転生して、カーディナルさえ検知できないチートを手に入れたから、ゲームクリアしてくる。 (恭華)
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アインクラッド攻略編
第1層・キリトなんていなかった。


いい加減、オルタナティブと大罪を書けって聞こえる。


あ、これ、俺死んだな。

 

学校帰りの通学路、俺は信号無視スピード超過過積載のトラックに轢き殺された。

体の潰れる感覚ってこんな感じなんだな。

そんな馬鹿みたいな思いを抱きながら、この世に未練も思い残しもない。 だから安らかに逝けるかなと考えていたのだが、どうやら神様はそう簡単に死なせてたまるか、という神様だったようだ。

 

 

 

風の音、豚のような鳴き声で目を覚ます。

 

目の前にあるのは、青色の体毛に覆われた、機械的な赤い瞳を持つぶ……イノシシ。 その体の上には黄色いダイヤの様なものと、フレンジーボアの文字。

視界左上には自分の名前の別読であるSeimei。 本名はハルアキ。その右には緑色した謎のバー。 多分HPだろう。

そのほかにも色々とあるが、とりあえずは目の前のイノシシからどうにかしよう。 完璧こちらをロックオンしている。

 

三十六計なんとやら。 全力ダッシュを決め込み、フレンジーボアというイノシシから逃走を計る。

幸いにも、イノシシはこちらを追うことはせず、群れの方へと戻って行ってくれた。

 

そこでようやっと休憩することが出来、ゆっくり周りを見渡す余裕が生まれた。

とぎれとぎれになってはいるものの、緑萌ゆる草原。

その上で走り回るフレンジーボアの群れ。

とぎれとぎれになっている理由の浮島。

浮島の上空にある三日月と太陽が合わさったような物体。

 

こんなにわかりやすい物が沢山あるのに気が付かない方がおかしいと言えるだろう。

ここは浮遊城アインクラッド。

ここはVRMMOの世界。

ここは、ソードアート・オンライン。

 

「あの事故で、世界線を移動でもしたのかな……」

 

苦笑いじみた声を上げながら、自分の体を見回す。

武器は本物みたいだが、映画やアニメなどで、名前のない兵士Aさんが持っていそうな業物でもなんでもない片手用直剣。

特筆することの無い皮の胸当。

麻の服(上下)

バリバリの初期装備と言うやつだ。

 

どうしようもないな、と思いつつも、ここがSAOならば、こうすればメニューが開けるはずだよな、と人差し指中指を揃えて右手を振る。

すると、鈴のような音がなり、メニューウィンドウが表示される。

メニューをスクロールしていけば、歯車のマークが出てくる。

本編であれば、茅場晶彦以外のプレイヤーは、ログアウトボタンが消失している。

俺も例外ではないようで、ログアウトボタンは無くなっている。

 

まぁ分かってはいた。 実際、そんな予感もしていたし。

諦めて再度死ぬか、この世界でゲームクリアを目指すか。 どちらにしても、この後少ししたら茅場晶彦の演説が始まる。 それを聞いてからでもいいだろう、そう思いながらメニューをスクロールさせて行く。

 

「……チートコマンド?」

 

メニューウィンドウの真ん中、装備と書かれた項目の下にチートコマンドなる項目がある。

ここがちゃんとしたSAOなら、カーディナルに処される様な項目が、何故か俺のメニューウィンドウに出現している。

うーむ、と腕組ながら開くか悩んでいたが、結果的にはその項目をタップしてツリーを開いてみれば、ステータス改変、アイテム改変、アバターリメイカーなどなど、本来であればあるはずのない物が次々にウィンドウに表示された。

試しに、とステータス改変の項目をタップしようとした時、空が紅く染まり、EMERGENCYの文字で埋め尽くされ、次の瞬間には、視界が青白く染まり、始まりの街転移門の前に強制転移させられていた。

 

 

長ったらしい茅場のオープニングセレモニーが始まる。 SAOがデスゲームになったこと、既に何人も死んでいること、100層にいる茅場を倒せばゲームクリアだということ。

なら、俺は、このチートを使って希望と欲望に溢れたゲームライフを送ろう。

それを楽しみ終わったら、ゲームクリアしてもいいだろう。

 

これからの毎日が楽しみだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

あの(俺以外の)絶望の日から2ヶ月が経った。

経験値ブーストチート以外は使わず地道にレベリングに勤しみ、今では安全マージンを大幅に飛び越える、レベル35になった。

装備等はこの層で集められる最強の装備、ベーターやチーターだと思われる可能性があるが、まぁチーターだから何も言わない。

 

それはいいとして、今日はボス討伐会議だ。

そのため、俺はトールバーナに来ている。

 

「はぁー……人がいっぱいだなぁ……」

 

最前線の街なのに、こんなに人がいっぱい居るとは思っていなかった。

野外コンサート会場みたいなところが会議場らしいため、そこに行き、階段状になっている石に座る。 位置はキリトが座るはずだった席。

俺の横にはフードを被ったアスナが座る。 それを見計らってか、青髪の青年が現れ

 

「それじゃあ始めさしていただきまーす!

