァァァァァ!!」――バンッ!!

 

「ふっ、なかなかやるじゃないか・・・

 でも、君に負けられない理由が有るように、僕には生徒達を守る義務がある

 だから、君たちの様な危険なデュエルをする人間を見逃すわけにはいかない」

 

 切れ長の目が俺たちを見つめてくる

 ふざけた奴だと思っていたが、根は生徒思いのいい人物の様だ

 そんな人物を今、危険に晒しているのは心苦しいが・・・

 

「メインフェイズ2、僕はレベル4の戦士族、タスケナイトとライトロード・モンク エイリンでオーバーレイ!」

 

「「何!?」」

 

「来い!僕の新たなヒーロー!エクシーズ召喚!CH(コミックヒーロー)キング・アーサー!!」

 

キング・アーサー「うおおおぉぉぉぉ!はっ!!」

        DEF1200 ORU2

 

 大剣を地面に突き刺し、仁王立ちで立つ黄金と白の鎧で包まれた巨大で屈強な戦士

 この男、融合だけではなくエクシーズも使うのか!?

 

「何を驚いているんだい?

 僕はLDSの講師、専門は融合だけど、エクシーズ使いの講師とも交流があるんだよ

 僕はこれでターンエンド」

 

「ちっ!いちいち忌々しい奴だ

 俺のターン、ドロー

 俺はライズ・ファルコンの効果を発動し、キング・アーサーの攻撃力をライズ・ファルコンに加える。」

 

 ライズ・ファルコン ORU2→1

          ATK2450→4850

 

「墓地に送られたミミクリー・レイニアスを除外しデッキからRR(レイド・ラプターズ)―シンギング・レイニアスを手札に加える。

 そして、自分フィールド上にエクシーズモンスターが居ることによって、1ターンに1度だけ、こいつは特殊召喚出来る。」

 

 シンギング・レイニアス DEF100

 

「そして、フィールド上にRR(レイド・ラプターズ)が2体以上いることによって、RR(レイド・ラプターズ)―ネストの効果発動

 デッキからRR(レイド・ラプターズ)―ペイン・レイニアスを手札に加え、シンギング・レイニアスを対象にして、ぐぅ・・・特殊召喚する。」

 LP1150→1050

 

 ペイン・レイニアス DEF100

           LV1→4

 

「そして、レベル4のシンギング・レイニアスとペイン・レイニアスでオーバーレイ!

 冥府の猛禽よ、闇の眼力で真実をあばき、鋭き鉤爪で栄光をもぎ取れ!エクシーズ召喚!

 飛来せよ!ランク4!フォース・ストリクス!!」

 

フォース・ストリクス「クルルル!」

          ATK100→600

          DEF2000→2500

 

 機械の様な梟、その攻撃力は自身の効果で増加しても低いが次々と仲間を呼び出す、隼のデッキのエンジンともいえるモンスターだ

 

「フォース・ストリクスは自分フィールド上の自身以外の鳥獣族モンスター1体に付き、攻撃力、守備力を500アップさせる。

 そして、1ターンに1度、オーバーレイユニットを使うことで、デッキから闇属性、鳥獣族、レベル4モンスターを1体手札に加える。

 俺はデッキからRR(レイド・ラプターズ)―バニシング・レイニアスを手札に加える。」

 

 フォース・ストリクス ORU2→1

 

「俺のフィールド上にエクシーズモンスターが2体以上居ることにより、マジックカード、エクシーズ・ギフトを発動

 自分フィールド上のオーバーレイユニットを2つ取り除き、デッキから2枚ドローする

 さらに墓地に送られたファジー・レイニアスの効果によってデッキからファジー・レイニアスを手札に加える。」

 

 フォース・ストリクス ORU1→0

 ライズ・ファルコン  ORU1→0

 

「俺はRR(レイド・ラプターズ)-バニシング・レイニアスを召喚

 そして、効果を発動する!

 このモンスターが召喚、特殊召喚されたターンのメインフェイズに1度だけ、手札のレベル4以下のRR(レイド・ラプターズ)モンスターを特殊召喚する

 俺はもう1体のバニシング・レイニアスを特殊召喚し、さらに自分フィールド上に他のRR(レイド・ラプターズ)が居ることによりファジー・レイニアスを自身の効果により特殊召喚」

 

 バニシング・レイニアス ATK1300

 バニシング・レイニアス DEF1600

 ファジー・レイニアス  DEF1500

 

「俺はレベル4のバニシング・レイニアスとファジー・レイニアスでオーバーレイ

 飛翔せよ!ランク4、RR(レイド・ラプターズ)―フォース・ストリクス!

 そして効果によって、デッキからRR(レイド・ラプターズ)―ナパーム・ドラゴニアスを手札に加え、バニシング・レイニアスの効果で特殊召喚!」

 

 フォース・ストリクス  ATK600→2100

             DEF2500→4000

 フォース・ストリクス  ATK100→2100

             DEF2000→4000

             ORU2→1

 ナパーム・ドラゴニアス DEF1000

 

「ナパーム・ドラゴニアスは1ターンに1度、メインフェイズに相手に600ポイントのダメージを与える!」

 

「ぐはっ!!これは・・・なかなか、キツイね・・・」

 LP4000→3400

 

 ナパーム・ドラゴニアスが発射した火球がマルコを傷つける

 見た目の割に威力は低いのか、彼の服を焼くに留まるが、それでも恐ろしいだろう

 未知の力で傷つけられるのは・・・

 

「まだだ!レベル4のバニシング・レイニアスとナパーム・ドラゴニアスでオーバーレイ

 エクシーズ召喚!飛翔せよ!ランク4、フォース・ストリクス!」

 

 フォース・ストリクス ATK100→1600

            DEF2000→3500

            ORU2

 フォース・ストリクス ATK2100→1600

            DEF4000→3500

 フォース・ストリクス ATK2100→1600

            DEF4000→3500

 

「ワオォ・・・1ターンに3体もエクシーズモンスターを出すか・・・やるね。」

 

 あの男、この状況でまだ目が死んでいない・・・楽しんでいるのか!?

 怖くはないのか!傷つくことが!?恐ろしくはないのか!痛みが!?

 

「これで終わりだ!行け!フォース・ストリクス!

 キング・アーサーに攻撃だ!!」

 

「キング・アーサーの効果発動、戦闘破壊されるとき、オーバーレイユニットを身代わりにすることが出来る

 そして、この効果でオーバーレイユニットが取り除かれた時、このカードの攻撃力を500ポイントアップさせ、相手に500ポイントのダメージを与える!」

 

キング・アーサー「ウオオオォォォォ!!ティアァァァ!!」

        ORU2→1

        DEF1200

        ATK2400→2900

 

「何!?ぐはっ!!」

 LP1050→550

 

 キング・アーサーの剣が襲い掛かってきたフォース・ストリクスを弾き飛ばし、風圧が隼を傷つける

 この状況で反撃しただと!?

 

「ぐぅ・・・小癪な手を・・・だが、俺のライフはまだ残っている!

 フォース・ストリクス2体でキング・アーサーに攻撃!」

 

 キング・アーサーは2体目のフォース・ストリクスの攻撃を1体目と同じように剣で捌くが素早く回り込んだ3体目の攻撃は長剣で捌くことは出来ず、破壊される

 

キング・アーサー「ぐっ!?ぐおおぉぉぁああぁぁぁぁ!!」――バンッ!!

        ORU1→0

        DEF1200

        ATK2900→3400

 

「ぐうぅぅ・・・これでお前を守るモンスターはいない・・・

 行け!ライズ・ファルコン!!敵を引き裂け!!ブレイブクロー・レボリューション!!」

 LP550→50

 

ライズ・ファルコン「キュオオオォォォォォォォォ!!」

 

 まずい!!攻撃力4850のライズ・ファルコンの直接攻撃を受けたら彼が!?

 

「させないよ!トラップカード発動!!ピンポイント・ガード!

 相手モンスターの攻撃宣言時、自分の墓地のレベル4以下のモンスターを1体特殊召喚するよ!

 さぁ!出番だよ!ダーク・ヒーロー ゾンバイア!!」

 

ゾンバイア「はっ!!」

     DEF500

 

「そんな壁モンスター程度で何が出来る!!」

 

「ピンポイント・ガードで呼び出したモンスターはこのターン、戦闘と効果で破壊されない」

 

 ゾンバイアは迫り来るライズ・ファルコンの爪を華麗に躱す

 まるで、昔見ていた特撮の一場面の様だ・・・

 

「ちっ!しぶとい奴め

 俺はフォース・ストリクスの効果でデッキからRR(レイド・ラプターズ)―ラスト・ストリクスを手札に加え、カードを1枚伏せターンエンドだ」

 

「ふふ、ピンチに駆けつけるヒーロー、どうだ、かっこいいだろ?」

 

「恰好いいだと・・・そんなふざけたことを言って、俺を馬鹿にしているのか!!」

 

「僕にとってはそんなことじゃないさ

 昔、僕はあるデュエリストにぼろ負けしていてね

 何度、挑んでも勝てなかった・・・悔しくてたまらなかった、カッコ悪くて挫けそうになった

 でも、諦めず何度も立ち上がる僕の事を皆、言ってくれたんだ『かっこいいよ』って

 だから、僕はデュエルでカッコ悪い姿なんて見せられない、見せたくないのさ

 講師になった今ならなおさらね・・・」

 

 伝わる、彼のデュエルに対する信念が・・・情熱が

 なぜ、この世界のデュエリストたちはこうも・・・

 俺たちが失ってしまったモノを・・・奪われたものを持っているのだろう・・・

 

「・・・・・・」

 

「僕のターンだ、ドロー

 僕はマジックカード、融合回収を発動

 墓地の融合素材モンスター、魔力吸収球体と融合を手札に加えるよ

 そして、融合発動、手札の魔力吸収球体とフィールドのゾンバイアを融合!

 融合召喚!再び立ち上がれ!!異星の最終戦士!!」

 

異星の最終戦士「うおおおぉぉぉぉぉぉ!!」

       ATK2350

 

 再び現れる黄金の戦士

 異星の最終戦士でフォース・ストリクスを攻撃されれば、ライフが50しかない隼は・・・

 

「バトル!行け!異星の最終戦士でフォース・ストリクスを攻撃!!」

 

「トラップ発動、針虫の巣窟!

 自分のデッキから5枚のカードを墓地に送る。

 そして、墓地のRR(レイド・ラプターズ)―レディネスを除外することでこのターンのダメージを0にする!!」

 

 再び隼を守る風の壁、異星の最終戦士の拳は弾き飛ばされる

 

「君も人のことが言えないくらい、しぶといじゃないか

 僕はマジックカード、おろかな埋葬を発動し、デッキからシールド・ウォリアーを墓地に送ってターンエンドだ。」

 

 このターンはしのいだが、隼のデッキは後3枚

 それにさっき、墓地に送られたモンスターは・・・

 

「俺は・・・俺は・・・・負けられないんだー!!

 俺のタアアァァァァン!ドロオオォォォォ!!

 俺はマジックカード、オーバーレイ・リジェネレートを発動しこのカードをライズ・ファルコンのオーバーレイユニットにする!!」

 

「オーバーレイユニットの補充カードだって!?」

 

「ライズ・ファルコンの効果発動!

 オーバーレイユニットを1つ使い、異星の最終戦士の攻撃力をこのカードに加える!!」

 

ライズ・ファルコン「キュオオオオォォォォォォォォォ!!」

         ATK4850→7200 ORU0→1→0

 

 再び炎を纏うライズ・ファルコン、その大きさは最初の比ではない

 

「ははっ、参ったね、これは」

 

「行け、ライズ・ファルコン!!

 今度こそ敵を引き裂け!ブレイブクロー・レボリューション!!」

 

「墓地のシールド・ウォリアーを除外して効果発動

 この戦闘で異星の最終戦士は破壊されないよ・・・ぐわあああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 LP3500→0

 

 ライズ・ファルコンの炎を纏わせた爪が異星の最終戦士を引き裂こうとしたが、黄金の戦士はその爪を受け止めた

 しかし、ライズ・ファルコンの纏っていた炎がマルコへと降り注ぎ、吹き飛ばされた

 

「大丈夫か!!?」

 

 俺は彼を助け起こす、着ていたフリル付きのシャツはボロボロで見る影もない

 隼も足を引きずるようにして近づいてくる

 まさか、カードにするつもりか!?

 

「待て、隼!!カードにするのは」

 

「何故だ・・・」

 

「えっ?」

 

「何故、負けるのが分っていながらシールド・ウォリアーの効果を発動させた・・・」

 

「ふふ、死してなお倒れなかったヒーロー・・・って・・・カッコよく・・ない・・かい・・・?」

 

「ふっ・・・どこまでも・・・ふざけた奴だ・・あ・・・・」

 

 2人はそう言葉を交わすと、気絶してしまった

 無理もない、ダメージだけでライフはギリギリまで削られていたのだから

 

「おい、隼!!しっかりしろ!隼!!」


「うぅ・・・あっ・・・・」

 

 差し込む日の明かりによって俺は目を覚ます

 ここはどこだ?病室か?

 

「すぅ・・・すぅ・・・」

 

 ユートが椅子に座りながら寝ている

 俺は昨日、LDSの講師だという奴と戦って・・・その後どうなった?

 

「目が覚めたようだな」

 

 突如かけられた声、振り向くとそこには銀髪に赤いメガネを掛けた俺と同い年ぐらいの男が立っていた

 

「キサマは?」

 

「赤馬 零児、レオ・コーポレーションの現社長だ。」

 

 赤馬・・・赤馬だと!?

 

「キサマが赤馬零児!!赤馬零王の息子か!?

 この時を待っていた!俺とデュエルをしろ!!」

 

「ほう、私とデュエルをして、どうするつもりなのかね?」

 

「キサマを人質にして、瑠璃を取り戻す!

 実の息子との交換なら、赤馬零王も決してノーとは言わないはずだからな!

 さぁ、来ぐうぅぅ!?」

 

 傍らに置いてあったデュエルディスクに手を伸ばそうとするが、起きていたユートが突然、俺の腹に拳を叩き込んできた

 

「ユート・・・な、に・・を・・・?」

 

「落ち着け隼、彼は敵ではない・・・」

 

「ぐぅ・・・」

 

 俺の意識はまた暗転する

 ユート・・・止めるだけなら、もう少し手加減をしてくれ・・・




マルコ先生!!

やあ、真澄ちゃん 
心配してくれるのは嬉しいけど、病院で大声出しちゃだめだよ?

す、すいません・・・

まったく、真澄にも困ったものだね

だな、面会時間始まって、すぐこれだもんな~

あはは
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『ジュニアユース選手権』
彼は僕とのデュエル、楽しんでくれたかな・・・


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ジュニアユース選手権

何気に零児がユートに接触したことがない事実
デュエルなしの説明回です
にしても社長、3年も準備して現時点でメンバーゼロって、ちょっとイケてないんじゃな~い?


「へぇ~社長が直接出張ってきたのか、珍しいじゃねえか」

 

「そうですね。

 あの人は僕のデータでも、人前にはほとんど出たことがない筈です。」

 

「ペンデュラムカードの試験運転だったんじゃないか?

 真っ先に自分の使っているテーマのカード作るなんて、良い御身分だよな~」

 

 平日の昼休み

 俺はいつものように屋上で柚子と権現坂と食べていたら、沢渡たちが来て一緒に食べることになった、さすがに10人もいると狭く感じるな

 

「お前が言えたことかよ・・・で、勝敗はどうなったんだよ?」

 

「それがね~なんだか向こう側で、トラブルが起きたみたいで無効試合になっちゃったの」

 

「うむ、あれは惜しかったな

 相手側も不満気であったようだし・・・」

 

「あっ!それって、あれじゃね?例のLDS狩り」

 

「おそらくそれですね、なんでも今度は講師の人が襲われたそうです」

 

「うん、融合コースのせんせーが一人、入院したってメールが来ました。」

 

 融合コースの先生・・・あのキラキラした人か

 となるとやったのはクロワッサン・・・じゃなかった黒咲か

 でも、行方不明じゃなくて入院?カードにならずにすんだのか?

 

「沢渡さんを襲ったあの、ユートって奴っすかね?」

 

「いや、あいつはぜってぇ、もうしねぇよ。」

 

 沢渡がユートを擁護している?あの倉庫でいったい何があったんだ?

 

「だったら誰がやったんだろうな・・・」

 

「レオ・コーポレーションの対抗企業じゃないか?

 なんでも、あっちこっちで買収をしているらしいし、LDS狩りの噂を手に入れた連中が模倣して事件を起こしたんじゃないか?」

 

「なるほど!さすが遊矢先生、それならつじつまが合いますね!」

 

 まぁ、十中八九ぐらいは違うとは思うが、カード化していないと言うならその可能性があるかもしれない

 

「まったく、世間騒がせな奴だぜ・・・

 そういえば、榊遊矢、お前はジュニアユース選手権、出るのかよ?」

 

「あ~そういえば、もうそんな時期だったか・・・沢渡たちはどうなんだよ?」

 

「もちろん、俺は出るぜ!

 他の奴らは出れないみたいだがな」

 

「む?黒門たちも出れないのか?

 1年生でも確か、6抜きすれば出場権の獲得が出来たはずだが?」

 

 権現坂がもっともな質問をしている

 ただのビートデッキが多いこの世界で、6抜き程度なら何とかなるだろう

 苦笑いしている黒門たちの反応からして、何か理由が有るようだが

 

「いや~俺たち、確かに6抜きはしたんすっけど・・・」

 

「ユースクラスの人でして・・・」

 

「ジュニアユース選手権の出場権が手に入らなかったんですぅ・・・」

 

 それは逆にすごいんじゃないのか?

 

「えぇ~ユースの人に6連勝したのに出場できないの?」

 

「そうなんっすよ~しかも、俺たちやり過ぎて他のジュニアユースの奴らがビビっちまって」

 

「沢渡さん以外とは2回ぐらいしかデュエルしたことがないんですよね・・・」

 

 まぁ、大会出場に数稼ぎで弱い相手と戦うわけにはいかないか・・・相手が不憫だ

 

「で、お前はどうなんだよ?榊遊矢」

 

「俺な~・・・」

 

 ぶっちゃけ、プロとか興味がないし、プロダクション契約したら使用カードに制限掛かるだろうしな~増Gとか

 アウトローで大会荒らしをしただけでも、結構稼げてるし、個人的には出る必要ないんだよな、個人的には


「改めて、名のろう

 私は赤馬零児、現レオ・コーポレーション社長だ。」

 

「ふん、で、ユートが言った貴様が敵ではないとはどういう事だ?」

 

 エクシーズ次元のデュエリスト『黒咲 隼』

 彼が意識を回復させた矢先に、彼の仲間が再び気絶させてしまうというアクシデントがあったが、これで何とか話を前へ進められる

 

「私は3年前、偶然融合次元へと渡り、そこで奴が各次元へと侵略行為を企てていることを知った。

 止める暇、いや、奴は私の言葉など聞きもせず、私はこのスタンダード次元へと強制的に送り返された。

 私は奴の野望を打ち砕くため、この世界を救うため、準備を整えて来た。

 つまり、我々は共通の敵と戦っているということだ。」

 

「隼、彼の言葉に嘘はない、信じてくれ・・・」

 

「ふん!あんな、馬鹿を囲っているような奴が敵だなんだと信じられるか

 赤馬零児、キサマの言葉、信じてやる。」

 

 ふむ、頑固で融通が利かないと聞いたが予想に反し、素直に聞き入れてくれたようだ

 

「で、お前は奴が次元侵略をしている理由を知っているのか?」

 

 いきなり本題か・・・すでに、大まかなことは彼の仲間が話したと思っての事だろう

 残念ながら、その質問には私は答えられないが・・・

 

「いや、それは私も分らない。

 だが、奴の使っていたパソコンのデータを修復したところ、気になる物があった。

 まずは、これを見てくれ」

 

――パチンッ!

 

 私が指を鳴らすと部屋の明かりが消され、ディスプレイが表示される

 そこに写っていたのは、昨日、遊勝塾にいた少女『柊 柚子』の写真

 

「瑠璃!?瑠璃なのか!?キサマ!!なぜ、瑠璃の写真を持ってグフゥ!?」

 

「落ち着け隼、彼女は瑠璃ではない。」

 

 また殴った・・・

 確かに興奮した彼と会話をするのは難しいとは思うが、落ち着かせるのに殴る必要はあるのか?

 また気絶されると、困るのだが

 

「ぐうぅ・・・瑠璃ではないとは、どういう事だ?」

 

「彼が言ったように、この画像の少女は君の妹『黒咲 瑠璃』ではない

 彼女は『柊 柚子』れっきとした、この世界の住人だ。」

 

「何?確かに髪色や、瞳の色が違うが・・・」

 

「あぁ、俺も驚いた。

 俺は彼女と直接会ったことがあるが、まるで生き写しの様に顔がそっくりだった。」

 

 やはりか・・・

 

「そして、これは赤馬零王のパソコンデータを復元した際に現れた『リバイバル・ゼロ』と名の打たれたファイルに入っていた2枚の画像の1枚だ。」

 

 柊柚子の隣に映し出される1枚の画像、それは青い髪を黄色いリボンで止めた幼い少女の写真

 

「何!?」

 

「また、瑠璃にそっくりだ・・・・」

 

 彼らが驚くのは無理もないだろう

 その少女は幼くはあれど、髪型や瞳の色以外では柊柚子にそっくり、いや、彼らにしてみれば黒咲瑠璃と同じ顔をしているのだから

 

「彼女は『セレナ』私が3年前、アカデミアで出会った融合次元の住人だ。」

 

「融合次元の!?」

 

「そう、彼女は赤馬零王から最も目を付けられているデュエリストだった。」

 

 思い出すのは、先陣を切らせろ、自由にしろと暴れるセレナに言い放った言葉

 

≪セレナ、君がどこへ逃げようと私は君を捜し出す。

 そして、絶対に連れ戻す、絶対にだ!!≫

 

 私に対して淡々としていたあの男が、セレナに対してだけは感情的になった

 それが何を意味するのかは分からない

 だが、セレナにそっくりだという黒咲瑠璃がカードにされずに攫われた

 彼女たちが、奴の野望の鍵となる存在であることは間違いないだろう

 そして・・・

 

「彼女の画像と共に入っていたもう1つの画像がこれだ。」

 

「なっ!?」

 

「今度は、ユートによく似ているな・・・」

 

 映し出されるのは紫の髪の少年

 髪色も髪型も目の色も眉の形も違うが、パッと見、目の前の少年ユートに似ている

 

「こいつは・・・瑠璃を攫ったアカデミアのデュエリスト!!」

 

「何!?それは本当か!!」

 

「あぁ、暗がりでフードを被っていたが間違いない、こいつだ!!」

 

 やはり、彼らに情報を渡して正解だった

 この写真の少年がアカデミアに属している情報を得られた

 

 だが、同時に新たな疑問が浮かぶ

 なぜ、ユートを連れて行かずに瑠璃だけ攫ったのかだ

 セレナにあれ程執着していたのに、ユートには執着がない

 と言うことはセレナが関わる奴の計画とは別の理由が、この少年には有る筈だ

 

「なるほど、3つの次元に同じ顔を持つ少女が居て、同じく3つの次元に同じ顔を持つ少年が居るというわけか・・・」

 

「3つ?この次元には瑠璃と同じように、ユートによく似た奴もいるのか?」

 

 私の呟きに黒咲が反応したので、画像を切り替える

 同時に彼に対する異常性も他次元の人間から見てどう映るか知りたい

 

「彼の名前は榊 遊矢

 市内の中学に通う、学生だ。

 ただ、彼は裏で大会荒らしをしており、そのすべてでほぼ優勝と言う鬼才のデュエリストでもある。」

 

「確かにユートと似ている。」

 

「大会荒らし・・・7年も前からやっているのか?」

 

 一緒に表示させた彼の出場記録に困惑するユート

 自分と同じ顔の人間が、誘拐犯や大会荒らしなどと異常な経歴を持っていたら当然か

 

「そうだ。

 そして、彼は5つの召喚法を自在に操るデュエリストでもある。」

 

「5つの召喚法?エクシーズ、シンクロ、融合の3つではないのか?」

 

「いや、隼、儀式を忘れているぞ

 だが、それでも4つだ、あと一つはなんだ?」

 

 ふむ、エクシーズ次元でも儀式召喚はあるのか・・・

 だが、この反応から推測するにペンデュラム召喚は存在しない、この世界独自のものと言う事か

 

「ペンデュラム召喚

 彼が独自に編み出し、世に知らしめた、まったく未知の召喚法だ

 彼はこの5つの召喚法と実戦的なタクティクスを持って、私すらも翻弄した。」

 

 次に表示されるのは、昨日の私とのデュエル

 管制室に問い合わせたところ、彼が5つの召喚法を使った際、まるで互いを高め合うかのように召喚エネルギーが増大し、計器が異常をきたす問題が発生したようだ

 マルコと彼がデュエルした場所から動いていなかったのにもかかわらず、発見が遅れたのもそれが原因だ

 

≪儀式召喚!大地の力宿る戒めの竜、オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン!!≫

 

≪シンクロ召喚!星紡ぐ戦の竜、オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン!≫

 

≪エクシーズ召喚!全てを凍てつかせる永久の竜、オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン!≫

 

≪揺れろペンデュラム、異界へ繋がる扉を開け!ペンデュラム召喚!

 現れろ!レベル4慧眼の魔術師、EM(エンタメイト)ドクロバット・ジョーカー、レベル6EM(エンタメイト)マンモスプラッシュ、そしてレベル7、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン!≫

 

≪融合召喚!雷の力帯びし竜、オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン!≫  

 

「こ、これは・・・」

 

「この次元のデュエリストは、みんなこれほどの使い手なのか?」

 

「いや、彼は特別だ

 2、3組み合わせて使う者はいるが1ターンで5つの召喚法を連続使用するものなどいない

 もっとも、ペンデュラム召喚自体も現状、彼ぐらいしか使い手がいないが・・・」

 

 私もペンデュラムカードを手に入れたが、実質、失敗に終わってしまった

 散見するEM(エンタメイト)ペンデュラムモンスターも表立って使用する者は少なく

 また、ペンデュラム召喚自体を理解できていない者もいるのがこの世界の実情だ

 

「元々、この世界には融合も、シンクロも、エクシーズもなかった」

 

「そうなのか!?」

 

「スタンダードとアカデミアの奴らはそう呼んでいたが・・・」

 

「そうだ、全ての基礎となる中心の世界

 エクシーズ、融合もあるのだからシンクロ次元もあるのだろう

 儀式やペンデュラム次元の話は聞いたことはないか?」

 

「いや」

 

「奴らは倒されるとすぐに転送されてしまうので、ちゃんと話したことなどないからな

 だが、儀式は俺たちの世界にもあったから次元が別れてはいないのではないか?」

 

「ふむ、ペンデュラムも榊遊矢が発現させた召喚法だ

 おそらく、こちらも次元は別れていないだろう、となると次元は4つに分かれていることになるが・・・」

 

「つまり、シンクロ次元にもユートや瑠璃に似た人物がいると言いたいわけだな」

 

「うむ、おそらく赤馬零王はシンクロ次元の少女も狙っているはずだ。」

 

「だが、シンクロ次元のデュエリストは、もしかしたらアカデミアと手を組んでいるかもしれないぞ。」

 

「なに!?どういうことだ?」

 

「瑠璃を攫われてすぐのことだ。

 俺の前に白いバイクに乗ったデュエリストが現れた

 奴は自分のことを融合と名乗り、シンクロ召喚を使っていたからな

 アカデミアの手先とみて間違いないだろう。」

 

 なんという事だ・・・シンクロ次元はすでに赤馬零王の手に落ちていたという事か・・・

 

「奴らがシンクロ、エクシーズに既に侵攻しているのなら、このスタンダードに来るのも時間の問題だろう

 キサマは準備をしてきたと言うが、何か策はあるのか?」

 

「あぁ、私がLDSにおいて有力なデュエリストの発掘、育成に力を注いできたのもそのため

 我々の世界を守り、赤馬零王と戦うための槍を育て上げるため

 その最終選抜として、あるデュエル大会を開催する予定だ。」

 

「デュエル大会?」

 

「そうだ、そこの上位者を集い、遊撃部隊を結成し、赤馬零王を叩く!」

 

「上位者か・・・彼はどうするんだ?」

 

 ユートが榊遊矢を指差す

 確かに彼が戦列に加われば、戦力は増大するだろう

 だが、彼は私が御せる存在ではないし、何を考えているのかもわからない危険な存在でもある

 奴の計画の鍵の一つであろう柊柚子をこちらに引き込んでしまえば、彼も付いてくる可能性があるが・・・

 

「開催する大会は元は、プロ試験大会の一つだ

 柊柚子はプロデュエリストになるのが目標の様だから参加するとは思うが、賞金が出ず、プロには興味がないらしい彼が出場する可能性は低いだろう。

 むしろ、柊柚子の防衛にあたってくれた方が」

 

――コン、コン

 

 ん?誰だ?

 

「失礼します、赤馬社長」

 

「中島、急にどうした。

 ここには急用以外は立ち入らないように言っていたはずだが?」

 

「いえ、それが・・・例の榊遊矢が舞網チャンピオンシップ・ジュニアユース選手権に参加を表明したらしく、すでに大会に参加申請していた者たちが出場辞退を訴えてきてまして・・・」

 

「何!?」

 

 榊遊矢!!一体君は何を考えているのだ!?




【表明】ジュニアユース選手権に参加してみた【マジ】

1.オッドアイズ・てんこ盛り・ドラゴンさん
 
 しちゃいました

2.伝説の釣り人さん

 なんやて!?

3.完璧な調理師さん

 それは本当かい?

4.カンフー・ファイターさん

 (゚Д゚)

5.アルカナフォースEX―THE PROPHETさん

 これも運命よ

6.月の忍者さん

 意外でござる

7.伝説の釣り人さん

 せやかて自分、プロには興味ないって言ってたやんか

8.オッドアイズ・てんこ盛り・ドラゴンさん

 >6 いや、うちの事務員が参加するらしいから、壁になってやろうかなって

9.完璧な調理師さん

 うわ~

10.伝説の釣り人さん

 これは荒れるで・・・

11.カンフー・ファイターさん

 \(`д´)ゝ

12.オッドアイズ・てんこ盛り・ドラゴンさん

 >11 はいはい、ちゃんと大会で相手してやるから待ってなさいって
 次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
 『新たな不動の境地』
 山で修行してきたって言っていたけど、デュエルと関係あるのか?


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新たなる不動の境地

お久しぶりです
最近予定が立て込んでいたり、プロットで効果がミスっていたので書き直したりといろいろありましたが、出来上がりました

アニメ本編は初めての真剣勝負回ですが、ここでは真剣勝負しかしてこなかった2人のいつものデュエルをお送りします


「ターンエンドでいいのかぁ?

 だったら、ウィジャ盤の効果発動、死のメッセージ「H」が置かれる

 これで、死の宣告は完成した・・・とんだ期待外れだったなぁ」

 

「うわああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 闇が晴れる

 中から現れたのは恐怖で固まる青年と、俺の親友

 

「もうやめるのだ!遊矢!!こんなことをして何になる!!」

 

「そうよ!もうみんな分かったから!

 もう、あなたを誰も悪く言わないから!!」

 

「何になるか・・・別にただの憂さ晴らしだ、意味なんてないよ」

 

 『意味がない』その言葉に幼い俺は激昂した

 

「な、意味もなく人を傷つけるのか!?けしからーん!!

 遊矢!!その荒ぶった心!!俺が鎮めてやる!!」

 

「ちょ、ちょっと!?権現坂、何乗せられてるのよ!?」

 

「ふふふ、相変わらず乗せやすい・・・

 弱い奴ばかり相手するのも飽き飽きしてたところだ、お前との方が俺も楽しめる!!」

 

「「『決闘』!!」」


 あの後、俺は完膚なきまでに敗れた

 未熟さゆえ、心が乱れていたのは俺の方だったのだ

 

≪そうだ、いいぞ~もっとだ!もっと全力でぶつかってこい!!限界を超えて見せろ!!≫

 

 遊矢は現状に満足しない、常に高みへ、貪欲に進化を追い求めている

 

「昇、もう修行はよいのか?」

 

「親父殿」

 

「うぬの友はまるで修羅の様よの~

 一歩間違えば、すぐに道を踏み外す危うい存在」

 

「遊矢は、そんな軟弱者ではない」

 

「そうじゃの、あの者は道を違えることはないじゃろう

 街の悪意を一身に受けたときも、自らの力で全て払い潰してしまったんじゃから

 その悪意が別の者に行かぬようにの」

 

 そう、あの日、遊矢が街の人々を襲撃したのは、自らの力の誇示の為

 卑怯者の仲間などと俺たちに非難が行かぬように、悪意を力で抑えつけるため

 まるで、地獄の悪鬼を踏みつける明王の様に

 

 情けなかった

 あの日、父親の失踪で傷ついた遊矢を守ろうと思った俺が、逆に守られる側の存在だったなど

 

「道を違えず、力に溺れず、研鑽を怠らず、疎まれ恐れられても動じず

 あれもまた、一つの不動のカタチ

 昇よ、おぬしはあの者の生き方にどう応えるのかの?」

 

 俺は自らのデッキを見る

 共に研鑽を積み、磨き上げた俺のデッキを

 そう、全ての答えはこの中にある!!

 

「俺は俺の道を示すのみ」


 初夏の日差しが強くなってきた日曜日

 塾も休みでゆっくりしようかと思っていたら、権現坂から修行の成果を見てほしいと言われ権現坂道場へ足を伸ばした

 普段は権現坂の方が遊勝塾へ来ることの方が多いので久しぶりだ

 

「ねぇねぇ、そのジュニアユース選手権って何?」

 

 一緒に暮らしている関係上、付いてきてしまった素良が最近話題になっているジュニアユース選手権の事について聞いてくる

 興味を持たれてしまったか・・・

 

「あ~まぁ、プロ資格を得るための試験大会の一つだよ

 プロダクション側がスカウトしてプロになる場合もあるけど、一般的にはクラス選手権を勝ち抜いてプロ試験資格を得るのが多いな」

 

「ふぅ~ん、それって誰でも出られるの?」

 

「いや、年間デュエル回数50以上で勝率6割以上、または負けなし6連勝で出場可能だ

 ジュニアクラス出場資格者持ちだったという規定もあったはずだけど

 まぁ、有って無いようなものだ、そこはペーパー試験でパスしても行けるし」

 

「へぇ~でも、それって勝率維持の方がきつくない?」

 

「まぁな、あの大会、誰と戦って6連勝したとか関係ないから、たまに滅茶苦茶弱いのが出場していることがあるんだよな~

 盤外戦術でズルして出場したのとかも出ているし」

 

 何故、誰と戦ってとか、どういう内容でとか、考慮しないんだろうねぇ~

 まぁ、そういう輩は1回戦で瞬殺されるんだが・・・

 

「その選手権って、遊矢も出るの?」

 

「あぁ、俺はプロには興味ないが、柚子や権現坂、その他、知り合いが出るみたいだからな

 顔合わせ程度に出てみるよ

 素良はどうする?今から、6連戦したら出場資格貰えるかもしれないぞ?」

 

「ん~僕はいいや

 弱い人とで6連勝しても何にも楽しくないし・・・」

 

 意外だ、原作じゃ出場資格を得るのに駄々をこねて6戦して出場したのに

 こちらに来ているエクシーズ組の動きがいまいち分らないが、素良が融合次元の人間だとばれることがなくなった?

 いや、そもそも黒咲が大会に出場するかもまだ分らないけど

 

「それに遊矢も出ている大会に僕まで出場しちゃったら、柚子が可哀そうだし・・・」

 

「ん?何か言ったか?」

 

「何でもない、あっ!着いたみたいだね」

 

 顔を上げてみると、目の前に現れたのは立派な道場

 う~ん、いつもながらでかいな、ここは

 

 権現坂道場は門下生は梁山泊塾には及ばないものの、それなりの人数を抱えているデュエル道場だ

 守備系で戦い方は地味だがアクションカードを使わないスタイルは、技巧と精神力を求められ、コアな人気がある

 他にも、事情で激しく体が動かせない人が入塾してきたりもするらしい

 アクションデュエルが普及してしまったことの地味な弊害の1つだな

 デュエルは世界中の誰でもが楽しめるゲームであることがペガサス会長や海馬社長の理想だったのに

 

「待ちかねたぞ、遊矢!!」

 

 門を開け中に入ると、権現坂が仁王立ちで待ち構えていた

 連絡してきてからずっとここで立っていたのか?

 

「よぉ、権現坂

 もう山から登下校する生活は終わったのか?」

 

「うむ、帰る途中で熊3匹に襲われたが、返り討ちにしてやったわ!」

 

 熊を3頭伏せてターンエンド!って、人間業じゃないな

 こいつはどこに向かっているんだ?

 滝ドローくらいなら、他にもやっている連中を見たことがあるが

 

「さぁ!早速始めようではないか、遊矢!!」

 

「あぁ、お前の新しい力、見せてもらおうか!!」

 

「おう!親父殿、頼む!!」

 

「うむ!いざ!アクションフィールドオン!!

 フィールド魔法、剣の墓場、発動!!」

 

 道場に光が満ち、暗雲立ち込める無数の剣が突き刺さった古戦場へと変わる

 このフィールドを選んだということは

 

「俺の新たな不動の境地を見出すきっかけをくれた刃殿に報いこのフィールドを選ばせてもらった!

 覚悟しろ、遊矢!!」

 

 やれやれ、俺もあの場に居たんだから、そんなことを言ったら新戦術がバレバレじゃないか

 

「そういうのは、お披露目してから言うものだぞ?

 まぁ、俺には関係ないがな」

 

「そう言ってられるのも今の内だ」

 

「「『決闘(デュエル)』!!」」

 

「先攻は俺が貰う

 俺は超重武者ダイ―8を召喚」

 

ダイ―8 ATK1200→DEF1800

 

「ダイ―8は召喚、特殊召喚に成功した時、このカードの表示形式を変更できる。

 さらに自分の墓地に魔法、トラップカードがない場合、このカードを表側守備表示から攻撃表示に変更することでデッキから超重武者装留を手札に加える。

 俺は超重武者装留チュウサイを手札に加え、ダイ―8に装備する。」

 

ダイ―8 DEF1800→ATK1200

 

「そして、チュウサイを装備しているダイ―8をリリースすることでデッキから超重武者を特殊召喚する。

 俺は超重武者ビックベン―Kを守備表示で特殊召喚」

 

ビックベン―K「フン!!」

       DEF3500

 

「さぁ、遊矢よ!全力でかかって来るがいい!!」


 うわ~権ちゃん、気合十分だね

 モンスター1体だけ出してターンエンドだけど、フルモンデッキなら手札誘発で迎え撃つ気満々ってことだよね

 さぁて、遊矢はどう動くかな?

 

「俺のターン、ドロー

 折角のこのフィールドだ、あの技を試してみようか、なっ!!」

 

 遊矢はいきなり、近くにあった刀を抜いて、一閃

 すると少し離れたところからアクションカードが剣圧で浮いてきた、あれって

 

「それは刃殿の!?」

 

「あぁ、なかなか便利そうだから、真似してみた

 さてと、まずはこのアクションカードを捨てて、魔法カード、スネーク・レイン発動

 デッキから爬虫類族モンスターを4体墓地に送る

 俺はデッキからイピリアとEM(エンタメイト)ウィップ・バイパー、EM(エンタメイト)パートナーガ、EM(エンタメイト)リザードローを墓地に送る。」

 

 爬虫類族のサポートカード?この前の5召喚デッキじゃない?

 いや、でもあのデッキの主力は攻撃力が3000より下だから相性的には微妙か

 となると、権ちゃんだけに対するメタ構成のデッキかな?

 

「さらに魔法カード、ヴァイパー・リボーンを発動

 墓地のモンスターが爬虫類族のみの場合、チューナー以外の爬虫類族モンスター1体を墓地から特殊召喚する。

 俺はイピリアを特殊召喚し効果発動

 こいつが召喚、特殊召喚、反転召喚に成功した時、1ターンに1度だけ、デッキから1枚ドローできる。」

 

 イピリア DEF500

 

 出て来たのは長い髭の様な物を生やした水色のトカゲ

 またドロー加速ギミックが多めに仕込まれたデッキ?何をドローする気なんだろう

 

「よしよし、俺はEM(エンタメイト)ドクロバット・ジョーカーを通常召喚」

 

ドクロバット・ジョーカー「ハハッ!」

            ATK1800

 

「ドクロバット・ジョーカーの召喚に成功したのでデッキからEM(エンタメイト)ギタートルを手札に加え、ペンデュラムゾーンにセッティング

 さらにEM(エンタメイト)リザードローをセットしてペンデュラム効果発動

 まずはギタートルの効果で1枚ドローして、続いてリザードローを破壊してもう1枚ドロー

 さらに俺のペンデュラムゾーンにカードが置かれてることにより、魔法カード、デュエリスト・アドベントを発動

 デッキからEM(エンタメイト)ペンデュラム・マジシャンを手札に加え、ペンデュラムゾーンにセッティング」

 

 古戦場に現れる2本の光の柱、これでペンデュラムスケールは2と6

 

「そう言えば、ペンデュラムを手に入れてから相手するのは初めてだったな、権現坂」

 

「そうだな。

 ならば俺もペンデュラム召喚の力、存分に見せてもらうとしよう。」

 

「オゥケーイ、存分に味わってくれ

 揺れろペンデュラム、異界へ繋がる扉を開け!ペンデュラム召喚!

 まずはエクストラデッキからレベル3、EM(エンタメイト)リザードロー、そして手札からレベル4、EM(エンタメイト)ブランコブラ、EM(エンタメイト)ウィップ・バイパー」

 

 リザードロー DEF600

 

ウィップ・バイパー「シャアアァァ!」

         ATK1700

 

ブランコブラ「シュウゥゥゥ!」

      ATK300

 

 遊矢が出したのは燕尾服を着た赤いトカゲ、リザードロー

 シルクハットを被った紫のコブラ、ウィップ・バイパー

 何処から釣り下がっているのか、ブランコに乗った黄色いコブラ、ブランコブラ、爬虫類族ばっかりだね

 遊矢のフィールドで唯一魔法使い族のドクロバット・ジョーカーが浮いちゃっているよ

 

「ペンデュラム・マジシャンのペンデュラム効果発動

 ペンデュラム召喚に成功した時、自分フィールド上のEMの攻撃力をエンドフェイズまで1000ポイントアップさせる。」

 

 ウィップ・バイパー    ATK1700→2700

 ブランコブラ       ATK300→1300

 ドクロバッド・ジョーカー ATK1800→2800 

 リザードロー       DEF600

              ATK1200→2200

 

「ウィップ・バイパーの効果発動

 1ターンに1度、フィールド上のモンスターの攻守の数値を入れ替える。」

 

 ふ~ん、これでビックベン―Kの守備力を1000にして、ブランコブラで攻撃

 その後、ドクロバット・ジョーカーとウィップ・バイパーでダイレクトアタックで決まりか

 でも、手札誘発の多いデッキでそううまく行くかな?

 

「俺はブランコブラにこの効果を使う。」

 

 えっ!?

 

ブランコブラ「シャアアァァァァ!!」

      ATK1300→1800

      DEF1800→1300

 

「そして、ブランコブラはダイレクトアタックが出来る。」

 

「何!?」

 

「行け!ブランコブラで権現坂にダイレクトアタック!」

 

 乗っているブランコを器用に動かして、勢いよく飛びかかるブランコブラ

 牙の付いた大きな口で、権ちゃんの腕に噛みつく

 うわぁ、痛そ~

 

「ぐっ!?何のこれしき!!

 俺は手札の超重武者ココロガマ―Aの効果を発動する

 このカードは自分の墓地にマジック、トラップカードが存在せず、自分が戦闘ダメージを受けたとき、特殊召喚出来る。」

 LP4000→2200

 

 ココロガマ―A DEF2100

 

「さらにこの効果で特殊召喚したココロガマ―Aはこのターン、戦闘、効果では破壊されん」

 

 緑色の超重武者が現れ、武器を構える

 ダメージをトリガーにして展開してきた、権ちゃんもやるね

 

「ちょっと読み違えたかな?

 メインフェイズ2、俺はレベル4のブランコブラとウィップ・バイパーでオーバーレイ!

 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚

 現れよ、キングレムリン!」

 

キングレムリン「グオオオオォォォ!!」

       ATK2300 ORU2

 

 遊矢が呼んだのはライオンの様な鬣がある人型の爬虫類族エクシーズモンスター

 王冠のようにも見える角や、胸に付けた宝玉は、その名の通り王様と言った感じだ

 

「キングレムリンの効果発動

 1ターンに1度、オーバーレイユニットを取り除いて、デッキから爬虫類族モンスターを1体手札に加える。

 俺が手札に加えるのはEM(エンタメイト)ウィップ・バイパー」

 

 キングレムリン ORU2→1

 

「カードを2枚伏せて、エンドフェイズ

 ヴァイパー・リボーンの効果で特殊召喚されたイピリアは破壊される。

 そして、自分フィールド上のモンスターが破壊されたターン、このカードを発動できる。

 速攻魔法、イリュージョン・バルーン」

 

 イピリアが爆発し煙に包まれると5つの風船が中から飛び出してくる

 デメリットを逆手にとって、カードの発動条件を満たしたんだ・・・

 

「俺はデッキから5枚のカードをめくり、その中にEM(エンタメイト)モンスターが居れば、その内1体を特殊召喚出来る。

 残りのカードはシャッフルされる、俺が引いたのはこの5枚」

 

 風船が割れ、5枚のカードが公開される

 一族の結束、EM(エンタメイト)ペンデュラム・マジシャン、EM(エンタメイト)パートナーガ、スネーク・レイン、毒蛇の供物

 種族サポートカードばっかり・・・ペンデュラムモンスターが墓地に行かない事を利用したデッキかな?

 

「俺はペンデュラム・マジシャンを特殊召喚して効果発動

 このカードとドクロバット・ジョーカーを破壊してデッキから、EM(エンタメイト)ブランコブラとリザードローを手札に加え、ターンエンドだ。」

 

 また、ブランコブラとウィップ・バイパーがそろった

 さっきの一族の結束があれば、攻撃力2600のダイレクトアタッカーになるのか・・・

 守備力がいくら高くても、これじゃ関係ないね

 守備表示でも攻撃可能なビックベン―Kが居るのにキングレムリンを攻撃表示で出しているし、完全に攻撃を誘っている

 狡猾な搦め手で攻める様は、まさに蛇の様だ

 

「うぬぅ~やはり一筋縄ではいかないか・・・」

 

「何度お前とデュエルしていると思っているんだ

 どうせモンスターを守るカード、手札に持っているんだろ?

 見え透いた手を使ってないで、お前の修行の成果、早く見せてもらおうじゃないか」

 

「うむ、ではとくと見るがいい!ドロオオォォォォ!!」

 

 気合の篭った、権ちゃんのドローによって風がフィールドを駆け巡る

 すごっ!?でも、アクションカードも吹き飛ばしちゃったから、遊矢がちゃっかり手に入れちゃったけど

 

「素敵なプレゼント有難うよ。」

 

「ふん、礼には及ばん

 さぁ、見るがいい遊矢!これが俺が到達した新たな不動のデュエルだ!

 俺はレベル2のチューナーモンスター、超重武者ホラガ―Eを特殊召喚!!」

 

ホラガ―E「イー!!」

     DEF600

 

 権ちゃんが出したのは、超重武者にしては小柄で守備力も高くないモンスター

 でもチューナーモンスターって、まさか!?

 

「このモンスターは自分の墓地にマジック、トラップカードがない場合、手札から特殊召喚出来る。

 ただし、このターン俺は超重武者以外のモンスターの特殊召喚を行えない

 行くぞ!俺はレベル8の超重武者ビックベン―Kにレベル2機械族チューナー、超重武者ホラガ―Eをチューニング!」

 

――ボオォォォォ!!

 

 ホラガ―Eがその手に持つほら貝の様な装置を吹き鳴らすと、緑色の輪っかになってビックベン―Kを囲う

 

「荒ぶる神よ、千の刃の咆哮と共に、砂塵渦巻く戦場に現れよ!シンクロ召喚!!」

 

 ビックベン―Kが眩い光に包まれると、中から大薙刀を振るう大鬼のような機械の武者が現れ、ズシンっと胡坐をかき、座り込む

 本当にやっちゃったよ・・・

 

「いざ出陣!!レベル10!超重荒神スサノ―O!!」

 

スサノ―O「オオオオォォォォォ!!フンッ!!」

     DEF3800

 

「さらに、俺はチューナーモンスター、超重武者タマ―Cを通常召喚」

 

タマ―C「タマシー」

    ATK100

 

 現れたのは丸々とした体の小さめの超重武者

 遊矢も初見なのか、カードの効果を確認している

 

「また、チューナーか

 あ~言っておくが、ペンデュラムモンスターは墓地にはいかないから

 墓地のレベルを参照する、そいつの効果でシンクロモンスターは呼べないぞ?」

 

「むっ?そうなのか」

 

「除去ならできるが、どうする?」

 

 除去?シンクロモンスターを呼ぶ?何だか厄介な効果を持っているみたいだね

 

「いや、ここはタマ―Cの効果は使わないでおこう

 俺はレベル3の超重武者ココロガマ―Aにレベル2の超重武者タマ―Cをチューニング

 揺るがぬ心、その曇りなき刃に籠めよ!シンクロ召喚!

 出でよ!レベル5、超重剣聖ムサ―C!!」

 

ムサ―C「フンッ!!」

    DEF2300

 

 羽織の様な赤い装甲に二振りの刀を持った超重武者、ムサ―C

 気合の表れか、頭のまげの様な排気口から炎が轟々と燃えている

 

「ムサ―Cの効果発動、このモンスターがシンクロ召喚に成功した時、自分の墓地の機械族モンスターを1体選択し手札に戻すことが出来る。

 俺は超重武者ホラガ―Eを手札に戻し、ホラガ―E自身の効果で特殊召喚だ!」

 

ホラガ―E「イー!!」

     DEF600

 

 チューナーがまた!?

 本当に権ちゃんって、シンクロ召喚初挑戦!?

 

「俺はレベル5の機械族モンスター、超重剣聖ムサ―Cにレベル2の機械族チューナー、超重武者ホラガ―Eをチュー二ング

 速きこと風の如く!静かなること林の如し!音無く忍びとどめを刺せ!シンクロ召喚!

 出でよ、レベル7!超重忍者シノビ―A・C!!」

 

シノビ―A・C「ハッ!!」

       DEF2800

 

 今度は忍者風の色合いのロボット、足は細く、雰囲気も忍者らしいが胴体部は丸々としていてアンバランスだ

 

「ここで俺は超重荒神スサノ―Oの効果を発動

 自分の墓地にマジック、トラップカードがない場合、1ターンに1度、相手の墓地のマジック、トラップカードを自分フィールド上にセットする。」

 

 相手の墓地のカードを奪う?でも、遊矢の墓地に権ちゃんが使えそうなのって・・・あっ!!

 1ターン目のコストで捨てたアクションカードか!!

 

「俺は遊矢の墓地のアクションマジック、回避を伏せる。

 この効果で伏せられたカードはフィールドを離れた場合、除外される。

 

 続けて、シノビ―A・Cの効果を発動、このターン、このモンスターの元々の守備力を半分にすることで相手プレイヤーに直接攻撃できる権利を得る。

 そしてシノビ―A・Cも守備力を攻撃力として使い守備表示で攻撃が可能だ

 さらに、手札の超重武者装留ダブル・ホーンをシノビ―A・Cに装備しバトルだ!

 行け、シノビ―A・C!!遊矢にダイレクトアタックだ!」

 

シノビ―A・C「ハアアアァァァァ!!」

       DEF2800→1400

 

 ずんぐりむっくりの体系にさらに巨大な角飾りの様な物を付けて、もはや忍ぶ気がない機械の忍者が、見た目からは考えられないような素早さで遊矢に迫る

 

「簡単に通すわけにはいかないな

 永続トラップ発動、EM(エンタメイト)ピンチヘルパー

 1ターンに1度、相手のダイレクトアタックを無効にし、デッキからEM(エンタメイト)モンスターを効果を無効にして特殊召喚する。

 来い!EM(エンタメイト)ブランコブラ!」

 

ブランコブラ「シャアアァァ!!」

      DEF1800

 

 何処からともなく、ブランコに乗りながら現れたブランコブラがシノビ―A・Cに空中で体当たりを仕掛けバランスを崩させる

 だけど、シノビ―A・Cはすぐに態勢を整え、再度攻撃を仕掛けた、なんで!?

 

「ダブル・ホーンを装備したシノビ―A・Cは2回攻撃できる!

 今度こそ喰らえ遊矢!!シノビ―A・Cでダイレクトアタックだ!!」

 

「ぐおぉ!?ははっ、やるじゃないか、権現坂」

 LP4000→2600

 

 遊矢の持っているアクションカードは使えなかったのか、まともにダイレクトアタックを食らった

 遊矢がまともにライフを減らされたの始めてみたかも・・・

 

「まだまだ!今度はスサノ―Oの攻撃を食らうがいい!!

 スサノ―Oもまた、守備力を使い攻撃することが出来るモンスターだ

 超重荒神スサノ―Oでキングレムリンに攻撃!クサナギソード・斬!!」

 

「まともに食らうか!!アクションマジック、エクストリーム・ソード!

 バトルフェイズ中のみ、対象モンスターの攻撃力を1000ポイントアップさせる。

 こいつでキングレムリンの攻撃力を1000ポイントアップさせ、さらにチェーンして永続トラップ、ダメージ=レプトルを発動!」

 

スサノ―O「フンッ!!」

 

キングレムリン「グオオオォォォォ!!」

       ATK2300→3300

 

 据わりながら巨大な薙刀を振り回すスサノ―O、それに対しキングレムリンは自身の爪で迎撃する

 いくらか衝撃は殺せたが、巨大な薙刀の一撃には耐え切れず切り裂かれる

 だが、土煙が晴れたその場には、白いひげを蓄えた、水色のトカゲが鎮座していた

 

 イピリア ATK500

 

「ダメージ=レプトルの効果

 1ターンに1度、爬虫類族モンスターの戦闘によって自分がダメージを受けたとき、受けたダメージの数値以下の攻撃力を持つ爬虫類族モンスターを1体特殊召喚出来る。

 俺が受けたダメージは500、よって攻撃力500のイピリアを特殊召喚させてもらった。」

 LP2600→2100

 

 あのカードの為にキングレムリンを攻撃表示に・・・

 攻撃力アップ効果の多いアクションカードとの兼ね合いも計算に入れているのかな?

 

「さらに俺のフィールド上の表側表示モンスターが相手によって破壊されたことにより、リザードローの効果発動

 俺のフィールドのEM(エンタメイト)モンスターの数だけドローできる

 フィールドには2体のEM(エンタメイト)モンスター、よって2枚ドロー、さらにイピリアが特殊召喚されたことにより1枚ドロー」

 

 権ちゃんのターンなのに遊矢のフィールドと手札が増えていく、なんて理不尽

 

「攻撃するなら、リザードローにすべきだったな」

 

「何を言う、リザードローはペンデュラムモンスター、次のターンになれば同じことよ

 ならば、ダメージを与えられるときに与えておく方がお前に対してはいい」

 

「ライフなんて、1ポイントでも残っていればいいんだよ」

 

「それは言い過ぎではないのか?」

 

 僕も、そう思う

 

「俺は、これでターンエンドだ。」

 

 2人の攻撃ターンが終わってみれば、権ちゃんはモンスターのステータスが高いけど、手札は少なく

 遊矢はモンスターのステータスは低いけど、フィールドと手札がいっぱい、ホントあの2人って

 

「正反対じゃろ?」

 

 デュエルに見入っていた僕に突然話しかけて来た着物を着た小柄なおじさん

 さっき権ちゃんが親父殿って言っていた人だから、きっと権ちゃんのお父さんだよね?鼻以外全然似ていないけど

 

「確か、素良君じゃったかの?息子が世話になっておる。」

 

「い、いえ、僕は、どっちかって言うと遊矢の世話に」

 

「ははは、分かっておる。

 この頃、昇は修行に明け暮れていたからの

 さて、君は武者修行中のデュエリストと聞いたが、あ奴らのデュエルを見てどう思った?」

 

「純粋にすごいと思います。

 互いに一歩も引かず、一歩間違えばすぐに負けてしまうような、ギリギリの戦いをして・・・」

 

 そう、ギリギリの戦い

 僕、いや、アカデミアのデュエル戦士にとって敗北は死に近い

 特に最近はエクシーズの残党たちもカード化装置の付いたディスクを使用していると聞く

 もし奴らに負ければカードにされ、容赦なく破かれてしまうだろう

 

「何か迷いがある様じゃな・・・

 まぁ、若いうちは悩むことも修行のひとつよ、立ち止まるよりずっといい・・・」

 

「えっ?おじさん、不動の権現坂道場の師範なんでしょ?そんなこと言っていいの?」

 

「昔、わしは勝つために変化を追い求めることは不動の道に反すると考え、それに固執しておった

 だが、昇はデュエルは進化し続けるものだと、不動のデュエルとて1つの場所に留まっていては時代に取り残されると言いおった。

 遊矢君にも言われたよ、血の通わぬ岩ならば、時と共にもろく崩れていくと

 わしはいつの間にか、不動を言い訳にして歩みを止めていたと思い知らされた。

 あの2人のデュエルを見ればわかるじゃろ?」

 

 確かに遊矢のデッキは毎回、変なコンボが飛び出してくる

 対策やメタカードも容赦なく使ってくるから、変化のない同じデッキで勝とうと思っても難しくなるだろう

 

「デュエルとは魂の磨き合い、互いに切磋琢磨せよ!

 と、門下達に教えて来たわしが研鑽することを忘れておった、全く恥ずかしい話じゃ・・・」

 

 磨き合い、切磋琢磨・・・僕らには縁の遠い話だ

 デュエルはただの戦う手段だ、勝って、負けた奴をカードにして嗤う、それだけ・・・

 アカデミアでも負けたら死だと、痛みと苦痛を与えられながら教えられてきた

 

 そう、僕はデュエルを楽しいと思ったことは1度もなかったんだ、あの日までは

 

「俺のターン、ドロー

 俺はまず、エクストラデッキからEM(エンタメイト)ペンデュラム・マジシャン、手札からEM(エンタメイト)ブランコブラをペンデュラム召喚

 ペンデュラム・マジシャンのペンデュラム効果で俺のフィールドのEM(エンタメイト)の攻撃力が1000ポイントアップだ。」

 

 ペンデュラム・マジシャン ATK1500→2500

 ブランコブラ       ATK300→1300

 ブランコブラ       ATK300→1300

 リザードロー       DEF600

              ATK1200→2200

 

「ペンデュラム・マジシャンのモンスター効果により、ペンデュラムゾーンのペンデュラム・マジシャンとフィールドのイピリアを破壊し、デッキからEM(エンタメイト)パートナーガとウィップ・バイパーを手札に加える。

 さらに空いたペンデュラムゾーンにリザードローをセッティングして、ギタートルのペンデュラム効果で1枚ドローし、リザードローのペンデュラム効果で自身を破壊して、さらに1枚ドローだ。」

 

 これで遊矢の手札は9枚、デッキも半分以上削れた、何が出て来てもおかしくない

 

EM(エンタメイト)ウィップ・バイパーを通常召喚」

 

ウィップ・バイパー「シャアァァァ!!」

          ATK1700

 

「魔法カード、貪欲な壺を発動

 墓地からブランコブラ、ウィップ・バイパー、キングレムリン、パートナーガ、リザードローの5枚のモンスターをデッキに戻し2枚ドロー

 俺はスケール3のEM(エンタメイト)パートナーガをペンデュラムゾーンにセッティングし、ペンデュラム効果発動

 1ターンに1度、自分フィールド上のモンスター1体の攻撃力を俺のフィールドのEM(エンタメイト)カード1枚に付き300ポイントアップさせる。

 俺のフィールドのEM(エンタメイト)カードは8枚、よって効果が無効になっていないブランコブラの攻撃力を2400アップさせる。」

 

ブランコブラ「シュルルル」

      ATK1300→3700

 

 攻撃力3700のダイレクトアタッカー!?相変わらず滅茶苦茶だ!?

 でも権ちゃんのフィールドには回避がセットされているから、ダメージはない

 さぁ、遊矢、君は次はどんな手を使うんだい?

 

「さらにウィップ・バイパーの効果発動

 シノビ―A・Cの攻守の数値を反転させる。」

 

 シノビ―A・C DEF2800→1000

       ATK1000→2800

 

「バトルだ、攻撃力が上がっているブランコブラでダイレクトアタック!」

 

「させぬ!伏せられたアクションマジック、回避を発動させ、攻撃を無効にする!」

 

 ブランコから権ちゃんに飛びかかったブランコブラだけど、スサノ―Oが薙刀を振った風圧で吹き飛ばされる

 

「さて、これで攻撃を回避するカードはなくなったかな?

 続いて2体目のブランコブラで、シノビ―A・Cに攻撃だ。」

 

 本来なら、高い守備力を持つはずのシノビ―A・C

 だけど、ウィップ・バイパーの毒を受けた影響で体がうまく動かないようで、あっと言う間にブランコブラに巻き付かれ、締め付けられ破壊される。

 でも、まだ権ちゃんのフィールドには守備力3800のスサノ―Oが鎮座しているよ、遊矢

 あのモンスターを倒さないと、権ちゃんに攻撃は届かない

 

「ウィップ・バイパーで超重荒神スサノ―Oに攻撃」

 

「むっ!その攻撃宣言時、俺はスサノ―Oの効果発動、この効果は相手ターンでも使うことが出来る。

 遊矢の墓地からエクストリーム・ソードを伏せる。」

 

 えっ?攻撃力しか上がらないエクストリーム・ソードを伏せた?

 

「ほぉう、ダメージステップに手札の速攻魔法、死角からの一撃を発動

 相手フィールド上の表側守備表示モンスターと自分フィールド上の表側攻撃表示モンスターを1体ずつ選択し、エンドフェイズまで選択した自分のモンスターの攻撃力に、選択した相手モンスターの守備力を加算する。

 よって、ウィップ・バイパーの攻撃力は3800ポイントアップだ。」

 

ウィップ・バイパー「シャアアァァァァァ!!」

         ATK1700→5500

 

スサノ―O「グオオォォォ!?」――バンッ!!

 

 スサノ―Oの強固な外装を噛み砕き侵入し中心部を破壊し逃げ去るウィップ・バイパー

 スサノ―Oは暴走する動力炉が爆発を起こし砕け散る

 

「ぬうぅぅぅ、だが、スサノ―Oは倒させん!

 手札の超重武者装留マカルガエシの効果発動

 守備表示モンスターが戦闘によって自分の墓地に送られた時、手札からこのカードを捨てることで、そのモンスターを攻撃表示で特殊召喚する。」

 

スサノ―O「ウオオオォォォォ!!フンッ!!」

     ATK2400

 

 権ちゃんのフィールドに数珠の様な物が現れ、それを掴んでスサノ―Oが大地を割り戻ってくる

 すごい、絶体絶命の状態からリカバリーしてきた

 伏せられているエクストリーム・ソードがあるから、攻撃力2500のペンデュラム・マジシャンじゃ破壊できない

 

「あちゃ~そうきたか・・・だったらこうだ!

 ペンデュラム・マジシャンでスサノ―Oに攻撃だ!!」

 

 えっ!?勝てないのが分っているのにどうして!?

 

「俺は伏せられたアクションマジック、エクストリーム・ソードを発動し、スサノ―Oの攻撃力をバトルフェイズ終了まで1000ポイントアップさせる!

 返り討ちにしろ、スサノ―O!!」

 

スサノ―O「フウゥゥゥン!!ハアッ!!」

     ATK2400→3400

 

ペンデュラム・マジシャン「ぐはあぁぁぁ!!」――バンッ!

 

 スサノ―Oの拳がペンデュラム・マジシャンを砕く、これで遊矢の受けるダメージは900、なんでこんなことを?

 

EM(エンタメイト)ピンチヘルパーの効果発動

 モンスター同士の戦闘によるダメージをフィールド上の表側表示のこのカードを墓地に送ることで0にする。

 これで俺はバトルフェイズを終了する。

 攻撃を行ったブランコブラはバトルフェイズ終了後、守備表示になる。」

 

 スサノ―O ATK3400→2400

 

 ブランコブラ ATK1300→DEF1800

 

 ダメージは回避したけど、2枚のカードを失った今の行動に何の意味が・・・

 

「俺はレベル4のウィップ・バイパーと効果が無効になっている方のブランコブラの2体でオーバーレイ

 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築

 エクシーズ召喚、キングレムリン!」

 

キングレムリン「グガッ!」

       DEF2000 ORU2

 

「キングレムリンの効果発動

 オーバーレイユニットを1つ使いデッキから爬虫類族モンスター、EM(エンタメイト)パートナーガを手札に加える。

 カードを2枚伏せ、これでターンエンドだ。」

 

 キングレムリン ORU2→1

 

「そのエンドフェイズ時、俺もスサノ―Oの効果でお前の墓地の死角からの一撃を伏せさせてもらおう。」

 

 あっそうか、魔法・罠ゾーンを空けるためにEM(エンタメイト)ピンチヘルパーを墓地に送ったのか

 遊矢のフィールドは守備モンスターが3体に伏せカード2枚、しかもダメージ=レプトルがあるからモンスター越しのダメージを与えたら、またモンスターが増える

 もっとも、遊矢のデッキはサーチとドローのし過ぎで、もうモンスターは残り少なそうだけど

 

「俺のターン、ドロォォ!!

 よし、俺はスサノ―Oを守備表示に変更し、超重武者テンB―Nを召喚」

 

テンB―N「ビンッ!」

     ATK800

 

 スサノ―O ATK2400→DEF3800

 

「このモンスターが召喚、特殊召喚に成功した時、自分の墓地のテンB―N以外のレベル4以下の超重武者1体を守備表示で特殊召喚する

 戻ってこい、超重武者ダイ―8!」

 

 ダイ―8 DEF1800

 

 テンB―Nの持つ天秤棒の先の桶から光が溢れて、ダイ―8が墓地から戻ってくる

 そのダイ―8が押す荷台には最初のターンに見た茶色い武具の寄せ集めの様な物が乗せられている

 

「ダイ―8の効果発動、このカードを攻撃表示に変更し超重武者装留チュウサイを手札に加え、これをダイ―8に装備

 そして効果発動、装備モンスターをリリースしてデッキから超重武者モンスターを1体、特殊召喚する。

 現れよ、チューナーモンスター、超重武者コブ―C!」

 

コブ―C「コブシー!!」

    DEF900

 

 新しいチューナーモンスター、見た目はその名前の通り、デカい拳を持ったロボットだ

 

「いくぞ!俺はレベル4の超重武者テンB―Nにレベル2の超重武者コブ―Cをチューニング!

 雄叫び上げよ、神々しき鬼よ!見参せよ、魂ぶつけ合う戦場に!シンクロ召喚!

 いざ出陣!レベル6!超重神鬼シュテンドウ―G!!」

 

シュテンドウ―G「ウオオォォォォォ!!フンッ!」

        DEF2500

 

 巨大な金棒を振り回し、ドカリッと座り込む、鋼鉄の赤鬼

 座ったままの態勢で、シュテンドウ―Gは遠心力を加えた金棒を遊矢のフィールドに投げ飛ばす

 

「シュテンドウ―Gがシンクロ召喚に成功した時、自分の墓地にマジック、トラップカードがない場合、相手フィールド上のマジック、トラップカードを全て破壊する!」

 

「それは黙って見ているわけにはいかないな!

 トラップ発動、地霊術―鉄、さらにチェーンしてトラップカード、反転世界(リバーサル・ワールド)を発動

 逆処理によって、まずはフィールド上の全ての効果モンスターの攻撃力、守備力の数値が入れ替わる。」

 

 シュテンドウ―G DEF2500→500

         ATK500→2500

 スサノ―O    DEF3800→2400

         ATK2400→3800

 

 キングレムリン DEF2000→2300

         ATK2300→2000

 ブランコブラ  DEF1800→300

         ATK300→1800

 リザードロー  DEF600→1200

         ATK1200→600

 

「さらに地霊術―鉄の効果によって、地属性のブランコブラをリリースし、自分の墓地のリリースしたモンスター以外のレベル4以下の地属性モンスターを特殊召喚する。

 この効果は同名でもOKだ、よって墓地に眠るEM(エンタメイト)ブランコブラを守備表示で特殊召喚」

 

 ブランコブラ DEF1800

 

「そして俺のフィールド上の魔法、トラップカードはすべて破壊される。

 ペンデュラムモンスターのギタートルとパートナーガはエクストラデッキへ、ついでにリリースされたブランコブラもエクストラデッキの中だ。」

 

 権ちゃんが効果を使ったのに逆に遊矢のモンスターの守備力が上がって、権ちゃんのモンスターが弱体化した

 それに墓地のブランコブラがフィールドに戻ったということは次のターン、ペンデュラム召喚されれば2体のブランコブラが並ぶことになる

 何か手を打たないと、次のターンで負けちゃうよ権ちゃん

 

「ぬぅ・・・ならば俺は墓地の超重武者コブ―Cの効果発動

 1ターンに1度、自分の墓地にマジック、トラップカードがない場合、超重武者シンクロモンスターのレベルを1つ下げることで、このカードを墓地から特殊召喚する。

 この効果使用後、俺は超重武者モンスターしか特殊召喚出来ない。

 俺は超重武者モンスターとして扱う、スサノ―Oのレベルを1つ下げ超重武者コブ―Cを特殊召喚」

 

 スサノ―O LV10→9

 

 コブ―C DEF900

 

「俺はレベル6の超重神鬼シュテンドウ―Gにレベル2の超重武者コブ―Cをチューニング

 闇に潜む忍びの者よ、山に木霊する叫びと共に、魂交差する戦場に現れよ!シンクロ召喚!

 いざ出陣!レベル8、超重忍者サルト―B!!」

 

サルト―B「ハアッ!!」

     DEF2800

 

 黒の次は青、丸々としたボディをした忍び風のロボットが現れ、大量の爆弾を持ちだす

 

「バトルだ!超重忍者サルト―Bでリザードローへ

 スサノ―Oでキングレムリンにそれぞれ攻撃する、クサナギソード・斬!」

 

 サルト―Bの投げた大量の爆弾の爆発に巻き込まれ、リザードローが破壊され

 スサノ―Oの一閃がキングレムリンを切り裂く

 これなら、ドローもサーチもされないね

 

「まだだ、メインフェイズ2でサルト―Bの効果発動

 1ターンに1度、俺の墓地にマジック、トラップカードがない場合、フィールド上のマジック、トラップカードを1枚破壊し、相手に500ポイントのダメージを与える!

 俺のフィールドに伏せられた死角からの一撃を破壊し遊矢、お前に500ポイントのダメージだ!」

 

「うおっ!?あぶなっ!!」

 LP2600→2100

 

 サルト―Bが伏せられたカードを手裏剣のごとく投げて、遊矢にぶつける

 遊矢はそれを腕で払って弾く、高速で迫るカード手裏剣を払い落とすなんて遊矢も大概だよね

 

「さらに俺はスサノ―Oの効果を使い、遊矢の墓地から反転世界(リバーサル・ワールド)をセット

 これでターンエンドだ!さぁ、何処からでもかかって来るがいい!!」

 

「ははっ!やるじゃないか、権現坂!俺のターン、ドロー!」

 

 笑っている・・・権ちゃんも遊矢も

 互いにいつライフがなくなってもおかしくないギリギリのデュエルをしているのに・・・2人共楽しそうだ

 なんで?負けるのが怖くないの?

 

「俺はスケール6のEM(エンタメイト)ギタートルとスケール3のEM(エンタメイト)パートナーガをペンデュラムスケールにセッティング!

 揺れろペンデュラム、異界へ繋がる扉を開け!ペンデュラム召喚!!

 手札からレベル4、EM(エンタメイト)ウィップ・バイパー

 エクストラデッキからレベル4、EM(エンタメイト)ブランコブラ、EM(エンタメイト)ドクロバット・ジョーカー、レベル5、EM(エンタメイト)パートナーガ!」

 

 ウィップ・バイパー    ATK1700

 ブランコブラ       ATK300

 ドクロバット・ジョーカー ATK1800

 パードナーガ       DEF2100

 

「パートナーガの効果発動

 このカードが召喚、特殊召喚に成功した時、フィールド上のモンスター1体を選択して、そのモンスターの攻撃力を自分フィールド上のEM(エンタメイト)モンスターの数×300ポイントアップさせる。

 フィールドのEM(エンタメイト)モンスターは5体、俺はブランコブラの攻撃力を1500ポイントアップさせる。」

 

ブランコブラ ATK300→1800

 

「さらに、ペンデュラムゾーンのパートナーガのペンデュラム効果も発動

 もう1体のブランコブラの攻撃力を俺のフィールドのEM(エンタメイト)カード1枚に付き300アップだ。」

 

「させるか!!チェーンしてサルト―Bの効果発動、パートナーガを破壊する。

 これでペンデュラム効果は不発となるのだろう?」

 

「うおっ!?その通り、永続魔法と同じく効果処理時にカードがなければペンデュラム効果は不発となる。」

 LP2100→1600

 

 これでウィップ・バイパーの効果を使ってブランコブラの攻撃力を上げても、反転世界(リバーサル・ワールド)の効果で入れ替わるから権ちゃんのライフは100残る

 すごい、権ちゃんも遊矢相手に一歩も引いていない

 

「やれやれ、よくもまぁやってくれる、おかげで俺のデッキのモンスターは殆ど品切れだよ。

 このままじゃジリ貧になるから・・・作戦プランBを使うとしよう

 俺はパートナーガとドクロバット・ジョーカーをリリースして、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンをアドバンス召喚!」

 

オッドアイズP「キュオオオオォォォォォォォォォ!!」

       ATK2500

 

「ふむ、パートナーガのレベル5以下のモンスターが攻撃できなくなるデメリットを無くしたか・・・

 だが、オッドアイズだけでは俺のモンスターはびくともせん!」

 

「あぁ、だから応援を呼ぶとしよう

 俺はレベル4のブランコブラ2体とウィップ・バイパーでオーバーレイ!」

 

「なっ!?」

 

 ここでエクシーズ召喚!?

 

「3体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚

 現れろ、覚醒の勇士ガガギゴ!」

 

覚醒の勇士ガガギゴ「グオオォォォォ!!」

         ATK2950

 

 暗雲を切り裂き現れる黄金の鎧を纏ったトカゲの戦士、雲の合間から日が差し黄金の鎧を一層輝かせる

 

「さらに装備魔法、月鏡の盾をオッドアイズに装備、永続魔法、アタック・フェロモンを発動させバトルだ!

 覚醒の勇士ガガギゴで超重荒神スサノ―Oに攻撃!」

 

「なに!?」

 

 反転世界があるのにどうして!?

 

「お、俺はトラップ発動、反転世界(リバーサル・ワールド)

 このカードの効果でフィールド上の効果モンスターの攻守の数値が入れ替わる。

 これで返り討ちだ!スサノ―O!!」

 

 オッドアイズP ATK2500→2000

         DEF2000→2500

 

 スサノ―O DEF2400→3800

      ATK3800→2400

 サルト―B DEF2800→2000

      ATK2000→2800

 

 ガガギゴが殴り掛かり、スサノ―Oもまた立ち上がりガガギゴの拳に合わせ殴る

 クロスカウンターはリーチの差でスサノ―Oに軍配が上がり、ガガギゴは遊矢のフィールドにまで飛ばされる

 

「うおっ!」

 LP1600→750

 

「何を馬鹿な事を・・・」

 

「ふふふ、なぁ権現坂、気付いているか?

 追いつめられると、モンスターを守る癖が自分にあるっていう事」

 

「何?」

 

 スサノ―O DEF3800→ATK2400

 

「なっ!?スサノ―Oが攻撃表示に!?」

 

「永続魔法、アタック・フェロモンの効果

 自分フィールド上の爬虫類族モンスターが守備表示モンスターを攻撃した場合、そのモンスターをダメージステップ終了時に表側攻撃表示に変更する。」

 

「くっ!?だが、攻撃力の下がったオッドアイズでは俺のモンスターを破壊することは出来ない!」

 

「いや、月鏡の盾を装備したモンスターは相手モンスターと戦闘を行うダメージ計算時、装備モンスターの攻守を戦闘を行う相手モンスターの攻撃力と守備力の内、どちらか高い方の数値+100になるのさ」

 

それなら、スサノ―Oの守備力は3800だから、オッドアイズの攻撃力は3900に!?

 

「そして、オッドアイズの効果」

 

「相手モンスターと戦闘を行うとき、戦闘ダメージは倍となる!?」

 

「そういうこと!行け!オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン!!超重荒神スサノ―Oに攻撃!!」

 

オッドアイズP「キュオオォォォォォォォ!!」

       ATK2000→3900

 

「ストライク・ムーン・バアァァストォォォォ!!」

 

「うっ!おおぉぉぉぉああぁぁぁぁぁ!!」

 LP2200→0

 

 赤黒い破壊の本流に黄金の光が混じり、鋼の荒神を溶かしていく

 

 あぁ・・・遊矢、やっぱり君はすごいよ

 

 体が熱くなる――君に僕の全力をぶつけたいって

 

 血が滾る――君に勝ちたいって

 

 魂が震える――君と・・・もっと、わくわくする『決闘(デュエル)』がしたいって!!


「はははっ!昇、まだまだ精進が足りなかったようじゃな!!」

 

「うぅ・・・面目ない、親父殿・・・」

 

「いやいや、良い線いっていたと思うぞ?

 初めてのシンクロ召喚であそこまでできていれば上出来、上出来

 あっ!そうだ、餞別代りにこいつをお前にやるよ。」

 

「ぬっ?このカードは・・・いいのか?」

 

「あぁ、そのカードは俺の持っているデッキよりも、お前のデッキの方が活躍の機会があるだろうしな

 その方がそのカードたちも喜ぶ」

 

「かたじけない、ありがたく使わせてもらおう。」

 

「あぁ、次はジュニアユース選手権で戦おう」

 

「うむ!」

 

 2人は拳を付きあわせ、そのまま握手する

 権ちゃんは負けた悲壮感などなく、遊矢は勝って慢心することもない

 僕には、僕らには分からない世界がここにはある

 

「うむ、共に知略と死力を尽くし魂の限り戦った!真に素晴らしきデュエルじゃった!

 そして、終われば共に称え合う、これぞ『決闘者(デュエリスト)』のあるべき姿よ!!」

 

 称え合うか・・・なら僕らは何なんだろうね

 嘲り、踏み躙り、奪い、嗤う、僕らアカデミアは・・・

 

 ねぇ、遊矢、どうやったら僕は『決闘者(デュエリスト)』に成れるのかな?




そのころの柚子

「行けー!マインスタリン・シューベルトで攻撃よー!!」

「ぐわああぁぁぁ!!」

「なぁ、なんであいつは不良とデュエルしてるんだ?」

「いや~柚子姉ぇさん、また沢渡さんとデュエルしたくて近くに来てたらしいンスけど」

「ねねちゃんに前絡んできた不良がカチコミかけて来てたみたいで」

「ばったり、柊柚子と鉢合わせしたみたいで・・・」

「で、ああなったのか?全く血の気の多い奴だぜ。」

「わぁ~柚子さんすごーい」

「柊さんが融合召喚使えるようになったとは聞いてましたがここまでとは」

「はははっ!この調子でジュニアユース選手権でも勝ち抜くわよー!!
 次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
 『開幕 舞網チャンピオンシップ』
 目指せ!エンタメプロデュエリスト!おー!!」


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開催 舞網チャンピオンシップ

大会表作ったり、なぜか書いている途中で先の展開を思いついてしまったりと、デュエルしない回なのに時間がかかりましたが出来上がりました

ちなみに大会開催期間は7月後半、夏休みを想定しております。


「ついに!この日が来たー!!」

 

 朝早くの遊勝塾、静かな朝をぶち壊すように大声が響き渡る

 

「今年も我が遊勝塾から、舞網チャンピオンシップの出場者が出たことを誇りに思うぞー!!」

 

 あ、暑苦しい・・・

 この一か月、平和に時は流れ、舞網チャンピオンシップの開催日となった

 集合場所を外にしなくて良かった・・・

 このくそ暑いのに修造さんの熱血激励など聞いていたら、熱中症になってしまう

 

「お父さん、テンション高すぎ・・・」

 

「この暑いのに、良くやるよねぇ~」

 

 柚子と素良も呆れている

 フトシとアユとタツヤは苦笑いだ

 

「では、改めて説明しておくぞ

 舞網チャンピオンシップはジュニア、ジュニアユース、ユースの3つのクラスに分かれて行われる。

 タツヤ、アユ、フトシ、君たちはこの内のジュニアクラスに出場だ。」

 

「「「はい!」」」

 

「ねぇ、遊矢?大会の出場資格って、年間勝率6割以上だよね?

 うちの子達、6割行っている子ってもっといたはずだけど、なんであの3人だけなの?」

 

「あ~それはただの大会の年齢制限だ、小学5年生以上ってね。

 デュエル大会って言っても正確にはアクションデュエルの大会だから、いくらリアルソリッドビジョンの硬度が柔らかいと言っても、危ないことには変わりないし」

 

「ふぅ~ん、そういえば、5年生なのはあの3人だけだったか」

 

「そう、フトシ君とアユちゃんは遊矢が教え出したころから居る古株なのよ」

 

 まぁ、2人が入った理由も俺が関わっているんだけどね

 

「おっしゃー!痺れさせてやるぜー!!」

 

 フトシは彼の両親がやっている弁当屋が俺の行きつけとなっていたのだが、フトシが待ち時間にデュエルしてと誘って来たので、相手してやったら懐かれた

 

「頑張る!」

 

 アユは写真家の彼女の父が山の中で怪我をしていたのを俺が助けたのがきっかけだ

 まさか、忍者探しの帰りにあんな形で出会うとは思わなかった・・・

 「君にしか任せられない!」なんて、言われたら引き受けるしかないじゃないか

 

「まぁ、一般的には小学4年生くらいでデュエル塾に入るからな

 タツヤみたいなのは珍しい例さ、去年は似た様なのが6人居たけど」

 

「みんな今年は中学生に上がったものね~

 暗次君、正人君、アキラ君、皇一郎君、ねねちゃん、ゾフィーちゃん

 学校でも会うけれど、それでもちょっと寂しく思っちゃうわ」

 

 あれだけ馬鹿騒ぎしていたのが居なくなったら寂しくもなるさ

 今は人数が多くて騒がしいけど

 

「なぁ遊矢、お前からも何か言ってくれよ!」

 

 修三さんいきなりすぎ、事前に考えといてくれとか一言、言ってくれよ

 

「ふむ、今年のジュニアはこの3人が出場だが、もちろん会場には君たちの親だけじゃなくて、塾や学校の子達も来ることだろう

 来年はその子達も出場するかもしれないから模範になるようにマナーは守ってほしい

 だが、それ以上に俺としてはデュエルを楽しんでほしい、以上だ」

 

「はい!遊矢先生もジュニアユース選手権、頑張ってください!」

 

「あぁ、ありがとうな、タツヤ」

 

「でも、実際頑張らなくちゃいけないのは、柚子の方だよねぇ~?」

 

「うっ!?わ、分かってるわよ!

 遊矢!選手権じゃ、お互いにライバルなんだから、手加減なんていらないからね!」

 

「俺が、デュエルで手加減すると思っているのか?」

 

「う~」

 

「あはは!頑張りなよ~柚子!」

 

 柚子を茶化して無邪気そうに笑う素良

 素良に今の所、目立った動きはない

 黒崎やユートと接触した様子もないし大会にも出場しない

 このまま行けば、駄犬を含めてアカデミアが乱入してくることもない筈だ

 

 いざとなれば、あのカードを使うしかない、か・・・

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「ご覧ください!

 舞網市内は、まさにデュエル一色!

 そうです、今日からいよいよ、この街最大のイベント、舞網チャンピオンシップが始まるのです!」

 

 舞網スタジアムへ続く道

 そこには大会ロゴを掲げた露店が多数立ち並び、ビルに備え付けられた大型モニターにはプロモーション映像が絶えず流れ、空には宣伝用の飛行船まで飛んでいる

 

「何と言っても、この舞網市はリアルソリッドヴィジョンシステムを開発した、デュエル業界最大手、レオ・コーポレーションの御膝元!

 この大会も世界最大級のデュエル大会として注目されており、海外からも多数のデュエリストが参加

 更には、観戦を目的とした観光客も大勢、この舞網市を訪れています」

 

 映像が切り替わり、スタジアム内の映像が映し出される

 巨大なスタジアムの観客席はすべて人で埋め尽くされており、今か今かと会場内の熱気は上がり続けている

 

「すごいです!開会式の会場となる、デュエルスタジアムも既に超満員!

 ん?おっと!これはもしかして・・・零児様!零児様です!!」

 

 キャスターの目は輝き、興奮気味でカメラに話しかける

 そして、そのキャスターに同調するように会場内から黄色い声が上がり始める

 

「今大会のメインスポンサーである、レオ・コーポレーション社長、零児様こと

 赤馬零児さんが貴賓席に姿を見せました!

 なんと生です!生零児様が見られるなんて、これはとても珍しい事です!!」

 

 貴賓席に現れた赤馬零児、会場中のカメラが彼に向けられ、右手を上げて挨拶をする

 その表情は真顔で愛想など、まったくなかったが

 

――零児!零児!零児!

 

 観客には受けが良かったようだ

 

「いや~モテモテだな、あの社長」

 

「仕方ないわよ、赤馬零児は普段は滅多に人前に出ないんだから、騒ぎになるのは当然よ」

 

「まぁ選手権3クラス、ストレート優勝で、最年少でプロ資格取ったイケメン社長様じゃ、話題にならない方が可笑しいか」

 

「いや、話題で言うなら、貴方も相当だと思うけど・・・」

 

――あれが榊遊矢?

 

――あの狂った道化師(マッドピエロ)の!?

 

――おっかねぇ~

 

――あいつが出る前にユースに上がれてよかったぜ・・・

 

――今年のジュニアユースに参加する奴らが可哀そう・・・

 

 はぁ~・・・なんで、こんな奴らが大会に出ているんだ?

 強い奴と戦えることがデュエリストの喜びじゃないのか?

 

「なんか・・・ムカつくね」

 

「落ち着け、素良

 あんなの戦ったって面白くもない奴らだ、気にするだけ無駄だ」

 

 素良の目が据わっている。柚子も何処から取り出したのかハリセンを構えて今にでも飛び出しそうだ

 何か話題を変えないと・・・

 

「お~い!!」

 

「遊矢く~ん~!!」

 

 雑踏の中、俺の名を呼びながら走ってくる2人の影

 クジラを模したキャップと釣り師服が特徴的な太めの少年『大漁旗 鉄平』とそばかす顔で赤交じりのオレンジ髪をした糸目の少年『茂古田 未知夫』

 

「お~!鉄平、未知夫、久しぶりだな~」

 

「ホントやな~」

 

「電話とかネットじゃ、ちょくちょく会ってるけどね」

 

「えっと・・・遊矢?この二人は?っていうか、未知夫って、もしかしてテレビでよく見る!?」

 

「あぁ、テレビでよく見る天才少年料理人、茂古田 未知夫、通称ミッチー、その人だよ」

 

「えぇー!?なんで、そんな有名人が!?っていうか、なんで料理人がデュエル大会に出ているの~!?」

 

「あはは、まぁプロを目指している人からしたら、僕は場違いに見えるかもしれないね」

 

「ほんまやで、自分、プロデュエリストとプロの料理人の二足の草鞋を履くつもりかいな?」

 

「それって、鉄平も同じじゃん、本業の釣りの方はどうしたんだよ?」

 

「もちろん絶好調や!今日もごっつい真鯛を釣ったんやで!」

 

「おぉ!それはいいな!釣ったのは、未知夫のお父さんの店に?」

 

「うん、パパも喜んでいたよ。

 そうだ、僕も何匹か貰ったからよかったら、今夜どうだい?」

 

「はは、じゃあ、試合前の交流会ってことで、権現坂や忍者兄弟も誘うかな

 親父さんが五月蠅そうだけど、沢渡とかもな」

 

「おいおい、ちゃんと手伝ってくれよ、遊矢君?」

 

「あぁいいぞ、柚子と素良もどうだ?」

 

「えぇ!?うん、絶対行くわ!天才料理人の料理なんて楽しみね~」

 

 ミーハーな柚子らしい反応だ、素良は困惑しているけど

 

「僕、選手じゃないけどいいの?」

 

「もちろんさ、君が遊矢君の言っていた素良君だね?

 僕の考えたレシピどうだった?」

 

「えっ?」

 

「前に知り合いの料理人にレシピ考えてもらったって言ったろ?それがこいつだ」

 

「あぁ、そういえば洋子さんがミッチーって・・・

 うん、美味しかったよ」

 

「それはよかった!

 今夜も精いっぱい、おもてなしさせてもらうから、楽しみにしててね!

 あぁ、そうなると、会場も広い場所が必要だね、霧隠塾長に相談しようかな?」

 

「ね、ねぇ!どうして、料理人なのにデュエルしているの?」

 

「ん?楽しいからだけど・・・何かおかしいかい?」

 

「い、いや・・・」

 

「まぁ~デュエルをしてなきゃ、遊矢君とも会えなかっただろうし

 彼に紹介してもらった鉄平君とも出会えてなかっただろうしね。

 感謝しているよ、僕らを繋いでくれたデュエルには」

 

「えぇ事言うな~さすがミッチーや!感動モノやで!」

 

「茶化さないでよ、鉄平君、恥ずかしいじゃないか」

 

「「「ははははっ!」」」

 

「おーい!遊矢兄ちゃーん!!柚子姉ぇちゃーん!!」

 

「もうすぐ会場入りだってー!!」

 

「僕達も行きましょー!!」

 

「あぁ!じゃあ、また今夜」

 

「うん!」

 

「ほなな~!」

 

「じゃあ、素良、観客席で修造さんと待っててくれよ?」

 

「う、うん」

 

「ほら、柚子、いつまでも呆けてないで行くぞ!」

 

「鯛ってことは、御刺身、カルパッチョ、アクアパッツァ、煮付けに塩釜焼・・・

 あ~いったい、何が出てくるのかしら~?」

 

 うわ言のように料理名をつぶやきながら、涎がたれそうになっている柚子を引きずって会場に向かう

 

「繋がりか・・・」

 

 雑踏に紛れる素良の呟きを残して

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「ニヒィ!皆様、大変長らく、お待たせしました!

 年に一度のデュエリストたちの祭典、舞網チャンピオンシップの開幕です!」

 

――ワアアアアァァァァァァ!!

 

「開会式の進行は、ストロング石島が大会期間中お休みを頂いて修行をするというので暇になってしまったワタクシ、ニコ・スマイリーがあい務めさせて頂きます!」

 

 グラウンド内に妖精やドラゴンなど、様々なモンスターが飛び交い、舞網チャンピオンシップのロゴマークがホログラムで大きく映し出される

 

「それでは選手入場でございます!!」

 

 ニコ・スマイリーの掛け声に合わせ、入場口からプラカードを持った女性を先頭に少年少女たちがぞろぞろと行進を開始する

 

「今大会は開始前から波乱の予感!参加選手はユースコースが最も多く、ジュニアクラスはその約半分!

 そしてジュニアユースクラスは、なんと!大会史上初!参加人数たったの20人、それもほとんどの選手が勝率8~9割の猛者ばかりです!!」

 

――20人!?

 

――勝率8割以上とかマジかよ!?

 

 観客のざわめきをBGMにして、先頭集団が全員出切る

 

「さぁ、先頭を行くのは、LDS、レオ・デュエル・スクール!

 毎年、多くのプロデュエリストを輩出している、この名門からは今年も最も多くの選手が出場しています」

 

 続き現れたのはまるで中国の拳法家の様な出で立ちの集団

 その中でも紫髪の強面の少年は、その鍛え上げられた肉体から溢れんばかりの闘気を滲ませている

 

「続いては武闘派デュエリスト達の総本山、梁山泊塾です!

 ジュニアユースコースの勝鬨 勇雄君は昨年のジュニアユース優勝者!

 今年は2連覇を狙い、燃えています!」

 

――ガチャ、ガチャ

 

 重厚な鎧の音を響かせて白いローブを着こんだ5人組が一糸乱れぬ歩調で行進する

 

「おーっと!あれは海外参加の国際チーム、ナイト・オブ・デュエルズ!

 

 さらに舞網漁業組合から参加の大漁旗 鉄平選手が続きます」

 

 鉄平は大手を振って、会場にアピールする、もはやそれは行進ではない

 

「さぁどんどん参りましょう!不動のデュエルで有名な権現坂道場

 今年はその跡取りが出場してきました、権現坂 昇君です」

 

 鉄下駄のその重さを感じさせぬ堂々とした行進をする権現坂

 会場の一角では彼の父や道場の門下生たちが静かに見守っている

 

「さぁこちらも注目の選手です。

 今や奥様方の毎日の献立の味方、霧隠料理スクールから天才少年料理人の茂古田 未知夫君が参戦です!」

 

――キャー!!ミッチー!!

 

 会場から黄色い声が所々から上がる

 それを聞いて未知夫が手を振ると、さらに黄色い声が上がった

 

「おぉ!これはレアです!山の奥にあると言われる秘境塾、風魔デュエル塾から日影、月影の兄弟デュエリストがこの舞台に現れましたー!!」

 

 噂どころか都市伝説と化している謎の塾である風魔デュエル塾から参戦者が出たことに会場がどよめく

 その2人の風貌、どこからどう見ても忍者としか思えない容姿に海外からの参加者の一部が目を輝かしていた

 

 その後もニコ・スマイリーによる各塾の紹介が続けられ、ついにラスト、遊勝塾の出番となった

 

「さぁ、いよいよ参加塾も次で最後です。

 前大会、ジュニアコースのみで出場、その出場者6人が優勝争いをするという異例のダークホース!

 今年はジュニアユースからも参加者が出て、始まる前から波乱を巻き起こした遊勝塾です!!」

 

 その名をニコが口にしたとき会場に溢れたのは歓声やどよめきではなく、静寂だった

 入場口から現れる遊勝塾の5人は人数が少ないのもあって横並びで歩いていく

 それは自然体で悠然としたもので、ばつが悪そうに先頭を行かされるプラカードを持った女性を除けば、参加者たちの服装や髪色がカラフルなのも相まって後ろに爆発が起きてもおかしくない、ある意味、絵になった姿である

 

「注目のデュエリストは、今年の話題の人物、その最上位と言ってもいいデュエリスト、榊 遊矢君!!

 新たな召喚法、ペンデュラム召喚の確立者にして数多の大会で賞金稼ぎを行う大会荒らし『狂った道化師(マッドピエロ)』の参加表明に参加取り消しが続出、始める前から嵐を巻き起こしております!」

 

 事情を知らないものは戦慄し、前大会を見ていたものは阿鼻叫喚の大会模様を思い出す

 荒れ狂う豪雨と雷、この世の終わりを告げるかのように降臨する巨大な女神

 悪魔たちが嘲嗤い、天使の裁きの光が降り注ぎ、神話が紡がれる

 

 今年もまた、荒れることを会場に集まった人々は予期した

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「えぇ~ここに集まった君たちは数多のデュエリストの中から勝ち上がった精鋭たちです。

 フェアプレイ精神で全力を尽くしたデュエルを期待します」

 

 魚顔の市長のあいさつが終わり、ニコ・スマイリーにマイクが戻る

 

「では、次は選手宣誓に移ります。

 選手代表は・・・遊勝塾、榊 遊矢君!!」

 

 会場がざわつく、今大会の最大の問題児であろう少年が選手代表で宣誓を行うのだ

 

(やれやれ、こういうことは昨年のジュニアユース優勝者の勝鬨あたりにでもやらせればいいのに)

 

 ニコ・スマイリーはジェスチャーで報酬は払いますからと伝えてくる

 

(はぁ~仕方ないか・・・普通に宣誓してもいいが・・・)

 

 遊矢は設置されたマイクの前まで来るとそれをスタンドからひったくり、会場全体を見渡し

 

「諸君!俺は今日というこの日、非常に落胆している!」

 

 爆弾を落とした

 

「俺は世界中から強者がやってくるという、この大会を楽しみにしていた

 だが、蓋を開けてみればどうだ

 海外から参加してくれた者たちを除けば、見知った顔しかいない!!

 

 『決闘者(デュエリスト)』とは強者と戦えることに喜びを感じるものではなかったのか?

 己のプライドと魂を燃やし戦うのが『決闘(デュエル)』ではなかったのか!!」

 

 遊矢は憤る、誇りなき弱者に、プライドを貶す愚者に

 

「諸君!これから始まるのは『見世物(ショー)』でもなければ『祭り』でもない!

 決闘者たちによる、プライドと魂を賭けた『遊戯(ゲーム)』だ!!

 

 諸君らが目にするのは、敗者の断末魔と、勝者の栄光!

 

 選ばれし若き決闘者たちよ!

 逃げ遂せた馬の骨以下の紛い物共に、知らしめてやろうではないか!

 

 真の決闘者が歩む戦いの(ロード)を!選ばれし者の煌めきを!!」

 

 会場の誰もが息をのむ

 

 ジュニアとジュニアユースの選手たちはこれから紡がれる言葉に

 

 ユースの選手は膨れ上がる不安に耐え切れず震えて

 

 会場はこれから始まる戦いに期待を寄せて

 

「今ここに!舞網チャンピオンシップの開催を宣言する!!」

 

――ワアアアアアアァァァァァァァァァァ!!

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 膨れ上がるボルテージ、大歓声に支配されたスタジアムの中で遊矢の宣誓を見守っていた俺は目を丸くしていた

 

「あははっ!なにあれ、らしくなーい!!」

 

 素良は笑う、確かにここまで派手なパフォーマンスは遊矢っぽくはない

 センパイともまた違う、だれかの真似だろうか?

 

「あ~もう、こんなの洋子さんが聞いたら・・・」

 

「あたしがなんだって?」

 

 俺がその声に驚き振り向いたら、そこには洋子さんがいた

 俺は慌てて、センパイを否定するような遊矢の宣誓の理由を取り繕おうとする

 

「うわっ!?洋子さん!!いや、今のは違くてですね」

 

「まったく、とっくに知ってるよ

 あの子が、遊矢が、榊 遊勝の事をどう思っているかなんて」

 

「えっ?」

 

「私を気遣って、良い息子でいてくれたことも

 あの日から、あの人を遊矢がどんな風に思って来たかも、みーんな知っているさ

 

 飄々として、悪ぶれているくせに根は真面目で優しい子だからね」

 

 そう言って、洋子さんはウィンクをする

 

「なーんだ、遊矢ってば、ばれちゃってたのか」

 

「なんだい、素良君には話していたのかい?妬けちゃうねぇ~

 まぁ、あたしがあの子の本音を聞くのは、あの人が帰ってきてからにしようかね・・・」

 

 やさしい嘘を吐き続けている2人

 洋子さんはこのまま待ち続けるのだろう、遊矢は・・・いつか、世界中を飛び回ってでも見つけ出しそうだなぁ~

 センパイ、帰ってきたら2人にぶん殴られてくださいよ?




少年は孤独に生きてきた
長く続く戦いの中で、己というものを封じ込めて
その瞳に映った輝きを模倣してきた彼に、絶えず輝きを変える水面の下で蠢く者たちが襲いかかる!
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth『水面に映る光』


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水面に映る瞳

おかしいな~この話こんなに長くなる予定なかったんだけど
初のアニメオリカ使用回です。(まだ、OCGになる可能性がありそうなので)
なお、使用したアニメオリカは活動報告に効果を載せておきます
あと彼女の普段使いのデッキは湿地草原を入れたビオトープデッキになっています



キャスターに成りたくて、田舎から上京してきて――

 

専門学校を卒業して無事、TV局に入社できて――

 

入社1年目で舞網チャンピオンシップのリポートなんて大役をやらせてもらうことになって――

 

ジュニアコースの実況までやらせてくれるって、舞い上がっちゃって――

 

ジュニアの子ならきっと、かわいいモンスターがいっぱいなんだろうな~

ちょっとミスしたりとか可愛らしい事とかするんだろうな~

緊張している子とか大丈夫かな~

 

なんて思っていたら――

 

――ギャオオオオオォォォォォォォォォ!!

 

 巨大怪獣と人型の蟲みたいなのが大暴れして

 

――シャアアァァァァァァァ!!

 

 獣たちが海に潜むナニカと争って

 

――ブッピガン!!

 

 空では宇宙戦艦とロボットが戦争している

 

「あははははは・・・なんなのこれ・・・?」

 

 去年は入社したてで大会中継なんて見る暇なかったし、ジュニアコースのデュエルは毎年ダイジェストで流れるくらいだったから流して見ていたけれど

 それでも、そこに映っていたのは子供らしい可愛らしさに溢れたものだった

 

 そう、決してこんな映画みたいな感じじゃなかったはずだ

 

「え、えっと・・・」

 

 あっちこっちで起こっている効果の応酬や駆け引きは、もうデュエルから離れて長い私にはリポートできるようなものではなかった

 

――トンッ

 

 誰かが私の肩に手を置いてくれた

 励ましてくれるんだ、そうだ、これでも私はアナウンサーなんだ!

 プロとして蹲っているわけにはいかない!!

 

「あ、ありがとうっ!?」

 

――カラッ、グッ!

 

 振り向いたら紫のローブを着たガイコツがサムズアップしていて、あまりの事に私の意識はそこで途切れました・・・

 

 これがあの開会式の後に行われたジュニアコース一回戦です


 さぁ、盛大に始まりました、舞網チャンピオンシップ

 2日目の今日、ここメインスタジアムではジュニアコース2回戦が行われています

 実況はこのワタクシ、本来の担当者が昨日失神してしまったので代打として参りました、ニコ・スマイリーがお届けさせていただきます

 

 現在は遊勝塾、原田フトシ君とワイト塾、瀬良あゆみちゃんの試合が行われております!

 

「痺れるぜ!俺のターン!ドロー!!」

 LP1200

 

「「フトシ!頑張れよ(って)ー!!」」

 

「あゆみー!負けるなー!!」

 

「頑張って~!!」

 

 ご家族からの盛大なエール!これは両選手には心強いでしょう!

 さて、現在のフィールドの状況は瀬良選手のモンスターが何と攻撃力15000のワイトキングが3体!

 対して、原田選手は前のターン、ダメージは防いだもののモンスターをすべて失ってしまいました

 

 彼の操るモンスターは相手フィールドのモンスターをリリースして相手フィールドに特殊召喚可能ですが、自らの発動させている永続トラップ、群雄割拠の効果でそれは望めません

 

「俺は手札の怪粉壊獣ガダーラを捨ててマジックカード、トレード・インを発動

 デッキから2枚ドローするぜ!」

 

 原田選手ここが大勝負です

 

「よっしゃー!俺はマジックカード、アンティ勝負を発動!

 互いのプレイヤーは手札を1枚選んで確認し、レベルの高いモンスターを選んだプレイヤーのカードは手札に戻り、レベルの低いモンスターを選択したプレイヤーはそのカードを墓地に送り、1000ポイントのダメージを受けるぜ!」

 

「わわわ!?レベル勝負ですか!?」

 

「俺は手札のレベル10、壊星壊獣ジズキエルを選ぶぜ!」

 

「うぅ~私が選ぶのはレベル1のワイトです。」

 

「じゃあ、ダメージを1000ポイント受けてもらうぜ!」

 

「きゃああぁぁぁ!!」

 LP800→0

 

 決まったー!見事、逆転のカードを引き当てた原田フトシ選手の勝利です!

 

「素晴らしいデュエルでした!お強いんですね!」

 

「おう!痺れただろ~?」

 

「はい、痺れちゃいました!また・・・デュエルしてくださいね?」

 

「あぁ、俺で良ければいつでもいいぜ!」

 

「はい、ありがとう、ございます。」

 

 うんうん、初めて会った相手とも友情をはぐくみあえる

 これぞ、大会の醍醐味ですなぁ~

 さぁ、次の対戦カードは・・・


「やったぜー!」

 

「おめでとう、3回戦進出ね!」

 

「うむ、めでたいな、だが気を抜くなよ、フトシ

 勝って兜の緒を締めよという言葉がある

 すなわち、故人曰く勝者への戒めとして・・・」

 

「権ちゃん、おっさんくさ~!」

 

「おっさん言うなー!」

 

『はははははっ!』

 

 権現坂と素良の漫才にみんな笑う

 ぶっちゃけ、俺としてはあの娘が親と一緒に居て普通に暮らしていることに涙が出そうだが

 まぁ、ダインがこの世界には居ないしな

 居るとしても、シンクロ次元だと思ったが・・・トリシューラプリンがある辺り、気にするだけ無駄か

 

「次はアユの番だったな」

 

「うん、がんばっちゃうよ~えっと、相手は確か・・・」

 

「LDSの赤馬 零羅君だな」

 

「赤馬?赤馬零児の関係者か?」

 

「修造さん、他人の家庭事情を詮索するのは感心しませんよ?」

 

「あぁすまない、ちょっと気になっちゃったからさ」

 

 気になるのもわかるけどね

 赤馬零児に弟がいたなんて、情報はないだろうし

 さて、たしかあの子はかなり特異な才を持っていたはずだけど、うちの子達とデュエルしてどんな影響が出るかな?


「よいしょ、よいしょ

 むむむ・・・よし、チャージ完了!」

 

 心を込めてデッキをシャッフルする

 遊矢お兄ちゃんに教えてもらった、おまじない

 今日も頑張ろうね、私のカードさん達

 

「あぁ、今日もアユは可愛いな~」

 

「もう、あなたってば!先に先生たちに挨拶でしょ!」

 

「アタッ!?」

 

 何やってるのよ、パパ、ママ・・・

 

「いや、お母さん、自分たちは気にしませんので・・・」

 

「そう言うわけにはいきません!

 アユをこんな大舞台に導いてくれた先生方には感謝してもしきれません。」

 

「修造さん、ここは大人として好意は受け取っておくべきですよ?」

 

「うむ!親しき仲にも礼儀ありと言うしな!」

 

「だから権ちゃん、おっさん臭いって」

 

「おっさん言うなー!!」

 

「アユ~こっち向いて、こっち」

 

 私はパパの向けるカメラに笑って手を振る

 やらないと、落ち込んじゃうから大変なんだから

 

「わぁ、かわいい~」

 

 やらなくても良かったかな・・・もう、相手の子に笑われちゃうよ

 

「さぁ、熱戦続く、ジュニアコース2回戦、次なる試合は鮎川アユ選手と赤馬零羅選手です!」

 

 赤馬?あの社長さんの家族かな~?

 私の対面に立っているのは継ぎはぎの熊のぬいぐるみを持った帽子の上にフードを被った男の子?だよね?

 なんだか、怯えているような・・・

 うん、とりあえず、挨拶は大事だよね!

 

「こんにちは!いいデュエルにしようね!」

 

 握手しようと思って手を差し出してみるけど、零羅君は瞬きもせずにそこに立っているだけ

 その大きな眼は見開かれたままで、まるでカメラのレンズみたい

 

「おや~?どうしましたかな、零羅君?緊張しておりますかな?」

 

 零羅君はピクッ!っと反応すると顔を上げて、どこかに目を向ける

 その視線の先には、あのLDSの理事長さんがいて窓越しだから何だかわからないけど・・・何か言っていた

 

――ハッ!

 

「おや?」

 

 零羅君は持っていたぬいぐるみをニコさんに渡して、初期位置についてしまった

 う~ん、変わった子だな~

 

「ふむ、では、零羅選手も準備が出来た様なのでアユ選手も準備をお願いできますかな?」

 

「あっ、は~い」

 

 私も初期位置に立って準備完了する

 よ~し、頑張るぞー!


「さぁ、まずはアクションフィールドのセレクトです!アクションフィールド、オン!!」

 

 アユと零羅の立つ場所がスタジアムの芝生から燦々と陽光が照り付ける岩場の谷へと変わる

 

「これはフィールド魔法、おひさまの谷!

 夏場でこのフィールドは少々きつそうですが、両選手には元気いっぱいにデュエルしてほしいものですね~

 では、始めましょう!戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が!」

 

「モンスターと共に地を蹴り!」

 

「宙を舞い・・・」

 

「フィールド内を駆け巡る!」

 

「見よ・・・」

 

「これぞ!」

 

「デュエルの最強進化系!アクショーン!!」

 

『『決闘(デュエル)!』』

 

「先攻は私からだよ!

 私は、あっ!アクションカード見っけ!」

 

「おぉ!アユ選手早速アクションカードを入手、幸先がいいですね~」

 

「よ~し、魔法カード、手札抹殺発動

 互いのプレイヤーは手札を全て捨てて、デッキから捨てた枚数分ドローするよ

 私の手札は5枚だから、5枚のカードをドロー!」

 

「僕も5枚のカードを捨てて5枚のカードをドロー・・・」

 

「これは遊矢君の十八番、アクションカードを使った手札増強だー!

 アクションカードをフル活用する遊勝塾らしい戦略ですね~」

 

「よし、私は手札からアクアアクトレス・グッピーを召喚!」

 

グッピー「キュル!」

    ATK600

 

 日の照りつける谷に可愛らしくデフォルメされたピンクの熱帯魚が現れる

 

「グッピーの効果発動

 1ターンに1度、手札のアクアアクトレスモンスター1体を特殊召喚出来る

 来て、アクアアクトレス・アロワナ!」

 

アロワナ「アロー!」

    ATK2000

 

 グッピーの隣に並ぶ、巨大かつ派手な紫を基調とした熱帯魚

 水生のモンスターの割には演出の為だろうか、キセルまで持っている

 

「まだまだ行くよ~手札から魔法カード、ダウンビート発動

 このカード名のカードは1ターンに1度だけ発動出来て、自分フィールド上の表側表示モンスターを1体リリースして発動できるの

 そして、私はリリースしたモンスターと元々の種族、属性が同じで元々のレベルが1つ低いモンスターをデッキから特殊召喚するよ

 私は水属性、水族、レベル2のグッピーをリリースしてデッキからレベル1のアクアアクトレス・テトラを特殊召喚!」

 

テトラ「テートラ!」

   DEF300

 

 グッピーが退場し、続き現れるのは水色の熱帯魚、その顔は男形だからか少々凛々しい

 

「テトラの効果発動、1ターンに1度、デッキからアクアリウムカードを1枚手札に加えるよ

 私は永続魔法、水舞台(アクアリウム・ステージ)を手札に加えて発動!」

 

 水分など全くない岩場がどこからともなく現れた大量の水に呑まれ、海底の様になってしまう

 心なしか、居心地が悪そうにしていたアクアアクトレスたちもご満悦だ

 

「このカードの効果で私の水属性モンスターは水属性モンスターとの戦闘以外では破壊されない

 さらに、アクアアクトレスモンスターは相手の効果を受けなくなるよ

 そして、アクアアクトレス・アロワナの効果発動

 デッキからアクアアクトレスモンスターのグッピーを手札に加えて、手札を1枚セット

 私はこれでターンエンドだよ。」

 

「お~迎撃準備万端のフィールド、零羅選手、これを崩せるのか!」

 

「・・・僕のターン、ドロー」

 

 ニコの煽りも空しく、零羅は機械的な動きと抑揚のない声で自分のターンを開始する

 

「僕は手札から永続魔法、ペルソナ・シャッター・レイヤー1を発動

 このカードは相手モンスター1体を選択し、そのモンスターと同じ、種族、属性、レベル、攻撃力、守備力、効果、名前を持ったモンスターとして自分のモンスターゾーンに特殊召喚する。

 僕はアクアアクトレス・アロワナを撮影・・・」

 

――カシャ!

 

 カメラ付きの仮面が現れ、小切れの良いシャッター音が鳴り響くと仮面の後ろに像が現れる

 その姿は左右が反転し仮面をつけたアクアアクトレス・アロワナそのものだった

 

 レイヤー1(アロワナ) ATK2000

 

「ただし、選択したモンスターがフィールドを離れたとき、このカードは破壊される・・・」

 

 零羅の使用した相手を完全にコピーするマジックモンスターという、珍しいカードをフトシとタツヤは考察する

 

「へぇ~どんな強いモンスターもコピーされちゃうってことか・・・結構強いかも」

 

「いや、それだけじゃないよ

 召喚権を使わずにモンスターをだしたからリリースしてアドバンス召喚にも使えるし、相手次第だけど、シンクロやエクシーズにもつなげられる。

 おまけに効果までコピーしているから、いろんなコンボが出来るだろうね。」

 

「バトル・・・レイヤー1でアクアアクトレス・テトラを攻撃・・・」

 

 コピーアロワナの吐いた水流がテトラへと向かうが、それをただで通すアユではなかった

 

「ちょっと待って!相手の攻撃宣言時にトラップ発動、邪神の大災害!

 フィールド上のマジック、トラップカードを全て破壊するよ。」

 

「えっ?」

 

 穏やかだった海中の中に突如として渦潮が発生し、コピーアロワナを飲み込んで行く

 そして、渦潮はいつの間にか大竜巻へと変化し、水そのものを奪い去って行った

 

「おぉっと!アユ選手の発動させたトラップにより、零羅君のコピーモンスターも破壊!

 アユ選手もカードを1枚失ってしまいましたが・・・おぉぅ!?」

 

 ニコはアユのフィールドを見て驚愕する、そこには

 

グッピー「ピッ!」

    ATK600

 

 ピンク色の熱帯魚と

 

 ディノミスクス ATK1200

 

 無数の青白く光る触手を生やした古代生物が鎮座していた

 

「邪神の大災害発動時に墓地のトラップカード、バージェストマ・ディノミスクスを発動したよ

 このカードはトラップカードが発動した時、その発動にチェーンして通常モンスターとして特殊召喚出来るの

 さらに破壊された水舞台(アクアリウム・ステージ)の効果で墓地の水族モンスター、アクアアクトレス・グッピーを特殊召喚したよ。」

 

「なんということだー!零羅選手の攻撃が完全に仇となってしまったー!

 手札抹殺もこの状況を作るための布石だったとはー!」

 

「・・・・・・僕はカードを3枚伏せて、永続魔法、騎士道精神発動

 自分フィールド上のモンスターは、攻撃力が同じモンスターとの戦闘では破壊されなくなる。

 これでターンエンド・・・」

 

「私のターン、ドロー

 まずはアロワナとテトラの効果発動

 デッキからテトラと水舞台装置(アクアリウム・セット)を手札に加えるよ

 そして、グッピーの効果で手札のグッピーを守備表示で特殊召喚」

 

グッピー「ピッ!」

    DEF600

 

「さらに永続魔法、水舞台装置(アクアリウム・セット)を発動

 このカードの効果で私の水属性モンスターは攻守が300ポイントアップ

 さらにアクアアクトレスモンスターは、もう300ポイントアップするよ」

 

 荒れ谷に豪華な城が現れる、まるでおとぎ話の竜宮城の様な外見だが水っ気のないこのフィールドでは古代遺跡の様だ

 

 アロワナ    ATK2000→2600

         DEF2000→2600

 グッピー    ATK600→1200

         DEF600→1200

 グッピー    DEF600→1200

         ATK600→1200

 テトラ     DEF300→900

         ATK300→900

 ディノミスクス ATK1200→1500

         DEF0→300

 

「よし、バトル!グッピー、ダイレクトアタック行ちゃってー!」

 

グッピー「ピッ!」

 

「あうっ!」

 LP4000→2800

 

 グッピーは宙を舞いながら体当たりを仕掛け、それを受けた零羅はよろめく

 一方アユは攻撃が通ったことに驚いていた

 

(なにも発動させなかった?攻撃反応型トラップじゃないのかな~?

 全部攻撃が通ったらライフが無くなっちゃうのに、う~ん・・・)

「まぁ、いいや

 バージェストマ・ディノミスクスでダイレクトアタック!」

 

「うぅ・・・」

 LP2800→1300

 

 ディノミクスの触手が鞭のように零羅に襲い掛かるが、それでも零羅は何もアクションをしない

 

(アクションカードも取りにいかない・・・なら、この攻撃で)

「アクアアクトレス・アロワナでダイレクトアタックだよ!」

 

「零羅選手、大ピーンチ!このまま終わってしまうのか!?」

 

「トラップ発動、ペルソナ・シャッター―インスタント

 ダイレクトアタックを受けたとき、このカードをその攻撃モンスターと同じモンスターとして自分フィールド上に特殊召喚する。

 ただし、バトルフェイズ終了時にこのカードは破壊される。」

 

――パシャッ!

 

 インスタント(アロワナ) ATK2600

 

 シャッター音が鳴り零羅の場にアクアアクトレス・アロワナが現れるが、その顔の半分はカメラの様な機械がはめ込まれており、異様さを醸し出していた

 

「むぅ~攻撃力まで、そのままコピーか・・・

 じゃあ、私はこれでバトルフェイズを終了するよ。」

 

「待って・・・バトルフェイズ終了時に速攻魔法、神秘の中華鍋を発動

 このカードは自分フィールド上のモンスターをリリースして、その攻撃力か守備力のどちらかの数値の分ライフを回復する

 

 さらにチェーンして、永続トラップ、フォト・フレームを発動

 このカードは相手フィールド上の表側表示のマジック、トラップカードと同じ効果になって同じ種類のカードとして扱う。

 僕は水舞台装置(アクアリウム・セット)を撮影・・・」

 

――カシャ!

 

 零羅側の岩の壁に水舞台装置の風景が写り込む、壁画の様だがその効力は如実に表れる

 

 インスタント(アロワナ) ATK2600→3200

 

「えぇー!?っていう事は!?」

 

「神秘の中華鍋の効果でリリースして攻撃力分のライフを回復する。」

 LP1300→4500

 

「何と零羅選手、アユ選手のカードを利用してライフを大幅に回復!

 アユ選手はこのターンの攻撃が全て無駄になってしまいました。」

 

「へぇ~コピーモンスター、って言うよりコピーデッキか

 1枚1枚は大したこと無いその場しのぎだけど、噛みあうと厄介だね。」

 

「そうね、水属性を全体強化する水舞台装置(アクアリウム・セット)もコピーされちゃったし、アユちゃんには厳しい戦いになるわね。」

 

「でも、可愛いから大丈夫だ!!」

 

「おじさん、五月蠅い」

 

 真面目に考察する素良と柚子に対し、アユの父がボケてくるが素良に一蹴される

 

「もう、パパってば・・・

 私はメインフェイズ2でレベル2のバージェストマ・ディノミスクスと攻撃表示のアクアアクトレス・グッピーでオーバーレイ

 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚

 来て、バージェストマ・オパビニア!」

 

オパビニア「ギシャアアァァァァァ!!」

     DEF2400→2700 ORU2

     ATK0→300

 

 乾いた地層を割り砕き、百足のような長い躰を持ち漏斗のような口吻に鋭い牙が生えた不気味な古代生物が現れる

 この生物を可愛いと感じるものは流石に少ないだろう

 

「オパビニアの効果発動

 1ターンに1度、このカードがトラップカードをオーバーレイユニットにしている時、オーバーレイユニットを1つ使ってデッキからバージェストマトラップを手札に加える

 私が手札に加えるのはバージェストマ・ピカイア」

 

 オパビニア ORU2→1

 

「さらにグッピーの効果で手札のアクアアクトレス・テトラを特殊召喚」

 

テトラ「フフ」

   DEF300→900

   ATK300→900

 

「そしてこのテトラの効果でデッキから水照明(アクアリウム・ライティング)を手札に加えて発動

 これで私のアクアアクトレスモンスターはモンスターと戦闘を行うときその攻撃力を2倍にするよ

 カードを2枚伏せて、ターンエンド」

 

「僕のターン、ドロー・・・あっ・・・」

 

 零羅がドローしたカードを確認した時、その眼に光が宿った

 そして、その顔を上げて一点を見つめる

 アユもそれが気になり振り向くとそこに居たのは

 

(あっ、赤馬社長だ)

 

 赤馬零児が静かに零羅を見つめていた

 

「僕は手札よりCC隻眼のパスト・アイを召喚!」

 

 パスト・アイ ATK1400

 

 零羅が召喚したモンスターはベルトや針金で岩のような躰を無理やりつなぎ合わせた無機質な物であり、ただ一点、大きな眼だけは生物的であり、不気味さを増長させていた

 

「なんだ、あのモンスター!?」

 

「痺れるくらい不気味だぜ・・・」

 

「手札から永続魔法、写真融合(モンタージュ・フュージョン)を発動!

 このカードは1ターンに1度、融合モンスターによって決められた融合素材モンスターが自分及び相手フィールド上にそれぞれ1体以上存在するとき、自分フィールド上の融合素材モンスターを墓地に送り、融合召喚を行う!」

 

「私のフィールドのモンスターのコピーとで融合召喚するの!?」

 

「レベル6のアクアアクトレス・アロワナを撮影!

 そして、撮影したレベル6の水属性モンスターのアロワナと隻眼のパスト・アイを融合する!

 鱗煌めく大河の覇者よ!我が目に宿りて、その力を捧げよ!融合召喚!!」

 

 機械的だったさっきまでとは打って変わって感情の宿る言葉で祝詞を叫ぶ

 

「現れろ!全てを切り裂く水の剣!CCC武融化身 ウォーター・ソード!」

 

 武融化身ウォーター・ソード ATK2400→2700

 

 現れたのは水のように煌めくディスク状の機械の様なモンスター

 それには多数の数の宝玉と1本の剣がはめ込まれている

 

水舞台装置(アクアリウム・セット)の効果で攻撃力が300ポイントアップする。」

 

「でもでも、私のフィールドには水照明(アクアリウム・ライティング)があるから攻撃表示のアロワナに攻撃したら返り討ちなんだからね!」

 

「ウォーター・ソードは戦闘時、フィールド上のこのカード以外の水属性モンスターの攻撃力を全て加える!」

 

「なっ!?それじゃ!?」

 

「今フィールドに居る水属性モンスターはアユのモンスター5体!」

 

「総攻撃力は5900、アロワナに攻撃すれば水照明(アクアリウム・ライティング)の効果でアロワナの攻撃力が倍になり、もう2600ポイント加算して、最終的に11200になるな」

 

「それじゃ、アユちゃんは・・・」

 

「行って、CCC武融化身ウォーター・ソードでアクアアクトレス・アロワナに攻撃!」

 

 ディスクの宝玉が光を放ち、設置されていた剣の刀身に水が纏う

 その剣はひとりでに浮かび上がり、目標に向かって射出される、だが

 

――ドコッ!!

 

「えっ!?」

 

――ザアアアァァァァァァ!!

 

 その行く手は岩肌を粉砕し流れ込んできた大量の水によって止められた

 

「トラップカード、ポセイドン・ウェーブを発動させたよ

 このカードは相手モンスター1体の攻撃を無効にする。」

 

 ウォーター・ソードの剣を飲み込んでもその水は留まることを知らず、未だに流れ続け、人型を形成していく

 

「さらに私のフィールドの水族、魚族、海竜族のモンスター1体に付き、相手に800ポイントのダメージを与える!」

 

「なっ!?」

 

「言ったでしょ、アロワナに攻撃したら返り討ちって!

 4000ポイントのダメージ、受けてもらうよ!いけー!!」

 

 大量の水を圧縮されて形成されていた人型は崩壊し、零羅に津波となって押し寄せる

 

「ぼ、僕は墓地のトラップカード、ダメージ・ダイエットを除外して効果発動!

 このターン、僕が受ける効果ダメージは半分になる!うわああぁぁ!!」

 LP4500→2500

 

「あっ、躱されちゃった・・・」

 

「うぅ・・・バトル終了、僕は墓地のシャッフル・リボーンの効果発動

 このカードを除外し、自分フィールド上の表側表示カードを1枚デッキに戻すことでデッキから1枚ドローする。

 ウォーター・ソードをデッキに戻して1枚ドロー

 

 カードを1枚伏せて、ターンエンド

 エンドフェイズにシャッフル・リボーンの効果で手札を1枚除外しなくちゃならないけど、僕の手札は0だがら、不発・・・」

 

「何と言う攻防でしょうか!

 零羅選手の必殺の一撃に反撃したアユ選手ですが、零羅選手はこれを最小限のダメージで抑えましたー!」

 

「そう簡単に勝たしてはくれないよね

 私のターン、ドロー

 私はアロワナとテトラ2体の効果でデッキからグッピーと水舞台(アクアリウム・ステージ)水舞台装置(アクアリウム・セット)を手札へ

 さらにオパビニアの効果、オーバーレイユニットを1つ使ってデッキから、バージェストマ・ハルケギニアを手札へ」

 

 オパビニア ORU1→0

 

「よし!魔法カード、嵐を発動

 自分フィールド上のマジック、トラップカードを全て破壊して、その後、破壊したカードの数だけ相手フィールド上のマジック、トラップカードを破壊する!」

 

「っ!?トラップ発動!!和睦の使者!

 このターン、僕のモンスターは破壊されず、戦闘ダメージも0になる!」

 

「だったら、効果ダメージはどう?

 チェーンしてトラップカード、ダイヤモンド・ダストを発動

 フィールドの水属性モンスターをすべて破壊して、この効果で破壊されて墓地へ送られた水属性モンスター1体に付き、500ポイントのダメージを与える!」

 

 アユのモンスターが氷像となって砕け散り零羅に向かって飛散する

 

「墓地の2枚目のダメージ・ダイエットの効果発動!

 このカードを除外してこのターン僕が受ける効果ダメージは半分になる!!うわぁ!?」

 LP2500→1250

 

「う~ん、ダメかぁ・・・嵐の効果で水舞台装置(アクアリウム・セット)水照明(アクアリウム・ライティング)、ダイヤモンド・ダストの3枚を破壊

 零羅君の騎士道精神、水舞台装置(アクアリウム・ステージ)扱いのフォト・フレーム、写真融合(モンタージュ・フュージョン)を破壊するね。」

 

 互いのフィールドにカードがなくなるが、アユはこれだけでは終わらない

 無格好でも勝利を目指し、最善を尽くす、それが師の教えなのだから

 

「破壊された水舞台装置(アクアリウム・ステージ)水照明(アクアリウム・ライティング)の効果で墓地の水族モンスターを1体ずつ特殊召喚

 戻ってきて、アクアアクトレス・グッピー、バージェストマ・オパビニア!」

 

グッピー「ピィ!」

    DEF600

 

オパビニア「ギシャアアァァァ!」

     DEF2400

 

「オパビニアが居る時、私は手札からバージェストマ罠を発動できる

 私はバージェストマ・ピカイアを発動

 手札のバージェストマカード、バージェストマ・ハルキゲニアを捨てて2枚ドロー

 そして、チェーンして墓地のトラップ、バージェストマ・ピカイアを通常モンスター扱いで特殊召喚」

 

 ピカイア ATK1200

 

 太刀魚のように長い体をくねらせて、泥の中から古代生物がよみがえる

 

「さらに手札からトラップカード、バージェストマ・ハルキゲニアを発動

 フィールドの表側表示モンスター1体を選択して、その攻守をターン終了まで半分にするよ」

 

 グッピー DEF600→300

      ATK600→300

 

「えっ?自分のモンスターを・・・?」

 

「そして、墓地のトラップカード、バージェストマ・ハルキゲニアの効果発動

 バージェストマ・ハルキゲニアにチェーンして通常モンスター扱いで特殊召喚」

 

 ハルキゲニア ATK1200

 

 針のような脚部に背部に無数のチューブ所の管を生やした生物が水浸しで泥のようになったフィールドから這い出してくる

 

「アクアアクトレス・グッピーを手札から通常召喚」

 

 グッピー ATK600

 

「よ~し、私はレベル2のアクアアクトレス・グッピーとバージェストマ・ハルキゲニア、ピカイアの3体でオーバーレイネットワークを構築

 出てきて!太古の海に潜む最強の捕食者!バージェストマ・アノマロカリス!!」

 

アノマロカリス「シャアアアァァァァァァ!!」

       ATK2400 ORU3

 

 その体長は優に10メートルは超すであろう巨躯に濃紺の甲殻を持つ太古の食物連鎖の頂点

 その2本の爪の生えた碗が獲物を狙う

 

「さらにバージェストマ・マーレラ発動

 デッキからトラップカード、邪神の大災害を墓地に送るよ

 さらにこのカードにチェーンして、墓地からバージェストマ・オレノイデスを通常モンスター扱いで特殊召喚」

 

 赤紫の三葉虫がハルキゲニアと同じく、泥中から這い出す

 

 オレノイデス ATK1200 

 

「アノマロカリスの効果、私のマジック、トラップゾーンからトラップカードが墓地に送られた時、デッキの1番上のカードを確認してそれがトラップなら手札に加え、それ以外なら墓地に送る

 デッキの1番上は・・・やった!トラップカード、水物語(アクア・ストーリー)―ウラシマ!手札に加えるね。」

 

「レベル2のアクアアクトレス・グッピーとバージェストマ・オレノイデスでオーバーレイネットワークを構築

 エクシーズ召喚、バージェストマ・オパビニア!」

 

オパビニア「シャアァァ!」

     DEF2400 ORU2

 

「オパビニアの効果でバージェストマカードをって行きたいところだけど、オパビニアの効果は1ターンに1度しか使えないから・・・

 永続魔法、水舞台(アクアリウム・ステージ)水舞台装置(アクアリウム・セット)を発動させてカードを1枚伏せてターンエンド!」

 

 アノマロカリス ATK2400→2700

         DEF0→300

 オパビニア   DEF2400→2700

         ATK0→300

 オパビニア   DEF2400→2700

         ATK0→300

 

 再び海底となるフィールド、その中を悠然とアノマロカリスが泳ぎ回り、海底ではオパビニアが待ち構える

 捕食者だらけの無法の海と化した場に零羅の感じる恐怖はピークに達していた

 

(兄様にもらったカードがこの子には通用しない・・・

 兄様にもらったヒカリがこの子には届かない・・・)

 

 兄、赤馬零児からもらった力であるウォーター・ソードは激流に呑まれて阻まれた

 そして今、太古の捕食者たちは、今か今かと獲物である自分を狙っている

 

(僕じゃ勝てない・・・

 僕じゃ負ける・・・

 僕じゃ・・・死ぬ・・・)

 

 少年の過去に刻まれた記憶、死と隣り合わせの日常

 迫る敗北は死の前兆だと零羅の頭が訴えてくる

 

「あ・・・あぁ・・・」

 

 フィールドにはもはやカードは1枚もない、手札もない、墓地にあるダメージ軽減カードは使い切った

 生きるために模倣をしてきた少年はもはや模倣するだけの材料すらない状況で、迫る敗北に震えるしかなかった

 

――ガチガチガチッ!

 

 凍えるように寒い、奥歯がガタガタ鳴る、手も震えて言う事が聞かない

 その様子を見ていたニコも異常かと声をかけようとするが

 

「あきらめないで!!」

 

 アユの声が先に響いた

 

「えっ・・・?」

 

「負けるのって怖いよね?でも、私はこんな形でデュエルを終わらせたくない」

 

 対戦者、それも今から自分を食らおうとしている捕食者の主である少女からのわがまま

 

「どうして・・・?」

 

「だって、あなたとのデュエル、すっごく楽しいんだもん!」

 

「楽しい・・・?」

 

 少女からの意外な言葉、死と隣り合わせの戦いの何が楽しいのだろうか?

 

「うん、あなたのカードって見たこともないのばっかりだし、戦い方もすっごくユニークだし、次は何が出るんだろうって、すっごくわくわくするの!」

 

 わくわく?何を言っているんだ、戦いにそんなものいらないじゃないか

 

「ねぇ?なんで、そんなに楽しそうなの?」

 

 零羅の中に生まれた疑問、それはアユに対する初めてのアクション

 嘲りなど感じない、彼女から伝わって来る純粋な「楽」の感情に対する疑問だ

 

「えっ?あなたはデュエルが楽しくないの?」

 

「!?」

 

 その瞬間、零羅が理解した彼女と自分の決定的なズレ

 彼女は戦いが好きなわけじゃない、彼女は殺しが好きなわけじゃない、彼女は戦争が好きなわけじゃない

 彼女は「決闘(デュエル)」という「遊戯(ゲーム)」が好きなんだと

 これは戦いではない、これは殺しではない、これは・・・戦争ではないのだから

 

「・・・・・・僕の、ターン!ドロー!」

 

 殺されることはない、死ぬことはない、殺すこともない

 それがわかった時、零羅の心は軽くなった

 死の恐怖がなくなって、零羅に中に残ったのは「負けたくない」という、子供らしい思いだった

 

「僕は魔法カード、命削りの宝札を発動

 手札が3枚になるようにドローする

 ただし、このターン特殊召喚が行えず、エンドフェイズに手札を全て墓地に送る

 

 さらに魔法カード、強欲で貪欲な壺を発動

 デッキの上から裏側表示で10枚のカードを除外して発動し、2枚のカードをドローする。

 そして、カードを4枚セット!」

 

「おっと、そうはいかないよ!

 バージェストマ・アノマロカリスのもう1つの効果

 トラップカードをオーバーレイユニットにしているとき、オーバーレイユニットを1つ使ってフィールド上のカードを1枚破壊する。

 この破壊効果は相手ターンにも発動できる

 私はオーバーレイユニットを1つ使い1番右のカードを破壊するよ!」

 

アノマロカリス「シャアアァァァァ!」

       ORU3→2

 

「させない!墓地のトラップカード、ブレイクスルー・スキルの効果発動

 このカードを除外して相手モンスター1体の効果をターン終了時まで無効にする!!」

 

「あう~また、防がれちゃった・・・」

 

「僕はこれでターンエンド」

 

「よ~し、このターンで決めちゃうんだから!ドロー!」

 

「トラップ発動、バトルマニア

 このカードは相手ターンのスタンバイフェイズに発動可能

 相手フィールド上に表側表示で存在するモンスターは全て攻撃表示になり、このターン表示形式は変更できず、このターン攻撃可能なモンスターは攻撃しなければならない!」

 

 オパビニア DEF2700→ATK300

 オパビニア DEF2700→ATK300

 

(攻撃強要カード、だったら残りの3枚はミラーフォースみたいなカード!?)

「私はバージェストマ・オパビニアの効果発動

 オーバーレイユニットを1つ使いデッキからバージェストマ・オレノイデスを手札に加えて発動

 フィールド上のマジック、トラップカードを1枚破壊するよ、真ん中のカードを破壊!」

 

「ダメ!トラップ発動、死魂融合(ネクロ・フュージョン)

 墓地の融合素材を裏側表示で除外して融合召喚する

 僕は墓地のCC隻眼のパスト・アイと神竜アクアバザルを融合!

 天に届きし水の柱よ、我が目に宿り、力捧げよ!融合召喚!!

 再び現れろ!全てを切り裂く水の剣!CCC武融化身 ウォーター・ソード!!」

 

 兄からもらったカードから生まれた零羅を守る盾にして剣、ウォーター・ソードが再びその姿を現した

 

 武融化身ウォーター・ソード ATK2400

 

「うっ!?そのモンスターは・・・だったら、まずはトラップカードが墓地に行ったから、アノマロカリスの効果発動、デッキトップはダイヤモンド・ダスト、トラップカードだから手札に加えるよ

 さらにアノマロカリスの効果発動

 オーバーレイユニットを1つ使って、ウォーター・ソードを破壊!!」

 

「させない!速攻魔法、禁じられた聖杯を発動

 フィールド上の表側表示モンスターを1体選択し、そのモンスターの攻撃力を400アップさせて効果を無効にする。

 アノマロカリスの効果はこれで無効!」

 

アノマロカリス「ギャアアァァァ!?」

       ATK2700→3100 ORU2→1

 

 ウォーター・ソードに襲い掛かるアノマロカリスだったが、黄金の杯がぶつかりそれを妨害する

 

「まだだよ!トラップ発動、水物語(アクア・ストーリー)―ウラシマ

 私の墓地にアクアアクトレスモンスターが居る時、フィールド上のモンスター1体を選択して発動できる。

 そのモンスターはターン終了まで、効果を無効にして攻撃力、守備力が100になり、さらに相手のカード効果を受けられなくする!」

 

「リバースカード発動、速攻魔法、禁じられた聖槍

 このターン、フィールド上のモンスター1体の攻撃力を800ダウンさせ、このカード以外のマジック、トラップカードの効果を受けられなくする!」

 

 青紫の玉手箱の中からあふれ出た霧がウォーター・ソードに向かうが、ウォーター・ソードから聖なる力を秘めた槍が射出され、魔力の宿った霧を払う

 

 武融化身ウォーター・ソード ATK2400→1600

 

「あはは、やっぱり君すごいね!」

 

 もはやアユに打てる手立てはない、次のターンになれば勝利は確実だがバトルマニアの効果を受けたモンスター達をどうにかする手段がないのだ

 悔しさはあったが、純粋に相手の力量が上だったのだ

 アクションカードを探すという手段もあったが、周囲にそれらしきものはない

 探しているうちにモンスター達が待ちきれずに動き出してしまうだろう

 

「うん・・・私の負けだね・・・

 バージェストマ・アノマロカリスでウォーター・ソードに攻撃!」

 

「ウォーター・ソードの効果!

 戦闘時にフィールドのこのカード以外の全ての水属性モンスターの攻撃力を自身に加える。」

 

 武融化身ウォーター・ソード ATK1600→4900

 

――ザシュ!!

 

 水の剣が太古の海王を両断する

 そして、その余波が水圧となってアユへと襲い掛かる

 

「あうぅ・・・バージェストマ・オパビニアで攻撃!」

 LP4000→1800

 

「ウォーター・ソードの効果!」

 

 ウォーター・ソード ATK1600→2200

 

――ザシュ!!

 

 オパビニアも同様に切断された

 

「きゃああぁぁ!!うぅ・・・これで」

 LP1800→200

 

「最後・・・」

 

 ウォーター・ソード ATK1600→1900

 

――ザシュ!

 

 最後のオパビニアにウォーター・ソードが墓標の様に突き刺さり、ここの勝敗は決した

 

アユLP200→0


「ふぅ・・・」

 

 勝った・・・しかし、なんだろう、この気持ちは?

 疲れが心地よい、まだ体が熱を持っている

 

「あ~負けちゃった~」

 

 さっきまで対戦していた女の子が近づいてくる、何しに来たんだろう?

 

「はいこれ、ニコさんが忙しいから渡しておいてくれって」

 

 僕のぬいぐるみ

 

「このために?」

 

「う~ん、それもあるけど、君とのデュエルすっごく面白かったから、またやりたいなって、ダメ・・・かな?」

 

 またデュエルがしたい、それが言いたくて来たんだ

 なんだろう、胸の奥がポカポカする

 またこの子とデュエルをすれば、この気持ちの名前が分るだろうか?

 

「うん・・・いいよ。」

 

「やったー!じゃあ、次は負けないからね!

 あっ!3回戦は私と同じ塾のフトシだから頑張ってね、それじゃ!」

 

 彼女はそう言って、彼女の仲間の所に帰ってゆく、負けたのに楽しそうだ

 

「零羅」

 

 僕を呼ぶ声、いつの間にか兄様がスタジアムの入り口まで下りてきていた

 僕はすぐさま、兄様の下に駆け寄った

 

「兄様・・・」

 

 兄様はゆっくりと手を差し出して、僕の頭を撫でてくれる

 安心する、僕のヒカリ

 

「よくやった、その調子だ。」

 

 褒められた、胸の奥が熱くなる

 そうだ、思い出した・・・この気持ちの名前は「うれしい」だ

 また兄様に褒めてもらおう、そのために勝ち進もう

 

 そして、できれば・・・あの子の言う様に楽しいデュエルをしよう

 




う~む、ユート最後の攻防、お前の戦術に似てなかったか?

あぁ、赤馬零児があの子に俺たちのデュエルを見せていたのはこのためか?

わからん、そういえば次の試合はあの遊矢とかいう奴らしいぞ

あぁ、俺と同じ顔を持つこの世界の住人か・・・
資料でしか見たことがなかったが、実際のデュエルを見られるのは楽しみだな

あぁ、次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth『因縁の歴史』
これは本当にデュエルなのか?


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因縁の歴史

歴史(約8年)

なお、作者はロボットアニメも好き


 ヤツとの出会いは自分が梁山泊塾に入塾する日

 両親と別れ、マスター梁山と共に夕焼けの河原を歩いている時だった

 

「おや、貴方はもしかしてプロデュエリストの郷田川 梁山さんではありませんか?」

 

 そいつは奇妙なヤツだった

 夕焼けに照らされた顔はニコニコと笑みを浮かべているのに、自分には恐ろしく思えた

 

「童、何の用だ?」

 

「いえいえ、有名なプロの御方に出会えたので、ご挨拶をと

 あとできれば、私とデュエルをしてほしい、な~んて」

 

 当時の自分よりも幼い外見、だがその喋り方は大人びていてアンバランスさが冗長され、仰々しいその仕草は人形の様で不気味だ

 

「キサマの様な者にかまっているほど、儂は暇ではない。」

 

「いえいえ、時間は取らせませんよ?

 何しろ、私みたいな子供など郷田川プロに掛かればすぐに負けるでしょうからねぇ~?」

 

「ふん、それならば、なおの事、時間の無駄だ。」

 

「おや?無駄になるほど、時間がかかると?」

 

 挑発的な言い回し、自分はマスター梁山の後ろに居たのでマスターの顔を見ることは出来なかったが、背中からわかるほど怒りを滲ませていた

 

「いいだろう!小僧!!加減などせんぞ!!」

 

「はははっ、そうこなくちゃ!」

 

 人好きのする笑顔が崩れ、獲物を前にした狼の様に口の裂けた笑みをしたそいつは、戦いの合図を高らかに叫び

 

『『決闘(デュエル)』』

 

「先攻は俺だ、フィールド魔法、ブラック・ガーデン!」

 

 自分たちを飲み込んだ


「はぁ、はぁ・・・・」

 

「う~ん、タイトル複数持ちのプロデュエリストでこの程度か・・・

 やっぱりアクションじゃないとダメか?」

 

 そのデュエルは一方的だった

 マスターのモンスターはすべて弱体化させられ、それと同時に薔薇の化物が湧いてくる

 そしてそれは奴の発動させた永続罠で凶暴化し不死の力を手に入れていく

 

「くっ!嘗めるなよ小僧!!

 儂は天昇星テンマに最強の盾を装備、このカードの効果でテンマの攻撃力は元々の守備力分上昇する。」

 

 テンマ ATK1050→2050

 

「バトル!天昇星テンマでローズトークンに攻撃じゃ!!」

 

テンマ「はあぁぁぁ!!」

 

 マスター梁山の攻撃、破壊はされなくてもそれを上回る力で攻撃し続ければデュエリストのライフは尽きる

 

「速攻魔法、旗鼓堂々発動

 俺の墓地の装備魔法を正しい対象となるフィールド上のモンスターに装備する

 俺はヴィシャス・クローを攻撃されているローズトークンに装備」

 

ローズトークン「ギシャアアァァァァァ!!」

       ATK1800→2100

 

 たったの50ポイント、その差が決定的な差となる

 薔薇の化物から生えた白銀の爪はマスターのモンスターを盾ごと引き裂いた

 

「なんと!?」

 

「さて、時間が押しているのなら手早く終わらせよう

 ローズトークンでダイレクトアタック!」

 

「ぐわあああぁぁぁぁ!!」

 

――ボシャン!!

 

 無数の蔦がマスター梁山に襲い掛かり、突き飛ばす

 師になるはずの人のいきなりの敗北、目の前で起きた出来事に自分は混乱した

 

「あちゃ~ただのソリッドビジョンなのに派手に飛んだな・・・大丈夫だろうか・・・」

 

 師が敵わない相手。当時の自分では到底敵わないだろう……だが

 

「ん?君もデュエルがしたいのか?」

 

 自分は奴に勝ちたいと思った

 

――ガクガク

 

 体が震える、猛獣に挑むような自殺行為だ

 

「そんなに怯えるなよ・・・そんな調子だと俺も楽しめないからさ~」

 

 楽しむ?

 マスター梁山はデュエルを楽しいなどと思うなと言った

 お前の行く道はそんな甘いものではないと、ひたすら暗い闇の道を歩き続けろと

 なのにこいつは楽しむためにマスター梁山と戦い、勝利したというのか!?

 

「そうだ、君は彼のデュエル塾に通うのだろう?

 だったら、そこで1番の強さに成ったらデュエルしようじゃないか」

 

「!?」

 

「楽しみにしておくよ。」

 

「ま、待て!!」

 

 一陣の風が過ぎ去り、奴は夕闇に解けるようにして姿を消した


「破ッ!!」

 

「ぐわああぁぁぁ!!」

 

 自分の今日の対戦相手が吹き飛ばされ転がる

 

 あれから5年、自分はこの梁山泊塾であいつが言ったように1番となった、マスター梁山とも互角以上に戦えるほどに

 全てはあの日以来、亡霊のように自分の記憶に住み続ける奴と戦うため

 あの日、怯え震えるだけだった自分と決別するため

 

「「ぐわあああぁぁぁぁぁぁ!!」」

 

 道場に響く悲鳴、扉を突き破り転がっていたのは梅杉と竹田

 ロクでもない小者どもだが、それなりに腕の立つこの2人がやられた

 

 自分の体が震える、直感した、ヤツが来たのだ

 

「やれやれ、2対1でこの様か・・・肉体言語以外に取柄はないのかね、こいつらは」

 

 この震えは、あの幼い時の怯えから来るものではない

 

「やぁ少年、5年ぶりくらいかな?

 毎日頑張っているようだねぇ~あの時の約束通り、デュエルをしようじゃないか」

 

 これは歓喜だ!!

 

「そうだ待っていたぞ!!この時を!!

 キサマを降す、この一戦を5年もの間待っていたぞ!!」

 

「おうおう、気合十分だねぇ~じゃあ、早速やりますか」

 

『『決闘(デュエル)』』

 

 ヤツの使ったのは、あの時と同じブラック・ガーデンというフィールド魔法を使用したトークンデッキ

 奇怪なコンボを使用したそのデッキは混沌と言うに他ならない

 

「だが、このカードでキサマの混沌を打ち砕く!

 マジックカード、融合発動、手札の地翔星ハヤテと天昇星テンマを融合!

 天翔ける星、地を飛び、今一つとなって、悠久の覇者たる星と輝け!融合召喚!

 来い!覇勝星イダテン!!」

 

覇勝星イダテン「はっ!!」

       ATK3000

 

 闇色の鎧を輝かせ、三又の矛を構えし戦神、自分が修行の末、手に入れた力だ!

 

「だが、ブラック・ガーデンの効果により、そのモンスターの攻撃力は半分になり、俺のフィールドにローズトークンが攻撃表示で特殊召喚される。

 さらに暴走闘君の効果で攻撃力が1000アップだ。」

 

 覇勝星イダテン ATK3000→1500

 ローズトークン ATK800→1800

 

「だが、イダテンが融合召喚に成功したことによりデッキからレベル5の戦士族、地翔星ハヤテを手札に加える

 さらにイダテンの効果を発動、1ターンに1度、手札を任意の数捨てることで1枚につき200ポイント攻撃力を上げる

 自分は手札を2枚捨て攻撃力を400ポイントアップさせる!」

 

 覇勝星イダテン ATK1500→1900

 

「バトル!覇勝星イダテンでローズトークンへ攻撃!

 イダテンはダメージ計算時にこのカードのレベル以下のレベルを持つモンスターの攻撃力を0にする効果を持つ、これで終わりだ!!」

 

「速攻魔法、禁じられた聖杯発動

 モンスター1体の攻撃力を400アップさせ、効果を無効にする

 俺はイダテンを選択する。」

 

 覇勝星イダテン ATK1900→2300

 

「くっ!?だが、攻撃力はこちらが上だ!」

 

「それはどうかな?トラップ発動、力の集約

 このカードはモンスター1体に装備カードを集約させる

 よって攻撃を受けているローズトークンに別のローズトークンに装備させていた下克上の首飾りを装備!」

 

「ぐっ!?そのカードは!!」

 

「そう、装備モンスターがレベルの高いモンスターと戦闘するとき、ダメージ計算時のみ攻撃力をレベルの差×500ポイント上昇させる

 ローズトークンのレベルは2、イダテンは10、よってローズトークンの攻撃力は4000ポイントアップだ。」

 

 星を模した飾りが薔薇の怪物に埋め込まれ、その身を巨大により禍々しくさせる

 

ローズトークン「グオオオォォォォォォォ!!」

       ATK1800→5800

 

「馬鹿な!攻撃力5800のトークンだと!?ぐわあああぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 花弁の中から生えて来た鰐の様な口から花粉の粉が噴出し、それがイダテンに当たると爆発し自分はその衝撃で吹き飛ばされた

 

「ふぅ~最近、ろくでもない奴ばっかりとデュエルしてたから、これで満足したぜ」

 

 くっ!勝てなかった・・・自分じゃ駄目なのか・・・

 

「強くなったな少年、良いデュエルだったよ。

 また機会があったらやろうじゃないか」

 

 !?

 

「あ~そういえば、少年の名前を聞き忘れていたな・・・俺は榊 遊矢

 今、悪い意味で話題の榊 遊勝の息子さ」

 

 榊 遊勝?そんなもの関係ない!!

 自分が勝ちたいのはキサマだ!榊 遊矢!!

 

「自分は勝鬨・・・勝鬨 勇雄!キサマを闇に葬る者の名だ!!」


「ねぇ、遊矢?本当に大丈夫なの?」

 

 舞網チャンピオンシップ3日目、今日からジュニアユース選手権が行われる

 ちなみに、ジュニアコースは今日はインターバルでユースは2回戦前半が行われるらしい

 

「何だよ、柚子?何時になく心配性だな。」

 

「だって、あの勝鬨よ?

 いつものうちや梁山泊塾の道場の中じゃなくて、スタジアムでアクションデュエルをするのよ?

 2人共、大怪我するかも・・・」

 

「そんなことはアクションデュエルじゃ常に付きまとっていることじゃないか

 ライオンにじゃれ付かれる様なものさ、大丈夫だって」

 

「いや、全然大丈夫じゃないじゃない・・・」

 

 ジト目でこちらを見つめてくる柚子

 まぁしかたない、石やら竹槍やらイスやら使った肉体言語でアクションカードを取るのを妨害してくる奴だ

 ぶっちゃけ、奴とアクションデュエルをするとカンフー映画にしかならない

 下校時とかにも襲撃掛けてくるときもあるし

 

「だが、いきなり前優勝者である勝鬨と遊矢の対決とはな」

 

「まぁ、そこはLDSの嫌がらせでしょ

 LDSの看板に泥を塗った2人の内どちらかを早々に消しておこうなんて算段なんじゃないか?」

 

「うぅむ・・・けしからん!!男と男の戦いをそのような!!」

 

「落ち着けって権現坂

 そこは遅かれ早かれの問題なんだし、仕方ないさ」

 

「しかし・・・」

 

「しかしも、案山子もないの

 さて、そろそろ試合時間だから、行くとするか」

 

 スタジアムへの選手用通路を歩きながら、俺はあの夕焼けの河原のことを思い出す

 

(この世界の体裁なんて気にしないプロデュエリストがどのくらい強いのか調べようと思ってたら、偶然、郷田川プロが勝鬨を連れている所に出くわしたんだよなぁ

 プロとはいえ、ハイビートで妨害札もなかったから、あっさり勝っちゃったけど・・・

 まぁ、言われのない因縁を付けられる前に因縁つけたから、変に拗らせることもないだろう)

 

 原作では妬みから拗らせた上、アカデミア側の尖兵みたいな感じになったがその心配はもう不要だろう

 

「さぁ、思いっきり楽しもうか」

 

 奴と俺の因縁を


『さぁ、始まりました、舞網チャンピオンシップ3日目

 本日から行われますジュニアユース選手権、その記念すべき第一回戦、第一試合

 対戦者はまさかまさかの大物2人!

 まずはその一人目にご登場願いましょう!遊勝塾、狂った道化師(マッド・ピエロ)こと榊 遊矢選手です!!』

 

 選手入場口から大観衆の視線にも動揺せず自然体で歩く遊矢、その視線は反対側から現れるであろう存在を警戒している

 

『そして対するは昨年のジュニアユース選手権の王座に輝いた梁山泊塾、勝鬨 勇雄選手!』

 

――バシシィィィィィィン!!

 

 スタジアムの一角、そこを占拠する異様な胴着の集団

 その中でも特別大きな体を持つ男が手で銅鑼を打ち鳴らし、スタジアム中に音を響き渡らせる

 そして、それを合図にして

 

「ホワタァァァ!!」

 

 遊矢に向かって飛び蹴りが炸裂した

 

「うおっ!?」

 

 遊矢はそれを躱すと、すぐさま振り向き次の一撃に備える

 

「ウリャアァァァァ!!」

 

 奇声を発しながら飛び蹴りの着地の勢いを利用した上段回し蹴りが遊矢を狙うが、遊矢はこれを勢いが完全に付く前に腕を使い押しのけ、軸足を狙う

 

「ハッ!!」

 

 だが、件の人物は軸足のバネのみで跳び、宙返りをし落下の勢いをつけ掌打を振り下ろす

 

「ハアアァァァァ!!」

 

――バシィィィィンン!!

 

 肉と肉がぶつかり合う音が響き、会場に居る何人かは目を覆うが、その掌打は遊矢の脳天を捉える前に白羽取りで受け止められていた

 

「フンッ!ハッ!!」

 

 数瞬、空中で固まっていた中国胴着を纏った紫髪の少年『勝鬨 勇雄』はバク転をしながら初期位置へと着いた

 

『は、えっ・・・?』 

 

 進行役であるニコ・スマイリーすらも呆然とする中、遊矢が口を開く

 

「いきなり、随分な真似をしてくれるじゃないか、勝鬨ぃ~」

 

「ふん、はっ!準備運動には丁度好かろう?」

 

「おぉ~怖い怖い、お前と準備運動だなんて、命がいくつあっても足りないな~」

 

「ふん、それでも自分に合わせられる、キサマに言われたくはない」

 

「岩を素手で割るお前と一緒にしないでくれるか?

 っと、ニコちゃ~ん?そろそろ、開始の宣言をしてくれるかな~?」

 

 いきなり話を振られたニコだったが、それによって自分の役目を思い出し司会を進行させる

 

『はっ・・こ、これは失礼しました。

 では、ジュニアユース選手権、一回戦、第一試合、まずはフィールド魔法の選択です!

 フィールド魔法、仙界竹林、発動!』

 

 リアルソリッドヴィジョンシステムが起動し、スタジアムが無数の岩山に囲まれ、大量の岩の足場と共に浮かぶ雲の上の竹林へと変化する

 2人は岩山の上に立ち、互いに相手を見据え、口上を述べるような雰囲気ではない

 

『あ・・・と・・た、戦いの殿堂に集いしデュエリスト達がモンスターと共に地を蹴り、宙を舞い、フィールド内を駆け巡る

 見よ、これぞ、デュエルの最強進化系、アクショ~ン』

 

『『決闘(デュエル)!!』』

 

「さて先攻は俺からあっ!?」

 

「であああぁぁぁ!!」

 

 デュエルが始まると同時、勝鬨が早速飛びかかってきたが、遊矢は側転の要領でこれを躱す、飛びかかってきた勝鬨を足場にその場から逃走し、竹林の中へと逃げ込む

 

「まったく、いきなり危ない奴だ

 俺は手札のスケール3のEM(エンタメイト)ラ・パンダとスケール6のEM(エンタメイト)リザードローをペンデュラムゾーンにセッティング、手札からレベル4のEM(エンタメイト)セカンドンキーをペンデュラム召喚!」

 

セカンドンキー「ブヒィィィン!!」

       ATK1000

 

 遊矢の場に体にホルンのような管楽器を巻きつけたパンダとトカゲの紳士が光の柱の中に浮かび、茶色の毛を持つロバを呼び寄せる

 

「セカンドンキーの効果発動

 召喚、特殊召喚した時、デッキからEM(エンタメイト)モンスターを1体墓地に送ることが出来る

 俺はEM(エンタメイト)コンを墓地へ送る。」

 

 効果の処理を終えた遊矢はセカンドンキーに乗り込み、逃走準備を整える

 すると予想通り、竹を手刀で切断しそれをクナイのように飛ばす勝鬨の姿が遊矢の目に映った

 

「セヤアアァァァァ!!」

 

 遊矢は勝鬨が飛ばしてきた竹クナイをセカンドンキーをロディオの様に操りながら躱し、たまにセカンドンキーが竹クナイを蹄で迎撃する

 

「まったく、じっとしている暇がないな!

 俺はさらに手札からEM(エンタメイト)フレンドンキーを通常召喚、その効果で墓地のレベル4以下のEM(エンタメイト)モンスター、EM(エンタメイト)コンを特殊召喚だ。」

 

フレンドンキー「ブヒィン!」

       ATK1600

 

EM(エンタメイト)コン「はぁい♡」

     ATK600

 

 遊矢の場に新たに灰色の毛のロバとそれに跨った水色の髪をツインテールにした一本角が生えた少女が現れ、竹クナイの迎撃に参加する

 遊矢は竹クナイの迎撃をモンスター達に任せ、その場を離脱しデュエリストとして動き始める

 

「俺はEM(エンタメイト)コンの効果発動

 このカードと攻撃力が1000以下のEM(エンタメイト)モンスターを守備表示にすることで、デッキからオッドアイズモンスターを手札に加える

 俺はEM(エンタメイト)コンとEM(エンタメイト)セカンドンキーを守備表示にしてデッキからオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンを手札に加える。」

 

 セカンドンキー ATK1000→DEF2000

 EM(エンタメイト)コン   ATK600→DEF1000

 

「そして、EM(エンタメイト)リザードローのペンデュラム効果発動

 もう片方のペンデュラムゾーンにEM(エンタメイト)リザードロー以外のEM(エンタメイト)カードがあるとき、このカードを破壊しデッキから1枚ドロー

 さらにラ・パンダのペンデュラム効果を発動しこのカードのスケールを1つ上げる」

 

 ラ・パンダ Pスケール3→4

 

「俺はカードを2枚伏せ、空いたペンデュラムゾーンにオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンをセッティングしエンドフェイズ

 オッドアイズのペンデュラム効果を発動、このカードを破壊しデッキから攻撃力1500以下のペンデュラムモンスターを手札に加える

 俺はEM(エンタメイト)ペンデュラム・マジシャンを手札に加え、ターンエンドだ。」

 

『遊矢選手、ペンデュラム召喚とモンスター効果を巧みに使い、先攻1ターン目からモンスターを3体呼び寄せました

 次は、えぇ~と・・・何故か竹で攻撃している勝鬨選手のターンです・・・』

 

「む、自分のターン、ドロー!」

 

 ニコの言葉により、竹クナイの生成を止め勝鬨のターンが始まる

 

「相手フィールド上にのみモンスターが存在するとき、または自分フィールド上に光属性モンスターが存在する場合、手札から地翔星ハヤテをリリースなしで召喚出来る!

 現れよ!地翔星ハヤテ!!」

 

地翔星ハヤテ「ふん!」

      ATK2100

 

「さらに地翔星ハヤテの効果発動

 このカードが召喚、特殊召喚された時、1ターンに1度だけ手札の光属性、レベル5の戦士族モンスター1体を特殊召喚できる

 続け!天融星カイキ!!」

 

天融星カイキ「はっ!」

      ATK1000

 

 オオカミの毛皮を被った武将、地翔星ハヤテと怪物の顔を模した鎧を纏った武将、天融星カイキが並び立つ

 

『おぉ!勝鬨選手も負けじと、いきなり上級モンスターが2体並びましたー!!』

 

「いや、これだけではまだ終わらん!

 特殊召喚された天融星カイキの効果発動

 ライフを500ポイント払うことで自分の手札、フィールドのモンスターを使い戦士族融合モンスターを融合召喚する。

 自分はフィールドのレベル5以上の戦士族モンスター、地翔星ハヤテと天融星カイキを融合!」

 LP4000→3500

 

 勝鬨は演舞を踊るように構えを取り、最後に荒ぶる鷹の様なポーズをとる

 

「天に溶ける星よ、地を飛び、今一つとなって、悠久の覇者たる星と輝け!

 融合召喚!来い!覇勝星イダテン!!」

 

覇勝星イダテン「はあぁぁぁぁ!ふんっ!!」

       ATK3000

 

 光の渦の中から三又の槍を構えし覇者、覇勝星イダテンが降臨した

 

『出ましたー!勝鬨選手のエースモンスター、覇勝星イダテン!!

 戦闘時、このカードのレベル以下のモンスターの攻撃力をダメージ計算時のみ0にするという強力な効果を持ったモンスター

 そして、遊矢選手の場には攻撃表示のEM(エンタメイト)フレンドンキー、このままでは大ダメージを受けてしまうぞ!!」

 

「覇勝星イダテンの融合召喚に成功したことによって、デッキからレベル5の戦士族、天昇星テンマを手札に加える。

 さらに自分は覇勝星イダテンの効果を発動、先ほど手に入れたアクションカード1枚を捨てイダテンの攻撃力を200アップさせる。」

 

 覇勝星イダテン ATK3000→3200

 

「バトル、行け!覇勝星イダテン!!EM(エンタメイト)フレンドンキーを攻撃だ!」

 

「残念、そう簡単にいかないんだよな~これが

 トラップ発動、ドタキャン

 相手モンスターの攻撃宣言時に発動、自分フィールドのモンスターをすべて守備表示に変え、このターン戦闘及び効果で破壊されたEM(エンタメイト)モンスターは持ち主の手札に戻る。」

 

 フレンドンキー ATK1600→DEF600

 

 覇勝星イダテンの槍の一撃をフレンドンキーはひらりと躱すと、カードとなって遊矢の下に帰って行った

 

「くっ!ならば、自分はカードを1枚伏せ、ターンを終了する。」

 

「おっと、終了するのは待ってもらおうか!

 俺はEM(エンタメイト)コンを墓地に送り、速攻魔法、烏合無象を発動

 このカードは自分フィールドから元々の種族が獣族、獣戦士族、鳥獣族の表側表示モンスターを1体墓地に送り発動する

 墓地に送ったモンスターと元々の種族が同じモンスター1体をエクストラデッキから特殊召喚する

 EM(エンタメイト)コンは獣戦士族のモンスター、よって俺はエクストラデッキから天狼王 ブルー・セイリオスを特殊召喚だ!」

 

ブルー・セイリオス「ワオオオォォォォォォン!!」

         ATK2400

 

 EM(エンタメイト)コンが手を振りながら退場し、代わりにフィールドに立つのは三つ首の青き天狼の王

 

「何!?シンクロ召喚せずにシンクロモンスターを呼びだしただと!?」

 

「ただし、この効果で特殊召喚されたモンスターは攻撃宣言できず、効果も使えず、エンドフェイズに破壊される

 今はエンドフェイズ、よって、ブルー・セイリオスは破壊される。」

 

 ブルー・セイリオスの体が光り輝き、覇勝星イダテンに向かって突撃し、イダテンを巻き添えにしながらその身を焦がして行く

 

「ブルー・セイリオスがフィールドで破壊され墓地に送られた時、相手フィールド上の表側表示モンスター1体の攻撃力を2400ポイントダウンさせる

 この効果は墓地で発動する効果だから、フィールドで効果が無効になっていても関係ない」

 

覇勝星イダテン「ぐわあああぁぁぁぁ!ぐっ・・・」

       ATK3200→800

 

「くっ!よくも!!」

 

「さて、俺のターンと行こうか、ドロー

 俺はまず、EM(エンタメイト)フレンドンキーを再び召喚し、その効果でEM(エンタメイト)コンを呼び戻す

 来い、フレンドンキー、コン!」

 

フレンドンキー「ヒヒィーン!」

       ATK1600

 

EM(エンタメイト)コン「はぁ~い!」

     ATK600

 

「さらに俺はセカンドンキーを攻撃表示に変え、EM(エンタメイト)コンの効果を発動

 コンとセカンドンキーを守備表示に変えデッキからオッドアイズ・ペルソナ・ドラゴンを手札に加える。」

 

 セカンドンキー DEF2000→ATK1000→DEF2000

 EM(エンタメイト)コン   ATK600→DEF1000

 

「そしてスケール1のオッドアイズ・ペルソナ・ドラゴンをペンデュラムスケールにセッティングしラ・パンダのペンデュラム効果でスケールを4から5に上げる。」

 

 ラ・パンダ スケール4→5

 

「これでレベル2から4のモンスターが同時召喚可能となった

 揺れろペンデュラム、異界へ繋がる扉を開け!ペンデュラム召喚!

 手札から現れろ!EM(エンタメイト)ペンデュラム・マジシャン、EM(エンタメイト)ロングフォーン・ブル!」

 

ペンデュラム・マジシャン「ハッ!」

            DEF800

 

ロングフォーン・ブル「ブモッ!」

          ATK1600

 

「そしてこの2体が特殊召喚に成功したことにより効果発動

 まずは、ロングフォーン・ブルの効果でデッキからペンデュラム以外のEM(エンタメイト)モンスター、EM(エンタメイト)フレンドンキーを手札に加え

 ペンデュラム・マジシャンの効果で自身とオッドアイズ・ペルソナ・ドラゴンを破壊しデッキからペンデュラム・マジシャン以外のEM(エンタメイト)モンスター、EM(エンタメイト)リザードローとEM(エンタメイト)ドラミングコングを手札に加える。」

 

 ロングフォーン・ブルの頭の電話が鳴り響き、巨大な振り子が持ち主と光の柱に捕らわれた赤い竜を破壊し、遊矢の新たな力となる

 

「さらに俺はリザードローをペンデュラムゾーンにセッティングしてペンデュラム効果を使い破壊して1枚ドロー」

 

「これで、レベル3とレベル4が2体ずつ・・・」

 

「その通り、俺はレベル3のコンとフレンドンキー、レベル4のロングフォーン・ブルとセカンドンキーでオーバーレイ

 2体ずつのモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚

 現れろ、鳥銃士カステル、機装天使エンジネル!」

 

カステル「クワッ!」

    ATK2000 ORU2

 

 エンジネル ATK1800 ORU2

 

 混沌の渦の中から現れるのは鳥人の狙撃主と水色の機械の様な天使

 

「勝鬨分かってるよな?エクシーズモンスターにはレベルがないから、イダテンの効果で攻撃力を0にできないぞ?」

 

「そんなことは分かっている!!」

 

(さて、ここでカストルの効果を使ってもいいんだが・・・どっちにしろダメージを与えられなさそうなんだよな・・・)

「さらに俺はスケール2のドラミング・コングをペンデュラムゾーンにセッティング

 ドラミング・コングはモンスター同士が戦闘するとき1ターンに1度、自分のモンスターの攻撃力を600上げるペンデュラム効果を持つ」

 

『おぉ!!勝鬨選手このままでは大ダメージを受けてしまうぞ!!』

 

「バトル、エンジネルでイダテンへ攻撃」

 

「させぬ!!自分は墓地の天融星カイキの効果発動

 相手ターンに自分フィールド上に攻撃力が変化しているレベル5以上の戦士族モンスターが居る場合、墓地から特殊召喚出来る。

 蘇れ、天融星カイキ!」

 

天融星カイキ「ふん!」

      DEF2100

 

「そして、カイキの特殊召喚により自分のライフを500払い、融合召喚を行う!

 自分は天融星カイキと覇勝星イダテンを融合!」

 LP3500→3000

 

『相手ターンに融合ですとぉー!?』

 

「天に溶けし星の呪いが、悠久の覇者を修羅の道へ導く!融合召喚!!

 来い、レベル12!!覇道星シュラ!!」

 

覇道星シュラ「ハァァァァ!フン!!」

      ATK0

 

 3つの顔に4つの腕、まさに阿修羅のごとき武将が光の渦から現れ、その身から闇をにじませる

 

「覇道星シュラの効果発動、1ターンに1度、自分または相手のバトルフェイズに相手フィールド上の表側表示モンスター全ての攻撃力を0にすることが出来る!

 星の呪いを受けるがいい!!」

 

 カステル  ATK2000→0

 エンジネル ATK1800→0

 

 覇道星シュラから漏れ出た闇がエンジネルとカステルに纏わりつき、その力を奪う

 

『うぉお!!何と凄まじい効果ー!!

 勝鬨選手、昨年よりもさらに進化を遂げてきたー!

 だが攻撃力0ではドラミング・コングのペンデュラム効果で攻撃力を上げられてしまうぞー!!』

 

「ふん、覇道星シュラはモンスター同士が戦闘するとき、ダメージ計算時のみ互いのモンスターの攻撃力をそのレベルの200倍とする。」

 

『おぉ!!ですが、エクシーズモンスターはレベルを持ちません!』

 

「そう!レベルを持たないということはレベル0ということだ!!」

 

 指で0アピールする勝鬨、だが遊矢はその勝鬨を見て、とりあえず講師もしているので言っておく

 

「いやレベル無しであって、レベル0ではないからね。」

 

「むっ!そうなのか・・・

 だが、攻撃力が上がらないことには変わりない!」

 

「あぁ、だからこれで俺のバトルフェイズは終了だ

 だが、その厄介者にはご退場願おう、カステルの効果発動

 1ターンに1度、オーバーレイユニットを2つ使い、このカード以外のフィールドの表側表示カードを1枚デッキに戻す

 俺は覇道星シュラをデッキに戻す。」

 

「ただでは通さん!トラップカード発動、一族の結集

 フィールドの表側表示モンスター1体を選択し、そのモンスターと元々の種族が同じでカード名が異なるモンスターを手札、墓地より特殊召喚する

 舞い戻れ!覇勝星イダテン!」

 

覇勝星イダテン「ふん!」

       ATK3000

 

「だが、シュラには消えてもらう!」

 

 カステル ORU2→0

 

覇道星シュラ「ぐわあああぁぁぁ!?」

 

 カステルの銃にオーバーレイユニットが2つ装填され、風の弾丸が放たれ、覇道星シュラを吹き飛ばす

 

「くっ!だが、これでお前のモンスターは攻撃力0で攻撃表示のまま」

 

「そううまく行かないんだよ

 エンジネルの効果発動、オーバーレイユニットを1つ使い、フィールドのモンスター1体を守備表示に変更する

 俺はカステルを守備表示に変更してターンエンド!」

 

 エンジネル ORU2→1

 カステル  ATK0→DEF1500

 

 ターンを終えるなり、いきなり走り出す遊矢、勝鬨は逃がさないと追う

 

「待てっ!!」

 

「待てと言われて待つ奴はいないんだよっと!!」

 

 遊矢は逃走途中にあった竹を蹴ってへし折り、上へ放り投げる

 

「ラ・パンダ!!」

 

ラ・パンダ「ラ、パッ!!」

 

――ボオオォォォン!!

 

 遊矢が指示を出すと、ラ・パンダは思いっきり体に巻き付いた楽器を吹き、その衝撃で竹を吹き飛ばす

 吹き飛ばされた竹は勝鬨の目の前に柵の様に突き刺さり、一瞬だが足止めをすることに成功する

 

「こんな危険な所には居られないから逃げさせてもらうぜ」

 

――ブルウゥゥゥン

 

 遊矢はエンジネルに乗り込み、竹林から脱出する

 そして、それを追い勝鬨は跳ぶ

 

「ホワチャアアァァァァァ!!」

 

 宙に浮かぶ岩を蹴り飛ばし、遊矢の逃走を妨害しながら

 

「えぇ!?嘘だろぉ!?」

 

 遊矢はエンジネルを操り、迫り来る大岩を躱す

 勝鬨は足場を伝い、たまに岩を蹴り、遊矢を妨害しながらターンを進める

 

「自分のターン!ドロー!!

 自分はマジックカード、戦士の生還を発動し、墓地の戦士族、天融星カイキを手札に戻す

 そして、自分フィールド上に光属性モンスター、覇勝星イダテンが居ることにより手札の地翔星ハヤテをリリースなしで召喚!」

 

地翔星ハヤテ「はっ!!」

      ATK2100

 

「さらにハヤテが特殊召喚されたことにより、手札のレベル5の光属性戦士族モンスター、天融星カイキを特殊召喚」

 

天融星カイキ「ふん!」

      ATK1000

 

「おぉ、賑やかになってきたなって、うわぁ!?」

 

「トオリャアアァァァァァ!!

 ふん、その減らず口すぐに利けないようにしてやる

 自分はカイキの効果を使い、ライフを500払い手札の天昇星テンマとターレット・ウォリアーを融合

 天に昇りし星の導きよ、戦士を覇者へと誘え!

 融合召喚、並び立て!覇勝星イダテン!」

 

覇勝星イダテン「はっ!!」

       ATK3000

 

「イダテンの効果でデッキから天昇星テンマを手札に加える

 そして、自分は速攻魔法、手札断殺を発動

 互いのプレイヤーは手札を2枚捨て、2枚ドローする

 自分は天昇星テンマとアクションカードを捨て2枚ドロー」

 

「竹林から出るときにアクションカードを拾っていたか・・・

 俺の手札は2枚だけだから2枚とも捨て、2枚ドローだ。」

 

「これで、次のターン、フレンドンキーは使えまい

 さらに自分はマジックカード、置換融合を発動

 このカードの効果により自分フィールドのモンスターを融合する

 レベル5以上の戦士族、天融星カイキと覇勝星イダテンを融合!

 天に溶けし星の呪いよ、悠久の覇者を再び修羅へと導け!融合召喚!!

 混沌を打ち払うために再び降臨せよ!覇道星シュラ!!」

 

覇道星シュラ「ハアアァァァ!!」

      ATK0

 

「さらに墓地の置換融合を除外し効果を発動

 融合モンスター、覇勝星イダテンをエクストラデッキに戻し1枚ドローする。」

 

 遊矢は勝鬨の動きに注視し、エンジネルを操りながら、岩場に落ちているアクションカードを発見し手を伸ばすが

 

「キエエェェェェェ!!」

 

 勝鬨は怪鳥音を叫びながら、岩を蹴り飛ばし、アクションカードのあった岩場へ飛ばしてきた

 

「ちっ!」

 

 遊矢はアクションカードを諦め回避すると、勝鬨が空中に飛散したアクションカードを掴み取った

 

「このアクションカードは自分が頂いた!

 イダテンの効果を発動しアクションカードを捨てイダテンの攻撃力を200ポイントアップさせる。

 そしてバトル、覇勝星イダテンでエンジネルに攻撃ぃ!!」

 

「残念、エンジネルの効果は相手ターンにも使えるんだよ!

 オーバーレイユニットを1つ使い、エンジネルを守備表示に変更

 さらにこの効果を受けたエンジネルはこのターン、戦闘及び効果で破壊されない!」

 

 エンジネル ATK0→DEF1000

 

 エンジネルは自身の周りにバリアを展開し、イダテンの槍の一撃を防ぐ

 

「くっ!ならば、地翔星ハヤテでカステルを攻撃」

 

地翔星ハヤテ「はっ!!」

 

カステル「グエェェ!!」――バンッ!

 

 ハヤテの棍が突き刺さり、カステルが破壊される

 

「メインフェイズ2に入り、自分は永続魔法、暗黒の扉を発動

 このカードの効果により互いのプレイヤーはバトルフェイズに1体のモンスターでしか攻撃することが出来なくなる。」

 

「ほう、地翔星ハヤテには戦士族モンスターへの攻撃を自身の攻撃力を500削ることで防ぐ効果がある

 そしてお前のモンスターは全て戦士族、厄介なコンボを・・・」

 

「奇妙なコンボばかりするキサマに言われたくない、自分はこれでターンエンド」

 

「おっと、エンドフェイズに墓地のEM(エンタメイト)ユニの効果を発動させてもらおう

 このカードと墓地の他のEM(エンタメイト)モンスター、EM(エンタメイト)ロングフォーン・ブルを除外して、このターン、俺の受ける戦闘ダメージを1度だけ0にする。」

 

『おっと?遊矢選手、バトルは終了したのに戦闘ダメージを防ぐカードの効果を発動しましたぁ?』

 

「くっ!言ったそばから・・・」

 

「ははは、さて、仕込みは上々・・・俺のターン、ドロー

 俺はラ・パンダのスケールを5から6に上昇」

 

 ラ・パンダ スケール5→6

 

「スケールはこれで2と6となった

 さぁ、来いよ、俺のモンスター達!ペンデュラム召喚!!

 エクストラデッキからレベル3、EM(エンタメイト)リザードロー2体、レベル4、EM(エンタメイト)ペンデュラム・マジシャン、そしてレベル5、オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン」

 

 リザードロー       DEF600

 リザードロー       DEF600

 ペンデュラム・マジシャン DEF800

 オッドアイズ・ペルソナ  DEF2400

 

 振り子の導きにより光となって現れるのは2体のトカゲの紳士、振り子の魔術師、赤い躰に白い装甲を纏った仮面の竜

 

「オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴンとエンジネルを対象にペンデュラム・マジシャンの効果発動

 さらにそれにチェーンしオッドアイズ・ペルソナ・ドラゴンの効果を発動する

 この効果は相手ターンでも使えるスペルスピード2の誘発即時効果、問題なくチェーン出来る

 

 チェーン処理開始

 まずはペルソナ・ドラゴンの効果でエクストラデッキから特殊召喚された表側表示モンスター1体の効果をターン終了まで無効にする

 この効果で覇道星シュラの効果を無効にする、ペルソナ・エフェクト!」

 

 ペルソナ・ドラゴンの体の各所の宝玉が煌めき、覇道星シュラの闇を払う

 

「さらにペンデュラム・マジシャンの効果でペルソナ・ドラゴンとエンジネルを破壊しデッキからEM(エンタメイト)フレンドンキーとEM(エンタメイト)ラ・パンダを手札に加える。」

 

 巨大な振り子がペルソナ・ドラゴンと遊矢が乗っているエンジネルを破壊する

 足場の無くなった遊矢は落下するが

 

「俺はレベル3のリザードロー2体でオーバーレイ!

 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!

 来い!虚空海竜リヴァイエール!!」」

 

リヴァイエール「ギャオオオォォォ!!」

       DEF1600 ORU2

 

 遊矢が新たに呼んだ異次元を飛ぶ海竜、リヴァイエールが混沌の渦の中から現れ、遊矢をその背に乗せる

 

「リヴァイエールの効果発動

 オーバーレイユニットを1つ使い、除外されているレベル4以下のモンスターを特殊召喚する

 来い、EM(エンタメイト)ユニ!」

 

EM(エンタメイト)ユニ「はぁ~い♡」

    ATK800

 

「さらに相方も呼ぶとしよう

 EM(エンタメイト)フレンドンキーを通常召喚し墓地からEM(エンタメイト)コンを特殊召喚」

 

フレンドンキー「ヒヒィーン」

       ATK1600

 

EM(エンタメイト)コン「きゃは♡」

     ATK600

 

「コンの効果でユニと共に守備表示にしてデッキからオッドアイズ・ミラージュ・ドラゴンを手札に加える

 そして、レベル3のEM(エンタメイト)コンとEM(エンタメイト)フレンドンキーでオーバーレイ

 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築

 エクシーズ召喚!管魔人メロメロメロディ!」

 

メロメロメロディ「きゃは♪ふん!」

        DEF1600 ORU2

 

 緑色の髪の魔人の少女が自分の身の丈よりも大きな管楽器に乗って現れる

 だが、これはまだ序曲に過ぎない

 

EM(エンタメイト)ユニの効果発動、このモンスターが召喚、特殊召喚されたターン、レベル3以下のEM(エンタメイト)モンスター1体を手札から攻撃表示で特殊召喚出来る。

 俺はEM(エンタメイト)ラ・パンダを攻撃表示で特殊召喚」

 

ラ・パンダ「ラ~パァ~」

     ATK800

 

「さらにレベル4のEM(エンタメイト)ユニとEM(エンタメイト)ペンデュラム・マジシャンでオーバーレイ

 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築

 エクシーズ召喚、交響魔人マエストローク!」

 

マエストローク「ふん!」

       ATK1800 ORU2

 

 指揮者が入場し、あとは最後の演奏者が入場を待つのみ

 

「まだまだ、速攻魔法、超カバーカーニバルを発動、自分のデッキ、手札、墓地からこいつを1体特殊召喚する

 来い!EM(エンタメイト)ディスカバー・ヒッポ!」

 

ディスカバー・ヒッポ「ヒッポ!!」

          DEF800

 

「またレベル3のモンスターが・・・」

 

「これで終わりだから安心しろ、俺はレベル3のEM(エンタメイト)ラ・パンダとディスカバー・ヒッポでオーバーレイ

 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!鍵魔人ハミハミハミング!」

 

ハミハミハミング「ら~ら~ら~」

        DEF1800 ORU2

 

 巨大な黄金のグランドピアノに座った薄紫色の髪をツインテールにした魔人の少女

 これで役者はそろい、終焉に向けてのコンサードが幕を開ける

 

「ハミハミハミングとメロメロメロディのモンスター効果をマエストロークを対象に発動する。」

 

 ハミハミハミング ORU2→1

 メロメロメロディ ORU2→1

 

――カッ、カッ、カッ!

 

 マエストロークが指揮丈を打ち鳴らし、リズムを取ると遊矢のモンスター達がそれに合わせ演奏をし始める

 

「な、何だ!?」

 

――♪♪♪

 

 ドラミングコングのドラムの低音、ラ・パンダとメロメロメロディによる管楽器の高音、そしてハミハミハミングの透き通ったピアノの音

 全ての音が一体となり、演奏される軽快で重厚なジャズミュージック

 

『おぉ!これはなんと、楽しげ・・・う、うん!?』

 

――ビキッ

 

「くっ!何と凄まじい衝撃だ!?」

 

――ビキビキッ

 

 それは観客には楽しげでノリの良い音楽に聞こえるかもしれないが、その音の衝撃を一身に受けている勝鬨には身を締め付けられるような、音の暴力

 そして、それは

 

――ビキビキビキッ!ドゴォ!!

 

 アクションフィールドも例外ではない

 勝鬨の岩投げにより飛散した破片に晒された他の岩場は脆くなり、次々と崩壊していく

 

「くっ!?」

 

 勝鬨は崩壊する足場から離れ、崩壊していない岩へ飛び乗るが、自分のモンスターと離れてしまい、さらにその周りの岩は崩壊し孤立してしまう

 

「メロメロメロディは魔人エクシーズモンスター1体に2回攻撃できる権利を、ハミハミハミングはこのターン指定した魔人エクシーズモンスターに直接攻撃する権利を与える。」

 

「何!?」

 

「暗黒の扉は1体のモンスターしか攻撃できなくするカードだが1体のモンスターが複数回攻撃することは止められない

 そして。ハヤテの効果は戦士族モンスターが攻撃対象でなければ発動できない、バトルだ!」

 

「くっ!?ならば自分は再び天融星カイキの効果を」

 

「そうはさせない!俺は手札から速攻魔法、墓穴の指名者の効果を発動

 相手墓地のモンスター1体を除外し、このターン、その除外したモンスター及び元々のカード名が同名のカードの効果を無効化する

 天融星カイキは使わせない!行け!マエストロークでダイレクトアタックだ!!」

 

「ぬぅう!!ならば相手の直接攻撃宣言時、手札の護封剣の剣士の効果を発動する

 このカードを特殊召喚し、さらに攻撃モンスターの攻撃力がこのカードの守備力より低い場合、そのモンスターを破壊する!」

 

護封剣の剣士「はっ!」

      DEF2400

 

 青い全身鎧に光の剣を背負った戦士が現れ、その背負う光の剣をマエストロークに飛ばし迎撃しようとするが

 

「無駄だ!マエストロークが表側表示である限り、魔人エクシーズモンスターが破壊される場合、オーバーレイユニットを身代わりにできる!」

 

 マエストローク ORU2→1

 

――ブオオォォォン!

 

 音の衝撃が光の剣を叩き落とし、マエストロークに傷をつけることは出来ず、逆に護封剣の剣士がその音の衝撃によって迎撃される

 

護封剣の剣士「うおあぁぁぁ!?」

 

「くっ、アクションカードは!?」

 

 少ない足場の中にアクションカードがないかと探す勝鬨だったが

 

「残念ながら、そこにアクションカードはない」

 

 そう、遊矢は逃げながら勝鬨をアクションカードの無い場所に誘い込んでいたのだ

 

「これでもう、邪魔者はいない、フィナーレだ!!

 マエストロークで勝鬨に2回ダイレクトアタックだ!EM(エンタメ)魔人セッションオーケストラ!!」

 

――ドウゥウゥウゥゥゥゥゥゥン!!

 

「うわああぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 LP3000→1200→0

 

 最大級の音の衝撃が勝鬨に襲い掛かり、ジュニアユース選手権第一試合にピリオドを打った


「負けたか・・・また・・・」

 

 3年、その間にヤツと何度デュエルをしただろうか

 マスター梁山に歩めと言われた闇の道、だがそこに自分を満たしてくれるものはなかった

 

「よう、大丈夫か、勝鬨?」

 

 そうだ、ヤツの・・・ヤツのデュエルが!闇よりも深い混沌のデュエルが自分を満たしてくれる

 

「・・・次は、負けん」

 

 そう、だからと言って自分はそれで満足はしない

 

「あぁ、何時でも相手してやるよ。」

 

 次こそ自分の力で奴の混沌を打ち砕く!




零児さん・・・アクションデュエルってこんなのだったかしら?

いや、う~ん・・・

(兄様・・・僕があんな風にできるようになったら兄様は喜んでくれるかな?)
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『友を繋ぐもの』
体・・・鍛えてみようかな・・・?

次は大丈夫なんでしょうね?中島

情報によると、権現坂道場の権現坂 昇選手はクマ三頭を素手で叩き伏せると・・・

「「えぇ・・・」」


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友を繋ぐもの

お久しぶりです。約1か月ぶりの更新・・・すいません
パソコンのある部屋にエアコンがないので暑さで死んでました

本来ならここで本格登場の暗国寺君、なぜかタックフォースにも出演
彼がこの世界でどうなったかというと



ある山奥のデュエル寺、海空寺
瞑想にふける強面で大柄な少年が一人
そしてそれに話しかける、某霊滅術師そっくりな住職

「・・・・・・」

「悪夢は晴れましたか?」

「・・・いや・・・」

「ふむ、君がここに駆け込み、3年に成るが・・・まだ晴れませんか?」

「俺のしてきたことへの天罰だと言うなら納得できる・・・俺は悪人だ。」

「そうですね
 貴方のこれまでの人生は褒められたものではありませんが・・・
 それでも、償い続けるこれからの中で、少しはいいことがあっても良いでしょう。」

「・・・なんのことだ?」

『たのもー!!』

「!?」

 少年、『暗国寺 ゲン』はその声を聞き立ち上がる、何故なら

「なんで、なんであの人がこんなところに!?」

 何故ならその声の持ち主は

「おぉー!誰もいないのかと思ったじゃねぇか!
 ここに強ぇデュエリストが居るって聞いてきたんだが、おめぇの事か?
 いっちょ俺と手合わせしてくれねぇか?」

 少年が3年前から憧れ続ける王者なのだから

「ふむ、縁が繋げるか・・・夕闇の悪魔とはどのような人物なのでしょうね?」


「おらぁ!ライザーとガイウスでダイレクトアタックだー!」

 

「うわああぁぁぁぁぁ!!」

 LP4000→1600→0

 

「さぁ、衝撃的な一回戦で始まりました舞網チャンピオンシップ、ジュニアユース選手権

 第二回戦は海外からの特別参加、ナイト・オブ・デュエルズのエース、シャルル選手対LDSの沢渡 シンゴ選手でしたが

 なんと沢渡選手が後攻1ターンキルで早々に勝利を手にしてしまいました!」

 

「あー!!くそ!!隠し玉も何もなしかよ!ちきしょー!!」

 

 悔しさをとりあえず、地面にぶつけて地団太を踏む沢渡

 これには彼の取り巻き達も苦笑いである

 

「おぉっと?沢渡選手、勝ったのになぜか悔しがっていますね?」

 

「もっと目立ちたかったー!!」


『もっと目立ちたかったー!!』

 

「相変わらず馬鹿なこと言っているな、沢渡は・・・」

 

 権現坂の控室、そこに設置されているテレビから流れる2回戦の中継

 俺だって目立ちたくて目立ったわけじゃないんだがな~

 

「もう、そんな悠長なこと言っていていいの?

 次の遊矢の相手、これで沢渡に決まったじゃない」

 

「そんなこと、相手の1ターン目でわかっていたよ、驚くようなことじゃない」

 

「う~ん、確かに伏せ1枚と下級モンスター1体だけの布陣はねぇ・・・」

 

「油断を誘うための罠、とも考えられたが・・・何もなかったな」

 

「攻撃力1200くらい越えていれば、1ターンは持ちこたえられると思っているのも、まだまだ多いからねぇ

 あのアサルトナイト・スラッシュは戦闘ダメージを0にする効果を持っているみたいだったけどさぁ」

 

「除去には無力か・・・伏せはミラーフォース、どうすることもできんな」

 

「あっ、そういえば権現坂の対戦相手の大漁旗って言う人、どういう人なの?

 釣り好きって言うのは分かるけど」

 

 鉄平?あぁ、そういえば、2人は未知夫と鉄平にはこの前初めて会ったんだったな

 おおよそ、そうとしか言えないけど・・・

 

「その認識で間違いない、小悪党でもあるけど

 そういえば、あいつが自分で処理しきれないぐらい釣った魚を俺が買ったのが出会いだったな・・・」

 

「えぇ!?どういう出会い方よ!?」

 

「気晴らしに釣りでもしようかと思ったんだよ

 そしたら、あいつがどうしようか悩んでいたんだ。」

(まぁ、突然ミエルが釣りに行けって、言って来たのを真に受けたのが始まりなんだが・・・)

 

「ほう、奇妙な縁もあるものだな」

 

「まぁな、んで、釣り過ぎた魚を使ってくれないかと、未知夫経由で親父さんに頼んだのが付きあいの始まりさ

 意外と未知夫と気が合ったのもあるけどな

 さて、そろそろ試合の時間だな、頑張れよ~権現坂、あいつは曲者だぞ?」

 

「ふん、お前以上の曲者が居るものか!

 この男権現坂、必ずや勝利し、遊矢、お前と戦ってみせるぞ!!」


『さぁさぁ、とっても濃~い戦いが続いておりますジュニアユース選手権も3戦目

 対戦カードは権現坂道場、不動のデュエル継承者、権現坂 昇!』

 

―カランッ!

 

 鉄下駄を鳴らし、黒いタスキをビシッと掛けた堂々たる姿で会場入りする権現坂

 その反対側の入場口から出てくるのは、飄々とした太めの釣りスタイルの少年

 

「それに対するは舞網漁業組合から参加、大漁旗 鉄平!!」

 

「よっしゃー!気張って行くでぇー!!」

 

――ワアアアァァァァァァァ!!

 

 カンフー映画並みの激しいアクションを繰り広げる第1試合、1ターンキルを達成した第2試合

 その流れで続くこの第3試合に観客たちは期待を寄せていた

 

「ひやぁ~ほんま、ごっついなぁ~

 ワイは遊矢はんみたいなことは出来へんっちゅうに・・・権現坂はんも思うやろ?」

 

「俺は俺のデュエルをするだけだ。

 観客がどうだなど、関係ない」

 

「とっつきにくいやっちゃなぁ~まぁ、えぇ」

 

『にしし、お二人とも準備はよろしいですかな?

 それではまずはフィールド魔法の選択です!』

 

 ニコ・スマイリーの宣言に合わせ2人の頭上に数十枚の光のカードが球状に回転し、その中から1枚のカードが飛び出す

 

『さぁ、今回のカードは・・・フィールド魔法、絶海の孤島、発動!!』

 

 スタジアムは光と共に美しい海に囲まれ密林と岩山を有する小島に変わる

 

「おぉ~これは絶景やなぁ!

 一度でいいからこんなところで釣りしてみたいものや、遭難はごめんやけど~

 っと、そろそろ始めまっか?」

 

 大漁旗の問いに権現坂は目を見開き、気合を込めて宣言する

 

「こちらの準備は当にできている!」

 

「おぉ怖~まぁ、お手柔らかになぁ?」

 

「いや!男と男の真剣勝負!全力で戦わずしてなる物か!!

 行くぞ!戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が!」

 

「はぁ~とっつきにくいお人やで、ホンマ

 モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い、フィールド内を駆け巡る。」

 

『見よこれぞデュエルの最強進化系ぇい!アクショーン!』

 

『『決闘(デュエル)!!』』

 

「先攻は貰うぞ、俺は超重武者グロウ―Vを召喚」

 

 グロウ―V ATK100

 

「さらに墓地にマジック、トラップカードがないことにより、手札よりチューナーモンスター、超重武者ホラガ―Eを特殊召喚!」

 

ホラガ―E「イィー!」

     DEF600

 

「俺はレベル3の超重武者

 

「おぉっと!待ってもらいまひょか!

 ワイは手札のドラゴン・アイスの効果を発動や!」

 

「何!?」

 

「相手が特殊召喚をしたとき、手札を1枚切って、こいつを手札、墓地から特殊召喚や!

 来い、ドラゴン・アイス!」

 

ドラゴン・アイス「グオオォォォォォ!!」

        DEF2200

 

 大漁旗の呼び出した氷の体を持つガーゴイルの様なモンスター、だが彼の狙いはこれで終わらない

 

「さらに水属性モンスターの効果発動コストとして墓地に送られた海皇の重装兵の効果発動や

 相手のフィールドのカードを1枚、ホラガ―Eを破壊させてもらうでぇ?」

 

「何だと!?」

 

 樹海から大きな盾を両腕に装備した魚人が走ってきて、権現坂のフィールドのホラガ―Eを連れ去り、海へと帰って行った

 

「むふふ、もう、あんさんは召喚権使ってもうたから、これでシンクロは出来んやろ?」

 

「ぬうぅぅ・・・ターンエンドだ。」


『なんと大漁旗選手、1ターン目の権現坂選手のターンでモンスターを召喚したばかりか、シンクロ召喚の妨害までこなしてしまったー!』

 

「わぁ~すごいね、あの人

 1ターン目からシンクロ召喚を妨害してきたよ。」

 

 素良は意外だったのか、大漁旗の事をぽかんとした顔で褒めている

 本来なら、安全に展開できる先攻1ターン目で妨害してきたのだから当然か

 

「権現坂君には悪いが、これは上手いとしか言えないな・・・」

 

「そうね、本業は釣りって言っていたけど、デュエリストとしての腕も相当だわ」

 

「いやいや、まだ、1ターン目だから

 それに言っておくが、あいつ自身は趣味人だから本当の初対面でデュエルしたら、ちょっと強いファンデッキ使いって感じだぞ?」

 

「えっ?それってどういう事?」

 

「あいつは事前にデュエリストの情報を調べているのさ

 ネットだったり、噂だったりからな

 特に権現坂なんて、同じタイプのデッキを使い続けているから、簡単に割れるだろうしな。」

 

「えぇ~それって、卑怯って言うんじゃ・・・」

 

 今度は柚子が、嫌そうな顔で聞いてくるが・・・まぁ、卑怯と言えばなぁ~

 

「別に卑怯じゃないさ

 トーナメント制の大会ではしかたがないことだし、事前情報を得るのが卑怯というのなら、今こうして観戦していることも、2回戦以降戦う相手の情報収集と言えるからな。」

 

「うっ!?た、確かにそうだけど・・・」

 

「有名になるって言うのはそういう事さ

 それに、あなたに勝つためにデッキを組んできました、なんて言われたら結構嬉しいものさ

 有名料だと思って受け取っておけ、沢渡とかモロそのタイプだし」

 

「むぅ~そうね

 戦う前から知られていたから負けましたなんて、デュエリスト失格ね。」

 

 柚子は納得したみたいだな

 さてさて、こういうのが苦手な権現坂は、どうなることやら


「ワイのターン、行くでぇ~ドローや!

 ワイはマジックカード、ワン・フォー・ワンを発動や」

 

「むっ!ならば、手札の増殖するGの効果発動

 相手ターンにこのカードを手札から墓地に送ることで、相手が特殊召喚するたびに1枚ドローする。」

 

 孤島の密林の奥からざわざわとした雰囲気が伝わってくるが、以前と違いその姿は一切見せていない

 どうやら、彼らなりの気遣いらしい

 

「うげぇ~そいつを使うかぁ

 まぁ、仕方ないわ、このカードは手札のモンスターカードを1枚切って、デッキ、手札からレベル1モンスターを1体特殊召喚するんや

 ワイは手札の海皇子 ネプトアビスを捨てて、デッキから屈強の釣り師(アングラップラー)を特殊召喚や!」

 

屈強の釣り師(アングラップラー)「ハァ!!」

      ATK100

 

「増殖するGの効果で1枚ドローする。」

 

 密林の中の一団は、観客の目には分からないスピードで権現坂の下にカードを届ける

 はた目から見たら、権現坂の手元にいきなりカードが現れたかのように見えたことだろう

 

「さらに真海皇 トライドンを通常召喚や」

 

トライドン「ギャオ!」

     ATK1600

 

 大漁旗のフィールドに並ぶ、青い肌の魔人の釣り師と幼き海竜、そして氷のガーゴイル

 権現坂はその布陣を見て、何か手を打とうとするが残念ながら現状では何も打てる手がなかった

 

「くうぅぅぅ・・・」

 

「さ~てと、ドラゴン・アイスを攻撃表示に変えてバトルや!

 いてもうたれ!ドラゴン・アイスで超重武者グロウ―Vを攻撃や!!」

 

ドラゴン・アイス「ガアアァァァァァァァ!!」

        DEF2200→ATK1800

 

 氷の爪が鋼鉄の体を引き裂き、爆発を起こす

 爆風が権現坂を襲い、その体を後退させた

 

「ぐううぅぅぅぅ・・・何のこれしき!

 グロウ―Vの効果発動、自分の墓地にマジック、トラップカードがないとき、デッキの上から5枚を確認し、好きな順番でデッキの上に戻す。」

 LP4000→2300

 

(グロウ―Vの墓地効果は・・・う~ん、まぁ、どうにかなるやろ)

「さぁ、次行くでぇ!屈強の釣り師(アングラップラー)でダイレクトアタックや!」

 

「墓地のグロウ―Vの効果発動

 相手の直接攻撃宣言時このカードを除外し、デッキの1番上のカードをめくり、そのカードが超重武者ならば手札に加え、攻撃モンスターの攻撃力を0にする。

 超重武者でなかった場合は、そのカードは墓地に送られる。」

 

(使うて来たか、屈強の釣り師(アングラップラー)の効果は諦めるかぁ)

 

「デッキトップはクリアクリボーよってこのカードは墓地に送られる、くっ!?」

 LP2300→2200

 

(なる~そういう事かぁ~でも後悔させたるでぇ)

屈強の釣り師(アングラップラー)がダイレクトアタックで相手にダメージを与えたから、効果を発動させてもらうでぇ!

 ワイの墓地からモンスターを1体、守備表示で特殊召喚や!来い、海皇子 ネプトアビス」

 

ネプトアビス「はっ!」

      DEF0

 

 青い鎧に三又の槍を構えた美青年が、さらに並び立つ

 心なしか、トライドンが嬉しそうにしている

 

「増殖するGの効果で1枚ドロー」

 

「どんどん行くでぇ!トライドンでダイレクトアタックや!」

 

「させぬ!相手の直接攻撃宣言時、墓地のクリアクリボーを除外し効果を発動する!

 俺はデッキから1枚ドローし、そのカードがモンスターならば、そのモンスターを特殊召喚し戦闘モンスターと強制戦闘をさせる。

 俺の引いたカードは・・・超重武者ビックベン―Kだ!!」

 

ビックベン―K「ベンケェー!!」

       DEF3500

 

 深き青の海竜の前に立ちあがる巨壁、白と橙の機械武者、ビックベン―Kは手に持つ刺又を振るい突風を起こしトライドンと大漁旗を吹き飛ばす

 

「うひぃ~!?めちゃ硬いのが出て来おったなぁ」

 LP4000→2100

 

『此処で来ましたー!守備表示で守備力を使い攻撃できる権現坂選手の代名詞ともいえるモンスター、ビックベン―K!!』

 

「俺はここで負けるわけにはいかん!遊矢を超えるまではな!!」

 

「はは、めっちゃ気合いはいっとんなぁ~

 でも、ワイだって、負けるつもりは毛頭ないんや、ガチで行かせてもらうで

 メイン2に入って、海皇子 ネプトアビスの効果発動や

 1ターンに1度、デッキから海皇モンスターを1体墓地に送ることで、ネプトアビス以外の海皇カード1枚をデッキから手札に加える

 ワイはこの効果で海皇の竜騎隊を墓地に送って海皇の重装兵を手札に加えるでぇ」

 

「くっ!?またそのモンスターか・・・」

 

「それだけやない、水属性モンスターの効果の発動コストとして墓地に送られた海皇の竜騎隊の効果でデッキから海皇の竜騎隊以外の海竜族モンスターを1体手札に加える

 ワイが手札に加えるのは深海のディーヴァや

 

 まだまだ行くで、ワイは真海皇 トライドンの効果発動

 トライドンと自分フィールドの海竜族モンスター、海皇子 ネプトアビスをリリースすることで手札、デッキからこいつを特殊召喚や

 来い、海皇龍 ポセイドラ!!」

 

 竜巻の様に湧き上がる水がトライドンとネプトアビスを飲み込む

 そしてそれがはじけ飛ぶと、そこに居たのは若き海の皇子でも、幼き海竜でもなく、傲慢なる海の皇

 深海のごとき深き青の鱗を煌めかせ、権現坂に向かい咆哮する

 

ポセイドラ「グルル・・・グオオオォォォォォ!!」

     ATK2800

 

『うおぉぉ!!見事なコンボでエースを呼び出し、大漁旗選手に大ダメージを与えた権坂選手ですが大漁旗も負けじと大型モンスターを召喚です!

 いやぁ~大波乱のジュニアユース選手権、まだまだ目が離せませんねぇ~』

 

「おぉ!解説の人、随分と盛り上げてくれるやないか

 でも、まだワイのターンは終わらないでぇ~

 おっと、その前にトライドンの効果の続きや、アンさんのモンスターの攻撃力を300ポイントダウンさせてもらうでぇ」

 

 ビックベン―K DEF3500

         ATK1000→700

 

「ぬぅ、増殖するGの効果で1枚ドロー

 だが、ビックベン―Kは元より守備表示、そして守備力を攻撃力として使い守備表示のまま攻撃できる

 攻撃力をいくら下げても無駄だ!」

 

「わかっとるわいそんなこと

 あ~ネプトアビスが水属性モンスターの効果発動コストとして墓地に行ったことで、効果発動や

 墓地からネプトアビス以外の海皇モンスターを特殊召喚させてもらうでぇ

 来いや、海皇の竜騎隊!」

 

海皇の竜騎隊「「「ハッー!!」」」

      ATK1800

 

 ポセイドラを護衛するように海竜の乗った半魚人の騎士たちが現れ、忠誠を示すかのように槍を掲げ声を上げた

 

「特殊召喚されたので1枚ドロー」

 

「さて、その堅そうなモンスターは退場してもらうで

 あぁ、言い忘れとった!屈強の釣り師(アングラップラー)はチューナーモンスターなんや」

 

「チューナーだと!?それでは!?」

 

「あた~り~ワイはレベル5のドラゴン・アイスにレベル1の屈強の釣り師(アングラップラー)をチューニング

 シンクロ召喚!来るんやレベル6!獣神ヴァルカン!!

 

ヴァルカン「グオオオォォォォォン!!」

     ATK2000

 

 進化の光の中から現れるのは赤熱した大槌を振るう虎の獣人

 

「くっ!?シンクロ召喚も特殊召喚だ、1枚ドローする」

 

「ぬふふ、あがけや、あがけや

 獣神ヴァルカンの効果発動、こいつはシンクロ召喚に成功した時、自分及び相手のフィールドの表側表示カードを1枚ずつ選択して手札に戻すんや」

 

「なんだと!?」

 

「ワイのフィールドの海皇の竜騎隊とアンさんのビックベン―Kをバウンスや

 やったれ!ヴァルカン!!」

 

ヴァルカン「グオオオォォォ!!」――ガンッ!!

 

 ヴァルカンが大槌を振るうと大漁旗の背後の海のが荒れ始め、大波が発生し竜騎隊たちはその波に乗り、ビックベン―Kを攫い、海へと消えて行った

 

「なっはっはっはっ!えぇモンが釣れたわ!

 さらにワイはマジックカード、一時休戦を発動

 互いにカードを1枚ドロー、んでもって、次のターンまで互いにダメージは受けへんようになる

 これで次のターンまで、ワイは安全っちゅう訳や

 

 さらにマジックカード、サルベージを発動

 墓地の攻撃力1500以下の水属性モンスターを2体、海皇の重装兵と海皇子 ネプトアビスを手札に加えてターンエンドや」

 

「くっ!俺のターン、ドロー

 俺は超重武者ジシャ―Qを召喚」

 

 ジシャ―Q ATK900

 

「ジシャ―Qを召喚したことにより効果発動

 手札からレベル4以下の超重武者を特殊召喚し、このモンスターを守備表示にする

 俺は手札からチューナーモンスター、超重武者コブ―Cを特殊召喚だ!」

 

コブ―C「コブシッ!」

    DEF900

 

 ジシャ―Q ATK900→DEF1900

 

 紺色のU字磁石を模した機械武者、ジシャ―Qの磁力に引き寄せられ、その身に合わないほどの巨大な拳を持った機械武者、コブ―Cが並び立つ

 だが、機械武者たちは今まさに海の脅威にさらされていた

 

「おっと、シンクロはさせへんでぇ~

 墓地のドラゴン・アイスの効果発動

 手札の海皇の重装兵を捨てて、こいつを特殊召喚

 さらに重装兵の効果で超重武者ジシャ―Qを破壊や!」

 

ドラゴン・アイス「グワッ!!」

        DEF2200

 

 脇に海皇の重装兵を抱えたドラゴン・アイスが現れ、ジシャ―Qに向かって見事なフォームで海皇の重装兵を投げ飛ばし破壊した

 

「なんの!俺は自分フィールド上の機械族、地属性モンスター、超重武者コブ―Cをリリースし、このモンスターを守備表示で特殊召喚する

 来い、無限起動ブルータルドーザー!」

 

――ギュルルルルルルッ!

 

 島の密林の奥からキャタピラとエンジン音を鳴り響かせ現れる巨大なブルドーザー

 その車体には赤紫色の幾何学模様が光り輝く

 

 ブルータルドーザー DEF2100

 

「ブルータルドーザーの効果発動

 このモンスターが手札からの特殊召喚に成功した場合、デッキからブルータルドーザー以外の無限起動モンスターを1体、効果を無効にし守備表示で特殊召喚出来る

 現れよ!無限起動スクレイパー!」

 

――ドルルルルルルルッ!

 

 赤い車体に水色の幾何学模様が光る削岩車、スクレイパーが地を割り現れる

 

 スクレイパー DEF500

 

「ブルータルドーザーのこの効果を使ったターン、俺は機械族、地属性モンスターしか特殊召喚出来ない

 さらに俺の墓地にマジック、トラップがないことにより手札からチューナーモンスター、超重武者ホラガ―Eを特殊召喚!」

 

ホラガ―E「イィー!」

     DEF600

 

「ちっ!2枚目かい!」

 

「俺はレベル5の機械族モンスター、無限起動スクレイパーにレベル2の機械族モンスター、超重武者ホラガ―Eをチューニング!

 速きこと風の如く!静かなること林の如し!音無く忍びとどめを刺せ!シンクロ召喚!

 出でよ、レベル7!超重忍者シノビ―A・C!!」

 

シノビ―A・C「ハッー!!」

       DEF2800

 

「さらに超重武者シンクロモンスターのレベルを1つ減らすことによって、墓地の超重武者コブ―Cを特殊召喚できる

 俺は超重武者として扱う超重忍者シノビ―A・Cのレベルを1つ減らし、舞い戻れ!チューナーモンスター、超重武者コブ―C!」

 

 コブ―C DEF900

 

「そして、機械族レベル5モンスター、無限起動ブルータルドーザーにレベル2機械族モンスター、超重武者コブ―Cをチューニング

 シンクロ召喚!並び立て!もう1体の超重忍者シノビ―A・C!」

 

シノビ―A・C「ツェアー!!」

       DEF2800

 

『決まったー!!連続シンクロ召喚ー!!

 ですが、大漁旗選手が前のターンに発動させたマジックカード、一時休戦の効果により、このターン互いにダメージは受けません』

 

「だが、モンスターは破壊できる!

 俺は手札の超重武者装留グレート・ウォールをシノビ―A・Cに装備する!」

 

 機械の忍者の下に主から緑色のおろし金の様な盾が与えられる

 

 シノビ―A・C DEF2800→4000

 

「グレート・ウォールは超重武者モンスターの守備力を1200ポイントアップさせる装備カードとなり、手札、フィールドから装備できる

 行くぞ、バトルだ!グレート・ウォールを装備したシノビ―A・Cでポセイドラを、もう一体のシノビ―A・Cでヴァルカンをそれぞれ攻撃する!」

 

シノビ―A・C「「ハアッー!!」」

 

 緑の大盾を装備したシノビ―A・Cが地面を割り衝撃波でポセイドラを吹っ飛ばし、もう一体のシノビ―A・Cはヴァルカンの鳩尾に手に持った昆をたたき込み粉砕した

 

「よし!俺はこれでターンエンドだ!」


「手札を4枚残して、守備力2800と4000のシンクロモンスターがフィールドに、さらに片方に攻撃すると守備力を0にすることで攻撃を無効にされる、か」

 

「う~ん、中々の布陣だね」

 

「おまけに2体とも元々の守備力を半減してダイレクトアタック可能なシノビ―A・C

 鉄平はこのターンでどうにかしないと負けるなぁ~」

 

「そうね、でもまだ、アクションカードが、あっ!

 そういえば何で大漁旗君もアクションカードを取りにいかないのかしら?

 ビックベン―Kの反射ダメージだって軽減できたかもしれないのに・・・」

 

「アクションカードを取らない・・・って、もしかして」

 

「あぁ、権現坂もなかなかの有名人だからな

 鉄平の奴、切り札のスサノ―Oのことを知ってるんだろうさ

 だから情報にないコンボを作られることを警戒して、自分のデッキにあるカードのみで対処している。」

 

「ぬぅ~有名人の苦悩か・・・先輩も滅茶苦茶メタられていたことがあったなぁ~」

 

「おぉし!いけー!権現坂ー!!」

 

「次のターンで決めちゃえ、権現坂ー!」

 

「頑張ってくださーい、権現坂さーん!」

 

「ねぇ?遊矢はあの2人、どっちが勝つと思う?」

 

「さぁな、勝負は時の運

 でも、負けたくないという気持ちに、デッキは応えてくれるさ」


「やれやれ、なんや、ピンチやなぁ

 でも、ここから巻き返しや!ワイのターン、ドロー!

 よっしゃ!ワイはマジックカード、強欲なウツボを発動するでぇ!

 このカードは手札の水属性モンスターを2体デッキに戻して、その後3枚ドローするんや

 ワイは手札の海皇子 ネプトアビスと海皇の竜騎隊をデッキに戻して3枚ドローや!」

 

『おぉっと!ここで大漁旗選手、手札交換カードを引き当てた!』

 

「うしし、粋なカードが来たやんか

 ワイは手札からマジックカード、大波小波を発動

 ワイのフィールドの水属性モンスターをすべて破壊し、手札から破壊した数と同じ数まで水属性モンスターを特殊召喚や

 ワイはドラゴン・アイスを破壊して、来るんや!伝説を継ぐ者!伝説のフィッシャーマン二世!!」

 

 大漁旗が背にしている海から津波が発生し、大漁旗とドラゴン・アイスを飲み込むとその中から鯱に乗り、ボウガンを構えた野性味あふれる青年が大漁旗を抱えて飛び出し、権現坂とモンスター達に対峙する。

 

フィッシャーマン二世「ハッー!!」

          ATK2200

 

「うへぇー!まさかワイまで波に呑まれるなんて思わなかったわ・・・

 っと、さらにワイは海皇の重装兵を通常召喚や」

 

海皇の重装兵 ATK0

 

「何っ!?重装兵を召喚だと!?」

 

「重装兵の強みは破壊効果だけやないんやで?

 こいつはワイのフィールドで、表側表示で存在する限り、ワイのメインフェイズに1度だけ、レベル4以下の海竜族モンスターを通常召喚できるんや

 ワイは手札からチューナーモンスター、深海のディーヴァを追加で召喚や!」

 

深海のディーヴァ「はぁ!」

        ATK200

 

「んでもって、深海のディーヴァの効果発動や

 こいつが召喚に成功した時、デッキからレベル3以下の海竜族モンスターを1体特殊召喚出来る

 来いや、海皇子 ネプトアビス!」

 

深海のディーヴァ「Ah~」

 

 人魚の歌姫の歌声に誘われて、大漁旗のフィールドに海皇の皇子が再び姿を現した

 

ネプトアビス「ティアァ!」

      DEF0

 

「ネプトアビスの効果でデッキから海皇の竜騎隊を墓地に送って2枚目の海皇の竜騎隊を手札に加えるで、さらにコストにした竜騎隊の効果で3枚目の海皇の重装兵を手札に持ってくるでぇ」

 

「くっ!?また、重装兵が手札に・・・」

 

「ワイは勝負するときはいい餌をぎょうさん用意する性質なんや

 さて、大モン釣る為の準備も整ったことやし、いっちょやりまひょか!

 ワイは自分フィールドのレベル3以下の水属性モンスター、海皇子 ネプトアビス、海皇の重装兵、深海のディーヴァの3体をリリースして、こいつを墓地から吊り上げるで!

 再び君臨や!海皇龍 ポセイドラ!!」

 

ポセイドラ「グオオオオォォォォォォォォ!!」

     ATK2800

 

 大漁旗の3体のモンスターが海へと還り、傲慢なる海の皇を再び目覚めさせた

 さらに海へと還ったものの力により、新たな海のモンスターが海皇龍に付き従う

 

「さらにネプトアビスの効果で墓地から真海皇 トライドンを特殊召喚や」

 

トライドン「グワッ!」

     ATK1600

 

「さぁて、ここからが運試し、マジックカード、貪欲な壺を発動や

 墓地のモンスター、海皇の重装兵2体、獣神ヴァルカン、深海のディーヴァ、海皇の竜騎隊の5体をデッキに戻し、シャッフル、んで、2枚ドローや

 

 うっしゃー!!来たでぇー!!

 ワイは伝説のフィッシャーマンとして扱う、伝説のフィッシャーマン二世をリリースして手札からこいつを特殊召喚や

 生まれ変われ、語り継がれし伝説と共に!伝説のフィッシャーマン三世!!」

 

 フィッシャーマン二世が光に包まれ、乗っている鯱はさらに巨大になり、その手に持つボウガンは水中銃へと変化しさらに洗練された姿へと生まれ変わった三世として、ここに参上した

 

フィッシャーマン三世「ウラアアァァァァ!!」

          DEF2000

 

「この特殊召喚に成功した時、このターンのフィッシャーマン三世の攻撃を封じる代わりに相手フィールドのモンスターをすべて除外できる!」

 

「何っ!?」

 

「2体まとめて、一網打尽や!」

 

フィッシャーマン三世「トォー!!」

 

 フィッシャーマン三世はどこからか投網を持ちだすと、シノビ―A・C達をそれに捕まえ、森の何処かへと投げ捨ててしまった

 

「くっ!?」

 

『おぉっと!!権現坂選手、強力な布陣を一気に崩され、一転してピンチー!!

 ダイレクトアタックを受けたら終わってしまうぞー!!』

 

「これで終いや!バトル!トライドンとポセイドラでダイレクトアタックや!!」

 

 トライドンとポセイドラの水流ブレスが権現坂に迫るが

 

――バッシュー!!

 

 それを遮るように現れた鋼鉄のカカシによって阻まれた

 

「なっ、なんや?」

 

「俺は手札から速攻のかかしの効果を発動させた

 このカードを手札から捨てることで相手のダイレクトアタックを無効にし、バトルフェイズを終了させる。」

 

「ちぃ!」

(まだ、防御カード持ってたんかいな

 アクションカードもあんま使いとーないし、レベル10にさせないように調整せんとあかんし、ホンマ、やり難いお人やで・・・)

「ワイはメイン2でトライドンの効果を発動

 ポセイドラとこいつをリリースして、デッキから2体目のポセイドラを守備表示で特殊召喚して、ターンエンドや」

 

 ポセイドラ DEF1600

 

「俺のターン、ドローだ」

(テンB―Nか・・・だが、この手札ではホラガ―Eを破壊された後は・・・いや、まだ希望はある!)

「俺は墓地の無限起動スクレイパーの効果を発動、墓地の機械族、地属性モンスターを5体デッキに戻すことで、デッキから2枚ドローする。

 俺は墓地の超重武者ジシャ―Q、速攻のかかし、無限起動ブルータルドーザー、超重武者装留グレート・ウォール、超重武者ホラガ―Eの5体をデッキに戻し2枚、ドローだ!!」

 

 権現坂のドローによって風が巻き起こり、島の木々を揺らす、そして、その手の中にあるカードたちを見て権現坂は目を見開いた

 

(こ、このカードは!?そうか、遊矢、お前が力を貸してくれるのか!)

 

 権現坂は観客席にいる遊矢を一瞥する

 尊敬と信頼を寄せる頂に居る好敵手、だが彼に挑む前に

 

「目の前の壁を乗り越えなければなるまい!!」

 

「おっと、アンさんが何かやらかす前にこいつを発動させておくで!

 手札の儚無みずきの効果発動

 こいつを墓地に送ることで、このターン中、ワイはアンさんがモンスターを特殊召喚するたびにその攻撃力分のライフを回復するんや

 ただし、ライフを回復できんかったら、ワイのライフは半分に成るけどな

 さぁ、どうするんや?」

 

「そんなことで俺は揺らがん!

 自分フィールド上にモンスターが存在せず、相手フィールドに2体以上のモンスターが居る場合、手札から超重武者テンB―Nを特殊召喚出来る!」

 

テンB―N「ビン!」

     DEF1800

 

「そのモンスターの攻撃力は800、よってワイのライフは800回復や」

 LP2100→2900

 

「さらにテンB―Nは召喚、特殊召喚された時に墓地のテンB―N以外のレベル4以下の超重武者を1体、守備表示で特殊召喚できる

 戻ってこい!チューナーモンスター、超重武者ホラガ―E!」

 

ホラガ―E「イィー!」

     DEF600

 

「儚無みずきの効果で300回復っと」

(ホラガ―Eにはアドバンス召喚の素材になった時、蘇生する効果があったなぁ)

「だったら、決まりや!

 ワイは墓地のドラゴン・アイスの効果を発動し、手札の海皇の重装兵を捨ててドラゴン・アイスを特殊召喚や

 んでもって、重装兵の効果でホラガ―Eを破壊や!」

 LP2900→3200

 

 2ターン前の再現のように現れるドラゴン・アイスと射出される海皇の重装兵

 今度はホラガ―Eを海送りにした

 

「まだだ!俺は超重武者装留ダブル・ホーンを超重武者であるテンB―Nに装備

 さらにダブル・ホーンの効果、1ターンに1度、このカードの効果でこのカードが装備されている時、装備されているこのカードを特殊召喚出来る!」

 

超重武者装留ダブル・ホーン DEF300

 

 一瞬、テンB―Nと合体する巨大な角付きの兜の様な機械は即座に分離し、テンB―Nと並ぶ

 なお、その仰々しい見た目に反し攻撃力は0である

 

「俺は超重武者テンB―Nと超重武者装留ダブル・ホーンをリリースし、アドバンス召喚!

 共に勝利を掴もうぞ!超重武者ビックベン―K!!」

 

ビックベン―K「ウオオオォォォォォ!!ベン、ケエェェェ!!」

       ATK1000→DEF3500

 

 勇ましく再び戦場に舞い戻りし機械の巨漢ビックベン―Kが雄叫びを上げる

 

「ビックベン―Kは召喚・特殊召喚した時、表示形式を変更できる

 さらに超重武者装留シャイン・クローとイワトオシをビックベン―Kに装備する。」

 

 橙の機械武者に赤青銀で彩られた鋼鉄の爪と紺色の梓弓がそれぞれの腕に装備される

 

「シャイン・クローは超重武者モンスターに攻守を500アップさせる装備カードとして、イワトオシは貫通能力を与える装備カードとして手札、フィールドから装備できる!」

 

 ビックベン―K DEF3500→4000

         ATK1000→1500

 

「はっ!だけどなぁ、アンさんがめっちゃ特殊召喚してくれたおかげでワイのライフもだいぶ増えたわ、おおきにな」

 

「ならば、もう少し増やしてやろう

 俺は超重武者装留シャイン・クローの効果発動、装備を解除し特殊召喚する!」

 

 超重武者装留シャイン・クロー DEF500

 ビックベン―K   DEF4000→3500

           ATK1500→1000

 

 ビックベン―Kの腕から、ブースターを起動させ、分離するシャイン・クロー

 空を幾分か飛んだあと、ビックベン―Kの隣に並んだ

 

「な、なんやと!?どういうつもりや!?

 わざわざ、ステータスを落としてまで分離させるなんて・・・」

 LP3200→3700

 

「いや、好敵手(とも)から譲り受けたこのカードが、俺のモンスターを繋ぐ!

 俺はスケール8のEM(エンタメイト)カード・ガードナーをペンデュラムゾーンにセッティングする!」

 

「なんやて!?」

 

『なんとー!?』

 

 権現坂のフィールドに立ち上る光の柱、その中にはカードそのものをデフォルメしたかのようなモンスターが鎮座する

 その光景を見てある2人を除き、会場の誰もがどよめいた


(あれが、遊矢があの時渡したカード・・・)

 

「ちょ、ちょっと!?なんで、権現坂がペンデュラムを、それもEMを使ってるのよー!?」

 

「俺がやったからだが?」


EM(エンタメイト)カード・ガードナーのペンデュラム効果を発動

 1ターンに1度、自分フィールド上の表側守備表示モンスターを1体選択し、そのモンスターの守備力を自分フィールドの全ての表側表示モンスターの元々の守備力の合計値にする。

 俺はシャイン・クローを選択し、ビックベン―Kの守備力をプラスする!」

 

 超重武者装留シャイン・クロー DEF500→4000

 

「んな滅茶苦茶な!?」

 

「そして、ビックベン―Kは超重武者モンスターを守備表示で守備力を使い攻撃を可能にする効果を持つ!

 バトルだー!行け!超重武者ビックベン―K!海皇龍 ポセイドラへ攻撃!!」

 

 ビックベン―Kの腕に付けられた巨大な梓弓が弦を引き発射体制へと入る

 

「いや、まだや!貫通効果を持っているのはビックベン―Kのみ!

 まだまだ終わらへんで!!」

 

「いや、終わりだ!!

 今こそ力を合わせる時!手札から超重武者オタス―Kの効果を発動

 自分の墓地にマジック、トラップカードがない場合、自分の守備表示モンスターが相手モンスターと戦闘を行うダメージ計算時にこのカードを手札から捨て、その戦闘を行う自分のモンスターの守備力にダメージ計算時のみ、自分フィールド上の別の超重武者モンスター1体の守備力を加える。

 俺はシャイン・クローの守備力をビックベン―Kに加える!!」

 

「なっ!?それじゃ!?」

 

「ビックベン―Kの守備力は7500だー!!」

 

 ビックベン―K DEF3500→7500

 

 引き絞る弦は限界まで、その矢には仲間の力を込めて、発射されたその矢は傲慢なる海の皇を穿ち

 

「ぬわあああぁぁぁぁぁぁ!!」

 LP3700→0

 

――バッシャーン!!

 

 大漁旗は海へと落ちた

 

「いや~やっぱアンさん強いなぁ~完敗やぁ」

 

「いや、俺もギリギリだった。」

 

「ホンマかぁ?まぁええわ

 また機会があったらデュエルしようや」

 

「うむ、この男、権現坂、いつでも相手になろうぞ!」

 

 ふむ、鉄平と権現坂は割と仲良くなれそうな感じだな

 さて、ナイト・オブ・デュエルズはエースがあんな感じだから、期待薄として、未知夫と北斗か・・・

 デッキの相性的に未知夫かなぁ?

 そして、原作と同じように真澄と柚子か・・・前倒しで仲良くなってたし、記憶も霞んでないはずだから、どうなるかな?




「2回戦出場ね、一応、おめでとうと言っておくわ、刃」

「おう、ありがとよ!
 しっかし、やっぱあいつらと比べたら物足りなくなっちまうなぁ~
てか、真澄の相手って」

「そうよ、柊柚子、リベンジマッチってことになるかしらね?」

「おいおい、それってめっちゃ燃える展開じゃねぇか!
 かー!!絶対、俺も2回戦抜けて3回戦であいつと戦ってやるぜ!!」

「ふふ、マルコ先生に鍛え直してもらったこのデッキで、今度は勝ってみせるわ!
 次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
 『魂の輝き』
 っていうか、何で北斗はあんな所で白くなってるのよ?」

「あ~まぁ、仕方ねぇんじゃねぇか?
 1ターン目から出したモンスター全て破壊されちゃぁな・・・」


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魂の輝き

≪ジ・・・・・ジジ・・・・・≫

 AIが消え、遊作が姿を消した、だがそれでも世界は回り続ける

≪ジ・・・・・ジン・・・・ル・・イ・・・・・≫

「藤木君どこ行ってしまったのでしょうか?」

「さぁな、でもいつか必ず帰って来るさ」

 世界を守った者たちが舞い戻った日常、これからも続いていく変わらぬ世界

「おっしゃー!勝ったぜー!」

「あら?島君、また勝ったの?」

 それはほんの小さな違和感

≪ジンルイ・・・・シ・・・シシン・・・・≫

「ねぇ、財前さん、綺久を見なかった?」

「えっ?見ていないけど?」

「まったく、あいつが学校をサボるなんてどこに・・・」

 平和な日常が

≪ジ・・・ンル・・・イ・・・・・・・・・シン・・・カ・・・・≫

ハックされる

「なんでだ、なんであいつが!?」

「やめてお兄様!?」

「やめろ!子供たちにさわるな!!」

 変えられていく人々、肉親も友人もすべてが書き換えられていく

≪ジンルイ・・・シンカ・・・・・≫

「くっ!草薙さんまで・・・」

「もう、どうすればいいの・・・」

「諦めるな!まだ方法はあるはずだ!」

 街が、世界が、全てが敵となった世界で

「藤木君!」

 彼が帰ってくる、再び戦うために

遊戯王VRAINS『ネオハノイ』編 2019年10月より放送


しません
お久しぶりです、色々とごたごたしていましたが落ち着いたので更新です
10月からは時間が取れそうなので週1以上で更新できたらと思います
 それと終わってしまいましたねヴレインズ
全体だと盛り上がりに少し欠ける感じでしたが先のストーリーで希望がありそうで、なかなかいい終わり方だったような気がします
ちなみに上の妄想の黒幕は一期で消えたすべての元凶の残流データです
 リボルバーまで乗っ取られたり、遊作と合流した面々がAIを復活させようとしたりするストーリーが頭をよぎりましたが、とりあえず封印しておきましょう

では、ストロング柚子と記憶がくすんでいない真澄ちゃんの2戦目どうぞ


「これデ最後デス!ランプの魔精ラ・ジーンでダイレクトアタック、なのデス!」

 

「きゃああぁぁぁぁ!!」

 LP1200→0

 

『決まりましたー!!LDS留学生対決、ノルディック校のオルガ選手を制し、勝利を勝ち取ったのは・・・アナトリア校のハリル選手だー!!』

 

――ワアアアァァァァァァァァ!!

 

「オォ!ダイジョブですカ?オルガ?」

 

「ふん!勝者の情なんていらないわ!

 貴方、いいこと?この私に勝ったのだから、次も勝ち抜きなさいよね!」

 

「アハ!応援してくれるのデスね!ウレシイです!私ガンバリます」

 

「ちょ!?そんなんじゃないわよ!?」

 

『Oh~美しかな友情、言葉で伝わらなくてもデュエルで伝わるとはよく言ったものですねぇ~

 さぁ~アクション、スペクタクル、こってりマシマシでお送りしてきましたジュニアユース選手権

 海外からの特別参加チーム、ナイト・オブ・デュエルズは、まさかの全員一回戦敗退!!

 昨年度優勝者の勝鬨選手も敗れ、先の見えない展開が続いております

波乱万丈の一回戦も次で最後の試合です!』


「今日のオオトリが柚子か~お客さんは大盛り上がりだね?」

 

「言わないで!?緊張しちゃうじゃない!?」

 

 素良が試合前の柚子をからかって遊んでいる

 いや、柚子よ、エンタメデュエリスト目指しているんだから、観客が居るくらいで緊張するなって・・・

 変な所でヘタレなんだから・・・

 

「観客に見られているからって、緊張するな!

 そんなことじゃ、エンタメデュエリストになんか成れないぞ?」

 

「うっ!?お、お父さん・・・でも・・・」

 

「でもじゃない!!人を笑顔にしたいなら、まず自分が笑顔じゃないといけないんだ!

 それに、相手はあの真澄ちゃんだろ?緊張している暇なんてないぞ?」

 

「う、うん・・・」

 

 鞭じゃ、踏ん切りがつかないか・・・しかたない

 

「柚子」

 

「遊矢?」

 

「観客が居て、緊張するなら気にするな」

 

「えっ?」

 

「代わりに、相手の顔を真っ直ぐ見るんだ

 デュエルが始まれば2人だけの世界だ、全力でぶつかり合うことだけ考えろ

 相手も全力でかかって来るんだから、全力で答えないと、エンターテイナー以前にデュエリストとして失格だぞ?」

 

「そうだ、柚子!お前はお前らしくデュエルをすればいいんだ!気合を入れろー!!

 気合いだ!気合い!!気合で熱血勝負だ!!」

 

「・・・そうね、エンターテイナーとしてはまだまだでも、せめてデュエリストとしては胸を張れるようにならなくちゃね!

 よーし!!気合入れていくわよー!!」

 

「そうだ、柚子!熱血だ!!」

 

『『熱血だー!!』』

 

 やれやれ、持ち直したみたいだな

 持ち直し過ぎて、空回りしなきゃいいけど

 

「はぁ~まったく、手のかかる弟子だな~」

 

「ははは、ほんと、手間がかかるうえに親子そろって暑苦しいことで・・・」

 

 ちょっと、羨ましいかもな・・・


『今、熱き思いが、ここに集う!Let’s blast it!

 皆様!お待たせしました。

 クールタイムも済んだところで、本日最後の熱を投入しましょう!!

 只今より、遊勝塾所属、柊 柚子選手とレオ・デュエル・スクール所属、光津 真澄選手の試合を開始します!!』

 

――ワアアアァァァァァァァァ!!

 

 うぅ・・・やっぱり、スタジアムはすごいわね、しかも超満員だし・・・って、ダメ、ダメ、ダメ、ダメ!!

 ますは、相手を、真澄のことをちゃんと見なきゃ!

 

「ふふ、お久しぶりね」

 

 私を見据える赤い目の少女、そのたたずまいは緊張の一欠けらも見せていない

 はぁ~やっぱり、私ってば、デュエリストとしても未熟だなぁ~

 観客がいるぐらいで、縮こまっていちゃだめだよね!

 

「ふぅ~……うん、久しぶり、初戦が貴女なんて、奇遇ね」

 

「えぇ、本当に

 でも、今日はあの時の様にはいかないわよ?

 この日の為にマルコ先生に鍛え直してもらったんだから」

 

「えぇ、私もよ

 このデュエルで、さらに進化した私を見せてあげる!」

 

「いいわ!折角の大会ですもの

 それくらいでないと歯ごたえがないでしょう、お互いにね。

 あなたの輝きが、どれほど増したか、見せてみなさい!!」

 

『おぉ、両者のボルテージも最高潮

 では、さっそく、フィールド魔法の選出です

 マシンによって、ランダムに選ばれたフィールド魔法カードは・・・』

 

 スタジアムの上空に無数の光のカードが現れ、球を成し、その中に巨大なカードが浮かび上がる

 そして、弾けるように光のカードが散らばると無数の橋が描かれた1枚のカードが表を向く

 

『アクションフィールド、オン!

 フィールド魔法、無限架橋、発動!!』

 

 柚子と真澄の居たスタジアムの地面は消失し、簡素な手すりしかない、あみだくじの様に不規則に架けられた橋が出現し、フィールドの形成と共に上昇していく

 

『さぁ、出来上がりましたのは、一歩、足を踏み外せば奈落に真っ逆さま!

 この緊張感あふれるフィールドでジュニアユースコースの2つの蕾、どちらが大輪の花を咲かせるのか注目です!』

 

 なんとなく下をのぞいて見ると、先が見えないほど暗くなって、架けられた橋も無数に続いている

 実際はスタジアムの地面があるんでしょうけど、落ちたらただで済みそうにないわね・・・

 

「あら、怖気づいたのかしら?」

 

「冗談、さぁ、早速始めましょ!

 戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が!」

 

「モンスターと共に、地を蹴り、宙を舞い!」

 

「「フィールド内を駆け巡る!

 見よ!これぞ、デュエルの最強進化系!!」」

 

『アクショーン!!』

 

『『決闘(デュエル)!!』』

 

 私達は開始と共に走り出す、橋の上には・・・なさそうね

 

「先にやらせてもらうわよ!

 私は永続魔法、ブリリアント・フュージョンを発動

 このカードの発動時に、自分のデッキの融合素材モンスターを墓地に送ることで、ジェムナイト融合モンスターを融合召喚するわ」

 

 いきなり、デッキ融合!?

 

「私はジェムナイト・アイオーラ、ラズリー、ラピスの3体を融合

 神秘の力秘めし碧き石よ、愛を胸に秘めて、永遠の輝きとなれ!融合召喚!!

 現れなさい!輝きの淑女!レベル10、ジェムナイトレディ・ブリリアント・ダイヤ!」

 

 3つの青の輝きを持つ騎士たちが交わり、七色の輝きと共に金剛石の力を持つ女騎士へと生まれ変わる

 

ブリリアント・ダイヤ「はっ!!」

          ATK0

 

「この効果で呼び出したモンスターは攻撃力、守備力が0となり、このカードがフィールドから離れた場合、破壊されるわ

 そして、効果で墓地に送られたジェムナイト・ラズリーの効果発動

 墓地の通常モンスター、ジェムナイト・ラピスを手札に加えるわ」

 

 実質、手札消費なしで高レベル融合モンスターの召喚・・・

 今は攻撃力0だけど、厄介な効果持ちだし、アクションカードを取られたら有って無い様なデメリットね

 

「そして、レスキューラビットを通常召喚よ」

 

レスキューラビット「きゅ?」

         ATK300

 

 真澄の頭の上に何故か現れる、ヘルメットを被った可愛らしい兎、確か効果は・・・まずいじゃない!?

 かわいいとか思っている場合じゃないわ!?

 

「レスキューラビットの効果発動

 1ターンに1度、このカードを除外して、デッキからレベル4以下の同名通常モンスターを2体特殊召喚するわ

 現れなさい、2体のジェムナイト・ラピス!」

 

ラピス「はっ!」

   DEF100

 

ラピス「ふっ!」

   DEF100

 

「そして、ブリリアント・ダイヤの効果を発動するわ

 1ターンに1度、自分フィールド上の表側表示のジェムナイトモンスターを墓地に送って、エクストラデッキのジェムナイト融合モンスターを1体、召喚条件を無視して特殊召喚するわ

 私はジェムナイト・ラピスを墓地に送って、グラインド・フュージョン!

 現れなさい!レベル9!ジェムナイトマスター・ダイヤ!!」

 

マスター・ダイヤ「ハッ!!」

        ATK2900→3200

 

 ジェムナイト・ラピスがブリリアント・ダイヤの光を受けて、マスター・ダイヤに変わる

 1ターン目から超大型の融合モンスターを2体も・・・

 それに手札はまだある

 

「マスター・ダイヤの攻撃力は私の墓地のジェムモンスター1体に付き100上がるわ。

 マシックカード、吸光融合を発動させて、デッキのジェムナイトカード、ジェムナイト・フュージョンを加え発動

 手札とフィールドのジェムナイト・ラピス2体を融合

 碧き輝きよ、今真の輝きへと還れ!融合召喚!ジェムナイトレディ・ラピスラズリ!」

 

ラピスラズリ「ふん!」

     ATK2400

 

 ラピスラズリ!まずい!一か八かアクションカードを!

 

「ラピスラズリの効果発動

 1ターンに1度、デッキ、エクストラデッキからジェムナイトモンスターを1体墓地に送って、フィールド上に存在する特殊召喚されたモンスター1体に付き500ポイントのダメージを相手に与えるわ!くらいなさい!!」

 

ラピスラズリ「はあぁぁぁ・・・たあっ!!」

 

 走って逃げる柚子を瑠璃色の光弾が追随し、その足元で爆散する

 

「きゃああぁぁぁぁぁぁ!!」

 LP4000→2500

 

 爆風で吹き飛ばされた柚子は、宙に投げ出され、その先には鉄柱が迫る

 

(!?アクションカード!!)

 

 叩きつけられそうになった鉄柱にアクションカードが張り付いているのを確認した柚子は、体を捻り、態勢を整え、鉄柱を掴む

 

「てええぇぇぇい!!」

 

 気合の声を叫び、鉄柱を軸に回転しアクションカードを手に取ると同時に勢いを殺し、仮想の足場へと着地する

 

「ととっ・・・へへ、アクションカードは先にもらったわよ!」

 

「やるわね、だったらもう一度受けなさい!

 ジェムナイトマスター・ダイヤの効果発動、墓地のレベル7以下のジェムナイト融合モンスター1体を除外してそのモンスターの効果と名前を得るわ

 私は墓地のジェムナイトレディ・ラピスラズリを除外し、さらに効果発動

 デッキのジェムナイト・ラズリーを墓地に送って、もう1500ポイントのダメージよ!」

 

マスター・ダイヤ「ハッ!!」

 

「うっ!くううぅぅぅぅぅぅ!!」

 LP2500→1000

 

 マスター・ダイヤの振った大剣によって生じた風が柚子を襲うが、手すりをがっちり掴み踏ん張り耐え抜く

 

「さらに墓地に送られたラズリーの効果発動よ!」

 

 下層に移動した柚子に続き、真澄も階段の手すりを立ち滑りし追う、その途中でアクションカードを確保して

 

「墓地で通常モンスターとして扱うデュアルモンスターであるジェムナイト・アイオーラを手札に加えるわ

 そして、アクションマジックを墓地に送って、ブリリアント・フュージョンの効果発動

 ブリリアント・ダイヤのステータスを元の数値に戻す」

 

 ブリリアント・ダイヤ ATK0→3400

            DEF0→2000

 

「さらに墓地のジェムナイト・ラズリーを除外してジェムナイト・フュージョンの効果を発動

 墓地からこのカードを手札に加えるわ

 これで私の墓地のジェムモンスターは4体、マスター・ダイヤの攻撃力は3300よ」

 

 マスター・ダイヤ ATK3300

 

「カードを1枚伏せて、ターンエンドよ。」

 

『なんと真澄選手、1ターン目から凄まじい攻撃

 柚子選手のライフを3000も削ってしまいましたー!柚子選手は次のターンを耐え抜けるのか?それともこのターンで逆転か?

 はたまた、このまま敗北してしまうのかー!?』

 

 うぅ・・・あっという間にライフが・・・でも手札は何とか

 

「私のターン、ドローよ

 私は手札のヘカテリスの効果発動 

 このカードを墓地に送ってデッキから永続魔法、神の居城ヴァルハラを手札に加えるわ

 そして、速攻魔法、手札断殺を発動

 互いのプレイヤーは手札を2枚捨て、その後2枚ドローする。」

 

「来たわね、手札交換カード!とうっ!!」

 

 真澄は近くのポールに捕まり滑り降り、途中にあるアクションカードを入手する

 

「あなたのカード利用させてもらうわ

 手札のアイオーラとアクションカードを捨て2枚ドローよ

 ジェムモンスターが増えたことにより、マスター・ダイヤの攻撃力がアップするわ」

 

 マスター・ダイヤ ATK3300→3400

 

 さすがにジェムナイト・フュージョンを捨ててはくれないか・・・

 

「私はイーバと幻奏の音女エレジーを捨てて2枚ドロー

 そして、墓地に送られたイーバの効果で、このカード以外の墓地、フィールドの光属性、天使族モンスターを2体まで除外して、デッキからイーバ以外のレベル2以下の光属性、天使族モンスターを手札に加えるわ

 私は墓地のヘカテリスと幻奏の音女エレジーを除外してデッキからハネワタと幻奏の音女スコアを手札に加えるわ」

 

(ハネワタ、手札に加えて来たわね

 それで次の私のターンを凌ごうって魂胆なんでしょうけど、このカードでそんな甘い考えを打ち砕いてあげるわ)

 

「さらにもう1枚手札断札を発動

 手札のスコアとアクションカードを捨てて2枚ドローよ!」

 

「あら、よっぽど手札が悪かったのかしら?

 だったら私は手札のヴォルカニック・バレットとクリスタル・ローズを捨てて2枚ドローよ」

 

 ヴォルカニック・バレット!?

 何であのカードが真澄のデッキに・・・って、一緒に落ちたクリスタル・ローズも墓地で有利に動くカードじゃない!?

 

「私は永続魔法、神の居城ヴァルハラを発動し効果発動

 私のフィールドにモンスターが存在しない時、手札の天使族モンスターを1体特殊召喚するわ

 来て、幻奏の歌姫ソプラノ!」

 

ソプラノ「AAaaaaaaaa!」

    DEF1400

 

 ドレスに鎧を付けた様な衣装を着て目元をバイザーで隠した女性のモンスターが、甲高い声を響かせながら現れる

 

「ソプラノが特殊召喚に成功した時、墓地のソプラノ以外の幻奏モンスターを手札に加えることが出来るわ

 私は手札断札の効果で墓地に送った幻奏の音女スコアを手札に」

 

(スコアを回収・・・これで攻撃に対しても迎撃するつもりね)

「ふふ、なかなかやるじゃない」

 

「ありがと、でもこれで終わりじゃないのよ!

 私は幻奏の音女アリアを通常召喚」

 

アリア「Ah~」

   ATK1600

 

「そして、幻奏の歌姫ソプラノの2つ目の効果発動

 1ターンに1度、自分のメインフェイズにこのカードを含む融合素材モンスターをフィールドから墓地に送り幻奏融合モンスターを融合召喚するわ!」

 

「融合内蔵モンスター!?」

 

「響き渡れ、天使のさえずりよ!タクトの導きにより、力重ねよ!融合召喚!

 今こそ舞台へ!幻奏の音姫マイスタリン・シューベルト!」

 

マイスタリン・シューベルト「ホホホホホッ!はあっ!!」

             ATK2400

 

 炎のようにうねる髪をたなびかせて、私のフィールドに立つマイスタリン・シューベルト

 まずは、厄介なカードの対処よ!

 

「マイスタリン・シューベルトの効果発動

 このカードが表側表示である限り1度だけ、お互いの墓地のカードを3枚まで選択して除外し、このカードの攻撃力を除外した枚数×200アップさせるわ

 私が除外するのは貴方の墓地のクリスタル・ローズ、ヴォルカニック・バレット、ジェムナイト・ラズリーの3枚よ!コーラス・ブレイク!」

 

 マイスタリン・シューベルトがタクトを振り上げ、真澄の墓地のカードを3枚呼び出し、それをタクトで切り裂いた

 

 マインスタリン・シューベルト ATK2400→3000

 

「私の墓地のジェムモンスターが減ったことによりマスター・ダイヤの攻撃力が下がる。」

 

 マスター・ダイヤ ATK3500→3400

 

「よし!そのままバトルよ!マイスタリン・シューベルトでジェムナイトレディ・ラピスラズリに攻撃!

 ウェーブ・オブ・ザ・グレイト!!」

 

 ラピスラズリの周りに五線譜が現れ、その周りに音符が現れる

 

ラピスラズリ「!?」

 

 捕らわれの身になったラピスラズリに五線譜が巻きつき拘束し、その周りに音符が張り付くと爆発を起こし、ラピスラズリを爆散させた

 

「やったー!とりあえず、1体破壊よ!」

 

 何か妨害がはいるかと思ったけど、それもなかったみたいね、ラッキー

 

「ふふふ、一見正しい事の様に見えても、それが大いなる間違いであることもあるのよ?」

 LP4000→3400

 

「えっ?」

 

「トラップ発動!ブリリアント・スパーク!

 自分フィールド上のジェムナイトモンスターが相手の攻撃または効果で破壊された場合、破壊されたそのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与えるわ!」

 

「なっ!?」

 

「さぁ、ハネワタちゃんを切らないと、負けてしまうわよ?」

 

「うくっ・・・私は手札のハネワタの効果でこのカードを捨てて、このターンの効果ダメージを0にするわ」

 

 くっ!ハネワタを使わせるためのカードというわけね

 そしてマスター・ダイヤが残っているから、次のターンにはまた1500のダメージ

 

「私はカードを1枚伏せて、ターンエンドよ。」

 

「あなたのターンの終わりにブリリアント・ダイヤはブリリアント・フュージョンの効果で攻守ともに0に戻るわ」

 

 ブリリアント・ダイヤ ATK3400→0

            DEF2000→0

 

「私のターン、ドローよ

 ふふ、あなたのおかげでいい手札になったわ

 私は速攻魔法、異次元からの埋葬を発動

 除外されているジェムナイト・ラズリー、クリスタル・ローズ、ヴォルカニック・バレットを墓地に戻すわ

 戻すだからラズリーの効果が発動できないのが残念ね」

 

 そんなことできたらとんでもない手札に成るじゃない!

 

「さらに手札のサンダー・ドラゴンの効果発動よ

 自分のメインフェイズにこのカードを手札から捨てることで、デッキからサンダー・ドラゴンを2枚まで手札に加えるわ

 ヴォルカニック・バレットの効果も発動させて私のライフを500払ってデッキからヴォルカニック・バレットを手札に加えるわ」

 

「一気に手札が!?」

 

「まだまだよ、墓地のクリスタル・ローズの効果発動

 1ターンに1度、墓地の融合モンスターを除外してこのカードを特殊召喚するわ」

 

 クリスタル・ローズ DEF500

 

 フィールドに咲く、赤と白と緑の水晶で作られた薔薇

 だが美しさの裏には危ない棘が隠れている

 

「クリスタル・ローズのもう1つの効果発動

 1ターンに1度、ジェムナイトモンスターを手札、デッキから墓地に送ることでエンドフェイズまで、そのカードと同名カードとして扱うわ

 私が墓地に送るのはジェムナイト・ラズリー」

 

 クリスタル・ローズが光り輝くとジェムナイト・ラズリーの像がホログラムの様に浮かび上がる

 

「そしてラズリーが墓地に送られたことにより効果発動

 墓地のジェムナイト・ラピスを手札に加えるわ

 そして、ブリリアント・ダイヤの効果発動

 ジェムナイト・ラズリー扱いのクリスタル・ローズを墓地に送り、2体目のブリリアント・ダイヤを召喚条件を無視して特殊召喚よ!」

 

ブリリアント・ダイヤ「はっ!」

          ATK3400

 

 2体目!?手札消費なしどころか手札が増えてるし!?

 

「ジェムナイト・フュージョンを発動、手札のジェムナイト・ラピスとジェムナイト・オブシディアを融合

 碧き秘石よ、鋭利なる漆黒よ、光となりて勝利を呼べ!融合召喚!

 レベル5、ジェムナイトレディ・ラピスラズリ!」

 

ラピスラズリ「ふっ!」

      ATK2400

 

「さらに手札から墓地に送られたジェムナイト・オブシディアの効果を発動

 墓地の通常モンスターを特殊召喚するわ

 戻ってきなさい、ジェムナイト・アイオーラ!」

 

 現れたのは薄い青色の鎧を身に纏い水のブーメランを持った騎士

 たしかデュアルモンスターだったわね、効果は・・・うえっ!?

 

「さて、そろそろ終わりかしら?

 ラピスラズリの効果発動、エクストラデッキからジェムナイト・ルビーズを墓地に送って特殊召喚されたモンスターの数×500ポイントのダメージを与えるわ!」

 

『おぉ!フィールドに特殊召喚されたモンスターは柚子選手のフィールドを含めて6体!!

 ライフ1000の柚子選手、絶体絶命!!このまま終わってしまうのかー!?』

 

 ラピスラズリの光弾が6つの光となって柚子に迫る

 

「いえ、終わらせないわ!

 手札のハネワタの効果発動、このターンの私への効果ダメージを0にするわ!!」

 

 がふわふわの綿のような毛を持った天使の羽の生えた生物がそれを全て受け爆発、柚子の周りに羽根と綿が霧散する

 

「さっきのターンでドローしてたのね・・・面白いじゃない!

 このくらいじゃないと張り合いがないわ!

 私はジェムナイト・アイオーラを再度召喚して、効果発動

 1ターンに1度、墓地のジェムナイトを除外して墓地のジェムナイトを手札に加える

 私はジェムナイト・ラピスを除外してジェムナイト・ラズリーを手札に戻す」

 

「うっ!?」

 

 このままじゃ後が無くなる、どこかにアクションカードは・・・

 

「ジェムナイト・フュージョン発動

 手札の雷族モンスター、サンダー・ドラゴンとフィールドのジェムナイト・アイオーラを融合

 秘めたる愛が雷鳴のごとく轟き、英知の輝きとなる、融合召喚

 現れなさい、レベル7、ジェムナイト・プリズムオーラ!」

 

プリズムオーラ「ふん!」

       ATK2450

 

 赤い目を輝かせ七色の輝きを放つ水晶の騎士、その剣には稲妻の力がバチバチと弾けている

 

『なんという事でしょうかー!?

 真澄選手のフィールドが融合モンスターで埋まったー!!

 ストロング石島を長きにわたり、プロデュースしてきた私でさえ、これほど見事に融合召喚を使いこなしたデュエリストは見たことがありません!!』

 

 流石ね真澄、塾で戦った時の何倍も強くなっている

 

「これで終わりじゃないわ

 プリズムオーラの効果発動、1ターンに1度、手札のジェムナイトカードを墓地に送ることで、フィールド上の表側表示カード1枚を選択して破壊する

 焼け落ちなさい!ジェムナイト・ラズリーを墓地に送り、マイスタリン・シューベルトを破壊するわ!」

 

プリズムオーラ「はああぁぁぁぁぁ!!デェアッ!!」

 

「させないわ!!速攻魔法、融合解除!!」

 

 プリズムオーラの剣から放たれた雷がマイスタリン・シューベルトに襲い掛かるが、光に包まれたシューベルトはアリアとソプラノに分離し、プリズムオーラの雷を躱した

 

 アリア  DEF1200

 

 ソプラノ DEF1400

 

「フィールド上の融合モンスター1体をエクストラデッキに戻して、その融合モンスターの融合召喚に使用した素材一組を自分の墓地から特殊召喚したわ

 そして、アリアが特殊召喚されたことにより、私のフィールドの幻奏モンスターは戦闘では破壊されず、効果の対象にならない」

 

「ふふ、うまくかわしたわね

 プリズムオーラの効果が使えなくなっちゃったわ

 墓地に送られたジェムナイト・ラズリーの効果で墓地のアイオーラを手札に加えるわ

 さらにジェムナイト・ラピスを除外して墓地のジェムナイト・フュージョンを手札に戻す」

 

 て、手札が減らない・・・

 

「ジェムナイトマスター・ダイヤの効果発動

 墓地のジェムナイト・ルビーズを除外して効果と名前を得るわ

 

 速攻魔法、大欲な壺を発動

 除外されている自分及び相手のモンスターの中から3体を選びデッキに戻し、持ち主のデッキに加えシャッフルし、その後、私は1枚ドローするわ

 私は私のジェムナイト・ラピスラズリ2体とジェムナイト・ルビーズをデッキに戻し、1枚ドローよ」

 

 ラピスラズリがエクストラデッキに・・・

 ハネワタはもうデッキにないし、次のターン召喚されたら・・・

 

「ジェムナイト・フュージョン発動

 手札の炎族、ヴォルカニック・バレットとフィールドのジェムナイトレディ・ラピスラズリを融合

 絶えぬ炎よ、碧き幸運の下で新たな絆と縁結べ、融合召喚

 レベル7、ジェムナイト・マディラ」

 

マディラ「はっ!」

    ATK2200

 

 ラピスラズリの代わりに現れたのは赤茶けた鎧に身に着け赤熱した腕と剣を持つジェムナイト

 攻撃力を下げた?いえ、中継することで次のターンのクリスタル・ローズのコストを確保するつもりね

 

「2体目のブリリアント・ダイヤの効果発動

 ジェムナイト・マディラを墓地に送り、ジェムナイト・ルビーズを召喚条件を無視して特殊召喚する。」

 

ルビーズ「ふん!」

    ATK2500

 

 あった!アクションカード!!って!?ノーアクション!?

 アクションカードを無効にするって、真澄はコストとしてしか使う気ないのに意味ないじゃない!?

 

「あら?アクションカードを手に入れたのね

 だったらルビーズの効果を発動するわ

 ルビーズは1ターンに1度、ジェムモンスター1体をリリースして、このターンの終了時までこのカードの攻撃力をリリースしたモンスターの攻撃力分アップする

 私はプリズムオーラをリリースしてルビーズの攻撃力をアップ

 そしてこれで墓地のジェムモンスターは5体となり、マスター・ダイヤの攻撃力が再び3400へアップ」

 

 ルビーズ     ATK2500→4950

 

 マスター・ダイヤ ATK3300→3400

 

 攻撃力4950と3400、しかもどちらも貫通効果持ち

 アリアの守備力を2000以上、上回っている

 奇跡じゃ防げない数値に合わせているわね・・・持ってないけど

 

「ついでにさっき手に入れたアクションカードを墓地に送って、ブリリアント・ダイヤのステータスを元の数値に戻すわ」

 

 ブリリアント・ダイヤ ATK0→3400

            DEF0→2000

 

「うっ!?容赦なしってわけね」

 

「当たり前でしょ?特にあなたに対しては、ね

 バトルよ!ジェムナイト・ルビーズで幻奏の音女アリアに攻撃!」

 

「させないわ!手札の幻奏の音女スコアの効果発動

 自分の幻想モンスターが相手モンスターと戦闘を行うダメージ計算時、このカードを手札から墓地へ送り、戦闘する相手モンスターの攻撃力、守備力をターン終了時まで0にする。

 返り討ちよ!アリア!!」

 

ルビーズ「はあぁぁぁぁぁ!!」

    ATK4950→0

    DEF1300→0

 

アリア「Aaaaaaaaaaa!!」

 

 ルビーズの斧がアリアに振り落とされるが、アリアはスコアの力を得て高らかに叫びをあげ、ルビーズを逆に吹き飛ばす

 

ルビーズ「ぐっ!?」

 

「うくっ・・・そうね、そうするしかないわよね!

 でもこれで終わりよ!ジェムナイトマスター・ダイヤで幻奏の音女アリアに攻撃よ!」

 LP2900→1700

 

マスター・ダイヤ「ふん!はあっ!!」

 

 マスター・ダイヤの大剣が炎を纏いながらアリアに迫る

 

マスター・ダイヤ「デェリアアァァァァァァァァァ!!」

 

 戦闘で破壊されないアリア、だけど、あの剣に宿った炎は私を焼くだろう

 敗北を幻視した時、ふと、あの預言者だという子の言葉が思い浮かぶ

 

≪貴方の運命の先に待つのは、貴方が原因で誰かを傷つけてしまう未来≫

 

 私が弱いと、誰かが傷つく?そんなの嫌!!

 

≪あなたが、誰も傷つけたくないというなら、強くなりなさい≫

 

 私は強くなる!誰も傷つけたくない、誰も傷ついてほしくない!だから!!

 

「此処で負けてられないのよ!!」

 

――ガキイィィィィィン!!

 

 スタジアムに甲高く響く金属音、突然の事態に会場の誰もが困惑する

 そして、その金属音の発生地、マスター・ダイヤの大剣の前に灰色の巨躯のナニカがその長い腕を交差させて大剣を受け止めていた

 

「な、なにが!?」

 

「アルカナフォースⅩⅣ―TEMPERANCEの効果!!

 戦闘ダメージ発生時、このカードを手札から捨てて、その戦闘で発生する自分へのダメージを0にする!!」

 

 節制の名を持つ人ならざる天使は大剣から発せられる炎で身を焼かれ、歌の天使とその主人を守り抜き消えた

 

「まさか、最後の手札まで手札誘発の防御カードだったなんてね

 でも、これで貴女の手札はアクションカード1枚だけ、次のターンで引導を渡してあげるわ!

 

 ルビーズの効果を得たマスター・ダイヤの効果でルビーズをリリース

 墓地に置かれた2枚目のヴォルカニック・バレットの効果でデッキから3枚目のヴォルカニック・バレットを手札へ

 さらに墓地のジェムナイト・オブシディアを除外して墓地のジェムナイト・フュージョンを手札へ加えて、このカードを墓地に送って墓地のブリリアント・スパークの効果を発動、このカードを手札に加えるわ

 そして墓地に置かれたジェムナイト・フュージョンの効果でジェムナイト・ラピスを除外し手札へ戻し、カードを2枚伏せてターンエンドよ」

 LP1700→1200

 

 マスター・ダイヤ ATK3400→3300

 

 くっ!真澄のモンスターはこれで全て攻撃力3300以上

 マイスタリン・シューベルトを再び融合しても敵わない

 手札は使用タイミングがないアクションカードだけ・・・このドローに全てがかかっている!

 

「私のターン・・・ドロー!!

 私はマジックカード、強欲で金満な壺を発動

 自分のメインフェイズ1開始時に、自分のエクストラデッキの裏側表示のカードを3枚または6枚をランダムに裏側で除外して発動

 除外したカード3枚に付き1枚、デッキからドローするわ

 ただし、このカードの発動後、ターン終了時まで私はカードの効果でドローできなくなる。

 私は6枚のカードを裏側で除外!!」

 

(ランダムで裏側で除外・・・あの子のエクストラデッキは9枚、シューベルトを呼べなくなるかもしれないのに、こんな賭けに出るなんて)

 

「6枚除外したから、2枚のカードをドロー!!」

(このカードなら・・・エクストラに残っているのは・・・よし!これならいける!!)

「私はソプラノの効果発動、アリアとソプラノを融合して、また力を貸して!融合召喚!!

 幻奏の音姫マイスタリン・シューベルト!!」

 

シューベルト「オホホホホホッ!!」

      ATK2400

 

「マイスタリン・シューベルトの効果で真澄の墓地のジェムナイト・ルビーズ、ジェムナイトレディ・ラピスラズリ、ジェムナイト・マディラを除外して攻撃力を600アップ!

 コーラス・ブレイク!」

 

 シューベルト   ATK2400→3000

 

 マスター・ダイヤ ATK3300→3000

 

(クリスタル・ローズの効果の妨害?でも今更遅いわ)

「それでも私のダイヤの輝きには敵わない!!」

 

「いえ!私は貴女を乗り越えて見せる!!

 マジックカード、トランスターンを発動

 自分フィールド上のモンスターを1体墓地に送り、そのモンスターと同じ属性、種族を持つレベルが一つ高いモンスターをデッキから特殊召喚するわ

 私はレベル6のシューベルトを墓地に送り、デッキからレベル7の幻奏の音姫ローリイット・フランソワを特殊召喚!」

 

ローリイット・フランソワ「ふふっ」

            DEF1700

 

 シューベルトの代わりに戦いの壇上に上がるオオムラサキを連想させる蝶の意匠の入ったドレスを身に纏う貴婦人が幻のように浮かび上がる鍵盤を弾き鳴らす

 

「ローリイット・フランソワの効果発動

 このターン光属性以外のモンスターの効果を発動できなくする代わりに、自分の墓地の天使族、光属性モンスター1体を対象とし、そのモンスターを手札に加える

 私は幻奏の歌姫ソプラノを手札に戻し、召喚!!」

 

ソプラノ「Ah~」

    ATK1400

 

「そのモンスター、ということはまた融合を!?」

 

「そうよ!!

 私はソプラノの効果でソプラノとローリイット・フランソワを融合

 天使のさえずりよ、ピアノの詩人よ、タクトの導きにより力重ねよ!融合召喚!」

 

 2つの光が交じり合う光の中から、無数の花びらと音符がフィールドに舞い、一輪の花が生まれる

 

「今こそ舞台に勝利の歌を!幻奏の華歌聖ブルーム・ディーヴァ!」

 

ブルーム・ディーヴァ「LaLaLa~!」

          ATK1000

 

 花が開き現れるのは天女のごとき羽衣を纏う歌の精、美しい歌がスタジアムに響き渡る

 

「新しい融合モンスター・・・」

 

「行くわ、バトルよ!

 ブルーム・ディーヴァでジェムナイトマスター・ダイヤに攻撃!」

 

「攻撃力の低いモンスターで攻撃ですって!?」

 

「ブルーム・ディーヴァは戦闘、効果では破壊されず、このカードの戦闘で発生する私へのダメージは0になる。

 そして、このモンスターが特殊召喚されたモンスターとの戦闘を行ったダメージ計算後に、戦闘を行った相手モンスターとブルーム・ディーヴァの元々の攻撃力の差分のダメージを相手に与え、その相手モンスターを破壊する」

 

「何ですって!?」

 

「破壊される前にダメージを与えるから、ブリリアント・スパークも発動できないでしょ?

 行って、ブルーム・ディーヴァ!」

 

ブルーム・デイ―ヴァ「Ah~」

 

 フィールドに舞う花弁がブルーム・ディーヴァの歌声に反応し、嵐のごとく舞い踊る

 

「くっ!リバーストラップ発動、重力解除!

 フィールド上の全てのモンスターの表示形式を入れ替える!

 これでバトルは無効よ!」

 

「いえ、そうはさせないわ!

 速攻魔法、禁じられた聖槍をブルーム・ディーヴァを対象に発動!

 これでブルーム・ディーヴァの攻撃力は800ポイント下がって、このカード以外のマジック、トラップの効果を受けなくなったわ

 重力解除の効果を受けるのは貴方のモンスターだけよ!」

 

 吹き荒れる花の嵐と急速に変化した重力によって宝石の騎士たちは構えを取ることが出来ず、その身を無防備に晒す

 そして、ブルーム・ディーヴァはその手に現れた聖槍の穂先を掲げ、声を震わす

 

 ブルーム・ディーヴァ ATK1000→200

 

 マスター・ダイヤ   ATK3000→DEF2500

 

 ブリリアント・ダイヤ ATK3500→DEF2000

 

ブリリアント・ダイヤ ATK3500→DEF2000

 

「あぁ・・・いえ、まだよ!」

 

 一瞬、呆けた真澄であったが、気を持ち直し、アクションカードを手に入れるために目の前のポールを滑って行く

 

「歌い響け!リフレクトシャウト!!」

 

ブルーム・ディーヴァ「Uuuuuuuuuuhaaaaaa!!」

 

 華歌聖の手から放たれた聖槍は輝石の長に突き刺さり。その穂先はブルーム・ディーヴァの声に共鳴し震え、彼の頑強な肉体を崩壊させ始める、だが

 

「でもまだ終わりじゃないわ!アクションマジック、加速!

 効果ダメージが発生するとき、それを無効にするわ!!」

 

 輝石の騎士団を率いる少女は諦めない

 

「いえ終わらせるわ!受けてみなさい!私の勝利へのラストアタック!!

 アクションマジック、ノーアクション!

 アクションマジックの発動と効果を無効にし破壊するわ!」

 

 しかし既に花と歌の精の主たる少女の手の中には勝利の楽譜が握られていた

 

「なっ!?」

 

「これでトドメよ!リフレクトシャウトオォォォ!!」

 

 ブルーム・ディーヴァの声により、聖槍は激しく振動しマスター・ダイヤが爆散した

 

「ふっ・・・本物ね、あなたの輝きは・・・」

 LP1700→0


 夜の闇が支配する一室、そこに一人の少女が佇んでいる

 

「見える、見えるわ・・・」

 

 月の光すら入らぬ部屋を、少女の持つリンゴ型の水晶から放たれる光が照らす

 

「器無き世界に月が昇るとき、地獄の門は開かれ、蟲が荒れ狂い、幽鬼が彷徨い・・・」

 

 水晶に映し出されるのは破滅の始まり、開けてはならぬものを開けてしまった末路、ありふれたストーリー、しかしそういう物語には

 

「そして、王は覚醒する」

 

 希望が残されているものだ

 




所であなた、ずっと制服だけど、そんなミニでよく躊躇なく飛んだり走ったりできるわね(まったく中は見えてなかったけど)

う~ん、塾の経営が大変だった時の癖で、私あんまり服を持っていないのよね
あっでも、ほら、スカートの下にもう一枚穿いているから別に平気よ?

(ジャージ!?レギンスとかハーフパンツじゃなくてジャージ!?
 短く切って穿いているの!?)
はぁ~・・・ねぇ、あなた、今度一緒に買い物に行かない?

えっ?でも、私、あんまり手持ちが・・・

いいから!とにかく、まともな服は一式持ってなさい!

えっ!はい!!
じ、次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『巨影を写す瞳』
なんで、怒られたのかしら?


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巨影を写す瞳

うぅ・・・先週中に投稿できなかった・・・すいません

今回は零羅3本勝負、第二弾素材にすることができない相手をお送りいたします


「大会も今日で4日目、キサマのメガネにかなう奴はいたのか?

 ユースとか言うコースの奴らは児戯にも等しい奴ばかりだが」

 

「あぁ、だがジュニア、ジュニアユースのデュエリストは申し分ない

 まさか、これほどに実力に差が出るとはな・・・」

 

「・・・・・・」

 

 暗がりに浮かぶ無数のモニター

 この大会、いやこの街の全てを監視する管制室

 目の前に映る映像にはデュエリストの戦いを、まだかまだかと待っている観客たちが映し出されている

 

「どうした、ユート?」

 

「いや、良い笑顔だと思っていただけだ・・・」

 

 俺たちの世界から無くなってしまったモノ、奪われたモノ・・・

 またいつか俺たちの世界にも来るのだろうか・・・デュエルを楽しみ、熱くなり、笑顔になる日が

 

「ユート・・・」

 

 そして俺は思ってしまう、この笑顔を壊したくないと・・・

 あのデュエリスト達を戦いに巻き込みたくないと

 

「零児、彼らを戦いに巻き込むのはやめないか?

 これは俺たちの問題だ、エクシーズ次元はまだ落ちてはいない

 この世界に奴らが侵攻してくるのもまだ先のはずだ

 だったらその前に、奴らの本拠地に乗り込み、決着を着ければ・・・」

 

「だめだ!

 気持ちはわかるが、これは私個人や、君たちエクシーズ次元の人間だけの問題ではない

 それに私達だけでは明らかに力不足・・・

 私がランサーズ候補にと用意していた人員でも、君たちに拮抗できるものは極わずか

 このままアカデミアに乗り込んでも返り討ちに遭うだけだ」

 

 正論だ

 俺たちが対峙していたのはあくまで侵攻部隊であり、アカデミアの全貌は見えていない

 

「それに柊 柚子の事もある。」

 

 以前俺が出会ったこの次元の瑠璃と似た顔をした少女

 瑠璃と同じように、彼女を狙いアカデミアが来る可能性は高い、だが

 

「しかし、あんな幼い、君の弟まで戦場に送りだそうなど、正気か?」

 

 そう、赤馬零児の組織するランサーズには候補ではなく、正式な人員として彼の弟、赤馬零羅が記載されていた

 アカデミアに対抗するための実戦部隊と銘を打っておきながら、あんな幼い子供を人員に加える必要はない筈だ

 

「たしかにな

 あんな子供が戦いの役に立つとは思えん、むしろ邪魔だ!」

 

「いや零羅の力は必ず、アカデミアとの戦いにおいて必要になる。」

 

「何故そう言い切れる?」

 

「零羅は・・・私の本当の弟ではない」

 

「「!?」」

 

「ある紛争地帯にいた孤児だった・・・

 そしてその過酷な環境で、生き残るために特異な能力を身につけていた。」

 

「能力?」

 

「自分というものを捨て、他者に成り切る、あるいは他人の指示を完璧に遂行する

 自分は器となり、そこに他者の意志を満たして生きる

 そんな操り人形としての力」

 

 それほど壮絶な過去があの少年に・・・だが

 

「だったら尚更、反対だ!

 俺たちはあの子のデュエルを見ていたが、操り人形などではなかった!」

 

 くじけそうになっても、立ち上がったあの姿は間違いなく決闘者(デュエリスト)だった!!

 物、ましてや兵器などではなかった!

 

「あぁ、そうだな、その通りだ・・・」

(操り人形である零羅は、我々の力となりうる・・・そう母様は言っていたが・・・

 自我の芽生え・・・あの遊勝塾の少女とデュエルしてから零羅は変わってきた

 そのことを母様に話せば舌打ちをするかもしれない。だが私は)


『盛り上がってますかなー!!舞網市ー!!そして全デュエリストの皆様ー!!

 舞網チャンピオンシップも本日で佳境の4日目!!

 ここメインスタジアムの最初のプログラムはジュニアコースの準決勝をお送りします!』

 

――わあああぁぁぁぁぁぁ!!

 

 うひゃ~すごい歓声だぜ

 これがみんな、俺たちのデュエルを身に来た人達だなんて痺れるぅ~

 

『では選手入場です!

 遊勝塾所属、超大型モンスター「壊獣」の使い手

 その痺れるぅ~強さを今日も見せてもらいましょう!原田フトシ選手です!!』

 

「おっしゃ、行くぜ!」

 

「フトシ~!!」

 

「フトシ、頑張れよー!!」

 

「おう!父ちゃん、母ちゃん行って来るぜー!!」

 

『続きましては2回戦では巧みなディフェンスタクティクスと融合召喚で激戦を制した

 レオ・デュエル・スクール所属、赤馬零羅選手です!!』

 

「零羅君もがんばってねー!!」

 

「!?」

 

 ん?なんだ、アユからの応援に驚いたのか?

 まぁ、あいつ声でけぇからな、いきなり聞こえたら驚くのも無理ないぜ

 

『では両者スタート位置に付いたところで、フィールド魔法の選択です

 今回の戦いの舞台は・・・これ!フィールド魔法、ダークタウンの幽閉塔』

 

 照り付ける太陽の日差しが夜闇に消え、明るく活気付く摩天楼と暗いアウトロー街が現れ、2人はその2つの街を繋ぐ橋に鎖の巻きつく高い塔を挟んで対峙する

 

(あっ!?これって沢渡と遊矢兄ぃちゃんがよくデュエルで使っている奴だ!?

 って、ことはあんまりアクションカードを取りにいけないな・・・)

 

『ほの暗いビターな雰囲気漂う、このフィールドの罠を掻い潜り、決勝へと駒を進めるのはどちらか!

 さぁ、参りましょう!戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が!』

 

「モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い!フィールド内を駆け巡る!」

 

「見よこれぞ・・・デュエルの最強進化系・・・」

 

『アクショーン!!』

 

『『決闘(デュエル)』』

 

「・・・先攻は僕から・・・僕は手札から速攻魔法、手札断殺を発動

 互いのプレイヤーは自分の手札を2枚捨てて2枚ドローする・・・」

 

『おぉ~!零羅選手、最初のターンから遊勝塾のお株を奪う、手札断殺を発動だー!』

 

「俺も2枚捨てて2枚ドローだ!」

 

「そして僕は銀塩の魔術師(フィルム・マジシャン)を召喚・・・」

 

銀塩の魔術師(フィルム・マジシャン)「フッ!」

      ATK0

 

「普通のモンスター?」

 

 零羅のフィールドに現れるレンズの付いた帽子にフィルムの意匠がある胴着を着た小さな魔術師

 零羅が普通のモンスターを出したことにフトシは僅かながら驚く

 

銀塩の魔術師(フィルム・マジシャン)は戦闘では破壊されない

 そして、相手モンスターと戦闘するとき相手モンスターと同じ攻撃力となる。

 カードを1枚伏せて、エンドフェイズ

 

 墓地に送られた彼岸の悪鬼 スカラマリオンの効果を発動

 デッキから闇属性でレベル3の悪魔族モンスターを手札に加える。

 僕はCC隻眼のパスト・アイを手札に加える、これでターンエンド」


「戦闘では無敵のモンスター、伏せ1枚、そして手札には起点モンスターらしきカードが入った、っと」

 

「へぇ~普通に強いカード持っているんだねぇ~」

 

 攻撃力をコピーするモンスターではあるけどな、あのモンスター

 にしても『彼岸』も交じっているのか・・・

 まぁ、複数のサーチカードに対応しているパスト・アイがメインのデッキなのだから当然と言ったら当然だけど・・・

 

「遊矢、ここからどうなると思うのだ?」

 

「ん、あ~フトシが負ける要素は少ない、かな?」

 

「遊矢先生、それはどういう事でしょうか?」

 

「前のアユとのデュエルを見る限り、あの子のデッキは属性メタデッキ

 フトシのデッキは単純に属性がバラバラだし、それにレベルが高すぎる。」

 

「あ~そういえばあのCCCって融合モンスター、レベル5、6の水属性モンスターが融合素材だったような・・・」

 

「だろ?アユが言ったようにあの子の主力を出すにはフトシのデッキは基本レベルが高すぎて素材にすることは難しい」

 

 方法がないわけじゃないけど

 

「そうね、戦闘では無敵と言ってもフトシ君のデッキって、そういうの関係ないもの」

 

 そう、フトシのデッキはあのコピーデッキで勝つことは難しい

 高レベル体の融合はあの亡霊が憑りついていないから、ない筈だしな

 自我が希薄またはほぼないというのが原作でのあの子の出だしだった

 それが、神竜アクアバザル、彼岸の悪鬼スカラマリオンと、明らかに戦術として機能するカードがデッキに織り込まれている

 言葉を借りるなら、戦略を考え、戦術を駆使する基礎が育っているということ

 それが誰かのまねである可能性も否定はできないが・・・未来は着実に変わっている

 さてさて、どう転ぶことやら・・・


「よっっしゃー!痺れさせてやるぜー!!

 俺のターン、ドロー!

 俺はまず永続魔法、壊獣の出現記録を発動

 壊獣モンスターが手札、墓地から特殊召喚される度にこのカードに壊獣カウンターを乗せるぜ」

 

 んで俺はお前の銀塩の魔術師をリリースして、こいつをお前のフィールドに攻撃表示で特殊召喚するぜ

 現れろ、電撃壊獣サンダー・ザ・キング!」

 

――ゴロゴロ、ビッシャッ!!

 

「うわっ!?」

 

 ダークタウン上空に暗雲が発生し、雷が銀塩の魔術師(フィルム・マジシャン)を貫く

 それを皮切りに無数の雷が降り注ぎ、それは零羅の頭上で一つとなり、その中から三つ首の竜が出現した

 

サンダー・ザ・キング「ギャアアァァァァ!」「クルルルル!」「キュオオオォォォ!」

          ATK3300

 

 壊獣の出現記録 壊獣C0→1

 

「へへっ!戦闘には無敵だって、リリースできない訳じゃないもんね!

 壊獣が手札から特殊召喚されたから壊獣の出現記録に壊獣カウンターが乗ったぜ

 さらに壊獣の出現記録の効果発動、自分、相手フィールド上の壊獣モンスターを1体破壊して、デッキからその破壊したモンスターのコントローラーのフィールドに破壊したモンスターと名称の異なる壊獣モンスターを1体特殊召喚するぜ

 俺はサンダー・ザ・キングを破壊して対壊獣用決戦兵器メカサンダー・キングをお前のフィールドに特殊召喚するぜ!」

 

 サンダー・ザ・キングの周りの空間が歪み、その姿が改造を施された未来の姿に変わる

 中心の首は巨大なレーザー砲へ、各部に補強パーツやアーマーが装着されたサイボーグ壊獣へと

 

メカサンダー・キング「「キュオオオォォォン」」

          ATK2200

 

「まだまだ行くぜ!相手フィールド上に壊獣モンスターが存在するとき、こいつを攻撃表示で特殊召喚出来る!

 出現!多次元壊獣ラディアン!」

 

ラディアン「フォフォフォフォフォフォフォ!」

     ATK2800

 

 不気味な笑い声のような声を響き渡らせ、黒塗の蟲の様な異星人が摩天楼に出現する

 

 壊獣の出現記録 壊獣C1→2

 

「そして、ラディアンの効果発動

 フィールドの壊獣カウンターを2つ取り除いて、ラディアントークンを1体呼び出すぜ

 俺は壊獣の出現記録の壊獣カウンターを2つ取り除いて、分身だラディアン!」

 

 壊獣の出現記録 壊獣C2→0

 

ラディアン「フォフォフォフォフォフォフォ」

 

ラディアントークン「フォフォフォフォフォフォフォ!」

         ATK2800

 

 虫の鳴き声のような音と共にラディアンの像がぶれ、ラディアンとまったく同じ姿をしたトークンが現れ、ラディアンと共に笑い出す

 

「よし、バトル!

 まずはラディアントークンでメカサンダー・キングに攻撃だー!」

 

ラディアントークン「フォフォフォ!!」

 

 ラディアントークンは摩天楼の大通りを疾走

 それを迎撃するためにメカサンダー・キングは2つの頭から電撃光線を放射

 しかしラディアントークンはビルを足場に軽快に跳び上がるとメカサンダー・キングの背後を取り、そのまま鋭利な爪でコアを貫き破壊した

 

メカサンダー・キング「ギャアァァァァ・・・」――バンッ!

 

「うぅ・・・」

 LP4000→3400

 

「メカサンダー・キングは壊獣との戦闘では破壊されないけど、ラディアントークンは壊獣じゃないから破壊可能だぜ

 んで、がら空きのお前にラディアンでダイレクトアタックだ!」

 

 分身の活躍をビルに腰掛けながら見物していたラディアンはフトシの命を受けて、手に赤い光球を作り出し、零羅に向かって放り投げる

 だが、適当に放り投げられた光球は零羅に直接あたることはなく零羅の背後の街に落ち、爆発する

 

「うわああぁぁ!?」

 LP3600→800

 

『おぉーっと、ここで零羅選手、早くも大ダメージ!』

 

「うぅ・・・はっ!?」

 

 零羅の目に映る焼けた街、それは零羅の過去に刻まれた記憶を刺激する

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ!!」

 

 様子の変わった零羅をフトシは訝しんで声をかける

 

「お、おい、大丈夫かよ?」

 

「はぁ、はぁ・・・」

 

≪私はこんな形でデュエルを終わらせたくない≫

 

「!!」

 

≪だって、あなたとのデュエル、すっごく楽しいんだもん!≫

 

 掘り起こされる記憶、だがそれを上書きするように少女の言葉が零羅の頭に浮かぶ

 そして思う、この戦い(ゲーム)をここで終わらせたくは無いと

 

「だ、大丈夫・・・」

 

「そ、そうか?だったら俺のメイン2いくぜ

 俺はチューナーモンスター、守護竜ユスティアを召喚!」

 

 ユスティア ATK0

 

 フトシの背後に半透明なオーラの様な竜が現れる

 

「チューナー・・・」

 

「おう!俺はレベル7の多次元壊獣ラディアンにレベル2の守護竜ユスティアをチューニング

 シンクロ召喚!浮鵺城!!」

 

 ユスティアが2つの光のリングとなると、ラディアンはその中に飛び込み、光が天へと延びる

 そして、その光に導かれるように夜天の空に巨大な浮かぶ城が出現する

 

 浮鵺城 DEF3000

 

「浮鵺城の効果発動、このモンスターがシンクロ召喚に成功した時、自分の墓地のレベル9モンスター1体を特殊召喚するぜ

 戻ってこい!電撃壊獣サンダー・ザ・キング!」

 

サンダー・ザ・キング「「「ギャオオオォォォォォォォ!!」」」

          ATK3300

 

 壊獣の出現記録 壊獣C0→1

 

 浮鵺城から跳び立つ3つ首の竜、サンダー・ザ・キングが再びダークタウンへと舞い戻る

 

『何と凄まじいフィールドでしょうか!

 超大型モンスターが3体並んでおります

 それだけではなく、浮鵺城の効果によりレベル8以下のモンスターは召喚、特殊召喚したターン中に攻撃できなくする徹底ぶりであります!』

 

「カードを1枚伏せて、ターンエンドだぜ!」

 

「僕の・・・ターン!ドロー

 僕はCC隻眼のパスト・アイを召喚」

 

 パスト・アイ ATK1400

 

(来た、痺れるくらい不気味なモンスター!

 でも、俺のモンスターは融合素材にできないし、属性もバラバラだぜ!

 おまけにレベル8以下のモンスターは攻撃できないしな!)

 

「僕は君の浮鵺城をリリースしてサタンクロースを、君のフィールドに守備表示で特殊召喚」

 

 夜空に浮かぶ浮鵺城、それが突如爆散し、赤と白の体色の悪魔が幽閉塔へと着地する

 

サタンクロース「ハッハッハッハッ!」

       DEF2500

 

「うえっ!?浮鵺城が!?」

 

『なんと零羅選手、原田選手の十八番戦法をやり返した!!』

 

「さらに永続トラップ、DNA移植手術を発動

 フィールドのモンスターすべてを僕の宣言した属性にする

 僕は地属性を選択」

 

 パスト・アイ     属性闇→地

 

 サタンクロース    属性光→地

 サンダー・ザ・キング 属性光→地

 ラディアントークン  属性闇→地

 

「げっ!?属性が統一された!?」

(おまけにこのサタンクロースってモンスター、レベル6じゃねぇか!?)

 

「そして、永続魔法、写真融合(モンタージュ・フュージョン)を発動」

 

「うっ!?やっぱり来やがったか!!」

 

「このカードは1ターンに1度、融合モンスターによって決められた融合素材モンスターが自分及び相手フィールド上にそれぞれ1体以上ずつ存在する場合に、自分フィールド上からのみ融合素材モンスターを墓地に送り、その融合素材モンスターを素材にした融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 僕は地属性となったレベル6のサタンクロースを撮影し、CC隻眼のパスト・アイと融合する!

 聖夜の悪魔よ、我が目に宿りて、その力を捧げよ!融合召喚!

 現れろ!全てを切り裂く鋼の剣!CCC武融化身ロック・ソード!!」

 

 パスト・アイが光に包まれ、その光の中から現れる一振りの剣

 カットラスに似た形状の岩で構成され、柄の近くには目が存在し生物的な印象を醸し出している

 

「地属性!?水属性だけじゃなかったのか!?」

 

「ロック・ソードは攻撃するとき、フィールド上のこのモンスター以外の地属性モンスターの攻撃力の合計分、自分の攻撃力をアップできる。」

 

「ってことは3300と1200と2800と2400で・・・えぇ~と、9700!?

 そんなもん、受けてたまるか!

 

 俺は永続トラップ、壊獣捕獲大作戦を発動

 1ターンに1度、フィールド上の壊獣モンスターを裏側守備表示にして、このカードに壊獣カウンターを置く

 俺はサンダー・ザ・キングを裏側守備表示にする。」

 

 主の命を聞き、サンダー・ザ・キングが川の中に飛び込み隠れる

 

(これで倒しきれなくなった・・・でも!)

「ダメージは避けきれない!行って、ロック・ソード!ラディアントークンへ攻撃!」

 

 ラディアントークンとサタンクロースからオーラがロック・ソードに吸い取られ、背後の倒壊した建物から瓦礫が集まってきて、ロック・ソードがラディアントークンを超すほどに巨大化する

 しかし、フトシもそれを黙ってはいない

 落ちていたアクションカードを即座に拾い発動させる

 

「アクショントラップ、ジャンクショット発動!

 自分フィールド上のモンスター、サタンクロースの攻撃力を400ポイント下げるぜ!」

 

 塔の上で笑い続けていたサタンクロースに何故か巨大なビリヤードの玉が飛来し、サタンクロースを地上に叩き落す

 

 サタンクロース ATK1200→800

 

 ロック・ソード ATK2400→6000

 

「うわぁぁぁぁぁ!!くうぅ、危なかったぜ・・・」

 LP4000→800

 

『何と原田選手、本来ならデメリット効果であるアクショントラップ、ジャンクショットの効果を使いダメージを軽減!

 デメリットすらもメリットに変えるとは、驚きです!』

 

「僕は墓地のネクロ・ディフェンダーの効果発動

 このカードをメインフェイズに除外することで、自分フィールド上のモンスター1体は次の相手のエンドフェイズにまで戦闘で破壊されず、そのモンスターの戦闘による自分への戦闘ダメージも0になる。

 僕はこの効果をロック・ソードに発動」

 

 効果が終了し元に戻ったロック・ソードの背後に頭蓋骨から直接腕が生えている様な見た目の紫のモンスターが現れ、ロック・ソードに自身を吸収させた

 

「僕はカードを1枚伏せて、ターンエンド

 サタンクロースの効果、自身の効果で特殊召喚された時、君は1枚ドローできる」

 

「おっ、いいのか?だったら遠慮なくドローさせてもらうぜ

 さらに俺のターンで、ドロー!

 俺はサンダー・ザ・キングを反転召喚!」

 

――ザバアァァァァン!

 

サンダー・ザ・キング「「「ギュオオォォォォンン」」」

          ATK3300 属性光→地

 

「んで、壊獣の出現記録を発動して、さらに壊獣捕獲大作戦をチェーン発動

 まずは壊獣捕獲大作戦の効果でサンダー・ザ・キングをまた裏側表示へ」

 

 壊獣捕獲大作戦 壊獣C1→2

 

 浮上したサンダー・ザ・キングが再び川の中に潜る

 

「今度は壊獣の出現記録の効果でサンダー・ザ・キングを破壊してデッキから粘糸壊獣クモグスを特殊召喚するぜ!」

 

クモグス「キュオオォォォォォ!!」

    ATK2400

 

 そして、川の中から飛び出す巨大な蜘蛛、奇声を発しながら体を振り、水を弾き飛ばす

 

「さらにマジックカード、おろかな埋葬を発動

 デッキのモンスター、守護竜ユスティアを墓地に送るぜ

 

 もう一発、マジックカード、トライワイト・ゾーンを発動

 墓地からレベル2以下の通常モンスターを3体選択し特殊召喚するぜ

 戻ってこい!3体のチューナーモンスター、守護竜ユスティア!」

 

 ユスティア DEF2100 属性光→地

 ユスティア DEF2100 属性光→地

 ユスティア DEF2100 属性光→地

 

(またチューナー!?

 でも、フィールドは埋まっているし、ロック・ソードは戦闘で破壊されずダメージもない)

 

「俺はレベル7の粘糸壊獣クモグスにレベル2の守護竜ユスティアをチューニング、シンクロ召喚!

 出撃だ!灼銀の機竜(ドラッグ・オン・ヴァーミリオン)!!」

 

――ドルルルルッ!

 

 無数の砲を備えた竜戦車が主の前に立ちはだかるものを撃退するために出撃する

 

灼銀の機竜(ドラッグ・オン・ヴァーミリオン)「ギュオオォォォン!」

     ATK2900 属性炎→地

 

灼銀の機竜(ドラッグ・オン・ヴァーミリオン)の効果発動だぜ

 1ターンに1度、自分の墓地、手札及び自分のフィールドの表側表示モンスターの中からチューナー1体を除外して、フィールドのカードを1枚破壊する。

 俺は墓地の守護竜ユスティアを除外して、お前のロック・ソードを破壊だ!

 ヴァーミリオンメーサー、照射!!」

 

 灼銀の機竜(ドラッグ・オン・ヴァーミリオン)の竜の頭部から青白い雷撃が放たれ、ロック・ソードは派手に火花を上げて爆散する

 

「!?」

 

「いよッしゃー!!

 このままドンドン行くぜ!装備魔法、戦線復活の代償

 自分フィールド上の通常モンスター1体を墓地に送って、互いの墓地の中からモンスター1体を特殊召喚

 再登場だ!多次元壊獣ラディアン!」

 

 ユスティアの1体が消えると、空が割れてそこからラディアンがフィールドに舞い戻ってくる

 

ラディアン「フォフォフォフォフォ!」

     ATK2800 属性闇→地

 

「墓地から壊獣が特殊召喚されたことで壊獣の出現記録に壊獣カウンターが乗る。」

 

 壊獣の出現記録 壊獣C1→2

 

「ラディアンの効果発動

 壊獣捕獲大作戦の壊獣カウンターを2つ取り除いて、ラディアントークンを特殊召喚」

 

 壊獣捕獲大作戦   壊獣C2→0

 

 ラディアントークン ATK2800 属性闇→地

 

「そしてこいつが俺の隠し玉!墓地のギャラクシー・サイクロンを除外して効果発動

 自分のメインフェイズに墓地のこのカードを除外することで、フィールドの表側表示のマジック、トラップカードを1枚破壊する

 俺が破壊するのはDNA移植手術だ!」

 

 空間が捻じ曲がり、発生したワームホールの中に零羅のDNA移植手術が呑み込まれる

 

 ラディアン     属性地→闇

 ラディアントークン 属性地→闇

 灼銀の機竜(ドラッグ・オン・ヴァーミリオン)   属性地→炎

 

『うおぉ!これは零羅選手が最初のターンで使った、手札断殺によって墓地に送られたカード!

 ここに来て、零羅選手、自身のキーカードを潰す結果を作ってしまっていたー!』

 

「これでロック・ソードを復活させても無駄だぜ!

 バトル!灼銀の機竜(ドラッグ・オン・ヴァーミリオン)でダイレクトアタック!」

 

「させない!僕は、負けない・・・まだ!

 トラップ発動、ピンポイント・ガード!

 自分の墓地のレベル4以下のモンスター1体を守備表示で特殊召喚

 この効果で特殊召喚したモンスターは、このターン戦闘、効果で破壊されない

 来て!CC隻眼のパスト・アイを特殊召喚!」

 

 パスト・アイ DEF1000

 

 灼銀の機竜(ドラッグ・オン・ヴァーミリオン)の一斉射を零羅の前に現れたパスト・アイが防ぐ、絶対砕けぬとその眼に意思を込めて

 

「ひやぁ~こいつも駄目か~

 痺れるくらい、硬い奴だぜ・・・だったら、メインフェイズ2

 俺はレベル7の多次元壊獣ラディアンにレベル2の守護竜ユスティアをチューニング、シンクロ召喚!

 出撃だ!2体目の灼銀の機竜(ドラッグ・オン・ヴァーミリオン)!」

 

灼銀の機竜(ドラッグ・オン・ヴァーミリオン)「ギャオオオォォォォォ!」

     ATK2900

 

 え~と、パスト・アイは効果も効かないし、とりあえず邪魔だからこいつにするか

 

灼銀の機竜(ドラッグ・オン・ヴァーミリオン)の効果発動

 墓地の守護竜ユスティアを除外して、サタンクロースを破壊するぜ!」

 

(相手のモンスターはすべて高レベル、僕のデッキにはレベル7以上をどうにかするカードはない

 サタンクロースを破壊されるわけにはいかない!)

 

 落下の衝撃でいまだ蹲るサタンクロースに向かって灼銀の機竜の口の砲門が向けられる

 零羅はエネルギーが放たれる前に、橋を支えているワイヤーにくっ付いているアクションカードをパスト・アイを足場にして、掴み発動させる

 

「アクションマジック、ミラー・バリアをサタンクロースを対象に発動

 このカードはフィールド上のモンスター1体をターン終了時まで効果破壊から守る!」

 

(!?すげぇ~あいつ、このフィールド、トラップが大半なのにマジックを引き当てやがったぜ!!)

「痺れるうぅぅぅぅ!すげぇーな、お前!やられたぜ!

 でも、俺だって負けねぇからな!エンドフェイズ、墓地の対壊獣用決戦兵器メカサンダー・キングの効果発動

 デュエル中に1度だけ、自分のエンドフェイズにこのカードを墓地から特殊召喚する

 メカサンダー・キング再発進だ!」

 

メカサンダー・キング「ギャオオオォォォ!」「キュルルル!」

          DEF2100

 

「壊獣が墓地から特殊召喚されたから壊獣の出現記録に壊獣カウンターが乗るぜ」

 

 壊獣の出現記録 壊獣C2→3

 

(よし、これで次のターンの準備はばっちりだ)

「俺はこれでターンエンド!さぁ、次はどうやって痺れさせてくれるんだ!」

 

 挑発などではなく、純粋に零羅の次のターンが楽しみなフトシ

 だが、着実に彼に追い詰められた零羅は、次のドローをする手が止まってしまう

 

「僕のターン・・・

(さっきはなんとか守れた・・・でも、もう手札も、墓地にも発動できるカードがない・・・どうしよう・・・)

 

 思わず動いた体、だが、もう現状を変えるようなカードは手元にはない

 

(次のドローが最後・・・負けたら・・・)

 

 零羅の心に靄がかかりはじめる

 負けたらどうなる?母は自分を罵るだろう、だが兄はどうするだろうか?そんな考えが頭の中でぐるぐると廻る

 そこで零羅はふと、前のターン自分を守ってくれたモンスター、パスト・アイをみる

 

(兄様のくれたモンスター、兄様のくれたヒカリ・・・)

 

≪君とのデュエルすっごく面白かったから、またやりたいなって、ダメ・・・かな?≫

 

(僕とのデュエルを面白いと言ってくれる・・・)

 

≪痺れるうぅぅぅぅ!すげぇーな、お前!やられたぜ!≫

 

(僕の事を凄いと言ってくれる・・・)

 

 空っぽだった心に言葉が注がれていく、そして、零羅はこう思った

 

(ここで負けたくない!)

「ドロー!!

 僕はマジックカード、アームズ・ホールを発動

 デッキの上から1枚を墓地に送り、このターン通常召喚が出来なくなる代わりにデッキ、墓地から装備魔法を1枚手札に加える。

 僕が手札に加えるカードは幻惑の巻物!」

 

(幻惑の巻物?すっげー古いカードだったような、効果はえ~っと・・・なんだっけ?)

 

「さらに墓地に送られたシャッフル・リボーンの効果発動

 1ターンに1度、このカードを除外し、自分フィールド上のカードを1枚デッキに戻してシャッフルし、その後1枚ドローする。

 僕は写真融合をデッキに戻す!」

 

(融合カードをデッキに戻すのかよ!?)

 

「シャッフル・リボーンの効果でデッキから1枚ドロー

 よし、僕は幻惑の巻物をサタンクロースに装備

 このカードは装備モンスターの属性を僕の宣言した属性に変える

 僕はサタンクロースを地属性に変更」

 

 サタンクロース 属性光→地

 

「そして速攻魔法、パスト・チューニングを発動!」

 

 チューニング!?

 

「このカードは自分フィールド上にCC隻眼のパスト・アイが居る時、相手フィールド上に存在するモンスター1体を選択して発動

 選択したモンスターのレベルが5か6の時、そのモンスターのレベルをエンドフェイズまで3にする。」

 

 サタンクロース LV6→3

 

「モンスターのレベルを調整?チューニング・・・

 まさか、俺のフィールドのモンスターを利用してシンクロ召喚を!?」

 

「そう、そして、パスト・アイはこのカードの効果でチューナーとして扱う

 焼き付けられし聖夜の悪夢、我が目と調和し、その力捧げよ!」

 

 パスト・チューニングにサタンクロースの姿が映し出され、パスト・アイと共に一筋の光となる

 

「現れろ!全てを打ち抜く精巧なる銃!レベル6、CCC撃調化身ロック・シューター!!」

 

 ロック・シューター ATK2200

 

 現れたのは岩でできたボウガンの様なモンスター、だが本体部分には牙や目の様な意匠があり、ロック・ソードよりもさらに生物的な見た目となっている

 

「ロック・シューターは攻撃の際、攻撃力をフィールドのこのモンスター以外の地属性モンスターのレベル×200ポイントアップする。」

 

 今度はレベル合計かよ!?

 あっぶねぇ~さっき、DNA移植手術を破壊してなかったらやられてたぜ

 

「それでもまだ俺のライフは残るぜ!まだまだ痺れ足りないぜ!!」

 

「いや、これで終わり

 ロック・シューターは1ターンに1度、相手フィールド上のモンスターの攻撃力を1000下げる。

 僕はラディアントークンの攻撃力を下げる。」

 

「なんだってー!?」

 

 ロック・シューターの銃口が口の様に展開し、緑色の光線がターゲットマーカーの様にラディアントークンを捉えた

 

 ラディアントークン ATK2800→1800

 

「行って、ロック・シューター!ラディアントークンに攻撃!!

 この瞬間、ロック・シューターの攻撃力は地属性モンスター、サタンクロースのレベル分、レベル3×200で600アップする!」

 

 ロック・シューター ATK2200→2800

 あの状況から、逆転してくるのかよ!!すげぇぜ!!

 

 フトシは零羅の諦めない勇気に感動を受ける

 ロック・シューターから放たれたマグマの様な光線がラディアントークンを貫き、彼は吹っ飛びながら叫ぶ

 

「痺れたぜえぇぇぇぇぇ!!」

 LP800→0


 薄く雲のかかった空の下、無数の薔薇が咲く庭園で少年と少女が、お茶を飲みながらカードで遊んでいる

 

「むむむ・・」

 

 しかめっ面で唸る少女をみて、にやにやとした笑みを浮かべた少年が口を開く

 

「そういえばさぁ~そろそろ、僕、スタンダードに行けって言われそうなんだよね。」

 

「何?それは本当か?」

 

「うん、例の娘が見つかったみたい

 嬉しいなぁ~また、遊び相手が増える。」

 

「むぅ~なぜいつもいつも、お前ばかりが先陣を切れるのだ!

 私なぞ、ここから出たことがないのだぞ!!」

 

「ちょっとちょっと、僕に当たんないでよ

 文句ならプロフェッサーに言えば?」

 

 少年の皮肉に少女の眉間のしわが濃くなる

 

「そのプロフェッサーの所為で出られないんじゃないか!

 私だって先陣を切りたいぞー!戦いたいぞー!!」

 

 曇り空に少女の叫びが空しく響く、その様子を見て少年はある提案をする

 

「だったらさ、切っちゃえば?先陣を」

 

「なんだと!?」

 

「あの勲章おじさんに頼んでさ、転移装置を動かして貰えばいいじゃない

 そうしたら君を探すために僕も向こうに行けるだろうし、向こうの世界の子を連れてこいとも言われるだろうから、僕はその分長く楽しめるだろうしね。」

 

 少年の提案に少女は驚きと歓喜を浮かべて、少年を見る

 

「おぉ!それは名案だな!!

 ならば私はスタンダードで1番強いデュエリストをキサマよりも先に倒しておこう!」

 

「えぇ~一番強いのは僕に残しておいてよぉ~」

 

「いや、私が一番強いのだ!クイーンのフォーカードだ!!」

 

 テーブルに叩きつけられるカード、それを見て少年は笑みを浮かべる

 

「ざんね~ん、キングでファイブカードだよ」

 

「なっ!?ジョーカー入りとは聞いてないぞ!ユーリ!!」

 

「あっはっはっはっ!だって言ってないもん

 それに君、表情に出過ぎて丸わかりだから、ポーカーは向いてないよ?セレナ」

 

 決められた運命がある、だが、既に狂った運命もある

 あずかり知らぬところで外れた歯車は、何時から外れていたのだろうか?

 それは、きっと――




すっげー痺れたぜ!お前とのデュエル!!

痺れる?どこか具合が悪いの?

そうじゃなくてさー!こう、体が興奮してびりびりするって言うか・・・
あっ!次、遊矢兄ちゃんと沢渡のデュエルだ!
これはまた痺れそうだぜ!

・・・次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『未来都市の罠』
あとで辞書で調べよう・・・


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未来都市の罠

長げ~黒咲回と違って5ターンで終わっているのに
でも、帝と妖仙獣、どちらの可能性もある(全く別の可能性もある)相手に勝つ可能性がこれしかなかったんだ


『ジュニアユース、2回戦、第一試合

 本日も最初から濃~いデュエル必至の組み合わせです

 遊勝塾所属、榊 遊矢対、レオ・デュエル・スクール所属、沢渡 シンゴでございま~す!!』』

 

――わあああぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

 大会の四日目・・・原作なら3回戦の2日目だからアカデミアとドンパチしている頃か・・・

 あのバトルロワイヤルでカードにされてしまったメンツはすでに大半が敗退

 このまま何事もなければいいんだけどな・・・

 

 大歓声の中、悠然と歩き思考する遊矢

 その前に現れた男、沢渡シンゴは制服のポケットに手を突っ込み不敵な笑みを浮かべている

 

「よぉ!沢渡」

 

「違うな。」

 

「ん?」

 

 あれ?じゃあ、ネオ・ニュー・沢渡か?いやでも、前にそんなこと言っていたような気がするし

 

「今日の俺は昨日までの俺じゃねぇ

 今日の俺はグレートでフルパワーな沢渡・・・そう!グレイト!フル!沢渡だ!!」

 

「「「「「「グレイト・フル・沢渡さん、最高―!!」」」」」」

 

 グレイト・フル・・・ってか、あいつらもノリノリだな

 

「グレイト・フルか、それはすごそうだ。」

 

「そうだろう!そうだろう!」

 

「だったら今日の俺も一味違うぜ?」

 

「あ?」

 

「今日の俺は榊 遊矢・ダブル・ツイン・マークⅡ・セカンドだ!」

 

「「同じ意味じゃ(ない)ねぇか!!」」

 

 あらら、柚子からも突っ込まれてしまった

 

「ちっ、だがなぁ、ふざけられるのもここまでだぜ?

 このデュエルでてめぇに吠えヅラかかせてやる!」

 

「ほ~」

 

 前に言ってた通り、ペンデュラムでデッキ組んだのか

 1回戦は帝だったところを見ると、俺の時まで取っててくれたのか、粋なことするねぇ~

 EMや魔術師のペンデュラムはそこらにあるらしいけど

 

『お~っと、これは沢渡選手、早くも勝利宣言

 ならば、2人のデュエリストの戦いの舞台を早速用意いたしましょう!

 ではカモン!アクションフィールド、セレクト!

 今回のフィールドは・・・未来都市ハートランドだ!!』

 

「「!!?」」

 

 ハートランド!?


「ハートランド・・・だと?」

 

「キサマどういうつもりだ?」

 

 ユートは動揺、黒咲は静かな怒りを向けてくる

 当然か、彼らの奪われようとしている故郷の名なのだから

 だが、何と言われようと私は確かめなければならない

 

≪数年前、大々的にニュースになっていたよな

 レオ・コーポレーション社長『赤馬 零王』謎の失踪って≫

 

 なぜ彼は赤馬零王の名前を出した?

 いや、榊さんと奴は親友だった、彼が自分の父親の失踪に赤馬零王が関わっていると思っても不思議ではない

 

「彼が何者かを確かめるためだ。」

 

「何者?この世界の人間ではないのか?」

 

「いや、彼は確かにこの世界の人間で間違いない

 ただ気になることがあるから、カマをかけたまでだ。」

 

「解析出ました!」

 

「報告を」

 

「わずかに驚きの兆候が見られましたが、やはり遠方からの映像解析だけでは何とも・・・」

 

「そうか・・・」

 

 母様の調査でも、彼の経歴に不審な点など何もなかった

 それなのに、この沸き立つ違和感は・・・榊 遊矢、君は何者なんだ?


 まったく、いつもいつもふざけやがって、調子が狂うぜ

 しっかし昼間だってのに、フィールドは夜中の街か・・・

 初めて見るな、こんなアクションフィールド、大会用の新造か?

 だが、新フィールドだって今の俺は負けやしねぇぜ!

 

「行くぜ!戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が」

 

「モンスターと共に地を蹴り」

 

「宙を舞い」

 

「「フィールド内を駆け巡る!」」

 

『見よ!これぞデュエルの最強進化系!アクション!!』

 

『『決闘(デュエル)!!』』

 

 先攻は・・・あいつかよ

 今回はどんなデッキで来るんだ?

 

「先攻は俺みたいだな、ふんっ!ハッ!!っとう!!」

 

『おぉ~っと!?榊選手いきなりバク転したかと思えば、勢いをつけて大ジャンプー!!

 アクションカードをいきなり入手したぞー!!』

 

 おいおいおい!?バッタかよあいつは!?

 5メーター以上は跳んだぞ!?

 ってしまった!?いきなりとんでもない事やられたから、出遅れた!!

 

「っと、俺は魔法カード、星の金貨を発動

 このカードは1ターンに1度、自分の手札を2枚相手の手札に・・・加える!!」

 

――ヒュンッ!ヒュンッ!!

 

「うおっ!?」

 

 あっぶねぇー!!いきなりカードを投げつけてきやがった!!

 

「んで、俺は2枚ドローだ。」

 

「おいてめぇ!!いきなり投げてくるなよな!!あぶねぇだろうが!!」

 

「これくらい普通にとれるだろ、お前、ほっと!

 さて、さらに速攻魔法、手札断殺を発動

 互いのプレイヤーは手札を2枚捨て、2枚ドローする

 俺は手札のEM(エンタメイト)ジンライノと今、手に入れたアクションカードを捨て2枚ドローだ。」

 

 ぐぬぬ・・・だったらこの奴から投げつけられたカードを・・・

 って、何だこりゃ?ゴキポール?効果は・・・げっ!?

 

「ぬぅ・・・俺はアクションカードと妖仙獣 飯綱鞭を捨てて2枚ドローする

 おらっ!このアクションカードは返すぜ!!」

 

 俺はあいつから投げつけられたアクションカードを投げ返すが、あいつはさも当然とばかりに指二本でキャッチし、墓地に送り込む

 さて、今度こそ俺もアクションカードを・・・

 

「魔法カード、魔導契約の扉

 このカードは自分の魔法カード1枚を相手の手札に加える、そらっ!」

 

「うおっ!?またかよー!!」

 

 しかもまた、アクションカード!

 ちっ!やっぱり、アクションカードの入手スピードはあいつの方が上手か

 カンフー野郎と同類にされても困るが・・・

 

「その後、自分のデッキからレベル7か8の闇属性モンスターを自分の手札に加える。

 俺はデッキからレベル7の地獄大百足(ヘル・センチピート)を手札に加える。」

 

 地獄大百足(ヘル・センチピート)?このゴキポールと言い、あいつのデッキは昆虫族か?

 だが、まだあいつの目的が分らねぇ・・・

 

「さらに俺は手札のスケール4、EM(エンタメイト)トランポリンクスとスケール6、EM(エンタメイト)リザードローをペンデュラムゾーンにセッティング」

 

 光の柱の中に現れる背中がトランポリンになった猫とカードの襟を持つ紳士トカゲ

 猫は初めて見るな・・・

 

「リザードローのペンデュラム効果発動

 1ターンに1度、このカードを破壊してデッキから1枚ドローする

 空いたペンデュラムゾーンにスケール2のEMダグ・ダガーマンをセッティング

 

 ダグ・ダガーマンのペンデュラム効果

 1ターンに1度、このカードが発動したターンの自分のメインフェイズに、自分の墓地のEM(エンタメイト)モンスター1体を手札に加える

 俺はこの効果でEM(エンタメイト)ジンライノを手札に戻す。」

 

 トカゲが消えてナイフを持った男が光の柱を登る

 一度捨てた墓地効果付のモンスターをまた手札に戻す?なんだぁ、この動き?

 

「さて、まだまだ行こうか

 魔法カード、EM(エンタメイト)ポップアップ発動

 手札を3枚まで捨て捨てた枚数だけドローし、その後、自分フィールド上のペンデュラムスケールの間のレベルを持つ手札のEM(エンタメイト)、魔術師ペンデュラムモンスター、オッドアイズモンスターをドローした数まで特殊召喚出来る

 ただし、同名カードは1枚までで、特殊召喚しなかった場合は自分の手札の数×1000ポイントライフを失う」

 

 ちっ!そういう事かよ

 街頭の上にあったアクションカードを登って取ってるし、こいつ何枚ドローする気だ?

 

「俺は手札のアクションカード、地獄大百足(ヘル・センチピート)、バリアバルーンバクを捨て3枚ドロー

 そしてスケールは2と4なのでレベル3のEM(エンタメイト)ジンライノを特殊召喚!」

 

ジンライノ「グオオォォ!!」

     DEF1800

 

「さらに魔法カード、オールド・マインド発動

 このカードは相手の手札をランダムに1枚捨てる。」

 

「ちっ!手札を増やしてきたと思ったら、今度は荒らしにかかってきやがったか!」

 

 アクションカードの裏面も一時的に他のカードと同じになり、それをあいつにわからねぇ様にシャッフルする

 

「そらよ、とっとと選べよ。」

 

 シャッフルしたカードを広げていると、あいつはトランポリンクスのトランポリンを使い、結構離れていたのに俺の目の前まで跳んでいやがった

 だー!!もう、心臓に悪いんだよこいつは!!

 

「じゃあ、これで・・・

 おぉ、やった、こいつは俺のやったゴキポールだ

 だったらこいつは俺の墓地行きだな

 さらにオールド・マインドの効果で俺は捨てさせた相手のカードと同じ種類のカードを捨てることでさらに1枚ドローする

 って、ことで俺はEM(エンタメイト)トランポリンクスを捨てて1枚ドローだ。

そして、オールド・マインドは相手の手札に加わる。」

 

 ちっ、妙なカードを・・・

 

「ゴキポールが墓地に送られたことにより、俺はデッキからレベル4の昆虫族モンスター、EM(エンタメイト)ギッタンバッタを手札に加える。

 そして、手札抹殺を発動

 互いのプレイヤーは手札を全て捨て、捨てた枚数デッキからドローする

 俺はアクションカードを含めて3枚、よって3枚ドロー」

 

 ここで手札抹殺だと?俺の手札は8枚もあるのにか?

 よっぽど引きたいカードがある?エクゾディアじゃあ・・・ねぇよな

 

「俺は8枚のカードを捨て8枚ドロー

 このアクションカードはお前のだから返すぜっ!」

 

 投げたアクションカードが奴の墓地ゾーンに吸い込まれるように入っていく

 今のうちにアクションカードを俺も見つけ出さねぇとまた飛んできちまう、何処だ?

 

「墓地の超進化の繭の効果発動

 このカードを除外し、墓地の昆虫族モンスターを1体デッキに戻すことで1枚ドローする

 俺は地獄大百足(ヘル・センチピート)をデッキに戻し1枚ドロー

 そして、魔導契約の扉を発動、そら!新しいアクションカードだ、沢渡ぃ!!」

 

「いらねぇよ!ちくしょー!!」

 

「はははっ!まだまだ行くぞ

 デッキから地獄大百足(ヘル・センチピート)を手札に加え、魔法カード、七星の宝刀発動

 自分の手札、フィールド上からレベル7モンスターを1体除外してデッキから2枚ドローする

 俺は地獄大百足(ヘル・センチピート)を除外して2枚ドロー

 

 そして、お待ちかねのペンデュラム召喚だ

 エクストラデッキからレベル3のEM(エンタメイト)リザードローをペンデュラム召喚」

 

 リザードロー DEF600

 

 夜空から流星のように現れるトカゲ

 ここまでめちゃくちゃしておいて、これだけか?

 

「手札から魔法カード、孵化を発動

 自分フィールド上のモンスター1体をリリースし、そのモンスターよりレベルの1つ高い昆虫族モンスターを特殊召喚する

 さぁ、出番だ、今日の主役!レベル3のEM(エンタメイト)ジンライノをリリースしてレベル4のEM(エンタメイト)ガンバッターを特殊召喚!」

 

ガンバッター「ガン」「バッター!」

      DEF1000

 

 雷太鼓をしょった犀が消えて代わりに出て来たのは、弓矢のように見える頭を持ったおんぶバッタ

 こいつが主役?

 

EM(エンタメイト)ガンバッターの効果発動

 1ターンに1度、自分フィールド上のEMモンスター1体をリリースして、リリースしたモンスターとは別の名称を持つEM(エンタメイト)モンスターを墓地から手札に加える

 俺はEM(エンタメイト)リザードローをリリースしてEM(エンタメイト)ジンライノを手札に加える

 

 さらにガンバッターの2つ目の効果を発動

 1ターンに1度、自分フィールドのEMモンスターをリリースし、相手にリリースしたモンスターのレベル×100ポイントのダメージを与える

 俺はガンバッター自身をリリース

 さぁガンバッターよ、沢渡に苦痛の矢を放て!」

 

「ぐふっ!!」

 LP4000→3600

 

 デカいバッタから小さいバッタが射出され、俺の腹にぶつかってきた

 滅茶苦茶イテェ~!!

 

「あらら、大丈夫か沢渡?

 俺はカードを2枚伏せて、ターンエンド」

 

 はっ?ターンエンドだと!?


『なんと、榊選手、伏せカードを2枚セットしてターンを終了!?

 壁になるモンスターすらいません、どういう事でしょうか?』

 

「なぁ、帝野?遊矢センセー何のデッキを使っていると思う?」

 

「う~ん、今のところ昆虫族中心ということ以外何とも・・・」

 

「でもよ~壁モンスターすらいないって、沢渡さんに怖気付いて、降参したんじゃねぇの?」

 

「えぇ~あの榊遊矢がぁ~?」

 

「ないない、絶対」

 

「それもそうかw」

 

「でも、せんせぇ~

 さっきから沢渡さんにアクションカード渡してばかり、攻撃する気がないってことかな?」

 

「それはありますね

 先ほど、ガンバッターが主役と言っていましたから、効果ダメージでじわじわ削っていく戦術でしょう。

 フィールドを殆ど空にしているのは、帝対策の一環かと・・・」

 

「でもよ、ガンバッターのダメージ量じゃ、削り切るの滅茶苦茶先だぜ?」

 

「そうなんですよねぇ~ですが、今の情報量では判断が付きませんね。」

(キーカードを引き込む為のドロー加速、ですが先生の性格上、それだけで終わるでしょうか?)


「めんどくっせーコンボ思いつきやがって!

 だがな、お前の考えている様にはいかないぜ!

 

 俺のターンだ、ドロー

 てめぇーが膨れ上がらせたこの手札!後悔しやがれ!!

 俺はマジックカード、妖仙獣の神颪を発動

 自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、デッキからペンデュラムモンスター、妖仙獣 右鎌神柱と妖仙獣 左鎌神柱を1枚ずつ選び、ペンデュラムゾーンにセッティングするぜ!」

 

 沢渡のそばから立ち上る光の柱、その中に鬼の面の様なモノが飾られた鳥居を2つに分けた様な柱が浮かび上がる

 

『なんと、沢渡選手もペンデュラムモンスターを使用!?

 これは公式戦では初のペンデュラム対決!私達は今まさに歴史の新たな1ページを目撃しているぅ!!』

 

「だが妖仙獣の神颪の効果でセットしたカードは次の相手ターンで破壊され、このカードを発動したターン妖仙獣以外のモンスターを特殊召喚出来ねぇ

 だが、このターンがありゃ十分だ!

 永続魔法、修験の妖社を発動!

 こいつがフィールド上に存在する限り、妖仙獣が召喚、特殊召喚される度にこのカードに妖仙カウンターが1つ点灯する!」

 

 沢渡の頭上に黒雲が浮かぶと、その中から蝋燭の立てられた祠が出現する

 

「行くぜ!俺は妖仙獣 鎌壱太刀を通常召喚!!」

 

鎌壱太刀「へっ!」

    ATK1600

 

 碧い着物を着て鎖鎌を持った人型のイタチの妖怪が現れ

 

「鎌壱太刀を召喚した時、鎌壱太刀以外の妖仙獣を召喚できる

 来い、妖仙獣 鎌弐太刀!

 

 こいつにも鎌壱太刀と同じ効果がある、召喚!妖仙獣 鎌参太刀!

 さらに鎌参太刀の効果により、もう1体、鎌弐太刀を召喚!」

 

鎌弐太刀「フッ!」

    ATK1800

 

鎌参太刀「ハッ!」

    ATK1500

 

鎌弐太刀「フンッ!」

    ATK1800

 

 浅葱色の羽織を着た刀を持つイタチ妖怪2体と小刀を構えたイタチ妖怪がそれに続くが続き、そして最後に

 

「そして、鎌弐太刀の召喚に成功したことにより、手札から鎌弐太刀以外の妖仙獣1体を召喚できる!

 さぁ、勝利が俺たちを呼んでるぜ!妖仙獣 侍郎風!!」

 

侍郎風「ハハハハハッ!ハッ!!」

   ATK1700

 

 オオトリに現れる編み笠にマントを羽織った金髪の妖怪イタチ

 見得を切り芝居掛かった動きで大目立ちするその姿は、なんとなく雰囲気が沢渡に似ている

 

『なななんと、沢渡選手、一気に5体のモンスターを召喚です!?』

 

「侍郎風の効果

 自分フィールド上に他の妖仙獣カードが存在するとき、このカードを召喚した場合、デッキから妖仙獣ペンデュラムモンスター1体を手札に加える。

 俺は魔妖仙獣 大刃禍是を手札にくわえるぜ!

 

 さらに5体の妖仙獣を召喚したことにより、修験の妖社の妖仙カウンターが5つ点灯!

 修験の妖社の効果、1ターンに1度、妖仙カウンターを3つ取り除くことで、デッキ、墓地から妖仙獣カード1枚を手札に加える

 俺が手札に加えるのはデッキのカウンタートラップ、妖仙獣の秘儀」

 

 修験の妖社 妖仙C0→5→2

 

(妖仙獣の秘儀、当然入っているか・・・)

 

「まだまだ行くぜ!侍郎風の2つ目の効果

 自分フィールド上の妖仙獣カード1枚を対象として発動、そのカードを持ち主のデッキに戻し、デッキから永続トラップ、妖仙郷の眩暈風か妖仙大旋風をマジック、トラップゾーンに表側表示で置く

 

 俺は妖仙獣 鎌弐太刀1体をデッキに戻し、妖仙郷の眩暈風を発動だ!

 こいつは俺のペンデュラムゾーンに妖仙獣カードが存在する限り、フィールドにセットされたモンスター及び、妖仙獣モンスター以外のフィールドの表側表示モンスターが手札に戻る場合、手札に戻らずデッキに戻す!」

 

「ほ~で、これでモンスターゾーンが1つ空いたと」

 

「その通り!右鎌神柱の効果発動!

 もう片方のペンデュラムゾーンに妖仙獣が居る時、ターン終了までペンデュラムスケールが11に上がる!

これでスケールは3と11、つまり、レベル4から10のモンスターが同時に召喚可能!」

 

『おぉ!これは!!』

 

「行くぜ行くぜ!ペンデュラムしょうか」

 

「あっ、それ却下

 速攻魔法、揺れる眼差し、フィールドのペンデュラムゾーンにあるペンデュラムカードを全て破壊する。」

 

「なー!?」

 

 光の柱の中で丸まっていたトランポリンクスがそこを飛び出し、沢渡の2本の神柱に体当たりをかましへし折り破壊する

 それだけでは終わらず、何故か、鎌壱太刀を自身の背のトランポリンへと乗せ、跳ねさせて遊び始める

 

「その後、破壊したカードの枚数によって効果が発揮される

 1枚以上破壊した効果は相手プレイヤーに500ポイントのダメージを与える。」

 

 トランポリンクスが跳ねさせていた鎌壱太刀を放心していた沢渡にぶつける

 

「ぐえっ!!」

 LP3600→3100

 

「2枚以上破壊した効果によって、デッキのペンデュラムモンスター、EM(エンタメイト)トランポリンクスを手札に加え、3枚以上破壊した効果によってフィールドのカード1枚を除外する

 鎌壱太刀は退場だ!」

 

 気絶した鎌壱太刀を咥え、トランポリンクスはどこかに走り去って行った

 

『な、なんと、榊選手・・・たった1枚のリバースカードで沢渡選手のペンデュラム召喚を阻止

 更にはダメージと除去、手札増強もやってしまいました・・・』

 

 カッコつけようとして、口上を考えていた沢渡は起き上がった後も、目の前で起きたことにしばらく呆然としていたが

 

「てぇめぇ!!俺の折角の見せ場を!!」

 

 怒りと共に再起動した

 

「ははは、相手の見せ場づくりの為に使える効果発動しない奴がいるかよ。

 それよりもいいのか?妖仙郷の眩暈風はペンデュラムゾーンに妖仙獣がいないと効果を発揮できないぞ?」

 

「ぐぬぬ・・・俺はスケール7の魔妖仙獣 大刃禍是をセッティング・・・」

 

 へし折られた神柱の代わりに光の柱へと昇る暴風を纏った巨大なライトグリーンのオオイタチ

 この荒ぶりはどこに行ったらいいんだとばかりに、柱の中で暴れている

 

「大刃禍是がペンデュラムゾーンに存在するとき、妖仙獣が攻撃するときその攻撃モンスターの攻撃力をバトルフェイズ終了まで300ポイントアップする

 バトルだー!!鎌弐太刀でダイレクトアタック!!」

 

 鎌弐太刀 ATK1800→2100

 

「相手の直接攻撃宣言時、手札のEMを捨てることでバリアバルーンバクの効果を発動

 俺はEM(エンタメイト)ジンライノを捨ててバリアバルーンバクを守備表示で特殊召喚」

 

 バリアバルーンバク DEF2000

 

「さらにEM(エンタメイト)モンスターが手札から墓地に送られたことにより、墓地のEM(エンタメイト)ギッタンバッタの効果発動、こいつを特殊召喚する。」

 

 ギッタンバッタ DEF1200

 

 襲い掛かる鎌弐太刀の前に現れるバク型の風船と尾部にも顔が付いているバッタ

 だが、鎌弐太刀はその2体の間を抜けて遊矢へ刀を振るう

 

「甘いぜ!鎌弐太刀の効果

 相手に与えるダメージは半分に成っちまうが、モンスターを越えてダイレクトアタックが出来る!喰らいやがれ!」

 

「おっと!」

 

 鎌弐太刀の一撃を跳んで回避した遊矢

 だが、鎌弐太刀はその刀身に風を纏わせて、追撃する

 

「ぐっ!」

 LP4000→2950

 

 風の一撃を受けた遊矢、その風によって背後の塔へと飛ばされていく

 アクションカードが張り付いた塔へと

 

「へへっ、ありがとうよ

 見つけたは良いけど、届かなくてさぁ~」

 

 ふざけているとも挑発ともとれる笑みを浮かべながら、手にしたアクションカードをひらひらとさせる

 

「ちっ!いけすかねぇ野郎だぜ

 鎌参太刀の効果発動、こいつ以外の妖仙獣が相手にダメージを与えたとき、1ターンに1度、デッキから鎌参太刀以外の妖仙獣カードを手札に加える

 俺が手札に加えるのは妖仙獣 大幽谷響(オオヤマビコ)

 そして、まだバトルは続いている! 鎌参太刀でEM(エンタメイト)ギッタンバッタに攻撃!」

 

 鎌参太刀 ATK1500→1800

 

「特殊召喚されたギッタンバッタは1ターンに1度、戦闘では破壊されない」

 

 鎌参太刀の小刀をギッタンバッタは後方に大きくジャンプして躱す

 

「だったら侍郎風で追撃だー!」

 

 侍郎風 ATK1700→2000

 

「墓地のEM(エンタメイト)ジンライノを除外し、ギッタンバッタの戦闘破壊を無効にする。」

 

 鎌参太刀の攻撃をかわしたギッタンバッタを侍郎風が追撃するが、ギッタンバッタの前に現れたジンライノが放電し、巻き込まれた侍郎風は痺れて倒れる

 

「ちぃ!バトルを終了しメイン2、俺はライフを800払って、手札から永続魔法、妖仙大旋風を発動!

 カードを1枚伏せて、ターンエンド」

 LP3100→2300

 

 沢渡がターンエンドを宣言した瞬間、夜の未来都市に風が流れ込む

 

「だが、ただのターンエンドではない

 見せてやる、沢渡レジェンドコンボ、妖仙ロスト・トルネードをな!

 ターンエンド時、召喚された鎌弐太刀、鎌参太刀、侍郎風は俺の手札に戻る。」

 

 沢渡の3体のモンスターを風が包み、3つの竜巻となる

 

「1ターンに1度、自分フィールド上の妖仙獣モンスターが手札に戻った時、妖仙大旋風の効果が発動する!

 相手のフィールドのカード1枚を選択し手札に戻す!」

 

「そして妖仙郷の眩暈風によって、デッキに戻されるか・・・」

 

「その通り!大旋風によって相手のカードを巻き上げ、舞い上がったカードは眩暈風に誘われフラフラとデッキに行っちまう

 これが沢渡レジェンドコンボ、妖仙ロスト・トルネードだ!

 消えろ・・・バリアバルーンバク!!」

 

 3つの竜巻がバリアバルーンバクを彼方へと吹き飛ばす、風船に竜巻相手に耐えろと言う方が無茶な話だ

 

「良いコンボじゃないか沢渡・・・だが俺も、ただのエンドフェイズじゃない

 相手のエンドフェイズ時、EM(エンタメイト)ギッタンバッタの効果が発動

 自身を墓地に送り、墓地のレベル3以下のEM(エンタメイト)モンスター1体を手札に戻す

 俺はEM(エンタメイト)トランポリンクスを手札に戻す。

 

 さらにトラップカード、貪欲な瓶を発動

 墓地の5枚のカードを選択しデッキに戻し、1枚ドローする

 俺は星の金貨、孵化、EM(エンタメイト)ポップアップ、手札断殺、オールド・マインドをデッキに戻しシャッフル、そして1枚ドロー」

 

(またドローカードだと?いったい何を狙っていやがるんだ?

 つーか、あいつ、何処まで行くつもりだ!!)

 

 アクションカードを探し回りながら移動している遊矢と、それを追っている沢渡はすでにスタート地点から大きく離れ、ビル街へと移動している

 超肉体派である勝鬨や、忍者兄弟と付き合っている遊矢に比べれば、体力のない沢渡はぶっちゃけ疲れてきていた

 

「さて、俺のターンだ、ドロー

 まずは、その見え見えの罠を破壊するとするか

 魔法カード、ギャラクシー・サイクロン

 フィールドにセットされた魔法、トラップカードを1枚破壊する、そのセットカードを、どうせ妖仙獣の秘儀だろうけど、破壊!」

 

「ちぃ!正解だよ!」

 

「邪魔なカードがなくなったところで、スケール2のEM(エンタメイト)ダグ・ダガーマンとスケール6のEM(エンタメイト)リザードローをセッティング

 ダグ・ダガーマンのペンデュラム効果で墓地からEM(エンタメイト)ガンバッターを手札に加える

 

 そして、EM(エンタメイト)ポップアップを発動

 アクションカードとEM(エンタメイト)トランポリンクスを捨て、2枚ドロー、そして、レベル4のEM(エンタメイト)ガンバッターを特殊召喚」

 

 ガンバッター DE1000

 

 フィールドに再び現れるガンバッター

 それを見た遊矢はいきなり助走をつけてガンバッターに向かって走り出す

 主が何をやらかすのか理解したガンバッターは背のバッタを降ろすと、前脚と中脚で体を支え、逆立ちの態勢を取る

 

「そして、リザードローのペンデュラム効果、自身を破壊し1枚ドローだああぁぁぁぁぁぁ!!!とおおぉぉぉ!!」

 

 ガンバッターをロイター板に見立て、遊矢はガンバッターの足に自分の足を踏み込み驚異のジャンプ

 5階建てのビルの上にまで跳躍し着地する

 

「マジかよ・・・」

 

「速攻魔法、手札断殺

 俺は今手に入れたアクションカードと、バリアバルーンバクを捨て2枚ドロー」

 

「俺はアクションカードと妖仙獣 木魅(コダマ)を捨て2枚ドロー

 化物めぇ・・・」

 

「はははっ!悔しかったら、お前も跳んでみるん、だなっと!!」

 

 小バッタを乗せて飛んできたガンバッターを再び足場に、隣にあった更に高いビルに遊矢は跳躍する

 

「もう一丁、手札断殺

 アクションカードとゴキポールを捨て2枚ドロー

 ゴキポールの効果でデッキからEM(エンタメイト)ガンバッターを手札へ!!」

 

「ちっ!まだ跳ぶのかよ・・・侍郎風と大幽谷響(オオヤマビコ)を捨て2枚ドロー」

 

「さらにもう一丁!!手札断殺!

 アクションカードとガンバッターを捨て2枚ドロー!」

 

「だーもう、アクションカードを探す暇もねぇ!!

 木魅(コダマ)と侍郎風を捨て2枚ドローだ!」

 

『榊選手、驚異の4連続大ジャンプ!

 何が彼にここまでさせるのでしょうかー!』

 

「ははっ!下のアクションカードは粗方取り尽くしちまったからな!

 星の金貨発動、手札のアクションカードとこいつをプレゼントだ!」

 

「って、またゴキポールかよてめぇ!!」

(しまった、捨てずに残しておくべきだったか?

 だが、ヤツのことだ

 何かトンデモないことをやらかしてくる前に手札をできるだけ確保しねぇと・・・)

 

「空いているペンデュラムゾーンにスケール4のEM(エンタメイト)トランポリンクスをセッティングし、エクストラデッキからレベル3のEM(エンタメイト)リザードロー2体をペンデュラム召喚

 

 ガンバッターの効果でリザードローをリリースし、墓地のガンバッターを手札へ、さらにもう1つの効果でリザードローをリリースし、相手に300のダメージ!」

 

「ぐえっ!!」

 LP3100→2800

 

 前のターンの焼き回しの様に行われるガンバッターの狙撃

 ただ違うのは、ガンバッター自身が消滅していないことと、沢渡の腹ではなく腰に当たったことである

 

「カードを1枚伏せて、ターンエンド」

 

(やっぱり攻撃はしてこねぇか・・・大幽谷響(オオヤマビコ)を捨てて、誘ってみたがその気配すらねぇ)

「俺のターン、ドロー!

 俺は手札から妖仙獣 鎌壱太刀を召喚!

 鎌壱太刀の召喚したことで妖仙獣 鎌弐太刀、鎌参太刀を続けて召喚!

 最後に鎌参太刀の効果で妖仙獣 辻斬風を召喚だ。」

 

鎌壱太刀「ふん」

    ATK1600

 

鎌弐太刀「ははっ!」

    ATK1800

 

鎌参太刀「へへっ!」

    ATK1500

 

辻斬風「はっ!」

   ATK1000

 

 鎌壱太刀3兄弟とともに現れる、居合の構えで佇む新たなイタチ妖怪

 自らの剣技で全てをたたっ斬って見せようと、遊矢を睨む

 

「妖仙獣モンスター4体の召喚に成功したことにより、修研の妖社の効果発動!

 妖仙カウンターが4つ点灯する。」

 

 修験の妖社 妖仙C2→6

 

「辻斬風の効果、フィールド上の妖仙獣モンスターの攻撃力をターン終了まで1000アップする。

 俺は鎌弐太刀の攻撃力を1000アップさせるぜ!」

 

 鎌弐太刀 ATK1800→2800

 

 辻斬風が自身の愛刀を鎌弐太刀に託す

 新たな仲間の礎となるために

 

「だがこれで終わりじゃねぇ!

 俺は墓地の妖仙獣 木魅(コダマ)の効果発動

 自分のメインフェイズにこいつを除外し、通常召喚に加えて1度だけ妖仙獣モンスターを召喚できる。

 俺は辻斬風をリリースし、妖仙獣 凶旋嵐(マガツセンラン)をアドバンス召喚!」

 

凶旋嵐(マガツセンラン)「グワオォォォォォォ!!」

   ATK2000

 

 修験の妖社 妖仙C6→7

 

 辻斬風が消えて現れるボロボロの僧侶のような恰好をした黒いイタチ妖怪が狂気を感じさせる声で叫ぶ

 

凶旋嵐(マガツセンラン)の効果発動

 こいつが召喚に成功した場合、デッキから凶旋嵐以外の妖仙獣モンスター1体を特殊召喚できる

 来い!妖仙獣 閻魔巳裂(ヤマミサキ)!!」

 

閻魔巳裂(ヤマミサキ)「ヌオオオォォォォォォオオオ!!」

    ATK2300

 

 修験の妖社 妖仙C7→8

 

 凶旋嵐(マガツセンラン)の叫びに続き現れる斬馬刀を片手で振り上げる巨大な法師の格好をした妖怪イタチ

 フィールドが埋まり、沢渡の戦闘準備が整う

 

「賑やかになってきたな」

 

「準備は整った、決着を着けてやるぜ!

 まずは鎌壱太刀の効果発動

 このカードがフィールド上に表側表示である限り1度だけ、こいつ以外の妖仙獣モンスターが存在するときに相手の表側表示カード1枚を手札に戻す。

 消え失せろ!EM(エンタメイト)ガンバッター!!」

 

「おっと、そうはいかないね!

 手札から寄生虫パラノイドの効果発動

 こいつの効果は相手ターンでも発動することができ、フィールドの表側表示モンスター1体に装備される

 鎌壱太刀に取り付け!パラノイド!!」

 

パラノイド「ギッシャァァァ!!」

 

 青い虫が鎌壱太刀に向かい跳んでいき、その腕に取りつくと自身の尾を鎌壱太刀の腕に突き刺し、体の中へ侵入してゆく

 

鎌壱太刀「ぐぅ!?ガアアァァァァァ!!」

    獣戦士族→昆虫族

 

「なっ!?なんだ!!」

 

「寄生虫パラノイドに寄生されたモンスターは昆虫族となり、さらに昆虫族モンスターを攻撃できず、昆虫族モンスターを対象とした、そのモンスターの効果は無効化される。

 ガンバッターは昆虫族、よって鎌壱太刀の効果は無効化される。」

 

「ぐっ!だったら!俺は修験の妖社の効果発動

 妖仙カウンターを3つ取り除き、デッキから魔妖仙獣 独眼群主(ヒトツメノムラジ)を手札に加える!」

 

「ほう・・・なら、リバースカードオープン

 速攻魔法、超進化の繭

 フィールド上の装備カードを装備している昆虫族モンスター1体をリリースし、デッキから昆虫族モンスター1体を召喚条件を無視して特殊召喚する。」

 

「フィールドの装備カードの付いた昆虫族モンスター?まさか!?」

 

「そう、お前の鎌壱太刀をリリース!」

 

 鎌壱太刀の腕に寄生したパラノイドの口から黄金の糸が吐き出され、鎌壱太刀の腕を操って鎌壱太刀をぐるぐる巻きにしていく

 やがて、ミイラのようになった鎌壱太刀は、さらに糸でくるまれ黄金の繭と化す

 

「さて、お前に相応しいゲストを招待しようじゃないか

 来い!ブロック・スパイダー!!」

 

 ブロック・スパイダー DEF100

 

 黄金の繭を突き破り、玩具のブロックで出来た体を持つ蜘蛛が飛び出す

 

(ブロック・スパイダー!?)

 

 ブロック・スパイダー、それは元は沢渡のカードであったが低レアリティだったため、遊矢に押し付けたカードの一枚だ

 押し付けた後のデュエルで、このモンスターに散々な目にあわされ、出すモンスターをことごとくハンバーガーに変えられるという悪夢に見舞われた

 

「ブロック・スパイダーが特殊召喚に成功したことにより効果発動

 1ターンに1度だけ、デッキからブロック・スパイダーを1体特殊召喚する。」

 

 ブロック・スパイダー DEF100

 

 黄金の繭からさらにブロック・スパイダーが現れ、2体のブロック・スパイダーは腹部から糸を出し、バルーニングによって遊矢の下に飛んでいく

 

「ブロック・スパイダーの効果は分かっていると思うが、こいつが居る限り俺の他の昆虫族を攻撃対象にできない

 2体居るから、ブロック・スパイダーにも攻撃できないけどな!」

 

「ぐぬぬ・・・だったらバトルだ!

 鎌弐太刀の効果でダイレクトアタックだ!!

 大刃禍是のペンデュラム効果により、鎌弐太刀の攻撃力を300アップ!」

 

 鎌弐太刀 ATK2800→3100

 

「手札のEM(エンタメイト)ガンバッターを捨て、墓地のバリアバルーンバクの効果を発動し守備表示で特殊召喚

 さらにEM(エンタメイト)が手札から墓地に送られたことにより、墓地のギッタンバッタも特殊召喚だ!」

 

 バリアバルーンバク DEF2000

 

 ギッタンバッタ   DEF1200

 

「だが、鎌弐太刀の攻撃は止められねぇぜ!くらえー!!」

 

 遊矢は鎌弐太刀の攻撃の前に宙へと浮かぶブロック・スパイダーへ跳び、腕に2体をくっ付ける

 鎌弐太刀の攻撃の風が遊矢へ直撃するが、それにより遊矢は更に高く跳び、その場を離れていく

 

「ぐうぅ・・・あ、あばよ・・・」

 LP2950→1400

 

「あっ!待ちやがれー!!」

 

「待てと言われて、待つ奴はいないよ、っと!」

 

 十分に離れ、今度はブロック・スパイダーが出した糸でターザンロープの要領で街を移動してゆく

 2体のバッタもそれを追う

 

「逃げんな!!ものども続けー!!」

 

 沢渡は閻魔巳裂(ヤマミサキ)の肩に飛び乗り、他の妖仙獣たちと共に遊矢を追跡する

 

「イヤフォオォォォォォ!!で、どうするんだ沢渡!!

 バリアバルーンバクだけは攻撃できるぞー!!」

 

「ちっ!鎌弐太刀が相手にダメージを与えたことにより、鎌参太刀の効果発動

 デッキから妖仙獣の秘儀を手札に加える、これで俺のバトルはこれで終了だ!」

 

鎌弐太刀 ATK3100→2800

 

「だがな!メインフェイズ2で手札からマジックカード、二重召喚を発動

 このターンの通常召喚権を1回増やす

 俺は凶旋嵐(マガツセンラン)と鎌参太刀の2体のモンスターをリリースしこいつをアドバンス召喚!」

 

 2体の妖仙獣が風へと還り竜巻を巻き起こすと、空に赤っぽい雲が発生し風を巻き込むことで成長していく

 

「天を支配する積雲よ、嵐を巻き込み、大地を蹂躙せよ!

 現れろ!魔妖仙獣 独眼群主(ヒトツメノムラジ)!!」

 

独眼群主(ヒトツメノムラジ)「グオオオォォォォォォ!!」

    ATK2000

 

 赤い雲は風の衣を纏い、沢渡の下に降り、その姿を龍のように変化させていき

 赤い片目を輝かせ、産声を上げた

 

独眼群主(ヒトツメノムラジ)の効果発動

 こいつが召喚、特殊召喚された場合、相手フィールドのカード1枚を持ち主の手札に戻す、が、妖仙郷の眩暈風の効果によりデッキに戻ってもらう!

 ちょろちょろと鬱陶しい、そいつには消えてもらうぜ!

 ギッタンバッタを吹き飛ばせ!独眼群主(ヒトツメノムラジ)!!」

 

 独眼群主(ヒトツメノムラジ)の纏っている風が遊矢の後を追い続けているギッタンバッタを吹き飛ばす

 

(攻撃せずに、デッキバウンスしてきたか

 そうなると沢渡はコンボを崩しに来たという訳だ・・・)

 

「独眼群主のもう1つの効果

 俺のカード効果により、こいつ以外のフィールドのカードが手札、デッキに戻るたびに俺の妖仙獣全ての攻撃力を500ポイントアップする。」

 

 独眼群主 ATK2000→2500

 閻魔巳裂(ヤマミサキ)閻魔巳裂 ATK2300→2800

 鎌弐太刀 ATK2800→3300

 

「カードを1枚伏せ、エンドフェイズだ

 特殊召喚された閻魔巳裂(ヤマミサキ)、召喚された鎌弐太刀は手札に戻る。

 そして、妖仙大旋風の効果で、てめぇのガンバッターを手札に戻す。

 もっとも眩暈風の効果で戻るのはデッキだけどな!妖仙ロスト・トルネード!!」

 

 2つの竜巻がガンバッターを捉え、彼方へと吹き飛ばす

 

「これで俺のカード効果によってデッキ、手札に戻ったカードは3枚

 よって、独眼群主(ヒトツメノムラジ)の攻撃力はさらに1500ポイントアップだ!!」

 

 独眼群主(ヒトツメノムラジ) ATK2500→4000

 

「俺はこれでターン終了!

 散々逃げ回りやがって、観念しやがれ!!」

 

『まさに一進一退、激しいカード効果の応酬!!

 ですが沢渡選手のデッキバウンスコンボ、妖仙ロスト・トルネードにより、次々と防御カードを消されている榊選手

 モンスター達と共にとんでもないアクションを披露しておりましたがついに追い込まれたー!!』

 

 独眼群主(ヒトツメノムラジ)の頭の上で吠える沢渡の言う様に遊矢はハートランドの中心にそびえるタワーの上に居る

 その周りを独眼群主(ヒトツメノムラジ)の体が取り囲んでおり、逃げ道を塞いでいる

 

「知っているだろ、俺は諦めが悪いんだ

 俺のターン、ドロー

 まずは墓地のギャラクシー・サイクロンの効果発動

 このカードを除外し、フィールドの表側表示の魔法、トラップカード1枚を破壊する

 俺が破壊するのは妖仙郷の眩暈風」

 

「ちいぃ!」

 

「そしてスケール2のEM(エンタメイト)ダグ・ダガーマンをセッティング」

 

「させねぇ!その効果にチェーンして俺のリバースカードを発動する

 カウンタートラップ、妖仙獣の秘儀!

 自分フィールド上に妖仙獣カードが存在し、自分のモンスターゾーンに妖仙獣以外の表側表示モンスターが存在しない場合、モンスターの効果、マジック、トラップの発動と効果を無効にし破壊する」

 

 独眼群主(ヒトツメノムラジ)の吐いた風のブレスにより、ダグ・ダガーマンが切り刻まれて破壊される

 

「ははっ!これでてめぇのコンボは崩れた!次のターンでフィナーレだ!」

 

 墓地のモンスターに攻撃を止められるようなものはすでにいない

 アクションカードは逃げている途中で手に入れたものの、修験の妖社の効果で墓地の鎌壱太刀を手札に戻せばブロック・スパイダーによるロックも崩壊する

 一見、危機的状況だが遊矢の口元は三日月の様に歪む

 

「・・・いや、フィナーレはこのターンだ。」

 

「何?」

 

「勝利の方程式は此処に完成した、俺はカードを1枚伏せる

 で、沢渡よぉ~デュエルモンスターズの勝利条件は、大まかに分けて3つあるのは知っているな?」

 

「あぁん?そりゃ」

 

「相手のライフを0にすること、特殊勝利効果を成立する事」

 

「相手のデッキが・・・って、まさか!?」

 

 遊矢の言葉に反応して自分のデッキと手札を見比べる沢渡

 だが、もう遅い

 

「手札から魔法カード、魔法再生発動

 手札の魔法カード2枚を墓地に送り、自分の墓地の魔法カード1枚を手札に加える

 アクションマジックと魔導契約の扉を墓地に送り、俺が手札に加えるのは手札抹殺!!」

 

「逃げまくって、俺を散々走らせたりしたのは俺の思考をデッキ枚数から背けるため

 地味バーンや、めんどくせぇ防御コンボは囮

 手札譲渡カードで俺の手札を増やしまくっていたのは・・・」

 

「That's right!その通りだ

 手札抹殺発動、互いのプレイヤーは手札を全て捨て、捨てた枚数分ドローする。

 もっとも、俺はハンドレスだがな」

 

「ぐうぅぅ・・・・」

 

 しぶしぶ手札を捨てる沢渡、その内2枚は元は遊矢の物なので投げ渡し、デッキから5枚のカードをドローする

 これで彼のデッキは残り4枚である

 

「俺の墓地にゴキポールが帰ってきたことにより、効果発動

 デッキからレベル4の昆虫族、EM(エンタメイト)ギッタンバッタを手札に加える。」

 

「ぐぅ、だがマジック回収系のカードはハンドコスト2枚いるはず・・・」

 

「こんな大目立ちするところなんだ

 アクションカードが1枚くらいなきゃおかしいよねぇ~」

 

 そう言って、遊矢は自分が背中を預けていた赤いクリスタル状の巨大なライトに張り付いていた、アクションカードを取り出す

 

「取らずに背中で隠していただと!?」

 

「見つけてキープしておくのも手だよなぁ

 リバースカード発動、魔法石の採掘

 手札2枚を捨て、自分の墓地の魔法カード1枚を手札に加える

 加えるカードはもちろん、手札抹殺!!」

 

「こんな回りくどい、ギャンブル紛いのデッキ破壊なんてありかよ!?」

 

「お前相手には、多少のギャンブルもやむなしさ、手札抹殺発動

さぁ、手札を捨てて引いて貰おうか、5枚のカードをな」

 

「うぅぅ・・・・できねぇよ!!こんちっくしょう!!」


 未来都市が光にほどけて消滅していく

 誰もがあんまりな、戦いの終結に固まる中、体を震わせる少年が一人

 

(ハート・・・ラン・・ド、ハート・・・ランド、ハートランド!!?)

 

 その都市の名を少年、紫雲院 素良は知っていた

 その都市の名はこの世界ではありえないもの、存在するはずのないもの

 ある世界に置いて、彼と彼の仲間たちが蹂躙した街の名

 

(ありえない!?偶然?いや!!)

 

 街の中心で聳え立つひときわ目立った塔、曲線や円形を多用した建物や道路

 それは彼の記憶の中に刻まれた光景によく似ていた

 

(来ているの!?スタンダードに、エクシーズの人間が!?)

 

「どうしたの、素良?なんか顔色悪いけど・・・?」

 

「う、うん、遊矢を目で追ってたら目が回っちゃって、ちょっと気分が・・・」

 

「あら、そりゃ大変だねぇ

 ちょっと、外の空気でも吸って来るかい?」

 

「うん、ありがとう洋子さん・・・」

 

「もう、私の試合の時までには治しておいてよね

 まだ、素良から聞きたいアドバイスはいっぱいあるんだから!」

 

「だいじょうぶ、それまでには、治しておくよ・・・」

 

 青い顔で笑いながら、スタジアムの外へと素良は移動する

 この世界にエクシーズ次元の人間が来ている、それは自分たちの敵が来ているということだ

 敵がいるなら、戦うしかないのだろう

 

(ごめん、柚子、僕は君の夢を邪魔してしまうかもしれない・・・)

 

 素良の不安を助長するかのように彼のデュエルディスクにメッセージの着信を知らせるランプが点滅していた




おぉ!!あのような、勝ち方もあるのだな、バレット!!

いや、あれは・・・

きっと、あのデュエリストがこの世界で一番のデュエリストに違いない!
私の野生の勘がそう告げている!

箱入りでしたよね、貴女
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『アカデミアから来た少女』

そうと決まれば早速デュエルだ!!行くぞバレット!!

目立つ場所に行かないでください、セレナ様


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アカデミアから来た少女

セレナVS遊矢だと思った?残念、勲章おじさんだよ

というか、予定的に勲章おじさんのデュエルここぐらいしかできなそう・・・
デッキに関してはさすがに彼のカードはOCG化はしなさそうなので最初は獣戦士×機械族のデッキにしようとしたんですが、融合と関係なくなってしまったので大幅変更しました(そして、勲章とも関係なくなった)

非力な私を許してくれ


「ふぅ~」

 

 ハートランド、エクシーズ次元の都市を模したアクションフィールドを使っての榊 遊矢へのカマ掛けは失敗に終わったと言ってもいいだろう

 アカデミアと関わりがあるのならばもっと動揺するなりしても良い筈だ

 しかし、アクションカードをあのような使い方をするとは・・・

 

「デッキ破壊か、盲点だったな」

 

「あぁ、ライフを削るではなくデッキを削るか、しかもそれを相手に悟らせまいとするとは・・・」

 

 エクシーズの人間にも彼のデュエルは刺激が強い様だ

 私はデュエリストがフィールドを破壊しながらデュエルをする、第一試合の時点で頭が痛くなったが

 

「あ、あの社長・・・」

 

「どうした、中島?」

 

「解析班からなのですが・・・

 計器の誤作動か、会場内に同一人物が2人居るとの報告が上がっていまして・・・」

 

「なに?

 会場内に設置されたシステムは双子であろうと、判別できるものだぞ?」

 

「はい、それがその同一人物と判断された人物が榊 遊矢と同じ遊勝塾に所属する柊 柚子でして」

 

「「「なに!!?」」」

 

 中島からの報告に私とユートと黒咲の声が合わさる

 

「すぐモニターに映せ!!」

 

「は、はい!!」

 

 映し出されるモニターに2通りの映像が浮かび上がる

 一つは観客席で家族や塾生たちに囲まれ榊 遊矢を応援する少女、こちらは柊 柚子本人で間違いない

 

 そして、もう一つはスタジアムの観客席入り口に立つ、腕に星の描かれたコートを着た、見るからに怪しい人物

 目深に被ったフードから垣間見えるのは青っぽい髪、そして一瞬カメラが捉えた翡翠の様な瞳

 その瞳を見た私の記憶に浮かび上がるのは一人の少女の名

 

「瑠璃!?」

 

「いや」

 

「・・・セレナ」


「いや~うまくいってよかった

 まったく、沢渡の奴とデュエルするときは初見の戦術じゃないと対策されるからEM(エンタメイト)だけじゃ、ネタ切れしそうだ

 次は何しようか・・・」

 

 試合が終わり、選手控室から観客席に行く為に通らないといけない関係者駐車場を進む俺だったが、背後に気配を感じて振り返る

 まぁ、だいたい察しはついている

 

「って、悠長にしていられたらよかったんだけどな、ミエル?」

 

「お久しぶりですわ、我がマジェスティ

 まずは大会2回戦突破を祝福させていただきます。」

 

「社交辞令はいい、本題を話してくれないか?

 これでも結構焦っているんだ。」

 

 遊戯王ZEXALにてメインの舞台となった街、ハートランド

 ARC―Ⅴにもエクシーズ次元に存在する都市として登場したが、アカデミアの侵攻によって崩壊した

 そう、素良が所属するであろうアカデミアによって・・・

 

「これは失礼しましたわ

 では早速、新たな運命の流れを感じましたのでご報告に」

 

「はぁ~やっぱりな、で、内容は?」

 

「器無き世界に月が昇るとき、地獄の門は開かれ、蟲が荒れ狂い、亡者に取りつかれた幽鬼が彷徨い歩く

 されど、陽より落とされし炎がそれを打ち払う。」

 

「なんだ?いつも以上に抽象的だな、聖書の一節か?」

 

「貴方様の覇道は、きっとそれよりも輝かしいものになりますわ。」

 

 だめだ、いまいち話がかみ合っていない

 月、というのはあの駄犬の事だろうけど、蟲?禿の側近の事か?あいつがアカデミアから出てくるとは思えないけど

 それに幽鬼というのは誰の事だ?

 紫キャベツじゃないよな、あいつに彷徨われたら俺じゃ対処するのは難しい

 

『見つけたぞ!!』

 

「!?」

 

 薄暗い駐車場に響く少女の声

 馬鹿な!?彼女はユースの魔導の人の所に行っているはず!?

 

 慌てて駆け寄ってくる足音

 ほどなくして現れたのは全身をすっぽり覆う青いコートを身に纏った明らかな不審者、腕の所にだけ黄色い星の図柄が描かれているのがやけに目立つ

 

「さぁ!私とデュエルだ!!覚悟しろ!!」

 

 バサッと行きよいよく投げ捨てられるコート

 揺れる黄色い大きなリボンとそれでポニーテールにした青紫の髪

 勝気そうな顔は柚子に似て、その眼にはめ込まれた翡翠の瞳が俺を睨んでいる

 

「私はセレナ!キサマを倒す戦士の名だ!覚えておけ!!」

 

 『セレナ』融合次元のデュエリストにして、赤馬零王の娘『レイ』の分け身の一人

 何でだよ!?俺はさっきのデュエルで1回もエクシーズ使って無いぞ!

 

「おやおや、勝気な御嬢さんだ

 生憎、今は急いでいてね、後日じゃ駄目かな?」

 

「少年、そう言わずセレナ様の相手をしてくれないか?」

 

 今度聞こえたのは渋い男性の声

 振り向くとそこには屈強な肉体をした傷だらけの男、顔の半分はやけどの跡があり左目は眼帯で塞がっている

 ちなみに背後に居たはずのミエルはすでに消失している

 

「挟み撃ちってわけか・・・でも、今は普段使いのデッキを持ってなくてね。

 全力での勝負を望むのなら、待ってほしいのだが?」

 

「なに?さっきの奴とのデッキがキサマの全力ではないのか?」

 

「今持っているのはあいつ専用の特注品さ

 君とのデュエルには向かないと思うし、アクションデュエル用の構築をしているんでね。」

 

「う~む、それならば仕方ないか・・・」

 

 よしよし、今持っているデッキは沢渡用のデッキなのは本当だし、相手するにしても調整の時間が欲しい

 出来るならこのまま交渉してうやむやにしたい所だ

 

「セレナ様、あまり悠長にしていると追手が来てしまいますよ?

 プロフェッサーはすでに、貴女が抜け出していることに気付いているでしょうし」

 

「ぬっ!それはまずいな・・・えぇい!

 キサマ!四の五の言わずに私と戦え!!

 お前ほどの戦士ならば、そのデッキでも私と戦えないとは言わせないぞ!」

 

 くそ、勲章おじさんめ、余計な事を!

 たしかにこのデッキならセレナの相手をしてやれないことはないが、あまりにも時間がかかりすぎる!

 

「セレナ様と戦うのが嫌というのであれば、私と相手をしてもらおうか?」

 

 お前はもっと駄目だよ!

 

「控えろバレット!こいつの相手をするのは私だ!!」

 

「やれやれ人気者はつらいね・・・」

 

 柚子の試合は第二スタジアムで次の次

 つまり、まだ素良の近くに柚子が居る

 エクシーズ次元の人間がこのスタンダードに紛れていることに気付いただろうから、それをアカデミアに報告されるついでに柚子を攫ってこいと言われたら、まずい

 此処でセレナを確保する手もあるけど、強制転送されたら目にも当てられない

 

「でも、今は本当に急いでいるんだ。

 君との相手は今度にさせてもらう、よっと!」

 

 俺は走る、今この場と外を繋げている、唯一の場所、窓へと

 

「なっ!?待て!!」

 

「待てと言われて待つ奴はいないんだよ!Ciao~」


「離せー!!」

 

「おやめください、セレナ様!さすがに無理です!!ここは三階ですよ!!」

 

 セレナの足取りを監視カメラを追って来てみれば、何だこれは・・・?

 

「奴は飛び降りたじゃないか!!なら私も出来る!!」

 

 なぜか、窓枠に手をかけて大暴れしているセレナと

 

「壁を蹴って、衝撃を和らげるなんて芸当が貴女にできるわけがないでしょう!?

 素直に階段で追いましょう!!」

 

 それを諌める大男

 

「そこで何をしている?」

 

「むっ!?しまった、騒ぎ過ぎたか!」

 

 私に気付いたセレナは、窓から降りるとこちらに警戒心むき出しで睨んでくる

 

「此処はひとまず逃げましょう、セレナ様」

 

「うむ、奴をとっとと追わないといけないからな!」

 

「待つんだ、セレナ!」

 

 逃げようと、いや誰かを追おうとしている2人を止めるため声をかける

 いきなり名前を呼ばれたためか彼女は足を止め振り返る

 

「キサマ、何故私の名を?」

 

「私は赤馬 零児、赤馬 零王の息子だ。

 覚えていないか?私は以前、君と会っている。

 融合次元のアカデミアで・・・」

 

「・・・・・・・・・・・あっ!3年前、アカデミアに侵入をしたけど、すぐにプロフェッサーにどこかに飛ばされた男!!」

 

 その通りだが、どういう覚え方をしているんだ・・・

 

「君は赤馬 零王に最も目をかけられているデュエリストだった

 その君が我々の世界に現れた、何を目的に?

 赤馬 零王にその腕を見込まれ、侵略の尖兵として送り込まれたか?」

 

「赤馬 零王など関係ない!

 私は自分の意志で、この世界に来た!この世界で一番強い奴とデュエルをするためにな!

 それに侵略とは聞き捨てならないことを!

 いいだろう!邪魔立てをするというのであれば、先にキサマの相手をしてやる!!」

 

 ディスクを構えようとするセレナ、だがそれを制し大男が私と彼女の間に割って入る

 

「バレット!?」

 

「貴女に降りかかる火の粉を払うのが、私の使命

 行ってくださいセレナ様、しばしの自由をお楽しみください」

 

「バレット・・・すまん、恩に着る!」

 

 バレットと呼ばれた大男を背にしてセレナが駆けてゆく、仕方がない

 

「此処を封鎖しろ、こちらから連絡を入れるまで誰も入れるな。」

 

『かしこまりました、社長』

 

「私などを封じ込めていいのか?

 セレナ様ならば、あちらこちらで暴れかねんぞ?」

 

「問題ない、あちらにも人員を向かわせている

 それに、お前にもいろいろと聞きたいことがある。」

 

「私には何も話すことはない」

 

「ならば、デュエルで聞き出すまで」

 

『『決闘(デュエル)!』』

 

「先んずれば人を制す!私が先攻だ!

 私はマジックカード、闇の誘惑を発動

 デッキから2枚をドローし、その後、闇属性モンスター1体を手札から除外する

 除外できない場合は手札が全て墓地へ送られる

 私はデッキから2枚ドローし、闇属性モンスター、サイバー・ウロボロスを除外

 

 さらにサイバー・ウロボロスが除外されたことにより効果発動

 手札1枚を墓地に送ることで、デッキから1枚ドローする。

 

 そして、墓地に存在するヴォルカニック・バレットの効果発動

 私のライフを500払い、デッキからヴォルカニック・バレット1枚を手札に加える!」

 LP4000→3500

 

 1枚のマジックカードからの連鎖的な効果の発動

 やはり、実戦経験は豊富らしいな

 

「まだ終わらん

 手札より速攻魔法、手札断殺を発動

 互いのプレイヤーは手札を2枚捨て、2枚ドローする。

 私はサイバー・ウロボロスとヴォルカニック・バレットを捨て2枚ドロー!」

 

「では私もDDネクロ・スライムとDDゴーストを捨て2枚ドローさせてもらおう。」

 

「墓地の2枚目のヴォルカニック・バレットの効果を発動し、ライフを500支払い、3枚目のヴォルカニック・バレットを手札に加える。

 手札より、ヴォルカニック・ロケットを通常召喚!」

 LP3500→3000

 

 ヴォルカニック・ロケット ATK1900

 

 相手の場に炎球が発生し、そこから生まれ出る骨の様な外骨格を持つモンスター

 その姿は名に有る通り、ロケットを生物にしたようだ

 

「このカードが召喚、反転召喚、特殊召喚に成功した時、自分のデッキ、墓地からブレイズ・キャノンと名の付いたカードを手札に加えることが出来る

 私はデッキからブレイズ・キャノン・マガジンを手札に加える。」

 

 モンスターを召喚しても手札を減らさないか・・・奴も融合次元の人間であるならば、そろそろ

 

「フィールド魔法、フュージョン・ゲートを発動

 このカードは手札、フィールドから融合素材モンスターを除外することで、融合召喚が可能となる!」

 

 やはりな

 

「私は手札の異次元の哨戒機とフィールドのヴォルカニック・ロケットを除外し融合!

 飛翔する炎禍よ、異界の番人と交じり合いて、新たな災魔となって襲撃せよ!融合召喚!

 現れ出でよ!重爆撃禽 ボム・フェネクス!!」

 

ボム・フェネクス「キュオオオォォォォォォ!!」

        ATK2800

 

 現れたのは高めの駐車場の天井に届くかと言う程の巨大な炎の鳥

 胴には人の顔に見えるものがあり、その炎の翼はこの場の壁や柱を焼いている、まさにその様は災魔に相応しい

 この駐車場に車が少なくて助かったな、こんなモンスターならば近くに車があったら燃料に引火して大爆発が起きていたであろう

 

「永続魔法、星邪の神喰を発動し手札を2枚伏せる

 この瞬間、私はボム・フェネクスの効果を発動する

 ボム・フェネクスは1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に、このカードの攻撃権を放棄しフィールドに存在するカード1枚に付き、相手ライフに300ポイントのダメージを与える!不死魔鳥大空襲(フェネックス・ビッグ・エアレイド)!!」

 

「ぐうぅ・・・」

 LP4000→2500

 

 ボム・フェネクスより放たれた5つの炎の礫が私に襲い掛かる

 全身を炎に包まれ、肌が焦げる感覚が襲い掛かるが

 

「この程度は想定の内

 私は手札のDDD反骨王レオニダスの効果を発動

 自分が効果ダメージを受けたとき、このカードを手札から特殊召喚し、受けたダメージの数値だけ自分のライフポイントを回復する

 現れよ!巨悪に反逆する屈強なる王!DDD反骨王レオニダス!!」

 LP2500→4000

 

反骨王レオニダス「ウオオォォォォォ!!ハッ!!」

        ATK2600

 

 私の炎を吹き飛ばし、雄叫びと共に現れる黄金の鎧に身を包んだ屈強なる王、レオニダス

 だが、このモンスターの真価はこれだけではない

 

「反骨王レオニダスがモンスターゾーンに存在する限り、私が受ける効果ダメージは0となる。」

 

「なに!?くっ、ならば私はエンドフェイズに入る

 このエンドフェイズに除外された異次元の哨戒機の効果発動

 このカードは除外されたターンのエンドフェイズ時に私の手札、フィールド、墓地のカードを1枚除外することで攻撃表示で特殊召喚する事が出来る

 私は墓地のサイバー・ウロボロスを除外し異次元の哨戒機を特殊召喚!」

 

 異次元の哨戒機 ATK1200

 

 攻撃力1200程度のモンスターを攻撃表示でわざわざ特殊召喚した、誘っているのか?

 

「そして、除外されたウロボロスの効果と、自分の墓地のモンスターが1体のみ除外されたことにより永続魔法、星邪の神喰の効果が発動する

 デッキから除外されたモンスターと異なる属性のモンスター1体をデッキから墓地へと送る

 サイバー・ウロボロスは闇属性、よって炎属性のヴォルカニック・カウンターを墓地へ

 ウロボロスの効果で手札のヴォルカニック・バレットを捨て1枚ドロー

 私のターンはこれで終了だ。」

 

 最後のヴォルカニック・バレットが墓地へと送られたことにより手札の情報アドバンテージはなくなったか

 1ターン目から効果ダメージで削りに来て、攻撃を誘いつつ墓地にカウンター用の罠を仕掛けるとは、堅実なデュエルをする男だ

 

「私のターン、ドロー

 私は速攻魔法、魔力の泉を発動、このカードの効果により相手のマジック、トラップカードは次の相手ターン終了時まで破壊されず、発動と効果を無効に出来ない」

 

「ほう、そのようなリスクを冒してまでのカードとは」

 

「もちろん、それだけのリターンはある

 相手の表側表示のマジック、トラップカードの数だけ私はドローし、その後、私のフィールドの表側表示のマジック、トラップカードの数だけ手札を選んで捨てる

 相手の場にはフュージョン・ゲートと星邪の神喰の2枚、私のフィールドには魔力の泉1枚だけ、よって2枚ドローし、手札を1枚、DDリリスを捨てる。

 

 さらに永続魔法、異形神の契約書を発動

 このカードは自分のスタンバイフェイズ毎に私に2000ポイントのダメージを与える」

 

「自らダメージを?」

 

 嫌な予感を覚えたのか、男の表情がゆがむ

 伏せカードの1枚はヴォルカニック・ロケットの効果で手札に加えたブレイズ・キャノン・マガジンだとして、もう1枚はマジック、トラップの除去系ではないようだな

 

「それと引き換えに1ターンに1度ずつ、私のフィールド上にエクストラデッキから各召喚法を使ったDDDモンスターを特殊召喚した場合、効果を発動できる

 

 私は墓地のDDネクロ・スライムの効果を発動

 このカードと他の融合素材モンスターを墓地から除外することで、DDD融合モンスターを融合召喚する!DDネクロ・スライムとDDゴーストを墓地から除外

 闇に蠢く亡霊よ、自在に形を変える神秘の渦よ、冥府によりて融け合い、今一つとなりて新たな王として生まれ変わらん!融合召喚!

 生誕せよ!DDD烈火王テムジン!」

 

烈火王テムジン「ハッ!」

       ATK2000

 

 炎を纏う赤き王、烈火王テムジン

 私に炎を浴びせたことを後悔させてやろう

 

「墓地融合、それもモンスターのみでやってのけるとはな

 なるほど、この次元のデュエリストは手強いらしい」

 

「この程度で驚かれては困る

 異形神の契約書の効果、融合モンスターを特殊召喚したことにより、私のライフが1000ポイント回復する。

 さらに除外されたDDゴーストの効果により、このDDゴースト以外の除外されているDDモンスターまたは契約書カードを墓地へと戻す

 私はネクロ・スライムを再び墓地へと戻す。」

 LP4000→5000

 

(私のカードで墓地に送ったカードを利用し融合モンスターを出すとは

 この青年、プロフェッサーの息子と言っていたが、そうなるとプロフェッサーは元々この次元の人間だったという事か?)

 

「さらに私はスケール1のDDD運命王ゼロ・ラプラスとスケール5のDDD壊薙王アビス・ラグナロクをペンデュラムスケールにセッティング!」

 

 私を挟むようにして光の柱が立ち上り、その中に計器や骨などで作られた悪魔の頭と王座に座った深淵の王が浮かび上がる

 

「なっ!?モンスターをマジック、トラップスロットに置くだと!?」

 

「ほう、やはりペンデュラム召喚は他の次元にはないようだな?」

 

「ペンデュラムだと?」

 

「ならばとくと見るがいい!

 設置されたスケールは1と5これにより、私は1ターンに1度、レベル2から4の手札のモンスターまたはエクストラデッキの表側表示ペンデュラムモンスターを同時に特殊召喚出来る

 

 我が魂揺らす大いなる力よ、この身に宿りて、闇を引き裂く新たな光となれ!ペンデュラム召喚!

 手札より出現せよ!レベル4、DDバフォメット!」

 

DDバフォメット「グワアアァァ!」

        DEF1800

 

 光と共に飛来する様々な生物が歪に歪み合わさった様な悪魔、これで

 

「烈火王テムジンの効果が発動する

 烈火王テムジンは1ターンに1度、DDモンスターが特殊召喚された場合、墓地のDDモンスター1体を特殊召喚する事が出来る

 冥府より湧き立て、DDネクロ・スライム!」

 

 DDネクロ・スライム DEF300

 

 赤紫の粘液が湧き、それが一部硬化して髑髏の様に固まる

 伏せカード1枚が不明だが、まずは奴の罠を先に潰すとしよう

 

「DDバフォメットの効果発動

 1ターンに1度、DDバフォメット以外のDDモンスターのレベルを1~8までの任意の数値に変更する。

 私はDDネクロ・スライムのレベルを1から4へと変更」

 

 DDネクロ・スライム LV1→4

 

「レベル4のモンスターが2体、これはまさか!?」

 

「そうだ!私はレベル4のDDバフォメットとDDネクロ・スライムでオーバーレイネットワークを構築!

 この世の全てを統べるため、今、世界の頂に君臨せよ!エクシーズ召喚!!

 生誕せよ、ランク4、DDD怒濤王シーザー!」

 

怒濤王シーザー「ウオオオォォォォォ!!」

       ATK2400 ORU2

 

「ペンデュラムから更にエクシーズだと!?

 まさかお前はすべての召喚法が使えるというのか!?」

 

「そのまさかだ、異形神の契約書の効果!

 エクシーズモンスターを特殊召喚したことにより、互いのフィールドか墓地のカードを1枚除外する

 私が除外するのは貴様の墓地のヴォルカニック・カウンターだ。」

 

 シーザーが大剣を突き立てると相手のフィールドに水柱が立ち、黄金の甲殻に覆われた四足歩行の獣の様なモンスターがそれに巻き込まれ、どこかに消えて行った

 

「ぬぅ・・・星邪の浸食の効果により、デッキから闇属性の異次元の偵察機を墓地に送る。」

(ヴォルカニック・カウンターは戦闘ダメージを受けたとき、墓地に他の炎属性が居る場合、自身を除外することで受けた戦闘ダメージ分の効果ダメージを相手に与えるカード・・・

 この次元のデュエリストならば、あの2人の渇きを癒せるかもしれない。)


 私は世界を転々とする傭兵部隊の一員だった

 が、あるとき、戦場は変わった

 リアルソリッドビジョンというものが出現し、カード1枚でどんな兵器よりも強力なモンスターを呼び寄せることが出来るようになった

 たかが紙切れ一枚で高価な地雷をもしのぐ爆弾を仕掛けられたのだ

 そして、私は、そのカードによって左目と戦場で生きる力を失った

 

「セレナ様、今日からあなたの監視役となる、バレットでございます。」

 

 戦場を失った私はそれでも戦いの場を求め、デュエル戦士を育て上げる養成校、デュエルアカデミアに身を寄せた

 デュエル戦士を養成し、戦場に送り出す此処でならば、戦果を上げれば新たな戦場へと舞い戻ることが出来ると

 

「よろしくお願いします。」

 

 だが、そこで私に言い渡されたのは少女の監視だった

 私は落胆した、このような何も力を持たない少女の監視など、戦場とはほど遠いものだと、この身が朽ちる場所には行けないのだと

 案内役が去り、不機嫌そうな少女が私に初めてかけた言葉が

 

「お前は強いのか?」

 

「えっ?」

 

「ならば私とデュエルしろ!」

 

 訳も判らず、デュエルをせがまれた

 そして彼女は強かった、ロック戦術でいくら縛られようと、決して諦めず挑みかかってきた

 

「お前なかなかやるな!だが勝つのは私だー!!」

 

 そして、私は負けた

 それからというもの、彼女に振り回された

 屋敷の敷地を抜け出すことなど序の口で、時にはアカデミア生とデュエルをしていることもあった

 そして、しばらく経ち彼女に無理やり連れてこられたのは、兵士を育てている場所には似つかわしくない無数の花が咲き誇る庭園

 

「紹介しよう!私の新しい監視役のバレットだ、中々に強いぞ!」

 

 庭園に居たのは一人の少年、紫の髪ににやけた表情

 私の戦士の勘が警鐘を鳴らす、この少年は危険だと

 

「へぇ~結構強いんだ、君に勝ったのかな?」

 

「何を言う!私が負けるわけないだろう!」

 

「じゃあ、セレナより弱いんだ、つまらなーい」

 

「ぬぅ!ほらバレット、キサマこうも言われて悔しくないのか!