俺は、ディアベル。 気持ち的に、ナイトやってます!」

 

ジョブシステムなんてないだろー、と最前列からヤジが飛ぶが、ディアベルは笑ってそれを受け流す。

それからは原作と同じように進んでいき、キバオウがちょぉまってんかーをして、それにエギルが食いつく。

 

それを欠伸混じりに見ながら、俺はメニューウィンドウを開く。

無論、開く物はチートコマンド。 他人に向けて使ったことは無いが、今のアスナなら、誰にも告げ口したりとかはないだろう。

そんな甘い考えを抱きながら、脳操作と書かれた場所をタップ。

対象を選択してくださいと表示された一覧を見れば、周りにいるPCが表示される。

迷わず俺はアスナを選ぶ。 その際に、ユナやサチといった名前が見受けられたが、今はいいだろう。

 

横目でアスナを見れば

 

「あっ……」

 

と声を漏らして項垂れ、倒れかける。

それをやさしく受け止めてやってから、表示されたウィンドウを見れば、発情値、興奮値等、感情から習慣、記憶まで、グラフやタップすれば変えられるボタンで表示されていた。

手始めに感情を見てみる。

絶望などの負の感情はそれなりにあるが、負けない、という思いもあるようだ。

手始めに、絶望などの負の感情のグラフを下げ、恋愛感情、愛情? と書かれたグラフを最大に引き上げる。

引き上げれば備考欄が表示された。 そこに、最初にみたプレイヤーを好きになる、と書き込んでから、一度チートコマンドを閉じる。

 

アスナは直ぐに目を覚まし

 

「あれ……寝ちゃってた……?」

 

と呟いてから目の前に座っている俺の方を見る。

すると、好き、と言って俺に抱きついて来た。




久しぶりだから書き方がわからない……


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第2層・アスナを使ってチート検証

チート検証タイム。 エッチシーンは次回かその次かな?


「しゅきっ♡」

 

あー……目がハートになってる。

いやまぁ、こんな美人に好きと言われるのはいいが、討伐会議中ずっと俺の腕を抱きしめている。

後ろに座っているから、周りに何かを言われることはないが、ディアベルはんがちらっ、ちらっ、とこちらを見てくるのがなんとも落ち着かない。

 

まぁ、それはいいのだが、アスナの胸が腕に当たって倫理コード使用していないのに股間がぼっきんきん。

鎮まれ我が息子よ。

 

「ねぇセイ君、大好きだよ……♡」

 

「それはいいけど、攻略会議聞こうぜ……?」

 

「うん、セイ君が言うなら♡」

 

清明ですが、読み方はハルアキです。

……それはいいとして、俺名前言ってないよな。

アレか、チートを使用すれば頭の中に色々詰め込まれるのかな?

うーぬぬ、と首をかしげながら考えていたのだが、いつの間にか会議は終わっており、ディアベルが俺の目の前に歩いてきていた。

 

「やぁ、俺はディアベル。

君達は取り巻きのコボルト達を倒してもらうって話をしに来たんだけど、大丈夫かい?」

 

「あぁ、いやすまない。 俺は、セイメイ。

あぁ、それは構わない……のだが、本当にごめんな?」

 

「よろしく。

……それは構わないよ。 こんなデスゲームになってしまったんだから。

死なないように気を張っていると、疲れちゃうからね」

 

優しい好青年のディアベル。 だからキバオウと酒を飲み交わすことが出来るのね。

とりあえずアスナを左腕に抱き着かせたまま、ディアベルとコボルト達の処理の話をし終え、また明日、と挨拶を交わしてからその場を後にした。

 

 

 

「さて、アスナとパーティを組み終わったし、宿屋取るかぁ……」

 

「一緒に泊まりたいけど、大丈夫……?」

 

「騒がしくしなければ大丈夫」

 

トールバーナの街を、柔らかいおっぱいを堪能しながら練り歩く。

第1層の街といっても、貧困に喘ぐNPCとかはおらず、清潔な街並みだ。

 

大通りを進んでいけば、外観は良さそうな宿屋を見つける。

大通り奥の方に噴水広場があり、そこでディアベルとキバオウが酒を飲みかわしているようで、その宿屋に入る前にキバオウが大笑いしているのが聞こえた。

 

 

 

「2名様でよろしいですね?」

 

「あぁ、部屋は1つでいい」

 

「かしこまりました。 では、そこの階段を上がって、一番奥の部屋へどうぞ」

 

受付のおばちゃんNPCから鍵を受け取り、腕に抱きついたままのアスナを伴い、指定された部屋へと向かう。

 

部屋に入ってからメニューを開き、俺はパンツだけを残して武装解除。

見せるようなものでもないが、細マッチョの部類だと言っておこう。

アスナにも全裸になるように命じれば、嬉しそうに頷いて全裸になった。

だが羞恥心が残っているのか

 

「恥ずかしい……」

 

と顔を赤くしたまま前を隠している。

 

まぁ、それはいい。 チートの実験台としてそういう羞恥心は残っていた方がわかりやすい。

ベッドに座りながら、メニューウィンドウを呼び出し、チートコマンド内のアバターリメイカーを選択。

対象はもちろんアスナ。

 

アスナを選択すれば、彼女の後ろに3枚の鏡が出現。 背中も見やすいようになったのはいいが、UIがもうカスタム〇イド。

わからない人に言うなれば、左側に上から頭、顔、体、服……とボタンが並んでおり、それらのうちひとつをタップすれば、並んでいるボタンの横に新しいウィンドウが開き、押したボタンに関連したデフォルトのパーツが表示される。

パーツ類の下には自分でカスタマイズすることの出来る数字があり、それを弄れば、顔の幅からクリトリスの長さや太さまで調整可能。

体型のセーブ&ロードも可能なため、もしミスってもロードすればいい。 ので先にアスナの体型をセーブ。

それから体型の欄をタップし、身長のバーを見てみる。

アスナの身長は-100~200中42。 そのバーを-52位まで下げてみれば、柔らかいおっぱい等は変わらず、身長だけ110cmくらいになった。

 

「ロリ巨乳っていいよね」

 

「?」

 

「……いや、なんでもない」

 

アスナは今の自分の状況を見ても悲鳴すら上げず、ただただ首を傾げているだけ。

それを見て苦笑いをしつつ、今度は胸の欄をタップ。 胸の大きさは、0~200cmとあり、アスナは80cm

それを弄って150に設定すれば爆乳に。

 

胸の欄をスライドさせていけば、母乳のオンオフが出来る欄が現れ、面白そうだと試しにタップ。 すると、アスナが母乳が出てきてる…… と言った。

それを聞き、嬉しそうにしていれば、母乳に関しての欄が追加された様で、甘さ、量等が増えたみたいだ。

 

「体はこれでいいかなぁ。 アンバランスだけど……」

 

110cmの幼女に150cmの爆乳。 だがまぁ外に出ないから今はこれでいい。

アバターリメイカーのウィンドウを閉じ、ステータス改変のウィンドウを開く。

レベルは一層にしては高いが、レベリングブーストを使っていた俺よりは低い。

細剣スキルが1番高く、次いで体力スキルが高い。 一層のアスナは、死に進むような戦い方をしていたようだ。 キリトがいたから料理スキルとかを上げるようになったみたいだ。

 

まぁ、それはいいとして、アスナの細剣スキル(最大値が1000)を100まで上昇。 ソードスキルをリニアーからリップ・ラヴィーネまで習得。

体力スキルを70まで上昇。 HPが7000位まで上昇しており、常時リジェネスキルが付与され、1秒で2000回復するぶっ壊れ性能になった。

次に料理スキルをカンストさせ

 

「明日から、俺だけに美味しい料理を作ってくれ」

 

とアスナに言えば、全裸のまま嬉しそうに微笑み、もちろん! と頷いてくれた。

アイテム改変を使ってS級食材出さないとなーと嬉しそうなアスナを見て、思ってしまった。

 

「スキルはこの程度でいいか。 次は?」

 

「うーん、新しい細剣が欲しいかなぁ……」

 

だそうだ。

とりあえずはこれでいいだろうと、アイテム改変の欄をタップして、5層上の細剣をアスナに与える。

それを嬉しそうに受け取るアスナ。

ロリ巨乳に武器を持たせる俺はどうかしてる気がするがまぁ……

 

「とりあえずは、明日のコボルトロード戦の準備は完了。 後は休むだけだけど……アスナはどうする?」

 

「うーん、お風呂入りたいなぁ……」

 

だろうな。

だがこの宿にお風呂は無い。 それをアスナに告げれば、絶望したような顔をして、入りたかったなぁと呟いている。

制作スキルを上げてお風呂でも作るか……?




自分ではなく、アスナがチーターって言われそうだなあ。
まぁ、そーなったらそーなったら。

4/17 スキル熟練度は最大1000です


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第3層・ボス戦Gill Fang The Cobalt Load

英語の綴りだとこうなるのね、コボルドロードさん……
感想や評価などなど、色々ありがとうございます! 1文字1文字正座して読ませて頂いております感謝です!


昨日、お風呂作ろうとしたけどダメだったから不貞寝した。

 

それはそれとして、今日はボス戦。

時計を確認すれば、集合に行く時間よりも二時間早く起きてしまった。

周りを見渡せば、アスナはいない。 だがメッセージが来ており、それをタップすれば

 

『朝食を作ってきます。 起きたらここの食堂に来てね?』

 

と書かれていた。

いい嫁になるだろうなぁ。

 

朝のトイレやそういった処理が必要ないのは楽でいい。 目が覚めたらそのまま放置で問題ないからな。

ヌかないと精神的に辛い時はあるが、まぁ……どうにかなるか。

一応記録位は……あ、そう言えば。

このゲームには開始直後から使われることの無くなったNPC、メンタルヘルスカウンセリングプログラムというものがある。

読んで字のごとく、精神異常をきたしたプレイヤーのケアをするプログラムなのだが、さっき言ったように使われることがないプログラムなんだ。

 

それを有効活用しようとチートコマンドを開き、なにかカーディナルシステムに干渉できるものはあるかなー、とスクロールさせる。

ぶぁー……と色々MODを詰め込みすぎたMine〇raftみたいな有様が流れていく。

下の下の下にやっと目的の『カーディナルシステムの書き換え』というボタンにたどり着く。

 

後に何が起こっても知らない、と半ば適当にそのボタンをタップすれば、最初は数字の羅列が乱舞していたが、少し経てば、数字の羅列が文字へと変わっていく。

モンスターのポップ率とかレアアイテムのドロップ率など、自分や他人単体ではなく、ゲーム自体のバランスをいじれるようだ。

その中にMHCPと書かれたボタンを発見。 それを躊躇なくタップ。

すると名簿のようなものが出現し、上からMHCP001、MHCP002、MHCP003……と11体のメンタルヘルスカウンセリングプログラムがあるようだ。

全て非アクティブ状態になっているため、誰も稼働していない事が明らかだ。

とりあえずは001と002の非アクティブと書かれたボタンをタップしてアクティベート。 それから横に書かれた強制呼び出しボタンをタップ。

 

転移門のようなエフェクトが起こり、転移してこようとしているのだろう。

転移し終わる前に脳操作のボタンをタップ。

プレイヤー欄の他にNPCの欄が新たに出来ている事に気が付き、少し驚くが今はいいだろう。

プレイヤー欄にMHCP002、NPC欄にMHCP001が新たに表示され、いじることが可能になった。

それと同時に転移が終わったのか、白いワンピースに肩甲骨位までの長さをもつ黒髪の幼女と、プレイヤーの初期装備を纏った薄紫のショートカールのお姉さん(巨乳)の2人が現れ、ゆっくりと目を開け

 

「ポチッと」

 

る前に脳操作のウィンドウに出てきた2人の名前をタップ。

目を開けずに項垂れ、暗示を待つ様な状態になったのを見てから、とっとと備考欄へとスクロールしてしては、そこに『ご主人様はセイメイ』『ご主人様に言われることはカーディナルシステムより上位の命令』『死んでこい、自殺しろとかは受け付けない』『それ以外なら、自分で肉体を変化させたりして命令を完遂しなければいけない』と書き込んでから、好感度を(アスナみたいにならない程度に)上げて、脳操作のウィンドウを消去。