 あいつの鼻を明かしてやれ!」

 

 確かに子供の言葉とはいえ侮辱されたのはいささか腹が立つ、少女の言葉に便乗して少年に挑むことにした

 

「へぇ~いいよ、ちょっとは僕を楽しませてよね!」

 

 やはりと言うべきか私は少年に大敗した

 狂気、いや戦いそのものを純粋に喜んでいると言っていいだろう

 

「はぁ~やっぱり弱かったね。

 でも、おじさん、僕のこと怖くないのかい?」

 

「はっ?」

 

 怖くないかだと、確かに危険な性質をしているとは思ったが、ここは戦士を養成する場所だ

 そして私は戦場を求め此処に来たのだ、その程度の事で怖がってなどいられない

 

「まぁ、及第点ってところかな?

 でもさぁ~ちょっと消化不良になっちゃったから付き合ってくれないかい、セレナ?」

 

「おぉ!いいぞ!見ていろバレット、私の戦いを!」

 

 それから行われた2人のデュエルは凄まじかった

 互いの本能とプライドがぶつかるギリギリの戦い、死に場所を求めてさまよう私とはかけ離れた精力ある姿に私は魅せられていた、そして思ったのだ

 

「はははっ!やっぱり、セレナは最高だよ!

 僕の強さを怖がる奴らと全然違う!」

 

 悪意と欲望が渦巻くこのアカデミアで、その強さゆえにつながりに餓える孤独な少年と

 

「当たり前だ!私とお前は『らいばる』とか言う奴らしいからな!」

 

 自由を求める少女のそばが私の戦場だと


「バトルだ!」

 

「させぬ!バトルフェイズに移行する前に永続トラップ発動!ブレイズ・キャノン・マガジン!

 お互いのメインフェイズに手札のヴォルカニックカードを墓地に送り、デッキから1枚ドローする。」

 

「このタイミングでドロー効果だと?」

 

「これで終わりではない

 墓地へ送られたヴォルカニック・バックショットの効果により、お前は500ポイントのダメージを受ける。」

 

「無駄だ。

 レオニダスが存在する限り、私への効果ダメージはゼロだ。」

 

「それはどうだろうな

 ヴォルカニック・バックショットのさらなる効果

 デッキ、手札よりヴォルカニック・バックショットを2枚墓地に送り、相手フィールドの全てのモンスターを破壊する、砕け散れ!!」

 

「シーザーの効果発動・・・」

 

 怒濤王シーザー ORU2→1

 

 カードから銀色に輝く、3つの銃口が現れ炎を纏う3つ首のトカゲの様なモンスターが弾丸の様に発射され、三体の王たちを駆逐してゆき、零児にも火の粉が飛ぶ

 

「これでレオニダスの効果は消えた、新たに墓地に送られたヴォルカニック・バックショット2体分の効果を受けろ!」

 

「ぐぅ・・・シーザーがフィールドから墓地に送られたことにより、デッキから契約書を1枚手札に加える。

 私は魔神王の契約書を手札に加える。」

 LP5000→4500→4000

 

「これで貴様のモンスターは消えた、バトルは出来まい。」

 

「いや、私はこのままバトルフェイズへ移行する。」

 

「なんだと!?」

 

「このバトルフェイズ終了時、怒濤王シーザーのモンスター効果により、このターンに破壊された私のモンスターを墓地より可能な限り、特殊召喚する。

 舞い戻れ、烈火王テムジン!怒濤王シーザー!」

 

烈火王テムジン「ハッ!」

       DEF1500

 

怒濤王シーザー「フンッ!」

       DEF1200

 

「だが、その代償に次のスタンバイフェイズに、私はこの効果で特殊召喚したモンスター1体に付き1000ポイントのダメージを受ける。」

 

「ほう、自らのライフと引き換えにモンスターを残したか、勲章ものだな。

 だがそれが自分の首を絞めたと思い知れ!

 速攻魔法、瞬間融合を発動、このカードはフィールドのモンスターを使い融合召喚を行う!

 

 私は炎族のボム・フェネクスと機械族の異次元の哨戒機を融合!

 飛翔する炎の災魔よ、異界の番人と交じり合い、破壊の災魔となり現れ出でよ!融合召喚!!

 来い、起爆獣ヴァルカノン!」

 

ヴァルカノン「ギャオオオォォォォォ!!」

      ATK2300

 

「私のターンで融合召喚を行うとは・・・」

 

「起爆獣ヴァルカノンの効果発動

 このモンスターが融合召喚に成功した時、相手フィールド上のモンスター1体とこのカードを破壊し墓地に送る。

 そして、相手に墓地へ送られた相手モンスターの攻撃力分のダメージを与える!

 共に砕けよ!怒濤王シーザーを破壊する!」

 

 犀の様な頭部を持つ全身を重火器で武装した機械獣、ヴァルカノンがシーザーへ組み付き拘束する

 そしてその尻尾の導火線が燃え尽きると2体は爆発を起こし零児へ向かって破片が飛ぶ

 

「ぐわああぁぁぁ!!」

 LP4000→1600

 

「これで次のスタンバイフェイズに貴様は2000ポイントのダメージを負うことになる。

 今ならば、サレンダーを認めてやろう

 そして、何処へなりと消えるがいい」

 

「・・・ふざけるな。」

 

「!!」

 

「貴様程度の奴に・・・私は負けていられぬ!

 ゼロ・ラプラスのペンデュラム効果発動!

 1ターンに1度、エクストラデッキからゼロ・ラプラス以外の表側表示のDDDペンデュラムモンスター1枚を手札に加える。

 私はDDD反骨王レオニダスを手札へ戻す。」

 

(ペンデュラムモンスターは破壊、いや墓地へ送られる代わりにエクストラデッキへ加わるのか)

 

「チューナーモンスター、DDナイト・ハウリングを通常召喚!」

 

 ナイト・ハウリング ATK300

 

「DDナイト・ハウリングが召喚に成功したので効果発動

 自分の墓地のDDモンスター1体を攻守0にして復活させる。

 再び君臨せよ!DDD怒濤王シーザー!」

 

怒濤王シーザー「ウオォオォォォォ!!」

       DEF0

       ATK0

 

 フィールドに現れた巨大な口、DDナイト・ハウリングの中から怒濤王シーザーが飛び出し雄叫びを上げる

 

「そして、このカードはランク4のDDDエクシーズモンスター1体を素材にしてエクシーズ召喚する事が出来る!

 私はランク4のDDD怒濤王シーザー1体でオーバーレイネットワークを構築!

 英雄の名賜りし者、深遠なる大義もて、この世の全てをいざ射抜かん!エクシーズ召喚!

 降臨せよ、ランク5、DDD狙撃王テル!!」

 

狙撃王テル「ハハッ!」

     ATK2300 ORU1

 

 シーザーが混沌へと還り、新たに転生した姿は矢に貫かれた林檎の様な胴と片腕に黄金の蛇の様なボウガンを装備した悪魔

 主の覚悟に応えるため、その照準をバレットへ向ける

 

「新たなエクシーズだと!?」

 

「狙撃王テルの効果発動

 私が効果ダメージを受けたターン、オーバーレイユニット1つを使い

 フィールドのモンスター1体の攻撃力、守備力を1000下げ、相手に1000ポイントのダメージを与える!」

 

「だが、私のフィールドにモンスターはいない」

 

「そう、だから私はテル自身の攻守を1000下げ、貴様にダメージを与える!ピアシング・アロー!」

 

 狙撃王テル ORU1→0

       ATK2300→1300

       DEF2000→1000

 

 狙撃王テルのボウガンにオーバーレイユニットが矢として装填され、テル自身のエネルギーが充填され発射される

 

「ぐわっ!自らのモンスターを犠牲にしてまで、私にダメージを・・・」

 LP3000→2000

 

「いや、ここからだ!

 私は永続魔法、魔神王の契約書を発動

 このカードは自分のスタンバイフェイズ毎に私に1000ポイントのダメージを与える。」

 

「また自らにダメージを課すカードだと!?」

 

「だが、これで私は1ターンに1度、悪魔族モンスターを融合召喚できるようになる

 私はフィールドのDDD狙撃王テルと手札のDDD反骨王レオニダスを融合!

 暗闇を射抜く射手よ、不屈の魂を得て真の王と生まれ変わらん!融合召喚!

 出でよ、神の威光伝えし王、DDD神託王ダルク!」

 

神託王ダルク「はっ!」

      ATK2800

 

 白銀の鎧に身を包んだ悪魔と罵られし聖女の再誕に合わせ、深淵の王が動き出す

 

「私のフィールド上にDDモンスターが特殊召喚されたことにより、DDD壊薙王アビス・ラグナロクの効果が発動する

 私の墓地よりDDモンスター1体を特殊召喚し私は1000ポイントのダメージを受ける。」

 

「馬鹿な!?自滅する気か貴様!?」

 

「そんなわけがないだろう

 私は墓地よりDDネクロ・スライムを特殊召喚!」

 

 ネウロ・スライム DEF300

 

 アビス・ラグナロクの全身から伸びるベルトが、ネクロ・スライムを引きずり出す

 そして、その対価だと言わんばかりに零児へ向けて雷が放たれる、が

 

「ここで神託王ダルクの効果が発揮される

 神託王ダルクが存在する限り、私への効果ダメージはすべて回復へと変わる、ライフ・イレイション!」

 LP1600→2600

 

 ダルクがそれを受け止め、暖かな光へと変えて零児に与える

 

「くっ!ダメージを回復に変えるカードだと」

 

「狙撃王テルがフィールドから墓地へ送られたことにより、私はデッキからDDカードまたは契約書カード1枚を墓地へ送ることが出来る

 私が墓地に送るのはDDヴァイス・テュポーン」

 

「融合、エクシーズ、ペンデュラムと来てフィールドにはチューナーモンスター・・・」

 

「察しがいいな

 私はレベル7のDDD神託王ダルクにレベル3のDDナイト・ハウリングをチューニング

 闇を引き裂く咆哮よ、荒れ狂う嵐を呼び、世界の全てを征服せよ!!シンクロ召喚!

 生誕せよ!DDD疾風大王エグゼクティブ・アレクサンダー!!」

 

Eアレクサンダー「タアァ!!」

        ATK3000

 

 光り輝く宝玉の埋め込まれた白銀の鎧を纏い、荒れ狂う風をマントに受け新たな力を得た疾風王が降臨する

 

「まだ終わらぬ!

 墓地のDDヴァイス・テュポーンの効果発動

 このカードが墓地へ送られたターンのメインフェイズ、このカードと墓地のモンスターを除外することでそれらを素材としたレベル8以上のDDDモンスターを融合召喚する

 

 私はレベル5以上のDDモンスター、DDヴァイス・テュポーンとDDナイト・ハウリングを融合

 大いなる母よ!闇の咆哮よ!煉獄の奥より全てを制圧する王を呼び覚ませ!融合召喚!

 生誕せよ!DDD烈火大王エクゼクティブ・テムジン!」

 

Eテムジン「ハッ!」

     ATK2800

 

 巨大な熱を湛える大剣とタワーシールドを持ち、さらに副碗に2本の剣を携えた新たなる烈火王

 そして、新たなる怒濤王の産声が迫っていた

 

「エグゼクティブ・アレクサンダーの効果発動

 このカードがフィールド上に存在し、DDモンスターが召喚、特殊召喚された時、墓地よりDDモンスター1体を特殊召喚する

 戻れ、DDバフォメット!」

 

 DDバフォメット DEF1800

 

「DDバフォメットの効果を発動し、DDネクロ・スライムのレベルを6へ変更する。」

 

 DDネクロ・スライム LV1→6

 

「レベル6が2体!?」

 

「私はレベル6のDDネクロ・スライムとDDD烈火王テムジンの2体をオーバーレイ

 世界に轟け、華々しき栄華!全ては我に通ず!エクシーズ召喚!

 生誕せよ!DDD怒涛大王エクゼクティブ・シーザー!」

 

Eシーザー「ウオオオオォォォォォォ!!」

     ATK2800 ORU2

 

 より巨大になった大剣を片手で軽々振り回す屈強なる怒涛大王

 ここに3つの召喚法を代表する大王が出そろった

 そして、主の勝利の為に大王たちは動き出す

 

「エクゼクティブ・テムジンの効果発動

 1ターンに1度、自分フィールド上にこのカード以外のDDモンスターが召喚、特殊召喚された場合、自分の墓地のDDモンスター1体を特殊召喚する。

 現れよ、DDリリス!」

 

 DDリリス DEF2100

 

 テムジンが剣を掲げるとフィールドに花の様な姿を持つ妖婦が現れる

 そして、その手には1枚のカードが握られており、零児へと渡される

 

「DDリリスが召喚、特殊召喚されたことにより効果発動

 自分の墓地のDDモンスター1体を手札に加える

 私が手札に加えるのはDDD反骨王レオニダス」

 

(これでスタンバイフェイズにダメージを受ければ、レオニダスを呼び出す手はずが整う

 だが何故、奴は回復効果のあるダルクを消した?)

 

「これで再び私のフィールドにレベル4のモンスター2体がそろった

 私はレベル4のDDリリスとDDバフォメットをオーバーレイ

 再び君臨せよ、DDD怒濤王シーザー!」

 

 怒濤王シーザー ATK2400 ORU2

 

「そして、ランク4の怒濤王シーザーで再びオーバーレイ!

 再び現れ、我が敵を射抜け!DDD狙撃王テル!」

 

狙撃王テル「ハッ!」

     ATK2300 ORU3

 

「そして、エグゼクティブ・アレクサンダーは、私のフィールドにDDDモンスターが3体以上いる時、その攻撃力を3000ポイントアップさせる。」

 

 Eアレクサンダー ATK3000→6000

 

「攻撃力6000だと!?

 だが、貴様のバトルフェイズはすでに終了している!」

 

「そうだ、だからこうする。

 狙撃王テルの効果発動オーバーレイユニット1つを使い、エクゼクティブ・アレクサンダーの攻守を1000ダウンさせ、再び1000ポイントのダメージを与える、ピアシング・アロー!」

 

 Eアレクサンダー ATK6000→5000

          DEF2500→1500

 

 狙撃王テル ORU3→2

 

 テルのボウガンにアレクサンダーの風の力が装填され、バレットに向かい放たれる

 

「ぐはっ!!ぐぅぅ・・・」

 LP2000→1000

 

 バレットは肩に刺さったテルの矢を引き抜き、握りつぶす

 

(これほどとは・・・この青年の覚悟と強さに応えてやりたいが、残念ながら私にはこの者が望むものは伝えられそうにないな・・・)

 

 バレットはすでに自分に勝ち目がない事が分かっていた。テルの効果を見てそれは明白だ

 せめて敗者として、勝者の望みは叶えてやりたいが、自分にはそれが出来ないと無知を恥じる

 

「私はこれでターンエンド」

 

「私のターン、ドロー」

 

「このスタンバイフェイズ、私は怒濤王シーザーの効果により2000ポイントのダメージを受ける、ぐぅぅ・・・・」

 LP2600→600

 

 零児の体から紫の靄が立ち上り、テルへとそれは流れていく

 

「狙撃王テルの効果は・・・相手ターンでも使える

 とどめだ!狙撃王テルの効果!オーバーレイユニットを1つ使いエクゼクティブ・アレクサンダーの攻守を1000下げ、相手に1000ポイントのダメージを与える!」

 

 Eアレクサンダー ATK5000→4000

          DEF1500→500

 

狙撃王テル「ははっ!ハッ!!」

     ORU2→1

 

「ぐはあああぁぁぁぁぁぁ!!」

 LP1000→0

 

 テルの矢がバレットを貫き、彼はゴロゴロと転がり壁へぶつかる

 零児はボロボロとなった彼に歩み寄り、冷徹なまなざしで問いかける

 

「答えろ、赤馬 零王は何故、次元戦争などを起こしている。

 エクシーズで瑠璃という少女を攫ったのは何のためだ。」

 

「残念ながら、私はそれに答えられない」

 

「白を切るつもりか?」

 

「いや、ただ知らないだけだ

 私は元は傭兵、アカデミアに身を置いてからはセレナ様の監視と警護が私の任務だった。

 次元侵攻についてはセレナ様もほとんど知らないことだ。」

 

 嘘は吐いていない、それはせめてもの勝者への報酬

 

「なに?お前達は奴が何をしているのか知らないというのか?」

 

「あぁ、何も知らない

 だが一つ言えることは、赤馬 零王は我々の世界から争いを無くしたという事だ。」

 

「争いを無くした?どういうこと――」

 

 アカデミアのデュエルディスクには負けた際、強制送還されるようにセットされている

 零児の質問が終わるより先にバレットは光に飲み込まれ消えて行った

 




ゲームのように笑いながら?
無抵抗な者も容赦なく?
アカデミアのデュエリストがそんなことをするはずがない!

本当だ!今も奴らの卑げた嗤い声は俺の、俺たちの中から消えていない・・・

嘘だ!アカデミアは正義のために存在している、そんなことをするはずがない!!
ならば、デュエルだ!貴様らの言葉か真実か証明して見せろ!!

くっ!戦うしかないのか・・・

隼!せめて、俺が行こう!
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『知らぬ罪、告げられた真実』


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知らぬ罪、告げられた真実

遅くなってしまって申し訳ありません。
あまりの長いので初めてではありますが分割で投稿させていただきます。
本当は会話だけだったんですが、私の脳内セレナが戦わせろとうるさいので、予定変更で書いております。


 あ~くそ、飛び降りたら裏手だったから、第二スタジアムまで滅茶苦茶遠い

 何で連絡橋とかないんだよ。

 だが、今一番困っていることは

 

「YaYa、僕はデニス・マックフィールド!

 LDSブロードウェイ校からの留学生だよ。

 君、榊 遊矢だろ?ちょっとお話したいなぁ~って、声をかけたんだけど、いいかな?」

 

 要注意人物(多分スパイ)との接触だ。

 なんで、さっきのセレナといい、急いでいる時に話しかけてくるんだ!こいつらは!

 

「話?俺は柚子の試合を見に行きたいから、あまり時間を取りたくないんだが?」

 

 とはいえ、邪険にするわけにもいかないし、俺がすでにセレナと接触していると気取られるわけにもいかない。

 平静を装って、この場を退散するとしよう。話だけなら歩きながらもできるし

 

「そんな連れないこと言わないでよ。

 歩きながらでもいいからさぁ~」

 

「そこまで言うなら、で、話って?」

 

「君の一回戦と二回戦、見せてもらったけど、とってもWonderfooo!!映画を見ているみたいで凄かったなぁ~

 僕、手に汗握って、興奮しちゃったよ!」

 

「そう、それはよかったな。」

 

「でも2戦目の勝ち方、あれだけは頂けなかったなぁ~

 Entertainerなら、あそこで一気に大逆転!ってしたら、お客さんも盛り上がっただろうに

 デッキ破壊なんて、皆唖然としていたよ?」

 

 えぇ~・・・そこ突っ込まれるの?

 たしかにデュエルモンスターズの勝ち方、というか敗北の仕方としては相当地味だ。

 特殊勝利カードならエクゾディアみたいに攻撃演出があるものや、ウィジャ盤や終焉のカウントダウンみたいに火の玉が躍ったり降り注ぐ、派手な演出がされている。

 

 だが、デッキ破壊は最終的にはただソリッドビジョンが消えるだけ。

過程でデッキが吹っ飛んでカードが散らばったりする演出が有ったりするが、俺が使用したのは完全ドロー型

 ひたすら相手にカードを引かせるだけなので、すごく地味だ。

 

「そんなこと言われてもなぁ~

 あれはそういう風にするために作ったデッキだし・・・」

 

「Oh・・・君、それでもEntertainerかい?

 お客さんを置き去りにするなんて、榊 遊勝のJuniorの名が泣くよ?」

 

「・・・父さんを知っているのか?」

 

「当たり前じゃないか!

 最高のエンタメデュエリスト、榊 遊勝!僕の憧れのデュエリストさ!」

 

「へぇ~まだ、そんなことを言ってくれる人がいるんだな。

 でも、残念ながら俺はエンターテイナーでもなければエンタメデュエリストでもないんでね。」

 

「えっ!?」

 

「それに名が泣く、なんて言っても榊 遊勝の息子なんて肩書き、皮肉以外で殆ど使ったことがないしな。」

 

「ど、どうしてだい?彼ほどの素晴らしいデュエリストを・・・」

 

「俺はあの人を決闘者(デュエリスト)とは思っていない。

 人柄一流、デュエル三流の二流手品師だ。

 相手の事を見ない、独りよがりでハリボテの様なデュエルをする者が決闘者(デュエリスト)なものか!

 それにアクションカードなしのスタンディングじゃ、それほどでもないし」

 

 あ~やば、イラッとしたから愚痴ってしまった。

 

「でも、彼はいつもみんなを笑顔に!」

 

「あぁ、そうだな、あの人はいつも周り(・・)しか見てなかった。

 だから自分のデュエルを、どんな時でもショーだと言い張れたんだろうよ。」

 

「!!」

 

「派手さだけで楽しませるんなら、それこそ花火やサーカスでも見に行けばいい話だ。

 デュエルでやる必要はない。」

 

「・・・だったら・・・だったら君にとってデュエルってなんだい?」

 

「大会の宣誓を聞いてなかったか?

 カードに思いを託して、魂を込めたデッキで闘う、プライドを賭けた決闘(ゲーム)さ。」

 

「・・・・・・」

 

 目を見開き呆然となるデニス

 ちょうど控室へ向かう分かれ道があるし、ここで別れるとするか

 

「ほら、選手控室はあっちだぞ?

 俺は第二スタジアムに向かうんでね、Ciao~」

 

 さて、大分時間を取ってしまったが大丈夫かな?

 セレナが動き回っているのも騒ぎになりそうだが、そこは赤馬社長に任せるしかないか

 はぁ~多人数用のデッキも組まないといけないな・・・


『警戒しろ、もうすぐ接触するぞ!』

 

「分っている!」

 

「隼!何か策はあるのか?」

 

「知れたこと!敵なら倒す!それだけだ・・・」

 

 俺たちは赤馬 零児の秘書の誘導の下、アカデミアの手の者であろう少女に対峙しようとしている。

 だが、隼、あのアカデミアの少女は、瑠璃と同じ顔をした少女をお前は・・・

 

『うおおぉぉぉ!!どこにいるー!!』

 

 薄暗い建物内に少女の声が木霊する。向こうか!!

 

 声がした方に向かうと、そこには赤いアカデミアの制服を着たリボンをした少女がきょろきょろとしていた。

 なんだろうか、瑠璃と同じ顔、年ごろなのに大分幼く見える。

 

「むっ!おぉ!!見つけたぞ!!

 さぁ、もう逃がさないぞ!私とデュエルしろおぉぉぉ!!」

 

 なぜか、俺を睨みつけて指差す少女

 この娘と俺は初対面のはずだが、なにかしたか?

 いや、デュエルアカデミアの人間なら、レジスタンスである俺の事をお尋ね者として、手配されていてもおかしくないが・・・

 

「すまないが、君と俺は初対面のはずだが、俺が何かしたか?」

 

「何を言う、さっき会ったばかりだろう!」

 

 さっき会った?

 

「お前こそ何を言っている?

 お前を探してここに来たんだ、さっき会っているはずがない。」

 

「うん?そういえば、服やら髪やらいろいろ違うような・・・」

 

 隼の言葉に悩みだす少女

 さっき会ったというのは、まさか・・・

 

「君、さっき会った奴は白い制服を着た緑交じりの赤髪じゃなかったか?」

 

「おぉ!そうだ!うん?そんなことを言うって事は、お前は・・・」

 

 そうだ、さっき会ったというのはおそらく榊 遊矢だ。

 だが、秘書から彼女が彼と接触したとは聞かされていないが・・・

 

「そうか!!双子か!!」

 

 ドヤッとした顔で見当違いなことを言う少女

 確かに俺たちの顔つきはよく似ているが・・・

 

「んん?そういえば、よく見ればユーリとも似ているような・・・まさか三つ子と言う奴か!!

 あいつに兄弟がいるなど聞いたこと無かったぞ!!」

 

 駄目だ、このままでは彼女の中で誤解が広がっている

 それにユーリというのはまさか!?

 

「違う!俺たちは何の関係もない別人だ!

 それと、ユーリというのは融合次元の人間か?」

 

「そうだ!ん?

 なぜ、ユーリの兄弟でないとするなら融合次元の事を知っている?」

 

「俺たちもこの次元の人間じゃない。

 エクシーズ次元から来た、アカデミアの侵略から俺たちの世界を救うためにな!」

 

 隼の言葉に少女は眉をしかめる。

 俺たちをエクシーズの人間と知ったからか?

 

「さっきの奴も侵略、侵略と聞き捨てならないことを!

 我々アカデミアは世界を一つにし、争いを無くし真の平和のために戦う正義の戦士だ!

 誇りある戦士を侮辱することは、この私が許さん!」

 

 世界を一つに・・・争いを無くす?・・・・真の平和だと!!

 

「「ふざけるな!!」」

 

「!?」

 

「突如現れたお前達は、嗤いながら人々を襲い続けた!」

 

「瑠璃を!家族を!仲間を!友たちを奪っておきながら、何が誇りだ!!」

 

「笑いながら人々を襲う?下らないデマは止せ。

 アカデミアの戦士が戦地でそんな馬鹿な真似など、するはずがない。

 それに全力で戦ったのなら戦士として、潔く、それは受け入れるべきだ!」

 

 少女はしたり顔で、戦士としての矜持を説くが、奴らのやったことはそんなことではない!

 

「奴らは大人も子供も、老人も赤ん坊でも関係なくカードにした!

 なんの力も持たない人間を襲っておいて真の平和だと!戯言を抜かすのも大概にしろ!!」

 

「なん、だと・・・!?」

 

 隼の言葉に少女は動揺する。

 どうやら本当に知らないようだな・・・

 

「俺たちの街は平和だった。

 みんながデュエルを楽しみ笑顔になれる、そんな街だった。

 アカデミアが来るまではな・・・」

 

「アカデミアは正義のために、平和のために存在している!そんなことをするはずがない!!」

 

「俺たちが嘘を言っているというのか?」

 

「そうだ!嘘に決まっている!

 お前達、私とデュエルだ!貴様らの言葉が真実か証明して見せろ!!」

 

「いいだろう!相手になってやる!」

 

 少女がデュエルディスクを展開し、隼もデュエルディスクを構えようとするが、その行動に戸惑いを感じる。

 やはり、彼女を見ていると瑠璃を想い出して仕方がないのだろう

 

「待て、隼!ここは俺が行く!」

 

「ユート!?だが・・・」

 

「わかっている。

 だが、お前に妹を傷つけさせる様な真似はさせたくない。」

 

「・・・・・・わかった、任せたぞ。」

 

「あぁ!

 君の相手は俺がする。」

 

「私はどちらでも構わない、さっさと始めるぞ!」

 

『『決闘(デュエル)』』


「先攻は私から行く!

 私は手札の月光黒羊(ムーンライト・ブラック・シープ)の効果を発動

 このカードを手札から捨てることで、デッキから融合を手札に加える。」

 

「やはり、融合で来るか・・・」

 

「さらに月光翠鳥(ムーンライト・エメラルド・バード)を召喚!」

 

(エメラルド・・・)

 

(バードか・・・)

 

 翠色の肌を持つ顔の右半分を三日月状の仮面で隠した、鳥の意匠のある衣装を着た女性が現れる。

 セレナは意識したわけではないが、そのモンスターは『瑠璃』を強く2人に想起させた。

 

「このモンスターの召喚、特殊召喚時、効果発動

 手札のムーンライトカードを1枚捨てることで、デッキから1枚ドローできる。

 私は手札の月光紫蝶(ムーンライト・パープル・バタフライ)を捨て1枚ドロー

 

 そして、マジックカード、融合を発動だ!

 フィールドの月光翠鳥(ムーンライト・エメラルド・バード)、手札の月光黄鼬(ムーンライト・イエロー・マーテン)月光彩雛(ムーンライト・カレイド・チック)を融合!」

 

 月光翠鳥(ムーンライト・エメラルド・バード)と共に黄色いテンの様な衣装を着た女性と、ヒヨコの様な衣装を着た少女が光に飲み込まれる。

 

「翠に輝く翼持つ鳥よ!黄色き怒り秘めしテンよ!彩る未来に羽ばたく雛よ!

 月の引力により渦巻きて、新たなる力と生まれ変わらん!融合召喚!」

 

 光の中から現れる月明かりに似た黄金の衣装に身を包んだ美しき虎の姫

 その手に2本の剣を持ち舞い踊る。

 

「現れよ!月光に輝く剣持ちて舞う気高き野獣!月光舞剣虎姫(ムーンライト・サーベル・ダンサー)!!」

 

月光舞剣虎姫(ムーンライト・サーベル・ダンサー)「ハッ!」

        ATK3000

 

「効果によって墓地に送られた黄鼬(イエロー・マーテン)彩雛(カレイド・チック)翠鳥(エメラルド・バード)の効果発動

まず、黄鼬(イエロー・マーテン)の効果によりデッキからムーンライトマジック、トラップカードを1枚、手札に加える。

 私は月光輪廻舞踊(ムーンライト・リンカーネーション・ダンス)を手札へ、さらに彩雛(カレイド・チック)の効果により墓地の融合を手札に加える。

 

 さらに翠鳥(エメラルド・バード)の効果により、墓地及び除外されている翠鳥(エメラルド・バード)以外のレベル4以下のムーンライトモンスター1体を効果を無効にし、守備表示で特殊召喚する。

 来い、月光黒羊(ムーンライト・ブラック・シープ)!」

 

月光黒羊(ムーンライト・ブラック・シープ)「ふっ!」

    DEF600

 

「さらに墓地の黄鼬(イエロー・マーテン)の効果により、黒羊(ブラック・シープ)を手札に戻すことで月光黄鼬(ムーンライト・イエロー・マーテン)を特殊召喚!」

 

月光黄鼬(ムーンライト・イエロー・マーテン)「うふふっ」

    DEF2000

 

 羊の毛の様な襟をした黒い執事服を着こなす男装の麗人が消え、大きな尻尾を持つテンの獣人、月光黄鼬(ムーンライト・イエロー・マーテン)が代わりにフィールドに立つ

 

月光舞剣虎姫(ムーンライト・サーベル・ダンサー)は墓地及び除外されている獣戦士族モンスターの数×200ポイント攻撃力をアップする!

 さらに相手の効果の対象にもならない!

 カードを2枚伏せターンエンドだ!さぁ!どこからでもかかってこい!!」

 

月光舞剣虎姫(ムーンライト・サーベル・ダンサー) ATK3000→3600

 

(1ターン目から攻撃力3600の融合モンスター・・・他のアカデミアの奴らとは明らかに違う!)

「俺のターン、ドロー!

 俺は幻影騎士団(ファントムナイツ)ラギッドグローブを召喚!」

 

 ラギッドグローブ ATK1000

 

「さらに自分フィールド上に幻影騎士団(ファントムナイツ)モンスターが存在するとき、幻影騎士団(ファントムナイツ)サイレントブーツを手札から特殊召喚」

 

 サイレントブーツ DEF1200

 

「俺はレベル3のサイレントブーツとラギッドグローブでオーバーレイネットワークを構築

 現れろ、幻影騎士団(ファントムナイツ)ブレイクソード!」

 

 青白い炎を迸らせる大きなグローブをした幽霊とボロボロの服を着てブーツを履いた幽霊が混沌の渦に飛び込み、欠けた大剣を持つ首の無い騎士を呼び覚ます。

 

 ブレイクソード ATK2000→3000

         ORU2

 

「おぉ!これがエクシーズ召喚か!」

 

「ラギッドグローブを素材にエクシーズ召喚をした闇属性モンスターは攻撃力が1000ポイントアップする。

 俺は永続魔法、オルフェゴール・アインザッツと漆黒のトバリを発動し、カードを2枚伏せ・・・ターンを、終了する。」

 

「何!?」

 

(ブレイクソードにはオーバーレイユニットを1つ使うことで、互いのフィールド上のカードを1枚破壊する効果がある。

 さらに破壊された時、墓地から幻影騎士団(ファントムナイツ)2体をレベルを1つ上げて特殊召喚出来る。

 

 伏せカードを割り、ブレイクソード自身を破壊することでダーク・リベリオンを攻撃力を1000アップさせて呼ぶこともできたはず。

 迷っているのかユート、瑠璃に似たあの女と戦うことを・・・)

 

「貴様、私を馬鹿にしているのか?」

 

「いや、俺は・・・」

 

「やはり、戦場から逃げた奴などこの程度か・・・

 アカデミアを侮辱する言葉を吐いたことを後悔させてやる!

 

 私のターン、ドロー!

 私はリバースカード、ナイトメア・デーモンズを発動!

 私のフィールドのモンスターを1体リリースし、相手フィールドに闇属性、悪魔族、レベル6、攻守2000のナイトメア・デーモンズトークン3体を攻撃表示で特殊召喚する!私は黄鼬(イエロー・マーテン)をリリース!」

 

 ナイトメア・デーモントークン ATK2000

 ナイトメア・デーモントークン ATK2000

 ナイトメア・デーモントークン ATK2000

 

 棒人間の様に細い手足をした黒い人型が、ユートのフィールドに現れ奇妙な踊りを踊り始める。

 

「俺のフィールドにだと!?」

 

「そいつらは破壊された時、コントローラーに800ポイントのダメージを与える。

 さらに自身の効果で特殊召喚された黄鼬(イエロー・マーテン)はフィールドを離れたとき除外される。

 除外された獣戦士族モンスターが増えたことで、月光舞剣虎姫(ムーンライト・サーベル・ダンサー)がパワーアップ!」

 

月光舞剣虎姫(ムーンライト・サーベル・ダンサー) ATK3600→3800

 

「まずい!このままでは、2600ものダメージを!?」

 

「そういうことだ。

 行け、舞剣虎姫(サーベル・ダンサー)!ナイトメア・デーモントークンに攻撃!」

 

「くっ!相手の攻撃宣言時にトラップカードオープン!地縛霊の誘い。

 相手攻撃モンスターの攻撃対象は俺が選択する。

 月光舞剣虎姫(ムーンライト・サーベル・ダンサー)の攻撃対象をブレイクソードに変更!!」

 

「だが、攻撃力はこちらが上だー!」

 

 荒々しいサーベルの剣撃が、ひび割れ欠けた大剣に叩き込まれる。

 

――キンッ!キンッ!

 

 ブレイクソードはそれを技量で受け流していくが、踊るような動きで縦横無尽に連撃を加えてくる月光舞剣虎姫(ムーンライト・サーベル・ダンサー)の攻撃についに耐え切れず、大剣を弾き飛ばされてしまう。

 

月光舞剣虎姫(ムーンライト・サーベル・ダンサー)「はぁっ!!」

 

――ザシュ!!

 

「トラップカード、エクシーズ・トライバル!」

 

ブレイクソード「グオッ!」――バンッ!!

 

 ブレイクソードがサーベルに貫かれると同時に、弾き飛ばされた大剣が落下し、月光舞剣虎姫(ムーンライト・サーベル・ダンサー)を引き裂いた

 

月光舞剣虎姫(ムーンライト・サーベル・ダンサー)「ぐわっ!?」――バンッ!

 

「なんだと!?」

 

「永続トラップ、エクシーズ・トライバルはオーバーレイユニットを2つ以上持ったモンスターを効果の破壊から守り、オーバーレイユニットを2つ以上持ったエクシーズモンスターと戦闘を行った相手モンスターをダメージ計算後に破壊する。」

 LP4000→3200

 

「ぬぅ・・・対象を取らない効果か・・・

 だが、モンスターが破壊されたことにより、トラップカード、月光輪廻舞踏(ムーンライト・リンカーネーション・ダンス)が発動できる。

 このカードは1ターンに1度、私のモンスターが戦闘及び効果で破壊された時、デッキからムーンライトモンスターを2体まで、手札に加える。

 私はデッキから月光紅狐(ムーンライト・クリムゾン・フォックス)月光白兎(ムーンライト・ホワイト・ラビット)を手札へ!」

 

「ならば俺も、幻影騎士団(ファントムナイツ)ブレイクソードの効果を発動

 エクシーズ召喚されたこのカードが破壊された場合、自分の墓地のレベルが同じ幻影騎士団(ファントムナイツ)モンスターを2体選択し、レベルを1つ上げて特殊召喚する。

 俺はラギッドグローブとサイレントブーツを守備表示で特殊召喚。」

 

 ラギッドグローブ DE500

          LV3→4

 サイレントブーツ DEF1200

          LV3→4

 

 ユートのフィールドに再び立ち並ぶ幻影騎士団(ファントムナイツ)、だがセレナはその光景を見て不満気だ。

 

「エクシーズとはランクが上がるほど強力なモンスターが多いと聞く、さっきのモンスターは破壊効果があったはずだが、何故それを使わなかった?

 月光輪廻舞踊(ムーンライト・リンカーネーション・ダンス)を破壊できていれば、私の手札を増やさずに済んだものを・・・」

 

「そ、それは・・・」

 

「私はこんな、つまらぬデュエルをするためにここに来たわけではない!

 私はこの次元で一番強い奴とデュエルするために来た!

 そして、お前は自分の言葉が真実だと、私に示すためにデュエルしたのではないのか!

 それとも、やっぱり嘘だったのか!!」

 

「違う!!アカデミアは本当に俺たちの」

 

「だったら、本気で来い!!

 お前の魂を、私にぶつけてこい!!」

 

≪そんな全然面白くなさそうな顔でデュエルされても、俺が面白くねぇんだよ!≫

 

「!!

 あぁ・・・そうだな・・・そうだったな。」

 

 ユートは思い出していた。

 以前自分の魂に火を点けた決闘者の事を

 そして理解した、アカデミアのデュエリストでありながら、熱く真っ直ぐな気持ちをぶつけてくる目の前の少女もまた、彼と同じ存在であるということを

 

「アカデミアにも君の様なデュエリストが居るとはな。」

 

「ふん!見直したか?」

 

「あぁ、君の様な馬鹿が付くほどストレートな奴が居るとはな。」

 

「ムッ!誰が馬鹿だ!!馬鹿って言った方が馬鹿なんだぞ!

 むぅ許せん!叩き潰してやる!

 バトルフェイズを終了しメインフェイズ

マジックカード、月光香を発動し、墓地のムーンライトモンスター、月光彩雛(ムーンライト・カレイド・チック)を特殊召喚!」

 

月光彩雛(ムーンライト・カレイド・チック)「はっ!」

       DEF800

 

「その特殊召喚に対し、永続魔法、オルフェゴール・アインザッツの効果発動

 1ターンに1度、相手がモンスターを召喚、特殊召喚した場合、手札、デッキからオルフェゴールモンスターまたは星遺物モンスターを1体選び、墓地へ送る。

 俺はデッキからオルフェゴール・ディヴェルを墓地へ送る。」

 

「ほう、だったら私も墓地の月光香を除外し手札を1枚捨てることで、デッキからムーンライトモンスター1体を手札に加える。

 私は月光紅狐(ムーンライト・クリムゾン・フォックス)を捨て、デッキから月光黒羊(ムーンライト・ブラック・シープ)を手札に加える。

 

 そして、手札の黒羊(ブラック・シープ)を1枚捨てることで、墓地の月光翠鳥(ムーンライト・エメラルド・バード)を手札に加え通常召喚!」

 

月光翠鳥(ムーンライト・エメラルド・バード)「はっ!」

       ATK1200

 

翠鳥(エメラルド・バード)の召喚により、手札の白兎(ホワイト・ラビット)を捨て1枚ドロー

 さらに彩雛(カレイド・チック)のモンスター効果を発動し、デッキ、エクストラデッキから1ターンに1度、ムーンライトモンスターを墓地に送ることで、このターン彩雛(カレイド・チック)をその墓地へ送ったモンスターと同名のカードとして融合素材にできる。

 私はエクストラデッキから月光舞豹姫(ムーンライト・パンサー・ダンサー)を墓地へ送る。」

 

 月光彩雛(ムーンライト・カレイド・チック)が背のヴェールを広げ一回転するとヴェールは月光彩雛(ムーンライト・カレイド・チック)の全身を覆い隠し、虹色に輝く

 そして、光が収まるとその姿は豹を思わせるしなやかさを持った浅黒い肌の女性へと変化していた。

 

「準備は整った!手札の融合を発動!

 手札の黒羊(ブラック・シープ)、フィールドの翠鳥(エメラルド・バード)舞豹姫(パンサー・ダンサー)として扱う彩雛(カレイド・チック)の3体を融合!

 月光の原野で舞い踊るしなやかなる野獣よ!翠に輝く翼持つ鳥よ!漆黒の闇に潜む獣よ!

 月の引力により渦巻きて、新たなる力と生まれ変わらん!融合召喚!

現れよ!月光の原野の頂点に立って舞う百獣の王!!」

 

 光に渦の中から現れる鬣のごとき水色の髪を持つ仮面をつけた女性

 その仮面が割れ砕け、凛とした紅い双眸が伺えると、柄に三日月が刻まれた長曲刀を構える。

 

月光舞獅子姫(ムーンライト・ライオ・ダンサー)!!」

 

月光舞獅子姫(ムーンライト・ライオ・ダンサー)「うおおおぉぉぉぉ!!はっ!!」

       ATK3500

 

「また3体融合の融合モンスターか!」

 

「そうだ!そしてこいつは相手の効果の対象に成らず、相手の効果では破壊されない。

 さらに2回攻撃出来て、1ターンに1度、モンスターを攻撃したダメージステップ終了時に相手の特殊召喚されたモンスターを全滅させる効果を持つ。

 守備表示で逃げることは許さんぞ!」

 

「まずい。

 ナイトメア・デーモントークンをこのままにしておくと、ユートは2400ポイントのダメージを食らった上で、ダイレクトアタックをされてしまう!」

 

「さらに融合素材にした3体のモンスターの効果が発動する。

 ますは彩雛(カレイド・チック)の効果で融合を墓地から手札に加え、黒羊(ブラック・シープ)の効果で黒羊(ブラック・シープ)以外の自分の墓地のムーンライトモンスター、月光白兎(ムーンライト・ホワイト・ラビット)を手札に加える。

そして、翠鳥(エメラルド・バード)の効果で除外されている月光黄鼬(ムーンライト・イエロー・マーテン)を守備表示で効果を無効にして特殊召喚だ!」

 

月光黄鼬(ムーンライト・イエロー・マーテン)「うふふ」

    DEF2000

 

「カードを1枚伏せ、ターンエンド

 さぁ見せてもらおうか、お前の本気、お前の魂を!」

 

 笑いながら挑発してくるセレナに応え、ユートもアカデミアと戦っているということは、一旦隅に置いて楽しむことにした、このデュエルを

 

「あぁ、見せてあげよう、俺の本気を!」




だーくそっ!もうちょっとで、デカいのとリベンジマッチだったのによ!!

はははっ!勝負は時の運、受け入れるでござるよ。刀堂殿

わーってるよ!チクショウ!
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『狂宴の足音』

まぁ、兄者が相手では権現坂殿も負けてしまうかもござらんな?

あいつが負けるわけねぇだろ!俺に勝ったヤツなんだからな!


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狂宴の足音

やっぱり長くなった。ユートVSセレナ後編です。


「あぁ、見せてあげよう、俺の本気を!

 俺のターン、ドロー!

 この瞬間、永続魔法、漆黒のトバリの効果が発動する。

 自分のドローフェイズにドローしたカードが闇属性モンスターだった場合、そのカードを相手に見せることで、そのカードを墓地へ送り、さらにドローできる。

 

 俺が引いたのは闇属性モンスター、幻影騎士団(ファントムナイツ)フラジャイルアーマー、よってこのカードを墓地へ送り追加で1枚ドローする。

 次に引いたのも闇属性モンスター、幻影騎士団(ファントムナイツ)サイレントブーツ、捨てて1枚ドローする。

 

 そして、スタンバイフェイズを飛ばしてメインフェイズ

 君に、俺のエースを見せてあげよう!俺はレベル4となったサイレントブーツとラギッドグローブでオーバーレイ!

 漆黒の闇より、愚鈍なる力に歯向かう反逆の牙!今、降臨せよ!エクシーズ召喚!

 現れよ!ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン!!」

 

ダーク・リベリオン「ギャギャオオオォォォォォォ!!」

         ATK2500→3500

         ORU2

 

 顎から長く伸びた牙と骨組みしかない翼を持つ漆黒の竜、ユートのエースモンスター、ダーク・リベリオンが雷を纏って降臨した。

 

「おぉ!かっこいいな!

 おまけにラギッドグローブの効果により、攻撃力が舞獅子姫(ライオ・ダンサー)に並んだか!」

 

「あぁ、だがダーク・リベリオンにはオーバーレイユニットを2つ使うことで、相手モンスターの攻撃力を半減させ、自身の攻撃力に加える効果がある。」

 

「なるほどな。

だが、舞獅子姫(ライオ・ダンサー)は相手の効果の対象にならない!」

 

「だが、その隣のモンスターなら受ける!

 ダーク・リベリオンの効果を月光黄鼬(ムーンライト・イエロー・マーテン)に対し発動!トリーズン・ディスチャージ!!」

 

(ここで効果を使うべきか?いや、たかが400程度のダメージ、受けて立つ!)

 

ダーク・リベリオンの翼が展開し、紫電を月光黄鼬(ムーンライト・イエロー・マーテン)に浴びせ、その力を吸い取り高める。

 

ダーク・リベリオン「ギャオオオォォォォォ!!」

         ATK3500→3900

         ORU2→0

 

月光黄鼬(ムーンライト・イエロー・マーテン)「ぐぅ・・・」

    DEF2000

    ATK800→400

 

「ナイトメア・デーモントークンを守備表示に変えバトルだ!

 ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンで月光舞獅子姫(ムーンライト・ライオ・ダンサー)に攻撃!

 反逆のライトニング・ディスオベイ!!」

 

 ナイトメア・デーモントークン ATK2000→DEF2000

 ナイトメア・デーモントークン ATK2000→DEF2000

 ナイトメア・デーモントークン ATK2000→DEF2000

 

「ふんっ!迎え打て、舞獅子姫(ライオ・ダンサー)!!」

 

舞獅子姫(ライオ・ダンサー)「はああぁぁぁぁぁ!!」

 

 主人の無茶ぶりにも怖気ず、漆黒の竜に向かっていく月の獅子姫

 紫電纏う牙と月光煌めく剣がぶつかり合い、あたりに火花が散る

 

「リバースカード発動、三位一択

 このカードはエクストラデッキの融合、シンクロ、エクシーズモンスターの内1種類を宣言し、互いのエクストラデッキをすべて確認、宣言した種類のカードの枚数が多い方のプレイヤーのライフを3000回復させる。

 私は融合モンスターを選択、もちろん私のエクストラデッキは残り10枚全て融合モンスターだ!」

 

「俺のデッキに融合モンスターはない。」

 

「ならば私のライフを3000回復だ!」

 LP4000→7000

 

 耐える月光舞獅子姫(ムーンライト・ライオ・ダンサー)であったが、ダーク・リベリオンの尻尾での薙ぎ払いや、翼での攻撃で構えを崩してしまい。

その隙にダーク・リベリオンが牙の一撃を当てる。

 

舞獅子姫(ライオ・ダンサー)「がっ!!」――バンッ!

 

「ぐぅ・・・どうした、お前の本気とはこんなものか?」

 LP7000→6600

 

「やるな。

 メインフェイズ2、墓地のオルフェゴール・ディヴェルを除外して効果を発動

 このターン闇属性モンスターしか俺は特殊召喚出来なくなるが、デッキからオルフェゴール・ディヴェル以外のオルフェゴールモンスターを1体特殊召喚する。

 来い、オルフェゴール・スケルツォン!」

 

――ギギギッ!ドンドンッ!パアァァァン!

 

 スケルツォン DEF1500

 

 竪琴を翼にしたガーゴイルがドラムセットを骸骨のように組み立てて作られたモンスター、オルフェゴール・スケルツォンを持って現れ、ユートの場に投下する。

 

「さらに、墓地のサイレントブーツ、ラギッドグローブを除外して効果発動

 サイレントブーツの効果でデッキからファントムトラップカード、幻影翼(ファントム・ウィング)を1枚手札に加え、ラギッドグローブの効果で幻影騎士団(ファントムナイツ)モンスター、ダスティローブを墓地へ

 続いて、ダスティローブも除外し、デッキから幻影騎士団(ファントムナイツ)サイレントブーツを手札に加え、手札の幻影翼(ファントム・ウィング)を捨て、墓地のフラジャイルアーマーを除外して効果を発動し1枚ドローする。

 

 さらにフィールドのオルフェゴール・スケルツォンを墓地に送り、マジックカード、オルフェゴール・プライムを発動

 このカードは1ターンに1度、手札及び自分フィールドの表側表示モンスターの中からオルフェゴールモンスターまたは星遺物モンスターを1体墓地に送りデッキから2枚ドローする。」

 

「一気に手札を回復させたか。さて、どう出てくる?」

 

「ナイトメア・デーモントークンを2体リリースしてモンスターをセット、カードを2枚伏せターンエンドだ。」

 

「なんだ、その程度か?詰まらん奴だな。

 私のターン、ドロー!

 守りを固めたところで無駄であることを教えてやろう!月光白兎(ムーンライト・ホワイト・ラビット)を召喚!」

 

月光白兎(ムーンライト・ホワイト・ラビット)「はっ!」

    ATK800

 

「このカードの召喚に成功した時、月光白兎以外の自分の墓地のムーンライトモンスター1体を守備表示で特殊召喚する。

 戻ってこい、月光彩雛(ムーンライト・カレイド・チック)!」

 

月光彩雛(ムーンライト・カレイド・チック)「きゃは!」

    DEF800

 

「永続魔法、オルフェゴール・アインザッツの効果によりデッキから再び、オルフェゴール・ディヴェルを墓地へ送る。」

 

「ならばこちらも月光彩雛(ムーンライト・カレイド・チック)の効果で私のデッキのムーンライトモンスター、月光翠鳥(ムーンライト・エメラルド・バード)を墓地へ送る。

 そして、効果で墓地に送られた月光翠鳥(ムーンライト・エメラルド・バード)の効果により墓地からこいつを特殊召喚だ!

 来い、月光黒羊(ムーンライト・ブラック・シープ)!」

 

(これでモンスターが再び三体、3体融合を行う準備は整ったか

 だが、このカードを発動させれば・・・)

 

「私は月光白兎(ムーンライト・ホワイト・ラビット)

のもう1つの効果を発動!

 1ターンに1度、このカード以外のムーンライトカードの枚数だけ、相手フィールドのマジック、トラップカードを持ち主の手札に戻す。

 私は伏せカード2枚を選択しお前の手札に戻す!行け、月光白兎(ムーンライト・ホワイト・ラビット)!」

 

「なに!?」

 

月光白兎(ムーンライト・ホワイト・ラビット)「はぁぁぁぁ!たあぁ!!」

 

 月光白兎(ムーンライト・ホワイト・ラビット)がハンマーを振り下ろし、その衝撃がユートのカードを揺らす。

 

「くっ!俺は・・・・ダーク・リベリオンをリリースし、永続トラップ、暴君の暴飲暴食を発動!

 このカードが存在する限り、お互いにレベル6以上のモンスターを特殊召喚する事が出来ない!

 さらにトラップカード、幻影騎士団(ファントムナイツ)ミストクロウズを発動

 除外されている自分の幻影騎士団(ファントムナイツ)モンスター1体を手札に戻す。

 俺は幻影騎士団(ファントムナイツ)フラジャイルアーマーを手札に加える!」

 

「だが、永続トラップは白兎(ホワイト・ラビット)の効果で手札に戻ってもらうぞ!」

 

 発動されダーク・リベリオンを取り込んだカードは2度目の月光白兎(ムーンライト・ホワイト・ラビット)の放つ衝撃波で吹き飛びユートの手札へ戻った。

 

「そして、手札の融合を発動!

 フィールドの月光黒羊(ムーンライト・ブラック・シープ)月光彩雛(ムーンライト・カレイド・チック)を融合!

 漆黒の闇に潜む獣よ!彩る未来に羽ばたく雛よ!

 月の引力により渦巻きて、新たなる力と生まれ変わらん!融合召喚!

 現れ出でよ!月明かりに舞い踊る美しき野獣!月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)!!」

 

――シャン!シャン!

 

 リズミカルな足捌きに遊ばれ、金飾りが美しい音色を奏でながら踊る。

 2本の短刀を持ちフィールドで踊る、仮面でその素顔を隠した妖艶な舞姫が足を上げてダガーを構え、登場のポーズをとる。

 

月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)「うふふ、にゃーお!」

     ATK2400

 

「2体融合のモンスター」

 

黒羊(ブラック・シープ)彩雛(カレイド・チック)の効果で墓地の月光紫蝶(ムーンライト・パープル・バタフライ)と融合を手札に戻す。

 そして、墓地の月光舞剣虎姫(ムーンライト・サーベル・ダンサー)の効果を発動

 こいつを墓地から除外することで、私のフィールド上の融合モンスター1体の攻撃力をターン終了まで3000ポイントアップする!」

 

 月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー) ATK2400→5400

 

 月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)の持つダガーが月光舞剣虎姫(ムーンライト・サーベル・ダンサー)の持っていた2振りの剣へと変わる

 あまりにも大雑把な攻撃力の上昇に、墓地を把握してない黒咲は驚愕した。

 

「攻撃力5400だと!?

 そうか、それで攻撃表示のダーク・リベリオンを守るために・・・」

 

「あぁ、だがそれだけでは終わらないんだろ?」

 

「ふん、当然だ!

 月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)の効果は戦闘では破壊されず、1ターンに1度、自分のメインフェイズ1にこのカード以外の自分フィールド上のムーンライトモンスターをリリースすることで、このターン、相手モンスターはそれぞれ1度だけ戦闘で破壊されず、舞猫姫(キャット・ダンサー)はすべてのモンスターにそれぞれ2回ずつ攻撃が出来るようになる。」

 

「なっ!?攻撃力5400で全モンスターに2回攻撃だと!?」

 

「あの黒い竜に攻撃出来ていれば私の勝ちだったのだがな。」

 

「生憎だが、俺は負けるつもりはない。」

 

「ふん、道理だな。

 私は墓地の月光黄鼬(ムーンライト・イエロー・マーテン)の効果を使い、月光白兎(ムーンライト・ホワイト・ラビット)を手札へと戻し黄鼬(イエロー・マーテン)を特殊召喚!」

 

月光黄鼬(ムーンライト・イエロー・マーテン)「はぁ!」

    DEF2000

 

「そして、月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)の効果で黄鼬(イエロー・マーテン)をリリースして、永続魔法、悪夢の拷問部屋を発動しバトル!

 舞猫姫(キャット・ダンサー)でナイトメア・デーモントークンに攻撃!」

 

「だが、ナイトメア・デーモントークンは守備表示だ!戦闘ダメージはない。」

 

「甘いな!

 月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)は攻撃宣言時に相手ライフに100ポイントのダメージを与える。

 そして、悪夢の拷問部屋は悪夢の拷問部屋以外で相手ライフに戦闘ダメージ以外のダメージが発生するたびに300ポイントの追加ダメージを与える!

 合計400ポイントのダメージを受けてもらうぞ!」

 

「なに!?うわぁ!!」

 LP3100→3000→2700

 

 月光舞猫姫がナイトメア・デーモントークンに切りかかるがトークンはするりとその斬撃を躱し、月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)の斬撃が鎌鼬となってユートを傷つける。

 

「私の攻撃から簡単に逃げられるとは思わないことだ!

 ナイトメア・デーモントークンに再び攻撃、4回の効果ダメージを受けろ!フルムーンクレスタ!」

 

 月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)の衣装が淡く蒼く発光し剣を交差させるとそこから満月状のビームがナイトメア・デーモントークンに発射され、ナイトメア・デーモントークンはユートに向かって吹っ飛ぶ

 

ナイトメア・デーモントークン「クケケケケッ!」

 

「ぐううぅぅぅ・・・・」

 LP2700→2600→2300→1500→1200

 

「次はお前のセットモンスターに2回攻撃

 どんな強力な壁モンスターとて5400の攻撃は受け切れまい!!ゆけ!舞猫姫(キャット・ダンサー)!!」

 

 月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)は2振りの剣の斬撃を飛ばし、謎のモンスターへ攻撃するがカードが反転して現れたのは様々な色に発光している黄色い宝石がはめ込まれた赤、橙、紫に彩られた杖

 それは月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)の攻撃では傷一つ付かず、代わりにユートが斬撃により負傷していた。

 

 星遺物―『星杖』 DEF2500

 

「ぐうぅぅ・・・」

 LP1200→1100→800→700→400

 

「な、何故だ!?なぜ破壊できていない!?」

 

「通常召喚した星遺物―『星杖』はエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターとの戦闘では破壊されない!」

 

「むうぅ・・・姑息な手を・・・

 だが、そのライフでは次のターン、舞猫姫(キャット・ダンサー)が攻撃を1度すれば私の勝ちだ!ターンエンド!

 さぁ、精々足掻いてみせるのだな!」

 

「いや、勝ちに行かせてもらう!

 俺のターン、ドロー!

 俺は手札を1枚伏せ、墓地のオルフェゴール・スケルツォンを除外し効果発動

 墓地のオルフェゴールモンスターを1体特殊召喚する。

 来い、オルフェゴール・ディヴェル!」

 

 オルフェゴール・ディヴェル DEF1400

 

「マジックカード、一撃必殺!居合ドローを発動、このカードは手札を1枚捨て、相手フィールド上のカードの枚数だけ、デッキの上からカードを墓地に送り、1枚ドローする。

 そのカードが居合ドローだった場合、それを墓地へ送りフィールドのカード全てを破壊し、その後、この効果で破壊されたカード1枚に付き1000ポイントのダメージを与える。」

 

「お前の場には5枚のカード、そして私の場には2枚、なるほど丁度7枚で成功すれば私のライフは尽きる。

 だがそれは成功すればの話、ここで運に身を任せるとはな。」

 

「運だけではないさ。

 フラジャイルアーマーを捨てデッキから2枚のカードを墓地へ送り、1枚ドロー

 このカードは居合ドローではないが、居合ドローの効果により、居合ドローで墓地に送った枚数分、墓地のカードをデッキに戻す。

 俺は墓地のダーク・リベリオンとブレイクソードをデッキに戻す。

 

 さらに墓地の幻影翼(ファントム・ウィング)を除外し効果発動、幻影騎士団(ファントムナイツ)モンスターを1体特殊召喚する。

 もどってこい!幻影騎士団(ファントムナイツ)フラジャイルアーマー!」

 

 フラジャイルアーマー DEF2000

 

「俺のフィールドに幻影騎士団(ファントムナイツ)モンスターが居ることによって、手札のサイレントブーツを特殊召喚!」

 

 サイレントブーツ DEF800

 

「そして、レベル4のフラジャイルアーマーとオルフェゴール・ディヴェルでオーバーレイ!

 再び反旗を翻せ!エクシーズ召喚!ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン!!」

 

ダーク・リベリオン「ギャオオオォォォォォォォォン!!」

         ATK2500 ORU2

 

 竪琴の悪魔とひび割れた鎧が混沌に呑まれ、漆黒の闇より黒き竜は再誕を果たした。

 

「おぉ!居合ドローはダーク・リベリオンをデッキに戻す為でもあったのか!うまいぞ、ユート!」

 

「あぁ、行くぞ!ダーク・リベリオン・エクシーズドラゴンの効果発動、トリーズン・ディスチャージ!」

 

 ダーク・リベリオンの稲妻が月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)に向かうが、その前に狐を模した紅い衣装を着た女性が現れ、稲妻を弾き返す。

 

「良い手だが、甘かったな。

 私は墓地の月光紅狐(ムーンライト・クリムゾン・フォックス)の効果を発動した。

 このカードを墓地から除外することで、自分フィールド上のムーンライトモンスターを対象にしたマジック、トラップ、モンスター効果を無効にし、互いのライフを1000回復させる。残念だったな。」

 LP6600→7600

 

「いや、判っていたさ。」

 LP400→1400

 

「なに?」

 

「ふっ、墓地のオルフェゴール・ディヴェルの効果発動

 このカードを除外し、デッキからオルフェゴール・スケルツォンを特殊召喚!」

 

 スケルツォン DEF1500

 

「これでレベル3のモンスターが2体!?」

 

「俺はレベル3のサイレントブーツとスケルツォンでオーバーレイネットワークを構築

 エクシーズ召喚!何度でも立ち上がれ!幻影騎士団(ファントムナイツ)ブレイクソード!!」

 

 ブレイクソード ATK2000 ORU2

 

 鋼鉄の馬に跨った大剣を持った首の無い騎士は主に勝利を献上するため、その身を捧げる。

 

「ブレイクソードの効果発動!

 オーバーレイユニットを1つ取り除き、ブレイクソードと月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)を破壊する!」

 

 ブレイクソード ORU2→1

 

 ブレイクソードは月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)に突撃し、剣を交える。

 いくつかの剣撃音が鳴り響き互いに見つけた相手の隙を付き2体は同時に消滅した。

 青い炎を残して

 

「エクシーズ召喚されたブレイクソードが破壊されたことにより効果発動

 墓地の幻影騎士団(ファントムナイツ)サイレントブーツを2体、レベルを1つ上げ特殊召喚する!

 

サイレントブーツ DEF800

          LV3→4

サイレントブーツ DEF800

         LV3→4

 

「レベル4となったサイレントブーツ2体でオーバーレイ!エクシーズ召喚!

 現れろ!インヴェルズ・ローチ!」

 

インヴェルズ・ローチ「ふんっ!」

          ATK1900 ORU2

 

 混沌から現れたのは昆虫を模した黄金の鎧を身に着けた黒き悪魔

 レイピアを構え精鍛な目がセレナを見据える。

 

「新たなエクシーズ!?」

 

「バトルだ!インヴェルズ・ローチとダーク・リベリオンでダイレクトアタック!!」

 

 ダーク・リベリオンがインヴェルズ・ローチを背に乗せ滑空しセレナに迫る。

 インヴェルズ・ローチがダーク・リベリオンの背から飛び出し、セレナに一太刀を入れるとすかさず、ダーク・リベリオンの突進力が加わった尻尾打ちでセレナは吹っ飛ばされる。

 

「ぐわっ!!うわああぁぁぁぁぁ!!」

 LP7600→5700→3200

 

「大丈夫か!?」

 

 アカデミアのデュエリストと言えども瑠璃と同じ顔をした少女、その安否が気になり思わず声をかけてしまったが

 

「ふふ、ははは・・・」

 

 彼女は笑っていた。

 

「今のは効いたぞ!この胸の高鳴り、そうだ!私はこれを求めてやってきた!!

 さぁ!次はどうする?もっとお前の本気を見せてくれ!」

 

≪もう~デュエルなんだから、もっと本気でしなくちゃ楽しくないじゃない。≫

 

「あっ・・・俺はこれでターンエンド。」

(そうか、ようやく思い出せたよ。瑠璃)

 

「よし、私のターンだ!ドロー!」

 

「言っておくが、インヴェルズ・ローチはオーバーレイユニットを1つ使うことで、レベル5以上のモンスターの特殊召喚を無効に出来る。」

(君が、「デュエルで笑顔を」と言った意味。)

 

「なるほどな。

 伏せている暴君の暴飲暴食と合わせての二重の融合モンスターへの対抗策か。

 だが私も私のデッキもまだ諦めてなどいない!

 マジックカード、貪欲な壺!墓地のモンスターを5体、月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)月光舞豹姫(ムーンライト・パンサー・ダンサー)月光舞獅子姫(ムーンライト・ライオ・ダンサー)月光黒羊(ムーンライト・ブラック・シープ)月光翠鳥(ムーンライト・エメラルド・バード)をデッキに戻し2枚ドロー!

 よし、私は月光白兎(ムーンライト・ホワイト・ラビット)を召喚し、その効果で墓地の月光翠鳥(ムーンライト・エメラルド・バード)を守備表示で特殊召喚!」

 

月光白兎(ムーンライト・ホワイト・ラビット)「はっ!」

    ATK800

 

月光翠鳥(ムーンライト・エメラルド・バード)「ふん」

    DEF1000

 

(デュエルを真剣に取り組み、熱く、純粋に楽しむ心。)

「相手のモンスターの召喚、特殊召喚により、オルフェゴール・アインザッツの効果発動

 デッキのオルフェゴール・ディヴェルを墓地へ送る。」

 

「私も月光翠鳥(ムーンライト・エメラルド・バード)の特殊召喚により効果を発動だ。

 手札の月光紅狐(ムーンライト・クリムゾン・フォックス)を墓地に送り1枚ドロー、そして月光紅狐(ムーンライト・クリムゾン・フォックス)が効果で墓地に送られたことにより、相手の表側表示モンスター1体の攻撃力をターン終了時まで0にする!

 私はダーク・リベリオンを選択する。」

 

(わくわくする気持ち、それを感じることこそデュエルの本来のカタチだ!)

「させない!永続トラップ、暴君の暴飲暴食!

 ダーク・リベリオンをリリースし、互いのレベル6以上のモンスターの特殊召喚を封じる。」

 

「その戦法もお見通しだ。

 速攻魔法、魔力の泉、相手のフィールドのマジック、トラップカードの枚数分ドローし、その後、私のフィールド上のマジック、トラップの枚数分、手札を捨てる。

 お前のフィールドのカードは4枚、そして私のフィールドに2枚、よって4枚ドローし2枚捨てる。

 そして、効果で月光黄鼬(ムーンライト・イエロー・マーテン)が墓地へ送られたので、デッキからムーンライトマジック、トラップカードを1枚手札に加える。

 私は月光輪廻舞踊(ムーンライト・リンカネーション・ダンス)を手札に加える。」

 

「ユートのカードを利用して、大量ドローだと!?」

 

「そして、墓地からADチェンジャーを除外し、フィールドのモンスター1体の表示形式を変更する。

 インヴェルズ・ローチには守備表示になってもらうぞ。」

 

 カードから現れたゲームコントローラーのケーブルがインヴェルズ・ローチに接続され上上下下左右左右BAと勝手にコマンドが打たれ、インヴェルズ・ローチは守備の態勢へと変えられる。

 

 インヴェルズ・ローチ ATK1900→DEF0

 

白兎(ホワイト・ラビット)の効果で暴君の暴飲暴食を手札に戻してバトルだ!

 月光白兎(ムーンライト・ホワイト・ラビット)でインヴェルズ・ローチに攻撃ー!!」

 

「エクシーズ・トライバルの効果でインヴェルズ・ローチと戦闘を行った月光白兎(ムーンライト・ホワイト・ラビット)は破壊される。」

(勘違いしてくれたおかげで、首の皮一枚つながったな。)

 

 黒と金の悪魔の騎士の剣と白い兎の槌が交差し、互いの二撃目が両者の体にめり込み、2体は爆散する。

 

「だが、これで私を縛るものはなくなった!

 手札より融合発動!手札の月光紫蝶(ムーンライト・パープル・バタフライ)とフィールドの月光翠鳥(ムーンライト・エメラルド・バード)を融合!

 紫の毒持つ蝶よ!翠に輝く翼持つ鳥よ!

 月の引力により渦巻きて、新たなる力と生まれ変わらん!融合召喚!

 再び舞い踊れ!月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)!!」

 

月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)「うふふ、にゃ~ん」

     ATK2400

 

月光翠鳥(ムーンライト・エメラルド・バード)の効果で除外されている月光黄鼬(ムーンライト・イエロー・マーテン)を特殊召喚!

 カードを2枚伏せ、ターンエンドだ!」

 

月光黄鼬(ムーンライト・イエロー・マーテン)「うふっ」

    DEF2000

 

(戦闘耐性を持つ月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)を出してきたか)

「俺のターン、ドロー!

 墓地のサイレントブーツを除外し効果発動、デッキから幻影霧剣(ファントム・フォッグ・ブレード)を手札に加える。

 マジックカード、オルフェゴール・プライムを発動

 フィールドの星遺物―『星杖』を墓地へ送り2枚ドロー!」

 

(防御モンスターを捨てたか、何か仕掛けてくるな。)

 

「さらにマジックカード、ブーギートラップを発動

 このカードは1ターンに1度、手札を2枚捨て自分の墓地のトラップカード1枚を選択して発動できる。

 選択したカードを俺のフィールドにセットする。

 俺は幻影霧剣(ファントム・フォッグ・ブレード)幻影騎士団(ファントムナイツ)クラックヘルムを捨て墓地のディメンション・スライドをセット!」

 

(あのカードは居合ドローの時に墓地へ送られたカードか。)

 

「さらに墓地の幻影霧剣(ファントム・フォッグ・ブレード)とオルフェゴール・ディヴェルを除外して効果発動

 幻影霧剣(ファントム・フォッグ・ブレード)の効果で墓地の幻影騎士団(ファントムナイツ)モンスター、サイレントブーツを、ディヴェルの効果でデッキのオルフェゴールモンスター、スケルツォンをそれぞれ特殊召喚!」

 

 サイレントブーツ DEF800

 スケルツォン   DEF1500

 

「レベル3の幻影騎士団(ファントムナイツ)サイレントブーツとオルフェゴール・スケルツォンをオーバーレイ!

 エクシーズ召喚!幻影騎士団(ファントムナイツ)ブレイクソード!」

 

 ブレイクソード ATK2000 ORU2

 

「またそいつか、芸のないことだな。」

 

「芸か・・・ならばこういうのはどうだ?

 トラップカード、ディメンション・スライド発動!

 自分フィールド上にモンスターが特殊召喚された時、相手フィールド上の表側表示で存在するモンスターを1体除外する。対象は月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)だ。」

 

「なっ!?そのカードはさっき伏せたカード!?」

 

「ブーギートラップでセットされたカードはそのターンでも発動出来るのさ。

 もっとも、このカードは元々特殊召喚がエクシーズ召喚だった場合、セットしたターンに発動できるカードだがな。」

 

「何だそれは!ずるいぞ!!

 墓地の月光紅狐(ムーンライト・クリムゾン・フォックス)の効果発動、このカードを除外しディメンション・スライドの効果を無効にし互いのライフを1000回復させる!」

 LP3200→4200

 

(彼女のデッキは融合を使ったテクニカルデッキではない。

 モンスターでの真っ向勝負、それが彼女のデッキの本質だ。なら俺の取る手は・・・)

「俺はブレイクソードの効果発動

 オーバーレイユニットを1つ使いブレイクソードと月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)を破壊する!」

 LP1400→2400

 

 ブレイクソード ORU2→1

 

 ブレイクソードの馬が疾走し月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)へ迫り、月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)は跳びかかる。

 二者の一閃は交差し、互いを切りつけ破壊する。

 

「くうぅぅ、だが私はこのカードを発動させてもらう!

 トラップカード、月光輪廻舞踊(ムーンライト・リンカネーション・ダンス)、デッキから月光黒羊(ムーンライト・ブラック・シープ)月光白兎(ムーンライト・ホワイト・ラビット)を手札に加える。

 お前の墓地にはレベル4の幻影騎士団(ファントムナイツ)が2体となっていたな?」

 

「あぁ、だが今はブレイクソードの効果は使わない。」

 

「なに?」

 

「代わりに俺は墓地の幻影翼(ファントム・ウィング)幻影剣(ファントム・ソード)、星遺物―『星杖』を除外し効果を発動させる!

 幻影剣(ファントム・ソード)幻影翼(ファントム・ウィング)の効果で墓地の幻影騎士団(ファントムナイツ)フラジャイルアーマーとクラックヘルムを特殊召喚!」

 

 墓地より蘇る蒼い炎を吹き出すひび割れた鎧と破損した頭部鎧のモンスター

 

 フラジャイルアーマー DEF2000

 クラックヘルム    DEF500

 

「さらに星遺物―『星杖』の効果で除外されているオルフェゴールモンスターを特殊召喚する。

 来い、オルフェゴール・ディヴェル!」

 

 そして、竪琴の悪魔

 

 ディヴェル DEF1400

 

「レベル4のモンスターが3体!?」

 

「やるのかユート!?」

 

「俺はレベル4の幻影騎士団(ファントムナイツ)フラジャイルアーマーとクラックヘルム、そしてオルフェゴール・ディヴェルの3体でオーバーレイ!

 暗き封印を突き破り愚鈍なる力を撃ち滅ぼせ!エクシーズ召喚!!

 現れろ!ヴェルズ・ウロボロス!!」

 

ヴェルズ・ウロボロス「「「ギャオオォォォォォン!!」」」

          ATK2750 ORU3

 

 現れたのは氷のように美しい3つ首の竜、だがその所々には黒い昆虫にも似た甲殻が生えており、禍々しい面持ちをしている。

 

「ヴェルズ・ウロボロスの効果発動

 このモンスターは表側表示である限り、1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ使うことで3つの効果を一つずつ使うことが出来る。

 俺はオーバーレイユニットを1つ使い、君のフィールドのカード1枚を選択し持ち主の手札に戻す。

 選択するカードは月光黄鼬(ムーンライト・イエロー・マーテン)だ!」

 

ヴェルズ・ウロボロス「グオオォォォォ!!」

          ORU3→2

 

月光黄鼬(ムーンライト・イエロー・マーテン)「きゃあぁぁぁぁ!?」

 

 ヴェルズ・ウロボロスの右の首がオーバーレイユニットを1つ喰らい、黒い瘴気の混じった吹雪で月光黄鼬(ムーンライト・イエロー・マーテン)を吹き飛ばす。

 

「くっ、やるな・・・」

 

「バトル!ヴェルズ・ウロボロスでプレイヤーにダイレクトアタック!」

 

「だが、手札に戻すモンスターを誤ったな!

 手札のアンクリボーの効果発動!相手モンスターの攻撃宣言時、手札のこのカードを捨て、このカード以外の自分または相手の墓地のモンスターを1体、私のフィールド上に特殊召喚する!

 来い!月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)!」

 

――クリクリー!!

 

月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)「にゃーう!!」

     ATK2400

 

 毛玉の様なモノがセレナの手から現れ光輝くとブレイクソードと共に破壊された月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)が復活を果たす。

 

「俺はこのままバトルを続行する!」

 

「そう来なくてはな!

 私も全力で相手をしよう!トラップカード、スキル・サクセサー発動!

 自分フィールド上のモンスター1体の攻撃力を400ポイントアップさせる!」

 

月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)「フッシャヤアアァァァァァ!!」

     ATK2400→2800

 

 ヴェルズ・ウロボロスの三本のブレスを華麗に躱す月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)がヴェルズ・ウロボロスの首を切りつける。

 

「こちらもエクシーズ・トライバルの効果が発揮される!」

 LP2400→2350

 

 ヴェルズ・ウロボロスの2本の首が疲弊した月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)を捉え道連れにしながら墓地へ消えて行った。

 

「どうやら、私の方が一枚上手だったようだな!!」

 

 ユートの手札は2枚、その内1枚は永続トラップ、暴君の暴飲暴食であり、このターンにすぐに使える墓地のカードもないため完全に追い詰められた状態だ。だが

 

「それはどうかな?

 俺は速攻魔法、エクシーズ・ダブル・バックを発動!」

 

 ユートはすでにこの状況を読んでいた。

 

「このカードは自分のエクシーズモンスターが破壊されたターン、自分のフィールド上にモンスターが存在しない場合発動できる!

 自分の墓地からそのターンに破壊されたエクシーズモンスター1体と、そのモンスターの攻撃力以下のモンスターを1体を選択し特殊召喚する!」

 

「なっ!?このために舞猫姫(キャット・ダンサー)をバウンスしなかったのか!?

 破壊させるために!?」

 

「君なら必ず、モンスターで真っ直ぐ攻めてくると思っていたからな。

 蘇れ、ヴェルズ・ウロボロス!ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン!!」

 

 墓地のゲートを無理やりこじ開け抜け出すヴェルズ・ウロボロス

 そして、その後に追随するユートの魂の竜ダーク・リベリオン

 フィールドにも手札にも2体のドラゴンを止める術をセレナは持っていない

 

ヴェルズ・ウロボロス「「「グオオオォォォォ!!」」」

          ATK2750

 

ダーク・リベリオン「ギャオオォォォォォ!!」

         ATK2500

 

「これで終わりだ!ダーク・リベリオンとヴェルズ・ウロボロスでダイレクトアタック!」

 

 ヴェルズ・ウロボロスの起こした吹雪がダーク・リベリオンが纏い、その身から発せられる紫電の力を高める。

 

「反逆のライトニング・ポーラ・ディスオベイ!!」

 

「うわあああぁぁぁぁぁぁ!!」

 LP4200→1700→0


 負けたか・・・

 

「大丈夫か!?」

 

 ユーリに似た顔が心配そうに私を覗き込んで来る。

 いや、あいつよりも眉間にしわが寄っているような気がする。

 

「あぁ、負けてしまったな・・・」

 

「あぁ、俺の勝ちだ。」

 

「お前ほどの戦士が嘘を吐くとは思えないな。

 伝わってきたぞ、お前の嘆きも悲しみも」

 

「あぁ、本当にアカデミアは」

 

「だが、私にとってアカデミアは家の様な場所だ。

 おいそれとそんなことは信じきれない。」

 

 そうだ、私は物心がついたころからあの島に居た。

 アカデミアがまだ、ただの小さな漁村だった頃からずっと

 

「そうか、だが・・・」

 

「分かっている。

 私とてそんな悪逆非道が行われているなら見逃しておくわけにはいかない!」

 

 そうだ、アカデミアの戦士にとってプロフェッサーの命が絶対

 ならば悪辣な事をしているのもプロフェッサーの指示ということになる。ならば!!

 

「私が全てを蹴散らして!!プロフェッサーを倒す!!」

 

「「はぁっ!?」」

 

 むっ!?よく見れば、バレットからの信号が消えている。

 ならば追手が来るのも時間の問題、その前に

 

「あの赤い奴ともデュエルをしないとな!うおおぉぉぉぉぉ!!」

 

「ま、待て!!」

 

「何処に行く!?」

 

「私は勝手にアカデミアを抜け出してきたからな!

 追手が今にでも来るだろうが、その前にあの赤い奴とデュエルしに行ってくる!!」

 

「なんだと!?」

 

「アカデミアがスタンダードに!?」

 

「「それを早く言えええぇぇぇぇぇ!!」」

 

はははっ!ユーリ、お前も私の前に立ちはだかるならボコボコにしてやるからな!!


――コンッコンッ

 

「はぁ~い」

 

 声の主は柚子、とりあえずまだ無事みたいだ。

 中に入ると柚子に加え修三さんとちびっこ3人、それと素良もいた。

 出来るだけ、平静を装わないと

 

「よぉ柚子!遅くなった。」

 

「あ~遊矢兄ぃちゃんやっと来た!」

 

「権現坂さんのデュエルとっくに終わってしまいましたよ?」

 

「おぉ~そうか、で結果は?」

 

「もちろん、権現坂の勝ちよ。」

 

「遊矢お兄ちゃんどこ行っていたの?」

 

「いやぁ~それが面倒な奴に絡まれちゃってさぁ~撒いてきた。」

 

「またテレビの取材とかか?」

 

「まぁ、そんなところです。

 で、柚子、大丈夫か?また緊張とかしてないよな?」

 

「うん、って言ってもちょっとはしているけど、大丈夫よ!」

 

「そうか、それはよかった。」

 

 とりあえず、柚子の無事は確認できた。あとは・・・


 笑い合う声、でも僕には彼らと笑い合うことは出来ない。

 励ます言葉、僕が誰かを励ますことは許されるのだろうか?

 

 夢を追う姿は僕には眩しくて、その生きざまは僕には熱すぎて燃え尽きてしまいそうで

 

 でも僕は生かされたのだから、生きなくちゃならなくて

 

 また帰る場所を失うのが怖くて、だから

 

「ごめん・・・」

 

『シウンインソラ シキュウ モドラレタシ』

 




離せ~!あの赤いのともデュエルするんだー!!

その前に瑠璃の情報を

それも重要だが、今はアカデミアへの対策を

私は何も知らんぞ!
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『榊遊矢抹殺指令』
ほら、早くしないとあの赤いのがやられてしまう!

「「予告に突っ込むな!!」」


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榊遊矢抹殺指令

お久しぶりです。
アニメオリカ勢第二弾、相手が融合次元の人間なのでカレーデッキにしようとしたんですが玉葱がいなかったのでほぼまんま彼のデッキです。


≪お前は完璧な料理とやらを作ることが楽しいのか?

 それとも、完璧な料理を作って喜ぶ人を見るのが楽しいのか?≫

 

 彼にそう問われた時、僕は迷ってしまった。

 

≪前者ならお前は料理人じゃないな。≫

 

 迷ってはならない問いを僕は即答できなかった。

 彼と彼のお母さんが、僕の料理教室に来たとき、彼はあまりものの野菜の皮や切りくずを使って1品作ってしまった。

 

 それが当時の僕は許せなかった。

 僕の作った完璧な献立を侮辱されたと思い、彼に柄にもなく喧嘩を吹っ掛けた。

 

≪僕と勝負をしてもらう!もちろん料理でね。≫

 

 もちろん、僕にもプライドがあったから何を作るかは彼に決めてもらった。

 

≪やれやれ、じゃあ・・・麻婆豆腐で≫

 

 種目は麻婆豆腐、季節は夏だ。

 うんと汗をかいて食べる麻婆豆腐は最高においしいだろう。

 

≪いいよ、僕の完璧な麻婆豆腐で、おもてなしてあげるよ!≫

 

 ニンニク山椒、トウガラシ、長葱、ガラスープに叩いて作った豚ミンチ

 僕の持てる全てを使って作った完璧な麻婆豆腐

 そして、彼が作った麻婆豆腐はと言うと、肉味噌の乗った冷奴だった。

 

≪君、麻婆豆腐で勝負って言ったよね?≫

 

≪なにを言っている、ちゃ~んと麻婆豆腐さ。≫

 

≪えっ!?≫

 

 彼の言っていたことは本当で、肉味噌にはガラスープの味がちゃんとついていたし、醤や葱の風味、山椒の爽やかな辛さを感じられた、冷たい麻婆豆腐と言えるものだった。

 

≪あら、美味しいわねこれ!≫

 

≪うん、作り方も見ていたけど簡単そうだし、私でも作れそう!≫

 

≪あまり辛くないから、汗とか気にしなくていいわねぇ~≫

 

≪冷たくていいから、作り置きも出来そう。≫

 

≪油もあんまり使ってないから、ヘルシーね。≫

 

≪そうそう、遊矢の作ったこれお酒にも合うのよ~≫

 

 審査してもらった奥様方の声を聞いて確信した。

 彼は審査してもらう人たちの好みそうなものを作ったのだと

 

 結果は僕の負け、むきになって彼にデュエルで勝負を仕掛けたけど結果は惨敗

 僕のプライドはボロボロになった。

 その後に問われたのがあの質問だ。そして同時に思い出したのがパパの言っていた言葉

 

≪料理に完璧なんてない。

 いや、あるとすれば食べる人のことを考えて、常に工夫し続ける事。≫

 

 思い知らされた。

 僕は完璧に固執するあまり、食べてくれる人のことを考えるのを怠ってしまっていたことに

 それを気付かせてくれた彼、榊 遊矢に僕は感謝した。

 

≪ありがとう。

 君のおかげで大切なことを思い出せたよ。≫

 

≪よせやい。

 俺はただ麻婆豆腐が食べたかっただけだからな。≫

 

 そのあと、僕らはなんとなく意気投合して、鉄平君を紹介してもらったり、料理のアイディアを交換したりして仲良くなった。

 そして、いつもは彼が僕の舞台に上がってきてくれるけど、たまには僕が彼の舞台に上がってみようと思いこの大会へ参加した。

 

「うん、今日もバッチリだ。」

 

 確認をして僕はスタジアムに向かう。

 さぁ、僕の工夫を凝らした最高のレシピ(デッキ)で、最高のおもてなし(デュエル)をしよう!


  柚子の試合が始まる前、飲み物を買ってくると母さんと修造さん、それとちびっこ3人が席を離れた間、何の因果か俺と素良が席番として残された。

 

「ねぇ、遊矢。」

 

「あぁ、何だ?」

 

「僕ね、妹がいるんだ。って言っても双子のだけど。

 美宇っていうんだ。」

 

 妹?それは・・・

 

「へぇ~じゃあ、その二重人格みたいなぶりっこは、可愛い妹に対抗するためか?」

 

「正解。ホント可愛い妹だったよ。」

 

 だったか・・・

 

「美宇はちょっと体が弱くってさ。

 パパもママも美宇に付ききりで、僕はそれに嫉妬して気づいたらこんなんになっちゃった。」

 

「でも、親にぶりっこしたところで意味はないんじゃないか?」

 

「ははっ、そうだね。うん。

 だからかな?パパもママもわざとどっちかを構って、僕らを嫉妬させて遊んでいたような気がする。」

 

「ほぉ~それはそれは、素良の両親らしく、悪戯好きで意地の悪いことで

 で、唐突にどうしたんだよ?こんな話するなんて。」

 

「うん、ごめん

 でも、知ってほしかったんだ。本当の僕を・・・」

 

「・・・・・・」

 

「僕、ちょっと人に酔っちゃったから、外の空気吸って来るね。」

 

 素良は諦めたような、仕方のないような、やるせない笑顔をして俺に背を向け立ち上がる。

 

「バイバイ・・・」

 

 そう一言つぶやいた後はこちらに一度も振り替えることもなく、素良は去っていった。

 

 観客席で戦闘をするわけにはいかない。

 ここで素良を引き留めても、何故アカデミアの事を知っているのかと疑われるだけで、良い言い訳は思いつかない。

 八方塞がり、追うことは出来ない。

 

「バイバイか・・・」


≪だから自分のデュエルを、どんな時でもショーだと言い張れたんだろうよ。≫

 

――そうだ、彼のデュエル(ショー)は華麗で、美しかった。

――だから、僕はあの人に憧れてエンタメデュエルを志すようになったんだ。

 

≪派手さだけで楽しませるんなら、それこそ花火やサーカスでも見に行けばいい話だ。

 デュエルでやる必要はない。≫

 

――先生にも言われたよ。

――僕のエンタメは派手なだけだと、何のメッセージも伝わってこないと・・・

――そりゃそうさ、僕は僕のエンタメで笑顔になってくれる人がいたら、それでいいんだから

――でも・・・

 

≪俺はあの人を決闘者(デュエリスト)とは思っていない。

 人柄一流、デュエル三流の二流手品師だ。≫

 

――先生、貴方がデュエリストでないのなら、僕はいったい何なのですか?

 

『さぁ、お隣でLDSアナトリア校のハリル選手と、遊勝塾の柊 柚子選手の対決が行われている中、こちらも注目の対決です!

 まずは霧隠料理スクール所属、天才料理人デュエリスト!茂古田 未知夫選手!!』

 

 スポットライトが当てられた入場口から糸目の少年、茂古田 未知夫が悠々と歩き、観客たちに軽く手を振る。

 

――ミッチイイィィィィ!!

 

『対しますは、LDSブロードウェイ校からの参戦、デニス・マックフィールド選手!・・・おや?』

 

 反対側の入場口から現れたのは朱色のパーマのかかったオレンジ色の髪をした長身の少年

 だが、その姿は一回戦の時に見せた華麗なパフォーマンスをする派手好きの少年とはかけ離れた大人しい、どこか落ち込んでいる様にも見える姿

 散々、とんでもないパフォーマンスをするデュエリスト達に慣れたニコは逆に呆気にとられてしまった。

 

「どうしたんだい?元気なさそうだけど?」

 

 未知夫も一回戦での彼のパフォーマンスを見ていたので訝しんだ。

 

「あ、うん、なんでもないよ・・・」

 

「そうかい?」

 

 いまだに訝しんだままである未知夫と同様のニコであったが、このままであれ、それは選手個人の問題であろうと考え、司会者という立場上進行を進める。

 

『ふむ・・・では、そろそろ始めさせてもらいましょう!

 アクションフィールドオン!フィールド魔法、マジカル・ブロードウェイ!!」

 

 リアル・ソリッドビジョンシステムが起動し、薄暗くなったスタジアムが煌びやかな電飾やネオンに彩られたビル街へと変化する。

 

「ここは・・・!!」

 

『さぁ、戦いの舞台はアクションデュエルのパイオニア、榊 遊勝の最も得意としたブロードウェイフィールド!

 アクションデュエルの新たな時代を担う、御二人がこの場でどんなデュエルを見せてくれるのか!

 では、参りましょう!戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が!』

 

「「地を駆け、宙を舞い、モンスターと共にフィールド内を駆け巡る。」」

 

『これぞ、デュエルの最強進化系!アクショーン!』

 

『『決闘(デュエル)!!』』

 

「先攻は僕からみたいだね。

 僕はマジックカード、食券乱用を発動

 デッキからRCM(ロイヤル・クックメイト)モンスターを2体手札に加える。ただし、このターン手札に加えたカードたちは召喚、特殊召喚出来ないけどね。

 僕はデッキからRCM(ロイヤル・クックメイト)プリンセス・プリンとRCM(ロイヤル・クックメイト)クイーン・オムレツを手札に加える。

 

 さらに星呼びの天儀台(セレスティアル・セクスタント)を発動、このカードは手札及び自分フィールドの表側表示モンスターの中から、レベル6モンスターを1体、持ち主のデッキの一番下に戻して2枚ドローする。

 僕は今、手札に加えたレベル6のプリンセス・プリンをデッキに戻し2枚ドロー

 

 もう一枚、マジックカード、九字切りの呪符を発動

 このカードは1ターンに1度、手札及び自分フィールドの表側表示モンスターの中から、レベル9モンスターを墓地へ送り、デッキから2枚ドローする。

 食券乱用の効果で手札に加えたレベル9、クイーン・オムレツを墓地へ送り2枚ドロー

 

 ふふ、なかなかいい仕込が出来そうだよ。手札からトーチ・ゴーレムを君の場に特殊召喚。」

 

「!?僕のフィールドに!?」

 

 トーチ・ゴーレム ATK3000

 

 デニスのフィールドに現れる顔や頭に当たる部位がない丸鋸や鎖が生えた生気と言うものを感じさせない無機質な鋼の巨人

 代わりに未知夫のフィールドにはトーチ・ゴーレムを縮めた様な2体のトークンが並ぶ

 

 トーチトークン ATK0

 トーチトークン ATK0

 

「トーチ・ゴーレムは僕の場にトーチトークンを2体攻撃表示で特殊召喚する事によって、相手の場に特殊召喚出来る。

 代わりに僕はこのターン、通常召喚することは出来なくなるけどね。

 

 さて、これで仕込みはバッチリ、僕はマジックカード、インスタント・クッキングを発動

 相手の場に居るモンスターのレベルの合計以下のレベルを持つRCM(ロイヤル・クックメイト)を可能な限り、自分フィールドに特殊召喚する。

 トーチ・ゴーレムのレベルは8、よって僕はレベル8以下のRCM(ロイヤル・クックメイト)を特殊召喚!

 まずは軽食でもいかがかな?お出でませ!レベル8、RCM(ロイヤル・クックメイト)ナイト・ナポリタン2体!レベル6、RCM(ロイヤル・クックメイト)プリンセス・プリン!」

 

ナイト・ナポリタン「ナポー!」

         ATK300

 

ナイト・ナポリタン「ナポー!」

         ATK300

 

プリンセス・プリン「プリンプリーン。」

         ATK300

 

 フォークを構え、皿を背負ったギリギリ人型に見えるように盛られたナポリタンパスタとデザートスプーンを持った可愛らしい顔の付いたプリンアラモード

 余りにもファンシーなモンスター達に対し無機質なトーチトークンが完全に浮いている。

 

「僕はカードを1枚伏せ、ターンエンド。

 さぁ、御持て成しの準備はバッチリだ。とくと味わってくれたまえ!」

 

『茂古田選手、先攻で3体もの高レベルモンスターを展開!

 軽食と言うにはパスタ2皿、デザート付は少々重いと思いますが、この布陣をデニス選手は崩すことが出来るのかー!!』

 

「僕のターン、ドロー

 僕はEm(エンタメイジ)トリック・クラウンを召喚。」

 

トリック・クラウン「ヘヘッ!」

         ATK1600

 

「1名様ごらいてーん!ここで、僕はRCMナイト・ナポリタンの効果発動

 相手がモンスターを召喚、特殊召喚した時、自身を手札に戻すことでそのモンスターを破壊する。たんとお上がりませ!満腹全席!!」

 

 片手逆立ちをするピエロ、トリック・クラウンの口に自分をドンドン食べさせるナイト・ナポリタン。

 いつしかトリック・クラウンの腹は丸々と膨らみ、終いには破裂してしまった。

 

「あ・・・トリック・クラウンの効果発動

 1ターンに1度、このカードが墓地へ送られた場合、Em(エンタメイジ)モンスターを自分の墓地から攻守を0にして特殊召喚する。

 僕はトリック・クラウン自身を守備表示で特殊召喚。」

 

トリック・クラウン「ヘヘッ!」

         DEF1600→0

         ATK1200→0

 

「その後、自分は1000ポイントのダメージを受けるけど、この効果に対して手札のEm(エンタメイジ)フレイム・イーターの効果が発動

 自分にダメージを与えるマジック、トラップ、モンスター効果が発動した時、発生するダメージを0にして自身を特殊召喚する。」

 

 トリック・クラウンが手に持つロッドがデニスに向かって、放たれるとそれを食らって、マントを付けた爆弾ともいうような見た目のモンスターが現れる。

 

 フレイム・イーター ATK1200

 

「一名様ごあんなーい!2体目のナイト・ナポリタンの効果発動、そのモンスターも破壊させてもらうよ!」

 

「その前に、フレイム・イーターの効果発動

 このモンスターが召喚、特殊召喚に成功した時、お互いのプレイヤーに500ポイントのダメージを与える。

 でも、僕は手札の2体目のフレイム・イーターを特殊召喚する事で、僕へのダメージを0にする。」

 

「またまた一名様ご来てーん!!

 プリンセス・プリンもナイト・ナポリタンと同じく、自身を手札に戻すことで相手がモンスターの召喚、特殊召喚に成功した時、そのモンスターを破壊することが出来る。

よって、そのフレイム・イーターも破壊させてもらうよ。満腹全席!」

 

 デニスのフィールドに現れた2体のフレイム・イーターの口に次々と自身を食べさせるナイト・ナポリタンとプリンセス・プリン

 最終的に押し込めるようにして無理やり食わせ、未知夫の手札に戻って行ったが、2体のフレイム・イーターは巨大な爆弾となってしまっていた。

 

「でも、召喚された時点で君への2体分のフレイム・イーターのダメージは確定している。

 僕は一体分だけどね。」

 LP4000→3500

 

「うわっ!」

 LP4000→3500→3000

 

 破裂したフレイム・イーターの中から火の粉が飛び散り、未知夫とデニスを焦がす。

 

――あぁ!ミッチー!?

 

「・・・さぁ、これでFinishだ。君のくれたモンスターでね!

 トーチ・ゴーレムでトーチトークンにこうげ」

 

「残念だけどそうはいかないよ!

 トラップ発動、スウィッチ・ヒーロー、お互いのフィールドのモンスターの数が同じ場合、そのモンスターのコントロールを全て入れ替える!」

 

「なっ!?」

 

 2人の間のフィールドの下から何故か、中華の食卓テーブルの回転台の様なモノが現れ、2人のモンスターが回転テーブルに乗り入れ替わる。

 

『おっと、ここでまさに大逆転!

 フレイム・イーターは自身の効果により除外されてしまいましたので、デニス選手は手札3枚を失った上に、墓地もモンスターなし、フィールドには攻守0のトークン2体のみと言う窮地に立たされてしまったー!!』

 

――ミッチーすごーい!!

 

――もっとすごいの見せてー!!

 

 未知夫の一挙一動に観客たちは湧き、声援を送る。

 

「くっ!だったら!!」

 

 デニスは宙に浮かんでいるフープを鉄棒の様に使い高く舞いアクションカードを手に入れる。

 それを見ていた未知夫も、何かあると思いアクションカードを手に入れるために動く

 

「僕は速攻魔法、手札断殺を発動させて、手札のアクションカードとEm(エンタメイジ)スティルツ・シューターを捨て2枚ドローする。」

 

「でも、その効果は僕にも及ぶ、アクションカードをいただきまして!

 このカードとプリンセス・プリンを捨て僕も2枚ドロー。」

 

「僕はカードを1枚伏せ、ターンエンドだ。」

 

「では、僕のターンだね。ドロー

 僕はマジックカード、トレード・インを発動

 その効果により、手札のレベル8モンスター、RCM(ロイヤル・クックメイト)ナイト・ナポリタンを捨て2枚ドロー

 

 もう1枚マジックカード、おろかな副葬を発動

 デッキからマジック、トラップカードを1枚墓地に送るよ。

 僕はデッキから永続トラップ、食罪庫を墓地に送る。

 

 ここでさらにマジックカード発動だ。

 発動させるのは再びトレード・イン、よってナイト・ナポリタンを墓地に送り2枚ドローだ。

 よし、じゃあそろそろ、メインディッシュを楽しんでもらおうかな?」

 

「!?」

 

「マジックカード、ブーギートラップ

 手札を2枚捨てることで自分の墓地のトラップカード1枚を自分フィールド上にセットする。

 僕はCM(クックメイト)タマゴング2枚を捨ててさっき墓地に送った食罪庫を伏せる。

 

 さぁ、これで仕込みは出来た!

 ブーギートラップの効果で伏せたカードはそのターンで使える、永続トラップ、食罪庫発動!!」

 

 煌びやかな街中にいきなりデンと現れる腕の様な取っ手の付いた丸っとしたポットか冷蔵庫の様なモノ

 前面につけられた扉が開くとこのターンに、墓地へ置かれたCMたちがその中へと入ってゆく

 

「このカードの発動時、このターン墓地へ送られたCM(クックメイト)モンスターを全てこのカードの下に置く。

 そして、この効果で重ねられたカードの枚数だけ、デッキからRCM(ロイヤル・クックメイト)を手札に加える。」

 

「なっ!?」

 

「このターンに墓地へ送られたのはCMタマゴングとナイト・ナポリタンが2体ずつ、よって僕はデッキからRCM(ロイヤル・クックメイト)クイーン・オムレツ2枚とRCM(ロイヤル・クックメイト)ナイト・ナポリタン、RCM(ロイヤル・クックメイト)プリンセス・プリンの計4枚を手札に加える。」

 

「いっきに4枚も・・・」

 

「さて、もうひと手間と行こうか!

 クイーン・オムレツを墓地に送ってマジックカード、九字切りの呪符を発動、さらに2枚ドローだ。」

 

 新たに引いたカードを見て未知夫はほくそ笑んだ。

 

「最高のカードが来た。

 僕のとっておきのレシピを披露しよう!永続魔法、ワンダー・レシピ!

 このカードは1ターンに1度、自分フィールド上に食罪庫がある場合、その下に重ねられたカードの枚数まで手札のRCM(ロイヤル・クックメイト)を攻撃表示で特殊召喚出来る。

 食罪庫に重ねられたカードは4枚、たっぷり食材でボリューミーなおもてなしをさせてもらうよ!

 ワンダー・レシピの効果でRCM(ロイヤル・クックメイト)クイーン・オムレツ、ナイト・ナポリタン、プリンセス・プリンを特殊召喚!」

 

クイーン・オムレツ「オム~」

         ATK300

 

ナイト・ナポリタン「ナポー!」

         ATK300

 

プリンセス・プリン「プリ~ン」

         ATK300

 

 未知夫の場に現れる黄金に輝くふわふわのオムレツ、赤くも色とりどりの野菜の入ったナポリタン、きらきらと可愛らしくトッピングされたプリンアラモードが並ぶ

 

――ミッチーのセットメニューよ!

 

――あぁ~ん、カロリーが気になっちゃうけど、おいしそ~

 

――なんだかお腹が空いてきちゃうわ~

 

「おっと、お代は前払いでお願いするよ。

 ワンダー・レシピは、このカードの効果で特殊召喚したモンスター1体に付き300ポイントのダメージを与える。

 三体分のお代、ライフでお支払い願おうか!」

 

 3体のモンスターに刻まれた紋章が輝き、デニスに向けて光弾が発射される。

 

「Oh!?」

 LP3500→2600

 

「さすがに、もうダメージカットは出来ないようだね。

 ここでナイト・ナポリタンとプリンセス・プリンの効果をクイーン・オムレツを対象に発動

 この2体の攻撃権をこのターン放棄することで、クイーン・オムレツの攻撃力を倍加する。もっとおいしくなーれ!」

 

 クイーン・オムレツ ATK300→600→1200

 

 クイーン・オムレツにナイト・ナポリタンが瑞々しいフレッシュトマトで作られたトマトソースをかけ、プリンセス・プリンが生クリームたっぷりのホワイトソースをかける。

 二色のソースに彩られたクイーン・オムレツは煌びやかなブロードウェイにも負けない輝きを放つ

 

(前のターンにトーチトークンを守備表示にすることが出来たのにしてないし、伏せカードがトラップなのは確実

 でも、彼のデュエルスタイル的に破壊系の可能性は少ないかな?

 攻撃妨害系なら、さっき手に入れたこのアクションカードでどうにかなるか・・・)

「よし、トーチ・ゴーレムでトーチトークンに攻撃だ!」

 

「甘いよ!僕はトラップカード、ダブルマジックアームバインドを発動 

 自分フィールドのモンスター2体をリリースし、相手の表側表示モンスター2体のコントロールを自分のエンドフェイズまで得る。

 よってトーチトークンを2体リリースし、君のRCM(ロイヤル・クックメイト)クイーン・オムレツとプリンセス・プリンのコントロールを得る。」

 

 2体のトーチトークンが2本のマジックアームへと変貌し、クイーン・オムレツとプリンセス・プリンをデニスのフィールドへと連れ去る。

 

「ごめんね。僕は少食だからMaindishとDessertだけ、頂くよ。」

 

(トーチ・ゴーレムじゃなくてプリンセス・プリンのコントロールを?

 次のターンの召喚妨害を防ぐためかな?でも、逃がさないよ。)

「残念だけど、お残しはいけないなぁ~

 アクションマジック、イリュージョン・ファイヤー発動

 自分フィールドのモンスター1体を選択し、このターンそのモンスター以外攻撃できなくなる代わりに、そのモンスターは自分フィールドの他のモンスターの数まで攻撃できる!

 よって、トーチ・ゴーレムはこのターン2回の攻撃が可能だ!」

 

「おっと、それはまずいね。

 じゃあもう一枚トラップカード、マジカルシルクハット発動!

 このカードは相手バトルフェイズ中に発動でき、デッキからマジック、トラップカードを2枚選び、そのカードを攻守0の通常モンスター扱いで、自分のモンスターゾーンのモンスター1体と合わせシャッフルし、裏側表示でセットするよ。

 僕はプリンセス・プリンとデッキから永続トラップ、マジシャンズ・プロテクションと装備魔法、黒いペンダントをシャッフルしてセットだ。」

 

 プリンセス・プリンにハテナマークの描かれた巨大なシルクハットが被せられ、そのシルクハットが3つに分裂する。

 

「むっ、だったら、まずはトーチ・ゴーレムでクイーン・オムレツに攻撃させてもらうよ。」

 

 無機質な巨人トーチ・ゴーレムの拳がソースで着飾ったクイーン・オムレツに叩き込まれ、デニスに向かってソースと卵がぶちまけられるが、その前に星の描かれたとんがり帽子と緑色のマントを着た人形が現れ、そのすべてを自分で被る。

 

「ふぅ、危なかった。

 Em(エンタメイジ)ダメージ・ジャグラーの効果を発動させてもらったよ

 バトルフェイズ中に手札のこのカードを墓地へ送ることで、このターンの戦闘ダメージを1度だけ0にする。」

 

「だったら、右のシルクハットに攻撃だ!」

 

 トーチ・ゴーレムの拳が今度はシルクハットへと叩き込まれるが、その中に入っていたのは黒い石のはめ込まれたペンダント

 

「うっ、黒いペンダントはフィールドから墓地へ送られた時、相手に500ポイントのダメージを与える。ハズレみたいだね」

 

「おっと、それは違うな、大ハズレさ!

 ここで墓地のEm(エンタメイジ)スティルツ・シューターの効果が発生する。

 自分の墓地にこのカード以外のEm(エンタメイジ)が居て相手にダメージを与える効果が発生したとき、このカードを除外し、追加で2000ポイントのダメージを与える!」

 

「何だって!?」

 

 未知夫はすかさず、近くに浮いているフープを使い、高く舞いアクションカードを入手する。

 

「さぁ、華々しく、爆ぜろ。」

 

――パッチン!

 

 デニスの指パッチンに合わせ、砕けた黒いペンダントの残骸は花火の様に華麗に爆ぜた。

 

「アクションマジック、加速!

 効果ダメージを1度だけ無効にする!スティルツ・シューターのダメージは無効だ。うっ!!」

 LP3000→2500

 

 未知夫のいた空中で爆ぜた花火だが、未知夫は加速の力でその場から離脱、だが躱しきれずに火花を少し被った。

 

――あぁん、ミッチー!!

 

――デュエルでもすごいわ、あの大ダメージを回避するなんて!!

 

――ガンバレー!ミッチー!!

 

「・・・さぁ、ここからどうするんだい?」

 

――なぜだ、負けているのは彼の方なのに、なんで彼に歓声が上がるんだ?

 

「やるねキミ、僕はこれでターンエンドだよ。」

 

「エンドフェイズの前にバトルフェイズ終了時にマジカルシルクハットの効果でセットされたダミーは破壊される。

 そして、マジシャンズ・プロテクションがフィールドから墓地へ送られたことで効果発動

 僕の墓地から魔法使い族モンスターを1体特殊召喚するよ。

 戻っておいで、Em(エンタメイジ)ダメージ・ジャグラー。」

 

ダメージ・ジャグラー「ベェー!」

          ATK1500

 

「そうはさせないよ。

 ナイト・ナポリタンの効果発動、満腹全席!」

 

 ジャグラー人形の口にナポリタンが詰め込まれ、その腹が膨らみ破裂する。

 このデュエルが始まって何度も見た光景、だがこれでデニスのターンが始まる前に未知夫のフィールドからすべてのRCM(ロイヤル・クックメイト)が消え失せた。

 

「これでやっとまともにモンスターを出せるよ。

 僕のターン、ドロー

 僕はマジックカード、モンスターゲートを発動

 自分フィールド上のモンスター1体をリリースして、通常召喚可能なモンスターが出るまで自分のデッキの上からカードをめくり、そのモンスターを特殊召喚する。それ以外のカードは全て墓地に送る。

 僕は伏せているRCM(ロイヤル・クックメイト)プリンセス・プリンをリリース、じゃあ、いくよぉ~1、2、3、OH!!これはいいねぇカワイ子ちゃんだ。

 おいで、チョコ・マジシャン・ガール!」

 

 ピンクのハートに黄金の蝙蝠の翼が生えた飾りがその翼をパタパタと羽ばたかせ、デニスの下に飛来すると、ボンっという煙とともに露出の多い青い魔導服を着た蝙蝠の羽根の生えた少女が現れる。

 

チョコ・マジシャン・ガール「じゃ~ん!」

             ATK1600

 

「さて、ここでダメージ・ジャグラーのさらなる効果と行こうか!

 墓地のダメージ・ジャグラーを除外して効果発動

 このカードを除外し、デッキからダメージ・ジャグラー以外のEm(エンタメイジ)モンスターを手札に加える。

 僕は2体目のEm(エンタメイジ)スティルツ・シューターを手札に加える。

 

 そして、ここで彼女の効果を使おうとしようか、チョコ・マジシャン・ガールは1ターンに1度、手札から魔法使い族モンスターを1体捨てることで自分はデッキから1枚ドローする。

 よってこの手札に加えたスティルツ・シューターを捨てて1枚ドローだ。

 

 Wao!今日の僕はツイてるな~Em(エンタメイジ)ハットトリッカーはフィールド上にモンスターが2体以上存在する場合、手札から特殊召喚出来る!」

 

 ハットトリッカー ATK1100

 

 現れたのは三又になったとんがり帽子と緑色のマントにオレンジのサングラスに手袋、とそれだけのモンスター。身に着けている人物などなく、衣類のみが組み合わさって浮いているようだ。

 

「さて、バトルと行こうか!」

 

「えっ!?」

 

「ハットトリッカーでトリッククラウンを攻撃!」

 

 ハットトリッカーの手袋だけが飛んでいきトリッククラウンにデコピンをかます。

 トリッククラウンはそれを受けるとわざとらしく倒れながら破壊された。

 

「此処で墓地へ送られたトリッククラウンの効果発動

 墓地からEm(エンタメイジ)を攻守0にして特殊召喚する。

 さぁお帰り!Em(エンタメイジ)トリッククラウンを特殊召喚だ!」

 

トリッククラウン「へっ!」

        DEF1200→0

        ATK1600→0

 

「でも、その効果を使ったら君は1000ポイントのダメージを受けるんだよね?」

 

「いいや、ここでMiracleMagicだ!」

 

 デニスのフィールドに現れたトリッククラウンが持っている杖を上に回転させながら投げ飛ばすと、それは炎を帯びて火球となりデニスへ落ちようとするが、ハットトリッカーがその火球をマントで包み、その中身を更に上へ放り投げると大輪の花が咲く

 

――バンッ!バンッ!バンッ!

 

 ハットトリッカー C0→1

 

「ハットトリッカーは自分への効果ダメージが発生した時、このカードにカウンターを置くことでそのダメージを0にできるんだ。」

 

――わ~綺麗ね~

 

――華やかだわ~

 

「ふふん、じゃあそろそろ、僕のデュエルの主役にご登場願おうかな!

 僕はレベル4のハットトリッカーとトリッククラウンでオーバーレイネットワークを構築!」

 

 2体のモンスターが混沌の渦へと身を投げると、その中から1本と杖が天空へと投げられる。

 

「Show must go on!

 天空の奇術師よ。華麗に舞台を駆け巡れ!エクシーズ召喚!」

 

 杖の両端から光のロープが天に向かって張られ、ブランコのようになると、一人でに揺れ始め、いつの間にか輝く人型が疎の足場に現れる。

 

「現れろ、ランク4!Em(エンタメイジ)トラピーズ・マジシャン!」

 

トラピーズ・マジシャン「アハハハハハハッ!」

           ATK2500 ORU2

 

 ブランコに片手でつかまりながらポーズを決め、その光のヴェールを脱いで現れたのは仮面をつけマントを羽織った白い道化師

 

「よし!」

 

 デニスはトラピーズ・マジシャンの下へと跳び、その腕をつかみともに観客たちへとアピールをする。

 

「YhAaaaaaaa!Foooooooooooo!!」

 

 笑いながら空中ブランコで芸をするトラピーズ・マジシャン、そして、デニス

 2人の軌跡の後には虹色の光がキラキラとこぼれ、派手で美しい華やかなブロードウェイにはぴったりと言える。

 そう、かつての栄華、そして今では忌むべき人、エンタメデュエリストの榊 遊勝のように

 

『なんとゴージャスな召喚でしょうか!』

 

「へえぇ~綺麗だね。」

 

「だろ?でも彼は美しいだけじゃないのさ。

 トラピーズ・マジシャンが居る限り彼の攻撃力以下のダメージは全て0になる。」

 

「つまりそのモンスターが居るかぎり、2500以下のダメージは通らないっていう事だね。」

 

「その通り、さぁ、君も魅せてくれよ。ターンエンドだ。」

 

「あぁ、たっぷりと味あわせてあげるよ。

 僕のターン、ドロー!

 よし、僕はマジックカード、マジック・プランターを発動

 このカードは自分フィールド上の永続トラップカード1枚を墓地に送ることでデッキから2枚ドローする。

 僕は食罪庫を墓地へ送り2枚ドローだ

 

 さらにマジックカード、貪欲な壺を発動

 墓地のモンスターカードを5枚選択し、デッキに戻してシャッフルし、2枚ドローする。

 僕は墓地のクイーン・オムレツ3枚とナイト・ナポリタン2枚をデッキに戻して2枚ドロー

 

 さらにもう一つ!マジックカード、食券乱用を発動

 デッキからクイーン・オムレツを2枚手札に加える。」

 

『茂古田選手、怒濤のマジックカード連打!一気に手札を6枚まで増やした!』

 

「でも、食券乱用で手札に加えたカードはこのターン、召喚も特殊召喚も出来ないんだろ?」

 

「その通り!でもそこはひと工夫

 僕は手札のモンスターカード3枚、RCM(ロイヤル・クックメイト)クイーン・オムレツ2枚とRCM(ロイヤル・クックメイト)ナイト・ナポリタンを墓地に送り、モンタージュ・ドラゴンを特殊召喚!」

 

モンタージュ・ドラゴン「ギャオオオォォォォォ!!」

 

 現れたのは顔のない筋肉質な3つ首のドラゴン

 細身の体には不釣り合いなほど、大きな腕、その割には頼りない翼など、どこかちぐはぐな印象を受ける。

 

「このモンスターの攻撃力はこのカードを特殊召喚するときに送ったモンスターのレベルの合計の300倍だよ。

クイーン・オムレツはレベル9、ナイト・ナポリタンはレベル8、よってレベル合計は26!」

 

 モンタージュ・ドラゴン ATK7800

 

「Wao!まさか、トラピーズ・マジシャンのダメージ制限を易々と超えてくるとはね。」

 

「おっと、驚くのはまだ早いよ。

 僕はザ・カリキュレーターを通常召喚。」

 

 ザ・カリキュレーター ATK?

 

 続き現れたのはレジ打ち機をそのままロボットにしたようなモンスター、顔の表示板にはすでに「×300」の文字が表示されて居る。

 

「また攻撃力が決まって無いモンスター?」

 

「そう、このモンスターの攻撃力はフィールドに居るモンスターのレベル合計によって決まる。

 モンスタージュ・ドラゴンとトーチ・ゴーレムは共にレベル8、そしてザ・カリキュレーター自身は2、レベル合計は18、攻撃力はその300倍さ。よって」

 

 ザ・カリキュレーターが胸のキーボードでレベルを算出し打ち込んでいき=が入力され、表示板に浮かぶ文字は5400

 

 ザ・カリキュレーター ATK?→5400

 

『なんと茂古田選手!ここで戦略が一変!!ものすごい攻撃力のモンスターを連続召喚だー!!』

 

――すごいわー!ミッチー!!

 

「では行こうか!バトル!

 モンタージュ・ドラゴンでトラピーズ・マジシャンに攻撃だ!」

 

 攻撃の為に動き出すモンタージュ・ドラゴンに合わせるようにトラピーズ・マジシャンは、フープを使いマジカル・ブロードウェイの中を翔ける。

 そして、途中で見つけたアクションカードをデニスへと投げ渡す。

 

「OHっと、これは・・・そうか、だったら、ここでトラピーズ・マジシャンの効果発動!

 オーバーレイユニットを一つ使い、このターン、フィールド上のモンスター1体を2回攻撃できるようにする。

 僕はこの効果をモンタージュ・ドラゴンへ向けて使う!」

 

「なんだって!?」

 

 トラピーズ・マジシャンは周囲を回っていたオーバーレイユニットの一つをモンタージュ・ドラゴンへ向けて蹴り飛ばす。

 

「とっ同時にアクションマジック、バトル・チェンジを発動。

 モンスター1体の攻撃対象を変更する。

 モンタージュ・ドラゴンにはチョコ・マジシャン・ガールと戦ってもらうよ!」

 

 えぇ~っというリアクションをするチョコ・マジシャン・ガール、その攻撃力の差は明らかなため仕方がない。

 なので、彼女は墓地から代役を引っ張ってくることにした。

 

「チョコ・マジシャン・ガールが攻撃対象にされたことにより効果発動!

 墓地のチョコ・マジシャン・ガール以外の魔法使い族モンスター1体を特殊召喚し、攻撃対象をそのモンスターに移し替え、攻撃してきたモンスターの攻撃力を半分にする。

 またまた出番だよ!Em(エンタメイジ)トリッククラウン!」

 

トリッククラウン「へへっ、へ!?」

        DEF1200

 

 モンタージュ・ドラゴン ATK7800→3900

 

 また出番かと意気揚々に出て来たトリッククラウンだったが、バトルさせられそうになっているのは半分になってもなお強力なドラゴン

 一介のピエロには荷が重いとデニスに泣き顔を見せる。

 

「では、彼ばかりに仕事させてないで、僕も動こうかな!っと!!」

 

 トラピーズ・マジシャンが再び空中ブランコを作り上げ、デニスはトラピーズ・マジシャンと共に大きく宙を舞う。

 そして、ビルの窓に張り付いていたカードをそのまま発動させる。

 

「アクションマジック、イリュージョン・ダンス!

 フィールドのモンスターはすべて守備表示になる!」

 

 トラピーズ・マジシャン   ATK2500→DEF2000

 チョコ・マジシャン・ガール ATK1600→DEF1000

 

 モンタージュ・ドラゴン   ATK3900→DEF0

 ザ・カリキュレーター    ATK5400→DEF0

 トーチ・ゴーレム      ATK3000→DEF300

 

 発動させたカードの効果で、何故か踊り出すモンスター達

 ノリノリで踊るデニスのモンスター達に比べて、未知夫のモンスター達は首や手を適当に動かしているだけでステップも何もありはしない。

 ただ、巨大なトーチ・ゴーレムが足踏みをしているので、フィールドが無駄に揺れている。

 

「う~ん、全て守備表示になってしまったのなら仕方ないか・・・

 バトルフェイズは終了するよ。」

 

「ふふ、It’s Showtime!!」

 

――バーンッ!!

 

 バトルフェイズが終了した瞬間、モンタージュ・ドラゴンがいきなり爆散した。

 

「な!?」

 

「ごめんね。トラピーズ・マジシャンの効果を受けたモンスターはバトルフェイズ終了時に破壊されてしまうんだ。

 そして、イリュージョン・ダンスの効果も切れて表示形式が変わったモンスターも元に戻る。」

 

 トラピーズ・マジシャン   DEF2000→ATK2500

 チョコ・マジシャン・ガール DEF1000→ATK1600

 

 ザ・カリキュレーター    DEF0→ATK5400→3000

 トーチ・ゴーレム      DEF300→ATK3000

 

「やるね。僕はカードを1枚伏せてターンエンドだ。」

 

「じゃあ、僕のターンだ、ドロー

 うん、いいカードだ。僕はマジックカード、強欲で金満な壺を発動

 自分のメインフェイズ1開始時に、自分のエクストラデッキから3枚または6枚、裏側表示で除外することで3枚に付き1枚ドローする。

 その代り、このターン僕はこれ以降カード効果でドローできない。

 僕は6枚のカードを除外して2枚ドロー。

 

 永続魔法、バリア・バブルを発動させてトラピーズ・マジシャンの効果を自身に対して発動

 これでトラピーズ・マジシャンは2回攻撃できるようになった。」

 

「でも、攻撃力は僕のモンスター達の方が断然上だよ?」

 

「それは・・・あのカードを取ってから言ってもらおうか。」

 

 デニスが見つめる先には、流れるネオン文字に連動して動いているアクションカード

 デニスはそれをトリッククラウンとチョコ・マジシャン・ガールによる人間トランポリンで高くジャンプして取り、トラピーズ・マジシャンがすかさず、デニスの腕をつかみ安全に下に降ろす。

 

「やった、これで大逆転だ!アクションマジック、バイアタック

 モンスター1体の攻撃を2倍にするよ、よってトラピーズ・マジシャンの攻撃力は5000にパワーアップ!」

 

トラピーズ・マジシャン「アハハハハハ!!」

           ATK2500→5000 ORU1→0

 

「バトルだ!トラピーズ・マジシャンでザ・カリキュレーターを攻撃!」

 

 キラキラと光の粒を溢しながら、ブランコで勢いをつけた飛び蹴りをザ・カリキュレーターに向けて放つ

 

「ザ・カリキュレーターを攻撃したのは間違いだったね!

 トラップカード、ギブ&テイク!相手のフィールドに僕の墓地のモンスターを1体、守備表示で特殊召喚し、自分フィールド上のモンスター1体のレベルをエンドフェイズまで特殊召喚したモンスターのレベル分アップさせる。

 僕は君の場にRCM(ロイヤル・クックメイト)クイーン・オムレツを特殊召喚しザ・カリキュレーターのレベルをアップ!それによって攻撃力もアップだ!」

 

 クイーン・オムレツ DEF300

 

 ザ・カリキュレーター LV2→11

            ATK3000→5700

 

 高速で打たれたキーボードによって表示値が変化したザ・カリキュレーターはその手に雷を灯して、トラピーズ・マジシャンを迎撃する。

 だがトラピーズ・マジシャンの周りに泡の様なモノが現れ電気を霧散させると、ザ・カリキュレーターの拳を利用して再び、空中ブランコに戻って行った。

 

「どういうことだい?」

 

「Ah!永続魔法、バリア・バブルの効果さ

 1ターンに1度、Em(エンタメイジ)及びEM(エンタメイト)モンスターは戦闘及び効果では破壊されず、発生する戦闘ダメージも0になる。

 

 そして、これで本当にとどめさ

 速攻魔法、旗鼓堂々!

 自分の墓地の装備魔法をフィールド上のモンスター1体に装備させる。

 僕は墓地の流星の弓―シールをトラピーズ・マジシャンに装備

 攻撃力を1000ポイントダウンさせ、ダイレクトアタックできるようになる!」

 

トラピーズ・マジシャン「アハハハハ!!」 

           ATK5000→4000

 

「モンスターゲートで墓地に送られたカードか!?」

 

「Exactly!その通りだ!

 行って、トラピーズ・マジシャンでダイレクトアタック!」

 

トラピーズ・マジシャン「ハハハハハッ!!」――ビュン!!

 

 空中ブランコの上に器用に立つトラピーズ・マジシャンが装飾のされた白磁の弓から矢を射れば、その矢は星の様な光を蓄え飛んでいき、未知夫に刺さる寸前に弾けてキラキラとした星が舞う

 

「ふぅ~僕の負けか・・・」

 LP2500→0

 

『夜空に美しい勝利の花を咲かせたのは、LDSブロードウェイ校エクシーズコースのデニス・マックフィールド選手だー!!』

 

――ワアアアァァァ!!

 

 観客たちは歓声を上げる、また、面白いデュエルを見れることを願って

 負けた未知夫の分も戦ってくれることを信じて、彼に歓声を送る。

 

――あぁ、やっぱり先生のデュエルは間違いじゃない。

――僕のデュエルで、こんなにも笑顔になってくれる人たちがいる。

――簡単な事だったんだ。

 

 だが

 

――僕が勝ったんだから、間違いなんかじゃなかったんだ。

 

 彼はその思いを理解していない。理解できない。

 

――ピッピッピッ

 

――ん?メッセージ?

――Wao、なんて素敵な任務なんだ!これも運命かな?

 

 彼は笑顔の仮面の下でほくそ笑む、それは破滅を告げるメッセージだというのに

 

――榊 遊矢、君の間違いを僕が正してあげよう

――先生は正しいんだって、僕が証明してあげる。

――だって、僕は強いんだから。


「紫雲院 素良の記憶解析終わりました。」

 

「うむ、ご苦労。」

 

 薄暗い玉座の間、そこにただ一つある王座に座る中年の男

 ひざまずく研究員らしき男を労い、渡されたデータを空中スクリーンに表示させて確認する。

 そうして、目に留まったのは一人の少女の姿

 

「おぉ!!ついに見つけた!これで!!」

 

 歓喜に打ち震える男だが、研究員の男は申し訳なさそうに進言する。

 

「プ、プロフェッサー、申し訳ないのですが・・・それより先をご覧になってください。」

 

「先?」

 

『儀式召喚!大地の力宿る戒めの竜、オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン!!』

 

『シンクロ召喚!星紡ぐ戦の竜、オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン!』

 

『エクシーズ召喚!全てを凍てつかせる永久の竜、オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン!』

 

『揺れろペンデュラム、異界へ繋がる扉を開け!ペンデュラム召喚!レベル7、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン!』

 

『融合召喚!雷の力帯びし竜、オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン!』

 

「な、なんだと・・・」

 

「この者の名は榊 遊矢、4人目の少女にも近しい人物の様で、彼女の保護をする際に多大な・・・プロフェッサー?」

 

「四天の竜が・・・独自に進化を遂げたのか!?このままではあの悪魔が・・・」

 

「あ、あのプロフェッサー?」

 

 明らかに普通ではない男の様子に、研究員は訝しむが

 

「君は、もう下がってよい。」

 

「は、はい?」

 

「下がっていろと言ったのだ!!」

 

「はい!失礼いたします!!」

 

 逃げるように玉座の間から出てゆく研究員

 男は全身の力が抜けたかのように王座に腰を落とす。

 

「なんという事だ・・・4人目ばかりか、セレナが向かってしまったスタンダードでまさか、こんな・・・」

 

「おやおや、どうされましたかな?貴方らしくもない。」

 

 玉座の影からぬるりと現れた不健康そうな男が、凶気を感じさせる笑みで中年の男に話しかける。

 

「ドクトル・・・オベリスクフォースを全員、召集せよ。」

 

「はぁ?オベリスクフォースを全員?

 貴方、前までスタンダードは敵じゃないと申されていたではないですか?

 少女2人連れてくるだけなら10人ばかり送れば十分でございましょう?」

 

「それはユーリにやってもらう。

 オベリスクフォースはこの少年、榊 遊矢を全力で以て倒すのだ!」

 

「おやおや、たかがスタンダードの小僧一人なんぞにそんな・・・」

 

「これは世界の存亡がかかっているのだ!早く、オベリスクフォースを召集せよ!!」

 

 血走った眼を見開く男にドクトルはあきれ果てて仕方なしに、返事を返す。

 

「やれやれ、仕方ないですな。

 では、オベリスクフォース48人全てを召集いたしましょう。」

 

「そうだ、あの悪魔の復活は絶対阻止しなければならん!

 榊 遊矢を必ずや抹殺するのだー!!」




バナナ!?バナ、バナナ!?

バナナじゃねェ!ユーゴだ!!

やはり融合か!!

だー!!融合でもねェ!!ユーゴだって言ってんだろうが!!
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『旅人、その名はユーゴ』

やはり融合か!!

だから融合じゃなくて、ユーゴだって言ってんだろうが!!

天然とバカで無限ループしている、いい加減止めるか・・・


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旅人、その名はユーゴ

お久しぶりです。
今回は考察回、会話だけなのにえらくなってしまいました。
戦争観については私の考えなので、ご了承のほどを

新作遊戯王シリーズ『遊戯王SEVENS』の情報が出ましたね。
ぶちゃっけ設定だけ見ると、遊戯王である必要性があるのかと思ってますが、仲間内の遊びが大勢で楽しむゲームになっていくみたいな展開なんですかね?
まぁ、マグロを食っているようなパチモノみたいにならないことを祈ります。

PS.次回を書いていたら詰め込み過ぎて予告と合わなくなってきたので、次回の予告を変更しました。


『激動のジュニアユース2回戦!

 最終試合を制したのは・・・遊勝塾の柊 柚子選手だー!!』

 

 夕暮れのスタジアムで巻き上がる歓声、それは一人の少女へと向けられている。

 

「ヘーイ!ユズ!!スバらしいデュエルでした!オメデトウございマース!!」

 

「うん!ありがとう!!」

 

「ワタシももっともっとベンキョして、強くなりマース!

 そうしたら、またデュエルをしましょー!!」

 

 民族衣装の少年ハリルは柚子に手を握って興奮気味にブンブンと振り回す。

 

「ええ、でも忘れないでね、私だってその時には今よりもっと強くなっているんだから!」

 

「OH!望むところデース!」

 

 笑い合う柚子とハリル

 ふと、柚子が観客席に目をやると、父の修造やタツヤ、アユ、フトシ等の塾の生徒達、権現坂や洋子もいて、自分へ手を振っていた。

 それは少女の当たり前の光景、きっと彼らは負けても手を振り、一緒に泣いてくれるだろう。

 そして、この後、彼らは自分と一緒に笑ってくれるだろう。だが

 

「あれ?遊矢?素良?」


『本日のプログラムはすべて終了となりました。

 この後、施設内の設備の点検を行いますので、お客様につきましては速やかに退館していただくよう、ご協力、お願いいたします。』

 

 放送の流れる少し前にスタジアムから出た遊矢は広場のベンチに腰かけていた。

 これから起こるであろうことを整理するために。

 

(素良が融合次元に戻った以上、明日にでもアカデミアが柚子を攫うために動き出すだろう。

 セレナのこともあるし、融合次元との接触は避けられない。

 

 赤馬零児はこのことを察知しているものと考えて、原作通りに進んで、明日の三回戦はバトルロイヤルになる可能性が大。

 カードにされるはずだったジュニアユース出場者はすでに全員敗退、地味に北斗も健在。

 ユースのイキり共は・・・零児の判断次第。

 

 仮面連中はどうにかなるとしても、一番の危険人物である紫キャベツと俺は戦えない。)

 

 知り過ぎているという事は、相手の行動を先読みできると言う事であるが、彼にとっては、それに頼りすぎると言うことは罠にはまることにつながる。

 すでにこの世界は彼の知る物語から逸脱をし始めているのだから。

 

(もし、アカデミアが攫う目的の侵入ではなく大挙しての侵略行為をしてきたら?

――守り切れるのか?

 

 未知夫たちがカードになる運命が変えられないどころか、被害が増大したら?

――どう責任を取ればいい?

 

 そもそも俺が負けたらどうなる?)

 

 運命の鎖が彼に巻き付いていく。

 不測の事態がないように最悪を想定していくために、その思考はどこまでも落ち込んでいく。

 地面を見つめる彼の隣に、誰かが腰かけた。

 

「顔色が悪いですわよ?我がマジェスティ・・・」

 

「ミエル・・・」

 

 フードつきのローブにいつものリンゴ型の水晶を片手に持った小柄な少女、方中 ミエルが彼に問いかけた。

 

「お悩みかしら?」

 

「まぁ、そんなところだ。」

 

「お労しや、ならばこの私めに打ち明けていただけないかしら?」

 

「あっ・・・いや・・・」

 

 遊矢は一瞬、ぶちまけてしまおうかと思ったが、それを飲み込む

 

「あら、私は何時だってマジェスティのことを思っていますのに、悩みの一つも打ち明けてくれないほど信用がないのですね・・・」

 

「い、いやそういうわけじゃ!?」

 

 遊矢の困った顔を見て、悲しく伏せていた少女の顔に一転して笑みが浮かぶ。

 

「そう、それですわ。

 マジェスティ、貴方は少しは信用した方がいいですわよ?

 貴方の周りにいる人たちと、貴方自身をね。」

 

「!?」

 

「人の一人が選び取った運命なんて、ちっぽけなものでしかない。

 でも、もしかしたらそれが世界を変える大きな力になるかもしれない。

 運命を選ぶのは貴方よ?私のマジェスティ。」

 

「はぁ~お前は本当に回りくどいな。」

 

「ふふ、だったら、率直に申し上げますわ。

 中央公園へ行ってみなさい、そこで運命は交差するわ。」

 

「はぁ?それってどういう、って、やっぱりもういないか・・・」

 

 遊矢が横に顔を向けるとミエルは姿を消していた。

 

「おーい、遊矢ー!!」

 

「柚子?」

 

「もう、こんなところに居た、ってあれ?素良は一緒じゃないの?

 おば様から、遊矢が捜しに行ったって聞いたんだけど?」

 

「・・・・・・素良は戻らない。」

 

「えっ?」

 

「急に故郷に戻るように言われたらしくてさ。

 顔を見ると辛気臭くなるから、黙っていくってさ。」

 

「えぇ!?そんな・・・せめて、大会が終わるまでは、どうにかならなかったの?」

 

「あぁ・・・どうにもならなかったみたいだ。

 柚子、すまないんだが、母さんたちにも言っておいてくれないか?」

 

「えっ、うん、それはいいけど、遊矢は?」

 

「ちょっとパック買ってくる。」

 

「えぇ~これからぁ~?まぁ、いいけど、遅くならないようにね?」

 

「分かってるよ・・・なぁ柚子?」

 

「ん?何?」

 

「素良がさ、次に会ったときとんでもない極悪人になっていたらどうする?」

 

「何よそれ?でも、そうね・・・とりあえず一発ぶん殴るわ!

 そんでもって、お説教して、反省させるの!友達なんだから当然でしょ?」

 

 あまりにもストロングな答えに遊矢は小さく噴き出す。

 

「ふっ、柚子らしい・・・

 あぁ、言い忘れていた、柚子二回戦突破おめでとう、戦うのを楽しみにしているよ。」

 

 薄く笑いながら掛けた遊矢のその言葉に、柚子は一瞬戸惑って

 

「!!・・・うん!!」

 

 花の様な笑顔を咲かせた。


 夜更けの舞網市、舞網チャンピオンシップが開かれていることもあり、8時を過ぎても街の中心部は騒がしい。

 その騒がしい町の中心に広がる公園は街灯が少ないこともあって、人気がない一角となっていた。

 そんな場所に眉間にしわを寄せた黒い少年が一人

 

≪私は勝手にアカデミアを抜け出してきたからな!追手が今にでも来るだろう≫

 

「アカデミアが・・・この世界に・・・」

 

 分っていたことだ。

 俺たちは赤馬 零児を見つけ出し、人質にして、アカデミアのプロフェッサーと呼ばれる赤馬 零王と交渉するために来たんだ。

 それはつまり、この世界の人々を戦火に巻き込む可能性があること・・・

 

「そうだ、分かっていたことだ。

 そして、アカデミアは遅かれ早かれ、この世界にも魔の手を伸ばしていたことだろう。だが・・・」

 

≪瑠璃?あ~たしか、ユーリがプロフェッサーの命令で連れて来たというのが、そんな名前だったような・・・

 私は会ったことはないが、中々強いと言っていたぞ!≫

 

 瑠璃を救うためだと息巻いていたが、俺は、俺たちは、引き金を引きかけていた。

 俺たちが最も忌むべきあの戦争の引き金を・・・

 

――ドゴオォォ!!

 

「!!?」


「あ~やっぱり、殆どエンタメイトか~」

 

 中央公園のベンチで買った8パックを開封したが、モンスターは案の定エンタメイトばかり。

 需要を考えれば当然のことだが、この世界には構築済みデッキや付録カードというものは基本的にない。

 モリンフェンやダーク・キメラ、ワイト等のコアなファンが付いているカードについては有志が信者獲得のため自費出版でカード付きの本を出していたりするがこれは例外だろう。

 金銭的にも変わっていてOCGではパックの値段は一律だったが、初心者用のスターターパックは安めでそれ以外が通常レート、復刻パックなどが高めの値段設定だ。

 

 パックの種類も豊富なのだが、元とはいえチャンピオンの使っていたシリーズの所為か、エンタメイトの入ったパックがやたらと多い。

 エンタメイトが入っているはずのない復刻パックやスターターパックなども買ってみるのだが、魔法、トラップカードばかり当たるか、単体じゃ役に立たないカードばかり当たるといった徹底ぶりだ。どうなっているんだ?

 

「にしても、中央公園か・・・」

 

 たしか、ここは素良とユートがデュエルして、正体をしゃべってしまった素良が強制送還された後、入れ替わりにユーゴが現れて、話を聞かないユートに業を煮やしたユーゴがデュエルを仕掛け、ユートが「デュエルで笑顔を・・・」と言い続ける背後霊になってしまう流れだったはず。

 

「でも、もう素良はいないしなぁ・・・」

 

 なのでユートがここに来るフラグもない筈

 

――ドゴオォォ!!

 

 何かがぶつかり合う音?交通事故?って!?

 

「マジか・・・」


「イッチッチ・・・ったく、何だって、こんなモンが突っ立ってんだ!?ったくよ!!」

 

 いきなり、緑色の光が発生したと思えば、次の瞬間にはバイクが鉄の街灯にぶつかる事故が発生していた。

 そして事故の加害者は自分が公園内でバイクに乗っていることを棚に上げて、街灯に文句を言っている。

 しかも、街灯は完全に折れ曲がっているのに、バイクには一切傷が付いていない、乗り手にも怪我がないようだが、どれだけ頑丈なのだろうか?

 

「いや、お前は!?」

 

「ん?あっ!?オメェは!!ここであったが百年目!探したぜ!!」

 

 アカデミアの刺客のシンクロ使い!!

 まさかこれほど早くアカデミアが攻めてくるとは!?

 

「この前は余計な邪魔が入って、うやむやになっちまったが、1対1なら負けるわけがねぇ!

 さぁ!俺とデュエルだ!!

 今度こそぜってぇテメェをぶっ倒してやるぜ!!」

 

 この男、セレナではなく俺を狙って来たのか!?

 と言うことは俺たちがスタンダードにいることが、既にアカデミアにリークされているというのか!?

 そうなると、アカデミアの息のかかった人間がスタンダードに、いや、レオ・コーポレーション内にいるという事か!?

 

「くっ!?ならば、お前から聞き出すまで!!

 この世界にも、俺たちの世界にも、もう犠牲を出させはしない!!

 覚悟しろ!融合の手先め!!」

 

「何がユーゴーだ!俺はユーゴだ!間違えてんじゃねぇ!!」

 

「やはり融合!!」

 

「ユーゴだ!つってんだろうが!!」

『デュエルモード、オン!オートパイロット、スタンバイ!』

 

「融合の手先に負けるわけにはいかない!」

 

「だから!俺はユーゴだっつってんだろうが!!

 何度もユーゴー、ユーゴー言ってんじゃねぇ!!」


 う~わ~何だ、この阿呆な会話は・・・

 衝突音があった場所に来てみれば、白を基調としたヘルメットとライディングスーツを身に纏った少年『ユーゴ』と黒服の少年『ユート』が言い争いをしていた。

 茂みに隠れてその様子を見ているが、これは早く止めないと、ナストラルか、バナベルルートまっしぐらだ。

 

「あぁ!もう!頭来た!!俺から大事なもん、奪い取った上に俺の名前を何度も何度も間違えやがって!!」

 

「奪い取ったのは、お前らだ!!」

 

「うるせぇ!!話はテメェをぶっ倒してからだ!!」

 

 いや、先に話をしてくれ!!

 ユートも奪った発言で血が上って、ユーゴが名前の事だと言及したにもかかわらず気付いてないし

 ここはどうする、あいつらのデュエルを阻止する方法・・・

 

 まずは状況確認!

 何故かユーゴはライディングデュエルをしようとして、バイクをトバしている。

 それをユートが律儀に走って追いかけている。いや、止まって、やれ!!

 

 そういえば、走れないDホイーラーにターンは回ってこないって、超官が言っていたな・・・

 シンクロ次元のライディングデュエルにそのルールがあるかは知らないが、それならあのDホイールを止めさえすれば、このデュエルをおじゃんにできるはず。

 

 だが、初速ですでに60キロ以上出ているあのDホイールを止めることが出来るか?

 俺が前に出れば、避けられるか、正面衝突。怪我と言うか死ぬ!!

 ならば、横!横からの奇襲によって、搭乗者を引きずり落とす!

 加速し続けているあのDホイールを横から捉える確率は低いし、なまじ成功してもどっちも大怪我をする可能性もある・・・

 いや、迷っている暇は無い!諦めるな!何もごともチャレンジ!勇気を持って一歩踏み出せ!そう!!

 

「かっとビング(物理)だ!!俺えぇぇぇぇ!!」


「かっとビングだ!!俺えぇぇぇぇ!!」

 

「グフウウゥゥゥゥ!?」

 

 裂帛の気合いの入った妙な掛け声と共に、茂みから何者か飛び出し、バイクの男を飛び蹴りで蹴り飛ばす。

 

「がっ!!」

 

――ズガガガガガガッ!!

 

 バイクの男は近くの木にぶつかり、バランスを崩し転倒し数秒スライディングした後停止する。

 男は、どうやら木がクッションになったらしく、怪我らしい怪我はしてないように見える。

 そして、飛び蹴りを放った人物は見事に着地していた。

 

 白い制服に赤いシャツ、黄色いネクタイをたなびかせ、ぼさついた癖のある赤と緑の混じった髪が揺れている。君は!?

 

「榊 遊矢!?」

 

「ぐううぅぅ・・・痛テェ・・・なんだ?

 って、ええぇぇぇっ!?リンを攫ったヤツが増えたたぁぁぁ!?」

 

 あの男、わき腹に飛び蹴りが直撃したのに元気だな・・・凄い生命力だ。

 ヘルメットが取れて、素顔が明らかになったが、その顔は俺とよく似ている。

 違いは瞳の色が青い事や、髪の後ろが青く前髪だけが金髪で、その髪が緩くカールしている独特の髪型だ。

 

「・・・バナナ?」

 

 確かにそう見える。

 

「バナナじゃねぇ!!ユーゴだ!!まさか、双子かぁ!?」

 

 このやり取り、昼間もしたような気がする・・・

 

「生憎そこの黒いのと兄弟だった覚えはないな。

 で、事故かと思って駆けつけてみれば、夜の公園でバイクを乗り回す不良少年がいたわけだが、どういう状況だ?」

 

 黒いの・・・確かに俺の服は黒ずくめだが・・・

 

「惚けんじゃねぇ!!テメェらのどっちかがリンを攫って行ったんだろうが!!

 って、あああぁぁぁぁ!!俺とリンのDホイールが!!?

 テメェ!!リンだけじゃなく、俺たちのDホイールまで!!」

 

「そのDホイールについては謝るが、生憎と俺は誰かを攫った覚えはないし、リンって言う名前の知り合いもいないなぁ。」

 

「何ぃ?だったらやっぱり、そっちの黒いのか!!」

 

「ふざけるな!!俺たちの仲間を・・・瑠璃を攫ったのはお前たち融合次元の仕業だろ!!」

 

「だああぁぁぁぁ!!ユーゴーじゃねぇ!!ユーゴだ!!何度言ったらわかるんだ!!」

 

「やはり、融合の手先!!」

 

「だから俺はユーゴだ!!」

 

「お前ら、わざとやっているのか?」

 

『『!?』』

 

 底冷えするような気迫に、俺とバイクの男は口を閉ざし、その発生元を見る。

 そこには真紅の瞳を滾らせ、見るだけで怒っているという事が分かる榊 遊矢が居た。

 

「はぁ~まず、そこの白いの、そこの黒いのから融合の手先だとか言われていたが心当たりは?」

 

「い、いえ!まったくございません!」

 

「じゃあ、あの言い争いになった理由は?人さらい以外のことで。」

 

「そ、それは・・・そこの奴が俺の名前を何度も間違えるから・・・」

 

 えっ?名前?

 

「そうか・・・黒いの、こいつの固有の名前が『ユーゴ』と言う事であって、融合の使者とかではないと言っているが、反論は?」

 

「あ・・・え、と・・・」

 

 出来るわけがない、その事については俺の完全な勘違いだ。

 

「つまり、そこの黒いのは白いのが自分はユーゴだと自分の名前を名乗っていたのを、自分は融合だと、所属を名乗っていたと勘違いしたわけだな?馬鹿じゃねぇの?」

 

「ぐうぅ・・・」

 

「それと白いの、いや、めんどくせぇからユーゴでいいな?

 お前の言うリンという人物を攫った奴の顔は見たのか?」

 

「お、おう!忘れもしねぇぜ!だって、ソイツは俺と同じ顔をしてたんだからよ!

 世界に同じ顔がそう何人もいて堪るかってんだ!!」

 

「すでにここに三人居るような気がするが・・・

 で、俺はそんな覚えはないわけだが、黒いのはどうだ?

 お前はさっき、瑠璃を攫われたと言っていたが?」

 

「そうだ、融合の、アカデミアの手先に俺の仲間で、親友の妹である瑠璃は攫われた。

 俺と同じ顔をしたアカデミアの奴に!!」

 

 忘れるものか!あの人を馬鹿にしたようなにやけた顔を!!

 

「ふ~む、と言うことは2人は互いに俺も含めて自分と同じ顔をした奴に、知り合いが攫われたと

 で、顔以外に何か心当たりはあるか?」

 

「それなら名前が分かっている!ユーリと言う融合次元のアカデミアのデュエリストだ!」

 

 そいつと友達だと言っていたセレナから聞いたんだから間違いない。攫うように指示したのは赤馬 零王らしいが

 

「へぇ~融合次元とか、アカデミアとかはわからないが、名前が分かっているのか・・・

 顔以外に特徴は?」

 

「紫色の髪をしていて、特徴的な眉をしている。そう、おかめ面のような形だ。」

 

「あぁ、そういえば一瞬見えたあいつのにやけヅラ、目の色が紫だったような・・・

 って、黒と赤!?まさか俺、違う奴に喧嘩ふっかけていたのか!?」

 

「紫に、にやけ面・・・もしかして、リンと言う人物は、こんな顔をしていなかったか?」

 

 俺は胸から写真を取り出し、ユーゴに見せる。

 まだ、エクシーズ次元が平和だったころ、隼と瑠璃と一緒に撮った写真だ。

 赤馬 零児が言う、赤馬 零王の計画に必要なシンクロ次元の少女とはもしかして・・・

 

「あぁ!!なんでお前がリンの写真を!!

 しかも楽しそうにしやがって!つーか、こっちののっぽは誰だ?」

 

 やっぱりか・・・

 

「ユーゴ、話の流れからして、この写真の人物は黒いのが言っている瑠璃だろう?」

 

「あっ、そっか。」

 

「黒いのはやめてくれ、俺はユートだ。

 彼女は黒咲 瑠璃、俺の親友の妹でアカデミアのユーリと言う、俺たちによく似た顔つきの奴に誘拐された。

 アカデミアの最高権力者、プロフェッサーの命令でな。

 リンと言う人物を攫ったのも、同一の奴だろう。」

 

「なにー!?それは本当か!?」

 

「あぁ、アカデミアから抜け出してきた少女が、プロフェッサーの命令で瑠璃を連れ去ったと言っていたからな。理由は同じだろう。」

 

 零児の予測通り、理由は分からないが赤馬 零王は各次元の同じ顔をした少女を集めているのだろう。

 彼女たちが関わるリバイバル・ゼロと言う計画とは、一体なんだ?

 

「なぁ、ソイツと会わせてくれ!リンは無事なのか!?」

 

「いや、その少女はアカデミアで箱入りとして育てられていたらしく、何も知らないらしい。

 アカデミアが戦争を起こしていることも知らなかったからな。」

 

「うぅ・・・そうか・・・リン、無事でいてくれよ・・・」

 

 Dホイールと呼ばれたバイクの前で、ユーゴが泣き崩れる。

 そうか、彼にとってもリンと言う少女は大事な人だったみたいだな・・・それなのに、俺は・・・

 

「なぁ?さっきから融合次元だとか、アカデミアだとか、戦争だとか、付いていけないんだが?

 そのアカデミアと言う組織に属している、俺たちによく似た顔のユーリとか言う奴が連続誘拐事件を起こしていることは分かったが。」

 

 榊 遊矢が質問してくる。

 確かに、彼にとってはかかわりのない話だ。

 いや、瑠璃とセレナとリン、3人の少女が同じ顔をしているのなら、同じく同じ顔をしている柊 柚子を狙ってくる可能性が高い。だったら・・・

 

「・・・榊 遊矢、実を言うと俺はこの世界の人間じゃない。

 エクシーズ次元と言う、別の世界からやってきた。」

 

「別の世界?」

 

「あぁ、そこのユーゴも同じだと思う。俺たちとはまた別の次元だと思うが」

 

「へっ?俺?そういえば、ここ何処だ?シティじゃねぇみてぇだが・・・」

 

「シティね・・・なんとかシティって呼ばれている街は数あれど、シティだけで通じるような場所は俺の記憶にはないな。」

 

「あぁ、おそらく彼はシンクロ次元から来たんだろう。」

 

「融合、シンクロ、エクシーズか・・・デュエルモンスターズのエクストラデッキから召喚される種類のカードの名前だな。」

 

「あぁ、この世界はスタンダードと呼ばれ、合わせて4つの次元が存在しているらしい。

 そして、その内の一つ、融合次元のアカデミアと言う組織が、俺たちの世界、エクシーズ次元に侵略戦争を仕掛けて来た。

 文字通り、融合召喚を使ってな・・・」

 

「デュエルモンスターズを使って戦争か・・・

 リアルソリッドビジョンシステムを軍事利用されるという懸念があったが、実際にそれをやった奴がいるとはな。それも別世界で。」

 

 デュエルモンスターズの軍事利用、それを聞いて心穏やかではないだろう。

 彼は本物のデュエリストだ。カードを愛し、デュエルを愛し、楽しんでいる彼からすれば、これ以上ない侮辱だろう。

 

「君は、信じてくれるのか?こんな荒唐無稽な話を?」

 

「12次元宇宙論とか、24次元宇宙論とか宇宙5分前誕生説とかいろいろ言われているんだ。4つ程度で驚かないよ。

 それに俺は、精霊とかを信じるタイプでね。」

 

 デュエルモンスターズの精霊の話か・・・懐かしいな、瑠璃が楽しそうに話を聞かせてくれた。

 

「う~ん、そういえば、融合とか、エクシーズとかって何なんだ?

 エクストラデッキがどうのこうの言っていたが、エクストラってシンクロモンスターのカードを置いておく場所だろ?」

 

「簡単に言うとメインデッキに入るカード以外の特殊な召喚法を使って呼び出すモンスター達の大雑把な種類だ。

 ユーゴが言っているシンクロは一般的にチューナーとそれ以外のモンスターを墓地に送って、そのモンスター達のレベルを足した合計と同じレベルを持つ、カード枠が白いモンスターを呼びだす召喚法。

 

 エクシーズはフィールド上の同じレベルのモンスターのカードを何枚か重ね合わせて、さらにその上に黒枠のモンスターカードを重ねることで呼び出す召喚法。

 

 融合は融合効果を持つカードを使って、何処からか2体以上のモンスターを墓地送りにして、紫色のカード枠のモンスターをフィールドに呼び出す召喚法だ。

 まぁ、カード効果によっては墓地から除外するとかデッキに戻すとか、例外は一番多いだろうけど。」

 

「へぇ~そういえば、ユートが使ったあの黒いドラゴン、アレがエクシーズモンスターってわけか・・・」

 

 なるほど、分かりやすい説明だ。講師をしているという話は伊達じゃないらしいな。

 

「そうだ、俺の世界の人々はみんなエクシーズ召喚を使っていた。

 だが、それは決して、兵器などではなかった。

 俺たちのデュエルは、みんなが笑顔で楽しむためのもの。

 そう、あの日、アカデミアが襲い掛かってきた日までは・・・」

 

 思い出されるのは忌々しい記憶。

 暗雲と共に現れた奴らは、俺たちの世界を、街を、炎と共に戦場に変えた。

 

「ハートランドには笑顔が溢れていたんだ・・・

 だが、奴らは人間を次々にカードに変えていった・・・」

 

「カードに変える?」

 

「そうだ、奴らはデュエルで負けた相手をカードに変える。

 だがそれだけではなく、無抵抗な者も容赦なくカードに変えていった。老人や赤ん坊もな・・・」

 

「チッ!そんなヒデェ奴らに、リンは・・・」

 

「・・・で、そんな戦争中の世界から、ユート君は何をしにこの世界に来た?

 警告か?それともレジスタンス活動のための戦力が欲しくて、わざわざ勧誘にでも来たか?」

 

「俺は、俺たちは、この世界にアカデミアに対して人質になりそうな人物がいることを知り、奴らの技術を解析し、この世界に来た。」

 

「この世界にアカデミアに繋がる人物がいると?」

 

「繋がる、と言うよりは、アカデミアのトップがこの世界の出身者だ。

 元レオ・コーポレーション社長、赤馬 零王、それが今の、アカデミアの最高権力者、プロフェッサーの正体だ。」

 

 榊 遊矢は目を細め、少し考えるそぶりを見せる。

 

「解せない話だな。

 数年前に行方不明になった赤馬 零王が、別の世界にわたって、さらに別の世界に戦争を仕掛けているなんて・・・何が目的なんだ?」

 

「それは分からない。

 息子である赤馬 零児に接触し分かったことは、瑠璃たちによく似た少女を何故か攫っていることと、リバイバル・ゼロという計画名だけだ。」

 

「はん!考えるまでもねぇ、直接乗り込んで、その赤馬零王って奴をぶっ倒せばいいんだろ?簡単な話じゃねぇか!」

 

「ユーゴ、相手は世界規模の軍隊だぞ?

 その本拠地を強襲したところで、近衛の奴らに邪魔されるに決まっている。」

 

「うっ!?そうか・・・」

 

「で、ユート、戦争はいつごろから始まって、今どういう状況になっている?

 降伏して終戦になったか?それとも拮抗して冷戦状態に突入したか?」

 

「いや、始まりは1年ほど前、奴らは最初の様な大々的な侵攻はやめたが、部隊を残し、人間狩りを続けている。

 今は俺たちレジスタンスが、生き残りを匿いながら、交戦を続けている状態だ。」

 

 そうだ、俺たちは滅ぼされてなどいない!

 奴らを倒し、再びハートランドに笑顔を取り戻して見せる!

 

「それはなおさら解せないな。」

 

「何だと?」

 

「下世話な話になってしまって申し訳ないが、戦争は最大のビジネスだ。

 融合次元が、どういう状況なのかわからないが、エクシーズ次元に対し何を求めているか、これがわからない。」

 

「どういう事だよ?」

 

「まず戦争の種類としてあげられるのが3つ

 1つは新たな統治者及び統治形態を選定するための革命戦争、

 現状に不満があるから、より良い群れのボスを決めるための戦争だな。

 まずこれは内戦になるから、次元戦争の理由として除外。

 

 2つ目は宗教、民族間で起こる戦争だ。

 これは違う思想の相手を脅威または恐怖したが故に起こる戦争だ。

 まぁ、大雑把に言うと、自分たちのコミュニティが脅かされないように戦力を削っておこうってわけだが、エクシーズ次元には次元移動するような技術力はあったか?」

 

「いや、街の清掃用のロボットはあったが、そんな技術はないし、リアルソリッドビジョンや次元移動の技術は奴らのディスクを解析したものだ。

 ブラックボックスが多すぎて、完全ではなかったらしいが。」

 

 だから融合次元に直接乗り込むことは出来なかった。

 無謀すぎる策だが、隼も俺も直接乗り込めるようなら、真っ先に瑠璃の救出に向かっている。

 

「ほ~う、じゃあ、理由としては薄そうだな、無視していればいいんだから

 で、3つ目は侵略戦争だ。

 生物的に言うと住処が小さくなった、または追われた、資源が枯渇したために起こる戦争

 星一個を資源にできると言えば魅力的に感じるが、人足となる現地民を過剰に攻撃しているのが気になる。

 酷いこと言えば、飽和状態の自分たちを減らすなんて目的もあるだろうけど、それにしては気が長すぎる。世界1つが飽和するほど人口があるとも思えない。

 ゆえに、この次元戦争で奴らが何を以て得としているのか分らない。

 加えて、誘拐事件を起こしていることが何に繋がるのか意図が見えない。」

 

 ふむ、確かに言われてみれば、よく分からないな。

 今までそんなこと考えたこともなかったが、瑠璃たちを誘拐することと、戦争を起こすことに何の関連性があるのかつながりが見えないな。

 

「抜け出してきた少女曰く、アカデミアはすべての次元を統一し、世界を一つにして理想郷を作るのが目的らしいが・・・」

 

 そのことを言った瞬間、榊 遊矢はそれを鼻で笑った

 

「はっ、よくあるプロパガンダだな。

 それに、誘拐するにしても、人をカードにするなんて滅茶苦茶なことが出来るんだ。

 カードにしてから誘拐した方が理にかなっている。」

 

 !!それは!?

 

「なんだ?わざわざ、誘拐するという手法に疑問を持たなかったのか?

 それに、技術の流出が起きていることや、わざわざデュエルをしてカードにしていることも気になる。

 無抵抗の人をカードにしているなら、特にその装置はデュエルの勝敗に関係してなさそうだし。」

 

 !?たしかに、この装置はデュエルの勝敗に関係はしていない!?

 くっ!一方的に蹂躙される可能性があったという事か!?

 

「あぁ!!もう、ついていけねぇぜ!!俺、頭使うの苦手なんだよ!!」

 

「そう嘆くなユーゴ、行きつく結果もデュエルする理由もわからないが、相手側が何を求めているのかは見えてきた。」

 

「なに!?それはなんだ!?」

 

 それが分かれば、戦争を止められるかもしれない!

 だが、次に紡がれた言葉は残酷なものだった。

 

「誘拐された少女と、カード化された人間だ。」

 

「なん、だと・・・」

 

「戦争において、技術の流出は最も避けなければならないことだ。

 それを犯し、負けている側に流出させているなら、わざと流出させて泥沼化させるのが目的と考えた方がいいだろう。

 そうすれば、2つの次元の人々をカードに変えることが出来る。

 ユートも仲間内を疑った方がいいかもな?

 トンデモ技術を解析なんて、早々できることじゃないから、レジスタンス内にスパイがいて、わざと技術を流した可能性がある。」

 

 そ、そんな・・・俺たちの戦いが、敵の策の内だというのか!?

 

「それに、こんな作戦に賛同してくれる奴なんて普通いないから、さっきのプロパガンダを踏まえると、アカデミアの兵士たちも体よく利用されている可能性が高いな。」

 

 そう言えば、セレナはアカデミアはプロフェッサーの絶対支配だと言っていた、なら!?

 

「この戦争に全体的な利益は見えない、むしろ損をしている。

 なら、個人的なことで起っている可能性が高い、ならだれの目的か、分かるだろ?」

 

「赤馬 零王・・・」

 

「その通り、何をしでかす気なのかは、さっぱりわからないけどな。

 はた迷惑な事には違いない。

 で、話は変わるがユーゴ、シンクロ次元でここ5年くらいで、変わったことはないか?」

 

「えっ5年!?う~ん、あ~たしか、セキュリティの長官が変わってから、エライ取り締まりがキツくなったんだよな~何か関係あるのか?」

 

「いやさ、エクシーズと融合で目的が達成できなかった場合、こことシンクロにも侵攻する可能性があるからな。

 おそらく、そのセキリュティとか言うのの内部にアカデミアのスパイが紛れ込んでいる可能性はある。

 もちろん、ここスタンダードにもな。」

 

「なにー!?前にも増してコモンズを目の仇にしやがると思ったら、そういうカラクリだったのか!?

 リンだけじゃなくて、そこまでするなんて、ぜってえゆるせねぇぜ!アカデミアアァァ!!」

 

 確かに許せない。だが、今の話からするとアカデミアもまた、赤馬 零王に利用されているだけ、俺は誰も傷ついてほしくはない。だが・・・

 

「・・・遊矢、聞いてほしい。

 アカデミアから抜け出した少女が居ると言ったな?」

 

「あぁ。」

 

「その少女はセレナと言うのだが、瑠璃、そしてリンとよく似た顔をした少女なんだ。

 そして、彼女たちは君の仲間の柊 柚子にもよく似ている。」

 

「つまり、セレナを追ってアカデミアがこの世界に来て、柚子も攫われる可能性があると言いたいのか?」

 

 あぁ、君は本当に聡明だな。

 

「あぁ、俺は彼女を、瑠璃を守ることが出来なかった・・・

 だから、君はどうか守り抜いてくれ。」

 

 これは世界とか、赤馬 零王の計画とかは関係ない、俺の願い。

 孤児の俺や隼たちと違い、彼らには親が居る。暖かな場所がある。

 そんな彼らを復讐者にはしたくない。

 

「一介のデュエリストに無茶を言うなぁ~

 この一件は俺のポケットには大きすぎる。」

 

「もちろん、俺も協力する。

 この街を戦場などにさせない!」

 

「おう!だったら俺もやるぜ!リンを攫った奴らの好きにはさせねぇ!

 ぶっ倒して、必ずリンを救い出す!!」

 

「あぁ、俺も瑠璃を必ず救い出す!!」

 

「よし、じゃあ、同盟成立だな。」

 

 俺たち3人は手を重ねる。

 違う世界で生まれた者同士だが、大切な人を守りたい気持ちは一緒だ。

 そのために、明日を乗り越えなければな。

 

「そういえば、ユーゴはどうやって、ここに来たんだ?」

 

「あぁ?俺も良く分っかんねぇけど、このカードがいきなり――」

 

「「!?」」

 

 ユーゴがいきなり、桃色の光に包まれて消えた!?この光は!?


 ユートとユーゴが光に包まれて消えた。と言うことは・・・

 

――遊~矢ー!!

 

「やっぱりか。」

 

「あっ!遊矢、やっぱりここに居た!

 もう、素良が居なくなったこと、おばさまたちに説明するの大変だったんだから!

 それに、こんな遅くまで遊矢がそばにいないんじゃ・・・おばさまを寂しがらせないでよ?」

 

「あぁ、ごめん。ちょっと気の合う連中と話し込んでたんだ。」

 

「へぇ~遊矢と気の合うなんて珍しい・・・」

 

「おい、それはどういう意味だよ?」

 

「そういう意味よ。」

 

 はぁ~ちょっと傷つくなぁ~にしても、明日か・・・

 紫キャベツと戦うわけにはいかないし、あいつへの対策は柚子の腕輪の力を利用するしかないが、今の感じだと2、300メーターくらいが圏内みたいだな。

 近くとも遠くともいえない微妙な距離だが、デニスの事もあるしどうするかな・・・


 薄暗い室内を不気味な緑色の光が照らしだす。

 玉座に座り込む軍服の様な服装の男、赤馬 零王の前にひざまずく小柄な少年、紫雲院 素良

 彼に新たな命令が下される。

 

「君にはもう一度、スタンダードに行ってもらう。」

 

「はい。」

 

「ただし、今度は単独ではない。

 彼らと共に行ってもらう。」

 

 門が開かれ、次々と入ってくる青い軍服に奇妙な仮面を纏った者たち

 その人数、実に48人

 

「!?オベリスクフォース!?それに、この人数は!?」

 

「そうだ、現在いるオベリスクフォース全てを招集した。」

 

(アカデミア内でもトップクラスのデュエリストを集めたとされるエリート集団。

 プロフェッサーのお抱え部隊が全員なんてどんな任務を。)

 

「そして、君にはこのカードを授けよう。」

 

 柱の陰から姿を現す、研究員らしき男

 その男が持つカードを受け取った素良の目が驚愕に見開かれる。

 

「こ、このカードは!?」

 

「君の記憶をもとに作ったカードだ。

 さぁ、君に新たな任務を授けよう、彼らと、そのカードを使い『榊 遊矢』を抹殺するのだ!!」

 

「!!?ど、どうしてそんなことを!?」

 

「彼はこの世界にとって確実に脅威になる存在だ!今のうちに排除せねばならぬ。

 諸君!この任務は世界の存亡をかけての戦いと思え!

 絶対にあの悪魔を!榊遊矢を抹殺するのだー!!」

 

――ハイッ!!

 

「・・・・・・はい・・・」

 

 オベリスクフォースが姿勢を正し、声を揃えてその命を受ける。

 そして、素良も苦しそうな顔を一瞬して返事をし、退出する。

 その場に残ったのは、赤馬 零王ともう一人

 

「なんだか面白そうなことが始まりそうだね。

 あぁ~あ、僕もあっちに入りたかったなぁ~」

 

 紫の髪に紫の軍服に赤いマントをした少年

 

「駄目だ、君にはセレナと最後のピースを連れてきてもらう。」

 

「もうセレナってば、ずるいなぁ~僕ももっと遊びたいのに~」

 

「これは遊びではない!分かってくれるね?『ユーリ』」




 心を取り戻してゆく少年、そして、今を生きる少年
 過去を乗り越え勝利をつかむのはどちらか?
 だが、幼き魂のぶつかり合いの裏で、邪悪な陰謀が動き出す。
 次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
 『瞳に映る赤き火(前編)タツヤのマシンワールド』


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瞳に映る赤き火(前編)タツヤのマシンワールド

前回のあらすじ

 公園の誓い


あけましておめでとうございます(大遅刻)

かぜっぱくて眠気に襲われてなかなか書けませんでしたが回復したのでペース上げていきたいです。(とりあえず今年中にエクシーズ編はいりたい)
ジムのフォッシルカードがOCG化するようですね。
個人的にギミックが好きだったので「聖天樹」押していたのですが2位だったので次の機会を待ちましょう。
ARC―Vに関連ならセルゲイもほしかったんですがね、「地縛」の方ですが

≪効果ミスしていた部分を修正しました。申し訳ありませんでした≫
次回の展開のために手札断殺で捨てたカードを変更させてもらいました


――ワアアアァァァァァァ!!

 

『皆様~お待たせいたしました~!

 舞網チャンピオンシップ5日目、本日の最初のプログラムはジュニアユース選手権の第三試合の内容からご説明させていただきます!

 その内容とは!此処まで勝ち残った5名によるバトルロイヤルを行います!』


「街中でのバトルロイヤルとは考えたわね、零児さん。」

 

 レオ・コーポレーションのビルの窓から街を見つめながら、母様が声をかけてくれる。

 そっけない言葉だが、私を元気づけようとしてくれている意が伝わってくる。感謝の意に堪えない。

 

「今すぐにでも多次元からの侵入者が現れると、正直に公表すれば街はパニックになりかねない。

 だからと言って、そのままにしておけば一般人に被害が出る。」

 

「それで、一般人を街から退去させてのバトルロイヤルか。」

 

「随分と無茶な事をやるものだ。」

 

 部屋の壁に背を預ける黒咲とユート、そしてソファに菓子を齧りながら腰を掛けるセレナ。

 

「だが、その・・・ユートが言うアカデミアがモンスターを使い破壊活動することに対しての策なのだろう?」

 

「あぁ、住人を会場に集めていれば、迎撃もしやすいからな。」

 

「しかし、スタジアムに24時間も拘束するなど・・・暴動が起きるんじゃないか?

 それに、事態が一日で終息するとは限らない。

 いや、アカデミアが本気で侵攻するのだとしたら1日で済むはずがないぞ?」

 

 ユートが疑問を口にする。

 もっともな話だ。だが、街中にリアルソリッドビジョンが発生しているうえ、アカデミアが無差別攻撃を仕掛けてくる可能性がある以上、住人を避難させておくことは必要事項だ。

 だが、住民の不満を完全になくすようにし、その後のことも考えて動くには時間が少なすぎた。

 

「その時は・・・包み隠さず公表する。」

 

「そこは行き当たりばったりというわけか・・・」

 

 そう、所詮はその場しのぎだ。

 

「つまり私達は1日でアカデミアの奴らをすべて倒さなければならないというわけだな!」

 

「そんな簡単に言うような話じゃないだろ・・・

 それにこのバトルロイヤルだって、急に始めたからルールが」

 

『ちょっと、いいかな、ニコちゃん?』


『はい、何でしょうか遊矢選手?』

 

「制限時間は今日の正午から24時間、その間の給水や食事などはどうなっているのかな?」

 

『え、え~と・・・』

 

「もしかして、補給所どころか給水場もないのか?」

 

『え・・・あ・・・はい・・・』

 

「はぁ~天下のレオ・コーポレーションが選手の健康管理もできないのか?

 まぁ、仕方ないからそれはこっちでどうにかするとして・・・

 街中にリアルソリッドビジョンを展開するなら、街は閉鎖だろ?

 ここの観客の寝泊りする場所は確保しているのか?」

 

――街が閉鎖!?

 

――帰れないの!?

 

――しかも24時間って言ってたよな!?

 

――ふざけんな!!

 

 不満、不安の声が重なり、観客たちは立ち上がり、怒りの声が大きくなっていく。

 

『あわわ!?』


「・・・ユート、彼は事情を知っているのだったな?」

 

 なのに、これは・・・

 

「あぁ、アカデミアが押し寄せる事、柊柚子が狙われている事、全て理解しているはずだ。」

 

「なら・・・」

 

『そこで、俺たちも補給タイムや睡眠時間は欲しいところだから、8時以降はデュエルしないんで、お客さんには丁度いい近場のホテル

 そうだなぁ~舞網シーサイドホテルとホテル舞網グランドロワイアルの2つのホテルならここの観客たち全員を入れることが出来るだろ?

 あぁ、元々泊まっている人には料金払い戻しで。』

 

「「・・・・・・・」」

 

 今、母様と私は白目をむきかけた間抜けな面を晒していることだろう。

 奴が提案したホテルは建物もそう高くなく、スタジアムからも近い場所にあるが、超が3つほどは付く高級ホテル。

 それをスタジアムに居る観客全員・・・いったい幾ら掛かるのか・・・

 

――ピッ!ピッ!ピッ!

 

「どうした?」

 

『そ、それが、榊遊矢の提案を真に受けた観客が、その気になってしまったようで、このまま断ったら!?』

 

「・・・すぐに、人数分の部屋を確保しろ・・・」

 

 このまま、暴動が起きるよりはましだ・・・

 

『えっ!?は、はい!!』

 

「はぁ~まさか、分かってやってるのではあるまいな・・・」

 

 本当に奴の行動の予測が付かない。

 奴がこの一件に協力的な姿勢を見せているのは吉報だが、腹の内が分からない。

 私とて次元戦争などと言う荒唐無稽なものに対抗するための協力者を得るのに月日を費やしたというのに・・・

 

『あ~それとニコちゃん?

 街中に散らばっているペンデュラムカードを2枚以上集めてからアンティ勝負するということだけど、得点に入るのはデュエルで得たペンデュラムカードの枚数ってことでいいのかな?』

 

 これは・・・?

 

『あ~え~と・・・』

 

『そうじゃないと、寝る間も惜しんでペンデュラムカードを集めてしまう奴が出てきちゃうだろ?

 まぁ、そんな奴はいないと思うが。』

 

『あ~はい、では、そのようにしてください。』

(実は私も急にバトルロイヤルなんてことになったから、カンペ頼りだったのですよ。)

 

 勝手にルールの追加を了承するな!

 バトルロイヤルとペンデュラムカードのルール以外の事を設定していなかったこちらの落ち度だが。

 

「勝手にルールの整備までしてくれたぞ・・・」

 

「よくもあそこまで口が回るな・・・」

 

「うむ、零児よりも頭がよさそうだな!」

 

「ぐっ、あの詐欺師め・・・」

 

 セレナは無意識に痛いところを突いてくる。

 遊勝塾では結果的にデュエルで負け、この大会でも勝ち残ったLDS生徒はユースを除けばデニス・マックフィールドと零羅のみ。

 そして今、急ごしらえの策の穴埋め。

 これほどの大敗を喫することになるのは、あの男以来だ。

 

「零児さん・・・私は調整に行ってくるわ・・・」

 

「お願いします、母様。」

 

 母様が退出し私は大きなため息を吐く。

 この際だ、金銭的な問題には目を瞑ろう。

 

「はぁ~にしてもユート、榊遊矢とシンクロ次元のデュエリストに協力を取り付けた話は本当なのだな?」

 

 新たに浮上した問題、エクシーズ次元のユート、シンクロ次元のユーゴ、そしてこのスタンダードのデュエリストである榊 遊矢

 彼らは昨晩に中央公園で会合し対アカデミアの為に動くと約束したようだが、急に故障した監視カメラを修理に行ったチームによると、榊 遊矢と柊 柚子が公園から出て行ったのを目撃したそうでそのほかには公園には誰もいなかったらしい。

 そして、ユートはなぜか数キロ離れた湾岸地区に居ることが確認された。どういう事だ?

 

「あぁ、ユーゴの事については名前の事だと思わず勝手に決めつけていた、すまない。」

 

「いや、だがそのシンクロ使いのユーゴだったか?

 監視カメラの何処にも彼らしき姿も、彼が乗っていたというバイクも確認できなかった。

 それに、君を発見したのは湾岸地区、中央公園からどうやって・・・」

 

「それは俺もわからない。

 以前にもあの沢渡と言うデュエリストと戦った後、倉庫街にいたはずなのに、いきなりどこかのビルの上に瞬間移動してしまったことがあったが・・・」

 

「何?」

 

「次元移動装置の誤作動か?」

 

「いや、俺たちのディスクの次元移動装置はスタンダードに移動した時にデータが飛んでしまってな。

 サルベージも出来ないくらい完全に消えてしまったらしい。」

 

 そう、彼らのディスクは有体に言えばアカデミアのディスクの劣化版と言うべきもので、リアルソリッドビジョンやカード化装置以外のデータにバグが起っていたり消えていたりしているようだ。

 なので、今はセレナのディスクを解析して得たデータを使い次元移動装置の最終調整に入っている。

 

 この戦いが終われば、その調整も終了し安全に次元移動ができるようになる。

 そうすれば、赤馬零王に対し攻勢に出られる!この戦いが終わればだが・・・


 やれやれ、アカデミアが急に来るから苦肉の策としてこんなことを画策するのはいいが、住人の不満も考えてほしいね。

 勝手に外に出られて、カードにされたりしたら目も当てられない。

 

「じゃあ、俺たちは午後8時から午前5時まで停戦ってことで。

 ちなみに何人が勝ちぬけになるのかな?」

 

『あ、ハイ

 改めてルール確認させていただきますと、アンティで勝ち取ったペンデュラムカードの枚数が多い上位御二方が決勝進出となり、後日決勝となります。』

 

「つまり、このバトルロイヤルが事実上の準決勝だと?」

 

 原作では16人と大人数だったけど、今は5人、今更1人落とすのにこんな大がかりな対戦方法を提示するよりも準決勝とした方が自然か。

 

『そういう事になりますなぁ~

 また、デュエルに際しましては、街に4つのエリアを持つフィールド魔法、ワンダー・カルテットが発動します。

 参加選手はどのエリアで戦っていただいても構いません。』

 

 にしても、この大会自前のフィールド魔法がコスト要因にしかほとんどできないのがやり辛い、セットもできないし。

 あと火山エリアは流石に危ないだろ。

 まぁ、マグマに触れても熱湯程度の熱さだけど。

 

『さぁ!開始時間が間近に迫ってまいりました!

 参加選手はデュエルディスクのご用意を!』

 

【バトルロイヤルモード!】

 

 デュエルディスクを展開すると自動でバトルロイヤルモードが設定される。

 さて、できれば柚子と一定の距離を取りつつ、仮面連中を相手にしたい所だけど・・・

 

『ゲート!オープン!!』

 

 ニコの掛け声でスタジアムの一角が観客席ごとせり上がり街への出口が作られる。

 あれって、さすがに事前に知らせているんだよな?滅茶苦茶怖いと思うんだが

 っていうか、5人しかいないんだから、こんなだだっ広いゲートいらなくね?

 

『では、まいります。

 戦いの殿堂に集いし、デュエリスト達が!』

 

 この戦いでしないといけないことは柚子の防衛とアカデミアの殲滅。

 ユーリについては柚子のブレスレットの力を借りるとして、デニスはどうするか・・・

 

『モンスターと共に、地を蹴り、宙を舞い、フィールド内を駆け巡る!』

 

 原作でのアカデミアの人数は素良を含めて数人、エクシーズ組と俺、それとどっかに居るユーゴで十分対処可能。

 できれば、月影たちにはなにも知らない柚子と権現坂を逃がしてほしいけど。日影もどこかにいるだろうし。

 

 とりあえず、月影に目配せしてみると頷いてくれた。

 どうやら、あの反応からしてこちらの事情は理解しているみたいだ。

 流石有能忍者、これで動きやすくなる。

 

『見よ!これぞ、デュエルの最強進化系!』

 

 最悪、修三さんには申し訳ないが、柚子については原作通りにシンクロ次元に逃がす手もあるか・・・

 あの鼻が特徴的な長官がいるとはいえ、絶賛戦争中のエクシーズ次元に逃がすより、ユーゴが一緒にいることを考慮すれば幾分か安全かつ見つかりにくい筈。

 

『アクショーン!!』

 

 素良については・・・とりあえず、ぶん殴っとくか。

 

『『『『『決闘(デュエル)!!』』』』』


『さぁ~て、バトルロイヤルの方は新たな動向が確認できるまでしばらく時間がかかるでしょうし、皆々様にはここで幼き王者の誕生を目の当たりにしてもらいましょう!

 ジュニアクラス決勝戦!その対戦者は!デュエル塾に入りわずか3か月、その短期間でここまで勝ち上がってきた遊勝塾が送り込んできたダークホース!山城 タツヤ選手です!!』

 

 司会の人に呼ばれて、僕は入場口を出る。

 視界に広がるのはスタジアムいっぱいのお客さん。そして遊勝塾の仲間たちとママ。

 

「タツヤー!頑張れー!!熱血だー!!」

 

「タツヤー!!零羅の痺れるシンクロにビリビリすんなよー!!」

 

「融合にもねー!!」

 

「しっかりやんなよ!タツヤ君!!」

 

「タツヤちゃーん!頑張れー!!」

 

 誰ともデュエルできなかった僕が、友達が出来て、こんなに大きな舞台でデュエルが出来る。

 こんなにうれしいことはない、本当に遊矢先生には感謝している。

 

『そして対戦しますのは、LDS所属の赤馬 零羅選手!

 タツヤ選手と同じ遊勝塾所属の選手を2人降したLDSの期待の星!

 ここでタツヤ選手を降し、天下のLDSの名を世に知らしめるのか!はたまた、お騒がせ塾の遊勝塾が嵐を巻き起こすのか!』

 

 反対側の入場口から出てくる、帽子の上からフードを被った小柄な子。

 赤馬 零羅君、フトシ君の時はシンクロ、アユちゃんの時は融合。

 赤馬 零児と同じように複数の召喚法を使うとなれば、エクシーズも使うはず・・・

 

『さぁ!まずはアクションフィールドの選択をいたしましょう!

 本日のアクションフィールドは・・・決まりました!フィールド魔法!プレイン・プレーン!』

 

 周りの景色が小川が流れ、中心に大きな噴水がある広大な草原と変わる。

 え~とこのフィールドってたしか・・・

 

『おおっと!これは数あるアクションフィールドの中でも極端にアクションカードが少ないフィールド!

 決勝戦でこのフィールドが当たってしまうとは・・・数少ないアクションカードが勝負の命運を分けるのか?

 では始めましょう!戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が!』

 

「モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い!」

 

「・・・フィールド内を駆け巡る。」

 

「「見よ、これぞ、デュエルの最終進化系!」」

 

『アクショーン!』

 

『『決闘(デュエル)!!』』

 

「先攻は・・・僕

 僕は魔界発現世行デスガイドを召喚。」

 

デスガイド「はーい!」

    ATK1000

 

 召喚されたのは赤く短めのツインテールの女の人。

 紺色の制服を纏って、その名の通りガイドさんみたいだ。

 

「このモンスターの召喚時、デッキ、手札から悪魔族、レベル3モンスター1体を効果を無効にして特殊召喚する。

 ただし、この効果で特殊召喚されたモンスターはシンクロ素材にできない。

 僕はデッキから彼岸の悪鬼スカラマリオンを守備表示で特殊召喚。」

 

 何処からともなく黒塗りのバスが現れるとデスガイドの後ろに停車し、デスガイドが迎えようと手を伸ばすけど、こうもりの羽根と長い爪を持った悪魔、スカラマリオンがバスの天井を壊してデスガイドの隣に並ぶ。

 どうも、窮屈だったみたい。押し込められてたし。

 

スカラマリオン「グルル・・・」

       DEF2000

 

「スカラマリオンは自分フィールドに彼岸モンスター以外が居る時破壊されるけど。」

 

「効果が無効になっているから、自壊しないか・・・」

 

 それにシンクロは出来ないけど、これでフィールドにレベル3モンスターが2体

 

「僕はレベル3のデスガイドとスカラマリオンをオーバーレイ

 エクシーズ召喚、彼岸の旅人 ダンテ」

 

ダンテ「ふん!」

   ATK1000 ORU2

 

 現れたのは青い髪の男の人、モンスターと言ってもこれといった特徴がない普通の人に見える。

 種族と属性は、戦士族で光属性?

 零羅君のデッキは悪魔族メイン、ならあのモンスターは何かしらのギミックがあるはず!

 

「ダンテの効果発動

 1ターンに1度オーバーレイユニットを1つ取り除き、デッキの上から3枚までカードを墓地に送ることで、墓地に送ったカード1枚に付き攻撃力を500ポイントアップする。

 僕は3枚全てを送り、ダンテの攻撃力を1500アップ。」

 

ダンテ ATK1000→2500

    ORU2→1

 

「さらに速攻魔法、手札断殺を発動

 手札のダメージ・ダイエットとヘルウェイ・パトロールの2枚を捨て2枚ドロー」

 

「その効果は僕も受ける。

 僕は手札のF.A.(フォーミュラアスリート)シェイクダウンとギアギアーノを捨て2枚ドロー」

 

「手札の彼岸の悪鬼ラビキャントを捨てることで、永遠の淑女 ベアトリーチェをダンテの上に重ねてエクシーズ召喚する。

 僕はランク3の彼岸の旅人ダンテでオーバーレイ

 現れろ、ランク6、永遠の淑女 ベアトリーチェ!」

 

ベアトリーチェ「ふふふ」

        ATK2500 ORU2

 

 ダンテが呑み込まれた渦の中から白いドレスを着た綺麗な女の人が出て来た。

 エクシーズを使ってくると思っていたけど、この展開はデッキ圧縮が目的?

 

「マジックカード、一時休戦を発動

 互いのプレイヤーはデッキから1枚ドローして、次の相手ターン終了時まで全てのダメージは互いにゼロになる。

 カードを1枚伏せる。エンドフェイズに入って、墓地に送られたスカラマリオンの効果発動、デッキから悪魔族、レベル3モンスターを1体手札に加える。

 僕はCC隻眼のパスト・アイを手札に加えターンエンド。」

 

 手札は2枚で伏せ1、モンスターは1、そして手札にキーモンスターがすでにある。

 防御面ではダメージがカットされている。

 やっぱり、フトシ君と対戦した時よりもアドバンテージの取り方がうまくなっている。

 

「僕のターン、ドロー

 僕は手札のマシンナーズ・フォートレスの効果発動

 このカードは手札の機械族をレベル8以上になるように捨てることで、手札、墓地から特殊召喚する。

 僕はB―バスター・ドレイクとマシンナーズ・フォートレス自身を墓地に捨てて、マシンナーズ・フォートレスを墓地から特殊召喚!」

 

 キャタピラ音を響かせて、水色のロボット戦車が出撃する。

 零羅君のデッキは一撃必殺タイプ、このモンスターで結構邪魔が出来るはず。

 

「強化支援メカ・ヘビーアーマーを通常召喚

 このモンスターが召喚されたとき、自分の墓地のユニオンモンスター1体を対象として、そのモンスターを特殊召喚する。

 B―バスター・ドレイクを特殊召喚!」

 

 ヘビーアーマー ATK500

 

バスター・ドレイク「ギャオオォォォ!」

         ATK1500

 

 銀と赤色の装甲車の上に乗った緑色の機械恐竜が現れ、マシンナーズ・フォートレスの隣に並ぶ。

 

「さらにマジックカード、トランスターンをバスター・ドレイクを墓地に送って発動

 デッキから墓地に送ったモンスターと同じ種族、属性でレベルが1つ高いモンスターを特殊召喚する。

 僕はユニオン・ドライバーをデッキから特殊召喚し、バスター・ドレイクがフィールドから墓地に置かれたことでデッキからユニオンモンスター、C―クラッシュ・ワイバーンを手札に加える。」

 

 ユニオンドライバー ATK2100

 

「ユニオン・ドライバーの効果発動、僕のフィールド上の表側表示モンスター1体に装備させる。

 ヘビーアーマーにユニオンドライバーを装備だ。

 

 そして、ユニオン・ドライバーの効果発動

 装備状態のとき、このカードを除外することで、このカードを装備していたモンスターに、装備可能なレベル4以下のユニオンモンスター1体を装備させる。

 デッキから光属性、機械族モンスターに装備可能なA―アサルト・コアをヘビーアーマーに装備!」

 

 イエローの近未来的なスポーツカーが武骨な装甲車と合体し、スポーツカー部分が光に包まれると黄色いサソリ型の戦車に置き換わる。

 

「A―アサルト・コアの効果で装備されているこのカードを分離させ、特殊召喚する。」

 

 アサルト・コア ATK1900

 

 これでA・B・Cの3体がそろった、けどまだまだ行くよ!

 

「手札からマジックカード、アイアンコールを発動

 墓地のレベル4以下の機械族モンスターを効果を無効にし特殊召喚する。

 B―バスター・ドレイクを墓地から特殊召喚」

 

 バスター・ドレイク DEF1800

 

「僕はレベル4のアサルト・コアとバスター・ドレイクでオーバーレイ

 2体の機械族モンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!

 現れろ!ギアギガントX(クロス)!」

 

 ギアギガントX(クロス) ATK2300 ORU2

 

「ギアギガントX(クロス)の効果発動

 1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ使ってデッキからレベル4以下の機械族モンスターを1体手札に加える。

 僕は超電磁タートルを加える。」

 

(手札がほとんど減っていない・・・)

 

「墓地のF.A.(フォーミュラアスリート)シェイクダウンの効果発動

 墓地のこのカードを除外して自分フィールド上の表側表示のカード1枚を破壊して、デッキからF.A.(フォーミュラアスリート)モンスター1体を特殊召喚する。

 僕はギアギガントX(クロス)を破壊してデッキからチューナーモンスター、F.A.(フォーミュラアスリート)カーナビゲーターを特殊召喚!」

 

カーナビゲーター「ハイ!」

        DEF0

 

 現れたのはホログラムに浮かぶレースクイーンをデフォルメしたような格好をしたマスコット。

 入れようかどうか迷ったけど、手札は多い方がいい。

 

(チューナー・・・)

 

「ギアギガントX(クロス)の効果をチェーン1として、カーナビゲーターの効果をチェーン2として効果発動!

 まずカーナビゲーターの召喚、特殊召喚に成功した時、デッキからF.A.(フォーミュラアスリート)フィールド魔法を1枚手札に加える。

 僕が手札に加えるのはF.A.(フォーミュラアスリート)シティGP(グランプリ)

 

『おぉっと!?タツヤ選手、アクションデュエルでは発動できないフィールド魔法をデッキに投入していた!!

 さすが魔境の遊勝塾、私達の常識など簡単に超えてくる!そこに痺れる!あこがれるー!!』

 

 う~ん、そんなに驚くことかな?

 フィールドに出す以外にも使いようはあるんだし、事故は怖いけど、そんなに変じゃないような・・・

 あとなんだか、「あー俺の決め台詞取られた!!」とか聞こえてくるけど、気にしないようにしよう。

 

「続いてギアギガントX(クロス)の効果発動

 このカードがフィールドを離れたとき、自分の墓地からレベル3以下のギアギアモンスター1体を選択し特殊召喚する。

 F.A.(フォーミュラアスリート)シェイクダウンの破壊と特殊召喚は同時だからタイミングを逃さない。

 レベル3のギアギアーノを特殊召喚だ。」

 

 ギアギアーノ DEF1000

 

「ギアギアーノの効果発動、このカードをリリースし墓地の機械族レベル4モンスターを1体、効果を無効にし特殊召喚する。

 戻ってきて、B―バスター・ドレイク!」

 

 カラフルなギアの塊がバラバラになり、墓地に置かれたバスター・ドレイクの新しいギアとなるとバスター・ドレイクは再起動し、僕のフィールドに戻ってきた。

 

 バスター・ドレイク DEF1800

 

「僕はレベル4のB―バスター・ドレイクにレベル1のF.A.(フォーミュラアスリート)カーナビゲーターをチューニング!

 シンクロ召喚!打ち砕け!A・O・J(アーリー・オブ・ジャスティス)カタストル!」

 

 蟲のような形のロボット、A・O・Jカタストル

 零羅君の対属性戦術への対策カード、このモンスターの効果を警戒するなら一撃必殺の効果を持つCCCモンスターは無暗に出せなくなる。

 

『なんとタツヤ選手、エクシーズに続きシンクロ召喚を使用!?

 これまでのデュエルで出さなかった隠し玉をここで出してきたー!!』

 

「フィールドから墓地へ送られたB―バスター・ドレイクの効果発動

 デッキからユニオンモンスター1体を手札に加える。

 僕は2枚目のC―クラッシュ・ワイバーンを手札に加える。

 そして、手札抹殺を発動、互いのプレイヤーは手札を全て捨て、捨てた枚数分デッキからドローする。

 クラッシュ・ワイバーン2枚、シティGP(グランプリ)、超電磁タートル、シャッフル・リボーンの5枚のカードを捨てドロー!」

 

「・・・僕はパスト・アイとスカラマリオンの2枚のカードを捨て2枚ドロー」

 

 むっ、スカラマリオンが墓地にいっちゃったか・・・

 でも、これで手札交換は出来たし、墓地にA、B、Cの3体がそろった。

 

「僕は墓地のA―アサルト・コア、B―バスター・ドレイク、C―クラッシュ・ワイバーンを除外することで3体を合体、ABC―ドラゴン・バスターをエクストラデッキから特殊召喚する!」

 

 突然にして、広場中央の噴水がせり上がり、格納庫が現れABCモンスター達がそこから発進し、バスター・ドレイクとクラッシュ・ワイバーンが分離し、アサルト・コアと合体する。

 出来上がるのは2本の竜の首を持ったキメラマシン。

 

「合体!ABC―ドラゴン・バスター!!」

 

ドラゴン・バスター「「ギュオオオオォォォオォォ!!」」

         ATK3000

 

『ここで来たー!タツヤ選手のエース!並み居る強力なモンスター達を粉砕してきたトンデモマシン!ABC―ドラゴン・バスター!!

 1ターンで3種類の召喚法を行うとは、やはり遊勝塾は一味違う!!』

 

「ABC―ドラゴン・バスターの効果発動

 1ターンに1度、手札を1枚捨てることでフィールド上のカードを1枚を対象にして除外する。

 仁王立ちを捨て、永遠の淑女 べアトリーチェを除外する。

 ディメンションバスター!!」

 

「その効果にチェーンして、ベアトリーチェの効果発動

 オーバーレイユニットを1つ取り除いてデッキのカード1枚を墓地に送る。

 デッキから彼岸の悪鬼ガトルホックを墓地に送る。」

 

 ベアトリーチェ ORU2→1

 

「でも、この効果は躱せない!」

 

 ドラゴン・バスターの肩?の部分にあるキャノン砲からレーザーが放たれ、ベアトリーチェを異次元の彼方へと消し去る。

 その際、ベアトリーチェの周りを回っていた光が零羅のディスクを照らし出した。

 

「墓地へ置かれたガトルホッグとダンテの効果発動

 ダンテの効果で墓地の彼岸カード、彼岸の悪鬼スカラマリオンを手札に加え、ガトルホッグの効果で墓地のガトルホッグ以外の彼岸モンスター、彼岸の旅人ダンテを特殊召喚。」

 

 彼岸の旅人ダンテ DEF2500

 

 ダンテが出てきた。

 回収効果にターン1は付いてないか・・・手札を回復されるのは痛いけど、次のターンにベアトリーチェが出てきたら一緒か、墓地が充実する前に倒しておこう。

 

「バトル!ABC―ドラゴン・バスターでダンテに攻撃!A・B・Cオールウェポン!」

 

 ドラゴン・バスターの全身の武装からレーザーやミサイルが放たれダンテを吹き飛ばす。

 

「ダンテの効果で彼岸の悪鬼ラビキャントを手札に戻す。」

 

「僕はカードを1枚伏せて、ヘビーアーマーの効果を発動

 フィールドの機械族モンスター、マシンナーズ・フォートレスに装備させる。 

 ヘビーアーマーが装備中、装備モンスターは相手の効果の対象にならない、ターンエンドだ。」

 

「エンドフェイズにスカラマリオンの効果により、デッキから悪魔嬢リリスを手札に加える。」

 

 僕のターンだけで、手札が5枚まで回復した。

 フィールドは伏せカードが1枚だけだけど、どう展開してくるか・・・

 

「僕のターン、ドロー

 手札からマジックカード、ワン・フォー・ワンを発動

 手札のモンスターカードを1枚捨てることで、デッキ、手札からレベル1モンスター1体を特殊召喚する。

 手札のラビキャントを墓地へ送り、デッキからチューナーモンスター、チューニングガムを特殊召喚。」

 

 チューニングガム DEF1200

 

 零羅君のフィールドに何故か現れるチューインガム、それは独りでに封が空くと緑色のガムが漏れ出してガイコツのような不気味な顔が浮かぶ。

 

「マジックカード、貪欲な壺を発動

 墓地のダンテ、ラビキャント、デスガイド、スカラマリオン、ガトルホッグをデッキに戻して2枚ドロー

 

 さらにトラップ発動、ギブ&テイク、相手の場に自分の墓地のモンスターを1体特殊召喚し、自分フィールド上のモンスターのレベルを特殊召喚したモンスターのレベル分上げる。

 ギラギランサーを君のフィールドに守備表示で特殊召喚し、チューニングガムのレベルをアップさせる。」

 

 ギラギランサー「ギラ!」

     DEF800

 

 チューニングガム LV1→7

 

 僕のフィールドに現れるとげとげとした鎧に身を包んだ槍使い、来た!!

 

「僕はクレーンクレーンを召喚

 このモンスターが召喚に成功した時、墓地のレベル3モンスター1体を効果を無効にして特殊召喚する。

 CC隻眼のパスト・アイを特殊召喚。」

 

 クレーンクレーン   ATK300

 CC隻眼のパスト・アイ DEF1000

 

 機械で出来た鶴が墓地からひとつめの不気味なモンスター、CC隻眼のパスト・アイを吊り上げてくる。

 あのモンスターが出てきて、僕の場にレベル6モンスター、なら次は!

 

「速攻魔法、パスト・チューニングを発動

 このカードは僕の場にパスト・アイが居る時、相手フィールド上のモンスター1体を選択して発動する。

 発動時にその相手モンスターのレベルを変える。ギラギランサーのレベルを3に変更!」

 

 ここだ!!

 

「ドラゴン・バスターの効果をその効果にチェーンして発動!

 手札を1枚捨てることでフィールド上のカード1枚を除外する。

 この効果は相手ターンでも使うことが出来る!手札の置換融合を捨てて、ギラギランサーを除外!」

 

ギラギランサー「ギラー!?」――バンッ!!

 

 ドラゴン・バスターの撃ちだしたミサイルが僕の場に居座っていたギラギランサーを爆殺する。

 これで零羅君は僕のフィールドに押し付けるモンスターのうち1体を失った!!

 

「対象を失ったパスト・チューニングは無効になる。」

 

「・・・なら、チューニングガムの効果発動!」

 

 えっ!?

 

「自分フィールド上の表側表示モンスターをチューナーとして扱う。

 ただしこのターン、自分はシンクロモンスターでしか攻撃できなくなる。

 僕はCC隻眼のパスト・アイをチューナー扱いにする。」

 

 チューナーとして扱うだって!?

 

「僕はレベル3のクレーンクレーンに効果が無効になりチューナー扱いとなっているCC隻眼のパスト・アイをチューニング!

 高き採掘者よ、我が目と調和し、その力捧げよ!

 現れよ!全てを撃ち抜く精巧なる銃!レベル6、CCC撃調化身ロック・シューター!!」

 

 ロック・シューター ATK2200

 

 しまった、あの隻眼のパスト・アイは自分フィールド上のモンスターと共に素材にできないから、僕の場のカードばかり使ってくると思ってたけど・・・

 パスト・アイを除外しておくんだったかな?

 

「バトル、ロック・シューターは攻撃時に相手のフィールド上のこのカードと同じ属性を持つモンスターのレベル×200ポイント攻撃力を上昇させる。」

 

「させない!墓地のトラップカード、仁王立ちの効果発動!

 このターン、相手は僕の選んだ1体のモンスターしか攻撃できなくなる。

 カタストルを選択、そしてカタストルは闇属性モンスター以外と戦闘を行う場合、ダメージ計算を行わずに相手モンスターを破壊する。」

 

 今にも砲撃を打ち放ちそうなロック・シューターの前にカタストルが飛び出して、威嚇を始める。

 どんなに攻撃力が高くても、破壊できるなら恐くはない。

 

「・・・メインフェイズ2、墓地のヘルウェイ・パトロールを除外して効果発動

 手札からレベル4以下の悪魔族モンスターを1体特殊召喚する。

 悪魔嬢リリスを守備表示で特殊召喚。」

 

悪魔嬢リリス「ハハハハッ!フン!!」

      DEF0

 

 ロック・シューターの横に並ぶ女悪魔、あのカードは確かトラップカードをサーチする効果を持っていたはず。

 

「悪魔嬢リリスの効果発動

 1ターンに1度、自分フィールド上の闇属性モンスターをリリースすることで、デッキから通常トラップを3枚選択し、相手はその中からランダムに1枚選択する。

 その後、選ばれたカードを自分フィールドにセットし、残りのカードはデッキに戻す。

 僕はチューニングガムをリリース、選ぶのは裁きの天秤2枚とピンポイント・ガード、さぁ、選んで?」

 

 裁きの天秤、強力なドローカードだけど、零羅君のフィールドと手札状況じゃその効力は薄れる。

 ピンポイント・ガードも厄介か・・・

 

「右のカードを選ぶよ。」

 

「選ばれたカードはセットし、残りはデッキへ

 ロック・シューターの効果発動、互いのターンに1度、相手モンスターの攻撃力を1000ポイントダウンさせる。

 ABC―ドラゴン・バスターの攻撃力を1000ポイントダウン。」

 

「ABC―ドラゴン・バスターの効果発動

 相手ターン中にこのカードをフィールドから墓地に送ることで、除外されている3体のABCモンスターに分離する!

 A―アサルト・コア、B―バスター・ドレイク、C―クラッシュ・ワイバーンを特殊召喚!」

 

 アサルト・コア     ATK1900

 バスター・ドレイク   DEF1800

 クラッシュ・ワイバーン DEF2000

 

 ドラゴン・バスターが分離し3体のモンスターが現れる。

 これであの伏せカードが裁きの天秤だった場合、ドローされちゃうな・・・

 

「墓地のネクロ・ディフェンダーの効果発動

 このカードを除外することで、選択した僕の場のモンスター1体は次の相手のエンドフェイズ終了時まで戦闘破壊されず、僕への戦闘ダメージもゼロになる。

 僕が選択するのはロック・シューター。」

 

  ロック・シューターに上半身だけのような姿をした悪魔の幻影がまとわりつく。

 う~ん、効果で処理することは出来るけど、墓地にチューニングガムが居るしな~

 できれば、裁きの天秤を先に使わせたいけど・・・

 

「カードを1枚セット、これでターンエンド。」

 

「僕のターン、ドロー

 う~ん、僕は墓地のシャッフル・リボーンの効果を発動

 このカードを除外し、自分フィールド上のカードを1枚デッキに戻すことで1枚ドローする。

 僕はヘビーアーマーをデッキに戻して1枚ドロー」

 

 この手札なら・・・でも、どっちにしろドローされちゃうなら・・・

 

「ロック・シューターの効果発動、マシンナーズ・フォートレスの攻撃力を1000ポイントダウンさせる。」

 

 マシンナーズ・フォートレス ATK2500→1500

 

「マシンナーズ・フォートレスの効果、相手のモンスターの効果対象となった時、相手の手札1枚をランダムに捨てさせる。」

 

 強制効果だから仕方がないね。

 はぁ~これでエンドフェイズにサーチは確定か・・・

 

「レベル4のアサルト・コアとクラッシュ・ワイバーンでオーバーレイ

 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築

 ギアギガントX(クロス)をエクシーズ召喚して効果発動

 オーバーレイユニットを1つ使いデッキからB―バスター・ドレイクを手札に加える。」

 

 ギアギガントX(クロス) ATK2300

          ORU2→1

 

「ギアギガントX(クロス)とB―バスター・ドレイクをリリースして、アドバンス召喚!

 来い!マイフェイバリットカード!パーフェクト機械王!!」

 

 ギアギガントXとバスター・ドレイクが共に自爆すると、煙の中から真っ赤なジェットを吹き出しながら、赤と銀色のボディを煌めかせた機械の王が現れる。

 

パーフェクト機械王「ハッ!!」

         ATK2800

 

 さぁ、戦いは此処からだ!!


「バトルロイヤルが始まったが、未だ異常は見受けられずか・・・」

 

 舞網市のビル、とはいってもリアルソリッドビジョンによって古代感あふれる塔へと変貌しているモノの上で赤いマフラーで顔の半分を隠した忍者然とした少年、日影は独り言ちる。

 

(LDSよりの依頼であるが、にわかには信じられるものではないのも事実

 次元戦争などと・・・杞憂であってほしいものでござる。)

 

 彼はその風貌に対して、かなり常識的な人物である。

 次元間を越えた戦争などととんでもない話に、はいそうですか、と納得はできない心くらいはある。

 だが、彼ら風魔の忍者のモットーは命を懸けてでも任務を完遂する事。

 多少の疑念など些事である。

 

(2回戦で負けてしまったのは幸か不幸か、こうして先行して偵察が出来るのはありがたい。

 にしても、柚子殿を狙ってくる可能性があるとはどういう事でござろうか?

 ふむ、後で遊矢殿に聞いてみるか・・・むっ!?)

 

 日影が目配せした視線の先、そこに青白い謎の光が数瞬輝いた。

 それは今は閉鎖状態の街では起きようもない事、さらに言えば今現在誰かがデュエルを行っているという情報はない。

 日影はすぐさまそこへと急行した。

 そこは監視カメラなどの死角となっているビルとビルの間にできた空白地、街の陰ともいえる場所であった。

 

(こ、これは!!?)

 

 物陰に隠れ、覗いてみればそこにいたのは不気味な仮面の集団。

 青い軍服の様なモノを着ており、一目で不審者と分る。

 そしてその数が多すぎる、ざっと数えて40人以上の集団が犇めいているのである。

 

(こやつ等が、アカデミアでござるか!?

 にしてもこの人数、とても拙者だけでは対処ができる数ではない!)

 

 日影は焦った、このバトルロイヤルには事情を知らない参加者が3人居るのだ。

 それは目下狙われている柊 柚子、海外からの留学生、デニス・マックフィールド、そして自分と戦った権現坂 昇。

 刺客が数人程度なら自分と弟だけでも速攻で対処可能であろうが、この数である。

 警護対象が居る任務において、この数の敵と戦いながら、というのは愚策以外の何物でもない。

 そして、守り切るのにも限度というものがある。

 

(くっ!すまぬ、権現坂殿!!)

 

 日影は心の中で謝罪しながら、音を立てずにその場を離れる。

 彼が受けた任務は柊柚子の警護、デュエリストとして、人として、友を見捨てたくはないが、任務の為には切り捨てなければならぬものもあるのだ。

 

「こちら日影!アカデミアと思わしき連中の侵入を確認した!

 その数48!!応援を求むでござる!!繰り返す!応援を求むでござる!!」

 

 

 

――かくして、世界の命運を決める戦いの幕は上がった。

――道化が演じるのは悲劇か、喜劇か。

――そのどちらでも演目は待ってはくれない、演じ終えるまで。




『こちら日影!アカデミアと思わしき連中の侵入を確認した!
 その数48!!応援を求むでござる!!繰り返す!応援を求むでござる!!』

48だと!?

ずいぶんと中途半端な・・・

いや、あれはオベリスクフォース、プロフェッサーの側近部隊だ!
あいつら、なんだか気持ち悪いから、相手にするの嫌なんだがなぁ・・・

((珍しい))

黒咲、ユート、どっちかセレナについてくれ
止めても無駄だろうからな。

あぁ

わかった。

次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『 瞳に映る赤き火(後編)舞網絶対防衛戦線』
この街は、この世界は私たちが絶対に守る!貴様の好き勝手にさせぬぞ!!


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瞳に映る赤き火(後編)舞網絶対防衛戦線

前回を反省し、プロットを見直していたら大量に出てくるミスの山
やっぱり、体調が悪い時に書くものではないですね。皆様も体は大事になさってください。

今回は零羅VSタツヤ後編、それとこの小説でマルコ先生以来デュエルしていなくて、いまいち目立つ機会のなかった黒咲さんでお送りします。


「ユート、黒咲を一人で行かせてよかったのか?

 私は別に一人で良かったのだが?」

 

 ユートはセレナの余計なひと言に小さくため息を吐く。

 

「君をアカデミアに奪われるわけにはいかない。

 赤馬 零王の主目的は君なのだからな。

 それに隼は負けることなどないさ、絶対に」

 

 日影からのアカデミア来襲の知らせを受け黒咲は我先にと飛び出し、それに続こうとするセレナを追う形になったユートは結果的にセレナのお目付け役となっていた。

 

「セレナ、オベリスクフォースとはどういう連中なんだ?」

 

「プロフェッサーの直轄部隊、ということぐらいしか私は知らない。

 何度か抜け出した私を追って来たことがあったが・・・」

 

 らしくもなく歯切れの悪い言い方をするセレナに、ユートは違和感を持つ。

 

「あったが?」

 

「あいつ等は気持ちが悪い。」

 

「気持ち悪い?」

 

「壁に叩きつけてしまったり、吹き飛ばしてしまったりして無視できないダメージを受けたはずなのに、その場で立ち上がってきたからな。

 まるで、ゾンビの様だったぞ。」

 

(何しているんだ・・・)

 

「それに使うデッキが支給品だから、デュエルをしてもつまらない奴らだからな。

 奴らとデュエルするんだったら、ユーリとした方が面白い。」

 

 あまりにもひどい評価だが、ユートには一つ気になったことがあった

 

「支給品?自分で組んだデッキじゃないのか?」

 

 デッキとはデュエリストの魂だ。

 他人から譲られたデッキでもデュエルしていく内に自分らしさが出てくるものだ。

 だがユートは思い出す、エクシーズ次元で戦ったアカデミアの兵士たちは殆ど同じカード、同じ手しか使ってこなかったなと。

 

「アカデミアに入って初めてデュエルを学ぶ奴らが多いからな。

 もちろんカードも持っていない、

 なんでも隊長クラスになれば別のデッキを持つことを許されるらしい。」

 

(あくまでアカデミアにとってカードは兵器というわけか

 セレナが例外なだけで、俺たちとは根本から相容れないのだな・・・)

「セレナ、君はいいのか?仲間と戦うことになるんだぞ?」

 

「フッ、私は戦士だ。

 アカデミアが戦士の矜持に反して、ただ恐怖をばら撒いているのなら許すことは出来ない。

 だから確かめる。確かめるために戦うんだ。」

 

「そうか・・・」

 

 彼女はすでに覚悟を決めている。

 ならば、自分も覚悟を決める時だろう、傷つけてしまう覚悟を。

 

「ん!!居たぞ、ユート!」

 

「あぁ、奴らは此処で食い止める!」

 

 オベリスクフォースを3人見つけたユートとセレナはデュエルディスクを構える。

 相手もそれに気付いた様で両者は臨戦態勢になるが、オベリスクフォースはユートの顔を見てユートを困惑させる言葉を発する。

 

「「「榊 遊矢を発見!ターゲットを抹殺する!!」」」

 

(!!?どういう事だ!?まるで意味が分からないぞ!!?)


「我らの任務の邪魔だ!痛い目に遭いたくなければ、そこをどけ!」

 

 青い軍服、趣味の悪い仮面、こいつらがアカデミアの精鋭・・・

 

「どくわけがない。

 俺が、貴様らアカデミアの所業を見過ごすはずがない!」

 

 ユート達とはぐれてしまったが、アカデミアの奴らを見つけてしまったのなら仕方がない。

 俺一人でもやってやる!

 

「我らの事を知っている?そうか、お前、エクシーズの残党か!」

 

「ははははっ!負け犬がまさかこんなところまで逃げていたとはな!」

 

 ちっ、こいつらの何処が崇高な戦士だ!!

 

「ふん、やはりアカデミアはゲスの集まりの様だな。

 あの女が言う戦士の心など、これっぽっちも持ち合わせていないようだ。」

 

「なんだと?」

 

「キサマ、我らを愚弄するか!!」

 

「狩られるだけの獲物のくせに生意気な口を!」

 

「我らはオベリスクフォース!!

 栄光なるアカデミアを統べるプロフェッサーの剣!」

 

「「「身の程をわきまえろ!!」」」

 

 ユートから、こいつらは赤馬 零王に良いように使われているだけの可能性があると言われたが、こいつらが今、俺たちの世界を貶しているのは変わらない!

 故郷の街は焼かれた、友の多くはカードにされた、最愛の妹は、瑠璃は捕らわれた。

 こんな奴らに慈悲を与えて許せだと?俺には出来ない!!蹴散らしてやる!!

 

『『『『決闘(デュエル)!!』』』』

 

「俺は古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)を召喚!」

 

古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)「グオッ!」

       ATK1000

 

 歯車が擦れる音が鳴き声のように鳴って、緑色の装甲と胴体にある巨大な歯車が特徴的な犬の様なロボットが現れる。

 「アンティーク・ギア」こいつらが好んで使っているテーマ

 あの忌々しいデカブツを出される前に潰してやる。

 

「このモンスターが召喚に成功した時、相手に600ポイントのダメージを与える!ハウンドフレイム!!」

 

 古代の機械猟犬の口の中から放射口が伸び、火炎が放たれる。

 やはり先制ダメージを与えて来たか、だがそれは想定の内。

 

「手札のRR(レイド・ラプターズ)―アベンジ・ヴァルチャーの効果発動

 自分が戦闘、効果でダメージを受けた場合、手札からこのカードを特殊召喚出来る。」

 LP4000→3400

 

 アベンジ・ヴァルチャー ATK1700

 

 俺のフィールドに現れる骨組みだけの様な機械の鳥

 これで迎撃準備は整った。

 

「ハッ!苦し紛れの手を

 手札よりマジックカード、古代の機械爆弾(アンティーク・ギアボム)を発動

 自分フィールド上のアンティーク・ギアモンスター1体を破壊し、そのモンスターの元々の攻撃力の半分のダメージを相手ライフに与える!」

 

「ぐわっ!」

 LP3400→2900

 

 追加でダメージを与えるカードを握られていたか。

 エクシーズ次元に来たアカデミアの奴らは1ターン目はモンスターを1体立たせるだけの児戯の様なデュエルしかしてこなかった奴らが多かったが、少しはやるらしい。

 

「カードを2枚伏せターンエンド!とっとと終わらそうぜ!」

 

「おう、速攻だ!俺は古代の機械城(アンティーク・ギアキャッスル)を発動

 このカードはアンティーク・ギアモンスターの攻撃力を300ポイントアップさせる。

 古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)を召喚し効果発動!ハウンドフレイム!」

 

古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)「グオォ!」

       ATK1000→1300

 

「ぬぅ・・・」

 LP2900→2300

 

「アンティーク・ギアモンスターの召喚に成功したことで古代の機械城の効果でこのカードにカウンターを1つ乗せる。

 古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)の効果発動

 1ターンに1度、自分メインフェイズに、自分の手札、フィールドから融合素材モンスターを墓地へ送りアンティーク・ギア融合モンスターを融合召喚する!」

 

 融合内蔵のモンスター、先制ダメージと合わせて厄介なモンスターだ。

 

「俺は手札の1枚とフィールドの1枚の古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)を融合!

 古の魂受け継がれし、機械仕掛けの猟犬達よ!群れ成して交じり合い、新たなる力と共に生まれ変わらん!融合召喚!

 現れよ!レベル5、古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(ダブルバイト・ハウンドドッグ)!!」

 

古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(ダブルバイト・ハウンドドッグ)「「グオオオオォォォォン!!」」

         ATK1400→1700

 

 アンティークの名を持つ割には新品の様なボディを輝かせ双頭となった機械の猟犬が吠える。

 

「これで攻撃力は超えた!行け!双頭猟犬(ダブルバイト・ハウンドドッグ)でアベンジ・ヴァルチャーに攻撃!」

 

「手札のRR(レイド・ラプターズ)―ブースター・ストリクスの効果発動!

 自分のRR(レイド・ラプターズ)モンスターが攻撃対象にされた時、手札のこのカードを除外して発動!

 攻撃モンスターを破壊する!」

 

 迫り来る機械犬を高速で飛び来る鋼の鳥が体当たりで打ち砕く。

 俺たちの世界のバトルロイヤルルールは全員の1ターン目が回りきるまで攻撃不能だったが、こいつらはこちらにターンが回っていようとなかろうと2ターン目から攻撃してくる。

 卑怯臭い奴らだ。

 

「ちっ!運のいい野郎だ。カードを1枚伏せターンエンド!」

 

「俺のターン、ドロー!」

 

「「永続トラップ、古代の機械蘇生(アンティーク・ギアリボーン)発動!

 自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、1ターンに1度、墓地のアンティーク・ギアモンスター1体を攻撃力を200ポイントアップさせ特殊召喚する!」」

 

古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)「グルル・・」

       ATK1200→1500

 

古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(ダブルバイト・ハウンドドッグ)「グオオォォ!」

         ATK1600→1900

 

 奴らの場に戻ってくる犬ども。

 モンスターを途切れさせないプレイング。

 いや、あの融合モンスターの効果でこちらを牽制するのが目的か。

 そして、囮が一人、そしてこの最後の一人は

 

「俺も古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)を召喚しハウンドフレイム!」

 

古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)「グオッ!」

       ATK1000→1300

 

「同じ手を何度も・・・」

 LP2300→1700

 

「ハハハッ!やはりエクシーズの負け犬などこの程度

 俺は古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)の効果発動!

 フィールドの1枚と手札の2枚の古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)を融合!

 古の魂受け継がれし、機械仕掛けの猟犬達よ!群れ成して交じり合い、新たなる力と共に生まれ変わらん!融合召喚!

 現れよ!レベル7、古代の機械(アンティーク・ギア)三頭猟犬(トリプルバイト・ハウンドドッグ)!!」

 

古代の機械(アンティーク・ギア)三頭猟犬(トリプルバイト・ハウンドドッグ)「「「グオオオオォォォォォォォォ!!」」」

         ATK1800→2100

 

 攻撃が目的、役割を分担したプレイング、ひとりひとりの強さは雑魚レベルだがこの物量がアカデミアの戦い方

 こんな奴らにデュエリストを名乗る資格などない!

 

古代の機械(アンティーク・ギア)三頭猟犬(トリプルバイト・ハウンドドッグ)でアベンジ・ヴァルチャーに攻撃!」

 

「ぐうっ」

 LP1700→1300

 

「ハッ!もう打つ手なしか?」

 

「まぁ、たとえ攻撃力の高いモンスターを出したところで双頭猟犬(ダブルバイト・ハウンドドッグ)の効果で召喚、特殊召喚されたモンスターにはギア・アシッドカウンターが置かれ、アンティーク・ギアモンスターと戦闘を行った瞬間、破壊される。」

 

(そして、それを乗り越え攻撃を行っても、ミラーフォースで返り討ちだ。)

 

「ターンエンド。」

 

「俺のターン、ドロー

 俺はマジックカード、強欲で貪欲な壺を発動

 デッキの上から10枚のカードを裏側表示で除外し、2枚ドローする。

 RR(レイド・ラプターズ)―バニシング・レイニアスを召喚」

 

 バニシング・レイニアス ATK1300

 

「バニシング・レイニアスの効果発動

 このカードが召喚、特殊召喚されたターンに1度だけ、手札からレベル4以下のRR(レイド・ラプターズ)モンスター1体を特殊召喚出来る。

 俺は手札からレベル4のRR(レイド・ラプターズ)―ミミクリー・レイニアスを特殊召喚!」

 

 ミミクリー・レイニアス DEF1900

 

「俺はレベル4のバニシング・レイニアスとミミクリー・レイニアスの2体でオーバーレイ

 冥府の猛禽よ、闇の眼力で真実を暴き、鋭き鉤爪で栄光をもぎ取れ、エクシーズ召喚!

 飛来せよ!ランク4、RR(レイド・ラプターズ)―フォース・ストリクス!」

 

 フォース・ストリクス ATK100 ORU2

 

 黄色を主とした機械の鳥と緑色の機械の鳥が、鋼の梟を呼び出す。

 

「攻撃力100?」

 

「そんな雑魚を呼び出して何になるというのだ?」

 

「ふん、攻撃力でしか物の価値を見れぬとは精鋭が聞いて呆れるな。

 フォース・ストリクスの効果発動

 1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ使い、デッキから鳥獣族、レベル4、闇属性モンスター1体を手札に加える。

 俺はデッキからRR(レイド・ラプターズ)―シンギング・レイニアスを手札に加え、特殊召喚!」

 

 シンギング・レイニアス DEF100

 

 フォース・ストリクス ATK100→600

            DEF2000→2500

            ORU2→1

 

「シンギング・レイニアスは1ターンに1度、自分のフィールド上にエクシーズモンスターが居る場合、手札から特殊召喚出来る。

 さらにフォース・ストリクスは自身以外の自分フィールド上の鳥獣族モンスターの数×500ポイント攻撃力、守備力を上昇させる。

 

 墓地のミミクリー・レイニアスの効果発動

 このカードが墓地に送られたターン、このカードを墓地から除外することでデッキからRR(レイド・ラプターズ)カード1枚を手札に加える。 

 

 俺は永続魔法RR(レイド・ラプターズ)―ネストを手札に加え発動!

 このカードは自分のフィールド上にRR(レイド・ラプターズ)モンスターが2体以上存在する場合、1ターンに1度、デッキ、墓地からRR(レイド・ラプターズ)モンスターを1体手札に加える。

 デッキからファジー・レイニアスを手札に加える。

 そして、このファジー・レイニアスはファジー・レイニアス以外のRR(レイド・ラプターズ)モンスターが存在する場合、手札から特殊召喚出来る。」

 

 ファジー・レイニアス DEF1500

 

 ひな鳥のように小さな機械鳥の隣に並ぶ紫の機械鳥

 この手札なら、行けるな。

 

「俺はレベル4のファジー・レイニアスとシンギング・レイニアスでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!

 飛来せよ!ランク4、RR(レイド・ラプターズ)―フォース・ストリクス!」

 

 フォース・ストリクス ATK100→600

            DEF2000→2500

            ORU2

 

「2体目のフォース・ストリクスの効果でデッキからRR(レイド・ラプターズ)―バニシング・レイニアスを手札に加える。

 そして、墓地へと送られたファジー・レイニアスの効果でデッキからファジー・レイニアスを手札に加える。」

 

「ハッ!長々とやってその程度か!その程度では猟犬(ハウンドドッグ)も倒せないぞ!」

 

「そうだ、キサマ達はいつもそんな風に嗤いながら俺の仲間たちを襲い続けた・・・」

 

 思い出される、奴らの嘲笑、街の人たちの悲鳴、そして、瑠璃の泣き声。

 こいつらがいなければ!!

 

「それの何が可笑しい?

 キサマらは獲物だ、狩人たる我々に狩られるだけのみじめな存在。」

 

「ただ、のうのうと生き、死んでいくだけの存在にアカデミアの為、プロフェッサーの為に役に立つという栄誉を与えてやっているのだ。」

 

「栄誉だと?俺たちはそんなもの欲しくはない!

 キサマらの身勝手に付き合うのもうんざりだ!このターンで終わらせてやる!

 俺はRUM(ランクアップマジック)―スキップ・フォースを発動!

 俺のフィールドのRR(レイド・ラプターズ)エクシーズモンスター1体を素材にして2つランクの高いRR(レイド・ラプターズ)モンスターにランクアップさせる!

 

 俺はランク4のRR(レイド・ラプターズ)―フォース・ストリクス1体でオーバーレイネットワークを再構築!

 誇り高きハヤブサよ、英雄の血潮に染まる翼翻し、革命の道を突き進め!ランクアップエクシーズチェンジ!!

 現れろ!ランク6!RR(レイド・ラプターズ)―レヴォリューション・ファルコン!!」

 

レヴォリューション・ファルコン「キュオオオォォォォォォォ!!」

               ATK2000 ORU2

 

「なっ!?ランクアップだと!?」

 

「レヴォリューション・ファルコンの効果発動!

 1ターンに1度。このカードがRR(レイド・ラプターズ)エクシーズモンスターを素材としている場合、相手フィールドのモンスター1体を破壊し、その攻撃力の半分のダメージを相手に与える。

 古代の機械(アンティーク・ギア)三頭猟犬(トリプルバイト・ハウンドドッグ)!!革命の火に焼かれて、砕け散れ!!」

 

 レヴォリューション・ファルコン ORU2→1

 

 黒き爆撃機の力を内包した革命のハヤブサが、三つ首の機械の魔物を爆撃でプレイヤー諸共焼き尽くす。

 

「ぐああぁぁぁ!!」

 LP4000→2950

 

「まだだ!俺はRUM(ランクアップマジック)―レイド・フォースを発動!

 自分フィールド上のエクシーズモンスターを1つ高いランクのRR(レイド・ラプターズ)モンスターにランクアップさせる!

 ランク6のレヴォリューション・ファルコン1体でオーバーレイネットワークを再構築!

 大いなる翼よ、遙かな天空から同胞を導き、戦場を蹂躙せよ!ランクアップエクシーズチェンジ!

 ランク7!RR(レイド・ラプターズ)―アーセナル・ファルコン!!」

 

 レヴォリューション・ファルコンが天に昇り、暗雲の中から巨大な空中空母が戦場に姿を見せる。

 

 アーセナル・ファルコン ATK2500 ORU2

 

古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(ダブルバイト・ハウンドドッグ)の効果発動!

 1ターンに1度、相手が召喚、特殊召喚したモンスターに対してギア・アシッドカウンターを乗せる。

 これでそのモンスターは我々のモンスターに攻撃した瞬間、お陀仏だ!」

 

 アーセナル・ファルコン ギア・アシッドC0→1

 

「アーセナル・ファルコンの効果発動

 1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ使い、デッキから鳥獣族、レベル4モンスター1体を特殊召喚する。

 現れよ、RR(レイド・ラプターズ)―ネクロ・ヴァルチャー!」

 

 アーセナル・ファルコンに毒々しいオーラを纏った歯車が突き刺さるが、その背から禍々しいオーラを放つ機械鳥が出撃する

 

 ネクロ・ヴァルチャー DEF1600

 

「ネクロ・ヴァルチャーの効果発動

 1ターンに1度、自分フィールド上のRR(レイド・ラプターズ)モンスターをリリースし自分の墓地のRUM(ランクアップマジック)1枚を手札に戻す。

 この効果を使った後、俺はRUM(ランクアップマジック)の効果でしかエクシーズ召喚出来なくなる。

 俺はアーセナル・ファルコンをリリース!」

 

「「「何!?」」」

 

「墓地からRUM(ランクアップマジック)―スキップ・フォースを手札に加える。

 そして、RRモンスターをエクシーズ素材として持っていたアーセナル・ファルコンが墓地へ送られたことにより効果発動!

 エクストラデッキからアーセナル・ファルコン以外のRR(レイド・ラプターズ)エクシーズモンスターを特殊召喚し、このカードをエクシーズ素材とする!

 現れよ、RR(レイド・ラプターズ)―デビル・イーグル!!」

 

デビル・イーグル「クエエェェェ!!」

        ATK1000 ORU1

 

 アーセナル・ファルコンが生まれ変わった黒い鳥。

 これはエクシーズ召喚でない特殊召喚なので、ネクロ・ヴァルチャーの効果に抵触することはない。

 

「デビル・イーグルの効果発動

 1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ使い、相手フィールド上の特殊召喚された表側表示モンスター1体を選択

 そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える!俺が選択するのは古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(ダブルバイト・ハウンドドッグ)だ!」

 

「ぐわあああぁぁぁぁ!」

 LP4000→2600

 

「手札より、RUM(ランクアップマジック)―スキップ・フォースを再び発動!

 ランク3のデビル・イーグル1体でオーバーレイネットワークを再構築!

 まだ見ぬ勇猛なハヤブサよ。猛き翼に秘めし未知なる力、今ここに知らしめよ!エクシーズ召喚!

 現れよ!ランク5!RR(レイド・ラプターズ)―エトランゼ・ファルコン!!」

 

 エトランゼ・ファルコン ATK2000 ORU1

 

 デビル・イーグルが進化した赤い重装甲に身を包んだ異邦の力を持つハヤブサ。

 だがこれで終わらん!奴らの希望を全て刈り取ってくれる!!

 

「まだだ!さらに手札からRUM(ランクアップマジック)―ソウル・シェイブ・フォースを発動!

 ライフを半分払い、自分の墓地のRR(レイド・ラプターズ)エクシーズモンスター1体を特殊召喚し、そのモンスターを素材にランクの2つ高いエクシーズモンスターをエクシーズ召喚する!

 俺は墓地からランク6のレヴォリューション・ファルコンを特殊召喚してオーバーレイネットワークを再構築!

 現れよ!!勇猛果敢なるハヤブサ!!エクシーズ召喚!!RR(レイド・ラプターズ)―サテライト・キャノン・ファルコン!!」

 

サテライト・キャノン・ファルコン「キュオオオオォォォォォォォ!!」

                ATK3000 ORU1

 

「サテライト・キャノン・ファルコンがRR(レイド・ラプターズ)モンスターを素材にエクシーズ召喚された時、相手フィールド上のマジック、トラップカードを全て破壊する!

 相手はこの効果に対しカード効果を使用できない!!」

 

「「「何!!?」」」

 

 白く美しいボディをした巨大な砲とブースターを備えた機械鳥。

 その砲門が奴らを守るカードを残らず消し炭にする。

 これであとはモンスターのみ。

 

 古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(ダブルバイト・ハウンドドッグ) ATK1900→1600

 

 古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)    ATK1500→1200

 

「ミラーフォースか、これで俺の攻撃を止めることは出来ないな!

 だがまだ終わらん!エトランゼ・ファルコンの効果発動!

 このモンスターがエクシーズモンスターをエクシーズ素材としている場合、オーバーレイユニットを1つ使い、1ターンに1度、相手フィールド上のモンスター1体を破壊し、そのモンスターの攻撃力分のダメージを与える。

 俺が破壊するのは古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(ダブルバイト・ハウンドドッグ)だ!」

 

「ぐわっ!俺のモンスターが・・・」

 LP2600→1000

 

「さらに墓地のRUM(ランクアップマジック)―レイド・フォースの効果発動

 このカードを除外し、手札のRR(レイド・ラプターズ)カード1枚を除外することで墓地のレイド・フォース以外のRUM(ランクアップマジック)カード1枚を手札に加える。

 俺は手札のRR(レイド・ラプターズ)―ファジー・レイニアスを除外しRUM(ランクアップマジック)―ソウル・シェイブ・フォースを手札に戻し発動!

 墓地のランク4、RR(レイド・ラプターズ)―フォース・ストリクスを特殊召喚しオーバーレイネットワークを再構築!

 勇猛果敢なるハヤブサよ、怒りの翼で再び飛び立ち、蔓延る敵を強襲せよ!!エクシーズ召喚!

 RR(レイド・ラプターズ)―レヴォリューション・ファルコン―エアレイド!!」

 

レヴォリューション・ファルコンAR(エアレイド)「クオオオオォォォォォォ!!」

                 ATK2000 ORU1

 

 爆撃用のハッチを解放したまま飛び立つ再誕した革命の翼

 奴らのモンスターを精々利用してやる。

 

「レヴォリューション・ファルコン―エアレイドがエクシーズ召喚に成功した場合、相手フィールド上のモンスター1体を破壊し、その攻撃力分のダメージを与える。

 最後の敵を駆逐せよ!スクランブル・エアレイド!!」

 

「ぐわああぁぁぁぁぁぁ!!」

 LP4000→2800

 

「これで俺のフィールド上の鳥獣族モンスターは5体となった、よってフォース・ストリクスの上昇値は2000ポイントにアップ!」

 

 フォース・ストリクス ATK600→2100

            DEF2500→4000

 

「我らのモンスターが、カードが・・・」

 

「全滅・・・」

 

「そんな・・・馬鹿な・・・」

 

「キサマらに狩られた同胞たちの痛みを思い知れえええぇぇぇぇぇ!!

 行け、レイド・ラプターズ達よ!奴らにダイレクトアタック!!」

 

「ぐわあぁぁぁぁぁ!!」「あああぁぁぁぁ!!」「ぁぁぁぁぁぁ・・・」

 LP2950→0    LP1000→0     LP2800→800→0

 

 サテライト・キャノン・ファルコンの砲撃が、フォース・ストリクスとエトランゼ・ファルコンの突撃が、レヴォリューション・ファルコン―エアレイドの爆撃が、奴らをズタボロにする。

 気絶した奴らにデュエルディスクから照射した光を浴びせると、その存在をカードへと変える。

 精鋭でこの程度か、あの男の足元にも及ばないな。

 

「フンッ!つまらぬ奴らだ。」


 アドバンス召喚で出て来た、銀色のロボット、パーフェクト機械王。

 フィールド上の自身以外の機械族モンスターの数×500ポイント攻撃力を上げるモンスター。

 

 パーフェクト機械王 ATK2700→3700

 

 言い変えればそれだけのモンスター。

 ロック・シューターの効果をもう使っちゃったから、攻撃力を下げられないけど。

 

「リリースされ墓地へ送られたB―バスター・ドレイクの効果発動

 デッキからユニオンモンスターの強化支援メカ ヘビーアーマーを手札に加える。

 そして、墓地の置換融合を除外し、融合モンスター、ABC―ドラゴン・バスターをエクストラデッキに戻して、1枚ドローする。」

 

 墓地にはすでにA、B、Cのモンスターが居る。

 

「墓地のアサルト・コア、バスター・ドレイク、クラッシュ・ワイバーンを除外して、再び合体しろ!ABC―ドラゴン・バスター!!」

 

ドラゴン・バスター「「ギヤアアァァオ!」」

      ATK3000

 

 また、噴水の下から格納庫が現れてそこから出撃した三体の機械モンスターが合体して2本の竜の首を持った戦車になる。

 

「機械族モンスターが増えたことにより、パーフェクト機械王の攻撃力はさらに500ポイントアップ!」

 

 パーフェクト機械王 ATK3700→4200

 

『なんと凄まじい攻撃力!まさに王の名にふさわしい!!

 そしてそれに従う臣下のように再度合体したABC―ドラゴン・バスターと闇属性モンスター以外を容赦なく破壊するA・O・J(アーリー・オブ・ジャスティス)カタストル、弱体化させられたとはいえ破壊効果を持ったマシンナーズ・フォートレスという、そうそうたるメンツがタツヤ選手のフィールドに集結しております!

 零羅選手はこれを耐え抜くことが出来るのかー!!』

 

「ABC―ドラゴン・バスターの効果発動

 1ターンに1度、手札を1枚捨てることでフィールド上のカード1枚を除外する。

 僕は手札のマシンナーズ・カーネルを捨て前のターンに悪魔嬢リリスの効果で伏せた零羅君のリバースカードを除外する。」

 

 ABC―ドラゴン・バスターの脇?に装備されたロケット弾が伏せカードのピンポイント・ガードを燃やす。

 

「!!」

 

≪痺れるうぅぅぅぅ!すげぇーな、お前!やられたぜ!でも、俺だって負けねぇからな!≫

 

 あの爆音が、熱が、僕の肌を震わせる。

 怖い、でも、頭の中にあの男の子の勇気に満ちた言葉が響いてくる。

 デュエルは戦いだけど、争いじゃない。

 

「裁きの天秤じゃなかったか・・・」

 

 そう、これは囮、本命は前のターンに伏せたこのカード。

 

「悪魔嬢リリスの効果発動

 自分フィールドの闇属性モンスター、悪魔嬢リリス自身をリリースして、デッキから通常トラップを3枚選び、それを相手はランダムに1枚選択しそれをセットする。

 チェーンして、トラップカード、裁きの天秤を発動。」

 

「すでに手札にあったのか!?」

 

「自分のフィールドと手札の枚数より、相手のフィールド上のカードの枚数が多いときその差分だけデッキからカードをドローする。

 僕の手札は0、フィールドは今は裁きの天秤とロック・シューター、そっちのフィールドにはモンスター4体と伏せカードが1枚の5枚

 よって、僕は3枚のカードをドローする。」

 

『おぉっと此処で、零羅選手大量ドロー!!

 マシンナーズ・フォートレスの効果を使わせたのはこのためだったか?いやそうに違いない!』

 

「続いて悪魔嬢リリスの効果処理

 僕が選ぶのは戦線復帰2枚と裁きの天秤、さぁ、選んで?」

 

(ドローカードが1枚、蘇生カードが2枚か・・・)

「真ん中のカードにするよ。」

 

「このカードはセットして、残りのカードはデッキに戻してシャッフル。」

 

「バトル!カタストルでロック・シューターに攻撃!」

 

 カタストルの頭部に当たる部分から発せられるレーザーによってロック・シューターが溶かされていく。

 これで僕のフィールドにはリリスの効果で伏せられたこのターン使えないトラップだけ。

 

「よし、パーフェクト機械王でダイレクトアタックだ!」

 

「させない!墓地のトラップカード、光の護封霊剣の効果を発動

 このターン、相手モンスターはダイレクトアタックが出来なくなる。」

 

 光で作られた何本もの剣が相手の場のモンスター達を釘付けにする。

 

(これで、墓地で発動するカードはダメージ・ダイエットだけ)

「僕はマシンナーズ・フォートレスを守備表示に変えてエンドフェイズ

 シャッフル・リボーンのデメリットにより、手札のB―バスター・ドレイクを除外してターンエンド。」

 

「そのエンドフェイズに彼岸の悪鬼スカラマリオンの効果によりデッキからレベル3、闇属性、悪魔族の魔界発現世行デスガイドを手札に加える。」

 

(デスガイドが手札に入っちゃったか・・・

 伏せカードがもし裁きの天秤ならこれ以上ドローさせるわけにはいかないし、今の内なら発動させられる心配もない、なら)

 

「僕のターン、ドロー」

 

「スタンバイフェイズに手札のシャッフル・リボーンを捨てABC―ドラゴン・バスターの効果発動!

 そのセットカードを除外だ!」

 

「そうはいかない!

 トラップカード、戦線復帰

 墓地のモンスター1体を守備表示で特殊召喚する。

 僕はCC隻眼のパスト・アイを特殊召喚。」

 

 CC隻眼のパスト・アイ DE1000

 

 ロケット弾でできた煙を引き裂いて現れる一つ目のモンスター、パスト・アイ。

 兄様にもらったカード、僕のヒカリ。

 

「マジックカード、手札抹殺

 互いのプレイヤーは手札を全て捨て、捨てた枚数分ドローする。

 4枚のカードを捨て4枚ドロー。」

 

「僕の手札も4枚だ、よって4枚ドロー。」

 

「暗黒界の狩人 ブラウの効果

 手札からカード効果で捨てられた場合、1枚ドローする。

 ブラウは2枚捨てられた、よって2枚ドロー

 

 さらにマジックカード、アームズ・ホールを発動

 デッキの上から1枚カードを墓地に送り、デッキ、墓地から装備魔法を1枚手札に加える。

 僕が手札に加えるのは降格処分。」

 

(降格処分?確かモンスターのレベルを!?)

 

「僕は相手フィールドのABC―ドラゴン・バスターとA・O・J(アーリー・オブ・ジャスティス)カタストルをリリースして、溶岩魔神ラヴァ・ゴーレムを君のフィールドに特殊召喚。」

 

「なっ?ラヴァ・ゴーレム!?」

 

 草原に突如として現れる鳥かごの様な鉄格子が相手を捉えて、ドラゴン・バスターとカタストルを溶岩が呑み込む。

 鉄格子の近くに寄り集まった溶岩は段々と人型のカタチへと変化していき、灼熱の溶岩魔人が姿を現した。

 

 ラヴァ・ゴーレム ATK3000

 

「そのモンスターを特殊召喚したターン、僕は通常召喚が出来ない

 でも、アームズ・ホールの効果でこのターン僕の通常召喚は封じられているから問題ない。

 装備魔法、降格処分を君のパーフェクト機械王に装備、レベルを2つ下げる。」

 

 パーフェクト機械王 ATK4200→3200

           LV8→6

 

「しまった!!レベル6の地属性モンスターが!」

 

「そう、でもその前にマジックカード、モンスター・スロットを発動

 自分フィールド上のモンスター1体を選択し、そのモンスターと同じレベルのモンスターを墓地から除外、その後デッキから1枚ドローして引いたカードが選択したモンスターと同じレベルなら特殊召喚する。

 僕はパスト・アイを選択し墓地からレベル3の暗黒界の狩人ブラウを除外して1枚ドロー

 引いたカードはレベル3のA(アーリー)・ジェネクス・チェンジャー、守備表示で特殊召喚。」

 

 緑色の大きな顔に手足が付いたスロットが現れ両目にそれぞれパスト・アイとスカラマリオンが写り、口から1つのガシャポンが出てくると玩具の様な緑色の人型のロボットが現れる。

 

A(アーリー)・ジェネクス・チェンジャー「ハッ!」

              DEF1800

 

「機械族モンスターが増えたことにより、パーフェクト・機械王の攻撃力がアップ。」

 

 パーフェクト機械王 ATK3200→3700

 

「そして、永続魔法、写真融合(モンタージュ・フュージョン)を発動

 1ターンに1度、自分のフィールドと相手のフィールドに融合素材モンスターが1体ずついる時、自分フィールド上の融合素材モンスターを1体のみ墓地へ送り、融合召喚を行う

 僕はレベル6となったパーフェクト機械王を撮影し、パスト・アイと融合

 完全なる機械の王よ、我が目に宿り、力捧げよ!

 融合召喚!現れろ、レベル6、CCC武融化身ロック・ソード!!」

 

 ロック・ソード ATK2400

 

 柄のひとつ目を輝かせ、岩を削り出し作られた無骨な片刃剣、ロック・ソードが現れる。

 このターンで決着を着けることは出来ないけど、墓地の防御カードは使わせる。

 

「A・ジェネクス・チェンジャーの効果発動

 1ターンに1度、フィールド上のモンスター1体の属性を変化させる。

 僕はラヴァ・ゴーレムの属性を炎属性から地属性に変更する。」

 

 ラヴァ・ゴーレム 炎→地

 

『おぉ!ロック・ソードは自身と同じ属性を持つ自身以外のフィールド上のモンスターの攻撃力を戦闘時に加えます。

 タツヤ選手のフィールドにはマシンナーズ・フォートレスとパーフェクト機械王、そして属性を変化させられたラヴァ・ゴーレムがいますのでロック・ソードの攻撃力は・・・

 な、ななんと!!10700ポイント!!」

 

「バトル、ロック・ソードでパーフェクト機械王に攻撃」

 

「させないよ!墓地の超電磁タートルを除外して効果を発動!

 デュエル中に1度だけ、このカードを墓地から除外することで相手のバトルフェイズを強制終了させる。」

 

 ロック・ソードの前にパーフェクト機械王の盾になるように電磁波を帯びた機械の亀が現れて、ロック・ソードはその亀の出した電磁波で弾かれる。これでいい。

 

「カードを1枚伏せて、マジックカード、ダーク・バースト発動

 墓地の攻撃力1500以下の闇属性モンスター、魔界発現世行きデスガイドを手札に戻してターンエンド。

 エンドフェイズに写真融合(モンタージュ・フュージョン)の効果で召喚されたモンスターは破壊される。」

 

 ロック・ソードが崩れて土塊になる

 防御が不安になってきた

 

「僕のターン、ドロー!」

 

「スタンバイフェイズにラヴァ・ゴーレムの効果発動

 コントローラーに1000ポイントのダメージを与える。」

 

「うわぁ!!」

 LP4000→3000

 

 相手を捉えている檻の中にラヴァ・ゴーレムの体が溶け落ちてダメージを与える。

 4ターン耐えればこっちの勝ちだけど

 

(お湯を被ったみたいだ。)

「っ・・・やっぱり、やっかいなモンスターだね

 僕はマジックカード、アドバンス・ドローを発動!」

 

 これで終わりじゃないよね。

 

「このカードは自分フィールド上のレベル8以上のモンスターをリリースして、デッキから2枚ドローする。

 僕はレベル8のラヴァ・ゴーレムをリリースして2枚ドロー」

 

 ラヴァ・ゴーレムが光となって消えて、相手のデッキに吸い込まれる。

 カードは投げ返されたので、キャッチした。

 

「よし僕はマシンナーズ・フォートレスを攻撃表示に変えてマジックカード、強制転移を発動

 お互いのプレイヤーは自分フィールド上のモンスター1体のコントロールを相手に移す。

 僕はマシンナーズ・フォートレスを零羅君のコントロール下に置く。」

 

 モンスター交換カード、嫌な予感がする。

 

「僕のフィールドのモンスターはA(アーリー)・ジェネクス・チェンジャーだけ」

 

 マシンナーズ・フォートレス DEF1600→ATK1500

 

 僕のフィールドに水色のロボット戦車がやってくる。

 このモンスターが破壊されると、相手の墓地に行くから、僕のフィールドのカードが1枚破壊されてしまう。

 

「僕はさらにマジックカード、アイアンコールを発動

 僕のフィールドに機械族モンスターが存在するとき、僕の墓地からレベル4以下の機械族モンスターを効果を無効にして特殊召喚する。

 僕は墓地からレベル1のチューナーモンスター、F.A.(フォーミュラアスリート)カーナビゲーターを特殊召喚!」

 

 カーナビゲーター DEF0

 

「僕はレベル3のA(アーリー)・ジェネクス・チェンジャーにレべル1のF.A.(フォーミュラアスリート)カーナビゲーターをチューニング

 シンクロ召喚!現れろ、アームズ・エイド!」

 

 光の中から現れる、赤い爪が特徴的な巨大なガントレット。

 このモンスターの効果は・・・ダメージは避けられないか。

 

「アームズ・エイドの効果発動

 1ターンに1度、自分のメインフェイズにこのカードを装備カードとしてモンスターに装備させ攻撃力を1000ポイントアップさせる。

 パーフェクト機械王にアームズ・エイドを装備!」

 

 パーフェクト機械王の右腕にアームズ・エイドが嵌り、パーフェクト機械王の腕に合う様に大きさが変わる。

 

 パーフェクト機械王 ATK3700→4200→3700→3200→4200

 

「さらにトラップカード、スクランブル・ユニオンを発動

 除外されている機械族、光属性の通常モンスターかユニオンモンスターを3体まで特殊召喚する。

 来い!A―アサルト・コア!B―バスター・ドレイク!C―クラッシュ・ワイバーン!」

 

 曇っている空の向こうから紫色の機械の翼竜が、地平線の向こうから黄色い蠍の戦車と緑色の機械恐竜がやってきて、パーフェクト機械王に並ぶ。

 

 アサルト・コア     ATK1900

 バスター・ドレイク   ATK1500

 クラッシュ・ワイバーン ATK1200

 

「機械族モンスターの数が増えたことで、パーフェクト機械王の攻撃力もアップ!」

 

 パーフェクト機械王 ATK4200→5700

 

 攻撃力5700!?そうはさせない。

 

「バトル!パーフェクト機械王でマシンナーズ・フォートレスに攻撃!

 パーフェクト・アームズ・ナックル!!」

 

「トラップ発動、攻撃の無敵化

 このバトルフェイズ中、モンスター1体を戦闘と効果から守るか、自分への戦闘ダメージを0にする。

 僕はこのバトルフェイズ中、戦闘ダメージを0にする効果を選択する。」

 

 パーフェクト機械王の鉄拳がマシンナーズ・フォートレスを貫き爆風が僕に向かってくる。

 でも、爆風は僕の前に壁があるように弾かれる。

 

「逃がさないよ!

 アームズ・エイドの効果!装備モンスターが相手モンスターを戦闘で破壊した時、そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを与え、さらにマシンナーズ・フォートレスが戦闘で破壊されたことにより、フィールドのカード1枚を破壊する。

 よって零羅君にマシンナーズ・フォートレスの元々の攻撃力、2500ポイントのダメージを与え、写真融合(モンタージュ・フュージョン)を破壊する!」

 

「!?墓地のダメージ・ダイエットの効果発動!!

 このカードを除外してこのターンの効果ダメージを半分にするぅわあああぁぁぁぁぁぁ!!」

 LP4000→2750

 

 弾かれた爆風が腕の形になって無敵化の壁を貫いて僕に襲い掛かってくる。

 衝撃で少し転がり立ち上がると、僕のフィールドのカードが全て消えていた。

 

(これで零羅君の墓地には墓地発動するカードはもうない。

 アームズ・ホールで墓地に送られたカードは墓地じゃ意味のないトラップ。

 墓地から防御する手が無くなったはず。でも・・・)

「墓地のシャッフル・リボーンを除外して効果発動

 僕は・・・パーフェクト機械王をデッキに戻して1枚ドロー。」

 

『おぉっと!?タツヤ選手、ここで自分のフェイバリットカードを手放した!?』

 

 レベル6になったパーフェクト機械王を残しておいてくれないか・・・

 

「カードを2枚伏せて、エンドフェイズにシャッフル・リボーンの効果で手札を1枚、F.A.(フォーミュラアスリート)シティGP(グランプリ)を除外して、ターンエンドだ。」

 

 相手の手札は2枚、伏せカードも2枚、モンスターは3体。

 対して僕の手札はデスガイドだけ・・・

 

「僕のターン、ドロー。」

 

「ドローフェイズに永続トラップ発動!生贄封じの仮面!

 このカードがある限り、お互いにリリースすることが出来なくなる。」

 

 サタンクロースやラヴァ・ゴーレムへの対策!?これじゃ・・・

 

≪あきらめないで!!≫

 

 !!そうだ、まだ、僕のデッキは諦めていない!

 

「僕は魔界発現世行きデスガイドを召喚して、効果でデッキからレベル3の悪魔族モンスター、魔サイの戦士を特殊召喚。」

 

魔サイの戦士「フンッ!」

      DEF900

 

 黒塗りのバスから降りてくる赤い髪のバスガイドと犀頭の獣人。

 

「僕はレベル3のデスガイドと魔サイの戦士でオーバーレイ

 現れろ、ランク3、彼岸の旅人ダンテ!」

 

ダンテ「ハッ!」

   ATK1000 ORU2

 

 混沌の渦の中から現れる濃紺色の髪の男の人、ダンテ。

 このカードを発動するにしても、まだカードが足りない。

 

「ダンテの効果発動、オーバーレイユニットを1つ取り除きデッキの上から3枚までのカードを墓地へ送り、墓地へ送ったカードの数×500ポイント、このカードの攻撃力をアップする。

 僕はデッキから3枚のカードを墓地へ送り、ダンテの攻撃力を1500ポイントアップ。」

 

 ダンテ ATK1000→2500

     ORU2→1

 

 墓地へ送られたカードは・・・うん、これなら。

 

「墓地へ送られた彼岸の悪鬼ハックルスパーの効果発動

 このカードが墓地へ送られた場合、フィールドのセットされたマジック、トラップカード1枚を持ち主の手札に戻す。

 君の伏せカードを選択。」

 

「だけど、その効果は僕のカードが表になれば不発に終わる!

 永続トラップ発動!機動要塞 メタル・ホールド!

 僕のフィールドの機械族、レベル4モンスターを任意の数だけ対象にし、このカードを機械族、地属性、レベル4の攻守0のモンスターとして特殊召喚する!」

 

 黒い影が伏せカードを覆おうとしていたけど、それを振り払いピンク?紫?っぽい色のずんぐりむっくりとしたロボットが立ち上がる。

 

メタル・ホールド ATK0

 

「さらに、この効果で特殊召喚された時、選択したモンスターを装備モンスターとしてこのカードに装備させ、装備したモンスターの元々の攻撃力をこのカードの攻撃力に加える。

 アサルト・コア!バスター・ドレイク!クラッシュ・ワイバーン!メタル・ホールドと合体だ!!」

 

 3体のモンスターの目が光ると、メタル・ホールドはなぜか逆立ちをし始め、足を後に曲げる。

 そこに尻尾を下にしたアサルト・コアが飛んできてメタル・ホールドの足がアサルト・コアの尻尾を挟み込むように連結し新たな胸部となる。

 さらにバスター・ドレイクとクラッシュ・ワイバーンの体が腕として合体し、クラッシュ・ワイバーンの翼が背に取り付けられ、アサルト・コアのドーム状の部分から頭部が出てくる。

 そして、何故か関係ない生贄封じの仮面が胸部にくっ付き、巨大なロボットが完成する。

 

「完成!ABC―メタル・ホールド!!」

 

 メタル・ホールド ATK0→4600

 

『何ということだー!ここに来て攻撃力4600の巨大ロボットが爆誕だー!!』

 

「攻撃力だけじゃないよ

 メタル・ホールドの効果で装備したとはいえ、A、B、Cのユニオンモンスター達の装備カードとしての効果は生きている。

 アサルト・コアは相手からのモンスター効果を、バスター・ドレイクは相手からのマジックの効果を、そしてクラッシュ・ワイバーンは相手からのトラップの効果を装備モンスターが受けなくなるようにする。

 そして、メタル・ホールド自身は相手は他の僕のモンスターを攻撃対象にできず、効果の対象にもできなくする。」

 

『おぉ!!あらゆる効果を受け付けず、仲間を守る!まさに守護者に相応しい!

 さらに生贄封じの仮面の効果でリリースすることも叶わない!零羅選手はこのモンスターにどう立ち回るのか!!』

 

 超大型モンスター、それも装備カードの効果で強固な耐性を得ている。

 怖いくらい強い、だけど何故だろう。胸の奥が熱い。

 

「墓地へ送られた魔サイの戦士の効果で、デッキの悪魔族モンスター、2体目のCC隻眼のパスト・アイを墓地へ送る。

 僕はマジックカード、強欲で貪欲な壺を発動

 デッキの上から10枚のカードを裏側表示で除外して、2枚のカードをドローする。」

 

 あのモンスターをどうやって攻略しようか、自分のデッキで何が出来るか、どんどん浮かんでくる!

 

「僕は速攻魔法、魔力の泉を発動

 1ターンに1度、相手フィールドの表側表示のマジック、トラップカードの枚数分デッキからドローし、その後自分フィールド上の表側表示のマジック、トラップの枚数分、手札を捨てる。

 このカードの発動後、次の相手のターン終了時まで、相手フィールド上のマジック、トラップカードは破壊されず、無効にもされない。」

 

 そのトラップモンスターは永続トラップとして扱い、装備状態のモンスターは装備魔法として扱われる。

 そして、僕のフィールドには魔力の泉が1枚だけ。

 

「僕は5枚のカードをドローして手札を1枚、暗黒界の刺客 カーキを捨てる。

 そして、カーキの効果、このカードが手札から効果で墓地へ捨てられた場合、フィールドのモンスターを1体破壊する。

 僕は彼岸の旅人 ダンテを破壊。」

 

「自分のモンスターを!?」

 

 墓地へと送られるダンテ。でもこれで、

 

「墓地へ送られたダンテの効果で、墓地の彼岸の悪鬼 ハックルスパーを手札に戻す。

 マジックカード、闇の誘惑を発動

 デッキから2枚ドローし、その後、手札の闇属性モンスターを1体除外する。

 僕はさっき戻した、ハックルスパーを除外。」

 

『ここで零羅選手、怒濤のドローカード3連続!!

 だが、魔力の泉の効果でユニオンモンスターの身代わり効果も封じてしまったため、メタル・ホールドの攻撃力低下は望めなくなってしまったぞ~?』

 

 たしかに、だけど、この手札なら攻撃力は超えられる・・・・でも、たぶんまだ足りない。

 

「手札から永続魔法、王家の神殿を発動

 このカードは1ターンに1度、手札から伏せられたトラップカードを1枚だけ、そのターン中に発動できる。

 僕はカードを1枚セットして、永続トラップ、DNA移植手術を発動

 フィールド上の全てのモンスターは僕の宣言した属性になる。地属性を選択

 

さらに墓地のシャッフル・リボーンを除外して王家の神殿をデッキに戻し、1枚ドロー。」

 

(またドロー、メタル・ホールドは元々地属性だし、シャッフル・リボーンの効果を使うためだけに発動させた?)

 

「そして、マジックカード発動、取捨蘇生!」

 

「取捨蘇生?」

 

「僕は僕の墓地からモンスターを3体選ぶ、相手はその内の1体を選択し、選択されたモンスターは僕のフィールドに特殊召喚され、選択されなかったモンスターは除外される。

 僕は墓地からCC隻眼のパスト・アイ、CCC撃調化身ロック・シューター、ジャンク・コレクターを選ぶ。」

 

(ステータスが一番低いのはジャンク・コレクター、でも墓地の通常トラップカードをどんなものでも使える効果がある。

 パスト・アイを出したら、新たなモンスターが出てくるかもしれないし・・・ここは)

「僕が選択するのはロック・シューターだ。」

 

 墓地に繋がるゲートから現れるアンク状の光

 それが変化し、岩の銃が僕のフィールドに戻ってくる。思ってた通りだ。

 

 ロック・シューター ATK2200

 

「まだ、マジックカード、死者蘇生発動

 墓地からCCC武融化身ロック・ソードを特殊召喚。」

 

 ロック・ソード ATK2400

 

『おぉ!攻撃力を結集させるロック・ソード!!

 これで、このターンで零羅選手の勝利』

 

「僕は手札から朔夜しぐれの効果発動!

 相手がモンスターを表側表示で特殊召喚した場合、手札からこのカードを捨てることで、そのモンスターの効果をこのターン無効にし、このターンそのモンスターがフィールドを離れたとき相手にそのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを与える。」

 

 半透明のフードを被った女の子がロック・ソードに憑りつく。

 これじゃあ、このターンに勝てない。

 次のターンになれば相手はユニオンモンスター達を分離させ、耐性の無くなったメタル・ホールドを破壊して、マシンナーズ・カーネルを特殊召喚し、僕のフィールドのモンスターを全滅させてくる。

 だから、痛くても前に進む!!

 

「手札から速攻魔法、次元誘爆発動!」

 

「なっ!?そのカードは!!」

 

「僕のフィールド上の融合モンスターをエクストラデッキに戻し、お互いのプレイヤーは除外されているモンスターを2体特殊召喚する。

 CCC武融化身ロック・ソードを戻して、除外されているジャンク・コレクターと永遠の淑女 ベアトリーチェを特殊召喚!」

 

 ジャンク・コレクター DEF2200

            光→地

  ベアトリーチェ   DEF2800

            光→地

 

「僕はB―バスター・ドレイクとユニオン・ドライバーを守備表示で特殊召喚

 だけど、ロック・ソードがフィールドを離れたことにより、君はロック・ソードの攻撃力、2400ポイントのダメージを受ける!」

 

 バスター・ドレイク  DEF1800

            光→地

 ユニオン・ドライバー DEF1000

            光→地

 

 ロック・ソードに憑りついていた女の子が今度は僕に憑りつき、僕に呪いをかける。

 

「うぅ・・・」

 LP2750→350

 

(ロック・シューターの攻撃力を無理やり上げる気!?

 でも、それならエクシーズモンスターを呼んだ理由は・・・)

 

「僕はさらに装備魔法、リビング・フォッシルを発動

 自分の墓地のレベル4以下のモンスターを効果を無効にし、攻守を1000ポイントダウンさせ特殊召喚する。

 来て、CC隻眼のパスト・アイ!」

 

 パスト・アイ DEF1000→0

        ATK1400→400

        闇→地

 

「そして、最後に手札からこのマジックカード、星に願いを、を発動

 このカードは僕のフィールドの表側表示モンスター1体を選択し、選択したモンスターと同じ攻撃力または守備力を持つモンスターはすべて、そのモンスターと同じレベルになる。

僕が選択するのはロック・シューター、よって同じ守備力0のパスト・アイのレベルは6になる。」

 

 パスト・アイ LV3→6

 

「パスト・アイのレベルが6に!?」

 

「僕はレベル6となったパスト・アイと地属性のロック・シューターの2体でオーバーレイ!

 全てを撃ち抜く精巧なる銃よ、我が目に宿りて、その力捧げよ!エクシーズ召喚!」

 

 混沌の渦の中に消えるロック・シューターとパスト・アイ

 そこから現れるのは無数の岩を従えた悪魔の顔を模した鎧

 

「現れろ、全てを弾き返す究極武装!CCC鎧重化身ロック・アーマー!!」

 

 ロック・アーマー ATK2500 ORU2

 

「エクシーズのCCCモンスター!?」

 

「ロック・アーマーは戦闘する地属性モンスターの効果を無効にし、戦闘時オーバーレイユニットを1つ使うことでフィールド上のこのカードと同じ属性を持つモンスター全ての守備力の合計値の半分をこのカードの攻撃力に加える。」

 

(このカードの為に守備力の高いベアトリーチェを!)

「でも、まだ僕のライフは700ポイント残る!」

 

「いや、残さない!

 ジャンク・コレクターの効果発動

 このカードと墓地の通常トラップ1枚を除外して、その効果を発動させる!

 僕が使うのはD2シールド!

 自分フィールド上のモンスター1体の守備力を、元々の守備力の倍にする。

 ベアトリーチェの守備力を倍に!」

 

 ベアトリーチェ DEF2800→5600

 

「なっ!?」

({2000+5600+1800+1000}÷2+2500=7700

 それが4600のABC―メタル・ホールドと戦闘すればライフポイント3000の僕は!?)

 

「行って、ロック・アーマーで攻撃!

 この瞬間、ロック・アーマーのオーバーレイユニットを1つ使い効果発動!

 フィールド上の全ての地属性モンスターの守備力の合計の半分の数値をこのカードの攻撃力に加える!」

 

ロック・アーマー ――オオオォォォォォォォォ!!

        ATK2500→7700 ORU2→1

 

 地鳴りのような音を上げながら大量の岩が鋼鉄の守護者の周りに浮かび上がり、ロック・アーマーから発せられた雷が岩に伝播してメタル・ホールドと相手に降り注ぐ。

 

「うわああぁぁぁぁぁ!!」

 LP3000→0


『大逆転!融合、シンクロ、エクシーズを使いこなしジュニアコース優勝の座を手に入れたのはLDSの赤馬 零羅選手だー!!』

 

――ワアアアァァァァァァァ!!

 

 歓声が勝者に、零羅君に送られる。あぁ、悔しいな。

 僕はまだ、ぼうと固まっている零羅君のもとに歩み寄る。

 

「優勝おめでとう。

 3つの召喚法を操るなんて先生、いや赤馬社長みたいだったね。」

 

「!!あ、ありがとう・・・」

 

 照れているのか、顔を真っ赤にして伏し目で顔を隠してそう言われた。

 やっぱり、赤馬社長の身内なのかな?

 

「君とのデュエル、とっても楽しかったよ。

 よかったら、またデュエルしてくれるかな?」

 

「ぼ、僕も!君とのデュエル、とってもわくわくした。

 だから、僕の方こそ、また、デュエルしたい・・・君や、君の友達と・・・」

 

 顔を上げた零羅君は百面相をしながら嬉しくなることを言ってくる。

 

「うん、もちろんだよ!また、楽しいデュエルをしよう!」

 

「うん・・・!!?」

 

――ガタガタガタガタガタガタッ!!

 

 握手した手から伝わってくる震え、そして零羅君はいきなり崩れ落ちる。

 

「!?」

 

 頭を打つ前に零羅君を支える、凄い震えだ、顔を見ると脂汗が浮かんでいる

 

「ど、どうしたの!?大丈夫!?」

 

「わ、わからない・・・でも・・・」

 

「でも?」

 

「怒ってる。とても、強く!」

 

「えっ!?怒っているって、誰が・・・!!?」

 

――ギャオオオオォォォォォォォォォォ!!

 

 突如響き渡る咆哮、顔を上げた僕が見たのは、

 

――ゴオォォォォォォォ!!

 

 真っ赤に燃えた空だった。




地獄の門は開かれ、蟲が荒れ狂い、亡者に取りつかれた幽鬼が彷徨い歩く
されど、陽より落されし炎がそれを打ち払う。

祝え!歴史を塗り替え、再誕せし新たなる王を!!
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『器在らざる世界の王』
さぁ、ゲーム盤は整えましたわ。
存分にゲームをお楽しみください。我がマジェスティ


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器在らざる世界の王

予想されている方もいましたね
にしてもこの犬どもルビを振るのがめんどくさい
(長すぎるとルビになってくれないのを初めて知りました)


「もう1時間経っちゃったわね・・・」

 

 アクションフィールド、ワンダー・カルテットが展開され、街の中が別世界みたいに変わった。

 エリアは火山、遺跡、ジャングル、そして今私の居る氷河エリア。

 体感システムの所為で滅茶苦茶寒いわ・・・上着持ってきたほうが良かったかなぁ~?本当は夏だけど。

 

「しっかし、全然見つからないわね。」

 

 ヒントもなしに街中に散らばったカード(といっても様変わりしているけど)を見つけるのはやっぱり難しいわね。

 アンティが出来るのは2枚からだし、1枚じゃあね・・・

 あぁ~あ、遊矢だったら何枚も見つけるんだろうなぁ~

 

「おい、見つけたか?」

 

「いや、ターゲットはまだ、発見できていないらしい。」

 

 人の声?でも遊矢達じゃなさそう

 あれ、今って、大会参加者以外は街に入れないんじゃ?

 氷の陰から声の主をこっそり見てみると、そこには変な仮面を被った人たちが話し合っていた。何あれ?

 

「4班が榊 遊矢と思わしき奴と交戦に入ったらしい!」

 

「何!?」

 

「ちっ、先を越されたか!」

 

 えっ!?遊矢!?

 

「我々も急ぐぞ!」

 

「「おう!!」」

 

「ちょ、ちょっと待ちなさい!!」

 

「「「何者だ!!」」」

 

 いや、それ、こっちの台詞!!

 

「あなた達こそ何者よ!今ここは一般人は立ち入り禁止のはずよ!」

 

 どう見ても怪しいコスプレの一団、4班とか言っていたしほかにも仲間が居そうね。

 観察していると3人のうち一人が、驚いたように後ずさる。

 

「ん?セレナ様!?」

 

 セレナ?えっ、誰?

 

「セレナ?私は柚子よ。

 大会の関係者じゃなさそうね。遊矢に何をするつもり?」

 

「あぁ、資料に有った榊 遊矢の関係者か。」

 

「ならばちょうどいい、こいつを人質にしよう。」

 

 えっ!?人質?

 

「それはいい!

 そうすれば我らの勝利は揺るぎない!プロフェッサーもお喜びになるだろう!」

 

「おい女!大人しくアカデミアの為、いや世界の為に、我らに捕まれ!

 大人しくすれば、痛い目に遭わなくて済むぞ?」

 

 げらげらと下卑た嗤いをするコスプレ集団。

 ちょっと待って、こいつら今、アカデミアって言った!?

 

「あなた達、今、アカデミアって・・・」

 

「そう、我らは栄光あるアカデミアの戦士!」

 

「そして、その中でもプロフェッサーに選ばれた誇り高きエリート!」

 

「オベリスクフォースだ!」

 

 間違いない!こいつら、ユートの仲間を攫ったっていう奴らの仲間ね!

 でも、なんで遊矢を?

 

「あなた達、遊矢に何をするつもり?」

 

「奴は、世界を滅ぼす悪魔だとプロフェッサーは言っていた。」

 

「だから我らは正義の為、世界の為、奴を討伐しに来たのだ。」

 

「奴の首を持って帰れば、さぞプロフェッサーはお喜びになることだろう!」

 

 討伐!?それにく、首って、こいつら遊矢を攫いに来たんじゃなくて、殺しに来たの!?

 

「それを聞いて、あなた達を遊矢の所に向かわせるわけにはいかないわ!」

 

 大会中なら、どこかにカメラがあるはず、私がこいつらを足止めして、警備の人が来るまで時間を稼ぐ!

 そしたら、ユートの仲間の事も何か分るかもしれないし。

 

「ほう、我らとデュエルするつもりか?」

 

「痛い目に」

 

「遭いたいらしいな。」

 

 ちょ、ちょっと!?3人ともデュエルディスク起動させたわよ!?

 まさか、3対1のバトルロイヤル!?それはヤバいわよ!!

 

「柚子殿おおぉぉぉ!!」

 

――ボムッ!!

 

「うわっ!?」

 

「なんだ!?」

 

 辺り一面に煙が発生し、私は誰かに抱えられて、その場を離脱したみたい。

 この声は・・・

 

「月影さん!?」

 

「日影でござる。」

 

 あ、ハズレたか

 

「柚子殿、奴らと戦っては駄目でござる!危険でござるよ!」

 

 日影さんはあいつら、アカデミアの事を知っているの?だったら、

 

「ま、まって、あいつら、遊矢を狙っているみたいなの!」

 

「えっ!?」

(奴らの狙いは、柚子殿とセレナ嬢なのでは?)

 

「あいつら、遊矢の事を討伐だとか、首を取るとか言っていたの!

 ねぇお願い!私を遊矢の所に!!」

 

(奴らの狙いが、遊矢殿だとするなら、あの人数が遊矢殿に襲い掛かる・・・)

「とりあえず、月影と合流するでござる。」

 

「えっ!?ちょっと!?私は遊矢の所に」

 

「戦地に警護対象を連れて行くわけにはいかないでござる!!」

 

 警護対象ってどう言う事!?遊矢ー!!


「なぁ?いつまでついてくる気なんだ?」

 

「つれないなぁ遊矢は、僕は君と友達になりたいのに~」

 

「友達?」

 

「そう!デュエルをすれば、みんな友達さ!

 ねぇ~だから、早くデュエルしようよ!」

 

 白々しい、大方親父を馬鹿にしたから、懲らしめてエンタメデュエルの事を認めさせるとか、そういう発想なんだろうなぁ・・・

 バトルロイヤルが開始から1時間ほどだが、始まってからずっとデニスがくっ付いてきている。

 

「生憎とまだ、デュエルする気はないんでね。

 それより、2枚もうあるんだったら、他に持っている奴を探したほうがいいんじゃないか?」

 

「NO!僕の一戦目は君に決めているんだ。

 だから早く、2枚目を見つけてよ、僕も手伝うからさ!

 2人で最高のエンタメをしようよ!」

 

「だから、俺はエンタメには興味ねぇって・・・」

 

 今セットしているデッキでエンタメなんて到底無理だろうしな。阿鼻叫喚にはなると思うけど。

 さて、氷河エリアに行った柚子と並行する形で遺跡エリアの端、元が湾岸倉庫の所まで来たけど、素良の奴は現れるかな?

 黒咲とまったく接点がないから、アカデミアにいるかもしれないけど。

 

「見つけたぞ!!」

 

「ん?」

 

 声をのした方に振り向けば、何故か同じフォームで走ってくる怪しい仮面の3人組。

 見つけた?

 

「おや、何だい君たち?今は大会中だよ?」

 

「我らはオベリスクフォース!」

 

「栄光なるアカデミアの誇り高き戦士!」

 

「偉大なるプロフェッサーの命を受け、世界を滅ぼす悪魔、榊 遊矢を討伐しに来た!」

 

 なんでこいつら3人でしゃべってるんだ。

 しかし、俺を討伐ってどういう事?セレナを迎えに来たんじゃないのか?

 

「俺を討伐?何いってんの?

 それに、世界を滅ぼすなんて一介のデュエリストでしかない俺にできるはずないじゃん。

 そんなこと吹聴している、プロフェッサーとやらはよっぽど頭がイカれているようだ。」

 

「なんだと!偉大なるプロフェッサーを愚弄するか!!」

 

「我らが世界の救世主であるプロフェッサー零王を馬鹿にするなど!」

 

「万死に値する!!」

 

 いや、俺を討伐しに来たんだから、元々殺す気だろ。

 にしても、ちょっと煽っただけで情報をポロ出ししているが、軍人としてそれでいいのか?

 

「Wow、なんだかヤバそうな連中だね。

 遊矢、ここは僕も手伝うから、こいつらをとっとと倒してしまおう!」

 

 デニスが協力?ふむ。

 

「まぁ、いいだろう。」

 

『『『『『決闘(デュエル)!!』』』』』

 

 あぁ、やっぱり3人同時か。


「先攻は俺だ!俺はまず、手札から永続魔法、古代の機械要塞(アンティーク・ギアフォートレス)を発動

 自分フィールドのアンティーク・ギアモンスターは召喚、特殊召喚されたターンには相手の効果対象にならず、破壊もされなくなる。

 さらにアンティーク・ギアカードの効果発動に対して、相手はマジック、トラップ、モンスター効果を発動できない。」

 

 へぇ~最初からそのカードを使ってくるか

 彼らが敗退した時、僕が遊矢に止めを刺そうかと思ったけど、必要なかったかな?

 

「さらに手札からマジックカード、融合派兵を発動

 エクストラデッキの融合モンスター1体を相手に見せ、そのモンスターにカード名が記されている融合素材モンスター1体を手札、デッキから特殊召喚する。

 俺は古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイト・ハウンドドッグ)を公開し、デッキから古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)を特殊召喚!」

 

古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)「グオオォン!」

       ATK1000

 

 僕たちアカデミアが誇る狩人の象徴、古代の機械猟犬!

 特殊召喚ゆえにバーン効果の発動は出来ないけど、

 

――ブウゥゥゥン!!

 

 ん?なんだ、虫の羽音みたいな、ヒッ!?

 

「融合派兵発動時に手札の増殖するGの効果を発動した。

 このターン、相手が特殊召喚を行うたびに俺はカードを1枚ドローする。

 ゆえに俺は1枚ドローだ。」

 

 カサカサと遊矢の周りを飛び交う黒い影。

 卒倒物の光景だけど、遊矢は平然と黒い影に取り巻かれている。

 

「ぬぅ!?しかたない、さらにマジックカード、融合徴兵を発動

 エクストラデッキの融合モンスターカード1枚を公開し、そこに書かれた融合素材モンスターを1体手札に加える。

 ただし、このカードの発動後、ターン終了時まで手札に加えたカードと同名のカードは通常召喚、特殊召喚出来ず、効果も発動できない。

 俺は再び古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイト・ハウンドドッグ)を見せ、古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)を手札に加える。

 そして、手札からマジックカード、融合発動!」

 

「融合発動時に手札の応戦するGの効果を発動

 相手がモンスターを特殊召喚する効果を含む魔法カードを発動した時、このカードを手札から特殊召喚する。」

 

 応戦するG DEF1400

 

 遊矢の周りを飛んでいた黒い影は2つに分離し、1つはモンスターとしてフィールドで羽音を響かせる。

 

「ちっ!俺はフィールドと手札の古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)2体を融合!

 古の魂受け継がれし、機械仕掛けの猟犬達よ!群れ成して交じり合い、新たなる力と共に生まれ変わらん!融合召喚!

 現れよ!レベル5、古代の機械(アンティーク・ギア・)双頭猟犬(ダブルバイト・ハウンドドッグ)!!」

 

古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイト・ハウンドドッグ)「「ギュオオォォォォン!」」

         ATK1400

 

 特殊召喚されたモンスターにカウンターを置き、カウンターが乗ったモンスターとアンティーク・ギアモンスターが戦闘を行った時、ダメージ計算前に問答無用で破壊する。

 呪われた魔犬が1ターン目で出たか。

 

――ブウゥゥゥン!!

 

「なっ!?なんだ!!?」

 

 前方に出た黒い影から3本の触手のように影が伸び、オベリスクフォースの墓地へ置かれようとしているカードへと喰らい付く

 なんだ!?

 

「あぁ、応戦するGの効果だ

 自身の効果で特殊召喚されているこいつがモンスターゾーンに存在する限り、墓地へ送られるカードは墓地へは行かず除外される。

 ついでに、増殖するGの効果は継続しているから1枚ドローだ。」

 

 オベリスクフォースの古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)2枚と融合が応戦するGに喰い千切られる。

 なんて奴だ、僕たちアカデミアの戦士の象徴である融合を!

 

「キサマ!よくも俺の融合を!!」

 

「恨むんだったら、自分の不運を恨むんだな。」

 

「次は俺のターンだ!ドロー

 俺も永続魔法、古代の機械要塞(アンティーク・ギアフォートレス)を発動し、手札から古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)を召喚!」

 

古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)「ワオォン!」

       ATK1000

 

「このモンスターの召喚に成功した時、相手プレイヤーに600ポイントのダメージを与える!」

 

「うおっ!」

 LP4000→3400

 

 ふふふ、やるじゃないか。

 僕が手助けして、彼から信頼を得た後、ボロボロの彼を僕が倒すって言うのが最高のシナリオだけど、この調子じゃ彼らに負けてしまいそうだね、遊矢?

 

「さらに俺は古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)の効果発動

 1ターンに1度、自分の手札、フィールドから融合素材モンスターを墓地へ送り、アンティーク・ギア融合モンスターを融合召喚する!」

 

「じゃあ、その効果にチェーンして手札から儚無みずきと増殖するGの効果発動

 このターン、相手が効果モンスターをメインフェイズ及びバトルフェイズに特殊召喚するたびに俺はその攻撃力分のライフを回復する。

 なお、応戦するGの効果でこの2枚は除外される。」

 

「ちっ!またか!!俺はフィールドの古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)と手札の古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)を融合

 古の魂受け継がれし、機械仕掛けの猟犬達よ!群れ成して交じり合い、新たなる力と共に生まれ変わらん!融合召喚!

 現れよ!レベル5、古代の機械(アンティーク・ギア・)双頭猟犬(ダブルバイト・ハウンドドッグ)!!」

 

古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイト・ハウンドドッグ)「「ギギャオオオォォォ!!」」

         ATK1400

 

「儚無みずきの効果でライフが1400回復、さらに増殖するGの効果で1枚ドロー。

 そして、お前が素材にしたカードたちはすべて除外される。」

 LP3400→4800

 

 花の花弁が舞い、黒い影が遊矢に手札を運び、そしてその影がオベリスクフォースの手札を貪る。

 

「ちっ!!永続魔法、古代の機械城(アンティーク・ギアキャッスル)を発動、フィールドのアンティーク・ギアモンスターの攻撃力を300ポイントアップさせバトルだ!

 双頭猟犬(ダブルバイト・ハウンドドッグ)で応戦するGに攻撃!」

 

 古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイトハウンドドック) ATK1400→1700

 

 古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(ダブルバイト・ハウンドドッグ)が黒い影の塊に圧し掛かり霧散させる。

 だがその陰は遊矢の手の下に集まり、1枚のカードとなる。これは!?

 

「・・・応戦するGの効果、こいつがフィールドから墓地へ送られたことでデッキから応戦するG以外の攻撃力1500以下の昆虫族、地属性モンスターを1枚手札に加える。

 この効果で俺は増殖するGを手札に加えた。」

 

 な、なんて抜け目のない・・・

 ライフの回復、手札増強、攻撃のいなし、相手の妨害、ターンが回ってないのにここまでやるなんて!?

 

「くっ!なら俺は融合派兵を発動!

 エクストラデッキの双頭猟犬(ダブルバイト・ハウンドドッグ)を見せ、デッキから古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)を特殊召喚!」

 

 古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ) ATK1000→1300

 

「効果モンスターの特殊召喚により俺のライフが回復、そして、ドロー。」

 LP4800→6100

 

古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)の効果発動

 フィールドの古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイト・ハウンドドッグ)古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)の2体を融合

 古の魂受け継がれし、機械仕掛けの猟犬達よ!群れ成して交じり合い、新たなる力と共に生まれ変わらん!融合召喚!

 現れよ!レベル7、古代の機械(アンティーク・ギア・)三頭猟犬(トリプルバイト・ハウンドドッグ)!!」

 

古代の機械(アンティーク・ギア)三頭猟犬(・トリプルバイト・ハウンドドッグ)「「「ワオオオオォォォォン!!」」」

         ATK1800→2100

 

「三度俺のライフが回復し、増殖するGの効果でドローだ。」

 LP6100→8200

 

「ちっ!カードを2枚伏せてターンエンド。後は頼むぞ。」

 

「おう!俺のターン、ドロー!

 俺はまず、古代の機械要塞(アンティーク・ギアフォートレス)を発動!

 さらに手札からマジックカード、精神操作を発動

 相手フィールド上のモンスター1体をこのターン、俺のコントロール下に置く。

 ただし、そのモンスターは攻撃できず、リリースもできない。

 古代の機械(アンティーク・ギア)三頭猟犬(・トリプルバイト・ハウンドドッグ)を俺のフィールドに移す。」

 

 へぇ、うまいね。

 そして古代の機械(アンティーク・ギア)三頭猟犬(・トリプルバイト・ハウンドドッグ)を自分のフィールドに呼んだということは

 

「そして、融合発動!

 手札の古代の機械獣(アンティーク・ギアビースト)とフィールドの古代の機械(アンティーク・ギア・)三頭猟犬(トリプルバイト・ハウンドドッグ)を融合する!」

 

「手札の増殖するGを捨て、効果を発動する。」

 

「古の魂受け継がれし、機械仕掛けの猟犬達よ!群れ成して交じり合い、新たなる力と共に生まれ変わらん!融合召喚!

 現れよ!レベル9、古代の機械(アンティーク・ギア・)究極猟犬(アルティメット・ハウンドドッグ)!!」

 

古代の機械(アンティーク・ギア)究極猟犬(・アルティメット・ハウンドドッグ)「「「グオオオオォォォォン!!」」」

         ATK2800→3100

 

 現れるのは三つの首に無数の蛇の尾、さらに胴に巨大な口が付いた機械でできた地獄の番犬。

 前の彼が発動させた古代の機械城(アンティーク・ギアキャッスル)の効果でパワーアップもした。

 

「特殊召喚により、1枚ドローする。」

 

「ハッ!いまさら無駄なことだ!

 究極猟犬(アルティメット・ハウンドドッグ)が融合召喚に成功した時、相手のライフを半分にする!

 喰らえ榊 遊矢!ヘル・ハウンドフレイム!!」

 

――ゴポオオォォォォォォ!!

 

「ぐうああぁぁぁぁぁ!!」

 LP8200→4100

 

 遊矢が火炎に焼かれて、地面を転がる。

 ふふ、いい気味だ。

 

「大丈夫かい!遊矢!!

 そんな、リアルソリッドビジョンとはいえ、こんなダメージが!?」

 

「見たか!正義の鉄槌を!!」

 

 オベリスクフォースのその言葉に、立ち上がった遊矢は目に見えて機嫌を悪くする。

 

「はぁ?正義?

 じゃあ、俺がどうやって世界を滅ぼすか、知っているのか?」

 

「プロフェッサーが仰っていたのだ!貴様は世界を滅ぼす悪魔だと!」

 

 オベリスクフォースのその言葉に、遊矢は青筋を立てている。

 どういう事だ、いきなりこんな状況に置かれて、なぜ彼はこんなに冷静なんだ!?

 

「ほう、そのプロフェッサーがどんな奴だろうが、ろくでもない奴であることは確かなようだな。」

 

「何だとキサマ!!」

 

「プロフェッサーを愚弄するか!!」

 

「あぁ、俺の知り合いに仲間を攫われ、故郷を焼かれた奴がいるんだが、お前達はどう思う?」

 

「な、何だ突然。」

 

「それと、これと、何の」

 

『いいから答えろ。』

 

 遊矢の真紅の目がオベリスクフォースを捉えている。

 僕も彼らも、その有無を言わせぬ物言いに押し黙ってしまう。

 そして、オベリスクフォースの1人がその答えを口にする。

 

「か、可哀そうだと・・・思う。」

 

「へぇ~ちなみにそいつから聞かせてもらったんだが、それをやった奴らは『アカデミア』っていうらしいんだが、何か知らないか?」

 

 !?そんな、なんで彼がそのことを、いや、いるのか!?

 このスタンダードに、エクシーズ次元の住人が!?

 

「は、ハッ!

 なんだ、そいつはエクシーズの奴らの事か!

 だったら、なんてことはない!奴らは栄光なるアカデミアの礎となったのだ!」

 

「そうだ!我らが真なる目的、4つの世界を1つにするという目的のためにな!」

 

「だが、安心するがいい

 礎となった者たちは皆、アカデミアの下で一つとなった世界で再生する。

 真なる楽園で、再び生を得るのだ!それらが我らが目的、アークエリアプロジェクトなのだからな!」

 

 そうだ、そのために僕たちは戦っている。真なる平和の為に・・・

 

「へぇ~御大層なスローガンだな。

 で、4つの世界と言っていたが、この世界だけで人口が70億ほどいるんだが・・・280億人に膨れ上がった人口を賄う食料はあるのか?」

 

 えっ?

 

「えっ?」「何を。」「言って・・・」

 

「当然じゃないか、4つの世界の住人が一つの世界に集まるわけだろう?

 食料やエネルギーとか確保できなかったら、そのうち奪い合うに決まっているじゃないか。

 いや、それ以前にエクシーズの人たちがお前らと同じ箱庭に入れられて、心穏やかにいられるかな~?」

 

「そ、それは・・・」

 

「「・・・・・・」」

 

 彼らは沈黙してしまう。僕もそんなこと考えもしなかった。

 いや、考えないようにしていたのかもしれない。

 一つとなった後の世界のことなど・・・


 あぁ、なんて愚かな奴らなのだろうか。

 少し考えれば無茶なことだと、何故そう思わなかったのか。

 沈黙してしまったオベリスクフォースたちは意気消沈していたが、突然頭を押さえて苦しみだす

 

「うぅ・・・そうだ、プロフェッサーの言う事は正しいんだ・・・」

 

「俺たちの世界を救ってくれたあの人の下でなら、一つの世界も平和になる・・・」

 

「だから、滅びを呼ぶ悪魔を、榊 遊矢を倒す!!」

 

 抑揚のない声で、呟かれた言葉。

 脈絡も中身もないけど、まだ戦う気ではあるようだ。

 

「速攻魔法、リミッター解除!自分フィールド上の機械族モンスターの攻撃力は倍となる!」

 

 古代の機械(アンティーク・ギア)究極猟犬(・アルティメット・ハウンドドッグ) ATK3100→6200

 

「これで終わりだ!古代の機械(アンティーク・ギア)究極猟犬(・アルティメット・ハウンドドッグ)で榊 遊矢にダイレクトアタック!!」

 

 俺は手札から1枚のカードをデュエルディスクに置く

 すると耳障りな羽音と共に煙が辺りにまき散らされ、突撃してきた究極猟犬(アルティメット・ハウンドドッグ)と俺を飲み込む

 

「や、やった!」

 

「奴のライフは4100、これで!」

 

 それはフラグと言うんだ

 

――ブウウゥゥゥゥゥゥゥン!!

 

「「「「!?」」」」

 

 黒い煙はいつしか無数の羽虫となって究極猟犬(アルティメット・ハウンドドッグ)の牙を俺に届かせないように拘束している。

 突撃の衝撃は殺せず、少し後ずさったが。

 

「手札のスモーク・モスキートの効果

 戦闘ダメージを受ける時、こいつを特殊召喚し、そのダメージを半分にしバトルフェイズを終了させる。」

 LP4100→1000

 

 スモーク・モスキート DEF0

 

「そ、そんな!?」

 

「馬鹿な!?」

 

「これでも仕留めきれないだと!?

 えぇい!カードを1枚セットして、ターンエンドだ。

 エンドフェイズ、リミッター解除の効果を受けたモンスターは破壊される。」

 

 拘束されていた究極猟犬(アルティメット・ハウンドドッグ)は部品が飛び散り、スクラップとなって崩れ去る。

 そして、羽虫たちは結集し口が葉巻のようになった蚊のモンスターに変化する。

 

 しかし、この3人目のオベリスクフォースの手札は古代の機械獣(アンティーク・ギアビースト)、融合、リミッター解除、古代の機械要塞(アンティーク・ギアフォートレス)、精神操作、そしてセットされたカード1枚。

 事故一歩手前どころか事故っている手札だ。

 何より不可解なのは俺のライフと手札が増強する状況でありながら古代の機械(アンティーク・ギア)三頭猟犬(・トリプルバイト・ハウンドドッグ)を融合召喚する事を強行した2人目。

 そう、まるで3人目の手札が分かっていたかのような動き方。

 

「あぁ、そうか・・・」

 

 さっきの奴らの苦しみ方、そういうカラクリか。

 

「なるほどな、俺のターン、ドロー」

 

「キサマのターンに入った時、このカードを発動する!

 永続トラップ、古代の機械蘇生(アンティーク・ギアリボーン)!自分フィールド上にモンスターがいない時、墓地のアンティーク・ギアモンスターを召喚条件を無視し、攻撃力を200ポイントアップさせて特殊召喚する。

 蘇れ!古代の機械(アンティーク・ギア)究極猟犬(・アルティメット・ハウンドドッグ)!!」

 

古代の機械(アンティーク・ギア)究極猟犬(アルティメット・ハウンドドッグ)「「「グオオオォォォンン!!」」」

         ATK2800→3300

 

「俺も永続トラップ発動、古代の機械蘇生(アンティーク・ギアリボーン)!俺が特殊召喚するのは古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイト・ハウンドドッグ)だ!」

 

古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイト・ハウンドドッグ)「「ワオオオォォン!!」」

         DEF1000

         ATK1400→1900

 

 これで破壊効果を持つ古代の機械(アンティーク・ギア・)双頭猟犬(ダブルバイト・ハウンドドッグ)が2体、そして1人目が伏せたカードがまだ1枚リバースで残っている。

 あぁ、これがタイマンだったら面白かったのに・・・

 

「なぁ、これ楽しい?」

 

「はっ?」

 

「何を言っている。」

 

「ターンの回っていない奴に攻撃してさぁ~マナーがなっていないんじゃないの?

 それに、随分と狡い手を使ってくれるじゃないか?」

 

「なんだと?」

 

「ふん、何を言い出すのかといえば、言いがかりか!」

 

「悪魔とはずいぶん腑抜けた野郎の様だな!戦いにマナーも何もあるか!!」

 

 戦争にだってルールとマナーはあるさ。

 そう、犯してはならない絶対的な一線、これがゲームならなおさらな。

 

「あぁ、そうだ、お前達はハンティングゲームと称して戦争ごっこをやっているんだったな?

 デュエルする気がないわけだ。」

 

「ごっこだと!!」

 

「何処まで我らを!」

 

「侮辱するつもりだ!」

 

「どこまででもさ。

 ルールもマナーも守れない奴らに、ゲームも戦争も付きあう価値なんてないからな。

 俺はスケール6のEM(エンタメイト)ギタートルとスケール3のEM(エンタメイト)シール・イールをペンデュラムゾーンにセッティング。」

 

 光の柱に浮かび上がる、体がギターになった亀と口にバッテンマークの付いたうなぎ。

 

「ギタートルがペンデュラムゾーンに居る時、EM(エンタメイト)モンスターをペンデュラムゾーンに置いたことによりペンデュラム効果が発動、デッキから1枚ドローする。

 そして、シール・イールの効果で1人目の古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイト・ハウンドドッグ)の効果をこのターン中無効にする。」

 

 古代の機械要塞(アンティーク・ギアフォートレス)の対象を取れなくする効果が発揮されるのは召喚ターンのみ、1人目に対しては問題なく使える。

 

「さらに永続魔法、炎舞―天璣を発動

 このカードの発動時、デッキから獣戦士族モンスターを1体手札に加える。

 俺が手札に加えるのはEM(エンタメイト)オッドアイズ・ミノタウロス

 

 魔法カード、EM(エンタメイト)ポップアップ、手札を3枚まで捨て、捨てた枚数分ドローする。

 俺は手札のEM(エンタメイト)スプリングース、カレイドスコーピオン、ラクダウンを捨て3枚ドロー

 そして、自分のペンデュラムゾーンのカード2枚のペンデュラムスケールでペンデュラム召喚可能なレベルを持つ、EM(エンタメイト)、オッドアイズ、魔術師ペンデュラムモンスターを手札から特殊召喚出来る。

 俺のペンデュラムゾーンのスケールは3と6、よってレベル4のEM(エンタメイト)ペンデュラム・マジシャンを特殊召喚。」

 

ペンデュラム・マジシャン「はっ!」

            DEF800

 

「ペンデュラム・マジシャンの効果発動

 自分フィールド上のカードを2枚まで破壊し、デッキからペンデュラム・マジシャン以外のEM(エンタメイト)モンスターを破壊した枚数分手札に加える。

 ただし、同名は1枚だけ

 俺はペンデュラム・マジシャン自身と炎舞―天璣を破壊しデッキからEM(エンタメイト)オッドアイズ・ユニコーンとEM(エンタメイト)ドクロバット・ジョーカーを手札に加え、EM(エンタメイト)ドクロバット・ジョーカーを召喚する。」

 

ドクロバット・ジョーカー「いひひひっ!」          

            ATK1800

 

 白黒の道化師が現れ、被っている髑髏の描かれたシルクハットから取り出される雨合羽。

 

「このモンスターの召喚時、デッキからEM(エンタメイト)、オッドアイズ、魔術師ペンデュラムモンスターの内、どれか1種類を1枚手札に加える。

 俺が手札に加えるのはEM(エンタメイト)レインゴート。

 

 魔法カード、貪欲な壺発動

 墓地の5体のモンスター、増殖するG2体、応戦するG、EM(エンタメイト)カレイドスコーピオン、EM(エンタメイト)ラクダウンをデッキに戻して2枚ドロー

 そして、揺れろペンデュラム、異界へ繋がる道を開け!ペンデュラム召喚!

 舞い戻れ!EM(エンタメイト)ペンデュラム・マジシャン!」

 

ペンデュラム・マジシャン「ふんっ!!」

            ATK1000

 

 空から光とともに現れる振り子の魔術師。

 やはり、融合次元にはないのか、ペンデュラム召喚を見て驚いている。

 

「これが、ペンデュラム召喚・・・」

 

「この程度で驚くなよ。

 手札より速攻魔法、揺れる眼差しを発動

 ペンデュラムゾーンのペンデュラムカードを全て破壊し、破壊した枚数によって効果を発揮する。

 ギタートルとシール・イールの2枚を破壊し、1枚破壊した時の効果で相手ライフに500ポイントのダメージ

 そうだな、その馬鹿でかい犬っころの飼い主にでも与えておこう。」

 

 天空から釣り下がっていたペンデュラムが相手のフィールドに向かって落ちてゆき、オベリスクフォースにそのペンデュラムの破片が散弾のように振りかかる

 オベリスクフォースにそのペンデュラムの破片が散弾のように振りかかる

 

「ぐわああぁぁぁ!」

 LP4000→3500

 

「な、なんだ!?」

 

「この威力はスタンダードのモノなのか!?」

 

 500ポイント程度のダメージで大げさな奴だ。

 

「そして、2枚破壊した時の効果でデッキからペンデュラムモンスターを1体手札に加える。

 俺が手札に加えるのはオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン

 さらに魔法カード、ペンデュラム・コールを発動

 魔術師ペンデュラムモンスターの効果をまだ使って無いターン、手札を1枚捨て、デッキから名称の異なる魔術師ペンデュラムモンスター2体を手札に加える。

 俺はオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンを捨てデッキから相克の魔術師と相生の魔術師を手札に加える。

 このターンの終了時までペンデュラムゾーンの魔術師カードは破壊されない。」

 

 これで準備ができた。

 

「スモーク・モスキートの効果発動

 1ターンに1度、フィールド上のモンスターと同じレベルになることが出来る。

 よって、スモーク・モスキートのレベルはペンデュラム・マジシャンのレベルと同じ4になる。」

 

 スモーク・モスキート LV1→4

 

「レベル4となったスモーク・モスキートと同じくレベル4のペンデュラム・マジシャンでオーバーレイ

 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!

 来い!竜魔人クィーンドラグーン!!」

 

 混沌から現れる燃え滾る竜の体を下半身にした半人半竜の女性がその手に持つ竜を模した竪琴を鳴らす。

 

クィーンドラグーン「ふん!」

         ATK2200 ORU2

 

「エクシーズ!?」

 

「はっ!負け犬どもと同じ召喚法など、とるに足らん!」

 

古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイト・ハウンドドッグ)の効果発動!

 1ターンに1度、特殊召喚された相手モンスターにギア・アシッドカウンターを置く

 これでそのモンスターが我らのモンスターに攻撃した時、そのモンスターは破壊される!」

 

 クィーンドラグーン ギア・アシッドC0→1

 

 召喚法で優劣を決めるなんて愚の骨頂だな。

 

「クィーンドラグーンの効果発動

 1ターンに1度、オーバーレイユニットを使い、墓地のレベル5以上のドラゴン族モンスターを特殊召喚する。

 ただしそのモンスターは効果は無効化され、このターン攻撃も出来ない。

 オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンを墓地から特殊召喚。」

 

オッドアイズP「ギャオオオォォォォォォ!!」

       ATK2500

 

「新たなモンスターだと!?」

 

「だが、攻撃も出来ず効果も無効ならば、恐れるに足らん!」

 

「そうだ、我らアカデミアに敗北はない!」

 

 敗北はない?狩りとは狩るものと狩られるものの命のやり取りだ、そこに絶対の勝利などない。

 

 なぁ、オッドアイズ、お前は何を考えているんだろうな?

 負けるのが嫌だったか?人を傷つけるのが嫌だったか?見世物にされるのが嫌だったか?

 

「俺はスケール3の相克の魔術師とスケール8の相生の魔術師をペンデュラムスケールにセッティング。」

 

 この頭を焦がすような熱はオマエのモノか?

 

「相生の魔術師は自分フィールド上のカードが相手のフィールドの枚数より多いときスケールが4となる。」

 

 相生の魔術師 PS8→4

 

 いや、デュエルを貶す無法者に腹を立てているのは俺だ。

 

「相生の魔術師のもう1つのペンデュラム効果、1ターンに1度、自分フィールド上のレベル5以上のモンスターとエクシーズモンスターを選択し、このターン中、選択したエクシーズモンスターのランクを指定したもう1体のレベルと同じ数値にする。

 オッドアイズとクィーンドラグーンを選択しクィーンドラグーンのランクを7に変更。」

 

 クィーンドラグーン RANK4→7

 

「ランクを上げた!?」

 

「何をする気だ!?」

 

 この胸に煮えたぎる思いはオマエのモノか?

 

「相克の魔術師のペンデュラム効果、1ターンに1度、自分フィールド上のエクシーズモンスターを選択し、そのモンスターをこのターン中、そのランクと同じ数値のレベルのモンスターとしてエクシーズ召喚の素材にできる。

 これでクィーンドラグーンはこのターン、レベル7のモンスターとしてエクシーズ召喚の素材にできるようになった。」

 

 違うな、俺はオマエの声が聞こえるわけじゃない。

 

「エクシーズモンスターをさらにエクシーズ素材に!?」

 

 この思いは、怒りは、

 

「遊矢、君は一体!?」

 

 俺のモノだ!!

 

「覚悟はいいか?」


月光蒼猫(ムーンライト・ブルー・キャット)が特殊召喚された時、自分フィールドのムーンライトモンスター1体の攻撃力を倍にする。

 私は月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)の攻撃力を倍にする!」

 

 月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー) ATK2400→4800

 

「行け!月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)!お前達の全てのモンスターに2回攻撃!フルムーンクレスタ!!」

 

「「「ぐわああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」

 

 いきなりユートに襲い掛かってきたオベリスクフォースの3人

 1人に対し3人で挑むとはなんという連中だ!

 

「ふぅ、やったぞユート、我々の勝利だ。」

 

「あぁ、そうだな。」

 

 ユートはカードへと変わったオベリスクフォースを見つめている。

 甘い奴だ、とはいえ私もゲスな奴らとはいえ同じアカデミアの仲間を手にかけたのだから、気分がいいものではない。

 

「まさか、アカデミアが戦場でこんなデュエルをしているとは思わなかった・・・」

 

「あぁ、俺もここまで卑怯な手を使ってくる奴らは初めてだから驚いている。」

 

 ユートが先攻で手札抹殺を発動してくれなかったらやられていただろう。

 自分たちだけで連続でターンを回し、私に攻撃を仕掛けてくるとは・・・アンクリボーが居てくれて助かった。

 

「にしても、こいつらは君を狙っている様には見えなかったが・・・」

 

「あぁ、私の事を全く知らない様子だったな。」

 

 普段は閉じ込められているようなものだったし、アカデミアは広いから顔を合わせてない奴がいても不思議じゃないが、追って来たのなら私の顔くらい知っているだろう。

 

「俺を榊 遊矢と間違えて襲って来たみたいだったが?」

 

「それは解からん。

 何故アカデミアが赤いのの事を知っているのかも、皆目見当が付かん。」

 

「ふむ、奴らの狙いは君ではなく榊 ゆうぅ!!?」

 

「!?」

 

 ユートが突然胸を押さえて蹲る。なんだ!?いきなりどうしたんだ!?

 

「大丈夫かユート!?さっきのデュエルで何か・・・」

 

「わ、分らない・・・急に・・・なに・・か・・・」

 

――ドサッ・・・

 

「ユート!ユート!!」

 

 気を失ってしまった、一体何が?ん?

 

「ユートのドラゴンが・・・」

 

 崩れ落ちたときに飛び出たのか、ユートのダーク・リベリオンのカードが飛び出ていた。

 そのカードは、何かに怯える様に弱々しく光っている。なんだこれは?

 なぜ光っているのか確かめるために、そのカードに手を伸ばそうとしたとき

 

――ボオオォォォォォォォォ!!

 

「!!?」

 

 轟音と共に空が燃えた。


『覚悟はいいか?』

 

 その呟きは誰に向けられたものだったのか。

 

「俺はレベル7のオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンとレベル7として扱う竜魔人クィーンドラグーンをオーバーレイ!

 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!」

 

 2条の光は天へと上り、曇天の雲を燃やす

 

「何だこれは!?」

 

「何が起きている!?」

 

 燃えた空は渦を巻き、その中心で竜は覚醒の時を待つ。

 主が祝詞を読み上げるまで。

 

「怒り秘めたる二色の眼の竜よ、紅蓮の翼で地上を蹂躙し、蔓延る愚かな罪人を討滅せよ!エクシーズ召喚!!」

 

――バキバキッ!

 

 渦巻く炎の中で、無機質な竜の装甲が軋み、ひび割れ、その内から強靭な真紅の鋼殻が露わとなる。

 

「天を焦がせし烈火の竜!」

 

 未熟だった羽は炎の翼となり、雄々しく羽ばたき纏わり付いた炎を弾き飛ばす。

 罪人たちを見る二色の眼の片方からは血の涙のごとき赤いラインが突き出た鋼殻へと伝っている。

 そして、その存在を主が認めるため、魂を宿せし(ディスク)に名もなき(カード)が置かれる。

 置かれたカードに無数の像が重なり、魔竜の真の姿と名が刻まれる。

 

 さぁ、その名を告げ、世界に知らしめろ。

 

「覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン!!」

 

オッドアイズ・レイジング「ギャオオォォォォォォオオォォォ!!」

            ATK3000 ORU2

 

 今ここに、この時存在しないはずの魔竜が誕生した。

 

「なんだ、あのモンスター!?」

 

「これはエクシーズなのか!?」

 

「ヒィ・・・!!」

 

「オッドアイズ・レイジング・ドラゴンがエクシーズモンスターを素材にエクシーズ召喚された場合、オーバーレイユニットを1つ使い、1ターンに1度、相手フィールドの全てのカードを破壊する!」

 

「「「何!?」」」

 

 その魔竜は王の怒りの化身、儀式を汚す、罪人を処刑する執行者。

 その背にした燃えた空が魔竜の掲げた腕に導かれるようにうねりを上げ、

 

『レイジングテンペスト!!』

 

 罪人たちに落とされた。


「うぅ・・・あぁ・・・」

 

 気を失っていたか・・・・遊矢が白紙のカードをディスクに置いてそれで・・・

 そうだ、現れたドラゴンが燃えた空を落とすという滅茶苦茶な方法で効果を使ったんだ。

 その凄まじい衝撃で、僕は吹き飛ばされて

 

オッドアイズ・レイジング「グルル・・・」

            ORU2→1

 

 !?

 

――ズシンッ!

 

 顔を上げてみれば、地上へと降り立った紅い魔竜がオベリスクフォースたちを見下ろしている。

 

「ァツッ!?」

 

 頭の混乱が解けて来たのか、手に伝わってくる地面の熱。

 周りを見てみれば、遺跡は倒壊し、煮たった海から湯気が出ている地獄の様な光景が広がっている。

 

「うぅ・・・」

 

「あぁ・・・」

 

「ぐぅ・・・」

 

「そら、起きろ、まだデュエルは終わって無い。」

 

 この惨状を起こした張本人は、何事もなかったかのようにデュエルを進めようとしている。

 

古代の機械要塞(アンティーク・ギアフォートレス)には破壊された時、墓地のアンティーク・ギアを特殊召喚する効果があったな。

 それで、どうだ?使うのか?使わないのか?」

 

 気が付いた彼らに告げられる質問。

 

「ヒッ・・・ヒィ!!俺は墓地から古代の機械獣(アンティーク・ギアビースト)を守備表示で特殊召喚!!」

 

 古代の機械獣(アンティーク・ギアビースト) DEF2000

 古代の機械(アンティーク・ギア)究極猟犬(・アルティメット・ハウンドドッグ) ATK3300→3000

 

 古代の機械要塞(アンティーク・ギアフォートレス)の効果で破壊から免れた古代の機械(アンティーク・ギア)究極猟犬(・アルティメット・ハウンドドッグ)を持つ彼は墓地に眠る、巨大な機械犬を呼び出す。

 その恐怖から逃れるために

 

「あぁあああぁぁぁ・・・俺は墓地の古代の機械(アンティーク・ギア・)三頭猟犬(トリプルバイト・ハウンドドッグ)を守備表示で特殊召喚!!」

 

 古代の機械(アンティーク・ギア)参頭猟犬(・トリプルバイト・ハウンドドッグ) DEF1000

 古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイト・ハウンドドッグ) DEF1000

                   ATK1900→1600

 

 同じく古代の機械要塞(アンティーク・ギアフォートレス)の効果で双頭猟犬を死守した彼は発狂しかけながら新たな壁役を呼び出す。

 痛みから逃れるために。

 

「・・・お、俺は古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイト・ハウンドドッグ)を特殊召喚、守備表示だ・・・」

 

 古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(ダブルバイト・ハウンドドッグ) DEF1000

 

 残る彼は、もはや諦めているのだろう。

 言われるがままに墓地に残る唯一のモンスターを呼びだす。

 

「オッドアイズ・レイジング・ドラゴンは自身の効果で破壊したカードの枚数×200ポイント攻撃力を上げる。

 お前達のカードは占めて10枚、その内2枚が破壊から免れたから破壊できたのは8枚

 よって、レイジング・ドラゴンの攻撃力は1600ポイント上がる。」

 

オッドアイズ・レイジング「グオオォォォォォォオオオオォォ!!」

            ATK3000→4600

 

 咆哮を上げる魔竜の節々から上がる炎。

 全身の鋼殻もまるで血管が浮き出る様に紅いラインが浮かび上がる。

 

「墓地のEM(エンタメイト)スプリングースの効果発動

 自分のメインフェイズに墓地からこのカードを除外することで、自分のペンデュラムゾーンのEM(エンタメイト)カードか魔術師カード、フィールドのペンデュラムモンスターの中から2枚を対象にし、そのカードを持ち主の手札に戻す。

 

 俺はペンデュラムゾーンの相克の魔術師と相生の魔術師を手札に戻し、新たにスケール6のEM(エンタメイト)オッドアイズ・ミノタウロスとスケール8のEM(エンタメイト)オッドアイズ・ユニコーンをペンデュラムスケールにセットする。」

 

 大盾を持った男性と弓を構えた女性が消え、新たに発生した柱に上るのは異虹彩の魔物たち。

 

「バトルフェイズに入って速攻魔法、竜の闘志を発動

 このカードはこのターン特殊召喚されたドラゴン族モンスターを対象にして発動できる。

 対象モンスターはこのターン通常の攻撃に加えて相手フィールド上の特殊召喚されたモンスターの数まで、一度のバトルフェイズ中に攻撃できる!」

 

「「「なんだと!!?」」」

 

「こいつは素で2回攻撃できる効果を持っているが・・・古代の機械要塞(アンティーク・ギアフォートレス)の効果を使わなかったら3回で済んでたのにな?

 オッドアイズ・レイジング・ドラゴンで古代の機械獣(アンティーク・ギアビースト)へ攻撃

 そして、オッドアイズモンスターの攻撃時、オッドアイズ・ユニコーンのペンデュラム効果を発動できる。

 このカードがペンデュラムゾーンにある限り一度だけ、戦闘するオッドアイズモンスターの攻撃力をそのモンスター以外のEM(エンタメイト)モンスターの攻撃力分アップさせる。

 レイジング・ドラゴンにドクロバット・ジョーカーの攻撃力1800ポイントを加える。」

 

 オッドアイズ・レイジング ATK4600→6400

 

「あっ・・・あぁ・・・・」

 

 告げられる無慈悲な宣言。

 そして、放たれた魔竜の拳は獣を砕き、究極まで上り詰めたアカデミアの象徴すら粉々にし、オベリスクフォースの一人にその拳を付きたてた。

 

「ぐわあああぁぁぁぁぁぁ!!」

 LP3500→0

 

「さて・・・次はど、い、つ、に、し、よ、う、か、な?」

 

 遊矢は残り2人のオベリスクフォースたちを交互に指差す。

 まるで、どちらのおもちゃで遊ぼうかと決めかねている子供の様に。

 

「ひぃ・・・ああああぁぁぁぁぁぁぁあああああああああAAAAaaaaaaa!!」

 

 恐怖に耐え切れなくなり、三頭猟犬(トリプルバイト・ハウンドドッグ)双頭猟犬(ダブルバイト・ハウンドドッグ)を従えていたオベリスクフォースが逃げ出す。

 だが、魔竜は双頭猟犬(ダブルバイト・ハウンドドッグ)を踏みつけ、助け出そうと挑みかかる三頭猟犬(トリプルバイト・ハウンドドッグ)の首を掴み締め上げる。

 

「おいおい、デュエル中に逃げ出すなよ。

 もっともさっき見たからわかると思うが、オッドアイズ・ミノタウロスがペンデュラムゾーンに居る限り、俺のオッドアイズモンスターとEM(エンタメイト)は貫通効果を得ているがな。

 オッドアイズで双頭猟犬(ダブルバイト・ハウンドドック)に攻撃。」

 

 踏みつけ、締め上げていた猟犬達が突然発火する。

 そして、逃げ出していた彼もまた発火し炎に焼かれる。

 

「ぎゃあああぁぁぁぁぁぁあああああああああ!!」

 LP4000→0

 

「あぁ・・・・・・」

 

 暴虐の限りを尽くす魔竜の攻撃は終わることはない。

 この処刑場に立たされた罪人(僕ら)を焼き尽くさんと唸りを上げ、そして咆哮する。

 

オッドアイズ・レイジング「グルル・・・オオォォォォォォォ!!」

 

 その恐怖に支配された彼はアカデミアの戦士の誇りなど投げ捨てて、処刑人に命乞いをする。

 

「や、やめて!た、助けてくれ!!」

 

「ほう、じゃあ、お前はそう言われて助けたことはあるのか?」

 

「そ、それは・・・」

 

 あるはずがない。

 僕達はエクシーズ次元で何度もその言葉を耳にし、そして踏み躙ってきたのだから・・・

 

「じゃあ、ダメだ。」

 

「ち、違う!俺は、ホントはあんなことウッ!ガアアァァァァ!!」

 

「!?」

 

 突然、彼が苦しみだす

 

――キシャアアァァァァァァァ!!

 

 その理由は彼の仮面の下から伸びた薄緑がかった触手の様なナニカ

 不気味な叫びを上げて彼の首を締め上げている。

 

「ガ・・・はっ・・た・・・助け・・・て・・・く・・れ・・・・」

 

 彼は息も絶え絶えに、目の前の悪魔と罵った男に手を伸ばす。

 

「・・・オッドアイズ!その虫けらを焼き殺せ!!

 『激情のストライク・インフェルノ!!』」

 

 魔竜が纏う炎が一点に収束し、業火となって彼らを焼く。

 その衝撃で海へと放り出された彼らは、海の底へと消えてしまうのかと思ったが埠頭から伸びた赤黒いミミズの様なモノが彼らを捉え呑み込んでいく。

 なんだあれは!?

 

「ミエルの奴、何をやったんだか・・・

 それでデニス、実はと言うとペンデュラムカードを3枚持っているんだ。」

 

「えっ?」

 

「此処で決着つけないか?」

 

 決着?もう、そのモンスターの攻撃は・・・あっ、双頭猟犬(ダブルバイトハウンドドック)究極猟犬(アルティメットハウンドドック)もこのターンに融合召喚されたモンスター

 ならレイジング・ドラゴンはこのターン6回の攻撃が可能!?

 

「あぁ・・・」

 

 このまま、挑み、アクションカードで防いでも3回の連続攻撃だ。勝てるわけがない!

 いや、改めてデュエルをしても僕は勝てるのか?

 

 僕はこのデュエルで何もできていない。

 彼に僕の力を見せることも、一矢報いることも・・・

 

 いや、それでいいのかもしれない。

 彼の後ろで控える魔竜は罪人を裁く処刑人そのものだ。

 僕のデュエルで人を笑顔に出来ればいいと思っていたけれど、こんな血に塗れた手で人を笑顔に出来るはずがないじゃないか・・・なら、ここで、

 

「ふっ、冗談だよ。」

 

「えっ・・・?」

 

「こんなケチのついたデュエルの延長戦なんてやってもつまらないからな。

 さて、どうやらこの大会に変なのが紛れて、おまけに俺を狙っているらしいな。」

 

「あ、あぁ・・・そうだね。」

 

「あいつらはデュエルじゃなくてハンティングゲームをしているらしいし、どうせなら。」

 

 不気味な笑みを浮かべた口から紡がれる言葉

 

「乗ってやろうじゃないか、あいつらのゲームに。」

 

「えっ?」

 

「誰が俺を狩ることが出来るのか、はたまた俺に狩られるのか、生き残りをかけたデスマッチ

 敗者はあぁして、機怪蟲に呑み込まれて退場する。

 どうだ?最高にスリリングなゲームだろう?」

 

 く、狂っている!

 この状況で、自分からオベリスクフォースたちに戦いを挑むつもりか!?

 

「ふふふ『さぁ、ゲームを始めよう。』」




って、訳でお前も付きあえ、デニス

ゑっ?

――バシッ!(レイジング・ドラゴンの尻尾に拘束される。)

さぁ、出発だ!空の上なら見つけやすいだろう。

ギャオオオォォォォォォォ!!(離陸)

NOooooooooo!!(強烈な風圧)

ふははははは!本当に飛んでる!(変なテンション)
さて次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『曇り模様の空に』
雨が降らないといいんだがなぁ?

あばばばばばばば!!(死にそう)


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曇り模様の空に

前回の省略デュエル
ユートの1ターン目
手札抹殺→ダークリベリオンXYZ
     エクシーズトライバル 幻影翼 リバース2枚

OBF1「破壊できない、攻撃力が足りない、なら女!!」

ユート「そうはさせない!立ちはだかる強敵の効果でダークリベリオンと強制戦闘!」

OBF1「ぐわあああぁぁぁぁ!!」

OBF2「なら俺が女の方に攻撃!!」

ユート「地縛霊の誘い!ダークリベリオンに攻撃対象を変更!」

OBF2「ぐわああぁぁぁぁ!」

OBF3「ならば俺が!」

セレナ「アンクリボーの効果で墓地から月光蒼猫を特殊召喚!」

ORF3「・・・・ターンエンド。」
ということが繰り広げられた。
なおモンスターを失った奴らはセレナのターンで古代の機械蘇生でモンスターを守備表示で出したが、蒼猫の効果で攻撃力倍化にメテオ・ストライク装備した猫舞姫で殴られたということで

≪追記≫
よく見れば防御札が手札にあることが割れていることに気付き、居合ドローの後にさらにドローカードを発動させ、手札が分からないように修正しました


「状況はどうなっている!!」

 

 アカデミアが現れてからというもの黒咲が飛び出し、セレナが突進し、ユートが追いかけて行き、見事アカデミアの撃退に成功したがそれでも6人

 風魔忍者からの情報では48人という事だからまだ42人も残っていることになる。

 迅速に行動しなければならないが・・・その要である指揮所は混乱の極みの中にあった。

 

「わかりません。

 湾岸地区の撮影用、監視用カメラが全て故障、また各種計測機も異常をきたしております。」

 

「くっ!榊 遊矢はいったい何をしたんだ!?」

 

 その原因は榊 遊矢のデュエル

 彼はデニス・マックフィールドと共にアカデミアと交戦

 しかし、デュエルの途中でカメラや計器に異常が発生し、指揮所にもその影響が及んでいた。

通信機まで故障し、これではユート達と連絡が出来ない状態だ。

 

「それもわかりません。

 途切れる直前の映像ではエクシーズモンスターを素材に更にエクシーズ召喚したとしかわからず、何を召喚したかは不明です。

 ただ、スタジアムや警備の者が空へと昇る2条の光を見たそうですが、その後空が燃えただの、燃えた空が海に向かって落ちて来ただの、よく分らない話ばかりで・・・」

 

なんだそれは・・・本当に奴はいったい何をしたというのだ・・・

 

「スタジアムの方はどうなっている?」

 

「ハッ!念のため、スタジアムにいた観客全員を泊まる先のホテルへと移動させました。

 ジュニアユースの映像が見たいという者もいたそうですが、カメラの不具合の為、リアルタイムの映像を見せることが出来ないと言い含めました。」

 

 その場しのぎの手だが仕方あるまい

 どの道、アカデミアが多数徘徊している現状では一般人に見せられる映像など撮りようがないのだから

 

「湾岸地区について何か別の情報は?」

 

 この際だ信憑性は後回しにして少しでも情報が欲しい

 最悪、榊 遊矢がどうなったのかぐらいは

 

「それが・・・何かが飛び立ったらしいのですが・・・」

 

「何?・・・いや、それならもういい」

 

「えっ?」

 

 アカデミアに航空能力があるのなら、既にこの街にアカデミアが広範囲に霧散してしまっているだろう。

 だが、奴らは風魔忍者の報告によると徒歩で移動しているらしい。

 なら、飛びたった何かとは榊 遊矢に関係するものだろう。

 ならば、おそらく彼はアカデミアに勝ったということだ。何をしたかはわからないが・・・

 

「社長!計器故障前に測定された召喚反応の解析が終わりました・・・」

 

 オペレーターの一人からそんな声が上がってくる。

 最後の映像で垣間見えたのはエクシーズモンスターを使いエクシーズモンスターを召喚するという光景だが、肝心の何がエクシーズ召喚されたのかはわからない

 

「計測数値から召喚前でも膨大な数値ですが・・・スクリーンに出します。」

 

【XYZ/PENDULUM】

 

「!?」

 

 映し出されたのは、判定ミスを疑う内容

 これが本当ならエクシーズでありながらペンデュラムでもあるモンスターが存在するという事

 ペンデュラムとはメインデッキに入るものだけではなかったのか!?

 

「おい!赤馬社長!!」

 

 今度は何だ・・・

 

「沢渡!?何故、ここに?警備員は何をしている!」

 

 沢渡か・・・この忙しいときに何の用だ?

 

「そんなことパパの力でどうにでもなる!」

 

 警備員は減俸だな

 

「それよりもバトルロイヤルは今どうなっていやがるんだ!

 もうデュエルは始まってるんだろ?

 あんな滅茶苦茶な事やらかす奴なんて、あいつしかいねぇ!録画でもいいから見せやがれ!」

 

 あいつとは、榊 遊矢の事か・・・

 録画どころか、こちらが現状を全く理解できていないのだが・・・

 各種計器も故障してしまったモノが多く、ユートや黒咲とも連絡が取れない始末、どうするか・・・

 いや、沢渡なら実力として申し分ない。

 

「沢渡、君に頼みたいことがある。」

 

「ぁあ?」

 

「敗者復活戦をしてみないか?」


「あれは何だったのでござろうか?」

 

 いきなり空が燃えたかと思えば、海の方に空の炎が落ちてくるなど、世界の終わりかと思ったでござる・・・

 いや、今まさにこの世界は侵略を受けているのでござるが・・・

 

「まさか、通信機が故障するとは・・・」

 

 あの空が燃えてからというもの、通信機からはノイズしか聞こえなくなってしまったてござる。

 どうやって兄者たちと合流しようでござるか・・・いったん戻るべきか、探すべきか・・・

 

「月影!!」

 

「兄者!!それに柚子殿!」

 

 さすが兄者、既に柚子殿を保護していたでござるか!

 

「兄者、無事でござったか!」

 

「うむ、柚子殿がアカデミアに襲われそうになっていたでござるが、間一髪救出できたでござる。」

 

「ねぇ、日影さん、もう降ろしてくれないかしら?」

 

「おぉ、済まぬでござる!」

 

 俵のように担いでいた柚子殿を降ろす兄者

 ずっとその状態で走って来たのでござろうか?さすがでござる。

 

「ねぇ!月影さん、遊矢を知らない!?」

 

「遊矢殿を?いや拙者は見ていないでござる。」

 

「そう・・・」

 

「だが、何故遊矢殿を?」

 

「それが、柚子殿の話によると、仮面をつけたアカデミアの連中は遊矢殿を狙っているようなのでござる。」

 

「なんと!?」

 

 赤馬殿からは敵の狙いは柚子殿とアカデミアから脱走してきたセレナ嬢だと聞かされていたが、違うのでござるか!?

 

「確かに私聞いたの!あいつら、私を遊矢をおびき出す為の囮にするって。

 それに自分たちは遊矢を討伐するために、やって来たって・・・」

 

 討伐?うぅむ・・・奴らが何を企んでいるのか判らぬでござるな・・・

 

「ねぇあなたたち、アカデミアについて知っているんでしょ?私にも教えて!」

 

「いや、我々も全てを把握しているわけではござらぬが・・・」

 

「なんでも奴らは他の次元からやってきた侵略者のようなのでござる。」

 

「他の次元?」

 

 まぁ、当然の反応でござるな。

 だが、柚子殿も巻き込まれる可能性がある以上、知ってもらう必要があるでござろう。

 

「世界は4つの次元に分かれていて、その中でも拙者たちの住んでいる此処はスタンダードと呼ばれており、その他にエクシーズ、シンクロ、そして融合という3つの次元に分かれているそうなのでござる。」

 

「その名の通り、3つの世界ではデュエルモンスターズのその名にちなんだ召喚法が発展しており、その中でも融合次元のアカデミアが他の次元に対して侵略戦争を行っているそうなのでござる。デュエルモンスターズを使って」

 

「デュエルモンスターズを戦争に使うなんて・・・」

 

 まったく、許せぬ話でござるな!

 

「そして、昨日、そのアカデミアから脱走してきた少女がここスタンダードに来たそうで。」

 

「その少女はアカデミアにとっては重要な人物であったようで、さらに言えばその少女と同じ顔をした少女が他の次元にもいて、アカデミアに連れ去られているそうなのでござる。」

 

「連れ去る・・・それってまさか瑠璃?」

 

 知っているのでござるか!?

 

「前にアカデミアに大切な仲間を連れ去られたって言ってた人がいて、私によく似ていたって・・・あっ!もしかして!?」

 

「そう、我々は依頼者から、柚子殿もアカデミアに狙われる可能性が高いと護衛の要請を受けたのでござる。」

 

「だけど、あいつらは遊矢を・・・」

 

 そこは全くわからぬでござるが・・・

 

「「遊矢殿なら、あまり心配する必要はない気がするでござるが・・・」」

 

「いや!でも!あいつら3人同時にデュエルしようとしていたのよ!?」

 

「それでも・・・」

 

「遊矢殿でござるからな・・・」

 

 拙者らの修練場に占い師殿と一緒にやってきて、仕掛けられた罠に瞬時に対応していたでござるし、最悪、占い師殿とどうにかしそうでござる。

 

「にしても、3人同時に仕掛けてくるとは厄介でござるな。」

 

「うむ、月影、しばらく柚子殿を任せていいでござるか?」

 

「承知したが兄者はいずこに?」

 

「権現坂殿と留学生殿を探してくるでござる。

 この場でアカデミアの脅威について知らないのは、その二人だけでござる。

 アカデミアが複数人対戦を仕掛けてくるなら、彼らにも事情を説明して協力を仰ぐ方がいい。」

 

 なるほど、彼らも実力者、複数人で挑んでくるなどしたら我らも苦戦することは必至

 共に行動すれば、まともに戦える。

 

「では行ってくる。」

 

「兄者、お気を付けを。」


「どこに居る!アカデミア!!」

 

 突然、赤馬零児との通信が届かなくなったせいで、アカデミアがどこに居るかわからなくなったが、まだ40人以上いるのなら適当に歩いているだけで見つかるだろう。

 

「あれは!!」

 

 次元転送の時に出る光!アカデミアめ、さらに増援をよこすつもりか!!

 

「合流前に潰す!」

 

 光の出ていたピラミッドの上部へとたどり着くとそこにいたのは、仮面の奴らじゃない水色の髪の小柄なガキ

 

「キサマ!アカデミアだな!!」

 

「だれ?」

 

「俺はアカデミアを滅ぼす者!さぁ、俺の質問に答えろ!」

 

「あぁ・・・君がエクシーズの・・・そうだよ、僕はアカデミアの一員さ。

 で、どうするの?」

 

「俺と戦え!俺はお前達を一人残らず駆逐してやる!!」

 

「嫌だよ。僕は遊矢を倒しに来たんだ。

 君と遊んでいる暇はないんだよ。」

 

「お前の事情など知ったことか!!良いから俺とデュエルしろ!!」

 

「はぁ、しかたないなぁ。

 デッキ調整くらいには付きあってあげる。」

 

 こいつ、俺をどこまで馬鹿にするつもりだ?

 だが、アカデミアの好きにはさせん!こいつは此処で倒す!!

 

『『決闘(デュエル)』』

 

「先攻は俺だ!

 俺はRR(レイド・ラプターズ)―バニシング・レイニアスを召喚!」

 

 バニシング・レイニアス ATK1300

 

「バニシング・レイニアスが召喚、特殊召喚したターン、俺は手札のRRモンスターを1体特殊召喚出来る。

 俺はバニシング・レイニアスを特殊召喚し、新たに特殊召喚されたバニシング・レイニアスの効果でRR(レイド・ラプターズ)―ミミクリー・レイニアスを特殊召喚!」

 

 ミミクリー・レイニアス DEF1900

 

 俺のフィールドに現れる緑と黄色の機械の鳥たち

 奴は仮面の連中とは違う雰囲気を感じる、用心に越したことはないだろう。

 

「俺はレベル4のミミクリー・レイニアスとバニシング・レイニアスでオーバーレイ!

 冥府の猛禽よ、闇の眼力で真実を暴き、鋭き鉤爪で栄光をもぎ取れ、エクシーズ召喚!

 飛来せよ!ランク4、RR(レイド・ラプターズ)―フォース・ストリクス!」

 

 フォース・ストリクス DEF2000 ORU2

 

「フォース・ストリクスの効果発動

 1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ使い、レベル4の闇属性、鳥獣族モンスター1体を手札に加える。

 俺が手札に加えるのはRR(レイド・ラプターズ)―ファジー・レイニアス

 そして、こいつは俺のフィールドにファジー・レイニアス以外のRR(レイド・ラプターズ)モンスターが居る時その効果で特殊召喚出来る。」

 

 フォース・ストリクス ORU2→1

 

 ファジー・レイニアス DEF1500

 

「ミミクリー・レイニアスが墓地へ送られたターン、こいつを除外し、デッキからRRカードを手札に加える。

 マジックカード、RR(レイド・ラプターズ)―コールを手札に加え発動

 1ターンに1度、自分フィールド上のRR(レイド・ラプターズ)と同名のモンスターをデッキから特殊召喚する。

 俺が呼び出すのはRR(レイド・ラプターズ)―バニシング・レイニアス!」

 

 バニシング・レイニアス DEF1600

 

「俺はレベル4のファジー・レイニアスとバニシング・レイニアスでオーバーレイ

 再び飛来せよ!RR(レイド・ラプターズ)―フォース・ストリクス!」

 

 フォース・ストリクス DEF2000 ORU2

 

「再び、フォース・ストリクスの効果でデッキからRR(レイド・ラプターズ)―トリビュート・レイニアスを手札に加える。

 さらに墓地に送られたファジー・レイニアスの効果でデッキからファジー・レイニアスを手札に加え、そして、3体目のバニシング・レイニアスの効果でトリビュート・レイニアスを特殊召喚!」

 

 トリビュート・レイニアス ATK1800

 

 バニシング・レイニアスに導かれ現れる青い戦闘機の様なRR

 下級のRR(レイド・ラプターズ)の中では高い攻撃力を持つが、こいつの真価は攻撃力ではない。

 

「トリビュート・レイニアスが召喚、特殊召喚されたターン、デッキからRR(レイド・ラプターズ)カードを1枚墓地へ送ることが出来る。

 俺が墓地に送るのはRR(レイド・ラプターズ)―レディネス。」

 

 レディネスはRR(レイド・ラプターズ)モンスターが存在する場合、墓地から除外することでそのターンのダメージを全て0にする。

 これで奴のターンに俺が敗北することはない。

 

「レベル4のバニシング・レイニアスとトリビュート・レイニアスでオーバーレイ!

 三度飛来せよ!RR(レイド・ラプターズ)―フォース・ストリクス!!

 そして効果でデッキからRR(レイド・ラプターズ)―シンギング・レイニアスを手札に加える。

 さらにフォース・ストリクスは俺のフィールドに自身以外の鳥獣族が居る時、その数×500ポイント攻撃力、守備力をアップする。」

 

 フォース・ストリクス DEF2000→3000

 フォース・ストリクス DEF2000→3000

 フォース・ストリクス DEF2000→3000 ORU2→1

 

「永続魔法、RR(レイド・ラプターズ)―ネストを発動

 自分フィールド上にRR(レイド・ラプターズ)モンスターが2体以上いる場合、デッキからRR(レイド・ラプターズ)モンスターを1体手札に加える。

 RR(レイド・ラプターズ)―アベンジ・ヴァルチャーを手札に加え、カードを1枚伏せてターンエンド。」

 

「長い1ターンだったね。」

 

「ふん、痺れでも切らしたか?」

 

「別に・・・僕のターン、ドロー

 僕は手札を1枚捨て、エクストラデッキのデストーイ・シザー・ベアーとデストーイ・ホイールソウ・ライオを墓地へ送り、永続魔法、デストーイ・サンクチュアリを発動

 このカードがある限り、僕のフィールドの融合モンスターは全てデストーイとして扱われる。」

 

 発動条件で融合モンスターを墓地へ送るだと?

 

「墓地へ送られたエッジインプ・チェーンの効果でデッキからデストーイカード1枚を手札に加える。

 僕が手札に加えるのはデストーイ・マイスター。」

 

 これまでのアカデミアの奴らなら、エクシーズ次元の人間には嬉々として襲い掛かっていたのに、こいつにはその素振りがない。それに

 

「ふん、どうせ貴様らアカデミアの事だ。

 後からぞろぞろとお前の仲間が乱入してくるんだろう?」

 

「はぁ?僕がそんなことするわけないじゃん!変なこと言って邪魔しないでよ!

 マジックカード、魔玩具補綴(デストーイ・パッチワーク)、1ターンに1度、デッキから融合とエッジインプモンスター、エッジインプ・コットン・イーターを手札に加える。」

 

 嘘で言っているわけじゃない、本当にそんなことは許さないという意思を感じる。

 それもそんなことをしたら、そいつらを潰してやるとばかりに怒っている。

 なんだこいつ、本当にアカデミアか?

 

「・・・僕はスケール4のデストーイ・マイスターとスケール8のファーニマル・エンジェルをペンデュラムスケールにセッティング。」

 

 奴のフィールドの両脇に昇る光の柱、そしてその中に浮かぶフードを被った骸骨と天使の人形

 ペンデュラムだと!?

 

「ファーニマル・エンジェルのペンデュラム効果

 1ターンに1度、墓地のファーニマルまたはエッジインプモンスターを特殊召喚する。

 この効果の発動後、僕は融合モンスターしかエクストラデッキから特殊召喚出来ない。

 エッジインプ・チェーンを特殊召喚。」

 

エッジインプ・チェーン「ゲへへッ!」

           DEF1800

 

「デストーイ・マイスターのペンデュラム効果も発動

 自分フィールド上のレベル4以下のエッジインプ、デストーイ、ファーニマルモンスターのいずれか1体をリリースし、デッキからそのモンスターと同じレベルの悪魔族モンスターを特殊召喚する。

 レベル4のエッジインプ・チェーンをリリースし、同じくレベル4のエッジインプ・トマホークを特殊召喚。」

 

エッジインプ・トマホーク「ヒヒヒッ!」

            ATK1800

 

 鎖の塊が崩壊し、中から現れたのは斧の束

 

「エッジインプ・トマホークの効果

 1ターンに1度、自分のデッキの中からエッジインプモンスターを墓地へ送り、このターン中、このモンスターを墓地へ送ったモンスターと同名モンスターとして扱う。

 デッキからエッジインプ・DTモドキを墓地へ

 

 そして、僕は今、レベル5からレベル7のモンスターを同時に召喚できる。

 揺れろ運命の振り子・・・生きるも地獄、死ぬのも地獄、醒めぬ悪夢を彷徨い歩け・・・ペンデュラム召喚

 現れろ、レベル7、地獄への水先案内人、エッジインプ・コットン・イーター。」

 

コットン・イーター「グアアアァァァァァァ!」

         ATK2400

 

 現れたのは叫びを上げる羽根や牙の付いた巨大で不気味な卵

 こいつ自身もペンデュラムモンスターか。

 

「コットン・イーターが特殊召喚に成功した場合、自分の墓地のデストーイモンスターの数×200ポイントのダメージを与える。

 DTモドキはその効果でデストーイとして扱うから君は600ポイントのダメージを受ける。」

 

 効果ダメージ、卵に付いた口の中から礫が襲ってくるが600ポイント程度でこのカードを使うわけにはいかない。

 

「ぐっ!」

 LP4000→3400

 

「そして、融合を発動。」

 

 やはり来るか、融合召喚!

 

「手札のファーニマル・ペンギンとフィールドのエッジインプ・コットン・イーターを融合

 現れろ、デストーイ・ハーケン・クラーケン。」

 

ハーケン・クラーケン「アhYひゃはYひゃはッ!」

          ATK2200

 

 卵を引き裂き狂った笑い声を上げて現れる触手の先が刃物になったイカの化物

 だが、その攻撃力では俺のフォース・ストリクスは突破できない。

 

「デストーイの融合素材として墓地へ送られたファーニマル・ペンギンの効果発動

 デッキから2枚ドローし、その後手札を1枚捨てる。

 ハーケン・クラーケンのモンスター効果、1ターンに1度、相手モンスター1体を墓地へ送る。

 フォース・ストリクスを墓地へ。」

 

 フォース・ストリクスが奴のモンスターの触手に絡みとられ、刃でずたずたに引き裂かれる。

 

 フォース・ストリクス DEF3000→2500

 フォース・ストリクス DEF3000→2500

 

「ちっ!」

 

「そして、僕はハーケン・クラーケンをリリースして死霊操りしパペットマスターをアドバンス召喚。」

 

 死霊操りしパペットマスター ATK0

 

「なっ!?」

 

 融合モンスターを捨て、攻撃力0のモンスターを召喚しただと!?

 

「パペットマスターの効果発動

 このカードのアドバンス召喚に成功した時、ライフを2000払い、自分の墓地の悪魔族モンスター2体を対象にして、そのモンスターを特殊召喚する。

 この効果で特殊召喚されたモンスターはこのターン攻撃できない。

 僕はデストーイ・ハーケン・クラーケンとデストーイ・マイスターを特殊召喚。」

 LP4000→2000

 

 奴の背後に浮かぶ道化師の亡霊が指先から光の糸を垂らし、イカの化物とフードを被った骸骨を呼び出す。

 ファーニマル・ペンギンの効果で墓地に送られていたか

 だが、ライフを半分も削るほどのメリットがあのモンスターにあるのか?

 

 ハーケン・クラーケン  DEF3000

 デストーイ・マイスター DEF0

 

「デストーイ・マイスターの効果発動、1ターンに1度、デッキからレベル4以下のエッジインプ、ファーニマル、デストーイモンスターの中から1体を特殊召喚する。

 2体目のエッジインプ・トマホークを特殊召喚し、トマホークの効果でエッジインプ・DTモドキを墓地に送る。」

 

 エッジインプ・トマホーク ATK1800

 

 またあのモンスター、デッキ圧縮を繰り返してコットン・イーターのダメージを増加させるつもりか!

 

「マジックカード、星呼びの天儀台を発動

 レベル6の死霊操りしパペットマスターをデッキの一番下に戻して2枚ドロー

 

 手札を1枚捨ててマジックカード、一撃必殺!居合ドローを発動

 相手のフィールドのカードと同じ数のカードをデッキの上から墓地に送り、1枚ドローする。

 君のフィールドのカードは3枚、よって3枚のカードを墓地へ送りドロー。

 このドローしたカードが居合ドローならそれを墓地へ送り、フィールドのカードを全て破壊し、破壊したカード1枚に付き2000ポイントのダメージを相手に与えるけど、このカードはアドバンス・ドロー、居合ドローじゃない

 破壊効果が失敗したから、墓地へ送った枚数分墓地のカードをデッキに戻す

 僕は融合、魔玩具補綴(デストーイ・パッチワーク)、星呼びの天儀台を戻す。

 

 墓地へ送られたカードの中に魔サイの戦士があったから、その効果でデッキの悪魔族、デストーイ・マイスターを墓地へ送る。」

 

 また墓地にデストーイが・・・

 ついでとばかりにDTモドキが墓地に送られ、これで奴の墓地のデストーイは6体となった。

 

「ハーケン・クラーケンの効果発動

 もう1体のフォース・ストリクスを墓地へ。」

 

 フォース・ストリクス DEF2500→2000

            ATK600→100

 

「くっ!名称でターン1ではないのか!」

 

「デストーイ・マイスターのもう一つの効果

 1ターンに1度、フィールドの悪魔族モンスターを2体以上リリースすることで、リリースしたモンスターの元々のレベルの合計と同じレベルのデストーイ融合モンスターを、融合召喚扱いでエクストラデッキから特殊召喚する。」

 

「なんだと!?」

 

 素材も何も無視して融合を!?

 

「レベル4のエッジインプ・トマホーク2体をリリースして修理融合(リペアフュージョン)!」

 

 デストーイ・マイスターの力で無数の斧が宙を舞い、魔法陣を描き出す

 

「現れろ、地獄へ引きずり込む疫病神、デストーイ・デアデビル!」

 

 デアデビル ATK3000

 

 魔法陣からはいずり出たのは黒と赤の体色の悪魔

 その眼は人形のように虚ろで、何処にも向いてはいない

 

「墓地のADチェンジャーの効果発動

 自分のメインフェイズに、このカードを除外し、フィールドのモンスター1体の表示形式を変更する。

 フォース・ストリクスを攻撃表示に変更。」

 

 フォース・ストリクス DEF2000→ATK100

 

 しまった!?

 

「デアデビルは相手モンスターを破壊した時、1000ポイントの追加ダメージを与える。

 デアデビルでフォース・ストリクスに攻撃。」

 

デアデビル「ギャアアアアアっァァァァァァァァァァっぁ亜!!」

 

「墓地のRR(レイド・ラプターズ)―レディネスの効果発動!

 墓地にRR(レイド・ラプターズ)モンスターが存在するとき、このカードを除外し、このターン、俺への全てのダメージを0にする!」

 

 デアデビルの叫びでフォース・ストリクスが崩れ去る。

 600ポイント程度などと思っていたのが間違いだった・・・こいつは、強い!

 

「僕はマジック・カード、アドバンス・ドローを発動

 レベル8以上のモンスター、ハーケン・クラーケンを墓地に送り2枚ドロー

 カードを1枚伏せてターンエンドだ。」

 

「いや、お前のエンドフェイズに俺は速攻魔法、RUM(ランクアップマジック)―デス・ダブル・フォースを発動する!

 このターンに戦闘により墓地へ送られたRR(レイド・ラプターズ)エクシーズモンスターを1体特殊召喚し、その倍のランクを持つエクシーズモンスターを、対象モンスターの上に重ねてエクシーズ召喚する!

 俺はランク4のRR(レイド・ラプターズ)―フォース・ストリクスを特殊召喚しオーバーレイネットワークを再構築!

 現れよ!勇猛果敢なるハヤブサ!!エクシーズ召喚!RR(レイド・ラプターズ)―サテライト・キャノン・ファルコン!!」

 

サテライト・キャノン・ファルコン「キュオオオォォォォォォォォ!」

                ATK3000 ORU1

 

「こいつがエクシーズモンスターを素材にエクシーズ召喚された時、相手フィールド上のマジック、トラップカードを全て破壊する。」

 

 奴の光の柱の中のモンスターと城の様な絵が描かれたカードがレーザーによって撃ち抜かれる。

 

「・・・・・・」

 

 これでも、だんまりか・・・

 破壊したカードはカウンタートラップ、デストーイ・マーチ

 デストーイモンスターを対象とした効果を無効にし、対象となったモンスターを墓地へ送り、新たなレベル8以上のデストーイを融合召喚扱いで特殊召喚するカード

 厄介なカードを潰せたな。

 手札もあと1枚、モンスターは2体だがサテライト・キャノン・ファルコンにはモンスターの攻撃力を下げる効果がある。

 状況は圧倒的にこちらが有利、だが、俺の勘が告げている

 このまま勝てる相手じゃないと

 

「俺のターン、ドロー!

 俺はRR(レイド・ラプターズ)―ファジー・レイニアスを自身の効果で特殊召喚。」

 

 ファジー・レイニアス DEF1500

 

RR(レイド・ラプターズ)―ネストの効果でデッキからRR(レイド・ラプターズ)―トリビュート・レイニアスを手札に加え召喚!」

 

 トリビュート・レイニアス ATK1800

 

「トリビュート・レイニアスの効果で2枚目のRR(レイド・ラプターズ)―レディネスを墓地に送る。

 そして、レベル4の鳥獣族モンスター、トリビュート・レイニアスとファジー・レイニアスでオーバーレイ!

 秘めたる闘志、ここに解放せよ!エクシーズ召喚!

 現れろ!ランク4!RR(レイド・ラプターズ)―ブレード・バーナー・ファルコン!」

 

 ブレード・バーナー・ファルコン ATK1000 ORU2

 

 逆境にこそ、このモンスターは真価を発揮するが、今の状況では効果は使えん

 

「そしてRUM(ランクアップマジック)―レイド・フォースを発動

 自分フィールド上のエクシーズモンスター1体を1つ上のランクを持つRR(レイド・ラプターズ)にランクアップさせる!

 俺はランク4のブレード・バーナー・ファルコン1体でオーバーレイネットワークを再構築!

 獰猛なるハヤブサよ、激戦切り抜けしその翼翻し、寄せ来る敵を撃ち破れ!ランクアップエクシーズチェンジ!

 現れろ!ランク5!RR(レイド・ラプターズ)―ブレイズ・ファルコン!!」

 

 ブレイズ・ファルコン DEF2000 ORU3

 

 刃の羽を持つハヤブサが姿を変え、炎の様に赤い翼を持つハヤブサへと変わる。

 そして、サテライト・キャノン・ファルコンでデア・デビルの攻撃力を0にすれば、俺の勝ちだ。

 防がれてもブレイズ・ファルコンの効果で奴のモンスターを全滅させる!

 

「墓地のトラップカード、仁王立ちの効果を発動

 このカードを墓地から除外することで、このターン相手は僕の指定したモンスター以外攻撃できなくなる。

 デアデビルを選択。」

 

 攻撃対象を限定するトラップ!?居合ドローで墓地に送られたカードか!

 

「なら、このまま押し通るまでだ!

 サテライト・キャノン・ファルコンの効果発動!

 オーバーレイユニットを1つ使い、相手フィールド上の表側表示モンスター1体の攻撃力を俺の墓地のRR(レイド・ラプターズ)モンスターの数×800ポイント下げる。

 俺の墓地のRR(レイド・ラプターズ)は8体、これでデアデビルの攻撃力は0だ!」

 

 サテライト・キャノン・ファルコン ORU1→0

 

 デアデビル「AAAGGあああぁぁぁあががぁぁぁっぁ!!」

      ATK3000→0

 

 サテライト・キャノン・ファルコンの武装がデアデビルを撃ち抜いてゆく

 だが、デアデビルは穴だらけになった体から不気味な光を立ち上らせ前に出てくる。

 

「足掻いても、この一撃で終わりだ!

 サテライト・キャノン・ファルコンでデストーイ・デアデビルに攻撃!

 エターナル・アベンジ!!」

 

 サテライト・キャノン・ファルコンのレーザーがデアデビルを撃ち抜くが、その破れた内から無数の亡霊が飛び出した。

 

――オオオォォォォォォオォ!!

 

「!!?」

 

「この戦闘の僕へのダメージは手札のクリボーを捨てることで0になった。

 そして、デアデビルが相手の効果でフィールドを離れた、または戦闘で破壊された時、墓地のデストーイモンスターの数×500ポイントのダメージを与える。

 僕の墓地にはDTモドキを含めて8体のデストーイ、4000のダメージだ。」

 

「させるか!!墓地のRR(レイド・ラプターズ)―レディネスを除外し、このターン、俺が受けるダメージを全て0にする!」

 

 無数の亡霊が俺へと襲い掛かってきたが、ブレイズ・ファルコンが牽制の雷を出して防いだ。

 バトルは防がれたが、これで奴の手札は0、ブレイズ・ファルコンの効果は防げない!

 

「メインフェイズ2に移行し、ブレイズ・ファルコンの効果発動

 1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ使い、キサマの特殊召喚されたモンスター全てを破壊し、破壊したモンスター1体に付き500ポイントのダメージを与える。」

 

 ブレイズ・ファルコン ORU3→2

 

 ブレイズ・ファルコンから分離した遠隔操作のレーザービットが奴のデストーイ・マイスターを焼き切り、奴を吹き飛ばす。

 

「ぐうぅぅ・・・」

 LP2000→1500

 

 だが奴は少し呻いただけで立ち上がる、まるで幽鬼のように

 

「墓地に送られたファジー・レイニアスの効果でデッキからファジー・レイニアスを手札に加える。

 そして、墓地のRUM(ランクアップマジック)―レイド・フォースと手札のRR(レイド・ラプターズ)―シンギング・レイニアスを除外して効果を発動

 墓地のRUM(ランクアップマジック)―デス・ダブル・フォースを手札に加える。

 カードを1枚伏せてターンを終了する。」

 

「僕の・・・ターン・・・」

 

 糸人形のようにカードを引く、奴のフィールドにカードはない、手札はあの1枚

 状況は圧倒的に俺が有利だが・・・あの目は危険だ。

 

「ドロー・・・

 あぁ・・・そうだ・・僕は生きなくてはいけない・・・」

 

 餓えた獣のごとく

 

「君の代わりに生き続けると誓ったんだから・・・」

 

 自身を傷つけてでも

 

「だから・・・」

 

 相手を倒す意志が込められた目だ!

 

「君は消えろ!!

 マジックカード、デストーイ・リニッチ発動!

 墓地のデストーイモンスターを1体特殊召喚する!

 戻ってこい!デストーイ・デアデビル!!」

 

デストーイ・デアデビル「ギャアGYYAぎゃははぁっはあhっははh!!」

           ATK3000

 

 デアデビル!しまった!奴の墓地には!?

 

「デアデビルでサテライト・キャノン・ファルコンに攻撃!!」

 

 魍魎が閉じ込められたキグルミの悪魔が、ハヤブサに再び焼かれる。

 だが飛び出した魍魎たちは周りの炎など気にも留めず、俺へと襲い掛かる

 

「ぐあぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 LP3400→0

 

 ピラミッドを転がり落ちる俺の耳に

 

「・・・・・・ごめんね。」

 

 そんな声が届いたような気がした。


「むぅ~おい、ユート、起きろ~・・・駄目か。」

 

 額を叩いてみるがユートは一向に目を覚ます気配がない

 担いで隠れやすそうな場所ということで、暗い溶岩まみれの場所に来たはいいがこのままでは戦えん

 なぜだか零児との通信もできないし、黒咲を探しに行こうにもな・・・

 

「いた、情報に有った榊 遊矢の関係者だ!」

 

「いや、あいつの肩に居る奴は!」

 

「榊 遊矢!!」

 

 ちっ!こんなときに!!

 

「「「榊 遊矢を抹殺する!!」」」

 

「まて、こいつは榊 遊矢じゃない!」

 

「そんな言い訳をしても無駄だ!」

 

「榊 遊矢は抹殺する!」

 

「世界を守る為に!!」

 

 駄目だ、話にならない。しかたない私一人で!!

 

「おいおい、レディーによって集って何してるんだ?」

 

「「「!?」」」

 

 あ、あいつは!!

 

「助太刀するぜ?柊柚子似の名も知らぬレディー?」

 

 確かこの次元に来たとき赤いのとデュエルしていた

 

「この俺!ハイパーグレイトフル沢渡がな!!」

 




あなたは誰なの?

僕はユーリ、いやぁ~本当にセレナたちに似ているなぁ~
勝気なところなんてそっくりだ。

セレナ達って・・・まさか瑠璃たちを攫ったのって!?

うん、僕
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『この者、危険な捕食者』

何でそんなことを!!

知らないよ、そんなこと
あっ、どうせならプロフェッサーに聞いてみる?
僕と一緒に来て、ね?


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その男、危険な捕食者

時系列を考えて、デュエルを2つ入れたら2万時超えてしまったよ(予想通り)

今話は試験的にターンプレイヤーの手札が変動した際、(H6)という感じで手札の表記を行っています。
見にくかったら消しますので、ご意見が頂けるとありがたいです。

-追記-

手札表示は見にくいとの意見が多かったので削除しました
皆様ご協力ありがとうございました


 いきなり現れたこの男、沢渡と言ったか?

 戦場に来て、何を馬鹿な事を言っているのかと思ったが

 

「揺れる眼差しの効果でメロー・マドンナとワイルド・ホープを破壊して犬っころの飼い主に500ポイントのダメージだ。」

 

「ぐわっ!」

 LP4000→3500

 

「さらにデッキからペンデュラムモンスター、魔界劇団ビッグ・スターを手札に加え、破壊されたワイルド・ホープの効果でもう1枚ビッグ・スターを手札に加えるぜ。

 そして、スケール3の魔界劇団ビッグ・スターとスケール8の魔界劇団コミック・リリーフをペンデュラムスケールにセッティング!

 

 これで俺はレベル4から7までのモンスターを同時召喚可能!

 よっしゃー!やってやるぜ!!ペンデュラム召喚!!

 来い!エクストラデッキからレベル4、魔界劇団ワイルド・ホープ!レベル7、魔界劇団メロー・マドンナ!そして、手札からレベル7!魔界劇団ビッグ・スター!!」

 

ワイルド・ホープ「ハッ!」

        ATK1600

 

メロー・マドンナ「うふふ」

        DEF2500

 

ビッグ・スター「はーはははっ!!」

       ATK2500

 

 現れたのは髪の長い女やガンマンの様な人形、そして隻眼の紳士風の人形

 効果を繋ぎ、エクストラデッキにモンスターを溜め、2ターン目にしてモンスターを3体召喚する。

 さすが、あの赤いのと張り合っていただけはある。

 だが相手の場にはミスト・ボディと磁力の指輪を装備した古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイト・ハウンドドッグ)が居る。

 特殊召喚したモンスターは・・・

 

古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイト・ハウンドドッグ)の効果!1ターンに1度、特殊召喚されたモンスターにギア・アシッドカウンターを置く!

 同時に召喚したのなら、全てのモンスターにギア・アシッドカウンターは置かれる。

 これで貴様のモンスターは、我々に攻撃した瞬間お陀仏だ!」

 

 ビッグ・スター  ギア・アシッドC0→1

 メロー・マドンナ ギア・アシッドC0→1

 ワイルド・ホープ ギア・アシッドC0→1

 

 磁力の指輪は相手の攻撃対象を装備させたモンスターに集約させ、ミスト・ボディは戦闘耐性を得られる装備魔法だ。

 磁力の指輪で攻守は500下がっているが、ミスト・ボディでそれを補い。

 さらに古代の機械城(アンティーク・ギアキャッスル)の効果でアンティーク・ギアの攻撃力は300ポイント上昇する。

 1ターン目としては厄介な布陣を揃えられている。それをこの男はどう崩すか・・・

 

「ビッグ・スターの効果発動、1ターンに1度、自分のメインフェイズにデッキから魔界台本マジックカードを1枚選んでセットする。

 俺は魔界台本「オープニング・セレモニー」をセットして発動、俺のフィールドの魔界劇団モンスターの数×500ポイントライフを回復するぜ。」

 LP2400→3900

 

 ジャングルに電飾や看板が取りつけられ、クラッカーが弾け、紙吹雪が舞う

 その中を奴のモンスターが恰好を付けてポーズをしている。

 気が抜けるな・・・なぜか、こいつも一緒になってポーズしているし

 

「「「ふざけているのかキサマ!!」」」

 

「いや、俺は大まじめだぜ?

 魔界台本が発動したことでメロー・マドンナの効果発動

 デッキからレベル4以下の魔界劇団を1体特殊召喚出来る。

 俺はレベル3の魔界劇団コミック・リリーフを特殊召喚だ。」

 

コミック・リリーフ「ヒョーヒョヒョヒョ!」

         ATK1000

 

 光の柱に居る小太りのメガネを掛けたモンスターと同じモンスターが現れた。

 うまいな。メロー・マドンナのペンデュラム効果のライフコストと古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)のダメージを殆ど帳消しにしたうえで、さらに展開した。

 やはり、この世界のデュエリストは侮れないな。

 

「ビッグ・スターのペンデュラム効果発動

 1ターンに1度、自分フィールド上の魔界劇団を1体リリースして、墓地の魔界台本を手札に加える。

 俺はメロー・マドンナをリリースして、魔界台本「オープニング・セレモニー」を手札に加えるぜ。」

 

 むっ?

 

「マジックカード、同胞の絆

 このターンのバトルフェイズをスキップし、ライフを2000払い、自分フィールド上のレベル4以下のモンスター1体を対象にして、ソイツと同じ種族、属性、レベルを持ったモンスター2体を同名は無しで特殊召喚する。

 レベル4のワイルド・ホープを選択し、来な!魔界劇団プリティ・ヒロイン!魔界劇団ティンクル・リトルスター!」

 LP3900→1900

 

プリティ・ヒロイン「キャハ☆!」

         DEF1000

 

ティンクル・リトルスター「ふみゅ・・・」

            DEF1000

 

 なっ!?バトルフェイズを放棄だと!?

 召喚されたのは魔女の様な格好の猫っぽい少女と星に乗ったカラフルな衣装を着た少女人形

 この2体にそれほどのアドバンテージがあるのか?

 

「このターン、俺はもう特殊召喚を行えねぇ

 カードを3枚伏せて、コミック・リリーフのペンデュラム効果発動

 自分フィールド上の魔界劇団ペンデュラムモンスター1体と相手フィールド上のモンスター1体を選択して、そのコントロールを入れ替えこのカードを破壊する。

 俺が選ぶのはコミック・リリーフと古代の機械(アンティーク・ギア・)双頭猟犬(ダブルバイト・ハウンドドッグ)。」

 

「何っ!?」

 

 古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイト・ハウンドドッグ) DEF500→1000

           ATK1200→1700

 

 コミック・リリーフが跳ね飛び、オベリスクフォースの下へ行くと、古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイト・ハウンドドッグ)を蹴飛ばして沢渡のフィールドへと移動させた。

 そして、その衝撃で首輪の様についていた磁力の指輪が砕けた。

 

「ぐうっ・・・磁力の指輪は自分のモンスターにしか装備できない。」

 

「対象不適切で破壊されたか、これで俺たちは自由に攻撃できるぜ。」

 

「それはこちらとて同じこと!」

 

「そして、このターン、お前はバトルフェイズを行えない!」

 

「女のフィールドはがら空き、次の俺のターンで!」

 

 そう、全員が相手となるこのバトルロイヤルルールでは、磁力の指輪は我々への攻撃も防いでいたものとなっていたが、それはなくなった。

 だがこんな効果なら、相手の1人くらいは潰せていたはず

 

「へぇ~聞いちゃいたが、胸糞わりぃ連中だ・・・

 コミック・リリーフはコントロールが移った時、元々の持ち主は自身のマジック、トラップゾーンにセットされた魔界台本1枚を破壊できる。

 俺はセットしていた魔界台本「オープニング・セレモニー」を破壊

 そして、効果発動、自分のエクストラデッキに魔界劇団が表である時にセットされたこいつが相手によって破壊された時、俺は手札を5枚になるようにドローする。

 俺のエクストラデッキには魔界劇団―エキストラが居て、手札は0、よって5枚ドローだ!」

 

 オベリスクフォースの言葉に機嫌を悪くした沢渡は、一気に手札を5枚まで回復させる。

 

「俺は伏せていた魔界台本「魔界の宴咜女」を発動

 自分フィールド上の魔界劇団モンスター1体をリリースして、墓地の魔界台本を1枚セットする。

 ビッグ・スターをリリースして魔界台本「オープニング・セレモニー」をセットだ。

 カードを2枚伏せてエンドフェイズ、メロー・マドンナの効果で特殊召喚されたコミック・リリーフは持ち主の手札に戻る。

 俺のカードは返して貰うぜ。」

 

「ちっ!」

 

「ターンエンドだ。」

 

「おい、お前。」

 

「俺のターン、ドロー!俺は古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)を召喚!

 効果で男の方に600ポイントのダメージだ!」

 

「アチッ!な、なんだよ?」

 LP1900→1300

 

「このデュエルはバトルロイヤル、2ターン目の貴様は攻撃することも出来た。

 何故、そうしなかった?」

 

「マジックカード、融合識別(フュージョン・タグ)

 エクストラデッキから古代の機械(アンティーク・ギア・)参頭猟犬(トリプルバイト・ハウンドドッグ)を公開し、このターン、古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)を融合素材とするとき、古代の機械(アンティーク・ギア・)参頭猟犬(トリプルバイト・ハウンドドッグ)として融合素材にできる。

 俺は古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)の効果で手札の古代の機械兵士(アンティーク・ギアソルジャー)と融合!」

 

「あぁ?そんなのあたりまえじゃねぇか。」

 

「現れろ!古代の機械(アンティーク・ギア)究極猟犬(・アルティメット・ハウンドドッグ)!!

 このモンスターが融合召喚に成功した時、相手のライフを半分にする!

 喰らえ!ヘル・ハウンドフレイム!!」

 

「ギャー!!おい!話の腰を折るんじゃねぇよ!!

 古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイト・ハウンドドッグ)の効果でそいつにギア・アシッドカウンターを乗せるぜ。」

 LP1300→650

 

 古代の機械(アンティーク・ギア)究極猟犬(・アルティメット・ハウンドドッグ) ATK2800→3100

           ギア・アシッドC0→1

 

「ふん、すぐに口を利け無くしてやる!

 古代の機械(アンティーク・ギア)究極猟犬(・アルティメット・ハウンドドッグ)は1ターンに3回の攻撃が」

 

「トラップカード、威嚇する咆哮!

 相手はこのターン、攻撃宣言が出来なくなる。」

 

古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイト・ハウンドドッグ)「グオオオォォォォォン!!」

 

 双頭猟犬(ダブルバイト・ハウンドドッグ)が吠え、究極猟犬(アルティメット・ハウンドドッグ)が伏せる。奇妙な光景だ。

 

「ちっ!カードを3枚伏せてターンエンドだ。」

 

 むっ、私のターンか

 

「私のターン、ドロー!

 それで、なんだ?」

 

「あぁ?別になんてことはねぇよ。

 ターンが回ってねぇ奴が相手にいるのに攻撃する気がおきねぇだけだ。

 それに」

 

「それに?」

 

「一人ずつなんてちまちました事やってられっか!

 俺様が3人同時にド派手にかっこよく倒す!!

 それくらいじゃないと張り合いがねぇからな!」

 

 勿体付けて宣言されたのは3キル宣言、そのために攻撃ではなく展開を選んだのか?

 

「・・・お前、馬鹿だな。」

 

「ハッ!馬鹿で結構!

 これくらいできなきゃあのデュエル馬鹿を負かすことなんて出来ねぇンだよ!」

 

 甘い奴だ、負けたくない奴がいるから勝ちを逃すなど・・・だが

 

「フッ、その馬鹿さ加減、嫌いじゃない

 私も乗ってやろう、マジックカード、一時休戦、互いのプレイヤーはカードを1枚ドローし、次の相手ターンの終了時まであらゆるダメージは発生しなくなる。」

 

 全員がカードを1枚ドローする。

 攻撃した後に発動することもできたのに、これでは私も馬鹿だな。

 さて、馬鹿は馬鹿なりに御膳立てでもしてやるか

 

月光翠鳥(ムーンライト・エメラルド・バード)を召喚!」

 

月光翠鳥(ムーンライト・エメラルド・バード)「ハッ!」

    ATK1200

 

月光翠鳥(ムーンライト・エメラルド・バード)の効果発動、このカードが召喚、特殊召喚に成功した時、手札のムーンライトカードを1枚墓地へ送り、デッキから1枚ドローする。

 私は月光黄鼬(ムーンライト・イエロー・マーテン)を捨てデッキから1枚ドロー、さらに効果で墓地に送られた月光黄鼬(ムーンライト・イエロー・マーテン)の効果でデッキからムーンライトカード、月光融合を手札に加える。

 

 マジックカード、月光融合(ムーンライト・フュージョン)発動。

 このカードは通常の融合の効果に加え、相手フィールド上にエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターが居る場合、自分のデッキ、エクストラデッキのムーンライトモンスターを1体まで融合素材にし、ムーンライト融合モンスターを融合召喚できる!

 フィールドの月光翠鳥(ムーンライト・エメラルド・バード)とデッキの月光白兎(ムーンライト・ホワイト・ラビット)を融合!

 翠に輝く翼持つ鳥よ!月光に映え躍動する兎よ!月の引力により渦巻きて新たなる力と生まれ変わらん!融合召喚!

 現れ出でよ!月明かりに舞い踊る美しき野獣!月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)!!」

 

月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)「はっ!」

     DEF2000

 

「「「融合だと!?」」」

 

 う~む、本当に私の事を知らないようだ。

 赤いのを倒すとか言っていたり、何しに来たんだこいつら?

 

月光翠鳥(ムーンライト・エメラルド・バード)の効果発動

 効果でこのカードが墓地へ送られた場合、墓地の中か除外されているムーンライトモンスター1体を効果を無効にし守備表示で特殊召喚する。

 私は月光白兎(ムーンライト・ホワイト・ラビット)を特殊召喚。」

 

 月光白兎(ムーンライト・ホワイト・ラビット) DEF800

 

「さらに墓地の月光黄鼬(ムーンライト・イエロー・マーテン)の効果発動

 自分フィールド上のムーンライトモンスターを手札に戻してこのカードを守備表示で特殊召喚する。

 白兎を手札に戻し月光黄鼬(ムーンライト・イエロー・マーテン)を特殊召喚。」

 

 月光黄鼬(ムーンライト・イエロー・マーテン) DEF2000

 

「そして、融合を発動。

 手札の月光白兎(ムーンライト・ホワイト・ラビット)とフィールドの黄鼬(イエロー・マーテン)を融合し2体目の月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)を融合召喚!」

 

月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)「ふふっ」

     DEFG2000

 

「自身の効果で特殊召喚された黄鼬(イエロー・マーテン)は除外される。

 マジックカード、月光香発動

 墓地からムーンライトモンスター1体を特殊召喚する。戻ってこい!月光白兎(ムーンライト・ホワイト・ラビット)!!」

 

月光白兎(ムーンライト・ホワイト・ラビット)「ははっ!」

    DEF800

 

月光白兎(ムーンライト・ホワイト・ラビット)の効果発動

 1ターンに1度、自分フィールド上のムーンライトカードの数まで、相手フィールド上のマジック、トラップカードを選択して手札に戻す。

 私のフィールドにムーンライトは3体、2番目の奴のセットカード3枚を全て手札に戻す。」

 

「なんだと!?」

 

 これで今ある妨害札はすべてなくなった。

 

「カードを2枚伏せ、ターンを終了する。」

 

「おのれ!俺のターン、ドロー!

 マジックカード、融合派兵を発動、エクストラデッキの古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイト・ハウンドドッグ)を公開し、デッキから古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)を特殊召喚!」

 

 古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ) ATK1000→1300

 

「そして、融合発動

 フィールドと手札の2体の古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)を融合し現れろ、古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイト・ハウンドドッグ)!」

 

 古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイト・ハウンドドッグ) ATK1400→1700

 

「マジックカード、融合回収(フュージョン・リカバリー)を発動し、墓地の融合と融合素材として墓地へ送られた古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)を手札に戻し、再び融合を発動

 フィールドの古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイト・ハウンドドッグ)と手札の古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)を融合!

 融合召喚!現れろ、古代の機械(アンティーク・ギア・)参頭猟犬(トリプルバイト・ハウンドドッグ)!」

 

 古代の機械(アンティーク・ギア)三頭猟犬(・トリプルバイト・ハウンドドッグ) ATK1800→2100

 

「まだだ!手札からマジックカード融合賢者を発動しデッキから新たな融合を手札に加え発動!

 フィールドの古代の機械(アンティーク・ギア)参頭猟犬(・トリプルバイト・ハウンドドッグ)と手札の古代の機械兵士(アンティーク・ギアソルジャー)を融合

 現れろ!古代の機械(アンティーク・ギア)究極猟犬(・アルティメット・ハウンドドッグ)!!」

 

古代の機械(アンティーク・ギア)究極猟犬(・アルティメット・ハウンドドッグ)「グオオオオオォォォン!!」

         ATK2800→3100 ギア・アシッドC0→1

 

古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイト・ハウンドドッグ)の効果でギア・アシッドカウンターを乗せさせてもらったぜ。」

 

「だが、地獄の業火からは何者も逃れられない!

 古代の機械(アンティーク・ギア)究極猟犬(・アルティメット・ハウンドドッグ)の効果発動!神聖な融合を使う不届き者め!制裁を受けろ!!」

 

「ぐうぅ!!」

 LP4000→2000

 

 この効果はライフを半減させる効果、ダメージではないから一時休戦では防げないか

 

「バトルフェイズ、古代の機械(アンティーク・ギア)究極猟犬(・アルティメット・ハウンドドッグ)月光白兎(ムーンライト・ホワイト・ラビット)を攻撃!

 カードを1枚伏せて、ターンエンドだ。」

 

 月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)は戦闘では破壊されないし、ペンデュラムモンスターは破壊されればエクストラデッキへ行き、再び蘇る。

 無駄な戦闘は避けて来たか。

 

「俺のターン、ドロー!

 俺は古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)を召喚!

 一時休戦の効果は切れた!喰らえ!ハウンド・フレイム!!」

 

「チッ、ちまちましやがって・・・」

 LP650→50

 

古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)の効果発動

 手札の古代の機械獣(アンティーク・ギアビースト)と融合し、これで引導を渡してやる!現れろ!レベル8!古代の機械魔神(アンティーク・ギア・デビル)!!」

 

 古代の機械魔神(アンティーク・ギア・デビル) DEF1800

 

 複数の砲台が羽のように広がったアンティーク・ギア

 たしかあのモンスターには戦闘破壊されたとき、デッキからアンティーク・ギアを呼び寄せる効果があったな。

 

「このモンスターにあらゆる効果は効かない!

 そしてこのモンスターは1ターンに1度、相手に1000ポイントのダメージを与える。

 これで終わりだ!喰らえ!!」

 

 古代の機械魔神(アンティーク・ギア・デビル)の砲台から沢渡へ向かって砲弾が掃射される。

 だが、奴は不敵に笑みを浮かべ、自信満々に言い放つ

 

「なかなかのモン持ってんじゃねぇか!

 でもな、この俺、ハイパーグレイトフル沢渡は最高にいいモン持ってんだよ!!

 トラップ発動!生命吸収魔術

 フィールド上の全ての裏側守備表示モンスターは表側表示になり、俺はフィールドの効果モンスターの数×400ポイントのライフを回復する!

 フィールドのモンスターは全部で9体、よって3600ポイント回復だ!」

 LP50→3650→2650

 

「何!?」

 

「へっ、さぁ!どうした、何かまだやることがあんのかよ?」

 

「ぐぅ・・・ターン、エンドだ。」

 

「さぁ、いよいよ俺のターンだ。覚悟しな!ドロー!

 まずは俺の勝利への一歩を華々しく飾ろうか!伏せていたマジックカード、魔界台本「オープニング・セレモニー」発動!

 俺のライフはさらに1500ポイント回復!」

 LP2650→4150

 

 ライフが再び回復した、散々効果ダメージを受けたのに初期値よりもライフが多くなっている。タフな奴だ。

 

「ビッグ・スターのペンデュラム効果でプリティ・ヒロインをリリースして墓地の魔界台本「オープニング・セレモニー」を手札へ

 スケール1の魔界劇団―デビル・ヒールをペンデュラムスケールにセッティングして、マジックカード、ペンデュラム・ストームを発動

 お互いのペンデュラムゾーンのカードを全て破壊し、相手のマジック、トラップカードを1枚選んで破壊する。

 3番目の奴のセットカードを破壊するぜ。」

 

「ぐっ!古代の機械蘇生(アンティーク・ギアリボーン)が・・・」

 

「これでテメェ等は丸裸だ。

 速攻魔法、魔界台本「ロマンティック・テラー」を発動!」

 

ビッグ・スター「ハーハハハハハッ!!」

       DEF1800

 

 なぜか、ビッグ・スターがタキシードを着て、花束を掲げながら、ヘリコプターで登場した。

 そして、その花束を向けられたティンクル・リトルスターは恥ずかしそうにして、沢渡の手札へ戻ってしまった。

 まぁ、あの登場は恥ずかしいだろう。

 おまけにビッグ・スターは逃げられたのがショックだったのか、膝を付いて落ち込んでいる。なんだこれ?

 

「魔界台本「ロマンティック・テラー」は自分フィールドの魔界劇団ペンデュラムモンスター1体を手札に戻し、そのモンスターと名前の異なる魔界劇団をエクストラデッキから守備表示で特殊召喚する。

 リトルスターを手札に戻して、ビッグ・スターを特殊召喚したぜ

 さらにビッグ・スターの効果でデッキから魔界台本「魔王の降臨」をセットして発動

 自分フィールド上の魔界劇団モンスターの数まで、相手フィールド上の表側表示カードを破壊する。

 古代の機械(アンティーク・ギア)究極猟犬(・アルティメット・ハウンドドッグ)古代の機械城(アンティーク・ギアキャッスル)を破壊だ。」

 

 落ち込みから回復したビッグ・スターが立ち上がり、禍々しいマントを羽織って腹いせとばかりに魔法を放ってオベリスクフォースのカードを破壊する。

 

 古代の機械(アンティーク・ギア)究極猟犬(・アルティメット・ハウンドドッグ) ATK3100→2800

 

 古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイト・ハウンドドッグ) DEF1000

           ATK1700→1400

 

「魔界台本「魔界の宴咜女」の効果でビッグ・スターをリリースして、墓地の魔界台本「魔王の降臨」をセット。」

 

 破壊効果を持つ「魔王の降臨」がセットされたか、なら

 

「私はトラップカード、ナイトメア・デーモンズを発動

 月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)を1体リリースし、一人目のフィールドにナイトメア・デーモントークンを3体攻撃表示で特殊召喚する。」

 

 ナイトメア・デーモントークン ATK2000

 ナイトメア・デーモントークン ATK2000

 ナイトメア・デーモントークン ATK2000

 

「俺のフィールドに!?」

 

「ナイトメア・デーモンズだとぉ?・・・じゃあこうだ!

 俺はスケール2の魔界劇団―サッシー・ルーキとスケール9の魔界劇団―ティンクル・リトルスターをペンデュラムスケールにセッティング!」

 

 光の柱の中に現れるリトルスターと様々な所に目があるアフロ頭の悪魔

 

「これで俺はレベル3からレベル8までのモンスターが同時召喚できる。

 世界よ、見よ!湧け!そして俺を讃えろ!ペンデュラム召喚!

 来い!レベル8、魔界劇団―デビル・ヒール!そして2体のレベル7、魔界劇団―ビッグ・スター!」

 

 デビル・ヒール ATK3000

 ビッグ・スター ATK2500

 ビッグ・スター ATK2500

 

 2体のビッグ・スターと青い大柄の悪魔が光の中から登場する。

 にしてもこのモンスターたちはいちいちポーズを取らないと登場できないのか?

 

「デビル・ヒールが召喚、特殊召喚された時、相手フィールド上のモンスター1体の攻撃力を俺の場の魔界劇団モンスターの数×1000ポイントダウンさせる。

 俺の場の魔界劇団は4体、ナイトメア・デーモントークン1体の攻撃力を4000さげるぜ!」

 

 ナイトメア・デーモントークン ATK2000→0

 

「な、攻撃力0だと!?」

 

「そして魔界台本「魔王の降臨」を発動!

 テメェらの古代の機械(アンティーク・ギア)究極猟犬(・アルティメット・ハウンドドッグ)と攻撃力2000のナイトメア・デーモントークン2体を破壊!」

 

「そして、デーモントークンは破壊されるとコントローラーに800ポイントのダメージを与える。」

 

「ぐわああぁぁ!!」

 LP3500→2700→1900

 

「魔界劇団―ワイルド・ホープを攻撃表示にして効果発動

 1ターンに1度、このカードの攻撃力をターン終了時まで自分フィールドの魔界劇団モンスターの種類×100ポイントアップする。」

 

 ワイルド・ホープ DEF1200→ATK1600→1900

 

古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイト・ハウンドドッグ)も攻撃表示にしてバトルだ!

 ナイトメア・デーモントークンをワイルド・ホープで、2人目をビッグ・スター2体で3人目をデビル・ヒールと古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイト・ハウンドドッグ)で攻撃!!」

 

「ぐわあああぁぁあぁぁ!!」「ぐおぉぉぉぉぉぉぉ!!」「ぐええぇぇぇぇっぇぇ!!」

 LP1900→0      LP4000→1500→0 LP4000→2600→0

 

 ナイトメア・デーモントークンをワイルド・ホープが撃ち抜き、2体のビック・スターが飛び蹴りを放ち、古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(ダブルバイト・ハウンドドッグ)が噛みつき、デビル・ヒールが殴り倒す。

 ふむ1ターン3キル達成だな。まぁ、私のカードあってのことだが

 

「どうだ、ナイスサポートだったろ?」

 

「何言っていやがる。

 まったく余計なことしやがって、「俺の」!3キルが出来なかったじゃねぇか!!」

 

 むっ!こいつ!!

 

「なんだと!!コミック・リリーフで究極猟犬(アルティメット・ハウンドドッグ)のコントロールを得てもダメージが足りなかったではないか!」

 

「そこはだな!うん?うぇ!?な、何だあれ!?」

 

「うん?うおっ!?」

 

 見てみれば倒れていたオベリスクフォースが地面に呑み込まれていた。

 いや、よく見れば奴らの下の地面が赤黒いミミズの様なモノに変化し、奴らを飲み込んでいる。

 これは・・・なんだ?

 

「お、おい、アカデミアってのは、負けるとあぁなるのか?」

 

 そんな仕様は嫌すぎる

 

「いや、そんなはずは・・・うん?」

 

 奴らから目を離すと、近くの木に凭れている奴がいた、あれは・・・黒咲!?

 

「おい、しっかりしろ!黒咲!!」

 

「・・・・う・・・瑠・・・璃・・・いや、セレナか、くっ・・・」

 

「おいおい、ソイツ酷い怪我じゃねぇか!?」

 

「何があったんだ?」

 

「アカデミアの増援とデュエルをして・・・くっ!ここは?」

 

 なにっ!?じゃあ、この近くに!?

 

「ジャングルエリアだ。

 ユートが急に倒れたからここで隠れようと思ったんだが・・・」

 

 こんな怪我が出来るようなデュエルを近くでしていたのに、なぜ気付かなかったんだ私は!!

 

「ジャングル?お前がここまで運んだのか?」

 

「えっ?何を言って・・・」

 

「おい、お前、何処でやられたんだよ?」

 

「遺跡エリアのピラミッドだが・・・」

 

「ピラミッドだと!?あれは此処とは反対の場所にある奴だぞ!?」

 

 どういうことだ・・・さっきの奇妙なミミズといい

 我々やアカデミア以外に何か得体の知れない奴が、この世界にいるというのか!?


「ふむ、権現坂殿も留学生殿もいないでござるか・・・」

 

 溶岩エリアまで来たでござるが、収穫なし、まさかもう・・・

 

「いや、留学生殿の実力はまだ測れぬでござるが、権現坂殿なら持ちこたえているはずでござる。

 それにしても、どうしたものか・・・」

 

 いっそのこと、デュエルの気配をたどってみるか・・・むっ!

 

「おい!来たか!!」

 

「いや、だがこちらへ向かっているらしい!!」

 

「丁度いい、ここで迎え撃つ!!」

 

 アカデミア、随分と切羽詰っている様子でござるが何をするつもりか・・・

 

「「「誰だ貴様!!」」」

 

 ぬぅ!?別の方向からアカデミアが!!しまった、ここは撤退を!!

 

「「「忍者だと!?」」」

 

「「「丁度いい」」」「「「こいつを人質に」」」「「「すればいいだろう。」」」

 

 何人居るでござるか!?

 くっ!何時の間にやらぞろぞろと集まってきている。これでは逃げられ

 

――ゴオオオォォォォォォォォォ!!

 

「むっ?」

 

 この音は、なんでござるか?

 

――オオオオオオオォォォォォォォォォ!!

 

 まるでジェットエンジンの様な

 

「「「「「来た!!」」」」」

 

「「「「「奴だ!」」」」」

 

「「「「「悪魔だ!!」」」」」

 

――グオオォォォォォォォォォ!!

 

――ガウッ!ガウゥゥ!!ガオオオオォォン!!

 

 続き聞こえる咆哮と、鉄が擦り合うような音で発せられた獣の声

 奴らが目を向ける、そこにいたのは

 

オッドアイズ・レイジング「ギャオオオォォォォォォォン!!」

 

 炎の翼を広げ地面すれすれを飛行している紅いドラゴンと

 

古代の機械猟犬「「「「ギャン!」」」」」「「「「「ギャオ!」」」」」「「「「「ワオォォン!!」」」」」

 

 それを追うアカデミアを背中に乗せた機械の猟犬の群れ

 

「日影!!」

 

「!?」

 

 紅いドラゴンから聞き慣れた声で拙者の名が紡がれたことに驚いたが、その原因はその背から飛び降り地面をスライディングしながらそばに来た人物を見て確信した。

 

「大丈夫か、日影?」

 

「遊矢殿・・・事態が全く好転しているように見えぬのでござるが?」

 

 ざっと見て、敵が倍になったでござる。

 

「まぁ、心配するなって。」

 

「「「「「「「「「「榊 遊矢!」」」」」」」」」」

 

「「「「「「「「「「世界を滅ぼす悪魔を!!」」」」」」」」」」

 

「「「「「「「「「「今ここで討伐する!!」」」」」」」」」」

 

「ほら、聞いての通り、こいつらの狙いは俺だ。

 お前は逃げてもらって構わないんだぞ?」

 

「冗談、友を貶す輩を見逃したとあっては風魔忍者の名折れでござる!」

 

 拙者一人では無理な事でも、遊矢殿が居るならば負ける気がしない。

 侵入してきたほとんどの者がこの場に集まっているようだし、ここで一掃するでござる!!

 

――決闘(デュエル)!!――


「3時でござるな・・・」

 

 日影さんが権現坂達を探しに行ってから30分くらい経ったわね・・・

 

「ねぇ、日影さん大丈夫なの?」

 

「兄者は太陽のごとく果敢に攻め、敵陣を突破する。そういう忍びでござる。

 攻め時も引き際もわきまえている、心配ござらん。」

 

「そう・・・」

 

 心配はいらないか・・・でも私はやっぱり心配、日影さんの事も権現坂の事も遊矢の事も

 

≪貴方の運命の先に待つのは、貴方が原因で誰かを傷つけてしまう未来≫

 

 これがそうだって言うの?

 訳が分からないまま巻き込まれて、いつの間にか守られる立場になって、それで誰かが傷ついて

 私は誰の力にもなれないの?

 

――ヒュ~

 

「ん?何この音?」

 

―ヒュウウゥゥゥゥゥ・・・・

 

「いかん!?柚子殿御免!!」

 

「うっ!?うえぇぇぇぇぇ!!?またこれええぇぇぇぇ!!」

 

――ドゴォォォ!!ゴオオオォォォン!!ドッカアアァァァァン!!

 

 月影さんに抱えられて、隠れていた氷の陰から出る。

 そして、私達が元いた場所が爆発し、爆風で私達は吹き飛ばされた。

 

「な、なにっ!?何が起こったの!?」

 

「くっ、やはり砲撃音でござったか・・・柚子殿、怪我は?」

 

「あ、ありがとう、怪我はないわ、大丈夫。」

 

 これでもアクションデュエリストとして体は鍛えているんだから

 

「ははっ!隠れていた奴が見つかったぞ。」

 

「「!?」」

 

「しかも2人出て来たか、だが、榊 遊矢の知り合いは女の方だ。」

 

「構わない、人質は多い方がいい。」

 

 こ、この人たち・・・アカデミア!

 彼らの後ろには複数の砲塔が羽のように広がっている機械族(だと思う)モンスターが、その砲身から煙を上げて鎮座していた。

 

「まさか、そのモンスターを使って無差別砲撃をしたの!?」

 

 さっきの爆発、ただのリアルソリッドビジョンの威力じゃない

 当たったら本当に・・・

 

「どうしてこんなことをするの・・・」

 

「プロフェッサーはおっしゃられた!」

 

「榊 遊矢は世界を滅ぼす悪魔だと!!」

 

「我らは正義の為、世界の為、奴を討伐する!」

 

「「「光栄に思え!貴様らはその礎となるのだ!!」」」

 

 ・・・ふざけないで!!

 

「何で遊矢が悪魔なの!!遊矢が何をしたって言うの!!」

 

≪あれが欲しいのか?≫

 

 遊矢の何も知らないくせに!!

 

「何で私達が貴方たちの都合に巻き込まれなくちゃいけないの!!」

 

≪ほら、いいよ、柚子の為に取ったんだし、柚子が持ってろよ。≫

 

 遊矢は、誰かが泣くのが大っ嫌いなの!!

 

「何でデュエルモンスターズで争うの!!」

 

≪うん、やっぱり、柚子は笑っている方が似合っている。≫

 

 遊矢はデュエルが大好きなの!!

 

「遊矢が、私が、私達が大好きなデュエルを戦争の道具になんかしないでよ!!」

 

「柚子殿・・・」

 

「はぁはぁ・・・」

 

「・・・貴様らの意志など関係ない。」

 

 えっ・・・?

 

「プロフェッサーの言葉こそ正しい、プロフェッサーこそ、正義!」

 

「プロフェッサーが悪魔と言った、榊 遊矢こそ悪!」

 

「「「悪は裁かれねばならぬのだ!!」」」

 

 あ~もう!!

 

「あったま来た!!何が正義よ!人を誘拐したり殺そうとしたりしているあなた達の方がよっぽど悪よ!!」

 

 私はデュエルディスクを起動させる。

 すると月影さんが慌てて割って入ってくる。

 

「落ち着かれよ柚子殿!ここは」

 

「いやよ!!人質を取ろうとしなくちゃ遊矢に勝てないと思っている腰抜けから逃げたなんて、みんなに顔向けできないわよ!!」

 

「・・・分かり申した。

 そこまで言う御仁に逃げることを勧めるなど、酷でござったな。

 ならば、拙者も風魔忍者の威信にかけて柚子殿をお守り致そうぞ!!」

 

 月影さん!

 

「痛い目に」「あうことを選ぶとは」「愚かな奴らだ。」

 

『『『『『決闘(デュエル)!!』』』』』


「へぇ~やっぱり、気が強いんだ~

 いや、瑠璃みたいに御淑やかでもないし、リンみたいにお姉さんっぽくもないなぁ~

 セレナみたいに馬鹿っぽくもないし、顔は似ているけどやっぱり別人だね。」

 

 柚子たちを眼下に収め、その少年は嬉しそうに言う

 

「うんうん、あの子とデュエルをするのとっても楽しそう。でも・・・」

 

 少年はオベリスクフォースへ目を向けると、汚物でも見たように顔を歪ませる。

 

「プロフェッサーの為にとか言いながら、邪魔しているなんて哀れな奴ら。

 さて、そのプロフェッサーからの仕事の邪魔だし、柚子ともデュエルしたいし、彼らには早めに消えてもらわなくちゃね。」

 

 捕食者は氷の丘を降りてゆく、自らの求める戦いを早く楽しむために


 このデュエル、遊矢の為にも、私の意地にかけて負けられないわ!

 人数差が何よ!ぶっ飛ばしてやるんだから!!

 

「先攻は俺だ、俺は古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)を召喚!」

 

古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)「グオオォォン!」

       ATK1000

 

 出て来たのは機械の犬?なんだか、火を口の中に溜めている?

 

古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)の効果!召喚された時、相手に600ポイントのダメージを与える!

 まずは生意気な女からだ!ハウンド・フレイム!!」

 

「きゃあぁぁぁ!」

 LP4000→3400

 

 ディスクの実体化プレートに当たったけど、滅茶苦茶熱いわ!?

 まるで本物の炎、その割に焦げたりやけどになってないけど

 

「柚子殿!?」

 

「だ、大丈夫よ。びっくりしただけ」

 

「ふん、我らアカデミアを甘く見るからこうなるのだ。

 古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)のもう1つの効果、1ターンに1度、自分の手札フィールドから融合素材を墓地に送りアンティーク・ギア融合モンスターを融合召喚する!

 フィールドと手札の古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)を融合!

 古の魂受け継がれし、機械仕掛けの猟犬達よ!群れ成して交じり合い、新たなる力と共に生まれ変わらん!融合召喚!

 現れよ!レベル5、古代の機械(アンティーク・ギア・)双頭猟犬(ダブルバイト・ハウンドドッグ)!!」

 

古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイト・ハウンドドッグ)「「グオオォォンン!!」」

         ATK1400

 

 融合召喚で出て来たのは頭が二つになった機械犬

 でも攻撃力も守備力も低い数値、厄介な効果を持ってそうね。

 

古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイト・ハウンドドッグ)は1ターンに1度、モンスターが召喚、特殊召喚された時

 そのモンスターにギア・アシッドカウンターを置く

 そして、ギア・アシッドカウンターの置かれたモンスターはアンティーク・ギアモンスターと戦闘を行う時、ダメージ計算を行う前に破壊される。

 

 更に装備魔法、磁力の指輪を装備、このカードは自分のモンスターにのみ装備可能でその攻撃力、守備力を500ポイント下げる。」

 

 古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイト・ハウンドドッグ) ATK1400→900

           DEF1000→500

 

「そして、相手は装備モンスターしか攻撃対象に選べなくなる。

 カードを2枚伏せ、ターンを終了する。」

 

 融合デッキなのに手札を1ターンで使い切った!?

 ということはあの2枚の伏せカードのうちどちらかがドローカード?

 

「次は拙者が行く!ドローカード!

 拙者はマジックカード、闇の誘惑を発動

 その効果でデッキから2枚のカードを引き、その後手札の闇属性モンスター、黄昏の忍者将軍―ゲツガをゲームより除外。

 さらにマジックカード、増援を発動、レベル4以下の戦士族、忍者マスターHANZOを手札へ加える。

 

 そして、永続魔法、隠密忍法帳を発動 このカードは1ターンに1度、手札の忍者モンスターを1体捨てることで、デッキから隠密忍法帳以外の忍法マジック、トラップカードを1枚、自分フィールドにセットする。

 拙者は先ほど手札に加えたHANZOを捨てデッキから、機甲忍法ゴールド・コンバージョンをセットする。

 

 さらにマジックカード、アームズ・ホールを発動

 デッキの上から1枚を墓地へ送り、デッキ、墓地より装備魔法1枚を手札に加える。

 このカードを使うターン、拙者は通常召喚が出来ぬ。

 デッキより装備魔法D・D・Rを手札に加え、手札の2枚目のHANZOを捨て発動するでござる!

 このカードの効果は手札を1枚切り、除外されたモンスターを拙者のフィールドに特殊召喚する!

 参上せよ!黄昏の忍者将軍―ゲツガ!!」

 

ゲツガ「ハアアァァァ!フン!!」

   ATK2000

 

 月影さんが出したのは月の飾りが輝く兜を付けて、背中に雲と月の絵が描かれた幟を差した、まさに将軍と言ったモンスター

 でも、意外と鎧は軽装だけど忍者には見えないわね。

 

「そいつの特殊召喚時、古代の機械(アンティーク・ギア・)双頭猟犬(ダブルバイト・ハウンドドッグ)の効果発動!

 ギア・アシッドカウンターを1つ乗せる。」

 

 ゲツガ ギア・アシッドC0→1

 

「ならばゲツガの効果発動、1ターンに1度、攻撃表示のこのカードを守備表示に変える事で墓地よりゲツガ以外の忍者を2体呼び出す!

 現れよ!2体の忍者マスターHANZO!!」

 

HANZO「ハッ!いざ!」

    ATK1800

 

HANZO「フン!参る」

    ATK1800

 

「HANZOの特殊召喚時、デッキよりHANZO以外の忍者モンスターを手札に加える。

 拙者はデッキより2体の機甲忍者―アクアを手札に加える。」

 

 ゲツガが、幟を突き立て陣を作ると、銀の軽鎧を身に纏って、灰色のマフラーで顔を隠した忍者が2体現れて月影さんに2枚のカードを投げ渡した。

 

「はっ!何体モンスターを並べようが無駄だ!

 俺は自分フィールド上の攻撃表示モンスター、古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイト・ハウンドドッグ)を対象に永続トラップ、安全地帯を発動

 このカードが存在する限り、対象モンスターは相手の効果対象にならず、戦闘及び相手のカード効果で破壊されない!

 さらに永続トラップ、スピリット・バリア発動

 このカードがある限り、自分フィールド上にモンスターが存在する限り、俺は戦闘ダメージを受けない!」

 

 えぇと、古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイト・ハウンドドッグ)は今、モンスターの攻撃を全て引き寄せて、戦闘でも効果でも破壊されず、対象にもならない。

 さらにスピリット・バリアで戦闘ダメージが発生しない状態になったという事ね。

 厄介なコンボね。片方ドローカードかと思ったけど、やるだけの価値はあるわ。

 でも磁力の指輪は「相手の」全ての攻撃を引き寄せるから残り二人も攻撃できないんじゃないかしら?

 

「ふ~む・・・拙者は伏せていたマジックカード、機甲忍法―ゴールド・コンバージョンを発動

 自分フィールドの忍法カードを全て破壊し、デッキから新たに2枚のカードを引く

 隠密忍法帳を破壊し2枚ドロー、さらにマジックカード、手札抹殺を発動

 我々はすべての手札を捨て、捨てた枚数分ドローする。

 拙者は5枚のカードを捨て5枚ドロー。」

 

 ナイス月影さん!

 

「墓地へ送られたイーバの効果発動よ

 自分の墓地、フィールドからこのカード以外の天使族、光属性モンスターを2枚まで除外して、除外した枚数だけ、デッキからイーバ以外のレベル2以下の天使族、光属性モンスターを手札に加えるわ。

 同名カードは1枚だけだから、デッキからレベル1のハネワタとレベル2の宣告者の神巫(デクレアラー・ディヴァイナー)を手札に加える。」

 

 うん、最初の奴以外の2人の手札も墓地へ送っちゃったけど、手札が7枚になった。

 相手の墓地のカードで、墓地でも使えるのは・・・古代の機械射出機(アンティーク・ギアカタパルト)?トークンを作る効果なのね。

 それから、あれ?昆虫族のモンスターが居る?なんだか、気持ち悪いモンスターね・・・

 

「さらに拙者はマジックカード、忍び寄る闇を発動

 自分の墓地より2体の闇属性モンスターを除外し、デッキから闇属性レベル4モンスターを手札に加えるでござる。

 拙者の墓地より異次元の偵察機を2体除外し、3体目の忍者マスターHANZOを手札へ加える。

 さらにフィールドのレベル4の闇属性モンスター、忍者マスターHANZO2体でオーバーレイ、エクシーズ召喚!

 現れよ、ランク4!ヴェルズ・ナイトメア!」

 

ヴェルズ・ナイトメア「ァァァアハ!ンハ!」

         DEF1950 ORU2

 

 忍者2体で呼び出されたレイピアを構えた闇騎士

 だけど、何故かヴェルズ・ナイトメアを見たアカデミアが嗤い始める。

 

「ハハハッ!こいつ、エクシーズを使うのか!」

 

「これはお笑いだ!自ら我々の獲物であることを晒しやがった!」

 

「負け犬のエクシーズをな!!」

 

「こやつら!!」

 

「なんて奴らなの!!」

 

 カードを生かすも殺すもそれを使うデュエリストしだいなのに、エクシーズ召喚を使うってだけで馬鹿にするなんて!!

 

「拙者はカードを3枚伏せて、エンドフェイズ、このターンに除外された異次元の偵察機の効果が発動し、攻撃表示で特殊召喚される。」

 

 異次元の偵察機 ATK800

 異次元の偵察機 ATK800

 

「これでターンエンドでござる。」

 

「俺のターン、ドロー

 俺も古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)を召喚し、今度は忍者野郎にハウンド・フレイム!!」

 

 古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ) ATK1000

 

「ぐおっ!」

 LP4000→3400

 

「月影さん!!」

 

「何のこれしき!」

 

「強がりがいつまでできるかな?

 俺は古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)の効果発動、手札の古代の機械兵士(アンティーク・ギアソルジャー)とフィールドの古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)を融合!

 古の魂受け継がれし、機械仕掛けの猟犬と兵士よ!交じり溶け合い、新たなる力と共に生まれ変わらん!融合召喚!

 現れろ!レベル8、古代の機械魔神(アンティーク・ギア・デビル)!」

 

 古代の機械魔神(アンティーク・ギア・デビル) DEF1800

 

 現れたのはさっき砲撃してきたモンスター

 でも、今はあの人も攻撃できない状況、なら

 

「そして、古代の機械魔神(アンティーク・ギア・デビル)の効果発動!1ターンに1度、相手プレイヤーに1000ポイントのダメージを与える。

 標的は忍者だ!」

 

 やっぱり、効果ダメージ狙い!?

 

「月影さん!!」

 

――ドオオォォォン!!

 

「ぐああぁぁぁぁぁ!!」

 LP3400→2400

 

 着弾した砲撃の衝撃で月影さんが吹き飛ばされる。

 

「はははっ!負け犬どもの召喚法など使うからそうなるのだ!

 装備魔法、古代の機械戦車(アンティーク・ギアタンク)古代の機械魔神(アンティーク・ギア・デビル)に装備

 装備モンスターは攻撃力が600上がり、さらにこのカードが破壊された時、相手ライフに600ポイントのダメージが発生する。

 もっとも、古代の機械魔神(アンティーク・ギア・デビル)はカード効果を受けないがな。

 カードを3枚伏せてターンエンドだ。」

 

 ステータスが変動しないのに装備した理由は追加ダメージの為か・・・

 今度は徹底したバーン戦術、1人が攻撃をせき止めて、2人目がダメージを与える。

 一人でやるんじゃなくて完全に連携する運用方法

 すごいけど、ちゃんとしたタッグデュエルでやりなさいよ!

 

「次は私」

 

「いや、先に僕にやらせてよ。」

 

「えっ!?」

 

「僕のターン、ドロー」

 

――ビィー!ビィー!ビィー!【乱入ペナルティ2000ポイント】

 

「あらら、最初から参加する気だったのに乱入だなんてひどいなぁ~

 あれ?しかも、フィールド魔法に変なカードが表示されている、何だこれ?」

 LP4000→2000

 

 氷山の上から暢気なこと言っているのは

 

「遊矢?」

 

「えっ?違うよ、っと!」

 

 飛び降りて来たのは、なんていうか、紫色の人

 髪とか目とか軍服っぽい服とか、とにかく色味の違う紫色がちりばめられた、なんとなく遊矢に似ている顔をした同い年くらいの男の子

 

「あぁ~あ、この崖降りてくるのに苦労したんだから、ペナルティなしにしてくれてもいいのにね?

 まだターンも回り切ってないんだしさぁ~」

 

「あなたは・・・」

 

「何者・・・」

 

 月影さんも知らないみたい。本当に誰なの?

 

「キサマ!?」

 

「ユーリ!?」

 

「なぜこんなところに!?」

 

「「ユーリ?」」

 

 アカデミアの知り合いっていう事は、この人もアカデミア!?

 

「!!」

 

「もう、怖い顔しちゃって、助けに来たのにそれはないんじゃないかなぁ?」

 

 えっ?助け?

 

「ユーリ貴様!!」

 

「アカデミアを裏切るつもりか!?」

 

「我々の邪魔をするというならお前も!!」

 

「あ~はいはい、そういうのはいいから、っていういかさぁ?

 君たちの方こそ僕の邪魔をしないでよ。」

 

「「「「「!?」」」」」

 

 この人、なんか普通じゃない!?

 陽気そうに見えるけど、今すごくイライラしている感じだし、何か怖い

 

「これほどの殺気、只者ではない!」

 

「もう、そんなに怯えなくても、君たちに手は出さないよ。

 とりあえずこいつらを片付けて、その後でゆっくり話をしようじゃないか

 って言うわけで、僕は捕食植物(プレデター・プランツ)セラセニアントを召喚。」

 

セラセニアント「キィー!」

       ATK100

 

 出て来たのは蟻みたいな虫から変な形をした草が生えているモンスター

 でも、攻撃力100を攻撃表示?カウンター系のモンスター?

 

「マジックカード、フレグランス・ストームを発動

 フィールド上に表側表示で存在する植物族モンスターを破壊し、自分は1枚ドローする。

 さらに、その引いたカードが植物族モンスターなら追加で1枚ドローできる。

 セラセニアントを破壊して1枚ドロー

 引いたカードは植物族の捕食植物(プレデター・プランツ)スキッド・ドロセーラ、さらに追加で1枚ドローさせてもらうよ。

 

 そして、フィールドで効果により墓地へ送られたセラセニアントの効果発動。セラセニアント以外のプレデターカードを1枚デッキから手札に加える。

 僕が手札に加えるのはマジックカード、捕食活動(プレデター・プラクティス)。」

 

 この人、アカデミアの人ってことは融合使いよね?

 「プレデター」とか名前だけでヤバい感じがする。

 

「マジックカード、捕食活動(プレデター・プラクティス)を発動

 1ターンに1度、手札の捕食植物(プレデター・プランツ)モンスターを特殊召喚してデッキから捕食活動(プレデター・プラクティス)以外のプレデターカードを手札に加える。

 手札からスキッド・ドロセーラを特殊召喚して、デッキから捕食植物(プレデター・プランツ)ドロソフィルム・ヒドラを手札に加える。」

 

 スキッド・ドロセーラ DEF400

 

 氷を突き破って生えて来た所々目玉がある暗い色の木

 うげぇ~やっぱり普通じゃない。

 

「スキッド・ドロセーラをリリースして永続魔法、超栄養太陽を発動

 このカードはレベル2以下の植物族モンスターをリリースして発動できる。

 リリースしたモンスターのレベル+3以下のレベルを持つ植物族モンスターを手札、デッキから特殊召喚する。

 スキッド・ドロセーラのレベルは2、よってデッキからレベル3のローンファイア・ブロッサムを特殊召喚するよ。」

 

 ローンファイア・ブロッサム DEF1400

 

 スキッド・ドロセーラの茎の所から新しく先端が膨らんだ蕾か果実のようになった植物が生えて来た

 その先端から何故か、バチバチと火花が出ているけど。

 さらに元々のスキッド・ドロセーラの葉の部分からワニみたいのが生えて来た。何アレ?

 

「スキッド・ドロセーラの効果発動

 表側表示のこのカードがフィールド上から離れた場合、相手フィールド上の特殊召喚されたモンスターすべてに捕食カウンターを1つ置く。

 捕食カウンターの置かれたモンスターのレベルは1になるよ。」

 

「むっ!?ならば拙者は永続トラップ、忍法 分身の術を発動するでござる。

 このカードは自分フィールド上の忍者モンスターを1体リリースし、デッキからレベル合計がリリースしたモンスターのレベルになるように、忍者モンスターを任意の数だけ表側攻撃表示か裏側守備表示で特殊召喚する。

 拙者はレベル8の黄昏の忍者将軍―ゲツガをリリースし、デッキより2体のレベル4忍者モンスター、暁の忍者―シンゲツと速攻の黒い(ブラック)忍者を特殊召喚!」

 

速攻の黒い(ブラック)忍者「フンッ!」

       ATK1700

 

シンゲツ「イザァァ」

    ATK1500

 

 ゲツガが煙の中に消えてその中から黒い装束の忍者とマントを羽織った忍者が出て来た

 これで月影さんのモンスターは5体、でもすべて特殊召喚されたモンスターだから

 

 古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイト・ハウンドドッグ) LV5→1 捕食C0→1

 

 シンゲツ       LV4→1 捕食C0→1

 速攻の黒い(ブラック)忍者    LV4→1 捕食C0→1

 異次元の偵察機    LV2→1 捕食C0→1

 異次元の偵察機    LV2→1 捕食C0→1

 ヴェルズ・ナイトメア 捕食C0→1

 

 スキッド・ドロセーラの葉からはじき出されるように放たれた捕食カウンターが、カード効果の効かない古代の機械魔神(アンティーク・ギア・デビル)以外に噛みつくようにして引っ付いた

 

「さて、ローンファイア・ブロッサムの効果も発動させちゃおう。

 ローンファイア・ブロッサムは1ターンに1度、自分フィールド上の表側表示の植物族モンスターをリリースしてデッキから植物族モンスターを1体特殊召喚する。

 僕はローンファイア自身をリリースして、デッキから捕食植物(プレデター・プランツ)オフリス・スコーピオを特殊召喚。」

 

オフリス・スコーピオ「シャー!」

          ATK1200

 

 ローンファイア・ブロッサムの丸まった部分が割れて、中から植物で作られた蠍の様なモンスターが現れた。

 

「オフリス・スコーピオが召喚、特殊召喚された時、1ターンに1度、手札を1枚捨てることでオフリス・スコーピオ以外の捕食植物(プレデター・プランツ)モンスターをデッキから特殊召喚出来る。

 手札のドロソフィルム・ヒドラを捨てて、デッキから捕食植物(プレデター・プランツ)サンデウ・キンジーを特殊召喚。」

 

サンデウ・キンジー「グエエエェェェェ!!」

         ATK600

 

 更に蠍の尻尾が地面に付きたてられて、先端が取れるとそれはテラテラした粘液を滴らせるトカゲのような姿に成長した。

 

「そして、サンデウ・キンジーの効果を発動だ。」

 

サンデウ・キンジー「ギエエェェェ!!」

 

 サンデウ・キンジーが這うような動きで古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイト・ハウンドドッグ)に向かい、取り付く

 えっ!?今、古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイト・ハウンドドッグ)は安全地帯の効果で相手の効果の対象にもならないし破壊も出来ないんじゃ・・・

 

「サンデウ・キンジーは1ターンに1度だけ、このカードを含めた自分の手札、フィールド上及び相手フィールド上の捕食カウンターの置かれたモンスターを使って、闇属性融合モンスターを融合召喚できる。

 この効果は対象を取る効果でも破壊する効果でもないからね。

 闇属性のサンデウ・キンジーと融合モンスターの古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイト・ハウンドドッグ)を融合

 さぁ、甘き蜜に誘われし哀れな獲物を溶かし、今一つとなりて、次なる命を貪れ!融合召喚!!」

 

古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイト・ハウンドドッグ)「グ、オオォ・・・・オォォ・・・・」――バキバキバキバキッ!!

 

 古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイト・ハウンドドッグ)に噛みついていた捕食カウンターから無数の蔦が伸びて、古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイト・ハウンドドッグ)を締め潰し、サンデウ・キンジーを取り込みながら成長してゆく

 

「うぅ・・・」

 

「おぞましい・・・」

 

「現れろ!捕食植物(プレデター・プランツ)ドラゴスタペリア!」

 

ドラゴスタペリア「ギャオオオォォォォォォ!!」

        ATK2700

 

 蔓が絡み合って出来たのは植物で出来たドラゴン、所々虫の様な部分が有ったりしているけど、何より

 

「何この臭い?うえっ!」

 

 なんで、このモンスターとんでもない異臭を放っているのよ!?

 翼の部分からなんか変な煙が上がってるし、絶対原因それでしょ!?

 

「あはは、ごめんねぇ~

 スタペリアはこの臭いでハエをおびき寄せて、花粉をばら撒く植物なんだよ。

 まぁ、この臭いを出す花は1日で枯れちゃうから、このモンスターもすぐにひっこめるよ。

 バトル、ドラゴスタペリアで古代の機械魔神(アンティーク・ギア・デビル)に攻撃。」

 

ドラゴスタペリア「グオオォォォォォ!!」――ブブブブブブブブ!!

 

 ドラゴスタぺリアが黒い煙みたいなのを吐いて古代の機械魔神(アンティーク・ギア・デビル)を溶かしている

 でも、あの黒い煙からは音が聞こえているってことは・・・もしかしてあれ、全部ハエ!?

 

「ぐぅ、ユーリ、キサマ、本当に!!

 古代の機械魔神(アンティーク・ギア・デビル)の効果発動!戦闘で破壊された時デッキからアンティーク・ギアモンスター1体を召喚条件を無視して特殊召喚する!

 来い、古代の機械獣(アンティーク・ギアビースト)!!」

 

 古代の機械獣(アンティーク・ギアビースト) DEF2000

 

「さらに古代の機械戦車(アンティーク・ギアタンク)が破壊されたことにより、忍者野郎に600ポイントのダメージだ!」

 

「ぐおっ!」

 LP2400→1800

 

「あっ、ごめんねぇ~

 でもさ、アレがあのままの方がよっぽど危ないでしょ?」

 

「ぐぅぅ・・・分かっているでござる・・・」

 

「うんうん、物わかりがいいって言うのはいいねぇ、話がスイスイ進む

 その点こいつら、話が通じないからキライなんだよねぇ

 メインフェイズ2でドラゴスタぺリアの効果発動、1ターンに1度、相手の表側表示モンスターに捕食カウンターを置く。」

 

 古代の機械獣(アンティーク・ギアビースト) LV6→1 捕食C0→1

 

「そして、墓地のドロソフィルム・ヒドラの効果発動

 捕食カウンターの乗っているモンスターをリリースして、墓地か手札のこのカードを特殊召喚する。

 おいで、捕食植物(プレデター・プランツ)ドロソフィルム・ヒドラ!」

 

 大きな機械の犬の内側から蛇の頭の様な蔦が何本も伸びてきて、宿主を食いつぶして複数の頭部を持つ蛇の姿になる。

 この人のデッキ、こうやって相手のモンスターを食い破って行くデッキ?

 

「これで揃った、僕はマジックカード、置換融合発動

 このカードはフィールドのモンスターで融合召喚を行う。

 闇属性のドロソフィルム・ヒドラ、ドラゴスタぺリア、オフリス・スコーピオの3体を融合!

 魅惑の香りで虫を誘う、3輪の美しき花よ、魔を払いて敵を貫け!融合召喚!

 現れろ、捕食植物(プレデター・プランツ)トリフィオヴェルトゥム!!」

 

トリフィオヴェルトム「「「グアアアアァァァァァァァ!!」」」

          ATK3000

 

 ドラゴスタぺリアに2体のモンスターが取り込まれ、その体はさらに大きく、足が4本、首が3本に増えて、翼の蟲の様な部分が怪しい光を発する赤い花に変わる。

 これで植物族のモンスター・・・?

 それに確かに異臭はなくなったけど、翼からの毒々しい煙が増えているんだけど

 

「トリフィオヴェルトゥムの攻撃力はこのカード以外の捕食カウンターが置かれたモンスターの元々の攻撃力分アップする。」

 

「えっ!?それじゃ!?」

 

「拙者のモンスターにはすべて捕食カウンターが!?」

 

 紫の煙の効力なのか月影さんのモンスターに噛みついていた捕食カウンターが急激に成長し蔦や葉がモンスター達を覆う

 

 トリフィオヴェルトゥム ATK3000→8750

 

「「「「「攻撃力8750!?」」」」」

 

「う~ん、いい感じに育ったね。

 さて、墓地の置換融合を除外して、融合モンスターの捕食植物ドラゴスタぺリアをデッキに戻して効果発動、1枚ドローする。

 カードを3枚伏せて、ターンエンドだ。

 さぁ、後は君の番だ。」

 

「えっ?私・・・?」

 

「うん、君のターンであいつら倒しちゃってよ。」

 

 えええぇぇぇぇ!?

 ちょっと、私のデッキ、フルライフを3人も削るほど火力ないわよ!?

 

「ちょっと、それは・・・」

 

「あれ、出来ないの?

 2人のフィールドにはもうモンスターはいないし、あいつら一人くらいなら何とかなるでしょ?」

 

「なんだと!」

 

「我々を愚弄するのもいい加減にしろ!俺のターン、ドロー」

 

「このスタンバイフェイズに永続トラップ、破邪の刻印を発動!

 相手のスタンバイフェイズに1度だけ、フィールド上の表側表示で存在するカードの効果を無効にする!

 俺が選択するのはトリフィ」

 

「あ~五月蠅い、トリフィオヴェルトゥムを対象に速攻魔法、禁じられた聖槍を発動

 攻撃力を800ダウンさせ、このターン、対象モンスターはこのカード以外のマジック、トラップカードの効果を受けなくなる。」

 

 トリフィオヴェルトゥム ATK8750→7950

 

「なっ!?」

 

「くっ!ユーリ、貴様、我々の使命を忘れたか!」

 

「世界を一つにするという崇高な目的を!プロフェッサーのご命令を!」

 

「あぁ~本当に五月蠅いね。

 僕は世界を一つにするとか興味ないし、それに僕はプロフェッサーの為になんか働いたことないよ。」

 

「「「なっ!?」」」

 

「僕は僕の為に動いている。

 あぁ、いっそのことアカデミアに喧嘩を売るっていうのも、面白そうだよねぇ?」

 

「そんなことさせるか!永続魔法、古代の機械要塞(アンティーク・ギアフォートレス)を発動!

 そして、墓地のマジックカード、古代の機械射出機(アンティーク・ギアカタパルト)の効果発動

 このカードを除外し、自分フィールド上の表側表示カードを1枚破壊し、古代の機械(アンティーク・ギア)トークンを1体特殊召喚する!」

 

 古代の機械(アンティーク・ギア)トークン DEF0

 

「さらに破壊された古代の機械要塞(アンティーク・ギアフォートレス)の効果で墓地のアンティーク・ギアモンスターを特殊召喚

 来い、古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)!」

 

 古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ) ATK1000

 

「マジックカード、融合識別(フュージョン・タグ)

 このカードの効果でこのターン、古代の機械(アンティーク・ギア)トークンを古代の機械(アンティーク・ギア)参頭猟犬(・トリプルバイト・ハウンドドッグ)として融合素材にできる!

 古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)の効果で古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)古代の機械(アンティーク・ギア)トークンを融合!融合召喚!

 現れろ!古代の機械(アンティーク・ギア)究極猟犬(・アルティメット・ハウンドドッグ)!!」

 

 古代の機械(アンティーク・ギア)究極猟犬(・アルティメット・ハウンドドック) ATK2800

 

「そして、このモンスターの融合召喚成功時、相手のライフを」

 

「あぁ、それなしで

 カウンタートラップ発動、ツバメ返し

 特殊召喚成功時に発生する効果モンスターの効果を無効にして、そのカードを破壊する。」

 

 トリフィオヴェルトゥムの腕が伸びて、地面に突き入れ赤錆色の機械犬の下から、つきささり内部からさらに枝が伸びて、バラバラの鉄くずに変える。

 えげつない無効の仕方ね・・・

 

「くっ!俺は古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)を召喚し、忍者に向かってハウンドフレイムだ!」

 

「ぬぉ!!くぅ・・・」

 LP1800→1200

 

「あれ?僕にしてこないの?

 やっぱり、つまらない奴らだねぇ君たち。」

 

「くううぅぅ・・・・」

 

≪運命を選び取るには強い意志と力が必要よ。≫

 

 強い意志

 今までのアカデミアはプロッフェッサーの為とか世界の為とか、曖昧なこと言っていたけど、この人はちゃんとした自分の意志を持っている。

 それがこの人の強さ、それは遊矢も・・・

 

≪あなたが、誰も傷つけたくないというなら、強くなりなさい。≫

 

「うん、やる前からできないとか言ってられないわよね!」

 

「あっ、やっとその気になった?そうでなくっちゃ」

 

「はっ!だったらその女から潰してやる!

 古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)の効果でフィールドの古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)と手札の古代の機械箱(アンティーク・ギアボックス)古代の機械獣(アンティーク・ギアビースト)古代の機械砲台(アンティーク・ギアキャノン)を融合!

 古の魂受け継ぎし機械達よ!神秘の渦で交じり合い、混沌の巨人を呼び覚ませ!融合召喚!

 現れろ!古代の機械混沌巨人(アンティーク・ギア・カオス・ジャイアント)

 

 古代の機械混沌巨人(アンティーク・ギア・カオス・ジャイアント)「グオオオオオォォォォォォォォォォ!!」

          ATK4500

 

 氷の下から立ち上がるビルみたいに大きい犬の頭を模したパーツがある黒鉄の巨人

 デカっ!?そして、攻撃力が高い!おまけにマジック、トラップの効果を受けないし、バトルフェイズ中モンスター効果が発動できなくなる!?

 効果盛り込み過ぎって、あぁ、そういえば・・・

 

「拙者のモンスターの事を忘れているようでござるな?

 ヴェルズ・ナイトメアの効果発動

 相手がモンスターの特殊召喚に成功した時、オーバーレイユニットを1つ取り除き、その特殊召喚したモンスターを裏側守備表示にするでござる!風魔忍法、影隠しの術!!」

 

 ヴェルズ・ナイトメア ORU2→1

 

 ヴェルズ・ナイトメアの剣にオーバーレイユニットの光が宿り、それを振るうと墨を広げたような巨大な影ができ、古代の機械混沌巨人(アンティーク・ギア・カオス・ジャイアント)はそれに呑み込まれてカードに封じられる。

 

「くっうぅぅ・・・ターンエンドだ。」

 

 トリフィオヴェルトゥム ATK7950→8750

 

「へえぇ~忍者の人もなかなかやるじゃん

 あぁ、あのデカブツ、守備力は3000だから。」

 

「分かったわ、私のターン、ドロー!」

 

「俺は破邪の刻印の効果を発動!」

 

「邪魔しないでよ、トラップカード、トラップ・スタン

 このターン、このカード以外のフィールドのトラップカードの効果は無効になる。」

 

「「「なんだと!?」」」

 

 これで相手の伏せカードを殆ど気にせずにいけるわね

 

「よし、私は手札からマジックカード、オスティナートを発動

 自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、自分の手札、デッキから融合素材を墓地へ送り、幻奏融合モンスターを融合召喚する。

 私はデッキから幻奏の音姫プロディジー・モーツァルトと幻奏の歌姫ソプラノを融合!

 至高の天才よ、永久の響きよ、タクトの導きにより力重ねよ!融合召喚!

 決意を胸に、今こそ舞台へ!情熱の歌を!!幻奏の華歌聖ブルーム・プリマ!!」

 

ブルーム・プリマ「はっ!」

        ATK1900→2100

 

 花を模した青と黄色のフレアドレスを着た少女が現れる。

 これが私の勝利への第一歩!

 

「ブルーム・プリマは融合素材の数×100ポイント攻撃力が上がる。

 さらに融合を発動!

 手札の幻奏の音女スコアと幻想の音女ソナタを融合!

 響け歌声!踊れ楽譜!タクトの導きにより力重ねよ!融合召喚!

 今こそ舞台へ!レベル6、幻想の音姫マイスタリン・シューベルト」

 

マイスタリン・シューベルト「オホホホホ!」

             ATK2400

 

 現れたのは炎のような髪をたなびかせる女性

 よし!レベル6のモンスターを出せた。残りの手札はこうだから・・・

 

「マジックカード、トランスターンを発動

 マイスタリン・シューベルトを墓地へ送って、同じ種族、属性でレベルが1つ高い、アテナを特殊召喚!」

 

アテナ「はっ!!」

   ATK2600

 

 槍と盾を構えた月の女神、アテナ、貴方の力を貸して!

 

「アテナの効果発動、1ターンに1度、アテナ以外の天使族モンスターを墓地へ送ることで、墓地からアテナ以外の天使族モンスターを特殊召喚

 私はブルーム・プリマを墓地へ送り、プロディジー・モーツァルトを特殊召喚!」

 

プロディジー・モーツァルト「はっ!」

             2600

 

「そして、アテナの効果発動よ

 天使族モンスターが召喚、特殊召喚された時、相手に600ポイントのダメージを与える。」

 

「ぐわっ!!」

 LP4000→3400

 

 まずはモンスターが居る人、月影さんが散々ダメージを受けたんだからそっくり返してやるわ!

 

「融合召喚されたブルーム・プリマが墓地へ送られたことで墓地の幻奏モンスター、幻奏の歌姫ソプラノを手札に加える。

 そして、プロディジー・モーツァルトの効果で1ターンに1度、手札の光属性、天使族モンスターを特殊召喚する。

 来て、幻奏の音姫ローリイット・フランソワ!」

 

ローリイット・フランソワ「ふふっ」

            ATK2300

 

「そして、アテナの効果でもう一回あなたにダメージよ!」

 

「ぐおっ!?」

 LP3400→2800

 

「ローリイット・フランソワの効果で墓地の光属性、天使族モンスター、幻奏の音女ソナタを手札に加える。

 速攻魔法、光神化発動、手札の天使族モンスター、幻奏の歌姫ソプラノを攻撃力を半分にして特殊召喚!

 アテナの効果で再びダメージよ!」

 

ソプラノ「ah~」

    ATK1400→700

 

「ぬわあぁぁ!」

 LP4000→3400

 

「ソプラノが他の幻奏モンスターが居る状態で特殊召喚されたことで墓地の2枚目の幻奏の音女ソナタを手札に加える。

 そして、2つ目の効果で、このカードを含む融合素材を自分フィールドから墓地へ送り、幻奏融合モンスターを融合召喚する。

 幻奏の音姫ローリイット・フランソワと幻奏の歌姫ソプラノを融合!

 再び響け、情熱の歌!幻奏の華歌聖ブルーム・プリマ!!」

 

ブルーム・プリマ「はぁ!!」

        ATK1900→2500

 

 再び現れるブルーム・プリマ、そしてアテナの効果で、1ターン目の人にダメージよ!

 

「ぬわっ!」

 LP4000→3400

 

「さらに自分フィールド上に幻奏モンスターが居ることにより、手札の2体の幻奏の音女ソナタは特殊召喚できる!

 アテナの効果でまたダメージよ!」

 

幻奏の音女ソナタ「HA~」

        ATK1200

 

幻奏の音女ソナタ「Oh~」

        ATK1200

 

「「ぐわあぁぁ!!」」

 LP3400→2800 LP3400→2800

 

「そして、ソナタは私の天使族モンスターの攻撃力、守備力を500ポイントアップさせる!」

 

 ブルーム・プリマ      ATK2500→3000→3500

               DEF2000→2500→3000

 プロディジー・モーツァルト ATK2600→3100→3600

               DEF2000→2500→3000

 アテナ           ATK2600→3100→3600

               DEF800→1300→1800

 幻奏の音女ソナタ      ATK1200→1700→2200

               DEF1000→1500→2000

 幻奏の音女ソナタ      ATK1200→1700→2200

               DEF1000→1500→2000

 

「なっ!?」「なん・・・」「だと・・・」

 

「バトルよ!まずはブルーム・プリマでセット状態の古代の機械混沌巨人(アンティーク・ギア・カオス・ジャイアント)に攻撃!」

 

 ブルーム・プリマの出した花弁を乗せた風が、影に捕らわれた古代の機械混沌巨人(アンティーク・ギア・カオス・ジャイアント)を包み、闇を浄化する。

 そして、混沌の巨人の抜け殻は瓦礫へと変わった。

 

「これで貴女たちを守ってくれるモンスターはいないわ!

 そしてブルーム・プリマは1ターンに2度攻撃が出来る!

 アテナ、ブルーム・プリマ、プロディジー・モーツァルトでダイレクトアタック!!」

 

 プロディジー・モーツァルトの背中の羽根から衝撃波が出て、ブルーム・プリマの花の風に合わさり、さらにアテナの盾から放たれた月の光が一緒になって、アカデミアの三人組を飲み込んだ。

 

「「「ぐわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」

 LP2800→0 LP2800→0 LP2800→0


「や、やった?」

 

「うむ、柚子殿見事な勝利でござる!」

 

「はぁ~よかった・・・」

 

――パチ、パチ、パチ

 

「あははは、すごいすごい、半分冗談だったのに本当に3人倒しちゃった!」

 

 いやぁ~これは本当にすごいなぁ~

 さて、邪魔なごみは掃除しておこうか

 僕のディスクから、紫色の光が出てオベリスクフォースの3人を包むとその姿が消える。

 

「「!!?」」

 

 ディスクからカードが排出されて、どうなっているか見るけど、やっぱりこいつらカード写りも良くないなぁ~

 い~らないっと

 

「あ、貴方今何を!?」

 

 柚子が奴らのカードを拾っている。えっ、そんなのほしいの?

 

「何?そんなのが欲しいなら、あげるけど?

 さて、邪魔者が消えたことだし、今度は僕とやろっか?」

 

「えっ!?」

 

「柚子殿!!」

 

 忍者クンが柚子の前に立つけど、今、僕は柚子としたいんだよねぇ

 

「忍者クン、君の相手は後でしてあげるからさ。

 先に柚子とやらしてくれない?」

 

「な、なんで!?貴方アカデミアを裏切ってたんじゃ!?」

 

「えっ、違うよ?あいつらが君とデュエルするのに邪魔だから助けただけ

 プロフェッサーの事も本当にどうでもいいけど、あの人の所に居たらこうしていろんな世界に行って君みたいな強い人とデュエルできるからさぁ~

 で、そのプロフェッサーが君を連れて来いって。」

 

 なんで、セレナに似た女の子達を集めているのかは全然知らないけど、アカデミアに居たら気軽に遊べるしね。

 いちいち、忍び込むのは面倒だけど

 

「じゃあ、貴方・・・」

 

「うん、僕は君を迎えに来たんだ。

 でも、何もなしにつれて行くって言うのもあれだからさ。」

 

 って言っても、これは建前

 僕は君とデュエルしたくてウズウズしているんだ。だからさ

 

「デュエルをしようよ、柚子。」




社長!氷山エリアから多数の砲撃!

なにっ!?一般人の被害は!!

そ、それが・・・ホテルが黄土色の装甲で包まれて砲撃を全て受け切ったと・・・

・・・本当にこの街で何が起きているんだ・・・
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『餓えた毒竜』

社長!監視カメラの映像回復!
これは・・・榊 遊矢が風魔忍者とともにアカデミア30人と交戦中!?

・・・なにをしているんだ、あいつは・・・


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餓えた毒竜

一か月以上も更新がなくてすいません。
何してたかというと10年来使っていたパソコンがついに壊れまして、新しいパソコンのワープロソフトが元のパソコンと仕様が変わっていて手間取ってました。
この小説も1年たったので、エイプリールネタとしてCMやリンクス、TFネタなども考えてましたがまぁ、また来年に


 さて、原作では素良を含めて数人だったと思うが、とんでもない数だな。

 そして、この人数差で本気で挑んでくるとは・・・どこまでもイラつかせる連中だ。

 

「拙者の先攻で行く、拙者は忍者マスターHANZOを召喚!」

 

HANZO「はっ!」

    ATK1800

 

「HANZOの効果により、デッキから隠密忍法帖を手札に加え発動

 その効果で手札の忍者カードとして扱う黄昏の中忍-ニチリンを捨て、デッキより永続罠、忍法 変化の術をセットする。

 マジックカード、機甲忍法ゴールド・コンバージョンを発動!

 拙者のフィールドの忍法カードすべてを破壊しデッキから2枚ドローする。」

 

 セットされた変化の術を残しつつ、2枚ドロー

 だがこうなってくると、犬対策は俺のほうでやったほうがいいか、ちょうど初手でいいカードが来ているし

 

「そしてマジックカード、星の金貨発動

 拙者の手札2枚を相手の手札に加え、2枚ドローする。

 拙者はこの2枚のカードを遊矢殿に渡すでござる。」

 

 おっ?ほう、なるほどね。

 

「そして2枚ドロー

 伏せ札を3枚だしてターンを終了するでござる。」

 

「次は俺だ、ドロー。」

 

『『『ふん!たとえ貴様がどんな化け物でも、この人数差は覆せまい!』』』

 

 ステレオで言うなよ、うるせぇな・・・

 

「遊矢殿のスタンバイフェイズに永続罠カード、忍法 変化の術を発動!

 レベル4のHANZOをリリースし、そのレベルから+3までの獣族、鳥獣族、昆虫族のモンスター1体を手札、デッキから特殊召喚する。

 いでよ、レベル7!ダーク・シムルグ!!

 さらにトラップカード、戦線復帰、リリースした忍者マスターHANZOを守備表示で特殊召喚!」

 

ダーク・シムルグ「ケェエエエエェェェェェ!!」

        ATK2700

 

HANZO「ふん!!」

    DEF1000

 

「HANZOの特殊召喚の成功により、デッキから黄昏の忍者―シンゲツを手札に加える。」

 

 HANZOが印を結んで煙の中に消えると、中から巨大な翼を広げる闇の神鳥とその背に乗ったHANZOが現れる。

 ダーク・シムルグがいると俺はモンスターが出せなくなるから、念のために壁は立てておくか

 

「俺も速攻魔法、超カバーカーニバルを発動

 デッキからEM(エンタメイト)ディスカバー・ヒッポを守備表示で特殊召喚。」

 

ディスカバー・ヒッポ「ヒポッ!」

          DEF800

 

「そして、メインフェイズ1の開始時に魔法カード、大熱波を発動する!」

 

 カードの発動に呼応して、周りのマグマやら溶岩やらが沸き立ち、小さな火山が噴火して地面が赤熱化する。

 蟲どもはうろたえているが、まぁ、あのデッキに通常モンスターなど入ってないだろう

 

「これで次の自分のドローフェイズ時まで、お互いに効果モンスターを召喚、特殊召喚することはできない。

 セットはできるけどな。」

 

「もっとも、拙者のダーク・シムルグの効果により、おぬしらはカードをセットすることができぬでござるがな。」

 

『『『何っ!?』』』

 

 俺もモンスターを出すことはこれ以降できないし、ダーク・シムルグが破壊されたらロックが緩くなるが、基本力押しのアンティーク・ギアデッキ

 迎撃カードは入っていてもモンスター除去カードは少ないだろう。

 

「大熱波は日影のカードだから日影の墓地へ、さてもう1枚の日影からの贈り物も使うか

 魔法カード、闇の誘惑、デッキから2枚ドローし、その後闇属性モンスター、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンを除外する。

 

 そして、スケール7のEM(エンタメイト)キングベアーとスケール6のEM(エンタメイト)リザードローをペンデュラムスケールにセッティングして、リザードローの効果発動

 片側のペンデュラムゾーンにEM(エンタメイト)カードがあるとき、このカードを破壊して1枚ドローする。」

 

 さて、大丈夫だとは思うが念押しはしておくか

 

「永続魔法、禁止令を発動

 宣言したカードはこのカードがフィールド上に存在する限りプレイすることができない。

 俺が禁止するのは速攻魔法、サイクロン。」

 

『『『ぐぅ・・・』』』

 

 あの反応を見る限り、やっぱり入っていたか

 最初の奴らを吹き飛ばしてしまったせいで、デッキを見れなかったが推測が当たったようだ。

 

「相変わらず、えげつないでござるな・・・」

 

「えげつない人数を相手にしているんだ。やって当然だろ?」

 

「うぅ・・・」

 

 あっ、デニスのこと忘れていた。

 今起きられるとややこしいから、まだ寝ていろ!

 

「ぐえっ!?」

 

(なんと鋭い当身・・・混乱されるよりは良いが、遊矢殿がここまでやるとなると、この留学生殿には何かあるのでござろうか?)

 

「ターンエンドだ。」

 

「俺のターン、ドロー・・・・ターンエンドだ。」

 

「俺のターン、ドロー

 永続魔法、古代の機械要塞(アンティーク・ギアフォートレス)を発動・・・・ターンを終了する。」

 

「俺のターン――

 

 これが30人続くのか・・・・チッ、集めすぎたな。

 紫キャベツはミエルに任せるしかないか


「デュエルをしようよ、柚子。」

 

 ヤバい、ヤバい、ヤバい、ヤバい!あの顔はヤバい!!

 あの顔はつまらないことが続いて欲求不満って感じの顔だわ・・・

 あれに付き合わされたら、満足するまで何時間も何回もデュエルすることになる!?

 

「柚子殿、ここは拙者が引き受ける!そのうちに逃げられよ!!」

 

「月影さん。」

 

「う~ん、忍者クンとデュエルするのも面白そうだけど、今、僕は柚子とデュエルしたい気分なんだよね。

 だからさぁ~ちょっと待っててよ。」

 

――シュルルルゥゥ!!

 

「うおっ!?」

 

 月影さんの足元から蔦が伸びて月影さんを縛り上げる。えっ!?この蔦って!!

 

――バキバキッ!!

 

トリフィオヴェルトゥム「ギョオオオォォォォォォォ!!」

 

 氷の下から現れた巨大な球根から三つ首の竜が生えてくる、腐臭をまき散らしながら

 

「なんと!?」

 

「ソリッドビジョンが消えてない!?」

 

「あはは、そう、実はデュエルが終わってもデュエルディスクはそのままにしておいたんだよね。

 ここは本当に面白い。

 なんでかフィールド魔法に変なカードが表示されたままだけど、ソリッドビジョンを消さずにこんなことができるなんてね。」

 

 アクションフィールドの中ではデュエルディスクを起動したままだと、デュエルが終わってもソリッドビジョンが残り続ける。

 

――ギリギリギリギリッ!

 

「ぐわああぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「月影さん!!」

 

 トリフィオヴェルトゥムの蔦が月影さんを縛り上げる。

 これを止めるにはデュエルを受けてデュエルディスクをリセットさせるか、あのソリッドビジョンを形だけでも破壊するしかない!!

 でも、私のデッキには破壊カードも攻撃力3000のモンスターを単体で倒せるようなモンスターもメインデッキにない。

 やっぱりやるしか・・・

 

――どおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ

 

「「「!?」」」

 

「せいやあああぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 空から降ってきた白とオレンジのロボットが手に持った薙刀でトリフィオヴェルトゥムを切り裂く

 あれはビックベン―K!?っていうことは

 

「ミエル殿!!柚子と月影殿を頼む!!」

 

「言われなくてもやるわ

 マジェスティが憂いなく楽しむためにね。」

 

 ビックベン―Kの背中から飛び降りる2つの影

 権現坂はユーリの前に立ちふさがり、ミエルは月影さんを引っ張ってこっちにやってくる。

 

「少しは強くなったようね。

 でも、あの捕食者は手に余るから撤退するわよ。」

 

「えっ!?」

 

 ミエルと月影さんと私を囲う様に周りの地面が隆起して、私たちを飲み込んだ。


 柚子たちをドームのように包んだ赤黒いミミズのようなものは、赤い球体の付いた黄土色の装甲を形成し地面へと潜ってゆく

 

「わぁ~すごい!すごい!ねぇねぇ!何あれ、あれ!!」

 

「知らん。」

 

 そんなもの俺が聞きたいくらいだ。

 にしても、この者、顔つきは遊矢に似ているが意外と子供っぽいな。

 だが感じる。こやつはその子供のような残虐性も持ち合わせていることを

 

「えぇ~まぁいいか、それで柚子とのデュエルを邪魔してくれたということは、君が僕の相手になってくれるということでいいのかな?」

 

「おう、貴様が何者かは知らんが、その気ならやってやる。」

 

 事情はよく分からんが、ミエル殿からこやつを足止めしろと言われている。

 あっちが乗り気なら都合がいい。

 他にもよくわからん連中が徘徊していて、大会どころじゃなくなったのはわかるが、いったい何者なのだろうか?

 

「ん?僕が誰だか知らずに来たの?

 じゃあ自己紹介、僕はユーリ、この世界とは別の次元から強いデュエリストと戦うために来たんだぁ

 せっかくいい子見つけたのに邪魔してくれたんだから、強くないとひどい目にあってもらうよ?」

 

 別の次元?なんのことかはわからんが、危険な奴だということはわかった。

 

「ふん!やれるものならやってみるがいい。

 俺は権現坂 昇、柚子を付け狙うというなら俺の不動を乗り越えてみせるのだな!!」

 

「いいねぇ

 僕に向かってそういった啖呵を切ってくれる人は、大好きだ。」

 

『『決闘(デュエル)!!』』


「先攻は俺からゆく

 俺は手札の星見獣ガリスの効果を発動、このカードを相手に見せ、デッキの一番上のカードを墓地に送り、それがモンスターならばこのカードを特殊召喚する。

 そうでなければこのカードは破壊される。

 墓地に送られたのは超重武者グロウ―V、よってこのカードを特殊召喚する。」

 

ガリス「グオオォォン!」

   DEF800

 

「さらに墓地へ送ったモンスターのレベル×200ポイントのダメージを与える。

 グロウ―Vのレベルは3、よって600ポイントのダメージを与える。」

 

 翼の付いた鎧をまとった黒い獣が光弾を3つユーリへと発射する。

 受けたユーリは腕で顔を覆いながらその下で楽しそうな笑みを浮かべる。

 

「ふふ・・・」

 LP4000→3400

 

「まだだ、グロウ―Vの効果発動、このカードが自分の墓地にマジック、トラップカードが存在しないときに墓地へ送られた場合、デッキの上から5枚のカードを確認し、好きな順番でデッキの上に戻す。

 さらに俺は自分フィールド上の表側表示モンスターである星見獣ガリスを手札に戻し、手札のチューナーモンスター、A・ジェネクス・バードマンを特殊召喚し、次いでガリスの効果を再び発動

 墓地に送られたのはレベル5の無限起動スクレイパー、よってガリスを特殊召喚し、お前に1000ポイントのダメージを与える。」

 

 ジェネクス・バードマン ATKK1300

 ガリス         DEF800

 

 緑の機械の鳥人と再び現れる黒い星見の獣

 ユーリに向かって5つの光弾が放たれユーリはよろけるが、ついにその隠れていた笑みは、堪え切れなくなり笑いとなって権現坂に露見する。

 

「くぅぅ・・・・くふふふ、あはは・・・」

 LP3400→2400

 

「何がおかしい。」

 

「あはは、おかしい?ふふふ、違うよこれは嬉しい、だ

 1ターン目から僕に1600ポイントもダメージを与えるコンボをしてくるなんてね。 

 アカデミアでここまでしてくるのなんて、ムカつくけど、オベリスクフォースくらいしかいないからさ。

 初めはとっとと終わらせようと思っていたけど、楽しめそうだ。」

 

「ほう、だがこの程度など序の口だ

 俺は手札からチューナーモンスター、超重武者ホラガ―Eを召喚。」

 

ホラガ―E「イィー!」

     ATK300

 

「チューナー、ってことは君ってシンクロ使い?」

 

「違うな。俺はシンクロも使うだけだ。

 俺はレベル3の星見獣ガリスにレベル2の超重武者ホラガ―Eをチューニング

 揺るがぬ心、その曇りなき刃に籠めよ!シンクロ召喚!

 出でよ!レベル5、超重剣聖ムサ―C!!」

 

ムサ―C「ハッ!」

    DEF2300

 

 ほら貝の音色が響き、光の柱を引き裂いて見参する二刀を持つ機械武者

 その力は次へとつなげるため、眠る魂を転生させる力

 

「ムサ―Cの効果発動、このモンスターがシンクロ召喚に成功したとき、自分の墓地の機械族モンスター1体を手札に戻すことができる。

 俺は超重武者ホラガ―Eを手札に戻す。

 そして、俺はレベル5の超重剣聖ムサ―Cにレベル3の機械族チューナー、A・ジェネクス・バードマンをチューニング

 闇に潜む忍びの者よ、山に木霊する叫びとともに、凍てついた戦場に現れよ!シンクロ召喚!

 いざ出陣!超重忍者サルト―B!!」

 

 サルト―B「フンッ!」

      DEF2800

 

 剣聖の次に現れるのは青く丸っこいボディの機械忍者、主の前に立ち、ユーリを警戒する。

 

「へぇ~初めて見るカードだ。

 効果は・・・マジック、トラップカードを破壊して500ダメージ、しかも僕のターンにも発動できるかぁ

 でも、この発動条件、君もしかして、そのデッキ、フルモンスター?」

 

「さすがにばれるか

 そうだとも、これこそ、権現坂道場の不動を体現したデッキ、そして、それを友との研鑽で磨き上げた俺のデッキだ。」

 

「あはは、いいね。

 それでもう終わりかい?」

 

「いや、最後に手札の超重武者装留ビックバンをルール上、超重武者として扱うサルト―Bに装備

 装備モンスターの守備力を1000ポイントアップさせる。」

 

 サルト―Bに膨大なエネルギーが蓄えられたユニットがつけられる。

 元からの鈍重そうな見た目といい、その姿は忍びらしさからはさらに遠のいてゆく

 

 サルト―B DEF2800→3800

 

「俺はこれでターンエンドだ。」

 

「今度は装備カードになるモンスターか、面白い効果だねぇ

 じゃあ、僕のターンだ、ドロー

 まずは小手調べと行こうか、僕は捕食植物(プレデター・プランツ)フライ・ヘルを召喚。」

 

フライ・ヘル ATK400

 

 現れたのは巨大なハエトリグサ、巨大とはいっても人間の子供程度であり、口のように開いた葉に比べれば、茎や枝に相当する部分は細く貧弱そうだ。

 

「フライ・ヘルの効果発動

 1ターンに1度、相手フィールド上の表側表示モンスター1体に捕食カウンターを置く。」

 

 フライ・ヘルの口?からワニの頭のような形の種が吐き出され、サルト―Bに噛みつく

 

「そして、捕食カウンターの置かれたモンスターのレベルが2以上だった時、そのレベルは1になる。」

 

 サルト―B LV8→1

       捕食C0→1

 

「サルト―Bのレベルが1に!?」

 

「ふふふ、さぁバトルだ。

 捕食植物(プレデター・プランツ)フライ・ヘルで超重忍者サルト―Bに攻撃!」

 

「なっ!?サルト―Bの守備力は3800だぞ!?」

 

「ご心配なく

 フライ・ヘルは自分より低いレベルのモンスターと戦闘を行うとき、ダメージステップ開始時に、そのモンスターを破壊する。」

 

 捕食カウンターから蔦が伸び、サルト―Bを拘束すると、フライ・ヘルは植物とは思えないような力で鋼鉄の体をかみ砕いては溶かしてゆく

 そして、その体は見る見るうちに成長し、ワニのようになる。

 

 フライ・ヘル LV2→10

 

「これは・・・!?」

 

「フライ・ヘルは自分が破壊したモンスターの元々のレベルを自身に取り込んで成長する。

 さて、君のデッキにレベル11以上のモンスターはいるかなぁ~?

 カードを3枚伏せてターンエンドだ。」

 

「ぬぅ、俺のターン、ドロー」

 

 植物族のデッキ、遊矢が以前ブラックガーデンを使ったデッキを使っていたが、やはりレベルや攻撃力が低いからと油断できぬ種族だ。

 そして、俺のデッキとあのモンスターは相性が悪い

 

「俺は超重武者ダイ―8を召喚

 ダイ―8は召喚、特殊召喚されたとき表示形式を変更できる。」

 

 ダイ―8 ATK1200→DEF1800

 

「さらにダイ―8の効果発動、1ターンに1度、自分の墓地にマジック、トラップカードが存在しないとき、表側守備表示のこのカードの表示形式を変更し、デッキから超重武者装留モンスターを手札に加える。

 俺は超重武者装留チュウサイを手札に加え、チュウサイの効果でダイ―8に装備する。

 さらに、チュウサイの効果でダイ―8をリリースして、デッキから超重武者モンスター1体を特殊召喚する。

 現れよ、超重武者ビックベン―K!!」

 

 荷台に4本の腕の付いた機械を乗せたロボットが現れ、さらにその荷台の中からトリフィオヴェルトゥムを切り裂いた不動の機械武者、ビックベン―Kが姿を現す。

 

ビックベン―K「ベンケェエエェェ!!」

       DEF3500

 

「守備力3500、すごいねぇ

 でも、レベル8じゃフライ・ヘルで破壊されちゃうよ?」

 

「ふん!これで終わりなわけがないだろう。

 手札のホラガ―Eは自分の墓地にマジック、トラップカードがない場合、特殊召喚できる。

 こい、チューナーモンスター、超重武者ホラガ―E!」

 

ホラガ―E「イィー!」

     DEF800

 

「レベル8の超重武者ビックベン―Kにレベル2のホラガ―Eをチューニング!

 荒ぶる神よ、千の刃の咆哮と共に、凍てついた戦場に現れよ!シンクロ召喚!!

 現れろ!レベル10!!超重荒神スサノ―O!!」

 

スサノ―O「オオォォォォォォォォ!!」

     DEF3800

 

 ほら貝が響き、不退の機械武者が不動の荒神となって戦場にドカリッと座り込む

 それを見たユーリはというと大はしゃぎである。

 

「わあぁぁ、すごいね、レベル10!

 シンクロ使いとは戦ったことなかったから、新鮮だよ。

 でも残念なことに、フライ・ヘルのレベルも10、まだ防ぎきれないね。」

 

「ふん、防ぐのではない。

 俺の不動は、進化し前に進み続ける!

 墓地の無限起動スクレイパーの効果発動、このカードを除外し、俺の墓地の地属性、機械族モンスターを5体選びデッキに戻すことで、俺はカードを新たに2枚引く

 墓地のムサ―C、チュウサイ、ダイ―8、ホラガ―E、サルト―Bの5体をデッキに加え、2枚ドロー!

 よし、俺は超重武者装留マカルガエシを超重武者として扱うスサノ―Oに装備する。」

 

 機械でできた巨大な数珠がスサノ―Oに襷掛けられる。

 それはステータスには何の影響もないものではあるが、装着者を魔から守る力を持つ装具

 

「マカルガエシを装備したモンスターは1ターンに1度、効果で破壊されない!

 そして、スサノ―Oは守備力を攻撃力として扱い、守備表示のまま攻撃できる!

 行け!超重荒神スサノ―Oでフライ・ヘルに攻撃だ!クサナギソード・斬!!」

 

 胡坐をかいた状態で放たれる巨大な薙刀による一斬

 フライ・ヘルの攻撃力は400しかないため、このままでは大ダメージを受けてしまうが、ユーリは知っている、自分のカードの弱点を

 

「あはっ!だったら僕はリバースカードを発動させてもらうよ!

 トラップカード、ディメンション・ウォール!」

 

「なっ!?ディメンション・ウォール!?

 戦闘ダメージを相手へ押し付けるカードか!!

 ならば、ディメンション・ウォールに対してチェーンし、墓地の超重武者装留ビックバンの効果発動

 俺のフィールドに守備表示の超重武者が存在し、相手がバトルフェイズ中にマジック、トラップ、モンスター効果を発動させたとき、このカードを墓地より除外し、その効果を無効にして破壊し、その後フィールド上のモンスターすべてを破壊して互いに1000のダメージを受ける!」

 

「これだけじゃ終わらないよ!

 さらにトラップカード、捕食計画(プレデター・プランニング)!永続トラップ、捕食惑星(プレデター・プラネット)をチェーン発動!

 捕食計画(プレデター・プランニング)の効果でデッキの捕食植物(プレデター・プランツ)ドロソフィルム・ヒドラを墓地へ送り、フィールド上のすべての表側表示モンスターに捕食カウンターを置く。」

 

 スサノ―O  LV10→1

        捕食C0→1

 

 フライ・ヘル LV10→1

        捕食C0→1

 

「自ら、フライ・ヘルのレベルを下げただと!?」

 

「ふふふ、そして、ビックバンの効果で僕らのモンスターは破壊されるんだよね?」

 

「ぬぅ、だが、スサノ―Oはマカルガエシの効果で効果破壊を免れる!」

 

 墓地から現れた青いユニットが、その内部に蓄えられたエネルギーを暴走させ爆発する。

 フライ・ヘルは抗いようもなく消し炭にされ、ディメンション・ウォールのカードも粉々になる。

 対して、スサノ―Oはマカルガエシの加護で爆風と爆炎を受けても不動である。

 

「ぐぅ、ダメージを受けたがこれでスサノ―Oの戦闘は巻き戻される。」

 LP4000→3000

 

「ライフ1400の僕はこの一撃で終わりってわけね。

 でもその前に、捕食カウンターの乗ったフライ・ヘルが破壊されたことによって捕食惑星(プレデター・プラネット)の効果が発動

 デッキから捕食植物(プレデター・プランツ)サンデウ・キンジーを手札に加えさせてもらうよ。」

 LP2400→1400

 

(何かあるか・・・だが!)

「スサノ―Oで再び攻撃、ダイレクトアタックだ!クサナギソード・斬!!」

 

「そうはいかないよ

 相手のダイレクトアタック宣言時、手札の捕食植物(プレデター・プランツ)セラセニアントの効果を発動して特殊召喚。」

 

セラセニアント「シャー!」

       DEF600

      

 ユーリの場に現れた緑色のアリから細いラッパの様な草が生えたモンスター

 

「ぬぅ!?スサノ―O!!止まれ!!」

 

 初見のモンスターだが嫌なものを感じた権現坂はスサノ―Oの攻撃を制止する。

 薙刀はセラセニアントに当たる直前で止まり、それを見てユーリは愉快とばかりに笑う。

 

「ふふふ、あーははははは!!

 効果も読まずにすごいね。うん、いい判断だ。

 セラセニアントは相手モンスターと戦闘したダメージ計算後に、その相手モンスターを破壊する。危なかったね。」

 

(マカルガエシの効果は1ターンに1度だけ、あのモンスターを攻撃してしまえばスサノ―Oはやられていた。

 やはりこいつ油断できん!)

「バトルフェイズを終了し、メインフェイズにスサノ―Oの効果発動、自分の墓地にマジック、トラップカードが存在しない場合、相手の墓地のマジック、トラップカード1枚を対象として、そのカードを俺のフィールドにセットする。

 俺はお前の墓地のディメンション・ウォールをセットする。」

 

「あぁ~ドロボーはいけないんだぞ~」

 

「喧しい!俺はこれでターンエンドだ!」

 

「じゃあ僕のターンだ、ドロー、僕は」

 

「待った!貴様のスタンバイフェイズにスサノ―Oの効果を発動する。

 俺はお前の墓地の捕食計画(プレデター・プランニング)を俺のフィールドにセットし、さらに手札から増殖するGを捨てて効果発動

 このターンお前が特殊召喚するたびに俺はデッキからカードを1枚ドローする。」

 

「あぁ~あ、また盗られちゃった。

 その効果、相手ターンでも使えるんだ、ずるいなぁ~」

 

「ふん、融合召喚することで発動する破壊効果など、見過ごしておけるか!」

 

捕食計画(プレデター・プランニング)の墓地での効果を見越してかぁ~でも残念だったね。

 そのモンスターを消すのはそのカードじゃないよ。」

 

「何?」

 

「墓地の捕食植物(プレデター・プランツ)ドロソフィルム・ヒドラの効果発動。」

 

スサノ―O「グオオオオォォォォォォ!?」――バキッ!バキバキッ!!

 

 スサノ―Oに齧りついていた捕食カウンターが成長し、スサノ―Oの躯体を喰らいながら神話の多頭の蛇、ヒドラのような姿へと変わる。

 

ドロソフィルム・ヒドラ「キシャアアァァァア!」

           ATK800

 

「ドロソフィルム・ヒドラはフィールド上の捕食カウンターの置かれたモンスターを1体リリースすることで手札、墓地から特殊召喚できる。

 効果での破壊は防げても、コストでのリリースは防げないよね。

 おっと、捕食惑星(プレデター・プラネット)の効果でデッキから、捕食活動(プレデター・プラクティス)を手札に加えさせてもらうよ。」

 

「ぐっ、だが、特殊召喚により俺は1枚ドローだ。」

 

「さぁどんどん行くよ、マジックカード、捕食活動(プレデター・プラクティス)発動

 まずは、手札の捕食植物(プレデター・プランツ)サンデウ・キンジーを特殊召喚。」

 

サンデウ・キンジー「グルルルル」

         ATK600

 

「その後、デッキからプレデターカード1枚を手札に加える。

 僕が手札に加えるのは捕食植物(プレデター・プランツ)セラセニアント。」

 

 首の周りに触手のようなものが生えたオオトカゲが、口に加えたカードをユーリへと渡す。

 

「増殖するGの効果で1枚ドローだ。」

 

「マジックカード、フレグランス・ストームを発動

 フィールド上の表側表示の植物族モンスター1体を破壊し、デッキから1枚ドローする。

 さらにその引いたカードが植物族モンスターなら、そのカードを相手に公開することで追加で1枚ドローできる。

 僕のフィールドのセラセニアントを破壊して1枚ドローだ。

 そしてこの引いたカードは・・・にん人、植物族モンスターだ、だから追加で1枚さらにドロー

 

 おまけにフィールドから効果で墓地へ送られたセラセニアントの効果でデッキから、プレデターカード、捕食植物オフリス・スコーピオを手札に加えるね。」

 

(防御、破壊、サーチ、ステータスの低さを上回るほどの効果を持ったモンスターだな。

 手札に防御カードはない、ここは耐えるしかないか・・・)

 

「そして、捕食植物オフリス・スコーピオを通常召喚。」

 

 オフリス・スコーピオ ATK1200

 

「このモンスターの召喚、特殊召喚成功時、手札のモンスターカード、にん人を捨てて、オフリス・スコーピオの効果を発動

 デッキからオフリス・スコーピオ以外の捕食植物(プレデター・プランツ)、ダーリング・コブラを特殊召喚する。」

 

 ダーリング・コブラ ATK1000

 

 植物でできたサソリの尻尾が氷に突き刺さり、それが蛇の頭のような花を咲かせた植物へと成長する。

 

「ダーリング・コブラが捕食植物(プレデター・プランツ)の効果で特殊召喚されたことにより、効果発動

 デュエル中に1度だけ、デッキから融合マジックカード、またはフュージョンマジックカードを1枚、手札に加える。

 僕が手札に加えるのはプレデター・プライム・フュージョン。」

 

「だが俺も貴様の特殊召喚により、1枚ドローだ。」

 

「何枚ドローしても、このターンで負けちゃったら意味ないよねぇ?

 バトル!サンデウ・キンジー、ドロソフィルム・ヒドラ、ダーリング・コブラの順でダイレクトアタックだよ!」

 

 植物のオオトカゲが権現坂にタックルし、多頭の蛇と毒蛇が巻き付き締め付ける。

 

「ぐわああああぁぁぁぁぁぁ!!」

 LP3000→2400→1600→600

 

「そして、オフリス・スコーピオでダイレクトアタックだ。」

 

 権現坂のライフはもう後がなく、この攻撃を止めるにはカードを発動するしかない。

 

「ぬぅ!!俺は墓地の超重武者グロウ―Vの効果発動!

 相手モンスターのダイレクトアタック宣言時、墓地のこのカードを除外し、デッキの一番上のカードを1枚めくり、それがモンスターならば手札に加え、攻撃モンスターの攻撃力を0にする!

 デッキトップは超重武者装留ファイヤー・アーマー、モンスターカードだああぁぁ!」

 

オフリス・スコーピオ「ギャアアァァァァ!?」

          ATK1200→0

 

オフリス・スコーピオの尻尾を権現坂はドローを利用した手刀で破壊し、オフリス・スコーピオはうめく

 

「ふぅ、確率100%のギャンブルなんて本当に君はずるい人だ。

 ディメンション・ウォールが残っちゃったし仕方ない。

 メインフェイズに入って速攻魔法、プレデター・プライム・フュージョンを発動

 このカードはフィールド上に捕食植物(プレデター・プランツ)が存在する場合発動できる。自分フィールド上の闇属性モンスター2体以上を含む、自分、相手フィールド上の融合素材を墓地へ送り闇属性融合モンスターをエクストラデッキから融合召喚する。

 僕はオフリス・スコーピオとダーリング・コブラを融合!

 魅惑の香りで虫を誘う、二輪の美しき花よ、交じり合い大輪の花となれ!融合召喚!!

 現れろ、レベル7、捕食植物(プレデター・プランツ)キメラフレシア!」

 

キメラフレシア「ギシャアアァァァァァァ」

       ATK2500

 

 現れたのは触手や花の中心に口や牙のある巨大なラフレシアの化け物

 花弁のピンクの下地に白のひび割れ模様と、その花から漂う異様な臭いには権現坂も顔をしかめる。

 

「・・・1枚ドローだ。」

 

「さらにサンデウ・キンジーの効果発動

 このカードを含む自分の手札、フィールド上及び相手フィールドの捕食カウンターの置かれたモンスターの中から融合素材モンスターを選び、闇属性融合モンスターを融合召喚する。」

 

「なっ!?また融合だと!?」

 

「僕はフィールドの闇属性モンスター、サンデウ・キンジー、キメラフレシア、ドロソフィルム・ヒドラの3体を融合!

 魅惑の香りで虫を誘う、3輪の美しき花よ、魔を払いて敵を貫け!融合召喚!

 現れろ、レベル9!捕食植物(プレデター・プランツ)トリフィオヴェルトゥム!」

 

トリフィオヴェルトゥム「「「グオアアアァァァァ!!」」」

           ATK3000

 

 権現坂に両断された恨みを晴らそうと雄たけびを上げる、三つ首の植物竜

 だが、権現坂はその威圧をものともせずに、ユーリの身を切った行動がどこか自分の友の姿とぶれていた。


 融合モンスターを呼ぶために融合モンスターを挟むか・・・あのキメラフレシアというモンスターには何かありそうだな。

 そして、次の奴のターンで俺のライフを確実に削るつもりだ!

 

「特殊召喚により1枚ドロー。」

 

「僕はカードを2枚伏せて、ターンエンド。」

 

 伏せカードは2枚、前のターンのことを考えるのならダメージを肩代わりさせるカードか?

 このターンで俺の手札は8枚と潤沢だが、奴の手札にはセラセニアントも控えている・・・

 いや、ここで立ち止まっていても負けるだけ、立ち向かうのだ!

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 これはバトルロイヤルが始まる前にここまでの参加賞だと、配られたペンデュラムカード!

 そして、この手札、一か八かだがやるしかない!

 

「このスタンバイフェイズにフィールドから墓地へ送られたキメラフレシアの効果でデッキから融合またはフュージョンと名の付くマジックカードを手札に加える。

 僕が手札に加えるのは置換融合。」

 

 置換融合、ドロー効果を持つ融合の派生カードだったな。

 キメラフレシアを素材に挟んだのはこれが理由か。 

 

「俺は超重武者ジシャ―Qを召喚!」

 

 ジシャ―Q ATK900

 

「ジシャ―Qの召喚に成功したとき、俺は手札のレベル4以下の超重武者を特殊召喚できる。

 来い、超重武者ダイ―8!そして、ジシャ―Qは守備表示となる。」

 

 ダイ―8  DEF1800

 

 ジシャ―Q ATK900→DEF1900

 

 ジシャ―Qの頭のU字磁石となっている角に引き寄せられて、ダイ―8が手札から現れる。

 妨害はなし・・・行くぞ!

 

「ダイ―8の効果発動

 守備表示のこのカードを攻撃表示に変え、デッキから超重武者装留チュウサイを手札に加える。」

 

 ダイ―8 DEF1800→ATK1200

 

「そして、チュウサイをダイ―8に装備し、効果発動!

 共に戦おうぞ!出でよ!超重武者!ビックベン―K!!」

 

ビックベン―K「ベンケエエエェェェェェェェェ!!」

       DEF3500

 

「へぇ~またシンクロ召喚かい?

 でも、トリフィオヴェルトゥムは1ターンに1度、相手のEXデッキからの特殊召喚を無効にして破壊できる。」

 

「何を勘違いしている。言ったはずだ、俺はシンクロも使うだけだと!

 俺は手札の超重武者装留ファイヤー・アーマーの効果を発動

 このカードを手札から捨て、このターン終了時までビックベン―Kの守備力を800ダウンさせることで、ビックベン―Kはこのターン、戦闘と効果では破壊されなくなる。

 

 そして、手札から超重武者装留ダブル・ホーンを装備することでビックベン―Kに2回攻撃できる権利を与える!」

 

 ビックベン―K DEF3500→2700

 

「戦闘でも効果でも破壊されないモンスターで2回攻撃

 その感じだとそのモンスターも守備力を攻撃力計算で守備表示のまま攻撃できるんだろうけど、守備力がトリフィオヴェルトゥムの攻撃力より下になっちゃったよ?

 どうするんだい?」

 

「ふん、すぐにわかる。

 俺の墓地にマジック、トラップカードがないことで手札の超重武者ヌス―10を特殊召喚!」

 

 ヌス―10 DEF1000

 

 ほっかむりを被った盗人の姿をした超重武者が現れる。

 さっきも奴から泥棒呼ばわりされたが、反論できなくなりそうだな。

 

「そして、スケール8の超重輝将サン―5とEM(エンタメイト)カード・ガードナーをペンデュラムスケールにセッティングする!」

 

 天へと伸びる光の柱の中に浮かぶのは、赤く煌めく超重武者とカードそのものの姿をしたモンスター

 友と俺の力で俺の新たな不動の道を切り開く!

 

「ペンデュラム!!あれ?でも、それってスケール間のレベルを持つモンスターを特殊召喚できるんだよね?

 スケールが同じじゃ、できないんじゃないの?」

 

「そうだ、だがペンデュラムモンスターはただペンデュラム召喚を行うためだけのものではない。

 EM(エンタメイト)カード・ガードナーのペンデュラム効果発動!

 1ターンに1度、自分の表側守備表示のモンスター1体の守備力を自分フィールド上の表側守備表示モンスターの元々の守備力の合計にする!」

 

「えっ!?ということは、ファイヤー・アーマーの効果で下がった守備力も元に戻って」

 

「そうだ、そしてジシャ―Qの守備力1900とヌス―10の1000がさらに加算され」

 

 ビックベン―K DEF2700→6400

 

「6400!?」

 

「これで終わりではない!ヌス―10の効果発動!

 このカードをリリースし、相手のマジック、トラップゾーンのカードを破壊する!

 俺はお前の右の伏せカードを選択する!」

 

 ヌス―10が飛び出し、奴の右の伏せカードを俺のもとまで運んで消える。

 

「くっ!ディメンション・ウォールが・・・」

 

「ふん、どうやら俺は賭けに勝ったようだな!

 行くぞ!ビックベン―Kで捕食植物(プレデター・プランツ)トリフィオヴェルトゥムに攻撃!」

 

ビックベン―K「ウオオォォォォォ!!」――ズドンッ!!

 

 ビックベン―Kの拳が、凍てついた大地に叩きつけられ、トリフィオヴェルトゥムと奴を挟み込むように巨大な壁がせり上がり、奴らはそれに挟み込まれる。

 ダメージは3400、余裕で決着がつく数値だが

 

「ふぅ・・・危なかった。

 これもついでに伏せてなかったらやられていたよ。」

 

 やはりか・・・

 崩れ落ちた壁の中から現れたのは友を連想させる意地の悪い笑みをした紫の男

 その周りに、橙色の光の幕が張られている。

 

「トラップカード、パワー・ウォールは相手モンスターの攻撃による戦闘ダメージが0になるように500ダメージにつき1枚、自分のデッキの上からカードを墓地へ送る。

 このカードの効果で僕は7枚のカードを墓地に送ってダメージを0にした。」

 

「ふっ、そんなことだろうとは思っていた・・・だが、ダブル・ホーンを装備したビックベン―Kは2回攻撃できる!

 行け!ビックベン―Kでダイレクトアタックだ!!」

 

「相手のダイレクトアタック宣言時、手札のセラセニアントの効果を発動し特殊召喚する。」

 

「攻撃続行だ!ビックベン―Kでセラセニアントに攻撃!」

 

 セラセニアントが奴の前に現れ、ビックベン―Kは奴らの頭上へと飛び上がりセラセニアントを踏みつける。

 2度目も躱されたが3度目はどうだ!

 

「超重輝将サン―5のペンデュラム効果!

 1ターンに1度、自分の超重武者モンスターが戦闘で相手モンスターを破壊した場合、そのモンスターはもう1度、攻撃できる!

 三度の攻撃!ビックベン―Kでダイレクト」

 

「セラセニアントの効果で捕食接ぎ木(プレデター・グラフト)を手札へ

 さらに墓地の光の護封霊剣の効果発動

 相手ターンに墓地のこのカードを除外し、このターンの相手のダイレクトアタックを封じる!」

 

 殴りかかろうとしたビックベン―K、そしてその後ろで控えていたジシャ―Qに無数の光の剣が突き刺さり動きを封じられてしまう。

 パワー・ウォールの効果で墓地へ送られたか・・・

 

「ぐぅ、ターンエンドだ。」

 

「ふぅ~助かった、今のはかなり危なかったよ。

 ディメンション・ウォールが破壊されなきゃ、返り討ちだったのになぁ~」

 

「ふん、運も実力の内だ。文句は言わせん。」

 

「だよね。」

 

 そういって笑うやつは、やはり遊矢に似ている。

 遊矢はどんなに追い詰められても、どんなに負けそうになっても、自分から負けを認めるようなことはしない。

 勝敗が決するまで、あきらめずにカードを引くのだ。この男、ユーリも

 

「じゃあ、文句のつけようがないくらいに、ここから逆転してあげるよ!

 僕のターン、ドロー

 僕はスタンバイフェイズに墓地の捕食植物(プレデター・プランツ)コーディセップスの効果を発動

 このカードを除外して、自分の墓地のレベル4以下の捕食植物(プレデター・プランツ)2体を特殊召喚する。」

 

「簡単に通すと思うな!手札の増殖するGを捨て効果を発動

 このターンお前が特殊召喚するたびに俺は1枚ドローする。」

 

「ふふ、来い、捕食植物(プレデター・プランツ)サンデウ・キンジー!フライ・ヘル!」

 

 サンデウ・キンジー DEF200

 フライ・ヘル    ATK400

 

「この効果の発動後、ターン終了時まで僕は通常召喚できず、融合モンスターしか特殊召喚できない。」

 

「俺は1枚ドローだ。」

 

 融合を内蔵するサンデウ・キンジーと捕食カウンターを撒くフライ・ヘルか

 融合モンスターしか出せぬ状況でどうするつもりだ?

 フライ・ヘルを強化するつもりでも、俺にはジシャ―Qがいる。

 

「メインフェイズに入って、フライ・ヘルの効果

 ビックベン―Kに捕食カウンターを乗せるよ。」

 

 ビックベン―K LV8→1

         捕食C0→1

 

「これでフライ・ヘルでビックベン―Kが破壊可能になってしまったが、ジシャ―Qが表である限り、お前はジシャ―Qにしか攻撃できない。

 効果を使うモンスターを間違えたな。」

 

「いいや、間違えてないよ。

 墓地のトリフィオヴェルトゥムの効果発動

 相手フィールドのモンスターに捕食カウンターが置かれている場合、1ターンに1度、このモンスターは墓地から守備表示で特殊召喚できる。

 来なよ、トリフィオヴェルトゥム!」

 

 トリフィオヴェルトゥム DEF3000

 

「むぅ!?増殖するGの効果により1枚ドローだ。」

 

 まさかこれほど簡単に復活してくるとは、これで融合素材が増えてしまった。

 

「そして、手札の置換融合の効果を発動

 このカードは僕のフィールドのモンスターで融合召喚を行う!

 僕は捕食植物(プレデター・プランツ)トリフィオヴェルトゥムとフライ・ヘルを融合!

 魅惑の香りで虫を誘う、二輪の美しき花よ、交じり合い再び大輪の花を咲かせよ!融合召喚!!

 現れろ、捕食植物(プレデター・プランツ)キメラフレシア!」

 

キメラフレシア「キヤアアアァァァァ!!」

       ATK2500

 

 来たかキメラフレシア、だがまだ俺のライフは削れんぞ

 

「融合召喚により1枚ドローだ。」

 

「墓地の置換融合の効果発動

 墓地のキメラフレシアをエクストラデッキに戻して1枚ドローだ。

 マジックカード、死のマジック・ボックスを発動」

 

「死のマジック・ボックスだと!?」

 

「自分及び相手のモンスターを1体ずつ選択し、選択した相手モンスターを破壊し、選択した自分のモンスターは相手にコントロールが移される。

 僕は超重武者ジシャ―Qとキメラフレシアを選択。」

 

「何!?」

 

 三連の黒い箱が現れジシャ―Qとキメラフレシアがその中に詰め込まれ、無数の剣がその中に突き刺さる。

 パカパカと開けられた奴のフィールドの箱の中には無残な姿となったジシャ―Qがおり、俺のフィールドに置かれた箱の中からはズルリッとキメラフレシアが這い出して来る。

 何のつもりだ!?

 

「そして、サンデウ・キンジーの効果発動

 このモンスターと、自分フィールド上及び相手フィールド上の捕食カウンターの置かれたモンスターを素材にして融合召喚を行う。

 さらに、僕が融合召喚に使用する捕食カウンターの置かれたモンスターは闇属性として扱われる。

 僕はフィールドの闇属性モンスター、サンデウ・キンジーと闇属性として扱われる君の超重武者ビックベン―Kを融合!」

 

 サンデウ・キンジーがビックベン―Kにとりつくと、トカゲのようなその体は植物らしく根を伸ばし、ビックベン―Kに噛みついていた捕食カウンターからも蔦が伸びてビックベン―Kを覆ってゆく

 

「くっ!?ビックベン―K!!」

 

「楽しいデュエルのお礼に君に僕のエースモンスターを見せてあげるよ。

 魅惑の香りで虫を誘う美しき花よ、不屈の機械武者を取り込み、その花弁の奥の地獄から、新たな脅威を生み出せ!融合召喚!!」

 

 蔦と根は卵のような塊となり、その中からうなり声が聞こえ、牙の生えた口をもつ触手がその中から飛び出す。

 

「現れろ!餓えた牙持つ毒竜、レベル8!スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン!!」

 

スターヴ・ヴェノム「グルル・・・・・グオオォォォォォォォォ!!」

         ATK2800

 

 蔦の塊を引き裂き現れたのは紫の竜

 その姿は細く、赤く輝く球体も相まって見ようによっては昆虫にも見える。

 だが、その背に突き出した4つの突起や咢からダラダラと涎を滴らせていることから、それが虫ではなく、危険な餓えた竜だということを知らしめている。

 

「こいつは・・・」

 

「スターヴ・ヴェノムの効果発動!

 融合召喚に成功したとき、相手フィールド上の特殊召喚されたモンスター1体を選び、その攻撃力分だけこのカードの攻撃力をターン終了時までアップさせる。

 僕はキメラフレシアの攻撃力をスターヴ・ヴェノムに与える。」

 

 スターヴ・ヴェノムの背後の触手が元は仲間であるはずのキメラフレシアに容赦なくかじりつく

 

 スターヴ・ヴェノム ATK2800→5300

 

「くっ!特殊召喚により1枚ドローだ。」

 

「おっと、忘れないうちに捕食惑星(プレデター・プラネット)の効果でセラセニアントを手札に加えて・・・さらに墓地の捕食計画(プレデター・プランニング)の効果発動!

 闇属性モンスターの融合召喚に成功した場合、墓地のこのカードを除外し、フィールドのカード1枚を対象として破壊する。

 伏せられたディメンション・ウォールを破壊させてもらうよ。」

 

「うおっ!?」

 

 スターヴ・ヴェノムの触手のうち1つがディメンション・ウォールをかみ砕く

 

「さらにスターヴ・ヴェノムの効果で1ターンに1度、相手フィールド上のレベル5以上のモンスター1体の効果と名前を、ターン終了までスターヴ・ヴェノムは得る。」

 

 キメラフレシアの蔦だけではなく花弁にも喰らい付き、キメラフレシアはもはや原型がわからぬほどズタズタになってしまった。

 この状況では手札のクリアクリボーや速攻のかかしは使えん!ここまでか・・・

 

「あはっ!さぁバトルだ!スターヴ・ヴェノムでキメラフレシアに攻撃!

 この時、キメラフレシアの効果を取り込んだスターヴ・ヴェノムの効果発動!

 戦闘する相手モンスターの攻撃力を1000ポイントダウンさせ、自身の攻撃力を1000ポイントアップさせる!」

 

スターヴ・ヴェノム「ギャオオオオオォォォォォォォォォォォ!!」

         ATK5300→6300

 

 キメラフレシア ATK2500→1500

 

 スターヴ・ヴェノムの触手が背に戻り、開けた4つの口から今度は膨大なエネルギーが吐き出される。

 それは血のような翼となって毒竜の体を浮かせる。

 そしてその毒竜の口の中には毒々しい光が蓄えられている。

 

「・・・この借りはいずれ返すぞ。」

 

「ふふ、楽しみにしているよ。」

 

 その言葉を皮切りに、毒竜の咆哮はズタズタのキメラフレシアを消し飛ばし、俺の意識はそこで途切れた。


 いや~楽しかったなぁ~

 柚子とのデュエルを邪魔してくれたから、サクッとヤってカードにしちゃおうかと思ったけど、またやりたいなぁ

 時間はあるんだし、もう一戦・・・

 

「あら?」

 

 スターヴ・ヴェノムの攻撃による煙が張れると、えぇ~と、権現坂だっけ?彼が消えている。

 代わりに彼がいたと思われる場所に、赤黒いミミズが這いまわって、それらはこの氷の地面と見分けがつかなくなる。

 

「へぇ~、なるほどね。」――コツンッ!

 

 足でこの氷を蹴ってみると一瞬だけど、赤い筋のようなものが走る。

 負けたら、退場か・・・面白い趣向だ。

 

「さて、スターヴ・ヴェノム、彼はいなくなっちゃったし、今度こそ柚子か、セレナでも探そうか?」

 

スターヴ・ヴェノム「ギュオオォォォォォォ!!」

 

 うんうん、そうだよね。

 もっと遊びたいよね?君も、そして僕もね。




――俺のターン

遊矢殿?

なんだよ日影?

――俺のターン

これいつまで続くのでござるか?

――俺のターン

一人当たり、1分くらいで15人目くらいだから・・・あと15分くらいじゃないか?

――俺のターン

マジでござるか・・・

マジでござる。
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『美しくも雄々しき翼』

――俺のターン

「「やっぱり長い(でござる)」」


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美しくも雄々しき翼

オルガ「ついに私の極氷獣がOCGになるわよ!」

ハリル「OH!オメデトウございマス、オルガ
    これは次期にワタシのカードもOCGになりソウデスね!」

オルガ「この小説はOCGの宣伝も兼ねているというから、これは私たちの」

ハリル「出番モ?」

 ないよ

ハリル「デスよネ。」

オルガ「ちょっとどういうことよ!!ヘボ作者!!
    OCGになったんだから出番少しでも作りなさいよ!!
    私の出番ほとんどカットだったじゃない!!
    ちょっと聞い――プツンッ・・・

 いや、まさか極氷獣がOCGになるとは思いませんでした。本編に全く絡まないというか被害者以外の何物でもないオルガのカードですし
 そして、もうこの2人を出すことのできるタイミングがない・・・

 さて、タイトルからわかる通り今回は最後の四天の竜の最後の一体のお披露目会なのですが・・・正直もうひとりのほうが目立っている気がする。
 あと、最後のコンボは某動画を参考にしたものなので、既視感を覚えるかもしれません。


「・・・やられたみたいね。」

 

「えっ!!やられたって、もしかして権現坂が!?だ、大丈夫なの!?」

 

「心配することはないわ。

 何かがある前に回収したわ。」

 

「そう、よかった・・・」

 

 本当によかった。あんな危険な奴とデュエルして、権現坂もこんな風にカードになってしまったかと思ったわ・・・

 

「にしても、ミエル殿と権現坂殿には助けられたでござる。」

 

「礼などいらないわ。

 私はマジェスティの臣下として当然のことをしたまでよ。」

 

 あ、相変わらずだなぁ・・・この子・・・

 でも、自分のモンスターをこの街の全体に張り巡らせて負けたデュエリストを回収しているなんて、なんでできるのかしら?

 いや、前にデュエルした時にも一部だけ見えていたけど、とんでもない大きさだったし

 今はリアルソリッドビジョンが街レベルで展開しているから、できないことじゃないのかもしれないわね。

 

「ねぇ、貴女はあいつらのこと知っているの?」

 

「知らぬも何もないわ。

 私は未来を見通す者、だけど私は見ることはできても知ることはできないわ。」

 

――・・・キィィィ

 

 つまり、よく知らないってことね・・・

 

「・・・貴女、知らない土地に行ったら大人しくしていることね。」

 

「えっ?」

 

「貴女の道行きに凶相が出ているわ。」

 

――キイィィィィィィィィ・・・

 

 ちょっと、いきなり何よ!?

 道行きに凶相って、今日一日で十分、大凶よ!!

 大会はめちゃくちゃになるし、変なのに追いかけられるし、遊矢に会えないし

 

――ギュウウウゥゥゥゥゥゥゥン!!

 

 あぁ!!もう!五月蠅いわね!ここ穴の中だから音が響いて、って!?

 

「えっ!?」

 

「うわわわわわ!?止まれえええぇぇぇぇぇぇ!!」


――キュウウゥゥゥゥゥゥゥ・・・

 

 ふぃ~あぶねぇあぶねぇ、いきなりなんだよ。

 ここは・・・氷の中?南極か北極にでも来ちまったのか?

 おっかしいなぁ?シティの道路の上だったはずなんだが・・・

 

「あれは・・・」

 

「旅人・・・」

 

 声にしたほうに首を向けると、そこにはフードをすっぽりかぶった怪しいやつと、忍者と、なっ!?

 

「リン!?・・・リィィィィィン!!」

 

「えっ!?えぇ、なに!?なに!?」

 

 こんな氷の中で会えるなんて

 そうか、連れ去られてこんな、さみぃ場所に置き去りにされたんだなぁ・・・

 

「無事でよかった、心配したぜ、体冷えてねぇか?風邪ひいてねぇか?

 会いたかったぜ・・・リン!!」

 

「ちょっと、あなた、誰!?っていうかリンって誰!?」

 

 なぜだか、リンは俺を知らないように言ってくる、嘘だろ!リン!!俺を忘れちまったのかよ!?

 記憶喪失ってやつか!?どんなひどい目に・・・

 慌てているリンの手が、メットのバイザーを持ち上げると

 

「えっ!?遊矢・・・?」

 

 そこにいたのは、ピンク色の髪に深い青色の目の女の子

 リンは緑の髪に橙の瞳・・・?

 

「そこの御仁、その娘は貴殿が言うリンという少女とは別人でござる。」

 

 人違い・・・?

 

「・・・・うわわわわぁぁ、すまねぇ!!」

 

 慌てて、抱き着いていたのをやめて後ろに下がる。

 やっべ・・・別の女の子に抱き着いたのを知られたらリンに殺される

 

「おぬしは・・・シンクロ次元のユーゴ殿でござるか?」

 

 混乱している俺に忍者?が声をかけてくる。

 へっ?俺に忍者の知り合いなんていたっけ?

 

「あぁ?おう、俺はユーゴだけど・・・」

 

 なんかあっちも困惑してる?俺のこと知ってるけど、会ったことないってことか?

 でも、まぁ、まずは状況確認だ。

 

「なぁ、ここはどこなんだ?

 シティのハイウェイ走ってたはずなのに、いきなり氷の中だしよぉ?」

 

「ここはスタンダード次元の舞網市でござる。

 おぬしこそ、どうやってここに来たでござるか?」

 

 スタンダード、舞網市?・・・あっぁ~前に飛ばされた場所か!こんなさみぃ場所だったっけ?

 えぇ~と、どうやって来たかと聞かれてもなぁ・・・

 

「あぁ、俺にもよくわからねぇんだが、このカードが「「「榊 遊矢を発見!」」」

 

「「「!?」」」

 

 な、なんだぁ!?

 上を見ると、趣味のわりぃ仮面をつけた青服の連中がこっちを見下ろしている。

 あの服は!!ユートが言っていたエクシーズ次元の街でデュエルモンスターズで人を襲っていたという連中と同じ!!

 

「ミエル殿、もう一度。」

 

「・・・いえ、あれは私が相手をするわ。」

 

 忍者がフードを被ったやつに、なんか頼んでいるがこいつは心底イラついているといった声で、その答えを言う

 っていうか、女なのか

 

「なんと!?」

 

「愚かにもマジェスティの手を煩わせている蛆虫どもも、マジェスティが相手にしているのを除けばあの3匹しか残っていないようね。

 だけどマジェスティのゲームに横槍を入れるモノたちをここで見過ごすことはできないわ。」

 

「なら、私も」

 

「拙者もやるでござる!」

 

「必要ないわ。」

 

 突き放した言葉を放ち、足元から赤黒いミミズみたいなものを出しながらフード女は穴の上に登っていく

 どうなってるんだ?って、それは後にして

 

――ギュウウオオォォォォォォォォォォォ!!

 

「えっ!?」

 

 俺だってあいつらを見逃しておく気はねぇ!

 Dホイールのエンジンをふかしながら、氷の壁をらせん状に登っていく

 

――ブオオオォォォォォォォォォン!!キキィッ!!

 

「あら、やっぱり来たのね。」

 

 まるで俺が来るのが分かっていたみてぇにいうフード女、初対面だよな?

 

「おう、あの制服・・・デュエルモンスターズで人を襲ってた連中だ。

 あいつらがアカデミアっていうんだろ?」

 

「さぁ?私は見通す者、知るものではないからそれは答えられないわ。」

 

 い、言ってることが分からねぇ・・・さっきのミミズといい、なんなんだこいつは?

 

「「「榊 遊矢を抹殺する!世界のために!!」」」

 

 えっ?遊矢?こいつら、俺をあのおっかねぇ奴と間違えているのか!?

 

「遊矢じゃねぇ!俺はユーゴだ!」

 

「「「言い逃れをするつもりか!!」」」

 

「あぁー!もう、ステレオで言うんじゃねぇ!ぶっ潰してやるから覚悟しろ!」

 

「騒がしい男ね。」

 

「「「「「決闘(デュエル)」」」」」

 

 って!?あいつら3人でデュエルすんのかよ!?

 

「先攻は私ね。

 私はマジックカード、儀式の下準備を発動

 デッキから儀式魔法を1枚選択し、そのカードに書かれた儀式モンスター1枚をデッキ、墓地から手札に加えるわ。

 私はデッキの聖占術の儀式とそこに書かれた聖占術姫タロットレイを手札に加えるわ。

 そして、マンジュ・ゴッドを通常召喚よ。」

 

 マンジュ・ゴッド ATK1400

 

「マンジュ・ゴッドが召喚、反転召喚されたとき、デッキから儀式モンスター、または儀式魔法1枚を手札に加えるわ。

 私は儀式魔法、魔神儀(デビリチャル)の祝誕を手札に加える。」

 

 出てきたのは泥みてぇな体に無数の腕の生えたモンスター、それがあの子にカードを差し出している。

 儀式デッキか?珍しいもん使ってんな。

 

「カードを1枚伏せて、マジックカード、手札抹殺を発動

 プレイヤーは手札をすべて捨て、捨てた枚数分デッキからカードを補充する。

 私の捨てたカードは4枚、よって新たに4枚ドローするわ。」

 

 おいおい、必要なカードを手札に集めてんじゃねぇのかよ?

 まぁ、俺もドローできるからいいんだけどさ。

 あいつらの墓地も増やしちまったのはまずいんじゃぇのか?

 

「リバースカード発動、マジックカード、儀式の準備

 デッキからレベル7以下の儀式モンスターを手札に加え、その後、自分の墓地の儀式魔法カード1枚を手札に加えることができるわ。

 私はデッキからレベル7の儀式モンスター、魔神儀(デビリチャル)―カリスライムを手札に加えて、墓地の聖占術の儀式を手札に加えるわ。

 

 手札のカリスライムを公開してカリスライムの効果発動、手札1枚を捨てデッキから魔神儀(デビリチャル)モンスター1体を特殊召喚する。

 この効果発動後、私は儀式召喚できなければエンドフェイズに2500ポイントのライフを失うわ。」

 

 へぇ~あのモンスター、儀式素材を自分で持ってこれるのかよ。

 でも聖占術の儀式ってあのカリスライムってやつのカードじゃねぇよな?

 もう、ペアの儀式モンスター持ってんのか?

 

「私は聖占術の儀式を捨てて、デッキから魔神儀(デビリチャル)―ブックストーンを特殊召喚よ。」

 

 ブックストーン DEF0

 

「って、おいぃぃ!!儀式魔法捨てんのかよ!?」

 

「はぁ~マジェスティとよく似た顔なのに、うるさい男ね。

 黙ってみてなさいな。

 ブックストーンの効果、デッキからの特殊召喚に成功したとき、墓地の儀式魔法を手札に加えるわ。

 私が手札に加えるのは儀式魔法、聖占術の儀式。

 

 さらに墓地の魔神儀(デビリチャル)の祝誕の効果発動

 このカードが墓地に存在する場合、手札及び自分フィールドの魔神儀(デビリチャル)の祝誕以外の魔神儀(デビリチャル)カード1枚を墓地へ送って、デッキから魔神儀(デビリチャル)モンスター1体を特殊召喚し、その後このカードを手札に加える。

 私は魔神儀(デビリチャル)―カリスライムを捨てて、デッキから魔神儀(デビリチャル)―タリスマンドラを特殊召喚して、魔神儀(デビリチャル)の祝誕を手札に加えるわ。」

 

タリスマンドラ「ギエエェェェェェェェ!!」

       DEF0

 

「そして、タリスマンドラがデッキからの特殊召喚に成功したとき、デッキから儀式モンスター1体を手札に加える。

 私が手札に加えるのは聖占術姫タロットレイ。」

 

 はえぇ~モンスター3体も出てんのに手札が7枚に増えてやがる。

 しかも捨てたりコストにしたりしたのに、儀式モンスターと儀式魔法が手札にそろってやがる。

 儀式デッキってこんなに回るんだな。

 

「儀式魔法、聖占術の儀式発動

 私はフィールドのレベル4、マンジュ・ゴッドとレベル5、魔神儀(デビリチャル)―ブックストーンを儀式の供物に捧げる。

 全てを見通す太古の巫女よ。古の秘術によりて、今、蘇れ!儀式召喚!

 レベル9、聖占術姫タロットレイ!」

 

タロットレイ「レイ・・・」

      ATK2700

 

 魔法陣の中から現れる黄金の装飾がされたドレスのようなものを着た巨大な女のモンスター

 攻撃力も高けぇ、これが儀式召喚かよ。

 シティじゃ使っているやつ見たことないけど

 

「速攻魔法、聖遺物の胎動を発動

 自分フィールド上にレベル9モンスターがいる場合、そのモンスターと異なる種族、属性を持ったレベル9モンスター2種類をデッキから特殊召喚するわ。

 タロットレイは光属性の天使族、よってデッキから地属性、岩石族の禁忌の壺と風属性、ドラゴン族の星遺物の守護竜メロダークを守備表示で特殊召喚するわ。」

 

 禁忌の壺  DEF3000

 メロダーク DEF3000

 

 おぉ、すげぇ、守備力3000のモンスターが2体も現れやがった。

 

「私はさらにマジックカード、九字切りの呪符を発動、自分フィールドのレベル9モンスター、禁忌の壺を墓地へ送り2枚ドロー

 さらに星呼びの天儀台(セレスティアル・セクスタント)を発動し、フィールドのレベル6のタリスマンドラをデッキに戻し2枚ドローする。

 

 永続魔法、召喚制限―パワーフィルターを発動して、カードを4枚伏せてエンドフェイズ。

 まずはタロットレイの効果で墓地のリバースモンスター、機怪神(デウス)エクスクローラーを裏側守備表示で特殊召喚。

 さらに聖遺物の胎動で特殊召喚したメロダークは破壊される。

 フィールドでメロダークが破壊されたことで、墓地からメロダークとは異なる種族、属性を持つレベル9モンスター、聖占術姫タロットレイを手札に戻すわ。

 これでターンエンドよ。」

 

 消えかけた双頭のドラゴンの首の一つがカードを1枚咥えて女に渡した。

 モンスター2体並べて伏せ4枚と永続魔法まで出して、手札2枚かよ。

 でも、あいつらが何をやってくんのかわからねぇから、油断できねぇぜ。

 

「俺のターン、ドロー!

 俺は永続魔法、古代の機械要塞(アンティーク・ギアフォートレス)を発動

 このカードの効果により俺のアンティーク・ギアモンスターは召喚、特殊召喚されたターンには相手の効果対象にならず、相手の効果では破壊されなくなる。」

 

「永続罠発動、聖遺物の傀儡

 自分フィールド上の裏側表示モンスターを表側攻撃表示または表側守備表示にするわ。

 現れなさい、機怪神(デウス)エクスクローラー!!」

 

 カードが表に返ると氷の地面に幾何学的な赤い模様が走る。

 そして、氷の擬態を解いた無数の赤黒いミミズのような虫が天高くに登ってゆき、俺たちの頭上を覆うように広がると無数の赤い水晶のようなものが目のように輝き、黄土の甲殻を形成し、変態が完了する。

 なんじゃこりゃ!!?

 

 機怪神(デウス)エクスクローラー DEF3000

 

「ぐぅ、守備力3000か・・・俺は古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)を召喚!」

 

古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)「グオォォン!」

       ATK1000

 

「召喚時、永続罠、サモンリミッター発動。」

 

古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)が召喚されたとき、相手に600ポイントのダメージを与える!」

 

「無駄よ、リバースした機怪神(デウス)エクスクローラーがフィールドに存在する限り、相手フィールドのモンスターが発動した効果は無効化されるわ。」

 

 炎を口にためていた機械の犬は地面から伸びた赤黒い蟲にからめとられ、その口を無理やり閉じさせられる。

 これで効果ダメージはなくなったな。

 ん?相手フィールドのモンスターってことは・・・俺もかよ!?

 

「ぐぅ・・・ならば、俺は墓地の古代の機械射出機(アンティーク・ギアカタパルト)の効果を」

 

「あら、いいのかしら?

 永続罠、サモンリミッターはプレイヤーに1ターンに2回までしか召喚、反転召喚、特殊召喚をさせなくする制約を課すカード。

 その効果を使ってしまったら、貴方はもうモンスターを出すことはできなくなるわ。

 いや、召喚制限―パワーフィルターの効果で互いに攻撃力1000以下のモンスターは特殊召喚ができないから、そもそも効果が使えないわね。」

 

「なんだと!?」

 

 あれ、もしかして俺、忘れられてない?

 俺のデッキのモンスター、ほとんど攻撃力1000以下なんだけど・・・

 

「ぬぅぅぅぅ!!ならば、先に標的の抹殺を優先する!

 マジックカード、融合発動!

 手札とフィールドの古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)の2体を融合!

 古の魂受け継がれし、機械仕掛けの猟犬達よ!群れ成して交じり合い、新たなる力と共に生まれ変わらん!融合召喚!

 現れろ、レベル5、古代の機械(アンティーク・ギア・)双頭猟犬(ダブルバイト・ハウンドドッグ)!」

 

古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイト・ハウンドドッグ)「「グオオオォォォォォン!」」

         ATK1400

 

古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイト・ハウンドドッグ)で榊 遊矢に攻撃!!」

 

 おい!俺、まだターンまわってねぇぞ!!っていうか!

 

「俺は遊矢じゃねぇ!ユーゴだって言ってんだろうが!!

 墓地のSR(スピードロイド)三つ目のダイスの効果発動!このカードを除外して、このターンの相手モンスターの攻撃を1度だけ無効にする!

 こいつは対象をとる効果じゃねぇ、古代の機械要塞(アンティーク・ギアフォートレス)じゃ防げねぇぜ!」

 

 機械の犬が三面ダイスにぶつかってはじかれる。ざまぁ見やがれ!

 

「ぐうぅぅ、小癪な・・・

 なら、バトルを終了しマジックカード、闇の指名者発動

 このカードはカード名を1つ宣言し、相手のデッキにそのカードが入っていれば、そのカードを相手の手札に加える。

 俺は古代の機械箱(アンティーク・ギアボックス)を宣言する!」

 

 そう言って、指さしたのは仲間の仮面野郎、てぇことは

 

「もちろん、俺のデッキにそのカードはある。

 そして、ドロー以外でデッキ、墓地から手札に加わった古代の機械箱(アンティーク・ギアボックス)の効果発動

 デッキから守備力または攻撃力が500の機械族、地属性モンスター1体を手札に加える。

 俺は攻撃力500の古代の機械砲台(アンティーク・ギアキャノン)を手札に加える。」

 

「カードを1枚伏せて、ターンエンドだ。」

 

 今攻撃力1000以下は特殊召喚不能、あらゆる召喚は2回まで、フィールドで発動するモンスター効果は無効・・・

 やっべ、俺、なんの役にも立てねぇ・・・どうしよう。

 

「俺のターン、ドロー

 マジックカード、融合を発動!

 手札の古代の機械箱(アンティーク・ギアボックス)2体と古代の機械砲台(アンティーク・ギアキャノン)古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)の4体のアンティーク・ギアを融合!

 古の魂受け継がれし、機械仕掛けの戦士達よ!その身溶け合わせ、新たなる力と共に生まれ変わらん!融合召喚!

 現れろ、古代の機械混沌巨人(アンティーク・ギア・カオス・ジャイアント)!!」

 

 古代の機械混沌巨人(アンティーク・ギア・カオス・ジャイアント) ATK4500

 

 出てきやがったのは藍色の装甲を持つ犬の頭が何個も付いた巨大ロボット、でけぇ!?

 

「タロットレイの効果を発動、1ターンに1度、フィールド上のモンスターを裏側守備表示に変えるわ。

 古代の機械混沌巨人(アンティーク・ギア・カオス・ジャイアント)を裏側守備表示に変更よ。」

 

「なっ!?」

 

 タロットレイの脇に控えている人形が古代の機械混沌巨人(アンティーク・ギア・カオス・ジャイアント)をカードの中に押し込め、裏側に変える。

 やりたい放題だな・・・

 

「マジックカード、融合回収発動

 墓地の融合素材モンスターである、古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)と融合のカードを手札に戻す

 そして、マジックカード、融合発動!

 手札の2体の古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)を融合!

 古の魂受け継がれし、機械仕掛けの猟犬達よ!群れ成して交じり合い、新たなる力と共に生まれ変わらん!融合召喚!

 現れろ、レベル5、古代の機械(アンティーク・ギア・)双頭猟犬(ダブルバイト・ハウンドドッグ)!」

 

 古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイト・ハウンドドッグ) ATK1400

 

古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイト・ハウンドドッグ)で榊 遊矢にダイレクトアタックだ!」

 

 古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイト・ハウンドドッグ)が炎を吐いてくる。

 くっ!手札にメンコートはいるが、効果が使えねぇ!?

 

「ぐえっ!?いてぇなこの野郎!!つぅーか俺はユーゴだ!!」

 LP4000→2600

 

「チッ!これでターンエンドだ。」

 

 あの感じ、本当はもっとモンスターを並べる気だったか

 全召喚が2回までしかできねぇから、死に札になってるみてぇだ。

 俺の手札もほとんど死に札だけど。

 

「俺のターン!

 俺は古代の機械要塞(アンティーク・ギアフォートレス)を発動し、古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)を召喚!

 さらに永続魔法、古代の機械城(アンティーク・ギアキャッスル)を発動し、フィールドのアンティーク・ギアモンスターの攻撃力を300ポイントアップさせる!」

 

古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)「グオォォン!」

       ATK1000→1300

 

 古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(ダブルバイトハウンドドック) ATK1400→1700

 

 古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(ダブルバイトハウンドドック) ATK1400→1700

 

「トラップカード

 死魂融合(ネクロ・フュージョン)を発動!

 墓地の融合素材モンスターを裏側表示で除外することで、融合召喚を行う!

 墓地の古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)2体と古代の機械獣(アンティーク・ギアビースト)古代の機械兵士(アンティーク・ギアソルジャー)の4体のアンティーク・ギアを融合!

 古戦場に眠りし魂受け継ぐ、機械仕掛けの戦士達よ!群れ成して交じり合い、新たなる力と共に生まれ変わらん!融合召喚!

 立ち上がれ!古代の機械混沌巨人(アンティーク・ギア・カオス・ジャイアント)!!」

 

 古代の機械混沌巨人(アンティーク・ギア・カオス・ジャイアント) ATK4500

 

 一番最初の仮面野郎が、トラップでモンスターを出してきやがったか

 どっちのモンスターも古代の機械要塞(アンティーク・ギアフォートレス)の効果を受け、対象にならず、破壊もされねぇが、なんでこのタイミングで出した?

 自分のターンに召喚して耐性を得たうえで攻撃したも良かったはずだが・・・

 

古代の機械混沌巨人(アンティーク・ギア・カオス・ジャイアント)はバトルフェイズ中の相手モンスターの効果を発動不能にする!」

 

「手札からのモンスター効果で防ぐことはできぬぞ!」

 

 ちっ!用心深いやつらだ。

 こっちは使いたくても使えねぇんだよ!

 

「バトル!アン「バトルフェイズに入る前に、トラップカード、バースト・リバースを発動するわ。

 ライフを2000払い、自分の墓地のモンスターを1体選択し、裏側守備表示で特殊召喚する。

 墓地から攻撃力2000のリバースモンスター、禁忌の壺を裏側守備表示で特殊召喚よ。」

 LP4000→2000

 

 タロットレイの脇に控えている人形みてぇな奴が、墓地からカードを釣ってくる。

 こいつもこのタイミングでモンスターを増やした?

 

「さらにタロットレイの効果で機怪神(デウス)エクスクローラーを裏側守備表示にするわ。」

 

「なっ!?」

 

 巨大な円盤みてぇなモンスターがカードに還ってくる。

 まだメインフェイズ、まだあいつはモンスターを出せるのにどうしてだ?

 

「ははっ!ならば、俺はメインフェイズを続行しマジックカード融合識別(フュージョン・タグ)を発動!

 俺のエクストラデッキの融合モンスター、古代の機械(アンティーク・ギア)参頭猟犬(・トリプルバイトハウンドドック)を公開

 このターン俺のフィールドの古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)古代の機械(アンティーク・ギア)参頭猟犬(・トリプルバイトハウンドドック)として融合素材にできる!

 

 古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)の効果発動!

 手札とフィールドから融合素材モンスターを墓地へ送り、アンティーク・ギア融合モンスターを融合召喚する!

 古代の機械(アンティーク・ギア)参頭猟犬(・トリプルバイトハウンドドック)として扱うフィールドの古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)と手札の古代の機械箱(アンティーク・ギアボックス)を融合!

 現れろ!古代の機械(アンティーク・ギア)究極猟犬(・アルティメット・ハウンドドック)!!」

 

古代の機械(アンティーク・ギア)究極猟犬(・アルティメット・ハウンドドック)「「「ガオオォォォォォォン!!」」」

              ATK2800→3100

 

 うわっ!?なんかすごいの来た!?

 

「このモンスターの融合召喚成功時、相手プレイヤーのライフを半分にする!

 喰らえ!榊 遊矢ぁ!!ヘル・ハウンドフレイム!」

 

「だから俺はユーゴだってあつつついいいぃぃぃぃ!!」

 LP2600→1300

 

 あの犬っころの体についてる口から特大の火炎放射が俺に向かって放たれる。これはまずっ!?

 

「バトルだ!アンティーク・ギア「バトルフェイズに入った時にトラップを発動、黒猫の睨み

 自分フィールド上に裏側守備表示モンスターが2体以上存在する場合、相手バトルフェイズを終了させるわ。」

 

――にゃぁぁぁぁぁぁ!!

 

 大量の黒猫が仮面の野郎どものフィールドを埋め尽くす。

 犬っころどもは大量の黒猫に追いかけられ、こっちに攻撃が出来なくなっっちまっているようだ。

 そうか、裏側守備表示モンスターを2体揃えるのが目的でこんな動きを・・・

 

「ちぃ!!メインフェイズ2で融合回収(フュージョン・リカバリー)を発動し、墓地の融合と融合素材の古代の機械箱(アンティーク・ギアボックス)を手札に戻す。

 そして、古代の機械箱(アンティーク・ギアボックス)がドロー以外の方法で墓地から手札に加わったことにより、デッキの古代の機械砲台(アンティーク・ギアキャノン)を手札に加える。

 ・・・ターンエンドだ。」

 

「なら、エンドフェイズに永続トラップ、星遺物の傀儡の効果で禁忌の壺を表側守備表示に変更するわ。」

 

 禁忌の壺 DEF3000

 

「禁忌の壺のリバース効果、フィールド上のマジック、トラップカードをすべて手札に戻すわ。」

 

 古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイトハウンドドック) ATK1700→1400

 

 古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイトハウンドドック) ATK1700→1400

 

 古代の機械(アンティーク・ギア)究極猟犬(・アルティメット・ハウンドドック) ATK3100→2800

 

 悪魔や鬼の描かれた趣味の悪りぃ壺から強い風が巻き起こり、カードを吹き飛ばす。

 あれ?サモン・リミッターもパワーリミッターもなくなった?で、次は俺のターン・・・

 

「さらに墓地の黒猫の睨みの効果発動

 このカードを除外し、自分フィールド上の占術姫を含む表側表示モンスターを裏側守備表示にするわ。

 私は禁忌の壺と聖占術姫タロットレイを裏側守備表示に変更。」

 

 仮面の連中のところの黒猫が今度はタロットレイと禁忌の壺をセット状態に変える。またわけのわかんねぇことを・・・

 

「禁忌の壺は4つの効果を持つ、厄災の壺

 その勇気と知恵を示して挑まなければならないわ。」

 

「あ、あぁ・・・言っていることはよくわからねぇが、とにかくすげぇ効果を4つ持ってるんだな。」

 

 よく見たら、こいつの効果は強欲な壺、サンダーボルト、ハリケーン、押収なのか・・・そりゃ強いぜ

 サンダーボルトの効果を使えば、あのデカ物どもを一掃できるんだが、聖遺物の傀儡は手札に戻っちまったし・・・

 ん?いや、このカードの効果を使えば・・・

 

――PiPiPiPiPi!!

 

「あっ、やっべ!ディスクのバッテリーが!?」

 

 ディスクのバッテリー、ケチって古いやつしか入れてないから長持ちしねぇんだよなぁ

 こんなスリップしまくりそうな場所だが仕方ねぇ

 

――ブゥウウウウウウウン!!

 

 Dホイールのモーメントエンジンが唸りをあげて回転して、それと同時にディスクのバッテリーが充電される。

 だが、このまま止まったままじゃ、エンジンを動かしている予備バッテリーまでなくなっちまう。だから

 

「ひとっ走り行くとするかっ!」

 

――ブオオォォォォォォォンン!!

 

「なんだ!?」「いきなりバイクで」「走り出した!?」

 

 車輪を回せば、同時にギアの回転も上がり、より強力なエネルギーを得る永久機関、モーメントエンジン

 俺たちの手製だが、今日も調子がいいぜ

 

「行くぜ、俺のターン!ドロー!!

 俺はまず、墓地のマジックカード、スピードリバースを除外して効果発動!

 墓地のスピードロイドモンスターを1体手札に戻す。

 俺はSR(スピードロイド)ベイゴマックスを手札に戻すぜ。

 

 そして、マジックカード、カード・フリッパーをSR(スピードロイド)メンコートを捨てて発動!

 相手フィールド上の全モンスターの表示形式を変更する。」

 

 古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイトハウンドドック) ATK1400→DEF1000

 

 古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイトハウンドドック) ATK1700→1400

 古代の機械混沌巨人(アンティーク・ギア・カオス・ジャイアント) ATK4500

 

 古代の機械(アンティーク・ギア)究極猟犬(・アルティメット・ハウンドドック) ATK2800→DEF2000

 

「はははっ!馬鹿め」

 

古代の機械混沌巨人(アンティーク・ギア・カオス・ジャイアント)にマジックカードの効果など効かぬ!」

 

「それどころか裏側守備表示にされた俺のモンスターを起こしてくれるとはな!」

 

「どちらにせよ、攻撃力4500、守備力3000のモンスターをやすやすと倒せるものか!」

 

「あら、私のモンスターには効くわよ?」

 

 タロットレイ      ATK2700

 機怪神(デウス)エクスクローラー ATK2000

 禁忌の壺        ATK2000

 

「禁忌の壺のリバース効果、相手フィールド上のモンスターすべてを破壊するわ。」

 

 禁忌の壺から出た雷が、あいつらのモンスターを一掃する。これでがら空きだぜ!

 

「わ、われらの」「モンスターが」「全滅だと・・・」

 

「タロットレイの効果発動、機怪神(デウス)エクスクローラーを裏側守備表示にするわ。」

 

 機怪神(デウス)エクスクローラーの体が元のミミズに崩れて、地面の中に潜っていく

 これでフィールドで発動するモンスター効果も使えるぜ!

 

「よっしゃー!

 俺のフィールドにモンスターがいないとき、手札のSR(スピードロイド)ベイゴマックスは特殊召喚できる。

 来い、SR(スピードロイド)ベイゴマックス。」

 

 SR(スピードロイド)ベイゴマックス ATK1200

 

「ベイゴマックスが召喚、特殊召喚に成功したとき、デッキからベイゴマックス以外のスピードロイドモンスター1体を手札に加える。

 俺が手札に加えるのはSR(スピードロイド)カールターボ!

 さらにこいつは自分フィールド上に風属性モンスターがいるとき、手札から特殊召喚できるぜ!」

 

 SR(スピードロイド)カールターボ DEF1200

 

 赤い独楽が連なったムカデみてぇなのと、カードからエンジンが生えたみてぇなのが現れる。

 

「よっしゃぁ!行くぜ!俺はレベル3のSR(スピードロイド)ベイゴマックスにレベル3のチューナーモンスター、SR(スピードロイド)カールターボをチューニング!

 十文字の姿を持つ魔剣よ。その力ですべての敵を切り裂け!シンクロ召喚!

 現れろ、レベル6!HSR(ハイスピードロイド)魔剣ダーマ!!」

 

 HSR(ハイスピードロイド)魔剣ダーマ ATK2200

 

 ベイゴマックスとカールターボの作り出した光の中から現れた自分より巨大な槍と盾を持つ藍色の騎士

 さぁいくぜ、俺のデッキの真骨頂!

 

「通常召喚だ!こい、SR(スピードロイド)ダブルヨーヨー!」

 

 SR(スピードロイド)ダブルヨーヨー ATK1400

 

「さらにダブルヨーヨーが召喚されたとき、自分の墓地のレベル3以下のスピードロイドを1体特殊召喚できる。

 戻ってきな、チューナーモンスター、SR(スピードロイド)―OMKガム!」

 

 SR(スピードロイド)―OMKガム DEF800

 

 緑色の馬鹿でかいヨーヨーが回転して、墓地から箱が変形したロボットOMKガムを釣ってくる。

 運しだいだが、こいつで2抜きしてやるぜ!

 

「俺はレベル4のダブルヨーヨーにレベル1のOMKガムをチューニング!

 その躍動感溢れる剣戟の魂。出でよ、レベル5!HSR(ハイスピードロイド)チャンバライダー!」

 

 HSR(ハイスピードロイド)チャンバライダー ATK2000

 

 続き現れる巨大な刀に乗った紅の剣士

 俺の少し後を魔剣ダーマと横並びになって並走する。

 

「OMKガムの効果発動、こいつがシンクロ素材として墓地へ行ったとき、自分のデッキの一番上のカードを墓地に送り、そのカードがスピードロイドモンスターなら、OMKガムを素材にしたシンクロモンスターの攻撃力を1000ポイントアップさせる。

 デッキの一番上は・・・よし、SR(スピードロイド)三つ目のダイス!よって、チャンバライダーの攻撃力は1000ポイントアップ!」

 

 チャンバライダー ATK3000

 

「さらに墓地のカールターボの効果発動!

 このカードと墓地の別のスピードロイドモンスター、SR(スピードロイド)メンコートを除外して俺のフィールドの風属性モンスターの攻撃力をこのターン中800ポイントアップさせる!」

 

 HSR(ハイスピードロイド)チャンバライダー ATK3000→3800

 HSR(ハイスピードロイド)魔剣ダーマ    ATK2200→3000

 

「攻撃力3800と3000だと!?」

 

「いや」「まだ・・・」

 

「ここで魔剣ダーマの効果発動!

 1ターンに1度、墓地の機械族モンスターを除外することで相手プレイヤーに500ポイントのダメージを与える。

 俺は墓地からダブルヨーヨーを除外して3人目の仮面野郎に500ポイントのダメージだ!」

 

「うわっ!!」

 LP4000→3500

 

 魔剣ダーマが先行して仮面野郎の1人に突撃する。ざまぁみやがれ!

 

「さらにマジックカード、アイアンドロー発動

 自分フィールド上のモンスターが機械族の効果モンスター2体のみの場合、デッキから2枚ドローする。

 この効果の後、俺はこのターン1度だけしか特殊召喚できない。」

 

 引いたカードは・・・よし、これなら行ける!

 先行していた魔剣ダーマと合流しターンをして、俺はモンスターたちとともに仮面の連中へ突撃する。

 

「よし、行くぜ!!

 チャンバライダーでダイレクトアタック!

 この瞬間、チャンバライダーの効果発動、こいつが攻撃を行うダメージステップ開始時、攻撃力を200ポイントアップする。」

 

 HSR(ハイスピードロイド)チャンバライダー ATK3800→4000

 

「攻撃力4000だと!?ぐわああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 LP4000→0

 

「まだまだ、チャンバライダーは1ターンに2回攻撃ができる。」

 

「何!?」

 

「チャンバライダーで2度目のダイレクトアタック!」

 

 HSR(ハイスピードロイド)チャンバライダー ATK4000→4200

 

「ぐわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 LP4000→0

 

 チャンバライダーがターンし、2人目の仮面野郎に突撃してそのまま衝撃で跳ね飛ばす。

 まぁ、直接当たってねぇから死んじゃいねぇだろ

 

「魔剣ダーマで3人目にダイレクトアタックだ!!」

 

 空気を切り裂き、魔剣ダーマの槍が仮面野郎の横を突き抜け、野郎が吹っ飛ばされる。

 

「ぐわあぁぁぁ!!だ、だがまだライフは残っているぞ・・・」

 LP3500→500

 

「あぁ、そうだな。

 だが、俺はもう止められねぇぜ!!

 俺は速攻魔法、ユニゾン・チューンをチャンバライダーに対して発動!

 墓地のチューナーモンスター、SR(スピードロイド)―OMKガムを除外して、このターン中、チャンバライダーのレベルをOMKガムと同じレベル1にしてチューナーとして扱う。」

 

 HSR(ハイスピードロイド)チャンバライダー LV5→1(チューナー)

 

「チューナーだと!?

 だが、シンクロ召喚はバトルフェイズ中にはできないはずだ!」

 

「そうでもないぜ?

 墓地のトラップカード、リサイコロを除外して効果発動!

 自分のフィールド上のスピードロイドチューナーを含むモンスターを素材にして、風属性モンスターのシンクロ召喚を行う!」

 

「何っ!?」

 

「俺はレベル6、HSR(ハイスピードロイド)魔剣ダーマにレベル1となったHSR(ハイスピードロイド)チャンバライダーをチューニング!

 その美しくも雄々しき翼翻し、光の速さで敵を討て!シンクロ召喚!」

 

 俺はジャンプ台のようになっている氷に登り、その先の氷の斜面にジャンプする。

 そして、先行していた魔剣ダーマに透明になったチャンバライダーが重なり、その胸の星が緑の光輪を描き出す。

 ダーマの6つの星が列をなし、光を放つ、さぁ見せてやるぜ!俺たちの翼を!!

 

「現れろ!レベル7!!クリアウィング・シンクロ・ドラゴン!!」

 

クリアウィングS「ギャオオオォォォォォォォォ!!」

        ATK2500

 

 光の中から現れる、エメラルドのような透明な翼をもつ、白い竜

 そのきれいな翼からキラキラと光が漏れている。

 あぁリンの奴、こいつが飛ぶの大好きだったのにもう長く見せられてねぇ・・・ぜってぇ助け出してやるからな!

 

「でも、その前におめぇらをぶっつぶしてからだ!」

 

クリアウィングS「ギャオオォォォォォォ!!」

 

「ひっ!?」

 

「クリアウィングでダイレクトアタック!旋風のヘルダイブスラッシャアアァァァァァァ!!」

 

「ぐわあああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 LP500→0

 

 氷の斜面を駆け下りた俺の横を悲鳴を上げて吹き飛ぶ仮面野郎

 俺がリンっぽいのと忍者のいる氷の穴の近くに来て停車するとクリアウィングが勝鬨を上げるように吠えた


クリアウィングS「ギャオオォオオォォォォォォォォ!!」

 

 えっ!?なにあのドラゴン!?

 ずっと、この穴の中にいたからデュエルの様子が全然わからなかったけど

 

「おーい!!やったぜリン!!」

 

 あのユーゴっていう人また間違えてる・・・よっぽど私が似ているのね

 

「もう!私はリンじゃないって!!」

 

「あっ!?そうだった・・・すまねぇ、あんまりにも顔が似てっからよ!」

 

――ピキッ

 

 そう言って笑う彼だけど、あれはリンって娘も苦労してそうね・・・遊矢とは違った方向で

 

――ピキピキッ

 

 あれ、さっきから聞こえてるこれって・・・

 上を見ると、彼の足元の氷にひびが入っている。

 

「あ!?危ない!!そこから離れて!!」

 

――ピキピキパキンッ!!

 

「へっ?うわわわわわああぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

――ズドンッ!!

 

 彼は滑り落ちて、バイクの下敷きになってしまった。

 

「ちょ、ちょっと大丈夫!?」

 

「うぅ・・・あぁ、うわわわ、俺とリンのDホイールが!?

 どこか壊れてないか!?」

 

 バイクの下敷きになっているのにバイクの心配をしだした・・・よっぽど大事なものなのね。

 

「もう、ほら手を貸すわ。」

 

「お、おう、わりぃ」

 

 彼の差し出した手を私が握った瞬間

 

――ピカアァァァァァァァ!!

 

「「「!?」」」

 

 桜色の光がブレスレットから溢れて

 

「消えた・・・!?」

 

 私は意識を失った。


「・・・ターンエンドだ。」

 

 始まってから30分と少しばかり、やっと奴らのターンが全員まわって一巡してこっちのターンになった。

 結局、古代の機械騎士(アンティーク・ギアナイト)は出てこず、サイクロン以外の破壊カードでこちらのロックを崩してくることもなかった。

 こいつらのデッキは一体どうなっているんだ?

 まぁ、出てきても日影のことだ、残っている伏せカードもラスト・ミストあたりだろう

 

「やっと拙者のターンでござるな・・・ドロー・・・

 拙者はメインフェイズ開始時にマジックカード、強欲で金満な壺を発動

 エクストラデッキのカードを裏側で6枚か3枚除外し、3枚につき1枚のカードをドローする。

 拙者は6枚のカードを除外し、2枚のカードをドロー

 拙者はHANZOを攻撃表示に変更しバトルフェイズに突入するでござる。」

 

 HANZO DEF1000→ATK1800

 

「ダーク・シムルグと忍者マスターHANZOでダイレクトアタックでござる!」

 

「ぐわああぁぁぁぁぁぁ!!」

 LP4000→1300→0

 

 特に言うこともなく、一人脱落したな。

 手札誘発の防御カードもなかったようだ。

 

「バトルを終了し、モンスターを1体セット、カードも1枚伏せてターンを終了するでござる。」

 

 さて、俺のターンか

 このスタンバイフェイズで大熱波の効果は切れる。

 

「俺のターン、ドロー

 俺はスケール2のEM(エンタメイト)ラクダウンをペンデュラムゾーンにセッティング。」

 

 光の柱のなかに浮かび上がる帽子をかぶったラクダ

 隣の柱のなかには王冠を被ったクマ、スケールはこれでOK

 とっととこのつまらない前座を終わらせよう。

 

「これでスケールは2と7、レベル3から6のモンスターがペンデュラム召喚できるようになった。

 揺れろペンデュラム、異界へ繋がる道を開け!ペンデュラム召喚!

 エクストラデッキからレベル3、EM(エンタメイト)リザードロー!

 手札からレベル6、EM(エンタメイト)カレイドスコーピオン、そして、ギガプラントを特殊召喚!」

 

 リザードロー     ATK1200

 カレイドスコーピオン DEF2300

 

ギガプラント「ギシャアアァァァァァァ!!」

      ATK2400

 

 紳士なトカゲと尻尾がライトになっているサソリとともに現れる、カニのような足が生え赤く巨大な口の付いた植物の化け物

 先に出ていたのがディスカバー・ヒッポであるため完全に一体だけ浮いている。

 

「ギガプラント?」

 

 日影がこの場違いなモンスターに疑問を感じているが、まぁ仕方ない

 やろうとしているコンボにはパーツが1つ足りてないからな。

 

「俺はレベル3のディスカバー・ヒッポとリザードローをオーバーレイ

 2体の地属性モンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚

 出てこい、メリアスの木霊。」

 

 メリアスの木霊 DEF900 ORU2

 

 出てきたのはギガプラントと対照的な可愛らしい木の精霊

 さぁ、このコンボのメインキャストを揃えるとしよう。

 

「メリアスの木霊の効果発動

 1ターンに1度、オーバーレイユニットを使い、デッキから植物族モンスター1体を墓地へ送る。

 俺はデッキからサボウ・ファイターを墓地に送る。」

 

「ギガプラント・・・サボウファイター・・・カレイドスコーピオン、ラクダウン・・・そうか!そういうことでござるか!!

 ならば拙者もお手伝いいたす!永続トラップ、忍法―分身の術を発動

 自分フィールドの忍者モンスターをリリースし、レベル合計がリリースしたモンスターのレベル以下になるように、デッキから忍者モンスターを任意の数だけ表側攻撃表示または裏側守備表示で特殊召喚する。

 拙者はレベル4の忍者マスターHANZOをリリースし、同じくレベル4の黄昏の忍者―シンゲツを攻撃表示で特殊召喚するでござる!」

 

黄昏の忍者―シンゲツ「イザァ・・・」

          ATK1500

 

 さすが、有能忍者、俺のやろうとしていることが分かったらしい

 

「攻撃力を下げただと?」

 

 奴らはわかってないみたいだが

 どうせ、この後、馬鹿にしたような言葉を言うのだろうが、聞くのも無駄なので続けるとしよう。

 

「ギガプラントは、フィールドに出ている状態で召喚しなおすことで効果を得るデュアルモンスター

 そして、俺はこのターン通常召喚を行っていない。

 ギガプラントを再度召喚し効果発動、1ターンに1度、自分のメインフェイズに、自分の手札、墓地から昆虫族または植物族のモンスター1体を選んで特殊召喚する。

 来い、サボウ・ファイター!」

 

サボウ・ファイター「SABOOOOoooo!!」

         ATK1900

 

 ギガプラントの腹?幹?がカーテンのように開き、中から現れる薄っぺらいサボテンを無理やり人型にしたようなモンスターがボクシングのリング入りのように自身をアピールしながら登場する。

 凶悪そうな顔つきだが、姿がアレなのでどうしてもコミカルにしか見えないが

 

「カレイドスコーピオンの効果発動

 1ターンに1度、自分フィールド上の表側表示モンスター1体を対象にし、そのモンスターにこのターン、相手フィールド上の特殊召喚されたモンスターすべてに1回ずつ攻撃できる権利を与える。

 

 さらにラクダウンのペンデュラム効果も発動

 自分フィールド上の表側表示モンスター1体を選択し、そのモンスターにこのターン貫通効果を与え、さらに相手モンスターすべての守備力を800ポイント下げる。

 

 俺はこの2つの効果をサボウ・ファイターに対して発動する。」

 

 サボウ・ファイターの頭上にラクダウンの吐いたシャボン玉が浮かびそれをカレイドスコーピオンのライトが照らして、あたかもサボウ・ファイターに7色のスポットライトが当てられているかのように照らし出す。

 そして、サボウファイターは拳?を突き上げてポーズを決めている。

 

 ダークシムルグ ATK2700

         DEF1000→200

 黄昏の忍者―シンゲツ ATK1500

            DEF100→0

 

「バトル、サボウ・ファイターで・・・黄昏の忍者―シンゲツを攻撃する。」

 

 サボウ・ファイターは意気揚々にシンゲツに殴り掛かり、日影は殴り飛ばされたシンゲツを支える。

 

「お役目ご苦労、後はゆっくり休まれよ。

 相手によって破壊されたシンゲツの効果でデッキからシンゲツ以外の忍者、忍者マスターHANZOを手札に加えるでござる。」

 LP4000→3600

 

「ふはははっ!これはお笑いだ!」「仲間を攻撃するとはな!」「やはり悪魔は悪魔だ!」

 

 何もわかってないんだなこいつら・・・これでお前らはチェックメイトだというのに

 サボウ・ファイターが腕を振ると1本の棘が飛び出し、それをカレイドスコーピオンの光が照らすと棘は巨大な虹色の光の楔となってオベリスクフォースの1人に突き刺さる。

 

「ぐっ!?ぐうぅぅぅ!!い、いったいな、なにが!?」

 

「サボウ・ファイターが戦闘で相手モンスターを破壊したとき、相手フィールド上にニードルトークンを1体守備表示で特殊召喚する。」

 

 ニードルトークン DEF500

 

「な、なぜ私のフィールドに!?」

 

「サボウ・ファイターの効果には相手フィールドと書かれているだけで、『どこの』相手フィールドなんて書かれていないからな。」

 

 まぁ、こんな状況、普通ならあり得ないんだがな。

 

「そして、忘れてないよな?このターン、サボウ・ファイターは特殊召喚されたモンスターに1回ずつ攻撃できるってことを!!

 サボウ・ファイターでニードルトークンに攻撃!!」

 

 サボウ・ファイターが光の楔を殴りつけると楔はオベリスクフォースを突き抜ける。

 

「ぐわあぁぁぁ!!」

 LP4000→2600

 

「そして、相手モンスターを破壊したことにより、ニードルトークンを特殊召喚。」

 

 ニードルトークン DEF500

 

 苦しむオベリスクフォースに再び突き刺さる光の楔、特殊召喚されたモンスターなのでもちろん、サボウ・ファイターは攻撃できる。

 

「もう1度、サボウ・ファイターでニードルトークンに攻撃。」

 

「ぐわあぁぁぁぁぁぁ!!」

 LP2600→1200

 

「そして、ニードルトークンは再び特殊召喚される。」

 

 ニードルトークン DEF500

 

『『『!?』』』

 

 どうやら、気づいたようだな。

 

「サボウ・ファイターで新たなニードルトークンに攻撃。」

 

「ぐぼああぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 LP1200→0

 

 プレイヤーが倒れ、相手フィールドが1つ潰れたが、相手フィールドならまだある。

 光の楔は別のオベリスクフォースに突き刺さる。

 

「ぐっ!?があぁぁぁぁ!!こ、これは!?」

 

『『『無限ループ!?』』』

 

「そう、これはお前らのライフが尽きるまで終わらない無限ループ

 あぁ、逃げても無駄だ。

 サレンダーできるのは自分のターンのみ、サボウ・ファイターはどこまでも追いかけてお前らをぶん殴る!」

 

サボウ・ファイター「SAaBBOOOOOUUUUUUUUUU!!」

 

 サボウ・ファイターは無数の棘を飛ばし、それがカレイドスコーピオンによって楔となってオベリスクフォースを縫い付ける。

 

『『『があぁぁあああぁぁぁぁぁぁ!?』』』

 

「ルールを守れない悪い子にはお仕置きだ!サボウ・ファイター!!

 あいつらの泣きわめく声が枯れるまでぶん殴ってこい!!」

 

サボウ・ファイター「SABOOOOOOOO!!」

 

 サボウ・ファイターはその体からは考えられないような軽快な動きであいつらに突き刺さった光の楔を殴り続ける。

 

『『『ぎゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・』』』

 LP4000→2600→1200→0


 最後の一人も殴り飛ばし、うず高く積まれた奴らの山の上でサボウ・ファイターは拳を突き上げるポーズを決める。

 ゴングがあったら鳴らしたいところだ。

 

「ヤるもヤったり、30人でござるか。」

 

「殺してないし、一人をやったのはお前だろ。」

 

 気絶したこのオベリスクフォースの山だが、ズブズブと地面に沈んでいっている

 正確にはクローラーと思わしきミミズみたいなものの中に沈んでいっているのだが

 

「う~む、面妖な・・・これは何なのでござろうな?」

 

「知るか、どうせミエルだろ。」

 

「占い師殿でござるか、納得でござる。」

 

 本当になんでこうなったんだあいつは

 機怪神(デウス)エクスクローラーの精霊でもついているのだろうか?

 っと、冗談はここまでにして

 

「日影、そこに転がっているデニスを連れて赤馬社長のところに戻っていてくれないか?」

 

「むっ?遊矢殿は・・・!?」

 

 日影も気づいたようだ。

 俺たちをずっと見ていた視線、そこに目を向ければ水色の髪の小柄な人影

 

「俺はお客さんのお相手をしないとな。」

 

 前座が長かったんだ、楽しませてくれよ、素良?




久しぶり、ってわけでもないかぁ?元気だったか素良?

遊矢・・・僕は君を殺さなくてはいけない。
それが、プロフェッサーの命令だから・・・

ふぅん、辛気臭い顔するなよ。

ふざけるのもいい加減止めたらどうだい。
これから始まるのは遊びなんかじゃない、決闘だ!

遊びだよ。
決闘(デュエル)は楽しいゲームだ。それは今も昔も変わらないことだ。
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『雨の中で幽鬼は哭く』
だから、本気で来いよ。素良ぁ!!



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雨の中で幽鬼は哭く

今回は私の妄想力を爆発させております。
前半は盛りに盛った素良の過去編
後半は頭の体操です。かなり無茶なコンボでやっていますが許してください。


 僕には家族がいた

 僕と両親、そして双子の妹の美宇の四人家族

 美宇は体が弱くて病気がちで、薬を飲まないとすぐ体調を崩してたから、両親は美宇をかまうことの方が多かった。

 僕も両親のことは大好きだったから、かわいい自分を演じて構ってもらおうとしていたけど、美宇のほうが一枚上手だった。

 

 か弱くて、素直で、泣き虫な、誰が見ても構いたくなるような女の子を演じていた。

 本当は皮肉屋で、ちょっと意地悪な・・・でも、それでもかわいい妹だった。

 

 僕を出汁にしてパパやママに抱き着くなんてことも何回もあったし、僕が抱っこしてもらっていると自分もしてと迫ってくることも多かった。

 もちろん、僕もしてもらいたかったからしがみついたりしてたし、僕も構ってと迫っていくことも多かった。

 

 そして、遊矢にも言われたけど、両親はそんな僕らの様子を見て笑っていた辺り、僕や美宇の本当の性格を分かっていたんだと思う。

 親に子供が演技していたところで無駄だってことだね。

 

「美宇、薬はちゃんと飲んだのぉ?」

 

「当たり前でしょ、せっかくの旅行なのにパパやママに迷惑かけるわけにはいかないわ。

 いつもながら苦かったですけどね。」

 

 成長して美宇の体調も安定してきたその日、僕らは人生で初めての旅行に行くことになった。

 美宇は部屋にいることが多かったからか、どこか遠くの景色を映した風景写真や旅行の本を見るのが趣味で、実際に自分が旅行に行くとなるとわくわくが抑えられないのか前の日から早く寝て準備していた。

 かくいう僕も、初めての旅行なので楽しみにしている。

 

 パパの運転する自動車に乗り込み、僕らは目的地に向かう。

 窓の外に映る知らない町や広い畑、暗い森に深い谷

 高かったり、変な形だったりした山に驚いたり、笑ったり、いつもと変わらないはずの空だって新鮮に思えた。

 

「うわぁ~素良、見て、海よ!」

 

「うわぁ~」

 

 美宇の見ている窓の外に広がるのは深い青、それがどこまでも続いて地平線の向こうで空と一緒になっている。

 

「ねぇ、ぱぱ、夏になったら海水浴っていうのに行こうよ!」

 

「えぇ~私泳げないのよ?」

 

「そういえばそうだな・・・よし!素良、海水浴に行ったら美宇に泳ぎを教えてあげなさい。」

 

「そうね、お兄ちゃんですものね。」

 

「ホント!教えてくれるの!?お兄ちゃん!!」

 

「えぇ~・・・」

 

 この妹、僕が教えられるほど泳ぎがうまくないのを分かってて言っている。

 いつもは「素良」と呼び捨てなのに、美宇がお兄ちゃんと言ってくるときはたいてい僕をからかっている時だ。

 

 僕が少し困り顔なのにパパもママもくすくす笑って、美宇は意地の悪い笑みを浮かべている。このぉ・・・

 

 こんな妹と両親だったけど、僕にとっては大切で大好きな家族だった。

 

――ブオオォォォォォン!

 

「「「「!?」」」」

 

――ガッシャン!!

 

――ドンッ!

 

「―――・・・」

 

 気がついたときは病院のベットの上だった。

 医者や警察が言うには、僕らの乗っていた車に居眠り運転のトラックが追突したらしい。

 僕は偶然、車から投げ出され骨折や打撲で済んだけど、トラックと美宇たちの乗っていた車は海に落ちてしまい、遺体が回収不能な状態になってしまったらしい。

 

 退院できてから行かされたのは僕の家族の葬式で、でもその葬式に用意された3つの棺桶の中には誰もいなくて、美宇たちがいなくなったなんて僕には思えなかった。

 だけど、数か月ぶりの家に戻って、パパの部屋の作りかけの人形も、ママの裁縫道具も、美宇のぬいぐるみも全部埃をかぶっていて、みんながもういないことを自覚して

 

「う・・・・うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 僕は泣いた。泣き続けた。

 

 なぜ美宇たちが死ななければならなかったんだ!――この恨みを晴らしたくても、あのトラックの運転手も死んでしまった。

 

 なぜ僕だけ生き残ってしまったんだ!――ちがう、僕は生かされたんだ。

 

 偶然?運命?ちがう、僕を生かしたのは、僕を守ってくれたのは

 

「美宇・・・なんでだよ・・・」

 

 トラックが僕らの車にぶつかって、海に投げ出されようとした瞬間、とっさに僕を外に突き飛ばしたのは美宇だった。

 そして、僕は美宇の最後の言葉を聞いた

 

≪生きて・・・≫

 

 なんでだよ・・・体調も良くなってきて、もうすぐ普通の生活ができるようになるって言われたろ?

 夏に海水浴に行こうって話してたろ?僕に泳ぎを・・・教えろって、いってたのに・・・

 

「なんで・・・」

 

 そんなことを延々、答えなんてあるはずないのに考え続けた。

 僕に親戚と呼べる人はいなかったから、パパやママの友達や、警察や病院の人まで見に来てくれたけど、僕は僕らの家でずっとふさぎ込んでいた。

 でも、ある時から突然、見に来ていた人たちは姿を現さなくなった。

 僕は料理とかできなかったから、お菓子をつまみながらしばらく過ごしていたら

 

「いたぞ、リストにあった紫雲院 素良だな?」

 

「誰?」

 

 いきなり、家の中に入ってきたのは変な制服を着た大人たち

 

「我々はデュエルアカデミア

 紫雲院 素良、君の身柄を預かっている孤児院は我々の管理下に置かれた!

 これから君には栄光あるアカデミアの一員として、世界のため、正義のために戦ってもらう!」

 

 世界のため?アカデミア?栄光?

 なんだそれ、僕には関係ないだろ、勝手に僕らの家に入ってくるなよ。

 デュエルなら美宇としていたけど、それで戦うってなんだよ。

 

「僕には関係ないだろ?

 世界とか正義とかそんなものにも興味はないんだ。僕らの家から出て行ってくれ。」

 

「家?この埃まみれのがらくた小屋がか?」

 

「!!?」

 

 僕が家に戻ってから、いろんな人たちが来て、掃除とかをしてくれていたけど、いつしか来なくなってから、僕は自分でやってなかった。

 ふさぎ込んで、ただ生きるために食べる、ただそれしかしてなかった。

 それしかやってなかったから、家には蜘蛛の巣が張り、埃にまみれ、パパの人形は塗装がはがれてボロボロになって、虫食いでママの縫っていた人形の服はボロボロになり、美宇のぬいぐるみは綿がはみ出ていた。

 家族は僕を守ってくれたのに、僕は家族のモノを守れていなかったんだ。

 

 呆然としている間に僕は船に乗せられ、孤島のデュエルアカデミアに連れてこられていた。

 そこはプロフェッサーの名のもとの規律と正義で運行されている地獄のような場所

 ごはんはレーションでまずいし、部屋に戻れば寝るだけで楽しみや娯楽なんてものはない。

 唯一の娯楽といえば、デュエルの実践演習で相手を打ち負かすことくらいだ。

 負ければその日のごはんがなくなったりしたし、死にそうなくらい痛い思いをした

 だから、そこで生きるためには、強くなるしかなかった。

 

 デュエルに必要があるのかよくわからない訓練とかも死に物狂いでやり遂げて、いつしか僕はアカデミアのエリートコースに入っていた。

 エリートになれば自分のデッキを持てたし、待遇も良くなった。

 逆に落ちこぼれになると、体罰や死にそうな目に遭うサバイバルデュエルにまた放り込まれるので、僕は他人を蹴落としてでもエリートの椅子にしがみついた。

 

 アカデミアのエクシーズ次元への侵攻が始まるとき、僕も行かせろと志願した。

 アカデミアでエリートで居続けるためには戦果を挙げなければならない。

 だからエクシーズに行って、たくさんの人をカードにした。

 僕が生きるための犠牲だ。牧場の家畜と同じだ。抵抗なんて無駄だ、大人しく狩ラれロ

 

 エクシーズから帰還した僕は特別任務に選ばれてスタンダードに先行偵察に行かされた。

 やることは簡単だ、強そうなやつを見つけて狩る。ただそれだけ、いつものハンティングゲームだ。

 そして、ちょうどいい獲物を見つけた。

 シンクロ、ペンデュラム、エクシーズ、融合を使いこなすデュエリスト、アカデミアでも見たことがないくらい強くて、容赦がない。初めて見たデュエルで1キルをかましていた。

 こいつを狩れば、僕はアカデミアでもっと偉くなれる。だからそのためにボクにカらレロ

 でも、ひとつ誤算だったのは、こいつが

 

「お前、講師をやってくれないか?」

 

 とっても変な奴だったことだ。


「よぉ!素良、久しぶり・・・でもないか

 元気だったかぁ?随分とお友達をいっぱい連れてきたじゃないの。」

 

「友達?そいつらが?

 冗談よしてよ、そんな奴ら友達でも何でもない。」

 

「つれないやつだなぁ。」

 

 和やかに会話をする遊矢と冷たい素良、対照的な二人の会話についていけない日影は困惑していた。

 

「遊矢殿、なぜ素良殿が・・・」

 

「そんなの単純な話だ、あいつは元からアカデミアだったってことだろ。」

 

「なんと!?」

 

 日影は驚いた。

 数日前まで遊矢をからかったり、からかわれていたりしていた少年が自分たちの敵だったことに。

 

「遊矢殿、ここは拙者が!?」

 

 日影は素良と会ったのは数度だけだが、遊矢と素良の間に確かな友情があることに気付いていた。

 だから、この二人が戦うのは辛かろうと自分が前に出ようとした

 だが、それを制したのは遊矢だ。

 

「いいから行けよ。日影、あいつは俺のお客さんだ。

 あそこで寝ている、父さんの一番新しいファンにふかふかのベットでも用意してやってくれ。」

 

「遊矢殿・・・わかったでござる。」

 

 遊矢の目を見て、もう自分では止められないことを悟った日影は気絶しているデニスを抱えて、その場を去っていった。

 

「見逃してくれるんだな?」

 

「別に・・・僕の標的は最初から遊矢だけだからね。

 あんな奴を見逃したところで、どうってことないさ。

 それに・・・近いうちにここも狩場になる、そうなったら今も後も変わらないさ。」

 

 素良は目を伏せて、遊矢にとってつらい現実を突きつける。

 エクシーズ次元は人狩りを初めて1年ほど、抵抗は続いているが焼け石に水で、近々狩りつくされるだろう。

 なら次はどこだ、素良の推測でしかないが、このスタンダードだろうと

 

「へぇ~そういえば、お前たちはハンティングゲームをしているんだっけか?

 だけど、狩人がこんな羽虫どもなら、鬱陶しいだけだろ。」

 

 ずぶずぶと沈んでゆくオベリスクフォースたちに目を向けて、遊矢は感想を述べる。

 素良のディスクの識別ビーコンにも、もう自分しか残っていない。

 何かしたのか、彼らのディスクはもう使い物にならなくなっているらしく、強制転送装置も起動していない。

 

 例えるならエクシーズ次元がウサギ小屋なら、このスタンダードはオオカミの縄張りだ。

 強いやつが強すぎる。弱いやつも多いがそれがそれなりに強くなるのも時間の問題だろう。

 そうなればオベリスクフォース以下の一般学生などひとたまりもない。自分のような一部のエリートのみが対抗できる、発展途上の魔境だと素良は思った。

 だがその一部のエリートをもってしても、目の前のこの男に噛み殺されてしまう未来が見えている。

 

「そんなこと言えるの、遊矢だけだと思うけど?」

 

「そんなことないさ。

 カードがあれば、誰だってできるんだから。」

 

 オベリスクフォースを壊滅させたコンボはオッドアイズなどの特別なカードは一切使っていない。

 一般流通しているエンタメイトと植物族を使ったコンボだ。

 むしろ、なぜかパックを開ければほとんどエンタメイトな遊矢よりも完成度の高いものが作れるだろう。 

 

「そうだね。でも、君がいなくなれば話は別だ。」

 

 この次元はカードプールの多さは一番だが、それを有用に使おうとするものは少ない。

 見栄や体裁ばかり取り繕ったものが多く、数年前のデュエル雑誌にはほかの次元では誰でも知っているようなコンボが紹介されていた。

 それを変えたのは誰でもない、遊矢だ。

 

「君がいなくなれば、この世界のデュエルの発展は遅れる。

 プロフェッサーの言うとおりだ、君は僕らの世界にとっての劇薬だ。

 だから・・・君をここで殺す。」

 

「ヒットマンがするにしては随分と辛気臭い顔だな。

 そんなに恐ろしいなら、デュエルで戦争なんてやめたらどうだ?」

 

「・・・駄目だよ、遊矢。

 もう僕たちはエクシーズを滅ぼしてしまった、もう戻れない、止まれないんだよ!

 戦って戦って、生き残るしかないんだ。もうデュエルを遊びにはできないんだよ!!」

 

「はぁ~遊びなのかそうじゃないのかはっきりしてほしいねぇ

 だがな素良、俺にとっては遊びだ。

 決闘(デュエル)は楽しいゲームだ。それは今も昔も変わらない。」

 

「ふざけるのもいい加減にしろ!僕は!!」

 

「本気で行くぞ、ってか?

 ちがうなぁ、遊びだから手を抜くんじゃない。遊びだからこそ本気になれるんだ。」

 

 遊矢はデッキをいったん取り外し、それから数枚のカードを抜いて、別のデッキと合わせ付け替える。

 

「だから、本気で決闘(デュエル)しようぜ!素良ぁ!!」

 

『『決闘(デュエル)!!』』

 

「先攻は俺からだな。

 俺はスケール6のEM(エンタメイト)ギタートルをペンデュラムスケールにセッティング。」

 

「待った!セットした瞬間、僕は手札のエッジインプ・サイズの効果を発動する!

 相手ターンのメインフェイズに、手札のこのカードを相手に見せ、自分の手札、フィールドのこのカードを含む融合素材モンスターを墓地に送り、デストーイ融合モンスターを融合召喚する!

 僕はエッジインプ・サイズとファーニマル・ペンギンを融合!

 悪魔の処刑具よ!冷たき心よ!神秘の渦で1つとなりて、新たな力と姿を見せよ!融合召喚!」

 

 内側からもぞもぞと何かが蠢き、ペンギンのぬいぐるみが肥大化してゆく

 顔、背中、そして尻尾から鎌が突き出て、腹からも鎌が突き出て引き裂く

 そして、ビリビリと破れた首の中からのぞかせるのは不気味に光る赤い目

 

「現れ出でよ!大海に潜む、大いなる巨獣!!デストーイ・クルーエル・ホエール!!」

 

クルーエル・ホエール「ぎゃあはあはHHAぁぁぁぁぁAA!!」

          ATK2600

 

 シャチの姿となったぬいぐるみの中から、悪魔が笑い声をあげる

 そして、クルーエル・ホエールは獲物を見つけたとばかりに光の柱の中のギターのような姿をした亀に向かって飛びつく

 

「ファーニマル・ペンギンが融合素材として墓地に送られたことで、デッキから2枚ドローし、手札を1枚捨てる。

 そして、クルーエル・ホエールの効果発動

 このカードが融合召喚に成功したとき、自分及び相手フィールド上のカードを1枚ずつ選んで破壊する。

 僕はクルーエル・ホエール自身とEM(エンタメイト)ギタートルを選択。」

 

 クルーエル・ホエールの鎌がギタートルを切り裂いたが、その時、クルーエル・ホエール自身の鎌もぶつかり合って、いくつかが砕け散った。

 

「デストーイ融合モンスターが破壊されるとき、エッジインプ・サイズを除外することで身代わりにできる。」

 

「初動を止めてきたか、仕方ない。

 俺はスケール1のEM(エンタメイト)ユーゴーレムとスケール6のEM(エンタメイト)リザードローをセッティング

 リザードローのペンデュラム効果、EM(エンタメイト)カードがもう片方のペンデュラム・ゾーンに存在するとき、このカードを破壊し1枚ドローする・・・よっわ。」

 

 まさかのこの大事な盤面で、手札事故一歩手前である。

 思わず呟いてしまうほどに、今の手札はかなりイマイチだ。まったく動けないわけではないが

 

「う~ん、よし、俺は永続魔法、炎舞―天璣を発動

 発動時にデッキからレベル4以下の獣戦士族モンスター、EM(エンタメイト)ユニを手札に加える。

 さらに魔法カード、ペンデュラム・パラドクスを発動

 エクストラデッキの表側表示のペンデュラムモンスターの中から、同じスケールで名称の異なるモンスター2体を手札に加える。

 俺はスケール6のEM(エンタメイト)ギタートルとEM(エンタメイト)リザードローを手札に戻す。」

 

「ちっ、せっかく破壊したのに・・・」

 

「言うな言うな、正直この手札じゃ、何もできることはないんだ。

 だから、お色直しといこう、魔法カードEM(エンタメイト)キャスト・チェンジ発動

 手札のEM(エンタメイト)モンスターを任意の数デッキに戻し、デッキから戻した枚数+1枚ドローする。

 俺はEM(エンタメイト)リザードロー、ギタートル、ユニをデッキに戻し4枚のカードをドロー

 

 よし、俺は魔法カード、調律を発動

 デッキからシンクロンチューナー、ヴァレット・シンクロンを手札に加えデッキトップを1枚墓地へ送る。

 

 手札のマジシャンズ・ソウルズの効果発動

 1ターンに1度、このカードが手札にある場合、デッキからレベル6以上の魔法使い族モンスター1体を墓地へ送り、このカードを特殊召喚する。

 俺はレベル6の賤竜の魔術師をデッキから墓地へ送りマジシャンズ・ソウルズを特殊召喚。」

 

 マジシャンズ・ソウルズ DEF0

 

 現れたのは青白い2人の魔術師の魂

 それはこの世界において伝説となっているカードのサポートカード

 なぜ最近のパックに入っていたのかわからないレベルのカードであるが、このカードはサポートの役目以外にも使い道がある。

 

「カードを1枚伏せ、マジシャンズ・ソウルズの効果発動

 自分の手札、フィールドから魔法、トラップカードを2枚まで墓地へ送り、送った枚数だけデッキからドローする。

 俺はフィールドの炎舞―天璣とセットしたマジシャンズ・プロテクションを墓地へ送り2枚ドロー。」

 

 引いたカードはさっきの事故一歩手前の手札が嘘のようなカードたち、そして、今墓地に送ったカードとともに遊矢はコンボを組み立てていく。

 

「墓地へ送られたマジシャンズ・プロテクションの効果発動

 このカードがフィールドから墓地へ送られた場合、自分の墓地の魔法使い族モンスターを1体対象として、特殊召喚する。

 来い、賤竜の魔術師!」

 

賤竜の魔術師「はっ!」

      ATK2100

 

 荒々しい風とともに現れる嵐のような雰囲気を持つ魔術師、その鷹のような目が素良をにらむ

 

「賤竜の魔術師が召喚、特殊召喚に成功したとき、自分の墓地の賤竜の魔術師以外の魔術師またはオッドアイズペンデュラムモンスターを1体手札に加える。

 俺は慧眼の魔術師を手札に戻し、そのままペンデュラムスケールにセッティング

 そして、ペンデュラム効果発動、もう片方のペンデュラムゾーンに魔術師またはEM(エンタメイト)カードがある場合、このカードを破壊しデッキから慧眼の魔術師以外の魔術師をペンデュラムゾーンに置く

 俺は新たにデッキからスケール1の龍脈の魔術師をセッティング。」

 

 目をバイザーで覆った魔術師がその場を譲ったのは、長い三つ編みの少年魔術師

 元気いっぱいに出番だと意気込むが、悲しきかな片方のスケールが自分と同じなため、すぐに退場になることは確定である。

 

「速攻魔法、揺れる眼差し

 フィールド上のペンデュラムゾーンのペンデュラムモンスターを破壊し、その破壊した枚数に応じて、効果を増やす。

 俺は自分のペンデュラムゾーンのEM(エンタメイト)ユーゴーレムと龍脈の魔術師を破壊。」

 

 龍脈の魔術師が「えぇー!?」という顔をするが、仕方なしにU字を2つくっつけたような白いゴーレムとともにその場を消える。

 

「2枚を破壊したことにより、デッキからペンデュラムモンスター、EM(エンタメイト)ペンデュラム・マジシャンを手札に加える。

 そして、お前に500ポイントのダメージだ。」

 

 天に浮かぶ水晶の振り子が落下し、その破片が素良を襲う。

 

「ぐぅ!さっき、よっわ、とか言ってたのに・・・」

 LP4000→3500

 

「俺だって驚いてるよ。

 まだまだ行くぞ、魔法カード、ルドラの魔導書

 自分の手札、フィールド上のルドラの魔導書以外の魔導書カード1枚または自分フィールド上の魔法使い族モンスター1体を墓地へ送り2枚ドローする。

 俺はマジシャンズ・ソウルズを墓地へ送り2枚ドロー

 

 もう一、二働きしてもらうか、魔法カード、アメイジング・ペンデュラム

 1ターンに1度、自分のペンデュラムゾーンにカードがないとき、エクストラデッキの表側表示のペンデュラムカードの中から名前の異なる魔術師ペンデュラムカードを2枚を手札に加える。

 俺はスケール1の龍脈の魔術師とスケール5の慧眼の魔術師を手札に加え、ペンデュラムスケールにセッティング。」

 

 再び現れる水晶の振り子と2人の魔術師、龍脈の魔術師は少し不貞腐れている。

 

「これでレベル2から4のモンスターがペンデュラム召喚可能になった。

 揺れろペンデュラム、異界へつながる扉を開け!ペンデュラム召喚!

 エクストラデッキからレベル4、EM(エンタメイト)ユーゴーレム、手札から同じくレベル4、EM(エンタメイト)ペンデュラム・マジシャン、EM(エンタメイト)ロングフォーン・ブル!」

 

 流星の中から現れる白いU字を2つくっつけたようなゴーレム、振り子の魔法使い、頭に受話器を置いた二本足で立つ水牛

 よくわからないメンツではあるが、今は1ターン目である。

 相手フィールドに融合モンスターが出ていたりするが1ターン目なのである。

 よって、やることは次のターンの準備だ。

 

「ロングフォーン・ブルの特殊召喚により、デッキからペンデュラム以外のEM(エンタメイト)モンスターを1体手札に加える。

 俺はもう1度、EM(エンタメイト)ユニを手札に加え、さらにペンデュラム・マジシャンの効果で自分フィールド上のカードを2枚まで破壊し、デッキから同名以外のEM(エンタメイト)モンスターを破壊した枚数分手札に加える。

 龍脈と慧眼を破壊しデッキから、EM(エンタメイト)リザードローとEM(エンタメイト)ユーゴーレムを手札に加える。

 

 そして、俺はレベル4のEM(エンタメイト)ペンデュラム・マジシャンとロングフォーン・ブルの2体でオーバーレイ

 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚、御影志士。」

 

 御影志士 ATK2300 ORU2

 

 出てきたのは黒い石で作られた侍の彫像

 石で出来ている割になぜか滑らかな動きでポーズを決めている。

 

「エクシーズ・・・」

 

「御影志士の効果発動、1ターンに1度、オーバーレイユニットを使ってデッキから岩石族モンスター1体を手札に加える。

 俺が手札に加えるのは融合呪印生物―闇。」

 

 御影志士 ORU2→1

 

「融合呪印生物だって!?」

 

「そして、俺はこのターン通常召喚を行っていない

 融合呪印生物―闇を通常召喚。」

 

 融合呪印生物―闇 ATK1000

 

 ぐちゃぐちゃと音を立てて蠢くのは紫色の触手の塊、機械や血管、ミミズのようなものがそこかしらにはみ出て脈動している。

 

「スケール1のユーゴーレムをペンデュラムスケールにセッティングして、融合呪印生物―闇の効果発動

 このカードは融合モンスターカードにカード名が記された融合素材モンスター1体の代わりにでき、闇属性の融合モンスターによって決められたこのカードを含む融合素材モンスター1組を自分フィールドからリリースして、融合モンスターをエクストラデッキから特殊召喚する。

 俺は融合呪印生物―闇をオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンとして魔法使い族の賤竜の魔術師とともにリリース。

 現れろ、秘術振るいし魔天の龍、ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン!」

 

ルーンアイズ「キュオオォォォォォォォォ!!」

      ATK3000

 

 現れたのはオッドアイズの亜種ともいえる魔龍

 その片方の眼には奇妙な文字の描かれた眼帯がつけられており、その背の突起は金色の輪となっている。

 

「融合モンスターをこんな方法で出すなんて・・・」

 

「まぁ、この方法で出すとルーンアイズの効果が全く使えないんだが、今はレベル5以上の闇属性モンスターが欲しかっただけだから問題ない。

 EM(エンタメイト)ユーゴーレムの効果発動、このカードがペンデュラム召喚に成功したターンに1度だけ、このカードを含む融合素材を自分フィールドから墓地へ送り、融合召喚を行う。

 EM(エンタメイト)モンスター、ユーゴーレムとレベル5以上の闇属性モンスター、ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴンを融合!

 さぁ!因縁の再会と行こうか!EM(エンタメイト)ガトリングール!」

 

ガトリングール「フハハhハハハhHHHHッ!!」

       ATK2900

 

 2人の初めてのデュエルで素良に引導を渡した機関砲を持った屍鬼、ガトリングールの登場に素良は苦々しい顔をした。

 

「ガトリングールの効果、このモンスターが融合召喚に成功したとき、フィールド上のカード1枚につき200ポイントのダメージを相手に与える。

 現在フィールドには4枚のカード、よって800ポイントのダメージ。」

 

――きゃああぁぁぁぁぁぁ!!

――助けてくれえぇぇー!!

――お前は!お前だけはぁぁぁ!!

 

「くっ!?その効果にチェーンして、墓地のダメージ・イーターの効果発動!

 僕にダメージを与える効果が発動したときに、このカードを除外してその効果を僕への回復効果に書き換える!

 

 さらにクルーエル・ホエールの効果!デッキ、エクストラデッキからクルーエル・ホエール以外のデストーイモンスターを墓地へ送り、融合モンスターの攻撃力を自身の元々の攻撃力の半分の数値分アップさせる。

 僕はデッキからデストーイ・マイスターを墓地へ送り、クルーエル・ホエールの攻撃力をアップ!」

 

 クルーエル・ホエール ATK2600→3900

 

 ガトリングールはガトリングガンをぶっぱなそうとしたが、そこに込められた弾は傍らから現れた黄色い悪魔によって取り換えられて、飴玉が発射される。

 

「あらら、この効果、連続しているから後半の効果も書き換えられたか・・・

 まぁ、いい、再会を祝してのプレゼントだ存分に受け取れ!

 ペンデュラムモンスターを融合素材にしたことで、追加でクルーエル・ホエールを破壊しお前にその元々の攻撃力分のダメージを与え、じゃなかった回復させる。」

 

 茶化して言う遊矢に、素良のイライラは募るばかりだ。

 無数の鉛玉がガトリング砲から発射され、クルーエル・ホエールをボロボロにするが、素良の前に行くころには失速して大量に転がっていく

 

「遊矢・・・わかっていてやってるでしょ?」

 LP3500→4300→6900

 

 そう遊矢は直感で素良のデッキが前よりも『墓地』を重視したものだと感じている。

 だから毎ターンの墓地肥やしが可能なクルーエル・ホエールを無理やり破壊したのだ。

 

「さぁ、どうだかぁ~

 ユーゴーレムのペンデュラム効果、融合召喚成功により墓地のEM(エンタメイト)モンスター、ペンデュラム・マジシャンを手札に戻す。

 

 魔法カード、一時休戦、互いにカードを1枚ドローし、次の相手のターン終了時までお互いが受けるダメージを0にする。

 

 魔法カード、デュエリスト・アドベントを発動、自分フィールド上にペンデュラムスケールがセッティングされているとき、デッキからペンデュラムと名の付くペンデュラムモンスターか、魔法、トラップカードを手札に加える。

 俺はペンデュラム・ホルトを手札に加え発動、エクストラデッキに表側表示のペンデュラムモンスターが3種類以上あるとき、デッキから2枚ドローする。」

 

 サーチとドローを繰り返し、もうすでにデッキは元の枚数より半分のカードが削られている。

 これには遊矢自身も驚きであるが、そのかいあって今はダメージを受けることもなく、手札は6枚と潤沢だ。

 

「最後にランク4の御影志士をオーバーレイ

 ランク4のモンスター1体でオーバーレイネットワークを再構築

 エクシーズ召喚!旋壊のヴェスぺネイト」

 

ヴェスぺネイト「シャアァァァァァァ!」――ヴォオォォォッォォン!

       ATK2500 ORU2

 

 御影志士が混沌へと戻り、そこから現れたのは巨大な機械の蜂

 翅ではなくジェットで飛んでいるため轟音をまき散らしている。

 

「こいつは自分フィールド上のランク4に重ねて1ターンに1度だけエクシーズ召喚できる。

 これで俺のターンは終了だ。」

 

「僕のターン、ドロー!

 僕はマジックカード、魔玩具補綴(デストーイ・パッチワーク)を発動

 1ターンに1度、デッキから融合とエッジインプモンスターを手札に加える。

 僕が加えるのはエッジインプ・チェーン!

 

 ダメージを与えられないのなら、僕だって好き勝手させてもらう!

 マジックカード、ワン・フォー・ワン

 手札のモンスターカード、エッジインプ・チェーンを捨てデッキからレベル1モンスター、ファーニマル・マウスを特殊召喚!」

 

ファーニマル・マウス「チッ!」

         DEF100

 

「エッジインプ・チェーンの効果発動

 このカードが手札、フィールドから墓地へ送られた場合、デッキからデストーイカードを1枚、手札に加える。

 僕はデストーイ・ファクトリーを手札に加える。

 ファーニマル・マウスの効果発動、自分のメインフェイズにデッキからファーニマル・マウスを2体まで特殊召喚する。」

 

 ドーナッツを持ったネズミが一瞬黒くなりその身は3体に分裂する。

 

 ファーニマル・マウス DEF100

 ファーニマル・マウス DEF100

 

「手札のファーニマル・ベアの効果発動、このカードを捨てて、デッキからトイポット1枚を自分フィールド上にセットする。

 そして、そのまま発動、永続魔法、トイポット

 手札を1枚捨てて、デッキから1枚ドロー、ドローしたカードがファーニマルモンスターなら特殊召喚、それ以外ならそのカードを捨てる。

 引いたのはファーニマル・ドッグ、よって特殊召喚!」

 

 ファーニマル・ドッグ「ワンッ!」

           ATK1700

 

 天使の羽が生えた犬のぬいぐるみが、羊のぬいぐるみを咥えて現れた。

 

「ファーニマル・ドッグが召喚、特殊召喚されたことで1ターンに1度、デッキからファーニマルモンスターを手札に加えることができる。

 僕が手札に加えるのはファーニマル・シープ、そしてこのカードはファーニマル・シープ以外のファーニマルモンスターが存在するとき、特殊召喚できる。」

 

ファーニマル・シープ「メェー」

          DEF800

 

「おうおう、1ターンで5体揃えちゃってまぁ。」

 

「遊矢に言われたくないよ。

 ファーニマル・シープの効果、1ターンに1度、このカード以外のファーニマルモンスターを手札に戻し、手札、墓地からエッジインプモンスターを特殊召喚する。

 僕はファーニマル・ドッグを手札に戻し墓地からエッジインプ・チェーンを特殊召喚。」

 

エッジインプ・チェーン「ぎゃはははあはhHHH」

           ATK1200

 

「そして、僕はスケール1のエッジインプ・コットンイーターをセッティング。」

 

 光の柱の中に現れるのは巨大な羽の生えた卵、だがその真ん中あたりから鋭い牙が生えており、巨大な一つ目が遊矢を見つめている。

 

(ペンデュラムモンスター、デストーイ・マイスターもそうだが、やっぱりほかにも持っていたか。)

 

「驚かないんだね。」

 

「驚くも何も、俺は誰が何のカードを持っているかなんて把握していないしな。」

 

「そう・・・だったらたっぷり驚かせてやるよ!

 手札から融合発動、フィールドのエッジインプ・チェーンとファーニマル・マウスを融合!

 連鎖する悪夢よ、小さき悪意よ、神秘の渦で1つとなりて、新たな力と姿を見せよ!融合召喚!

 現れ出でよ!大海に潜む、大いなる巨獣!!デストーイ・クルーエル・ホエール!!」

 

クルーエル・ホエール「うひゃひゃHYAはyはyは!!」

          ATK2600

 

「融合召喚の成功により、エッジインプ・コットンイーターのペンデュラム効果で1枚ドロー

 そしてクルーエル・ホエールの効果で僕の場のコットンイーターと遊矢のフィールドのペンデュラムゾーンのEM(エンタメイト)ユーゴーレムを破壊!」

 

 クルーエル・ホエールが空中を泳ぐように飛び光の柱の中のユーゴーレムとコットンイーターを切り裂き喰らう。

 

「クルーエル・ホエールのもう1つの効果

 デッキの魔玩具融合(デストーイ・フュージョン)を墓地へ送り、クルーエル・ホエールの攻撃力をアップ。」

 

 クルーエル・ホエール ATK2600→3900

 

「マジックカード、融合回収(フュージョン・リカバリー)、墓地の融合と融合素材として墓地へ送られたモンスター、エッジインプ・チェーンを手札に加える。

 永続魔法、デストーイ・ファクトリーを発動

 このカードは1ターンに1度、僕の墓地の融合またはフュージョンと名の付くマジックカードを除外し、融合召喚を行う。

 僕は魔玩具融合(デストーイ・フュージョン)を除外し、手札のエッジインプ・チェーンとフィールドのファーニマル・マウスを融合

 三度現れろ、大海の巨獣よ!デストーイ・クルーエル・ホエール!」

 

クルーエル・ホエール「うひヒャハyhya㏊YHAY!」

          ATK2600

 

「クルーエル・ホエールの効果でデストーイ・ファクトリーと、ヴェスぺネイトを破壊だ!」

 

 見境なく齧り喰らうクルーエル・ホエールは機械の蜂といえどひとたまりもなく、噛み切られる。

 

「エクシーズ召喚されたヴェスぺネイトが相手により破壊された場合、俺の墓地からレベル5以下のモンスターを1体特殊召喚できる。

 戻ってこい、ロングフォーン・ブル!」

 

ロングフォーン・ブル「ブモッ!?」

          DEF1200

 

 憐れな水牛が墓地から引っ張り出されたのは2匹のシャチの姿をした悪魔が泳ぐ、どう考えても助からない場所

 でも、仕事はせねばならないと、頭の受話器でヘルプを要請する。

 

「ロングフォーン・ブルの効果でデッキからEM(エンタメイト)スプリングースを手札に加える。」

 

「墓地へ送られた、デストーイ・ファクトリーの効果で除外されている魔玩具融合(デストーイ・フュージョン)を手札に加える。

 もう1度クルーエル・ホエールの効果を発動し、デッキからデストーイ・マイスターを墓地へ送りクルーエル・ホエールの攻撃力をアップ!」

 

 クルーエル・ホエール ATK2600→3900

 

「墓地のファーニマル・ウィングの効果発動

 このカードと別のファーニマルモンスターを除外し、デッキから1枚ドロー、さらに僕のフィールドのトイポットを墓地へ送ることでさらに1枚ドローする。

 僕はファーニマル・ウィングとファーニマル・マウスを除外し1枚ドロー、トイポットも墓地へ送ってもう1枚ドローだ。

 さらに墓地へ送られたトイポットの効果でデッキからファーニマルモンスター、ファーニマル・エンジェルを手札に加える。」

 

(来たな、もう1枚のペンデュラム!)

 

「スケール8のファーニマル・エンジェルをペンデュラムスケールにセッティングし、ペンデュラム効果発動

 1ターンに1度、僕の墓地からファーニマルまたはエッジインプモンスターを特殊召喚する。

 戻れ、ファーニマル・ペンギン!」

 

ファーニマル・ペンギン「クエェェ!」

           ATK1600

 

「そして、融合発動!フィールドのデストーイ・クルーエル・ホエール、ファーニマル・ペンギン、ファーニマル・シープ、ファーニマル・マウスを融合

 大海の巨獣よ、冷たき心よ、憐れな贄よ、小さき悪意よ、神秘の渦で1つとなりて、新たな力と姿を見せよ!融合召喚!

 現れ出でよ!すべてに牙剥く、魔境の猛獣!デストーイ・サーベル・タイガー!!」

 

サーベル・タイガー「ヒヒヒヒhhihihihih伊Hiひ!」

         ATK2400

 

 クルーエル・ホエールがファーニマルたちを食い尽くし、その内から新たな赤い剣が生えて、シャチのぬいぐるみを切り捨てると剣虎のぬいぐるみに潜んだ悪魔となって再誕する。

 

「サーベル・タイガーが融合召喚に成功したことにより、墓地からデストーイモンスター1体を特殊召喚する。

 戻れ!デストーイ・クルーエル・ホエール!」

 

クルーエル・ホエール「ひゃひゃはyひゃぁhゃxはy!!」

          ATK2600

 

「融合素材のファーニマル・ペンギンの効果により2枚ドローし、手札のファーニマル・ドッグを捨てる。

 クルーエル・ホエールの効果でエクストラデッキからデストーイ・ホイールソウ・ライオを墓地に送り、クルーエル・ホエールの攻撃力をアップ

 さらにサーベル・タイガーの効果により、僕のフィールドのデストーイは攻撃力が400ポイントアップする。」

 

 クルーエル・ホエール ATK2600→3000→4300

 クルーエル・ホエール ATK3900→4300

 サーベル・タイガー  ATK2400→2800

 

「さらにマジックカード、悪夢再びを発動

 墓地から守備力0の悪魔族モンスターを2体手札に戻す。

 僕が手札に戻すのは2体のデストーイ・マイスター!

 

 マジックカード、トレード・イン、手札に戻したデストーイ・マイスターを1枚墓地へ送りデッキからカードを2枚ドロー

 そして、残ったスケール4のデストーイ・マイスターをペンデュラムスケールにセッティング!」

 

 光の柱の中に浮かぶのは反対側の天使とは違い、子供のような姿のフードを被った骸骨、瞳のように燃える青い炎がゆらゆらと揺れている。

 

「見せてやるよ、遊矢、アカデミアの、いや、僕のペンデュラム召喚を!

 揺れろ運命の振り子・・・生きるも地獄、死ぬのも地獄、醒めぬ悪夢を彷徨い歩け!!ペンデュラム召喚!

 現れろ、レベル7、地獄への水先案内人、エッジインプ・コットン・イーター!」

 

 落ちてくるのは赤い凶星、それは大地にぶつかり羽を広げ、けたたましい声を上げる。

 これは次の悪夢を運ぶ卵だ。

 

 コットン・イーター「グワアアァァァァァァ!!」

          ATK2400

 

「そして、ファーニマル・ドルフィンを通常召喚して効果発動

 墓地のトイポットを僕のフィールドにセットし、さらにデッキからエッジインプ・シザーか、ファーニマルモンスター1体を墓地に送る。

 僕が墓地に送るのはファーニマル・ウィング。」

 

ファーニマル・ドルフィン「クカカカカカカ。」

            ATK1600 

 

(これでまた次のターンに実質4枚ドローか、面倒だな。)

 

「デストーイ・マイスターのペンデュラム効果発動

 自分フィールド上のデストーイ、ファーニマル、エッジインプモンスターをリリースしてデッキからリリースしたモンスターと同じレベルで名前の異なる悪魔族モンスターを特殊召喚する。

 レベル4のファーニマル・ドルフィンをリリースして来い!エッジインプ・トマホーク!」

 

エッジインプ・トマホーク ATK1800

 

「エッジインプ・トマホークの効果発動、1ターンに1度、デッキからトマホーク以外のエッジインプモンスターを墓地へ送り、このモンスターをこのターン墓地へ送ったモンスターと同じモンスターとして扱う。この効果で僕はエッジインプ・シザーを墓地に送る。」

 

 素良のフィールドに現れた斧の塊が崩れ、はさみの塊が現れて赤い目を輝かせる。

 

「マジックカード、魔玩具融合(デストーイ・フュージョン)を発動!

 このカードは自分のフィールド、墓地から融合素材モンスターを除外し、デストーイ融合モンスターを融合召喚する。

 僕はフィールドのエッジインプ・シザー扱いのトマホークと墓地のファーニマル・マウスを融合!

 束ねられし悪魔よ、小さき悪意と一つとなりて、新たな力と姿を現せ!融合召喚!!

 現れ出でよ!すべてを切り裂く、密林の魔獣!デストーイ・シザー・タイガー!!」

 

 ネズミのぬいぐるみが引き裂かれ、中から現れる巨大なハサミが腹や腕に突き刺さった虎のぬいぐるみ、その口の中から覗く赤い双眸から不気味な笑い声が響く

 

シザー・タイガー「げひゃひゃひゃひゃhHAHAAAH!」

        ATK1900→2300

 

「シザー・タイガーの融合召喚に成功したとき、このカードの融合素材の数までフィールド上のカードを破壊する。

 消え失せろよ!ガトリングール!!・・・と、ついでのロングフォーン・ブル!」

 

 シザー・タイガーの腹のハサミが大きく伸びて、ガトリングールとロングフォーン・ブルを裁断する。

 心なしか以前ひどい目にあったシザー・タイガーはガトリングールを自分のハサミで倒したことにご満悦だ。

 

「そして、2枚目の融合回収(フュージョン・リカバリー)を発動

 墓地のエッジインプ・チェーンと融合を回収し、融合を発動!

 融合するのはフィールドのエッジインプ・コットン・イーターと手札のファーニマル・キャット!

 悪魔の卵よ、忍び寄る闇よ、神秘の渦で一つとなりて新たな力と姿を得よ!融合召喚!

 現れろ、地獄へ引きずり込む疫病神、デストーイ・デアデビル!」

 

デアデビル「ぎゃははハハハハハッはははh!!」

     ATK3000→3400

 

 悪魔の卵から生まれ出たのは赤と黒の正真正銘の悪魔

 これまでのデストーイとは違い、かりそめの姿ではない、厄災を呼ぶものだ。

 

「ファーニマル・キャットが融合素材になったことで、墓地の融合を手札に戻す。

 そして、デストーイ・シザー・タイガーの効果で僕のフィールドのデストーイの攻撃力は、僕の場のデストーイ及びファーニマルの数×300ポイントアップ!」

 

 クルーエル・ホエール ATK4300→5800

 クルーエル・ホエール ATK4300→5800

 サーベル・タイガー  ATK2800→4300

 シザー・タイガー   ATK2300→3800

 デアデビル      ATK3400→4900

 

「見たか遊矢!!これが僕の力だ!!

 僕は絶対生き残る、だから君は大人しく僕の糧になれええぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 彼の耳には彼に狩られた者たちの嘆き、悲鳴、恨みの声が、けたたましい雨のように今も聞こえている。

 幽鬼の慟哭は、それをかき消そうとしているかのようであり、そんな主人の姿を見て悪魔たちは楽しげに笑っている。

 

――ぎゃははははははhhっはははっははははははははhahahははハハハハ




ずっとずっと、耳から離れないんだ。
君に出会う前はなんてことなかったのに・・・

素良・・・

だから消えてよ!!こんなのが聞こえていたら僕はきっと耐えられない!
僕は妹の分まで生きなくちゃならないのに!!

残念だが、そんなお前に負ける気はしねぇよ
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『君に太陽を』
Gotcha!いいデュエルだったぜ。


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君に太陽を

素良戦後半
墓地と手札を使いまくっているのでまた長いですが、お付き合いくださいませ。
デッキの方はちゃんと枚数確認したので問題ない、はずです。

≪修正≫
申し訳ございません
ドラゴン族縛りのことを忘れていたために、最後の展開に2枚のカードを付け足しました。


「僕は絶対生き残る、だから君は大人しく僕の糧になれええぇぇぇぇぇぇ!!」

 

――ぎゃははははははhhっはははっははははははははhahahははハハハハ

 

 響く絶叫は、悪魔たちの笑いに虚しくもかき消される。

 

「糧になれか・・・俺好みの言葉だが・・・」

 

 だが幽鬼の目の前に立つ、笑わない悪魔は

 

「そいつは無理だな。」

 

 その絶叫を否定する。

 

「・・・なんでだよ・・・・・・・・なんでそんなこと言えるんだよ・・・」

 

「お前がなんでそこまで『生きる』ことに執着するかは知らないが、生きるってことは苦しくて辛いことだ。

 特に自分に待ち受けている運命が分かっているなら猶更な・・・」

 

 遊矢は自らに待ち受ける運命の1つを知っている。

 それは賞賛される輝かしいものだ。

 だが、それは彼にとって、多くのモノを失うだけで意味のない、受け入れられないものだ。

 

「だが糧を得るということはそんな苦痛の中での『幸福』だ。

 糧を得なければ『生きる』ことができない、なら『生きる』ことは『幸福』を得ることだ。

 お前は今、『幸福』か?」

 

「・・・・・・」

 

 遊矢の紅い目は素良をまっすぐ見据えている。

 そこには死への恐怖などない。

 殺されそうになっている獲物にはありえないものだ。

 

「そうじゃないだろ?おまえ、ひっどい顔しているぜ?」

 

「・・・うるさい、うるさい!うるさいうるさいうるさい!!うるさああぁぁぁぁぁいい!!

 君の敗北の運命は変わらない!

 君は、この攻撃力を超えるモンスターを持っていないだろ!

 いや、超えられたとしてもそれは一時的だ!

 

 サーベル・タイガーは3体以上のモンスターを使って融合召喚されたとき、戦闘と効果で破壊されない。

 次のターンで僕のライフを削りきることなんて無理なんだよォォ!!

 カードを2枚伏せてターンエンド!」

 

 クルーエル・ホエール「ゲヘヘッ!」

           ATK5800→4500

 

 クルーエル・ホエール「ギャハハ!」

           ATK5800→4500

 

 サーベル・タイガー「キヒヒッ!」

          ATK4300

 

 シザー・タイガー「ヒャハハハハッ!」

         ATK3800

 

 デアデビル「ギャハハハハハッ!!」

      ATK4900

 

「敗北の運命は変わらない?

 違うな、運命は決するまでわからないものだ。

 そして、運命はこの手札で、そしてこれから引くカードでガラリと変わるかもしれない。

 そう考えたらワクワクしないか?」

 

「ワクワク・・・?まだそんなことを!!」

 

「はっはっはっ、怒るな怒るな

 生憎と俺は泣き虫とつまらないことは嫌いなんでね。

 だから、俺は楽しんでいるよ。このデュエルを!

 俺のターン、ドロー!

 俺はスケール2のEM(エンタメイト)ダグ・ダガーマンとスケール6のEM(エンタメイト)リザードローをペンデュラムスケールにセッティング!」

 

 光の柱に登るのはお馴染みの赤い紳士なトカゲと、初登場となる青い服に帽子を深くかぶったナイフ使い。

 

「これで3、4、5のレベルのモンスターはペンデュラム召喚できる。

 の前に、ダグ・ダガーマンのペンデュラム効果で俺の墓地のEM(エンタメイト)モンスター、ロングフォーン・ブルを手札に戻す。

 

 そして、魔法カード、EM(エンタメイト)ポップアップを発動

 手札を3枚まで捨て、捨てた枚数分ドローし、その後、自分のフィールドのペンデュラムスケールでペンデュラム召喚可能なEM(エンタメイト)、魔術師ペンデュラム、オッドアイズモンスターを手札からドローした枚数まで特殊召喚する。

 ただし、同名は1枚までで、1体も特殊召喚できない場合は自分の手札の枚数×1000ポイントのダメージを受けるけどな。

 

 俺は手札のEM(エンタメイト)ユニ、スプリングース、オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴンを捨て3枚ドロー

 そして、俺はレベル4のEM(エンタメイト)ペンデュラム・マジシャンとEM(エンタメイト)ロングフォーン・ブルを特殊召喚!」

 

ペンデュラム・マジシャン「はっ!」

            ATK1500

 

ロングフォーン・ブル「ブモッ!」

          ATK1600

 

「ロングフォーン・ブルを特殊召喚したことにより、デッキからペンデュラム以外のEM(エンタメイト)モンスター、ミス・ディレクターを手札に加える。

 そして、特殊召喚したペンデュラム・マジシャンの効果でペンデュラム・マジシャン自身とロングフォーン・ブルの2枚のカードを破壊し、デッキからEM(エンタメイト)ドクロバット・ジョーカーとEM(エンタメイト)カレイドスコーピオンを手札に加える。」

 

 ペンデュラム・マジシャンがロングフォーン・ブルの角の電話で次のキャストに連絡をつけ、役目を終えた2体は出番があるときまで舞台裏に退場する。

 

「墓地のEM(エンタメイト)スプリングースの効果発動

 墓地のこのカードを除外して、ペンデュラムゾーンのEM(エンタメイト)か魔術師カードまたはモンスターゾーンのペンデュラムモンスターを手札に戻す。

 俺はペンデュラムゾーンのEM(エンタメイト)ダグ・ダガーマンとEM(エンタメイト)リザードローを手札に戻す。」

 

「ペンデュラム召喚もリザードローのドロー効果も使わずに戻す?

 何を考えているのさ?」

 

「さぁな?EM(エンタメイト)ドクロバット・ジョーカーを通常召喚。」

 

ドクロバット・ジョーカー「ハッハァー!!」

            ATK1800

 

「ドクロバット・ジョーカーの召喚により、デッキからEM(エンタメイト)、魔術師ペンデュラム、オッドアイズモンスターのうちいずれか1体を手札に加える。

 俺は相克の魔術師を手札に加える。

 

 魔法カード、貪欲な壺を発動

 墓地の御影志士、旋壊のヴェスぺネイト、EM(エンタメイト)ガトリングール、融合呪印生物―闇、EM(エンタメイト)ロングフォーン・ブルをデッキに戻して2枚ドロー

 

 スケール6のEM(エンタメイト)ギタートルとEM(エンタメイト)リザードローをペンデュラムスケールにセッティング

 EM(エンタメイト)がペンデュラムスケールになったことにより、ギタートルのペンデュラム効果で1枚ドロー

 

 さらに速攻魔法、イリュージョン・バルーンを発動

 自分フィールド上のモンスターが破壊されたターン、デッキの上から5枚のカードを確認し、その中にEM(エンタメイト)モンスターがいたらそのうちの1体を特殊召喚する。

 特殊召喚するのは・・・EM(エンタメイト)セカンドンキー!」

 

 セカンドンキー「ヒヒィーン!」

        DEF2000

 

「セカンドンキーの効果でデッキからEM(エンタメイト)クリボーダーを墓地に送るが、俺のフィールドにはペンデュラムスケールが2枚セッティングされている。

 よって、このカードは墓地ではなく手札に入る。」

 

(またデッキ圧縮・・・もう20枚以上のカードが出たり入ったりしているけど、一体あのデッキは何枚なんだ?)

 

「よし、まずはスタートをかけるか。

 俺はレベル4のセカンドンキーとドクロバット・ジョーカーでオーバーレイ

 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築

 エクシーズ召喚、鳥銃士カステル。」

 

カステル「クワッ!」

    ATK2000 ORU2

 

 茶色いロバとドクロを模したハットをかぶった道化師が混沌の中に消え、そこから狙いを定める天空の銃士が現れる

 

「カステルの効果発動、オーバーレイユニットを2つ使い

 このカード以外のフィールド上の表側表示カード1枚をデッキに戻す。

 デストーイ・サーベル・タイガーには消えてもらおう。」

 

「させるか!カウンタートラップ、デストーイ・マーチ!

 デストーイモンスターが相手の効果の対象となった時、その効果を無効にして破壊する!」

 

 カステルがデストーイ・サーベル・タイガーに狙いを定めると、地面が割れて大量のデストーイモンスターたちが現れ、カステルを墓地へと引きずり込んだ。

 

「そううまくはいかないか。

 リザードローのペンデュラム効果で片方のペンデュラムゾーンにEM(エンタメイト)カードがあることによって自身を破壊し1枚ドローする。

 そして、空いたペンデュラムゾーンに俺はスケール4のEM(エンタメイト)カレイドスコーピオンをセッティング。」

 

 赤いトカゲが消えた後に浮かぶのは赤いサソリ、そしてその下に表示されるのは4、隣のギタートルのスケールは6でありこのままではレベル5のモンスターしかペンデュラム召喚できない、なので

 

「永続魔法、魂のペンデュラムを発動

 このカードは1ターンに1度、自分フィールド上にセッティングされた2枚のペンデュラムスケールをそれぞれ1つ上げ下げするカードだ。」

 

「スケールの幅を広げられるのか!?」

 

「その通り、俺はカレイドスコーピオンのスケールを3にし、ギタートルのスケールを7に変更する。」

 

 天空に揺れる水晶の振り子が大きく振れる。

 それと連動するように光の柱の中の数字が変化を起こす。

 

 カレイドスコーピオン PS4→3

 ギタートル      PS6→7

 

「これで特殊召喚できるのはレベル4から6のモンスターになった!

 揺れろペンデュラム、異界へつながる扉を開け!ペンデュラム召喚!

 エクストラデッキからレベル6、賤竜の魔術師、レベル4、慧眼の魔術師、龍脈の魔術師、そして手札からレベル5、EM(エンタメイト)ダグ・ダガーマン、レベル6、チューナーモンスター、EM(エンタメイト)ミス・ディレクターを特殊召喚!」

 

 異次元から流星に乗って現れる嵐、光、水の魔術師たちとナイフ使いと眼鏡をかけた女性ディレクター

 これが遊矢の必殺コンボを成立させるために選んだメンツである。

 

 賤竜の魔術師    ATK2100

 慧眼の魔術師    ATK1500

 龍脈の魔術師    ATK1800

 ダグ・ダガーマン  ATK2000

 ミス・ディレクター DEF2000

 

「賤竜の魔術師が特殊召喚に成功したことにより、墓地のオッドアイズモンスター、オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴンを手札に加える。

 さらにペンデュラム召喚されたダグ・ダガーマンの効果で手札のEM(エンタメイト)コンを墓地へ送り、1枚ドロー

 さて、まずは俺はレベル4の慧眼の魔術師と龍脈の魔術師でオーバーレイ

 2体の魔術師ペンデュラムモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!

 現れろ!星刻の魔術師!!」

 

星刻の魔術師「はっ!」

      DEF1200 ORU2

 

 光と水が重なり生まれたのは始まりのペンデュラムモンスター、星読みと時読みの魔術師の装備を両手に持った新たな魔術師

 ペンデュラムを指定するその召喚条件に素良は驚く

 ペンデュラムはまだ生まれて間もなく、またエクシーズ次元には存在しないものだ。

 

「そんなモンスター、どこで・・・」

 

「さぁな、気が付いたら持っていた。

 続き、ミス・ディレクターの効果を発動する。

 ミス・ディレクターは1ターンに1度だけ、自分の墓地からレベル1モンスターを効果を無効にして特殊召喚し、そのモンスターとこのカードを使ってシンクロ召喚を行う!

 俺は墓地からレベル1のマジシャンズ・ソウルズを特殊召喚!」

 

――カチンッ☆

 

 マジシャンズ・ソウルズ DEF0

 

 ミス・ディレクターが持っていたカチンコを鳴らすと素良の目から見て、その後ろから青白い2人の魔法使いの魂が現れていた。

 

「そして、レベル1、マジシャンズ・ソウルズにレベル6のEM(エンタメイト)ミス・ディレクターをチューニング!

 2色の眼に写る七つの星よ、流星となって降り注げ!シンクロ召喚!

 星紡ぐ戦の竜、オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン!」

 

オッドアイズM「ギャオオオォォォォォォォォォォ!!」

       ATK2500

 

 星が連なり、光が輝き赤き流星が竜となってフィールドに舞い降りる。

 

「メテオバースト・ドラゴンの効果発動

 このモンスターの特殊召喚成功時、自分のペンデュラムゾーンのペンデュラムモンスターを1体特殊召喚できる。

 ただしこの効果を使ったターン、こいつは攻撃できない。

 出てこい、カレイドスコーピオン!」

 

 カレイドスコーピオン DEF2300

 

 流星の竜に導かれ、光の柱から解き放たれる赤いサソリ

 その尻尾のライトが5体の悪魔たちを照らし出す。

 

(何か嫌な予感がする。)

「僕は2体のクルーエル・ホエールの効果を発動

 エクストラデッキのデストーイ・チェーンシープとデッキのデストーイとして扱うエッジインプ・DTモドキを墓地に送り、クルーエル・ホエールの攻撃力をその元々の半分の数値分アップする。」

 

 クルーエル・ホエール ATK4500→5800

 クルーエル・ホエール ATK4500→5800

 

「強敵出現、ってことで、それじゃこのターンの主役を呼ぶとするか

 魔法カード、龍の鏡(ドラゴンズ・ミラー)を発動

 このカードはドラゴン族専用の融合魔法で、使える素材はフィールドと墓地のモンスターだ。

 俺はフィールドの戦士族、EM(エンタメイト)ダグ・ダガーマンと墓地のペンデュラム・ドラゴンモンスター、ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴンを融合する。」

 

 フィールドに現れた1枚の鏡の中に映し出される魔天の竜

 その装甲がパージされ新たな装甲が装着される。

 

「魔天の竜よ、熱き闘志を眼に宿し、鋼の装甲を得て転生せよ!融合召喚!」

 

 尻尾にはキャタピラがつき、装甲はよりメカニカルなものになり、まるで特撮やSF映画に出てくるロボット怪獣のような姿になる。

 そして、新たな姿に換装した魔竜は鏡を突き破って、この世に顕現する。

 

「出撃せよ!ブレイブアイズ・ペンデュラム・ドラゴン!!」

 

ブレイブアイズ「ギャアアァァオオォォォォォォォォ!!」

       ATK3000

 

 駆動音交じりの咆哮を響き渡らせる赤き鋼の魔竜

 

クルーエル・ホエール「ギャアアァァァァぁぁ!!」

          ATK5800→0

 

クルーエル・ホエール「ヒィィィィィィ!!」

          ATK5800→0

 

シザー・タイガー「キャアアアァァァァァァ!!」

        ATK3800→0

 

サーベル・タイガー「ヒャアァァァァぁぁ!!」

         ATK4300→0

 

デアデビル「クッ・・・ヒぃ・・ギギ・・・」

     ATK4900→0

 

 その咆哮を聞いた悪魔たちは、恐怖し、怯えその力を喪失した。

 

「どうなっているんだ・・・なんで攻撃力が!?」

 

「ブレイブアイズの融合召喚に成功した瞬間、相手モンスターの攻撃力は0になる。」

 

「なんだって!?」

 

「もちろん、デメリットはある。

 この効果を使ったターン中、ブレイブアイズ以外の攻撃ができなくなるが・・・

 カレイドスコーピオンの効果発動!

 1ターンに1度、自分フィールド上の表側表示モンスター1体は、このターン、相手フィールド上の特殊召喚されたモンスターすべてに攻撃することができるようになる。」

 

「何っ!?」

 

「まだ終わりじゃない。

 星刻の魔術師の効果発動、オーバーレイユニットを1つ使い、デッキ、墓地から闇属性の魔法使い族モンスターを手札に加える。

 俺は墓地からマジシャンズ・ソウルズを手札に加える。」

 

 星刻の魔術師 ORU2→1

 

 「さらに、レベル6の賤竜の魔術師とEMカレイドスコーピオンでオーバーレイ

 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築

 永遠の淑女 ベアトリーチェをエクシーズ召喚し効果発動、オーバーレイユニットを1つ使い、デッキからカードを1枚墓地へ送る。

 俺はオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンを墓地へ送る。」

 

ベアトリーチェ「ふふ。」

       DEF2800 ORU2→1

 

 現れた白い女性の周りを浮遊する光がデッキに宿り、振り子の竜を墓地へと導く

 

「さて、準備完了だ。

 ブレイブアイズ、ターゲットロック!」

 

――ズドンッ!!

 

 ブレイブアイズの尻尾が振り下ろされ、その体からエネルギーがチャージされる音がする。

 

「お前のライフは6900、3体貫けばお前のライフは尽きる。」

 

「ちっ!!永続罠発動!スピリット・バリア!

 僕のモンスターがいる限り、僕への戦闘ダメージは0になる!」

 

「ふっ・・・だったら!モンスターを倒すのみ!

 クルーエル・ホエール2体、シザー・タイガー、そして、デアデビルを攻撃!」

 

 遊矢の命令でブレイブアイズの口や全身のレンズが発光する。

 

「馬鹿な!?デアデビルは相手によって破壊された場合、相手のライフに僕の墓地のデストーイの数×500ポイントのダメージを与える。

 その順なら僕の墓地のデストーイは9体になる!おまえは4500ポイントのダメージを受けることになるんだぞ!?」

 

「あぁ、メテオバーストには隠された効果があってな。

 こいつがいる限り、相手はバトルフェイズ中にモンスターの効果を発動できないんだ。」

 

「!?君は、そこまで計算して・・・この場面を作り上げたのか!?」

 

「ふっ、行け!ブレイブアイズ!!灼熱のメガフレイム・フルバースト!!」

 

 尻尾のキャタピラが唸りを上げ、反動を受け止めながらブレイズアイズは口と全身から無数のレーザーを発射する。

 雨のように降るレーザーは悪魔たちの全身から飛び出る刃を砕き、その体に穴をあけ、ボロボロになった4悪魔たちは機械魔竜の放つ灼熱のブレスによって焼き尽くされる。

 

 そして残ったのはもはや戦うことのできない、憐れでみじめな姿となったデストーイ・サーベル・タイガー

 3体以上のモンスターを融合素材にして召喚されたこのモンスターは戦闘、効果で破壊されない。

 その自らの力で生きながらえたのだ。

 

 だが、素良のフィールドのモンスターは1体だけとなり、彼が勝利を確信するほどの強力な盤面は1ターンで崩壊した。

 

「言っただろ?運命は決するまでわからない。ってな。」


 楽しい

 これほどデッキを回せることが、全力をぶつけられる相手が居ることが 

 

「バトルフェイズを終了し、メインフェイズ、このモンスターは自分フィールド上のランク5、6のモンスターの上に重ねてエクシーズ召喚できる。

 俺はランク6の永遠の淑女 ベアトリーチェ1体でオーバーレイ

 1体のモンスターでオーバーレイネットワークを再構築

 エクシーズ召喚、迅雷の騎士ガイアドラグーン」

 

ガイアドラグーン「はっ!!」「ギャオオオォォォォォ!」

        ATK2600

 

 ゆえに惜しい

 目の前の相手が泣いていることが

 

「スケール3の相克の魔術師をペンデュラムゾーンにセッティング

 このカードのペンデュラム効果は1ターンに1度、自分フィールド上のエクシーズモンスター1体を選択して、そのモンスターをそのランクと同じレベルを持つモンスターとしてエクシーズ素材にできるようにする。

 ランク7の迅雷の騎士ガイアドラグーンをこのターン、エクシーズ素材にできるようにする。

 

 俺はレベル7のオッドアイズ・メテオバースト・ドラゴンとランク7の迅雷の騎士ガイアドラグーンをレベル7のモンスターとしてオーバーレイ!

 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!

 六道八獄踏み越えて、絶対なる力、2色の眼に焼き付けろ!エクシーズ召喚!

 全てを凍てつかせる永久の竜、オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン!」

 

オッドアイズA「ガアアァァァァァ!!」

       DEF2500 ORU2

 

 感じるのは後悔、嘆き、そして呪い

 あの憔悴しきった顔と異常なまでの生への執着、それは次元戦争のトラウマか、それとも・・・

 

「手札のマジシャンズ・ソウルズの効果を発動

 デッキのレベル6以上の魔法使い族モンスター、EM(エンタメイト)ミス・ディレクターを墓地へ送り、このモンスターを特殊召喚する。」

 

 マジシャンズ・ソウルズ DEF0

 

「さらにカードを1枚伏せて、マジシャンズ・ソウルズの効果を発動

 永続魔法、魂のペンデュラムとセットされた永続トラップ、マジシャンズ・プロテクションを墓地へ送り2枚ドロー

 そして、マジシャンズ・プロテクションがフィールド上から墓地へ送られたことにより効果発動、墓地の魔法使い族、賤竜の魔術師を特殊召喚。」

 

 賤竜の魔術師 DEF1400

 

 だが、素良よ。

 ただ生きるだけのことに何の意味がある?

 そんな顔をしていたら、死んでいるのと変わらない。

 今のお前は動く肉塊と何も変わらない。

 

「魔法カード、グリモの魔導書を発動

 1ターンに1度、デッキから魔導書と名の付くカードを1枚手札に加える。

 俺はルドラの魔導書を手札に加えて発動

 フィールドの魔法使い族モンスター、マジシャンズ・ソウルズを墓地へ送り2枚ドローする。」

 

 人は生きていく中で幸福を見つけるものだ。

 幸福な夢をもって、生き足掻くものだ。だから

 

「カードを1枚伏せてターンエンド。」

 

 そんな不幸そうな顔をしていちゃ、生きているなんて言えないぞ。


 なぜだ。

 僕はさっきまで、遊矢を追い詰めていた。

 攻撃力4000級のモンスターを5体も並べたんだぞ!破壊されれば一瞬でライフがなくなるようなモンスターもいたんだぞ!!

 

「僕の・・・ターン、ドロー

 手札を1枚デッキの上に戻して、墓地のエッジインプ・シザーの効果発動、こいつを特殊召喚する。」

 

エッジインプ・シザー「ゲヘへ」

          DEF800

 

 なのになんで、遊矢の場にはモンスターが4体もいて、僕のフィールドには攻撃力が0になったモンスター1体しかいないんだ!?

 

「僕はセット状態のトイポットを表にして、効果発動

 手札を1枚捨て、デッキから1枚ドローし、それがファーニマルモンスターなら特殊召喚する。

 ファーニマル・ドルフィンを特殊召喚!」

 

ファーニマル・ドルフィン「クカカッ!」

            DEF1000

 

「手札から墓地へ送られたエッジインプ・チェーンの効果発動

 デッキからデストーイカードを手札に加える。

 僕はマジックカード、魔玩具補綴(デストーイ・パッチワーク)を手札に加え、発動!

 デッキから融合とエッジインプモンスター、エッジインプ・DTモドキを手札に加える。

 

 さらに墓地のファーニマル・ウィングの効果発動!

 このカードと墓地のファーニマルモンスター、ファーニマル・マウスを除外してデッキから1枚ドロー、さらに僕のフィールドのトイポットを墓地へ送りもう1枚ドローする。

 そして、墓地へ送られたトイポットの効果でファーニマル・ドッグを手札に加える。」

 

 僕は勝たなくちゃいけない。

 勝って生き残らなければいけない。

 それが美宇の願いなんだ!それなのに!!

 

「ファーニマル・ドルフィンの効果で墓地からトイポットをセット

 さらにファーニマル・エンジェルのペンデュラム効果で、墓地からファーニマル・ペンギンを特殊召喚!」

 

ファーニマル・ペンギン「クワッ!」

           DEF1100

 

「そして、融合を発動!!」

 

「おっと、星刻の魔術師がフィールド上に存在するとき、俺のフィールドのモンスター及びペンデュラムゾーンのペンデュラムモンスターは1ターンに1度、デッキから魔法使い族モンスターを墓地へ送ることで、破壊を免れる。

 融合先は慎重に選ぶんだな。」

 

 なんで君は倒れない!倒れてくれない!!

 僕は君を殺そうとしているんだぞ!なのに!!なのに・・・・

 

「ちっ!それならそいつから消してやる。

 僕はフィールドのエッジインプ・シザーとファーニマル・ペンギンを融合!

 悪魔の爪よ、冷たき心よ、神秘の渦で一つとなりて新たな力と姿を見せよ!融合召喚!

 現れ出でよ!自由を奪い闇に引き込む海の悪魔!デストーイ・ハーケン・クラーケン!!」

 

ハーケン・クラーケン「ヒャハハ刃ははha!!」

          ATK2200→2600

 

「ファーニマル・ペンギンが融合素材となって墓地へ送られたことにより、デッキから2枚ドローし手札を1枚、エッジインプ・DTモドキを捨てる。

 そして、ハーケン・クラーケンの効果で星刻の魔術師を墓地へ送る。」

 

ハーケン・クラーケン「ひゃははははは!!」

 

星刻の魔術師「ぐわぁぁぁぁ!?」――ザシュ!!

 

「あちゃ~墓地送りには対応できないや。」

 

 なんで、そんなに楽しそうなんだよ・・・


「僕はマジックカード、デストーイ・リペアーを発動

 墓地のデストーイ融合モンスター、クルーエル・ホエールをエクストラデッキに戻して、墓地のファーニマルかエッジインプを特殊召喚する!

 戻ってこい!エッジインプ・シザー!!」

 

エッジインプ・シザー「キヒヒッ」

          DEF800

 

「ファーニマル・ドッグを通常召喚!」

 

ファーニマル・ドッグ「ワンッ!」

          ATK1700

 

「ファーニマル・ドッグの召喚時効果により、デッキからファーニマル・キャットを手札に加える。

 そして、融合を発動!

 フィールドのエッジインプ・シザー、ファーニマル・ドッグ、ファーニマル・ドルフィンを融合

 悪魔の爪よ、牙剥く野獣よ、海の知恵者よ、神秘の渦で一つとなりて新たな力と姿を見せよ!融合召喚!

 再び切り刻めぇ!!デストーイ・シザー・タイガー!!」

 

 エッジインプ・シザーのハサミが犬とイルカのぬいぐるみを切り刻み、それをデストーイ・マイスターがかき集め、ファーニマル・エンジェルが縫い合わせる。

 出来た虎のぬいぐるみの内から、はさみが飛び出し、裂けた口から覗く赤い目の主が嗤い声をあげる。

 

シザー・タイガー「ぎゃはははhぁxはhぁh!!」

        ATK1900→2300→3200

 

 ハーケン・クラーケン ATK2600→3500

 サーベル・タイガー  ATK0→900

 

「シザー・タイガーの効果発動!

 融合素材は3体!よって遊矢の相克の魔術師、EM(エンタメイト)ギタートル、そしてセットカードを破壊だぁ!!」

 

「ならその効果にチェーンして、トラップ発動、アルケミー・サイクル。

 発動ターンのエンドフェイズ終了時まで、自分フィールド上の表側表示モンスターの元々の攻撃力を0にする。」

 

 ブレイブアイズ ATK3000→0

 オッドアイズA DEF2500

         ATK2800→0

 賤竜の魔術師  DEF1400

         ATK2100→0

 

「なっ!?自分のモンスターの攻撃力を0に!?」

 

「この効果で攻撃力が0になったモンスターが戦闘で破壊され、墓地へ送られた場合、俺はデッキからカードを1枚ドローする。

 まぁ、残念なことにペンデュラムモンスターは墓地に行かないから、この効果にはあまり意味がないがな。」

 

 デストーイたちは獲物が出来たと悦んでいるが、素良はそうでない。

 彼は遊矢のデュエルをよく見ていた。

 だから、遊矢がよく使うカードの効果は確認せずとも覚えているのだ。

 

(墓地のEM(エンタメイト)ユニはダメージを1度だけ0にして、手札のEM(エンタメイト)クリボーダーはダイレクトアタック時に特殊召喚され、クリボーダーと強制戦闘、その際発生したダメージはすべて回復となる。

 そもそも、アブソリュート・ドラゴンの効果で1回は攻撃を止められてしまう。

 攻撃力0だからデアデビルで自爆もできない。くそっ!!)

 

 デュエルモンスターズにおいて手札とは可能性だ。

 遊矢の手札で不明なものは3枚

 あそこまで余裕のある様子だと、その手札にバリアバルーンバクのような、戦闘ダメージを0にするカードをまだ持っている可能性がある。

 それをすり抜けるために、素良は考える。

 

「マジックカード、融合回収(フュージョン・リカバリー)

 墓地の融合と、エッジインプ・シザーを手札に戻し、融合を発動!

 手札のエッジインプ・シザーとファーニマル・キャットを融合

 現れろ!!デストーイ・クルーエル・ホエール!!」

 

クルーエル・ホエール「ぎひひひいHIHいひIhi」

          ATK2600→4200

 

 シザー・タイガー ATK3200→3500

 ハーケン・クラーケン ATK3500→3800

 サーベル・タイガー  ATK900→1200

 

「デストーイが増えたことにより、シザー・タイガーの効果で攻撃力がアップした。

 そして、クルーエル・ホエールの効果!

 僕のセットされたトイポットと、遊矢のアブソリュート・ドラゴンを破壊!」

 

 クルーエル・ホエールから撒き散らされる鎌により、カエルのようなガチャガチャと絶対零度の竜が破壊される。

 

(エクシーズ召喚されたアブソリュート・ドラゴンが墓地に送られた場合、エクストラデッキのオッドアイズを特殊召喚できる。

 でも使ってこない?ボルテックス・ドラゴンはいないのか?)

「何もないなら!

 トイポットの効果でデッキからファーニマル・オクトを手札へ、そしてデストーイ・マイスターのペンデュラム効果発動!

 レベル8のハーケン・クラーケンをリリースして、デッキからレベル8のカード名が異なる悪魔族を特殊召喚する!

 僕が特殊召喚するのはこいつだ!現れろ!デストーイ・マイスター!!」

 

 デストーイ・マイスター DEF0

             ATK0→1600

 

 ハーケン・クラーケンから抜け出た魂が新たな姿で実体化し、光の柱にとらわれたフードを着た骸骨と同じ姿になる。

 

「デストーイ・マイスターの効果発動!

 デッキからレベル4以下のファーニマル、エッジインプ、デストーイの内いずれか1体を特殊召喚する。

 出てこい、エッジインプ・トマホーク!」

 

 エッジインプ・トマホーク ATK1800

 

「エッジインプ・トマホークの効果でデッキのエッジインプモンスター、エッジインプ・DTモドキを墓地へ送る。」

 

 これから出そうとしているのは、プロフェッサーから与えられた自身の記憶から作り出されたカードだ。

 それは自分の罪を象徴するもので、誰にも見せたくないものだ。

 だが勝利のためには、生き残るには、そのカードを出さざるを得ない。

 

「ねぇ、遊矢?

 僕がなんで生きることに執着するのかって言ったよね?だったら、教えてあげるよ。

 僕は昔、交通事故にあって、妹に助けてもらったんだ。

 妹も両親もその時にいなくなってしまったけどね。」

 

「・・・・・・」

 

 勝利してしまえば、彼は物言わぬ屍だ。

 自分の罪を話したところで、墓の下だ。

 

「妹が、美宇が最後に言ったんだ「生きて」って、でもね。

 いつの間にか、家族との思い出はボロボロになっていった。守れなかったんだ!

 だからせめて、美宇の最後の願いは守ろうと、僕は決めた。

 

 生き残るために、戦って戦って、人を狩った!

 そのときは何も思わなかった、ただの家畜同然の奴らを狩っているだけ、そう思っていた、生きるために仕方のないことだって・・・」

 

「・・・・・・」

 

 だから、ここで自分の罪をすべて打ち明けても構わない。

 

「だけど、ずっとずっと、頭から離れないんだ!

 怒りが、恨みが、呪いが、ずっと頭に響いてくる!「許さない!」「死んでしまえ!」「生きられると思うな!」って!!

 アカデミアに戻ってから、それがますますひどくなる!!

 それは君に出会ってからだ!!」

 

「・・・・素良。」

 

「それなら君がいなくなれば、この声も消える!

 生きるのに邪魔なこの声を、黙らせることができる!!

 

 僕はデストーイ・マイスターの2つ目の効果を発動!!

 1ターンに1度、自分フィールド上の悪魔族モンスターを2体以上リリースし、エクストラデッキからリリースしたモンスターのレベルの合計と同じレベルのデストーイ融合モンスターを融合召喚扱いで特殊召喚する!

 僕はレベル4のエッジインプ・トマホークとレベル6のデストーイ・シザー・タイガーをリリース!修理融合(リペア・フュージョン)!!」

 

 2体の悪魔の魂がデストーイ・マイスターの素材となり、その手で新たな人形が作り上げられる。

 

「現れろ!デンジャラス・デストーイ・ナイトメアリー!!」

 

 ナイトメアリー ATK2000→2400

 

 それは巨大な少女の人形

 顔は口が縫い付けられ、鼻は陥没している。青白い肌も相まってそれはまるで死体のようだ。

 だが、服の中に体はなく闇を吐き出し続ける光によって支えられている。

 

「こいつは・・・」

 

「このカード、僕の記憶から作ったんだってさ・・・

 このモンスターが着ている服、あの時、美宇の着ていた服とそっくりだと一目でわかったよ。

 このカードは、僕の妹の記憶から作られたものなんだって・・・」

 

 ナイトメアリーは他のデストーイたちと違い、狂ったように嗤うことはない。

 ただ、素良の前に浮かび、遊矢の前に立ちふさがる。

 

「笑っちゃってよ、遊矢

 僕は命の恩人を、大切な妹を、こんな姿にしてしまったんだからさ・・・」

 

 遊矢はナイトメアリーを見つめる。

 このモンスターは漫画版に出てきたモンスターだが、今ここに立っているモノと明らかに違う点がある。

 元のモンスターは虚ろな目をした、まさしくただの人形というようなモンスターだったが、遊矢はこのモンスターから強い意志を感じていた。

 そして、素良の話を聞いて納得した。この違和感の正体を

 

「なぁ、素良・・・お前はいつまで、妹に心配をかけさせているんだ?」

 

「!?な、なにを!?」

 

「人は二度死ぬっていう話があってな。

 1度目は肉体の死、そして2度目は誰からにも忘れ去られて消える、魂の死

 こいつがお前の妹の記憶から作られたのなら、その妹がお前が心配だから、こうして化けて出たんじゃないのか?」

 

「・・・・・・」

 

「うじうじしているお前に比べて妹はすごいなぁ?

 俺だったら、こんなブッサイクな人形になるぐらいだったら、それこそ忘れてほしいと思うぜ?」

 

「美宇・・・」

 

「昔話ついでだ。俺のも聞かせてやる。

 俺はかつて、父さんがいなくなったとき、母さんに「笑顔でいよう」と言った。

 確かに俺は母さんに笑っていてほしかったけど、悲しみを押し殺して笑っていろなんて思ってなかった。」

 

 そう、それは勇気が出せなかったために作られてしまった呪いだ。

 その呪いを解くためには、遊勝を洋子の前に突き出すことでしか解けないだろう。

 だが、素良は違う。

 

「素良、お前の妹はお前が不幸の中で生きろと願うような奴だったのか?」

 

「ち、違う!美宇はそんな奴じゃ!」

 

「そうだろうな。

 だったら、お前には、生きて、幸せになってほしいと願ったはずだ!」

 

「!!?」

 

 素良は祝福されていた。幸あれと、幸福であれと

 

「お前、せめて妹の願いは守るって言ったよな!

 違うよな!お前は、妹の言葉を免罪符に楽な選択に流されていただけだ!

 その願いを叶えようだなんて、これぽっちも思っちゃなかったんだ!!」

 

「だったら、どうすればよかったのさ!!

 アカデミアでは、いや融合次元では!今やアカデミアなしでは生きられない!!

 僕にそれ以外の選択肢があったっていうのか!?」

 

「知るかよそんなもん!!

 人の生き方も、人の幸せも、そいつだけが見つけるものだ!

 お前の幸せが何なのかとか、俺が知るわけないだろ!!」

 

「あぁ!!この無責任!!

 幸せがどうのとか!幸福がどうのとか!さんざん言ってたくせに!!」

 

 始まる2人の口喧嘩、2人が出会った時から始まったいつものやり取り

 突如始まったそれに2人のモンスターたちも困惑している。

 

「ふんっ!そんなに幸せになりたかったら、夢でも持ったらどうだ?」

 

「夢?」

 

「そうだ、夢っていうのは生きることの目標だ。

 自分の罪が許せないなら、罪を償うことを夢にしたっていい。叶えられそうにない途方もない夢だっていい。

 当てがないより、目標があるっていうことは目指す道を探しやすいだろ?

 素良、お前は何がしたい?」

 

「夢・・・僕の・・・」

 

 素良の耳に聞こえていた呪詛はいつの間にか止んでいた。

 そして、本音をぶつけ合っているこの場で、もはや嘘をつく必要はない。

 素良は、自分の心から望むことを口にする。

 

「僕は・・・僕は、君とデュエルしたい!

 君と、君たちと一緒に楽しいデュエルをずっとしていたいよぉ!!」

 

 あふれ出る思いを、涸れ果てていたはずの涙とともに吐露する。

 その願いを聞いた悪魔(遊矢)は、笑顔でそれを聞き届ける。

 

「あぁ、だったら今すぐしよう!

 生きるとか死ぬとか、世界とか、戦争とか、アカデミアとか、敵だとか味方だとか関係ない。

 俺たちの楽しいデュエルをしよう!」

 

「・・・うん!だけど、僕が勝ったら君は・・・」

 

「残念ながら、俺はなっさけない泣きっ面をさらしているやつなんかに、負ける気はしないんでね。」

 

「!!・・・言ったな、後悔するなよ!遊矢!!」

 

 グジグジと溢れていた涙を袖で拭って、デュエルは再開される。

 それを見ていたナイトメアリーは何となく嬉しそうだ。

 

「シザー・タイガーはいなくなったけど、ナイトメアリーは僕のターンの間、僕の墓地の悪魔族、天使族モンスターの数×300ポイント攻撃力がアップする!

 僕の墓地の悪魔族、天使族モンスターは合計24体、よってナイトメアリーの攻撃力は7200ポイントアップ!」

 

 ナイトメアリー     ATK2400→9600

 サーベル・タイガー   ATK1200→0

 クルーエル・ホエール  ATK4200→3000

 デストーイ・マイスター DEF0

             ATK1600→400

 

「さらにデストーイ・クルーエル・ホエールの効果でエクストラデッキのデストーイ・シザー・ベアーを墓地へ送り、デストーイ・サーベル・タイガーの攻撃力をアップ!」

 

 サーベル・タイガー ATK0→1200

 

「そして、ペンデュラム召喚!

 来い!エッジインプ・コットン・イーター!!」

 

コットン・イーター「グオオォォォォォ!!」

         ATK2400

 

「コットン・イーターの特殊召喚により、遊矢に僕の墓地のデストーイモンスターの数×200ポイントのダメージを与える。

 墓地のデストーイは13体、2600ポイントのダメージを受けろ!」

 

 コットン・イーターの口から無数の怨霊が飛び出し、遊矢に襲い掛かる。

 

「ぐおおおぉぉぉぉぉ!」

 LP4000→1400

 

「よし、通った!融合回収(フュージョン・リカバリー)で戻した、融合を発動!

 手札のファーニマル・オクトとフィールドのエッジインプ・コットン・イーターを融合!

 もう一度出てこい!デストーイ・ハーケン・クラーケン!!」

 

ハーケン・クラーケン「ひゃっはっー!!」

          ATK2200→2600

 

 赤いタコのぬいぐるみが青紫のイカへ変形し、その触腕の先に鎌が突き出る。

 素良の予想では、遊矢の防げるダメージは5回が限界だ。

 だから、その上を行く

 

「デストーイの融合素材となったファーニマル・オクトの効果で除外されている自分のモンスターを2体まで墓地へ戻す。

 僕はエッジインプ・サイズとファーニマル・ウィングを墓地へ戻す。

 

 マジックカード、冥界流傀儡術を発動

 このカードは自分の墓地の悪魔族モンスター1体と同じレベルになるように、自分フィールドのモンスターを除外し、そのモンスターを特殊召喚する。

 僕はレベル8のデストーイ・マイスターを除外して、戻ってこい!デストーイ・デアデビル!!」

 

デアデビル「クワハハハハハッ!!」

     ATK3000→3400

 

「これで僕の墓地の天使族、悪魔族モンスターの数は3体増えた!

 ナイトメアリーの攻撃力がさらに1200ポイントアップ!」

 

 ナイトメアリー ATK9600→10800

 

「行くぞ、バトル!!

 デアデビルで賤竜の魔術師を攻撃!!」

 

 デアデビルの投げた槍が賤竜の魔術師を貫き、遊矢の横をかすめる。

 

「デアデビルの効果!モンスターを戦闘で破壊したことにより1000ポイントのダメージだ!」

 

「くっ!?」

 LP1400→400

 

(これで遊矢は手札のカード効果を使わざるを得ない。

 もしなかったら、それだけで僕の勝ちだ!)

「デストーイ・サーベル・タイガーでブレイブアイズ・ペンデュラム・ドラゴンへ攻撃!」

 

 サーベル・タイガーがクルーエル・ホエールの鎌を口に咥え、無力となったブレイブアイズに襲い掛かる。

 

「攻撃宣言時に墓地のEM(エンタメイト)コンの効果発動

 相手ターンに、このカードと墓地の別のEM(エンタメイト)モンスター、ミス・ディレクターを除外して俺のライフを500回復する。」

 LP400→900

 

「ダグ・ダガーマンの効果で捨てたカードか!でも500ポイントくらい!!」

 

「そして、ダメージ計算時、手札の」

 

(来た!)

 

 サーベル・タイガーがブレイブアイズを切り裂くと、その鋼鉄の体の中から黒煙が噴出する。

 

「な、なんだ!?」

 

 バリアバルーンバクの効果が発動したとき、黒煙など上がらない

 それはつまり、別のカードが発動したことになる。

 それを象徴するように

 

――ブウゥゥゥゥゥゥゥン!

 

 羽音が響く

 

「俺は手札のスモーク・モスキートの効果を発動した!

 こいつは俺が戦闘ダメージを受けるとき、そのダメージを半分にしてフィールド上に特殊召喚され、バトルフェイズを終了させる!」

 LP900→300

 

 スモーク・モスキート DEF0

 

 煙が収束し現れたのは口が葉巻のようになった蚊

 素良のモンスターたちはせき込んでおり、攻撃できるような状態ではなくなっている。

 

「ほんっとにしぶといね。君は。」

 

「いや、今のは結構ヤバかったぜ。

 ブレイブアイズはアルケミー・サイクルの効果を受けているから1枚ドローだ。」

 

「ちっ、カードを1枚伏せてターンエンド。

 僕のターンが終わったことで、ナイトメアリーの攻撃力はサーベル・タイガーで上がっている分を残してダウンする。

 サーベル・タイガーもクルーエル・ホエールの効果が切れる。」

 

 ナイトメアリー   ATK10800→2400

 サーベル・タイガー ATK1200→0

 

「でも僕の墓地にはデストーイの破壊を防ぐエッジインプ・サイズがいるし、ナイトメアリー自身もエクストラデッキのデストーイを除外することでこのカードを対象とした効果を発動したとき、それを無効にする。」

 

「でも、もう融合は2枚しかいないだろ?」

 

「遊矢だって、あんなにカードを使ったんだから、残り少ないんじゃないのぉ?」

 

「お生憎様、このデッキは60枚デッキだ。

 それでも後十枚少しだけどな。」

 

「60枚って、どんなデッキ組んでるのさ・・・」

 

「もちろん、勝てるように組んでいる!

 俺のターン、ドロー!

 じゃあまずはそのよくわからないカードをどうにかするか

 マジックカード、ギャラクシー・サイクロンを発動

 相手の魔法、トラップゾーンにセットされたカード1枚を破壊する。」

 

 重力の嵐が、素良のセットカードを破壊する。

 それは素良がペンデュラム対策に入れたカード、それが発動されてしまえば遊矢は勝つことができなかったであろうカードだ。

 

「奈落の落とし穴か・・・危ないものを伏せてくれる。」

 

「ちっ!引くのがもう1ターン早ければなぁ~」

 

「それは残念だったな。

 俺はスケール3のEM(エンタメイト)シール・イールとスケール8のオッドアイズ・ミラージュ・ドラゴンをペンデュラムスケールにセッティング!」

 

 光の柱に登るのは口をバッテンシールでふさいだ鰻と、緑色の異虹彩の眼を持つ竜

 

「これでレベル4から7のモンスターをペンデュラム召喚可能だ。

 揺れろペンデュラム!異界へつながる扉を開け!ペンデュラム召喚!!

 エクストラデッキから現れろ!レベル7、相克の魔術師!レベル6、賤竜の魔術師!レベル4、EM(エンタメイト)ペンデュラム・マジシャン!EM(エンタメイト)ユーゴーレム!」

 

 相克の魔術師       ATK2500

 賤竜の魔術師       ATK2100

 ペンデュラム・マジシャン ATK1500

 ユーゴーレム       ATK1600

 

 流星に乗り異界から現れる4体のモンスター

 どのモンスターも、主のためにその力をあらん限りにささげる。

 

「賤竜の魔術師の効果で墓地の慧眼の魔術師を手札に加える。

 さらにペンデュラム・マジシャンの効果でペンデュラム・マジシャン自身とミラージュ・ドラゴンを破壊してデッキからEM(エンタメイト)リザードローとEM(エンタメイト)バリアバルーンバクを手札に加える。」

 

「何?ここでまた守る気?」

 

「いや、もう選択肢がこいつぐらいしかいないんでね。

 ここでシール・イールのペンデュラム効果を発動

 1ターンに1度、相手フィールド上の表側表示モンスター1体の効果を無効にする。

 デストーイ・サーベル・タイガーの効果は無効だ。」

 

 シール・イールからバッテンシールが飛ばされ、サーベル・タイガーにくっ付く

 ただでさえ攻撃力を剥奪されているサーベル・タイガーはシールが貼られたことで完全に崩れ落ちる。

 

 ナイトメアリー    ATK2400→2000

 クルーエル・ホエール ATK3000→2600

 デアデビル      ATK3400→3000

 ハーケン・クラーケン ATK2600→2200

 

「魔法カード、おろかな副葬を発動

 1ターンに1度、デッキから魔法、トラップカードを1枚墓地へ送る。

 俺が墓地へ送るのはトラップカードのファイナル・ギアス。」

 

「トラップを墓地に送る?

 墓地効果でもあるの?」

 

「いや、これは墓地効果も手札効果もない、ごく普通の通常トラップカードだ。

 何分圧縮したくてね。

 空いたペンデュラム・ゾーンに慧眼の魔術師をセッティングしてペンデュラム効果発動

 このカードを破壊し、デッキから貴竜の魔術師をセッティングする。

 だが、もう片方のペンデュラムゾーンにいるのはEM(エンタメイト)シール・イール、魔術師じゃないため、貴竜の魔術師は自らのペンデュラム効果により自壊する。」

 

(せっかくセットしたカードを自壊させた!?

 というか、まだデッキ圧縮するの!?)

 

「速攻魔法、異次元からの埋葬を発動、除外されているカードを3枚まで選んで墓地へ送る。

 俺はEM(エンタメイト)スプリングース、EM(エンタメイト)コン、ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴンを墓地に戻す。

 ペンデュラムゾーンにリザードローを置いて効果発動、こいつを破壊して1枚ドロー

 そして戻したスプリングースの効果をさっそく発動

 墓地からこいつを除外して、ペンデュラムゾーンのEM(エンタメイト)シール・イールとペンデュラムモンスター、EM(エンタメイト)ユーゴーレムを手札に戻す。」

 

「融合召喚しないの!?」

 

「ガトリングール出しても、エッジインプ・サイズに防がれるだけだからな。

 俺はスモーク・モスキートの効果を発動

 自分フィールド上のモンスター1体を選択し、こいつのレベルをターン終了時までそのモンスターと同じにする。

 俺はスモーク・モスキートのレベルを賤竜の魔術師と同じ、レベル6に変更。」

 

「レベル6のモンスターが2体!」

 

「そう、俺はレベル6の賤竜の魔術師とスモーク・モスキートでオーバーレイ!

 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!

 エクシーズ召喚!目覚めよ!甲虫装機(インゼクター) エクサビートル!」

 

エクサビートル「うぉぉぉぉぉ!はあっ!!」

       ATK1000 ORU2

 

 出てきたのは巨大な黄金のカブトムシ

 それが変形して、人型になって大地に降り立つ

 

「エクサビートルの効果発動

 このモンスターがエクシーズ召喚されたとき、自分か相手の墓地のモンスター1体を装備して、このモンスターの攻撃力は装備したモンスターの攻撃力の半分の数値分アップする。

 俺の墓地からオッドアイズ・メテオバースト・ドラゴンを装備!」

 

 エグザビートル ATK1000→2250

         ORU2

 

「ん?墓地にもっと攻撃力が高いモンスターいるじゃん。」

 

「いや、実は使わなくてもいいんだけど、カッコよさげだからやってみた。」

 

 自分の生死がかかった戦いで、別段関係ないからとか、かっこいいからとか、そんなことで効果を使った意図に、さすがの素良も耐えられずに笑いがこみあげてくる。

 

「あはは、なにそれ!で、何をやるのさ。」

 

「まぁ、見ていればわかる

 手札からチューナーモンスター、ヴァレット・シンクロンを通常召喚!」

 

 ヴァレット・シンクロン ATK0

 

 現れたのは弾丸のような姿をした小型のドラゴン

 EM(エンタメイト)以外で遊矢がまともに当てたシリーズカードの1枚が、このカードである。

 

「ヴァレット・シンクロンの効果発動

 この効果の後、このターン、エクストラデッキから特殊召喚できるモンスターは闇属性に限定されるが、自分の墓地からレベル5以上の闇属性、ドラゴン族モンスターを効果を無効にして特殊召喚する!

 待たせたな、来い!オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン!!」

 

オッドアイズP「キュオオォォォォォォ!!」

       DEF2000

 

 やっとの出番に甲高い咆哮を上げる異虹彩の竜

 だが、守備表示であり、ヴァレット・シンクロンの効果で特殊召喚されたモンスターはエンドフェイズに破壊されてしまう。

 

「ここでオッドアイズ?」

 

「ふふ、そして、俺はレベル7の相克の魔術師にレベル1のヴァレット・シンクロンをチューニング!

 受け継がれしその称号、今ここに光を超えて覚醒する!シンクロ召喚!!

 現れろ!覚醒の魔導剣士(エンライトメント・パラディン)!!」

 

覚醒の魔導剣士(エンライトメント・パラディン)「はあっ!!」

       ATK2500

 

 光の中から現れる二振りの剣を携えた時読みの魔術師に似た白き魔導剣士

 相克の魔術師を素材にしたことで、その秘められた力が解放される。

 

覚醒の魔導剣士(エンライトメント・パラディン)が魔術師ペンデュラムモンスターを素材にシンクロ召喚されたとき、自分の墓地から魔法カードを1枚を手札に加える。

 俺はアメイジング・ペンデュラムを手札に加え発動

 俺のペンデュラムゾーンにカードはない、よってエクストラデッキの相克の魔術師と貴竜の魔術師を手札に加える。」

 

(相克の魔術師、あのモンスターはエクシーズをさらにエクシーズさせる効果があったね。

 でも、今フィールドにいるのはランク6のエクサビートル、レベル8の覚醒の魔導剣士(エンライトメント・パラディン)、レベル7のオッドアイズ

 どれもばらばらで、エクシーズ召喚なんてできない。)

 

「さてあとは未来に賭けるか!

 魔法カード、EM(エンタメイト)キャストチェンジ!

 手札のEM(エンタメイト)クリボーダー、シール・イール、バリアバルーンバク、ユーゴーレムをデッキに戻して戻した数+1枚、つまり5枚のカードをドローだ!」

 

(このためにスプリングースの効果を・・・

 ここまで来てまだドローするか、次は何を狙っているんだい、遊矢。)

 

「来たぜ!魔法カード、ブーギートラップを発動

 1ターンに1度、手札を2枚捨てて、自分の墓地のトラップカード1枚をセットする。

 俺は手札の貴竜の魔術師とペンデュラム・コールを捨ててトラップカード、ファイナル・ギアスをセット!」

 

「それは、さっきの・・・」

 

「そしてエクサビートルの効果を発動する。

 1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ使い、自分フィールド上及び相手フィールド上に存在するカードをそれぞれ1枚ずつ選択して墓地へ送る。

 俺はこの効果で覚醒の魔導剣士(エンライトメント・パラディン)とデストーイ・クルーエル・ホエールを墓地へ送る!」

 

 エクサビートル ORU2→1

 

「今度はシンクロモンスターを自ら墓地へ送るのか!?

 その効果にチェーンして、クルーエル・ホエールの効果発動

 エクストラデッキのデストーイ・マッド・キマイラを墓地へ送りナイトメアリーの攻撃力をアップさせる!」

 

 ナイトメアリー ATK2000→3000

 

 覚醒の魔導剣士(エンライトメント・パラディン)がエクサビートルへ搭乗すると、その手に星の光を湛える赤き剣が出現し、その一斬は太陽のフレアのような熱を帯びて、クルーエル・ホエールを焼き切った。

 一見して無駄だらけな遊矢の行動だが、それはすべてこのカードを発動させんがためのことである。

 

「これでこのカードの発動条件が整った!

 ブーギートラップの効果でセットされたトラップカードはそのターンで発動できる!

 トラップ発動!ファイナル・ギアス!!」

 

 そのカードが発動された瞬間、墓地に眠るモンスターたちがすべて飛び出してくる。

 いきなりたたき出され、彷徨う素良のモンスターたちを遊矢のモンスターたちが熱線で焼き、魔天の光が照らし、剣で切り裂き、ある者は拳や蹴りでその魂を昇天させてゆく

 

「ファイナル・ギアスは自分と相手のフィールドから元々のレベルが7以上のモンスターがそれぞれ1体以上、墓地へ送られたターンに発動できる。

 そしてその効果は、互いの墓地のモンスターをすべて除外する。」

 

「なっ!?」

 

 デュエルモンスターズにおいて墓地とは第二の手札である。

 そして、そこに眠るモンスターたちが終盤ですべて消えたということは、優位性をすべて喪失したことに他ならない。

 事実、素良のモンスターを守っていたエッジインプ・サイズは魔天の光の中に消えていった。

 

「そして、除外された中で一番レベルの高い魔法使い族モンスターを俺のフィールドに特殊召喚できる。

 戻ってこい!覚醒の魔導剣士(エンライトメント・パラディン)!」

 

覚醒の魔導剣士(エンライトメント・パラディン)「はあぁぁ!デュアッ!!」

       ATK2500

 

「くっ!?確かに墓地はなくなったけど、僕のライフはまだ!!」

 

「あぁ、だから俺は手札のスケール3の相克の魔術師とスケール8の相生の魔術師をペンデュラムスケールにセッティング!」

 

 光の柱の中に浮かぶ大盾を構えた男性魔術師と弓を構えた女性魔術師

 それは星を操り、星を与える、眠れる魔竜を呼び起こすためのキーカード

 

「相生の魔術師のペンデュラム効果発動、1ターンに1度、自分フィールド上のエクシーズモンスター1体とレベル5以上のモンスター1体を選択し、そのエクシーズモンスターのランクをターン終了時まで、そのレベル5以上のモンスターのレベルの数値と同じにする。

 俺は甲虫装機(インゼクター) エクサビートルのランクをオッドアイズのレベルと同じ7に変更。」

 

 エクサビートル RUNK6→7

 

「相克の魔術師は、エクシーズモンスターをそのランクと同じレベルのモンスターとして、エクシーズ素材にできる!?」

 

「その通り、俺は相克の魔術師のペンデュラム効果をエクサビートルに対して発動

 そして、速攻魔法、揺れる眼差し、ペンデュラムゾーンのカードは4枚、すべてを破壊し、まず相手に500ポイントのダメージを与える。」

 

「くッ!」

 LP6900→6400

 

 叩き落された振り子がハーケン・クラーケンを貫いて、破片が素良へと飛ぶ

 

「2つ目の効果でデッキからペンデュラムモンスター、降竜の魔術師を手札に加え、3枚以上破壊したときの効果でハーケン・クラーケンを除外した。」

 

「くっ!?3枚以上破壊する効果なんてあったのか・・・」

 

「もちろん4枚破壊した時の効果でデッキから揺れる眼差しを手札に加える効果があるんだが、このデッキに揺れる眼差しは2枚しか入ってないので使わない。

 そして、空いたペンデュラムゾーンに新たに降竜の魔術師をセッティング!」

 

 新たに光の柱に登るのは竜の魂をその身に宿す魔術師

 さぁ、目覚めよ、厄災の魔竜よ。

 その身に宿る業火で、亡霊となった魂を天へと還せ

 

「降竜の魔術師のペンデュラム効果で昆虫族のエクサビートルをドラゴン族に変更!」

 

 エクサビートル 昆虫族→ドラゴン族

 

「行くぞ!レベル7のオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンとレベル7のドラゴン族として扱うようになった甲虫装機(インゼクター) エクサビートルでオーバーレイ!

 2体のドラゴン族モンスターでオーバーレイネットワークを構築!

 激情秘めたる二色の眼の竜よ、紅蓮の翼で戦場を焼き、浮かばれぬ魂を討滅せよ!エクシーズ召喚!!」

 

 星と太陽の力を持つ竜の魂を宿した甲虫巨神の熱が渦巻く炎となってオッドアイズの赤き装甲を焼き焦がし、その内から新たな深紅の鋼殻が露わとなり、雄々しい紅蓮の翼をその背に広げ、断罪の魔竜が咆哮を上げる。

 

「天を焦がせし烈火の竜!覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン!!」

 

オッドアイズ・レイジング「ギャオオオォォォォォォォォオオオオォォォォォ!!」

            ATK3000 ORU2

 

「エクシーズで・・・ペンデュラム!?」

 

「ふぅん、これでゲームエンドだ!

 オッドアイズ・レイジング・ドラゴンの効果発動!

 このモンスターがエクシーズモンスターを素材にエクシーズ召喚されているとき、1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ使い、相手フィールド上のカードをすべて破壊し、破壊した数×200ポイントこのカードの攻撃力をアップさせる!」

 

「なんだって!?でも、同時に破壊ならデアデビルの効果で君には2000ポイントのダメージが!?」

 

「言っただろ?負ける気はしねぇって、『レイジングテンペスト!!』」

 

オッドアイズ・レイジング「ギャオオォォォォォォ!!」

            ORU2→1

 

 天へとささげられた光は曇り空を焦がして大地へ落ちてくる。

 魔竜の炎が悪魔たちを燃やしてゆく、そのうちの一体の中から無数の怨霊が飛び出て遊矢に襲い掛かるが

 

「手札のEM(エンタメイト)レインゴートの効果

 自分にダメージを与えるカード効果が発動したとき、このカードを手札から捨て受けるダメージを0にする。」

 

 遊矢がカードを振るうと青い雨合羽が怨霊たちを払い

 はじかれた怨霊たちは炎の中で焼滅していく、次々と燃え尽きてゆく悪魔と人形たちの中で、最後に立っていたナイトメアリーは素良に一瞬だけ振り向き炎の中へ消えていった

 

「美宇・・・」

 

「・・・破壊したカードは7枚、レイジング・ドラゴンの攻撃力は1400ポイントアップする。」

 

オッドアイズ・レイジング「グルル・・・」

            ATK3000→4400

 

「あぁ、それと素良、柚子から言伝だ。

 悪いことしてたらぶん殴ってでも止めるってさ。」

 

「あは、それは・・・」

 

「あぁ、だから俺もとりあえず1発、いや2発ぶん殴るとしよう!

 覚醒の魔導剣士(エンライトメント・パラディン)とオッドアイズ・レイジング・ドラゴンでダイレクトアタック!!」

 

 覚醒の魔導剣士(エンライトメント・パラディン)が素良へと素早く近づき剣を捨ててアッパーで素良を宙へと浮かせ、そこをレイジング・ドラゴンが炎をまとった拳を突きつける。

 

「ぐふぅ!!まったく、容赦がないな君は・・・」

 LP6900→4400→0


「あたたた、まったく、なんで最後の攻撃がパンチなのさ?」

 

「俺が知るか。」

 

 冗談じゃなくて本当に痛い。

 壁にぶつかったのもあるけど、この世界のリアルソリッドビジョンってこんなに痛かったっけ?

 

「で、素良、これからどうするんだ?」

 

「ん~どうしよう。

 ぶっちゃけ、世界がどうとか、アカデミアとか、もうどうでもいいや。」

 

 いや、むしろ僕は最初からそんなものに興味はなかったんだ。

 生きるために必要なことだと思っていただけなんだから

 

「でも、自分の犯した罪は償うつもりだよ。

 どうやってするかはわからないけどね。」

 

 遊矢が気づかせてくれた。

 幸福な生き方をするためには、この背中の十字架は重過ぎる。

 背負ったまま、無視したまま胸を張って生きていくなんてことは僕にはできない。

 

「そうか、ん?」

 

「どうしたの?」

 

「あぁ、何でも柚子が迷子になったらしい、探しに行かないとな。」

 

 柚子が迷子?何やってるんだい、あの弟子は

 

「あぁ、柚子からは直接殴られると思うから覚悟しておけよ?」

 

「あはは、それは怖いなぁ。」

 

 遊矢は僕に背を向けて、いまだにいる赤い竜、レイジング・ドラゴンの背に乗り込む

 

「じゃあ、またな素良。」

 

「あぁ、また・・・」

 

 また、デュエルをしてくれるのか、優しいんだか厳しいんだか

 僕の夢は叶わないものだ。

 君たちと一緒に居たいだなんて、一生かけても償いきれない罪を犯している僕には到底無理な話なんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ、ひとつ言い忘れていた。」

 

 彼は竜の背中で何かを突然思い出したように振り向き

 

「Gotcha!いいデュエルだったぜ、素良。」

 

 二本の指で僕を指さし笑顔でそれだけ言った彼は、黄昏の空に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・なんだよ。ガッチャって、カッコつけちゃってさ・・・」

 

 体は動かないし、なぜかディスクの強制転送装置も動かない。

 いや、任務に失敗したんだ。

 戻ったところで再訓練、もしかしたらデッキも取り上げられるかも・・・

 

「ねぇねぇ、ここには君一人?」

 

「!?痛ぅ・・・」

 

 突然かけられた声に驚いて、振り向いてしまったけど、めちゃくちゃいたい。

 そこにいたのは遊矢によく似た顔つき、いやそんなに似てない?なんでそんなこと思ったんだろう?

 まぁ、よく見れば似ているかもといった感じの紫の男、たしかこいつは・・・

 

「ユーリ?」

 

「ん?そうだよ、僕はユーリ、君はアカデミアだろう?」

 

「あぁ、そうだけど・・・」

 

 プロフェッサー直属のデュエリスト、ユーリ

 初めて会うけど、アカデミアで勝るものがいないといわれるほどのデュエリストがなぜここに?

 

「君、柊 柚子って子、知らない?」

 

「えっ?」

 

 なんで柚子が?

 

「なんかさぁ、彼女を追って氷だらけの場所にいたんだけど、気が付いたら街の外に出ててさ。もうびっくりだよ。

 スターヴ・ヴェノムも突然消えちゃうし。」

 

 スターヴ・ヴェノム?彼のモンスターだろうか

 そうか、ここアクションフィールドが張られてたんだ、僕も遊矢も全くアクションカード拾わなかったから忘れてたけど

 ということは、一瞬で範囲外のエリアに出たってこと?

 

「あぁ、それと君がデュエルしてた相手!榊 遊矢だよね!

 どんな風だったのか教えてくれない?

 プロフェッサーがさぁ、彼と戦うのは絶対にダメっていうんだよ。

 だからさ、感想だけでも聞かせてよ!」

 

 あぁ、なんかまた変なのが・・・いや、でもこれは好都合かも

 

「いいけど、ひとつ頼みがある。」

 

「えっ、何?」

 

 僕は生き抗う、君とまた楽しいデュエルをするために




君たちはアカデミアの撃退に成功した、まさに対デュエルアカデミアのためのデュエルの戦士【ランサーズ】の名にふさわしい力を示したわけだ。

へぇ~だったら、お前の会社の持ち株15%で手を打とう

何っ!?

ただし、俺にデュエルで勝てたらな?
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth 
『突きつけられた真実』
まぁ、その前に準備運動でもするか。


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突きつけられた真実

長めの前置き回、今回はデュエルはないです。
月は徐々に地球から離れて行っているんだとか、潮の満ち引きとかがだんだん変わっていきそうですね。


「社長、沢渡とセレナが負傷したユートと黒咲を連れて帰還しました。」

 

「うむ、アカデミアは・・・」

 

「全滅しました・・・その後の行方は不明です。」

 

 中島の報告を聞き、私は安堵する。一山は越えたと

 うまくはいった。うまくはいったのだ。不気味なほどに

 

「内状は?」

 

「はっ!侵入したアカデミアは仮面をかぶったものが48人、それとは別に2名の計50人

 黒咲、ユート、セレナ、沢渡が倒した9名以外ですが・・・

 風魔忍者、月影と柊 柚子、それと融合次元のデュエリストと思わしき人物が共闘、それにより3名が倒されておりますが・・・同デュエリストにより権現坂道場の権現坂 昇が柊 柚子をかばい負傷。」

 

 映像に映る、紫のデュエリスト、あれがユーリ

 各次元でセレナに似た少女たちを攫っている奴か・・・

 仮面の集団と一線を画す実力、そして思考、厄介な相手だ。

 

「謎のデュエリストとシンクロ次元のデュエリスト、ユーゴの2名によって3人。」

 

 謎のデュエリスト、カメラにはフードを被った小柄な人物としか映っておらず、何者か不明

 街を覆うほどの巨大なモンスターを召喚し、一帯のリアルソリッドビジョンを掌握していた疑いがある人物。

 各映像から、どうやら敗れたアカデミアを捕縛しているようだったが、何をどうやって、どういう目的でなど一切のことが不明だ。

 

「ですが、戻った月影の報告によると、ユーゴは突如、柊 柚子とともに消えてしまったと・・・

 同時に柊 柚子を追っていた融合次元のデュエリストの反応もロストしています。」

 

 消えたか・・・ユーゴがどうやってこの世界に来ているのかは不明だが、もしかするとシンクロ次元にはアカデミアの使っている転送装置のようなものがあるのだろうか?

 それに以前ユートも巻き込まれたとしたら瞬間移動の説明も付くが・・・不審な点が多すぎる。

 いや、ユーリが消えたとなると、柊 柚子はもうこの世界にいないのでは?

 

「柊 柚子に関しては引き続き捜索を、ユートのように離れた場所にいるかもしれない。」

 

「はっ!

 それと残り33人ですが・・・榊 遊矢がデニス・マックフィールドと風魔忍者、日影の両名との共闘はあったものの・・・ほぼ一人で倒しました・・・」

 

 ・・・・・奴はいったい何者なのだろうか・・・

 彼を最後に捉えた映像は無限ループによって30人のアカデミアを一瞬の内に殲滅する姿

 その姿はまさに圧倒という他に言葉はないだろう。

 楽しませようとする気など一切ない容赦のなさ、それなのに目を奪われるほどに・・・

 

「いや、私にそんな・・・」

 

「どうかいたしましたか、社長?」

 

「何でもない。中島ここは任せる。」

 

「社長はどちらに?」

 

「生き残った戦士たちにねぎらいの言葉をかけてやらなければな。」

 

 始まってしまった以上、もう引き返せないのだ。

 この世界を守るために彼らの力を借り、アカデミアを殲滅する。

 そのために私はこの4年を生きてきたのだから


「大丈夫でござるか、権現坂殿。」

 

「あぁ、問題ない。」

 

「だから俺一人でもやれるって言っただろ!柊 柚子似の女!!」

 

「その呼び方をやめろ!私はセレナだ!!」

 

 レオ・コーポレーションの玄関前の広場にて、バトルロイヤルに参加していたメンツは集まっていた。

 ユーリに負けた後、機怪蟲(クローラー)によってここに運ばれた権現坂と、柚子が消えてしまったことを伝えるためにやってきた月影

 黒咲とユートを医務室に運び込んだ沢渡とセレナが再びアカデミアを倒そうと出てきたところで鉢合わせになったのだ。

 

「これは・・・勢ぞろいでござるな・・・」

 

「おぉ!!兄者!!無事でござったか!!

 ん?その背の御仁はどうしたのでござる?」

 

「あぁ、なんというか・・・」

 

 勢ぞろいしたこの場にデニスを背負ってやってきた日影は月影からの質問に困っていた。

 騒がれると面倒だからと遊矢に気絶させられたままのデニスであるが、遊矢がなぜそのようにしたのか意図が分からなかったからである。

 ただ直感で、遊矢がデニスに何かしらの警戒心を抱いていることを見抜いていたために、口ごもったのである。

 

――ゴオォォォォォ!!

 

――ん?

 

 空から聞こえる轟音、それに目を向けるとそこにいたのは厄災の魔竜

 もちろんそんなものに乗ってくるのは

 

「遊矢!」「「遊矢殿!」」「榊 遊矢!」

 

「やぁやぁ、皆の衆、無事で何より・・・」

 

 魔竜を消して下りてきたのは、いつものふざけた調子の遊矢

 その彼に一人、イマイチ状況をつかめていない権現坂が質問する。

 

「遊矢、いったいどうなっておるのだ?

 ミエル殿に言われるがままにお前とよく似たやつと戦ったが、俺は状況をよくわかっていないのだ。」

 

(俺とよく似たやつって・・・ユーリか・・・

 この感じからすると負けたみたいだが、ミエルが何とかしてくれたみたいだな。

 よかった。)

「あぁ、どうもな」

 

「それは、私が説明しよう!」

 

 声のした方に全員の注目が集まる

 そこにはいつの間にか、レオ・コーポレーションの玄関に手を腰にやり、赤いマフラーをたなびかせる赤馬 零児が立っていた。

 

「君たちのデュエル見せてもらった。

 よくぞ、侵略者たちを退け生き残ってくれた。

 君たちこそ、『ランサーズ』の名にふさわしい。」

 

「「ランサーズ?」」

 

 まったく意味の分からない権現坂と、怪訝な顔をする遊矢

 それを見越して、零児は説明を続ける。

 

「私は4年前、偶然にも次元転送装置を使いこの世界とは違う次元世界、融合次元へと渡った。

 そこでは私の父、赤馬 零王が多次元への侵略のための軍隊を作っており、私はこの世界、スタンダード次元を守るため、対アカデミアのための部隊、Lance Defence Soldiers、略してランサーズを組織し、攻勢に打って出ることにした。

 そして、昨日、融合次元からそこにいる少女、セレナが訪れたことにより、アカデミアの来襲を予期した私は、ジュニアユースクラスの3回戦をトーナメントから街中でのバトルロイヤルに変更し、君たちの力で敵を撃退しようと考えたのだ。」

 

「へぇ~なるほど、だからバトルロイヤルのルールがあんなに“雑”だったわけだ。」

 

――ピクッ

「君たちはアカデミアの撃退に成功した。

 まさに対アカデミアのデュエルの戦士『ランサーズ』の名に、ふさわしい力を示したというわけだ。」

 

 遊矢の物言いに頬を引くつかせながらも、ランサーズに迎える面々を賞賛する零児

 だが困惑する権現坂の隣の遊矢はあきれ顔だ。

 

「なぁ、社長?

 ランサーズって槍機動部隊とかいう意味かな?」

 

「そうだ、ランサーとは馬を駆り、槍を掲げて敵陣へと突っ込む槍騎兵のこと。

 アカデミアを殲滅をすることを目的とした最強の部隊だ。」

 

「・・・なぁ、まさかとは思うが、そのランサーズってここにいる奴らだけだったりしないよな?」

 

「いや、この戦いで負傷したエクシーズ次元からのデュエリスト2名に加え、私の弟、零羅も加わる。」

 

 ここにいるのは遊矢と零児を含め8人、さらにそれに加えて3名で11人である。

 

「・・・ほかに現地での支援部隊とかは?」

 

「・・・ない。」

 

 零児もばつの悪そうな顔をしているが、遊矢はかなり冷ややかな視線を彼に送っている。

 

「話にならないな。

 槍騎兵ってただの突撃部隊のことかよ。しかも支援なし?

 ふざけてんのかよてめぇ。」

 

「ぐっ!?」

 

「いいか?まず戦争する気があるのなら一番大事なのは兵站だ。

 食料、拠点、移動手段、その他もろもろ要るのに何もなしはないだろぉ?

 

 さらに言えば、槍騎兵っていうのは、弓とか投擲とかの支援の後、混乱している敵に突っ込んで陣形を崩させ、そのあとに白兵戦ができる部隊が掃討することで勝ち筋が見えてくる業種なんだ。

 それを11人、うち一人は小学生ときた。無茶を言うなよぉ。

 

 混乱していない敵に真正面から突っ込んだら、長槍で串刺しにされるか鉄砲で撃たれるか、敵の中に入って孤立したら横槍につかれて死ぬか、馬がやられて落とされた後に袋叩きにあう。

 っていうか、そもそも敵より速い馬っていうのはあるんだろうな?」

 

「・・・・・・」

 

「ないみたいだな。

 兵站書どころか、歴史の教科書を読み返した方がいいんじゃねぇの、天才さん?」

 

 まくしたてる遊矢に権現坂、日影、月影は同感していた。

 4人とも歴史好きで各好きなジャンルは違うものの、ネット掲示板で話し合うことがあったからだ。

 なお、沢渡とセレナは話についていけていない。

 

「・・・我々には・・・アクションカードが、アクションデュエルがある。」

 

「はぁ?アクションデュエル?」

 

 言われるがままの零児が絞り出した反論がそれだった。

 

「アクションデュエルは、他の世界にはないこの世界の独自のモノだ。

 そして、君が発現させたペンデュラム召喚、それを組み合わせれば『そんなことで勝てると思っているのか?』

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

 零児は遊矢の真紅の瞳に見つめられている。

 その視線の中にあるのは侮蔑と軽蔑、そして怒りだ。

 その怒りに当てられた面々は、知っているものなら戦々恐々として、知らぬものは恐怖する。

 

「俺に相手がよくわからないルールで戦えというのも気にくわないが、それ以前にアクションデュエルは相手もアクションカードが使えるということを忘れているのか?

 手品みたいに、タネさえ分かってしまえば、誰でも使えてしまうものをどうしろっていうんだ?

 肝心な時に回避だの、奇跡だの連発されてしまえば、リスクを負うのはこっちだぞ?」

 

「ぐぅ・・・」

 

「おまけにどれだけペンデュラムを信用しているんだ?

 あいつらも融合を使えるから強い、エクシーズを使うから弱いとか、うだうだ言っていたけどさぁ?

 そんなもの関係ないだろ?使わなくても強いやつは強いし、肝心なのはそのカードを、デッキをどれだけ使いこなすことができるかだ。」

 

「だったら・・・」

 

 零児に、もはや反論できることはなかった。

 彼は強者であるがゆえに、臆病になることができなかったのだ。

 ゆえに目の前の道化(臆病者)と相容れない。

 

「だったらどうしろというのだ!

 このまま指をくわえて、滅ぼされるのを待てというのか!!」

 

 彼は4年もの間をこのために費やしてきた。

 だが、その期間では他次元のデュエリストに対抗する人員を育てるには短すぎたのだ。

 彼が元々のランサーズの候補としていた制服組や講師たちでも、ユートと黒咲に対抗できるものはほんの一握り

 ゆえに精鋭を別に募る必要があったし、新たな戦術とカードにすぐに適応できた一騎当千のデュエリストを求めたのだ。

 

「じゃあ、お悩みの社長に良い手を提案してやろう。

 打って出るってことは、次元を移動する手段があるんだろう?

 だったら、世界中の爆弾をかき集めて融合次元の月を爆破して破壊してしまおう。」

 

「・・・はっ?」

 

 零児は遊矢の言ったことで一瞬フリーズした。

 遊矢が提案したのは戦うことではなく、滅ぼすこと

 慈悲も何もない、悪魔の所業である。

 

「月を爆破して、その破片が地上に落ちれば大惨事

 なまじ生き残りが出たとしても、環境が変わって人の住めない星になる。

 おまけに月の重力がなくなれば計器や電子機器にも異常が出るはずだから、おそらく次元転送装置で他の次元に逃げることもなく全滅させられる。」

 

 淡々という遊矢に唖然とする面々だが、一人怒りに燃えるものがいた。セレナである。

 

「キサマ!!それ以上の妄言は私が許さんぞ!!」

 

 遊矢の胸ぐらをつかみ、激昂するセレナであるが遊矢は表情一つ変えない。

 

「妄言?違うな。

 俺は確実かつ、こちらに被害が出ない形で、そこの社長の言う殲滅できるプランを提案しただけだ。」

 

「なっ!?」

 

「というか俺が思うに、もはや融合次元は後腐れがないように、滅ぼすしかないレベルになってしまっていると思う。」

 

「なん・・・だと・・・!?」

 

「ユートから聞いた範疇の話だが、アカデミアはエクシーズ次元に対して金や労力では賄いきれないレベルのことをしている。

 この次元戦争が収束しても、エクシーズ次元には禍根と怒りが残り、今度はエクシーズ次元側から融合次元に対しての戦争が始まるだろう。

 そっから先は泥沼だ。互いが互いを恨み合う戦争が始まる。」

 

 人は皆が聖人ではない。

 そして許すことができるものよりも、許すことができないものの方が多いのだ。

 

「それに融合次元の・・・いや、アカデミアの感性がイカレている。

 人間っていうのは同族を殺すことに対して多大なストレスを覚えるから、殺すことにためらいを覚える。

 だが、あの仮面の連中とユートの話に出てきた連中は嬉々として人を襲っている。

 おおかた、そういう風に教育されたんだろうな。

 

 だとすればだ、戦争が終わった後、そいつらはどういう行動をとると思う?」

 

「どういう行動、だと?」

 

 セレナに学はない。

 もとは孤島の漁村の孤児であり、もとより簡単な教育しかされておらず、アカデミアに入ってからも箱入りにされていただけだ。

 ゆえに、戦争が終わった後の狂人の行動など予測がつかない。

 

「そういう輩がどういう行動をとるかは2パターンだ。

 自分の行いに罪悪感が芽生えて、陰鬱になるか

 殺しの、あ、いや、人をカードにする快楽が忘れられずにまた人を襲うかだ。」

 

「なっ!?」

 

「融合次元内でそういう輩が量産されているなら、赤馬 零王がいなくなった途端そいつらが爆発する。

 そうして、融合次元内で人をカードにしたい連中と、まともな人間の間で戦争が始まる。もしくはまた他の次元に対して戦争をし始める。

 かといって、超個人的な理由で戦争をしているであろう赤馬 零王は〆ないとこの戦争は止まらない。」

 

 融合次元において、独裁者である赤馬 零王は今やストッパーだ。

 それを外してしまえば、融合次元に未来はない。

 だが、赤馬 零王を止めるには叩き潰すしかない。

 赤馬 零王のしでかしたことは、融合次元自体も危険な状態にしてしまっている。

 

「あぁ、でもユートやユーゴのいい人が囚われてるんだっけか?

 だったら、まずはそいつらを攫う算段と・・・ついでに素良もつれてこなくっちゃなぁ~」

 

 遊矢は囚われのお姫様と約束をした友をどうやって連れ出すかを考え始めるが、他の融合次元の住人に対しては諦めてしまっている。

 どうやっても戦争の火種にしかならないのなら、文字通り殲滅するしかないのだ。

 

「まぁこれは極論で、あくまで最終手段だ。

 でも、とりあえず、赤馬 零王は最低さらし首にでもしないとエクシーズ次元の住人の溜飲が下がらない。

 異常な性癖を開花させてしまった連中は、処分しないと閉じ込めるにしてもオープンにするにしても危険だし、戦後のことを考えるときりがない。

 

 戦争っていうのはゲームみたいに悪いやつを倒してハイ終わりっていうわけにはいかないんだよ。」

 

 零児もセレナも、赤馬 零王を倒せばこの戦争は止まると考えていた。

 そしてその後のことなど考えていなかった。

 のちの禍根を絶たねばならぬことなど考えていなかったのだ。

 だが、小心者で心配性な遊矢は、常に最悪を想定する。

 

「なぁ、榊 遊矢。

 俺に小難しいことは分っからねぇが、ムカつくやつをそのままにしておくわけにもいかねぇってのはわかる。

 でもよぉ、お前にそこまで言わせるナニカが奴らにあるのか?」

 

 沢渡は遊矢との付き合いは比較的短い方だが、普段と違いやたらと攻撃的であることに違和感を覚える。

 

「さすっが、察しがいいな沢渡さん

 まぁ、言葉でいうよりも実際見た方がいいだろう。

 ミエル!どっかにいるんだろ?出て来いよ。」

 

「お呼びですか?我がマジェスティ。」

 

 遊矢の背後からニュッと出てきて傅くローブの少女、あまりにも唐突に出てきたので初めて見る面々は驚愕する。

 だが遊矢にとってはいつものことなので、特に驚きもせずに要求を言う。

 

「お前が捕えているアカデミアの蟲どもをここに出せ。」

 

「仰せのままに。」

 

――パチンッ!

 

 ミエルの指パッチンの音に反応して、レオ・コーポレーションの前の遺跡のレンガのように見えるソリッドビジョンが無数の赤黒いミミズ、機怪蟲(クローラー)に変化、それらは次々に集まってドームを作っていく

 

(あれは、ユーゴと共闘した謎のデュエリスト!?

 榊 遊矢の関係者だったのか・・・!?)

 

 ドームが崩れ、機怪蟲(クローラー)たちがそこに残したのはカードに変えられた9人以外のオベリスクフォース39人

 遊矢はその内、最も端で倒れているオベリスクフォースに近づく

 

「これが理由だ。」

 

――ガッ!・・・・コンッ・・コン・・・

 

 遊矢はオベリスクフォースの被っている仮面を蹴飛ばす。

 すると、そのオベリスクフォースの体は痙攣しだして

 

「う・・・が・・あああぁぁっぁぁぁ――キシャアアアァァァァァッァアッァァァ!!

 

 「「「「「「「!!?」」」」」」」


 何だあれは!?

 いや、あれはさっきも見た。

 オベリスクフォースの仮面の下から覗いていた触手だ。

 オベリスクフォースの顔を覆うようにして顕現する長い尾の生えた赤いダニのようなモンスター

 それは、苦し紛れに遊矢へととびかかるが

 

「フンッ!!」――グシャァ!

 

 遊矢によって蹴りつぶされる。

 

「今のは・・・いったい・・?」

 

 赤馬社長が困惑とともにその言葉を吐き出す。

 それは僕だって聞きたい。

 

「ソリッドビジョンを使った寄生虫、いや洗脳装置ってところか?

 疑似体感システムの微弱電流を悪用したものだろう。」

 

 疑似体感システム

 それはモンスターからの攻撃や効果によるダメージを疑似再現するために微弱電流を流して脳に錯覚を覚えさせるシステム。

 デュエルモンスターズのソリッドビジョンのシステムには必ずついて回るモノだ。

 それを使って洗脳?・・・アカデミアが!?

 

「アカデミアが・・・そんな・・!!赤いの、後ろだ!!」

 

 セレナが声を上げると彼の後ろのオベリスクフォースたちの仮面がさっきの蟲へと変化して、その触手を全身へと伸ばしていく

 

――ザガギyヴヤ、マザzzズ・・・

 

――ミラrrエタ・・ミナゴロジ・・・

 

 言葉になっていない言葉を呟きながら、さっき仮面を蹴り飛ばされたのと焼け焦げている3人以外のオベリスクフォースだったものが次々に立ち上がる。

 

「見られたら皆殺し・・・やっぱり見られちゃまずいものだったみたいだな。」

 

「お手伝いしましょうか?我がマジェスティ。」

 

「いや、後ろの連中を頼む。」

 

――キシャアアァァァァァァぁぁッぁぁx!!

 

「準備運動にはちょうどいい!!」

 

 一番前にいた奴が遊矢に殴りかかるが、遊矢はそれを受け流し、手首をつかんで背後にあった石柱にその拳を叩きつける。

 石柱にはひびが入り、それに勢いのまま叩きつけられた拳は無事ではすんでいないが

 

「ギャアアァァァァァァァァ!!」

 

 そんなことはお構いなしに血濡れの拳で遊矢へ再び殴り掛かる。

 

「宿主のことはお構いなしか!質の悪い!!オラァ!!」

 

 遊矢は身をかがめてその拳を躱し、足払いでそいつを宙へ浮かせると回し蹴りで迫っていた他のオベリスクフォースへと蹴り飛ばす。

 

「召喚!EM(エンタメイト)ソード・フィッシュ!」

 

 何を思ったのかデュエルディスクを起動させ、剣のような魚のモンスターを召喚するとその魚は本体を除いてオベリスクフォースたちと同じ数、35匹へと増殖し、増殖した魚たちがオベリスクフォースたちへと突撃、その肩や足へと突き刺さる。

 

――ギャアアァァァァァァァァ!!?

 

「なるほど、デュエルモンスターズの力の方が効くみたいだな。

 それなら、ペンデュラムゾーンにスケール3の相克の魔術師とスケール8のEM(エンタメイト)ドクロバット・ジョーカーをセッティングしEM(エンタメイト)ポップアップを発動

 手札を2枚捨て2枚ドローし、来い!EM(エンタメイト)ロングフォーン・ブル!!」

 

ロングフォーン・ブル「ブモオォォォォ!!」

 

 二本足で立つ青い水牛がラリアットをしながらソード・フィッシュが突き刺さった苦しみで悶えていたオベリスクフォースたちを跳ね飛ばす。

 

「ロングフォーン・ブルの効果でデッキからEM(エンタメイト)ミス・ディレクターを手札に加え、ペンデュラム召喚!

 現れろ!レベル6、EM(エンタメイト)ミス・ディレクター!レベル7、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン!!」

 

ミス・ディレクター「はっ!」

 

オッドアイズP「ギャオオォォォォォォ!!」

 

 流星に乗って現れる女ディレクターと異虹彩の赤い竜

 

「ミス・ディレクターの効果で墓地のレベル1モンスター、EM(エンタメイト)レインゴートを特殊召喚し、シンクロ召喚!

 出撃だ!ダーク・ダイブ・ボンバー!!」

 

――ドドドドドドドドドドドドドッ!

 

 光の中から現れた黒い戦闘機が、立ち上がろうとするオベリスクフォースたちを機銃でかく乱し

 

「さらに墓地の貴竜の魔術師の効果でオッドアイズのレベルを3つ減らし特殊召喚!」

 

貴竜の魔術師「はっ!」

 

「レベル4となったオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンにレベル3の貴竜の魔術師をチューニング!

 現れろ!オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン!!」

 

オッドアイズM「ギュオオォォォォォォ!!」

 

「メテオバーストの効果でペンデュラムゾーンのドクロバット・ジョーカーを特殊召喚

 そして、ダーク・ダイブ・ボンバーの効果でメテオバーストをリリースしてそのレベル×200ポイントのダメージを相手に与える!」

 

 赤い竜は星の炎を身に宿して、慌てふためくオベリスクフォースたちを炎で焼いてゆく

 

――ギャアアアアァァァァァァ!!

 

「まだだ!レベル4のロングフォーン・ブルとドクロバット・ジョーカーでオーバーレイ!

 現れろ!竜魔人クィーン・ドラグーン!!」

 

クィーン・ドラグーン「ふんっ!」

 

 混沌から現れる半竜半人の女王

 その力は、眠る竜を呼び起こす。

 

「オーバーレイユニットを1つ使い墓地より、オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴンを特殊召喚!

 そして、レベル7のダーク・ダイブ・ボンバーとメテオバースト・ドラゴンの2体とランク4のクィーン・ドラグーン1体でそれぞれオーバーレイ!

 現れろ!オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン!旋壊のヴェスペネイト!!」

 

オッドアイズA「グオオォォォォォ!!」

 

 星の炎を身に宿した竜は絶対零度の冷気を身にまとう竜へと変化し、竜人の女王は巨大な機械の蜂へと変わる。

 

「さて、そろそろ締めるか、フンッ!!」

 

 遊矢は手に持ったソード・フィッシュをオベリスクフォースへと投げつける。

 

「オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴンの効果!

 オーバーレイユニットを1つ使い、ソード・フィッシュの攻撃を無効にする。」

 

 投げられたソード・フィッシュはその前に現れた氷柱へとぶつかり、空へと弾き飛ばされる。

 だが、そこには大量のソード・フィッシュがオベリスクフォースたちを捉えていた。

 

「その後、墓地のオッドアイズモンスター、メテオバースト・ドラゴンを特殊召喚

 そして、ソード・フィッシュの効果により、俺の特殊召喚した回数につき600

 12回の特殊召喚に成功したので、はじめと合わせて7800ポイントお前たちの攻守は下がる。」

 

星炎の竜が再び顕現したのを皮切りに、無数のソード・フィッシュたちがオベリスクフォースへと突貫、全身へ突き刺さる。

 

――ぎゃああアアァァァァァァッぁぁァAAA!!

 

「これで決まりだ。

 アブソリュート、メテオバースト、ヴェスぺネイトで攻撃!!」

 

 アブソリュート・ドラゴンが絶叫を上げるオベリスクフォースたちの全身を凍らせ

 ヴェスぺネイトが巨大な削岩機へと変形し、それをメテオバースト・ドラゴンが炎を吐き出して飛ばす。

 星の炎を纏って、進撃する破壊の螺旋は凍り付いた蟲を粉々にし、オベリスクフォースのかぶっていた仮面が砕ける。

 

 ここにアカデミアの誇る精鋭部隊オベリスクフォースは本当の意味で壊滅した。


「ゲームクリア、って、ところか

 さて、アレは無理やり洗脳で動かしている感があったが、一般兵に関してはあの蟲で思考誘導されているだけだと思うから、あの蟲を除去しても性格が治らない。

 もしくは・・・」

 

「ぐっ!!・・・あぁ?・・・・あぁ・・・・・・・」

 

 遊矢は倒れ伏したオベリスクフォースの一人を起こして気付けをする。

 だが、そのオベリスクフォースの男はここが何処なのかわかっていない、いや、自分が何なのかわからないといった様子で、虚空を見つめてうめき声をあげている。

 言葉すら忘れてしまったようだ。

 

「はぁ~長い間、脳みそいじくりまわされていたら、こうなるわな・・・」

 

「どういうことだ?」

 

 セレナが青い顔で質問する。

 当事者としては当然の反応だ。

 

「あの蟲を使って脳内麻薬を調節してたりしてたんだろうけど、この調子を見ると記憶もいじくられているみたいだな。

 人間らしい生活は二度とできないだろう・・・」

 

「そんな・・・!?」

 

「これほどひどくはなくても、頭がパーになっている可能性が十分ある。

 社長さん、こいつら全員の面倒見れるか?言っておくが、世界全体かもしれないぞ?」

 

「・・・・・・」

 

 零児は何も言えなかった。

 もはや彼の頭では目の前で起こったことへの処理が追い付かなかったのだ。

 

「とはいっても、柚子も俺もアカデミアから狙われている以上、潰すことは確定だ。

 だがぁ、赤馬 零児、お前の下につくのはごめんだね。」

 

「なんだと?」

 

「だって当たり前だろ、お前の作ろうとしているランサーズとやらだが、その中に・・・」

 

 遊矢は足首だけで跳び、地面をすべるようにして移動する。そして

 

「ネズミが沸いている。」

 

 デニスを蹴り飛ばす。

 

「ぐわああぁぁぁぁぁ!!」

 

 デニスの懐にあったデュエルディスクは砕け散り地面に散乱し、デニスもゴロゴロと転がる。

 

「ぐぅ・・どうして・・・」

 

「分からいでか、さっきから気絶した振りしてるくせにチラチラ見やがって、大根役者が。

 それにそこのセレナと同じ、青い顔してたしな。」

 

「はは・・・やっぱり・・君には・・・かないそうに・・ないな・・ぁぁ・・・」

 

 突然の裏切り者の発覚、そしてそのデニスを運んできた日影が遊矢に声をかける。

 

「遊矢殿、彼は・・・」

 

「まぁ、ユートの話からしてアカデミアが間者を送り込んでいることは十分予想ついていたからな。

 そしたらこいつ、バトルロイヤル中、ずっと俺についてくるし、友達になろうとか言っている割にギラギラしたゲスい目をしてたからな。

 まったく、ゲスは1人で十分だっつうの。」

 

 あっけらかんと言う遊矢であるが零児の心境は芳しくない。

 自分の作ろうとしていた精鋭部隊にアカデミアの間者がいたのだ。

 ともすれば、次元を渡った先で後ろ玉で全滅していたことだろう。

 

「駄目じゃないか、精鋭っていうなら経歴ぐらい調べなきゃ

 それで二つ目の理由だが・・・まぁ、これは俺の個人的なものなんだが・・・」

 

 そこから先の言葉は零児にとっての禁句だ。

 零児自身が分かっていても気づきたくなかった事実だ。

 

「赤馬 零王と同じ思考をしている、お前が信用できない。」


「なん・・だと・・・!!」

 

 私があの男と同じ・・・?何をふざけたことを!!

 

「だってそうだろ?

 お前が社長になってから3年ぐらいたつが、その間に海外含め、多数のデュエル塾の買収

 そのころから、いや、それ以前からランサーズの構想があったというなら、それはランサーズに足るデュエリストを育てるため。

 戦争のための兵隊を子供を使って作ろうとしてたんだ、それが赤馬 零王のアカデミアという組織構造と何が違う?」

 

「!!?」

 

「なんだぁ?わかってなかったのか?

 それに3年以上かけた計画のわりに、兵站も支援も一切ない行き当たりばったり、戦争が終わった後のこともまったく考えてない。

 そのあたりも赤馬 零王と一緒だ。

 行き当たりばったりの私的な目的のために、世界を巻き込んでいる狂人となぁ?」

 

 榊 遊矢は赤馬 零王が私的な目的のために次元戦争をしていると予想している。

 そんな奴と私が同じ・・・

 

「兵を使い潰す可能性のある将がいる部隊なんぞ、絶対にごめんだ。

 俺はここに転がっている連中と同じ末路を辿りたくないからな。」

 

 榊 遊矢の周りに転がる死屍累々のアカデミアの兵士たち

 うめき声をあげ、虚空を見つめ、その手足をじたばたとあてもなく動かしているところを見るに体の動かし方すら忘れてしまっている。

 自分が何者かを失い、言葉をなくし、立つことすらできない彼ら・・・これが私の生み出すモノ・・・

 

「ちがう・・・私はただ、世界のために・・・」

 

「こいつらも言ってたよ。

 アカデミアは世界のために、正義のために戦っているってな。」

 

 ・・・ちがう

 

「いい言葉だよなぁ?

 そんな綺麗言をほざいていれば、何をやっても許される免罪符になってくれる。」

 

 ちがう・・・

 

「お前は赤馬 零王の辿った道を後ろから付いて歩いているだけだ。

 そんな奴が、奴の前に立ちふさがれると思っているのか?

 いや、立ちふさがれても後のことも先のことも、失敗することも考えてないようでは、止めることなんてできはしない。」

 

 ちがう・・ちがう・・ちがう・・・

 

「正義の味方を気取って戦争ごっこをしているだけのお前には、何も守ることはできない。」

 

 違う!!


「違うんだあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 零児の絶叫がこだまする。

 

「零児・・・」

 

「「赤馬殿・・・」」

 

「社長・・・・」

 

「赤馬 零児・・・」

 

 その見せたことがない弱弱しい姿にその場の全員が絶句する。

 零児は常に真っすぐ、正しいと思った道を生きてきた。

 だが真っすぐすぎた彼は父親のしいた道の上から抜け出せず、知らず知らずのうちにその道の上を歩き続けていたのだ。だが

 

「僕は母さんを悲しませる、あいつを絶対に許さない!!

 優しかった母さんを!変えてしまったあいつを!絶対に!!」

 

 そう、それが零児の本音

 ただ、優しかった母を取り戻したいがための子供らしい願い。

 

「それがお前の心の闇か・・・」

 

 もはや、零児が被っていた強者の仮面は剥がれ、そこにいたのはただ母を悲しませる父が許せないと駄々をこねる子供だった。

 それを聞いて遊矢は

 

「ふふふ、ははは、あーはっはっはっ!!」

 

 笑った。

 

「いいねぇ!いいねぇ!正義だの、世界だの言いだすエゴイストよりよっぽど信用できる!」

 

「えっ・・・?」

 

「どちらにせよ。

 赤馬 零王に一発かまさないといけないのは変わらないし、柚子を迎えに行かなくちゃならないんだ。

 最初からお前が持っているであろう、次元転送装置を使わせてもらう予定だったけど、いいぞ!お前の言う部隊に入ってやる!」

 

 遊矢にとって大事なのは自分とその周りである。

 ゆえに害するものには容赦がないし、害ある可能性を持つものは排除しておきたい心配性の小心者である。

 世界のためとか、正義のためとか、そんな自分にとってどうでもいいことでは彼の心は踊らないのだ。

 

「あぁ、傭兵の代金としてお前の会社の持ち株15%を前金としてもらおうか?」

 

「なぁっ!!?」

 

「何を驚いているんだ?

 兵にはちゃんとした見返りを払ってこその軍だろう?

 もっとも、お前の下についてお前の命令を聞くかは別問題だが。」

 

「くっ!だったら・・・」

 

 どうしろと続けようとした零児だが、それは遊矢によってすぐに提示される。

 

「デュエルしろよ。

 赤馬 零児、お前の本当の本気、全力をぶつけてこい!

 あぁ邪魔が入らないよう、スタンディングデュエルでな?

 お前が勝ったら、俺は潔くちゃんとお前の部隊の一員として働こうじゃないか。ただし俺に勝ったらの話だがぁ?」

 

 それは安易に負ける気がないから好き勝手やると言っているようなもので、あからさまな遊矢の挑発である。

 だが、散々言われ続けて、隠しておきたかった弱い自分をさらけ出されてしまった零児はついにプッツンした。

 

「いいだろう!さんざんの暴言!!

 その減らない口を縫い付けてやる!!」

 

「ははっ、糸と針の準備はできているかぁ?」

 

『『決闘(デュエル)!!』』




ただいまぁ~あれぇ?プロフェッサーいつもそばでイヒイヒ言ってる気持ち悪いやつはどうしたの?

ユーリか・・・ドクトルなら、突然全身に剣が刺さったような痛みに襲われたあと、凍傷とやけどが全身にできて治療中だ。

へぇ~何があったんだろうね?

分からん。だがどうせあいつのことだ。
変な実験をして、副作用でも出たんだろう。
で、柊 柚子は連れてきてくれたのかい?

いや、見失ったから、帰ってきた。
後、例のオベリスクフォース全滅したよ?

なにっ!?

そこまでショックを受けることかなぁ~
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『顔をなくした道化』
さて、どうやって榊 遊矢とデュエルしようかなぁ~


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顔をなくした道化

大分長くなったせいでちょっと遅れ気味ですが出来上がりました
異次元のブラック企業社長VS別次元の詐欺師(二戦目)です。


「んぅ・・・?ここは・・・?」

 

 目覚めてみると病室だと思われる部屋の中で、寝かされている。

 隣には傷ついた隼もいる。

 俺はアカデミアの迎撃のためにセレナと行動していて・・・

 

「そうだ!アカデミアは!!」

 

 急ぎ、部屋の窓を開けて外を見ると

 

『『決闘(デュエル)!!』』

 

 赤馬 零児と榊 遊矢がデュエルをしていた・・・どういうことだ?

 

「前回同様、先攻後攻はお前が決めろ。」

 

 榊 遊矢の挑発のこもった言い草に赤馬 零児はむっとした様子で答える。

 あいつはこんなに分かりやすく、感情を見せる奴ではなかったはずだが・・・

 

「ならば!先攻で行かせてもらう!!

 私はマジックカード、ワン・フォー・ワンを発動!

 手札のモンスターカードを1枚捨て、デッキ、手札からレベル1モンスターを1体特殊召喚する。

 私は手札のDD魔導賢者二コラを捨て、デッキからDD魔導賢者ケプラーを特殊召喚する!」

 

 ケプラー DEF0

 

 天球が回る塔のようなモンスターがフィールドに現れる。

 あれが赤馬 零児の使うモンスター

 

「ケプラーの特殊召喚に成功したことにより、デッキから契約書を手札に加える。

 私はこの魔神王の契約書を手札に加える。

 

 さらに速攻魔法、手札断殺を発動 

 互いのプレイヤーは手札を2枚捨て新たに2枚ドローする。

 私はDDゴーストとDDヴァイス・テュポーンを捨て2枚ドロー!」

 

「おやおや、僕っこはもう終わりかい?

 俺もEM(エンタメイト)ユニとスキル・サクセサーを捨て2枚ドローさせてもらおう。」

 

「くっ!!墓地へ送られたDDゴーストの効果で、墓地に眠るDD魔導賢者二コラと同名カードをデッキから墓地へ送る。

 そして、さっき手札へ加えた永続魔法、魔神王の契約書を発動!

 このカードは悪魔族専用の融合魔法!さらにDD融合モンスターを融合召喚する場合、墓地のモンスターも除外することで融合素材として利用できる!

 私はフィールドのDD魔導賢者ケプラーと墓地のDD魔導賢者二コラを融合!!

 天を知る者よ!闇に眠る光を齎せし者よ!今一つとなりて新たな王を生み出さん!融合召喚!

 生誕せよ!レベル6!DDD烈火王テムジン!!」

 

テムジン「はああぁぁぁ!!」

    ATK2000

 

 現れるのは赤い炎を模した剣と大きな盾を持った悪魔

 永続魔法での融合、墓地のモンスターの利用、それに付随する墓地肥やし、なんて隙のないプレイングだ。

 

「さらに永続魔法、地獄門の契約書を発動しデッキからDDモンスター、DDナイト・ハウリングを手札に加え召喚!」

 

 ナイト・ハウリング ATK300

 

「そして、このモンスターが召喚されたことで私の墓地から、DDモンスターを攻守を0にして特殊召喚する。

 出でよ!DDヴァイス・テュポーン!」

 

ヴァイス・テュポーン「ヴァァァァ・・・」

          ATK2300→0

          DEF2800→0

 

「DDモンスターの特殊召喚成功により、烈火王テムジンのモンスター効果発動!

 墓地よりDDモンスターを特殊召喚する。

 私はチューナーモンスター、DDゴーストを特殊召喚!」

 

 DDゴースト DEF300

 

 巨大な口から飛び出す数多の蛇が絡まったような巨大な悪魔

 そして、テムジンの導きで蘇る内部に猫の影が見えるオレンジ色の結晶体

 チューナーか、となれば

 

「私はレベル6のDDD烈火王テムジンにレベル2のDDゴーストをチューニング!

 その紅に染められし剣を掲げ、英雄たちの屍を超えていけ!シンクロ召喚!!

 生誕せよ!レベル8、DDD呪血王サイフリート!!」

 

サイフリート「はあぁぁぁぁ!ふん!!」

      ATK2800

 

 光を切り裂いて現れる大剣を掲げた白髪の剣士

 大型モンスターを先攻1ターン目で2体も召喚したか。

 いや、だがこれでは終わらないだろう

 

「DDゴーストが墓地へ送られたことにより、再びデッキからDD魔導賢者二コラを墓地へと送る。

 さらに私はレベル7のDDヴァイス・テュポーンにレベル3のDDナイト・ハウリングをチューニング!

 闇を引き裂く咆哮よ、荒れ狂う嵐を呼び、世界のすべてを征服せよ!!シンクロ召喚!!

 生誕せよ!レベル10!!DDD疾風大王エグゼクティブ・アレクサンダー!!」

 

Eアレクサンダー「ウオォォォォォォ!!」

       ATK3000

 

 出てきたのは宝玉の埋め込まれた白銀の鎧をまとう、風の王

 レベル8とレベル10のシンクロモンスターをこうもやすやすと連続で出すとは・・・

 

「まだだ!このターン墓地へ送られたDDヴァイス・テュポーンはレベル8以上のDDD融合モンスターによって決められた、このカードを含む融合素材を自分の墓地から除外することで、そのモンスターを融合召喚する。

 私は墓地のDDゴーストとレベル5以上のDDモンスターであるDDヴァイス・テュポーンを融合!!

 闇に蠢くものよ!大いなる母よ!煉獄の奥より、全てを制圧する王を呼び覚ませ!融合召喚!!

 生誕せよ!レベル8!DDD烈火大王エグゼクティブ・テムジン!!」

 

Eテムジン「ふんっ!!」

     ATK2800

 

 シンクロ素材となったテムジンが阿修羅のような姿となってフィールドに舞い戻る。

 シンクロ、融合ときたなら次は

 

「除外されたDDゴーストの効果で除外されているDDゴースト以外のDDモンスター、DDヴァイス・テュポーンを墓地へと戻す。

 そして、DDモンスターが特殊召喚されたことにより、エグゼクティブ・アレクサンダーの効果が発動する。

 墓地のDDモンスターDD魔導賢者二コラを特殊召喚!」

 

 二コラ ATK2000

 

「エグゼクティブ・テムジンにも烈火王テムジンの効果が受け継がれている。

 DDモンスターの特殊召喚により、墓地のもう1体のDD魔導賢者二コラを特殊召喚!」

 

 二コラ ATK2000

 

 これで同じレベルのモンスターが2体

 

「レベル6の悪魔族モンスター、DD魔導賢者二コラ2体でオーバーレイ!

 世界に轟け、華々しき栄華!全ては我へと通ず!エクシーズ召喚!!

 生誕せよ!ランク6!DDD怒涛大王エグゼクティブ・シーザー!!」

 

Eシーザー「オオォォォォォォォ!!」

     ATK2800 ORU2

 

 融合からシンクロ、そしてその2体が協力して召喚されたエクシーズ・・・

 本当にこの次元のデュエリストは分け隔てなどなくカードを使うのだな・・・

 

「ん?おぉ!ユート殿、気づかれたか!

 大丈夫でござるか?」

 

 病室に入ってきたのは青いマフラーをした月の模様の入ったはち金をつけた忍者の少年

 名前は・・・月影だったか?

 だが彼がその背に背負っているのは

 

「お前、なぜアカデミアを連れている!」

 

 あの特徴的な仮面は外されているが、青い軍服のような恰好をした男

 まちがいない、あれはこの世界を襲撃したアカデミアだ!なぜそんな奴をここへ!

 

「心配めさるな。

 こやつは、もはや抵抗することもできぬでござるからな・・・」

 

「なに?」

 

 見てみれば、そいつの顔に生気は全くなく、虚空を見つめて呻いている。

 何があった?

 

「詳しいことは、あの二人の喧嘩が終わった後に遊矢殿から聞くといいでござる。

 今邪魔をすると、後が怖いでござるからな・・・」

 

 ・・・・・・喧嘩?


「エグゼクティブ・アレクサンダーは自分フィールド上にこのカード以外のDDDモンスターがいるとき、攻撃力を3000ポイントアップする!

 カードを1枚伏せ、ターンエンド!」

 

 Eアレクサンダー ATK3000→6000

 

 いや~さすがタガが外れた赤馬 零児、すさまじい盤面だな。

 先攻1ターンで手札使いきったが、三大王とサイフリート出して1伏せ

 エグゼクティブ・シーザーとサイフリートの妨害が厄介だな。

 セットはカウンターじゃなきゃ、行けるか?

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 まずは、サイフリートの効果を使わせるとするか。

 

「俺はスケール3のEM(エンタメイト)シール・イールをペンデュラムゾーンにセッティングし、ペンデュラム効果発動。

 1ターンに1度、相手フィールド上の表側表示モンスター1体の効果をエンドフェイズ終了時まで無効にする。

 俺はエグゼクティブ・シーザーの効果を無効にする。」

 

「そうはさせない!その効果にチェーンしてサイフリートの効果発動!

 サイフリートは1ターンに1度、フィールド上のマジック、トラップの効果を次のスタンバイフェイズまで無効にする。この効果は相手ターンでも使用可能だ!

 ペンデュラムゾーンに存在するペンデュラムカードはマジックカード扱い、よって、シール・イールの効果を無効にする!」

 

 呪われた大剣から出た赤い雷がシール・イールを感電させる。

 だが、これで魔法カードが使える。

 

「スケール3のマジカル・アブダクターをペンデュラムスケールにセッティング。」

 

 光の柱に新たに昇る独特の模様が描かれた法衣を身に纏う女魔法使い。

 

「そのカードは!?」

 

「そう、3回戦出場だって、貰ったカードさ。ありがたく使わせてもらう。

 魔法カード、三戦の才を発動

 このカードは1ターンに1度、このターンの自分のメインフェイズに相手がモンスター効果を発動している場合に発動できる。」

 

「何!?」

 

「悔しいだろうねぇ?良かれと思ってやったことが、裏目に出るのは。

 三戦の才は3つの効果の中から1つの効果を使えるが、今回は相手フィールド上のモンスターを1体選んで、コントロールをエンドフェイズまで奪う効果を使わせてもらおう。

 奪うのはエグゼクティブ・シーザーだ。」

 

 エグゼクティブ・シーザーは俺に向けていた大剣を赤馬社長に向けて反抗の意思を示す。

 

「魔法カード使用により、マジカル・アブダクターに魔力カウンターが1つ乗る。」

 

 マジカル・アブダクター 魔力C0→1

 

 マジカル・アブダクターのベルトのバックルに光が灯る。

 後、2枚

 

「特殊召喚を無効にして攻撃力を上げる効果と、フィールドから墓地へ送られることで契約書を手札に加える効果か。

 厄介だし、奪えるのはエンドフェイズまでだから、こいつには早々退場してもらおう。

 俺はランク6のエグゼクティブ・シーザー1体でオーバーレイ!」

 

「なっ!?」

 

「1体のモンスターでオーバーレイネットワークを再構築、エクシーズチェンジ!

 来い、迅雷の騎士ガイアドラグーン!」

 

ガイアドラグーン「はっ!」「ギャオオォォォォォ!」

 

 重厚な鎧を身に纏っていた激流の王はカラフルな鎧の竜騎士へと姿を変える。

 これで妨害札らしきものはあのセットカードだけだ。

 

「おぉ!?エクシーズが何のカードも使わずに変わったぞ!!」

 

「1発目に出すモンスターの召喚の仕方がひでぇ・・・」

 

「これであのモンスターのサーチ効果は使えなくなったか

 そして、呼び水にされたエグゼクティブ・シーザーはもう戻らない。」

 

 さっきまで青い顔していたセレナが元気になっている。

 あんなにバカっぽかったっけ?まあ、いい

 

「酷かろうが、ルール上問題なきゃアリなんだよ。沢渡

 というわけで、こんなカードも使う。魔法カード、隣の芝刈り

 自分のデッキが相手のデッキの枚数より多いとき、互いのデッキ枚数が同じになるようにデッキの上からカードを墓地へ送る。」

 

「デッキ枚数だと!?

 くっ!私のデッキの枚数は28枚、6枚ものカードが墓地へ・・・」

 

 6枚?あぁ・・それは違うな。

 

「何を言っている。俺のデッキをよく見ろよ?」

 

 この場にいる全員が俺のデッキに注目する。多分、全員同じことを思うだろう。

 

(((((((分厚い!?)))))))

 

「見てわかる通り、このデッキは60枚デッキ

 よって墓地へ送られるカードは・・・26枚だ。」

 

「なんだと!?」

 

 このデッキは素良に使ったのとは別の60枚デッキ

 それなりにDDDデッキに対抗できるデッキだから、たっぷりと楽しんでくれ

 

「落ち方は・・・うん、まぁまぁだな。

 効果で墓地へ送られたシャドール・ビーストと影依の原核(シャドールーツ)の効果発動

 まずは影依の原核(シャドールーツ)の効果で墓地から同名以外のシャドールマジック、トラップを1枚手札に加える。

 俺は影光の聖選士(レーシャドール・インカーネーション)を手札に加え、さらにシャドール・ビーストの効果で1枚ドローする。

 そして、魔法を使ったことでマジカル・アブダクターに2つ目の魔力カウンターが乗る。

 

 マジカル・アブダクター 魔力C1→2

 

「これで3枚目、フィールド魔法、天空の虹彩を発動。」 


 暗い夜空に7色の光が輝く

 なぜだろうか、俺はこの美しい光に恐ろしさを感じる。

 

「おぉ!ユート!起きたのか!」

 

「セレナ、すまない。

 だが、これはいったいどういう状況だ?」

 

 状況がよくわからないのと、アカデミアと同じ部屋に居づらかったので外に出てみたが

 

「むぅ?また遊矢に似たやつが・・・」

 

「あぁ、俺はユート、エクシーズ次元のデュエリストだ。

 誰かこの状況のことを教えてくれないか?」

 

「赤馬社長が榊 遊矢の癇に障ったんだよ。

 んで、社長も榊 遊矢に対してブチ切れて、喧嘩っつぅわけだ。」

 

「そ、そうなのか・・・

 状況は赤馬 零児の優勢に見えるな。」

 

「いや、それはどうだろうなぁ?」

 

「うむ、遊矢はすでに赤馬 零児の妨害策を潜り抜けた。

 墓地リソースが大量に出来てしまった以上、何をするか見当もつかん。」

 

 榊 遊矢と付き合いのあるらしい彼らすら、何をするか見当がつかない?

 いったいどういうデュエルをするんだ?

 

「マジカル・アブダクター、ペンデュラム効果発動

 1ターンに1度、このカードに乗っている魔力カウンターを3つ取り除き、デッキからペンデュラムモンスターを手札に加える。

 俺が加えるのは慧眼の魔術師。」

 

 マジカル・アブダクター 魔力C2→3→0

 

「そして、天空の虹彩の効果を発動

 1ターンに1度、このカード以外の自分フィールド上の表側表示カード1枚を破壊し、デッキからオッドアイズカードを1枚手札に加える。

 俺はマジカル・アブダクターを破壊し、デッキから儀式魔法、オッドアイズ・アドベントを手札に加える。」

 

「!!?

 トラップ発動!契約洗浄(リース・ロンダリング)

 自分フィールド上の契約書をすべて破壊し、その枚数分ドローしさらに1枚につき1000ポイントのライフを回復する。

 私のフィールドの契約書は2枚、よってそれを破棄し2枚のカードをドロー、さらに2000ポイントのライフを得る!」

 LP4000→6000

 

 赤馬 零児が明らかに慌てている。

 あの儀式魔法で召喚されるモンスターを警戒しているのか?

 

「おうおう、怯えちゃってぇ~

 それなら期待に応えて、たっぷりとファンサービスしてやろう。

 スケール5の慧眼の魔術師をペンデュラムスケールにセッティング

 これでレベル4のモンスターがペンデュラム召喚可能となった。」

 

「まて!私はペンデュラムスケールセッティング時に手札の増殖するGの効果を発動!

 このターン、貴様が特殊召喚を行うたびに私は1枚ドローする!」

 

「あらまぁ、意外なカードを・・・でも防御カードが引けるかなぁ?

 揺れろペンデュラム、異界への扉を開け!ペンデュラム召喚!

 エクストラデッキからマジカル・アブダクター、手札からマジカル・コンダクターを特殊召喚!」

 

 マジカル・アブダクター ATK1700

 マジカル・コンダクター ATK1700

 

 流星のような光に乗って現れたのは服装だけが違う同じ顔の女魔法使い

 これが、ペンデュラム召喚か・・・

 

「特殊召喚により1枚ドローする。」

 

「マジカル・アブダクターは魔法カードが発動するたびに魔力カウンターが1つ乗り、攻撃力が魔力カウンターの数×100ポイントアップする。

 マジカル・コンダクターは魔法カードが発動するたびに魔力カウンターが2つ乗る

 とはいえ、ちまちまマジックカードを発動してたんじゃ手札がなくなるので、魔法カード、魔力統轄を発動

 このカードはまずデッキからエンディミオンカードを1枚手札に加える。

 俺が手札に加えるのはフィールド魔法、魔法都市エンディミオン。」

 

 新たなフィールド魔法、あれを発動させて魔力カウンターを稼ぐつもりか?

 

「その後、自分フィールドの魔力カウンターを置くことができるカードに、自分のフィールド、墓地の魔力掌握、魔力統轄の数まで可能な限り魔力カウンターを置くことができる。」

 

「何っ!?」

 

「俺の墓地には魔力統轄が1枚、魔力掌握が2枚、そしてフィールドにこの魔力統轄が1枚の計4枚

 よって俺はマジカル・コンダクターとマジカル・アブダクターに2個ずつ魔力カウンターを置き、それぞれのモンスター効果でさらに魔力カウンターが置かれる。」

 

 マジカル・アブダクター ATK1700→1800→2000

             魔力C0→1→3

 マジカル・コンダクター 魔力C0→2→4

 

「マジカル・アブダクターの効果発動

 1ターンに1度、このカードの魔力カウンターを3つ取り除き、デッキから魔法使い族、レベル1モンスターを手札に加える。

 俺はマジシャンズ・ソウルズを手札に加える。」

 

 マジカル・アブダクター 魔力C3→0

 

「そしてデッキのレベル6以上の魔法使い族、EM(エンタメイト)ミス・ディレクターを墓地へ送り、マジシャンズ・ソウルズは特殊召喚できる。」

 

 マジシャンズ・ソウルズ DEF0

 

 半透明な幽霊のようなモンスター、あれは伝説に聞いた黒き魔術師たちか!?

 まさか、この次元でもあるとは・・・一度この目で見てみたいものだ・・・

 

「モンスターの特殊召喚により1枚ドロー」

 

「慧眼の魔術師のペンデュラム効果

 自身を破壊し、デッキから慧眼の魔術師以外の魔術師ペンデュラムモンスターをペンデュラムゾーンに置く

 俺は新たにスケール3の相克の魔術師をペンデュラムゾーンに置く。

 

 さらにマジシャンズ・ソウルズの効果発動

 自分のフィールド、手札の魔法、トラップカードを2枚まで墓地へ送り送った枚数分デッキからドローする。

 俺は手札の影光の聖選士(レーシャドール・インカーネーション)と魔法都市エンディミオンを墓地へ送り2枚ドロー

 

 そして、マジカル・コンダクターの効果発動

 1ターンに1度、自身に乗っている魔力カウンターを任意の数取り除き、取り除いた数と同じ数のレベルを持つ魔法使い族モンスターを手札または墓地から特殊召喚する。

 来い、EM(エンタメイト)ペンデュラム・マジシャン!」

 

 女魔法使いに導かれやってきたのは振り子を持ったマジシャン

 だがそのマジシャンが持つ振り子と同じデザインの巨大な振り子がマジカル・コンダクターとマジシャンズ・ソウルズを破壊する。

 

「ペンデュラム・マジシャンの特殊召喚に成功したので効果発動

 俺のフィールド上のカードを2枚まで、マジシャンズ・ソウルズとマジカル・コンダクターを破壊して、デッキからEM(エンタメイト)を2種類、EM(エンタメイト)ギタートルとEM(エンタメイト)ドクロバット・ジョーカーを手札に加える。」

 

「くっ!私はカードを1枚ドローさせてもらう。」

 

「いいだろう、好きなだけドローするといい。

 儀式魔法、オッドアイズ・アドベントを発動

 レベル合計が儀式召喚するモンスターのレベル以上になるように、自分の手札、フィールド上のペンデュラムモンスターをリリースして、自分の手札、墓地のドラゴン族儀式モンスターを儀式召喚する。

 俺はレベル4のEM(エンタメイト)ペンデュラム・マジシャンとマジカル・アブダクターを儀式の供物に捧げ、地の底から目覚めよ!

 儀式召喚!大地の力宿る戒めの竜!オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン!!」

 

オッドアイズG「グオオォォォォォォ!!」

       ATK2800

 

 地を割り、墓地から呼びだされる黒い水晶が生えた異虹彩の竜

 これが映像にあった榊 遊矢の儀式竜か

 

「こいつの儀式召喚時、相手の魔法、トラップカードをすべて手札に戻すが、あいにくとお前のフィールドには1枚もないから空打ちだ。」

 

「来たか、グラビティ・ドラゴン・・・特殊召喚により1枚ドローだ!」

 

「よかったなぁ~?増殖するGの効果はこのターン中に継続し続ける効果

 もし、いちいち発動する効果なら使用料を払ってもらわなくちゃいけなくなるところだった。」

 

 使用料?

 

「だが、お前に会いたがっているのはこいつだけじゃないぞ?

 魔法カード発動、ダウジング・フュージョン!

 このカードは1ターンに1度、墓地の融合素材となるペンデュラムモンスターを除外し、融合召喚を行う。

 俺は墓地のオッドアイズ・ミラージュ・ドラゴンと曲芸の魔術師を除外融合!

 疾風迅雷、その二色の眼に写る、歯向かいし者を平伏させよ!

 融合召喚!雷の力帯びし竜、オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン!!」

 

オッドアイズV「グオオォォォォォ!」

       ATK2500

 

 今度は融合か!?

 

「ボルテックス・ドラゴンが特殊召喚されたとき1ターンに1度、相手フィールド上の表側攻撃表示モンスターを手札に戻す。

 呪血王サイフリートにご退場願おうか!パラライズシャウト!!」

 

 

 緑色の装甲の竜、ボルテックス・ドラゴンの羽が展開し電気を帯びてサイフリートに急接近、サイフリートは吹っ飛ばされ、赤馬 零児のエクストラデッキへと戻っていく

 そして、これでフィールド上のDDDモンスターは2体となった、よって

 

「くっ!DDDモンスターが減ったことで、エグゼクティブ・アレクサンダーの攻撃力がダウンする。

 そして、特殊召喚によりさらに1枚ドローだ。」

 

 Eアレクサンダー ATK6000→3000

 

「俺のドラゴンは出たがりだからな。どんどん行くぜ?

 まずはEM(エンタメイト)ドクロバット・ジョーカーを通常召喚。」

 

ドクロバット・ジョーカー「はっ!」

            ATK1800

 

「ドクロバット・ジョーカーの召喚に成功したことにより、デッキからEM、オッドアイズ、魔術師ペンデュラムモンスターの内1体を手札に加える。

 俺が手札に加えるのはEM(エンタメイト)リザードロー

 

 そして、俺のフィールドのレベル7以上のオッドアイズモンスター、オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴンのレベルを3つ下げることで墓地からこいつを特殊召喚する。

 来い!チューナーモンスター、貴竜の魔術師!」

 

 オッドアイズV LV7→4

 

貴竜の魔術師「はいっ!」

      DEF1400

 

 フィールドに新たに並ぶ黒い道化と白き魔術師

 チューナー、とくれば

 

「相克の魔術師のペンデュラム効果をガイアドラグーンに対して発動し、レベル4のドクロバット・ジョーカーにレベル3の貴竜の魔術師をチューニング!

 二色の眼に写る七つの星よ、流星となって降り注げ!

 シンクロ召喚!星紡ぐ戦の竜、オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン!!」

 

オッドアイズM「ギャアアァァァァ!!」

       ATK2500

 

「貴竜の魔術師はオッドアイズモンスター以外のモンスターとシンクロ素材になった時、デッキの一番下へ戻る。

 そして、オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴンが特殊召喚されたとき、ペンデュラムゾーンのモンスターを1体、特殊召喚できる。

 さぁ出てこい、相克の魔術師!」

 

相克の魔術師「はっ!」

      ATK2500

 

 光の中から飛び出す赤い流星、その炎を振り払い現れたのは炎の力を宿した異虹彩の竜

 そして、竜に導かれ光の柱の中から解放される大盾を構えた魔術師、そのレベルはどちらも7!!

 

「レベル7のオッドアイズ・メテオバースト・ドラゴンと相克の魔術師でオーバーレイ!

 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!

 六道八獄踏み越えて、冥府すらも二色の眼で睥睨せよ!

 エクシーズ召喚!全てを凍てつかせる永久の竜、オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン!!」

 

オッドアイズA「ギュオオォォォォォォ!!」

       ATK2800 ORU2

 

「これが・・・全召喚・・・」

 

 ペンデュラムに始まり、儀式、融合、シンクロ、そしてエクシーズを成功させた。

 その複雑な動きはまるでパズルのようで、組みあがった絵がここまですさまじいものとなるとは・・・

 

「おっと、まだ終わりじゃないぞ?

 相克の魔術師のペンデュラム効果でこのターン、ガイアドラグーンはそのランクと同じレベル、つまりレベル7のモンスターとしてエクシーズ素材に出来る。」

 

 エクシーズをランクアップではなく、直接エクシーズ召喚の素材にするだと!?

 

「俺はレベル7のオッドアイズ・グラビティ・ドラゴンとレベル7として扱う迅雷の騎士ガイアドラグーンでオーバーレイ!」

 

――ドクンッ!

 

 ぐっ!?

 

「激情秘めたる二色の眼の竜よ、紅蓮の翼で戦場を焼き、無知なる愚者に贖いを!エクシーズ召喚!!」

 

 迅雷の騎士は炎へと変わり、大地の竜を包み込む

 業火の中で未熟な竜は魔竜へと覚醒する。

 

「天を焦がせし烈火の竜!覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン!!」

 

オッドアイズ・レイジング「ギャオォォォォォォォォォ!!」

            ATK3000 ORU2

 

 エクシーズで、ペンデュラムだと!?

 それだけでも驚きだが、なんだこの身が竦むような恐怖心は!?

 

「おい!ユート、大丈夫か!?」

 

「おいおい、お前、突然倒れたんだろ?

 無理しねぇで、寝ていろよ?」

 

 セレナと沢渡が心配してくれるが、昼間のように倒れそうになるほどじゃない。

 

「い、いや、大丈夫だ・・・」

 

 身に覚えがないはずの赤い魔竜

 あのドラゴンは、いったい・・・?


「これが・・・ペンデュラムエクシーズモンスターか!?」

 

 反応はあったものの映像にその姿が映らなかったモンスターの、その圧倒的な威圧に零児は増殖するGの効果でドローしながらもたじろぐ

 

「空いたペンデュラムゾーンにEM(エンタメイト)リザードローをセッティングしてペンデュラム効果発動、このカードを破壊して1枚ドローする。

 では、さっそくレイジング・ドラゴンの効果を使おう

 1ターンに1度、このカードがエクシーズモンスターを素材にしてエクシーズ召喚されている場合、オーバーレイユニットを1つ使い相手フィールド上の全カードを破壊し、破壊したカード1枚につき攻撃力を200ポイントアップする。」

 

「何っ!?」

 

「レイジング・テンペスト!」

 

オッドアイズ・レイジング「グオオォォォォォ!!」

            ORU2→1

 

 オーバーレイユニットを取り込んだレイジング・ドラゴンの体から熱波が放出される。

 その熱は風などでは防げず、烈火の大王すら溶かしつくす。

 

 オッドアイズ・レイジング ATK3000→3400 

 

「これでご自慢の王様たちは全滅だなぁ?

 バトル!オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴンでダイレクトアタック!

 この攻撃宣言時、オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴンの効果発動!」

 

「手札のバトルフェーダーの効果発動!

 相手のダイレクトアタック宣言時このカードを特殊召喚してバトルフェイズを終了させる!」

 

「無駄だ!その効果は発動させない!

 オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴンの効果発動!!

 チェーンはボルテックス、フェーダー、アブソリュートの順で解決される。

 ボルテックス・ドラゴンの効果でエクストラデッキのEM(エンタメイト)ドクロバット・ジョーカーをデッキへと戻してバトルフェーダーの効果は無効!

 そして、オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴンの効果!

 オーバーレイユニットを1つ使い、ボルテックス・ドラゴンの攻撃を無効にする!」

 

 氷に雷がまとわりつき氷の中に竜の影が浮かび上がる。

 

「その後、墓地からオッドアイズモンスターを1体特殊召喚する・・・」

 

 遊矢はここで少し迷った、墓地にバトルフェイズ中の相手のモンスター効果を使えなくするオッドアイズ・メテオバースト・ドラゴンがいる。

 遊矢の知っている限り、このタイミングで手札から発動できるトラップや魔法で攻撃を防げるようなものはない。

 OCGではの話だが

 

(5D`sであったんだよな・・・この状況で発動できるトラップ・・・)

 

 それは『女教皇の錫杖』モンスターの攻撃を無効にしバトルフェイズを終了させ、さらに500ポイントのダメージを与えるトラップであり、自分フィールドにモンスターがいない場合、手札から発動できる代物である。

 OCGよりもより多くのカードがあるこの世界では、さすがの彼でもすべてを把握できない、なので零児がそんなものを持っていてもおかしくはないと考える。

 そして、彼は零児がこのまま終わるとは思っていない。

 

(特殊召喚すれば奴の手札は10枚、そういうカードを手札に呼び込んでいてもおかしくはない。

 重ね掛けしてこないから、持ってないか?う~ん・・・

 どちらにしろ攻撃が止められるなら・・・)

「俺は、オッドアイズ・グラビティ・ドラゴンを特殊召喚する。」

 

オッドアイズG「グオォォォォォ!!」

       ATK2800

 

 氷柱を破壊し復活する大地の竜

 これで再び零児は効果を使うたびに500ポイント自らのライフを削らなくてはいけなくなった。

 

「バトルフェーダーの効果が無効になったことで、バトル続行!

 オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴンでダイレクトアタック!」

 

「手札の2枚目のバトルフェーダーの効果発動!

 ダイレクトアタックを無効にし、このカードを特殊召喚する!」

 

「効果を使いたいなら、使用料を払ってもらおう!」

 

「くっ!わかっている・・・」

 LP6000→5500

 

 バトルフェーダー DEF0 ――ゴーン、ゴーン、ゴーン

 

 悪魔が鳴らす鐘の音が竜の闘志を収めていく、だが零児にはその代償が支払われた。

 

(2枚目のフェーダー、メテオバーストでよかったか・・・)

「グラビティ・ドラゴンの特殊召喚で2枚目を引いたか、運のいいやつ

 だが、御大層な御旗を掲げている割には、ギリギリじゃないか?」

 

「だが、私はまだ負けていない!」

 

「ふっ、そうだな、どんなに情けなくても勝てばいいんだ。勝てればな。

 魔法カード、貪欲な壺発動

 墓地のEMリザードロー2枚とマジカル・コンダクター、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン、増殖するGをデッキに戻し2枚ドロー。

 

 スケール4のオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンをペンデュラムゾーンにセッティングしてエンドフェイズ

 オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンのペンデュラム効果で自身を破壊し、デッキから攻撃力1500以下のペンデュラムモンスターを1体デッキから手札に加える。

 俺はEM(エンタメイト)リザードローを手札に加えて、ターンエンドだ。」

 

 これで互いにターンが終わった。

 結果的には互いにダメージは全く与えられていない。

 だが、オッドアイズたちの効果を知らない権現坂以外の面々は、零児が謎の500ポイントのコストを払わされたことに疑問を抱く。

 

「なぁ、なぜ零児は自分のカードを発動させるためにライフを500支払ったのだ?

 あのカードの発動にはライフコストはいらないんだろう?」

 

「あれはグラビティ・ドラゴンの効果だ。

 相手プレイヤーは、あらゆるカードの発動に対して、500ポイントのコストを要求される。

 さらにボルテックス・ドラゴンは1ターンに1度、あらゆるカードの発動に対してのカウンター効果を持つ。」

 

「げぇ~それって、効果発動に絶対手札1枚と1000ポイントのコストが発生するってことかよぉ。」

 

「う~む、零児殿の手札は多いが・・・」

 

「フィールドにバトルフェーダー以外のカードはなく、墓地にも効果を発動できるようなカードはない。

 相性が悪すぎでござるな・・・」

 

「そして、アブソリュート・ドラゴンには攻撃を止める効果があって、レイジング・ドラゴンは全体破壊効果がある。

 守るだけ不利になるこの状況では、攻めるしかないのか・・・」

 

 見ている面々は言葉には出さないが、全員こう思った『意地が悪い!!』と

 

「行くぞ!私のターン、ドロー!

 ・・・私はスケール5のDDD壊薙王アビス・ラグナロクをペンデュラムゾーンにセッティング。」

 

「忘れてないよな?

 ペンデュラムゾーンへの設置、そしてそのペンデュラム効果の発動

 それぞれに代金を支払ってもらう。」

 

「くっ、わかっている。」

 LP5500→5000

 

「ついでに言っておくが、ご自慢の契約書の効果を使うたびにも効果が発生するからな?

 もちろん強制効果のライフダメージ発生時にもな。」

 

「「「「「理不尽すぎる!」」」」」

 

「ならば・・・手札のDDスワラル・スライムの効果発動!

 手札のこのカードと融合素材モンスター、DDラミアを墓地へ送り、DDD融合モンスターを融合召喚する。

 呪われし女よ、自在に形を変える神秘の渦に融け込み、真の王へと生まれ変わらん!融合召喚!

 出でよ!神の威光伝えし王!レベル7、DDD神託王ダルク!」

 LP5000→4500

 

神託王ダルク「はっ!!」

      ATK2800

 

 現れたのは悪魔となった聖女騎士、そして彼女が現れたことにより光の柱の中にたたずむ黄昏の王が動く。

 

「この瞬間、アビス・ラグナロクのペンデュラム効果発動!

 1ターンに1度、DDモンスターが特殊召喚されたとき墓地のDDモンスター1体を特殊召喚する。

 その後、私は1000ポイントのダメージを受け、相手が受ける戦闘ダメージはこのターン半分になる。」

 LP4500→4000

 

「その効果は通さない!

 オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴンの効果発動!

 1ターンに1度、魔法、トラップ、モンスター効果が発動したとき発動し、その効果を自分のエクストラデッキの表側表示のペンデュラムモンスターをデッキに戻して無効にし破壊する。

 俺はEM(エンタメイト)リザードローをデッキに戻し、アビス・ラグナロクのペンデュラム効果を無効にし破壊する。

 パラライズエフェクト!」

 

 ボルテックス・ドラゴンの雷がアビス・ラグナロクを貫く

 それは零児もわかっていたこと、目的はボルテックス・ドラゴンの効果を使わせることなのだから

 

「私は新たにペンデュラムゾーンにスケール1のDDD運命王ゼロ・ラプラスをセッティング!」

 LP4000→3500

 

「!?」

 

 黄昏の王が消えた光の柱に新たに昇るのは無数の計測道具や骨で構成された巨大な山羊の頭蓋骨

 それは本来のこの世界の歴史には登場しないものなので、遊矢は少し驚いた。

 

「ゼロ・ラプラスのペンデュラム効果!

 1ターンに1度、自分のメインフェイズに自分のエクストラデッキから表側表示のDDDペンデュラムモンスターを1体手札に加える。

 私はDDD壊薙王アビス・ラグナロクを手札へ戻す。

 

 そして、墓地のDDスワラル・スライムを除外し効果発動!

 手札のDDモンスターを特殊召喚する!現れよ!神々の黄昏に審判を下す最高神!DDD壊薙王アビス・ラグナロク!!」

 LP3500→3000→2500

 

 アビス・ラグナロク DEF3000

 

 フードで顔を隠し玉座に座る王が今度はモンスターとして現れる。

 契約洗浄で得たライフも使い切った零児だが、勝利のためには仕方ないと、さらにその身を削る。

 

「アビス・ラグナロクの効果発動!

 1ターンに1度、このカードが召喚、特殊召喚された場合、自分の墓地からDDDモンスターを復活させる。

 戻ってこい!DDD怒涛大王エグゼクティブ・シーザー!」

 LP2500→2000

 

Eシーザー「うおぉぉぉぉ!!」

     ATK2800

 

「そして、アビス・ラグナロクの2つ目の効果を発動!

 1ターンに1度、このカード以外の自分フィールドのDDモンスターを1体リリースし、相手フィールド上のモンスター1体を除外する。

 私は復活させたエグゼクティブ・シーザーをリリースしオッドアイズ・グラビティ・ドラゴンを除外する!!」

 LP2000→1500

 

 エグゼクティブ・シーザーが大剣を構えてさんざん零児を苦しめてきたグラビティ・ドラゴンを異次元の彼方へ追いやり、自らは冥府へと帰っていく、1枚の契約書を残して

 

「エグゼクティブ・シーザーがフィールドから墓地へ送られたことでデッキから闇魔界の契約書を手札に加える。」

 

「おいおい、グラビティ・ドラゴンを攻略するだけで随分とライフを減らしちまったじゃねぇか、だいじょーぶかぁ?」

 

「どの口が言うか、この詐欺師め!

 速攻魔法、手札断殺、手札のDDネクロ・スライムと彼岸の悪鬼 スカラマリオンを捨て、2枚ドロー」

 

「俺も手札のEM(エンタメイト)ジンライノとギャラクシー・サイクロンを捨て2枚ドローだ。」

 

「私はアビス・ラグナロクとバトルフェーダーをリリースしてアドバンス召喚!

 現れよ、超越神!DDD死偉王ヘル・アーマゲドン!」

 

 ヘル・アーマゲドン ATK3000

 

(アドバンス召喚、特殊召喚メタを警戒してか・・・それと邪魔なバトルフェーダーをフィールドからどかすのが目的か。

 そして、手札に闇魔界の契約書、エクストラデッキにスケール10のケプラー、すでに設置されているスケール1のゼロ・ラプラス

 これは・・・このターンで全滅だな。)

 

「手札から2枚の永続魔法、異形神の契約書と闇魔界の契約書を発動

 まずは闇魔界の契約書の効果でエクストラデッキの表側表示のペンデュラムモンスター、DD魔導賢者ケプラーをペンデュラムスケールにセッティングする。

 

 そして、役目を終えた闇魔界の契約書を破棄し墓地のDDラミアを自身の効果で特殊召喚

 現れよ、チューナーモンスター、DDラミア。」

 

 DDラミア DEF1900

 

 鱗のようなものに覆われた頭部や腕をした蛇女が、闇魔界の契約書を破って出現する。

 

「レベル7のDDD神託王ダルクにレベル1のDDラミアをチューニング!

 その紅に染められし剣を掲げ、英雄たちの屍を超えていけ!シンクロ召喚!!

 再び生誕せよ!レベル8、DDD呪血王サイフリート!!」

 

サイフリート「はあっ!」

      ATK2800

 

「異形神の契約書の効果、DDDシンクロモンスターがエクストラデッキから特殊召喚されたとき、そのモンスターに相手からの効果対象にならない効果を付与する。

 これでサイフリートはお前の効果の対象にならない。

 

 墓地のDDネクロ・スライムの効果発動

 このカードと墓地のDDモンスター、DDD神託王ダルクを除外してDDD融合モンスターを融合召喚する。

 神の威光伝えし王よ、冥府にて神秘の光を手に入れ、竜をも倒す勇者となれ!融合召喚!

 生誕せよ!レベル8、DDD剋竜王ベオウルフ!」

 

剋竜王ベオウルフ「グオオオォォォンン!!」 

        ATK3000

 

「異形神の契約書の効果、DDD融合モンスターをエクストラデッキから召喚したことにより、私のライフを1000ポイント回復する。」

 LP1500→2500

 

「おぉ!がら空きの状態から、攻撃力3000のモンスター2体と攻撃力2800のモンスター1体!!

 すごいぞ零児!!」

 

「いや。」

 

「赤馬社長のフィールドにはすでにペンデュラムスケールが2枚セッティングされている。

 しかもスケールは1と10!!くるぜぇ、でけぇペンデュラムが!」

 

「我が魂を揺らす大いなる力よ、この身に宿りて闇を引き裂く新たな力となれ!ペンデュラム召喚!!

 現れ出でよ!世界を凝望せし我が僕!レベル7!DDD超視王ゼロ・マクスウェル!

 そして、エクストラデッキから再誕せよ!レベル8、DDD壊薙王アビス・ラグナロク!!」

 

 流星のような光に乗って降臨する顕微鏡のような悪魔と、再臨する黄昏の王

 そしてエクストラデッキから再臨したことにより、異形神との契約が満たされる。

 

「異形神の契約書の効果発動

 ペンデュラムモンスターをエクストラデッキから特殊召喚したことにより、デッキから1枚ドローし、その後手札を1枚捨てる。

 

 そして、レベル8のDDD剋竜王ベオウルフとDDD壊薙王アビス・ラグナロクをオーバーレイ!

 2つの太陽が昇るとき、新たな世界の地平が開かれる!エクシーズ召喚!

 現れ出でよ!ランク8!DDD双暁王カリ・ユガ!!」

 

カリ・ユガ「フン・・・」

     ATK3500 ORU2

 

 輝かしい黄金の光を発する玉座に座る強大な力を持つ悪魔、カリ・ユガ

 彼が降臨したことで、遊矢の竜たちもその威圧にその力を奪われる

 

――グルル・・・

 

 レイジング・ドラゴン ATK3400→3000

 

「カリ・ユガのエクシーズ召喚に成功したことにより、このターン、カリ・ユガ以外のフィールド上のカード効果がすべて無効になり、発動できなくなる。」

 

「それはお前のフィールドのカードだって同じこと、異形神の契約書の最後の効果を使っていれば、俺のオッドアイズを後一体除外できたのになぁ~?」

 

 効果が無効になり、自身の効果で攻撃力を上げていたレイジング・ドラゴンの攻撃力が下がるが、この期に及んでも余裕の態度を崩さない遊矢に零児はさらにイラつく

 

「ならば、用のなくなったものは破棄するだけのこと!

 カリ・ユガの効果発動!オーバーレイユニットを1つ使い、フィールド上のマジック、トラップカードをすべて破壊する!」

 

 カリ・ユガ ORU2→1

 

 カリ・ユガがオーバーレイユニットを握りつぶすと、その光が異形神の契約書と遊矢のEM(エンタメイト)シール・イールと天空の虹彩を消し去る。

 

「バトル!

 サイフリートでオッドアイズ・ボルテックス・ドラゴンを攻撃!バルムンク・スラッシュ!!」

 

 サイフリートがボルテックス・ドラゴンの雷をかわしながら、大剣を叩き込み

 

 遊矢LP4000→3700

 

「ヘル・アーマゲドンでオッドアイズ・アブソリュート・ドラゴンを攻撃!地獄触手鞭!!」

 

 ヘル・アーマゲドンの水晶から発生した闇の触手がアブソリュート・ドラゴンを貫く

 だが、遊矢とてただやられているわけではない。

 

「レイジング・ドラゴンを先に攻撃してくれれば、もう一回遊べたのに

 エクシーズ召喚されたアブソリュート・ドラゴンが墓地へ送られたことにより、エクストラデッキからオッドアイズモンスターを特殊召喚する。

 これは墓地で発生する効果だからな、来い、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン!」

 LP3700→3500

 

オッドアイズP「ギャオオォォォォォォ!!」

       ATK2500

 

「しつこい奴め!ゼロ・マクスウェルでオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンに攻撃!ゼロシャット・ショット!」

 

 遊矢LP3500→3200

 

 望遠鏡から発せられた熱線が、赤い竜を焼き貫き、ついに遊矢のドラゴンも1体となり、偉大なる悪魔と断罪の魔竜がにらみを利かせる。

 

「行け!カリ・ユガ!!オッドアイズ・レイジング・ドラゴンに攻撃!!ツインブレイクショット!!」

 

 カリ・ユガの手から放たれた雷がレイジング・ドラゴンに迫る。

 それをレイジング・ドラゴンは炎を纏った腕で迎撃するが、力を奪われている状態では、その迎撃も虚しく破壊される。

 

レイジング・ドラゴン「グオオォォォォォォォ!!」――バンッ!!

 

「レイジング・ドラゴンは破壊されたとき、ペンデュラムゾーンに置くことができるが、効果を封印されているので素直にエクストラデッキに行くとしよう。

 ちなみにこいつはレベル7のモンスターとしてペンデュラム召喚ができるからな。」

 LP3200→2700

 

「本当にしつこい奴だ・・・カードを2枚伏せてエンドフェイズ

 墓地へ送ったスカラマリオンの効果により、デッキからレベル3、闇属性、悪魔族モンスター、DDナイト・ハウリングを手札に加えターンエンド。」

 

「生憎、出来ないことならともかく、出来ることについては諦めが悪いんでね。

 俺のターン、ドロー!」

 

「ユガの効果は相手ターンにも使える!

 オーバーレイユニットを1つ使い、墓地の契約書を私のフィールドにセットする。」

 

 カリ・ユガ ORU1→0

 

「俺のターンでそれは認められないな!

 墓地のトラップカード、ブレイクスルー・スキルの効果を発動!

 自分のターンにこのカードを除外し、相手モンスター1体の効果をターン終了時まで無効にする。

 カリ・ユガの効果は無効だ!」

 

 なぜだかレイジング・ドラゴンが現れ、さっきの仕返しとばかりにカリ・ユガをぶん殴り玉座から叩き落とす。

 満足したのか、レイジング・ドラゴンはすぐさま消える。

 

「スケール6のEM(エンタメイト)ギタートルをペンデュラムゾーンにセッティング!」

 

「ならば、永続トラップ、戦乙女(ヴァルキリー)の契約書を発動!

 手札のDDネクロ・スライムを捨てて、相手フィールド上のカード1枚を破壊する。」

 

 天より降り注ぐ、光の槍がギターのような亀に降り注ぐが、雷太鼓を背負った犀が現れてその槍を雷で弾き飛ばす。

 

「なんだと!?」

 

「墓地のEM(エンタメイト)ジンライノを除外することで、自分フィールド上のEM(エンタメイト)カードの身代わりにできる。

 ブレイクスルー・スキルを使わせたのはいい判断だが、まだまだ俺の墓地にはいろいろあるぞぉ~

 墓地のギャラクシー・サイクロンをさらに除外して、表側表示のマジック、トラップカードを破壊する。

 戦乙女(ヴァルキリー)の契約書は破壊させてもらう。」

 

「なんて効果の応酬だ!?」

 

「これが榊 遊矢のデュエル・・・」

 

「さて、スケール6のEM(エンタメイト)リザードローをペンデュラムゾーンにセッティングしてギタートルのペンデュラム効果で1枚ドロー

 そして、リザードローのペンデュラム効果」

 

「その効果にチェーンして!サイフリートの効果を発動する!

 フィールド上の表側表示のマジック、トラップカードの効果を次のスタンバイフェイズまで無効化する。

 私が無効にするのはEM(エンタメイト)リザードローだ!」

 

 血染めの雷がリザードローを拘束する。

 これが零児の本当の狙い、ペンデュラム封じの策の一つである。

 

「ペンデュラムスケールが共に6同士。」

 

「これでは遊矢はペンデュラム召喚できない!」

 

「これを狙ってやがったのかぁ!」

 

「お見事。」

 

 零児の遊矢の好むコンボを逆手に取ったペンデュラム封じに見ている面々は驚愕する。

 それは、ユートたちばかりではない

 

「うぅ、おぉぉぉ!」「おぉ~!!」「あっ!あっ!」

 

 部屋に入りきらないので、シートの上に寝かせていたオベリスクフォースたちが、2人のデュエルを見てはしゃいでいた。

 それは赤子のような邪気のないものであり、その目には先ほどまでにはない輝きがあった。

 

「!?・・・なんだ?」

 

「あいつらも、元は決闘者(デュエリスト)であったってことだろうな・・・」

 

「何?」

 

「何もかも忘れても、デュエルを楽しむ心は魂に刻まれていたってことだろ。

 生まれた世界が違えば、あいつらとも楽しいデュエルが出来たのかもな・・・」

 

「・・・・・・」

 

 零児は何も言えなかった。

 それは赤馬 零王の犯した償いきれそうもない罪の証明

 もはや彼らは自らデュエルモンスターを楽しむことはできないだろう。それが自らの背負っている罪への罰だとしても

 

「・・・湿っぽい話になっちまったな。

 そういえば、お前は父さんのファンだったな?だったら、ここでちょっとしたファンサービスとして、特別ゲストを呼ぶとしよう。

 永続魔法、魔術師の再演を発動。」

 

「何っ!?」

 

「このカードの発動時、墓地のレベル3以下の魔法使い族モンスターを1体特殊召喚する。

 来い!EM(エンタメイト)レビュー・ダンサー!」

 

レビュー・ダンサー「はいっ!」

         ATK800

 

 棺桶の中から現れる褐色の少女、彼女はある手品師の助手を務めていたモンスター

 零児にとっても遊矢にとっても、特別な人物

 

「魔術師の再演に・・・レビュー・ダンサー・・・そのカードは、榊さんの・・・」

 

「いや、これは俺のカードさ。

 懐かしい顔だろう?生憎、このデッキにスカイ・マジシャンは入っていないけど。」

 

「君は・・・榊さん、榊 遊勝のことを恨んでいるのではなかったか?」

 

「恨んでるさ。

 でも、カードまで恨む気にはなれないんでね。」

 

 その言葉に零児は目を伏せる。

 それは後ろめたさからくる視線の変化、その変化を遊矢は見逃さない。

 

「やっぱり、お前、父さんの失踪に一枚かんでるだろう?」

 

「!!?」

 

「図星って顔だな。

 まぁ、裏で賞金稼ぎのついでに情報集めもしていたからな。

 赤馬 零王と榊 遊勝の間に親交があったことは知っている。

 そして、父さんの残した手紙には友達が悪いことしているから止めに行くと書かれていた。」

 

「・・・そうだ。

 榊さんに赤馬 零王が何をしているのかを話したのは私だ。

 アカデミアに対抗するための実戦部隊、ランサーズの指揮を執ってもらうために・・・

 だが、彼は次の夜にまだ実験段階の次元移動装置を使って、行方が分からなくなってしまった・・・」

 

 そう、榊 遊勝の失踪は元はといえば零児の所為だ。

 彼が次元戦争のことを遊勝に伝えなければ、彼は失踪せずにいたことだろう。

 彼と彼の家族が汚名を被ることもなかったのだ。

 零児は告白すると、遊矢の顔が見れなくなってくる。だが、遊矢は今は遊勝のことなどどうでもいいのだ。

 彼が気になること、それは

 

「なるほど、これで合点がいった。

 お前、実戦部隊とか言っておきながら、元はアカデミアと正面切って戦う気なんてなかったな?」

 

「「!?」」

 

 遊矢の言葉にユートとセレナは驚愕する。

 

「いや、正確には穏便に済ませればと思っていたってところかな?」

 

「・・・何?」

 

「ん~あの四六時中、笑顔笑顔言っている馬鹿親父に実戦部隊の指揮を執ってもらうように依頼するなんて普通に考えておかしいだろ?

 ただ、父さんは赤馬 零王の親友だ。

 だから、父さんの言葉なら聞いてくれるかもしれないと思って、声をかけた。

 

 だが、勝手に馬鹿親父は先走って失踪したうえ、ユートたちがやってきて次元戦争がすでにどうしようもない段階になっていることを知って、にっちもさっちもいかなくなったから、急遽、強引に突撃部隊を編成しようとした。

 ほら、これでさっきの雑な計画のつじつまが合うだろう?

 3年かけた計画じゃなくて、つい最近、路線変更したんだからな。」

  

「なぜそう思う・・・?」

 

 零児自身すら自覚していなかった本音が解体されていく、遊矢は物語上の『赤馬 零児』という人物しか知らない。

 その評価は馬鹿なのか天才なのか本心含めてよくわからない人物という微妙なものであるが、さっき彼の心の弱さを知ってからどういう人物なのかが分かってきた。

 

「それはとってもシンプルな答えだ。」

 

 彼は

 

「家族だからさ。」

 

 家族愛で動いていると

 

「!!!」

 

「赤馬 零王はこのスタンダードでは偉人レベルの天才だ。

 リアルソリッドビジョンを生み出して、一代でただの町工場を大企業に成長させたんだ。

 正直、尊敬しない方がおかしい。

 うちのただのテーブルデュエルで突然立ち上がってレディース&ジェントルメンしてくるクソ親父より、よっぽどな。

 

 だから、信じたかったんだろう?聡明で尊敬している父親が、戦争なんて馬鹿げたことをするわけない。

 何か理由がある、話せばわかってくれる。そんな甘いことを。」

 

「ふ・・・ふふふ、はははははっ!」

 

 もはや零児の心は丸裸である。

 心の壁を荒らしまわった悪魔に対し笑いが自然とこみあげてくる。

 もはや彼に偽りはいらないのだ。

 

「そうだな、確かに『僕』はただ、父さんに戻ってきてもらいたかっただけなのかもしれない。」

 

「そうか、だったらこのデュエルやめるか?

 俺としたら、転送装置さえ使わせてくれれば、お前は別についてくることはないんだぜ?」

 

「いや、それはない。

 父を止めるのは、息子である『私』の役目だ。」

 

「ふっ、覚悟は決まったみたいだな。」

 

「あぁ、それに」

 

「?」

 

「こんな楽しいデュエル、途中で終わらせるのはもったいない。」

 

 偽りない笑顔で言われたその言葉に、遊矢もつられて笑顔になる。

 

「同感!!俺はEM(エンタメイト)フレンドンキーを通常召喚!」

 

 フレンドンキー ATK1600

 

 現れた1匹のロバ、その背には角の生えたツインテールの女性がまたがっている。

 

EMコン「はぁ~い♡」

   ATK600

 

「フレンドンキーの召喚に成功したことで、墓地からEM(エンタメイト)コンを特殊召喚した。

 EM(エンタメイト)コンの効果発動、このモンスターが召喚、特殊召喚に成功したターンの自分のメインフェイズに1度だけ、このカード以外の攻撃力1000以下のEM(エンタメイト)モンスター1体とこのカードを守備表示にすることで、デッキからオッドアイズモンスターを1体手札に加える。」

 

「オッドアイズだと?

 だが、止まった振り子で何ができる!!」

 

「振り子が止まっても、俺の進化は止まらない!

 EM(エンタメイト)コンとEM(エンタメイト)レビュー・ダンサーを守備表示に変え、デッキからこのカードを手札に加える!」

 

 EM(エンタメイト)コン        ATK600→DEF1000

 EM(エンタメイト)レビュー・ダンサー ATK800→DEF1000

 

――ギャオオオォォォォォォォォォォ!!

 

 2体のアシスタントたちが傅くと、光の柱に浮かび上がっていた数字がバグったかのように数値が定まらなくなり、それと同時に今まで召喚された6体のオッドアイズたちが幻影のように現れる。

 

オッドアイズG/オッドアイズV「「グオォォォ!!」」

 

オッドアイズM/オッドアイズA「「ギャァァァァ!!」」

 

オッドアイズP/レイジング・ドラゴン「「ギャオォォォォ!!」」

 

「な、なんだ!?何が起きている!?」

 

「こいつは自分のペンデュラムゾーンにカードが2枚存在し、自分のエクストラデッキに表側表示のオッドアイズペンデュラムモンスターが存在する場合、手札から特殊召喚できる!オーバースケール・ペンデュラム!!」

 

 幻影の竜たちの像が天空のペンデュラムに重なり、その中から新たな竜が幻想を打ち破り顕現する。

 

「オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン!!」

 

ファンタズマ・ドラゴン「ギャアアオォォォォォォォォォオオオォォォ!!」

           ATK3000

 

 七色に光る炎の翼を揺らし、現れたのは巨大な白亜の竜

 

「こいつが攻撃するときのダメージ計算時、相手モンスターの攻撃力を自分のエクストラデッキの表側表示のペンデュラムモンスターの数×1000ポイントダウンさせる。

 俺のエクストラデッキには6枚のペンデュラムモンスターが表側表示でいる。」

 

「6000ポイントもの攻撃力が削られるというのか!?」

 

「その通り、だけど、せっかくだから派手に行こうじゃないか!

 レベル3のEM(エンタメイト)レビュー・ダンサーとEM(エンタメイト)コンをオーバーレイ!

 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!

 来い、虚空海竜リヴァイエール!!」

 

リヴァイエール「ギャオォォォ!!」

       ATK1800 ORU2

 

「リヴァイエールの効果発動

 1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ使い、除外されているレベル3以下のモンスター1体を特殊召喚する。

 俺はレベル3のオッドアイズ・ミラージュ・ドラゴンを特殊召喚!」

 

 異次元の海を泳ぐ海竜が虚空の中から二色の眼を持つ緑色の竜を連れてくる。

 

ミラージュ・ドラゴン「ギャッ!」

          ATK1200

 

「またエクシーズか!?」

 

「ちっちっちっ、甘いな。

 こいつは融合素材である闇属性、ドラゴン族モンスター1体と獣族モンスター1体をフィールド上からリリースすることでエクストラデッキから融合カードなしで特殊召喚できる。

 オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴンとフレンドンキーをリリースし、特殊召喚!

 出でよ!野獣の眼光りし獰猛なる竜!ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン!」

 

ビーストアイズ「グオオォォォォンン!!」

       ATK3000

 

 新たに表れたのは骨のような鋼殻を持つ獣のような荒々しい竜

 融合素材をリリースという、とんでもない方法で召喚された融合モンスターである。

 

「融合モンスターだと!?」

 

「さてどんどん行こうか

 魔法カード、精神操作、相手フィールド上のモンスター1体のコントロールをターン終了時まで得る。

 DDD死偉王ヘル・アーマゲドンをいただこう。」

 

 ヘル・アーマゲドンがふらふらと移動していく、割と気に入っているモンスターを奪われたので零児はご立腹だ。

 

「また私のモンスターを!!」

 

「はははっ!悔しかろう。

 さらにレベル8のDDD死偉王ヘル・アーマゲドンとビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴンでオーバーレイ!

 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!森羅の守神 アルセイ!」

 

アルセイ「ガオオォォォォォォンン!」

    ATK2300

 

 樹木や葉でできた巨大なライオンかトラのようなモンスターが吠える。

 

「アルセイの効果発動、1ターンに1度、カード名を1つ宣言して、自分のデッキトップを確認し、そのカードが宣言したカードなら手札に加え、そうじゃなかった場合は墓地へ送る。

 宣言するのはペンデュラム・ホルト・・・・ってあら?まさかの正解だぁ。」

 

 デッキが半分以上少なくなっているとはいえ、まさか当たるとは思ってなかった遊矢、だが次善策はすでに用意されている。

 

「しかたない、魔法カード、おろかな副葬を発動

 デッキから魔法、トラップカードを1枚墓地へ送る。

 俺はデッキから、復活の福音を墓地へ送り、アルセイの効果が発動

 自分のデッキからカード効果でカードが墓地へ送られたとき、このモンスターのオーバーレイユニットを1つ取り除き、フィールド上のカード1枚を選んで、持ち主のデッキトップかボトムに戻す。

 ゼロ・マクスウェルをデッキトップにおいてもらおうか?」

 

 アルセイ ORU2→1

 

 アルセイが突進し、ゼロ・マクスウェルが撥ねられる。

 

「次から次へと・・・」

 

「さて、バトルと行こうか!

 オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴンで双暁王カリ・ユガに攻撃!ファンタスティック・フォース!!」

 

 カリ・ユガ ATK3500→0

 

 七色に輝く火炎はカリ・ユガを燃やし尽くすが、零児にはその炎は届かない、何故なら

 

「トラップ発動!ガードブロック!

 戦闘ダメージを1度だけ0にして、さらにその後デッキから1枚ドローする。」

 

「防がれたか・・・ドローロックも無駄になったな。

 アルセイでサイフリートに攻撃!この瞬間墓地のスキル・サクセサーの効果発動!

 墓地からこのカードを除外して自分のモンスターの攻撃力を800ポイントアップさせる。」

 

 アルセイ ATK2300→3100

 

 アルセイの爪とサイフリートの剣がせめぎあうが、力の増したアルセイがその剣を弾き飛ばし、サイフリートを引き裂く

 

「ぐぅぅ・・・」

 LP2500→2200

 

「追撃!リヴァイエールでダイレクトアタックだ!」

 

「ぐわああぁぁぁ!ぐぅ・・・」

 LP2200→400

 

 リヴァイエールの吐いた旋風のブレスが零児を吹き飛ばす。

 もはやそのライフでは、契約書のダメージすら支払えない。

 だが、遊矢はこの状況からでも逆転をしてくるだろうと思い、カードを切る。

 

「メインフェイズ2、ペンデュラム・ホルト発動

 自分のエクストラデッキに3種類以上のペンデュラムモンスターが表側表示でいるとき2枚ドローする。

 

 そして、ランク3以下のモンスターである虚空海竜リヴァイエール1体でオーバレイ!

 1体のモンスターでオーバーレイネットワークを再構築、エクシーズ召喚、ダウナード・マジシャン!」

 

ダウナード「ふみゅ・・・」

     ATK2100→2500

 

 危なそうな薬品を手に持っているが、すでに戦闘が終わっているためかやる気がなさそうな、青い髪の少女が眠り目をこすりながら登場した。

 まったく、この場の雰囲気に合っていない

 

「さらに墓地の影光の聖選士(レーシャドール・インカーネーション)の効果発動

 墓地のシャドール・ビーストとともに除外することで、俺のフィールドの表側表示モンスターを裏側守備表示にする。

 アルセイを裏側守備表示にしてターンエンドだ。」

 

 互いの2ターン目が終わり、零児に対して圧倒的に不利な状況

 だが、零児はなぜか、この緊張を心地よく感じていた。

 

(ライフは400、モンスターも伏せも何もないこの状況、手札はナイト・ハウリングとゼロ・マクスウェル。

 展開することはできても、奴のライフを削りきるには、このドローに賭けるしかない!)

「私のターン、ドロー!

 私はマジックカード、終わりの始まりを発動

 私の墓地に闇属性モンスターが7体以上いるとき、そのうちの5体を除外し3枚のカードを新たにドローする!

 私は墓地からバトルフェーダーと彼岸の悪鬼 スカラマリオン、DDヴァイス・テュポーン、DD魔導賢者二コラ2体を除外して3枚ドロー!」

 

「ドローカードを引いたか。」

 

「ふん、どうやら、私も相当に諦めが悪いようだ

 速攻魔法、ご隠居の猛毒薬を発動

 この効果は相手にダメージを与えるか、自分のライフを回復するかを選択して効果を使える。

 私は自分のライフを1200ポイント回復する効果を使用。」

 LP400→1600

 

(ご隠居の猛毒薬!?ライフ調整に入れるにしても何でアレ!?)

 

「さらにマジックカード、火炎地獄を発動!

 私は500ポイントのダメージを受け、お前は1000ポイントのダメージを受ける!」

 

「えぇ!?ここで直接ダメージカード!?ぎゃああぁぁぁぁ!!」

 LP2700→1700

 

「うぐぅぅ・・・」

 LP1600→1100

 

 炎の精が舞い、2人にダメージが入る。

 

「零児・・・せっかく回復したライフを犠牲にしてまで・・・」

 

「いや、セレナ、これは犠牲ではない。

 これが私の勝利への布石だ!墓地のDDネクロ・スライムの効果発動!

 このカードと墓地のDD魔導賢者二コラを除外して融合!

 冥府に渦巻く神秘の光よ、叡智の光を得て、新たなる王の産声となれ!

 生誕せよ!レベル6、DDD烈火王テムジン!!」

 

烈火王テムジン「フン!」

       DEF1500

 

「手札からチューナーモンスター、DDナイト・ハウリングを召喚!」

 

 DDナイト・ハウリング ATK300

 

「その効果で墓地からDDバフォメットを特殊召喚!」

 

 DDバフォメット DEF1800→0

         ATK1400→0

 

 ナイト・ハウリングの口から飛び出す様々な生物のパーツが入り組む異形の神、DDバフォメット

 異形神の契約書で墓地へと送られていたカードである。

 

「DDバフォメットの効果、1ターンに1度、DDバフォメット以外の自分フィールド上のDDモンスターを対象として、そのレベルを1から8までの好きな数値に変化させる。

 私はDDD烈火王テムジンのレベルを6から4に変更。」

 

 テムジン LV6→4

 

「さらにレベル4のDDバフォメットにDDナイト・ハウリングをチューニング!

 闇を切り裂く咆哮よ!疾風の速さを得て新たな王の産声となれ!シンクロ召喚!

 生誕せよ!レベル7、疾風王アレクサンダー!」

 

 零児の代名詞ともいえる三体の王の内二体がそろい踏み、彼の勝利への道を切り開く

 

「DDモンスターが特殊召喚されたことにより、DDD烈火王テムジンの効果発動!

 甦れ、黄昏の王よ!DDD壊薙王アビス・ラグナロク!」

 

アビス・ラグナロク「フン・・・」

         DEF3000

 

「アビス・ラグナロクの特殊召喚に成功したことで墓地からDDD疾風大王エグゼクティブ・アレクサンダーを特殊召喚!」

 

Eアレクサンダー「ツアッ!!」

        ATK3000→6000

 

「そして、DDモンスターの特殊召喚により疾風王アレクサンダーの効果で墓地のレベル4以下のDDモンスターを特殊召喚する。

 舞い戻れ、DDバフォメット!」

 

 DDバフォメット DEF1800

 

「レベル4になったDDD烈火王テムジンとレベル4のDDバフォメットをオーバーレイ!

 この世のすべてを統べるため、今、世界の頂に降臨せよ!エクシーズ召喚!

 生誕せよ!ランク4!DDD怒涛王シーザー!!」

 

シーザー「ウオォォォォォ!!」

    ATK2400

 

「新たなDDモンスターが特殊召喚されたことにより、エグゼクティブ・アレクサンダーの効果が発動する。

 甦れ、DDD怒涛大王エグゼクティブ・シーザー!!」

 

Eシーザー「ハッ!!」

     ATK2800

 

 青いオーラを纏い現れる2体の怒涛王

 その異次元的な展開力に、零児以外のものは唖然としている。

 

「アビス・ラグナロクの効果発動!

 エグゼクティブ・シーザーをリリースして、セット状態の森羅の守神 アルセイを除外する。

 そして、エグゼクティブ・シーザーの効果でデッキから魔神王の契約書を手札に加える。

 

 さらにランク4のDDD怒涛王シーザー1体でオーバーレイ!

 英雄の名賜りし者、深淵なる大義もて、この世のすべてをいざ射抜かん!エクシーズ召喚!

 降臨せよ!ランク5!DDD狙撃王テル!!」

 

狙撃王テル「ハッ!」

   ATK2300 ORU3

 

 蛇のようなボウガンを持った悪魔の狩人、その力を使うための条件はすでに整っている。

 

「狙撃王テルの効果発動!

 私が効果ダメージを受けたターンに1度だけ、このモンスターのオーバーレイユニットを1つ使って、相手モンスターの攻撃力を1000ポイントダウンさせ、相手プレイヤーに1000ポイントのダメージを与える!ピアシング・アロー!」

 

 放たれた矢はダウナード・マジシャンがいつの間にか抱えていた枕の下半分を消し去り、遊矢へと突き刺さる。

 

ダウナード・マジシャン「!!?」

           ATK2500→1500

 

「ぐわっ!!」

 LP1700→700

 

「永続魔法、魔神王の契約書を発動

 フィールドのDDD狙撃王テルと墓地のDDD剋竜王ベオウルフを融合!

 邪悪を滅し、その正義を示すため、新たな世界を切り開け!融合召喚!

 出現せよ!極限の独裁神!DDD怒涛壊薙王カエサル・ラグナロク!!」

 

カエサル・ラグナロク「ウオォォォォォォ!!」

          ATK3200

 

 重厚な鎧に身を包み、ベルトが触手のように伸びる新たな王、カエサル・ラグナロク

 その姿は名が示す通り、アビス・ラグナロクとシーザーによく似ている。

 

「狙撃王テルが墓地へ送られたことにより、デッキからDDネクロ・スライムを墓地へ送る。

 バトルだ!カエサル・ラグナロクでダウナード・マジシャンに攻撃!」

 

 カエサル・ラグナロクの攻撃がダウナード・マジシャンに迫るが、当人は枕が破壊されたことで落ち込んでいる。

 

「この瞬間、カエサル・ラグナロクの効果発動!

 このカード以外のDDカード、または契約書を手札に戻し、攻撃モンスター以外の相手モンスターをこのカードの装備カードにし、その攻撃力をこのカードの攻撃力にプラスする!

 魔神王の契約書を手札に戻しオッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴンをカエサル・ラグナロクの装備カードにする!」

 

ファンタズマ・ドラゴン「グォォォォ!?」

 

 カエサル・ラグナロク ATK3200→6200

 

 ファンタズマ・ドラゴンがカエサル・ラグナロクに虹色のオーラとして取り込まれ、仲間がいつの間にかいなくなったことに気付いたダウナード・マジシャンは慌てて、手元の薬品をあっちこっちに投げて逃走を図る。

 

「墓地のEM(エンタメイト)ユニの効果発動!

 墓地のこのカードと別のEM(エンタメイト)モンスターを除外して戦闘ダメージを1度だけ0にする。

 俺はEM(エンタメイト)ユニとEM(エンタメイト)ミス・ディレクターを除外してこの戦闘によるダメージを0にする。」

 

 しっちゃかめっちゃかに投げられた薬品のなかに墓地への転送用の魔法陣を発生させるものがあったのか、ダウナード・マジシャンは急いでその中に飛び込み、つっかえているのをEM(エンタメイト)ユニとEM(エンタメイト)ミス・ディレクターが無理やり押し込む。

 

「躱されたか・・・だが、これでもう墓地にダメージを無効にするカードは・・・?」

 

 零児は遊矢のフィールドが異常な状態になっていることに気付く、ダウナード・マジシャンが投げた薬品で発生した魔法陣が消えていないのだ。

 

――バビューン!!

 

 突如鳴り響く銃声、見れば魔法陣を行きかう銃弾のような一匹の小型の竜がいる。

 その竜は目的の場所に入ると、その魔法陣を拡大させ、深淵の力を宿す二色の眼の竜を呼び出す。

 

オッドアイズ・ウィザード「ギャオオォォォォォォォォン!!」

            DEF2500

 

「な、なぜ新たなドラゴンが!?」

 

「手札のヴァレット・リチャージャーの効果

 エクストラデッキから特殊召喚された自分フィールド上の闇属性モンスターが戦闘、効果で破壊された場合、手札、フィールドからこのカードを墓地へ送り、破壊されたモンスターとは元々のカード名が異なる闇属性モンスターを1体、自分の墓地から特殊召喚する。

 俺はこの効果でこのオッドアイズ・ウィザード・ドラゴンを呼び出したのさ!」

 

オッドアイズ・ウィザード「グルル・・・」

 

 その翼は魔法使いのマントのように広がり、頭の角もとんがり帽子にようになったオッドアイズが零児の前に立ちふさがる。

 

(奴の墓地には、ドラゴン族の身代わりとなる復活の福音がある。

 そして、あのモンスターの効果・・・破壊されたときデッキ、墓地からオッドアイズモンスターを特殊召喚し、螺旋のストライクバーストを手札に加えるか・・・

 何かわからぬモンスターを呼ばれ、次のターンを渡すよりは・・・)

「私はカードを1枚伏せて、ターンエンドだ。」

 

「お前のターンが終わる前に墓地のEM(エンタメイト)コンとEM(エンタメイト)フレンドンキーを除外して、俺のライフを500ポイント回復する。」

 LP700→1200

 

 自爆されるということも考えたが、バトルフェイズをしなくてはならないという一工程があるので、よっぽどましだと思い零児はこのターンの攻撃を終えた。

 

「なんて・・・デュエルなんだ・・・」

 

「あぁ、一進一退とはこういうのを言うのだろうな・・・」

 

 セレナとユートのつぶやいた言葉はこの場の全員の感想である。

 もはや両者ともデッキもライフもギリギリだ。

 

「俺のターン、ドロー!

 俺はまず、前のターンに使い損ねていたリザードローの効果を発動

 このカードを破壊し、デッキから1枚ドロー

 

 さらに墓地のシャッフル・リボーンを除外し、自分フィールド上の表側表示カード、魔術師の再演をデッキに戻してシャッフル、その後1枚ドロー

 

 スケール8のEM(エンタメイト)ドクロバット・ジョーカーをペンデュラムスケールにセッティングし、ギタートルのペンデュラム効果で1枚ドローする。」

 

 遊矢は連続でドロー効果を使いながら、零児の伏せたカードについて考察する。

 

(あのセットカード、自分のモンスターに耐性を与えるカードか?

 いや、馬鹿火力モンスターを並べているし、奴の行動は大体がこちらの妨害、それもペンデュラムの妨害が主

 ならあのカードは・・・)

「これで俺はレベル7のモンスターを呼び出せるようになった!

 揺れろペンデュラム!異界へとつながる扉を開け!ペンデュラム召喚!!

 現れろ!ランク7!オッドアイズ・レイジング・ドラゴン!レベル7、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン!」

 

レイジング・ドラゴン「ギャオォォォ!!」

 

オッドアイズP「グルル・・・」

 

 流星に乗って並び立つ二色の眼の竜たち、だがその竜たちに

 

「その特殊召喚に対し!カウンタートラップ発動!神の宣告!!」

 

 神罰が下される。

 

「ライフを半分払い、マジック、トラップの発動及び召喚、特殊召喚、反転召喚を無効にして破壊する。

 ペンデュラム召喚はこれで無効となり、お前の2体のドラゴンは消え去る!」

 LP1100→550

 

レイジング・ドラゴン「ギャアアァァァ!?」――バンッ!

 

オッドアイズP「グオォ!?」――バンッ!

 

「ふっ・・・なるほど、意趣返しか・・・」

 

「振れぬ振り子でも無理やり動かすというのなら、振り切った後を狙うまで、ということだ。」

 

 ペンデュラム召喚は1ターンに1度だけの召喚法である。

 それを無効にされれば、このターン中、遊矢のペンデュラムは封じられる。

 絶体絶命な状況ではあるが・・・

 

「分かりやすいやつ!」

 

 遊矢は笑っていた。

 

「何っ!?」

 

「一見正しいと思える行動でも、それは大いなる間違いを犯していることもある。

 これで、俺はセットカードも手札も気にせずに行動できるってわけだ。

 魔法カード、死者蘇生!墓地からEM(エンタメイト)ペンデュラム・マジシャンを特殊召喚!」

 

ペンデュラム・マジシャン「ハッ!」

            ATK1500

 

「ここで、死者蘇生だと!?」

 

「ペンデュラム・マジシャンの効果でEM(エンタメイト)ドクロバット・ジョーカーを破壊し、デッキからEM(エンタメイト)ヒックリカエルを手札に加え、スケール3のEM(エンタメイト)ヒックリカエルをペンデュラムスケールにセッティングしてペンデュラム効果発動!

 1ターンに1度、フィールド上のモンスター1体の攻撃力と守備力を入れ替える。

 俺はDDD疾風大王エグゼクティブ・アレクサンダーを選択!」

 

 光の柱の中の帽子を被ったカエルがひっくり返り、エグゼクティブ・アレクサンダーの風の流れが変わる。

 

 Eアレクサンダー ATK6000→2500

          DEF2500→6000

 

「エグゼクティブ・アレクサンダーの攻撃力が・・・オッドアイズと同じ攻撃力に!?」

 

「あぁ、『オッドアイズ』と同じ攻撃力だ。

 オッドアイズ・ウィザード・ドラゴンを攻撃表示に変えてバトル!