ゆっくりと目を開けていく2人を見守りながら、当初の目的である俺の息子の記録をつけさせるか悩んでいる。

 

「問おう、貴方が私のご主人様?」

 

「何を言っているんですか……?」

 

薄紫の髪の女性がアホ毛の王様みたいな事を呟き、それにツッコミを入れる幼女。

芸としては残念だが、とりあえずは「そうだ」と言っておく。

すると、幼女の方がパァッ……! と音がしそうな程嬉しそうな顔をして、女性の方が幼女にジト目を向ける。

 

 

 

 

 

「私はユイと言います。 こっちが妹のストレア」

 

ユイと名乗る黒髪の幼女は、姉にしか見えない豊満なおっぱいをもつ女性を妹と言った。

 

「じゃあ、ユイがMHCP001?」

 

「はい、そうです」

 

つまり番号順なわけだ。

とりあえずは2人の関係と今の俺との状態は確認した。

 

じゃあ次に……と言い出そうとした時に

 

「まだ寝てるの?」

 

とアスナが部屋に踏み込んできた。

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~

あの後、アスナに弁明をして、ユイとストレアの滞在について認めてもらった。

もちろん、ストレアはプレイヤー枠なので、狩りで稼いで、宿代は入れて、とアスナに命じられていた。

ユイは見た目幼女だから、と無条件で受け入れていたが。

 

そんなこんなで、迷宮区ボス部屋までの道のりを歩いている。 無論ストレア付き。

 

その最中、取り巻きのコボルド共の狩りに関してをアスナやストレアに教えて。

 

「あ、そうだディアベル!」

 

最後列にいる俺が、最前列にいるディアベルに声を掛ける。

なんだい、と同じような音量で返してくれるディアベルに

 

「ゲージが3本切った辺りから、野太刀を使うっていう情報が入った」

 

原作ではその通りになったため、嘘では無い。

ちゃんとクエストクリアしたらそういう情報が入った、ということも伝えた。 クエストクリアしてないけど。

 

「そうか……分かった。 みんな聞いての通り、HPのゲージが三本切った辺りから、武器を持ち替えて野太刀を使うらしい、コボルドロードと当たるメンバーは覚えておいて欲しい」

 

キバオウ辺りから、んな情報信じられへん、という声が聞こえてきたが、無視でいいだろう。

どうせ後で分かることになるんだし。

 

言う、ということが大事なんだ。

ディアベルを殺させずに済ます為に。

 

 

 

そんなこんなで迷宮区を突破し、ボス部屋の前に到着。 各々自分の武器の調子を確かめていく。

片手剣を素振りするディアベル、斧を取り出して担ぎ直すエギル、フードを被ったままで腕に抱きついているアスナ、後ろから抱きついて楽しそうにしているストレア。

……うん、後半2人は何やってんだと突っ込みたくなるがまぁ……

諦めた調子でストレージを弄り、今現在でゲット出来る武器の中堅程度の強さをもつ片手剣、アニールブレード+8と、キリトが原作で、ラグーラビットを仕留めた時に使っていた銀の爪楊枝みたいなピックを取り出す。

 

「2人は武器出さなくていいのか……?」

 

「一応、始まる時には出すよー」

 

「もう、用意は出来てるんだ」

 

との回答。 さいですか、と頷くしかないが、まぁどうとでもなるか。

 

 

 

「みんな、準備はいいな?

このボス戦、勝って帰るぞ!」

 

おぉぉぉ!! と周りの声を聞きながら、おー、と軽く拳を上げるに留める。

が、ストレアがどこかの重巡洋艦的なぱんぱかしそうな手の上げ方をしたせいで、後頭部におっぱいがぶつかり、地味に痛い。

 

ストレアに文句を言っている間に、ディアベルがボス部屋の扉を押して中に入っていっていた。

それに続いて俺達も突入して行き、左翼に展開。

右翼は別なチームが、中央はディアベル達が担当だ。

 

「まーたラストアタック取ろうとしなきゃいいが……」

 

少し心配なのがそれだ。

レベルの高い俺達は苦もなくコボルド共がPOPした瞬間にアニールブレードを振るい、首を跳ね飛ばし、四肢を切り飛ばし、鎧をつらぬき、頭を押しつぶしているが、右翼はそうも行かない。

ちょいちょいダメージを受けながら、どうにかこうにか押し返してる感じだ。

 

「攻撃パターンが変わるぞ!」

 

コボルドを切り殺しまくり、コルをがっぽがっぽ稼いでいる最中に、やっとHPバーを三本終わらした様で、攻撃パターンが変わるとディアベルが叫ぶ。

 

コボルドロードが手に持っていた手斧(扱いはメイス)と盾を投げ捨て腰に取り付けてあった野太刀に手を伸ばす。

このタイミング、実は無敵タイムなわけじゃないのに、周りのみんなは動かない。

ウォークライという怯みや攻撃力アップを付与するスキルがあるが、それを使用した形跡もなし。 ちょっと見ていられなくなった俺は、周りにバレないように、腰のベルトに付けていたピックを引き抜き、コボルドロードの目ん玉に向けて投擲。

大きな悲鳴と赤い血飛沫のようなエフェクトを撒き散らしながら後退し、野太刀を振り回しながら玉座にぶつかり、腰を玉座に落として野太刀を振り回すのが止まるコボルドロード。

 

「俺が行く!」

 

それを見逃さずに突貫するディアベルとキバオウ。

ついでに、ディアベルが死にそうだなぁと思った俺。

 

「自分左翼任されとったやろが!」

 

「知るかボケェ! 死亡フラグおったてやがったディアベルに文句を言え!」

 

「えっ、もしかして俺知らないうちに死亡フラグ建ててたのか?」

 

「「この無自覚フラグ建築士めがぁっ!!」」

 

ディアベルを2人で虐めながらディアベルを先頭に突撃するバカ3人。

片目が潰れたコボルドロードは、迫り来るバカ3人を粉砕するために、玉座から飛び上がり、周りに設置された柱を飛び回る。

 

一瞬ディアベルが止まってしまい、それに合わせて背後からコボルドロードが飛び込んで来た。

だがもちろん、背後には俺とキバオウがいる。 振り抜かれた野太刀を逸らすように弾き、スイッチと叫ぶ。

 

「だらっしゃぁぁぁぁ!!」

 

その掛け声に合わせて気迫たっぷりな雄叫びを上げて野太刀をもつ右腕に切り込むキバオウ。

 

「ここだぁっ!」

 

トドメと言わんばかりに、コボルドロードの脳天に片手剣を突き刺すが、ギリギリ削りきれず、切り落とせていない左手に頭を掴まれる。

 

「もし俺がいなかったら、こうはなってなかっただろうな」

 

コボルドロードが掴んでいるディアベルの下、腰を落とし、深紅に染まるアニールブレードを構え、ロケットエンジンの様な音を出し、一気に突撃しコボルドロードの腹を容赦なく消し飛ばす。片手剣単発ソードスキル・ヴォーパルストライク。

 

着地するのと同時に、ディアベルを落として、ポリゴンの欠片を撒き散らし爆散するコボルドロード。

 

なんかもう最終決戦感を出しながら、腰にぶら下げている鞘にアニールブレードを仕舞う。 少しの沈黙の後、わぁぁぁっ!! と大歓声がボス部屋に響き渡る。

 

「あぁ、これがあと99層続くのかな……」

 

疲れた、と言いながら、ディアベルやキバオウと拳をぶつけ合う。




わーい、初4000文字。
電池きれそうだから割と焦って投稿してます。 何故こうなった。
晴明君はクール系で行こうとしたのに熱くなりそう……


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第4層・いい加減、えっちなことをしたいんですが?

ダメだ、アスナとストレアを同時期に出しちゃったから交われなくなってる。
だってほら、ストレアとヤろうとするとアスナが止めるし、アスナとヤろうとするとストレアが一緒にヤりたいって言って割り込んできてアスナが止めちゃうでしょ?
……∑(ºωº`*)ユイとヤれb(殴)

感想、栞、評価、諸々ありがとうございます!
オルタナティブや大罪以上に見てくださる方が多くて嬉しい限りです。拙すぎる文章ですが、最終章まで頑張って描きますので、どうかお付き合い下さいますよう!


ディアベル、キバオウと共に第一層ボス、イルファング・ザ・コボルドロードを倒したのが2ヶ月前。

今俺とアスナ、ストレア、ユイは21層の主街区で宿を取っていた。

 

「で、俺はなんで拘束されてる訳?」

 

その宿の一番いい部屋のベッドの上にて、俺はアスナに拘束されていた。 無論ユイは(全裸で)寝ている。

事後とかそういう訳ではなく、俺が寝ていたところにユイが(全裸で)侵入して来ただけだろう。

それなのに俺を拘束する2人。

 

「ユイちゃんと、シたんだよね?」

 

「してないです……」

 

「ほんとーに?」

 

「し、してないです……」

 

「じゃあ、ユイちゃんの周りにあるこの白いペースト状のものは何?」

 

「……モンスターかなにかじゃない?」

 

いや本当に俺は何もしていない。

確かに俺は現世……というか前世ではロリコンでもあった。 二次元のロリだけだが……

まぁ、それはいいとして、俺はただぐっすりと眠っていただけで、ユイが部屋や布団に侵入してきたことも知らないし、ましてやユイと繋がったりもしてない。 これ本当にエロ小説だよな、って首傾げるくらい何もしていない。

それなのにユイのアソコからは白いモノが出てるし、周りにはソレが散らばってるし……圏内殺人並のミステリーですわ。

 

「ぺろ……あ、これ砂糖どっさり溶かした水だよ?」

 

「「へ?」」

 

「だって、物凄く甘いもん」

 

しれっとユイのアソコに指を突っ込んで掻き混ぜてから引っこ抜き、それを舐めるといった行為をするストレア。

その行為に、狸寝入りを決め込んでいたユイが甘い声を漏らし、目を覚ましたフリをする。

 

「むぅぅ……おはようございます……」

 

じっとりとした目をストレアに向けながら挨拶をするユイ。

おはよう、と返すが、ユイのジト目以上にジト目をする俺とアスナ。

ユイから目を逸らし、アスナの方に向ければ、アスナは気まずそうに目をそらす。

 

「……まぁ、とりあえず今はその事については不問にします。 ユイもちゃんとその中の砂糖水を掻き出してから反省して、アスナも早とちりしないように」

 

説教とかは苦手なため、今は、と強調しながら自力で縄を切る。 というかSTR値が結構高めだから引きちぎるの方が正確か。

 

縄を引きちぎってから、装備欄を開き、クエストを受けに行く用意をする。

装備は、キリトと同じように黒……ということはなく、森の中や洞窟等暗い場所で発見されにくいパターンの迷彩柄。

一層で手に入れたコート・オブ・ミッドナイトも同じ色に染色している。

それに盾無しの片手剣。 片刃の装飾など一切ない、光を反射しない鋼の直剣、銘をレヴナント。

 

ストレアはボンテージというかツナギというか……バイクのおねいさん方が着るような……ライダースーツみたいな服を着ており、大きい胸が強調されている。

武器は両刃の両手剣。 こちらも華美な装飾はされておらず、どっかの炎の紋章の主人公が使いそうな感じの両手剣。 銘をラグナス。(ギリギリアウトな気がしたのは内緒)

 