 エグゼクティブ・アレクサンダーに攻撃!トライ・ストライクバースト!!」

 

「ぐっ!迎え撃て!エグゼクティブ・アレクサンダー!」

 

 魔法陣と自身の口から放たれるブレスは、変幻自在に曲がりながらエグゼクティブ・アレクサンダーを焦がしてゆくが、最後の意地とその刃がオッドアイズ・ウィザード・ドラゴンに突き刺さり爆発が起きる。

 そして、その爆発の中から落ちてきたのは

 

オッドアイズ・ドラゴン「ギャオォォォォォォォォン!!」

           ATK2500

 

 なんとも頼りない姿をしていた。

 

「オッドアイズ・ドラゴン・・・?」

 

 見た目的にはオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンの成長前といった風貌の赤い竜

 何の変哲もないただの効果モンスターである。

 だが、これがこのデュエルに決着を告げるカードだ。

 

「オッドアイズ・ウィザード・ドラゴンが相手により破壊されたことにより、デッキからオッドアイズ・ドラゴンを特殊召喚した。

 ついでに魔法カード、螺旋のストライクバーストを手札に加えるが・・・まぁ、意味はないな。」

 

「どういうことだ!?」

 

「オッドアイズ・ドラゴンは戦闘で破壊し、墓地へ送ったモンスターの元々の攻撃力の半分のダメージを相手に与える。

 そして俺の墓地には復活の福音がある。この意味が分かるだろう?」

 

 零児のフィールドには攻撃力2500の疾風王アレクサンダーがいる。

 本来相打ちならば、オッドアイズ・ドラゴンの効果は使えないが

 

「オッドアイズ・ドラゴンの破壊を復活の福音で肩代わりすれば、私は破壊されたアレクサンダーの攻撃力の半分のダメージを受ける!?」

 

「そういうこと。」

 

 敗北の折、零児は遊矢にある疑問を抱いた。

 遊矢は明らかにスタンダードの一般人とは逸脱した思考をしている。

 もしかしたら、彼はどこか別の次元のデュエリストなのではないかと

 

「・・・何者なんだ君は?」

 

「さぁな、何者なんだろうね。俺は・・・」

 

 もっとも、彼自身にすらそれはわかっていないのだが

 

「フィナーレだ!オッドアイズ・ドラゴン!

 疾風王アレクサンダーに攻撃!スパイラルフレイム!!」

 

 若き竜の炎が疾風王の風によって巻き上がり、2体を燃やしていくがオッドアイズ・ドラゴンは巨神竜の石像の加護により破壊を免れ、零児に対してさらに炎を放つ

 

「・・・完敗だよ。」

 LP550→0


 負けた。

 完全なる大敗だ。

 

「よぉ、負けた割にはいい顔しているじゃないか?」

 

 倒れた私に奴が声をかけてくる。

 これほど、デュエルを楽しんだのは初めてかもしれない。

 死力を尽くす魂の決闘、これがデュエルモンスターズか・・・

 

「そうか・・・いい顔しているのだな。私は・・・」

 

「あぁ、とりあえず今日は休ませてもらうぜ?

 さすがにへとへとなんでね。」

 

「あぁ、好きにするといい。

 私も疲れた・・・」

 

 こんな弱音を吐いたのもいつぶりだろうか?

 だが少し肩の荷が下りた気がする。

 

「まったく、そんな肩肘張ってたら、身が持たないぜ?

 お前は取り合えず、ムカつく親父をぶん殴るぐらいの気持ちでいいのさ。

 そのあとの処理は・・・まぁ、俺が何とかしてやるよ。

 断頭台から、木ののこぎりまでな。」

 

 それは処刑方法じゃないか・・・

 もっとも父さんの所業を考えれば、足りないぐらいだが・・・

 

「あぁ、そうだ。

 お前の持ち株、30%を委譲する契約書と成功報酬の件の話は2日後でいいな?」

 

 ん?

 

「ちょっとまて、あの話は本気だったのか?

 それに15%じゃなかったのか?」

 

「何を言っている俺はちゃんと言っただろ?

 『勝ったら』『前金で』持ち株15%って、負けたんだからその分上乗せに決まっているじゃないか。」

 

(((((あ、悪魔だ・・・)))))

 

「これで俺がお前たち親子の次にLDSの大株主になったから、いろいろ口出しさせてもらうぜ?

 もちろん、ランサーズについてもな?」

 

 こ、この

 

「この詐欺師めえええぇぇぇぇぇぇぇ!!」




ところで遊矢殿、なぜ2日後なのでござる?

修三さんと母さんに事情を話さなくちゃいけないからな。
愛娘が行方不明でしかも狙われているだなんて、修三さんが知ったら・・・あぁ~今から胃が痛い・・・

ち、ちなみに零児殿はこの騒ぎ、どう治めるつもりだったのでござるか?

・・・公表して、ランサーズの後続部隊を作るつもりでいた。

育成場所は?

LDSで・・・

この場にいるメンツのほとんどがLDS所属じゃないから、説得力ないだろ!

ぐはっ!!

はぁ~さて、修三さんたちのこともそうだが・・・あいつもどうにかしないとな・・・
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『ガラス玉か、宝石か』


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それはガラス玉か、宝石か

デュエルしない話にしようと思ったのに入れちゃいました。省略だけど
一応ここから新章、シンクロ次元編です。


「これが、この一件の顛末です。」

 

「そんな・・・柚子・・・」

 

「・・・・・・」

 

 あの夜が明け、次の日の朝に舞網チャンピオンシップの中止が宣言された。

 表向きの理由は広域のリアルソリッドビジョンを利用しようとしたテロリストの介入

 だが、俺は母さんと修造さんには包み隠さず話した。

 アカデミアのこと、次元戦争のこと、赤馬 零王のこと、父さんの失踪の原因、そして柚子と俺が狙われていることを

 

「修造さん、申し訳ありません。

 アカデミアに捕らわれることを避けるため、勝手に別の次元に柚子を行かせてしまって・・・」

 

 できれば、柚子の近くにずっといてユーリが近づいても問題ないようにしたかったが、あまりにも多いアカデミアが全員俺を狙っていたので、一緒にいるより先に倒してしまった方がいいと思っての行動だったが、次善策である別次元に隠すしかなくなってしまった。

 

 ミエルの『花は旅人と共に行ったわ。』のメールの文面からアニメと同じようにシンクロ次元に行ったようだが、あそこも命の危険があるエクシーズよりはましというぐらいの安全度しかない。

 ユーゴがおそらく一緒にいるから大丈夫だとは思うが、あの鼻長官が柚子を見つけないことを祈るばかりだ。

 

「・・・信じがたい話だが、遊矢、お前がそう言っているのならそうなんだろう。」

 

「で、遊矢、あんたは一体どうするんだい?」

 

「アカデミアが俺も狙っている以上、俺はこの世界に居られない。

 赤馬 零児に話をつけて、対アカデミアの部隊に入ったから、アカデミアを、いや赤馬 零王を倒す。」

 

 実際、アカデミアが柚子たちを狙っているのは、あのハゲの命令だからだ。

 ハゲさえどうにかしてしまえば、柚子たちは自由の身だ。

 それを利用すればセレナあたりを新しいアカデミアのトップに据えて、融合次元の平定もできるかもしれない。

 戦後を穏便に済ますにはすべての罪を赤馬 零王に擦り付けて断罪したうえで、次元移動の技術をどうにかしなくてはいけないが・・・

 

「俺がいない間のことはLDSから講師を借りれるようにできるように交渉するし、零児の持ち株の30%をふんだくったから、俺がどうにかなった場合はこの株がすべて修造さんに移譲されるようにします。

 そしたら、修造さんがLDSの社長、副社長に次いでの筆頭株主になるから、塾の講師を借りれるようにすれば講師に困ることもないでしょう。」

 

「なにかって・・・あんた!?」

 

 この世界はアニメでも漫画でもない。

 主人公が絶対的に敵に勝てるなんて保証はないし、事故もあり得る。

 特にシンクロ編の最後に関しては場合によっては次元の狭間に漂うなんてこともなるかもしれない。

 だから、絶対に戻ってこれる保証なんてどこにもない。

 

「遊矢・・・っ!!」

 

 修造さんが何かを決心したかのように立ち上がる、なんだ?

 

「遊矢!!俺とデュエルしろ!!」

 

「えっ?」

 

 いったいなんだ、急に?

 修造さんなら、「俺も連れてけ!」とか「柚子を狙うアカデミアなんてぶちのめしてやる!」とでも言うと思っていたのに?

 

「いいから、ホラ!早くしろ。」

 

「は、はい・・・」


――おい、お~い!

 

 ん?もう、お父さん・・・夏休みでしょ、もうすこし・・・・

 

――お~い!もう朝だぞ!いい加減に起きろ!

 

「もう、お父さん、もう少し・・・Zzz」

 

「誰がお父さんだ!俺はユーゴだ!!」

 

「うえっ!?えっ?ここ・・・どこ?」

 

 怒鳴られて、目が覚めるとそこは知らない場所、倉庫?ガレージ?

 えっ?これってどういうこと!?

 

「やっと目が覚めたか・・・

 まったく、リンに似て図太い神経ぇしてんなぁ、お前?」

 

 目の前にいたのは、白いライダースーツを着た男の子

 青い髪に前髪だけが金髪で撥ねているから、なんだかバナナみたいな印象を受ける。

 彼は確か・・・

 

「えっと・・・ユーゴで、いいのよね?」

 

「おう!」

 

 二カッと笑う彼は遊矢と似た顔つきなのにどことなく子供っぽい。

 うん、なんだか、いい人そう。

 

「ねぇ、ここはどこなの?」

 

 窓の外に広がる景色は、寂れた街と、それを避けるように台の上に建てられた近未来的なビル街

 高速道路みたいなのがあちこちに引かれているし、どう見ても舞網市じゃない。

 私がそのことを聞くと、彼は言いずらそうに口を開く

 

「えぇ~と、ここはシティつぅ、俺の地元なんだが・・・

 ここはたぶん、おめぇがいた世界とは違う世界だと思う・・・」

 

「えっ!?」

 

 そういえば月影さんがこの世界は4つの世界に分かれているって言ってたけど・・・

 えっ!!ってことは私、別の世界に来ちゃったの!!

 

「えぇ~っと・・・私がいた世界に帰る方法はあるのよね?」

 

 そうよね。

 この人、私のいた世界に来てたんだから、私を帰す方法もあるはず・・・

 

「・・・えぇ~と・・・ごめん!――パチンッ!

 俺もどうやって世界を超えてんのか、わからねぇんだ!!」

 

 ・・・・・・?

 手を合わせて、申し訳なさそうに私に謝るユーゴ、えっ?帰れない?

 

「なんですってぇえぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?」

 

 遊矢ぁぁぁ!!お父さん!私どうすればいいのぉぉぉぉ!?


「俺は墓地の装備魔法、妖刀竹光を除外してこいつを特殊召喚だ!

 うおおおぉぉぉぉぉ!!燃えろ!燃えあがれ!!熱血だああぁァァァ!!

 来い!ゴッドフェニックス・ギア・フリード!!」

 

GPギア・フリード「はっ!!」

        ATK3000

 

 爆炎を纏って現れる赤と白の鎧を身に纏う騎士、ゴッドフェニックス・ギア・フリード

 さすがだねぇ。手札抹殺からモンスターやマジックの効果をつなげて1ターンでエースモンスターを呼び出した。

 

「ゴッドフェニックス・ギア・フリードに手札の妖刀竹光を装備!

 この瞬間、発動させておいた永続魔法、燃え竹光の効果発動!!

 このカードが既にマジック、トラップゾーンに存在する状態で、自分が竹光カードを発動した場合、次の相手のメインフェイズ1をスキップする!」

 

 ゴッドフェニックス・ギア・フリードの持つ剣が竹光に変わってそれが轟々と燃えだして、遊矢のフィールドを火の海にする。

 

「さらに俺は蒼炎の剣士に装備魔法、ラプテノスの超魔剣を発動しエンドフェイズ

 このターンに墓地に送られた焔聖騎士―ローランの効果発動!

 デッキからローラン以外の戦士族、炎属性モンスター1体か、装備魔法を1枚俺の手札に加える。

 俺は戦士族、炎属性のエヴォルテクター エヴェックを手札に加えてターンエンドだ!」

 

「俺のターン、ドロー!」

 

「遊矢!お前のメインフェイズ1は燃え竹光の効果でスキップされる!」

 

 メインフェイズ1をスキップされ、遊矢にはスタンバイフェイズの次にバトルフェイズに入るか否かの選択が迫られる。

 だけど、メインフェイズ2はバトルフェイズ後じゃないと発生しないから、バトルフェイズを行わなければエンドフェイズに入っちまう。

 

「俺はこのままバトルフェイズに入る。」

 

「よぉし!だったらこのバトルフェイズの開始時にラプテノスの超魔剣の効果発動!

 装備モンスターの表示形式を変更し、モンスターを1体召喚する。

 出てこい!デュアルモンスター、エヴォルテクター エヴェック!!」

 

蒼炎の剣士「ふん。」

     ATK1800→DEF1600

 

エヴェック「ハッ!!」

     ATK1500

 

 青い鎧の剣士が奇妙な模様の入った剣を盾にして防御姿勢をとる。

 すると、その隣から燃え盛る鉄球を振り回す戦士が援軍に駆け付ける。

 絶対にバトルフェイズに入らなければいけない状況を作ってから自分のカードの効果につなげる。

 修造君、プロ時代から全く腕が落ちちゃいないじゃないか。

 

「そして、蒼炎の剣士の効果発動!

 1ターンに1度、互いのバトルフェイズに、このカード以外の自分フィールド上の戦士族モンスター1体に自身の攻撃力600ポイントを分け与える!

 俺は蒼炎の剣士の攻撃力600をエヴォルテクター エヴェックに与えるぜ!」

 

 蒼炎の剣士 DEF1600

       ATK1800→1200

 エヴェック ATK1500→2100

 

「バトルフェイズを終了、メインフェイズ2に入って魔法カード、テラ・フォーミングを発動

 デッキからフィールド魔法、天空の虹彩を手札に加えて発動。」

 

 天井に七色に揺らぐ光が現れる。

 遊矢は前のターンでシャドール・ビーストの効果で1枚ドローして手札が7枚スタートだが、バトルフェイズを無駄にされて攻撃を封じられた。

 さて、どう動く?

 

「スケール4のオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンをペンデュラムスケールにセッティングして、天空の虹彩の効果発動

 自分フィールド上の表側表示カードを1枚破壊し、デッキからオッドアイズカードを手札に加える。

 俺はオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンを破壊し、デッキからスケール8のオッドアイズ・ミラージュ・ドラゴンを手札に加え、スケール5のEM(エンタメイト)チェーンジラフとともにペンデュラムスケールにセッティング。」

 

 光の柱に昇る緑色のドラゴンとオレンジ色の輪っかが付いたキリン

 

「揺れろペンデュラム!異界へつながる扉を開け!ペンデュラム召喚!

 手札からレベル6、EM(エンタメイト)ミス・ディレクター!エクストラデッキからレベル7、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン!!」

 

ミス・ディレクター「はいっ!」

         DEF2000

 

オッドアイズP「ギャオォォォォ!!」

       ATK2500

 

 

「ミス・ディレクターはオッドアイズモンスターが存在する限り、攻撃対象にならない。

 そして守備表示で存在する限り、俺のオッドアイズモンスターは戦闘で破壊されず、俺への戦闘ダメージは0になる。

 チェーンジラフは、自分のモンスターが戦闘で破壊されたとき、このカードを破壊することで、そのモンスターを特殊召喚し、そのターン中、戦闘で破壊不能にする。

 さらに天空の虹彩の効果で俺のペンデュラムゾーンのEM(エンタメイト)、魔術師、オッドアイズカードは相手の効果の対象にならない。

 俺はカードを3枚伏せて、ターンエンド。」

 

 固ったい守りだねぇ。

 ミス・ディレクターを攻撃表示にするか、破壊しないとオッドアイズを戦闘で破壊できないしダメージもない。

 さらにチェーンジラフの効果で実質ダメージが2500ポイントカットされるようなもんだ。

 そして、伏せカードをガン伏せ、危ない臭いがプンプンしているねぇ。

 

「俺のターン、ドロー!!」

 

「修造さんのスタンバイフェイズにトラップ発動、バトルマニア!

 相手モンスターはすべて攻撃表示となり、このターン表示形式を変更することが出来ず、必ず攻撃を行わなければならない。

 

 さらに永続トラップ、生贄封じの仮面を発動!

 互いのプレイヤーはいかなるリリースもできなくなる。」

 

「なっ、なにっ!?」

 

 蒼炎の剣士 DEF1600→ATK1200

 

 攻撃強要カード、それにリリースを封じるカードか。

 蒼炎の剣士はラプテノスの超魔剣の効果で守備表示にできるし、エヴォルテクター エヴェックも蒼炎の剣士の効果で攻撃力2700まで上げることができる。

 だけど、遊矢のフィールドにはまだ伏せカードが1枚、完全に攻撃したら何かありますって感じね。

 相変わらず相手の逃げ道を防ぐのがうまいねぇ、あの子

 デュエルが始まる前は困惑していたのに、始まったとたん冷静に相手を追い詰めてくる。

 

「ぬぅぅ・・・俺は黄金色の竹光を発動!

 このカードは俺のフィールドに竹光装備魔法がある場合発動でき、デッキから2枚ドローする。

 そして、竹光カードが発動したことにより、次の遊矢のメインフェイズ1はスキップされる!

 

 俺はマジックカード、アームズ・ホールを発動

 このカードを発動するターン、俺は通常召喚をすることができないが、デッキトップを1枚墓地に送ってデッキ、墓地の装備魔法1枚を手札に加える。

 俺はデッキから装備魔法、スーペルヴィスを手札に加え、デュアルモンスターである、エヴォルテクター エヴェックに装備する!

 これでエヴェックは再度召喚された状態となり、効果が解禁される!

 

 エヴェックの効果で今、墓地に送られた炎属性、戦士族モンスター、フェニックス・ギア・フリードを特殊召喚だぁ!!」

 

Pギア・フリード「はあっ!!」

        ATK2800

 

 もう一体現れる紅白の騎士、その体に炎は纏っていないが場合によってはゴッドフェニックス・ギア・フリードよりも厄介な効果を持つモンスターだ。

 

「墓地の焔聖騎士―ローランの効果発動

 このカードを自分フィールド上の表側表示モンスター1体に攻撃力500アップの装備カードとして装備する。

 俺はローランをフェニックス・ギア・フリードに装備!」

 

 Pギア・フリード ATK2800→3300

 

「さらに永続魔法、一族の結束を発動!

 俺の墓地のモンスターの種族が一種類のみの場合、俺のフィールドのその種族のモンスターは攻撃力が800ポイントアップする。

 俺の墓地には戦士族の焔聖騎士―モージがいる!そして俺のフィールドのモンスターは戦士族!

 うおぉぉぉぉ!!もっと燃えろ!燃えろ!熱血だああァァァ!!」

 

 GPギア・フリード ATK3000→3800

 Pギア・フリード  ATK3300→4100

 エヴェック    ATK2100→2900

 蒼炎の剣士    ATK1200→2000

 

 これでオッドアイズの攻撃力を3体とも上回った!

 蒼炎の剣士は効果で守備表示にできるから問題ないし、ローランと妖刀竹光は墓地に送られればサーチができる。

 スーペルヴィスはフィールドから墓地へ送られれば、墓地の通常モンスターがよみがえってくる。

 ミラーフォースなんかが来ても対処できるし、蒼炎の剣士はラプテノスの超魔剣の効果で守備表示にしてしまえば、戦闘で破壊されない。

 打ちのめされても諦めない。ホント修造君らしい、泥臭い戦い方だ。

 

「行くぞ遊矢!!

 バトルフェイズに入り、ラプテノスの超魔剣の効果発動!

 蒼炎の剣士を効果で守備表示にし、フェニックス・ギア・フリードを再度召喚する!

 これで俺のフィールドの装備カードを1枚墓地へ送ることで、フィールドのモンスターを対象とするマジック、トラップの発動を無効にし破壊する効果を得た!

 行け!フェニックス・ギア・フリード!!オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンに攻撃だああぁぁぁぁ!!」

 

 蒼炎の剣士 ATK2000→DEF1600

 

 あえて、バトルマニアの効果を受けていないフェニックス・ギア・フリードでの特攻

 今のあのモンスターはすっごい厄介なモンスターと化しているからねぇ、遊矢としては先に潰しておきたいモンスターだ。

 トラップを使うなら、ここで使うはず。

 

「トラップ発動!」

 

 ほら

 

「分断の壁!」

 

 おぉ!?

 

「このカードは相手の攻撃宣言時に発動できる!

 相手フィールド上の攻撃表示モンスターすべての攻撃力を、相手フィールド上のモンスターの数×800ポイントダウンさせる!」

 

「げえぇっ!?俺のモンスターは4体、ッてことは!?」

 

「そう、3200ポイントダウンする!」

 

 GPギア・フリード ATK3800→600

 Pギア・フリード  ATK4100→900

 エヴェック    ATK2900→0

 

 うわぁ~なんて意地の悪い笑み

 

「そして、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンはモンスターとの戦闘で発生する相手へのダメージを倍加する。

 返り討ちだ!オッドアイズ!!螺旋のストライクバースト!3連弾!!」

 

「ぐおぉぉぉぉぉ!!?燃え尽きたあぁぁァァァ!!」

 LP4000→200→0

 

 3つの赤黒い炎弾がモンスターをすべて薙ぎ払って、修造君は衝撃で吹っ飛ばされて壁にぶつかる。

 修造君が倒れたから、遊矢は心配してかけよる。

 やれやれ、オーバーだねぇ。

 

「大丈夫ですか、修造さん!?」

 

「お、おう、このくらい心配ねぇよ。

 はぁ~結構いい動き出来てたのに、負けちまったなぁ~ははっ・・・

 やっぱり、俺じゃダメか・・・」

 

「修造さん・・・」

 

「お前に勝てれば、俺も連れて行ってもらおうと思ったんだがな。

 でも、こんなあっさり負けるようじゃ、戦争なんてできそうもないや・・・

 もっとも俺は、そんな度胸もないけどな、たはは・・・」

 

 あぁ、そうだね。

 昔はデュエルを喧嘩の道具にしていたあたしだけど、デュエルを戦争の兵器にするなんて馬鹿げている。

 だから、この子はそれを許さない。覚悟を決めて戦おうとしている。

 

「こんな情けない俺だけどな?俺はお前のことも大切に思っている。

 もちろん、柚子を大切にしてくれているのはうれしいが、自分も大切にしろ。

 お前、自分の命を賭けてでもとか思っていただろ?」

 

「そ、それは・・・」

 

「だから俺と約束しろ。

 犠牲になる覚悟じゃなくて、みんなと一緒にここに戻ってくるって覚悟をしろ!」

 

「!!・・・そ、それは・・・」

 

 保証しかねるってかい?そうだよね、あんたはそういうやつだ。

 これは、あたしも覚悟決めなきゃね。

 

「遊矢!!」

 

「!?」

 

「あんたが戻ってくる場所は、あたしが守ってやる。」

 

 困惑する遊矢を私は後ろから抱きしめる。

 もう、榊 遊勝を待ち続ける女はやめよう。

 あたしはあたしの家族が戻ってこれる場所を守る女になる!

 

「何年だって、何十年だって私は守り続けるよ。

 だからさ。絶対に帰っておいで?

 遊矢にまでどっか行かれちゃ、あたし泣いちまうよ?」

 

「母さん・・・」

 

 遊矢は泣くやつが嫌いだ。誰かを泣かす奴も嫌いだ。

 こう言っちまえば、お前は断れないだろ?掛け値なしのあたしの本音だけどさ。

 

「はぁ~そういわれたら、保証できないなんて言えないじゃないか・・・負けたよ。

 で、覗き見している連中は、いい加減出てきたらどうだ?」

 

 えっ?

 

「あはは、バレてた?流石、遊矢君。」

 

「だからワイは言うたやんけ、隠れてもどうせ見つかるんやから、どうどうと見ようって。」

 

 出てきたのはミッチー、と鉄平君、それに

 

「ふん。」

 

「勝鬨、お前もか。」

 

「君たち、どうしてここに?」

 

「チャンピオンシップが中止になった詳細が知りたくて。」

 

「で、遊矢はんなら、知ってんのかなぁ~って、思うて来たんや。

 そしたら、なんか面白そうなデュエルしとったから、観戦しようってなったんやけど・・・」

 

「でも、テレビで言っていた行方不明者って、柊さんのことだって聞いちゃって、そしたらなんだか、出て行きにくい雰囲気になっちゃってね。」

 

 あぁ、2人がデュエルし始める前に柚子ちゃんのことを言ってたからね。

 戦争のこととかはあまり口に出してなかったから、バレてないと思うけど。

 

「遊矢君、柊さんを追うんだろ?

 しばらく会えないのは寂しいけど、帰ってきたら美味しい料理で最高のおもてなしをさせてもらうよ!」

 

「ワイもワイも、ごっつぅ魚、釣ってきてやるでぇ!

 あぁ、そうや!この塾の子ら、たまにワイが野外学習で釣り教えといてやるわ!」

 

「僕も、たまに差し入れを持ってくるよ。」

 

「・・・・・・ここはアクションデュエルも教えているのだろう?

 軽いトレーニングだったら、自分も教えることができるはずだ。」

 

「勝鬨、お前・・・」

 

「だから、お前はその気にくわない連中を必ず倒してこい。いいな?」

 

「・・・・・・あぁ!」

 

 熱いね。

 あの子らの青春は・・・あの子のデュエルは榊 遊勝のデュエルと全く違う、自分が楽しむためのものだけど、そのデュエルであんなに熱い絆を紡げるんだね。

 昔のあたしも、あんな熱いデュエルが出来れば敵じゃなくて、馬鹿やれるライバルを作れたのかもしれないねぇ。

 

「ふっ・・・あたしも久しぶりにデッキをいじってみるかねぇ。

 あの子が帰ってきたときに、思いっきり熱いデュエルができるように。」

 

≪デュエルは人を幸せにできる!

 デュエルは人と人を繋ぐ、懸け橋になる!俺はそう信じている!!≫

 

 遊勝、昔、あんたはあたしにそう言ったけど

 あたしらの息子は、あんたと違う形でその夢をかなえているよ。

 

「あぁ、そろそろ時間だな。行くとするか。」

 

「ん?どこに行くんだい、遊矢?」

 

 時計を見て思い出したかのようにこの場を去ろうとする遊矢にあたしは声をかける。

 まったく、どっかに行ってほしくないって言った矢先にこれなんだから

 

「父さんの一番新しいファンのところ。」

 

 えっ?


 夜になって高窓から差し込む日の光が月光に変わった。

 奴に蹴られて、罅の入った肋骨もレオ・コーポレーションの技術ですぐに治り、僕は記憶の読み取りによる情報の抜き出しに掛けられた。

 

 まぁ、大した情報なんて得られなかっただろうけどね。

 僕がエクシーズ侵攻のきっかけを作ったってわかった時は、黒咲っていうエクシーズの人間がつかみかかってきたけど

 

――コツ、コツ

 

 ん?誰か来る?

 

「よぉ?」

 

 鉄格子越しに現れた顔は、僕が最も見たくない奴の顔

 そいつは、にやにやと笑いながらこちらを見下している。

 だから僕は、そいつの顔が見たくないから鉄格子に背を向けた。

 

「おいおい、エンターテイナーなんだろ?

 だったら、歓迎ぐらいしてくれよ。こんな場所でもさぁ?」

 

 こんな場所に閉じ込められた原因が何を言っているんだ。

 

「やれやれ、随分嫌われちまったなぁ?

 友達になりたいとか言ってきたのはお前の方だろぉ?」

 

 たしかに言ったけど、僕は君が嫌いだ。

 先生のエンタメに興味ない君が、アカデミアを簡単に蹂躙する君が、僕のすべてを否定する君が、大っ嫌いだ。

 

「はぁ~これは話を聞けそうにないか・・・」

 

 彼はそう言いつつもどっか行ってくれることはなく、鉄格子の前に座り込んだようだ。

 話なんてする必要ないだろ?僕の記憶はとっくにレオ・コーポレーションが入手している。

 僕から話すことなんて・・・

 

――コッ、コン、コン・・・・コッ、コン、コン・・コッ、コン、コン

 

 ?・・・何をしているんだ?

 

――コッ、コン、コン・・コッ、コン、コン・・・コッ、コン、コン

 

 横を見てみると、僕の周りに青いガラス玉が転がっていた。

 なんだこれ?ビー玉?

 

――・・・ピンッ!

 

 僕が振り向くのに合わせたのか、彼はそれまで適当に投げ込んでいたビー玉を狙いをつけてはじいた。すると

 

――コッ、コッ、コッ・・コッコッ・・・・・コッ

 

 弾き込まれたビー玉は転がっていたビー玉を次々と弾いて、転がる力を与えていく

 そして転がっていったビー玉はすべて鉄格子の間を抜けて、彼の手元へと吸い込まれていく

 

「へぇ~!!うまいもっ!?・・・・・・」

 

「やっとこっちを向いてくれたな。」

 

 迂闊だった。こんなことで気を引いてくるなんて・・・

 

「昔、って言っても父さんがいなくなってすぐだから、3年前か・・・

 柚子に無理やり、近所の夏祭りに連れて行かれたんだよ。

 まだバッシングがひどいから、自分たちだけで行けって言ったんだけどな。」

 

 何の話だ?

 

「で、出店を一緒に回って的屋も何軒かやったんだけど、あいつ不器用でさぁ~

 結局、何にも景品もらえずに小遣いを全部スっちまってさ。

 涙目になっていたから、仕方なしに柚子の代わりだってビー玉弾きやって、おもちゃの指輪を取ってやったんだよ。

 そしたら、あいつ、花が咲いたみたいに笑って嬉しがってさ、今でもその時の指輪、大事にしてくれているんだよ。」

 

 何それ、のろけ話?

 

「俺、母さんを慰めるのに失敗してさ。

 泣いている母さんに笑えって言っちまって、無理やり笑うようにしてしまったんだ。

 別に俺は、悲しみを押し殺してまで笑って欲しくはなかったんだけどな・・・」

 

 それは・・・

 

「でも、その柚子の笑顔を見た瞬間、俺でも誰かを笑顔にできるんだなって、ちょっと自信がついたんだ。

 だから、俺はその笑顔が守りたくなった。

 母さんのこともあったけど、潰れかけた遊勝塾の経営をどうにかしたり、ため込んでいたファイトマネーで設備の都合をつけたりな。」

 

 3年前って、君、小学生だよね?

 

「お前、エクシーズ次元で父さんに会ったんだろう?

 どんな感じだった?まぁ、どうせ、相変わらず笑顔笑顔と言っているんだろうけど。」

 

 いや、確かに言ってたけど・・・

 

「・・・その顔は図星のようだな。」

 

「はっ!?くっ・・・・」

 

 いけない、いつの間にか顔をあっちに向けていた。

 

「まったく、エクシーズ次元の侵攻が始まったのが1年前だから、2年は立ち往生か・・・

 何やってるんだろうな、あのクソ親父は

 赤馬 零王、いや、お前にはプロフェッサーって言った方がいいか。

 そいつを止めるために、石島さんとの王者防衛戦をすっぽかして、ファンを裏切って、母さんを悲しませて、自分で作った塾を傾かせて

 勇んで自分で作ったもの全部、捨てていったくせに、何もできていない。」

 

「・・・・・・」

 

「それに、エクシーズ次元の侵攻が始まったのはお前がゴーサイン出したからなんだってな?

 しかも原因が大道芸やってて、それをたまたま見に来た瑠璃を見つけてしまったからって、むしろ親父の方が戦犯だな。」

 

「違う!先生は何も、はっ!?」

 

 あぁ、駄目だ。

 なんなんだよ君は、僕の仮面の内側にするすると入り込んできて、これじゃホントの悪魔じゃないか・・・

 

「ふん、父さんを慕っているのは本当みたいだな。

 だが、戦争を止めるために出て行ったくせに、止められなかった時点でもうアウトなんだよ。

 むしろ、お前が瑠璃を見つけても黙っていられるぐらいにエンタメ漬けにしてしまえばよかったのに。」

 

「・・・・・・それは無理だよ。」

 

「あん?」

 

「僕は昔、貧しい孤児院で、笑うことない日々を過ごしていたんだ。

 その孤児院では僕が一番歳が上だったから、下の子らの面倒を見て、どうにかして笑ってもらおうと手品とか、ジャグリングとか覚えたりしたんだ。

 でも、アカデミアがその孤児院を徴収したから、帰れる場所はアカデミアしかないのさ。」

 

「はぁ~お前もかよ・・・」

 

 お前も?彼はアカデミアの関係者と何かしらの知り合いなのか?

 なら言っても構わないか

 

「僕みたいな先行組は似たり寄ったりな境遇だと思うよ?

 帰る場所がアカデミアにしかないから、どんなに別の世界でいい暮らしをしてようと裏切れないのさ。」

 

 僕らは子供だ。

 大人に頼らず、自分を偽り続けて暮らすなんて無理なのさ。

 耐えきれないから、帰れる場所を求めて、アカデミアを裏切るなんてことはしない。

 

「でも、お前は自分のやりたいことを見つけたんだろう?」

 

「あぁ、あのハートランドの街角でデュエルをする先生はとっても華麗で僕の憧れになった。

 あれを見て僕はエンタメデュエルに目覚めたんだ。」

 

 目を閉じれば思い浮かぶ、キラキラしたデュエル

 その場にいた観客全員を魅了し笑顔にする彼のようなデュエルがしてみたいと、僕は人生で初めて目標というものを得たんだ。でも

 

「でも、それはまやかしだったんだね・・・」

 

 僕は彼に勝てないと、負けを認めてしまった。

 勝敗はついてないものの心が折れてしまった。

 彼が勝ったのだから、正しいのは彼の方だ。

 

「あぁ?なんでそんなことを思った?」

 

「だってそうなんだろ?

 彼は決闘者(デュエリスト)じゃない。人柄一流、デュエル三流の二流手品師、君がそう言ったんじゃないか。」

 

「んん、まぁそうだけど・・・でも、お前が父さんのデュエルで感動したこととは関係ないだろ?」

 

「えっ?」

 

「花火だって、元はただの火薬だ。

 でもそれを美しいと思う人はたくさんいるし、多くの人を集めて感動させている。

 それなら父さんの派手なだけの見世物だって、似たようなものさ。」

 

 派手なだけの見世物・・・

 

≪君は見た目の派手さばかりに、目を奪われているな。

 エンタメデュエルで最も大事なことは、その華やかさの中にどれだけ人の心を揺さぶるメッセージを込められるか、それが大事なんだ。≫

 

「なんだか、似たようなことを先生に言われたような気がするよ・・・」

 

「そりゃそうさ。

 俺が言ったんだから、派手なだけで面白みに欠けるプレイだなって。」

 

 えっ?

 

「そもそも俺が父さんを決闘者(デュエリスト)じゃないと言ったのは、見た目や反応を気にしすぎて単純にゲームを楽しむ気がないからだ。

 いやぁ~テーブルデュエルで突然、立ち上がってレディース&ジェントルメンとか言い出したときはイラっと来たね。

 そのあと、普通にミラフォしたけど。」

 

「それは・・・」

 

 ごめんなさい、先生、さすがにそれは擁護できません。

 

「似たようなことを言われたってことは、父さんはお前と自分を似た者同士だって感じたのかもしれないな?

 俺はあのロクデナシと一緒にされるなんて、御免だけど。」

 

 似た者同士・・・僕と先生が・・・

 

「まぁ、俺からしたら榊 遊勝は無責任なロクデナシ親父だけど

 お前が榊 遊勝のデュエルでエンタメデュエルに憧れて、尊敬しているっていうのはお前の本当の気持ちなんだろ?

 このビー玉だって、ほら。」

 

 彼は手元で遊んでいたビー玉の一つを高窓から漏れる月明かりに当てる。

 するとそれは、中の気泡が複雑に光を反射させて、キラキラと不思議に輝く、それはまるで宝石のようだ

 

「うわぁ・・・」

 

「どうだ?安っすい気泡入りのビー玉だけど、結構きれいなものだろ?

 ただのガラス玉でもおもちゃでも、特別な思いがあれば、きっとその人だけが持つ本物の輝き(宝石)になる。

 俺にとってはただの派手なだけの父さんのデュエルだって、お前にとっては人生を変えるほどの宝物(思い出)なんだろ?だったらそれでいいさ。」

 

「遊矢・・・」

 

「まぁ、憧れるのはお前の思い出の中の榊 遊勝にしておけ、無責任な馬鹿オヤジにならないようにな。」

 

「ははっ、本当に君は先生が嫌いなんだね。

 うん、でも分かった。僕が憧れたのはみんなを笑顔にする最高のEntertainerの榊 遊勝だ。誰かを悲しませることなんてしないよ。

 僕はもう手遅れだけどね・・・」

 

 僕はたくさんの悲しみを生んでしまった大罪人だ。

 憧れる存在には絶対なれないし、君たちが勝っても負けても僕はもう日の目を見ることはないだろう。

 

「手遅れ・・・なるほど、お前は自分のやったことに罪悪感を感じているのか。」

 

「あぁ、そうだね。

 僕だってできれば、ずっとあそこで大道芸をしたかった・・・僕とトラピーズ・マジシャンでみんなを笑顔にし続けたかったんだ。

 それは僕の嘘偽りない本心だよ。

 僕にはアカデミアを裏切る勇気なんてなくて、あんなことになってしまったけどね・・・」

 

 後悔先に立たずとか、日本では言うんだよね。

 なんでよりにもよって、瑠璃は僕のところに来てしまったんだろうとか考えちゃうし

 これが運命とかいう奴なら、どんな皮肉なんだろうね。

 

「ふっ、じゃあ、悩めるデニスに俺から提案だ。俺と取引しないか?」

 

「取引?」

 

 いったいなんだ?

 すると彼はニヤッと、意地の悪い笑みを浮かべてとんでもないことを言い出した。

 

「デニス、お前に世界をくれてやろう。」




【16歳】第一回部隊名会議【中二病】

鉄〇団、けっして散らない鉄の・・・

待ってぇぇい!それでは私が途中で死んでしまうではないか!!

えぇ~じゃあパッ〇ョーネ。

それだと、お前がトップだろう!

わかったわかった。
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『結成、ランサーズ』
う~ん、どっちかって言うと目的とメンツ的にアサシンのような気がする・・・


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結成、ランサーズ

説明と設定と考察の回、こういうのバランスが難しいな・・・
リアルソリッドビジョンは漫画版から設定を引っ張ってきてます。その他はほとんど想像です。

今回は本当にデュエルをしない回なので、前回の省略部分を載せておきます。
謎に強い修造氏の1ターン目です。

H5
手札抹殺 H4
焔聖騎士―ローラン 焔聖騎士―オジエ 
ゴッドフェニックス・ギア・フリード 妖刀竹光捨て4ドローH4

妖刀竹光効果 燃え竹光Hへ H5

昇華騎士―エクスパラディン H4
効果焔聖騎士―モージー装備 

焔聖剣―ジョワユーズ エクスパラディン装備 H3
効果ゴッドフェニックスHへ ジョワユーズ破壊 h4

トランスターン H3

エクスパラディン墓地へ 蒼炎の剣士ss
モージー効果 オジエ ジョワユーズ エクスパラディン デッキへ1ドロー H4

ストラクチャーデッキR-ウォリアーズ・ストライクとライズ・オブ・ザ・デュエリスト収録のカードで大体再現可能です。
えっ、燃え竹光?・・・サーキット・ブレイク売っている店あるかな・・・


 レオ・コーポレーションの本社ビルの屋上

 誰も立ち入らないそこで、俺は今まで張っていた気を抜く

 まったく、頑固な大人の説得には骨が折れる。

 

「ふぅ~、やっと終わったか・・・」

 

 零児に俺がランサーズ入りをする条件を飲ませるのはうまくいった。

 ただ、あいつの母親の赤馬 日美香が猛反対していたが、対アカデミアに付随した商品アイディアをいくつか提示したら押し黙ってくれた。

 まぁ、現行の技術で新しい商品が作れるのだ。経営者として黙ってられないだろう。

 

「さて・・・」

 

 俺は懐からカードを取り出す。

 輝きのないホログラフィックレアカードというような、ほぼ白紙のカード。

 テキスト欄も文字化けして読めないものになっているが、そのほとんどは知っているカードだ。

 このカードたちはディスクに反応せず、他人から見たら完全に白紙に見えるらしい。

 存在そのものが不安定なのか、まだ動く時ではないということなのか。

 

 もともとOCGオッドアイズたちや、ファンタズマ、レイジングもこのような状態だったのだが、いつの間にか使えるようになっていた。

 時間の経過か、俺の精神面の問題か、あの馬鹿親父が失踪したときから色づき始めたのだ。

 明らかに普通でない現象なのだが、レイジング・ドラゴンを使っても俺自身には何の影響もないところから、これがズァークの影響とは考えにくい。一体何なんだ?

 

「運命とはいつか巡ってくるものですわよ、我がマジェスティ?」

 

「ミエル・・・お前ホントどこからでも・・・

 いや、何の用だ?」

 

 ここ一般人立ち入り禁止の場所のはずなんだが?

 

「マジェスティの旅路に祝福を、と思いまして来ましたの。」

 

「へぇ~そうかい。

 こんな旅、祝われてもうれしくもないが・・・」

 

 これからやるのは戦争

 そして世界1つを滅ぼすことがほぼ確定の茨道だ。

 滅ぼさないためにデニスを引っ張り込んだが、それでもアカデミアの関係者は処罰を与えねばならない。

 

「何を言いますやら、マジェスティの行く道はいつだって祝福であふれてますわ。

 せめて、その眠れるカードたちが起きることには胸を躍らせてもいいのではありません事?」

 

「ふっ・・・そうだな。」

 

 なぜだかわからないが、このカードから悪い気は感じない。それよりも何か懐かしさを感じている。

 俺の昔の記憶はかなりあやふやだが、もしかしたら俺が使っていたカードだったのかもしれないな。

 

「望むままにお進みください、我がマジェスティ

 その歩みは幾多の道をつなげ、光射すものとなることでしょう。」

 

「よせやい、俺は星ってがらじゃ」

 

 どっかのカニじゃあるまいし

 

「って、もういないか・・・」

 

 本当に神出鬼没な奴だ。助かっているけど

 さて、原作より柚子が1日早くあっちへ行っちまったが、これがどう影響することやら

 たしか、トップスに勝手に入ってお尋ね者になるんだったっけ?

 

「そんなことになってなきゃいいけど・・・」


「はあぁくしょん!!」

 

 あぁもう、埃まみれになっちゃったじゃない!

 

「おお、でけぇくしゃみ、大丈夫か?」

 

 別次元、たぶん月影さんの言う通りだったら、ここはシンクロ次元で目を覚まして1日が過ぎた。

 昨日は混乱しすぎて落ち着くためにふて寝してたけど、このユーゴが住んでいるガレージには一つ問題があった。

 

「もう、誰の所為よ!少しは掃除しときなさいよね!」

 

 そう、全然掃除してないの!

 棚の物とか埃まみれになっていたわ!だから、さっそく掃除を始めた。

 はぁ~ここの生活事情を考えたら贅沢とか言えないけど、シャワーくらい浴びたいなぁ~

 

「あ、あはは・・・わりぃ・・・リンを早く助け出さなきゃって、思っていたらよ・・・

 たしかに口喧しいやつだから、うちがこんな風じゃ、怒られちまうな・・・」

 

「もう。」

 

 そんなこと言われたら強く言えないじゃない。

 

「でも、ここって借りている場所なんでしょ?

 恋人さんを早く助け出したいのはわかるけど、帰ってくる場所くらいちゃんとしておきなさい。」

 

「こ!?恋人って!?えへへ、そ、そんなんじゃねぇよ~ただの幼馴染だって!」

 

 嘘、そんなでれぇっとした顔で言われても説得力ないわよ。

 帰る場所って言ったら、私の部屋も戻ったら埃まみれになっているかもね。

 お父さん掃除とか苦手だから

 

「はぁ~どうやったら帰れるかな?」

 

「心配すんなって!俺だって何度か次元を超えてんだ!

 きっといつか、クリアウィングがお前の世界に連れてってくれるさ、たぶん。」

 

「めっちゃ不安なんだけど・・・」

 

 クリアウィング・シンクロ・ドラゴン

 ユーゴが持っているシンクロモンスターのドラゴン。

 ユーゴが言うにはリンが攫われたときから、次元を跳び越える力を持つようになったらしいけど、何が条件で跳んでいるのかわからないらしいのよねぇ・・・

 

 ユーゴが言うには呼ばれた気がしたらしいけど

 ユートの故郷のハートランドにも跳んで、そこの惨状を見てきたらしいし

 次元戦争なんてとんでもないことやっているのに、その傍らで私似の女の子を誘拐しているなんて、あのアカデミアって連中、何なのかしら?

 わからないことばかりだわ・・・

 

「はぁ~でも、今ここで何かしても仕方ないし、大人しくしてましょう・・・」

 

 ミエルに「道行に凶相」なんて言われちゃうと、何か動くより待ってた方がよさそうだしね。

 もしかしたら

 

「遊矢が迎えに来たり・・・してくれるかもね。」


「おい!赤馬 零児!どういうことだ!

 なぜ、アカデミアがある融合次元ではなく、シンクロ次元なんぞに行かなければならん!!」

 

 レオ・コーポレーションの通路で黒咲 隼は憤慨していた。

 彼はランサーズのメンバーが集まり次第、憎きアカデミアに一刻も早く乗り込み、自分の妹、瑠璃を助け出す気でいたのだ。

 だが、怪我が回復し告げられた目的地は戦争の魔の手の及んでいない、関係ないシンクロ次元だという。

 あまりの剣幕に彼らの後ろをトコトコ付いて来ている零羅は怯えている。

 

「隼、落ち着け。」

 

「ユート!だが!!」

 

 親友のユートが黒咲を収めようとするが、逸る気持ちを抑えきれない彼は暴走状態だ。

 仕方なしと拳を構えるユートだが、丁度彼らは目的地である部屋にたどり着く

 

「黒咲、君の妹を思い逸る気持ちは理解するが、物事には順序というものがある。」

 

「順序だと?」

 

 零児の言葉に怪訝な表情をする黒咲であるが、零児とて事のすべてを承知しているわけではない。

 なぜなら、すでにランサーズの作戦権限は彼の手を離れて行ってしまっているのだから

 

「それも含めて、奴から説明がある。」

 

 苦々しい顔で扉を開ける零児、そこに広がっていたのは

 

「よぉし!古代の機械混沌巨人(アンティーク・ギア・カオス・ジャイアント)で連続攻撃!貫通ダメージで俺の勝ちだぁ!!」

 

「ぐおぉぉぉ!?また負けたああぁぁぁぁ!!?」

 

「2連勝でマッチも遊矢殿の勝ちでござるな。」

 

「このカード、こんなにあっさり出るのか・・・素材4体で出しにくいモンスターだと思っていたが・・・」

 

「ふぅ~む、ちゃんと使えば本当に強いでござるな。」

 

「地獄の暴走召喚1枚で戦局が一変したな。」

 

「う~ん、元が僕が貰った支給品のデッキだとは思えないや・・・」

 

 遊矢と沢渡がテーブルデュエルをして、風魔兄弟とセレナ、権現坂、そしてデニスがそれを観戦しているという、なんとも緊張感のない場面であった。

 

「「「「・・・・・・」」」」

 

「お~う、零児、やっと来たか。

 重役は遅れてこれるから、気が楽だねぇ~」

 

 遊矢の緊張感のない嫌味に、フリーズしていた4人の頭が再起動するが、その言葉に一番最初に反応したのは煽られた零児ではなく

 

「キサマあああァァァ!!」

 

 黒咲である。

 

「これから戦場に向かうというのに、何を!!

 それにそこの女はともかく、なぜその裏切り者がここにいる!!」

 

 彼が憤慨したのは遊矢の煽りが癪に障ったからではない。

 スパイだと判明し、自身の故郷を焼くゴーサインを下したデニスがこの場にいることについてである。

 

「おいおい、初対面だっていうのに随分な態度だな?ワッさん。」

 

「誰がワッさんだ!!」

 

(ワッさん?)

 

(黒咲・・・ワッさん・・・まさか・・・)

 

(クロワッサン?)

 

――ぶっ!

 

「笑うな!!」

 

 黒咲がツッコミを入れている隙に遊矢は自身の胸ぐらを掴んでいる黒咲の手を振りほどき、スクリーンの準備をする。

 

「まぁまぁ、こいつは自分のしでかしたことを悔いているんだ。

 でもお前だって、死んでハイ終わりなんて納得いかないだろ?

 だから、こいつにはこの一件が終わった後の融合次元の統治を含めた後始末をさせるのさ。」

 

「後始末だと?だがこいつは!!」

 

「あぁ、お前の故郷が焼かれる原因を作ったやつだな。

 だから、地獄よりも大変な目に遭わせるのさ。

 また裏切るとかしたら、その時点で俺は融合次元をシャブ漬けにして、内乱を起こさせる作戦にシフトするけどな。」

 

 歴史上でも起こった麻薬戦争、それを世界単位で起こすと宣う遊矢

 慈悲など全くないその言葉は冗談ではなくて本気で言っている、そう黒咲は感じた。そして引いた。

 

(この男・・・ヤバいやつだ・・・)

 

「はは・・・そういうわけで頼むよ、黒咲・・・

 ちなみに僕らが失敗したら、毒ガスなんかを使ったバイオテロ作戦を決行するらしいから、君も妹を死なせたくないなら、協力しようよ・・・

 僕だって瑠璃に死んでほしくないしね?」

 

「おいおいデニス、それは3次策だ。

 その前にロボットを使って無差別カード化だ。

 いやぁ~人質がいるっていうのは面倒だね。殲滅策がそうそう使えなくて。」

 

 あっけらかんと遊矢は言っているが、暗に人質がいなかったら無差別攻撃で世界ごと滅ぼすと言っているのでさすがの黒咲もまた引いた。

 

(この男、悪魔か・・・)

 

「さて、そんなわけで俺たちランサーズの目的は大きく分けて3つ

 1つは囚われのお姫様、エクシーズの瑠璃と、シンクロのリンの奪還

 2つ目は赤馬 零王の討滅

 3つ目はできればであるが、洗脳のシステムの奪取だ。」

 

「洗脳だと?」

 

「あぁ、そういえばお前はあの場にいなかったか・・・」

 

 遊矢は懐に入れていたカード束を取り出す。

 そこに描かれているのは尻尾がついた赤いダニのようなモンスター

 

「パラサイト・フュージョナー

 カードそのものは普通のカードなんだが、リアルソリッドビジョンを使うと人の記憶を読み取って、それを改ざんすることで洗脳できるらしい。

 洗脳中はこいつが大半の脳機能の代わりをするらしく、長期間の洗脳を受けると廃人になるようだ。

 もしかしたら、融合次元の大半の人間がこいつによる洗脳を受けているかもな?」

 

 黒咲からしたら初めて聞くとんでもない話だが、この場にいる大半の人間からしたらあの惨状が世界規模で起こる可能性があることはすぐに想像がついた。

 

「まぁ、こんなものがあるんだ。

 洗脳を行っている中枢がどこかにあるはず、それを奪取するのも目的だ。

 そうなったら、後は煮るなり焼くなりやりやすくなるからな。

 

 さて、そんな俺たちの攻撃目標、アカデミアについてわかっていることだ。

 4、5年前、この世界から失踪した赤馬 零王が融合次元に作った組織で目的は4つの次元を1つに統一して、理想郷を作ることらしいが・・・

 まぁ、これは表向きのスローガンだろう。」

 

「遊矢、どうしてそう思うのだ?」

 

「ものすごくあやふやな理由だからさ、権現坂。

 理想郷って言ったって、理想の内容が分からないんじゃ、共感しようがないだろ?

 共感できる内容なら、別に戦争を起こすこともないし

 現在、奴らが侵攻中のエクシーズ次元は過剰なまでの被害を受けている。

 ちなみにユート、黒咲、もし奴らの言っていることが事実だとして、お前たちを襲ったアカデミアの連中と仲良しこよしなんてできるか?」

 

 遊矢は故郷を焼かれ、大切な人を攫われた当事者である2人に質問をするが、そんなものの答えなど決まっている。

 

「それは・・・」

 

「無理に決まっているだろう!!」

 

「だよな。

 ということは奴らの言っているのは誰もが幸せになれる理想郷ではないことが分かる。

 では、奴らがエクシーズ次元を植民地のような状態にしようとしているのかというと、それも違う。

 すでに占領状態に入ってもいいのに植民地に必要な人足を今も減らし続けているし、融合次元側がわざと自分達の技術を流出させた疑いがある。

 それによって、融合次元側も不要な犠牲を出していることから、自分たちだけが得をする理想郷でもないだろう。」

 

「ふぅ~む確かに妙でござるな・・・」

 

「というと、アカデミアの目的は一体何なのでござろうか?」

 

「ふむ、それが全体的な利益で考えたら、結果として何もわからないという結論になった。

 ということは、この次元戦争は赤馬 零王個人の目的のために始められた可能性が高い。」

 

「なんだと!?プロフェッサーの個人的な理由で!?」

 

 セレナは驚いた、かつて何かしらいいことがあるんだろうなぁ程度の考えでアカデミアの理想に共感していたが、そんなもの何もなかったといわれているのだから。

 

「何を言っている。その証拠が君だろう?」

 

「へっ?」

 

「4つの次元を統合して理想郷を作ることと、4つの世界から同じ顔の女の子を誘拐することが全くつながらない。

 ちなみに零児、赤馬 零王が14歳の女の子に好意を抱くロリコンである可能性は?」

 

「ない、はずだ・・・」

 

 零児が赤馬 零王に最後にあったのは3年前だ。

 そして、その時の赤馬 零王のセレナへの執着は異常だった。

 なので、自分の尊敬していた父は、そういった異常な性癖を持っていないと絶対に言いきれなくなってしまった。

 

「反応に困るなぁ~その答え方・・・

 まぁ、ともかくすでにエクシーズとシンクロから連れ去られていることは確かだ。

 そして、エクシーズと融合の次元間の戦争で得られるものとして、人を封印したカードを集めているのだろうと俺は推測した。

 デニス、アカデミア兵はそのあたりはどうなんだ?」

 

「う~ん、そうだね。

 たしかにアカデミアはカード化した人間を回収している。

 実際、ある程度集めたらアカデミア本部に転送するように命令が下ってたけど、それで何をするのかは誰も知らない。

 ただ、カード化された人々は理想郷で蘇るって言われてたけどね。」

 

「嘘くさ・・・でも、カード化した人々が元に戻るというのは本当かもな。

 このカード化のシステム、そして、次元間移動システムなんだが、どうにもリアルソリッドビジョンの発展技術で作られていることが分かった。」

 

「あぁ?なんで、そこでリアルソリッドビジョンが出てくるんだよ?」

 

 実際に研究し事情を知っている零児以外が全員疑問に思ったことを沢渡は口にした。

 リアルソリッドビジョンの装置は一般にはブラックボックスなものが多く、その装置がどういう原理でソリッドビジョンの実体化を行っているのかは秘匿されていたのだ。

 それを遊矢は図を切り替えて、専門的なことは省いて説明する。

 

「まず、リアルソリッドビジョン装置なんだが、これを分かりやすく言うと一定空間に異次元を作る装置だ。」

 

「異次元?」

 

「ちょっとズレた位相空間を作り出し、位相空間内の物質だったものは質量エネルギーとして変換されるので、それは投影されたソリッドビジョンに対応して形を再構築され現実世界で実体化される、らしい。」

 

 さすがに遊矢といえど、うまく言えない代物であったが、遊矢自身はこの技術によく似た代物を知っている。

 それは遊戯王ZEXALに登場したスフィアフィールドだ。

 それは一定空間内に高次元のエネルギー世界であるアストラル世界やバリアン世界に似た環境を作り出すというものだ。

 いわばこれの劣化版がリアルソリッドビジョン技術である。

 

「で、カード化は対象周辺に対して異次元空間を作り出して、この物質世界とアクセス不能になる。

 まぁ、簡単に言うと異次元の隔離空間に捕らわれているような状態らしい。

 カードはその異次元空間とこの世界を紐づけしているものらしい。」

 

「じゃあ、戻ってこれるのか!!」

 

「カードがある限りな。

 実験的にネズミとか、いろいろとカード化してみたんだが

 どうもその異次元空間には時間の概念がないらしく、元に戻すと捕らわれた時のまんまの状態で出てきた。」

 

「出てきただと・・・!?じゃあ!!」

 

「あぁ、カードから元に戻すことに成功した。」

 

「「!!」」

 

 ユートと黒咲は驚きとともに見つめ合った。

 今まで失った仲間たちを取り戻す光明が見えたのだ。

 

「次元間移動の方は、もっと単純で2つの世界をつなげる異次元のトンネルを作っているらしい。

 まぁ、どれも異次元科学の理論のもと運用されていて、同じシステムを使っているからデュエルディスクに詰め込んで搭載できるらしいな。」

 

 アカデミアと戦うための問題であるカード化、これが解決されたことでその惨状を知っているものから安堵の息が上がる。

 だが、遊矢はそんなことでは安堵できない。アカデミアと戦う上で厄介な問題はまだある。

 

「次にアカデミアと戦う上での対策だ。

 アカデミアは赤馬 零王がトップのピラミッド状組織だ。

 先日戦った仮面の連中、オベリスクフォースは親衛隊みたいなもので、あれで割と強い方らしい。」

 

「う~む、たしかに厄介な相手でござったが、一人一人はそれほどでもないような?」

 

「そう、そこ

 カード化の問題はどうにかなったが、最大の問題としてアカデミアは複数人対1人を基本にしているらしい。

 ぶっちゃけ、一人一人だとそんなに強くない。

 奴らのデッキを見ると無理やりデチューンしたような内容だったからな。」

 

 【アンティーク・ギア】それは地属性機械族のテーマであり、攻撃力3000以上のレベル8以上のモンスターを使った豪快なパワープレイが売りだ。

 それ以外の下級はサポートという役に収まっているものがほとんどだ。

 オベリスクフォースのデッキはメインデッキに入る高攻撃力アタッカーを排除して、融合召喚を使わないと勝てないような内容にされていた。

 

 なお、デニスが所持していたものにはちゃんとアタッカーが入っているのだが、これはエリートにのみ贈られるデッキらしく、一般兵には配布されていないらしい。

 

「そこで、アカデミア対策を施した新型のデュエルディスクを作った。」

 

『新型?』

 

「ちょっと待ってろ。」

 

 遊矢が部屋を出ていくと、すぐに扉が開き見慣れない人物がアタッシュケースを持って歩いてくる。

 その人物は、長い銀の髪を二つ括りにして、黒いコートのような軍服に、黒いズボンを履いており、顔は黒い帽子とマフラーで見えづらいが、その双眸は赤い目をしていた。

 

「こちらが新型のデュエルディスクになります。」

 

 鈴のなるような声とともに開けられたアタッシュケースに入っていたのは8台の銃のような形のデュエルディスク

 めずらしい形状のそれに注目がいくが、その中で零児は思った、こんな人物は自分の会社にいたかと

 そして、その人物に心当たりがある沢渡が声を張り上げる。

 

「あぁー!!」

 

「沢渡、君は彼女を知っているのか?」

 

「えっ!?社長の関係者じゃねぇのかよ?

 去年の文化祭で榊 遊矢のクラスが作った映画『閃刀姫』で敵役『ロゼ』をやってた奴だよ!」

 

「私のことをご存じなのですか?」

 

「うちの学校で知らないやつがいるかよ!

 すげぇアクションと演技力で、話題になってたじゃねぇか!

 結局あれは誰だったんだって、一時期その噂でもちきりだったんだぜ?」

 

「それはそれは・・・」

 

 『ロゼ』は自身のホルスターの中に収められていた新型デュエルディスクを停止させる。

 すると、その背に流れていた銀の髪が消える。

 

「うれしいねぇ!」

 

「うおぉ!!?さ、榊 遊矢ぁぁ!?」

 

 帽子を外しマフラーを下にずらして現れた顔は、ニヤッとした笑みを浮かべた遊矢である。

 特徴的だった赤と緑のトマトヘヤーは銀色に染められているが、まぎれもない当人だ。

 

「どうしたんですか、沢渡さん、そんなに驚いて?」

 

 再び遊矢は声を変えて、沢渡をからかう

 少女声で、口調も丁寧だが顔は意地悪くにやけているため、違和感しかない。

 

「ど、どうしてお前が女の子役やってんだよ!?それにその声は何だ!?」

 

「沢渡、あれは遊矢の声真似だ。」

 

「こ、声真似えぇぇ!?」

 

「そうそう、「どぉだ?いい声だろう?」なんてな。」

 

 遊矢は続き、沢渡の声を真似てからかう

 もはや新型デュエルディスクのお披露目よりインパクトがあったため、注目はこちらに向かってしまっている。

 

「ちなみにさっきの質問の答えは、柚子に付いてアクションができる女子がうちのクラスにいなかったからだ。

 脚本書いたのに、キャストまでやらされる羽目になったけど・・・」

 

「えぇ~!?レイをやってたの柊 柚子だったのかよ!?全然わからなかったぜ・・・」

 

「いや~メイク担当がすごかったからな。本当に別人みたいだったな。」

 

「・・・思い出話をするのもいいが、いい加減話を戻してくれないか?

 それに、君はなぜそんな恰好をしている。」

 

 文化祭の種明かしという、他のメンツにはよくわからない話に脱線しているため、零児が強引に話を戻す。

 

「俺もなぜかアカデミアのお尋ね者になっているみたいだからな。変装くらいはするさ。

 ちなみにさっきまでは制服を着た俺自身の写真を、俺に投影させていたのさ。」

 

 そう、これが新型デュエルディスクに搭載された機能の一つである。

 デニスの一件もあり、どこにスパイが紛れているのかもわからないので無用な戦闘を避けるため、このような機能を追加したのだ。

 

「写真だけじゃなくてデュエルモンスターズのカードも投影できるから、いろいろ遊べて売れそうだろ社長さん?」

 

「ふん。」

 

 ちなみにこれは別個の商品として一般にも販売する予定だ。

 遊矢が赤馬 日美香を黙らせるために用意した儲け話の一つである。

 さらにこの世界の守りとして、融合及び特殊召喚メタを中心にしたデッキを搭載したデュエルロボを掃除ロボとして売り出すことになっている。

 

「さらにこのデュエルディスクには強制的に人数を制限するためのフィールドを発生させる機能も付けている。

 これでまた30人対2人なんて面倒なことをしなくて済むってわけだ。」

 

 この機能はエクシーズ次元のデュエルアンカーとこの世界のアクションフィールドのシステムの応用である。

 遊矢のスフィアフィールドのようなシステムなら、本当にスフィアフィールドを作れるのでは?という考えから作られたもので、相手のデュエルディスクに作用して、対戦者以外のデュエルディスクを機能停止にさせ妨害するジャミングフィールドを発生させるのだ。

 なお余計なデータ容量を使っていたアクションカードがなくなったので、普通にフィールド魔法も使用可能である。

 

「もちろん、カード化を解除するシステムもこれには搭載されている。

 いろいろ準備して、さっそくアカデミアに殴り込みに行きたいところだが・・・

 その前に、柚子がシンクロ次元で迷子になったらしいから、見つけに行く。」

 

「シンクロ次元?なんで柊 柚子がそんなところにいるんだよ?」

 

「シンクロ次元の俺のそっくりさん、ユーゴの次元移動に巻き込まれたらしい。

 まぁ、ユーゴもしたくてやったわけじゃないだろうけどな。」

 

「うぅむ、確かにそんな感じでござったな。

 ただあのとき・・・そう、柚子殿のつけていたブレスレットが光ったと思ったら、2人は消えてしまっていた・・・」

 

「そう、柚子が持っているブレスレットなんだが、あれは俺とユート、ユーゴ、そして融合次元のユーリをどうしても出会わせたくないらしい。

 セレナのブレスレットもさっきからピカピカ光っているしな。」

 

「何?おぉ!?本当だ!なんだこれは!?初めてだぞ!?」

 

「・・・セレナ、君はそのブレスレットをどこで手に入れた?」

 

 以前、実際に柚子のブレスレットの効力で瞬間移動してしまったユートがセレナに質問する。

 そして思い出したのだ、瑠璃も同じようなデザインのブレスレットをしていたことを

 

「いや、う~ん・・・昔から持っていたとしか覚えていないな・・・」

 

「柚子も同じだ。

 あれが腕に嵌らないときは紐付けて首にかけてたりしてたしな。」

 

「瑠璃もだ・・・あの銀のブレスレットをずっと持っていた・・・」

 

 深まるばかりの柚子たちの謎、遊矢はもちろんその答えを知っているがそれを語るわけにはいかない。

 

「まぁ、こうなってくると赤馬 零王の目的は正確には変なブレスレットを持っている同じ顔をした女の子なんだろうな。

 で、柚子のブレスレットは特別変な力を持っていて、俺と俺に似ている奴らをどっかに飛ばす力がある、と

 そうなってくると今、柚子はユーゴと行動を共にしているから、俺とユートは近づけない。

 よって、何班かに分けて行動することにする。」

 

「分ける?」

 

「ユーゴからの情報でシンクロ次元の警察組織みたいなもののトップにアカデミアからの間者が居座っている可能性が出てきたからな。

 俺とユートの班は、そっち側の調査をするから残りの班で柚子を探してくれ。」

 

「警察が相手か・・・面倒そうだな、それ。」

 

「あぁ、でもそれ以上に面倒なのが、これだ。」

 

 スクリーンに映し出されるのは地図、それは縮尺からしてかなりの広範囲の地図であることであることが分かり、区か市並みの広さの街が広がっていることが分かる。

 

「これは奴らのデュエルディスクの中に設定されていたシンクロ次元の転送先の街を郊外部が現れるまで広げた地図だ。

 見ての通りかなり広い。

 おそらくユーゴと柚子はこの街にいるんだろうが、この街で人探しするには時間がかかる。

 今アカデミアはオベリスクフォースが壊滅したから、混乱しているのか何もアクションを起こしていない。

 この機を逃すわけにはいかないからな。出来るだけ早めに見つけておきたい。」

 

「ふむ、時間をかけずに広い街から柚子たちを見つけ出す方法か・・・」

 

「まぁ、柚子を探すより、ユーゴを探した方がいいだろう。

 あれだけ騒がしい性格しているから、知っている人間もいるはずだ。」

 

「まぁ、そうでござろうなぁ~」

 

 この場のメンツでユーゴを知っている月影は、しみじみつぶやいた。

 

「あぁ、それとシンクロ次元ではエクシーズと融合とペンデュラムは禁止な。」

 

――えっ!? 

 

 突如の戦力外通告を受けるユート、黒咲、セレナ、デニス

 シンクロ以外の召喚法を戦術に組み込んでいる赤馬兄弟もほとんど戦力外だ。

 

「ちょっとまて、なんだそれは!?」

 

「零児、お前が召喚反応を検知する装置を使っているのなら、警察組織に入り込んでいるアカデミアも似たような装置を使っていると考えるべきだろう?

 それに俺はシンクロ次元であまり目立って戦争に巻き込むような真似はしたくないんだ。

 だったらあの世界に存在しない召喚法は、緊急時を除いて使わない方がいい。」

 

「ぬぅ・・・だが・・・」

 

「シンクロに行く目的はあくまで柚子の捜索だ。

 間者についてはどのくらいあの世界に潜り込んでいるかによって採決する。

 後ろから撃たれたくないから、出来る限り潰しておきたいけどな。

 こっそりと暗殺して、別次元にトンずらよ。」

 

「暗殺・・・もう少し言い方をどうにかできないのか、君は・・・」

 

「誇れる勝利なんて戦争で期待するなよ、零児。

 赤馬 零王だって状況を見てからになるが、現時点では混乱に乗じて暗殺する予定だ。」

 

 遊矢は11人で正面切って戦うなんて考えていない。

 多人数制限のフィールドだって、赤馬 零王の頭脳では対策されるかもしれないと考え、何かしらの方法でアカデミア本部を混乱させ、その間に事を済ませるつもりでいるのだ。

 

「さて、シンクロ次元での行動だが、デニス、権現坂、沢渡で一班、月影、セレナ、零羅で一班組んでもらい、柚子を探してもらう。

 それ以外はシンクロ次元の警察組織、セキュリティに探りを入れる。」

 

「むっ?なぜ私が、こんな子供と?」

 

「零羅は危機察知能力が高いらしいからな。

 矢面に立つのは月影だが、変な奴が寄り付くのを防いでくれるだろう。」

 

「・・・・・・」――コク

 

 零羅は言葉を発さずにうなずく、零羅から感じる意思に零児とセレナは驚き、それ以降黙り込む。

 

「異存はないようだな。月影も頼むぞ?」

 

「承知した。月に代わりセレナ殿と零羅殿をお守りしよう。」

 

 だが、この班分けに疑問を持つ者はセレナだけではなかった。

 

「いいのかい?スパイだった僕が柚子の捜索隊になって?」

 

「探して見つけるより、見つけてもらった方が楽だからな、お前ほどの適役はいない。

 そうだろう?」

 

「!!、はぁ~本当に君は・・・わかったよ・・・

 僕に拒否権なんてないし、先生から教えてもらったエンタメをこれ以上汚したくないしね。」

 

 反対意見がなくなったところで、転送地点は人気のなさそうな東西の森の4点に決まった。

 

「げぇ~榊 遊矢、なんでいちいち森の中なんだよ?

 どこでも転送できるんだったら、一気に町中に入っちまえばいいじゃねぇか?」

 

「お前は本当に馬鹿だな、沢渡・・・

 いきなり街の中に見知らぬ人間が出現したら、不審者確定じゃねぇか。

 旅行者装うためにちょっと離れた人気のなさそうなところから入るんだよ。

 俺はいきなり刑務所行きになったり、いしのなかにいる、なんていう事態はごめんだからな。

 さて、じゃあ、そろそろ行こうか?」

 

 デニスを除く全員が銃型デュエルディスクを手に取る。

 デニスはスタンダード製デュエルディスクに転送装置を付けただけの物だ。

 ディスクを起動するとリボルバーの弾倉のように、パネルが展開され、シンクロ次元への転送データをインプットする。

 

【Dimension move Stand by】

 

「では各員、健闘を祈る。」

 

――ドオォン!!

 

 引き金が引かれ、彼らは旅立った。

 

 行先は歪んだ絆が蔓延る止まった街

 

 道化はガラクタの中、眠れる英雄を目覚めさせることでしょう。

 

――キイイィィィィィィィィ!!




はいは~い!シティの皆さん、こんばんは。
トップシティTVのトップリポーター、メリッサ・クレールです。

今日も始まりました!大興奮のライディングデュエル!
追うのはセキリュティの花形デュエルチェイサー!
追われているのは・・・えぇー!?嘘!?あのDホイールは!?
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
疾走(アクセラレーション)!ゴーストライダー』
ちょ、ちょっと!?お化けじゃないわよねぇええ!?


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シンクロ次元編
疾走(アクセラレーション)!ゴーストライダー


やっと来ましたシンクロ次元
この章はアニメ本編があまりにも人間の関係性が薄いので、そこいらへんとバックストーリーを大幅に追加しますことをご了承ください。
あとこの話元々の予定の時間帯は昼だったんですが夜に変更しました。シティ(上)の夜景はきれいだからね。


 勝者がすべてを手に入れる街、シティ

 欲望渦巻くそこで、今日もコモンズと呼ばれる負け犬たちは、勝者であるトップスの人間をやっかみ、その平穏を害し続けている。

 そんな犯罪者となった者たちを逮捕し、秩序を守るのが治安維持局セキリュティであり、中でも頻発するDホイール犯罪に対処するために結成された部隊が、彼らデュエルチェイサーズである。

 

「こちら、チェイサー227

 巡回パトロール時間終了、異常なし、これより帰投する。」

 

『了解、チェイサー227、巡回パトロール終了を確認

 お疲れ様です。帰投してください』

 

「了解、チェイサー227、これより帰投します。」

 

 高台の上に建てられた煌びやかなビル街であるトップスの街

 そしてその下に広がる荒んだコモンズのスラム街

 シティの光と闇を渡る長く広大な高速道の上でデュエルチェイサーの一員である彼、チェイサー227は定期パトロールを終え、セキュリティ本部に帰還しようとしていた。

 

 何事もないのはいいことだ。

 そして、犯罪が起こったとしてもそれはいつものことだ。その時は検挙率100%を誇る彼がその犯罪者を逃しはしないだろう。

 何時も通りに光輝くトップス街を見ながら、彼は何事もなかったことを誇りに治安維持局への道を進んでいたが

 

「今日は、霧が濃いな・・・」

 

 今日はいつもと少し違っていた。

 シティは海辺近くの街だ。朝などは霧がよく出ることがある。

 だが、すでに午後10時を回って視界が不良になるほどの霧が発生していた。

 さっきまではトップス街が見れていたということを踏まえれば、この霧は突然発生したことになる。

 

――ブウウウゥゥゥゥゥゥゥン!!

 

「!!?」

 

 霧の中に響くエンジン音

 それは自身のDホイールから発せられたものではない。

 この低音の回転音はもっと古いタイプのDホイールに搭載されていた旧式のモーメントエンジン音だ。

 こんなものに乗っているなど昨今のコモンズにもいないだろう。

 彼はそれに乗っているのは誰かとバックミラーで確認しようとするが

 

――ブウウウウゥゥゥンン!!

 

「おわっ!?」

 

 ソレは突然として自分を抜き去った。

 バックミラーを確認する間もなく、デュエルチェイサーである自分を抜いたのだ。

 彼とてDホイーラーとしては一流だ。

 これほどの接近を気づかないなどありえないが、そのDホイールは自身の隣から出現し自分を抜いた。

 

「なんだと・・・・っ!!?」

 

 さらに彼は驚愕した。

 自身の少し前を走りどんどん差を広げる、その赤いDホイールに彼は見覚えがあった。

 それは決してこの場にいるはずのない存在の乗っていた愛機

 

「本部!本部!!こちらチェイサー227!!

 不審なDホイールを高速5号線において発見!照会を頼む!!」

 

『了解、チェイサー227、そのまま対象Dホイールを捉えてください・・・

 照会完了、該当Dホイールに履歴あり、データ送信します。』

 

「・・・・・・やはり、そうなのか?」

 

 この時点で、あのDホイールを操っている人物は何も犯罪を起こしていない。

 強制執行しようにも、止める指示をするにも理由がないが・・・

 

「そ、そこのDホイール!止まりなさい!!

 こちらはセキュリティです!今すぐ止まりなさい!」

 

 その乗っているDホイールは前科がある者の物だ。

 どこで手に入れたか聞くためと言う理由で、停車を求めた。

 

(これでいい。

 こちらの命令を聞かなければ、デュエルの強制執行権が使える。)

 

 普通のコモンズなら、こちらの命令など聞きもしないだろう。

 彼は前方の謎のDホイーラーをデュエルで拘束するために、停止命令をだした。

 そして彼は強制執行を行うためのボタンに手を伸ばす。

 

――ギュウゥウ、キィィィィ!!

 

「なっ!?」

 

 だが、彼の予想とは裏腹にDホイールは停車した。

 ドリフトし急停車したため、彼は止まり切れずにそのDホイールを追い抜いてしまう。

 

「くっ!!」

 

 一拍遅れてブレーキをかけ、5車間ほど開けながら彼も停止する。

 

――ブゥゥン・・・ブゥゥウン・・・・

 

 件のDホイーラーはアクセルを吹かして「止まってやっただろう?」とでも言いたげに彼を挑発している。

 

「キサマ!何者だ!!そのDホイールをどこで手に入れた!」

 

 こちらの命令に従い、確かに止まってしまったのだから彼は自身の聞きたいことを言うしかない。

 いつの間にか霧は晴れ、そのDホイーラーの姿がはっきりと確認できるようになった。

 Dホイーラーは黒いライディングスーツに紫のラインの走るプロテクターをしている。

 顔はフルフェイスのヘルメットを被っているため伺い知ることができない。

 

「・・・おい、デュエルしろよ。」

 

「何っ!?」

 

「俺が何者かを知りたければ、デュエルで賭けろ。

 こちらには何も謂れは無いのだからな。」

 

 そういうとそのDホイーラーは今来た道を逆走していく。

 それが意味するのは、相手は最初からその気で現れたということだ。

 

「いいだろう!その誘いに乗ってやろう!!

 本部!こちら、チェイサー227!該当Dホイールはこちらの質問を無視!

 デュエルの強制執行を求む!!」


「長官、高速5号線において、不審なDホイールをチェイサー227が発見

 搭乗者はこちらの質問を拒否し逃走、チェイサー227より強制執行の許可が求められています。」

 

「やれやれ、もうすぐ今日の勤めも終わりだというのに、困ったものだ

 デュエルの強制を許可します。」

 

 セキュリティ本部、その長官席に座る男は傍らのチェス盤の上に置かれた駒を弄びながら、命令を下す。

 

「セキュリティの命令に従わぬ者は、速やかに身柄を拘束しなさい。」

 

「はっ!」

 

「コースは?」

 

「該当Dホイールが郊外に向かっておりますので、そこからシティ中心へ向かうようにRUS07ルートを使い誘導します。」

 

「結構、チェイサー227、デュエルを開始しなさい。」


「了解!強制執行、開始します。

 フィールド魔法、スピードワールド・ネオ、セットオン!」

 

【デュエルモード、オン、オートパイロット、スタンバイ】

 

――ガシュウン!ウィイイイィィィィン・・・

 

 街中に建てられた塔からライディングデュエル専用レーン、デュエルレーンが展開される。

 

【デュエルが開始されます。デュエルが開始されます。

 ルート上の一般車両は直ちに退避してください。

 

 デュエルが開始されます。デュエルが開始されます。

 ルート上の一般車両は直ちに退避してください。】

 

 警報が鳴り、ライディングルートの一般車両が退避していく

 デュエルはこの街最大の娯楽だ。それを迷惑なんだと思うものはいない。

 むしろ観戦するために、ライディングルートを並走する車だっている。

 

――ブゥゥゥゥゥゥゥゥンン!!

 

 2台のDホイールがレーンの中に入る。

 そして、2台のDホイールが鼻先を並び合わせたとき、今宵のショーの幕が開ける。

 

『『ライディングデュエル、アクセラレーション!!』』


「ええぇぇぇ!?何あれ!?」

 

 4日目も特段帰る良い手が思いつかず、ユーゴの仕事である機械修理を眺めていた私は、寝る前の気分転換に星でも見ようと外に出た。

 すると突然、警報が鳴り響き、街中に立っていた塔から道路が伸びて行っているという光景に出くわした。何よこれ!?

 

「おぉ!?誰かがライディングデュエルをやってるのか!」

 

「ライディングデュエル?」

 

「あぁ、あいつに乗ってデュエルするのさ。」

 

 ユーゴが示すのは彼がずっと乗っていたバイク

 

「えっ!?乗るって、もしかして走りながら!?」

 

「あったり前だろ!最高にスリリングで、風と一体になってやる、それがライディングデュエルさ!」

 

「へ、へぇ~そうなんだ・・・」

 

 走りながらって、絶対危ないわよね?

 いや、でも、この世界のアクションデュエルって考えたら、おかしくはないのかしら?

 あれもそれなりに危ないし・・・

 

「ねぇ、そのライディングデュエルって見ることできないの?」

 

 かなり高い道路の上で行われているので、私たちがいるこの場所からは全く見えない。

 直接見えるのはあのトップスっていう人たちが住んでいる高層の上からくらいかしら?

 

「まぁ、待てって、どうせ・・・ほら、お出でなすった。」

 

――バルルルルルルルル

 

「ヘリコプター?」

 

「あぁ、中継用のヘリさ。

 トップスの野郎どもは娯楽に飢えてっからな

 レーンが出るようなライディングデュエルってなると、ああしてすぐに中継機が来るのさ。

 うちにも画面はちぃせぇけど、テレビはあるからよ。見てみようぜ?」

 

「う、うん」

 

 さっきまで、死んだような顔をしていたこの街の人たちが一気に精気を取り戻した。

 数日過ごしただけでもわかる、トップスとコモンズのあまりにも深い溝

 それを超えてみんなを夢中にさせるライディングデュエルって、どんなものなのかしら?


『はいは~い、シティの皆さん、こんばんは。

 トップシティTVのトップリポーター、メリッサ・クレールです。

 おやすみ前のこの時間、突如始まりました息詰まるチェイス!

 大興奮のライディングデュエルに今宵は眠れなくなっちゃうかも?

 手に汗握る生中継、運よくまだ1ターン目の最初!このチェイスの行方を最後まで、私、トップリポーターのメリッサ・クレールが、皆様にお届けいたします。』

 

 中継ヘリから身を乗り出すカウガールのような恰好をした女性メリッサ・クレールが、カメラの前で宣伝する。

 

『追うのは、セキュリティの花形、デュエルチェイサー!

 そして、追われているのは・・・・えっ!?』

 

 彼女の目に入ったのは赤いDホイール、それを見て彼女は少し動揺する。

 それはこのシティで昔、光輝くも落ちてしまった星の乗っていたDホイール

 その動揺をハンドサインでカメラマンに指摘されたメリッサは急いで立て直す。

 

『し、失礼しました!

 追われているのは全身黒づくめの謎のDホイーラー、デュエルチェイサーの前にぴったりと張り付き、前に行かせようとしません。

 そのままレーンの第一コーナーに入り、先攻を制したのは逃亡犯です!』

(ちょっとちょっと!?あのDホイールってまさか!?お化けとかじゃないわよね!?丑三つ時はまだよ!?)

 

「俺の先攻、俺は魔法カード、闇の誘惑を発動

 デッキから2枚ドローし、その後、手札の闇属性モンスター1体を除外する。

 俺はアブソルーター・ドラゴンを除外

 さらに魔法カード、調律を発動。」

 

「調律!?」

 

「デッキからシンクロンチューナーモンスター、ヴァレット・シンクロンを手札に加え、シャッフル、その後デッキトップを1枚墓地へ送る。

 手札を1枚捨て、装備魔法、D(ディファレント)D(ディメンション)R(リバイバル)を発動

 除外されているモンスターを俺のフィールドに特殊召喚し、このカードを装備する。

 戻ってこい、アブソルーター・ドラゴン!」

 

アブソルーター・ドラゴン「グォォォォ!!」

            DEF2800

 

 時空の彼方から出現したのはコードや鉄板でできたロボットのような機械竜

 闇の誘惑のデメリットを利用して、最上級モンスターをやすやすと呼び出した、その巧みなプレイングにメリッサは大興奮だ。

 

『逃亡犯なんと1ターン目から守備力2800の最上級モンスターを呼び出したぁ!』

 

「これで終わると思ってくれるなよ。

 手札からチューナーモンスター、ヴァレット・シンクロンを召喚!」

 

 ヴァレット・シンクロン ATK0

 

「このモンスターが召喚に成功したとき、自分の墓地からレベル5以上のドラゴン族、闇属性モンスターを効果を無効にして、守備表示で特殊召喚する。

 来い、スピードローダー・ドラゴン!」

 

スピードローダー・ドラゴン「ギャオォォ!!」

             DEF600

 

 青い弾丸のような小竜に導かれ、弾丸装填具のようなものを体につけた中型のドラゴンが現れる。

 

『な、なんと逃亡犯!デメリットとコストを利用して、フィールドに3体のモンスターを並べました!?

 さらに、その内の1体はチューナー・・・ということは、皆さんお分かりですね。』

 

「俺はレベル6のスピードローダー・ドラゴンにレベル1のヴァレット・シンクロンをチューニング!

 シンクロ召喚!襲撃せよ!ダーク・ダイブ・ボンバー!!」

 

ダーク・ダイブ・ボンバー「ハッ!!」

            ATK2600

 

 光の中から現れる黒い爆撃機が人型に変形しロボットとなる。

 

「ダーク・ダイブ・ボンバーの効果発動

 1ターンに1度、自分のメインフェイズ1に自分フィールド上のモンスター1体をリリースし、リリースしたモンスターのレベル×200ポイントのダメージを相手プレイヤーに与える。

 俺はレベル7のアブソルーター・ドラゴンをリリース!1400ポイントのダメージを受けてもらう!」

 

 アブソルーター・ドラゴンが突撃し、チェイサー227の目の前で爆発する。

 その衝撃に彼が乗るDホイールが大きく揺れる

 

「ぐわあああぁぁぁぁぁぁ!!」

 LP4000→2600

 

「アブソルーター・ドラゴンが墓地へ送られたことにより、デッキからヴァレットモンスター、ヴァレット・リチャージャーを手札に加える。

 俺はこれでターンエンド。」


『こ、これは・・・逃亡犯、1ターン目からデュエルチェイサーに対し1400の大ダメージ!

 これはかなりの実力者と見たぁ!デュエルチェイサーはここから、どう切り返すのでしょうか!?』

 

「だ、ダーク・ダイブ・ボンバー・・・」

 

「んぁ?どうしたんだよ、柚子?」

 

「うん、いや、ちょっと、トラウマが・・・」

 

 ダーク・ダイブ・ボンバー、遊矢がよく使ってたのよね・・・

 私のロックコンボをいつもいつも超えてくる黒い爆撃機、まさかね?

 

「ユーゴこそ、テレビ見るまでははしゃいでいたのに、なんか変じゃない?」

 

 あの前を走っている赤いDホイールが映ってから、なんだか困惑してるっていうか、驚いているっていうか、なんか変な感じなのよね・・・

 

「ん、あぁ、ちょっとな・・・」

(あのDホイール、いや、あの人は3年前に・・・)

 

『ぐぅ、私のターン、ドロー!

 私は切り込み隊長を召喚しその効果で手札のレベル4以下のモンスター、チューナーモンスター、ジュッテ・ナイトを特殊召喚する。』

 

切り込み隊長『はっ!」

      ATK1200

 

ジュッテ・ナイト『ヨッ!ごようだ!』

        ATK700

 

 警察の人、セキュリティって言ったけど、その人が召喚したのは青い鎧を着た壮年の戦士とデフォルメされた岡っ引きみたいなモンスター

 チューナーってことは、この人もシンクロ召喚ね。

 

『ジュッテ・ナイトの効果発動!

 1ターンに1度、相手フィールド上の表側攻撃表示モンスターを表側守備表示にする。

 ダーク・ダイブ・ボンバーには守備表示になってもらおう!』

 

ダーク・ダイブ・ボンバー ATK2600→1800

 

『レベル3の切り込み隊長にレベル2のジュッテ・ナイトをチューニング!

 地獄の果てまで追い詰めよ!見よ!清廉なる魂!シンクロ召喚!

 出でよ!レベル5、ゴヨウ・チェイサー!』

 

ゴヨウ・チェイサー『はっ!御用だ!!』

      ATK1900

 

 シンクロ召喚で呼び出されたのは歌舞伎の隈取みたいな仮面をした細身の岡っ引きみたいなモンスター

 警察だけあって、警察みたいなモンスター使うのね。

 

『行くぞ!ゴヨウ・チェイサーでダーク・ダイブ・ボンバーへ攻撃!』

 

 ゴヨウ・チェイサーの持つ十手がダーク・ダイブ・ボンバーを貫く

 

『ゴヨウ・チェイサーの効果発動!

 このカードが戦闘でモンスターを破壊し墓地へ送った時、そのモンスターを攻撃力を半分にして自分フィールド上に特殊召喚する!』

 

「えぇ~!?そんな簡単にモンスターが盗られちゃうの!?」

 

「セキュリティどものいつもの手だぜ。

 これであいつは自分のモンスターの追撃を受けて1300のダメージを、ん?」

 

 ダーク・ダイブ・ボンバーの破壊された後に発生した煙のなかに何かがいる。

 それは魔法使いが纏うローブのような大きな翼を広げて、煙を打ち払い咆哮する。

 

オッドアイズ・ウィザード『オオオオォォォォォォォォォォ!!』

            ATK2500

 

「えっ!?オッドアイズ!?」

 

『手札のヴァレット・リチャージャーの効果を発動した。

 自分フィールド上のエクストラデッキから呼び出されたモンスターが戦闘、効果で破壊された場合、このカードを手札、フィールドから墓地へ送りそのモンスターと元々のカード名が異なる闇属性モンスターを特殊召喚する。

 この効果で俺はこのオッドアイズ・ウィザード・ドラゴンを特殊召喚した。』

 

『むっ、私もダーク・ダイブ・ボンバーをキサマの墓地から攻撃力を半分にして特殊召喚する。』

 

 ダーク・ダイブ・ボンバー ATK2600→1300

 

『これは逃亡犯!新たなモンスターを呼び出し、デュエルチェイサーの追撃を躱した!?

 逃亡犯のモンスターは攻撃力2500、デュエルチェイサーのモンスターでは太刀打ちできません!』

 

 この相手をどこまでも追い詰めるような意地悪なプレイスタイル、そしてオッドアイズ、やっぱり

 

「あぁ・・・遊矢・・・」

 

「えっ!?」

 

「遊矢、遊矢よ!あれは遊矢だわ!来てくれたのよ!」

 

「お、おい、遊矢ってあのおっかねぇ奴のことか?

 だったら、ちとまずいぜ・・・」

 

「へっ、どうして?」

 

「ライディングデュエルに負けたらDホイールは強制停止される。

 そんで、セキュリティにつかまったら収容所行きだぜ・・・」

 

「えぇ!?デュエルで負けたら収容所行き!?あ、でも勝ったら・・・」

 

「奴らのことだ、ぜってぇ、ハイウェイで別の奴が待ち構えている。

 あいつが止まるまで続けるはずだ。」

 

「そんな・・・」

 

 遊矢・・・来てくれたのは嬉しいけど、大丈夫なの?


「ふむ、これは・・・長引きそうですね・・・

 パトロール隊各員に通達、中継を見たコモンズが妙な動きをしないよう、シティ全域の警戒レベルを5に引き上げてください。」

 

「了解!」

 

「ふっ、これはトップスの方々もさぞ喜ばれるデュエルになることでしょう。

 それにしても・・・」

 

 治安維持局長官 ジャン・ミシェル・ロジェは手元の画面に映し出された前科履歴を見る。

 

「故人のDホイールですか・・・それも私が着任する前に死亡している・・・

 これで搭乗者が本人なら、あのDホイーラーは幽霊、さしずめゴーストライダーといった所ですか。」

 

 それが本当ならこの謎のDホイーラーは盤面外の駒だ。

 チェイサー227が負ける様なことがあれば、職務質問無視程度で手配などできないので、雲隠れされてしまう。

 不審な駒など彼の街に要らない、昔の彼ならばそんなことはどんなことがあっても阻止したことであろう。だが

 

(まぁ、いいです。幽霊でも何でも、この街に強いデュエリストが集まるのならば・・・)

「チェイサー227へ通達、場合によっては特殊装備の使用も許可します。

 我々の新たな力の宣伝にもなることでしょう。」

 

「はっ!」

 

決闘者(デュエリスト)というのは強いモノと戦いたがる生き物なのですからね。)

 

 白と黒の駒を弄び、彼は口元を釣り上げた。


「まだ私のターンは終わっていない!

 私は手札のモンスターカード、ヘルウェイ・パトロールを捨ててマジックカード、ワン・フォー・ワンを発動。

 その効果により、デッキ、手札からレベル1モンスターを1体特殊召喚する。

 現れろ、レベル1チューナー、ヘル・セキュリティ!」

 

ヘル・セキュリティ「へアッ!」

         DEF600

 

 拡声器を持ち、頭にパトランプをつけた小悪魔が現れる。

 

『おぉ!ここでデュエルチェイサー新たなチューナーを召喚です!』

 

「私はレベル7のシンクロモンスター、ダーク・ダイブ・ボンバーにレベル1のヘル・セキュリティをチューニング!

 お上の威光の前にひれ伏すがいい!シンクロ召喚!レベル8、ゴヨウ・キング!!」

 

―カッ!カッカッカッ!

 

ゴヨウ・キング「よぉおおぉぉぉぉ!ごうぉうでぇいいいい!」

       ATK2800

 

 光がほとばしると、襖が現れ、それが何枚も開いてその中から、隈取をした老年の岡っ引きが現れる。

 

「ゴヨウ・チェイサーは私のフィールドの自身以外の地属性、戦士族シンクロモンスター1体に付き攻撃力を300ポイントアップする。

 カードを1枚伏せ、私はターンを終了する。」

 

 ゴヨウ・チェイサー ATK2200

 

『おぉっと!!皆さんご覧ください。ゴヨウ・キング、ゴヨウ・キングです!

 滅多に見られないセキュリティの切り札モンスター、まさか見れるなんてなんてラッキー!

 これは逃亡犯も年貢の納め時か!!』

 

「賑やかになってきたな・・・俺のターン、ドロー

 俺はオッドアイズ・ウィザード・ドラゴンでゴヨウ・チェイサーに攻撃!」

 

「甘い!トラップ発動!セキュリティ・ボール!

 相手モンスターの攻撃宣言時、そのモンスター1体の表示形式を変更する!」

 

「甘いのはどっちかな?

 チェーンし速攻魔法発動、禁じられた聖槍

 モンスターの攻撃力を800ポイントダウンさせ、このターン、対象モンスターはこのカード以外の魔法、トラップの効果を受けなくなる。

 俺は、オッドアイズ・ウィザード・ドラゴンを選択。」

 

 オッドアイズ・ウィザード・ドラゴン ATK2500→1700

 

「なっ!?」

 

 オッドアイズ・ウィザード・ドラゴンが作り出した魔法陣の中から槍が放たれ、セキュリティ・ボールを貫く

 だが、それによりオッドアイズ・ウィザード・ドラゴンはゴヨウ・チェイサーよりも攻撃力が低くなってしまった。

 

「キサマ、正気か!?」

 

「残念だが、大真面目でね。

 オッドアイズ・ウィザード・ドラゴンの攻撃を続行!トライ・ストライクバースト!」

 

 オッドアイズ・ウィザード・ドラゴンが魔法陣とともに炎を吐く、だがそれはゴヨウ・チェイサーの十手投げに突き抜かれ、オッドアイズ・ウィザード・ドラゴンは破壊されてしまう。

 

「ゴヨウ・チェイサーの効果発動!戦闘で破壊したモンスターを攻撃力を半分にして特殊召喚する。」

 

「こちらも、相手によって破壊され墓地へ送られたオッドアイズ・ウィザード・ドラゴンの効果を発動

 デッキ、墓地からオッドアイズ・ウィザード・ドラゴン以外のオッドアイズモンスターを特殊召喚する。

 現れろ、切り裂く閃光!オッドアイズ・セイバー・ドラゴン!」

 LP4000→3500

 

オッドアイズ・セイバー・ドラゴン「ギャオオォォォォォォォォ!」

                ATK2800

 

 オッドアイズ・ウィザード・ドラゴン DEF2500

                   ATK2500→1250

 

 十手のひもで捕縛されたオッドアイズ・ウィザード・ドラゴンの残した魔法陣の中から背に4本の剣が生えた白い鎧のような鋼殻を身に纏う新たな二色の眼の竜が現れる。

 

「その後、デッキから螺旋のストライクバースト1枚を手札に加える。」

 

『なんとなんと、逃亡犯、自爆特攻で新たなモンスターを召喚!

 攻撃力はゴヨウ・キングと同等!?マジで何者!?』

 

「オッドアイズ・セイバー・ドラゴンで再び、ゴヨウ・チェイサーに攻撃!ストライクセイバー・ダッシュ!」

 

 Dホイールがターンバックし相手と向き合う形で指示を出す。

 オッドアイズ・セイバー・ドラゴンは背の刃を逆立たせ、ゴヨウ・チェイサーに突っ込み破壊する。

 

「ぐわっ!?」

 LP2600→2000

 

「オッドアイズ・セイバー・ドラゴンが戦闘で相手モンスターを破壊したことにより効果発動

 相手フィールドのカード1枚、ゴヨウ・キングを破壊する。バック・ブレイド!」

 

 Dホイールがターンし前を向くのと同時に、オッドアイズ・セイバー・ドラゴンも体をひねって前を向く、そしてその背の刃がゴヨウ・キングを切り裂く

 

「ぐっ!?ゴヨウ・キングまでも・・・」

 

「カードを2枚伏せて、ターンエンド。」

 

「くっ!私のターン、ドロー!?このカードは!!

 私は自分フィールド上の表側表示モンスター、オッドアイズ・ウィザード・ドラゴンを除外し、手札から異次元の精霊を特殊召喚する。」

 

 異次元の精霊 DEF100

 

 オッドアイズ・ウィザード・ドラゴンが異次元の渦にのみ込まれ、その中から幼い姿をした小さな妖精が出現する。

 

「さらにシンクロ・フュージョニストを通常召喚!」

 

 シンクロ・フュージョニスト ATK800

 

 その姿はオレンジ色の悪魔のような姿、そしてそいつはある魔法カードに描かれた影によく似た姿をしている。

 そう、この世界に本来なら存在していないはずのカードの

 

「私はレベル2のシンクロ・フュージョニストにレベル1の異次元の精霊をチューニング!

 お上の力を思い知れ!シンクロ召喚!現れろ!レベル3、ゴヨウ・ディフェンダー!」

 

ゴヨウ・ディフェンダー「ヨッ、ヨッ、ヨッ、御用だ!」

           ATK1000

 

 盾を構えた新たなゴヨウモンスター、だが問題はそちらではない

 

「シンクロ・フュージョニストがシンクロ素材として墓地へ送られた場合、デッキから融合またはフュージョンと名の付くマジックカードを手札に加える。

 私はデッキからミラクルシンクロフュージョンを手札に加える!」

 

(来たか・・・)


 この世界に来た時、俺はごみ置き場にいた。

 いや、正確に言えばごみ置き場というよりは不法投棄場だ。

 電化製品やマシンパーツなどが、無残な姿でガラクタと化している。

 まぁ、人目がなさそうでなによりだが

 

「サテライトかよ・・・さて、日影はどこか・・・」

 

――キュイイイィィィィィィィィィィィ・・・

 

「ん?」

 

 この場に似つかわしくない駆動音

 その甲高い音は昔見た絆の物語でよく聞いた虹色の光の回転音

 

「これは・・・!?」

 

 不法投棄場の川のそば、状況からして増水したときに流れてきて乗り上げたのか横倒しになった1台のDホイール

 

「似ている・・・」

 

 特徴的な三日月のような突起はないし、ハンドルもアームカバーのようなものでなくてグリップだ。

 だが、それは遊戯王5D'sの主人公、不動 遊星の乗っていた遊星号によく似ていた。

 ボディは泥で汚れ、全体的にボコボコだが、フロントの形やカラーリングが遊星号を連想させる。

 そしてそれは、無残な見た目からは想像できないが、まだ生きているぞと主張するようにそのエンジン部分から虹色の光を漏らし、駆動音を叫んでいた。

 

「乗り手もいないのにどうして・・・ん?」

 

 持っているディスクにメッセージが表示されている【リンクしますか?】

 もしかして、俺のデュエルディスクに反応して動いているのか?

 このディスクのセキュリティコードを抜けているということは、完全に同期しているらしい。

 どんな確率だ?

 

「・・・・・・」

 

 悩んだが、やっぱりこれがこのままでいることが忍びなくてリンクをOKする。

 すると、このDホイールのメモリーに入っていたのかライディングデュエルのガイドや、Dホイールの整備の仕方、そしてこのDホイールの損傷具合などのデータが入ってくる。

 川を漂っていた割には、データを信じるならばボディ損傷とホイールに異物が入っているぐらいで特に大きく壊れているわけではないらしい。

 

「ホントに頑丈だな。デュエル関係の機械は・・・」

 

 ちょっと呆れながら、カードにして持ってきた工具を取り出し整備を始める。

 まぁ、母さんのバイクの整備の手伝いくらいしかやったことないから簡単にしかできないが、マニュアルもあるしどうにかなるだろう。

 

「遊矢殿、ここにおられたか・・・何をしているのでござる?」

 

「おう、日影、いいものを拾ってよ。」

 

「いいモノとはそのバイクでござるか?」

 

「あぁ、どうもこの世界のアクションデュエル的なもので使うものらしい、これに乗ってデュエルするんだってよ。」

 

「それはまた・・・で、どうするんでござる?」

 

「なに警察に怪しいやつがいるのなら、まずは警察にちょっかいかけてみようと思ってよ。」

 

「それは、大丈夫なのでござるか?」

 

 まぁ、俺の記憶でもこの世界のセキュリティは半ば乗っ取られているようなもんだから、捕まったら即投獄されそうだが、今持っている装備を使えばどうとでもなる。

 

「その顔は・・・また何やら企んでいるのでござるな?

 ならば拙者も、その企みに助力させてもらおう。」

 

「助かるよ、これ制御系がプログラムだからどうしようかと思ってたんだ。」

 

 日影はこう見えて、電子系が得意だ。いや現代の忍者と考えたら、らしいっちゃらしいのか?

 

「ふむ、では拙者はそっちの方面の整備をしよう。」


 そんなこんなで、見れるようになったDホイールをターンバックができるくらい練習して走っているわけだが、このDホイールアシストプログラムが驚くレベルで高度だ。

 中坊の初心者である俺が、セキュリティのライディングデュエル部隊であるデュエルチェイサーズにライテクで拮抗できるくらいには

 

「ゴヨウ・ディフェンダーの効果発動

 自分フィールドに地属性、戦士族のシンクロモンスターしかいない場合、エクストラデッキからゴヨウ・ディフェンダー1体を特殊召喚する。

 さらに新たに呼んだゴヨウ・ディフェンダーの効果でもう1体のゴヨウ・ディフェンダーを特殊召喚!」

 

ゴヨウ・ディフェンダー「御用だ!」

           ATK1000

 

ゴヨウ・ディフェンダー「御用だ!」

           ATK1000

 

 インチキ効果すぎる。

 なんで、シンクロモンスター3体が実質手札1枚消費で出てくるんだ。

 

「マジックカード、ミラクルシンクロフュージョンを発動!

 自分のフィールドおよび墓地の融合素材モンスターを除外し、シンクロモンスターを融合素材とする融合モンスター1体を融合召喚する!」

 

「その効果にチェーンし、手札のホップ・イヤー飛行隊の効果を発動!

 相手のメインフェイズに、自分のフィールドのモンスター1体を対象とし、このカードを手札から特殊召喚し、そのモンスターとこのカードでシンクロ召喚を行う!」

 

『えぇ~相手ターンにシンクロ召喚!?

 それに融合召喚って!?なに、なに、なに~!?』

 

 いや~本当に外野がうるさいな。

 まぁ、ここの数少ない娯楽らしいから、派手過ぎるくらいでいいだろうけど

 

 ホップ・イヤー飛行隊 DEF600

 

「俺はレベル7のオッドアイズ・セイバー・ドラゴンにレベル2のホップ・イヤー飛行隊をチューニング!

 シンクロ召喚!噛み砕け!飢鰐竜アーケティス!!」

 

アーケティス「グオォォォォォ!!」

      DEF1000

 

 現れたのはとげとげした鰐のようなモンスター、海竜族のようで魚族である。

 こいつには本来シンクロ召喚時に非チューナーのシンクロ素材の数だけドローできる効果があるが、それは相手がこれから呼び出すであろうモンスターの対策のため使わない。

 

「新たなモンスターか!だが!私は墓地の地属性、戦士族シンクロモンスター、ゴヨウ・チェイサーとゴヨウ・キングを除外し融合!

 飽くなき追跡者の魂と捕縛の王の魂が、今一つとなりて昇華する!融合召喚!

 出でよ!荘厳なる捕獲者の血統を受け継ぎし者!ゴヨウ・エンペラー!!」

 

 ゴヨウ・エンペラー ATK3300

 

 現れたのは中国の皇帝のような恰好をした幼い子供のモンスター

 厳ついゴヨウモンスターの中では浮いた存在だが、なかなかえぐい効果をしている。

 

「行け!ゴヨウ・エンペラーでアーケティスに攻撃!」

 

「破壊はさせない!リバースカードオープン!

 速攻魔法、ドロー・マッスル!

 1ターンに1度、自分フィールド上の守備力1000以下の表側守備表示モンスターを1体対象にし、デッキから1枚ドローし、選択したモンスターはこのターン戦闘で破壊されない。

 アーケティスを選択し1枚ドロー、さらにアーケティス自身の効果で攻撃力、守備力が俺の手札の数×500ポイントアップする!」

 

 アーケティス DEF1000→1500

        ATK1000→1500

 

 防御態勢のアーケティスにゴヨウ・エンペラーが炎をはきつける、いやその攻撃方法おかしいだろ!?

 

「ぐっ!?これも防ぐか・・・だが、ゴヨウ・エンペラーは自分フィールドの戦士族、地属性シンクロモンスターを1体リリースすることで、相手がモンスターを特殊召喚したとき、そのモンスターのコントロールを得られる。

 次なるシンクロモンスターを召喚しても捕縛してくれる!私はこれでターンエンドだ!」

 

『なんという攻防!ライフはデュエルチェイサー側が不利ですが、逃亡犯はゴヨウ・エンペラーとゴヨウ・ディフェンダーにより特殊召喚されたモンスターを3回も奪われてしまいます!なんという絶望的な状況かー!』

 

 あのキャスター、アーケティスの効果を勘定に入れてから解説してくれないかな?

 まぁ、手札が0か1になるから、後続が続かなくなるけど

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 よし、このカードならいける!

 

「伏せていた魔法カード、螺旋のストライクバーストを発動!

 デッキからレベル7のオッドアイズモンスター、オッドアイズ・ドラゴンを手札に加える。

 俺はアーケティスの効果発動!

 手札2枚を捨て、フィールド上のカード1枚破壊する。

 俺は手札のアブソルーター・ドラゴンとオッドアイズ・ドラゴンを捨てゴヨウ・エンペラーを破壊する!」

 

 アーケティスの強固な顎が、ゴヨウ・エンペラーをかみ砕く

 

「墓地へ送られたアブソルーター・ドラゴンの効果でデッキからヴァレット・シンクロンを手札に加える。」

 

「だが、まだ私のフィールドには3体のゴヨウ・ディフェンダーがいる!

 このモンスターが攻撃対象に選択されたとき、このカード以外の自分フィールドの戦士族、地属性シンクロモンスター1体に付き1000ポイント攻撃力をアップさせる。」

 

『っていうことは、実質攻撃力3000のモンスターが3体並んでいるっていうこと!?

 さすがデュエルチェイサー!』

 

 ほめるのはまだ早いんだよ。

 

「さらにヴァレット・シンクロンを召喚し、墓地のアブソルーター・ドラゴンを守備表示で特殊召喚!」

 

 ヴァレット・シンクロン  ATK0

 アブソルーター・ドラゴン DEF2800

 

 さて、ん?レベル10シンクロ可能?

 俺のデッキにレベル10のシンクロモンスターなんて・・・

 

「なっ!?こいつは・・・よし!やってみるか!!」


 くっ!?なんて奴だ!

 複数のカードをつなげて、こちらの盤面を崩してくるなんて!?このプレイングはまるで・・・

 

「俺はレベル9のシンクロモンスター、飢鰐竜アーケティスにレベル1のヴァレット・シンクロンをチューニング!

 集いし夢が結集し、宙へ輝く星となる!光射す道となれ!!」

 

 !!?

 

「シンクロ召喚!飛び立て!サテライト・ウォリアー!!」

 

サテライト・ウォリアー「ツァアッ!!」

           ATK2500

 

 光の中から現れた白いロケットが変形し、黄金の戦士となり、その背に青く美しいパネルが羽のように広がる。

 やはり、お前は!?

 

「サテライト・ウォリアーの効果発動!

 このカードがシンクロ召喚に成功した場合、自分の墓地のシンクロモンスターの数まで、相手フィールド上のカードを対象とし、そのカードを破壊する。

 俺の墓地には2体のシンクロモンスターがいる、お前のフィールドの残った2体のゴヨウ・ディフェンダーを破壊する!コメット・ブラスト!」

 

 サテライト・ウォリアーの出した流星の輝きが俺のゴヨウ・ディフェンダーを跡形もなく消し去る。

 残ったのは効果の使えない攻撃力1000のゴヨウ・ディフェンダー1体のみ・・・

 

「さらにこの効果で破壊したカードの数×1000ポイントこのカードの攻撃力をアップする!」

 

 サテライト・ウォリアー ATK2500→4500

 

「これで止めだ!サテライト・ウォリアーでゴヨウ・ディフェンダーに攻撃!コズミック・シュート!!」

 

 放たれるロケットの逆噴射による加速の付いた必殺の蹴撃

 手札にも墓地にもフィールドにも俺を守るカードは何一つなく、俺はその攻撃を受け入れる。

 

「ぐわああぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 LP2000→0

 

 ぐっうぅぅぅ・・・負けたことによる強制停止に加え、リアルソリッドビジョンによる衝撃がDホイールのバランスを崩し、クラッシュしそうになるが、なんとかそれだけは免れる。

 そして、あのDホイーラーはそんな俺を尻目に夜闇の中に消えようとしている。

 

「ま、待ってくれ!お前は!!ふ――!?」

 

 それはたしかに俺の前にいたはずだ。

 だが、奴はまるで煙のようにその姿を揺らがせ、終いには

 

『「き・・・消えた?」』

 

 まるでそれは蜃気楼のように消えてしまった。俺は夢を見ているのか・・・?

 

「ほ、本部!?こちらチェイサー227!対象Dホイールを見失った!

 モーメント反応による追跡を求む!」

 

『こ、こちら本部・・・モーメント反応消失・・・完全に消えました・・・』

 

 いつも冷静なオペレーターが困惑している。本当に幽霊だとでもいうのか?

 

 その後、顔すら分からなかったそいつは長官の呟きから『ゴーストライダー』と呼称され、一夜にしてこの街の都市伝説となった。




そんな・・・ありえねぇ・・だってあいつは・・・

どうしたの?

アマンダ、フランク、タナー・・・
すまねぇ、ちょっと行ってくる!

えっ!?ちょっとどこ行くの!?

今、外はセキュリティでいっぱいだよ!?

捕まちゃうよ!?

すまねぇ、でも幽霊でも何でもいいから俺はもう一度あいつに会いてぇんだ!!
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『一人ぼっちの泣き烏』


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一人ぼっちの泣き烏

鉄砲玉登場
蜂の子の触感とか味のデータはウナギの白焼きと同じらしいですよ。私はまだ未体験ですが機会があれば一度食べてみたいですね。まぁ、市販の蜂の子の佃煮は成虫とさなぎが混じるのでバリバリしているらしいですが。エビが好きなので行けるはず・・・

※ブラックバスなどの特定外来種の生きたままの持ち帰りは法律により禁止されております。
 また、在来種保護のためにも釣ったらその場で〆ましょう。
 スズキの仲間なのでしっかり臭みを抜けば、美味しい魚です。川魚のでしっかり日は通しましょう。


―――い!!返事をしてくれぇぇ!!戻って来たんだろぉ!!」

 

 暗い街を1台の黒いDホイールが疾駆する。

 

「シンジを止められなかったのは俺の責任だ!だからよぉ・・・」

 

 それに乗る一羽のカラスは、届くはずのない声を上げて鳴いている。

 

「幽霊でもいいから・・・返事してくれよぉ・・・」


「ふぅ~やっと行ったか・・・」

 

 どこの世界でも、マスコミっていうのは鬱陶しいねぇ。

 ミスト・ボディと光学迷彩アーマーのカードの力とリアル煙玉を使って、幽霊っぽく消えて、Dホイールをカードにしてハイウェイを飛び降りた俺はその場所からそう遠くないところで、ディスクを停止させてカードの効果を解く

 

「遊矢殿。」

 

 日影が来たか、こいつのミスト・ウォームの霧の演出もいい塩梅だった。

 にしても、確かあの鼻長官が融合を使いだすのは大会からだったはずだが、すでに配布しているのか・・・

 まぁ、わかりやすくていいが・・・

 

「日影、セキュリティは黒だ。」

 

「うむ、拙者も確認した。

 だが、こうなってくると柚子殿を探すのも難しくなってくるでござるな・・・」

 

「なぁ~に、人探しするのに警察を使うまでもないさ。

 特にこういう治安の悪そうなところはな。」

 

「う~む、あてがあると?」

 

 確かに当てはある。

 この世界でも彼が情報屋をやっているのかは謎だが、まぁ、外れた場合はそこら辺のチンピラから聞きだすしかない。

 

「まぁ、そこらへんは零児達の仕事だ。」

 

「うむ、では拙者はこのことを零児殿に伝えるとしよう。

 しても、遊矢殿が最後に使ったカードはもしや?」

 

「あぁ、あのDホイールのエクストラ入れに入ってた奴だ。」

 

 日影にシステム周りの整備を頼んだが、エクストラの認証が枚数オーバーでエラーが出ていた。

 壊れたことによるバグかと思われたが、原因はあのDホイールのエクストラにカードが入りっぱなしになっていることが原因だった。

 そして、どうにかそのカードを取り出そうとしたのだが、普通に取り出すには防犯のためパスワードがいるらしく、入り口は堅く閉ざされ、ボディごと取り外そうにも俺にそんな技術はないし設備もないのでそのまんまにしておいたのだ。

 

 だが入っていたのがサテライト・ウォリアーとはな・・・

 あのDホイールまさか本当に・・・

 

「う~む、それなら召喚条件を整えて取り出すしかないでござるな。

 さて遊矢殿はこれからどうなされるか?

 さっきの騒ぎで、警戒の目が厳しくなっておるでござるし・・・」

 

「そうだな、俺はとりあえず、図書館にでも行くとしよう。

 長官が代わるとなれば新聞で記事にでもなっているだろうし・・・」

 

「それもそうでござるな。

 ではお気を付けなされよ。」

 

 そう言い、日影は暗闇に消える。

 さて、休むにしても野宿なんだが、スラム街の所為でそこらへんで雑魚寝している奴が多いから野宿でも違和感ないんだよな。

 どっか泊まってもいいんだがデニスの稼ぎも、積極的に使いたくないし

 しかし・・・

 

「雑魚寝しているほどの割には、そんなに痩せてないんだよなぁ・・・?」


「あぁもう!!なんだよあいつ!

 何が「俺はできるだけ目立ちたくないんだ。」だよ!思いっきり目立ってんじゃねぇか!!」

 

 翌朝、売られていた新聞を購入した沢渡はそこの紙面のトップを飾っている、謎のDホイーラーに怒りを燃やしていた。

 

「どうせ遊矢のことだ。

 身バレしていないから自分は目立っていないと、白を切るだろう。」

 

「だろうけどよぉ・・・言って2日でこれだぜ?」

 

「はは、でも意外だね。

 彼がこんな、魅せるようなデュエルをするなんて・・・」

 

 デニスは遊矢が適度に手加減して、相手が動けるように調節してデュエルしていたことに気付いていた。

 状況的に破壊効果が使えた螺旋のストライクバーストの効果を使えば、オッドアイズ・ウィザード・ドラゴンも破壊でき、結果論であるが次のターン、セキュリティが大量のゴヨウモンスターを展開するのも阻止できたのだ。

 

「デニス、昨日の遊矢の行動は敵が潜り込んでいることに確信を得るためだったが、別に遊矢は魅せるデュエルが嫌いなわけじゃないぞ?」

 

「えっ!?」

 

 権現坂の言葉に怪訝な顔をするデニス

 それもそうだろう、遊矢は魅せデュエルの代名詞ともいえる榊 遊勝のことが嫌いである。

 

「遊矢はただ、デュエルに余計な‟間”を作られるのが嫌なだけだ。

 実際、エンタメデュエリストを目指している柚子のことは応援しているし、ソリッドビジョンだけではなくて、プレイングでも魅せられる者は賞賛している。」

 

「あぁ、アイツ煽りとか気にしねぇのに、別の茶々入れられるとめっちゃキレるよなぁ~」

 

「あぁ、榊 遊勝は今思えば、余計な‶間”を作り過ぎていたのかもな。

 あの相手の信条なら仕方ないと受け流す遊矢が憎悪するほどに

 いや、あれは自分の信条すら裏切ったゆえか・・・」

 

「そう・・・なんだ・・・

 だったら、僕も彼に賞賛されるようなエンタメをしなくっちゃね!

 さて、僕も彼から与えられた任務をこなすとしよう!」

 

 デニスは路地から出ると、ちらほらと人の集まり始めた噴水の広場に立つ

 

「レディース&ジェントルメン!Everybody!今日も共に楽しもう!!」

 

――ワアァァァ!

 

 少なめだが歓声を受け、デニスはそれに応えるべく手品やジャグリングなどの大道芸をしてゆく

 そして、それを見た道行く人も次々と足を止め、歓声の輪の中に入ってゆく

 

「・・・張り切ってんな、アイツ。」

 

「あぁ、任務とか関係なく、ただ笑顔が好きなのだろう。

 遊矢への対抗意識もあるのだろうがな。」

 

「ちっ!俺様だって、あのらいでぃんぐ?デュエルをすれば、あっという間に目立ってやるのに!」

 

「沢渡・・・もうセキュリティ内に敵がいるのは確定なのだから悪目立ちは・・・」

 

「それでもよぉ!あっちでもこっちでも、アイツのニュースばっかしてんじゃねぇか!

 あぁ、どっかに俺様が最っ高っ!!に目立てる舞台はねぇもんかなぁ~」

 

「・・・はあぁぁ~」

 

 喚く沢渡を鬱陶しそうに見ながら、権現坂は大きくため息を吐いた。


「・・・ジャン・ミシェル・ロジェ、治安維持局長官着任。」

 

 シティの図書館、そこは特に制限もなく入れる共同の物で、コモンズ対策なのか貸し出しはしてなかったが、それでもかなりの蔵書量を誇っていて、新聞も過去のものが大量にデータベースとして残されていた。

 

 結局、ロジェについての情報といえばそのくらいで、その後の評判もトップス目線で書かれているためか、そう悪くない。

 だがトップスでも権力のあるものが犯罪を行うと容赦なく逮捕しているともあったので、組織としてはかなり真っ当に警察をしているようだ。

 

 ついでに、モーメントのことについても調べたが、これについてはなぜか開発者の名前が出てこなかった。

 この街の住人が至極当たり前のものとして使っているにもかかわらずだ。

 

「この辺りは、ソリッドビジョンと同じか・・・」

 

 実はというとスタンダードでもソリッドビジョンやデュエルモンスターズの開発者については、存在を抹消されたかの如く分からなくなっていた。

 これは元々一つの世界が分離したことによる弊害だろうか?

 

「まぁ、これは深く追求しても仕方ないか・・・」

 

 図書館ではこれ以上の情報は得られないと思い外に出る。

 

 次に向かうのはスラム街の闇市だ。

 正確に言えば地図によると商業エリアといい、違法な物以外は何でも売れる楽市楽座状態の場所らしい。

 様々な屋台が立ち並ぶそこは、掘り出し物もあるのかトップスの人間と思われる身なりの良い人々もちらほらと見かける。

 

「いた。」

 

 俺の目的、モンスターの模型やフィギュアを売っている小さなサングラスに中国帽を被ったエセ中国人風の太めの男、胡桃沢

 

「いらっしゃい。」

 

「なぁ、ここは買取もしているか?」

 

「買取ぃ?できなくもないが、俺の目にかなうほどの品じゃないとねェ?」

 

 スタンダードで偶然手に入ったものなんだが、まさかこういう使い方になるとは・・・

 こいつの好みが一緒なのか知らないけど

 

 カバンの中から茶色い緩衝材に包まれたソレを取り出し、とりあえず全体が胡桃沢に見えるように包みを解く

 

「おぉ!?そ、それは!!?ア、アップル・マジシャンガールたん!?」

 

 めっちゃ食いついた・・・

 

「とりあえず、これでどうだい?」

 

――サッ!

 

 手で希望の買取値段をサインし、競りを始めるんだが・・・いきなり金を差し出された。

 いや、吹っ掛けたのに桁が一つ多いんだけど・・・箱なしの中古品で50万って・・・

 つぅか、よくそんな金あったな・・・

 

「交渉成立・・・」

 

「うぉおおぉぉぉ!ありがとう!!あぁ・・・まさかこんな所で会えるとは・・・」

 

 感動して、涙を流し号泣している胡桃沢

 まさか、一体でこれとは・・・この調子ならいけるか?

 

「つかぬことを聞くが、この街でユーゴってやつを聞いたことはないか?」

 

「ユーゴ?あぁ、修理屋のユーゴのことか?

 そいつなら確かにこの街に住んでるぜ?俺は会ったことはないが・・・」

 

 修理屋?この調子だとこいつはこれ以上知らなそうだが、まぁいい、これだけでも貴重な情報だ。

 

「ありがとう。

 じゃあ、これはそのお礼だ。」

 

 カバンから取り出す2体目、黄色い魔法使い族、レモン・マジシャン・ガールのフィギュア

 

「うひょぉぉぉぉ!!マジか!?マジでいいのか!?」

 

「えぇ、それは情報料ですからね。」

 

「情報・・・ぼ、坊ちゃん、も、もしかして・・・!?」

 

 カバンからさらに1体取り出す、今度は顔だけのチラ見だ。

 

「おぉ!!?そ、それはで、伝説のブラ!?ブラマジ、ガー・・・」

 

 なんか過呼吸起こしそうになっているな・・・大丈夫かこいつ?

 

「ユーゴの所在を教えてくれたら、あげちゃってもいいんだけどなぁ~?」

 

「きたああぁぁぁぁ!!それぐらいお安い御用だ!!

 明日に、また来てくれ!今夜中に調べてやるぜ!」

 

「ありがとう、じゃあ明日また来るよ。」

 

「それと情報のことならこの俺にまかしてくれ!

 あんたになら、俺にできる範囲の情報をやるぜ!何でも聞いてくれ!」

 

「あぁ、贔屓にさせてもらうよ。」

 

 カバンにフィギュアを仕舞い、その場を離れる。

 まさか、金と情報がフィギュア3体で手に入るとは・・・

 

 裏路地に入ってフィギュアをカードに変えて、そのまま進む

 にしても、本当にチンピラとかいないな・・・

 セキュリティの目が厳しいとはいっても、俺みたいな、よそ者のチビ、しかもさっき金を貰ったのに全くと言っていいほど襲われない。

 ドミノ町なら奇声を発するチンピラが、タイヤで拘束してきそうなものだが・・・

 

「なんていうか、気力のない街だな・・・」

 

 ここまでひどい格差の街だと、ギャングやチンピラが横行しそうなものだが、セキュリティの目が厳しすぎてそんなものはいない。

 外にいる子供をよく見れば、痣があり怯えていることから、家がないのではなく親に怯えて家に入れないのだろうということが分かる。

 雑魚寝している男を見れば、顔が赤らんでいるところから酒に酔っているようだ。

 

 世界は違えどもここも日本だからだろうか、飢え死にしそうになっている人間がいないことを踏まえると、配給や炊き出しみたいなことはしているのかもしれない。

 生ごみを漁るような奴も見かけないし、垢だらけで皮膚病になって苦しんでいる奴も見かけない。

 貧しいのは貧しいんだろうけど、本当に貧しいのかこれ?

 

「まぁ、俺には関係ないか・・・ん?」

 

 裏路地を抜け、表通りに着くとDホイールを押してフラフラとこちらに歩いてくるヘルメットを被った人

 そのDホイールはマフラーの部分に特徴的な翼がついており、カラスを連想させる意匠とカラーリングをしていた。

 

「あれって・・・!?」

 

「あぁ!?あ・・・ゆう・・・」――ドサッ・・・

 

「!?おい、大丈夫か!?おい!!

 あぁ駄目だ、完全に気絶している・・・どうしよう、俺この人の家知らないぞ!?」

 

 急に倒れたその男、クロウ・ホーガンをDホイールに乗せて、とりあえずゆっくり出来そうな場所に移動した。


――クロウ

 

「はっ!遊!?」

 

「おぉう!?脅かすなよ・・・」

 

 俺は・・・そうか、徹夜で走り回って気絶しちまったのか・・・

 起きて目の前にいたのは、黒い軍服みてぇな服を着た赤目の男

 夏だっていうのにマフラー巻いて、帽子を目深に被ってやがる。なんだ?こんなやつシティじゃ見たことねぇぞ?

 

「お目覚めかな?」

 

「お、おう、おめぇは?見ねぇ顔だが・・・」

 

「俺はロゼ、人探しでこの街に来ていてね。

 いきなり目の前で倒れられるから、何事かと思ったが、その眼の下の隈からして寝不足かな?」

 

 背はちぃせぇし、覗く顔つきからしてかなり若いんだろうが、年上としゃべってるみてぇだぜ。

 

「あ、あぁ・・・」

 

「そう警戒するなよ。

 熱中症かもしれないから、公園で水を汲んできた。飲め。」

 

「お、おう。ありがたくいただくぜ。」

 

 差し出されたペットボトルに入った水を飲む

 昨日の晩から、ずっと飲まず食わずで走りっぱなしだったから、ただの水なのにうまく感じやがるぜ。

 

 冷静になって周りを見れば、ここはシティを流れる川の河川敷、そこに架けられた橋の下だ。

 空を見ればもうお天道様は天辺を過ぎてやがる・・・

 

「ありがとうな。迷惑かけちまって・・・」

 

「いいさ、別に

 ちょうど探し人の当たりがついたから、明日まで暇だったし。」

 

 よそ者とはいえ、マーカーだらけの俺を暇だからって理由で介抱するなんて、悪ぃ奴じゃなさそうだ。

 

「俺も、人を探して一晩中・・・」

 

「で、倒れたって?無鉄砲な奴だなぁ~

 腹減ってるだろ?もう少しで飯もできるから、待ってな。」

 

「飯?あっ、でも俺帰らなきゃ・・・」――ぐぅ~

 

 いいタイミングで腹の虫が鳴りやがる・・・

 

「・・・また倒れられたら困るから、食ってけ。」

 

「すまねぇ・・・」

 

 アマンダ、フランク、タナーもすまねぇ、帰るのは少し遅れそうだ。

 

「さて、貴方はDホイールに乗っていた、っていうことはDホイーラー、デュエリストってわけだ。

 どうだい?飯ができるまで俺と一勝負しないか?」

 

「あぁ?この俺とデュエルだと?」

 

「あぁ、これでも俺もちょっとしたデュエリストでね。

 助けたついでに、俺の暇つぶしに付き合え。」

 

 変な奴、助けた見返りがデュエルかよ。

 それに飯ができるまでの暇つぶしとは、このクロウ様が舐められたもんじゃねぇか!

 

「いいぜ!やってやるよ!この鉄砲玉のクロウ様がな!!」

 

「ふぅん、じゃあ、少し遊ぼうか?」

 

『『決闘(デュエル)!!』』

 

「先攻は俺か、俺はEM(エンタメイト)セカンドンキーを召喚。」

 

セカンドンキー「ブヒヒヒィン!」

       ATK1000

 

 出てきたのは帽子と蝶ネクタイをした茶色いロバ、妙なモンスターを使うな?

 

「こいつが召喚、特殊召喚されたとき、デッキからEM(エンタメイト)セカンドンキー以外のEM(エンタメイト)モンスター1体を墓地へ送る。

 俺が墓地に送るのはEM(エンタメイト)ギッタンバッタ

 カードを2枚伏せて、ターンエンドだ。」

 

 高々攻撃力1000のモンスターを攻撃表示で突っ立たせて、伏せカード2枚だと?

 そんな見え見えの罠、このクロウ様には通用しないぜ!

 

「俺のターン、ドロー!

 へっ!いいカードが来たぜ!永続魔法、黒い旋風発動!

 こいつは俺のフィールドにBF(ブラックフェザー)モンスターが召喚されたとき、そのモンスターより低い攻撃力を持つBF(ブラックフェザー)モンスターをデッキから手札に加える!

 そして、BF(ブラックフェザー)―暁のシロッコは相手フィールド上にのみモンスターが存在するとき、リリースなしで召喚ができる!

 来い、BF(ブラックフェザー)―暁のシロッコ!!」

 

暁のシロッコ「はっ!」

      ATK2000

 

 オレンジ色の頭をした黒羽の鳥人、暁のシロッコが俺のフィールドに現れる。

 でもこんなもんで終わらねぇぜ!俺のブラックフェザーデッキはな!

 

「黒い旋風の効果で攻撃力1400のBF(ブラックフェザー)―月影のカルートを手札に加えるぜ!

 さらに俺のフィールドにBF(ブラックフェザー)モンスターがいるとき、手札のこいつらは特殊召喚できる!

 来い!BF(ブラックフェザー)―黒槍のブラスト、BF(ブラックフェザー)―疾風のゲイル!」

 

黒槍のブラスト「フンッ!」

       ATK1700

 

疾風のゲイル「クルゥゥ!」

      ATK1300

 

 黒い螺旋槍を持った鳥人と、緑色の小柄な鳥人が現れる。

 ここまで展開してなんもしてこないところを見ると、伏せているカードは戦闘系みてぇだな!

 だったら、さっそく決めさせてもらうぜ!

 

「手札からトラップカード、デルタ・クロウ―アンチ・リバースを発動!

 こいつは自分フィールド上にBF(ブラックフェザー)モンスターが3体のみ存在するとき、手札から発動出来る!

 相手フィールドにセットされたマジック、トラップカードをすべて破壊するぜ!」

 

 3体のブラックフェザーが巻き起こす旋風が、ロゼのカードを吹き飛ばす。

 だが、防御カードを破壊されたつぅのに奴は涼しい顔をしてやがる?

 

「相手によって破壊された運命の発掘とミラーフォース・ランチャーの効果を発動する。

 まずはミラーフォース・ランチャーの効果でセット状態で相手に破壊されたこのカードと、デッキ、墓地の聖なるバリア―ミラーフォース―を1枚選択し、この2枚を自分フィールドにセットする!」

 

「な、なにぃ!?ミラフォだと!?」

 

「さらに、フィールドで相手によって破壊された運命の発掘の効果で、自分の墓地の運命の発掘の枚数だけ、俺はデッキからカードをドローする。

 現在俺の墓地の運命の発掘は1枚、よって俺は新たに1枚ドローする。

 あぁ、そうだ、ミラーフォース・ランチャーの効果で伏せられたミラーフォースはこのターンでも発動できるから、気を付けるんだな。」

 

「セットしたターンでもミラフォが使えるだとぉ!?

 インチキ効果もたいがいにしやがれ!?」

 

「手札からトラップ使っているあんたが言うか。」

 

 おまけに1枚ドローさせちまった。

 こいつ悪いやつじゃねぇが、なんて意地の悪ぃデッキ使ってやがるんだ!?

 

「だが、この程度じゃ俺のブラックフェザーデッキはへこたれねぇぜ!

 疾風のゲイルの効果発動!

 1ターンに1度、相手フィールド上のモンスターの攻撃力、守備力を半分にする。

 俺はEM(エンタメイト)セカンドンキーを選択!」

 

 セカンドンキー ATK1000→500

          DEF2000→1000

 

「よし!さらに俺はレベル4のBF(ブラックフェザー)―黒槍のブラストにレベル3のBF(ブラックフェザー)―疾風のゲイルをチューニング!

 漆黒の翼翻し、雷鳴と共に走れ!電光の斬撃!シンクロ召喚!

 降り注げ!A(アサルト) BF(ブラックフェザー)―驟雨のライキリ!」

 

驟雨のライキリ「はっ!」

       ATK2600

 

 左右非対称の紫の鎧を身に着けた日本刀を構えた鳥人、ライキリ

 早速俺のエース様のご登場だぜ!

 

「驟雨のライキリの効果発動!

 1ターンに1度、自分フィールド上のこのカード以外のBF(ブラックフェザー)モンスターの数まで、相手フィールド上のカードを対象にして破壊する。

 俺のフィールドには暁のシロッコが1体、よってお前が伏せたミラーフォースは破壊だぁ!」

 

 これで奴の迎撃トラップはすべてなくなった!

 ライキリの攻撃力は2600、シロッコは2000、奴のモンスターは500

 

「こいつで決まりだ!行くぜ、バトルフェイズ!」

 

「いや、勝負っていうのは終わってみないと分からないものさ。

 メインフェイズ終了前に手札のホップ・イヤー飛行隊の効果発動。」

 

 なっ!?そいつは昨日の!?

 

「相手のメインフェイズ時、自分フィールド上のモンスター1体を対象として、このカードを特殊召喚し、対象モンスターと共にシンクロ召喚を行う!」

 

 ホップ・イヤー飛行隊 DEF600

 

「俺はレベル4のEM(エンタメイト)セカンドンキーにレベル2のホップ・イヤー飛行隊をチューニング!

 シンクロ召喚!現れろ!オリエント・ドラゴン!」

 

オリエント・ドラゴン「ギャアァァ!」

          ATK2300

 

 新たに奴が呼び出したのは鳥みてぇな羽を持った祭りの龍の出し物みたいな頭をしたドラゴン

 おいおい、こいつって確か!?

 

「このカードがシンクロ召喚に成功したとき、相手フィールド上のシンクロモンスター1体を選択しゲームから除外する。

 驟雨のライキリには消えてもらおう!」

 

 オリエント・ドラゴンの羽ばたきで起こされた風でライキリがどっかに飛んで行っちまう。

 くそっ!せっかく呼んだのによ!しかたねぇ・・・

 

「カードを1枚伏せて、ターンエンドだ。」

 

「おやおや、鉄砲玉の弾丸が止まってしまったなぁ?

 しかも弾丸も尽きようとしているとは、情けない・・・」

 

「うるせぇ!」

 

 ちゃんと手はあんだよ!

 伏せたカードはフェイク・フェザー、手札のBF(ブラックフェザー)をコストに相手の墓地のトラップの効果を使える。

 こいつであいつのミラーフォースをコピーして、返り討ちだぜ!

 

「俺のターン、ドロー・・・・

 魔法カード、手札抹殺を発動

 互いのプレイヤーは手札をすべて捨て、捨てた枚数分デッキからカードをドローする。

 俺はEM(エンタメイト)バリアバルーン・バク、復活の福音を捨て2枚ドロー。」

 

「くっ!俺はBF(ブラックフェザー)―月影のカルートを捨てて、1枚ドローだ。」

 

 引いたカードは・・・よし!BF(ブラックフェザー)―大旆のヴァーユだ!

 こいつは墓地のこいつとBF(ブラックフェザー)を除外することでBF(ブラックフェザー)シンクロモンスターを呼び出せる。俺に風が吹いているみたいだぜ!

 

「さらにチューナーモンスター、森の聖獣 ヴァレリフォーンを召喚!」

 

ヴァレリフォーン「フォーン!」

        ATK1200

 

 新たに召喚される、背中に花が生えた小鹿

 チューナーか、新しいシンクロモンスターを出す気か?

 

「ヴァレリフォーンの効果発動

 1ターンに1度、手札のカードを1枚捨てて墓地のレベル2以下の獣族モンスターを表側攻撃表示か裏側守備表示で特殊召喚する。

 俺は手札のEM(エンタメイト)ユニを捨て、戻ってこい、レベル2チューナー、ホップ・イヤー飛行隊!」

 

 ホップ・イヤー飛行隊 ATK300

 

「さらにEM(エンタメイト)モンスターが手札から墓地へ送られたことにより、墓地のギッタンバッタは特殊召喚できる。」

 

 ギッタンバッタ DEF1200

 

 1つの効果を発端にアッという間に立ち並ぶ2体のモンスター、この戦法・・・!?

 

「俺はレベル4のギッタンバッタにレベル2のホップ・イヤー飛行隊をチューニング!

 天を焼くシリウス、孤狼の蒼き瞳よ、地に縛られた憐れな烏をかみ砕け!シンクロ召喚!

 現れろ!天狼王 ブルー・セイリオス!」

 

ブルー・セイリオス「「「グオオォォォォォン!!」」」

         ATK2400

 

 三つ首の蒼い狼、ブルー・セイリオス、こいつはジャックの!?

 

「さらに闇属性のレベル6モンスター、ブルー・セイリオスにレベル2のヴァレリフォーンをチューニング!

 闇が滲み、終焉へと導く、光なき世界へ!シンクロ召喚!

 現れろ!ダークエンド・ドラゴン!」

 

ダークエンド・ドラゴン「グルルルル・・・」

           ATK2600

 

 ブルー・セイリオスから闇があふれ出して変わった姿は胸に顔があるずんぐりむっくりな黒いドラゴン

 ブルー・セイリオスと200ポイントしか攻撃力は変わらねぇ、何を考えてやがる?

 

「ダークエンド・ドラゴンの効果発動!

 1ターンに1度、自身の攻撃力を500ポイント減らすことで相手モンスターを1体選択して墓地へ送る。

 暁のシロッコにもご退場願おうか?」

 

 ダークエンド・ドラゴン ATK2600→2100

 

 ダークエンド・ドラゴンの胸の顔の口から闇が吐き出され、暁のシロッコが飲み込まれて消える。

 ぐっ!?これで俺に残されたカードは、フェイク・フェザーだけか・・・

 

「バトル!ダークエンド・ドラゴンとオリエント・ドラゴンでダイレクトアタックだ!」

 

 かかった!!

 

「そうはさせねぇ!!トラップ発動!フェイク・フェザー!

 手札のBF(ブラックフェザー)―大旆のヴァーユを捨てて、相手の墓地のトラップの効果をこのカードの効果として発動する!

 俺が発動させるのはおめぇの墓地の聖なるバリア―ミラーフォース―だ!」

 

 輝くバリアが2体のドラゴンを弾き飛ばす。これで奴のフィールドはがら空き・・・

 

――バリンッ!

 

「何っ!?」

 

 ミラフォのバリアが割られている!?なんでこいつら破壊されねぇんだよ!?

 

「墓地の魔法カード、復活の福音の効果

 自分フィールド上のドラゴン族モンスターが破壊されるとき、代わりに墓地のこのカードを除外することができる。

 ミラーフォースの効果は同時に破壊される効果、そして俺のモンスターはどちらもドラゴン族、よって復活の福音は俺の2体のドラゴンを同時に守り抜く!」

 

「墓地のマジックカードだと!?」

 

「手札抹殺で捨てたカードの1枚さ。

 バトル続行!2体のダイレクトアタックを受けろ!!」

 

「うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 LP4000→1900→0

 

 2体のドラゴンの衝撃で、俺は吹っ飛ばされる。

 いてて、まさかこんなにあっさり負けちまうとはな・・・

 

「お~い、大丈夫か?」

 

「あぁ、おめぇ強ぇな・・・

 まさか捨てたカードにぶち抜かれるなんてよ・・・」

 

「生憎、俺のデッキにただ捨てるだけのカードなんて1枚もないんでね。

 ドローするカード、手札のカード、墓地に眠るカード、除外されたカード、そのすべてのカードが俺を勝利へと導くための切り札だ。」

 

――この世に不必要なカードなどない。

 

「!!?

 はっ・・・昔、似たようなことを言ったやつがいたぜ・・・」

 

「・・・さて、丁度良い時間だ。飯にしよう。」

 

 ロゼは携帯用コンロにかけてあった鍋の中からアルミホイルを2つ取り出し、それを木の皿にのせ、アルミホイルを解いてそのうち一つをスプーンとともに俺に差し出す。

 

 皿の上にはアルミホイルの上に葉っぱが敷かれていて、さらにその上に米みてぇなのと魚の切り身が載せられている。

 付け合わせなのかエビ?も一緒に蒸されているみてぇだが、なんだこれ?

 いい臭いはしているけどよ・・・

 

「できるだけ骨は取り除いてるが、残っているかもしれないから気を付けろよ?」

 

「ガキじゃねぇんだからそんくらいわかってぇらぁ!いただきます!」

 

 魚を崩して、下の米みてぇなのと一緒にスプーンにのせて食べる。うめぇ・・・

 

「なんだこれ、うめぇ・・・」

 

「口に合ったようで何より

 う~ん、そこの川で釣った奴だが、割ときれいな川だからか、ちゃんと泥臭さは取れているな。」

 

「えっ!?そこで釣ったやつって・・・」

 

 この川にこんなうめぇ魚なんているのか?

 

「あぁ、ブラックバスだよ。

 皮引いて、塩振って、臭みを抜いたら十分食える魚だ。鯉とかブルーギルとかもな。

 ちなみにそのエビっぽいものは、ザリガニだ。」

 

 ブラックバスにザリガニ!?

 

「じゃ、じゃあ、この米っぽいものは?」

 

 プチプチして変な触感しているから、米じゃねえみてぇだけど・・・

 

「あぁ、それは蜂の子だね。」

 

「は、蜂ぃ!!?」

 

「こぼすなよ、買うと高いし、苦労して取ったんだから。」

 

 ロゼは何でもないという風にぱくついている。

 確かに味はいけるし、出されたものを残すのはもったいねぇから、俺も大人しく食う。

 

「おめぇいつもこんなもの食ってんのか?」

 

「いつもじゃないな。

 でも、今はあまりお金を使いたくなくてね。

 その辺でとれるもので工面したのがこれだ。食いづらいものでもちゃんと下処理して火を通してやれば、うまいものになるだろ?」

 

 確かに、別にこの川は釣りが禁止されているわけじゃねぇ

 ブラックバスとかなら山ほどいる。

 いつも俺がアイツらに持って行ってやれるもんなんて、缶詰とか菓子とかくれぇで、ちゃんとした食事なんて作ってやれなかった・・・

 

「ほら、そんなに湿気た顔してないで、飯の時ぐらい笑って食えよ。」

 

「ん?あぁ・・・」

 

 そういえばあいつも、飯の時間だっていうのに眉間にしわ寄せてたな・・・

 

≪―――い、なんだぁ?また徹夜したのかぁ?

 ほら、飯の時ぐらい眉間にしわ寄せんなよ。飯の時ぐらいニコニコしてなって!≫

 

「なんだか、言い返されたような気分だぜ・・・」

 

「ん?」

 

「いや、なんでもねぇ。」

 

 不思議な奴だ。

 あいつと全然違うのに、なんだかあいつと同じ匂いがする・・・

 

「なぁ、この街に来たばかりなら泊まるとこあんのか?」

 

「ん?いや、ないけど・・・」

 

「だったら、うちに泊まっていけよ。飯の礼も兼ねてな。」

 

 だから俺は、こいつに興味がわいた。昔、あいつと出会った時のように




むぅ~月影、私もデュエルがしたいぞ!

だからこうして、テーブルデュエルをしているのでござろう?

そうではない!私は赤いのと同じようにあのバイクに乗ったデュエルがしたいのだ!

無茶を言いなさるな・・・
明日は遊矢殿がユーゴ殿の居場所を手に入れてくれるそうでござるから、そっちに行くでござるよ。

イヤだぁ!私もバイクに乗ってデュエルをするんだぁ!!

・・・月影、兄様から連絡

むっ?零児殿から?・・・・なんと!?
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『白からの依頼』
零児殿は、そんな人物とどうやって接触したのでござろうか?


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白からの依頼

ARC―Vの貧乏描写って中途半端なんですよね。
シンジはちゃんとしたライダースーツ着てますし、なぜかクロウの家の常備食がカビが生えやすく割と高い食パンですし、一斤を4人で3、4日かけて食べたら・・・う~ん、普通に栄養失調でアウトのような気がする・・・何食べてたんだろ?
お菓子も保存食になるクッキーとかも全部食べてましたし・・・

お久しぶりです。
納得いかずにリテイクばっかりしてたので、時間がかかっていました。
フレンドシップカップへの中継ぎ話です。



 『クロウ・ホーガン』

 遊戯王第三作、遊戯王5D’sの主人公、不動 遊星の幼馴染にして親友

 OCGにおいても一世を風靡した超速シンクロデッキ、ブラックフェザーデッキの使い手

 無鉄砲なところはあるが子供好きでお人よし、その所為かいろいろと苦労する場面もあったキャラだ。

 

「あぁ!?クロウ!お帰り!もう!心配したんだよ!!」

 

「あぁ、すまねぇな。アマンダ・・・」

 

 褐色肌の赤髪の女の子、アマンダがクロウに抱き着く

 まぁ、話を聞いてみれば昨日の夜から帰ってなかったみたいだしそりゃ心配するよな・・・

 

「あぁ!!クロウ!」

 

「お帰りクロウ兄ちゃん!」

 

「フランクとタナーも、心配かけちまったみてぇだな・・・ごめん。」

 

 緑髪の生意気そうな顔をした少年、フランクと水色の髪をした他の二人よりも幼そうな少年、タナーも家から出てきて、クロウに抱き着いた。

 子供好きで世話好きなのは変わらずか。

 

「あれ?クロウ、そいつ誰?」

 

 フランクが一足先に冷静になったのか、俺に気付いた。

 

「あの人がクロウの探していた人?」

 

「いや、あいつはロゼ、ちょっといろいろあってよ。

 この街に来たばかりらしぃんだが、泊るところないっていうんで連れてきたんだ。」

 

「あぁ、またクロウのいつものか。」

 

「よく拾ってくるよねぇ~?」

 

 俺は猫か。

 

「お初に、俺はロゼ

 ちょっと人探しにこの街に来ているデュエリストだ。」

 

「私、アマンダ!」

 

「僕、タナー!」

 

「フランクだ。

 なぁ、お前、デュエリストってことは強いのか?」

 

「ん?まぁ、クロウに勝てるぐらいにはな。」

 

 大分ぎりぎりだったけど

 

「えぇ~クロウ!?人探しに行ったんじゃなくてデュエルしてたの?」

 

「ち、違うって、人探しで疲れて倒れた俺を介抱してくれたんだよ。

 で、助けたついでにデュエルしろって言われたからさ。」

 

「で、負けちゃったの?」

 

「嘘だぁ~クロウ兄ちゃんが負けるはずないじゃん。」

 

「だったら俺とデュエルだ!

 クロウに勝ったのが本当か、確かめてやる!!」

 

 慕われているねぇ~まぁ、勝ったのは事実だし、どうしようもないんだけど

 こういう負けん気は嫌いじゃない。

 

「いいだろう。だが、その前に・・・」

 

 ザリガニの下処理からだな。


「首尾は?」

 

「駄目だ。一般に出回っている以上の情報がどこにもない。」

 

「そうか・・・」

 

 スラム街の一角、誰も使うことがなくなった廃ビルの中で零児、ユート、黒咲が会合していた。

 融合次元の関係者であろう治安維持局の長官、ジャン・ミシェル・ロジェの情報を集めていた。

 

「だが、どうなっているんだこの街は!

 台の上のビル街や、その下のスラム街はまだしも、さらにその下に闘技場やごみ処理施設があるとはどういうことだ!?」

 

「あぁ、闘技場はあのバイクに乗ったデュエルで賭け事をしていたようだが、ごみ処理施設の方は酷かったな。

 ただ、掘って作っただけの空間で延々とごみ処理を続けさせられている人々・・・

 あれでよく崩落しないな・・・」

 

「そのごみ処理施設は、軽犯罪者の流刑地らしい。

 崩落しようとかまわないということなのかもしれぬな。」

 

 ロジェを引っ張り出す方法が見つからないので、この街について話し合う三人、だが誰も来ないはずのこの場に近づくものがいた。

 

「ホ、ホ、ホ、見てくれはあれじゃがアレは結構頑丈に造っておるのじゃよ?」

 

「「「!!?」」」

 

「おぬしたちかの?ユーゴについて調べてまわっておるのは?」


「うめぇ~!!」

 

「うん、美味しい!」

 

「ちょ~ウマだよ!」

 

「はい、お粗末さん。」

 

 帰りの途中で何を買ってんのかと思えば、玉ねぎとケチャップなんかの調味料と小麦粉

 川で大量にとってきたザリガニとで何を作るのかと思えば、エビチリ、いやザリチリ?

 それとブラックバスの骨をあぶったやつや玉ねぎの皮を炒ったやつで出汁を取ったスープに、水、小麦粉、塩だけで作った簡単なクレープ

 いつもの缶詰買ってきて、パンに挟んで食べるのとは大違いだ・・・

 

「ありがとうな。飯まで作ってもらって。」

 

「いいさ、一宿の恩ってやつだ。」

 

「ロゼ、お前すげぇな、デュエルは強いし、料理もできる。」

 

「そうそう、うちのクロウとは大違い!」

 

「それはどういうことだゴラァ!」

 

 まったく、にしてもホント変わったやつだぜ。

 こんな食えそうにないものを、うめぇ料理にしちまうなんてよ。

 

「あぁ、なにしろ俺にはよく山籠もりに行く親友がいてね。

 それに付いて行って、よくキャンプしたりしたんだよ。

 料理上手な奴とか、釣り上手な奴とかも巻き込んでな。

 で、そんな奴らと苦心して、取ったモノをうまい料理にするためのレシピを考えたんだよ。」

 

 変わった奴の親友も変わった奴だな・・・なんだよ、山籠もりって・・・

 

「どうしてそこまでするんだよ?」

 

「ん~せっかくだから、うまいものが食べたいっていうのが第一だな。

 まずいもので腹膨らましても疲れるだけだし、美味しく食べる方法があるならちょっと手間がかかってもその方がいい。

 それにこのザリガニだってそうだが、淡水の水生生物には大体寄生虫がいるからな。

 安全に食べるためにも、手間は惜しむべきじゃない。

 後は栄養が取れれば万々歳だ。」

 

 栄養、俺たちコモンズにそんなもん考えている暇はない。

 パンなんかは安く売られたり、配給されたりするが、基本的には食うもんに困っているありさまだ。

 だが、こいつは街に流れる川で取ったモノでうまくて腹が膨らむモンを作っている。

 

「普通の料理に使わない野菜の皮とかにも栄養があるから、きんぴらにして食えるようにしたり、出汁やらにしてスープに溶かし込んだら無駄がないし、丈夫な体になるにはいろいろ食うのが一番だ。

 まぁ、野食をするときは捌いたりなんかの下処理も、有毒物を避ける知識もいるから知らずに何でも取って食うのはお勧めしないけど。」

 

 知識、俺たちコモンズにそんなものを求められてもな・・・

 さっきだって買ってきた小麦粉と水で作れる、うどんだとかフライパンで焼けるパンだとかのレシピを貰った。

 ありがてぇが、今までこういうことをしなかった俺が情けないぜ・・・

 

「この時期ならセミが捕まえやすくて、下処理とかが面倒なく食べられるからおすすめだな。

 キノコには絶対手は出さない方がいい、野草とかも見た目がよく似ている毒草とか結構あるから、絶対これだとわかるもの以外は食べるなよ?

 このスープに入れたセリとよく似たドクセリっていう植物があるからな。

 まぁ、ドングリなら問題なく食べられるから拾ってみたらどうだ?」

 

 ドングリぃ~?そんなものも食えるのか?でもよぉ・・・

 

「ぬぅぅ・・・知らないことばっかで、頭がこんがらがって来るぜ・・・」

 

「我慢しろ、食っていくのに知っていかなきゃいけないんだ。

 この子たちだって将来、何かしらの仕事をしていくんだから、親代わりであるあんたがいろいろと教えていかなきゃな?」

 

 こいつらの将来・・・

 

「君たちは何かやりたいことはないのか?」

 

「う~ん、俺たち、今はクロウにくわせてもらうだけで精いっぱいだし・・・」

 

「家のことはやれるけど・・・」

 

「将来とか言われても、わかんないよねぇ~」

 

 フランクたちの言葉にロゼは呆れたように、窓に歩き出す。

 

「なんだよ、子供のくせに夢のない奴らだなぁ?

 俺の幼馴染は見てくれる人みんなをデュエルで笑顔にしたいって言ったり、道場の跡取りだから自分も師範になるために頑張ってたりしてるんだぞ?

 一生このスラム街で腹すかせているつもりか?

 どうせ夢なんだから、見るならでかい夢でもいいじゃないか。自分がなりたいもの、例えば・・・」

 

 ロゼは窓を開けて、街に照らし出される男を見上げた。この街の象徴『キング』

 

「あそこに赤く輝く星とかさ。」

 

――ジャック・アトラス

 

「ジャック・・・」

 

「ジャック?はんっ!誰があんな裏切り者なんかに・・・」

 

「裏切り者?」

 

「よそ者のあんたは知らないだろうけど、ジャックは元々このスラム街出身なんだ。」

 

「でもフレンドシップカップって言うライディングデュエル大会で3年前に優勝して、そこからずっと王者の座を守り続けているの。」

 

「でもジャックって、トップスの連中とつるみ始めてから、僕たちコモンズを見下す、ちょ~嫌な奴になっちゃってさ!」

 

 そうだ、ジャックは変わった、あいつがいなくなった時から・・・

 シティは勝者にあらゆる富が集まる街、フレンドシップカップで勝ちまくるあいつに、トップスの連中はすぐに食いついた。

 金も名声も何もかも手に入れたあいつは、俺たちコモンズのことを呆れた顔で見下し始めた。

 俺たちコモンズの絆なんて最初からなかったって言っているみてぇに・・・

 

「・・・俺にはちょっとジャックの気持ちが分かる気がするよ。」

 

――えっ?

 

「俺は明日早いから、もう寝させてもらうんで、お休み。」

 

「おっ、おい!」

 

 ジャックの気持ちって、なんだよ・・・


「ほらよ、これが修理屋ユーゴが住んでいるガレージの場所だ。」

 

「ありがと、じゃあ報酬だ。」

 

「うぉぉぉぉぉぉ!!モノホンだぁ!

 すげぇよ、すげぇよ!!」

 

 ブラマジガールのフィギュアでここまで大泣きするとは・・・

 

「い、いや、それとついでに聞くけど、治安維持局長官ジャン・ミシェル・ロジェについて何か知ってるかい?」

 

「治安維持局長官?

 いや、あいつは3年前くれぇに、ふらっとこの街に来て、それからとんとん拍子に長官になったってことしか知らねぇぜ?

 さすがの俺でもセキュリティに目を付けられたら、まずいからな。」

 

 ふらっと現れて、そのまま長官にか・・・

 

「まぁ、この街じゃよくあることさ。

 勝者となったやつが、どんどん上に昇っていくのはな。

 そういえばそんくらいの時からかなぁ~この街が止まっちまったのは・・・」

 

「止まる?」

 

「あぁ、昔はコモンズだって負けん気が強いやつがいて、どうにかして這い上がろうってやつが結構いたのさ。

 そんときゃぁ、トップスの連中も今ほど風当たりが強いことがなかったんだ。

 まぁ、そんな奴らがいなくなっちまって、今じゃトップスの連中と付き合いがあるのは俺たち商売人くらいさ。」

 

「へぇ~それは貴重な情報だ。」

 

「おっと、こいつにお代はいらねぇぜ?

 俺のただの昔話だ、それにこいつに対する料金にはまだ達してねぇからな。」

 

「ふっ、ありがとうよ。」

 

「へっ、御贔屓に。」

 

 さて、情報は貰ったし、昨日窓辺に刺さっていた、日影からの指定場所に向かうとするか

 

「にしても、なぜにカフェなんだ?」

 

 しばらく歩いてシティの中層エリア、トップスもコモンズも利用できるエリアの一角のカフェ

 呼び出し人は零児から、ロジェについてなにか進展があったのだろうか?

 

「あれ、閉まってる?」

 

 かけられたクローズの札

 おかしいな?場所はここで合ってるし、店名も合ってるのに・・・

 

「おや?君、赤馬 零児さんのお知り合いかね?」

 

「あっ、はい、ロゼと申します。

 あの、彼はここに?」

 

「あぁ、もう待っておるよ。さぁ、お入り。」

 

 店の扉を開けてくれたのは、結構歳の行ったおじいさん

 閉まっているのに待っているって、貸し切りにしたのか?

 どこからそんな金が?

 

「おぉ!遅いじゃねぇか!さか!?あぁ・・・ロゼ!」

 

 いつもの調子で沢渡が声をかけてこようとするが、途中で思い出して偽名で呼ぶ、この馬鹿!

 見れば、忍者兄弟以外のランサーズ全員が勢ぞろいしており、各々が何かしらを飲み食いしている。

 アメリカンスタイルの小洒落たカフェ、結構高そうなんだが・・・

 

「おい、権現坂、デニスの稼ぎってこんなにいいのか?」

 

「いや、これはあちらの御仁が奢ると言って聞かぬので仕方なしに頼んだのだ。

 沢渡やセレナは遠慮なしだがな・・・」

 

 あちらの御仁?

 権現坂が目で示したテーブルには零児と見覚えのないアロハシャツにサングラスをしたしわの深い老人

 えっ、誰?

 

「おぉ!おぬしはこっちじゃ、こっち!」

 

 謎の老人に手招かれて、席に着く

 ん?よく見たら、サングラスの横から出ているの髪の毛じゃなくて眉毛だ。

 長い眉毛・・・老人、まさか!?

 

「さぁ、何でも注文するとえぇ

 さっきお主が聞いた通り、ここはわしのおごりじゃ。」

 

「おごりと言って、後から請求するのはやめてくださいよ?

 シティ最高評議会議長、ホワイト・タキ殿?」

 

 あまりにもイメージとかけ離れた姿だったため結び付かなかったが、この声は間違いなく昼行燈議長だ。

 ばれてしまったものは仕方ないとタキ氏はサングラスを取る。

 

「おぉ!もうバレてしもうたわい。

 う~む、もっといい変装方法はあるかの・・・」

 

 いや、全然わかんなかったよ!っていうかイメージが違いすぎ!?

 こんな陽気なじいちゃんじゃなかったろ!?

 

「それで何を頼むかの?なんでもえぇぞ?」

 

 やけに注文を促してくるな。

 これはあれか、こちらの遠慮を誘って話を有利に進めようとかそういう魂胆か?なら・・・

 

「マスター、注文をお願いします。」

 

「はいはい、何にしますか?」

 

「ブルーアイズ・マウンテン。」

 

「かしこまりました。」

 

「ほう・・・」

 

 この店に入った時から、いいコーヒーの臭いがするから絶対にコーヒーはうまいだろう。

 そして、豆は挽き済ではなく、注文を受けてから挽くようだ。

 これほどのこだわりなのだから、ブルーアイズ・マウンテンも美味しいはずだ。

 あれは苦みと酸味が強くうまく淹れるのが難しい豆だからな。

 

「ここのコーヒーは注文を受けてから挽いて、ハンドドリップじゃから時間がかかるぞ?」

 

「ちょうどいいでしょう?話し合いをするには。」

 

「ホ、ホ、ホ、そうじゃのう。

 じゃあ、話をするとするか・・・」

 

 ここまで零児は無言、っていうことは自分との話は既に終えて、後はこちらの判断待ちか。

 いったい何をやらせる気なのやら・・・

 

「まずは本題と行こうかの、おぬし等にフレンドシップカップに出てもらいたい。」

 

「フレンドシップカップ?

 あれは、シティの融和大会でしょう?よそ者の俺たちが出てもいいのですか?」

 

「別に、この街に住む者限定というわけではない。

 フレンドシップカップはわし等、評議会と治安維持局、それと一般希望者の中から何人か選出してトーナメントを組んでおる。今年はそれぞれから3人ずつじゃがのう。

 街おこしの一環じゃ、外からプロを雇うこともあるわい。」

 

 筋は通っている。

 だが、こちらとしては時間が惜しい。この大会は拘束される恐れがあるからな。

 

「ほう、フレンドシップカップに出場して負けた人間は二度と日の目を見れない場所に行かされるとか聞きましたが?」

 

「はぁ~誰じゃ、そんな噂を流しおったのは・・・

 それは単純にエントリーした者の中に軽度な犯罪歴がある者がいることもあるのでな。」

 

「犯罪者が紛れている大会?いくら融和と自由を謳う大会でもそれは・・・」

 

「酔って暴れたとかその程度じゃよ。コモンズにはよくおる。

 さすがにすぐに独房行になるようなものなど出させぬわい。

 まぁ、反省ついでに負ければ大会が終わるまで強制労働させておるがな。

 おぬしらの様な客人にそんなことはせん。」

 

 あぁ、そういえば、アニメだとランサーズのほとんどがお尋ねもの状態だったか・・・

 

「まったく、自業自得じゃというのに変な噂を流しおって・・・

 それはさておき、どうかの?もちろん報酬は払おう。」

 

「・・・解せませんね。」

 

「何?」

 

「確かに俺たちはデュエリストだ。

 それを零児から聞いたというのは納得がいく。

 だが、街おこしの大事な大会で、なぜプロではなく無名の俺たちに依頼するのです?

 強いか弱いかわからないのに。」

 

 後ろで騒ぎだしそうなやつを権現坂やデニスが抑えているが、これは聞かねばならない。

 何かしらの弱みを握られているなんて目も当てられないからな。

 

「勘、と言っても納得はしてくれんじゃろうな。

 まぁ、なんじゃ、わしはこの街に新しい風を入れたいんじゃよ。」

 

「新しい風?」

 

「そうじゃ。

 トップスは現状に満足して、コモンズは天に唾を吐くだけで何もせん。

 坊主、あぁ、君らが捜していたユーゴのことじゃが、そいつの様な奴はたまにいるんじゃがのう。」

 

 ホワイト・タキとユーゴが知り合い?

 トップスの中のトップとでもいうべき人物とコモンズの修理屋にどういうつながりが?

 

「自由という言葉を自分の都合のいいように解釈して、新しいことにチャレンジしようとする者がいなくなってしまった。

 外からくる人間も、いつの間にかトップスとコモンズのどちらかの枠に入って落ち着いてしまう。

 でも、おぬしらはユーゴの知り合いなんじゃろう?

 だったら、この街に新しい風を入れこんでくれる。そう感じたんじゃよ・・・」

 

「・・・ユーゴとあなたの関係は?」

 

 ホワイト氏は、憧憬に思いをはせて、ただ一言言った。

 

「なぁに、ただの腐れ縁じゃよ。」


 ロゼが出て行ってから、大分経つな。

 この街にいる間はここで泊ってけとは言ったが、また虫取りしてるんじゃねぇよな・・・セミとか言ってたし・・・

 なんて考えてたら、家の前にDホイールが止まる音が聞こえた。

 外で掃除をしていたアマンダが、誰が来たかを伝えてくれる。

 

「ク、クロウ・・・トニーとデイモンが来たけど・・・」

 

 あいつらか・・・

 このゴーストライダー騒ぎに便乗する気だな・・・

 

「あぁ、フランクもタナーも外に出てくるなよ?」

 

「あぁ。」

 

「うん。」

 

 撥ねっ返りのフランクも悪戯好きのタナーもあいつらが来たことに意気消沈している。

 無理もねぇ、元々あんまりガラがいい方じゃなかったが、あいつがいなくなってシンジの奴がセキュリティにとっ捕まった時から酷くなってる。

 

「よぉ、クロウ!」

 

「会うのは久しぶりだな。」

 

 赤鼻で太めのトニーと、トカゲが張り付いたような髪形をした細身のデイモン

 2人とも、トップスの連中がでかい顔をしているこの街の現状が気にくわないからと活動してる奴らだ。

 

「おう。」

 

「例のゴーストライダー、お前も知ってんだろ?」

 

「お前あいつが誰だか知ってるか?」

 

「いや、知らねぇ

 仮に知ってたらどうするつもりだったんだよ?」

 

 俺のその言葉に奴らは何を言っているんだって顔で、ニヤつく

 

「どうするも何も、お前も見ただろ?

 セキュリティのデュエルチェイサーをあんなに簡単にひねれる実力!

 ゴーストライダーが仲間になってくれれば、こんなクソみたいな世の中をひっくり返せる!」

 

「そうだ!今がチャンスなんだ!

 トップスの連中の鼻を明かしてやれる、絶好の機会なんだ!」

 

「だからって!どこの誰かもわからねぇ奴を、俺たちの事情に巻き込めっていうのか!!」

 

「言ってる場合かよ!

 あいつの力を借りれば、セキュリティのデュエルチェイサーなんて軽くひねれるんだぞ?

 それにもしかしたら、あいつは本当に・・・」

 

 何気ないトニーのその言葉が俺の鶏冠に来た!

 

「なら猶更だめだ!あいつはシティが一つになれることを信じてたんだ!

 革命なんて望んじゃいねぇ!!」

 

 もともとあいつはトップスだった!

 両親が死んで、俺たちの孤児院に流れてきたけど、元トップスだってことを鼻にかけずに俺たちに接してくれて、いろんなことを教えてくれた!

 今俺たちがDホイールを触れんのもあいつのおかげじゃんか!!

 

「クロウ、お前ももうわかっているだろ?限界なんだよ俺たちは!!

 シンジだって助け出さなきゃならねぇし、セキュリティがゴーストライダーで混乱しているときが今なんだ!!」

 

「お前だって、この上っ面の平等社会にうんざりしてるんだろ?

 子供たちにもっといい未来を与えてやりたくないのか?」

 

「それは・・・」

 

 ガキどもの未来・・・夢を見れる未来を与えてやれる・・・

 

『気に入らないな、子供を出しに使うなんて。』

 

「「「!?」」」

 

 物陰から出てきたのは黒い帽子とマフラー、そして軍服を着た赤目の男

 

「あぁ?誰だてめぇ?」

 

「俺はロゼ、ロゼ・ジェスター、ただの旅行者だ。

 縁あってここに世話になっていてね。

 で、その世話になっている家の裏でテロの勧誘なんてもんを見つけたから出てきたというわけだ。」

 

 ば、馬鹿!俺たちの問題に首を突っ込むんじゃねぇ!! 

 

「テロだと?俺たちをそんなもんと一緒にするんじゃねぇ!

 これはこの街に住む、俺たちの問題なんだ!よそ者は黙っていろ!!」

 

「いや、黙ってられないね。

 お前たちが誰かを悲しませようとしているなら、俺はそれを止める。」

 

 それは覚悟が決まった目だった。

 誰かの悲しみは見たくないからと、ただそれだけの理由であいつはここに来た。あいつみてぇに・・・

 

「ロゼ、やめろ!デイモンも・・・」

 

「うるせぇ!生意気な奴は、こうやって黙らせりゃイイんだ!」

 

 喧嘩っ早いデイモンが容赦なくロゼに叩き込もうとする。

 

「へぇ~早速暴力か・・・どうせ、さっきから言っている革命とやらもそうやるつもりなんだろう?」

 

 だが、ロゼはデイモンの拳を跳びあがって躱すと、そのまま一回転して背中に踵をたたき込む。

 

「実に野蛮だ。」

 

「ぐわっ!?」

 

「デイモン!?こ、この!!」

 

 デイモンがやられたことに怒ったトニーが、ロゼに拳を振うが、ロゼはそれを軽く反らすと同時に肘鉄をトニーの顎に入れた。

 

「ぐっ!?うぅ・・・あぁ・・・・」

 

「顎に入ったんだ、脳震盪でしばらく動けないだろう。

 そっちも、肺に衝撃が入っただろうから、息がしにくいんじゃないか?」

 

「がっ・・・は・・・」

 

 あっという間にトニーもデイモンも倒されちまった・・・

 

「ふぅ~で、クロウ、こいつらの言っている革命ってなんだよ?」

 

「あっ、あぁ・・・お前も見たからわかると思うが、この街はトップスの勝ち組がすべてを手に入れ、コモンズは毎日の食事にも困っているありさまだ。

 だから、こんな社会をひっくり返そうと・・・」

 

「ひっくり返す、ははっ、それはお笑いだ。

 つまりこの体制を変えずに、そっくり自分たちコモンズとトップスの立場を入れ替えると?馬鹿馬鹿しい。」

 

 ロゼはそう吐き捨てると、まだしゃべれるトニーを起こして、質問をぶつける。

 

「おいお前、お前たちの仲間に政治に詳しいやつとかいるのか?」

 

 はぁ?

 

「答えろ・・・お前たちの中に明確にこの街を今よりもっといいものにできるプランを考えている奴はいるのかと聞いているんだ。

 まさか、本当に暴力に訴えて立場を入れ替えるとしか考えていなかったわけじゃないよな?」

 

「う・・・ぐぅ・・・」

 

「はぁ~どうやら本当にそうみたいだな・・・

 ぶくぶく太っているわ、そっちの奴は髪形気にしてるし、金に困ってるっていうよりは、ただ怠けたいから金が欲しいだけじゃないか。

 なによりこいつらから酒とたばこの臭いがする・・・折角のうまいコーヒーの残り香が台無しだ!」

 

 酒にタバコだと!?こいつら・・・

 

「向上心がないくせして、そんなことやってもすぐにまた追い抜かれるだけだろうに・・・

 これならギャンブルやらしている奴の方がましだな。」

 

 追い抜かれる?

 

「どういうことだよ、ロゼ。」

 

「トップスの人間は多かれ少なかれ、勝者でいられるための努力をしているってことだよ。

 仕事したり勉強したり、それができないならすぐに格落ちしてしまうからな。

 それを努力もしないやつが、ただ上の地位に就いたってすぐに元通りになるだけだろう?その地位にしがみつく能力がないんだから。

 コモンズの扱いをよくして貰いたいなら、まずはどこかで働いたり、共同図書館で勉強したりして見たらどうだ?」

 

「ぐぅ・・・ふざけるな・・・誰が、トップスの奴らなんか・・・グッ!?」

 

 しゃべれるようになったデイモンが、ロゼに不満を漏らすが、その口はすぐにふさがれる。

 

「ふざけるな、はこっちのセリフだな。

 一人で何でもできる天才じゃないんだろ?

 成功できる能力がないなら、成功者に学ぶ、当たり前のことだ。

 

 それにコモンズ発祥のライディング・デュエルをトップスが見世物にしているとかいう理由で忌避しているらしいな?

 トップス、コモンズ関係なく楽しめるものがあるなら、もっとそれを盛り上げようと思わないのか?

 ライディングデュエルは楽しい、だから一緒にやろうぜみたいな気持ちになれないのか?」

 

≪俺たちのライディングデュエルが、風が、俺たちのシティを一つにしてくれる。

 そういう未来を俺は夢見ているんだ。≫

 

 !!?

 あぁ・・なんで俺は忘れちまってたんだ・・・あいつの夢・・・

 

「お前たちはDホイーラーなんだろ?

 だったら堂々と、ライディングデュエルができる舞台で戦ってみたらどうなんだ!

 あそこに分かりやすい目標はあるだろ!!」

 

 ロゼが指差すのは、立体投影されたジャックの姿、このスラムからこの街の象徴へとなった男

 

「ジャック・・・ジャックだって!ハンッ!

 誰があんな、トップスにこびへつらうような裏切り者みたいなんかに!」

 

「そうだ!俺たちコモンズの仲間を、絆を捨てて行った奴なんかに!!」

 

絆を言い訳にするな!!

 

「「「!!?」」」

 

「絆とは捨てようが、断ち切ろうが、いつの間にかついて回る者だ!

 トップスだとか、コモンズだとか、そんなもの程度でなくなるならそれは最初から絆じゃない!!

 ただの負け犬の傷の舐め合いだ!」

 

 俺たちはここで寄り添って生きてきた。

 それが俺たちの絆だと信じて、あぁ、だけど最初から分かっていたさ。

 もう失うことが、挫折することが怖くて、ただ逃げていたって・・・

 

「お前たちはそうやってドブの底から這い上がった勝者すら蔑むのか!!

 負け犬として生まれたのなら、負け犬として生きていろとそう言いたいのか!!」

 

 俺たちはコモンズという枠に他人を勝手に当てはめていただけ、それから外れたやつを勝手に裏切り者呼ばわりして・・・

 

「ジャックはそんなもので縛られたりしない!自分の道は自分で切り開く信念を持った男だ!」

 

 あぁ、そうだ、ジャックは昔からそうだったじゃないか

 傲慢で、自分勝手で、わからんちんの大馬鹿野郎だったじゃねぇか!

 

「だからジャックはきっとこういうだろう!

 

 『俺の道を阻むものがあるのなら、それが絆であろうと、俺は蹴散らしてゆく!!』」

 

 ははっ!そうだ、あいつはそういうやつだった!

 

「ロゼ、もうそこまでにしてくれないか?」

 

 こいつらとのけじめは俺がつけなきゃいけねぇんだよ

 

「クロウ・・・わかった。後は任そう。」

 

「おう、おい、よく聞けおめぇら!

 俺はな、ガキどもの未来を守りたいと思っているが、お前らが言うような革命だのなんだろうには興味ねぇ!!

 この街を泣かすような真似をしたら、おめぇらであろうと容赦しねぇからな!!」

 

「なっ!?」

 

「クロウ!お前も裏切るのか!!?」

 

「裏切る?裏切られたのはこっちの方だぜ!

 あいつの願いを汚すような真似しやがって・・・楽しておまんま食えねぇなんざ当たり前だろうが!

 いい暮らしがしたいなら、仕事でも探しな!」

 

 俺が言えた義理じゃねぇけどな!

 

「ほう、クロウ、そう言うからには何かやるのか?」

 

「おう!俺はフレンドシップカップに出場する!」

 

 俺の宣言を聞いた、トニーとデイモンが驚いた顔をする。

 

「なっ!?クロウ!お前!?」

 

「トップスの奴らの見世物になるつもりか!?」

 

「見世物?上等じゃねぇか!俺たちのライディングデュエルは最高だって!堂々と見せつけてやんのさ!

 そんでもって、あの不貞腐れた顔をしたキング様の顔面に一発入れてやんだよ!

 見限ってんじゃねぇ!俺だってやれんだよってな!!」

 

 ジャックは俺たちを裏切ったわけじゃねぇ、俺たちはジャックに見限られてたんだ。

 誰もがジャックを勝手に羨望して、失望して、ジャックを追い抜かそうとする奴なんていなかった。

 きっとジャックは、あいつみてぇな奴が来ることを待ち望んでいるに違いねぇ!

 だから俺が、この鉄砲玉のクロウ様があいつの分まで羽ばたいて見せる!

 

「へぇ~クロウ、本当にフレンドシップカップに出る気なんだな。」

 

「おう!といっても、いつ出場できるかはわからねぇけどな・・・」

 

 あの大会の一般枠なんて少ねぇし、抽選にあたって運よく出場できるのがいつになるのかわからねぇが・・・

 

「それはよかった、説得する手間が省けたよ。」

 

 ロゼは懐から1枚の封筒を俺に差し出してくる。

 

「なんだこれ?」

 

「何って、フレンドシップカップの出場招待状。」

 

「はっ!?何でお前がそんなもん!?」

 

「一般枠って、どうしようもないやつを参加させて盛り下げないために抽選より推薦の方が優先されるんだってさ。

 すでに参加が決まっている選手からの。」

 

 推薦!?じゃあ!?

 

「俺もフレンドシップカップに出場するのさ。評議会枠でな。」




日影さん!!

うぉっ!?忍者だ!忍者がいる!!
って、あんた前会ったか?

それは弟の月影でござるな、拙者は兄の日影でござる。

やっぱり、遊矢たちもここにきてたのね!

うむ、だが、その・・・今、柚子殿が遊矢殿に近づくのは、待ってもらえないだろうか?

えぇ!?ちょっと何でよ!?私なにかした!?

いや、柚子殿というより、柚子殿がしているブレスレットが原因のようなのでござるが・・・
大会中に出場者が2人も消えたら、まずいでござるし

えっ!?大会?

うむ、この街のライディング・デュエル大会、フレンドシップカップに遊矢殿たちが参加することになったのでござる。
おまけに、エキシビジョンを遊矢殿が行うよう話を取り付けたとかで

なっ!?フレンドシップカップだって!?
それにエキシビジョンを自分から!?

ど、どうしたのユーゴ!?

どうしたのじゃねぇよ!エキシビジョンのデュエルっていえば、キングへの生贄だぜ?
『絶対王者 ジャック・アトラス』へのな。
あっ!やべっ!?タイトル先に言っちまった!?
じ、次回 遊戯王ARC―V R-e:birth 『絶対王者 ジャ

ちょっと、ぐだぐだじゃないの・・・

はい、すいません・・・


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絶対王者 ジャック・アトラス

チェーンの組み方が不安だったので、久しぶりに遊戯王カードゲーム事務局に電話しました。
結果、考えていたものよりチェーン1とチェーン2の組む順番が逆だったことが判明
いやぁ~聞いてよかった。

今回はエキシビジョン前半戦です。切りがいいところで切ったので少し短いです。


「これがホワイト・タキ評議会議長が用意したデュエリストですか?」

 

「はい、このほかコモンズの中から推薦で2名の出場が決まりました。」

 

 無名のデュエリスト3人に、そのデュエリストが推薦した2名のデュエリスト

 いやはや、こんなものを用意して何を考えているのやら・・・

 これなら地下闘技場から出場したものの方が、ん?

 

「このコモンズのデュエリストは・・・」

 

「はっ!ユーゴという、スラムで修理屋を営んでいる少年のようであります。」

 

 ふむ、なるほど彼がこの世界の・・・それにこっちも

 

「これはなかなか、面白いモノが見れそうですねぇ。

 あなたたちもそう思いませんか?」

 

 私は控える3つの影にそう問いかける。

 まぁ、まだ完璧に浸透してない現状、答えが返ってくるはずもないですが

 

「・・・・・・」「・・・・・・」「・・・・クロウ・・・」


『ここ、シティの中心部に聳え立つデュエルパレスには、実に20万以上の大観衆が詰めかけ、フレンドシップカップの開幕を待つ熱気で、盛り上がってます!

 今宵は、このメリッサ・クレールと一緒にシティ最大のデュエルの祭典『フレンドシップカップ』の前夜祭を思いっきり楽しみましょう!!』

 

――わあああぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

「うおぉぉぉぉ!!来たぜ来たぜ!デュエルパレス!!

 すげぇでっけぇ!!広すぎる!!」

 

「本当に、広いわねぇ・・・」

 

 舞網市のデュエルスタジアムも大きかったけど、ライディングデュエルの会場ってこんなに大きいのね・・・

 

「あぁ、リンにも見せてやりたかったな・・・」

 

「ユーゴ・・・その、本当によかったの?

 リンさんが攫われてるのに・・・」

 

「何言ってるんだよ!フレンドシップカップに優勝して、ジャックと戦って勝つ!

 それは俺とリンの夢だ。

 そのチャンスをふいにしちまったら、リンにどやされちまうよ。

 それにリンを助け出す手がかりが得られるかもしれないときちゃあ、出ない理由はないだろ?

 あぁ・・・えぇ・・と、こういうの一石投入っていうんだっけ?」

 

 一石投入?あぁ、もしかして・・・

 

「それって、一石二鳥って言いたいの?」

 

「あぁ!それそれ!!」

 

 もう。

 日影さんから、遊矢たちがこの世界に来ているって伝えられて数日

 まだ、私は遊矢に会えていない。

 

 理由は私、遊矢、ユート、ユーゴ達が近づくと、それぞれを別の場所に転送してしまうから、らしい。

 原因はこのブレスレットらしいのだけど、これを持っていればあのユーリってやつもどっかに飛ばすことができるらしいので、身の安全のために持ってろと言われた。

 

 遊矢と一緒に居たいと思ったけど、遊矢はこの世界の警察組織、セキュリティの中に潜んだ融合次元の人間に対処するために動かなければならないということで、私は引き続きユーゴの家に厄介になっている。

 

「連れてきてくれたのは嬉しいけど、はしゃぎすぎて、前に出ないでよね。

 折角、出場できたのに知らない土地に飛ばされて欠場なんて嫌でしょう?

 まぁ、私の所為だけどさ・・・」

 

「あぁ分かってるって!

 だからそんな申し訳なさそうな顔すんなよ!

 大会もちゃんと出場して、お前も守る!そんで優勝できりゃ、リンへの自慢話になるってもんよ!」

 

『それではいよいよ、本日のメーンイベント!』

 

「ほら、始まるぜ?」

 

「あぁ、うん。」

 

『シティが誇るデュエルキング!

 ジャック・アトラスによるスペシャルマッチの開幕です!!』

 

――うおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!

 

――ジャック!ジャック!ジャック!ジャック!ジャック!

 

――アトラス様ー!!

 

――ジャック!ジャック!ジャック!ジャック!ジャック!

 

「ジャック!ジャック!ジャック!ジャック!ジャック!!」

 

 す、すごい熱気!?

 トップスの人もコモンズの人もみんな彼の名を呼んでいるわ。

 

 こんな人とデュエル出来るなんて、幸運で光栄なことのはずだけど、このエキシビジョンの対戦者はユーゴ曰く生贄

 キングの絶対な強さを思い知らせるための、その頂がどれだけ高いのかを思い知らせるものらしいわ。

 

『さぁ、出迎えましょう!我らがキングを!

 その強さ、その威厳の前にシティはひれ伏した!

 コモンズ出身でありながら、昇り龍のごとくサクセスロードを駆け上がり、デュエリストの頂点に上り詰めた、生きる伝説、レジェンド!』

 

 このフレンドシップカップはキングへの挑戦権を得るための大会

 キングが対戦者を完膚なきまでに叩きのめし、ここまで登ってこいと参加者、そして観客たちを煽る恒例行事。

 暴君そのものだけど、ここまで慕われているのならその実力は本物なのでしょうね。

 遊矢・・・

 

『ご紹介しましょう!

 我らがデュエルキング!ジャック・アトラス!!』

 

「「キングは一人!この俺だぁ!!」」

 

 へっ?


 色とりどりの花火が上がり、象徴ともいえるトランプのKのカードがスタジアムに表示され、スポットライトを浴びながらスモークの中から現れる『2台』のDホイール。

 

『なななぁ!?どういうことでしょう・・・我らがキング、ジャック・アトラスが・・・』

 

 巨大な一輪のホイールにフロントとバックブースターを取り付けた白と青を基調としたDホイール『ホイール・オブ・フォーチュン』

 それはキングのみしか所有していない、世界で一台だけのタイプのはずの物

 

『ふ、二人!?二人います!?』

 

 アナウンサーであるメリッサ同様、観客たちはみんな困惑していた。

 そう、それは当事者である彼も例外ではない。

 

「貴様・・・何者だ?」

 

「ははははっ!今紹介されたであろう?

 俺こそ真のキング!ジャック・アトラスだ!!」

 

 声、しぐさ、言動、それは紛れもなく自身のものと一致していた。

 そのことに横暴で傲慢なプライド高いこの男は腹を立てていた。

 

「世迷言を!!ジャック・アトラスはこの世界でただ一人!この俺だ!!」

 

「だったら、証明して見せろ。ライディングデュエルで!!」

 

「いいだろう!俺はキング!誰の挑戦であろうと受ける!

 偽物ごときに、怯むような臆病者ではない!!」

 

「はははっ!実に心地いいな!血肉に飢えた野獣の眼光は!

 街に飼いならされた、情けない腑抜けどもなどとは比べるまでもないようだ!」

 

 2人は進行役であるメリッサを置いてきぼりにして、ライディングデュエル専用のフィールド魔法を発動させる。

 

「「フィールド魔法、セットオン!」」

 

【【アクションフィールドオン クロス・オーバー・アクセル】】

 

『えっ?アクションフィールド?って何?』

 

 メリッサがこぼしたその発言、それはこの場にいる者たちすべての総意であろう。

 デュエルパレスに光のカードが球状に集まり、それがはじけ、レーン中にばらまかれる。

 

「これは・・・」

 

「アクションカード。

 フィールドに散らばるこれらのカードは互いに好きなように手に取ることができ、相手のターンであっても発動できる。

 セットもできるが、手札には一枚しか加えることはできない。」

 

「手に取る・・・直接手にしろということか?」

 

「その通り!いつものように、ただファーストカーブを制するだけでは、腕がなまるだろう?

 欲しかったら自身のライディングテクニックで取って見せろ!

 そして、その踊りで、この俺を!キングを存分に楽しませるがいい!!」

 

「まだ言うか!偽物め!蹴散らしてくれる!!」

 

「ふんっ!貴様が本物というなら、偽物であるこの俺を何ターンで倒す?」

 

 明らかな挑発であるが、キングであるジャックはあえてそれに乗ってやる。

 

「3ターンだ!

 先攻は俺が、その次のターンで貴様にも十分に見せ場を与えてやろう!

 そして、最後にそれを上回る圧倒的な力の差を!貴様に見せつけてやる!!」

 

「ふぅん、なかなかだな。

 キングのデュエルはいつだってエンターテインメントでなければならない!

 さぁ!存分に趣向を凝らそうではないか!」

 

【【デュエルモードオン オートパイロット スタンバイ】】

 

『ライディングデュエル』『アクセラレーション』

 

 司会進行など関係無いとばかりに勝手にデュエルの開始を宣言する2人

 もちろんそんな二人にメリッサは大慌てだ。

 

『えぇ~!?ちょ、ちょっと二人とも勝手に!?』

 

 困惑するメリッサをよそに、二人は第一コーナーに入る。先に制したのは

 

「先攻はこの俺だああぁぁ!!

 俺は速攻魔法、コマンド・リゾネーターを発動!

 手札のリゾネーターと名の付くモンスターを1体捨て、デッキからレベル4以下の悪魔族モンスター1体を手札に加える!

 俺はレッド・リゾネーターを捨て、デッキからレベル4の悪魔族、レッド・スプリンターを手札に加え、召喚!

 来い、レッド・スプリンタアァァ!」

 

レッド・スプリンター「オオォォ!!」

          ATK1700

 

 現れたのは炎を体に巻き付けた人にも似た馬のような悪魔

 

「レッド・スプリンターの効果発動!

 このモンスターが召喚、特殊召喚されたとき、自分の手札、墓地からレベル3以下の悪魔族チューナー1体を選んで特殊召喚する。

 俺は墓地からチューナーモンスター、レッド・リゾネーターを特殊召喚!」

 

レッド・リゾネーター「ヘッ!」

          ATK600

 

 レッド・スプリンターの隣に現れる炎を纏い、音叉を持った小悪魔

 レッド・リゾネーターは持っている音叉をレッド・スプリンターに向けて鳴らす。

 

「レッド・リゾネーターの効果発動!

 このモンスターが特殊召喚に成功したとき、フィールドの表側表示モンスター1体を対象として、俺はそのモンスターの攻撃力分だけライフを回復する。

 俺はこの効果をレッド・スプリンターを対象に発動し、その攻撃力1700ポイントのライフを回復する。」

 LP4000→5700

 

 チューナーともう一体のモンスターを速攻でそろえ、ライフを大幅に回復するジャックのプレイングにさすがだと観客たちがざわめく。

 だが、もう一人のキングはそれを黙ってみてはいない。

 

「手札のEM(エンタメイト)ライフ・ソードマンの効果を発動

 相手のライフが回復したとき、手札からこいつを特殊召喚する。」

 

「何っ!?」

 

「この効果で特殊召喚したとき、攻撃力はその回復した数値と同じになる。

 来い、EM(エンタメイト)ライフ・ソードマン!」

 

ライフ・ソードマン「はっ!」

         ATK0→1700

 

 現れたのは民族服のようなものを着た光刃を携えた少年剣士

 ターンすら回らずのモンスターの出現に会場はさっきよりもどよめくが、召喚した当人は当然とばかりに高笑いを上げる。

 

「ははははっ!どうした!!

 キングのデュエルは常に常人の2歩先を行く!このくらい造作もないことだろう?」

 

「黙れ!どこまでも俺を愚弄しおって!!

 俺はレベル4のレッド・スプリンターにレベル2のレッド・リゾネーターをチューニング!

 赤き魂、ここに一つとなる。王者の雄たけびに震撼せよ!シンクロ召喚!!

 現れろ!レッド・ワイバーン!」

 

レッド・ワイバーン「グアアァァァ!!」

         ATK2400

 

『おぉ!!キング!ファーストターンでシンクロ召喚!

 まさに衝撃の幕開けだ!!』

 

 レッド・リゾネーターとレッド・スプリンターの作り上げた光から現れたのは炎を猛らせる赤き亜竜

 その力は初ターンに出すには最適の物だ。

 

「自身より攻撃力の高いモンスターを破壊するレッド・ワイバーンか・・・

 この程度で衝撃とは、フレンドシップカップも質の落ちたものよ。」

 

「何?」

 

「見せてやろう!3歩先を行くエンターテインメント!真の衝撃の開幕をな!!

 俺は手札のホップ・イヤー飛行隊の効果をEM(エンタメイト)ライフ・ソードマンを対象に発動!」

 

「なっ!?」

 

『あ、あのカードは!?』

 

「相手ターンのメインフェイズ中に手札からこのカードを特殊召喚し、対象モンスターと共にシンクロ召喚を行う!」

 

 ホップ・イヤー飛行隊 ATK300

 

「レベル1のEM(エンタメイト)ライフ・ソードマンにレベル2のホップ・イヤー飛行隊をチューニング!シンクロ召喚!

 はばたけ!霞鳥クラウソラス!!」

 

霞鳥クラウソラス「ケエェェェー!!」

        DEF2300

 

 雄々しく羽ばたく翠色の美しい巨鳥

 もう一人のキングのなした衝撃、それは相手のファーストターンでシンクロ召喚を成功させるという、前代未聞のもの

 さらに使われたカードは、最近話題となったゴーストライダーの使ったチューナー

 

『な、なんということでしょうか・・・

 もう一人のキング、相手のファーストターンでシンクロ召喚を成功させてしまいました・・・』

 

――す、すげぇ・・・

 

――あんなことジャック以外にできるか?

 

――もしかして、あっちが本当のキングなんじゃ・・・

 

「キングは常に先を行く・・・前人未踏の高みを見せつけるのがキングのデュエルだ!」

 

「・・・・俺はカードを1枚伏せて、ターンエンドだ。」

 

「ははははっ!瞠目せよ!闘気滴る極上のデュエルをな!

 俺のターン!ドロー!!

 俺は霞鳥クラウソラスの効果を発動!

 1ターンに1度、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択し、ターン終了時まで選択したモンスターの攻撃力を0にし、その効果を無効にする。

 俺はレッド・ワイバーンを選択。」

 

霞鳥クラウソラス「ケェー!!」

 

 クラウソラスが翼を羽搏かせると、巨大な竜巻が発生しレッド・ワイバーンへと向かってゆく。

 そして、その竜巻に

 

「はっ!!」

 

 もう一人のキングが自ら飛び込んだ。

 

――なっ!?

 

 Dホイールと共に回転する竜巻がレッド・ワイバーンを襲い、その牙を爪を無残に砕いてゆく

 

レッド・ワイバーン「グワァァァァァ!!?」

         ATK2400→0

 

 そして、竜巻に乗ってジャックを飛び越えたキングは着地と同時に1枚のアクションカードを手に取り、ジャックの進路の邪魔をするように前に出る。

 

「はははっ!追われるとは気分がいいものだな!お前もそう思わないか!」

 

「こいつ!!邪魔だ!俺の前を走ろうなど!身の程を知れ!!」

 

「身の程を知れ?それはお前の方じゃないのか?」

 

「何っ!?」

 

「お前は3年もこの街のキングであり続けた。

 その実力があれば、お前は世界にすら挑戦できるだろう。

 なってみたいとは思わないのか!世界の王者に!!」

 

「それは・・・」

 

 ジャックとて分かっていた。

 自分がこの街にとどまるのは、すでに頂の先へと行ってしまったモノを追い求める意味のないものだと

 自身とともに駆け抜けた風はもういないのだ。

 

「街の頂きごときで満足するような男が、真のキングであるはずがない!

 否!ジャック・アトラスですらありはしない!!」

 

「!!?」

 

「俺は手札より、速攻魔法、手札断殺を発動!

 互いのプレイヤーは手札を2枚捨て、デッキから新たにドローする。

 俺はEM(エンタメイト)ギッタンバッタとさっき手に入れたアクションカードを捨て2枚ドローする!」

 

「・・・俺は手札のミラー・リゾネーターと絶対王 バック・ジャックを捨て2枚ドローする。

 そして、墓地へ送られたバック・ジャックの効果でデッキの上から3枚を確認し、好きな順番で再びデッキトップへ戻す。」

 

「はははっ!キングが本気で掛かったら一瞬だ!そんな小細工が通用すると思うな!!

 俺はチューナーモンスター、森の聖獣 ヴァレリフォーンを召喚!」

 

ヴァレリフォーン「クォオオン!」

        ATK400

 

「ヴァレリフォーンの効果発動!

 1ターンに1度、手札を1枚、EM(エンタメイト)バリアバルーン・バクを捨て、墓地のレベル2以下の獣族モンスター、ホップ・イヤー飛行隊を特殊召喚!

 さらに手札のEM(エンタメイト)が墓地へ送られたことにより、墓地に眠るEM(エンタメイト)ギッタンバッタがフィールドに現れる!」

 

 ホップ・イヤー飛行隊 ATK300

 EM(エンタメイト)ギッタンバッタ   DEF1200

 

 次々に召喚される背中に植物の生えた小鹿、耳が羽のようになった巨大なウサギ、シーソーのようなバッタ

 普通のジャックでは考えられないほど可愛らしいモンスターだが、見た目でだまされてはいけない。

 

「俺はレベル3の霞鳥クラウソラスにレベル2のホップ・イヤー飛行隊をチューニング!シンクロ召喚!

 現れろ!転生竜サンサーラ!」

 

サンサーラ「グアアアァァァァァァァァ!!」

     DEF2600

 

 胸にアンクの描かれた黒い竜が翼を広げる。もちろんこれで終わるはずもない。

 

『またシンクロ召喚!?いや、まだチューナーが!?』

 

「その通り!では今宵の特別ゲストを招待するとしよう!

 レベル4のEM(エンタメイト)ギッタンバッタにレベル2の森の聖獣 ヴァレリフォーンをチューニング!

 星雨を束ねし聖翼よ!魂を風に乗せ世界を巡れ!!シンクロ召喚!!」

 

「なっ!?」

 

「スターダスト・チャージ・ウォリアー!!」

 

スターダスト・チャージ「はあっ!!」

           ATK2000

 

 特別ゲストと銘を打たれて登場したのはカッターのようなウィングを広げたある竜を模した戦士

 そう、それはジャックにとってなじみ深い、因縁を持つカード

 

「スターダスト・チャージ・ウォリアーがシンクロ召喚されたとき、1ターンに1度、ドローすることができる。

 俺は1枚のカードを新たにドロー!」

 

「そいつは!?キサマ!!そのカードをどこで手に入れた!!」

 

「どこで手に入れただと?ふん、知らんなぁ!!

 キングにとって過去など、路傍の石ころよりも価値のないモノだ!!

 スターダスト・チャージ・ウォリアーでレッド・ワイバーンを攻撃!!流星乱射(シューティング・クラッシャー)!!」

 

 スターダスト・チャージ・ウォリアーのブレードが分離しその裏に備えた砲身が露わになり、まさに流星のごとく無数の光線がレッド・ワイバーンを焼き尽くす。

 

「ぐわああぁぁぁぁぁ!!」

 LP5700→3700

 

「俺はこれでターンエンド!さぁ、もっとキングを楽しませろ!!」

 

「・・・違う。」

 

「何?」

 

 ジャックは感じていた。目の前の男と自分との決定的な違いを

 それは使っているカードや、アクションカードを交えた戦法を取るというモノではない

 

「・・・お前はやはり、俺などではない。」

 

 目の前の男はまさしく『キング』だ。

 自分が3年間、この街の住人に見せつけ、誰も追いつけぬと孤高に座した偶像だ。それはつまり

 

「この俺が奴との過去を!好敵手()との記憶を忘れるはずがない!!」

 

 ジャック・アトラスではない!

 

「見せてやる!熱き魂を!真なるジャック・アトラスの力を!!

 俺のターン!ドロー!!

 俺は墓地のミラー・リゾネーターの効果発動!

 相手フィールド上にのみエクストラデッキから呼び出されたモンスターが存在するとき、墓地からこのカードを特殊召喚できる!!」

 

ミラー・リゾネーター「ヘアッ!」

          DEF0

 

「さらに手札のチューナーモンスター、シンクローン・リゾネーターを通常召喚!」

 

シンクローン・リゾネーター「ハッ!」

             ATK100

 

「そして、自分フィールド上にリゾネーターが召喚されたとき、こいつは攻撃力を半分にして特殊召喚できる!

 来い!レッド・ウルフ!!」

 

レッド・ウルフ「ワオオォォォォォォン!!」

       ATK1400→700

 

 鏡を背負った小悪魔と黄色と緑で作られたスペードのようなオブジェを背負った小悪魔に続き、赤い人狼が現れる。

 

「俺はレベル1のミラー・リゾネーターにレベル6のレッド・ウルフをチューニング!

 新たなる王者の脈動、混沌の内より出でよ!シンクロ召喚!

 誇り高き、デーモンカオス・キング!!」

 

デーモン・カオス・キング「オォォ!!」

            ATK2600

 

 光の中から現れる色とりどりに燃える炎の悪魔王

 その気高き魂は昇華され、新たなる悪魔竜に受け継がれる。

 

「俺はレベル7のデーモン・カオス・キングにレベル1のシンクローン・リゾネーターをチューニング!

 王者の咆哮!今天地を揺るがす!唯一無二なる覇者の力をその身に刻むがいい!!シンクロ召喚!!」

 

 それは長く傷だらけになりながらも戦い続けた王者の姿

 

 それは真なる力の体現

 

 紅く燃える右手を輝かせる悪魔の竜、その名は

 

「荒ぶる魂!!レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト!!」

 

レッド・デーモンズS「グオオォォォォォォォォォォ!!」

          ATK3000

 

『きたあああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 キングのエース、レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト!!

 あれこそジャック!ジャック・アトラスです!我らがキング!ジャック・アトラスです!!』

 

「フィールドのシンクローン・リゾネーターが墓地に送られたことによりの墓地のレッド・リゾネーターを手札に加える!

 レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライトは1ターンに1度、自身以外の自分の攻撃力以下の特殊召喚された効果モンスター全てを破壊し、その後、この効果で破壊したモンスターの数×500ポイントのダメージを相手に与える!!」

 

 炎を纏う拳が輝き、その炎は太陽の様に夜闇を照らし出す

 

「光を惑わす偽りの影よ!真なる王者にひれ伏すがいい!!

 アブソリュート・パワー・フレイム!!」

 

レッド・デーモンズ「オォォォォォォ!!」

 

 炎の流星が偽りの王者のモンスターを破壊しつくし、黒煙の向こうに消し去る

 その横を颯爽と真の王者は駆け抜けてゆく

 

『偽ジャック2体のモンスターを破壊されて、1000ポイントのダメージ!!

 これでダイレクトアタックが決まればおしまいね!』

 

 偽物の判明、王者のエースの登場、まさに悪役が退場するには最高のタイミングだろう。

 

 だが

 

「破壊された転生竜サンサーラと手札のスピードローダー・ドラゴンの効果発動。」

 LP4000→3000

 

 黒煙の中からミサイルのごとく緑の弾丸が放たれる。

 

「なにっ!?ぐわああぁぁ!!?」

 LP3700→2700

 

『えっ!?えっ!?な、なになに!?』

 

――ブウウウゥゥゥゥゥゥゥゥンッ!!

 

 そのエンジン音はジャックのホイール・オブ・フォーチュンから出ないものだった。

 低く唸る旧式モーメントエンジンの音

 そんなものに乗るのは今やこの街でただ一人

 

――ボフッボフッ!!

 

 黒煙から次々に現れる影、装填補助器を体につけた奇妙な竜と、ジャックの墓地に眠っているはずの赤い亜竜

 

スピードローダー・ドラゴン「グワアアァァァァァ!!」

             DEF600

 

レッド・ワイバーン「ギャオオォォォォォォ!!」

         DEF2000

 

――ボフッ!!ウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!

 

『あ、あれは!?』

 

 そして、赤いDホイールを駆る黒と紫のDホイーラー、それは

 

――ゴーストライダー!?

 

「さぁ、第2幕と行こうか?」

 LP3000→3500




俺の名はロゼ・ジェスター、昔からの君のファンさ。

キサマ!そのDホイールをどこで手に入れた!!

このDホイールは拾い物でね、詳しい出所は俺も知らないんだ。

くぅぅ・・・そのDホイールに乗る以上、無様なデュエルは許さんぞ!!

仰せのままにキング
次回 遊戯王 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『魂の激闘 オッドアイズVS』
            『レッドデーモンズ』!!

「「ライディングデュエル!アクセラレーション!!」」


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魂の激闘 オッドアイズVSレッド・デーモンズ

ジャックVSゴーストライダー(遊矢)後編です。

たまにはアクションカードを活用したデュエルをと(宣伝だし)
まぁ、大体あってもなくてもそこまで勝敗に関与しないようにしてます。


『破壊された転生竜サンサーラの効果にチェーンして、手札のスピードローダー・ドラゴンの効果を発動した。

 こいつは自分が効果ダメージを受けたとき、相手にそのダメージと同じダメージを与え、自分は受けたダメージの半分のライフを回復し、こいつを特殊召喚する。

 

 そして、転生竜サンサーラは相手の戦闘、効果によって破壊された場合、転生竜サンサーラ以外の自分、相手墓地のモンスター1体を特殊召喚する。

 この効果であなたの墓地から、レッド・ワイバーンを特殊召喚した。』

 

スピードローダー『ギャオォォォォォ!』

        DEF600

 

レッド・ワイバーン『グルルルル・・・』

         DEF2000

 

『ぐぅ・・・おのれぇぇええぇぇ!!』

 

 はっはっはっ!実に愉快じゃ!

 あのキングが、ジャック・アトラスがあの小僧にいいようにやられておる!

 

「ほぉう、さすがは議長の推薦したデュエリスト。」

 

「なかなかやりますな。」

 

 まぁ、わざわざ自分からエキシビジョンに出してくれといったんじゃ

 これくらいやってもらわんと、用立てた価値がないわい。

 珍しく、腰の重い古狸どもが浮ついておる。

 

「ですがゴーストライダーとは・・・」

 

「先日のセキュリティとの一件

 職質無視によるデュエルを制したことで、あちらからも特別手配はなかったですが・・・

 随分血の気の多い若者ですな、議長。」

 

「ふぉ、ふぉ、ふぉ、この街に来て早々、強いモノと戦いたいと言って飛び出したからのう。

 事後ではあるが、御咎めなしになる書状も出した。許してやりましょう。」

 

 あの小僧

 

≪出てもいいが、拘束とかされたくないから、その書面をかけ。≫

 

 などと、ぬかしおった裏にはこういう考えがあったか・・・

 まぁ、あの程度、書状なぞなくとも厳重注意程度で咎められることはないわい。

 誰かに怪我をさせたわけじゃないしのう。

 

「にしても、アクションデュエル

 向こう側からの発案でしたが、今のところは手札増強程度でしか役に立ってませんな?」

 

「それも戦術としては有効でしょう。

 手札コストを手軽に1枚減らせるというのは脅威です。」

 

 戦術での優位性、それだけでも魅力的じゃ。

 デッキ内のカードを増やすように強要するわけでもなく、Dホイーラーのテクニックによって獲得できるアクションカード。

 まぁ、『ネオ』よりは楽しめるじゃろう。

 

「それにまだ手に入れたカードの効果を使ったわけではありません。

 それが、このデュエルにどうかかわってくるのか・・・」

 

 はぁ~さっそく心配事か・・・

 まぁ、街中であんな曲芸やられても困るから大会限定にはなるじゃろうがな。

 

「ですな?議長。」

 

「ふむ、見守りましょう。」

 

 荘厳豪奢なる最高評議会室の5つの席の真ん中で、わしはそう返す。

 さぁ、次は何を見せてくれるんじゃ?道化師よ。


「俺の真似だけでは飽き足らず、俺のモンスターまでも!!

 キサマ!何者だぁ!!そのDホイールをどこで手に入れた!!」

 

 俺は声のあらん限りに叫ぶ。

 この俺の真似をしたことは許せない。

 だがそれ以上に、奴のDホイールを他人が使っていることが気にくわん!!

 

「Cava、お初にキング。

 俺の名はロゼ・ジェスター、しがないデュエリストだ。

 あなたとこうしてデュエル出来て光栄の極み。

 ちょっとした余興は楽しんでいただけましたかな?なんてね。」

 

 俺はさっきの不遜な態度とまるで違う道化じみた慇懃無礼な物言いに面を食らう。ふざけたやつだ!

 それにわざわざ、俺の方へ顔を向けるためにターンバックで走行などしおって!!

 

「あぁ、それとこのDホイールについては拾い物でね。

 出自についてはよく知らないんだ。」

 

 奴の態度から嘘か本当か判断しにくいが、奴は評議会が推薦した選手、裏は取れているはず。

 あの3年前のことに関与しているわけはないか・・・

 

「ささ、お客さんの熱が冷めてしまう前にデュエル再開と行きましょうや。」

 

「くっ!!」

 

 あいつの言うことはもっともだ。

 ここであいつのことをこいつに問いただしても、エキシビジョンの熱が冷めるだけ・・・

 ならばこのデュエル、さっさと終わらしてやる!

 

「俺はレッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライトでレッド・ワイバーンに攻撃!

 灼熱のクリムゾン・ヘル・バーニング!!」

 

 レッド・デーモンズの炎がレッド・ワイバーンを焼き尽くす。

 だが、レッド・ワイバーンは守備表示、伏せているカードも追撃を行えるカードではない。

 奴がバラまいた、アクションカードとやらも今手元にない。

 

「俺はこれでターンエンド!」

 

「おやおや、キング予告の3ターン目だというのに、いいのですかな?」

 

 ちっ!どこまでも俺をこけにする気か!

 

「キサマァ!そのDホイールに乗る以上、無様なデュエルは許さんぞ!!」

 

「仰せのままにキング、だったら・・・ここから台本のない戦いを始めようか!」

 

 !?また雰囲気が変わった!?

 

「俺のターン、ドロー!!

 俺は手札からチューナーモンスター、ヴァレット・トレーサーを通常召喚!」

 

ヴァレット・トレーサー「グワアアァァァ!」

           ATK1600

 

 赤い弾丸の様な小竜が出現する。何だあれは?

 EM(エンタメイト)といいあのモンスターといい、見たこともないモンスターを使う。

 

「ヴァレット・トレーサーの効果発動

 1ターンに1度、自分フィールド上の表側表示のカード1枚を対象としてそれを破壊して、デッキからヴァレット・トレーサー以外のヴァレットモンスター1体を特殊召喚する。

 俺はスピードローダー・ドラゴンを破壊し、デッキからヴァレット・シンクロンを特殊召喚する!」

 

 ヴァレット・シンクロン ATK0

 

 ヴァレット・トレーサーがスピードローダー・ドラゴンを貫き、現れたのは青い弾丸のようなモンスター

 シンクロン・・・だと!?

 

「だが、チューナー同士でどうするつもりだ!

 そんな脆弱なモンスター2体でレッド・デーモンズに立ち向かうつもりか!」

 

「焦るなよぉ、キング様?

 何が出るかは、お楽しみだぁ。

 速攻魔法、イリュージョン・バルーンを発動

 俺のモンスターが破壊されたターン、俺のデッキの上から5枚のカードを互いに確認し、その中にEM(エンタメイト)モンスターがあればその内1体を特殊召喚できる。」

 

 ヴァレット・トレーサーの効果コストの破壊をトリガーにして発動したのか!?

 開示されたカードはどれも見覚えのないモノばかり、それもモンスターはどれも攻撃力が低い。

 そして、その中から選ばれたのはハンコを持った老人のような亀のカード。

 

「俺はEM(エンタメイト)プラスタートルを特殊召喚。」

 

 プラスタートル DEF1800

 

「プラスタートルの効果発動、1ターンに1度、フィールド上の表側表示モンスターを2体まで対象として、そのモンスターのレベルを1つ上昇させる。

 俺はヴァレット・シンクロンのレベルを1から2に上昇させる。」

 

 ヴァレット・シンクロン LV1→2

 

「俺はレベル4のEM(エンタメイト)プラスタートルにレベル2となったヴァレット・シンクロンをチューニング!

 天を焼くシリウス、孤狼の蒼き瞳よ、血に縛られた牙なき犬どもをかみ砕け!シンクロ召喚!

 天狼王 ブルー・セイリオス!」

 

ブルー・セイリオス「ワオオオォォォォン!!」

         ATK2400

 

 現れる三つ首の蒼き狼、くっ!こいつ!!

 

「キサマ!この期に及んで俺の猿真似か!!」

 

「おっと早合点するなよ。

 ヴァレット・トレーサーの効果を使ったターン、俺はエクストラデッキから闇属性以外のモンスターを特殊召喚できないんでね。

 闇属性レベル6なんてこいつしか持ってないのさ。」

 

 屁理屈を!

 ブルー・セイリオスを自爆させ、レッド・デーモンズの攻撃力を下げるつもりか?

 いや、レベル6のシンクロモンスターとレベル4チューナー・・・まさか!?


「俺は墓地の絶対王 バック・ジャックを除外し効果発動!

 相手ターンにこのカードを除外し、自分のデッキの一番上のカードをめくり、そのカードが通常トラップならば、それを自分フィールドにセットできる!」

 

 ジャックが発動したのは前の俺のターンで墓地へ送られた、絶対王 バック・ジャック。

 あのカードは墓地へ送られたターンの制約などはなかったはずだが、とりあえず、レッド・デーモンズを出したかったのだろうか?

 いや、このタイミングで発動させたんだ、レッド・デーモンズがいないと意味がないカードの可能性が高い。

 

「俺はこのカード、バスター・モードをセットする!」

 

 バスター・モード・・・

 あのカードがあれば追撃でスピードローダー・ドラゴンも破壊できたはず。

 エンドサイクの警戒?いいや、ピンチを演出し、観客のカタルシスをつかむってかぁ?

 

「舐めてくれるじゃないか、キング様よぉ?

 俺はレベル6のブルー・セイリオスにレベル4のヴァレット・トレーサーをチューニング!

 集いし夢が結集し、宙へ輝く星となる!光射す道となれ!!シンクロ召喚!

 飛び立て!サテライト・ウォリアー!!」

 

――ゴオォォォォォ!!ガシャン!ガャン!!ブォン!!

 

サテライト・ウォリアー「ハッ!!」

           ATK2500

 

 ロケットが変形した黄金の巨人、サテライト・ウォリアー

 このカードといい、Dホイールといい、ジャックの反応からして何かありそうだな?

 まぁ、それは置いといて・・・

 

「サテライト・ウォリアーの効果発動!

 相手フィールドのカードを俺の墓地のシンクロモンスターの数まで破壊し、破壊したカード1枚につき1000ポイントの攻撃力を得る!

 俺はセットカード2枚とレッド・デーモンズを破壊する!

 行け!コメット・ブラスト!」

 

 サテライト・ウォリアーが呼び寄せた隕石がジャックに向かって落ちてゆく

 だが、ジャックはそれを予期していたとばかりにカードを発動させる。

 

「やはり来たか!だが、レッド・デーモンズは破壊させん!

 トラップ発動!バスターモード!!

 このカードは自分フィールド上のシンクロモンスター1体をリリースし、その名が含まれる/バスターと名の付くモンスターをデッキから特殊召喚する!

 煉獄の鎧を纏え!レッド・デーモンズよ!」

 

 レッド・デーモンズの体に炎がまとわりつき、隕石はその炎で燃え尽きてゆく

 降り注ぐ隕石が止むと、悪魔のような意匠の鎧を着た新たなレッド・デーモンズがジャックを守っている。

 

「レッド・デーモンズ・ドラゴン/バスター!!」

 

レッド・デーモンズ/バスター「グオオォォォォォォォォ!!」

              ATK3500

 

『おおぉぉぉ!!ジャック、サクリファイスエスケープでレッド・デーモンズを守り、さらに進化させた!!』

 

「だが、チェーン処理中に発動したバスター・モードとセットカードのリジェクト・リボーンの2枚のカードの破壊により、サテライト・ウォリアーの攻撃力は2000ポイントアップ!」

 

 サテライト・ウォリアー ATK2500→4500

 

「まずはその済ました鼻っ面を折ってやろう!バトルだ!

 サテライト・ウォリアーでレッド・デーモンズ・ドラゴン/バスターに攻撃!

 コズミック・シュート!!」

 

 宙から飛来する黄金の巨人の蹴撃が悪魔の竜の鎧を割り砕く。

 その衝撃は地を揺らし、ジャックのDホイールのバランスを崩させ、コマのように回転させる。

 

「ぐわあああぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 LP2700→1700

 

『あぁ!?ジャック!!』

 

「だぁ・・・くぅ、だが、/バスターが破壊されたことで墓地のレッド・デーモンズが蘇る。

 俺はレッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライトを呼び戻す!」

 

レッド・デーモンズS「グゥゥゥ・・・」

          ATK3000

 

 鎧が弾け、元のレッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライトに戻る。

 観衆はジャックの奥の手ともいうべき/バスターを破壊され、本気で追い詰められていることに動揺しざわめいている。

 さぁさぁ、今宵の主役さん、本気を出さないと悪役が勝ってしまうぞ?

 

「ターンエンド。」


――ウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!

 

――パシッ!

 

――パシッ!

 

 黄金の巨人を操る道化を紅の悪魔竜を従える王が追う。

 2人はコース中央に並べられたアクションカード2枚をそれぞれ手にして疾走する。

 

(この俺が震えている・・・恐怖しているというのか?いや・・・)

 

 ジャックは目の前を走る赤いDホイールを見る。

 そこに写り込むのは在りし日の幻想、自身の追いつけぬ場所に行ってしまった友の背中

 

(お前はまだ!俺の前を走り続けるというのか!!)

「俺のターン!!」

 

 彼の中で燻っていた炎が燃え上がる。先には行かせんとアクセルを踏む。

 引いたカードはハイリスクなカード、失敗すれば悪魔竜の炎で焼き尽くされぬほど強大になった黄金の巨人に自身は敗北するだろう。

 

(それがどうした!!)

「俺はマジックカード、紅蓮魔竜の壺を発動!!

 自分のフィールドにレッド・デーモンズがいるとき、俺は2枚のカードをドローする!」

 

「っ!?そのカードは発動させてしまえば、召喚、特殊召喚を行えなくなるカード!?

 このタイミングで使用するのか!?」

 

 道化があまりにもハイリスクなカードの使用に驚きの声を上げる。

 そのカードは絶対王 バック・ジャックの効果で確認した最後の一枚、そこから先は未知の領域だ。

 フィールドに自身の魂以外のカードがないこの状況では分の悪い賭けとなる。

 だが、そんな心配を王は一喝する

 

「キングをなめるなっ!!2枚のカードをドロー!!

 さらにマジックカード手札抹殺を発動!!

 互いのプレイヤーは手札をすべて捨て、捨てた枚数分ドローする!

 俺はアクションカードを含めた4枚のカードを捨て4枚ドローする!」

 

「ここで手札交換カードを引き当てただと!?

 俺もアクションカードを含めた2枚のカードを捨て2枚ドローする。」

 

 手札のアクションカードがなくなったことにより、さっそく道化は次なるアクションカードを手に入れるためにハンドルを切るが、そうはさせまいと王は壁を駆ける。

 

「させるかああぁぁぁ!!」

 

「うぉっ!?」

 

 コーナーガードを駆け、ロゼこと遊矢の前に出たジャックはアクションカードを掻っ攫う。

 

「ふんっ!このカードはこうしても使えるのであろう?

 マジックカード、ブーギー・トラップ!

 手札のアクションカードと風来王 ワイルド・ワインドを捨て、墓地のトラップカード、プライドの咆哮をセットしバトルだ!

 レッド・デーモンズでサテライト・ウォリアーに攻撃!

 行け!灼熱のクリムゾン・ヘル・バーニング!!」

 

レッド・デーモンズS「グオオォォォォォォォ!!」

 

「迎え撃て!サテライト・ウォリアー!」

 

 レッド・デーモンズの炎の中をサテライト・ウォリアーが足のブースターを吹かして突き進む。

 

『!?キング!!サテライト・ウォリアーに特攻!!

 このままではライフを大きく失ってしまいます!』

 

「そんな馬鹿な真似、俺がするか!

 ブーギー・トラップで伏せたカードはこのターンで発動できる!

 トラップカード発動!プライドの咆哮!

 戦闘ダメージ計算時、自分のモンスターの攻撃力が相手モンスターより低い場合、その攻撃力の差分のライフポイントを払うことで、ダメージ計算時のみ自分のモンスターは相手より攻撃力を300上回る!

 俺のライフ1500をレッド・デーモンズに与える!!」

 LP1700→200

 

レッド・デーモンズ「オオォォォォォ!!」――ゴオオオォォォォォォ!!

         ATK3000→4800

 

「燃やし尽くせ!レッド・デーモンズ!!」

 

 王のプライドがレッド・デーモンズに力を与え、その炎の威力を増す。

 サテライト・ウォリアーの拳はその業火の前に融け崩れ、その身は炎の前に燃え尽きる。

 

「ぐっ・・・どうした!キングの力とはこの程度か!!

 サテライト・ウォリアーの効果発動!

 シンクロ召喚されたこのカードが破壊された場合、自分の墓地からレベル8以下のウォリアー、シンクロン、スターダストシンクロモンスターを3体まで選んで特殊召喚する!

 

 さらに手札のヴァレット・リチャージャーの効果発動!

 エクストラデッキから特殊召喚された自分フィールド上の闇属性モンスターが戦闘、効果で破壊された場合、手札、フィールドのこのカードを墓地へ送り、そのモンスターとは名称の異なる闇属性モンスターを墓地から選んで特殊召喚する!

 来い!オッドアイズ・ウィザード・ドラゴン!スターダスト・チャージ・ウォリアー!」

 LP3500→3200

 

オッドアイズ・ウィザード「ギャオオォォォォォォぉ!!」

            ATK2500

 

スターダスト・チャージ「はっ!!」

           ATK2000

 

 黄金の巨人が融け消えても、新たな魔法陣から星屑の銃士と異虹彩の魔術竜が紅蓮魔竜に対峙する。

 

『キングの捨て身の一撃の前にサテライト・ウォリアー燃え尽きたぁ!

 ですがゴーストライダー、モンスターが途切れない!

 というか、減るどころかむしろ増えている!?』

 

「ぬうぅぅ!しつこいやつだ!!」

 

「生憎と、諦めは悪い方でね。」

 

(ここでレッド・デーモンズの効果を発動させ、あのモンスターを破壊すれば奴に1000ポイントのダメージを与えられるが・・・

 それでもモンスターを途切れさせることはできないか・・・)

「俺はカードを1枚伏せ、ターンを終了する!」

 

 これで5ターンが終わり、サーキットの周回も10を超え、2人は再びカーブへと入る。

 先行を行くジャックはカーブ中央のアクションカードを取る。

 このカーブにはアクションカードがもう1枚あるが、それはコーナーインコースに設置され非常に取りづらい。

 それをゴーストライダーこと遊矢は

 

――ギュルルルルルルッ!!

 

 Dホイールを倒し、ドリフト走行でコーナーに入り手に入れる。

 

『おぉ!!ゴーストライダー、コーナーのインコースに設置されたアクションカードを華麗なドリフトでゲット!

 さらにコーナーウォールを使い体勢を立て直した!

 見事なライディングテクニックです!彼はいったい何者なのか!?』

 

「俺のターン、ドロー!

 スタンバイ、メインフェイズを飛ばしバトルフェイズ、オッドアイズ・ウィザード・ドラゴンでレッド・デーモンズに攻撃!

 そして、アクションマジック、立体交差を発動!

 モンスター同士が戦闘を行うとき、そのモンスターの攻撃力を入れ替える!

 やれ!オッドアイズ!!」

 

オッドアイズ・ウィザード「ギャオォォォ!!」

            ATK2500→3000

 

レッド・デーモンズS「グルゥ!?ガアァァァ!!」

          ATK3000→2500

 

 オッドアイズ・ウィザード・ドラゴンは魔法陣からチェーンを発生させ、レッド・デーモンズ・ドラゴンを拘束する。

 

『あぁ!?レッド・デーモンズが!?』

 

「小癪な真似を!!だが俺の魂はこの程度のことで砕けはせん!!

 アクションマジック、エクストリーム・ソード!

 このターン、フィールド上の表側表示モンスターの攻撃力を1000ポイントアップさせる!

 俺はレッド・デーモンズの攻撃力を1000ポイントアップ!返り討ちだあぁ!!」

 

レッド・デーモンズS「グオォォォォォ!!」

          ATK2500→3500

 

 レッド・デーモンズは巻き付いていた光の鎖を引きちぎり、炎を纏わせた拳でオッドアイズ・ウィザード・ドラゴンをぶん殴る。

 

オッドアイズ・ウィザード「グエアァァァ・・・」

 

『やった!ゴーストライダーのドラゴンを返り討ちです!』

 

「ぐうぅ・・・まぁ、そんなことだろうと思っていたよ。

 相手によって破壊されたオッドアイズ・ウィザード・ドラゴンの効果発動!

 デッキから魔法カード、螺旋のストライクバーストを手札に加えて、デッキ、手札から新たなオッドアイズを特殊召喚する。

 来い!オッドアイズ・ランサー・ドラゴン!!」

 LP3200→2700

 

 落下するオッドアイズ・ウィザード・ドラゴンの下に魔法陣が現れ、それをくぐると鋭利な翼と槍の穂先のような頭をした新たな異虹彩の竜へと変身する。

 

オッドアイズ・ランサー「ギャオオオオォォォォォォォォ!!」

           ATK3000

 

 だが新たに召喚されたこのモンスターではアクションカードで強化されたレッド・デーモンズにはかなわない。

 そんな遊矢の思いに応えたのかオッドアイズ・ランサー・ドラゴンは地に足を付け、首で指図する。

 

「なるほど、じゃあ遠慮なくいくぞ!オッドアイズ!!」

 

――ブウウウゥゥゥゥンン!!

 

 アクセルを吹かせ、遊矢はオッドアイズ・ランサー・ドラゴンの背に向かう。

 そして

 

「なっ!?」

 

『と!?跳んだ!?』

 

 その背をジャンプ台代わりにして跳んだ遊矢はコース上空に浮かんでいたアクションカードを手にジャックの前方へと着地する。

 

「はっ!これは御誂え向きのカードだな!

 アクションマジック、オーバー・ソード!

 このカードはモンスターの攻撃力を500ポイントアップさせる!」

 

 オッドアイズ・ランサー・ドラゴン ATK3000→3500

 

「追撃だ!オッドアイズ・ランサー・ドラゴンでレッド・デーモンズ・ドラゴンに攻撃!!」

 

 オッドアイズ・ランサー・ドラゴンは翼を折りたたみ、レッド・デーモンズ・ドラゴンに突撃する。

 レッド・デーモンズも突撃してくるオッドアイズ・ランサー・ドラゴンを炎がまとわりつく拳で迎撃する。

 

『両者のモンスターの攻撃力は互角!

 このまま、相打ちか!?』

 

「残念ながら、オッドアイズ・ランサー・ドラゴンはオッドアイズカードの破壊を、代わりに別の手札、フィールドのオッドアイズカードを破壊することで免れる!

 さらにこのモンスターの攻撃時、相手はダメージステップ終了時まで魔法、トラップを発動できない!」

 

「なっ!?」

 

「貫け!ストライクチャージランサー!!」

 

 オッドアイズ・ランサー・ドラゴンの翼から伸びる光がまるで柄のように伸び、その身は巨大な一振りの槍と化し、紅蓮魔竜の拳を体を魂を貫いた。

 

レッド・デーモンズS「グオォォォ・・・・」――バンッ!

 

「っ!?レッド・デーモンズ!?」

 

「オッドアイズ・ランサー・ドラゴンの代わりに手札のオッドアイズ・ドラゴンを破壊!

 さらに俺にはまだスターダスト・チャージ・ウォリアーの攻撃が残ってるぜ!

 行け!スターダスト・チャージ・ウォリアーでダイレクトアタック!流星乱射(シューティング・クラッシャー)!!」

 

 星屑の銃士の砲撃がジャックに向かってゆく。

 常に王を守り共に戦っていた紅蓮魔竜は異虹彩の竜に貫かれ、その身はさらされている。

 まさに絶体絶命の状況

 

『嘘・・・ジャックが負ける?キング!!』

 

――アトラス様!?

 

――ジャックー!!

 

 阿鼻叫喚の中、シティのキングは流星の砲撃の中に姿を消した。


 3年、いや、俺が上を目指そうと思ったのはもっと昔、天から落ちてきた一枚のカードを手に入れてからのことだ。

 コモンズの誰もが俺を嘲笑った、出来るはずがないと、そんなもの夢物語だと

 

 だが、あいつは俺の夢を笑って応援してくれた。

 自分の夢を追うものの一人として、そしてライバルとして

 だが、その友はあっさりと夢の先に消えてしまった・・・

 

 虚無感のままにただ頂を目指し、シティのキングとなっても乾きは増すばかり、この胸に燃えていた炎はだんだんと小さく燻っていった。

 

「パワー・ウォールを発動し、ダメージを無効にしていたか・・・」

 

『ジャック!!』

 

――ジャック!!

 

――アトラス様ー!!

 

「そうだ!このカードは俺の受ける戦闘ダメージ500ポイントに付き1枚、デッキの上からカードを墓地へ送ることでそのダメージを無効にする!

 よって俺は4枚のカードを墓地に送り、ダメージを無効にさせてもらった!

 墓地に送られた2枚目の絶対王 バック・ジャックの効果でデッキの上から三枚を確認し、好きな順番でデッキトップに戻す!

 さらに、絶対王 バック・ジャックを除外し効果発動!

 デッキトップは戦線復帰!通常トラップだ!よって、俺のフィールドにセットする!」

 

――オオォォォォォォ!!

 

『さすが我らがキング!ジャック・アトラス!!

 王の中の王、キング・オブ・キングス!!』

 

 誰もたどり着けぬ高み、それを目指しここに来た。

 だが、後追うものは誰もおらず、この場に現れる者もどいつもこいつも雑魚ばかり・・・

 天に唾を吐くもの、欲に目がくらんだもの、俺と戦うだけで満足するもの

 誰も俺に『勝とう』とする者はいなかった。

 

「バトルフェイズを終了し、魔法カード、螺旋のストライクバーストを発動。

 デッキからレベル7のオッドアイズモンスターを手札に加える。

 俺はデッキからオッドアイズ・セイバー・ドラゴンを手札に加え、ターンエンド!」

 

 だが、今ここに、俺に本気で『勝とう』とする者が現れた!

 あいつのDホイールとカードと共に!!

 この胸の火を燃え上がらせるには十分だ!

 

「お前、ロゼと言ったか?」

 

「ん?あぁ、そうだ、ロゼ・ジェスター、それが俺の名前だ。」

 

「そのDホイールについても知らぬのなら何も言わん。

 だが、この大会に出る以上、必ず俺の前に再び現れろ!それ以外は許さん!!」

 

「おいおい、突然なんだよ・・・」

 

「うるさい!俺は再びお前とデュエルをしたくなった、それだけのことだ・・・」

 

「ほう・・・それは光栄の極み。

 だが、それは勝ったやつが言うセリフだ

 このままキングが負けてしまったら締まらないよなぁ~?」

 

 勝って見せろということか、どこまでも道化的な奴だ。だが!!

 

「よかろう!!お前にキングの!いや、ジャック・アトラスの燃え滾る魂を見せつけてやる!!

 俺のターン、ドロオオォォ!!」

 

 引いたのは奴から以前貰ったカード、皮肉なものだ。

 これも運命、いや絆と言うのかもな・・・

 

「俺はマジックカード、星屑のきらめきを発動!

 俺の墓地のドラゴン族シンクロモンスター1体を選択し、そのモンスターと同じレベルになるように、選択したモンスター以外のモンスターをゲームから除外し、選択したモンスターを墓地から特殊召喚する!

 俺は墓地からレベル4のマッド・デーモンとレッド・ガードナーを除外し

 甦れ!我が魂!!レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト!!」

 

レッド・デーモンズS「グオオォォォォォ!!」

          ATK3000

 

『おおぉぉぉ!!見てください、ジャックの魂、レッド・デーモンズの再臨です!!』

 

 再びコーナーカーブに差し掛かり、俺たちは互いにアクションカードを手にする。

 

「レッド・デーモンズの効果発動!

 このモンスター以外の、このモンスターの攻撃力以下の特殊召喚されたモンスターすべてを破壊し、その数×500ポイントのダメージを相手に与える!

 アブソリュート・パワー・フレイム!」

 

「オッドアイズ・ランサー・ドラゴンの効果発動!

 手札のオッドアイズ・セイバー・ドラゴンを代わりに破壊!」

 

「だがスターダスト・チャージ・ウォリアーには消えてもらう!」

 

 復活したレッド・デーモンズの炎がスターダスト・チャージ・ウォリアーを燃やし尽くす。

 このデュエルはお前とのデュエルではない、俺は奴と決着をつける!!

 

「うぉっ!」

 LP2700→2200

 

「さらに俺は墓地の風来王 ワイルド・ワインド2枚を除外し効果を発動!

 デッキから攻撃力1500以下の悪魔族チューナーモンスターを手札に加える。

 俺は攻撃力100のチェーン・リゾネーターと2枚目のシンクローン・リゾネーターを手札に加え、チェーン・リゾネーターを召喚!!」

 

チェーン・リゾネーター「へアッ!」

           ATK100

 

「このモンスターが召喚に成功したとき、フィールド上にシンクロモンスターが存在する時、デッキからチェーン・リゾネーター以外のリゾネーターモンスターを1体特殊召喚する!

 来い!ダーク・リゾネーター!」

 

ダーク・リゾネーター「ヘッ!」

          ATK1300

 

「さらにトラップ発動!戦線復帰!

 墓地のモンスターを守備表示で特殊召喚する。

 俺は墓地のレッド・ワイバーンを特殊召喚し、さらにフィールドにシンクロモンスターがいることにより手札のシンクローン・リゾネーターを特殊召喚!」

 

レッド・ワイバーン「オォォ!!」

          DEF2000

 

シンクローン・リゾネーター「ゲッ!」

             DEF100

 

『なんとなんとキング!カード効果を巧みに使い5体のモンスターを1ターンで呼び出したぁ!!

 すごいぞキング!我らのジャック・アトラス!!』

 

 奴の手札にはアクションカードが1枚

 このカードは攻撃力変化や、戦闘回避系のカードが多いようだな。

 あのカードも戦闘回避系として見るべき、ならば!

 

「聞くがいい!この俺、ジャック・アトラスの魂の鼓動を!

 感じるがいい!その燃え滾る魂を!!

 そして見よ!俺が切り開いた新たなる道を!!

 レベル8のレッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライトにレベル1のシンクローン・リゾネーターとレベル1のチェーン・リゾネーターをダブルチューニング!!」

 

 チェーンとシンクローン、2体のリゾネーターが炎の輪となりレッド・デーモンズを囲い回転する。

 

『ダ!!ダブルチューニング!?』 

 

「王者と悪魔、今ここに交わる!

 赤き竜の魂に触れ、天地創造の雄たけびを上げよ!!」

 

 炎はレッド・デーモンズの身を隠し、その中で新たなる王の鼓動が動き始める。

 

「シンクロ召喚!!」

 

 ともに行くぞ!!レッド・デーモンズ!!

 

「大いなる魂!!レッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラント!!」

 

レッド・デーモンズT「グオオォォォォォォォォ!!」

          ATK3500

 

 戦い続け身に付いた傷は新たなる力への糧とし、雄々しく広がる4枚の翼を広げ、ここに暴君は君臨した!

 

『すごい!ジャックの魂、レッド・デーモンズがダブルチューニングによって進化した!!』

 

――すごい・・・

 

――これがキングの力・・・

 

「ははっ!だが、そのモンスターじゃあ、俺のライフはまだ残る。

 その程度じゃ・・・足りないな!!

 そんなものか!本当のジャック・アトラスの力は!!」

 

 ふっ、道化め、臆さず啖呵を切るか!

 ならば、見せてやろう!誰も寄せ付けぬ圧倒的な力を!!

 

「シンクローン・リゾネーターが墓地へ送られたことで、墓地の別のリゾネーター、クリエイト・リゾネーターを手札に加える!

 そしてこのモンスターは自分フィールド上にレベル8以上のシンクロモンスターが表側表示で存在する場合、特殊召喚できる!」

 

クリエイト・リゾネーター「ヒッ!」

            DEF600

 

「さらにマジックカード、トランスターンを発動!

 自分フィールド上のモンスター1体を墓地へ送り、そのモンスターと同じ種族、属性でレベルが1つ高いモンスターをデッキから特殊召喚する!

 俺はレベル3のダーク・リゾネーターを墓地へ送り、デッキからランサー・デーモンを特殊召喚!」

 

ランサー・デーモン「はあぁぁ!フンッ!」

         ATK1600

 

「そしてアクションマジック、イリュージョン・ファイアーを発動!

 このカードは自分のフィールド上のモンスター1体を対象にし、このターン、そのモンスター以外の攻撃を封じる代わりに、そのモンスターはこのターン、俺のフィールドの他のモンスターの数まで攻撃できる!

 俺はレッド・デーモンズを選択!!」

 

『ジャックのフィールドのモンスターはレッド・デーモンズを除いて3体

 ってことは攻撃力3500のモンスターが3回攻撃できるってこと!?』

 

「バトルだ!レッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラントでオッドアイズ・ランサー・ドラゴンに攻撃!!

 行け!獄炎のクリムゾン・ヘル・タイド!!」

 

 灼熱の獄炎がオッドアイズ・ランサー・ドラゴンを包み込む。

 奴の手札はまだ1枚ある。どう出てくる?

 

オッドアイズ・ランサー「グゥ・・・オオアアァァァァ!!」――バンッ!!

 

「ぐぅぅ・・・」

 LP2200→1700

 

『通ったああぁァァァ!!ゴーストライダーのドラゴンをレッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラントが打ち取りましたあぁぁ!!』

 

――うおぉおぉぉぉぉぉ!!

 

『さらにもうゴーストライダーのフィールドにはカードがありません!

 イケー!ジャックー!!』

 

「これで終わりだ!レッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラントでダイレクトアタック!!」

 

「おっと!まだこれで終わりではないんだな!

 相手のダイレクトアタック宣言時、手札のEM(エンタメイト)ミス・ディレクターを墓地へ送り、EM(エンタメイト)バリアバルーン・バクの効果発動!

 このモンスターを墓地から特殊召喚する。

 さらにEM(エンタメイト)が手札から墓地へ送られたことにより、墓地のEM(エンタメイト)ギッタンバッタを特殊召喚だ!」

 

 バリアバルーン・バク DEF2000

 ギッタンバッタ    DEF1200

 

 ここで展開してくるか!

 

「特殊召喚されたギッタンバッタは1ターンに1度、戦闘では破壊されない。」

 

『ええぇぇ!?あと二回しか攻撃できないのに、これじゃモンスターが残っちゃう!』

 

 なるほど、他のモンスターで攻撃していれば突破できず、2体ともフィールドに残ったうえで次のターンを回すことになっていたか。

 だが、俺の燃え滾る魂はその程度の壁で阻まれはせん!!

 

「俺はレッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラントでEM(エンタメイト)ギッタンバッタに攻撃!

 この瞬間!ランサー・デーモンの効果発動!

 相手フィールド上の守備表示モンスターを攻撃対象とした自分のモンスターの攻撃宣言時、1ターンに1度、そのモンスターに貫通効果を付与する!」

 

レッド・デーモンズT「グオオォォォォ!!」

 

 レッド・デーモンズの手に集まった獄炎が槍の形となって阻む壁に向かう

 俺は待っていたのだ!限界を超える戦いを!

 こいつはまだまだ、その強さを眠らせている。その強さを洗いざらいさらけ出すまで俺ははるか高みに昇れるだろう!

 だから、今、この一戦に引導を渡す!!

 

「これで終わりだ!!アブソリュート・エクストリーム・フォース!!」


 迫る獄炎の槍が非力な虫を焼き貫こうと向かってくる。

 

 バリアバルーン・バクだけではイリュージョン・ファイアーによって攻撃回数を増やしたタイラントを止められない。

 手札のカードがEM(エンタメイト)ユニだったならば、ダメージは回避できたんだろうが、ないものねだりはしちゃいけない。

 

 どうやっても詰み、だけどこれで何もしないで終わるわけにはいかない!

 

「ふっ、これでこそジャック・アトラスだな。

 だったらその勝利に花を添えてやるよ!!アクションカード、回避!攻撃を無効にする!」

 

「!?レッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラントの効果発動!

 バトルフェイズ中のマジック、トラップの発動と効果を無効にし破壊し、このカードの攻撃力を500ポイントアップさせる!」

 

 レッド・デーモンズT ATK3500→4000

 

 ここまでやって負けるんだ!だったらせめて最後に最高の負けを演出してやるよ!

 

「ははっ!楽しいデュエルだったぜ!キング!!」

 

 獄炎の槍がギッタンバッタを貫き、俺の乗ったDホイールは敗北の証として緊急停止した。

 

 LP1700→0


 静寂

 

 今宵、自分たちが見ようと思っていたものはなんであったか?

 王の前に差し出された憐れな子羊が供物として捧げられるのを見るためではなかったか?

 

 だが、ソレは王を騙り、王を貶し

 正体がばれるや否や、王に噛みつき、締め上げ、死闘を演じた。

 それはまるで蛇のごとく狡猾で、そして決闘者(デュエリスト)としての熱き魂を持った者

 

 それはもう、生贄などとは呼べないだろう。

 その戦いが永遠なれと、この場にいる者が、中継を見ているすべての人々が思ったのだから

 

『・・・け、けっ、けっちゃーくぅ!!

 フレンドシップカップ、エキシビジョンマッチ!

 激闘を制したのは!我らがキング!!ジャック・アトラース!!』

 

――うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!

 

 割れんばかりの歓声

 それは勝者であるジャックだけに向けられたものではない。

 負けたとはいえ、このデュエルで見せた生き様は、自分たちには真似できない気高くて馬鹿にすることはできないものなのだから

 

「あぁ・・・ひっさしぶりに気持ちよく負けたなぁ~」

 

 まぁ、その歓声を向けられている当人は、そんなことを気にしてはいないが

 

「・・・ロゼとやら、ひとつ聞きたいことがある。」

 

 スタートラインに戻った2人、ジャックの方からロゼ、遊矢に話がふられる。

 

「なんですかねぇ?

 このDホイールについてはさっき話した通り、よく知らないんですがねぇ?」

 

「そっちではない。

 お前が使ったオッドアイズ・ランサー・ドラゴン、そのテキストにあったペンデュラムモンスターや、ペンデュラムゾーンとは何のことだ?」

 

「へっ?」

 

 遊矢は失念していた、いや、しょうがないので放置していた。

 EM(エンタメイト)は今やほとんどがペンデュラムありきのテーマであり、魔術師、オッドアイズについてもその通りだ。

 ペンデュラムでないカードでデッキを構成しても、そのテキストには制約や効果範囲の中でペンデュラムという文字は出てくるのだ。

 

「いや・・・それは、その・・・なんでしょうね?」

 

 とはいえ、その中で書かれたペンデュラムというテキストなど、使わなければほとんど気にしないようなものばかりなのだ。

 口頭の説明で大体の効果を伝えるのだから、さらに気にする人など少ない。

 だが、違ったのだ。目の前の男、ジャック・アトラスはペンデュラムというテキストを目にしている。

 

「キサマ!!白を切るつもりかぁ!!」

 

「あわわ、暴力反対!?」

 

 首襟をつかまれ、ジャックの怒号が響く

 彼にとっては許せないのだ。この道化はその力を眠らせているのではなく、隠しているのだから。

 そして、自分はその力を隠している相手に負けかけたのだから

 

「でぇい!!この俺が、ここまで馬鹿にされるとは・・・」

 

「い、いや、別に馬鹿にしたわけでは・・・」

 

「えぇぇい!!決めたぞ!!おい!!そこの女!!」

 

『えっ?あっ!はい!!』

 

「今年のフレンドシップカップは俺も本選に出る!!」

 

『えっ?えええぇぇぇぇええぇぇぇ!!』

 

「ここまでコケにされて座して見てなどいられるか!!

 どうせ、俺が負けた時のために出場枠をいつも一つ空けているのだろう!!」

 

 突然のキングであるジャックの本選出場宣言にメリッサを含め、会場中の誰もが驚きの声を上げる。

 だが、プライドの塊であるこの男はもう止まらない。

 

「いいか!次にこの俺と対峙するときは、お前の持ちうる力、全てで掛かってこい!!

 あいつのカードも、そのペンデュラムというのもすべてだ!!」

 

 指差された男、ロゼ・ジェスターを名乗る遊矢は

 

「ははは、ジャックにそこまで言ってもらえるなんてな。

 首洗って待ってなよ。」

 

 不敵に笑って、挑発するのであった。




・・・これエキシビジョンじゃよな?

そうです。

まだ、エキシビジョンです。

いやはや、議長の連れてきたデュエリストは最初はどう言うものかと思ったが

なかなかやりますな。議長

う、うむ
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『追想 夢の残骸』
ここまでやられるとあやつがどうなっているか気になってくるのう。


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追想 夢の残骸

皆様お久しぶりでございます。
仕事の方が忙しいのと、暑さで頭が回らなかったので一か月超更新が止まってしまって申し訳ありませんでした。
来週からは仕事の方は落ち着くのですが、私は熱さにかなり弱いうえにパソコンのある部屋はエアコンがないので、また遅くなるかもしれませんが気長にお待ちくださいませ。


「ふぁ~やっぱり、慣れないことすると疲れるねぇ~」

 

 怒れるジャックを何とか落ち着かせて、待機場に戻ってきた。

 ロジェ対策のためにここにDホイールを置いておくわけにはいかないので、すぐさまカードにしてトンズラしなければならないのだが、今回は待ち人がいるのでここにきている。

 

「で、ちょっとはジャックが何を考えているか分かったか?サムくぅ~ん?」

 

「・・・・・・」

 

 目を伏せて黙り込む気弱そうな小柄な少年『サム』

 コモンズ民だが、生活費のために役所の宿泊施設のボーイのバイトをやっているのだが、他人、それもこの街のスターであるジャックから直接カードを渡されたにもかかわらず、そのカードを「レベルも攻撃力も弱いモンスター」と言い切り、それを理由にジャックを裏切り者認定した。

 そのかなりの自己中っぷりから『強欲なサム君』とあだ名がつけられた少年である。

 

「なんだ、余計に分からなくなったって顔だな?」

 

「・・・はい、それにあなたのことも・・・」

 

「あぁ?」

 

「だって、なんであなたはそんなに楽しそうなんですか!?

 あなたは負けたんですよ!悔しくはないんですか!!」

 

 なんだそんなことか・・・

 

「別に悔しくないってわけじゃないさ。

 だけど、悔しいよりも俺は嬉しいんだ。」

 

「嬉しい?」

 

「何を隠そう、俺はジャックの昔からのファンでね。

 そのジャックと思いっきりデュエル出来たんだ。

 それに演出のためとはいえあれだけ悪口を言っておきながら、最後にジャックは俺とまた戦いたいと言ってくれた、これが嬉しくないわけないだろ。」

 

「ジャックのファン・・・」

 

 お~おぉ、また目を伏せちゃってまぁ、落ち込みやすいやつだ。

 まぁ、大方ジャックを倒せそうな奴を見つけたのに、そいつがジャックのファンだったから落胆しているってところかな?

 

「言っておくが、俺はお前の復讐に付き合う気もないし、コモンズ代表なんてものにもなった覚えはないぞ?」

 

「!!?」

 

 やっぱりか、わかりやすいやつだ。

 エキシビジョンが始まる前、俺の控室にこいつが来たのでとりあえず話しかけたのだが、まぁ、こいつは俺の記憶通りの奴だった。

 ジャックに勝手に期待して、勝手に失望して、勝手に恨んでいる。

 あのデブやトカゲ野郎もそうだったが、これがコモンズの標準なのだろうか?  

 まぁ、自分で働いているだけマシかもしれないけど。

 

「ジャックのことが許せないのなら、自分でやったらどうだ?

 何をやられたかは知らないけど~」

 

 まぁ、原作通りなら知ってるんだけど

 

「・・・僕もジャックのファンでした。

 スラム街の無敵のキングと呼ばれていた時からずっと・・・

 僕も彼のようになりたくて・・・でも、カードも持ってない僕は、こうしてお金を稼ぐためにトップスの下で働いたりして・・・」

 

 いや、働き口ってトップス以外にほとんどないような気がするけど

 コモンズの住んでいる層は、ほとんど民家でコンビニや酒場なんかもない、そういうものがあるのはどちらも通える中層地帯だ。

 店と言ったら露天があるものの、あそこは偏屈な商人ばかりが集まっているので子供に手伝いなんてさせないだろうし

 

「一度、彼と会う機会があって、僕はどうしてもこの思いを伝えたくて、彼の前に行きました。

 そして僕は彼から『お前に一番ふさわしいカードだ。』と言われて、このカードを渡されました・・・」

 

 懐から出されたのはやはりというか[調律の魔術師]

 レベル1の闇属性、魔法使い族のチューナーモンスターだ。

 ステータス的にかなり希少なカードであるが、召喚、特殊召喚するたびに微妙なデメリットが発生するため、かなり使いづらいカードである。

 

「こんな、レベルも攻撃力も低いカードが僕にふさわしいなんて・・・ジャックは馬鹿にしているんだ!同じコモンズなのに!!

 ジャックは変わった、キングになって金持ちになったジャック・アトラスはトップスに魂を売った裏切り者だ!!」

 

 ・・・またかよ。

 

「裏切り者ねぇ?

 じゃあ、ジャックがキングになった時、自分から俺はコモンズの代表です!って言ったのか?」

 

「えっ?」

 

「どうなんだ?」

 

 サムは目を伏せて、記憶を掘り返しているようだが、まぁないだろう。

 

「・・・言って・・・ないです。」

 

「だろうな、あの傲慢で自分勝手でめんどくさい男が、そんなこと言うわけがない。

 そもそも、コモンズに対して仲間意識があるのかと言っても答えはNOだろう。

 彼は彼、ジャック・アトラスでしかありはしないんだからな。」

 

 サムはさっきまであった怒り顔が嘘のように消失し、ただの叱られている子供の顔になっている。

 まぁ、言葉足らずのジャックもどうかと思うことはあるけど・・・

 

「君と同じようにジャックを裏切り者と言っている奴らにこの前も会ったけどさぁ 

 元からジャックはコモンズの代表としてキングになったわけじゃないと思うし、勝手な期待を背負わされるのなんてジャックからしたらいい迷惑だ。」

 

「うぅ・・・」

 

 ジャックはいい統治をして国を豊かにする『王様』じゃない。

 道を切り開きその生き様を見せて、さぁ追いつけるものなら追いついてみろ!と言い放つ『絶対王者(キング)』だ。

 ゆえに、彼に何かを伝えたかったらデュエルをして認めてもらうしかないだろう。

 

 まぁ、俺はジャックのこととは別にものすごくこの子に対して気に入らないことがあるのだが

 

「ところで、君はそのカードがどういう価値を持っていると思う?

 あぁ、ジャックからもらったカードって言うことを除いて、純粋にデュエルモンスターズにおいての話だ。」

 

「えっ?・・このカードの価値?

 こんなレベルも攻撃力も低いクズカードに価値なんか・・・」

 

 クズカードか・・・

 

「闇属性、レベル1、チューナー、魔法使い族、攻守は0

 サーチ幅が広くて、サポートも多く受けられるステータスを持っている上、同じ条件をもつモンスターは俺の知る限り他にいないからな。」

 

「で、でも!召喚するたびに相手のライフを400回復させて、自分のライフを400削るんですよ!」

 

「俺は面白い効果だと思うけどな。

 まぁ、生かすのなら専用構築にしなくっちゃいけないし、パーツを揃えるのも大変だとは思うけど・・・

 すぐにクズカードと言って切り捨てる、君のような奴には向いてないカードだわな?

 それとも何か?ジャックが、使えば誰にでも勝てる無敵のカードでもくれるとでも思ったのか?」

 

「うぅ・・・」

 

 図星かい。

 っていうか、そんなカードねぇよ。

 ゲーム崩壊級の禁止カードだって大半が他のカードと組み合わせると悪さするから牢屋に入っているというのに・・・

 まぁその話は置いておいて

 

「ん~そんな玄人向けのカードを渡してきたってことは『そのカードを使いこなせるほどの決闘者(デュエリスト)になって俺と戦え!』っていうことなんじゃないか?」

 

「えっ!?」

 

 アニメだと自分が上を目指すきっかけになったカードを渡したということだったような気がするけど、まぁ、そんなことこいつに分かるわけでもないし、理由的にはこっちだろう。

 ぶきっちょな男だから本気で前者かもしれないけど・・・

 

「俺はここ数日スラム街にいたけど、夢のないなんとも面白みのない街だったな。

 他人に迷惑をかけることしか考えない本物のクズもいたけど・・・

 

 そんな奴らに比べたら、夢を持って歩きだした君は全然マシだ。

 だからジャックは君に期待してこのカードを預けたんじゃないか?」

 

「期待・・・そんな・・・僕なんかに・・・」

 

 申し訳なさそうな、嬉しそうな、そんな顔をしてぶつぶつ言ってるな。

 

「いや、言っておくがそのあたりは俺の想像だからな?本気にするなよ。」

 

「!!」

 

 おぉ、一気に落ち込んだな。

 ここまで百面相されるとは・・・いじりがいのあるやつだ。

 

「・・・あなたにお願いがあります。

 このカードを貰ってくれませんか?」

 

 落ち込み顔のあと、悩み顔になり、何か決心したような顔をしたと思ったらそんなことを言ってきた。

 手に持っていたカード、ジャックからもらった[調律の魔術師]を差し出して

 

「どういうことだ?

 そのカードはジャックが渡した君のカードだ。

 ここでバイトしているのもカードを買うためなのだろう?

 たとえ使いにくいカードでも1枚でも多くあったほうがいいんじゃないか?

 デッキすらできていないのだろう?」

 

「そうです。

 僕が持っているカードはこの一枚だけ・・・

 僕はジャックが期待してようとしてなかろうと、僕は、デュエリストになる夢は諦めてしまったんです・・・」

 

「その夢はそんなに簡単にあきらめられるものなのか?」

 

「・・・・・・」

 

 俯き差し出される手は震えている。

 嘘の下手な奴だ。

 俺は差し出したカードを未練がましく見つめるサムから調律の魔術師を奪い取る。

 

「あっ・・・」

 

「なんだ、未練たらたらじゃないか。

 ふふ、それでこそこのカードを手に入れた甲斐がある。」

 

「えっ?」

 

「ジャックが期待したのなら、それなりのデュエリストになるだろう。

 だから、このカードを返して欲しかったら、それなりのデュエリストになって取り返しに来い。

 おまえの好きなカードで、好きなデッキ組んでな。」

 

「えぇ!?」

 

「このカードが気になるのなら、本当の0から始めろ。

 お前の夢は捨てるんじゃなくて、ここから始めろ。」

 

「そ、そんな勝手に!?」

 

「お前はジャックに勝手な期待をしたんだから、俺もお前に対して勝手な期待をさせてもらう。」

 

「うっ・・・」

 

「別に俺は、お前がこれを取り返しに来なくても構わないんだけど・・・どうする?」

 

「・・・・・・失礼します・・・」

 

 サムは扉を開けて出ていく、さてさて釣れるかねぇ~

 8パックぐらいなら買えそうだけど・・・

 

「で、盗み聞きなんて趣味が悪いじゃないか、クロウ?」

 

 サムと入れ替わりに入ってくるクロウ

 扉の隙間からチラチラ見てたけど、用はこのDホイールだろうな・・・

 ジャックが『友』って言っている人の物らしいし、いや、それともゴーストライダーのことだろうか?

 

「・・・ちょっと、付き合え。」

 

 それだけを告げて、クロウは出てゆく。

 俺はDホイールのエンジンを起動し、ガレージから直接スタジアムを出る。

 見つけたクロウの後ろをついてゆく、さてさてどこに行くのやら・・・


 エキシビジョンマッチが終わって、ユーゴのガレージに戻ってきたけど、ユーゴは「ちょっと走ってくる。」って言って出て行っちゃった。

 もう、こんな遅くに・・・で、ユーゴの代わりにやってきたのが

 

「久しぶりね。ユート。」

 

「あぁ、そうだな。

 柊?でよかったか?」

 

 う~ん、なんか違和感が・・・やっぱり遊矢と同じ顔だからかしら?

 ユーゴも柚子って呼んでくれるし・・・

 

「別に柚子でいいわよ?」

 

「あぁ、ありがとう。

 だが、なんというか・・・」

 

「・・・もしかして、瑠璃のこと?」

 

「あぁ、やはりというか、君もセレナも瑠璃に似すぎているのでな・・・」

 

 そうよね。

 ユートはずっと、辛い中で戦って、大切な人まで奪われて・・・

 ユーゴはチャンスを不意にしたらリンに怒られるからって、この大会で戦って行く決意をしているけど、それだって寂しさや悲しみの裏返し

 こんなにみんなを悲しませて、一体、赤馬 零王は何をする気なの?

 

「・・・ねぇ?聞かせてくれない、瑠璃のこと。」

 

「えっ?」

 

「あっ!いや、ちょっと気になったというかぁ~?

 ユーゴもリンのこと話してくれたし、セレナとは実際会ったし、瑠璃のことだけ知らないなぁ~って・・・」

 

 し、しまったぁ!!気になったからつい言っちゃったけど

 ユートにとって瑠璃のことは辛いことのはずなのに、私の馬鹿!!

 

「ふふ、君は随分と素直なのだな?」

 

「あっ、いや、その、ごめん・・・」

 

「いいさ。だが、そういうところは瑠璃と少し違うな。」

 

「へっ?」

 

「瑠璃は決めたことをまっすぐ突き進んでいた。

 アカデミアが襲ってきて、街が火の海になっているときでさえ、こんなの間違っていると、デュエルは争いの道具ではないと『デュエルは人を笑顔にするもの』だと曲げなかった。」

 

 !!?その言葉って・・・でも、当然といえば当然のことだし・・・

 うぅ~ん、遊矢に言った方がいいかしら?

 

「そう、強い人だったのね。」

 

「あぁ、喧嘩をした俺と隼を殴って止められるくらいにな。」

 

「いや!?腕力の話はしてないわよ!!?」

 

 ちょっと、瑠璃って囚われのお姫様的な人じゃないの!?

 ユートは思い出してしみじみしているけど、全然感傷にふけるような話じゃないわよ!?

 

「え、えぇ~と、もしかして瑠璃って怖い人?」

 

「いや、確かに怒ると手が付けられないことはあったが、優しい人だったよ。

 大空を自由にさえずり飛び回る鳥達のような、明るく楽しいデュエルがしたいと言っていた。

 不器用で不愛想な隼も、瑠璃の前ではいつも笑顔だった・・・

 まぁ、俺と同じで隼たちも孤児だから、家族と呼べるのも瑠璃だけだから当然だがな。」

 

 隼、たしか黒咲って人のことね。

 すごい怖い顔してたけど、いや私の顔を見たときすごい狼狽してたけど、あの人が笑顔をみせるか・・・

 逆に言えば瑠璃が攫われたから、あんなふうになったのよね・・・

 

 その後も、ユートはエクシーズ次元のいろいろなことを話してくれた。

 楽しくて平和な思い出、戻ることのできない色鮮やかな記憶を


 エキシビジョンマッチの興奮冷めないシティ

 コモンズ、トップスのどちらもが訪れる中層と呼ばれる一角がいくつかある。

 その中でも一番外側にあるその場所は、シティを一望出来る知る人ぞ知る場所である。

 

――シュボッ!

 

「スゥ~はぁ~・・・」

 

 その場所に作られた公園のベンチで一人の老人がタバコをふかしていた。

 

「タバコは体に悪いぜ?ジーサン。」

 

「ははっ、そう堅いことを言うな、小僧。

 評議会室は禁煙なんじゃ。」

 

 その老人に近づく白いライダースーツを纏った少年、ユーゴ

 突然話しかけたユーゴに対し、その老人、ホワイト・タキはユーゴがここに来るのが分かっていたかのように言葉を返す

 

「なんじゃ、こんな時間に

 もしかして、わしに会いに来たのか?」

 

「いんや、ここの景色を見ようと思ったら、たまたま爺さんがいただけだ。」

 

「はっ!なんじゃ、可愛げのない奴じゃのう。」

 

 ユーゴはホワイトの隣に腰を下ろすと、シティの街並みを眺める。

 しばらく無言が二人の間で続く

 

「・・・嬢ちゃんのことすまなかったのう。」

 

「なんだよ、藪から棒に・・・それは爺さんの所為じゃねぇ。」

(誘拐犯が別次元の人間だとか誰もわかんねぇよ。)

 

「いや、この一件はセキュリティそのものがかかわっているらしいのであれば、この街を取り仕切る者としてわしに責任がある。」

 

「心配すんな!リンはこの俺が絶対に助け出す!」

 

「ふん、毎度のことじゃが大口叩くのう。

 わしに向かって『絶対にキングになる!』と吠えただけのことはあるわい。」

 

「へっ!『その時までにこの街を最高にして見せる』なんて、言った爺さんの方がよっぽどだと思うけどな!」

 

「ふ、そんなこと言った過去の自分を殴りたいわい。

 腰の重い古狸どもの穴をたたくのがどれほど面倒か・・・」

 

「でも、そのおかげでフレンドシップカップが出来たんだろ?」

 

「あぁ、でも、それも今は都合のいい客寄せパンダを作るための大会になってしまったがのう・・・」

 

「おいおい客寄せパンダなんてジャックが聞いたら怒るぜ?」

 

「ホッホッホッ、たしかに、あの男は客寄せにしては不愛想すぎるのう。

 まぁ、あの男はキングとしては最高じゃが、それ故に勝とうとするものが少なくなってしまったのは問題じゃったがのう・・・」

 

「そんなこたぁねぇ!ジャックは最高のキングだ!

 ジャックがコモンズでもトップになれることを証明してくれた。

 爺さんがフレンドシップカップを作ったから、ジャックはキングになれた。

 ジャックがキングになったから爺さんが俺たちの孤児院慰問に来た。

 俺と爺さんの出会いはジャックのおかげなんだぜ?」

 

「ふっ、そういえばそうじゃのう・・・」

 

 トップスの中のトップである最高評議会の長とコモンズの少年

 少年の夢と老人の約束、その交差は絶対王者の威光

 

「じゃが今年はおぬしがキングになるのは無理そうじゃがのう。

 何しろキング当人だけではなく、あのイカレ道化も倒さねばならぬからのう!」

 

「はっ!俺はリンを助け出したときの土産話で『キングになった』って言うつもりなんだ。

 だったら、ジャックだってあいつだって倒して登り詰めてやるぜ!!」


「結構トバしたのについてくるなんて、エキシビジョンの時も思ったがいい腕しているな。」

 

「ほめてくれるな。

 俺はDホイールに乗って一週間のペーペーだ。

 すごいのはこのDホイールのアシストプログラムだ。」

 

 連れてこられたのは何の変哲もないシティ郊外の森の上を走る道路

 クロウは道路の縁から眼下の森を見つめる。

 

「一週間!?

 ははっ、暇があればDホイールをいじっていたあいつらしいぜ。

 そんなど素人が、ジャックと張り合えるDホイールを作っちまうなんてよ・・・」

 

 だんだんと言葉尻が小さくなり、うつむいてしまうクロウ

 クロウと同じように下の森を見ていると月明かりに照らされた川がキラキラと光っている。

 『川』『Dホイール』『作っちまった』ってことは、このDホイールの持ち主、この世界におけるあの人に該当する人は・・・

 

「・・・昔、俺には大勢の仲間がいた。

 ガキの頃からの親友、デュエル仲間、ただ単に気があった奴、仲間になった奴のそのまた仲間・・・

 まぁ、出会い方はいろいろだったけど、気の良い連中だった。

 おめぇがあったトニーやデイモンだって、昔はあんなに擦れてなかったんだぜ?」

 

 何も知らない俺に詮索する義理はない。

 だがクロウはそんなことは知るかと昔話を始めた。確かにあった絆の物語を

 

「昔のシティは今よりギラギラしていてなぁ。

 デュエルギャングや不良グループなんかもいたもんだ。

 俺たちもそいつらと似たようなもんだったんだが、仲間の一人が“新しいライディングデュエルのための乗り物を作ろう”って言いだしたんだ。」

 

 ライディングデュエルのための乗り物?

 その時はまだDホイールという名称はなかったのか?

 

「最初は無茶だって誰もが思ったさ。

 昔のなんてオーパイもないホントにただのバイクだったしな。

 だけどそいつは、みんながライディングデュエルを楽しめるようにと、いろんなものを詰め込みまくった。

 オーパイやら簡単に転倒しないようにする装置やら、デュエルディスクと連動するシステムとか

 今のライディングデュエルがあるのはあいつのおかげさ。」

 

「へぇ~でも、そんな人の話、全然聞かないな。

 さぞかし有名人だろうに」

 

「・・・あぁ、作ったそいつはそれが広まる前に死んじまったからな・・・」

 

 ・・・やっぱり、そう、なるか・・・

 

「新しいモノを作ろうとしているんだ。金もかかる。

 いろいろとしているうちに資金がなくなってきてな。

 で、仲間の一人が伝手を使って、トップスの金持ちに援助を頼みに行ったんだ。

 だけど、仲間にはトップス嫌いの奴が何人もいてな。

 そいつは俺たちに黙って話を付けに行ったんだが、それがバレちまった。」

 

「喧嘩にでもなったのか?」

 

「あぁ、そいつがトップスとつながっているって大騒ぎになった。

 Dホイールを作ってたやつも、元は親がトップスから流れてきたやつだったから疑われた。

 それで血の上った奴が、援助を頼みに行った奴をぶちのめしてやるって出て行っちまった。」

 

「そいつはトップスにどんだけ恨みを持っていたんだよ・・・」

 

「いや、恨みとかじゃなくて俺たち(・・・)でやりたかったのさ。

 トップスの力を借りずに“ライディングデュエルを始めたコモンズ達だけ”でな。

 援助を頼みに行った奴は、どうやってもマシンを完成させたかったから、資金援助を頼んだ。」

 

「夢を追う奴と現実を考えて行動する奴の認識の違いってことか・・・」

 

「あぁ・・・」


 その日はひっどい雨だった。

 おまけにトップスの富豪の家に突撃かまそうとしているもんだから、どこの誰だか知らねぇがセキュリティまで追ってくる始末

 

――ウーウーウーウー!!

 

「おい!シンジ!!

 セキュリティまで出てきちまったぞ!?こんなことやめろって!!」

 

『うるせぇ!!俺たちの夢を汚したボルガーの野郎は許せねぇ!!』

 

「だからって、今やることじゃねぇだろうが!!」

 

『今止めねぇとトップスの豚どもに全部取られちまうだろうが!!マシンも!俺たちの夢も!!』

 

 血の上った俺たちの仲間『シンジ・ウェーバー』

 仲間の中で一番トップスにいい顔してない奴だったが、その日は酷かった。

 トップスに俺たちが作ってきたものを全部取られちまうと焦燥してやがった。

 

 当時はまだデュエルチェイサーズなんてもんは無くて、追ってくるのもパトカーだけでセキリュティもデュエルを使ってシンジを止めるっていうこともできなかった。

 

 トップスピードで突き進むシンジと追う俺たちじゃ、距離が縮まるどころか開くばかり

 だが、何も策のない俺たちと違ってセキュリティには組織と人という武器があった。

 

『なっ!?あれは!?』

 

「検問!?」

 

 セキュリティの奴らはシンジがどこに向かっているのかということを予測して、丁度そこに検問を敷いていた。

 護送車を何台かおいて完全に封鎖されていて、普通の奴なら止まるしかない状態

 だが、シンジは仲間の中で一番マシンテクに優れていて、その普通に当てはまらないやつだった。

 

『そのくらいで俺が止められるかよおぉぉぉ!!トップスの犬がアアァァァァァァ!!』

 

 奴は突っ込んだ。

 いつものあいつなら、ホイールの回転を利用してバリケードを飛び越えて、セキュリティどもを尻目に見ていただろうが・・・

 

――キキキッ!!

 

『なっ!?うわっ!!?』

 

 通信越しに聞こえたのは困惑の声

 視界不良になるほどの雨、郊外の道路だから舗装が荒れていたこと、そして頭に血が上っていたことによる判断ミス

 シンジの奴は完全にバランスを崩した。

 

――うわあああぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

「シンジイイイィィィイイィィ!!」

 

 俺が叫んだところで遅かった。

 最高速でバランスが崩れたことで制御不能に陥ったシンジのバイクは、そのままバリケードに突っ込んでいった。

 シンジはもう助からない、そう思った時

 

「――――――――!!」

 

――ビュウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!

 

 一陣の風が起こった。

 

「えっ・・・」

 

 訳が分からなかった。

 いつの間にかあいつはシンジのそばに接近していて、シンジをバイクから投げ飛ばしていた。

 だけど

 

――ガシャアアアアァァァァァァァァァン!!ガンッ!!ガンッ!!

 

 乗り手のいなくなったシンジのバイクはあいつを巻き込んだ。

 あいつは乗っていたマシンから投げ出されて、バリケードに叩きつけられた

 シンジの乗っていたバイクと一緒に・・・

 

――ドッッカアアカァァァァァァァァァン!!

 

――キキキッ!ドゴォ!!バッシャアアアァァァァァァァァン!!

 

 はじめは何が起こったのかわからないほど目の前が真っ白になって、現実感がなかった。

 そいつはトップスからコモンズになったいわゆる『落ちこぼれ』で、本来ならコモンズにも居場所がないような出自だった。

 だがあいつはコモンズだとかトップスだとか関係なく仲間を作っていった。

 無表情でクールそうな奴なのに、熱い心を持っていて、不思議と俺とも気が合った。

 

 あいつが始めたライディングデュエル用のマシン“Dホイール”の開発もあと一歩、エンジン部分さえできれば完成するのに

 

――ゴオオオオォォォォォォォォォォ!!

 

 激しい雨にもかかわらず、その炎は激しく燃えている。あいつと一緒に

 

「「!!?――エエェェェェェェェェェェェェ!!」」


「突っ込んでくるって分かっていたセキュリティ側の死傷者はゼロ

 投げ出されて全身を骨折したシンジはその場で取っ捕まって、開発者がいなくなって資金援助の話はオジャン。」

 

「じゃあ、いまDホイールが広まっているのは?」

 

「あぁ、ボルガーの野郎が諦めきれなくってな・・・トップスに売り込んだのさ。

 あいつだけじゃなくて、あの時の仲間はみんなチリヂリになっちまったがな・・・」

 

 なるほど、じゃあこのDホイールはプロトタイプってところか、そういえば日影が設計図から見てエンジン系のリミッターが外れているとか言ってたっけ?

 スピードを一定まで上げるとオーバーロードしたモーメントのエネルギーが制御できなくなって暴走状態になるからスピードの出し過ぎは危険だって

 

「なぁ、それ、どこで見つけたんだ?」

 

「森の中の不法投棄場

 この下に川があるから、今の話とすり合わせると増水した川に乗って運ばれたんだろうな。」

 

「なるほど、せめてマシンだけでも

 って、みんなでこの下探したのに見つからないわけだ。」

 

 まぁ、下の川の水量は少ない。

 だけど、おそらく近くに貯水用のダムとかがあって鉄砲水がやってくるか、雨の時だけ水量が増えるのだろう。

 鉄の塊が流されているなんて、想像できなかったわけだ。

 

「なぁクロウ、このDホイール・・・」

 

「待った!」

 

 返そうかと言う前に、クロウに止められた。

 

「そいつはライディングデュエルをやるために生まれてきたんだ。

 そしてお前は今、フレンドシップカップっていうライディングデュエルの大舞台に出ている。

 降りるなんて言うなよ。」

 

「だけど・・・」

 

 当事者が見つかったのに、使い続けるのは気が引ける。

 それになにより、このDホイールの持ち主の後釜としては俺には荷が重い。

 

「あぁ~もう!だけども、杓子もないっての!!

 ジャックも言ってたろ!勝ち続けてまた俺と戦えって!だから、お前はそいつと一緒にジャックとまた戦ってくれ!

 あいつはジャックを一番のライバルにしてたからな・・・」

 

「クロウ・・・」

 

「さぁ!そうと決まったら、そいつの未完成の部分を仕上げようぜ!

 俺の家に予備パーツはあるからよ!

 おっと、言っておくが、お前と俺が戦うときは手加減なしだからな?」

 

「ふふ、この前ぼろ負けしたのはどこの誰だったかな?」

 

「ぬかせ!今度は俺が勝つんだよ!!」

 

 軽口をたたきながら俺たちはシティに戻る。

 知ってしまったからには、こいつには花を添えなければならないな。

 勝利という艶花を




ねぇ、本当にここに遊矢たちがいるの?

さぁ?

さぁ?って・・・

まぁまぁ、僕もなんとな~く、ここかなってきただけだしさ。
それにほら、なんだか面白そうなことしているみたいだよ?

フレンドシップカップ?って、えっ!?権ちゃん!?

あれ、知り合い?
じゃあ、僕の勘、っていうかスターヴ・ヴェノムの勘も的外れじゃなかったみたいだねぇ
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『頂のその先へ』
ライディングデュエル・アクセラレーショ~ンだっけ?


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頂のその先へ

柚子「遊矢!」

遊矢「おぉ、柚子、久しぶりだなぁ。」ジッ

柚子「な、なに?じっと見つめて・・・」

遊矢「やっぱりその髪色(マゼンタ)目立つな・・・」

柚子「えっ!?」



やっと涼しくなってきましたね。
本当は先週に投稿する気だったのですが、仕事が忙しくなったので遅れてしまいました。おのれシルバーウィーク!
まぁ、来週から忙しさは抜けるので、出来る限り週一更新を目指します。

なお、シンクロモンスターを封じる効果は本来カウンター効果なのですが、OCGでは永続効果になっているので、それに伴い、効果名を変えております。


「ローズトークンでマインフィールドに攻撃!」

 

「ぐっ!マインフィールドの効果で、墓地のフィールド魔法、ブラック・ガーデンを手札に加える。

 そして、古の森の効果でローズトークンは破壊される。」

 LP700→650

 

 聖なる森の神気が、薔薇の化け物を浄化する。

 

「どうした遊矢!お前が作り上げたデッキはそんなものか!!」

 

「ふ、ははは・・・どうだろうなぁ?」

 

 5年ほど前だったか?

 遊矢は新しいデッキを思いついたからと、手合わせを頼んできた。

 その時の俺は、自分の実力に伸び悩みを感じていた。

 

「さて、ターンエンドか?権現坂?」

 

「あぁ、俺はターンエンドだ。」

 

 そして遊矢が作り上げたのは、俺の持つデッキとはまるで違うマジック、トラップを多用したデッキ。

 あぁ、そういえばこの時の一戦は遊矢がEM(エンタメイト)を全く使用しないデッキで初めてデュエルしたと言っていたな。

 

「俺のターン、ドロー

 俺はフィールド魔法、ブラック・ガーデンを発動」

 

 神聖な森が無数の蔦で覆われ、赤黒いバラの花が咲き誇る。

 俺の超重武者は無理やりに攻撃表示に変えられれるなどをして調子を崩され、遊矢は地力の低いモンスターしか出さなかったため、互いに大きなダメージが入らないまま何ターンか経過した。

 

「なぁ権現坂?こんな言葉を知っているか?

 デュエルはモンスター『だけ』では勝てない。トラップ『だけ』でも魔法『だけ』でも勝てはしない。」

 

 その言葉は、俺のデッキに刺さる言葉だった。

 モンスターだけで構築されたフルモンスターの超重武者デッキ、俺の不動のデッキ

 だが、俺はそこに限界を感じ始めていた。

 

「バランスの良いデッキは確かに勝利をつかみやすい。

 だが、この言葉の本質はそこじゃない。」

 

「何が言いたい。」

 

「この言葉はこう続くのさ。

 勝利を築き上げるために最も必要なことは、ここにある!ってな!!」

 

 遊矢は自身の胸を指さし、一枚の手札を切る。

 

「俺は巨大ネズミを召喚!」

 

巨大ネズミ「ヂュー!!」

     ATK1400→700

 

「ブラック・ガーデンの効果で攻撃力が半減し、相手フィールドにローズトークンが攻撃表示で特殊召喚される!」

 

 ローズトークン ATK800

 

 黒い庭に現れる骸骨を持った、その名の通り巨大なネズミ

 その身に蔦が絡まり、俺の場に魔力で育った巨大な薔薇の怪物が再び現れる。

 

「バトル!巨大ネズミで、ローズトークンに攻撃!」

 

「馬鹿な!?そんなことをしてもお前にダメージが!?」

 

 巨大ネズミはローズトークンの蔦に貫かれ破壊される。

 

「ぐぅ・・・だが、巨大ネズミの効果でデッキから攻撃力1500以下の地属性モンスターを特殊召喚する。」

 LP650→550

 

「攻撃力1500以下?

 そんなモンスターを出しても俺の不動のモンスターはおろか、ローズトークンすら破壊することは、っ!?」

 

 いや、この状況で最も力を発揮するモンスターがいる!?

 

 後で聞けば遊矢は親父殿から1枚のカードを託されていた。

 そしてそのカードを使い、俺の持つデッキとは全く違うデッキを作り上げていた。

 

「来い!超重武者ビッグベン―K!!」

 

ビッグベン―K「ベンケエエェェェェェェ!!」

       ATK1000→500→DEF3500

 

 フィールド魔法を使った妨害には長けているものの、勝ち筋がないように思えたデッキ。

 だが、ソレまでのことは決して無駄ではなかった。

 遊矢は待っていた。たった1枚の切り札を

 

「こいつは召喚、特殊召喚時に表示形式を変更することができる。

 そして、自分フィールド上の超重武者に守備表示のまま守備力を使って攻撃できるようにする効果をもつ。

 行け!ビッグベン―K!!」

 

 黒い庭の中に雄々しく立つ機械の武者

 それから放たれる一撃は、ソレまでが繋いだ勝利の一撃

 それはデュエリストとして最も大事なことを貫いたが故の勝利

 

ビッグベン―K「ベンケエェェェェェ!!」――ズドンッ!!

 

 デュエルに最も必要なもの、それは・・・


「おい、権現坂!起きてんのか?」

 

 瞼を開ければ、沢渡の顔が真正面にある。

 やれやれ、こいつの騒がしさはどこでもいっしょだな・・・

 

「むぅ~何だ、沢渡?」

 

「ハッ!相変わらず肝の据わった奴だぜ。

 プロも出ているこんなでけぇ大会で、平然としているなんてよ。」

 

 こいつは人のことが言えた義理だろうか?

 

「プロが出ていようと出てまいと、俺のやることは変わらん。

 それはお前も同じだろう?」

 

「まぁ、そうだけどよ。

 でも、アブねぇ奴らと戦いに来て、大会に出ることになるとはなぁ?」

 

 まぁ、それについては同感だ。

 この大会は街おこしのための大会、とはいえアカデミアがかかわっている疑いがある以上、見過ごしておけぬだろう。

 

『さぁさぁ!伝説的な熱いエキシビジョンを経て、本日よりフレンドシップカップ本選です!』

 

 外からMCの女性の声が興奮気味に聞こえてくる。

 対戦相手はランダムで決まると言っていたが・・・

 

『栄えある開幕戦に登場するのは・・・なんとなんと!!

 このシティの天空に輝く星!あなたの!あなたの!そして私の!みんなのキング!!ジャック・アトラァァアアァァァス!!』

 

――ドドンッ!!

 

――キイイイィィィィィィィィィ!!

 

「キングは一人!この俺だ!!」

 

 花火が上がり、車体そのものが車輪になった独特のバイク、いやDホイールに乗った金髪の男が昨夜と同じように、名乗りを上げる。

 そしてそれに呼応し、周りの観客たちも叫びをあげ、彼の名を高らかに叫ぶ。

 

――ウオオオォォォォォォォォォォォ!!ジャック!ジャック!ジャック!ジャック!ジャック!ジャック!

 

「あぁ~あ、完全にアウェーだぜ。

 チキショウ!俺様がオープニングを飾れば、沢渡コールにすべて変えてやったのによぉ!!」

 

 はぁ~何を言っているんだか・・・

 

「Ah!そうだね。

 僕も出れたら、もっとお客さんを盛り上げるオープニングにしてあげたのに~」

 

「権現坂殿、システムチェック終わったでござる。」

 

「車体点検も問題なし、怪しいものは仕掛けられてないでござる。」

 

「うむ、日影殿、月影殿、かたじけない。」

 

 この大会に出るにあたりDホイールは評議会が用意するとの打診があったが、何かしらの工作をされる恐れがあったので、デニスの稼ぎを使いDホイール等のライディングデュエルに必要なものを一式購入、整備員として風魔兄弟と赤馬零児を据えることで、マシントラブルを装った妨害を防止した。

 

「ヘルメットも問題ない。

 まぁ、我々がずっと持っていたのだから当然だが。」

 

 過剰とも思える妨害への警戒

 遊矢は何かを感じているのだ、この大会に

 

「ほれ、行ってこい。」

 

「うむ。」

 

 沢渡からヘルメットを受け取り、Dホイールに乗り込む

 どんな陰謀が動いているのかわからぬが、デュエルを汚す者の好きになどさせぬ!

 俺の不動のデュエルで阻んでくれよう!

 

「男、権現坂、参る!!」


『キングに挑む、勇敢なるデュエリストは権現坂 昇ぅ~!!』

 

――キイィィィィィィィィィン!

 

 甲高い音を出して、入場口から登場した渋めの色のDホイール

 告げられた名前に全く聞き覚えのない観客たちは、あれは誰だと困惑しているが、それとはまったく違う反応をしている一角があった。

 

「くふふ、権現坂の奴全く似合ってないなぁ~」

 

 帽子とマフラーで顔を隠した黒ずくめの少年 ロゼこと遊矢と

 

「ちょ、ちょっと、そんなこと言ったら可哀そう、プッ!」

 

 「いつものあのリーゼントはヘルメットのどこに収まったのかしら?」とか考え始めた時点で噴出した、クリーム色と茶色の制服のようなものを着た金髪の少女

 学校の出し物で使った[閃刀姫―レイ]の衣装で変装した柚子である。

 

「くふふ・・・ねぇ、ゆ、じゃなかった。ロゼ

 あなたはどっちを応援するつもりなの?」

 

「う~ん、ジャックとはこの大会で再戦の約束をしたし、でもだからって権現坂を応援しないっていうのもないから、どっちもかなぁ~」

 

「えぇ・・・それってありなの?」

 

「ありなんだよ。

 それに中々に勝ち予想がつかない組み合わせだし、むしろ黙って観戦している方が面白いかもな?」

(ロジェの計画はジャックを利用した街の心理的掌握。

 場合によっては、ジャックを勝たすために、妨害を行うかもしれないな・・・)

 

 遊矢は楽しみな反面、不安を感じながらジャックと権現坂のデュエルの開始を見つめる。

 

『では!さっそくいくわよぉ~!フィールド魔法!クロス・オーバー・アクセルゥ~!!』

 

 見える景色が紫がかり、アクションカードがばらまかれる。

 スタートカウントが始まる前に、ジャックは権現坂に向かって一言宣言する。

 

「キサマがどこのだれかは知らんが、この大会、俺はキングとしてではなく、ジャック・アトラスとして戦う!

 慈悲や加減など期待せん事だ。」

 

「望むところ。この男、権現坂、逃げも隠れもせん!」

 

――フッ

 

 2人はそれぞれの覚悟を宣言すると自然と口元を緩ませる。楽しくなりそうだと

 

『ライディングデュエル!アクセラレーション!!』

 

『『決闘(デュエル)!!』』

 

 スタートと共にジャックは一気に前へ躍り出る。

 対して権現坂は追随できる程度のスピードでファーストコーナーに入る。

 

「その程度のスピードでこの俺は抜けんぞ!俺のターン!!

 俺はチューナーモンスター、レッド・リゾネーターを通常召喚!!」

 

レッド・リゾネーター「ヘッ!」

          ATK600

 

「リゾネーターモンスターの召喚に成功したことで手札のレッド・ウルフは攻撃力を半分にして特殊召喚できる。

 さらにレッド・リゾネーターが召喚されたことで、手札のレベル4以下のモンスターを特殊召喚する!

 来い!レッド・ウルフ!チューナーモンスター、変容王 ヘル・ゲル!」

 

レッド・ウルフ「ワオオォォォン!」

       ATK1400→700

 

 ヘル・ゲル ATK100

 

 赤き調律の小悪魔に導かれ赤き人狼と上下に二つの口を持つゲル状の人型が呼び出される。

 

「変容王 ヘル・ゲルの効果発動!

 このモンスターが召喚、特殊召喚に成功した場合、このカード以外のフィールドの表側表示モンスター1体を対象にし、ヘル・ゲルのレベルをそのモンスターと同じにし、そのレベル×200ポイントのライフを回復する。

 俺はレッド・ウルフを対象にし、ヘル・ゲルのレベルを6に変更、さらに1200ポイントのライフを回復する。」

 LP4000→5200

 

 ヘル・ゲル LV1→6

 

「さらにヘル・ゲルの効果で手札からヘル・ゲルよりレベルの低い悪魔族モンスター1体を特殊召喚する!

 俺は絶対王 バック・ジャックを特殊召喚!!」

 

バック・ジャック「ハッ!!」

        DEF0

 

 現れたのはジャックをデフォルメしたようなモンスター

 あっという間にジャックのフィールドにモンスターが4体揃えられ、権現坂も感嘆の声を出す。

 

「おぉ!1ターンでこれほどのモンスターを揃えるとは・・・」

(そして、そのうちの2体はチューナー、なれば次の手は)

 

「刮目するがいい!ジャック・アトラスのデュエルを!!

 俺はレベル6のレッド・ウルフにレベル2のレッド・リゾネーターをチューニング!

 王者の咆哮!今、天地を揺るがす!唯一無二なる覇者の力をその身に刻むがいい!!シンクロ召喚!

 荒ぶる魂!レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト!!」

 

レッド・デーモンズS「グオオォォォォォ!!」

          ATK3000

 

「さらにレベル1の悪魔族、絶対王 バック・ジャックにレベル6となった悪魔族チューナー、変容王 ヘル・ゲルをチューニング!

 天頂に輝く死の星よ!地上に舞い降り生者を裁け!シンクロ召喚!

 降臨せよ!天刑王 ブラック・ハイランダー!!」

 

ブラック・ハイランダー「フン!ハッ!!」

           ATK2800

 

 星が輝き新たな輝きとなって降臨する。

 一つは王の魂である紅き悪魔竜、もう一つは新たな白を抹殺する黒き執行者

 

「ブラック・ハイランダーがフィールド上に存在する限り、お互いに新たなシンクロ召喚を行うことはできない!死兆発令(ブラック・オーダー)!!」

 

 黒い執行者の大鎌が振るわれ、二人の走る道が黒く染まる。

 

「墓地へ送られたバック・ジャックの効果でデッキの上から3枚を確認し、その後好きな順番でデッキトップに戻す。

 俺はこれでターンエンドだ!」

 

『おぉ!!キング、最初の1ターン目で強力な2体のシンクロモンスターの召喚に成功!!

 さらにシンクロを封じる凶悪な戦術をくりだしたぁ!!

 今日のジャックは一味違う!!

 対する権現坂選手、このピンチをどう乗り越えるのでしょうかぁ!!』

 

(高攻撃力のシンクロモンスター2体にロック戦術、1ターン目でこれほどの場を構築するとは・・・

 さすがキングと呼ばれる男!だが、この男、権現坂、その程度では揺るがぬぞ!)

「見せてやろう!俺の不動のデュエルを!俺のターン、ドロー!!

 自分の墓地にマジック、トラップカードがないとき、手札の超重武者ビッグワラ―Gは特殊召喚できる。

 来い!超重武者ビッグワラ―G!!」

 

 ビッグワラ―G DEF1800

 

「ビッグワラ―Gは機械族モンスターをアドバンス召喚する場合、2体分のリリースとして扱うことができる。

 俺はビッグワラ―Gをリリースし、アドバンス召喚!!

 いざ出陣!!超重武者ビッグベン―K!!」

 

 手も足もない黄色のロボットの胴が2つに割れると巨大な草履のようになって消え、権現坂の魂たる橙の重武者が出陣する。

 

ビッグベン―K「ベンケェェェ!!」

       ATK1000→DEF3500

 

「超重武者ビッグベン―Kは召喚、特殊召喚したとき、表示形式を変更できる。」

 

「ふん!だが、守りを固めるだけでは俺には勝てんぞ?」

 

「いや、超重武者ビッグベン―Kがフィールド上に存在する限り、俺のフィールドの超重武者は守備力を攻撃力として扱い、守備表示のまま攻撃できる!」

 

『えぇ~!?何それ!!』

 

「さらに手札の超重武者装留ダブル・ホーンの効果を使い、このモンスターをビッグベン―Kに装備する!」

 

 2本の角の付いた巨大な兜が2つに割れて、ビッグベン―Kの肩に合体する。

 

「ダブル・ホーンを装備した超重武者は2回攻撃ができる!」

 

『えっ!?じゃあ、実質、攻撃力3500のモンスターが2回攻撃できるようになったってこと!?』

 

「なるほど、なかなかに楽しませてくれる・・・

 なら俺もそれに応えよう!俺は墓地のバック・ジャックの効果を発動!

 相手ターンにこのカードを墓地から除外することで、デッキトップを確認し、そのカードが通常トラップなら、セットできる。

 デッキトップは針虫の巣窟、通常トラップだ。よって俺のフィールドにセットされる!」

 

(針虫の巣窟、あのカードは自分のデッキトップのカードを5枚墓地に送るカードだったな。

 本命は墓地肥やしと墓地へ送られたカードによる迎撃、だが!!)

「ここは臆さず攻める!!バトルフェイズ!」

 

「バック・ジャックの効果で伏せられたカードはセットしたターンに使用できる!

 針虫の巣窟を発動させ、俺のデッキの上から5枚のカードを墓地へ送る。

 そして、墓地の超電磁タートルの効果を発動!このカードを除外することでデュエル中に一度だけ、相手のバトルフェイズを終了させる!」

 

 ビッグベン―Kがスラスターを吹かして、ジャックのモンスターに突撃するが突如として現れた機械の亀が発した磁力によって弾き飛ばされる。

 

(超電磁タートルか、ここで使わせたのはいいが

 1200ポイントのダメージを回避するためだけに使ったとは思えん・・・)

「俺はこれでターンエンドだ。む?」

 

 スタジアムと違い、シティの全域をライディングコースとして使用するフレンドシップカップ本戦

 広大な分アクションカードもかなりばらけて置かれており、1デュエル内でアクションカードを入手する機会は減っている。

 初めてのアクションカードがコースの真ん中で浮いていた。

 もちろん先行しているジャックはそれを遠慮なく入手する。

 

「アクションカードは頂くぞ!

 お前のエンドフェイズに墓地へ送られた彼岸の悪鬼 スカラマリオンの効果が発動し、デッキからレベル3闇属性の悪魔族モンスター、奇術王 ムーン・スターを手札に加える。

 

 そして俺のターンだ、ドロー!

 俺はブラック・ハイランダーの効果を発動!

 1ターンに1度、装備カードを装備した相手モンスター1体を選択し、そのモンスターに装備された装備カードをすべて破壊し、破壊した数×400ポイントのダメージを相手に与える!死回帰線(デス・トロピクス)!」

 

ブラック・ハイランダーが鎌を振り、その斬撃がビックベン―Kの鎧となっているダブル・ホーンを切り裂き破壊する。

 

「ぬぅ・・・」

 LP4000→3600

 

「さらにレッド・デーモンズの効果発動!

 1ターンに1度、自身以外の自身の攻撃力以下の攻撃力を持つ特殊召喚された効果モンスターをすべて破壊し、1体につき500ポイントのダメージを相手に与える!

 くらえ!クリムゾン・ヘル・バーン!!」

 

 黒い道を紅き炎が蹂躙する。

 レッド・デーモンズの放つ炎はブラック・ハイランダーの身を焼き、その魂を炎熱へと変え、権現坂に直接襲い掛かる。

 

「ぐおっ!?ぐうぅぅ・・・だが、ビッグベン―Kはアドバンス召喚されたモンスター

 レッド・デーモンズの効果では破壊されん!」

 LP3600→3100

 

「ふん!だがこれで、新たなシンクロ召喚が可能になる!

 墓地の風来王 ワイルド・ワインドを除外し効果発動!

 デッキから攻撃力1500以下の悪魔族チューナーを手札に加える。

 俺は攻撃力100のチェーン・リゾネーターを手札に加え、召喚!」

 

チェーン・リゾネーター「ケケッ!」

           ATK100

 

「フィールド上にシンクロモンスターが存在するときに、チェーンリゾネーターを召喚したとき、デッキからチェーン・リゾネーター以外のリゾネーターモンスター1体を特殊召喚できる!」

 

「その効果に対し俺は手札の増殖するGの効果を発動!

 このカードを墓地へ送ることで、このターン中、相手が特殊召喚を行うたびに俺はデッキからカードを1枚ドローする!」

 

「むっ、だが、発動してしまった効果は止められぬ。

 デッキより現れよ!レベル1チューナー、シンクローン・リゾネーターを特殊召喚!」

 

シンクローン・リゾネーター「ヘッ!」

             DEF100

 

 鎖を背負った小悪魔が仲間を呼び出すが、権現坂を追随する黒い影たちが、権現坂のデッキからカードを引き権現坂に渡す。

 

『うっ!?ゲェェェェ!?ぞ、増殖するGぃ!?

 リアルソリッドビジョンでアレ使うのォォ!?

 ですがこれで、ジャックが特殊召喚するたびに権現坂選手は1枚ドローします。

 うぅ、強力な効果なのはわかるけど、ビジュアル的にきついよぉ~』

 

 司会のメリッサ含め、一部で阿鼻叫喚が起こっているが、当人たちは平然とデュエルを続行する。

 

(増殖するG、だが、ここで立ち止まるわけにはいかぬ!)

「俺はレベル8のレッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライトにレベル1のチェーン・リゾネーターとシンクローン・リゾネーターをダブルチューニング!

 王者と悪魔、今ここに交わる!赤き竜の魂に触れ、天地創造の雄叫びをあげよ!!シンクロ召喚!

 大いなる魂!レッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラント!!」

 

レッド・デーモンズT「オオオオォォォォォォォォォォォォ!!」

          ATK3500

 

 スカーライトを炎が包み、観衆たちの前に覇者の威風を見せつける竜の暴君

 その登場に増殖するGで半狂状態になった観衆も持ち直す。

 

「来たか、特殊召喚により俺は1枚ドローする。」

 

『きたあぁぁぁぁぁ!!ジャックの切り札、レッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラント!!』

 

「レッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラントは1ターンに1度、自身以外のフィールド上のすべてのカードを破壊できる!

 くらえ!!アブソリュート・パワー・インフェルノ!!」

 

『さすがはジャック!アドバンス召喚されたモンスターでも、これで、って!?えっ!!』

 

 だが、レッド・デーモンズは無数の不気味な炎を上げるお札に囲まれていた。

 

レッド・デーモンズT「グルル!?」

 

「なんだこれは!?」

 

「俺は手札から幽鬼うさぎの効果を発動させてもらった!

 このカードは1ターンに1度、フィールドのモンスター効果が発動したとき、または既にフィールドで発動しているマジック、トラップカードの効果が発動したとき、自分の手札、フィールドのこのカードを墓地へ送り、フィールドのそのカードを破壊する!

 

 さらに手札の超重武者装留ファイヤー・アーマーの効果を発動し、このカードを捨てることでこのターン、ビッグベン―Kの守備力を800ポイントダウンさせ、戦闘と効果で破壊されなくする!」

 

 ビッグベン―K DEF3500→2700

 

 権現坂の隣にはぼさぼさの白髪を2つ結びにした少女が浮かんでおり、レッド・デーモンズを葬らんとお札を操作していた。

 

「レッド・デーモンズはやらせはせん!!

 手札のレッド・ガードナーの効果を発動!自分フィールド上にレッド・デーモンモンスターが存在し、相手のマジック、トラップ、モンスター効果が発動したとき、このカードを手札から墓地へ送ることで、このターン、俺のモンスターは相手の効果では破壊されない!!」

 

 レッド・デーモンズに襲い掛かる青白い炎を放つお札を、紅き盾が放つ炎が駆逐する。

 そしてレッド・デーモンズが放った炎がビッグベン―Kに襲い掛かるが、ビッグベン―Kがその身から立ち上らせた炎のような闘気で相殺される。

 

 バトルという枠を超えた効果の応酬による激闘への褒美とばかりに、2人の前に新たなアクションカードが出現する。

 

『おぉぉと!?ここで新たなアクションカード!

 ジャックはすでにアクションカードを手にしているので、権現坂選手、アクションカード入手のチャンス到来です!』

 

「バトルフェイズ!いけ!レッド・デーモンズよ!ビッグベン―Kに攻撃!」

 

『えっ?このターンもうビッグベン―Kは戦闘でも破壊されないのに。』

 

「手札のアクションマジック、回避を発動

 そしてこの瞬間、レッド・デーモンズの効果を発動!

 バトルフェイズ中のマジック、トラップの効果を無効にし、自身の攻撃力を500ポイントアップさせる!」

 

 レッド・デーモンズT ATK3500→4000

 

 アクションマジックのソリッドビジョンがレッド・デーモンズによって砕かれる。

 これにより、ジャックの手札にはアクションカードはなくなり、観客たちは2人がアクションカードを入手するために派手なライディングバトルを繰り広げるものだと思っていたが

 

「ぬ?」

 

 ジャックすら首をかしげるほど、権現坂は動かなかった。

 ランダム性は高いとはいえ、防御カードの多いアクションカード

 使えなくても手札コストにできる分、手に入れていて損はないものだ。一般的には

 

 レッド・デーモンズはいまだに闘気を纏うビッグベン―Kを殴りつけるが、暴君の拳は不退の機械武者を倒すには至らない。

 モンスターたちがそうこうしているうちにアクションカードはジャックが手に入れた。

 

『あれあれ?権現坂選手、アクションカードを全スルー!?』

 

 観衆たちはせっかくのアクションカードの入手のチャンスを棒に振った権現坂の行動に驚きを隠せなかった。

 少しでもデュエルを齧ったことがある者ならば、どんなカードでも手札が増えるのはとんでもないアドバンテージだとわかるからだ。

 ゆえに、観客の一部からやる気があるのかとヤジが上がる。


「貴様、何の真似だ?」

 

「俺はこのデッキを信じている。

 デュエルとは魂と魂のぶつかり合い。

 そして、デッキとは自分の魂を託し共に戦うモノ

 ならば俺は自分を信じ、作り上げたデッキを信じ戦う!これぞこの男、権現坂 昇の不動のデュエルよ!」

 

 そう、これが遊矢があの時教えてくれたこと。

 デッキに正解などない。自分の好きなカードで、好きなように組み上げ、戦い、研鑽したものこそが、最強のデッキだということ

 魂を託したデッキを信じることは自分を信じることにつながる、それこそが不動心!

 誰に何と言われようが、これが俺のデュエルだ!

 

「ふん!そうか、ならばその信念とやら、突き通して見せろ!ターンエンドだ。」

 

「俺のターン!ドロオォォ!!」

 

 全体破壊を連発されたら、さすがにもたん。

 こちらが相打ちできぬようにするとは、なかなかのしたたかさだ。

 

「俺は手札の星見獣ガリスの効果を発動。

 このカードはデッキの一番上のカードを墓地へ送り、それがモンスターだった時、このカードを特殊召喚し、相手に墓地へ送ったモンスターのレベル×200ポイントのダメージを与える。

 デッキの一番上のカードは超重武者コブ―C、モンスターカードだ!出でよ、星見獣ガリス!」

 

ガリス「グオオォォォン!」

   DEF800

 

「コブーCのレベルは2、よって貴殿に400ポイントのダメージをあたえる!」

 

「・・・ふん、生ぬるい!この程度のダメージへでもないわ!」

 LP5200→4800

 

 鎧を着た鳥にも似た黒い獣、星見獣ガリスがフィールドに現れ、背の羽から2つの光弾を解き放つがジャック・アトラスは平然としている。

 

「俺の墓地にマジック、トラップカードが存在しないとき、このカードは手札から特殊召喚できる。

 来い!チューナーモンスター、超重武者ホラガ―E!」

 

ホラガ―E「イィー!」

     DEF600

 

「チューナーだと?」

 

「これもまた俺の研鑽の賜物だ!

 レベル8の超重武者ビッグベン―Kにレベル2の機械族チューナー、超重武者ホラガ―Eをチューニング!

 荒ぶる神よ、千の刃の咆哮と共に疾風吹き荒れる戦場へ現れよ!シンクロ召喚!

 現れよ!レベル10!超重荒神スサノ―O!!」

 

スサノ―O「オオオォォォォォォォォォ!!フンッ!!」

     DEF3800

 

 ほら貝の音色が響き渡り、ビックベン―Kが緑の装甲を持つ荒神へと変わる。

 スサノ―Oは雄たけびを上げ、ドシッと空中に座り込む

 

「墓地の超重武者コブ―Cの効果発動!

 自分の墓地にマジック、トラップがない場合、自分フィールド上の超重武者シンクロモンスターのレベルを1つ下げ、墓地からこのカードを特殊召喚する。

 俺は超重武者としても扱うスサノ―Oのレベルを1つ下げ、現れよ!チューナーモンスター、超重武者コブ―C!」

 

 スサノ―O LV10→9

 

コブ―C「フンッ!」

    DEF900

 

 スサノ―Oの星を1つ砕き、巨大な拳を構える鋼の武者が現れる。

 

「レベル3の星見獣ガリスにレベル2のコブ―Cをチューニング!

 揺るがぬ心、その曇りなき刃に籠めよ!シンクロ召喚!

 出でよ、レベル5!超重剣聖ムサ―C!!」

 

ムサ―C「フンッ!」

    DEF2300

 

 二つの刀を持った超重武者、ムサ―C

 その姿はかつて剣の道を極め、最後には刀を抜かずにその威圧だけで敵を倒したとされる宮本武蔵を彷彿とさせる。

 

「ムサ―Cがシンクロ召喚に成功したとき、墓地の機械族モンスターを1体手札に加えることができる。

 俺が手札に加えるのは超重武者ホラガ―E

 さらにここで超重荒神スサノ―Oの効果を発動!

 1ターンに1度、俺の墓地にマジック、トラップがない場合、相手の墓地のマジック、トラップカード1枚を俺のフィールドにセットできる。」

 

「なにぃ!?」

 

「貴殿の墓地からマジックカード、貪欲な壺をセットし発動

 俺の墓地から星見獣ガリス、幽鬼うさぎ、増殖するG、超重武者装留ファイヤー・アーマー、超重武者ビッグワラ―Gをデッキに戻し2枚ドロー

 スサノ―Oの効果でセットされたカードはフィールドから消滅した際、除外される。」

 

『なんとなんと!相手の墓地からマジック、トラップカードを奪ってしまう驚異の効果!!

 ジャックの墓地に強力なカードが送られると、権現坂選手はそのカードを使いたい放題になってしまいます!

 これは容易に墓地肥やしもできなくなりましたぁ!』

 

「そして俺の墓地にマジック、トラップがないため、手札の超重武者ホラガ―Eを特殊召喚だ!」

 

ホラガ―E「イィー!」

     DEF600

 

「マジック、トラップが墓地に存在しない場合・・・そうか、お前のデッキは・・・

 なんという無茶なデッキで、この大会に挑んでいるのだ。」

 

 再びフィールドに現れるホラガ―E

 さすがに何度もやったからか、ジャック・アトラスは俺のデッキがどういうものか気づいたようだ。

 

「これが俺の信じる、俺の(デッキ)よ!

 俺は手札から超重武者ダイ―8を通常召喚!」

 

 ダイ―8 ATK1200→DEF1800

 

「このモンスターが召喚、特殊召喚に成功したとき、このモンスターの表示形式を変更できる。

 さらにダイ―8の効果!守備表示の自身を攻撃表示に変更し、デッキから超重武者装留モンスターを手札に加える。

 俺は超重武者装留チュウサイを手札に加え、ダイ―8に装備する!」

 

 ダイ―8 DEF1800→ATK1200

 

 大八車に4つの腕が生えている機械、チュウサイを乗せる小型のロボット、ダイ―8

 あれを呼び出す準備はこれで最後

 

「超重武者装留チュウサイの効果発動、このカードを装備したモンスターをリリースしデッキから超重武者モンスターを1体特殊召喚する!

 再び現れろ!超重武者ビッグワラ―G!」

 

 ビッグワラ―G DEF1800

 

 本来なら舞網チャンピオンシップの決勝で遊矢への隠し玉として用意していたものだが、相手にとって不足なし!

 

「レベル5の超重武者ビッグワラ―Gと超重剣聖ムサ―Cにレベル2の超重武者ホラガ―Eをチューニング!

 不動の鬼神よ、籠めたる魂を燃やし、今、鉄の鬼となって戦場に咆哮せよ!シンクロ召喚!

 いざ出陣!現れろ!レベル12、超重蒸鬼テツドウ―O!!」

 

テツドウ―O――ウオオオォォォォォォォン!!

      DEF4800

 

 線路が敷かれその上を爆走する鬼の顔の付いた蒸気機関車

 その上にスサノ―Oが搭乗し座り込む

 

『守備力4800!?

 しかも超重って、もしかしてそのモンスターも守備表示のまま攻撃できる!?』

 

「その通りだ!行け!テツドウ―O!!

 レッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラントを攻撃!!」

 

「相手の攻撃宣言時、手札のレッド・ミラーの効果発動、このカードを墓地へ送り、レッド・ミラー以外の炎属性悪魔族モンスターを1体墓地から手札に加える。

 俺はレッド・ウルフを手札に戻す!」

 

テツドウ―O――ウオォォォォォォン!!

 

レッド・デーモンズ「グオオォォォォォ!!」――バンッ!!

 

「くっ!レッド・デーモンズ!」

 LP4800→4000

 

 テツドウ―Oの口から炎が吐かれ、紅き暴君を燃やし破壊する。通ったか!!

 

「続け!超重荒神スサノ―O!!ダイレクトアタックだ!!」

 

「させるか!!相手のダイレクトアタック宣言時

 手札のバトルフェーダーを特殊召喚し、バトルフェイズを終了させる!!」

 

――ゴーン、ゴーン、ゴーン

 

 バトルフェーダー DEF0

 

 フィールドに鐘の音が響き渡る。

 ふむ、保険を掛けられていたか、この攻撃が通ればテツドウ―Oの効果で俺の勝ちだった。

 それを阻止し、次のターンの布石を整えるとは、野獣のような勘だ。

 

「ならば、テツドウ―Oの効果発動!

 1ターンに1度、手札を2枚まで捨て、捨てた数だけ相手フィールド上のカードを対象にとり破壊する。

 俺は手札の無限起動スクレイパーを捨て、バトルフェーダーを破壊する。」

 

テツドウ―O――ボオオォォォォォォ!!

 

 テツドウ―Oが唸りを上げそのスピードを上げる。

 巨大な鬼面の口を開け、バトルフェーダーをかみ砕く

 

「墓地の無限起動スクレイパーの効果発動

 このカードを除外し、墓地の地属性機械族モンスターを5体デッキに戻すことで、俺は新たに2枚のカードをドローする。

 俺は墓地の超重剣聖ムサ―C、超重武者ダイ―8、超重武者装留チュウサイ、超重武者ビッグワラ―G、超重武者ダブル・ホーンの5体をデッキに戻し2枚ドローし、ターンエンドだ!」

 

 フィールドはがら空き、手札はすべて公開されたもの、エースモンスターはすべて墓地

 この状況、どう切り抜ける?キングと呼ばれる男よ!


 ギリギリだった。

 前のターンにバトルフェーダーを握っていなかったら、俺は奴に屈していた。

 レッド・デーモンズのパワーを真正面から打ち破るモンスター、俺のカードすら利用したタクティクス、そして、奴と共に戦うモンスターとの信頼

 

 あぁ、震えるぞ!魂が!!

 

「俺のターン!!」

 

 奴のモンスターは守備力が高い割に、攻撃力が低い

 ならばデーモン・カオス・キングで突破するのが最善手、だがそれがうまくいくのか?

 奴のデッキはフルモンスター、ならばあのカードが手札に入っている可能性は十分にある。

 

「俺は・・・マジックカード、闇の誘惑を発動

 デッキからカードを2枚ドローし、手札の闇属性モンスター、奇術王 ムーン・スターを除外する。」

 

 来たか!現状を変えるカード!

 ふっ、一か八かの賭けなど、いつぶりだろうな。

 

「俺はさらにマジックカード、手札抹殺を発動!

 手札のレッド・リゾネーター、レッド・ウルフ、スカーレッド・コクーン、そしてアクションカード、クラッシュ・アクションを墓地へ送り4枚のカードをドローする!」

 

「俺も手札の超重武者装留マカルガエシ、超重武者装留バスター・ガントレット、エフェクト・ヴェーラーを捨て3枚のカードをドローする。」

 

 やはりあったか!エフェクト・ヴェーラー!

 あのままデーモン・カオス・キングをシンクロ召喚していてもあのカードで効果を無効にされ、ただの案山子のようにされていたところであった!

 だが、これで阻むものはない!

 

「俺は手札からレッド・スプリンターを召喚!」

 

 レッド・スプリンター ATK1700

 

「レッド・スプリンターの召喚、特殊召喚に成功したとき、墓地からレベル3以下の悪魔族チューナーモンスターを「俺は手札のエフェクト・ヴェーラーの効果を発動する!」なにいっ!?」

 

 2枚目だと!?

 

「相手のメインフェイズにこのカードを墓地へ送ることで、対象モンスターの効果をターン終了時まで無効化する!

 俺のデッキをなめてくれるな!」

 

 あの年とは思えない裂帛の気合が俺の体を震わせる。

 自らのデッキとの信頼、そして絆、それがあのカードを呼び寄せたというのか・・・ならば!!

 

「ふんっ!俺の魂もレッド・デーモンズと共にある!

 手札を3枚伏せ、エンドフェイズ、墓地へ送られたスカーレッド・コクーンの効果が発動し墓地からこのモンスターを呼び覚ます!

 舞い戻れ!レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト!!」

 

レッド・デーモンズS「グオオォォォォォ!!」

          ATK3000

 

 その絆は俺とレッド・デーモンズも負けてはいない!!


『そのエンドフェイズに俺はスサノ―Oの効果を発動し、貴殿の墓地の針虫の巣窟を俺のフィールドにセットする!』

 

 また、強いカードを取れたな、権現坂

 それにしても、ロジェはなかなか動きを見せないな。

 アイツの目的を考えれば、ジャックがここで負けることは許さないはず・・・

 

「ねぇねぇ、これってさ、勝っちゃうんじゃない?権現坂!」

 

 柚子が嬉しそうに勝利目前の権現坂の様子を聞いてくる。

 たしかにジャックの手札は0、ドローのために捨てたアクションマジックは[クラッシュ・アクション]相手の手札のアクションカードを破壊して、そのターン中、アクションカードを使えなくするカードだ。よって、スサノ―Oがいる以上、アクションカードでの防御も捨てたとみていいだろう。

 

「だけど、そううまくいくかねぇ~?」

 

「えぇ~だって、たしかにライフは満タンだけど、権現坂なら一気に消し飛ばせるでしょ?」

 

 たしかに、ジャックのモンスターは攻撃表示で置かれている。

 権現坂が新たなモンスターを出せば、ジャックのライフは消し飛ぶだろう。

 

「まぁ、手負いの獣ほど怖いものはないって言うだろ?」


「俺のターン!ドロー!

 俺はセットしたトラップカード、針虫の巣窟を発動し、デッキの上から5枚のカードを墓地へ送る。」

 

「ならばこちらもリバースカード発動!速攻魔法、エネミーコントローラー!」

 

 権現坂にターンが移ったスタンバイフェイズ、ジャックの発動させたカードからゲームのコントローラーが飛び出す。

 

「このカードはコマンド入力により、異なる効果を発揮する!左!右!AB!

 このコマンドにより、俺のフィールドのモンスター、レッド・スプリンターをリリースし、お前のフィールド上のモンスター、超重蒸鬼テツドウ―Oのコントロールをエンドフェイズまで得る!」

 

 レッド・スプリンターが消え、コントローラーの接続線がテツドウ―Oに突き刺さる。 

 テツドウ―Oは上に座っていたスサノ―Oを振り落とし、スピードをあげてジャックの横につけるように走り出す。

 

「ぬぅ!?テツドウ―Oが!

 だがエンドフェイズまでのその場しのぎにしかならんぞ!」

 

「フンッ!そう思うのなら、貴様はどうする!」

 

(相手の伏せカード2枚は確実にトラップ

 一番あり得るのはミラーフォースだが、守備表示で攻撃する超重武者には効かん

 別の手があるとみて然るべき。)

「ならば、まずは伏せカードから除去させてもらおう!

 手札の超重武者装留イワトオシを通常召喚!」

 

 イワトオシ ATK1200

 

 フィールドに現れる青い弩、権現坂はデッキに眠る赤い鬼を呼び出すために墓地のコブ―Cの効果を発動しようとするが

 

「トラップ発動!ナイトメア・デーモンズ!

 自分フィールド上のモンスター1体をリリースし、相手フィールド上に悪魔族、闇属性、レベル6、攻守2000のナイトメア・デーモン・トークン3体を攻撃表示で特殊召喚する!」

 

 ラジコンのようになったテツドウ―Oが消え、権現坂のフィールドに黒い影のような悪魔たちがわちゃわちゃと踊りながら、フィールドを埋め尽くす。

 

「ぐっ!?こいつらは破壊されるとコントローラーに800ポイントのダメージを与えるトークン!?」

(このターンでレッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライトを破壊しなければ、俺は4体のモンスターを破壊され2000のダメージ、さらにトークン3体の破壊によって2400のダメージを受け、敗北する!?)

 

 権現坂は焦った。

 デュエルに逆転劇はよくあることだが、目の前の男の敷いた策は完全に自分が動かなければ好転できない状況に追いやられていたからだ。

 それと同時に感心もした、どんなことがあろうともこの逆転のコンボの中心にはジャック自身が魂と呼ぶカード、レッド・デーモンズの存在があることに

 

「・・・ふっ、なるほど、遊矢好みの決闘者だな。

 ならば!ここが男の意地の見せ所!!

 イワトオシの効果を発動、このカードを自分フィールド上の超重武者モンスター1体に装備することができる!

 俺は超重武者として扱う超重荒神スサノ―Oにイワトオシを装備する。

 さらにスサノ―Oの効果で貴殿の墓地のアクションマジック、クラッシュアクションをセットしバトル!」

 

 イワトオシはフィールドから墓地へ送られたとき、デッキから超重武者をサーチする効果がある。

 そしてクラッシュ・アクションにより、ジャックはアクションカードを使っての防御を行えない。

 アフターケアと対策を施した上で、権現坂が動く

 

「正面突破だ!!行け!スサノ―O!クサナギソード・斬!!」

 

 スサノ―Oが薙刀を振りあげるが、そのさまを見てジャックは不敵に笑う。

 

「そうだ!そうするしかあるまい!!トラップ発動!波動障壁!!

 自分フィールド上のシンクロモンスター1体をリリースし、相手フィールド上に攻撃表示で存在するモンスターをすべて守備表示に変え、その後、攻撃宣言をしたモンスターの守備力分のダメージを相手に与える!!」

 

「なっ!?攻撃表示のトークンを俺のフィールドに置いた真意は、そのカードの発動条件を満たすためか!?」

 

「その通りだ!行くぞ!レッド・デーモンズ!!」

 

レッド・デーモンズ「グオオオォォォォォォォォォ!!」

 

 レッド・デーモンズはその身を炎と化し、その熱に煽られたナイトメア・デーモントークンはすべて怯え、うずくまる。

 権現坂の手札にこのダメージを防ぐすべはない。

 だが、墓地に眠るカードにはこれを防ぐ術はある。あるのだが・・・

 

(どちらにしても俺の負けか・・・)

 

 そう、そのカードを発動させた所で権現坂の敗北は決定していた。

 足掻いたところで意味はない。

 

(確かに意味のない無駄な足掻きだ。

 だが、その無駄な足掻きを遊矢はした、自身の敗北すら少しでも華々しくするために・・・)

 

 それは最後にできたちょっとしたお遊び

 デュエルは楽しくやるという遊矢の意思の表れ

 

(ならば、俺も俺の意思をジャック・アトラス殿に示そう!!)

「バトルフェイズ中に相手がマジック、トラップ、モンスター効果を発動したとき、墓地の超重武者装留ビックバンを除外し、その発動を無効にして破壊し、その後、フィールド上のモンスターをすべて破壊し、お互いのプレイヤーに1000ポイントのダメージを与える!!」

 

「何っ!?キサマのフィールドには破壊されれば、800ポイントのダメージを与えるナイトメア・デーモントークンがいるのだぞ!?」

 

「どうせ負けならば、俺は貴殿の身に一太刀でも多くの傷を刻むまでだ!!」

 

 迫る炎の悪魔竜に対し、スサノ―Oが跳ぶ

 2体の拳は途中で交差し、過ぎ去ると2人のフィールドに同時に着弾し、お互いに大爆発を起こした。

 

「おのれ!うわあああぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 LP4000→3000

 

「ぬわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 LP3100→2100→1300→500→0


 閃光に包まれる会場の画面、やがて画面が切り替わり爆発が収まるとDホイールのエンジン音が鳴り響き、煙の中を突っ切り白いDホイールが飛び出してくる。

 

『あはっ!見てください!会場の皆様!ジャックです!ジャック・アトラスです!

 フレンドシップカップ第一試合を制したのは、みんなのキング!ジャック・アトラース!!』

 

――ウオオオォォォォォォ!!

 

 ジャックの勝利に観客たちは沸く。

 遅れて、権現坂のDホイールが強制停止の影響でのろのろと出てくるが、それに乗っている敗者はしてやったりの顔で、勝者であるはずのジャックはぶすっとした顔をしている。

 

「あの人、なんか勝ったのに悔しそう。」

 

「まぁ、自分の魂みたいなモンスターの捨て身の一撃が躱された上に、ダメージ貰って、相手はほぼ自爆だからな。」

 

「あぁ~なるほどね。」

 

 しかし、ジャック[波動障壁]なんてなかなかに渋いカードを

 相手モンスターを減らさずに自分のターンでスカーライトの効果で相手にダメージを与えるコンボのために入れているのだろうけど、権現坂にとって完全に地雷だったな。

 

 ロジェに関しては完全に動きなし

 映像を見ている限り妨害などは無し、風魔兄弟がずっと権現坂たちを見張っていたし、普通に健全な試合だった。

 割とジャックが追い詰められていたにもかかわらずだ。う~ん・・・

 

「ねぇ、どうしたの難しい顔をして?」

 

「いや、無事に試合が終わったなぁ~って。」

 

「うんそうね!

 権現坂、転んじゃわないかとか思ったけど、全然そんなことなかったわね!」

 

 能天気だな、柚子・・・

 自分が狙われているのだから、その常にピコンピコン光っているブレスレットみたいにもっと警戒心をもってもらいたい。

 

「はぁ~さて、権現坂が戻って来たら労って、ん?」

 

――ビカッ!!

 

 唐突にブレスレットが放った目の前を覆いつくすほどのピンク色の強い光、これって!?

 

「おい!!ねぇちゃん!フラッシュ焚くならもっと弱くしてくれよな!!」

 

「は?えっ!?あっ!!ご、ごめんなさい!?」

 

 俺はマフラーの下に隠した通信機を使い、ユーゴのお目付け役をしている零羅とセレナとユートと一緒にいるはずの黒咲に連絡を取る。

 

「黒咲、零羅、ユートとユーゴはそこにちゃんといるか!?」

 

『ユーゴ、ちゃんといる。』

 

『どうした、さっきの光はなんだ!?』

 

「黒咲、ユートとセレナはちゃんとそこにいるな?」

 

『あぁ・・・まさか!?』

 

「あぁ、そのまさかだ。」

 

 2人ともちゃんとそこにいるなら間違いない。

 

 

 

 ユーリが来た。




あぁ~あ、ゴンちゃん負けちゃった。
あの人かなり強いね。ユーリって、えっ!?ちょ、ちょっと、ユーリどこ行ったのさ!?
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『動き出す悪意』
悪ふざけはやめてよね!あれ本当にいない?どこに行ったのさ!ユーリ!?


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動き出す悪意

やれることが少ないデッキって予想以上にデュエルが作りにくいですね。
他のカードを入れる余地も少ないので本筋と兼ね合わせるのも大変

※強欲で金満な壺を発動させるタイミングを見つけましたので復活させました。


 あ~また、とんでもないやつが来たなぁ!

 っていうか来るの早すぎだろ!?なんだ!ズァークセンサーの精度が上がっているのか!?

 

『ユーリだと!?』

 

「あぁ、柚子のブレスレットが発動したから、本人はどこかに飛んでいったのだろうけど、取り巻きがまだ残っているかも・・・」

 

『アカデミアの奴ら・・・どこだ!!この俺が全部倒して!!』

 

 あぁ、やっぱり黒咲にこの話するとそうなるよな・・・

 どうせ、一緒にいるセレナも「何!敵か!!よし、わたしがぜんぶたおしてやる!」とか、言ってユートが全力で止めているんだろうけど・・・

 

「あ~あ~でも、ブレスレットの有効範囲にまで近づいて、騒ぎが起こっていないのだから、侵攻する気じゃないのか、そもそもユーリだけで来たのかもしれないし・・・」

 

『だったら、ユーリを今すぐに追って!!』

 

 こいつは馬鹿なのか?

 

「この世界のどっかに、いや別の世界に飛ばされたかもしれないのに、どこに追いかけるつもりなんだ?」

 

『ぐぅ・・・それは・・・』

 

 ふ~何とか黒咲は落ち着いたか・・・

 さて、フラッシュ騒ぎで平謝りしている柚子のフォローをそろそろしないと・・・

 

「いいか、ここには一般人が多すぎるし、戦闘になれば、カード化される人間もそうだが重傷者が出るかもしれないんだ。

 とりあえず今は堪えて、警戒だけしておいてくれ。」


 ぬぅ~確かにこいつの言う通りか・・・

 

『あぁ、それとそこにいる狂犬のお守り、頼んだぞ?』

 

「敵か!敵だな!つまり、私の出番だな!!」

 

「やめろ!まだ動く時ではない!!」

 

 ギャーギャーと騒ぐセレナと、なんとか止めようとしているユート、そんな二人を周りの観客は白い目で見ている。

 

「・・・・・・」

 

 他人のフリはできないだろうか・・・


 あぁ~若干緊張するなやっぱ、こんなに見られてデュエルするのなんて初めてだもんなぁ

 大事な初戦、それも次でジャックと当たるとか、勝つしかないよなぁ!

 

「で、あいつは何やってんだ?」

 

「うん・・・わかった・・・うん・・・・・・・・・」

 

 柚子の代わりにとあいつらが置いて行った熊のぬいぐるみを持った紫チビ

 あんまり瞬きせずにこっちをずっと見つめてくるし、ちょ~無口だし、っていうかなんか不気味だし

 つか、こいつが持っていた「一人で寂しいだろ?」っていうムカつく手紙・・・

 なんだ!くそ!俺だってリンが一緒に居ればな!!

 

――くい、くい

 

「ん?なんだよ。」

 

「時間・・・」

 

 いつの間にか、チビ助が俺のヘルメットを持って服の裾を引っ張っていた。

 おっと、もうそんな時間か

 

「あ、ありがとうよ。」

 

「・・・うん。」

 

 あぁ~すっげぇー会話しづれぇ~

 

「・・気を付けて・・・なにか・・・・・危ない感じ・・・・」

 

「あっ、まぁ、ライディングデュエルはちょっち、アブねぇからな・・・心配してくれるのか?

 でも、俺はこう見えてDホイーラーとしては」

 

「そうじゃ・・なくて・・・・嫌な・・気が・・気配がしてる・・・」

 

 ん?どういうことだ?

 

『さぁ!興奮冷めやらぬうちに第二回戦へと参りましょう!

 まずは一般公募から参加権を勝ち取ったラッキーボーイ!ユーゴ!!』

 

 おっ!呼ばれたな。

 

「さぁてと、折角だ、おめぇも応援しててくれよ。行くぜ!!」


 白いDホイールが入場口より登場する。

 そのDホイールを駆るユーゴへの歓声は少ない、ただそれでも彼の元孤児院の知り合いや修理屋としての客など、街で彼を知る者たちから少なからず声が上がっていた。

 

『そして対峙するは・・・えぇ、ナニコレ?

 セ、セキュリティより、シークレットτ(タウ)?』

 

――キイィィィィィィイイイィィィィィィン!

 

 別の入場口から現れるDホイール、それは奇妙な形をしていた。

 

「なんだ?あの後ろの・・・排気口・・いやDホイールにそんなものいらねぇし・・・」

 

 後部に巨大なダクトのようなパイプが何本も生えており、バランスを取る為なのか前部も長く伸びておりロケットのようになっていた。

 さらに言えば、乗っているDホイーラーも黒いバイザーで顔を覆っており、その名の通り素性が分からなくなっていた。

 

(なんだぁ?こいつ?)

 

『さぁ、テストランも終わり2人がスタートラインに付きます。

 次なるジャックと戦う栄光あるデュエリストを決める戦いが始まります!

 では!ライディングデュエル!アクセラレーショオォォォン!』

 

――ピッ!ピッ!ピッ!ビイィィィィ!!

 

『『決闘(デュエル)!』』

 

 スタートのブザーが鳴りユーゴとτが走り出す。

 だが見た目通り重いτのDホイールは加速が乗らずスタートダッシュという点でユーゴに負けていた。

 

「よし、このままファーストコーナーは頂きだぜ!」

 

 調子のいいスタートを切れたユーゴは調子に乗っていた。だが

 

――ドゴオォォォォォ!!

 

「あぁ?なんだ・・・いっ!?」

 

 ユーゴのバックミラーに映るのは赤い炎を上げながら急加速するτのDホイール

 それはオーバーブーストシステム、セキュリティが開発した急加速装置であり使用後の最高速に制限が掛かるものの、他の追随を許さないほどのスピードを得られるものである。

 τはあっという間にユーゴを追い抜かし、ファーストコーナーを曲がった。

 

「そんなのありかよ!?」

 

「・・・俺のターン・・俺はマジックカード、花合わせを発動・・・

 デッキから攻撃力100の花札衛(カーディアン)モンスター4種類を効果を無効にし攻撃表示で特殊召喚する・・・・・

 俺はデッキから花札衛(カーディアン)、松、芒、桐、柳を特殊召喚・・・」

 

 花札衛(カーディアン)―松― ATK100

 花札衛(カーディアン)―芒― ATK100

 花札衛(カーディアン)―桐― ATK100

 花札衛(カーディアン)―柳― ATK100

 

「一気に4体のモンスターだと!?」

 

 フィールドに浮かぶ様々なモンスターの描かれた4枚のカードのようなモンスター?

 それらは横一列に連結し1枚絵のようになる。

 

「・・マジックカード、花積みを発動

 デッキから花札衛(カーディアン)モンスター3体を選び、好きな順番でデッキの上に戻す・・・

・・・芒に月・・・桐の鳳凰・・柳に小野道風をデッキの上へ・・・・・

 手札の花札衛(カーディアン)―松に鶴―の効果・・・発動・・・

 自分フィールドのレベル1の花札衛(カーディアン)モンスター1体をリリースし・・特殊召喚する・・・」

 

――ガタッ、パタン・・・

 

 花札衛(カーディアン)―松に鶴― ATK2000

 

 花札衛(カーディアン)―松―の上に新たな花札衛(カーディアン)―松に鶴―が重なり、松は虚空へと消える。

 

『あれ?この戦法って・・・』

 

「松に鶴の効果・・・・このモンスターの特殊召喚に成功したとき、デッキから1枚ドローする。

 それが花札衛(カーディアン)モンスターならそのモンスターを特殊召喚でき・・・それ以外なら墓地へ送る・・・

 引いたのは芒に月・・・よって手札に加える・・・

 

 芒に月の効果・・・レベル8の花札衛(カーディアン)―芒―をリリースし特殊召喚・・・そして、1枚ドロー

 引いたのは桐に鳳凰・・・レベル12の桐をリリースし特殊召喚、1枚ドロー

 引いたのは柳に小野道風・・・レベル11の柳をリリースし、1枚ドロー

 引いたのは札再生・・・花札衛(カーディアン)じゃねぇ・・・よって、墓地へ送られる。

 

 札再生の効果、このカードが花札衛(カーディアン)の効果で墓地に送られた場合・・デッキの上から5枚のカードを確認し、その中からマジック、トラップカードを1枚手札に加え、残りのカードは好きな順番でデッキの上に戻す・・・」

 

――バタッ、バタッ、バタッ

 

 花札衛(カーディアン)―芒に月―    ATK2000

 花札衛(カーディアン)―桐に鳳凰    ATK2000

 花札衛(カーディアン)―柳に小野道風― ATK2000

 

 次々に入れ替わる絵柄はそのたびに色彩豊かになってゆく、シンプルな絵が複雑で華麗な絵へと、そのさまに観客たちは次は何かと期待の眼差しを向ける。

 それに対し対峙しているユーゴは連続でモンスターを出し続けるτの戦術に驚愕する。

 

「おいおい、いつまで続けんだよ・・・」

 

「手札の花札衛(カーディアン)―桜に幕―の効果・・・・このカードを公開し、デッキから1枚ドローする。

 そのカードが花札衛(カーディアン)ならこのカードを特殊召喚し、違うならドローしたカードとこのカードを墓地へ送る。

 引いたのは花札衛(カーディアン)―桜―よって、桜に幕を特殊召喚する。」

 

 花札衛(カーディアン)―桜に幕― ATK2000

 

 新たに桜が舞う絵が追加され連結する。5体のモンスターが連結したその様は屏風の様だ。

 

「柳に小野道風の効果、このモンスターを使って、シンクロ召喚するとき他の素材を含めレベル2として扱うことができる。

 ・・・俺はレベル2として扱う松に鶴、芒に月、桐に鳳凰、桜に幕に同じくレベル2として扱う柳に小野道風をチューニング!

 その神々しきは、聖なる光・・・今、天と地と水と土と金となりて照らせ!

 シンクロ召喚!花札衛(カーディアン)―五光―!!」

 

花札衛(カーディアン)―五光―「うおぉぉぉぉ!!はっ!!」

       ATK5000

 

 現れるのは紫の鎧を身に纏う豪華絢爛なる武人

 その圧倒的な攻撃力を前にして、さすがのユーゴも度肝を抜かれる。

 

「攻撃力5000!?いきなりとんでもないもの出してきやがった!?」

 

「驚くのはまだ早いぜぇ・・・

 マジックカード、超こいこい発動!

 1ターンに1度、自分のデッキの上から3枚のカードをめくり、その中の花札衛(カーディアン)を可能な限り召喚条件を無視して特殊召喚する。

 特殊召喚したモンスター以外のカードは裏側表示で除外し、自分は除外したカードの枚数×1000ポイントのダメージを受ける。」

 

(普通ならただの博打カードだが、引く三枚は札再生の効果で確認したカード・・・)

「ちっ、インチキ臭いぜ・・・」

 

「来い!萩に猪、紅葉に鹿、桐!

 この効果で特殊召喚したモンスターはレベル2となり、効果が無効になる!」

 

 花札衛―萩に猪―  ATK1000 LV7→2

 花札衛―紅葉に鹿― ATK1000 LV10→2

 花札衛―桐―    ATK100  LV12→2

 

「さらに手札の花札衛(カーディアン)―桜―の効果発動

 自分フィールド上にレベル2以下の花札衛(カーディアン)がいるとき、このカードを特殊召喚できる。」

 

 花札衛(カーディアン)―桜― ATK100

 

「桜の効果!1ターンに1度、自分フィールド上の花札衛(カーディアン)を1体リリースし、デッキから1枚ドロー

 そのカードが花札衛(カーディアン)ならば、デッキから桜以外の花札衛(カーディアン)モンスター1体をデッキから手札に加え、違った場合、ドローしたカードを墓地へ送る。

 ・・・引いたカードは花札衛(カーディアン)―柳―、よってデッキから花札衛(カーディアン)―牡丹に蝶―を手札に加える。

 柳の効果、自分フィールド上にレベル10以下の花札衛(カーディアン)がいる場合、手札から特殊召喚できる。」

 

 花札衛(カーディアン)―柳― ATK100

 

「柳の効果、1ターンに1度、墓地の花札衛(カーディアン)モンスター1体をデッキに戻し新たに1枚ドローする。

 墓地の花札衛(カーディアン)―桐―をデッキへ戻し、1枚ドロー

 

 さらに手札の牡丹に蝶の効果、自分フィ-ルド上の花札衛(カーディアン)を1体リリースして、手札から特殊召喚する。

 俺は花札衛(カーディアン)―柳―をリリースして、チューナーモンスター、花札衛(カーディアン)―牡丹に蝶―を特殊召喚!」

 

 花札衛(カーディアン)―牡丹に蝶― ATK1000

 

「牡丹に蝶が特殊召喚に成功したとき、デッキからカードを1枚ドローし、それが花札衛(カーディアン)なら自分のデッキの上から3枚確認し、好きな順番でデッキの上か下に戻す。

 ドローしたのは花札衛(カーディアン)―松―、よって3枚のカードを確認・・・1枚はデッキの下に戻して2枚は上に戻す。」

 

『シークレットτのフィールドにはチューナーモンスターとさらに3体のモンスターが揃いました!これはやはり!!』

 

「牡丹に蝶をシンクロ素材とする場合、他の素材も含めレベル2として扱う。

 レベル2の萩に猪、紅葉に鹿、桜にレベル2の牡丹に蝶をチューニング!

 涙雨、光となりて、降り注げ!シンクロ召喚!!

 現れろ!花札衛(カーディアン)―雨四光―!!」

 

花札衛(カーディアン)―雨四光―「はあぁぁぁぁ!ふん!!」

        ATK3000

 

 武人の横に並び立つは傘を差した麗人、その手に持つ傘はキラキラと光が当たり輝いている。

 

『決まったー!2度目のシンクロ召喚!

 扱いの難しい花札衛(カーディアン)を使いこなし、五光と雨四光が出そろいました!

 五光は1ターンに1度、マジック、トラップの効果を無効にし、さらにバトルフェイズ中、相手モンスターの効果を無効にさせ、雨四光がいる限りτ選手のフィールド上の花札衛(カーディアン)を効果では破壊されず、対象にもできません。』

 

「何っ!?」

 

「そういうことでぇ

 俺はカードを1枚伏せてターンエンドォ。」

 

『さぁ1ターン目から怒涛の展開を見せたτ選手

 ここからユーゴ選手がどう巻き返すのかぁ!!』

 

(おいおい軽く言ってくれんなよ。)

「まぁやるっきゃねぇか!俺のターン、ドロー!」

 

「この瞬間、雨四光の効果発動

 1ターンに1度、相手がドローフェイズに通常ドローをした場合、相手に1500ポイントのダメージを与える。」

 

 雨四光が傘を放り、その周りに光の輪ができると、まるで雨の様に光がユーゴへ降り注ぐ

 

「げっ!?なんだよその効果ああああぁぁぁぁぁあああぁぁぁ!!」

 LP4000→2500

 

『出たあぁぁ!雨四光の先制ダメージ!

 3ターン維持されると負けが確定する強力な効果です!ユーゴ選手、大丈夫?』

 

「言われなくても大丈夫だよ!!」

(たく、バカ高い攻撃力のモンスターのくせに耐性にロック、戦闘補助、極めつけに効果ダメージかよ。

 にしても妙な奴だな?最初は機械みてぇな感じだったのに、今は・・・)

 

「どうした?怖気付いたのか?」

 

「けっ!誰が!!自分フィールド上にモンスターがいないとき、手札のSR(スピードロイド)ベイゴマックスは特殊召喚できる!」

 

 ベイゴマックス ATK1200

 

「こいつが召喚、特殊召喚に成功したとき、1ターンに一度、デッキからベイゴマックス以外のスピードロイドモンスター1体を手札に加える。

 俺はSR(スピードロイド)タケトンボーグを手札に加える。

 そして、こいつは自分フィールド上に風属性モンスターがいるとき、手札から特殊召喚できるぜ!

 来い!SR(スピードロイド)タケトンボーグ!」

 

 タケトンボーグ DEF1200

 

 いくつもの独楽が連なりムカデのようになったモンスターと竹トンボが変形したロボット

 ユーゴの操るスピードロイドデッキにとってエンジンになるモンスターが早々に登場する。

 

「タケトンボーグの効果、このモンスターをリリースしてデッキからスピードロイドチューナーを1体特殊召喚する。

 俺はデッキからSR(スピードロイド)三つ目のダイスを特殊召喚!」

 

 三つ目のダイス DEF1500

 

 俺はレベル3のSR(スピードロイド)ベイゴマックスにレベル3の三つ目のダイスをチューニング!

 十文字の姿を持つ魔剣よ。その力ですべての敵を切り裂け!シンクロ召喚!

 現れろ、レベル6!HSR(ハイスピードロイド)魔剣ダーマ!!」

 

 魔剣ダーマ ATK2200

 

 巨大な十字の剣と円形の盾を装備した剣士が光の中から現れる。

 その姿は横倒しにしたけん玉の様だ。

 

「どんどんいくぜぇ!魔剣ダーマの効果発動!1ターンに1度、墓地のスピードロイドモンスターを1体除外し、相手に500ポイントのダメージを与える。

 俺はSRタケトンボーグを除外して、てめぇに500ポイントのダメージを与えるぜ!」

 

 魔剣ダーマの剣先から光線が発せられるが、先行していたτはスピードに任せて壁走りを決行、そこにあったアクションカードを入手した。

 

「手札のアクションマジック、加速を発動・・・自分への効果ダメージを無効にする・・・」

 

 カードが発動するとτのDホイールが急加速し、魔剣ダーマの光弾をかわす。

 

「げっ!?マジで加速した!?」

(ちっ!あんな図体でとんでもねぇスピード出しているのにぶれる様子が少しもねぇ・・・

 どんな接地性していやがるんだ!?)

「手札からSR(スピードロイド)ダブルヨーヨーを通常召喚!

 こいつが召喚に成功したことで、墓地からレベル3以下のスピードロイドを特殊召喚できる。

 もう一度来い!SR(スピードロイド)三つ目のダイス!!」

 

 ダブルヨーヨー ATK1400

 三つ目のダイス DEF1500

 

「よっしゃー!俺はレベル4のダブルヨーヨーにレベル3の三つ目のダイスをチューニング!

 その美しきも雄々しき翼翻し、光の速さで敵を討て!シンクロ召喚!

 現れろ、レベル7!クリアウィング・シンクロ・ドラゴン!!」

 

クリアウィング「グオアアァァァァァァ!!」

       ATK2500

 

 巨大なヨーヨーとダイスが作り出した光を割いて現れる美しき透明な翼を持つ白き竜

 クリアウィングの登場に知らないものはその美しさに見とれ、知る者はさっそく出たかとヤジを飛ばす。

 

『おぉ!ここでユーゴも連続シンクロ召喚!

 だがどちらのモンスターもτ氏のモンスターの攻撃力には遠く及びません。』

 

「へっ!所がどっこい、さらに手札を1枚墓地に送ってマジックカード、カード・フリッパーを発動!

 こいつの効果で相手フィールド上のすべてのモンスターの表示形式を変更するぜ!」

 

「させねぇ・・・五光の効果

 1ターンに1度、相手の発動させたマジック、トラップの効果を無効にして、破壊する。」

 

「無駄だぜ!クリアウィング・シンクロ・ドラゴンの効果発動!

 このカード以外のレベル5以上のモンスターの効果が発動したとき、その発動と効果を無効にして破壊する!ダイクロイックミラー!!」

 

 クリアウィングの翼に電子基板の様なラインが走り、五光の発した光を跳ね返す。

 だが跳ね返された光は雨四光の傘によって弾かれ霧散した。

 

「雨四光の効果で俺の花札衛(カーディアン)はカード効果で破壊されねぇ・・・」

 

「ちっ、だがこれでカード・フリッパーの効果が有効になるぜ!」

 

 カード・フリッパーから多数の糸が伸び五光と雨四光を絡めとる。

 

 雨四光 ATK3000→DEF3000

 五光  ATK5000→DEF0

 

『これは・・・五光の守備力は0!これを狙っていたのね!』

 

「さらに今、墓地に送ったSR(スピードロイド)カールターボの効果発動!

 このカードとSR(スピードロイド)ダブルヨーヨーを除外して、このターン、俺のフィールド上の風属性モンスターの攻撃力を800ポイントアップさせるぜ!」

 

 クリアウィング ATK2500→3300

 魔剣ダーマ   ATK2200→3000

 

「バトルだ!魔剣ダーマは守備表示モンスターを攻撃したとき、貫通ダメージを与えるぜ!

 行けぇ!!魔剣ダーマで花札衛(カーディアン)―五光―に攻撃!」

 

 身動きのできない五光に魔剣ダーマの巨大な剣が突き刺さり、そして引き裂きτのすぐそばを高速で駆け抜ける。

 

「ぐううぅぅぅ・・・・」

 LP4000→1000

 

 風が吹きすさび、さすがのτのDホイールもバランスを崩し揺れ、そして、ヘルメットのバイザーが上がり、その下の顔が露わとなる。


 バイザーの下から露わとなった顔は昔は美丈夫だったであろう端正な顔に無精ひげが彩られ、浅黒くなった肌はその人物がそれなりの年であることを感じさる。

 花札衛(カーディアン)なんて使うからもしかしてと思ったが・・・

 

『ワオッ!やっぱりそうだった!!これは何というサプライズ!!

 シークレットτの正体はかつての大スター、エンターテインメントデュエリストのエンジョイ長次郎だった!!』

 

 『エンジョイ長次郎』 本名『徳松 長次郎』

 アニメARC-Vにおいてランサーズ達が監獄に入れられた際、『秋雨の長次郎』として監獄のボスをしていた男

 5D’sの『氷室 仁』に相当するキャラクターで根は粋かつ人の良い人だが、過去にトップスのデュエリストによっていじめまがいのことをされた末にデュエルで不正をやらかし収監された過去を持つ

 

「ねぇ?エンジョイ長次郎って?」

 

「俺に聞くなよ。」

 

 そりゃまぁアニメの設定的なことは知っているけど、俺はこの世界のあの人がそのまんまとか知らないんだから、無茶言うなよ柚子。

 

「なんでぇ、あんたたち知らないのか?

 エンジョイ長次郎っていえば、俺たちが若かった頃のジャックみたいな人だ。

 まぁジャックと違って、勝ち負けにこだわらず、劣勢な時もデュエルを楽しむ!っていうのが信条の人だったけどな!」

 

「そうそう、ここ一番のドローってぇいやすごかったもんな!ドキドキしたぜ!」

 

「そうそう!俺、あの人のデュエル教室にガキの時行ったなぁ~」

 

「俺なんか『喧嘩する元気があったらデュエルをやんな。』って怒られたぜ・・・」

 

「それはお前が悪いんだろ!」

 

――がははははははははは!!

 

 さっき柚子のブレスレットの光で文句を言ってきたおじさんや周りのコモンズの人たちが口々に昔話に花を咲かせている。

 う~ん、この話を聞く限り、アニメとほとんど大差はないのか?

 

「へぇ~そんな人なんだ・・・でも、なんか・・・」

 

『セットしていたアクションマジック、ダメージ・ドロー

 2000ポイント以上の戦闘ダメージを受けたとき、デッキから2枚ドローする。』

 

『げっ!?アクションカードってドローカードもあるのかよ!?』

 

 柚子が画面の中の人物と周りの評価に差異を感じている。

 アニメではイカサマにまで手を染め、収容所でレアカードを巻き上げ、エンターテイナーではなく、ただ勝つことだけにこだわる人間にまで落ちぶれていた人だ、それも当然と言える。

 

『五光が相手によってフィールドからいなくなったとき、エクストラデッキから五光以外の花札衛(カーディアン)シンクロモンスターを特殊召喚する。

 来い!花札衛(カーディアン)―雨四光―!!』

 

雨四光『ふんっ!』

   DEF3000

 

『ちっ!増えやがったか!だったら、クリアウィングで新しく出てきた方の雨四光に攻撃だ!!』

 

「しかし、違和感があるな・・・」

 

「えっ?なにが?」

 

「あの人、本当にアクションデュエルは初めてなのか?」

 

 現在あの人がとっている戦法はデュエル自体は花札衛(カーディアン)の戦い方だ。

 しかし、あの人が刑務所に入ったのは10年、ライディングデュエルもクロウ曰く始まったのは4、5年ほど前からで、周知されるようになったのが3年前。

 そして、アクションデュエルは昨日からだ。

 

 なのにあの人のDホイールにはブースターが取り付けられ、常に相手の前を取れるようにして、自分のターンに積極的にアクションカードを伏せ、新しいアクションカードを取り続けている。

 このアクションライディングデュエルにおいて有効な戦術と装備を1日で用意した。

 いや、1日で用意したとしてもそれを使いこなせるものなのか?

 

『カードを2枚伏せてターンエンドだ!

 カールターボの効果は終了して、俺のモンスターの攻撃力は元に戻る。』

 

 クリアウィング ATK3300→2500

 魔剣ダーマ   ATK3000→2200

 

『エンドフェイズに雨四光の効果、次のターンの俺のドローフェイズをスキップして、このカードの効果を持続させるか、次の相手のスタンバイフェイズまでこのカードの効果を無効にするか選ぶ・・・

 俺は次のドローを破棄、代わりにトラップカード、無謀な欲張りを発動

 デッキから2枚のカードをドローし、その後、自分のドローフェイズを2回スキップする。』

 

『おぉ!長次郎選手、デメリットを重複させ、リスクを軽減

 う~ん、ちょっとらしくない気もするけど・・・まぁ、10年の研鑽ってことね!』

 

 らしくない、アニメの荒んでいるときのデュエルはドローを投げ捨てて、ロックとバーンで勝つやり方

 話を聞くに昔の戦い方は一発逆転のドローが売りの半ギャンブル戦術だったみたいだ

 だが目の前で行われているのは割と堅実、むしろ何で?と言うくらいドロー特化戦術

 確かに俺の記憶的にもらしくない。

 

『俺のターン・・・雨四光の効果でこのターンのドローフェイズはスキップされる。』

 

『てめぇのデッキがどういうのかは大体分かったぜ!だったらこいつは刺さるだろ?

 クリアウィングを対象に永続トラップ発動、竜の束縛(ドラゴンズ・バインド)

 自分フィールド上の攻守2500以下のドラゴン族モンスターを対象にして発動、このカードがマジック、トラップゾーンにある限り、お互いに対象モンスターの元々の攻撃力以下のモンスターを特殊召喚できないぜ!』

 

『おめぇも俺のことを上から見下すつもりかよ・・・

 マジックカード、強欲で金満な壺を発動!

 エクストラデッキから6枚までカードを裏側で除外し、3枚につき1枚のカードをドローする!

 このカードを発動したターン、俺はもう効果でカードを引けねぇ!6枚のカードを除外し2枚ドローだ!

 おめぇが後生大事にしている、そのトカゲ野郎をぶっ殺してやる!

 行け!雨四光!!クリアウィング・シンクロ・ドラゴンに攻撃ぃ!!』

 

『させるか!墓地の三つ目のダイスを除外して、このターンの相手の攻撃を1度、無効にする!』

 

 そして、バックがセキュリティ、つまりロジェということは何かあるのか?


――・・・・・・・

 

「ちっ、どうせ変わらねぇ流れなのに無駄なことしやがってよぉ・・・

 ちぃとばかし生きながらえて何の意味があるんだ!!俺は手札を2枚とアクションカードを伏せてターンエンドォ!」

 

「変えてやるさ!てめぇを超えて、俺はジャックと戦う!

 俺のターン、ドロー!」

 

「そのドローに対して雨四光の効果発動!

 そら、おめぇの傘を使いたかったら使いな。」

 

「クソめんどくせぇ奴だぜ!クリアウィングの効果発動!

 自身以外のレベル5以上のモンスターの効果が発動したときそれを無効にして破壊するぜ!」

 

「セットしていたアクションマジック、効果暴走を発動!

 相手のモンスター効果が発動したとき、その効果を無効にして500ポイントのダメージを与える!」

 

「何ぃ!?」

 

「自滅の道を転げ落ち、おのれの涙雨に濡れやがれぇ!!」

 

「ぐわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 LP2500→2000→500

 

 トカゲ野郎の光をはじき返し、さらに雨四光の傘から光の雨が降り注ぐ・・・

 そうだ、何をしようと無駄。

 それが強者のデュエル、トップのデュエル・・・

 強大なる力の前で何かを変えるなんて不可能だ。

 

『ユーゴ、雨四光と効果暴走のダメージを受けバランスを崩し大きく後退!

 長次郎とさらに差を離されていくー!』

 

「くぅぅ・・・まだまだ!!」

 

 この小僧、なんで諦めねぇ・・・ライフはもう500だぞ!

 吹けば消し飛ぶオケラのくせして!

 

――・・・・・・・・・・・・・・

 

 またアクションカードってやつか・・・ちっ、効果暴走じゃねぇのか

 だが、これで下手に効果を使ってこねぇだろ、なにせ、このカードはあの坊主からしてみれば、効果暴走かもしれないんだからな。

 

「魔剣ダーマの効果発動!」

 

 なにぃ!?

 

「墓地のSR(スピードロイド)ベイゴマックスを除外して、相手に500ポイントのダメージを与えるぜ!」

 

「ぐわっ!?」

 LP1000→500

 

「よっしゃー!通ったー!へへっ!これでライフは並んだぜぇ!」

 

 なんでだ!?なんで怖気づきもせず、魔剣ダーマの効果を発動させた!?

 効果暴走だったらおめぇは負けてたんだぞ!?

 

「俺はマジックカード、おろかな埋葬を発動

 その効果でデッキからSR(スピードロイド)―OMKガムを墓地に送る。

 さらに俺はマジックカード、命削りの宝札を発動

 このカードを発動させるターン、俺は特殊召喚はできねぇが、デッキの上から俺の手札が3枚になるようにドローする。

 俺の手札は0、よって新たに3枚ドローだ!」

 

 なのに・・・なんで笑っていられる・・・

 収容所の奴らはここまでになったら、涙を流してカードを差し出したというのに・・・

 

――ワレ・・・ヲ・・ツカ・・・・・エ・・・・

 

「クリアウィングと魔剣ダーマを守備表示に変えて、カードを1枚伏せてターンエンド。」

 

 クリアウィング ATK2500→DEF2000

 魔剣ダーマ   ATK2200→DEF1600

 

「トラップ発動、砂塵の大竜巻!

 相手フィールド上のマジック、トラップカードを破壊する。

 俺は竜の束縛(ドラゴンズ・バインド)を破壊!その後の効果で手札のマジック、トラップカードを1枚伏せる。

 俺はアクションカードをセット!」

 

 アクションカードをセットし、新たなアクションカードを手に入れる。

 これで次のターン、俺のモンスターが特殊召喚できるようになる。

 さぁ、絶望しろ、泣いて許しを請い涙雨で溺れるがいい

 

「やっぱそう長く持たないか・・・命削りの宝札の効果でエンドフェイズに手札をすべて捨てる。

 さぁ、てめぇのターンだぜ?」

 

 なんで諦めない!

 

――ワレヲツカエ

 

 そうだ。運命ってやつはどう転んでも勝手に回る。

 変えれねぇもんなんだよ!!足掻いても無駄なんだよ、そんなこたぁ!!

 

 

 

 

 

 

――我を使え


「俺のターン、雨四光の効果でドローを放棄!

 手札から花札衛(カーディアン)―松―を召喚!」

 

 花札衛(カーディアン)―松― ATK100

 

 攻撃100のモンスターを召喚、やっぱり仕掛けてくるよな。

 

「松の効果、このモンスターが召喚に成功したとき、デッキから1枚ドローする。

 それが花札衛(カーディアン)ならば手札に加え、違うのなら墓地へ送る。

 引いたのは花札衛(カーディアン)―桜―よってこのカードは手札に加わる。

 

 手札のマジックカード、札再生を発動

 墓地の花札衛(カーディアン)―桜に幕―を手札に加え、その後手札の花札衛(カーディアン)を特殊召喚する。

 俺が呼び出すのはこいつだ!花札衛(カーディアン)―桜―!」

 

 花札衛(カーディアン)―桜― DEF100

 

 あぁん?桜って自分で特殊召喚できるんだろ?

 なんで今出したんだ?

 

「桜の効果発動、松をリリースしデッキから1枚ドローする。

 引いたのは花札衛(カーディアン)―柳に小野道風―、よってデッキから花札衛(カーディアン)―柳―を特殊召喚する!」

 

 花札衛(カーディアン)―柳― DEF100

 

 柳、あいつの効果はドロー効果だったな。

 止めるか?止めないか・・・いや、何かを仕掛けてくるんだったら、まだクリアウィングの効果を使うときじゃねぇ。

 

「柳の効果発動、墓地の花札衛(カーディアン)―柳―をデッキに戻し1枚ドローする。

 花札衛(カーディアン)―柳―をリリースして花札衛(カーディアン)―柳に小野道風―を特殊召喚!

 小野道風の特殊召喚により、デッキから1枚ドロー、それが花札衛(カーディアン)なら特殊召喚出来る。

 引いたのは花札衛(カーディアン)―柳―!」

 

 花札衛―柳に小野道風― DEF2000

 花札衛―柳―      DEF100

 

 げっ!?また柳だとぉ!?

 

「柳の効果、墓地の柳をデッキに戻して1枚ドロー

 花札衛(カーディアン)―柳に小野道風―をシンクロ素材にするとき、自身を含めてレベルを2にできる。

 俺はレベル2の桜、柳に柳に小野道風をチューニング!

 飲めや謳えや幕の内、月に酔って狂い咲け!シンクロ召喚!花札衛(カーディアン)―月花見―!!」

 

月花見「おほほほ・・・ふぅ~」

   ATK2000

 

 光の中から出てきた黒と赤に花の絵が描かれた着物を着た女が、手に持った杯で酒を一杯呷る。

 いきなり出てきて、酒飲むとか、なんだこいつ!

 

「月花見の効果発動、自分のメインフェイズに1度、カードを1枚ドローする。

 それが花札衛(カーディアン)なら召喚条件を無視して特殊召喚する。

 その特殊召喚したモンスターはこのターン、相手のモンスターを無視してダイレクトアタックができる!」

 

 !?ここで2000のモンスターなんて出されてたまるか!

 

「クリアウィング・シンクロ・ドラゴンの効果発動!

 月花見の効果を無効にして、破壊する!」

 

「雨四光の効果は有効だ。

 よって月花見は効果を無効にされちまうが破壊されねぇ。

 いい判断だ。だが、そんなもん何の足しにもならねぇ!

 墓地の花積みの効果発動!このカードを除外して、墓地から花札衛(カーディアン)―松に鶴―を手札に加える。

 

 手札の花札衛(カーディアン)―桜に幕―の効果を発動しデッキから1枚ドロー

 引いたのは花札衛(カーディアン)―芒―よって桜に幕は特殊召喚される!」

 

 花札衛(カーディアン)―桜に幕― ATK2000

 

「さらに墓地の超こいこいを除外して効果発動

 桜に幕をリリースし、手札の花札衛(カーディアン)―松に鶴―を特殊召喚!」

 

 花札衛(カーディアン)―松に鶴― ATK2000

 

「松に鶴の効果、カードを1枚ドローしそれが花札衛(カーディアン)ならば手札に加えるか特殊召喚し、それ以外なら墓地へ送る。

 へっ!はははっ!なんだこりゃ!引いたのは花札衛(カーディアン)―柳―!」

 

 花札衛(カーディアン)―柳― DEF100

 

「なにっ!?また柳だとぉ!?」

 

 デッキに戻してはドローしているとはいえ、どんだけ特殊召喚できるタイミングで引いてんだよ!?

 

「柳の効果!墓地の花札衛(カーディアン)―雨四光―をデッキに戻し、1枚ドローする。

 マジックカード、戦士の生還発動、墓地の戦士族モンスター、花札衛(カーディアン)―桜に幕―を手札に加える。」

 

 モンスターが5体並びやがった。

 使われてねぇけど、桜に幕には攻撃力を上げる手札誘発効果まである。

 墓地に居ねぇのに三つ目のダイスまで警戒しているのかよ!

 

「バトル!雨四光でクリアウィング・シンクロ・ドラゴンに攻撃!」

 

「おっと!攻撃する前にトラップカード、リサイコロを発動!

 墓地からスピードロイド1体を特殊召喚する。

 来い!チューナーモンスター、SR(スピードロイド)―OMKガムを特殊召喚!」

 

 OMKガム DEF800

 

「今更壁を増やしたところで!!」

 

「いや、大博打はこれからだぜ!

 リサイコロで特殊召喚したモンスターのレベルはターン終了までサイコロの出目と同じになる。

 出目は・・・2!!」

 

 よっしゃー!!大当たりだぜ!!

 

 OMKガム LV1→2

 

「だから何だっていうんだよ!!行け!雨四光!」

 

「リサイコロの効果はまだあるぜ!

 墓地のこのカードを除外することで自分フィールド上のスピードロイドチューナーを含むモンスターを素材にして風属性モンスターをシンクロ召喚する!

 俺はレベル6のHSR(ハイスピードロイド)魔剣ダーマにレベル2となった機械族、風属性チューナー、SR(スピードロイド)―OMKガムをチューニング!

 連なる風を受けて、大空へと飛び上がれ!!シンクロ召喚!

 現れろ!HSR(ハイスピードロイド)カイドレイク!!」

 

カイドレイク「ギャアアァァァァァァァァ!!」

      ATK3000

 

「さらにOMKガムの効果、シンクロ素材となって墓地に送られた場合、デッキの一番上のカードを墓地に送り、それがスピードロイドなら、このカードを素材にしてシンクロ召喚したモンスターの攻撃力を1000ポイントアップさせる!

 墓地に送るのはSR(スピードロイド)ビードロドクロだ!よってカイドレイクの攻撃力は1000ポイントアップ!」

 

 カイドレイク ATK3000→4000

 

「なっ!?」

 

「さらにカイドレイク自身の効果!

 相手フィールド上のすべての表側表示のカードの効果を無効にするぜ!」

 

 排気音の混じる叫びをあげる機械の竜がおっさんのモンスターを風で捉える。

 荒ぶる風の中で藻掻く雨四光がクリアウィングに攻撃しようとしているが、そうはさせないぜ!

 

「墓地のダイスロール・バトルを除外して効果発動!

 相手のバトルステップに自分及び相手の表側攻撃表示のシンクロモンスターを1体ずつ選び、強制的にバトルさせる!

 俺が選ぶのはカイドレイクと雨四光!!」

 

「なんだとぉ!!?」


 伏せているアクションマジック、ブラインド・ブリザードを発動すれば、バトルフェイズを終了させることができる。

 だが、俺のモンスターが攻撃表示であることには変わらねぇ・・・このままじゃ負ける!

 

――我が力となる魔導書は汝の手に集まった

 

 雨四光も五光も強欲で金満な壺で除外しちまって、エクストラデッキにねぇし

 いやだ!負けるのはもう嫌だ!!

 

――天に命し運びに仇なす者に、鉄槌を!


「俺はもう負けねぇ!!負けたくねえええぇぇぇぇぇぇ!!」

 

「な、なんだぁ!?」

 

「トラップ発動、緊急同調!

 バトルフェイズ中にシンクロ召喚を行う!

 俺は雨四光、柳、松に月、桜に幕に月花見をチューニング!!」

 

「はぁ!?なんだよそれ!?レベルどうなってるんだよ!?」

 

「月花見をシンクロ素材とするとき、他のモンスターを含めてレベル2とすることができる!」

 

 またかよ!?

 

「天よ!運命よ!!事象の理よ!!巡る天輪に乗せここに結実せよ!!シンクロ召喚!!」

 

 暗雲が立ち込めおっさんの5体のモンスターが天に現れた巨大な光の輪に吸い込まれていく

 

「沈黙を破り、光と共に降臨せよ!!天穹覇龍ドラゴアセンション!!」

 

ドラゴアセンション「グオォォアアァァァァァァァァァァァァ!!」

         ATK?

 

 なんだよ・・・これ!?

 暗雲を切り裂き、何枚もの翼を持つ白いドラゴンが現れる。

 なんかやばい感じを肌にビリビリと感じるぜ・・・

 こいつは普通のモンスターじゃねぇ!!

 

「攻撃力が決まっていない!?」

 

「ドラゴアセンションの攻撃力は俺の手札の数×800ポイントになるぅ!

 俺の手札はアクションカードを含めて8枚!!」

 

ドラゴアセンション「ガアアァァァァァァ!!」

         ATK?→6400

 

「攻撃力6400!?」

 

「見たかこの攻撃力ぅ!!俺は誰にも負けねええぇぇぇ!!

 トップスに逆らうことを身に染みて思い知れえぇぇぇ!!

 ドラゴアセンションでカイドレイクに攻撃いいぃぃぃぃぃ!!」

 

 天上の白い竜が地を這う虫けらを蹴散らすためにその咢に光を募らせる。

 その対象は無謀にも天に昇ろうとする竜を模した機械

 五光すら超えるとてつもない攻撃力、この攻撃を通してしまえばライフ500なんて簡単に消し飛ぶ

 

 

 

 ・・・・・・かかったな!!

 

「永続トラップ発動!追走の翼!!

 自分フィールド上のシンクロモンスター、カイドレイクを対象にして発動!

 このカードがある限り対象モンスターは戦闘と効果で破壊されない!」

 

「だがダメージは!!」

 

「そうはいかねぇ!対象モンスターがレベル5以上の相手モンスターと戦闘を行う場合、ダメージステップ開始時に、その相手モンスターを破壊する!!」

 

「なんだと!?」

 

 機械の竜の翼に光が宿り風を纏って、天から落ちてくる光を貫く矢となって飛翔する。

 

「行けええぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

カイドレイク「ギャアアァァァァァァァァ!!」

 

ドラゴアセンション「グアッ!?ギャアアァァァァァァァァァァ!?」――バンッ!

 

 カイドレイクの突撃でドラゴアセンションの胸に風穴が開く

 どんなにヤバい雰囲気のモンスターだって、耐性がなかったらこんなもんだぜ!

 

「で、追走の翼で破壊したモンスターの元々の攻撃力分、対象モンスターの攻撃力をターン終了時までアップすんだが・・・そいつ元々の攻撃力がなかったな。」

 

「・・・・・・?」

 

「あぁ?どうしたんだ、おっさん?」

 

 さっきと違って、随分と大人しいな?


 ・・・破壊された?ドラゴアセンションが?こんなにあっさり・・・?

 

「お~い、おっさん、もう何もないのか~?」

 

「・・・ドラゴアセンションの効果

 相手によって破壊された場合、墓地にシンクロ素材一式がそろっている場合、そのモンスターを効果を無効にしてすべて特殊召喚する・・・」

 

 花札衛(カーディアン)―雨四光― DEF3000

 花札衛(カーディアン)―月花見― DEF2000

 花札衛(カーディアン)―桜に幕― DEF2000

 花札衛(カーディアン)―松に鶴― DEF2000

 花札衛(カーディアン)―柳    DEF100

 

「げっ!?今度はモンスターが増えやがった!?」

 

 驚いてはいるが、その目の輝きは全く失っちゃいねぇ・・・

 いや、当たり前か、バカ高い攻撃力のモンスターで攻めようが、効果ダメージでライフを削ろうが諦めなかった坊主だ

 

「・・・なぁ、なんでお前は諦めねぇんだ?」

 

「あぁ?そりゃ、おっさんに勝てばジャックと戦えるからな!

 ジャックとデュエルするのは俺の昔からの夢なんだ。

 このDホイールもジャックと戦いたいから、作ったんだからな!」

 

 このバイクを手作り!?

 へっ・・・骨のある坊主だ。夢のためにそこまでするとはなぁ・・・

 

「あのにぃちゃんか、だがあいつ強ぇんだろ?

 負けるのが怖くないのかよ?

 この街は負け組にはとことん冷てぇぞ?」

 

「あぁ、勝てねぇかもしれねぇ、挑むのなんて馬鹿だっていつも言われているさ。

 それでも俺はジャックと戦いたい!

 それが俺とリンの夢だからな!!」

 

 夢か・・・

 思えば俺もシティの上下社会がでぇきれぇで、トップスの連中に挑んだんだっけか・・・

 いや、嘲笑や罵倒なんかで諦めるんじゃ夢とは言えねぇか

 なんだよ、調子乗って馬鹿やって、ポリに取っ捕まる・・・その辺のチンピラと変わらねぇじゃねぇか・・・

 

「へっ・・・すまねぇ坊主、ちょっと湿っぽいことを考えちまったぜ。

 手札を2枚伏せて、アクションカードをさらに1枚伏せる。」

 

 伏せたカードは手札からの特殊召喚を無効にするイカサマ御法度

 攻撃表示モンスターを破壊する聖なるバリア―ミラーフォース

 アクションマジックはマッド・ハリケーンとか言う自分フィールド上のカードを手札に戻すカード

 使いどころ的には次のターンだが、ブラフにはなるだろう。

 

「ターンエンドだ。

 さぁ、かかってきな!」

 

 デュエルとはすなわち人生、勝つ日もあれば負ける日もある。

 負けを恥じず、勝って驕らず、すなわちレッツ、エンジョイってか・・・

 駄目な奴だったな・・・俺はよ・・・


「あぁ、彼はもう終わりですね・・・」

 

 やはり、ただカードを憑りつかせただけでは駄目でしたか。

 

『よっしゃ、俺のターン、ドロー!

 おぉー!やったぜ!マジックカード、シンクロ・キャンセル発動!

 シンクロモンスターをエクストラデッキに戻して、そのシンクロ素材が自分の墓地に一式居れば、そのモンスターを特殊召喚できる。

 俺はHSR(ハイスピードロイド)カイドレイクをエクストラデッキに戻して、SR(スピードロイド)―OMKガムとHSR(ハイスピードロイド)魔剣ダーマを墓地から特殊召喚!』

 

 イカサマ御法度にブラインドブリザード、ミラーフォース、戦闘と新しいモンスターによる対策はいいですが、墓地からの特殊召喚、そして効果ダメージへの対策はされていませんからね。

 

『魔剣ダーマの効果は覚えているよな?

 魔剣ダーマの効果発動!1ターンに1度、墓地のスピードロイド1体を除外して相手に500ポイントのダメージを与える。』

 

『ぐぅ・・・』

 LP500→0

 

 徳松 長次郎が光の槍に貫かれる。

 いろいろやった割にあっさりとした結末ですね。

 

『あ、えと・・・け、決着ぅ!

 ジャックと次に戦う誉あるチケットを手にしたのは、ユーゴだ!』

 

「やれやれ、あまりにも締まらない結末で会場が白けてしまったではないですか。

 エンターテインメントデュエリストというのならあのロゼと言うデュエリストのように散り様も派手にしてほしいものですね。」

 

 とはいえ、予定以上のコースを走ってくれたことですし、目的の量も溜まりました。

 

「では、次に期待するとしましょう・・・」




(決闘竜!?なんでこの世界に!?)
        ↓
(えぇ・・・あっさり倒された。
 OCG効果みたいだったし、もしかして、普通のカードなのか?)

(遊矢、なんかすごい顔しているわね・・・)
と、とりあえず今日はもう試合がないし帰りましょう?
ほ、ほら、ユーゴの一回戦突破をお祝いしましょうよ!
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『シンクロ封じ!?クロウVS沢渡』

その祝勝会、俺とユートは絶対参加できないけどな。

あっ・・・


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シンクロ封じ!?クロウVS沢渡

普通のキッズアニメになったのかと思ったらGX並みのカオスなSEVENS、宇宙ラーメンはもはやボーボボレベルでハジケリストも活性化しているようですね。
フィールド魔法[宇宙]も遊戯王Rネタような気がするし、割と過去ネタを探せば見つかるかもしれませんね。

今回はクロウVS沢渡、沢渡のデッキは【ドラグマ】も候補にあったりしましたがやっぱりこっちの方が沢渡感出るので

追記
[終わりの始まり]が制限カードということを忘れていたので[魔力の泉]と[強欲で貪欲な壺]で対処しました。


 シティ内にある警察病院、そこには今ある男が入院していた。

 徳松 長次郎、昼間フレンドシップカップでユーゴとライディングデュエルをした彼は敗北した後、急に倒れここに運び込まれた。

 原因は極度の疲労と診断され、10年収容所で過ごしていた彼が出所してから吸った空気は薬臭いものとなった。

 

「・・・・・・綺麗なもんだなぁ。」

 

 夜となりベッドの上で目を覚ました彼は、窓から見える青く輝く月を見つめている。

 煌びやかなトップス地区は夜を知らぬとばかりに明るく騒がしいが、病院があるこのエリアは夜となると静寂が訪れる。

 

(月ってぇのは、ここまで綺麗ぇだったのか。

 俺がガキだったころはトップスの街の明かりばかり見て、デュエリストとして有名になったころはスポットライトが、収容所ではトップで居続けることが俺の光だったが・・・)

 

 今の彼は何者でもない。

 刑期を終え出所した彼は人気エンタメデュエリスト「エンジョイ長次郎」でも収容所のドン「秋雨の長次郎」でもなくただの徳松 長次郎だ。

 

「へっ・・・ロクでもねぇ明かりばかりだな。

 そんなもんに引き寄せられるとか俺は羽虫かなんかかよ・・・」

 

『いやいや、デュエリストとしてのあなたは確かに輝いていましたよ?』

 

「!!?」

 

 どこからともなく返ってきた声に長次郎は慌てて周りを見るが、人影などどこにもない。

 

『おやおや、どこを見ているのですか?

 私はあなたの隣にいますよ?』

 

「隣・・・!?」

 

 徳松はその言葉を聞き自分の隣、室内カーテンに写り込んだ『ソレ』を見つける。

 

『ど~も~』

 

 『影遊び』というのを知っているだろうか?

 手などで影を作り、それが何に見えるかなどを聞く昔ながらの遊びである。

 ここは個室ではあるがプライバシーのために扉側に設置された仕切りとなっているカーテンに自分の影とその影遊びで作られた蛇のような影が相対していた。

 

「な・・なんでぇ・・・?」

 

 徳松はベッドを出てカーテンの後ろを見る。

 誰もいないことを確認し次に窓を見るがそこには誰もいないどころか、影を作れるようなものも何もない。

 

「これはどういうことでぇ・・・?」

 

『まぁまぁ、そんなに驚きなさんな。

 私は見ての通りただの『影』。あなたにちょっと聞きたいことがあって、こうして会いに来ただけですよ。』

 

 ただそこに映る『影』は怪奇的な現象にもかかわらず、実にフランクに徳松に話しかける。

 

『あぁ、面会時間外なのはご容赦を。

 私は何分『影』ですから、照明の明かりではなかなか気づいてもらえないと思いましてね?』

 

「お・・おう・・・」

 

 あまりにも現実離れした事態に徳松はこの『影』が何なのかは考えることをやめた。

 起きたばかりと思っていたが、自分はまだ眠っているようで、今はまだ夢の途中なのだと思ったのだ。

 

「で、なんでぇ話っつぅのは?」

 

『あなたは[天穹覇龍ドラゴアセンション]をどこで手に入れましたか?』

 

「て、てんきゅう・・・はりゅう?なんでぇ、その噛みそうな名前のカードは?」

 

『今日のデュエルであなたの使っていたカードですよ?』

 

「今日のデュエル・・・すまねぇ、実はというとな。

 ここ最近のことはめっきり覚えちゃいねぇんだ。

 今日のデュエルもなんかもやもやとしてほとんど覚えちゃいねぇ。

 なんかあの白い坊主に迷惑をかけたことぐれぇしか記憶にねぇんだ。」

 

『記憶・・・』

 

 『影』は考え込むようなしぐさを見せ、徳松は台の上にある自分のデッキを取り、広げて『影』に見せる。

 

「そら、どこにもそんなもん居ねぇだろ?

 そもそも俺のデッキは花札衛以外モンスターは入っちゃいねぇよ。」

 

『たしかに・・・お騒がせして申し訳ありませんでしたね。

 私はこれにて、消えることにします。お大事に。』

 

「お、おい待ちな!」

 

 するすると本物の蛇のように立ち去ろうとする『影』を徳松が呼び止める。

 

『なんでしょうか?』

 

「い、いや、俺だけ質問されるっつぅのも不公平だろ?

 だったら、俺の質問にも答えちゃくれねぇか?」

 

 ばつが悪そうに徳松は『影』に要求した。

 この場に自分と『影』以外は誰もいない。そもそもからしてこれは自分の見ている夢だ。

 だったら自分の弱いところを見せても問題にならないと徳松は思った。

 

「おめぇはこれから俺がどうすればいいと思う?」

 

『どうとは?』

 

「俺はよ・・・ガキの頃、上とか下とかそういうもんは嫌ぇだった。

 デュエリストになって、有名になった俺はデュエルにトップスもコモンズもねぇ、そう思った俺はトップスのデュエリストたちに挑んで、そして負けた。

 

 そっからは絵にかいたような転落人生さ。

 歓声もブーイングや嘲笑に変わって、終いにはイカサマに手ぇ出して務所にポイ。

 そこでトップで居続けることにこだわった俺は、他の奴らからカードを巻き上げてふんぞり返った。

 で、刑期になって、外でやっていく自信がなかった俺は・・・はは、すまねぇこの先は覚えちゃいねぇわ。」

 

『・・・・・・』

 

「まぁ、なんだ・・・俺はぁ、務所の外でやっていく自信がこれっぽっちもねぇんだ。

 いや、トップにこだわるとか、馬鹿らしく思えてきたから務所に戻ってもな・・・」

 

 何者かわからぬこの『影』に徳松は自分の半生を語り自嘲する。

 

「嗤いたきゃ、嗤ってくれ、要するに俺は怖ぇんだよ・・・」

 

 自分のこれまではなんと無意味だったのだろうと

 

『・・・残念ながら、その質問に対する答えを私は持ち合わせていませんね。』

 

 『影』から返ってきたのは当たり前の言葉だった。

 これは夢だ。ならば迷っている自分に、この『影』が答えを持っているわけがない。

 

「そう・・・だよな・・・」

 

『だって私が答えてしまうと、貴方はそれに向かってしまうでしょう?』

 

「!?」

 

 『影』から次に紡がれた言葉は徳松にとって予想外のものだった。

 『影』は答えを持っていないから答えられないのではない。答えなどないから答えられないのだ。

 

『人生は一度きり、その終着点を今決めてしまうのはもったいないでしょう?

 今出した答えに向かったところで、後悔は絶対ついてくる。

 なぜなら、今出した答えは最高最善の結果から導き出されたものなのですから。

 そんな結果だけを追い求めたら、ちょっとした気にすることもない失敗でやる気も次第に失せるでしょう?

 だったら、自分が今楽しいと思うことを全力でやればいいのではないでしょうか?』

 

 人生は一度きり、勝つ日もあれば、負ける日もある。

 

『負けて恥じず、勝って驕らず、すなわち』

 

「レッツ、エンジョイ・・・」

 

 それは昔の自分が毎度言っていたことだ。

 プロデューサーに何か名乗りのようなものを言ってくれと言われできた言葉だ。

 勝った日も負けた日も、デュエルは楽しいと、この街に住んでいる人たちに伝えたくて。

 デュエルの楽しさにコモンズもトップスもねぇと伝えたくて言ってきた言葉だ。

 

「へっ、そうか・・・なぁ、だったらこれだけは答えてくれねぇか?」

 

『なんでしょう?』

 

「俺のデュエルは・・・楽しめたか?本当の笑顔が作れていたか?」

 

 よくよく思い出せば向けられたブーイングは「らしくない」とか「どうしたんだよ」とか、そんな心配の声だった。

 そんな言葉が向けられたのも、自身が驕ってトップスのデュエリストに挑んだからだ。

 

『えぇ、昔のあなたを惜しむ声は、貴方が作り上げた笑顔は今も受け継がれてますよ。』

 

 変わっていったのは観客たちじゃない、自分だったのだ。

 

「あぁ・・・そうかい。それはよかった・・・」

 

 徳松の頬を伝う一つのしずくがベットのシーツを濡らす。

 『影』は質問に答えたからか、気が付けばいなくなっていた。

 現実感がまるでない。幻のようなひと時であったが、見失っていたものを見つけることができたと、彼は満足げに再び眠りについた。


「どうでござったか?」

 

「予想通りだよ。徳松氏はここ数日の記憶なし、デュエル中のこともあいまいだってさ。

 それにドラゴアセンションについても知らない様子だった。」

 

「うむ、嘘を付いている様子ではなかったでござるからな。」

 

 彼はロジェの出した尻尾であるため、記憶操作とかをされるわけにはいかなかったので月影の作ったテントウ虫型盗聴撮影機をくっつけ監視していたのだ。

 だが、四六時中彼を見張るわけにはいかないので、現実離れしたシチュエーションで話を聞きだした。

 俺が十階の窓から影遊びする羽目になったけど

 ちなみに盗聴器は窓のサッシの隙間から回収済みだ。

 

「にしても、あのドラゴンは何なのでござろうか?

 零羅殿もあのドラゴンに何やら感じていたようでござったが・・・」

 

「さぁな。だが、デッキにあったはずのカードが抜かれていたんだから、普通のカードじゃないんだろう。」

 

 そう、あれは本当に普通のカードじゃない。

 『決闘竜(デュエルドラゴン)』。それは漫画版5D’sのラスボス『究極神』から生まれた力の一端足るドラゴンたち。

 基本的に使用者として認められないと、それらが持つ闇の瘴気に当てられデュエリストを暴走させる危険物である。

 

 その中でもドラゴアセンションは漫画版のレクス・ゴドウィンの持つトンデモカードであり、自身でシンクロとキャンセルを繰り返し、さらには素材の効果もそのまま使えるというチートカードであった。

 OCGになると自分で分離ができない、復活させた素材の効果を無効にすると弱体化を食らったが、それでも手札を増やせるデッキでは高い攻撃力を得られるので特定のデッキにとっては切り札になるほどのカードであった。

 

 そして徳松さんの使用したのはおそらくOCG版、これが『究極神』がかかわっているのかどうかイマイチはっきりしない原因になっている。

 

「むぅ、ならばこれからどうするか・・・あの御仁は零児殿がホワイト殿に話を付けてくれるでござるが、あのカードを探すとなると・・・潜入でもしてみるでござるか?」

 

 おぉ、さすが忍者、肝が据わっていること、冗談だろうけど

 

「いや、折角の尻尾を引っ込められても困る。」

 

「そうでござるな。」

 

「まぁまずは情報だな。

 最悪、ロジェ長官の刺客だと思われるセキュリティ側の出場者2人を倒すことを優先しよう。」

 

 ロジェの目的が『究極神』に関係するものなら、デュエルで勝ち続けるしかない。

 『究極神』の儀式の最後に得られるのは『望む未来が得られる』というもので、現状の情報だけを考慮すれば、ロジェの狙いはこれだと思われる。

 だが、この世界の『究極神』が俺の知る物かはわからないし、ただロジェが自分の傀儡としたデュエリストに強いカードを渡しているだけかもしれない。

 

「うむ、動かずして待ち、鳴動するまでできることをするしかないでござるな。」

 

 なにかしらロジェの計画の一端を知れればいいんだけどな。

 問題として情報が少なすぎるから、柚子たちもいるし迂闊に動くのはまずい。

 ただ、『究極神』ないし『赤き竜』の元ネタとなった南米で信仰されていた『翼を持つ蛇』や『ケツァルコアトル』から何かわかるかもしれないな。


 あ~自分から出るって言った手前なんだが、やっぱ人前っていうのはなんつぅか・・・見世物感があるな。

 ロゼが言うには「観客はお金を払って見に来ているんだから、当たり前じゃん。」とか言ってたけどよ・・・

 

「ってこんなことでうじうじしてたら、またあいつから経済の話だのなんだの言われるからやめるか・・・

 それに、あいつらも見に来てることだし・・・」

 

 タナー達にはあらかじめロゼからフレンドシップカップの連日チケットが渡されている。

 本当なら連日チケットは高すぎてコモンズにはまずお目にかかれないものだが、アマンダが止められなかったら勝手に入ってきて取っ捕まっちまいそうとか言われたけど、あいつらそんなこと・・・しないよな?しないよな?

 

『さぁ今日もシティのお友達が待ち焦がれたフレンドシップカップのお時間よー!

 今日試合する選手たちは他のブロックの選手と比べて1戦多くなっちゃうけど、頑張ってね~!

 では選手入場!まずはゴーストライダーからのご指名デュエリストよ!クロウ・ホーガン!!」

 

 呼ばれたか。

 

「よし、行くか!ブラック・バード!!」

 

――ブウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!

 

 エンジンを吹かしてゲートをくぐる。

 コモンズの奴らもトップスの奴らも関係なしに俺に視線が集中する。

 あ~やっぱちょっとキツ

 

「クロウ兄ちゃ~ん!!」

 

 !!今の声!

 

「がんばって~!!」

 

「クロウ負けるなよ!!」

 

 スタジアムの最前列、そこにタナー、アマンダ、フランクが居た。

 あいつらの顔を見て声を聞いたら、なんだか恰好付けたくなってカーブの壁を走ってちょっと跳んで手を振ってやる。

 

「わぁ~!!」

 

「「すげぇ!!」」

 

 まっ、あいつらにはこういうのもいいかもな。

 

『わぉ!さっそく小粋なアピかましてきたわねぇ!

 では続いて登場してもらいましょう!沢渡 シンゴ~!!』

 

――ブゥゥゥゥゥゥ!!ブオオオォォォォォォン!

 

 な、なんだ!?

 

「ははははははっ!待ちに待って、待たせたな!!

 フレンドシップカップの主役、沢渡 シンゴ参上!!」

 

 白と黄色のライディングスーツとDホイールに乗ったあからさまに軽そうな男がゲートから文字通り「跳び」出してくる。

 6メーターくらい跳んだぞ!?

 

――誰だお前!!

 

 この時俺も観客のコモンズもトップスも珍しく同じことを考えてたと思う。

 すげぇライディングテクニックを持っていることはあのジャンプでわかる。

 だけど、主役とか、待たせたとか、そもそもお前のこと知らねぇよ!?

 それは観客も同じで、この謎のチャラい奴にブーイングを送っている。

 

 だが、そんなアウェイな中でなぜかこの沢渡つぅ奴はスタンドアピールだのして目立ちまくっている。

 馬鹿なのか?

 

「沸き立つ観客、盛り上がる客席、うぅ~ん実に俺向きの舞台だぜ。」

 

 いや、沸いているのはブーイングだと思う。

 

「おい、そこのお前、グレイトフルな沢渡さんが相手してやるっていうんだから光栄に思えよ?」

 

 うわ、こっちにも振ってきた。

 

「おいおい、だんまりかぁ?もしかして始まる前から怖気づいてんのかぁ?」

 

「なんだとゴラァ!!」

 

 そういうのは聞き捨てならねぇぜ!

 

「おメェみてぇな軽そうなやつ、この鉄砲玉のクロウ様がぶち抜いてやるぜ!」

 

「ハッ!口先だけじゃないこと期待するぜ?」

 

 こいつ・・・なんかムカつく!

 

『おぉう、これはまた癖の強そうなのが来たわね・・・

 りょ、両者の間に激しく火花が散っていることですし、さっそく参りましょー!

 フィールド魔法、クロス・オーバー・アクセル、セットオン!!』

 

【デュエルモード、オン、オートパイロット、スタンバイ】

 

『ライディングデュエル、アクセラレーション!』

 

『『決闘(デュエル)!!』』

 

――ブオオォォォォォン!

 

「あわわわ!!」

 

「げっ!?危ねぇ!!」

 

 スタートでインコースを駆けようとしたが、こいついきなりウィリーかましてきやがった!?

 俺は避けるためにコースを大きく外側にずらされた。

 ちっ、スタートダッシュは失敗か・・・

 

(ひえぇ~あぶねぇあぶねぇ、もうちょっとでコケるところだったぜ・・・)

「へっ!見たか俺のライディングテクニック、ビビっちまったか?」

 

「このぉ!!」

 

 あいつのDホイールは・・・ボルガーの所のか。

 走りが荒いくせにスピードの伸びがいい。

 自前のブラック・バードとの性能差が明らかに出ちまっているがこっちには隠し玉があんだよ!

 

『両者接戦、いや沢渡の方がちょっとリード!

 スタートダッシュの失敗がここでクロウを苦しめるか、コーナーに入ります。

 おっと!!クロウ、スピードを落とさずにカーブガードに突っ込んだ!』

 

 飛べ!ブラック・バード!!

 

――ウィーン、ガチャ!ガチャ!!

 

 カーブガードを飛び出し、空中に放り出されるブラック・バードは翼を広げて飛ぶ。

 そして姿勢制御をして俺は着地する。

 アイツはコーナーで減速したようだな。第一コーナーは貰ったぜ!

 それについででこいつもゲットだ!

 

「なああぁぁぁ!?バイクが飛ぶとかありかよ!?」

 

「アリなんだよ!先攻は俺が貰ったぜ!

 俺はマジックカード、手札抹殺を発動

 互いのプレイヤーは手札を捨て、その後、捨てた枚数分だけデッキからドローする。

 俺はアクションカードを含めた手札5枚を捨てて、新たに5枚のカードをドローする。」

 

「俺も5枚のカードを捨てて5枚引かせてもらうぜ。」

 

「よし、俺はチューナーモンスター、BF(ブラックフェザー)―極北のブリザードを通常召喚!」

 

ブリザード「クワッ!」

    ATK1300

 

「極北のブリザードが召喚に成功したとき、俺の墓地のレベル4以下のBF(ブラックフェザー)を1体守備表示で特殊召喚する。

 来い、BF(ブラックフェザー)―精鋭のゼピュロス!」

 

 精鋭のゼピュロス DEF1000

 

 氷のような色合いをした丸々とした鳥と青い頭の鳥人が俺の横に追随する。

 見せてやるぜ!BF(ブラックフェザー)の超速シンクロ召喚術をな!

 

「俺はレベル4のBF(ブラックフェザー)―精鋭のゼピュロスにレベル2の極北のブリザードをチューニング!

 星流れて、闇を切り裂け、白銀の綺羅星!シンクロ召喚!!

 現れろ!BF(ブラックフェザー)―星影のノートゥング!!」

 

星影のノートゥング「ハッ!!」

         ATK2400

 

 光を切り裂いて現れる大剣を持った漆黒の鳥人、まずはライフ差を開かせてもらうぜ。

 

「星影のノートゥングは1ターンに1度、特殊召喚に成功したとき、相手プレイヤーに800ポイントのダメージを与える。舞い戻る剣(ホーミングソード)!」

 

「ぐわっ!」

 LP4000→3200

 

 星影のノートゥングが剣を投げ飛ばすとあの野郎にぶつかって、剣は星影のノートゥングの手元に収まる。

 

「その後相手モンスターを1体選んでそいつの攻守を800下げるが、おメェのフィールドにモンスターはいねぇからそれは不発だ。

 星影のノートゥングのもう一つの効果、1ターンに1度、通常召喚とは別にBF(ブラックフェザー)を召喚できる。

 俺は手札からチューナーモンスター、BF(ブラックフェザー)―上弦のピナーカを召喚するぜ!」

 

上弦のピナーカ「クワッ!」

       ATK1200

 

 現れた背の低いガキのような雰囲気のあるBF(ブラックフェザー)は、弓を持って狙いをつける。

 

「さらに装備魔法、グローウィング・ボウガンをノートゥングに装備して、墓地のBF(ブラックフェザー)―精鋭のゼピュロスの効果発動!

 デュエル中に1度だけ自分フィールド上に存在する表側表示カード1枚を手札に戻して、こいつを特殊召喚して俺は400ポイントのダメージを受ける。

 俺はグローウィング・ボウガンを手札に戻して、墓地から戻ってこい!BF(ブラックフェザー)―精鋭のゼピュロス!」

 LP4000→3600

 

 精鋭のゼピュロス ATK1600

 

「レベル4のBF(ブラックフェザー)―精鋭のゼピュロスにレベル3のBF(ブラックフェザー)―上弦のピナーカをチューニング!

 漆黒の力束ね、さらなる力を現出せよ!!シンクロ召喚!!

 現れろ!BF(ブラックフェザー) (テイマー)―漆黒のホーク・ジョー!!」

 

 新しく召喚されたのは背中にでけぇ黒い羽根飾りと頭に赤い羽根飾りを付けたインディアン風の戦士。

 その肩にはカラスを象った黄金の鎧が輝く。

 

「墓地のBF(ブラックフェザー)―大旆のヴァーユの効果発動

 墓地のこのカードとチューナー以外のBF(ブラックフェザー)を1体除外して、その合計レベルと同じレベルのBF(ブラックフェザー)シンクロモンスターを召喚条件を無視して効果を無効にして特殊召喚する。

 俺はレベル4のBF(ブラックフェザー)―精鋭のゼピュロスとレベル1の大旆のヴァーユを除外して、レベル5の(アサルト) BF(ブラックフェザー)―五月雨のソハヤを特殊召喚だ!」

 

五月雨のソハヤ「ハッ!」

       ATK1500

 

「さらに自分フィールド上に他のBF(ブラックフェザー)がいることで手札のチューナーモンスター、BF(ブラックフェザー)―突風のオロシを特殊召喚!」

 

突風のオロシ「カァ!」

      ATK400

 

「俺はレベル6のBF(ブラックフェザー)―星影のノートゥングとレベル5の(アサルト) BF(ブラックフェザー)―五月雨のソハヤにレベル1の突風のオロシをチューニング!

 漆黒の翼よ!雷の力宿して鮮烈に轟け!シンクロ召喚!!

 切り裂け!(アサルト) BF(ブラックフェザー)―神立のオニマル!!」

 

神立のオニマル「オオォォォォォォ!ハッ!!」

       ATK3000

 

 大剣を持つ黒い鳥人と青い鎧を纏う鳥人が黒い翼に導かれ雷を従えて舞い戻る。

 片方の翼は機械のような鎧を纏い、雷を模した乱れ刃の刀を振るうBF(ブラックフェザー)最高レベルモンスターだぜ!

 

「漆黒のホーク・ジョーの効果発動

 墓地からレベル5以上のBF(ブラックフェザー)を1体呼び戻す。戻ってこい、星影のノートゥング!」

 

 星影のノートゥング「フン!」

          ATK2400

 

「最後に手札に戻したグローウィング・ボーガンをBF(ブラックフェザー) (テイマー)―漆黒のホーク・ジョーに装備させ攻守を500ポイントアップさせエンドフェイズ。

 このターン、フィールドから墓地へ送られたBF(ブラックフェザー)―上弦のピナーカの効果発動

 デッキから上弦のピナーカ以外のBF(ブラックフェザー)モンスター、毒風のシムーンを手札に加えてターンエンドだ。」

 

 漆黒のホーク・ジョー ATK2600→3100

 

『おぉぉ!!なんと驚きのフィールド!

 1ターン目から最高レベル!レベル12のシンクロモンスターが召喚され、さらには2体の上級シンクロモンスターが並んでおります!』

 

「まったく、長々とやりやがって日が暮れちまうぜ!」

 

「うっせぇ!ほら、おめぇのターンだ!

 初めに言っておくが神立のオニマルは効果で破壊されねぇぜ!」

 

 ついでにホーク・ジョーを対象にした効果は他のBF(ブラックフェザー)に移し替えられる。

 オニマルに移して効果を弾くこともできるし、ノートゥングをわざと破壊させて、次のターン、ホーク・ジョーの効果で復活させれば効果ダメージを与えられる。

 

「なるほどな、なかなか楽しませてくれるじゃねぇか。

 俺のターンだ!ドロー!

 まずは墓地のマジックカード、汎神の帝王の効果を発動

 このカードを除外し、デッキから帝王と名の付くマジック、トラップカードを3枚選択し、相手に選ばせる。

 選んだ1枚は俺の手札に加え、残りはデッキに戻す。

 俺が選ぶのは帝王の深怨3枚、さぁ、選びな。」

 

「おい!それどれ選んでも同じじゃねか!!

 チッ、インチキくせぇことしやがって、帝王の深怨を選ぶぜ。」

 

「OK、OK、じゃあ早速、使わせてもらうぜ。

 マジックカード、帝王の深怨、手札の攻撃力2400、守備力1000のモンスターか攻撃力2800、守備力1000のモンスターを1体相手に見せることで、デッキから深怨以外の帝王マジック、トラップカード1枚を手札に加える。

 俺は手札の邪帝ガイウスを見せてデッキから帝王の開岩を手札に加える。

 

 さらに手札のマジックカード、汎神の帝王発動

 手札の帝王マジック、トラップカード、帝王の凍気を捨てデッキから2枚ドローする。

 よし、永続魔法、帝王の開岩を発動して墓地の冥帝従騎エイドスを除外して効果発動

 エイドス以外の墓地の攻撃力800、守備力1000のモンスターを1体対象にして、そいつを特殊召喚する。

 来い、天帝従騎イデア!」

 

イデア「ふふ。」

   ATK800

 

「イデアの召喚、特殊召喚に成功したとき、デッキからイデア以外の攻撃力800、守備力1000のモンスターを1体守備表示で特殊召喚する。

 並べ!冥帝従騎エイドス!」

 

エイドス「ハッ!」

    DEF1000

 

 黒と白銀の鎧のモンスター、やっとモンスターを出してきたか

 

「俺は天帝従騎イデアをリリースしこいつをアドバンス召喚する!

 来い!邪帝ガイウス!!」

 

邪帝ガイウス「ウオォォォォォォアアァァァ!!」

      ATK2400

 

 白銀の鎧のモンスターが消えて闇の瘴気を纏うモンスターが出てきた。

 が、その攻撃力は星影のノートゥングと同じ、なんも怖くは

 

「墓地へ送られたイデアの効果で除外されている帝王マジック、トラップカードを1枚手札に加える。

 俺が手札に加えるのは汎神の帝王!

 

 さらに俺のフィールド上にモンスターが表側表示でアドバンス召喚に成功したことで永続魔法、帝王の開岩の効果が発動

 1ターンに1度デッキから攻撃力2800で守備力1000のモンスター1体を手札に加える。

 俺が手札に加えるのは轟雷帝ザボルグ。」

 

 おいおい、なんでアドバンス召喚したのに手札が増えてんだよ!?

 

「そして、邪帝ガイウスの効果!

 こいつがアドバンス召喚に成功したとき、フィールド上のカード1枚を除外し、そいつが闇属性モンスターだった場合、相手に1000ポイントのダメージを与える。」

 

「何ィ!?」

 

「破壊できないなら、除外しちまえばいいってことだろ?

 消えな!(アサルト) BF(ブラックフェザー)―神立のオニマルを除外、そして闇属性モンスターを除外したことでてめぇに1000ポイントのダメージだ!」

 

 邪帝ガイウスの放った暗黒の球体がオニマルを捉え大爆発を起こす。

 

「うわあああぁぁぁぁ!!」

 LP3600→2600

 

「はははっ!俺様は今日も絶好調!

 俺はもう一回、汎神の帝王を発動、手札の帝王の轟毅を捨てデッキから2枚ドロー

 そして、今墓地へ送った帝王の轟毅を除外し効果発動、このターンの終わりまでフィールド上のモンスターを俺が宣言した属性に変更する。

 俺が宣言するは光属性だ。」

 

 エイドス 闇→光

 ガイウス 闇→光

 

 漆黒のホーク・ジョー 闇→光

 星影のノートゥング  闇→光

 

「エイドスを召喚、特殊召喚したターンは通常召喚と別に1度だけアドバンス召喚を行える。

 そして、この轟雷帝ザボルグはレベル8だがアドバンス召喚したモンスター1体でアドバンス召喚できる!

 俺は邪帝ガイウスをリリース!現れろ!轟雷帝ザボルグ!!」

 

 轟雷帝ザボルグ「オオォォォォ!!」

        ATK2800

 

 光を湛えた邪帝が消え去って出てきたビリビリバチバチと電気を迸らせる巨大な轟雷帝

 その姿は雷様みてぇだ。

 

「恐れ、慄け、轟け!轟雷帝ザボルグの効果発動!

 こいつをアドバンス召喚したとき、フィールド上のモンスター1体を破壊する。

 黒焦げになっちまいな!漆黒のホーク・ジョーを破壊!」

 

「させるか!漆黒のホーク・ジョーのモンスター効果発動!

 ホーク・ジョーを対象にした相手の効果を自分フィールド上の正しい対象となる別のBF(ブラックフェザー)モンスターに移し替える!

 よってザボルグの効果で破壊されるのは星影のノートゥングだ!」

 

 星影のノートゥングが剣を掲げてザボルグの出した雷を自ら受ける。

 助かったぜ、ありがとうな。

 

「チッ、でもまぁ1枚程度じゃあんまり変わらねぇか。

 ザボルグが破壊したモンスターが光属性だった時、互いのプレイヤーは自分のエクストラデッキから破壊したモンスターのレベルと同じ枚数のカードを墓地へ送る。

 ただし、光属性モンスターをリリースしてザボルグを召喚した場合は相手の墓地へ送るカードは俺が選ぶ!」

 

「なっ!?」

 

 なんじゃそりゃああぁぁぁ!!

 

「リリースしたガイウスも破壊したノートゥングも元々は闇属性だが、このターン帝王の轟毅の効果でどっちも光属性になっている。

 よってどっちの効果も有効だ。

 さて、ノートゥングのレベルは6だったな?じゃあ!・・・えと・・・・・・このカードを墓地へ送りな!」

 

 くっ!ソハヤを全滅させられた。それにザボルグに対抗出来るモンスターも潰された。

 

「俺もエクストラデッキから墓地へ送るが、俺のエクストラデッキにはこの1枚、PSYフレームロード・Ωを墓地に送って、こいつの墓地での効果を発動、自分または相手の墓地のカード1枚とこのカードをデッキに戻す。

 俺が戻すのはてめぇの墓地のBF(ブラックフェザー)―星影のノートゥング。」

 

 ぐっ!ホーク・ジョーでの使い回しを封じられた。

 

「永続魔法、補給部隊を発動させ、カードを1枚伏せターンエンドだ。」

 

『おぉ!!なんということでしょう、クロウ選手の戦線が1ターンで崩壊!

 ホーク・ジョーのみとなってしまいました!』

 

「こんなことで諦めるかよ!BF(ブラックフェザー)の底力見せてやるぜ!

 俺のターン、ドロー!

  マジックカード、終わりの始まり!

 俺の墓地に闇属性モンスターが7体以上いるとき、その内5体を除外することでデッキから3枚のカードをドローする!

  俺はザボルグの効果で墓地に送られたBF(ブラックフェザー)5体を除外して3枚のカードをドロー!」

 

「おっと、だったら手札の天帝アイテールの効果を発動させてもらうぜ。

 相手のメインフェイズ時、墓地の帝王トラップ、始原の帝王を除外してアイテールをアドバンス召喚する。」

 

「何ィ!!?俺のターンにアドバンス召喚だと!?」

 

「アイテールもアドバンス召喚したモンスター1体でアドバンス召喚出来る。

 俺は轟雷帝ザボルグをリリースして、降臨しろ!天帝アイテール!!」

 

 雷が天に還って暗雲の隙間から光と共に巨大な純白の帝が降り立つ

 

天帝アイテール「ふん!」

       ATK2800

 

「アイテールのアドバンス召喚により効果発動、さらに帝王の開岩の効果も始動する!」

 

「ぐっ!?じゃあ、その効果にチェーンして漆黒のホーク・ジョーの効果発動!

 墓地からレベル5以上のBF(ブラックフェザー)モンスター1体を特殊召喚する。

 来い!BF(ブラックフェザー)―漆黒のエルフェン!」

 

漆黒のエルフェン「ハッ!」

        DEF1200

 

「かろうじてモンスターを出したか、帝王の開岩の効果で俺は2体目の轟雷帝ザボルグを手札に加える。

 そして、アイテールがアドバンス召喚したとき、デッキから攻撃力2400以上守備力1000のモンスターを1体特殊召喚する。

 さぁ出てこい!我が僕!光帝クライス!」

 

光帝クライス「ハハハハハッ!!」

      ATK2400

 

 アイテールに並び立つ黄金の帝クライスがその両手に光をためる。

 

「光帝クライスが召喚、特殊召喚に成功したとき、フィールド上のカードを2枚まで破壊し破壊されたカードのコントローラーはその枚数分だけドローする。

 俺はクライスの効果でてめぇの漆黒のホーク・ジョーと漆黒のエルフェンを破壊!」

 

 クライスのレーザーが漆黒の鳥人たちを焼き尽くす。

 俺のターンでめちゃくちゃやりやがるぜ!

 

「クライスの効果で俺は2枚のカードをドローする!」

 

 ここで毒風のシムーンを出してデッキから黒い旋風を持ってこれれば、またシンクロモンスターを展開できる。だが、まずはあれを狙う!

 

(なるほど、アクションカード狙いか!だが素直に取らせるほど俺は甘ちゃんじゃねぇんだよ!)

「徹底的にやらせてもらうぜ!

 永続トラップ、連撃の帝王を発動!このカードは1ターンに1度、相手のメインフェイズ及びバトルフェイズ中にアドバンス召喚を行う。

 俺は天帝アイテールをリリースし再び轟け!轟雷帝ザボルグ!!」

 

轟雷帝ザボルグ「うおぉぉぉ!!」

       ATK2800

 

 アイテールが去り再びザボルグが現れる、もう少し!

 

「ザボルグの効果発動!俺のフィールドの光帝クライスを破壊し、おめぇのエクストラデッキからさらに6枚のカードを墓地送りだ!!」

 

――ピカッ!!ゴロ、ドドオオォォォンン!!

 

「うわああぁぁぁぁ!!」

 

 ザボルグの放った雷が光帝クライスと俺に落ちる。

 衝撃と光が俺を襲い、アクションカードまでもう少しってところでバランスを崩された。

 

『なんと!沢渡選手ザボルグの効果を使いクロウ選手がアクションカードを取るのを妨害!

 さらにこの効果によってクロウ選手のエクストラデッキが全滅!

 フィールドも空っぽで大、大!大!!ピンチ!!』

 

「へっ!こいつは俺が貰っておくぜ。

 俺のフィールド上のモンスターが破壊されたことによって、永続魔法、補給部隊の効果が発動、デッキから1枚ドローするぜ。」

 

 ちゃっかりと俺の取り損ねたアクションカードをゲットしやがった。

 こいつ、アクションデュエルってぇのに慣れてる?ロゼの野郎といい何もんなんだ?

 

「くっ!だがまだだ!俺のデッキは、BF(ブラックフェザー)は、絆は途切れやしねぇ!

 俺はBF(ブラックフェザー)―鉄鎖のフェーンを召喚!

 さらに自分フィールド上に他のBF(ブラックフェザー)がいるとき手札からこいつを特殊召喚できる。

 来い!BF(ブラックフェザー)―黒槍のブラスト!」

 

 鉄鎖のフェーン ATK500

 黒槍のブラスト ATK1700

 

 鎖分銅を持った忍者のような姿のBF(ブラックフェザー)と巨大な螺旋槍を持ったBF(ブラックフェザー)が現れる。

 俺のBF(ブラックフェザー)はシンクロだけのデッキじゃねぇんだよ!

 

「バトル!鉄鎖のフェーンは相手のモンスターを飛び越えてダイレクトアタックができる!

 鉄鎖のフェーンでダイレクトアタックだ!」

 

「ぐおっ!」

 LP3200→2700

 

 通った!てぇことはあのアクションカードは戦闘用じゃねぇか。

 

「鉄鎖のフェーンがダイレクトアタックで相手のライフを削った時、相手フィールド上に攻撃表示でいるモンスターを守備表示にする。

 俺は轟雷帝ザボルグを守備表示に変更!」

 

 轟雷帝ザボルグ ATK2800→DEF1000

 

「げっ!?」

 

「そして、黒槍のブラストは守備表示モンスターを攻撃した時、貫通ダメージをあたえるぜ!

 黒槍のブラストで轟雷帝ザボルグに攻撃!!」

 

 ブラストの槍がザボルグを貫き、吹き荒れる風が沢渡を襲う。

 

「ぐぅぅ・・・やってくれるじぇねぇか・・・」

 LP2700→2000

 

「へっ!よく言うぜ。

 バトルを終了しメインフェイズ、マジックカード、フェザー・ウィンド・アタックを発動

 自分フィールド上に表側表示で存在するBF(ブラックフェザー)―鉄鎖のフェーンをデッキに戻して、デッキからBF(ブラックフェザー)と名の付いたモンスター、BF(ブラックフェザー)―月影のカルートを手札に加える。

 カードを2枚伏せてターンエンドだ!」

 

『ここでクロウ選手がライフでリード、だがしかし、彼のエクストラデッキは全滅!

 そして、始まるのは自称フレンドシップカップの主役、沢渡 シンゴのターン!

 自分のターンでも相手のターンでもやりたい放題な彼はこのターンで何を我々に見せてくれるのでしょうか!』

 

「決まっているだろ!俺の華々しい勝利さ!

 俺のターン、ドロー!

 まずは墓地の汎神の帝王を除外し効果発動

 さぁ選びな。今度は汎神の帝王と帝王の深怨2枚だ。」

 

 ドローかサーチ、だが今はどうやっても止められない。

 

「汎神の帝王だ。」

 

「ふん、じゃあその汎神の帝王を手札の帝王の開岩を捨てて発動、2枚ドローする。

 さらにマジックカード、トレード・インを発動

 手札のレベル8モンスター、冥帝エレボスを捨ててさらに2枚ドローする。

 

 まずは何だかわからねぇカードから処理するとするか

 墓地の帝王の凍気の効果発動、このカードと他の帝王マジック、トラップ、帝王の開岩を除外しフィールド上にセットされたカード1枚を破壊する。

 俺が破壊するのはてめぇの右のセットカードだ。」

 

 残念だが選んだカードはハズレだぜ!

 

「させねぇ!トラップ発動、ダメージ・ダイエット!

 このターン、俺が受けるあらゆるダメージは半分になる!」

 

「チッ、しぶてぇな。

 だがチェーンして発動、アクションマジック、フレイムボール。

 相手に200ポイントのダメージを与える。」

 

「ぐっ。」

 LP2600→2400

 

「そんでもって俺は新たなアクションカードをゲット!

 墓地の冥帝エレボスの効果発動、手札の帝王マジック、トラップを捨てて墓地の攻撃力2400以上で守備力1000のモンスターを手札に戻す。

 俺は再臨の帝王を捨てて邪帝ガイウスを手札に戻す。

 そして、冥帝従騎エイドスをリリースして、邪帝ガイウスをアドバンス召喚!」

 

邪帝ガイウス「ウオオォォォォォ!!」

      ATK2400

 

「ダメージが与えにくいなら、数で押すまでだぜ!

 邪帝ガイウスの効果!アドバンス召喚したときフィールド上のカード1枚を除外し、それが闇属性モンスターなら相手に1000ポイントのダメージを与える!

 消えろ!黒槍のブラスト!」

 

「俺の仲間をこれ以上好きにはさせないぜ!

 トラップ発動!ブレイクスルー・スキル!

 このターン終了時まで相手モンスター1体の効果を無効にする。

 邪帝ガイウスの効果は無効だぁ!!」

 

「チッ!だがアドバンス召喚には成功した、よって帝王の開岩の効果で怨邪帝ガイウスを手札に加える。

 墓地の冥帝従騎エイドスの効果発動、デッキから天帝従騎イデアを特殊召喚し、イデアの効果でエイドスを特殊召喚!」

 

 イデア  ATK800

 エイドス DEF1000

 

「これでまたアドバンス召喚ができるようになったぜ。

 手札の氷帝家臣エッシャーを捨ててマジックカード、コストダウンを発動

 このターンの終わりまで俺の手札のモンスターのレベルは2つ下がる。

 よって、レベル8の怨邪帝ガイウスはレベル6となってリリース1体で召喚できるようになった!

 俺は冥帝従騎エイドスをリリースして、怨邪帝ガイウスをアドバンス召喚!」

 

怨邪帝ガイウス「ガアアァァァァオォォォォ!!」

       ATK2800

 

 怨嗟の声を上げより濃い瘴気をまき散らすガイウスの進化した姿

 それは普通のガイウスと同じく、いやそれ以上の闇の球体を作り出す。

 

「怨邪帝ガイウスがアドバンス召喚に成功したとき、フィールド上のカード1枚を除外し相手に1000ポイントのダメージを与える。

 さらに除外したカードが闇属性モンスターだった時、そのカードのコントローラーは同名カードを手札、デッキ、墓地、エクストラデッキからすべて除外する。

 俺は黒槍のブラストを除外するぜ!」

 

「ぐああぁぁ!!ダメージ・ダイエットの効果で・・・ダメージは半減・・・」

 LP2400→1900

 

 闇の瘴気の塊は黒槍のブラストに当たると俺にも飛び火し、デッキに眠る同胞たちを奪い去っていく

 くっ、これで貫通ダメージを与えることもできなくなった!

 

「次のターンの心配なんていらないぜ?

 何しろこのターンでてめぇは終わるんだからな!

 バトル・・・の前に俺の墓地PSYフレームロード・Ωの効果発動!

 てめぇの墓地のBF(ブラックフェザー) (テイマー)―漆黒のホーク・ジョーとこのカードを互いのデッキに戻すぜ。

 これで陽炎のカームとかいうカードの効果は使えねぇだろ?」

 

 陽炎のカームは相手のバトルフェイズに墓地のBF(ブラックフェザー)シンクロモンスターを特殊召喚できるが、今俺の墓地には蘇生条件を満たしているモンスターがいねぇ

 あのついでで墓地に送られているカードどんだけ厄介なんだよ!

 

「さぁ今度こそマジのバトルフェイズだ!

 邪帝ガイウスでてめぇにダイレクトアタック!!」

 

「があぁぁぁぁああぁぁぁ!!」

 LP1900→700

 

「そしてこれでジ・エンドだ。行け!怨邪帝ガイウス!ダイレクトアタックだああァァァ!!」

 

――クロウ!

――クロウ兄ちゃん!

――クロウ!!

 

「まだ、負けてられっかよ!!手札のBF(ブラックフェザー)―熱風のギブリの効果発動!

 相手のダイレクトアタック宣言時、手札からこのカードを特殊召喚する!」

 

熱風のギブリ「カァー!」

      DEF1600

 

 黒に赤のラインの入った6枚の羽根を持つ小鳥が俺に迫る怨邪帝ガイウスの闇の砲撃を防いでくれる。

 首の皮1枚でつながったぜ・・・

 

「ホントにしぶてぇな・・・だったら、天帝従騎イデアでダイレクトアタック。」

 

「くっ!」

 LP700→300

 

 残りライフ300、次のターン、ダメージ・ダイエットの効果でガイウスの効果ダメージを半減させても俺のライフは0になるか

 奴の手札にガイウスはもうねぇ、っていうのは考えない方がよさそうだな。

 なくてもどうにかして手札に持ってくるだろう。

 

「俺はこれでターンエンド。」

 

『クロウ選手、絶体絶命のピ~ンチ!!

 沢渡選手の主役宣言はホントなのか!?

 鉄砲玉の異名を持つ彼は1回戦でさっそく弾けてしまうのでしょうかぁ!!』

 

 あぁ、いちいち癇に障る実況だな。

 だけど言われている通り、このままじゃシムーンを出して黒い旋風を張って、カルートで帝を1体倒せたところで、次のターンで俺はしめぇだ。

 いや、シムーンで出した黒い旋風をどうにかしなきゃ、俺のライフはこのターンの終わりに尽きる。

 このドローが最後のチャンス・・・

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 ・・・まだ終わりじゃねぇみたいだな。

 

「俺はマジックカード、闇の誘惑を発動

 デッキからカードを2枚ドローし、その後手札から闇属性モンスター1体を除外する。

 俺が除外するのはBF(ブラックフェザー)―毒風のシムーン。

 

 もう1枚、速攻魔法、魔力の泉を発動

 このカードは相手フィールド上の表側表示のマジック、トラップカードの数だけドローし、その後、自分フィールド上の表側表示のマジック、トラップカードの数だけ手札を捨てる。

 おまえのフィールドには補給部隊、連撃の帝王、帝王の開岩の3枚

 よって3枚ドローし手札1枚を捨てる。」

 

「だったら、俺もてめぇのメインフェイズに墓地の冥帝エレボスの効果を発動させてもらうぜ!

 手札の連撃の帝王を捨てて、墓地から天帝アイテールを手札に加える。

 さらにアイテールの効果発動、墓地の連撃の帝王を除外しアドバンス召喚を行う。

 俺は邪帝ガイウスをリリースして、天帝アイテールをアドバンス召喚!」

 

天帝アイテール「フンッ!」

       ATK2800

 

「帝王の開岩の効果でデッキから怨邪帝ガイウスを手札に加える。

 さらに天帝アイテールの効果で光帝クライスを特殊召喚して効果発動

 俺は怨邪帝ガイウスと天帝従騎イデアを破壊!」

 

光帝クライス「ハハハハッ!!」

      DEF1000

 

 アイテールの効果で呼び出されたクライスは、なぜか嬉しそうにイデアとガイウスを爆散させる。

 破壊されたのは全部アイツのカード、ってことは

 

「クライスの効果で俺は2枚のカードをドロー、さらに補給部隊の効果で1枚ドロー

 さらに墓地へ行ったイデアの効果で除外されていた汎神の帝王を手札に戻す!」

 

 まったく俺のターンで4枚の手札を増やすとかどうなってやがんだ?

 俺の墓地にはブレイクスルー・スキルがある、怨邪帝ガイウスを出しても効果を止められると思って、次のターンで決着をつけるために手札を増やしたってことだろうが

 

「まだだ!マジックカード、強欲で貪欲な壺

 デッキから裏側表示で10枚のカードをゲームから除外し2枚のカードをドロー!

 よし!俺は永続魔法、黒い旋風を発動!」

 

 繋がったぜ!勝利への道筋が!!

 

「こいつは俺がBF(ブラックフェザー)を召喚したとき、その召喚したモンスターより攻撃力の低いBF(ブラックフェザー)モンスターをデッキから手札に加える。

 相手フィールド上にのみモンスターがいるとき、BF(ブラックフェザー)―暁のシロッコはリリースなしで召喚することができる!

 来い!BF(ブラックフェザー)―暁のシロッコ!」

 

暁のシロッコ「ハッ!」

      ATK2000

 

「黒い旋風の効果で攻撃力1300のBF(ブラックフェザー)―疾風のゲイルを手札に加える。

 そしてこいつは自分フィールド上に他のBF(ブラックフェザー)がいるとき手札から特殊召喚できる!」

 

疾風のゲイル「ホウゥル!」

      ATK1300

 

「疾風のゲイルのモンスター効果!1ターンに1度、相手フィールド上の表側表示モンスターの攻撃力、守備力を半分にする!

 天帝アイテールの攻守を半分にするぜ!」

 

天帝アイテール「オォオオオォォォ!?」

       ATK2800→1400

       DEF1000→500

 

 緑色の髪の毛のような頭をもつ小柄な鳥人が巻き起こした風に天帝アイテールが捕らわれる。

 

「ここで連撃の帝王の効果を使うぜ!

 半減させられた天帝アイテールをリリースして、手札から再誕せよ!怨邪帝ガイウス!!」

 

怨邪帝ガイウス「フウウゥゥゥゥン!!ハァ!!」

       ATK2800

 

 アイテールを閉じ込めていた風の檻の中から瘴気があふれ出し風が霧散する。

 そして、お返しとばかりにガイウスの手には瘴気が集められる。

 

「怨邪帝ガイウスの効果!フィールド上のカードを除外し1000ポイントのダメージを相手に与える。

 暁のシロッコにはさよならだ!」

 

「そうはいかねぇ!!墓地のブレイクスルー・スキルを除外し効果発動!

 自分のターンに墓地からこのカードを除外することで、相手フィールド上の効果モンスター1体の効果をターン終了まで無効にする。

 怨邪帝ガイウスの効果は無効だ!!」

 

 闇の瘴気が迫るがシロッコたちの周りに現れたバリアがそれを防ぐ

 

「俺はさらにBF(ブラックフェザー)―残夜のクリスを特殊召喚!」

 

残夜のクリス「ハッ!」

      ATK1900

 

「残夜のクリスも自分フィールド上に他のBF(ブラックフェザー)がいるとき、手札から特殊召喚できる。

 さらに手札からマジックカード、ダウン・ビートを発動!

 レベル3のBF(ブラックフェザー)―疾風のゲイルを墓地へ送り、デッキからゲイルと同じ種族・属性を持つレベルの1つ低いモンスターを特殊召喚する。

 来い!BF(ブラックフェザー)―鉄鎖のフェーン!!」

 

鉄鎖のフェーン「ハッ!」

       ATK500

 

「シンクロしねぇのか!?」

 

「暁のシロッコの効果発動!

 俺のフィールドのBF(ブラックフェザー)1体を選択し、対象モンスター以外のフィールド上のBF(ブラックフェザー)モンスターの攻撃力を対象モンスターに集約する!」

 

 眼鏡をかけた鳥人と橙の頭をした大柄な鳥人がフェーンに力を集約させ、フェーンの鎖が高速で回転し始める。

 

 鉄鎖のフェーン ATK500→4400

 

『おぉ!!鉄鎖のフェーンはダイレクトアタックが可能!大大大逆転ね!!』

 

「バトルだ!鉄鎖のフェーンでダイレクトアタック!!」

 

 鉄鎖のフェーンが鎖分銅を沢渡に投げつける。

 シロッコとクリスがさらにそこに風を加えることで鎖と風による竜巻が発生する。

 

「読めてたぜ!手札のアクションマジック、バトル・チェンジを発動!

 相手が攻撃宣言したとき、そのモンスターの攻撃対象は俺が選択する。

 俺が選択するのは守備表示の光帝クライス。」

 

『あぁ!折角の逆転の一手が!?沢渡選手これを華麗に防いだ!!』

 

 鉄と風の嵐はその矛先を光の帝へと曲げられ消失する。

 

 鉄鎖のフェーン ATK4400→5800

 

「ふふん、守備表示ならダメージは受けないからな、ってあら?どこ行った?」

 

 振り返った沢渡の視線の先には俺はいない。

 なぜなら、俺は

 

――ビュウウゥゥゥン!!

 

「なっ!?アイツいつの間に俺の前に!?」

 

 フェーンたちが作ってくれた風に乗って飛んでいるからな!

 

「俺は手札からBF(ブラックフェザー)―月影のカルートの効果を発動させた。

 カルートはBF(ブラックフェザー)が戦闘を行うとき、そのモンスターの攻撃力を1400ポイントアップさせる。

 本来なら守備表示のモンスターにいくら攻撃力を高めても意味はねぇが、カルートの追い風に乗って俺はフェーンたちの竜巻に乗ったのさ!こいつを手に入れるためにな!!」

 

「なっ!?アクションカード!?」

 

「そしてこいつでしめぇだ!アクションマジック、ワンダーチャンス!

 俺のモンスター1体はこのターン、もう1度攻撃できる!」

 

「うげぇ!?」

 

「くらえ!鉄鎖のフェーンで、もう1度ダイレクトアタック!!ブラックトルネード!!」

 

 仲間の力が結集した嵐が巨大な帝たちを軽々と吹き飛ばし、高速の分銅が沢渡にぶち当たる。

 

「ぐへぇえええぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 LP2000→0


 試合が終わった後のクロウはスタジアムの外にいた。

 フレンドシップカップ2日目はもう1試合ある。それも明日クロウと戦う相手を決める戦いが

 それでもクロウが外にいる理由は

 

「やったね!クロウ!」

 

「すごいや、クロウ兄ちゃん!!」

 

「やっぱりクロウは強いよ!」

 

「あはは、褒めるな褒めるな。

 まだ一回戦だぞ?調子乗っちまうじゃねぇか!」

 

 子供たちに会うためである。

 

「しっかし、ロゼの野郎は何処に行ったんだ?」

 

「あぁ~そういえば今朝からずっと見ないね?」

 

「なんだよ。この俺の逆転勝利を見せつけたかったのによ!なははは!!」

 

(クロウ・・・)

 

(調子乗ってるよ・・・)

 

 平和なやり取り、希望ある笑顔、それが

 

――ドオオオォォォォォォォォンン!!

 

 爆音によって消え去った。

 

「な、なに!?」

 

「スタジアムの方からだ!?」

 

「行ってみよう!クロウ!」

 

「あぁ、一体なにが・・・」

 

 再びスタジアムへ入るクロウ達、彼らの目に飛び込んできたのは

 

――ブウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥン

 

 耳を負いたくなるほどの羽音、それは鮮血のような色をした体を持つ巨大なモンスターが奏でているもの

 そう、それは巨大な『蜂』

 

「なっ!?あれは!!あのモンスターは!!」

 

「行け!決戦のビッグ・バリスタ!スピード・キング☆スカル・フレイムに攻撃!!」

 

「ぐわあああぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 炎をたなびかせる骸の王が巨大な針に貫かれ、主ごと抹殺される。

 

『決まったー!!何度もキングに挑む不屈のデュエリスト、炎城 ムクロ!まさかのワンターンキルで敗退!!

 次なる決戦へ歩みを進めたのはセキュリティのエージェント!アベンジャーΣだぁ!!』

 

「決戦のビッグ・バリスタだと!?」

 

 アベンジャーΣ、そう呼ばれた男のヘルメットからはみ出ている青紫と水色の髪

 バイザーの下から覗く、狂人の目、それをクロウは知っている。

 

「シンジ・・・!!」




やれやれ、せっかく与えたカードを使わず終いですか。
まぁ、相手もその程度の相手ということですね。1ターンキルで終わりましたし
いけないですねぇ、それなりに戦ってもらわないと
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『友の叫びは羽音に消える』
おや?評議会から通信ですか。
いやはや、小言を聞く身にもなってもらいたいものですねぇ?


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友の叫びは羽音に消える

プロローグを除いて50話目達成
放送話数で考えたらここで約1年分くらいですね。(1年半以上かかりましたが)大抵卓球とかあって1年48話くらいになりますけど

テロリスト本格登場、決闘竜どうしようかと思ったけど、デッキが蟻と蜂で微妙に関連あるのであいつになりました。


 行政評議会の評議室、そこに今一人の男が呼び出されていた。

 上質な紫の服、整えられた髪、何を考えているのかわからない笑みを浮かべた貴族然とした男、ジャン・ミシェル・ロジェ

 

「ロジェ、おぬしはここに呼ばれたわけが分かるか?」

 

 ホワイト・タキが内に秘めた怒りを押し殺してロジェに問いかける。

 問いかけられたロジェは一切表情を変えず口を開く

 

「はて?なぜでしょうか?」

 

「フレンドシップカップはシティの商業と観光事業を発展させるための大事なイベント。」

 

「シティ外からも大勢の人々が見に来ていることはわかっているな?」

 

 この場の唯一の女性「アスール」と黄色を基調とした法衣のような服を着た男性「ゲール」がフレンドシップカップの重要性を問い。

 

「そして、狭き門とはいえコモンズでもデュエルで成功できる開かれた門であると同時に、罪を犯したものであっても救済の余地を与えるチャンスの場でもある。」

 

「だが、蜘蛛の糸を掴めるのは再犯性のない、軽犯罪者のみ。

 ですな?議長。」

 

 小柄なギョロ目の男性「グレイ」が街の弱者や落ちこぼれ達への配慮の場でもあるといい。

 オレンジ色の服の男性「ボルドー」が落ちこぼれ達の中の本当の害虫にはその資格はないとホワイトに確認する。

 

「そう・・・だが今回おぬしが出場させたシンジ・ウェーバー

 彼には強いトップスへの憎しみとでもいうべき不満を抱いており、捕まった際の事件もテロ紛いのことをしようとした疑いがあると覚えがあるが・・・

 そんな危険人物をなぜ出場させた?」

 

 ホワイトがロジェを睨む

 ホワイトはユーゴからシンジの起こした事件の顛末を聞いている。

 そして、その事件で唯一命を落とした者がコモンズの、いや、シティを変える風になれたかもしれない男だったことも

 

「ははは、そうですねぇ

 ですが我々セキュリティは犯罪者を取り締まるのもそうですが、それを更生させるのも仕事。」

 

「君はシンジ・ウェーバーが更生し、2度と罪を犯さないと言えると?」

 

「えぇ、私共が築き上げた更生プログラムの真価をお見せしましょう。

 フレンドシップカップは我々、セキュリティが開発した防犯機構をお見せする場でもある。そうでしょう?ホワイト議長。」

 

「・・・・・・」

 

 ホワイトは苦々しい思いをしながらも、それ以上のことを追及できなかった。

 トップスに対して反抗的な姿勢を見せる男が、セキュリティの命令を聞き入れて大会に出場している。

 試合風景を見ても問題発言も行動もない。

 これが更生プログラムの結果なのだとするならば褒められこそすれ、問題として取り上げることはできない。

 

「・・・分かった。

 じゃが、そのようなものを出すならば事前に通達せよ。

 最後の一人の情報もまだ入ってきて無いではないか。」

 

「おや、評議会の皆様にもお楽しみいただけるように我々からのほんのささやかなサプライズをと思ったのですが、これは申し訳ない。

 すぐに手配しますので、しばしお待ちを。」

 

 評議室からロジェが悠然と立ち去ってゆく。

 その背を見るホワイトは言い知れぬ不安を覚えていた。


「あった、これか・・・」

 

 決闘竜(デュエルドラゴン)と究極神、世界規模の大災害を起こしそうな代物を調べるために、まず胡桃沢に詳しそうな人間がいるか聞いたところ、カブレラストーンなどの古代物モチーフのモンスターのイミテーションを売っている露天商が詳しい人物を知っているそうだと聞いた。

 その露天商に接触したところ、たまに来る大学教授の爺さんの研究テーマが南米神話だと聞かされたのだが、どうもその教授は数か月前から調査に出かけておりシティにはいないそうだ。

 だが、その教授の書いた論文が図書館で閲覧可能だというので早速、図書館に来た。もともと来る予定だったが灯台下暗しにならなくてよかった。

 

(さすがに究極神について書かれた記述じゃないか・・・)

「古代南米アンデス地方において行われた祝祭についての論文・・・」

 

 要約すると約5000年前以前から行われていた平和を願うための儀式であり、ナスカ周辺の山々を騎獣で駆け抜けるいわゆるレースが行われていたそうだ。

 悪しき神を封じ込めるため、聖なる神の力を高める儀式だったとされるが現在その文化は受け継がれておらず詳細は調査中だという。

 

「悪しき神って・・・地縛神じゃないだろうな・・・?」

 

 究極神に加えて地縛神もいる世界とかハードモードすぎる!

 

「う~ん、あっ!これじゃない、ケツァルコアトル!」

 

「レイ、それはただの似た名前の翼竜だ。」

 

「えぇ・・・」

 

 俺の調べ物にくっついてきた柚子

 ただ、柚子は計算は得意だがこういう調べ物には向いていない。

 というか、なんで恐竜図鑑を読んでいるんだ?

 

 まぁ、俺が一緒にいるからユーリの心配はいらないし、ユーゴとユートは黒咲と零羅が一緒に行動しているから、もしあの2人の前に現れても2VS1のデュエルで勝利できるだろうし、時間を稼いで柚子を連れて行けばユーリはどっかに飛ばせるからいいんだけどさ。

 調べ物助手としては役に立たないが

 

 さて、南米について、というよりケツァルコアトルについての記述だ。

 ぶっちゃけアンデス地方とのかかわりはこの神様自体にはないのだが、一番古いこの神様の描かれた出土物が見つかったテオティワカンは紀元前後くらいから始まった文明らしいので、それより遥かに古い歴史を持つアンデス文明から伝わった可能性はなきにしもあらずといったところか・・・

 

「やっぱり、そこまで詳しい記述はないな・・・」

 

 「天空城セイバル」「決闘巫女(デュエルシスター)」「決闘神官(デュアク・ウム)」「地錠覇王」「天錠覇王」「解錠覇王」といった究極神にまつわるワードは一つも出てこない。

 この論文をそのまま信用するのならば聖なる神は邪神を封じる善性の神「赤き龍」ということになるが・・・

 

「矢薙の爺さん、どういう神かぐらい調べててくれよ・・・ん?」

 

 通信か、緊急線じゃないから、襲撃じゃなさそうだが・・・相手はデニス?図書館だしチャットモードでいいな。

 

【どうした、デニス?】

 

【あっ遊矢、今日の2戦目の出場者のアベンジャーΣって人なんだけどさ。

 君から預かった子供たちとクロウっていう人の知り合いみたいなんだ。】

 

【クロウの知り合い?】

 

【うん、それにさ、みんなすっごく動揺しているみたい。】

 

 クロウの知り合いで動揺する相手、問題の人の名前から察するとセキュリティの出場者、で、今現在俺が直接見たことないシンクロ次元編の人物・・・

 

【なぁ、そのアベンジャーΣって人をクロウ達はシンジって呼んでなかったか?】

 

【あぁうんそうだよ!知ってたの?】

 

 また厄介ごとか・・・


『シティは一つ!みんな友達ぃー!!

 さぁ!波乱万丈なフレンドシップカップも、もう3日目!今日も張り切っていくわよー!

 まずは昨日、帝の猛攻を潜り抜けて見事勝利を掻っ攫ったクロウ・ホーガンと毎年恒例の名物人物を1ターンキルで葬ったアベンジャーΣの対決よぉ!』

 

――ワアアァァァァァァァァ!!

 

 メリッサの紹介で観客たちから歓声が上がる。

 激戦を制したクロウと、この大会の名物男を1ターンで葬ったアベンジャーΣ

 2人の実力をすでに知っている観客だからこそ、今日はどんな戦いが見れるのかと沸いているのだ。

 本人たちは別にして

 

(シンジ、おめぇが取っ捕まってから3年、いろんなことがあったぜ・・・

 ガキどもの面倒見たり、変な奴と会ったり、あいつの、いや俺たちの夢が帰ってきたり・・・)

 

 スタートの合図を待つ青と黒の2台のDホイール

 青に乗るアベンジャーΣことシンジ・ウェーバーをちらりと見てクロウは思う。

 

 「トップスが嫌いだ!」それはコモンズのほとんどが抱えている不満

 勝ち組は勝ちっぱなしで負け組は負けっぱなし、それがシティという街の社会構図

 敗者たちは自身に降りかかるすべての不幸を勝者の所為にして地を這っている。

 

(這い蹲っているだけじゃ何も変わらねぇ

 変わろうと思えばいつでも変われるのに俺は長いこと変わろうとしなかった。

 アイツがいなくなってから・・・お前はどうなんだ?シンジ・・・)

 

 クロウがシンジを一瞥するものの彼はクロウを意に介さず黙ったままだ。

 3年もの間、獄中で会えなかった友

 その別れ方からして気軽に挨拶など交わせない2人であるが、クロウはシンジが前に歩き出すようになっていることを切に願っている。

 

(それを・・・今から確かめてやるぜ、シンジ!)

 

『さぁ、準決勝に駒を進めるのはどちらか!

 それでは皆さんご一緒に!ライディングデュエル!アクセラレーション!!』

 

『『決闘(デュエル)!!』』

 

――ブオオオオオォォォォオオオン!!

 

 2台のDホイールのエンジンが唸りを上げスタートラインを飛び越える。

 かつてDホイールの基礎を作り上げた男から薫陶を受けたクロウと仲間たちが作り上げた『ブラック・バード』とセキュリティが開発した対Dホイーラー装備『ティンダロス』

 惜しげもなく最新最高のパーツたちで組みあがったそれは、クロウを大きく引き離す。

 

(くっ!?なんだあのスピードは!?

 まさか、リミッターも何もついてないんじゃないだろうな!?)

 

 Dホイールの動力であるモーメントエンジンは無限のエネルギーを作り出すまさしく夢の機械だ。

 コモンズの中にはDホイールに搭載されたこれを発電機代わりに使っている者もいるくらいだ。

 ゆえに試作品のDホイールはその制御が難しく、テスト段階ではとても人が乗る乗り物が出してはいけないスピードが出たこともあった。

 

『アベンジャーΣ、とてつもないスピードでクロウ選手を引き離す!

 そして今~ファーストコーナーを・・・曲がった!

 先攻はアベンジャーΣ!』

 

「俺のターン、俺はマジックカード、手札抹殺を発動

 互いのプレイヤーは手札をすべて捨てて、デッキから捨てた枚数分ドローする。

 俺はアクションカードを含め5枚のカードを捨て、5枚のカードをドロー。」

 

「?俺も5枚のカードを捨てて5枚ドローする!」

 

 ファーストコーナー勝負の最中にアクションカードを拾ったことをクロウは見ていた。

 アド損なしで墓地肥やしとドローができる、デュエリストとしてそれは嬉しいことだ。

 それなのにシンジは何の感情の揺らぎも見せずに淡々と効果処理を行う。

 

(なんだ?この静かさは?

 シンジだったら大喜びするか、こっちを煽ってきそうなもんだが・・・)

 

「墓地へ送られたゴキポールの効果

 このカードが墓地へ送られたとき、デッキからレベル4の昆虫族モンスターを手札に加える。

 B・F(ビー・フォース)―早撃ちのアルバレストを手札に加える。

 

 マジックカード、蘇生の鋒玉を発動

 自分の墓地のB・Fモンスター1体を対象にして特殊召喚する。

 B・F(ビー・フォース)―毒針のニードルを特殊召喚。」

 

毒針のニードル――ブウウウゥゥゥゥゥゥゥ!

       ATK400

 

 無数の光輝く蜂たちがどこからともなく現れ集結し1匹の機械的な蜂へに変わる。

 その頭に付いた単眼はスコープのようになっており、腹にはピンク色の不気味な液体が入って揺れている。

 

「毒針のニードルが召喚、特殊召喚されたことにより、デッキからB・F(ビー・フォース)モンスター、必中のピンを手札に加える。

 B・F(ビー・フォース)―早撃ちのアルバレストを通常召喚。」

 

早撃ちのアルバレスト――ブウウゥゥゥゥゥゥゥゥン!!

          ATK1800

 

「このモンスターが召喚されたとき、墓地からレベル3以下の昆虫族モンスター1体を守備表示で特殊召喚できる。

 レベル3のゴキポールを特殊召喚。」

 

 ゴキポール DEF1200

 

 羽音が響き現れるのは人と同じくらいの大きさの黄色と紫の体を持った巨大なスズメバチ

 その肢にはボールのように丸いゴキブリが4匹抱えられている。

 

「レベル3のゴキポールにレベル2のB・F(ビー・フォース)―毒針のニードルをチューニング

 シンクロ召喚、B・F(ビー・フォース)―霊弓のアズサ。」

 

霊弓のアズサ「ハッ!」

      ATK2200

 

 早撃ちのアルバレストが抱えていたゴキポールを毒針のニードルが串刺しにして、新たなモンスターが生まれる。

 赤いドレスのような鎧を着て弓を構えた女性のモンスター、ただその頭はまるっきり蜂である蜂人間だった。

 

「手札のB・F(ビー・フォース)―必中のピンは自分フィールド上に昆虫族モンスターが存在する場合、手札から特殊召喚できる。」

 

 必中のピン ATK200

 

 霊弓のアズサの横に現れる早撃ちのアルバレストに比べると小さく弱弱しく見える蜂のモンスター

 実際このモンスターは攻撃力もレベルも低いが、その真価は別のところにある。

 

「永続魔法、悪夢の拷問部屋を発動

 このカードが存在する限り、自分が相手プレイヤーに戦闘ダメージ以外のダメージを与えた場合、追加で300ポイントのダメージを与える。」

 

「げっ!?」

 

「必中のピンのモンスター効果

 1ターンに1度、自分フィールド上の必中のピンの数×200ポイントのダメージを与える。」

 

 必中のピンは1体、よってそのダメージは200

 本来なら大したことないダメージだが、今のシンジのフィールドにあるカードはこのダメージを致命的なものにする。

 

「くっ!墓地のダメージ・ダイエットを除外して効果発動!

 このターン、俺が受ける効果ダメージはすべて半分になる!!」

 LP4000→3900

 

「悪夢の拷問部屋の効果で300ポイントの追加ダメージ。

 B・F(ビー・フォース)モンスターが相手プレイヤーに効果ダメージを与えたことにより、霊弓のアズサの効果、必中のピンの元々の攻撃力分のダメージを与える。

 そのダメージ発生に対しても、悪夢の拷問部屋の効果が発生する。」

 

「うわああぁぁぁぁぁ!」

 LP3900→3800→3650→3500

 

 画鋲で指先をチクリと刺されたようなダメージがきっかけで矢や杭が飛び、ブラックバードの車体やクロウの被っているヘルメットを傷つける。

 

「くっ!?これは!?」

(いくらリアルソリッドビジョンだからって、今の衝撃と痛みは・・・本物だ!?)

 

「墓地の蘇生の鋒玉を除外し効果発動

 霊弓のアズサは次のターンの終了時まで戦闘、効果で破壊されない。

 カードを1枚伏せ、ターンエンド。」

 

(シンジのデッキは連続ダメージを与えるのを得意とするデッキ

 どういう訳かは知らねぇが、痛みで頭が回らなくなる前に方を付けるぜ。)

「俺のターン!ドロー!

 俺はBF(ブラックフェザー)―極北のブリザードを召喚して効果発動!」

 

極北のブリザード「クワッ!」

        ATK1300

 

「それに対して手札の増殖するGの効果発動

 このカードを手札から墓地へ送り、このターン相手が特殊召喚する度に、自分はカードを1枚ドローする。」

 

「ちっ、だがここで臆するわけにはいかねぇ!

 極北のブリザードが召喚に成功したことにより墓地のレベル4以下のBF(ブラックフェザー)―逆巻のトルネードを守備表示で特殊召喚!」

 

逆巻のトルネード「カァー!」

        DEF1200

 

 氷の色をしたBFが刃の翼を持つ仲間を呼び、そして逆巻く北風は新たな風を呼ぶ

 

「特殊召喚により1枚ドロー。」

 

「レベル4の逆巻のトルネードにレベル2の極北のブリザードをチューニング!

 星流れて闇を切り裂け!白銀の綺羅星!シンクロ召喚!

 現れろ!BF(ブラックフェザー)―星影のノートゥング!!」

 

星影のノートゥング「ハッ!!」

         ATK2400

 

「特殊召喚により1枚ドロー。」

 

「星影のノートゥングの効果発動!

 特殊召喚に成功したとき、相手に800ポイントのダメージを与え、その後、相手モンスター1体の攻撃力を800ポイントダウンさせる。

 くらえ!舞い戻る剣(ホーミングソード)!!」

 

「ぐっ・・・・この程度の、痛み・・・・」

 LP4000→3200

 

 霊弓のアズサ ATK2200→1400

 

(アイツもこのダメージを受けているのか?セキュリティめ!!)

「趣味の悪ぃことしやがって!手札のマジックカード、ダーク・バーストを発動!

 このカードの効果で墓地に存在する攻撃力1500以下の闇属性モンスター、BF(ブラックフェザー)―逆巻のトルネードを手札に加える。

 そして、星影のノートゥングがいることによって俺はBF(ブラックフェザー)を通常召喚とは別に1度だけ召喚できる。

 もう一度来い!BF(ブラックフェザー)―逆巻のトルネード!」

 

逆巻のトルネード「カァー!!」

        ATK1000

 

「逆巻のトルネードの効果発動!

 こいつが召喚されたとき、相手フィールド上に特殊召喚されたモンスターがいれば、自分の墓地からBF(ブラックフェザー)チューナーを1体効果を無効にして特殊召喚できる。

 来い、BF(ブラックフェザー)―上弦のピナーカ!」

 

上弦のピナーカ「ハッ!」

       ATK1200

 

 弓を持った小柄な鳥人が竜巻の中から現れる。

 

「特殊召喚により1枚ドロー。」

 

「レベル4の逆巻のトルネードにレベル3の上弦のピナーカをチューニング!

 漆黒の翼翻し、雷鳴と共に走れ!電光の斬撃!シンクロ召喚!

 降り注げ、(アサルト) BF(ブラックフェザー)―驟雨のライキリ!!」

 

驟雨のライキリ「はぁぁぁ!!フン!!」

       ATK2600

 

「特殊召喚により1枚ドロー。」

 

(どうせセットしているのは、あのカードなんだろう?)

「驟雨のライキリの効果発動!

 1ターンに1度、ライキリ以外のBF(ブラックフェザー)モンスターの数まで、相手フィールド上のカードを対象として破壊する!

 俺のフィールドには星影のノートゥングが1体!てめぇのセットカードを破壊するぜ!」

 

「トラップ発動、ブービートラップE

 手札を1枚捨て、自分の手札、墓地の永続トラップカード1枚を選び、自分フィールド上にセットする。

 このセットした永続トラップはこのターンでも発動できる。

 墓地の永続トラップ、B・F・N(ビー・フォース・ネスト)をセット。」

 

「何っ!?」

 

 クロウのエースモンスターである鳥人が雷が迸る刀でシンジのセットカードを狙うが、それはクロウの狙いの物ではなく、狙っていたはずのカードが墓地からセットされてしまう。

 

「捨てられた未界域のモスマンの効果発動

 このカードが手札から捨てられた場合、互いのプレイヤーはデッキからカードを1枚ドローし、その後手札1枚を捨てる。

 俺は超進化の繭を捨てる。」

 

「チッ、俺も1枚ドローしてBF―天狗風のヒレンを捨てる。」

B・F・N(ビー・フォース・ネスト)B・F(ビー・フォース)モンスターへの攻撃を無効にし、手札、デッキからB・F(ビー・フォース)モンスターを特殊召喚して、バトルフェイズを強制終了させるカード

 攻撃しても無駄だな。)

「手札を1枚伏せ、エンドフェイズ

 フィールドで効果が無効になっても墓地で発動する効果は無効にされるわけじゃねぇ

 フィールドから墓地へ送られた上弦のピナーカの効果で、デッキからBF(ブラックフェザー)―砂塵のハルマッタンを手札に加える。

 これでターンエンドだ!」

 

『おぉっと、ここでクロウ選手、バトルフェイズを放棄!

 まぁ、あの伏せられた永続トラップはバトルフェイズを強制終了させるみたいだから、攻撃するだけ無駄だもんねぇ~』

 

 クロウが攻撃しなかったことに疑問を抱く観客もいたが、メリッサの実況により納得しヤジを飛ばすことはなかった。

 

「俺のターン、ドロー。

 俺は墓地の超進化の繭の効果を発動

 このカードを除外し墓地の昆虫族モンスター、ゴキポールをデッキへ戻して新たにデッキから1枚ドローする。

 B・F(ビー・フォース)―早撃ちのアルバレストを召喚

 その効果で墓地からB・F(ビー・フォース)―毒針のニードルを特殊召喚。」

 

 早撃ちのアルバレスト ATK1800

 毒針のニードル    ATK400

 

「毒針のニードルの効果でデッキからB・F(ビー・フォース)-追撃のダートを手札に加える。

 必中のピンの効果発動、悪夢の拷問部屋と霊弓のアズサの効果も連動して発動する。」

 

 ピンの針、アズサの弓、そして悪夢の拷問部屋から杭が放たれクロウに襲い掛かる。

 

「うっ!!がっ!!うわあああぁぁぁぁぁぁ!!」

 LP3500→3300→3100→2800→2500

 

 クロウの悲鳴を聞いてもシンジは動じずに淡々とデュエルを続ける。

 

「レベル1の必中のピンにレベル2の毒針のニードルをチューニング

 シンクロ召喚、レベル3、霞鳥クラウソラス。」

 

 霞鳥クラウソラス「クエェェ!」

         DEF2300

 

「ぐうぅぅ・・・そ、そいつは!?」

 

 シンジが呼び出したのはゴーストライダーがジャックと対峙したときに使用した翠緑の巨鳥

 その風が黒い旋風を消し去るために力を振るう。

 

「クラウソラスの効果

 1ターンに1度、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスターの攻撃力を0にして、効果を無効にする。

 (アサルト) BF(ブラックフェザー)―驟雨のライキリを選択。」

 

驟雨のライキリ「うおぉぉぉぉぉ!?」

       ATK2600→0

 

「レベル3の霞鳥クラウソラスにレベル5のB・F(ビー・フォース)―霊弓のアズサをチューニング

 呼応せよ力・・集えよ同胞!怨毒の炎を携え、反抗の矢を放て!シンクロ召喚!

 レベル8、B・F(ビー・フォース)―降魔弓のハマ!!」

 

降魔弓のハマ「ハァ!!」

      ATK2800

 

 新緑の蜂を模した鎧を身に纏う昆虫魔人、降魔弓のハマ

 そのモンスターが現れたことによって今まで淡々と機械の様にデュエルを行っていたシンジが感情を見せる。

 

「これで終わりだ!

 降魔弓のハマで驟雨のライキリを攻撃ぃ!!」

 

降魔弓のハマ「ハアアァァァァァ・・・ハッ!!」

 

驟雨のライキリ「ウッ!・・・ガァァァァ!!」――バンッ

 

 風に捕らわれた鳥人の剣士を魔人の矢が貫き、なおも止まらぬ矢はクロウへと迫る。

 

「ここで終わるわけにはいかねぇ!!

 トラップ発動!体力増強剤スーパーZ!

 自分が2000ポイント以上の戦闘ダメージを受けるとき、ダメージ計算時にライフを4000ポイント回復させる!ぐあああぁぁぁぁぁぁ!!

 

 うぅ・・・そして、俺が2000ポイント以上の戦闘ダメージを受けたことにより墓地のBF(ブラックフェザー)―天狗風のヒレンの効果を発動できる・・・

 墓地からこいつとレベル3以下のBF(ブラックフェザー)を効果を無効にして特殊召喚する!」

 

「だが、俺もB・F(ビー・フォース)―追撃のダートの効果を使う!

 手札のこのカードを墓地に送ることで、戦闘で相手モンスターを破壊したB・F(ビー・フォース)モンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える!

 悪夢の拷問部屋の効果も受けやがれぇ!!」

 

「グッ!ぐわああァァァァァァ!!

 ぐぅ・・・来い!BF(ブラックフェザー)―天狗風のヒレン!上弦のピナーカ!」

 LP3700→900→600

 

天狗風のヒレン「ハッ!」

       DEF2300

 

上弦のピナーカ「カァ!」

       DEF1000

 

 2体のカラス天狗がクロウのもとに駆け付けるが、降魔弓のハマが放った二の矢はクロウのモンスターの間をすり抜けて、クロウへと直撃した。

 そして、降魔弓のハマの新たな鏃はクロウのモンスターたちへと向く

 

「そして、降魔弓のハマが相手に戦闘ダメージを与えたことにより、お前のモンスターの攻撃力はすべて1000下がる。」

 

 星影のノートゥング ATK2400→1400

 上弦のピナーカ   DEF1000

           ATK1200→200

 

「今度こそ本当に終わりだ!シンクロモンスターを素材に呼び出された降魔弓のハマは2回攻撃できる!

 行け!降魔弓のハマで星影のノートゥングに攻撃!!」

 

「へっ!ッ残念だが終わるのは今じゃねぇ!手札からトラップカード、ブラック・ソニックを発動!!」

 

『「手札からトラップ!!?」』

 

 体を襲う痛みを気合で跳ねのけ発動したカードにメリッサとシンジの驚愕の声が重なる。

 

「こいつは自分フィールド上のモンスターがBF(ブラックフェザー)3体のみの場合、手札から発動できる!

 相手モンスターが自分フィールド上のBF(ブラックフェザー)モンスターに攻撃宣言した場合、相手フィールド上に存在するすべての攻撃表示モンスターを除外する!!」

 

星影のノートゥング 天狗風のヒレン 上弦のピナーカ「「「ハァ!!」」」 

 

 3体のBF(ブラックフェザー)達が起こした黒い嵐が羽音をかき消しシンジのモンスターたちを飲み込んでいく

 シンジはその光景を見て呆然としている。

 

「馬鹿・・・な・・・俺のモンスターが・・・・・仲間が・・・」

 

「忘れたのかよシンジ!

 この鉄砲玉のクロウ様がただやられているだけの男じゃねぇことをよ!

 3年で随分、腕が落ちたんじゃねぇのか?」

 

『えっ?シンジ?

 もしかしてアベンジャーΣって、クロウの知り合いなの?』

 

 親しげに話しかけるクロウに対してメリッサが困惑しているが、シンジは俯きぶつぶつと何かをつぶやいてクロウの挑発にもメリッサの困惑にも応えようとしない。

 

「・・・・なんでだ・・・・・・クロウ?・・・・・・なぜ・・・邪魔をする・・・

 俺は・・・手札からB・F(ビー・フォース)―連撃のツインボウを手札から特殊召喚。」

 

連撃のツインボウ――ブゥゥゥゥゥゥ!

        ATK1000

 

「こいつは1ターンに1度、自分のメインフェイズに手札から特殊召喚できるが、この効果を使った後、このターン俺はエクストラデッキから昆虫族モンスター以外を特殊召喚できなくなる。

 

 さらにマジックカード、アリの増殖を発動

 自分フィールド上の昆虫族モンスター、連撃のツインボウをリリースし兵隊アリトークンを2体特殊召喚する。」

 

 兵隊アリトークン DEF1200

 兵隊アリトークン DEF1200

 

 2対の肢が逆向きに生えた足長バチを食い破り2体の巨大なアリが現れる。

 

(地属性、レベル4、攻撃力500、守備力1200の昆虫族トークン

 保険を持っていやがったか。)

 

「さらにマジックカード、死者蘇生を使い墓地からチューナーモンスター、B・F(ビー・フォース)―霊弓のアズサを特殊召喚!」

 

 霊弓のアズサ ATK2200

 

「さらに墓地の妖怪のいたずらの効果発動!

 フィールド上のモンスター1体を対象にしてそいつのレベルを1つ下げる。

 俺は霊弓のアズサのレベルを1つ下げる。」

 

『レベル4のモンスター2体にレベル4のチューナーってこれはっ!』

 

「俺はレベル4の兵隊アリトークン2体にレベル4となった霊弓のアズサをチューニング!

 結集せし絆の力にて逆境に反旗する一矢となれ!シンクロ召喚!!

 現れろ!レベル12!B・F(ビー・フォース)―決戦のビッグ・バリスタ!!」

 

決戦のビッグバリスタ――ブオオオオォォォォォォンン!!

          ATK3000

 

 低音の羽音を響かせて現れる要塞のように巨大な蜂

 その背は翅を含め巨大な弩砲であるバリスタのようになっておりそれに見合うだけの巨大な矢が備えられている。

 

『出たぁー!!最高レベル12のシンクロモンスター!

 炎城ムクロ選手を1ターンキルで葬ったフィニッシャー、決戦のビッグ・バリスタがアベンジャーΣ選手のピンチに堂々登場です!』

 

「決戦のビッグ・バリスタが特殊召喚に成功したとき、自分の墓地の昆虫族モンスターすべてを除外することで、相手フィールド上のモンスターすべての攻撃力、守備力を除外されている昆虫族1体につき、500ポイントダウンさせる!

 俺の除外された昆虫族モンスターは全部で8体、クロウ!お前のモンスターはすべて4000ポイント攻守がダウンする!」

 

星影のノートゥング「グウゥゥゥ!?」

         ATK1400→0

         DEF1600→0

 

上弦のピナーカ「ガアアァァァ!」

       DEF1000→0 

       ATK200→0  

 

天狗風のヒレン「ウゥ・・・」

       DEF2000→0

 

 決戦のビッグ・バリスタの後方から生えている2本の針から無数の毒針が発射されクロウのモンスターたちを蝕む

 

(ノートゥングの攻撃力も0になっちまったか

 だが、メインフェイズ2でこの効果を使ったところで意味はない、あいつの狙いは次のターンのために自分のモンスターを除外すること。)

「やっと、俺の名前を呼んだなシンジ、忘れているかと思ったぜ?」

 

 シンジの狙いを看破し、同時に初めて名前を呼んだシンジにクロウは問いかける。

 

「あぁ・・・忘れるものかよ。

 カードを1枚セットし、ターンエンド。」

 

「俺のターン、ドロー!

 シンジ!おめぇがなんでフレンドシップカップに出ているのかは知らねぇ。

 だがな、俺様にはガキどもに夢を見せるっつぅ目的がある!だから、本気で勝ちに行かせてもらうぜ!

 俺のフィールド上にBF(ブラックフェザー)がいるとき手札のBF(ブラックフェザー)―砂塵のハルマッタンは特殊召喚できる!」

 

砂塵のハルマッタン「クワァ!」

         ATK800

 

「俺はレベル2の砂塵のハルマッタンにレベル3の上弦のピナーカをチューニング!

 黒き烈風よ、絆を紡ぐ追い風となれ!シンクロ召喚!

 飛び立て!(アサルト) BF(ブラックフェザー)―五月雨のソハヤ!」

 

五月雨のソハヤ「ハッ!!」

       ATK1500

 

 真ん丸な胴体をした南国風の足の長い黒い鳥が力を失った上弦のピナーカを新たな存在、蒼き鳥人、五月雨のソハヤへと押し上げる。

 

「五月雨のソハヤの効果発動!

 シンクロ召喚に成功したとき、自分の墓地のA BFモンスターを1体特殊召喚できる。

 戻ってこい!(アサルト) BF(ブラックフェザー)―驟雨のライキリ!!」

 

驟雨のライキリ「ハッ!!」

       ATK2600

 

「さらに俺はBF(ブラックフェザー)―竜巻のハリケーンを召喚!」

 

竜巻のハリケーン「フンッ!」

        ATK0

 

 鶏のように赤い鶏冠を持つ筋肉質な鳥人がその肉体美を見せつける。

 これでクロウのモンスターは5体となり、ライキリの刀にその力が雷となって結集する。

 

「ここで驟雨のライキリの効果発動!

 1ターンに1度、ライキリ以外のBF(ブラックフェザー)の数まで相手フィールド上のカードを破壊する!

 俺のフィールドには4体、よってお前の決戦のビッグ・バリスタ、悪夢の拷問部屋、セットカード2枚をすべて破壊するぜ!!

 やれ!ライキリ!!」

 

驟雨のライキリ「はあああぁぁぁぁぁぁぁ!!チェストオオォォォォ!!」

 

「手札を1枚捨てトラップ発動!レインボー・ライフ!

 このターン俺が受けるすべてのダメージは回復となる!

 そして墓地へ送られたゴキポールの効果でデッキからジャイアント・ワームを手札に加える。」

 

 ライキリが振るう稲妻の太刀がシンジのフィールドのすべてのカードを切り裂く

 だが、崩壊する決戦のビッグ・バリスタの中から3体のモンスターが飛び立つ

 

 降魔弓のハマ     ATK2800

 早撃ちのアルバレスト ATK1800

 早撃ちのアルバレスト ATK1800

 

「シンクロ召喚された決戦のビック・バリスタが破壊されたことにより、除外されていたレベル11以下の昆虫族モンスターを3体選んで特殊召喚させてもらった!」

 

(ちっ、レインボーライフの所為で攻撃してもライフ差が開いちまうか・・・だったら)

「俺はマジックカード、おろかな埋葬を発動しデッキからBF(ブラックフェザー)―南風のアウステルを墓地に送る。

 俺はレベル7の(アサルト) BF(ブラックフェザー)―驟雨のライキリにBF(ブラックフェザー)を使ってシンクロ召喚されたことによってチューナーとして扱うようになったレベル5の(アサルト) BF(ブラックフェザー)―五月雨のソハヤをチューニング!

漆黒の翼よ!雷の力宿して戦列に轟け!シンクロ召喚!

切り裂け!(アサルト) BF(ブラックフェザー)―神立のオニマル!!」

 

神立のオニマル「タアッ!!」

       DEF2000

 

「まだまだ!レベル6のBF(ブラックフェザー)―星影のノートゥングにレベル1の竜巻のハリケーンをチューニング!

 漆黒の力束ね、さらなる力を現出せよ!!シンクロ召喚!

 現れろBF(ブラックフェザー) (テイマー)―漆黒のホーク・ジョー!!」

 

漆黒のホーク・ジョー「ハッ!!」

          DEF2000

 

「漆黒のホーク・ジョーの効果発動!

 1ターンに1度、自分の墓地のレベル5以上のBF(ブラックフェザー)モンスターを1体特殊召喚する。

 戻ってこい!(アサルト) BF(ブラックフェザー)―五月雨のソハヤ!」

 

 五月雨のソハヤ ATK1000

 

「さらに俺はレベル5の(アサルト) BF(ブラックフェザー)五月雨のソハヤにレベル5のBF(ブラックフェザー)―天狗風のヒレンをチューニング!

 黒き旋風よ、嵐となって天空を突き抜けろ!シンクロ召喚!!

 荒ぶれ!BF(ブラックフェザー)―フルアーマード・ウィング!!」

 

フルアーマード・ウィング「ハアァァァァ!!タアッ!!」

            ATK3000

 

 神鳴りの剣士、漆黒の鳥人使い、そして大剣と大砲を両腕に装備した完全武装の鳥人が立ち並ぶ。

 攻撃できないからこその全力の布陣。

 そして、最悪の形で別れてしまった友への自分の思いを届けるための布陣

 

「墓地の南風のアウステルの効果発動!

 このカードを除外して、相手フィールド上の表側表示モンスターすべてに楔カウンターを打ち込む!」

 

 降魔弓のハマ     楔C0→1

 早撃ちのアルバレスト 楔C0→1

 早撃ちのアルバレスト 楔C0→1

 

BF(ブラックフェザー)―フルアーマード・ウィングの効果発動!

 1ターンに1度、相手フィールド上の楔カウンターの乗ったモンスター1体を対象にして、そのモンスターのコントロールを得る!

 俺はB・F(ビー・フォース)―降魔弓のハマのコントロールを得る。」

 

 降魔弓のハマがシンジのフィールドからクロウのフィールドへと移動する。

 その様をシンジは苦々しい顔で見つめる。

 

「シンジ、3年前、お前は馬鹿なことをしてとんでもねぇことを起こしちまった・・・

 長いこと俺もそれで夢は終わっちまったと思っていた。

 だがな、終わっちまった後にもいくらでも夢なんてもんは作れるってことに気付かされた。

 お前がこの大会に出てるってことはもうすぐ務所から出てくるんだろ?

 だからよ、もう一度始めないか?俺たちの夢を、俺たちと、一緒に・・・」

 

 同じ友を失ったもの、だがシンジの立場は加害者であり、クロウは遺族の立場だ。

 普通ならクロウはシンジに怒りの言葉をぶつける立場だろうが、彼はそれをしなかった。

 そんなことしても彼らの友は戻らない。

 そして、その友ならシンジをきっと許すだろうと思った。仲間として、友はシンジを命を懸けて守ったのだから

 

「俺は、お前を許す!

 他の奴もとやかく言うと思うし、ボルガーの奴なんかは頑固だから骨が折れそうだが、きっと何とかする!だから「無理を言うなよ・・・」

 

 だが、その許しはシンジには届かない。

 

「お前が、お前たちが許そうが許すまいが、あいつは帰ってこないだろうが・・・」

 

 クロウは未来を見ているが、シンジは過去しか見ていないのだから

 

「シンジ・・・俺はカードを1枚伏せ、エンドフェイズ、墓地に送られた上弦のピナーカの効果でデッキからBF(ブラックフェザー)―月影のカルートを手札に加え、ターンエンドだ・・・」

 

「なんだよ、フルアーマード・ウィングは楔カウンターが乗ったモンスターを全滅させる効果がある。

 使わないのかよ?」

 

「あぁ。」

 

「はっ、甘ちゃんだなお前は・・・許すだとか、俺のモンスターを破壊しないとか・・・

 俺のターン、ドロー

 なぁ、クロウ?アイツがさ、戻ってこれる方法があるって言ったらどうする?」


「Σ、バイタル不安定、ですが召喚エネルギーが増大しています。」

 

「ふむ、頃合いですね。

 まぁ、余計なことを口走って街を混乱させられても面倒ですし・・・

 実況ヘリに連絡、燃料が切れたとでも理由を付けて下がらせなさい。

 それと、これよりΣの音声はこちらが吹き替えたものを使うように。」

 

「はっ!了解いたしました!」

 

 セキュリティ本部の指令所にてロジェはオペレーターたちに指示を出す。

 彼は張りの良い椅子に深く腰かけ、画面の向こうでデュエルを行う自身の計画のピースたちを見てほくそ笑む

 

「やはり、人形より、使い手としての方が濃く現れますか・・・

 では、次の試合のアレはもしかしたら余計な処置だったかもしれませね?

 まぁ、再利用できるだけ、いや、彼ならばアレからすら引き出してくれるやもしれませんね。」

 

 期待に胸を膨らまし、ロジェは鼻をこする。

 その後ろでは不気味な光を発するポッドが乱立していた。

 

――ゴポォ・・・


 アイツが戻ってくるだと・・・!?

 

「アイツが・・・?」

 

「あぁ、お前、俺が何のためにこの大会に出てるのかって聞いたよな?

 それさ、俺がお前らの仲間として戻るには、俺がアイツを呼び戻すしかないって思ってな?だからこの大会に出た。」

 

 そんな馬鹿な話あるか、あいつは死んだんだ。

 どんな方法であれデュエルモンスターじゃねぇんだから呼び戻すなんてことできるはずがない。

 この大会で優勝できても、もういないものを呼び戻すなんて・・・

 

「俺は墓地の昆虫族モンスター、ゴキポールを除外してジャイアントワームを特殊召喚。

 さらにチューナーモンスター、インフェルニティ・ビートルを召喚・・・」

 

ジャイアントワーム「シャアァァァァァァ!!」

         ATK1900

 

インフェルニティ・ビートル「ズビイィィィィィ!」

             ATK1200

 

 現れたのは見たまんまの巨大なムカデとカブトムシのモンスター、ここでチューナーを引かれたか

 

「インフェルニティ・ビートルの効果発動

 自分の手札が0枚の場合、このカードをリリースすることでデッキからインフェルニティ・ビートルを2体まで特殊召喚できる。」

 

インフェルニティ・ビートル「ズビイィィィィィ!」

             ATK1200

 

インフェルニティ・ビートル「ズビイィィィィィ!」

             ATK1200

 

 増殖能力を持ったチューナーだとぉ!?

 

「俺はレベル4のジャイアントワームにレベル2のインフェルニティ・ビートルをチューニング!

 その翅で爆風を巻き起こし、その一刺しで冥府の道を切り開け、シンクロ召喚

 来い、レベル6、B・F(ビー・フォース)―突撃のヴォウジェ。」

 

 赤い翅に青い鋼殻を持った蜂人間が槍のような斧のような武器を振り上げる。

 突撃のヴォウジェ、自分の攻撃力以上のモンスターと戦うとき、相手モンスターの攻撃力をダメージ計算時のみ半分にするモンスターだ。

 こいつで降魔弓のハマの攻撃力を半分にしようってハラなんだろうが、そうはいかねぇぜ。

 

「トラップ発動!BF(ブラックフェザー)―アンカー!

 自分フィールド上のBF(ブラックフェザー)モンスターをリリースして、そのモンスターの攻撃力をエンドフェイズ時まで、俺のフィールドのシンクロモンスターに加える!

 俺はBF(ブラックフェザー) (テイマー)―漆黒のホーク・ジョーをリリースしてB・F(ビー・フォース)―降魔弓のハマの攻撃力をアップさせるぜ!」

 

 降魔弓のハマ ATK2800→5400

 

 これで突撃のヴォウジェの効果で半減させられても降魔弓のハマの攻撃力は2700

 フルアーマード・ウイングに効果は効かねぇから、これで突撃のヴォウジェで突破できるモンスターはいなくなった!

 

「ヴォウジェじゃ突破できなくなったか、だがクロウ、これで終わりだと思うなよ!

 俺はレベル6のB・F(ビー・フォース)―突撃のヴォウジェにレベル2の闇属性チューナー、インフェルニティ・ビートルをチューニング!」

 

――ブチッ!グチュ、ブウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン

 

 インフェルニティ・ビートルと突撃のヴォウジェの体を喰い破り、無数の蛆が這いだし次々に羽化して蠅となって立ち上る。

 なんだっ!?普通のシンクロ召喚じゃねぇ!?

 

「魔神を束ねし蠅の王よ!!虫唾の走る世界に陰りを!!シンクロ召喚!!」

 

 無数の蠅はだんだんとその密度を増して巨大な蠅となる、さらにその尾は蛇のごとく伸び、その頭にはさらに2対の竜の首が、その中心には女の上半身が生えたその様は、まさに

 

「魔王龍ベエルゼ!!」

 

 魔王だ。

 

魔王龍ベエルゼ「「「「グオオォォォォォォォォォォォォ!!」」」」

       ATK3000

 

 2つの竜の首が、人の口が、蠅の頭が、それぞれ底冷えのする唸り声をあげる。

 

「クロウ、お前、どうせアイツを呼び戻す方法なんかないとか思ってるんだろ?」

 

「あ、当たり前だろ!あいつは死んじまったんだ!

 死んだ奴を呼び戻すなんて・・・生き返らせるなんて!神様の奇跡でもなきゃ無理な話だろうが!!」

 

「あるんだよ。神様も、奇跡ってやつも・・・」

 

 何っ!?

 

「だから、俺の邪魔をするんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!クロウ!!

 アクションカード、イリュージョン・ファイヤー!

 このターン、俺はベエルゼ以外のモンスターの攻撃を放棄し、ベエルゼは俺のフィールド上の他のモンスターの数まで攻撃することができる!

 魔王龍ベエルゼでB・F(ビー・フォース)―降魔弓のハマを攻撃ぃ!!」

 

「なっ!!なんだと!?」

 

 シンジは拾ったアクションカードを即座に発動させ、魔王龍ベエルゼに、強化された降魔弓のハマに向かって攻撃の命令を出す。

 攻撃された降魔弓のハマは近づいてくる化け物に向かって矢を放つ

 だが、矢が当たった場所は無数の蠅へと再び変わり、その矢はシンジへと突き刺さる。

 

「うぐっ!!」

 LP3200→800

 

「シンジ!?」

 

 このデュエルはなぜだかダメージが本物の衝撃となって襲ってくる。

 2400ものライフを一気に削られた衝撃は身に染みてわかる。

 俺も降魔弓のハマの攻撃で、肋に罅が入りそうな衝撃を受けた。

 

「はぁはぁ・・・痛てぇ・・・・痛てぇぞ!クロウ!!」

 

魔王龍べエルゼ「「「「オオオオオォォォォォォォォォォォォォ!!」」」」

       ATK3000→5400

 

「何っ!?攻撃力が上がった!?」

 

「魔王龍ベエルゼは自身の戦闘によるダメージが発生したとき、俺が負ったダメージの数値分自身の攻撃力をアップさせる!!」

 

「くっ!フルアーマード・ウィングの効果発動!

 相手モンスターの効果が発生したときそのモンスターに楔カウンターを乗せる!」

 

 魔王龍ベエルゼ 楔C0→1

 

「はははははっ!!そんなことをしてももう遅い!行け!喰らえ!魔王龍ベエルゼ!!

 BF(ブラックフェザー)―フルアーマード・ウィングに攻撃ぃ!!」

 

 そう、もう遅い。

 俺の手札は二の太刀のエテジアと月影のカルート、フルアーマード・ウィングにはカルートの効果を使えねぇし、エテジアの効果を使えるのはダメージステップ終了時だ。

 

「喰らい尽くせ!魔王の赦肉祭(ベエルゼ・カーニバル)!!」

 

――バキャ!バキ!ボキ!オオォォォォォォォォォォ!!

 

 ベエルゼがフルアーマード・ウィングを巨大な蠅の頭の口で噛み砕き、2本の竜の首から漆黒のブレスのように見える蠅が不快な羽音を伴って放たれる。

 ごめんな、フランク、アマンダ、タナー・・・お前らの夢になるって言ったのにこんな所で終わりでよ・・・

 ロゼ、すまねぇ、後は頼んだ・・・

 

「うわあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 LP600→0




シンジ、ウェーバー!!
キサマはあいつを死なせただけではなく、自らの友すら手に掛けようというのか!!
この街の恥を煮詰めた様な男め!
この俺、ジャック・アトラス直々に葬ってやりたいが、ロゼの奴が軽くつぶすだろう!
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『蘇る悪夢』
この俺との約束を違えることなど許さぬからな!
前座どもなど早く倒して、この俺にたどり着け!ロゼ!!


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蘇る悪夢

この変態書いてて楽しぃ~!ってな感じで筆が乗って久しぶりに週1更新です。


「クロウ!!」

 

 コース上で魔王龍 ベエルゼの攻撃を受けクラッシュしたクロウは大会スタッフによってスタジアムへと戻ってきた。

 なぜ、直接病院へ搬送されなかったかというと・・・

 

「命に別状はありません。

 ただ、病院へ運びちゃんとした治療をしないと、身体不全を起こすかもしれません。

 ですが彼はコモンズなので・・・負けてしまいましたし、その・・・治療費が・・・」

 

「私が彼の治療費を払います。

 彼には守るべきものがある、ここで終わらせるわけにはいかない!」

 

「わかりました。急ぎ手配いたします。

 彼のDホイールは3番ガレージに搬送しますので、後で受け取りに来てください。」

 

「はい、わかりました。」

 

 スタッフは救急車を手配するために、この場を後にする。

 俺は担架に眠らされたクロウを見る。

 

「クロウ・・・」

 

「ロ・・・ゼ・・?」

 

 気を失っていたクロウが、俺の声に反応したのか目を覚ます。

 命に別状はないとはいえ、Dホイールが破損するほどの衝撃で体を叩きつけられたため、擦り傷や打撲がひどいし、肩や肋骨にひびが入っているかもしれない。

 痛みでしゃべるのもきついはずだ。

 

「クロウ、しゃべらなくていい。寝ていろ。」

 

「いや・・大丈夫、うっ・・・」

 

「ほら、無理するな。

 救急車は俺の方で呼んだから病院で診てもらえ、治療費は俺の方で出しておくから。」

 

「すまねぇ、大口ほざいてこのザマなんてな・・・」

 

「そういうこともあるさ。」

 

「あぁ、だがよ・・・そういうことで済まされないこともある!

 あいつは、シンジは!こともあろうにあいつを蘇らせるとかほざきやがった!!くっ・・・」

 

「無理をするな、クロウ!

 で、どういうことだ?」

 

 興奮したクロウが痛みで顔を顰める。

 甦らせる?スタジアムで流れていた映像はあたりさわりのない会話しかしていなかったが・・・

 そうか、アフレコだったか・・・

 

「どうもこうも俺だってわかんねぇ!

 神様だの、奇跡だの、あいつはそんなもの信じちゃいなかったのに・・・

 変な風に変わっちまいやがって!」

 

 たしかに究極神の力、いや、もしかしたら地縛神の力でも死者蘇生はできる。

 大半碌なものにはならないけど

 

「クロウ、古今東西、死者蘇生の逸話っていうのはよくある。

 そのシンジっていうやつも、それに縋り付きたくなることもあるだろう。

 クロウだって、戻れるものなら戻ってきてほしいんだろう?」

 

「それは・・・」

 

「だけど、死者の眠りを覚まさせるのは大抵碌でもないことにしかならない。

 お盆の時にでも会うくらいじゃないと、な?」

 

「・・・・・・へっ、あいつが戻ってきたら、街がこんなので落ち込んじまうだろうな・・・」

 

「そう思うなら、変えていかないとな。お前たちで。」

 

「あぁ、そうだな・・・

 なぁ、ロゼ?お前、あいつを、シンジを止めてくれねぇか?」

 

「戻って来てほしいんじゃないのか?」

 

 アイツを倒すのは決定事項だ。

 ロジェの計画の全容はまだ見えないが、奴の息がかかったデュエリストを勝たせるわけにはいかない。

 それに、ジャックとの約束もあるし

 

「あぁ、でも、あいつにこんな街を見せられるかよ。

 会って話したいことは在るし、また一緒に夢を追っかけて見てぇとも思う。

 けどよ、やべぇことやって蘇ってもアイツはちぃ~っとも喜ばねぇだろうさ。」

 

 大量の魂を生贄に捧げたり、究極神の依り代だったり、確かにあの人ならそんなことで蘇ってもうれしくはないだろうな。

 

「あいつは仲間を守って逝っちまった。

 でもそれはアイツが選んだ道だ。

 今更、道を曲げて戻ってこいなんて言えねぇよ。」

 

 死んだ人は死んだ人なりに道を進んでいるか、たしかに・・・そうなのかもな。

 

「ジャックとの約束もあることだし、わかった。

 あのシンジってやつをボコボコにしてやろう。」

 

「ハッ、手加減・・・なんて期待できねぇな。」

 

「当たり前だ。」

 

 俺たちは2人して苦笑する。

 そのあと救急車が来てクロウは搬送されていった。

 さて、負けられない理由が増えたか・・・


『多少アクシデントが発生しましたが、クロウ選手の命には別状なし!

 病院に搬送されたとのことです。いや、よかった~

 では続いての試合を始めましょう!本日の第二試合は皆さんお待ちかねのゴーストライダーことロゼ・ジェスター!!』

 

――わあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

 観衆たちは先ほどのクロウの事故など気にも留めないとばかりに歓声を送る。

 シティの大半の人間にとって勝者こそ讃えるもの、それはコモンズでもトップスでも考え方は変わらない。

 いや、コモンズという敗者が多すぎていちいち気に留められないだけかもしれない。

 

『そして対峙するのは、セキュリティの開発したライディングデュエルロイド、デストロイヤーΛってあら?』

 

 入場口からDホイールに乗って登場しすぐさまスターティンググリットに着いたロゼと違い、デストロイヤーΛと呼ばれたモノは歩いて入場口から登場する。

 異常なまでに鍛え上げられた上半身、短くざっくばらんと切られた白い髪、何より特徴的なのはライディングスーツから見える肌に無数の黄色い入れ墨が入れられていること

 

『セ、セルゲイ・ヴォルコフ!?

 えっ、終身刑のデュエリストクラッシャーがなんでフレンドシップカップに出ているのー!?』

 

 その男は決してフレンドシップカップという街おこしのイベントには出てはいけない重犯罪者

 プロアマ問わず腕に覚えがあるデュエリストを再起不能にし、そのトラウマは今でもシティに息づいている悪夢のデュエリストである。

 

『え、えぇ~今情報が入ってきました。

 彼はセルゲイ・ヴォルコフをモデルにした対違法Dホイーラー用デュエルロイドとのことです。

 えぇ~本当にロボット?本人じゃないの?』

 

 ソレは件の男とは別の物であると説明を受けたがそれはあまりにも似すぎていた。

 よくよく見れば耳や腕、左目などは確かに機械でありロボットだと言われればそうだとも思える姿をしている。

 

『こ、これは間接的にシティのお騒がせ者同士のデュエルということになりますね~

 っと、彼のDホイールは?』

 

――ヴォオオォォォォォォン!

 

 メリッサが疑問を投げかけたその時、重低音を響かせて奇妙なDホイールがやってくる。

 前輪に3輪、後輪に1輪のホイールがあり、金と黒に彩られた騎馬鎧や骸骨にも似たデザインをしたトライク型のDホイール

 乗り手の前にやってくるのかと思いきや、デストロイヤーΛは

 

「・・・・・・!!」

 

――ガシュ!ゴオオオォォォンン!!

 

 足からジェットを噴射して飛翔した。

 

『えっ?・・・えええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?』

 

 空を駆けるデストロイヤーΛ、地を走るDホイール

 Dホイールは前輪ウィリーを行うと後部座席に当たる部分でデストロイヤーΛの下半身を格納

 

「オォオおォォおおォォォォォォぉ!!」

 

 ボディ後方と前輪部分が展開され、腰に当たる部分で赤い光がデュエルディスクとなって起動する。

 

「うおおぉぉぉぉぉ!!」

 

 人間離れ、というか人間じゃないアピールを行うデストロイヤーΛに、シティ中の人間が困惑する。

 唯一その様に動揺しなかった人間、対戦相手であるロゼこと遊矢は


 シャチホコみたいだな・・・

 

 Dホイールのデザインに顔のようなものがあり、それが下の方にくっ付いており、エビ反りになったようなその恰好は腕の付いたシャチホコのようだ。

 

 しかしデュエルロイドか・・・

 原作だとDホイールに無理やり取り込まれる様な形で変形していた覚えがあるが、自分で合体したし改造人間のサイボーグなのかマジモンのアンドロイドなのか判別に困るな・・・

 もともとセルゲイは全身改造だったから余計に

 

『さ、さぁ、両者の準備も整ったことですしそろそろデュエルタ~イムと行きましょうか?』

 

 さすがにあのアナウンサーも困惑しているな。

 

『アクションフィールド、オン!フィールド魔法、クロス・オーバー・アクセルゥ!』

 

 この一輪車のような恰好、全くスピードが出なさそうに見えてジャックが手古摺るほど早いみたいだし、何よりあのアーム・・・

 

【デュエルモード、オン、オートパイロット、スタンバイ】

 

『ライディングデュエル!アクセラレーション!!』

 

『『決闘(デュエル)!!』』

 

 アクセルを入れる。

 

――ブオォン!

 

 振りをしてバックして伸びてきたアームをかわす。

 

『おぉぉ!?なんとデストロイヤーΛ、いきなりのラフプレイ!

 いや、これは発進のためにコースを叩いた!?』

 

 一輪車はある程度のスピードがないと倒れてしまう。

 発進前は手を付くようにコースにつけられていたアームは蹴った時にこちらへと当たりそうになるコースで上がってきた。

 ライディングデュエルはオートパイロットにより事故自体は少ないそうだが、脅しや煽り目的のラフプレイは認められているそうなので文句は言えない。

 普通は接触事故につながるので相当な腕がないと出来もしないらしいが。

 

『ゴーストライダーこれを予想していたのかバックして躱した!

 しかし、それによって大きく出遅れてしまったぁ!!』

 

 Dホイールが警告音を吐いている。

 警告範囲はセルゲイのアームの範囲、アニメのジャックみたいに隙を見ないと抜けないなこりゃ。

 

「先攻は俺だ。

 マジックカード、一時休戦を発動

 互いのプレイヤーはデッキからカードを1枚ドローし、次のターンのエンドフェイズまで互いにダメージを受けない。

 

 さらに永続魔法、守護神の宝札を発動。

 このカードは手札を5枚捨て発動し2枚のカードをドローする。

 このカードがマジック、トラップゾーンにある限り、自分のドローフェイズの通常ドローは2枚になる。」

 

 いつの間にやら確保されていたアクションカードごとセルゲイの手札が捨てられ新たに2枚のカードがドローされる。

 さて、何を捨てたのか・・・

 

「墓地へ送られたグローアップ・ブルーム、牛頭鬼の効果発動。」

 

 アンデットか!!

 

「牛頭鬼は1ターンに1度、このカードが墓地へ送られた場合、自分の墓地から牛頭鬼以外のアンデット族モンスター1体を除外して、手札からアンデット族モンスターを特殊召喚する。

 墓地のシノビネクロを除外して、手札のファラオの化身を特殊召喚。」

 

 ファラオの化身 ATK400

 

 現れたのは体高ほどもある黄金の人面マスクを被った獣

 アンデッド要素は仮面しかない。

 

「墓地に送られたグローアップ・ブルームの効果

 1ターンに1度、このカードが墓地へ送られた場合、墓地のこのカードを除外し、デッキからレベル5以上のアンデット族モンスターを1体手札に加える。

 俺は地獄の門番イル・ブラッドを手札に加える。

 

 そして、牛頭鬼のコストで墓地から除外したシノビネクロの効果

 このカードを特殊召喚する。」

 

シノビネクロ「イヒヒッ!」

      ATK800

 

 連鎖して現れる青白い炎を身に纏う忍者の骸骨

 

「マジックカード、闇の誘惑を発動

 デッキから2枚ドローし、その後、手札の闇属性の地獄の門番イル・ブラッドを除外する。

 マジックカード、アームズ・ホールを発動。

 デッキトップを1枚墓地へ送り、デッキから装備魔法カード、ヴィシャス・クローを手札に加える。

 

 墓地の馬頭鬼の効果発動

 このカードを除外し、墓地のアンデット族モンスターを1体特殊召喚する。

 アームズ・ホールのコストで送られたゴブリンゾンビを特殊召喚。」

 

ゴブリンゾンビ「グワァァァ・・・」

       ATK1100

 

 赤いレンズのような目のゴブリンのゾンビ

 この蘇生によってシノビネクロのもう一つの効果が起動する。

 

「シノビネクロの効果発動。

 このカードがモンスターゾーンに存在する状態で、自分の墓地からアンデット族モンスターが特殊召喚された場合、デッキから1枚ドローし、その後手札を1枚選んで捨てる。

 俺は手札からユニゾンビを捨てる。」

 

『えっ、あれぇ?手札5枚捨てたのにモンスター3体になってる?』

 

「レベル3のファラオの化身にレベル2のチューナー、シノビネクロをチューニング。

 身が腐れ、病は呪い、光に背きし汝の名、シンクロ召喚

 現れよ、レベル5、毒の魔妖―土蜘蛛。」

 

毒の魔妖―土蜘蛛「キシャアアァァァァァァぁァァァ!!」

        ATK2000

 

 現れたのは灰色の外骨格を持った上半身が鬼、下半身が蜘蛛の化け物

 だが、これで終わりではない。

 

「自身の効果で特殊召喚されたシノビネクロは除外される。

 そして、シンクロ素材として墓地に置かれたファラオの化身の効果を発動

 自分の墓地からレベル4以下のアンデット族モンスターを1体対象にし、そのモンスターを特殊召喚する。

 俺はチューナーモンスター、ユニゾンビを特殊召喚。」

 

ユニゾンビ「あぁ・・・」「うわぁ・・・・」

     ATK1300

 

 青白い肌の大柄でデブのゾンビと緑色の肌のガリガリにやせ細ったゾンビが肩を組んで現れる。

 互いに足が1本無いため、二人二脚を行って走っている姿はあまりにもシュールだ。

 

「ユニゾンビの効果発動

 1ターンに1度、フィールドの表側表示モンスターを1体選び、デッキからアンデット族モンスターを墓地へ送り、そのモンスターのレベルを1つ上げる。

 デッキから馬頭鬼を墓地へ送り、ユニゾンビのレベルを1つ上げる。」

 

 ユニゾンビ LV3→4

 

「俺はレベル5の毒の魔妖―土蜘蛛にレベル4となったユニゾンビをチューニング

 美は妖し、怪しは美、幽世の焔で灯火滅せ、シンクロ召喚

 現れろ、レベル9、麗の魔妖―妖狐。」

 

麗の魔妖―妖狐「ふふふ、こぉん。」

        ATK2900

 

 怪しい美しさを持つ人型の九尾の狐、朱の入った白い体毛を金糸の入った紫の導師服が引き立てる。

 

「墓地の2体目の馬頭鬼の効果発動

 再びチューナーモンスター、ユニゾンビを特殊召喚。」

 

 ユニゾンビ ATK1300

 

「レベル4のゴブリンゾンビにレベル3のユニゾンビをチュー二ング

 世の理に背きし魂よ、輪廻を壊し闇より飛翔せよ、シンクロ召喚

 現れよ、レベル7、真紅眼の(レッドアイズ)不屍竜(アンデットネクロドラゴン)。」

 

真紅眼の(レッドアイズ)不屍竜(アンデットネクロドラゴン)「グオオォォォォォォォォォ!!」

       ATK2400→2900

 

 全身のあちこちから不気味な炎を上げ、恨み声のような叫びをあげる真紅の瞳の黒竜

 前肢を覆っている鋼殻もささくれ立ったり、ドロドロになっていたりと見る者に忌避感を覚えさせる。

 

真紅眼の(レッドアイズ)不屍竜(アンデットネクロドラゴン)は互いの墓地に存在するアンデット族モンスター1体に付き攻撃力を100ポイント上げる。

 そしてフィールドから墓地へ送られたゴブリンゾンビの効果で、守備力1200以下のアンデット族モンスター、不知火の隠者を手札に加える。

 手札を1枚伏せ、ターンを終了する。」

 

『え、えぇ・・・手札を5枚捨てたわよね?

 最上級のシンクロモンスターが2体並んで、手札2枚とセットカードまであるわよ?』

 

 さすがアンデット族、馬頭鬼を使いたい放題なせいでめちゃくちゃな動きをしやがる。

 

「俺のターン、ドロー」

 

「ぐひっ・・・」

 

 俺のターンが始まると同時にセルゲイのDホイールのアームが新たなアクションカードを手にする。

 なんだか気持ち悪い笑いが聞こえたような・・・

 

「トラップ発動、死なばもろとも

 互いの手札が3枚以上の時、その手札をすべて好きな順番でデッキの下に戻し、自分はこの効果でお互いがデッキに戻したカードの数×300ポイントのライフを失う!」

 

 俺の手札は7枚、セルゲイの手札はアクションカードを含め3枚、発動条件は満たしているがアクションカードはデッキに加えられないため戻すカードは1枚減り2700のライフがセルゲイから削られる。

 

「あひいぃぃぃぃぃぃぃぃww」

 LP4000→1300

 

 いや、本人だろアレ

 

「はぁはぁ、ぐひぃひひ・・・その後、互いのプレイヤーは手札が5枚になるようにドローする。」

 

 顔に玉の汗をかきながら気持ち悪い笑いを浮かべる変態(セルゲイ)

 一時休戦のデメリットどころか、後攻によるハンドアドバンテージをも失わせてきたか。

 墓地も0だし

 

「ははは・・・見たかこの美しきコンボ!

 見よ、このスピードと一体となりし美しきフォルムを!」

 

 いや、デザインに関しては凝りすぎて失敗している気がする。

 にしてもコンボ決まったせいか、テンション高いなこの変態、リミッターとかどうしたんだ?

 

「これで圧倒的にキサマは不利となった!さぁどうするぅ?

 この程度で絶望する、退屈な奴ではないことを祈ろう!」

 

「あぁ、あいにく俺は諦めの悪い馬鹿でね。

 俺はデッキからレベル6以上の魔法使い族、EM(エンタメイト)ミス・ディレクターを墓地へ送り、手札からマジシャンズ・ソウルズを特殊召喚!」

 

マジシャンズ・ソウルズ「「ハッ!!」」

           DEF0

 

「さらに召喚僧サモンプリーストを召喚!」

 

 サモンプリースト ATK800→DEF1600

 

 伝説の魔術師の魂に並ぶのは黒い僧侶服に身を包んだ白い老人

 

「このモンスターは召喚、反転召喚に成功したとき守備表示になる。

 サモンプリーストの効果発動

 手札の魔法カード、アームド・チェンジャーを捨ててデッキからレベル4モンスター、レスキューキャットを特殊召喚!」

 

レスキューキャット「みゃお。」

         DEF100

 

「この効果で呼び出したモンスターはこのターン攻撃できない

 だが効果は使える。レスキューキャットの効果

 フィールド上のこのカードを墓地へ送りデッキからレベル3以下の獣族モンスター2体を特殊召喚する。

 来い!チューナーモンスター、森の聖獣 ヴァレリフォーン!ホップ・イヤー飛行隊!」

 

 ヴァレリフォーン   ATK400

 ホップ・イヤー飛行隊 ATK300

 

「俺はレベル1のマジシャンズ・ソウルズにレベル2の森の聖獣 ヴァレリフォーンをチューニング!

 シンクロ召喚!来い!霞鳥クラウソラス!!」

 

霞鳥クラウソラス「クェー!」

        DEF2300

 

「さらにレベル4の召喚僧サモンプリーストにレベル2のホップ・イヤー飛行隊をチューニング!

 星雨を束ねし聖翼よ、魂を風に乗せ世界を巡れ!シンクロ召喚!

 現れろ!スターダスト・チャージ・ウォリアー!!」

 

スターダスト・チャージ「ハッ!!」

           ATK2000

 

 聖なる獣が魔術師の魂と一つとなり翠緑の翼として飛翔し、歳重ねし召喚士は翼の獣と共に星の戦士として再誕する。

 

「スターダスト・チャージ・ウォリアーをシンクロ召喚したことにより1枚ドロー

 さらにスターダスト・チャージ・ウォリアーにガーディアンの力を装備して、速攻魔法、旗鼓堂々を発動し、その効果により、墓地の装備魔法、アームド・チェンジャーを装備する。」

 

 アームド・チェンジャーは普通に使うと装備魔法をコストにしなくてはいけない。

 だが、旗鼓堂々なら発動コストを無視できる。

 

『特殊召喚したモンスターに連続攻撃できるスターダスト・チャージ・ウォリアーにダブル装備魔法!

 ですが攻撃力ではデストロイヤーΛのモンスターには遠く及ばない!

 クラウソラスの効果で1体撃破はできますが、どうするのでしょうか!!』

 

「霞鳥クラウソラスの効果発動

 1ターンに1度、相手フィールド上のモンスター1体の攻撃力を0にしてその効果を無効にする。

 俺が対象にするのは真紅眼の(レッドアイズ)不屍竜(アンデットネクロドラゴン)!」

 

霞鳥クラウソラス「クェー!!」

 

真紅眼の(レッドアイズ)不屍竜(アンデットネクロドラゴン)「グオオォォォォォ!?」

       ATK2900→0

 

 クラウソラスの起こした風が真紅眼の不屍竜の不浄の焔を消し去る。

 これで準備完了だ。

 

「バトル!スターダスト・チャージ・ウォリアーで真紅眼の(レッドアイズ)不屍竜(アンデットネクロドラゴン)を攻撃!

 この時、装備魔法、ガーディアンの力の効果発動!

 装備モンスターが戦闘を行う攻撃宣言時、このカードに魔力カウンターを置き、装備モンスターの攻守を魔力カウンターの数×500ポイント上昇させる!」

 

スターダスト・チャージ「うおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!ハッ!!」

 +ガーディアンの力 魔力C0→1 ATK2000→2500 

                 DEF1300→1800

 

真紅眼の(レッドアイズ)不屍竜(アンデットネクロドラゴン)「ギャアアァァァァァァァァ!!」――バンッ!

 

 聖なる星光の弾丸が不浄の黒竜を打ち抜く

 さぁ墓地の効果を使ってくるか?

 

「んぅ・・・自分フィールド上のレベル7シンクロモンスターが戦闘で破壊されたことにより、墓地の毒の魔妖―土蜘蛛の効果を発動。

 墓地の他のアンデット族、牛頭鬼を除外し、このカードを復活させる。」

 

毒の魔妖―土蜘蛛「ハアアァァァァァァ・・・」

        ATK2000

 

「装備モンスターがモンスターを破壊したことにより、アームズ・チェンジャーの効果で自分の墓地から装備モンスターの攻撃力以下のモンスターを1体手札に加える。

 俺が手札に加えるのは攻撃力800の召喚僧サモンプリースト。」

 

「復活した毒の魔妖―土蜘蛛の効果発動

 このカードが墓地からの特殊召喚に成功した場合、お互いのデッキの上からカードを3枚墓地に送る。」

 

 躊躇なく土蜘蛛の効果を使ってきたか、あっちの墓地が肥えたがこっちとしても好都合

 

「続いて毒の魔妖―土蜘蛛に攻撃!

 攻撃宣言により魔力カウンター充填!」

 

スターダスト・チャージ「はぁぁ!ハッ!!」 

 +ガーディアンの力 魔力C1→2 ATK2500→3000

                 DEF1800→2300

 

毒の魔妖―土蜘蛛「ギャアアァァァァ!!」――バンッ!

 

 スターダスト・チャージの砲撃が土蜘蛛を撃破する。

 

「うぅ・・・ん・・・・」

 

「・・・アームド・チェンジャーの効果で攻撃力300のホップ・イヤー飛行隊を手札に加える。

 今度は麗しの魔妖―妖狐を攻撃!」

 

スターダスト・チャージ「はぁぁ!ハッ!!」 

 +ガーディアンの力 魔力C2→3 ATK3000→3500

                 DEF2300→2800

 

麗しの魔妖「ふふふ・・・」――バンッ!

 

「ぅう・・・ん!」

 

 いちいち喘ぐな!!ダメージ無いだろ!!

 

「攻撃力1600のEM(エンタメイト)フレンドンキーを手札に加える。

 カードを1枚伏せ、ターンエンド。

 旗鼓堂々の効果で装備されていたアームド・チェンジャーは破壊され墓地へ送られる。」

 

「ぐふふふ・・・面白い・・・面白いぞ!!

 俺のターン!守護神の宝札の効果で2枚ドロー!!

 俺は永続魔法、魂吸収を発動!

 このカードはカードがゲームから除外されるたびに1枚に付き俺のライフポイントを500ポイント回復させる。

 

 そして、マジックカード、強欲で貪欲な壺を発動!

 1ターンに1度、自分のデッキの上から裏側表示で10枚のカードを除外し、2枚のカードをドローする!」

 

『えっ?カードが除外されたっていうことは、魂吸収の効果が発動するってことで、1枚に付き500ってことは10枚除外されたから!?』

 

 除外されたカードから浮遊霊が噴出し魂吸収に描かれたイラストのようにセルゲイに取り込まれる。

 

「魂吸収の効果で俺は5000ポイントのライフを回復ぅ!!」

 LP1300→6300

 

『なんということでしょうか!

 デストロイヤーΛ、死なばもろともの効果で失ったライフを回復どころか初期値より多くしてしまいました!

 デストロイヤーΛのデッキは除外ギミックが多数ある様子、ゴーストライダーこれを削りきることはできるのか!?』

 

「俺は生者の書―禁断の呪術を発動

 このカードは相手の墓地のモンスター1体を除外し、その魂を供物として俺の墓地のアンデット族モンスターを復活させる!

 お前の墓地のEM(エンタメイト)ギッタンバッタを除外して地獄の門番イル・ブラッドを特殊召喚!!」

 

イル・ブラッド「うぅ・・・ぅ・・・」

       ATK2100

 

 現れたのは苦しそうにうめき声をあげる不自然なほどに腹が膨らんだ囚人服を着たモンスター

 ギッタンバッタを除外されたか、見せている戦術は対策を取られているとみていいな。

 

「モンスター除外により、俺のライフが回復ぅ!

 そして、イル・ブラッドはデュアルモンスター!再度召喚を行い効果を発動する!

 1ターンに1度、自分か相手の墓地のアンデット族モンスター1体を特殊召喚する。

 俺はゾンビ・マスターを特殊召喚!」

 LP6300→6800

 

ゾンビ・マスター「へへヘッ!」

        ATK1800

 

「ゾンビ・マスターの効果発動!

 手札を1枚捨てることで互いの墓地のレベル4以下のアンデット族モンスター1体を特殊召喚する。

 俺は馬頭鬼を捨てチューナーモンスター、ユニゾンビを特殊召喚!」

 

ゾンビ・マスター「ウエエエェェェェェェェイ!!」

 

ユニゾンビ「ウボァ・・・」「アァ・・・」

     ATK1300

 

 イル・ブラッドの腹が割け、ボロボロの服を身に着けたアンデット族デッキではおなじみのゾンビがボサボサの白髪を振り回して嗤い声をあげ、さらに墓地に眠っていたユニゾンビを復活させる。

 

「そしてライフを2000払いマジックカード、超越融合を発動!!」

 LP6800→4800

 

 ちょ!?超越融合だと!?

 

「このカードの発動に対してカードの効果は発動できない。

 自分フィールドから融合素材モンスター2体を墓地へ送り、融合召喚を行う!」

 

『えっ!?融合召喚!?』

 

「俺のフィールドのゾンビ・マスターとユニゾンビを融合!

 響き昂れ亡者の魂よ!その叫びで冥界の主を呼び覚ませぇ!!融合召喚!!」

 

 2体の亡者が融け合わさってドロドロとした闇となり、その闇の中から腐り鬱血したような色合いの筋繊維を甲殻でまとめ上げた、髑髏のような顔の龍が現れる。

 

「冥界の扉を破り現れよ!冥界龍 ドラゴネクロ!!」

 

ドラゴネクロ「グオオォォォォォォォォ!!」

      ATK3000

 

「そして墓地より超越融合を除外し、融合モンスター、ドラゴネクロの融合素材一組を効果を無効にし攻守0で復活させる!」

 LP4800→5300

 

 ゾンビ・マスター ATK1800→0

 ユニゾンビ    ATK1300→0

 

『おぉ、これは・・・』

 

「レベル4のゾンビ・マスターにレベル3のユニゾンビをチューニング!

 世の理に背きし魂よ、輪廻を壊し再び闇より飛翔せよ、シンクロ召喚

 現れよ、レベル7、真紅眼の(レッドアイズ)不屍竜(アンデットネクロドラゴン)!」

 

真紅眼の(レッドアイズ)不屍竜(アンデットネクロドラゴン)「ギャオオオォォォォォォォ!!」

       ATK2400→3200

 

 再び現れ咆哮を上げる真紅眼の(レッドアイズ)不屍竜(アンデットネクロドラゴン)

 融合とシンクロの同時運用、セルゲイが原作で使っていた【茨の囚人】【地縛】に共通したプレイスタイルだが、[超越融合]を使ってやるとは・・・

 そして、予測通り現れた決闘竜(デュエルドラゴン)、アンデット使っているからほぼ確定だったがあいつ倒すの面倒なんだよなぁ。

 

『さっすがセキュリティが作ったデュエルロイド!

 シンクロ召喚と、新たな召喚法、融合召喚を連続使用だぁ!!』

 

「墓地の馬頭鬼を除外し効果発動!蘇れ!麗の魔妖―妖狐!!」

 LP5300→5800

 

麗の魔妖―妖狐「ふふ・・・」

        ATK2900

 

 真紅眼の不屍竜ATK3200→3000

 

「妖狐が墓地より特殊召喚されたとき、相手フィールド上のモンスター1体を破壊する!」

 

「させない!ガーディアンの力の効果発動!

 魔力カウンターを1つ取り除き、装備モンスターの破壊を無効にする!」

 

スターダスト・チャージ「フンッ!」

 +ガーディアンの力 魔力C3→2 ATK3500→3000

                  DEF2800→2300

 

 麗の魔妖―妖狐の放った狐火がスターダスト・チャージ・ウォリアーを取り囲み燃やそうとするがそれを魔力を取り込んだチャージ・ウォリアーが弾き飛ばす。

 

「手札から装備魔法、ヴィシャス・クローをドラゴネクロに装備ぃ!

 攻撃力を300ポイントアップさせるぅ!」

 

 ドラゴネクロ ATK3000→3300

 

「手札のホップ・イヤー飛行隊の効果発動!

 相手ターン中に自分フィールド上のモンスター1体を対象にそのモンスター1体とこのカードでシンクロ召喚を行う!

 俺はレベル3の霞鳥クラウソラスにレベル2のホップ・イヤー飛行隊をチューニング!

 シンクロ召喚!転生竜サンサーラ!!」

 

転生竜サンサーラ「グルル・・・」

        DEF2600

 

 現れる不安定な黒い靄のようなワイバーン

 セルゲイはこいつを見てもなんでもない風に見ている。

 それはそうだろう。ドラゴネクロの効果があるのだから

 

「バトル!ドラゴネクロでスターダスト・チャージ・ウォリアーに攻撃ぃ!!ソウル・クランチィ!!」

 

『えっ!?スターダスト・チャージ・ウォリアーはガーディアンの力の効果で攻撃力が3500になって、3300のドラゴネクロでは返り討ちになっちゃうのに・・・』

 

「トラップ発動!ドタキャン!

 相手の攻撃宣言時、自分フィールド上のモンスターをすべて守備表示にする!」

 

 スターダスト・チャージ       ATK3000→DEF2300→2800

  +ガーディアンの力 魔力C2→3 DEF2300→ATK3000→3500

 

『えぇー!?なんでぇ!?守備表示にしちゃダメージ与えられないじゃん!?』

 

 ドラゴネクロの咢がスターダスト・チャージ・ウォリアーに喰らい付こうとする。

 本来なら戦闘破壊無効のために魔力カウンターが削られるのだが、喰らい付くはずだったドラゴネクロはスターダスト・チャージ・ウォリアーをすり抜ける。

 

「ぐふふ、ドラゴネクロが喰らうのは肉体ではなくその魂ぃ!!

 ドラゴネクロと戦闘を行うモンスターは戦闘で破壊されない。

 だがそのダメージステップ終了時、そのモンスターの攻撃力を0にしそのモンスターの元々のレベル、攻撃力をもつダークソウルトークンを特殊召喚する!」

 

スターダスト・チャージ「うぅ・・・」

           DEF2800

           ATK3500→0

 

 ドラゴネクロに噛みつかれたスターダスト・チャージ・ウォリアーは突然、力を失ったように脱力し、ドラゴネクロの口から洩れる黒い血のようなものが真っ黒なスターダスト・チャージ・ウォリアーに変わる。

 

 スターダスト・チャージDS ATK2000 LV6

 

「あぁ、だがつまらぬ悪あがきを・・・そのまま大人しくしていれば美しいフィニッシュになったものを・・・

 麗の魔妖―妖狐で転生竜サンサーラを攻撃。」

 

 妖狐の狐火が転生竜サンサーラを燃やし尽くす。

 だがその中から、頭に電話の受話器を乗っけた水牛が現れる。

 

ロングフォーン・ブル「ブモッ!」

          DEF1200

 

「転生竜サンサーラの効果で俺の墓地からEM(エンタメイト)ロングフォーン・ブルを特殊召喚した。

 ロングフォーン・ブルが特殊召喚したことでデッキからEM(エンタメイト)モンスター、バリアバルーンバクを手札に加える。」

 

「だったら、ロングフォーン・ブルを真紅眼の(レッドアイズ)不屍竜(アンデットネクロドラゴン)で攻撃。」

 

 青と黒の焔がロングフォーンブルを焼く

 まぁ、だがこのターンはドタキャンの効果が効いている。

 

「ドタキャンを発動したターン、戦闘、効果で破壊されたEM(エンタメイト)は手札に戻る。」

 

『あ、あれ?デストロイヤーΛのターンなのにゴーストライダーの手札が増えてる。

 なにこの二人、おかしくない?』

 

 失礼なキャスターだな。

 

「カードを2枚伏せて、ターンエンド。」

 

 トークン含めて攻撃力2000オーバーのモンスター5体

 ドロー加速の守護神の宝札、エースらしきモンスターに戦闘破壊回避の装備魔法

 そしてリバースカードが2枚

 こいつアブナイ変態だけど、めちゃくちゃ強えぇ~

 

「俺のターン、ドロー!

 俺はEM(エンタメイト)キャストチェンジを発動、手札のEM(エンタメイト)モンスターを任意の枚数デッキに戻し、その戻した枚数+1枚のカードをドローする。

 俺はEM(エンタメイト)ロングフォーン・ブル、フレンドンキー・・・」

 

 今のところガーディアンの力の効果で膠着状態にできているけど・・・

 

「・・・バリアバルーンバクの3枚をデッキに戻し4枚ドロー!

 永続魔法、魔術師の再演を発動!

 このカードの発動時、墓地のレベル3以下の魔法使い族モンスター1体を特殊召喚する。

 俺が呼び出すのはマジシャンズ・ソウルズ!」

 

 マジシャンズ・ソウルズ DEF0

 

「カードを1枚伏せてマジシャンズ・ソウルズの効果発動!

 自分の手札、フィールド上の魔法、トラップカードを2枚まで墓地に送り、デッキから墓地に送ったカードの枚数分ドローする。

 俺は魔術師の再演と伏せたマジシャンズ・プロテクションを墓地に送り2枚ドロー

 

 そして、マジシャンズ・プロテクションがフィールドから墓地に送られたことで、墓地から魔法使い族モンスター、EM(エンタメイト)ミス・ディレクターを特殊召喚する。」

 

ミス・ディレクター「ハイっ!」

         DEF2000

 

 メガホンとカチンコを持った眼鏡の女性ディレクターが現れる。

 相手は異常に強い変態、しかもこっちの見せた戦術は対策済み。

 それをどうにかするには・・・

 

「さらに魔法カード、ルドラの魔導書を発動。

 フィールドの魔法使い族、マジシャンズ・ソウルズを墓地へ送りデッキから2枚ドローする。

 よし!俺はミス・ディレクターの効果を発動!

 自分の墓地のレベル1のモンスター1体を効果を無効にし特殊召喚し、そのモンスターとこのカードを使いシンクロ召喚を行う!

 俺は墓地からマジシャンズ・ソウルズを再び特殊召喚!」

 

 マジシャンズ・ソウルズ ATK0

 

「レベル1のマジシャンズ・ソウルズにレベル6のEM(エンタメイト)ミス・ディレクターをチューニング!

 二色の眼に写る七つの星よ、流星となって降り注げ!シンクロ召喚!!

 現れろ!星紡ぐ戦の竜、オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン!!」

 

オッドアイズM「ギャオオォォォォォォォォン!!」

       ATK2500

 

 久しぶりに出した気がするメテオバースト・ドラゴン

 特殊召喚効果は使えないが、魔妖とドラゴネクロを同時に封じれるのはこいつだけだ。

 

「俺は魔法カード、渾身の一撃をスターダスト・チャージ・ウォリアーに対して発動

 そして、チャージ・ウォリアーを攻撃表示に変更!」

 

 スターダスト・チャージ DEF2800→ATK0

 

『えっ!?攻撃力0を攻撃表示に!?

 ちょっと、貴方もなに考えてるの!?』

 

「そんなもの、勝つことを考えているに決まっている!

 バトル!!スターダスト・チャージ・ウォリアーで真紅眼の(レッドアイズ)不屍竜(アンデットネクロドラゴン)を攻撃!」

 

「馬鹿な!?魂を失った抜け殻で、戦闘で破壊されると土蜘蛛も復活する真紅眼の(レッドアイズ)不屍竜(アンデットネクロドラゴン)を攻撃するだと!?」

 

スターダスト・チャージ「はああぁぁぁぁ!!」

 +ガーディアンの力 魔力C3→4 DEF2800→3300

 

 スターダスト・チャージ・ウォリアーが真紅眼の(レッドアイズ)不屍竜(アンデットネクロドラゴン)に攻撃するが、腰に付いている銃がエネルギーをチャージできないので、真紅眼の(レッドアイズ)不屍竜(アンデットネクロドラゴン)の体に無理やり銃口をねじ込み

 

「魂なら、ここにある!!」

 

 体内で拡散させ爆散させた。

 絶対な力の差を無視して自分のモンスターを破壊され、何故か俺のライフも全く削られない。

 さらに言えば、真紅眼の(レッドアイズ)不屍竜(アンデットネクロドラゴン)が破壊されたのに墓地の土蜘蛛の効果が使えないことにセルゲイは酷く狼狽する。

 

「うぅ・・・!?うぅ・・うぅな、なぜだ!?

 なぜ俺のモンスターが破壊される!?なぜおまえはダメージを受けない!?

 なぜ土蜘蛛の効果も使えないいぃぃぃ!?」

 

「それが俺が発動させた渾身の一撃の効果だ。

 このカードの効果を受けたモンスターは戦闘で破壊されず、お互いの戦闘ダメージも0になる。

 だが、ダメージ計算後にモンスターは効果で破壊される。

 そして、オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴンはバトルフェイズ中、相手のモンスター効果の発動を出来なくする。」

 

「はあっ・・・」

 

「そして、スターダスト・チャージ・ウォリアーは特殊召喚したモンスター全てに攻撃できる!

 もちろん、渾身の一撃の効果は持続したままでな!」


「行け!ドラゴネクロを攻撃!」

 

スターダスト・チャージ「オオオォォォォォォ!!」

 +ガーディアンの力 魔力C4→5 DEF3300→3800

 

 キラキラとした星の光がドラゴネクロを焼き殺す。

 

「今度は麗の魔妖―妖狐を攻撃!!」

 

 スターダスト・チャージ      DEF3800→4300

  +ガーディアンの力 魔力C5→6 

 

 幽玄の焔も空に何千、何万、何億、何兆年も湛えられた星の火にはかなわない。

 

「さぁ、自らの影を打ち破れ!

 スターダスト・チャージ・ウォリアーでダークソウルトークンを攻撃!!」

 

 スターダスト・チャージ      DEF4300→4800

  +ガーディアンの力 魔力C6→7 

 

 星が放つ光に影などない。

 なぜなら、光を放っているのは星自身だからだ。

 

「最後にメテオバースト・ドラゴンで地獄の門番イル・ブラッドを攻撃!」

 

「うぅ・・んぅ・・・」

 LP5800→5400

 

 それは星の炎もまた同じ・・・あぁ・・・う、

 

美しい・・・」

 

「バトルを終了し、速攻魔法、ユニゾン・チューン!

 互いの墓地の中からチューナーモンスターを1体除外し、フィールドのモンスター1体のレベルをターン終了時まで除外したモンスターと同じにし、チューナーとして扱う。

 俺はお前の墓地のユニゾンビを除外して、スターダスト・チャージ・ウォリアーをユニゾンビと同じレベル3のチューナーにする!」

 

 スターダスト・チャージ LV6→3 (チューナー)

 

「俺はレベル7のオッドアイズ・メテオバースト・ドラゴンにレベル3となったスターダスト・チャージ・ウォリアーをチューニング!

 集いし夢が結集し、宙へ輝く星となる!光射す道となれ!!シンクロ召喚!

 飛び立て!サテライト・ウォリアー!!」

 

サテライト・ウォリアー「ハッ!」

           ATK2500

 

 白いロケットが変形し黄金の戦士となる。

 あぁ、その希望と夢にあふれた輝き、それもまた・・・

 

美しい・・・」

 LP5400→5900

 

「サテライト・ウォリアーの効果発動!

 相手フィールドのカードを俺の墓地のシンクロモンスターの数まで破壊し、破壊したカード1枚に付き1000ポイントこのカードの攻撃力をアップさせる!

 俺の墓地には4体のシンクロモンスター!

 お前のセットカード2枚と守護神の宝札、魂吸収を破壊する!コメット・ブラスト!!」

 

「チェーンして永続トラップ!不知火流 輪廻の陣を発動!

 除外されている自分の守備力0のアンデット族モンスター2体をデッキに戻し1枚のカードをドローする。

 俺はグローアップ・ブルームとユニゾンビをデッキに戻し1枚ドロー。」

 

「だがお前のカードはすべて破壊だぁ!!」

 

 黄金の戦士が呼び寄せた流星が俺のフィールドのカードを焼く

 俺のフィールドはチリ一つ残らぬ焼け野原、あぁ何という容赦の無さ!

 

 サテライト・ウォリアー ATK2500→6500

 

「なんと美しい・・・

 美しい戦術、美しいモンスター!美しい魂!!そして・・・美しき破壊!!

 

 あぁ、高まりが抑えられない!!

 

「美しいぞ!!

 このデュエル!最高に美しい!!

 さぁ!もっとこい、もっとだ!!もっと美しく飾ろう!!俺たちのデュエルを!!」


「あぁ・・・リミッターが外れてしまいましたか。」

 

 痛みすら快楽に変え、破壊を美と感じるその精神性

 それ故に人の世になど適応できるはずもない。

 

「あの男をあそこまで制御するのに苦労したといいうのに・・・」

 

 はじめは私もアイツの精神性を分かっていなかった。

 痛みを与えれば怯え従順になるだろうと、全身を切り刻んだが悦び暴れるだけだった。

 次に蟲を機械化したチップを埋め込んだが、奴の異常な精神を制御できなかった。

 最終的に全身を機械として、こちらで体や精神を鎮静化することで抑え込んだが・・・これはもう無理ですね。

 

「あのカードをセルゲイに与えたのが原因だったのか?

 いや、あのゴーストライダーとのデュエルがそうさせたのか・・・

 まぁ、あのカードを使ってデュエルをしてくれれば問題ない。」

 

 勝負とは最後に笑ったものが勝ちなのですからね。


「ふっ、美しいかどうかは別にして、負けてやる気はないさ。」

(最後の伏せカードは[魔妖遊行]だったか、オッドアイズがなければ本当にヤバかったな。)

「俺は魔法カード、貪欲な壺を発動

 墓地の霞鳥クラウソラス、オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン、転生竜サンサーラ、レスキューキャット、ホップ・イヤー飛行隊をデッキに戻して2枚ドローし、カードを2枚伏せターンエンドだ。」

 

「ぁぁ、なんだ?お前はこの状況で勝利を確信しないのか?」

 

 攻撃力6500のモンスターを従え、手札にサモンプリーストを確保している。

 レスキューキャットがデッキに戻っている以上、次のターン展開が始まるのは目に見えている。

 この状況はほぼ勝利が確定していると言っていいだろうが

 

「勝負というのは終わってみるまでわからない。

 特にアンタのような、決闘者(デュエリスト)はな。」

 

「ぐふふ・・・残念だ、あぁ、残念だ。

 勝とうと必死な顔より、勝ったと確信した顔をぶっ潰す!

 それが最高に美しいのに・・・」

 

「残念だが、俺は臆病でね。 

 それに俺は攻められるより、攻めるほうが好きだ。」

 

「ぐふっ!俺はどっちもだぁ!!

 さぁ、ぶっ潰してやるぞ!美しくな!!俺のターン、ドロー!!

 俺はチューナーモンスター、劫火の舟守 ゴースト・カロンを召喚!!」

 

 蒼い炎を灯火にした冥界の舟守が現れる。

 

「このカードの効果を使うターン、俺はドラゴン族しか特殊召喚できない。

 だが、相手フィールドにモンスターが存在し、自分フィールド上にこのカード以外のモンスターが存在しない場合、自分の墓地の融合モンスターとこのカードを除外し、その2体のレベルを合計したレベルのドラゴン族シンクロモンスターをシンクロ召喚する!!

 俺はレベル8の冥界龍 ドラゴネクロにレベル2の劫火の舟守 ゴースト・カロンをネクロチューニング!!

 百八の鐘でも消えぬ歪曲した煩悩よ、亡者の激流を逆巻き浮上せよ!!シンクロ召喚!!

 現れよ!冥界濁龍!!」

 

 暗い闇に妖星の光が取り込まれ、冥界に戻ったドラゴネクロが新たな力を得て現世に戻ってくる。

 

「ドラゴキュートス!!」

 

ドラゴキュートス「ギャアアアアオオオォォォォォォォォォォォ!!」

        ATK4000

 

『攻撃力4000!?』

 

「そして俺は装備魔法、孤毒の剣をドラゴキュートスに、魔界の足枷をお前のサテライト・ウォリアーに装備する!」

 

サテライト・ウォリアー「ウオッ!?」――ドシンッ!

           ATK6500→100

           DEF2000→100

 

 悪魔の顔が描かれた重りの付いた足枷がサテライト・ウォリアーに着けられると、空を飛んでいたサテライト・ウォリアーは地に落ちる。

 そして、ドラゴキュートスの爪には毒々しい紫のオーラが纏われた。

 

「魔界の足枷を付けられたモンスターは攻撃力、守備力が100になる。

 そして、孤毒の剣を装備したモンスターは、相手モンスターと戦闘を行うダメージ計算時に攻撃力、守備力が倍になる!」

 

『えぇ!?攻撃力100のモンスターに4000の倍!8000の攻撃力が襲い掛かるのおぉぉ!!?』

 

「くっ!?」

 

「ははははぁ!!さぁ派手に!そして美しく散れぇ!!

 冥界濁龍 ドラゴキュートスでサテライト・ウォリアーに攻撃いぃ!!」

 

「攻撃宣言時!永続トラップ、シモッチによる副作用発動!」

 

「そんなカードを発動して何になる!!

 冥界の幽鬼奔流(ゴースト・ストリーム)うぅぅ!!」

 

ドラゴコキュートス「グオオォォォォォ!!」

         ATK4000→8000

 

サテライト・ウォリアー「うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 ドラゴキュートスの胸に浮かび上がった顔から死霊の濁流が放たれ、地に伏せたサテライト・ウォリアーが飲み込まれる。

 モンスターの破壊を確認したセルゲイは口をだらしなく開け、白目をむきそうなほど目をむいた酷い顔をさらしている。

 

「あぁ・・・はは・・・はぁ~うひひっひ!!

 イッた・・・イッちまったぞ・・・」

 

――ブウウゥゥゥ・・・

 

『あっ、あぁ、ゴーストライダー、サテライト・ウォリアーと共にドラゴキュートスの攻撃に巻き込まれました。

 受けたダメージは7900、リアルソリッドビジョンの強烈な衝撃を受けた彼の安否は!?』

 

――ブウウウゥゥゥゥゥ・・・

 

『って、さっきから五月蠅いわね!!虫でも飛んで、えっ!?』

 

――ブウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!

 

「勝ったと確信した顔をぶっ潰す。それが最高に美しいだったか?」

 

――ブオオオォォォォォォオン!!

 

 エンジン音と共に羽音が響く

 死霊の濁流の中から黒い煙、いや、煙のような無数の蚊を引き裂いて赤いDホイールが現れる。

 

 スモーク・モスキート DEF0

 

「手札からスモーク・モスキートの効果を発動した!

 相手モンスターの攻撃で自分が戦闘ダメージを受けるダメージ計算時、手札から特殊召喚して、その発生する戦闘ダメージを半分にしバトルフェイズを強制終了させる。」

 LP4000→50

 

「なっ!?何っ!!?」

 

「さらにダメージ計算後、トラップカード、ダーク・ホライズンを発動!

 戦闘及び効果ダメージを受けたとき、デッキから受けたダメージ以下の攻撃力を持つ魔法使い族、闇属性モンスター1体を特殊召喚する。

 俺はチューナーモンスター、調律の魔術師を特殊召喚する!」

 

 赤黒い血のような球体の中から音叉の付いた杖を持ったピンク髪の魔術師の少女が現れ、可愛らしくポーズを決める。

 

調律の魔術師「キャハ!」

      DEF0

 

「調律の魔術師が召喚、特殊召喚されたとき、相手は400ポイントライフを回復し、その後俺は400ポイントのダメージを受ける。」

 

『はぁっ!?』

 

「なんだと!?」

 

 対戦相手であるセルゲイ、最初から2人のデュエルを実況してきたメリッサ、そしてこのデュエルを見ている観客たち全員が思った。

 何故そんなモンスターをわざわざ呼んだのかと

 そもそも調律の魔術師の攻撃力は0であり、この土壇場で呼ぶようなモンスターではない。

 

『何を考えているの!?

 あんたのライフは400もないじゃない!?』

 

「っ!!シモッチによる副作用・・・」

 

「その通り、シモッチによる副作用の効果ですべての回復効果はダメージに変わる。」

 

調律の魔術師「えぇぇい!!」――キイイイィィィィィィィィ!

 

「んぅぐぅ・・・」

 LP5900→5500

 

 調律の魔術師の音叉が鳴り響き、セルゲイのライフを削る。

 

『でも、その後、ゴーストライダーには400ポイントのダメージが・・・

 あれ?受けない?』

 

「調律の魔術師の効果で俺がダメージを受けるときは、相手がライフを回復しなくてはならない。

 相手のライフが回復することが条件の効果が、ダメージに変わったことにより、条件未達成となって適用できず不発になったという訳さ。」

 

『へぇ~』

 

「では解説も終わったところで、デュエルを再開しよう。

 シンクロ召喚したサテライト・ウォリアーが破壊されたことにより、自分の墓地からレベル8以下のウォリアー、シンクロン、スターダストシンクロモンスターを3体まで特殊召喚する。

 まぁ、呼べるのは1体だけだけど、戻ってこい!スターダスト・チャージ・ウォリアー!!」

 

スターダスト・チャージ「ハッ!!」

           ATK2000

 

 死霊の濁流をかき分けて星屑の戦士が再び遊矢のフィールドに戻ってきた。

 

「そして、戦闘工程がすべて終わったことにより、スモーク・モスキートの効果でバトルフェイズが強制終了される。」

 

 自身のライフを削った小さな魔法使いと冥府より舞い戻った星の戦士

 彼は思った、このデュエリストの輝きをもっと見たいと、この美しさを目に焼き付けたいと!

 

「ぐふっ、あぁ、美しい、美しいぞ!お前!!ターンエンドだ!!

 さぁ!もっともっとも~~っと美しいデュエルを見せてくれ!!」

 

「そこまで言うなら見せてやろう!このデッキの神髄を!!

 俺のターン、ドロー!

 俺はスモーク・モスキートの効果を発動!

 ターン終了時までこのカードのレベルを自分フィールド上のモンスター1体と同じにする。

 俺はスターダスト・チャージ・ウォリアーを選択し、スモーク・モスキートのレベルを6にする。」

 

 煙のような蚊がスモーク・モスキートに集まりその大きさを何倍にも肥大化させる。

 

 スモーク・モスキート LV1→6

 

「俺はレベル6となったスモーク・モスキートにレベル1の調律の魔術師をチューニング!シンクロ召喚!

 出撃せよ!ダーク・ダイブ・ボンバー!!」

 

ダーク・ダイブ・ボンバー「ハッ!」 

            ATK2600

 

「さらに召喚僧サモンプリーストを召喚して効果を発動

 手札の魔法カード、手札断殺を捨てデッキからレベル4のEM(エンタメイト)プラスタートルを特殊召喚。」

 

 サモンプリースト   ATK800→DEF1600

 EM(エンタメイト)プラスタートル DEF1800

 

 サモンプリーストに呼ばれてきたのは赤い蝶ネクタイを巻いたハンコを持った亀

 

「手札の魔法カード、グリモの魔導書を発動し、デッキから別の魔導書、ルドラの魔導書を手札に加えて発動!

 サモンプリーストを墓地に送り2枚ドロー!

 まだまだ行くぜ!永続魔法、魔術師の再演を発動し戻ってこい!調律の魔術師!」

 

調律の魔術師「ハイッ!」

      DEF0

 

 再び現れた調律の魔術師が自身の杖を打ち鳴らし音叉が鳴り響く

 

「うぐぅ!」

 LP5500→5100

 

「ここでEM(エンタメイト)プラスタートルの効果発動!

 1ターンに1度、フィールドの表側表示モンスターを2体選び、そのレベルを1つ上げる。

 俺は調律の魔術師のレベルを1つ上げる。」

 

調律の魔術師「フンッ!」

      LV1→2

 

「俺はレベル4の水属性モンスター、EM(エンタメイト)プラスタートルにレベル2となった調律の魔術師をチューニング!シンクロ召喚!

 凍れる世界の守護者!氷結界の虎王 ドゥローレン!!」

 

ドゥローレン「ガオオオォォォォンン!!」

      ATK2000

 

 金と黒の鎧を身に纏った氷の虎が吠える。

 その雄たけびは、魔の力を失った札に再び力を与える。

 

「ドゥローレンの効果発動!

 1ターンに1度、このカード以外の自分フィールド上のカードを任意の枚数戻し、戻した枚数×500ポイント、ドゥローレンの攻撃力をアップさせる。

 俺が手札に戻すのは魔術師の再演!」

 

 ドゥローレン ATK2000→2500

 

「そのカードが手札に戻ったということは!?」

 

「そう、このカードの効果は名称ターン1ではない!

 再び魔術師の再演を発動!墓地から呼び出すのはもちろん、こいつだ!」

 

調律の魔術師「はぁーい!えいっ!!」

      DEF0

 

「はひぃいぃ!!」

 LP5100→4700

 

「レベル6の水属性モンスター、氷結界の虎王 ドゥローレンにレベル1の調律の魔術師をチューニング!

 シンクロ召喚!極氷獣アイスバーグ・ナーワル!」

 

アイスバーグ・ナーワル「ウオオォォォォ!!」

           ATK2700

 

「さらに死者蘇生を発動、墓地から調律の魔術師を特殊召喚し効果発動

 シモッチによる副作用の効果でダメージを受けろ!」

 

調律の魔術師「いえぇ~い!!」

      DEF0

 

「はひぃぃいぃひひ!!」

 LP4700→4300

 

『お、おぅ・・・なんとゴーストライダー、デストロイヤーΛのライフを調律の魔術師の効果だけで1600も削ってしまいました・・・』

 

 調律の魔術師の杖が響き、セルゲイが喘ぎ、メリッサが困惑する。

 あまりにも混沌とした場である。

 

 興奮し過ぎているセルゲイはすでにアクションカードをいくつも見逃している。

 いや、もう彼はアクションカードをその手には取らないだろう。

 彼はこう思っているのだ、このコンボに水を差すのは勿体ないと

 

「俺はレベル7の闇属性モンスター、ダーク・ダイブ・ボンバーにレベル1の調律の魔術師をチューニング!

 闇が滲み、終焉へと導く、光なき世界へ!シンクロ召喚!!

 現れろ!ダークエンド・ドラゴン!!」

 

ダークエンド・ドラゴン「グオオォォォォォ!!」

           ATK2600

 

 ドラゴキュートスと同じように胸に顔のようなものがある漆黒の竜が現れる。

 多くのルートの上にたどり着いた漆黒の竜はその名の通りこのデュエルに終焉をもたらす。

 

「ダークエンド・ドラゴンの効果発動!

 1ターンに1度、自身の攻撃力、守備力を500ポイント下げ、相手フィールド上に存在するモンスター1体を墓地へ送る。ダーク・イヴァポレイション!!」

 

ドラゴキュートス「ギャアアァァァァァァァァ・・・」

 

 冥界の龍王が闇へと還っていく

 もはやセルゲイを守る物は何もない。

 

「バトル!アイスバーグ・ナーワルでダイレクトアタック!!」

 

「あひいいぃぃぃぃぃぃいいいい!!」

 LP4300→1600

 

 アイスバーグ・ナーワルがコースに腕の角を突き刺すと氷柱が何本も発生し、セルゲイを磔にする。

 

「さぁ、フィナーレだ!!

 スターダスト・チャージ・ウォリアーでダイレクトアタック!!流星乱射(シューティング・クラッシャー)!!」

 

スターダスト・チャージ「フンッ!ハァ!!」

 

 スターダスト・チャージ・ウォリアーが4つの砲身から光線を発射する。

 共に戦い守り抜いた美しき星が放つ光によって敗北する自らの姿に、彼はついに絶頂を超えた。

 

「はははははははははははは!!その容赦の無さも、また美しいいぃぃぃいぃぃ!!」

 LP1600→0

 

――ガッシャアアァァァァァァン、ガンッ!カラ、カラカラ・・・・

 

 そして彼は壊れた

 

「・・・・・・」


 勝者である遊矢がデュエルパレスへ戻ってくる。

 だがその背にはある者が背負われている。

 

――おい、さっきのライディングロイドだぜ?

 

――なんで勝者であるゴーストライダーがアイツを背負ってんだ?

 

――よく、あの気持ち悪いのを背負えるな・・・

 

「・・・お前・・・なぜ俺を・・・・・・」

 

 セルゲイは自分がこうしている意味が分からなかった。

 自分は常に壊す側だった。壊して壊して壊して、そして壊された。

 壊されたガラクタなど、誰も見向きもしないもの。自分も壊した後のモノのことなど覚えていない。

 

「別に、このDホイールの元の持ち主ならこうするだろうと思っただけさ。」

 

「・・・・・・そう・・・か・・・・」

 

 苛烈なデュエルですでに遊矢もDホイールもボロボロだ。

 それなのにただのモノでしかない自分を置いていかなかった。

 

「ぐふふ・・・なんと・・も・・・美しい・・・・そ・・の・・魂・・・」

 

「あぁ、そうだな。

 見れるのだとしたら、きっとあの人の魂は綺麗なんだろうな。」

 

「・・・・・・!!」

 

 そうではないと言おうとしたが、ついに彼の言語回路は限界を迎えた。

 同時に彼に埋め込まれた彼自身を生かすための様々な回路が停止していく

 多くの観衆に看取られながら、強敵の背中で

 

(あぁ、なんとも美しくない・・・最後・・・だ・・・・)

 

 普通の人間と同じように




最初:ここで調律の魔術師!?でもダメージが!!

その後:えぇ?調律の魔術師があんなにダメージを与えている・・・

最後:何回出てくるんだ・・・


調律の魔術師にあんな使い方があったなんて・・・
ぼ、僕も調律の魔術師みたいにいっぱい働けと言うことなんでしょうか!?
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『夢の歩みだし』
それほど努力しろと言いうことなんでしょうね・・・キング


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夢の歩みだし

ジャックVSユーゴ前編
全く実現することのなかったジャックとユーゴの絡み、シンクロ次元編とは・・・

そして調律の魔術師とジャックの相性が悪すぎるので大分ジャックの過去を改変
あの謎の電波発言もズァークの意思が介入してたりするのでしょうか?
あの世界の分裂後の過去はいってみれば『歴史』ではなく『設定』でしかないですし


 フレンドシップカップ3日目の日程が終わり、僕たちランサーズはシンクロ次元に来てから、それほど多くない全員集合を果たしていた。

 融合次元の刺客と思われる治安維持局長官に対して進展があったからだ。

 

「遊矢、さっきまで疲れているように見えたが、大丈夫か?」

 

「大丈夫大丈夫、あの変態の所為で無駄に疲れただけだし。」

 

 遊矢は何でもない風に装っているけど、とてもそうは見えなかった。

 試合直後はとても暗い顔をして焦燥しているようだった。

 

「遊矢、俺が言えた義理ではないが、その・・・」

 

「だから心配すんなって!」

 

 権現坂が心配しユートが励まそうとするが遊矢は譲らない。

 遊矢と戦ったセキュリティのデュエルロイド、デストロイヤーΛをユートのデュエルディスクで解析したら、その内部に生体反応が検知された。

 デストロイヤーΛはロボットではなくて改造人間、サイボーグだったみたい。

 

「だが!」

 

「その内一人や二人なんか言ってられなくなるかもしれないからな。」

 

――!!

 

 遊矢が手の中で一本のボルトを弄びながら言ったその言葉にこの部屋に居た僕と風魔兄弟以外が動揺する。

 黒咲とユートは口をつぐみ、権現坂は狼狽え、セレナと沢渡は顔を歪める。

 

 人を殺すこと――昔の僕にとっては当たり前だった。

 

         生きるために仕方なかった。

 

         敵だから仕方がなかった。

 

 思い出せる記憶の中には親はいない。

 硝煙と血と灰の臭いが最初の記憶で、ナイフで殺しに来た敵を刺し殺して、銃を撃ってきた敵を撃ち殺した。

 それが当たり前、それが僕の生きる世界だった。

 

「各々の方、拙者らはそうならぬように動いているのでござる。」

 

「うむ、どんな者であろうとこれ以上戦に巻き込まれぬように、血を流させないために、恨まぬように・・・

 あの者は解析によると右目と脳以外のほとんどは機械化されており、遅かれ早かれ助けられなかったであろう。

 過ぎたことは、もう戻せぬ・・・これからを考えるべきでござる。」

 

「あぁ、そうだな。

 ヤッちまったものは仕方がない。取り戻せない。

 罪は背負って、前を歩くしかない。

 アカデミアのアホどもみたいにはなりたくないからなぁ。」

 

「おい!それは私をアホだと言っているのか!?」

 

「おめぇはアホじゃなくて馬鹿だろ?」

 

「それはどう意味だ沢渡!馬鹿って言ったやつは馬鹿なんだぞ!!この馬鹿が!!」

 

「おめぇも馬鹿って言ってんじゃねぇか!この馬鹿!!」

 

「あぁー!!また言ったなこの馬鹿!!」

 

――ふふふ

 

 沢渡とセレナがまさしく馬鹿みたいなことで喧嘩をし始めて、みんなが含み笑う。

 だけど、僕は笑う気分なんかにはなれなかった。

 

 僕は殺した、それも一人や二人じゃない。

 殺すことを息をするのと同じ感覚で行っていた僕は、殺した相手の顔なんて覚えていない。心を痛めたこともない。悩んだこともない。

 罪を背負おうとしても、相手の顔も覚えていないのなら僕は、僕は・・・

 

僕は・・・アカデミアと・・・同じなの・・かな・・・

 

「そんなことはない。」

 

「黒・・さ・・き・・・?」

 

 僕に声をかけたのはいつものように壁際で腕を組んで立ち、目を瞑っていた黒咲だ。

 

「お前はアカデミアを許せないと感じているか?」

 

 アカデミア

 兄様を悲しませて、デュエルを戦争に使う敵

 

「う、ん・・・」

 

「・・・俺は妹を、瑠璃を取り戻すためなら手段を問わなくなっていた。

 友の声にすら耳を傾けず、無関係の人間すら犠牲にしようとした。

 この戦争と一切のかかわりがない、ただ平穏に暮らしていたやつを、無用な犠牲を出そうとした。

 

 だが、お前は生きるために戦った。

 そしてその戦いが実を結び、お前は今ここにいる。

 お前の戦いは無駄ではなかった。お前の出した犠牲は無駄ではなかった。」

 

 僕の戦いは無駄じゃなかった・・・

 あの地獄で、母様に拾われて、兄様に出会って、あの子たちとデュエルをして・・・

 あれが僕の勝ち取ったモノ・・・

 

「お前はアカデミアを許せないと言った。

 犠牲を出し続けるアイツらと同じならそんなことは思わないはずだ。

 もし、過去の犠牲をお前が今、罪だと感じるのなら、その思いを胸に、これから償っていけ。」

 

 黒咲のその言葉は、僕だけに言っただけじゃないような気がして、それでも前に向かおうとする意志があるような気がして、ぶっきらぼうでも暖かかったから

 

「あ・・あり・・・ありがとう、黒咲・・・」

 

「ふん・・・」

 

 お礼を言いうと黒咲はそっぽを向いてしまった。へ、変なこと、言ったかな?

 

「さて、馬鹿をいじるのもこれくらいにして、零児の奴そろそろ来ないかな」

 

――コッコココッ、コン!

 

「おぉ、噂をすれば。」

 

 上にある扉を遊矢が開けると兄様が入ってくる。

 

「ロゼ・ジェスター、君に客人だ。」

 

「客人?誰だ?」

 

「ボルガー&カンパニーのボルガー社長とロバート・ピアスン工場長だ。」


「作戦会議するから」って、ユーゴの所に放り込まれたけど

 はぁ~本当に何なのかしらね?この腕輪・・・

 思えば自分でも思い出せないくらい昔から持っていたような気がするわ。

 まぁ、これのおかげでユーリ除けになっているみたいなら、それでいいけど・・・

 

「明日はあのジャックさんとデュエルね。

 リンさんじゃないけど、応援しているわ。ユーゴ。」

 

「おう!優勝もしてねぇし、決勝戦でもねぇってのがちょいと恰好つかねぇが

 ジャックと戦えるならこれ以上のことはないぜ!」

 

 まぁたしかに、普通漫画とかだったらこういうのって決勝戦のほうがシチュエーションにあっているわよね・・・仕方ないことだけど

 あっ、そういえば

 

「ふふふ、ねぇ、そういえば聞いたことなかったけど、なんでユーゴはそこまでジャックさんに拘るの?」

 

「あ?あぁ~へへ、実はな、俺とリンはジャックと同じ孤児院で育ったんだ。」

 

「えっ!そうなの?」

 

 ユーゴとジャックさんにそんな繋がりが・・・

 

「あぁ、と言っても俺たちが入ったころにはもう出て行っちまってたけどな。

 孤児院を出てコモンズの中の荒くれデュエリストたち相手に連戦連勝!ストリートデュエルのキングって呼ばれてたんだ。」

 

「へぇ~そこから、シティのキングになったんだ。」

 

 舞網市でも不良グループのデュエリストがいたけど、こっちでもいたのね。

 

「そうさ。

 あのフレンドシップカップで優勝してな!

 だから俺も、ジャックと戦って、フレンドシップカップに優勝する!それが俺の夢だからな!!」

 

「ふふ、そういうのユーゴらしいわね。」

 

「あぁ!今のリンっぽい!

 リンもさぁ、そんな風に笑ってフレンドシップカップがライディングデュエルの大会になってからは、こいつを作るのを手伝ってくれてよ。」

 

 リンさんと一緒に・・・そういえばユーゴって修理屋してたり、バイク作ってたり、私と同年代なのに何気にすごい人よね。

 私の周りの人たちってこんな人達ばかりのような気もするけど・・・

 

「ホント、ユーゴとリンさんってすごいわね。

 Dホイール作ったり、修理屋してたり。」

 

「あはは、褒めるな褒めるな!こんなのできて当り前さ。

 なにしろ俺たちの技術はあの人仕込みだからな!」

 

「あの人?」

 

「あぁ、ジャックのライバルだった人だ。」

 

「ジャックさんのライバル?」

 

 あの人にそんな人いたんだ。

 

「そう!っていうか、ライディングデュエルをここまで流行らした人でもあるな!

 Dホイールを初めて作った人でもあるし。」

 

「そんなすごい人なの!?」

 

「あぁ、普段は俺みたいに修理屋してたみたいだけどな。

 俺のいた孤児院に配管の修理に来て、その時に教えてもらったんだ。」

 

 修理屋してて、大きな大会ができるほどのデュエルを流行らせてって、世の中にはすごい人がいるものね・・・

 

「じゃあ、今ユーゴがこうしていられるのも、その人のおかげってわけね。

 その人の名前なんて言うの?」

 

「俺がこうしていられるのは、その人のおかげだけじゃねぇけどな。

 えぇと・・・たしか、あの人の名前は――――」


 後日、ジャック・アトラスの控室にて、彼の付き人としてある少年が訪れていた。

 

「あ、あの・・・僕を、覚えていますか?」

 

「・・・あぁ。」

 

 グローブの調子を確かめながらジャックはこの少年、サムに返事を返す。

 サムはもじもじしながら、言葉を紡ぐ。

 

「前にあなたから調律の魔術師を渡されて・・・」

 

「渡されてどう思った。」

 

「えっ?」

 

「どう思ったかと聞いている。」

 

 ジャックからの質問にサムは言いづらそうにしながらも、正直に答える。

 

「・・・使えないカードだと思いました。

 だから、お前にふさわしいカードと言われて、役に立たないクズだという意味だと思って、あなたを恨んでました・・・」

 

「それでお前はどうした。」

 

「ロゼさんに・・・あなたを倒せるかもしれないデュエリストに渡して、あのカードを叩き返してもらおうとしました。」

 

「ロゼにか・・・それで奴はどうした?」

 

「断られました。真っ向から、復讐に付き合う気も、コモンズの代表になった覚えもないと・・・」

 

 ロゼから言われたことをジャックに伝える。

 その言葉を受けたジャックは不機嫌だとばかりに鼻を鳴らす。

 

「フンッ、そうだろうな。俺だってごめんだ。」

 

「やっぱり・・・そうですか・・・」

 

「それで断った奴が、あのカードを持っていたわけはなんだ?」

 

「デュエリストになる夢を諦めきれないのなら、0から始めろと

 好きなデッキを組んでデュエルで取り返してみろと、そう言われて・・・」

 

「それで、自分では無理だからと、今度は俺にあのカードを取り返せというのか?」

 

 ジャックはコモンズの大半の人間が他人任せな性質なのを知っている。

 コモンズは彼自身の原点であるのだから

 

「ちっ!違います!

 ただ・・・どうしたらいいのかと・・・」

 

「そんなもの俺は知らん。

 お前があのカードを取り返したいなら、奴の言うようにとっととデッキを作って取り返しに行け!」

 

「うぅ・・・」

 

「・・・お前があのカードを取り返したいのは、奴があのカードを、力のあるカードだと証明して見せたからか?」

 

 ロゼは[調律の魔術師]の強さを証明して見せた。

 様々なカードとコンボさせることで、何度も復活し、ダメージを与え、勝利へと貢献した。

 人とは現金なもので、あのデュエル以降[調律の魔術師]やサポートしたカードの価値が高騰しているらしい。

 

「わか・・・りません・・・」

 

 だが、サムにそんな欲はなかった。

 一度は他人に押し付けて捨てようとしたカード、叶わぬ夢と共に切り捨てたカード

 そのカードになんで今も未練がましく執着しているのかは自分でも分からなかった。

 ロゼに言われたように勝手な期待に応えようとしているわけでもない。ただあのカードが自分の元から離れたことが不安だった。

 

「・・・・・・昔、俺は周りのすべてに怯えていた。」

 

「えっ?」

 

 サムは驚いた。

 ジャック・アトラスと言えば絶対的な強さを持つキングであり、怯えず、動じない絶対的な力の象徴

 そんな彼がすべてに怯える弱者であったことが信じられなかった。

 

「俺に親はいなかった。友もいなかった。力すらなかった。あの時の俺には何もなかった。

 ゆえに俺は、俺にないものを持っているものに恐怖した。

 

 だがある日、そんな俺のもとに1枚のカードが落ちてきた。

 必要がないと切り捨てられたのだろう。貴重でもない、強くもない、即役に立つわけでもないそのカードは、それでも俺が初めて手にした『力』でもあった。」

 

「そのカードって・・・」

 

「そう、調律の魔術師だ。」

 

「!!」

 

「天啓を得た気持ちだった。本能が訴えていた。

 これは戦う術だ。何かを得るには、強くなるにはこれしかないと

 それから俺は街中を駆け回り、カードを探した。ゴミ捨て場や道端に落ちていたカードを拾いデッキを組み上げた。

 孤児院に入り、文字を学び、ルールを学び、そして初めてデュエルをした。」

 

 それは英雄の原点、最初の戦い。

 少年はいつしか恨んだはずの英雄の話に聞き入っていた。

 

「それで、勝ったんですか!」

 

「惨敗した。」

 

「えっ・・・」

 

「そもそも戦術も戦略もバランスすら度外視した、紙束以下のただの寄せ集めで勝てるはずがない。

 だが、その時の俺にとって『勝敗』という結果よりも『戦えた』という事実の方が重要だった。

 

 戦うためには力がいる。

 それからの俺は戦略と戦術を考え、ただの寄せ集めを真のデッキへと変え、さらに多くの者たちと戦うために強さを求めた。

 強さを求める中で俺は思った。

 いつか、天よりも高き頂に立って見せると・・・」

 

 ただのコモンズの少年が見た夢は無謀だった。

 コモンズの頭上には常にトップスという厚い雲がかかっている。それより上の頂など見れるはずもない。

 

「それを聞いた奴らは誰もが俺を嘲笑った。

 できるはずがない、夢物語、妄想、虚言、馬鹿、口汚く罵られた。

 だが、その中で俺の声に耳を傾ける者もいた。」

 

 ジャックが瞼を閉じれば、一見クールなようで、その裏に誰にも負けない熱さを持った、あの好敵手の顔が浮かんでくる。

 

「奴もまた、コモンズとトップスが互いに手を取り合い前に進もうとするという荒唐無稽な未来を夢見ていた。

 俺と奴は目指すところは違えど、その道はよく交差した。

 俺は己が力を求める旅路に、その力をさらに高める、高め合える友を、仲間と言えるものを得ていたのだ。

 傷の舐め合いや慰め合いの関係ではない、本当の仲間をな。」

 (最もそのことに気付いたのは、奴を失ってからだがな・・・)

 

 孤高の道には限界があった。

 力を付けるうちに、彼はデュエリストとして敬遠され始めた。

 何もないところから始めて、力を付けたら彼の心に乾きが生まれた。そして、その渇きを癒してくれたのが亡き友の存在

 

「本当の仲間・・・」

 

「改めてお前に問おう。

 お前はあのカードをどうしたい?何を得たい?」

 

「僕は・・・・・・」

 

 サムは答えられなかった。

 ジャックに憧れたのは「少しはいい暮らしができるかも」という打算的なところがあり、明確な展望、こうしたいということは考えてなかった。

 

「自分で動き出しただけマシかと思ったが、俺に人を見る目はないらしい・・・」

 

「えっ・・・」

 

「付き人はいらん。」

 

――バタンッ

 

「うぅ・・・」

 

 王者が去って少年が残された。

 部屋には少年の沈黙に応える者はもういなかった。


 どうやら、俺には人と人を繋げるということはできないらしい。

 全てのカードには役割がある。人もまた同じ・・・

 お前はそう言っていたな。

 

 3年、短くも長いこの時間、俺は『キング』という座に座り続けた。

 座り続けて、自らが乾く中で俺に何が変えられただろうか・・・

 

 コモンズは相も変わらず他人を頼りに生きている。

 トップスは自分たちの地位が下がらぬようにと停滞している。

 「自由だからこそ」「勝ち続けるからこそ」それぞれの役割すら放棄したこの街は静かに腐り続けている。

 極たまに、ダイヤの原石のような者もいるが、その輝きは研磨されず路傍の石となり果てている。

 

 だが、お前の作り上げたものは僅かながらもトップスとコモンズが共に娯楽として楽しむものとなった。

 お前の遺して行った仲間たちの中には、この街を変えようと未だに足掻いている者もいる。

 

 お前は繋ぐという力においては俺を遥かに超えているようだ。

 

『さぁ!フレンドシップカップも4日目!

 待ちに待ったシティの希望にしてレジェンド!まさに、このシティの天空に輝く星!

 あなたの、あなたの!そして私の!!みんなのぉ~・・・ジャック・アトラス!!』

 

 歓声が起こる中、俺はホイール・オブ・フォーチュンを走らせ、スポットライトの中を進む。

 その歓声の中に混じってくる罵倒や妬みの声

 こそこそ陰口を叩くくらいなら、俺に立ち向かってこないのか!!臆病者どもめ!

 

『そして、絶対王者に挑戦するのは憐れな供物か!無謀な勇者か!

 コモンズから来たラッキースター!ユーゴ!!』

 

 ゲートから現れる白いDホイール

 市販では見たことがないタイプだ。

 既製品でないならオーダーメイド品となるが、コモンズだというのなら誰かが作ったものか、もしくはハンドメイドとなるが・・・

 いや、Dホイールを手ずから作るなど、あの子供が出来ようか

 

「ジャック・・・待ちに待ってたぜ、あんたとデュエル出来るこの日を!」

 

 輝かんばかりの視線を俺に突きつけてくるユーゴという少年

 この目は・・・少しはマシそうだ。

 あの権現坂という奴よりは気迫というものは感じられないが、この目の奥には熱がある。

 

「キサマ、俺と戦いたいと望むのなら、無様なデュエルを晒したら承知せんぞ。」

 

 熱があっても中途半端な奴はいる。

 俺とデュエルをするだけで満足する輩だ。

 そういう奴らは戦いにすらならん、一瞬で片がつく、こいつはどうか・・・

 

「そんなことするわけねぇだろ。

 このデュエルは俺たちの夢のデュエルだ。最高のもんじゃねぇと格好がつかねぇ!

 そのためにこいつを作ったんだからな!」

 

 何?

 

「作った?その、Dホイールをか?」

 

「あぁ!こいつは俺たちが作った、俺とリン、そして爺さんの夢を乗せる翼だ!

 あんたとデュエルして、そして、このフレンドシップカップで優勝して、俺が新しいキングになる!

 それが俺たちの夢だ!!」

 

 こいつ、夢のためにDホイールまでも作ってここに来たというのか・・・

 

「くっ・・・ふふ」

 

 そんな、あいつのような馬鹿な真似をする奴がいようとは・・・

 

「くくくはははは!あーははははははは!!」

 

 俺は堪えきれずに笑いだした。

 

「お、おい、何がおかしいんだよ?」

 

「な、なに、優勝だと?キングになるだと?

 その為だけに、そんなものを作ったというのか?」

 

「あぁそうだよ!悪いかよ!

 Dホイール買う金なんてねぇんだよ!だからゴミだのなんだのかき集めて作ったんだよ!」

 

 ユーゴの目に偽りはない。どうやら本気の様だ。本気の馬鹿の様だ。

 そして何よりも懐かしい・・・

 

「それはこの俺を、ジャック・アトラスを本気で倒す気で掛かってくる。そういうことだな?」

 

「あぁ!本気も本気!俺の全力をアンタにぶつけてやるぜ!ジャック!!」

 

 ふっ、今年の大会は実に奇妙なことが起こる。

 俺の偽物が出るわ、あいつの置き土産が見つかるわ、気迫のあるデュエリストと出会えるわ。

 それに、こんなところで夢を語る馬鹿に出会えようとは!

 

「ならば全力ではなく、全力を超えて挑んで来い!

 このジャック・アトラスがデュエルの神髄を、そして!俺を倒そうなどということは100万年早いことを教えてやる!!」

 

『おぉう、スタート前から激しく火花が散っております。

 ではさっそく参りましょう!アクションフィード、オン!フィールド魔法、クロス・オーバー・アクセル!!』

 

【デュエルモード・オン オートパイロット・スタンバイ】

 

『ライディングデュエル!』

 

「アクセラ!」「レーション!」

 

『『決闘(デュエル)!!』』

 

――ブオオオオォォォォォォォォォォォォン!!

 

 Dホイールのエンジンが唸り、スタートラインから飛び出す。

 いい走りだ。だがこの俺とホイール・オブ・フォーチュンを抜けると思うな!!

 

 スタジアムを出て、ファーストコーナーが見えてくる。

 その先にはアクションカードが2枚、ふん、1枚は餞別としてくれてやる。

 

「キングは常に先を行く!先攻は貰った!

 俺のターン!俺はマジックカード、コール・リゾネーターを発動

 デッキからリゾネーターモンスター、レッド・リゾネーターを手札に加える。

 

 さらに速攻魔法、手札断殺を発動!

 互いのプレイヤーは己の手札を2枚捨て、新たに2枚のカードをドローする!

 俺はアクションカードと、風来王 ワイルド・ワインドを捨て2枚ドロー。」

 

「俺もアクションカードとSR(スピードロイド)電々大公を捨てて2枚ドローするぜ!」

 

「続いて速攻魔法、コマンド・リゾネーターを発動

 手札のレッド・リゾネーターを墓地へ送りデッキからレベル4以下の悪魔族モンスター、レッド・スプリンターを手札に加え、召喚!」

 

レッド・スプリンター「グルル・・・」

          ATK1700

 

「レッド・スプリンターが召喚、特殊召喚されたとき、自分フィールド上に他のモンスターが存在しない場合、手札、墓地からレベル3以下の悪魔族チューナー1体を選んで特殊召喚する。

 我が元へ!来い!レベル2チューナー、レッド・リゾネーター!」

 

レッド・リゾネーター「ヘッ!」

          ATK600

 

「俺はレベル4のレッド・スプリンターにレベル2のレッド・リゾネーターをチューニング!

 漆黒の闇を切り裂き、その熱き魂を燃え滾らせよ!シンクロ召喚!!

 現れよ!レッド・ライジング・ドラゴン!!」

 

レッド・ライジング「グオオォォォォ!!」

         ATK2100

 

 馬の姿をした悪魔と音叉の小悪魔が悪魔竜の姿をした烈火の魂を呼び出す。

 

「レッド・ライジング・ドラゴンのモンスター効果!

 このカードがシンクロ召喚したとき、自分の墓地からリゾネーターモンスターを呼び出す!

 今一度舞い戻れ!レッド・リゾネーター!」

 

 レッド・リゾネーター ATK600

 

「レッド・リゾネーターが特殊召喚されたとき、1ターンに1度、フィールド上の表側表示モンスター1体を対象とし、そのモンスターの攻撃力分だけ自分のライフを回復する。

 よって俺はレッド・ライジング・ドラゴンの攻撃力と同じ2100ポイントのライフを回復する。」

 

 LP4000→6100

 

『ジャック、レッド・ライジング・ドラゴンとレッド・リゾネーターのコンボでライフを大幅回復!

 そしてそして、レベル6とレベル2が揃ったのなら!!』

 

「俺はレベル6、レッド・ライジング・ドラゴンにレベル2のレッド・リゾネーターをチューニング!

 王者の咆哮、今、天地を揺るがす!唯一無二なる覇者の力をその身に刻むがいい!シンクロ召喚!!

 荒ぶる魂、レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト!!」

 

レッド・デーモンズS「グオオォォォォォォォォ!!」

          ATK3000

 

 レッド・リゾネーターの音叉の音色がレッド・ライジング・ドラゴンの炎を弾き飛ばしその真の姿、我が魂、レッド・デーモンズへと昇華させる。

 さぁ、俺を倒すといったのなら、我が魂を乗り越えてみろ!

 

「カードを1枚伏せて、ターンエンドだ!」

 

「最初っから、お出ましかよ・・・でもビリビリ来るぜ!

 俺のターン、ドロー!

 俺はSR(スピードロイド)バンブー・ホースを召喚!

 さらにこいつが召喚されたとき、手札からレベル4以下のSR(スピードロイド)モンスター1体を特殊召喚できる。

 来い、チューナーモンスター、SR(スピードロイド)―OMKガム!」

 

 バンブー・ホース ATK1100

 OMKガム    DEF800

 

 機械でできた半身だけの馬に箱が変形したロボット

 あのチューナーは墓地肥やしができるカード、そして奴の墓地には・・・なるほど

 

「俺はレベル4のバンブー・ホースにレベル1のOMKガムをチューニング!

 双翼抱く煌めくボディー、その翼で天空に跳ね上がれ!シンクロ召喚!

 現れろ、レベル5!HSR(ハイスピードロイド)マッハゴー・イータ!!」

 

 マッハゴー・イータ ATK2000

 

 ジェット機の様に推進するボートのような奇妙な機械、その周囲には羽の付いたボールのようなものが浮いている。

 

「OMKガムの効果、こいつがシンクロ素材として墓地へ送られたとき、デッキトップを墓地に送りそいつがSR(スピードロイド)モンスターなら、シンクロ召喚したモンスターの攻撃力を1000ポイントアップする。

 ちっ、デッキトップはシンクロ・クラッカー、SR(スピードロイド)じゃねぇ。

 

 でもまだまだ、墓地のSR(スピードロイド)電々大公の効果発動!

 墓地のこのカードを除外することで、1ターンに1度、自分の手札・墓地から電々大公以外のSR(スピードロイド)チューナーを特殊召喚する。

 もう一度来い!SR(スピードロイド)―OMKガム!」

 

 OMKガム DEF800

 

「ここでマッハゴー・イータの効果発動!

 このカードをリリースすることでフィールド上全てのモンスターのレベルをターン終了時まで1つ上げる。」

 

 OMKガム LV1→2

 

 レッドデーモンズS LV8→9

 

「そして、墓地のマッハゴー・イータは自分フィールド上にSR(スピードロイド)チューナーがいるとき、1ターンに1度、復活できる!

 お前も戻ってこい!HSR(ハイスピードロイド)マッハゴー・イータ!」

 

 マッハゴー・イータ ATK2000

 

 レベルを上げ2にしたチューナーと、復活したレベル5モンスター、これは・・・

 

「俺はレベル5のマッハゴー・イータにレベル2になったOMKガムをチューニング!

 その美しくも雄々しき翼翻し、光の速さで敵を討て!シンクロ召喚!

 来い!レベル7!クリアウィング・シンクロ・ドラゴン!!」

 

クリアウィング「ギュオオォォォォォォォン!!」

       ATK2500

 

「そしてまたOMKガムの効果だ!

 デッキトップは・・・よっしゃ!アタリぃ!!SR(スピードロイド)ビードロ・ドクロ!

 よって、クリアウィングの攻撃力は1000ポイントアップ!」

 

クリアウィング「ギャオオオオォォォォォォォォ!」

       ATK2500→3500

 

 あれが奴のエースモンスター、緑色の透明な翼をもつ白き竜

 強者に打ち勝つ可能性を秘めたモンスター

 

『おぉ!ユーゴ選手、モンスター効果を巧みに使いクリアウィング・シンクロ・ドラゴンを召喚!

 それに博打に勝ってレッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライトの攻撃力を上回った!』

 

 レッド・デーモンズの効果は自身より強い者を破壊することはできない。

 そして、あのモンスターはレベル5以上のモンスターの効果を打ち消す。

 攻防一体の一手を手札2枚で成し遂げたか。

 

「バトルだ!クリアウィング・シンクロ・ドラゴンでレッド・デーモンズ・ドラゴンに攻撃!旋風のヘルダイブスラッシャー!!」

 

 暴風を纏った白き竜が、悪魔竜に突撃する。だが

 

――ガキンッ!

 

 その進撃を悪魔の鎖が止める。

 

「甘いわ!俺は永続トラップ、デモンズ・チェーンを発動させた。

 このカードはフィールド上の効果モンスターを対象に発動し、このカードがある限り、対象モンスターは攻撃できず効果も封じられる。

 この俺に、そのような生ぬるい手が通用すると思うな!」

 

「ひゅー!さすがジャック!

 だが、攻撃力が上回っている限り、レッド・デーモンズの効果でクリアウィングを破壊することはできねぇぜ!

 俺はカードを2枚伏せて、ターンエンド!」

 

 ふんっ、道化者のようなことを

 俺がそれを許すと思っているのか!

 

「俺のターン!ドロー!

 俺は墓地の風来王 ワイルド・ワインドの効果を発動!

 このカードを除外し、デッキから攻撃力1500以下の悪魔族チューナー1体を手札に加える。

 俺はチェーン・リゾネーターを手札に加え召喚!」

 

チェーン・リゾネーター「へへッ!」

           ATK100

 

「チェーン・リゾネーターが召喚に成功したとき、フィールド上にシンクロモンスターがいるとき、デッキから新たなリゾネーターを呼び出すことができる!

 来い!シンクローン・リゾネーター!!」

 

シンクローン・リゾネーター「ハッ!」

             DEF100

 

 見せてやろう!あらゆる敵を打ち砕く、俺の圧倒的なパワーを!

 

「レベル8、レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライトにレベル1のチェーン・リゾネーターとシンクローン・リゾネーターをダブルチューニング!」

 

 2体のリゾネーターが炎の輪となってレッド・デーモンズを覆うように高速で回転する。

 

「王者と悪魔、今ここに交わる!赤き竜の魂に触れ、天地創造の雄たけびを上げよ!シンクロ召喚!

 現れろ!レッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラント!!」

 

レッド・デーモンズT「グオオォォォォォォォォォ!!」

          ATK3500

 

 獅子の鬣のごとき角、傷が癒え、より強大になった肉体、そして熱き魂!

 この暴君の力の前では小細工なぞ通用せん!

 

「うおぉぉぉ!!これがレッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラント!

 間近でみると威圧感が半端ネェぜ!!」

 

「ふっ、騒々しい奴め。

 シンクローン・リゾネーターがフィールドから墓地へ送られたことにより、墓地のレッド・リゾネーターを手札に戻す。」

 

 むっ、また新たなアクションカードか、丁度いい。

 

「先を行くものの特権を見せてやろう!

 新たに得たアクションマジックを捨てマジックカード、一撃必殺!居合ドローを発動。

 このカードはお前のフィールドのカードの枚数分、俺のデッキの上からカードを墓地に送り、1枚ドローする。

 それが居合ドローならばそれを墓地に送り、フィールドのカードすべてを破壊し、相手に破壊され墓地へ送られた枚数×2000ポイントのダメージを与える。

 お前のフィールドのカードは3枚!よって3枚のカードを墓地へ送り1枚ドロー

 ドローしたのは(ディファレント)(ディメンション)(リバイバル)、居合ドローでないため、俺の墓地から居合ドローの効果で墓地へ送られた枚数と同じ枚数分のカードをデッキに戻す。

 俺は手札断殺、コマンド・リゾネーター、コール・リゾネーターをデッキに戻す。

 

 そして!レッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラントの効果発動!

 1ターンに1度、このカード以外のフィールド上のカードすべてを破壊する!

 全てを滅ぼせ!アブソリュート・パワー・インフェルノ!!」

 

「おぉっと!そうは問屋が卸さねぇ!

 チェーンしてクリアウィングを対象に永続トラップ、追走の翼!そしてさらにチェーンしてトラップカード、ハーフ・アンブレイクを発動!」

 

クリアウィング「オオォォォォォォォォ!!」

 

 破滅の獄炎がクリアウィングに襲い掛かるが、クリアウィングはデモンズ・チェーンを引きちぎり、その中を縦横無尽に飛び回り躱していく。

 そして奴もまたDホイールを巧みに駆使し、獄炎の余波を避け続ける。

 

「ハーフ・アンブレイクの効果でこのターン、クリアウィングは戦闘では破壊されず、戦闘ダメージは半分になる。

 そして追走の翼の効果でこのカードが存在する限り、対象モンスターは相手の戦闘、効果では破壊されない。」

 

「チェーン処理の関係上、すでに追走の翼の効果を受けたクリアウィングは破壊されなかった、というわけか。」

 

「おう!そんでもって、デモンズ・チェーンも破壊してくれたからクリアウィングの効果も復活したぜ!」

 

 レッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラントの自己強化を封じられたか

 

「フンッ、なかなかやるではないか。

 俺はカードを1枚伏せ、エンドフェイズ、墓地へ送られた彼岸の悪鬼 スカラマリオンの効果発動

 このカードが墓地へ送られたターンのエンドフェイズ時、デッキからスカラマリオン以外の悪魔族、闇属性、レベル3モンスター1体を手札に加える。

 俺はデッキから奇術王 ムーン・スターを手札に加え、ターンエンドだ。」

 

「ふぅ~何とか乗り切ったぜ・・・

 俺のターン、ドローだ!

 まずは俺の墓地のSR(スピードロイド)バンブー・ホースの効果を発動!

 墓地のこのカードを除外してデッキの風属性モンスター、2体目のSR(スピードロイド)電々大公を墓地に送る。」

 

「ならば俺も墓地の絶対王 バック・ジャックの効果を使わせてもらう!

 相手ターンに墓地のこのカードを除外し、デッキトップを確認しそれが通常トラップなら、自分フィールドにセットし、それ以外ならそのカードを墓地へ送る。」

 

「へっ!そんな博打打ちで大丈夫かよ!」

 

 確かに博打打ちだ。

 スカラマリオンの効果のため、バック・ジャックのトップ操作能力は無駄になった。

 墓地肥やしになると言えばそうだが

 

「キングをなめるな!!

 デッキトップは・・・スカーレッド・コクーン!通常トラップだ!

 よってこのカードを俺のフィールドにセットする!」

 

「おぉぉ!!やっぱり持っているぜ!ジャック・アトラスっていうデュエリストはよ!

 そんじゃ、俺もとっておきの、とっておきのとっておきを出させてもらうぜ!

 墓地の電々大公の効果発動!もう一回頼むぜ!SR(スピードロイド)―OMKガム!!」

 

OMKガム「フムッ!」

     DEF800

 

 また、そいつか

 墓地にはマッハゴー・イータがある。あれを使えば新たにレベル6の風属性シンクロモンスターが出せるが・・・

 何かを仕掛けてくるな?

 

「俺はレベル7のシンクロモンスター、クリアウィング・シンクロ・ドラゴンにレベル1のSR(スピードロイド)―OMKガムをチューニング!!」

 

「むっ!?」

 

 強化したモンスターを素材にするか!

 

「神聖なる光蓄えし翼煌めかせ、その輝きで敵を討て!!シンクロ召喚!!」

 

 風の中で透明な翼が変わる。

 より雄々しく、より美しく、より煌めく、水晶の翼へと

 

「出でよ!クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン!!」

 

クリスタルウィング「ギャオオオオオォォォォォォォォォォォォ!!」

         ATK3000

 

「おぉ・・・」

 

 日の光を反射させて輝く水晶の鎧と翼を持つ竜

 その美しさに俺も思わず息を漏らす。

 

「こいつが俺の、俺たちの夢を乗せた翼!覚悟しろよジャック!!」

 

 青臭いことを言うやつだ。

 コモンズに、いや、この街にまだこれほどの『熱』を持ったやつが居るとはな・・・だが!!

 

「フンッ!面白い!!

 俺の前で夢を語るというのなら!我が魂を、この俺が立つ頂を乗り越えてゆくがいい!!」

 

 俺も負けん!奴との真の決着をつけるためにな!!




 いや~べこべこになった外装をどうしようかと思ってたら、解決手段が向こうから転がり込んでくるとはな。
 しかも、引き取ったクロウのDホイールの修理もかって出てくるおまけつき。

 それよりも、君がすぐにOKを出したことに疑問を感じえないのだが?

 まっ、そこらへんは信用できるだろう。
 何か整備不良があれば、向こうの所為にできるし。

 ・・・やっぱり、君は詐欺師だ。
 次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
 『夢の先の背中』

 さてさて、ユーゴとジャックのデュエルか・・・今回ばかりはジャックを応援しないと・・・


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夢の先の背中

この辺の悩みは大会やりつつ本編進めないといけないところ(なんで戦争途中で大会編なんぞ入れたのか・・・)
ユーゴVSジャック後編です。


 シティ郊外の工場、その中の明かりは丑三つ時だと言うのに消えていなかった。

 

「まさか、またこいつに触れる日が来るとはな。ボルガー。」

 

「あぁ、にしても3年も野ざらしにされていたのに綺麗なもんだ。」

 

 色眼鏡を掛けたモヒカンの男『ボルガー』と髪を伸びっぱなしにした男『ロバート・ピアスン』

 社長と工場長という立場の二人が他に誰もいない深夜の工場で作業している。

 その理由については、遊矢がDホイールをこの2人以外に触らせないでほしいと条件を出したからだ。

 

「ただ、このボディの損傷だけは酷いな。

 リアルソリッドビジョンがいくらリアルな衝撃を与えてくるって言っても・・・」

 

 Dホイールの損傷は酷いものだった。遊矢のDホイールはボディを完全に新造

 クロウのDホイールは組み直しレベルとなっていた。

 

「・・・なんだか、きな臭いことが起きているのかもな・・・シンジのやつ・・・」

 

 ボルガーは何かが動いていることを察し、それに昔の仲間が関わっていることに怒りを覚える。

 思いつめそうになるボルガーにピアスンは元気づけるように明るく言葉を紡ぐ

 

「・・・なら、俺たちがこいつをそいつをブッ千切れる位すごいマシンにしなくちゃな!」

 

「あぁ!!

 だが、この中に入っているというカードを取り出すのは無理そうだな。

 解体している時間がない。」

 

「うぅん、防犯のためとはいえ、完全密閉にするんじゃなかったな・・・

 異常といえば、学習型サポートプログラムも切れなくなっているし、まぁ、それで助かっていると言っていたが・・・」

 

「とりあえず足回りを完璧にしよう!ピアスン!

 朝までに終わらせなくては、試し乗りもできないからな。」


「フンッ!面白い!!

 俺の前で夢を語るのなら!我が魂を、この俺の立つ頂を乗り越えてゆくがいい!!」

 

 熱い、熱い思いが、ジャックがこの俺と本気でデュエルをしているって気持ちが伝わってくる。

 なんなんだろうな。あのジャックが本気で掛かってくるなんてマジでやべぇ話だっていうのに、こんなにもワクワクするっていうのはよ!

 

「おう!乗り越えるどころか飛び越えてやるぜ!!

 シンクロ素材となったSR(スピードロイド)―OMKガムの効果!

 デッキトップは・・・トラップカード、ダイスロール・バトル、SR(スピードロイド)じゃねぇから攻撃力アップはなしだ。」

 

「ほう、飛び上がって見せるといった割には無様な結果じゃないか?」

 

「うるせぇ!こっからだ!こっから!!

 マジックカード発動!ハイ・スピード・リレベル!

 墓地のSR(スピードロイド)モンスター、ビードロ・ドクロを除外してそのレベル×500ポイント、自分フィールド上のシンクロモンスターの攻撃力をアップさせ、除外したモンスターと同じレベルにする。

 ビードロ・ドクロのレベルは7!

 よってクリスタルウィング・シンクロ・ドラゴンのレベルは7となり攻撃力は3500ポイントアップだ!」

 

クリスタルウィング「ギャオオオォォォォォォォォォ!!」

         ATK3000→6500 LV8→7

 

「いくぜぇ!クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴンでレッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラントを攻撃!!」

 

 煌めく水晶の翼、クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴンがジェット機のように腕を折りたたみ青空を音を置き去りにして飛び立つ。

 目標は真紅の暴君、その胸に風穴開けてやるぜ!!

 

「クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴンはレベル5以上のモンスターと戦闘するとき、ダメージ計算時そのモンスターの攻撃力をこいつに加える!」

 

『攻撃力6500にレッドデーモンズ・ドラゴン・タイラントの攻撃力3500ポイントを加えたら攻撃力10000となって、ジャックのライフ6100は消し飛んじゃいます!

 まさかのキングに1ターンキル!?』

 

 それがそうもいかねぇんだよな・・・

 

「トラップ発動!スカーレッド・コクーン!

 このカードは発動後、ドラゴン族シンクロモンスターの装備カードとなり、装備モンスターが相手モンスターと戦闘を行う場合、ダメージステップ終了時まで相手フィールド上のすべての表側表示モンスターの効果を無効化する!』

 

 レッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラントが真っ赤な繭に一度包まれ、それを破るとクリスタルウィングを阻むように炎の壁を作り出す。

 だがまだ攻撃力では大勝ちしてんだ!このまま行けぇー!!

 

「烈風のクリスタロス・エッジ!!」

 

 大空を飛びながらさらに加速したクリスタルウィングが炎の壁を突き抜ける。

 

――ビュウゥゥゥゥゥゥゥゥ、ガシッ!!

 

クリスタルウィング「ギャッ!?」

 

 だが、その首根っこを暴君は掴んでいた。

 

「なっ!なんだぁ!?」

 

「この程度の攻撃で俺を、俺の魂を超えられると思うな!

 トラップカード、プライドの咆哮!!

 自分のモンスターが相手モンスターと戦闘を行うとき、相手モンスターの攻撃力が上回っている場合、俺のライフで足りない攻撃力を補い、さらに300ポイントアップさせる!

 俺のライフ3000を支払い、タイラントの攻撃力を3300ポイントアップさせる!!」

 LP6100→3100

 

レッドデーモンズT「グオオォォォォォォォォ!!」

         ATK3500→6800

 

クリスタルウィング「グギャアアァァ!?」――バンッ!

 

「げえぇぇ!?ぐぅうぅ・・・」

 LP4000→3700

 

 首根っこを掴まれていたクリスタルウィングが俺の方へ投げ飛ばされ破壊される。

 くっそっー!!こいつでもダメか!

 

「だったら、バトルを終了してマジックカード、スピードリバースを発動!

 自分の墓地からSR(スピードロイド)モンスターを特殊召喚する。

 俺が呼び戻すのはこいつだ!チューナーモンスター、SR(スピードロイド)―OMKガム!」

 

 OMKガム DEF800

 

「さらに墓地のHSR(ハイスピードロイド)マッハゴー・イータは自分フィールド上にSR(スピードロイド)チューナーがいるとき特殊召喚できる!」

 

 マッハゴー・イータ DEF1000

 

「そして、自分フィールド上に機械族効果モンスターが2体のみの時、手札からマジックカード、アイアンドローが発動できる。

 このカードを使っちまった後、俺は特殊召喚を1回しかできなくなるが、デッキから新たに2枚ドローする。

 そしてこれが最後の一回!俺はレベル5のHSR(ハイスピードロイド)マッハゴー・イータにレベル1のOMKガムをチューニング!

 十字の姿持つ魔剣よ。その力ですべての敵を切り裂け!シンクロ召喚!!

 現れろ!レベル6、HSR(ハイスピードロイド)魔剣ダーマ!!」

 

 魔剣ダーマ ATK2200

 

 出てきたのは自分より大きな盾と剣を装備した俺がガキの時から使っているモンスター

 クリスタルウィングがポシャっちまったからには、こいつで一か八かやるしかねぇ・・・

 

「OMKガムの効果・・・デッキトップはマジックカード、アイアンコール、効果は失敗だ。

 だが俺は装備魔法、ブレイク・ドローを魔剣ダーマに装備

 そんで駄目押しで魔剣ダーマの効果発動、1ターンに1度、墓地の機械族モンスターを除外して、相手に500ポイントのダメージを与える。

 俺はSR(スピードロイド)―OMKガムを除外してジャックに500ポイントのダメージを与えるぜ!」

 

「フンッ!温いな、この程度のダメージ、お前の思いとはそんなものか?」

 LP3700→3200

 

「へっ!こっから!こっから!

 俺はカードを2枚セットしてターンエンドするぜ!」


「あいつも馬鹿なのか?」

 

 なぜ、攻撃力3500のモンスターの目の前でそれより下の攻撃力のモンスターを攻撃表示で・・・

 

「トラップ・・・さそって・・・る?」

 

「あぁ、2枚も伏せたんだ。

 どちらかか、どちらもか、どっちにしろそうでなくてはこのターンで奴は終わる。

 最も戦闘に持ち込む前に全体破壊をどうにかしなくてはならんがな。」

 

 黒咲と零羅が白いのの行動を推察する。そ、そうだな・・・

 

『何を伏せたか知らんが、この程度で終わってくれるなよ!

 俺のターン、ドロー!』

 

『お言葉に甘えるぜ!速攻魔法発動、禁じられた聖杯!

 このターンの終わりまで、フィールド上のモンスター1体の効果を無効にして攻撃力を400ポイントアップする。

 無効にするのはもちろん、レッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラント!』

 

 レッド・デーモンズT ATK3500→3900

 

「これで後は、相手の攻撃待ちというところか?」

 

「相手、攻撃しないと、次のターン、効果ダメージ

 ・・・それに、戦闘補助なら、次のターンも使える・・かも。」

 

「藪を突っつくような話だな。

 あのモンスターに装備されているトラップの効果でモンスターが途切れないなら・・・攻撃を選ぶか。」

 

『俺は墓地のレッド・ライジング・ドラゴンの効果を発動!

 このカードを除外することで墓地からレベル1のリゾネーターを2体特殊召喚する!

 来い!チェーン・リゾネーター!シンクローン・リゾネーター!』

 

 チェーン・リゾネーター   DEF100

 シンクローン・リゾネーター DEF100

 

『さらに装備魔法、(ディファレント)(ディメンション)(リバイバル)を発動!

 手札を1枚捨て除外されている自分のモンスター1体を特殊召喚する!

 再び我が前へ!レッド・ライジング・ドラゴン!!」

 

 背中にチェーンとオブジェを背負った小悪魔とそれを呼び出した炎の悪魔竜があの男の前に現れる。

 

『俺はレベル6、レッド・ライジング・ドラゴンにレベル1悪魔族チューナー、チェーン・リゾネーターをチューニング!

 新たなる王者の脈動、混沌の内より出でよ!シンクロ召喚!

 誇り高き、デーモン・カオス・キング!』

 

デーモン・カオス・キング『ハッ!』

            ATK2600

 

『さらにレベル7のデーモン・カオス・キングにレベル1のシンクローン・リゾネーターをチューニング!

 王者の決断、今赤く滾る炎を宿す、真紅の刃となる!熱き波濤を超え、現れよ!シンクロ召喚!!

 炎の鬼神!クリムゾン・ブレーダー!!』

 

クリムゾン・ブレーダー『フン!ハァァァァ!デュア!!』

           ATK2800

 

 小悪魔と炎の悪魔が真紅の鎧を纏う二刀流の剣士となる。

 

「新たなモンスター、コンバットトリック狙いなら、これでユーゴというやつの思惑はついえたことになる。」

 

「あぁ、あのドラゴンを生かせば、次のターンで全体破壊、攻撃力を上げる方法がなければ対処できないだろう。」

 

『シンクローン・リゾネーターの効果により俺は墓地からチェーン・リゾネーターを手札に加える。

 バトル!クリムゾン・ブレーダーでHSR(ハイスピードロイド)魔剣ダーマを攻撃!

 クリムゾン・ブレーダーは戦闘でモンスターを破壊し墓地に送った場合、次の相手のターン、相手はレベル5以上のモンスターを召喚、特殊召喚できなくなる!』

 

『おぉっと、これはHSR(ハイスピードロイド)魔剣ダーマは自己蘇生効果を持っていますが、キングこれを封じてきた!

 いや、ユーゴはそもそもこのターンを凌げるのでしょうかぁ!?』

 

 クリムゾン・ブレーダーの攻撃を防がなければライフは残っても続かないだろう。

 シンクロ召喚はより高レベルのモンスターを出し続ける召喚法

 白いののメインデッキにはまともな攻撃力のモンスターはいないだろうしな。

 

『ちょい待ち!そのバトルステップ時に俺は墓地のダイスロール・バトルの効果を発動するぜ!!』

 

「墓地のトラップ!?」

 

『こいつを除外して、自分及び相手フィールド上の攻撃表示のシンクロモンスターを1体ずつ選び、強制戦闘させる!

 俺の魔剣ダーマと、ジャック!あんたのレッド・デーモンズでな!!』

 

『ほう、だがレッド・デーモンズの攻撃力の方が上だぞ?

 行け!レッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラントよ!獄炎のクリムゾンヘルタイド!!』

 

 真紅の炎が機械の騎士に向かう。

 魔剣ダーマをあえて破壊させて、クリムゾン・ブレーダーの効果を回避するつもりか?

 

『ンなことはわかっているんだよ!!

 ダメージステップにリバースカード発動!速攻魔法、リミッター解除!!

 俺のフィールド上の機械族モンスターの攻撃力をすべて倍にする!!』

 

 魔剣ダーマ ATK2200→4400

 

 なっ!?ここで攻撃力を上回っただと!?

 

『貫かせてもらうぜ!!いけぇぇぇぇぇぇ!!』

 

 魔剣ダーマは炎を突き進み、荒ぶる暴君の胸にその手の刃を突きつける。

 

レッド・デーモンズT「グオォォォ・・・」――バンッ!

 

『ぐぉおおぉぉぉぉぉ!!』

 LP2600→2100

 

『なんとなんと!!魔剣ダーマがレッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラントを両断!!

 ジャックにダメージを与えましたあぁぁァァァ!!』

 

――うおぉぉぉぉぉぉぉ!!

 

「おぉぉぉ!!・・・おっ?」

 

 白いのの逆転の一手に興奮し、周りの観客につられて立ち上がった私が視界の端に偶然見つけたもの

 左目に大きな火傷があり眼帯をした大柄な男・・・

 

「バレット!?」


『しゃああぁぁぁ!!やったぜ!!

 魔剣ダーマに装備されたブレイク・ドローの効果で1枚ドロー!』

 

「あぁ、もう、ユーゴったら、はしゃいじゃって・・・デュエルはまだ終わってないのよ・・・」

 

『暴君は倒れても俺の魂は倒れはせん!!

 バトルを終了しマジックカード、アドバンス・ドローを発動

 レベル8以上のモンスター、クリムゾン・ブレーダーをリリースし2枚ドロー

 さらに手札抹殺を発動し、俺の手札4枚を捨て4枚のカードを新たにドロー!!』

 

『俺も1枚捨てて1枚ドローするぜ。』

 

『墓地に送られた絶対王 バック・ジャックの効果でデッキトップを3枚確認し好きな順番でデッキの上に戻す。

 手札を1枚伏せエンドフェイズ、スカーレッド・コクーンの効果発動、蘇れ我が魂!!レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト!!』

 

レッド・デーモンズS『グオオオオォォォォォォ!!』

          ATK3000

 

 全身傷だらけで片角が折れた悪魔竜が暴君の倒れた煙の中から現れる。

 あのモンスター、そしてそれに連なるカードがジャックさんのフィールドから途切れない。

 

「我が魂、と言うだけはあるわね。」

 

「あぁ、そうだな。」

 

 私のつぶやきにユートも賛成してくれる。

 遊矢がデッキを作るときに自分の一番好きなカードをまず最初に選べって言ってたけど、これを見ればみんな納得ね。

 

――おい、ジャック、負けちまうのか?

 

――いや、こっから大逆転だ、ジャックならな!

 

「あっ・・・」

 

 ジャックさんとユーゴの攻防、それはおじさんみたいに華麗なものではないけど、互いが互いのプライドをかけた熱さを持っている。

 その熱さにこの会場、いえ、きっとこのデュエルを見ている人たち全員が同じ熱さを共有している。

 私もユートも見入ってしまうくらいに

 

『エンドフェイズになったことで、リミッター解除の効果を受けた魔剣ダーマは破壊される。』

 

――どうなるんだろうな。どっちが勝つんだ?

 

――そりゃジャックさ!我らがキング!!

 

――いや、修理屋に俺は賭けるぜ!ワンチャンな!

 

 誰もが2人のどちらが勝つのかとワクワクしている。ドキドキしている。

 このデュエルを『楽しんでいる』。

 

「デュエルって、見た目じゃないのね・・・」

 

「ん?どうしたんだ?」

 

「うぅん、何でもない。

 ただ、みんなデュエルを楽しんでるなぁって・・・」

 

「・・・あぁ、俺も、またこんな楽しいデュエルがしてみたいものだ。」

 

 エクシーズ次元は今もアカデミアによって人がカードに変えられている。

 デュエルが恐怖の対象になってしまっているのなら『楽しいデュエル』はもう・・・

 

 そんなことを思いながら、私はスタジアムで2人のデュエルを楽しんでいる観客たちを目に焼き付けていると、見知った水色の髪が目に入った。

 他の観客と同じように2人のデュエルを見ている私たち遊勝塾の仲間

 

「素良!?」


「俺のターン、ドロー!!

 墓地のHSR(ハイスピードロイド)魔剣ダーマの効果発動

 自分フィールド上にカードが存在しない場合、こいつを墓地から特殊召喚する。」

 

 魔剣ダーマ ATK2200

 

「さらに俺のフィールドに風属性モンスターがいることにより、手札のチューナーモンスター、SR(スピードロイド)カールターボは特殊召喚できる!」

 

 カールターボ ATK800

 

「さらに墓地のHSR(ハイスピードロイド)マッハゴー・イータの効果発動!

 俺のフィールドにSR(スピードロイド)チューナーがいることにより、墓地よりこいつを特殊召喚する!」

 

 マッハゴー・イータ ATK2000

 

『ユーゴ、モンスター効果を巧みに使い前線を盛り返す!

 本気のキング!本気のジャックに、レッド・デーモンズにどう立ち向かうのか!!』

 

「まずは魔剣ダーマの効果で墓地の機械族モンスター、SR(スピードロイド)ブロックンロールを除外して、ジャックに500ポイントのダメージだ!」

 

「フン、小技を・・・」

 LP2100→1600

 

「俺はレベル5のHSR(ハイスピードロイド)マッハゴー・イータに風属性の機械族チューナー、SR(スピードロイド)カールターボをチューニング!

 連なる風を受けて、大空へと飛び上がれ!!シンクロ召喚!!

 来い!HSR(ハイスピードロイド)カイドレイク!!

 

カイドレイク「ギャアァァオオォォォォ!!」

      ATK3000

 

 ユーゴと共に並走する平たいモンスターが風を受けて重なり大空へと舞い上がって機甲の竜へと変わる。

 

「カイドレイクの効果発動!

 こいつがシンクロ召喚に成功したとき、フィールド上のこいつ以外のカードすべてを破壊する!!」

 

「レッド・デーモンズをこれ以上破壊させぬ!!

 レッド・ガードナーの効果を発動! 自分フィールド上にレッド・デーモンモンスターが存在し、相手のマジック、トラップ、モンスターの効果が発動したとき、このカードを手札から墓地へ送り、このターン俺のフィールドのモンスターを効果で破壊できなくする。

 

 さらにチェーンしトラップ発動!スカーレッド・カーペット

 フィールドにドラゴン族シンクロモンスターが存在する場合、自分の墓地のリゾネーターモンスターを2体まで特殊召喚する。

 来い!ダブル・リゾネーター!シンクローン・リゾネーター!」

 

ダブル・リゾネーター「へヘッ!」

          DEF0

 

シンクローン・リゾネーター「ヘッ!」

             DEF100

 

 頭が二つある新たな小悪魔とスペードを模したオブジェを背負ったこのデュエルでジャックを支え続けた小悪魔が真紅の盾を持って、カイドレイクの突撃からレッド・デーモンズを守り抜き、魔剣ダーマはカイドレイクの起こした風により吹き飛び破壊される。

 

「なにっ!?」

 

「フンッ!さらにダブル・リゾネーターの効果発動

 こいつが召喚、特殊召喚されたとき、フィールド上の表側表示モンスター1体をこのターンチューナーとして扱う。

 俺はレッド・デーモンズを選択!」

 

 レッド・デーモンズS(チューナー)

 

(レッド・デーモンズをチューナーに?

 何をしてくるのか全然わからねぇが、もうフィールドにセットカードはねぇし、アクションカードもねぇ、なら!)

「俺はマジックカード、星屑のきらめきを発動!

 俺の墓地のドラゴン族シンクロモンスターと同じレベルになるようにそれ以外のモンスターを除外することでそいつを特殊召喚する!

 墓地のレベル3、SR(スピードロイド)カールターボとレベル5、HSR(ハイスピードロイド)マッハゴー・イータを除外し、また天空へと舞い上がれ俺たちの翼!レベル8!クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン!!」

 

クリスタルウィング「ギャオオオオォォォォォォォォ!!」

         ATK3000

 

 青い空に水晶の輝きが飛翔する。

 だが、その背に白いフードを被った少女が乗っていた。

 

「手札の朔夜しぐれの効果を発動した

 相手がモンスターを表側表示で特殊召喚したとき、手札のこのカードを捨てることで、そのモンスターはこのターン中効果が無効となる。

 さぁ、どうする?」

 

「ちっ!俺はクリスタルウィング・シンクロ・ドラゴンの効果を発動!

 1ターンに1度、モンスター効果の発動を無効にし破壊する!」

 

「はははっ!そうだ!そうせざるを得まい!!」

 

(くっ!これでまた手札誘発持っていたら対処できなくなっちまった!

 ジャックの手札は後一枚・・・)

 

「俺は墓地のバック・ジャックを除外し効果を発動、デッキトップを確認

 引いたのは通常トラップ、破壊神の系譜!よってこのカードをセットする!」

 

(!!?破壊神の系譜!?

 あのカードは守備表示モンスターを破壊したターン、レベル8モンスターに2回目の攻撃権を与えるカード!

 ジャックの墓地には・・・これで貫通とか来たらマズい!!ビビっている場合じゃねぇ!!)

「バトルだ!!行け!クリスタルウィング!!

 レッド・デーモンズに攻撃!!烈風のクリスタロスエッジ!!」

 

「迎え撃てレッド・デーモンズ!!アブソリュート・ヘル・マキシマム!!」

 

 水晶の竜の突撃と紅魔の竜の拳がぶつかり合う。

 

クリスタルウィング「ギャオオオォォォォォォォォォォ!!」

 

「今度こそとどけぇぇぇぇぇ!!」

 

「言ったはずだ!!俺の魂をこれ以上破壊させはしないと!!

 手札のバリア・リゾネーターの効果発動!

 このカードを墓地へ送ることで、このターン俺のフィールドのチューナー1体は戦闘で破壊されず、その戦闘ダメージも0になる!」

 

レッド・デーモンズS「グゥ・・・オオォォォォォォォォォォ!!」

 

クリスタルウィング「ギャァァァ!?」

 

 レッド・デーモンズの拳が炎と雷を帯びクリスタルウィングを殴り飛ばす。

 クリスタルウィングは空中で姿勢を変え地上に激突することを免れる。

 

「・・・マジかよ・・・すげぇ・・・・・」

 

 一見無意味そうに見える効果をレッド・デーモンズを守るという結果につなげるタクティクス。

 その為に必要なカードを引き当てるドロー運の良さ。

 ユーゴの行動を誘導した心理戦。

 そのすべてが成立しないとこの状況は生まれない。

 

「これが本気のジャック・・・本物のキング!!」

 

「さぁどうした!!お前の夢の翼はこの程度しか飛び上がれないのか!!」

 

「ハッ!んなわけねぇだろ!!

 俺はまだあきらめねぇ!カイドレイクでダブル・リゾネーターに攻撃してターンエンドだ!」

 

 威勢だけはいいもののユーゴはすでに手札を使い切った。

 立ち向かうには今持てる力で最善を尽くすしかない。

 

「俺のターン!ドロー!

 俺は墓地の生きる偲びのシルキィの効果を発動!

 このカードが手札、墓地に存在する場合、自分及び相手フィールド上の表側表示モンスターを1体ずつ対象として発動

 それらを裏側表示にし、このカードを特殊召喚する。

 俺が選択するのはレッド・デーモンズとクリスタルウィング!」

 

(ぐぅ!?クリスタルウィングの効果でこの効果を打ち消しても、レッド・デーモンズの効果で破壊されちまう・・・

 なら少しでも・・・)

「クリスタルウィングの効果は・・・使わねぇ。」

 

「フン、ならば、生きる偲びのシルキィの効果を受けるがいい。」

 

 2体のドラゴンが消え、シルクのドレスを纏った亡霊が現れる。

 

生きる偲びのシルキィ「ふふ・・・」

          ATK800

 

「レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライトを反転召喚

 さらに墓地のレッド・ライジング・ドラゴンを再び除外してレベル1のチェーン・リゾネーターとダブル・リゾネーターを特殊召喚!」

 

 レッド・デーモンズS  ATK3000

 チェーン・リゾネーター ATK100

 ダブル・リゾネーター  ATK0

 

「そして、レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライトの効果発動!

 フィールド上のこのカード以外の、このカードの攻撃力以下の攻撃力を持つ特殊召喚された効果モンスターをすべて破壊し、破壊したモンスター1体に付き500ポイントのダメージを相手に与える!アブソリュート・パワー・フレイム!!」

 

 レッド・デーモンズの炎が路面を焦がす。

 王に従う家臣たちはその身を勝利に捧げ、歯向かう敵は身を焦がす。

 

「うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 LP3700→1200

 

「自身の効果で特殊召喚された生きる偲びのシルキィは除外される。

 そして、墓地へ送られたシンクローン・リゾネーターの効果でレッド・リゾネーターを手札に戻す。」

 

「ぐぅぅ・・・・HSR(ハイスピードロイド)カイドレイクは相手によって破壊され墓地へ送られた場合、デッキからSRモンスター1体を俺の手札に加える。

 俺はSR(スピードロイド)メンコートを手札に加えるぅぅ・・・」

 

「守備表示ならクリスタルウィングの効果も意味があるまい!

 行け!レッド・デーモンズよ!!灼熱のクリムゾン・ヘル・バーニング!!」

 

クリスタルウィング「グゥゥ・・・ギャアオォォォォォォ!!」――バンッ

         DEF2500

         ATK3000→6000

 

 強者の力を映し出す水晶の鎧も悪魔竜の炎で溶け砕ける。

 

「トラップ発動!破壊神の系譜!!

 相手フィールド上に守備表示で存在するモンスターを破壊したターン、自分フィールド上に表側表示で存在するレベル8モンスターは2回攻撃ができる!

 もう一度行け!レッド・デーモンズ!!」

 

「させるか!!手札のSR(スピードロイド)メンコートの効果発動!!

 相手のダイレクトアタック宣言時、このカードを手札から攻撃表示で特殊召喚し、相手フィールド上の表側表示モンスターすべてを守備表示にする!」

 

 メンコート ATK100

 

レッド・デーモンズS「グッ!?」

          ATK3000→DEF2500

 

 四方からジェットを使い回転飛翔する機械で作られた板がレッド・デーモンズに向かい、それをとっさに避けるためにレッド・デーモンズは攻撃の手を止め防御行動をとる。

 

「まだあきらめぬか・・・面白い!!

 カードを1枚伏せターンエンドだ!」

 

(互いに手札はゼロ、ライフも、フィールドも圧倒的に俺が不利

 でも、まだ・・・飛べるはずだろ?)

「なぁ!!俺のターン!ドロオォォォォ!!」

 

 ユーゴの思いに応えるようにデッキは状況を打破するカードをユーゴに与える。

 だが、勝利を得るには今一歩足りない。

 

(足りないものは・・・掴み取る!!)

「俺はマジックカード、死者蘇生を発動!

 もう一度、何度でも飛び上がれ!俺たちの翼!!クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン!!」

 

クリスタルウィング「ギャオオォオォォォォォォォ!!」

         ATK3000

 

「バトルだ!!行くぜ!クリスタルウィング!!」

 

クリスタルウィング「ギュオオォォォォォォ!!」

 

 低空で飛ぶクリスタルウィングの突撃は空気を切り裂きユーゴはその中を突き進む

 

「うおぉぉぉぉぉ!!」

 

「!!?この加速・・・スリップストリーム!!?」

 

 リアルソリッドビジョンにより生まれた奇跡の様な偶然

 モンスターとのスリップストリームはユーゴをジャックと並走させついには追い抜かしその手に勝利の鍵をもたらす。

 

(アクションマジック、ゼロ・ペナルティ!!

相手モンスターの攻撃力を0にするカード!!)

 

「・・・見事だ。」

 

 ジャックも認めた。そして感じ取った。この目の前の少年は友に連なるものだと

 

(?・・・そういえば、なんでクリスタルウィングはジャックを追い抜いた?)

 

 ゆえに思った。

 

「だが・・・遅かったな!!」

 

 負けられないと!!

 

「攻撃宣言時にトラップカード、波動障壁を発動した。

 シンクロモンスター、レッド・デーモンズをリリースし、相手フィールド上の攻撃表示モンスター全てを守備表示に変え、攻撃宣言したモンスターの守備力分のダメージを相手に与える!!」

 

 クリスタルウィング ATK3000→DEF2500

 

 レッド・デーモンズはすでに波動となり実体無き力となっていた。

 このダメージを回避する術はもうユーゴにはない。

 

「・・・あぁ・・・高ぇな・・・・」

 LP1200→0


「バレット!!」

 

「待てセレナ!」

 

「ま・・・ま、って・・・ハァハァ・・・」

 

 私はその姿を見た瞬間、衝動的にバレットを追いかけていた。

 バレットの使うモンスターは爆発系の効果を持ったものが多い。

 もし、ここで奴が暴れれば甚大な被害が出るだろう。

 私がこんなにも焦ったのは赤いのが言っていた、死というものを見る恐怖からなのかもしれない。

 

「!!セレナ様!?」

 

 意外にもバレットは私を見て驚いていた。

 私を捕らえに来たのではないのか?

 

「・・・ご無沙汰しております。お元気そうで。」

 

「あぁ、楽しくやらせてもらっている。」

 

「それは吉報でございますな。」

 

 バレットの真意が見えない。その言葉に嘘はないと感じたからだ。

 プロフェッサーの命を受けここにいるのならば、クソ真面目なこいつのこと、ジョークなど飛ばすはずもない。

 

「・・・セレナ、こいつはアカデミアだな?」

 

「あぁ、私のお目付け役だった男だ。」

 

「敵・・!!」

 

 敵、そう今のバレットは敵だ。ならば戦うまで・・・いや、その前に・・・

 

「・・・バレット、アカデミアはシンクロ次元にも侵攻するつもりか?」

 

「いえ、私はあなたのご友人の頼みで来たにすぎません。」

 

「ユーリか・・・」

 

「左様、だがあなたを見つけてしまった以上、何もしないわけにはいきませんね。」

 

「そうだな。お前は戦士だ。」

 

 私はデュエルディスクを構える。

 ここは駐車場、広さも申し分ない。

 

「まて!ここは俺が!」

 

「ぼ、僕も・・・!」

 

「いや、黒咲、零羅、ここは私にやらせろ。」

 

 偉そうなのと白いののデュエル、その熱は私に伝播しこの身に御しきれないほどため込まれている。

 それにこいつには、まだ勝ち越されているからな!!

 

「勝たせてもらうぞ、バレット!!」

 

「やれやれ、仕方ない・・・行きますよ!セレナ様!!」


「素良!」

 

「えっ!?だれ・・・って、その声!?もしかして柚子!?」

 

 えっ!?気づいてなかったの!?ヤバ!!

 

「・・・はぁ~本当にいた・・・まぁ、権ちゃんとか、沢渡とか、たぶん遊矢とか居るからいるだろうなとは思ってたけどさ・・・

 でも、折角変装しているのに僕の前に出てきちゃダメじゃない?」

 

「うっ!!それは・・・」

 

 それはまぁ、こっちとしてはバレてると思ってたわけだし・・・

 

「そいつは、アカデミア・・・か?」

 

 遊矢への言い訳考えている場合じゃなかったぁ!!

 

「君は遊矢、じゃなさそうだね。

 今試合しているユーゴっていうのがここの人なら・・・君はエクシーズかな?

 まったく、君たちは何人そっくりさんがいるのさ。」

 

「さぁな。

 それで、アカデミアがここに何の用だ。」

 

 ユートが静かだけど、怒りを滲ませているのが分かる。

 

「聞かなくてもわかるんじゃない?柚子を攫いに来たって。」

 

 !!素良はアカデミア、でも遊矢が「もう奴が人を襲うことはない。」っていってたのに・・・

 

「させると思うか?」

 

「だよね。

 まぁ、そういう名目で実際は今の僕の上司の道楽に付き合っているだけさ。

 って言うか、今君を連れて行ったらその上司、怒ると思うし・・・」

 

「・・・はぁ?」

 

 あっけらかんと言われた素良からの言葉は意外だった。

 アカデミアのデュエリストは赤馬 零王の命令のためならどんなことでもやりそうな危険な奴ら、少なくともあの仮面の奴らからはそんな感じがしたわ。話も通じなかったし

 でも、素良からはなんだか・・・ちょっと苦労人臭がするわ・・・

 

「それでどうする?

 僕としてはこのままここで話し込んでいてもいいんだけどさ。

 そっちの黒い人は僕をどうにかする権利はあると思うよ。僕はエクシーズへの最初の攻撃の時に侵攻部隊にいたから。」

 

「キサマ!!」

 

「ユート!」

 

 怒りだすユートを私は止める。

 短い間だけどユートが優しい人だって分かったから、怒りや憎しみでデュエルをしてほしくはない。

 そう、それは私のわがまま。でもこのわがままは通させてもらうわ!

 

「ねぇ、素良

 遊矢が言ってたと思うけど。」

 

「うん、そういうことなら、外に出よっか。」

 

「えぇ。」

 

「待て、一体何をするつもりだ!?」

 

 悪いことをしているなら止める。間違っているなら力ずくでも正す!

 なぁ~んて、お父さんの熱血が移っちゃったかしらね。

 

「ユート、素良はアカデミアだけど、同時に私たち遊勝塾の仲間でもあるの。

 だから私は友達として仲間として・・・悪いことしたあいつをぶん殴ってやるのよ!!」

 

「・・・ゑ?」


 あぁ~負けちまった・・・

 すまねぇ、リン、爺さん。せっかくのチャンスだったのに・・・

 

「お前、ユーゴと言ったな。」

 

「へっ?」

 

 スタジアムに帰る最中、ジャックから突然声を掛けられた。

 

「俺はこのフレンドシップカップが終わったら、この街を出る。」

 

「えっ!?」

 

 そんな・・・ジャック、なんで・・・ジャックはキングなのに・・・

 

「俺は己の力を世界に向けて試したくなった。

 今まで俺は、もういないはずの奴との繋がりに縛られていたが、俺は俺の力を試したい。

 自分だけの力で世界を切り開きたい、そう思ったのだ。

 その為には、この街は狭すぎる。」

 

 ジャック・・・かっけぇなそれ!!

 

「かっけぇ・・・かっけぇぜ!ジャック!!

 世界のキング!最高だぜ!!」

 

「ふん・・・ならばお前はどうする?

 俺は先に進む!俺を倒して新たなキングとなるというのなら、お前はついてこれるか!!」

 

 ついてこれるかだって、そんなもの決まってらぁ!!

 

「おうよ!どこまでもどこまでも追いかけて、いつか絶対に追い越してやるぜ!!」

 

 俺がそう言うと、ジャックはめったに見せない笑みを見せて

 

「フッ、楽しみにしているぞ。お前とまたライディングデュエル出来る日を。」

 

 最高の言葉を贈ってくれた。

 

「!!・・・おう!!」


 選手控用のガレージで今朝搬送されてきたDホイールの点検も済み

 デッキの確認をしていると、ある意味案の定な訪問者がここに訪れていた。

 

「クロウ、本当に昨日の今日で出歩いて大丈夫なのか?」

 

「大丈夫大丈夫、大したことねぇって!

 ちぃとばかし、肩にひびが入ってたみてぇだがそれだけだってよ!」

 

 いや、それは大丈夫じゃない気はするけど・・・

 うぅん、肋骨の2、3本が折れても平然とライディングデュエルを続行したクロウなら大丈夫な程度なのか?

 あの大事故でその程度で済んだあたりも異常だけど

 

「しっかし綺麗になったもんだな。まるで新品だぜ。」

 

「まぁ、ボディと、応急処置とか代用品で賄ってたとこを全部ちゃんとしたものに換えてくれたからな。

 それでも手の回らないところは本当に手が回ってないみたいだけど。」

 

 メインフレームにくっ付いているカードケースとパスワードのわからないデータ部分とかな。

 エクストラに制限ができるのはちょいと痛いが、データの方は問題を感じたことはないし

 

「クロウのDホイールはもっとちゃんとして帰ってくるだろうさ。」

 

「あぁ、それも含めてもありがとうな。

 俺も久しぶりにボルガーたちに会ったんだが・・・実はよ、ライデイングデュエルがシティの外でも流行りだしたって聞いたんだ。」

 

 あぁ~そういや、この街にずっといて忘れてたけど、シンクロ次元のライディングデュエルっていわゆるマイナールールなんだよな。

 

「ほう、それはよかったじゃないか。」

 

「あぁ、俺たちの作ったものが認められたっていうのは、ちぃと照れくせぇ気もするがな。

 で、本格的にプロリーグを作るって話が持ち上がっているみたいでよ。

 俺も、それに誘われたんだ。」

 

「ははっ、職が向こうから舞い込んできたか!

 これで子供たちも腹を空かさなくて済むな。」

 

「へっ!そうだな。気がはえぇ気もするが

 それでよ、お前も一緒にやらないか?」

 

「あぁ?あ~俺はやめとくわ。堅苦しいのとか苦手だし。」

 

 そもそもこの世界の住人じゃないし

 

「そりゃ俺だって苦手だけどよ・・・お前となら、ライディングデュエルをもっといいものにできる気がするんだ!だから!」

 

「俺はただの通りすがりだ。そんな奴に自分の夢まで託すもんじゃない。」

 

 俺はこの席にとどまってはいられない。

 それに俺自身が厄介ごとの種でもあるしな。

 

「・・・すまねぇ、熱くなっちまった・・・」

 

「いいさ。

 その代わりと言っちゃなんだが、クロウが出来ないことを俺がやる。」

 

 シンジ・ウェーバーが言っていた神様、ロジェの目的、決闘竜(デュエルドラゴン)

 危険な存在の臭いがプンプンしているが、とりあえず勝てば儀式はできないはず・・・

 

「あぁ、頼んだ「やぁ~っと、見つけたぁ。」

 

 !!?

 

「君に会いに行こうとしたら、なぜか知らないとこに飛ばされてさ。

 ひどいよね。

 僕はちょっと君とデュエルがしたかっただけなのに・・・」

 

 子供のように無邪気な声が響く

 入り口を見れば小さなマントの付いた軍服のようなものを着た紫の少年が立っている。

 危険な存在どころか、最大級に問題の存在が来やがった!?

 

「ねぇ?だから、早くしようよ。デュエル♪」




ついに出会ってしまった捕食者と道化
なんとしても逃げようと画策するも、捕食者からは逃げられそうにない。

「俺を忘れてもらっちゃ困るぜ。」

「いや、罅入っているんだろ!?」

「あれ?お兄さんがデュエルしてくれるの?
 じゃあ、まずは君からにしようか。」

それぞれの思いと思惑の下に決闘(デュエル)の幕が上がる。
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『舞台裏の決闘(デュエル)

「楽しくないと、お兄さん、カードになっちゃうかもね?」


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舞台裏の決闘(デュエル)

あけましておめでとうございます。
年末年始のごたごたも終わりましたので、更新を再開いたします。
3つのデュエルを考えるのに時間取られたのもあるんですがね・・・

『ゼアル』『サイバー』『ブラック・ローズ』と次々とアニメ強化されておりますね。
『天魔神』なんかのなつかしいのも強化されるしレベル1シンクロという異例なモンスターも登場するようでどうなるか楽しみです。


「ねぇ?だから、早くしようよ。デュエル♪」

 

 デュエル♪じゃねぇ!よ!!

 柚子とかセレナの方に行かずにこっちに来るなんて・・・どうしよう・・・

 

 こいつと勝敗を決するわけにはいかない。

 どちらかがどちらかを取り込めば、フリーお願いします龍の復活を加速させてしまう。

 いや、そもそも俺というイレギュラーが、どう作用するかもわからない・・・

 

 というか!なんで試合前なんて、とんでもないタイミングで来るんだこいつ!!

 

「なんだ?てめぇ、ロゼはこれから試合だ。

 デュエルがしたいんなら、後にしな。」

 

「えぇ~君たちがどうやってあんなことができたのか分からないけど、苦労してここまで来たのに・・・

 ねぇねぇ、いいでしょ?10分くらいまだあるじゃない!」

 

 10分・・・念のために、対抗策のデッキも持ってきているけど、10分で終わる気がしねぇ!!

 

「おい、ロゼ、こいつ一体何なんだ?

 話が分かるっていうタイプじゃねぇぞ?」

 

「それは俺が知りたい。初対面だ。」

 

「えぇ~僕のことセレナから聞いてない?僕だよ、僕、ユーリ♪」

 

 笑顔で自分を指さしながら、そう告げるユーリ

 ・・・なんだか・・・ものすごく子供っぽいな・・・?

 アニメだと大半暴走していて、ユベルっぽくなっていたけど、素はこうなのか?

 

「だぁぁもう!ユーリだか、キュウリだか知らねぇが!ロゼは試合だっつってんだろうが!!

 そんなにデュエルがしてぇんなら!この俺、鉄砲玉のクロウ様が相手になってやるぜ!!」

 

 腕の固定を外して、クロウが啖呵を切る、いや!?ちょっと待て!!

 

「おい、クロウ!?お前肩!!」

 

「ロゼ、悔しい話だが俺にはもうシンジを止めることはできねぇ・・・

 だから、それはお前に託す!

 お前だってジャックとの約束があんだろ?

 だったら、こんなところで足止め喰らっている暇なんてねぇだろうが!!」

 

「!!でも・・・」

 

「でもも杓子もねぇ!!行ってこい。そら!」

 

 クロウが1枚のカードを投げてくる。これは!?

 

「そいつなら、お前のデッキにも合うだろ?

 ・・・シンジのこと頼むぜ?」

 

 ・・・・すまない。

 

 俺はすぐさま、Dホイールに乗り込みガレージからゲートへと向かう。

 託されたものを、果たすために


 華麗で美しい舞台の裏では様々な人間たちがそれぞれの役割を持って動いている。

 しかし、観客たちはその者たちの働きを目にすることはないだろう。

 

「あぁ~あ、行っちゃったぁ~

 それで、君が代わりにデュエルしてくれるの?」

 

「あぁ、俺じゃ不満か?がきんちょ。」

 

「ガキンチョじゃないよ。僕14歳だもん。

 まぁこの際、お兄さんでいいかっ。

 でもさぁ~張り切って出てきた割に弱かったら、君、カードになっちゃうかもよ?」

 

「へっ!やれるものならやってみやがれ!!」

 

 キャストを降りたものは舞台に上がる者へとその願いを託して

 

「零羅、ここの監視カメラは。」

 

「もう、切ってある。

 リアルソリッドビジョンも出来ないようにしたから、召喚反応も出ない・・・はず・・・」

 

「勝たせてもらうぞ!バレット!!」

 

「やれやれ、仕方ない・・・行きますよ!セレナ様!!」

 

 舞台へ上がらない者だって、その意地を通すため

 

「さて、ここらへんでいいかな?

 あぁ、そうだ。面倒なことが起こらないようにリアルソリッドビジョンは切っておこうよ。」

 

「う、うん。そうね。

 あっ、ねぇ素良、聞きたいことが「おっと、そこから先を聞きたいなら、僕に勝ってからにしなよ。柚子。」

 

「・・・そうね。

 だったら、勝たせてもらうわ!素良!!」

 

 舞台に上がろうとする者は、夢のために

 

『『『『『『決闘(デュエル)!!』』』』』』

 

 戦っている。自分の物語を紡ぎながら


 スタジアムから出て、アカデミアの人間と柊 柚子が交戦に入る。

 セレナと隼、零羅の場所にもアカデミアの人間が現れたという。

 情報収集のために即応で駆け付けられるメンバーがいないときに限って!!

 あのスパイが?いや、この配置は遊矢が決めた。情報漏れではなくハードラックということか!くそっ!!

 

「先攻は私よ!

 私は永続魔法、未来融合―フューチャー・フュージョンを発動するわ!」

 

「それは通せないな!

 手札のエッジインプ・サイズの効果を発動!

 相手メインフェイズに、手札のこのカードを相手に見せて発動、自分の手札、フィールドからこのカードを含む融合素材を墓地へ送ることで、デストーイを融合召喚する!」

 

 なっ!?相手のファーストターンで融合召喚だと!?

 

「僕は手札のエッジインプ・サイズとファーニマル・ペンギンを融合!

 悪魔の処刑具よ!冷たき心よ!神秘の渦で1つとなりて、新たな力と姿を見せよ!融合召喚!

 現れ出でちゃえ!大海に潜む、大いなる巨獣!!デストーイ・クルーエル・ホエール!!」

 

クルーエル・ホエール「ゲヘへへへヘッ!!」

          ATK2600

 

 ペンギンのぬいぐるみの中から鎌が突き破って現れ、ぶくぶくと変化すると巨大なシャチのような形へと変化し、破れた穴の中から赤い目がのぞく

 こいつは古代の機械(アンティーク・ギア)デッキではないのか!?

 となると、かなりの手練れのはず・・・大丈夫なのか・・・

 

「クルーエル・ホエールの効果を発動!

 融合召喚に成功したとき、自分と相手のフィールドのカードをそれぞれ1枚選択し破壊する!

 僕はクルーエル・ホエールと未来融合を破壊!

 でも、僕の墓地のエッジインプ・サイズを除外することでデストーイ融合モンスターは破壊を免れるけどね。

 

 さらに融合素材となったファーニマル・ペンギンの効果でデッキから2枚ドローし1枚を捨てる。」

 

「その捨てたカードも何かあるんじゃない?」

 

「その通りだよ、柚子。

 捨てたカードはエッジインプ・チェーン、このカードが墓地に送られた場合、デッキからデストーイカードを1枚手札に加える。

 僕が手札に加えるのは魔玩具補綴(デストーイ・パッチワーク)。」

 

 永続魔法が鎌で切り裂かれるが、相手の融合モンスターは無傷

 さらにはドローとサーチの両立、これを相手ファーストターンにこなすとは・・・

 

「やっぱりすんなり通してくれないわね・・・でも未来融合は囮よ!

 マジックカード、オスティナート発動!

 このカードは自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、自分の手札、デッキから融合素材を墓地に送ることで幻奏融合モンスターを融合召喚するわ!」

 

 デッキ融合だと!?

 

「私はデッキの幻奏の音女アリアとエレジーを融合

 流れる旋律よ、悲しみさえ乗せて、タクトの導きにより力重ねよ!融合召喚!!

 今こそ舞台へ!幻奏の音姫マイスタリン・シューベルト!」

 

シューベルト「オホホホッ!」

      ATK2400

 

 華麗に降り立つ炎の音楽家、ビルの合間の路地という不釣り合いな場所に高笑いが響く。

 ここすらも自分の舞台だというほどに

 

「まさか、柚子がデッキ融合までするようになるなんてね・・・」

 

「私だってあなたがいなくなってからもいろいろと成長しているのよ?

 さらに宣告者の神巫(デクレアラー・ディヴァイナー)を通常召喚。」

 

宣告者の神巫(デクレアラー・ディヴァイナー)「ハッ!」

      ATK500

 

「このカードが召喚、特殊召喚したとき、デッキ、エクストラデッキから天使族モンスターを1体墓地に送ることで、このモンスターに墓地に送ったモンスターのレベルをプラスするわ。

私はデッキから星杯の妖精リースを墓地に送って、宣告者の神巫(デクレアラー・ディヴァイナー)のレベルを2つ上げる。」

 

 宣告者の神巫(デクレアラー・ディヴァイナー) LV2→4

 

「さらにマジックカード、モンスターゲートを発動

 宣告者の神巫(デクレアラー・ディヴァイナー)をリリースして、デッキから通常召喚可能なモンスターが出るまでカードをめくり、そのモンスターを特殊召喚する。

 1枚目、光神テテュス!通常召喚可能よ!よって特殊召喚!」

 

光神テテュス「ふふっ」

      ATK2400

 

 虹の羽持つフードを被った女性が消え、光輝く純白の羽を持った天使が現れる。

 

宣告者の神巫(デクレアラー・ディヴァイナー)がリリースされたことで、手札、デッキから宣告者の神巫(デクレアラー・ディヴァイナー)以外のレベル2以下の天使族モンスターを特殊召喚するわ。

 私はデッキから2体目の星杯の妖精リースを特殊召喚。」

 

星杯の妖精リース「アハッ!」

        DEF2000

 

「星杯の妖精リースが召喚、特殊召喚に成功したことによりデッキから星杯モンスター、3体目の星杯の妖精リースを手札に加えるわ。」

 

 小さなライトが飛び、そこから映し出される小さな妖精

 なぜだろう、邪な気配を感じる・・・

 

「へぇ~並べるだけ並べようってわけ?

 でも、僕のデッキがどういうものか知っているし遊矢からも聞いてるんでしょ?

 なんの耐性もなしじゃ、すぐにぶっ潰しちゃうよ?」

 

「そうね。

 だからこっからは博打よ。速攻魔法、リロード!

 手札をすべてデッキに加えてシャッフル、その後加えた枚数分ドローするわ。

 私の手札は1枚、よってこのカードをデッキに加えて1枚ドロー

 

 そしてここで光神テテュスの効果!

 ドローしたカードが天使族モンスターならそれを相手に見せることでさらに1枚ドローするわ。

 新しく引いたカードはこれ、幻奏の音女ソナタ、よってもう1枚ドロー

 そして、光神テテュスの効果にターン1制限はないわ。引いたのは天使族モンスター、イーバ、さらにドロー!天使族モンスター、トリアス・ヒエラルキア

 ドロー!天使族モンスター、アテナ!ドロー!天使族、幻奏の音女タムタム!ドロー!」

 

 あっという間に1枚の手札が6枚に膨れ上がる。

 運がいいのか悪いのか、手札にモンスターが溜まっていくが何をするつもりなんだろうか?

 

「う~ん・・・よし、テテュスの効果を終了して墓地の星杯の妖精リースの効果。

 私の手札、フィールドのモンスター、イーバを墓地に送って、墓地の星杯の妖精リースを手札に加えるわ。

 

 さらにイーバが墓地に送られたことで効果発動

 墓地のイーバ以外の天使族、光属性モンスター、宣告者の神巫(デクレアラー・ディヴァイナー)を除外してデッキから、イーバ以外のレベル2以下の天使族、光属性モンスター、幻奏の音女スコアを手札に加えるわ。

 

 そして、私のフィールドに幻奏モンスターがいることによって幻奏の音女ソナタは特殊召喚できるわ。」

 

ソナタ「a、ha~」

   DEF1000

 

「まだまだ行くわよ、手札のトリアス・ヒエラルキアの効果発動。

 このカードが手札、墓地にあるとき、自分、相手のメインフェイズに自分フィールド上のモンスターを3体までリリースすることで特殊召喚するわ。

 私は聖杯の妖精リース、光神テテュス、幻奏の音女ソナタをリリースして手札のトリアス・ヒエラルキアを特殊召喚!!」

 

 トリアス・ヒエラルキア DEF2900

 

 3体の天使が天に還り現れる白と黄金と赤に彩られた巨大な天使の彫像

 その守備力はクルーエル・ホエールを上回っているが、わざわざ3体のリリースを使って呼び出したからにはまだ何かある。

 

「このカードが自分の効果で特殊召喚したとき、リリースしたモンスターの数によって効果を適用できるわ。

 3体リリースで私はデッキからカードを2枚ドローする。

 そして、2体以上なら相手フィールド上のカード1枚を破壊できるのよ!」

 

「ははっ!だったら、破壊される前にクルーエル・ホエールの効果発動!

 デッキ、エクストラデッキからクルーエル・ホエール以外のデストーイカードを墓地に送ることで、僕の融合モンスターの攻撃力を、自身の元々の攻撃力の半分の数値分アップする。

 僕はクルーエル・ホエール自身を選択して、エクストラデッキのデストーイ・ホイールソウ・ライオを墓地に送る。」

 

「でも、そのモンスターにクルーエル・ホエールを守る効果はないわ!」

 

 トリアス・ヒエラルキアの極光がクルーエル・ホエールを焼き尽くす。

 これが柊柚子のデュエル、粗削りだが、力強いデュエルだな。

 

「クルーエル・ホエール撃破!さらにカードを2枚ドローよ!

 ・・・カードを2枚伏せてシューベルトの効果、このカードが表側表示でいる限り1度だけ、お互いの墓地のカードを3枚まで対象として、そのカードを除外して、このカードの攻撃力を除外した枚数×200ポイントアップさせるわ。

 私はあなたの墓地から、クルーエル・ホエール、ファーニマル・ペンギン、エッジインプ・チェーンを除外!コーラス・ブレイク!」

 

 シューベルト ATK2400→3000

 

 シューベルトのタクトに導かれたカードたちが炎に焼かれる。

 相手の墓地リソースをつぶしたか。

 

「エンドフェイズ、オスティナートの効果で融合召喚したモンスターを破壊することで、その素材一組を墓地から特殊召喚できるわ。

 私はシューベルトを破壊して、墓地から幻奏の音女アリア、エレジーを守備表示で特殊召喚してターンエンドよ。」

 

 アリア         DEF1200

             ATK1600→1900

 エレジー        DEF1200

             ATK2000→2300

 トリアス・ヒエラルキア DEF2900

             ATK1900→2200

 

「うわぁ・・・絶対、柚子のデュエルで出てくるねその無敵コンビ

 対象にできないし、戦闘、効果では破壊できないうえに天使族の攻撃力を300ポイントアップする。

 面倒なものを・・・」

 

 本当に面倒な布陣だな。

 

「ふふん、さぁ、あなたに見せ場はあるかしら?」

 

「僕だって、手札は潤沢だよ。

 すぐにひっくり返してやるさ、ドロー!

 僕はマジックカード、魔玩具補綴(デストーイ・パッチワーク)を発動

 デッキから融合とエッジインプモンスター、エッジインプ・チェーンを手札に加えるよ。」

 

「よし・・・ならトラップカードよ!副作用?発動!」

 

 副作用?

 

「このカードは相手にカードを3枚までドローさせて、私のライフを相手がドローした数×2000ポイント回復するわ。」

 

 なっ!?いくらライフを大幅に回復できるとしても、相手に3枚ものカードをドローさせるなんて、自殺行為だ!

 

「・・・・僕は1枚ドローするよ。」

 

「あら?いいのかしら?」

 LP4000→6000

 

「天使族デッキに下手にライフを渡したくないからね。」

 

 天使族・・・そうか!天使族のモンスターやそのサポートカードには相手よりライフが多いときに有利になるカードが多い。

 その為のカードか!

 

「ふふふ、残念だけど読み違えているわよ?

 私の狙いはこのカードよ!トラップカード、大暴落!!」

 

「「だ!大暴落!?」」

 

「このカードは相手の手札が8枚以上あるときに発動!

 相手はそのすべてのカードをデッキに戻して、その後2枚ドローさせる。」

 

「くっ!?僕の手札は丁度8枚!?

 ぐうぅ、このためにドローさせるなんて、誰かさんに似たんじゃない?柚子。」

 

「かもね。」

 

 融合は手札を多く消費する召喚法

 大暴落を発動させるために敢えてドローさせたのか。

 

「でも、この程度で諦める僕じゃないんだよね。

 手札のファーニマル・ベアの効果を発動、このカードを墓地に送ることでデッキから永続魔法、トイポットをセットする。

 そして発動、トイポット!

 手札を1枚捨ててデッキの一番上をめくる、それがファーニマルモンスターなら特殊召喚し、それ以外なら墓地に送る。

 僕は手札のエッジインプ・チェーンを捨てて・・・出た!ファーニマル・マウスを特殊召喚!」

 

ファーニマル・マウス「チッ!」

          DEF100

 

「エッジインプ・チェーンの効果でデッキから魔玩具融合(デストーイ・フュージョン)を手札に加える。

 そして、ファーニマル・マウスの効果発動!

 このカードがフィールド上に表側表示で存在するとき、1度だけ自分のメインフェイズにデッキからファーニマル・マウスを2体まで特殊召喚できる!

 来い!2体のファーニマル・マウス!」

 

ファーニマル・マウス「ヂッ!」

          DEF100

 

ファーニマル・マウス「チュ!」

          DEF100

 

 巨大なガチャガチャの中から現れたのはドーナツを持った羽の付いたネズミ。

 そのモンスターが黒い影と共に3体へと分裂する。

 そして、手札には「融合」の名を持つカード・・・

 

「僕はマジックカード、魔玩具融合(デストーイ・フュージョン)を発動!

 このカードは僕の墓地、フィールドのモンスターを除外することでデストーイ融合モンスターを融合召喚する!

 墓地のデストーイ融合モンスター、デストーイ・ホイールソウ・ライオ、ファーニマルモンスター、ファーニマル・べア、そしてフィールドのファーニマル・マウス1体を融合!

 無慈悲で残虐な百獣の王よ、野獣の牙よ、小さき悪意よ!

 今一つとなりて、新たな力と姿を見せよ!融合召喚!!

 現れ出でよ!全てに牙剥く魔境の猛獣、デストーイ・サーベル・タイガー!!」

 

デストーイ・サーベル・タイガー「ぐははひゃひゃひゃははは!!」

               DEF2000

               ATK2400→2800

 

 3体のモンスターが融合し現れたのは赤い剣を背中から生やしたボロボロの虎のぬいぐるみ、その口に当たる部分から赤い目がのぞいている。

 手札が2枚しかない状況から3体融合を成功させるとは・・・くっ!隼を下した実力は伊達ではないということか!

 

「サーベル・タイガーはフィールドのデストーイモンスターの攻撃力を400ポイントアップさせる。

 さらに3体以上を素材に融合召喚に成功したこのカードは戦闘でも効果でも破壊されない。

 手札がないからってなにも出来ないわけじゃないんだよ、柚子?

 僕はこれでターンエンド。」

 

 モンスター3体、その内一体は戦闘でも効果でも破壊不可能

 セットカードも手札もないとはいえ、柚子、君は相手が盛り返す前に勝つことができるのか?

 

「そうね。分かってるわ。しっかりと

 だから私は最後まで油断も容赦もしない!本気で!全力で!あなたを倒す!!

 私のターン、ドロー!!

 私はトリアス・ヒエラルキアと幻奏の音女 エレジーをリリースしてアテナをアドバンス召喚!」

 

アテナ「ふん!」

   ATK2600

 

 新たに召喚されたのは鏡のような盾と神々しい光を放つ矛を持った月の女神

 そのモンスターの登場に相手は露骨にいやそうな顔をする。

 

「うへぇ、来たね。柚子のダメージ要因。」

 

「ふふ、さぁここから私のステージよ!

 私は速攻魔法、光神化を発動!その効果で、手札の天使族モンスター、幻奏の音姫プロディジー・モーツァルトを攻撃力を半分にして特殊召喚!」

 

モーツァルト「ふふ、はぁぁあああぁぁ!はっ!」

      ATK2800→1400

 

 光の中から現れる赤いドレスを纏い蝶のような羽を広げる妖精のような女性

 その登場を祝うかの如く月の女神の矛に光が湛えられる。

 

「天使族モンスターが特殊召喚に成功したことにより、アテナの効果発動!

 相手に600ポイントのダメージを与えるわ!」

 

「くっ!これは・・・ちょっとまずいかもね・・・」

 LP4000→3400

 

「ちょっとじゃすまないわよ!

 プロディジー・モーツァルトの効果!

 1ターンに1度、手札の天使族、光属性モンスター1体を特殊召喚できる。

 私は幻奏の音女タムタムを特殊召喚!」

 

タムタム「あはっ!」――ドドオオォォォォン!!

    DEF2000

 

 プロディジー・モーツァルトが指揮をするように手を振るうと、少女が新たに現れ、その手に持つ赤いドラを打ち鳴らす。

 そして月の女神の矛から放たれる光弾が相手を襲う。

 

「ぐぅ・・・」

 LP3400→2800

 

「タムタムが特殊召喚したとき、自分フィールド上に他の幻奏モンスターがいることによってデッキから融合を手札に加えるわ。

 さらに墓地の星杯の妖精リースの効果で、フィールドのプロディジー・モーツァルトを墓地に送ってリースを手札に加える。

 そして、アテナの効果を発動

 1ターンに1度、アテナ以外の自分フィールド上の天使族モンスターを墓地に送り、自分の墓地の天使族モンスター1体を特殊召喚する。

 私は幻奏の音女アリアを墓地に送って、幻奏の音姫プロディジー・モーツァルトを再び特殊召喚!」

 

モーツァルト「はっ!」

      ATK2800

 

「アテナの効果で600ポイントのダメージ!

 さらにプロディジー・モーツァルトの効果で手札の星杯の妖精リースを特殊召喚して、さらに600ポイントのダメージよ!」

 

「うぅ!!あぁ!!」

 LP2800→2200→1600

 

 モンスターが入れ代わり立ち代わり、そのたびに相手へは出演料だとばかりにライフが削られていく。

 

「リースの効果で、デッキから3体目のリースを手札へ

 そして、融合発動!

 フィールドの幻奏の音姫プロディジー・モーツァルトと幻奏の音女タムタムを融合!

 至高の天才よ!その魂を響かせて、タクトを振るい力重ねよ!融合召喚!!

 今こそ舞台に勝利の歌を!幻奏の華歌聖ブルーム・ディーヴァ!!」

 

ブルーム・ディーヴァ「Ah~」

          ATK1000

 

 暗く無機質な裏路地に花が舞い、歌が響く

 花から生まれた歌聖とその名を体現したモンスターは、場違いな場所であろうと自身の歌を紡がせる。

 もちろん、その歌を聴くにはタダとはいかない。

 

「天使族の特殊召喚でアテナの効果発動!

 さらに融合素材として墓地に送られたタムタムの効果でブルーム・ディーヴァの攻撃力を500ポイント下げて相手に500ポイントのダメージを与える。

 合計で1100ポイントのダメージよ!!」

 

 ブルーム・ディーヴァ ATK1000→500

 

「うわああぁぁぁ!!」

 LP1600→1100→500

 

 1ターンで効果ダメージだけで3500も削ったか

 後1体天使族モンスターを出せれば、彼女の勝利となるが、すでに召喚権は使い、手札はすべて判明しており、その中に特殊召喚効果を持ったものはいない。

 いや、あの融合モンスターはたしか・・・

 

「バトルよ!!

 ブルーム・ディーヴァでデストーイ・サーベル・タイガーに攻撃!

 ブルーム・ディーヴァは戦闘、効果では破壊されず私への戦闘ダメージを0にする!」

 

「サーベル・タイガーは守備表示、普通なら僕にも君にもダメージもないし、モンスターもそのまんま

 でも、そうじゃなかったよね?」

 

「えぇ、ブルーム・ディーヴァは特殊召喚したモンスターと戦闘を行ったダメージ計算後、その相手モンスターとこのカードの元々の攻撃力の差分のダメージを相手に与えて、その相手モンスターを破壊する!」

 

「デストーイ・サーベル・タイガーは効果で破壊されない。」

 

「でも、ブルーム・ディーヴァの元々の攻撃力との差分のダメージ

 1400ポイントのダメージは受けてもらうわ!!リフレクト・シャウト!!」

 

 華歌聖の歌が剣のケダモノから刃を牙を砕いて奪う。

 砕かれた鉄片は花弁と共に舞って、キラキラと輝く。

 

「ふふ、強くなったね。柚子・・・」

 LP500→0


 セレナが噛みついた男、バレット

 こいつは確か、セレナと共にスタンダードに来たアカデミアのデュエリスト

 セレナを連れ戻しに来たわけでもないなら、ここで何をしていたんだ?

 

「先んずれば人を制す!先攻は私が貰います!

 私はマジックカード、手札抹殺発動!

 互いのプレイヤーは手札をすべて捨て、捨てた枚数と同じだけドローする。

 私は4枚捨て、4枚ドロー。」

 

「ちっ、いまいちな手札の時に・・・

 私は5枚捨て、5枚ドローする。」

 

「ふむ・・・随分と運の無い手札ですな。

 ですが容赦はしませぬ!手札の起動兵長コマンドリボルバーの効果発動!

 自分の墓地のガジェットモンスターを2体まで選択し、このカードを特殊召喚、選択したカードを装備カードにする!」

 

 コマンドリボルバー ATK0→2000

           DEF2000

 

 現れたのは足が車輪になったロボット、その車輪の腹にホイールカバーのように赤と緑の歯車が取り付けられる。

 

「このカードの攻撃力はこのカードの効果で装備したモンスターの数×1000ポイントアップする。

 さらに永続魔法 起動指令ギア・チャージを発動

 このカードの発動時に装備カード扱いのガジェットモンスター2体を特殊召喚する。

 現れよ!レッド・ガジェット、グリーン・ガジェット!」

 

 レッド・ガジェット  ATK1300

 グリーン・ガジェット ATK1400

 

 コマンドリボルバーの車輪の歯車が分離し、手足が伸びてロボットの姿となる。

 

「2体のガジェットの効果発動!

 このモンスターらが召喚、特殊召喚されたとき、グリーンの効果でレッドを、レッドの効果でイエローを、デッキから新たに手札に加える!

 さらに墓地のヴォルカニック・バレットの効果!1ターンに1度、自身のライフを500減らすことにより、デッキからヴォルカニック・バレットを1体手札に加える。

 さらにイエロー・ガジェットを召喚し、その効果でグリーン・ガジェットを手札へ!」

 LP4000→3500

 

 イエロー・ガジェット ATK1200

 

 さらに現れたのは黄色の歯車のようなロボット。

 先攻1ターン目でレベル4モンスターを4体もそろえるだと!?

 

「さらに手札断殺を発動、互いのプレイヤーは手札2枚を捨て2枚ドローする。

 手札のヴォルカニック・バレットとレッド・ガジェットを捨て2枚ドロー。」

 

「私も2枚捨て2枚ドローする。」

 

「新たに墓地に送られたヴォルカニック・バレットの効果、500ライフを払い、新たなヴォルカニック・バレットを手札へ

 そして私は融合を発動する!」

 LP3500→3000

 

「来たか!?」

 

「まぁ、当然だろうな。」

 

 セレナはそれくらいはやるだろうという反応だが、そんな悠長なことを言っている場合か!?

 

「私は手札のヴォルカニック・バレットとフィールドの起動兵長コマンドリボルバーを融合!

 機構の統率者よ、焔の弾丸と交じり合いて、新たな災魔となって襲撃せよ!融合召喚!!

 現れ出でよ!重爆撃禽ボム・フェネクス!!」

 

ボム・フェネクス「キュオオオォォォォォォ!!」

         LP2800 

 

 暗い駐車場に火を灯すように炎の厄災が不死鳥の形を得て現れる。

 

「来たな。お前の切り込みモンスター!」

 

「ではさっそく行かせてもらいます。

 手札を2枚セットし、ボム・フェネクスの効果発動!

 1ターンに1度、フィールド上のカードの数×300ポイントのダメージを相手に与える!

 私のフィールドには4体のモンスターと3枚のマジック、トラップカード!2100のダメージを食らえ!

 不死魔鳥大空襲(フェネクス・ビッグ・エアレイド)!!」

 

「うわっ!?ぐぅぅ・・・」

 LP4000→1900

 

 炎の翼からまさに爆撃のように炎がセレナを襲う。

 リアルソリッドビジョンならば、この場は火の海と化していただろうな。

 その場合、相手も巻き添えだろうが

 

「私はこれでターンを終了させていただきます。」

 

「おい!大丈夫なのか!?」

 

「あ、あぁ・・・あんまり・・大丈夫ではないな・・・

 だが、進めなければ、勝てもしない。

 私のターン、ドロー!

 私はまず墓地の月光小夜曲舞踊(ムーンライト・セレナーデ・ダンス)を除外し効果を発動する。

 手札を1枚墓地へ送り、デッキから月光(ムーンライト)モンスターを1体特殊召喚する。」

 

「ならば私もセットカードを発動する!

 速攻魔法、融合解除!

 フィールドの融合モンスターを1体持ち主のエクストラデッキに戻し、そのモンスターに使用された融合素材モンスター1組が自分の墓地に居ればそれらを特殊召喚する!

 ボム・フェネクスの融合を解除し、墓地より蘇れ!起動兵長コマンドリボルバー!ヴォルカニック・バレット!」

 

 コマンド・リボルバー   ATK0

 ヴォルカニック・バレット ATK100

 

 再び現れる機械の兵とトカゲのような金属の塊

 強力なモンスターを分離させた?この男何を考えている?

 

「むっ、私は未来融合―フューチャー・フュージョンを捨て、月光蒼猫(ムーンライト・ブルー・キャット)を特殊召喚!」

 

月光蒼猫(ムーンライト・ブルー・キャット)「にゃ!!」

    ATK1600

 

「ほう、月光蒼猫(ムーンライト・ブルー・キャット)ですか・・・ならば私の次の手も読んでいるようで

 速攻魔法、瞬間融合を発動!!

 自分フィールド上の融合素材を墓地へ送り、融合召喚を可能にする!!」

 

 なっ!?速攻魔法の融合だと!?

 

「グリーン・ガジェットとヴォルカニック・バレットを融合!!

 機構の一よ、焔の弾丸と交じり合いて、破壊の災魔となりて現れ出でよ!融合召喚!!

 現れ出でよ!起爆獣ヴァルカノン!!」

 

ヴァルカノン「ヴォオオオォォォォォォ!!」

     ATK2300

 

 新たに現れたのは全身に重火器が備え付けられた犀のような獣

 その尻尾には導火線のような物が伸びており、それが火花を散らしている。

 

「ヴァルカノンの効果発動!

 このカードが融合召喚に成功したとき、相手フィールド上のモンスター1体とこのカードを破壊し墓地に送り、相手に墓地に送られた相手モンスターの攻撃力分のダメージを与える!

 私はこの効果で月光蒼猫(ムーンライト・ブルー・キャット)を破壊する!」

 

 巨大な機械の獣が蒼い猫の獣人を抱き込み、諸共爆発する。

 その風圧でセレナが吹き飛ぶ。

 

「ぐわああぁぁぁ!!

 うぅ・・・月光蒼猫(ムーンライト・ブルー・キャット)の効果、このカードが戦闘、効果で破壊された場合、デッキから月光(ムーンライト)モンスターを特殊召喚する。

 来い!月光翠鳥(ムーンライト・エメラルド・バード)!!」

 LP1900→300

 

月光翠鳥(ムーンライト・エメラルド・バード)「ふふっ」

    ATK1200

 

「おいっ!?」

 

「大丈夫!?」

 

「大丈夫だ!月光翠鳥(ムーンライト・エメラルド・バード)の効果

 このカードが召喚、特殊召喚されたとき、手札の月光(ムーンライト)カードを墓地へ送り、デッキから1枚ドローする。

 私は月光輪廻舞踊(ムーンライト・リンカーネーション・ダンス)を墓地へ送る。」

 

「!?おい、そのカードが生むアドバンテージを捨ててまでドローするのか!?」

 

「当たり前だ。

 ここまでライフが削られたら後続を考えるまでもない。むしろ邪魔だ!

 それに奴の墓地にはヴォルカニック・カウンターがいる、あのカードがあったら守備表示でモンスターを出すだけで、私は負けてしまうからな。」

 

「ぐうぅ・・・たしかに、そうだが・・・」

 

 ヴォルカニック・カウンター

 あのカード以外の炎族モンスターが墓地にいるとき、受けたダメージを相手にも与えるカード

 つまり、セレナは守備力300以上のモンスターを出すこともできなくなった。

 いや、残りライフ300なぞ、バーンデッキの前ではすぐに吹き飛ぶだろう。それこそ次のターンにでも

 

「ならば、今この時を以って我が勝利を引き寄せるまで!!ドロオォォォォ!!」

 

 セレナは気合を入れてカードを引く

 引いたカードをちらりと見て、わずかにほほ笑む、その顔は瑠璃が逆転のカードを引いた時とよく似ていた。

 

「よし!私はマジックカード、アースクエイクを発動!

 このカードはフィールド上に存在するモンスターの表示形式を守備表示に変更する!」

 

 レッド・ガジェット  ATK1300→DEF1500

 イエロー・ガジェット ATK1200→DEF1200

 コマンドリボルバー  ATK0→DEF2000

 

「アースクエイクですか。

 ですが、これでは私に戦闘ダメージを与えられませんね。」

 

「あぁ、だから、からめ手で行かせてもらおう。

 私は月光狼(ムーンライト・ウルフ)をペンデュラムスケールにセッティング!」

 

 光の柱に狼の姿をした女が浮かび上がる。

 

「ペンデュラム!?」

 

「ほう、そういえば、お前は零児とデュエルをしていたのだったな。

 まぁ、今の私の手札にモンスターはいないのでペンデュラム召喚はできないのだがな。」

 

「!!?そんなこと、馬鹿正直に言ってどうする!?」

 

 本当に馬鹿なのか!?

 

「ははは、どうせターンを渡した時点で私の負けは確定するんだ。

 だから・・・このターンで決着をつける!

 月光虎(ムーンライト・タイガー)を召喚!」

 

月光虎(ムーンライト・タイガー)「ガァーオ!!」

   ATK1200

 

「そして、月光狼(ムーンライト・ウルフ)のペンデュラム効果を発動する!

 自分のフィールド、墓地のモンスターを除外することで月光(ムーンライト)融合モンスターを融合召喚する!

 

 私は墓地の月光蒼猫(ムーンライト・ブルー・キャット)月光翠鳥(ムーンライト・エメラルド・バード)を除外し融合!

 蒼き夜を徘徊する猫よ、翠に輝く翼持つ鳥よ、月の引力により渦巻きて、新たなる力と生まれ変わらん!融合召喚!!

 現れ出でよ!月明かりに舞い踊る美しき野獣!月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)!!」

 

月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)「うふふ、にゃーお。」

     ATK2400

 

 爆発の残り香である黒煙を振り払い。

 月の光を湛えた猫のように妖艶な仮面の踊り子が降り立つ。

 あのモンスターなら、確かにダメージを与えられる。だが・・・

 

「ほう、そういうことですか。

 だが、その程度のダメージ程度では私を倒すことはかないませんなぁ?」

 

「ならば、ダメージを上げればいいだけのことだ!

 永続魔法、悪夢の拷問部屋を2枚発動!!

 このカードは相手へ効果ダメージが発生したとき、追加で1枚に付き300ポイントのダメージを与える!!

 そして、月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)月光(ムーンライト)モンスターをリリースすることで戦闘するたびに100ポイントのダメージを与え、戦闘したモンスターは1回目の攻撃では破壊されず相手モンスター全てに2回ずつ攻撃ができる!」

 

 相手のモンスターは3体、月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)の1回の攻撃で合計700ポイントのダメージが与えられ、1体に付き2回の攻撃

 そして、相手のライフは3000・・・

 

「というわけで月光虎(ムーンライト・タイガー)をリリースし行けー!!」

 

「・・・・・・お見事です。」

 LP3000→2900→2600→2300→2200→1900→1600→1500→1200→900→800→500→200→100→0


「あぁ~あ、負けちゃった。

 しかもワンキルとか、本当に容赦ないね。」

 

 紫雲院 素良

 私に融合召喚を教えてくれた私の師匠で、私の同僚で、私の友達、そして一応、私の敵

 そんな素良はいつもの、遊勝塾にいたときと変わりなく、話しかけてくる。

 

「これでもぎりぎりだったわよ・・・

 大暴落がうまくいってなかったら、いくらでも手を作ったでしょう?」

 

「う~ん、そうかなぁ~あのコンビ、ハーケン・クラーケンの効果も効かないしなぁ~」

 

 絶対嘘だ。

 遊矢の話じゃ、素良はペンデュラムも使えて、とんでもないレベルのバーン戦術をデッキに取り込んでいるらしいから

 アリアとエレジーで膠着状態を維持したら、それで私はやられていたかもしれないわ。

 

「あぁ~そういえば、僕に聞きたいことがあるんだよね?

 でも、戻ってくる気はないかとかはなしだよ?

 世界とか、アカデミアはどうでもいいけど、僕は今、こっちでいいんだから。」

 

「!!?

 お前は、アカデミアではないのか!?」

 

「ううん、アカデミアの一員ではあるよ。

 でも、世界を一つにするとか、理想郷を創るとか、そういうアカデミアの目的はどうでもいいってこと。

 今の僕は、ちょっとでも生きやすい方に流れているだけだから、さ。」

 

 素良の発言にユートがすごく驚いている。

 でも、戻ってくる気はないか

 

「うん、わかってるわ。

 じゃあ、素良、あなたジャン・ミシェル・ロジェって知ってる?」

 

 私が素良から聞きたかったのは治安維持局長官の情報

 遊矢たちが必死に情報を探っているけど、シンクロ次元では手掛かりになりそうな情報は見つかっていない。

 なら、アカデミアからの情報なら、ロジェが何を企んでいるのか掴めるかもしれない。

 

「ジャン・ミシェル・ロジェ?

 ジャン・・・・ミシェル・・・・ロジェ・・・・あぁ!!

 そういえば、アカデミアの手配リストにそんな名前が載っていたね。出奔したって。」

 

 出奔?

 

「といっても、そいつが逃げ出したのって僕がアカデミアに行く前の話だし、もうその手配書にみんな見向きもしてないけどね。出奔なんてしょっちゅうだし

 でも、噂にはなってたよ。

 なんでも、プロフェッサーの側近の部下の研究者が研究資料を持ち逃げしたって

 確証はないけど大人の出奔は珍しいから、たぶん同じ奴だと思うけど・・・」

 

 昔・・・ロジェが長官になったのは3年くらい前・・・

 だったら、それより前にこの世界に来ていてもおかしくはないわね・・・

 じゃあ、素良は噂以上のことは知らなそうね。でも

 

「素良、噂でもいいからロジェのこと知らない?」

 

「う~ん、ごめん。

 僕、エクシーズの後すぐにスタンダード行ったし、ほとんど訓練ばかりでアカデミア本校にいたのは1年くらいしかないんだよね。

 だから、それ以上のことは分からないや。」

 

「そう・・・うん、ありがと、じゃあ。また。」

 

「・・・うん、じゃ、またね。」


 痛っ・・・やっぱり、1日じゃくっ付いちゃくれねぇか・・・

 しっかし、こいつ、ガキのくせして選手妨害なんて、不貞ぇことしやがって!!

 

「じゃあ、僕から先攻で行かせてもらおうかな。

 僕はイービル・ソーンを召喚。」

 

 イービル・ソーン ATK100

 

 黒い実がなった植物がコンクリートを突き破って生えてくる。攻撃力100だと?

 

「イービル・ソーンの効果発動ぉ。

 このカードをリリースすることで、相手に300ポイントのダメージを与えてデッキからイービル・ソーンを2体まで攻撃表示で特殊召喚する。」

 

 イービル・ソーンの黒い実がはじけ飛び、その破片に着いた棘が俺に迫る。

 

「うわっ!?」

 LP4000→3700

 

 イービル・ソーン ATK100

 イービル・ソーン ATK100

 

「永続魔法、超栄養太陽発動

 自分フィールドのレベル2以下の植物族モンスター1体、イービル・ソーンをリリースして、このカードは発動する。

 リリースしたモンスターのレベルより3つまで上のレベルを持つ植物族モンスターを特殊召喚する。

 僕が特殊召喚するのはローンファイア・ブロッサム。」

 

 ローンファイア・ブロッサム DEF1400

 

「ローンファイア・ブロッサムの効果発動

 1ターンに1度、自分フィールド上の植物族モンスターを1体リリースすることで、デッキから植物族モンスターを1体特殊召喚する。

 僕はローンファイア・ブロッサム自身をリリースして、2体目のローンファイア・ブロッサムを特殊召喚。

 さらにこのローンファイアもリリースして、デッキから捕食植物(プレデター・プランツ)オフリス・スコーピオを特殊召喚する。」

 

オフリス・スコーピオ「キェアァァァ!」

          DEF800

 

 イービル・ソーンが生え変わって火花を散らす別の植物になって、最後には植物でできたサソリに変わる。

 

「オフリス・スコーピオの効果発動。

 1ターンに1度、手札のモンスターカードを1枚捨てて、デッキからオフリス・スコーピオ以外の捕食植物(プレデター・プランツ)モンスターを特殊召喚する。

 出ておいで、捕食植物(プレデター・プランツ)ダーリング・コブラ。」

 

ダーリング・コブラ「シャアァァァ・・・」

         DEF1500

 

 オフリス・スコーピオの尻尾が割れ、中から双頭の蛇のような植物が這い出てくる。

 

「ダーリング・コブラが捕食植物モンスターの効果で特殊召喚された事により、デュエル中に一度だけ融合またはフュージョンと名の付いたマジックカードを手札に加えることができる。

 僕はデッキから置換融合を手札に加える。」

 

「!!?融合だと!?」

 

 やっぱりこいつ!!セキュリティの回しもんか!?

 

「ふふふ、さぁ、早速行くよぉ!

 マジックカード、置換融合発動!

 フィールドの闇属性モンスター、イービル・ソーンとダーリング・コブラを融合!

 美しき花が魅惑の香りで虫を誘い、悪の種が芽吹く時、その奥の地獄から、新たな脅威が生まれ出でる!融合召喚!」

 

 不気味で気持ちわりぃ光の渦にダーリング・コブラとイービル・ソーンが取り込まれ、その奥から枯れ木のように細い体に無数の発光する球体を付けた紫色の竜が這い出てくる。

 

「現れろ!スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン!!」

 

スターヴ・ヴェノム「ギャアアァァァオオォォォォォォォォォ!!」

         ATL2800

 

 涎をダラダラ滴らせる蟲のようにも見えるその竜の召喚に気をよくしたのか、このガキは薄ら笑いを浮かべて、手を合わせている。

 それこそ今にでも食事をする前のあいさつをするかのように

 

「ふふ、さぁ、君はどんな味がするのかな?」




カラスってマズそうだよねぇ~
ゴミの臭いとかしそう。

そこまでひどい臭いしないわ!!

えっ?食べたことあるの?

あっ、いや・・・
(俺のことじゃなかったか・・・)

ふふ、君面白いね。
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『託す思いは、天空へと舞い上がる翼となる』
さぁ、もっと僕を楽しませてよ。


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託す思いは、天空へ舞い上がる翼となる

また三週間も開いてしまった・・・すいません。
やりたいことと出したいカードををねじ込みつつデュエルを進行させるのは難しいですね。
今回はクロウVSユーリです。
そういえば、コモンズは経済的な問題でエース級カードをピンでしか入れられていないらしいですが、複数積み前提の五月雨のソハヤはエース級じゃないんですかね?攻撃力以外は申し分ない様な気はしますが


スターヴ・ヴェノム「ギャシャアアアァァァァァァァ!!」

 

「ふふ、さぁ、君はどんな味がするのかな?

 カードを2枚伏せて、ターンエンド。」

 

 怪しく光る玉を体中につけた枯れ木のようにも蟲のようにも見える不気味な紫のドラゴンを従えたガキが薄ら笑いを浮かべていやがる。

 融合カードだけじゃなくて、融合モンスターまで・・・やっぱりこいつ、セキュリティの回しもんに違いねぇ!!

 

「ロゼを失格させようとか、やることがセッケェんだよ!!

 俺のターン、ドロー!!

 俺は手札のBF(ブラックフェザー)―毒風のシムーンの効果を発動!

 手札の他のBF(ブラックフェザー)、大旆のヴァーユを除外して、デッキから永続魔法、黒い旋風を1枚、マジック、トラップゾーンに表側表示で置き、このカードを手札からリリースなしで召喚する。」

 

毒風のシムーン「ケェェェ!!」

       ATK1600

 

 毒々しい色合いの羽を持つ鳥人が黒い風を纏って現れる。

 毒には毒ってな!

 

「永続魔法、黒い旋風の効果

 BF(ブラックフェザー)モンスターが召喚された場合、そのモンスターより攻撃力の低いBF(ブラックフェザー)モンスターをデッキから手札に加えることができる。

 俺は攻撃力1300のBF(ブラックフェザー)―南風のアウステルを手札に加えて、こいつを通常召喚!」

 

南風のアウステル「クワァー!」

        ATK1300

 

BF(ブラックフェザー)の召喚により黒い旋風の効果、攻撃力1000のBF(ブラックフェザー)―逆巻のトルネードを手札に加える。

 さらに南風のアウステルが召喚されたことにより効果発動!

 ゲームから除外されている自分のレベル4以下のBF(ブラックフェザー)モンスターを守備表示で特殊召喚する。

 さっき毒風のシムーンのコストとして除外された大旆のヴァーユを特殊召喚だ!」

 

大旆のヴァーユ「クエェ!」

       DEF0

 

 極彩色の小鳥の姿をしたBF(ブラックフェザー)が応援団のような恰好のBF(ブラックフェザー)を呼んでくる。

 大旆のヴァーユはフィールドじゃあ、シンクロ素材にできない効果を持つチューナーだ。

 効果を無効にしてない今はただ突っ立てるだけだが

 

「ふぅ~ん、チューナー・・・彼のことをよく知らないみたいだし君はここの人みたいだね?

 じゃあ、伏せカードを発動しようかな。

 リバースカードオープン、トラップカード、捕食計画(プレデター・プランニング)。」

 

 突如として地面が割れ、その割れ目から蔦が現れてフィールドのモンスターに絡みつき、ワニの頭のような種を植え付ける。

 

毒風のシムーン「グワァァァ・・・」

       LV6→1 捕食C0→1

 

南風のアウステル「キュー!?」

        LV4→1

 

大旆のヴァーユ「グウゥゥ・・・」

       捕食C0→1

 

 スターヴ・ヴェノム LV8→1 捕食C0→1

 

「なっ!?なんだぁ!?」

 

捕食計画(プレデター・プランニング)の効果

 デッキから捕食植物(プレデター・プランツ)モンスターを1体墓地に送り、フィールドの表側表示モンスターすべてに捕食カウンターを1つ置く

 捕食カウンターを置かれたレベル2以上のモンスターはすべてレベル1となる。

 

 僕はこの効果でデッキから捕食植物(プレデター・プランツ)ドロソフィルム・ヒドラを墓地に送って、フィールド上のモンスターすべてに捕食カウンターを置き、レベルを1にしたのさ。

 シンクロデッキってお目当てのレベルを揃えないといけないのにレベル1モンスターばっかりじゃ動けないよね?」

 

 レベルを1にするカウンターだとぉ!?

 だが、そんくれぇで動けなくなるほどBF(ブラックフェザー)は柔じゃねぇぜ!

 

「舐めんなよ!俺はレベル1のBF(ブラックフェザー)―毒風のシムーンにレベル1のBF(ブラックフェザー)―南風のアウステルをチューニング!

 漆黒の翼羽搏かせ秘めたる刃で風を切れ!シンクロ召喚!

 飛来せよ!(アサルト)BF(ブラックフェザー)―雨隠れのサヨ!!」

 

雨隠れのサヨ「はっ!!」

      DEF100

 

 新たに現れるのは小太刀を持った忍者の姿をした鳥人

 見せてやるぜ、BF(ブラックフェザー)の不屈の力を!

 

「さらにBF(ブラックフェザー)―大旆のヴァーユをリリースして(アサルト)BF(ブラックフェザー)―霧雨のクナイを特殊召喚!」

 

霧雨のクナイ「クワッ!」

      ATK2100

 

「そして、墓地にいる大旆のヴァーユの効果を発動

 このカードと墓地にいる他のBF(ブラックフェザー)モンスター1体を除外することで、エクストラデッキから除外したモンスターのレベル合計と同じレベルを持つBF(ブラックフェザー)シンクロモンスターを効果を無効にして特殊召喚する!

 俺はレベル6の毒風のシムーンとレベル1の大旆のヴァーユを除外してレベル7の(アサルト)BF(ブラックフェザー)―涙雨のチドリを特殊召喚。」

 

涙雨のチドリ「はっ!」

      ATK2600

 

「マジックカード、おろかな埋葬を発動させ、デッキのモンスターカード、BF(ブラックフェザー)―精鋭のセピュロスを墓地に送り、ゼピュロスの効果発動!

 デュエル中に1度だけ自分フィールド上の表側表示カードを1枚、手札に戻すことでこいつを墓地から特殊召喚する。

 俺は黒い旋風を手札に戻して、来い!BF(ブラックフェザー)―精鋭のゼピュロス!」

 

精鋭のゼピュロス「フン!」

        ATK1600

 

「霧雨のクナイは自身の効果で特殊召喚された場合、チューナーとして扱う。

 雨隠れのサヨも、BF(ブラックフェザー)をシンクロ素材にしてシンクロ召喚された場合、チューナーとして扱う効果を持ってる!

 さらに霧雨のクナイの効果で1ターンに1度、自分フィールド上のシンクロモンスターのレベルを1から8までの任意のレベルに変更する。

 俺は雨隠れのサヨのレベルを2から6に変更!」

 

 雨隠れのサヨ LV2→6

 

「これでそろった。

 俺はレベル7の(アサルト)BF(ブラックフェザー)―涙雨のチドリと(アサルト)BF(ブラックフェザー)―霧雨のクナイをチューニング!

 漆黒の翼よ!雷の力を宿して鮮烈に轟け!シンクロ召喚!!

 切り裂け!(アサルト)BF(ブラックフェザー)―神立のオニマル!!」

 

神立のオニマル「はぁぁぁぁぁ!!ハッ!!」

       ATK3000

 

 黒い翼の剣士と鳥人の忍者が雷の力を宿す神の剣を呼び出し

 

「レベル4のBF(ブラックフェザー)―精鋭のゼピュロスにレベル6となった(アサルト)BF(ブラックフェザー)―雨隠れのサヨをチューニング!

 黒き旋風よ、嵐となって天空を突き抜けろ!!シンクロ召喚!

 来い!BF(ブラックフェザー)―フルアーマード・ウィング!!」

 

フルアーマード・ウィング「フン!ハァァァァァァァ!!ハッ!!」

            ATK3000

 

 青と黒の鳥人と小太刀のきらめきが黒い竜巻を作り出し、その中から大剣と大砲を装備した全身武装の鳥人が現れる。

 

 フルアーマード・ウィングも神立のオニマルも効果じゃ破壊できねぇモンスター

 これであの気持ち悪ぃドラゴンの効果も関係ねぇぜ!

 

「わあぁ、すごい!すごい!

 あの状況で、最高レベルクラスのシンクロモンスターを呼び出すなんて!!」

 

 なんだぁ?本当にガキみたいなやつだな・・・?

 

「へっ!これくらいこの鉄砲玉のクロウ様には当たり前のことだ!

 行くぜ!バトル!!

 フルアーマード・ウィングでスターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴンを攻撃!!ブラック・ストーム!!」

 

「その攻撃宣言時に永続トラップ、捕食惑星(プレデター・プラネット)を発動。」

 

 フルアーマード・ウィングは巨大な銃を乱射して紫のドラゴンの動きを止め、大剣で切り裂く

 

スターヴ・ヴェノム「キャアアァァァァァァァァ!!」――バシュウウウゥゥゥゥゥゥゥ!

 

 切り裂かれた竜から毒の霧と粘液が飛び散り、フィールドを犯す。

 その猛毒は並みのモンスターではすぐに死んじまうだろうが、鋼鉄の鎧を纏ったフルアーマード・ウィングと神剣をもつオニマルには通用しないぜ!

 

「フルアーマード・ウィングは効果を受けねぇし、神立のオニマルも効果じゃ破壊されねぇぜ!」

 

「へぇ~ちゃんとスターヴ・ヴェノムの効果に対策してたんだぁ。

 でもスターヴ・ヴェノムがやられたとき、捕食惑星(プレデター・プラネット)の効果が発動するよ。

 このカードは捕食カウンターが置かれたモンスターがフィールドから離れた場合、デッキからプレデターカードを1枚手札に加える。

 僕は捕食植物(プレデター・プランツ)セラセニアントを手札に加えるよ。」

 LP4000→3800

 

「でもこれで、てめぇのフィールドはがら空きだ!

 行け!神立のオニマルでダイレクトアタック!!」

 

 オニマルが剣を構えて相手に突撃する。

 大ダメージを与えるチャンスであり相手のピンチのタイミング、なのにあいつは未だに薄ら笑いを浮かべていやがる。

 

「手札の捕食植物(プレデター・プランツ)セラセニアントの効果、相手のダイレクトアタック宣言時、このモンスターを特殊召喚する。」

 

 セラセニアント DEF600

 

 出てきたのは背中から草をはやした蟻のようなモンスター

 

「オニマルの攻撃対象をセラセニアントに変更。」

 

 オニマルがその小さな雑草か虫かわからねぇもんを切り裂くとガキは悪戯が成功したような笑みを見せる。

 

「あぁ~あ、やっちゃったぁ~

 セラセニアントが戦闘、効果で墓地に送られた場合、デッキからセラセニアント以外のプレデターカードを手札に加える。

 僕が手札に加えるのは速攻魔法、プレデター・プライム・フュージョン。」

 

「ちっ、攻撃したのはまずったか・・・俺は手札を1枚セットしてターンを終了する。」

 

「う~ん・・・お兄さん、ちっ、とかまずったとか言ってるけどさぁ?

 僕が捕食惑星の効果で手札に加えたとき、セラセニアントの効果を確認できたんじゃないの?」

 

「うっ・・・」

 

 確かに、ていうかがら空きでダメージを与えるチャンスだと思って、手札に加えたモンスターの効果なんて気にしてなかったぜ・・・


(まぁ、セレナみたいに引っかかるかな?って、僕が誘ったんだけどね♪)

「ふふ、このミスを後悔することになっても、僕を恨まないでね。お兄さん。

 自分の所為なんだから、さ!ドロー!

 スタンバイフェイズ、僕は墓地の捕食植物(プレデター・プランツ)コーディセップスの効果を発動

 墓地のこのカードを除外することで、自分の墓地のレベル4以下の捕食植物(プレデター・プランツ)モンスター2体を対象にしてそのモンスターを特殊召喚する。

 お出で、セラセニアント、ダーリングコブラ。」

 

セラセニアント「シュー!」

       DEF600

 

ダーリングコブラ「シャー!」

        DEF1500

 

「メインフェイズに入って、捕食生成(プレデター・プラスト)を発動

 このカードは手札のプレデターカードを任意の枚数公開することで、相手フィールド上の表側表示モンスターを公開した数まで対象にして捕食カウンターを1つずつ置く。  

 僕はさっき手札に加えたプレデター・プライム・フュージョンを公開して、(アサルト)BF(ブラックフェザー)―神立のオニマルに捕食カウンターを置く。」

 

 神立のオニマル LV12→1 捕食C0→1

 

 神の剣の名を持つ鳥人に飢えを秘めた種子が噛みつく

 

「またこのカウンターか!?」

 

「あれ、もう嫌になっちゃった?

 でも手を止める気はないけどね。僕は速攻魔法プレデター・プライム・フュージョンを発動

 このカードは捕食植物(プレデター・プランツ)モンスターがいるとき、自分フィールド上の闇属性モンスターを2体以上使うようにして、フィールド上のすべてのモンスターを融合素材にすることができる。」

 

「なっ!?フィールドの全てってことは、俺のモンスターもだと!?」

 

「そういうこと。

 残念ながら効果そのものを受けないフルアーマード・ウィングを融合素材にはできないけど、僕は僕のフィールドのダーリングコブラとセラセニアント、そして、お兄さんのフィールドの(アサルト)BF(ブラックフェザー)―神立のオニマルの3体のフィールド上の闇属性モンスターを融合!」

 

 セラセニアントとダーリングコブラが神立のオニマルに取りつく

 神立のオニマルからすれば、歯牙にもかけない攻撃力しか持たないモンスターたち、だが、自身に噛みついている捕食カウンターが発芽し、根が神立のオニマルの体に入り込んでいく

 

神立のオニマル「ぐわああぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「オニマル!?」

 

――カラン、カラン・・・

 

 その名を体現する神の剣が神立のオニマルの手から滑り落ちる。

 ダーリングコブラの蔦が伸び、セラセニアントの葉が神立のオニマルの姿を覆っていく

 

「魅惑の香りで虫を誘う2輪の美しき花よ!憐れな獲物を喰らい尽くし、魔を払う槍となれ!融合召喚!!

 現れろ!捕食植物(プレデター・プランツ)トリフィオヴェルトゥム!!」

 

神立のオニマル「うわああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・」

トリフィオヴェルトゥム「「「「・・・ヴァアアァァァァ」」」

           ATK3000

 

 神立のオニマルはその全身を覆われ食い尽くされ、3つ首の竜を模した醜悪な植物の肥となり果てる。

 

「て!?てめぇ!!よくも俺のモンスターを!!」

 

「もう、怒らないでよ。プレデター・プライム・フュージョンを手札に持ってきてくれたのはお兄さんなんだから。

 融合召喚に成功したから墓地の捕食計画(プレデター・プランニング)の効果を発動

 このカードを除外することでフィールドのカード1枚を破壊する。

 僕が破壊するのはお兄さんの伏せカード。」

 

 トリフィオヴェルトゥムがクロウの伏せカードを踏み潰す。

 

「くっ!ブラック・ソニックが!?」

 

 そのカードはBF(ブラックフェザー)が攻撃されたとき、相手フィールド上の表側攻撃表示のモンスター全てを除外するカード

 手札から発動させる効果もあるがそれにはフィールドにBF(ブラックフェザー)が3体必要なため、伏せていたクロウだがそれが裏目に出た。

 

「捕食カウンターが乗ったモンスターがフィールドを離れたことで捕食惑星(プレデター・プラネット)の効果が発動、デッキから捕食植物(プレデター・プランツ)セラセニアントを手札に加え、効果で墓地に送られたセラセニアントの効果で捕食活動(プレデター・プラクティス)を手札に加えるよ。

 

 本当はもっと出したいんだけど、コーディセップスの効果を発動したターンは融合召喚以外できないんだよね。

 だ・か・ら、このままバトルフェイズ!

 トリフィオヴェルトゥムでフルアーマード・ウィングに攻撃!」

 

 トリフィオヴェルトゥムが隣にいたフルアーマード・ウィングに襲い掛かる。

 フルアーマード・ウィングもそれを大剣で迎え撃つが、2本の首で腕をからめとられてしまう。

 

「なっ!?攻撃力は同じなのに!?」

 

「墓地の捕食生成(プレデター・プラスト)を除外することで捕食植物(プレデター・プランツ)の戦闘破壊を肩代わりできるんだよ。」

 

トリフィオヴェルトゥム「ヴァアアァァァァァァァァ!!」

 

フルアーマード・ウィング「グワアアァァァァァ!?」――バンッ!!

 

 真ん中の首から強力な酸のブレスが放たれ強力な鎧を身に着けたフルアーマード・ウィングを溶かし破壊する。

 

「墓地の置換融合を除外して、融合モンスターのスターヴ・ヴェノムをエクストラデッキに戻して効果発動、1枚ドローする。

 カードを1枚伏せて、ターンエンドっと。」

 

(くっ!なんだこのガキめちゃくちゃ強ぇ!

 耐性を持った攻撃力3000のモンスターを2体とも除去されるとはな。)

「だが、俺は諦めねぇ・・・俺のターン、ドロー!!

 俺はマジックカード、闇の誘惑を発動

 デッキから2枚カードをドローして、手札の闇属性モンスターBF(ブラックフェザー)―逆巻のトルネードを除外する。

 

 そして、永続魔法、黒い旋風を発動

 さらにチューナーモンスター、BF(ブラックフェザー)―極北のブリザードを召喚!」

 

極北のブリザード「クエェェ!!」

        ATK1300

 

「黒い旋風の効果で攻撃力100の蒼天のジェットを手札に加える。

 さらに極北のブリザードの効果を発動!

 このモンスターを召喚したとき、自分の墓地のレベル4以下のBF(ブラックフェザー)モンスターを1体守備表示で特殊召喚する。

 俺はBF(ブラックフェザー)―精鋭のゼピュロスを特殊召喚。」

 

 精鋭のゼピュロス DEF1000

 

 氷のように白い丸々とした鳥がクロウのデュエルディスクを突き、その墓地から仲間を呼び出す。

 

「さらに速攻魔法、烏合無象を発動

 こいつは1ターンに1度、自分のフィールドの元々の種族が獣、獣戦士、鳥獣族の表側表示モンスターを1体墓地に送ることで、元々の種族が墓地へ送ったモンスターと同じ種族のエクストラデッキのモンスターを効果を無効にして特殊召喚する。

 俺は鳥獣族の精鋭のゼピュロスを墓地に送り、エクストラデッキから同じ鳥獣族の(アサルト)BF(ブラックフェザー)―五月雨のソハヤを特殊召喚!」

 

五月雨のソハヤ「ふんっ!」

       DEF2000

 

 藍の鳥人が碧の鎧を纏う鳥人剣士へと変わる。

 

「俺はレベル5の(アサルト)BF(ブラックフェザー)―五月雨のソハヤにレベル2のBF(ブラックフェザー)―極北のブリザードをチューニング!

 漆黒の力を束ね、さらなる力を現出せよ!!シンクロ召喚!!

 現れろ!BF(ブラックフェザー)(テイマー)―漆黒のホーク・ジョー!!」

 

漆黒のホーク・ジョー「はっ!!」

          ATK2600

 

「それはダメかな。

 トリフィオヴェルトゥムの効果発動、融合召喚されたこのカードがいるとき1ターンに1度、相手がエクストラデッキからモンスターを特殊召喚する際、その特殊召喚を無効にし破壊する。」

 

「何っ!?」

 

――ブシュウウゥゥゥゥゥゥゥゥ!!バチッ、バチッ、バゴオオォォン!!

 

 トリフィオヴェルトゥムの翼の赤い花から花粉がまき散らされ、漆黒のホーク・ジョーに接触するとその花粉が爆発する。

 

「くっ、ホーク・ジョーが・・・

 だったら俺はマジックカード、終わりの始まりを発動!

 このカードは自分の墓地の闇属性モンスターが7体以上存在するとき、その内5体を除外することでデッキから3枚ドローする。

 俺は墓地から極北のブリザード、精鋭のゼピュロス、霧雨のクナイ、漆黒のホーク・ジョー、涙雨のチドリを除外して3枚ドロー

 

 よし、手札に加わったBF(ブラックフェザー)―そよ風のブリーズの効果発動

 このカードはデッキからカード効果で手札に加わった時、特殊召喚できる!」

 

そよ風のブリーズ「ホウゥ!」

        DEF300

 

「さらに自分フィールド上にBF(ブラックフェザー)がいることによって手札のBF(ブラックフェザー)―砂塵のハルマッタンを特殊召喚!」

 

砂塵のハルマッタン「クエェェ!」

         DEF800

 

「俺はレベル2の砂塵のハルマッタンにレベル3のそよ風のブリーズをチューニング!

 黒き烈風よ、絆を紡ぐ追い風となれ!シンクロ召喚!!

 飛び立て、(アサルト)BF(ブラックフェザー)―五月雨のソハヤ!!」

 

五月雨のソハヤ「はっ!」

       DEF2000

 

 鮮やかな朱と黄色の鳥人が丸々とした黒い鳥と共になり、仲間を繋ぐ2人目の碧の剣士を呼び出す。

 

「五月雨のソハヤの効果発動!

 このカードがシンクロ召喚に成功したとき、自分の墓地から五月雨のソハヤ以外の(アサルト)BF(ブラックフェザー)モンスターを1体特殊召喚する。

 戻ってこい!(アサルト)BF(ブラックフェザー)―神立のオニマル!!」

 

神立のオニマル「タァァァ!!」

       ATK3000

 

 無残な姿にされた神の剣が碧き烈風により復活し、自身の成れの果てに剣を向ける。

 

「バトルだ!

 神立のオニマルでトリフィオヴェルトゥムに攻撃!!」

 

「熱くなっちゃってぇ~でも残念、トラップカード発動、植物連鎖

 このカードは僕のフィールドの植物族モンスターの装備カードとなって、攻撃力を500ポイントアップさせる。

 さらに墓地のドロソフィルム・ヒドラの効果発動

 このカードが墓地にある時、墓地の捕食植物(プレデター・プランツ)モンスター1体を除外してフィールドの表側表示モンスターの攻撃力を500ポイント下げる。

 僕は墓地のダーリング・コブラを除外して、神立のオニマルの攻撃力を500ポイントダウンさせるよ。」

 

 トリフィオヴェルトゥム ATK3000→3500

 神立のオニマル     ATK3000→2500

 

「なら俺はこの戦闘ダメージ計算時、手札のBF(ブラックフェザー)-蒼天のジェットの効果を発動!

 自分フィールド上のBF(ブラックフェザー)はこの戦闘では破壊されない。」

 

「でも、ダメージは受けてもらうよ?」

 

 トリフィオヴェルトゥムに剣が振り下ろされたが、相手はドラゴンのように見える植物であり、その腕も腕のように見える蔦の束である。

 瞬時に伸ばされる両腕の蔦に剣は絡めとられ、3つの首から花粉のブレスが放たれ爆発が起き神立のオニマルとクロウを焦がす。

 

「うぐっ・・・」

 LP4000→3000

 

「いやぁ~残念だよ。

 トリフィオヴェルトゥムは捕食カウンターが乗っている自分以外のモンスターの攻撃力分パワーアップするから、捕食計画(プレデター・プランニング)とかだったら返り討ちにできたのに~」

 

 ユーリは煽るようにクロウの行動がどれほど綱渡りな物だったのかを告げる。

 だが、クロウはそれを聞いて口元を嬉しそうに緩める。

 

「へぇ~ってぇことは、俺は賭けに勝った、つぅことだな?」

 

「うん?」

 

「バトルフェイズを終了して、俺は神立のオニマルの効果を発動!

 デュエル中に1度だけ、自分の墓地のBF(ブラックフェザー)モンスターのレベルと同じになれる。

 俺は神立のオニマルのレベルを墓地の蒼天のジェットと同じ1にする。」

 

 神立のオニマル LV12→1

 

「レベル1となった神立のオニマルにチューナーとして扱うレベル5の五月雨のソハヤをチューニング!!

 星流れて、闇を切り裂け、白銀の綺羅星!シンクロ召喚!!

 現れろ!BF(ブラックフェザー)―星影のノートゥング!!」

 

星影のノートゥング「タアァァァァ!!」

         ATK2400

 

 黒い翼を広げる白銀の大剣を持った鳥人

 仲間の遺志を継ぎ、眼前の化け物に刃を向ける。

 

「星影のノートゥングの効果発動!

 1ターンに1度、相手に800ポイントのダメージを与え、さらに相手モンスター1体の攻撃力を800ポイントダウンさせる!舞い戻る剣(ホーミングソード)!!」

 

 白銀の剣が投げられ、トリフィオヴェルトゥムとユーリに傷をつける。

 

 トリフィオヴェルトゥム ATK3500→2700

 

「うぐっ・・・でも、この程度のダメージどうってことないね。」

 LP3800→3000

 

「はっ、虚勢張ってられるのも今の内だぜ!

 星影のノートゥングがフィールドにいるとき、1ターンに1度、通常召喚とは別にBF(ブラックフェザー)を召喚できる。

 俺は2体目のBF(ブラックフェザー)―極北のブリザードを召喚!」

 

極北のブリザード「クエェェ!」

        ATK1300

 

「黒い旋風の効果で攻撃力0のBF(ブラックフェザー)―熱風のギブリを手札に加えて、さらに極北のブリザードの効果で墓地から(アサルト)BF(ブラックフェザー)―雨隠れのサヨを守備表示で特殊召喚!!」

 

雨隠れのサヨ「ハァ!」

      DEF100

 

「さらに五月雨のソハヤの効果を発動!

 こいつが墓地へ送られたターンのメインフェイズ、このカード以外の五月雨のソハヤを墓地から除外することで、こいつを特殊召喚できる!

 戻ってこい!(アサルト)BF(ブラックフェザー)―五月雨のソハヤ!!」

 

五月雨のソハヤ「フンッ!」

       DEF2000

 

「よっしゃー!!俺はレベル5の(アサルト)BF(ブラックフェザー)―五月雨のソハヤにレベル2のBF(ブラックフェザー)―極北のブリザードをチューニング!!

 漆黒の翼翻し、雷鳴と共に走れ!電光の斬撃!!シンクロ召喚!!

 降り注げ、(アサルト)BF(ブラックフェザー)―驟雨のライキリ!!」

 

驟雨のライキリ「はっ!!」

       DEF2000

 

 紫の鎧を纏い雷を湛える刀を持つ鳥人が、仲間が繋いだ化け物退治の大トリを務める。

 

「驟雨のライキリの効果発動!

 1ターンに1度、自分フィールド上のこのカード以外のBF(ブラックフェザー)モンスターの数まで、相手フィールド上のカードを対象として破壊する!

 俺が破壊するのはてめぇのトリフィオヴェルトゥムと捕食惑星!!」

 

驟雨のライキリ「はぁぁぁぁぁ!!ハッ!!」

 

 驟雨のライキリは刀を2閃するとその斬撃は二光の雷となってユーリのカードを焼く

 クロウを苦しめた竜の姿をした植物の化け物はこうして打ち取られた。

 

「ヘッ!どんなもんだ!ターンエンド!!」


 すごい、すごい!すごいすごいすごいすごい!!

 今の場面をひっくり返してモンスターを3体残すなんて!!

 しかも、あの雨隠れのサヨってモンスター2回も戦闘破壊耐性持ってる!

 更地の状態からシンクロ召喚を1回無効にしたのに、ここまで持ち直すなんて!!

 

「これなら僕も本気を出しても大丈夫そうだね!

 僕のターン、ドロー!!

 僕は手札からマジックカード、捕食活動(プレデター・プラクティス)を発動

 このカードは手札の捕食植物(プレデター・プランツ)モンスターを1体特殊召喚して、デッキからプレデターカードを手札に加える。

 僕は手札から捕食植物(プレデター・プランツ)セラセニアントを特殊召喚して、デッキから捕食生成(プレデター・プラスト)を手札に加える。」

 

 セラセニアント DEF600

 

「さらにマジックカード、フレグランス・ストームを発動

 フィールド上の植物族モンスターを1体破壊してデッキから1枚ドローする。

 さらにそのドローしたカードが植物族モンスターだった場合、もう1枚ドローできる。

 僕はセラセニアントを破壊して1枚ドロー

 ドローしたカードは捕食植物(プレデター・プランツ)プテロペンテス、植物族モンスターだ。よってもう1枚ドローする。」

 

 うんうん、いい感じ、いい感じ!

 

「で、セラセニアントが効果でフィールドを離れたっつぅことは・・・」

 

「そうだよ!

 セラセニアントの効果でデッキから捕食計画(プレデター・プランニング)を手札に加える。

 そして、手札から捕食生成(プレデター・プラスト)を発動!

 手札の捕食植物(プレデター・プランツ)プテロペンテスと捕食計画(プレデター・プランニング)を公開して、君の星影のノートゥングと雨隠れのサヨに捕食カウンターを乗せる。」

 

 星影のノートゥング LV6→1 捕食C0→1

 雨隠れのサヨ    LV2→1 捕食C0→1

 

「そして、墓地のトリフィオヴェルトゥムとドロソフィルム・ヒドラの効果発動

 相手フィールドに捕食カウンターが乗ったモンスターがいるときトリフィオヴェルトゥムは墓地から守備表示で特殊召喚できる。

 さらにドロソフィルム・ヒドラはフィールド上の捕食カウンターが乗ったモンスターをリリースすることで特殊召喚できる。

 僕は星影のノートゥングをリリース!」

 

「なんだとぉ!?」

 

 コンクリートが割れ、巨大な球根から芽が出て見る見るうちに三つ首のドラゴンっていう感じの姿になるトリフィオヴェルトゥム

 そして、星影のノートゥングにくっ付いていた捕食カウンターが、宿主を喰って曲がった葉を何本も持つ多頭の蛇の姿に成長する。

 

トリフィオヴェルトゥム「「「ギャオオォォォォォォ!!」」」

           DEF3000

           ATK3000→4300

 

ドロソフィルム・ヒドラ『シャアァァァァァァ!!』

           DEF2300

 

「てめぇまた俺のモンスターを!!」

 

「ふふ、さらに手札から捕食植物(プレデター・プランツ)プテロペンテスを通常召喚!」

 

プテロペンテス「ギャアァァァァァ!」

       ATK300

 

 次に出てきたのは大きな口にずんぐりした胴体がチャーミングな翼竜のようなモンスター

 このモンスターで彼のフィールドを綺麗にしてあげよう。

 

「プテロペンテスのモンスター効果

 1ターンに1度、相手フィールド上にこのモンスター以下のレベルを持つモンスターがいる場合

 そのモンスター1体を僕のモンスターにする。

 お兄さんの(アサルト)BF(ブラックフェザー)―雨隠れのサヨは今、レベル1だから、そのコントロールを貰うよ!」

 

雨隠れのサヨ「ク!?・・・ワッ・・・・・・」

 

 プテロペンテスの出す甘く芳しい香りに誘われて、雨隠れのサヨがフラフラと僕のフィールドに寄ってくる。

 さぁ、僕のエースの本当の力を見せてあげるよ!

 

「俺のモンスターを素材にするだけじゃなくて、奪いやがって!!

 やることがせっけぇんだよ!!」

 

「ハハッ!だってそれが僕のデッキなんだもん、負けても文句は言いっこなしだよ!

 僕は墓地の捕食惑星(プレデター・プラネット)の効果を発動!

 このカードを除外することで僕の手札、フィールドの捕食植物(プレデター・プランツ)モンスターを使って融合召喚を行う。

 僕はフィールドの闇属性の捕食植物(プレデター・プランツ)プテロペンテスとドロソフィルム・ヒドラを融合!

 魅惑の香りで虫を誘う二輪の美しき花よ!その花弁の奥の地獄から、再び脅威を生み出せ!融合召喚!!

 出でよ!スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン!!」

 

スターヴ・ヴェノム「ウウゥゥ・・・ギャアアァァァァァァァァァ!!」

         ATK2800

 

 あは♡スターヴ・ヴェノムも昂ってるね!

 そうだよね。こんなに僕たちと戦える人なんてそんなにいないもんね!

 

「見せつけてやろう。君の力を!

 スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴンの効果! 

 このカードが融合召喚に成功した場合、このターンのエンドフェイズまで相手フィールド上の特殊召喚されたモンスター1体の攻撃力をこのカードの攻撃力に加える!

 僕は(アサルト)BF(ブラックフェザー)―驟雨のライキリの攻撃力をスターヴ・ヴェノムに加える!」

 

「なにぃ!?」

 

スターヴ・ヴェノム「ギャアアアァァァァァァァァ!!」

         ATK2800→5400

 

 スターヴ・ヴェノムの背中の口が開き、さっき驟雨のライキリがまき散らした雷のエネルギーを食べる。

 さぁ、ここからだよ!

 

「さらにスターヴ・ヴェノムの効果発動!

 1ターンに1度、相手フィールド上のレベル5以上のモンスターを1体を対象に選び、このターンのエンドフェイズ時までスターヴ・ヴェノムはそのモンスターの名前と効果を得る!ミミクリー・ヴィジョン!!」

 

 スターヴ・ヴェノムの全身の赤い水晶体が光を放ち、その前に驟雨のライキリの姿を映し出す。

 

 スターヴ・ヴェノム((アサルト)BF(ブラックフェザー)―驟雨のライキリ)

 

「ライキリの効果と名前・・・はっ!?その為に雨隠れのサヨを!?」

 

「そうだよ!

 驟雨のライキリの効果発動!

 1ターンに1度、自分フィールド上のこのカード以外のBF(ブラックフェザー)モンスターの数まで相手フィールド上のカードを選択してそれを破壊する。

 僕が破壊するのは驟雨のライキリ!!」

 

スターヴ・ヴェノム「ギャアアァァァ!!」

 

 スターヴ・ヴェノムが腕を振り上げると幻影の驟雨のライキリも刀を振り上げる。

 そして腕を振るうとそれに合わせて刀が振り下ろされ、紫色の雷が本物の驟雨のライキリに放たれる。

 

驟雨のライキリ「うわああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」――バンッ!

 

「ライキリまで・・・」

 

「ふふ、またがら空きだね。

 でも、手加減は君にはいらないよね?

 僕は手札からマジックカード、融合を発動

 フィールドの融合モンスター、捕食植物(プレデター・プランツ)トリフィオヴェルトゥムと闇属性モンスター、(アサルト)BF(ブラックフェザー)―雨隠れのサヨを融合!

 美しきも禍々しき神秘の槍よ、甘い香りに誘われた憐れな獲物を取り込み、新たな花を咲き乱れさせよ!融合召喚!!

 出ておいで!芳しき香りで捕食する華竜!捕食植物(プレデター・プランツ)ドラゴスタぺリア!!」

 

ドラゴスタぺリア「グワアアァァァァァァ!!」

        ATK2700

 

 忍者みたいな鳥をトリフィオヴェルトゥムが取り込み、新たに紫の翼を広げ、腐肉臭を巻き散らせるドラゴンの姿をした捕食植物(プレデター・プランツ)に変質する。

 これで、エンドフェイズにコントロールが戻る、なんて事もなくなった。

 

「さぁ!バトルだよ!!

 ドラゴスタぺリアでダイレクトアタック!」

 

ドラゴスタぺリア――ボフォオオォォォォォォォ!!

 

「ぐふぅ!?がはぁぁあぁぁ!!ごふぉ!ゴホッ!!ガハッ!!」

 LP3000→300

 

 紫のブレスが彼に吹きかけられる。

 リアルソリッドヴィジョンだからその凄まじい臭気が刺激となって彼を苦しませる。

 さぁ!大詰め、って言っても、これで終わらないだろうけどね?

 

「さぁ!行け!スターヴ・ヴェノム!!ダイレクトアタックだ!!」

 

スターヴ・ヴェノム「ギャオオオォォォォォォォ!!」


 不気味な竜の背中から伸びてきた触手が割れ、巨大な口が涎をたらして迫ってくる。

 それを見て俺は、もう終わってもいいかと思った。

 

 全身が痛ぇ

 このガキとのデュエルはシンジとのデュエルの時みてぇに、ただの立体映像や体感衝撃なんてもんじゃねぇ、本当の痛みを伝えてくる。

 

 もう、今頃ロゼはスタートラインに立っていることだろう。

 このガキもそこまで行っているロゼにちょっかいかけようとはしないはずだ。

 俺の足止めっつぅ目的は達成された。

 

 なら、もう・・・こんなつらくて痛い思いも、苦しい思いもしなくても・・・

 

≪負け犬として生まれたなら、負け犬として生きてろとそう言いたいのか!!≫

 

 ロゼ・・・ごめんな・・・

 俺は本当に、ただの負け犬だったみたいだぜ・・・

 

≪クロウ≫≪クロウ≫≪クロウ兄ちゃん!≫

 

 フランク、アマンダ、タナー・・・ごめんな。俺はダメな奴だったよ・・・

 

≪お前たちのような有象無象が、この俺と並び立つだと?

 馬鹿も休み休みに言え、俺はこんなところで終わるつもりはない。≫

 

 ジャック・・・あいつは、あいつなりにあいつの願いを叶えようとしてくれたのによ・・・

 

≪俺たちのライディングデュエルが、風が、俺たちのシティを一つにしてくれる。

 そういう未来を俺は夢見ているんだ。≫

 

 ・・せい・・・すまねぇ、とても俺なんかには・・・

 

≪きっと辛くて、長い道のりにはなると思う。≫

 

 む・・・

 

≪だからこそ、自分にできることがある限り、諦めないで前に進もうと思うんだ。≫

 

 !!

 

「俺は手札のBF(ブラックフェザー)―熱風のギブリの効果発動!!

 ダイレクトアタックを受けるときこのカードを特殊召喚する!!」

 

 熱風のギブリ DEF1500

 

 そうだ、シンジの時もあいつは諦めなかった。

 諦めないで自分のできることをやって、シンジを救った!

 

「あはっ!そうこなくちゃ!スターヴ・ヴェノム!

 熱風のギブリに攻撃対象を変更だぁ!」

 

スターヴ・ヴェノム「ギャオオォォォォォ!!」

 

――ガブリッ!

 

 熱風のギブリが触手の先のワニみてぇな口に丸飲みにされる。

 でも、これで俺のライフは次のターンにつながった!

 

「カードを1枚伏せて、って言ってもこのカード分かっているよね?

 あぁ、ドラゴスタぺリアは捕食カウンターが乗っているモンスターの効果を無効にするから

 どう?ドロソフィルム・ヒドラの効果も併せて結構八方塞がりでしょ?」

 

「へっ!それがどうしたって言うんだよ!

 俺のターン、ドロー!」

 

 八方が塞がってるって言うんなら、飛び上がりゃいいじゃねえか!!何度だってな!!

 

「俺はマジックカード、貪欲な壺を発動

 墓地の5体のモンスター、神立のオニマル、フルアーマード・ウィング、驟雨のライキリ、雨隠れのサヨ、星影のノートゥングをデッキに戻して2枚のカードをドローする。

 

 さらにマジックカード、悪夢再びを発動

 このカードは俺の墓地の守備力0の闇属性モンスター2体を手札に加えるカードだ。

 俺はBF(ブラックフェザー)―極北のブリザードと南風のアウステルを手札に加える。

 

 もう一つマジックカード、一撃必殺!居合ドローを発動!

 手札を1枚捨てて、相手フィールド上のカードの数だけ自分のデッキからカードを墓地へ送り、その後1枚ドローする。

 それをお互いに確認し、それが居合ドローなら、それを墓地へ送り、フィールドのカードをすべて破壊し、破壊して墓地へ送ったカードの数×2000ポイントのダメージを相手に与える!」

 

「へぇ~まさに一撃必殺、逆転のカードってわけだね。

 サーチとかで結構デッキも削れてるし、これは本当に危ないかもね。」

 

 危ないも何も、俺のデッキに居合ドローはこの一枚しかねぇけどな!

 さぁ、来てくれよ・・・

 

「てめぇのフィールドのカードは3枚、よって、デッキから3枚のカードを墓地に送って1枚ドロー・・・

 ドローしたカードはおとり人形、居合ドローじゃねぇから、墓地へ送ったカードの枚数分自分の墓地のカードをデッキに戻す。

 俺は終わりの始まり、貪欲な壺、闇の誘惑をデッキに戻す。」

 

「あらら、残念、失敗だね。」

 

 失敗?いや、最高の一手だったぜ!

 

「俺は墓地のシャッフル・リボーンの効果を発動!

 墓地のこのカードを除外して、自分フィールド上のカードを1枚デッキに戻してシャッフルして1枚ドローする。

 俺は黒い旋風をデッキに戻して1枚ドロー!!」

 

 おっしゃ来たああぁぁぁぁぁ!!

 

「サーチカードまでデッキに戻しちゃって、よっぽど後がないんだね?」

 

 後がない?

 

「いや、後なんていらなくなったぜ?

 なぜならこのターンで俺がお前を倒すからな!

 まずはマジックカード、おとり人形を発動だぁ!」

 

「おとり人形?」

 

「こいつはマジック、トラップゾーンに伏せられたカードを1枚確認して、それがトラップカードなら、その場で強制発動させる!」

 

「強制発動!?」

 

「おう!てめぇの伏せている捕食計画(プレデター・プランニング)を強制発動させてもらうぜ!」

 

 勝手に発動されるトラップカード、今フィールドにいるモンスターはあいつのモンスターだけ

 

「むっ?コストはいるんだね。

 僕はデッキから2枚目の捕食植物(プレデター・プランツ)コーディセップスを墓地に送ってドラゴスタぺリアとスターヴ・ヴェノムに捕食カウンターを置く。」

 

 ドラゴスタぺリア  LV8→1 捕食C0→1

 スターヴ・ヴェノム LV8→1 捕食C0→1

 

「さらに居合ドローの効果で墓地に送られたBF(ブラックフェザー)―大旆のヴァーユの効果を発動!

 こいつと同じく墓地に送られたBF(ブラックフェザー)―漆黒のエルフェンを除外して、その合計レベルと同じBF(ブラックフェザー)シンクロモンスターを特殊召喚するぜ!

 ヴァーユは1でエルフェンは6!

 来い!レベル7!BF(ブラックフェザー)―アーマード・ウィング!!」

 

アーマード・ウィング「ツァァァ!!」   

          ATK2500

 

 現れたのは漆黒の鎧を身に纏う鳥人

 こいつは、俺の昔の、あいつと一緒にいた頃のエースモンスター

 仲間を守るため、お前の力を貸してくれ!

 

「そして、俺はBF(ブラックフェザー)―極北のブリザードを通常召喚して効果を発動!」

 

極北のブリザード「クエェェ!」

        ATK1300

 

「させないよ!

 ドラゴスタぺリアの効果発動、1ターンに1度、相手フィールド上の表側表示モンスターに捕食カウンターを置く。

 この効果は相手ターンにも発動できる。

 BF―極北のブリザードに捕食カウンターを置き、ドラゴスタぺリアのもう一つの効果でそのモンスターの効果は無効だ!」

 

 ドラゴスタぺリアは尻尾を伸ばして極北のブリザードに捕食カウンターを植え付けようとするが

 

――パシッ

 

 それをアーマード・ウィングが払いのける。

 

「なっ!?」

 

「カウンタートラップを手札から発動させてもらったぜ。ブラック・バード・クローズ

 こいつは自分フィールド上にBF(ブラックフェザー)シンクロモンスターがいるとき、手札から発動できる。

 相手フィールド上のモンスターが、効果を発動させたとき、自分フィールド上のBF(ブラックフェザー)モンスターを墓地に送って、その効果を無効にし、破壊する。」

 

「手札からカウンタートラップ!?」

 

「もう、これ以上、俺の仲間に手を出してんじゃねぇ!!」

 

アーマード・ウィング「タアァァァァ!!」

 

――ドゴッ!

 

ドラゴスタぺリア「ギャァァァァァァァ!?」――バンッ!

 

 アーマード・ウィングがドラゴスタぺリアに拳を叩き込み破壊する。

 同時にドラゴスタぺリアの腕が伸びて、アーマード・ウィングの胸を貫くが、アーマード・ウィングはそれに目をくれず、俺の方に振り向いて静かに消えていった。

 

「・・・これで、極北のブリザードの効果は有効になった。

 俺は墓地からレベル3のBF(ブラックフェザー)―熱風のギブリを守備表示で特殊召喚!」

 

熱風のギブリ「カアァ!」

      DEF1500

 

 さっき俺を守ってくれた複数枚の赤いラインの入った羽を持ったカラス、熱風のギブリが蘇る。

 さぁ、これでもう邪魔するもんはねぇ!一気に行くぜ!!

 

「俺はレベル3の熱風のギブリにレベル2の極北のブリザードをチューニング!

 黒き烈風よ、絆を紡ぐ追い風となれ!シンクロ召喚!!

 飛び立て、(アサルト)BF(ブラックフェザー)―五月雨のソハヤ!!」

 

五月雨のソハヤ「はっ!」

       DEF2000

 

「五月雨のソハヤがシンクロ召喚されたことにより効果発動、墓地からもう1体の(アサルト)BF(ブラックフェザー)―五月雨のソハヤを特殊召喚する!」

 

五月雨のソハヤ「ふんっ!」

       DEF2000

 

「そして五月雨のソハヤはBF(ブラックフェザー)をシンクロ素材に呼び出した時、チューナーとして扱う!

 俺はレベル5の(アサルト)BF(ブラックフェザー)―五月雨のソハヤにレベル5のチューナーとして扱う(アサルト)BF(ブラックフェザー)五月雨のソハヤをチューニング!

 黒き旋風よ、嵐となって天空を突き抜けろ!!シンクロ召喚!

 舞い上がれ!BF(ブラックフェザー)―フルアーマード・ウィング!!」

 

フルアーマード・ウィング「オオォォォォ!!ハッ!!」

            ATK3000

 

「効果が効かないフルアーマード・ウィング・・・

 でも、そのモンスターで攻撃しても、僕の受けるダメージはたったの200

 このターンで決着は「なにを勘違いしてやがるんだ?」!?」

 

「言っただろ?このデュエルはこのターンでシメェだ!

 墓地のBF(ブラックフェザー)―南風のアウステルの効果発動!

 このカードを墓地から除外することで、相手フィールド上の表側表示モンスターすべてに楔カウンターを1つ乗せる!」

 

フルアーマード・ウィング「ハアッ!」――ドゥンッ!

 

スターヴ・ヴェノム「ギャアアァァァァァァ!?」

         楔C0→1

 

 フルアーマード・ウィングの銃から釘打ち機の様に楔が放たれ、スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴンに打ち込み壁に貼りつけにする。

 そいつは何とかして、楔を外そうともがいているが、俺の仲間が繋いで打ち込んだ楔は外れやしねぇ!

 

「スターヴ・ヴェノム!?」

 

「フルアーマード・ウィングは楔カウンターを乗っけた相手モンスターのコントロールを奪う。

 そいつには、そこで大人しくしてもらうぜ!」

 

「・・・あは♡すごいね。お兄さん!」

 

 このガキはこの期に及んで、嬉しそうにしている。

 悪ガキめ。いっぺんしめねぇと分からねぇみてぇだな!!

 

「お仕置きの時間だぜ!!

 BF(ブラックフェザー)―フルアーマード・ウィングでダイレクトアタック!!」

 

 フルアーマード・ウィングがあいつに大剣を躊躇なく一閃、振り下ろす。

 

「・・・・・・あぁ~あ、負けちゃった。」

 LP3000→0


「痛っあぁぁぁぁ・・・・」

 

 ユーリとの一戦と終え、クロウはその場にうずくまる。

 デュエルの高揚も冷め、痛みがぶり返してきたのだ。

 

「あれ?もしかして、お兄さん。怪我しているの?」

 

 その様を目の前にいたユーリはケロッとした顔で聞いてくる。

 

「あ?あぁ、そうだよ!つぅ・・・

 おいガキ、これでに懲りたらもうあいつに手出ししようとなんてするなよ?」

 

「う~ん、それは保証できない、っていうか無理だね。

 僕、彼とデュエルしたいし。」

 

「あぁ!?舐めてんじゃねぇぞ!

 この次の試合つったら、ジャックとの決勝戦だろうが!

 もうてめぇら、セキュリティの出る幕じゃ「あぁ、そうだ!ずっと言っているそのセキュリティってさ。なんのこと?」

 

「・・・はあ?」

 

「だからさ。

 僕、そのセキュリティっていうのと何の関係もないんだけど?」

 

「はぁ!?だって、じゃあなんでこんな時に!?」

 

 クロウは驚愕した。

 セキュリティ側の選手で唯一残っているシンジ

 クロウはユーリのことを、シンジを絶対勝たせるために、ロゼこと遊矢を失格に追い込むための刺客だと思っていたのに、本人は関係ないと言っているのだ。

 

「こんな時くらい、って言うか

 僕もよくわからないけど、たまたま今日会えたんだよね。

 会おうと思っても、会えなかったのになんでだろうね。あははっ」

 

 そして、ユーリも理由はよくわからなかった。

 昨日まで、ユーリは何とかして遊矢に接触を試みたものの、遊矢はずっと柚子のそばにいたため、ブレスレットの力でシティ郊外に毎度転送されてしまっていたのだ。

 

「なんだよ・・そりゃ・・・」

 

「まぁ、いいや。

 お兄さんに免じて、うん、彼がこの大会を終えるまで待ってあげる。

 でも、終わったら、彼とデュエルさせてもらうからね?」

 

「・・・もう、好きにしてくれ・・・」

 

「うん、そうする。じゃあ、またデュエルしようね。

 あぁ、後、彼によろしく、バイバーイ。」

 

 ユーリは気軽にそう言い去ってしまった。

 緊張の解けたクロウはめちゃくちゃになったガレージの中で寝ころびながら、天を仰ぐ

 

「なんだったんだ?あのガキ・・・・」




あれ?ユーリ、なんだかご機嫌だね。
遊矢はもうスタート位置についているみたいだけど、デュエル出来たの?

ううん、でも、面白いお兄さんとデュエルをしてきたよ。
楽しかったなぁ~

そ、そう・・・ところでさ。
なんでも、セキュリティっていうところに、こちら側のお尋ね者がいるみたいだよ?
どうする?

へぇ~それはそれは
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『キセキが繋いだ光指す道』
まだまだ、面白くなりそうじゃない


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キセキが繋いだ光指す道

名もなきトップスの人「キミこんなのしか持っていないのに、デュエルしたの?
           もっとましなカード集めてからおいでよ。」(カード返してくれる)

シンジ「トップスはコモンズに不利な勝負吹っ掛けては、何もかも奪っていきやがった!!」

あれ?このトップスの人のセリフからするとアンティ勝負吹っ掛けたのシンジじゃね?奪われてもないし
おまけに挑まれたら拒否ることもなさそう。
まぁ、ビビったと思われてもトップスの立場上受けないわけにはいかないか。

名もなきトップスの人「と言ってもコモンズには無理か、はっはっはっはっはっ・・・」

まぁ、期待はしてないみたいですが

さて今回は遊矢とシンジによる準決勝
いろいろ詰め込んだのでいつもよりも長くなってますが、切ると変になるのでご勘弁を


≪・・・シンジのこと頼むぜ?≫

 

 俺は英雄ではない。

 

≪やぁ、こんな時間に済まない。

 私はボルガー&カンパニー社長のボルガー、こっちは工場長のピアスン。

 突然のことなんだが君たちに頼みがある。君のDホイールを私たちに直させてはくれまいか!≫

 

≪ボルガー。

 びっくりさせてすまないな。

 だが仲間の遺したものが、あんなにボロボロになっているのを見ていられなくてな・・・

 俺からも頼む。絶対に悪いようには、いや!最高の状態で試合に出させてやる! 

 だから、頼む!≫

 

 俺はデュエルがしたいだけだ。

 そうでなければ、目の前の敵を払うだけだ。

 

≪この街に新しい風を入れこんでくれる。そう感じたんじゃよ・・・≫

 

 別にこの街をどうにかしようとか思っていない。

 

≪いいか!次にこの俺と対峙するときは、お前の持ちうる力!そのすべてで掛かってこい!!≫

 

 なのにいつの間にか、いろんなものを背負うことになってしまった。

 

「本来なら、あなたが背負っていたのかもしれませんね・・・」

 

 異邦人に背負わせるようなものじゃないだろうに

 

「でも、こういうのが・・・」

 

――ブオオォォォン!!


 やれやれ、久しぶりの帰郷だというのに仕事とは・・・まぁ悪い気はしませんが

 

 失われた世紀の天才の遺した2枚のカード、その内の1枚を一介のデュエリストに渡そうとするとは、お二人は何をお考えなのでしょう?

 もう1枚は見つかってないというのに・・・

 

 思えば一週間ほど前から奇妙なことの連続のような気がします。

 博士の見つけた粒子と粒子を結び付ける粒子の性質を利用した永久機関「モーメント」

 デュエルモンスター、取り分けシンクロモンスターと、それを呼び出すシンクロ召喚により活性化するという性質がありましたが、大規模な発電を行う出力を得られず、今では副産物ともいえる小型のものが発電機として出回っているのみ

 さらには開発者が交通事故で亡くなってしまうという悲劇により、発電炉としての計画は頓挫、今では実験用の1号炉が休眠管理されるだけとなりましたが、それが突如活性化、現地で何があったのでしょうね?

 まぁその調査もワタクシの仕事なのですが・・・

 

――ピ!ピ!ピ!ピ!

 

「おっと!?もう時間ですか!?伸びてしまう!」

 

 考え事をし過ぎましたね。ぺりっと

 蓋を開ければ至福の湯気が立ち上る。

 うん、どんなに豊かになってもこれはたまりません!

 

「では頂くとしましょう!イーヒッヒッイヒッヒッヒッヒッヒッヒッ!」


「てめぇ!!そのDホイールはどうしたぁ!!」

 

 知ってた。

 

「あいつから奪ったのか!!あの事故もお前の所為か!!答えろ!!」

 

 クロウの話じゃ厄介な宗教にドはまりした様な感じになっているって言ってたし、実際、地縛神みたいに傀儡とはいえ人間を生前の姿で再現できる力を持った神様なんだけどさぁ~

 だからって、名目上はセキュリティとしているこいつがスタジアムのど真ん中でこんなこと言っていていいのか?

 

「答えろっつってんだよ!!」

 

「あ~はいはい、もううるさいな。

 デュエルの前に白ける話するなよ・・・このDホイールは拾いもんだ。

 あんたのお仲間もそのことは了承済みだよ。」

 

 つぅか14でここに来たのもつい最近の俺が3年以上前の事件に関与できるか!

 

「何!?」

 

「あぁ~『元』お仲間だったか?

 了承を得たのは裏切り者のボルガー社長とそれに付いて行ったピアスン、それにクロウだからな。」

 

「チッ!あいつらか・・・」

 

 シンジは目を伏せて、舌打ちをする。

 ?ここまで煽ったらもっと突っかかるかと思ったが、退いた?

 

『あー、あー、あーもう!なんだか出てくる人出てくる人、トラブルばっかりね~

 フレンドシップカップはシティは一つみんな友達ぃ~な大会なのに・・・

 でも、そんな因縁ならデュエルでスパッと解決しちゃいましょう!

 フレンドシップカップ準決勝第二試合、ゴーストライダー、ロゼ・ジェスターとアベンジャーΣ!

 ジャックとユーゴに負けない、素晴らしいデュエルに期待して、今、スタートです!』

 

 司会の野次を聞き、シンジは黙ってスタート位置に着く。

 因縁も何も、あるのはDホイールの方であって俺には関係はほとんどない。

 

 そもそもこのシンジ・ウェーバーという男自体、近寄りたくないレベルの厄ネタの塊である。

 原作では革命家とは名ばかりのテロリストであり、コモンズを扇動し、器物損壊事件を起こしてシティを混乱させた。

 それが今や変な宗教家にクラスチェンジである。

 

 クロウに目を覚まさせるようには頼まれたが・・・

 決闘竜(デュエルドラゴン)が増幅させた心の闇は『失った仲間への固執』だと思っていたが、今の反応は違うような・・・?


『さぁさぁスターティンググリットに入って!

 それじゃあ行くわよ!アクションフィールド、オン!

 フィールド魔法、クロス・オーバー・アクセル!!』

 

【デュエルモード・オン オートパイロット・スタンバイ】

 

『ライディングデュエル・・・アクセラレーション!!』

 

『『決闘(デュエル)!!』』

 

――ブオオオォォォォォォォォォン!!

――キイイイィィィィィィィィィィ!!

 

 赤いDホイールが力強い音を鳴らし、青いDホイールが甲高い声を上げる。

 シンジの乗るDホイールは対Dホイール犯罪用の特別車であり、その性能は現状のどのDホイールを見てもトップクラス。

 対して遊矢の駆るDホイールは昔のコモンズの手作業によって作られた旧型、知っているものからすれば、その性能差は明らかでありシンジも自分が負けるはずがないと思っていた。だが

 

「何!?」

 

「先攻は俺だな。」

 

 先攻を選別するためのファーストコーナーを先に曲がったのは遊矢だった。

 現状最高峰のDホイールメカニックである2人によって改修された遊矢のDホイールは、元々のマシンでは扱いきれなかった旧型モーメントエンジンのパワーを完全に制御していた。

 さらに学習型サポートプログラムの発展、遊矢のマシン操作の腕の向上など様々な要因が重なり、本来のマシンスペックを超え、シンジをわずかながら抜いたのだ。

 さらにはそのコーナーの先のアクションカードすら手に入れて

 

「俺は魔法カード、魔獣の懐柔を発動

 このカードは自分フィールド上にモンスターがいない場合発動できる。

 デッキからカード名が異なるレベル2以下の獣族効果モンスターを3体、特殊召喚する。

 ただし、この効果で呼んだモンスターは効果を無効化されエンドフェイズに破壊される、さらにこのカード使用後ターン終了時まで俺は獣族モンスターしか特殊召喚できない。

 俺はこの効果でデッキからメルフィー・パピィ、チューナーモンスター、森の聖獣 ヴァレリフォーン、魔轟神獣ケルべラルを特殊召喚。」

 

メルフィー・パピィ「わふ。」

         DEF100

 

ヴァレリフォーン「ケェーン!」

        DEF900

 

ケルべラル「わおっ!」「ワンッ!」「キャン!」

     DEF400

 

 そろって現れたのはもふもふとした毛並みの子犬と背中に植物をはやした小鹿、そして地獄の番犬たる三頭の魔獣・・・の子供

 緊張感のかけらもないファンシーなメンツである。

 

「そんな壁にもならねぇ雑魚を並べやがって、てめぇやる気あんのか?」

 

「レベルと攻撃力が低くて、効果も使えないからって舐めるなよ?

 俺はレベル2のメルフィー・パピィにレベル2の魔轟神獣ケルべラルをチューニング

 シンクロ召喚!来い、魔轟神獣ユニコール!」

 

ユニコール「ヒヒーン!!」

     DEF1000

 

 現れたのは一本角を持つ白馬の神獣、それは疾走する遊矢のDホイールと並走する。

 その背には小さな白い小悪魔が落ちないように必死にしがみついており、やはりどこか緊張感に欠けているが・・・

 

「さらに俺は手札から召喚僧サモンプリーストを通常召喚。

 こいつは召喚、反転召喚した際、守備表示になる。」

 

 サモンプリースト ATK800→DEF1600

 

「サモンプリーストの効果発動

 1ターンに1度、手札の魔法カードを捨てることでデッキからレベル4モンスターを1体特殊召喚する。

 俺は手札のアクションマジックを捨て、デッキからレスキューキャットを特殊召喚。」

 

レスキューキャット「ニャーオ。」

         DEF100

 

 ユニコールの背に黒い僧服を纏った老人が現れ、さらにその膝の上には安全メットを被った子猫が現れた。

 もはやどういう状況かもわからない。

 それを見ている観客も司会のメリッサも対戦者のシンジもわからない。

 

「レスキューキャットの効果発動

 1ターンに1度、フィールドのこのカードを墓地へ送りデッキからレベル3以下の獣族モンスター2体を効果を無効にして特殊召喚する。

 俺はレベル3のマイン・モールとEM(エンタメイト)ディスカバー・ヒッポを特殊召喚。」

 

マイン・モール「モグ。」

       DEF1200

 

ディスカバー・ヒッポ「ヒポッ!」

          DEF800

 

 レスキューキャットが消え、新たに安全メットを被った鼻が花となっているモグラとシルクハットをかぶったピンク色のカバが現れる。

 

「俺はレベル3の地属性モンスター、マイン・モールにレベル2の地属性チューナー、森の聖獣 ヴァレリフォーンをチューニング!

 シンクロ召喚!戒め守護せよ!ナチュル・ビースト!」

 

ナチュル・ビースト「グオオォォォン!!」

         DEF1700

 

 子鹿とモグラが消えて続き現れたのは虎である。

 その全身が樹木や葉っぱで構成されている異様な姿をしているが、これまでに現れたどこか気の抜ける獣モンスターからすると真面目な雰囲気をしている。

 

「フィールドでは効果が封じられていても墓地では有効だ。

 マイン・モールが獣族モンスターのシンクロ素材に使用され墓地へ送られた場合、デッキから1枚ドローする。

 さらに自分フィールド上の魔法使い族モンスター、召喚僧サモンプリーストとレベル4以下の地属性モンスター、EM(エンタメイト)ディスカバー・ヒッポを墓地へ送ることで、デッキからこいつを特殊召喚できる!

 来い!憑依覚醒―デーモン・リーパー!」

 

デーモン・リーパー「シャアァァァァ!!」

         ATK2000

 

 現れたのはリスのようなモンスター、だが赤い蝙蝠のような翼、大きく発達したカトラスのような角

 なにより、その顔は凶悪そのものであり、名に違わず悪魔のような見た目をしていた。

 デッキから直接登場するそのモンスターに段々と見ているものはヤバさを感じ始めていた。

 

「デーモン・リーパーの効果発動。

 このカードが自身の効果で特殊召喚された場合、墓地のレベル4以下のモンスターを効果を無効にして特殊召喚できる。

 俺は再び、チューナーモンスター、森の聖獣 ヴァレリフォーンを特殊召喚!」

 

ヴァレリフォーン「フォォン!」

        DEF900

 

「レベル5のデーモン・リーパーに獣族チューナー、森の聖獣 ヴァレリフォーンをチューニング!

 天翔ける雷よ、雲海を切り裂き、その蹄を地上に穿て!シンクロ召喚!

 轟け!ボルテック・バイコーン!」

 

ボルテック・バイコーン「ヒヒィィィン!!」

           DEF2000

 

 雷鳴が轟き、馬の嘶きが響く

 黒い馬体に大きな稲妻をのような2本の角を持つ魔獣が戦列に加わる。

 

「永続魔法、メルフィーのかくれんぼを発動

 このカードがある限り、俺のフィールドの獣族モンスターはそれぞれ1ターンに1度、効果で破壊されない。

 さらに二つ目の効果を発動、墓地の獣族モンスターを3種類デッキに戻すことで、デッキから1枚ドローする。

 俺は墓地の魔轟神獣ケルべラル、憑依覚醒―デーモン・リーパー、レスキューキャットの3体をデッキに戻しシャッフルし1枚ドロー。

 カードを1枚伏せ、ターン終了だ。」

 

『お、おう・・・なんとゴーストライダー

 1ターンでトリプルシンクロ!出だしが嘘のような勇ましいメンツがそろい踏みです!

 アベンジャーΣはどのようにしてこの陣形を破るのかー!?』

 

「さぁ、お前のターンだ。

 ちなみにナチュル・ビーストは俺のデッキを2枚削ることで魔法カードの発動と効果を無効にし、ユニコールは俺とお前の手札が同じ枚数の時、お前の発動したあらゆるカード効果を無効にして破壊する。

 頑張って突破するんだな。」

 

『想像以上にひどい盤面だった!?

 本当にどうするアベンジャーΣ!!』

 

 だがそんなメリッサの問いかけは無視して、シンジはその口から呪詛を吐く

 

「・・・そうやって、いつもいつも、俺たちを上から押さえつけやがって!!

 やられっぱなしはうんざりなんだよ!!俺のターン!

 ブクブクに腫れ上がるまで、ぶっ刺してやる!

 俺はてめぇのフィールド上のモンスター、ナチュル・ビーストをリリースして怪粉壊獣ガダーラをてめぇのフィールドに攻撃表示で特殊召喚する!」

 

ナチュル・ビースト「ガウッ!?」――バクッ!

 

ガダーラ「キエエェェェェェェェェ!!」

    ATK2700

 

ナチュル・ビーストが巨大な蛾に食われる。

 

「うわっ、壊獣まで入ってんのかよ・・・」

 

「これで、マジックカードが使えるぜ。

 通常魔法、手札抹殺を発動。お互いに手札をすべて捨て、新たにデッキから捨てた枚数分ドローする。

 俺はアクションカードを含めた5枚を捨て5枚ドロー!」

 

「俺は3枚捨て3枚ドローする。」

 

「これで終わりじゃねぇ!

 捨てられて墓地へ送られたゴキポールの効果発動!

 まずはゴキポールの効果でデッキからレベル4の昆虫族、未開域のモスマンを手札に加える。

 

 さらに手札の未開域のモスマンの効果発動!」

 

「その効果にチェーンしてトラップカード、一族の結集を発動

 このカードはフィールドのモンスター1体を対象にして、そのモンスターと元々の種族が同じでカード名が異なるモンスター1体を自分の手札、墓地から特殊召喚する。

 俺は魔轟神獣ユニコールを対象にして、同じ獣族のメルフィー・パピィを墓地から特殊召喚する!」

 

メルフィー・パピィ「わうっ!」

         DEF100

 

「ハッ!そんな雑魚を呼んだところでどうにかなると思っているのか?

 未開域のモスマンの効果だ!

 俺の手札を1枚、お前が選ぶ、それが未開域のモスマンならそのカードを墓地に送り、それ以外ならそのカードを墓地へ送り手札から未開域のモスマンを特殊召喚する。さぁ!選べ!!」

 

「俺から見て右から2番目。」

 

「こいつか、大外れだぜ!!

 お前が選んだのは超進化の繭!こいつを捨てて、未開域のモスマンを特殊召喚だ!

 そして、俺は1枚ドローするぜ!」

 

 未開域のモスマン ATK1800

 

メルフィー・パピィ「わふっ!?」

 

 現れたのは不気味な蛾人間、その姿を見たメルフィー・パピィはユニコールの背中の上から遊矢の下へ飛び込んでくる。

 

「メルフィー・パピィの効果!

 相手がモンスターを召喚、特殊召喚したとき、このカードを手札に戻してデッキからレベル2以下の獣族モンスター1体を特殊召喚する。

 俺はメルフィー・キャシィを特殊召喚!」

 

メルフィー・キャシィ「にゃおぉ?」

          DEF200

 

 ユニコールの背中にオレンジ色の毛並みの可愛らしい子猫が現れる。

 次にシンジが手札を使えば4枚と、シンジと遊矢の手札の枚数が同じになりユニコールの効果が有効になる。

 

「ちっ!めんどくせぇ・・・でも手札が同じにならなきゃいいんだろ!

 手札のB・F(ビー・フォース)―連撃のツインボウの効果を発動!

 自分のメインフェイズにこのカードを手札から特殊召喚できる!」

 

連撃のツインボウ――ブウゥゥゥゥゥゥゥン!

        ATK1000

 

 現れたのは尻に針が2本生え、肢が弓のように曲がった蜂

 そのモンスターの登場にユニコールの上で寝転がっていた子猫が反応する。

 

「メルフィー・キャシィの効果

 相手がモンスターを召喚、特殊召喚したとき、フィールドのこのカードを手札に戻し、デッキから獣族モンスターを1体手札に加える。

 俺が手札に加えるのはホップ・イヤー飛行隊。」

 

「はっ!そんな臆病者どもに何ができるって言うんだよ!

 さらに俺はチューナーモンスター、B・F(ビー・フォース)―毒針のニードルを召喚!」

 

毒針のニードル――ブウウゥゥゥ!

       ATK400

 

 続いて、毒液の入ったフラスコのようなメカメカしい蜂が現れる。

 

「毒針のニードルが召喚、特殊召喚されたとき、デッキからB・F(ビー・フォース)モンスター、追撃のダートを手札に加える。

 俺はレベル3の連撃のツインボウにレベル2の毒針のニードルをチューニング!

 蜂出する激憤の針よ、閃光と共に天をも貫く弓となれ!シンクロ召喚!

 現れろ!B・F(ビー・フォース)―霊弓のアズサ!」

 

霊弓のアズサ「はっ」

      ATK2200

 

「さらにマジックカード、孵化を発動

 自分フィールド上のモンスター1体をリリースして、そのモンスターよりレベルが一つ上の昆虫族モンスターをデッキから特殊召喚する!

 俺はレベル4の未開域のモスマンをリリースして、デッキからレベル5のプリミティブ・バタフライを特殊召喚!」

 

 プリミティブ・バタフライ DEF900

 

「プリミティブ・バタフライの効果発動!

 1ターンに1度、自分のメインフェイズに、自分フィールド上の昆虫族モンスターすべてのレベルを1つ上げる!」

 

 プリミティブ・バタフライ LV5→6

 霊弓のアズサ       LV5→6

 

 六枚羽根の鮮やかな蛾の鱗粉が自身と蜂の巫女の格を高める。

 

「墓地の超進化の繭を除外し、墓地の昆虫族モンスター、B・F(ビー・フォース)-追撃のダートを対象にして効果発動、対象カードをデッキに加えシャッフルしデッキから1枚ドローする。

 さぁ!嵐の到来だ!!

 マジックカード、一斉蜂起を発動!

 相手フィールド上のモンスターの数まで俺の墓地からB・F(ビー・フォース)モンスターを特殊召喚する。

 戻ってこい!毒針のニードル!連撃のツインボウ!」

 

 毒針のニードル  ATK400

 連撃のツインボウ ATK1000

 

「俺はレベル6となったプリミティブ・バタフライにレベル6となったB・F(ビー・フォース)―霊弓のアズサをチューニング!

 集結せし絆の力にて傲岸たる巨悪の壁を射貫け!シンクロ召喚!

 現れろ!レベル12!B・F(ビー・フォース)―決戦のビッグ・バリスタ!!」

 

決戦のビッグ・バリスタ――ブオオォォォォォォォ!!

           ATK3000

 

 B・F(ビー・フォース)最大の決戦兵器が姿を現した。

 その背に背負う大弓に毒の塗られた矢が装填される。

 

「決戦のビッグ・バリスタが特殊召喚に成功したとき、俺の墓地の昆虫族モンスターを全て除外して発動する!

 除外されている俺の昆虫族モンスター1体に付き、お前のモンスターの攻守を全て500ポイントダウンさせる!

 除外されている昆虫族は4体!てめぇのモンスターの攻守は全て2000ダウンだ!」

 

 ガダーラ ATK2700→700

      DEF1600→0

 

ボルテック・バイコーン「ヒヒィィン!?」

           DEF2000→0

           ATK2500→500

 

ユニコール「ブルルゥゥ・・・」

     DEF1000→0

     ATK2300→300

 

 無数の毒矢が遊矢のモンスターに突き刺さり、その力を奪う。

 

「ははははっ!!見ろ!俺の仲間がてめぇのモンスターをボロボロにしてやったぜ!!

 リッチなトップスの皆様方も、その内同じ目に遭うかもな?

 並べた盤面が崩れ去った時のショックはさぞ大きいことだろうよ!!」

 

『ちょっとちょっと!?お客さんへの暴言は禁止!!』

 

「ヘッ!もうすぐ暴言じゃなくなるさ・・・事実になるんだからな!

 俺はレベル3の連撃のツインボウにレベル2の毒針のニードルをチューニング!

 再び射貫け!B・F(ビー・フォース)―霊弓のアズサ!!」

 

霊弓のアズサ「ふんっ!」

      ATK2200

 

「さぁ!バトル「の前に、手札のホップ・イヤー飛行隊の効果発動

        自分フィールド上のモンスター1体を選択して、このカードを特殊召喚し、対象モンスターとこのモンスターでシンクロ召喚を行う。」

 

 ホップ・イヤー飛行隊 ATK300

 

「俺はレベル4の魔轟神獣ユニコールにレベル2のホップ・イヤー飛行隊をチューニング!

 シンクロ召喚!振り上げよ!獣神ヴァルカン!!」

 

獣神ヴァルカン「ウオォオォォォォォ!!」

       DEF1600

 

 虎の獣人の姿をした神が、普段は鉄を鍛えている槌を戦いのために振り上げる。

 

「獣神ヴァルカンの効果発動

 このカードがシンクロ召喚に成功した場合、自分及び相手のフィールドの表側表示カードを1枚ずつ対象として、そのカードを手札に戻す。

 俺は俺の永続魔法、メルフィーのかくれんぼとお前のB・F(ビー・フォース)―決戦のビッグ・バリスタを手札に戻す!」

 

「なんだとぉ!?」

 

獣神ヴァルカン「ヴァアアァァァァァ!!」――ガンッ!!

 

 ヴァルカンが槌を地面に叩きつけ、その衝撃で遊矢のカードとシンジの決戦のビッグ・バリスタが吹き飛ばされる。

 

『ゴーストライダー、お得意の相手ターンでのシンクロ召喚で貫通効果を持つビッグ・バリスタを除去!

 追撃のダートとのコンボによる1ターンキルを防いだ!』

 

「クソッ!思い通りにならねぇ・・・ガキの頃から・・・

 だが、それでも俺のB・F(ビー・フォース)はへこたれねぇぜ!コモンズのガキみてぇにな!!

 バトル!霊弓のアズサでボルテック・バイコーンに攻撃!!」

 

霊弓のアズサ「はっ!」

 

 霊弓のアズサの放った矢がボルテック・バイコーンを貫き、その体に蓄えられた雷を吸って爆発し、遊矢は大きくバランスを崩し後退する。

 

「ぐぅ、ああぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 LP4000→1500

 

「追撃のダートの効果を発動させた。

 自分のB・F(ビー・フォース)が元々の持ち主が相手となるモンスターを戦闘で破壊したとき、このカードを手札から捨てることで、そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを与える。

 さらに、B・F(ビー・フォース)モンスターが効果ダメージを与えたことで霊弓のアズサの効果発動!

 ダメージを与えたB・F(ビー・フォース)モンスターの攻撃力分のダメージを追加で相手に与える!

 ダートの攻撃力、100ポイント分のダメージを受けろ!!」

 

「ぐぅ・・・ボルテック・バイコーンの効果

 相手によってこのカードが破壊された場合、お互いのプレイヤーはデッキの上から7枚のカードを墓地へ送る。」

 LP1500→1400

 

 爆発した雷の力は2人のデッキを焼く、そのことにシンジの脳裏にある記憶がよみがえる。

 

「そうやって、カードをゴミみたいに・・・俺から奪ったカードを、捨てたこともあったよな・・・」

 

「はぁ?」

 

「もっとましなカード持って来いとかぬかしやがって・・・トップスはコモンズに不利な勝負をふっかけては、何もかも奪ってきた!奪ってきやがったんだ・・・」


『あぁ、そうだ・・・世話になっていた施設を借金のカタにされて、住む場所すらなくなったこともあった!!』

 

「あぁ?なんだ、あいつ?いきなり身の上話し始めたぞ?」

 

 スタジアムの中継モニターで流れているのはアベンジャーΣつぅ治安維持局のデュエリストとおっかねぇあいつのデュエル

 めちゃくちゃな展開力で作られたひでぇ盤面を突破してワンターンキルまで繋げて、すげぇと思ったが、それを阻止したおっかねぇのもすげぇ、って思っていたのにいきなりなんだあいつ?

 

『そんなどうでもいいことはいいから、さっさとデュエルを進めろ。

 それとももう、ターンエンドか?』

 

『どうでも、いい・・・だと!!俺の、俺たちの!怒りが分からねぇってのか!!』

 

『いや、知らねぇよ。』

 

 まぁ、あいつはシティっていうか、この世界出身でもねぇし

 

『知らねぇなら、イヤッてほど分からせてやるぜ!!

 マジックカード、貪欲な壺を発動!

 墓地のモンスターカード、B・F(ビー・フォース)―追撃のダート、B・F(ビー・フォース)―早撃ちのアルバレスト2体、B・F(ビー・フォース)―必中のピン2体をデッキに戻し、2枚ドロー!

 

 さらに墓地の蘇生の鋒玉を除外して効果を発動!

 次のターンの終了時まで昆虫族モンスター1体は戦闘、効果では破壊されなくなる!

 俺はB・F(ビー・フォース)―霊弓のアズサにこの効果を適用する!

 カードを3枚伏せてターンエンドだ!!』

 

『お前のエンドフェイズに墓地のデーモン・イーターの効果を発動。

 相手エンドフェイズにこのカードが墓地にある時、自分フィールドの表側表示モンスター1体を対象とし、そのモンスターを破壊し、墓地からこのカードを特殊召喚する。

 俺はガダーラを破壊し、デーモン・イーターを特殊召喚。』

 

デーモン・イーター『ヂッ!』

         DEF200

 

 弱ったガダーラを破壊して、デーモン・リーパーに似た蝙蝠の翼が生えた茶色いネズミが現れる。

 

『俺のターン、ドロー。』

 

 

『トラップ発動!DNA移植手術!!

 このカードがフィールドにある限り、フィールド上に存在する表側表示のモンスターは全て俺が宣言した属性となる!

 闇属性を宣言!!』

 

 獣神ヴァルカン   火→闇

 デーモン・イーター 地→闇

 

 霊弓のアズサ 風→闇

 

『属性変更でナチュル・ビーストのシンクロ召喚を封じてきたか。』

 

『そうだ!!もうお前たちに好き勝手させない!!

 このデュエルは社会の縮図だ!

 自由競争と言いながら勝ち組は勝ちっぱなし、それがこのシティの現実だ!』

 

 ざわざわと、俺もそうだ、私もと、あの野郎に賛同する声が観客席の方から聞こえる。

 確かにコモンズの暮らしは貧しいし、我慢も多い。あいつ自身も不幸だと思う。

 奴の言うことにも一理はある。だけど

 

『だから俺が、俺たちがひっくり返してやる・・・その為にあいつを!!』

 

『あいつ・・・このDホイールの持ち主のことか?』

 

 !!なんだ?あの人はもう・・・

 

『そうだ!あいつが戻ってくれば、俺たちはまた一つとなれる!

 一致団結して、トップスの野郎どもを地の底に叩き落としてやるんだ!!』

 

「何言ってやがる!あの野郎!!」

 

 あの人はそんなこと!!

 

『そんなこと望まないだろうよ、あの人ならな。』

 

 !?

 

『俺はEM(エンタメイト)フレンドンキーを通常召喚!

 その効果により、墓地のレベル4以下のEM(エンタメイト)モンスター、EM(エンタメイト)ソード・フィッシュを特殊召喚する。』

 

 

フレンドンキー『ブヒィン!』

       ATK1600 地→闇

 

ソード・フィッシュ『ギョ!』

         DEF600 水→闇

 

 現れたのは目つきの悪いロバと剣のような体をした魚

 その攻撃力は霊弓のアズサに及ばない。だが、ソード・フィッシュの仲間が現れ霊弓のアズサに突撃する。

 

霊弓のアズサ『ぐっ!?』

      ATK2200→1600

      DEF1600→1000

 

『何ッ!?』

 

『やられたらやり返すってね。EM(エンタメイト)ソード・フィッシュの効果!

 このカードが召喚、特殊召喚されたとき、相手フィールド上の全てのモンスターの攻守を600ポイントダウンさせる。

 さらに墓地の超重禽属コカトリウムの効果を発動

 自分フィールド上の獣族、鳥獣族、獣戦士族モンスターをリリースすることで、このカードを特殊召喚する。

 俺は獣族のEM(エンタメイト)フレンドンキーをリリースして、墓地からコカトリウムを特殊召喚!』

 

コカトリウム「ケェェー!!」

      DEF900 風→闇

 

 出てきたのは緑色の金属でできた鶏?っぽいモンスター

 それにつられて、なぜかソード・フィッシュの仲間までもが現れる。なんで?

 

『ソード・フィッシュの第二の効果、俺がモンスターを特殊召喚するたびに相手フィールドの全てのモンスターの攻守を600下げる。それ行け!』

 

霊弓のアズサ『ぐわっ!?』

      ATK1600→1000

      DEF1000→400

 

『そんな雑魚に、俺のモンスターが!?』

 

『言っただろ?ステータスだけがモンスターの強さじゃない!

 速攻魔法、ユニゾン・チューンを発動

 自分または相手の墓地のチューナー1体を除外して、自分フィールド上のモンスター1体を対象にして、そのモンスターをチューナーとして扱い、除外したモンスターと同じレベルにする。

 俺が除外するのはお前の墓地のB・F(ビー・フォース)―毒針のニードル!そしてチューナーとなるのはコカトリウム!』

 

 コカトリウム LV4→2(チューナー)

 

『さらにコカトリウムの効果

 自分のデッキからレベル4以下の獣族、鳥獣族、獣戦士族モンスター1体を除外することで、コカトリウムは除外したモンスターと同じレベル、種族、属性になる。

 俺はレベル4、獣族、地属性のEM(エンタメイト)ロングフォーン・ブルを除外する。』

 

 コカトリウム LV2→4 

        鳥獣→獣

 

『レベル4のチューナーと・・・シンクロモンスター!?』

 

『俺はレベル6のシンクロモンスター、獣神ヴァルカンにレベル4に戻りチューナーとなった超重禽属コカトリウムをチューニング!

 集いし夢が結集し、宙へ輝く星となる!光射す道となれ!!シンクロ召喚!!

 飛び立て!サテライト・ウォリアー!!』

 

サテライト・ウォリアー『ハッ!!』

           ATK2500

 

 光の中から現れるロケットが変形し、黄金の巨人となる。

 あの人のモンスター、その力は仲間の遺志を継ぐ力

 

『自身の効果で特殊召喚したコカトリウムはフィールドを離れたことで除外される。

 サテライト・ウォリアーの効果発動!

 このカードがシンクロ召喚に成功した場合、自分の墓地のシンクロモンスターの数まで、相手フィールドのカードを破壊し、破壊した枚数×1000ポイントこのカードの攻撃力をアップさせる!コメット・ブラスト!」

 

 墓地のシンクロモンスターは4体

 蘇生の鋒玉の効果で霊弓のアズサは破壊できねぇが、DNA移植手術とセットカード2枚は破壊できる。

 さらに特殊召喚により、EM(エンタメイト)ソード・フィッシュの効果が発動し霊弓のアズサの攻撃力はさらに600下がって400、サテライト・ウォリアーの攻撃力は5500に跳ね上がるから・・・

 

『この効果が通り、攻撃が決まればゴーストライダーの1ターンキル返し!?

 やっぱりすごいわ!ゴーストライダー!!』

 

 サテライト・ウォリアーが放つスペースデブリの弾丸がアベンジャーΣのカードを破壊せんと迫る。

 危機的状況、だが奴はそのことに激昂し伏せたカードを発動した。

 

『・・・やっぱり、お前にはわからないのか・・・俺たちコモンズの怒りが!憎しみが!!

 トラップ発動!シンクロコール!

 自分の墓地のモンスターを1体、効果を無効にして特殊召喚し、ドラゴン族か悪魔族のシンクロモンスターをシンクロ召喚する!!

 俺はレベル3のB・F(ビー・フォース)―連撃のツインボウを特殊召喚し、レベル5の闇属性となったチューナーモンスター、霊弓のアズサをチューニング!!』

 

 霊弓のアズサと連撃のツインボウが無数の蛆に喰われていく

 

『魔神を束ねし蠅の王よ!!虫唾の走る世界に陰りを!!シンクロ召喚!!』

 

 腹が膨れた蛆は羽化して蠅となって、不気味で邪悪な、このシティの闇ともいえる龍を作り上げる。

 

『魔王龍ベエルゼ!!』

 

魔王龍ベエルゼ『『『『ウオォォォォォォォォォォォォォォ!!』』』』

       ATK3000


 現れたか、決闘竜(デュエルドラゴン)、魔王龍ベエルゼ

 

「恐れおののけ!トップスども!そしてそれに尻尾を振る飼い犬どもよ!!

 これが、こいつが!俺たちコモンズの怒りだ!!はははははは!!」

 

魔王龍ベエルゼ「「「「ギャアアァァァァァァァァァァ!!」」」」

 

 2頭の蛇が、埋め込まれた女性が、巨大な蠅の顔が、怨嗟の声を上げる。

 

「ソード・フィッシュの効果により、ベエルゼの攻撃力、守備力は600ポイントダウン。

 さらにサテライト・ウォリアーで、シンクロコールとDNA移植手術、セットカードは破壊される。」

 

 魔王龍ベエルゼ ATK3000→2400

         DEF3000→2400

 

 サテライト・ウォリアー ATK2500→5500

 

「だからどうした!!ベエルゼは俺が受けた痛みで強くなる!

 戦闘でも効果でも破壊されないこいつはお前のモンスターを一方的にかみ砕く!!

 この俺たちの怒りと憎しみが、俺たちの絆!!誰にも断ち切ることはできない!!

 

 セットされた運命の発掘が相手の効果で破壊されたことにより墓地の運命の発掘の枚数分ドローする。俺の墓地の運命の発掘の枚数は1枚、1枚ドローだ!」

 

 絆?こんなのが?この程度の力が?

 

「コモンズだとか!トップスだとか!押しつけがましいんだよ!お前!!

 絆はお前の都合のいい道具じゃない!!

 

 俺は永続魔法、メルフィーのかくれんぼを発動

 その効果で俺の墓地のEM(エンタメイト)フレンドンキー、ボルテック・バイコーン、ナチュル・ビーストをデッキに戻し1枚ドロー。

 

 さらに永続魔法、魔術師の再演を発動し、墓地のレベル3以下の魔法使い族モンスター、レベル1のマジシャンズ・ソウルズを特殊召喚!

 特殊召喚により、ソード・フィッシュの効果でベエルゼの攻撃力がダウン!」

 

マジシャンズ・ソウルズ「「はっ!」」

           DEF0

 

 魔王龍ベエルゼ ATK2400→1800

         DEF2400→1800

 

 現れたのは魔術師の師弟の影

 敵を消し去る力はないが、新たな未来を呼び込む力を持っている。

 

「マジシャンズ・ソウルズの効果発動!

 1ターンに1度、手札、フィールドの魔法、トラップカードを2枚まで墓地へ送る事で送った枚数分ドローする。

 俺はフィールドのメルフィーのかくれんぼを墓地へ送り1枚ドロー

 さらにフィールドの魔法使い族、マジシャンズ・ソウルズと地属性レベル4以下のモンスター、デーモン・イーターを墓地へ送り、デッキから憑依覚醒―デーモン・リーパーを特殊召喚!」

 

デーモン・リーパー「ヂッ!」

         ATK2000

 

 デーモン・イーターが覚醒しデーモン・リーパーへ

 さらにソード・フィッシュの効果が怨嗟の竜の力を削ぐ

 

 魔王龍ベエルゼ ATK1800→1200

         DEF1800→1200

 

「デーモン・リーパーの効果で墓地からチューナーモンスター、調律の魔術師を効果を無効にして特殊召喚!」

 

調律の魔術師「はっ」

      DEF0

 

 音叉の付いた杖を構える小柄な少女がデーモン・リーパーの呼びかけに応じる。

 その祝いは、ソード・フィッシュのベエルゼへの突撃だ。

 

 魔王龍ベエルゼ ATK1200→600

         DEF1200→600

 

「俺はレベル5のデーモン・リーパーにレベル1の調律の魔術師をチューニング!

 星雨を束ねし聖翼よ!魂を風に乗せ世界を巡れ!!シンクロ召喚!

 来い!スターダスト・チャージ・ウォリアー!!」

 

スターダスト・チャージ「フンッ!!」

           ATK2000

 

 星屑の戦士の目が狂ったかつての友を射貫く

 そして、ソード・フィッシュが闇の竜に突き刺さる。

 

 魔王龍ベエルゼ ATK600→0

         DEF600→0

 

「なっ!?ベエルゼの攻撃力が0だと!?」

 

「はっ!怨み、憎しみで得た力なんてそんなもんなんだよ!

 スターダスト・チャージ・ウォリアーがシンクロ召喚に成功したことにより1枚ドロー!

 

 まだまだいくぜ!魔法カード発動、エアーズロック・サンライズ!

 このカードは墓地の獣族モンスターを1体特殊召喚する。

 来い!チューナーモンスター、森の聖獣 ヴァレリフォーン!」

 

ヴァレリフォーン「フォーン!」

        DEF900

 

「さらに相手フィールド上のモンスターの攻撃力を、俺の墓地の獣族、鳥獣族、植物族モンスター1体に付き200、さらにソード・フィッシュの効果によりさらにベエルゼの攻撃力は600下がる。

 俺の墓地には獣族と鳥獣族モンスターが8体、併せて2200ポイントダウンする!」

 

 ヴァレリフォーンの召喚に合わせ、墓地に眠るモンスターの魂までもが現れ、さらにソード・フィッシュの呼び出した仲間たちと共に怨嗟の塊に向かっていく

 

魔王龍ベエルゼ「「「「ギャアアァァァァァァァァ!?」」」」

 

 本来の力すら失った魔王龍は非力なはずの魚群に突き刺され悲鳴を上げた。

 

「さらに手札を1枚捨てヴァレリフォーンの効果を発動

 墓地からレベル2以下の獣族モンスター、チューナーモンスター、ホップ・イヤー飛行隊を特殊召喚!」

 

 ホップ・イヤー飛行隊 DEF600

 

「俺はレベル6のスターダスト・チャージ・ウォリアーにレベル2のホップ・イヤー飛行隊をチューニング!

 剛毅の光を放つ勇者の剣、今ここに閃光と共に目覚めよ!シンクロ召喚!

 現れよ!覚醒の魔導剣士(エンライトメント・パラディン)!」

 

覚醒の魔導剣士(エンライトメント・パラディン)「フンッ!はぁ!!」

       ATK2500

 

 時間を操る力を持つ魔導剣士

 今はその本来の力を発揮できないが、その登場によりソード・フィッシュがボロボロのベエルゼにさらに突き刺さる

 

魔王龍ベエルゼ「「「「グワァアァァァ・・・・・・」」」」

 

「ベエルゼが・・・俺の・・力がっ・・!?」

 

「この程度で随分とボロボロになったな。お前の言うそれは

 切っても切れないもの、どこだって感じられる繋がり、どんな時だって、どこにいたって、自分を支えてくれる物、それこそが絆。

 そんなに脆いものじゃない!」

 

 離れていても絆に変わりはない。でも、人生は絆だけでどうにかなる物じゃない。

 自分の人生は自分で責任を持って歩まなくてはならない。

 彼は物語の最後にそれを悟って、仲間たちをそれぞれの未来へと送り出した。

 

「お前の言うそれは、ただの押しつけだ。」

 

 だがこいつは、独り善がりな繋がりを押し付けてくる。

 変わろうと、前に進もうとする者の邪魔をしてくる。

 

「押しつけ・・・だと!?

 俺たちが肩寄せ合って生きていくことが、そんなに悪いことだっていうのか!!そうすることしかできない俺たちに!!」

 

「そう言う時点で押し付けているだろ。

 助け合うことが悪いとは言わない。だが、一人で立てるようになったら前に踏み出さなきゃ世界は変わらない!」

 

「!!?」


「クソッ・・・

 まだ頬がひりつくぜ。なんなんだよ、あいつ・・・」

 

 コモンズが作り出したライディングデュエル。

 元は鬱憤が溜まった奴らの遊びだったものを、新しいデュエルのカタチにする。

 あいつが始めた俺たちの夢

 

「シンジ、ここにいたのか。」

 

「・・・あぁ。」

 

 そうこいつ、元はトップスのお坊ちゃんだったくせに

 親が死んだからという理由だけでコモンズの孤児院に来たこいつ

 最初は誰も信用なんかしてなかった。

 だけど、クールなくせにすぐ熱くなるし、何かにのめり込むと寝ないで何日も作業してる。

 変わった奴だった。

 

「すまない。ジャックには俺がよく言っておく。」

 

「ケッ!何が、『ガキには躾が必要だ!』だよ。

 俺と変わらない歳しているくせに・・・」

 

「ジャックはそういうことを言っているわけじゃないのだと思う。」

 

「はぁ?だったら、なんなんだよ?」

 

 だけど、絆を誰よりも大切にしていた。

 知り合ったやつ、共に飯食ったやつ、デュエルしたやつ・・・そういった奴との繋がりを何より大切にして、その輪はどんどん大きくなっていった。

 あの偏屈者のジャック・アトラスがその輪に加わるくらいに

 

「シンジ、俺たちがあれを作り始める前までは、大抵のコモンズの住人たちは配給や生活保護金を使って暮らしていた。」

 

「・・・あぁ

 何もできねぇコモンズはおことわりだとぬかしやがって、トップスの奴らめ・・・」

 

「あぁ、学校も何もないコモンズでは仕方のないことだ。

 だが、それを仕方ないで終わらせていたら駄目なんだ。

 何もできないんじゃなくて、何かをできるようにならないとトップスもコモンズを受け入れはしないだろう。」

 

「だからこうして、何かをしているんだろう?」

 

「あぁ、だけど、それだけじゃないさ。」

 

「あぁ?どういうことだよ。」

 

「みんな今は夢を追いかけて必死になった。

 勉強して新しいことを覚えたり、何度も練習してできるようになったり、お金を稼ぐために働いたり・・・

 夢を原動力にして、前に進むようになった。」

 

 その時俺は驚いた。

 こいつは自分の夢のために周りを利用しているんじゃなくて、周りのために自分の夢を利用していた。

 だから、俺は疑わしくなった。こいつはその為に実現不可能なことをしているんじゃないかと

 

「・・・なんだよそれ、俺たちはお前に踊らされていたっていうのかよ?

 もしかして、お前の夢ってぇのは本当はただの嘘なのか!?」

 

「嘘じゃないさ。

 コモンズ発祥のデュエル、ライディングデュエルは俺の、俺たちの叶えたい夢だ。

 それが叶ったら、ギスギスしているコモンズとトップスの関係も少しは良くなるだろう。

 その内、大きな大会になったりしてな?

 そこまでいけば、互いに手と手を取り合える時もきっとくる!

 でも、もっと大事なのはその先だ。」

 

「その先?」

 

「コモンズとトップスの間の大きな壁

 それを乗り越えた先には、きっと未知の世界が広がっているだろう。

 そのとき、俺たちは一人一人が選択を迫られるだろうし、一人で解決しなくてはいけないことも出てくる。

 一人の未来を歩まなくてはいけないときが出てくる。」

 

「それは・・・それじゃ!俺たちの絆はどうなっちまうんだよ!?

 俺たちコモンズの絆は!?それでいいのかよ!お前は!!」

 

 そんなことになってしまったら、俺の居場所が消えていく、なくなっていく、奪われていく

 俺はそれが怖くなった。

 

「・・・本当は言いたいさ。“ずっと一緒にいてくれ”って。

 けど、俺はみんなが自分で選んだ道を妨げたくない。

 それに離れていても絆が消えるわけじゃない。

 けれど、俺たちが進むその先の未来は絆だけでどうにかなるもんじゃない。

 自分の人生は自分で責任をもって生きていかなきゃいけなくなるんだ。俺たちがそれぞれ、次のステージに進むためにな。」

 

 それぞれのステージ

 それは肩寄せ合って生きていくしかねぇコモンズの生き方では出来ないこと

 コモンズだとか、トップスだとか、それがなくなったらそういうこともできるだろう

 それぞれの夢を持った生き方が

 

「あぁ、それは・・・いいな。」

 

「あぁ!その思いが、きっとこの街を変えていく! 

 俺たちのシティは、こんなに素晴らしい居場所だったんだ!って、誇れる街になっていくさ!」

 

 そう言って、シティを眺めるあいつは星のようにキラキラしていて

 

 

 

 

 俺には眩しすぎた。


「うるせぇ・・・うるせぇ!うるせぇ!!うるせぇー!!五月蠅えぇぇぇ!!」

 

 例えるならそう、羽化を拒んだ蛹

 未知が広がる外に出るのを拒み、壁を隔てた先には仲間がいるからと自分の殻に閉じこもった。

 そんな情けない子供の叫びがこだました。

 

「虫唾が走るぜ!!

 だったら、お前に変えられるっていうのかよ!このシティを!」

 

「変えるのは俺じゃない。この街に住んでいる一人一人だ!

 俺は墓地のBF(ブラックフェザー)―精鋭のゼピュロスの効果を発動!

 俺のフィールドの表側表示カード、魔術師の再演を手札に戻し、墓地からこいつを特殊召喚する!」

 LP1400→1000

 

精鋭のゼピュロス「はっ!」

        ATK1600

 

BF(ブラックフェザー)!?そいつはクロウの!?」

 

「お前によろしくだとよ。

 俺はレベル4のBF(ブラックフェザー)―精鋭のゼピュロスにレベル2のホップ・イヤー飛行隊をチューニング!

 シンクロ召喚!こいつで吹き飛ばしてやる!来い!オリエント・ドラゴン!」

 

オリエント・ドラゴン「ギャアオォォ!!」

          ATK2000

 

 東洋の龍や妖怪の様な姿をしたドラゴンが現れ、雉の羽のような翼を雄々しく広げる。

 

「オリエント・ドラゴンの効果発動!

 こいつのシンクロ召喚成功時、相手フィールド上のシンクロモンスター1体を除外する。

 消え失せろ!闇に取りつく寄生虫め!!」

 

 神秘の風が闇を打ち払わんと放たれる。

 無数の悪霊が寄り集まった魔王龍がほどけていく

 

「・・・させるか、させるか!させるかぁぁぁ!!