アスナは……今は放置だから気にしなくていいか。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

「よォ、元気カ、セー坊」

 

クエスト場所へと向かっている途中、背中から声が掛けられる。

この特徴的な声はネズミだな、と苦笑いしながら声をかけられた方へと顔をむける。

 

「まぁまぁだな。 アルゴこそ元気か?」

 

そこには、黄土色で統一された服を着て、顔には鼠の髭の様なペイントをした、見た目少女な金髪、情報屋、ネズミのアルゴがそこにいた。

 

「マァマァだナ。 それデ、セー坊は正妻である姫サマを置いて何処にいくんダイ?」

 

「正妻言うな。 まだそんな関係じゃねーしな。

……とりあえずはクエストを受けに行こうとしてるだけだよ」

 

脳みそ弄って改造しまくってるのに正妻じゃないって何様だと言われそうだが、気にするな。

 

「フムフム、噂になってるアレカ?」

 

「ドレカ?」

 

「アレだよアレ、教会の前に刺さってる剣の話」

 

どこの王様の話かと思ったが、それがちゃんとクエストになっているらしい。

アルゴによれば、その剣は誰にも抜けずに今も教会の前に残っているらしい。

それの前に立てばクエスト開始、離れればクエスト放棄となるみたいだから、楽といえば楽なのか?

 

「マァ、抜けるなんて誰も言ってないからナァ……セー坊もヤルだけヤリに行ってみなヨ」

 

まぁ、それでもいいかと頷き、アルゴに情報料を送金。

礼を言いつつその場を後にす

 

「抜けたら連絡くれヨー?」

 

る時にアルゴがいい笑顔で手を振っていた。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~

その教会は寂れていた。

 

その教会の前には、台座に刺さったままの剣があった。

 

誰にも抜かれずに忘れられた剣があった。

 

 

「なにあれ?」

 

「さぁな、どっかの王様になる運命だった人間が、人間をやめ、王になる事を選んだ聖別の剣とかそんなんだろ」

 

ストレアに問われ、そんな感じのものだろう、と告げながら、ゆっくりと近づいていく。

周りには人はおらず、教会も手入れされている気配はない。

ゲームの中なのに、ホコリ被っているように感じてしまう。

だがこの剣は、その中で最も異彩を放っている。 抜きたいなぁとは思っていても、これは抜ける類のものでは無いと分かっているが、ストレアが挑戦すると言って聞かないため、仕方なくそれを見守る。

 

「ふぬぬぬぬぬっっ……!!」

 

力いっぱい引っ張っても抜ける気配はない。

それで諦めたのか、項垂れて戻ってくる。

 

「やっぱり無理だったぁ……だからセイメイが代わりに抜いてよ!」

 

無茶を言うな、と言いたかったが、まぁチャレンジしてもいいかなと思ってしまった。 ストレアがチャレンジしてるんだから、と。

 

チャレンジしなければ良かったなんて後になって思ったが、今の俺にはどうしようもなかった。

 

剣の前に立てば、『王選の剣』と書かれたクエストが自動開始になり、その剣へとアクセスすることが出来るようになる。

その剣の柄をつかみ

 

「よい……しょっっ!」

 

ストレアが抜けないなら俺も抜けないだろうと思いながらも、力いっぱい引き抜こうとする。

地面に根を張った木を引き抜くような感覚を覚悟していたが、思いのほか軽く抜けてしまった。

こう……すぽーん、という感じに。

 

抜けちゃったよ、とストレアの方を見れば、嬉しそうな顔をしながら拍手してくれる。

仕方なく苦笑いして返しながら、クエストクリアのファンファーレを聞く。 本来ならファンファーレと同時にクエスト報酬のウィンドウが出現する筈なのだが、今回は何故かスキルウィンドウが出現。

そこに新たなスキル【騎士王】という未知のスキルが追加された。

1層の頃、チートで色々見たはずなのだが、【騎士王】なんてスキルは見たことがない。 【二刀流】や【神聖剣】、【弓】なんてものも同様だ。 【神聖剣】は俺と同じようなチートだが……。

 

スキルウィンドウを消去すれば、次いで報酬ウィンドウが開き、武器の名前が表示された。

見た目はヒースクリフのあの剣に似ているのだが、鍔の幅が広く、刀身、鍔、柄に掛けての紅い十字も無い。

銘は、カリバーン。

 

「まんまじゃねぇかいい加減にしろ!」

 

「き、急にどうしたの?」

 

「いや、悪い……王選の剣と聞いた時点で嫌な予感はしてたんだけどさ、本当にアーサーアーサーしそうだよ……」

 

はぁ……とため息を吐きながら、近寄ってきたストレアに報酬内容と愚痴をこぼす。

お疲れ様、とチートを使って少し大きくしてある胸に抱きしめられる。 母性がある子って、癒されるよね……とユイやアスナに言ったらシメられそうな事をストレアの胸の中で呟く。

 

擽ったそうにするストレアに離すようお願いをして離してもらい、目の前の寂れた教会にストレアを連れて中に入る。

中は外ほど寂れておらず、割と可愛いシスターのNPCがお祈りをしていた所だった。

こちらから話しかけなければ反応しないNPCは置いておいて、教会の奥にあるシスターや神父(牧師?)が寝る場所へと突撃する。

そこには幸いにもNPCすらおらず、色々やるにはうってつけだった。

簡素な作りの部屋だが、柔らかそうなベッドがあるのを見れば、ストレアをお姫様抱っこしてからベッドへ向かう。

その際、「わひゃっ!?」と聞こえたが気にしないでおこう。

ベッドに降ろしてから

 

「そろそろ、限界なんだ……いいかな……?」

 

「もちろん……♡」

 

あんまり風情の無い言い方だったが、ストレアは二つ返事でOKを出してくれた。

 

二人一緒に装備全解除をタップし、1番下の方にある倫理コード解除をタップ。

見えなくなっていたモノがゆっくりと現れ、えっちを可能にしてくれる。

 

「えっと……まずは胸だよな……」

 

「どーてー……♪」

 

童貞と微笑むストレアに、うるさいとジト目で呟いてから、優しく胸を掴む。

実際どうやって気持ちよくさせればいいか分からないから、チートコードのウィンドウを表示、アバターリメイカーを使用し、ストレアから母乳を出るように変更。 乳腺を母乳が通る度に絶頂しそうな程の快楽が押し寄せてくると備考欄に書き込めば、それを適応させてからウィンドウを閉じる。

 

「な、なんか、変な感じが……?