 手札のエフェクト・ヴェーラーの効果発動!!

 こいつを手札から捨てモンスター1体の効果をこのターン無効にする!

 オリエント・ドラゴンの効果は無効だぁぁ!!」

 

 だが、彼は闇に縋った。

 風がおさまった後、吹き飛ばされた蠅たちは再び結集し、魔王龍の形を得る。

 

「躱されたか、なら攻撃してライフを消し飛ばすしかないか・・・

 手札に戻した魔術師の再演を再び発動!

 墓地のレベル3以下の魔法使い族、チューナーモンスター、調律の魔術師を特殊召喚!」

 

調律の魔術師「ハイッ!」

      DEF0

 

「調律の魔術師の効果により、お前のライフは400回復し、俺のライフに400ポイントのダメージが与えられる。」

 LP1000→600

 

「その雑魚が何だって言うんだよ!!」

 LP4000→4400

 

「お前の墓地の超電磁タートルを封じるんだよ。

 俺はレベル6のオリエント・ドラゴンにレベル1の調律の魔術師をチューニング!

 2色の眼に写る星よ、流星となって降り注げ!シンクロ召喚!!

 星紡ぐ戦竜、オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン!!」

 

オッドアイズM「ギャアアァァァァァァ!!」

       ATK2500

 

 幼き音の魔術師の力で神秘の風は紅き流星の力を宿す2色の眼の竜を呼びだす。

 

「オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴンはバトルフェイズ中の相手モンスターの効果を発動できなくする。

 これで、バトルフェイズ中に効果を発動させる超電磁タートルは使えない!」

 

「ぐぅ!?」

 

『アベンジャーΣなすすべ無し!

 そしてサテライト・ウォリアーの攻撃力は5500!

 ベエルゼの効果を使う前にライフは0よ!』

 

「バトル!サテライト・ウォリアーで魔王龍ベエルゼに」


 サテライト・ウォリアーが飛び立ち、魔王龍ベエルゼに蹴撃を叩きこもうとしている。

 あいつが使っていたカードが、俺たちの、俺の象徴を潰しにかかってくる。

 

 あいつが、俺を否定してくる!

 

 あいつさえいれば、クロウも、ボルガーも、ピアスンも、ジャックも

 俺を置き去りにした連中を戻せると思っていた。

 あいつを繋ぎ留めれば、みんな俺の下から離れないと思っていた。

 

 だが、あいつはこんな俺を認めてはくれない・・・

 だったら、いらない・・・あいつなんていらない・・・クロウも、ジャックも、俺を置いて行った連中なんてみんないらない!!

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!アクションマジックゥ!!バトル・ロック!!

 このターン、相手モンスターは攻撃宣言できない!!」

 

「アクションカード・・・しぶといやつだ。

 俺はカードを2枚伏せて、手札のメルフィー・キャシィの効果を発動

 このカードは自分のターンのエンドフェイズに特殊召喚できる。」

 

メルフィー・キャシィ「みぃー。」

          DEF200

 

「俺のターン!!」

 

 役立たずなんてもういらないぜ!!

 

「俺は墓地のシャッフル・リボーンの効果発動!

 自分の墓地のこのカードを除外し、自分フィールドのカードを1枚デッキに戻すことで1枚ドロー出来る!

 俺はベエルゼをエクストラデッキに戻し、1枚ドロー!」

 

「俺は墓地のトラップ、小人のいたずらを除外し効果を発動!

 このターン、お互いの手札のモンスターのレベルは1つ下がる!」

 

 手札のモンスターのレベルだと?

 そんなの手札を経由しなきゃ意味ねェ効果だろうが!!

 

「俺はチューナーモンスター、インフェルニティ・ビートルを召喚!」

 

 インフェルニティ・ビートル ATK1200 LV2→1

 

「来たか。

 メルフィー・キャシィの効果発動、このカードを手札に戻し、デッキからホップ・イヤー飛行隊を手札に加える。」

 

「手札を1枚伏せ、インフェルニティ・ビートルの効果を発動!

 自分の手札が0枚の時、このカードをリリースし、デッキからインフェルニティ・ビートルを特殊召喚する!!」

 

 インフェルニティ・ビートル ATK1200

 インフェルニティ・ビートル ATK1200

 

「さらに伏せていたマジックカード、アリの増殖を発動!

 自分フィールド上のモンスターを1体リリースして、兵隊アリトークンを2体特殊召喚する!」

 

 兵隊アリトークン ATK500

 兵隊アリトークン ATK500

 

「!!闇属性チューナーに2体のレベル4!?」

 

 黒いカブトムシの内一体が2体のアリのえさとなる。コレデソロッタ

 

「俺はレベル4の2体の兵隊アリトークンに、レベル2の闇属性チューナー、インフェルニティ・ビートルをチューニング!

 地を這いし億万の蛆虫よ!その身をやつし天を埋めよ!!」

 

 インフェルニティ・ビートルと兵隊アリの体から蛆が湧きだす。

 

「全ての世界は我らが手中にあり!!シンクロ召喚!!」

 

 より多く、より濃く、より黒く、羽化して空を黒く染める。

 

「君臨せよ!魔王超龍ベエルゼウス!!」


ベエルゼウス「「「「オオオォォォォォォォォォォォ!!」」」」

      ATK4000

 

 より禍々しく、より巨大に、より凶悪になった魔王龍ベエルゼの進化体とも呼べる眼前の魔竜、魔王超龍ベエルゼウス

 世界有数のろくでなし伝説を持ち、多くの不幸の原因を作った神の名を入れた蠅の魔王

 

「ベエルゼウスの効果発動!

 1ターンに1度、相手フィールド上のモンスターの攻撃力を0にし、そのモンスターの元々の攻撃力を俺のライフに加える!

 俺の糧となれ!サテライト・ウォリアー!!蠅王覇権(ベエルゼウス・サプラマシー)!!」

 

サテライト・ウォリアー「うぐぅ!?あぁぁぁ・・・・」

           ATK5500→0

 

ベエルゼウス「「「「ギャアアァァァァァァァァ!!」」」」

 

 ベエルゼウスの尾がサテライト・ウォリアーに突き刺さり、その力を奪う。

 夢のような黄金の輝きが、光を受ける美しいパネルが、見るも無残にその色を失っていく。

 

「この効果を使ったターン、お前が受ける戦闘ダメージは半分になる!

 だけど関係ぇねぇな!お前のライフはたったの600!どいつを攻撃してもベエルゼウスの攻撃でジ・エンドだ!!

 はははは!!消えろ!キエロ!!何もかもなくなってしまえ!!」

 LP4400→6900

 

 絶体絶命、伏せたカードでは現状をどうすることもできない。

 いや、むしろベエルゼウスの召喚を妨害した方がよかっただろう。やろうと思えばできた。

 ただ、いきなり提示されたメッセージに驚いてタイミングを逃した。

 

【UNLOCK SYNCHROTUNER】

 

 その表記と提示されたカードを見れば、このカードは今までのカードとは違い、今まで意図的にセーフティが掛かっていたということ

 それがいつ外れたのかは分からないが、シンクロできるようになったから表示されたのだろう。だが

 

「出したところで、シンクロ先が・・・」

 

 シンクロ先は未表示になっている。レベルすら分からない

 どんな効果のモンスターかわからない以上、出てしまったベエルゼウスをどうにかできる保証はない。

 そんな俺の不安のつぶやきに、Dホイールの画面は返答してきた

 

【CHALLENGE THE UNKNOWN】

【DON’T GIVE UP REACHING OUT】

【THE FUTURE IS BEYOND!】

 

 “未知に挑め”“手を伸ばすことを諦めるな”“未来はその先にある!”

 あの人らしい、仲間を大切に思う気持ちと、未来への思い。

 いつの間にやら、勝手に背負ったものすら本当になっていたらしい。

 

「なら・・・応えないわけにはいかないな!」

 

 背の重みが前へと進ませてくれる。不安も置き去りにしてくれる。

 

「トラップ発動!ギブ&テイク!

 自分の墓地のモンスター1体を相手のフィールド上に守備表示で呼び出し、俺の場のモンスター1体のレベルをこのターンの終了時まで、相手フィールドに特殊召喚したモンスターのレベル分アップさせる。

 俺は墓地からBF(ブラックフェザー)―精鋭のゼピュロスを特殊召喚し、EM(エンタメイト)ソード・フィッシュのレベルを6に上昇させる!」

 

 精鋭のゼピュロス DEF1000

 

 ソード・フィッシュ LV2→6

 

「はっ!俺のモンスターを増やしてどうする!

 どうせまた、シンクロするんだろうが!もうベエルゼウスに敵うもんなんてねぇんだよ!!」

 

「ただのシンクロと思うなよ。

 俺は手札のホップ・イヤー飛行隊の効果を発動

 自分フィールド上のモンスター1体を選択して、このカードを特殊召喚してそのモンスターとシンクロ召喚を行う!

 俺はレベル6となったEM(エンタメイト)ソード・フィッシュにレベル1となったホップ・イヤー飛行隊をチューニング!!」

 

 なら、迷うことなどない!!

 

「集いし奇跡が未知を照らす灯火となる!光さす道となれ!!シンクロ召喚!!」

 

 ジェット機のような大きな翼、星の光を放つその体、宇宙の闇すら照らし出すその竜の名は

 

「未来へ飛び立て!シンクロチューナー、シューティング・ライザー・ドラゴン!!」

 

シューティング・ライザー「ギュオオォォォォォォォォオオォォォォ!!」

            ATK2100

 

 

【WELCOME TO THE ENTRANCE TO THE NEW FRONTIER!】

 

 

『なんとなんと!!ゴーストライダーの新たなモンスターはシンクロモンスターのチューナー!

 でも、絶体絶命は変わらず、どうすんの!?』

 

「シンクロチューナー、だと?

 だから何だっていうんだ!!てめぇの敗北は決まっている!

 諦めて死のダンスを踊れ!!」

 

――ブオオオォォォォォォォォォ!!

 

「諦めるか!

 シューティング・ライザー・ドラゴンのシンクロ召喚成功時、デッキからこのモンスターのレベルよりも低いレベルのモンスターを1体デッキから墓地へ送ることで、シューティング・ライザー・ドラゴンのレベルを墓地へ送ったモンスターのレベル分下げる!

 俺はレベル6のEM(エンタメイト)バリアバルーン・バクを墓地に送ってシューティング・ライザーのレベルを7から1にする。」

 

 シューティング・ライザー LV7→1

 

「さらに墓地の妖怪のいたずらの効果を発動

 このカードを墓地から除外することで、フィールド上のモンスター1体のレベルを1つ下げる。

 俺は魔王超龍ベエルゼウスのレベルを1つ下げる。」

 

「何ィ!?」

 

 ベエルゼウス LV10→9

 

「さらにトラップ発動、シンクロ・マテリアル!

 このターン相手モンスターを1体対象にして、このターン俺がシンクロ召喚を行う場合、対象にした相手モンスターをシンクロ素材にできる。

 俺が対象にするのはベエルゼウスだ!」

 

『えぇー!?そんなカード、相手ターンで使ったら意味がないじゃない!?』

 

「そうだぜ、何を血迷ったか知らねぇが・・・もう何をしても無駄、何ッ!?」

 

 まぁ、驚いただろうな。

 さっきまでダメージを受けて大分後方に追いやられていたのに、いつの間にやらお前のすぐ後ろまで来ているんだから

 

「そら、ちんたら走ってんじゃねぇ、よ!!」――ガッ

 

 俺のDホイールが奴のDホイールを押す。

 中型でサイズも負けているDホイールがはるかに大きいシンジのDホイールを押し上げ、なおも加速している。

 

「なんでだ!?そんなパワーそのマシンにはないはず!?」

 

ベエルゼウス「「「「ギャアアァァァァァァァァ!?」」」」

 

 シンジを押し上げ加速する俺のDホイール、そしてそれに合わせるようにシューティング・ライザー・ドラゴンもベエルゼウスに組みついて加速する。

 

「限界を勝手に決めんな!見せてやるよ!限界に挑み続ける力を!

 シンクロを超えたシンクロを!!」

 

シューティング・ライザー「ギュオオォォォォォォ!!」

 

『えっ!?えっー!?早!?早すぎ!?ちょっと!?その先はまだコースが!?』

 

 普通バイクでは出ないはずのスピードを叩きだしているため、コースを制御しているシステムが追いきれず、コースのせり上がりが間に合わない。

 

「おい!?このままだとお前も!?

 まさか飛び越す気か!?無理だ!!100m以上はあるぞ!?」

 

「光をも超えるシンクロにその程度飛び越えられない道理はない!!

 シューティング・ライザー・ドラゴンは相手ターンのメインフェイズにこのカードを使いシンクロ召喚を行える!!」

 

「なんだと!?俺のターンに俺のモンスターを・・・ベエルゼウスを使いシンクロ召喚を行うっていうのか!?」

 

「そうだ!お前のレベル9となったシンクロモンスター、魔王超龍ベエルゼウスにレベル1となったシューティング・ライザー・ドラゴンをチューニング!!」

 

 加速し続ける世界で、星の道しるべが、闇を溶かしていく

 

「集いし絆が宿る拳は、闇すらも握り込む鋼の意思と化す!光さす道となれ!!」

 

 光すら置き去りにし、全てがスピードに融けていく

 

「アクセルシンクロオオォォォォォォォォ!!」

 

――ブォン・・・・・・

 

『えっ?・・・・消えた?』

 

 そして、俺たちは世界すら置き去りにした。


――ブオオォォォォォン!

 

 そこは全てはスピードに融け、線と化した空間

 光すら置き去りにした空間でシンジと遊矢は不思議なものを見た。

 

(!?あいつは・・・!?)

 

 もはや速さという次元すら超えたその空間で、自分たちの前を走っている赤いDホイールがいるのだ。

 そして、その後ろ姿をシンジは知っていた。

 その人物は少しスピードを緩めて、遊矢たちのいる位置まで下がると遊矢に1枚のカードを手渡し、シンジに前を指さしながら、その口を開いた。

 

――先に行ってる。

 

「・・・!!」

 

 それだけ言うとその人物は二人を抜き去って前へ進んでいく、あっという間に点になっていく

 

「ゆ!ゆう・・・」

 

 シンジはその姿に手を伸ばしながら、その人物の名を叫んだ。

 

遊星ぇぇぇぇえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!


「生来せよ!」

 

――ヴォオン!!

 

――ギィイギィイギィィィィ・・・

 

――ギュィィィィィィィィィィィィィィン!!

 

 スピードの世界を抜け出し2人は落ちそうになっていたコースのさらに先に現れる。巨大な星屑の戦士と共に

 

「スターダスト・ウォリアー!!」

 

スターダスト・ウォリアー「オオォォォォ!!ハッ!!」

            ATK3000

 

 星屑の竜を模した煌めく鎧を装着した戦士が鋼の拳を握り締める。

 仲間を闇から救い出す。その意志と使命を宿して

 

『えっ!?あっ!!もうあんなところに!?

 えっ、もしかして本当に二人とも飛び越えたの!?』

 

――バチッ、バチッ・・・

 

 無理やりスペック以上のスピードを出させられたシンジのDホイールは既にボロボロだった。

 だが、それ以上にシンジはもはや戦う意思を失っていた。

 

「・・・なんだよ・・・あいつ・・・待っててはくれないのかよ・・・・」

 

 親に置き去りにされた子供のように涙を流しながらうなだれるシンジの背を精鋭のゼピュロスが見つめている。

 

「かわいそうなやつだな。お前は・・・

 手を伸ばしたり、引っ張ってくれる奴がいたのに気づかないなんてな。」

 

「えっ?」

 

「そら、どうした?

 まだお前のターンだぞ?」

 

「あ・・・・ターン・・エンド・・・」

 

「俺のターン、バトル

 覚醒の魔導剣士(エンライトメント・パラディン)で精鋭のゼピュロスを攻撃

 覚醒の魔導剣士(エンライトメント・パラディン)は戦闘で相手モンスターを破壊したとき、そのモンスターの攻撃力分のダメージを与える。」

 

精鋭のゼピュロス「ふん!オリャァァァァ!!」――バキッ

 

「ぐっ!?」

 LP6900→5300

 

 覚醒の魔導剣士の力を借りて精鋭のゼピュロスがコントローラーであるはずのシンジを殴りつける。

 

「オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴンでダイレクトアタック。」

 

「うわああぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 LP5300→2800

 

 星の炎が容赦なくシンジに放たれる。

 それによりシンジのDホイールはクラッシュ寸前にまで追い込まれる。

 

「これでフィナーレだ。

 行け!スターダスト・ウォリアー!スターダスト・ラッシュ!!」

 

スターダスト・ウォリアー「ウオォォォォォ!!タアアァァァァ!!」

 

――バキバキッ!ガシャアァァァァァァァァン!!

 

 星屑の戦士の拳が流星群のように放たれる。

 それによってシンジの乗っていたマシンは砕け散るが、シンジが地面に叩きつけられることはなかった。なぜなら

 

スターダスト・ウォリアー「・・・・」

 

「なんだよ・・・このお節介焼きが・・・」

 LP2800→0

 

 スターダスト・ウォリアーの大きな手に抱かれながら、シンジはゆっくり目を閉じた。




ロジェの奴、なにが更生したじゃ、とんでもない問題漢だったではないか!!

そうですな。では、治安維持局の内部調査は満場一致でよいですな?

えぇ。

むしろしないと問題でしょう。

既に調査員も準備済み
しかし議長の提案とはいえ、外部の人間を調査に向かわせるのはどうかと?

あの用心深いロジェのことじゃ
わしらの名前を使ったら、何を隠されるかわからぬからのう。
次回 『光と影の戦い』
まぁ、能力は恰好通りじゃから安心できるじゃろう。
(むしろ、何を見つけてくるかのう?)


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光と影の戦い

たぶん皆さんが忘れていたであろう、あの野郎が登場
OPにも登場していたけど、ほんとこいつ何だったんだろ?地下の説明なら徳松さんで十分だったような気がしないでもない


 フレンドシップカップ最終日

 シティ最高のキングとして君臨しているジャック・アトラスと、颯爽と現れた流れのデュエリスト、ゴーストライダーことロゼ・ジェスターのデュエルを一目見ようとコモンズもトップスも関係なく多くの街の住人がスタジアムに詰めかけ、スタジアムに入れなかったものは、そのデュエル模様を一目見ようとデュエルレーンに目を向けている。

 

 そんな中、治安維持局本局に2人の評議会堂職員の制服を着た男が訪れていた。

 

「わ、我々はホワイト・タキ評議会議長の命により、治安維持局の内部調査に来たものだ。」

 

「はい、これ令状ね。

 何か隠しても無駄だから、すぐに通してくれると嬉しいなぁ?」

 

「わ、わかりました・・・

 あ・・・え、と・・・・どうぞ、お通りください・・・」

 

 対応した受付職員は面を食らった。

 一人はこういうことに慣れていないのか、少し緊張気味で

 もう一人は軽く、だが有無を言わせない態度で熟練を思わせる。

 ただ、背丈からの印象は真反対だったので、そのちぐはぐさに受付職員は若干の混乱を起こしつつ令状を確認すると、言われるがままに2人を通した。

 

「OK、じゃあ、行こっか。」

 

「あ、あぁ・・・」

 

 いぶかしげな目線を受けながら2人は一般立ち入り禁止の局内へと足を進ませる。

 

「ふぅ~ねぇ、ちょっと緊張しすぎじゃない?」

 

「五月蠅い!そういうお前は、随分となれている様子だったな?」

 

「まぁ、これでもあっちこっちに行ってきたからね♪

 変に硬くならないで、自然体であった方がいいのさ。」

 

「・・・・・・」

 

 怪しげな評議会堂職員、正体はデニスと黒咲である。

 こういうことに一番向いている遊矢はジャックと決勝戦をやる為抜け、零児も評議会でロジェについての資料集めと情報整理に追われている。

 よって、白羽の矢が立ったのがデニスだったわけだが、彼はその出自から信用という面では欠けている。

 その為、お目付け役として手の空いていた黒咲が彼とコンビを組むことになったのだが、生真面目な彼は半分人を騙すこの変装調査という任務において若干不向きだった。

 

「もう、怖い顔しないで、って、ここだと怖い顔の方がいいっか♪」

 

「・・・怪しい真似をしたら、容赦しないからな。」

 

「分かってるよ。

 じゃあ、お目付け役しっかり頼むよ。ワッさん。」

 

「ワッさんいうな!!」

 

 不安になる凸凹コンビであるが、彼らとて表側である治安維持局内部に人体実験場のような人目に憚る様なものがあるとは思っていない。

 もちろん調査はしっかりやるつもりだが、彼らはロジェの目を少しでも逸らすためのいわば、囮である。


――ワアアアァァァァァァァァァァァァァ・・・

 

 響く歓声が青空に響き渡り消えていく

 フレンドシップカップはいわば処刑場だった。中世や古代において処刑や殺し合いは娯楽であり、それ以外のモノを知らぬ者にとっては最高のエンターテインメントだった。

 

 未来的な街であるはずのシティ

 だが実態は惰性で生きるコモンズと蹴落とされないようにビクつくトップスで互いに停滞してフラストレーションが溜まるだけの止まった街

 

 このフレンドシップカップはそんなシティ住人のガス抜きの場、そういう場所だった。

 

「ロゼ、お前はこの大会が終わった後どうする?」

 

「どうするって?」

 

「お前はこの街に残るのか?」

 

「冗談、俺は依頼以上にこの街に残るつもりはないよ。

 探し物も見つけたし、大会が終わったら次の仕事だ。

 このDホイールとカードもクロウ達に返すよ。」

 

「・・・そうか

 俺もこの戦いが終わったら、街を出る。

 日本の、いや世界のキングに俺はなる!その為に俺はこの街を出る!!」

 

 キングという存在は絶対

 シティのヒーローであり象徴的な存在であり広告塔

 そんな絶対孤高の存在が隣に目を向け、前を向いて走り出そうとしている。

 

「そうか・・・うん、それでこそ、ジャックらしい。」

 

 絶対王者の隣、それはひょっとすれば抜くことができる場所だ

 新たなる王者が誕生するかもしれない場所だ。

 ゆえにこの場に、いやこの街にいる人間たちはコモンズもトップスも無くある思いに駆られていた。

 

“見たい”

 

 新たな王者の誕生が、王座を守り抜くキングの姿が

 それにより生まれる壮絶なる決闘(デュエル)が!

 

『さぁ!!歴史的な瞬間です!

 留まることを知らない進化を見せるゴーストライダーが、キングを下し新たなる王者の栄冠を勝ち取るのか!

 はたまた絶対王者ジャック・アトラスがその強さを見せつけるのか!』

 

 2人はスタートラインに立つ、もはや言葉は不要

 遊矢はジャックとの約束の通り、持てる力の全てを入れたデッキで、憧れに挑む

 

『アクションフィールド・オン!クロス・オーバー・アクセル』

 

【【デュエルモード・オン オートパイロット スタンバイ】】

 

 ジャックは前に踏み出すために己の全力をかけて、未知に挑む

 

『ライディングデュエル!!』

 

 そして戦いの火蓋が落とされる瞬間、心は交差する。

 

――アクセラレーション!!


――ゴウン、ゴウン

 

 大量のベルトコンベアが稼働しゴミを運んでくる。

 

「おら!働け!働け!終わんねぇぞ!!」

 

 ここはごみ捨て場、コモンズよりもさらに下、犯罪者や表ではどうしようもなくなった者たちの吹き溜まり

 ここはごみ捨て場、時間をかけて努力を学ぶリサイクル場

 

「まぁ、終わることなんてないんだがな。ヘッヘッヘッww」

 

 だが、今やここは浅ましい欲望が渦巻く地獄である。

 

 

 

 

 そんな地獄の奥の調査に抜擢された日影、月影の風魔忍者兄弟は同じことを思っていた。

 

((これはこれでタキ殿に報告案件なのでは?))

 

 風魔兄弟は囚人たちへの過度な虐待行為、看守の域を超えた折檻やいじめなどを密かに撮影し進んでいく。

 

「ふむ、これで地図に書かれた区画はすべてでござるか・・・」

 

「まぁ、やましいものを隠すのに情報の出ている場所に作るわけがないでござるからな。」

 

「ならば。」

 

「後は。」

 

「「あのダクトの奥でござるな。」」

 

 地下施設のダクトや配管等は岩壁にむき出しで作られ張り巡らされている。

 それらは一般人には無軌道で乱雑なものにしか見えないだろう、そして学がある者であってもその配管配置は無駄が多いと言わせるものになっている。

 なぜなら、本来の設計にはない場所にも繋がっているのだから

 

 風魔の忍は、そのことを見逃さなかった。

 隠された壁の奥、そこに正面から入るほど2人は馬鹿じゃない。

 2人は換気ダクトの中に入り込み進む。

 

「ふむ、換気ダクトに侵入者を想定しての赤外線。」

 

 その内部に張り巡らされた赤外線を月影がデュエルディスクのハッキング機能を使って無力化させ

 

「換気扇のネジにセンサー・・・

 用心深すぎて逆に怪しいと言っているものでござるな。」

 

 途中にあった換気扇を日影が解体する。

 

――ガコンッ

 

 最後のダクトの蓋が外れる。

 

「ここは・・・?」

 

「なんでござるか?」

 

 2人が下りた場所は一言でいえば坑道の竪穴、そこに橋が蜘蛛の巣状に張り巡らされている

 さらにはその下から不気味な虹色の光が立ち上っていた。

 

「むっ!?兄者!あれを!!」

 

「んっ?なっ!?」

 

 月影が指さす方向を見た日影は驚愕した。

 

――うぅ・・・あぁ・・・・・

 

――ま・・まけ・・・・・

 

――か、かった・・・また・・か?・・・

 

――もう・・・終わらせて・・・・くれ・・・・

 

 無数の人間が何かの機械の付いた椅子に座らされうめき声をあげていた。

 その中心には虹色の光を生み出す塔のようなもの

 そう、そこは表が天国に見えるほどの

 

『ようこそ!地獄の一丁目へ!!』

 

「「!!?」」

 

 突如響く、芝居ぶった濁声

 臨戦態勢を取る2人の目に入ってきたのは、一言でいうなら趣味の悪い男

 金で作られたサングラス、大きな宝石や凝った細工の入ったリングを指に着け、首には薔薇を模したネックレス、着ているシャツも薔薇がプリントされており、その全体は煌びやかで金がつぎ込まれていることが分かるが、絶望的に品がなかった。

 

「お主・・・」

 

「何者でござるか?」

 

「おいおい、それはこっちのセリフだぜ?

 まぁ、いいか、まずは自己紹介だ!俺の名はギャラガー!敏腕プロモーター、ギャラガー様だ!」

 

「敏腕?」

 

「プロモーター?」

 

 あまりにも怪しげな男『ギャラガー』

 だが、ただの成金の小物にしか見えないこの男がこの異常な場にいるのはあまりにも不似合いだった。

 さらに言えば、自称する敏腕プロモーターという肩書も

 

「っと、言っても、今はここの、まぁ、支配人ってところだがな。

 で、おメェさんたちは一体何だい?

 生憎ここはコスプレ会場でも、オーディション会場でもねぇんだがね?」

 

「支配人・・・だったら話が早い。

 拙者らは評議会の命によりこの地下施設の調査をしているものでござる。」

 

「令状もある。支配人というならばこの施設が何なのか教えてもらえるか?」

 

「へぇ~なんだ、あのジジババどもようやく重い腰を上げたっていうのかい?

 OK、そういうことなら教えてやろうじゃねぇか!」

 

「「!!」」

 

 あまりにもあっさりと要求に応じるギャラガーに2人は警戒レベルを上げる。

 

「お~おっかねぇ~

 ここはなぁ~いわばリサイクル施設ってとこだな。」

 

「リサイクル?」

 

「だと?」

 

「おうよ、表側の施設も見てきただろ?あれとおんなじさ。

 使えなくなったもの、負けたもの、飽きられたもの、壊れたもの、役に立たねぇと捨てられたもの

 そういうどうしようもねぇゴミを、何とかして使えるようにするてぇのが、ここだ。

 ただ、表と違うのは対象が“物”じゃなくて“人”だってところだがなぁ。」

 

「「!!」」

 

 さらっとギャラガーが言った人を人とも思わない一言に2人の顔が怒りでゆがむ

 ここで行われていることがリサイクルならば『更生』などという人道的なものではないことは明白だからだ。

 

「人のリサイクルとはどういうことでござるか!」

 

「なぁに、下にいる連中も地上では役立たずやはみ出し者として、地下に送られた連中ってのは表と変わらねぇが、たまにそのゴミの山の中にもキラリと光る奴が紛れ混んでいる場合があってね。

 下にいる奴らがそれさ。」

 

 下から漏れ聞こえる声からして、何が光るのかと言えばデュエルの腕だろう。

 だが、それとこの状況が何をリサイクルしているのか繋がらない。

 

「ただ、だ。

 ゴミの中にあっただけあって、奴らはロクでもねぇ精神をしてやがってな?

 こっちの言うことなんか聞きやしねぇ。

 だから、商品造りのための“部品”として使ってやってるつぅわけだ。」

 

「商品だと!?」

 

「そう、地上から来たってことはおメェらも見ただろ?ライディングロイド!」

 

 ライディングロイド、その言葉で2人の脳裏に浮かび上がるのは、遊矢と戦ったいきなりバイクと合体した変態(セルゲイ・ヴォルコフ)

 

(あの御仁は、ロボットではなくサイボーグ)

 

(部品というならば、彼らを機械化するつもりか?

 いや、それならあの状況と合致しない、商品というにはあまりにも非人道的過ぎて一般には出せない・・・まさか!!?)

「彼らにライディングデュエルにインストールするAIを育てさせているのでござるか!?」

 

「おっ!いい勘しているぜ。青い忍者君!

 その通り!奴らはライディングデュエルに搭載するデュエル戦術AIのために電子空間上でデュエルをさせている!

 それなりの数のそれなりのデュエリストどもが鍛え上げたAIを乗っけたデュエルロイドはセキュリティだけじゃねぇ、あっちこっちの企業やシティの外にだって需要がある!

 大会に出せば賞金をスパッととってきてくれるだろうよ!

 それになんたって、逆らわねぇし、情をかけることもねぇし油断もすることもねぇ!完璧なデュエリストだ!!

 サイコーだろ!強くて逆らわねぇデュエリストが金で手に入る時代になんだぜw!」

 

 彼の語る商用デュエルロイド計画

 それは彼ら決闘者(デュエリスト)がそのデッキに賭けた思いを切り捨てる所業

 

「「・・・そんなもの」」

 

「あ?」

 

「「そんなもの!!決闘者(デュエリスト)ではない!!」」

 

「我らの魂を」

 

「我らの思いを」

 

「「要らぬと否定されてなるものか!!」」

 

 ゆえに、風魔兄弟はゆるさない。

 

「ハッ!なるほど、ずいぶんと青い考えしているみてぇだな?

 まぁ、ここを見られちまったんだ。ただで帰すわけにはいかねぇ

 おめぇらがデュエリストだってなら、ここはひとつカッコよく決闘と行こうじゃねぇか!」

 

「「望むところ!!」」

 

「といっても俺も忙しい身でね。

 とっとと終わらせるためにてめぇら2人まとめて相手して、おまえらもアイツらの仲間にしてやるよ!!」

 

『『『決闘(デュエル)!!』』』

 

「2人相手なんだ。

 俺のライフはお前らの倍の8000スタート、先攻は貰うぜ!

 俺のターン、俺はマジックカード、天使の施しを発動!」 

 

「「なっ!?天使の施しだと!?」」

 

 ギャラガーの前に浮かび上がる1枚のカード[天使の施し]

 それは長いデュエルモンスターズの歴史の中で禁止カードとして長年収容され続けているカードである。

 それはここシンクロ次元でもスタンダード次元でも変わりはない。

 

「そのカードは禁止カード!」

 

「レギュレーション違反でござる!!」

 

「何言ってやがる、ここの“支配人”はオレだぜ?

 つまり、ここのルールも法もオレってことだぜ!ハッハッハッハッ!!

 天使の施しの効果でデッキから3枚のカードをドローして2枚のカードを捨てる。

 

 墓地に送られたエクリプス・ワイバーンの効果でデッキから光か闇属性のドラゴン族レベル7以上のモンスターを除外する。

 俺が除外するのは闇属性、ドラゴン族レベル8の破滅竜ガンドラX

 さらに墓地に行ったダンディライオンの効果で俺のフィールドに綿毛トークンを2体、守備表示で特殊召喚する。」

 

 綿毛トークン DEF0

 綿毛トークン DEF0

 

 フィールドに現れる目の付いたタンポポの綿帽子

 もちろんこれも禁止カードの産物である。

 

「さらにぃマジックカード、苦渋の選択を発動

 これでてめぇらは俺がデッキから選び出した5枚のカードの中から1枚を選ばなくちゃならねぇ

 てめぇらが選んだ1枚は俺の手札に、それ以外は墓地に送られる。

 俺が選ぶのはグローアップ・バルブ、焔征竜―ブラスター、瀑征竜―タイダル、嵐征竜―テンペスト、巌征竜―レドックス、さぁ、どいつを選ぶ?」

 

「ほとんど禁止カードではござらぬか!!」

 

「ここまでくるとどれでも同じのような気もするが・・・

 グローアップ・バルブを選ぼう。」

 

「そうかい。でも、まぁ~どれを選んでも同じだったけどな。

 2枚目の天使の施し発動、デッキから3枚ドローしグローアップ・バルブ、レベル・スティーラーを捨てる。

 

 さらに永続魔法、生還の宝札を発動。

 こいつがある限り、俺の墓地からモンスターが特殊召喚されるたびに俺は1枚ドローする。

 俺は墓地のグローアップ・バルブの効果を発動、デッキトップを1枚墓地に送り、チッ、こいつを特殊召喚だぁ。」

 

 グローアップ・バルブ DEF100

 

 現れたのは球根のような部分に目がついている花

 

「生還の宝札で1枚ドロー

 さらに墓地の巌征竜―レドックスの効果発動、俺の墓地の地属性モンスター、ダンディライオンとドラゴン族モンスター、エクリプス・ワイバーンの2体を除外してこいつを特殊召喚する!」

 

レドックス「グワアアァァァァァァ!!」

     DEF3000

 

 壁を突き破り現れたのは岩のような体を持つドラゴン

 

「生還の宝札で1枚ドロー

 さらに除外されたエクリプス・ワイバーンの効果発動、エクリプス・ワイバーンの効果で除外されていたガンドラXを手札に加える。」

 

(ガンドラX

 フィールドのモンスターをすべて破壊し、破壊したモンスターの内、最も攻撃力の高いモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与えるカード)

 

(舌打ちしたときに墓地へ送られたカードはマスドライバー

 フィールド上のモンスターをリリースして相手に400ポイントのダメージを与えるカード

 あのデッキは先攻ダメージタイプか。)

 

((ならば!))

 

「俺はレベル7の巌征竜―レドックスとレベル1の綿毛トークンにレベル1のグローアップ・バルブをチューニング!

 シンクロ召喚!出てこいレベル9!氷結界の龍 トリシューラ!」

 

トリシューラ「「「ギュオオォォォォォォ!!」」」

      ATK2700

 

 現れたのは三界を凍てつかせる破滅の氷龍

 3つ首のうち一本が月影の手札を見つめている。

 

「トリシューラの効果発動

 こいつをシンクロ召喚したとき、相手の墓地、フィールド、手札のカードをそれぞれ1枚除外する。

 青い方のにいちゃん、左端のカードを除外しな。」

 

「むぅ・・・」

 

「さて、もう1枚、苦渋の選択を発動だ

 選ぶのは地征竜―リアクタン、風征竜―ライトニング、レベル・スティーラー2枚、スポーアだ。」

 

「スポーアを手札に加えてもらおう。」

 

「オケェー!オケェー!でも、無意味だがな

 天使の施し発動、3枚ドローし、手札のスポーアとレドックスを捨てる。

 墓地の嵐征竜―テンペストの効果!ドラゴン族のリアクタンとレドックスを除外して墓地からこいつを特殊召喚!

 生還の宝札で1枚ドロー。」

 

嵐征竜―テンペスト「グワアアァァァァァ!」

         ATK2400

 

 竜巻を纏って現れるのは嵐の力を宿した緑色のドラゴン

 さらにその竜の星を喰らい、1匹のテントウムシが現れる。

 

「テンペストのレベルを1つ下げて、墓地のレベル・スティーラーの効果、こいつを特殊召喚!」

 

 嵐征竜―テンペスト LV7→6

 

 レベル・スティーラー DEF0

 

「1枚ドローして、さらに墓地のスポーアの効果

 墓地の植物族モンスター、グローアップ・バルブを除外して、そのレベルをこいつに加えて特殊召喚!」

 

 スポーア DEF800 LV1→2

 

「またこれで」「レベル9」

 

「1枚ドロー!そして、レベル6のテンペストとレベル1のレベル・スティーラーにレベル2のスポーアをチューニング

 シンクロ召喚!氷結界の龍 トリシューラ!」

 

トリシューラ「「「グオオォォォォ!」」」

      ATK2700

 

「やはり制限カードも枚数無視して入れているか・・・

 ならば!拙者は手札のエクストラ・ヴェーラーの効果を発動!

 相手が特殊召喚したとき、手札からこのモンスターを特殊召喚する!

 このモンスターがこの効果で特殊召喚されターン、拙者が受ける効果ダメージは貴様が受ける!」

 

「何ぃ!?」

 

エクストラ・ヴェーラー「ハッ!」

           DEF200

 

 トリシューラのシンクロ召喚に合わせて日影が特殊召喚したのは金の刺繡がされた赤い布をひらつかせる闘牛士

 ギャラガーはこのターンで決めるつもりだったのを邪魔をされてイラ立つ。

 

「チッ、トリシューラ!似合わねぇモンスター使っている忍者サマのカードを凍らせてやれぇ!」

 

 颯爽と現れたエクストラ・ヴェーラーと日影の手札がトリシューラによって凍らされ砕け散る。

 

「一匹逃がしたが、まぁいいか

 トリシューラのレベルを1つ下げレベル・スティーラーを特殊召喚。」

 

 レベル・スティーラー DEF0

 

「1枚ドローだ。

 レベル・スティーラーとトリシューラ1体をリリースして破滅竜ガンドラXをアドバンス召喚!」

 

ガンドラX「ギャオオオォォォォォォォ!!」

     ATK0

 

 破滅を呼ぶ神の氷槍が漆黒の体に無数の赤い宝玉を輝かせる新たな破滅を呼ぶ

 それが放つ紅い滅光は味方であるはずのもう1体のトリシューラを崩壊させる。

 

「ガンドラXの効果!

 こいつが手札から召喚、特殊召喚されたとき、こいつ以外のフィールドの全てのモンスターを破壊して、相手に破壊したモンスターの内で最も攻撃力の高ぇモンスターの攻撃力分のダメージを与える。

 赤い方には無理だが、青い方のお前!喰らえぇやぁ!!」

 

「ぐわああぁぁぁぁぁぁ!!ぐぅ・・・

 だが、拙者が効果ダメージを受けたことで手札の森の精霊 エーコの効果が発動する!」

 LP4000→1300

 

「なんだと!?」

 

 ガンドラX ATK0→2700

 

「このモンスターを特殊召喚し、貴様に拙者が受けたダメージと同じ分だけダメージを与え、その後、互いが受ける効果ダメージをこのターン0にする!」

 

 森の精霊 エーコ DEF1000

 

 木に宿った精霊が戦いのためのカタチを得る葉っぱと枝で作られた植物人間となったエーコは本体である赤い玉を輝かせ、主に仇なした敵に主と同じ痛みを与える。

 

「ぐへぇぇぇぇ!!?

 て、てめぇら!!2人してダメージ対策なんて、どういうことだ!?」

 LP8000→5300

 

「どういうことと言われても・・・」

 

「ワンキル対策は必須でござる。」

 

「うむ。」


――ギュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!

――キィィィィィィィィィィィィン!!

 

 昨日からDホイールのエンジンの調子がいい

 以前よりも加速の伸びが段違いだ。アクセルシンクロの影響だろうか?

 まぁ、それでも

 

「抜けないか・・・」

 

 前を走るジャックは絶妙な位置取りで前への道を開かない。

 多少無理を通して突っ込もうとしても、それに合わせてくる。

 それを利用して、付き合えばガードに衝突コースになるように誘導しても、1輪という特殊な形状を利用して壁を走る。

 そして、先攻は取られ、アクションカードも先取された。

 

「先攻は俺だ!

 俺は速攻魔法、手札断殺を発動

 互いのプレイヤーは手札を2枚墓地へ送り、2枚ドローする。

 俺は手に入れたアクションカードとバックグランド・ドラゴンを墓地へ送り2枚ドロー!」

 

「俺も手札のウィッチクラフト・マスターピースとEM(エンタメイト)ギッタンバッタを墓地へ送り2枚ドローする。」

 

 完全にアクションカードを戦術に取り入れるようになってきたか

 

「墓地のバックグランド・ドラゴンの効果発動!

 このカードが墓地にある時、俺のフィールドに何もカードがない場合、墓地のこのカードと手札のレベル4以下のドラゴン族モンスターを守備表示で特殊召喚する!

 出でよ!バックグランド・ドラゴン!霊廟の守護者!」

 

バックグランド・ドラゴン「グワアァオオォォ!」

             DEF1800

 

 霊廟の守護者 DEF2100

 

 オレンジ色のメカメカしい鋼殻を持つドラゴンと霊廟を守護する竜人が姿を現す。

 だがジャックの展開はこれで終わらない

 

「さらにレッド・リゾネーターを通常召喚!

 その効果により手札のレベル4以下のモンスター、変容王ヘル・ゲルを特殊召喚!」

 

レッド・リゾネーター「ヘッ!」

          ATK600

 

 ヘル・ゲル DEF100

 

 ジャックの副代名詞的な赤い小悪魔、レッド・リゾネーターとそれに呼び出されたカエルの上半身が2つくっ付いたようなゲル状のモンスター、変容王ヘル・ゲル

 あぁこりゃ、たぶん並ぶな。

 

「変容王ヘル・ゲルの特殊召喚に成功したことにより効果発動!

 このカード以外のフィールドの表側表示モンスター1体を選び、ヘル・ゲルのレベルをそのモンスターと同じにし、その後、そのモンスターのレベル×200、俺のライフを回復する!

 俺はバックグランド・ドラゴンを対象にし、ヘル・ゲルのレベルをバックグランド・ドラゴンと同じ5にし、俺は1000ポイントライフを回復する!」

 LP4000→5000

 

 ヘル・ゲル LV1→5

 

「さらにヘル・ゲルの効果でヘル・ゲルのレベル以下のレベルを持つ悪魔族モンスターを1体手札から特殊召喚する!

 出でよレベル1!シンクローン・リゾネーター!!」

 

シンクローン・リゾネーター「ヘッ!」

             ATK100

 

『何とジャックいきなり5体のモンスターを召喚です!!』

 

「これで終わりではない!

 俺はレベル1のシンクローン・リゾネーターにレベル5のバックグランド・ドラゴンをチューニング!

 漆黒の闇を裂き、その熱き魂を燃え滾らせよ!シンクロ召喚!

 いでよ!レッド・ライジング・ドラゴン!!」

 

レッド・ライジング「グオォォォォォ!!」

         ATK2100

 

「レッド・ライジング・ドラゴンの効果発動!

 このカードがシンクロ召喚に成功したとき、墓地のリゾネーターを1体特殊召喚する!

 舞い戻れ!シンクローン・リゾネーター!」

 

シンクローン・リゾネーター「へヘッ!」

            ATK100

 

「俺はレベル6のレッド・ライジング・ドラゴンにレベル2のレッド・リゾネーターをチューニング!

 王者の咆哮、今天地を揺るがす!唯一無二なる覇者の力をその身に刻むがいい!シンクロ召喚!!

 荒ぶる魂、レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト!!」

 

レッド・デーモンズS「グオオオオォォォォォォォォ!!」

 

 烈火を引き裂いて現れるジャックの魂たる傷だらけの悪魔竜

 だが、フィールドにはまだチューナー2体とモンスター1体が残っている、その合計レベルは10

 

「さらにレベル4の霊廟の守護者にレベル5となった変容王ヘル・ゲルとレベル1のシンクローン・リゾネーターをダブルチューニング!!」

 

『えぇ!?これって!!?』

 

「王者と悪魔!今ここに交わる!!赤き竜の魂に触れ、天地創造の雄たけびを上げよ!シンクロ召喚!

 現れろ!レッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラントォォォ!!」

 

レッド・デーモンズT「グオオオオォォォォォォォォ!!」

          ATK3500

 

 鬣のような角を誇らしく輝かせ、強靭になった肉体をその暴君は惜しげもなく見せつける。

 スカーライトとタイラント、2体のレッド・デーモンズがここに並んだ。

 

『中継を見ている皆様、この感動伝わっていますでしょうか!?

 何とレッド・デーモンズが2体それも1ターン目から並びました!!

 それに対しゴーストライダーどうす、ん?おぉぉ!!ここでアクションカードだ!!』

 

 俺たちの進路上に姿を見せたのはアクションカード、それも2枚、まぁ1枚は

 

――ギュウゥゥゥゥゥン!!

 

 !!?

 

――ギュゥギュゥギュ、ギュイイィィィィンン!!

 

 加速しいち早くアクションカードのもとまで行ったジャックに何をやられたかというとスピンターンだ。

 その回転の中でジャックは先に手に入れたアクションカードを流れるようにセットして、もう1枚を手札に掻っ攫っていった。

 実質2枚取りである。

 

『何とジャック!アクションカードを実質2枚取り!

 ゴーストライダーの手に渡す気が全くありません!!』

 

 アクションカードは描かれてはいないが扱いは速攻魔法だ。

 よって、セットされたターンには発動できなくなる。

 それでいて発動タイミングの無いカードならば魔法・罠ゾーンを圧迫するだけのカードとなる。

 

「・・・そこまでするか?」

 

「フンッ、俺はこの一戦、俺の全ての力、そして技術、そのすべてを持ってお前を倒しにかかる!

 だからお前も、持てる全てを、いやそれすら超えて俺と戦え!!

 シンクローン・リゾネーターの効果で墓地のレッド・リゾネーターを手札に加え、カードを1枚伏せ、ターンエンドだ!」

 

 ライディングの腕でもってことか・・・なるほど

 

「ふっ・・・そこまでしてくれるか。」

 

 面白くなってきた! 


「クソが!!早すぎた埋葬発動!

 ライフを800払い、墓地のモンスターを特殊召喚する!

 墓地のチューナーモンスター、スポーアを特殊召喚!

 さらにガンドラXのレベルを1つ下げてレベル・スティ―ラーを特殊召喚!

 合計2枚のカードをドロー!」

 LP5300→4500

 

 スポーア       DEF800

 レベル・スティーラー DEF0

 

「レベル7のガンドラXとレベル1のレベル・スティーラーにレベル1のスポーアをチューニング!

 シンクロ召喚!氷結界の龍 トリシューラ!青いやつのカードを除外してやれぇ!!」

 

 トリシューラ ATK2700

 

 3度現れるトリシューラ、今度は拙者の手札とエーコを氷結粉砕する。

 このギャラガーと名乗ったルール無視の怪しい男、先攻ワンキルの失敗程度で随分品のない。

 

「墓地のドラゴン族、トリシューラ2体とテンペスト、ライトニングの4体を除外して墓地から瀑征竜―タイダル、焔征竜―ブラスターを特殊召喚!

 生還の宝札で2枚ドロー!」

 

瀑征竜―タイダル「ギュアアァァァァァァ!!」

        ATK2600

 

焔征竜―ブラスター「グオオォォォォォ!!」

         ATYK2800

 

 ギャラガーのフィールドに流れ落ちる瀑流のごとき青白い体を持つ竜とマグマのごとき赤く燃える体を持つ竜

 タイダル、ブラスター、トリシューラ、大型ドラゴン、それも禁止、制限を受けてたモンスターの並ぶ姿は圧巻ではある。

 

「手札を4枚伏せ!ターンエンド!手札制限で3枚捨てる。」

 

 がそれで怖じ気づくような風魔の忍ではござらん。

 

「ならば、拙者のターン、ドローでござる。

 マジックカード、強欲で金満な壺を発動!

 このカードは拙者のメインフェイズ1の開始時に発動できる。

 エクストラデッキから3枚か6枚のカードをランダムに裏側で除外し、除外したカード3枚に付き1枚ドローする。これ以後、拙者はこのターン、カードを効果でドローできない。

 

 さらにマジックカード、アームズ・ホールを発動

 デッキトップを1枚墓地へ送り、デッキ、墓地より装備魔法を手札に加える。

 ただしこのターン、通常召喚ができないでござる。

 拙者が手札に加えるのはD・(ディファレント・)D・(ディメンション・)R(リバイバル)

 

 さらに速攻魔法、盆回しを発動!

 自分のデッキからカード名が異なるフィールド魔法を2枚選び、1枚を拙者のフィールドにもう1枚を相手フィールド上にセットするでござる。

 拙者のフィールドに隠れ里―忍法修練の地を兄者のフィールドにチキンレースをセットする!

 兄者!これを!」

 

「うむ!!」

 

「盆回しの効果でセットされたカードがいずれか、フィールドゾーンにセット状態である限り、お互いに新たなフィールド魔法をセット、発動出来ないでござる。」

 

「チッ、仲良しこよしのくせに何言ってやがる!」

 

 拙者らは共に修業をした忍であり、兄弟

 その絆は堅く繋がっている。

 

「ふんっ、セットされている隠れ里―忍法修練の地を発動!」

 

 不気味な地下空間が静寂なる夜の中に佇む隠れ里へと変貌する。

 

「手札を1枚捨て装備魔法D・(ディファレント・)D・(ディメンション・)R(リバイバル)を発動!

 除外されている拙者のモンスターを1体特殊召喚するでござる。

 現れよ!黄昏の忍者将軍―ゲツガ!!」

 

ゲツガ「フンッ!いざ!!」

   ATK2000

 

「ゲツガの効果発動!

 攻撃表示のこのカードを守備表示にして墓地のゲツガ以外の忍者モンスターを2体特殊召喚する!

 ゲツガの元へ集え!我が同胞たちよ!成金(ゴールド)忍者!忍者マスターHANZO!」

 

成金忍者「へっへっへっ!」

    DEF1800

 

HANZO「はっ!」

     ATK1800

 

 旗印をたなびかせる忍の長が陣を敷き、その下に煌びやかな服装の忍者と銀と黒の軽鎧を纏う忍者マスターが参上する。

 

「特殊召喚されたHANZOの効果でデッキより忍者モンスター、黄昏の忍者―シンゲツを手札に加える。

 続いて成金(ゴールド)忍者の効果発動、手札のトラップカードを捨てることでデッキより忍者モンスターを1体特殊召喚する。

 参上せよ!覆面忍者ヱビス!」

 

ヱビス「なっ!ははは!!」

   DEF1800

 

 緑色の忍び装束を纏うでっぷりと太った忍者が笑い声をあげながら現れる。

 その手には4つの爆弾

 

「忍者モンスターの特殊召喚により修練の地の効果で墓地の忍法カード、分身の術を手札に戻す。

 さらにヱビスの効果発動!このカード以外の忍者モンスターが拙者のフィールドにいるとき、拙者のフィールドの忍者モンスターの数まで相手フィールドのマジック、トラップカードを手札に戻す!

 貴様のフィールドにセットされた4枚のカード全てを戻させてもらうぞ!」

 

「何ィ!!?」

 

 ヱビスはギャラガーの驚きなどお構いなしに爆弾を投げつける。

 

「チィ!チェーンしてトラップカード、針虫の巣窟!局地的大ハリケーン!シンクロコールを発動!

 まずはシンクロコールの効果で墓地のモンスター、チューナーモンスター、スポーアを特殊召喚して、その後シンクロ召喚を行う!

 レベル7の瀑征竜―タイダルにレベル1のスポーアをチューニング!

 出てこい!混沌魔竜 カオス・ルーラー!!」

 

 カオス・ルーラー ATK3000

 

 水を司る竜が消え、人のようにも見える黒にも白にも見える甲殻をした魔竜が翼を広げる。

 

「そして、局地的大ハリケーンの効果で俺の手札と墓地のカードをすべてデッキに戻してシャッフル。

 その後、針虫の巣窟の効果で俺のデッキの上から5枚のカードが墓地へ送られる。

 そんでもって最後に残ったセットカードは俺の手札に加わる。

 

 そして新たなチェーンだ!

 シンクロ召喚に成功したカオス・ルーラーがチェーン1、墓地へ送られたエクリプス・ワイバーンがチェーン2で効果処理

 デッキから破滅竜ガンドラXを除外し、カオス・ルーラーの効果でデッキの上から5枚をめくりその中から光か闇属性のモンスターを手札に加える。

 チッ、湿気てやがんな・・・レベル・スティーラーを手札に加え、その他は全て墓地送りだ。」

 

 5枚まで削れたデッキが一気に回復した。

 そしてなくなった墓地アドバンテージの回復をこなしたか。

 ただ、禁止カードを使って適当に組んだデッキというわけではなさそうでござるな。

 

「ならば拙者はレベル4の覆面忍者ヱビスと忍者マスターHANZOでオーバーレイネットワークを構築!

 エクシーズ召喚!参上せよ!クロノダイバー・リダン!!」

 

クロノダイバー・リダン「ははははっ!」

           DEF2000

 

 赤い裏地の黒いマントをたなびかせ白髪美麗の時を攫う怪盗が参上する。

 

「エクシーズ召喚?聞いたこともねぇ召喚法だな?

 へへへっ、おい、坊主、どうせなら俺のプロデュースでも受けてみるかい?

 その召喚法だけで、がっぽり儲けられそうだぁ!」

 

 エクシーズは知らぬか・・・

 ジャン・ミシェル・ロジェと関係はあっても、別世界の住人という訳ではなさそうでござるな。

 

「冗談、そのようなことに巻き込まれては碌なことにはござらん。」

 

 遊矢殿もペンデュラムの際に苦労したという話でござるからな。

 

「カードを1枚伏せ、ターンを終了するでござる。」

 

「拙者のターン、ドロー!

 そして、スタンバイフェイズ、月影のクロノダイバー・リダンの効果が発動する!」

 

「あっ?」

 

「クロノダイバー・リダンはスタンバイフェイズに相手のデッキの一番上のカード1枚をオーバーレイユニットとしてこのカードに重ねる。」

 

「月影!このカードを受け取れ!」

 

「かたじけない兄者、そして、むっ?」

 

 拙者がフィールドに目を向けたときクロノダイバー・リダンはその姿を消していた。

 なぜなら

 

「あっ!?こらドロボー!!」

 

 ギャラガーのデッキの上から1枚失敬していた。

 この状況だと、『全ての』相手のデッキの一番上を奪うのでござるか・・・

 まぁ、嬉しい誤算というやつでござるな。

 

「そして、クロノダイバー・リダンの効果を発動。

 このカードに重ねられたモンスター、マジック、トラップのオーバーレイユニットを3種類まで取り除くことで効果を発動する。

 拙者は覆面忍者ヱビス、貴様の死者蘇生、兄者の忍法―妖変化の術の3種類を取り除く。

 これにより、このターンのエンドフェイズまでリダンを除外し、拙者はカードを1枚ドロー

 さらに貴様のフィールドの表側表示カードを1枚、持ち主のデッキトップに置く

 貴様のフィールドの生還の宝札をデッキの上においてもらおうか。」

 

 時の怪盗がその力を最大限に発揮し動き回る。

 拙者の時を速めドローを加速させ、ギャラガーのカードの時を戻してデッキの上に移動させ、そして自分は時の狭間に雲隠れする。

 

「ちっ!」

 

「では拙者のターンを続行させてもらおう。

 セットされたフィールド魔法、チキンレースを発動させ、その効果により拙者のライフを1000払い、デッキから1枚ドローする。

 さらにチキンレースが発動されている限り、ライフポイントが一番低いプレイヤーはあらゆるダメージが0となる。」

 LP4000→3000

 

「何だと!?」

 

「月影にこれで手出しはできんよ

 さらに拙者はマジックカード、精神操作を発動、相手フィールド上のモンスター1体のコントロールをエンドフェイズまで得る。

 月影、お主の成金(ゴールド)忍者を使わせてもらうぞ!」

 

「承知。」

 

 拙者の成金(ゴールド)忍者が兄者に力を貸すために移動する。

 

成金(ゴールド)忍者効果発動

 手札のトラップカード、迷い風を捨てデッキより忍者マスターHANZOを特殊召喚。」

 

忍者マスターHANZO「ふんっ!」

         ATK1800

 

「特殊召喚したHANZOの効果により、デッキから忍者カードとして扱う黄昏の中忍―ニチリンを手札に加える。

 さらに永続魔法、隠密忍法帖を発動し効果を起動

 手札の忍者カード、黄昏の中忍―ニチリンを捨てデッキから忍法カード、機甲忍法ゴールド・コンバージョンをセットし発動!

 拙者のフィールドの忍法カードをすべて破壊し2枚ドローする。

 カードを3枚伏せ、エンドフェイズ、成金(ゴールド)忍者のコントロールは月影に戻る。」

 

 兄者は短いターンを終えて、役目を果たした成金(ゴールド)忍者がこちらへ戻ってくる。

 あの感じだと、準備は済んだようでござるな。

 だが拙者も念押しをするでござる。

 

「エンドフェイズになったことでクロノダイバー・リダンが帰ってくるでござる。

 さらに永続トラップ、忍法―分身の術をゲツガをリリースし発動!

 デッキより、レベルの合計がリリースしたモンスターのレベル以下になるように忍者モンスターを任意の数だけ表側攻撃表示、または裏側守備表示で特殊召喚する。

 ゲツガのレベルは8、現れよ!レベル4!機甲忍者アクア!忍者マスターHANZO!」

 

機甲忍者アクア「ふんっ!」

       ATK800

 

忍者マスターHANZO「タァ!!」

         ATK1800

 

「クソが!やりたい放題やりやがって!!」

 

 どの口が言うのでござろうか?

 にしても、こちらがタッグで戦うことを指定しておいて文句、自身の手札に加わったカードに文句、こちらの妨害策に文句

 

「・・・HANZOの効果でデッキから新たな黄昏の忍者将軍―ゲツガを手札に加える。」

 

 つまらぬ男よ。


「俺のターン、ドロー!

 早速行こうか、俺は手札のスケール6のEM(エンタメイト)ギタートルとスケール1のEM(エンタメイト)レ・ベルマンをペンデュラムスケールにセッティング!」

 

 奴を挟むように天から光の柱が降臨する。

 その中に浮かぶのはギターのような亀と黄金のベルを被ったモンスター

 あれがペンデュラムか。

 

『えっ!?モンスターを直接魔法・罠ゾーンに!?』

 

「ペンデュラムモンスターは魔法・罠ゾーンの両端をペンデュラムゾーンとすることでそこに魔法扱いで置くことができる。

 さらに2枚揃えることでペンデュラムスケールという場所に書かれた数字の間のレベルを持つモンスターを1ターンに1度、手札、またはエクストラデッキに表側表示で加わったペンデュラムモンスターの中から可能な限り特殊召喚することができる。

 それがペンデュラム召喚だ。」

 

 ほう、モンスターの複数同時召喚、融合とも違う新たな召喚法ということか

 だがその程度なら何ら珍しいことはない。

 

「エクストラに表で加わるとは?」

 

「ペンデュラムモンスターはフィールドから墓地へ送られる場合、墓地へは送られずエクストラデッキに表側表示で加わる。

 そんでもって、ペンデュラムゾーンで魔法扱いであるということはモンスター効果とは別の魔法としての効果、ペンデュラム効果を持っているってことだ。

 

 ギタートルのペンデュラム効果、1ターンに1度、EM(エンタメイト)がもう片方のペンデュラムゾーンに発動したとき、デッキから1枚ドローする。」

 

 2枚で特殊召喚効果を発揮する永続魔法のようなものか

 だが、その真価は恐らく・・・

 

「魔法カード、EM(エンタメイト)ポップアップを発動

 手札を3枚まで捨て、捨てた枚数分ドローする。その後、ドローした枚数までペンデュラム召喚可能な魔術師ペンデュラム、EM、オッドアイズモンスターを手札から特殊召喚する。

 それができない場合はドローした枚数×1000ポイントのダメージを俺は受ける。

 俺は最大枚数の3枚を捨て、3枚ドロー、セットされているスケールは1と6なのでレベル5のオッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン、レベル4のEM(エンタメイト)ペンデュラム・マジシャン、レベル2のEM(エンタメイト)トランプ・ガールを特殊召喚。」

 

オッドアイズ・ペルソナ「グオォォ!」

           ATK1200

 

ペンデュラム・マジシャン「ハッ!」

            ATK1500

 

トランプ・ガール「あはは」

        DEF200

 

 仮面をかぶった竜、振り子を持ったマジシャン、トランプの柄が描かれた服を着た少女が現れる。

 なるほど、これはマジックカードの効果だがこういう風に出てくるのか。

 

「ペンデュラム・マジシャンの効果発動

 こいつが特殊召喚されたとき、俺のフィールドのカードを2枚まで破壊して、デッキから破壊した枚数分、デッキからペンデュラム・マジシャン以外のEM(エンタメイト)モンスターを

手札に加える。ただし同名は1枚

 俺はペンデュラム・マジシャン自身とペンデュラムゾーンのギタートルを破壊しデッキからEM(エンタメイト)リザードローとEM(エンタメイト)オッドアイズ・シンクロンを手札に加える。

 

 さらに空いたペンデュラムゾーンにスケール6のEM(エンタメイト)リザードローをセッティングしペンデュラム効果発動

 もう片方のペンデュラムゾーンにEM(エンタメイト)カードが発動しているとき、このカードを破壊し新たに1枚ドローする。」

 

 燕尾服を着たトカゲが光の柱の中に現れるがすぐさまそこからいなくなる。

 奴はフィールドを経由して破壊しアドバンテージを取っているが、同時にエクストラデッキにモンスターを貯めている。

 やはりそういうことか

 

「トランプ・ガールの効果発動

 1ターンに1度、このカードを含む自分フィールドのモンスターを使い融合召喚を行う。」

 

「何、融合だと!?」

 

「ペンデュラムモンスターであるトランプガールとオッドアイズモンスター、ペルソナ・ドラゴンを融合

 疾風迅雷、その二色の眼に写る歯向かう者を平伏させよ!

 融合召喚!雷の力帯し竜、オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン!!」

 

オッドアイズV「グオオォォォォォ!!」

       ATK2500

 

 雷の力を帯びた緑色の竜がレーンを滑るようにして走る。

 そして、その二色の眼はレッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライトに向けられる。

 

「ボルテックス・ドラゴンが特殊召喚に成功したとき1ターンに1度、相手フィールド上の表側攻撃表示モンスター1体を対象に、そのモンスターを持ち主の手札に戻す。

 スカーライトには一旦、檀上を去ってもらおうか?」

 

オッドアイズV「ギャオオォォォォ!!」

 

レッド・デーモンズS「グワアアァァァァァ!?」

 

「くっ!?」

 

『そんな!?レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライトがあんなにあっさり!?』

 

 雷でできた竜の影がスカーライトを俺の下に弾き飛ばす

 

「スケール6のEM(エンタメイト)オッドアイズ・シンクロンをペンデュラムスケールにセッティング。

 これでスケールは1と6、よって2から5のレベルのモンスターをペンデュラム召喚可能

 揺れろペンデュラム、異界へつながる扉を開け!」

 

 天に描かれる光の魔法陣、そしてそこから落ちてくる流星のごとき虹の輝き

 

「ペンデュラム召喚!

 レベル2、EM(エンタメイト)トランプガール、レベル4、EM(エンタメイト)ペンデュラム・マジシャン、レベル5、オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン!」

 

トランプガール「あはっ!」

       DEF100

 

ペンデュラム・マジシャン「はっ!」

            DEF800

 

オッドアイズ・ペルソナ「ギャオオォォォォ!」

           DEF2400

 

『えぇ!?全部戻ってきた!?なにあの召喚方法!?』

 

「やはりそうか!ペンデュラム召喚とは破壊と再生を繰り返す無限再生の召喚法!」

 

 さっき素材やコストへと消えたモンスターたちが全く同じ顔ぶれで立ち並ぶ

 ペンデュラムスケールがある限り、あれが毎ターン復活する!

 

「さすがジャック物分かりがいい。

 まぁその分、手札管理が大変で、スケールを除去されると、どうしようもなくなるけど

 さて、ここでレ・ベルマンのペンデュラム効果を発動だ。

 1ターンに1度、メインフェイズにペンデュラム召喚された自分フィールド上の全てのモンスターのレベルを1つ上げる。」

 

 トランプガール      LV2→3

 ペンデュラム・マジシャン LV4→5

 オッドアイズ・ペルソナ  LV5→6

 

「さらにオッドアイズ・シンクロンのペンデュラム効果でEM(エンタメイト)モンスター、トランプガールのレベルをこのターン1にしてチューナーとして扱う。」

 

 トランプガール LV3→1(チューナー)

 

「レベル6のオッドアイズ・ペルソナ・ドラゴンにレベル1のEM(エンタメイト)トランプ・ガールをチューニング!

 2色の眼に写る星よ、流星となって降り注げ!シンクロ召喚!!

 星紡ぐ戦竜、オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン!!」

 

オッドアイズM「ギャアアァァァァァァァァ!!」

       ATK2500

 

 奴のデュエルで何度か見る2色の眼を持つ星炎の竜

 バトルフェイズ中のモンスター効果を使用不能にする効果は強力だが、あれの隠された力が解放される。

 

「オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴンの効果発動!

 このカードが特殊召喚されたとき、自分のペンデュラムゾーンのカードを1体、特殊召喚する。

 来い!チューナーモンスター、EM(エンタメイト)オッドアイズ・シンクロン!」

 

オッドアイズ・シンクロン「んっ!」

            DEF600

 

 光の柱から解放されるシルクハットをかぶった金属のボールのようなモンスター

 赤と緑の2色の目は信号機を彷彿とさせる。

 

「レベル5のEM(エンタメイト)ペンデュラム・マジシャンにレベル2のEM(エンタメイト)オッドアイズ・シンクロンをチューニング!」

 

――カンカンカンッ!

 

 遮断機のような音が鳴り響き、オッドアイズ・シンクロンが2つの光の輪に変わる。

 その輪がペンデュラム・マジシャンを取り囲みその中の5つの星を輝かせ新たな光を生み出す。

 

「集いし奇跡が道を照らす灯火となる!光さす道となれ!!シンクロ召喚!!

 未来へと飛び立て!シンクロチューナー、シューティング・ライザー・ドラゴン!!」

 

シューティング・ライザー「ギュオォォォォォォォォ!!」

            ATK2100

 

 こいつが奴の遺した星の光、闇すら飲み込み進化を導く、希望の竜!

 

「シューティング・ライザー・ドラゴンがシンクロ召喚に成功したことで、デッキからこのカードのレベルより低いモンスター、曲芸の魔術師を墓地へ送り、そのレベル分シューティング・ライザーのレベルを下げる。

 曲芸の魔術師のレベルは5よって、シューティング・ライザーのレベルは7から2になる。」

 

 シューティング・ライザー LV7→2

 

「さらに魔法カード、ペンデュラム・ホルトを発動

 俺のエクストラデッキにペンデュラムモンスターが3種類以上表でいるとき、さらに2枚ドローする。

 

 そして、死者蘇生を発動

 墓地から蘇れ!オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン!!」

 

オッドアイズ・ファンタズマ「ギャオオォォォォォォォォ!!」

             ATK3000

 

 現れたのは虹の炎の翼を広げる骸のように白い2色の眼の竜

 効果を見れば、タイラントを容易く屠ることができる能力を持つ、だが

 

「俺のフィールドのレベル7以上のオッドアイズモンスターのレベルを3つ下げ、墓地の貴竜の魔術師を墓地から特殊召喚!」

 

 オッドアイズ・ファンタズマ LV8→5

 

貴竜の魔術師「ふん。」

      DEF1400

 

「俺はレベル5となったオッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴンにレベル3の貴竜の魔術師をチューニング!」

 

 奴はそれを容易く捨てた。

 

「闇が滲み、終焉へと導く、光なき世界へ!シンクロ召喚!!

 現れろ!ダークエンド・ドラゴン」

 

ダークエンド「グオォォォ・・・・」

      ATK2600

 

 幻想が漆黒の闇へと変わる。このモンスターは

 

「ダークエンドの効果発動、1ターンに1度、このモンスターの攻撃力を500ポイント下げることで相手フィールド上のモンスター1体を墓地送りにする。

 タイラントにもご退場願おうか!」

 

ダークエンド「グオォォォ・・・」

 

レッド・デーモンズT「グウゥウゥゥ・・・・・」

 

 ダークエンド・ドラゴンの吐いた闇がタイラントを消し去っていく

 

「くっ!?レッド・デーモンズ達をこうも容易く!?

 だが、その魂は守護者に受け継がれる!

 俺のフィールドの表側表示のドラゴン族モンスターが効果で墓地へ送られたことで墓地の霊廟の守護者の効果発動!

 このカードを特殊召喚する!」

 

 霊廟の守護者 DEF2100

 

「さて・・・やるか!

 俺はレベル8のシンクロモンスター、ダークエンド・ドラゴンにレベル2となったシューティング・ライザー・ドラゴンをチューニング!」

 

――ギュオォォォォォォォォォォ!!

 

 異常とも思える加速、風の抵抗を全く感じさせない走り

 だが、奴はもはやそんな次元にはいない。

 

「集いし力が拳に宿り、鋼を砕く意思と化す!光さす道となれ!アクセルシンクロォォ!!」

 

――ブォン!!

 

『えっ!?また!?』「消えた・・・?」

 

 あまりにも早すぎて俺の目が追い付かなかったのではない、奴は数瞬この世界から確かに消えていた。 

 

――ブゥオォォォォォォォォ!!

 

「現れろ!スターダスト・ウォリアー!!」

 

スターダスト・ウォリアー「ハッ!!」

            ATK3000

 

 奴が次の瞬間に現れたとき俺の前を新たなモンスターを従えて走っていた。

 星屑の鎧を纏う巨神、その在り方は奴、遊星を思い起こさせる。

 

「これがお前の目指した境地、そして、お前のたどり着いた境地か・・・」

 

「それはちょっと違うな。」

 

「む?」

 

「俺はカードとDホイールを借りて真似ているだけだ。

 あの人が至った、至ったであろう場所には全然足りないし、どうやっても同じにならない。

 ぶっちゃけ俺だけじゃ、ジャック、あなたの背中すら見えなかったと思っている。」

 

「・・・そうか、ならばお前はどうする?」

 

「今は借りてでも、あなたに挑むだけさ。ジャック・アトラス!!

 アクションマジック!イリュージョン・ファイヤーをスターダスト・ウォリアーを対象にして発動!

 このターン、対象モンスター以外は攻撃出来ない代わりに、それ以外のモンスターの数まで攻撃できる!

 行け!スターダスト・ウォリアー!霊廟の守護者を攻撃!スターダスト・ラッシュ!!」

 

スターダスト・ウォリアー「オォォォォォ!!」

 

「ぐっ!!セットしていたアクションマジック、奇跡の選択を発動!

 このカードの効果により霊廟の守護者はこの戦闘では破壊されない!」」

 

「なら2回目の攻撃!」

 

スターダスト・ウォリアー「ハッ!!」

 

「くっ!」

 

「そして墓地のトラップカード、ウィッチクラフト・マスターピースの効果を発動!

 墓地のこのカードと魔法カードを任意の枚数除外することで、除外した魔法カードと同じレベルを持つウィッチクラフトモンスターを特殊召喚する。

 俺はEM(エンタメイト)ポップアップを除外してレベル1のウィッチクラフト・ジェニーを特殊召喚。」

 

ジェニー「ふふふっ」

    ATK300

 

 現れたのは長くウェーブのかかった髪と眼鏡が特徴的な女魔法使い

 新たなモンスターが出現したということは・・・

 

「これでスターダスト・ウォリアーはもう1度攻撃できる!

 行け!ジャックにダイレクトアタック!スターダスト・ラッシュ!!」

 

「させぬ!

 トラップ発動!リジェクト・リボーン!

 相手の直接攻撃宣言時、バトルフェイズを終了させる!!」

 

「それくらいはしてくるよな!

 オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴンの効果!

 1ターンに1度、エクストラデッキの表側表示のペンデュラムモンスターをデッキに戻すことで、相手のカード効果を無効にして破壊する!

 EM(エンタメイト)リザードローをデッキに戻しリジェクト・リボーンを無効!パラライズシャウト!」

 

オッドアイズV「ギャオォォォォ!!」――バリバリ!!

 

 オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴンの雷がリジェクト・リボーンを焼く

 そして、スターダスト・ウォリアーの連拳の衝撃が俺に襲い掛かる

 

「ぐぅおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!

 だが、俺は手札のアクションカード、アンコールを発動する。

 このカードは発動条件の整ったアクションカード1枚を墓地から発動する!

 俺が発動するのは俺が2000以上のダメージを受けたとき発動できる。アクションマジック、ダメージ・ドロー!

 その効果により、デッキから2枚のカードをドローする!」

 LP5000→2000

 

「手札断殺で墓地に送ったカードか。

 奇跡の選択を発動して、ダメージを0にすることもできただろうに。」

 

「ふんっ、分かっていて何を言う!」

 

 お前が用意した二重の妨害策

 レッド・リゾネーターしか持たぬ状態で次のターンを迎えてはどうしようもない。

 ふっ、この俺を1ターンで、そういう思考に陥らせるとはな。

 

「カードを1枚伏せて、エンドフェイズ、墓地のウィッチクラフト・クリエイションの効果を発動

 エンドフェイズ時に自分フィールド上にウィッチクラフトモンスターがいるとき、墓地のこのカードを手札に戻すことができる。これでターンエンドだ。」

 

『レッド・デーモンズ2体を除去して、ジャックにここまでダメージを・・・

 その召喚法と言い、ゴーストライダー、あなた一体何者なの?』

 

「ふんっ!貴様が何者なのかなど、どうでもいいわ!!」

 

 俺は今、貴様にどうしようもなく、勝ちたい!!

 

「俺のターン、ドロー!

 俺はマジックカード、ブラック・ホールを発動!

 フィールド上のモンスターをすべて破壊する!!」

 

「それは・・・止めなきゃどうしようもないな!

 オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴンの効果発動

 エクストラデッキのEM(エンタメイト)ギタートルをデッキに戻して、ブラックホールを無効!」

 

「だが、これでもうこのターンその効果は使えまい!

 レッド・リゾネーターを通常召喚!さらに効果で手札からレベル1モンスター、ハイ・キューピッドを特殊召喚!」

 

レッド・リゾネーター「へアッ!」

          ATK600

 

ハイ・キューピッド「ハッ!」

         ATK600

 

 レッド・リゾネーターとともに現れたのは黄金の矢を構える緑色の髪の少女

 運命というやつがあるのなら、ここで終わらせてくれるなよ。

 

「ハイ・キューピッドの効果発動!

 1ターンに1度、自分のデッキの上から3枚までカードを墓地へ送り、墓地へ送ったカードの枚数分、このカードのレベルをアップする。

 俺はデッキの上から3枚送り、ハイ・キューピッドのレベルを3つ上昇させる!」

 

ハイ・キューピッド LV1→4

 

「墓地へ送られた絶対王 バック・ジャックの効果でデッキの上から3枚を確認し、好きな順番でデッキの上へ戻す。

 レベル4となったハイ・キューピッドにレベル2のレッド・リゾネーターをチューニング!

 赤き魂、ここに1つとなる。王者の雄叫びに震撼せよ!シンクロ召喚!

 現れよ!レッド・ワイバーン!」

 

レッド・ワイバーン「ギャオォォォォ!」

         2400

 

「面倒なものを・・・止めるしかないな。

 スターダスト・ウォリアーの効果発動!

 相手が特殊召喚をした際、このカードをリリースして、その特殊召喚を無効にして破壊する。

 ヴィクティム・ミラージュ!」

 

スターダスト・ウォリアー「オォォォ!!」

 

 スターダスト・ウォリアーがレッド・ワイバーンに組みつき、2体とも星屑のような光を放ちながら、その存在を幻想の様に消していく。

 だが、これで目に見える妨害策はつぶした!

 

「墓地のレッド・ライジング・ドラゴンの効果発動!

 墓地のこのカードを除外することで、俺の墓地よりレベル1のリゾネーターを2体特殊召喚する!

 さぁ!王を迎え入れる準備をするがいい、バリア・リゾネーター!シンクローン・リゾネーター!」

 

バリア・リゾネーター「へヘッ!」

          ATK300

 

シンクローン・リゾネーター「ヘッ!」

             ATK100

 

「さらに俺のフィールドにチューナーがいることにより、手札の奇術王 ムーン・スターを特殊召喚

 このモンスターは特殊召喚に成功したとき、自分のフィールドか墓地のモンスターと同じレベルになることができる。

 この効果の発動以降、このターン俺はシンクロ召喚以外の特殊召喚が出来なくなる。

 俺はムーン・スターのレベルを墓地のレッド・ワイバーンと同じ6にする。」

 

ムーン・スター ATK900 LV3→6

 

 2体のリゾネーターと共に並ぶ星と月の仮面と杖を持つ道化

 さぁ!お前が何をしようと我が魂の炎を止められぬことを知るがいい!!

 

「俺はレベル6になったムーン・スターにレベル1のバリア・リゾネーターをチューニング!

 新たなる王者の脈動、混沌の内より出でよ!シンクロ召喚!

 誇り高き、デーモン・カオス・キング!」

 

デーモン・カオス・キング「ハッ!」

            ATK2600

 

「さらにレベル7のデーモン・カオス・キングにレベル1のシンクローン・リゾネーターをチューニング!」

 

 炎の悪魔王が昇華し、我が魂を新生させる。

 

「再び出でよ!我が魂!!レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト!!」

 

レッド・デーモンズS「グオオォォォォォ!!」

          ATK3000

 

『キター!レッド・デーモンズ復活です!

 そして、ゴーストライダーのモンスターは全て特殊召喚されたモンスター、ということは!』

 

「ふんっ、シンクローン・リゾネーターの効果で墓地のレッド・リゾネーターを手札に戻す。

 そして、レッド・デーモンズの効果を発動!

 1ターンに1度、フィールド上のこのカード以外のこのカードの攻撃力以下の攻撃力を持つ特殊召喚されたモンスターをすべて破壊し、破壊したモンスター1体に付き相手に500ポイントのダメージを与える!」

 

「それにチェーンして手札の魔法カード、ウィッチクラフト・クリエイションを墓地に送って、自身をリリースしてウィッチクラフト・ジェニーの効果発動。

 さらにチェーンして、トラップカード、ワンダー・エクシーズを発動!

 このカードは自分フィールド上のモンスターを素材として、エクシーズ召喚を行う!」

 

「エクシーズ召喚だと!?」

 

 また新たな召喚法か!

 

「レベル7のオッドアイズ・ボルテックス・ドラゴンとオッドアイズ・メテオバースト・ドラゴンでオーバーレイ!

 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築

 六道八獄踏み越えて、絶対なる力、2色の眼に宿れ!エクシーズ召喚!!

 全てを凍てつかせる永獄の竜、オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン!!」

 

オッドアイズA「ギャオオォォォォォォ!!」

       ATK2800

 

『モンスターが重なって、新たなモンスターに!?』

 

「さらにウィッチラフト・ジェニーの効果でデッキのジェニー以外のウィッチクラフト・モンスター、ウィッチクラフト・ピットレを特殊召喚!」

 

ピットレ「ふふ。」

    DEF1500

 

 現れたのは2色の眼を持つ氷の竜と様々な色の入った瓶を周りに浮かせた少女

 だが、2体にレッド・デーモンズの効果を防ぐ能力はない。

 

「何が出てこようとも!諸共砕け散るがいい!!アブソリュート・パワー・フレイム!!」

 

レッド・デーモンズS「グオオオオォォォォオオ!!」

 

「ぐぅぅぅ!!」

 LP4000→3000

 

 奴の2体のモンスターが灰塵へと消え、あのモンスターの欠片なのか、氷の結晶が舞う。

 

――グルル・・・

 

  だが、それはいつの間にか炎へと変わり

 

――オオオオォォォォォォォォォォォォ!!

 

――ブオオォォォ!!

 

、灰塵を吹き飛ばし、太陽のごとく燃え立つ翼を広げた新たな2色の眼の竜が叫びをあげた。

 

オッドアイズ・レイジング「ギャオオォォォォォォォォ!!」

            ATK3000

 

「エクシーズ召喚されたアブソリュート・ドラゴンが墓地へ送られた場合、エクストラデッキからアブソリュート・ドラゴン以外のオッドアイズモンスターを特殊召喚できる!

 俺はこの効果で、オッドアイズ・レイジング・ドラゴンを特殊召喚した。」

 

オッドアイズ・レイジング「オオォォォォォォォオオオォォォ!!」

 

レッド・デーモンズS「グオオオオオォォォォォォォ!!」

 

 そのモンスターは凄まじい威圧を放ち、レッド・デーモンズを威嚇する。

 攻撃力3000、あのエクシーズ召喚とやらはダメージを減らすだけのものではなく、こいつを呼び出すための布石か・・・

 

「ふ、ふふふ・・・」

 

 俺の知らぬモンスター、俺の知らぬ召喚法、俺の知らぬ戦術・・・まさにこいつは‟未知”そのもの!!

 それに立ち向かうことがこれほど胸躍ることとは・・・

 

「あぁ・・・楽しいぞ!!」




ふはははははっ!素晴らしい!素晴らしいデュエルだ!
回転率、収集率ともに最上!
さぁ、私のために走り続けなさい!
おや?あそこに侵入者ですか?
まぁ、あの男もこの試合が終わるまでは持たしてくれるでしょう。
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『繋いだ力 フレンドシップカップ決着』
念のため、あれの用意もしておくとしましょうか。


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繋いだ力 フレンドシップカップ決着

フレンドシップカップも終わり、序章除いて58話か、長かったな・・・
えっ?アニメは98話?うっそん・・・

寂しかったのでタイトルを5Dsっぽく少し長くしました。
ジャックVSゴーストライダー(遊矢)2戦目後半です。書きたいものを詰め込みましたのでどうぞ


「これを・・・俺に?」

 

 ロゼとのデュエルの前、俺は胡散臭いやつから1枚のカードを受け取っていた。

 こいつの話を信じるならば、政府の役人らしいが・・・

 

「えぇ、それこそ、世界を変えるかもしれない発明の、その制御装置として開発されたカード。」

 

「何も描かれてないではないか?」

 

 そもそも、制御装置だと?

 デュエルモンスターズのカードですらないのではないか?

 

「えぇ、それはカードとしては未完成・・・いや、その発明も今はまだ未完成なのですが・・・」

 

「そんなもの、この俺にどうしろというのだ?」

 

「そのカードを完成させてほしいのです。」

 

「完成させるだと?

 ふんっ!そんなもの貴様らで勝手にやれ!

 俺はこれから大事なデュエルがあるのだ!!」

 

 奴との一戦の前に、そんなことしてられるか!!

 

「ヒィヒィヒィ、いえ、そんなに難しいことではございません。

 あなたはただ、デッキにカードを入れてくださればよろしいのです。

 もっとも、カードが完成できるかはあなた次第ですが・・・」

 

「どういうことだ?」

 

 話が全く見えん!

 

「先日、ロゼ・ジェスター・・・でしたか?

 あの者がこの世に新たなカードを生み出しました。」

 

「!!?」

 

「そもそも、そのカードは2枚で1対のカード

 ですが、片側は長らく行方不明になっておりました・・・それが。」

 

「奴の、スターダスト・ウォリアーがそれだと?」

 

 スターダスト・ウォリアー

 誰も見たことがないシンクロ、アクセルシンクロによって呼び出されたモンスター

 あのDホイールに眠っていたカードの1枚だというのなら・・・

 

「おい、その発明とやら、不動と名の付くものが関わっていないか?」

 

「おぉぉ!!その通りでございます!

 不動博士こそ、遊星粒子を発見し、その性質を利用した発明、モーメントを開発された方なのでございます!

 まさか知っておられるとは・・・いやはや、さすがはキングと言われるお方。」

 

「その博士とやらは知らん!

 俺が知っているのは、今はもういない俺の友だけだ!」

 

 今でも鮮明に思い出される。

 未来へと挑み続け、絆でシティを一つにしようとした男『不動 遊星』

 事故で両親を亡くし、身内のごたごたの内にコモンズに流れ着いた。流れ星

 

「そうでしたか・・・いつの間にか街にモーメントエンジンが溢れていたのは、そういう背景が・・・

 ならば、それはあなたこそ持つにふさわしい・・・

 あなた様なら、デュエルの中でそのカードを真の姿にしてくれることでしょう。ヒィーヒィヒィヒィ!!」

 

「・・・・・・」

 

 俺の手元にある何も描かれていないカード

 これが、奴がたどり着くかもしれなかった可能性、奴がたどり着いた可能性、その片割れというのならば!

 

「・・・負けてられん!!」


オッドアイズ・レイジング「ギャオオオォォォォォォォ!!」

 

レッド・デーモンズS「グオォォオオォォォォォォ!!」

 

 威嚇し合う2体の紅

 滅びの光を翼にして広げる覇道を行く怒りの化身と、戦い続け傷つき、されど研磨された王者の魂

 

「覇王烈竜 オッドアイズ・レイジング・ドラゴンとレッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライトの攻撃力は同じ!

 さぁ、どうする?」

 

「覇王だと?この俺の前で王を名乗るなど片腹痛い!!粉砕してくれる!!

 行け!レッド・デーモンズ!!オッドアイズ・レイジング・ドラゴンに攻撃!!」

 

「迎え撃て!オッドアイズ!!」

 

――オオオオオオォォォォォォォォオオオォォォォォォ!!

 

 2体の竜が叫び、それぞれの主の命で、だが示し合わせたかのように2体は接近し

 

レッド・デーモンズS「グアァァァァァ!!」――バキッ!!

 

オッドアイズ・レイジング「ギャアアァァァァ!!」――バゴッ!!

 

 互いのその顔に拳を叩き込んだ。

 

『く、クロスカウンター・・・!!?』

 

レッド・デーモンズS「グッ!!」

 

オッドアイズ・レイジング「オオオォォォ!!」

 

 2体は蹈鞴を踏むように、空中で後退し、だが、相手をその目でとらえ追撃を開始する。

 怒りの竜が無数の火の玉を降らせれば、王者の魂はそれを打ち落とし、だが捌ききれぬとなれば、弾幕の中を突っ切って肉薄する。

 それをオッドアイズは天高く舞い上がり、目くらましとばかりに太陽を背にしながらさらに焔弾を放ち、レッド・デーモンズはそれを腕を交差することでガードする。

 

「逃がすな!レッド・デーモンズ!!」

 

「こっから本命だ!オッドアイズ!!」

 

レッド・デーモンズ「グオオオオォォォォォォ!!」

 

オッドアイズ・レイジング「ギャオオオオォォォォォォォ!!」

 

「灼熱の・・・」

 

「激情の・・・」

 

 太陽を背にし、オッドアイズの翼がさらに輝きを増し、レッド・デーモンズが自らの左腕に炎を溜める。

 

「クリムゾン・ヘル・バアアァァニング!!」

 

「デストラクション・バアアァァァスト!!」

 

――ドオオオォォォォォォォォ!!

 

 滅びの炎が大地に向かって降り注ぐ、それを受け止めているのは傷だらけの悪魔竜

 

 それはまさに神話の様な光景

 

レッド・デーモンズS「グオオオォォォオオオオォォォォオオ!!」

 

 滅死の炎の中をレッド・デーモンズは突き進み

 

オッドアイズ・レイジング「ギャオォオオオオォォオォォォォ!!」

 

 ついにその拳がオッドアイズに突き刺さる

 

――ドオオオオォォォォンン!!

 

レッド・デーモンズS「グオォォォ・・・・・・」

 

オッドアイズ・レイジング「グアァァァ・・・・・・・・」

 

 爆炎が晴れ2体の竜は力なく大地に向かって落ちていく

 

「オッドアイズ・レイジング・ドラゴンがモンスターゾーンで破壊された場合、このカードをペンデュラムゾーンに置くことができる。」

 

 オッドアイズは落ち行く途中で光の柱に掴まり、その中に浮かび

 

「エンドフェイズ、このターン墓地へ送られたスカーレッド・コクーンの効果でレッド・デーモンズ・ドラゴンは俺のフィールドに蘇る!!」

 

 落下したレッド・デーモンズはさらなる闘争を求めて立ち上がり飛び立つ、その身に新たな傷を刻んで

 

レッド・デーモンズ「グオオオォォォォォォ!!」

         ATK3000


「なら、そのエンドフェイズ、自身の効果でリリースされたスターダスト・ウォリアーが復活する!

 戻ってこい!スターダスト・ウォリアー!!」

 

スターダスト・ウォリアー「オオオォォォ!!ハッ!!」

            ATK3000

 

 星屑が集まって、巨神が復活する。

 墓地に落ちたカードの効果を見越してレッド・デーモンズとオッドアイズを同士討ちさせるとは・・・

 やっぱり、レッド・デーモンズは墓地に置いてはいけないな。

 

「俺はこれでターンエンドだ!」

 

「俺のターン!ドロー。」

 

 1枚しかないからあまりこの効果を使いたくなかったがこの手札なら仕方ない。

 

「墓地のウィッチクラフト・ジェニーの効果発動。

 墓地のこのカードとウィッチクラフト魔法カード1枚を除外することで、除外した魔法カードの効果を発動する。

 俺はジェニーと共にウィッチクラフト・クリエイションを除外して、その効果でデッキからウィッチクラフトモンスター、ピットレを手札に加える。

 

 さらに墓地のウィッチクラフト・ピットレの効果発動、このカードを除外しデッキから1枚ドロー、その後、手札からウィッチクラフトカードを墓地に送る。

 俺はさっき手札に加えた2枚目のピットレを墓地に送る。」

 

「ふんっ!小細工を!

 だが俺も仕込ませてもらうぞ!墓地の絶対王バック・ジャックを除外し効果発動!

 デッキの一番上のカードをめくり、それが通常トラップならそのまま俺のフィールドにセットできる!

 デッキの一番上のカードは通常トラップ、針虫の巣窟、よってこのままセット!

 

 さらにこの効果でセットされたカードはそのターンに発動できる!トラップ発動!針虫の巣窟!

 デッキの上から5枚のカードを墓地に送る!」

 

 墓地肥やし、落ちたカードは・・・

 このターンで決着は無理だな。

 

「だったら俺もマジックカード、おろかな埋葬を発動!

 デッキのモンスターカード、BF(ブラックフェザー)―精鋭のゼピュロスを墓地に送る。

 

 さらにゼピュロスの効果発動、デュエル中に1度だけ俺のフィールドの表側表示のカードを1枚手札に戻すことでこのカードを特殊召喚

 その後俺は400ポイントのダメージを受ける。

 俺はペンデュラムゾーンのEM(エンタメイト)レ・ベルマンを手札に戻し、精鋭のゼピュロスを特殊召喚!」

 LP3000→2600

 

精鋭のゼピュロス「ハッ!」

        ATK1600

 

 クロウから託された。群青の鳥人

 ペンデュラムとの相性は抜群だ。おかげでオッドアイズの効果が発動できる。

 

「オッドアイズ・レイジング・ドラゴンのペンデュラム効果

 1ターンに1度、もう片方のペンデュラムゾーンにカードがない場合、デッキからペンデュラムモンスターを1体、そのペンデュラムゾーンに置くことができる。

 俺がデッキからスケール5の慧眼の魔術師をペンデュラムゾーンにセッティング。」

 

 目を覆うバイザーを付けた魔術師が光の柱に昇る。

 どうせだから、このカードを最大限で使わないとな。

 

「オッドアイズ・レイジング・ドラゴンのスケールは1

 これで2から4のモンスターをペンデュラム召喚可能になった。

 揺れろペンデュラム、異界へとつながる扉となれ!ペンデュラム召喚!

 エクストラデッキからレベル4、EM(エンタメイト)ペンデュラム・マジシャン、レベル2チューナー、EM(エンタメイト)オッドアイズ・シンクロン、そして手札からレベル4、EM(エンタメイト)セカンドンキー!」

 

 ペンデュラム・マジシャン ATK1500

 オッドアイズ・シンクロン DEF600

 セカンドンキー      DEF2000

 

 光に乗って現れる振り子の魔術師と、玉のような信号機のようなモンスターと、茶色い毛並みのロバ

 

「特殊召喚されたペンデュラム・マジシャンとセカンドンキーの効果発動

 セカンドンキーの効果でデッキからEM(エンタメイト)モンスターを墓地へ、だが、ペンデュラムゾーンが2枚埋まっていることにより、墓地に送るカードを手札に加える。

 この効果でデッキからEM(エンタメイト)ギタートルを手札へ

 

 さらにペンデュラム・マジシャンの効果でオッドアイズ・レイジング・ドラゴンとEM(エンタメイト)セカンドンキーを破壊してデッキからペンデュラム・マジシャン以外のEM(エンタメイト)モンスター、EM(エンタメイト)リザードローとEM(エンタメイト)ユニを手札に加える。」

 

 いつもは発動者であるペンデュラム・マジシャンを轢いている巨大な振り子が怒りの魔竜と茶色いロバを潰して新たなカードに再生する。

 なにせ今回はペンデュラム召喚したペンデュラムモンスターにいてもらわないと困るからな。

 なおかつこれでモンスターゾーンが1つ空いた。

 

「オッドアイズ・シンクロンの効果発動

 自分のペンデュラムゾーンのカードを1枚対象にして、そのカードを効果を無効にして特殊召喚し、そのカードとこのカードとでシンクロ召喚を行う!

 俺はレベル4の慧眼の魔術師にレベル2のオッドアイズ・シンクロンをチューニング!

 星雨を束ねし星翼よ!魂を風に乗せ世界を巡れ!!シンクロ召喚!

 現れろ!スターダスト・チャージ・ウォリアー!!」

 

スターダスト・チャージ「ハッ!!」

           ATK2000

 

 カッターのような砲身を携えた星屑の銃士が現れる。

 

「エクストラデッキから特殊召喚されたオッドアイズ・シンクロンは除外される。

 そして、スターダスト・チャージ・ウォリアーがシンクロ召喚に成功したとき、デッキからカードを1枚ドローする。

 

 さらにスケール6のEM(エンタメイト)ギタートルとEM(エンタメイト)リザードローをペンデュラムゾーンにセッティング

 ギタートルのペンデュラム効果により1枚ドロー、さらにリザードローのペンデュラム効果で自身を破壊しさらに1枚ドロー。

 

 カードを1枚伏せ、手札抹殺を発動

 互いのプレイヤーは手札をすべて捨て、捨てた枚数分ドローする。

 俺は4枚捨てて4枚カードを新たにドロー。」

 

「ならば俺も1枚捨て、1枚ドローさせてもらおう!」

 

 レッド・リゾネーターを捨てさせたが、ジャックはレッド・デーモンズ関連の手札誘発も使う。

 その効果は破壊耐性なのでこれからやろうとしていることには問題ないだろう。

 

「ふんっ!相打ちさせて、俺のライフを削りきろうという魂胆だろうが、このカードでその考えを改めさせてやる!

 墓地の光の護封霊剣を除外し効果発動!このターン、貴様はダイレクトアタックすることができない!」

 

「なら、レッド・デーモンズを除去させてもらおう!

 レベル6シンクロモンスター、スターダスト・チャージ・ウォリアーにレベル4のペンデュラムモンスター、EM(エンタメイト)ペンデュラム・マジシャンをチューニング!」

 

「なっ!?そのモンスターはチューナーでは!?」

 

「これから呼び出す奴はペンデュラム召喚したペンデュラムモンスターをチューナー扱いでシンクロ召喚できる。そういうシンクロモンスターだ。」

 

「なんだと!?」

 

「時の狭間に至る極地、刮目して確と見よ!!シンクロ召喚!!」

 

 振り子が回り、4つの光の輪となって星屑の銃士を取り囲み、その姿が変わって行く

 透き通るような碧は、青空を思わせる蒼色に、その武器は工具のような銃から時計の文字盤を思わせる装飾のなされた大剣に

 

「目覚めよ!涅槃の超魔導剣士(ニルヴァーナ・ハイ・パラディン)!!」

 

涅槃の超魔導剣士(ニルヴァーナ・ハイ・パラディン)「はぁぁぁぁぁぁ!!ハッ!!」

        ATK3300

 

「攻撃力3300!!」

 

「こいつの真価はそこじゃない

 涅槃の超魔導剣士(ニルヴァーナ・ハイ・パラディン)の効果発動、ペンデュラムモンスターをチューナー扱いでこのカードをシンクロ召喚に成功したとき、俺の墓地からカードを1枚、手札に戻すことができる。

 俺が手札に戻すのは、死者蘇生!」

 

「くっ!?」

 

「さらにセットしていた魔法カード、調律を発動

 デッキからシンクロンチューナーモンスター、EM(エンタメイト)オッドアイズ・シンクロンを手札に加え、シャッフルして、その後デッキトップを1枚墓地に送る。

 そして、EM(エンタメイト)オッドアイズ・シンクロンを通常召喚。」

 

オッドアイズ・シンクロン「ハッ!」

            ATK200

 

「このカードが召喚に成功したとき、自分の墓地のレベル3以下のEM(エンタメイト)モンスター1体を効果を無効にして特殊召喚する。

 来い!レベル2モンスター、EM(エンタメイト)チアモール!」

 

チアモール「もる・・・」

     DEF1000

 

 ポンポンで顔を隠したモグラのチアガールがオッドアイズ・シンクロンによって舞台に立たされる。

 アクションカード対策もしなくっちゃな。

 

「俺はレベル4のBF(ブラックフェザー)―精鋭のゼピュロスとレベル2のEM(エンタメイト)チアモールにレベル2のEM(エンタメイト)オッドアイズ・シンクロンをチューニング!

 受け継がれしその称号、今ここに光を超えて覚醒する!シンクロ召喚!!

 来い!覚醒の魔導剣士(エンライトメント・パラディン)!!」

 

覚醒の魔導剣士(エンライトメント・パラディン)「はっ!!」

       ATK2500

 

「そいつは!?」

 

「そう、戦闘破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与えるカードだ。

 そして、死者蘇生発動!

 蘇れ!オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン!!」

 

オッドアイズV「ギャオオオオォォォォォォォォ!!」

       ATK2500

 

「オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴンの効果発動

 こいつが特殊召喚に成功したとき、相手フィールドの表側攻撃表示モンスター1体を手札に戻す。

 俺が対象に選ぶのはレッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト!」

 

 さぁどうする?

 この効果をかわすために守備表示にすれば、時の魔導剣士の白刃がライフを刈り取る。

 防がなければレッド・デーモンズを出すのにスターダスト・ウォリアーを突破しなければならない。

 そして、それを乗り越えても涅槃の超魔導剣士(ニルヴァーナ・ハイ・パラディン)の斬撃と効果が大きくライフを削るぜ?

 

「・・・・すまぬ。レッド・デーモンズ。」

 

レッド・デーモンズS「グルル。」

 

オッドアイズV「ギャアオォォォォォォ!!」――バリバリッ!!

 

 ジャックは手札のカードを使うことなく、オッドアイズの放つ電撃にレッド・デーモンズを晒す。

 

「何とか通ったか・・・

 カードを2枚伏せて、ターンエンド。」

 

「ならばお前のエンドフェイズに墓地に送られた彼岸の悪鬼 スカラマリオンの効果を使わせてもらう。

 このカードが墓地へ送られたターンのエンドフェイズ、俺のデッキからレベル3、闇属性悪魔族モンスターを1体手札に加えることができる

 俺はこのカードでダーク・リゾネーターを手札に加える。」

 

 ダーク・リゾネーター・・・

 これで次のターン、ジャックの手札は3枚、さらに墓地には・・・

 

「俺のターン!

 俺は墓地のブレイクスルー・スキルを発動!

 自分のターンにこのカードを墓地から除外することで、相手フィールド上のモンスター1体の効果をターン終了時まで無効にする!

 俺が無効にするのは当然・・・オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン!!」

 

 ちっ、あれはコストで除外するからなぁ・・・優先権あっちだし

 これで妨害策が1つ減ってしまった。

 

「速攻魔法、異次元からの埋葬を発動

 このカードは互いの除外されているカードの中から3枚までを持ち主の墓地に戻す。

 戻すカードは俺のカード、バックグランド・ドラゴン、絶対王 バック・ジャック、レッド・ライジング・ドラゴンを墓地に戻す。

 

 さらに貪欲な壺を発動

 墓地のレッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラント、デーモン・カオス・キング、レッド・ワイバーン、レッド・ライジング・ドラゴン、ハイ・キューピッドの5枚のモンスターをデッキに戻し、2枚のカードをドロー!

 

 さらに墓地に戻ったバックグランド・ドラゴンの効果を発動!

 自分フィールド上にカードが何もない場合、このカードと手札のレベル4以下のドラゴン族モンスターを特殊召喚する。

 出でよ!バックグランド・ドラゴン!百年竜(ハンドレッド・ドラゴン)!」

 

バックグランド・ドラゴン「ガアァァァァァ!」

             ATK1600

 

百年竜(ハンドレッド・ドラゴン)「グルル・・・」

   ATK1800

 

 機械的な甲殻のどこかモグラを思わせるドラゴンと年若いドラゴンが現れる。

 ハ、百年竜(ハンドレッド・ドラゴン)?まずい!!

 

「さらに墓地の亡龍の戦慄―デストルドーの効果を発動!

 俺のライフを半分払い、俺のフィールドのレベル6以下のモンスターを対象にし、このカードを特殊召喚、対象モンスターのレベル分このカードのレベルを下げる。

 俺はレベル4の百年竜(ハンドレッド・ドラゴン)を対象にし、デストルドーをレベル3として特殊召喚する!」

 LP2000→1000

 

デストルドー「グアアァァァァァァ・・・・」

      ATK1000 LV7→3

 

 現れたのは肉の半分ほどが腐り落ち骨すら見えた、まさに亡龍

 だがその闘志が新たな未来のための力となる。

 

「この効果で特殊召喚されたデストルドーはフィールドを離れた場合、デッキの一番下に戻る。

 

 さらに百年竜(ハンドレッド・ドラゴン)の効果を発動、1ターンに1度、自分メインフェイズに、ターン終了時までこのカードのレベルを自分フィールド上のカードの数だけ上げ、上げた数×100このカードの攻撃力をアップする。

 俺のフィールドのカードは3枚!よって、百年竜(ハンドレッド・ドラゴン)のレベルは7となり300ポイント攻撃力がアップする!」

 

 百年竜(ハンドレッド・ドラゴン) ATK1800→2100 LV4→7

 

「俺はレベル5、バックグランド・ドラゴンにレベル3となったデストルドーをチューニング!!

 王者の咆哮、今再び響き渡る!この記憶を身に刻め!!シンクロ召喚!!

 我が魂!!レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト!!」

 

レッド・デーモンズS「グオオォォォオオオオオオォォ!!」

          ATK3000

 

「させるか!!スターダスト・ウォリアーの効果発動!!

 特殊召喚の際、このカードをリリースしてその特殊召喚を無効にする!ヴィクティム・ミラージュ!」

 

スターダスト・ウォリアー「オオォォオオオオ!!――バキッ!!

 

レッド・デーモンズS「グオオォオォォオオ!!」――バゴッ!!

 

 スターダスト・ウォリアーとレッド・デーモンズが殴り合う。

 星の光を、烈火の魂を散らしてその身を削り、最後に組み合うと爆発を起こして光と炎を散らして互いに消えた。

 これで、スカーライトは蘇生制限を満たせない。どうする?

 

「ふんっ!これで俺の魂を封じたつもりか?甘いわ!!

 手札を1枚捨てマジックカード、一撃必殺!居合ドロー発動!」

 

 !!?ここでか!?

 

「このカードはお前のフィールド上のカードの数だけ、俺のデッキの上からカードを墓地に送り、デッキから1枚ドローする。

 ドローしたカードが居合ドローだった場合、そのカードを墓地へ送りフィールド上のカードすべてを破壊し、破壊した数×2000ポイントのダメージをお前に与える!

 お前のフィールドのカードは6枚!よって、6枚のカードをデッキから墓地へ送りドロー!」

 

 墓地に送られたのはミラー、チェーン、クリエイト、ダーク、レッドの各リゾネーターと超電磁タートル

 そろそろジャックのデッキのチューナーが尽きそうだ。

 

「ドローしたカードはコール・リゾネーター!

 居合ドローでないため、この効果で墓地へ送った枚数分、墓地のカードをデッキに加える。

 俺はスカーライト、異次元からの埋葬、手札断殺、リジェクト・リボーン、ブラック・ホール、スカーレッド・コクーンをデッキに戻す。」

 

「レッド・デーモンズがデッキに!」

 

「さらに墓地のミラー・リゾネーターの効果を発動する!

 相手フィールド上にのみ、エクストラデッキから特殊召喚されたモンスターがいる場合、墓地のこのカードを特殊召喚する!」

 

「俺のフィールドには覚醒(エンライトメント)涅槃(ニルヴァーナ)の2体の魔導剣士・・・」

 

「来い!チューナーモンスター、ミラー・リゾネーター!!」

 

ミラー・リゾネーター「ヘッ!」――カァァンッ!

          DEF0

 

大きな鏡を背負った小悪魔が、墓地から現れる。その役目はもちろん王の出迎え・・・

 

「俺はレベル7となった百年竜(ハンドレッド・ドラゴン)にレベル1ミラー・リゾネーターをチューニング!!

 不屈の闘志は燃え尽きず。熱き魂は幾度でも立ち上がる!!シンクロ召喚!!

 舞い戻れ!!レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト!!」

 

レッド・デーモンズS「グオオオォォォォオオオオオオォォォオオオ!!!」

          ATK3000

 

「あぁ・・・」

 

 すげぇ・・・


 手を変え、品を変え、レッド・デーモンズを排除しながら俺へ噛みつくプレイングに俺は追い詰められていく。

 全壊させても無限復活するペンデュラムがある限り奴のモンスターは途切れることはない。

 だが、そんなものに臆する俺ではない!無限に再生するのなら無限に蹴散らすのみだ!!

 

 我が魂と共に!!

 

「レッド・デーモンズの効果発動!

 1ターンに1度、フィールド上のこのカード以外のこのカード以下の攻撃力を持つモンスター全てを破壊し、破壊したモンスター1体に付き500ポイントのダメージを相手に与える!

 アブソリュート・パワー・フレイム!!」

 

レッド・デーモンズS「グオオォォォォォオオオオ!!」

 

 レッド・デーモンズが紅き炎の宿る右腕を振るう。

 それによって、覚醒の魔導剣士(エンライトメント・パラディン)とオッドアイズ・ボルテックス・ドラゴンが破壊される。

 

「ぐぅぅぅぅ・・・どうした!まだ俺のフィールドには涅槃の超魔導剣士(ニルヴァーナ・ハイ・パラディン)が残ってるぜ!!」

 LP2600→1600

 

涅槃の超魔導剣士(ニルヴァーナ・ハイ・パラディン)「ふんっ!!」

 

 涅槃の超魔導剣士(ニルヴァーナ・ハイ・パラディン)、タイラントを呼べばその攻撃力をわずかだが上回ることはできるだろうが・・・

 奴のことだ。次のターンを渡してしまえば、早々に排除し、俺に致命の一撃を加えてくるだろう。

 だからいま必要なのだ。何物にも負けない絶大なる力が!

 

「俺はマジックカード、コール・リゾネーターを発動!

 デッキからリゾネーターモンスターを1体手札に加える!」

 

 この魂の猛りを、カタチにするカードが!

 

「俺はクリムゾン・リゾネーターを手札に加え、召喚!!」

 

クリムゾン・リゾネーター「ヘッ!!」

            ATK800

 

 現れたのはレッド・リゾネーターよりもなお緋い炎を背に宿す悪魔

 

「ク、クリムゾン・リゾネーター!?」

 

「このカード以外の自分フィールドのモンスターがドラゴン族、闇属性シンクロモンスター1体のみの場合、手札、デッキからクリムゾン・リゾネーター以外のリゾネーターモンスターを2体まで特殊召喚出来る!

 来い!ダブル・リゾネーター!シンクローン・リゾネーター!」

 

ダブル・リゾネーター「ハハッ!」

          ATK0

 

シンクローン・リゾネーター「へヘッ!」

             ATK100

 

 緋色の小悪魔に導かれる二顔と調星の小悪魔

 

「チューナーが・・・3体!?」

 

 今こそ己が限界を超えるとき!!

 

「見ているか!遠き地にいる好敵手(とも)よ!!

 見るがいい!新たな強敵(とも)よ!!この俺、ジャック・アトラスの新たなる輝きを!!

 

 猛り荒ぶる魂を!!!

 

 レベル8!レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライトにレベル1のシンクローン・リゾネーターとダブル・リゾネーター!そして、レベル2のクリムゾン・リゾネーターをトリプルチューニング!!」

 

――カアァァァァァァァンッ!!

 

 Dホイールの出力が上がり、この身を研磨する風が熱を持つ

 

「王を迎えるは三賢人。」

 

 3体のリゾネーターは4つの炎の輪となり、レッド・デーモンズを包み込み回転する。

 

「紅き星は滅びず、ただ愚者を滅するのみ!」

 

 その姿は紅く輝く恒星

 

「荒ぶる魂よ・・・天地開闢の時を刻め!!」

 

――ボッ・・・

 

「シンクロ召喚!!」

 

 それが今・・・爆発する!!

 

猛り荒ぶる魂!!

 

――ドガアアァァァァァァァァァァァァァアアアン!!!

 

 王者の証たる王冠のような5本の角

 紅蓮を思わせる4枚の翼

 数々の戦いの中で研磨されし、緋色に輝く超新星!それが!!

 

スカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴンッ!!」

 

スカーレッド・Sノヴァ「グオオオォォォォォオォォォォォオオオオオオ!!」

           ATK4000

 

「スカーレッド・・・・スーパーノヴァ!?」

 

『なななななんと!!ジャック!ここにきて誰も見たことがない新たなモンスターを召喚!!

 その名は!スカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴン!!』

 

「シンクローン・リゾネーターの効果によって墓地のクリムゾン・リゾネーターを手札に戻す。

 さらに俺のフィールドにドラゴン族、闇属性シンクロモンスターがシンクロ召喚されたことにより、墓地のトラップカード、スカーレッド・レインの効果発動、このカードを手札に加える。

 

 見たかロゼ!!これが新たな我が力!スカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴンだ!!

 そして思い知るがいい!俺がこれまで積み上げてきた力を!

 俺がこれからを切り開いていく力を!!

 

 スカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴンは、相手の効果では破壊されず、俺の墓地のチューナー1体に付き、攻撃力を500ポイントアップさせる。

 俺の墓地に眠るチューナーは12体!!よって攻撃力は・・・」

 

スカーレッド・Sノヴァ「グオオォォォォォオオォォォォオォォオ!!

          ATK4000→10000

 

「「『10000!!⦅?⦆』」」

 

「バトルだ!スカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴンで涅槃の超魔導剣士(ニルヴァーナ・ハイ・パラディン)を攻撃!!

 アブソリュート・バーニングノヴァ・カラミティ!!」

 

 星が爆発するほどのエネルギーがスカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴンの拳に宿り、涅槃の超魔導剣士(ニルヴァーナ・ハイ・パラディン)に振るわれる。

 何者も寄せ付けない絶対の一撃、だが、道化はここでは終わらない。そうだろう?

 

「攻撃宣言時、墓地のEM(エンタメイト)ユニの効果を発動!

 このカードと他のEM(エンタメイト)モンスター、セカンドンキーを除外することで戦闘ダメージを1度だけ0にする!」

 

「それを待っていた!!

 貴様のモンスターの効果が発動したことにより、スカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴンの効果が発動される!

 このカード及び相手フィールドのカードすべてを除外する!」

 

『えぇ!!?全部除外!?』

 

 奴も言っていたペンデュラムの弱点、それは激しい手札消費

 エクストラデッキのモンスターの引き出しも少なくなったこの状況で、残り手札2枚の奴の取れる手段は少ない。

 この効果を使ったスーパーノヴァは次の俺のエンドフェイズにフィールドに舞い戻る。

 

「道化の舞台もここまでだ!スーパーデモン・メテオ!!」

 

スカーレッド・Sノヴァ「グオオオオオオオオ!!」

 

 緋色の輝きが奴を終焉へと導くために輝く

 

「いや!まだ幕引きには早いぜ!ジャック!!

 チェーンして永続トラップ発動!王宮の鉄壁!!

 このカードが魔法・罠ゾーンにある限り互いにカードを除外できない。」

 

「何ぃ!?」

 

 だが、その輝きは道化によって霧散する。

 

「これでスカーレッド・スーパーノヴァの効果は不発!

 既にコストとして除外されているEM(エンタメイト)ユニの効果のみが成立、モンスター数の変動もないので攻撃はそのまま続行だ!ぐうぅぅぅぅぅ!!」

 

 スカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴンの一撃が涅槃の超魔導剣士(ニルヴァーナ・ハイ・パラディン)を砕き、奴のDホイールを余波で揺らす。

 だが、奴の正面には一本角の生えた小娘と茶色いロバが立ちふさがりダメージを防ぐ 

 

「ふはははっ!この一撃すら防ぐか!さすがだな!!」

 

「おっと・・・防ぐだけじゃないぜ?

 モンスターゾーンで破壊された涅槃の超魔導剣士(ニルヴァーナ・ハイ・パラディン)は、空いている俺のペンデュラムゾーンに置くことができる。

 

 さらに速攻魔法、イリュージョン・バルーンを発動

 自分フィールド上のモンスターが破壊されたターン、自分のデッキの上から5枚のカードをめくり、その中からEM(エンタメイト)モンスター1体を選んで特殊召喚する。

 来い!EM(エンタメイト)ペンデュラム・マジシャン!」

 

ペンデュラム・マジシャン「ハッ!」

            ATK1500

 

 このデュエルで幾度も登場した振り子の魔術師、そして、スカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴンの一撃で消し炭になったはずの涅槃の超魔導剣士(ニルヴァーナ・ハイ・パラディン)が次元を切り裂いて現れ、光の柱に昇る。

 そうか!まだ手があるか!!

 

「ペンデュラム・マジシャンの効果で自身とペンデュラムゾーンのEM(エンタメイト)ギタートルを破壊

 デッキからEM(エンタメイト)バリアバルーンバクとEM(エンタメイト)シール・イールを手札に加える。」

 

 バリアバルーンバクは戦闘ダメージを0にする効果

 シール・イールはペンデュラム効果がモンスター効果を、モンスター効果が召喚時にセットされたマジック、トラップカードを発動不能にする効果か・・・ならば!

 

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド!」

 

「エンドフェイズ、スターダスト・ウォリアーが復活!」

 

スターダスト・ウォリアー「フンッ!」

            ATK3000

 

「そして、俺のターン、ドロー!」

 

 ここだ!

 

「ドローフェイズ終了時にトラップ発動!スカーレッド・レイン!

 このカードは自分フィールド上にレベル8以上のモンスターが存在するとき発動できる。

 フィールドの一番レベルの高いモンスター以外のモンスターすべてを除外する。」

 

「だが、俺の王宮の鉄壁の効果でカードは除外できないぜ!」

 

「スカーレッド・レインの効果はそれだけではない!

 このカードの効果で除外できなかった表側表示モンスターはターン終了時まで、自身以外の効果を受けない!

 これで俺のスカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴンと貴様のスターダスト・ウォリアーは他の効果を受け付けない!」

 

『攻撃力10000のモンスターが一切の効果を受けない!?

 そんなのどう倒せばいいの!?』

 

「なるほどな、これでスターダスト・ウォリアーをカード効果を使って強化することもできなくなったわけだ・・・」

 

 さぁ、どうする?

 お前自身のカードの効果で俺の墓地のチューナーを除外して減らすことはできない。

 王宮の鉄壁がなくなれば、スーパーノヴァの効果でお前のフィールドのカードは全滅する。

 

「俺は魔法カード、デュエリスト・アドベントを発動

 俺のフィールドにペンデュラムスケールがセッティングされている場合、デッキからペンデュラムと名の付くペンデュラムモンスターか、ペンデュラムと名の付く魔法、トラップカード1枚を手札に加える。

 俺が手札に加えるのは3枚目のEM(エンタメイト)ペンデュラム・マジシャン。

 

 さらに魔法カード、ペンデュラム・パラドックスを発動

 エクストラデッキの表側表示の同じスケールでカード名が異なるペンデュラムモンスター2体を手札に加える。

 この効果でスケール6のEM(エンタメイト)オッドアイズ・シンクロンとEM(エンタメイト)リザードローを手札に加える。

 

 そして、スケール2のEM(エンタメイト)ペンデュラム・マジシャンをペンデュラムスケールにセッティング!」

 

 ペンデュラム・マジシャンが光の柱に昇る。

 涅槃の超魔導剣士(ニルヴァーナ・ハイ・パラディン)のスケールは8、これでレベル3から7のモンスターがペンデュラム召喚可能となったわけか。

 

「さらに永続魔法、魂のペンデュラムを発動!

 このカードがあるときにペンデュラム召喚に成功した場合、このカードにカウンターを置き、そのカウンター1つに付きフィールドのペンデュラムモンスターは攻撃力が300ポイントアップする。

 さらにこのカードは1ターンに1度、自分のペンデュラムゾーンのカード2枚を対象に、そのスケールをそれぞれ1つ上げるか下げることができる

 このカードの効果でペンデュラム・マジシャンのスケールを1つ下げ、涅槃の超魔導剣士(ニルヴァーナ・ハイ・パラディン)のスケールを1つ上げる!」

 

 ペンデュラム・マジシャン PS2→1

 涅槃の超魔導剣士(ニルヴァーナ・ハイ・パラディン)     PS8→9

 

「スケールの幅が広がった!?」

 

「これでレベル2から8のモンスターがペンデュラム召喚可能だ。

 揺れろペンデュラム、異界へ繋がる扉を開け!ペンデュラム召喚!!

 レベル2、EM(エンタメイト)トランプ・ガール、EM(エンタメイト)チアモール、レベル4、EM(エンタメイト)ペンデュラム・マジシャン

 そしてレベル8!幻想より出でし2色の眼の竜!オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン!!」

 

 魂のペンデュラム C0→1

 

トランプガール「あはっ!」

       ATK200→500→1500

 

チアモール「もぐ・・・〃〃」

     ATK600→900→1900

 

ペンデュラム・マジシャン「ふんっ!」

            ATK1500→1800→2800

 

オッドアイズ・ファンタズマ「ギャオオオォォォォォォォォォ!!」

             ATK3000→3300

 

 流星に乗り奴のフィールドにモンスターたちが出揃う。

 道化のような衣装の少女、モグラのチアガール、振り子の魔術師、そして虹色の翼を広げる骸のような2色の眼の竜

 

「ペンデュラム・マジシャンの効果で涅槃の超魔導剣士(ニルヴァーナ・ハイ・パラディン)を破壊して、デッキからEM(エンタメイト)ドクロバット・ジョーカーを手札へ

 さらに俺がEM(エンタメイト)モンスターをペンデュラム召喚したことによりペンデュラム・マジシャンのペンデュラム効果が発動し、俺のEM(エンタメイト)モンスターの攻撃力をさらに1000ポイントアップさせた。

 

 さらにEM(エンタメイト)チアモールの効果発動!1ターンに1度、自分のメインフェイズに元々の攻撃力と異なる攻撃力を持つモンスター1体を対象に、その攻撃力が元々より高い場合、さらに攻撃力を1000ポイントアップさせる。

 オッドアイズの攻撃力をこの効果でさらに1000ポイントアップさせる!」

 

オッドアイズ「ギャオオォォォォォォ!」

      ATK3300→4300

 

 攻撃力4300!

 そのモンスターの効果と合わせれば、1ターンキルが可能だろうがまだ我が猛り荒ぶる魂にはかなわん!

 

「どうした!その程度では足りんぞ!!」

 

「あぁ、分かってるさ!

 スケール6のEM(エンタメイト)リザードローをセッティングし、片側にEM(エンタメイト)がセッティングされていることによりペンデュラム効果発動!

 このカードを破壊し、新たに1枚ドロー!

 

 そして、スケール6のEM(エンタメイト)オッドアイズ・シンクロンをペンデュラムゾーンにセッティング!

 そのペンデュラム効果で俺のフィールドのEM(エンタメイト)モンスター、ペンデュラム・マジシャンのレベルをこのターン1にしてチューナーとして扱う。」

 

 ペンデュラム・マジシャン LV4→1(チューナー)

 

「さらに速攻魔法、揺れる眼差しを発動

 フィールド上のペンデュラムゾーンのカードをすべて破壊し、その破壊したカードの数によって効果を適用する。

 ペンデュラム・マジシャンとオッドアイズ・シンクロンの2枚を破壊することによって1枚破壊したときの効果で相手に500ポイントのダメージを与える。」

 

「ぐっ!こざかしい真似を・・・」

 LP1000→500

 

「2枚破壊したときの効果でデッキからペンデュラムモンスターを1体、3体目のEM(エンタメイト)オッドアイズ・シンクロンを手札に加える。

 そして、再びオッドアイズ・シンクロンをペンデュラムゾーンにセッティングしてペンデュラム効果発動!

 今度はオッドアイズモンスター、ファンタズマ・ドラゴンをレベル1のチューナーにする!」

 

 オッドアイズ・ファンタズマ LV8→1(チューナー)

 

「!!?

 何をするつもりだ!?」

 

「何って?そりゃ・・・そのデカ物をぶっ倒してやるのよ!!

 バトル!!スターダスト・ウォリアーでスカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴンに攻撃!!」

 

「何だと!?」

 

『なんとゴーストライダー乱心!!

 攻撃力3000のモンスターで10000のモンスターに特攻を敢行したぁ!!』

 

スターダスト・ウォリアー「はああぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

スカーレッド・Sノヴァ「グオオォォォォォオオォォオ!!

 

「自分のモンスターが相手モンスターと戦闘を行うダメージ計算時、手札のEM(エンタメイト)バリアバルーンバクを捨てることで、その戦闘で発生するダメージをお互いに0にする!」

 

 超新星の緋き輝きが星屑を砕け散らせる。

 

「戦闘でフィールドを離れたスターダスト・ウォリアーの効果発動!」

 

――キンッ・・・キン、キンッ、キンッ!キンッ!!

 

 そして、その散らばった星屑は5つの光の輪となって飛び回る。これは!?

 

「エクストラデッキからレベル8以下のウォリアーシンクロモンスターをシンクロ召喚扱いで特殊召喚する!

 集いし星が新たな力を呼び起こす。世界を超える・・・光さす道となれ!!

 

 5つの輪はやがて列をなし、1本の光の道を作り出し輝く

 

「スターライトシンクロ!!出でよ・・・」

 

 光の中でシルエットが浮かび上がるウィングとスラスターを背負う巨大な拳を持った屑鉄の戦士

 この俺をかつて打ち負かした奴の、遊星の象徴ともいえるモンスター

 

ジャンク・ウォリアー!!

 

ジャンク・ウォリアー「はぁぁぁぁ・・・ハッ!!」

          ATK2300

 

「ここで!?ジャンク・ウォリアーだとぉ!?」

 

「ジャンク・ウォリアーの効果発動!

 シンクロ召喚成功時、自分フィールド上のレベル2以下のモンスターの攻撃力をすべて、このモンスターの攻撃力に加える!」

 

 奴のモンスターはすべて!?

 

パワー・オブ・フェローズ!!

 

 トランプ・ガールが、チアモールが、ペンデュラム・マジシャンが、オッドアイズが

 奴のモンスターから虹色の輝きが沸き上がり、ジャンク・ウォリアーに集まり宿る。

 

 ジャンク・ウォリアー ATK2300→12800

 

「攻撃力12800だとぉ!?」

 

 本来はその効果に相容れないはずの高レベルモンスターですらも自らの力にするとは・・・

 

「行くぞ!ジャック!!

 ジャンク・ウォリアーでスカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴンに攻撃!!」

 

――バシュウウウゥゥゥゥゥゥゥ!!

 

 ジャンク・ウォリアーのバーニアが火を噴き加速し、マフラーをたなびかせながらスカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴンに迫る。

 

「スクラップ・・・フィストオオォォォォォォォォオオ!!

 

ジャンク・ウォリアー「フンッ!ハァァァァァアア!!

 

 その拳は虹色の光を放ち巨大化し、緋色の超新星の輝きを覆っていく・・・

 

「ふっ、お前たちの勝ちだ・・・」

 LP500→0


――バシュウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ・・・・・・

 

 ホイール・オブ・フォーチュンから強制停止を知らせる煙が上がる。

 それは絶対無敵のキングが敗れた証

 

――キィキィィィィ

 

 それより少し前で赤いDホイールが停止する。

 誰もなせなかった、いや、大半の人間が夢にも思わなかった絶対王者の打倒を成し遂げた年若い新たなキングはDホイールから降りて敗者たる元キングに近づく

 

「ジャック・・・」

 

「・・・ロゼ。」

 

 2人は同時に拳を引き、相手に向かって突きつける、そして

 

――ゴツッ、グググ・・・

 

「「ははははははははははっ!!」」

 

 その拳を付き合わせた2人は笑い合う。

 

「楽しかったぞ!お前のデュエル!!」

 

「俺もだ。ジャック・・・」

 

――パシッ!

 

 そして、拳を解いた2人は握手して、互いに楽しかったと称え合い笑う。

 

『あっ・・・み、皆さまご覧ください!

 フレンドシップカップ決勝戦!その激闘についに決着がつきました!!

 この戦いを制したのはゴーストライダー・・・ロゼ・ジェスター!!』

 

 メリッサの実況で放心していたシティの住民たちは我を取り戻す。

 映像を見ればそこには勝者も敗者もなく笑い合っている。

 負けてしまった元キングを貶そうと思うものは誰もいない。その敗者ですら自分達ではたどりつけない遥か高みにいるのだから

 今はただ、この戦いを戦い抜いた2人に声援と拍手を送ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!

 

「!!?なんだ!?」

 

「地震!?」

 

 突如としてシティ全土を揺るがす振動

 だが、異変はそれだけでは留まらない。

 

――グオオォォォン・・・・

 

「なんだこれは!?」

 

「この光って・・・まさか!?」

 

 2人のいるデュエルレーンが赤く輝きだす。

 その中にいる2人には伺い知ることができないが、ヘリに乗っているメリッサだけはその異変の全容を確認することができた。

 

「・・・竜?」

 

 その赤い光はシティ全土に赤い竜の地上絵を描き出していた。




ははははははっ!素晴らしい!!これで私の大いなる計画が始動する!!

お前の思う様にはいかんよ。

!?
おぉ・・・これはこれは・・・評議長、こんなところに何の御用ですかな?

なに、折角シティに新しい未来を示してくれた若者の頑張りに水を差すような真似をした無粋な輩にお灸を据えようと思っただけじゃよ!
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『シティ騒乱 ロジェの大いなる野望』

はははっ!大きな口を利くものではありませんよ、何もできない老いぼれガァァァァ!


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シティ騒然 ロジェの大なる野望

蛇足のようなラスボス戦(シンクロ編)
遊戯王ワールドにおいてちょいちょい出てくる精霊といった存在
精神力や想像力に影響を与えたり受ける存在と考えるのなら、実際にいてもおかしくはないのかもしれません。お互い目に見える干渉はできないでしょうが

アーク・ウィング・シンクロ・ドラゴン(暫定)のビジュアルが公開されましたね。
クリスタルウィングをさらに成長させたような姿でかっこいいですね!(白翼の魔術師のことを考えると女の子っぽいですが)
モンスター効果妨害系を貫くのか、魔法・罠対応するのか、はたまた全く別ものか・・・
ここまで来たらアーク・ヴェノムも期待できそうです。


『猛り荒ぶる魂!!スカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴンッ!!』

 

「ふはははっ!!新たなカードが創られるほどの干渉!素晴らしい!!」

 

 不気味な光が照らす暗い部屋で男が笑う。

 そこは名目上は治安維持局局長室となっている場所

 だが、壁に隙間なく置かれた不気味なポッドや一人が使うにしてはビルの最上階を丸々使った異様な広さなど、とても治安の維持を担う者の長の部屋ではなかった。

 例えるのならそう、科学者の実験室と言った雰囲気をしていた。

 

「これで私の大いなる計画が始動する!」

 

『ほう?勤務時間中にテレビとは感心せぬのう?』

 

「!!?」

 

 男『ジャン・ミシェル・ロジェ』は部屋に響いた声に驚く

 部屋の入口に立っていたのは清掃員の恰好をした老人である。

 

「おや?ここに清掃員を呼んだ覚えはありませんがねぇ?」

 

「なぁに遠慮するでない。

 この街を任されたものとして、汚れは綺麗にしないとのう。」

 

「!?」

 

 帽子を脱いだその下の顔にロジェはさらに驚く

 この場にいてはならない存在、今も座して動かない存在であるはずの老骨

 評議長『ホワイト・タキ』その人だったのだから

 

「おぉ・・・これはこれは・・・

 評議長、こんな所に何の用ですかな?」

 

「あぁ、確かに『こんな所』じゃのう?

 視察が来ておるのにどこにいるのかと思えば・・・

 新設したセキュリティ本部にこんな場所があるなんぞ、今の今まで知らなかったわい。」

 

 現在、セキュリティが管理している施設には評議会による視察が行われている。

 ロジェも業務を正しく行っているのかを視察される立場であったが、その姿はない。

 だがそのことを予期していたホワイトはこうして自ら清掃員に紛れて治安維持局に入り込みロジェを探していたのだ。

 

「で、どう言い訳するのかのう?

 監獄では賄賂が当たり前、地下では過剰な折檻、表向きは真面目そうにしていてこんなことを見過ごして、さらには当の本人は業務放棄ときておる。

 失脚の理由としては十分だと思うが?」

 

「言い訳?失脚?くふふふ・・・」

 

 権力者の立場を失う。

 それはこの街の住民にとって、最も避けたいこと。

 だが、ロジェはそのように追い込まれているのに、それがどうしたというような態度であった。

 

「なんと小さいことか!!」


「くっそぉぉ!!俺のターン!!

 

 禁止カードを平気で使う男ギャラガー

 長々と戦うわけにはいかぬ、このターンで決めたいところでござる。

 

「ドローフェイズ終了時、永続トラップ、魔封じの芳香を発動!

 これにより、互いにマジックカードを使う場合、セットして次の自分のターンまで経過しなければ使えなくなる!

 

 さらに永続トラップ、忍法 変化の術を発動!

 レベル4の忍者マスターHANZOをリリースし、そのレベル+3以下の獣、鳥獣、昆虫族モンスターを特殊召喚する。

 出でよ!レベル7!ダーク・シムルグ!!」

 

ダーク・シムルグ「ケェェェェェェェェ!!」

        ATK2700

 

 闇のように黒い王冠を頂く巨鳥が現れる。

 あやつの手札はクロノダイバー・リダンの効果で戻された生還の宝札と覆面忍者で戻されたセットカード

 

「ダーク・シムルグがフィールドに存在する限り、相手はカードをセットすることができない!」

 

「何ィ!?」

 

「スタンバイフェイズにクロノダイバー・リダンの効果も発動させてもらおう!

 相手のデッキの一番上のカードをこのカードに重ねオーバーレイユニットとする!」

 

 拙者のデッキトップはトラップカード忍法 妖変化の術

 そして、ギャラガーのデッキからはマジックカード、天使の施しが引き抜かれる。

 

 クロノダイバー・リダン ORU0→2

 

「さらにクロノダイバー・リダンの効果発動!

 相手ターン中にこのカードのオーバーレイユニットを3種類まで取り除くことでそれぞれの効果を発動する!

 拙者はマジックとトラップを取り除き効果発動!

 マジックカードを取り除いた時の効果でデッキから1枚ドローし、トラップカードを取り除いた時の効果で混沌魔竜 カオス・ルーラーをデッキに戻す!」

 

 時の怪盗により、混沌の魔竜が攫われていく

 氷結界の龍 トリシューラの攻撃力は2700、焔征竜―ブラスターの攻撃力は2800

 手札のカードはどちらもマジックかトラップ、この状況をどうにかするには現状、破滅竜ガンドラXしかない。そのためには・・・

 

「俺は墓地の瀑征竜―タイダルの効果発動!

 墓地のエクリプス・ワイバーンと破滅竜ガンドラXを除外して、こいつを特殊召喚する!」

 

瀑征竜―タイダル「グワアアァァァァァ!!」

        ATK2600

 

「「やはりそうきたか!」」

 

「拙者は手札より朔夜しぐれの効果を発動!

 相手がモンスターを表側表示で特殊召喚した場合、このカードを手札から捨て、そのモンスターを対象に、そのモンスターの効果をターン終了時まで無効にし、さらにそのモンスターがこのターン中にフィールドを離れた場合、そのコントローラーは対象モンスターの元々の攻撃力分のダメージを受ける。」

 

 さすがは月影!そのカードを引いていたか!

 ならば決着を付けよう!!

 

「チィ!!俺はエクリプス・ワイバーンの効果で除外されていたガンドラXを手札に加える。

 俺のライフはまだ潤沢!ガンドラXの効果で全部吹き飛ばしちまえば、その後のバトルで、てめぇらのどっちかのライフなんて消し飛ばせるんだよ!」

 

「いや、消し飛ぶのはキサマだけでござる!

 トラップ発動!破壊輪!!」

 

「なぁ!?」

 

「このカードは相手のライフポイント以下の攻撃力を持つ相手フィールド上のモンスター1体を破壊し、拙者はそのモンスターの攻撃力分のダメージを受ける。

 その後、拙者が受けた効果ダメージ分だけ相手プレイヤーにダメージを与える!

 破壊するのは当然、瀑征竜―タイダル!!ぐうううぅぅぅぅぅ!!」

 LP3000→400

 

 手りゅう弾がいくつかくっ付いたリングがタイダルに付けられ爆散する。

 それでも拙者らのライフより奴のライフは多い。よってチキンレースの恩恵は受けられない。

 

「さらに朔夜しぐれの効果により、さらに2600のダメージを受けるがいい!!

 

「うぐあぁぁああぁぁぁぁぁぁ!!」

 LP4500→1900→0

 

 タイダルが爆発したと同時に濁流がギャラガーを襲い橋の上を転げまわり、中心の塔のようなものを囲む柵にぶつかる。

 死んでござらんよな?

 

「・・・うぅ。」

 

「生きているか。」

 

 まぁ、この手合いはなかなか死なぬものよな。

 

「兄者、どうやらここの人々は点滴のみしか与えられておらぬようだ。酷く衰弱している。

 この男のこともだが早く運び出さなければ・・・」

 

「うむ、ではホワイト殿にこのことを伝えて」

 

――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・

 

「むっ!?地震か!?」

 

「いかぬ。これでは!」

 

 こんなところで何かが落ちてきたら!?

 

「ひ、ヒヒッ・・・どうやら、おっぱじまったようだな。」

 

「!!?キサマ何か知っているでござるか!?」

 

「なぁに、フレンドシップカップが終わったのさ。

 同時にお上の計画が始まったのよ。この世界そのものを手に入れる計画をな・・・」

 

「なんだと!?」

 

「どういうことでござるか!!」

 

「くくく、甘ちゃんだな忍者君たち

 俺がデュエルした理由なんて、ただの時間稼ぎさ。

 そんでもってそろそろ・・・」

 

――ガコォ、ウイィィィィィィッィイン・・・・

 

「「!!?」」

 

 橋が仕舞われていき、中心の塔が露呈する。

 その様子はまるで、ロケットの発射準備のようでござる。

 

「はははっ!!そら行け!!役立たずのポンコツがよぉ!」


『遊矢殿!!遊矢殿!!こちら月影!

 地下施設で見つけた虹色の光を発する塔がせり上がっているでござる!

 そっちで何か起こってはござらんか!?』

 

 何か起こってないかって?めちゃくちゃ起こっているよ。

 赤い光がハイウェイを照らしているのもそうだが・・・

 

――ゲヘへへへへへッ!!

 

ドラゴネクロ「グワアアァァァァァ!!」――ガブッ!

 

――ンンッ・・・♡

 

ドラゴネクロ「ギャアアァァァオォォォォ!!」――ガブリッ!

 

――ア・・ハッ・・・・

 

ドラゴネクロ「ガァァァァ!!」ガツガツッ!!

 

 わらわらとシティ中にあふれかえる変態(セルゲイ)、いやそれを模したロボット

 そしてそのロボットと無理やり戦わせられているシティの人々

 無数のドラゴネクロがシティの人々のモンスターを喰らい、ダークソウルが元の主人に牙をむき、街はまるでゾンビ映画のような有様になっている。

 

「なんだ・・・これは!?」

 

 ジャックが驚いているが俺にもよくわからない。

 死ね死ね団のようにサーキットを無理やり描かされているわけでもない。ただ街の人々をライディングロイドが襲っている。

 究極神の儀式はデュエリストがいないと始まらない。だが、ジャックも俺も何の影響も受けてないし肝心の決闘竜(デュエルドラゴン)も持ってはいない。いったい・・・

 もしかして、この世界では儀式のやり方が違ったのか!?

 

「とにかく、止めないと!?」

 

 俺はDホイールに乗り込みデッキを対複数デッキに切り替える。

 

「待てロゼ!この状況は何なんだ!?」

 

「わからない。

 ただ、治安維持局長官のロジェが何かをしているらしい・・・」

 

「なんだと!?

 くっ!!俺たちのデュエルに水を差しおって!!許せん!!」

 

 ジャックも怒りを隠そうともせず、Dホイールに乗り込み街中にあふれたライディングロイドの始末に出る。

 ん?そういえば、虹色の輝く塔?ってまさか!?


「何をしおった貴様!!」

 

「はははっ!今日この世界は生まれ変わるのです。私という神の手によってね・・・」

 

「神じゃと?」

 

「まぁ、凡人には理解できないでしょう。

 お見せしますよ。この街が今どうなっているのかをね。」

 

――ガコォ!!

 

「うぉ!?」

 

 わしは突然の揺れに蹈鞴を踏む

 不気味にオレンジ色に発光する壁が移動、いや、開いていき、部屋に風がなだれ込む。

 こんな仕掛けが!?

 

「さぁ、見るといい。

 あなたの愛した街がどんな姿になっているのかを!」

 

「!!?」

 

 わしの目に飛び込んできた光景に腸が煮えくり返りそうになった。

 街のあちこちであのデュエルロイドが人々を襲っておる。

 街は騒然、活気があれと長年思っておったが、こんな騒ぎはいらん!

 

「キサマ何のためにこんな!!」

 

「くふふ、あなたも願っていたでしょう?この街の変化を

 それなら、新しいものを創るには破壊は付き物ということはお分かりのはず・・・

 えぇ、彼らは私が創る新世界の礎になってもらっているのです。光栄なことにね。」

 

 光栄?こやつは光栄と言ったか?

 

「こんな・・・悲しみを生む変化なんぞ望んでおらん!!

 わしらが目指したシティは、キサマの小汚い欲望に濡れたものではないわ!!」

 

 激昂したわしはデュエルディスクを取り出し身に着ける。

 長年やってやれなんだが、今一度わしに力を貸してくれい・・・

 

「あぁ~あ、どうやら、私の崇高な考えをご理解いただけないようだぁ・・・

 なら、ここで始末するとしましょう。

 何も変えることのできない老いぼれめ。」

 

『『決闘(デュエル)!!』』

 

「先攻は私のようですね。

 私はフィールド魔法、機巧伝―神使記紀図(カミツカワシメノキキエ)を発動。」

 

 奴の周りに巻物が浮かび開かれる。

 そこに金や白、黒で描かれた様々な動物が描かれておる。

 聞いたことのないカードじゃな?

 

「このカードは自分のメインフェイズにデッキの上から3枚のカードをめくり、その中から攻撃力と守備力の数値が同じ機械族モンスターを1枚選んで手札に加えることができます。

 私は機巧嘴―八咫御先(ヤタノミサキ)を手札に加え、その後残りのカードは裏側表示で除外します。

 

 機巧菟―稻羽之淤岐素(イナバノオキノシロ)を召喚し、その効果で手札の同じ攻守の数値を持つ、機巧牙―御神尊真神(オンカミコトノマカミ)を守備表示で特殊召喚します。」

 

 稻羽之淤岐素(イナバノオキノシロ) ATK50

 

 御神尊真神(オンカミコトノマカミ) DEF2150

 

 機巧伝―神使記紀図(カミツカワシメノキキエ) C0→1→2

 

 眼下に巨大な金属でできた兎と狼が現れる。

 なんという大きさじゃ・・・兎だけでも家一軒、狼の方はビルほどの体高がある。

 このモンスターどもに暴れられたら街はめちゃくちゃになる。早く対処せねば・・・

 

「機巧牙―御神尊真神(オンカミコトノマカミ)の効果発動

 このカードが召喚、特殊召喚した場合、手札のモンスターを1体捨てデッキから機巧牙―御神尊真神(オンカミコトノマカミ)以外の攻守の数値が同じモンスターを1体手札に加える。

 私は機巧蛙―磐盾多邇具久(イワタテノタニグク)を捨てて機巧狐―宇迦之御魂稲荷(ウカノミタマノイナリ)を手札に加えます。

 

 マジックカード、強欲で貪欲な壺を発動し、デッキから10枚のカードを裏側で除外し2枚のカードをドロー。

 

 さらに通常召喚された機巧菟―稻羽之淤岐素(イナバノオキノシロ)をリリースし、機巧嘴―八咫御先(ヤタノミサキ)を自身の効果で特殊召喚します。」

 

 八咫御先(ヤタノミサキ) ATK2050

 

 神使記紀図(カミツカワシメノキキエ) C2→3

 

「このカードが召喚、特殊召喚されたターン、モンスター1体を召喚できます。

 機巧鳥―常世宇受賣長鳴(トコヨウズメノナガナキ)を召喚。」

 

 常世宇受賣長鳴(トコヨウズメノナガナキ) DEF950

 

 神使記紀図(カミツカワシメノキキエ) C3→4

 

 兎が消えて、これまた巨大な同色の金属でできたカラスと鶏が現れる。

 既にデッキが半分近く削れておる。こやつは一体何がしたいんじゃ?

 

「この効果を使ったターン、常世宇受賣長鳴(トコヨウズメノナガナキ)と同じ種族、機械族モンスターしか私は特殊召喚できなくなりました。

 常世宇受賣長鳴(トコヨウズメノナガナキ)の効果発動

 1ターンに1度、自分フィールド上の攻守の数値が同じ機械族モンスター1体をリリースし、そのモンスターよりレベルの低い攻守の数値が同じモンスター1体をデッキから特殊召喚します。

 私はレベル5の機巧嘴―八咫御先(ヤタノミサキ)をリリースし、デッキからレベル3のチューナーモンスター、ヴァイロン・キューブを特殊召喚。」

 

 ヴァイロン・キューブ DEF800

 

 神使記紀図(カミツカワシメノキキエ) C4→5

 

 カラスが消えて現れたのは小さな立方体に腕が生えたようなモンスター

 これまでの奴のモンスターと違い動物モチーフではなく、さらに無機質な印象を受けるモンスターじゃ

 

八咫御先(ヤタノミサキ)がリリースされたことにより、私のライフは2050ポイント回復します。

 さらに墓地の機巧蛙―磐盾多邇具久(イワタテノタニグク)の効果発動

 このカードをゲームから除外し、墓地の攻守の数値が同じ機械族モンスターを1体特殊召喚します。

 戻ってきなさい。機巧菟―稻羽之淤岐素(イナバノオキノシロ)。」

 

 稻羽之淤岐素(イナバノオキノシロ) DEF50

 

 神使記紀図(カミツカワシメノキキエ) C5→6

 

「私はレベル1の機巧菟―稻羽之淤岐素(イナバノオキノシロ)とレベル2の機巧鳥―常世宇受賣長鳴(トコヨウズメノナガナキ)にレベル3のヴァイロン・キューブをチューニング

 現れなさい、甲化鎧骨格(インゼクトロン・パワード)。」

 

 甲化鎧骨格(インゼクトロン・パワード) DEF1600

 

 虫のような機械のシンクロモンスター、甲化鎧骨格(インゼクトロン・パワード)

 こやつは知っておる。召喚したターン中、効果戦闘耐性とプレイヤーへのダメージを0にするモンスターじゃ。

 1ターン目に出しても大して意味のないモンスターじゃが、狙いはヴァイロン・キューブの効果か

 

「ヴァイロン・キューブが光属性モンスターのシンクロ素材として墓地へ送られたことにより、デッキから装備魔法カードを1枚手札に加えます。

 私が手札に加えるのはやりすぎた埋葬

 

 さらに墓地に存在する機巧鳥―常世宇受賣長鳴(トコヨウズメノナガナキ)を除外し効果を発動

 裏側表示で除外されている自分のカードの中から、攻守が同じ数値の機械族モンスター1体を手札に加える。

 私は機巧辰―高闇御津羽龗(タカクラミツハノカミ)を手札に加え、カードを1枚伏せてターンエンドです。」

 

 モンスター2体を出して守備表示にフィールド魔法とリバースカード1枚

 まぁまぁといった感じじゃが、あれだけ動いてこれでは釣り合ってないような気がするのう・・・というか

 

「さっきからそのカウンターが置かれているフィールド魔法はなんじゃ?」

 

「おぉっと、すっかり忘れておりました。

 この機巧伝―神使記紀図(カミツカワシメノキキエ)は攻守が同じ数値の機械族モンスターが特殊召喚されるたびに、カウンターが一つ置かれ、そのカウンターが10以上の場合、攻守の数値が異なるフィールドのモンスターは効果を発動できなくします。」

 

「白々しい。お前の好きになどさせぬよ。

 わしのターン、ドロー!

 わしは手札の水属性モンスター、超古深海王シーラカンスを捨て、白棘鱏(ホワイト・スティングレイ)の効果を発動、このカードを手札から特殊召喚する。」

 

 白棘鱏(ホワイト・スティングレイ) ATK1400

 

「さらにチューナーモンスター、貪食魚グリーディスを召喚。」

 

 グリーディス ATK1000

 

「レベル4の白棘鱏(ホワイト・スティングレイ)にレベル3の水属性チューナー、グリーディスをチューニング!

 気高きその勇気で未来を貫け!シンクロ召喚!!

 現れよ、白闘気一角(ホワイト・オーラ・モノケロス)!」

 

白闘気一角(ホワイト・オーラ・モノケロス)「ウオォォォォォ!!」

          ATK2500→3100

 

 白いエイ、堅い鋼殻を持つ古代魚が一本の巨大な牙を持つ白き海獣を呼び寄せる。

 そしてこやつは深淵に潜む太古の王を呼び覚ます。

 

「グリーディスがシンクロ素材となったことで、このカードを使ってシンクロ召喚したモンスターの攻撃力はお主の手札の数×200ポイントアップした。

 

 さらに白闘気一角(ホワイト・オーラ・モノケロス)がシンクロ召喚に成功したとき、1ターンに1度、墓地の魚族モンスター1体を特殊召喚できる。

 来い!超古深海王シーラカンス!」

 

 超古深海王シーラカンス ATK2800

 

「永続魔法、白の救済(ホワイト・サルベージ)を発動し効果を発動

 1ターンに1度、墓地の魚族モンスター1体を手札に加える。

 わしが手札に加えるのは白棘鱏(ホワイト・スティングレイ)

 

 シーラカンスの効果発動、1ターンに1度、手札を1枚捨てることでデッキからレベル4以下の魚族モンスターを可能な限り特殊召喚する。

 わしは今、手札に加えた白棘鱏(ホワイト・スティングレイ)を捨てデッキから貪食魚グリーティス、フィッシュボーグ―ランチャー、オイスターマイスターを特殊召喚!」

 

 グリーティス         ATK1000

 フィッシュボーグ―ランチャー ATK200

 オイスターマイスター     ATK1600

 

 古の深海の王に呼ばれグリーティスと共にカキの姿の怪人と奇妙なメカに乗ったタガメが現れる

 じゃが、同時に街に巨大な金属の狐が現れる。

 

宇迦之御魂稲荷(ウカノミタマノイナリ) DEF2250

 

神使記紀図(カミツカワシメノキキエ) C6→7

 

「私も手札の機巧狐―宇迦之御魂稲荷(ウカノミタマノイナリ)の効果を発動させてもらいました。

 このモンスターはあなたがデッキからの特殊召喚を行った時、私の手札から特殊召喚できます。」

 

 新たなモンスター、そしてフィールド魔法にカウンターが・・・

 じゃが、ここで手をこまねいているわけにはいかん!

 

「わしはレベル3のオイスターマイスターにレベル3のグリーティスをチューニング!

 群れし海獣よ、輪廻の輪よりその姿を現せ!シンクロ召喚!

 現れよ!白闘気海豚(ホワイト・オーラ・ドルフィン)!!」

 

白闘気海豚(ホワイト・オーラ・ドルフィン)「カカカカカカカカッ!」

      ATK2400→2800

 

 わしの場に白いイルカが現れるが、それに合わせるようにして宇迦之御魂稲荷(ウカノミタマノイナリ)から青い炎がわしに向かって放たれた。

 

「うおっ!?」

 LP4000→3700

 

「相手がモンスターを召喚、特殊召喚に成功するたびに宇迦之御魂稲荷(ウカノミタマノイナリ)は相手に300ポイントのダメージを与え続けます。」

 

 姑息な手を

 

「グリーディスの効果で白闘気海豚(ホワイト・オーラ・ドルフィン)の攻撃力アップ

 さらに戦闘以外の方法で墓地に送られたオイスターマイスターの効果でオイスタートークンを1体特殊召喚する。」

 

 オイスタートークン DEF0

 

宇迦之御魂稲荷(ウカノミタマノイナリ)の効果で300ポイントのダメージを受けてもらいましょう。」

 

「ぐぅ・・・わしはさらにレベル7の水属性、超古深海王シーラカンスにレベル1の水属性チューナー、フィッシュボーグ―ランチャーをチューニング!

 深淵に眠る大いなる勇魚・・・生と死を廻る大海原に目覚めよ!シンクロ召喚!

 現れろ!白闘気白鯨(ホワイト・オーラ・ホエール)!!」

 LP3700→3400

 

白闘気白鯨(ホワイト・オーラ・ホエール)「ホエェェェェェェェ!!」

        ATK2800

 

 現れたのは奴のモンスターよりも巨大な白鯨

 こいつは2回攻撃と貫通効果を持っておる。全モンスターの攻撃で終わらせてくれる!

 

「特殊召喚により300ポイントのダメージ

 そのモンスターは私の攻撃表示モンスターを全て破壊する効果を持っているようですが、私のモンスターはすべて守備表示、残念でしたね?」

 

「ふん、だがバトルで終いにしてやるわい!

 白闘気白鯨(ホワイト・オーラ・ホエール)宇迦之御魂稲荷(ウカノミタマノイナリ)に」

 

 

「おや良いのですか?

 私のモンスターがいる場所にはまだ人々が残っておりますよ?」

 

 何?

 

「このデュエルはリアルソリッドビジョンを用いたデュエル

 もちろん、モンスターの攻撃も実体として影響を及ぼします。

 そのような巨大モンスターの攻撃、宇迦之御魂稲荷(ウカノミタマノイナリ)がいるあのビルに向けたら一体何人の人間が犠牲になるのでょうね?

 もちろん、甲化鎧骨格(インゼクトロン・パワード)がいるこのビルにも。」

 

「キサマ!!?」

 

 なんと卑怯な!?

 

「えぇ、治安維持局長官として、攻撃はお勧めしませんよ。

 なのでトラップカード、和睦の使者を発動

 このターン私のモンスターは戦闘で破壊されず、私への戦闘ダメージも0になります。」

 

「くっ!?カードを2枚伏せて、ターンエンドじゃ。」

 

「では私のターンですね。ドロー

 機巧伝―神使記紀図(カミツカワシメノキキエ)の効果発動。」

 

「そううまくいくと思うな!

 トラップ発動、フィッシャーチャージ!

 自分フィールド上の魚族モンスター1体をリリースし、フィールド上のカードを1枚破壊しデッキから1枚ドローする。

 オイスタートークンをリリースし、神使記紀図(カミツカワシメノキキエ)を破壊じゃ!

 これでフィールド魔法の効果は不発になる!」

 

「ふむ、では手札の機巧辰―高闇御津羽龗(タカクラミツハノカミ)の効果を発動

 フィールド上にエクストラデッキから呼び出されたモンスターが2体以上いる場合、手札のこのカードを特殊召喚します。」

 

 高闇御津羽龗(タカクラミツハノカミ) ATK2950

 

 新たに出現したのは白闘気白鯨(ホワイト・オーラ・ホエール)をも超える体長を持つ機械でできた龍

 これほどのモンスターがこんなに簡単に出てくるのか!?

 

高闇御津羽龗(タカクラミツハノカミ)の効果発動

 ライフを1500払いエクストラデッキから呼び出されたモンスターを全滅させます。」

 

 高闇御津羽龗(タカクラミツハノカミ)が天に昇ると、あたり一帯は強烈な嵐に見舞われ、その嵐の中、わしのモンスターと奴の甲化鎧骨格(インゼクトロン・パワード)は雷に打たれて消え去る。

 じゃが、わしのモンスターは輪廻の輪より何度でも蘇るぞ!

 

「相手によって破壊された白闘気(ホワイト・オーラ)達の効果発動!

 自身以外の墓地の水属性モンスターを除外することで、チューナー扱いで特殊召喚する!

 舞い戻れい!白闘気一角(ホワイト・オーラ・モノケロス)白闘気海豚(ホワイト・オーラ・ドルフィン)白闘気白鯨(ホワイト・オーラ・ホエール)!!」

 

白闘気一角(ホワイト・オーラ・モノケロス)「ウオォォォ!!」

         DEF1500 (チューナー)

 

白闘気海豚(ホワイト・オーラ・ドルフィン)「クカカカカカッ!」

         DEF1000 (チューナー)

 

白闘気白鯨(ホワイト・オーラ・ホエール)「ホエェェェェェ!!」

         DEF2000 (チューナー)

 

「ですがそれぞれのモンスターが特殊召喚したことにより、宇迦之御魂稲荷(ウカノミタマノイナリ)の効果で1体に付き300ポイントのダメージを受けてもらいますよ。」

 

「ぐぅぅぅぅぅう!!」

 LP3400→3100→2800→2500

 

高闇御津羽龗(タカクラミツハノカミ)の効果を使ったターン、私はモンスター1体でしか攻撃できませんがまぁいいでしょう。

 高闇御津羽龗(タカクラミツハノカミ)白闘気白鯨(ホワイト・オーラ・ホエール)に攻撃。」

 

 天から降りてきた機械の龍が白鯨に襲い掛かるが、それを待っていたんじゃ!

 

「かかったな!トラップカード、ポセイドン・ウェーブ!

 相手モンスターの攻撃宣言時、その攻撃を無効にして、わしのフィールドの魚、海竜、水族モンスター1体に付き800ポイントのダメージをおぬしに与える!」

 

 白闘気白鯨(ホワイト・オーラ・ホエール)は襲い掛かる高闇御津羽龗(タカクラミツハノカミ)を尾鰭で弾き飛ばし、嵐の雨が津波のごとくロジェに降り注ぐ

 

「ぐぅぅ・・・ふふふ。」

 LP4550→2150

 

 じゃが奴は嗤っていた。この攻防すら予想通りとでもいうように

 

「いやはや華麗な反撃、御見それしました。

 さすがは元デュエルチャンピオンと言われたお方だ。」

 

「何?」


 突然街に湧き出した、この気持ち悪ぃライディングロイドとかいうロボットデュエリスト

 ジャックとおっかねぇののデュエルが終わったとたんに出てきたんだが、倒しても倒しても一向に数が減っている気がしねぇ!!

 

「ゲヘへへへヘッ!!・・・・げへへへへへっ!!」

 LP0→4000

 

 つぅか減らねぇ!!

 倒しても倒しても、一瞬止まったかと思えばまた動き出してきやがる!!

 

「ちっ!!どうすりゃ・・・」

 

――サボサボオォォォォォ!!

 

「!!?」

 

 突然発生する大量の光の円錐、あいつらのフィールドに突き刺さっている棘?のようなものから出ていやがる。なんだ?

 

「サボウ・ファイターでニードルトークンに連続攻撃!!」

 

サボウ・ファイター「サボサボサボボサボサボサボサボサボサボサボササボサボォ!!」

 

「ゲヘへへへヘハアアァァ・・・・」

 LP4000→2600→1200→0

 

「ンンッ・・・・」

 LP4000→2600→1200→0

 

「アハアァァ・・・・」

 LP4000→2600→1200→0

 

 俺の前を邪魔していた3体のライディングロイドは円錐に殴りかかるサボテン?によって倒されていった。

 そして、一瞬動きを止めた後、そいつらは何かに閉じ込められるようにして消えていった。今のは・・・

 

「ユーゴ!!」

 

「えっ!?あっ!!お前は!!」

 

 黒と紫のライディングスーツに身を包んだ赤いDホイールに乗った奴

 まぎれもなくゴーストライダー、あのおっかねぇ奴だった。

 

「無事だったか?」

 

「あっ、あったりめぇだろ!俺を誰だと」――ズドンッ!!「!!?」

 

 俺たちの真横のビルにそいつは突然現れた。

 金と銀と黒、その3色の金属で作られた巨大な狐、それが尾から出る青白い炎を治安維持局の天辺に向けて発射している。なんだこいつ!?

 

「機巧狐―宇迦之御魂稲荷(ウカノミタマノイナリ)・・・今度はこいつか

 発射方向からすると、あの天辺でデュエルが行われているのか?」

 

「えっ!?お前、こいつのこと知ってんの?」

 

「あっ、あぁ・・・」

 

 いや、こいつこの世界の人間じゃねぇし、俺が知らねぇカードを知っててもおかしくはねぇか。

 

 こいつらなんなんだろうな?

 さっきからビルの上に乗っかるようにして出てきやがるが・・・中にいる奴らがパニックを起こして、とんでもねぇことになってやがる。

 どこのどいつだよ!!馬鹿でけぇモンスターを出す馬鹿は!!

 

――ホエエェェェェェェェェ!!

 

 今度聞こえたのは、響く様な鳴き声

 治安維持局の周りを泳ぐようにして巨大な白いクジラが浮いていた、あのモンスターは!?

 

白闘気白鯨(ホワイト・オーラ・ホエール)?」

 

「爺さんのモンスターだ!」

 

「えっ?爺さん・・・もしかしてホワイト議長!?」

 

「あぁ!!昔、ってことはこの馬鹿でけぇモンスター使うやつとデュエルしているのは爺さんってことか!!」

 

「・・・それはマズいかもな。

 このモンスターたち実体化しているみたいだから、ダメージも実際レベルで襲ってくるだろうし・・・」

 

「何だって!?」

 

 さっきから何発か、この狐が火の玉飛ばしているがそれが爺さんに向けられてるつぅのか!?

 

「1発300ダメージ・・・よし、ユーゴ、お前クリアウィング使って空から行け!

 モンスターが実体化しているならそれができるはずだ!」

 

「えっ、クリアウィングで空からって・・・その手があったか!!?」

 

 全く考えてなかったぜ。よしなら早速

 

「来い!クリアウィング・シンクロ・ドラゴン!!」

 

 待ってろよ!爺さん!!


 その昔、1人のデュエリストがいた。

 プロの世界で数々のタイトルを制した秀才デュエリスト

 だが、不幸にも事故でプロの道を夢半ばで終えた彼は、今ここで新たな夢を手に戦っている。

 

「おやおや、とぼけるのですか?

 ホワイト・タキ評議会議長、いや、無敗と謳われたデュエルチャンピオン『白滝 蓮』」

 

「ふん、それは捨てた名じゃ

 今ここにいるのは、シティの未来を示した若者の頑張りに水を差した輩にお灸を据えてやろうとやってきた老人にすぎん!」

 

「そうですか・・・カードを1枚伏せて、ターンエンドです。」

 

「わしのターン!ドロー!!

 白闘気海豚(ホワイト・オーラ・ドルフィン)の効果発動!

 1ターンに1度、相手フィールド上の表側表示モンスター1体を対象にして、そのモンスターの攻撃力を元々の攻撃力の半分にする。

 機巧辰―高闇御津羽龗(タカクラミツハノカミ)の攻撃力を半分に!」

 

 高闇御津羽龗(タカクラミツハノカミ) ATK2950→1475

 

「さらに揺海魚デッドリーフを召喚!」

 LP2500→2200

 

 デッドリーフ ATK1500

 

 白い水草のような不気味な魚が現れる。

 宇迦之御魂稲荷(ウカノミタマノイナリ)が火の玉を飛ばしホワイトのライフを削るが彼はそんなことを気にしない

 

「デッドリーフの効果発動

 デッキから魚族モンスター1体を墓地へ送る。

 わしが墓地へ送るのはキラー・ラブカ

 

 そして、レベル4の揺海魚デッドリーフにレベル6のシンクロチューナー、白闘気海豚(ホワイト・オーラ・ドルフィン)をチューニング!

 万物の頂に眠りし臥龍!全知全能の神気を宿し今こそ目覚めよ!シンクロ召喚!

 現れよ!白闘気双頭神龍(ホワイト・オーラ・バイファムート)

 

白闘気双頭神龍(ホワイト・オーラ・バイファムート)「「ギャオオオオォォォォォォォ!!」

       ATK3300

 

 神龍トークン DEF3000

 

 ホワイトが身を削り召喚したのは2本の首を持つ神龍にして白く輝く怪魚

 2本の首は独立しそれぞれで動くことのできる特異なモンスターだ。

 

「このモンスターがシンクロ召喚に成功したとき、自分フィールドに神龍トークンを守備表示で特殊召喚できる。」

 

「なら2体分のダメージを受けてもらいましょう。」

 

「くぅぅ・・・墓地のデッドリーフの効果発動

 このカードを墓地から除外し、墓地の魚族モンスター3体をデッキに戻すことでデッキから1枚ドローする。

 白闘気海豚(ホワイト・オーラ・ドルフィン)、フィッシュボーグ―ランチャー、白棘鱏(ホワイト・スティングレイ)をデッキに戻して1枚ドロー。

 

 さらに白の救済の効果で、墓地の魚族、超古深海王シーラカンスを手札に戻す。

 

 白闘気一角(ホワイト・オーラ・モノケロス)白闘気白鯨(ホワイト・オーラ・ホエール)を攻撃表示に。」

 LP2200→1900→1600

 

白闘気一角(ホワイト・オーラ・モノケロス) DEF1500→ATK2500

白闘気白鯨(ホワイト・オーラ・ホエール)   DEF2000→ATK2800

 

(さっきは動揺して頭が回らんかったが、ビルを人質にしているのなら、海まで連れ出して破壊してくれるわ!)

「バトルじゃ!行け!「バトルフェイズ前にトラップ発動、威嚇する咆哮、このターン相手は攻撃宣言を行えません。」

 

「くっ!またか・・・カードを2枚伏せターンエンドじゃ。」

 

「くくくっ・・・無駄ですよ。

 貴方は何もできはしない。何も変えることのできない朽ちるのを待つだけの老いぼれ

 えぇ、すべては私の筋書き通りに事は進んでますよ。

 モーメントの回転を速めてくれる高レベルシンクロモンスターを呼び出してくれたのだからネエェェェェ!!」

 

――キュイイイイィィィィィィィィィン!!

 

 ロジェは嬉しさのあまり奇声を発し、同時に2人を隔てるように巨大な虹色の輝く塔が現れ、せり上がる。

 

「なっ!?モーメントじゃと!?」

 

 粒子回転発電炉『モーメント』

 この街が創られたきっかけである夢のマシンは、今、一人の男の野望のために使われようとしていた。

 

「貴方も知っているでしょう?

 モーメントをモーメント足らしめている遊星粒子はシンクロ召喚に強く反応し、その回転速度を増すことを。」

 

「!!?

 白闘気双頭神龍(ホワイト・オーラ・バイファムート)を出させるために、知っていて白闘気海豚(ホワイト・オーラ・ドルフィン)を破壊したというのか!?一体何のために!?」

 

「ふふふ、時に議長、貴方、カードの精霊の話は聞いたことありますか?」

 

「カードの精霊じゃと?」

 

 『デュエルモンスターズのカードには精霊が宿っている』それは誰もが一度は耳にする話だ。

 もちろんホワイトとてその話は知っている。

 

「えぇ、と言っても何もおとぎ話をしようというわけではありません。

 研究によって精霊とは、この世界とは別に存在する次元に住まう精神生命体のようなものだとわかりましてね。

 この世界にイマジネーションや、インスピレーションという形で影響を与えているものの様なのです。

 そして、この世界にはデュエルモンスターズという形でその姿を得ている・・・」

 

「それとおぬしの奇行に何の関係がある?」

 

「別次元の生命がこの世界に影響を与えている。

 そこには膨大なエネルギーが発生しているのですよ。次元の壁を超えるようなね。

 その昔この世界の人々はそのエネルギーを使い生活していた、と思われる痕跡すらあるようですよ?

 そして、いつしか、そのエネルギーは人々のイマジネーションと結びつき、新たに『神』と呼ばれる存在を作り出した。

 膨大な力を持ちながらも不完全なその存在は、この世界に現れた精霊を喰らい始め、最終的に封じられることになった。」

 

「まるで意味の分からぬ話をしおって・・・キサマはその『神』とやらを見つけ出したとでもいうのか?」

 

 荒唐無稽な話にホワイトはついていけず、ロジェに対して適当なことを言った。

 だが、その言葉は本当のことだった。

 

「えぇ!!そうですよ!!

 その『神』はこの世界と壁を一枚隔てた異空間に封じられている!

 モーメントを発射台として、次元の壁に影響を及ぼす精霊の残り香『デュエルエナジー』を集積照射すれば、その壁を破壊できるのです!」

 

 ロジェの語りに対応するようにモーメントにシリンダー内に入っているオレンジ色のエネルギー『デュエルエナジー』が注入される。

 

「そして私はその『神』の力を手に入れ、私自身がこの世界を統べる‟神”となるのです!!」

 

―――ギュウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ・・・ビュウゥゥゥゥゥ・・・

 

 そしてそれは空に向けられ放たれた。

 螺旋の輝きが次元の壁をガラスの様に砕いていき

 

――パリッ、パリッ!パキイィィィン!!

 

 その城は姿を現した。

 

「何じゃ・・・あれは?」

 

 それは城というにはあまりにも不格好で、古代に作られたものにしては新しすぎる鉄の塊

 

「あれこそ天空城セイバル!

 古代の神官たちに封印されし『究極神』の眠る地!」

 

「まさか・・・ほんとうに!?」

 

「さぁ、貴方の死をもって復活の儀式としましょう!

 私のターン!私は機巧鳥―常世宇受賣長鳴(トコヨウズメノナガナキ)を召喚!」

 

 常世宇受賣長鳴(トコヨウズメノナガナキ) ATK950

 

「ぬぅ!?わしはトラップカード、白の咆哮(ホワイト・ハウリング)を発動

 自分フィールド上に水属性モンスターがいる場合、相手の墓地のマジックカード、強欲で貪欲な壺を除外して、このターン相手フィールドのマジックカードの効果は無効になる。」

 

「ムダダァ!!私は常世宇受賣長鳴(トコヨウズメノナガナキ)の効果を発動!

 機巧牙―御神尊真神(オンカミコトノマカミ)をリリースし、デッキからチューナーモンスター、トルクチューン・ギアを特殊召喚!」

 

 トルクチューン・ギア DEF0

 

 現れたのはギアをいくつか組み合わせたエンジンのようにも見えるパーツ

 

「レベル2の機巧鳥―常世宇受賣長鳴(トコヨウズメノナガナキ)にレベル1のトルクチューン・ギアをチューニング!

 現れなさい!レベル3、シンクロチューナー、ブリキの軍奏!」

 

 ブリキの軍奏――バアアアァァァァァァァ!!

       DEF2200

 

「ブリキの軍奏がシンクロ召喚に成功した場合、自分の墓地のチューナー1体を選択し特殊召喚できる。

 再び、トルクチューン・ギアを特殊召喚!」

 

 トルクチューン・ギア DEF0

 

 ブリキ板でできた動く複合楽器が、調律するものを再び呼び起こす。

 

「墓地の機巧鳥―常世宇受賣長鳴(トコヨウズメノナガナキ)の効果発動

 このカードを除外し、機巧猪―伊服岐雹荒神(イブキノヒョウアラガミ)を手札に加える。

 このモンスターは自分フィールドに同じ攻守の数値を持つモンスターがいる場合、特殊召喚できます!」

 

 伊服岐雹荒神(イブキノヒョウアラガミ) ATK1850

 

 街に現れる巨大な猪、だがそれもこれから呼び出される災厄の為の贄でしかない。

 

「レベル3のブリキの軍奏にレベル4の伊服岐雹荒神(イブキノヒョウアラガミ)をチューニング!

 シンクロ召喚!レベル7、F.A.(フォーミュラアスリート)ライトニングマスター!」

 

 ライトニングマスター ATK0→2100 (チューナー)

 

 雷を放ちながら走るレーシングカーが2人の前に停車する。

 白を基調にした煌めくボディ、だが、そこから宇迦之御魂稲荷(ウカノミタマノイナリ)と共にどす黒い瘴気のようなものがあふれ、ロジェに集まっていく

 

「おぉ・・・これぞ、私の追い求めていた力・・・究極の神の力!!」

 

「何じゃあれは!?」

 

「さぁ名も無き神よ。貴方の誕生を私が祝いましょう。

 私があなたに名を与えましょう。私があなたにカタチを与えましょう。

 ブリキの軍奏を使ってシンクロ召喚されたモンスターはチューナーとして扱う。

 私はレベル7の機巧狐―宇迦之御魂稲荷(ウカノミタマノイナリ)にレベル7のF.A.(フォーミュラアスリート)ライトニングマスターをマイナスチューニング!!」

 

「マイナスチューニングじゃと!?

 それにレベル7からレベル7を引いたら・・・」

 

 本来シンクロ召喚はモンスターのレベルをプラスしていく進化を象徴する召喚法

 だが、その召喚は無へと向かう召喚

 

「さぁ!見なさい!!その目に焼き付けなさい!!

 長き眠りから解き放たれし、混沌の次元より湧き出せし力の源!!原点にしてすべての頂点!!

 この現世で、その無限の渇望を暫し潤すがよい!!」

 

 2体のモンスターの7つの星がセイバルに取り込まれ、その中に捕らわれし者『神』を目覚めさせる。

 

「神降せよ!!アルティマヤ・ツィオルキン!!」


――ギュオオォォォォォォォォォオオオオオォォォォォオオォオオォォ・・・・

 

「なんだありゃぁぁぁああぁぁぁぁ!?」

 

 治安維持局に向かうユーゴが見たものは赤いエネルギーの奔流のような龍

 

クリアウィング「グゥゥ・・・」

 

「どうしたんだ!?クリアウィング!?」

 

 その龍は精霊の残り香のようなエネルギーから生まれた虚ろの神

 ゆえにその存在そのものが、精霊の力を脅かす。

 クリアウィングの翼の輝きが衰え、明らかな不調を露わにしたがユーゴを手放すようなことはなく治安維持局への飛行を続ける。

 

「よし、もう少しで爺さんの所に」

 

――ドゴオオォォォォォォォ!!

 

「なっ!?なんだぁ!!?」

 

 突然として、治安維持局の最上部分が爆発した。

 立ち上がる黒煙、崩れ落ち消えていく白き海獣たち、そして

 

「!!?爺さん!!」

 

 ホワイト・タキが敗者の末路とばかりに地上に向かって落ちていく

 

「爺さああぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」

 

クリアウィング「グオオォォォォォォォォ!!」

 

 ユーゴとクリアウィングは加速する。風のごとく、光のごとく

 夢の翼は、夢の片翼を逃しはしなかった。

 

「おい!爺さん、しっかりしろ!?」

 

「うぅ・・・ユーゴ・・・か?」

 

「あぁ、何があった!?」

 

「すまぬ、ロジェにやられてしもうた・・・まさかあんな・・・」

 

「なにがあったんだよ!?」

 

 あった出来事についてホワイトはユーゴに言いにくそうに目を伏せたが、この緊急時に話さないわけにもいかず

 

「・・・・・・上を見てみればわかると思うぞ・・・」

 

「上?なっ!!?」

 

 煙が晴れた先、そこにいたのは曲がった角、傷だらけの体、炎を宿した右腕

 

「レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライトだとっ!!?」




何!?俺のレッド・デーモンって紫じゃないか!!?

うぅん、なぜかコピーしたらこの様な色になってしまったのですよねぇ?

紫・・・黄色と青もいるんじゃないだろうな・・・

ジャックの魂をてめぇなんかに使わせてたまっかよ!!
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『究極神 アルティマヤ・ツィオルキン』
「「「ライディングデュエル!アクセラレーション!!」」」


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究極神 アルティマヤ・ツィオルキン

お久しぶりです。
なかなか納得いかなくて時間がかかってしまいました。
別々の場所で動いているキャラを場面転換無しで表現するって難しいですね。

そしてやっときましたね[スターヴ・ヴェネミー・ドラゴン]
この調子でアークヴェノムも早よ!


「ハァ・・・ハァ・・・・・!!」

 

 タリナイ・・・ミタサレナイ・・・・・

 

「なっ!?なんですかこの飢餓感は!?」

 

 タリナイ・・・ミタサレナイ・・・・・

 

「十分、精霊も喰わせたでしょう!?」

 

 モット・・・・モット!!

 

「フヒヒ・・・そうですか・・・

 いいでしょう、それならばこの世界の全てのカードを貴方に捧げましょう!

 その為には・・・」

 

 私は目の前で飛行する竜に乗る少年と次々とライディングロイドを処理していく2人のDホイーラーに目を向ける。

 

「また利用させてもらいますよ。デュエリストども。」


 近未来的な街並みと、その下のスラム街という二極的な光景が広がる『シティ』

 成功と栄光、失敗と腐敗の交差するその街の上に異質なソレは現れた。

 

 赤い流水のようにも炎のようにも見える実体の定まらない体

 

 人知を超えた圧倒的な威圧感

 

 そして、幻想そのものから現れたことを表す龍と言うその存在

 

 それはまさに神という“災害”だった。

 

『日影!月影!コントロールは受け付けないのか!!?』

 

『駄目でござる!コントロールパネルとの接続もネットも切れている!』

 

『零児殿!拙者らもこのまま収容所の防衛にあたるでござる!』

 

 年若い声が無線から響いてくる。

 

『おい!こっちで本当にあってるんだろうなぁ!?』

 

『私を信じろ!・・・そら!いたぞ!!』

 

『だぁぁぁ!?敵だらけじゃねぇか!?迎撃場所に向かってたんじゃねぇのかよ!?』

 

 本局との連絡が途絶えて以降、評議会の命の下、暴走したライディングロイドから市民を守るために主要施設をシェルターとして利用、我々セキュリティはその防衛にあたっていた。

 

『何をやっておるのだ・・・沢渡とセレナは・・・』

 

『敵!・・・来た!!』

 

『スタジアムにもあのロボットが来たわ!!』

 

『ここは通さない!!』

 

 スタジアム、議会堂等、大型施設に住民を避難させ、そこにやってきたライディングロイドをこの声の主たちが迎撃する作戦のようだ。

 とはいえ、彼らは少人数らしく動けない住民がいるが多数存在する施設にまで手が回らない。例えばそう、ここのような病院などは

 

『赤馬社長!さっきの衝撃で本局の人たちに怪我人がいっぱい出ている!

 どこに運べばいい!?』

 

『デニス!怪我人は、中央3の病院へ搬送を!黒咲、君は』

 

『分かっている!そこへ怪我人を運べばいいのだろろう?』

 

「227!!聞いていた通りだ!本局からの負傷者がここに運び込まれてくる!!

 奴らが来る可能性も高くなるが・・・」

 

「あぁ、俺たちの使命はこの街の治安と安全を守ること・・・わかっているさ。」

 

 無線機をしまいあたりを警戒する。

 セキュリティとなって初めての任務で俺の目の前で人が死んだ。

 人を救ってその男は死んだ。男が救った人はテロリスト紛いの思想を持つ犯罪者だった。

 なぜ救った男が死んで、救われた犯罪者が生きているのか・・・

 あれからずっとそれが俺の中に渦巻いているが

 

「犯罪を撲滅することは人を救わない理由じゃないな。」

 

 今、俺の守るべき後ろにはその犯罪者がいるのだから

 

『聞け!愚かなシンクロ次元の住民どもよ!!』

 

 !!?


「サボウ・ファイターでニードルトークンに攻撃。」

 

「くはぁぁぁ!!」

 LP400→0

 

 ライディングロイドをサボウ・ファイターの無限ループで蹴散らしながら治安維持局に進む俺だったが、こいつら一向に減らないな・・・

 無視してロジェを潰すか?いや、こいつらにやられた奴のカードを見ると白紙になっていたから、こいつら邪眼神的な機能があるらしい、見逃すと究極神の力を増してしまいそうだし、みんなの負担を考えたら出会い頭に潰していく方がよさそうだ。

 

『聞け!愚かなシンクロ次元の住民どもよ!!』

 

 !!?

 

『最高評議会議長、ホワイト・タキはこの私が下した。

 そう、君たちのルールに乗っ取り勝者となった私はこの街で最高の権力を、そして神を従えた私は最強の力を手に入れたのだ!』

 

 ・・・・はぁ?

 

『この力を使えばこの世界そのものを私の思いのままにできるゥ!

 私に従うのなら、私の作り出す新世界に歓迎しようではありませんか。』

 

 なんだ、こいつ?

 よくわからない理論で、よくある悪役のような言葉を吐いている。

 

『ただ、我が神は酷く空腹のようだ・・・5000年以上も続くこの飢えを満たすための生贄が必要のようでしてねぇ?

 強きデュエリストの魂を持つもの、君達の魂がね。』

 

 赤く輝くハイウェイの上空、とはいえロジェのいるであろう治安維持局のビルの屋上部分に水平になるように鏡写しの赤き竜の紋章が浮かび上がる。

 御誂え向きと言うように、俺の近くにその紋章から光で作られたスロープが伸びてくる。

 これは・・・


『さぁ!選ばれし生贄たちよ!!

 その身をこの神にささげるためにこの天空コースに駆け上がりなさい!!

 この私に敗れる栄誉を与えてやりましょう!!』

 

「何だと!この野郎!!」

 

 空に浮かぶ映像に向かって俺は叫ぶ

 生贄だと?そんなもののどこが栄誉なんだ!!

 

「ユーゴよ、行くのか?絶対罠じゃぞ?」

 

「罠?そんなもんでビビる俺じゃねぇぜ!」

 

 飛び超えちまえば良いんだからな!!

 

「はぁ~相変わらずバカな奴じゃのう・・・もういい、行って来い。ユーゴ!」

 

「おうよ!じゃあ、行ってくるぜ!!」

 

 俺たちの街をめちゃくちゃにしたことを後悔させてやる機会が向こうから転がり込んできたんだ!むしろ


 好都合だ!!

 雑魚ロボットどもを蹴散らし、治安維持局に向かい奴を締め上げる気だったが

 向こうから誘いが来るとはな!

 

――ギュウウウウゥゥゥゥゥゥン!!

 

 赤い光のスロープを昇る。

 俺と同じようにロゼの奴がこのコースへと上がり、さらにユーゴもこの場に現れる。

 

「ふへぇ~この赤い光本当に足場になってるんだな・・・

 えっ?ジャック!!それに赤い奴も!?」

 

 3人同時にこの場に呼び出しただと?俺たち全員を相手にするつもりか?

 

『ふふふ、神の力の前には人など無力だということを教えてあげましょう。貴方たち三人をまとめて我が神の捧げものにしてあげることでね。

 ルールは3VS1、貴方たちのフィールド、墓地、ライフは共通、初期ライフは互いに12000、攻撃は2ターン目から可能。

 ただし私はファーストターン先取で私のターンで2ターンの間、手札が6枚になるようにドローさせてもらいます。』

 

「変則的だが、タッグフォースルールという訳か・・・」

 

 ロゼが奴の仕掛けたこのデュエルのルールを分かりやすく言う。

 俺たちは3人でターンを回し、奴は1人で3人分のターンを回すということだ。

 その分奴のデッキ圧縮率は凄まじいものになるだろうが・・・

 

「ふん!いいだろう!

 その程度のハンディでいいのならくれてやるわ!!」

 

 他の二人もそれで異論はないようで、スタート姿勢に入る。

 

『さぁ!始めましょう!

 我が野望のためのデュエルを!!』

 

 ふんっ!!キサマにこの街を好きにはさせん!

 ちんけな野望など、このジャック・アトラスが蹴散らしてくれる!!

 

――キイィィィィィィィ!!

――ブオオォォォォォォ!!

――キイイイイィィィィ!!

 

「ライディング!」「デュエル!」「アクセラレーション!」

 

『『『『決闘(デュエル)!!』』』』


 ジャックとチームを組んでのデュエル・・・こんな状況じゃなきゃ最高なのによ。

 それも三対一とか舐めやがって!

 しかし・・・長官の髪って黒だったっけか?

 

『では私の先攻、私はマジックカード、強欲で貪欲な壺を発動し、デッキトップのカードを10枚除外、その後2枚ドローする。

 さらにマジックカード、チューナーズ・ハイを発動

 手札のモンスターカードを捨て、そのモンスターよりレベルの一つ高い同じ種族、属性を持つチューナーモンスターを特殊召喚します。

 私はレベル1、風属性機械族の音響戦士(サウンドウォリアー)ベーシスを捨ててデッキからレベル2の音響戦士(サウンドウォリアー)ドラムスを特殊召喚。』

 

 ドラムス DEF700

 

 現れたのはドラムセットに手足が生えたような機械族チューナー

 爺さんから聞いた話じゃ、あの馬鹿でけぇモンスターもこいつのだったらしいが守備ばっかのバーン戦法なんてチキンな奴らしいが・・・

 

『墓地の音響戦士(サウンドウォリアー)ベーシスの効果発動

 このカードを除外することで、自分フィールド上の音響戦士(サウンドウォリアー)モンスターのレベルを私の手札の数分アップさせます。

 私の手札は4枚、よってドラムスのレベルは2から6へアップ!』

 

 ドラムス LV2→6

 

『さらに私のカードが6枚以上除外されていることにより、レベル6の機巧牙―御神尊真神(オンカミコトノマカミ)をリリースなしで召喚できます。』

 

 御神尊真神(オンカミコトノマカミ) ATK2150

 

御神尊真神(オンカミコトノマカミ)が召喚されたことにより効果発動

 手札を1枚捨てデッキから御神尊真神(オンカミコトノマカミ)以外の攻守が同じモンスター1体を手札に加えます。

 機巧鳥―常世宇受賣長鳴(トコヨウズメノナガナキ)を捨て、機巧蛙―磐盾多邇具久(イワタテノタニグク)を手札に加えます。

 

 さぁ見せてあげましょう我が神を!!

 私はレベル6の機巧牙―御神尊真神(オンカミコトノマカミ)にレベル6となった音響戦士ドラムスをマイナスチューニング!!』

 

「なにっ!?レベル6からレベル6をマイナスするだと!?」

 

 ジャックが驚きの声を上げる。そりゃそうだな、俺だってこんな0に向かうシンクロなんて信じられねぇ・・・

 あれ?あいつは全然驚いてないんだな?

 

『混沌の次元より湧き出せし力の源!!原点にしてすべての頂点!!

 この現世で、その無限の渇望を暫し潤すがよい!!

 さぁその身を震わしなさい!私の力に屈しなさい!!神降!アルティマヤ・ツィオルキン!!』

 

 巨大な機械の狼の内にある星がドラムセットの中の星と打ち消し合う。

 その打ち消し合い残った虚空から赤い血のようなエネルギーが漏れ出し、それがあの、赤き竜になる。

 

アルティマヤ・ツィオルキン「キュオオオオォォォォォォォォォォォォ!!」

             DEF0

 

「レベル0のシンクロモンスターだと!?」

 

「こいつが爺さんの言ってた奴か!」

 

『ふふふ、さぁ私の力をたっぷりと味あわせてあげましょう!

 カードを2枚セット、これにより、アルティマヤ・ツィオルキンの効果が発動

 自分フィールドにマジック、トラップカードが伏せられたとき、エクストラデッキからレベル7か8のドラゴン族シンクロモンスターを特殊召喚する。

 さぁ、我が元に傅きなさい!クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン!!』

 

「「「なっ!?」」」

 

 クリスタルウィングだとっ!?

 

クリスタルウィング「グルル・・・・」

         ATK3000

 

 現れたのはまさにクリスタルウィングだ、だが綺麗に輝く水晶の翼は真っ黒になり、体の色も赤くなって、さらにその胸にあの赤い竜と同じような目の模様が胸に浮かび上がる。

 

「おい!コピーカードは禁止じゃないのか!?」

 

 ここにきて、赤いやつが口を開く、コピーカード!?

 

『コピーではありません、ちゃんと公式に認証されたレプリカです。

 なぜかあなた方のカードはこのようなミスが起こる上、ちゃんとカードになったのが数枚だけと不可解なことが起こったのですが何故でしょうね?』

 

「知るか!!

 てめぇ!ジャックのレッド・デーモンズだけじゃなく、俺のカードまで!!」

 

『おや?おかしなことを言う。

 カードとは誰でも手に入るものでしょう?なら私が使っても問題などありませんよね?』

 

 屁理屈こねやがって!!わざわざ自分で使うためにレプリカ作ったんだろうが!!

 

「ユーゴ、落ち着け。

 相手のペースに乗せられるな。」

 

「ちっ!分かってるよ・・・」

 

『ふふふ、怖い怖い。コモンズの狂犬どもは些細なことで噛みついてきますねぇ?

 墓地の機巧鳥―常世宇受賣長鳴(トコヨウズメノナガナキ)の効果を発動

 このカードを除外することで、除外されているカードの中から攻守の数値が同じ機械族モンスター、古代の機械熱核竜(アンティーク・ギア・リアクター・ドラゴン)を手札に加え、ターンエンドです。』

 

 だがな!俺と同じカードを使ってロクでもねぇことをしようってのは気にくわねぇんだよ!!       

 

「最初は俺から行くぜ!ドロー!!」

 

『ドローフェイズ終了時に私はトラップカード、サブテラーの継承を発動します。

 このカードは手札、フィールドのモンスターカードを1枚墓地へ送り、そのモンスターと同じ属性のカード名が異なるリバースモンスター1体を手札に加えます。

 私は地属性の古代の機械熱核竜(アンティーク・ギア・リアクター・ドラゴン)を墓地へ送り、デッキから星なる影(ネフシャドール) ゲニウスを手札に加えます。

 そして、このカードは発動後、墓地へ送られずそのままセットします。』

 

「なにぃ!?それじゃ!?」

 

『えぇ、アルティマヤ・ツィオルキンの効果が発動します。

 私は2体目のクリスタルウィング・シンクロ・ドラゴンを特殊召喚。』

 

クリスタルウィング「グオォ・・・・」

         ATK3000

 

『アルティマヤ・ツィオルキンは自分フィールド上に他のシンクロモンスターが存在する限り、攻撃にも効果の対象にもなりません。』

 

 先に2体のクリスタルウィングをどうにかしなきゃならねぇってことか・・・

 やってやろうじゃねぇか!!

 

「俺はチューナーモンスター、SR(スピードロイド)カールターボを召喚!

 さらに速攻魔法、スピードリフトを発動

 このカードは自分のフィールドのモンスターが、チューナー1体のみの場合、デッキからレベル4以下のSR(スピードロイド)を特殊召喚する。

 来い!レベル4モンスター、SR(スピードロイド)シェイブー・メラン!」

 

 カードにエンジンがついたようなのと、ブーメランが変形したロボットが俺のフィールドに並ぶ

 クリスタルウィングもレッド・デーモンズも好きにさせてたまっかよ!

 

「さらにマジックカード、アイアンドローを発動

 こいつは俺のフィールドに機械族モンスターが2体のみいるとき、俺はデッキから2枚ドローする。

 このカードの発動以降、このターン俺は特殊召喚を1度しか行えない。」

 

『ならば私もトラップカード、針虫の巣窟を発動させてもらいます。

 私のデッキより、上から5枚のカードを墓地に送ります。』

 

 ちっ!超電磁タートルが落ちやがった!

 おまけに・・・なら、俺の今やることは・・・

 

「俺はレベル3のカールターボにレベル4のシェイブー・メランをチューニング!

 その美しくも雄々しき翼翻し、光の速さで敵を討て!シンクロ召喚!!

 行くぜ!クリアウィング・シンクロ・ドラゴン!!」

 

クリアウィング「ギャオオオォォォォォォ!!」

       ATK2500

 

 よっしゃ行くぜ、相棒!

 

『墓地のトラップカード、迷い風の効果を発動

 相手のエクストラデッキからモンスターが特殊召喚された場合、墓地のこのカードは自分フィールドにセットできる。』

 

「・・・俺はマジックカード、ヒドゥン・ショットを発動

 自分の墓地のスピードロイドモンスターを2体まで除外し、除外した数だけフィールドのカードを対象にして発動し、対象のカードを破壊する。

 俺はカールターボとシャイブー・メランを除外してクリスタルウィング2体を破壊する!」

 

 2体のスピードロイドから出た雷が2体のクリスタルウィングを破壊する。

 あいつはモンスター効果にはめっぽう強いが、マジック、トラップの効果には無力だからな!

 使っている俺が一番よく知ってる。後は・・・

 

「バトルだ!クリアウィングでアルティマヤ・ツィオルキンに!」

 

『墓地の超電磁タートルの効果を発動

 このカードを相手ターンに除外することで、バトルフェイズを強制終了します。』

 

 これで1枚目、次のターン絶対に使ってくるはず・・・。

 

「カードを2枚伏せてターンエンドだ!」


『私のターン、6枚になるようにドローします。

 まずは伏せられているトラップカード、迷い風を発動。

 特殊召喚された表側表示モンスター1体を対象にし、そのモンスターの効果を無効にし、元々の攻撃力を半分にします。

 私が対象とするのはクリアウィング・シンクロ・ドラゴン。』

 

クリアウィング「グウゥゥ・・・・」

       ATK2500→1250

 

「ちっ!」

 

 想い人がよく使っていたカードをロジェに使われ、いい気がしないユーゴが舌打ちをする。

 そんなユーゴのことをつゆほどにも構わないロジェは、束縛の無くなった自らの神の力を振るう。

 

『さらにトラップカード、サブテラーの継承の効果を発動

 手札の機巧蛙―磐盾多邇具久(イワタテノタニグク)を墓地へ送り、デッキからリバースモンスター、2枚目の星なる影(ネフシャドール) ゲニウスを手札に加え、このカードを再セットします。

 そして私の場にカードが伏せられたことにより、アルティマヤ・ツィオルキンの効果が発動!

 さぁ!私に従いなさい!神の僕たる決闘竜(デュエルドラゴン)よ!魔王龍 ベエルゼ!』

 

ベエルゼ「グオオオオォォォォォォ!!」

    ATK3000

 

 無数の蠅が集まり現れる魔王龍

 その胸にはクリアウィングと同じようにアルティマヤ・ツィオルキンの支配下の証たる目の模様が浮かび上がる

 

「ベエルゼ・・・」

 

『ふふふ、ロゼ・ジェスター、あなたには感謝してますよ。

 このカードの力とモーメントの回転を高めてくれたあなたにはねぇ!

 メインディッシュである、あなたには痛みなく葬り去ってあげられるように、前菜に苦痛で一味加えてあげましょう!

 墓地の機巧蛙―磐盾多邇具久(イワタテノタニグク)の効果発動

 このカードを除外し、墓地の同じ攻守を持つ機械族モンスター、音響戦士(サウンドウォリアー)ドラムスを特殊召喚。』

 

 ドラムス ATK700

 

『バトル、ベエルゼでクリアウィング・シンクロ・ドラゴンに攻撃。』

 

「永続トラップ発動!追走の翼!

 自分フィールドのシンクロモンスター1体を対象にして、そのモンスターは戦闘及び相手の効果で破壊されず、対象モンスターがレベル5以上のモンスターと戦闘を行うダメージステップ開始時、そのモンスターを破壊する!」

 

『残念ですが、ベエルゼは戦闘及び効果で破壊されません。』

 

 ベエルゼの吐く無数の蟲がクリアウィングに向かうが、それをクリアウィングは急加速して突っ切りベエルゼに向かって体当たりを仕掛けようとするが、ベエルゼは自身の体を蠅に崩して回避、吐かれた蟲の残りはユーゴを襲った。

 

「ぐうぅぅう!!だ、だが、俺がダメージを受けたことで手札のSR(スピードロイド)―OMKガムの効果が発動できるぜ!

 こいつはバトルフェイズ中に俺がダメージを受けた場合、特殊召喚できる!」

 LP12000→10250

 

OMKガム「ハッ!」

    ATK0

 

「さらにこの効果で特殊召喚に成功したバトルフェイズ中、このカードを含む風属性モンスターのみを素材にしてシンクロ召喚を行うぜ!

 俺はレベル7のシンクロモンスター、クリアウィング・シンクロ・ドラゴンにレベル1のOMKガムをチューニング!

 神聖なる光蓄えし翼煌めかせ、その輝きで敵を討て!シンクロ召喚!

 来い!レベル8!クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン!!」

 

クリスタルウィング「ギャオオオオォォォォォォォォ!!」

         ATK3000

 

 まとわりつく不安の風を振り払い、透明な翼が箱型が空中変形したロボと共に生まれ変わり、ロジェの召喚したまがい物と違う空を思わせる配色の美しい水晶竜が咆哮する。

 

『ふむ、では墓地の2枚目の迷い風の効果を発動、このカードをセットします。』

 

「なら俺もシンクロ素材として墓地に送られたOMKガムの効果発動だ!

 デッキの一番上のカードを墓地へ送り、そのカードがスピードロイドモンスターなら、クリスタルウィングの攻撃力は1000ポイントアップする。

 墓地に送られるのは・・・SR(スピードロイド)ベイゴマックス!スピードロイドだ!よってクリスタルウィングの攻撃力は4000にパワーアップ!」

 

クリスタルウィング「ギャオオォォオオォォォォォォ!!」

         ATK3000→4000

 

『メインフェイズ2に入り、墓地の2体目の音響戦士(サウンドウォリアー)ドラムスを除外し効果発動

 自分フィールド上の音響戦士(サウンドウォリアー)の属性を宣言した属性に変えます。

 私はドラムスの属性を風から闇属性に変更、カードをさらに3枚伏せてターンエンドです。』

 

(これで手札には星なる影(ネフシャドール) ゲニウスが2体

 次のターンまでロジェは6枚になるようにドローできるから、伏せはブラフもあり得るか・・・大トリはジャックにやってもらうとするなら)

「次は俺が行こう。ドロー。」

 

『ドローフェイズ終了時にトラップカード、迷い風を発動

 あなた方のフィールドのクリスタルウィング・シンクロ・ドラゴンを封じさせてもらいますよ!』

 

 クリスタルウィング ATK4000→2500

 

(これで2枚目・・・)

「俺はスケール6のEM(エンタメイト)ギタートルとEM(エンタメイト)リザードローをセッティング

 ギタートル発動中にペンデュラムゾーンにEM(エンタメイト)カードが置かれたことにより1枚ドロー

 さらにリザードローの効果、もう片方のペンデュラムゾーンにEM(エンタメイト)が発動中の場合、このカードを破壊しもう1枚ドローできる。

 

 さらにマジックカード、ペンデュラム・コールを発動

 手札を1枚捨て、デッキから名称の異なる魔術師ペンデュラムモンスターを2体手札に加える。

 俺が手札に加えるのは調弦の魔術師と賤竜の魔術師

 

 さらにさらにマジックカード、調律を発動し、デッキからシンクロンチューナー、EM(エンタメイト)オッドアイズ・シンクロンを手札に加え、デッキをシャッフル、その後デッキの一番上のカードを墓地へ送る。」

 

 ペンデュラムの性質上、自分のエクストラデッキに貯めても次のプレイヤーとなるジャックに繋げることはできない。

 共有している墓地にカードを溜めることはできるが、生憎遊矢の今の手札ではそれはかなわない。

 さらに言えばこのターンで決着を付けられるような手札でもない

 

(それなら、ロジェの妨害策をできるだけ潰してジャックに繋げる!)

「スケール2のEM(エンタメイト)ダグ・ダガーマンをセッティング、これでスケールは6と2、レベル5から3のモンスターが特殊召喚可能となった!

 揺れろペンデュラム!異界へとつながる扉となれ!ペンデュラム召喚!

 来い!エクストラデッキのレベル3、EM(エンタメイト)リザードロー!手札のレベル4、調弦の魔術師!

 

 そして調弦の魔術師の効果発動

 このカードが手札からのペンデュラム召喚に成功した場合、デッキから調弦の魔術師以外の魔術師ペンデュラムモンスター1体を効果を無効にして守備表示で特殊召喚出来る。

 来い!レベル3、刻剣の魔術師!」

 

リザードロー「クルルッ!」

      ATK1200

 

調弦の魔術師「あはははっ!」

      DEF0

 

刻剣の魔術師「はっ!」

       DEF600

 

 ギターのような亀とナイフの曲芸師の間に生まれた光のペンデュラムの内より現れるのは光の柱より一旦退場したトカゲの紳士と、少し成長した音叉の杖を持つピンク髪の魔術師、そしてそれに続いて剣士の少年が現れた

 

「俺はレベル3の刻剣の魔術師にレベル4の調弦の魔術師をチューニング!

 集いし奇跡が未知を照らす灯火となる!光さす道となれ!シンクロ召喚!!

 未来へ飛び立て!シンクロチューナー、シューティング・ライザー・ドラゴン!!」

 

シューティング・ライザー「ギョオオォォォォォォォオォォ!!」

            ATK2100

 

「シューティング・ライザー・ドラゴンがシンクロ召喚に成功した時、デッキからこのカードより低いレベルを持つモンスターを墓地に送ることで、このカードのレベルをそのモンスターのレベル分下げる。

 この効果で墓地に送られたモンスターと同名のモンスターはこのターン、モンスター効果を発動できない。

 俺は2体目のEM(エンタメイト)ダグ・ダガーマンを墓地へ送りシューティング・ライザー・ドラゴンのレベルを2にする。」

 

 シューティング・ライザー LV7→2

 

「レベル8のシンクロモンスター、クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴンにレベル2となったシューティング・ライザー・ドラゴンをチューニング!

 集いし絆が拳に宿り、鋼を砕く意思と化す!光さす道となれ!!アクセルシンクロ!!」

 

シューティング・ライザー「ギュオオォォォォ!!」

クリスタルウィング「ギャオオォォォォォォ!!」

 

――ブォン!

 

 遊矢、シューティング・ライザー、クリスタルウィングが加速の向こうへと一瞬姿を消す。

 星光と空の結晶が交わり、現れるのはこの街を思う男が遺した星の守護神

 

「生来せよ!スターダスト・ウォリアー!!」

 

スターダスト・ウォリアー「ウオオォォォォ!!ハッ!!」

            ATK3000

 

『ならば、その特殊召喚成功時、トラップカード、サブテラーの継承を発動

 その二つ目の効果で手札のリバースモンスター、星なる影 ゲニウスを墓地へ送り、デッキからそのレベルより低い同じ属性のモンスター1体を手札に加える。

 私が手札に加えるのはレベル3の機巧蛙―磐盾多邇具久(イワタテノタニグク)

 

 そして、効果で墓地へ送られた星なる影(ネフシャドール) ゲニウスの効果が発動

 フィールド上のモンスター1体を対象にし、このターン、その効果モンスターはフィールドで発動する効果を発動することはできない。

 スターダスト・ウォリアーの効果をこのターン封じます。』

 

(わざわざ、スターダスト・ウォリアーにゲニウスの効果を使った・・・となると一枚は確定か?)

 

「さらにサブテラーの継承が再セットされたことにより、アルティマヤ・ツィオルキンの効果が発動

 3体目のクリスタルウィング・シンクロ・ドラゴンを特殊召喚します。」

 

 クリスタルウィング ATK3000

 

 3体目のロジェのクリスタルウィングは煙水晶を思わせる灰色

 その効果によりこのターン、モンスター効果が妨害されることになるが、すでに遊矢の手には対抗策があった。

 

「なら速攻魔法、墓穴の指名者を発動!」

 

『なっ!?』

 

「相手の墓地のモンスターを1体除外し、次のターンの終了時まで、このカードで除外したモンスター及び、そのモンスターと元々のカード名が同名のモンスターの効果は無効になる。

 俺が除外するのはクリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン!」

 

 ロジェがこのデュエルで初めて驚愕の声を上げる。

 ベエルゼの耐性、クリスタルウィングの妨害、それがロジェの講じていたロゼこと遊矢への対抗策

 その一角があっさりと喪失した。

 

「さらにEM(エンタメイト)オッドアイズ・シンクロンを通常召喚

 その効果により墓地のレベル3以下のEM(エンタメイト)モンスター、フレンドンキーを特殊召喚!」

 

オッドアイズ・シンクロン「ハッ!」

            ATK200

 

フレンドンキー「ブヒィーン!」

       ATK1600

 

 遊矢のフィールドに信号機のような目を持つ球状のモンスターと、シルクハットをかぶったロバが現れる。もはやこれを止めるすべをロジェは持ち合わせていない。

 

「ペンデュラム効果はモンスター効果ではない。

 よってダグ・ダガーマンのペンデュラム効果発動!

 このカードが発動したターンのメインフェイズ、墓地のEM(エンタメイト)を1体手札に戻すことができる。

 俺はEM(エンタメイト)ダグ・ダガーマンを手札に加える。

 そしてオッドアイズ・シンクロンの効果発動

 1ターンに1度、自分のペンデュラムゾーンからモンスターを1体効果を無効にして特殊召喚し、そのカードとこのカードでシンクロ召喚を行う!

 レベル5のEM(エンタメイト)ダグ・ダガーマンを特殊召喚し、レベル2のオッドアイズ・シンクロンをチューニング!

 2色の眼に写る七つの星よ、流星と共に降り注げ!シンクロ召喚!

 星紡ぐ戦竜、オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン!!」

 

オッドアイズM「ギャオオオオォォォォォォォォ!!」

       ATK2500

 

「メテオバーストの効果発動

 このカードが特殊召喚に成功したとき、自分のペンデュラムゾーンのカード1枚を特殊召喚できる。

 EM(エンタメイト)ギタートルを特殊召喚。」

 

 ギタートル DEF400

 

「さらにレベル7のシンクロモンスター、オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴンにレベル3のペンデュラムモンスター、EM(エンタメイト)リザードローをチューナー扱いでチューニング!

 時の狭間に至る極地、刮目して確と見よ!シンクロ召喚!

 目覚めよ!涅槃の超魔導剣士(ニルヴァーナ・ハイ・パラディン)!!」

 

 赤き流星が時の狭間に至り、悟りを開きし超魔導剣士を呼び起こす。

 

涅槃の超魔導剣士(ニルヴァーナ・ハイ・パラディン)「はっ!!」

        ATK3300

 

涅槃の超魔導剣士(ニルヴァーナ・ハイ・パラディン)がペンデュラム召喚したペンデュラムモンスターをチューナー扱いでシンクロ召喚した時、自分の墓地のカード1枚を手札に戻す。

 俺が手札に加えるのはペンデュラム・コール!

 

 さらにトラップカード、リサイコロを発動

 このカードは自分の墓地のスピードロイドチューナーを効果を無効にして特殊召喚し、サイコロを一回振る。

 その特殊召喚したモンスターはダイスの出目と同じレベルになる。

 SR(スピードロイド)―OMKガムを特殊召喚、ダイスの出目は・・・・2!」

 

 OMKガム DEF800 LV1→2

 

「俺はレベル1のギタートル、レベル3のフレンドンキーにレベル2となったOMKガムをチューニング!

 星雨を束ねし聖翼よ!魂を風に乗せ世界を巡れ!シンクロ召喚!

 スターダスト・チャージ・ウォリアー!!」

 

スターダスト・チャージ「フンッ!」

           ATK2000

 

「このカードのシンクロ召喚に成功した場合、1ターンに1度、1枚ドローできる。

 

 さらにOMKガムの効果でデッキの一番上のカードを墓地に送る。

 墓地に送られたのはEM(エンタメイト)ユニ、攻撃力アップはない。

 

 マジックカード、アメイジング・ペンデュラムを発動

 自分のペンデュラムゾーンにカードが存在しない場合、1ターンに1度、エクストラデッキからカード名が異なる魔術師ペンデュラムモンスターを2体手札に加える。

 俺が手札に加えるのは調弦の魔術師と刻剣の魔術師

 そして、スケール2の賤竜の魔術師と刻剣の魔術師をペンデュラムゾーンにセッティング。」

 

 浮かび上がるガラの悪い魔術師と少年剣士

 そのスケールは共に2であり、ペンデュラム召喚することはできない。

 だがこれが墓地に眠るある魔術師の力を解き放つカギである。

 

「賤竜の魔術師のペンデュラム効果発動、賤竜の魔術師と共にセッティングされているのが魔術師ペンデュラムモンスターの場合、エクストラデッキの表側表示の賤竜の魔術師以外の魔術師かオッドアイズペンデュラムモンスターを手札に加える

 俺はEM(エンタメイト)オッドアイズ・シンクロンを手札に戻す。

 

 そして、墓地の調律の魔術師の効果を発動

 自分ペンデュラムゾーンに魔術師が2枚存在するとき、このカードを特殊召喚する。

 さぁ来い!調律の魔術師!!」

 

調律の魔術師「はいっ!」

      DEF0

 

「これが調律の魔術師の真の力か・・・」

 LP10250→9850

 

 そのことに誰よりも驚いたのは誰でもないジャックである。

 その手にした時から書かれていた存在しないはずのカードを指定する謎の文章の意味がやっと分かったのだから

 シモッチの副作用とのコンボの方が異常なのである。

 

「俺はレベル6の風属性モンスター、スターダスト・チャージ・ウォリアーにレベル1の調律の魔術師をチューニング!

 輝く翼、神速となり天地を照らせ!シンクロ召喚!!」

 

 遊矢が呼び出そうとするのは次元を超えし会合、交わるはずのないカードの1枚、神速の翼

 

「現れろ!クリアウィング・ファスト・ドラゴン!!」

 

クリアウィング・ファスト「ギャオオオォォォォォォォ!!」

            ATK2500

 

 神速の翼が歓喜の声を上げる。

 クリアウィング・シンクロ・ドラゴンと比べて丸みを帯びた異なる透明の翼に今度はユーゴが驚愕する。

 ただその驚愕に応える解答を遊矢は持ち合わせていない。ジャックとの戦いの後、色が戻ったカードの1枚がこれだったのである。

 

「なっ!?お前もクリアウィングを持ってたのか!?」

 

「・・・まぁね。

 じゃあ早速効果を使うか、クリアウィング・ファスト・ドラゴンは1ターンに1度、相手フィールド上のエクストラデッキから特殊召喚された表側表示モンスターの効果を無効にし、その攻撃力を0にする。」

 

『なんですって!?』

 LP12000→12400

 

「ベエルゼの効果を無効にしろ!フラッシュスクリーム!」

 

 ファスト・ドラゴンはベエルゼに閃光のごとき速さで近づき、その周囲に風の檻を作り出す。

 轟々と吹き荒れる小さな竜巻の中でベエルゼは悲鳴を上げる

 

ベエルゼ「ギャアアァァァァァァァァ!!?」

    ATK3000→0

 

「バトル、まずは涅槃の超魔導剣士(ニルヴァーナ・ハイ・パラディン)でクリスタルウィング・シンクロ・ドラゴンへ攻撃!時刻剣一刀両断!!」

 

『タダで破壊はさせませんよ!

 手札を1枚捨て、トラップカード、レインボー・ライフを発動!

 このターン私が受けるすべてのダメージは回復となる!』

 

 涅槃の超魔導剣士(ニルヴァーナ・ハイ・パラディン)の大剣がまがい物の水晶を破壊する。

 だがその余波はロジェを包む虹のヴェールによりそよ風へと変わり相手を癒す結果に終わってしまう。

 

『ふふふ、さぁまだ攻撃しますか?

 その2体の強力なモンスターのダイレクトアタックにも等しい攻撃は、私をさらに何ッ!?』

 

 だが、ロジェを取り囲むように無数の剣が、時空を超えて振るわれていた。

 その斬撃を阻めるものなどどこにもない。

 

『ぎゃああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』

 LP12400→12700→6350

 

涅槃の超魔導剣士(ニルヴァーナ・ハイ・パラディン)の効果

 こいつが戦闘で相手モンスターを破壊した場合、相手のライフを半分にする。」 

 

 減るはずの無いライフが減ったことでロジェは狼狽し、神を失うわけにはいかないと思い急いで伏せカードを発動させる。

 

『ト!?トラップカード、緊急同調!

 バトルフェイズ中にシンクロ召喚を行う!

 レベル8のドラゴン族、魔王龍 ベエルゼにレベル2の闇属性となった音響戦士ドラムスをチューニング!

 冥界を流るる嘆きの河より亡者の濁流を逆巻き浮上せよ!!シンクロ召喚!!

 私に従いなさい!冥界濁龍 ドラゴキュートス!!』

 

ドラゴキュートス「グアァァァ・・・・・」

        ATK4000

 

 竜巻に捕らわれたベエルゼが闇の中で腐敗した体を持つ不死の竜へと変化する。

 

『ヒャハハハハ!!これでキサマのモンスターでは手出しできまい!』

 

「そうだな。

 カードを1枚伏せて、ターンエンドだ。」

 

 挑発して見せてもどこ吹く風

 遊矢の態度に沸点の低いロジェの心はさらに荒む。さらに自身を襲う空腹感も酷くなってきた。

 ならば、早く目の前の獲物を喰ワナクテハナラナイ

 

『私のターン!ドロー!!

 このスタンバイフェイズ時、ドラゴキュートスの効果発動!

 相手フィールド上の表側表示のモンスターの攻撃力を半分にし、その数値分だけ相手にダメージを与える!』

 

 ドラゴキュートスの胸の口から魍魎がまさしく濁流のように放たれ、涅槃の超魔導剣士(ニルヴァーナ・ハイ・パラディン)に襲い掛かる。

 

涅槃の超魔導剣士(ニルヴァーナ・ハイ・パラディン)「うおおおぉぉぉぉぉ!?」

        ATK3300→1650

 

「ぐっ」

 LP9850→8200

 

『トラップカード、サブテラーの継承を発動

 手札の星なる影(ネフシャドール) ゲニウスを捨て3枚目の機巧蛙―磐盾多邇具久(イワタテノタニグク)を手札に加え、このカードを再セット。

 

 アルティマヤ・ツィオルキンと墓地に送られた星なる影 ゲニウスの効果発動!

 ゲニウスの効果で再びスターダスト・ウォリアーの効果の発動を規制し、アルティマヤ・ツィオルキンの効果で現れなさい、シンクロチューナー、シューティング・ライザー・ドラゴン!!』

 

 シューティング・ライザー ATK2100

 

 聖なる光を湛えているはずの星の竜、それが赤い凶星の光を放っている。

 

「シューティング・ライザーもコピーしたのか・・・」

 

「おのれ!」

 

『ハハハ!君の言う未来も、全て神たるこの私の手の内にあるのです!

 墓地の機巧蛙―磐盾多邇具久(イワタテノタニグク)の効果発動!

 蘇りなさい!古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)!!』

 

古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)「ガアァァァァ!」

       ATK1000

 

「レベル3の古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)にレベル7のシューティング・ライザー・ドラゴンをチューニング!

 天よ!運命よ!!事象の理よ!!巡る転輪に乗せ此処に結実し、光と共に降臨せよ!!

 シンクロ召喚!!天穹覇龍ドラゴアセンション!!」

 

ドラゴアセンション「グオオォォォォォォォォ!!」

         ATK?

 

 凶星と機械の猟犬が呼び出したのは3体目の決闘竜(デュエルドラゴン)、輪廻を廻る白亜の竜

 

「ドラゴアセンションを手札消費無しで呼び出したか

 だが、クリアウィング・ファスト・ドラゴンの効果は相手ターンにも使える。

 ドラゴアセンションの効果を無効にしろ!フラッシュスクリーム!!」

 

『させませんよっ!!速攻魔法、禁じられた聖杯!

 このカードの効果でフィールド上のモンスター1体の効果はターン終了時まで無効になり、攻撃力は400ポイントアップする。

 クリアウィング・ファスト・ドラゴンの効果は無効ですよっ!!

 そして、ドラゴアセンションの攻撃力は私の手札の数×800ポイントとなる!』

 

 クリアウィング・ファスト ATK2500→2900

 

 ドラゴアセンション ATK?→4000

 

『バトル!ドラゴアセンションでクリアウィング・ファスト・ドラゴンに攻撃ィ!!』

 

「セットしていた速攻魔法、揺れる眼差しを発動!

 ペンデュラムゾーンのカードをすべて破壊し、破壊した枚数によって効果を得る。

 刻剣と賤竜を破壊し、1枚破壊の効果で相手に500のダメージを、2枚破壊の効果でデッキのペンデュラムモンスター、EM(エンタメイト)ペンデュラム・マジシャンを手札に加える。

 

 くっ・・・さらにモンスターゾーンで破壊されたファスト・ドラゴンは空いているペンデュラムゾーンに置くことができる。」

 LP8200→7100

 

 ドラゴアセンションの光線がファスト・ドラゴンを焼くがその身は焼き焦げる前に光の柱が護る。

 

『ぐうっ!!だが、まだドラゴキュートスの攻撃がありますよッ!!

 スターダスト・ウォリアーに攻撃!!』

 LP6350→5850

 

 星の守護神に冥界の亡龍が噛みつき砕く、それでも星の意思は次なる戦士へと受け継がれる。

 

「うぅぅ・・・スターダスト・ウォリアーの効果!

 このカードが相手の戦闘、効果でフィールドを離れた場合、ウォリアーシンクロモンスターをシンクロ召喚扱いでエクストラデッキから特殊召喚する!

 来い!ジャンク・ウォリアー!!」

 LP7100→6100

 

ジャンク・ウォリアー「フンッ!!」

          DEF1300

 

『守備表示ですか、ですが獲物はまだいるのですよッ!!

 ドラゴキュートスの効果発動、戦闘でモンスターを破壊し墓地に送った時、続けて2度目の攻撃ができる!

 力なき者に身の程を分からせなさいィィ!!涅槃の超魔導剣士(ニルヴァーナ・ハイ・パラディン)に攻撃ィ!!』

 

「墓地のEM(エンタメイト)ユニの効果発動

 このカードと墓地のEM(エンタメイト)フレンドンキーを除外し、戦闘ダメージを1度だけ0にする。

 さらに破壊された涅槃の超魔導剣士(ニルヴァーナ・ハイ・パラディン)もペンデュラムゾーンに置くことができる!」

 

『ぐうぅぅ・・・・なんとしぶとい!!

 カードを2枚伏せ、ターンエンドです!!』

 

「ふぅ・・・さて、前座はここまでだ。

 後はしっかり決めてくれよ、キング?」

 

「キングではない!ジャック・アトラスだ!!

 だが・・・任された!!俺のターン!!ドロー!!」

 

『何をしようと無駄ですよッ!トラップカード、サブテラーの継承!

 手札の機巧蛙―磐盾多邇具久(イワタテノタニグク)を捨て星なる影(ネフシャドール) ゲニウスを手札に加えます。

 そしてセットされたことにより、アルティマヤ・ツィオルキンの効果発動!

 再び現れなさい!魔王龍 ベエルゼ!!』

 

ベエルゼ「グワアアァァァァァ!!」

    DEF3000

 

「2体目のベエルゼ!?」

 

決闘竜(デュエルドラゴン)もコピーしたのか!?」

 

「ふん!だからどうしたというのだ!!

 俺はマジックカード、一撃必殺!居合ドローを発動!

 手札のクリムゾン・リゾネーターを捨てお前のフィールドのカード枚数分デッキの上からカードを墓地へ送り、デッキから1枚ドローする!

 俺は9枚のカードを墓地へ送りドローする。

 ドローしたカードはチェーン・リゾネーター、居合ドローではないため墓地のカードを墓地へ送った枚数分デッキに戻す。

 俺は追走の翼、スターダスト・チャージ・ウォリアー、墓穴の指名者、アメイジング・ペンデュラム、プライドの咆哮、スカーレッド・カーペット、コール・リゾネーター、オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン、シューティング・ライザー・ドラゴンの9枚をデッキに戻す!

 

 そして墓地へ送られた絶対王 バックジャックとトリック・デーモンの効果を発動!

 トリック・デーモンの効果でトリックデーモン以外のデーモンカード、ミストデーモンを手札に加え、バックジャックの効果でデッキトップを3枚確認し、好きな順番で戻す。

 

 次はこれだ!俺のフィールドにシンクロモンスターが存在することにより、手札のシンクローン・リゾネーターを特殊召喚!」

 

シンクローン・リゾネーター「ヘッ!」

             ATK100

 

「お前のカード、借りるぞ!

 俺はレベル5のジャンク・ウォリアーにレベル1の悪魔族、シンクローン・リゾネーターをチューニング!

 漆黒の闇を裂き、その熱き魂滾らせよ!シンクロ召喚!

 出でよ!レッド・ライジング・ドラゴン!」

 

 友の遺せし戦士が紅き炎の体を持つ竜へと変わる。

 

レッド・ライジング・ドラゴン「グオオオオォォォォ!!」

              ATK2100

 

「シンクローン・リゾネーターの効果で墓地のレッド・リゾネーターを手札に加え、レッド・ライジング・ドラゴンの効果

 こいつはシンクロ召喚されたとき墓地のリゾネーターチューナーを1体特殊召喚する!

 来い!クリムゾン・リゾネーター!」

 

クリムゾン・リゾネーター「へヘッ!」

            ATK800

 

「さらにクリムゾン・リゾネーターの効果発動!

 自分フィールド上のモンスターがこのカードと闇属性ドラゴン族シンクロモンスターのみの場合、デッキ、手札からクリムゾン・リゾネーター以外のリゾネーターモンスターを2体まで特殊召喚する!

 来い!シンクローン・リゾネーター!クリエイト・リゾネーター!」

 

シンクローン・リゾネーター「ヒヒッ!」

             ATK100

 

クリエイト・リゾネーター「ケハッ!」

            ATK800

 

「やったぜ!チューナーが3体!」

 

「ふんっ!俺はレベル6のシンクロモンスター、レッド・ライジング・ドラゴンにレベル1のシンクローン、レベル2のクリムゾン、レベル3のクリエイト、3体のリゾネーターをトリプルチューニング!!

 王を迎えるは三賢人!紅き星は滅びず、ただ愚者を滅するのみ!荒ぶる魂よ、天地開闢の時を刻め!!シンクロ召喚!!

 猛り荒ぶる魂・・・スカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴン!!」

 

スカーレッド・Sノヴァ「グオオオオォォォォォォオオオオォォォォ!!」

           ATK4000→6000

 

 レッド・ライジング・ドラゴンの炎が爆発し、紅き超新星の竜が巨大な赤き竜を威嚇する。

 

「シンクローン・リゾネーターの効果でクリエイト・リゾネーターを手札へ

 そして、スカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴンの攻撃力は自身の墓地のチューナーの数×500ポイントアップする。」

 

『ふっ・・・だがただ攻撃力が高いだけでは私のフィールドを突破することは不可能!

 何しろこちらには戦闘で破壊されないドラゴキュートスとベエルゼ

 そして、ドラゴアセンションがやられても私の受けたダメージはそのままベエルゼの攻撃力へ変換される。

 このターンであなたが勝利を収めなければ次のターンで、私のモンスターがそのモンスターを破壊します。

 まぁ、まだまだ潤沢なライフを持つ私を倒すことなどできるはずもありませんがねェ!!』

 

「はっ?」

 

「ん?」

 

「・・・なるほど、無知な愚か者め!それがただの思い上がりだということを知るがいい!!

 ロゼ!今このスケールでは5から7のモンスターが召喚できるのであったな!」

 

「ん?あっ!?あぁ!!」

 

「なら俺はセッティング済みのスケールでペンデュラム召喚!

 我が元へはせ参じよ!レベル5!ミストデーモン!!」

 

ミスト・デーモン「ヴアアァァァァ・・・・」

        ATK2400

 

「さらに自分フィールド上にレベル8以上のシンクロモンスターがいることにより、クリエイト・リゾネーターを特殊召喚!」

 

クリエイト・リゾネーター「ハッ!」

            ATK800

 

「俺はレベル5のミストデーモンにレベル3のクリエイト・リゾネーターをチューニング!

 王者の咆哮、今、天地を揺るがす。唯一無二なる覇者の力を身に刻むがいい!シンクロ召喚!!

 出でよ!荒ぶる魂!レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト!!」

 

 霧が生み出した悪魔が小悪魔の響きで、魂を得て紅き悪魔竜へと生まれ変わる。

 

レッド・デーモンズS「グオオォォォォォォ!!」

          ATK3000

 

「チェーン・リゾネーターを召喚!

 フィールドにシンクロモンスターが存在するときにこいつを召喚したとき、デッキからチェーン・リゾネーター以外のリゾネーターを特殊召喚する。

 来い!3体目のシンクローン・リゾネーター!」

 

 チェーン・リゾネーター   ATK100

 シンクローン・リゾネーター ATK100

 

「そして、レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライトの効果を発動!アブソリュート・パワー・フレイム!!」

 

『何かと思えば馬鹿の一つ覚えですか。

 そのモンスターの効果は自身の攻撃力以下のモンスターを破壊する効果

 私のドラゴキュートスとドラゴアセンションは攻撃力が上、ベエルゼは効果でも破壊されない。

 そして、アルティマヤ・ツィオルキンにはこれです!永続トラップ、スクラム・フォース!

 このカードの効果は私のフィールドに表側守備表示モンスターが2体以上存在する場合、自分フィールド上の守備表示モンスターは相手の効果対象にならず、相手の効果で破壊されなくします。

 これで破壊されるのはあなたの2体の雑魚モンスター!そして、私の受けたダメージはベエルゼの糧となる!』

 LP5850→4850

 

ベエルゼ「グオオォォ・・・・・」

    DEF3000

    ATK3000→4000

 

「それを待っていた!

 スカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴンの効果を発動!

 1ターンに1度、相手モンスターの効果が発動したとき、このカード及び相手フィールド上のカード全てを除外する!!」

 

『何だとオオォォォ!!?』

 

「シンクローン・リゾネーターの効果でチェーン・リゾネーターを手札に戻し、喰らえ!愚か者!!スーパーデモン・メテオ!!」

 

スカーレッド・Sノヴァ「バオオオオォォォォォォォオオオオオォォォォォオオ!!」

 

『キャアアァァァァァァァァァ!!トラップカード、和睦の使者アアァァァ!!

 このターン私への戦闘ダメージはすべてゼロになるウウゥゥゥゥ!!』

 

 紅き超新星爆発がロジェの全てを吹き飛ばす。

 自身を守るトラップカードも、強力な赤き竜に従属する決闘竜(デュエルドラゴン)も、3年の年月をかけて復活させた神も

 

『そんな・・・・馬鹿な私の神が・・・・』

 

「ふんっ!小賢しい手でダメージを免れたか!

 俺はカードを2枚伏せ、自身の効果で除外されたスカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴンはエンドフェイズにフィールドに舞い戻る!」

 

スカーレッド・Sノヴァ「グオオォォォォォオオオォォォ!!」

           ATK4000→7000

 

「ターンエンドだ!」


 馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿なバカなバカなバカナバカナバカナバカナバカナ!!

 私の神が!私の3年を掛けた計画が!!

 

「ふんっ!所詮は借り物の力でイキるだけの愚か者か!!」

 

「爺さんと街をめちゃくちゃにしたこと、ちゃんと償ってもらうからな!!」

 

「独り善がりな欲望のために神になろうとか・・・器じゃなかったってことだな。お前は。」

 

 黙れ黙れ黙れ黙れダマレダマレダマレダマレダマレダマレダマレダマレダマレダマレ!!

 お前たちなど私の糧となるだけの、この飢えを満たスタメノ生贄デシカナイトイウノニ!!

 

「・・・我ノターン・・・ドロー・・・・

 我ハ手札ノ速攻魔法、手札断殺ヲ発動、オ互イノプレイヤーハ手札ヲ2枚捨テ、デッキカラ2枚ドロースル

 ・・・墓地へ送ラレタ、星なる影(ネフシャドール) ゲニウスノ効果、スカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴンノ効果ヲコノターン発動不能ニスル。」

 

「ちっ!ならばその効果にチェーンし、スーパーノヴァの効果を発動!

 このカードを除外する!」

 

 強大ナル力ヲ持ッタ獲物ガ消エル・・・嗚呼・・勿体ナイ、アレヲ砕ケバコノ飢エモマシニナッタロウニ

 

「墓地ノ機巧蛙―磐盾多邇具久(イワタテノタニグク)ノ効果ヲ発動

 機巧牙―御神尊真神(オンカミコトノマカミ)ヲ特殊召喚。」

 

 御神尊真神(オンカミコトノマカミ) ATK2150

 

「効果発動、手札ノトルクチューン・ギアヲ捨て、攻守0のダークシー・レスキューを手札ヘ加エ召喚。

 サラニ、墓地ノ音響戦士(サウンドウォリアー)サイザスヲ除外シ効果発動

 サイザス以外ノ除外サレテイル音響戦士(サウンドウォリアー)ヲ特殊召喚スル、チューナーモンスター、音響戦士(サウンドウォリアー)ドラムスヲ特殊召喚。」

 

 ドラムス        ATK700

 ダークシー・レスキュー ATK0

 

「我ハレベル1ノダークシー・レスキューニレベル2の音響戦士ドラムスヲチューニング・・・

 現レヨ、シンクロチューナー、武力(ブリキ)の軍奏。」

 

 武力(ブリキ)の軍奏――ブオオォォォォォ!!

      ATK500

 

「シンクロ素材トシテ墓地ヘ送ラレタダークシー・レスキューノ効果デ1枚ドロー

 ソシテ武力(ブリキ)の軍奏ガシンクロ召喚サレタコトニヨリ効果発動

 墓地ノチューナーモンスター、トルクチューン・ギアヲ守備表示デ特殊召喚!」

 

 トルクチューン・ギア DEF0

 

『レベル3ノ武力(ブリキ)の軍奏ニレベル6ノ機巧牙―御神尊真神(オンカミコトノマカミ)ヲチューニング

 シンクロ召喚、浮鵺城

 

 コノモンスターガシンクロ召喚ニ成功シタ時、自分ノ墓地ノレベル9モンスター1体ヲ特殊召喚スル。現レヨ、古代の機械熱核竜(アンティーク・ギア・リアクター・ドラゴン)!」

 

 浮鵺城      DEF3000

 古代の機械熱核竜(アンティーク・ギア・リアクター・ドラゴン) ATK3000

 

「!!武力(ブリキ)の軍奏を素材にしたシンクロモンスターはチューナーとしても扱う!?」

 

「まさか、あの赤い竜も2体目がいるってぇのか!?」

 

 愚カナ、我ガコレヨリ呼ビ出スノハ真ナル我ガ身

 コノ世界ヲ喰ライ尽クス、絶対的ナ神ノ力!!

 

「レベル9ノ古代の機械熱核竜(アンティーク・ギア・リアクター・ドラゴン)ニレベル9ノチューナー浮鵺城ヲマイナスチューニング!」

 

 巨大ナ浮遊島ニ建テラレタ城ト錆付イタ機械デ作ラレタ竜ガ崩レ去リ無ヘト帰ッテ行ク

 

「無ノ地平ニ君臨スル無限ノ力!!混沌ヲ束ネ姿ナキ身ヲ現世ニ映サン!!シンクロ召喚!!」

 

 赤キ奔流ガ私ヲ覆ウ、オオオォォォォォ!!コレコソガ究極神ノ力!!

 コノ世界ノ全テヲコノ身ニ収メル力!!

 

『「オオォォォォ!!我コソガ究極幻神!!アルティミトル・ビシバールキン!!!」』


 嗚呼・・・何故我ハ目覚メタ?

 古キ友ハ現世ヲ去ッタガ人トノ新タナ関係ヲ紡イダ、忘レラレシホドノ時ノ中デ、コノ身ハ大地二抱カレコノ魂ハ天デ微睡ノ中ニアッタ、我ガコノ世界ニ降リ立ツコトナドアリ得ヌコトダッタノニ・・・

 

 最早コノ意思ハ衝動ヲ、コノ身ヲ止メラレヌ

 

 我ガ古キ友ヲ喰ライ尽クシテシマウ前二・・・・・・




解読中のこの地域の神話についての詩と思われる古代文より抜粋

遥かなる時の中 人と精霊は手に手を取り合い世界は廻る


・・力 力は赤き竜となって・・・・・


力は本能のままに精霊を喰らう 精霊を喰らうことに力は・・・・


・・・を止めるため人と精霊は力を・・・互いを別った


力の体は大地に・・・ 力の魂は天空で・・・・・


力・・ 我らは忘れることがなきよう力に・・・捧げよう


餓えることがなきよう・・・・・・・・・・


眠りが妨げられたのなら その叫びを聞け


星の導 それは力の・・『星が連なり未来へと向かう』


解読者 矢薙 典膳


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星が連なり未来へと向かう

お久しぶりです。
スランプ気味でいいネタが思いつかなかったり、幻神のカタカナ喋りに手間取ったり過去最長のターン数なのでミス連発していたりと修正に手間取っておりました。なんでダークシー・レスキューをチューナーにしてたんだ私・・・
それでも詰め込みたいことは詰め込みましたのでお楽しみください。


『「オオォォ!!我コソガ究極幻神!!アルティミトル・ビシバールキン!!!」』

 

「モンスターと・・・」

 

「一体化しただと!?」

 

 そのモンスターはアルティマヤ・ツィオルキン同様の実体のない竜の下半身と翼に岩のような上半身と角を持つ半人半竜の荒神

 その額からはロジェの上半身が生えており、そこからロジェの声に混じり頭の中に響いてくるような底冷えのする声を放つ

 

『「モンスターデハナイ!!我ハ‟神”!!

 コノ世界ノ全テヲコノ身ニ収メル原初ニシテ無限ノ力ヲ持ツモノデアル!!」』

 ATK0→3000

 

「なっ!?あいつの攻撃力が0から一気に3000に上がりやがった!?」

 

「あいつの攻撃力はフィールドのモンスター1体に付き1000ポイント上昇するみたいだな。」

 

「だが攻撃力はレッド・デーモンズと同等!」

 

『「愚カナ考エダ!装備魔法、進化する人類ヲ発動

 コノカードノ効果ニヨリ、我ノ元々ノ攻撃力ハ我ノライフガ相手ヨリ少ナイ場合2400トナリ多イ場合1000トナル!」』

 ATK3000→5400

 

 進化する人類の力を取り込み究極幻神に足が生え半人半竜から竜人のような姿へ変わる。

 その姿は奇しくもレッド・デーモンズによく似ていた。

 

「くっ!?墓地の絶対王 バック・ジャックの効果発動!

 墓地のこのカードを除外し、デッキの一番上のカードをめくりそれが通常トラップならそれをセットする。

 デッキトップはリバイバル・ギフト、通常トラップのためそのままセット!」

 

『「フハハハハハ!!無駄ナコトヲ!!

 サァ!キサマノ魂タルドラゴン、喰ロウテヤルゾ!!

 天撃ヲ受ケヨ!!レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライトニ攻撃!!天聖雷撃(マヤクール・カクター)!!」』

 

 赤い雷がレッド・デーモンズを射貫き爆発させる。

 その衝撃を防ごうとジャックは伏せカードに手を伸ばすが

 

(ここでこのカードを発動させれば・・・いや、ユーゴの手札は現在1枚・・・ならば!)

「ぬおおおぉぉぉぉぉぉ!!」

 LP6100→3700

 

 ジャックは発動しようとしたカードから手を引き、あえて究極幻神の攻撃をその身に受けた。

 そして彼から減ったライフは究極幻神の糧となり、彼の神はその魂の味わいに歓喜を覚える。

 

『「オオォォォォ!!ナント強靭ナル魂!!実ニ美味デアルゾ!!」』

 

「ぐぅぅ・・・そんなことで褒められても、嬉しくもない。」

 

「だ、大丈夫かジャック!?」

 

「心配されるほどのことではない。」

 

『「フフフ、ソノ強ガリ、何時マデ続クカナ?

 速攻魔法、異次元からの埋葬ヲ発動!

 互イノ除外サレテイルモンスターノ中カラ三体ヲ持チ主ノ墓地ヘト送ル。

 我ガ墓地ヘ送ルノハ、我ノ機巧蛙―磐盾多邇具久(イワタテノタニグク)、機巧鳥―常世宇受賣長鳴(トコヨウズメノナガナキ)トキサマノスカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴン!!」』

 

「なんだと!?

 くっ!これではスーパーノヴァは帰還できない・・・」

 

『「全テハ無駄!苦シミガ続クダケダ!

 大人シク貴様ラノ決闘札(カード)(ライフ)ヲ差シ出スガイイ!!」』

 

「ざっけんな!!誰がするか!!」

 

『「フン、我ハトルクチューン・ギアノ効果ヲ発動

 コノカードヲ我自身ノ装備カードニシ、我ヲチューナートシテ扱ウ。

 

 サラニマジックカード、貪欲な壺ヲ発動

 我ノ墓地カラクリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン2枚、魔王龍 ベエルゼ、シューティング・ライザー・ドラゴン、武力の軍奏ノ5体ヲデッキニ戻シ2枚ドロースル。

 

 カードを2枚伏せ、ターンヲ終了・・・サァ、我ニ抗ウコトノ愚カサヲ教エテヤロウゾ!」』

 ATK5400→3000→2000 (チューナー)

 

 トルクチューン・ギアが究極幻神に取り込まれ赤い奔流の中に歯車が回る。

 わざわざ自身の攻撃力を下げる究極幻神の行動にユーゴは疑問を抱く

 

(なんだぁ?自分の攻撃力を下げたぞ?)

「俺のターン、ドロー!

 おっ!良いカードが来たぜ!スタンバイフェイズ、手札のSR(スピードロイド)ビードロ・ドクロの効果発動!

 こいつは自分・相手のスタンバイフェイズにエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターが相手フィールド上に存在するとき、手札から特殊召喚する。

 

 さらにリバースカード発動!リバイバル・ギフト!

 このカードは自分の墓地のチューナーを1体効果を無効にして特殊召喚して、相手フィールド上にギフト・デモン・トークンを2体特殊召喚する!

 戻ってこい!SR(スピードロイド)―OMKガム!」

 

 ビードロ・ドクロ ATK0

 OMKガム    DEF0

 

 ギフト・デモン・トークン DEF1500

 ギフト・デモン・トークン DEF1500

 

 ドクロの意匠のある砲台と箱から変形したロボットがユーゴのフィールドに並び

 究極幻神のフィールドにトカゲかイモリに似た黒塗りの悪魔が2体並ぶ

 モンスターの増加、それはつまり究極幻神の力を高めるということ、その行いに究極幻神は吹き出す

 

『「クッ!クハハハハハハ!!愚カナ!!態々我ノ力ヲ高メルトハナ!!」』

 ATK2000→6000

 

「愚かなのはどっちだろうな!

 SR(スピードロイド)ビードロ・ドクロは1ターンに1度だけ、このカードの戦闘で発生するダメージを相手に移す!

 

 そんでもってこれでダメ押しだぜ!速攻魔法、スピードリバース

 自分の墓地のSR(スピードロイド)ベイゴマックスを特殊召喚するぜ!」

 

『「ナラバ見セテヤロウ!我ガ力ヲ!!

 自分、相手ノメインフェイズニオ互イノフィールドニ同ジ数ダケ邪眼神(ウチャツィミーメ)トークンヲ可能ナ限リ守備表示デ特殊召喚スル!

 サァ!世界ニ満チルガイイ、邪眼神(ウチャツィミーメ)ヨ!!」』

 

(ビードロ・ドクロは自分フィールドにSR(スピードロイド)以外がいると自壊しちまう。)

「だったら俺はそれにチェーンして、墓地のトラップカードリサイコロを除外して効果発動!

 自分フィールド上のSR(スピードロイド)チューナーを含むモンスターを素材にして風属性シンクロモンスターをシンクロ召喚する!

 俺はレベル1のSR(スピードロイド)―OMKガムにレベル7のSR(スピードロイド)ビードロ・ドクロをチューニング!

 連なる風を受けて、大空へと飛び上がれ!!シンクロ召喚!!

 現れろ!HSR(ハイスピードロイド)カイドレイク!!」

 

カイドレイク「ギャアアァァァァァァァァ!!」

      ATK3000

 

 ベイゴマックス DEF600

 邪眼神(ウチャツィミーメ)トークン DEF0

 邪眼神(ウチャツィミーメ)トークン DEF0

 

 邪眼神(ウチャツィミーメ)トークン DEF0

 邪眼神(ウチャツィミーメ)トークン DEF0 

 

 連なる翼を持つ機械の竜と連なった独楽が作り出したムカデが現れるのと同時に目玉に虫のような肢が何本か生えたような化け物が2体ずつ互いのフィールドに現れた。

 これで究極幻神の力はほぼ最大まで高まることになるが、ユーゴの第二策はすでに完了している。

 

「カイドレイクの効果!

 このカードがシンクロ召喚に成功したとき、相手フィールド上の全ての表側表示カードの効果を無効化する!

 これでお前の攻撃力は」

 

『「ソウウマクイクト思ウノカ?トラップ発動!迷い風!」』

 

「なっ!?3枚目の迷い風!?」

 

『「特殊召喚サレタ表側表示モンスターノ効果ヲ無効ニシ、元々ノ攻撃力ハ半分ニナル。

 ソシテ、フィールドノモンスターハ現在9体!我ノ攻撃力ハ10000トナル!!」』

 ATK6000→10000

 

「くっ!?OMKガムの効果、デッキトップを墓地に送ってそれがSR(スピードロイド)モンスターなら、こいつを素材にしたシンクロモンスターの攻撃力を1000ポイントアップする。

 デッキトップはSR(スピードロイド)電々大公、よってカイドレイクの攻撃力は1000上がる。

 あとベイゴマックスを特殊召喚したことでデッキのベイゴマックス以外のSR(スピードロイド)モンスター、タケトンボーグを手札に加える。」

 

 カイドレイク ATK3000→1500→2500

 

「さらに俺のフィールドに風属性モンスターがいることにより、手札のSR(スピードロイド)タケトンボーグは1ターンに1度、特殊召喚できる!」

 

 タケトンボーグ DEF1200

 

「さらにタケトンボーグの効果発動!

 こいつをリリースして、デッキからSR(スピードロイド)チューナー1体を特殊召喚する。

 来い!レベル1、SR(スピードロイド)赤目のダイス!」

 

 赤目のダイス DEF100

 

 竹トンボが変形したロボットが消え、不気味な赤い目の模様が描かれたダイスが現れる。

 

「てめぇのバラまいたこのトークン、利用させてもらうぜ!

 レベル1の邪眼神(ウチャツィミーメ)トークン2体とレベル3、ベイゴマックスにレベル1の赤目のダイスをチューニング!

 十文字の姿を持つ魔剣よ、その力ですべての敵を切り裂け!シンクロ召喚!!

 現れろ、レベル6!HSR(ハイスピードロイド)魔剣ダーマ!!」

 

 魔剣ダーマ ATK2200

 

「よっしゃ!これでてめぇの気持ち悪ぃトークンは俺たちのフィールドから消えた!

 てめぇの攻撃力もダウンだ!」

 

『「フフフ、ソノ程度デ随分ト大キナ態度ダ。

 我ガ邪眼神(ウチャツィミーメ)ノ恐怖ハキサマラノフィールドダケニハ留マラナイ。」』

 

「何?」

 

「ユーゴ!!」

 

「外を見ろ!?」

 

「あっ?・・・なっ!!?」

 

 遊矢とジャックの動揺した声に従い外を見たユーゴは地獄のような光景を目の当たりにする。

 空から無数に落ちてくる小さな赤い流れ星、それはすべて究極幻神の奉仕神である邪眼神(ウチャツィミーメ)であった。


「なぁ?やっぱ、シンジを連れて逃げ・・・」

 

「逃げるってどこにだよ!?

 外はあのロボットがうじゃうじゃいるんだぞ!?」

 

「そんなこと分かってんだよ!!

 だがあの数を俺たちが相手してどうにかなるか?分かってんのか!トニー!!」

 

「デイモン・・・そうだな、今なら外のセキュリティの連中を囮にすりゃ・・・」

 

 シティの警察病院、シンジの見舞いにと訪れていたトニーとデイモンは突然のデュエルロイドの襲撃によってここへ閉じ込められていた。

 2人にデュエルロイドに立ち向かえる強さなどない、ただ怯え、脅威が去るのを待つばかりである。

 だが、神の災いはそれほど甘くはない

 

――バリンッ!!

 

「ぐああぁぁっ!!」

 

「「!!?」」

 

 窓を突き破り1人のセキュリティ隊員が壁に打ち付けられる

 そして、その壊された窓から這い出てくるのは目玉に蜘蛛の足がついたような化け物『邪眼神(ウチャツィミーメ)

 

「ぐぅぅ・・・に、逃げ・・ろ、逃げてくれ!!」

 

 セキュリティ隊員はもうろうとする意識の中、目の前にいる人に逃げろと叫ぶ

 それがかつて苦々しい思いをした犯罪者の仲間であろうと、ただこの脅威から逃げてくれと叫んだ。

 その叫びに反応したのか邪眼神(ウチャツィミーメ)はそのセキュリティ隊員に群がっていく

 

「うあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「ひぃ!!?」

 

「なっ!?なんだよ!?これぇぇ!!?」

 

 トニーとデイモンは逃げ出した。

 その脅威はただの人では到底太刀打ちできないもの、理解不能なもの

 だからその逃走は仕方ないことなのだ。


『「世界ニ満チヨ!邪眼神(ウチャツィミーメ)!!

 人ト精霊ノ魂を喰ライ我ガ糧トスルノダァ!!」』

 

「くっ!?てめぇ!!なんてことを!!」

 

「ユーゴ!ファスト・ドラゴンのペンデュラム効果を使え!」

 

「アッ!?」

 

邪眼神(ウチャツィミーメ)は究極幻神の力で作り出されている。

 なら。究極幻神を早く倒せば被害は抑えられる!」

 

「なるほどな・・・そりゃ分かりやすい!お前のクリアウィング、借りるぜ!

 墓地のSR(スピードロイド)電々大公の効果発動!

 こいつを除外して墓地の他のSR(スピードロイド)チューナー、赤目のダイスをもう一回特殊召喚!

 さらに赤目のダイスの効果でカイドレイクを対象に、そのレベルをターン終了時まで1から6までの数値に変更する。

 俺はカイドレイクのレベルを6に変更!」

 

 赤目のダイス DEF100

 カイドレイク LV8→6

 

「そしてクリアウィング・ファスト・ドラゴンのペンデュラム効果!

 レベル合計が7になるように、自分フィールドの表側表示のSR(スピードロイド)チューナー1体とチューナー以外のモンスター1体を墓地に送ってペンデュラムゾーンのこのカードを特殊召喚する!

 前に出ろ!クリアウィング・ファスト・ドラゴン!!」

 

ファスト・ドラゴン「ギャオオオオォォォォォォォォ!!」

         ATK2500

 

 光の柱が破られ高速の翼が解き放たれる。

 自己強化によって強化しているモンスターの天敵ともいえるファスト・ドラゴンの復活に究極神は睨みを利かせる。

 

『「ヌウウゥゥ・・・忌々シイ、ドラゴンメ!!!」』

 ATK8000

 

「よっしゃ!俺はまず魔剣ダーマの効果発動!

 墓地の機械族モンスター、タケトンボーグを除外して相手に500ポイントのダメージを与える!」

 

『「グゥゥ・・・コノ程度。」』

 LP4850→4350

 

「だよな。だけど今度はきついぜ?

 バトル!魔剣ダーマは守備モンスターを貫通する!

 行け!魔剣ダーマ!奴の邪眼神(ウチャツィミーメ)トークンに攻撃!!」

 

『「グオォォォ!!?グウウゥ・・・ダガ、僕ハ減ッタガ我ノライフガ貴様ラヨリ低クナッタコトニヨリ、進化する人類ノ効果ニヨリ我ノ攻撃力ガ上昇!」』

 LP4350→1150 ATK8000→7000→8400

 

「へっ!続いてクリアウィング・ファスト・ドラゴンでてめぇに攻撃!!

 この瞬間、ファスト・ドラゴンの効果発動!

 1ターンに1度、エクストラデッキから特殊召喚された相手モンスターの効果を無効にして攻撃力を0にする!

 この攻撃で決まりだあぁぁァァァ!!」

 

『「・・・ククク、愚カナ、ソノ程度ノコト我ガ構エテナイト思ッタカ!

 トラップカード、スキル・プリズナーヲ我ヲ対象ニ発動!

 コノターン、我ヲ対象トシタモンスター効果ヲ無効ニスル!」』

 

「何ッ!?」

 

『「フハハハハハ、愚カ者ヨ。

 我ニ歯向カッタ罪トシテ罰ヲ与エヨウ!仲間諸共我ガ糧トナルガイイ!

 天聖風軍(マヤクール・イク・ホルカン)!!」』

 

「だあぁぁぁ!?ど、どうすんだよぉ!?」

 

「やっぱり、そう簡単に通してはくれないか・・・

 涅槃の超魔導剣士(ニルヴァーナ・ハイ・パラディン)のペンデュラム効果!

 自分のペンデュラムモンスターが攻撃する場合、そのモンスターは戦闘で破壊されず、その戦闘で発生するダメージも0になる!

 さらにペンデュラムモンスターが戦闘をしたダメージ終了時、相手フィールド上のモンスターの攻撃力は戦闘を行ったモンスターの攻撃力分ダウンする。」

 

『「ヌゥゥ・・・シブトイ奴ラメ・・・」』

 ATK8400→5900

 

 ギフト・デモン・トークン DEF1500

              ATK1500→0

 ギフト・デモン・トークン DEF1500

              ATK1500→0

 

「ふぅ・・・助かったぜ・・・ターンエンドだ。」

 

 ギフト・デモン・トークン DEF1500

              ATK0→1500

 ギフト・デモン・トークン DEF1500

              ATK0→1500

 

『「我ノターン!

 我ハ我ニ装備サレタユニオンモンスター、トルクチューン・ギアヲ特殊召喚!

 サラニ手札ヨリ装備魔法、焔聖剣―オートクレールヲ発動シ我ニ装備!

 コノカードハ装備サレテイル場合、自分フィールド上ノモンスター1体ヲ対象トシ、コノターンソノモンスター以外ノモンスターノ攻撃ヲ封ジル代ワリニ2回攻撃ノ権利ヲ与エル。

 対象ハ当然、我ダ!!」』

 ATK5900→8400→9400

 

「攻撃力9400の2回攻撃だと!?

 そんなもん受けてられるか!クリアウィング・ファスト・ドラゴンの効果発動!

 てめぇの効果を無効にして、攻撃力を0にする!」

 

『「無駄ダ!墓地ノスキル・プリズナーノ効果発動!

 コノカードヲ除外し、自分フィールドノカードヲ1枚選択スル。

 コノターン、選択シタモンスターヲ対象トシタモンスター効果ハ無効トナル。

 サァ!大人シク我ガ神撃ヲ受ケルガイイ!クリアウィング・ファスト・ドラゴンヘ攻撃!!天聖雷撃(マヤクール・カクター)!!」』

 

「くっ!ジャックのカード、使わせてもらうぜ!

 トラップ発動!パワー・ウォール!

 このカードは相手モンスターの攻撃によって自分が戦闘ダメージを受けるダメージ計算時に発動できる。

 その戦闘で発生するダメージが0になるように500ダメージに付き1枚、自分のデッキの上からカードを墓地に送る。

 発生するダメージは6900、そのダメージを俺は14枚のカードを墓地に送ることで0にするぜ!

 そんでもって破壊されたファスト・ドラゴンはペンデュラムゾーンへ!」

 

『「グウゥゥ・・・シブトイ奴メ。

 ナラバ、今度ハソノ無防備ナ玩具ヲ燃ヤシ尽クシテクレヨウ!

 HSR(ハイスピードロイド)魔剣ダーマヘノ神撃!天聖雷撃(マヤクール・カクター)!!」』

 ATK9400→8400

 

「こんなところで負けてられねぇぜ!

 墓地のSR(スピードロイド)三つ目のダイスを除外して効果発動!

 このカードを相手ターンに墓地から除外することで、相手モンスターの攻撃を1度だけ無効にする!

 この効果は対象を取る効果じゃねぇ、てめぇの攻撃はシメェだ!!」

 

『「狂犬ゴトキガ・・・大人シク我ノ糧トナレバイイモノヲオオォォ!!」』

 

「へっ!てめぇなんかに喰われてたまるかよ!

 俺は、俺たちはてめぇをぶっ倒してこの街を守る!」

 

『「戯言ヲ!!ナラバ更ナル絶望ヲ目ニスルガイイ!

 我ハレベル3ノギフト・デモン・トークン2体ニレベル1ノトルクチューン・ギアヲチューニング

 我ニ従エ、シンクロ召喚!シューティング・ライザー・ドラゴン!!」』

 ATK8400→6400

 

 シューティング・ライザー ATK2100

 

「チッ・・・カミサマになっても、まだパチモノ使ってくるのか。」

 

『「シューティング・ライザー・ドラゴンノ効果発動!

 シンクロ召喚時、デッキカラコノモンスターノレベル以下ノモンスターヲ墓地ヘ送リ、墓地ニ送ッタモンスターノレベル分コノカードノレベルヲ下ゲル。

 我ガ墓地ヘ送ルノハレベル5ノ機巧嘴―八咫御先(ヤタノミサキ)。」』

 

 シューティング・ライザー LV7→2

 

『「サラニレベル1ノ邪眼神(ウチャツィミーメ)トークンニレベル2トナッタ、シューティング・ライザー・ドラゴンヲチューニング

 現レヨ、レベル3、武力(ブリキ)の軍奏。

 ソノ効果ニヨッテ、墓地ノチューナーモンスター音響戦士(サウンドウォリアー) ドラムスヲ特殊召喚。」』

 ATK6400→5400→6400

 

 武力(ブリキ)の軍奏  DEF2200

 ドラムス   DEF700

 

『「墓地ノ機巧鳥―常世宇受賣長鳴(トコヨウズメノナガナキ)ノ効果発動

 コノカードヲ墓地ヨリ除外シ、裏側デ除外サレテイル我ノ攻守ガ同ジ機械族モンスター1体ヲ手札ニ加エル。

 我ハカードガンナーヲ手札ニ加エ召喚。

 カードガンナーノ効果デデッキノ上カラカードヲ3枚マデ墓地ヘ送リ1枚ニ付キ500ポイント攻撃力ヲアップスル。」』

 ATK6400→7400

 

 カードガンナー ATK500→1900

 

『「レベル3ノカードガンナーニレベル2ノ音響戦士(サウンドウォリアー) ドラムスヲチューニング

 シンクロ召喚、レベル5、A・O・J(アーリー・オブ・ジャスティス)カタストル。」』

 ATK7400→6400

 

 カタストル ATK2200

 

『「墓地ノシャッフル・リボーンヲ除外シ我ニ装備サレテイル進化する人類ヲデッキニ戻シ1枚ドロー。

 サラニレベル5ノカタストルニレベル3ノ武力(ブリキ)の軍奏ヲチューニング

 我ニ従エ決闘竜(デュエルドラゴン)ヨ!シンクロ召喚!!閃珖竜 スターダスト!!」』

 ATK6400→4000→3000

 

「なっ!?」


「なんなんだよ・・・何だってんだよ!!」

 

「バカ!!大声出すな!あの目玉のバケモンが来ちまうだろうが!」

 

「そういうデイモンの方が大声出てるじゃんか・・・」

 

 邪眼神(ウチャツィミーメ)から逃げだしたデイモンとトニーはロッカールームに逃げ込み、震えていた。

 

「なぁ、シンジ・・・大丈夫・・かな?」

 

「あぁ、早くシンジを連れてここから出なきゃ・・・」

 

 2人は外の気配から動くものがいないと感じ取ると、扉を開けて邪眼神(ウチャツィミーメ)がいないことを再度確認する。

 

「よし・・・行くぞ!」

 

「おう!」

 

 仲間のために恐怖を押しのけて2人は外に踏み出す。だが

 

――うえぇぇぇぇぇん!!

――カサカサカサカサカサカサカサカサカッ!!

 

「「!!?」」

 

 静かな通路に響く子供の鳴き声と不気味な足音

 後ろを見てみると数多の邪眼神(ウチャツィミーメ)に追いかけられている身なりの良い少年がこちらへ走ってきていた。

 

「おいおい!マジかよ!!?」

 

「冗談にもなんねぇよ!?」

 

 2人はすぐにそれらから背を向け走り出そうとした

 

「うえぇぇぇぇぇん!!!」

 

 が、泣きじゃくる少年の声がそれにストップをかけた。

 

「「・・・・・・あぁ!!もう!!」」

 

 2人はすぐそばにあった消火栓から斧と消火器を取り出し、トニーが迫る邪眼神(ウチャツィミーメ)に向かって消火剤をばらまき混乱した邪眼神(ウチャツィミーメ)にデイモンが斧を叩き下ろす。

 逃げていた少年は助けを得られた安堵からか、枯れたのどから嗚咽を吐きながら立ち尽くす。

 

「あっ・・・あぁ・・・・」

 

「おいガキ!てめぇそんな所に突っ立てねぇでとっとと逃げろ!!」

 

「こんな事させて助かりませんでしたじゃ、ただじゃ済まねぇからな!!」

 

 悪態をつきながらも2人は少年の方へ向かおうとする邪眼神(ウチャツィミーメ)を次々と潰していく。

 だが多勢に無勢、2人の体力は徐々になくなっていき、一旦足を止めてしまった少年のスピードは明らかに遅かった。

 少年もどうにかして足を上げようとしているが、その歩幅は狭い。

 

「くっそおおぉぉぉぉ!!」

 

「やっぱり俺らじゃ何にもできねぇのかよおおぉぉぉ!!」

 

 誰も助けられない。2人の口から悔しさを含んだ慟哭が上がる。

 健闘虚しく、邪眼神(ウチャツィミーメ)は二人を越えて少年に迫る。だが

 

「へっ!骨のある奴がいるじゃねか!!えんじょおおおぉぉぉぉい!!」

 

猪鹿蝶「うおおぉぉぉぉぉ!!」――ザシュ!ザシュ!!

 

 煌びやかな鎧を纏った武者が長槍で邪眼神(ウチャツィミーメ)を切り裂く

 その主はかつて男たちが少年だったころのヒーロー

 

「エンジョイ・・・」「長次郎!!」

 

「おう!よく頑張ったな!お二人さん!後は俺たちに任せな!!」

 

「俺」「たち?」

 

――ヒュン!!ヒュン!!

 

 飛びかかろうとする邪眼神(ウチャツィミーメ)を毒の矢が貫く

 その射線の先には緑の鎧を纏う蜂の魔人を従えた男が一人

 

「あぁ・・・!!」「シンジ!!」

 

「ったく、てめぇら・・・・まぁそれは俺もか・・・

 バカはもう一人いるしな。」

 

――オラァ!!化け物ども!俺の仲間に手を出してんじゃねえぇぇぇぇ!!

 

 シンジが見つめる病院の外では黒羽の嵐が雷と共に荒れていた


スターダスト「ギュオオォォォォォォォォ!!」

      ATK2500

 

 スターダスト・・・だと!?

 

「あのモンスターは・・・」

 

「なんか似てるな?」

 

 究極幻神の出した閃珖竜に訝し気な目を送る二人

 それはそうだろう。[スターダスト・ウォリアー]も[閃珖竜 スターダスト]も同じモンスターがモデルなのだから。特にこいつは

 

『「コノモンスターハ互イノターンニ1度、我ガフィールドノ表側表示カード1枚ヲ選択シ、選択シタカードハソノターン1度ダケ戦闘及ビ効果デ破壊サレナクナル。」』

 

「なんだよそれ!?

 ただでさえバカみたいに高い攻撃力なのに破壊耐性を付与するモンスターだとぉ!?」

 

『「フハハハハ、神ノ前ニ絶望スルガイイ!!

 我ハマジックカード、貪欲な壺ヲ発動。

 我ノ墓地ヨリ、武力(ブリキ)の軍奏、カタストル、シューティング・ライザー・ドラゴン、星なる影(ネフシャドール) ゲニウス2枚ヲデッキニ戻シ2枚ドロースル。

 フンッ!カードヲ1枚伏セ、フィールド魔法、ブラック・ガーデンヲ発動スル!」』

 

「なっ!?フィールド魔法!?」

 

 そういえば、このデュエル、スピードでもアクションでもなかった・・・

 

『「コノカードガアルカギリ、互イニモンスターヲ召喚、特殊召喚スルタビニコントローラーノ相手フィールドニローズ・トークンガ攻撃表示デ特殊召喚サレル

 我ハコレデターンヲ終了スル。」』

 

 あいつのフィールドのモンスターは2体、こっちは1体

 だが奴のトークン精製能力とブラック・ガーデンの効果を合わせれば、優先権を渡した瞬間、俺たちのフィールドが埋まるか・・・

 まぁ、この手札なら問題ないだろう

 

「俺のターン、ドロー!」

 

『「キサマノドローフェイズ終了時、トラップ発動、攪乱作戦。」』

 

「なっ!!?」

 

 相手の手札をすべてデッキに戻して、元の手札の数だけドローさせる嫌がらせカード!?

 

『「サァ、ソノ手札、戻シテモラオウカ?」』

 

「チッ、姑息な真似を・・・」

 

 ・・・・なぁにこれ?

 

 事故ったあああぁぁぁぁぁぁ!!!?モンスターがいねぇ!!!

 どうする!?

 1、墓地のレッド・ライジング除外・・・チェーンが発生するから究極神の効果でフィールド枠が一つとなって効果が成立しない。

 2、墓地のスピードリバースを除外してモンスターの調達・・・フィールドが埋まる。

 3、ペンデュラム召喚・・・これが現状一番いいか?チェーンのらないし、賤竜とダグ・ダガーマン出すだけになるけど、こんなことならエクサ・ビートルくらい入れてればよかった。

 いや、ユーゴの言動からしてあいつはスカーライトのコピーカードも持っているらしいから次のターン吹き飛ばされて終わる可能性も・・・

 

――ピピッ!

 

「?」

 

―――ねぇ!?病院に誰か向かえない!?』

 

『この化け物どもめ・・・』

 

『沢渡!いけるか!?』

 

『こっちも消しても湧いてきやがるもんでよ!!』

 

『泣き言を言うな!沢渡!!

 零児!病院には私たちが向かう!!』

 

『わかった!・・・零羅!そっちは!』

 

『大丈夫、僕たちは負けない・・・!!』

 

『そうよ!私たちが諦めるわけにはいかないわ!!』

 

『うむ!!俺たちのデュエルは、外道に使われるものではない!』

 

『デュエルは・・・人を笑顔にするものだ!!』

 

『・・・そうだな。私たちは・・・その意地を通すために来たのだ!!』

 

 広域通信?デニスが切羽詰まってこっちにも飛んできたらしい。

 彼らは邪眼神(ウチャツィミーメ)とライディングロイドの残党に手古摺っていはいるが、諦めずに立ち向かっている。

 

「なんだよ・・・かっこいいじゃないか・・・」

 

 俺が守りたいものはこの街じゃない。彼らだ。

 その彼らがこの街を守りたいというのであれば、俺も諦めるわけにはいかないよな・・・

 

「さて、どうするか・・・・」

 

 思いを・・・繋げ・・・

 

「!!?何か、言ったか?」

 

「?いや?」

 

「それよりどうする気だ!ロゼ!!」

 

「いや・・・う~ん・・・・」

 

 ジャックに叱咤されて頭を謎の声から切り替える

 せめてチューナーがいれば・・・チューナー?

 そういえばスターダストは・・・・

 

「!!俺は設置済みのペンデュラムスケールでペンデュラム召喚!

 来い!レベル6、賤竜の魔術師!!」

 

賤竜「ふん!」

DEF1400

   ATK2100→1050

 

『「愚カニモ神ニ立チ向カウカ!

 ブラック・ガーデンノ効果ニチェーンシ我ノ効果発動!満チヨ!邪眼神(ウチャツィミーメ)!!

 サラニ、キサマノエクストラデッキカラモンスターガ特殊召喚サレタコトニヨリ墓地ノ迷い風ノ効果ヲ発動!コノカードヲセットスル。」』

 ATK3000→10000

 

 邪眼神(ウチャツィミーメ) DEF0

 邪眼神(ウチャツィミーメ) DEF0

 邪眼神(ウチャツィミーメ) DEF0

 

 邪眼神(ウチャツィミーメ) DEF0

 邪眼神(ウチャツィミーメ) DEF0

 邪眼神(ウチャツィミーメ) DEF0

 

「ッ!?またかよ!?」

 

「鬱陶しい!!」

 

 ユーゴとジャックが忌々しそうに 邪眼神(ウチャツィミーメ)を見るがこのターンにはどうしようもない。

 

「スターダストの効果で守れるのは自分フィールドの表側表示カードだけ、迷い風は破壊させてもらう!

 速攻魔法、ダブル・サイクロンを発動!

 お互いのフィールドの魔法、トラップカードを1枚ずつ選択し、破壊する。

 セットされたお前の迷い風と、俺のフィールドの涅槃の超魔導剣士(ニルヴァーナ・ハイ・パラディン)を破壊!

 さらに魔剣ダーマを守備に変更して効果を発動、墓地のSR(スピードロイド)ビードロ・ドクロを除外してお前に500ポイントのダメージを与える!」

 

『「フッ無駄ナ足掻キヲ・・・」』

 LP1150→650

 

「あぁ、足掻かせてもらうぜ?

 カードを3枚セット、ターンエンドだ。」

 

『「フン!言ウ割ニ何モ出来ヌカ。ナラバ我ノターン!!」』

 

「スタンバイフェイズの終了時、トラップ発動!バトルマニア!

 このターン、相手フィールド上のモンスターはすべて攻撃表示になり、このターン表示形式の変更を不能にし、攻撃可能なモンスターは必ず攻撃しなければならない!」

 

 邪眼神(ウチャツィミーメ)トークン DEF0→ATK0

 邪眼神(ウチャツィミーメ)トークン DEF0→ATK0

 邪眼神(ウチャツィミーメ)トークン DEF0→ATK0

 

『「ハハハハ!邪眼神(ウチャツィミーメ)ヲ攻撃サセテ、我ニダメージヲ与エテ勝トウトイウノダロウガ、僕ガ1体足リナカッタナ!

 我ト閃珖竜ノ攻撃デ貴様ノモンスターハ尽キル、攻守ノ数値ガ同ジ邪眼神(ウチャツィミーメ)デハダメージハ発生シナイ!」』

 

 まさに無駄な行為をしている俺に究極神いや、ロジェは嘲笑しその手に雷をため込む。

 

『「我ガ神撃ヲ受ケルガイイ!」』

 

「トラップ発動!シンクロ・マテリアル!!

 俺が指定した相手モンスターはこのターン、俺のシンクロ召喚に使用できる!

 指定するのは閃珖竜 スターダスト!」

 

『「何ッ!?」』

 

「!!?スターダストは・・・」

 

武力(ブリキ)の軍奏の効果でチューナーに!!」

 

「そしてこのカードだ!トラップカード!緊急同調!!

 バトルフェイズ中にシンクロ召喚を行う!

 俺はレベル1の邪眼神(ウチャツィミーメ)トークン2体にレベル8、閃珖竜 スターダストをチューニング!!」

 

スターダスト「ギュオオォォォォォォォォ!!」

 

 スターダストが飛翔し、俺の2体の邪眼神(ウチャツィミーメ)も流星となって天へ上る。

 

「集いし願いは未来の嘆き、その力を示し、新たな世界の扉を開け!シンクロ召喚!!」

 

 スターダストと邪眼神(ウチャツィミーメ)が星へと変じ、暗雲の空に巨大な生命の樹が魔法陣のように描かれる。

 そしてその生命の樹から黄金の鎧が降りてくる

 

「現れろ!時械神祖ヴルガータ!!」

 

 黄金の鎧の胸部の鏡のような部分に厳格な老人の顔が浮かび上がる。

 

 ヴルガータ ATK0

 

 ローズトークン ATK800

 

「「攻撃力0!!?」」

 

『「・・・クッ、クククククハハハハハハハ!!

 ナルホド、ヨウヤクソノ身ヲ我ニ差シ出ス気ニナッタカ!!」』

 

「なわけないだろ?

 ヴルガータは戦闘、効果で破壊されず、このカードの戦闘で発生する自分へのダメージは0になる。

 エクストラデッキから特殊召喚したこのカードは戦闘を行ったダメージステップ終了時に、相手フィールド上に存在するモンスターすべてを除外する!」

 

『「何!!?ダ、ダガ貴様ラノフィールドニ獲物ナド!」』

 

「ふ、今はお前のバトルステップ・・・

 墓地のトラップカード、ダイスロール・バトルの効果を発動!

 自分と相手のフィールドの攻撃表示のシンクロモンスターを1体ずつ選び、強制的にバトルさせる!

 選ぶのはもちろん・・・ヴルガータとお前だぁぁ!!」

 

『「ヌ!?オオォォ!?ワアアァァァァァ!?ヤメロオオォォォォォ!!????」』

 

 奴の手に集められた雷は奴の意思とは関係なく暴発し、黄金の鎧に向かう。

 だが、ヴルガータはその雷に動揺せず腕すら動かさず不動でその雷を受ける。

 

ヴルガータ「・・・・!!」

 

 受けた雷を自らに取り込みそのエネルギーを波動としてロジェのフィールドを蹂躙する。

 

『「ヌワアアァァあああああぁぁぁぁぁ!!」』『・・・・・・』

 

 究極神の頭の上にくっ付いているロジェが悲鳴を上げるが、その下の究極神の顔は微笑むようにも見えながら消えていった。

 

「ぐっ!!はっ・・・・うぅ・・・・はっ!?力が!?私の力が!?

 究極神の力が消えているウゥ!!?」

 

 狼狽するロジェ

 こいつ、究極神に乗っ取られたのかと思えば・・・まぁ、こんな奴器にもならないよな・・・

 

「どうした?お前のターン中だぞロジェ?

 ヴルガータの除外効果で除外されたモンスターはターン終了時に特殊召喚されるが、ビシバールキンは自身の効果による特殊召喚以外には特殊召喚不能、そのほかのモンスターは全てトークン、このままだとお前はがら空きだ。」

 

「ぐぬううぅぅぅぅウゥゥゥゥ!!

 バトルフェイズを終了し、私はマジックカード、貪欲な壺を発動ッ!

 墓地の浮鵺城、ゲニウス、ダークシー・レスキュー、機巧嘴―八咫御先(ヤタノミサキ)、トルクチューン・ギアをデッキに戻し、2枚ドロー!

 

 そして墓地より機巧蛙―磐盾多邇具久(イワタテノタニグク)の効果を発動!

 このカードを除外し、墓地の攻守が同じ数値の機械族モンスターを特殊召喚する!

 私が特殊召喚するのは古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)

 そしてローズトークンをお前たちのフィールドに特殊召喚!」

 

古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)「ギャアオォォ!!」

         ATK1000→500

         DEF1000

 

 ローズトークン ATK800

 

 ん?

 

「さらに機巧鳥―常世宇受賣長鳴(トコヨウズメノナガナキ)を除外し効果を発動!

 裏側表示で除外されている古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)を手札に加える!

 そして、フィールドの古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)の効果を発動!

 私のフィールド、手札のモンスターを使いアンテーク・ギア融合モンスターを融合召喚する!

 混じれ!猟犬どもよ!融合召喚!!古代の機械魔神(アンティーク・ギア・デビル)!!」

 

 古代の機械魔神(アンティーク・ギア・デビル) DEF1800

 

 結局、アンティーク・ギアに走るのか・・・ならこいつ、この後アカデミアに逃げる気か?

 零児に柚子とセレナに警戒させるようにメールを送っておくか。

 

古代の機械魔神(アンティーク・ギア・デビル)の効果発動!

 1ターンに1度、相手に1000ポイントのダメージを与える!」

 

「くぅぅ!!」

 LP3700→2700

 

「私は負けない!勝つのは・・・私ダアアァァァ!!

 永続魔法、暗黒の扉を発動し、カードを1枚セットしターンエンドォォ!!」

 

 古代の機械魔神(アンティーク・ギア・デビル)はあらゆる効果を受けず、暗黒の扉は相手の攻撃宣言できるモンスターを1体のみに制限する。

 破壊されても後続が出てくるし、この時点で鬱陶しい場面を構築された。ただその姿は非常に

 

「見苦しい・・・」

 

「ふんっ!全くだな!!ならこの俺が一思いに葬ってくれよう!!

 俺のターン!!」

 

「させるカアアァァァァ!!トラップ発動!和睦の使者!!

 このターン私は戦闘ダメージを受けず、私のモンスターは戦闘で破壊されない!」

 

 これで効果を受けない古代の機械魔神(アンティーク・ギア・デビル)は戦闘破壊はされるが後続のモンスターは戦闘破壊されず、直接攻撃も実質封じられた。

 

「小賢しい・・・そんな生ぬるい手でこの俺を止められると思うな!!

 俺はマジックカード、ブーギートラップを発動!

 手札2枚を捨て、俺たちの墓地のトラップカード1枚を対象にし、それをセットする。

 俺がセットするのはナイトメア・デーモンズ!

 

 このセットされたカードはこのターンに発動できる!

 俺たちのフィールドの最後の邪眼神(ウチャツィミーメ)トークンをリリースしナイトメア・デーモンズを発動!

 お前のフィールドに3体のナイトメア・デーモントークンを攻撃表示で特殊召喚する!」

 

 ナイトメア・デーモントークン ATK2000→1000

 ナイトメア・デーモントークン ATK2000→1000

 ナイトメア・デーモントークン ATK2000→1000

 

 ローズトークン ATK800

 

「くっ、はははは、バカなことを、このターン私のコントロールするモンスターは戦闘破壊されないんですよ?

 このトークンがフィールドを1体でも離れれば私に勝てるとしても、貴方の代名詞、レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライトでは破壊できない。

 タイラントはフィールドが埋まり召喚できる状況ではない。どうするのです?」

 

「俺は一人で戦っているのではない!ロゼ!ユーゴ!お前たちの力、借りるぞ!!」

 

「おっしゃ!!」

 

「あぁ!!」

 

「俺はマジックカード、トラスト・マインドを発動!

 俺のフィールドのレベル2以上のモンスター、賤竜の魔術師をリリースしそのレベルの半分以下のレベルを持つチューナーモンスター、レッド・リゾネーターを手札に加え、召喚!!」

 

レッド・リゾネーター「ヘッ!!」

          600→300

 

 ローズ・トークン ATK800

 

「魔剣ダーマの効果発動!機械族モンスター、SRマジックハウンドを除外しキサマに500ポイントのダメージ!」

 

「墓地のダメージ・ダイエットを除外して効果を発動!

 このターン、私への効果ダメージは半分となる!!」

 LP650→400

 

「ふん、浅はかなことだ。

 墓地のADチェンジャーの効果発動!

 このカードを除外し、フィールドのモンスター1体の表示形式を変更する。

 ナイトメア・デーモントークン1体を守備表示に変更!」

 

 ナイトメア・デーモントークン ATK1000→DEF2000

 

「見せてやろう。この俺、ジャック・アトラスの魂を!!

 レベル6のHSR魔剣ダーマにレベル2のレッド・リゾネーターをチューニング!」

 

 レベル8?クリムゾン・ブレーダーか?でもこの状況じゃ・・・

 

 「王者の鼓動、今ここに列をなす・・・

 

 !!この口上は!?

 

天地鳴動の力を見るがいい!

 

「きたあぁぁぁぁ!!」

 

「シンクロ召喚!!現れよ!!我が魂!!」

 

 人に似た体に長く伸びた首の先の頭に生える曲がった角、それはまさしくジャック・アトラスの原典

 

「「「レッド・デーモンズ・ドラゴン!!」」」

 

レッド・デーモンズ「バオオオオオォォォォォォォォォ!!」

         ATK3000→1500

 

「うぉぉおぉぉぉ!!すげえぇぇ!!マジだあぁぁ!!マジで本物のレッド・デーモンズ・ドラゴンだぁぁ!!」

 

「持ってたのか・・・」

 

「新たなレッド・デーモンズ!!?

 だ、だが、私のフィールドのモンスターは戦闘で破壊されず、ブラック・ガーデンの効果を受けたそのモンスターはローズ・トークンを倒せる攻撃力しかない!」

 

「ふんっ!ならばその目でしかと見るがいい!レッド・デーモンズの勇士を!!

 レッド・デーモンズ・ドラゴンで古代の機械魔神(アンティーク・ギア・デビル)へ攻撃!

 アブソリュート・パワー・フォース!!

 

 レッド・デーモンズ・ドラゴンの手に炎が宿り、古代の機械魔神(アンティーク・ギア・デビル)に叩きつける。

 古代の機械魔神(アンティーク・ギア・デビル)は翼でその攻撃をはじき返し、お返しとばかりの砲撃を加え、その余波がジャックの頬を薙ぐ

 

「・・・・・・」

 LP2700→2400

 

「はははは!愚かな抵抗だぁ・・・・

 どんな効果を持っているか知りませんが、古代の機械魔神(アンティーク・ギア・デビル)は効果を受けません。」

 

「・・・愚かなのはお前だ。」

 

「レッド・デーモンズ・ドラゴンの効果!」

 

「守備表示モンスターを攻撃したダメージステップ終了時、相手フィールドの守備表示モンスターすべてを破壊する!」

 

「なっ!?全てだと・・・」

 

「そうだ、お前のフィールドにいるナイトメア・デーモントークンをな!!

 いけぇぇぇぇぇ!!レッド・デーモンズ・ドラゴン!!」

 

「「「デモン・メテオ!!」」」

 

 再び拳に宿った炎を撃ち放ち、守備表示のナイトメア・デーモントークンを爆発で打ち上げる。

 当人は空を舞いながらけらけら笑って、ロジェに向かって炎を纏いながら落ちて行く

 

「ヒイィィ!!来るな!!来るな!!?クルナアアアァァァァ!!ぎゃああぁぁぁぁぁぁ!!!」――ボオオォォォォ!!

 LP400→0

 

 こうして多くの人々と、古の神を被害者にした小悪党の野望は潰えた。


 馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿なバカナバカナバカナバカナバカナバカナッ!!

 

 3年を掛け手に入れた神の力が!!この世界での私の地盤の全てが!!砕け散ってしまった・・・

 

 くそオオオォォォォォォォォォォォォ!!あんなコモンズのドブネズミなんぞにイイィィィィ!!

 

 どうすればいい!?このままでは奴らに捕まる。アカデミアに戻ろうにも・・・

 はっ!!そうだ!!手土産だ!

 確か赤馬零王が誘拐を命じた少女と同じ顔の少女が、最近シティで目撃されていたはず・・・

 もしその少女がアカデミアから逃げ出したのなら、それを連れ戻した私にはそれなりの地位が舞い戻る!!

 

 ははは、それならこんなところで油を売っている暇はない!

 おっと、その前にドブネズミ共の足止めをしなければ


「「あの野郎オオォォォォォォォ!!」」

 

――キュイイイィイィィィィィィィィィィィィ!!

 

 俺とユーゴの声がシンクロしてセキュリティ本部のビルの上に響き渡る。

 そしてそれに混じり響くのはモーメントの駆動音

 その内部からは虹色ではなくオレンジ色の光が漏れ出している。

 

「くっ!!駄目だ。おい!お前たちはどうにかできないか!!?」

 

「無理っす!!」

 

「無茶言うな!!」

 

 ジャックも大焦りしてモーメントを止めようとしている。

 光の道が消える前にこの場所に降り立った俺たちだが、ロジェはすでに姿を眩ませていた。

 だが奴は俺たちの足止めのためにあろうことかモーメントを暴走させていきやがった!!

 

「このままじゃモーメント内のエネルギーが暴発してこのあたり一帯が吹き飛んでしまう!!」

 

「あぁ!!どうすりゃいいんだ!!?」

 

 おまけに中にデュエルエナジーが紛れ込んでいるから下手したら時空間に影響が出るかも・・・どうする!!

 

「ええぇぇぇい!!ならばこんなもの壊して」「「それはやめろ!!」」

 

 ユーゴは修理屋しているし、俺も月影の見よう見まねはできる。

 ジャックもDホイールの整備くらいはわかるとは思うが、このモーメントは発電機として作られたものだからなのかセキュリティが強固だ。

 なによりコンソールが壊され正規の緊急停止すらできない。Dホイールに繋いでデータを呼び出したはいいものの 

 どう操作していいか全くわからない。

 別口で開いているせいか暴走しているのに緊急停止プログラムも起動しない。

 

「イーヒヒヒヒヒ!!それならばこのわたくしにお任せを!!」

 

「あっ!?」「お前は!?」「えっ?誰?」

 

 奇妙な笑い声とともに現れたのは、背の低い色白の男

 何故か目には赤い縦線が化粧されている。その人物の名は

 

「ドングリピエロ!!」

 

「はたぁぁ・・・ナンデスカソノ変ナ呼ビ名ハ!!わたくしの名前はイェーガーです!!」

 

「いぇーがー?・・・・あっ!!そうだ!お札の人だ!!」

 

「それは私の曾々お爺さんです。って!コンナ事ヲシテイルバアイデハアリマセン!!」

 

「そうだ!このポンコツを早く止めなくてはイカン!!」

 

「だぁぁぁから、その為にわたくしが来たのですよッと!!」

 

 イェーガーは袖から端末を取り出すと巨大モーメントに接続、あっという間にシステムのバックドアを呼び出し、緊急停止させるためのプログラムを呼び出す。

 

「ささ、後はここに制御用のカードを認識させるだけですヨォ!」

 

「制御用のカード?貴方が持っているのでは?」

 

「いえ、お持ちなのはジャック・アトラス様とあなたですよ。ロゼ・ジェスター。」

 

 えっ?俺?

 

「そうだ、お前の持つスターダスト・ウォリアー

 それがこの巨大モーメントの制御キーの一つらしい。」

 

「スターダスト・ウォリアーが・・・」

 

 やっぱりこれも不動博士作なのか・・・

 俺はスターダスト・ウォリアーを、ジャックはスカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴンを取り出し、イェーガーの端末の認識台に置く

 

――キュイイィィィィィ・・・・・・

 

 するとさっきまでぐるんぐるん廻っていたモーメントの内部が回転を落とし、そして停止した。

 

「や、やった!やったぜ!ジャック!ロゼ!!」

 

「まったく、これほど早く済むのなら、早く出てこぬか!」

 

「デュエル終了から急いでここまで登ってきたのですよ!?」

 

 それはロジェにはち合わなかったのか?

 こちらの追っ手を撒くためにわざと遠回りをしたか?

 まぁなんにしろもうこの世界では立場を失ったから、後は柚子たちにちょっかいを出さないか警戒をすれば・・・

 

――ゴプゥ・・・

 

「・・・・・・なぁ、イェーガーさん?」

 

「はいィ?何でございましょうか?」

 

「この緊急停止ってさ、もしかしなくてもモーメントを止めるだけ?」

 

「?えぇ、そうですよ?」

 

「じゃあ、この中に入り込んだ外部のエネルギーはどうなる?」

 

「ほぇ?」

 

 通常なら粘性の液体のように振舞うデュエルエナジー

 それが今までかき混ぜられていたためか、モーメント内で沸騰するように泡立ちその怪しい輝きが増し続けている。

 

――ゴポポポポポポポポポッ!!

 

「コッ!?コレハ!!?」

 

「まずい!?」

 

「爆発するぞ!!?」

 

「もうだめだあああぁぁぁぁぁぁ!!」


――・・・・・・・・

 

「あ、あれ?」

 

「収まった、のか?」

 

「あの光ももうねぇみてぇだな?」

 

「タッ、助かりました・・・ヨヨヨ・・・」

 

 デュエルエナジーがひときわ大きく輝いたことで爆発するかと思われたが、どういう訳か一瞬でその光はなくなり、モーメントは何事もなかったかのように停止していた。

 霧散したのか?何にしても異世界編に突入するなんて羽目は避けられたか・・・ん?

 

「あれ、いつの間にカード落としたんだ?」

 

 ケースに入れていたはずなのにこの一枚だけ・・・あの未だ名前も姿もわからない白紙のカードが俺の足元に寄り添うように落ちていた。




「はぁはぁ、ここまでくれば「逃げ切れると思った?」

「!!?ひっ!?ヒイイィィィ!!キサマはユーリ!!?」

「もう折角、遊矢とデュエル出来ると思ったのにさぁ?
 あのジャックっていう人とのデュエルの余韻も台無しにしてくれちゃって、どうするの?」

「それは!!」

「まぁ、答えは聞かないけどね。」

――シャアアァァァァァァ!!

 ユーリの背後には涎を滴らせる紫の毒竜が暗闇からロジェを睨んでいた

「ぎゃああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」――ガブッ!

「ユーリ、これって死んでないよね?」

「嚙んだだけだよ?嚙み千切ってないから死なないよ。たぶん
 さぁ、お仕事を終わらせるために一旦還ろっか!」

「遊矢たちはいいの?」

「ふふ、うん、今は疲れているだろうしね?」

「はぁ~本当に君はよくわからないやつだなぁ・・・
 次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
 『また会える日まで』」

「また会えるよ、彼と僕はね。ふふふ。」


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また会う日まで

作者は最近ゴジラSPに嵌ってます。

シンクロ編ラスト
最後の問題を残した人物の清算と考察、そしてお別れ回です。
短めになってしまいましたが、ダラダラ伸ばしても仕方がなかったので


 治安維持局長官、ジャン・ミシェル・ロジェによる大規模テロから2日

 街の混乱も落ち着き、街は日常を取り戻そうとしていた。

 

「そうですか・・・彼らはこの街を去るのですか・・・」

 

「えぇ、元々彼らを引き留めていたのはこちらですから、これ以上引き留めることもないでしょう。

 彼らには彼らの目的がありますじゃ。」

 

「そうですか・・・・

 それにしてもフレンドシップカップ優勝、そしてあの騒ぎへの功労

 それに賞するものがあんなものでよかったのですか?」

 

「あれを欲しがったのですから仕方ありませんなぁ~

 こちらとしてもあんな厄介なものを引き取ってくれたのは願ったりかなったり・・・

 それより、モーメント発電機の破棄、本当によかったのですかな?」

 

 デュエルエナジーという次元に影響を及ぼす異常なエネルギーの残留が懸念され、大型モーメント発電機は解体が決まった。

 それだけではなく、扱いきれないほどのエネルギーを発生させる大型モーメントは現状の技術では生かすことが出来ないことが分かったのだ。

 

「えぇ、今の我々にはアレは過ぎたる発明です。

 ゴドウィン御兄弟も大変残念そうにしておられましたが、しかたなしと・・・」

 

「そうですか・・・

 もっと我々が良き街を作っていれば・・・」

 

「いえ、急ぎ過ぎれば、躓くと大変なことになります。

 ゆっくりでもいいのです。前へ進み続けることを忘れなければ、いつかきっと・・・」

 

「そうですのう・・・」

(この街はようやく歩き出した。それでも街はここにある。

 ユーゴ、大事なものを取り戻したら、帰ってくるのじゃぞ?)


――チュン、チュン

 

「う・・・・ぁ・・・・痛っ!!」

 

 まだ痛みやがるな・・・まぁしかたねぇか、無茶して暴れたからな。

 ん?ロゼの奴はもう起きてやがんのか?まだ6時だぞ?

 まぁ、俺も目ぇ覚めちまったし起きるか・・・

 

 俺もメシの準備手伝わなきゃなぁ

 

「んぁ?ロゼの奴、どこ行ったんだ?」

 

 D-ホイールは・・・あるな。ホントどこ行ったんだ?ん?

 鍋の中には魚とザリガニが入ったクリームスープ、クラムチャウダーってのか?

 

「『温めて食べてください。』いや、こんなの書かなくったって・・・!!?」

 

 食卓の上にはスターダスト・チャージ・ウォリアー、サテライト・ウォリアー、ジャンク・ウォリアー、シューティング・ライザー・ドラゴン、そしてスターダスト・ウォリアー

 ロゼと共に戦った遊星のカードたちが置かれていた。その横にはもう一枚の書置き

 

「『お世話になりました。』って・・・勝手にいなくなるなよな!!」

 

 あばよの一言もかけないで行きやがって!

 俺は数年ぶりにあいつに連絡を取る。出るかどうかわからねぇが・・・

 

『なんだクロウ、お前が俺に連絡など。』

 

 ぶっきらぼうな声が受話器越しに聞こえる。ロゼのことで一番協力してくれそうなのがこいつだ。

 

「おう、ジャック、おめぇに頼みたいことがある・・・」

 

『頼みたいこと?』

 

「あぁ、実はロゼがいなくなっちまって・・・」

 

『・・・そうか、奴は大会を終えたら旅立つと言っていたからな。』

 

 そうなんだけどよ・・・そうだよ、あいつがいなくなるのは分かってたことじゃないか。

 あいつはただの通りすがりで、あいつと会ったのはたったの一週間ちょい前のことだ。

 人を探しているって言ってたけど、それも見つかって、大会も終わった。

 ここにいる意味はねぇ・・よな・・・・

 

『・・・クロウ、お前はこれからどうするつもりだ?』

 

「えっ?」

 

『俺も近々、この街を出る。世界のキングを、俺の道を進むためにな!』

 

「ジャック・・・」

 

 お前もいなくなっちまうのか・・・

 

「俺はボルガーたちと一緒にライディングデュエルのプロリーグを創るつもりだ。

 俺たちの作ったライディングデュエルをもっといろんな奴らに楽しんでもらうためにな。」

 

『ふん、お前らしい青臭い考えだな。

 それで、ロゼは遊星のカードとDホイールを置いて行ったか?』

 

「!!?なんでそれを!?」

 

『奴が決勝の時に言っていた

 それでクロウ、お前はあのDホイールとカードをどうする?』

 

「どうするって・・・そりゃ・・・」

 

 どうするんだ?どうしたいんだ、俺は・・・

 わざわざ勝手に恨んでいたジャックに連絡までして、それなのに遊星のモノをどうするか、その答えが出てこない。

 

『あれをただの思い出にするのか。』

 

 遊星はとっくの昔に死んじまった。

 それでも遊星のカードとDホイールはロゼと一緒にシンジを救ってくれたり、この街を守るために戦ってくれた。

 もう、眠らしてやってもいいと思う。だが・・・

 

『それとも・・・』

 

 だが、俺は・・・


遥かなる時の中 人と精霊は手に手を取り合い世界は廻る

 

絆は力 力は赤き竜となって生まれ落ちる

 

力は本能のままに精霊を喰らう 精霊を喰らうことに力は嘆き悲しむ

 

悲しみを止めるため人と精霊は力を眠らせ互いを別った

 

力の体は大地に抱かれ 力の魂は天空で永遠の安らぎを

 

力は絆 我らは忘れることがなきよう力に思いを捧げよう

 

餓えることがなきよう 忘れることがなきよう

 

眠りが妨げられたのなら その叫びを聞け

 

星の導 それは力の叫び 星が連なり未来へと向かう

 

解読者 矢薙 典膳


 今日発行された新聞の一面

 南アメリカアンデス高地からマヤにかけて伝わる詩

 それは荒ぶる神を鎮め眠らせ、その安息を願う、人と精霊の絆の詩

 

 やっぱり、漫画5Dsとはかけ離れた存在だったか

 ロジェも究極神の意思が乗っ取ったのではなく、暴走していたものの意識はロジェのままだった。

 あのスターダストは赤き竜なりに手を貸してくれたということか。

 

 究極神の笑みの真意に思いをはせてコーヒーを一口

 

「ねぇちょっと遊矢!新聞読んでないで説明してよ!」

 

「へいへい。」

 

 柚子の回収、フレンドシップカップ、そしてロジェの計画を潰した以上、もうシンクロ次元に用はない。

 ロジェは逃亡したがホワイト議長指揮でセキリュティが血眼になって探し、国際指名手配までされた以上、ロジェの再起は無理だろう。

 そしてそのロジェがセキュリティに残して行ったデータからこの次元世界における新たな情報が得られた。

 

「まずは次元移動の座標のそれぞれには定員があること。」

 

「定員?一度に送れる人数があらかじめ決まっているってぇことか?」

 

「おっ、さっすが察しがいいな沢渡さん。

 ここを例に言うと、俺たちが来た4つの地点で2~4人、それが通れるくらいの穴が空いていて、次元移動はそこに通路を差し込んでいるってことだな。

 それ以上は転送位置にラグが発生するらしい。」

 

「ラグ?位置ずれを起こすということか?」

 

「あぁ、いわゆる石の中にいるだったり、上空1万メートルに放り出される事態になるらしい。

 また、時空移動すると同じ穴は規模によるが数時間から1日以上期間を置かないと、不安定になるらしい。」

 

 どこかで聞いた話だが、戦時中のドイツ軍が異次元研究をしていて戦艦を乗組員ごと異次元空間に隠そうとしたが、再出現した際に乗組員ごとあらゆるものが融合した状態で出てきたとか

 やっぱりというか次元間移動にはそれなりのリスクがあるってことだな。

 そして、このシンクロ次元が侵攻を受けてない理由がそこにある

 

「このシンクロ次元はそれぞれの穴の定員が数人と少なく、シティ周りに複数箇所あるが、それ以外は距離がある。

 一気に来れるのも俺たちと同じくらいの人数で、集まろうにも取り締まりが厳しい。

 だから、ロジェもここを拠点にしたんだろうな。」

 

「それでは俺たちの、エクシーズ次元のハートランドは・・・」

 

 まぁそりゃ知りたいよな。黒咲は

 スタンダードならオベリスクフォースがやって来た舞網市の約50人が転送できる穴が最大

 それでなぜ自分たちの故郷だったのか、その理由は

 

「・・・ハートランドに空いている穴で転送できるのは1000人規模、2個大隊が一気に攻め込める大穴が空いている。

 他には日本以外に1人2人しか通れないような小さい穴しかないみたいだが・・・」

 

「なっ!?」

 

 それ以上は言わなくてもわかるハートランドが攻め込まれた理由、そして人が少なくなったにもかかわらず、ずっとハートランドで居座っている理由

 攻め込みやすい場所が他になかったから、ハートランドを足掛かりに人間狩りをしているのだろう。

 

「それとなんでデュエルをしてカード化を行っているのかについてだが、これはデュエルエナジーが関係していると思われる。」

 

「デュエリストがデュエルを行った後に発生させるエネルギーでござるな。

 その性質は次元に影響を与えるとのことでござったか?」

 

「そう、で奴らの目的は次元を統一し新たな理想郷を作ること

 それを加味すると奴らの目的は政治的な統一じゃなくて、デュエルエナジーを使って物理的に世界を融合させる気だということだな。」

 

「そんなこと・・・可能なのでござるか?」

 

 日影が俺の無茶な推測に疑問を発する。

 まぁこの推測、俺が結末を知っているから立てられたものだしな・・・

 そこにちょうど、頼んでおいたトーストが来る。

 

「どうぞ。」

 

「ありがとう。ちょうどいい。」

 

 俺はトーストを四角く8等分に切り分ける。

 

「この一つ一つがカード化された人々が閉じ込められている異空間

 見ての通り切り分けられていて、この世界含め互いに干渉することが不可能になっている。

 外から干渉を受けないから、内部の状態が分からずシュレディンガーの猫理論的にどうなっているかわからない状態にある。」

 

「だが、カードの絵柄という情報でこの世界で観測されているため、内部の状態はそれで固定されている。というわけか。」

 

「う~ん・・・付いた焼き目は変わらない。ということか?」

 

「まぁ、そういうことだな。

 もっとも、燃えたり濡れたりして状態が変わったら、――サクッ、かふぁるともふぉうけど。」

 

「う~ん、それとこれがどう・・・」

 

「切られたパンを持ち上げても互いに干渉することはないが、この切れ目を飴でも塗ってくっ付けたらどうなる?」

 

「?2つが離れずに持ち上がるだけ・・・あぁ、そういうことか・・・」

 

「干渉できないものを干渉出来るようにする・・・

 世界と世界が認識されてより大きな世界になる。それが多くなれば一つの次元になる。

 それが第五次元ってことだろう。

 

 ロジェのシミュレーションによると、第五次元は現在の4次元の上に腫瘍のような形で出現し、薄い壁しか持たない4つの次元を侵食融合しながら成長するらしい。」

 

「・・・それって・・・今の世界は・・・どうなるの・・・・?」

 

「それはわからない。」

 

「そうだろうな。

 そんな事態予想がつかない。その世界で我々は今のままでいられるのか

 それとも再構成され全く別のものになってしまうのか・・・いずれにしても世界が崩壊するに等しいことになる。

 止めなければならないのだ・・・我々が・・・私が・・・」

 

「兄様・・・」

 

 零児め、一人で背負い込もうとするのはもう性分だなこりゃ。

 そりゃ完全に父親の起こした不祥事だが。それに目的もはた迷惑極まりない。

 

 第五次元に柚子たちを放り込んだ場合、元がレイという一人の人間だった柚子たちのパーソナルスペースは互いに干渉し合って崩壊して交じり合う。というのが赤馬 零王としての目的なんだろうけど、その後のことについては考えてない、いや興味ないんだろうな・・・

 

 世界を分け隔てる楔がそんなことになれば4つの次元の核となっている四天の竜の持ち主も元のズァークに戻るだろうことは容易に想像がつくが、『エン』カードを使って討伐できると考えているのだろうか?

 その時異物の俺がどうなるか分からんが・・・

 

「あ、あの、すいません!」

 

 ん?君は・・・


「う~ん、居ないねぇ~」

 

「そうね。もうスラムにはいないのかも」

 

「あぁ~あ、ロゼも黙っていくことねぇのになぁ。」

 

 クロウのためにロゼ探しを手伝うタナー、アマンダ、フランク

 だが広いシティ、人一人を探すのは容易ではない。だが彼らは運がよかった。

 

「あぁ~あ、なんで俺たちが買い物なんなんだよ。」

 

「仕方がないだろう。

 あのブレスレットに近づくとどこに行くかわからないんだから。」

 

「「「あっ!」」」


「これでおしまいだな。」

 

「はい、ありがとうございました。」

 

「・・・俺は今日この街を発つ。そうしたらもう君に会えることはないだろう。

 カードを取り返す気があっても不可能になる。

 なんなら、このカードを普通に返してもいいが・・・どうする?サム君?」

 

 自信なさげな顔の少年『サム』

 デッキ片手にここへやってきた彼は俺に挑み、そして負けた。

 デッキの内容は・・・まぁ酷いものだ。本当にそこらへんで落ちてそうなノーマルカードの束

 だが彼はそれで挑んできた。

 自らの意思で[調律の魔術師]を取り戻すことを選んだのだ。

 

「いえ、そのカードは貴方が持っていてください。

 いつか、貴方からそのカードを勝って取り戻す。そう決めましたから。」

 

 そう言って、サムは笑う。

 その笑みは卑屈さを感じさせない真っすぐな笑みだ。

 

「勝手だな。」

 

「はい。勝手に決めさせてもらいました。」

 

「フンッ!ならば、その前に俺を乗り越えていくことだな!」

 

 !!?ジャック!?

 

「キ、キング!?なぜここに!?」

 

「今の俺はキングではない!ジャック・アトラスだ!

 いいか!こいつを倒したいならまずは俺を倒していけ!!」

 

「えっ・・・えぇぇええええぇぇぇぇ!?そんな!無理ですよ!!」

 

「無理ではない!

 お前はこいつを乗り越えると言った!ならこの俺を乗り越えられない道理はない!

 デュエルは無限の可能性があるのだ!

 俺も・・・勝手な期待をさせてもらうからな。」

 

「!!・・・はい!!」

 

「で、ジャックはどうしたんだ?

 コーヒーでも飲みに来たか?コクが違うぞ。」

 

「それもいいが、ここに来たのは忘れ物を届けるためにクロウに泣きつかれたからだ。」

 

「おい、誰が泣きついたんだよ!」

 

「クロウ。」

 

 ぐっすり眠らせておこうと思って出発したが、探させてしまったか。

 

「ロゼ。てめぇはよ・・・とにかくまずはこいつだ。」

 

「えっ?これは・・・」

 

「『忘れ物』だ。外のアレも忘れんじゃねぇぞ?」

 

 そこにあったのはクロウの家に置いて行った5枚のカード。

 『不動 遊星』が使用したシンクロモンスターたちだった。それに外に出ると例の赤いDホイールが、ボルガー社長たちの乗るトラックに置かれていた。

 

「いいのか?これはあなたたちの・・・」

 

「俺はあいつのことを忘れたりせん。だが俺は奴の思い出に縋りつく気もない。

 そして、お前以上にあのカードとDホイールを託せる奴もいない。」

 

「そうだ。俺たちはあのDホイールに、遊星にずっと走っていてほしいんだ!

 だから、このカードとDホイールをお前に託す!」

 

「・・・俺は通りすがりだし、ライディングデュエルを他でやるのかも怪しいぞ。」

 

「・・・あぁああぁぁ!!もう!いいか!俺たちは『仲間』のお前にこいつらを持っていてほしいって言ってるんだ!」

 

「なかま・・・俺が?」

 

「あぁ、デュエルして、一緒に飯食って、ダチを救ってくれて、街も救ってくれた!

 お前は何と言おうと、俺の、俺たちの仲間だ!

 だから!『さよなら』ぐらい言わせろよ・・・」

 

「・・・ごめん。」

 

「んで、また会おうな!約束だぜ?」

 

「!!」

 

「そうだ、また会うときにはまた俺と戦え、これらは俺たちからの誓いだ。」

 

「あぁ、ありがとう。大切に使わせてもらう。そして、また・・・」


 止まった街は歩みだした。新たな絆を紡いで

 

 そして、次なる舞台は

 

「じゃ、柚子を頼んだぞ。零児。」

 

 花は太陽なき場所へ

 

「あぁ、君も、この作戦にこの世界全ての命運がかかっている。」

 

 道化は希望を失った国へ

 

「遊矢・・・」

 

「大丈夫だって、こんなくだらない事さっさとケリを付けて一緒に帰ろう。」

 

「うん!」

 

 次なる舞台を移す。

 

 運命はまだ決していない。だが確実に狂い始めた。

 

 闇の中に光を灯すのは、王の記憶




てぇわけで、遊星のカードとDホイールはやっちまった。

そうか。

シンジ、お前に話を通さなかったのはすまねぇと思っているだが時間がなくて

いいや、もういいんだ。
俺はあのロゼってやつはよく知らねぇが・・・

ん?

あいつが認めたのなら文句はねぇよ。
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『勇者の言葉』


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エクシーズ次元編
勇者の言葉


書いているうちにしっくりくるものが思いついたので、予告からタイトルを変更しました。

【アンティーク・ギア】ルビ祭り再び開催
オベリスクブルーより弱く、それでいてエクシーズ次元の人たちが負けそうな構築にするのが大変でした。
そして今回のデュエルはほぼコンボ紹介のようなものです。
ちなみに後半のコンボはある動画のコンボパターンの一部を拝借しました。
いやほんと、カードの組み合わせは無限大ですね


 街の清掃やライフラインなどをロボットによる完全自動化によって賄い発展を遂げた技術先進都市『ハートランド』

 その街で最高のエンターテインメント、それがデュエルモンスターズ

 街のあちこちで「「決闘(デュエル)!」」の掛け声が上がり、優しい笑顔と楽しそうな声が上がっていた。

 

「それがこれか・・・」

 

 俺たちの目の前に広がるのは色を失った瓦礫の山

 そこには人の笑顔どころか土煙やほこりが舞い上がり、ひび割れ今にも倒壊しそうな建物と、もはや街の体をなしていない。

 そんな場所でアカデミアは人狩りを続け、残り少なくなった住人たちは危険を顧みずこの瓦礫の中で隠れ潜んでいる。

 

「あぁ、ここが俺たちの故郷・・・」

 

「これがアカデミアの起こした惨状だッ!」

 

「・・・・・・」

 

「これが、これほど・・・なのか・・・・」

 

 ユートと黒咲がデニスを睨む、デニスは何も言えず俯くばかりでセレナは理想としていたものと現実のあまりの違いに悲嘆している。

 

「酷いな・・・」

 

「あぁ、いろいろとな。」

 

 街もあれだがこの場の雰囲気が非常に悪い。まぁ仕方がないが

 だが街の案内とレジスタンスへの説明役にユートと黒咲は必須、標的分散のためにセレナ、アカデミアの内情解説としてデニス

 そして、街中で戦闘を行うため、残った住人を逃がすために建機モンスターである『無限起動』を所有する権現坂

 零児含めた残りのメンツは融合次元での準備もあって潜伏してもらっている。

 

「お~い、ピリピリするのもそのくらいにして、レジスタンスの所に案内してくんないかね?お二人さん。」

 

「・・・そうだな。」

 

「ここでこうしていても仕方ないか・・・」

 

 瓦礫の山を下りて、ハートランド内へ

 崩落の危険が少なそうな、できるだけ原型を保っている建物の影に入りながら進む。

 だが見えるのはずっと似たような壊れた建物、そして予想はしていたがところどころに赤黒い模様・・・

 

「なぁデニス、人狩りするにしてもここまで街を破壊する必要はあったのか?

 危険すぎてやりづらそうだが?」

 

「さぁ、僕もそこんところはわかんないね。

 侵攻が始まったと思えば、なぜかデュエルするより街の破壊を始めるし・・・

 威嚇にしてもやりすぎだとは思ったけど・・・」

 

「思った、だと!元はといえば!お前が!!」

 

「やめろ、隼!俺も同じ気持ちだが・・・ここで争っている場合じゃない。」

 

「・・・ごめん、でも本当に侵攻作戦についてはわからないんだ。

 僕の任務は護衛も兼ねてたけど、瑠璃を見つけ出してアカデミアに連れていくことだったからね。

 聞くんだったら、侵攻部隊総司令官に聞くしかないだろうね。」

 

 総司令官・・・もし彼なら今もあの馬鹿親父の戯言に悩んでこの瓦礫の山を放浪しているのだろうか?

 

――うわああぁぁぁぁぁ!!やめろ!!お願いだ!助けてくれえぇぇぇ!!!

 

「「「「「!!!」」」」」

 

「俺が先に行く!みんなは周辺警戒を!!」

 

 ようやく人かと思ったら悲鳴か、幸先悪い。

 瓦礫を飛び越え向かった先にいたのは制服の色が黄色が1人、赤が2人のアカデミア

 薄ら笑いをしながらのんきにカードをプラプラさせているところを見ると、さっきの悲鳴の主をカードにしたところなんだろう。

 さて、ようやくハッキング機能の本領発揮だな。

 

「お!新しいのが来たぜ。」

 

「やったな今日は豊作じゃん!」

 

「こちらC班、1名発見。直ちに処、ってあれ?

 なんでだ?本部と連絡が取れないぞ?」

 

「お前ら、一応聞くけど、アカデミアでいいんだよな?」――ガシャン!ブォン!

 

 とりあえず相手は黄色でいいか

 

「ほう・・・キサマ、デュエリストか。

 見かけないデュエルディスクだが、久しぶりに暴れられそうだ!」

 

「よっしゃ、ってあれ!?なんでデュエルディスクが動かないんだぁ!?」

 

「お、俺のもだ!?」

 

「おまえたち・・・ディスクの整備くらいちゃんとやっとけ!

 まぁ見ていろ、この程度の奴、俺一人で十分だ!」

 

 程度って、どこからその自信が来るのだろう?

 まさか身長で判断しているんじゃないよな?

 

『『決闘(デュエル)!!』』

 

「先攻は俺だ!

 俺は古代の機械城(アンティーク・ギアキャッスル)を発動して古代の機械兵士(アンティーク・ギアソルジャー)を召喚!

 召喚したことにより、古代の機械城(アンティーク・ギアキャッスル)にカウンターが1つ乗り、古代の機械兵士(アンティーク・ギアソルジャー)の攻撃力は300ポイントアップ!」

 

 古代の機械城(アンティーク・ギアキャッスル) C0→1

 

 古代の機械兵士(アンティーク・ギアソルジャー) ATK1300→ATK1600

 

「さらに装備魔法、古代の機械戦車(アンティーク・ギアタンク)古代の機械兵士(アンティーク・ギアソルジャー)に装備し攻撃力をさらに600ポイントアップ!」

 

 古代の機械兵士(アンティーク・ギアソルジャー) ATK1600→2200

 

 現れたのは片手がグレネード砲になった古めかしい機械の兵隊

 それが城を背に砲塔の付いた巨大なバイクに乗り込む

 う~ん・・・融合しないのか?

 

「カードを2枚セットしてターンエンドだ!」

 

 攻撃力2200のモンスターを出してセット2枚、それであの勝ち誇ったような顔となると・・・

 

「俺のターン、ドロー。

 俺は手札を1枚捨てマジックカード、ペンデュラム・コールを発動

 デッキから名称の違う魔術師ペンデュラムモンスター2体を手札に加える。

 そしてこの手札に加えたスケール8、時読みの魔術師とスケール1、星読みの魔術師をペンデュラムゾーンにセッティング。」

 

「なっ!?モンスターをマジックゾーンに!?」

 

 いつもなら、ペンデュラムの説明をするところだが、まぁこいつらに必要ねぇか

 

「揺れろペンデュラム、異界につながる扉を開け!ペンデュラム召喚!!

 来い!レベル7!神秘に輝く二色の眼!オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン!!」

 

オッドアイズP「ギャオオオオォォォォォォォォ!!」

       ATK2500

 

 おいおい、オッドアイズよぉ。

 久しぶりの出番なのはわかるが、あまり騒がしくしないでくれ、今はな。

 

「リリースもなしに最上級モンスターを召喚した!?

 ペンデュラム召喚・・・まさかお前!?」

 

「誰だっていいじゃないか。知る権利なんてお前にないし。

 手札からチューナーモンスター、EM(エンタメイト)オッドアイズ・シンクロンを通常召喚!

 このモンスターが召喚に成功したとき、墓地のレベル3以下のEM(エンタメイト)かオッドアイズモンスターを効果を無効にし特殊召喚できる。

 来い!レベル1モンスター、EM(エンタメイト)クリボーダー!」

 

オッドアイズ・シンクロン「ハッ!」

            ATK200

 

クリボーダー「クリクリボー、ダー!」

      ATK300

 

「チューナーだと!?」

 

「レベル1のEM(エンタメイト)クリボーダーにレベル2のEM(エンタメイト)オッドアイズ・シンクロンをチューニング!

 シンクロ召喚、霞鳥クラウソラス!」

 

霞鳥クラウソラス「ケェエェェ!」

        DEF2300

 

「シンクロモンスター!?」

 

 赤い二色の瞳の竜に並ぶは緑の羽が鮮やかな鳥

 さて、この効果を止められなければワンキル達成だが、あの伏せカードが俺の想像通りなら・・・

 

「どこの誰だとしても勝つか負けるかの違いでしかないだろう?

 クラウソラスの効果発動、1ターンに1度、相手フィールド上に存在するモンスター1体の攻撃力を0にして効果を無効にする。」

 

「「「なっ!?」」」

 

 古代の機械兵士(アンティーク・ギアソルジャー) ATK2200→0

 

「バトル、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンで古代の機械兵士(アンティーク・ギアソルジャー)に攻撃。」

 

オッドアイズP「ギャオオォォォォォ!!」

 

「くっ!?攻撃力をゼロにされようとも、このカードで返り討ちだ!

 トラップ発動!聖なるバリアーミラーフォース!・・・何故だ!?なぜリバースカードが発動できない!?」

 

「時読み、星読みのペンデュラム効果

 自分のペンデュラムモンスターが戦闘を行う場合、相手はトラップもマジックもダメージステップ終了時まで発動できない。」

 

「何っ!?」

 

「そして、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンがモンスターとの戦闘で与える相手へのダメージは倍になる。」

 

「2500の倍だと!?」「それじゃ!?」

 

「5000のダメージを受けてお前は終わりだ!リアクション・フォース!!」

 

「「「ぐわああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」――ドオオォォン!!

 

 派手に吹き飛んだな。

 結構騒いだが増援は来る気配なし・・・いや、音信不通になったことを怪しまれるかもしれないな。

 なんにしても手早く調べるか

 

「お、お願いだ!」「見逃して――カタッ、カタッ・・・

 

「ひいぃぃぃぃいいいぃぃぃぃぃ!?」

 

 掌握速度は問題なし、後は

 

「た、助け――ドゴッ!!

 

「騒ぐな。黙っていろ。」

 

 顔のすぐ横に蹴りを入れて脅す。

 呆然になっている間にデッキを奪い取って内容を確認・・・[古代の機械兵士(アンティーク・ギアソルジャー)]、[古代の機械砲台(アンティーク・ギアキャノン)]、[古代の歯車(アンティーク・ギア)]に[ペアサイクロイド]?何これ?

 

「おい、古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)とか古代の機械混沌巨人(アンティーク・ギア・カオス・ジャイアント)とかはどうした?

 古代の機械魔神(アンティーク・ギア・デビル)もないじゃないか。」

 

「そ、そんなエリート組のカード、俺たちが持っているわけないよぉ!!」

 

 いやエリートって・・・それ入ってなきゃ【融合古代の機械(アンティーク・ギア)】として成り立たないだろう。

 強いて言えば【低レベル古代の機械(アンティーク・ギア)】に融合ギミックが入っているといった感じだ。

 

「そうか、そうか、それは悪かった。そういう事情があったのか、ごめんな。」

 

――ポンポン

 

 う~ん、この構成で負けたってことは数か攻撃力で押し切られたか。

 一応キルコースは在るし『No.(ナンバーズ)』というエクシーズ最大カテゴリもない。

 迎撃されてモンスターを失い、返しのターンでやられたって感じかな?初見殺し感が強いデッキだ。

 

「は、ははは・・・そうなんだよ、上はなかなか、新しいカードくれなくてさ。

 それで、その・・・見の――パタッ・・・

 

 回収回収っと、しっかし予想以上に弱かったな・・・

 ブルーの実力がまだわからないがライディングロイド軍団の方が百倍強かったぞ。

 

「うわぁ~・・・ひっどいね。君・・・」

 

「なんだよ、デニス。

 情けを掛けてやるほど余裕がないのは、お前だってわかるだろ?

 それよりも増援は在りそうか?」

 

「いや、今はその気配はないね。人っ子一人いないよ。

 ハートランド以外に出払っているのかもね。ただ別のことでちょっと・・・」

 

「ん?」

 

 判断に困る案件が発生したのか、デニスにつられてみれば、折れて水が噴出している噴水の前に散乱した缶詰や水入りの一斗缶

 ここは・・・

 

「この人の持ち物か?」

 

「いや、奴らとは反対方向に足跡がある。それにこれは女性の足跡だ。

 そのカードにされた人ではない。

 さっきの騒ぎを避けて急いで逃げたのだろう。」

 

「どうするんだ?赤いの。」

 

「・・・届けよう。この状況じゃ食糧事情が逼迫していることは明らかだからな。

 それに、もしかしたらその人が向かった先にレジスタンスがいるかもしれないし、アカデミアとの戦闘中に出てくると人質にされる可能性がある。

 それなら巻き込まれるより巻き込んでしまった方が安全だ。」

 

 散らばった缶詰を集め、一斗缶に水を入れ直し足跡を消しながら後を追う。

 いろいろと気になることがあるが・・・

 

「ユート、あの騒ぎでアカデミアどころか、レジスタンスも姿を見せなかったということは・・・」

 

「言わないでくれ。

 俺だって信じがたいが、その可能性が大きいことはわかっている。」

 

 黒咲は一斗缶を無言で抱えてむすっとしている。

 話しかけないでくれと言うことなのだろう。

 

「それとあの水はどこから来ているんだ?地下水とかじゃないんだろ?」

 

「ん?あれはただの水道水のはずだ。

 だが、なぜそんなことを?」

 

「水道がこの状況でまだ通っているのなら、管理しているところに人がいるんじゃないかと思ってな。」

 

「この街は水道もロボット管理だ。

 アカデミアだって水道を管理するだけのロボットを狙う必要はないだろう。」

 

「ロボット管理なのに壊れて駄々洩れの水道管に水を供給し続けているのか?

 水道代だってタダじゃないんだ。修理ができないのなら一旦は止めるんじゃないのか?」

 

「それは・・・待て、何が言いたい?」

 

「あの噴水のある場所の建物は比較的綺麗で倒壊の心配がなく、誰の目にも付く。

 もしあそこに水がわざと来ているのだとしたら?」

 

「!!あそこに水が来るように、管理ロボットに指示を出している者がいるということか!」

  

「あぁ、少なくとも現状を顧みてくれるヤツがいるってことだ。

 で、各地の管理ロボットに指示を出せるような場所を知らないか?」

 

「あぁ!たしかハートタワーの中にあったはずだ!」


 約一か月ぶりの帰郷、そこで俺たちを待っていたのは輪をかけて酷くなった絶望的な状況だった。

 街を守っていたレジスタンスの影が消え、アカデミアは無抵抗の市民を容赦なくカード化している。

 だが、同時にこの街をずっと守ってくれている人がハートタワーにいるらしいことが分かった。それは喜ばしいことだ。

 その人が繋いでいた希望を今は届けなくては

 

「足跡が続いているのは・・・あの家だな」

 

「おぉ!そうなのか!ならば早速。」

 

 山師のように微かな足跡から持ち主の性別まで予測した男、権現坂

 スタンダードの住人はみんな一芸持ちなのだろうか?芸と言えば・・・

 

「待て、一応ブービートラップの警戒をしろ。

 この足跡だって、ダミーの可能性も無きにしも非ずだ「ダメ!取っちゃダメェ~!」ってわけでもなさそうか・・・」

 

 こいつだ。榊 遊矢

 鋭い洞察力と幅広い知識、警戒心が強く容赦がない。

 それに裏打ちされたデュエルの腕は一級品

 

 俺たちの仲間にもいた、そんな奴が。

 彼はそれに加え融通が効かない、シンクロ次元のジャック・アトラスのような偏屈者だったが・・・彼は無事だろうか?

 

「ダメ~!ダメ~!「シッ!静かにしなさい、まだ奴らが近くに・・・」

 

「・・・デニス、お前これ持って、行ってこい。」

 

「えっ?僕でいいのかい?」

 

「中に入らなくていいから、とりあえずこれを受け取ってもらえ。

 話を聞けるようならレジスタンスがどうなったのかとか、ついでに親父を見てないかとか聞いてこい。

 俺たちは入口から見える位置にいるから。」

 

「うん、わかった。じゃ行ってくるよ!」

 

 デニスは嬉しそうに缶詰と水を持って家に向かっていく

 彼と俺たちの関係は最悪と言っていいだろう。

 瑠璃が連れ去られる原因を作り、戦争の引き金を引き、スタンダードではスパイ活動をしていた。

 だが彼をその立場に追いやったのはアカデミアという環境だ。

 子供であった彼はそれに従わざるを得なかっただろう。それは他のアカデミアの兵士たちも同じだと思いたい。

 彼は切っ掛けがあって変われたのだから

 

「また待つのかぁ~・・・」

 

「休憩だと思って休んでおけ、退屈しないようにはしてやるから、な?」

 

 不貞腐れるセレナに遊矢はその辺の小石を使ってジャグリングを始める。

 しばらくすると足で地面の小石を上に蹴飛ばし、回す石の数を増やしていったり、わざと落とした石を足でまた打ち上げたりといった技に、セレナは目を輝かせて見ている。

 

 彼女もまたアカデミアに所属していた一人だが、その存在には謎が多い。

 瑠璃を含め赤馬 零王の計画の重要人物とのことだが、こんなに純粋な彼女を奴らは一体どうしようというのだろうか?

 

「みんな!話なら中で聞いてくれるって!」

 

「おぉ~さすがだなデニス。

 じゃあ、お言葉に甘えて、いくぞ」

 

「あぁ・・・隼?」

 

「俺は外で見張っていよう。」

 

 覚悟はできている。だが信じたくない気持ちもある。

 もし隼が面と向かって事実を突きつけられたら、感情のままにデニスに殴り掛かってしまうだろう。

 隼もそれを分かっているから、見張りをやると言っている。俺もと思ったが・・・

 

「わかった。待っていてくれ、隼。」

 

 知らなければいけない。現実を

 打ち砕かなければならない。現状を

 だから、俺はこの選択を選んだ。

 

「ヒッ、いや、ご、ごめんなさい・・・」

 

「ママ・・・」「お母さん・・・」

 

 中に入るとそこにいたのは女性とその子供と思われる男の子が2人

 女性の方は目の下に隈が出来ており顔色が悪く憔悴している。

 

「いえ、こちらこそすいません、突然。

 俺たちは別の街で活動していたレジスタンスなんですが、この街にもレジスタンスがいるって聞いてやってきたんです。

 でも、街に入ってもそれらしい人がいなくって・・・何かご存じありませんか?」

 

「レジスタンス・・・レジスタンスなんてとっくにいなくなりました・・・

 きっと、一人残らずやられたんだわ。」

 

 やはり、か・・・

 

「私の夫、この子たちの父親も私たちの目の前で・・・」

 

 目の前で・・・とてもつらいことを思い出させてしまった・・・

 俺たちがカードから人に戻す装置を持っているにしても、カードが無ければ元に戻すことはできない。

 いち早く、アカデミアに乗り込まなければ!

 

「何もかもデュエルの所為よ!!

 デュエルさえなければ、こんな・・・うぅ・・・あぁ・・・うぅ・・・・・・」

 

 ・・・取り戻せるだろうか。

 デュエルをして人が笑顔になっていた、あの頃のハートランドを・・・

 デュエルが争いの道具になったことで、デュエルそのものを憎んでしまっている人がいる。それでどうやって・・・

 

「・・・奥さん、アカデミアのやっていることがデュエルだと思いますか?」

 

「えっ?」

 

「俺の知っているデュエルは勝って嬉しくて、負けて悔しくて

 だから何度もデッキをいじって、そして勝って、勝ったら相手が悔しがって「またやろう」って言ってくれて、大人も子供もムキになって本気でぶつかり合う。

 そんな関係が続いて、絆が、仲間が、友達が出来ていく・・・そういうものだと俺は思ってます。」

 

「!!」

 

「あぁ、分かるぞ。

 私もユーリに負け続けてやっと勝ったらいつもすまし顔のあいつが、目を丸くしてなw

 『もう一回だ』って言うんだ。

 今思えばあれがあいつと私の『友』としての始まりだったかもしれない。」

 

「まったく・・・遊矢の本気に付き合うのは、毎度骨が折れるがな。」

 

「ははは、感謝しているよ。権現坂

 まぁ、とにかく俺の知っているデュエルは 兵器とか争いの道具じゃなくて、互いに本気でぶつかり合える・・・

 そんな『楽しいゲーム』です。」

 

 遊矢・・・

 

「・・・・・・そうね。そうだったわね・・・ごめんなさい・・・

 私の夫もね。デュエリストだったの。

 街のデュエル大会で優勝した日にあのハートタワーの展望台に上って、『これからも俺のデュエルでお前たちを楽しませるからな!』なんて言ってくれたわ。」

 

「はは、随分とロマンチストな方ですね。」

 

「ふふ、そうね・・・」

 

 気恥ずかしそうに笑う女性

 それを見ていた彼女の子供たちが何かを決めたかのように、遊矢のもとに向かう。

 

「・・・ねぇ、お兄ちゃん。」

 

「ん?なんだい?」

 

「俺に・・・デュエルを、教えてくれないか、な?」「僕も!僕も!」

 

 突然の申し出、それを聞き女性は驚き、そして、子供たちを諫めようとする。

 

「こ、こら!あなたたち!」

 

 が、それを遊矢は手で静止し、子供たちの目線に合うように腰を折る

 

「それはいいけど、どうしてだい?」

 

「お、俺、お父さんみたいにお母さんを守りたい!だから!」

 

「悪いやついっぱいやっつけるの!」

 

「・・・勇ましい子たちだ。けど、その申し出は受けられないな。」

 

「どうして?」「俺たちも母さんを守れる力が欲しんだ!」

 

「それで、君たちが傷ついたらお母さんはもっと悲しむよ?」

 

「あっ!」「それは・・・」

 

「君たちはお母さんが悲しまないようにそばに居てやんな。

 そうしたら、お兄ちゃんたちが悪いやつらぜ~んぶ倒して、お父さんを必ず君たちのもとに帰そう。」

 

「「本当?」」

 

「あぁ!約束だ!!

 そうしたら、お父さんにデュエルを教わりな。きっとその方がお父さんも喜ぶぞ~」

 

「でも・・・」「お父さんはカードに・・・」

 

「おいおい、早速諦めないでくれよ・・・

 奇跡っていうのは諦めずに前に挑み続けたやつにやってくるんだ。かっとビング!ってな。」

 

「「かっとビング?」」

 

「かっとビング・・・変な言葉だな。」

 

 セレナの言うことももっともだ。

 かっとビング・・・確か遊矢と初めて会った時も言っていたな。

 

「遊矢、それはどういう意味なんだ?」

 

「まぁ、変な言葉っていうのは否定しないけど・・・三つの世界を救った勇者の言葉なんだぜ?

 

 かっとビング、それは勇気を持って一歩踏み出すこと

 かっとビング、それはどんなピンチも決して諦めないこと

 かっとビング、それはあらゆる困難にチャレンジすること

 

 まぁ、やってやれないことはない、どんな時だって希望はあるってね。その証拠に・・・」

 

【REVELATION MODE】

 

 遊矢はデュエルディスクを起動させ、カードを1枚出して、それを実体化させる。

 そして現れたのは・・・何の変哲もないバナナである。

 

「これが約束の印、ってことで、受け取ってもらえるかな?」

 

「ほへ?・・・えっ?・・・ええぇぇぇぇ!?触れる!?臭いもある!?」

 

「これ本物だぁ!?」

 

「「食べていいの!!」」

 

「あぁ、どうぞ。折角出したんだからお母さんと分けて食べな。」

 

「「わ~い!!」」

 

 子供たちはバナナを1房ずつ千切って食べ始める。

 その光景を見ていた女性は信じられない物を見たと、困惑交じりに目を見開く

 それはそうだろう。

 今まで「死」と同義だったカード化が、アカデミアに囚われているだけに変わった。つまりまだ生きているという希望が見えてきたのだから

 

「はい!お母さん!」

 

「えっ?、えぇ、ありがとう・・・貴方たちは一体・・・・・・」

 

「なぁに、ただの反抗期のガキですよ。俺たちは。

 で、君たち、ちょっとお願いがあるんだけど。」

 

「お願い?」「なになに?」

 

「君たちのお母さんを守りたいっていう気持ち、俺たちに預けてくれないか?

 そしてら絶対にまたお父さんと楽しいデュエルが出来るようにさせてあげるから。」

 

「「本当!!?」」

 

「あぁ、約束だ。」

 

 遊矢は小指を出して、子供たちもそれに倣って指切りをする。

 

 これが絶望が希望に変わるということ。

 父親が守り、この親子が諦めずに生き続けた結果訪れた奇跡の始まり。

 

 かっとビングか・・・


「来たぞ!!アカデミアだ!!」

 

 和やかになっていた家内に突然訪れる悲報

 希望を刈り取ろうとする野犬たちがやってきたのだ。

 

「ひっ!!」

 

「お母さん・・・」

 

「お兄ちゃん・・・」

 

 母親は咄嗟に子供たちを抱きしめる。

 そんな子供たちは母親を心配し、そして目の前に現れた希望を見つめる。

 

「大丈夫大丈夫、君たちの勇気を預けてくれたんだから、悪いやつらに指一本触れさせないからさ。

 で、黒咲、相手は何人だ?」

 

「3人、制服は黄1赤2だ。」

 

「なるほど、丁度いい。

 約束した手前、やれるってところを見せるとしましょうかねぇ~」

 

「む?遊矢、一人で行くのか?」

 

「あぁ、元より釣り餌は俺だ。

 みんなはここでこの人たちを守っておいてくれ。」

 

「大丈夫か?」

 

「なぁに、ここに目がいかないくらい、せいぜい派手にやるさ。」

 

【REALIZE MODE】

 

 遊矢は[光学迷彩アーマー]を使い姿を消すと、すぐさまアカデミアの前まで移動し、姿を現す。

 

「!!?」なっ!?何だ、お前は!?」「どこから現れた!?」

 

「Ciao!アカデミアの諸君、俺は榊 遊矢

 お前たちのボスが悪魔って呼んでいるデュエリストだ。」

 

「なっ!?榊 遊矢だと!?なぜ、エクシーズに!?

 まさか、連絡が途絶えたC班もこいつに・・・」

 

「へへ、だがこれはチャンスだぜ?一人でのこのこ現れやがって

 ここで俺たちがこいつを倒しちまえば、プロフェッサーもお喜びになる。」

 

「なるほどな、それはいい・・・」

 

「油断するな!こいつが本当に榊 遊矢ならオベリスクフォースを全滅させた奴だ!」

 

「へっ!だからって3人に勝てるかよ!!」

 

「こちらF班、抹殺対象者、榊 遊矢を発見。直ちに処理を行います・・・」

 

「速攻で片を付ける!バトルロイヤルモードで行くぞ!」

 

(やっぱ屑だな。こいつら・・・)

「ふん、さぁ、SHOW TIMEと行こうか?」

 

『『『『決闘(デュエル)!!』』』』

 

「先攻は俺が貰う。

 俺は魔法カード、手札抹殺を発動。

 お互いのプレイヤーは手札をすべて捨て、その後捨てた枚数分、デッキから手札を補充する。」

 

「へっ!いきなり手札交換カードかよ!」

 

「よっぽど、手札が悪かったか・・・」

 

(レッド2人は墓地アド軽視か・・・)

「フィールド魔法、天空の虹彩を発動

 さらに手札の植物族モンスター、EM(エンタメイト)バラクーダを墓地へ送り、墓地のにん人の効果を発動、こいつを特殊召喚する。

 さらにEM(エンタメイト)モンスターが手札から墓地へ送られたことにより、墓地のEM(エンタメイト)ギッタンバッタの効果も発動、こいつも特殊召喚する。」

 

 にん人     ATK1900

 ギッタンバッタ DEF1200

 

 空に虹色に輝く光が現れて、人型のオレンジ色の根菜と前にも後ろにも顔があるバッタが現れる。

 

「俺はレベル4のにん人とEM(エンタメイト)ギッタンバッタの2体でオーバーレイ!

 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚

 来い、アロメルスの蟲惑魔。」

 

アロメルスの蟲惑魔「ふふふ・・・」

         ATK2200

 

 現れたのは煽情的な黒い衣装に身を包んだ赤毛の少女

 その頭の角飾りはどことなくアリの顎を彷彿とさせる。

 

「そして、効果発動。

 1ターンに1度、オーバーレイユニットを2つ使い、自分の墓地からレベル4の昆虫族か植物族のモンスターを特殊召喚する。

 来い、共振虫(レゾナンス・インセクト)。」

 

共振虫(レゾナンス・インセクト)――リリリリリリッ・・・・

   DEF700

 

「天空の虹彩の効果発動。

 1ターンに1度、自分フィールドの表側表示のカードを1枚破壊してデッキからオッドアイズカード1枚を手札に加える。

 俺は共振虫(レゾナンス・インセクト)を破壊して、デッキからオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンを手札に加える。

 

 さらにフィールドから墓地へ送られた共振虫(レゾナンス・インセクト)の効果発動

 デッキからレベル5以上の昆虫族モンスターを手札に加える。

 俺が手札に加えるのは、レベル6のEM(エンタメイト)カレイドスコーピオン

 

 手札を1枚伏せて、スケール4のオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンをペンデュラムスケールにセッティング。」

 

 空に立ち上る光の柱、その中に浮かぶのは二色の眼を持つ赤い竜

 

「直接マジックゾーンに・・・」

 

「これが奴の使うというペンデュラムモンスターか!?」

 

「エンドフェイズだ。

 ここでオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンの効果発動

 自身を破壊してデッキから攻撃力1500以下のペンデュラムモンスター、EM(エンタメイト)ラクダウンを手札に加える。これでターンエンド。」

 

「へっ!どんな強力なデュエリストかと思えば、負け犬のエクシーズを1体出しただけかよ!」

 

「しかももう、オーバーレイユニットを喪失している・・・」

 

「だが、油断なくいこう!

 僕のターン!ドロー!」

 

「お前のドローフェイズ終了時、永続トラップ、ナチュルの神星樹を発動

 このカードの効果は1ターンに1度、2つの内どちらかを発動できる。

 俺は地属性昆虫族モンスターをリリースしてデッキからレベル4以下の地属性植物族モンスターを特殊召喚する効果を発動、アロメルスの蟲惑魔をリリースし、レベル1の薔薇恋人(バラ・ラヴァ―)を特殊召喚する。」

 

 薔薇恋人(バラ・ラヴァ―) DEF800

 

 アロメルスの蟲惑魔が去った後に登場したのは薔薇のように真っ赤なドレスを着たブロンドの髪をたなびかせる女性。

 わざわざ攻撃力の高いエクシーズモンスターを使い呼び出したのはステータスの低いレベル1モンスターということにアカデミアの兵士たちは嘲笑する。

 

「へっ、何やっているんだこいつ!」

 

「わざわざ守備力の低いモンスターを呼び出すとは・・・ククッ・・・」

 

「だが容赦はしない!僕は永続魔法、古代の機械城(アンティーク・ギアキャッスル)を発動!

 このカードが存在する限りお互いにモンスターが通常召喚されるたびにこのカードにカウンターを置く!

 さらにフィールドのアンティーク・ギアモンスターの攻撃力が300ポイント上昇する!

 

 僕は古代の機械兵士(アンティーク・ギアソルジャー)を召喚!

 さらに装備魔法、古代の機械戦車(アンティーク・ギアタンク)を発動して攻撃力をさらに600ポイントアップだ!

 バトル!古代の機械兵士(アンティーク・ギアソルジャー)薔薇恋人(バラ・ラヴァ―)に攻撃!」

 

 古代の機械城(アンティーク・ギアキャッスル) C0→1

 

 古代の機械兵士(アンティーク・ギアソルジャー) ATK1300→1600→2200

 

薔薇恋人(バラ・ラヴァ―)「きゃあ!!」――バンッ!

 

 古代の機械戦車(アンティーク・ギアタンク)に乗った古代の機械兵士(アンティーク・ギアソルジャー)薔薇恋人(バラ・ラヴァ―)を跳ね飛ばす。

 何の抵抗も出来なかった薔薇恋人(バラ・ラヴァ―)の姿を見て、彼らの嗜虐心が擽られる。

 

「フッ、カードを3枚伏せ、ターンを終了する!」

 

「へっへへへへ!なんだよこいつ弱ぇじゃねか!

 俺のターン、ドロー!

 へっ!俺も古代の機械城(アンティーク・ギアキャッスル)を発動し、古代の機械兵士(アンティーク・ギアソルジャー)を召喚!

 班長の古代の機械城(アンティーク・ギアキャッスル)の効果と合わせて攻撃力600ポイントアップ!

 バトルだ!ダイレクトアタックを喰らえぇぇ!!」

 

 古代の機械城(アンティーク・ギアキャッスル) C1→2

 

 古代の機械城(アンティーク・ギアキャッスル) C0→1

 

 古代の機械兵士(アンティーク・ギアソルジャー) ATK1300→1600→1900

 

(そのセリフは俺の墓地を見てから言ってほしいね。)

「墓地のEM(エンタメイト)バリアバルーンバクの効果発動

 相手のダイレクトアタック宣言時、1ターンに1度、手札のEM(エンタメイト)を捨ててこのカードを墓地から守備表示で特殊召喚できる。

 俺はEM(エンタメイト)カレイドスコーピオンを捨てて、バリアバルーンバクを特殊召喚。

 さらにEM(エンタメイト)が手札から墓地へ送られたことによりギッタンバッタも特殊召喚する。」

 

 バリアバルーンバク DEF2000

 ギッタンバッタ    DEF1200

 

「チッ!だったらEM(エンタメイト)ギッタンバッタを攻撃だぁ!」

 

「残念だが、特殊召喚されたEM(エンタメイト)ギッタンバッタは1ターンに1度、戦闘では破壊されない。」

 

 遊矢のフィールドに現れる紫の獣の形をした風船、バリアバルーンバクとギッタンバッタ

 古代の機械兵士(アンティーク・ギアソルジャー)はその腕のグレネードガトリングをギッタンバッタに向かって発射するが、ギッタンバッタはこれを跳ねて軽やかにかわす。

 

「ちまちま逃げやがって!

 だったら俺はマジックカード、古代の整備場(アンティーク・ギアガレージ)を発動!

 自分の墓地のアンティーク・ギアモンスター1体を手札に加える。

 

 俺が手札に加えるのは古代の機械箱(アンティーク・ギアボックス)

 こいつがドロー以外の方法でデッキ、墓地から手札に加わった場合、デッキから古代の機械箱(アンティーク・ギアボックス)以外の攻撃力または守備力が500ポイントの地属性機械族モンスターを1体手札に加える!

 俺が手札に加えるのは古代の機械砲台(アンティーク・ギアキャノン)

 

 さらにマジックカード、古代の採掘機(アンティーク・ギアドリル)を発動!

 自分フィールドにアンティーク・ギアがいるとき、手札を1枚捨てデッキから魔法カード1枚を選んで自分フィールドにセットする。

 俺は古代の機械箱(アンティーク・ギアボックス)を捨てて、デッキから速攻魔法、リミッター解除をセット!

 さらにカードを1枚セットして、ターンエンド!」

 

「そのエンドフェイズにナチュルの神星樹の効果を発動

 地属性、昆虫族のEM(エンタメイト)ギッタンバッタをリリースし、デッキから地属性レベル4の植物族、サボウ・ファイターを特殊召喚。」

 

サボウ・ファイター「サボッ!」

         ATK1900

 

「攻撃力1900・・・

 俺のターン、ドロー・・・」

 

「そのドローフェイズ終了時、ナチュルの神星樹の2つ目の効果発動

 地属性植物族、サボウ・ファイターをリリースし、デッキからレベル4以下の地属性昆虫族モンスターを特殊召喚する。

 2体目のEM(エンタメイト)ギッタンバッタを特殊召喚。」

 

 ギッタンバッタ DEF1200

 

「特殊召喚されたギッタンバッタは戦闘で一度破壊されない・・・

 なら、俺はマジックカード、磁力の召喚円LV(マグネットサークル レベル)2を発動・・・

 手札からレベル2以下の機械族モンスターを1体特殊召喚する・・・

 レベル2、古代の機械砲台(アンティーク・ギアキャノン)を特殊召喚・・・

 

 さらに攻撃力500以下の機械族モンスター、古代の機械砲台(アンティーク・ギアキャノン)を対象にマジックカード、機械複製術を発動・・・

 デッキから対象モンスターと同名のモンスターを2体まで特殊召喚する・・・

 古代の機械砲台(アンティーク・ギアキャノン)を2体特殊召喚・・・」

 

 古代の機械砲台(アンティーク・ギアキャノン) ATK500

 古代の機械砲台(アンティーク・ギアキャノン) ATK500

 古代の機械砲台(アンティーク・ギアキャノン) ATK500

 

「戦闘がダメなら、直接ダメージを与える・・・!

 古代の機械砲台(アンティーク・ギアキャノン)の効果発動・・・フィールドのこのカードをリリースし、相手に500ポイントのダメージを与える・・・

 俺は3体全ての効果を使う・・・」

 

――ドムッ!ドムッ!ドムッ!

 

 古めかしい歯車の塊のような砲台3つから遊矢に向かって砲弾が放たれる。

 それらは遊矢のすぐ横に着弾し、その衝撃で遊矢のライフを削る

 

「む・・・」

 LP4000→3500→3000→2500

 

「へっ!やったぜ!悪魔野郎に大ダメージだ!」

 

「まだ気を抜くな!奴のライフはまだ2500も残っている!」

 

「うん・・・古代の機械兵士(アンティーク・ギアソルジャー)を召喚・・・

 カードを2枚セット、ターンエンド・・・」

 

 古代の機械城(アンティーク・ギアキャッスル) C2→3

 

 古代の機械城(アンティーク・ギアキャッスル) C1→2

 

 古代の機械兵士(アンティーク・ギアソルジャー) ATK1300→1600→1900

 

「そのエンドフェイズにEM(エンタメイト)ギッタンバッタの効果を発動

 このカードを墓地へ送って、墓地のレベル3以下のEM(エンタメイト)モンスター、EM(エンタメイト)バラクーダを手札に加える。」

 

(3人の攻撃を凌いだ・・・やはり奴は油断できない。

 だが、攻撃すれば僕の伏せた聖なるバリア―ミラーフォースがみんなを守る。それに)

 

(へっ!攻撃してきたらリミッター解除で返り討ちだぜ!)

 

(そして、デメリットで破壊されても古代の機械蘇生(アンティーク・ギアリボーン)で俺のモンスターは攻撃力を上げて蘇る・・・)

 

(((布陣は完璧だ!!)))

 

(とか考えているんだろうなぁ~)

「俺のターンドロー

 俺は天空の虹彩の効果発動、バリアバルーンバクを破壊してデッキからオッドアイズ・ミラージュ・ドラゴンを手札に加える。」

 

――おっ!やってる。やってる。

 

「ん?」

 

「あれが榊 遊矢・・・」

 

「悪魔のデュエリスト。」

 

「なんだよ。フィールドがら空きじゃねぇか、大したことねぇな。」

 

 ぞろぞろと現れる赤と黄、そして青の制服の100人を超えるアカデミア兵士たち

 そのすべてが、デュエルディスクを起動し始める。

 

作戦参謀のご命令だ!

 榊 遊矢!お前はここで必ず討つ!! 

 

「へっ!手柄を横取りかよ!まぁ命令なら仕方ねぇか。」

 

「こ、この人数なら!」

 

「負ける要素がない・・・!!」

 

(あ~こいつらホント、デュエルする気ないな・・・ハッキングする必要すらないなんて。

 ブルーはまだおどおどしているのが何人かいるから、マシなレベルか。)

「まっ、その作戦にノッたのが運の尽きだと思ってくれ。」

 

――何っ?

 

「俺の勝利の法則はもう整っている!

 俺は手札のEM(エンタメイト)バラクーダを墓地へ送ってにん人とEM(エンタメイト)ギッタンバッタを特殊召喚!」

 

 にん人     ATK1900

 ギッタンバッタ DEF1200

 

「レベル4のモンスター2体でオーバーレイ!

 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!

 エクシーズ召喚!芽吹け!六花聖ストレナエ!」

 

ストレナエ「キャハ!」

     DEF2000 ORU2

 

 現れたのは氷の杖を持ったピンク髪の少女姿の妖精

 エクシーズモンスターの召喚に何人かのアカデミア兵から嘲笑の声が上がるが、もはや遊矢には関係ない。

 

「ストレナエの効果発動

 オーバーレイユニットを1つ使い、自分の墓地の植物族モンスター、サボウ・ファイターを手札に戻す。

 

 そして、手札からスケール2のEM(エンタメイト)ラクダウンとオッドアイズ・ミラージュ・ドラゴンでペンデュラムスケールをセッティング

 ペンデュラム召喚、来い!レベル3、ローンファイア・ブロッサム。」

 

 2本の光の柱に昇るのはラクダと緑の異虹彩の竜

 そしてその間に天から降ってくるのは火花が飛び散る実を持つ植物

 

 ストレナエ         ORU2→1

 ローンファイア・ブロッサム DEF1400

 

「ローンファイア・ブロッサムの効果発動

 1ターンに1度、自分フィールド上の植物族モンスターを1体リリースし、デッキから植物族モンスターを特殊召喚する。

 俺はストレナエをリリースし、デッキからもう1体のローンファイア・ブロッサムを特殊召喚。」

 

 ローンファイア・ブロッサム DEF1400

 

 ストレナエの氷の杖がローンファイア・ブロッサムに変わり、ストレナエ自身はその存在をより高みに生まれ変わる。

 

「ストレナエのもう1つの効果、こいつがオーバーレイユニットを持った状態でリリースされた場合、エクストラデッキか墓地からランク5以上の植物族エクシーズモンスターを特殊召喚しこのカードをオーバーレイユニットにする。

 ランクアップエクシーズチェンジ!咲け!六花聖カンザシ!」

 

カンザシ「うふふ。」

    DEF2400 ORU1

 

「2体目のローンファイア・ブロッサムの効果発動!

 1体目のローンファイア・ブロッサムをリリースし、デッキからEM(エンタメイト)バラードを特殊召喚

 さらにモンスターがリリースされたことによりカンザシの効果が発動!

 オーバーレイユニットを1つ使い、自分または相手の墓地のモンスター1体を俺のフィールドに効果を無効にし植物族として特殊召喚する。

 生まれろ、新たな命よ!俺の墓地から共振虫(レゾナンス・インセクト)を特殊召喚!」

 

 バラード      DEF1100

 カンザシ      ORU1→0

 共振虫(レゾナンス・インセクト)   DEF700

 

 白薔薇の騎士が現れ、カンザシが巨大な鈴虫の姿の氷の華を咲かせる。

 モンスターが入れ代わり立ち代わり、その数を段々と増やしていく様にアカデミア兵、そして物陰から見ている親子とセレナは目を見開く

 

(え、えぇ~・・・・)

 

((すごいすごい!))

 

(おぉ~!すごいぞ赤いの!!)

 

「ナチュルの神星樹の効果発動

 植物族の共振虫(レゾナンス・インセクト)をリリースし、デッキから昆虫族の共振虫(レゾナンス・インセクト)を特殊召喚

 そして、共振虫(レゾナンス・インセクト)の効果により2枚目のEM(エンタメイト)カレイドスコーピオンを手札に加える。

 

 さらにレベル3のローンファイア・ブロッサムとバラクーダでオーバーレイ

 レベル3のモンスター2体でオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!

 現れろ!機装天使エンジネル!

 

 そして墓地の薔薇恋人(バラ・ラヴァ―)を除外することで手札の植物族モンスター、サボウ・ファイターを特殊召喚!」

 

共振虫(レゾナンス・インセクト)――リリリリリリリリリリリ!!

     DEF700

 

エンジネル――ブオオオォォォォォォン!!

     DEF1000 ORU2

 

サボウ・ファイター「サァァァボゥ!!」

         ATK1900

 

 機械の天使のエンジン音と、本来の姿を取り戻した共振虫(レゾナンス・インセクト)の鳴き声をBGMに現れたのはサボテンの拳士、サボウ・ファイター

 そして、このデュエルをフィナーレに導く彼にふさわしい舞台が用意される。

 

「新たなフィールド魔法、ブラック・ガーデンを発動

 そして、これでエンドカードだ。

 共振虫(レゾナンス・インセクト)をリリースして、EM(エンタメイト)カレイドスコーピオンをアドバンス召喚!

 モンスターが召喚されたことにより、ブラック・ガーデンの効果発動。」

 

 カレイドスコーピオン ATK100→50

 

 古代の機械城(アンティーク・ギアキャッスル) C3→4

 

 古代の機械城(アンティーク・ギアキャッスル) C2→3

 

 ローズトークン ATK800

 

「へっ!?何だこいつ!?」

 

「僕たちのフィールドにトークンが!?」

 

「あ、足を取られ!?取れない・・・!!?」

 

 瓦礫の街に蔦が這う。ここは魔の庭園、ブラック・ガーデン

 その花園で咲く血のように赤い薔薇は罪人を捉えて離そうとはしない。

 

「フィールド魔法、ブラック・ガーデンはモンスターが召喚、特殊召喚されたとき、そのモンスターの攻撃力を半分にして、コントローラーから見て相手フィールド上にローズ・トークンを特殊召喚する。

 まぁ、この場合の相手と言ったらお前ら全員だな。

 

 おっと、共振虫(レゾナンス・インセクト)の効果で3枚目のカレイドスコーピオンを手札へ 

 さらにエンジネルの効果発動

 オーバーレイユニットを一つ使い、自分フィールド上の表側攻撃表示モンスターを表側守備表示にして、そのモンスターをこのターン戦闘及び効果で破壊できなくする。

 カレイドスコーピオンを守備表示に

 

 仕上げにカレイドスコーピオンのモンスター効果とラクダウンのペンデュラム効果をサボウ・ファイターを対象に発動!」

 

 エンジネル      ORU2→1

 カレイドスコーピオン ATK50→DEF2300

 

 赤いサソリの尾からスポットライトがサボウ・ファイターを照らす。

 さらにラクダウンの吐いた泡がその光を受けてキラキラと輝く、美しいがそれはアカデミア兵達にとっての死兆星に他ならない。

 

「バトル、サボウ・ファイターで黄色いお前のローズ・トークンに攻撃!」

 

「させない!その攻撃宣言に対しトラップカード発動!聖なるバリア―ミラーフォース!

 相手フィールド上の攻撃表示モンスターを全滅させる!」

 

サボウ・ファイター「アサァァァボウッ!!」

 

 サボウ・ファイターの行く手を阻むように光の壁が出現する。

 だがそんなものでは彼は止まらない。

 その身には薔薇の乙女の加護があるのだから

 

――バリンッ!!

 

「なっ!?何故だ!?」

 

薔薇恋人(バラ・ラヴァ―)の効果で特殊召喚したモンスターはトラップカードの効果を受けない。

 そして、俺のサボウ・ファイター以外のモンスターはすべて守備表示、よってミラーフォースの発動は無駄に終わる。」

 

サボウ・ファイター「サッ~ボウゥッ!!」

 

「ぐはあぁぁぁ!!」

 LP4000→2900

 

「班長!!?」

 

「だがこれで奴は攻撃モンスターを失った、もうダメージは・・・」

 

「何を勘違いしているんだ?俺のバトルフェイズは終了しないぜ!

 サボウ・ファイターの効果発動!

 こいつが戦闘によってモンスターを破壊した場合、相手フィールド上にニードルトークン1体を守備表示で特殊召喚する!」

 

 ニードルトークン DEF500

          ATK500→250

 

 ローズトークン ATK800

 

「ぐぅ・・・また、僕のフィールドにトークンを!?」

 

 班長と呼ばれる少年のフィールドに攻撃のマーキングである棘が現れる。

 そして新たなモンスターの出現によってローズ・トークンが特殊召喚されアカデミア兵たちの体をより強固に拘束する。

 

「カレイドスコーピオンの効果を受けたサボウ・ファイターは相手フィールド上の特殊召喚されたモンスターすべてに1度ずつ攻撃でき、さらにラクダウンのペンデュラム効果によって貫通効果を得ている。つまり・・・」

 

サボウ・ファイター「サァァ・・・ボオオォォウッ!!」

 

「ぐわああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 LP2900→1500→100→0

 

 サボウ・ファイターが棘に向かって拳を振るうとその棘が釘打ちのように連続してアカデミアの少年に叩き込まれ、茨の海に沈む

 その様を見ていたアカデミア兵は恐怖と共にそのギミックの名を叫んだ

 

無限ループ!!?

 

「さぁ!これでフィナーレだ!!サボウ・ファイター!!」

 

サボウ・ファイター「サボッ!サボッ!!サボ!!サボサボサボサボオサボサボサボサボサボサボサボサボサボサボオサボサボサボサボサボサボサボサボサボサボオサボサボサボサボサボサボサボサボサボサボオサボサボサボサボサボサボサボサボサボサボオサボサボサボサボサボサボサボサボサボサボオサボサボサボサボサボサボサボサボサボサボオサボサボサボサボサボサボサボサボサボサボオサボサボサボサボサボサボサボサボサボサボオサボサボサボサボサボサボサボサボサボサボオサボサボサボサボサボサボサボサボサボサボオサボサボサボサボサボサボサボサボサボサボサボオサボサボサボサボサボサボサボサボサボサボサボサボサボサボサボオサボサボサボサボサボサボサボサボサボサボサボサボサボサボサボサボサボサボサボサボオサボサボサボサボサボサボ・・・

 

 

 

サァァァ・・・ボウッ!!」

 

 音速を超えて振るわれるサボウ・ファイターの拳

 それを避けようにもローズ・トークンの拘束で敵わず、命乞いしようにも、声を出す前にその拳が振るわれる。

 そして遊矢はその敗者たちに背を向け、最後の言葉を継げる。

 

Ciao~

 

ぐわああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

 サボウ・ファイターが天に拳を突き上げるのと同時にアカデミア兵たちも天に向かって打ち上げられる。

 カードへと変わるその瞬間、エンジネルに乗ったカンザシがそれを掻っ攫い勝利の凱旋ついでに回収していく、

 そして、一番の功労者たるサボウ・ファイターにはその勝利を称えるかのように雲が切れ陽の光が注ぎ照らしていた。

 

「すごい・・・すごい!すごい!!」

 

「あんなにいた悪い奴ら、みんな倒しちゃった!!」

 

「・・・た・・・助かった・・・の?」

 

 息子たちが遊矢の元へ向かっていくのを女性は止めずに、ただその場で呆けている。

 

 現実感がないのだ。

 百人以上のアカデミアに周りを囲まれ、血も凍るかと思ったのに、それが一度のデュエルで、あまつさえたった一人に全員倒されてしまったのだから。

 

「よぉ!どうだ、やってやれないことなんてないだろう?」

 

「うん!かっとビングのお兄ちゃんすごい!!」

 

「テレビのヒーローみたいだった!」

 

 そう、テレビで息子たちと見た特撮ヒーローのような、絵本に出てくる勇者のような

 

(そう・・・やっと・・・・)

 

 絶望を希望に変える存在が現れたのだ。


 ルールを犯し無残に散ったアカデミアの兵士たち、その様を物陰から見ていたものがいた。

 

「あうっ!?・・・うぅ・・・

 み、みんな・・・やられちゃった・・・・・うぅうぅ・・・・・・・」

 

 そして勝者である遊矢たちを見つめる目も

 

「ユート、隼・・・戻ってきたのか・・・

 それに奴は・・・未知の召喚法、EM(エンタメイト)・・・一体何者だ?」

 

 物語は交差し、混沌は加速する。

 

 運命はまだ決してはいない。




無限ループってこんなに簡単にできるものなのか?

頑張ればできる。

戦闘を介するコンボだからな。
それに最初に相手フィールド上にサボウ・ファイターで戦闘破壊可能な特殊召喚されたモンスターが存在せぬと成立せぬ。

(こいつら、いつもこの調子なのか?)

その為のブラック・ガーデンか・・・
私の月光(ムーンライト)にも合いそうだな!

これって、オッドアイズ・レイジング・ドラゴンで殴り倒された彼らはまだましだったんじゃないかな・・・
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『絡み合う運命の囚人』
サボテンが夢に出そうだ・・・


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絡み合う運命の囚人

ハートランドから始まった。
アカデミアによる侵攻から1年


エクシーズ次元は
レジスタンス、アカデミア、ランサーズ


それぞれの思惑が絡み合い。
その運命は混沌を極めていた!





等とふざけてみましたが、今回は虚淵玄氏には遠く及ばないとは思いますがGX3期並み重いと思います。ご注意ください。
そして主人公はとってもひどい奴


 アカデミアの雑兵を退けた遊矢たち

 そんな彼らにポンチョを着た猫目の少年と紫の髪の眼鏡の少女が近づく

 

「やっぱりそうだ!おーい!!ユート!!隼!!」

 

「二人とも戻ってきてたんだ!!」

 

――!!

 

 いきなり響くその声に全員が臨戦態勢になる。その名を呼ばれたユートと黒咲以外

 

「アレン!サヤカ!」

 

「無事だったのか!?」

 

 その存在を確かめ合うように彼らは手を握る。

 ただ、2人を知らない面々、特に親子からは懐疑的な目を向けられ、子供たちは遊矢の裾を握っている。

 

「ユート、黒咲、そいつらは?」

 

「あぁ、彼は『神月 アレン』、彼女は『笹山 サヤカ』

 俺たちレジスタンスの仲間だ。」

 

「2人とも他のレジスタンスのみんなはどうした!?

 ここまで来るまで一人も・・・」

 

 黒咲の少し慌てた問いに2人は目を伏せる。つまりはそういうことである。

 

「隼とユートがスタンダード次元に行った後、アカデミアの大攻勢が始まって・・・」

 

「スペード校の人たちは、全滅・・・したみたいなの・・・

 私たちクローバー校もみんな、散り散りになって・・・」

 

「・・・・・・そうか、すまない。」

 

「俺たちがいなくなったばかりに・・・」

 

「いや!だけど、隼たちが4人も新しい仲間を連れて戻ってきてくれたことは喜ばしいぜ!

 今は味方が一人でも貴重だからな。

 俺たちだけじゃ、守り切れるか不安で・・・」

 

 少しでも明るい話をしようとするアレンだが、それでも今背負っている重圧から沈んでしまう。

 そこで遊矢はあくまでも事務的に質問を投げかける。

 

「その口ぶりだと、お前らの所に何人か非武装の一般人がいるのか?」

 

「あっ?あぁ、今は山の奥の寺みたいなところをアジトにしてそこに集まって。」

 

「場所は何処だ?」

 

 遊矢はハートランド周辺の地図をデュエルディスクから立体投影し、アレンに示すように強要する。

 

「うおっ!?なんだ!?そのデュエルディスク!?

 地図まで出せるのか?・・・えぇと・・・この辺だな。」

 

「ふむ、スペード校とクローバー校っていうのは?」

 

「ここと、ここだ。」

 

「ふん・・・クローバー校は他の場所のちょうど反対側か・・・

 ユート、黒咲、この二人は信用に足る人物なんだな?」

 

「あぁ。」「もちろんだ。」

 

「よし、じゃあ、こうしよう。

 俺とユートはアカデミアを2、3組倒しながら、クローバー校の方から壊滅状況を調べる。

 みんなはその親子を安全なところまで送り届けてくれ。」

 

「俺はいいが・・・遊矢、なぜクローバー校からなんだ?

 反対側なら、スペード校から調べたら。」

 

「ユート、俺は一応狙われている立場なんだぞ?

 つまりアカデミアのヘイトは今俺に向いている。俺がいる方向が分かればそっちに部隊を送ってくるだろう?

 彼女らを危険に晒すわけにはいかないからな。」

 

「待て、それなら私も行こう。」

 

「セレナ、今はお前が目立つときじゃない。

 その内大暴れさせてやるから、今は鉢合わせしたアカデミアを倒して、その親子を無事に送り届けてくれ。」

 

「む~わかった。やってやる。」

 

「さて」

 

「「お兄ちゃん行っちゃうの?」」

 

 子供たちの不安げな眼差しが遊矢を見つめる。

 

「ん?あぁ、大丈夫大丈夫、お兄さんの仲間はみんな強いからね。

 悪い奴らから君たちを絶対守り抜くさ。

 お兄さんも後で行くから、先に安全な場所で待ってなって。

 

 んじゃユート、行こうか?」

 

「あぁ。」

 

 遊矢はユートの了承を取ると、オッドアイズ・レイジング・ドラゴンを呼び出し乗り込む。

 2人を背に乗せた紅蓮の竜は炎を上げて曇天の空に舞った。

 

 少し気の抜ける環境になったことで、遊矢はふと子供たちに言われたことを思い出す。

 

(テレビのヒーローに、かっとビングのお兄ちゃんか・・・)

「俺も会ってみたいな・・・」

 

オッドアイズ・レイジング「ギャオオオオォォォォォォォォ!!」

 

 遊矢の呟いた誰にもわからない郷愁は、風の音に消えていった。


「あぁ~!!なんということだ!?なんということだー!!

 私の計算によれば、悪魔めを退治するのに10分もかからなかったはずなのにぃいいぃぃぃぃ!!」

 

 アカデミア、エクシーズ次元派遣軍、その拠点となる移動要塞で一人の男が懐中時計片手に嘆いていた。

 

「全滅!?全滅だとぉ!!?

 これではエクシーズ次元におけるアークエリア・プロジェクトは予定より1か月と18日、14時間32分遅れることに・・・いや!榊 遊矢がこの世界に居座るならもっとだぁぁぁ!!

 くぅぅ・・・このままでは私がプロフェッサーからお叱りを受けてしまう・・・」

 

 その前に立たされていたのは明るい茶髪の少女

 

「分かっているんだろうね!!宮田君!!」

 

「あうぅ!?うぅ・・・は、はいぃ・・・・・」

 

 少女は目を伏せて肯定する。

 そう、彼女はアカデミアが大敗を決したあの場を見て、見ているだけで逃げ出した者だった。

 

「一刻も早く全住民のカード化を完了せねばならぬのに・・・悪魔のデュエリストまで・・・

 まったく・・・私がこんなに焦っているというのに、本来先頭に立って指揮をとるべき総司令官は・・・」

 

「僕がどうかしたか?」

 

 指令室に響き渡る声、それは今この場で最もふさわしい人物のもの

 銀の髪に青い瞳を持った青年

 

「!!エ、エド総司令官!今までどこに・・・!?」

 

「・・・どこだっていいだろう。

 それで、僕の不在中になぜキミが声を荒げるような事態になっているのか、説明してくれるか?」

 

「くうぅぅ・・・そ、それが、ここエクシーズ次元に最優先抹殺命令が出ている榊 遊矢が現れて・・・」

 

「何っ!?榊・・・遊矢だと!?

 何故それを僕に知らせなかった!!」

 

「うぅ!?そ、それは・・・お忙しそうなので、総司令官殿のお手を煩わすまいと思い・・・」

 

「そうか、もういい。

 キミ、今どういう状況か説明してくれるか?」

 

「はっ!副指令の命でハートランド周辺で展開していた部隊すべてを投入し、榊 遊矢の討伐を図ったのですが・・・集まった113人すべてが・・・」

 

 通信士の言い辛そうなその様子にエドは彼らがどうなったのか察しがついた。

 

「!!?敗れたというのか!?たった一人に!?」

 

「えぇ、その一部を見ていたのが、その子でして。」

 

「ぅうぅ・・・」

 

「そうか・・・たしか、キミは宮田君だったね?

 辛かっただろうが、彼らがなぜ敗れたのか、榊 遊矢がどんな戦術を使ったのか、話してくれるかい?」

 

 はた目から見ても混乱して落ち着きがない彼女を落ち着かせるためにエドは彼女の名を呼び、100人以上が敗れ去った原因を聞く

 

「あうぅ・・・そ、それが、私、行く途中で息切れしちゃって、みんなに置いて行かれて、見たのはみんなが負けるときだけで・・・」

 

「それでもいい。

 彼らの奮戦に応えるためにも・・・頼む。」

 

「・・・・・・さ、サボテン・・・」

 

――はっ?

 

 ゆまの口から洩れたそのワードに指令室の全員の頭の上にはてなマークが浮かんだ。

 

「み、みんな、おっきな薔薇さんに抱き着かれて、すっごく速く動くサボテンさんに殴られてましたぁ・・・」

 

「はっ!何を馬鹿な!

 サボテンなんぞに我ら栄光あるアカデミアが敗れたと言いうのかね?」

 

「ほ、ほんとうですっ!!信じてくださいっ!!」

 

「野呂!!君は勝手な判断で部隊の4分の1を失わせた上、そこから帰還したものの言葉を無碍にするというのか!

 キミの方こそ馬鹿は休み休みに言いたまえ!!」

 

「うぐっ!?も、申し訳ありません、総司令・・・」

 

「キミへの話は後だ・・・今は榊 遊矢を倒すことが先決・・・」

 

 モニターに浮かぶ遊矢の画像に、いや、そこに写っていない誰かにエドは忌々し気な視線を送り手を握り締める。

 

「榊 遊矢・・・遊勝の息子ォ・・・」――ギリギリッ!


「これは・・・酷いな。」

 

 特に得る情報がなかったクローバー校からスペード校へと移動した俺たち、道中にアカデミアを5、6襲ってここまで来たが、車に乗った奴とかいたあたり、これは招集命令でもかかったかな?

 それなら狙い通りなんだが・・・

 

「あぁ、アレンの言うように全滅したと見て間違いなさそうだ・・・」

 

 一番被害が大きい教室、そこの黒板にはアカデミアの拠点へ乗り込むための襲撃作戦と思わしき内容が書かれている。

 状況から判断するに、作戦会議のために集まっていたところを攻撃されたということだろうか?

 アカデミアの大攻勢と作戦会議の日が重なるねぇ・・・

 

「やっぱり、ここを攻撃するのに合わせて大攻勢を始めたか。」

 

「待て!?それなら!?そんな訳・・・」

 

 内通者、もしくはここで作戦会議をするように仕向けたやつがいるということだ。

 まぁ、もとよりアカデミアの技術を流した奴がいるのは予想がついていたが

 

「なぁ、ユート?

 発言権があって、アカデミアの技術を再現できるような人物に心当たりはないか?」

 

「・・・いるにはいる。だが、あの人がまさか・・・」

 

「誰だ?」

 

「カイトの父親だ。

 あっ、カイトと言うのはクローバー校最強のデュエリストと呼ばれた俺たちの仲間だ。

 だがあの人はいつも子供たちを心配しているような子煩悩な人だったから、そんな・・・」

 

 やっぱりか、『Dr.フェイカー』

 彼は病弱な息子の一人を何としても救おうとして、親友2人と世界を一個滅ぼしかけた人だ。

 そんな人と同一人物なら息子たちを盾にされては、アカデミアに協力せざるを得ないだろう。

 もっとも、アニメでは確かカイトの家族は全員カードにされたという話だったから、用済みになって消されたらしいが・・・

 

「子煩悩なら、子供を盾にされたら従わざるを得ないだろう。

 大事な人を思う気持ちは、強くて弱いものだからな・・・

 なんなら、その父親の居場所をカイトと言うやつに聞いてみてもいいだろう。」

 

「あぁ・・・そういえば遊矢、父親と言えば君の・・・」

 

「あぁ?あぁ、いいんだ俺の方は後回しで

 居たら居たで、俺の計画の邪魔をしてきそうだし、あの笑顔親父。」

 

「・・・そうか。」

 

 ユートは目をそらして、肯定する。

 まぁ、俺の計画は俺を囮にアカデミアの戦力となる奴らを、まとめて封印し本拠地に乗り込むときに楽をしようというものだ。

 もしかしたら、戦死者が多すぎて融合次元の親たちが反乱を起こし、戦争そのものを継続できなくできるかもしれないという思惑もある。

 だがもうカード化は死ではないと分かってはいてもユートは

 

「それでも、誰かを傷つけるのは反対か?」

 

「!!」

 

 図星か、零児もそうだったが、堅物っていうのはこういう時分かりやすいねぇ~

 

「・・・あぁ、俺は子供をカードにされて泣く親を何人も見てきた。もちろんその逆も・・・

 今まで俺たちはアカデミアから、ハートランドの人々を守るために戦ってきた。

 仕方がないと妥協して・・・だが、俺は・・・」

 

 守りたい、けど傷付けたくない。

 矛盾した思いだ。守るためには戦わないといけない。戦ったら傷つけてしまう。

 出来るはずのない願い、けど

 

「いいんじゃねぇの?」

 

「えっ?」

 

「勇者はどんな時も諦めない。

 なにか自分にとって大切なものを失うことになると分かっていても、それでも自分の守りたいもののために運命の扉を開いた。

 

 何度も大事なものを失いかけた。何度も強大な敵が襲い掛かってきた。

 手ひどい裏切りも受けた。多くの仲間を失った。運命の悪戯に翻弄された。

 

 それでも、彼は諦めなかった。

 諦めずに救おうとしたんだ。敵も味方も・・・」

 

「それで・・・彼はどうなったんだ?」

 

 不安げに、ユートは勇者のその後を聞いてくる。

 端から聞いていると残酷すぎる運命だ。常人なら心が折れそうになるほどに・・・だけど

 

「結果、彼はすべてを手に入れた。

 何かを失うどころか、失ったものを取り戻し、多くの仲間と絆を紡いで

 それが出来たのは、彼がどんな困難にも勇気をもって挑戦し続け、諦めなかったから。」

 

「かっとビングか・・・」

 

「そういうこと。

 かっとビングし続ければ、可能性が見えてくる。新たな未来の扉が開く

 

 少なくとも俺は、今のやり方が一番被害が出ない方法だと思ってやってる。

 未来に可能性を与える方法だと思ってな。」

 

「可能性・・・来るのだろうか・・・

 みんなが、デュエルをして笑顔になる、そんな未来が・・・」

 

「あぁ!諦めなければ、かっとビングし続ければ、誰とだって分かり合える。

 だから早く大事なもん取り戻して、こんな馬鹿げたこと(戦争)なんぞ終わらせてしまおうぜ?」

 

「ふっ、物騒なことばかり提案する君が言うと説得力がないな。」

 

「言うな。俺は理屈で考えてしまうから、選択肢がないことは言えないんだ。

 ‟最悪”そうなってしまうかもしれないけどな?」

 

「なら、その‟最悪”を回避するためにも、頑張らないとな・・・」

 

「「ははっ」」

 

――・・・・・・・

 

「「!!」」

 

 人の声、それも複数・・・のように聞こえる。

 

「アカデミアか?」

 

「かもな。

 とは言え、こんな崩れやすそうな場所でドンパチはごめんだな。」

 

「同感だ。」

 

 とりあえず相手の確認のために音を立てないように声の方へと近づいていく

 

――・・・・」「・・・・・・」「・・・・・・・・」「・・・しょうね?」

 

「だって、こんなの私が求めていた刺激じゃないもの。」

 

「そういう態度が不真面目だと言っているんです!」

 

「あら?そういうあなただって、そんなに積極的ではないじゃない。

 私たちと違って、優等生のアナタが。」

 

 覗き込むとバレそうなので、手鏡を使ってその姿を見る。

 そこにいたのは見覚えのある特徴を持つ少女たち

 

「それは・・・・私はこれが正しいこととは思えないんです!!」

 

 手に持つ歪んだデュエルディスクを持って叫ぶ、眼鏡をかけた緑髪のいかにも委員長と言った見た目の少女『原 麗華』

 

「ちょっと、大声出さないでよ・・・

 あぁ~もう・・・起きちゃったじゃないの・・・」

 

 薄紫の髪をツインテールにした蠱惑的な少女『藤原 雪乃』

 

「むぅうぅ・・・・うぅ・・・・お、おはようございますぅ~・・・」

 

 その胸に抱かれて寝ていた、今も眠そうにしている赤紫色の髪の少女『樋口 桜』

 

「おはようございます、桜さん・・・今日はどんな夢、見れましたか?」

 

 そして明るい茶髪の少女『宮田 ゆま』

 うわっ、タッグフォースのヤバい実力の女子4人組じゃん。

 それぞれが【チェーンバーン】【デミスドーザー】【最上級】そして【E・HERO(エレメンタルヒーロー)】を使用していた強力なデュエリストだ。本来のデッキならの話だが・・・

 

「えへへ、今日はぁ~いつもの人と一緒に大きなデュエルの大会で優勝したよ~

 お客さんいっぱいの会場で、いっぱいおめでとう言われたんです。」

 

「あら、良いわね。私もそんな刺激味わってみたいわ。

 ほんと・・・アナタはいいわね・・・」

 

「いいなぁ、桜ちゃん・・・私も・・・ううぅん・・・やっぱり駄目です・・・」

 

「宮田さん・・・」

 

「アナタ、本当に暗くなったわね?

 前は底抜けに明るかったのに・・・」

 

 確かに彼女は絶望の底にいた相手すら、その無垢さで虜にし、どんな悪人でもたちどころに改心させてしまうと言われたキャラクターだ。

 ただ、目の前の彼女は、彼女自身が絶望に打ちひしがれている。

 

「・・・私、救えるはずの手を掴めなかったんです・・・

 必死に伸ばせば助けられたかもしれない。危ないって声を掛ければよかったかもしれない・・・

 最悪、カードにすれば、みんなが言うように新世界で・・・

 でも、私っ!何にもできなかったんですっ!!負けるのが怖くなって・・・・なにも・・・・」

 

 少女の口から漏れだすのは後悔、自責、悲痛、憤怒、憎悪、絶望、それらが入り混じった慟哭

 

「正しいことだって言われたのにっ!正しいと思ってやってきたのにっ!

 苦しめて・・・泣かせて・・・・そして・・・ッ・・

 もう、何を信じればいいか・・・わからないよぉおおぉぉぉ!!

 えぐっ!・・うぅ・・ぅぅ・・・」

 

「宮田さん・・・」

 

「ゆま・・・」

 

「ゆまちゃん・・・」

 

「「・・・・・・」」

 

「・・・ゆまちゃん、今日はもう寝た方がいいよ?」

 

「そうね。アナタ、今日はいろいろありすぎたのよ。」

 

「いえ、私から司令官に言っておきますから、明日も休んでください。ゆまさん・・・」

 

 彼女たちはゆまに手を貸しながらスペード校を出て行った。

 負けるのも、倒すのも怖くなって、心に小さな黒いしみが出来て、自己嫌悪か・・・

 

「辛いな・・・」

 

「あぁ、アカデミアにも、あんな思いでここにいる奴がいるとはな・・・」

 

 生きるか死ぬかの選択が迫られたとき、『人』らしい選択を取れる人がどれだけいるだろう。

 自分の中の『獣』にどれだけ抗えるだろう。

 なのに抗っているうちに、絶望は静かに忍び寄ってくる。

 

「あぁなってしまえば、『終わり』だけが救いなのかもしれないな・・・」

 

「あぁ、それでも・・・俺は・・・」

 

 それでもユートは『誰も傷付けたくない』という思いを捨てない。

 それでいい。その切なる望みは、きっと世界を変える希望になり得るのだから。


 融合次元、そこは次元統一を企む赤馬 零王の率いるアカデミアの本拠地の存在する次元

 だが、赤馬 零王のもたらした技術によってあらゆる戦争が駆逐され、そこに住む人々は平和な毎日を自然と共に謳歌していた。

 

 しかし暗闇の訪れとともに、7人のアカデミアの制服を纏った男女がある島へ上陸した。

 

「融合次元って、意外とのどかなのね?」

 

「モノを知らねぇな~柊 柚子

 あの島は観光地に使われるような離島だぜ?のどかなのは当たり前じゃねぇか。」

 

「いや、柚子殿が言っているのは拙者たちが来た時に見た街のことでござろう。」

 

「うむ、本土でありながら少し町から外れれば森や山が広がっていたでござるからな。」

 

「うぅ・・・そ、そんなことはいいから、早く休ませてくれぇ~うぷっ!」

 

「だ、だいじょう・・ぶ・・・・?」

 

 そう言いユーゴはフラフラになりながら口元を抑え、零羅が背中をさする。完全に船酔いである。

 

 融合次元に先行で侵入したランサーズたちは人が乗れる潜航ロボットモンスター[水陸両用バグロス Mk―3]を使いいくつかの島を経由して融合次元での潜伏場所を目指していた。その場所とは

 

(このスピードなら、明日には目的地である南硫黄島に着けるだろう。)

 

 日本の南端の秘境 南硫黄島である。


 スペード校、クローバー校共に調べ終わった俺たちはダーク・リベリオンに乗りアレン達がいるという山中の寺を目指していた。

 

「遊矢、見えたか?」

 

「う~ん・・・あっ、あれか?」

 

 遊矢の指先には薄らぼんやりだが明かりが見える。よかった、まだ電気は通っているんだな・・・

 

「おぉ!やっと来たか!ユート!待ってたぜ。」

 

 そこへ降り立つとアレンが俺たちを出迎えてくれた。

 中に入ると男女問わず数十人の人々がスープとパンの列にならんでいた。

 よかった、まだこんなに居たんだな・・・

 

「それじゃあ、改めて自己紹介ってことで、俺は神月 アレン

 んで、あっちで炊き出しのスープを配っているのが笹山 サヤカ。レジスタンスの一員さ。」

 

 寺の一角にある座敷スペースで、レジスタンスとランサーズの顔合わせが行われる。

 ただ、サヤカはあっちでスープを配っているが

 

「おい、サヤカ

 今日は当番じゃないんだから、無理して手伝うことないって!」

 

「う、うん・・・でも」

 

「人の世話ばっかして、自分が倒れたら意味ないぞ。

 アカデミアとの戦いはいつまで続くか分かんないんだから・・・

 もっと自分を大切にしろって、いつも言っているだろ。」

 

「うん。分かってる。はい、どうぞ。」

 

 このやり取り、相変わらずだな・・・

 

「悪いな。アイツ人見知りでさ。

 お前らのこと嫌っているわけじゃないから。」

 

「そうかい。まっ、無理強いはしないさ。

 俺は今こいつらのリーダーをしている遊矢

 そっちのでかいのが権現坂で、駄犬のセレナと、そっちの細いのが一番下っ端のデニスだ。」

 

「誰が駄犬だ!!」

 

「その言い方酷くないかい!?」

 

「はははっ!愉快な奴らだな!

 ユートや隼の仲間なら、お前たちも俺たちの仲間だ!ゆっくりしてくれ。」

 

「いや、俺はアカデミアのお尋ね者でね。

 一般人を巻き込むわけにはいかない。明日にでも出てくさ。

 ここに来たのはあの親子を安全な場所に連れて行きたかったのと、情報を貰うため。」

 

「情報?アカデミアのことなら」

 

「それはいい。敵なら倒す。それだけだ。

 俺が聞きたいのは俺の父、榊 遊勝について何か知っていることはないか?

 デニスの話じゃ、クローバー校の周りをうろちょろしていたらしいが。」

 

「えっ!?先生の!?」

 

 話を遠巻きに聞いていたサヤカが驚愕する。

 榊 遊勝はサヤカ達とも関わりがあったんだな。

 

「先生?」

 

「今から三年前、まるでアカデミアの侵略を予測していたみたいに現れて、私たちにデュエルの全てを教えてくれたの。

 技術だけではなく、どんな時も笑顔を忘れるなって精神も・・・」

 

「だが、あいつはアカデミアの侵略が始まって少しして、ぱったり姿を消した・・・

 俺たちを見捨てて逃げだしたんだ!」

 

 いつも冷静なアレンも声に怒りを滲ませている。

 姿を消しただけなら、アカデミアにやられた可能性もある。

 どんな強豪のデュエリストだって、遊矢のようにループ攻撃でもしなければ、数の暴力に屈してしまう。俺たちレジスタンスはそうやってやられることが多かった。

 アレンに恨まれるようなことを彼は何かしたのだろうか?

 

「・・・やっぱり恨まれているよ。あのクソ親父・・・・・・

 あぁそれと、カイトっていう奴っていうか、その父親のことについてなにか知らないか?」

 

「カイト!?いや、あいつは・・・」

 

「大攻勢の時に彼の家族はみんなやられてしまったの・・・

 実の家族だけじゃなくて、カイトが昔からお世話になっていた人達も全員・・・」

 

 そんな・・・

 

「そうか・・・それじゃ、お尋ね者は退散するとしようかね。」

 

――えっ!?

 

「朝一の仕事の仕込みもあるんでね。権現坂も一緒に来てくれ。」

 

「むっ?おう。」

 

「他のみんなは連絡が来るまで待機で~」

 

 そう言って、2人は本当に出て行ってしまった。

 俺たちは行動を起こすまでは、ここでみんなを守れということか。

 意図的にアレン達を避けているようにも見えたが・・・

 

「なんだよ。アイツ、つれねぇ奴だな・・・」

 

 榊 遊勝のことで居づらくなったのか?いやでも・・・


 砂埃が舞う廃墟の中を外套を纏った青年が当てもなく歩いていた。

 その手には、破れたカードの下半分

 

「榊 遊矢・・・遊勝の息子・・・

 どこにいるんだ・・・アイツは!!」

 

 彼の名は『エド・フェニックス』

 アカデミア軍エクシーズ派遣部隊総司令官である。

 

――うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

「っ!!」

 

 突如響き渡る悲鳴に彼は駆けだす。

 その先にいたのは3枚のカードを持った赤と緑のトマトのような髪色を持つ少年

 

「おやぁ~?見るからに怪しいやつが現れたなぁ。」

 

「キミが・・・榊 遊矢、遊勝の息子か!?」

 

「生憎とその呼ばれ方は好きじゃないなぁ。

 っていうか、俺のことを知っているっていうことは、お前はアカデミアってことでいいのかな?」

 

「あぁ!僕はアカデミア軍エクシーズ派遣部隊総司令官、エド・フェニックス!

 榊 遊矢!アカデミアの未来のため!そして、遊勝をおびき出す餌になってもらうため

 ここで僕が打ち取る!!」

 

「はっ!親父も有名人だな。

 そろそろ飽きてきたことだし、少しは俺を楽しませろよ?」

 

「楽しむ・・・だとっ!?ふざけたことを!!」

 

「おぉ、怖い怖い。じゃあ、始めようか?」

 

『『決闘(デュエル)!!』』

 

「先攻は俺からだ。

 俺はフィールド魔法、天空の虹彩を発動

 さらに魔法カード、カバーカーニバルを発動

 このカードの効果により、俺のフィールドに3体のカバートークンを特殊召喚する。

 こいつらが存在する限り、俺はエクストラデッキからモンスターを特殊召喚できない。」

 

カバートークン(青)「ハァン。」

          DEF0

 

カバートークン(橙)「ウフン。」

          DEF0

 

カバートークン(黄)「ヒポォ。」

          DEF0

 

天空に虹のような輝きが現れ、地にはなぜかサンバの恰好をした色とりどりのカバ達が並ぶ

 

「ふざけたカードを!」

 

「怒るな怒るな。っと、ここで天空の虹彩の効果

 1ターンに1度、自分フィールド上の表側表示カードを1枚を破壊し、デッキからオッドアイズカードを手札に加える。

 俺はカバートークン1体を破壊して、デッキからオッドアイズ・ペンデュラム・

ドラゴンを手札に加える。

 手札2枚を伏せて、スケール4のオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンをペンデュラムスケールにセッティング。」

 

 橙のカバが去り、光の柱に異虹彩の赤い竜が昇る。

 

「モンスターを直接マジック・トラップスロットへ・・・それが、ペンデュラムモンスターか。」

 

「その通り、ペンデュラムモンスターは魔法罠ゾーンの第一スロットと第五スロットにペンデュラムスケールとして魔法扱いで置くことができる。

 そして、モンスター効果とは異なる魔法カードとしての効果として、ペンデュラム効果を持つ。

 

 エンドフェイズ、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンのペンデュラム効果発動!

 このカードを破壊し、デッキから攻撃力1500以下のペンデュラムモンスターを1体手札に加える。

 俺が手札に加えるのはEM(エンタメイト)トランプ・ウィッチ

 フィールドで破壊されたペンデュラムモンスターは、墓地ではなくエクストラデッキに表側表示で加える。

 これでターンエンド。」

 

EM(エンタメイト)・・・壁を2体出したところで僕の本気を受け切れると思うな!

 僕のターン、ドロー!

 僕はD-HERO(デステニーヒーロー) ドリルガイを召喚!」

 

ドリルガイ「タァ!!」

     ATK1600

 

「ドリルガイのエフェクト発動!

 このカードが召喚、特殊召喚したとき1ターンに1度、手札のこのカードの攻撃力以下の攻撃力を持つD-HERO(デステニーヒーロー)を1体特殊召喚する。

 カモン!アナザー・ワン!」

 

ドリルガイ「ハッ!」

     ATK1600

 

 エドのフィールドに現れる運命を穿つ螺旋の英雄たち

 そして、彼はこのターンで悪魔を打ち取るために英雄たちを結束させる。

 

「さらに僕は永続魔法、連合軍を発動!

 このカードのエフェクトは自分フィールドの戦士族モンスターの攻撃力を自分フィールド上の戦士族、魔法使い族モンスター1体に付き200ポイントアップさせる。

 これでドリルガイたちの攻撃力は400ポイントアップ!」

 

 ドリルガイ ATK1600→2000

 ドリルガイ ATK1600→2000

 

「ドリルガイが守備表示モンスターを攻撃するとき、貫通ダメージを与える。

 キミのモンスターの守備力は0、これで終わりだ!

 行け、ドリルガイズ!ゴー・ファイッ!」

 

ドリルガイズ「「タアァー!!」」

 

「生憎幕引きにはちぃと早い!

 トラップ発動、スウィッチヒーロー。

 お互いのフィールドのモンスターの数が同じ場合、そのモンスターのコントロールを入れ替える。」

 

「何っ!?」

 

 カバートークンたちは右手のドリルを唸らせて迫るドリルガイたちをひらりと躱し、蹴とばして地面に叩きつけると、自分たちはくるくると踊りながらエドのフィールドに居座った。

 

 カバートークン(青) DEF0

 カバートークン(黄) DEF0

 

 ドリルガイ ATK1600

 ドリルガイ ATK1600

 

「ウェルカムッ!ドリルガァイズ!!カバートークンたちも囮、ご苦労。

 さぁて・・・次はどんな手で来るね?」

 

 大仰な素振りで挑発する遊矢、だがエドの手札にはこのターンで出せるカードはなかった。

 

「くっ!?僕は手札を2枚伏せ、ターン、エンドだ・・・」

 

「おいおい、それでお終いか?逆境を打ち砕いてこそのヒーローだろ?

 そんなんじゃ運命が笑い死んじまうぜ?」

 

「笑い・・・いや!僕の運命はアカデミアと共にある!」

 

「ふん・・・俺のターン、ドロー!

 ドリルガイが守備表示モンスターを攻撃するとき、貫通ダメージを与える。だったな?

 カバートークンの守備力は0、これでジ・エンド。

 行け、ドリルガイズ!ゴー・ファイッ!」

 

 遊矢はさっきのエドのセリフをなぞり、そしてドリルガイ達もまたさっきのターンの焼きまわしのようにカバートークンへ向かう。

 ただ一つ違うのは、カバートークンが躱さず、その体を貫かれたこと

 

ドリルガイズ「「ハアアァァァァ!!」」

 

カバートークン(黄)(青)「「カバァー!」」――バンッ!バンッ!

 

「くぅぅぅ、だがしかし、2回目のダメージ計算時、手札のダイナマイトガイをセメタリーに送り、エフェクト発動!

 僕へのダメージを0にし、お互いのプレイヤーは1000ポイントのダメージを受ける!」

 LP4000→2400

 

――ドゴオオオォォォン!!

 

「ぐうううぅぅぅぅぅ!!」

 LP2400→1400

 

 激しい爆発が2人を襲う。

 だが、遊矢は相も変わらず薄ら笑いを浮かべている。少しはマシかと言うように

 

「ダメージを減らしたか・・・さすが司令官様だと言いたいが、甘いな。

 カバートークンがいなくなったことで、俺のエクストラデッキが解禁された。

 

 トラップ発動、ペンデュラム・リボーン

 墓地またはエクストラデッキのペンデュラムモンスター1体を特殊召喚する。

 来い!オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン!」

 LP4000→3000

 

オッドアイズP「ギャオオオオォォォォォォォォ!!」

       ATK2500

 

「何だと!?」

 

「オッドアイズよ!ヒーローごっこのお坊ちゃんに引導を渡してやれ!

 螺旋のストライクバースト!!」

 

 異虹彩の竜の赤黒い螺旋の炎がエドに迫る。

 

「まだだ!僕は負けない!「デュエルで笑顔を」などと、ふざけたことを言うやつに!!

 トラップ発動!D―フォーチュン!

 相手のダイレクトアタック宣言時、自分のセメタリーのD-HERO(デステニーヒーロー)1体を除外することでバトルフェイズを終了させる!」

 

ダイナマイトガイ「フンッ!グワアアァァァァァァァ!!」――バンッ!

 

 オッドアイズの螺旋の炎から内部で爆発が巻き起こる屈強な体格のHERO、ダイナマイトガイが現れ、エドを守る。

 

「防いだか・・・なら俺はスケール4のEM(エンタメイト)トランプ・ウィッチをペンデュラムスケールにセッティング」

 

 再びそそり立つ光の柱、そこの昇るのは小柄な魔法使いの少女

 

「このタイミングで来るのか!?ペンデュラム召喚!?」

 

「いや、もうペンデュラムを使うまでもない。

 俺はEM(エンタメイト)プラスタートルを召喚!」

 

プラスタートル「ホッホッホッ」

       ATK100

 

「プラスタートルの効果発動

 1ターンに1度、フィールドの表側表示モンスターを2体まで対象にし、そのレベルを1つ上げる。

 俺はドリルガイ一体のレベルを1つ上げる。」

 

 ドリルガイ LV4→5

 

「ドリルガイのレベルを上げるだと!?」

 

「そして、トランプ・ウィッチのペンデュラム効果

 1ターンに1度、自分フィールド上のモンスターを使い融合召喚を行う!」

 

「何ッ!?融合だと!?」

 

EM(エンタメイト)モンスター、プラスタートルとレベル5となった闇属性モンスター、ドリルガイを融合!

 運命の岩盤を貫く英雄よ、万年の知恵を蓄え、狂乱を呼べ!融合召喚!

 来い!EM(エンタメイト)ガトリングール!!」

 

ガトリングール「ははhっはははははははhAhh!!」

       ATK2900

 

「ガトリングールが融合召喚に成功したとき、フィールド上のカード1枚に付き、200ポイントのダメージを相手に与える。

 お前のフィールドに伏せ合わせて2枚、俺のフィールドに5枚

 合わせて7枚で丁度1400ポイントのダメージがお前に与えられる。

 まぁ、そのカードが防いでくれるかもしれないが?」

 

「くっ!?」

(伏せているカードはD―フュージョン、このカードでは奴の与えてくるダメージは!?)

 

 もはやエドに抗う術は残されていなかった。

 彼に付きつけられるのはガトリングールの銃口と遊矢との圧倒的な実力差

 

「なんだ?違うのか?

 残念だ・・・その程度の奴に勝ったところで笑う気にもなれないなぁ~」

 

「くっ・・・ううぅ・・・・」

 

「消えろ、雑魚が。」

 

ガトリングール「はははhxふあxはhひh!!」――ドルルルルルルルルルルルッ!!

 

「ぐわあああああぁぁぁぁぁ!!っ!!くぅぅぅ・・・・」

 LP1400→0

 

 吹き飛ばされ、倒れ伏すエドに微妙な顔で遊矢は近づく

 

「さてと・・・ん?」

 

――総司令官殿おぉぉ!!

 

 慌ててエドの元へ向かってくる青服のアカデミア3名、すでにディスクは機動しておりハッキング済。

 遊矢は丁度いいと彼らのデュエルディスクを操作し、カード化システムを起動させる。

 

「「「司令官!今、おたうわぁぁぁぁぁぁ!!」」」――パタ、パタ、パタンッ・・・

 

「ふぅ・・・さて、総司令官に対して下っ端3人、釣り合ってるかな?」

 

「えっ・・・・?なぜ彼らを・・・?」

 

「何故って?最近、同じようなデッキ使う奴ばっかりで飽きてきてなぁ。

 変わり種は残しておきたかったんだ。」

 

 理由は酷いものだった。

 ただ飽きてきたからだと、自分を残したのは暇つぶしだと

 「デュエルで笑顔を」という彼にかかった呪い云々よりも、アカデミアの正義や教えよりも、その行いは間違いなくエドにとって許されざる『悪』だった。

 

「お前・・・お前はあああぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「じゃあ、今日はこの辺で、Ciao~」

 

「待てっ!!うぅ・・・」

 

 彼が痛みで膝をつき、再び前を見れば、そこにはもう遊矢の姿はない。

 怒りの矛先を失った彼にできるのは、自分の弱さと、その弱さで失われたものがあったということを嘆く事だけ

 

「うぅ・・・あぁぁ・・・あああああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛゛・・・


「あぁ~・・・拍子抜けするほど、弱かったな・・・」

 

 エド・フェニックス

 遊戯王テレビシリーズ第二作目『遊戯王デュエルモンスターズGX』におけるライバルキャラの一人

 独特の効果を持つ運命を司る『E』を超えたHERO、『D』シリーズを使うシリーズ最強格のデュエリスト

 

 なのだが・・・

 DD、斎王 琢磨、遊城 十代、万城目サンダー、彼の運命を狂わし、彼を支え、彼を強くしたファクターが軒並み存在しない。

 さらには『D-HERO(デステニーヒーロー)』の新規があるあたり、どうやら彼が力を渇望する理由となる事件が起こっていないのかもしれない。

 

「それなら、あんなもんか・・・?

 早めに接触できたことはよかったが・・・」

 

 アニメでは親父とアカデミアの教えの間でブレブレに心が揺れるママママインドして情緒不安定だったが、それはこの世界でもらしい。

 

「正直、干されないかが心配だな・・・」

 

 これじゃ計画が

 

――待て

 

「!!」

 

 振り返れば、瓦礫の上に怒りに満ちた目をした男

 銀河の竜を操る光の狩人が、俺を見下ろし立っていた。




ふぅ~偽装はこれで終わったか・・・
遊矢め、山の周辺に偽装とトラップを仕掛けろなど・・・
だが俺も気になることがあるのは事実
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『銀河の眼に写る道化』
さて、避難場所の選定もせねば・・・


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銀河の瞳に写る道化

悪魔は正しき手順で使役しなければならない。
悪魔は正しき方法でのみ打倒することができる。
悪魔は正しさによってのみ縛ることができる。


今回は主人公(14)VSカイト(14)です。
ほぼデュエルしかしてないのにまた長くなってしまいました。

皆さんも引火した油等の高温度火災の際にに水を掛けるのはやめましょう。


待て。」

 

 『天城 カイト』アニメ遊戯王第4作「遊戯王ZEXAL」のライバルキャラの一人にして作中最強の実力者。

 自身の弟『天城 ハルト』を救う為、フェイカーの命で作中のキーカード『No.(ナンバーズ)』を使用者の魂ごと狩る。

 そして、付いた異名は誰が呼んだか「ナンバーズハンター」

 

「お前は何者だ?

 アカデミアか?そうでないのなら、なぜさっきの奴を見逃した!」

 

 さっきの奴・・・エドのことか?

 それならもしかして、ガトリングールを見られた?だとしたらややこしいことに・・・

 

「人の名前を聞く時は、まず自分から名乗るのが礼儀だと教わらなかったか?

 まぁいいか・・・俺の名は榊 遊矢

 こことは違う世界、スタンダードからはるばるやってきた。

 アカデミアからは悪魔なんて呼ばれている、お尋ね者よぉ。」

 

「・・・俺はカイト、この街に仇なすものを狩る者だ。

 スタンダード・・・やはり他次元の、そんな奴がどうしてここにいる。」

 

「アカデミアを潰すために来た。と言ったら信じてくれるか?

 あぁ、さっきの質問の答えは、作戦の一つさ。

 無能に指揮をしてもらった方がこちらはやりやすいからな。」

 

「なるほどな。だが俺はお前の言葉を信じない。

 ヤツらは、あらゆる手を使って俺たちを欺き、狩ろうとする。

 お前が、ユートと隼を丸め込み、俺達の一片すらも狩ろうとするアカデミアの先兵だとしても不思議じゃない。

 ましてや、融合召喚を使うやつなど信用できるか!!」

 

 もはや「融合」という言葉がアレルギーとなっているような過剰な反応をカイトは見せる。

 これは大分重症だな。

 

「カードに罪はない。と言っても聞いてくれそうにないか・・・」

 

「お前の言葉が真実だと言うなら、この俺とのデュエルで示してみろ!!」

 

「それは何とも・・・わかりやすい!」

 

『『決闘(デュエル)!!』』

 

「先攻は俺みたいだな。

 俺は魔法カード、調律を発動し、デッキからシンクロンチューナーを1体手札に加える。

 俺はヴァレット・シンクロンを手札に加え、その後デッキをシャッフルしデッキトップを1枚墓地へ送る。」

 

「チューナーだと?」

 

 あぁシンクロがないということは、チューナーもこの世界にないのか。

 

「モンスターカテゴリの1つだ。

 俺はさらに魔法カード、闇の誘惑を発動し、デッキから2枚ドロー、その後闇属性モンスター1体を除外する。ヴァレット・シンクロンを除外。

 そしてEMドクロバット・ジョーカーを召喚!」

 

ドクロバット・ジョーカー「ハハッ!」

            ATK1800

 

 ドクロが描かれたシルクハットをかぶる道化が現れ、それを見たカイトが怪訝な顔をする。

 

「ドクロバット・ジョーカーの召喚に成功したことでデッキからEM(エンタメイト)、オッドアイズ、魔術師ペンデュラムモンスターの内1体をデッキから手札に加える。

 俺が手札に加えるのは、EM(エンタメイト)ギタートル。」

 

EM(エンタメイト)・・・それに榊・・・お前、榊 遊勝と何か関係あるのか?」

 

 やっぱりカイトとも接触しているのか・・・

 その割に何の役にも立っているイメージがないが。

 

「あぁ?なんだ、お前も馬鹿親父の関係者か?」

 

「親父・・・その口ぶりだと、お前は彼の息子か?」

 

「あぁ、今となっては不本意な蔑称だよ。

 大事なチャンピオン防衛戦で逃げた臆病者の息子ってな。

 それで、榊 遊勝の息子ってことで、信用してくれる気にはなったかい?」

 

「ない!!」

 

「そうだよな・・・ここでも逃げたとか言われている疫病神なんて、信用の材料にならないよな。

 だったら、刮目しろ!俺のデュエルを!

 俺はスケール6のEM(エンタメイト)ギタートルとEM(エンタメイト)リザードローで、ペンデュラムスケールをセッティング!」

 

「直接モンスターをマジック、トラップゾーンへ・・・

 これが謎の召喚法の条件か。」

 

「う~ん、残念、このままじゃお前の言う謎の召喚法はできない。

 スケールに幅がないからな。

 ギタートルのペンデュラム効果、このカードが発動中にもう片方のペンデュラムゾーンにEM(エンタメイト)カードが発動した場合、デッキから1枚ドローする。

 さらにリザードローのペンデュラム効果、もう片方のペンデュラムゾーンにEM(エンタメイト)カードが発動中の場合、このカードを破壊することでデッキから1枚ドローする。」

 

「破壊されたモンスターが表側でエクストラデッキへ・・・

 そうか!ペンデュラムモンスター、そしてそれを使った召喚法とは、破壊されればエクストラデッキへ貯められ、そこから召喚される無限復活の召喚法か!?」

 

 うわっ!?すげぇな。

 複雑なペンデュラムのシステムをカードの動きだけで理解しやがったよ

 

「大体正解だ。

 ぺンデュラムモンスターはフィールドから墓地へ送られる場合、エクストラデッキに表側表示で加えられ、スケール幅の中のレベルを持つモンスターを手札、またはエクストラデッキの表側表示のペンデュラムモンスターの中から1ターンに1度、特殊召喚できる。

 これをペンデュラム召喚と言う。

 

 俺は新たにスケール3のマジカル・アブダクターをペンデュラムスケールにセッティング。

 これで5から4のレベルを持つモンスターをペンデュラム召喚できるようになった。

 まぁその前に手札から魔法カード、デュエリスト・アドベントを発動

 自分フィールド上でペンデュラムスケールが存在する場合、デッキからペンデュラムと名の付くペンデュラムモンスターか、ペンデュラムと名の付く魔法、トラップカード1枚を手札に加える。

 俺が手札に加えるのは魔法カード、ペンデュラム・コール

 さらに魔法カード、テラ・フォーミングを発動し、デッキからフィールド魔法、天空の虹彩を手札に加え、発動。」

 

 空に輝く不定形の虹のような光、そして光の柱の中に浮かんだ奇妙な法衣を着た女性の胸、ベルト、杖の飾りの宝玉が光り輝く。

 

 マジカル・アブダクター 魔力C0→1→2→3

 

「マジカル・アブダクターは魔法カードが発動されるたびに魔力カウンターを1つのせる。

 そして、効果発動、溜まった魔力カウンター3つを取り除き、デッキからペンデュラムモンスター、EM(エンタメイト)ペンデュラム・マジシャンを手札に加える。」

 

 マジカル・アブダクター 魔力C3→0

 

「さてお待ちかね。揺れろペンデュラム、異界へ繋がる扉を開け、ペンデュラム召喚!

 手札から現れろ!レベル4、ヴァレット・トレーサー、EM(エンタメイト)ペンデュラム・マジシャン!」

 

ヴァレット・トレーサー「ギャアアァァァァ!」

            ATK1600

 

ペンデュラム・マジシャン「ハッ!」

            ATK1500

 

 流星のごとく落ちてくる光から現れる弾丸のような姿の赤い竜と、振り子の魔術師

 そして、彼とドクロバット・ジョーカーにいつものごとく迫る、その手のモノと同じデザインの巨大な振り子

 

「ペンデュラム・マジシャンの効果発動

 特殊召喚に成功したとき、フィールド上のカードを2枚まで破壊し、デッキから破壊した枚数に付き1種類、EMモンスターを手札に加える。

 ペンデュラム・マジシャン自身とドクロバッド・ジョーカーを破壊しデッキからEM(エンタメイト)ギッタンバッタとEM(エンタメイト)クリボーダーを手札に加える。

 

 さらにヴァレット・トレーサーの効果発動

 1ターンに1度、自分フィールド上の表側表示カードを1枚破壊し、デッキからヴァレット・トレーサー以外のヴァレットモンスターを特殊召喚する。

 俺はマジカル・アブダクターを破壊し、ヴァレット・リチャージャーを特殊召喚!

 この効果の発動後、このターン俺は闇属性モンスター以外をエクストラデッキから出せない。」

 

 ヴァレット・トレーサーがマジカル・アブダクターに突撃し、アブダクターの砕かれた破片が新たな弾丸の竜となって再生する。

 

ヴァレット・リチャージャー「ギャオォ!」

             DEF2100

 

「さらに俺はレベル4のヴァレット・リチャージャーとヴァレット・トレーサーでオーバーレイ!

 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築

 エクシーズ召喚!来い、キングレムリン!」

 

キングレムリン「グオオォォ!!」

       ATK2300 ORU2

 

 頭に王冠のような角を生やした屈強巨大な化け物が吠える。

 

「キングレムリンの効果

 1ターンに1度、オーバーレイユニットを一つ使い、デッキから爬虫類族モンスターを1体手札に加える。

 俺はEM(エンタメイト)リザードローを手札へ」

 

 キングレムリン ORU2→1

 

「さらに天空の虹彩の効果発動

 自分フィールド上のカード1枚を破壊しデッキからオッドアイズカードを1枚手札に加える。

 俺はキングレムリンを破壊し、オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴンを手札に加える。」

 

「何?」

 

 召喚権が行使され、ペンデュラム召喚もやった後でせっかく呼んだエクシーズモンスターを手放す行為にカイトは疑問を覚えたようだ。

 とりあえずの迎撃準備はできたが・・・相手はあのカイト、まだ安心はできない。

 

「魔法カード、ペンデュラム・コール

 魔術師ペンデュラムモンスターの効果を使ってないターンに1度だけ、手札を1枚捨て、デッキから魔術師ペンデュラムモンスターを2種類手札に加える。

 俺は調弦の魔術師と慧眼の魔術師を手札に加える。

 

 さらに魔法カード、ペンデュラム・ホルト

 エクストラデッキにペンデュラムモンスターが3種類以上、表側である場合デッキから2枚ドローする。」

 

 よし、これなら・・・

 

「カードを2枚伏せ、ターンエンドだ。」

 

「何?モンスターを残さないだと?なんのつもりだ!」

 

 さんざん動かしてモンスターのいないフィールドを作り上げた俺に、カイトはますます怪訝な表情になる。

 確証はないが、あのデッキだった場合フィールドにモンスターを残すのは悪手

 

「さぁね。親父のことを知っているんなら、種の分かった手品がつまらないことくらい、わかるだろ?」

 

「ふざけたことを!なら、その種ごと消し飛ばしてくれる!!

 俺のターン、ドロー!俺は光波双顎機(サイファー・ツイン・ラプトル)を召喚!」

 

光波双顎機(サイファー・ツイン・ラプトル)「ギャアァァ!!」

     ATK1600

 

 現れたのは虹色の輝く幾何学の羽を広げた光るトカゲか恐竜のようなモンスター

 なぜあの見た目で機械族なんだ・・・

 

光波双顎機(サイファー・ツイン・ラプトル)の効果発動!

 手札を1枚捨て、手札、デッキからサイファーモンスター1体を特殊召喚する!

 現れろ!光波鏡騎士(サイファー・ミラー・ナイト)!!」

 

光波鏡騎士(サイファー・ミラー・ナイト)「ハッ!」

     DEF0

 

 続いて現れたのは鏡の鎧を持つ騎士、こちらはちゃんと戦士族だ。

 

「そして、墓地へ送られた光波異邦臣(サイファー・エトランゼ)の効果発動!

 1ターンに1度、このカードが墓地に送られた場合、デッキからサイファーマジック、トラップを1枚手札に加える。

 俺が手札に加えるのは光波干渉(サイファー・インターフィアー)

 そして手札から永続魔法、光波干渉(サイファー・インターフィアー)二重露光(ダブル・エクスポージャー)を発動!」

 

 揃ってしまったか・・・

 あのカードを使えば光波双顎機(サイファー・ツイン・ラプトル)で特殊召喚するモンスターを攻撃力が400以上あるサイファーモンスターにすれば、フィールドにモンスターがいない俺のライフを削りきる攻撃力を得られただろう。

 だが、そうしなかったということは、公開情報から分かる戦略は読まれているということだ。

 

「バトルフェイズ!この瞬間、二重露光(ダブル・エクスポージャー)の効果発動!

 自分、相手のバトルフェイズ開始時、自分フィールド上のサイファーモンスターを1体対象にし、そのモンスター以外のフィールド上の表側表示モンスター1体の名称を対象としたサイファーモンスターとエンドフェイズまで同じにする。

 俺は光波双顎機(サイファー・ツイン・ラプトル)を選択し、光波鏡騎士(サイファー・ミラー・ナイト)の名称を光波双顎機(サイファー・ツイン・ラプトル)にする!」

 

 光波鏡騎士(サイファー・ミラー・ナイト)光波双顎機(サイファー・ツイン・ラプトル)

 

 光波鏡騎士(サイファー・ミラー・ナイト)の鎧が輝き、その周りに光波双顎機(サイファー・ツイン・ラプトル)の像を作り出す。

 

「バトルだ!光波双顎機(サイファー・ツイン・ラプトル)でダイレクトアタック!」

 

「相手のダイレクトアタック宣言時、墓地のEM(エンタメイト)バリアバルーンバクの効果発動

 手札のEM(エンタメイト)モンスター、クリボーダーを捨て、このカードを守備表示で特殊召喚!

 さらにEM(エンタメイト)モンスターが手札から墓地へ送られたことにより、EM(エンタメイト)ギッタンバッタの効果も発動、このカードを特殊召喚する!」

 

 バリアバルーンバク DEF2000

 ギッタンバッタ DEF1200

 

 現れるのはEM(エンタメイト)の防御担当、紫の獏の形をした風船と顔が尾にもついているバッタ

 もちろん、カイトはそれを予期していたために光波双顎機(サイファー・ツイン・ラプトル)の攻撃をすかさずバリアバルーンバクに向ける。

 

「ならば、攻撃対象をバリアバルーンバクに変更!

 光波干渉(サイファー・インターフィアー)はフィールドに同名モンスターが存在するサイファーモンスターが戦闘を行うダメージ計算時に、その攻撃力を倍にする!」

 

「なら攻撃対象を選択したタイミングで永続トラップ、強制終了を発動する!

 このカードは自分フィールド上のカード1枚を墓地へ送ることで、このターンのバトルフェイズを終了させる!

 俺はバリアバルーンバクを墓地へ送り、お前のバトルフェイズを強制終了!」

 

「なるほどな。ギッタンバッタは相手エンドフェイズにリリースすることで墓地のレベル3以下のEMモンスターを手札に戻すことができる。

 そしてキサマの墓地にはレベル1のクリボーダー・・・俺が戦闘を行うたびに発生するループコンボか。」

 

「ふぅん、まぁデュエルは始まったばかりだ。ゆっくりしようじゃないか。

 積もる話でもしながらさぁ~」

 

「キサマとする話などない!

 二重露光(ダブル・エクスポージャー)のもう一つの効果発動!1ターンに1度、自分フィールド上の同名サイファーモンスターのレベルを倍にする!」

 

 光波双顎機(サイファー・ツイン・ラプトル)           LV4→8

 光波鏡騎士(サイファー・ミラー・ナイト)光波双顎機(サイファー・ツイン・ラプトル)) LV4→8

 

 !!ついに来るか!

 

「俺はレベル8となった光波双顎機(サイファー・ツイン・ラプトル)2体でオーバーレイ!

 闇に輝く銀河よ・・・復讐の鬼神に宿りて、我が僕となれ!エクシーズ召喚!!」

 

 2体のモンスターが呼び出した混沌

 そこから弾けるのは宇宙の輝く星々の光、その光は凝縮し虹の翼を広げる銀河の瞳の竜となる。

 

「降臨せよ!ランク8!銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)!!」

 

銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)「ギャオオオオオオォォォォォォォォォォ!!」

             ATK3000 ORU2

 

 

 

 

 ふつくしい・・・

 

 まさに青白く輝く銀河のごとき竜。

 そしてその胸に描かれた紋章はアレによく似ている。

 こいつも、もしかしたら異世界科学の一端だったりしてな。

 

「手品の種は見えた!ならばその種ごと狩りつくしてくれる!!

 銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)の効果発動!1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ使い、相手フィールド上のモンスター1体のコントロールをエンドフェイズまで奪い。

 銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)として扱い、攻撃力を3000とする!サイファープロジェクション!!」

 

銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)「ギュオオオオオォォォォォォォォォ!!」

       ORU2→1

 

 対象はもはや言うことなく、俺のフィールドで控えるギッタンバッタ

 だが残念ながらこの手品には続きがあるんだ。

 

「永続トラップ、木遁封印式!

 1ターンに1度、自分フィールド上の表側表示で存在する地属性モンスター1体をリリースし、相手の墓地のカードを2枚まで選択してゲームから除外する!

 俺はギッタンバッタをリリース!!」

 

「なっ!?サクリファイスエスケープ!?」

 

「エクシーズ使い相手なんだ。コントロール奪取効果の対策はしてしかるべきだろ?

 お前の墓地の光波異邦臣(サイファー・エトランゼ)光波鏡騎士(サイファー・ミラー・ナイト)は除外させてもらう。

 光波鏡騎士(サイファー・ミラー・ナイト)はエンドフェイズにサイファーカードをサーチする効果があったみたいだが、墓地からいなくなった以上もう使えない。残念だったな?」

 

「くっ!マジックカード、銀河の施しを発動

 このカードは自分フィールド上にギャラクシーエクシーズモンスターがいる場合発動できる!

 その効果で俺は、手札を1枚捨てカードを2枚ドロー!

 カードを1枚伏せ、ターンエンドだ!」

 

 う~ん・・・しっかし、何だろうか?

 折角のカイトとのデュエルなのにジャックと戦った時ほど心が躍らない。

 カード化対策はしているから、別に命がかかっているというわけでもないのに・・・

 

「俺のターン、ドロー

 俺はEM(エンタメイト)リザードローをペンデュラムゾーンにセッティングし、ギタートルのペンデュラム効果で1枚ドロー

 続いて、リザードローのペンデュラム効果を発動し、自身を破壊し1枚ドロー

 

 空いたペンデュラムゾーンにスケール5の慧眼の魔術師をセッティングしペンデュラム効果発動

 もう片方のペンデュラムゾーンに魔術師もしくはEM(エンタメイト)カードが存在するとき、自身を破壊しデッキから慧眼以外の魔術師ペンデュラムモンスター1体をペンデュラムゾーンに置く

 俺はスケール3の相克の魔術師をセッティング、再び揺れろペンデュラム!

 エクストラデッキからレベル4、ペンデュラム・マジシャン、マジカル・アブダクター、慧眼の魔術師、そして手札から調弦の魔術師をペンデュラム召喚!」

 

 ペンデュラム・マジシャン ATK1500

 マジカル・アブダクター  ATK1700

 慧眼の魔術師       ATK1500

 

調弦の魔術師「はいっ!」

      DEF0

 

「調弦の魔術師が手札からのペンデュラム召喚に成功したことにより、デッキから調弦以外の魔術師ペンデュラムモンスター1体を効果を無効にし特殊召喚する。

 来い!時読みの魔術師!」

 

時読みの魔術師「フンッ!」

       DEF600

 

 流星に乗り現れた4体の魔法使いと遅ればせながら現れた黒服の不良のような魔術師が俺のフィールドを一気に満たす。

 

「この効果で特殊召喚したモンスターはフィールドを離れた場合除外される。

 さらにペンデュラム・マジシャンの効果、自身とギタートルを破壊しEM(エンタメイト)ソード・フィッシュとEM(エンタメイト)ユニを手札に加える、

 そして、今加えたEM(エンタメイト)ソード・フィッシュを通常召喚!」

 

 ソード・フィッシュ ATK600

 

 現れたのはリーゼントみたいな髪形とサングラスをした刀剣のごとき魚

 攻撃力は貧弱だが、大物狩りならこいつの力が役立つ。

 

「ソード・フィッシュが召喚、特殊召喚されたことにより効果発動!

 相手フィールド上の全てのモンスターの攻守を600ポイントダウンさせる!」

 

 ソード・フィッシュが分裂し6匹の群れとなって銀河眼の光波竜に突き刺さる。

 

銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)「ギャアッ!?」

             ATK3000→2400

             DEF2500→1900

 

「ギャラクシーアイズ!?」

 

「さらにこの効果はソード・フィッシュがモンスターゾーンにいる限り、俺が特殊召喚した場合に発動し続ける。

 俺はレベル4の慧眼の魔術師とマジカル・アブダクターの2体でオーバーレイ!

 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築

 エクシーズ召喚!鳥銃士カステル!」

 

カステル「クエェー!」

    ATK2000 ORU2

 

 現れたのはカラフルな羽と衣装を身に纏う鳥人の銃

 

「カステルの効果発動、オーバーレイユニットを2つ使い、このカード以外のフィールド上の表側表示カードを1枚、持ち主のデッキに戻す!」

 

 カステル ORU2→0

 

「そいつの効果は使わせん!

 墓地のトラップカード、スキル・プリズナーをギャラクシーアイズを対象に発動!

 このカードを除外しこのターン、ギャラクシーアイズを効果の対象としたモンスター効果を無効にする!」

 

「ちっ、だが、ソード・フィッシュの効果で600ポイント攻撃力がダウンする。」

 

銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)「グルル・・・」

             ATK2400→1800

             DEF1900→1300

 

 鳥銃士の弾丸が銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)の発した波動によって弾かれるが、その体に新たにソード・フィッシュの群れが突き刺さる。

 

 こういうカードの読み合いもできて、緊張感による高揚もある。

 だが、どこか・・・そう、クロウと初めてデュエルしたときみたいな、物足りなさを感じる・・・

 

「相克の魔術師のペンデュラム効果発動

 このターン、自分フィールド上のエクシーズモンスター、鳥銃士カステルは、そのランクと同数値のレベルのモンスターとしてエクシーズ召喚の素材にできる。」

 

「エクシーズをランクアップではなく召喚素材に使うだと!?」

 

「それは後のお楽しみ、まずはこいつだ。俺はレベル3の時読みの魔術師にレベル4の調弦の魔術師をチューニング!

 二色の眼に映る七つの星よ、流星となって降り注げ!シンクロ召喚!

 星紡ぐ戦の竜!オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン!!」

 

オッドアイズM「ギョオオオォォォォォォォォォ!!」

       ATK2500

 

 音叉の杖を持つ少女魔術師と時を司る不良魔術師の持つ星が赤き流星の竜を呼び覚ます。

 もちろん、シンクロも存在しないエクシーズ次元の住人であるカイトは困惑気味だ。

 

「シンクロ召喚・・・また新たな召喚法

 モンスターのレベルを足した数値と同レベルの新たなモンスターを呼び出すものか。」

 

「ほんと理解が早くて助かるよ。

 と言ってもまだ終わらないがな、メテオバーストの効果発動、このカードが特殊召喚に成功したとき、自分のペンデュラムゾーンのカードを1体特殊召喚する。

 来い!相克の魔術師!!」

 

相克の魔術師「ふんっ!」

      ATK2500

 

 不思議な模様の入った巨大な盾を構える魔術師が光の柱の中から戦場(いくさば)に躍り出る。

 さて、メテオバーストがいるならオネストとかの警戒はしないでいいんだが、伏せが1残ってるし、それに『カイト』だしなぁ・・・・

 

「俺はスケール4となっている相生の魔術師とスケール2の降竜の魔術師をペンデュラムゾーンにセッティング。

 相生の魔術師は自分フィールドのカードの枚数が相手よりも多いとき、ペンデュラムスケールは4となる。

 

 そして、この2枚のペンデュラム効果を鳥銃士カステルを対象に発動!

 これでカステルの種族は降竜の効果でドラゴン族となり、相生の効果で俺のフィールドのレベル5以上のモンスター、オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴンのレベルと同じ数値のランクとなる。」

 

 カステル RANK4→7

      鳥獣族→ドラゴン族

 

「!!?カステルはこのターン、ランクと同じレベルのモンスターとしてエクシーズ素材にできる!?」

 

「そういうこと、俺はレベル7のオッドアイズ・メテオバースト・ドラゴンと鳥銃士カステルでオーバーレイ!

 2体のドラゴン族でオーバーレイネットワークを構築!

 激情秘めたる二色の眼の竜よ、紅蓮の翼で戦場を焼き、非情の狩人に喰らいつけ!エクシーズ召喚!!

 天を焦がせし烈火の竜!覇王烈竜 オッドアイズ・レイジング・ドラゴン!!」

 

レイジング・ドラゴン「グオオオオォォォォォオオオォォォォォォォォ!!」

          ATK3000 ORU2→1


「っ!!?」

 

 こ、この感覚は!?

 

「どうしたユート!?」

 

「大丈夫かい!?」

 

「あ、あぁ・・・・だがこの恐怖感・・・遊矢がレイジング・ドラゴンを使ったらしい。」

 

「それは・・・わかるものなのか?」

 

 それは俺も聞きたい。昨日はまだ平気だったのに・・・

 だが、今重要なのはあのドラゴンを使うほどの相手が遊矢の前に現れたということだ。

 

「俺が様子を見に行こう。あいつに限ってのことはないとは思うがな・・・」

 

「隼・・・頼む。」

 

 俺はもう何も失いたくない。それはお前もだ。遊矢。

 

 燃える空に浮かぶ虹の光に向かって隼を乗せたライズ・ファルコンが行く。

 そして、俺は手元で怯えるように明滅する相棒を見る。

 

「ダーク・リベリオン・・・お前たちは一体何なんだ?」


「エクシーズの、ペンデュラム、だと!?こんなものまで・・・」

 

 立て続けに起こる未知なる召喚法、未知なるモンスターにさすがのカイトも驚きを隠せない。

 

「驚くのは、まだ、早い!

 オッドアイズ・レイジング・ドラゴンの効果発動!

 エクシーズモンスターを素材にしてエクシーズ召喚されたレイジング・ドラゴンはオーバーレイユニットを1つ使い、相手フィールド上のカード全てを破壊し、破壊した枚数×200ポイント攻撃力をアップする!レイジング・テンペスト!!」

 

レイジング・ドラゴン「グオオォォォォォ!!」――ゴオオォォォォォォォ!!

          ORU2→1

 

銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)「グッ!オオオォォオォォォォォ!!」――バンッ!

 

 レイジング・ドラゴンの全身から炎が吹き上がり、カイトのフィールドを蹂躙し銀河の竜も燃え果てる。

 

「破壊したカードは4枚、よってオッドアイズの攻撃力は800ポイントアップだ!」

 

レイジング・ドラゴン「オオオォォォォォォオオオオォォォォォ!!」

          ATK3000→3800

 

「バトルだ!俺は「俺は墓地の永続トラップ、光の護封霊剣を除外し効果を発動!

         このターン、相手はダイレクトアタック宣言ができない!」

 

 カイトを守るように黄金の光の剣が盾のように聳え、遊矢のモンスターを拒絶する。

 

「ちっ、ならバトルフェイズを終了し天空の虹彩の効果発動

 ソード・フィッシュを破壊してEM(エンタメイト)オッドアイズ・シンクロンを手札に加え、カードを1枚伏せ、ターンエンドだ。」

 

「ならば俺のターン!ドロー!

 俺はマジックカード、強欲で貪欲な壺を発動!

 1ターンに1度、デッキの上から10枚のカードを裏側でゲームから除外することで2枚ドローする!

  

 さらに手札を1枚捨てマジックカード、一撃必殺!居合ドローを発動!

 このカードは相手フィールド上のカードの数までデッキの上からカードを墓地へ送り、1枚ドローしお互いに確認する。

 それが居合ドローならフィールドの全てのカードを破壊し、違うのならこのカードの効果で墓地に送ったカードの枚数分、俺の墓地のカードをデッキに戻しシャッフルする。

 お前のフィールドのカードは8枚!よって8枚のカードを墓地へ送りドロー!

 ・・・引いたのはエクシーズ・ダブル・バック!

 居合ドローではないため、墓地の8枚のカード、光波干渉(サイファー・インターフィアー)二重露光(ダブル・エクスポージャー)、強欲で貪欲な壺、光波双顎機(サイファー・ツイン・ラプトル)、銀河の施し、光波翼機(サイファー・ウィング)3枚をデッキに戻す!

 

 さらにコストで墓地へ送られた光波異邦臣(サイファー・エトランゼ)の効果でデッキから光波干渉(サイファー・インターフィアー)を手札に加える!

 そして、死者蘇生を発動!蘇れ!!我が復讐の化身!!銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)!!!」

 

銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)「ギャオオオォォォォォォ!!」

             ATK3000

 

(ギャラクシーアイズを復活、そして手札にはエクシーズ・ダブル・バック、となれば・・・)

 

「さらに俺はランク8のギャラクシーアイズ1体でオーバーレイネットワークを再構築!!」

 

 復活した銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)が再び混沌へ消え、新たな肉体を再構築する。

 

「闇を切り裂く銀河よ!怨讐の刃となりて、我が僕に宿れ!!

 サイファー・ランクアップエクシーズチェンジ!!」

 

 輝く翼はより巨大に、頭部も兜のように変化し、そして腕からは光の刃が伸びる。

 

「新生せよ!ランク9!銀河眼の(ギャラクシーアイズ・ )光波刃竜(サイファー・ブレード・ドラゴン)!!」

 

銀河眼の(ギャラクシーアイズ・ )光波刃竜(サイファー・ブレード・ドラゴン)「ギャオオオォォォォォォオオォォォォォ!!」

                ATK3200 ORU1

 

銀河眼の(ギャラクシーアイズ・)光波刃竜(サイファー・ブレード・ドラゴン)の効果発動!

 1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ使い、フィールド上のカード1枚を破壊する!

 俺が破壊するのは・・・ギャラクシーアイズ自身だ!!」

 

 銀河眼の(ギャラクシーアイズ・ )光波刃竜(サイファー・ブレード・ドラゴン) ORU1→0

 

 せっかく新生した自身のエースを破壊する宣言をしたカイト

 アカデミアなら気が狂ったかと嘲笑うところだが、既にその手に握られているカードの効果を知っている遊矢からしてみれば気が気ではない。

 

「させるか!相克の魔術師の効果発動!

 1ターンに1度、フィールド上の光属性モンスター1体の効果をターン終了時まで無効化する。この効果は相手ターンでも発動できる。

 銀河眼の(ギャラクシーアイズ・ )光波刃竜(サイファー・ブレード・ドラゴン)の効果を無効化!!」

 

 自らの刃で自決しようとしていた銀河眼の(ギャラクシーアイズ・ )光波刃竜(サイファー・ブレード・ドラゴン)を相克の魔術師が盾を使い邪魔をする。

 だが、既に相克の魔術師の効果も勘定に入っていたカイトのコンボはもう止められない。

 

「ならば!手札からマジックカード、サンダー・クラッシュを発動!」

 

「なっ!?サンダー・クラッシュ!?」

 

「このカードは自分フィールド上のモンスターすべてを破壊し、破壊したモンスター1体に付き300ポイントのダメージを相手に与える。

 銀河眼の(ギャラクシーアイズ・ )光波刃竜(サイファー・ブレード・ドラゴン)を破壊!!」

 

――バリバリッ!!

 

「くっ!?」

 LP4000→3700

 

「そして、速攻魔法、エクシーズ・ダブル・バックを発動!

 自分フィールド上のエクシーズモンスターが破壊されたターン、自分フィールド上にモンスターが存在しない場合にこのカードは発動できる!

 自分の墓地からこのターンに破壊されたエクシーズモンスター1体と、そのモンスターの攻撃力以下のモンスター1体を特殊召喚する!

 再臨せよ!ランク9!銀河眼の(ギャラクシーアイズ・ )光波刃竜(サイファー・ブレード・ドラゴン)!!ランク8!銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)!!」

 

銀河眼の(ギャラクシーアイズ・ )光波刃竜(サイファー・ブレード・ドラゴン)「ギャオオオォォォォォォォ!!」

                ATK3200

 

銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)「ギャオオオォォォォォォォ!!」

             ATK3000

 

「さらに俺は再び銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)1体でオーバーレイネットワークを再構築!

 サイファー・ランクアップエクシーズチェンジ!!

 共振せよ!ランク9!銀河眼の(ギャラクシーアイズ・ )光波刃竜(サイファー・ブレード・ドラゴン)!!」

 

銀河眼の(ギャラクシーアイズ・ )光波刃竜(サイファー・ブレード・ドラゴン)「ギャオオオォォォォォォォ!!」

                 ATK3200 ORU1

 

「ちっ、クラゲみたいな真似しやがって・・・」

 

「まだ終わらん!墓地のオーバーレイ・イーターの効果発動!

 自分のメインフェイズ時、墓地のこのカードを除外し、相手フィールド上のエクシーズモンスターのオーバーレイユニットを自分フィールド上のエクシーズモンスターに加える!

 オッドアイズ・レイジング・ドラゴンのオーバーレイユニットを復活させたサイファー・ブレードに加える!」

 

 奇妙な色合いのカメレオンが墓地から顔を出し、その舌でレイジング・ドラゴンのオーバーレイユニットを奪い、銀河眼の(ギャラクシーアイズ・ )光波刃竜(サイファー・ブレード・ドラゴン)のもとまで引っ張り与える。

 

 レイジング・ドラゴン ORU1→0

 

 銀河眼の(ギャラクシーアイズ・ )光波刃竜(サイファー・ブレード・ドラゴン) ORU0→1

 

「さらに墓地のオーバーレイ・スナイパーの効果発動!

 墓地のこのカードを除外し、相手フィールドのモンスター1体の攻撃力を、自分フィールド上のオーバーレイユニットの数×500ポイントダウンさせる。

 俺が対象にするのはオッドアイズ・レイジング・ドラゴン!!」

 

 カイトの2体の銀河眼の(ギャラクシーアイズ・ )光波刃竜(サイファー・ブレード・ドラゴン)のもとに浮かぶ光から光弾が放たれ、レイジング・ドラゴンの翼を打ち抜き失落させる。

 

レイジング・ドラゴン「グアッ!?グウゥルルル・・・・」

          ATK3800→2800

 

「さらに2体のサイファー・ブレードの効果発動!

 キサマのフィールドの強制終了とセットカードをそれぞれ破壊する!

 サイファー・ブレード・カッター!!」

 

 銀河眼の(ギャラクシーアイズ・ )光波刃竜(サイファー・ブレード・ドラゴン) ORU1→0

 銀河眼の(ギャラクシーアイズ・ )光波刃竜(サイファー・ブレード・ドラゴン) ORU1→0

 

「2体目の効果にチェーンして、トラップカード、デストラクト・ポーションを発動!

 自分フィールド上のモンスター1体を破壊し、破壊したモンスターの攻撃力分だけ自分のライフを回復する!

 相克の魔術師を破壊!」

 LP3700→6200

 

 2体の光の刃が遊矢の防衛戦を崩しにかかる。

 遊矢の守りの弱点、それは強制終了がなければモンスターへの攻撃には無防備だということ

 

「永続魔法、光波干渉(サイファー・インターフィアー)を発動しバトルフェイズ!

 行け!銀河眼の(ギャラクシーアイズ・ )光波刃竜(サイファー・ブレード・ドラゴン)!!オッドアイズ・レイジング・ドラゴンへ攻撃!!

 この瞬間、光波干渉(サイファー・インターフィアー)の効果によりサイファーブレードの攻撃力は倍になる!

 殲滅のサイファー・ブレード・エッジ!!」

 

銀河眼の(ギャラクシーアイズ・ )光波刃竜(サイファー・ブレード・ドラゴン)「ギャオオオオォォォォォォォ!!!」

                ATK3200→6400

 

レイジング・ドラゴン「グゥ・・・オォアアァァァ!!」――ザシュ!!バアァァァン!!

 

 銀河眼の(ギャラクシーアイズ・ )光波刃竜(サイファー・ブレード・ドラゴン)の腕から伸びる刃がレイジング・ドラゴンへ向かって断頭台のごとく振り落とされる。

 レイジング・ドラゴンは自らの炎の熱でその光の刃を歪めようとするが、その防御むなしく切り裂かれた。

 

「ぐおおおぉぉああぁぁぁ!!ふぅ・・・危ねぇ危ねぇ、回復してなかったらやられてたぜ。」

 LP6200→2600

 

「ふんっ・・・」

 

 2人の睨みが激しくなったとき、空から風を切り裂く音と共に遊矢を呼ぶ声が響いた。

 

――榊ぃぃ!!

 

「ん!?黒咲?」「隼!?」

 

「なっ!?カイト!?どういうことだ榊!!

 なぜおまえがカイトと戦っている!!」

 

 黒咲から見れば仲間同士が争っているので、当然の話である。

 

「喧嘩を売られたから買った。」

 

「はあぁ!?キサマ!そんなことしている場合か!?

 カイトも。こいつが信用できないのかもしれんが、今は!」

 

「そうだ、だから信用するかどうかはこのデュエルで判断する。

 お前こそ邪魔をするな!隼!!邪魔をするならお前でも容赦はしない!!」

 

「カイト・・・アレン達から聞いた、お前も家族を・・・

 その悲しみは俺にもわかるが・・・」

 

「黙れ!大切な人たちを失い、父さんに守られ、それなのに命よりも大切な弟すら守れなかった・・・そんな俺の気持ちの何が分かる!!」

 

 怒り、悲しみ、憎しみ、今カイトを突き動かすのはそれから来る絶望から湧き出た復讐心のみ

 

(・・・・・・そうか、“そこ”が違うんだ。)


 遊戯王ZEXALにおいて『天城 カイト』という“キャラクター”は自分を顧みない強さがあった。

 だが、それは自分がどうなっても「弟を救う」という希望を持つ“守るもの”としての強さだった。

 

「だが、アレンやサヤカ達を放っておいていいのか!?」

 

「あいつらとはもはや袂を分かった!!」

 

 だが、目の前の“人物”は復讐に駆られた“壊すもの”だ。それは奴自身も他ならない。

 

「エンド宣言がまだだな。」

 

「ターンエンドだ!

 エクシーズ・ダブル・バックで特殊召喚されたモンスターは破壊されるが、墓地の復活の福音を除外することでドラゴン族モンスターの破壊は免れる!」

 

「じゃあ!俺のターンだ!!」

 

「待て!榊!この戦いに何の意味がある!!」

 

「黒咲・・・これはあいつにとって俺を見極めるための戦いだ。

 そして俺にも戦う理由はある、いや出来た!」

 

 カイトの根幹は家族への思い。

 だが今の彼を動かしているのは、それを失ってしまったことによる絶望と復讐心だけ

 

「俺はあいつをここで正さなければならない。

 怒りや憎しみでデュエルをされちゃノリ切れないからな。ドロー!」

 

「ノリだと?そんなふざけたことで俺の思いを否定するのか!!」

 

「いいや?復讐したいなら気が済むまですればいい。八つ当たりならいくらでも付き合ってやろう。

 だが、復讐で終わろうとするお前だけは否定させてもらう。」

 

「俺が・・・終わろうとしている、だと?

 馬鹿にするな!俺は終わらない!!アカデミアを根絶やしにするまで!!」

 

「根絶やしにして、その後はどうする気だ?」

 

「何?」

 

 カイトは何を言っているんだと俺に聞き返す。それが復讐者の限界だ。

 

「根絶やしにして、カード化した人は取り戻さないのか?」

 

「それは!!っ・・・・・・」

 

「考えにもなかったか?そうだろうな、お前は諦めているんだから。」

 

「っ!?俺は・・・」

 

「諦めていないとでも言うつもりか?

 ならなぜ黒咲やユートのようにすぐ行動しなかった?

 いや、なぜアカデミア遠征軍総司令官を放っておいて、俺のところに来た?」

 

 カイトは俺とエドのデュエルを見ていて、聞こえる位置にいたのならエドが何者なのかも聞いているはず

 シバキ倒すなり、人質にするなりできたはずなのにな。

 

「絶望の闇に捕らわれ、復讐心を燃料に自分が壊れるまで暴走する。それが今のお前だ。」

 

「っ・・・」

 

「・・・お前に一つ希望をやろう。カード化は元に戻せる。」

 

「!!?嘘を付くな!!俺を謀るつもりか!!」

 

 動揺はしているようだが、縋ろうとはしないか・・・

 

「悪魔に魂は売らないってか?

 なら『憎しみの果てに、真の勝利はない。』と証明してやる!言葉ではなく決闘(デュエル)でな!!

 天空の虹彩、効果発動!降竜の魔術師を破壊し、デッキからオッドアイズ・ミラージュ・ドラゴンを手札へ加え、スケール8のこのカードをペンデュラムスケールとしてセッティング!

 

 これでスケールは4と8!揺れろペンデュラム!異界へ繋がる扉を開け!!

 ペンデュラム召喚!!来い、俺のモンスターたち!!」

 

レイジング・ドラゴン「グオオォォォォォ!!」

          ATK3000

 

相克の魔術師「ふんっ!」

      ATK2500

 

降竜の魔術師「ハッ!!」

      ATK2400

 

 流星に乗って現れるのはエクストラから相克の魔術師、レベル7としてペンデュラム召喚可能なレイジング・ドラゴン、降竜の魔術師

 

オッドアイズP「ギャオオオオォォォォォォォォ!!」

 

 そして、手札からオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン

 勝利の方程式までもう一歩・・・

 

「まずはレベル7のオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンと相克の魔術師でオーバーレイ!

 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!

 六道八獄踏み越えて、絶対なる力、未来を護る巨壁となれ!

 エクシーズ召喚!!全てを凍てつかせる永久の竜、オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン!!」

 

オッドアイズA「ガオオオォォォォォォ!!」

       ATK2800

 

「さらにチューナーモンスター、EM(エンタメイト)オッドアイズ・シンクロンを召喚!

 その効果で墓地のレベル3以下のEM(エンタメイト)モンスターを効果を無効にして特殊召喚する。来い!EM(エンタメイト)クリボーダー!」

 

オッドアイズ・シンクロン「ハッ!」

         ATK200

 

クリボーダー「クリクリボー!」

      DEF200

 

「そして、レベル1のクリボーダーにレベル2のオッドアイズ・シンクロンをチューニング!

 シンクロ召喚!霞鳥クラウソラス!!」

 

霞鳥クラウソラス「ケェェー!!」

        DEF2300

 

「クラウソラスの効果発動!

 1ターンに1度、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体をターン終了時まで効果を無効化し、攻撃力を0にする!」

 

「俺に同じ手が通用すると思うな!!

 墓地のスキル・プリズナーを除外し、対象になったサイファー・ブレード・ドラゴンを守る!!」

 

 防がれるよな。だが、これで奴の手札、フィールド、墓地の全てからこちらを妨害するカードはなくなった!

 

「まだだ!!俺はシンクロモンスター、霞鳥クラウソラスにペンデュラム召喚したペンデュラムモンスター、降竜の魔術師をチューナー扱いでチューニング!!」

 

「何ッ!?」

 

「時空を超えて受け継ぎ、至れ!シンクロ召喚!!

 目覚めよ!涅槃の超魔導剣士(ニルヴァーナ・ハイ・パラディン)!!」

 

涅槃の超魔導剣士(ニルヴァーナ・ハイ・パラディン)「フンッ!はっ!!」

          ATK3300

 

 竜を封じ竜の力を宿す魔術師と極彩の鳥がこの決闘に終止符を打つ蒼き超魔導剣士を呼び出す。

 後はアレを呼びこむだけ・・・

 

――ドッ!ドッ!ドッ!ドッ!・・・・

 

涅槃の超魔導剣士(ニルヴァーナ・ハイ・パラディン)の効果で墓地のペンデュラム・ホルトを手札に加えはつど!!?」

 

――ヒュ~・・・・・ドドオオオオォォォォォォォォォォン!!


 「デュエルで笑顔を」俺がデュエルを教わった最後の師はよくその言葉を口にした。

 笑顔が増えれば幸せも増える。それならデュエルを通して人を幸せにできる。

 彼はそう言っていた。

 

 だが、そのデュエルがアカデミアによって、人から笑顔を奪うものに変わった。

 永遠のように続く地獄のような日々の中で、兄と慕っていた人がカードになった。次にその弟たち、その父親も

 

 その不幸は俺たちにも襲ってきた。

 父さんは俺と弟を逃がすために奴らに挑み敗れ、守れと託された弟もカードとなった・・・

 

 許せなかった。俺たちが何をした?

 次元統一?理想郷のため?正義の行い?そんなこと俺たちに何の関係がある!

 彼はデュエルで人を傷つけることはやめろと言うだろう。今の俺を見たら悲しむだろう。

 だが、俺はそれでもアカデミアを赦せない!!

 

『や・・・やったか?やってしまった、のか?』

 

『つ、ついに悪魔を、榊 遊矢をっ!!?』

 

――ピキピキピキピキピキッ!

 

レイジング・ドラゴン「ギャオオオオオオオオオオォォォオオオオオォォォォ!!

 

――バキイィィィィン!!

 

――うわあああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?

 赤き魔竜の咆哮によって、俺たちを取り囲んでいた砲弾入りの氷の壁が粉々にはじけ飛び、アカデミアの連中が慌てふためく

 

『なるほど・・・今度はそういう手で来るか・・・』

 

 それを起こしたのは今まで俺とデュエルをしていた、先生の息子と名乗り、アカデミアからは悪魔と恐れられる男

 奴はその血のような真紅の目で、アカデミアを睥睨する。

 

『最低でもデュエルをするなら、ルール違反の連帯責任程度で許してやろうと思ったのに・・・』

 

「うっ!?撃てええぇぇぇぇぇぇ!!」

 

――ジャキンッ!ガアアァァァン!!

 

 奴らのモンスターがその銃口を再びこちらへ向けようとするが、それは突然現れた無数の剣に阻まれた。奴が最後に召喚したあの魔導剣士と同じ大剣に

 そしてその剣はひとりでに動いて奴らのモンスターを鉄くずに変えると、そのまま奴らへ向かい、地に縫い付ける。

 

「ぎゃあああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「痛い痛い痛い痛いいたいたいたいたいイタイイタイイタイイタイ!!」

 

「た、助けて!!」

 

『冗談言うなよ。デュエルの邪魔どころか、殺しに来ておいて

 そっちがそんな態度を取るなら、俺も全力で抵抗するに決まっているだろ?

 さてここからはちょっとした科学の時間だ。』

 

――ビキビキビキビキッ!

 

――ゴオオオオオオオォォォォォォォォ!!

 

 散らばった絶対零度の氷が地に氷の華を咲かせ、燃える空にもう一つの太陽が浮かぶ

 

『氷は水の結晶で、水は酸素と水素、とっても燃えやすいものでできている。

 その分離方法は電気を使って分離するか、もしくは分子結合が崩壊するほどの熱を加える等・・・』

 

レイジング・ドラゴン「ギャオオオオォォォォォォォ!!」

 

 烈火の魔竜は太陽の熱をどんどん上げてゆく、氷の花園はさらに広がってゆく

 奴の言葉を理解した連中は必死になって絶叫する。

 だがその命乞いも、許しも聞かず、奴はただ無表情に、因果応報の鉄槌を下だした。

 

――ぎゃあああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 膨大な熱が肌を焼き、爆音が耳を劈く、そんな“映像”を体験した奴らは一人残らずその恐怖で失神した。

 

「馬鹿だなぁ~本当にそんなことしたら、このあたり一帯が消し飛んでしまうじゃないか。

 んっ?時間切れか・・・・はぁ~、って、居ない。」

 

 復讐をやめろと言わず、八つ当たりには付き合うと言い。だが今の俺を否定した。

 

 アカデミアの暴虐に暴虐で答え、殺意に恐怖で返す。

 

 先生の息子『榊 遊矢』

 

「奴は一体、何なんだ・・・」




いきなり耳栓を渡されたと思えば、なんだこれは・・・

アンティーク・ギアを破壊した後からただのソリッドビジョンだよ。
突き刺さったのに血とか出てなかったろ?

とてもそうは見えなかったが・・・・

それはさておき、向こうがなりふり構わないのなら、こっちだって徹底的に潰さなきゃな。そうだな作戦名は・・・
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『オペレーションV』
うん。これでいこう。


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力なき正義の代償 オペレーションV

最近暑くなってきましたね。
気分転換と描写保管を兼ねて絵を描いてみました。ラフ画に色鉛筆で色を塗っただけの下手な絵ですが晒しておきます。

やっぱりカイトだけではZEXAL感を出すのが難しい(キャラ数の問題でGX感が強くなってしまう)ので、あるキャラを追加登場させました。まさかまたカタカナ変換を使うことになるとは・・・


――コンッ・・・コンッ・・・コンッ・・・

 

 はぁ~全く、悪いことじゃないとはいえ、なんでハートタワーを調べに出かけるだけでエドやらカイトにエンカウントするのやら。

 それにアカデミアがあそこまで直接的な武力行使に走るとは・・・

 

――コンッ・・・コンッ・・・コンッ・・・

 

 既に意外と追い詰められている?

 いや、副指令ってあの野呂だろうから手柄のためにエドの敗北を利用したか。カイトも手配されていたはずだし・・・

 

――コンッ・・・コンッ・・・コンッ・・・

 

「なぁ、黒咲、そっちはどうだ?」

 

「端末はすべて死んでいる。埃も被っているから誰かが最近触れた形跡もない。

 本当にここに人がいるのか?」

 

「だと思うんだけどなぁ~?あそこに電気が行っているのも・・・」

 

 ――コオォォンッ・・・・

 

「おっ?」

 

 壁から返ってくる僅かな反響音、その周囲を調べてみると壁の凸凹や模様に紛れるように両開きの扉があった。

 黒咲と共にその扉をこじ開けると現れたのは下に長く続く空間とロープワイヤー

 

「隠しエレベーターか・・・ベタだねぇ~、っと!」

 

「おっ、おい!?」

 

 ワイヤーを伝いカゴがある場所まで降りる。

 カゴに潜入しその扉を開けると、そこには大量の計器と記憶に懐かしい、一台の白いロボットが這いずったような形で転がっていた。

 

「オービタル!?」

 

 『オービタル7』カイトの作ったAIロボット、多機能に変形するマルチロボで遊戯王ZEXALにおいてはカイトの相棒として活躍していた。

 この世界でも作られていたんだな・・・

 

「オービタル・・・こんなにボロボロになってまで・・・」

 

 頭部は半分欠け、片腕、両足はもぎ取られ、別世界であるとはいえ彼を知る己としてはその破損が天城一家を守ってのことだろうと悟った。

 その考えが間違いではないことは、普段は見せない悲しみの顔をしている黒咲を見れば瞭然だ。

 

【ヌワアアァァァァァ!!?侵入者デアリマズ!侵入者デアリマス!?】

 

「「あ?」」

 

 なのに湿っぽい雰囲気を吹き飛ばすハイテンションな機械音声が響き渡った。

 

【グヌヌ、コレデオイラモ年貢ノ納メ時・・・カクナル上ハ、オ前達モ道連レデアリマスッ!!】

 

「オ、オービタルか!?俺だ、黒咲 隼だ!!わかるか!!」

 

【ウェッ?ヤヤッ!?本当デアリマス!!カイト様ノオ友達デアリマス!!

 無事ダッタンデアリマスナー!!ン?ソチラノ方ハ?】

 

「あぁ、奴は榊 遊矢、俺たちの協力者だ。」

 

「お初、俺は榊 遊矢、しがないデュエリストだ。

 俺が何者かについては、そのカイト様が師事を受けていた榊 遊勝の子供である。と言った方が分かりやすいか?」

 

【ナント!?アノ遊勝氏ノオ子サンデアリマスカ!?

 コノオービタル7、ソノ事実ニ驚愕デアリマス。】

 

「まぁ、あの親父は子供がいるようには見えないだろうが・・・

 そのことは置いといて、街に水とか供給してくれているのは君ということでいいのかな?」

 

【ム、ソウデアリマス。

 アカデミアノ襲撃ノ際、コノ身ヲ張ッテカイト様達ヲオ守リシタモノノ、ソノ後フェイカー様ヤハルト様ガ・・・

 ソレガ悔ヤンデモ悔ヤミキレズ、壊レタ躯体ヲ引キズリココマデヤッテ来テ、コノ管制コンピューターニオイラヲ移シ、少シデモカイト様ヲサポートシヨウト・・・】

 

 ロボットとは思えない根性だ。

 

「外とは連絡取れなかったのか?」

 

【コノ管制コンピューターハロボットノ制御用デアリマス。

 別ノネットワークトハ繋ガッテナイノデアリマス。】

 

「?じゃあ、なんで外の様子は知れたんだ?」

 

【マダ生キテイル監視カメラガアルノデアリマス。

 表面上ハアカデミアノ管理下ニアリマスガ、大本ノネットワークハオイラガ掌握シテイルノデアリマス!

 隠レテイル街ノ人タチモ、見ツカラナイヨウニ細工シテイルノデアリマス!】

 

 なるほど、アカデミアの監視カメラは元からこの街にあったものを流用していたのか・・・俺壊してたんだけど

 それにオービタルが細工をしているから人間狩りの役にはほとんど立ってないと・・・ん?

 

「なら、今お前はアカデミアに常にハッキングしている状態なのか?」

 

【失礼ナ!ハッキングシテイルノハ向コウデアリマス!

 モットモ、オイラノ手ニカカレバ、バレナイヨウニ細工スルコトナド、オ茶ノ子サイサイナノデアリマス!

 見ツカッタ住民ハドウシヨウモナカッタデアリマスガ・・・】

 

「そうか、オービタル、お前が街の人たちを守ってくれていたんだな・・・

 カイトがお前のことを知ったら喜ぶことだろう・・・」

 

【イエ・・・カイト様ニハ顔向ケデキナイデアリマス・・・

 ハルト様タチを護レズ、カイト様ガ悲シンデイル時ニ、何モデキナイオイラナンカ・・・】

 

「じゃあ、何かしてみる気はないか?」

 

【ハァ?何ヲデアリマスカ?】

 

「なぁに、少し聞きたいことと、やってもらいたいことがあるだけさ。」

 

【ナヌ?】

 

「ここで歯がゆい思いをしながら過ごすのも飽きただろう?

 だったら、俺たちとひと暴れしようじゃないかって話、さぁ、お返事は?」

 

【カ、カシコマリッ?】

 

「・・・お前、何を考えている?」

 

「もちろん、アカデミアを潰すよからぬこと・・・

 そうだな、『A計画(アークエリア・プロジェクト)』の反対と言うことで作戦名は『作戦V(オペレーションブイ)』とでもしておこうか。」


『消えろ、雑魚が。』

ガトリングール『はははhxふあxはhひh!!』――ドルルルルルルルルルルルッ!

 

「うわあああぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 脳裏に焼き付く遊勝の息子の言葉、そして放たれる連続した銃撃音

 それにより僕は絶叫と共に目を覚ます。

 

「きゃ!?し、司令官さんっ!?目が覚めたんですねっ!」

 

「ハッ・・・はぁ、はぁ・・・・み、宮田君・・・」

 

「あっ・・・あの、大丈夫ですか・・・?」

 

「あぁ・・・大丈夫だ。

 宮田君、現状を教えてくれ、僕は酷く混乱している・・・」

 

「は、はいっ。

 司令官さんは気を失った状態で見つかって、かたき討ちだーって、副指令が悪魔さんに・・・」

 

「また部隊を差し向けたのか!?」

 

「はい、それに・・・手段は問わないって・・・」

 

「何だって!?」

 

 くっ!?野呂の奴め勝手な真似を!

 

「野呂は指令室だな。すぐに向かう。」

 

「だ、ダメですよっ!?まだ安静にしてないと」

 

「大丈夫だと言っているだろう!」

 

「あうぅ・・・すい、ません・・・・」

 

 あっ・・・くっ、何をしているんだ僕は、彼女は心配してくれたというのに・・・

 

「すまない。怒鳴ったりなんかして・・・

 だが、あいつは、榊 遊矢は尋常ならざる力を持ったデュエリスト、部隊を無策で突っ込ませるわけにはいかない!分かってくれ。」

 

 マントを羽織り医務室を出る。確かに体に鈍い痛みが残っているが気にしてなんかいられない。

 “アレ”は僕たちの想像を超えた化け物だ。

 神聖な融合を汚し、人を人と思わない。絶対なる“悪”だ

 

――全滅だとおおぉぉぉぉぉぉ!?

 

 !!?

 外にまで響き渡る野呂の絶叫、僕は急いで指令室に駆けこんだ。

 

「ぐううぅぅ・・・・なぜ君たちも行かなかったのかね!!」

 

「だから!貴方の命令に正当性を感じられないと言っているのです!!」

 

 指令室に駆け込んだ僕の目に入ってきたのは、野呂と眼鏡の少女、原君が言い争っている光景だった。

 

「何の騒ぎだ、これは!!」

 

「エ、エド!?指令・・・・」

 

「エド総司令官!お目覚めになられたのですね・・・」

 

「あぁ、さて、野呂、説明してもらおうか?

 何故、彼女達、戦闘部隊員と言い争いをしているのかを。」

 

「うっ・・・それは、その・・・」

 

 野呂は目を泳がしてこちらを見ようともしない。

 奴が言い訳を考えているうちに、原君が事のあらましを説明してくれる。

 

「僭越ながらご説明します。

 総司令官が発見され運び込まれた後、野呂副指令が榊 遊矢討伐のため全部隊でもって総攻撃を掛けよと、『遠距離から砲撃を叩き込めば討伐できる!』と申されたのです!!」

 

 !!?

 

「野呂!それはつまり・・・彼女たちに“殺し”を強要したということか!!」

 

「うぅ・・・だ、だってしょうがないではありませんか・・・

 我々の中で一番強いあなたが、奴に、勝てなかったのですから・・・」

 

「っ!!?」

 

≪消えろ、雑魚が。≫

 

 フラッシュバックする奴の言葉

 

「教えてください、総司令官!

 私たちがやっていることは本当に“正しいこと”なのですか!?」

 

 僕が弱かったから何もかも壊れていく。

 

「こ!?こら何を言って!?」

 

「誰かを悲しませることも、誰かの命がなくなることも、誰かを殺すことも、その先にある理想郷は本当に明るいものなのですか!?」

 

「そうだそうだ!委員長の言うとおりだ!」

 

「私・・・殺しなんてしたくないんです!指令!!」

 

 多くの仲間が失われたのも、野呂が凶行に走ったのも、彼女たちに余計な罪を背負わせたのも、全ては僕の・・・


「もう、か弱い女の子をこんな時間に外に放りだすなんて、酷い男ねぇ。」

 

「ゆ、雪乃さん・・・」

 

「司令官に面と向かって、言ったの恰好よかったよ。委員長~」

 

「いえ、私としたことが熱くなり過ぎました・・・」

 

 あの問答の後、彼女たちのアカデミアへの反抗意思ともとれる発言は不問にされたが、日が完全に落ちきるまで遊矢を探すことを命じられた。

 

「確かに、争いのない世界は理想だと思います。ですが・・・」

 

 彼女は立ち止まり荒廃したハートランドを改めて目に焼き付ける。

 これが彼女の、彼女たちの罪の証

 

「この争いの果ての理想郷など・・・」

 

「えぇ、本当につまらない・・・」

 

「こっちが夢だったらよかったのに・・・」

 

「皆さん・・・」

 

 夕焼けに彩られた街はとても幻想的で、現実離れしていた。

 そうだったらよかったのにと彼女たちに思い起こさせるほどには

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『つまらないんだったら、俺と少し遊ばないか?』

 

「「「「!!?」」」」

 

 振り返れば沈もうとする太陽を背に幻想の世界の水先案内人は佇んでいた。

 

『さぁ、愉しい楽しいショーを始めようか!』

 

 彼女たちにもう逃げる術はない。舞台の幕は上がってしまったのだから


≪でも楽しかっただろ?≫

 

 奴に、榊 遊勝に言われたことが頭によぎる。

 違う!デュエルに楽しさなど不要、デュエルはただ敵を屠る力なのだから、それがアカデミアの“正しさ”なのだから

 

≪消えろ、雑魚が。≫

 

 だから、僕は勝って証明しなくてはならない。その強さと正義を!

 アカデミアは常に正しい。プロフェッサーの教えは絶対。

 そうでなければ、今日まで流した血は一体何だったのか、無意味なものになってしまう・・・

 

【た!助けて下さああぁぁぁい!!】

 

「!!?どうした!?何があった!?」

 

「H39地区において第6班より緊急入電!」

 

「詳細不明!映像出ません!!」

 

 榊 遊矢が現れるとき監視カメラは使えなくなっていた。これは奴の仕業か!?

 

「僕が向かう!オペレーターは第6班がいるであろう場所までのナビゲートをしろ!」

 

 野呂が制止しようとするが僕はそれを無視して飛び出す。

 今度は勝つ、勝たなければならない。榊 遊矢に、榊 遊勝の息子に!!

 

――ドオオォォン!!ドオオォォン!!ドオオォォン!!

 

 複数の爆発音、そして倒壊する建造物、その粉塵から逃げてくる茶髪の少女

 

「きゃああああああああぁぁぁあああああああ!!」

 

「ッ!!宮田君っ!!」

 

「し、司令官さん!!あうぅぅ・・・」

 

「宮田君!一体何があった!?」

 

「ううぅ・・・司令官さん!みんなが!みんなが!!」

 

『あちゃ~逃げられちゃったか。』

 

「「!!」」

 

 粉塵が晴れ現れたのは榊 遊矢ではなかった。

 頭には4つに分かれた頭巾をし、上着はまるで軍服のように見える。

 首には奇妙な模様の入ったマフラー、太い縦縞模様が入った膨らんだズボンにつま先が曲がった靴

 その全身の色は白と黒だが、顔にした奇妙な仮面だけは青い装飾がされ鼻だけが赤い。

 その怪人を一言で表すのなら“道化師”だった。

【挿絵表示】

 

 

「何者だ!?」

 

『これはこれはお初、新たなるお客さん。

 俺は『クラウン・ジョーカー』見ての通り、怪しぃ~い道化師だ。』

 

 声も身長も違う。奴じゃないのか?

 

「ひぃ!!」

 

 宮田君は奴に酷く怯えている。

 第6班は彼女や原君を含め4人だったはず・・・

 

「彼女たちに何をした!!」

 

『ん~?あぁ、退屈そうにしてたんでね。ちょい~っと一緒に遊んだだけさ。』

 

 ひらひらと3枚のカードが奴の手元で仰がれている。つまりはそういうことだ。

 

「遊びだと!?ふざけた真似を!!」

 

 僕は激昂してデュエルディスクを起動させる。

 

『フハハ、いいねいいね。

 新たなる挑戦者の登場だ。これはポイントが高いねぇ!』

 

『『決闘(デュエル)!!』』

 

「先攻は僕が行く!

 僕はD-HERO(デステニーヒーロー)ドリルガイを召喚!」

 

ドリルガイ「ハッ!」

     ATK1600

 

「ドリルガイのエフェクト発動

 ドリルガイが召喚、特殊召喚されたとき、手札のドリルガイの攻撃力以下の攻撃力を持つD-HERO(デステニーヒーロー)を1体特殊召喚できる。」

 

『その効果に対し、手札の増殖するGを捨てその効果を発動する。

 このターン、相手が特殊召喚を行うたびに俺はデッキから1枚ドローする。』

 

「くっ!カモン!ドローガイ!」

 

ドローガイ「フンッ!」

     ATK1600

 

 運命を穿つ英雄に並び立つ、運命を打ち抜く英雄

 だが、その登場に合わせ黒い道化の元に闇が蠢く

 

『特殊召喚により1枚ドロー。』

 

「ドローガイのエフェクト、このカードがHEROモンスターの効果により特殊召喚されたことにより、お互いに1枚ドローする。」

 

『おやおや、親切なお方だ。』

 

 くっ、確かにセオリーから言えばよくないことだが、リスク以上のメリットは得られた。

 

「カードを2枚伏せ、ターンエンドだ。」

 

『なんだよ。それだけで終わりか?腰抜けめ。

 俺のターン、ドロー。』

 

「減らず口もいい加減にしろ!トラップ発動!D-フュージョン!!

 このカードのエフェクトは僕のフィールドのD-HERO(デステニーヒーロー)を使い融合召喚を行う!

 運命の岩盤を穿つ英雄よ、運命を打ち抜く英雄よ。今一つとなりて暗黒の未来に君臨せよ!融合召喚!!

 カモン!D-HERO(デステニーヒーロー)ディストピアガイ!!」

 

ディストピアガイ「ハアアアァァァ!!」

        ATK2800

 

 マスクに描かれた『D』の文字が輝く、運命の英雄の力を合わせた暗黒の世界の英雄が降臨した。

 そして、その手から審判の光が放たれる。

 

「ディストピアガイの特殊召喚に成功したとき、墓地のレベル4以下のD-HERO(デステニーヒーロー)モンスター1体の攻撃力と同じ数値のダメージを相手に与える。

 ドリルガイの攻撃力1600ポイントのダメージを受けろ!スクイズ・パーム!!」

 

『んうぅ・・・ふふ、やってくれるじゃないか。

 だったらこちらも最大限に持てなそう。EM(エンタメイト)ドクロバット・ジョーカーを召喚!』

 LP4000→2400

 

ドクロバット・ジョーカー「ははっ!」

            ATK1800

 

EM(エンタメイト)!!それにペンデュラムモンスター!やっぱり、お前は!!」

 

『さぁて、俺は誰でしょね?仮面の下を覗こうとするなんて野暮だよ。

 ドクロバット・ジョーカーの効果でデッキからEM(エンタメイト)モンスター、トランプ・ウィッチを手札に加え、スケール4のこのカードをペンデュラムゾーンにセッティング。』

 

 光の柱に浮かぶ、トランプのスートの飾りがされたドレスを纏った少女

 神聖な融合を汚す外道め!

 

「僕はそれに対しトラップカード、アームズ・コールを発動!

 デッキから装備魔法を1枚手札に加え、その後、そのカードを装備可能な自分フィールド上のモンスターに装備できる。

 僕は装備魔法、ドーピングを手札に加え、ディストピアガイに装備!攻撃力を700ポイントアップさせる。」

 

 ディストピアガイ ATK2800→3500

 

「さらにディストピアガイのエフェクト発動!

 攻撃力の変化しているこのカードの攻撃力を元に戻し、フィールド上のカード1枚を破壊する!

 消えろ!トランプ・ウィッチ!ノーブルジャスティス!!」

 

ディストピア「デュア!!」

      ATK3500→2800

 

 ディストピアガイの手に現れた暗黒空間にトランプ・ウィッチが吸い込まれる。

 

『あぁ~あ、折角のかわいこちゃんが・・・ひどいなぁ~

 なぁんて、手札を1枚捨てマジックカード、ペンデュラム・コールを発動

 デッキから名称の異なる魔術師ペンデュラムモンスターを2体手札に加える。

 俺は調弦の魔術師と竜脈の魔術師を手札に加える。

 このカードの発動後、次の相手ターン終了時までペンデュラムゾーンの魔術師カードは効果で破壊されなくなる。

 

 さらにマジックカード、グリモの魔導書を発動

 1ターンに1度、デッキから魔導書と名の付くカードを1枚手札に加える。

 セフェルの魔導書を加え、自分フィールド上に魔法使い族モンスターがいて、手札のアルマの魔導書を公開することで、セフェルの魔導書を発動

 墓地のグリモの魔導書を除外し、その効果を得る。

 この効果で新たにルドラの魔導書を手札に加え、手札のアルマの魔導書を墓地へ送り、これを発動

 デッキから2枚のカードをドローする。

 

 新たにスケール1の竜脈の魔術師とスケール5のEM(エンタメイト)チェーンジラフをペンデュラムゾーンにセッティング。」

 

 新たに現れた光の柱に浮かぶのは年若い青年の魔法使いと首に奇妙な輪を巻いたキリン

 くっ、来るか!?

 

「これで2から4までのモンスターが同時召喚可能となった。

 ペンデュラム召喚!来い!調弦の魔術師!」

 

調弦の魔術師「はいっ!」

      DEF0

 

 天から降る流星と共に現れたのは近未来的なローブに身を包んだ音叉の杖を持つ魔術師

 攻守0のモンスター1体だけだと?

 

「調弦の魔術師の効果発動

 手札からこのカードをペンデュラム召喚したことでデッキから調弦の魔術師以外の魔術師ペンデュラムモンスターを守備表示で特殊召喚する。

 慧眼の魔術師を特殊召喚。」

 

慧眼の魔術師「ふん。」

      DEF1500

 

「さらにレベル4の魔術師ペンデュラムモンスター、調弦の魔術師と慧眼の魔術師でオーバーレイネットワークを構築

 星よ廻れ、時を刻め、エクシーズ召喚、現れろ、星刻の魔術師!」

 

星刻の魔術師「ふん!」

      ATK2400 ORU2

 

 混沌の光から夜空のようなマントを翻す魔術師が姿を現す。

 エクシーズモンスター・・・だが、攻撃力はまだディストピアガイの方が上

 それにこのターン、D―フュージョンで呼び出したモンスターは戦闘でも効果でも破壊されない。何をするつもりだ?

 

「星刻の魔術師の効果発動、オーバーレイユニットを1つ使いデッキから闇属性、魔法使い族モンスター1体を手札に加える。

 調律の魔術師を手札に加える。

 

 さらにマジックカード、奇跡のマジックゲートを発動

 このカードは自分フィールドに魔法使い族モンスターが2体以上存在するとき、相手フィールド上のモンスター1体を守備表示にして、そのコントロールを得る!」

 

「何っ!?」

 

 ディストピアガイが突如として現れた扉に取り込まれると、奴のフィールドに守備の体勢で現れる。

 

 ディストピアガイ ATK2800→DEF2400

 

『Welcome!ディストピアガイ!!』

 

「あうっ!?司令官さんのモンスターが盗られちゃいましたっ!?」

 

「くううぅっ!また僕のヒーローを!!」

 

『ハハッ効果のタイミングは慎重になるべきだったなぁ?

 これでお前はがら空き、俺の残りのモンスターでThe end!

 バトルフェイズ!行け!ドクロバット・ジョーカー、星刻の魔術師!ダイレクトアタック!」

 

「あうううぅうっ!!司令官さん!?」

 

「大丈夫だ・・・運命はまだ決してはいない!

 トラップ発動!D―フォーチュン!

 相手のダイレクトアタック宣言時、僕のセメタリーのD-HERO(デステニーヒーロー)1体を除外することでバトルフェイズを終了させる!

 頼むぞ!ドリルガイ!!」

 

ドリルガイ「ハアアァァァッ!グウゥゥ・・・・オアアァァ!!」

 

 2体の攻撃からドリルガイが僕たちを守り散っていく

 

『ハハッ、そうだそうだヒーローはそうでなくっちゃ。

 頑張ったご褒美にちょっとしたプレゼントをあげよう。

 マジックカード、成金ゴブリンを発動、相手はライフを1000ポイント回復し自分は1枚ドローする。

 さらにもう一枚、成金ゴブリンを発動、さらにマジックカード、一時休戦を発動してお互いは1枚ドローし、次の相手ターン終了時までお互いにダメージを与えられなくなる。』

 

「ライフ2000とドローまでさせてくれるなんて・・・」

 

「僕を馬鹿にしているのか!」

 LP4000→5000→6000

 

『ふふん、どう受け取るかはご自由に・・・ターンエンドだ。』

 

「僕のターン!ドロー!!

 このスタンバイフェイズ、セメタリーに眠るD-HERO(デステニーヒーロー)ドローガイのエフェクトが発動する!

 このカードがセメタリーに置かれた次のターンのスタンバイフェイズにドローガイは復活する。

 甦れ!ドローガイ!」

 

ドローガイ「はっ!」

     ATK1600

 

「ドローガイの効果、互いに1枚ドローする!」

 

『おや?またカードをくれるのかい?嬉しいねぇ~

 で、ドーピングの効果も発動して、ディストピアガイの攻撃力は200下がるっと。

 あぁ言い忘れていた。奇跡のマジック・ゲートの効果でディストピアガイは戦闘で破壊されなくなっている。

 不屈のヒーローってわけだ。頼もしいね。』

 

 ディストピアガイ DEF2400

          ATK2800→2600

 

 これでディストピアガイのエフェクトが使用可能になってしまった。

 くっ!戦闘で破壊されず、僕のターン毎にカードを破壊する能力を得る・・・

 せめてエフェクトをどうにかしないと・・・

 

「僕は手札のD-HERO(デステニーヒーロー)ドレッドガイを捨て、マジックカード、デステニー・ドローを発動!

 デッキから新たに2枚のカードをドローする。」

 

 ・・・よし、この手札なら!

 

「僕は速攻魔法、禁じられた聖杯を発動!

 エンドフェイズまでフィールド上のモンスター1体の効果を無効にし、攻撃力を400ポイントアップさせる!

 僕はディストピアガイを選択!」

 

『それにチェーンして、ディストピアガイの効果発動

 ドローガイを破壊する。ノーブルジャスティス。』

 

 ディストピアガイ DEF2400

          ATK2600→2800→3200

 

 ディストピアガイがドローガイを暗黒の世界へ追放する。

 自身の効果で特殊召喚されたドローガイは除外されてしまうが、これでディストピアガイの効果はなくなった!

 

「これで僕を阻むものはない!

 僕はフィールド魔法、ダーク・シティを発動!

 さらにD-HERO(デステニーヒーロー)ディバインガイを召喚し装備魔法、旋風剣(サイクロンブレード)を装備!」

 

 廃墟の街が月の光が照らす黒い街に変わる。

 そこに現れるのは巨大な刃を背負う英雄、その手にはさらに巨大な3枚の刃

 

ディバインガイ「フンッ!」――ジャキンッ!

       ATK1800

 

「バトルだ!ディバインガイ!!星刻の魔術師を攻撃!

 そして、この攻撃宣言時にディバインガイのエフェクトが発動!

 ディバインガイは相手フィールドの表側表示のマジックカード1枚を破壊し、相手に500ポイントのダメージを与える!

 僕はマジック扱いのEM(エンタメイト)チェーンジラフを破壊!」

 

『星刻の魔術師の効果発動

 1ターンに1度、自分モンスターゾーン及びペンデュラムゾーンのペンデュラムモンスターカードが破壊される場合、代わりにデッキから魔法使い族モンスターを墓地に送ることができる。

 クリア・エフェクターを墓地に送る。

 そしてこのターン、一時休戦の効果で俺へのダメージはない。』

 

「だが星刻の魔術師自身の破壊は免れない!

 そして旋風剣(サイクロンブレード)を装備したモンスターが戦闘を行ったダメージステップ終了時、フィールド上のマジック、トラップカード1枚を破壊することができる!

 僕は僕のフィールドのドーピングを破壊する!」

 

 星刻の魔術師が切り裂かれ、戻ってきたディバインガイがディストピアガイの効果の起点となっているドーピングを破壊してくれる。

 

「やったー!これでジョーカーさんはディストピアガイの効果を使えませんっ。」

 

『ふふ、でもすべてが上手く行くわけじゃない。

 EM(エンタメイト)チェーンジラフのペンデュラム効果

 自分のモンスター1体が戦闘で破壊されたとき、このカードを破壊し、その戦闘で破壊されたモンスターを攻撃表示で特殊召喚する。』

 

星刻の魔術師「ふん。」

      ATK2400

 

 チェーンジラフの首の輪が伸びて墓地から星刻の魔術師を引っ張り上げてくる。

 だが、デッキから魔法使い族を手札に加える効果はこれで使えない。

 

「カードを1枚セットし、ターンエンド!」

 

 セメタリーに幽閉されし英雄よ。僕たちを守ってくれ・・・

 

『ふふ、面白くなってきたじゃないか。ドロー

 ほう~マジックカード、救魔の標を発動

 1ターンに1度、自分の墓地の魔法使い族効果モンスター1体を手札に加える。

 慧眼の魔術師を手札に加え、スケール5のこのカードをペンデュラムゾーンにセッティング。』

 

 新たな光の柱に浮かぶのは目を隠した魔法使い。

 これで前のターンと同じように2から4のモンスターが同時召喚可能となったか・・・

 

『慧眼の魔術師のペンデュラム効果発動

 このカードを破壊し、デッキから別の魔術師ペンデュラムモンスターをペンデュラムゾーンに置く。』

 

 くっ!さらにスケールを上げる気か!?

 

『その効果に対して、星刻の魔術師の効果を発動。』

 

「なっ!?」「えっ!?」

 

『デッキから闇・道化師のぺーテンを墓地へ送り、破壊を無効にする。

 これにより慧眼の魔術師の効果は不発になるが、代わりに墓地へ送られたぺーテンの効果が発動する。

 このカードが墓地へ送られたとき、墓地からこのカードを除外し、手札、デッキから新たな闇・道化師のぺーテンを特殊召喚する。』

 

ぺーテン「ウケケッ!」

    DEF1200

 

 現れたのは奴と同じように不気味な仮面をした道化師

 帽子を脱いで恭しく礼をしているが、どうもこちらを馬鹿にしているような雰囲気をしている。

 

『グリモの魔導書を発動し、デッキからルドラの魔導書を手札に加え星刻の魔術師を墓地へ送ることで発動、デッキから2枚ドロー。

 そして、マジックカード、手札抹殺を発動

 お互いのプレイヤーは手札をすべて捨て、捨てた枚数分、新たにデッキから手札を補充する。

 

 マジックカード、闇の誘惑を発動、さらにデッキから2枚のカードをドロー』

 

 手札交換と補充を繰り返している。

 昼間のデッキとはまるで違う。一体奴の狙いはなんだ?

 

『・・・・フフフ、ハハハハハ、アハハハハハハ!』

 

「ひっ!?」

 

『これはこれは、なんて運命の悪戯だぁ!!』

 

「なんだと?どういうことだ!!」

 

『これから俺のすることを止められなければ俺の勝ちってことだよ。

 闇の誘惑の効果で手札から闇属性モンスターを1体除外する。処刑人マキュラを除外。

 俺のペンデュラムゾーンに魔術師カードが2枚存在するとき、墓地の調律の魔術師の効果発動

 このカードを墓地から特殊召喚する。』

 

調律の魔術師「はっ!」

      DEF0

 

 現れたのは調弦の魔術師によく似たモンスター

 だがそのレベルは1、攻守も0、それに・・・

 

『このモンスターが召喚、特殊召喚に成功したとき

 相手プレイヤーのライフは400回復し、その後俺は400ポイントのダメージを受ける。』

 

「えっ?なんで?」

 

「また僕のライフを・・・何のつもりだ!!」

 LP6000→6400

 

『言ったはずだ。止められなければお前の負けだと・・・

 レベル4のドクロバット・ジョーカーにレベル1の調律の魔術師をチューニング!

 シンクロ召喚!現れろ、転生竜サンサーラ!』

 LP2400→2000

 

転生竜サンサーラ「ギャアアァァァァァ!!」

        DEF2600

 

 現れたのは黒い竜、だが守備表示でその効果もこちらに害をなすものではない。

 

「僕の仲間に手を出させはしない!

 トラップ発動!戦線復帰!セメタリーに眠るモンスターを守備表示で蘇らせる!

 カモン!D-HERO(デステニーヒーロー)ドレッドガイ!!」

 

ドレッドガイ「ウオオォォォォォォ!!フンッ!!」

      DEF?→1800

      ATK?→1800

 

 地を割って飛びあがる鉄仮面をした大男、これこそが幽閉されし最凶の英雄

 

「ドレッドガイの攻撃力、守備力は僕のフィールドのD-HERO(デステニーヒーロー)の攻撃力の合計となる!

 そして、ドレッドガイが特殊召喚に成功したターン、僕のフィールドのD-HERO(デステニーヒーロー)は破壊されず、コントローラーへの戦闘ダメージは0になる!」

 

「やったっ、これで司令官さんのモンスターはこのターン無敵ですっ!」

 

『ふふ、無敵か・・・さて、それはどうかな?

 自身の効果で特殊召喚された調律の魔術師はフィールドを離れるとき除外される。

 そして速攻魔法、次元誘爆発動。

 自分フィールド上の表側表示の融合モンスターを持ち主のエクストラデッキに戻し、お互いは除外されているモンスターを2体まで特殊召喚する。

 ディストピアガイを戻して、調律の魔術師と処刑人マキュラを特殊召喚。』

 

「何っ!?・・・僕はドリルガイとドローガイを特殊召喚する。

 D-HERO(デステニーヒーロー)が増えたことにより、ドレッドガイのステータスがアップ!」

 LP6400→6800

 

 処刑人マキュラ ATK1600

 調律の魔術師  DEF0

 

 ドリルガイ  DEF1200

 ドローガイ  DEF800

 ドレッドガイ DEF1800→5000

        ATK1800→5000

 

「すごいっ!攻撃力5000のモンスターですっ!それにライフもっ!

 でも、なんで・・・?」

 

『お嬢さん、お楽しみはこれからだよぉ?

 今からそのライフを、ぜ~んぶ、消し飛ばしてあげるからねぇ~!!

 見てろよ、見てろよ。』

 LP2000→1600

 

 大仰なしぐさで宮田君に勝利宣言するクラウン・ジョーカー

 何をする気だ!?

 

『速攻魔法、ディメンション・マジック

 自分フィールドに魔法使い族モンスターがいるとき、自分フィールド上のモンスター1体をリリースし、手札の魔法使い族モンスターを特殊召喚する。

 処刑人マキュラをリリースし、手札からマジキャットを特殊召喚。』

 

マジキャット「みゃ。」

      DEF500

 

「わっ、ねこさんですっ。」

 

『永続魔法、魔術師の再演を発動

 このカードの発動時、墓地からレベル3以下の魔法使い族モンスター1体を特殊召喚する。

 クリア・エフェクターを特殊召喚する。』

 

クリア・エフェクター「はっ!」

          DEF900

 

 続き現れたのはヴェールを持った髪の長い女性。

 なんだ?魔法使い族という点だけしか共通点が見えない・・・

 

『さぁ!Ladies and gentlemen!!

 ここからビックリどっきり、愉しいショーが始まるよぉー!

 レベル3のぺーテン、レベル2のマジキャットとクリア・エフェクターにレベル1の調律の魔術師をチューニング!

 剛毅の光を放つ勇者の剣、今ここに閃光と共に目覚めよ!シンクロ召喚!

 現れよ!覚醒の魔導剣士(エンライトメント・パラディン)!』

 

覚醒の魔導剣士(エンライトメント・パラディン)「タアァァァ!!フンッ!」

       ATK2500

 

 攻撃力2500のシンクロモンスター、効果は・・・戦闘破壊したモンスターの攻撃力分のダメージ与える、だと?

 ドレッドガイの効果で僕のD-HERO(デステニーヒーロー)は破壊されない。

 魔法使い族が1体になったことで、奇跡のマジック・ゲートも使えない。

 僕にはダメージを与えられない、はずだ・・・

 

『シンクロ素材にしたクリア・エフェクターの効果、チェーンしてマジキャットの効果を発動

 逆順処理でマジキャットの効果から、こいつが魔法使い族シンクロモンスターのシンクロ素材として墓地へ送られた場合、自分の墓地のマジックカード1枚をデッキトップに戻す。

 シンクロ・キャンセルをデッキに戻して、クリア・エフェクターの効果で1枚ドローする。

 

 さらにこのターン、モンスターゾーンから処刑人マキュラが墓地へ送られていることにより、手札のトラップカード1枚をそのまま発動できる。

 永続トラップ、シモッチによる副作用を発動。

 

 そして、その後にマジックカード、シンクロ・キャンセルを発動

 フィールド上に存在するシンクロモンスターを持ち主のエクストラデッキに戻し、その戻したシンクロモンスターのシンクロ素材一組が自分の墓地にそろっていれば自分フィールド上に特殊召喚できる。

 覚醒の魔導剣士(エンライトメント・パラディン)、シンクロ・キャンセル!

 戻ってこい!ぺーテン!マジキャット!クリア・エフェクター!そして調律の魔術師!」

 

ぺーテン「ウキョ!」

    DEF1200

 

マジキャット「にゃー!」

      DEF500

 

クリア・エフェクター「ふふふ」

          DEF900

 

調律の魔術師「はいっ!」――キイィィィィ!

      DEF0

 

『調律の魔術師の効果、相手のライフは400回復する。

 が、現在シモッチによる副作用の効果が適用されているので、回復効果はすべてダメージに変わる。』

 

「なっ!?くっ!?この程度・・・」

 LP6800→6400

 

 音叉の音色が僕の頭に響く、うぅ・・・

 

「司令官さんっ!?でも、それならあなたのライフも・・・」

 

『それが、調律の魔術師が俺にダメージを与える効果は相手が“回復”しないと条件が満たされず、不発になるんだ。』

 

「えっ・・・じゃあっ!?」

 

『ぺーテン、クリア・エフェクター、マジキャットに調律の魔術師をチューニング

 シンクロ召喚、覚醒の魔導剣士(エンライトメント・パラディン)

 クリア・エフェクター、マジキャットの効果でシンクロ・キャンセルをデッキトップへ戻し1枚ドロー。』

 

 覚醒の魔導剣士(エンライトメント・パラディン) ATK2500

 

「これは・・・!?」

 

『シンクロ・キャンセル発動

 戻ってこい!ぺーテン、クリア・エフェクター、マジキャット、調律の魔術師!』

 

 ぺーテン       DEF1200

 クリア・エフェクター DEF900

 マジキャット     DEF500

 

調律の魔術師「はいっ!えーいっ!」――キイィイィィィ!

      DEF0

 

「くぅ・・・マジキャットとクリア・エフェクターの効果でシンクロ・キャンセルを手札に加えて」

 LP6400→6000

 

「調律の魔術師が400ポイントのダメージを与え続ける・・・?」

 

『無限ループ完成・・・

 さぁ、止められるものなら止めてみな!はははははははははははははっ!!』

 

調律の魔術師「あはははははははははははははっ!!」

 

――キイィィィィィィィィィイイイイィィィィィィィィ!!

 

 頭に反響し響き渡る音叉の音色と奴の嗤い声

 僕にこの敗北への運命から抜け出す術など

 

「きゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁあぁあぁぁぁ!!」

 

「うわあああぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁぁ!!」

 LP6000→5600→5200→4800→4400→4000→3600

 →3200→2800→2400→2000→1600→1200→800→400→0

 

 在りもしなかった。


「はぁ、はぁ、はぁ・・・・」

 

「あううぅぅ・・・」

 

『ははっ、これでさらに9ポイントかぁ、一歩リードだなぁ~』

 

 ポイント?一歩リード?何のことだ?

 うぅ・・・頭がまだ響いていて声が・・・

 

『あっ、それとお嬢さん。』

 

「うぅ、わ、私です・・か?」

 

『俺から逃げ切ったということで1ポイントだ。』――シュ!

 

 奴から宮田君のもとに1枚のカードが投げられる。それは・・・

 

「あっ・・あうぅぅ・・・うぅぅ・・・・れ、麗華さん・・・・・・」

 

 あの委員長とみんなから信頼されていた、原君だった。

 

「!!?まさか、ポイントとは!?」

 

『じゃあ、また次のゲームでお会いしよう・・・Ciao~』

 

 夜の帳と共に奴は姿を消した。

 

 この日、僕らアカデミアは戦士ではなく、奴らにただ狩られるだけの獲物として狙われることになった。




何ぃ!?総司令がまた負けた!?

は、はい。第六班も宮田ゆまを残して全滅した模様です・・・

ぐうぅぅ・・・まさか一番の役立たずが残るとは・・・
ぬぅ~もう援軍を頼むしかあるまい・・・
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『新たなる遊戯(ゲーム)への誘い 戯遊師団【スート】』
何だこいつらは!?敵は榊遊矢やレジスタンスだけではないのか!?


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新たなる遊戯への誘い 戯遊師団【スート】

お待たせしました。ほぼ二か月ぶりの更新・・・
8月前半までは熱さと仕事で書く気力がなくて、8月後半になって落ち着いてきたので、さぁ書こうかと思ったら、まさかのコロナに罹りました。
10日間パソコンに触れられず、キャラデーターが頭から抜けてしまったので詰め直に
油断は禁物、皆様もお気付けください。


 南硫黄島、断崖絶壁と周囲約7.5キロの中に最高峰915メートルの聳え立つ山が特徴的な火山島である。

 人が住む場所からほど遠く、またその地形や真水の確保が難しいという条件からまったく人が住むには適さない土地は有史以来ほぼ人の手が入ったことはない現生の火山島

 貴重生物、絶滅危惧種、新種、固有種などの保護のため、現生自然環境保護地域に指定されている。

 

「って、遊矢が言ってたけど・・・」

 

 打ち付ける波、切り立った崖、ゴロゴロと転がる岩

 いや、南の島って感じじゃないわよ・・・なにが「ちょっとバカンスでも楽しんできな。」よ!

 

「いやはや、まさに天然のいや、自然の城塞ですな。」

 

「人を拒む島、とはいえ遭難者が3年半過ごしたこともあるそうでござるから、危険な毒性生物はおるまい。

 周りに有人島もないから、明りを漏らさない限り潜伏がバレることもないでござろう。」

 

「あの、謎の浮遊物も周囲になし・・・奴の予想通りか。

 よし、みんな、これより波が打ち付けない位置まで登り穴を掘り、そこにテントを設置する。

 夕暮れまでには終わらせるぞ。」

 

「うえぇぇ・・・ま、まだ働くのかよ・・・」

 

「おえぇ・・・ちょ、ちょっと休ませてくんね?」

 

「ダメ、そのためにお昼寝はいっぱいした。」

 

「もう、沢渡もユーゴもだらしないわね~」

 

「俺様は繊細なんだよ!体力馬鹿のゴリラ女と違ってな!」

 

「なんですってー!!」

 

 もう!失礼しちゃうわ!

 って、言ってもこの後、ほんと色々することあるのよねぇ・・・

 拠点作った後は月影さんたちは情報収集に出ちゃうし

 

「私もこの遊矢から渡された宿題を解かないと・・・」

 

 でも遊矢?今何しているか分からないけど

 なんで私に腐敗ガスの発生量の計算なんてさせるのよ?


「まったく、戦闘部隊のガキども、ビビりすぎなんだよな~

 戦士が聞いてあきれちまうぜww」

 

「ホントにな。

 てか、あの偉そうな総司令官殿もまたあの悪魔に負けちまうし・・・

 あ~あ~どうなるんだろうね~?

 とっとと帰って、プロフェッサーからもらった金で豪遊したいぜ。」

 

 丑三つ時、エクシーズ次元のアカデミアの拠点要塞にてオペレータールームで2人の男が悪態をつきながらモニターの監視をしていた。

 

――プシュー・・・

 

「「ん?」」

 

 2人は自動ドアが開く音を聞き、後ろを見るが

 そこには開いた扉があるだけですぐに閉まってしまった。

 

「おい、まさか今の会話、ガキどもに聞かれたんじゃ・・・!?」

 

「やっべ、副指令の耳に入ったら、また長々お説教が始まっちまうぜ!?」

 

「まったく・・・消灯時間も守れねぇ悪ガキどもめ。

 ここはひとつ、俺たち大人が〆てやんなきゃな!」

 

「あぁ、規律はきっちりしないとなw」

 

 一人は立ち上がり廊下に出るが、長くまっすぐな通路には誰の影もなかった。

 走ったのなら、寝静まっている今なら足音が響くはず。だがその気配もない。

 

「・・・?

 誤作動か?なんだよビクビクさせやがって・・・」

 

 念のため、通路の端まで見に行ったが誰も隠れているというわけではなさそうだ。

 男は諦めオペレータールームへと戻っていく

 

「あぁもう、このオンボロ扉め!点検どうなってんだよ・・・?」

 

 男が室内に入るとすぐに違和感を持った。

 さっきまで悪態を一緒についていた同僚が茶化してこなかったのだ。

 そして漂ってくる臭いがさっきまでと違って、いやに鉄臭い。

 

――キィ・・・

 

 同僚が座っていた椅子がひとりでに動き出す。そこには

 

「ヒィ!!?」

 

 べっとりと赤黒い血がぶちまけられていた

 

「なっ!!あっぐぅうむぅ!?」

 

 恐怖から大声を出そうとした彼だが、何かに口を塞がれそれは叶わなかった。

 いきなりのことに混乱して全身を硬直させてしまうが、すぐにその原因は彼の背後から現れ彼に声を掛けた

 

『Ciao~』

 

 闇に輝く不気味な仮面をその目に入れた瞬間、彼の意識はそこで停止した。


 シンクロ次元からロジェを拘束して帰ってきてみれば、僕らに待っていたのは謹慎

 出奔者の逮捕って普通手柄なんじゃないの?

 

「あ~もう!なんでデュエルしたらダメなのさー!!」

 

「はぁ~また・・・そのセリフ今日で五回目だよ。ユーリ。」

 

「だって~!」

 

「だって~なんて言われても僕にプロフェッサーが何考えてんのかなんてわかるわけないじゃん。」

 

 プロフェッサー直々に告げられた理由は僕らがシンクロ次元で無用なデュエルをしたこと

 柚子たちを連れてこられなかったことの方を咎められるかと思ったけど、そっちなのはどうしてだろう?

 

「だってさ~シンクロ次元の時と違って、今度はエクシーズ次元で彼がアカデミア狩りを始めたって言うじゃないか!

 強い僕を出せば済む話じゃんか~!」

 

「確かにな。

 戦略上全く理に適ってない動きではある。」

 

「だよね!だよね!おじさんもそう思うよね!」

 

 現地部隊が1日で4分の1減って、2日目で全体の3分の1まで減ったんだっけ?

 無限ループでも使ったのかな?

 エドまで倒しちゃったらしいし、僕が最後にデュエルしたときより絶対強くなってるよね。

 

「あの被害だと、普通は壊滅って状況だよね?」

 

「いや、部隊損耗率が半分になった時点で全滅だ。

 それ以上は部隊員の士気が著しく低下する。今頃かなりの恐慌状態に陥っているはずだ。」

 

「へぇ~じゃあ、タイラー姉妹が行ったところで無駄かもね?

 わざわざ休暇返上してまでの出陣なのにね。」

 

「えっ!?あの二人は出撃なの!?うらやましい~いぃ~!!」

 

 はぁ~全く面倒な上司だ。こっちから行かなくてもきっと遊矢はここに来るよ。

 遊矢がエクシーズで暴れる理由は、ここに来る前の前準備程度のことなんだろうからね。


「これは・・・」

 

「こ!?これはどうしたことだー!!

 誰か説明できるものはいないのかぁー!!」

 

 昨日の被害は僕らの部隊の人数が元の3分の1まで減るほどだった。

 野呂の無謀な策もあったが、それ以外の奴からの被害も大きい。

 そして、入口に広がる血痕、だがこの惨状が広がるのはここだけではない。

 

「他には?」

 

「はっ!オペレーター以外にも医務室、食堂勤めの総じて9名の行方が分からなくなり、また、居たと思われる場所に・・・血だまりが見つかっております・・・」

 

「9人・・・」

 

「さらに艦内の医療機器が破壊され、食料が全て奪われております。水すらありません!!」

 

「なにっ!?くっ・・・侵入者め・・・一晩でそこまで・・・

 アカデミアからの増援が到着するというのに、これでは・・・」

 

 野呂は部隊の増員の心配をしているが、僕はこの事件の下手人に心当たりがあり、気づけば僕は走り出していた。

 

≪ははっ、これでさらに9ポイントかぁ、一歩リードだなぁ~≫

 

「まさか・・・!?」

 

 向かった場所は彼女の部屋、奴の所業の唯一と言ってもいい生存者

 

「宮田君!?」

 

「・・・・・・指令、官、さん・・・・」

 

 中に入ると彼女はベットの上で体を縮めて震えていた。

 

「宮田君、艦内にいたはずの職員が9人消えた。

 奴の言っていた9ポイントと言うのは!?」

 

「・・・そうだと、思います・・・・・

 昨日、麗華さんがジョーカーさんとデュエルして、3ポイントって言いながら皆を・・・」

 

「原君がデュエルを!?じゃあなぜ僕は・・・」

 

「私は麗華さんに庇われたんです・・・

 カードにされそうになった時、このデッキを私に渡して・・・」

 

 彼女の手に在ったのは彼女が持っているはずもない優等生デッキと俗に言われている成績優秀者に送られるデッキだ。

 それを見つめる彼女の顔は涙も枯れ果てた虚ろなものとなってしまっている。

 

「麗華さん・・・どうして、私なんかを庇ったんですか?

 何もできない。私なんかを・・・・」

 

「宮田君・・・」

 

 何もできない・・・

 それは・・・僕だって・・・・・・

 

――ビィー!!ビィー!!ビィー!!ビィー!!ビィー!!


「も~う、相変わらず埃っぽいところねぇ~」

 

「グレース。」

 

 荒れた街に星が落ちる。

 銀の星は自業を理解せず辟易し、金の星は自業には見向きもせずに銀の星を諫める。

 

「だってグロリア姉さん・・・折角の休みを邪魔されたのよっ!愚痴ったっていいじゃない!!」

 

「はぁ~それに付いては全くだな・・・エドも不甲斐ない。」

 

「ノロマちゃんもね。ほ~んと口ばっかりなんだから。」

 

「ふん、そうだな。

 さて、そろそろ転送も終わったか、部隊をまとめて」

 

――ヒュウゥゥゥゥゥゥ!!

 

――!!?

 

――ズウウウゥゥゥゥゥゥゥンッ!!

 

 六つの肢、特に巨大な腹から伸びる2本の肢は長い、それは一見すると虫のようである。

 

【ゲヘヘヘヘ・・・・】

 

 不気味な笑いをその口から漏らす様は、その生えた上半身の通り人のようで

 

――ガシャ!ガシャ!

 

 その躯体の輝きとその肢から鳴る音は鋼であった。

 

――ヒィ!?何だよ!?あれ!?」

 

――なんであんな化け物がいるんだよ!?

 

 鉄の獣は無知なる星に襲い掛かる。

 理解せよ、理解せよ、これはそなたらの自業自得である。

 

【ウウウゥゥゥウウウ・・・決闘(デュエル)・・・・・・】

 

インヴェルズの先鋭「シャアァァァァ!!」

 

 黒き蜂が現れる。それを見た星は愚かにも「これまでと変わらない。」と考える。

 

――な、なんだよ・・・だったらこいつだ!融合召喚!!

 

【トラップ発動、ヘル・ポリマー・・・】

 

 愚者の僕は悪魔に憑りつかれ主に牙を向ける。

 

――うっ!?うわああぁぁぁぁ!!

 

 理解せよ、理解せよ、自らに刻まれた業を

 

「何だあれは・・・」

 

「ちょっと・・・何よ、あれ!?」

 

――ガシャガシャガシャガシャガシャガシャ!!

 

 あらゆる陰から鋼鉄の獣が這い出てくる

 その数はすでにこの場に募った星よりも多く、双子の星も剣を取らざるを得ない。

 

 そして、その様を仮面の双眸が見下している。

 

「怖いねぇ・・・全て彼が予想した台本(シナリオ)通りか・・・

 だったら僕も、与えられた役を果たそうか、エンターテイナーとしてね。」


 シグナルが鳴り響く、異常を知らせる赤色灯が発光する。

 僕と宮田君は急いでオペレータールームに駆けこむ

 未だに漂う鉄臭さに眉をひそめながら、僕は中にいた野呂に声をかける。

 

「野呂!何だ!?何があった!?」

 

「エ、エド総司令!?そ、それが、増援部隊が襲撃を受けておりまして!?」

 

「何っ!?」

 

『Ladies&Gentlemen!!』

 

「「!!?」」

 

 この口上は!?

 

『本日は僕ら、戯遊師団【スート】の催したゲームの会場へようこそ!

 本日はこの僕、クラブギア・キングが司会進行、そしてBOSSを務めさせてもらうよ!』

 

 ゲーム・・・だと!?

 

「戯遊師団【スート】!?

 レジスタンスの新組織か!?それとも榊 遊矢の関係者か!?

 えぇぇい!!カメラ!!カメラはこの声の主に合わせられないのか!?」

 

 野呂はパネルを操作して、どうにか声の主を映そうとしているが、オペレーター経験などない彼にそのような操作は無理だろう。

 

『僕から提供させてもらうのは、簡単に言うと・・・そう、おジャマ虫のいるビーチフラッグだ。

 そいつらをどうにかして、搔い潜りながら僕のいるこのビルの最上階までたどり着き、フラッグである僕とデュエルをして、そのデュエルが終わればそいつらも止まって、今日のゲームはクリアだ。

 あぁ、もちろん、君たちの敗北条件は全滅だ。』

 

『ふざけるな!正々堂々、私たちと戦え!!』

 

『そんなのはそいつらがやるよ。

 僕と戦うのはここまでたどり着いた勇者だけだ。頑張り給え。』

 

――ぎゃああぁぁぁぁぁ!!

 

――助けてえぇぇ!!

 

 映像からは機械音のような嗤い声が響き、悲鳴が木霊する。

 

「ぬうぅぅぅ・・・崇高なアカデミアの戦士がこんな!?」

 

「・・・・・・」

 

 無残だった。無力だった。

 鋼鉄の魔物に一般兵は手も足も出ず、あのタイラー姉妹も倒しても倒しても再度挑んでくるこれらに疲労の色を見せ始めている。

 なぜだ・・・何故平和のための戦士たちがこんな目に合う・・・

 こんな非道が許されていいのか!こんな非道を僕らが受けて・・・良いはずが・・・はずが・・・・・・

 

――タッ、タッ、タッ、タッ、タッ、タッ、タッ・・・・

 

「?」

 

 誰かが走り去る音が聞こえる。振りむけば僕の後ろにいたはずの彼女がいなくなっていた。

 

「宮田君!?」

 

 僕は彼女を追いかけた。

 彼女は仲間を失い、精神衰弱に陥った。言ってしまえば敗残兵だ。

 そんな彼女を追いかけた理由は自分でもわからない。

 ただあの場所でモニターを見ていられなかったのかもしれないし、助けられた彼女のことを心配したからかもしれない。

 

「待て、どこに行くんだ!?」

 

 彼女は拠点を飛び出した。そしてその歩みが向かう方向は増援部隊が襲われている方向だった。

 

「待つんだ!みやたあぁぁ!!」

 

 足がもつれたのか僕は転んでしまう。

 あちこちに散らばる小石が掌に刺さり、擦り傷切り傷を作る。

 彼女は僕がそうしている間にもどんどん離れていく

 

「待って・・・待って、くれ・・・・」

 

『ははははっ、これまた無様な奴がいたもんだ!』

 

「!!?」

 

 ビルの上に腰掛ける黒い道化師、その姿は見間違えるはずもない。

 

「お前は・・・榊 遊矢!?」

 

『惜しい!この姿の時はクラウン・ジョーカー、そう呼んでくれたまえ。』

 

「そんな事はどうでもいい!おまえは!!」

 

 僕は衝動に任せてデュエルディスクを構える。

 だが、クラウン・ジョーカーはその様子を嘲笑い、カードをちらつかせながら夜の出来事を白状する。

 

『ハハハハハハ!お仲間がいなくなったのがそんなに寂しいのか?

 まぁ、お前もすぐこいつらの仲間に入れてやるよ。

 とは言え、今日はあいつの番だ。俺のゲームに参加したいのなら、次の機会にな。』

 

「くうぅぅぅ・・・!!何がゲームだ!ふざけるな!!

 お前たちの目的は何だ!!」

 

『別にふざけちゃっいないんだがな〜

 それに目的か〜ふぅん・・・強いて言うなら「金」だな。』

 

「なっ!?」

 

『戸籍も身内もいない天涯孤独の少年少女な〜んて、いい商材だと思わないか?

 弱っちぃが、デュエルの基礎程度は知ってるし、戦闘訓練もされている。

 しかも、そいつらが世界一つ分、こっちに勝手に出荷されて来るんだぜ!嗤いが止まんねぇよ。ハハハッ!』

 

「・・・・・・」

 

 僕は言葉を失った。その最低な目的もそうだが、僕たちは戦士どころか『人』としても見られていない。

 

『ただ、普通に収穫してもつまらないから、遊びながらやってるのさ。

 さてさて、どっかの軍隊に売るか、テロリストにでもやるか・・・

 まっ、好事家か変態に売りつけてもいいがな。ハハハッ!』

 

 ゲームの駒、家畜、ジョーカーの言葉から読み取れた僕たちの価値はそのようなものだ。

 生かすも殺すも自由にできる、その程度の存在・・・

 

「・・・・・・そんなこと・・・」

 

『あん?』

 

「そんな事が許されるものか!この下郎!!」

 

 我慢の限界だった。

 目の前の存在は許されぬ「悪」であると、僕は叫ばずにはいられなかった。

 

『へえ〜総司令官殿なら、分かってくれると思ったんだがな〜?』

 

「何?」

 

『だって、お前たちとオレ達、同類じゃないか?』

 

「!?何を・・・」

 

 馬鹿なと言いたかった、だが僕は言えなかった。

 

『この世界に来て、ゲーム感覚で人を狩っているのだろう?

 俺たちと何が違うんだ?』

 

「ち、違う!!僕らは正義の!真の理想郷の為に!!」

 

 そう、僕らの行為は理想郷のための正義の行い。

 エクシーズ次元の人々も理想郷ですべて蘇り、その後はみんなが幸せに暮らせる世界が待っている。

 だから、この次元での僕たちの行いは・・・

 

『その為なら何をやっても許されるのか?

 それなら、俺たちの事もとやかく言うなよ。

 襲い来る侵略者どもを駆除するって言う正義の行いなんだからな。』

 

「!?」

 

『まぁ、ボランティアでやるには規模が大きいから、ついでに金儲けしつつ遊んでるんだがな。ハハハッ!』

 

「侵略者だと・・・僕らが・・・」

 

『人を攫って、街を壊す。

 絵に描いたような分かりやすい侵略者じゃないか。』

 

 あぁ、小さいころに見たヒーローたちは、そんな「悪者」を倒していた・・・

 

「・・・違う・・・・・」

 

『違わないさ。お前は同類だ。』

 

 それは否定だった。

 僕の全ての否定だった。あのときと同じ・・・

 

≪デュエルで争うなんて、愚かなことだとわかっただろう?≫

 

≪あなたはアカデミアの教えが・・・プロフェッサーが間違っているというのか!?≫

 

≪そうだ。≫

 

違うんだアアあぁぁぁぁァァァ!!

 

 だから、否定したかった。

 それがただの我儘にしかならないとしても、事実から目を覆うことにしかならないとしても、認めたくなかった。

 そんな僕の懐から、一枚の破れたカードが落ちる。

 

「あ・・・」

 

『ふぅん、違うと言うのなら、何を護り、何を救うか・・・それくらいしっかり決めろ。HERO・・・』

 

 そう言いクラウン・ジョーカーは風に溶けるように消えた。

 

「護る、救う・・・」

 

 僕は落としたカード[スマイル・ワールド]を手に戦場に向かった。

 せめて今救えるものだけでも手放さないように・・・


――きああぁぁぁぁぁ!

 

――うわあああぁぁぁぁぁぁ!

 

「はぁはぁ・・・みんな・・・」

 

 僕は物陰に隠れながら、戦場を見る。

 そこは正に地獄と呼ぶに相応しい光景が広がっている。

 補充部隊は80人だったはずなのに、ここから見る限りでは20人ほどしかいない。

 

「彼女は・・・」 

 

 見れば、裏口の扉が開け放たれたビルがあった。

 そのビルはあのクラブギア・キングと名乗る奴が登ってこいと言っていたビルだった。

 

 僕は確信をもって、そのビルの中に侵入した。

 

――はぁ・・・はぁ・・・・

 

 中に入りしばらくすると、息を切らした女性の声が聞こえてくる。

 

「宮田君!」

 

「はぁはぁ・・・しれい・・かん・・・・さん?

 はぁ・・・はぁ、なんで・・・・」

 

「それはこっちのセリフだ!

 なぜこんな無謀なことをした!?」

 

「・・・無謀なんかじゃ・・・ないです・・・」

 

「えっ!?」

 

「無謀なんかじゃないです!

 私は・・・みんなが消えていくのをもう見たくありません・・・だから!!」

 

 ここは敵陣、そこでこんな大声を出すのは悪手だ。

 だが僕は彼女の気迫にそのことを指摘する気にはなれなかった。

 

「・・・救えるのか?彼らを・・・」

 

 だから僕は彼女に賭けてみた。

 

「はい。」

 

 彼女はそれだけ言うと、屋上への扉をあけ放つ。

 

 

 

 

 

「おや?意外なお客様だね?」

 

 そこにいたのは歯車を組み合わせたような仮面と工場をモチーフとしたような肩飾りにマントをした男だった。

 クラウン・ジョーカーと名乗る榊 遊矢と同じように奇妙な格好をしている。

 

「クラブギアさんですか?」

 

「あぁ、僕が本日のゲームの司会進行を務めさせていただいている。クラブギア・キングだよ

 さて、カップルさんがお付きだけど、僕とデュエルできるのは1人だけなんだ・・・

 勇気あるチャレンジャーはどちらかな?」

 

「わたしが・・・」

 

「・・・ふぅ~ん・・・ジョーカーのお気に入りの方が盛り上がりそうだけど、後で怖いしね・・・」

 

 やはり、こいつも榊 遊矢の仲間か・・・

 

「いいよ、やろうじゃないか!」

 

『『決闘(デュエル)!!』』

 

「先攻は僕から行くよ?

 手札から召喚僧サモンプリーストを召喚。

 このカードは召喚、反転召喚されたとき守備表示となる。」

 

 サモンプリースト ATK800→DEF1600

 

「サモンプリーストの効果、1ターンに1度、手札のマジックカードを1枚、墓地に送ってデッキからレベル4モンスターを特殊召喚する。

 聖魔の大賢者(マギストス・マスター)エンディミオンを特殊召喚!」

 

聖魔の大賢者(マギストス・マスター)エンディミオン「ふん!」

                          ATK1300

 

「エンディミオンの効果発動!

 1ターンに1度、自分フィールド上のマギストスモンスターにエクストラデッキのマギストスモンスターを1体装備する。

 結晶の女神(マギストス・ゴッデス)ニンアルルを装備。」

 

 長いひげの老人と精悍な顔立ちの男が並び、その後ろに美しいクリスタルで作られた女神像が現れる。

 エクストラデッキから直接モンスターを装備カードにするだと?

 

「マジックカード、聖なる法典(マギストス・インヴォケーション)を発動

 このカードは1ターンに1度、自分のフィールド、手札から魔法使い族モンスターを含む、融合素材を墓地へ送り融合召喚を行う。

 また、マギストスモンスターを融合召喚する場合はマギストスモンスターの装備カード扱いになっているモンスターを素材にできる。」

 

 なっ!?こいつも融合を!?さらには装備カードを融合素材にだと!?

 

「エンディミオンの装備カードとなっているマギストスモンスター、ニンアルルと手札の魔法使い族モンスターEm(エンタメイジ)ダメージ・ジャグラーを融合

 結晶の女神よ、痛みすら投げ捨てる軽業師と一つとなり、我を守護する力となれ!

 融合召喚!!法典の守護者(マギストス・セイント)アイワス!!」

 

 法典の守護者(マギストス・セイント)アイワス DEF2800

 

 現れたのは天使のような羽を持つ無機質な物体

 円錐状の体に異様に巨大な腕など、不気味な姿をしている。

 

「墓地のダメージ・ジャグラーの効果発動。

 メインフェイズに墓地のこのカードを除外することで、デッキからEm(エンタメイジ)を手札に加える。

 僕が手札に加えるのはEm(エンタメイジ)トリック・クラウン。

 さらにレベル4のサモンプリーストとエンディミオンでオーバーレイネットワークを構築!

 show must go on!天空の奇術師よ 華やかに舞台を駆け巡れ!エクシーズ召喚!

 現れろ!ランク4!Em(エンタメイジ)トラピーズ・マジシャン!」

 

トラピーズ・マジシャン「ひゃははははははは!」

           ATK2500 ORU2

 

 現れたのは笑みを浮かべた仮面をつけた道化師のようなモンスター

 その姿はどことなく榊 遊勝が使っていたモンスターに似ている・・・

 

「カードを1枚伏せて、ターンエンドだ。

 さぁ、君のターンだよ?

 ちなみに、トラピーズ・マジシャンはフィールド上に存在する限り、トラピーズ・マジシャンの攻撃力以下の僕への戦闘、効果ダメージを無効にするし、メインフェイズにアイワスは自身を装備カードにすることで、モンスターのコントロールを奪えるんだ。」

 

 ダメージカットとモンスター強奪だと!?

 くっ、これでは古代の機械砲台(アンティーク・ギアキャノン)の効果も融合モンスターも封じられたも同然・・・

 

「私のターン、ドロー・・・私は・・・」

 

 宮田君、どうするんだ・・・?

 

「私は、このままターンエンドします。」

 

「なっ!?宮田君!?」

 

 何故だ!?きみの行いは無謀なことではないと言ったばかりじゃないか!?

 

「へぇ~・・・本当にいいの?」

 

「はい。」

 

「何を言っているんだ!?

 何のためにここまで来て・・・みんなを救うんじゃなかったのか!?」

 

「・・・助けます。」

 

「えっ?」

 

「だから、これで良いんですよ。司令官さん。

 無茶をしなければ、私じゃみんなを護れませんから・・・」

 

「だ、そうだよ?

 いやはや、ゲームのルールの穴を突かれるなんてね。

 ゲームメーカーとして、悔しい限りだよ。」

 

「え?」

 

 クラブギアは勝ちが確定している状況で、自身が負けているというような発言をした。

 どういうことだ?

 だが、そんなことを考える暇もなく2体のモンスターに終わりの言葉を言い渡す。

 

「アイワスとトラピーズ・マジシャンでダイレクトアタック。」

 

「ぐぅうぅぅ・・・・・あぁぁぁ!!」

 LP4000→2000→0

 

 そう言い彼女はアイワスの放つ光線に焼かれ、天空の道化師の放つ蹴りをその身に受けた。

 僕は吹き飛ばされる彼女を受け止める。

 

「宮田君!!宮田君!!しっかりしろ!!」

 

「うぅ・・・あぅ・・・・・・」

 

「宮田君・・・なぜこんなことを・・・?」

 

 彼女は微笑みを僕へ返すと、クラブギア・キングへ目を向ける。

 

「これで・・・ゲームは終わり、ですよね?」

 

「えっ・・・?」

 

「あぁ、僕とのデュエルは終わってしまったからね。

 今日の舞台はこれで閉幕だ。」

 

「あっ・・・」

 

 そういえば、奴は自分に勝つかどうかは何も言っていない。

 いわば、奴とのデュエルが終わるまでが下で暴れている化け物の活動制限だったのだ。

 

「じゃあ、僕はこれで帰るとするよ。また次のゲームでね?」

 

トラピーズ・マジシャン「うきょきょきょきょきょ!!」

 

 クラブギア・キングはトラピーズ・マジシャンと共に空中ブランコを行って去って行った。

 もちろん鋼鉄の化け物たちも

 

「よかった・・・」

 

 自らの危険も顧みず敗北の恐怖に打ち勝って、仲間を護った彼女はそう声を漏らした。

 その姿は正しく




やっぱり、実力的にはデュエルロイド以下か。

僕が言うのもなんだかなと思うけど、メタデッキを使っておいてそれ言う?

プロデュエリストレベルならメタ対策なんてやって当然なんだよ。
さて、そろそろネズミも焙り出さないとな。

もう目星はついているんだろう?

あぁ、だが証拠がないと納得しないだろう?
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『レイダーズ 反逆の翼と剣』


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レイダーズ 反逆の翼と剣

う~ん、一回調子を崩すと中々文章が出てきませんね。ごめんなさい
やっと涼しくなってくれたので眠気はなくなりそうです。

まぁ今回の一番の問題はタイラー姉妹が使う融合型アマゾネス(リンクなし)デッキ
ただでさえアマゾネスカテゴリーが枚数少ないのにアマゾネスの里との相性が絶望的で、どうコンセプトを分けたらいいんだ・・・と悩んだ時間が多かったです。

そんなアマゾネスも新鋭の女戦士やウォークライで強化(?)
みんなで組もう!YESアマゾネス!


「はぁ!?食べ物も薬もない!?どうなっているのよ!!?」

 

「そ、それが・・・侵入されたようで・・・」

 

「野呂、そしてエド・・・貴様らは何をやっているんだ!!」

 

 ヒステリックな声と怒号が響く

 

「こっちはバカンスを返上してきたのよ!!

 それなのにいきなり変なロボットに襲われて、拠点で休めると思えば食事もできないってどういうことなの!?」

 

 文句を言う銀の髪の少女『グレース・タイラー』

 

「お!?落ち着き給え・・・

 なぁに、君たちならあの悪魔をすぐに討伐してバカンスの続きを楽しめる。

 なっ、それで」

 

「水は汲んできてもらっている。

 食料も・・・捜索中だ。」

 

「・・・・・・」

 

 呆れたと言う視線をエドと野呂に向ける金の髪の少女『グロリア・タイラー』

 彼女たちのその言葉、その視線は冷たいものだ。

 彼女たちと共に増援としてきた兵たちも怒りの声を上げ、本隊はすでにPTSDを患った者や恐怖のあまり恐慌状態に陥った兵すらいる始末、つまり

 

(もう、この部隊はまともに戦えない・・・いや、それは僕もか・・・)

 

 それでも彼らは戻れない。

 行きつくところまで行くことしかないのだ。


「数の差を覆すだけで、これほど簡単にアカデミアを倒せるとは・・・」

 

『疲レタノデアリマス・・・』

 

「何かしら対策されると思っていたが、特に変わった様子はなかったしな。」

 

「そこは意外だな。

 すでに既存戦術では対処できないと考えないのか?」

 

「ん~そうだね。

 融合戦術はアカデミアの指標だからね。そこは変えられないだろうし

 ほら、急に別のデッキ使えって言われても困っちゃうから。」

 

 打ち捨てられた山小屋

 俺たちは次なるアカデミアへ仕掛ける作戦を話し合っていた。

 なお、セレナと隼はここにはいない。遊矢曰く腹芸ができないからだそうだ。

 

「所詮、付け焼刃じゃその程度と言うことだ。」

 

「ふむ、元々融合次元はソリッドビジョンすらなかったという話だしな・・・」

 

『ムムム?

 優位性ガ崩レタノニ、ヤツラハマダ撤退シナイツモリデアリマスカ?』

 

「こちらとしても早々に撤退されても困るがな。

 まぁ、赤馬零王は俺を目の敵にしているから、駒がいくら傷つこうと構わずなんだろう。

 根本的な問題で破綻しているがな。

 だが、そのおかげで後手後手の戦争で持ち直すことができた。」

 

「ふむ、だがこれからどうする遊矢?

 あまり時間をかけすぎると、あの仮面たちのように蟲を入れられた兵が出てくるのではないか?」

 

「それは・・・」

 

「出てくるだろうなぁ~

 どんなに弱くても、一定レベルにできるんだから使わない手はない。」

 

「じゃあ、これから俺達はどう動く?」

 

「未来に厄介者がやってくるのが確定しているし、現存部隊は食料探しでばらけて行動するらしいから、一人二人なら残っているレジスタンスやカイトが潰すだろう。

 だから今の問題の解決に動くとしよう。

 デニス、どんな感じだった?」

 

「う~ん、お世辞にも強いとは二人共言えないし・・・

 それにやっぱり、偶然見つけたにしては乾燥物とかの保存食が多すぎるのはおかしいからね。

 スパイの意見から言わせてもらうと、黒で確定でいいと思うよ。」

 

「・・・・・・」

 

 隼がこの場にいないのはただ単に隠し事が苦手だという理由だけではない。

 もし隼がこの場にいたら遊矢やデニスの胸ぐらをつかんで激昂していたことだろうことが容易に想像できたからだ。

 もちろん、俺だって信じたくないことだが・・・

 

「じゃあ、次はネズミを焙り出すとしよう。」


 私たちがレジスタンスの大きな集団を壊滅させたというのに、制圧にいつまでかかっているのか。

 エドも野呂も不甲斐ない・・・そう思っていた。

 

「はぁ~姉ぇさん、お腹がすいたわ~」

 

「グレース、我慢しろ。」

 

 妹のグレースが文句を言う。仕方のないことだ。

 到着早々謎のロボットに襲われ、増援部隊のほとんどを失い、拠点に戻れば水も食料もない。

 私だって文句を言いたくなった。

 だが、あのロボットを蹴散らせなかったことを反省し、侵入者を許したこと以上のことは言わなかった。

 

「状況を報告せよ。」

 

「はっ、水は確保できたようですが、やはり食糧の発見が難航しております。」

 

「むむむ、私の計算では部隊の一食分の食料が確保できているはずなのにぃ!!」

 

 本当に野呂の計算は当てにならないな。

 訓練時代にサバイバル知識も叩き込まれたはずだが、作戦時はアカデミアから兵站は送られてくるものだった。

 そんな知識、とうに錆び付かせてしまっている。

 やはりアカデミアからの補給物資を待った方が堅実か・・・

 

『やぁやぁ、どうもどうもアカデミアの皆さん。

 いつでもエンタメをお届け、クラウン・ジョーカーさんだよ~』

 

――!!?

 

 いきなり切り替わる画面に仮面を付けた黒い道化師が映る。

 プロフェッサーが警戒している殲滅対象のデュエリスト、榊 遊矢

 それが化けている奴だとエドは言っていたが・・・

 

「なっ!?なにをしているのかね!!

 ハッキングだ!すぐに取り戻したまえ!!」

 

「ダメです!!こちらの操作を一切受けつけません!?」

 

「くっ、今度は何をするつもりだ・・・」

 

 野呂が臨時オペレーターに激を飛ばし、エドが戦慄する。

 

『本日の演目は・・・かくれんぼだ。

 俺が用意した相手とデュエルし、それが終わるまでに頑張って俺の居場所を探し出せれば・・・』

 

 この時私は昨日のようにデュエルした相手が助かると言うのかと思っていた。

 だがそうではなかった。

 目の前の怪人はプロフェッサーの言うように正しく悪魔だったからだ。

 

――ギイイィィィィィィィイイィィィィィィィイイィ!!

 

『むー!!むー!!むぅぅぅぅぅ!!』

 

『むうぅぅぅ!!むうううぅぅぅぅぅぅぅ!!』

 

 画面が切り替わり、ロッカーに押し込められたブルーとレッドの制服の女生徒が映る。

 彼女たちは針金やひもでミノムシのようにぐるぐる巻きになっており、さらに前面には出れないように有刺鉄線が張らている。

 そして、その上には激しく回転するノコギリが唸りを上げていた

 

「なっ!?」「えっ!?」「くっ!」「なんと!?」

 

『この二人を解放しようじゃないか。

 方式はタッグデュエル、墓地とフィールドが共用のタッグフォースルールだ。

 会場はA―3地区にて、来なかったら二人は真っ二つだぁ!!

 えっ?俺の居場所?言う訳ないじゃん!Ciao~!』

 

 手を振って消えるクラウン・ジョーカー、馬鹿にして!!

 

「グレース!行くぞ!タッグデュエルなら私たちが負けるはずがない!」

 

「えぇ、姉さん・・・私すっごくキレそうだわ。あいつムカつく。」

 

 グレースも同じ気持ちらしい。

 だが速足で出ていこうとする私たちを野呂が引き留める。

 

「待てキミたち!こんなあからさまな罠に乗る必要は!!」

 

「ならここで黙ってみてろと言うのか!?」

 

「それこそないわ。

 来なかったら真っ二つと言っているのだし、ならアナタたちがアイツを見つけ出しなさい。」

 

「ぬぅ・・・各員に次ぐ!」

 

 野呂は通信機に向かって、外に出ているメンバーに怒号を飛ばす。

 そして、エドは

 

「・・・・・・グロリア、グレース、君たちに頼みがある。」

 

「む?」「なによ?」

 

「クラウン・ジョーカーが発見されるまで、君たちには耐え抜いてほしい。」

 

「はぁ?」「どういうことだそれは?」

 

「彼女たちとノコギリの間にメーターがあった。

 推測だが、君たちのライフが減るとあのノコギリが迫るのだろう。

 そして、二人を解放する条件が奴を見つけ出すこと・・・なら、デュエルの勝敗では二人共は助からないということかもしれない。」

 

「なるほどな。」

 

「だったら、早く見つけなさいよ。

 まぁ、こっちが絶対勝つんだから、止めを刺すのを待っててあげるわよ。」

 

「あぁ、二人とも頼んだ。」


 金と銀の少女が荒れ地を進む。

 その先にいるのは黒いマスクに半身をマントで覆い隠す二人組

 

「あら?アナタたちが私たちの相手?」

 

「あぁ、俺はエースレイダー、こっちはウィングレイダー。」

 

 剣を模したマントを身に纏う小柄な男『エースレイダー』

 

「・・・・・・お前たちを倒す者だ。」

 

 翼を模したマントを身に纏う不機嫌そうな長身の男『ウィングレイダー』

 

『ハロロ~ン!お待ちしておりましたよ、お客様!

 さて予告で言ったように君たちにはタッグフォースルールでのデュエルをしてもらう。

 なお、君たちのデュエルの模様はここと、アカデミアの拠点へ生中継だ。

 おっと、そろそろBGMでも流すか・・・』

 

 クラウン・ジョーカーはお気に入りのCDをオーディオに入れるかのような手つきで少女たちの猿轡を外す。

 

『おねぇちゃん!おねぇちゃん!!』

 

『お願い!!妹だけでも助けて!!』

 

 少女たちは姉妹だったようで、互いが互いを思い合ってクラウン・ジョーカーに懇願する。

 ただ、そんなことこの怪人には聞き入れてもらえない。

 

『んんん~残念だが妹ちゃんが助かるかどうかは、レイダーズに掛かっているねぇ~

 あぁ、おねぇちゃんの方はそっちの金銀姉妹に掛かっているよ~

 君たちの上にあるノコギリはそれぞれのライフと対応しててね。

 減っていくとどんどん下がって行って、0になると冷蔵室の牛みたいに真っ二つになる!』

 

『『ヒッ!?』』

 

『ってなわけでぇ~

 二人とも助かりたかったら、ヒーロー君がここを見つけてくれることを祈るんだな。』

 

(悪趣味な・・・)(最っ低!!)

 

「悪趣味だと思うか?」

 

「「!!?」」

 

「最低だとも思うだろうが、貴様らもそう変わらん!

 俺たちの怒りを思い知らせてやる!!」

 

 グレースとグロリアは一瞬何のことか分からなかったが、ウィングレイダーがエクシーズ次元の住民だということに思い至り笑みをこぼす。

 

『『『『決闘(デュエル)!!!』』』』

 

「最初は私ね。

 私は永続魔法、スローライフを発動するわ。

 このカードは私のフィールドにモンスターがいないメインフェイズの始めに発動出来て、通常召喚したプレイヤーはそのターン、特殊召喚できないし、特殊召喚を行ったターンは通常召喚を行えなくなる。

 

 さらにフィールド魔法、融合再生機構と速攻魔法、アマゾネスの叫声(コール)発動

 1ターンに1度、デッキからアマゾネスの叫声(コール)以外のアマゾネスカードを手札に加えるわ。

 手札に加えるのはアマゾネスペット仔虎(ベビータイガー)、そしてこのカードをコストに捨てて、融合再生機構の効果を発動

 デッキから融合のカードを手札に加えるわ。」

 

「融合!」

 

 ウィングレイダーがグレースが融合を手札に加えたことに反応する。

 それを見て彼女たちはウィングレイダーがエクシーズ次元の住人だということを確信し、同時に自分たちの勝利も確信した。

 エクシーズの雑魚なんかに自分たちが負けるはずがないのだから、と

 

「強欲で貪欲な壺を発動して、デッキから裏側で10枚のカードを除外して2枚ドロー

 よしよし、良い感じ良い感じ、手札のアマゾネスペット(タイガー)を公開して、アマゾネスの斥候を手札から特殊召喚よ。」

 

アマゾネスの斥候「ふん!」

        DEF1200

 

 外套を纏った浅黒い肌の女性が警戒態勢でナイフを構える。

 その隣にはピンク色の毛をした小さな虎の子が戯れていた。

 

アマゾネスペット仔虎(ベビータイガー)「みゃー」

            DEF500

 

「そしていよいよマジックカード、融合を発動よ!

 手札のアマゾネスペット(タイガー)とフィールドのアマゾネスペット仔虎(ベビータイガー)を融合!

 牙剥く密林の野獣よ、新たな血をその血統に入れ、新たな猛獣となって現れよ!

 融合召喚!現れよ、レベル7!アマゾネスペット虎獅子(ライガー)!!」

 

アマゾネスペット虎獅子(ライガー)「ガオオオォォォォォォン!!」

           ATK2500

 

 雄叫びを上げる隻眼の虎と獅子が混じったモンスター

 だが、レイダーは彼女のエースたるこのモンスターを見ても動揺した様子はない。

 それが彼女の癪に障った。

 

「なによ、あんたたち・・・ちょっとは驚くとかしたらどうなの?

 つまんないわね・・・カードを1枚伏せてエンドフェイズ、融合再生機構の効果でこのターンの融合召喚に使用した自分の墓地の融合素材モンスターを1体を手札に戻すわ。

 私はアマゾネスペット(タイガー)を手札に戻してターンエンドよ。」

 

「次は俺だ。ドロー

 俺はマジックカード、おろかな埋葬を発動しデッキから幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ステンドグリーブを墓地に送る。

 ステンドグリーブは墓地から除外することで、手札から幻影騎士団(ファントム・ナイツ)モンスター1体を特殊召喚することができる。

 俺は幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ティアースケイルを特殊召喚。」

 

 ティアースケイル DEF1600

 

 フィールドに現れたのはその内から青白い光が宙に持ち上げるボロボロと崩れる上半身の鎧

 

「ティアースケイルの効果発動!

 手札を1枚捨てデッキからティアースケイル以外の幻影騎士団(ファントム・ナイツ)モンスターか、ファントムマジック、トラップ1枚を墓地に送る。

 俺はトラップカード、幻影翼(ファントム・ウィング)を墓地へ送る。

 

 さらに墓地に送った幻影翼(ファントム・ウィング)の効果発動!

 このカードを除外し、自分の墓地の幻影騎士団(ファントム・ナイツ)1体を特殊召喚する。

 来い!幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ダスティローブ!」

 

 ダスティローブ DEF1000

 

 続き現れたのは薄汚れた外套、その周りには紫色の鬼火が浮いている。

 

「通常召喚が封じられているのに揃えてきたか。」

 

「そうこなくっちゃ、面白くないわね。」

 

「獲物を前に舌なめずりか・・・三流のすることだな。

 俺はレベル3のティアースケイルとダスティローブでオーバーレイネットワークを構築!

 戦場に倒れし騎士たちの魂よ。今こそ蘇り、闇を切り裂く光となれ!エクシーズ召喚!!

 現れろ、ランク3!幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ブレイクソード!!」

 

 ブレイクソード ATK2000 ORU2

 

 混沌なる闇より駆け出したのは壊れた大剣を持つ首なしの騎士

 だが、その攻撃力はアマゾネスペット虎獅子(ライガー)に及ばない。

 

「あら、せっかく呼んだのにそんな雑魚なの?

 もうやっぱり、エクシーズはダメねぇ~ンフフフ。」

 

「それはどうかな。

 俺はオーバーレイユニットを1つ使いブレイクソードの効果を発動!

 自分フィールド上のカード1枚と相手フィールド上のカード1枚を破壊する。

 俺はブレイクソードと君のセットカードを破壊する。」

 

 ブレイクソード ORU2→1

 

 ブレイクソードの大剣に光が宿り、そのままグレースのセットカードに突っ込みどちらも砕け散る。

 

「ちっ、でも今破壊されたのはアマゾネスの強襲

 自分の墓地のアマゾネスモンスターを1体特殊召喚出来るわ。

 戻ってきなさい!アマゾネスペット仔虎(ベビータイガー)!」

 

 アマゾネスペット仔虎(ベビータイガー) DEF500

 

「だが幻影騎士団の魂は倒れない!

 エクシーズ召喚されたブレイクソードが破壊された場合、墓地の同じレベルを持つ幻影騎士団(ファントム・ナイツ)を2体特殊召喚しそのレベルを1つ上げる!」

 

 ダスティローブ  LV3→4 

          DEF1000 

 ティアースケイル LV3→4

          DEF1600

 

「何ですって!?」

 

「レベル4となったダスティローブとティアースケイルでオーバーレイ!

 死せる騎士よ。機装の鎧を身に纏い、新たな未来を築く光となれ!エクシーズ召喚!

 現れろ!ランク4!レイダーズ・ナイト!!」

 

レイダーズ・ナイト――シュコオオオォォォォォ!!

         ATK2000 ORU2

 

 青い炎を排気管から吹き出し、機械の鎧を身に纏う騎士が現れる。

 

「レイダーズ・ナイトの効果発動

 オーバーレイユニットを1つ使い、このカードのランクより1つ高い、または低い幻影騎士団(ファントム・ナイツ)エクシーズモンスターを、このカード1体を素材にエクシーズ召喚する!

 ランクダウンエクシーズチェンジ!再び現れよ、ランク3!幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ブレイクソード!!」

 

 ブレイクソード ATK2000 ORU2

 

「2体目!?ってことはまた!?」

 

「そう、ブレイクソードのオーバーレイユニットを1つ使い、ブレイクソードとアマゾネスの斥候を破壊する!

 さらにダスティローブとティアースケイルをレベル4として特殊召喚!」

 

アマゾネスの斥候「きゃあああぁぁぁ!!」――バンッ!

 

 再び首なしの黒騎士が密林の女戦士と共に砕け散り、2体の幻影騎士が復活する。

 その様は死を自覚せずに彷徨う魔物のようでも、死んででも立ち上がった英霊のようでもある。

 

 ダスティローブ  DEF1000 LV3→4

 ティアースケイル DEF1600 LV3→4

 

「また、って言うことはもう一度・・・」

 

「残念だが、レイダーズ・ナイトの効果は1ターンに1度しか使えない。」

 

 エースレイダーの言葉にグレースは一安心と息を吐く。

 だが、その終わりは新たな苦痛の始まり

 

「俺は再び、ティアースケイルとダスティローブでオーバーレイネットワークを構築!

 漆黒の闇より、愚鈍なる力に抗う反逆の牙!今、降臨せよ!!エクシーズ召喚!!

 現れろ!ランク4!ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン!!」

 

ダーク・リベリオン「ギャオオオオオォォォォォォォォォォォ!!」

         ATK2500 ORU2

 

 新たに現れたのは機械的な翼と刃のような顎下の逆鱗を持つ口上通りに真っ黒な竜、その竜を見てタイラー姉妹の脳裏にある情報が浮かび上がる。

 

(こいつ!?)(ブラックリストに載っていたレジスタンス!?)

 

「ダーク・リベリオンの効果を発動!

 オーバーレイユニットを2つ使い、相手モンスター1体の攻撃力を半分にしその数値分このカードの攻撃力をアップする!

 俺はアマゾネスペット虎獅子(ライガー)を選ぶ!トリーズン・ディスチャージ!!」

 

 ダーク・リベリオンの翼が展開し紫色の雷がアマゾネスペット虎獅子(ライガー)を襲いその力を奪う。

 

ダーク・リベリオン「ギャオオオォォォォォォォォォ!!」――バリバリバリバッ!! 

         ATK2500→3750

 

アマゾネスペット虎獅子(ライガー)「グオオォォォォォ!?」

           ATK2500→1250

 

「バトル!ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンでアマゾネスペット虎獅子(ライガー)に攻撃!反逆のライトニング・ディスオベイ!!」

 

 雷を纏った黒き竜の牙が密林の獣を切り裂き、グレースにその紫電が襲い掛かる。

 

「きゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 LP8000→5500

 

「グレース!!」

 

『――ギュウオオオォォォォォォォォォ!!』

 

『ひっ!!』

 

『おいおい、折角のBGMをひっ!の一言で済ませるなよ・・・盛り上がらないだろう?

 あっ!妹ちゃんの方がピンチになってくれたらいい声で鳴いてくれるかな?

 そういう訳で・・・頑張ってレイダーズのライフを減らしてくれよぉ~お二人さん~』

 

「あんた!黙っててくれる!!」「外道め・・・」

 

「バトルフェイズを終了し、墓地のダスティローブの効果を発動

 このカードを除外しデッキからダスティローブ以外の幻影騎士団(ファントム・ナイツ)カードを手札に加える。

 俺が手札に加えるのはRUM(ランクアップマジック)幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ラウンチ、手札を3枚伏せターンエンドだ。」

 

「うぅ・・・」

 

「よくもグレースを!私のターン、ドロー!

 私は融合再生機構の効果を発動、手札を1枚捨てデッキから融合を手札に加える!」

 

「ならばそれにチェーンしダブルリバース!

 速攻魔法、RUM(ランクアップマジック)幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ラウンチ!永続トラップ、レイダーズ・アンブレイカブル・マインド!!

 幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ラウンチの効果は自分、相手のメインフェイズにオーバーレイユニットがない自分フィールド上の闇属性エクシーズを1つランクが高い闇属性エクシーズにランクアップさせる!

 

 俺はランク4のダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン1体でオーバーレイネットワークを再構築!

 煉獄の底より、未だ静まらぬ魂に捧げる反逆の歌!永久に響かせ現れよ!ランクアップエクシーズチェンジ!!

 出でよ、ランク5!ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン!!」

 

ダーク・レクイエム「ギュオオオォォォォォォォォォ!!」

         ATK3000 ORU2

 

「ちっ!ランクアップされたか・・・」

 

幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ラウンチはこの効果で特殊召喚されたエクシーズモンスターのオーバーレイユニットになる。

 そして闇属性エクシーズモンスターを素材にエクシーズ召喚に成功したことにより、レイダーズ・アンブレイカブル・マインドの効果が発動!

 フィールドのカード1枚を破壊する!アマゾネスペット仔虎(ベビータイガー)を破壊!」

 

アマゾネスペット仔虎(ベビータイガー)「ミャ!!」――バンッ!

 

(くっ!融合素材が・・・

 ここは墓地に送った新鋭の女戦士の効果を使うべきか・・・いや、グレースの手札はアマゾネスペット(タイガー)以外ない。ここは・・・)

「マジックカード、融合派兵を発動!

 1ターンに1度、エクストラデッキの融合モンスター1体を公開し、そのモンスターに記載されている融合素材モンスター1体を手札、デッキから特殊召喚する!

 私はアマゾネス女帝(エンプレス)を公開し、デッキからアマゾネス女王(クイーン)を特殊召喚!」

 

 赤い布に敷かれた豪奢な椅子に座った青い髪の女性が大剣を片手に頬杖を突く

 

アマゾネス女王(クイーン)「ふんっ!」

       DEF1800

 

「アマゾネスが特殊召喚されたことにより、墓地のアマゾネスペット仔虎(ベビータイガー)の効果を発動!」

 

「そうはさせない!

 ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴンの効果発動!

 このカードがダーク・リベリオンをエクシーズ素材にしているときに相手がモンスター効果を発動したとき、オーバーレイユニットを1つ使い、その発動を無効にし破壊し、その後、自分の墓地からエクシーズモンスターを特殊召喚する。

 アマゾネスペット仔虎(ベビータイガー)の効果を無効にし、墓地からレイダーズ・ナイトを特殊召喚!レクイエム・サルベーション!!」

 

 レイダーズ・ナイト DEF0

 

「はぁ!?効果無効で蘇生!?何よその反則効果!?」

 

「ちぃい!!ならば、手札から融合を発動!

 フィールドのアマゾネス女王(クイーン)と手札のアマゾネス王女(プリンセス)を融合!!

 密林の女王よ、新たな世代の力を取り込み、全てを統べる帝国を築け!融合召喚!!

 現れろ、レベル8!アマゾネス女帝(エンプレス)

 

 アマゾネス女帝(エンプレス)「うおぉぉぉぉ!はっ!!」

        ATK2800

 

 新たに現れたのはアマゾネス女王(クイーン)よりも巨大な波打った大剣を持ち動物の頭骨で作られた冠を被った密林の女帝

 眠る同胞の敵を討つために目の前の竜を睨む

 

「さらに永続魔法、アマゾネスの闘志を発動し、墓地の速攻魔法、アマゾネスの叫声を除外し効果を発動!

 これでアマゾネス女帝(エンプレス)はアマゾネスの叫声の効果で相手モンスターすべてに攻撃でき、アマゾネスの闘志の効果で攻撃宣言時に1000ポイント攻撃力をアップする!バトルだ!!」

 

「永続トラップ、幻影霧剣(ファントム・フォッグ・ブレード)をアマゾネス女帝(エンプレス)を対象に発動。

 このカードの対象になったモンスターは効果が無効になり、攻撃対象にならず、攻撃も出来ない。」

 

「「なっ!!?」」

 

 起死回生をかけたコンボ、基本攻撃力が低めで展開力に難がある【アマゾネス】というカテゴリーにおいて展開しきった相手フィールドを壊滅させることができるこのコンボ

 どうしてもモンスターの減ってしまうエクシーズという召喚法相手にはあまり使わない戦術であるためタイラー姉妹にとっては隠し玉とでもいうべき戦術であったが

 

(だけど、破られた!?)

 

(私たちの戦術がすべて読まれている!?)

「くっ!バトルフェイズを終了し、カードを2枚伏せターンエンド・・・

 エンドフェイズに融合再生機構の効果で融合素材モンスターであるアマゾネス女王(クイーン)を手札に加える。」

 

「俺のターン、ドロー

 俺は手札からRUM(ランクアップマジック)―スキップ・フォースを発動!

 自分フィールド上のRR(レイド・ラプターズ)エクシーズモンスター1体をそのランクより2つ高いエクシーズモンスターにランクアップさせる!」

 

「なっ!?いきなりランクアップ!?」

 

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!?

 アンタたちのフィールドにRR(レイド・ラプターズ)とかいうモンスターなんて一体もいないじゃない!?」

 

「レイダーズ・ナイトはRR(レイド・ラプターズ)モンスターとしても扱う。」

 

(!!?こちらの戦術を妨害するだけではなく、利用されていただと!?)

 

「ランク4のレイダーズ・ナイト1体でオーバーレイネットワークを再構築!

 誇り高き隼よ、敗れた者たちの意思を継ぎ、全ての敵を殲滅せよ!ダブルランクアップエクシーズチェンジ!

 現れろ!ランク6!RR(レイド・ラプターズ)―レヴォリューション・ファルコン―エアレイド!!」

 

レヴォリューション・ファルコン―A「ケェエエエエエエェェェェェ!!」

                 ATK2000 ORU1

 

「レヴォリューション・ファルコン―エアレイドはエクシーズ召喚に成功した場合、相手フィールドのモンスター1体を破壊しその攻撃力分のダメージを与える!」

 

「させるか!!永続トラップ、安全地帯をアマゾネス女帝(エンプレス)に発動!

 表側攻撃表示モンスターを対象にし、このカードがある限り、対象モンスターは相手の効果対象にならず、戦闘でも効果でも破壊されない!」

 

『フハハハハ、いいぞいいぞ!

 ワンサイドゲームなんて面白くないからな。』

 

「だがまだ終わらん!

 手札からRUM(ランクアップマジック)―レイド・フォースを発動!

 自分フィールドのエクシーズモンスターをランクが1つ高いRR(レイド・ラプターズ)エクシーズモンスターにランクアップさせる!

 革命の翼よ・・・遥かな天空から同胞を導き、戦場を蹂躙せよ!ランクアップエクシーズチェンジ!

 現れろ!ランク7!RR(レイド・ラプターズ)―アーセナル・ファルコン!!」

 

 アーセナル・ファルコン ATK2500 RUM2

 

 機装の騎士が大空に浮かぶ超巨大な隼型母艦アーセナル・ファルコンに変わる。

 そしてそこから深い紫の禿鷹が出撃する。

 

「アーセナル・ファルコンの効果発動!

 1ターンに1度。オーバーレイユニットを1つ使い、デッキからレベル4、鳥獣族モンスター1体を特殊召喚する。

 来い!RR―ネクロ・ヴァルチャー!」

 

 アーセナル・ファルコン ORU2→1

 

 

ネクロ・ヴァルチャー「ケェェー!」

          DEF1600

 

「ネクロ・ヴァルチャーの効果発動!

 1ターンに1度、自分フィールド上のRR(レイド・ラプターズ)モンスター1体をリリースすることで、墓地からRUM(ランクアップマジック)カードを手札に加える。

 ただし、このターン俺はRUM(ランクアップマジック)の効果以外でのエクシーズ召喚を行えない。

 俺はアーセナル・ファルコンをリリースし、スキップ・フォースを手札に戻す。」

 

(スローライフで通常召喚を封じられているこの盤面でさらに召喚を縛るデメリットを自らに加えるだと!?)

 

RR(レイド・ラプターズ)モンスターをオーバーレイユニットにしたアーセナル・ファルコンが墓地に送られたことにより効果発動!

 エクストラデッキからアーセナル・ファルコン以外のRR(レイド・ラプターズ)エクシーズモンスターを特殊召喚し、墓地のこのカードをエクシーズ素材とする。

 来い!ランク4、RR(レイド・ラプターズ)―フォース・ストリクス!」

 

 フォース・ストリクス DEF2000 ORU1

 

 現れたのはメカニカルな姿をしたフクロウ

 その新たなモンスターの登場にグレースは疑問の声を上げる。

 

「えっ!ちょっと!?アンタこのターンはエクシーズ召喚出来ないんじゃないの!?」

 

「これはエクシーズ召喚ではなく特殊召喚だ。

 蘇生条件は満たせないが、ネクロ・ヴァルチャーの制約には引っかからない。」

 

「そういうことだ。

 フォース・ストリクスの効果発動!

 オーバーレイユニットを1つ使い、デッキからレベル4、鳥獣族の闇属性モンスター1体を手札に加える。

 俺が手札に加えるのはRR(レイド・ラプターズ)―ファジー・レイニアス

 

 さらに俺は速攻魔法、烏合無象を発動!

 元々の種族が獣族、獣戦士族、鳥獣族のモンスター1体をリリースし、そのリリースしたモンスターと同じ種族のモンスターをエクストラデッキから特殊召喚する!

 俺は鳥獣族のネクロ・ヴァルチャーをリリースし、同じく鳥獣族のRR(レイド・ラプターズ)―レヴォリューション・ファルコン―エアレイドを特殊召喚!」

 

 フォース・ストリクス ORU→0

 

 レヴォリューション・ファルコン―A ATK2000

 

「2体目か・・・」

 

「くうぅぅぅ、あいつの手札には・・・」

 

「そして再び、RUM(ランクアップマジック)―スキップ・フォースを発動!

 ランク6のレヴォリューション・ファルコン―エアレイドをランクが2つ高いエクシーズモンスターにランクアップさせる!」

 

(嫌な予感がする・・・!!)

「リバースカードオープン!トラップカード、戦線復帰発動!

 墓地のモンスターを守備表示で特殊召喚する!

 来い!アマゾネス王女(プリンセス)!!」

 

アマゾネス王女(プリンセス)「はっ!」

        DEF900

 

「勇猛果敢なる隼よ、怒りの炎を巻き上げ、大地をも焼き尽くす閃光となれ!ダブルランクアップエクシーズチェンジ!!

 飛翔せよ!ランク8!RR(レイド・ラプターズ)―サテライト・キャノン・ファルコン!!」

 

サテライト・キャノン・ファルコン「ケェェェェェェエエエェェェェ!!」

                ATK3000 ORU1

 

 それはもはや隼というものを超えた、外敵を焼き尽くす衛星兵器

 その照準は彼女らを護るカードたちに向けられる。

 

(アマゾネス王女の効果を・・・いやダメだ、ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴンの効果で無効にされモンスターを増やしてしまうッ。)

 

「サテライト・キャノン・ファルコンがRR(レイド・ラプターズ)モンスターを素材としてエクシーズ召喚に成功した場合、相手フィールド上に存在するマジック、トラップカードをすべて破壊する!

 この効果に対し相手はマジック、トラップ、モンスター効果を発動できない!」

 

「「なっ!!?」」「きゃあぁぁぁぁぁ!!」「ぐうぅぅぅぅぅうぅぅ!!」

 

アマゾネス女帝(エンプレス)「ぐあわああああぁぁぁぁぁぁ!!」――バンッ!

 

 グロリアの葛藤も無碍に終わる無慈悲な砲撃が閃光となって彼女たちの砦となるカードたちを破壊し、その閃光にアマゾネス女帝も巻き込まれる。

 

『あぁ~あ、安全地帯の対象となったモンスターは安全地帯がフィールドを離れたとき破壊される。

 アマゾネス女帝(エンプレス)は相手によってフィールドを離れた場合、アマゾネス女王(クイーン)1体を特殊召喚する効果があるが・・・

 残念ながら、自分の安全地帯の効果で破壊されたから発動できない。

 

 これでお前たちを護るのは、何もできない小さなお姫様だけか・・・

 実につまらん舞台になってしまったな・・・じゃあ、ウィングレイダー、幕引きだけは盛大に飾ってやれ。』

 

「言われなくてもこのターンで終わらせてやる!

 墓地のRUM(ランクアップマジック)―レイド・フォースの効果発動!

 このカードと手札のRR(レイド・ラプターズ)カード、RR(レイド・ラプターズ)―ファジー・レイニアスをゲームから除外することで墓地のRUM(ランクアップマジック)カード1枚を手札に加える!

 俺はRUM(ランクアップマジック)幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ラウンチを手札に加え発動!!

 

 ランク4のRR(レイド・ラプターズ)―フォース・ストリクス、1体でオーバーレイネットワークを再構築!

 まだ見ぬ勇猛な隼よ、猛き翼に秘めし未知なる力、今ここに知らしめよ!ランクアップエクシーズチェンジ!!

 現れろランク5!RR(レイド・ラプターズ)―エトランゼ・ファルコン!!」

 

 エトランゼ・ファルコン ATK2000 ORU2

 

「エトランゼ・ファルコンの効果発動!

 このカードがエクシーズモンスターをオーバーレイユニットにしている場合、1ターンに1度オーバーレイユニットを1つ使い、相手モンスター1体を破壊しそのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える!

 アマゾネス王女も破壊だ!!そしてその攻撃力1200ポイントのダメージを受けるがいい!!」

 

アマゾネス王女「うわあああぁぁぁぁぁ!!」――バンッ!

 

グロリア「ぐわああぁぁぁぁ!!」

    ATK5500→4300

 

「姉さ『ひいいぃぃぃぃぃ!!』

 

『きゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!おねぇちゃん!!おねぇちゃん!!』

 

 グレースが姉を気遣う声をかき消すように今まさに回転のこぎりが頭上に迫る姉妹たちの悲痛な叫びが木霊する。

 

「もうお前たちを守るものは何もない!

 エトランゼ・ファルコンとサテライト・キャノン・ファルコンでダイレクトアタック!!」

 

「うわああぁぁぁぁぁぁ!!ぐぅ・・・」

 LP4300→2300

 

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!がっ!!」

 LP2300→0

 

 機械の隼たちの砲撃で二人は宙を舞い、地面に叩きつけられる。

 それにより彼女たちの敗北が決した、決してしまった。

 

『あぁ~あ、2周目に行かないでやんの・・・

 期待外れだったな~じゃあ、こっちで楽しむとしますか。』

 

『――ギュイイイイィィィィィィィィィィ!!』

 

『いや・・・いやいやイヤイヤイアああぁぁぁぁぁぁ!!

 

 クラウン・ジョーカーはカメラを徐々に迫る電動のこぎりに身を屈めて何とか助かろうとしている人質、いや玩具に向ける。

 

「っ!!?まさか本当に!?」

 

「ちょ!ちょっと!!?アンタたち!!やめさせなさいよ!!アレ!!」

 

「・・・何を言っている!」

 

「お前たちが今までやってきたことだろう!!」

 

『おっと!こっからよい子は見ちゃダメ!!』『――バンッ!!ブチュ!!

 

あぁァァぁx――ガgッガggァツガガギュチュガガgァxガガ!!

 

 電動のこぎりが彼女を切り裂くその瞬間、クラウン・ジョーカーはロッカーの扉を蹴り閉めるが、ガリガリグチャグチャと生々しい音が響き

 その扉の隙間からは夥しい赤黒い液体が飛び散り黒い道化を汚す。

 

『――ぁ・・・えっ・・・?』

 

『いや~助かってよかったね。妹ちゃん♪

 頑張ったレイダーズに盛大な拍手を~って、縛られているからできないっか!』

 

『え・・・お、おねぇちゃんは?』

 

『えっ?見てなかった?・・・もういないよ?』

 

『あ?ああああぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

 クラウン・ジョーカーは何を言っているのか分からないという風にあっけらかんと告げる。

 現実逃避をしていた少女はその言葉で、現実に戻され絶叫した。

 

『なんでっ!!なンでッ!!ナンデッ!!あああぁぁぁぁぁァァァ!!

 

『なんでって、これが君たちの遊びなんだろう?

 戦争っていうのは人が死ぬものだ・・・それを遊びだって言っているんだからさ。

 遊びで人が死んでも仕方がないよね?』

 

「「!!?」」

 

『我ら、戯遊師団スートはあらゆる世界のニーズに応えたスリルと興奮をお届けできる【遊び】を提供しておりますぅ~

 ではでは、そこのヒーロー君が来るまで持ちこたえられなかったお二人さん、また次のゲームでお会いしましょう。

 あっ!お代は後で結構ですので~Ciao~!!』

 

 投影された映像が消える。

 二人の前にいたはずの黒ずくめ達も消え失せ、この場にいるのはタイラー姉妹ただ二人だけである。

 

「ッ!!」

 

「なんなのよ・・・なんなのよぉおおぉぉぉ!!

 

 黙っても、叫んでも、二人が得られたのは‟何も救えなかった”という事実だけである。


 日が落ちた森の中を俺は進む。

 

≪本当なのか?≫

 

 信じたくなかった。仲間の中に裏切り者がいるなどと

 

≪あぁ、お前も見ただろう?

 他に光源がない。真っ暗な山の中で明かりが漏れ出していたのを・・・

 あれじゃ、見つけてくださいと言っているようなもんだ。≫

 

≪麓から続く古い参道にも罠や隠すような仕掛けはなかったからな。

 逃亡し隠れているのに、どう考えても不自然だろう。≫

 

 だが、状況が証拠を突きつけてくる。

 あの場所がアカデミアに見つからないのではなくアカデミアから見逃されているのだと

 

≪僕みたいなのじゃないと思うよ。君たちの幼馴染なんだろう?≫

 

 スパイではなく、裏切り者、それがレジスタンスの中に紛れている。

 

≪ハァ~モウ少シ時間ト材料ガアレバ、フェイカー様ナラ次元転移ヲモット量産スルコトガデキタハズデアリマスノニ・・・≫

 

 俺と隼の持つデュエルディスク、これはカイトから渡されたものだったが、それはDr.フェイカーが作ったものだった。

 逃走するための手段を講じていたのに彼が裏切る必要があるだろうか、いや逃げる手段を見つけてしまったから彼は消されたんだ。

 大攻勢はそれを隠ぺいするためのフェイクに過ぎなかった。

 

『だから!君が奴らをおびき出すんだ!』

 

「だから!あいつはそれっきり見てねぇって!!」

 

 森の中で焦る声が響く

 

≪あの副指令のことだ、きっと追い詰めたら焦りだす。

 レジスタンスの関係者っていう餌も用意したら、協力者を呼びつけるだろう。≫

 

『だったら、今いる奴らだけでいい!

 いいか!しくじるんじゃないぞ!!』――プツンッ・・・

 

「クソッ!勝手言いやがって!!だけど・・・やるしかないよな・・・・・・」

 

――ザッ!

 

「っ!!?」

 

 カード化技術を広めることが出来て、リーダーシップもある。

 実際、クローバー校のレジスタンスのまとめ役だった。

 なのに・・・・どうしてなんだ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アレン・・・」




扉を閉めると、血糊の入った袋が鉄線で破れて噴き出す仕組みか・・・
君、よくこんなの考えるよね。

マジックのタネっていうのはこれくらいシンプルな方がいいんだよ。
じゃあ、しっかりしろよ~アシスタント。
失敗したらマジで真っ二つ、かもな?

わかってるよ。閉まったらすぐに助けて猿轡をする。わかっているさ。
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『暴走裏切り超特急』
でも、なんで豚骨なんて持ってきたの?

骨からとれるスープは栄養価が高いんだよ。
まぁ、今回はダミーに使うんだけど


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暴走裏切り超特急

この裏切りは悪ですか?



「そ!そうですか!!

 倫理委員会の方々が直々に来て下さると!?」

 

『あぁ、我々も、もちろんプロフェッサーも此度の事態は大変重く見ている。

 悪魔 榊 遊矢とその仲間は我々が必ず殲滅しよう。』

 

 黒い制服の女性に指令室にいた全員から安堵の息が漏れる。

 突然に始まる残忍な敵との戦い、アカデミアでも指折りの実力者だったタイラー姉妹の完全敗北、次々と消える仲間たち、そして『死』

 明日は我が身と震える彼ら(子供)に大人からの頼もしい言葉はまさに光だった。

 

『奴らの居場所は掴んでいるのだったな?』

 

「あ、いや~・・・実は榊 遊矢の一味の中にレジスタンスがいるようでして・・・

 レジスタンス内に潜入させているスパイに、そやつらを誘き出せることができます!」

 

『なるほど・・・そいつらを餌に榊遊矢を釣れる可能性もあるというわけか。

 ならば、我々は明日の夜、そのレジスタンスのアジトを襲撃する。

 それまでスパイに命じ、一味をそこに留めさせよ!』

 

――はっ!!了解いたしました!!

 

 敬礼をし通信を終える。

 野呂はすぐさまエクシーズ次元で勧誘したスパイである神月 アレンへと連絡を付ける。

 アレンは自分のアジトに件のレジスタンスが榊 遊矢を連れて帰ってきたことを告げ、野呂は「何故早くそれを報告しないのか!」と怒鳴り、「そんなこと知らねぇよ!」と通信越しで言い争いが始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『やっぱり、アレンがスパイだったか・・・』

 

 それを部屋の外で聞いている者が一人

 近未来的な船内の通路で場違いな恰好をした黒い道化は次なるゲームを思案する。

 

『意外と大人が動き出すのが早い。

 人海戦術が通用しないと悟ったのか、ストックがなくなったのか・・・

 

 新しい情報が必要だな・・・

 しかしここまで暴れて来ないとなると、ハゲも俺とあいつを接触させたくはないんだろう。

 なら、仕掛けを変えて釣り出すか。』

 

 方針が決まり、道化はその手に持ったデッキからカードを数枚入れ替えながら、遠い過去の御伽噺を思い返す。

 

『世界はそんなに優しくない。

 残酷な現実に打ちのめされることもあるだろう。

 理不尽な運命に翻弄されることもあるだろう。

 人の思いに押しつぶされることもあるだろう。』

 

 道化は立ち上がり、残酷な現実に直面しているであろう、優しき反逆者に思いを馳せ

 

『それでも逃げ出せないってのは、辛いもんだよな・・・』

 

 闇に紛れていた。


「アレン・・・」

 

「!!?」

 

 思わず漏れてしまった俺の言葉に彼は振り向く。

 

 俺たちは親友だった――学校は離れていても気があってよく遊んだ。

 

 俺たちは仲間だった――街がこんな風になっても助け合い、励まし合った。

 

 それがどうして・・・

 

「ユート・・・隼・・・」

 

「ッ!!アレンッ!!貴様ッアアァァァァ!!!」

 

 激昂した隼がアレンに掴みかかろうとするが、アレンの靴が変形しローラーが出て素早く回避し、逆にその加速力を利用した拳を隼に叩き込んだ。

 

グウゥ!!?がはっ!!ごふぉ!!ゴッ・・・・」

 

「あぁ・・・バレちまったか・・・

 あいつらにはてめぇらを差し出せってことだったけど、こうなっちまったら仕方ねぇよな!」

 

 アレンはデュエルディスクを起動する。

 俺たちに向ける彼の猫のような目は獲物を狙う肉食獣のように鋭く突きつけられた。

 

「アレン・・・お前がその気なら!!」

 

「待て、隼!ここは・・・俺がやる。」

 

 隼も怒りと悲しみと動揺を噛み殺し、デュエルディスクを起動させようとするが俺がそれを止め、声を上げる。

 隼はそれが意外だったのだろう、心配を籠めて俺の名を呼ぶ。

 

「ユート!?そんな、お前は・・・」

 

「大丈夫、大丈夫だ・・・だから、俺に任せてくれ。」

 

「ふっ、どっちでもいいさ。

 どっちでも、ここでてめぇらをぶっ潰すことには変わりねぇんだからな!!」

 

『『決闘(デュエル)!!』』

 

「先攻は俺から行く。

 俺はマジックカード、増援を発動。

 デッキからレベル4以下の戦士族、幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ティアースケイルを手札に加え召喚!」

 

 ティアースケイル ATK600

 

「手札を1枚捨て、ティアースケイルの効果発動!

 デッキから幻影騎士団(ファントム・ナイツ)モンスター、またはファントムマジック、トラップカードを墓地へ送る。

 俺がデッキから墓地に送るのは幻影翼(ファントム・ウィング)

 

 さらに今捨てた幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ラギッドグローブの効果発動!

 このカードを墓地から除外することでデッキから幻影騎士団(ファントム・ナイツ)カード、またはファントムマジック、トラップカードを墓地へ送る。

 この効果で俺は幻影騎士団(ファントム・ナイツ)トゥーム・シールドを墓地へ!

 

 そして俺のフィールドに幻影騎士団(ファントム・ナイツ)モンスターが存在することにより、手札の幻影騎士団(ファントム・ナイツ)サイレントブーツを特殊召喚する!」

 

 サイレントブーツ DEF1200

 

「俺はレベル3のティアースケイルとサイレントブーツでオーバーレイ!

 来い!ランク3、虚空海竜リヴァイエール!」

 

リヴァイエール「ギャアアァァァァァァ!!」

       DEF1600 ORU2

 

 砕け落ちる鎧と音なき靴が混沌に飲まれ虚空を揺蕩う魂を導く竜を呼び出す。

 

「リヴァイエールの効果発動!

 オーバーレイユニットを1つ使い、除外されている自分のレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚する。

 幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ラギッドグローブを特殊召喚!」

 

 リヴァイエール ORU2→1

 

 ラギッドグローブ DEF500

 

「さらに墓地の幻影翼(ファントム・ウィング)を除外して効果発動!

 墓地の幻影騎士団(ファントム・ナイツ)モンスター、ティアースケイルを呼び戻す。」

 

 ティアースケイル DEF1600

 

「俺はティアースケイルとラギッドグローブの2体でさらにオーバーレイ!

 戦場に倒れし騎士たちの魂よ、今こそ蘇り、闇を切り裂く光となれ!エクシーズ召喚!

 現れろ!ランク3、幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ブレイクソード!」

 

 ブレイクソード ATK2000→3000 ORU2

 

 混沌より駆け出したのは砕けた大剣を背負う騎士

 その背後には巨大なボロボロの手袋をした騎士の魂が憑き、彼の力を高める。

 

「ラギッドグローブを素材にした闇属性エクシーズモンスターは攻撃力を1000ポイント上昇させる!

 俺はさらにマジックカード、エクシーズ・ギフトを発動!

 自分フィールドにエクシーズモンスターが2体以上存在する場合、自分フィールドのオーバーレイユニット2つを取り除くことでデッキから2枚ドローする。

 リヴァイエールとブレイクソードのオーバーレイユニットを1つずつ取り除き、2枚ドローだ!」

 

 リヴァイエール ORU1→0

 ブレイクソード ORU2→1

 

「墓地のサイレントブーツを除外して効果を発動!

 デッキのファントムマジック、トラップカードである幻影霧剣(ファントム・フォッグ・ブレード)を手札に加え、さらに幻影騎士団(ファントム・ナイツ)モンスターが除外されたことにより、墓地のティアースケイルの効果が発動!

 ティアースケイルを特殊召喚する。

 

 さらに自分フィールドに幻影騎士団(ファントム・ナイツ)モンスターが特殊召喚されたことにより手札の幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ステンドグリーブの効果を発動し特殊召喚!」

 

 ティアースケイル DEF1600

 ステンドグリーブ DEF600

 

 三度現れるティアースケイルとそれに追随するように現れた汚れた脛当てを身に着けた青い炎ステンドグリーブ

 ファーストターンで俺のやれることは少ない。

 なら出来るだけ、次のターンのリソースを稼ぐ!

 

「俺はレベル3のステンドグリーブとティアースケイルでオーバーレイネットワークを構築!

 魂の眠る場所を探すがいい、ランク3、彼岸の旅人 ダンテ!」

 

彼岸の旅人 ダンテ「ふん。」

         DEF2500 ORU2

 

「ダンテの効果発動!

 オーバーレイユニットを1つ使い、デッキの上から3枚までカードを墓地へ送ることで、ターン終了時までこのカードの攻撃力を墓地に送ったカード1枚に付き500ポイントアップさせる。

 俺は3枚のカードを墓地に送りダンテの攻撃力を1500ポイントアップ。」

 

 彼岸の旅人 ダンテ DEF2500

           ATK1000→2500 ORU2→1

 

「カードを2枚伏せ、ターンエンドだ。」

 

 彼岸の旅人 ダンテ DEF2500

           ATK2500→1000 

 

「先攻で伏せることぐらいしかしなかったお前が、随分と動くじゃねぇか。

 変われば、変わるもんだ。」

 

「あぁ、お互いにな。」

 

「ユート、アレン・・・」

 

「だけどな!てめぇらがどんだけ強くなろうと、俺はその上を行く!行かなきゃならねぇんだ!!

 俺のターン!ドロー!!

 俺は速攻魔法、緊急ダイヤを発動!

 このカードは1ターンに1度、相手フィールド上のモンスターの数が俺のフィールドのモンスターの数より多いときに発動できる。

 デッキから地属性機械族のレベル4以下とレベル5以上のモンスターをそれぞれ1体、効果を無効にして守備表示で特殊召喚する。

 ただし、このカードを発動させたターン俺は機械族モンスターでしか攻撃宣言できない。

 来い!レベル10、重機貨列車デリックレーン!レベル4、イエロー・ガジェット!」

 

デリックレーン――ゴオオオォォォォォォォ!

       DEF2000

 

 イエロー・ガジェット DEF1200

 

 現れたのは大型のクレーンをつけた貨車を牽引するディーゼル機関車と黄色い歯車に手足が生えたようなモンスター

 ガジェット?初めて見るモンスターだ。それに歯車か・・・

 

「俺はマジックカード、テラ・フォーミングを発動!

 デッキからフィールド魔法カード、転回操車を手札に加えて発動

 このカードは1ターンに1度、手札を1枚墓地に送ることでデッキから機械族、地属性、レベル10のモンスターを1体手札に加える。

 手札の無頼特急バトレインを墓地に送り、弾丸特急バレット・ライナーを手札に加える。

 そしてこいつは俺のフィールドのモンスターが地属性機械族モンスターだけの時、手札から特殊召喚できる!」

 

バレット・ライナー――プワアアアァァァァァァン!!

         ATK3000

 

 空気を切り裂き弾丸のような速度で蒼き列車が到着する。

 これほど素早くレベル10モンスターを揃えるとは!?

 

「俺はレベル10のバレット・ライナーとデリックレーンの2体でオーバーレイ!

 地より昇り天空へ襲来せよ!エクシーズ召喚!

 来い!ランク10、超巨大空中宮殿ガンガリディア!!」

 

 ガンガリディア ATK3400 ORU2

 

 現れたのはその名に恥じない巨大な空中浮遊要塞

 2本の飛行船のようなものを船のようなものが繋げている。

 

「ガンガリディアの効果発動!

 1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ使って、相手フィールド上のカードを1枚破壊し1000ポイントのダメージを与える!

 伏せカードは破壊させてもらうぜ!」

 

 ガンガリディア ORU2→1

 

 ガンガリディアから錨のようなものが放たれこちらへ向かってくる。

 だが、それは着弾する前に霧のように霧散する。

 

「永続トラップ、幻影霧剣(ファントム・フォッグ・ブレード)を発動した。

 このカードの対象となったモンスターは攻撃対象にならず、効果が無効になり、さらに攻撃ができない。」

 

「そう来るよな、お前なら。

 だがエクシーズモンスターの効果を使うためにオーバーレイユニットとして墓地へ送られたデリックレーンの効果がまだ残っているぜ!

 相手フィールド上のカード1枚を破壊する!当然セットカードだ。」

 

「チェーンしてトラップ発動!ダメージ・ダイエット!

 このターン俺が受けるあらゆるダメージは半分になる!」

 

 これでアレンのエースモンスターの効果でライフを失うことはなくなったはず・・・

 リミッター解除を手札に持ってない限りは、だが

 

「ちっ、めんどくせぇもんしこんでやがったな。

 だけどな、まだ俺は通常召喚もしてないんだぜ?グリーン・ガジェットを召喚して効果発動!

 こいつが召喚、特殊召喚されたとき、デッキからレッド・ガジェット1体を手札に加える。」

 

 グリーン・ガジェット ATK1400

 

 続いて現れたのはイエロー・ガジェットと似た緑の歯車のモンスター

 このモンスターたちはまさか!?

 

「レベル4のイエロー・ガジェットとグリーン・ガジェットでオーバーレイ!

 エクシーズ召喚!ランク4、ギアギガントX(クロス)!」

 

 ギアギガントX(クロス) ATK2300 ORU2

 

 2体の歯車から呼び出されたのはガジェットたちと違いプラスティックのような質感のギアで作られた人型のロボット

 スタンダード次元でもよく見かけた機械族のエンジンとなるエクシーズモンスターだ。

 

「ギアギガントX(クロス)の効果発動

 1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ使い、デッキ、墓地からレベル4以下の機械族モンスター1体を手札に加える。

 俺はデッキからレベル4の起動兵長コマンドリボルバーを手札に加えるぜ。

 

 そして俺もマジックカード、エクシーズ・ギフトを発動!

 ガンガリディアとギアギガントXのオーバーレイユニットを1つずつ取り除いて2枚ドローだ。

 

 さらにさっき手札に加えた起動兵長コマンドリボルバーの効果を墓地のグリーンとイエローの2体のガジェットを対象に発動、こいつを特殊召喚する!」

 

 コマンドリボルバー ATK0→2000

 

 現れたのはずんぐりとした足の代わりに車輪がついたロボット

 その2つの車輪の中心にはグリーン・ガジェットとイエロー・ガジェットがそれぞれ埋め込まれている。

 

「対象となった機械族のガジェットモンスターはこいつのギアとして装備され、コマンドリボルバーはギア1つに付き攻撃力を1000ポイントアップさせる。

 

 だが、このギアの使い道はそれだけじゃないぜ!

 永続魔法発動!起動指令 ギア・チャージ!

 このカードは発動時に自分フィールドの装備カード扱いのガジェットモンスターを任意の数特殊召喚する!」

 

「「何っ!?」」

 

「来い!イエロー・ガジェット!グリーン・ガジェット!

 そしてイエローの効果でグリーンをグリーンの効果でレッドのガジェットを手札に加えるぜ!」

 

 イエロー・ガジェット ATK1200

 グリーン・ガジェット ATK1400

 

 一気にアレンのフィールドを埋め尽くす歯車のモンスターたち、そしてその2体のガジェットたちがデッキから新たなガジェットを呼んでくる。

 やはり、あのモンスターたちは相互にサーチする効果を持ったモンスターか!

 

「俺はさらにレベル4のコマンドリボルバーとグリーン・ガジェットでオーバーレイ!

 エクシーズ召喚、ランク4、ギアギガントX(クロス)

 そして効果を発動させ、デッキからレベル4の機械族モンスター、クロノダイバー・ベゼルシップを手札に加える。」

 

 ギアギガントX(クロス) ATK2300 ORU2→1

 

「ここで永続魔法、起動指令 ギア・チャージのもう1つの効果を発動。

 手札を1枚捨て、デッキから起動提督デストロイリボルバーを1体手札に加える。

 そして、墓地のベゼルシップの効果を発動

 自分フィールド上のオーバーレイユニットを1つ墓地に送ることでこいつを特殊召喚する。

 ギアギガントX(クロス)のオーバーレイユニットを使って特殊召喚だ。」

 

 ギアギガントX(クロス) ORU1→0

 

 クロノダイバー・ベゼルシップ DEF2000

 

 新たに現れたのはこれまでのモンスターとは一風変わった尖った胴体に2本のリングが付いた近未来的な船

 そしてこれでまたアレンのフィールドにレベル4のモンスターが揃ってしまった・・・

 

「レベル4のクロノダイバー・ベゼルシップとイエロー・ガジェットでオーバーレイ!

 3体目のギアギガントX(クロス)をエクシーズ召喚して効果発動!

 オーバーレイユニットを1つ使ってデッキからレベル4の機械族モンスター、ゴールド・ガジェットを手札に加える。

 

 そして手札のガジェットモンスター、レッド・ガジェット2体を墓地へ送り、手札から起動提督デストロイリボルバーを特殊召喚!」

 

 ギアギガントX(クロス) ATK2300 ORU2→1

 

デストロイリボルバー――ガッガッガッガッ、ブシュウウウウゥゥゥゥゥゥゥ!!

          ATK2500

 

 ギアの駆動音を轟かせ、蒸気を吐き出す巨大なロボットが現れる。

 

「モンスターが1ターンで5体!?」

 

「おっと隼!これで終わりじゃないだぜ!!

 デストロイリボルバーの効果!1ターンに1度、フィールド上のカード1枚を破壊する。

 ダンテには消えてもらうぜ。」

 

――ブオオオオォォォォォォォォォオオオ!!

 

 高温の蒸気を吹き出し、デストロイリボルバーがダンテを鷲掴みにして握りつぶす。

 モンスターは5体、こちらは2体

 だが、ブレイクソードの効果や墓地のカードの効果で攻撃を防ぐことはできる。

 このターンは凌げるが・・・・

 

「俺はランク4のギアギガントX(クロス)1体でオーバーレイネットワークを再構築!ランクアップエクシーズチェンジ!

 出撃しろ!ランク5、旋壊のヴェスぺネイト!」

 

旋壊のヴェスぺネイト――ヴォオオゴオオオオォォォォォォォォン

         ATK2500 ORU1

 

 3機のジェットエンジンとドリルを持つ巨大な蜂を模したロボット

 こいつはランク4の上に重ねてエクシーズ召喚できるモンスター、その能力は・・・まだ耐えきれるか?

 

「そしてランク10の超巨大空中宮殿ガンガリディア1体でオーバーレイネットワークを再構築!」

 

 空中に浮かんでいたガンガリディアが光の砲弾となって地の彼方へ飛んでいく

 

「天より堕ちて地を穿て!世界震撼!即撃発車!!ランクアップエクシーズチェンジ!!」

 

 着弾した光の中で巨大な鉄の城が顕現していく

 5本の列車に支えられた深緑のボディ、その上部に取り付けられた巨大な砲塔

 それは歴史の中に葬られた名もなき兵器

 

「ランク11!超弩級砲塔列車ジャガーノート・リーベ!現着!!」

 

 ジャガーノート・リーベ ATK4000 ORU1

 

 アレンの召喚したそのモンスターに隼の顔が青くなる。

 あのモンスターはここから一山超えた場所に顕現しているが、それでも異様な大きさを誇り、黒光りした下部の列車1本とほぼ同じ太さの砲身がこちらを狙っている。

 リアルソリッドビジョンでそのモンスターの攻撃が直接当たったらどうなるか・・・

 

「やめろアレン!!あのモンスターで攻撃すればユートは!!?」

 

「バラバラになろうが知ったこっちゃねぇよ!!

 どっちにしてもてめぇらはここで終わるんだからよ!!

 榴弾装填!方位射角修正!!目標!ブレイクソード!!第一射発射!!」

 

ブレイクソード「!!」

 

 アレンの攻撃命令と同時に山の向こうの暗闇で光が弾ける。

 それを察したブレイクソードは愛馬を走らせ、空に躍り出て

 

――・・・・・・・・ヒュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥ、ドオオオォォォォォォォォン!!

 

「「うわああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」

 LP4000→3500

 

 光が弾け、その後に風切り音と鼓膜が破れそうなほどの爆発音が俺たちを襲う。

 リヴァイエールが守ってくれなかったら吹き飛ばされていたことだろう。

 そしてその身を犠牲にしたブレイクソードの志は眠れる同胞を呼び覚ます。

 

 ステンドグリーブ DEF600  LV3→4 

 ティアースケイル DEF1600 LV3→4

 

「知っているよな?

 ジャガーノート・リーベはエクシーズ素材の数だけモンスターへの攻撃回数が増えるってことをよ!!

 第二射!!リヴァイエールに向け!!発射!!」

 

「くっ!?リヴァイエール!!」

 

リヴァイエール「オオォォォォォォ!!」

 

 リヴァイエールは空間を操り、爆風が届く範囲の外でその身をジャガーノート・リーベの砲弾にさらす

 

――ドオオオォォォォォォォォォォン!!

 

「ちっ、邪魔しやがって・・・だったら雑魚共だけでも始末させてもらうぜ!

 ギアギガントX(クロス)でティアースケイルを、ヴェスぺネイトでステンドグリーブを攻撃!

 ヴェスぺネイトの貫通ダメージもくらいやがれぇぇ!!」

 

「ぐはっ!!・・・ぁぁ・・・・・・」

 LP3500→2550

 

 拳が魂を打ち砕く、螺旋が志を穿つ、木に体が叩きつけられる。

 その痛みがアレンが本気だということを伝えてくる・・・分かって、しまう・・・・・

 

「ユートォォ!!

 くっ!アレン!どうしてだ!?その力さえあればアカデミアの奴らを、なのになぜ!!?」

 

「・・・・・・出来ると思ってんのかよ。

 

「えっ?」「なんだ?」

 

「ちっ、なんでもねぇ・・・

 墓地にはミストクロウズとシャドーベイル・・・まったくめぇんどくせぇ、バトルは終了だ。

 だがまだ終わりじゃねぇ!

 このカードはエクシーズモンスターが戦闘を行ったターンに1度、自分フィールド上のエクシーズモンスターの上に重ねてエクシーズ召喚できる!!

 俺はオーバーレイユニットを持ったギアギガントX(クロス)1体でオーバーレイネットワークを再構築!!」

 

 地から光が雷を描いて天に昇る、黒雲が現れ稲光が弾ける。

 

「地より昇り天を照らせ!天地震撼!電光来迎!オーバーランクアップエクシーズチェンジ!!」

 

 清浄の白と神聖の金、雷をまき散らすその姿はまさに神のごとき――マシン

 

「降臨せよ!ランク12!天霆號(ネガロギア)アーゼウス!!」

 

アーゼウス――ゴオオオォォォォォォォォォバリバリッ!!

     DEF3000 ORU2

 

 アーゼウスまで使ってくるか・・・

 アレンの戦術は豪快だがいつもだったら後続が続かない。

 だが、あのガジェットというモンスター群がそれを補い、それこそ使いつぶすことも可能にしている。

 

「カードを1枚伏せ、エンドフェイズ。

 エンドフェイズにこのターン墓地へ送られた無頼特急バトレインと弾丸特急バレット・ライナーの効果発動

 バトレインの効果でデッキから機械族地属性レベル10モンスター、バレット・ライナーを、バレット・ライナーの効果で墓地の機械族モンスター、デリックレーンを手札に加える。

 これでターンエンドだ。」

 

「・・・俺のターン、ドローだ。

 墓地のラギッドグローブを除外して効果発動、幻影翼(ファントム・ウィング)を墓地に送る。

 そして、幻影霧剣(ファントム・フォッグ・ブレード)の効果でティアースケイルを墓地から特殊召喚する!」

 

 ティアースケイル DEF1600

 

「ティアースケイルの効果、手札を1枚捨てデッキから幻影騎士団(ファントム・ナイツ)サイレントブーツを墓地へ送る。

 そして、幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ダスティローブを召喚!」

 

 ダスティローブ ATK800

 

「ならダスティローブの召喚にチェーンして永続トラップ、掃射特攻!

 1ターンに1度、自分フィールド上の機械族エクシーズモンスターのオーバーレイユニットを任意の数使って、その数だけフィールドのカードを破壊する!

 ヴェスぺネイトとジャガーノート・リーベのオーバーレイユニットを1つずつ使って、ステンドグリーブとティアースケイルを破壊だ!」

 

 ヴェスぺネイト     ORU1→0

 ジャガーノート・リーベ ORU1→0

 

「っ!!?ユート!また来るぞ!!」

 

「させはしない!

 墓地の幻影騎士団(ファントム・ナイツ)トゥーム・シールドの効果を発動!

 自分のターンにこのカードを墓地から除外することで、相手フィールドの表側表示のトラップカードの効果をターン終了時まで無効にする!」

 

「ならチェーンして、アーゼウスの効果発動!

 互いのターンにオーバーレイユニットを2つ使うことで、アーゼウス以外のフィールドの全てのカードを墓地に送る!!」

 

アーゼウス――ウオオオォォォォォオオオオオオォォォオオオオ!!

     ORU2→0

 

 2つの光がアーゼウスに取り込まれ、搭載された様々な装置が唸りを上げる。

 機械仕掛けの神の裁きが雷となってフィールドを埋め尽くした。

 やはり俺の戦術を知っているアレンが相手だとやりにくい・・・俺たちが言えたことじゃないが

 

 手札はなくなってしまった。

 俺に今やれることは・・・

 

「墓地のサイレントブーツの効果、このカードを除外しデッキから幻影騎士団(ファントム・ナイツ)カード、RUM(ランクアップマジック)幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ラウンチを手札に加える!

 さらに墓地の幻影翼(ファントム・ウィング)を除外し幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ブレイクソードを特殊召喚!」

 

 ブレイクソード ATK2000 

 

「そしてRUM(ランクアップマジック)幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ラウンチ発動!

 オーバーレイユニットの無い闇属性エクシーズモンスターを1つ高いランクの闇属性エクシーズモンスターにランクアップさせ、その後このカードをオーバーレイユニットにする!

 ランク3のブレイクソード1体でオーバーレイネットワークを再構築!

 死せる騎士よ。機装の鎧を身に纏い、新たな未来を築く光となれ!ランクアップエクシーズチェンジ!

 現れろ!ランク4、レイダーズ・ナイト!」

 

レイダーズ・ナイト――シュココオオオオォォォ!

         ATK2000 RUM2

 

 青白い炎が吹き出すダクトを装備した機械の鎧を持つ騎士が現れる。

 

「レイダーズ・ナイトの効果発動!

 オーバーレイユニットを1つ使い、このモンスターよりランクが一つ低いまたは高いRR(レイド・ラプターズ)幻影騎士団(ファントム・ナイツ)、エクシーズ・ドラゴンエクシーズモンスター1体をこのカードを素材にエクシーズ召喚する!

 転生せよ!ランク3!幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ブレイクソード!」

 

 レイダーズ・ナイト ORU2→1

 

 ブレイクソード ATK2000 ORU2

 

「またブレイクソードか。

 だが、俺の墓地には掃射特攻がある、こいつは俺の機械族エクシーズが相手によって破壊された場合、墓地の機械族エクシーズと共に除外することで相手にそのランク×200ポイントのダメージを与える。

 アーゼウスを破壊したら大ダメージだぜ!」

 

 わかっている。だが、ここで止まるわけにはいかない!!

 

「ブレイクソードの効果発動!

 オーバーレイユニットを1つ使い、ブレイクソード自身とアーゼウスを破壊する!」

 

ブレイクソード――ガシャン!ガシャン!ガシャン!

       ORU2→1

 

アーゼウス――オオオォォォォオオォォォ!ドオオオオオォォォォォン!!

 

 ブレイクソードが疾走し、天の機械神の胸にその剣を突き立てる。

 アーゼウスも神への反逆者に雷を持って裁きを下し、ブレイクソードの主である俺にも一本の雷光が迫ってくる。

 

「掃射特攻の効果発動!

 このカードとランク11のジャガーノート・リーベを除外して2200のダメージを喰らいやがれぇ!!」

 

「っ!!墓地のトラップカード!ダメージ・ダイエットを除外することで、このターン、俺が受ける効果ダメージを半分にする!うわっ!!」

 LP2550→1450

 

「ちっぃ!!またかよっ!!早くしねぇと・・・」

 

「・・・?

 ブレイクソードの効果!墓地からステンドグリーブとダスティローブをレベルを1つ上げて特殊召喚!」

 

 ステンドグリーブ DEF600  LV3→4

 ダスティローブ  DEF1000 LV3→4

 

 ダスティローブを呼び出してしまった以上、俺は手札を増やすことができない。

 追い詰められているのは俺の方なのに、アレンはそれでも焦りを見せた。

 あの視線の方角は・・・

 

「・・・俺はレベル4となったステンドグリーブとダスティローブの2体でオーバーレイネットワークを構築!

 漆黒の闇より愚鈍なる力に抗う反逆の牙!今、降臨せよ!エクシーズ召喚!!

 現れろ!ランク4!ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン!!」

 

ダーク・リベリオン「ギャアアアオオォォォォォォォォォ!!」

         ATK2500 ORU2

 

「来やがったな。ユートのエース

 だが、そいつのモンスター効果を発動するための俺のモンスターは居ねぇぜ!」

 

「ならダイレクトアタックだ!

 ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンでアレンにダイレクトアタック!!

 反逆のライトニング・ディスオベイ!!」

 

ダーク・リベリオン「オオオォォォォォォ!!」

 

「ぐわああああぁぁぁぁぁっ!!」

 LP4000→1500

 

 ダーク・リベリオンがアレンへ向け尻尾を振るう。

 アレンはそれにより吹き飛ばされ、叩きつけられるが

 そんな痛みなど関係ないとばかりに、アレンは立ち上がる。

 

「ぐ、くぅ・・・だが、ライフはこれ以上減らせねぇだろ・・・」

 

「む、墓地の幻影騎士団(ファントム・ナイツ)クラックヘルムの効果発動、このカードを除外する。

 そして、エンドフェイズ、クラックヘルムの効果で墓地の幻影騎士団(ファントム・ナイツ)カード、RUM(ランクアップマジック)幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ラウンチを手札に加える。ターンエンドだ。」

 

「俺のターン!ドロー!!

 俺は手札からマジックカード、貪欲な壺を発動

 墓地の5体のモンスター、アーゼウス、グリーン・ガジェット、ギアギガントX(クロス)3体をデッキに戻して2枚ドロー

 

 妨害もできなくなったのなら、好き勝手やらしてもらうぜ!

 ゴールド・ガジェットを召喚!その効果で手札からレベル4の機械族モンスターを特殊召喚する!

 来い!古代の歯車機械(アンティーク・ギアガジェット)!!」

 

 ゴールド・ガジェット ATK1700

 古代の歯車機械(アンティーク・ギアガジェット)  DEF2000

 

 現れたのは金色の球体が変形したロボットと、これまでのガジェットとくらべ古めかしい歯車のロボット

 古代の機械(アンティーク・ギア)!?いや、歯車型のモンスターということは・・・

 

「そのモンスターたちは・・・」

 

「あぁ、あいつらが要らねぇって俺に押し付けてきやがったんだ。

 だが、中々使えるぜこいつらは

 古代の歯車機械(アンティーク・ギアガジェット)が召喚、特殊召喚されたとき、カードの種類を宣言することで、このターン、自分のモンスターが攻撃する場合、相手はダメージステップ終了時まで宣言した種類のカードを発動できなくする。

 宣言するのはモンスターカード、さらにこいつは1ターンに1度、ガジェットモンスターのカード名を宣言することで、このターンこのカードを宣言したカードと同じカードとして扱う。

 俺はイエロー・ガジェットを宣言するぜ。

 

 さらにこのイエロー・ガジェット扱いの古代の歯車機械(アンティーク・ギアガジェット)を対象にマジックカード、機械複製術を発動

 このカードは自分フィールドの攻撃力500以下の機械族モンスターを対象にし、そのカードと同名モンスターを2体までデッキから特殊召喚する!」

 

 イエロー・ガジェット DEF1200

 イエロー・ガジェット DEF1200

 

「そしてデッキからグリーン・ガジェットを2体手札に加える!

 レベル4のゴールド・ガジェットと古代の歯車機械(アンティーク・ギアガジェット)の2体でオーバーレイ!

 さらにレベル4のイエロー・ガジェット2体でオーバーレイ!

 また出てこい!2体のランク4、ギアギガントX(クロス)!」

 

 ギアギガントX(クロス) DEF1500 ORU2

 ギアギガントX(クロス) DEF1500 ORU2

 

「まだだ、手札の弾丸特急バレット・ライナーは自分フィールド上のモンスターが機械族地属性モンスターのみの場合、特殊召喚できる。

 さらに自分フィールド上に機械族地属性モンスターが召喚、特殊召喚された場合、手札から重機貨列車デリックレーンを特殊召喚!」

 

バレット・ライナー――プオオオォォォォォォォォン!

         ATK3000

 

デリックレーン――ブオオオォォォォォォォオォン!

       ATK2800

 

「この2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!

 エクシーズ召喚!再び浮上せよ!超巨大空中宮殿ガンガリディア!」

 

 ガンガリディア ATK3400 ORU2

 

「ガンガリディアの効果発動!

 オーバーレイユニットを1つ使い、ダーク・リベリオンを破壊!さらに1000ポイントのダメージを喰らえ!」

 

 ガンガリディア ORU2→1

 

 さっきのターンの焼きまわしのように同じモンスターが並び、天空の宮殿から錨が放たれる。

 たださっきと違うのは、その錨を防ぐ手段が俺にないということだ。

 

――パリンッ!ズドンッ!!

 

「ぐわああぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 LP1450→450

 

「ユートオオォォォォォォ!!

 くっ・・・・・・アレンっ!!・・・・・なぜだ・・・何故裏切った!!」

 

「・・・・・・」

 

 アレンは答えない。

 だがアレンが俺たちを裏切った理由はなんだ?

 俺の中にその疑問が沸いたとき、遊矢が言っていたことが思い返される

 

≪え?なぜ裏切ったか?

 まぁ、心境や状況、立場にもよると思うけど・・・

 何かを諦めて、何かを諦めきれないんだろうなぁ~≫

 

≪何かを諦めて、何かを諦めきれない?≫

 

≪何もかも諦めて絶望したら自暴自棄になる。

 現状のすべてを諦めないなら、裏切ることはない。

 そいつにとって一番大事なものだけ、護るためにやっちまったんだろうさ。≫

 

「アレン・・・お前は何を諦めた?」

 

「っ!!?」

 

 アレンが初めてこちらの質問に反応した。

 

「・・・そういうお前らはこのまま戦い続けたからって、何が変えられるって言うんだよ!!

 ギアギガントXの効果でデッキからレベル4、起動兵長コマンドリボルバー、2体目の効果でレベル3の工作列車シグナル・レッドを手札に加える。

 さらに墓地のベゼルシップをギアギガントXのオーバーレイユニットを取り除いて特殊召喚!」

 

 ギアギガントX(クロス) ORU2→1

 ギアギガントX(クロス) ORU2→1→0

 ベゼルシップ   DEF2000

 

「さらに墓地のゴールド・ガジェットを対象に手札に加えたコマンドリボルバーを特殊召喚!」

 

 コマンドリボルバー DEF2000

            ATK0→1000

 

「レベル4のコマンド・リボルバーとクロノダイバー・ベゼルシップでオーバーレイ!

 難攻不落の黒鉄の城よ、地響き立てて敵兵蠢く鉄路を行け!エクシーズ召喚!!

 現れろ!ランク4、重装甲列車アイアン・ヴォルフ!!」

 

アイアン・ヴォルフ――ブオオオオォォォォォォォォォン!!

        DEF2200 ORU2

 

 新たに現れたのはアレンのエースの鉄の狼

 こいつを召喚したということは、勝負を決めに来たということ

 

「さらにランク4のギアギガントX(クロス)1体でオーバーレイネットワークを再構築!

 ランクアップエクシーズチェンジ!ランク5、旋壊のヴァスぺネイト!!

 ランク10のガンガリディアでオーバーレイネットワークを再構築!

 オーバーランクアップエクシーズチェンジ!!ランク11、超弩級砲塔列車ジャガーノート・リーベ!!」

 

 旋壊のヴェスぺネイト  DEF2100 ORU1

 ジャガーノート・リーベ ATK4000 ORU2

 

 再び現れる機械蜂と巨大列車砲、そこに鉄狼の咆哮が鳴り響く

 

「アイアン・ヴォルフの効果発動!

 オーバーレイユニットを1つ使って、自分フィールド上の機械族モンスター1体を選択、このターン、俺はそのモンスター以外で攻撃できないがそのモンスターはダイレクトアタック出来る!

 さらにジャガーノート・リーベの効果発動!

 オーバーレイユニットを1つ使い、このターン自身以外のモンスターの攻撃を封じ、自身の攻撃力を2000ポイントアップする!」

 

 アイアン・ヴォルフ ORU2→1

 ジャガーノート・リーベ ATK4000→6000 ORU2→1

 

「このターン、てめぇは古代の歯車機械(アンティーク・ギアガジェット)の効果で俺のモンスターの攻撃中はモンスター効果を使えねぇ

 幻影騎士団(ファントム・ナイツ)トラップはダイレクトアタックは止められねぇ!

 これでてめぇは終わりだ!!バトル!!ジャガーノート・リーベで!?」

 

 ジャガーノート・リーベは闇の中でその動きを突如停止させた。

 

「!!?なんでだ、なんでだよ!?動けよ!!」

 

 困惑するアレンに俺は種明かしをする。

 確かに攻撃中はモンスター効果が使えない、だが

 

「バトルフェイズ中の攻撃前・・・スタートステップ終了時に墓地の超電磁タートルの効果を発動した。

 このカードを除外し、バトルフェイズは強制終了された。

 エクシーズモンスターはこのターン戦闘を行っていないから、アーゼウスを出すこともできない。」

 

「くそっ!!なんでだよ!

 もう、お前のライフは450しかないんだぞ!?それでなんで諦めねぇんだよ!!」

 

「・・・俺は諦めない。

 この戦争を終わらせて、瑠璃を取り戻すまで!!」

 

「・・・・そうやって、抗ってなんになる!

 ただ、戦いが長引くだけだろうが!!それじゃ、サヤカが!!っ!!」

 

 ・・・なるほどな。

 

「そうか、サヤカのためか・・・」

 

「・・・・・・あぁ、そうだよ。

 俺はサヤカの居ねぇ世界になんて興味がねぇし、いらねぇ。

 そんなサヤカが苦しんで、苦しんで、苦しみ続けている、俺はそれが許せねぇ!

 だから、一分一秒でも早く俺はこの下らねぇ戦争を終わらせる!」

 

「お前の力なら、アカデミアの攻撃部隊を倒せるはずだ!」

 

「はっ!隼、お前は馬鹿だな。

 砲弾一発撃ち込んだところで、次の奴らが来るだけだぜ?

 ブッ潰しても、ブッ潰しても!ブッ潰しても!!世界と戦争するっていうのはそういうことだ・・・

 それなら、とっととあいつら側に着いちまったほうが賢い選択だと思わないか?」

 

「だが、リアルソリッドビジョンをこちらに広めて泥沼化させたのはアカデミアだろう?」

 

「あぁ、そうだ、やつらが俺に広めろって言ってきたもんだ。

 だが、それでもさっさとこっちが負けちまえば、無駄な抵抗するよりはずっと早く終わる。

 サヤカが苦しむ時間が短くなるんだ!」

 

 全てはサヤカのため。

 アレンは世界を、いやそれ以外を捨てる覚悟をした。

 

≪大事な人を思う気持ちは、強くて弱いものだからな・・・≫

 

 確かにな。

 もしかしたら、どこかでボタンの掛け違いがあれば、今、あそこに立っているのは俺だったのかもしれない・・・

 

「次のターンで、終わらせてやる・・・ターンエンドだ!!

 さぁ!とっととターンを進めやがれ!!何もできないならサレンダーしろ!!」

 

「サレンダーはしない!俺のターン、ドロー!!

 墓地のダスティローブを除外して効果発動、デッキから幻影騎士団(ファントム・ナイツ)モンスター、ティアースケイルを手札に加える。

 そして、マジックカード、闇の誘惑を発動!

 デッキから2枚ドローし、その後、闇属性モンスターを手札から除外する!」

 

「一か八かかよ。無駄な足掻きしやがって・・・」

 

 一か八か、確かにそうだ。

 今の手札だってブレイクソードを出すことはできる。

 だが、そうなればアレンのターンを凌ぐことはできないだろう。だが失敗すれば・・・

 

 

 

 迷いがカードを引く手を震えさせる。

 

 

 

 

 そんなとき、俺はあの言葉を思い出した。

 

「・・・それは勇気を持って一歩踏み出すこと。」

 

 大切なものを失いかけても、先の見えない戦いでも、裏切られても、それでも前に進んだ。

 

「それはどんなピンチも決して諦めないこと。」

 

 諦めずに全てを救った

 

「それはあらゆる困難にチャレンジすること!」

 

 勇者の言葉を

 

かっとビングだああぁぁぁぁ!

 

「かっと・・・」「ビング?」

 

 手の震えは止まっていた

 それだけじゃない。胸の内からエネルギーが溢れてくる気がする。本当に不思議な言葉だ。

 だから迷わずに行こう。真っすぐ俺の思うがままに進もう。

 

「アレン、俺は諦めない!

 デュエルでみんなと一緒に笑い合える世界を!!ドロォォォォ!!

 闇属性モンスター、ティアースケイルを除外!

 そして、死者蘇生を発動!墓地から甦れ、ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン!!」

 

ダーク・リベリオン「グオオォォォォォォ!!」

         ATK2500

 

「ダーク・リベリオン!?お前の手札には!?」

 

「そしてRUM(ランクアップマジック)幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ラウンチを発動!

 ランク4のダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン1体でオーバーレイネットワークを再構築!

 煉獄の底より、未だ静まらぬ魂に捧げる反逆の歌!ランクアップエクシーズチェンジ!!

 永久に響かせ現れよ!ランク5!ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン!!」

 

ダーク・レクイエム「オオオオォォォォォォォオオオオォォォ!!」

         ATK3000 ORU2

 

 漆黒の竜が骸の鎧を付け新生する。

 ダーク・レクイエム、頼む。お前の力で取り戻させてくれ、俺の友を!

 

「ダーク・レクイエムの効果発動!

 ダーク・リベリオンをオーバーレイユニットにしているとき、1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ使い。

 相手フィールド上のモンスター1体を対象にそのモンスターの攻撃力を0にし、その数値分ダーク・レクイエムの攻撃力に加える!

 ジャガーノート・リーベの攻撃力を0にする!」

 

「させねぇよ!!

 トラップカード!ハイレート・ドロー!!

 自分フィールド上の機械族モンスターを2体以上破壊し、俺は2体に付き1枚カードをドローする!

 ジャガーノート・リーベとギアギガントX(クロス)の2体を破壊し1枚ドロー!

 これで効果対象を失い、ダーク・レクイエムの効果は不発に終わるぜ!」

 

 フィールドには守備モンスター、そのどちらも相手によって破壊された時に効果を使えるモンスター

 アレンの手札にはシグナル・レッド、シグナル・レッドの効果を無効にさせダーク・レクイエムのオーバーレイユニットをなくさせ、破壊時の効果を通すつもりか・・・

 

「よく考えられた戦術だ。だがアレン、俺はすでに勝利への希望を手にしている!

 装備魔法!呪いのお札をお前のアイアン・ヴォルフに装備!!」

 

 鋼鉄の狼の顔に1枚の不気味なお札が張られる。

 

「なにっ!?」

 

「呪いのお札・・・装備モンスターが破壊されることによってそのカードが墓地に送られた場合、装備していたモンスターの守備力分のダメージを相手に与えるカード!!」

 

「バトルだ!!ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴンでアイアン・ヴォルフに攻撃!!」

 

 ダーク・レクイエムが飛ぶ、その骨の様な翼に教会のステンドグラスのような光を宿して

 

「くそ・・・クソオオォォォ!!手札の工作列車シグナル・レッドの効果!

 相手の攻撃宣言時、このカードを特殊召喚して、そのモンスターの攻撃をこのモンスターに移し替える!!」

 

「ダーク・レクイエムの効果!オーバーレイユニットを1つ使って、モンスター効果を無効にして、墓地からエクシーズモンスターを1体呼び出す!

 レクイエムサルベーション!!」

 

 アレンのカードが砕け散り、墓地に眠るモンスターを呼び覚ます。

 

ダーク・リベリオン「ギャオオオォォォォォォォ!!」

         ATK2500

 

「ダーク・リベリオン・・・」

 

 現れたダーク・リベリオンにアレンは両腕を下げた

 もやは自分には手がないと教えているかのように、だから、これで終わらせよう。

 

「鎮魂のディザスター・ディスオベイ!!」

 

ダーク・レクイエム「オオオォォォォォォォォォォォ!!」

 

 鎮魂の光を放つ逆鱗は鉄の城をいとも簡単に引き裂き砕け散り、その先のアレンはそれを受け入れた。

 

 LP1500→0


「アレン!!」

 

 アレンとユートのデュエルは終わってしまった。

 ダーク・レクイエムの攻撃を受け、アレンは巨木に背中を強く打ち付けていた。

 その様子を見た後の行動は自分でもよく分かっていない。

 声を出してしまったこと、駆け寄ってしまったこと、相手は裏切り者だというのに・・・

 

「・・・ほら、やれよ。」

 

「何のことだ?」

 

「しらばっくれんじゃねぇ、カードにでもなんでも、好きにしろ。

 俺は裏切り者なんだからな。」

 

「っ!?」

 

 改めて言われると、俺は戸惑ってしまう。

 友だったアレン、裏切り者だったアレン、敗者のアレン

 何をしたらいいのかは分かり切ったこと、だが・・・

 

「・・・アレン、俺はみんながデュエルで笑顔になる世界を取り戻したい。」

 

「さっきも聞いた。

 随分青くせぇ・・・出来ねぇことぬかしてくれるじゃねぇか。」

 

「諦めなければ、出来ないことなんかない。

 だからまずは・・・」――スッ

 

 うずくまるアレンにユートは手を差し出した。

 

「ユート!?」

 

「・・・何の真似だ?」

 

「アレン、お前がサヤカのいない世界なんて意味のないものなのと同じように、俺はアレンがいない世界なんて意味がない。」

 

「「!!?」」

 

「もちろん隼も、瑠璃も、サヤカも、カイトやレジスタンスの仲間、ハートランドの人たち、そしてランサーズ

 これまで出会ってきた人達、これから出会ってく人達、俺はその‟みんな”で一緒に笑い合いたい。」

 

 ユート・・・お前はそう決意したのか・・・強いなお前は

 

「・・・へっ!ほんと、お前ってやつは恥ずかしげもなくそう言うこと言うよなぁ~」

 

 アレンはそういうとユートの手を取り立ち上がった。

 

 レジスタンスは奪われた仲間も決して見捨てない。

 仲間は必ず奪い返す・・・

 

「負けたよ、親友。」

 

「あぁ、おかえり、アレン・・・」

 

 俺たちはこの戦争で、やっと1つ、大切なものを取り戻した。


「ふむ・・・やはり、フィードバックなど、プログラムにはない・・・」

 

 薄暗い部屋で、目の下に大きな隈がある不気味な老人がパソコンとにらめっこしている。

 

「精霊の力・・・そうとしか呼びようのないもの・・・

 私のパラサイトモンスターの唯一にして最大の欠点、変えられてしまったデュエリストでは他の精霊の力を引き出せなくなってしまうこと・・・

 だが、おそらく、榊 遊矢は逆に・・・」

 

 その老人はぶつぶつと考えをまとめると、口が裂けたかのように頬を釣り上げ笑みを浮かべる。

 

「あぁ!なんと素晴らしい!!

 私もその力が欲しい!!精霊の力!!この世ならざる者の力!!理屈など通用しない未知の力!!」

 

 恋する乙女のように、憧れた存在に出会えた子供のように、頬を上気させ狂人は叫ぶ

 

「!!変わったデュエリストにカードを使わせるのではなく、そもそも精霊に使わせてしまえば・・・!!

 ふへへへへへへへへ・・・」

 

 何かをひらめいた老人『ドクトル』は自らが生み出したパラサイト・フュージョナーに新たな因子を組み込んでいく。

 

「ネズミがペストを撒くように、蚊がマラリアを運ぶように・・・ふひひ。」

 

 戦場に新たな火種が迫っていた。




みんな移動は完了したか。
まったく、漢らしく正々堂々と来るならば相手をしてやるものを・・・
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『正義の在処 クラブギア・キングの問い掛け』
全滅するのか、だれか逃れれるのか・・・
まぁ、同情だけはしてやろう、同情だけは


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正義の在処 クラブギア・キングの問い掛け

よいお年を、あけましておめでとうございます。お久しぶりです。
と2か月も開いてしまいました。すいません。
まとまった休みがない期間だったのでなかなか書く時間が取れずでした

デュエル内容書き出したときはエンタメイジの数の少なさにどうしたらいいんだと、悩んでおりましたがそんな時に来た久しぶりのエンタメイト強化の発表
エンタメイジにもワンチャンあるのでは?と期待していたんですが・・・そんなものはなかったぜ!

いつ来るんだ。[トラピーズ・ウィッチ]と[トラピーズ・ハイ・マジシャン]は・・・


「おぉ!!よくぞ来てくださいました!!」

 

 太陽が西へ、その姿を隠そうとするころ彼らはやってきた。

 黒い軍服に身を包んだ十数人の集団はデュエルアカデミア倫理委員会

 普段は脱走者や離反者、反逆者などを鎮圧・排除するアカデミアの浄化機関だ。

 

「野呂 守遠征副司令官、手筈はどうなっている?」

 

「はい!予定通り奴らはこちらが用意したアジトにとどまっていると報告が。」

 

「うむ、よくやった。

 我々は明日、太陽が昇る前にやつらへ攻撃を仕掛ける。

 そして、悪魔 榊 遊矢をおびき寄せる餌を確保する。同時に君たちへの兵站の確保も約束しよう。」

 

「おぉ!!それはありがたい!!ありがとうございます!!

 これで私の計算によれば作戦は100%!いや1000%上手く行くこと間違いなしですな!!はははははは!!」

 

 その彼らが榊 遊矢の仲間、スートの面々が隠れているという場所を襲撃する。

 仲間たちのことを考えれば、これが最善のはず・・・だが・・・

 

「ッ・・・・・・よろしく、お願いします。」

 

「野呂副指令、ドクターから・・・」

 

 だが、それが正しいことなのだろうか?そもそも・・・

 

――ポフッ

 

「ん?」

 

「あ、あの・・・司令官さん・・・大丈夫ですか?

 お顔色が、その、悪いですよ?」

 

「あぁ、宮田君か・・・なんでも、なくはないな・・・」

 

 振り向いてみれば、そこには宮田君がいた。

 そんなに酷い顔をしているのか・・・心配をかけてしまったな・・・

 

「・・・・・・あ、あの・・・司令官さん、少しお時間ありますか?」


――カチャ

 

「どうぞ。」

 

「あ、ありがとう。でもこれは?」

 

 彼女の部屋に連れてこられて差し出されたのは、さわやかな香りがするお茶

 こんなもの、物資リストにはなかったはずだが?

 

「ミントがいっぱい生えているお家から取ってきたのですが・・・お腹にたまらないって言われちゃいまして・・・

 でも、せっかくなのでお茶にしてみました。

 どうぞ、気分が落ち着く、らしいですよ?」

 

「出来ればそこははっきりさせてほしいな。だがいただくよ。」

 

 飲めばミントのさわやかな香りと苦みを感じる。

 冷たさを感じるような独特の風味が、疲れた頭を癒してくれる。

 

「美味いな。」

 

「よかった~他の人に淹れるなんて初めてですから、ちゃんと美味しいか不安だったんです!」

 

 朗らかな笑みを浮かべる宮田君、だがその笑みはすぐに曇る

 

「でも、本当はいけないことですよね・・・人の家から勝手にって・・・」

 

「あっ・・・」

 

 それは簡単に言うと泥棒だ。犯罪であり、悪事だ。

 だが、そうしないと僕たちは生きれない。仕方のない行為なんだ・・・

 

「誰かが普通に暮らしていた街を壊すことも、誰かが笑い合っていた世界を奪うことも、誰かに涙を流させることも、本当は悪いことです、よね・・・」

 

「そ、それはッ!?」

 

 理想郷のためにエクシーズ次元の人々のカード化は必須、これは仕方のないこと・・・

 

「司令官さん、罪の先の理想郷で、誰かの涙で作られた理想郷で、私たちは笑い合えるのでしょうか?

 そんな理想郷に意味はあるのでしょうか?」

 

「・・・・・・」

 

 僕は何も答えられなかった。

 分かっている。分かっているんだ。

 だが、これは仕方がない・・・・・・仕方がないことなんだ・・・


「では、これより突入する!」

 

――ハッ!!

 

 防塵のために渡されたマスクと暗視ゴーグルを身に着け、アカデミア倫理委員会は暗い山を登る。

 夏のこの時期、太陽が昇るのは早いが目的地である山寺に到着するころはまだ明けの明星が輝くくらいだろう。

 

 そして、この任務に参加した1人の不真面目な隊員は考える。

 やることはただの子供を捕らえるだけの簡単な仕事

 プロフェッサーが何を怯えているのかいまいち分からないが、口うるさい上司への鬱憤をついでにレジスタンス共で晴らしてしまおうかと

 

(にしてもアチィ・・・蒸して暑苦しい。

 チッ、こりゃレジスタンス共を痛めつけてすっきりさせなきゃな!)

 

 なぜだか肌がピリピリとしており、マスクによる息苦しさと重い暗視ゴーグルにより彼のイライラはどんどん募っていた。

 普段は逃げ出した子供をいたぶって楽しんでいる彼は、少しのストレスでも我慢することはできなかった。

 よって、いつの間にか真っ赤に染まっているマスクを勝手に外して息を大きく吸ってしまった。

 

グbふォ!!?ゴフォ!!ォォォオオ!!ガハッ!!ァァアアア!!

 

 彼はいきなり咳き込みその場でのた打ち回る。

 のどや鼻がえらく痛く、まともに息ができない。

 

「なんだ!?どうした!!?」

 

「暴れるな!おい、そっちを抑えてくれ!今見てやるからな・・・」

 

 突然倒れた彼に救護の心得がある隊員がペンライトを出し暗視ゴーグルを外す、すると

 

あああアアァァァッぁァァァァァァああああぁぁぁx!!目っがアアァァァァァァ!!」

 

 その彼も目を押さえて苦しみだす。

 

「なんだ!?何が起こっている!!?」

 

 隊長である女性は暗視ゴーグル越しなのでわからないだろうが、落とされたペンライトが照らす空間は真っ赤に染まっていた。

 

「あぁ・・・アアァァァァァ!!」

 

「うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「ま!待て!!今は任務中だぞ!!?」

 

 予想外のことで恐怖が理性を上回った2人の隊員はこの異常な山から抜け出そうと来た道を逆走しだす。

 

――グサァ!!

 

ギャアアァァァァァァァァァァ!!

 

 だがそれは叶わなかった。一人は足を取られ、躓いた先に仕掛けられていた杭に足を貫かれ

 

――バッシャアアァァァァァァァァン!!

 

「ワプッ!!?た、助け、プッ!!」

 

 一人は落とし穴に嵌り、その底に貯められた足がつくかつかないかと言った泥の中で悶えた。

 なお彼の希望通りに誰かが助けに向かったとしても、それなりの深さがあるその穴に手を伸ばせば引きずり込まれて木乃伊取りが木乃伊になるのが落ちだろう。

 

「くっ!?全員、マスクとゴーグルを外すな!!前に進むぞ!」

 

――!!?

 

 今にも溺れそうになっている隊員も、足を貫かれて叫びをあげる隊員も、悶えている2人も見捨てて任務を優先させる隊長である女性

 非情に思われるが、この異常事態に対しても彼女の頭は冷静であり、現状を考察して導き出した回答が『前にしか進めない』だった。

 

(登ってきたときは何でもなかった。

 ならばあのブービートラップは逃げ出したものを狙った罠!

 くっ!?悪魔め!この借りは必ず!!)

 

 見捨てるしかなかった仲間を置いて前に進む一行

 だが、時間がたつにつれ彼らの服はじっとりと濡れていき、それに伴い全身が異常にひりついていく

 かいた汗が目に入ればそれだけで異常な痛みをもたらし、前を進むことが出来なくなったものは罠にかかり、それを見て恐怖し逃げ出した者もまた罠にかかっていく

 謎の痛みが体を支配する、罠や襲撃の可能性に精神が擦り切れる、仲間の悲鳴に心が締め付けられる。

 だがそれももう終わるのだ。彼らは目的地である山寺へ到着したのだ。

 

「全員、配置に着け。全方位から襲撃し中を制圧する。」

 

「「「「「「「了解。」」」」」」」

 

 もはやボロボロな彼らだが、それでも目的のために正義を振りかざし

 

「突げ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ゲヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘ!!!!

 

「えっ?」

 

 殴り返された。


【ターゲット、オールダウン、デアリマス。】

 

『ふぅん、上手く行ったな。

 ブービートラップに掛かった数も予想してたより多いし、さすが権現坂、いい仕事をしてくれる。』

 

「このようなこと、褒められたことではないがな。」

 

『確かにw

 じゃあ、オービタル、落とし穴に落ちたやつらはアカデミアの拠点の近くにでも転がしておけ。』

 

【ヌ?拘束スルノデハナイノデアリマスカ?】

 

『頼りになる大人なんかいないって、理解してもらわなくっちゃ、なぁ?』

 

【ヒェ!?了解デアリマスッ!!】

 

『さて、これでミッションコンプリート、作戦大成功だ。

 通信越しで失礼するが、奴らの誘導、感謝するよ。アレン君。』

 

「お、おう・・・おい、ユート?隼?こいつ大丈夫なのか?」

 

 この調子からいきなり話を振られた彼、神月アレンは困惑して隣にいるユートと黒咲にボールを投げる。

 まぁ、仕方ないよね。

 

「む?う~ん・・・うん。」

 

「少なくともこちらに危害を加えるやつじゃない、はずだ。」

 

「はずだって・・・そりゃあそこより安全な場所があるとは思いもしなかったけどよ・・・」

 

 仲間内でこの評価だから

 

「いや卑怯にもほどがあるだろ!あの赤い霧はなんだ!?」

 

『キャロライナリーパーっていう激辛トウガラシの微細粉末を溶かした水を噴霧器でばらまいた。』

 

「あの落とし穴にも何かあるのか!?」

 

『ジャイアント・ホグウィードっていう太陽にあたると火傷を起こす猛毒植物の汁を泥に混ぜた。

 服の下はとにかく、この季節に転がしていたら顔中水膨れでブクブクだろうな。

 言っておくがあいつら、倫理委員会だっけ?デュエルする気はさらさらなかったから容赦はいらないと判断したまでだ。』

 

「ぬぅ・・・」

 

 素直なセレナは遊矢のひねくれて容赦の無い作戦に噛みつくが、相手方がデュエルする気がないと言いきられてしまい、二の句が紡げなくなっている。

 とここで僕は遊矢の発言に少し疑問を覚えた。

 

「ねぇ?容赦をしないんだったら、なんで君はずっとこんな回りくどい方法を取るんだい?

 ひきつけ役だとしても今回のように部隊ごと潰して行けばいいのに、なぜわざわざ恐怖をあおるような真似をするんだい?」

 

 悔しいことに遊矢は強い。

 それに加えてシンクロ次元で手に入れたデュエルロイドも一般のアカデミア生では太刀打ちできないレベルになっている。

 武力は上、数は問題ないレベル、スパイは対処済みで、おまけに君はそんなところに潜り込んでる。

 実戦配備出来る兵士の教育には時間がかかるし、送られてくる兵士を片っ端から全滅させて行けば本校の戦力はガクッと下がると思うんだけど

 

 その疑問に彼は出来の悪い子供に言い聞かせるようなムカつく口調で答えた。

 

『ふぅん、恐怖っていうのは伝わらなきゃ意味がない。

 同時に間違いっていうのも、自分で気付け無かったら、意味がないからなぁ。』


 朝、水を組みに行った班がとんでもないものを見つけてしまった。

 それは昨晩、スートの潜伏先を襲撃しに行ったアカデミア倫理委員会、そのメンバーの無残な姿だった。

 全身泥まみれになり、顔はなぜか水膨れで醜く膨らんでしまっており、その痛みで呻いている。

 さらには彼らを治療しようと基地に運び込んだ者の手もなぜか火傷したかのように赤く腫れ始め、一部からは彼らは呪われたんだとオカルトを言い始める始末

 

「まったく、この混乱の中、野呂の奴は何処へ行ったんだ?」

 

 僕やグロリア、冷静なものが対処しているが、猫の手も借りたいと言うのに!

 

――ビィー!ビィー!ビィー!ビィー!

 

『調達班より緊急入電!!クラブギアと接敵し交戦中とのこと!!

 至急応援を頼む!繰り返す!至急応援を頼む!』

 

「くっ!?こんなときに!!」

 

「ちょっと!?私はイヤよ!!またあの気持ち悪いロボットの相手なんて!?」

 

「グレース!!よさないか!」

 

 クラブギアはタイラー姉妹にとってこの世界に来ていきなり襲われた相手、苦手意識もあるだろう。

 大勢引き連れて行っても被害が大きくなるだけ、なら・・・

 

「僕が行こう。」


「きゃああぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「うわあああぁぁぁぁぁ!!」

 

――ゲヘヘヘヘヘッ!!

 

 10体ほどの不気味な鉄の化け物が、人をカードに変える。

 その光景を見届けて擬人化した工場のような恰好のクラブギア・キングこと、デニスは考える。

 

(これで全滅、デュエルロイドに任せて食糧調達の妨害

 ほんと酷い作戦だよね。さて、誰も来ないならこのまま撤収――おっ?)

 

「僕が相手だ!クラブギア!!」

 

(WAO!!いいね♪)

「やっと来たのかい?でも一足遅かったね、もうお友達はいなくなっちゃったよ?」

 

「くっ!だが、これ以上仲間たちを奪わせはしない!!」

 

「ん~今回のゲームはすぐに終わっちゃったし、折角来てくれたお客さんを無碍にするのも忍びないからねぇ~

 いいよ、特別にこの僕が相手をしてあげよう!」

 

 エドのヒーローらしい登場にデニスはノリノリで悪役を遂行しデュエルディスクを展開する。

 

『『決闘(デュエル)!!』』

 

「先攻は僕からのようだね!

 じゃあまずはマジックカード、光の援軍を発動。

 デッキからカードを3枚墓地へ送って、デッキからライトロードモンスター1体を手札に加える。

 僕が手札に加えるのはライトロード・サモナー ルミナスを手札に加えるよ。

 おっ!僕って運がいいなぁ~墓地へ送られたライトロード・メイデン ミネルバの効果でさらに1枚デッキからカードを墓地に送る。

 

 さらに墓地のEm(エンタメイジ)ダメージ・ジャグラーの効果発動

 1ターンに1度、このカードを除外してデッキからEmモンスター1体を手札に加える。

 僕が手札に加えるのはEmトリック・クラウン

 じゃあ、ライトロード・サモナー ルミナスを召喚して効果を発動するよ。

 手札を1枚捨て墓地のライトロードモンスター1体を特殊召喚する。

 僕はさらにミネルバを特殊召喚!」

 

 神聖さを感じさせる白と金に彩られた服を着た褐色の女性召喚士の呼びかけで同じく神聖さを感じる服を着たフクロウを連れた少女が現れる。

 

ルミナス「ハッ!」

    ATK1000

 

ミネルバ「ふふっ。」

    DEF200

 

「墓地へ送られたEm(エンタメイジ)トリック・クラウンの効果発動

 自分の墓地のEm(エンタメイジ)モンスターを攻守0にして特殊召喚して1000ポイントダメージを受ける。

 僕はトリック・クラウン自身を特殊召喚!」

 

トリック・クラウン「ケケッ!アッ!?」

         DEF1200→0

         ATK1600→0

 

 小さな玉に乗りながら逆立ちで現れるピエロ、だがバランスが若干崩れたのか手に持ったバトンがクラブギアにあたる。

 

「あ痛!っと、まだまだいくよぉ!僕はレベル3のミネルバとルミナスの2体でオーバーレイ!

 エクシーズ召喚、ランク3、虚空海竜リヴァイエール!」

 LP4000→3000

 

リヴァイエール「ギャアアァァァ!」

       ATK1800 ORU2

 

「リヴァイエールの効果発動

 オーバーレイユニットを1つ使って、自分の除外しているレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚する。

 僕はダメージ・ジャグラーを特殊召喚。」

 

 リヴァイエール ORU2→1

 

ダメージ・ジャグラー「ヘヘッ!」

          ATK1500

 

 虚空泳ぐ海竜が開いた穴からジャグリングのピンにマントと手、三角帽を被った頭がついたふざけた姿のモンスターが取り出される。

 

「さぁ主役の登場だよ!

 レベル4の魔法使い族モンスター、Em(エンタメイジ)ダメージ・ジャグラーとトリック・クラウンでオーバーレイネットワークを構築!

 Showmust go on!天空の奇術師よ。華麗に舞台を駆け巡れ!エクシーズ召喚!

 現れろ!ランク4!Em(エンタメイジ)トラピーズ・マジシャン!」

 

トラピーズ・マジシャン「アヒャヒャヒャヒャ!」

           ATK2500 ORU2

 

 天から降りてきたブランコに光が集まり現れたのは仮面をつけた白い奇術師

 その姿はエドに忌々しい人物が使っていたモンスターを連想させた。

 

(仮面の奇術師、前にも見たな、主役と言うことはこいつがアイツのエース。)

「・・・お前も榊 遊勝に関わりがあるのか?」

 

「ん?まぁ、そうだね・・・彼は僕の憧れであり、師でもある。

 だから僕は弟子ってことになるかな?」

 

「!!?」

 

 エドは混乱した。「デュエルで笑顔を」などとふざけたことを言い自分を打ち負かした男、榊 遊勝

 その息子は非道な悪であり、その弟子だという目の前の存在もそれに連なる者である。

 楽しいデュエルを、争いの道具じゃないデュエルを、プロフェッサーが間違っていることを叩きつけてきた男と真逆を行くこいつらは何なのか。

 

「君は・・・」

 

「あっ!そういえばジョーカーから聞いたけど

 君、先生と知り合いなんだよね?デュエルはした?」

 

「っ!?」

 

 質問をする前に質問をされ、エドは咄嗟に隠すことも出来ず態度に出てしまった。

 

「あぁその反応はしたんだね?

 先生のデュエルってキラキラしてとっても楽しいよね!

 彼のデュエルを見たら思わず笑顔になっちゃうよね!」

 

「ち、違う!!?僕は決して笑ってなんか――っ!!?」

 

「ふぅ~ん・・・じゃあ、このデュエルは余計なことはなしだ。」

 

「はっ?」

 

「このデュエルは何か賭けることも、負けた方がカードになるとか何もなしだって言っているんだよ。」

 

「なにを!?」

 

「先生とデュエルしたら誰だって笑顔になる、って勝手に思ってたんだけど

 ここに一人、先生が笑顔にできなかった人がいるみたいだからね。

 だから僕はこのデュエル、スートの狩人としてではなく、一人のEntertainerとして君と戦うよ!

 カードを2枚伏せて、永続魔法、黒蛇病を発動してターンエンドだ!」

 

「ふざけるな!!正しいのは、アカデミア・・・プロフェッサーの教えだぁ!!

 僕のターン、ドロー!!

 僕はマジックカード、デステニー・ドローを発動!

 手札からD-HERO(デステニーヒーロー)を1枚捨て、2枚ドローする。

 僕はD-HERO(デステニーヒーロー) ドリルガイを捨て2枚ドロー

 さらにもう1枚、デステニー・ドロー発動、D-HERO(デステニーヒーロー) ディスクガイを捨てさらに2枚ドロー!

 

 そしてマジックカード、オーバー・デステニー!

 自分のセメタリーのD-HERO(デステニーヒーロー)1体を対象にし、そのモンスターのレベルの半分以下のレベルを持つD-HERO(デステニーヒーロー)をデッキから特殊召喚する。

 カモン!レベル1!D-HERO(デステニーヒーロー) ドリームガイ!」

 

 ドリームガイ DEF0

 

 現れたのは月や星のような飾りを付けた奇妙なヒーロー

 皮肉にもその姿は道化のようである。

 

「さらにマジックカード、ドクターDを発動!

 セメタリーのD-HERO(デステニーヒーロー)1体を特殊召喚する!カモン!ドリルガイ!!」

 

ドリルガイ「はっ!」

     ATK1600

 

「ドリルガイのエフェクト発動!

 このカードが召喚、特殊召喚されたとき、手札からこのカードの攻撃力以下のD-HERO(デステニーヒーロー)1体を特殊召喚する。

 カモン!D-HERO(デステニーヒーロー) ダイヤモンドガイ!!」

 

ダイヤモンドガイ「ふん!」

        ATK1400

 

 片手が巨大なドリルとなっている英雄と体中にダイヤモンドの結晶が突き出た男が現れる。

 

「ダイヤモンドガイのエフェクト発動。

 1ターンに1度、デッキトップを確認し通常マジックだった場合、そのカードを墓地へ送り、次の僕のターン、そのマジックのエフェクトを使うことができる。

 僕が引いたのは通常マジック、融合!これで次のターンこのカードのエフェクトが確定した!」

 

「へぇ、君、中々エンタメなカード使うじゃない。」

 

「五月蠅い!エンターテインメントなど知ったことか!!

 僕はダイヤモンドガイをリリースして、アドバンス召喚!

 カモン!D-HERO(デステニーヒーロー) ダッシュガイ!!」

 

ダッシュガイ「はあぁぁ!ふんっ!!」

      ATK2100

 

 新たに現れたのは足や手にタイヤがついた自動車を鎧として身に纏ったようなヒーロー

 

「ダッシュガイのエフェクト!

 1ターンに1度、自分フィールド上のモンスター1体をリリースして、自身のアタックを1000ポイントアップさせる。僕はドリームガイをリリース!」

 

 ダッシュガイ ATK2100→3100

 

「トラピーズ・マジシャンの攻撃力を超えてきたね。

 だったら僕はここでトラピーズ・マジシャンの効果を発動!

 互いのターンのメインフェイズ1に1度だけ、オーバーレイユニットを1つ使い、トラピーズ・マジシャン以外のフィールドの表側攻撃表示モンスター1体を対象に、そのモンスターを2回攻撃できるようにする。

 対象に選ぶのはダッシュガイだ。」

 

「なっ!?どういうつもりだ!?」

 

「ただし、対象になったモンスターはバトルフェイズ終了後に破壊される。

 さぁ、今ならバトルフェイズに入るか入らないか選べるけど、君はどうする?」

 

(くっ!?バトルフェイズに入らなければダッシュガイは破壊から守れる。

 ダッシュガイは攻撃回数が増えても戦闘後に守備表示になってしまい意味がない。

 だが奴の伏せカードは2枚、放置する訳には・・・)

「僕はバトルフェイズに入り、ダッシュガイでトラピーズ・マジシャンへ向けアタック!ライトニング・ストライク!!」

 

「ならその攻撃に対しダブルトラップだ!

 永続トラップ、アストラルバリア!&マジシャンズ・プロテクション!

 アストラルバリアは相手が自分フィールド上のモンスターに攻撃してきた場合、その攻撃をダイレクトアタックへ変えることができる!

 彼への攻撃は僕が受けよう!」

 

「なにぃっ!?」

 

トラピーズ・マジシャン「ハハハハッ!!」――パシュ!!

 

 加速し接近するダッシュガイをトラピーズ・マジシャンは天から伸びるブランコに乗って躱し、そのままダッシュガイの鉄拳がクラブギアへ向かうが

 

――パシッ!

――ドオオオォォォォォォン!!

 

 ブランコで逆上がりしたトラピーズ・マジシャンが手を伸ばし、クラブギアはその手を掴み共に天へと逃れた。

 

「なにっ!?どういうことだ!?

 ダッシュガイの攻撃力はトラピーズ・マジシャンのアタックの数値を上回っているというのに・・・何故ライフが1ポイントも減っていない!?」

 

「haha!それはマジシャンズ・プロテクションの効果さ!

 このカードは僕のフィールドに魔法使い族モンスターがいるとき、僕へのダメージをすべて半分にしてくれる。

 だから僕の受けるダメージは3100の半分、1550になってトラピーズ・マジシャンが護ってくれたってことさ。」

 

「なっ!?それでは僕は5000オーバーのダメージを与えないと、ライフを削れなくなったというのか!?」

 

「そういうこと、彼は僕が守るし、僕は彼が守ってくれる。

 さぁ!どうするの?このまま攻撃続ける?」

 

「くっ!?ダッシュガイは攻撃終了後、守備表示になる。」

 

 ダッシュガイ ATK3100→DEF1000

 

「そして、バトルフェイズは・・・終了だ。」

 

「だったら、出番の終わった役者にはご退場願おうか?」

 

――パンッ!!

 

 軽い音を立ててダッシュガイがはじけ飛び紙吹雪が舞う。ふざけた演出にエドのイライラは高まっていく

 

「すまない。ダッシュガイ・・・カードを1枚セットしてターンエンドだ。」

 

「じゃあ僕のターンだね、ドロー。

 このスタンバイフェイズに永続魔法、黒蛇病の効果で僕たちは200ポイントのダメージを受ける。

 まぁもっとも、僕へのダメージはトラピーズ・マジシャンが防いでくれるから、君にだけ200ポイントのダメージだけどね。」

 

 エドの腕に黒い蛇のような痣が浮かび上がり、鈍い痛みが襲い掛かる

 

「ぐぅ・・・この程度。」

 LP4000→3800

 

「この程度ねぇ~

 でも放っておくとこのカードは発動するごとにダメージを倍にしていくから、気をつけてねぇ~

 さてさてメインフェイズ、墓地のダメージ・ジャグラーを除外して僕はEm(エンタメイジ)フレイム・イーターを手札に加えて召喚するよ。」

 

 フレイム・イーター ATK1200

 

 現れたのは丸い体に口と不揃いの目、小さなとんがり帽子にマントを付けた、子供の落書きのようなモンスター

 だがこのモンスター、その実危険な爆弾である。

 そのため、フレイム・イーターは花火のように色とりどりに弾けた。

 

――バンッ!!

 

「うわっ!?」

 LP3800→3300

 

「このモンスターが召喚、特殊召喚されたとき、互いに500ポイントのダメージが発生する。

 でも僕には彼がいるからダメージを受けるのはまたまた君だけだけどね。

 

 ここでリヴァイエールの効果!オーバーレイユニットを使って除外されているダメージ・ジャグラーをもう1度特殊召喚!」

 

 リヴァイエール ORU1→0

 ダメージ・ジャグラー DEF1000

 

「レベル4、炎属性のフレイム・イーターと光属性のダメージ・ジャグラー

 異なる属性を持つ魔法使い族2体でオーバーレイネットワークを構築!

 エクシーズ召喚!ランク4!結晶の魔女(マギストス・ウィッチ)サンドリヨン!!」

 

 混沌の帳から現れるのは水晶を生地にしたような美しく巨大なドレスを身に纏った魔女

 

結晶の魔女(マギストス・ウィッチ)サンドリヨン「ふふっ、はっ!」

             DEF2800 ORU2

 

「さぁバトルと行こうか!リヴァイエールでドリルガイに攻撃!」

 

リヴァイエール「ギャアァァァァァァ!!」

 

ドリルガイ「フンッ!!」

 

 リヴァイエールがドリルガイに噛みつきに行くが、ドリルガイはその手のドリルで対抗し拮抗、そしてその横から夢の世界の英雄が加勢する。

 

「させない!セメタリーのドリームガイのエフェクト発動!

 僕のD-HERO(デステニーヒーロー)が戦闘を行うダメージ計算時、セメタリーからこのカードは特殊召喚され、自分のそのモンスターはその戦闘では破壊されず、発生する自分への戦闘ダメージはゼロになる!」

 

ドリームガイ「トォオオオォォォ!!」

      DEF600

 

リヴァイエール「ギャッ!?」

 

「ナイスコンビネーション!

 でも、まだトラピーズ・マジシャンの攻撃が残っているよ!もう一度ドリルガイに攻撃だ!」

 

トラピーズ・マジシャン「アハハハハ!!」

 

「その攻撃も通さない!

 トラップ発動!D―フュージョン!!

 自分フィールド上のD-HERO(デステニーヒーロー)を素材に融合召喚を行う!

 運命の岩盤を貫く英雄よ、夢の世界の英雄と一つとなりて死の痛みを乗り越えよ!融合召喚!

 カモン!D-HERO(デステニーヒーロー) デッドリーガイ!!」

 

デッドリーガイ「ハァァッ!!」

       DEF2600

 

 天空の奇術師の攻撃を死を乗り越えた悪魔のごとき英雄が阻止する。

 

「D―フュージョンで呼び出されたモンスターはこのターン、戦闘、効果では破壊できない!」

 

「ふふ、見事だね。じゃあ僕も新たな役者を呼ぶとしよう!

 メインフェイズ2、僕はランク3以下のエクシーズモンスターである虚空海竜リヴァイエールでオーバーレイネットワークを再構築!

 ランクアップエクシーズチェンジ!出番だよ、ランク4!ダウナード・マジシャン!」

 

ダウナード・マジシャン「むぅ?」

           ATK2100

 

「さらに結晶の魔女(マギストス・ウィッチ)サンドリヨンの効果発動

 オーバーレイユニットを1つ使って、デッキからマギストスモンスターを特殊召喚する。

 ただし、このターン僕はこれからエクストラデッキからマギストスモンスターしか出せなくなる。

 僕が呼ぶのは結晶の大賢者(マギストス・ヴェール)サンドリヨン!」

 

 結晶の魔女(マギストス・ウィッチ)サンドリヨン ORU2→1

 

結晶の大賢者(マギストス・ヴェール)サンドリヨン「はっ!」

            DEF1800

 

 新たに現れる青い髪で何やら薬品を調合している少女と結晶の魔女の現身である白い大賢者

 

結晶の大賢者(マギストス・ヴェール)サンドリヨンが召喚、特殊召喚されたとき、デッキからマギストスマジック、トラップカードを1枚手札に加えることができる。

 僕が手札に加えるのは聖なる法典(マギストス・インヴォケーション)

 

 さらにフィールドにモンスターが2体以上存在することにより、手札のEm(エンタメイジ)ハットトリッカーは特殊召喚できる。」

 

 ハットトリッカー DEF1100

 

「レベル4の魔法使い族、結晶の大賢者(マギストス・ヴェール)サンドリヨンとEm(エンタメイジ)ハットトリッカーの2体でオーバーレイ!

 エクシーズ召喚!現れろ、ランク4!結晶の女神(マギストス・ゴッデス)ニンアルル!」

 

 三又に分かれた三角帽に眼鏡、マント、手袋と言った風貌の、いやもはやそれしかない外見の謎の存在と白き大賢者が混沌に飛び込む。

 そこから現れるのは魔工の女神

 

 ニンアルル DEF2400 ORU2

 

「ニンアルルの効果、オーバーレイユニットを1つ使って墓地のレベル4以上の魔法使い族モンスター、Em(エンタメイジ)フレイム・イーターを手札に戻す。

 

 さらにマジックカード、聖なる法典(マギストス・インヴォケーション)を発動!

 このカードは僕の手札、フィールドから魔法使い族モンスターを含む、融合素材を墓地へ送り融合召喚を行う!

 フィールドのマギストスモンスター、結晶の女神(マギストス・ゴッデス)ニンアルルと魔法使い族モンスター、ダウナード・マジシャンを融合!

 魔工の女神よ、天性の才よ、その叡智を集結し新たな力を生み出さん!融合召喚!

 現れろ!レベル8!法典の守護者(マギストス・セイント)アイワス!!」

 

 ダウナード・マジシャンが薬品の入った試験管をニンアルルに投げつけると、ニンアルルは粉々に砕け散り、その身は新たな魔法陣へと形を変える。

 それから出現するのは結晶なのか金属なのか分からないもので構成された天使のような姿をした不気味な存在、魔を護る存在

 

 アイワス DEF2800

 

「このモンスターは!?」

 

「そう、モンスターを奪取する効果を持った魔法の守護天使

 ついでに僕は手札のマジックカード、おろかな埋葬を発動してデッキからEm(エンタメイジ)フレイム・イーターを墓地へ送ってターンエンドだ。

 さぁ、このフィールド突破してみてよ。」

 

 今、クラブギアのフィールドのモンスターは総じてステータスが高く

 そのうえで攻撃力5000以下の攻撃は意味をなさず、モンスターは1体奪われてしまうという状況

 エドのフィールドにはデッドリーガイのみで現在手札1、そしてその手札も

 

(ディアボリックガイ・・・デッドリーガイのエフェクトを使って・・・いや、壁モンスターを増やしてもモンスターは強奪されてしまう!

 ダイヤモンドガイのエフェクトで融合の効果が確定しているが・・・)

 

「ふふっ」

 

「っ!!何がおかしい!?」

 

「いやだって楽しんでくれているなぁ~って。」

(彼の気持ち、少しわかるかも)

 

「何を訳の解らないことを!」

 

「ふふ、だって僕のコンボをどう崩そうって考えてるんでしょ?

 フィールドと手札と墓地を何度も見返しているし、それってデュエルを楽しんでるってことじゃない?」

 

 クラブギアのその言葉にエドは動揺も隠さず否定する。

 

「!!?ち、違う!!デュエルは楽しむものじゃ!?」

 

「楽しむものだよ・・・本当のデュエルは。

 さぁ、カードを引きなよ。君のヒーローがまだ負けたくないって言ってるよ?」

 

(ヒーローたちが・・・)

「くっ・・・僕のターン、ドロー!

 !!僕は墓地のダッシュガイのエフェクトを発動!

 このカードが墓地にいるとき一度だけ、ドローフェイズのドローでモンスターをドローしたとき、そのモンスター1体をお互いに確認し特殊召喚する!

 僕がドローしたのはD-HERO(デステニーヒーロー) ドローガイ!」

 

ドローガイ「ハッ!」

     ATK1600

 

 エドのピンチに現れたのは白い服にハットとマフラーをしたガンマン

 

「ドローガイがHERO(ヒーロー)モンスターのエフェクトで特殊召喚された場合

 お互いのプレイヤーはデッキから1枚ドローする!、っ!!」

(・・・ヒーローたち、こんな僕にまだ力を貸してくれるのか・・・)

「マジックカード、デステニー・ドロー!

 ディアボリックガイを捨て2枚ドロー!

 よし、僕は今セメタリーへ送ったディアボリックガイのエフェクトを発動!

 墓地のこのカードを除外することでデッキから新たなディアボリックガイを特殊召喚する。

 さらにドクターDを発動し、そのエフェクトで・・・カモン!D-HERO(デステニーヒーロー) ディスクガイ!」

 

ディアボリックガイ「オオオォォォォオオ!!」

         DEF800

 

ディスクガイ「ハッ!」

      DEF300

 

 現れた2つのディスクのようなブレードを背負ったヒーローが、エドを手助けする。

 

「ディスクガイが墓地から特殊召喚された時、デュエル中に1度だけデッキから新たに2枚カードをドローする。

  そして、前のターン、ダイヤモンドガイの効果で墓地に送られた融合の効果を発動!

 手札のD-HERO(デステニーヒーロー) ディナイアルガイ、フィールドのデッドリーガイを融合!

 敗北を否定する英雄よ、死を乗り越えし英雄よ、今一つとなりて黄昏の理想郷に君臨せよ!融合召喚!!

 カモン!D-HERO(デステニーヒーロー) ダスク・ユートピアガイ!!」

 

 ダスク・ユートピアガイ ATK3000

 

 まばゆい光と共に現れたのは遺跡のようなデザインの黄金の鎧を身に纏った、頭の部分が『D』を模したエンブレムとなった奇妙な姿のヒーロー

 その黄金の光は錬金の光、その混合の力が振るわれる。

 

「ダスク・ユートピアガイのエフェクト発動!

 このモンスターが融合召喚に成功した場合、新たに融合召喚を行う!

 僕はフィールドのディアボリックガイとディスクガイを融合!

 再び現れよ、デッドリーガイ!!」

 

デッドリーガイ「ハッ!」

       ATK2000

 

「さらにセメタリーのディナイアルガイのエフェクト発動!

 デュエル中に1度だけ、自分フィールド、セメタリーにディナイアルガイ以外のD-HERO(デステニーヒーロー)がいるとき特殊召喚できる!」

 

ディナイアルガイ「ハッ!」

        ATK1100

 

 仮面にマントをし紫の服を着たヒーローが現れ、その手に持つチェーンを異次元に飛ばし1枚のカードを引っ張ってくる。

 

「ディナイアルガイが召喚、特殊召喚されたとき、自分のデッキ、セメタリー、除外されているカードの中からD-HERO(デステニーヒーロー)をデッキの一番上に置く

 僕が選んだのは除外されているディアボリックガイ、このカードをデッキの一番上に置く。

 

 そしてセメタリーにいるディアボリックガイを除外しデッキに戻ったディアボリックガイを特殊召喚!」

 

ディアボリックガイ「ハアァァァァ!!」

         DEF800

 

「そして僕はフィールドのD-HERO(デステニーヒーロー) ディアボリックガイ、ディナイアルガイ、デッドリーガイの3体をリリースしてこのカードを特殊召喚!

 カモン!D-HERO(デステニーヒーロー) ドグマガイ!!」

 

 贄として捧げられる3つの闇

 それらが廃墟の街で一つとなり、強大なる魔王のごときヒーローが姿を現す。

 

ドグマガイ「うおおぉぉぉぉぉぉ!!ふんっ!!」

     ATK3400

 

「攻撃力3400・・・でも残念だね!

 僕は法典の守護者(マギストス・セイント)アイワスの効果発動!

 互いのメインフェイズに、このカード以外の表側表示モンスターにこのカードを装備させ、攻守を1000ポイントアップ!

 さらにそのモンスターが相手モンスターだった場合、そのモンスターのコントロールを僕が得る。」

 

ドグマガイ「うおっ!?ぐぅぅぅ・・・くっ!?」

     ATK3400→4400

     DEF2400→3400

 

 現れた魔王に魔法の守護天使が無理やり憑りつく、力は増したが彼の本来護るはずの人物に剣を向けることになってしまったヒーローは苦い顔だ。

 

「これでドグマガイは僕のものだ。

 フィールド、手札合わせて3枚からよく頑張ったけど。残念だったね?」

 

「・・・いや、運命はまだ決してはいない!!

 手札からマジックカード!HERO(ヒーロー)の遺産を発動!!

 1ターンに1度、自分のセメタリーのHERO(ヒーロー)を融合素材とする融合モンスター2体をエクストラデッキへ戻し、3枚ドローする!

 僕はセメタリーの2体のデッドリーガイを戻して、3枚のカードを・・・ドロー!!」

 

 絶対絶命のピンチ、だがまだ希望は残っている。

 そしてその希望が輝いたとき、彼は気付いていないだろうが、その顔からは笑みがこぼれていた。

 

「ありがとう・・・僕のヒーローたち!!共に行くぞ!!

 僕はD-HERO(デステニーヒーロー) ディバインガイを召喚!!」

 

ディバインガイ「ハッ!!」

       ATK1800

 

「さらにディバインガイに旋風剣(サイクロンブレード)を装備!

 そして、墓地のドクターDを除外してディバインガイの攻撃力をダスク・ユートピアガイの攻撃力と同じにする!」

 

 起死回生に現れた後光のような白銀のブレードを背負ったヒーロー、そのブレードがさらに巨大になり暁の光が宿る

 

ディバインガイ「ウオオォォォォォォォ!!」

       ATK1800→3000

 

「バトルだ!

 ディバインガイでトラピーズ・マジシャンに攻撃ぃ!!」

 

「おっと!そうはいかないよ!アストラルバリアの効果でその攻撃は僕が受ける!」

 

トラピーズ・マジシャン「ウキャ!!」

 

 クラブギアがトラピーズ・マジシャンと共に空へ逃れる。

 だが空振りとなるはずだったディバインガイの攻撃はその場から動かなかった存在に向けられた。

 

ディバインガイ「タアアァァァァ!!」

 

「ディバインガイが攻撃したダメージステップ終了時にエフェクト発動!!

 ディバインガイは相手フィールドの表側表示の魔法カードを破壊し、旋風剣(サイクロンブレード)はフィールド上のマジック、トラップカードを破壊する。

 僕が破壊するのは永続トラップ、マジシャンズ・プロテクションと装備魔法扱いの法典の守護者(マギストス・セイント)アイワス!」

 

 ディバインガイの追撃の斬撃がクラブギアを護る結界と仲間に憑りつく悪魔を駆逐する。

 

ドグマガイ「フンッ!!」

     ATK4400→3400

     DEF3400→2400

 

「これでドグマガイのコントロールは僕に戻った!」

 

「だけど僕もマジシャンズ・プロテクションの効果を発動させてもらうよ!

 フィールドからこのカードが墓地へ送られた場合、自分の墓地の魔法使い族モンスターを特殊召喚する。

 Comeback!Em(エンタメイジ)フレイム・イーター!」

 

フレイム・イーター――ドオオォォォン!!

         DEF1600

 

 小さな花火玉が再び現れ爆裂する。

 

「くっ!この程度・・・ダスク・ユートピアガイで結晶の魔女(マギストス・ウィッチ)サンドリヨンにアタック!」

 LP3300→2800

 

 結晶のドレスに暁の光が映りキラキラとその散り際を美しく彩る。

 

「さぁ行け!ドグマガイ!!トラピーズ・マジシャンに攻撃!デス・クロニクル!!」

 

ドグマガイ「フンッ!!ハアアァァァァァァァ!!タアアァァッ!!」

 

トラピーズ・マジシャン「ハハハハハッ!ハハッ!!」――ザシュ!!

 

 笑いながら切り裂かれるトラピーズ・マジシャン、だが最後の抵抗でクラブギアにその刃を届かせはしない。そして

 クラブギアを護る最後の砦が崩れたことにより、エドは手札に残った最後のカード[融合]を見つめる。

 

(これでディバインガイを素材にディストピアガイを呼び出せば、奴のライフは1200まで削れる。

 そして次の奴のターン、ドグマガイのエフェクトで半分となり600、奴の黒蛇病の効果で200にまで下がる。

 そうすれば、今の奴の最後の手札、フレイム・イーターの召喚は奴の敗北につながる。)

 

 次のドローでどう転ぶかはわからない。

 クラブギアのデッキの中にモンスターが何枚いるか。

 次のターンで自分の作り上げたフィールドをまた崩されるんじゃないか

 

 運命はまだ決してはいない。

 

 だが彼はそこに賭けた。勝利の可能性をわずかながら握りしめた。

 その勇気をクラブギアは手放しに賞賛する。

 

「Congratulation!!トラピーズ・マジシャンを倒すだなんてね!!」

 

「ふん!これでお前のショーの主役は消えた!」

 

「あぁそうさ、僕のショーはこれで終わり・・・つまり、このデュエルは終わりさ。」

 

「何?」

 

 クラブギアはどこぞの道化のように悪い顔を浮かべてトラピーズ・マジシャンに隠された最後の効果を使う。

 

「さぁ!彼のオールアップを華々しく彩ろうじゃないか!!

 トラピーズ・マジシャンの最後の効果!

 彼が戦闘、効果で破壊され墓地へ送られた場合、デッキからEm(エンタメイジ)モンスターを1体特殊召喚する。

 Come here!!Em(エンタメイジ)フレイム・イーター!!」

 

フレイム・イーター――ドオォォォォォン!!

         DEF1600

 

「なっ!?なにをっ!!?うわっ!!」

 LP2800→2300

 

「フレイムイーターの特殊召喚に成功したことでお互いに500ポイントのダメージ

 でも僕へのダメージが発生する効果が発生したことにより、手札の3体目のフレイム・イーターの効果が発動!

 このカードを特殊召喚し僕へのダメージを0にする。

 だが、この特殊召喚によってさらに500ポイントのダメージが発生する。」

 

「くっ!だが、後悔することになるぞ・・・」

 

「いいや、ここで終わりだから後悔もないさ!

 墓地のEm(エンタメイジ)スティルツ・シューターの効果発動!

 墓地にこのカード以外のEm(エンタメイジ)がいる状態で相手にダメージを与える効果が発生したとき、このカードを除外して相手に2000ポイントのダメージを与えるのさ!!」

 

「なっ!なんだとっ!!?」

 

「じゃあ、See you next time・・・Your smile was awesome!!」

 LP3000→2500

 

――ドドドドドオオオォォォォォォォォォォンッ!!

 

「うぅぅ・・・」

 LP2300→1800→0

 

 派手で色とりどりの火花が飛び散る爆発が起こり、白い煙が晴れるころにはその場にはエド以外何もいなかった。

 無数にいたロボットも、クラブギア・キングも

 そして、エドは自分の頬に手を当てる。

 

「笑顔・・・僕が・・・・・・

 違う、僕は・・・笑顔になんか・・・・・なっちゃいけないんだ・・・」

 

 そう呟いたエドの目の前にはらりと、半分に破かれた[スマイル・ワールド]のカードが落ちた。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・」

 

 呆然としたエドを、いや、それまでの一部始終を青い瞳が見つめていた。

 

「先生の弟子・・・そんな奴まで・・・」

 

 ただ怒りのままにアカデミアを殲滅していたカイト

 だが彼は榊 優勝の息子、遊矢とのデュエルの後からアカデミア狩りをしながら戯遊師団スートの暴れっぷりを見ていた。

 

(やはり一人では無理なのか・・・俺一人の力では父さんやハルトの仇すら取れないのか・・・)

――グウゥウゥゥゥゥ!!

 

 カイトは悔しさから拳を強く握りしめる。

 護るべきものを失ったカイト、仲間を捨てたカイト、孤独な彼に

 

「おやおや、一人でお悩みですかな?」

 

「っ!!?お前は!?」

 

 新たな闇が囁く




しかし、よく死人が出なかったな・・・

まぁ、あの転がした連中も応急処置だけはしたし、手加減はしたからな。いろいろと

アレでか?

殺す気だったら、落とし穴の底を杭にするし、噴霧器にレシニフェラトキシンでもいれるよ。
そもそもデュエルロイドで直接ぶん殴ったほうが早いだろうけど。

ユート!?隼!?やっぱ怖ぇよこいつ!!?

はぁ~それで今後はどうする?

ん~そうだな。
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『裏切りの烙印 クイーン・ダイヤを討て』
ついに出番と行こうか、セレナ?

ん!?私か!?


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裏切りの烙印 クイーン・ダイヤを討て

むむむ、祝日が増えたせいか2月意外と時間が取れませんね・・・・

そしてマスターデュエルが意外といいゲーム過ぎて驚き
エクシーズフェスをナンバーズデッキで乗り切り、ランク戦をヌメロンで駆け
トマトを除外してダイスポットとカオスポッドで勝つまで無限にダイスを振るネタデッキで遊んでます。
こういう変なデッキを使っていると、思わぬカードの組み合わせや使い方があるものですね。


「これがアカデミアへ向かう定期船の全てか。」

 

「うむ、スケジュールや何を運んでいるのかも纏めてあるでござる。」

 

「早速一隻細工をしてきた。

 今頃、海上でエンジントラブルに見舞われていることだろう。」

 

 融合次元に来て一週間ほど、偵察に出ていた月影さんと日影さんが帰ってきた。

 

「ちっ、チマチマしてんなぁ。

 もういっそその船に忍び込んで、とっととアカデミア潰しちまおうぜ?」

 

「そうだそうだ!とっととあいつらをぶちのめしてリンを!!」

 

「お、おちついて・・・」

 

 あぁ、沢渡もユーゴも零羅君に諫められてどうするのよ・・・

 

「はぁ・・・沢渡、ユーゴ、君たちもわかっているとは思うが、それは無謀が過ぎるぞ。」

 

「だってよぉ!!もうずっと、魚釣って缶詰作っているだけなんだぜ!?」

 

「ちょっと手を伸ばせば、リンに手が届くってのによぉ・・・」

 

「焦っては事を仕損じるというものでござるよ、ユーゴ殿?」

 

「そのための秘密兵器が、アレとは思いたくないものだがな・・・」

 

「それはねぇ・・・」

 

 私もあの謎の宿題がこれに繋がるなんて思いたくないけど、いろいろと汚いし

 

「いやはや、遊矢殿の辞書にはいったい何が載っているのでしょうなぁ?

 その遊矢殿でござるが、すでに街の噂になっておられた、悪魔のデュエリストがエクシーズで暴れているとな。」

 

 よかった、遊矢は無事みたいね。

 それにしても別次元のことなのに噂になるって、アカデミアの情報の扱いはどうなっているのかしら?

 

「ネットの匿名掲示板情報レベルのことでござるが、尾鰭胸鰭は付いておった。

 それともう一つ、これまた噂レベルの話で、アカデミアから脱走した兵が集まってできた集団があるらしいのでござるが・・・」

 

「その脱走兵がこう言っていたそうでござる。」

 

『『デュエルは人を笑顔にするものだ、と。』』

 

「「!!?」」

 

 それって!?


「ねぇ~もう帰りましょうよ~」

 

「グレース・・・いや、私も同じ意見だ。

 悔しいが、これ以上ここに居ても無駄に兵を減らすだけ・・・部隊の士気もよくない。

 これでは倫理委員会も手出しができない化け物どもの相手は無理だ。

 一旦、帰還し、体制を整えるべきだ。」

 

 アカデミアでも好戦的なタイラー姉妹、その二人にここまで言わせるか。

 僕もそれには同意見だが・・・

 

「進言はした・・・だが帰還許可は下りなかった。」

 

「はぁ!?何よそれ!?」

 

 グレースの文句も当然だ。

 僕たちにこのままここにとどまっていて何をしろと言うのか・・・

 そもそも、リアルソリッドビジョンのことを伝えても、そのまま続行させたことも・・・

 

「そういえば、野呂は何処へ行った?」

 

「そうねぇ?のろまちゃん、いつもならここで私の計算ではー!って、騒ぎ出すところなのにねぇ?」

 

 野呂め、また勝手なことをしているのではあるまいな『よぉ。』

 

――!!?

 

『さぁさぁ、今日も楽しいゲームの時間だ。』

 

「ちょっと!?またなの!?」

 

「毎日毎日!!何が楽しいゲームだ!」

 

 困惑と怒りの言葉を口にするタイラー姉妹、この指令室にいる面々も混乱し、怯え、恐怖し、次は自分だと絶望する。

 

『いやぁ~実は今、君たちの基地の真ん前にいるんだけどさぁ~』

 

 映し出される背景は確かに僕らの母艦が着陸したクレーターのものと思われる壁だ。

 やつら、直接乗り込む気か!?

 

『うちの団長がいい加減君たちと戦いたいっていうもんだからねぇ~

 で、今日はサービスデイ!うちの団長に一回でも勝ったら俺たちからは一切手を出さない特別チケットをプレゼント!』

 

――!!?

 

 デフォルメされた奴が舌を出しているムカつく柄のカードが映し出され、それが持つ効力を知りこの場にいる者全てがざわつく

 

『これを持っていれば我々が主催するゲームにおいて絶対にカードにならないし、景品とすることもない。

 そちらから挑んできて負けてもカードになんかしないさ。

 あぁ、今回は負けても終了時刻までは連続で何度でも挑戦可能だよ。』

 

――お・・・うぉおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?

 

「なっ!?待て!?君たち!!」

 

 我先にと仲間たちが駆けだす。

 いや、今この場で駆けだしたのは仲間でも戦士でもなく、ただ希望と言う誘蛾灯に群がる羽虫だったのだろう。

 このゲームのルールは明らかに今までの奴らの手口からすれば生ぬるかった。

 しかし僕らは知らなかった、与えられた希望など

 

『心折れるまではね。』

 

 絶望への試金石でしかないのだと。


月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)で追加攻撃!これで私の勝ちだー!!」

 

「うわああぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 ふむ、さすがはセレナ、危なげもなく勝てるな。

 今日の目的はセレナがエクシーズ次元にいることの宣伝だが・・・

 

「ま、まだ・・・」

 

――さっさと替われよ!!

 

――お前の腕じゃ絶対に勝てるかよ!!

 

――連続でワンキルされてんじゃねぇか!!

 

――時間の無駄なのよ!!

 

 船内からわらわら出てきたアカデミア兵、戦闘員だけじゃなくて炊事係や通信士をやっていたのまで出てきている。

 船内にいたほぼ全員いるんじゃないのか?

 それが今、2回連続で負けた1人に対して罵声を飛ばしている。

 

「ぅ・・・・あぁ・・・・・も、もう1か、い。」

 

 もう一押しと行くか

 

――ポンポン

 

「うぇ?」

 

「ごめんねぇ?勝つ気がない奴に挑戦権はないんだ。」

 

「そ、そんな!?まだ!!やれます!!勝つ気はあります!!頼むよ!!」

 

「あぁ~うん~じゃあ、そこの君。」

 

「えぇ!?俺?」

 

「こいつが整理券だ。どうするかわかるね?」

 

 デュエルディスクをハッキングし、例のシステムを泣きじゃくりながら懇願する挑戦者だったものを対象に起動させる。

 

「あっ・・・あぁ!」

 

「俺はま――パタンッ

 

 僅かな葛藤のあと、指名された彼は容赦なく仲間をカードにした。

 それを見てセレナは明らかに気を悪くしているが、まぁ我慢してくれ

 

「じゃあ、一名様ご案なぁ~い。」

 

「っしゃ!!」

 

「・・・・・・いくぞ。」

 

 追い詰められたら他人を蹴落としてでも自分が助かろうとする。

 理想郷のためにとか言っていた連中も、皮を剝けばこんなものだよな。ガキだし

 

「うわあああぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 なんて考えたらもうやられているし、本当にアカデミアは1人だと勝負にもならないな。

 

「な、なぁ?」

 

『あぁ?』

 

「あいつをカードにしたら次は俺に挑戦権くれよ。」

 

 うわぁ・・・

 

『それは出来ない。やる気があるうちは挑戦権はある。』

 

「そうか・・・だったら!!」

 

――バキッ!

 

「何しやがる!?」

 

「次やんのは俺だ!!お前らは邪魔なんだよ!!」

 

「なんだと!!この!!」

 

 わーわーぎゃーぎゃー、一人の不和が段々と全体に広がっていく。デュエルディスクには制限を掛けているから殴って蹴っての乱闘になっているが・・・

 ちょっとうまくいきすぎだな。軍事訓練受けているのならもう少し連帯感持とうぜ?

 仕向けたの俺だけど。

 

「やめろ!!何をしている!!」

 

 おっ!来た来た。

 

『おぉ遅かったなヒーロー君、もう4戦、あっ5戦目になったわ。』

 

「お前!!部下たちに何をした!?」

 

『おいおい、この乱闘騒ぎはあいつらが勝手に始めたことだぜ?

 我らが団長、『クイーン・ダイヤ』とデュエルをする権利を得るためにな。』

 

「なに!?」

 

『人間って愚かだよなぁ?

 自分のために他人を蹴落とし争い合う。

 たったの数十人でこんなになるんだから、統一された世界にこんなのいたら邪魔だよな?

 どうせなら、君たちも世界のためにゴミ掃除しないかい?』

 

「っ!!ふざけ「その心配はご無用です。」

 

――!!

 

 煽りに煽って、エドを爆発させようとしたがそれに待ったをかける奴がいた。

 そいつは俺の覚えてる限り、こんな場に割り込んでくるキャラではないし、実際部下を使って自分は安全圏にいる、そんな奴だった。

 

『お前は・・・』

 

「野呂!今までどこに!」

 

「くく、貴方と違って私はちゃんと仕事していましたよ。

 そう、全にして一なる統一世界の為にね!」

 

 全にして一なる統一世界?

 というか、あいつの後ろにいる2人って火傷塗れにした倫理委員会!?

 馬鹿な・・・常人なら痛みで動けるはずがない!

 

『これは珍しいプレイヤーが来たな。

 君がデュエルするのかい?それともそちらのお二人さんかな?』

 

「くくく、そんなわけないでしょう。私は実戦経験皆無なのですよ?

 で・す・の・で、あなた方のお相手は実戦経験豊富な、この個体にやらせましょう。」

 

 3人の後ろから1人の人物が現れる。

 それは絶対にアカデミアに付くはずのない人物、黒い服を纏った光の狩人

 

「・・・・・・」

 

『なんだと!?』

 

「君は!?」

 

 カイト!?


 お前は俺の光だった・・・

 

「・・・返せ・・・・・・」

 

だが俺はお前を護れなかった・・・託されたのに、俺は・・・

 

 

「返せ!」

 

 だから!

 

「返せ!!」

 

 お前を取り戻すために!!

 

「返せ!!!」

 

 俺は戦う!!

 

ハルト(繧ィ繧ッ繝ャ繧キ繧)をぉ!!返せえええエエェェェぇぇぇぇ!!!!!」


 怒りと悲しみに暮れた狩人の咆哮が響き渡る。

 その声は居場所を失った竜のごとく、気迫を持ってこの場にいたすべての人間を縛り付ける。

 その中で一番早くに動いたのが

 

「おい、赤いの」

 

 戯遊師団スートの団長、クイーン・ダイヤだった。

 

「あいつは、私が相手をする。」

 

『なっ!?だが、あいつは普通じゃないぞ!?』

 

「わかっている。わかっているさ。気持ち悪い気配が漂っているしな。

 だが、あんなやつ見てられん。」

 

 赤の女王は歩を進める。

 彼女とデュエルをするために殴り合い、争い合っていたアカデミア兵もそれを止めることはない。

 白の狩人に逆らう気力など彼らにはないのだ。

 

「返せ、返せ!かえせ!カエセ!!カエセセェェェエェェェェ!!」

 

 カイトの片目が赤く光る。

 その腕につけられたデュエルディスクが翼のごとく広がる。

 

「お前の相手は・・・私だ!!」

 

『『決闘(デュエル)!!』』

 

「先攻は私から行く!

 私は月光翠鳥(ムーンライト・エメラルド・バード)を召喚!」

 

月光翠鳥(ムーンライト・エメラルド・バード)「はっ!」

          ATK1200

 

月光翠鳥(ムーンライト・エメラルド・バード)の効果を発動

 このカードが召喚、特殊召喚に成功した場合、手札からムーンライトカード1枚を墓地へ送りデッキから1枚ドローする。

 手札の月光黄鼬(ムーンライト・イエロー・マーテン)を墓地へ送り1枚ドロー

 黄鼬(イエロー・マーテン)が効果で墓地へ送られたことでデッキからムーンライトマジック、トラップカード、月光輪廻舞踊(ムーンライト・リンカーネーション・ダンス)を手札に加える。

 さらにマジックカード、闇の誘惑を発動

 デッキからカードを2枚ドローし、その後、闇属性モンスター、月光彩雛(ムーンライト・カレイド・チック)を除外する。

 

 スケール5の月光虎(ムーンライト・タイガー)をペンデュラムゾーンにセッティングしペンデュラム効果!

 墓地のムーンライトモンスター、月光黄鼬(ムーンライト・イエロー・マーテン)を特殊召喚!

 よし、これでレベル4が2体だな。

 私はレベル4の獣戦士族、月光翠鳥(ムーンライト・エメラルド・バード)月光黄鼬(ムーンライト・イエロー・マーテン)でオーバーレイ!

 エクシーズ召喚!武神帝―カグツチ!」

 

武神帝―カグツチ「フンッ!」

        ATK2500 ORU2

 

 エメラルドに似た色彩の鳥の意匠を持つ獣人と黄色の貂の獣人が蒼く燃え盛る武神を混沌より呼び出す。

 

「カグツチがエクシーズ召喚に成功したときデッキの上から5枚のカードを墓地に送る。

 よし、カード効果で墓地へ送られた月光翠鳥(ムーンライト・エメラルド・バード)の効果

 墓地か除外されているモンスターの中から翠鳥(エメラルド・バード)以外のムーンライトモンスター1体を効果を無効にして守備表示で特殊召喚する。

 戻ってこい!月光彩雛(ムーンライト・カレイド・チック)!!」

 

月光彩雛(ムーンライト・カレイド・チック)「アハッ」

          DEF800

 

月光彩雛(ムーンライト・カレイド・チック)の効果・・・は無効化されているが発動することができる。

 よってコストでデッキのムーンライトモンスター、月光紅狐(ムーンライト・クリムゾン・フォックス)を墓地へ送る。

 さらに墓地の2体目の月光黄鼬(ムーンライト・イエロー・マーテン)の効果発動、私のフィールドのムーンライトカード、月光虎(ムーンライト・タイガー)を手札に戻すことでこのカードを特殊召喚!」

 

 月光黄鼬(ムーンライト・イエロー・マーテン) DEF2000

 

「これでまたレベル4が2体揃った。

 月光彩雛(ムーンライト・カレイド・チック)月光黄鼬(ムーンライト・イエロー・マーテン)の2体の獣戦士族でオーバーレイ!

 エクシーズ召喚!魁炎星王―ソウコ!!」

 

ソウコ「オオォォ!!フンッ!!」

   ATK2200

 

 オーロラのような翼を広げる雛と舞い戻りし貂が炎の虎をその身に宿す壮年の武人を呼び出す。

 

「ソウコがエクシーズ召喚されたとき、デッキから炎舞マジック、トラップカードをセットする。

 私は炎舞―天璣をセットして発動!

 このカードは発動時、デッキから獣戦士族モンスターを手札に加える。

 この効果で2体目の月光彩雛(ムーンライト・カレイド・チック)を手札に加える。

 そして、永続効果として私の獣戦士族モンスターの攻撃力が100ポイントアップする。」

 

 ソウコ      ATK2200→2300

 武神帝―カグツチ ATK2500→2600

 

 早々に≪炎星≫と≪武神≫2つのテーマのエースの一角ともいえるモンスターたちが立ち並ぶ

 だがカイトはデュエル前の荒れ様からは考えられぬほどに無口で無反応であり、不気味に沈黙していた。

 

「・・・・・・」

 

「つまらんやつだな。さっきまでの覇気はどうした?

 この程度で気落ちしたわけでもあるまい。」

 

「・・・・・・」

 

(これが黒いのがこの街最強のデュエリストと言い。

 赤いのが決着を付けたいとグチグチいっている奴か?

 いや、だが目は死んでいるわけではない。)

「墓地の月光小夜曲舞踊(ムーンライト・セレナーデ・ダンス)を除外し効果発動、自分メインフェイズに手札を1枚選んで墓地に送りデッキからムーンライトモンスター1体を特殊召喚する。

 手札の月光彩雛(ムーンライト・カレイド・チック)を墓地へ送り、デッキから3体目の月光黄鼬(ムーンライト・イエロー・マーテン)を特殊召喚する。」

 

月光黄鼬(ムーンライト・イエロー・マーテン) DEF2000

            ATK600→900

 

「効果で墓地へ送られた月光彩雛(ムーンライト・カレイド・チック)の効果で墓地の融合を手札に加え発動!

 フィールドの魁炎星王―ソウコと武神帝―カグツチを融合!

 赤き炎虎よ、青き炎剣よ、一つとなりて白き轟炎となれ!融合召喚!

 現れろ!レベル8、富炎星―ハクテンオウ!」

 

 2つの炎が交じり合い加熱し白い炎が生まれる。

 その炎は白鳥のごとく翼を広げ、槍を持った1人の武人が現れた。

 

ハクテンオウ「はあぁぁぁぁぁ!!フンッ!!」

      ATK2600→2700

 

「ハクテンオウの効果発動!

 こいつが特殊召喚した場合、自分のフィールドの炎舞マジック、トラップカードの数×200ポイントのダメージをお前に与える!」

 

 ハクテンオウの槍から白い炎がカイトに撃たれる。

 ただのソリッドビジョンのはずだが、カイトはこれに異様に反応した。

 まるで本当に炎であぶられたかのように

 

「っ!おのれぇ・・・」

 LP4000→3800

 

「むぅ・・・? 

 私は月光虎(ムーンライト・タイガー)を再びペンデュラムゾーンにセッティングし、ペンデュラム効果で月光蒼猫(ムーンライト・ブルー・キャット)を特殊召喚。」

 

月光蒼猫(ムーンライト・ブルー・キャット)「にゃ~お。」

          DEF1200

 

「そして手札を3枚伏せエンドフェイズに入り、月光虎(ムーンライト・タイガー)の効果で特殊召喚された月光蒼猫(ムーンライト・ブルー・キャット)は破壊される。

 だが、月光蒼猫(ムーンライト・ブルー・キャット)はフィールドで破壊された場合、デッキからムーンライトモンスター1体を特殊召喚できる。

 私は2体目の月光蒼猫(ムーンライト・ブルー・キャット)を守備表示で特殊召喚してターンエンドだ。」

 

 月光蒼猫(ムーンライト・ブルー・キャット) DEF1200

  

(奴もエクシーズと融合を。)

 

「奴らの首領と言うだけはあるな。」

 

「えぇ、1ターンでモンスター3体、伏せ3枚。

 ねぇのろまちゃん?アイツ大丈夫なの?」

 

「くくく、まぁ見てれば解りますよ。」

 

「「「?」」」

 

 野呂 守と言う男は真面目であると言えば聞こえはいいのだが、せっかちで上から目線、臆病な割に出世欲に正直と言うのが周知されていた。

 なので、グレースは反応が返ってこなかったことに

 グロリアは自分の用意したデュエリストに、それもエクシーズの人間の勝ちを確信しているような自信に

 エドは感情の波がほとんどないような不気味さに、それぞれ彼に違和感を覚えた

 

「俺の・・・ターン、ドロー

 俺は手札からマジックカード、儀式の下準備を発動

 デッキから儀式魔法カード1枚とその儀式魔法カードに記された儀式モンスター1体をデッキ、墓地から選び、その2枚を手札に加える。

 俺が手札に加えるのは凶導の葬列(ドラグマカブル)凶導(ドラグマ)白騎士(アルバス・ナイト)。」

 

『ドラグマだと!?』

(まずいな、あのカードが中心の構成だとすると、セレナと相性が悪い!)

 

 カイトのデッキが変わっていることに驚き、思わず声を上げるクラウン・ジョーカーこと遊矢

 さらにそのカードが秘めた危険性にセレナの勝率が低いことを計算する。

 

「マジックカード、トレード・インを発動。

 手札のレベル8モンスター、凶導(ドラグマ)白騎士(アルバス・ナイト)を墓地へ送り、デッキから2枚ドローする。

 さらに手札より、黒衣竜アルビオンの効果を発動する。

 デッキからアルバスの落胤を1体墓地に送り、このカードをデッキの一番下に戻しデッキから1枚ドローする。

 

 手札を1枚伏せ、マジックカード、手札抹殺を発動。

 お互いのプレイヤーは手札をすべて捨て、捨てた枚数分デッキから手札を補充する。」

 

「くっ!私の手札は0、5枚ものカードを引かれたか。」

 

「俺は・・・俺は全てを取り戻す。

 奪われた弟を!奪われた家族を!!奪われた仲間を!!

 その邪魔をする者はすべて蹴散らす!!マジックカード発動!!白の烙印!!

 このカードは自分の手札、フィールドからドラゴン族を含む素材を墓地へ送り融合召喚を行う!!」

 

「なっ!?エクシーズのデュエリストが融合だと!?」

 

 淡々としていたソレまでと違い、彼は感情の関が崩壊したかのように声を上げ、それに呼応し赫い炎が湧き上がる。

 

「さらにアルバスの落胤を素材とする場合、自分の墓地のモンスターも素材にできる!

 俺は墓地のアルバスの落胤と光属性モンスター、混沌のヴァルキリアを除外し融合!!

 刻まれし業に身をやつし、光り輝く姿を現すがいい!!融合召喚!!

 顕現せよ!レベル8!烙印竜アルビオン!!」

 

烙印竜アルビオン「ギャオオオオォォォォォォォ!!」

        ATK2500

 

 現れたのはカイトの怒りを具現化したような赫い竜

 その輝きが新たな竜を目覚めさせる。

 

「混沌のヴァルキリアが除外されたことによりデッキから闇属性モンスター、アルバスの落胤を墓地へ送る!

 さらに烙印竜アルビオンの効果!

 自分の手札、フィールド、墓地から烙印竜アルビオンを除くレベル8以下の融合モンスターカードに記された融合素材を除外し融合召喚を行う!

 墓地のアルバスの落胤として扱う黒衣竜アルビオンと教導(ドラグマ)の騎士フルルドリスを融合!

 刻まれし業に身をやつし、堕ちたる姿をさらすがいい!融合召喚!

 顕現せよ!レベル8!灰燼竜バスタード!!」

 

灰燼竜バスタード「ォォォオオオオォォォォォオオオオ!!」

        ATK2500

 

 続き現れたのは燃え尽きた灰のような白い竜

 地に這い呻くその姿は絶望に打ちひしがれた罪人の様でもある。

 

「連続融合だと!?」

 

「あっという間にレベル8が2体並んじゃった!?」

 

「俺はレベル8の灰燼竜バスタードと烙印竜アルビオンの2体でオーバーレイ!

 闇に輝く銀河よ、復讐の鬼神に宿りて、我が僕となれ!

 降臨せよ!ランク8!銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)!!」

 

銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)「ギャオオオオオオォォォォォォォォォォォ!!」

             ATK3000 ORU2

 

 2体のドラゴンが青白く輝く銀河の光を呼び覚ます。

 だがその咆哮は嘆き、その輝きは過去に置き去りにされた誇り、彼に遺されたのはその力のみ。

 

銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)の効果発動!

 1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ使い、相手フィールド上のモンスター1体を対象にその効果を無効にしコントロールを得、銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)として扱う!

 サイファープロテクション!!」

 

銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)「オオオオオオオオオォォォォォォォ!!」

             RUM2→1

 

 その力が光の翼を広げ白き炎の武人を飲み込まんとす

 

「馬鹿正直にハクテンオウを狙ってきたな。

 だが甘い!リバースカードオープン!速攻魔法、烏合無象!

 このカードは自分フィールドの元々の種族が獣、鳥獣、獣戦士族の表側表示モンスター1体を墓地に送り、その種族と同じモンスターをエクストラデッキから効果を無効にし特殊召喚する!

 私はハクテンオウを墓地に送り、同じ獣戦士族の月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)を特殊召喚!」

 

月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)「うふ、にゃ~お♡」――シャランッ

          ATK2400→2500

 

「くっ!逃げたか!!

 だがまだこれで終わりではない!伏せていた儀式魔法、凶導の葬列(ドラグマカブル)を発動!

 手札のレベル8モンスター、星雲龍ネビュラをリリースし手札、墓地よりドラグマ儀式モンスターを儀式召喚する!

 呪われし異界の力よ!我が身に宿り、敵を切り裂け!!儀式召喚!

 現れろ、レベル8!凶導(ドラグマ)白騎士(アルバス・ナイト)!!」

 

 カイトの体から湧き出る様に出現するその名にふさわしい白銀の鎧

 だが全身に不気味な紫の菱形が浮き出ており、神聖さよりも邪悪な気配が漂っている。

 

凶導(ドラグマ)白騎士(アルバス・ナイト)「ォォォ・・・オオォォォォアアアアァァァァアアアアア!!!」

        ATK500

 

「攻撃力500だと?」

 

「バトルだ!!

 銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)に攻撃!殲滅のサイファーストリーム!!」

 

「させるか!

 速攻魔法発動!ラピッド・トリガー!!」

 自分フィールド上の融合素材モンスターを破壊し、融合召喚を行う!

 私は月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)月光蒼猫(ムーンライト・ブルー・キャット)月光黄鼬(ムーンライト・イエロー・マーテン)の3体を破壊する!」

 

 3体の月光の舞姫たちは破滅の光をひらりと躱し、呪いを打ち払う新たな舞姫を呼び寄せる。

 

「現れ出でよ!月光に輝く剣持て舞う気高き野獣!月光舞剣虎姫(ムーンライト・サーベル・ダンサー)!!」

 

月光舞剣虎姫(ムーンライト・サーベル・ダンサー)「はあぁぁぁ!!ふんっ!!」

        ATK3000→6300

 

「攻撃力6300!?」

 

「ちょっとめちゃくちゃじゃない!?」

 

「わはははっ!見たか!この月光舞剣虎姫(ムーンライト・サーベル・ダンサー)はお互いの除外及び墓地の獣戦士族モンスター1体に付き攻撃力が200ポイントアップする!

 だがこれだけではない。

 破壊された月光蒼猫(ムーンライト・ブルー・キャット)月光黄鼬(ムーンライト・イエロー・マーテン)の効果が発動する。さらにトラップ発動、月光輪廻舞踊(ムーンライト・リンカーネーション・ダンス)

 こいつは自分のフィールドのモンスターが破壊された場合発動できる。

 デッキからムーンライトモンスターを2体手札に加える。

 月光黄鼬(ムーンライト・イエロー・マーテン)の効果と合わせ、月光融合(ムーンライト・フュージョン)月光白兎(ムーンライト・ホワイト・ラビット)月光黒羊(ムーンライト・ブラック・シープ)の3枚を手札に加え、月光蒼猫(ムーンライト・ブルー・キャット)の効果でデッキのムーンライトモンスター、3体目の月光蒼猫(ムーンライト・ブルー・キャット)を特殊召喚だ。」

 

月光蒼猫(ムーンライト・ブルー・キャット)「にゃ!」

         DEF1200

         ATK1600→1700

 

「だがお前がカード効果を使ったことで、凶導(ドラグマ)白騎士(アルバス・ナイト)の効果が発動している。

 自分と相手のエクストラデッキそれぞれからモンスターを墓地に送り、その墓地へ送ったモンスターの攻撃力の合計値の半分の数値このカードの攻撃力を上げる!

 俺の攻撃力4500の超銀河眼の(ネオ・ギャラクシーアイズ)光波龍(・サイファー・ドラゴン)とお前の攻撃力3500の月光舞獅子姫(ムーンライト・ライオ・ダンサー)を墓地へ送り、凶導(ドラグマ)白騎士(アルバス・ナイト)の攻撃力を4000ポイントアップさせる!」

 

 凶導(ドラグマ)白騎士(アルバス・ナイト)から呪いが溢れ、セレナのデッキに侵食する。

 主であるはずのカイトにすらその呪いは手を伸ばし、異界の力を高めていく

 

凶導(ドラグマ)白騎士(アルバス・ナイト)「オオォオォォォォォォォガッガガガァァアアアア%$#!!」

        ATK500→4500

 

「攻撃力4500か、それに私のエクストラデッキを狙ってくるとは小賢しい真似を。

 だが!月光舞剣虎姫(ムーンライト・サーベル・ダンサー)にはかなわないだろ!!」

 

「バトルフェイズは終了。

 メインフェイズ2で墓地の烙印断罪の効果を発動する。

 墓地のこのカードを除外し烙印マジック、トラップカード、白の烙印を手札に戻す。

 さらに星雲龍ネビュラを除外し効果発動、墓地の闇か光のドラゴン族レベル4モンスター、アルバスの落胤を手札に戻す。

 

 カードを3枚伏せ、エンドフェイズ

 墓地へ送られた灰燼竜バスタードの効果でデッキのドラグマモンスター、教導(ドラグマ)の騎士フルルドリスを手札に加え、ターンエンド。」

 

「私のターン、ドロー!

 何を伏せたか分からんが、このカードで全て消し去ってやる!月光白兎(ムーンライト・ホワイト・ラビット)を召喚!」

 

 月光白兎(ムーンライト・ホワイト・ラビット) ATK800→900

 

『あっ、ヤバ。』

 

「その効果で「その効果にチェーンし手札のフルルドリスの効果発動!

 自分、相手のメインフェイズにエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターがフィールドに存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。」

 

フルルドリス「ふん!ハッ!!」

      ATK2500

 

「モンスターを増やしたか、だが「さらに自分フィールド上に他のドラグマモンスターが存在する場合、フィールドの表側表示モンスターを選んでその効果をターン終了時まで無効にする。月光白兎の効果は無効だ!!」なんだと!!?」

 

『あっちゃ~・・・攻撃力900が棒立ち・・・』

 

「ふ、ふん!だが私にはこのカードがある!」

 

 セレナが新たなカードを切ろうとしたが、カイトはその前に呪われし騎士の力を発動させる。

 

凶導(ドラグマ)白騎士(アルバス・ナイト)の効果!

 さらにチェーンし永続トラップ発動!ヘッド・ジャッジング!!

 このカードは1ターンに1度、モンスター効果が発動したときに発動でき、そのモンスターのコントローラーはコイントスを1回行い、表裏を当てる。

 外れた場合、その発動は無効になりコントロールが相手に移る!俺が選ぶのは表だ!」

 

「何!?自分のモンスター効果を止める気か!?」

 

「出たのは裏、よって凶導(ドラグマ)白騎士(アルバス・ナイト)の効果発動は無効になり、コントロールがキサマに移る!異界の呪いをその身に受けるがいい!!」

 

凶導(ドラグマ)白騎士(アルバス・ナイト)「オアアァァァァア&%&%&%$#$&!!」

 

 声にならない叫びをあげながら凶導(ドラグマ)白騎士(アルバス・ナイト)がセレナに迫る。

 その足跡は彼女の鎧にある不気味な穴と同じものとなり、セレナのフィールドが異界の穴、ある世界で“ホール”と呼ばれているものに侵食される。

 

「自分のモンスターを私に?

 だが関係ない手札よりマジックカード、月光融合(ムーンライト・フュージョン)を発動!」

 

【ERROR】

 

「なっ!何!?なぜ月光融合(ムーンライト・フュージョン)が発動できない!?」

 

凶導(ドラグマ)白騎士(アルバス・ナイト)がモンスターゾーンに存在している限り、そのコントローラーはエクストラデッキからモンスターを特殊召喚出来ない。

 特殊召喚できるモンスターがいなければ、カードは発動できない。』

 

「なっ!?知ってたのか!?」

 

『あぁ・・・だが、奴がこんな運任せの戦術をしてくるとは・・・』

 

「ぬぅ~ならば!

 墓地の月光黄鼬(ムーンライト・イエロー・マーテン)の効果!月光白兎(ムーンライト・ホワイト・ラビット)を手札に戻し特殊召喚!

 さらに手札よりマジックカード、月光香を発動!

 墓地のムーンライトモンスター、月光翠鳥(ムーンライト・エメラルド・バード)を特殊召喚する!」

 

 月光黄鼬(ムーンライト・イエロー・マーテン) DEF2000

            ATK800→900

 月光翠鳥(ムーンライト・エメラルド・バード) DEF1000

            ATK1200→1300

 

 月光舞剣虎姫(ムーンライト・サーベル・ダンサー) ATK6300→5900

 

月光翠鳥(ムーンライト・エメラルド・バード)の効果で手札の月光融合(ムーンライト・フュージョン)を墓地へ送り1枚ドロー

 さらに墓地の月光香を除外し、手札の月光黒羊(ムーンライト・ブラック・シープ)を捨て効果を発動

 デッキからムーンライトモンスター、月光紫蝶(ムーンライト・パープル・バタフライ)を手札に加え、さらに効果発動

 手札からこのカードを捨てることで月光舞剣虎姫(ムーンライト・サーベル・ダンサー)の攻撃力をエンドフェイズまで1000ポイントアップ!

 これで私の墓地の獣戦士族モンスターが増えたことによりさらに600ポイントアップだ!」

 

 月光舞剣虎姫(ムーンライト・サーベル・ダンサー) ATK5900→6100→6300→7500

 

――攻撃力7500!?

 

「後がないのなら、このターンで決めればいいのだ!」

 

『強引で脳筋な解決法だな。』

 

「うるさい!誰が何と言おうとこれが私だ!

 私のデュエルだ!!」

 

「っ!!自分の・・・デュエル・・・」

 

 セレナの啖呵がエドを含めたアカデミア生たちに突き刺さる。

 彼らにとってのデュエルはアカデミアのデュエルだ。

 理想郷のため、組織のため、プロフェッサーのためのモノだ。

 

 だが、あぁ、赤い女王のデュエルのなんと美しいことだろう。

 全力全開、全身全霊、その様な言葉の似合うハイビート

 自分をさらけ出す彼女のデュエルはとても楽しそうだ。

 

「バトルだ!月光(ムーンライト)「トラップ発動!威嚇する咆哮!このターン相手は攻撃することができない!」 ちぃ!!ターンエンドだ!」

 

「ならばエンドフェイズに永続トラップ、リビングデッドの呼び声を発動!

 自分の墓地からモンスターを攻撃表示で特殊召喚する。

 俺が特殊召喚するのはパラサイト・フュージョナーだ!」

 

「なっ!?」『っ・・・・・・』

 

「パラサイト・フュージョナーが特殊召喚されたとき、自分フィールドのこのカードを含む融合素材モンスターを墓地へ送り融合召喚を行う。

 その際このモンスターは融合素材モンスター1体の代わりにできる。

 俺はパラサイト・フュージョナーをアルバスの落胤として、光属性の銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)と融合!」

 

銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)「グッ、ガアアァァァアァァアァァ!!」

 

 尻尾の生えたダニのような、蜘蛛のようなモンスターが銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)に張り付くと、その全身に大量の紫の菱形“ホール”が発生し、銀河の輝きを闇に葬っていく

 

「内なる声にて現れよ!融合召喚!レベル8、烙印竜アルビオン!!」

 

烙印竜アルビオン「グアアアァァァァァァァ!!」

        ATK2500

 

「烙印竜アルビオンの効果!

 墓地のパラサイト・フュージョナーをアルバスの落胤として扱い闇属性、灰燼竜バスタードを除外し融合!

 刻まれし業に身をやつし、荒ぶる姿を現すがいい!融合召喚!

 顕現せよ!レベル8、神炎竜ルべリオン!」

 

神炎竜ルべリオン「ギャオオオオォォォォォォォォ!!」

        ATK2500

 

 銀河のエネルギーを吸収したホールはひび割れのように広がり続け、赫、白、黒、炎の脅威を象徴する3色に彩られた竜を呼び寄せる。

 だがこれで終わりではない、闘争を求める竜はその纏う炎でさらにホールを広げる。

 

「ルベリオンの効果!

 このカードが融合召喚に成功したとき、手札を1枚捨て自分のフィールド、墓地及び除外された自分のカードの中から融合素材を選び持ち主のデッキに戻すことで融合召喚を行う!」

 

「何ッ!?私のターンで3回目の融合だと!?」

 

「俺は墓地の銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)超銀河眼の(ネオ・ギャラクシーアイズ)光波龍(・サイファー・ドラゴン)、そして除外されている星雲龍ネビュラ、アルバスの落胤、灰燼竜バスタードと黒衣竜アルビオン

 これら6体をデッキに戻し融合!刻まれし業に身をやつし、葬られしドラゴンたちよ、その怨念を結集させ、敵を殲滅せよ!!融合召喚!

 顕現せよ!レベル8!深淵竜アルバ・レナトゥス!!」

 

深淵竜アルバ・レナトゥス「オオオオォォォアアアアアアアアア!!」

            ATK2500

 

 憎悪の叫びが木霊する。

 ホールより現れた最後の一体は理性なき暴走竜

 炎で全てを消し炭に変える。それを体現したかのような黒赫のドラゴン

 

「最後にこのターン墓地に送られた烙印竜アルビオンの効果でデッキから烙印マジック、トラップカードを1枚セットか手札に加える。

 俺は烙印の裁きをセットする。」

 

「私のターンでさんざんやってくれるな・・・

 エンドフェイズに月光紫蝶(ムーンライト・パープル・バタフライ)で上がった攻撃力が元に戻る。」

 

 月光舞剣虎姫(ムーンライト・サーベル・ダンサー) ATK7900→6900

 

「・・・すぐに終わる。全てが!

 俺のターン!ドロー!!

 俺はマジックカード、マジック・プランターを発動!

 自分フィールド上の永続トラップカード1枚を墓地へ送り2枚ドローする!」

 

「ならば私もお前のモンスターの効果を使わせてもらう!

 凶導(ドラグマ)白騎士(アルバス・ナイト)の効果!お前のエクストラデッキの超銀河眼の(ネオ・ギャラクシーアイズ)光波龍(・サイファー・ドラゴン)と私の月光舞剣虎姫(ムーンライト・サーベル・ダンサー)を墓地に送り、えと・・・3750ポイントアップだ!」

 

 凶導(ドラグマ)白騎士(アルバス・ナイト) ATK500→4250

 

「無駄な足掻きを!

 俺はレベル8の烙印竜アルビオンと神炎竜ルべリオンの2体でオーバーレイネットワークを構築!

 闇に輝く銀河よ、再び復讐の鬼神に宿りて、我が僕となれ!

 再臨せよ!ランク8!銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)!!」

 

銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)「ギャオオオォォォォォォォォォ!!」

             ATK3000 ORU2

 

「さらに俺は速攻魔法、RUM(ランクアップマジック)光波昇華(サイファー・アセンション)を発動!

 自分、相手のメインフェイズに自分フィールドのサイファーエクシーズモンスター1体を1つ高いランクのサイファーエクシーズモンスターにランクアップさせる!」

 

RUM(ランクアップマジック)!?」

 

「俺はランク8の銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)1体でオーバーレイネットワークを再構築!ランクアップエクシーズチェンジ!!

 闇に輝く銀河よ!とこしえに変わらぬ闇を消し去り、光ある未来を掴め!!

 降臨せよ!ランク9!超銀河眼の(ネオ・ギャラクシーアイズ)光波龍(・サイファー・ドラゴン)!!」

 

超銀河眼の(ネオ・ギャラクシーアイズ)光波龍(・サイファー・ドラゴン)「オオオオォォォォォォォオオオオオオオ!!!」

             ATK4500 ORU3

 

 鮮烈なる光が銀河を変える。より強大に、より眩しく

 肩には顔のようなアーマーが装着され、伝説の白竜に連なる者として3頭に見える銀河の超越龍

 その力は、その暴走はもはや止められる者などない。光がフィールドを覆い尽くす

 

「ネオ・ギャラクシーアイズの効果!

 サイファーカードを素材として持つこのカードは1ターンに1度、オーバーレイユニットを3つまで取り除き、取り除いた数だけ相手の表側表示モンスターを選んで、そのコントロールを得る!

 俺は2つ取り除き効果発動!サイファースーパープロジェクション!!」

 

 超銀河眼の(ネオ・ギャラクシーアイズ)光波龍(・サイファー・ドラゴン) ORU3→1

 

「くっ!?だが、月光舞剣虎姫(ムーンライト・サーベル・ダンサー)は相手の効果の対象にならない!」

 

「この効果は発動後、“選ぶ”効果!対象を取るわけではない!

 お前のフィールドの月光舞剣虎姫(ムーンライト・サーベル・ダンサー)凶導(ドラグマ)白騎士(アルバス・ナイト)のコントロールを得る!

 さらにこの効果でコントロールを得たモンスターは効果が無効になり、超銀河眼の(ネオ・ギャラクシーアイズ)光波龍(・サイファー・ドラゴン)として扱い攻撃力は4500となる。」

 

 月光舞剣虎姫(ムーンライト・サーベル・ダンサー)超銀河眼の(ネオ・ギャラクシーアイズ)光波龍(・サイファー・ドラゴン) ATK6900→4500

 凶導(ドラグマ)白騎士(アルバス・ナイト)  →超銀河眼の(ネオ・ギャラクシーアイズ)光波龍(・サイファー・ドラゴン) ATK4250→4500

 

「なんだと!?」

(これでは月光紅狐(ムーンライト・クリムゾン・フォックス)の効果も使えん!?)

 

「そして、光波昇華(サイファー・アセンション)の効果で特殊召喚されたネオ・ギャラクシーアイズの攻撃力は自分フィールド上のレベル4以上のモンスターの数×500ポイントアップする!

 俺のフィールドのモンスターはネオ・ギャラクシーアイズを除いてすべてレベル4以上のモンスター!よって攻撃力は!」

 

超銀河眼の(ネオ・ギャラクシーアイズ)光波龍(・サイファー・ドラゴン)「ギャオオオォォォォォォォ!!」

               ATK4500→6500

 

「6500・・・だがまだ!」

 

「モンスターがいるから耐えられると?だがその希望も打ち砕く!!

 深淵竜アルバ・レナトゥスは1度のバトルフェイズ中にモンスターに対し、融合素材としたモンスターの数まで攻撃できる!」

 

「なっ!?」

 

「バトル!深淵竜アルバ・レナトゥスで月光翠鳥(ムーンライト・エメラルド・バード)黄鼬(イエロー・マーテン)蒼猫(ブルー・キャット)に攻撃!!

 赫焉のヘイトレッド・フレア!3連打ァ!!」

 

深淵竜アルバ・レナトゥス「ギャオオオォォォォォォォオ!!」

 

――ゴオオオオォォォォォォォォォオオオオオオオ!!

 

 赫い炎が月夜に舞う獣たちを消し炭にする。 

 だがその主たる少女はその状況においても諦めることはない。

 

月光蒼猫(ムーンライト・ブルー・キャット)の効果!デッキから最後の月光虎(ムーンライト・タイガー)を守備表示で特殊召喚!」

 

月光虎(ムーンライト・タイガー)「がうっ!」

       DEF800

       ATK1200→1300

 

「アルバ・レナトゥスで月光虎(ムーンライト・タイガー)に攻撃!

 赫焉のヘイトレッド・フレア!第4射!!」

 

月光虎(ムーンライト・タイガー)がフィールドで破壊された場合、墓地のムーンライトモンスターを特殊召喚する!戻ってこい!月光蒼猫(ムーンライト・ブルー・キャット)!!」

 

月光蒼猫(ムーンライト・ブルー・キャット)「にゃん!」

          DEF1000

          ATK1600→1700

 

「第5射!!」

 

蒼猫(ブルー・キャット)の効果ァ!月光翠鳥(ムーンライト・エメラルド・バード)を特殊召喚し効果発動!

 手札の置換融合を墓地に送り、1枚ドロー!」

 

月光翠鳥(ムーンライト・エメラルド・バード)「ふんっ!」

          DEF1000

 

「第6射ァ!!」

 

――ドオオォォン!

 

超銀河眼の(ネオ・ギャラクシーアイズ)光波龍(・サイファー・ドラゴン)の効果を使ったターン、このモンスターでしかダイレクトアタックはできない。

 だがそれで十分だ!ネオ・ギャラクシーアイズでダイレクトアタック!!」

 

 爆炎と共にキャストが入れ代わり攻撃を回避し続けるクイーン・ダイヤ

 それを連続攻撃能力を持つ融合モンスターで攻め立てるカイト

 最後の壁すら焼き払われ銀河の光が放たれようとしたその時

 

「その言葉を聞いて安心したぞ!手札よりアンクリボーの効果発動!

 手札からこのカードを捨てることでお互いの墓地からモンスターを1体特殊召喚する!」

 

アンクリボー「クリクリ!」

 

――おおぉぉぉ!!

 

 主の絶体絶命のピンチを救う為、小さな精霊が力を貸す。

 その光景に誰からか、誰もか、驚きと興奮から声が出た。

 勝利と敗北、それを分けるこの一瞬一瞬にこの場に集った者たちは、いつの間にやら魅せられていた。

 

「させん!!速攻魔法、墓穴の指名者!

 相手の墓地からモンスターを除外し、次のターンの終了時までこの効果で除外したモンスター及びそのモンスターと元々のカード名が同じモンスターの効果を無効化する!」

 

アンクリボー「クリッ!?クリィィ・・・――

 

 現れた小さな毛玉の精霊が突如発生したホールにのみ込まれる。

 最後の壁を出す手段がなくなり、ここに勝敗が決した。

 

「これでネオ・ギャラクシーアイズの攻撃は続行!!

 

「っ・・・・・来いっ!!」

 

「戦慄のサイファーストリーム!!」

 

 破滅の光が赤の女王、黒の道化師を飲み込んでいく

 その光が消え去った時、もうそこには誰もいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


「あ~なんとか、逃げ出せたな・・・」

 

 ただのソリッドビジョン・・・の割には焦げたような気がするが・・・

 と言うか、リアルソリッドビジョンを無効にしていたのにパラサイト・フュージョナーの洗脳が有効になっていたのは・・・どういうことだ?

 あの運任せのコンボとかパターン化した行動しかできないパラサイト・フュージョナーができるのか?

 

「くそぉおぉぉぉ!もう1ターンあれば・・・」

 

「あの伏せられていたトラップ、融合モンスターの攻撃力以上の相手モンスターを全滅させるやつだぞ?

 おまけにあのターン烙印竜が墓地に送られていたからなんか伏せられてたし。」

 

 さらにエクレシアとか出てこられてきたら・・・

 

「ぬぅ・・・」

 

「まぁ、ひっさしぶりに良いデュエルが見れた。ガッチャ、セレナ。」

 

 カイトがおかしくなっている以外はな・・・

 しかし、5パック剝いてウルトラレアカード引きまくったり、土壇場でクリボー引いたり、こいつ本当はどこぞのデュエルバカなんじゃないだろうな?

 

「むぅ・・・で、どうするんだ?赤いの

 蟲どもが出てきたら、アカデミアも形振り構わない感じになっているのだろう?」

 

「あぁたぶんな。

 だが自分たちだけではなく、この世界の住民にもあの蟲を入れるとは・・・

 折角、セレナの所在証明をしたが・・・被害者を増やすわけにもいかないし、ここらで潮時「あっ!やっと見ぃ~つけた~」!!?」

 

 今の声!?いやいやいや!いくらなんでも早すぎるだろう!?

 

「ごめんね。シンクロ次元の大会が終わったらデュエルしようって伝えたのに、待たせちゃって。」

 

 気安い友達に話しかけるような馴れ馴れしさで話しかけてくるのは紫の少年

 

「さぁ、デュエルしよ♪」




 セレナのいるところに天下御免で僕、参上!

 いや~ごめんねぇ、ごめんね。遊矢
 すぐに行くって聞かなくてさ。

 すまないが、こいつの戯れに付き合ってくれ。

(いや、こいつとデュエルすること自体がヤバいんだって!!)

 どうした。赤いの、らしくないな?

 あぁもう!次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
 『存在をBET!奇々怪々、竜毒樹』
 やってやんよぉ!!


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存在をBET!奇々怪々、竜毒樹

何とか3月中に投稿できた・・・そしてタイトルも予告より変えました

ラップとか口上とか音楽や効果音もあって耳障りがよくてちょっと長くてもすぐ覚えちゃいますね。
縁結びのSCPの口上とか





???????「俺の話題をしたな?これでお前とも縁が出来た!」


「どうですかな!?この戦略性!このパワー!!

 この天才ドクトルが作り上げたパラサイトモンスターは!新たなるステージに進みましたぞ!!」

 

 濃い隈を目の下に刻んだ不気味な老人が興奮気味に目の前の男に自分の研究成果を見せる

 

「・・・・・あぁ、そうだな・・・

 だが、なぜセレナをその場で確保しなかったのだ?ドクトル。

 今までは、ある程度は君が操作できていただろう?」

 

「ぬっ!?

 そ、それはですな・・・デュエリスト個々人の性質に合わせた結果、オミットされました・・・」

 

「・・・こちらの制御が効かないと?」

 

「その点は問題ありませんぞ!

 アカデミアへと敵対することはない!

 記憶操作はこれまでよりも格段に強く、深くなっている!

 いや!もはやあの世界に戦力を逐次投入する必要もない!

 私のパラサイトモンスターが榊 遊矢を下せばセレナも回収できるのですからな!」

 

 『ドクトル』の言い訳に呆れた王座に座った男『赤馬 零王』は通信をつなげる

 

「・・・奴を嘗めるなドクトル。

 ユーリを呼べ、現地部隊が榊 遊矢と交戦している隙にセレナを回収する。」

 

『ん・・・?プロフェッサーの命が下ったのではないのですか?』

 

「何のことだ?」

 

『いえ、ユーリなら先ほどプロフェッサーの言いつけ通りにセレナを連れ戻してくると、すでに・・・』

 

「っ!?すでにエクシーズ次元に向かったのか!?」

(くっ!?今はまだ、セレナの近くには榊 遊矢が!?

 やはり、奴らは惹かれ合うというのか!?ズァーク!!)

 

「ヌフフフフ、それはそれは・・・あのお子様にも困ったものですな?

 どうですかな?セレナ共々ユーリにもパラサイトモンスターを入れるというのは?

 あのじゃじゃ馬達も大人しくなりますよ?」

 

 動揺する零王にドクトルは自身の研究成果を宣伝する。

 

「っ!!控えろドクトル!!

 通信室!すぐにユーリに榊 遊矢と接触するなと伝えろ!!」

 

 それを一喝し零王は真なる悪魔の復活を阻止するために動き出すが、ここで彼はある大きなミスをしていた。

 ドクトルが自身の創ったパラサイトモンスター[パラサイト・フュージョナー]にどのような調整を施したのかと聞き損ねたのだ。

 

 目的の為ならどこまでもそこへ向けて進んでしまう。

 そんな科学者たちの所為で今エクシーズ次元には、静かに危機が迫っていた。


「さぁ、デュエルしよ♪」

 

「いや、いくら何でも早ぇよ!どういうことだよ!素良!?」

 

 俺はこの異常なタイミングの良さをユーリの横の素良に尋ねる。

 今俺たちがいるのは上の階が崩落して吹き抜けのようになったビルの中

 無数にある廃墟群の屋内の一角を、この短時間で見つけ出すなんて入るところを見られていた以外ないが・・・

 ここまで来るまで[光学迷彩アーマー]を使い透明になってきたのだ。普通なら見られるはずもない。

 

「いや~なんかごめんね。

 でもすごいよね、勘でこっちだ!ってだけで本当に見つけちゃうなんてさ。」

 

 異常を勘の一言で済ませられた!?

 くっ!?やっぱりズァークか!?ズァークの所為なのか!?

 混乱する俺を尻目にユーリはにっこにこ顔、お付きの素良と顔にやけどの跡がある大男 バレットは呆れている。

 

「唐突に飛び出して・・・またプロフェッサーにお叱りを受けるぞ?」

 

「えぇ~いいじゃん。

 こうしてセレナを見つけたんだしさ。

 それに、邪魔が入ったから仕方なくデュエルしたって言えば問題ないよね?ね?」

 

 きっと俺の顔は渋いことになっているだろう。その証拠にセレナは疑問顔だ。

 

「どうした、赤いの、らしくないぞ?」

 

「あぁ、自分でもそう思うよ・・・OK、やろうじゃないか。

 だがその代わりあの蟲について何か知っていることがあれば教えろ。」

 

「あの蟲?」

 

「仮面の連中、オベリスク・フォースを洗脳していたパラサイト・フュージョナーって言うカードだ。」

 

「洗脳だと!?」

 

「・・・・・・」

 

「へぇ・・・そう。」

 

 三者三様の反応、これだけでこいつらの持っている情報のほどが分かる

 バレットは完全に知らない様子、素良は不信が増し、ユーリは何となく感づいていたか。

 

「あぁ、リアルソリッドビジョンを用いた洗脳のはずなのにこの世界ではその制限を超えていた。

 勝手に動いているのなら、病気のように広がってしまう可能性もある。」

 

「あ~それは怖いね~

 でも、僕らが知っていることなんてオベリスクフォースの指揮官がプロフェッサーの側近のドクトルってやつなことくらいさ。ごめんね?」

 

「そうか・・・まぁいい、期待もしてなかったしな。」

 

 失敗や予想と違うと世界の破滅を進めることになる。それに・・・

 

「ん?」

 

 友達を失わせるわけにはいかないよな・・・

 

「じゃあ・・・やってやるよ!!」

 

「あはっ!うん!じゃあやろうか!!」

 

『『決闘(デュエル)!!』』


「先攻は僕から行っくよ~

 僕は手札からマジックカード、ワン・フォー・ワンを発動。」

 

「その発動にチェーンして手札の増殖するGの効果発動。

 このターン相手が特殊召喚を行うたびに、俺はデッキからカードを1枚ドローする。」

 

 瓦礫の隙間から無数の眼がのぞく

 素良は慣れたものだが、その嫌悪感を引き起こさせる黒い影たちにユーリやセレナは少々引く

 

「うおっ・・・」

 

「ちょっと君、すっごいカード使うねぇ・・・

 僕は手札のモンスター1体を墓地へ送り、デッキからレベル1モンスター、イービル・ソーンを特殊召喚。」

 

 イービル・ソーン DEF300

 

 黒い果実を実らせる巨大な植物が現れるがそれに反応して、黒い影が素早く遊矢のデッキからカードを主の元へ運ぶ。

 

「イービル・ソーンの効果発動。

 このカードをリリースして、相手に300ポイントのダメージを与え、デッキからイービル・ソーンを2体まで攻撃表示で特殊召喚する。」

 

 黒い棘の付いた果実が爆散し遊矢を襲い、さらに地面に飛んだ種子が新たな命となって芽吹き成長する。

 

 イービル・ソーン ATK100

 イービル・ソーン ATK100

 

「くっ、だがその特殊召喚によりさらに1枚ドロー。」

 LP4000→3700

 

「僕はさらに永続魔法、超栄養太陽を発動!

 自分フィールド上のレベル2以下の植物族モンスターを1体リリースして、デッキからリリースしたモンスターより3つまでレベルの高いモンスターを特殊召喚する。」

(本当はローンファイア・ブロッサムでデッキ圧縮したい所だけど、手札を余計に与えるのはしたくないな~)

「僕はレベル1のイービル・ソーンをリリースして、デッキからレベル3の捕食植物(プレデター・プランツ)オフリス・スコーピオを特殊召喚。

 

 オフリス・スコーピオを特殊召喚したことで効果発動

 手札のモンスターを1体墓地へ送ることでオフリス以外の捕食植物(プレデター・プランツ)を特殊召喚する。

 僕が新たに呼ぶのは捕食植物(プレデター・プランツ)ダーリング・コブラ。」

 

オフリス・スコーピオ「キャシアァァァ!」

          DEF800

 

ダーリング・コブラ「シャアアァァァァァ!」

         DEF1500

 

 火花を散らす花が弾け植物で作られたサソリと蛇が産声を上げる。

 

「特殊召喚により合計2枚ドロー。」

(フィールドに素材3、トリフィオか?)

 

(でもいいんだけど、もう手札8枚だし、1回止めるだけじゃな~)

「ダーリング・コブラが捕食植物(プレデター・プランツ)の効果で特殊召喚されたとき、デュエル中に1度だけ融合またはフュージョンと名のつく魔法カードを1枚手札に加える。

 

 さらに墓地に送られた捕食植物(プレデター・プランツ)ビブリスプの効果

 1ターンに1度だけ、このカードが墓地へ送られた場合、デッキからビブリスプ以外の捕食植物(プレデター・プランツ)モンスター1体を手札に加える。

 この2つの効果で置換融合とサンデウ・キンジーをデッキから手札に加えるよ。」

 

(サンデウ・キンジー、通常召喚権を残しているから判明情報だけで合計2回融合できる・・・

 それならスタぺリア、グリーディー、どちらも呼べるか。)

 

(でもそこまで行ったら手札10枚、それをモンスター1体で防ぐのは厳しいよね。なら)

「僕は置換融合を発動

 フィールドの闇属性モンスター、イービル・ソーンとダーリング・コブラを融合!

 魅惑の香りで虫を誘う二輪の美しき花よ、今一つとなりて、その花弁の奥の地獄から、新たな脅威を生み出せ!融合召喚!!

 現れろ!スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン!!」

 

スターヴ・ヴェノム・F「ギッシャヤアアアアアァァァァァァァァァ!!」

           ATK2800

 

 現れたのはカマキリ、アリ、トンボなど複数の肉食昆虫の特徴を合成した紫の毒竜

 遊矢はその異質な竜を一睨みし、次に自身のデッキへ目を移す。

 

(意識ははっきりしている、か・・・ユーゴがこの世界にいないからか?

 だがオッドアイズを並べるのは出来るだけ避けたいな。)

「増殖するGの効果で1枚ドロー。」

 

「さらに僕は捕食植物(プレデター・プランツ)サンデウ・キンジーを通常召喚!」

 

サンデウ・キンジー「ゲェェェ!」

         ATK600

 

「サンデウ・キンジーの効果、1ターンに1度、フィールド上のこのカードを含む手札、フィールド上のモンスターを使い融合召喚を行う。

 魅惑の香りで虫を誘う二輪の美しき花よ、今一つとなりて、地獄の入り口を開け!融合召喚!

 現れろ!レベル8、捕食植物(プレデター・プランツ)キメラフレシア!」

 

キメラフレシア「ギッシャアアアァァァァァァァァァァ!!」

       ATK2500

 

「さらにドロー。」

 

「これで僕はターンエンドだよ。」

 

「おいおい、今の俺の手札10枚だぞ?

 大盤振る舞いにもほどがあるだろ?」

 

「お近づきの印ってやつだよ。

 さぁ、君のターンだ。僕を楽しませてくれよ?」

 

「楽しむかどうかはお前の勝手だ、俺のターン、ドロー!

 俺はスケール1のEM(エンタメイト)バロックリボーをペンデュラムスケールにセッティング。」

 

 廃墟に天から一筋の光が差し込み、その中に重厚なコートとそれに合わせた巻き髪の金の鬘をつけた、全くそれらが似合っていない毛玉が浮かぶ

 

「魔法カード、デュエリスト・アドベント

 自分または相手ペンデュラムゾーンにカードが存在する場合、デッキからペンデュラムと名の付くペンデュラムモンスターかペンデュラムと名の付く魔法、トラップカードを手札に加える。

 

 魔法カード、ペンデュラム・コールを手札に加え、手札を1枚捨てこれを発動

 デッキからカード名の異なる魔術師ペンデュラムモンスターを手札に加える。

 慧眼の魔術師と調弦の魔術師を手札に加え、スケール5の慧眼の魔術師をセッティング。」

 

 2本目の光の柱が現れ目を覆い隠した魔術師が浮かぶ

 それを見てユーリはついに来たと目を輝かせる。

 

「スケール1と5、これで2から4までのモンスターを同時に召喚できるんだよね!」

 

「その通り、さぁさぁ前座と行こうか!ペンデュラム召喚!!

 手札より現れよ!レベル4、調弦の魔術師!レベル2、EM(エンタメイト)トランプ・ガール!」

 

調弦の魔術師「はっ!」

      DEF0

 

トランプ・ガール「あはははっ」

        DEF200

 

 流星に乗って現れたのは桃色の髪の音叉のような杖を持った少女と道化服を着た少女

 仰々しく登場した割には、そのどちらもがユーリのモンスターのどちらにも遠く及ばない弱弱しいモンスターたち

 

「えぇ~2体だけ?」

 

「いやもう一体だ。

 調弦の魔術師の効果、このカードが手札からのペンデュラム召喚に成功したとき、デッキから調弦の魔術師以外の魔術師ペンデュラムモンスター1体を守備表示で特殊召喚する。

 この効果でデッキから2体目の慧眼の魔術師を特殊召喚。」

 

慧眼の魔術師「ふんっ!」

      DEF1500

 

 光の柱に浮かぶ魔術師と同じ姿の魔術師が現れたが、それでもユーリのモンスターを数で上回っただけだ。

 だが、このモンスターたちが遊矢の存在を、世界の命運を賭けたコンボの始まりを彩るモンスターたちだ。

 

「さて俺はレベル4の慧眼の魔術師と調弦の魔術師でオーバーレイ

 2体の魔術師ペンデュラムモンスターでオーバーレイネットワークを構築

 エクシーズ召喚、星刻の魔術師。」

 

星刻の魔術師「はっ!」

      ATK2400 ORU2

 

 混沌より現れる星を読み、時を読み、未来を知る魔術師

 その周りに浮かぶ光を星見盤の付いた槍に宿し、主の未来を導く

 

「星刻の魔術師の効果発動

 オーバーレイユニットを1つ使い、自分のデッキ、墓地、エクストラデッキの表側のペンデュラムモンスターの中から、闇属性、魔法使い族モンスター1体を手札に加える。

 俺は闇・道化師のぺーテンを手札に加える。」

 

 星刻の魔術師 ORU2→1

 

「あれれぇ~それだけ?

 そんなモンスターじゃ、僕のモンスターには全然かなわないよ?」

 

「まぁそうだな。じゃあ厄介な虫をとっ捕まえるとするか。

 手札より魔法カード、奇跡のマジック・ゲートを発動

 自分フィールド上に魔法使い族モンスターが2体以上存在する場合、相手フィールドの攻撃表示モンスター1体を選び守備表示に変え、そのモンスターのコントロールを得る。」

 

「えぇ!?強奪カード!?」

 

 魔法使いたちは杖を合わせると、漏れ出た魔力が巨大な虫取り網を作り出す。

 

「虫には網に限るぜ。」

 

スターヴ・ヴェノム・F「ギャッ!?」

           ATK2800→2000

 

 その光の網でユーリのエースモンスターにして象徴たる餓えた毒竜は捉えられ、遊矢の元へと引きずられる。

 

「スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン捕獲!」

 

「あぁ~!?僕のスターヴ・ヴェノム返してよ!!」

 

 ユーリの文句を聞き流し、遊矢は魔力の網の中に捕らわれたスターヴ・ヴェノムを睨む。

 

スターヴ・ヴェノム・F「っ!?」

 

(・・・・・・特に何もなしか・・・)

「言われなくても、こんな厄介者、すぐに舞台からご退場願おう。

 トランプ・ガールの効果発動!

 このカードを含む、自分フィールド上のモンスターを使い融合召喚を行う。

 ペンデュラムモンスター、EM(エンタメイト)トランプ・ガールと闇属性モンスター、スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴンを融合!」

 

「なっ!?赤いのがスターヴ・ヴェノムを使い融合だと!?」

 

トランプ・ガール「あははははははっ!!」

 

 トランプ・ガールが光の網に同化するとそれは禍々しい樹木へと変化し、中の毒竜を溶かしながら成長していく

 

スターヴ・ヴェノム・F「ア゛ァ゛!?・・・・ガァ゛ッ・・・・・」

 

「毒を以て毒を制す・・・このモンスター、混ぜたら危険!!」

 

 断末魔がなくなり、卵が割れるのかの如く、植物のような、竜の様な不気味な存在が発芽する。

 取り込んだものの姿を似せた植物の亜竜、その名は

 

「融合召喚!スターヴ・・・・・ヴェネミー・ドラゴン!!」

 

スターヴ・ヴェネミー「ギャアアアァァァァァァァァァ!!」

          ATK2500

 

「融合ペンデュラムモンスター!?」

 

「ユーリのモンスターを取り込んだだと!?」

 

「ふ、ふふ・・・でもキメラフレシアは戦闘時に相手モンスターの攻撃力を1000ポイントダウンさせて、自分の攻撃力を1000アップさせる。

 まだ相打ちにもならないよ!」

 

「ほう、ならスターヴ・ヴェネミーの効果を使わせてもらおう。

 キメラフレシアを対象にエンドフェイズまでその攻撃力を500ポイントダウンさせ、相手に500ポイントのダメージを与える。」

 

スターヴ・ヴェネミー「オオオオォォォォォォ!!」

 

キメラフレシア「ギアアアァァァァァァァ!!」

       ATK2500→2000

 

 スターヴ・ヴェネミーの根がキメラフレシアに巻き付き養分を奪い、その際噴出した樹液がユーリへと飛び散り、その毒素がライフを侵食する。

 

「うぅ・・・それだけかい?大した事「そしてその名前と効果を奪う。」えっ!?」

 LP4000→3500

 

「ヴェネミーラーニング!」

 

スターヴ・ヴェネミー(キメラフレシア)「ギャアアァァァァァァァァ!!」

          

 キメラフレシアの瑞々しい緑が、不気味で巨大な花弁が色を失い枯れていく

 逆にスターヴ・ヴェネミーの背の巨大な葉のようなものが、美しく色づいていく

 喰らい、奪い、弱らせる。この土壌はもはやこの怪植物の独壇場だ。

 

「ちぃ、僕は墓地のドロソフィルム・ヒドラの効果を発動!

 このカード以外の墓地の捕食植物(プレデター・プランツ)モンスター1体を除外する事で、そのモンスターの攻撃力を500ポイントダウンさせる!

 僕はダーリング・コブラを除外してスターヴ・ヴェネミー・ドラゴンの攻撃力を下げる!」

 

 スターヴ・ヴェネミー ATK2500→2000

 

「おいおい、一瞬で余裕がなくなったじゃないか?

 じゃあバトル、の前にバロックリボーのペンデュラム効果、バトルフェイズ開始時、デッキから攻撃力300、守備力200のモンスター、EM(エンタメイト)クラシックリボーを手札に加え、このカードを破壊する。

 

 ではスターヴ・ヴェネミー改め、キメラフレシアでキメラフレシアに攻撃。餓喰のヴェネミー・ヘルブラッド!!」

 

スターヴ・ヴェネミー(キメラフレシア)「グゥゥ・・・・」――ツゥ・・・                                           

                  ATK2000→3000

 

――ピシャン!ズゥ・・・・ズズズッ!ザシュ!!ザシュ!!

 

キメラフレシア「ピギャアアアアァァァッァァ!!」――バンッ!!

       ATK2000→1000

 

 スターヴ・ヴェネミーが腕を差し出すとその爪先から一滴の樹液が垂れ落ち、それがビルの床いっぱいに広がると、曲がりくねった樹木が何本も生え、憐れな枯れ花を貫きその生命を終わらせ、その主たる紫の少年もそれに巻き込まれ傷ついていく。

 

「ぐわああぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 LP3500→1500

 

「やれやれ、いつもながら容赦がないねぇ君は。」

 

「ユーリのライフは1500、奴のモンスターはもう1体。」

 

「この攻撃が通ればユーリの負けか?」

 

 ユーリのフィールドにカードはもうない。

 このまま遊矢が攻撃すればこのデュエルは終わるだろう。が

 

「俺はこれでバトルフェイズを終了する。」

 

「「「「えっ?」」」」

 

「えっ?なんで、君のモンスターもう一体いるじゃん?」

 

「そう言っている時点で攻撃を誘っているのが丸わかりだ。

 攻撃を誘うのなら、その止まらないにやけ笑いはやめたらどうだ?」

 

「・・・ははは、これは手厳しいねぇ~」

 

「ふん、じゃあメインフェイズ2だ。

 手札のEM(エンタメイト)レディアンジュの効果、1ターンに1度、手札からこのカードとEM(エンタメイト)モンスター、クラシックリボーを捨てて2枚ドローする。

 

 さらに魔法カード、闇の誘惑を発動

 デッキから2枚のカードをドローし、その後闇属性モンスター、闇・道化師のぺーテンを除外。

 

 フィールド魔法、天空の虹彩を発動

 このカードは1ターンに1度、自分フィールド上のカードを1枚破壊することでデッキからオッドアイズカードを手札に加える。

 星刻の魔術師を対象にするが、星刻の魔術師の効果

 1ターンに1度、自分のモンスターゾーン、ペンデュラムゾーンのモンスターが破壊される場合、自分のデッキから魔法使い族モンスター1体を墓地に送ることができる。

 調律の魔術師を墓地に送り、破壊を無効、天空の虹彩の効果は不成立になる。

 

 墓地のシャッフル・リボーンの効果

 このカードを除外し、自分フィールド上のカード1枚をデッキに戻すことで1枚ドローする。

 星刻の魔術師をデッキに戻して1枚ドロー

 手札を3枚セットし、エンドフェイズ、シャッフル・リボーンのデメリットにより手札を1枚除外し、ターンエンド。」

 

「はぁ?」

 

 ユーリは遊矢の行動がよく分からなかった。

 天空の虹彩の効果を無駄にする行動、シャッフル・リボーンのコストを天空の虹彩ではなく防御効果を持つ星刻の魔術師にしたこと

 だが、その理解不能の行動を理解しているものがいた。

 

「あぁ~これ、遊矢、ユーリのデッキ知っちゃっている感じだね。」

 

「分かるのか?」

 

「まぁね。」

(でももうデッキが半分削れているところを見ると・・・まともに勝つデッキじゃなさそうだな~・・・)

 

「僕のターン、ドロー

 スタンバイフェイズに前のターン墓地へ送られたキメラフレシアの効果で僕はデッキから融合のカードを手札に加える。

 そして墓地の置換融合を除外して墓地のスターヴ・ヴェノムをエクストラデッキに戻すことでさらに1枚ドローする。

 

 ふふふ、前のターンはよくもやってくれたね。

 今度は僕たちが君たちを美味しく食べてあげる。マジックカード!捕食生成(プレデター・プラスト)

 僕の手札のプレデターカードを任意の数見せることで、見せた数だけ相手フィールド上のモンスターに捕食カウンターを1つずつ置く。

 僕は手札の捕食植物(プレデター・プランツ)セラセニアントを見せて」

 

「永続トラップ発動、ペンデュラム・スイッチ

 1ターンに一度、自分フィールド上のペンデュラムモンスターをペンデュラムゾーンに移動する。」

 

「えぇ!?」

 

――バキバキバキバキッ!!

 

 竜を模した怪植物がその本来の姿に戻っていく。

 血管のごとく密に無数の枝が天へと伸び、爪のような葉を生い茂らせる。

 

「さらにスターヴ・ヴェネミーのペンデュラム効果により、墓地にカードが送られるたびに1枚に付きこのカードに一つ、ヴェネミー・カウンターを置く。」

 

――ブシュッ!!

 

 スターヴ・ヴェネミー VC0→1

 

 毒の樹から赤黒い樹液が噴出し床に薄く広がった。

 

「あっちゃ~困ったな・・・

 でもいいの?自分からモンスター0にしちゃって。」

 

「心配ご無用

 ペンデュラムゾーンにいるスターヴ・ヴェネミーは戦闘ダメージを1ターンに1度ゼロにできる。」

 

「あはは、まいったな~本当にできることないや。

 って言うことで、僕はマジックカード、一時休戦を発動

 互いのプレイヤーはカードを1枚ドローし、相手ターン終了時まで互いが受けるダメージは0になる。

 

 う~ん、マジックカード、ダーク・バースト

 墓地の攻撃力1500以下の闇属性モンスターを手札に加える。

 僕は捕食植物(プレデター・プランツ)ビブリスプを手札に戻して捕食植物(プレデター・プランツ)セラセニアントを召喚。」

 

 スターヴ・ヴェネミー VC1→2→3

 

 カードが墓地へ送られるたびにスターヴ・ヴェネミーが変化した木から樹液が血のごとく流れ出し、血だまりを濃くしていく

 だがその血だまりは同族以外を衰弱させる毒の沼、そこに足を踏み入れてしまった憐れな虫が悲鳴を上げる。

 

セラセニアント「ギャアアアァァァァァァ!!?」

       ATK100→0

 

「ユーリのモンスターの攻撃力が下がった!?」

 

「ヴェネミーカウンターは1つに付きフィールドの闇属性ドラゴン族モンスター以外の攻撃力を200ポイントダウンさせる。」

 

「カードの発動すら躊躇させてくるわけね・・・

 でもどっちにしろここで止まるわけにはいかないよね。あ~あぁ、スターヴ・ヴェノム、君を呼べたらなぁ~

 マジックカード、融合!フィールドのセラセニアントと手札のビブリスプを融合!

 再び現れろ!捕食植物(プレデター・プランツ)キメラフレシア!」

 

 スターヴ・ヴェネミー VC3→5

 

キメラフレシア「ギ・・・ギエェェ・・・・」

       DEF2000

       ATK2500→1500

 

「ごめんね、キメラフレシア・・・

 セラセニアントの効果でデッキからプレデターカード、捕食計画(プレデター・プランニング)とビブリスプの効果で捕食植物(プレデター・プランツ)サンデウキンジーの2枚を手札に加えて、カードを1枚伏せてターンエンド。」

 

「エンドフェイズ終了前にトラップカード、バージェストマ・マーレラを発動

 デッキからトラップカードを1枚墓地へ送る。

 シモッチの副作用を墓地に送っておくぜ。何かあるか?」

 

「えっ?な、なにもない、けど・・・」

(シモッチ?)

 

 スターヴ・ヴェネミー VC5→6

 

 キメラフレシア DEF2000

         ATK1500→1300

 

「なら、俺のターン、ドロー!

 俺はEM(エンタメイト)ドクロバット・ジョーカーを召喚。」

 

ドクロバット・ジョーカー「ははっ!!」

            ATK1800→600

 

「この召喚により、デッキからEM(エンタメイト)レディアンジュを手札に加える。

 さらに慧眼の魔術師のペンデュラム効果、自身を破壊することでデッキから他の魔術師ペンデュラムモンスター、スケール8の竜穴の魔術師をペンデュラムゾーンにセッティング

 

 フィールド魔法、天空の虹彩の効果により、ドクロバット・ジョーカーを破壊しデッキからオッドアイズカード、EMオッドアイズ・シンクロンを手札へ

 

 魔法カード、成金ゴブリン

 デッキから1枚ドローし、相手のライフを1000回復させる。

 さらにフィールドからカードが墓地へ送られたことにより、スターヴ・ヴェネミーにヴェネミーカウンターが乗り、キメラフレシアの攻撃力はさらに200下がる。」

 

 スターヴ・ヴェネミー VC6→7

 

 キメラフレシア DEF2000

         ATK1300→1100

 

「おや?いいのか・・・いや、そうか、シモッチの副作用。

 あのカードって回復がダメージになる奴だったよね?

 さっき墓地に送っていたってことは、回収するカードでも待っているのかな?」

 LP1500→2500

 

「さぁどうだろうなぁ?

 とは言え、このターンダメージは通らない、が増加するぶんには問題ないよな?

 もう一枚、成金ゴブリン、1枚ドローし、お前のライフを1000回復。」

 

「えっ?」

 LP2500→3500

 

 スターヴ・ヴェネミー VC7→8

 

  キメラフレシア DEF2000

          ATK1100→900

 

 さすがのユーリもこの遊矢の行動に虚を突かれた。

 シモッチの副作用を中心としたデッキだとするならば、成金ゴブリンは強力な火力となるカードであり、この状況で切るのは勿体ないどころではない。

 よっぽど手札が悪いのかというと、そういう風もなく遊矢は毒沼をかき回すようにデッキを回す。

 

「レディアンジュの効果、手札のEM(エンタメイト)五虹の魔術師を墓地へ送り2枚ドロー

 現在のスケールは1と8、よって俺は2から7までのモンスターをペンデュラム召喚できる。

 揺れろペンデュラム、異界へとつながる扉を開け!ペンデュラム召喚!

 エクストラデッキからレベル2、EMトランプ・ガール、レベル4、EMドクロバット・ジョーカー、慧眼の魔術師、手札からレベル2チューナーモンスター、EMオッドアイズ・シンクロン、レベル4、処刑人マキュラ。」

 

 トランプガール      ATK200→0

 ドクロバット・ジョーカー ATK1800→200

 慧眼の魔術師       ATK1500→0

 オッドアイズ・シンクロン ATK200→0

 処刑人マキュラ      ATK1600→0

 

 毒沼に降り立つ流星、その中から現れる様々なモンスター、だがその戦うための力は主の育てた毒沼に沈む。

 

(チューナーとレベル4が3体!)

「僕はここでトラップカード!捕食計画を発動!

 デッキから捕食植物モンスター、ビブリスプを墓地に送ることでフィールドの表側表示モンスターすべてに捕食カウンターを乗せる!

 捕食カウンターの乗ったレベル2以上のモンスターは全てレベル1になるよ。

 これで狙っていたモンスターは出せないでしょ?

 それに唯一攻撃力の残っていたドクロバット・ジョーカーもこれで攻撃力0だ。

 

 そして僕は墓地に送ったビブリスプの効果でセラセニアントを手札に加える。」

 

 スターヴ・ヴェネミー ヴェネミーC8→9

 

 キメラフレシア DEF2000

         ATK1100→900

         LV8→1 捕食C0→1

 

 トランプガール      LV2→1 捕食C0→1

 ドクロバット・ジョーカー ATK200→0

              LV4→1 捕食C0→1

 慧眼の魔術師       LV4→1 捕食C0→1

 オッドアイズ・シンクロン LV2→1 捕食C0→1

 処刑人マキュラ      LV4→1 捕食C0→1

 

「あぁ困ったなー動けないなー、なんてね。

 レベル1となったドクロバット・ジョーカーと慧眼の魔術師の2体でオーバーレイ

 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚。

 来い、シャイニート・マジシャン。」

 

シャイニート・マジシャン――ザブンッ!バシャバシャ!!

            「わぷっ!?おえぇぇ!!わぷっ!がぽぽ!!」( ゚Д゚)/

            DEF2100

            ATK200→0

 

「「「「えぇ・・・・」」」」

 

 遊矢が呼び出したのはボサボサの蒼く長い髪の魔法使い

 出てきた瞬間に毒沼に足を滑らせ、溺れかけ、遊矢に抗議の目を向ける。なおこの様子にユーリもドン引きである。

 

「魔法カード、グリモの魔導書、その効果でデッキから他の魔導書カード、ルドラの魔導書を手札に加え発動、フィールドの魔法使い族モンスター、シャイニート・マジシャンを墓地へ送り2枚ドロー。」

 

 シャイニート・マジシャン「がぽぽぽ・・・・・」(vωv)/(グッ)

 

 溺れていたシャイニート・マジシャンは諦めた顔で何故か片手をあげてグッドサインをしながら毒沼に沈んでいった。

 

 スターヴ・ヴェネミー ヴェネミーC9→10→11→12

 

「え~と・・・」

 

「トランプ・ガールの効果」

 

((((そのまま続けるの((か))!!?))))

 

「フィールドのこのカードと、オッドアイズモンスター、EMオッドアイズ・シンクロンを融合。

 疾風迅雷、その二色の眼に映る歯向かう者を平伏させよ、融合召喚!

 現れよ、雷の力帯びし竜、オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン!」

 

オッドアイズV「ギャオオオォォォォォォォ!!」

       ATK2500→0

 

 ついに現れた榊 遊矢というキャラクターを代表するモンスター、の系統を持つモンスター

 赤と緑の異虹彩をもつ機械のような鎧を纏う雷竜

 だが、その強力な効果も現状では使えないものだ。

 

「手札のマジシャンズ・ソウルズの効果発動

 デッキからレベル6以上の魔法使い族モンスター、2枚目の竜穴の魔術師を墓地へ送りこのカードを特殊召喚する。」

 

マジシャンズ・ソウルズ「「はっ!」」

           DEF0

 

 続き現れたのは、伝説のデュエリストの最強の僕とその弟子の魂

 肉体を持たぬ黒魔術師たちは、しかしながらその絶大な力を振るい召喚者をサポートする。

 

「手札を1枚伏せ、マジシャンズ・ソウルズの効果発動!

 1ターンに1度、自分のフィールド及び手札の魔法、トラップカードを2枚まで墓地へ送り、デッキから墓地へ送った枚数分ドローする。

 俺は伏せカードを2枚墓地へ送り2枚ドロー。」

 

 スターヴ・ヴェネミー ヴェネミーC12→14

 

「えっ!?」

 

「さぁさぁ、ここからクライマックス、メインキャストのお出ましだぁ!

 フィールドから墓地に送られたマジシャンズ・プロテクションの効果、チェーンして処刑人マキュラをリリースして速攻魔法、ディメンション・マジック!

 さらにチェーンして俺のフィールドの融合モンスター、オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴンをエクストラデッキに戻し次元誘爆を発動!

 

 次元誘爆の効果でお互いにゲームから除外されている自分のモンスターを2体まで選択しそれぞれのフィールドに特殊召喚する。

 俺が呼び出すのは闇・道化師のぺーテンとクリア・エフェクター!」

 

ぺーテン「ヒヒッ!」

   ATK500→0

 

クリア・エフェクター「はっ!」

          ATK0

 

「っ!?ぼ、僕はダーリング・コブラを特殊召喚。」

 

 ダーリング・コブラ DEF1500

           ATK0

 

「続いてディメンション・マジックの効果で手札から魔法使い族モンスター、マジキャットを特殊召喚!」

 

マジキャット「にゃ!」

      ATK600→0

 

「そして今回の主役、マジシャンズ・プロテクションの効果で墓地から現れろ!チューナーモンスター、調律の魔術師!」

 

調律の魔術師「はいっ!」

      ATK0

 

 ペテン師ピエロ、踊り子、杖を持った猫、そして調弦よりも少し幼いピンク髪の魔術師

 まとまりのない姿の4体のモンスター、だがこのデュエルを終わらせる無限の力を持ったモンスターたちだ。

 

 スターヴ・ヴェネミー ヴェネミーC14→17

 

「調律の魔術師が特殊召喚されたことにより相手のライフを400回復させ、俺は400のダメージを受ける。

 だが、お前の発動させた一時休戦の効果で俺のライフが減ることはない。」

 

「!?」

 LP3500→3900

 

「レベル3のぺーテン、レベル2のマジキャットとクリア・エフェクターにレベル1の調律の魔術師をチューニング!

 剛毅放つ勇者の剣、今ここに閃光と共に目覚めよ!シンクロ召喚!覚醒の魔導剣士(エンライトメント・パラディン)!!」

 

 スターヴ・ヴェネミー ヴェネミーC17→21

 

覚醒の魔導剣士「はっ!!」

       ATK2500→0

 

「わわっ!?」「ぬぅ!?」「うおっ!?」

 

 光の中から現れる魔導剣士、それと同時にスターヴ・ヴェネミーが変化した木から大量の毒液が噴出

 毒沼は広がるどころか溜まりだし、この場にいる4人はもはやスターヴ・ヴェネミーの根を足場にしている。

 

「シンクロ素材となったクリア・エフェクター、マジキャットの効果発動!

 マジキャットの効果で墓地の魔法カード、成金ゴブリンをデッキトップに戻し、クリア・エフェクターの効果で1枚ドロー

 引いた成金ゴブリンを発動させ、さらに1枚ドローしお前のライフを1000回復させる。」

 

「なっ、何を考えてっ!?」

 LP3900→4900

 

「無意味だと思うか?そう笑うか?そんな常識はぶっ飛ばす!

 魔法カード、シンクロ・キャンセル!

 フィールドのシンクロモンスターをエクストラデッキに戻して、そのシンクロモンスターのシンクロ素材一組が墓地にそろっていれば、そいつらを特殊召喚できる。

 戻ってこい、ぺーテン、クリア・エフェクター、マジキャット、調律の魔術師!」

 

 ぺーテン        ATK500→0

 クリア・エフェクター  ATK0

 マジキャット      ATK600→0

 調律の魔術師      ATK0

 

 スターヴ・ヴェネミー スターヴC21→22

 

「さっきのモンスターの効果!?これって!?」

 LP4900→5300

 

「お供引き連れ、これより始まるは毒沼かき回しアムリタ造り!前人未踏のライフの大盤振る舞い!

 無限のライフに泣いて笑え!笑い転げて毒沼沈め!!シンクロ召喚!覚醒の魔導剣士(エンライトメント・パラディン)

 クリア・エフェクター、マジキャットの効果、シンクロ・キャンセルをデッキトップに戻してドローし再び発動!4体を特殊召喚!

 シンクロ召喚し、回収してドローしてシンクロ・キャンセル、シンクロ召喚・・・・」

 

 スターヴ・ヴェネミー スターヴC22→26→27→31→32→36→37→41→42→46→47→51→52→56→57→61→62→66→67→71→72→76→77→81→82→86→87→91→92

 

――ダクダクダクダクッ、ゴポポポポポポポポポ!

 

 歌舞伎役者のように口上を叫び、完成した無限ループの効果を処理していく遊矢

 道化と踊り子と猫が舞い、魔術師が敵であるユーリを回復し、そして毒液が飛び散り毒沼が神をも飲み込む底なし沼へと変わっていく。

 

「ちょっ!?ちょっと!?」

 LP5300→5700→6100→6500→6900→7300→7700→8100→8500→8900→9300→9700→10100→10500→10900

 

「ライフ一万オーバー・・・」

 

「おい、赤いの何やっている!?

 って言うかお前、次のターンで勝てただろう!?」

 

「いや、今、あいつの手の内はすべて露見している!

 存在を賭けた大一番、勝負を仕掛けるのはここしかない!

 ここで処刑人マキュラの効果!このカードがフィールドから墓地へ送られたターン、俺はトラップカード1枚を手札から発動できる。

 お前のライフは俺のライフより7000上回った、この状況で発動できるこいつをな。」

 

 ペンデュラム召喚されたモンスターの中で異彩を放っていた巨大な爪を付けた手甲を持つ処刑人が遊矢に警戒色で縁取られた赤いスイッチを差し出す。

 それは見た目でも分かりやすい、ありがちな『自爆スイッチ』

 お互いのライフを0()()()カードである。

 

「な、なんで・・・」

 

「まだ俺たちが決着をつけるときじゃないってことさ。

 お前とはしがらみなく決闘者(デュエリスト)として決着をつけてやる。全てが終わった後でな。」

 

 呆然とするユーリに遊矢は決闘者(デュエリスト)としての誓いを立て、自爆スイッチに手を伸ばす。

 それを慌てて素良が止める。この場は崩れやすい廃ビルの中なのだ。

 そして、そのことを一番理解しているバレットが一番に動き素良を回収する。

 

「わああぁぁぁ!!!ちょっと待って遊矢!!こんなところでそんなカードを使ったら!?」

 

「貴様!!戦士としての誇りがないのか!?」

 

「俺は戦士じゃない決闘者(デュエリスト)だ!!

 だから決着を付けられないこの一戦は本当に不本意だ!!だからせめて派手に吹っ飛ばす!」

 

 マキュラからスイッチをぶん取り、赤いスイッチに親指が近づき

 

「遊矢!だからダメだって!!?」

 

「いいや限界だ!!押すね!!」

 

「ちぃ!!」

 

――ポッヒョ!

 

――ドドドドドドドドドオオオオオォォォォォォォォォォォンッ!!


「はあああぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・死ぬかと思った・・・」

 

「まさか、あれほどの無茶をする奴とは・・・」

 

 遊矢が自爆スイッチを発動させたとき、バレットが僕らを抱えて、僕が次元移動装置を発動させた。

 一日に連続使用するのは推奨されていないことだけど、どうにか問題なく動いてくれたようだ。

 遊矢は・・・まぁ心配いらないか・・・

 

「・・・・・・」

 

「あ~ユーリ、大丈夫?」

 

「・・・・・・・この僕が手玉に取られた・・・」

 

 まぁ終始、遊矢の好き勝手にされていたしね・・・

 

「でもたぶんアレ、ユーリのデッキ知ってたんだと思うよ?

 じゃなきゃモンスターをフィールドに残さないなんて怖くてできないし。」

 

「でも彼、最初から相打ち狙ってた・・・」

 

 あ~それはたしかに・・・

 でも遊矢がそんなことするなんて・・・やっぱりわからないな。

 やりたかっただけ、なんてこともあり得そう・・・あの狂人ピエロ・・・

 

 そういえば、プロフェッサーも遊矢とユーリを戦わせたくないような感じだったけど、遊矢とユーリに何かあるのか?

 

「ん~その理由はわからないけど、決闘者(デュエリスト)として決着は付けるって言ってたし、その内本気でデュエルしてくれるんじゃない?」

 

「本気・・・本気か・・・・・・」

 

 あっ、本気じゃないのにいいようにされたって捉えられちゃったかな?

 対策と引き分けを両立させるとか、あれもある意味、本気でやってたんだと思うけど・・・

 

「・・・・・・ふふ、ふははははははっ!はぁ~・・・面白いね彼!!」

 

「へぇ?」「ぬぅ?」

 

「本気じゃないのに、あんなに楽しいデュエルができるなんて、すごいよ!

 あぁ~早く本気の彼とデュエルしたいな~」

 

「ぷっ!」

 

 どうやら我らがリーダーはただのデュエル馬鹿じゃなくて、とんでもないデュエル馬鹿だったみたいだ。

 

「はぁ~それでどうするのだ?ユーリ。」

 

「ん~そうだな~どうせ彼ここに来るでしょ?

 それなら、いい子にして待ってようかな~」

 

「そうだな、どうせまた謹慎だろう。」

 

「えぇ~その言い方なんか嫌だな~」


 突如出来上がった瓦礫の山

 突如爆発を起こしたビルの成れの果てであるが、何故崩落したのかはアカデミアは把握できなかった。

 追っていたスートの2人の所為だという話もあったが、それならばあの2人は瓦礫の下敷きになってしまったのであろうか?否

 

――ズズズズズ

 

 ビルのあった場所から地下深く、ハートランドに張り巡らされたロボットの移動通路

 そこに根の塊が侵入し、スターヴ・ヴェネミーと遊矢とセレナがその中から姿を現す。

 

「あ~死ぬかと思った。」

 

「いや!お前のせいだろ!赤いの!!私も肝が冷えたわ!!」

 

スターヴ・ヴェネミー「グア・・・」

 

 遊矢は激昂するセレナを無視してデュエルディスクをしまい、ユーリとのデュエルで使ったカード[スターヴ・ヴェネミー・ドラゴン]と[自爆スイッチ]を見る。

 

(やっぱり条件はどういう形であれ、あいつらとデュエルすること。

 それに引き分けであれば合体しないか。

 後でユートと黒咲あたりでタッグデュエルを・・・いや、やめとこ、直接じゃなくても合体してたような気がするし、目下すぐ処理しなければいけない問題もある。)

「終わったことにぐちぐちいうなセレナ。それよりも今の問題はあの蟲だ。」

 

「むぅ、確かにな・・・

 ここに居る奴らがすべて敵に回るかもしれないと言うのは勘弁したい。」

 

「あぁそうだ。最悪、ここを放っておいてアカデミアに突撃するしかなくなるが・・・

 その前にまた一芝居うつとしよう。」




おいおいマジかよ!?
カイトがアカデミアに着いたって!?

あぁ例の蟲で俺たちが家族を攫った犯人だと思わされていたよ。

むごいことを・・・

くっ!アカデミアめ!また俺たちの仲間を!!

カイトのことはもちろんだが、あの蟲が逐次投入されるとこっちの処理が追い付かない。
だ・か・ら、次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『ヒーローの資格 クラウン・ジョーカーの最後』
さぁショーを始めようか。


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ヒーローの資格 クラウン・ジョーカーの最後

今回は販促回です


 ユーリ襲来を切り抜けてアジトに戻ってきた。

 

『「「「なにっ!?カイト(サマ)が!!?」」」』

 

「まぁ、そういう反応になるよな・・・」

 

『ソンナ!カイトサマアァァァァァァ!!』

 

「当たり前だ!!あのカイトだぞ!!」

 

 アレンとオービタルは阿鼻叫喚、逆にユートと黒咲はその理由を察しているようだ。

 カイトの性格的にアカデミアに降るとは思えないというのもあるだろうが

 

「あの蟲か?」

 

「あぁ、と言うか当人が使っていた。」

 

「くっ・・・・・・遊矢!俺の仲間がまたやつらに奪われた!!

 まだ俺たちが奴らに慈悲を掛ける必要はあるのか!?」

 

「感情任せに傷付け合う、泥沼の戦争がお望みならご勝手に。」

 

 現状最も可能性がある未来。

 彼らが最も望むものとは遠い未来を俺は黒咲に提示する。

 すると、血の昇りは収まったのか黒咲は息を落ち着けた。

 

「・・・・・・すまん。」

 

「いいってことよ。吐き出すだけなら問題も起こらないさ。」

 

「ふむ、だがどうする遊矢。

 洗脳兵が投入されるのは予想出来ていたところだが、ばら撒かれるのは・・・」

 

「媒介者らしいあいつを止めるしかないな。

 戦力になるものが少なかったにしろ、前倒しで出てきたにしろ、これ以上アカデミアの戦力の逐次投入は期待できないし。

 ここが引き時だ。害虫駆除してからな。」

 

「カイトは!?カイトは・・・大丈夫だろうか?」

 

「数日ぐらいなら人格に問題ないと思うが・・・」

 

 あの洗脳カイトはオベリスクフォースと違って感情が爆発してるって感じだったしな・・・

 確実にこれまでのパラサイト・フュージョナーを使った洗脳とは何かが違う。

 チェスを将棋に変えられた様な状況だが、それならこちらの駒取りを早くするだけだ。

 

「時間が惜しいし、様子も見たい。さっそく出るとしよう。」

 

「遊矢、僕が行ってもいいんだよ?少し休んだらどうだい?」

 

「いや、一分一秒でも惜しい

 お前も準備しとけ、デニス。

 ユートはデュエルロイドを頼む。黒咲、権現坂、アレン、セレナはここの守りだ。」

 

「おい!なぜ私も守りなんだ!奴には借りが!」

 

「俺が奴らなら、こちらをどうにかできる戦力を手に入れたら襲撃を企てる。

 カイトなら、この街で最も安全なここに思い至っても不思議じゃない。

 一般人がいる以上守りは厚い方がいいだろ?」

 

 カイトにエクシーズの人々を襲わせないためにもな。

 

「ぬぅ・・・」

 

「他に意見は・・・・・・ないようだな。

 さぁ、覚悟を決めろよ?最終公演開始だ。」


 クイーン・ダイヤを野呂が連れてきた男が破った後、謎の爆発があったりと不可解なことがあったが、日に連続で奴らが何か仕掛けることはないと調査収集を開始した、だが

 

『M15地区の食糧班、スートのロボットと交戦中!!』

 

『C9地区の調査班!襲撃されています!!』

 

『T15地区!!こちらにも応援を!応援を!!ぐわあああぁぁぁぁぁ!!』

 

「くっ!?やつら!!」

 

 これまでと打って変わり、奴らはさらなる襲撃を掛けてきた。

 連続の襲撃、疲労の溜まった部下たちでは・・・

 

「スートオオォォォォ!!」

 

 後ろで怒号を上げる一人の男、クイーン・ダイヤとのデュエルの後、糸が切れた様に倒れた敵だった男が体を引きずり、飛び出そうとしていた。

 

「っ!?君!その体でどこに行くつもりだ!?」

 

「五月蠅い!!スートは・・・俺が倒す!!」

 

「あっ!?」

 

 彼は僕の静止など聞かず、拠点を光の竜に乗り飛び去って行った。

 彼に何があったのか、奴らが何をしたのか、野呂がなぜ彼を引き入れたのか、僕は何も知らない。

 だが僕たちはそんな彼に頼らなければ、自分の身すら護れない。

 

「T8地区、監視カメラにスートのロボットを確認!!」

 

「B地区にも多数確認!!」

 

「くっ!彼にスートの出現位置を伝えろ!外の部隊は戦闘をできる限り回避し撤退をするんだ!」

 

『いいね!いいね!中々の指揮っぷりじゃないか!』

 

――!!?

 

『ya~ya~ya~さっきぶりだね。ヒーロー君』

 

「クラウン・ジョーカー!!?どうしてここに!?」

 

『どうして?今までこの中で起きたことを考えたら、俺が普通に入っていること分かるだろ?馬鹿だなぁ~

 まぁそんなことはどうでもいいんだ。』――ビュン!ビュン!

 

「ぐあっ!!」「うわああぁ!!」

 

 クラウン・ジョーカーはどうでもよさげに銃のようなものを撃ちオペレーターをしていた2人をカードに変えた。

 

「なっ!?キサマアァァ!!」

 

『感謝しろ、洗脳されて人形にされる前に助けてやっているんだから、なぁ!!』

 

 奴の銃口が僕に向けられる。デュエルも何も関係なし、カードにされるという恐怖から僕は目を閉じてしまった。

 いや、来るべき時が来たのだ・・・

 

――ガシッ!

 

 だが、いつまでも僕の意識が消えることはなかった。

 

『・・・何のつもりだ?』

 

「もう・・・やめてくだい。」

 

「・・・・・・宮田、君?」

 

 クラウン・ジョーカーの邪魔をしていたのは、茶髪のレッドクラスの少女、宮田ゆま君だった。

 普段の自信の無さはなく、彼女は決意を秘めた勇ましい戦士の顔をしていた。

 

『逃げおおせただけの1ポイントが、俺に勝つつもりなのか?』

 

「・・・・・・」

 

 威圧を放つクラウン・ジョーカーにひるまず、彼女は眼前の悪を睨む。

 

『ふん、いいだろう。

 最後の遊びをしてやろうじゃないか。』

 

 奴はそう言うと外へと向かっていった。それに彼女も

 

「待ちたまえ!宮田君!!ここは僕が・・・」

 

「・・・司令官さん、手、震えてますよ・・・」

 

「っ!?」

 

 止めようと手を掴んだのに、僕はそう言われて自分で手を離してしまった。

 

「司令官さん・・・私、いっぱい後悔してます。

 桜ちゃんも、雪乃さんも、麗華さんも、私は守られるばかりで何もできませんでした。さっきだって!!