何かしたの……?」

 

胸を気にしながら問いかけてくるストレアに、母乳を出るようにしたと告げて。

それを聞いたストレアは顔を赤くして逸らしたが、身体は正直だった。

 

胸を鷲掴みにしたまま、優しく搾るように乳首まで手を閉じたり開いたりを繰り返す。

ぴゅるっぴゅるっと母乳を出し始めたストレアは、下唇を噛み、絶頂してしまうほどの快楽に耐えているが、俺の動かし始めた息子がストレアのおまんこに触れると、ビクンっ、と体を震わせて。

 

まだ濡れていないのを確認しつつ、息子を動かしセンズリを開始。

クリトリスに当たるように動かしてるからか、それとも俺の我慢汁の影響か、すぐにそこが濡れ始めて。

鷲掴みにしていた手を離し、センズリ中のクリトリスへと伸ばす。

その手の代わりに自分の首を動かし、ストレアの母乳を吸い始める。

甘い甘い母乳を飲んでいると、赤ん坊になってしまった様な感覚を覚えるが、まぁ……。

 

「んっ……そろそろぉ……♡」

 

まだ赤ん坊シチュを続けていたかったが、もうおまんこに欲しいと言われてしまえば、仕方ない、とセンズリをやめ、おまんこに息子の先を押し当てる。

そのまま容赦なく奥まで突きこもうとするが、処女膜や膣圧がそれを邪魔する。

 

「い゛っ……♡」

 

処女膜をぶち破ってしまった影響で、少し痛そうにするストレア。

ストレアの肩の上あたりに置いていた手でストレアを抱きしめてやれば、「嬉しい……」と抱き締め返してくれる。

痛みを半減させないまま、ゆっくり強く腰を動かして行けば、そろそろ絶頂しそうになる。

それが分かったのか、「私もっ、一緒にっ……♡」

と健気にも共に絶頂へと登ろうとするストレアの膣内、子宮口を強く刺激し始め、ゆっくりと絶頂へと登っていく。

 

「膣内にっ……♡」

 

膣内に出してくれという言葉と共に、子宮の中に精液を吐き出す。

それと同時に絶頂へと至るストレア。

 

 

 

初めての経験は、ゲームの中でした。




毎度のことだけどこういうえっちなことはむいてないというあれだだれかべつな人に書いてもらって……
だめだな、それじゃあ俺の作品じゃない……
でも、勢いで書いてもだめだしなぁ……ストレアとかユイとかシリカとかリーファとかフレイヤさんとかとえっちしたいなぁ……


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第5層・雪原に咲く百合の花

タイトル格好つけてるけど、実際格好つくか分からないです。
私の文章量じゃたかが知れてるだろうし……

UA28000名、お気に入り549件、その他もろもろ、ありがとうございます!
電車の中なのに構わず叫びだしそうになってます!


ストレアを主街区の宿屋に帰しながら、アルゴへ

 

『あの台座に嵌っていた剣のクエスト、クリアした。

詳細とかはなんもわかんないけど、台座は消滅したし、クエストログも無くなっている。

その代わり、その剣とユニークスキルが手に入った』

 

まぁこんなものでいいだろう、とメッセージを送信する。

さてスキル検証がてら迷宮区にでも、と教会から出ようとした所でアルゴから返信が来た。

 

『なんだっテ!? おいセー坊、ガセネタじゃないんだよナ!?

……マァ、セー坊は嘘はつかないカ……分かっタ、名前とかは出さずに手に入れたヤツがいるって情報、流していいカ?』

 

チートをアルゴに使っていないから、嘘をつかないと信じてくれているということは純粋に嬉しい。

とりあえずOKの返事と情報料払って、という冗談をメッセージにしたためて送信。

 

『またこんどナ』

 

と返ってきたメッセージを閉じながら、その教会を立ち去る。

そこからの迷宮区までの道のりは長く、砂漠と雪山という全く逆の環境が横たわっている。

 

踏破する程度には問題ないが、キャンプ狩りしたりするには精神が持たない。

まぁ、俺やアスナ達のレベリングはチート使ってるから、キャンプ狩りとかする必要が無い。 うは、BANされそう。

 

という訳で、俺達は安全マージンを15は軽く飛び越えている。

まぁ、経験値ブーストしているだけだから、前線にいられるんだけどね。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

「さっむい……」

 

踏破するくらいなら、と大見得を切っていたが、踏破するだけでもどちゃくそ寒い。

コート・オブ・ミッドナイトは耐熱耐氷耐雷その他色々耐性あるはずなのだが、鍛え方が違うのだろうか……

 

さすがにさっみい、という事でアイテムチートのウィンドウを呼び出す。 耐寒コートとか何かないかなとこの層まで限定で検索してみれば、ちょいモコモコしたコートが検索に引っかかった。

それを物質化してみれば、ちょいモコモコしていて暖かったのだが、女用なのである。 流石に男の俺が着るには小さいというか恥ずかしいというか……

 

それをストレージにしまいながら、迷宮区へと向かう。

……だがまだまだ塔は見えてこない。 というか、吹雪のせいで前が見えない

 