 正しいことをするためにデュエルしていたのに、私は・・・・・・」

 

 僕の手を彼女は手に取る。僕の震えを抑えてくれているように

 

「だから、戦いますっ!私!」

 

「宮田君・・・」

 

「行きましょうっ!」

 

 彼女は僕の手を引き歩き出す。

 違う、違うんだ。僕は・・・君のような人に・・・・・・


『ずいぶん遅かったな?時間稼ぎは無意味だぞ?』

 

 

「お待たせしましたっ・・・いきますっ!!」

 

 僕の気持ちとは裏腹に状況は前に進む。

 彼女は巨悪の道化師の前に立った。もう奴から何を言われようと彼女の決意は揺ぐことはないだろう。

 

『『決闘(デュエル)!!』』

 

『レディーファースト、なんてないからな?

 ドクロバット・ジョーカーを召喚!』

 

ドクロバット・ジョーカー「ははっ!」

            ATK1800

 

『このモンスターが召喚されたとき、デッキからEM(エンタメイト)モンスター、ギタートルを手札に加える。

 そして俺はスケール6のギタートルとリザードローをペンデュラムゾーンにセッティング。

 ギタートルのペンデュラム効果、このカードのセッティング中、EM(エンタメイト)がペンデュラムゾーンにセッテイングされた時1枚ドローする。

 さらにリザードローのペンデュラム効果、もう片方のペンデュラムゾーンにEM(エンタメイト)がある場合、このカードを破壊し1枚ドロー

 

 手札のEM(エンタメイト)レディアンジュの効果、1ターンに1度、手札のこのカードと他のEM(エンタメイト)モンスター、オッドアイズ・バトラーを捨ててさらに2枚ドロー

 

 さらに墓地のオッドアイズ・バトラーの効果、EM(エンタメイト)モンスター、ドクロバット・ジョーカーを指定しこのカードを特殊召喚、その後、指定したカードを破壊する。』

 

 ドクロのシルクハットを被った道化が消え、ティーセットを持った老執事が現れる。

 

 オッドアイズ・バトラー DEF2100

 

『速攻魔法、イリュージョン・バルーン。

 俺のフィールドのモンスターが破壊されたターン、デッキの上から5枚をめくり、その中にEM(エンタメイト)モンスターがいた場合、そのモンスター1体を特殊召喚する。

 ・・・俺はEM(エンタメイト)ペンデュラム・マジシャンを特殊召喚。』

 

ペンデュラム・マジシャン「ふんっ!」

            ATK1500

 

『ペンデュラム・マジシャンの効果

 特殊召喚成功時、自分フィールド上のカードを2枚まで指定し、それを破壊、その後破壊したカードの数まで同名でないEM(エンタメイト)モンスターを手札に加える。

 バトラーとペンデュラム・マジシャン自身を破壊し、デッキから2枚目のドクロバット・ジョーカーとEM(エンタメイト)トランプ・ガールを手札に加える。

 オッドアイズ・バトラーがモンスターゾーンで破壊された場合、ペンデュラムゾーンに置くことができる。

 

 マジックカード、EM(エンタメイト)ポップアップ発動

 手札を3枚まで捨てることでその枚数分ドロー、その後、セッティングされているスケールでペンデュラム召喚可能なモンスターを手札から特殊召喚する。

 出来ない場合は手札の数×1000ポイント、ライフを失う。

 セッティングされているのは、2と6、レベル5の曲芸の魔術師を特殊召喚。』

 

曲芸の魔術師「はあぁぁぁ!はっ!」

      DEF2300

 

 現れたのは奇抜な衣装の道化師

 ドローとサーチを繰り返すクラウン・ジョーカー

 この流れは・・・危険だ!

 

『さて、そろそろやるか。

 永続魔法、魔術師の再演、墓地よりレベル3以下のEM(エンタメイト)トランプ・ガールを特殊召喚。』

 

トランプ・ガール「はいっ!」

        DEF200

 

『トランプ・ガールの効果、フィールドのこのカードを含む素材で融合召喚を行う。

 深淵へ踏み込む少女よ、天と地を行く道化と一つとなり、新たな力で暴威を振るえ!

 融合召喚!EM(エンタメイト)ガトリングール!』

 

ガトリングール「あひゃhYahyAHハハ!!」

        ATK2900

 

「っ!!?あいつは!」

 

 僕が奴との最初のデュエルで敗北を喫したモンスター、奴のフィールドのカードは・・・4枚!

 

『ガトリングールが融合召喚に成功した時、フィールドのカードの数×200ポイントのダメージを与える。喰らえぇ!!』

 

「きゃあぁぁ!!」

 LP4000→3200

 

「宮田君!!」

 

『おぉっと!お客さん、これで終わりじゃないよぉ!

 速攻魔法、揺れる眼差し

 フィールドのペンデュラムスケールをすべて破壊し、その枚数に応じて効果を追加する。

 1枚目の効果で君のライフに500ポイントのダメージ!』

 

「あうっ!」

 LP3200→2700

 

『2枚目の効果でペンデュラムモンスター、EM(エンタメイト)リザードローを手札へ

 マジックカード、ペンデュラム・ホルト、エクストラデッキに3枚以上表側のペンデュラムカードがあるとき、2枚ドロー。 

 そして、手札からスケール6のエクストラ・シューターをセッティング!』

 

 光の柱に昇るのは所謂パチンコと呼ばれるものを持った少年、彼の手には7発の球が掴まれている。アレはまさか!?

 

『エクストラ・シューターのペンデュラム効果!

 1ターンに1度、このターンのペンデュラム召喚を封じることで相手に俺のエクストラデッキで表になっているペンデュラムカードの数×300ポイントのダメージを与える!

 さぁ!2100ポイントのダメージで悲鳴を奏でろ!』

 

「きゃあぁぁぁ!!」

 LP2700→600

 

「やめろ!!もうやめてくれ!!

 彼女を傷付けるのなら、僕を代わりにしてくれ!頼むっ!!」

 

 僕は見ていられなかった。

 彼女の尊き魂に報いる人間ではない。僕は・・・罪人なんだ。

 

『おいおい、折角の最後の遊びなんだ。白けること言うなよぉ~

 カードを1枚伏せ、ターンエンドだ。』

 

「・・・・そう、ですよっ。

 これは・・・私の、デュエル、なんです、からっ・・・」

 

 ボロボロになった彼女がそれでも立ち上がる。

 1ターンでライフが600になり、次のターンを渡すわけにはいかない状況

 しかし、この絶体絶命ただ中でも彼女の闘志は消えてなかった。

 

「もうやめてくれ!宮田君!!

 僕は救われるべきではない!汚れた人間なんだ!!救われる価値なんて・・・」

 

「関係・・ありませんよ・・・」

 

「えっ?」

 

「はぁはぁ・・・あなたが、救われる価値のない人間だとしても、あなたが自分をそう思おうとしても

 私があなたをっ、助けたいんですっ!」

 

「あ・・・」

 

 救うことに価値など関係ない。そう吠えた彼女は、その戦士の在り方は

 

「だから見ててください!司令官さんっ、私の『決闘(デュエル)』をっ!!

 

 私のターン、ドロー!

 カードガンナーを召喚しますっ!」

 

 カードガンナー ATK400

 

 現れたのはキャタピラに上半身が付いたようなカラフルなロボット

 あのモンスターは・・・!?

 

「魔法カードを発動しますっ、機械複製術

 自分フィールド上の攻撃力500以下の機械族モンスター1体を対象に、そのモンスターと同名のモンスターをデッキから2体まで特殊召喚しますっ!

 出てきてくださいっ!お仲間さんたちっ!!」

 

 カードガンナー ATK400

 カードガンナー ATK400

 

「カードガンナーさん達の効果っ発動ですっ!

 1ターンに1度、デッキの上から3枚まで墓地に送ることで送った枚数×500ポイント攻撃力アップですっ!」

 

 カードガンナー ATK400→1900

 カードガンナー ATK400→1900

 カードガンナー ATK400→1900

 

「よし、墓地の古代の機械射出機(アンティーク・ギアカタパルト)の効果を発動しますっ!

 このカードを除外して自分フィールドの表側表示カード1枚を破壊して、自分フィールドに古代の機械(アンティーク・ギア)トークンを特殊召喚しますっ!」

 

 カードガンナーが爆散し、古めかしい歯車の塊がその後に残される。

 

 古代の機械(アンティーク・ギア)トークン DEF0

 

「カードガンナーがフィールドから破壊されて墓地へ行ったとき、デッキから1枚ドローしますっ。

 魔法カード、古代の整備場(アンティーク・ギアガレージ)を発動しますっ!

 墓地のアンティーク・ギアモンスター、古代の機械箱(アンティーク・ギアボックス)を手札にっ。

 

 古代の機械箱(アンティーク・ギアボックス)の効果っ

 ドロー以外の方法でこのカードがデッキ、墓地から手札に加わった場合、古代の機械箱(アンティーク・ギアボックス)以外の攻撃力か守備力が500の機械族、地属性モンスター1体を手札に加えますっ!

 私は攻撃力500の古代の歯車機械(アンティーク・ギアガジェット)を手札に加えますっ

 

 よしっ、魔法カード発動しますっ、融合っ!

 フィールドの古代の機械(アンティーク・ギア)トークン、手札の古代の機械箱(アンティーク・ギアボックス)古代の歯車機械(アンティーク・ギアガジェット)を融合っ!

 時連ねし歯車達よっ、その力束ね、すっごい力になってくださいっ!融合召喚ですっ!

 来てくださいっ!古代の機械超巨人(アンティーク・ギア・メガトン・ゴーレム)!!」

 

古代の機械超巨人(アンティーク・ギア・メガトン・ゴーレム)――ズドンッ!!ドドンッ!!

            ATK3300

 

 現れたのは足と腕が3対ずつある巨人

 やはり彼女の使っているのは優等生に送られる特別デッキ!なぜ彼女がアレを?

 

「バトルですっ!アンティーク・ギ「トラップカード、エンタメ・フラッシュ!」はうっ!?」

 

 古代の機械超巨人(アンティーク・ギア・メガトン・ゴーレム) ATK3300→DEF3300

 カードガンナー      ATK1900→DEF400

 カードガンナー      ATK1900→DEF400

 

『俺のフィールドにEM(エンタメイト)モンスターがいるとき、相手フィールドの攻撃表示モンスターはすべて守備表示となり、次のターンの終了時まで表示形式を変更できない。

 戦闘時に効果を封じるアンティーク・ギア、だが戦闘前なら問題ない。』

 

「くっ!?」

 

「ま、まだですっ!バトルを終了して速攻魔法!ラピッド・トリガー!

 フィールドの融合素材モンスターを破壊して、融合召喚を行いますっ!

 私は同名の機械族モンスター、カードガンナー2体で融合ですっ!

 頼みますっ!ペアサイクロイド、融合召喚ですっ!」

 

ペアサイクロイド「チリンッ!チリンッ!」

        DEF1200

 

「カードガンナーの効果で合計2枚ドロー!

 カードを2枚伏せて、ターンエンドですっ!」

 

 くっ!このターン奴にダメージはなしか!

 チャンスはこのターンしかなかったのに!!

 

『あぁ残念、残念。もう少しだったのにねぇ~

 俺のターン、ドロー!

 でも、これで終わり、エクストラ・シューターのペンデュラム効果!』

 

「待ってくださいっ!手札を1枚捨ててトラップカード、レインボー・ライフ発動ですっ!」

 LP600→2700

 

 エクストラ・シューターの放った球が虹の壁に阻まれ癒しの光となって宮田君に降り注ぐ

 は~これでこのターンは何とかなった・・・

 

『このターンの全ダメージを回復に変えるカードか、無駄な足掻きを。

 ドクロバット・ジョーカーを召喚。』

 

 ドクロバット・ジョーカー ATK1800

 

『効果で3体目のリザードローを手札に加え、リザードローをセッティングしペンデュラム効果、弾丸を補充し1枚ドロー。

 ラピッド・トリガーの効果で効果が使い物にならなくなっているけど、減らしておこうか。』

 

 ドクロバット・ジョーカーが二人乗り自転車を蹴り壊す。

 このターンは切り抜けたか・・・

 

『カードを2枚伏せて、ターンエンド。』

 

「いえまだですっ!永続トラップ、リビングデッドの呼び声っ!

 私の墓地のモンスターを攻撃表示で特殊召喚しますっ!

 来てくださいっ!古代の機械飛竜(アンティーク・ギアワイバーン)!」

 

古代の機械飛竜(アンティーク・ギアワイバーン)「ギイィィアァァァ!!」

         ATK1700

 

「この子が召喚、特殊召喚されたとき、デッキからアンティーク・ギアカードを手札に加えますっ

 私は古代の機械城(アンティーク・ギアキャッスル)を手札に加えますっ!」

 

『う~ん・・・特にやることはない。エンドだ。』

 

「私のターン、ドロー!

 魔法カード、ギャラクシー・サイクロンっ!

 フィールドにセットされた魔法、トラップカード1枚を破壊します!」

 

『折角だから使っておこうか。トラップカード、EM(エンタメイト)ショーダウン!

 自分フィールド上の表側表示の魔法カードの数まで、相手フィールドのモンスターを裏側表示にする。

 古代の機械超巨人(アンティーク・ギア・メガトン・ゴーレム)を裏側にしてもらおうか。』

 

 古代の機械超巨人(アンティーク・ギア・メガトン・ゴーレム)は融合召喚された状態で相手の効果で破壊されたとき、古代の機械(アンティーク・ギア)究極巨人(・アルティメット・ゴーレム)を出すことができる。

 だが、これで融合召喚された事実がなくなってしまった。

 

「永続魔法古代の機械城(アンティーク・ギアキャッスル)っ!

 このカードの効果で私のフィールドのアンティーク・ギア達の攻撃力が300アップしますっ!

 さらに古代の機械超巨人(アンティーク・ギア・メガトン・ゴーレム)を反転召喚っ!」

 

 古代の機械飛竜(アンティーク・ギアワイバーン)    ATK1700→2000

 

 古代の機械超巨人(アンティーク・ギア・メガトン・ゴーレム) ATK3300→3600

 

「さらに自分フィールド上に機械族の効果モンスターが2体のみ存在するとき、このカードを発動できますっ!

 魔法カード、アイアンドローっ!

 デッキから2枚ドロー、このターン、私はあと1回しか特殊召喚出来なくなります。

 

 さらに魔法カード、融合回収(フュージョン・リカバリー)を発動っ

 墓地の融合と融合素材モンスター、古代の機械箱(アンティーク・ギアボックス)を手札に戻しますっ

 そして古代の機械箱(アンティーク・ギアボックス)の効果でデッキから古代の機械騎士(アンティーク・ギアナイト)を手札に加えますっ!」

 

「よしっ!これで融合できる!」

 

「はいっ!魔法カード!融合発動ですっ!」

 

『させん!永続トラップ、融合禁止エリア!

 お互いのプレイヤーは融合召喚ができない。』

 

 くっ!折角あいつにダメージを与えられるチャンスなのに!?

 

「諦めませんっ!力を貸してくださいっ!桜ちゃんっ!

 魔法カード、古代の機械工場(アンティーク・ギアファクトリー)っ!

 手札のアンティーク・ギアモンスター1体を選択、そのモンスターの倍のレベルになる様に墓地のアンティーク・ギアカードを除外することで、このターンそのモンスターを召喚するときリリースがなくなりますっ!

 私は墓地のレベル8の古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)、レベル4の古代の歯車機械(アンティーク・ギアガジェット)古代の機械兵士(アンティーク・ギアソルジャー)を除外してこのモンスターを召喚しますっ!

 お願いしますっ!古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)っ!!」

 

古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)――ゴッゴッゴッゴッ、ギギギギ、ガゴンッ!!

        ATK3000→3300

 

 力強い歯車の回転を響かせて、中世の甲冑のような姿の巨人が立ち上がる。

 よし、これでモンスターが3体だ!

 

「バトルですっ!

 古代の機械超巨人(アンティーク・ギア・メガトン・ゴーレム)EM(エンタメイト)ガトリングールに攻撃しますっ!メガトン・パウンドっ!」

 

 『ぐっ!』

 LP4000→3300

 

「続いてくださいっ!古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)!アルティメット・パウンド!!」

 

『ぐおぉぉぉああぁぁぁ!!』

 LP3300→1800

 

 鋼鉄の拳が黒き道化に突き刺さり、悲鳴を愉しんでいた者が苦悶の声を上げる。

 よし!勝った!まだ宮田君のフィールドには攻撃力2000になった古代の機械飛竜(アンティーク・ギアワイバーン)がいる!

 

「よしっ!行ってくださいっ!古代の機械飛竜(アンティーク・ギアワイバーン)でダイレクトアタックですっ!!」

 

 鋼の飛竜が倒れ込む道化に向かっていくが、その進路を黄金の光剣が阻む

 

「なっ!?攻撃が止まった!?」

 

『危ねぇ危ねぇ、墓地の光の護封霊剣を除外することでこのターン、お前はダイレクトアタックできない。

 古代の機械飛竜(アンティーク・ギアワイバーン)がモンスター効果のみを封じる効果で助かったよ。』

 

「うぅ・・・バトルを終了して、墓地のシャッフル・リボーンを除外して、フィールドの表側表示カード、リビングデッドの呼び声をデッキに戻して効果発動、デッキからさらに1枚ドローしますっ!

 そして、リビングデッドの呼び声がフィールドからなくなったことで、古代の機械飛竜(アンティーク・ギアワイバーン)は破壊されます。

 カードを1枚伏せて、エンドフェイズ、シャッフル・リボーンのデメリットで手札を1枚除外してターン・・・エンド、です。」

 

「そんな・・・」

 

 奴のエクストラデッキには、すでに9枚のペンデュラムモンスター

 エクストラ・シューターを処理できなかった以上、もう宮田君は・・・

 

『やぁ~よくやった。頑張った。

 ただの1ポイントがここまでくらいついてくるとは思わなかったよ。』

 

「・・・私一人の力じゃ、ありませんから・・・」

 

『あ?』

 

「このデッキは桜ちゃん、雪乃さん、麗華さん・・・みんなの遺してくれたカードで作ったデッキです。」

 

 っ!?

 

『ほ~う、侵略者が友情ごっこか、ははっ、これは御笑いだ!

 洗脳を平気でするような屑共のお仲間の言葉とは思えないよ。ドロー!

 だったら・・・大好きなお仲間と同じにしてあげるよ!

 

 リザードローをセッティングしペンデュラム効果で破壊しドロー!

 そして、エクストラ・シューター、ペンデュラム効果発動!

 俺のエクストラデッキのペンデュラムモンスターは10体!3000ポイントのダメージで終わりだぁ!!』

 

 エクストラ・シューターが10個の光の玉を宮田君に打ち出す。まずいっ!

 

「宮田君っ!!」

 

「・・・終わりませんっ!終われませんっ!!

 墓地のトラップカード!ダメージ・ダイエット発動ですっ!!

 このカードを除外して、このターン、私への効果ダメージは半分になりますっ!!くあぁぁ!!」

 LP2700→1200

 

『あぁ~ここまで抵抗してくるか・・・面白いと思ってたけどいい加減しつこいよ!!

 俺も墓地のシャッフル・リボーンの効果を発動!

 魔術師の再演をデッキに戻して1枚ドロー!

 

 ペンデュラム・ホルトを発動させ2枚ドロー!

 相手フィールド上にのみモンスターが存在するとき、EM(エンタメイト)レビュー・ダンサーは特殊召喚できる。』

 

レビュー・ダンサー「はいっ!」

         DEF1000

 

 褐色の際どい恰好の女性が現れる。あのモンスターは!?

 

『このモンスターはEM(エンタメイト)をアドバンス召喚する際、2体分のリリースになる!

 アドバンス召喚!現れろ、EM(エンタメイト)ラフメイカー!!』

 

ラフメイカー「あーははははははははははっ!!」

      ATK2500

 

 高笑いを上げながら現れる黄色い奇術師

 その姿はあの男、榊 遊勝によく似ていた。となれば、おそらく・・・

 

『ladies&gentlemen!さぁ笑顔の世界にご招待だ!

 マジックカード、スマイル・ワールド!

 フィールド上の全モンスターの攻撃力をフィールドのモンスターの数×100ポイントアップする。』

 

ラフメイカー「あっはははは!」

      ATK2800

 

古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)――ギッギッギッ!

         ATK3300→3600

 

古代の機械超巨人(アンティーク・ギア・メガトン・ゴーレム)――ギッギッギッ!

             ATK3600→3900

 

 フィールドのモンスターがすべて笑う。笑い合うのではなく笑う。

 ただその顔に笑みだけを張り付ける。その様は冷静に見れば不気味で、その一見意味のない効果の裏に思い至れば真に笑う者はただ一人と言うことを知るだろう。

 

『バトル!ラフメイカーで古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)に攻撃!

 ラフメイカーは攻撃するとき、自身と相手フィールド上のモンスターの内、元々の攻撃力よりも高い攻撃力を持つモンスターの数×1000ポイントさらに自身の攻撃力をアップさせる。よって攻撃力は』

 

ラフメイカー「はははっ!はぁあぁぁぁ!!」

      ATK2800→5800

 

「ダメージ・ダイエットの効果は戦闘ダメージを半減することができない!?」

 

――ドオオオォォォォォォン!!

 

「宮田・・・くん・・・」

 

 笑いながらラフメイカーが鋼鉄の巨人を攻撃し爆発が起きる。もちろん宮田君もそれに巻き込まれた

 煙が晴れるとそこには、倒れ伏した宮田君が

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)――ゴゴゴッ!

 

「大丈夫・・・ですっ!」

 

『なっ!?』

 

「宮田君っ!?」

 

 いなかった!彼女はまだ立っていた。鋼鉄の巨人と共に!

 

「トラップカード、ガード・ブロックっ!

 戦闘ダメージを0にして、デッキから1枚ドローさせていただきましたっ!」

 

『だがその効果ではモンスターは守れないはず!?』

 

古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)が破壊される時、墓地の競闘―クロス・ディメンションを代わりに除外したんですっ!」

 

『くっ!なんてしぶとい!カードを1枚伏せターンエンドだ。

 手札はゼロだからシャッフル・リボーンで除外することもなく、スマイル・ワールドの効果も終了する。』

 

 ラフメイカー ATK5800→2800→2500

 

 古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)      ATK3600→3300

 古代の機械超巨人(アンティーク・ギア・メガトン・ゴーレム) ATK3900→3600

 

「私のターンっ!ドロー!

 墓地の機甲部隊の超臨界(マシンナーズ・オーバードライブ)を除外して効果を発動しますっ!

 墓地か除外されている機械族モンスターをデッキに戻して1枚ドローします。

 私は除外されている古代の機械箱(アンティーク・ギアボックス)古代の歯車機械(アンティーク・ギアガジェット)古代の機械兵士(アンティーク・ギアソルジャー)をデッキに戻して1枚ドロー!

 古代の機械騎士(アンティーク・ギアナイト)を召喚しますっ!」

 

 古代の機械騎士(アンティーク・ギアナイト) ATK1800→2100

 

「・・・雪乃さん、行きましょうっ!!

 魔法カード、魔法の歯車(マジック・ギア)発動っ!!

 フィールドのアンティーク・ギアカード!古代の機械城(アンティーク・ギアキャッスル)古代の機械超巨人(アンティーク・ギア・メガトン・ゴーレム)古代の機械騎士(アンティーク・ギアナイト)の3枚を墓地に送って、デッキ、手札からそれぞれ古代の機械巨人を1体ずつ召喚条件を無視して特殊召喚しますっ!

 来てくださいっ!古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)さん達!!」

 

――ガラガラガラガラっ!!

  ゴッゴッ!ズドン!ズドンッ!!

 

 古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム) ATK3300→3000

 

 古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム) ATK3000

 古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム) ATK3000

 

古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)が3体だと!?

 トラップ発動!スキル・サクセサー!ラフメイカーの攻撃力を400ポイントアップさせる!』

 

 瓦礫の中から雄々しく立ち上がる、鋼の巨人たち

 その姿に悪の道化は最後の悪あがきを始める。

 

 ラフメイカー ATK2500→2900

 

 

 

「バトルですっ!ラフメイカーに攻撃っ!!」

 

 数多のピンチを乗り越えここまで来た。諦めずに立ち向かった。

 

 

 

『ぐっ!ラフメイカーの効果!

 攻撃力の上がっているこのカードが破壊されたとき、墓地からモンスター1体を特殊召喚できる!

 戻ってこい!ガトリングール!!』

 LP1800→1700

 

ガトリングール「HAは、はぁ?」

       ATK2900

 

 

 

「思いっきり行ってください!2体目の古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)でガトリングールに攻撃!」

 

『ぐわっ!ぐぅぅ・・・』

 LP1700→1600

 

 その姿は正しく幼いころ、父さんが思い描いていた。僕が捨て去った憧れの存在

 

 

 

「これでっ!古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)でダイレクトアタックっ!アルティメット・パウンドっ!!」

 

 最後に絶対勝利する希望の存在

 

「ぐわああぁぁぁぁぁぁ!!」

 LP1600→0

 

 

 “ヒーロー”


 悪の道化師はその身を地に打ち付けることなく、1枚のカードとなった。

 小さな英雄は、道化が転じたそのカードを拾い上げる。

 その姿は大きな勝利を得たとはとても思えないほど沈痛な面持ちだった。

 

「ジョーカーさん・・・」

 

「・・・・・・」

 

 その結末は心優しい少女には不本意だったのだろう。彼女は守りたかっただけで害したかったわけじゃない。

 そう、間違え続けた青年は察した。

 

――パチ、パチ、パチ、パチ、パチ

 

 その勝利を祝うように乾いた音が鳴る。

 

「野呂!?」

 

「いやはや、まさかきゃつをその個体が倒すとは・・・」

 

 現れたのはエクシーズ派遣軍副司令官『野呂 守』

 その後ろには虚ろな目をしたこの襲撃を生き残った。生き残ってしまったモノが立ち並ぶ。

 

「この個体の記憶も役に立たない、これほどの素体を見逃してしまうとは・・・

 3日と18時間24分16秒の損失です。」

 

「野呂?」

 

 淡々としゃべるその姿は普段の彼じゃない。いや、そもそも今の彼は自分と同じ『人間』なのかすら怪しい不気味さを持っていた。

 

「まぁいいでしょう。最大の障害は排除されたのです。

 これでこの世界を我々で満たすことができます。」

 

「なっ、何をッ!?」

 

 ソレは自分と同じ因子を持った寄生虫の宿るカードを2枚取り出し、この群の中で最も強いと当たりを付けた2体へと放った。

 

「最後の一枚は彼女で決まりですね。」――シュッシュッ




いっぱい間違えました。

他の人が護りたいと思っていたものを、私が、私が信じていたものが壊してました。

・・・嫌になっちゃってました。でも、あなたになら、もう一度・・・

次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『偽りの裏側』

信じています


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偽りの裏側

二か月ぶりの更新。大変お持たせしてしまい申し訳ありません。
忙しさもあったのですが会話パートが多いので納得いくものがなかなかできず四苦八苦していました。そして新カードが出すぎ(笑)
善と悪、そして正義とは難しいものですね。


『つまらないんだったら、俺と少し遊ばないか?』

 

「「「「!!?」」」」

 

「なっ!?何んですか!貴方は!?」

 

『俺か?俺の名はクラウン・ジョーカー!

 見ての通りの怪しぃ~道化師だ。』

 

 これが私たちと、ピエロさんの出会いでした。

 

『駄目じゃないか、お嬢ちゃんたち

 こんな、出入り口一つを塞がれたら逃げられないような場所に居ちゃ。

 怪しいやつに絡まれちゃうよ?』

 

「自分で言うのそれ・・・」

 

『ははは、さて俺をどかさなきゃ逃げられないわけだが、ど「うぅんん~?どこかで会いましたぁ~?」へ?』

 

 ピエロさんが仰々しい態度でデュエルディスクを構えたのですが、そこに桜ちゃんが突然彼にしゃべりかけました。

 

「えっ?樋口さんの知り合いなのですか?」

 

「んん~そうじゃないんだけど・・・

 なんだか、夢の中でいつも会っている人に会えたときみたいな?

 嬉しい!って、気持ちになったんですっ」

 

 桜ちゃんの夢の話はいつものことだけど、なぜかピエロさんはその話に少し嬉しそうに応えました。

 

『・・・・・・ふふ、まぁ、夢の中ならそんなこともあったのかもな?』

 

「あら、意外と貴方、ナンパなのね?」

 

『失礼な、俺はデュエル一筋だ。』

 

「それなら、私と早速しましょお~」

 

「樋口さん!?」「貴女!?」「桜ちゃん・・・」

 

 いつもは寝ているときが一番幸せそうな桜ちゃんが、ピエロさんとのデュエルにはなぜか積極的でした。

 

『ふっ、さぁ、愉しい楽しいショーを始めようか!』

 

「はいっ、精一杯、がんばります!」

 

 それからは私たちにとって、桜ちゃんの言葉を借りるなら夢のような時間でした。

 

「えぇええい!古代の機械巨竜(アンティーク・ギアガジェルドラゴン)で攻撃ですっ!」

 

『手札のダーク・オネストの効果!

 闇属性モンスターが戦闘を行うとき、このカードを墓地に送ることで、古代の機械巨竜(アンティーク・ギアガジェルドラゴン)はその攻撃力分ダウンする!』

 

「ふぇ!?」

 

『そしてオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンはモンスターとの戦闘で発生するダメージを倍加する。』

 

「・・・うふふ、やっぱり、貴方は」

 

 人をカードにするアカデミアのデュエル、ピエロさんとのデュエルも例にもれず桜ちゃんはカードへと変えられました。

 でも、彼女は笑顔でした。ずっと探していた人に会えたみたいに

 

「桜・・・ピエロさん、次は私とお付き合い願えるかしら?」

 

『お美しいレディの望みとあらば喜んで。』

 

「ふふ・・・さぁ、いらっしゃい。」

 

 いつも退屈そうにしていた雪乃さんが、ピエロさんに闘志を見せました。

 攻撃力が高いモンスターを1ターンに何体も揃える豪快なプレイングは、とても落第生などと言われている人とは思えないものでした。ピエロさんが防戦になるほどに

 

「痛いのは最初・だ・け、古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)でダイレクトアタック。」

 

『手札のEM(エンタメイト)を捨て墓地のバリアバルーンバクを守備表示で特殊召喚!』

 

「つれないわね。でも、貫通効果があるわ。」

 

『ぐううぅぅ・・・』

 

「これで私のターンは終了。貴方のターンよ。」

 

『ふっ、ギア・ゴーレム3体なんてワクワクするじゃねぇの!

 俺のターン、ドロー!

 よし、ドクロバット・ジョーカーを召喚しEMオッドアイズ・ユニコーンを手札に加え、ペンデュラムゾーンにセッティングしペンデュラム召喚!

 戻ってこい!オッドアイズ!』

 

オッドアイズ「ギャオオォォォォおおおおぉぉ!!」

 

 ピエロさんの永続トラップ、DNA改造手術で緑と紅の瞳を持つ赤い竜が、魔術師へと変わる。

 

『そして魔法カード発動!拡散する波動!

 ライフを1000払い、自分フィールドのレベル7以上の魔法使い族モンスター1体は相手モンスターすべてに攻撃しなければならない!』

 

「あら・・・?でも、古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)の攻撃力は3000、足りないわね。」

 

『オッドアイズ・ユニコーンのペンデュラム効果はオッドアイズモンスターの攻撃宣言時に自分フィールド上のEM(エンタメイト)モンスター1体の攻撃力を加えることができる。』

 

「あら・・・うふふ、そう・・・遠慮はいらないわよ?」

 

『元よりするつもりはないさ。

 オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン、いや、オッドアイズ・ペンデュラム・マジシャンで古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)3体に攻撃!超魔導進撃波!!』

 

「んふふ・・・貴方、良い男だわ――

 

 雪乃さんもカードに・・・

 でも、彼女の顔は恐怖で曇ることはなくとても晴れやかでした。そして

 

「雪乃さん・・・」

 

「・・・・・・宮田さん、すいません。」

 

「えっ?」

 

「本来なら私は、上官としてあなたを守り指示を下さなければならない立場なのですが・・・」

 

 彼女はピエロさんに目を向け、眼鏡をかけ直しました。

 

「アカデミア、エクシーズ派遣連隊!甲第9973部隊長!原 麗華です!よろしくお願いします!!」

 

『・・・はは、はーはははっ!俺はクラウン・ジョーカー、いや』「榊 遊矢、この馬鹿げた戦争を止めるために来た決闘者(デュエリスト)だ!

 覚悟はいいか!!」

 

「はいっ!」

 

 ピエロ。いえ遊矢さんは仮面を外し、麗華さんに向き合い2人は示し合わせることもなくあの言葉を同時に叫びます。

 

『『決闘(デュエル)!!』』

 

「先攻は俺だ!魔法カード、調律を発動!デッキからEM(エンタメイト)オッドアイズ・シンクロンを手札に加え、その後デッキトップを1枚墓地へ送る。

 

 さらに手札のEM(エンタメイト)レディアンジュの効果発動!

 手札からこのカードとEM(エンタメイト)オッドアイズ・バトラーを墓地へ送り2枚ドロー

 チューナーモンスター、オッドアイズ・シンクロンを召喚し効果発動、墓地のレベル3以下のEM(エンタメイト)モンスター、レディアンジュを効果を無効にして特殊召喚する。」

 

オッドアイズ・シンクロン「ふん!」

            ATK200

 

レディアンジュ「ははっ!」

       ATK1000

 

「さらに墓地のオッドアイズ・バトラーの効果発動!

 レディアンジュを対象にし、このカードを特殊召喚、その後、レディアンジュを破壊する。」

 

 オッドアイズ・バトラー ATK1000

 

「墓地の帝王の轟毅を除外し効果発動、このターンフィールドの全てのモンスターは宣言した属性になる。風属性を選択。」

 

 オッドアイズ・バトラー  闇→風

 オッドアイズ・シンクロン 闇→風

 

「風属性となったレベル5のオッドアイズ・バトラーにレベル2のオッドアイズ・シンクロンをチューニング!

 輝く翼、神速となり天地を照らせ!シンクロ召喚!

 現れろ!クリアウィング・ファスト・ドラゴン!!」

 

クリアウィング・ファスト「ギャオオォォォォォ!!」

            ATK2500

 

 遊矢さんは透明に輝く翼の白い竜を呼びました。

 桜ちゃん、雪乃さんのデュエルでも出てきたエクストラデッキから出てきたモンスターさんの攻撃力と効果をなくさせるモンスターです。

 

「カードを2枚伏せ、スケール4のオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンをセッティングしエンドフェイズ、オッドアイズのペンデュラム効果発動、このカードを破壊しデッキから攻撃力1500以下のペンデュラムモンスター、EM(エンタメイト)ペンデュラム・マジシャンを手札に加えターンエンド。」

 

「・・・行きます!私のターン、ドロー!!

 速攻魔法、手札断殺、お互いのプレイヤーは手札を2枚墓地へ送り2枚ドローします。

 フィールド魔法、歯車街(ギア・タウン)を発動

 さらに手札よりマジックカード、古代の機械射出機(アンティーク・ギアカタパルト)を発動

 歯車街(ギア・タウン)を破壊し、デッキから古代の機械飛竜(アンティーク・ギアワイバーン)を特殊召喚!さらに歯車街(ギア・タウン)の効果で古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)を特殊召喚!」

 

 古代の機械飛竜(アンティーク・ギアワイバーン) DEF1200

 古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ) DEF1000

 

古代の機械飛竜(アンティーク・ギアワイバーン)の効果でデッキから古代の機械箱(アンティーク・ギアボックス)を手札に加えます。

 そして古代の機械箱(アンティーク・ギアボックス)がドロー以外で手札に加わったことでデッキから守備力500の古代の機械砲台(アンティーク・ギアキャノン)を手札に加えます。

 古代の機械砲台(アンティーク・ギアキャノン)を召喚し、このモンスターを対象にマジックカード、機械複製術を発動!

 デッキから対象と同名のモンスターを2体まで特殊召喚します。」

 

 古代の機械砲台(アンティーク・ギアキャノン) DEF500

 古代の機械砲台(アンティーク・ギアキャノン) DEF500

 古代の機械砲台(アンティーク・ギアキャノン) DEF500

 

古代の機械砲台(アンティーク・ギアキャノン)の効果!このカードをリリースし、相手に500ポイントのダメージ与えます。

 私は2体リリースし、貴方に合計1000ポイントのダメージを与えます!」

 

「うぐっ」

 LP4000→3500→3000

 

古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)の効果を発動!

 手札の古代の機械箱(アンティーク・ギアボックス)とフィールドの古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)を融合!

 現れよ!レベル8!古代の機械魔神(アンティーク・ギア・デビル)!!」

 

 古代の機械魔神(アンティーク・ギア・デビル) DEF1800

 

古代の機械魔神(アンティーク・ギア・デビル)の効果で貴方にさらに1000ポイントのダメージ!

 墓地の機甲部隊の超臨界(マシンナーズ・オーバードライブ)を除外し発動!

 墓地の古代の機械砲台(アンティーク・ギアキャノン)2体と古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)の3体の機械族モンスターをデッキに戻し1枚ドロー!

 よし、もう1枚、機械複製術を発動し古代の機械砲台(アンティーク・ギアキャノン)を2体特殊召喚します!」

 

 古代の機械砲台(アンティーク・ギアキャノン) DEF500

 古代の機械砲台(アンティーク・ギアキャノン) DEF500

 

「アンティーク・ギアでバーンデッキ、よくやるもんだ。

 後は古代の機械爆弾(アンティーク・ギアボム)古代の機械飛竜(アンティーク・ギアワイバーン)を破壊すれば、コールドゲームって所か?」

 LP3000→2000

 

「・・・そうですね。」

 

「嘘が下手だねぇ~トラップ発動!トラップ・トリック!

 デッキから通常トラップを除外し、除外したカードと同名カードをセットする。

 このカードでセットしたカードはこのターンでも発動できる。ブービートラップEをセット。」

 

「!!?古代の機械砲台(アンティーク・ギアキャノン)の効果を発動!」

 

「それにチェーンし、トラップカード、ブービートラップEを発動!

 手札を1枚捨て、手札、墓地から永続トラップをセットする。

 このカードの効果でセットしたカードは、そのターンで発動できる。

 俺がセットするのはシモッチの副作用。」

 LP2000→1500

 

「シモッチ!?古代の機械砲台(アンティーク・ギアキャノン)の効果!」

 

「リバースカードオープン!

 速攻魔法!スマイル・ユニバース!チェーンして永続トラップ、シモッチの副作用を発動!

 スマイル・ユニバースを発動するターン、俺はこのカードの効果でしか召喚、特殊召喚できず攻撃できない。」

 

「それ、私のターンで関係あります?」

 

「だからだよ。俺のエクストラデッキから表側表示のペンデュラムモンスターを可能な限り効果を無効にして特殊召喚する。

 さぁ!エンドロールだ!オッドアイズ・バトラー!レディアンジュ!オッドアイズ・シンクロン!そしてオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン!!」

 

 オッドアイズ・バトラー  ATK1000

 レディアンジュ      ATK1000

 オッドアイズ・シンクロン ATK200

 

オッドアイズP「ギュオオオォォォォォォォ!!」

       ATK2500

 

 空から流星に乗って4体のモンスターが現れます。

 麗華さんのフィールドのモンスターは全部守備表示ですが、攻撃力200しかないモンスターも攻撃表示?それにエンドロールって?

 

「その後、この効果で特殊召喚したモンスターの元々の攻撃力の合計分だけ相手のライフポイントを回復する。」

 

 回復?じゃあ、4700ポイント麗華さんのライフは・・・あっ!?シモッチ!?

 

「なるほど・・・自信の手札だったのですが。」

 

「いや、こちらも焦ったよ。

 1ターン目でキメてこようとするなんてな。」

 

「ふふ、それでは、ありがとうございました――

 

 彼女は満足そうに目を閉じて彼に一礼してカードになっていきました。

 

 桜ちゃんは楽しそうに去っていきました。

 雪乃さんも晴れやかでした。

 そして、麗華さんも嬉しそうに・・・だから私は

 

「・・・何のつもりだ?」


「最後の一枚は彼女で決まりですね。」――シュッ、シュッ

 

 野呂が不気味な雰囲気がするカードを僕らに投げつける。

 アレがどういうものか分からないが、本能が警鐘を鳴らしている!

 

 ダメだ!間に合わないッ!!

 

――パスッ!パスッ!

 

「!!?」「?」

 

 カードは突如飛んできた石によって撃ち落される。そして

 

パラサイト・フュージョナー「「ギィ!ギイイィィ!!」」

 

 そのカードから赤いダニのようなモンスターが実体化し自ら飛びかかってくる。

 

「なにっ!!?」

 

「融合禁止エリア!」

 

パラサイト・フュージョナー「「ギッ!?ギャアアァァァァァァァァァ!!?」」

 

 不気味な悲鳴を上げるモンスター、[融合禁止エリア]融合召喚を封じるアカデミアのデュエリスト殺しのカード

 スートのロボットが多用していた・・・

 

「トゲトゲ神の殺虫剤。」

 

パラサイト・フュージョナー「「ギッ、ギュウゥゥ・・・・・・」」

 

「ぐぅ、ゴフォ!ゴォ!!」

 

「蟲には効いている・・・でも、副司令官さん以外の反応はありませんか・・・」

 

 それを、なんで君が・・・?

 

「宮ぃ田ぁ!!ゆまああぁぁぁぁぁぁ!!キサマアアァァァァァァァ!!!」

 

――ボコッ、ボコッ!!

 

 獣のような野呂の叫びに呼応するように、野呂の後ろに控えていた者たちに異変が起こる

 ボコボコと肉が盛り上がり、肌は黒く鱗のような甲殻のような粘液のようなものに変わって行き、禍々しい爪と角が伸び、鳥を思わせる嘴、魚のような尾、牛のような蹄の生えた足、様々な生き物のパーツを継ぎはぎにした化け物に変わってしまった。

 

「なっ!?なんだこれはっ!!」

 

「ミュートリアル・ビースト・・・

 ただの洗脳装置じゃないと思っていましたけど、人を触媒、いや融合させているようですね。」

 

 宮田君はこの異常事態の中でも冷静に、いや彼女も異常なほど冷静にこの状況を分析していた。

 先ほどの決意と優しさを秘めた目とは別の、奴と同じ冷徹な紅い目で

 

「ッ!?なぜそこまで・・・キサマは危険だ!排除!!ハイジョッ!ハイジョオオオォォォ!!」

 

ミュートリアル・ビースト――ギャオオオオオォォォォォォォォォォ!!

 

 無数の冒涜の化け物が駆けだす。

 宮田君は一枚のカードをデュエルディスクに置くと、その名を呼ぶ、ありえないはずの魔竜の名を

 

「来いっ!オッドアイズ!!」

 

オッドアイズ・レイジング「グオオオオォォォォォォォォ!!」

 

――ッ!!?

 

 バーナーのような羽が輝き、爆風が化け物を吹き飛ばす。

 そして舞う火の粉に焼かれるように宮田君の姿が崩れて

 

 

 

 

 

 

 

衝撃の真実ぅ~なんて、やってられないか・・・」

 

「「榊 遊矢っ!!?」」

 

「効果で一掃、いやここは逃げるか。」

 

「えっ!?」

 

 榊遊矢は僕の手を取り、召喚したモンスターの背に乗り空へと舞う

 

「なっ!?何をする!?」

 

「何なら降りて、あいつらの仲間入りするか?」

 

「くっ!!」

 

 野呂の異常、モンスター化した兵たち、そして宮田君のこと

 そのすべてについてこいつは知っている。事情を知るためにも今はここから逃げるしかない。

 

――ギャア!!ギャアァァ!!

 

 地上に置き去りにされた化け物どもはその背から鳥のような蟲のような翼をはやし、僕らを追撃してくる。それも速い!?

 

「うわっ、あいつら飛べんのかよ・・・叩き落すわけにはいかないし・・・」

 

 榊遊矢は目の前のビルに目を向ける。

 

「おっ!おい!このままだとぶつかるぞ!?」

 

「ぶつかんねぇよ、突き抜けるから。なぁ!オッドアイズ!!」

 

オッドアイズ・レイジング「オオオォォォォォォ!!」――ゴオッ!!

 

 赤き魔竜は榊遊矢の命に従い、炎を纏い廃ビルへと弾丸のように突撃し突き抜ける。

 元々倒壊しかけのビルはその衝撃でもって粉塵と破片を撒き崩れ去り、迫っていた化け物共は視界を遮られるからか破片にあたるのを嫌ったのか、それを避けて魔竜を追随していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ~何とか撒けたな。」

 

「・・・・・・なんて無茶な。」

 

 榊遊矢はビルを突き抜けると同時にドラゴンの上から僕を連れ飛び降りた。

 腕に玩具のブロックで作られたような蜘蛛を取り付かせ、そのモンスターが吐いた糸をワイヤーのようにしてダメージの少ないビルの中に飛び込んだのだ。 

 

「とりあえず、デュエルディスクの効果範囲外までは時間ができただろう。」

 

 時間ができた?逃げるのが先決なんじゃないのか?

 

「色々聞きたいことがあるだろう?答えられることなら答えてやろうじゃないか。」

 

「!?」

 

 願ってもない質問の時間、奴はその為にこの場を設けたのだという

 

「・・・・・・何時からだ。」

 

 だが僕が言えたのは主語も何もないもの

 様々なことが起こりすぎてこれしか言えなかった。

 だが僕は真っ先にこいつに問いただしたかった、こいつは一体いつから僕を騙していたのかと

 

「クラウン・ジョーカーのお披露目の時から

 一人だけ生き残るなんて怪しい要素万歳なのに、疑いもしないなんてなぁ?

 まぁ、影武者立てたり、ソリッドビジョンでアリバイ作ったりしたけど。」

 

 奴はクラウン・ジョーカーが封じられたカードをひらひらと僕に見せる。

 そうか、僕自ら基地の中にこいつを招いてしまったのか。

 はは、全てはこいつの掌か・・・

 

「野呂のアレはなんだ?」

 

「例の洗脳する寄生虫・・・だと思う。

 洗脳どころか、肉体までモンスター化させるなんて思わなかったけど。」

 

「アカデミアがやったのか・・・?」

 

「当たり前だろ。俺は狙われている側だぞ?」

 

「そう・・・だな・・・」

 

 人を人だと思わぬ所業、理想郷のための犠牲、しかたなし・・・・

 どれほどの言い訳を積み上げても・・・

 

「アカデミアは、僕らは『悪』だったのか・・・」

 

「・・・いい子にしてないといけないのは、悪い子は本当に悪い大人に騙されるからとか、どっかの誰かが言っていたな。

 良いように使われたんだよ、お前たちは。」

 

「悪い子・・・はは、そうか僕は悪人ですらないのか・・・」

 

「何も考えずに、アカデミアの言うこと聞いて従う。

 大人のすることじゃない・・・と、俺も中坊だったか。」

 

 そう言うと彼は肩を竦めた。

 残虐非道で無常非情な悪魔の様なデュエリスト

 僕を含めたアカデミアの印象とはかけ離れたとても人間らしい仕草だった。

 ?・・・残虐、非道?ならなぜ

 

「なぜ僕を・・・助けた?」

 

 助ける意味などなかったはずだ。僕はこいつにとってただの敵でしかないのだから。

 そもそもなぜこいつは僕たちを全滅させなかった?

 一週間もの間、水も食料も医薬品でさえ奪い。治療や通信を担う者を消した。

 侵入ではなくずっと内部にいたのなら、ゲームなどと言う回りくどいことをせずに部隊を壊滅させることができたはずだ。

 

「・・・最初はブッ殺そうと思っていたんだけどな・・・」


 カイトとのデュエルに明確な殺意を持って横槍を入れてきたアカデミア

 思えば俺はあの後完全にキレていた。

 デュエルを汚す害虫、脳みそをブラックホールされたのかと思うほど自分の行動に責任が持てないガキ共

 戦争が終わろうがこんな奴らが世界に蔓延るなど害悪でしかない。殺しに来るんだったら殺してやろうじゃないか。

 そんな考えが頭を支配していた。

 

 ユートは止めるだろう。自身の願いと反することだ。

 権現坂も反対するだろう。それは犯すなと

 柚子が聞いたら悲しむだろう。俺の所業を

 零児は部下の責任として罪を自ら背負うかもしれない。

 そのほかにも否定も反対もあるだろう。だが思わず封印のカードを破ってしまいそうなほど俺の怒りは頂点に達していた。

 

 だが、ふと思い出した。彼女たちのことを。

 

 樋口 桜、藤原 雪乃、原 麗華、宮田 ゆま

 PSPゲーム 遊戯王タッグフォースシリーズに登場する。一般デュエリスト

 この世界の彼女たちは決してCPUなどではないし、ゲームの設定とは全く違う人生を歩みここに居るのだろう。

 だが、その根底にはどこか似た部分はあるのだろう。

 現実から逃避し、無気力になり、自分の報じる正義に疑心し、そして絶望する。

 自分のアイデンティティから外れた行為を強制された彼女らはただの被害者

 俺の怒りの矛先ではない。

 

 だから、彼女たちとデュエルすることにした。

 全てが終わるその時まで眠ってもらうように、同時に俺の決別の誓いとして

 冷酷で残虐な『クラウン・ジョーカー』となるために

 

「・・・うふふ、やっぱり、貴方は。」

 

 リリース軽減を駆使して大型モンスターを並ばせる夢追い人は何故か俺から、あの赤い帽子の男を連想した様だ。

 いやアレと一緒はちょっと・・・

 

「んふふ・・・貴方、良い男だわ――

 

 刺激を求めてロマンと強さを追及する妖艶な少女は俺をいい男だという。

 この最低な悪人をいい男だとは、この世界の彼女はダメな女なのか?そして

 

「アカデミア、エクシーズ派遣連隊!甲第9973部隊長!原 麗華です!よろしくお願いします!!」

 

 その堅っ苦しい挨拶を聞いたらダメだった

 

『ふふ、はーはははははっ』

 

 次に目覚めたとき仲間を皆殺しにした俺を恨んでくれと付けていた悪人の仮面が外れてしまった。

 やっぱり俺はデュエルで嘘は吐けないようだ。

 

『俺はクラウン・ジョーカー、いや、「榊 遊矢、この馬鹿げた戦争を止めるために来た決闘者(デュエリスト)だ!

 覚悟はいいか!」

 

「はいっ!」

 

『『決闘(デュエル)!!』』

 

 驚いたことに彼女はあくまで本来追加火力程度であるアンティーク・ギアのバーンカードをうまく使い、【フルバーンデッキ】として成立させていた。頑固者はこの世界でも変わらないようだ。

 樋口 桜も藤原 雪乃もアカデミアが推奨する融合戦術にとらわれることなく、実に彼女たちらしいデッキだった。

 そう、彼女たちのデッキには魂が籠められていた。

 

「ふふ、それでは、ありがとうございました――

 

 ああ、楽しかったよ。君たちとのデュエル

 さて、残るは一人、宮田ゆま

 

「・・・何のつもりだ?」

 

 彼女に何が起こったのかは盗み聞きした程度

 だが以前の彼女は絶望していた。組織に、世界に、そしてなにより自分に

 

「・・・・・・」

 

 今、彼女はただ神に奉ずる修道士のように祈り佇んでいた。

 

「戦わないのか?」

 

 彼女は顔を俯かせて首を振る

 

「・・・・・・私に、その資格はありませんから。」

 

「資格?」

 

「貴方と皆さんのデュエル、ただ見ているだけなのにこう・・・胸が熱くなったんです!

 ドキドキして、ワクワクして、デュエルってとっても楽しいものだって!」

 

「だったら。」

 

「ダメなんです!私は・・・

 私のこの手は・・・汚れているから・・・・・・」

 

 その白く華奢な手は彼女にはどのように見えているのか・・・

 彼女は震える手を抑えようと合わせ、その目からはぽろぽろと涙が零れている。

 

「だからどうか!私みたいな気持ちを抱える人をこれ以上増やさないでください!

 楽しいデュエルができる世界を守ってください!!どうか!お願いしますっ!!」

 

 『私を助けてください。』じゃなくて『世界を守ってください』か・・・

 自分じゃなくて他人を、やっぱり彼女の本質は

 

「はぁ~・・・負けたよ。」

 

 俺は左手で彼女の震える手を抑えた。

 

「ふぇ?」

 

「さっきの彼女たち、アンティーク・ギアじゃなくて、もっと似合うデッキがあると思うんだよねぇ~

 融合次元が自由にデュエル出来るようになったら、彼女たちとまたデュエルしてみたいし~」

 

「じゃ!じゃあ!!」

 

「契約だ。悪い夢は俺が必ず終わらせてやる。

 でもいいのか?こんなあやし~い奴を信用なんかして。」

 

 難易度が上がった腹いせで意地悪を言ってみるが

 彼女は手をほどき今度は俺の手を取った。その手はもう震えてはいない。

 

「ふふふ、はい・・・信じています――


「まぁそんなわけで、彼女との契約でお前たちを殺すのはやめた。」

 

 奴は懐からカードの束を取り出す。

 それは今までやつにカードにされたアカデミア生達、その中にはあの悲惨なゲームの道具にされた姉妹たちもいた。

 

「断っておくがこいつらも死んじゃねぇよ。手品のアシスタントもな。

 さて、こっちからはいろいろ話したしこっちからも一つ質問させてもらうぜ?」

 

 僕を見据える真っすぐな紅い目

 はは、僕に質問したってお前が欲しい情報なんて・・・

 

「街をなぜ壊した。」

 

 っ!?そ!?それは・・・

 

「人間狩りするにあたって、建物が壊れるなんて非効率だろ?効率厨の副司令官サマがいるのにな。

 隠れる場所が増える。倒壊の危険で自分も相手もデュエルに集中できない。

 統一世界で仲良しこよししましょうなんて理想掲げているのに、恨みを深くしてどうする?」

 

「っ!!」

 

 僕は思わず唇を強く嚙み締めた。それは僕らの・・・

 

「リアルソリッドビジョンは出力を調整すればゴムのようにできるし、モンスターの攻撃だって打撃ならハリセンで叩かれた程度、光線系だって砂掛けレベルにできる。

 そこで俺は考えた。お前たちが街を壊したのは」

 

 僕の愚かな罪

 

「事故だったんじゃないかって。」

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・あぁ。」

 

 誰にも知られなかった真実、悲劇をより大きくした原因、それはただの出力ミス

 

「あぁ!そうだよ!!

 知らなかったんだ!デュエルで街が壊れるなんてっ!!」

 

 荒げた僕の声が廃墟に響く。

 追われているのに何をやっているんだと、理性が訴えかけるがどうしようもなかった。

 

「エクシーズへの遠征でリアルソリッドビジョンを使ったデュエルをしろって言われて、使ってみたらこんなことになった!

 もちろん、本校に連絡だってした!でも・・・そのまま続行しろと、言われたんだっ・・・!!」

 

 悲しかった!僕の信じるものは僕の正しさではなかったことに

 苦しかった!!誰も僕らの行いが間違いだと言ってくれないことに

 見ていられなかった!狂気の中でコワレテいく仲間たちが・・・

 悔しかった・・・間違いを間違いだと言えない自分が・・・

 

「なるほど、納得いったよ。親父をずっと探していた理由も。」

 

「何?」

 

 何を言っているんだこいつは・・・僕が榊 遊勝を探していた理由?

 そんなもの、僕に地を舐めさせたあの男が許せなかったから・・・

 

「お前、誰かに叱ってほしかったんじゃないか?」

 

 そのはず、だったのに・・・

 

「なん・・・で・・・・・」

 

「ん~デュエルの時、常に余裕がないっていうの?

 最初のデュエルの時だって壁モンスター2体だけと言って、伏せカードを警戒しなかったろ?

 無限湧きするペンデュラムモンスターを破壊したり、想像力に欠けている。

 

 まぁ、後は観察の結果だ。

 自分たちの行いが間違っていると、『悪』だと否定してほしくって、そう言ってくれる存在を探して、親父を見つけた。

 でもほしい答えを言ってくれる前に姿を消したから仕事もほっぽりだして探した。まぁこんな所だろ。」

 

「・・・あぁ・・・そうだ、そう・・・だからっ!!」

 

≪あなたですか?「デュエルで笑顔を」などと、ふざけたことを言いふらしているのは。≫

 

≪半分はあっている。

 確かにデュエルで笑顔をと言ったのは私だが、ふざけたことだとは思ってないよ。≫

 

≪馬鹿な、僕が負けるなんて・・・≫

 

 彼は否定した。デュエルが悲しみを生み出す道具ではないと

 あぁ、分かってたさ。だがあのカード[スマイル・ワールド]を差し出されたとき

 

≪でも楽しかっただろ?≫

 

≪っ!!?≫

 

 呪詛が告げる、その手の汚れはなんだと。

 その血まみれの手で父さんの創ったヒーローたちを汚して楽しいのかと!

 そんなわけあるかっ!!

 

≪デュエルで争うなんて、愚かなことだということが分かっただろう?

 だったらそれを君から赤馬零王に伝えてほしい。≫

 

 後悔が告げる。その愚かさにどう報いるのかと

 この街で失ったもののために働けばいいのか?恨みのはけ口として苦しみ続ければいいのか、それとも死ねばいいのか・・・

 

≪うわあああぁぁぁぁ!!違う!違う違う!!≫

 

 アカデミアである僕に彼の「正しさ」は毒でしかなく

 

≪出鱈目を言うな!僕は騙されないぞっ!!

 アカデミアは常に正しい!プロフェッサーの教えは絶対なんだあぁっ!!≫

 

 僕はアカデミアであることから逃げられなかった。

 

「僕は欲しかったっ!

 この罪に対する罰をっ!闇の中から抜け出すための光をっ!!

 だが奴は!遊勝は・・・っ!勝手ばかり言って、消えた・・・・・・」

 

 どこへ行ったのかはわからない。それ以来遊勝の噂も聞かなくなってしまった。

 だが僕は答えが欲しくてやつを探した。

 探す間にも悲劇は起こり罪は嵩む、誰か、誰か僕を救ってくれ・・・

 

「そんな時に見つけたのが君だった。

 遊勝の子なら、彼と同じように僕に勝った君なら、僕が待ち望む答えがあるのではないかと・・・」

 

「・・・・・・」

 

「なぁ、教えてくれよ・・・・僕はこれからどうすれば「ぁぁああもう!!甘ったれるなよっ!!」っ!?」

 

 僕の言葉を遮った彼の声は明らかに苛立っていた。

 

「ガキみたいにビービーとっ!!勝手なことを言っているのはお前も同じじゃないかっ!」

 

「だ、だが・・・」

 

「立ち向かったり変わるどころか、逃げ出す勇気もないやつに道案内しても意味がねぇんだよ!!

 お前がどうしたいかはお前が決めることだっ!!」

 

「それは・・・」

 

「少なくとも彼女は俺に託すことを決めた!自分の意思でなっ!!」

 

「ッ!!」

 

「大人になれ、エド・フェニックス。

 お前の『正義』は、お前じゃないと守れない。」

 

【REALISE】

 

「おっ!?っと・・・あっ、遊矢、これは・・・どういう状況なんだい?」

 

 奴が使う銃型のデュエルディスクからカードに封印されていた人物が解放される。

 クラウン・ジョーカー、その衣装をまとった人物の声はクラブギア・キングと同じ

 

「デニス、手短に話すが状況は最悪だ。

 こいつを連れて避難しろ。」

 

「・・・間に合わなかったのかい?」

 

「あぁ、蟲人間どころか完全なモンスター化してしまった。

 戻せるかどうかすら分からない。」

 

「そうかい・・・ところで、いや、分かった。」

 

「避難経路は地下地図を頼りにしろ、オービタルはデュエルロイドの操作で手一杯だろうしな。

 俺は引き付けておく。」

 

 彼は仲間に指示をすると窓に足を掛ける。

 

「エド。」

 

「っ!?」

 

「ヒーローで居たいなら、ラスト3分までには決めろ。」

 

――タンッ!・・・――――ブウウウゥゥゥゥゥゥゥン!!

 

――――――――――――――――ギャァァ!ギャァ!!ギャアアァァ!!

 

 彼が飛び降りた後エンジン音が鳴りそれにつられたのか、化け物たちが薄気味悪い声を上げながら通過していった。

 

「ふぃ~なんだいあれは?っと、それよりも逃げる方が先か、エド?」

 

「・・・・・・ラスト3分ってなんのことだ?」


「打ち止めか・・・」

 

 シンクロ次元で手に入れたデュエルロイドは全て放出した。

 操作しているのはオービタルだが、カイト相手では時間稼ぎにしかならないだろう。

 

【カイト様!カイトサマァァァアア!!

 止マッテクダサイ!カイトサマァァァァアアアァァァァァ!!】

 

「落ち着けオービタル!

 俺たちが絶対にカイトを取り戻す!だから今は、みんなが逃げる時間を少しでも稼ぐんだ!」

 

【ウゥゥ、カシコマリ・・・】

 

 とオービタルに言ったはいいものの、打開策はない。

 いっそのことカイトに・・・いや、カイト相手では五分と言うわけにもいかないか。

 

――・・・ぃゃぁぁあぁあぁぁぁぁぁああ!!

 

「!!?」

 

 悲鳴!?誰かが襲われて、あいつらは!?

 

「イヤ、イヤ!いやぁぁあぁぁ!!なんなの!?なんなのよ!?これはぁあぁぁ!!!」

 

「叫ぶ暇があるなら走れ!グレース!!追いつかれるぞ!!」

 

ミュートリアル・ビースト「ギャァア!ギャア!!」――バサッ、バサッ

 

 獣のような虫のような魚のような鳥のような・・・何なのかわからない黒い化け物が金と銀、二人の少女を襲っている。

 タイラー姉妹、多くの仲間をカードにした、敵!!

 

「きゃあ!?」

 

ミュートリアル・ビースト「グギャギャギャギャ!」

 

「グレースっ!?」

 

 グレースと呼ばれた少女に化け物の爪が迫るが、金の少女が割って入り鮮血を散らす。

 

ぐわああぁぁぁ!!

 

「姉さんっ!?ちょっと!!姉さん!姉さん!!大丈夫!?ねぇ!!?」

 

に・・逃げろ、グレース・・・・・

 

「そんな、姉さんを置いてなんて!?」

 

 妹を逃がそうとする姉と姉を助けようとする妹、そんな二人の思いを無視して化け物は再び爪を振り上げる。

 このまま見ていれば二人は死ぬだろう。憎き相手、その一部が今消える・・・・・・

 

 

 

 

 

誰か!助けて!!

 

 !!

 

「聖なるバリア―ミラーフォース!!」

 

――ビキッキイイイィィィィィィィイイ!!

 

ミュートリア・ビースト「ギャア!?」――ザシュ、ザシュ!ザシュ!!

 

 二人を包み込んだ光の壁に化け物の爪が当たると、強烈な光と共に化け物が切り刻まれ倒れ伏す。

 

「こっちだ!手を貸せ!!」

 

「あ、あんたは!?」

 

「早くしろ!!っ!?」

 

ミュートリアル・ビースト「・・・gy・た・ギャ・・・」――ブチュグチュグチャ!

 

 化け物を見れば肉の間から人がのぞいている。

 伸ばされた手からブクブクと肉が膨れ再び化け物の形を成そうとしている。

 俺は倒れた少女を担ぎ、急ぎその場から離れた。




また森に逃げることになるとはな。

仕方あるまい。カイトはここの関係者
大人数を収容できる場所と目を付けている可能性はある。

くっ!俺の所為だ・・・カイトは俺が!!

落ち着けアレン!

う~む・・・黒咲、ここは任せたぞ・・・

なっ!?おい!お前何を言っている!?俺が!

護ると覚悟したのだろう!!男なら守り通せ!!
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『護る者、救う者』
漢、権現坂!参る!!


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護る者、救う者

突然の不幸・・・・先生、素敵な物語をありがとうございました。


「う~む・・・これは」

 

 権現坂 昇は思案する。

 遊矢や忍者兄弟と歴史談義を繰り返し、武将の戦働きだけではなく知将の計略も語らい合った彼はデュエルロイドの交戦結果から脅威が着実に迫っていることを予想する。

 

 ブラフは混ぜた。放射状に散発した地図上の点は一見すると無秩序に見えることだろう。

 だが相対した相手はある時から転身、配置した歩兵を破壊しながらもハートタワーを目指し始めた。

 勘なのか、こちらの意図を理解したのか、将又ここがこちらの拠点だと知ったのか、いずれにしてもここは安全な拠点から危険な狩場となった。それだけは確かだ。

 

「ここを放棄する。」

 

「むぅ・・・仕方がないか。

 だがどうする、もうこの街に隠れる場所などないぞ?」

 

 迫る脅威は狩人だけではない。

 大地を駆け、空を侵略する醜い化け物

 人に宿り、人を変えてしまう寄生虫

 

「あぁ、この街を放棄する。」

 

――・・・・・・

 

 その事実にこの場にいた者たちは黙ってしまった。

 みんな理解はしていた、戦えぬ者のために街などにこだわっている場合ではないと

 だが、セレナはこの事態を引き起こしたのがアカデミアであることに

 黒咲は生まれ育った街を護れなかったことに、それぞれ罪悪感を覚えていた。

 

「くっ!!」――ダンッ!!

 

壁に拳が強く打ち付けられる。それは今この場で一番罪の意識に苛まれている者の拳

 

「どこに行く気だ!アレンッ!!」

 

「決まってんだろ!カイトを止めに行くんだよっ!!」

 

「止める手立てがあるのかっ!?」

 

「ないっ!!ない、けど・・・俺の所為で、カイトはっ!!」

 

「落ち着けアレン!何もなしにあのカイトに勝てると思っているのか!!」

 

 非常事態に冷静さが失われていく、罪が心をえぐり、責任が心を揺さぶる

 

(何もなし、か・・・確かに今は策を弄する時間すら惜しい。)

「・・・・・・黒咲、ここは任せたぞ。」

 

 そんな混乱の中、『不動』が立ち上がった。

 

「なっ!?おい!お前何を言っている!?俺が!」

 

「貴様にはやることがあるだろうッ!!」

 

 出ていこうとする権現坂をアレンが止めたが、一喝される。

 正直、権現坂は『裏切り』と言う不義理を働いたアレンに多少なりとも悪感情はある。

 ゆえに彼を完全に信用できるかと言えば否である。

 

 だが、悪意に対し人一倍過敏な親友は彼を受け入れたのだ。

 不安要素が嫌いな親友のこと「一度裏切った奴はまた裏切るだろ。」とでも言って今アレンはこの場にはいなかっただろう。

 少なくとも事が終わるまではカードに幽閉くらいはする。そういう男なのだ、己の親友は。

 

「貴様の『裏切り』は何のためにあったっ!」

 

 アレンは自身の行いを何と考えたのか。

 不信感を抱かれカイトが去った原因だったかもしれないし、事実多くの仲間を彼は生贄に捧げてきた。その先に得たものは・・・

 

「俺は・・・」

 

「貴様は護ると覚悟したのだろう!!」

 

「っ!!?」

 

 権現坂はその『裏切り』の覚悟を認めた。

 決して悪意ではない、愛おしいものを護るための選択。それを誰が正しい義ではないと言えようか。

 彼の親友が認めた覚悟を権現坂は認めたのだ。

 

「それなら護り抜け!護るために生きよ!それが漢と言うものだっ!!」

 

 権現坂に活を入れられて、アレンは思い直した。

 自分の戦いはサヤカのための戦いだ。自分には自分の戦いがあるのだ。

 逸る気持ちは落ち着き、足は止まっていた。その横を行く権現坂の背にセレナは声をかける。

 

「デカいの、奴は・・・強いぞ。」

 

「分かっている。」

 

 権現坂 昇は振り返らない。不退の覚悟は決まった。

 不動の壁として狩人の前に立ちはだかる為、権現坂は行く。

 

「漢、権現坂!参る!!」


――キイイイィィィィィィィィィィィイイイイ!!

 

 Dホイールの甲高いエンジン音が廃墟の街に木霊する。

 後ろからは様々な動物のパーツを持つ黒い異形[ミュートリアル・ビースト]が奇声を上げながら飛来している。

 よしよし、上手く釣られていたな。さて、この後どうするか・・・

 

「とりあえずできるかわからないが減らしてみるか。」

 

 [EM(エンタメイト)ガトリングール]のカードをリアライズモードのデュエルディスクに装填する。

 銃型のそれはカードの力を得てガトリングガンを形成、回転軸が唸りを上げる。

 

「威嚇射撃だ!」――ブウウゥゥゥゥゥン!!

 

 Dホイールをターンさせ、振り向きざまにガトリングガンをブッ放す。

 

―――ドドドドドドドドドドドドドッ!!

 

―――――――ギャッ!!ギャアッ!!ギャッ!

 

 数瞬ののち、聞くに堪えない悲鳴がいくつか聞こえる。

 

「当たった?・・・・・・やっぱりおかしいな。」

 

 ガトリングールの攻撃力は2800、ミュートリアル・ビーストの攻撃力は2400

 こちらの方が攻撃力が高いのだから、その弾が一発ないし数発当たったので怯むことはわかる。

 だが、リアルソリッドビジョンの効果範囲から外れている弾が当たったという事実がおかしい。

 と言うか距離からして、レイジング・ドラゴンはかなり長く姿を保っていたようだが、これもデュエルディスクのスペック的に変だ。

 

 ディスク内蔵のリアルソリッドビジョンシステムの効果範囲は1台だとせいぜい4~5メートル、それ以上はただのソリッドビジョンとなる

 実の原理はハゲに聞くしかないが、2台あれば相互の干渉の影響なのか遊勝塾に在ったオンボロと同じ範囲まで膨れ上がる。

 複数台あれば舞網チャンピオンシップの時のように街全てに効力を発揮するだろう。だから事故が起きたと言ってもいい。

 

「どこかに設置されている?いや、精霊だからカードの力を受けているだけか?」

 

 パラサイト・フュージョナーの謎の持続力も『精霊だから』で済ませられることなのか?

 

ミュートリアル・ビースト「ギャァアアアッ!!」

 

「っ!!?ちいいぃ!!」――ブウオオォォンン!!ガンッ!!

 

ミュートリアル・ビースト「ギャッア!?」――グシャッ!!

 

 考え事しているとビルの隙間を抜けて一匹横から突撃してきたが、タイミングを合わせてターンの要領で後輪を浮かせてはたき落す。

 だが、その転がった奴が正面を邪魔したので仕方なく方向転換、するとその先から数匹が地を駆けて突撃してくる。

 

ミュートリアル・ビースト「「「「「ギャオオオオォォォォ!!」」」」」

 

「別動隊!?誘導されたのか!?クソッ!!舐めるなっ!」

 

――ブオオオォォォォォォ!!ギュウウンッ!!――ドドドドドッ!!

 

ミュートリアル・ビースト「「「「「ギャアアアアァァァァァァ!!」」」」」

 

 俺は瓦礫をジャンプ台にして跳躍、奴らの頭の上を越えて振り向きざまに再び顕現させたガトリングを連射、奴らの足を傷つけ文字通り足止めする。

 だが、方向転換、ジャンプ、足止めのためのターンで、後続との距離を大きく縮められてしまった。

 この組織だった行動、副指令殿らしいことだ。

 つまり、このまま逃げ回っていたらいずれ本隊に追いつかれるということ・・・

 

「なら反撃するしかないな。」

 

 奴らはトラップに対する耐性はないが、破壊やバウンスが素体となった人間にどんな影響があるかわからない。

 マジックはカウンターされる恐れがある。モンスター効果は耐性があるが

 

「対象を取らない効果には耐性がない!頼むぞ!EM(エンタメイト)ソードフィッシュ!!」

 

ソードフィッシュ――ギョッ!!ギョッ!!ギョッ!!ギョッ!!・・・――

 

 勢いよく飛び出すグラサンを掛けた長剣のような青い魚の群れ

 それらは一匹を残し矢のようにミュートリアル・ビースト達に向かって飛んでいき突き刺さる。

 

ミュートリアル・ビースト――ギャアアアァァァァァァ!!?

 

 これで500

 

「あと4回特殊召喚すれば無力化できるな。」


――グオオオオォォォアアアアァァァァァア!!

――ギャアアアアァァァァァァ!!

――ギャオオオオオォォォォォォォォォォ!!

 

 天より堕ちたる竜は悲鳴を上げる。

 地を駆ける獣竜は己の不甲斐なさを嘆く。

 ゆえに狩人の象徴たる光の竜は痛みを誤魔化すために破壊を振りまくのだ。

 

 大切なものはもういない。大切な家族は奪われた。それを引き起こしたのは仲間の、仲間だと思っていたものの裏切りだ。

 

――カイト様アアアァァァァァァァ!!

 

 裏切りに遭った彼は自身の名を叫ぶ鉄くずに怒りを覚える。

 また自分を欺き貶める気かと、その声の主の真贋は疑問に思わず破壊する。

 

「失せろ!!」

 

――ドオオオオォォォォォォォン!!

 

 己を阻むガラクタを、忌々しい偽物を、あっという間に破壊し尽くす。

 その光景はあまりにも惨く、あまりに憐れだと権現坂 昇は思った。

 

「友の声ももはや聞こえぬか・・・」

 

「まだ他にもいたかっ!!」

 

 カイトの咆哮に呼応するように一陣の風が吹きつけるが、権現坂は揺るがない。

 腕を組み真っすぐにカイトを見つめ啖呵を切る。

 

「これより後ろは不退転、俺は一歩も後ろに引かぬ!!

 さぁ!通りたくば、この漢、権現坂を乗り越えてみるがいい!!」

 

「邪魔をするなら、懺悔をする時間すら与えん!!」

 

応っ!もはや言葉はいらぬ!デュエルで語ろうっ!!」

 

『『決闘(デュエル)!!』』

 

「俺は手札の深淵の獣(ザ・ビーステッド)ルべリオンの効果発動!

 このカードを墓地に送りデッキからルべリオン以外のビーステッドモンスター、深淵の獣(ビーステッド)サロニールを手札に加える。

 

 速攻魔法、烙印の気炎を発動!

 手札のサロニールを公開し、サロニールと同じドラゴン族の攻守どちらかが2500のレベル8融合モンスターを1体、エクストラデッキから墓地へ送る!

 俺が墓地に送るのは灰燼竜バスタード!

 さらにこの効果の後、公開したカードを捨てることでデッキからアルバスの落胤のカード名が記されたモンスター、黒衣竜アルビオンを1体手札に加える事ができる。

 そして墓地に送られたサロニールの効果でデッキから烙印断罪を墓地へ送る。

 

 手札に加えた黒衣竜アルビオン効果発動!

 このカードが手札、墓地にある時、デッキから烙印カードを墓地に送ることができる!

 俺は烙印融合を墓地に送り、その後このカードをデッキに戻す!さらに戻した場所が手札なら新たに1枚ドローする!

 

 墓地の烙印断罪を除外し効果発動!

 墓地の烙印断罪以外の烙印マジック、トラップ、烙印融合を手札に加える。」

 

(墓地肥やしを行った上でのコストカットの動き。

 怒りに飲まれているはずだが・・・ここまでくるともはや本能だな。)

 

「マジックカード、烙印融合!

 このカードは1ターンに1度しか発動できず、発動ターン自分は融合モンスターしかエクストラデッキから特殊召喚できない!」

 

「それほどのリスクを負ってまで・・・

 だが、ただでやらせはせん!手札の増殖するGの効果!

 このカードを墓地に送り、このターン、相手が特殊召喚を行うたびに俺はカードを1枚ドローする!」

 

「小癪な真似を!手札の灰流うららの効果!

 相手がデッキからカードを手札に加える効果を含むカード効果を発動したとき、手札からこのカードを捨てることで無効にする!」

 

「ぬっ!?」

(墓穴の指名者ではなかったか・・・)

 

「そして烙印融合の効果だ!

 このカードは自分のフィールド、手札、そしてデッキから素材を送りアルバスの落胤を融合素材とする融合モンスターを融合召喚する!

 デッキのアルバスの落胤と光属性モンスター、深淵の獣(ザ・ビーステッド)ルべリオンを融合!

 刻まれし業に身をやつし、光輝く姿を現すがいい!融合召喚!!

 顕現せよ!レベル8!烙印竜アルビオン!」

 

烙印竜アルビオン「ギャオオオオォォォォォォ!!」

        DEF2000

 

 その竜は太陽のごとく地を照らす、眠る魂を引きずり出す為に

 

「烙印竜アルビオンの効果!

 融合召喚成功時、フィールド、墓地より融合素材を除外することで融合召喚を行う!

 墓地のアルバスの落胤と闇属性の深淵の獣(ビーステッド)サロニールを融合!

 刻まれし業に身をやつし、荒ぶる姿を現すがいい!融合召喚!

 顕現せよ!レベル8!神炎竜ルべリオン!」

 

神炎竜ルべリオン「グワハハハハハハハッ!」

        DEF3000

 

「神炎竜ルべリオンの効果!

 融合召喚に成功したとき、手札を1枚捨て、自分のフィールド、墓地、及び除外されているモンスターをデッキに戻し、それらを素材に融合召喚を行う!

 除外されているアルバスの落胤、墓地のレベル8の深淵の獣(ザ・ビーステッド)ルベリオンを融合!

 刻まれし業に身をやつし、届かぬ手を嘆くがいい・・・融合召喚!

 顕現せよ!レベル8!痕喰竜ブリガンド!!」

 

痕喰竜ブリガンド「グオオオォォォォォォオオオ!!」

        DEF2000

 

 嘲笑うような鳴き声を上げる恐ろしき炎の具現と泣き叫ぶような鳴き声を上げる獣竜

 最小限の手札消費で呼び出された3体のドラゴンたちに権現坂は改めて対峙している相手が、規格外のデュエリストだと思い知るが、深度の増した狩人はこれでは終わらなかった。

 

「さらに墓地の深淵の獣(ザ・ビーステッド)ルベリオンの効果発動!

 自分フィールド上のレベル6以上の闇属性ドラゴン族モンスター1体をリリースし、このカードを特殊召喚する。

 烙印竜アルビオンを糧に現れろ!深淵の獣(ザ・ビーステッド)ルベリオン!!」

 

 異界の穴“ホール”が新たな場所に繋がる。

 烙印竜に秘められた膨大なエネルギーを糧に、人型のシルエットが生まれる。

 だがそれは決して人ではない、巨大な翼と長い首と尾がその存在が竜だと語るだろう。 

 神聖さすら感じる白銀の甲冑を纏うそれは決して善なる存在ではない。悲劇の舞台を彩る邪悪な役者が嘲笑う。

 

深淵の獣(ザ・ビーステッド)ルベリオン「グァワハハハハハッ!!」

          DEF3000

 

深淵の獣(ザ・ビーステッド)ルベリオンの効果発動!

 1ターンに1度、デッキから烙印永続魔法、永続トラップ1枚を自分フィールドに表で置く。

 永続トラップ、烙印の獣を置き、カードを2枚伏せエンドフェイズ。

 墓地へ送られた光波鏡騎士(サイファー・ミラー・ナイト)と灰燼竜バスタードの効果でデッキから2枚目の光波鏡騎士(サイファー・ミラー・ナイト)教導(ドラグマ)の騎士フルルドリスを手札に加え、烙印竜アルビオンの効果で烙印の気炎をセットする。」

 

 手札5枚スタートから、妨害も躱し最終的にフィールドのカードが7枚、手札2枚の絶大なアドバンテージを稼ぐカイト。

 その異次元のタクティクスは権現坂の目を見張るものであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――残念だ


 俺はこの街で生まれ育った。

 親の顔は知らない。施設で育った天涯孤独の身の上だ。

 身内はいなかったが俺は決して孤独ではなかった。施設で同じように育った兄弟のような仲の友は居たし、中学に上がってからは隼という生涯の親友も得て、通っていたスペード校のライバル校であるクローバー校にもデュエルを通してアレンやサヤカ、カイトに出会えた。そして瑠璃に・・・

 

 いや、ともかくこの街は俺の庭だ。

 裏道抜け道は熟知しているし、街が崩れてもレジスタンスとして活動する中で隠し通路として一見ではわからないようなものも作ったり発見したりした。

 

 そんな道を今、アカデミアの戦士と一緒に駆けている・・・

 

「はぁ、はぁ・・・もう・・・」

 

「あと少しだ。」

 

 その間、互いに会話らしい会話はない。

 

 森の中を歩くことしばらくして、この森の管理者の資材小屋に到着した。

 一年間ほったらかしにされた森は鬱蒼とし、深いところにあるので緊急避難場所としては最適だ。

 

 外套を床に敷き背負っていたグロリアと呼ばれていた少女を下ろす。

 あの化け物にやられた背中は傷は大きいものの深くはない。

 出血がひどかったように思えたがもう止まっている。気のせいだったのか?

 だが彼女の意識は無く、呼吸も乱れている・・・まさか、毒か!?

 

「さっきの化け物はなんなんだ?

 知っていることがあれば教えてくれ。」

 

「わ、分かんないわよ・・・私たちだって、いきなり・・・」

 

 グレースと呼ばれていた彼女は尻すぼみになった後黙ってしまう。

 どうやら本当にアレについては知らないようだ。

 

「す、すまない・・・意識が戻らないのが気になって・・・

 とりあえず傷を塞ごう、包帯と消毒液はあるから君が巻いてくれ、俺は後ろを向いているから。」

 

「・・・・・・えぇ、分かったわ。」

 

 彼女に治療道具を渡し俺は後ろを向き外を警戒する。

 後ろ手に彼女は姉の治療を始めたようだ。

 

「ねぇ、どうして助けてくれたの?」

 

 しばらくすると治療も粗方済んだのかそんな質問をしてきた。

 

「貴方、顔は隠していたけど、私たちと戦ったスートのメンバーでしょ?どうして今更・・・」

 

「・・・・・・わからない。」

 

「えっ?」

 

 そう、どうして助けたのかは自分でもわからない。

 彼女たちは何人もの仲間をカードにしてきた憎き敵のはずなのに・・・

 

「助けを呼ぶ声を聞いたら、体が勝手に動き出していた・・・」

 

 自分でも困惑していることに、彼女は喜色を抑えることが限界になったようだ。

 

「・・・・・・ぷっ!ふふふふ、なにそれ、テレビのヒーローじゃあるまいし

 本気で言っているのなら、貴方相当のお人よしの馬鹿ね!」

 

 あぁ、自分でも馬鹿なことをしていると思っている。

 

「でも、そのお人よしのおかげで助かったわ。

 ありがとう、ヒーローさん?」

 

「っ!?・・・・あぁ・・・・・・」

 

 彼女は茶化しているつもりなんだろうが、自分でも何故と思うことに改めて礼を言われると気恥ずかしい。

 言った彼女も恥ずかしかったのか、それ以降は黙ってしまった。

 

「・・・うっ・・・はぁ・・・・・い。」

 

 そして事態は急変する。

 

「姉さんっ!?起きたの!しっかりして!!」

 

「・・・しい・・・・・・・ほしい。」

 

 目を覚ました彼女の目は虚空を向き、俺どころか彼女の妹すら写そうとしない。

 

「えっ?何か欲しいものがあるの、姉さん?」

 

「待てっ!?何か変だ!」

 

 俺はすぐさまグレースをグロリアから引き離す。

 その間にも彼女は虚空を見つめ譫言を繰り返す。その光景は先のカイトを想起させる。

 

「ほしい・・・妹を、グレースを護る力が・・・ほしい!!」

 

『縺?>縺?繧阪≧縲!』

 

 彼女の口から謎の言語が発せられ、カイトが使っていたモンスターが発生させた菱形の異空間が彼女の額に現れる。 

 それに嫌な予感を感じ俺はグレースを抱えて小屋の外に出る。

 

「いやああぁぁぁぁ!!姉さん!!?」

 

「っ!!?」

 

 あまりにも異常を発した彼女は、異空間が消えるとなんともないとばかりにこちらへと歩いてくる。

 ただし目から頬に掛けて、さっきまでは付いていなかった2本の引っ掻き傷のような跡を浮かび上がらせて。

 

「姉さん?どうしちゃったの?どうしちゃったのよ!姉さん!!」

 

「ふふふ、グレース・・・何も心配することはない。

 私に尽くし、私に従えば、私の庇護を得られるのだからな!」

 

 身を挺して妹を護ったとは思えない傲慢な言葉。

 呆気に取られていると彼女はデュエルディスクを起動させ、一枚のカードをグレースに投げつけた。

 

「あぐっ!?」

 

「おいっ!?くっ!何をした!?」

 

「ふはははは、さぁ!来たれ我が一族よ!!」

 

「あ・・・ああぁぁぁぁぁ!!なにか・・・わたしの、なかに・・・・」

 

 まさか例の洗脳モンスターか!?いつの間に!?

 

「お・・願い・・・・ねぇ、さん・・・を・・・助け・・・・・――

 

 彼女は俺にそう言うと糸が切れた人形のように意識をなくし、次に立ち上がった時さっきまでのやり取りが何でもなかったかのようにグロリアのもとに参じ、ひざまづいた。

 その顔にはやはり先ほどまでなかった虎のような文様が浮かんでいる。

 

「遅ればせながら、参上いたしました。姉さん(髟キ)。」

 

「うむ、よく来た。グレース(繝舌?繧ケ)

 さて・・・そこのお前!」

 

「む?」

 

 何故かグロリアは俺をまじまじと品定めするように見つめてくる。

 な、なんだ?

 

「・・・・・・うん、良い面構えだ。

 どうだ、私と共に来ないか?」

 

「何?」

 

 意味が分からない・・・

 

「私の、ん?いや・・・どうやら時間切れのようだ。」

 

――ブオオオオォォォォオオオオオオ!!

 

 この音は!?

 

「ああぁぁもう!しつっけぇんだよ!!てっ!?うわっ!?」

 

――ギユルルルルリリリッ!!

 

「ユート!?それに、タイラー姉妹?どういう状況だ!?」

 

「遊矢!?お前こそ・・・っ!?」

 

 Dホイールに乗った遊矢が現れた。

 その後ろからはあの化け物が大量に走ってきて、俺たちを取り囲む

 

――ギャア!ギャア!ギャアァァ!!

 

「静まれええぇぇぇぇ!!同胞たちよぉ!!奴らは私達の獲物だ。」

 

「チッ・・・・・・なるほど、こっちが囮として誘導していたのかと思ったが

 逆にこっちが誘導されていたという訳か・・・」

 

「ほ~う、これはまた・・・ふふふ、悦しい戦いが出来そうだな!

 さぁ!役者はそろった!!己が知恵と勇気を存分に振り絞り、この私たちに挑むがいい!!」

 

「他の同胞たちには手出しはさせないわ。存分に死力を尽くしなさい!」

 

「はぁ~やっぱり上手く行かないもんだな・・・

 やるぞ、ユート。どうやら逃がしてくれる気はないらしい。」

 

「そうだ!この儀式に逃げなどと言う選択肢はない。」

 

 好戦的な彼女らの言葉、呆れと自虐がないまぜになった遊矢の問い掛け

 もし彼女らを助けなかったらこうはならなかったのではないか?

 救ったのが間違いで、見捨てることが正しい選択だったのではないか?

 

≪お・・願い・・・・ねぇ、さん・・・を・・・助け・・・・・――

 

「・・・・・・っ!あぁ!!」

 

 非情の運命は答えを出す時間すらくれず、流れに抗えない自分の非力さに嘆くことしかできない。

 

『『決闘(デュエル)!!』』

 

 俺はそれがたまらなく嫌だった。


 モンスター3、伏せ3、永続トラップ1、手札2

 これがエクシーズ最強と名高い男の実力・・・このような形で戦うことになるとは、残念でならぬ。

 

「ターンエンドだ!」

 

 だが!だからと言って気を抜くわけにはいかん!!

 

「俺のターン!ドローっ!!

 俺は手札の森と目覚めの春化精の効果を発動!

 1ターンに1度、手札からこのカードと地属性モンスターを共に墓地へ送り、デッキから地属性モンスター、マジカル・ハウンドを墓地に送る。

 この効果の使用後は地属性モンスター以外のモンスター効果を発動できない。

 だが、その後この効果で墓地へ送ったモンスターとは別のモンスターを墓地から特殊召喚できる!蘇れ、イワトオシ!」

 

 イワトオシ DEF0

 

 イワトオシはフィールドから墓地へ送られた場合、デッキから新たな超重武者を手札に呼び寄せる。

 烙印の獣は自身のフィールドのドラゴンをリリースすることでこちらのカードを破壊するようだが、ここで発動させても俺に不利はほとんどない。

 このスキを利用させてもらう!

 

「墓地のマジカル・ハウンドの効果を発動!

 デュエル中に一度だけ相手の表側表示のマジック、トラップカードを持ち主の手札に戻すことで特殊召喚する。

 来い!チューナーモンスター、マジカル・ハウンド!」

 

マジカル・ハウンド「ワンッ!」

         DEF800

 

 烙印の獣のカードを跳ね上げ現れたるは金色の機械の犬

 

「小細工をっ!」

 

「小細工結構!俺の後ろには護るべき者たちがいる!そしてお前にも絶対傷付けさせないために俺はここに居る!!負けられぬ戦いなのだ!!

 俺はレベル4のイワトオシにレベル1のマジカル・ハウンドをチューニング!

 揺るがぬ心、その曇りなき刃に籠めよ!シンクロ召喚!

 現れよ、レべル5!超重剣聖ムサ―C!!」

 

ムサ―C「フンッ!!」

    DEF2300

 

 二振りの刀を携えた鋼の剣豪が光の中から現れる。

 だが、その光景を見たカイトは俺に対しさらに強い敵意を向けてきた

 

「シンクロ召喚・・・キサマも異世界からの侵略者か!!」

 

「・・・今の貴様に何を言っても聞かんのだろうが、俺は、いや俺たちは断じて侵略者などではないっ!

 ムサ―Cがシンクロ召喚に成功したことで墓地の機械族モンスター、イワトオシを手札に戻し、さらにフィールドから墓地へ送られたイワトオシの効果でデッキから超重武者ダイ―8を手札に加える。

 

 さらに苗と霞の春化精の効果!

 こいつも森と目覚めと同じように地属性モンスターと共に捨てることで発動する。

 今戻したイワトオシを共に捨て、デッキから地属性、天使族モンスター、古尖兵ケルベクを手札に加え、再び蘇れイワトオシ!」

 

 イワトオシ DEF0

 

「続いて丘と芽吹の春化精の効果!

 手札の古尖兵ケルベクと共に捨てることで丘と芽吹以外の春化精モンスター、山と雪解の春化精をデッキから手札に加える。

 そして、戻ってこい!地属性チューナー、マジカル・ハウンド!」

 

マジカル・ハウンド「ワオォン!!」

         DEF800

 

「ここで手札から墓地へ送られた古尖兵ケルベクの効果!

 お互いのプレイヤーはデッキの上から5枚のカードを墓地へ送る!」

 

 墓地に送られたのは・・・うむ、良いカードだ。

 対して奴の墓地もマジック、トラップは全く落ちずモンスターばかりが落ちている。

 ただの運か、モンスターの比率が多いのか・・・とにかく[融合]というマジックカードを中心に構成した普通の融合デッキではない気がするな。

 

「俺は超重武者として扱うレベル5の超重剣聖ムサ―Cとレベル4の超重武者装留イワトオシにレベル1の機械族チューナー、マジカル・ハウンドをチューニング!

 荒ぶる神よ、先の刃の咆哮と共に、砂塵渦巻く戦場に現れよ!

 いざ出陣!!レベル10、超重荒神スサノ―O!!」

 

スサノ―O「オオオォォォォォォオオオッ!フンッ!!」

     DEF3800

 

 青緑色の装甲を纏う戦神が戦場にドカリッと座り込む

 奴の強力なマジックやトラップがケルベクの効果で落ちてくれればと思ったが、仕方なし、今俺ができるだけの全力を持って戦おう!

 

「イワトオシの効果で超重武者グロウ―Vを手札へ

 さらに墓地の機械族モンスター、超重武者装留イワトオシを対象に手札のセリオンズ“キング”レギュラスの効果発動!

 このカードを特殊召喚し対象としたカードを装備カードとしてレギュラスに装備させる!」

 

「なら俺も手札の教導(ドラグマ)の騎士フルルドリスを特殊召喚!

 このカードはエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターがフィールドに存在するとき、お互いのメインフェイズに特殊召喚できる!」

 

フルルドリス「Ahaaaaaァアァアァxッァァアァ!!」

      DEF2500

 

"キング"レギュラス「ハッ!」

         ATK2800

 

 悲痛な叫びをあげる聖騎士に対峙するように、巨大な葵き梓弓を腕に括りつけた鋼鉄の王者が現れる。

 ぬぅ、レギュラスの効果を即座に理解し先手を打ってきたか・・・

 

「見事な戦略眼!だが、まだ手は残っているっ!!

 手札の山と雪解の春化精の効果!

 さっき手札に加えた超重武者グロウ―Vと共に墓地に送り、デッキから1枚ドロー!

 さらに三度蘇れ!イワトオシ!!」

 

 イワトオシ DEF0

 

「墓地の超重武者コブ―Cの効果発動!

 自分フィールド上の超重シンクロモンスターのレベルを2つ下げこのカードを特殊召喚する!

 スサノ―Oのレベルを2つ下げ現れよ、チューナーモンスター!超重武者コブ―C!」

 

コブ―C「コブシッ!」

    DEF900

 

「レベル4の超重武者装留イワトオシにレベル2機械族チューナー、超重武者コブ―Cをチューニング!

 雄叫び上げよ、神々しき鬼よ!見参せよ!砂塵すさぶ戦場に!!シンクロ召喚!!

 いざ出陣!レベル6!超重神鬼シュテンドウ―G!!」

 

 巨大な拳を持った武者がイワトオシと共に光の道を作り紅き鋼の神鬼を呼び起こす。

 伏せているカードの1枚は不明だが、ここまで発動してこなかったのなら妨害ではなく戦闘補助のはず!

 

「シュテンドウ―Gの効果!

 自分の墓地にマジック、トラップが存在せずこのカードがシンクロ召喚に成功したとき、相手フィールドのマジック、トラップカードをすべて破壊する!」

 

「タダではやられん!

 チェーン発動!速攻魔法、烙印の気炎!さらにダメージ・ダイエット!!」

 

 ダメージ・ダイエット!?

 

「烙印の気炎の効果で光波鏡騎士(サイファー・ミラー・ナイト)を公開し、エクストラデッキから竜破壊の剣士―バスター・ブレイダーを墓地へ送り、デッキから黒衣竜アルビオンを手札に加える。

 さらにこのターン、俺へのダメージはダメージ・ダイエットの効果ですべて半分になる。」

 

「くっ!防御も厚いな・・・

 イワトオシの効果でオタス―Kを手札に加え、超重武者ダイ―8を通常召喚!

 このカードは召喚に成功したとき表示形式を変更する。」

 

 ダイ―8 ATK1200→DEF1800

 

「さらにダイ―8の効果発動!

 自分の墓地にマジック、トラップがない場合、表側守備表示のこのカードを攻撃表示に変更することでデッキから超重武者装留モンスター1体を手札に加える!

 俺は超重武者装留チュウサイを手札に加え、ダイ―8に装備!

 

 チュウサイの効果で装備モンスターのダイ―8をリリースして超重武者テンB―Nを特殊召喚!

 テンB―Nが特殊召喚されたことでさらに墓地の超重武者コブ―Cを特殊召喚!」

 

 鉄人の引く大八車に長い腕を持つ装置が乗せられ、さらにコブ―Cが入った天秤棒を担いだ鉄人が運ばれてくる。

 

テンB―N「ビンッ!」

    DEF1800

 

コブ―C「フンッ!」

    DEF900

 

「レベル6の超重武者として扱う超重神鬼シュテンドウ―Gとレベル4、超重武者装留イワトオシにレベル2の超重武者チューナー、コブ―Cをチューニング!

 不動の鬼神よ、覚悟のこぶしを握り締め、今!鉄の鬼となって戦場を駆け巡れ!シンクロ召喚!!

 いざ出陣!レベル12!!超重蒸鬼テツドウ―O!!」

 

テツドウ―O「バオオオオォォォォオオオオオオォォォォォン!!」

      ――シュッ!シュッ!シュシュシュ!!

      DEF4800

 

 雄叫びのごとく汽笛を鳴らし、蒸気の音を響かせながら鋼鉄の獣が現れる。

 

「ここで俺は墓地の無限起動スクレイパーの効果発動!

 墓地のこのカードを除外して、自分の墓地から地属性の機械族モンスターをデッキに5体戻すことで2枚のカードをドローする。

 俺は超重剣聖ムサ―C、超重神鬼シュテンドウ―G、超重武者装留チュウサイ、超重武者装留イワトオシ、超重武者ホラガ―Eをデッキに戻し2枚ドロー

 

 よし!超重蒸鬼テツドウ―Oの効果発動!

 手札を2枚まで捨てることで、相手フィールド上のカードを捨てた枚数だけ対象にし、それを破壊する!」

 

「させるか!痕喰竜ブリガンドの効果!

 このモンスターが居る限り、俺のフィールドの他のモンスターは相手のモンスター効果の対象にできない!」

 

「何ッ!?くっ・・・手札のオタス―Kを捨てブリガンドを破壊だ。」

 

テツドウ―O「バオオオオォォォォォォ!!」――ドゴオォォッ!!

 

ブリガンド「グワッ!!」――バンッ!!

 

 テツドウ―Oに轢かれブリガンドが破壊されるが、これではこのターンで奴を仕留めることはできぬな・・・

 

「ならば最大限削るまで!!

 まずはスサノ―Oの効果!俺の墓地にマジック・トラップがない場合、貴様の墓地からマジック、トラップカードを俺のフィールドにセットする!

 ダメージ・ダイエットの効果適用中は墓地効果は使えん!ダメージ・ダイエットをセットだ。

 

 さらにテツドウ―Oの更なる効果!

 1ターンに1度、自分のメインフェイズにお互いのマジック、トラップカードをすべて除外し除外したカードの数×200のダメージを相手に与える!

 お前の墓地から4枚のカードを除外し、800ポイントの半分400ポイントのダメージを受けてもらう!」

 

「ぐわっ!!・・・おのれっ!」

 LP4000→3600

 

「さらに超重武者装留ダブルホーンをスサノ―Oに超重武者装留ビックバンをテツドウ―Oにそれぞれ装備させる!

 これによりテツドウ―Oの守備力は1000ポイント上昇!スサノ―Oは2回攻撃できるようになる!

 さらに超重シンクロモンスターたちは守備表示で攻撃でき、その際守備力を攻撃力として扱う!」

 

 テツドウ―O DEF4800→5800

 

 スサノ―Oの肩には巨大な角の生えた装甲が装着され、テツドウ―Oの後部には光輝く強力なエネルギー核の付いたブースターユニットが取り付けられる。

 

「さぁ!バトルだ!!

 レギュラスでフルルドリスをスサノ―Oで2体のルベリオンを攻撃!!」

 

 鋼の拳が騎士の剣を砕き、荒神の薙刀が偽りの白で彩られた邪竜達を討滅する。

 

「よし!道は開けた!!超重蒸気テツドウ―Oでダイレクトアタック!!超重突貫!オーガドライブッ!!」

 

テツドウ―O「ブオオオォォォォォォォ!!」

 

「ぐわあああぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 LP3600→700

 

 爆走するテツドウ―Oがカイトに突撃する。直接ではなくても発生した衝撃が彼を撥ね飛ばすが、平然と立ち上がるカイトに怪我の一つもなさそうだ。

 この戦場で今の今まで戦っていたのだ、そんな心配など杞憂だったな。

 

「俺はこれでターンエンドだ。」

 

 さて、次のターンを凌がなければ

 

「このエンドフェイズに墓地へ送られた痕喰竜ブリガンドの効果発動!

 デッキからアルバスの落胤1体を特殊召喚!」

 

「何っ!?」

 

アルバスの落胤「・・・・・・」

       ATK1800

 

 どす黒く濁った眼をした白髪の少年が現れる。あのモンスターは!?

 

「俺は許さないっ!俺から思い出すら奪おうとするキサマをッ!!

 手札を1枚捨てアルバスの落胤の効果を発動!このカードを含むフィールド上の融合素材モンスターを墓地に送り融合召喚を行う!」

 

「くっ!?セリオンズ“キング”レギュラスの効果発動!

 相手がカードの効果を発動したとき、自分の手札、フィールドからセリオンズカード1枚を墓地へ送る事でその効果を無効にする!

 レギュラス自身を墓地へ送り、アルバスの落胤の効果は無効だ!

 

 装備されていたイワトオシが墓地へ行ったことでデッキから超重武者装留バスター・ガントレットを手札に加える・・・」

 

 返しのターンの妨害策であるレギュラスの効果を使わされた!

 奴の手札は黒衣竜アルビオン・・・いやそれだけではない!?

 

「墓地に送られた光波鏡騎士(サイファー・ミラー・ナイト)の効果でデッキから光波異邦臣(サイファー・エトランゼ)を手札に加える。

 俺のターンだ!ドロー!!

 まずは手札の黒衣竜アルビオンの効果、烙印の裁きを墓地へ送りこのカードをデッキの一番下に戻し1枚ドロー!

 

 貪欲な壺を発動!墓地の5体のモンスター、烙印竜アルビオン、灰燼竜バスタード、神炎竜ルベリオン、痕喰竜ブリガンド、竜破壊の剣士―バスター・ブレイダーをデッキに戻し2枚のカードをさらにドロー!

 そしてマジックカード、白の烙印を発動っ!!」

 

「融合カードか!?」

 

「フィールドのアルバスの落胤と手札の光波異邦臣(サイファー・エトランゼ)を融合!

 再び顕現せよ!烙印竜アルビオン!!」

 

烙印竜アルビオン「グワアアアァァァァァァァァァアア!!」

        ATK2500

 

「烙印竜アルビオンの効果!

 墓地のアルバスの落胤と教導(ドラグマ)の騎士フルルドリスを除外し融合!

 刻まれし業に身をやつし、堕ちたる姿をさらすがいい!融合召喚!!

 顕現せよ!レベル8!灰燼竜バスタード!!

 

灰燼竜バスタード「グオオオォォォォアアアァァァァァ!!」

        ATK2500

 

「さらに光波異邦臣(サイファー・エトランゼ)が墓地に送られたことで、デッキからRUM(ランクアップマジック)光波昇華(サイファー・アセンション)を手札に加える!!」

 

「ここでRUM(ランクアップマジック)だと!?」

 

「墓地の深淵の獣(ザ・ビーステッド)ルベリオンの効果発動!

 烙印竜アルビオンをリリースし、このカードを特殊召喚!

 さらに闇属性モンスターがリリースされたことにより、墓地から暗闇の魔王ディアボロスの効果発動!このカードを特殊召喚する!!」

 

深淵の獣(ザ・ビーステッド)ルベリオン「グハハハハハッ!」

         ATK2500

 

暗闇の魔王ディアボロス「オォォォォォォオオオ!!」

           ATK3000

 

「深淵の獣ルベリオンの効果発動!

 デッキから復烙印を発動!さらにマジックカード、魂の解放を発動!

 自分、相手の墓地から5枚までカードを取り除く!

 お前の墓地の超重武者グロウ―V、カゲボウ―C、オタス―K、ビックベン―K、そして俺の墓地の光波鏡騎士(サイファー・ミラー・ナイト)を除外!

 

 ここで復烙印の効果が発動する。

 お互いの墓地から光か闇属性のモンスターが除外された場合、その内一体を持ち主のデッキの一番下に戻し、1枚ドローする。

 光波鏡騎士(サイファー・ミラー・ナイト)をデッキの一番下に戻し1枚ドロー!

 

 さらに闇黒の魔王ディアボロスの効果!

 1ターンに1度、自分フィールド上の闇属性モンスター1体をリリースすることで、相手は手札を1枚選んでデッキの一番上または一番下に戻す!」

 

「なんだと!?」

 

 灰燼竜バスタードが闇色の炎となって俺の最後の手札、[速攻のかかし]を燃やす。

 最上級モンスター3体の召喚に加え、こちらの墓地のリソースを潰しながらドロー、さらに手札破壊まで!?

 

「くうぅぅっ!!俺はこのカードをデッキの一番上に戻す・・・」

 

「俺はレベル8の深淵の獣ルベリオンと闇黒の魔王ディアボロスの2体でオーバーレイネットワークを構築!!

 闇に輝く銀河よ・・・復讐の鬼神に宿りて我が僕となれ!!エクシーズ召喚!!

 降臨せよ!ランク8!!銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)!!」

 

銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)「ギャオオオオオォォォォォォオオオオ!!」

       ATK3000 ORU2

 

「ぬぅ・・・さらに奴の手札にはRUM(ランクアップマジック)・・・」

 

「そうだ!速攻魔法!RUM(ランクアップマジック)光波昇華(サイファー・アセンション)!!

 このカードはメインフェイズにのみ発動でき、自分フィールド上のサイファーエクシーズモンスターを1つ上のランクのモンスターにランクアップさせる!!

 俺は銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)1体でオーバーレイネットワークを再構築!!ランクアップエクシーズチェンジ!!

 闇に輝く銀河よ!永久に変わらぬ光放ち、過去の簒奪者を屠る業火となれ!!

 降臨せよ!!ランク9!超銀河眼の(ネオ・ギャラクシーアイズ)光波龍(・サイファー・ドラゴン)!!」

 

超銀河眼の(ネオ・ギャラクシーアイズ)光波龍(・サイファー・ドラゴン)「オオオオォオォォォォォオオアアアアアアアァァァ!!」

               ATK4500 ORU3

 

 闇から生まれた邪竜たちが光の化身を呼び、全てを焼き尽くす鬼神へと変わった。

 三顔の異様を見せる強力無慈悲の龍の力にはたとえ墓地にカゲボウ―Cが残っていても抗うことができない。

 

超銀河眼の(ネオ・ギャラクシーアイズ)光波龍(・サイファー・ドラゴン)の効果!

 サイファーカードを素材として持つこのカードは1ターンに1度、オーバーレイユニットを3つまで取り除き、取り除いた数だけ相手の表側表示モンスターを効果を無効にして奪い、その名と攻撃力を超銀河眼の(ネオ・ギャラクシーアイズ)光波龍(・サイファー・ドラゴン)と同じにする!スーパーサイファープロジェクション!!」

 

 テツドウ―O→超銀河眼の(ネオ・ギャラクシーアイズ)光波龍(・サイファー・ドラゴン) DEF5800

                        ATK2000→4500

 スサノ―O→超銀河眼の(ネオ・ギャラクシーアイズ)光波龍(・サイファー・ドラゴン)  DEF3800

                         ATK2400→4500

 

超銀河眼の(ネオ・ギャラクシーアイズ)光波龍(・サイファー・ドラゴン)「ガアアアァァァァァァァ!!」

                ATK4500→5500 ORU3→1

 

 カイトのフィールドに3体のドラゴンが立ち並び、奴のフィールドにレベルを持つモンスターが存在する事で光波昇華(サイファー・アセンション)の効果で攻撃力が上がる

 だが、俺にはまだ奴から奪ったダメージ・ダイエットがある。

 あのモンスターの効果を使ったターン、本物以外はダイレクトアタックができない。

 このターン耐えれば、俺のモンスターは戻ってくる。まだ勝機はある・・・か?

 

「さらに永続魔法!光波干渉(サイファー・インターフィアー)を発動!!

 このカードは俺のフィールドに同名のサイファーモンスターが2体以上いる場合、そのモンスターの戦闘時、攻撃力をバトルフェイズ終了時まで倍にする!!」

 

超銀河眼の(ネオ・ギャラクシーアイズ)光波龍(・サイファー・ドラゴン)「オオオォォォォォォオオオオ!!!」

               ATK5500→11000

 

「くっ!?やはり自分のカードの対策はしていたか!」

 

 手札、場、墓地、もはやこの一撃を耐え凌ぐカードはない・・・

 今、俺にできることは・・・

 

「砕け散れ!!超銀河眼の(ネオ・ギャラクシーアイズ)光波龍(・サイファー・ドラゴン)でダイレクトアタック!!戦慄のサイファーストリーム!!」

 

――ゴオォオオオオオオオオオオ!!

 

 くっ!?間に合ってくれ!!

 

「トラップカード、ダメージ・ダイエット!

 このターンの俺へのダメージはすべて半分になる!」

 

「無駄っだああああアアァァァァァァ!!」

 

 極光を放つ龍と同じく、怒りの形相でカイトが吼える。

 ダメージ・ダイエットの防壁が一瞬、攻撃を受け止めたと同時に俺の最後の策が完了する。

 

「ぐおおおおぁああああああああああ!!」

 LP4000→0

 

 遊矢、みんな・・・後は、頼んだぞ――・・・




ははははっ!さぁ誇りを掛けた儀式の始まりだっ!!

ご機嫌ですね。姉さん

なぁ、ユート、アイツらあんなキャラだったっけ?

俺に聞かないでくれ。
次回 『誇りと信念』
俺は・・・どうすればいいのだろう?


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誇りと信念

マスターでレインボーズで試して初めて知りましたけど、モンスターゾーンで破壊されてペンデュラムゾーンに移動するカードはエクストラデッキに一旦行ってから発動する。リクルーターとかと同じフィールドで効果無効になっていても大丈夫なタイプの様ですね。宝玉獣タイプだと思っていました

≪修正≫先の展開のためアマゾネスの叫声(コール)を追加しました


「・・・・・・」

 

 俺の手には一枚のカードが握られている。

 裏切り者を庇う為俺の邪魔をした敵が封じ込められたカード・・・

 

「ッ!!」

 

 今すぐ破り捨ててやりたいっ!ハルトを奪ったやつらの仲間など!!

 だが、それをハルト(縺ゅ?縺)は望むのか・・・優しいハルト(縺ゅ>縺、)が・・・・・・

 

――キイイイィィィィィィィィィィ

 

「ぐぅ・・・!?」

 

 そうだ・・・取り戻すんだ・・・・・・

 ハルトを、あのこを・・・あの優しい時間をっ!!

 

ハルトオオォォォオオオオオォォォォォォォォォォォ繧ィ繧ッ繝ャ繧キ繧「繧。繧。繧。繧「繧「繧「繧「繧「繧。繧。繧。繧。繧。繧。繧。繧。繧。繧。!!

 

                          

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 

          ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆                      

     ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆   ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆      ◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 

                              

               

               

 

 

 狩人の叫びに呼応して新たなホールが開く

 くくく、これでより進化した(我々)を喚べる。

 

――ギギ・・・・・ガッ・・・・・ギ・・・・・・


【ゴ、権現坂 昇ノデュエルディスクノ反応ヲロスト・・・デアリマス・・・】

 

――っ!!

 

 仲間がまた一人減った・・・それもアカデミアではなく、仲間であるはずのカイトの手で

 

「くっ!!すまねぇカイト!俺は!!」

 

 アレンは今にでも飛び出していきそうだ。

 だが、血が滲むほどこぶしを握り締めてその衝動に耐えている。己の役目を全うするために

 

「オービタル、ユートたちはどうなっている?」

 

【ユート、遊矢両名ノデュエルログ現在同時更新中、タッグデュエルニテ交戦中ノヨウデアリマス!

 街内カメラニ姿ハ・・・ナアッンデストッ!!?】

 

「どうしたオービタル!!?」

 

【ハートランド内警備システムニハッキング!モノスゴイ勢イデ侵食シテイルデアリマスッ!!?対処不能!!】

 

「なんだと!?」

 

 オービタルが対処不能のハッキングだと!?

 

【アワワ!?ネットワークヲ辿ッテ、コノメインサーバーガ攻撃サレテイルデアリマス!?侵食トメラレマセン!!】

 

「オービタル!!侵入された回線を強制切断だ!そのほかの外部回線もすべてシャットアウトしろ!!

 このままではお前までハッキングを受けるぞ!!」

 

【ナァ!?ソレデハ!?】

 

「早くしろ!!カイトのためにもお前まで失うわけにはいかない!!」

 

【ウゥ・・・カシコマリ、全回線カット、デアリマス・・・】

 

 今まではオービタルがデュエルロイドを動かしてくれていたが、もうそれができない。

 数の優位性が失われ、あいつとユートは交戦中・・・そしてカード化対策がカイト相手に効かない。

 なら俺がやるべきことは・・・

 

「アレン、お前のデュエルディスクを貸してくれ。」

 

「あ?いきなりなんだよ。」

 

 俺の行動に疑問に思いつつもアレンは素直にデュエルディスクを貸してくれる。

 俺はそれをオービタルが入っているメインサーバーのコンソールに直接接続する。

 

「オービタル、アレンのディスクにカード化防止システムを入れてくれ、それとお前も。」

 

【ハァ?】

 

「おい、何してるんだよ・・・」

 

「アレン、俺たちは仲間を絶対に見捨てない。

 だから、オービタルをお前に託す。」

 

【ヌアッ!?】

 

「はあっ!?どういうことだよそれ!?」

 

「今、外にカイトを止められる者はいない。

 もしもがあってもカイトにオービタルを殺させる訳にはいかないだろう。」

 

【・・・・・・】

 

「もしもって!?隼、お前っ!?」

 

 オービタルは俺と同じ考えなのか素直にデュエルディスクに移ってくれた。

 抵抗するアレンに俺はそのデュエルディスクを押し付ける。

 

「アレン、お前は護りたいものを護れ。

 だがその責任としてカイトの護りたいものも護れ!!

 そして、出来れば俺たちが護りたいものも護ってくれ・・・」

 

「隼・・・」

 

 デュエルディスクを受け取ったアレンの横を俺は抜ける。

 伏せられたアレンの顔を確認することもせず、俺は絶望に立ち向かう為に行く。

 絶体絶命の崖っぷちを覆すために、奪われたものを取り戻すために、俺は行く。

 

「クソ・・・・・・・」


「先攻は私、まずは速攻魔法、手札断殺。

 互いのプレイヤーは手札を2枚墓地へ送り、その後デッキから2枚ドローするわ。」

 

「どちらが捨てるかはそちらで決めていいぞ?」

 

「遊矢、俺が貰っていいか?」

 

「あぁ・・・」

 

 これで次のターンプレイヤーは俺か。

 突然始まったタイラー姉妹と俺とユートのタッグデュエル

 周りには俺をしつこく追い回してきたミュートリアル・ビーストの群れ、奴らに突き刺さっていたソード・フィッシュは消えてしまったな。

 逃げ道を絶たれている状況だが、このデュエルのルールはタッグフォースルール。

 アニメのようにターンが回っていないプレイヤーに対していきなりダイレクトアタック等もできない。

 

「自分フィールドにモンスターが存在しない場合、アマゾネスの戦士長は手札から特殊召喚できるわ。

 現れよ、アマゾネスの戦士長!」

 

アマゾネスの戦士長「はああぁぁぁぁ!ふんっ!」

         ATK1900

 

 グレースのデッキは変わらず【アマゾネス】か。後攻でよかった。

 様子がおかしいが、カイトのようにまるっきり違うデッキを使うと言うわけでもなさそうだ。

 

「戦士長が召喚、特殊召喚したことで効果発動。

 デッキからアマゾネスマジック、トラップカードまたは融合のカードを自分フィールド上にセットするわ。

 私はアマゾネスの秘湯をセット!

 

 さらに墓地のアマゾネス霊術師(シャーマン)の効果発動。

 このカードが手札または墓地にあるとき、自分フィールド上の霊術師(シャーマン)以外のアマゾネスカード1枚を手札に戻すことで、このカードを特殊召喚する。

 我らが前に!アマゾネス霊術師(シャーマン)!」

 

アマゾネス霊術師(シャーマン)「ふん。」

        DEF1800

 

 逆毛の立った筋骨隆々の女戦士がフィールドを去り、代わりに現れたのは赤いフード付きマントを着た美しき霊術師(シャーマン)

 その傍らには薄い朱色の体毛を持つ仔虎が鳴き声を上げる。

 

アマゾネスペット仔虎(ベビータイガー)「みゃ~あ!」

            DEF500

 

「墓地のアマゾネスペット仔虎(ベビータイガー)は、自分フィールドにアマゾネスが召喚、特殊召喚された場合、特殊召喚できる。

 さらにアマゾネス霊術師(シャーマン)が特殊召喚されたことによりデッキから融合を1枚手札に加える。

 

 そして融合を発動よ!

 手札のレベル5以上のアマゾネスモンスター、アマゾネスの戦士長とフィールドのアマゾネスペット仔虎(ベビータイガー)を融合!

 幼き密林の野獣よ、勇敢なる戦士の魂宿し、獣の王となって現れよ!融合召喚!!

 来たれ!レベル9!アマゾネスペット虎獅王(キングライガー)!!」

 

アマゾネスペット虎獅王(キングライガー)「グオオオォォォォンン!!」

            ATK2900

 

 現れたのは獅子の鬣と虎の強靭な肉体を併せ持つ交雑種ライガー

 その巨体には元の縞と合わせ無数の傷で彩られており、その肉体が歴戦を生き抜いた猛者であることを証明する。

 

「さらにフィールド魔法、アマゾネスの里を発動し、アマゾネスペット虎獅王(キングライガー)の効果発動!

 1ターンに1度、自分のフィールドのアマゾネスカード1枚と墓地の戦士族のアマゾネスモンスターを対象にし、対象のフィールドのカードを破壊し、墓地のモンスターを特殊召喚する!

 私はフィールドのアマゾネス霊術師(シャーマン)を破壊し、アマゾネスの戦士長を特殊召喚!

 

 さらにアマゾネスの里の効果が発動!

 1ターンに1度、アマゾネスモンスターは戦闘、効果で発動され墓地へ送られたとき、自分はそのアマゾネスモンスターの元々のレベル以下のアマゾネスモンスターを特殊召喚する!

 アマゾネス霊術師(シャーマン)はレベル2、私は同じくレベル2のアマゾネス・スカウトを特殊召喚!

 そしてアマゾネスの里の効果でアマゾネス達は攻撃力を200ポイントアップ!」

 

 アマゾネス・スカウト    DEF1100

               ATK500→700

 アマゾネスの戦士長     ATK1900→2100

 アマゾネスペット虎獅王(キングライガー) ATK2900→3100

 

 霊術師(シャーマン)が去り戦士長が黄色と水色の従者を伴い戻ってきた。

 攻撃を誘導するアマゾネスペット虎獅王(キングライガー)にフリーチェーンでアマゾネスモンスターを効果破壊から守るアマゾネス・スカウト

 かなり堅実なプレーだ。ゆえに奔放な性格の彼女らしくはない。

 言葉尻も所々どこか気真面目そうな印象を受ける。パラサイト、いやミュートリアの影響なのか?

 

「カードを1枚伏せ、ターンエンド!」

 

「俺のターンだな。ド――ピピピピッ!

 ん?」

 

 権現坂から緊急のメール?

 こんなものを今、あいつが送ってくるということは・・・・・・――

 

「遊矢?どう・・・っ!?まさか!?」

 

 いつの間にか、俺はドローしようとする手で顔を覆っていた。

 件名すらない緊急メール、多少の余裕があればデュエル中でも件名は表示されるようになっているのにそれをしないということは、それほど余裕がなかったということ

 で、権現坂の性格を考えれば、どういう状況でこの行動をとったか・・・

 

「・・・!!何をしている!やる気がないのなら!『ちょっと黙っていてくれないか?』――ッ!?」

 

 指の間から目を出して、グレースを一瞥する。どうやら黙ってくれたようだ。

 状況を考えろ、ここで冷静さを欠いてどうする?

 この場を切り抜けなければ、何もできないんだ。集中しろ、集中・・・――

 

「・・・・・・ふぅ~・・――待たせたな。ではデュエルを進めよう。

 カード、ドロー、魔法カード、調律を発動、デッキからシンクロンチューナー、EM(エンタメイト)オッドアイズ・シンクロンを手札に加え、デッキをシャッフル、その後デッキトップを1枚墓地へ送る。

 

 フィールド魔法、天空の虹彩を発動しEM(エンタメイト)ペンデュラム・マジシャンをペンデュラムゾーンへ

 天空の虹彩効果発動、ペンデュラム・マジシャンを破壊しデッキからオッドアイズカード、EM(エンタメイト)オッドアイズ・バトラーを手札へ

 

 手札を1枚捨て魔法カード、ペンデュラム・コールを発動

 デッキから名前の異なる魔術師ペンデュラムモンスター2体を手札に加える。

 調弦の魔術師、相克の魔術師を手札に加え、スケール3の相克の魔術師とスケール6のオッドアイズ・シンクロンをペンデュラムゾーンにセッティング

 これでレベル4から5のモンスターをペンデュラム召喚可能となった。

 ペンデュラム召喚、手札からレベル4、調弦の魔術師、エクストラデッキから同じくレベル4、EM(エンタメイト)ペンデュラム・マジシャン。」

 

 調律の魔術師       DEF0

 ペンデュラム・マジシャン DEF800

 

「特殊召喚に成功したペンデュラム・マジシャンの効果、チェーンして調弦の魔術師の効果発動。

 調弦の魔術師の効果でデッキから別の魔術師ペンデュラムモンスターを効果を無効にして守備表示で特殊召喚する。賤竜の魔術師を特殊召喚。」

 

 賤竜の魔術師 DEF1400

 

「ペンデュラム・マジシャンの効果、自分フィールドのカード、天空の虹彩と調弦を破壊してデッキから名称の異なるEM(エンタメイト)モンスター、レディアンジュとスプリングースを手札に加える。

 そしてレディアンジュの効果、このカードとスプリング―スを捨てて2枚のカードをドロー

 

 ここでペンデュラム・マジシャンを対象にオッドアイズ・シンクロンのペンデュラム効果発動。

 1ターンに1度、自分フィールド上のオッドアイズ、EM(エンタメイト)モンスター1体を対象にそのモンスターをレベル1のチューナーとして扱う。」

 

 ペンデュラム・マジシャン LV4→1(チューナー)

 

「レベル6の風属性モンスター、賤竜の魔術師にレベル1となったペンデュラム・マジシャンをチューニング

 輝く翼、神速となり天地を照らせ、シンクロ召喚、クリアウィング・ファスト・ドラゴン。」

 

クリアウィング・ファスト「ギャオオオォォォォォォ!!」

            ATK2500

 

「調弦の魔術師の効果で特殊召喚されたモンスターはフィールドを離れたとき除外される。

 クリアウィング・ファスト・ドラゴンの効果発動

 1ターンに1度、相手フィールドのエクストラデッキから特殊召喚された表側表示モンスター1体の攻撃力を0にし、効果を無効化する。何かあるか?」

 

「はっ!?うっ・・・なにも、ないわ・・・」

 

アマゾネスペット虎獅王(キングライガー)「グゥゥ・・・」

            ATK3100→0

 

 丸みを帯びた装甲を持つ竜の翼の輝きが、アマゾネスペット虎獅王(キングライガー)を無力化する。

 アマゾネス・スカウトの効果はアマゾネスモンスターをモンスター効果の対象にできなくする能力を持つが、既に対象に選ばれてしまったモンスターを守ることはできない。

 

 セットカードの一枚はアマゾネスの秘湯、1ターンに1度だけ受けた戦闘ダメージ分だけ回復するカード

 この場合残り1枚はアマゾネスの急襲の可能性が高いが、スカウトを残しているのなら・・・

 

「墓地のEM(エンタメイト)スプリング―スの効果発動

 このカードを除外し、自分のペンデュラムゾーンの魔術師、及びEM(エンタメイト)カード2枚を対象にし、そのカードを持ち主の手札に戻す。

 相克の魔術師、EM(エンタメイト)オッドアイズ・シンクロンを手札へ戻し、チューナーモンスター、EM(エンタメイト)オッドアイズ・シンクロンを召喚。

 さらにこいつの効果で墓地のレベル3以下のEM(エンタメイト)モンスター、EM(エンタメイト)オッドアイズ・バレットを効果を無効にして特殊召喚。」

 

 オッドアイズ・シンクロン ATK200

 オッドアイズ・バレット  DEF200

 

「墓地のEM(エンタメイト)オッドアイズ・バトラーの効果発動

 自分フィールドのEM(エンタメイト)、オッドアイズモンスターカード1枚を対象にしこのカードを特殊召喚、その後対象カードを破壊する。

 バトラーを特殊召喚しバレットを破壊。

 モンスターゾーンで破壊されたバレットはペンデュラムゾーンに置かれる。」

 

 オッドアイズ・バトラー DEF2100

 

「レベル5のオッドアイズ・バトラーにレベル2のオッドアイズ・シンクロンをチューニング。

 二色の眼に写る七つの星よ、流星となって降り注げ!シンクロ召喚!

 星紡ぐ戦の竜、オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン。」

 

オッドアイズM「グオオオォォォ!!」

       ATK2500

 

「メテオバースト・ドラゴンが特殊召喚に成功したとき、自分のペンデュラムゾーンのカード1枚を特殊召喚できる。

 戻ってこい、EM(エンタメイト)オッドアイズ・バレット。」

 

 オッドアイズ・バレット DEF200

 

「オッドアイズ・バレットの効果発動

 1ターンに1度、このカードが召喚、特殊召喚に成功した場合、デッキからバレット以外のEM(エンタメイト)、オッドアイズモンスター1体を墓地に送ることで、このカードを墓地へ送ったカードと同じレベルにする。

 オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンを墓地へ送りバレットのレベルを7にする。」

 

 オッドアイズ・バレット LV1→7

 

「レベル7のメテオバーストとバトラーでオーバーレイ。

 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚。

 闇の帳を切り裂き、反逆の牙を突き立てろ!」

 

 色のないカードがその色彩を取り戻す。骨のような鎧を纏った漆黒の竜、その名は

 

「ダーク・アンセリオン・ドラゴン!」

 

ダーク・アンセリオン「ギャオオオオォォォォォォォォ!!」

          ATK3000 ORU2

 

「ほう・・・」

 

「ダーク・リベリオンに似ている?」

 

「ッ!?」

 

 グレースは動揺して、効果を使うかどうか迷っている様子

 なぜかグロリアは品定めするような視線を向けているが・・・

 

「ダーク・アンセリオンの効果

 オーバーレイユニットを1つ使い、相手モンスター1体の攻撃力を半分にし、その数値分の攻撃力を自身に加える。

 アマゾネスの戦士長の攻撃力を半分に。何かあるか?」

 

「っ!?な、何もない!」

 

 ダーク・アンセリオン ATK3000→4050

            ORU2→1

 

 アマゾネスの戦士長 ATK2100→1050

 

「相克の魔術師を再びペンデュラムゾーンにセッティングしペンデュラム効果を発動

 1ターンに1度、自分フィールド上のエクシーズモンスターを対象にし、そのモンスターはこのターン、そのランクと同じ数値のレベルのモンスターとしてエクシーズ素材にできる。

 レベル7のドラゴン族、クリアウィング・ファスト・ドラゴンとレベル7として扱うダーク・アンセリオン・ドラゴンでオーバーレイ!

 激情秘めたる二色の眼の竜よ、紅蓮の翼で地上を焼き、我が敵を討滅せよ!!エクシーズ召喚!!

 天を焦がせし烈火の竜!覇王烈竜 オッドアイズ・レイジング・ドラゴン!!」

 

レイジング・ドラゴン「グオオオオォォォォオオオオォォォォォォン!!」

          ATK3000 ORU2

 

「何もしないというならとっとと終わらせてやるよ!レイジング・ドラゴンの効果。

 エクシーズモンスターを素材にして召喚したこいつは、1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ使い、相手フィールド上の全てのカードを破壊し、破壊したカードの数×200ポイント攻撃力を上げる。」

 

レイジング・ドラゴン「オオォォォォォォォ!!」

          ORU2→1

 

「全てだと!?アマゾネス・スカウトの効果!

 このカードをリリースして、このターン自分フィールド上のアマゾネスモンスターはモンスター効果の対象にならず、カード効果によって破壊されなくなる!

 さらにチェーンしてリバースカードオープン!速攻魔法、アマゾネスの秘術!

 さらにチェーン!アマゾネスの秘湯!このカードの発動時、デッキからアマゾネスモンスターを1体手札に加える!アマゾネス王女(プリンセス)を手札へ!

 そして、アマゾネスの秘術の効果で自分の手札、フィールドのカードを使ってアマゾネス融合モンスターを融合召喚する!

 アマゾネス融合モンスター、アマゾネスペット虎獅王(キングライガー)とアマゾネスの戦士長を融合!

 おいでくださいませ!レベル10、アマゾネス女帝王(カイゼリン)!!」

 

アマゾネス女帝王(カイゼリン)「はっ!はぁぁぁぁ!!はぁっ!!」

        DEF2800

 

「チェーン処理の最後だ。

 アマゾネス・スカウトの効果を受けたアマゾネス女帝王(カイゼリン)は破壊できないがバックは割らせてもらう。レイジング・テンペストレイ!」

 

 レイジング・ドラゴンの翼の炎が輝き、熱閃が3枚のカードを焼き切る。

 

 レイジング・ドラゴンATK3000→3600

 

「ぐっ!アマゾネスが特殊召喚されたことで墓地のアマゾネスペット仔虎(ベビータイガー)を特殊召喚!

 さらにアマゾネス女帝王(カイゼリン)の効果でアマゾネス女王(クイーン)を特殊召喚!」

 

 アマゾネス女王(クイーン)       DEF1800

 アマゾネスペット仔虎(ベビータイガー) DEF500

 

「他のアマゾネスに戦闘耐性を持たせるアマゾネス女王(クイーン)、効果耐性を持たせるアマゾネス女帝王(カイゼリン)

 互いに守り合う効果、厄介だな。」

 

「ほう、お前は我らアマゾネスのことをよくわかっているようだ。」

 

 ん?『我らアマゾネス』?

 

「だが、そいつらは自分は守れない。

 いや、大事なものも護れないかもなぁ!速攻魔法!黒白の波動!

 このカードはシンクロモンスターを素材に持つエクシーズモンスターが存在する場合に発動できる。

 フィールド上のカード1枚を選択しゲームから除外して、自分はデッキから1枚ドローする。

 邪魔なドラネコにはご退場願おう。」

 

アマゾネスペット仔虎(ベビータイガー)「みゅ!?みゃぁぁぁぁぁぁ!!(泣)」

 

仔虎(ベビータイガー)!?」

 

「バトル、レイジング・ドラゴンは1ターンに2回攻撃できる。

 アマゾネス女王(クイーン)、アマゾネス女帝王(カイゼリン)の順で攻撃。」

 

レイジング・ドラゴン「グオォォォォ!!」

 

アマゾネス女王(クイーン)「ぐはっ!!」

 

アマゾネス女帝王(カイゼリン)「きゃあぁぁぁ!!」

 

 レイジング・ドラゴンの爪がアマゾネス女王(クイーン)の剣を砕き、無防備となったアマゾネス女帝王(カイゼリン)を引き裂く

 ちっ、ここまでやってダメージなしか・・・

 

「カードを3枚伏せ、ターンエンド。」

 

「うぅ・・・すいません。姉さん(髟キ)、何も・・・」

 

「いや、よくやった。グレース(繝舌?繧ケ)

 お前は恐怖に打ち勝ち、最高のタイミングでスカウトの効果を使ってくれた。」

 

「勿体なき、お言葉です。」

 

「ふっ、それよりも歓喜しろ、我らの前には一族に値する最高の獲物(オトコ)がいるのだ。

 ふふふ、お前、榊 遊矢と言ったな?どうだ私のモノにならないか?」

 

「はぁ!?」「お、姉さん(髟キ)!?」

 

 なんか・・・既視感があるな・・・?

 

「生憎、俺にも好みがある。

 さぁ!戯言はここまでにして早くデュエルを続けろ!!」

 

「ふふ、つれないねぇ。ますます私のモノにしたくなる。

 私のターン、ドロー!

 私はマジックカード、強欲で貪欲な壺を発動!

 デッキから裏側で10枚のカードを除外し2枚のカードをドローする。

 ほう、私はこのモンスターを召喚する。来い!アマゾネス王女(プリンセス)!!」

 

アマゾネス王女(プリンセス)「はあっ!」

        ATK1200

 

「アマゾネス王女(プリンセス)の効果、発動。

 1ターンに1度、デッキからアマゾネスと名の付くマジックかトラップを1枚手札に加える。」

 

「させるか!カウンタートラップ、エクシーズ・ブロック!

 自分フィールドのエクシーズモンスター1体のオーバーレイユニットを1つ使い、モンスター効果の発動と効果を無効にして破壊する。」

 

 オーバーレイユニットとなっていたファスト・ドラゴンがアマゾネス王女(プリンセス)に突撃し互いに爆散する。

 その光景にグロリアは感心したように息を吐く

 

「ほう、容赦はしてくれないようだ。」

 

「情けをかける気もない。」

 

「んふふふふ、そうだ!だが私も諦める気はない!最後の最後までな!!

 速攻魔法、アマゾネスの叫声(コール)、このカードの効果で私はアマゾネスペット仔虎を手札に加える。」

 

 くそっ!せっかく除外したのにまた厄介な!

 

「手札を1枚捨てマジックカード、一撃必殺!居合ドロー発動!

 相手フィールド上のカードの数だけ自分のデッキの上からカードを墓地に送り、ドローする。

 ドローしたカードが居合ドローならばそのカードを墓地へ送りフィールドのカードすべてを破壊し相手に破壊したカードの数×1000ポイントのダメージを相手に与える!

 だが、そうでなかった場合は墓地に送ったカードの枚数分、墓地からカードをデッキに戻す。

 

 ほう、なるほど・・・

 んふふふ、このカードで貴様の魂を試してみるのも楽しそうだ。」

 

 俺はこの時までパラサイト・フュ―ジョナーがバラまいているのは、ミュートリアばかりだと思い込んでいた。

 どこぞの地球外生命体のようにパラサイト・フュージョナーを媒介にミュートリアが寄生するシステムなのだと。

 ミュートリアル・ビーストたちは破壊状態になっても宿主の人間を元に再生していたし、ようはスタンダードで見た蟲人間と同じ状態だと

 

 

 

 

 だが、おそらく目の前の二人は違うのだ、たぶんカイトも・・・

 

「私が引いたのはこのカード・・・」

 

 グロリアの言動、その信念、俺には覚えがあった。

 俺のそれまでの仮説は間違いだと突きつける違和感、そしてそのカードで確信に至った

 

 

 

「っ!?そのカードは!?」

 

「アマゾネスの死闘場!!」


「・・・・・・・」

 

 幽鬼が彷徨い歩く、その後ろに機械兵が変化した餓鬼たちを引き連れて、破滅を呼ぶ穴を開けながら

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

――Ah・・・ga・・・・・

 

 強靭で巨大な体躯はそのままに、壊れた部分を補うように入り込んだミュートリアが覗く

 デュエルロイドにミュートリアが取り付いたモンスター、この場に遊矢がいればその姿を[ミュートリアル・アームズ]と呼んだだろう。

 

――ヒュ~~~~・・・・・・――

 

まぁそんなことはこの男には関係ないのだが

 

――ドドドドドドドドドオオオオォォォォオオンッ!!

 

「今度はお前か・・・・隼!!」

 

「カイト・・・これ以上、お前を進ませない!」

 

 ミュートリアル・アームズたちを[RR(レイド・ラプターズ)―レヴォリューション・ファルコン]の爆撃で一掃し、カイトに対峙するのは黒咲 隼

 

「邪魔をするか、ならお前もカードにする!」

 

「・・・・・・やはり、話を聞く気はないか、なら俺とデュエルだカイト!!」

 

『『決闘(デュエル)!!』』

 

「俺が先攻する!手札からRR(レイド・ラプターズ)―バニシング・レイニアスを召喚!」

 

 バニシング・レイニアス ATK1300

 

「この召喚が成功したターン、手札からRR(レイド・ラプターズ)モンスターを1体特殊召喚できる。

 来い!トリビュート・レイニアス!」

 

 トリビュート・レイニアス ATK1800

 

「トリビュート・レイニアスの効果発動!

 このカードの召喚、特殊召喚に成功したとき、デッキからRR(レイド・ラプターズ)カード1枚を墓地に送ることができる。

 俺が墓地に送るのはRR(レイド・ラプターズ)―ミミクリー・レイニアス。

 このカードは墓地に送られたターンにこのカードを除外することで、デッキからミミクリー・レイニアス以外のRR(レイド・ラプターズ)カード1枚を手札に加える事ができる。

 俺はこの効果で永続魔法、RR(レイド・ラプターズ)―ネストを手札に加え発動!

 

 自分フィールドにRR(レイド・ラプターズ)モンスターが2体以上あるとき、デッキ、墓地からRR(レイド・ラプターズ)モンスターを手札に加える。

 俺が手札に加えるのはRR(レイド・ラプターズ)―ファジー・レイニアス!

 

 そして俺はレベル4のバニシング・レイニアスとトリビュート・レイニアスでオーバーレイ!

 冥府の猛禽よ、闇の眼力で真実を暴き、鋭き鉤爪で栄光をもぎ取れ!エクシーズ召喚!

 飛来せよ!ランク4!RR(レイド・ラプターズ)―フォース・ストリクス!!」

 

 フォース・ストリクス DEF2000 ORU2

 

 緑と青の機械の鳥が闇色のフクロウを呼び出す。

 その間、爆散したミュートリアル・アームズ達は、パーツをより集め再生を開始していたが、カイトは対照的に沈黙を保っていた。

 

 どんなに変えられても黒咲とカイトが友であったことには変わりなく、その記憶も未だ残っている。

 ゆえにカイトは警戒し、目の前の敵を殲滅するための手立てを立てていく。

 

「フォース・ストリクスの効果発動!

 オーバーレイユニットを1つ使い、デッキから鳥獣族レベル4、闇属性モンスターを1体、レイダーズ・ウィングを手札に加える。

 レイダーズ・ウィングは手札にあるとき、自分フィールド上の闇属性エクシーズのオーバーレイユニットを1つ使うことでこのカードを特殊召喚する。

 

 さらにファジー・レイニアスは別のRR(レイド・ラプターズ)モンスターがいる場合、特殊召喚出来る。

 来い!レイダーズ・ウィング!ファジー・レイニアス!

 フォース・ストリクスは自分フィールド上の他の鳥獣族の数×500ポイント攻守をアップさせる。」

 

 フォース・ストリクス DEF2000→2500→3000

            ATK100→600→1100

            ORU2→1→0

 

 レイダーズ・ウィング DEF2000

 ファジー・レイニアス DEF1500

 

「レベル4のレイダーズ・ウィングとファジー・レイニアスでオーバーレイ!

 来い!2体目のフォース・ストリクス!

 このフォース・ストリクスの効果でRR(レイド・ラプターズ)―ストラングル・レイニアスを手札に加える。

 さらに墓地へ送られたファジー・レイニアスの効果でデッキから新たなファジー・レイニアスを手札に加える。

 

 マジックカード、翼の恩返しを発動!

 このカードは1ターンに1度だけ、自分フィールド上のモンスターが鳥獣族のみの場合、ライフを600払うことでデッキから2枚のカードをドローする!」

 LP4000→3400

 

 フォース・ストリクス DEF2000→2500

            ATK100→600

            ORU2→1

 

 フォース・ストリクス DEF3000→2500

            ATK1100→600

 

「相変わらずだな隼。

 刃のような雰囲気を纏っているが、お前は一人でいることを誰よりも恐れている。」

 

「あぁ、俺は仲間を誰も失いたくない、失うことが恐ろしい・・・

 お前も・・・お前もそうじゃないのか!カイト!!」

 

「・・・・・・俺は、俺の大事なものはもうない!

 ハルトも、父さんも・・・クリスも、ゴーシュも、ドロワも!みんな!みんな!奪われた!!

 それは誰の所為だ!!分かっているんだろ!隼!!」

 

「あぁ、アレンのやったことは許されることではない・・・

 だが!あいつも大事なものを守りたいという気持ちは俺たちと変わらない!!

 それにあそこには俺たちがデュエルスクールの頃に集まってきていた子供たちもいるんだぞ!!それをお前は自分で滅ぼす気か!」

 

 絶望の闇の底に沈んでしまったカイトの心を救い出そうと黒咲は必死に訴える。

 大事なものはまだ残っていると、優しい時間を思い出してくれと、この悲しき復讐者に後悔をさせないでくれと

 

「贖罪なら後からいくらでもできる!今は力を合わせ前に進む時だ!!

 俺はRUM(ランクアップマジック)―ファントム・フォースを発動!!

 墓地の闇属性モンスターを任意の数除外し、自分フィールド上の闇属性エクシーズを除外した数だけランクアップさせる!

 俺はファジー、バニシング、トリビュートの3体を除外し、ランク4のフォース・ストリクス1体でオーバーレイネットワークを再構築!!

 大いなる翼よ、遥かなる天空から同胞を導き、戦場を蹂躙せよ!!ランクアップエクシーズチェンジ!!

 襲撃せよ!ランク7!RR(レイド・ラプターズ)―アーセナル・ファルコン!!」

 

 アーセナル・ファルコン ATK2500 ORU2

 

 暗雲切り裂き巨鳥型空中母艦が降下してくる。

 それから出撃するのは3体の新たなる機械の猛禽たち

 

「アーセナル・ファルコンの効果発動!

 オーバーレイユニットを1つ使いデッキから鳥獣族、レベル4モンスターを特殊召喚する。

 来い!RR(レイド・ラプターズ)―ネクロ・ヴァルチャー!

 

 さらに手札のストラングル・レイニアスは自分フィールド上に闇属性モンスターが存在する場合特殊召喚でき、さらに自分フィールド上に闇属性エクシーズを素材とするエクシーズモンスターがいる場合、自分の墓地からレベル4以下のRR(レイド・ラプターズ)を効果を無効にして特殊召喚する!

 俺はRR(レイド・ラプターズ)カードとしても扱うレイダーズ・ウィングを特殊召喚!!」

 

 アーセナル・ファルコン ORU2→1

 

 ネクロ・ヴァルチャー   DEF1600

 ストラングル・レイニアス DEF1100

 レイダーズ・:ウィング  DEF2000

 

「レベル4のストラングルとレイダーズ・ウィングでオーバーレイ!

 エクシーズ召喚!ランク4!RR(レイド・ラプターズ)―フォース・ストリクス!

 こいつの効果でRR(レイド・ラプターズ)―トリビュート・レイニアスを手札に加える。

 

 さらにネクロ・ヴァルチャーの効果発動!

 1ターンに1度、自分フィールド上のRR(レイド・ラプターズ)モンスター1体をリリースし、墓地からRUM(ランクアップマジック)魔法カード1枚を手札に加える。

 俺はアーセナル・ファルコンをリリースしRUM(ランクアップマジック)―ファントム・フォースを手札に戻す。

 これ以降、このターン、俺はRUM(ランクアップマジック)の効果以外で俺はエクシーズ召喚できない。

 

 そして、オーバーレイユニットを持ったアーセナル・ファルコンが墓地へ送られたことにより効果発動!

 エクストラデッキからアーセナル・ファルコン以外のRR(レイド・ラプターズ)エクシーズモンスターを特殊召喚し、このカードをオーバーレイユニットとする!

 究極至高の隼よ、数多なる盟友の遺志を継ぎ、勝利の天空へ飛び立て!

 来い!ランク10、RR(レイド・ラプターズ)―アルティメット・ファルコン!!」

 

 フォース・ストリクス DEF2000→3500

            ATK100→1600

            ORU2→1

 

 フォース・ストリクス DEF4500→3500

            ATK2100→1600

 

アルティメット・ファルコン「キュオオオオオォォォォォォォォォオオオオオ!!」

             ATK3500 ORU1

 

「カードを4枚伏せ、エンドフェイズ、アルティメット・ファルコンの効果発動!

 オーバーレイユニットを持つアルティメット・ファルコンは互いのエンドフェイズに相手フィールド上全てのモンスターの攻撃力を1000ポイントダウンさせる。

 しかし、相手にモンスターがいない場合は相手ライフに1000ポイントのダメージを与える!グロリアス・フルバースト!!」

 

 黄金の翼を持つ巨鳥が無数のレーザーを発射する。

 先攻であるため当たり前だがカイトのフィールドにはモンスターはいない。普通ならだが

 

深淵の獣(ビーステッド)マグナムート「グウゥゥ・・・」

          ATK2500→1500

 

 レーザーの雨が晴れたとき、カイトの前にいたのは両の手に巨大な拘束具を付けられたボロボロの赤い竜

 隼の襲撃はこの赤い竜に防がれたのだ。

 

「なんだと!?」

 

「俺はお前の墓地からフォース・ストリクスを除外し、深淵の獣(ビーステッド)マグナムートを特殊召喚した。

 こいつは互いの墓地の光か闇属性のモンスターを1体除外することで特殊召喚できる。

 相手フィールドにモンスターがいれば相手ターンでもな。

 さらにこいつが特殊召喚されたエンドフェイズに俺はマグナムート以外のドラゴン族モンスター、深淵の獣(ザ・ビーステッド)ルベリオンを手札に加える。」

 

 ◆                 ◆ 

 ◆◆◆           ◆◆◆ 

 ◆◆◆       ◆◆◆ 

 ◆◆     ◆◆ 

 

 聖なる邪竜がカイトのもとに来訪したことで‟ホール”があざ笑う眼のように開き、黒咲を見つめる。

 

 黒咲はカイトの新たなデッキの戦術を理解したと思っていた。

 だがそれは、あくまでセレナ、デュエルロイド、権現坂のデュエルで知り得た情報でしかなく、刻一刻とより深くカイトの心は飲まれているのだ。

 

「くそっ!ターンエンドだ!!」

 

「俺のターン!ドロー!

 手札からマジックカード、おろかな埋葬発動、デッキからモンスターカードを1枚、闇黒の魔王ディアボロスを墓地に送る。

 

 さらに手札の深淵の獣(ザ・ビーステッド)ルベリオンの効果発動

 このカードを墓地に送り、デッキから深淵の獣(ビーステッド)カード、ドルイドヴルムを手札に加える。」

 

(このタイミングなら・・・いや、まだ待て!)

 

「お前の墓地のストラングル・レイニアスを除外しドルイドブルムを特殊召喚!」

 

ドルイドブルム「グウウゥゥ・・・」

       DEF2000

 

「墓地の深淵の獣(ザ・ビーステッド)ルベリオンの効果、レベル6のマグナムートをリリースし、深淵の獣(ザ・ビーステッド)ルベリオンを特殊召喚。さらに闇属性モンスターをリリースしたことでディアボロスが特殊召喚される。」

 

深淵の獣(ザ・ビーステッド)ルベリオン「グワハハハッハハッ!!」

          ATK2500

 

暗闇の魔王ディアボロス「グルルルル・・・」

           ATK3000

 

深淵の獣(ザ・ビーステッド)ルベリオンの効果発動。

 デッキから烙印と名の付く永続魔法、永続トラップを1枚フィールドに表で置く。

 永続トラップ、烙印の獣を置き効果を発動。

 ドラゴン族モンスター、ドルイドヴルムをリリースし、セットカードを破壊する。」

 

 鎖による拘束具を付けられたシカやトナカイのようにも見える四足の竜が黒咲のセットカード、ファントム・フォースをかみ砕き

 その身より溢れた呪いが、ネクロ・ヴァルチャーを道連れにし消滅していった。

 

 フォース・ストリクス DEF3500→3000

            ATK1600→1100

 フォース・ストリクス DEF3500→3000

            ATK1600→1100

 

(くっ、片方のフォース・ストリクスはレイダーズ・ウィングの効果により対象に取られることはない。だが!)

 

「アルバスの落胤を召喚!」

 

 アルバスの落胤 ATK1800

 

「アルバスの落胤の効果発動!

 召喚時、手札を1枚捨てこのカードと相手フィールド上のモンスターを素材に融合召喚を行う!」

 

「させるか!カウンタートラップ、RR(レイド・ラプターズ)―ファントム・クロー!!

 自分フィールドの闇属性エクシーズのオーバーレイユニットを1つ使い、モンスター効果の発動と効果を無効にする!

 さらに取り除かれたのがRR(レイド・ラプターズ)カードとしても扱うレイダーズ・ウィングだったことにより、フォース・ストリクスの攻撃力を破壊したモンスターの攻撃力分アップさせる!」

 

 フォース・ストリクス DEF3000

            ATK1100→2900

 

「くっ!?だが、墓地へ送られた光波異邦臣(サイファー・エトランゼ)の効果でデッキからサイファーマジック、トラップカード1枚を手札に加える。光波干渉(サイファー・インターフィアー)を手札へ!

 さらにレベル8の深淵の獣(ザ・ビーステッド)ルベリオンと闇黒の魔王ディアボロスでオーバーレイ!

 闇に輝く銀河よ、復讐の鬼神に宿りて、我が僕となれ!エクシーズ召喚!

 降臨せよ!ランク8、銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)!!」

 

銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)「ギャオオオオオォォォォォォォオオオオ!!」

             ATK3000

 

(来たか、カイトのエースモンスター!)

 

銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)の効果発動!

 オーバーレイユニットを1つ使い、相手モンスター1体の効果を無効にしコントロールを奪い銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)として扱う!サイファープロジェクション!!」

 

 黒咲のフィールドは全てエクシーズモンスターだが、アルティメット・ファルコンは効果を受けないため2体のフォース・ストリクスのどちらかが対象となる。

 カイトが対象にしたのは攻撃力がファントム・クローによって上がった方だったが、黒咲はこのタイミングを待っていた。

 

「待っていたぞこの瞬間を!

 速攻魔法、RUM(ランクアップマジック)幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ラウンチ!

 オーバーレイユニットを持たない闇属性モンスターを1つ上の闇属性エクシーズにランクアップさせる。

 さらにチェーンして永続トラップ、レイダーズ・アンブレカル・マインドを発動!

 まだ見ぬ勇猛な隼よ、猛き翼に秘めし友の思い、今ここに知らしめよ!ランクアップエクシーズチェンジ!

 現れろランク5、RR(レイド・ラプターズ)――エトランゼ・ファルコン!」

 

 エトランゼ・ファルコン DEF2000 ORU2

 

「ユートのカード!?」

 

「そうだ!ユートもお前を待っている!目を覚ませカイト!!

 幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ラウンチは発動後オーバーレイユニットになる!

 そして、レイダーズ・アンブレイカル・マインドの効果!

 闇属性エクシーズを素材にエクシーズ召喚に成功した場合、相手フィールド上のカード1枚を破壊する。烙印の獣を破壊だ!」

 

「くうっ!!ならばバトルだ。

 銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)でフォース・ストリクスを攻撃!殲滅のサイファーストリーム!!」

 

 青白い破壊の光が無防備となったフォース・ストリクスを消滅させる。

 だが殲滅装置と化した狩人の手は止まらない。その怒りを刃へと変えて獲物を狩らんとする。

 

「メインフェイズ2、俺はランク8のギャラクシーアイズエクシーズモンスター1体でオーバーレイネットワークを再構築!

 闇に煌めく銀河の刃よ、復讐の鬼神に宿りて、我が敵を切り裂け!ランクアップエクシーズチェンジ!

 降臨せよ!ランク9、銀河眼の(ギャラクシーアイズ)光波刃竜(サイファー・ブレード・ドラゴン)!!」

 

銀河眼の(ギャラクシーアイズ)光波刃竜(サイファー・ブレード・ドラゴン)「ォォォォオオオオオオォォォォォオオオ!!」

               DEF2800 ORU2

 

銀河眼の(ギャラクシーアイズ)光波刃竜(サイファー・ブレード・ドラゴン)の効果発動!

 1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ使いフィールド上のカード1枚を破壊する。

 RR(レイド・ラプターズ)―ネストを破壊し、カードを1枚伏せターンエンド!」

 

「そのエンドフェイズにアルティメット・ファルコンの効果が発動し、銀河眼の(ギャラクシーアイズ)光波刃竜(サイファー・ブレード・ドラゴン)の攻撃力は1000ポイントダウン!」

 

 銀河眼の(ギャラクシーアイズ)光波刃竜(サイファー・ブレード・ドラゴン) DEF2800

                  ATK3200→2200

                  ORU2→1

 

「俺のターン!ドロー!!

 俺はエトランゼ・ファルコンの効果発動!

 オーバーレイユニットを1つ使い、相手フィールド上のモンスター1体を破壊し、その元々の攻撃力分のダメージを与える!」

 

 エトランゼ・ファルコン ORU2→1

 

「タダでは通さん!トラップ発動!ホーリーライフバリアー!

 手札を1枚捨てることでこのターン、相手から受けるすべてのダメージを0にする!

 さらにエクシーズ召喚された銀河眼の(ギャラクシーアイズ)光波刃竜(サイファー・ブレード・ドラゴン)は相手によって破壊された場合、墓地から銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)1体を特殊召喚する!」

 

 銀河眼の(ギャラクシーアイズ)光波刃竜(サイファー・ブレード・ドラゴン)の鋭くなった甲殻や腕の光の刃がエトランゼ・ファルコンの砲撃により砕け散り、元の銀河眼の光波竜に戻る

 

銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)「グルル・・・」

             DEF2500

 

「くっ、駄目か・・・

 なら俺は手札からトリビュート・レイニアスを召喚し効果発動

 ミミクリー・レイニアスを墓地に送り、除外することでRR(レイド・ラプターズ)―レディネスを手札へ

 さらにファジー・レイニアスを特殊召喚!」

 

 トリビュート・レイニアス ATK1800

 ファジー・レイニアス   DEF1500

 

「闇属性レベル4のトリビュートとファジー・レイニアスでオーバーレイ!

 来い!ランク4、レイダーズ・ナイト!」

 

 レイダーズ・ナイト DEF1000 ORU2

 

「こいつはRR(レイド・ラプターズ)カードとしても扱う為、ファジー・レイニアスの制約に掛からない。

 レイダーズ・ナイトの効果発動、オーバーレイユニットを1つ使い、ランクを1つ高いRR(レイド・ラプターズ)モンスターにランクアップさせる。

 獰猛なる隼よ、激戦を切り抜けしその翼翻し、寄せ来る敵を打ち破れ!ランクアップエクシーズチェンジ!

 来い!ランク5、RR(レイド・ラプターズ)―ブレイズ・ファルコン!

 

 ブレイズ・ファルコンの効果発動

 1ターンに1度、相手フィールドの特殊召喚した全モンスターを破壊する。」

 

 ブレイズ・ファルコン ATK1000 ORU2→1

 

銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)「グオオォォォ!!」――バンッ!!

 

 青い炎を吹き出す機械の黒騎士が、赤き装甲を身に纏う機械の隼へと姿を変え、翼に収納された浮遊砲台が銀河の竜を打ち抜いた。

 

「墓地に送られたファジー・レイニアスの効果でデッキの最後のファジー・レイニアスを手札へ

 ここで俺は手札からRUM(ランクアップマジック)―スキップ・フォースを発動!

 自分の場のRR(レイド・ラプターズ)エクシーズモンスターを2ランク上のRR(レイド・ラプターズ)エクシーズモンスターにランクアップさせる!

 俺はランク5のブレイズ・ファルコンでオーバーレイネットワークを再構築!

 再び舞い降りよ!ランク7!RR(レイド・ラプターズ)―アーセナル・ファルコン!!」

 

 アーセナル・ファルコン ATK2500 ORU2

 

「アーセナル・ファルコンの効果でネクロ・ヴァルチャーを特殊召喚し効果発動!

 アーセナル・ファルコンをリリースし墓地のファントム・フォースを手札へ!

 さらにアーセナル・ファルコンの効果で出でよ!ランク10!RR(レイド・ラプターズ)―アルティメット・ファルコン!」

 

アルティメット・ファルコン「キュオオオォォォォォォン!!」

             ATK3500 ORU1

 

「まだだ!速攻魔法、RUM(ランクアップマジック)―ファントム・フォース発動!

 墓地のファジー、ネクロ、トリビュート、ブレイズ・ファルコン、レイダーズ・ナイトの5体を除外し、ランク5のエトランゼ・ファルコン1体でオーバーレイネットワークを再構築!

 究極至高の隼よ、並び立ち、盟友たちを護り抜け!ランクアップエクシーズチェンジ!

 現れよ、ランク10!RR(レイド・ラプターズ)―アルティメット・ファルコン!!」

 

アルティメット・ファルコン「キュオオオォォォォォォォオオオ!!」

             ATK3500 ORU2

 

「レイダーズ・アンブレカル・マインドの効果でネクロ・ヴァルチャーを破壊し、カードを1枚伏せターンエンド。」

 

「俺のターン、ドロー・・・・

 なぁ隼、お前は守る気持ちは皆同じと言ったな?」

 

「・・・あぁ。」

 

「だったら、その行為に対する犠牲も同じ価値なのか?」

 

「っ!?」

 

「あいつの所為で・・・あいつの守りたいもののために、俺の守りたいものはすべて犠牲になった・・・

 勝手なエゴで、俺の命より大事なものは犠牲になり、あいつの守りたいものは自分たちと同じだから許せ?

 そんな理不尽・・・許しておけるかああぁぁぁっ!!

 俺は手札の黒衣竜アルビオンの効果発動!デッキから白の烙印を墓地へ送り、このカードをデッキの一番下に戻し1枚ドローする。

 

 マジックカード、烙印融合!

 自分のデッキ、手札から融合素材を墓地へ送りアルバスの落胤を素材とする融合モンスターを融合召喚する!

 俺はデッキからアルバスの落胤と攻撃力2500以上のモンスターである深淵の獣(ビーステッド)サロニールを墓地へ送り融合!

 刻まれし業に身をやつし、堕ちたる姿を晒すがいい、融合召喚!

 顕現せよ、レベル8、灰燼竜バスタード!」

 

灰燼竜バスタード「グワアァァ・・・」

        ATK2500

 

「墓地に送られたサロニールの効果で烙印断罪を墓地へ送る。

 さらにバスタードをリリースして墓地の深淵の獣(ザ・ビーステッド)ルベリオンを特殊召喚!

 闇属性モンスターのリリースにより闇黒の魔王ディアボロスを特殊召喚!」

 

 深淵の獣(ザ・ビーステッド)ルベリオン  ATK2500

 闇黒の魔王ディボロス   ATK3000

 

「ルベリオンの効果発動、デッキから烙印永続魔法、烙印の命数(セントラル・ドラグマ)を置く

 さらに墓地の烙印断罪を除外して効果発動

 墓地の烙印マジック、トラップカード、白の烙印を手札に加え発動!

 手札、フィールドから、ドラゴン族モンスターを含む融合素材を墓地に送り融合召喚を行う。

 ただし、アルバスの落胤を素材とする融合召喚を行う場合、その素材を墓地から除外することで賄うことができる。

 俺は墓地のアルバスの落胤、深淵の獣(ビーステッド)サロニール、銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)銀河眼の(ギャラクシーアイズ)光波刃竜(サイファー・ブレード・ドラゴン)の4体を除外し融合!

 刻まれし業に身をやつし、葬られしドラゴンたちよ、その怨念を集結させ、敵を殲滅せよ!融合召喚!

 顕現せよ!レベル8!深淵竜アルバ・レナトゥス!!」

 

アルバ・レナトゥス「アアァァァァアアアアァァァァァ!!」

         ATK2500

 

(セレナとのデュエルで出した、連続攻撃能力を持つモンスター!)

「くっ!?だが、攻撃力はアルティメット・ファルコンの方が上。」

 

「永続魔法、烙印の命数(セントラル・ドラグマ)はマジックカードで呼び出された融合モンスターの攻撃力をターン終了時まで自身の元々の攻撃力分アップさせる。」

 

 アルバ・レナトゥス ATK2500→5000

 

「なんだと!?ならトラップカード、RR(レイド・ラプターズ)―レディネス発動!

 このターン、自分フィールド上のRR(レイド・ラプターズ)モンスターは戦闘では破壊されない!」

 

「圧縮を優先して墓穴を掘ったな!

 ライフを半分払い手札よりカウンタートラップ、レッド・リブートを発動!」

 LP4000→2000

 

「なにっ!?カウンタートラップだと!?」

 

「このカードはトラップカードの発動を無効にし再びセットする。

 さらに相手はデッキから好きなトラップカードを伏せることができるが、このターン、トラップを発動することはできない!!」

 

「・・・・・・ぐっ!ラプターズ・ガストをセットする!」

 

「これでお前は何もできない・・・無限の闇に沈め!!

 アルバ・レナトゥスでアルティメット・ファルコン3体に攻撃!!

 赫焉のヘイトレッド・フレア!!」

 

――竜は吼える

  多を護るための犠牲と言う理不尽に

 

――竜は吼える

  失うことの惨めさに

 

――竜は吼える

  自らの悲しみが分かつことができないものだということに

 

(すまない、カイト・・・)

 LP3600→2100→600→0

 

 

 

 

 

 

 感情の奔流に飲まれ、消えゆく意識の中、黒咲は懺悔した。

 

(俺はお前の苦しみの深さを分かっていなかった――




「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「であああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 拳をいなし、足を受け止め、激しい攻防が続く
 號の力を振るう女と柔の技を繰り出す男
 死闘場で繰り広げられる魂のリアルファイト!

「次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
 『魂の交差!アマゾネスの死闘場』
 って、デュエルをしろお前たち!!」

「何を言っているユート」「そうだ、これこそが」
『『決闘(デュエル)だ!!』』


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魂の交差!!アマゾネスの死闘場

お久しぶりです。
時間がなかったのもですが過去一難産でした。
心というものの表現は難しいですね・・・


 『アマゾネスの死闘場』

 それは遊戯王デュエルモンスターズGXにて登場したとある決闘者(デュエリスト)を象徴するカードだ。

 

「一撃必殺!居合ドローではなかったため、墓地に送った枚数分、墓地のカードをデッキに戻す。

 墓地の手札断殺、アマゾネスペット虎獅王(キングライガー)、アマゾネスの里、強欲で貪欲な壺、この5枚のカードを戻す。

 

 マジックカード、融合回収(フュージョン・リカバリー)

 墓地の融合素材、アマゾネスの戦士長と融合のカードを手札に戻す。

 私のフィールドにモンスターがいない為、こいつは特殊召喚できる。

 来い!アマゾネスの戦士長!!」

 

アマゾネスの戦士長「はっ!!」

         ATK1900

 

「戦士長の特殊召喚により、デッキから永続トラップ、アマゾネス拝謁の間をセットする。

 さらに戦士長を戻すことで墓地からアマゾネス霊術師(シャーマン)を特殊召喚。

 アマゾネスペット仔虎(ベビータイガー)も来い!」

 

アマゾネス霊術師(シャーマン)「ふんっ!」

         DEF1800

 

アマゾネスペット仔虎(ベビータイガー)「みゅ~」

             DEF500

 

 チッ、ペット仔虎(ベビータイガー)を処理したのに無駄になったか。

 

「アマゾネス霊術師(シャーマン)の特殊召喚により、デッキから融合として扱う置換融合を手札に加える。

 ここで私は墓地のアマゾネスの秘術の効果を除外して発動。

 このターンアマゾネスを融合召喚する場合、一度だけエクストラデッキのモンスターを素材として使うことができる。

 

 さぁ行くぞ!手札から融合を発動!

 フィールドのアマゾネスペット仔虎(ベビータイガー)、エクストラデッキのアマゾネス女帝(エンプレス)を墓地へ送り融合!」

 

 その素材で来るのは・・・

 

「なら俺は融合にチェーンし、トラップ発動!ペンデュラム・リボーン!!

 自分の墓地及びエクストラデッキで表側表示で存在するペンデュラムモンスターを特殊召喚する!

 戻ってこい!クリアウィング・ファスト・ドラゴン!!」

 

ファスト・ドラゴン「ギャオオオォォォォ!!」

         ATK2500

 

「融合召喚!吼え猛れ!!レベル9!アマゾネスペット虎獅王(キングライガー)!!」

 

アマゾネスペット虎獅王(キングライガー)「グオオオオオォォォォォォォン!!」

            ATK2900

 

 俺の場に戻ってきた輝く翼を持つ丸みを帯びた白き竜

 それと対峙するのは虎と獅子の遺伝子を掛け持つ獣の王

 

「アマゾネスペット虎獅王(キングライガー)の効果発動

 1ターンに1度、自分フィールドのアマゾネスカードを破壊して、墓地の戦士族のアマゾネスを特殊召喚する。

 すまんな。霊術師(シャーマン)。」

 

 ここは・・・止めるべきではないな。

 霊術師(シャーマン)は主に気にしないでくださいと言うように微笑み、墓地に戻っていき、代わりに現れたのはやんちゃ盛りのアマゾネスの新生児

 

「アマゾネス王女(プリンセス)を特殊召喚だ!」

 

アマゾネス王女(プリンセス)「ハハッ!」

        ATK1200

 

 アマゾネス王女(プリンセス)はフィールド、墓地にある時、自身をアマゾネス女王(クイーン)として扱う効果を持つ

 そして手札にはまだ置換融合が残っている。

 

「マジックカード、置換融合!

 このカードは自分フィールドのモンスターを融合させる!

 アマゾネス王女(プリンセス)と融合モンスターであるアマゾネスペット虎獅王(キングライガー)を融合!

 新たな世代よ、強き血を取り込み君臨せよ!融合召喚!!

 現れよ、レベル10、アマゾネス女帝王(カイゼリン)!」

 

アマゾネス女帝王(カイゼリン)「はっ!!はぁぁぁぁ!!はあっ!!」

        ATK3200

 

 王女は成長し赤きマントをたなびかせ自分の身長の半分以上もある巨大な大剣を構えた新たなアマゾネスの統治者となって気合を露わにした。

 

「アマゾネス女帝王(カイゼリン)の効果、発動。

 このモンスターの融合召喚時、デッキからアマゾネスを1体フィールドに呼び出す。」

 

 ここだ!

 

「させるか!ここでクリアウィング・ファスト・ドラゴンの効果発動!

 エクストラデッキから特殊召喚されたモンスターの攻撃力を0にし、効果を無効にする!」

 

「ふふっ!何度も同じ手が通用すると思うな!!

 私は手札より速攻魔法、融合解除を発動!」

 

「なにっ!融合解除!?」

 

「アマゾネス女帝王(カイゼリン)の融合を解除!

 戻ってこい!アマゾネス王女(プリンセス)!アマゾネスペット虎獅王(キングライガー)!」

 

アマゾネス王女(プリンセス)「はははっ!」

        ATK1200

 

アマゾネスペット虎獅王(キングライガー)「グオオオォォン!」

            ATK2900

 

 幼くも交戦的な笑い声を出すアマゾネス王女(プリンセス)とお付きのように現れる虎獅王(キングライガー)

 これで効果を使ったことで攻撃できなかった虎獅王(キングライガー)の制約が外れた。

 

「さらに私は墓地の置換融合と新鋭の女戦士、それぞれの効果を使う。

 置換融合を除外し融合モンスターであるアマゾネス女帝(エンプレス)をエクストラデッキに戻し1枚ドロー。

 新鋭の女戦士の効果で墓地の地属性、戦士族モンスター、アマゾネス霊術師(シャーマン)を手札に加える。

 

 そして、私はこのカードを発動する!フィールド魔法!アマゾネスの死闘場!!」

 

――ゴゴゴゴ・・・ガシャンッ!!

 

 俺たちを囲うように闘技場が現れ、さらに檻が空を覆う。

 

「このカードは発動時に互いのライフを600回復する。」

 LP8000→8600

 

「何?こちらも回復するカードだと?」

 LP8000→8600

 

「んふふふふ、アマゾネスの死闘場とはモンスターとの絆を自らの魂を賭けて証明する神聖な場だ!」

 

「自らの魂を賭けて?」

 

 ユートがアマゾネスの死闘場のデメリットなのかメリットなのかよくわからない効果に困惑するが無理もない。

 このカードOCG化はされなかったものの、ゲームのTAGFORCEシリーズでは皆勤登場しており、知名度だけはあるカードなのだが、本領はその効果の良し悪しではないのだから

 

「いずれわかるさ。いずれな。

 さぁ畳みかけるとしよう!私はマジックカード、アマゾネスの呪詛師を発動!

 このカードは自分フィールド上のアマゾネス1体と相手フィールド上のモンスター1体の元々の攻撃力をターン終了時まで入れ替える。

 紅き厄災の竜よ、その力をアマゾネス王女(プリンセス)に捧げよ!」

 

「チッィ・・・だが、変化するのは元々の攻撃力、上昇分は再計算される。」

 

 アマゾネス王女(プリンセス) ATK1200→3000

 

レイジング・ドラゴン「グゥウゥ・・・」

          ATK3600→1200→1800

 

「行くぞ!アマゾネス王女(プリンセス)でクリアウィング・ファスト・ドラゴンに攻撃!

 この瞬間、アマゾネス王女(プリンセス)の効果が発動する!

 攻撃宣言時、手札を1枚捨てることでデッキからアマゾネスを1体守備表示で特殊召喚する。

 来い!アマゾネス・スカウト!」

 

アマゾネス・スカウト「ふんっ!」「はあっ!」

          DEF1100

 

「さらにアマゾネスモンスターが特殊召喚されたことで、墓地のアマゾネスの銀剣使いをペンデュラムゾーンに置くことができる!

 アマゾネスの銀剣使いがペンデュラムゾーンにある限り、私のアマゾネスモンスターの攻撃力はそのレベル一つに付き100ポイントアップする!」

 

 アマゾネス王女(プリンセス)      ATK3000→3300

 アマゾネス・スカウト    DEF1100

                ATK500→700

 アマゾネスペット虎獅王(キングライガー) ATK2900→3800

 

「そして喰らえぇ!王女の一矢を!!」

 

――ギギギギ・・・ヒュウゥウン!!

 

ファスト・ドラゴン「ギャアッ!!」――ザシュ!!バンッ!!

 

「くっ!ファスト・ドラゴンはペンデュラムゾーンに。」

 

「アマゾネスの死闘場の効果、発動。

 モンスター同士の戦闘ののち互いのプレイヤーはライフを100支払うことで、相手に100ポイントのダメージを与えることができる。」

 

「何?」

 

 それだけかと言いたげなユートの反応だが、このフィールドの効果は本当にこれだけである、ただ

 

「俺とお前が魂で殴り合いをする。なぁそうだろ?アマゾネスの長!!」

 

「んふふ、その通り。」

 LP8600→8500

 

 その肯定は死闘場のからくりに対してか、それとも自身のことか

 彼女は効果を発動させ白い幻影が一人の女戦士の姿を形作る。

 

『そう!私はアマゾネス一の戦士にして長!名をタニア!!』


 タニアと名乗った幻影

 その姿は赤黒い髪を一纏めにした褐色長身で鍛えられた肉体をした女性

 顔の引っ掻き傷のようなものは今のグロリアと同じだが、それ以外は全く似つかない。

 だが、遊矢は彼女のことを何か知っているようだ。

 

「遊矢、彼女は一体・・・?」

 

「あぁ、たぶんカードの精霊だ。」

 

 精霊・・・?

 

「だが、どうして!?」

 

「あいつらにくっ憑いているのかって?

 推測でしかないが、イタコや神降ろしみたいな降霊術で人間に憑かせて、そのうえで洗脳を施す。

 精霊の残り香であるデュエルエナジーも大量入手出来て、強力で従順な兵が手に入るか・・・

 よく考えたものだ。あぁ・・・胸糞が悪いなっ!!」

 

 遊矢は吐き捨てるように悪態をつく。

 アカデミアがカードの精霊について何かしていたことはシンクロ次元で分かってたことだが・・・

 

「『話は終わったか?

 さぁ、配下の献身に答える勇気はあるか!!』」

 

「そんなの決まっている・・・乗るぜ。」

 

 遊矢の体から白い靄のようなものが出て、それが遊矢の形になる。

 彼女はモンスターとの絆を自らの魂を賭けて証明すると言っていた。

 遊矢は魂で殴り合いをすると言っていたが・・・

 

「『行くぞ!!』」

 

「応おおぉぉぉぉぉ!!」

 

 2人の幻影は風のようなスピードで死闘場の中心へ飛び出る。

 すると遊矢の幻影はタニアを蹴り上げようとするがタニアも足を上げてその蹴りに威力が載る前に相殺

 だが遊矢はそれを予想していたのか、タニアの振り上げた足を軸にして飛び回し蹴り、彼女の顎を捉える。

 

「『ぐううぅぅ!!?やる、なっ!!!』」

 LP8500→8400

 

 だがタニアも負けじと空中に居て躱すことができない遊矢の幻影に拳を振るう。

 

「ぐわっ!!くっ・・・」

 LP8500→8400

 

「・・・殴り合いって、そのままの意味なのか・・・・・・?」

 

 俺は何をやっているんだと、声を大にして言いたかったが

 

「良い蹴り入れてくれるじゃない・・・さぁ!どんどん行くよ!

 アマゾネスペット虎獅王(キングライガー)で攻撃!」

 

「いいぜ!いくらでも付き合おうじゃないか!

 永続トラップ、ペンデュラム・スイッチの効果!

 ペンデュラムゾーンの相克の魔術師を特殊召喚!守備表示だ。」

 

相克の魔術師「ふんっ!」

      DEF500

 

「なら、虎獅王(キングライガー)で相克の魔術師を攻撃する!

 この瞬間、アマゾネスの銀剣使いのペンデュラム効果、発動!

 墓地のアマゾネストラップ、アマゾネスの意地を手札に加える!

 さらにアマゾネスの死闘場の効果!『はああああぁぁぁぁぁぁぁ!!』」

 LP8400→8300

 

 タニアがアマゾネスペット虎獅王(キングライガー)に乗り相克の魔術師を共に破壊し、再び遊矢に跳び掛かる。

 だが遊矢はその行動に合わせ、タニアの腕をつかみ投げ捨てる。

  

「でああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 LP8400→8300

 

「うおぉぉ!?がっ!!?ぐぅぅ・・・なんのおおぉぉっ!!」

 LP8300→8200

 

 すぐさま立ち上がったタニアは遊矢に拳を叩き込む。

 まさにルール無用、お互いがお互いをただ傷つけある様は、ただの『喧嘩』だ。なのに

 

「ぐぅつっ!!?・・・ははっ!!そら!もう終わりかよっ!!」

 LP8300→8200

 

「ふふふ、そんな訳ないじゃない。もっと楽しませてあげる!」

 

 なぜ・・・なぜ、そんなにも楽しそうなんだ?

 

「速攻魔法、瞬間融合!

 自分フィールド上のモンスターで融合召喚を行う!

 アマゾネス融合モンスター、アマゾネスペット虎獅王(キングライガー)とアマゾネス王女(プリンセス)を融合!

 さぁ真の力を開放し再び現れよ!融合召喚!!アマゾネス女帝王(カイゼリン)!!

 レイジング・ドラゴンに攻撃だ!!」

 

アマゾネス女帝王(カイゼリン)「はっ!!はああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

        ATK3200→4200

 

レイジング・ドラゴン「グオォォ!!?」――バンッ!!

 

 再び現れたアマゾネス女帝王がレイジング・ドラゴンを両断し、魔竜の中で煮えたぎっていた炎がまき散らされる。

 

「ぐうっ!!アマゾネスの死闘場のおぉぉぉぉぉおおおおおおおおおお!!!

 LP8200→5800→5700

 

「効果、発動ぉぉぉおおおおおおおお!!

 LP8200→8100

 

 焔立つ舞台の上を2人は駆ける。

 タニアは腕を引きその拳を叩き込もうとし、遊矢も周りの炎を巻き込んで回し蹴りをし、2人の攻撃はほぼ同時にそれぞれに入った。

 

「ぐわっ!!」

 LP8100→8000

 

「長!!?」

 

「ぐはっ!!・・・っ・・・?今のは・・・」

 LP5700→5600

 

「遊矢!?大丈夫か!!?」

 

「あ、あぁ、まったくリーチの差なんてハンデはキツイね。」

 

 困惑していたような遊矢だったが、すぐにいつもの調子で悪態をつく

 だが、その悪態もなぜか本気のように感じない。

 なぜだ、こんな異常な傷つけ合いに疑問も思わないのかっ!?

 

「ふふふ・・・今のは効いたぞ・・・

 だがまだだ!アマゾネス女帝王(カイゼリン)はアマゾネス女王(クイーン)、アマゾネス女帝(エンプレス)のいずれかを素材にして呼び出された場合、1ターンに2回攻撃できる。

 そして、アマゾネス王女(プリンセス)はフィールド、墓地にある時、アマゾネス女王(クイーン)として扱う。」

 

「なっ!?それでは!!?」

 

「そう!いけぇぇ!!アマゾネス女帝王(カイゼリン)!ダイレクトアタックだ!!」

 

 3000近くのダメージを受けた直後に4200ものダメージを受けたら遊矢は!?

 

「遊矢!俺の墓地のカードを!ミストクロウズを使うんだ!!」

 

「はは、準備がいいこった。

 墓地のトラップカード、幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ミストクロウズの効果発動!

 相手のダイレクトアタック宣言時、自分の墓地のレベル4以下の幻影騎士団モンスターと共にこのカードをそのモンスターと元々のレベルが同じ通常モンスターとして特殊召喚する!

 来い、幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ミストクロウズ!幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ラギッドグローブ!」

 

 ミストクロウズ  DEF0 LV?→3

 ラギッドグローブ DEF500

 

 遊矢を護るようにカラスを模した鎧を着た騎士と巨大なボロボロ手袋を付けた幽霊が現れるが、ミストクロウズはアマゾネス女帝王(カイゼリン)に両断される。

 

「ふぅぅ・・・・・・よし、アマゾネスの死闘場だ!」

 LP5600→5500

 

「遊矢!?」

 

「はははっ!いい度胸だ!!」

 LP8000→7900

 

「であっ!!ぐっ!?」  「はあっ!がっ!?」

 LP5500→5400   LP7900→7800

 

 2人は再び己の闘志をぶつけ合い、痛みに顔を歪める。

 だが、遊矢・・・100とは言え、アマゾネスの死闘場の効果を使う必要はあるのか?

 

「遊矢、なぜ!?」

 

「もうちょっとで何かつかめそうでな。

 それに、こういうのに付き合うのも悪くない。」

 

「なっ!?」

 

 楽しんでいるのか・・・この殴り合いを!?

 

「嬉しいこと言ってくれるじゃない。

 私はカードを2枚伏せて、アマゾネス・スカウトの効果を発動

 このカードをリリースして、このターン、私のフィールドのアマゾネスモンスターは効果で破壊されない。

 つまり、瞬間融合で召喚されたアマゾネス女帝王は、このターン破壊されない。

 ターンエンドだ。」

 

 瞬間融合は呼び出したモンスターにエンドフェイズに破壊されるデメリットが付くのか・・・

 このターンは回避しても何もなければ俺のエンドフェイズには自壊する。

 そもそもあのモンスター自身には耐性はない。セットカードを除けば十分に攻められる状況だ。

 

「俺のターン・・・」

 

≪お・・願い・・・・ねぇ、さん・・・を・・・助け・・・・・――≫

 

 俺がカードを引こうとしたとき、グレーズの最後の言葉が浮かんでしまった・・・

 

「くっ・・・」

 

 ドローする手は止まり、迷いで顔が歪む。

 救わなくてはいけないのに、彼女とのデュエルは傷つけ合いになってしまう・・・

 そう思うと腕が動かなくなっていた。不甲斐ない・・・俺は責任すら果たせないのか!!

 

「ユート・・・」

 

「・・・・・・・勝つ気すらないのなら去れ。」

 

「っ!!?」

 

 そんな俺に不満を漏らしたのは遊矢ではなくグロリア、いやタニアだった。

 

「長っ!!?」

 

「言うな。私は今気分がいいんだ・・・

 腑抜けの迷いなどで、水を差されたくない。

 さてキサマ、もう一度言おう。勝つ気すらないのならこの場から去れ!

 去るならば同胞たちにも手を出させはしない。一対一で仕切り直しもしよう。」

 

 逃げる・・・だと・・・?

 相手側から提示された新たな選択肢。そんなの・・・

 

「そんなの、信用できるか!ドロー!!

 俺はペンデュラム・スイッチの効果でペンデュラムゾーンのクリアウィング・ファスト・ドラゴンを特殊召喚する!」

 

ファスト・ドラゴン「ギャオオォォォ!!」

         ATK2500

 

「ふん、ならば私もセットしていた永続トラップ、アマゾネス拝謁の間を発動する!

 このカードは発動時、自分の墓地からアマゾネスを1体手札に戻すことができる。

 アマゾネス王女(プリンセス)を手札へ!

 

 さらにフィールドにアマゾネスと名の付くモンスターがいるとき、相手フィールドにモンスターが特殊召喚された場合、そのモンスターの攻撃力の数値分、こちらのライフを回復する!」

 LP7800→10300

 

 ライフ回復!?くっ、そうかライフを確保しつつアマゾネスの死闘場でこちらのライフを削る、そういう戦略だったのか・・・

 

「クリアウィング・ファスト・ドラゴンの効果!

 1ターンに1度、相手フィールド上のエクストラデッキから呼び出されたモンスターの攻撃力を0にして、効果を無効にする!」

 

「甘いな!トラップカード、スキル・プリズナー!

 このターンこのカードの対象となったカードを対象にしたモンスター効果は無効になる!

 私が選択するのはもちろん、アマゾネス女帝王(カイゼリン)!」

 

 ファスト・ドラゴンの効果は無効になってしまったが、これで警戒すべきカードはない。

 

「マジックカード、増援!デッキからレベル4以下の戦士族モンスターを1体、幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ティアースケイルを手札に加え召喚する!」

 

 ティアースケイル ATK600

 

「ティアースケイルの効果!

 1ターンに1度、手札を1枚捨てることでデッキから幻影騎士団(ファントム・ナイツ)モンスター、またはファントムマジック、トラップカードを1枚墓地へ送る。

 俺は手札の幻影騎士団(ファントム・ナイツ)フラジャイルアーマーを捨て、幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ダスティローブを墓地へ送り効果発動!

 デッキから幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ステンドグリーブを手札に加える。

 

 さらに墓地のフラジャイルアーマーを除外して効果発動!

 手札の幻影騎士団(ファントム・ナイツ)モンスター、クラックヘルムを捨て1枚ドロー

 

 そしてレベル3のティアースケイルとラギッドグローブでオーバーレイネットワークを構築!

 現れろ、ランク3!虚空海竜リヴァイエール!」

 

リヴァイエール「グワアアァァァ!!」

       ATK1800 ORU2

 

 混沌から呼び出される翼を持つ翠の海竜

 相手のモンスターは対象にできない、破壊できない、なら・・・

 

「リヴァイエールの効果発動!

 オーバーレイユニットを1つ使い、除外されている自分のレベル4以下のモンスター、幻影騎士団(ファントム・ナイツ)フラジャイルアーマーを特殊召喚!

 

 幻影騎士団(ファントム・ナイツ)が特殊召喚されたこの瞬間、手札のステンドグリーブの効果!

 このカードを特殊召喚し、その後このカードのレベルを1つ上げる!

 

 さらに墓地へ送られたラギッドグローブを除外し効果発動

 デッキからファントムマジック、トラップカードである幻影翼(ファントム・ウィング)を墓地へ送り、これを除外することで墓地の幻影騎士団(ファントム・ナイツ)を1体復活させる。

 来い!幻影騎士団(ファントム・ナイツ)クラックヘルム!」

 

 リヴァイエール ORU2→1

 

 フラジャイルアーマー DEF2000

 ステンドグリーブ   DEF600  LV3→4

 クラックヘルム    DEF500

 

「ほう、数を揃えてきたか。

 だが我がアマゾネス女帝王(カイゼリン)の前には足元にも及ばぬな?」

 

「俺はレベル4のフラジャイルアーマー、ステンドグリーブ、クラックヘルムの3体でオーバーレイネットワークを構築!

 不屈の凍志で黄泉還れ!ランク4!ヴェルズ・ウロボロス!!」

 

ヴェルズ・ウロボロス「「「グオオオオォォォォォォォォ!!」」」

          ATK2750 ORU3

 

「ヴェルズ・ウロボロスの効果!

 1ターンに1度オーバーレイユニットを1つ使い、相手フィールド上のモンスター1体を選んで除外する!」

 

 ヴェルズ・ウロボロス ORU3→2

 

 闇に染まった氷龍の起こす吹雪がアマゾネス女帝王(カイゼリン)を吹き飛ばす。

 

「対象を取らない効果なら、スキル・プリズナーの効果の及ぶところではない。」

 

「見事な手腕だ。

 だが・・・私は永続トラップを発動する!アマゾネスの意地!

 墓地よりアマゾネスを1体フィールドに攻撃表示で呼び戻す、来いアマゾネス・スカウト!

 さらに共に来たれ!アマゾネスペット仔虎(ベビータイガー)!」

 

アマゾネス・スカウト「「はっ!」」

          ATK500→700

 

アマゾネスペット仔虎(ベビータイガー)「みゃ!」

            DEF500

            ATK500→700

 

 またモンスターがっ!?

 

「くっ!?手札からマジックカード、エクシーズ・ギフトを発動!

 自分フィールドに2体以上エクシーズモンスターがいるとき、自分フィールド上のオーバーレイユニットを2つ取り除き、デッキから2枚ドローする。

 リヴァイエールとヴェルズ・ウロボロスのオーバーレイユニットを1つずつ取り除き2枚ドロー!

 

 墓地に送ったクラックヘルムの効果発動!

 このカードを除外しエンドフェイズに、墓地の幻影騎士団(ファントム・ナイツ)、ファントムマジック、トラップカードを手札に加える。

 この瞬間ティアースケイルの効果発動!

 墓地にこのカードがあり、幻影騎士団(ファントム・ナイツ)モンスターが除外されたとき、このカードを特殊召喚する!

 

 さらに自分フィールドに幻影騎士団(ファントム・ナイツ)がいるとき、手札の幻影騎士団(ファントム・ナイツ)サイレントブーツは特殊召喚できる!」

 

 リヴァイエール    ORU1→0

 ヴェルズ・ウロボロス ORU2→1

 

 ティアースケイル DEF1600

 サイレントブーツ DEF1200

 

 墓地から舞い戻る崩れ落ちる鎧、新たに現れる履く者のない靴

 

「レベル3のティアースケイルとサイレントブーツでオーバーレイ!

 戦場に倒れし騎士たちの魂よ、今こそ蘇り、闇を切り裂く光となれ!エクシーズ召喚!!

 現れろ、ランク3!幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ブレイクソード!」

 

 その魂が折れた剣に宿る新たな騎士の魂を呼び起こす!

 

 ブレイクソード ATK2000 ORU2

 

「新たなエクシーズか・・・なら私はここでアマゾネス・スカウトの効果を発動

 このカードをリリースして、このターンアマゾネスペット仔虎(ベビータイガー)は効果で破壊されない。」

 

 どうしても死闘場の効果を成立させるつもりかっ!?

 

「ブレイクソードの効果!

 1ターンに1度オーバーレイユニットを1つ使い、自分フィールド上のカード1枚と相手フィールド上のカード1枚を破壊する。

 俺が破壊するのはお前たちのフィールドのアマゾネスの銀剣使いとブレイクソード自身だ!」

 

 ブレイクソード ORU2→1

 

 ブレイクソードが駆る馬が走り、光の柱に守られていた銀剣使いに挑みかかるが相打ちと言う形で破壊される。

 

「ブレイクソードの効果!

 エクシーズ召喚されたこのカードは破壊された場合、俺の墓地の同じレベルの幻影騎士団(ファントム・ナイツ)2体をレベルを1つ上げて復活させる。

 戻ってこい!ティアースケイル!ステンドグリーブ!」

 

 ティアースケイル DEF1600 LV3→4

 ステンドグリーブ DEF600  LV3→4

 

「レベル4となったティアースケイルとステンドグリーブでオーバーレイ!

 駆け走れ友との絆!エクシーズ召喚!

 現れろランク4!レイダーズ・ナイト!!」

 

 レイダーズ・ナイト ATK2000 ORU2

 

 現れたのは全身に張り巡らされた排気口から青白い炎を吹き出す黒騎士

 さぁもう一度立ち上がってくれブレイクソード。

 

「レイダーズ・ナイトの効果発動!

 オーバーレイユニットを1つ使いこのモンスターより一つ上または下の幻影騎士団(ファントム・ナイツ)エクシーズモンスターにランクチェンジする!

 俺はレイダーズ・ナイト1体でオーバーレイネットワークを再構築!ランクダウンエクシーズチェンジ!

 再び立て!ランク3、幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ブレイクソード!」

 

 ブレイクソード ATK2000 ORU2

 

「ブレイクソードの効果に同名制限はない。

 ブレイクソードの効果!アマゾネス拝謁の間とブレイクソードを破壊!

 再びブレイクソードの効果でティアースケイルとステンドグリーブをレベル4として特殊召喚!」

 

 ティアースケイル DEF1600 LV3→4

 ステンドグリーブ DEF600  LV3→4

 

「再びレベル4となったティアースケイルとステンドグリーブでオーバーレイ!

 漆黒の闇より愚鈍なる力に抗う反逆の牙!今、降臨せよ!エクシーズ召喚!

 現れろ!ランク4!ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン!!」

 

ダーク・リベリオン「ギャオオオオオォォォォォォォォ!!」

         ATK2500 ORU2

 

「・・・バトル。

 リヴァイエールでアマゾネスペット仔虎(ベビータイガー)に攻撃・・・」

 

リヴァイエール「ゴオオオォォォ!!」

 

アマゾネスペット仔虎(ベビータイガー)「みゃああぁぁぁ・・・――

 

 リヴァイエールの風のブレスがアマゾネスペット仔虎(ベビータイガー)を吹き飛ばす。

 あぁやった。やってしまった・・・

 

「アマゾネスペット仔虎(ベビータイガー)、幼くも確かな献身確かに受け取った。私もそれに応えよう。

 貴様にも物申したいことがあるしな!!」

 LP10200→10100

 

 アマゾネスの死闘場の効果・・・

 タニアが現れるが彼女はあきれている。恐らく俺がこの効果に乗らなかったからだ・・・

 だが俺は恐ろしいんだ。傷つくことが、傷付けることが・・・『逃げろ』と言う選択肢に心が揺れてしまうほどに

 

『私の餓えを感じるか?強き者と戦いたいという私の飢えが。

 デュエルに容赦は許されない、つまり情けも許されない。だが、それ以上に自分に嘘を吐くことも許されない・・・』

 

「っ!!?」

 

 遊矢の時と違って彼女はゆっくりと歩いてくる。

 幻影であるはずなのにその存在感は強く、大地を踏みしめた音が嫌に大きく聞こえた

 堂々と、力強く、自分と言う存在を世界に示していた。

 

『「私達は虚勢などで満たされない!」』

 

「っ!!?」

 

『はああぁぁっ!!』

 

「ぐわっ!!」

 LP4800→4700

 

 拳が突き刺さり俺の意識が飛びかける。

 痛い、辛い、苦しい・・・なぜ、遊矢たちは嬉々としてこんなことをやったんだ?

 デュエルとは人を笑顔にするも・・の・・・・・――



 初めて彼女を目にした時はデュエルが強い人だと思った、その後隼にしれっと「俺の妹だ。」などと言われたときは顎が外れそうになったが

 

「始めまして、黒咲 瑠璃です。

 いつも兄がお世話になってます。」

 

「おい、瑠璃・・・」

 

「だって兄さん、他に友達いるの?」

 

「ぬぅ・・・」

 

「ふふっ、ふつつかな兄ですが、これからもよろしくお願いします。ユートさん。」

 

 実際会ってみるとその見た目に反して強かな女性だと感じた。

 俺もそうだからわかるが、孤児院暮らしは何かと苦労があるし、自然とそうなってしまったんだろうな。

 

LL(リリカル・ルスキニア)デッキ中々いいデッキだ。

 これ自分で考えたの?」

 

「そうよ。

 大空を飛び回る鳥たちみたいに、明るく楽しいデュエルがしたいの!」

 

「そ、そうか・・・」

 

 そんなことを言って、連続攻撃でワンターンキルを狙うデッキなんだから隼の妹だなとも感じたんだけどな・・・ロマンともいえるが

 

「兄さん、ユート、紹介するね。

 彼女はサヤカ、こっちはアレン、クローバー校に通っている私の友達よ。

 ほら、今度交流デュエル会があるでしょ?でも兄さんってほら、アレじゃない?

 先に二人だけでも知ってた方がいいと思って。」

 

「「「うわっ・・・」」」

 

「る、瑠璃・・・」 

 

 彼女は自分の事を隠したりはしなかった。

 彼女は自由だったし、やりたいことはやるし、良いと思ったことも必ずやる。

 いつも楽しく笑っている君を見ていた俺も楽しくなったし

 

――ジジジジジジ・・・

 

「ほらほら、兄さんもユートも早く!早くぅ!」

 

「分かった分かった、急かすな・・・」

 

「せっかちだな瑠璃は、タイマーは十分・・・」

 

「えいっ!!」

 

「おわっ!?」

 

「っ!!!?///////」

 

――パシャッ!!

 

 ちょっと強引な君にドキドキさせられて

 

「でね。」

 

「ははは、隼の奴、カイトと何しているのかと思ったら!」

 

「まったく、恥ずかしがりなんだから、兄さんは。」――こてん

 

「っ!!////」

 

「ふふっ・・・」

 

 可愛い君が大好きになった。だから

 

「こんなの間違っている!

 デュエルは争いの道具じゃない!デュエルはみんなに・・・

 この子たちの未来に笑顔をもたらすもの!そうでしょ!?」

 

 デュエルで笑顔になる世界にしたかった。デュエルで傷つける事が嫌だった。デュエルで争うことを止めたかった。

 でも、彼女たちを笑顔にするには傷つけ合うしかないのなら、どうすればいいんだ・・・

 瑠璃・・・



――――・・・・・・ート!・・か・・ユート!!しっかりしろ!ユート!!」

 

「はっ!!?ぐぅうぅぅぅ・・・」

 

 ただの一撃、ただ100ポイントのダメージ、それなのに全身に広がる鈍い痛み

 俺はそれを何とか堪えて立ち上がる

 

「ほう、まだ立ち上がるか・・・だが、お前のような半端なキモチの奴にもう用はないな。

 私は墓地から光の護封霊剣を除外

 これでこのターン私へのダイレクトアタックは封じられ、お前は攻撃不能となった。さぁどうする?」

 

「うぅ・・・俺はメインフェイズに入って、墓地のサイレントブーツを除外して効果発動。

 デッキからRUM(ランクアップマジック)―ファントム・フォースを手札に加え発動。

 墓地の闇属性モンスターを任意の数除外することでフィールド上の闇属性エクシーズモンスターを除外したモンスターの数だけ、ランクの高いエクシーズモンスターにランクアップさせる。

 俺は墓地のブレイクソード1体を除外し、ダーク・リベリオン1体でオーバーレイネットワークを再構築!

 ランクアップエクシーズチェンジ、来い、ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン!」

 

ダーク・レクイエム「グオアアアアアァァァァァァァァ!!」

         ATK3000 ORU3

 

 ダーク・リベリオンが骨の鎧を着こんだような姿、ダーク・レクイエム

 モンスター効果を封殺するこのドラゴンがいれば、次のターンを凌ぎ、遊矢にターンを渡すことができるだろう。

 

「カードを2枚伏せてエンドフェイズ。

 除外したクラックヘルムの効果でRUM(ランクアップマジック)―ファントム・フォースを手札に加える。

 ぐっ、ターンエンドだ・・・あぐっ・・・」

 

 駄目だ・・・痛みで足が震える・・・・・・

 この痛みがまた自分に襲い掛かってくると思うと怖い、怖くてたまらない・・・

 

「・・・・・・アマゾネスの情けです。一思いにやってあげましょう。

 私のターン、ドロー!

 私は速攻魔法、皆既日食の書を発動!フィールド上のモンスターはすべて裏側守備表示になってもらう!」

 

「なっ!?」

 

 1枚のカードによってモンスターたちが全てカードへと戻される

 これではモンスター効果に対するカウンターが!?

 

「私のフィールドにモンスターはいない。

 よって今一度フィールドに現れなさい、アマゾネスの戦士長!」

 

アマゾネスの戦士長「はっ!」

         ATK1900

 

「その効果でデッキから永続トラップ、アマゾネスの秘湯をセットする。

 続き墓地のアマゾネス霊術師(シャーマン)の効果を発動!

 我がフィールドのアマゾネスの意地を手札に戻し特殊召喚!

 この特殊召喚によりアマゾネスペット仔虎(ベビータイガー)も効果を発動し特殊召喚だ!」

 

 アマゾネス霊術師(シャーマン)     DEF1800

 アマゾネスペット仔虎(ベビータイガー) DEF500

 

霊術師(シャーマン)の特殊召喚時の効果でデッキから融合のカードとして扱う置換融合を手札に加える。

 さらに手札からアマゾネス王女(プリンセス)を召喚し効果発動、デッキからアマゾネスの秘術を手札に加える。」

 

 アマゾネス王女(プリンセス) ATK1200

 

 フィールドが更地同然になっていて手札もそれほどないのに、また素材と融合カードが!?

 

「手札よりマジックカード、置換融合を発動!

 フィールドのレベル5以上のアマゾネス、戦士長とアマゾネスペット仔虎(ベビータイガー)を融合!

 幼き密林の野獣よ、勇猛なる魂を継ぎ、新たな猛獣となりて現れよ!融合召喚!!

 出現せよ!レベル9!アマゾネスペット虎獅王(キングライガー)!!」

 

アマゾネスペット虎獅王(キングライガー)「グオオオオォォォォン!!」

            ATK2900

 

「アマゾネスペット虎獅王(キングライガー)の効果発動!

 自身を破壊し、墓地からこのモンスターを呼び戻す!

 おいでませ!アマゾネス女帝王(カイゼリン)!!」

 

アマゾネス女帝王(カイゼリン)「ふんっ!」

        DEF2800

 

「墓地の置換融合を除外し、アマゾネスペット虎獅王(キングライガー)をエクストラデッキに戻し1枚ドロー!

 さらに速攻魔法、アマゾネスの秘術を発動!

 フィールドでアマゾネス女王(クイーン)として扱うアマゾネス王女(プリンセス)とアマゾネス霊術師(シャーマン)を融合!

 密林の王女よ!天啓を聞き、全てを統べる帝国を築け!融合召喚!!

 現れろ!レベル8!アマゾネス女帝(エンプレス)!!」

 

アマゾネス女帝(エンプレス)「はあっ!!」

       ATK2800

 

 くっ!?アマゾネス女帝王(カイゼリン)は今は守備表示だが、もし攻撃表示にされたら!?

 墓地には・・・っ!!遊矢のドラゴン!

 

「トラップ発動!エクシーズ・リボーン!

 墓地のエクシーズモンスターを特殊召喚し、墓地のカードをオーバーレイユニットにする!

 借りるぞ遊矢!来い!ダーク・アンセリオン・ドラゴン!」

 

ダーク・アンセリオン「ギャオオオオオオォォォォォォォォ!!」

         ATK3000 ORU1

 

 刃のような翼と全身に埋め込まれた赤い宝玉が特徴的なダーク・リベリオンに似たドラゴン。

 二度と攻撃を喰らうわけにはいかない!

 

「ダーク・アンセリオン・ドラゴンの効果発動!

 1ターンに1度、互いのターンにオーバーレイユニットを1つ使うことで相手フィールドの表側表示モンスターの攻撃力を半分にし、その数値分このモンスターの攻撃力をアップさせる!

 俺はアマゾネス女帝王(カイゼリン)の」

 

「間抜けめ!墓地のスキル・プリズナーを除外し効果発動!

 このターンこのカードの対象となったカードを対象にしたモンスター効果は無効になる!対象はもちろん、アマゾネス女帝王(カイゼリン)!」

 

「あっ!!?」

 

 し、しまった・・・スキル・プリズナーのことを忘れて・・・

 

「痛みの恐怖が忘れられないか・・・ならばここで終われ!

 墓地のアマゾネスの叫声を除外して効果発動!

 フィールドのアマゾネス1体以外の攻撃をこのターン封じる代わりに相手フィールド上のモンスターすべてに攻撃できるようにする!

 私はこの効果をアマゾネス女帝(エンプレス)に付与する!

 

 さらに永続魔法、アマゾネスの闘志!

 このカードがフィールドにある限り、アマゾネスが自身の攻撃力より高い攻撃力を持つモンスターを攻撃する場合、攻撃力を1000ポイントアップさせる!

 そしてアマゾネス女帝(エンプレス)は自身の効果により貫通効果を得ている!」

 

 貫通と連続攻撃に攻撃力増加!?

 なら、このカードをっ!!?

 

「くっ!!?」

 

 なぜか、俺はこのターンを凌ぐためのカードを発動することを躊躇した。

 相手のライフは一万超え、戦闘効果で破壊不可能で対象にもできないモンスター群

 いくら遊矢でも、次のターンで勝利することは難しいだろう。

 なら、また俺のターンが回って来て、また・・・・・

 

「はぁ~・・・もういい、去れ。

 お前は長の相手にふさわしくはない。」

 

「っ!?」

 

「お前が抜けるのであれば、私も抜けよう。

 攻撃もせず、ターンをそちらに明け渡そう。それでいいよろしいでしょうか、長?」

 

 やめて・・・良いのか?

 アカデミアとの戦争が始まって様々な痛みを受けてきた。

 瑠璃を攫われ、仲間を失い、身を隠す場所や食事にも苦労した。

 

「あぁ、痛みの恐怖で動けなくなる腑抜けになど、用はないからな。」

 

 だが・・・自分の信念を否定されるのはこんなにも苦しいことなのかっ!!

 

≪お・・願い・・・・ねぇ、さん・・・を・・・助け・・・・・――≫

 

 すまない。君の願いを俺は叶えてやれそうにない・・・

 

≪こんなの間違っている!

 デュエルは争いの道具じゃない!デュエルはみんなに・・・

 この子たちの未来に笑顔をもたらすもの!そうでしょ!?≫

 

 ごめん、瑠璃。俺はどうやったら良いのか分からなくなってしまった・・・もう、ここで

 

「諦めるなユートっ!!!」

 

「遊、矢?」

 

「闇のデュエルの痛みや苦痛なんてまやかしだ!自分を強く持てっ!!」

 

 まやかし?この痛みが、恐怖が、幻だとでもいうのか?

 

「痛みを忘れろとは言わない。恐怖を無くせとは言わない。

 だが、これからも精霊をアカデミアが利用するなら闇のデュエルなんていくらでもやられる・・・

 ここで折れたら、お前はずっと逃げ続けることになる!

 お前はそれでいいのか!?それがお前の望む未来か!!?」

 

「未来・・・俺の、望む・・・・・・」

 

「教えたはずだ!勇気をもって一歩踏み出すことを!

 どんなピンチも決してあきらめないことを!

 あらゆる困難に立ち向かうことを!!

 どんな時だって、進み続けて全てを手に入れた『勇者』の言葉を!!」

 

「あっ!!?」

 

 そうだ・・・忘れていた・・・

 

「か・・・」

 

 遊矢が教えてくれた不思議な言葉

 

「かっと・・・・・・」

 

 立ち上がるための、いや!前に進む為の言葉を!!

 

かっとビングだああぁぁぁぁ!!俺えぇぇぇぇええええ!!」

 

 体の震えが止まる。

 そうだ!俺はこんなところで立ち止まるわけにはいかないんだ!!

 

「ありがとう遊矢。また助けられた。」

 

「礼を言われるほどのことじゃない。

 立ち上がることを選択したのはお前だ。」

 

「っ!!あぁ!!」

 

「茶番を!臆病者がいまさら立ち上がったところで、結末は変えられんっ!!

 バトル!アマゾネス女帝で裏側守備表示のリヴァイエールに攻撃!!女帝一刀両断!!」

 

「結末はここじゃない!

 トラップカード、ダメージ・ダイエット!

 このターン俺たちが受けるすべてのダメージは半分になる!」

 

 リヴァイエール DEF1600

 アマゾネス女帝(エンプレス)の大剣がリヴァイエールを真っ二つにして、その奥から片目が潰れたオレンジ色の虎が飛びかかってくる。

 

『刻みつけてやろうっ!!ガオオオォォォォォォォオオオオ!!』

 LP10200→10100

 

「ヌあっ!!?」

 LP4700→4100→4050

 

 ファスト・ドラゴン  DEF2000

 ヴェルズ・ウロボロス DEF1950

 

 アマゾネス女帝(エンプレス)は待ったなしで伏せられたファスト・ドラゴンとヴェルズ・ウロボロスを切り刻み、虎が俺に爪を搔き、その巨大で体当たりしてくる。

 

「ぐアっ!!グおっ!!

 ファスト・ドラゴンはペンデュラムゾーンに留まる!」

 LP4050→3650→3600→3175→3125

 

『臆病者めっ!!まだっ!!』

 LP10100→10000→9900

 

 女帝(エンプレス)が次に目を向けたのは漆黒の2体の竜

 格上との戦いに彼女の口角は上がりその闘志は増大する。

 

アマゾネス女帝(エンプレス)「ふふっ、はああああぁぁぁぁぁぁあああああ!!」

       ATK2800→3800

 

ダーク・レクイエム「ギャッ!!」――バンッ

         DEF2500

 

アンセリオン・ドラゴン「グウゥ・・・」――バンッ

 

「ぐわあぁぁぁぁ!!?」

 LP3125→2475→2425→2025→1975

 

 ダーク・レクイエムが攻撃を受けたとき、俺の中にさまざまな思いが伝わってきた。

 不満、怒り、餓え、俺に向けられた様々な負の感情

 そんな彼女の中の、いや彼女の中にいるグレースの切なる望み・・・

 あぁそうだな、俺が解ってやれてなかったんだ。

 

「まだ痛いか?ユート。」

 

 仲間を、友を、家族を守りたいという願い、そしてデュエルを思いっきり楽しみたいという思いが彼女たちを喚んだんだ。なのに俺は・・・

 

「いや・・・もう痛くない!」

 

「そうか。

 じゃあ、全力で勝ちに行くぞ、ユート!」

 

「あぁ!」


――キイイィィィィィィィィィ・・・――

 

 蟲のさざめきが木霊する。

 

 姉は妹を護る力を欲した。妹は姉を救いたいと願った。

 蟲の中に植え付けられた異界の門を開かせるほどに強く、強く、強く

 

「あの男、随分良い目をするようになったと思わないか、バース?」

 

「はい、ですが長の好むようなものであるとは思えません。」

 

――ィィィィィィィ・・・――

 

 蟲のさざめきが木霊する。

 

「ふふ、いや、ああいう男も悪くはない。」

 

 アマゾネスの長は力を貸した。ついでに自分の願いも叶えるために

 

「はぁ~お戯れが過ぎます・・・長。」

 

 アマゾネスの近衛は長に付いて行った

 長を手助けすることが彼女の使命であり、役割であり、望みだから

 

――ィィィ・・・・・・―――

 

 蟲のさざめきが木霊する

 

「ふん、楽しんでいるのは私だけではあるまい?」

 

「それは・・・」

 

 もう二人の女戦士は檻の外のケダモノ達を同胞とは呼ばないだろう。

 ただこの一戦に懸ける彼女たちの思いが一つに重なったのだから

 

――――――

 

 頭の中に響いていた蟲のさざめきは聞こえない。

 彼女たちの胸の鼓動が魂に響いている。


「私はカードを1枚伏せ、ターンエンド。」

 

「エンドフェイズにペンデュラム・スイッチの効果発動!

 ペンデュラムゾーンからクリアウィング・ファスト・ドラゴンを特殊召喚!」

 

 ファスト・ドラゴン ATK2500

 

 ファスト・ドラゴンを残してくれたか。

 伏せは判明しているし、これでアマゾネス女帝王(カイゼリン)への対抗手段が出来た。

 痛みで心が折れかけていたけど、かっとビングで持ち直してくれてよかった。

 

「俺のターン、ドロー・・・」

 

 問題はここから、タイラー姉妹からタニア達を引きはがす方法・・・憶測だが、人工とは言え触媒になっているパラサイト・フュージョナーも精霊であるなら・・・

 

「・・・ユート、俺はこれから全力を持ってグレースに憑いた精霊を引きはがす。」

 

「なっ!?知っているのか!?」

 

「知っている、訳じゃないさ。憶測の域を出ない賭けみたいなもの・・・

 ただそれが成功したとして、もしかしたら世界に悪影響が出るかもしれない。」

 

 自分でも馬鹿なことをしようとしていると感じている。

 なにしろ俺が危惧している存在の、世界を滅ぼすことが人々の望みだと思っている悪魔の力を借りるようなこと

 

「その方法とは?」

 

「精霊だ。あいつらの中に巣食っているパラサイト・フュージョナーに精霊の力を叩き込んで除去する。」

 

「そんなことが・・・・だが!?」

 

「精霊を持っているのかって?

 お前もわかって、いや感じたんじゃないか?さっきのターンで。」

 

「それは・・・」

 

 悪魔と呼ばれたデュエリストが使用した4体のフェイバリットモンスター『四天の竜』

 俺は分かっていたことだが、死闘場の効果なのかレイジング・ドラゴンが破壊されたとき強く感じた。精霊の力を

 だからユートも感じたはずだ、自分と深く繋がっている精霊の存在を

 

「ただ、その力を使うことは世界を滅ぼす危険に繋がるかもしれない。

 それでも、お前は「大丈夫だ。」っ!?」

 

 俺だけではなく、ユートもダーク・リベリオンの力を引き出すのは危険かもと、釘を刺すつもりだが遮られてしまった。

 

「世界の滅びなんて俺は望まない。俺の目指す未来じゃない。

 俺の望むのは瑠璃や隼、そして彼女たちとも笑い合ってデュエル出来る未来だ!

 だから信じてくれ、遊矢。」

 

「ユート・・・」

 

「勇気をもって一歩踏み出す。かっとビングだろ?」

 

 そう言うユートの顔はどこかあの勇者の顔を思い起こさせて

 

「うん・・・そうだな、信じることも勇気だな。

 じゃあ、後は任せたぞ、ユート!」

 

「あぁ!!」

 

 頼もしい声に押され俺は動き出す。

 精霊の、オッドアイズの力を最大限に引き出す為に!

 

「俺はレイジング・ドラゴンのペンデュラム効果を発動!

 もう片方のペンデュラムゾーンにカードがないとき、1ターンに1度、デッキからペンデュラムモンスターをセッティングする!

 俺はこの効果でスケール8のEM(エンタメイト)ジェントルードをセッティング!

 さらにペンデュラム・スイッチの効果でレイジング・ドラゴンを特殊召喚!」

 

レイジング・ドラゴン「グオオオオォォォォォォオオオオ!!」

          ATK3000

 

 黒い紳士服を纏った悪魔ジェントルードが光の柱の中に顕現し、代わりに赤と緑の瞳を持つ紅き魔竜がフィールドに解き放たれる。

 

「空いたペンデュラムゾーンにスケール6のEM(エンタメイト)リザードローをセッティングし、ペンデュラム効果!

 もう片方のゾーンにEM(エンタメイト)カードがセッティングされているとき、1ターンに1度、このカードを破壊し1枚ドローする。

 

 さらに墓地のEM(エンタメイト)レディアンジュの効果。

 ジェントルードがセッティングされているとき、こいつは墓地からペンデュラムゾーンに置くことができる。

 

 さらにジェントルードのペンデュラム効果。

 もう片方のゾーンにレディアンジュが存在し、自分フィールド上のモンスターが存在しない場合、またはペンデュラムモンスターのみの場合、デッキからオッドアイズカード1枚を手札に加える。

 俺のフィールドのモンスターはペンデュラムモンスターでもあるレイジングとファストドラゴンのみ

 よって、デッキからEM(エンタメイト)オッドアイズ・プリーストを手札に加える。

 

 現在のスケールは1と8、さぁ!揺れろ魂のペンデュラム!異界の扉を開け!!ペンデュラム召喚!!

 来い!手札からレベル6、オッドアイズ・プリースト!エクストラデッキからレベル3、リザードロー、レベル4、ペンデュラム・マジシャン!」

 

 黒の悪魔と白の天使が揺らす振り子が異界より3つの流星を呼び寄せる。

 その流星から生まれ出でるのはガラクタを寄せ集めたような姿の魔法使い、トカゲの紳士、振り子の奇術師

 

 オッドアイズ・プリースト ATK100

 リザードロー       ATK1200

 ペンデュラム・マジシャン ATK1500

 

「ペンデュラム・マジシャンが特殊召喚されたことにより効果発動!

 俺のフィールドのジェントルードとレディアンジュを破壊しデッキからEM(エンタメイト)モンスター、ドクロバット・ジョーカーとユニを手札に加える。

 

 さらにジェントルードが破壊されたことにより効果発動

 デッキからジェントルード以外のEM(エンタメイト)ペンデュラムモンスター、スケール6のEM(エンタメイト)シール・イールをセッティングしペンデュラム効果

 アマゾネス女帝王(カイゼリン)の効果を無効にする。

 

 さらにクリアウィング・ファスト・ドラゴンの効果でアマゾネス女帝(エンプレス)の効果と攻撃力も無力化させてもらう。」

 

「ぢっ!!」

 

 アマゾネス女帝(エンプレス) ATK2800→0

 

「やっとこれで攻撃が通るな。

 俺はレベル7のシンクロモンスター、クリアウィング・ファスト・ドラゴンにレベル3のリザードローをチューナー扱いでチューニング!

 時の狭間に至る極地、刮目して確と見よ!シンクロ召喚!!

 来い!涅槃の超魔導剣士(ニルヴァーナ・ハイ・パラディン)!!」

 

涅槃の超魔導剣士(ニルヴァーナ・ハイ・パラディン)「はあっ!!」

          ATK3300

 

 白き竜が光の中で生まれ変わり、蒼の時の剣士となる。

 

「ほう。」

 

「チューナーでないものをチューナーにだと!?なんだそのモンスターは!?」

 

「驚いてくれてどうも。

 だがこいつはこの特殊な方法で出したときにこそ真価を発揮するモンスターでな?

 この方法で呼び出したとき、俺は墓地からカードを1枚手札に戻す。

 俺が手札に加えるのはエクシーズ・ギフト

 

 ここで俺は手札からEM(エンタメイト)ドクロバット・ジョーカーを召喚し効果を発動

 デッキからオッドアイズモンスター、オッドアイズ・ランサー・ドラゴンを手札へ

 

 では続いてレベル4のドクロバット・ジョーカーとペンデュラム・マジシャンでオーバーレイ!

 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!

 現れろ竜魔人 クィーンドラグーン!」

 

クィーンドラグーン「ふんっ!!」

          ATK2200 ORU2

 

「クィーンドラグーンの効果発動

 1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ使い、墓地からレベル5以上のドラゴン族を効果を無効にして復活させる。

 

 さらにペンデュラム召喚したオッドアイズ・プリーストを除外しオッドアイズモンスターを復活させる!

 戻ってこい!オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン!オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン!

 

 クィーンドラグーン ORU2→1

 

 オッドアイズM「ォォォオオオオオォォォォォオオ!!」

       ATK2500

 

オッドアイズP「ギャオオオォォォォォ!!」

       ATK2500

 

 半竜半人の女王とガラクタの司祭の導きで二色の眼の竜たちが墓地より蘇る。

 

「まだまだ!レベル7のオッドアイズ2体でオーバーレイ!

 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!

 六道八獄踏み越えて、絶対なる力、二色の眼に焼き付けろ!エクシーズ召喚!

 全てを凍てつかせる永久の竜!オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン!!」

 

オッドアイズA「ギャオオオォォォォォオオオン!!」

       ATK2800 ORU2

 

 蘇った竜たちが新たに呼び出したのは、絶対の名を冠する氷結の力を手に入れた異虹彩の竜

 さぁ、まずは第一陣。

 

「エクシーズ・ギフトを発動

 オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴンとクィーンドラグーンのオーバーレイユニットを1つずつ取り除いて2ドローしてバトルフェイズ!」

 

「好き勝手にはさせん!永続トラップ、アマゾネスの秘湯!

 このカードは発動時にデッキからアマゾネスペンデュラムモンスターをフィールドにセッティングすることができる!

 スケール1のアマゾネスの金鞭使いをセッティング!」

 

「好き勝手させてもらうぜ!速攻魔法、揺れる眼差し!

 フィールド上のペンデュラムゾーンのカードすべてを破壊し、破壊した枚数によって効果が増える。

 金鞭使いとシール・イールの2枚を破壊し、相手に500ポイントのダメージを与え、デッキからペンデュラムモンスター、EM(エンタメイト)バロックリボーを手札に加える。」

 

「くっ!?」

 LP9700→9200

 

涅槃の超魔導剣士(ニルヴァーナ・ハイ・パラディン)でアマゾネス女帝王(カイゼリン)に攻撃!時空剣一閃!!」

 

涅槃の超魔導剣士(ニルヴァーナ・ハイ・パラディン)「でぇえあああぁぁぁぁぁぁ!!」

 

アマゾネス女帝王(カイゼリン)「ゥグアアアァァァ!!」――バンッ!

 

涅槃の超魔導剣士(ニルヴァーナ・ハイ・パラディン)がモンスターを戦闘で破壊したことにより効果発動!

 相手ライフを半分にする。

 さぁ、アマゾネスの死闘場と行こうか?」

 LP1975→1875

 

「ぐぅぅ・・・『オオオオォォォォォォォオオ!!』

 LP9200→4600→4500

 

 俺の目の前に現れるクリーム色の体毛を持った隻眼の虎『バース』

 タニアのお付きの巨大な虎だが、こいつもまた精霊だったとはな。

 バースはその巨体を生かすために真っすぐこちらへ飛びかかってくる。

 普段なら闘牛よろしく躱して回し蹴りでもするところだが・・・

 

「オラアアァァァァアアアァァァッ!!」

 LP1875→1775

 

『ギャウウウゥゥン!!?』

 LP4500→4400

 

 俺は敢えて真正面からぶん殴った!

 うん、アッパーは手ごたえ無し!!

 

「クィーンドラグーンで攻撃、だがここでオッドアイズ・アブソリュート・ドラゴンの効果発動!

 オーバーレイユニットを1つ使い、その攻撃を無効!

 そして、その後手札からオッドアイズ・ランサー・ドラゴンを特殊召喚!」

 

 オッドアイズA ORU1→0

 

オッドアイズ・ランサー「ギャオオオォォォォォォ!!」

           ATK3000

 

「オッドアイズ・ランサー・ドラゴンでアマゾネス女帝(エンプレス)に攻撃!!」

 

 氷の中から現れた槍の穂先のような頭の異虹彩の竜が翼を折りたたみ、自らを一本の槍として風の檻に閉じ込められ無力となった密林の女帝を貫く

 

「あぐっううううううぅぅぅぅぅ・・・

 だが、アマゾネスの秘湯の効果で回復、そして!!」

 LP4400→1400→4400→4300

 

「アマゾネスの死闘場だ!」

 LP1775→1675

 

 俺とバースは同時に相手に向かって疾走

 奴は爪で俺の幻影を引き裂こうとしてくるが、俺はそれよりも早く奴の眉間に槍のようなストレートを叩き込むっ!

 が、仰け反るバースも意地で爪を振り下ろしてきた!

 

「ガハッ!!?なんと・・・だが、融合召喚したアマゾネス女帝(エンプレス)が相手の戦闘で破壊されたことでデッキからアマゾネス女王(クイーン)を特殊召喚!

 さらに永続トラップ!アマゾネスの意地!!蘇れ!アマゾネス女帝王(カイゼリン)!!そしてアマゾネスペット仔虎(ベビータイガー)!」

 LP4300→4200

 

アマゾネス女王(クイーン)「フンッ!」

       DEF1800

 

アマゾネス女帝王(カイゼリン)「はぁ、はぁ、はぁ・・・」

        ATK3200

 

アマゾネスペット仔虎(ベビータイガー)「にゃ?にゅあうぅぅぅ!?」

            DEF500

 

 青い髪の密林の女王が鼻を鳴らし、女帝王(カイゼリン)が疲れてきたのか息を荒くして現れ、仔虎(ベビータイガー)が泣く

 またぞろぞろ出てきたな。予想通りだ!

 

「オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴンでアマゾネス女帝王(カイゼリン)に攻撃する!」

 LP1675→1575

 

「なにっ!!?」

 

 氷結の竜がアマゾネス女帝王に襲い掛かるが、彼女は意地で剣を振るいアブソリュート・ドラゴンを蹴散らす。

 アブソリュート・ドラゴンの氷の結晶が散らばりその間に電気がバチバチと音を鳴らすが俺とバースはその中を駆け、俺は奴に周りの冷気を巻き込むようにスクリューパンチを叩き込む

 

『ガアッアァアァぁぁ!?くっ!!?」

 LP4200→4100→4000

 

「なるほど・・・こういう感じだな!

 オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴンの効果発動!

 エクシーズ召喚されたこいつが墓地へ送られたとき、エクストラデッキからアブソリュート・ドラゴン以外のオッドアイズモンスターを特殊召喚する!

 来い!オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン!!」

 LP1575→1175→1075→975

 

オッドアイズV「グオオオォォォォォ!!」

       ATK2500

 

 アマゾネス女王(クイーン)は自身以外のアマゾネスに戦闘耐性を持たせるモンスター

 アマゾネス女帝王(カイゼリン)とでまた相互互助する組み合わせだがこいつの効果はアマゾネス女帝王(カイゼリン)に守る術は無い

 

「ボルテックス・ドラゴンの効果発動!

 こいつが特殊召喚されたとき、相手フィールドの攻撃表示モンスター1体を手札に戻す。

 折角戻ってきたところ悪いが、アマゾネス女帝王(カイゼリン)にはおかえり願おう。

 さらにアマゾネス女王(クイーン)を攻撃だ!」

 

 機械的な緑の装甲を身に纏った異虹彩の竜が、雷を纏って密林の守護者を吹き飛ばし、返す刀でその尻尾がアマゾネス女王(クイーン)を叩き潰す。

 そして俺は頭に何度か拳を叩き込んできたせいか、グロッキー状態のバースの動きを完全に止めるために足に雷を纏わせて奴の顎に回し蹴りをする。

 

「はっ!!」

 LP975→875→775

 

『ギャアアアァァァァアアアア!!?』

 LP4000→3900→3800

 

 奴はアマゾネスペット(タイガー)の精霊、なら戦士族のアマゾネスより強い影響を与えることができるのは・・・

 

ペット仔虎(ベビータイガー)「みゅ、みゅうぅぅぅ・・・」――ガクガクガク

 

「オッドアイズ、力を貸せ!」

 

オッドアイズ・レイジング「ォォォォオオオオオッ!!」

 

 オッドアイズは応え、俺は呼吸を整えて構える。

 

「はあぁぁぁ・・・・・っ!!

 バトル!オッドアイズ・レイジング・ドラゴンでアマゾネスペット仔虎を攻撃!!

 『激情のストライク・インフェルノオオオォォォォォオオ!!』」

 

 俺の幻影がレイジング・ドラゴンの炎を背に受けてバースに向かって跳ぶ

 フィールドに残っていた雷、氷の力も巻き込んだ槍のような乾坤一擲の蹴撃

 

「でああああぁぁぁぁぁぁぁああああああああっ!!!!」

 LP775→675→575

 

ガアアアアァァァアアアアアアア(ピギアアァァァァァ!!)あああぁぁぁぁぁぁぁ・・・・――

 LP3800→3700→3600

 

「バアァァスッ!!?」

 

 バースの声に重なり気味の悪い悲鳴が聞こえたような気もするが、それよりも今の彼女のさっきまで在った顔の虎のような模様が消えていることから、どうなったかはわかるだろう。俺も倒れそうだが

 

「ぐっ、うぅ・・・はぁはぁ・・・やった、か・・・・」

 

「遊矢っ!大丈夫かっ!?」

 

「あぁ、だが俺にできるのはここまでだ。後は任せたぜ?ユート。

 俺はカードを2枚伏せ、ターンエンドだ。」


「バース・・・」

 

 いつも寄り添ってくれたお前の気配がない。還ってしまったのだな・・・

 

「・・・私のターン、ドロー

 私は墓地のトラップカード、ブレイクスルー・スキルっ!

 このカードは相手フィールド上のモンスター1体の効果を無効にする!

 ボルテックス・ドラゴンの効果は無効だ!」

 

「ちっ、無効効果は使わせてくれないか・・・」

 

 いますぐにでもグレースを労わりたい、駆け寄りたい気持ちが胸に溢れる。

 

 だが同時にうらやましくも思うぞ、バース。

 お前を還すという強き思いと覚悟を込めた必殺の一撃

 

 あぁ・・・私も味わいたいぞっ!!

 

「フィールドに残っているアマゾネスの意地を手札に戻し、さぁ!我が友の遺志を継ぎ現れよ!アマゾネス霊術師(シャーマン)!アマゾネスペット仔虎(ベビータイガー)!」

 

 アマゾネス霊術師(シャーマン)     DEF1800

 アマゾネスペット仔虎(ベビータイガー) DEF500

 

「アマゾネス霊術師(シャーマン)の効果で融合を手札へ!

 アマゾネス王女(プリンセス)を召喚し、アマゾネスの急襲を手札に加える!

 融合を発動!アマゾネス王女(プリンセス)をアマゾネス女王(クイーン)として、アマゾネス霊術師(シャーマン)と融合!

 融合召喚!来たれ!アマゾネス女帝(エンプレス)!!」

 

アマゾネス女帝(エンプレス)「はっ!!」

       ATK2800

 

「アマゾネスの戦士長を特殊召喚する!

 その効果により、デッキから最後の融合をセットする。

 墓地のアマゾネスの秘術を除外し、セットしていた融合を発動する!

 フィールドのアマゾネスペット仔虎(ベビータイガー)、エクストラデッキのアマゾネス女帝を融合!

 君臨せよ!!アマゾネス女帝王(カイゼリン)!!」

 

アマゾネス女帝王(カイゼリン)「ふはははははっ!ふんっ!!」

        ATK3200

 

 奴らのライフは風前の灯

 だが、頑強な僕で固められたフィールド、ならばっ!!

 

「さぁ!お前たちに引導を渡す戦士を呼ぼう!来い!アマゾネスの剣士!!」

 

アマゾネスの剣士「はぁっ!!はああぁぁぁぁぁ!はっ!!!」

        ATK1500

 

 赤い髪に長剣を構えるアマゾネスの古株、私が最も信頼する戦士だ。

 その存在は、もちろん知っているよな?

 

「やっぱり出てきたか!アマゾネスの剣士!!

 うぅぅ・・・・勿体ないが仕方ない・・・その特殊召喚に対し、トラップカード発動!激流葬!!

 フィールド上の全てのモンスターを破壊する!

 涅槃の超魔導剣士(ニルヴァーナ・ハイ・パラディン)とレイジング・ドラゴンはペンデュラムゾーンへ!」

 

 怒涛の水流がドラゴンたちを押し流す。我らは女帝(エンプレス)女帝王(カイゼリン)の効果で破壊などされないが

 自らの手で行われた蛮行、だがそれは最善

 

「ふんっ!折角のモンスターもいなくなってしまえば、私とのデートもできないではないか。やはり連れない奴だなぁ。」

 

「つれないっていうならこっちだって、疲れてるんだ。

 手心はないのかねぇ~?って、するわけないよな、アマゾネス?」

 

 辛くともおどけ、負けそうでも気丈に振舞う。それでも私とのデュエルを楽しんでくれている・・・

 私がアマゾネスなら、お前は道化じゃないか。

 

「ははははっ!確かにな!!

 ならば散り様で私を興じさせよ!道化!!アマゾネスの剣士で直接攻撃!

 受けよ!!首狩りの剣!!」

 

「生憎、後を任せるって約束したんでねっ!!

 永続トラップ発動!EM(エンタメイト)ピンチヘルパー!

 1ターンに1度、相手のダイレクトアタックを無効にし、デッキからEM(エンタメイト)モンスターを特殊召喚する。来いEM(エンタメイト)バリアバルーンバク!」

 

 出てきたのは紫の獣のような形をした風船

 

「ははははっ!そんなもので防げると思うな!アマゾネス女帝(エンプレス)の貫通効果を忘れたか!

 アマゾネス女帝王(カイゼリン)で攻撃だ!もちろん私もな!」

 LP3600→3500

 

「あぁもう一緒にダンスを踊る代金はないんでね!

 モンスター同士の戦闘時、EM(エンタメイト)ピンチヘルパーの第二の効果が使える。

 その攻撃宣言時にこのカードを墓地へ送ることで、ダメージを無効にする。

 さらに墓地のダメージ・ダイエットを除外し効果発動!

 このターン俺への効果ダメージを半分にする!ぐっ!!」

 LP575→525

 

「だがこのアマゾネス女帝王(カイゼリン)は2回攻撃の権利を有している!

 追撃しろ!アマゾネス女帝王(カイゼリン)!!」

 

「相手のダイレクトアタック宣言時、手札のEM(エンタメイト)クリボーダーの効果発動!

 こいつを特殊召喚し、強制的にバトルさせる!

 その戦闘による俺へのダメージは回復になる。」

 

 クリボーダー「クリクリッ!」

       DEF200

 

 横じまの帽子を被った毛玉がアマゾネス女帝王(カイゼリン)の剣を阻む

 守備表示での特殊召喚であるが、アマゾネス女帝(エンプレス)の効果で・・・

 

「ふぅ~さて、ライフは十分だ。お付き合い願えるかな?Lady?」

 LP525→3525

 

「アハ♡もちろんだともっ!!」

 LP3500→3400

 

 私たちはゆっくりと近づく

 いくらライフを回復したとはいえ、疲労も痛みも抜けたわけではないだろう。

 それでも彼は真っすぐにこちらへ向かって来る。

 

「ハァッ!!」      「デュァ!!」

LP3400→3300   LP3425→3375

 

 拳と拳がぶつかり合うも彼は微動だにしない。

 

「アマゾネス女帝(エンプレス)で攻撃っ!」

 

「手札のEM(エンタメイト)ユニを捨てることでバリアバルーンバクを墓地から特殊召喚する!

 墓地に送ったユニの効果!

 ドクロバット・ジョーカーとともに除外してこのターン俺が受ける戦闘ダメージを1度だけ0にする!」

 

 バリアバルーンバク DEF2000

 

『うふふ、それでも私の思いを受け止めてくれるのだなっ!』

 LP3300→3200

 

「あぁ、お前の餓えは俺が満たしてやるっ!

 だから・・・しっかり相棒の覚悟を受け取りなっ!!」

 LP3375→3275→3225

 

「ぐっ!!?」

 LP3200→3100

 

 拮抗していた拳がずれ、私の腕を滑るように彼の拳が私に突き刺さる。

 あぁ・・・こんなに楽しいデュエルは久しぶりだ(初めてだ)!!


「モンスターが戦闘で破壊されたことにより、手札からEM(エンタメイト)バロックリボーを特殊召喚」

 

バロックリボー「クリリー」

       DEF3000

 

「ははは!このアマゾネスの戦士長の攻撃は・・・・・・

 うむ、カードを2枚伏せてターンエンドだ。」

 

 昔の音楽家のような恰好をした毛玉のようなモンスターがアマゾネスに立ちふさがる。

 普段の女ならそれでも構わずに攻撃しただろう。

 アマゾネスの秘湯もあるのだ。アマゾネスの誇りに掛けて、相手のライフを少しでも削っただろう。

 だが、女は男の作り上げた勝利の舞台に乗ることにした。

 

「タニア、お前・・・」

 

「お前は私の思いを受け止めてくれた。

 情けもなく、容赦もなく、真っすぐにデュエルをしてくれた。

 なのに・・・女が男の思いを受け止められなくてどうするのよ!」

 

 女の啖呵に、男は苦笑する。

 

「ふっ、やっぱりイイ女だよ。アンタ。

 っていう訳でユート、彼女がいる身で悪いが彼女と一曲踊ってくれるか?」

 

「ゆ、遊矢!?」

 

「ははははは!!それならば私がエスコートの手ほどきをしてやろう!

 案ずることはない。私たちは何時だってお前たちと共にある。」

 

 女は少年に優しく諭すように言う。

 

(共にある・・・)

 

 少年は目を閉じる。すると自身の胸の内から竜の叫びが聞こえてくる。

 

――ギュオアアァァァアァァァァァ・・・・

 

 どこか物悲しく、弱弱しい嘆きの声はいつも頼りにしていた漆黒の竜のモノとは思えなくて

 

(ダーク・リベリオン・・・俺とずっと共にいてくれた一番最初の友達

 俺は、お前が、お前たちが何なのか知らない。

 だけど・・・もう俺は誰かを恨んだり、誰かから恨まれたりはしたくない!)

 

――グウウゥゥ・・・・

 

(俺は!俺は誰もがデュエルで笑顔になる世界にしたい!!

 呪い呪われる世界なんて断ち切りたい!絶望に反逆する!それが俺のかっとビングなんだ!!)

 

 心配するような竜の唸りに応えるように少年は己の思いを吐露する

 

(だから力を貸してくれ。ダーク・リベリオン。)

 

 何時しか少年は竜の前に立っていた。

 竜は己を見つめる少年の真っすぐな瞳を見て、優しげに目を細める。

 

――ギャオオオオオォォォォォォォォォォ!!

 

 力強く翼を広げる漆黒の竜の翼にはステンドグラスのような鮮やかな光が宿り、少年の背後の暗闇を、暗闇に立つ漆黒の竜によく似た竜のさらに背後の雷雲を照らした。

――

――――

――――――

――――――――

――――――――――

「っ!!俺のターン!ドロオオォォォォォ!!」

 

 目を開けた少年は飛び立つようにカードを引く

 もうそこに痛みに怖がっていた、傷つけることに怖がっていた弱い子供はいない。

 希望にあふれた世界を目指すために冒険を続ける勇者がそこにいた。

 

「俺は墓地のフラジャイルアーマーを除外して手札のサイレントブーツを捨てることでさらに1枚ドロー!

 よし!俺はフィールドにセッティングされたペンデュラムスケールでペンデュラム召喚!

 揺れろ魂のペンデュラム!天空に描け、光のアーク!ペンデュラム召喚!!

 来い!漆黒の未来を切り裂く勇者の剣!!ダーク・アンセリオン・ドラゴン!!」

 

ダーク・アンセリオン「ォォォォオオオオオオオオッ!!」

         ATK3000

 

「んふふふふ、だがただ攻撃力が高いだけでは我らアマゾネスを超えられないぞ!!

 永続トラップ、アマゾネスの急襲!さらにチェーン発動!アマゾネスの意地!

 蘇れ!!アマゾネス女王(クイーン)!」

 

アマゾネス女王(クイーン)「はっ!!」

       ATK2400

 

「アマゾネス女王(クイーン)は他のアマゾネスを戦闘破壊から守る!

 さらにアマゾネスの急襲の効果で我らと戦った貴様のモンスターはダメージ計算後除外される。」

 

 アマゾネスの王族による三重の守り、全カード破壊不可、攻撃モンスター除外と言う布陣でタニアは迎え撃つが、ユートのかっとビングは止まらない。

 

「なら俺はマジックカード、おろかな副葬を発動!

 デッキからトラップカード、王宮の鉄壁を墓地へ送る。

 さらにサイレントブーツを除外して、デッキから幻影霧剣を手札へ

 

 さらにマジックカード、ブーギートラップを発動!

 手札を2枚捨て墓地のトラップカード1枚をセットする。

 この効果でセットしたカードはそのターンで発動できる!発動!王宮の鉄壁!

 このカードがある限り、お互いにカードを除外することはできない!」

 

「いいね!いい感じだ!!もっと魅せろ!お前の覚悟を!!」

 

「あぁ!!見せてやる!俺の覚悟っ!!俺のかっとビング!!

 マジックカード、エクシーズ・シフト!!

 自分フィールドのエクシーズモンスター1体をリリースし、そのモンスターと同じ種族、属性、ランクでカード名が異なるエクシーズモンスターをエクストラデッキから特殊召喚し、このカードをオーバーレイユニットにする!

 俺はランク7のダーク・アンセリオン・ドラゴンをリリース!!」

 

――ォォォォォオオオオ!!

 

 ダーク・アンセリオンが闇に還り、新たな竜の咆哮が稲妻と共に鳴り響く

 その誕生に祝福を、その背負いし運命に希望を

 二人はそのモンスターのために祝詞を上げる。

 

「遠き世界に生まれし2つの魂が重なりしとき!!」

 

「語り継がれるべき奇跡の力が二色の眼に宿る!」

 

「「黒き竜よ、その逆鱗を震わせ、呪縛を断ち切る刃となれ!!」」

 

「来い!ランク7!」

 

 八つの剣で形作られた翼、体中から突き出した何本もの刃

 その姿はダーク・リベリオンとオッドアイズの特徴を併せ持ちつつも全く異なる黒き覇王

 

「覇王黒竜!」「オッドアイズ」「「リベリオン・ドラゴン!!」」

 

オッドアイズ・リベリオン「ギャオオォォォォォォオオオオオォォォォォオオ!!

            ATK3000

 

「おぉ!!凄まじい力だ!

 だが、その竜の本当の力はその状態では引き出せまい。」

 

「いや!俺は、俺の望む世界を手に入れる!その為なら限界だって何度も超えて見せる!!

 行くぞ!オッドアイズ・リベリオン!」

 

 オッドアイズ・リベリオンの翼の剣から光の刃が伸びる。

 空に輝く星の軌跡のように、暗闇の先の未来を照らすように、雷を纏いながら黒き竜が限界を超える。

 

「エクシーズチェンジ・・・オーバーロード!!

 

オッドアイズ・リベリオン―OL「ギャオオオオォォォオオオオオオオォォォ!!」

              ATK3000

 

「ランク7のモンスターを素材として呼び出したオーバーロードは1度のバトルフェイズ中に3回攻撃できる!」

 

「ははははっ!!見事だ!

 だが、私にはアマゾネスの秘湯がある。

 三度、アマゾネスの戦士長を攻撃しても私のライフは残るぞ!!」

 

 舞台にピリオドを打つ勇者の剣の輝きに女は気高く吼える。

 

「いや、ここで終わらせる!

 バトル!オッドアイズ・リベリオン・ドラゴンでアマゾネスの戦士長に攻撃!!」

 

 オッドアイズ・リベリオンはその大顎に雷を纏わせてアマゾネスの戦士長に突撃

 彼女を護るために女帝王(カイゼリン)女帝(エンプレス)女王(クイーン)が力を合わせてその進撃を阻止するが刃と大顎がぶつかり合った時、凄まじい衝撃が生まれタニアは自身を含め吹っ飛ばされる。

 

「うわああぁぁぁぁ!!がっ!!

 アマゾネスの秘湯の効果!受けたダメージ分、ライフを回復する!

 そらそらっ!どうしたぁっ!!お前の覚悟はそんなものかっ!!行くよ!!」

 LP3100→2000→3100→3000

 

 タニアの幻影がユートに拳を振るう。

 一度は恐怖を感じた暴力が迫ってくるが、ユートは動かない。

 だが恐怖で震えているわけでもなければ、諦めているわけでもない。ユートはもう一度その真っすぐな拳を受け入れた。

 

「・・・なるほど、その真っすぐさ、力強さ、自由さ、瑠璃に似ているな。」

 LP3225→3125

 

『ふっ、違う女の名を口に出すとは、男としてなっていないな。』

 

「あぁ俺は未熟だ。だから、みんなと共に戦う!!

 涅槃の超魔導剣士(ニルヴァーナ・ハイ・パラディン)のペンデュラム効果!

 自分のペンデュラムモンスターが攻撃した、ダメージステップ終了時、相手フィールド上の全モンスターの攻撃力をターン終了時まで、攻撃モンスターの攻撃力分ダウンする!」

 

 アマゾネス女王(クイーン)    ATK2400→0

 アマゾネス女帝(エンプレス)   ATK2800→0

 アマゾネス女帝王(カイゼリン)   ATK3200→200

 アマゾネスの戦士長  ATK1900→0

 アマゾネスの剣士   ATK1500→0

 

 アマゾネスの王たちの刃は砕け散り、戦士長、剣士もひざを折る。

 もはや黒き稲妻の進撃を止められるものなどいない。

 

「これで最後だ!

 オッドアイズ・リベリオン!アマゾネス女帝王(カイゼリン)に攻撃!!

 反旗の逆鱗!ストライク・ディスオべイ!!」

 

オッドアイズ・リベリオン「オオオオオォォォォォォオオオォォォ!!」――バリバリバリッ!!

 

 迫る覇王黒竜に武器を失いつつも膝を折らなかったアマゾネス女帝王(カイゼリン)が拳で迎え撃つ

 そして激闘を繰り広げるモンスターたちの横で決闘者たちは静かに近づく

 

『あえてアマゾネス女帝王(カイゼリン)に攻撃せずともよかっただろう?』

 LP3000→200→100

 

「いや、貴女と君は俺にその思いをずっとぶつけてくれた。

 だから俺は見つけ出せたんだ。本当の戦いの意味を・・・だから伝えたかった。」

 LP3125→3025

 

 2人の幻影は自らの魂ともいえるモンスターたちと一つとなり、最後の一撃を繰り出す。

 

「ありがとう!」

 LP3025→2925

 

『っ!?ふふ,また出会えるとはな・・・――」

 LP100→0

 

 グレースは満足そうに目を閉じ倒れそうになるが、駆け寄ったユートが抱き留める。

 もう彼女の顔にはタニアであった証の痣はない。

 

「終わったか・・・」

 

「いや、まだだ。」

 

――ガンガンガンガンガンッ!!!ギャア!ギャ!!ギャギャアッ!!ギギギギッ!!

 

 グレースを背負った遊矢の言葉でユートは自分たちが置かれた状況を改めた。

 消滅しかけの死闘場の檻を激しく叩くバケモノ達、タニアたちを退けても自分たちが絶体絶命なことに変わりはなかったのだ。

 

「ミュートリアル・ビーストにデュエルロイドを取り込んだ奴はアームズか?

 それに加えてミストまで、揃い踏みだな。キッツ・・・」

 

「だが諦めるものか!!絶対にっ!!」

 

――ガンガンガンッバゴオオッ!!

 

 死闘場の檻が破壊され無数のミュートリアル達が流れ込んでくる。

 勇者は剣を構え、道化は炎を降ろしそれらに立ち向かう、その時!

 

――ガオオオオォォォォォォォォオオオオン!!!

 

 咆哮が響き渡る。

 

「「っ!!?」」

 

――バタッ、バタッ、ガラララ、ガシャンッ!!

 

 ミュートリアルモンスターたちがその異形の姿を正常に戻して転がる。

 ミストは元の瓦礫に、アームズはデュエルロイドのスクラップに、そしてビーストは取り込まれていたアカデミア生に

 

 あまりに唐突な事態に二人は目を丸くしていたが、しばらくしてこんな声が聞こえてきた

 

 

 

 

 

 

――良いデュエルをありがとう。

 

 

 

 

 

「・・・・・・ははっ、なぁ?イイ女だったろう?」

 

「ふっ・・・そうだな・・・」


 街のあちこちから、奇妙なものが発生している。

 赤黒い菱形の穴、それが何なのか僕には分からなかったし、遊矢は説明する暇もなく出て行ってしまった。

 

「で、本当に知らないの?」

 

「何度も言っているだろう。僕だって・・・」

 

「ぅん・・・」

 

 押し付けられた侵攻部隊長のエドに聞いてもこのありさま

 地下への入り口は塞がっているところが多くて、仕方なしに地上を歩いてハートタワーに向かっていると、あの穴がだんだん増えていった。

 それに

 

――ボトッ

 

 また穴から黒い塊が堕ちてきた。

 植物の種のようにも、一つ目の悪魔の首のようにも見える“ソレ”は瞬く間に発芽すると無数の触手を使って周りの瓦礫や残骸、切れた配線などを取り込み巨大な花のようになって

 

――gYああAAAァァァァァaaaa!!

 

 奇妙な産声を上げて徘徊し始める。

 ソリッドビジョンなんかじゃない本物のモンスター

 本能が危険を訴えてくる。恐怖が体を強張らせる。悍ましさに吐き気を覚える。

 

「ダメだ。これ以上進めない。」

 

「っ!?なぜだ、お前の仲間はあの先に居るんだろう!?」

 

「僕は君を逃がせって言われているからね。

 どう考えても、あの穴は僕が向かおうとしていた方向に多くなっている。

 っていうことは、あの化け物もいっぱいいる可能性があるってことだろう?」

 

 それにさっきから連絡も全くできなくなっているんだよね。

 だとしたら・・・もう、手遅れかもね。

 

「なら、行けるわけないじゃないか。」

 

「っ!!!・・・お前、榊 遊勝の弟子だと言っていたな・・・・・・

 臆病風に吹かれることが遊勝の教えか!?それが正しいことなのか!?」

 

「現実を見てよ。僕一人が行って何になるのさ。

 ここを離れること、それが今僕たちの正しい選択だよ。たとえそれが見捨てる結果になったとしてもね。」

 

「しかし!!」

 

「それにこの状況を招いたアカデミアの人間であるキミに正しさを説く資格なんてあるのかい?」

 

「っ・・・」

 

 尻すぼみになっていくエド。

 “正しさ”にこだわるのはHEROを使うものの矜持だからか。

 だがアカデミアの正しさは彼の正しさにならず、取り返しのつかないところまで来てしまった。

 

「まぁ僕も元アカデミアだし、戦争の引き金引いたのも僕だし、“正しいこと”なんて言う資格はないんだけどさ・・・」

 

「キミも・・・・・・なら、猶更だ。」

 

「ん?」

 

「キミも悔いているんだろう、アカデミアとしての所業を

 なら猶更だ。君は見捨てるなんて選択肢をするべきではない。きっと後悔する。」

 

 そういう彼の眼には決意の炎が宿っていた。

 今から一歩踏み出そうとする意志があった。

 

「あぁ、間違ったことをしたとも

 だけどそれが立ち止まっていい理由にはならないんだ。罪の重さに絶望している暇はないんだ!」

 

 そんな彼に当てられたのかな?

 キライな彼の言うことに逆らってみたくなったのもあるけど

 

「ふふ、ラスト3分までに間に合ったみたいだね!

 OK!だったら、間違ったもの同士、正しくない(・・・・・)ことしようじゃないか!!」




罪を背負った僕らは怪物の海を駆ける。
はじまりのまちからまおうじょうへ、一気に駆け抜ける。
正解(現実)を変える為に間違い(憧れ)を僕らは選んだ。
だって、まだ何が正しい(運命)なのか分からないんだからね。
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『舞い上がれHERO!!絶望の彼方へ』


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舞い上がれHERO!!絶望の彼方へ

納得いくものがなかなかできねぇ・・・となって一ヵ月
別々の視点での同時進行って難しいな。
資料がてらバイオハザード動画見て3D酔いしながら書いていたのも原因ですが

≪編集≫
次回の展開の為
4ターン目のダイヤモンドガイの効果で墓地に送るカードを終わりの始まりから魔法石の採掘へ

5ターン目にスキルドレインの発動を追加



「はぁ~・・・と、一息ついている場合じゃないな。」

 

 タニアとの戦いの後、タイラー姉妹を含めミュートリアル・ビーストとなっていたアカデミア生たちは酷い疲労状態で意識を取り戻す様子はなかった。

 仕方なしに彼ら彼女らをカード化することにしたが、ユートにはそのことでかなり渋い顔をされた、現状これが一番彼女らの安全を保障できると納得してもらうしかなかった。

 

「・・・そうだな。

 そういえば、さっき何かデュエル中にメールが来ていたな?」

 

「あぁ、権現坂からの緊急メール・・・カイトにやられたと思われるデュエルログだったよ・・・」

 

「っ!!?カイトがっ!!?」

 

 俺とユートをここに釘づけにしてカイトが今俺たちのアジトとなっているハートタワーを襲撃する。

 野呂の考えはそんなところだろう。

 

「権現坂のことだ、防衛戦で先陣を切ったのは間違いない。

 だがあれから、大分経ってしまったからな・・・事態は一刻を争う。」

 

「なら俺が!!俺がカイトを止める!!

 カイトに、仲間たちを傷つけさせるわけにはいかない!!」

 

 食い気味に俺にそう告げ、ユートは待っていた覇王黒竜でカイトのもとに向かおうとするが

 

「いや、お前は黒幕のもとに向かえ、カイトとは俺が決着をつける。」

 

「遊矢!?なぜ!?決着とか言っている場合じゃ!?」

 

「枝葉をいくら切り落としたって意味がないだろ?根元から絶たなくっちゃな。

 だからお前は黒幕、野呂の所に向かえ、どうせ基地から動いていないだろう。

 安心しろ、カイトは俺が絶対に止める。」

 

「遊矢・・・・・・わかった。カイトのこと頼むぞ!!」

 

オッドアイズ・リベリオン「オオォォォォォオオオオオオオ!!」

 

 ユートは雷光を纏う黒竜に乗って飛び去っていく。

 

「はぁ~嘘なんてつくもんじゃねぇな・・・」

 

 根本から絶つ?すでに飛ばされた種には意味のないことだろう。

 タニア達だって最初はミュートリアス達に仲間意識があるような発言していたが、後半はデュエル以外に興味が行っていなかった。

 パラサイト・フュージョナーが強い感情、欲望に対して弱いことが変わっていないのなら・・・

 

「カイトはアレン、復讐対象の全てを奪うつもりだ。」

 

 アカデミアなんて関係なく、記憶変換なんて関係なく

 家族を売った裏切り者の全てを消し去るのがカイトの目的。

 そして使っているカードからして取り付いている精霊は・・・

 

「いくぞ、オッドアイズ。」

 

オッドアイズ・レイジング「グルル・・・」

 

 カイトはもはや同情や説得では止まらない。

 憑いている精霊は狂うことが救いになるような世界に還さなければならない。

 今の奴らの全てを否定しなければならない。

 

「泥をかぶるのは道化の仕事ってね・・・」


 アカデミアの遠征母艦が存在する場所は着地した衝撃で大きなクレーターが形成され、一年を過ぎた今もそれは変わらない。

 いや、それは語弊がある。今そこには無数のナニカが墓標のように立っていた。

 

 そのナニカは一見すると枯れ朽ちた樹木のようであり、洞のような場所には蒼い宝玉を中心にした十字架のようなものが掲げられている。

 だが最も異様なのはそのナニカには瓦礫や鋼鉄、植物に動物、そして人間が巻き込まれ、混ぜこまれ、取り込まれていること

 

 ソレらの名は「変異体ミュートリア」

 

「正面突破だよ!!トラピーズ・マジシャン!!」

 

トラピーズ「キョキョキョキョオオオォォォ!!」

 

「プランも何もないのか!!君は!!」

 

 このような侵入者に対する警備兵である。

 

ミュートリアル・ビースト「「「「「「ギャアァアアァァアァ!!」」」」」」

 

ミュートリアル・ミスト「「「「「「キエェェェェェェェェエェ!!」」」」」」

 

ミュートリアル・アームズ「「「「「「ギ・・・ガガッ・・・・!!」」」」」」」

 

 侵入者を迎撃する為に配置されたバケモノどもの休眠体である。

 

「アレは僕たちに任せて!

 君は君のけじめを付けに行くんだ!!」

 

「わかっている!!」

 

 エド・フェニックスはトラピーズ・マジシャンから飛び降り、バケモノどもの中を突き進む。

 不思議なことにミュートリアル達はエドには目もくれず、トラピーズ・マジシャンとその主であるデニス・マックフィールドに向かう。

 

(やっぱり彼らはデュエルモンスターズではあるみたいだね。

 磁力の指輪で誘導されている。

 マジシャンズ・プロテクションとトラピーズ・マジシャンの効果でダメージもないし、まずは作戦成功かな?)

 

 無数のミュートリアスが攻撃を仕掛けるが天空の奇術師たちは華麗に躱していく

 ヒーローが自らから背負った使命を果たすまで


「隼・・・」

 

 苦しい、悔しい、情けねぇ

 

「くそ・・・くそ・・クソクソクソ、ックッソオオォォォォォォォオオオオオ!!」

 

「アレン・・・?」

 

「!!?サヤカ!?なんでまだ、お前!?」

 

「ア、アレンだって・・・」

 

「お、俺は・・・」

 

 権現坂ってやつも、隼も、やるべきことをやれ、護りたいものを護れって言っていやがったが・・・

 

「何がしたいんだよ・・俺は・・・」

 

 俺が飛び出したところで、カイトに勝てるわけがねぇ・・・

 サヤカもまだ逃げてねぇなら、俺はここに居るより、サヤカとオービタルを連れてとっとと逃げた方がいいはずだ。

 それなのになんで俺はここから動こうとしねぇ!!

 

「・・・・・・ねぇ、隼はどこに行ったの?」

 

「っ!?それは・・・」

 

「やっぱり、そうなんだね・・・ひっ、ひっぐ!」

 

 サヤカの目からぽたぽたと涙が流れる。

 

「わ゛、わ゛だ、じ、あ、謝れなかっだ・・・ひっぐ・・・

 瑠璃、助け、れなかっだ・・・ゆ゛ぅぎ、だぜながっだ・・・!!」

 

 サヤカは瑠璃がいなくなったあの晩、その現場を見たらしい。

 そのことは今のところ俺だけが知っている。

 隼たちが別の次元にすぐに行っちまったのもあるが、サヤカは隼にそのことが言い出せなかったことでずっと苦しんでいた。

 だがその苦しみは俺が止められることじゃねぇし・・・

 

「そうか・・・俺が今やんなきゃいけねぇことは・・・」

 

「え?」

 

「サヤカ、先に行っててくれ・・・」

 

「アレン?そんな!?いやだよ!!?アレンまでいなくなっちゃうの!?」

 

 ・・・なんで、俺はサヤカを泣かしてばっかなんだろうな。

 護るために仲間を裏切って、助けたいから犠牲にして、それで得られるのが惚れた女の涙かよ・・・馬鹿だな俺・・・

 

「アイツは俺を恨んでるから、謝って済む話じゃねぇんだけどな・・・

 でもなんとか頼んでみっから。」

 

 俺はオービタルの入ったデュエルディスクをサヤカに渡す。

 こいつだけは、カイトに殺させるわけにはいかねえから

 

「ア゛レ゛ン゛・・・!!」

 

「ごめんな・・・」


 母艦の中は異様なほど静かだった。

 外にあったミュートリアの休眠体もなく、電気もついている。

 人の気配が全くない以外は青年がここの主であった時と何も変わらない。

 だが今ここを支配しているのは、あらゆるものを飲み込み、混ぜ合わせ、進化する異次元の生き物なのだ。

 そのことを理解している彼は、指令室の自動ドアが開き

 

「遅い!!全く、またどこに行かれていたのですか!?エド総司令官!!」

 

 いつものように、副指令の小言を言われるとは思っていなかった。

 

「私の計算によれば、スートの存在により4年と11か月、それと13日と6時間6分6秒の遅れが出ていたのですよ!

 それも物資や人員のことを考えないで、での計算です!

 プロフェッサーのお叱り以前に、作戦の継続すら怪しい・・・

 それなのに本来、先頭に立って指揮を執るべき貴方が、何をしているのですか!!」

 

「野呂・・・」

 

「で・す・が!!ドクタードクトルから得られた人員で、41日と16時間48分でエクシーズ次元は我々の統治下にはいることでしょう!!

 あぁ、やはりお叱り覚悟で増員要請をしたのは英断でしたなぁ!この私の!!

 はははははははははははっ!!」

 

「野呂!!」

 

「?いきなり大声など出して、どうなさいましたカ?総シれi官Dぉノ?」

 

 ソレの言葉尻の『音』がおかしくなった。

 様々な動物の叫びを混ぜたような。砂を食んだような。歯車が擦れるような。不気味な音が混ざり合い、声のように聞こえている。

 

 それもそうだろう。

 右腕は鱗や毛がまばらに生えた樹木で、逆に左腕は金属片とコードが混ざり合った無機質なもの

 体はさらにそれらが混ざった異形であり、ごつごつと結晶体のようなものも生えている。

 もはや彼が彼であったことを示すものは、年の割には老けて見られる皴の目立つ顔だけである。

 ただそれも片目は嘴の様なものから覗く山羊の目玉の様な宝玉に取って代わられている。

 

「んっ、うんっ・・・発声器が・・・

 失礼、それで今更何用でここに?

 あぁ!貴方の失態続きや怠慢による遅れを私の功績で取り戻したことによる嫉妬ですかな?」

 

「いいや・・・僕は君を止めに来た。」

 

「・・・・・・それは、アカデミアを裏切るということですか?」

 

「あぁ、それが少しでも僕の犯した罪への償いになるというのなら。」

 

 青年はデュエルディスクを起動させる。

 これは彼がアカデミアへ反逆したことの証明。

 彼が自らの正義に従った結果。

 

 同じ穴の狢であったはずなのに、道を別ってしまった化け物は怒りに震える。

 

「今更、今更償いだと・・・?

 ふざけるのも大概にしなさい!!エド・フェニックスゥゥウウUUU!!

 いつも!いつもぉ!イツモオオォォオオ!!私の邪魔ばかりしおってえぇぇぇえええ!!!

 後悔などサセルヒマナンテアタエマセンヨオォォォOOO!!」

 

「ふん・・・後悔なんて、ずっとしているさ・・・」

 

≪デュエルシステム感知 デュエルシステム感知≫

 

 システム音が鳴り響き、エド・フェニックスと野呂 守だったものが立っていた場所がせり上がっていく

 もしものことを考えて設置されていた指令室への侵入者を外に排出する天空デュエル場

 ここがHERO足らんとする者と、戻れない化け物の決戦の場

 

『『決闘(デュエル)!!』』

 

「先攻は私の様ですね。まずは・・・」

 

 『野呂 守』と言う男は実戦としてのデュエルの経験が全くない。

 管理能力を買われての副指令と言う立場についていた男だ。

 ゆえに、支給品の古代の機械(アンティークギア)デッキも全くいじっていなかった。

 

 遠征部隊の総司令官という立場上、使うことはなくとも支給品のデッキ内容と動きはエドの頭の中に入っている

 大きなアドバンテージだと、この時、彼は思っていた。

 

「マジックカード、闇の誘惑を発動

 カードを2枚ドローし、その後手札から闇属性モンスター1体を除外します。

 ネクロフェイスを除外。」

 

「何ッ!?」

 

「ネクロフェイスの効果発動。

 このカードが除外された場合、お互いのデッキの上から5枚のカードを除外します。

 2枚目のネクロフェイスが除外されたことでさらに5枚取り除いてください。」

 

 ボロボロの人形の頭から肉の触手が伸びてカードを奪い去っていった。

 

「くっ・・・いきなり十枚も・・・」

 

「ふふふ、これだけでは終わりませんよ。

 除外された雷獣龍―サンダー・ドラゴン、雷電龍―サンダー・ドラゴンの効果発動。

 デッキからサンダー・ドラゴンカード、雷龍融合(サンダー・ドラゴン・フュージョン)を手札に加え、2体目の雷電龍―サンダー・ドラゴンを守備表示で特殊召喚。」

 

 雷電龍―サンダー・ドラゴン「グワアアァァァァ・・・・・」

              DEF1500

 

 通常そのモンスターは雷を纏う黒い龍である。

 だが、化け物は自らの肉体の一部を植物が枝を伸ばすようにして、コードと廃材、瓦礫が混ざり合った偽りの雷龍を作り上げる。

 

「さらに私は被検体ミュートリアST―46を召喚。」

 

 さらにその額に芽のようなものが盛り上がり、赤い目のような器官が開く

 

 ST―46 ATK500

 

「このモンスターの召喚に成功した場合、デッキからミュートリアと名の付くマジック、トラップカード1枚を手札に加える。

 フィールド魔法、ミュートリア進化研究所を手札に加え発動しますよ。」

 

 彼らの周りが無数の液体の入ったポッドが無数に並ぶ研究室へと変わる。

 そのポッドの一つには一つ目の悪魔のような、植物の種の様な、不気味な物体が浮いている。

 

 M―05  ATK0→500

 ST―46  ATK500→1000

 

「このカードの発動時、除外されているレベル4以下のミュートリアモンスターが特殊召喚されます。

 また、このカードがある限り私のミュートリアの攻撃力は除外されているミュートリアの種類×100ポイントアップします。

 そしてこの被検体ミュートリアM―05は召喚、特殊召喚された場合、デッキから新たなミュートリアを手札に加える。

 ミュートリアル・ミストを手札に加えます。

 

 ここでST―46の第二の効果

 このカードをリリースしさらにフィールド、手札からカードを除外することで、その除外したカードの種類に対応したミュートリアルを特殊召喚します!

 フィールドの雷電龍を除外し、来なさい!ミュートリアル・ビースト!!」

 

ミュートリアル・ビースト「GWAAおおぉぉぉおオオOO!!」

            ATK2400

 

 偽りの雷龍を取り込み野呂から切り離されたソレが象ったのは異変の最初に現れた様々な生物を混ぜ合わせた獣のような化け物、ミュートリアル・ビースト

 

「さらに私は手札のネメシス・コリドーの効果を発動

 除外されているモンスター、ネクロフェイスをデッキに戻すことでこのモンスターを特殊召喚します。」

 

 ネメシス・コリドー ATK1900

 

「さらにネメシス・コリドーの効果で除外されていたネメシスモンスター、ネメシス・フラッグを手札に加え、2体目のネクロフェイスをデッキに加え特殊召喚。」

 

 ネメシス・フラッグ ATK1100

 

 蒼い球体が2つ浮かび上がり、吹きすさぶ風と逆巻く炎を巻き込んで新たな異形が誕生する。

 人型でありながら腕が翼になった緑の鳥人と馬の下半身を持つ赤いケンタウロス

 だがその体は何処までも無機質な、かつ機械でもない謎の物質で形作られている。

 

「ネメシス・フラッグの効果でデッキのネメシス・キーストーンを手札へ

 ここでM―05の効果発動

 自身をリリースしてフラッグを除外し、2体目のミュートリアル・ビーストを特殊召喚!」

 

ミュートリアル・ビースト「GYAぁぁぁアアアアァァァァァ!!」

            ATK2400→2900

 

 ポッドの中に入っていたM―05がネメシスモンスターの核だと思われるものを取り込みその細胞を急速に増殖させ、2体目のビーストへと変貌しポットを壊しながら生れ落ちる。

 

「手札から雷族モンスターの効果が発動したターン、私のフィールドの雷族モンスター1体をリリースすることで、このモンスターをエクストラデッキから特殊召喚します。

 現れなさい!超雷龍―サンダー・ドラゴン!!

 

 さらに手札より、雷龍融合(サンダー・ドラゴン・フュージョン)を発動!

 フィールド、墓地及び除外されたモンスターをデッキに戻すことで雷族融合モンスターを融合召喚する!

 雷電龍2体と雷獣龍の3体のサンダー・ドラゴンを融合!

 現れ出でよ!雷神龍―サンダー・ドラゴン!!」

 

――ゴロッ、ゴロゴロッ!!ピッシャアァァァァァァァ!!

 

 研究室の外壁が雷で焼け崩れ、外で起こっている異常が目に入る。

 デニス・マックフィールドが相手にしていたミュートリアル達が彼を無視して重なり登り合っているのだ。

 

「何が起こっている!?」

 

「何とは?私は私のモンスターを喚んでいるだけですよ?」

 

 ミュートリアル達は、さっきの野呂のように自らの体を溶け合わせて変態していく

 ある集まりは雷電龍とは別の巨大な黒い龍へと、またある集まりは3つ又の首を持つ緑の龍へと変貌する。

 

雷神龍「「「・・・・・・ギギャオオオォォォォオオオオ!!」」」

   ATK3200

 

超雷龍「・・・ギエエエェェェェエエエエエ!!」

 

「人質のつもりか?」

 

「別にそんなつもりはありませんよ?カードを2枚伏せターンエンド。」

 

 除外を交えた最上級4体ものモンスターの召喚、そのモンスターの成り立ちからエドが手を出しにくいことを加味しての盤外戦術

 それ自体が野呂の実力と見合ってないものだが、彼の上官であったエドは目の前の存在は彼とは決定的に違う存在だと認識することがあった。

 

(小心者の野呂が、運任せのプレイスタイルでアドバンテージを取るものか!)

「僕のターン、ドロー!」

 

「ドローフェイズ終了時にトラップカード、竜嵐還帰を発動!

 除外されているモンスターを1体特殊召喚します。

 M―05を特殊召喚し、デッキから被検体ミュートリアGB―88を手札に加えます。

 あぁ、そう言えば言い忘れていましたが、超雷龍が存在する限り貴方はドロー以外でデッキからカードを手札に加えることは出来ませんよ?」

 

 M―05 DEF500

      ATK0→500

 

 ミュートリアル・ビースト ATK2900→2800

 ミュートリアル・ビースト ATK2900→2800

 

「くっ・・・なら僕は手札のD―HEROドローガイを捨てて、マジックカード、デステニー・ドローを発動!

 デッキから2枚のカードをドローする!」

 

「させませんよ!ミュートリアル・ビーストの効果!

 フィールドのM―05を除外してマジックカードの効果を無効にし、除外します!」

 

 ミュートリアル・ビースト ATK2800→2900

 ミュートリアル・ビースト ATK2800→2900

 

 ミュートリアル・ビーストが投げつけたM―05がデステニー・ドローのカードを貫く

 だがこれでこのカードを発動することができる!

 

「僕のターンに相手のエフェクトが発動されたターン、マジックカード、三戦の才を発動できる!

 このカードのエフェクトは3つあるが、僕は2枚ドローするエフェクトを発動する。」

 

「ぬぅぅ、ならば手札のGB―88の効果を発動!

 このカードはミュートリア進化研究所が存在する時、相手メインフェイズに特殊召喚できます。」

 

 GB―88 DEF500

       ATK500→1000

 

「このモンスターが相手ターンに特殊召喚されたとき、このカードをリリースし私の手札、フィールドのカード1枚を除外することで、墓地及び除外されているミュートリアルを特殊召喚する。

 手札のキーストーンを除外し、来なさい!ミュートリアル・アームズ!」

 

ミュートリアル・アームズ――ギギギッ!ガアアァァァァァァ!!

            ATK3000→3400

 

 ミュートリアル・ビースト ATK2900→2800

 ミュートリアル・ビースト ATK2900→2800

 

 デュエルロイドに植物のようなものが生えた歪な怪物がここまで這い上がってくる。

 元が元だけに生理的な嫌悪感が襲ってくるが、エドはそれを飲み込み、自身の思いを託すHERO達を呼び出す。

 

「僕はD―HEROドリルガイを召喚!」

 

ドリルガイ「ハッ!!」

     ATK1600

 

「ドリルガイのエフェクト発動

 ドリルガイの召喚に成功したとき、手札から新たなヒーローを呼ぶことができる!

 カモン!ダイヤモンドガイ!!」

 

ダイヤモンドガイ「フンッ!」

        ATK1400

 

 ダイヤモンドの装甲を身に纏ったヒーローが腕に鋭いドリルの付いたヒーローに並び立つ

 

「D-HEROの力を見るがいい!

 ダイヤモンドガイのエフェクト発動!

 1ターンに1度、デッキトップを確認しそれが通常マジックだった場合、セメタリーに送り、次のターン、そのエフェクトを発動できる!」

 

「ならば、ミュートリアル・アームズの効果を発動

 相手モンスターの効果が発動したとき、手札フィールドのカードを除外することで、フィールドのモンスター1体を除外する。

 手札のミュートリアル・フュージョンを除外し、ドリルガイを除外します。」

 

「ならば!手札より速攻マジック!ラピッド・トリガー!!

 フィールド上の融合素材モンスターを破壊し、融合モンスターを融合召喚する!!」

 

「サセマセンヨオオォォォ!!永続トラップ!サモン・リミッター!!

 お互いに1ターンに行える召喚、反転召喚、特殊召喚数がそれぞれ2回までになります!!

 ミュートリアカードが除外されたことで、我々の攻撃力がアップ!!」

 

 ミュートリアル・ビースト ATK2800→2900

 ミュートリアル・ビースト ATK2800→2900

 ミュートリアル・アームズ ATK3400→3500

 

「くうぅっ!!?ラピッド・トリガーは不発・・・

 逆処理により、ドリルガイは除外され、ダイヤモンドガイのエフェクトを解決。

 僕が引いたのは通常マジック、フュージョン・デステニー!

 これで次のターン、このカードのエフェクトが確定した。」

 

 すでに盤面が整えられている野呂と、展開途中で止められてしまったエド

 彼のヒーローたちは基本攻撃力が低いこともあり、この状況は致命的だ。 

 

(くっ、僕のターンの行動を阻害し、物量で押し切るつもりか!?)

「なら僕は、手札から速攻マジック、魔力の泉を発動する。

 このカードは相手フィールドに表側となっているマジック、トラップカードの数だけドローし、その後、僕のフィールドのマジック、トラップカードの数だけ手札を捨てる。

 君のフィールドには2枚、僕のフィールドには1枚

 よって僕は2枚のカードをドロー」

 

 よし、この手なら・・・

 

「その後、手札を1枚捨てる。

 カードを2枚伏せ、ターンエンドだ。」

 

「はははははっ!情けないですねぇ~?

 総司令ともあろうものが、私のようなものの一手で動けなくなるとは! 

 やはり貴方のようなものに総司令の立場はふさわしくなかったようだ・・・

 

 貴方のエンドフェイズに、このターン除外されたネメシス・キーストーンは手札に戻ってくる。

 そして私のターン、ドロー!!」

 

 1ターンに2度まで、逆に考えれば相手ターンにも2度まで召喚できるということ!

 

「スタンバイフェイズに前のターン墓地に送っていたドローガイのエフェクトが発動する!

 墓地からこのカードを特殊召喚!」

 

ドローガイ「ハッ!」

     ATK1600

 

「さらにHEROのエフェクトでドローガイが特殊召喚されたことで、ドローガイの新たなエフェクトが発動する!

 お互いのプレイヤーはデッキから1枚ドローする。」

 

 白きガンマンがデッキにエネルギー弾を撃ち込む

 相手の手札が増えることはこの状況ではかなりリスキーな行為だが、エドは目の前の存在が「野呂 守」と言う男であることに賭けた。

 

「愚かな!!ミュートリアル・アームズの効果発動!!

 手札のキーストーンを除外し、ドローガイを除外する!!」

 

「ふっ、リバースカードオープン!!トラップカード!D―フュージョン!!

 さらにチェーン発動!D―タクティクス!!

 まずはD―フュージョンの効果で自分フィールド上のD―HEROを融合する!

 逆転の英雄よ、剛き心を持って、暗黒の世界を駆け抜けろ!融合召喚!!

 カモン!マイフェイバリットヒーロー!D―HEROディストピアガイ!!」

 

ディストピアガイ「ツァ!!」

        DEF2400

 

 『D』が描かれたマスクを付けた闇の世界のヒーローがこの絶望的な状況を打開するために参上する。

 

「対象がいなくなったため、ミュートリアル・アームズのエフェクトは不発!

 そして、ディストピアガイが特殊召喚されたことでエフェクト発動!

 墓地のレベル4以下のD―HEROディバインガイの攻撃力1600分のダメージを相手に与える!スクイズ・パーム!!」

 

 ディストピアガイの力でセメタリーに眠るディバインガイのスピリットが野呂に取り付く化け物を巨大な刃で切りつける。

 

ディバインガイ「オオオォォォォォ!!」ザシュ!!

 

――ブシャアアアァァァァァァッァ!!


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 

 

 その軌跡に無数の赤黒いひし形をまき散らしながら、菖蒲色と血のような赤い瞳をした白き狩人はバケモノの軍勢を率いて進む。

 裏切り者に思い知らせてやるのだ。自分の受けた絶望を

 刻んでやるのだ、この痛みを

 

「カイトォォォォォォオオオオオオ!!!」

 

「アレン・・・」

 

「すまねぇ!!!」

 

 獲物(裏切り者)は開口一番頭を下げてきた。

 

「・・・・・・・今更何だ。」

 

「あぁ、今更だ、俺はお前に許されないことをした。

 俺を許してくれとは言わねぇ・・・だが、サヤカを、レジスタンスの奴らに手を出さないでくれ。」

 

「・・・・・・」

 

 アレンは地面に自分の頭を血が出るほど打ち付け土下座する。

 罪と向き合う裏切り者の覚悟、だが失意と怒りの亡霊足る狩人にその言葉は届かない。

 

「ハルト・・・父さん、クリス、クリスの家族・・・

 俺の大事なものは全てアカデミアに奪われた・・・だが、その原因はお前だった!!」

 

「っ!!」

 

「俺はお前にこの怒りをぶつけなければ、気が済まない・・・・

 お前に俺が受けた苦痛を与えなくては、気が済まない!

 俺が受けた絶望を!お前にも絶対に味合わせてやる!!この裏切り者がアァァァアアアアアア!!」

 

 狩人の叫びに呼応して空間が罅割れていく。

 デュエルディスクが広がり、敵意の全てが裏切り者へと向けられる。

 彼とのデュエルなどする資格などないと思いつつも、この獣を止めるために裏切り者は剣を抜く

 

『『決闘(デュエル)!!』』


 ディバインガイの刃が奴の体を切り裂いた瞬間、ヘドロのような色をした液体が噴出し野呂が絶叫した。

 

「ギャアアアアアァァァァァァァァァ!!?オ、オノ、れ・・・!!」

 LP4000→2400

 

 ディバインガイの攻撃で傷が!?

 爆発の余波や、周りの建物の倒壊はあれどもリアルソリッドビジョンによるプレイヤーへの殺傷力はほとんどなかったのに!?

 

「・・・D―タクティクスのエフェクト、僕のフィールドにレベル8以上のD―HEROが特殊召喚されたことにより、相手の手札、フィールド、墓地のカード1枚を除外する。

 消え失せろ!雷神龍―サンダー・ドラゴン!!」

 

 偽りの神龍がほどけてミュートリアルモンスターに戻っていく

 やはり、デュエルモンスターズである以上はデュエルが及ぼす影響を避けられないということか。

 もちろん奴も・・・

 

「そしてこのスタンバイフェイズ、D―タクティクスのさらなるエフェクトが発動する!

 僕のHEROの攻撃力を400ポイント上昇!

 さらにディストピアガイの攻撃力が変化していることで、エフェクトが発動!

 ミュートリアル・アームズを破壊!!ノーブル・ジャスティス!!」

 

ディストピアガイ「ハアアァァァ!!」

        DEF2400

        ATK2800→3200→2800

 

 ディストピアガイが作り出した重力球にミュートリアル・アームズが取り込まれ、押しつぶされて消え失せる。

 まずは2体・・・

 

「あAAaa・・・ミュートリル・アームズが相手によって破壊されたことで、除外されているミュートリアマジックカードを手札に加えLu・・・

 移行・・・メインフェイズZzzz・・・・・・発動、フュージョン・ミュートリアス

 フィールド、手札、素材除外・・・ミュートリア融合モンスター、融合召喚

 相手、効果、自分、ターン、発動、した、ターン、デッキ、墓地、から、融合素材、ジョガイ・・・・

 デッキ、ミュートリアル・ミスト、墓地、ミュートリアル・アームズ、除外!

 内なる叫びを聞け!内なる怒りを燃やせ!全てを飲み込め!!融合召喚NNNNnnnんン!!」

 

 野呂の傷口から多数の触手が生え、散らばっていたミュートリアル・アームズの残骸を取り込んでいき、彼の体は急速に肥大化、背中からは植物の蔓の様な触手が何本も生える。その先端には刃やペンチの様な嘴が付いている。

 獣でも、機械でも、植物でもないその怪物の名は

 

「シンセシス・ミュートリアス!!」

 ――「「「「「「ギャアアァァァああァaaa!!!」」」」」

   ATK2500→3100

 

ミュートリアル・ビースト「ギャ!GYA!!」

           ATK2900→3000

 

ミュートリアル・ビースト「げGeゲ」

            ATK2900→3000

 

「の、野呂・・・・・・」

 

 もはやこの化け物が彼であった証拠は口なのか目なのかわからないところから覗く、彼の右目周りだけ

 いや、魚の鰭のようなものに置かれたカードも、僕が彼とデュエルをしている証明になるだろう。だが、もはやそれだけだ

 

「「「「「「シンセシス・ミュートリアスの効果Aaa!!

    融合召喚に成功したとき、フィールド上のカード1枚を破壊するLuuu!!

    D―タクティクスを破壊ぃiii!!」」」」」

 

 シンセシス・ミュートリアスの触手がD―タクティクスのカードを貫く

 このカードは破壊されたときにデッキからD―HEROを手札に加えることができるが、超雷龍―サンダー・ドラゴンの効果でそれはできない。

 

「墓地の雷龍融合の効果発動ooo!!

 このカードを除外しiiii、デッキから雷族モンスター1体を手札に加えるLlUlluu!!

 雷電龍―サンダー・ドラゴンを手札へeee

 このカードの効果を発動し、デッキから2体目の雷電龍を手札へEEeeee

 カードを1枚セットOOOoooooo!

 エンドフェイズ、キーストーンを手札へ戻し、ターン終了ですSSUuuuu!!」

 

 人としての声なのか、獣としての叫びなのか、機械の擦れる音なのか、不快な音が重なって意味ある言語として聞こえてくる。

 プレイヤーがモンスターとしてフィールドに現れた。

 

 それは僕らの常識に当てはめれば、あまりにも異常だ。

 だがこれはチャンスかもしれない・・・HEROたちよ、僕に力を!

 

「僕のターン、ドロー!!

 ・・・よし!僕は速攻マジック、月の書を発動!

 このカードのエフェクトにより、超雷龍―サンダー・ドラゴンを裏側守備表示にする!」

 

「無駄なことをWWOOOOOOOOO!!

 ミュートリア・ビーストの効果!手札のキーストーンを除外し、その効果を無効Ooooo!!

 さらに私はこのターン、マジックカードの効果を受けなくしますUuuuuu!」

 

 あのモンスターは耐性効果を持っているのか!?

 だが、本命はこっちだ!

 

「させるか!チェーンしてフィールドの月の書を墓地に送り、速攻マジック、禁じられた一滴を発動!

 エフェクトを発動させたミュートリアル・ビーストの攻撃力を半減させ、エフェクトをターン終了まで無効にする!」

 

 ミュートリアル・ビースト ATK3000→1500

 

 リバースになったことで、超雷龍を構成していたミュートリアス達が崩壊していく

 彼への負担は増えてしまうが、仕方あるまい。

 

「ぐっ!?ウウゥゥゥゥuuuuu!!

 だが、手札は」

 

「運命を司るDの力、舐めるんじゃない!

 セメタリーのディバインガイのエフェクトを発動!

 手札が0枚の時、セメタリーからこのカードとD―HEROダイヤモンドガイを除外し、デッキから2枚ドロー!

 

 そしてここで、ダイヤモンドガイのエフェクトでセメタリーに送ったフュージョン・デステニーのエフェクトを発動する。

 手札、デッキからD―HEROを含む融合素材をセメタリーへ送り、融合召喚を行う!

 僕はデッキからダイヤモンドガイ、ダイナマイトガイ、ドレッドガイの3体を融合!!

 強き心!弾けろ力!目覚めろ運命の支配者!!融合召喚!!

 カモン!D―HERO ドミネイトガイ!!」

 

ドミネイトガイ「フンッ!ハッ!!」

       ATK2900

 

 現れるのは見上げるほど巨大な漆黒の騎士

 このターンで決めることもできるが・・・!

 

「ドミネイトガイのエフェクト発動!

 1ターンに1度、自分か相手のデッキの上から5枚のカードを確認し好きな順番でデッキの上に戻す!

 野呂、お前の運命は僕が決めよう。」

 

 っ!!パラサイト・フュージョナー、アカデミアが生み出した寄生モンスター・・・

 だが、このカードが一番使いどころがなさそうだ・・・

 

「この順番で戻してもらう。

 ディストピアガイを攻撃表示に変更。

 さらにマジックカード、ドクターDを発動。

 墓地のドレッドガイを除外して、ダイヤモンドガイを特殊召喚!」

 

 ディストピアガイ DEF2400→ATK2800

 

ダイヤモンドガイ「ふん!」

        ATK1400

 

「ダイヤモンドガイのエフェクト!

 引いたカードは魔法石の採掘、これで次のターン、このカードのエフェクトが確定!

 さらにセメタリーのダイナマイトガイのエフェクト!

 このカードを除外して、ディストピアガイの攻撃力を1000ポイントアップ!

 さらにセメタリーのドクターDを除外して、ダイヤモンドガイの攻撃力をディストピアガイと同じにする!」

 

 ディストピアガイ ATK2800→3800

 ダイヤモンドガイ ATK1400→3800

 

「ぬアァAAaaa!!?」

 

「野呂!僕はお前を止めて見せる!!

 ドミネイトガイで攻撃力の下がったミュートリアル・ビーストにアタック!

 ドミネイト・バスターブレード!!」

 

「ウワアアアァァァァァaaaaa!!?

 永続トラップ、スピリットバリアぁぁァァァAaa!!

 私のモンスターが存在する限り、私への戦闘ダメージはないぃぃィィiii!!」

 

 くっ!だがダメージはなくとも!!

 

「ドミネイトガイが戦闘でモンスターを破壊したとき、デッキから1枚ドロー出来る。

 ダイヤモンドガイで2体目のミュートリアル・ビーストを攻撃!

 そして、ディストピアガイで野呂、いやシンセシス・ミュートリアスに攻撃!!

 ディストピアブロー!!」

 

「ギyaああAaaaaaアアアァァァァ!!」

 

 ディストピアガイの拳が野呂を覆うシンセシス・ミュートリアスを砕く

 膨れ上がった体は元に戻ったが、人型に戻っただけで異形化はまだ解けていない。

 

「あァAAaaぁぁァァ・・・

 破壊されたミュートリアル・ビーストの効果で除外されているミュートリアルトラップカード、ミュートリアスの産声を手札heえぇエェェ・・・

 

 破壊されたシンセシス・ミュートリアスの効果で除外されている被検体ミュートリアM―05を手札へeee・・・」

 くっ、ダメージを与えられなかっただけではなく手札まで!

 

「ディストピアガイのエフェクト発動!

 攻撃力を戻し、裏側になった超雷龍―サンダー・ドラゴンを破壊!

 

 さらに僕はマジックカード、奇跡の採掘を発動

 このカードは自分のモンスターが5体以上除外されているときにエフェクトを発動できる。

 除外されているモンスターの内、3体を僕のセメタリーに戻す。

 僕はダイナマイトガイ、ディバインガイ、ドレッドサーヴァントを戻し、カードを1枚セットし、ターン、エンドだ!」

 

 ディストピアガイ ATK3800→2800

 

「Aaa、あ、アァ・・・ワタシノターん・・・

 手札からM―05をSyoうカn・・・ウッ!!」――グシャ!!

 ATK0→400

 

 よろよろと立ち上がった野呂の左目を覆っていたミュートリアが巨大化する。

 まさか、あれが野呂に寄生しているミュートリアの本体なのか!?

 

「サーチ効果は使わせない!

 永続トラップ、スキルドレイン!

 ライフを1000ポイント払い、フィールド上の表側表示モンスターの効果を無効にする!」

 LP4000→3000

 

「ウゥ・・・アァ・・・

 手札からマジックカード、星の金貨を発動

 手札2枚を相手に渡し、自分は2枚ドローする。」

 

 M―05の露出後、ぎこちない口調は戻ったが体は激しく痙攣し、野呂の目は瞳孔が開き虚空を見つめている。

 その様子からもはや野呂の意思はないだろう。

 そんな奴から、カードが2枚投げ渡される。

 

「っ!!!?このカードは!?」

 

 そのカードはこの惨劇を引き起こした元凶

 

「パラサイト・フュージョウッ!!?」

 

 そのカードを認識した瞬間、絵柄を飛び越えて件のモンスターが僕に飛びかかって

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ド・・・・エド・・

 

「っ!!?」

 

「どうしたんだい、エド?」

 

「と、父さん・・・?」


「ガアァァ、ハァァッ!!」

 

「終わりだ、アレン。」

 

 極光は巨大な鉄の城を貫き、その主である少年を吹き飛ばす。

 

(あぁ、クソッ!!俺じゃカイトを止められねぇのかよ!!)

 

 少年が志した決意も覚悟も全て無に帰すように、狩人は歩を進める。

 少年が護ろうとしたものの方へと

 

「っ!!?おい待て!!俺はここだぞ!?」

 

「・・・・・お前をカードにするのは最後だ。」

 

「なにっ!!?」

 

「お前が俺から全部奪ったように、俺も、お前から全てを奪い尽くしてやる!」

 

 愛するものも、愛してくれたものも、護りたいものも失った狩人は、少年のそれをすべて刈り取るために突き進む。

 止められぬことを理解した少年は絶叫する。

 

「やめろ、やめろ!やめてくれ!!

 他の奴らはホントに関係ねぇ!!裏切り者は俺だけだ!!」

 

「だがお前の全てはここにある・・・そのすべてを狩り尽くして、絶望させてやる!!」

 

「駄目だ!!この先に居るのはお前も護りたかった奴らなんだ!!」

 

「・・・・・・そんなもの、もう俺にはない!!」

 

 絶望の狩人はそれごと裏切り者の全てを残らず狩りつくすだろう。

 これは復讐だ。何も得られぬ、何も生まぬ

 そんなことは『彼ら』も理解しているが止まれば、心は救われぬから・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな、悲しいことを言う兄さんは嫌いだ。」

 

 

「「!!?」」

 

 その声はありえないものだった。

 幼い少年の声、2度と聞けないと思っていた声、狩人の弟の声

 それと同時に空から火の球が二人の間に落ちてくる。

 

「やぁ兄さん、僕の声を忘れないでいてくれてうれしいよ。」

 

 炎の中から現れたのは、赤い瞳の悪魔

 その悪魔は獰猛な笑みを浮かべながら、狩人の弟の声で、狩人の前に立ちはだかった。




魔術師に翻弄されるだけだった彼の運命は、星と月が巡る夜に迷い続ける。
そしてこの塔のカードが示すものは・・・
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『ミュートリア暴走!!目覚めよ、不死鳥』
君はどんな運命を選ぶんだい?


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ミュートリア暴走!!目覚めよ、不死鳥

とても長らくお待たせしました。
スランプと書く時間がない問題、公式にお出し出されたミュートリアの設定が三つ目のスマイルマーク的で当初の予定と食い違ってしまい修正が発生、そしてダークヒーローってなんだろう問題に直面してしまい。なかなか筆が進みませんでした。

クロスファイヤーは背負っている。現実にも目を向けさせた。でも何か足りない。
そんな私はバットマンの設定を見返した



「どうしたんだい?エド。」

 

「と、父さん・・・?」

 

 どうしてだ、僕は今まで・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 あれ、何をしてたんだっけ?

 

「明日はアカデミアへ出発だろう?

 その前に友達に挨拶するんじゃなかったのかい?」

 

「あ、あぁ、そうだね。

 そろそろ行かないと・・・」

 

 彼はアカデミアには行かないと言っていたから、しばらく会えなくなってしまう。

 だから出発前に会いに行こうとしてたんだった。

 

「はぁ~なぜ彼は来ないんだろう。

 彼が一緒なら心強いのに・・・」

 

「・・・エド!」

 

 僕が漏らした愚痴に父さんは、なぜか目を伏せて神妙な面持ちで僕の名を呼ぶ

 

「・・・・・・・・・エド、君にとってのヒーローってなんだい?」

 

「?なんだい、父さん。藪から棒に」

 

「あっ、はは、ちょっと聞いてみたくなってね。」

 

「そう?でも、僕にとってヒーローは変わらないよ。目標であり憧れであることはね。

 僕は父さんの生み出したヒーロー達のような正義の味方になれるように、アカデミアでも頑張るよ。」

 

 僕の父さんはカードデザイナーだ。

 コミックのヒーローのような戦士族テーマ『HERO』シリーズを代表に戦士族を中心に様々なカードを生み出してきた僕の自慢の父さんだ。

 もちろん僕の『D―HERO』達も父さんのデザインだ。

 

「はは、ありがとう。嬉しいな!

 ・・・でも、エド、僕の描いたヒーロー達ってね。

 正義の存在ではあるけど、正義の味方ってわけじゃないよ?」

 

「え?」

 

「だって、本当に正しいことばっかりやっていたら、時計塔に幽閉なんてされてないよ。

 彼は彼の守りたいものを守った、それが長く暗い監獄に幽閉されるような罪であろうともね。

 だからね?迷ったり、立ち止まることがあったらアカデミア(自分)を信じなさい。」

 

「っ!?」

 

 あ、あれ?そんなこと、父さんは言った・・・っけ?

 

「ふっ、引き留めて悪かったね。

 気を付けて行ってきなさい、エド。」

 

 父さんは僕の頭をひと撫でして、送り出してくれた。

 

「う、うん、行ってくるよ。父さん。」

 

 腑に落ちない思いを抱えながらも、僕は家を出た。

 今日は彼がこの街から旅立ってしまう日

 アカデミアに入る僕はまたいつ彼と会えるかわからないのだから


「なんだ、これは!?」

 

 アカデミアによってめちゃくちゃにされた自分の故郷

 だが、眼下に広がる光景は人によるものではない。

 生物、鉱物、機械それらが混じり合わさった歪な化け物たちが我が物顔で犇めき合っている様はとてもここが故郷の街の一角だったとは思えない。

 

 絶句していると、無数の黒の中に白い人影が飛び回っているのが見えた。

 

「アレは!!」

 

 ユートはすぐさまその白い人影の元へと向かうようにオッドアイズ・リベリオン・ドラゴンに指示し、自身は一枚のカードをセットする。

 

「トラップ発動!妖怪のいたずら!!フィールドのモンスターのレベルを2下げる!

 やれ!!オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン!!!」

 

オッドアイズ・リベリオン「ギャオオォォォ!!」

 

「「「「「「「「「「「「「「「「ギャアAあァァァaaaァァァぁぁァ!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」

 

 覇王黒竜の生み出した白む紫電が混沌の黒を駆逐する。

 

「ユート!?そのドラゴンは!?いや、なんでここに!?」

 

「それはこっちのセリフだデニス!お前はここで何をしている!?」

 

 白い人影、トラピーズ・マジシャンと共にいたデニスはユートの騎乗しているドラゴンにいつかの記憶を刺激されながらも、ユートが来たことに驚き

 ユートも遊矢からデニスがいることなど聞いてなかったので、ここに居ることについて驚く

 

「僕は、いや僕らだってじっとしていられなくてね。」

 

「僕ら?」

 

「あぁ、今、あの上でエドが野呂と戦っているよ。」

 

「エド!?総司令のエド・フェニックスか!?」

 

「あぁ、ただ、さっきから嫌に静かなんだよね・・・」

 

「上からも君が先に目に入ったとはいえ、デュエルをしているような様子はなかったが・・・」

 

 二人はエドと野呂のデュエルが行われているだろう場所に目を向けるが

 

――あぁああAAAAaaaaァァァァァアアアア!!!!!

 

――ギュチャ、グチャ

 

――ギギギギ・・・・

 

 菱形の裂け目からミュートリアが現れ、周辺のモノを取り込みながらミュートリアス・ミストやアームズへと成長し、さらにアカデミア生を媒介に再びビーストも再生する。

 

「くっ、こいつらまだ!!」

 

「はぁ~まったく、心配している暇もないんだね。」


 路地の一角の人目の付かないところにひっそりと、その占い館はある。

 もうすぐここは引き払われるため、今日は営業もしていない。だが僕はそんなことは気にせず中に入る。

 

「やぁ、待っていたよエド。」

 

 穏やかな声で僕の名を呼んだのは、紫が基調の部屋とは逆と言ってもいいくらい白いケープに白い衣装に身を包んだ男

 

「あぁ、来たよ斎王。美寿知は一緒じゃ無いのかい?」

 

 『斎王 琢磨』正式にはタクマ・S・フェニックス

 捨て子だった彼らを父さんが保護し、その後養子にした、義理とは言え兄にあたるが、僕にとっては親友としての感覚が強い。

 

「あぁ、美寿知には先に行ってもらった。

 私がここに居るのは・・・ちょっと気になることがあってね。」

 

 気になる、とは斎王にしては珍しい言葉だ。

 彼はいつもどこか超然としていて先が分かっているような雰囲気をしていたが

 

「・・・・・・やはり、視てみないとわからないか。

 エド、すまないがちょっと付き合ってもらえないかい?」

 

 そう言って彼は愛用のタロットを広げ始める。

 

「あ?あぁ。」

 

 しばらくカードが擦れる音が響く中、僕は斎王に問いかけた。

 

「斎王、美寿知もだが、なぜ君はアカデミアに行かないんだい?」

 

「・・・私、いや私たちの力は誰かの為になることはできても、誰かのものになってはいけないと思ったからかな。」

 

「?」

 

「すまない。今、私は言葉によって君に伝えることはできない。

 ゆえに運命が君に語り掛けてくれるだろう。」

 

 横に広げられたカードの中から斎王はカードを一枚引き抜き表にする。

 

「まずは君という人間を象徴するカード、『正位置の法王』

 優しく、正しくあろうとする君にふさわしいカードだな。そして」

 

 さらに7枚のカードが引き抜かれ、斎王はそれを並べる。

 

「・・・このカードたちが指し示す運命は、君に関することだが、何時の過去のことなのか、何時の現在なのか、それは私にも見通せない。

 それだけ君の運命は乱れている。」

 

 僕は黙ってそれを聞いていた。

 斎王が占いで見通せないと断言することなど、今までなかったからだ。

 カードが六芒星の中央と星の先端に置かれる

 

「さぁ、エド、カードを開けてくれ。」

 

 斎王からカードの位置と意味は聞いて覚えている。ではまずは中央の

 

「核心に『逆位置の愚者』

 夢想、愚行、無計画、無謀・・・考えることをやめ、運命に流されることの暗示。」

 

 斎王はそれ以上のことを言わない。

 運命に抗うことはできない。だが選ぶことはできるとは斎王が常に言っている弁だが

 僕は何時から考えることをやめてしまったんだろうか?

 

「過去に『逆位置の魔術師』

 このカードは未熟ゆえに混迷し、自信を失うことを暗示している。」

 

 奴に負けてから、いやもっとそれ以前・・・

 僕はヒーローになりたかったのに、世界を・・・?僕は何を? 

 

「現在に『逆位置の戦車』未来に『正位置の塔』

 逆位置の戦車は落馬の構図となり、失敗や人任せの行動の結果を意味する。

 そして、正位置の塔は崩壊や災難といった、もはや人の手に及ばない超常の厄災・・・

 

 これは君が放任し、誰かに任せきりになってしまったことで、さらに大きく過酷な運命へと派生するということだろうか。」

 

 あぁ、僕は間違いを正すまでもなく救いと否定を求めて彷徨った。

 救わなきゃいけなかったのは僕なのに、助けなきゃいけなかったのは僕なのに

 僕は何もせず、みんなが壊れていくのを横目で見ることしかしなかった。

 

「『正位置の月』・・・

 君と対峙している相手は過去のトラウマから、心の中にストレスがあり不安を抱えているようだ。」

 

 そんな僕の代わりに動いていたのは・・・

 副指令として、参謀として、アカデミアの一員としてなすべきことをし続けていたのは・・・

 

 フッ、そんな彼からすれば僕は、ただ邪魔な存在でしかないな。 

 

「『逆位置の死神』、起死回生、そして再生のカード

 エド、このカードが出たということは。」

 

「あぁ、斎王・・・僕は、変わらなくてはいけない。」

 

 いつの間にか僕と斎王の間には壁が出来ていた。

 画面越しかのような隔たり、それはそうだろう。これは僕の≪過去≫だ。

 

「これは君たちが見せてくれたんだな。」

 

 振り向けば僕の後ろには様々なHERO達がいた。

 幽閉されし鉄仮面、悪への脅威、未来への穿孔者、暗黒郷で戦い続ける者・・・

 誰もが僕と一緒に戦い続けてくれた、父さんから託されたD(運命)の名を持つHERO達

 その誰もが僕を見ていた。

 

≪おや、カードが・・・太陽と、悪魔、カードは斜め・・・

 これは何かしら、君の運命に影響を与えるということだろうか?≫

 

 あぁ、現状に落胆し続けていた太陽のおかげで、悪魔は僕らへの怒りから解放されて僕を何度も誘惑してきたよ。

 

 『ヒーロー』となれと

 

≪君自身に『正位置の力』のカードの暗示・・・

 よかった、君の心の内にある不屈の意思は消えていないようだ。

 またどこで出会えるかもわからないが、私は君の無事を祈っているよ。エド。≫

 

 斎王の言葉を背中に受け、僕は歩みだす。

 

「あぁ、ありがとう。斎王、そして父さん

 ありがとう。僕のHERO達。」

 

 HERO達の前であたたかに微笑む太陽の少女と、腕を組む破壊の悪魔の道化師に僕は手を差し出す。

 

「共に戦ってくれ!孤独の中で戦い続けてくれた仲間のために!!」

 

 二人の姿は炎に変わり、不死鳥の姿になって僕の手を取った。


「馬鹿な・・・馬鹿な!バカな!!バカナッ!!」

 

 視界が開けると、目の前には動揺した野呂

 ミュートリアの取り付いた顔の反対側の彼の目からは、彼の確かな意思を感じさせる涙があふれている。

 

「なぜあなたは私の言うことを聞かない!!なぜあなたは私の邪魔をする!?

 なぜあなたは・・・この戦いを長引かせるのですか!!?」

 

 あぁ、やはりそうなんだな・・・

 

 ≪私の計算によれば!≫≪早く!早く!!≫

 

 彼のカードは『戦車』

 正位置なら実行力、強い意志、迅速、勝利、征服

 野呂の正義とは、迅速に作戦を完遂し帰ることが目標だったのだろう。

 部隊のみんなのことを考えての苦渋の決断

 命じた自分にその業が帰ってくることも恐れず・・・

 

 それなのに僕は、自分のことばっかりで・・・

 

「すまない野呂・・・君に大きな罪を背負わせてしまったのは僕だ。

 そんなモンスターを呼んでしまうほど、追い詰めたのは僕だ。」

 

「・・・・・・・いまさら・・・今更なんだというのですかああぁぁああああAAAAaaa!!

 M05の効果!

 自身をリリースし、サモン・リミッターを除外!

 この効果はリリース後に効果が発揮するため、スキルドレインでは無効化できませんYおォ!!

 デッキからミュートリアル・アームズを特殊召喚!」

 

ミュートリアル・アームズ ATK3000→3500

 

 ミュートリアに支配されるままだった野呂がこのデュエルで初めて意思を爆発させる。

 サモンリミッターを自身で取り払い、その感情のままにカードを切る。

 

「手札抹殺を発動!

 私の手札5枚を捨て5枚をドロー!」

 

「僕も2枚ドローさせてもらう!」

 

「墓地の雷族、雷電龍―サンダー・ドラゴン、獣族、ミュートリアル・ビースト、サイキック族、被検体ミュートリアM- 05を除外し手札よりアークネメシス・エスカトスを特殊召喚!

 

 雷電龍の除外によりデッキのサンダー・ドラゴンカード、雷龍融合を手札へ加え発動!

 墓地の雷神龍、超雷龍、除外されている雷電龍の3体のサンダー・ドラゴンを融合!

 神の怒りよ!威光よ!叫びよ!神秘の渦で一つとなりて新たな力と姿を見せよ!融合召喚!

 再来せよ!雷神龍―サンダー・ドラゴン!!」

 

アークネメシス・エスカトス「ヴァアアァァァァァァァッァAAAAAaaa!!」

             ATK3000

 

雷神龍「「「GYAオオオオォォおおォooooォォ!!」」」

   ATK3200

 

 ミュートリアル・アームズ ATK3500→2700

 

「除外されているもう一体の雷電龍―サンダー・ドラゴンをデッキに戻し、手札からネメシス・コリドーを特殊召喚!

 このターン手札でネメシス・コリドーの効果を発動している為、フィールドの雷族モンスター、ネメシス・コリドーをリリースし、現れ出でよ!超雷龍―サンダー・ドラゴン!」

 

超雷龍「ギャAAァァaaァァァ!!」

   ATK2600

 

 数多のミュートリアが交じり、繋がり、重なりながら5本の竜の首を作り出した。

 

「墓地の置換融合を除外して、墓地のシンセンス・ミュートリアスをデッキに戻し1枚ドロー!

 手札を2枚捨て、マジックカード、ブーギートラップを発動!

 墓地のトラップカード、ミュートリアの産声を私のフィールドにセットする!

 この効果で伏せられたカードはそのターン中に発動できる!ミュートリアの産声を発動!

 メインフェイズに私のフィールド、墓地、除外されているモンスターをデッキに戻してミュートリア融合モンスターを融合召喚する!!

 除外されているミュートリア・ミスト!アームズ!墓地のビーストを融GOOO!!」

 

 そして、ドラゴンの塊ともいうべき物体に野呂が取り込まれ

 

『生あるものよ、存在するものよ、作られし者よ!

 わが身と一つとなり、全にして一の究極へと至るのDAAAaaaaa!!』

 

 五本の首の他に数多の蛇の首や植物の蔦、機械のアームにも似た触手が生る。

 

究極体ミュートリアス『『『『『『キュウキョクタイミュートリアスSSuuuuスぅ!!』』』』』』

          ATK3500→3900

 

 移動船など優に超える巨大なモンスター

 その胴と呼ぶべきか、根本と言うべきかもわからぬ場所に浮かび上がった野呂の顔は自らをそう呼称した。

 

究極体ミュートリアス『『『『『『エド・フェニックSUUUUUぅウウウううウウUUUU!!』』』』』』

 

「くっ!!」

 LP3000→2500

 

 機械のアームがドミネイトガイを押しつぶす。

 

「だがドミネイトガイが破壊されたことでエフェクト発動!

 セメタリーのレベル9以下のD―HEROを3体を特殊召喚する!

 カモン!ダイナマイトガイ!ディバインガイ!ドレッドガイ!!」

 

 ダイナマイトガイ DEF1000

 ディバインガイ  DEF1400

 ドレッドガイ   DEF0

 

――繧ョ繝」繧「繧「繧「繧。繧。繧。繧。繧。繝?ぃ繧。繧。繧。繝?ぃ繧。!!!

 

 新たに現れた3人のHERO達だが、眼前のモンスターは木の軋みの様な、金属の擦れるような、悲鳴のような音を発しながらディバインガイを残し屠っていく

 

「ぐわああぁぁぁぁ!!」

 LP2500→2400→1900

 

  衝撃により僕は移動船の上から放り出されるが

 

トラピーズ・マジシャン「ケケッ!!」

 

――バシッ!

 

「エド!!」「エド・フェニックスっ!!」

 

 白き奇術師と黒い竜を従える2人に助け出される。

 

「君たちは・・・いや、それよりも」

 

「エド・・・まさかと思うけど。」

 

「あぁ、あれは野呂だ。」

 

 デニス・マックフィールドが目の前の不格好なキメラの正体を考察するが、そんなこというまでもないだろう。

 もう一人も驚いてはいるが、現状を受け入れられている分何かあったのかもしれない。

 

「なら俺がやろう。

 オッドアイズ・リベリオンなら精霊にダメージを与えられるはずだ!」

 

「精霊・・・なるほど

 だが、君の手は借りない。これは僕のデュエルだ!」

 

「だが!!」

 

「アレは僕の罪、僕の迷いが生んだモンスターだ。

 だから僕が全責任と全力を持って、奴を倒す!」

 

「・・・・・・」

 

「ふっ・・・・」

 

 僕の言葉に2人は下がってくれ、デュエルディスクも僕のターンに変わったことを告げる。

 

「ありがとう、僕のターン!ドロー!!」

 

 なぜかは分からない。でも感じる。運命がささやいている。

 

「僕は前のターン、ダイヤモンドガイの効果でセメタリーへ送っていた魔法石の採掘のエフェクトを発動し、墓地のマジックカード、フュージョン・デステニーを手札に加え発動!」

 

 新たなHEROの誕生を!!


「デッキのD―HERO ディアボリックガイ!そしてディナイアルガイの2体を融合!!

 不屈の悪魔よ!『悪』を打倒し、破壊の調べを高らかに謳え!!融合召喚!!

 カモン!!NEW HERO!!」

 

 混沌の渦より現れるのは炎

 それは様々な色に変化する新緑に揺らぐ炎は翼に、赤黒い紅蓮の炎はドラゴンの尾へ

 そして地獄のごとき黒は人の形へと

 

――それは誰も知るはずのない破壊者

 

――悪を滅する炎

 

――そして青年は知るはずもない新たなHEROの名を叫ぶ

 

「D―HERO!デストロイ・フェニックスガイ!!」

 

D・フェニックスガイ「タアァァ!!」

          ATK2500

 

究極体ミュートリアス「「「「「「「「繧ョ繝」繧「繧「繧「繧。繧。繧。繧。繧。繧。繧。繧。繧。繧。繧。!!?」」」」」」」」

 

 モンスターの驚愕の叫びが響く

 宿主の記憶にない存在、青年の全ての力を見てきた宿主が知らぬ力

 警戒しようにも自身の力も取り込んだ偽りの龍の力も一切が封じられ身動きはできない。

 

「僕はさらにセメタリーのディナイアルガイのエフェクトを発動

 僕のフィールドにD―HEROがいるとき、デュエル中に一度だけ特殊召喚出来る。

 

 さらにセメタリーのディアボリックガイを除外することでデッキからディアボリックガイを特殊召喚できる。カモン!アナザーワン!!」

 

ディナイアルガイ「はっ!!」

        DEF600

 

ディアボリックガイ「ふんっ!」

         DEF800

 

「そして、ディナイアルガイ、ディアボリックガイ、ディバインガイの3体のモンスターをリリースし、並び立て!!D―HERO ドグマガイ!!」

 

ドグマガイ「はああぁぁぁぁああ!!フンッ!!」

     ATK3400

 

 3人のHEROの魂が神に背きし悪魔の姿を持ったHEROを呼び覚ます。

 ドグマガイは新たなHEROを一瞥し、デストロイ・フェニックスガイも頷き返し、目の前の巨大な敵を2人は恐れる様子もなく立ち向かう。

 

(あぁ・・・これだ・・・)

 

 その姿に青年はかつての感動を思い出していた。

 幼き日の父が描いた英雄たち、彼らの姿に、活躍に、胸が高鳴っていた過去

 もう戻れない遠き憧憬

 

「僕はデストロイ・フェニックスガイに装備マジック、旋風剣(サイクロンブレード)とフェイバリット・ヒーローを装備!そしてバトルフェイズ!!

 この瞬間!フェイバリット・ヒーローのエフェクト発動!

 デッキからフィールドマジックを1枚選んで発動する。

 ここが僕らのラストステージだ!発動しろダーク・シティ!!」

 

 月夜に陰るかきわりの街が巨大モンスターを取り囲む

 

「僕のフィールドにフィールドマジックが存在することで、フェイバリット・ヒーローの新たなエフェクトが解放される!

 装備モンスターの攻撃力は、自身の元々の守備力分アップする。よってデストロイ・フェニックスガイの攻撃力は4600にアップ!!」

 

D・フェニックスガイ「はぁぁぁぁぁぁ!!」

          ATK2500→4600

 

「GO!デストロイ・フェニックスガイ!!究極体ミュートリアスに攻撃!!

 行けええぇぇぇぇぇええええ!!」

 

D・フェニックスガイ「トゥアァァァァアアアアアアア!!」

 

 デストロイ・フェニックスガイは自身を炎の弾丸へと変え特攻する

 彼が飛び込んだのはモンスターの胴体、宿主の顔が浮き出た右目に該当する部分

 そこに存在する濁った赤い眼球を砕き突き進む

 

 その手に助けるべきものを手にして

 

「ぐはっああぁ!!?あぁ・・・?あぁぁあああああああ!!」

 

 野呂は自身の身に起きたことに一瞬呆けるが、彼が考えるより前に取り付いた異星の寄生体が、強靭な巨躯へ戻ろうと足掻きを見せる。

 

「モンスターから大量の触手が伸びているぞ!!」

 

「宿主を取り返そうとしているみたいだね。」

 

「させるか!!

 旋風剣(サイクロンブレード)のエフェクト!バトル終了時にフィールドのマジック、トラップカード1枚を破壊する。僕が破壊するのは・・・」

 

 このデュエルを終結させるにはフェイバリット・ヒーローの2つ目の効果を使い

 彼の手の中の存在を倒せばいいだけの話だ。だが

 

「ミュートリア進化研究所!!」

 

 ミュートリアス・アームズ ATK3400→3000

 

 青年はそれをしなかった。

 

「なんで・・・」

 

「エド・フェニックス、君は・・・」

 

 デニスはエドの行動に疑問を持つが、ユートはその行動の真意を察する。

 

「・・・彼を倒すだけでは足りないんだ。」

 

 青年は覚悟を決めていた。倒すのではなく『救う』のだと

 

「フェイバリット・ヒーローの第二のエフェクトを発動!

 装備モンスターの攻撃により相手モンスターを破壊したとき、このカードをセメタリーに送ることで2回目の攻撃を可能にする。

 さらにダーク・シティの存在によりD―HEROが戦うモンスターより攻撃力が低い場合、その攻撃力を1000ポイントアップさせる!

 セカンドアタック!!雷神龍―サンダー・ドラゴンを焼き尽くせ!!」

 

D・フェニックスガイ「ハアッ!!」

          ATK2500→3500

 

 宿主を取り戻そうと迫る三つ首を獄炎が焼き尽くし、それにより彼の腕につけられた風の大剣が唸りを上げる

 

旋風剣(サイクロンブレード)のエフェクトで破壊するのは僕のフィールドのスキルドレイン!」

 

「「!!?」」

 

「さらにドグマガイでミュートリアス・アームズを攻撃。

 これで邪魔者はもういない。デストロイ・フェニックスガイのエフェクト

 お互いのターンに1度、自分フィールド上のカード1枚と相手フィールド上のカード1枚を破壊する。

 デストロイ・フェニックスガイと野呂のフィールドのスピリットバリアを破壊。」

 

 野呂を下ろし、デストロイ・フェニックスガイはスピリットバリアのカードと共に自らを焼き尽くしていく

 

「エド!?君は一体何を!?」

 

「ク・・・ククク、ソうでSuよ・・・

 もはや貴方の手にカードはNAい、スキルドレインの呪縛も解け、私のフィールドには強力なモンスターが2体

 アークネメシス・エスカトスは指定した種族のモンスターを破壊し、そのモンスターの特殊召喚を妨害する能力を持ったモンスター

 貴方は愚行に愚行を重ねて・・・・・それでよろしいの、ですか?」

 

「あぁ。」

 

「ナラバ・・・私の、ターン・・・・」

 

 怪物はカードを引く。

 青年の過ちによって偽りの竜たちの力は解放されてしまった。

 それなのに青年の顔に焦りも後悔もない。なぜなら

 

「もう運命は決した。」

 

ドグマガイ「オオオォォ!!」

 

「うぐぅぅ・・・」「繧ョ繧ィ繧ィ繧ァ繧ァ繧ァ繝?ぉ繧ィ繧ァ繧ァ繧ァ!!?」

 LP2400→1200

 

 ドグマガイの体からオーラが湧き立ち、野呂の体にしみ込んでいく

 神に反逆せし者に掛けられた呪い、命を奪う力

 現れてその次のターンに遅れて『発動する』この効果はすでに消え去ったスキルドレインの影響はない。

 そして、デストロイ・フェニックスガイの残り火の影から現れるDの仮面の男

 

「ディ、ディストピアガイ!?」「繧ョ繝」繝!!?」

 

 ディストピアガイ ATK2800

 

「デストロイ・フェニックスガイが破壊された場合、次のターンのスタンバイフェイズ時にセメタリーのD―HEROを1体特殊召喚する。そして。」

 

「ディストピアガイは、特殊召喚時に墓地のレベル4以下のD-HERO(デステニーヒーロー)1体の攻撃力分のダメージを与える・・・」

 

「繧ョ繝」繧「繧「繧。繧。繧。繧。繧。繧。繧。繧「繧「繧「繧「繧。繧。繧。繧。・・・・・――

 LP1200→0

 

 ディストピアガイは暗黒の力を使い異星の寄生体を闇に葬り去る

 宿主である野呂には一切の傷はつけずに

 

「なぜ・・・・私など殺してしまえばよかったのに・・・」

 

「野呂、僕たちの罪は死などで償えるものではない。」

 

「っ!!・・・だから助けたと!!この地獄から逃げるなと!!

 勝手なことを言うな!!偽善者が!!

 私が・・・私の邪魔ばかりした、貴方が!!」

 

 出世欲の男、非情な卑怯者、口だけののろま等、陰口を叩かれ続けたこの男は悩み、苦しみ、心をすり減らしこの一年をこの異邦の地で過ごしてきた。

 早くこの地獄のような地から去りたい。壊れた仲間たちが増えていくのを見たくない。誰かの悲鳴を聞くのは嫌だ。

 そう、この男は特別でも、壊れているわけでもない、ただ普通の人間だったのだ。

 普通の人間が必死になっていただけなのだ。

 

「あぁ、だから君を助けた責任を僕は背負おう。もちろん他の仲間たちの分も。」

 

「はぁ?」

 

「総司令官として僕が君たちにできる最後の仕事だ。

 僕は君たちが背負ってしまった罪の全てを背負って、戦い続けよう。」

 

「・・・・・・それが貴方の憧れたヒーローと言うものなのですか?

 血に濡れた手でそんな存在になれるとでも?」

 

「っぅ・・・あぁ、僕は、もう誰かを助けるヒーローにはなれないだろう。

 だから、血に濡れてしまったからこそ、僕は奪ってしまったモノ以上のものを救おう。闇の中から守り続けよう。

 それが僕が選んだ運命だ。」

 

 青年はまっすぐにそう言った。

 

「ふふ・・・・・・・甘い貴方に・・どれ、ほど・・・・続けられる、で・・しょう、ね・・・・」

 

 最後の気力を振り絞り自らの罪を背負った英雄を案じる言葉を告げて、怪物になろうとした男は瞳を閉じた。


『そんな悲しいこと言う兄さんは嫌いだ。』

 

 聞こえた声はもう聞くはずのない声だった。

 憎い、にくい、ニクイ、裏切り者たちの巣の前に落ちる太陽

 一筋の希望が出来た気がした――あの光の奥に弟が、あのこが、アイツガ

 

 だがその希望はすぐさま消え去る

 

『やぁ兄さん、僕の声を忘れないでいてくれてうれしいよ。』

 

 ああああああああああああああぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁぁあああ

 声は確かにハルトの声だった!

 だが、炎の中から現れたのは仔憎たらしい笑みを浮かべるアイツ!

 

 訳が分からない奴だった。尊敬していた先生とはまるで真逆。その真意の読めない道化!!


 突然のことで頭が追いつかず俺は茫然としていた。

 

「キサマママアアアアァァァァァァァァァアアアアアア!!!!」

 

 カイトに負けて、俺が護ろうとしたものを全て奪ってやると言われて、俺が護ろうとしたものはカイトにはもう俺への復讐のための生贄でしかないと言われて

 

「HAHahaa、随分とお怒りだねぇ~

 だけど、どうやら本丸の方も大変なことになっているみたいだけど、行かなくていいの?兄さん♪』

 

 そんな絶望を打ち消したのはあまりにも悪辣、カイトの弟のハルトを出しにするという方法

 

「黙れ!!この侮辱と屈辱を晴らさずにおくべきか!!」

 

 そして今カイトの怒りは全てそれをやってのけたド外道、榊 遊矢に向けられている。

 

『『決闘(デュエル)!!』』

 

「先攻は俺が貰おう。

 まずは手札からEM(エンタメイト)レディアンジュの効果を発動

 手札のEM(エンタメイト)オッドアイズ・ディゾルヴァーと共に捨てることでデッキから2枚ドローする。」

 

「させるか!!手札の灰流うららを捨てることで、デッキからカードをドローするその効果を無効にする!!」

 

 まずい!?出鼻をくじかれた!?

 

「ふぅん、その程度のことは読んでいた。

 魔法カード、光の援軍、デッキの上からカードを3枚墓地へ送り、デッキからライトロードモンスター、アサシン ライデンを手札に加える。

 

 スケール8のEM(エンタメイト)ジェントルードをペンデュラムスケールにセッテイングし、墓地のEM(エンタメイト)オッドアイズ・バトラーの効果を発動

 墓地からこいつを特殊召喚し、ジェントルードを破壊、破壊されたことによりジェントルードの効果が発動、デッキからスケール6のEM(エンタメイト)ペンデュラムモンスター、ギタートルをセッテイング。

 

 さらにEM(エンタメイト)リザードローをペンデュラムゾーンにセッティング。

 EMがペンデュラムゾーンに置かれたことでギタートルのペンデュラム効果で1枚ドローする。

 さらにペンデュラムゾーンの片方にEM(エンタメイト)がいるとき、リザードローは自身を破壊しさらに1枚のドローを可能にする。

 

 魔法カード、調律を発動しデッキからシンクロンチューナーモンスター、EM(エンタメイト)オッドアイズ・シンクロンを手札に加え、その後デッキをシャッフルしデッキトップを1枚墓地に送る。

 オッドアイズ・シンクロンを召喚し効果発動、墓地のレベル3以下のEM(エンタメイト)またはオッドアイズモンスターを効果を無効にして特殊召喚する。

 来い、!オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン」

 

オッドアイズ・シンクロン「フンッ!」

            ATK200

 

オッドアイズ・ミラージュ「ギャッ!」

            DEF600

 

「レベル3のオッドアイズ・ミラージュ・ドラゴンにレベル2のオッドアイズ・シンクロンをチューニング。

 来い!X―セイバー ウェイン!」

 

ウェイン「ハッ!」

    ATK2100

 

「X―セイバー ウェインの効果発動

 シンクロ召喚に成功したとき、手札からレベル4以下の戦士族モンスター1体を特殊召喚する。

 チューナーモンスター、ライトロード・アサシン・ライデンを特殊召喚。」

 

 アサシン・ライデン ATK1700

 

「ライデンの効果発動、自分メインフェイズにデッキの上から2枚カードを墓地へ送る。

 レベル5のオッドアイズ・バトラーにレベル4のライデンをチューニング!シンクロ召喚!

 来い!星風狼ウォルフライエ!!」

 

ウォルフライエ「ウオオオォォォォオオオオン!!」

       ATK2500

 

「さらにスケール1のEM(エンタメイト)オッドアイズ・プリーストをペンデュラムスケールにセッティング。

 揺れろペンデュラム、異界に繋がる扉を開け!ペンデュラム召喚!

 レベル5、オッドアイズ・バトラー、レベル3、オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン、レベル2、オッドアイズ・シンクロン。」

 

 オッドアイズ・バトラー  DEF2100

 オッドアイズ・ミラージュ DEF600

 オッドアイズ・シンクロン DEF600

 

 信号機みたいなのと緑色のドラゴンが出てきたと思えば、ガンマンと暗殺者に入れ替わって、暗殺者が最初っからいた執事と翼を持つ狼に姿を変えて、今度は姿を消したモンスターがそのまま戻ってきやがった。

 モンスターは5体並んだが、カイト相手には壁にも成んねぇぞ。どうする気だ?

 

「そして、レベル5シンクロモンスター、X―セイバー ウェインにペンデュラム召喚されたペンデュラムモンスター、オッドアイズ・バトラーをレベル5のチューナーとして扱いチューニング!

 時の狭間に至る極地、刮目して確と見よ!シンクロ召喚!!

 目覚めよ!涅槃の超魔導剣士(ニルヴァーナ・ハイ・パラディン)!!」

 

涅槃の超魔導剣士(ニルヴァーナ・ハイ・パラディン)「フンッ!!ハァァアアァァァ!!タァッ!!」

          ATK3300

 

涅槃の超魔導剣士(ニルヴァーナ・ハイ・パラディン)がペンデュラムモンスターをチューナー扱いでシンクロ召喚されたとき、墓地のカード1枚を手札に回収することができる。

 ペンデュラム・ホルトを手札に加える。

 モンスター効果の発動により、ウォルフライエの攻撃力が300ポイントアップ。

 

 ミラージュ・ドラゴンの効果も発動し、ミラージュ・ドラゴンに破壊耐性を付与

 さらにウォルフライエの攻撃力上昇。」

 

 ウォルフライエ ATK2500→2800→3100

 

「オッドアイズ・プリーストのペンデュラム効果

 1ターンに1度、墓地のEMかオッドアイズモンスターカード1枚を手札に戻し、このカードを破壊する。

 墓地のオッドアイズ・ディゾルヴァーを手札に戻し、空いたペンデュラムゾーンにセッティングしペンデュラム効果を発動。

 手札、フィールドのカードを使ってドラゴン族融合モンスターを融合召喚する。

 フィールドのオッドアイズ・ミラージュドラゴンとオッドアイズ・シンクロンを融合!

 疾風迅雷、その二色の眼に写る歯向かう者を平伏せよ!融合召喚!

 雷の力帯し竜、オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン!」

 

オッドアイズV「ギャアアアァァァァァァァアアア!!」

       DEF3000

 

「墓地の執愛のウヴァループの効果を発動

 墓地のシンクロモンスター、X―セイバー ウェインを除外してこのカードを手札に戻す。

 モンスター効果発動によりウォルフライエの攻撃力上昇。

 

 手札より魔法カード、ペンデュラム・ホルトを発動

 このカードは自分のエクストラデッキに表側表示のペンデュラムモンスターが3種類以上存在する場合、デッキからカードを2枚ドローできる。」

 

 ウォルフライエ ATK3100→3400

 

 ドラゴンとごつい翼の生えた狼と大剣を構える魔導剣士、ここまでしておいてまだ手札が3枚

 ふざけていたり、おちょくっていたりしていたアカデミアとの戦闘では見せなかった、こいつの本気

 

 すげぇと思うし、今はすごく頼もしいが・・・

 俺は奴がカイトを見る目に薄ら寒いものを覚える。

 

「お前はさっきこう言ったな?侮辱と屈辱を晴らさずにおくべきかと・・・

 それはこっちのセリフだ。

 お前の今の在り方そのものが、大切なもののために魂を売った偏屈男への侮辱であり、俺の憧れへの屈辱に他ならない。

 だから・・・」

 

「お前たち(・・)の全てを否定してやる。」

 

 そのすべてを理解しているような瞳に




歪な白く、紅く、蒼い光
狩人と竜と聖女の思いは蟲によって繋がった。
強き光の下では陰ですらかき消される。何も見えない。なにも伝わらない。
破滅に向かおうとも、それは判らない。復讐者は止まらない。

我が戦いは遥か彼方
混沌をも覆う闇が『王の記憶』を呼び覚ます。


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王の記憶

7月中に投稿できなかった・・・くそぅ、烙印が強すぎる。
カードの効果処理の挙動がマスターで確かめれるのは楽ですね
とまぁ烙印攻略とやりたかったことのすり合わせでかなり時間がかかりましたが、エクシーズ編ラストステージです。



 ガラガラララ・・・・――

 

 異星の寄生体の大本が倒れたことにより、この地に蔓延っていた混合化生は元の人に或いは瓦礫に戻って、その消滅を告げる音が過ぎ去ると驚くほど静かになる。

 

「ほら、どうやらお前の雇い主様は打ち取られたようだぜ?」

 

「知るか!そんなことで俺の復讐を止めることもできなければ、お前に否定されるいわれもない!」

 

(あぁ・・・やっぱりか。)

 

 遊矢は理解していた、すでにカイトがパラサイト・フュージョナーの支配から抜け出していることに

 

(所詮は蟲、カイト程のデュエリストの魂を封じ込めることはできないか。)

「カードを2枚伏せ、ターンを終了する。」

 

「俺のターン!ドロー!!」

 

「永続トラップ、錬成する振動、自分フィールド上のペンデュラムゾーンのカード1枚を破壊することで自分のデッキから1枚ドローする。

 EM(エンタメイト)オッドアイズ・ディゾルヴァーを破壊して1枚ドロー。」

 

「なら俺は手札の深淵の獣(ザ・ビーステッド)ルベリオンの効果を発動する!

 手札のこのカードを墓地に送り、デッキからルベリオン以外のビーステッドモンスター1体を手札に加える!」

 

「させるか!オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴンの効果発動!

 1ターンに1度、相手の発動した効果をエクストラデッキの表側表示のペンデュラムカード、オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴンをデッキに戻すことで無効にする!

 そして、モンスター効果が発動したことで星風狼ウォルフライエの攻撃力が300上昇。」

 

 ウォルフライエ ATK3400→3700

 

「ならば、手札より通常魔法、三戦の才!

 このカードは俺のメインフェイズに相手がモンスター効果を発動している場合、3つの効果から1つを選び発動する。

 俺はこのカードの効果で2枚ドロー!」

 

「ちっ、なら俺はトラップカード、トラップトリックを発動

 デッキから通常トラップを1枚選んで除外し、そのカードと同名のトラップカードを自分フィールド上にセットする。

 俺がセットするのは闇のデッキ破壊ウイルス

 

 さらに俺のフィールドに魔法、トラップカードがセットされたことで、墓地のEM(エンタメイト)五虹の魔術師をペンデュラムゾーンに置くことができる。」

 

「まだだ!手札の未界域のビッグフットの効果!

 相手は俺の手札から1枚を選び、俺はそのカードを捨てる、その捨てられたカードが未界域のビッグフット以外なら特殊召喚し、デッキから1枚ドローする。

 ビッグフットだった場合は、相手の表側表示のカード1枚を破壊する。さぁ!選べ!!」

 

(ちっ!五虹の魔術師を失うわけにはいかない!)

「お前から見て右端のカードだ!」

 

「このカードはビッグフットではない、よって未界域のビッグフットを特殊召喚し1枚ドロー!」

 

未界域のビッグフット「ウオオオオォォアアアアアアァァァァァァァァ!!」

          ATK3000

 

「お、おい!?いきなり3000出てきたぞ!?」

 

「列車使っているお前が言うな。

 まぁ、現状だと当たりだ。ウォルフライエの攻撃力も4000になったしな。」

 

 叫びをあげる一軒家ほどもありそうな巨大な類人猿を見て慌てるアレンだが、遊矢は当然とばかりに流す。

 

 ウォルフライエ ATK3700→4000

 

「手札よりマジックカード、烙印融合を発動!

 1ターンに1度、自分の手札、デッキ、フィールドから融合素材2体を墓地へ送り、アルバスの落胤を素材とする融合モンスターを融合召喚する!

 俺はデッキのアルバスの落胤と光属性の光波異邦臣(サイファー・エトランゼ)を融合!出でよ!烙印竜アルビオン!!」

 

烙印竜アルビオン「ウオオオォォォォォォォォン!!」

        ATK2500

 

「だが、五虹の魔術師のペンデュラム効果により、魔法、トラップカードがセットされてないプレイヤーのフィールドのモンスターは効果を発動できない。」

 

「だがフィールド以外のモンスターは別だ!

 墓地に送られた光波異邦臣(サイファー・エトランゼ)の効果でデッキからトラップカード、光波防輪(サイファー・ビット)を手札に加える!」

 

「なら、その手札に加えた瞬間にウォルフライエの効果を発動!さらにチェーンし攻撃力2500以上の闇属性モンスター、涅槃の超魔導剣士(ニルヴァーナ・ハイ・パラディン)をリリースしトラップカード、闇のデッキ破壊ウィルスを発動!

 マジックかトラップを宣言し、相手フィールドの魔法、トラップ、相手の手札。相手ターンで数えて3ターンの間のドローしたカードすべてを確認し、宣言したカードの種類のカードすべてを破壊する。

 俺が宣言するのはトラップカード、さぁ!手札を見せろ!」

 

「ふんっ、手札のトラップはさっき加えた光波防輪(サイファー・ビット)のみだ。」

 

「げっ!?アルバスにヴェーラーだと!?素直に魔法にしておくべきだったか・・・

 しかし、ウォルフライエの効果でウォルフライエ自身とビッグフット、烙印竜アルビオンはデッキに戻ってもらう。」

 

「だがこれでお前の妨害の手立ては消えた!

 アルバスの落胤を通常召喚!」

 

アルバスの落胤「ふんっ!!」

       ATK1800

 

「俺の前にドラゴンを出したことを後悔するがいい!

 アルバスの落胤とフィールド上のドラゴン族、お前のオッドアイズ・ボルテックス・ドラゴンを墓地へ送ることでこのモンスターはエクストラデッキから特殊召喚できる!

 現れよ!!深淵竜アルバ・レナトゥス!!」

 

アルバ・レナトゥス「グォオオオオオオオォォォォオオオオ!!」

         ATK2500

 

 竜の力を秘めし少年が雷の力を持った二色の眼の竜を作り出した異界への穴“ホール”に無理やり取り込み、怒りの炎をまとった赫い竜へと変わる

 

「これでお前を守るモンスターもない!バトルフェイズ!!

 っ!?なぜ攻撃できない!!?」

 

「ハハハ、五虹の魔術師がいる限りセットカードがなければ攻撃もできないのだ。」

 

「くっ!?ならば、バトルを終了し、墓地の深淵の獣(ザ・ビーステッド)ルベリオンの効果を発動!

 レベル6以上のドラゴン族モンスター、アルバ・レナトゥスをリリースし墓地のこのカードを特殊召喚する。」

 

 深淵の獣(ザ・ビーステッド)ルベリオン DEF3000

 

 怒りの竜が去り、白い鎧を着たような甲殻の竜がその嘲りの表情を隠そうとせず現れる。

 

「エンドフェイズ、墓地へ送られたアルバ・レナトゥスの効果でデッキから融合強兵を手札に加えターンエンドだ。」

 

 

 

 

「・・・・なんだこれ。」

 

 アレンは目の前で行われていることに困惑していた。

 ライフを奪い合うでもなく、モンスターで戦い合うでもなく、互いのリソースとアドバンテージを奪い合うという別次元で行われる2人のデュエルに理解が追い付かない。

 だが一瞬でも目が離れれば状況が変わるという状況に彼は目を離せないでいた。


 原因の蟲の影響を外れてもカイトの周りの“ホール”の発生は変わらずか

 

「俺のターン、ドロー

 錬成する振動の効果でEM(エンタメイト)ギタートルを破壊し、さらに1枚ドロー

 魔法カード、ペンデュラム・パラドックスを発動。

 エクストラデッキの同じペンデュラムスケールで別名称のペンデュラムモンスター2体を手札に戻す。

 スケール6のEM(エンタメイト)ギタートルとリザードローを手札に戻し、リザードローをペンデュラムスケールにセッティングしペンデュラム効果発動

 EM(エンタメイト)モンスターがもう片方のスケールにいるので自身を破壊しもう1枚ドロー。」

 

 よし、使えるカードが来た。

 

「スケール1のEM(エンタメイト)バロックリボーをペンデュラムスケールにセッティング!

 これでスケールは1と12、2から11のレベルのモンスターが同時召喚可能となった。ただし、五虹の魔術師の制限によりすべてエクストラデッキからでなくてはならない。

 揺れろ魂のペンデュラム、異界への扉を開け!ペンデュラム召喚!!

 来い!レベル10、涅槃の超魔導剣士(ニルヴァーナ・ハイ・パラディン)、レベル8、EM(エンタメイト)オッドアイズ・ディゾルヴァー、レベル5、オッドアイズ・バトラー、レベル2、オッドアイズ・シンクロン。」

 

 青い鎧と大剣を持つ魔導剣士、青い炎のように輝く髪の魔法使い、黒い丸メガネの執事、帽子をかぶった玉形の信号のような姿のモンスターが虹の中から現れる。

 さて、面倒なカードを処理するか

 

「レベル5のオッドアイズ・バトラーにレベル2のオッドアイズ・シンクロンをチューニング

 二色の眼に宿る七つの星よ、流星となって降り注げ!シンクロ召喚!!

 星紡ぐ戦の竜、オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン!」

 

オッドアイズM「ギャアアァァァァァァ!!」

       ATK2500

 

「ペンデュラム召喚されたオッドアイズ・シンクロンがシンクロ素材となった場合、除外される。

 チューナーモンスター、執愛のウヴァループを通常召喚。」

 

 ウヴァループ ATK1200

 

「墓地の貴竜の魔術師の効果発動

 自分フィールド上のレベル7以上のオッドアイズモンスター、ディゾルヴァーのレベルを3つ下げることでこいつを特殊召喚する。

 来い、チューナーモンスター、貴竜の魔術師。」

 

 オッドアイズ・ディゾルヴァー LV8→5

 

貴竜の魔術師「ふん!」

      DEF1400

 

「レベル5となったオッドアイズ・ディゾルヴァーにレベル4、執愛のウヴァループをチューニング!シンクロ召喚!

 再び現れよ、星風狼ウォルフライエ!!」

 

ウォルフライエ「ワオオオオォォォォォオオオン!!」

       ATK2500

 

「エクストラデッキのEM(エンタメイト)ジェントルードの効果、手札のペンデュラムモンスター、EM(エンタメイト)ギタートルを捨てこのカードを手札に加え、さらにEM(エンタメイト)ペンデュラムカード、五虹の魔術師を手札に戻す。

 ウォルフライエの攻撃力アップは永続効果のため五虹の魔術師の効果適用中でも有効だ。」

 

 ウォルフライエ ATK2500→2800

 

「墓地のBF(ブラックフェザー)―精鋭のゼピュロスの効果を発動

 デュエル中に一度、自分フィールドの表側表示カード、錬成する振動を手札に戻しこのカードを特殊召喚。

 その後、俺は400ポイントのダメージを受ける。」

 LP4000→3600

 

 ウォルフライエ ATK2800→3100

 

「レベル4の精鋭のゼピュロスにレベル3の貴竜の魔術師をチューニング

 集いし奇跡が未知を照らす灯火となる!光さす道となれ!シンクロ召喚!

 未来へ飛び立て!シンクロチューナー、シューティング・ライザー・ドラゴン!」

 

シューティング・ライザー「ギュオオオオォォォォォォォ!!」

            ATK2100

 

赤い宝玉が装飾された白い法衣を着た少女が、黒羽の鳥人の手を取り星の光を湛える竜を呼び出した。

 

「シューティング・ライザー・ドラゴンの効果発動

 デッキからこのカードのレベルより低いモンスターを墓地へ送ることでこのカードのレベルをそのモンスターのレベル分減少させる。

 レベル4のEM(エンタメイト)ギッタンバッタを墓地に送り、シューティング・ライザーのレベルを3にする。」

 

 シューティング・ライザー LV7→3

 

 ウォルフライエ ATK3100→3400

 

「他のシンクロ素材がオッドアイズではない場合、貴竜の魔術師はデッキの一番下に戻る。

 メテオバーストはバトルフェイズ中の相手モンスターの効果発動を阻害する。

 そして、涅槃の超魔導剣士(ニルヴァーナ・ハイ・パラディン)は戦闘でモンスターを破壊したとき相手のライフを半減させる。

 あとは、残りでTHE END!バトルだ!!」

 

「甘い!!メインフェイズ終了時に手札のエフェクト・ヴェーラーの効果発動!

 このカードを捨てることで相手モンスター1体の効果をこのターン中無効にする。

 オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴンの効果は無効!」

 

「くそっ!やっとのチャンスなのに!?」

 

「想定内だ。モンスター効果が発動したことによりウォルフライエの攻撃力上昇

 そしてバトルフェイズに突入したことにより、バロックリボーのペンデュラム効果発動

 デッキから攻撃力300、守備力200のEM(エンタメイト)クラシックリボーを手札に加えこのカードを破壊する。」

 

 ウォルフライエ ATK3400→3700

 

「だがメテオバースト・ドラゴンの効果喪失により、墓地の超電磁タートルの効果が使える!

 このカードを除外し、デュエル中に一度だけ相手バトルフェイズを強制終了させる!」

 

 ウォルフライエ ATK3700→4000

 

「メインフェイズ2に入り、レベル7シンクロモンスター、オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴンにレベル3となったシューティング・ライザードラゴンをチューニング!

 集いし力が拳に宿り、鋼を砕く意思と化す!光さす道となれ!アクセルシンクロ!

 現れろ!スターダスト・ウォリアー!!」

 

スターダスト・ウォリアー「ウオオオォォォォオオ!!ハァッ!!」

            ATK3000

 

 星屑の竜を模した鎧をまとう巨人、スターダスト・ウォリアーがカイトに向けて拳を突き出す。

 スターダスト・ウォリアーが存在する以上、エクシーズやアルバの条件による特殊召喚は妨害できる。

 ウォルフライエもあと一回でデッキバウンス効果の条件を満たす。

 

「墓地のウヴァループの効果、シンクロモンスター、シューティング・ライザー・ドラゴンを除外し、ウヴァループを手札に回収。」

 

 ウォルフライエ ATK4000→4300

 

「スケール8のEM(エンタメイト)クラシックリボーをペンデュラムスケールにセッティング、カードを2枚セットしターンエンド。」

 

 光の柱にマントを着た音楽家風の毛玉が昇り、俺はターンを終える。

 アルバスの素出しは怖いがどれを除去するかは迷うはず・・・

 

「俺のターン、ドロー!

 引いたカードは黒衣竜アルビオン!これを発動しデッキから烙印カード、烙印断罪を墓地へ送りこのカードをデッキの一番下に戻し1枚ドロー

 引いたのはマジックカード、トレード・イン、俺はこのカードをセットする!」

 

 ウォルフライエ ATK4300→4600

 

 くっ、アルビオンで烙印の獣も失烙印も持ってこさせるわけにはいかないか!

 

「この瞬間!ウォルフライエの効果発動!

 ウォルフライエと深淵の獣アルビオンはデッキに戻る!」

 

「小賢しい!!リバースカード発動!トレード・イン!

 手札のレベル8モンスター星雲龍ネビュラを捨て2枚ドロー

 引いたのは強欲で貪欲な壺とオーバーレイ・スナイパー!

 

 マジックカード、強欲で貪欲な壺発動!

 1ターンに1度、自らのデッキの上から10枚のカードを裏側で除外し、2枚のカードをドローする!

 引いたのは闇黒の魔王ディアボロスと手札抹殺!

 

 墓地のネビュラを除外し効果発動

 墓地のレベル4、闇属性ドラゴン族、アルバスの落胤を手札に加え、マジックカード、手札抹殺を発動!

 互いのプレイヤーは手札をすべて捨て、捨てた枚数分ドローする。

 引いたのは禁じられた聖杯、白の烙印、教導(ドラグマ)の騎士フルルドリス、運命のウラドラ!」

 

 インチキだぁ!!?なんだその引き!!?

 

「速攻魔法、禁じられた聖杯!!

 表側表示モンスターの効果を無効化し攻撃力を400アップする!」

 

 スターダスト・ウォリアー ATK3000→3400

 

 くっ!妨害2つが対処された。

 

「墓地の烙印断罪を除外し効果発動、他の烙印カード、烙印融合を手札に加えセット

 マジックカード、白の烙印

 フィールド、手札のカードを使いドラゴン族融合モンスターの融合召喚を行う。

 さらにアルバスの落胤を素材とする場合、墓地のモンスターを除外し素材とすることができる!

 俺は墓地のアルバスの落胤と光属性のエフェクト・ヴェーラーを融合!

 刻まれし業に身をやつし、光り輝く姿を現すがいい!融合召喚!再誕せよ!烙印竜アルビオン!!」

 

烙印竜アルビオン「ギャオオオォォォォォォオオ!!」

        ATK2500

 

 灼熱のように燃え盛る輝く体の竜

 

「烙印竜アルビオンが召喚されたとき、手札、フィールド、墓地の素材を除外し融合召喚を行うことができる!

 墓地のアルバスの落胤とドラゴン族、闇黒の魔王ディアボロスを除外融合!

 刻まれし業に身をやつし、怨念は流転する!融合召喚!!

 顕現せよ!レベル8!深淵竜アルバ・レナトゥス!!」

 

深淵竜アルバ・レナトゥス「ウオオオォォォォオオオオオオ!!」

            ATK2500

 

 怒りの業火がそのまま形になったかのような竜

 

「さらにフィールド上にエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターが存在することにより、手札の教導(ドラグマ)の騎士フルルドリスは特殊召喚できる!」

 

フルルドリス「う、うおおおぉぉぉぉぉおおおお!!」

      ATK2500

 

 そして本来なら兜によって見えないはずの素顔を晒す藤の聖女

 その美貌は怒りと悲しみで無残な姿となっており、もはや鬼にしか見えない。

 

 明らかに異常さを抱えているのはフルルドリスだが、タニアやバースと同じ感覚を落胤の竜共からも感じる。

 ともすれば、やっぱりカイトと混じった精霊は、二人ともか・・・

 

「レベル8モンスターが並んだ!?まずいぜ!!」

 

「なら俺は永続トラップ、錬成する振動を発動し、五虹の魔術師を破壊し1枚ドロー!」

 

「俺はレベル8の烙印竜アルビオンとフルルドリスでオーバーレイネットワークを構築!

 闇に輝く銀河よ、復讐の鬼神に宿りて我が僕となれ!!エクシーズ召喚!

 降臨せよ!ランク8!銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)!!」

 

銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)「ォォォオオオオオオオオォォォォオオオオオ!!!」

             ATK3000 ORU2

 

 本来なら美しい蒼き銀河の輝きは赤と藤の濁った光が混ざっている。あれが今のカイトの象徴

 

「永続トラップ!ペンデュラムスイッチ

 その効果でフィールドのペンデュラムモンスターをペンデュラムゾーンに移動する

 涅槃の超魔導剣士(ニルヴァーナ・ハイ・パラディン)をペンデュラムスケールに!

 これでギャラクシーアイズの効果を使ったら、俺のモンスターは0になる。」

 

「そうしたら、その毛玉のダイレクトアタックを封じる効果を使うつもりか?だが甘い!!

 俺は銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)1体でオーバーレイネットワークを再構築!!」

 

「ちっ!?サイファー・ブレードか!?」

 

 アレンがこの状況でカイトが呼び出しそうなモンスターを予想するが、俺はそうは思えない。

 本来なら地上に空いた星空の空間にモンスターが取り込まれるはずのエクシーズ召喚だが、ギャラクシーアイズは暗雲渦巻く空を目指し太陽よりも強き輝きが爆発する。

 

「復讐の鬼神よ!銀河を覆う極光となりて、新たな姿を現すがいい!!オーバーランクアップエクシーズチェンジ!!」

 

 その輝きは地上を照らす太陽に非ず、その光は夜を照らす明かりで非ず、ただ全てを消しさるのみ

 人と竜と精霊が歪み生まれた四枚の光の翼を広げる破滅の象徴

 

「降臨せよ!銀河眼の(ギャラクシーアイズ)極光波竜(・サイファー・エクス・ドラゴン)!!」

 

銀河眼の(ギャラクシーアイズ)極光波竜(・サイファー・エクス・ドラゴン)「ギャアアアアァァァアアアアアアアァァアアアアア!!」

                ATK4000 ORU3


 敵の接近により私と避難民たちは、地下道を使って例の山寺に逆戻りすることになってしまった。

 

 その間にデカいのも黒咲もいなくなった。

 奴らを倒したのは私が前に敗北を喫したあのカイトという男

 もう一度戦いたかった。悔しくてたまらなかった。残念でならなかった。

 あの男となら、もっと胸を躍らすデュエルができたはずなのに・・・

 

「ウッぐっうぅぅ・・・・ア゛レ゛ン゛・・・アレンんんnうあああぁぁぁぁぁああ!!」

 

 などと考えていたら、殿として残ったあの男のそばにいた女が泣きわめいていた。

 

 あの男はこの場に居るものにとってひどい裏切り行為をしていた、アカデミアと内通し、レジスタンスを壊滅させた原因を作った男だ。

 恨まれて当然の男、裏切りのことを知らないにしても彼女以外の者からも、あの男のことを悲しんでいる者も何人もいることから、あの男がここにいる者たちを守ってきたのも真実だと私も理解できる。

 

「『守る』というのは、こんなにも難しいことなのか・・・」

 

――カッ!!

 

――!!?

 

 雷かと思い空を見上げれば暗雲があるはずの空が蒼と赫と藤色の光で溢れている。

 

「なんだ・・・アレは!?」

 

 街の中心、あの塔の上空に一匹の竜がいた

 光り輝く体に青と赤の甲殻を身にまとい4枚の黄金と光の翼をもつ、あの男がエースとしていたモンスターによく似た、だが異質なモンスター

 感じるのはこれほど遠くにいるのに、込められた怒りが伝わって来る。

 

「カイト・・・」

 

 涙がいまだ溢れる目でその光景を見た女がつぶやく

 仲間であるはずのあのカイトという男、彼女にとっては仲間同士で戦っているのだから気が気じゃないだろう。

 もっともあの男は蟲によって操られているようだが・・・

 

――うわっあぁぁああ!!?きゃやああぁぁぁぁ!!

 

「「!!?」」

 

 突然悲鳴が上がり振り向けば親子の前にあのよくわからない穴が出現している

 

「まずっ「危ない!!」――っ!!」

 

 私よりも先にさっきまで泣いていた女が走り出し、親子の盾になるために自らを投げ出した。

 私もデュエルディスクを起動させ、あの穴から出てくるであろうモンスターを倒すために動き出すが

 

「あっ!!」「かっとビングのお兄ちゃんだ!!」

 

「「「えっ?」」」

 

『攻撃力4000か!だがお前がスターダスト・ウォリアーの攻撃力を上げてくれたおかげでダメージは600ぽっちにしかならないぜ!』

 

『ほざけ!!俺はさらに墓地の光波異邦臣(サイファー・エトランゼ)のモンスター効果を発動!

 サイファーエクシーズモンスターが存在する場合、墓地のこのカードをそのモンスターのオーバーレイユニットにすることができる!』

 

『だぁぁぁぁ!?まずい!!カイトの墓地にはあのカードが!!』

 

「カイト!!アレン!!」

 

「なんだこれは・・・」

 

 その穴からモンスターが出てくることはなかった

 赤黒い空間が広がっているはずのその穴から何故かカイトと赤いののデュエルの様子が映し出されていた。

 

『さらに墓地のオーバーレイ・スナイパーの効果発動!

 このカードを除外し、相手フィールド上のモンスター1体の攻撃力を自分フィールド上のオーバーレイユニット1つに付き500ポイントダウンさせる!

 銀河眼の(ギャラクシーアイズ)極光波竜(・サイファー・エクス・ドラゴン)のオーバーレイユニットは4つ!キサマのモンスターの攻撃力は2000ダウンだ!!』

 

銀河眼の(ギャラクシーアイズ)極光波竜(・サイファー・エクス・ドラゴン)『ギャアアオオオオォォォォオオオ!!』

                ORU3→4

 

スターダスト・ウォリアー『ウオオオォォォオォオオオオ!!?』

            ATK3400→1400

 

 ドラゴンの周りをまわっていた4つの光から出た光線が赤いののモンスターの装甲を焼く

 

『俺はライフを1000払い、マジックカード、運命のウラドラを発動!

 ギャラクシーアイズの攻撃力を相手ターン終了時まで1000ポイントアップさせる!!

 

 さらにサイファー・エクスの効果発動!

 オーバーレイユニットを2つ使い自分フィールド上の光属性モンスターは相手ターン終了時まで相手の効果対象にならない!』

 LP4000→3000

 

 銀河眼の(ギャラクシーアイズ)極光波竜(・サイファー・エクス・ドラゴン) ATK4000→5000 ORU4→2

 

『これで小細工も通用しない!!

 ダイレクトアタックをする必要もなく貴様は終わりだぁぁ!!榊 遊矢アァアアアアアア!!

 行け!!銀河眼の(ギャラクシーアイズ)極光波竜(・サイファー・エクス・ドラゴン)!!

 『破滅のサイファーエクストリーム!!』

 

「あぁ!!」「「お兄ちゃん!!」」「ダメェェエエ!!カイトォォオオォォオ!!」

 

「いや、まだだ!」

 

 三色の光が混じり合った不気味な光のブレスが星屑の戦士もろとも赤いのをかき消さんとするが、この状況でも奴の目にあきらめは見えない。

 

『俺は手札のスモーク・モスキートの効果を発動!

 戦闘ダメージを受ける場合、そのダメージを半分にしてこのカードを特殊召喚し、バトルフェイズを強制終了する!!うぐっあああぁぁぁぁぁ!!』

 LP3600→1800

 

『遊矢!!』

  

 襲い掛かる光を遮るように黒い煙が赤いのを守り、そのあと煙は一匹の蚊の姿をとる。

 あの男のもう一体のモンスターはスモーク・モスキートの元の煙で視界を奪われ困惑している。

 

 スモーク・モスキート DEF0

 

『おのれ!!』

 

『はは・・・はぁ~危ねぇ危ねぇ、何とかなったぜ・・・

 っと、破壊されたスターダスト・ウォリアーの効果発動!

 エクストラデッキからレベル8以下のウォリアーシンクロモンスターをシンクロ召喚扱いで特殊召喚する!

 集いし星が新たな力を呼び起こす!光さす道となれ!スターダスト・シンクロ!

 来い!ジャンク・ウォリアー!!』

 

ジャンク・ウォリアー『フンッ!ハアッ!!』

          DEF1300

 

『だが運命のウラドラの効果を受けたモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊したことで、俺のデッキの一番下のカードをお互いに確認し、その後デッキの一番上か下に戻す。

 そして、確認したカードがドラゴン族、恐竜族、海竜族、幻竜族モンスターだった場合、その攻撃力1000に付き1枚俺はドローし、ドローしたカード1枚に付き俺は1000ライフを回復する!』

 

『カイトのデッキの一番下のカードは!?』

 

『そう!黒衣竜アルビオン!攻撃力2500!

 このカードを再びデッキボトムへ戻し、2枚のカードをドローし2000ライフを回復!そしてドローしたカードは!!』

 LP3000→5000

 

『禁じられた一滴!!?』

 

『っ!!?オネストぉ!?』

 

 禁じられた一滴は手札、フィールドのカードをコストに相手のモンスターの攻撃力を半減させ効果を無効にするカード

 オネストは戦闘時、光属性モンスターの攻撃力に対峙したモンスターの攻撃力を加えるカードだったか?

 そうなると赤いのは、現状、新たなモンスターを出しても効果を止められ、戦闘においては絶望的な差があることになる。

 

「くっ!!このままでは!!」

 

「お兄ちゃん!!」「ねぇ!どうにかならないの!!」

 

「カイト!お願い!やめてよ!!」

 

 いつの間にかこの光景を見せている穴は他にも出現し、みんなが二人のデュエルの模様に見入っていた。

 あぁ、歯がゆい・・・こんなもの見せられたって何ができるというのだ!!

 

――縺ァ縺阪k繧!!

 

 ん!?

 

――螢ー繧貞ア翫¢縺ヲ!!

 

「なに?今の・・・?」「声?」

 

 他の者も皆、聞こえたようだ。何を言っているかわからないはずの謎の言葉だったが

 

「でも!」「うん!聞こえた!」

 

――声を届けてって!!


(あ~マジかよ・・・ここにきてオネストと禁じられた一滴だとぉ・・・

 幸いペンデュラムができる手札でニルヴァーナのペンデュラム効果でギャラクシーアイズの攻撃力を減らしていくことはできるが・・・

 今エクストラにいる中で最高攻撃力はディゾルヴァーの2000、プリーストでつり上げもできるがそれで呼び出せる最高戦力はジェントルードの1800・・・)

 

「カードを1枚伏せ、エンドフェイズ、このターン墓地へ送られた烙印竜アルビオンの効果でデッキから烙印と名の付くトラップカード、烙印断罪をセットする!

 俺はこれでターンエンドだ!」

 

(ペンデュラムは烙印断罪で止められる。

 そのあとモンスターを出しても一滴で最低一枚は効果無効・・・)

 

「俺のターン、ドロー。」

(ツイン・ツイスターか、これなら。)

「手札を1枚捨て速攻魔法、ツイン・ツイスターを発動!

 フィールドの魔法、トラップカードを2枚まで破壊する!

 お前のセットされた烙印断罪と禁じられた一滴を破壊させてもらう!」

 

「なら俺はチェーンして、アルバ・レナトゥスと烙印断罪を墓地へ送り禁じられた一滴を発動!

 相手フィールド上の効果モンスターを墓地に送ったカードの数だけ選び、そのモンスターの攻撃力をターン終了まで半分にし、効果を無効にする!

 俺が選ぶのはジャンク・ウォリアーとスモーク・モスキート!」

 

 ジャンク・ウォリアー DEF1400

            ATK2300→1150

 

(何とか妨害は越えたが、スモーク・モスキートは機能停止

 今の手札ではギャラクシーアイズの攻撃力を削ることしかできないし、クィーン・ドラグーンでアンセリオンくらいか・・・

 いや、対象不能じゃオネストで良くて相打ち、カイトのライフが残ってしまう。

 カイトの中の精霊をそれでどうにかできるか・・・)

 

 遊矢はカイトに取り憑いている精霊をどうするかを考えていた。

 遊矢はその正体を知っている。その結末を知っている。だから復讐などしない二人だろうということを知っている。

 だが、その物語に少しでも綻びがあればあのような姿になるということも理解できる。

 

(聖女を助けられなかった2人か・・・カイトの意識はこちらに向けることはできるが、精霊側にアプローチできる方法が現状、手持ちの精霊らしいカードで攻撃するしかないのは、奴らを分離する方法として合っているのか・・・

 っていうか、なんだかさっきの攻撃から“ホール”が増えすぎじゃないか?)

 

『カイトォォ!!』

 

――!!?

 

「サヤカ!?」

 

『負けるなよ!赤いの!!』

 

『『かっとビングのお兄ちゃん頑張って!!』』

 

「この声は・・・」

 

――何やってんだカイト!!

――仲間同士で戦うなんて変だろ!!

――頼む!カイトの目を覚ましてくれ!!

――そんな怖い顔いやだよ光のお兄ちゃん!!

 

 “ホール”から聞こえる様々な声、カイトを思う声、遊矢に託す声、応援する声、心配する声――

 様々な思いが2人に投げかけられる。そして

 

『カイト様!!』

 

「!!?オー・・・ビタル?」

 

(オービタルの声に反応した!?

 “ホール”からの・・・しかもなんだかこの“声”心に響いてくる!)

「こんなこと、できるのって・・・」

 

「「エク・・レ、シア・・・?」」

 

 奇妙な現象の言葉がカイトの口から、いやカイトの口を通して呟かれる。

 カイトに宿った二人の精霊を思うものの名を

 

「!!・・・なるほど、白の聖女様か・・・

 錬成する振動の効果発動!クラシックリボーを破壊し1枚ドロー!・・・このカードは・・・・・」

 

「どうしたんだ、遊矢?」

 

「いやなに、アイツらを思っている奴らはまだまだいるみたいなんでな!

 俺はさらに墓地のシャッフル・リボーンの効果を発動!

 墓地からこのカードを除外し、自分フィールド上のカード、スモーク・モスキートをデッキに戻し1枚ドローする。」――ドクンッ!

 

 遊矢がデッキトップに手をかけた瞬間、胸が跳ね上がる。

 本能的に感じる緊張、触れてはいけないもの、禁忌を犯そうとしている感覚で手が止まる。

 

繧ェ繧、繧ェ繧、縲√>縺??縺九=縲??菴呵ィ医↑繧ゅ?繧呈?昴>蜃コ縺吶◇?

 

「・・・ふぅ・・・・それは勇気をもって一歩踏み出すこと・・・

 それはどんなピンチにも決して諦めないこと!

 それはあらゆる困難にチャレンジすること!!

 俺が何者であろうと!!俺がしたいことは変わらない!!それが、俺の!!」

 

 謎の幻聴の問いに道化は決意する。それが自らの謎に挑むことであろうと

 

「俺の!!!かっとビングだああぁぁぁ!!ドロオオオオォォォ!!」

 

 勇者の言葉が彼の覚悟を決める。

 

「俺はスケール2の降竜の魔術師をペンデュラムゾーンにセッティング!

 これでスケールは2と8!ペンデュラム召喚!エクストラデッキから来い!レベル5、EM(エンタメイト)オッドアイズ・バトラー!」

 

 オッドアイズ・バトラー DEF2100

 

「一体だけだと!?何を考えている!!」

 

「なぁにお前に物申したいゲストがいるんでねぇ?

 俺はレベル5のジャンク・ウォリアーとオッドアイズ・バトラーでオーバーレイ!

 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!!

 海を切り裂け!猛々しき鮫の巣よ!現れろ!シャーク・フォートレス!!」

 

――ザバアアァァァァァン!!

 

 シャーク・フォートレス DEF1800 ORU2

 

 混沌から浮上するのは巨大な鮫型母艦

 だがその効果も攻撃力も現状を変える力を持つモンスターでないことに、困惑の波紋が広がる。

 

「そして、このカードを発動する!魔法カード、ペンデュラム・エクシーズ!!

 自分のペンデュラムゾーンのモンスター2体を効果を無効にし特殊召喚し、その後、レベルを片方にそろえてエクシーズ召喚を行う!」

 

「ペンデュラムゾーンのカードでエクシーズだと!?」

 

 涅槃の超魔導剣士(ニルヴァーナ・ハイ・パラディン) ATK3300

 降竜の魔術師      ATK2500 LV7→10

 

「レベル10の涅槃の超魔導剣士(ニルヴァーナ・ハイ・パラディン)と降竜の魔術師でオーバーレイ!

 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!」

 

 青と赤の光となった2体のモンスターが闇の中に飛び込み、光の爆発が起きる

 

「無限の闇に浮かぶ我が記憶よ、偽りの光を切り裂く刃となれ!エクシーズ召喚!!」

 

 地上の夜空の闇から鎖で雁字搦めにされた一本の剣がせり上がる

 その剣は封印、失われし記憶の鍵

 

隕壽ぁ縺ッ縺?>縺?

 

 その剣は証、王としての責務

 

蠕梧綾繧はできないぞ

 

 道化が剣に手をかけると、鎖に罅が入る。

 

「あぁ・・・」

 

 鎖は砕け剣が引き抜かれ王がそれを掲げる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ≪<◎>≫   

 

 

 

 

 

 

 

 

覚悟はできたか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

できてるよ!!

 

 刃が展開し2本の剣となって宙を舞う

 2本の剣は青と赤の光を纏い何度もぶつかり合いながら交差し大きくなっていく

 

「刻まれし傷は戦いの歴史!」

 

 そして剣が分離し変化した巨大な盾に傷がつき

 

――パシッ!

 

 剣の一本を漆黒の闇が掴む、それはどんどん実体化していき荒々しい騎士の姿をとっていく

 

「繋がる世界、重なる思いが、大いなる希望となる!!」

 

 銀で縁取りされた闇色の鎧、たなびく白銀の兜飾りと真っ赤なマフラー

 左腕の盾にもう一本の剣が最後の傷を付けると、その戦士を象徴する『ナンバー』が刻まれ輝き。

 

「出でよ!No.(ナンバーズ)XX(ダブルエックス)!!」

 

 もう一本の剣が腰に装着され、赤い『X』が胸に輝き、戦士の目に碧の光が力強く宿る 

 

インフィニティ・ダークホープ!!

 

ダークホープ「ホォォォオオプ!!

      ATK4000 ORU2

 

 あるはずのないその存在は名を告げられそれを肯定するように咆哮し、この地に降臨した。

 

No.(ナンバーズ)、だと?」

 

「攻撃力4000のモンスター!

 だけど、ギャラクシーアイズの攻撃力は5000だ。しかもオネストが!」

 

「フィールドの降竜の魔術師を素材にしたモンスターはドラゴン族モンスターと戦闘する場合、ダメージステップ時に攻撃力が元々の攻撃力の倍になる。

 そして、このターン、効果の優先権は俺にあるため、たとえオネストの効果で攻撃力が上がっても上昇値は4000だ。」

 

「いや!それでも向こうは9000になるだろ!?」

 

「さぁドラゴン退治と行こうか!

 シャーク・フォートレスの効果をダークホープに対して発動し、EM(エンタメイト)ゴムゴムートンをペンデュラムゾーンにセッティング。

 ついでにダークホープの効果で俺のライフをシャーク・フォートレスの攻撃力分回復してバトルだ!」

 LP1600→4000

 

 シャーク・フォートレス ORU2→1

 

「話を聞けー!!」

 

「行け!インフィニティ・ダークホープ!銀河眼の(ギャラクシーアイズ)極光波竜(・サイファー・エクス・ドラゴン)を攻撃!!

 さらにゴムゴムートンのペンデュラム効果も発動。」

 

ダークホープ「フンッ!!ハァァ!!」

 

 ダークホープは腰に差したもう一本の剣も手に取り二刀流でギャラクシーアイズに向かっていく

 

ホープ剣XX(ダブルエックス)スラッシュ!!

 

 ダークホープの一撃目は軽く一閃、これをギャラクシーアイズは腕で受け止め

 だがその為に空いた脇腹を狙い切り上げるがギャラクシーアイズは避けるために距離をとる。

 

「無駄なことを・・・ダメージステップ計算時に手札のオネストの効果発動!

 自分の光属性モンスターが戦闘を行う場合、相手モンスターの攻撃力を自身に上乗せする!

 返り討ちだ!消え失せろ!!」

 

「だが、こっちも降竜の魔術師の効果で攻撃力が倍加する。」

 

銀河眼の(ギャラクシーアイズ)極光波竜(・サイファー・エクス・ドラゴン)「ギャアアアァァァァァァアアアアア!!」

                ATK5000→9000

 

ダークホープ「ウオオオオォォォォオオオオオォォオオオ!!」

      ATK4000→8000

 

 間合いを取ったギャラクシーアイズの翼に赫、蒼、藤の光が翼膜として現れ、それに対しダークホープも自身に宿った竜殺しの力が解放され、銀の縁取りが黄金に輝きだす。

 

 ギャラクシーアイズがダークホープに向けてブレスを吐き出すと、ダークホープは剣を一本回し投げ、残った一本を両手持ちで構えブレスを避けながら接近、先に投げていた剣と同時に切りかかる。

 だが、幻想最強の存在であるドラゴンにとってブレスなど攻撃方法の一つにすぎず、強力無比なのは己が肉体も同じである。

 ギャラクシーアイズは即座に体をひねり強力なテールスイングをダークホープに叩き込んだ。

 

ダークホープ「ウォオオォォ・・・!!」

 

「ぐぅううぅぅ・・・

 だが、ゴムゴムートンのペンデュラム効果により、ダークホープは破壊されない!そして!!」

 LP4000→3000

 

 地面にたたきつけられそうになったダークホープをゴムゴムートンがその身を膨らませてエアクッションのようになって救う。

 そしてその弾かれた勢いを利用してダークホープは空中に待機しているシャーク・フォートレスに搭乗する。

 

「シャーク・フォートレスの効果により、ダークホープはこのターン2回目の攻撃ができる!」

 

ダークホープ「フンッ!!タアアァァァァァァアア!!」――バシュンッ!!

 

 シャーク・フォートレスのカタパルトで加速し無限の闇の騎士が銀河の光の竜へと向かっていく

 

「だけどそれじゃ!?」

 

「無駄なことだ!!ギャラクシーアイズの攻撃力には及ばない!!」

 

「それはどうかな?これが俺の勝利の方程式!!墓地のタスケルトンを除外して効果発動!

 デュエル中に一度、攻撃を・・・・無効にする!

 

タスケルトン「タスケルートーン!!」

 

 2体の間に割り込む豚の骨、ダークホープは剣でその骨を叩き、その反動を利用してギャラクシーアイズよりさらに上に飛ぶ

 

「なんだと!!?」

 

 遊矢とダークホープの奇行にカイトは驚愕するが、ギャラクシーアイズにも驚愕することが起こっていた。

 

銀河眼の(ギャラクシーアイズ)極光波竜(・サイファー・エクス・ドラゴン)「ガッ!?」――ガキンッ!!

 

 なんとダークホープの手放した剣が自分の顎を打ち据えてきたのだ。だがそれだけでは終わらない。

 

――ヒュンヒュンヒュンヒュン!!ガキンッ!!ヒュンヒュンガキンッ!!ヒュンヒュンヒュンヒュン!!ガキンッ!!ガガキンッ!!ガガガキンッ!!

 

 物理法則などお構いなしに2本の剣は回転を止めずに何度も何度もギャラクシーアイズに向かって飛んできてギャラクシーアイズをその場に縫い付ける。

 

「何が、起こっている!?」

 

「バトルがまだ終わってないのさ。

 速攻魔法!ダブル・アップ・チャンス!!」

 

 ダークホープは自身の腕に括り付けていた盾を手に持ち替えると、2本の剣はギャラクシーアイズの下からダークホープの下へ向かい盾と合体、漆黒の巨剣となる

 

「モンスターの攻撃が無効になったとき、そのモンスターはもう一度バトルすることができ、さらにダメージステップの間、そのモンスターの攻撃力は倍になる!」

 

「っていうことは、降竜の魔術師の効果でさらに倍になるから!!」

 

「ダブル・アップ・チャンスの効果にチェーンして降竜の倍化

 元々の攻撃力の倍のさらに倍となり、攻撃力は!!」

 

 漆黒の戦士の力が強まるにつれ目では捉えられないほどの光が集まっていき、その鎧の輝きは白くなる。

 

ダークホープ「ウオオオオォォォォオオオオオォォオオオ!!!

      ATK4000→8000→16000

 

 

 

「16000だと!?」

 

「お前たちへの思いを希望に変えてこの一撃に込める!!」

 

 闇の巨剣は内包された無限の闇の力で場所も空間も世界も超えて光を集め、暗雲を貫く巨大な刀身を作り出す。

 

「ホープ剣・・・インフィニティ!スラアアァァアァァァッシュ!!!

 

ダークホープ「フンッ!!ハアアアァァァァァッァアア!!!」

 

 振り下ろされたその一閃で街を覆いつくしていた暗雲は吹き飛び、偽りの光を宿した銀河の竜も、歪な復讐鬼も光の奔流に飲まれていった。


 光の中から何者かが歩いてくる。

 薄い金の髪に白銀の鎧をまとう少女。

 誰かわからないはずなのに守らなければならない、救わなきゃいけない大切な人

 

蟶ー繧阪≧(帰ろう)!」

 

 よくわからない言葉だった。言語すらなのかわからなかった。それでも理解できた。差し出された手以上の意味はない。

 この少女は迎えに来たのだ。

 

 あぁなぜ忘れていたのだろう。俺たちの物語を

 

 俺の中にいたやつらは彼女の手を取る。アルバスの落胤と教導(ドラグマ)の聖騎士 フルルドリス

 奴らの向かう場所には片翼の鳥人やウサギの獣人の姉妹、よくわからん目玉やロボットなど様々な奴らがいた。

 俺から離れていくたびに、向こうに近づくたびに2人の姿も変わっていく

 アルバスは少し成長した姿、フルルドリスは黒いドレス姿に・・・

 

 そうか、奴らには復讐などではない物語があったのか。それなのに俺は・・・

 

 下っ端をいくら倒しても好転などしない。かつての仲間に嚙みついたところで何も変わらない。

  今更裏切り者をどうにかしたところで・・・

 そんなことはわかっていた。奴が言うようにそんなことをしている場合じゃないということも、それでも俺は!!

 

「すまなかった・・・俺の復讐に付合わせたりして・・・」

 

 3人は俺の言葉に振り向き、怒りを向けるべき二人は微笑んでいた。そしていつの間にか服が見すぼらしい旅装束に変わっていた聖女はある方向を指さす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――兄さん

 

「!!?」

 

 聞き間違えるはずがない。そして確かに嘘じゃない声

 

 そこにいたのは水色の髪の少年

 俺が自分の命よりも守りたかったもの、守れなかったもの

 

「ハル、ト・・・?」

 

「うん。言いたいことはいっぱいあるけど、時間がないみたいだから手短に言うね。」

 

 ハルトは目いっぱいに笑いながら

 

「すぅ、待っていて、兄さん!兄さんの居場所が僕の居場所だから!!約束だよ!!」

 

 俺が『今』守るべきものを示してくれた。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ト・・・カイト!おい、カイト!!しっかりしろカイトぉ!!

 

(気を・・・失っていたのか?)

 

「目を開けろよ!カイト!!」

 

「・・・五月蠅い。」

 

「カイト!!?目が覚めたのか!?おいみんな!!」

 

 光の中から帰還した復讐者の下に多くの人々が集まってくる。

 

「カイト!!」「カイト!!」「目が覚めたか!」

 

「お前たち・・・」

 

 サヤカやユート、レジスタンスのメンバー、それだけではなく復讐者がカードにしてしまった黒咲

 その全員が心配、歓喜、安堵・・・

 復讐者に対する負の感情は一切なく、ただ復讐者を思う感情だけが向けられていた。

 その中、一つだけ異様な視線を向けるのは

 

「よぅ。」

 

「・・・榊 遊矢。」

 

 瓦礫の上に腰掛ける不敵な笑みを浮かべる少年

 復讐者の恩師の息子、侵略者から悪魔と恐れられた男

 

「復讐するには今がちょうどいいんじゃないか?」

 

「・・・・・・」

 

 目の前には許されざる裏切り者、その周りにはそいつの大事なもの

 許せない。裏切り者に絶望を。復讐を遂げるとき。

 そんな些細な声が聞こえてくるが

 

「ふん・・・俺にそんなことをしている暇はない。」

 

 狩人は悪魔の声を聞かなかった。

 最愛の弟と約束をしたのだ。約束をして帰ってきたのだ。

 だから最愛の弟と、尊敬する父と、師と、多くの仲間たち、彼らが帰る場所を守る。

 それが狩人の新たな誓い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうか・・・なら、うん、頑張れよ。」

 

 碧の目の王はその誓いを受け止めた。




荒れ狂う海にその身で飛び込むわけにはいかず、ただ立ち止まることは時間が許してくれず、彼らは誓いと、使命と、希望を胸に箱舟による航海を決行する。
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『託される希望、融合次元へ突入せよ。』
あぁ、我が王の旅路に幸あれ


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