「寒い! 寒すぎる!」

 

もう耐えられないとばかりに近くにあった洞穴へと飛び込み、周りに人がいないことを確認してからアバターリメイカーを開く。

 

男がダメなら女になればいいという暴論を振りかざしながら、自分のアバターデータをセーブ。

このまま女になってもいいが、見た目クール系で筋肉質な俺がそのまま女になれば、クールビューティではなく、クーズブーティーになってしまう。

だからまずはストレアのデータをロード。

胸と股間以外はストレアと全く同じのアバターになる。 それをいじり、髪はカール無しの肩甲骨までのロング、目は深緑、身長は152位に変更して。

顔の形をユイと俺とアスナを足して3で割った感じにして貼り付ければ、素体の完成。

性別を変えれば、体、というか頭に少し負荷がかかり、頭が痛くなる。 だがそれも少しの間だけで問題は無く。

 

女の子の体へと変化すれば、性器の形も変更出来るため、胸をストレアに、おまんこはユイに、だがクリトリスは俺の、つまり息子を取り付ける。

チートだからこそできるふたなりと言うやつだ。

 

それで完成。

終わったぁ、とアバターリメイカーを終了すれば、装備していた服は全て脱げてしまい、更に寒い事になってしまうという誤算はあったが、暖かい装備を着ることができ一安心。

身体が暖かくなるホットココアのような物の素、普通のポット、焚き火替わりになる燃えるけど燃えない木材、コップ、最後に牛乳の5種類のアイテムを取り出し、ポットに牛乳を入れて、燃えるけど燃えない木材の上で温め始める。

 

パチパチと木の燃える音を聞きながら、アイテムチートのウィンドウ、しかも女物の装備を眺めており。

 

やはり女の子になったのだから、汚い格好より、可愛らしい格好がいいだろう、という事だ。

あまり派手すぎるのは嫌いだから、落ち着いた感じがいいと贅沢を言いながらスクロールして行く。

……この層までの服で、可愛らしいものはあまり無かった。

とりあえずは、膝上、ニーソ履いた時に絶対領域が出来るくらいの短さの黒地に赤チェックのプリーツスカート。

中は薄紫のキャミソールだが、その上にやっぱり黒地に、右胸を交差点にした赤い十字のセーター。 その上にブレストプレートを装着し、さっきのもふもふコートを着る。 寒いから今はこれでいいと言い聞かせながら、温まっている牛乳へと手を伸ばし……空をきる。

 

「あー……温まるぅ……」

 

空を切った手を引き戻しながら、声の主へと目をやる。

そこには、水色の吟遊詩人のような格好をした、茶髪の少女が俺のココアを飲んでいた。

 

「ご馳走様でした♪」

 

「おいこらてめぇ俺のココア返しやがれ……!」

 

見た目可愛いが中身ちょっと図々しい感じの少女。

前線域のフィールドに出ることは無いはずの歌姫。

中層ではシリカとは別のアイドル、歌姫として名を轟かせる。 名をユナ。

 

「あー……えっと、ごめんなさい……♪

お礼……というかお詫びに、1曲、貴方の為だけに……っていうのはダメかな……?」

 

「ダメです」

 

「うぅ……」

 

歌で身体が暖まるか、という意味を込めて言ったのだが、本気で落ち込むユナ。

 

「あ、そうだ」と自己紹介を始めるユナに、自分の名前を教えようとするが、今この見た目だし……と頭を一瞬抱えそうになるが、まぁいいか、と頭を振り、セイメイ、と自己紹介をして。

 

「セイメイって男らしい名前……もしかして、男の人のアバター使ってたのかな……?」

 

1人で勝手に想像を始めるユナをジト目で見つめながら、脳操作チートを使用。

周りにはユナの名前しかないのを確認してからユナを脳操作状態にして。

 

かくん、と目に光がなくなり、体全体をだらんとさせた状態になったのを確認してから、『セイメイが言った事は常識』『皆に歌を送り続けるが、セイメイには愛を送り続ける』『セイメイの嫁候補の1人として恥ずかしくない振る舞いを』と暗示のように脳に刻み込む。

ついでにステータスとかも死なないようにしなければ、とステータス改変を開き、アスナたちと全く同じステータス上昇値に。

蛇足で、アバターリメイカーを使って胸を大きくし、乳首を常時勃たせた状態にして。

 

これでOK、と開いていたウィンドウを閉じれば、ビクンっ、と肩を揺らし目を覚ますユナ。

 

「あ、あれ……寝ちゃってた……?」

 

「あー、寒いから寝ちゃうのか……転移結晶使って帰るか?」

 

「……ううん、勿体ないし、吹雪が止むまで待とう?」

 

ユナはぷるるっ…と肩を震わせ、両手に吐息を吹きかける動きをしている。

見ているこっちが寒くなってきたので、今俺が着ているコートをアイテムチートを使ってアイテム化してからユナに被せて。

 

いいの? と聞かれれば、寒そうにしている子に渡さないのも酷いやつだと思うし、と目を逸らしながら返す。

 

「ありがとう……」

 

その言葉を残して、眠りに落ちるユナ。

結局眠かったのかと苦笑いしながら、新しいココアを作るための材料を出し始めて。



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第6層・砂漠に突き立つ信念の槍

タイトル格好つけてるけど、実際格好つかないPart2
槍を使うキャラは1人しかおらんじゃろ?

ごふっ……こ、こんなにも沢山の方に見ていただけるなんて……
UA40000人突破、お気に入り600人突破……嬉しい……



眠い……眠いけど寝る訳には行かねぇ……

ここで寝たらユナが死ぬ……

 

……いやまぁ、ここを圏内に設定すれば問題ないんだろうけど、怪しまれそうだし、フィールドに圏内なんて出来ないしな……

 

「……じぃ……」

 

あー、クソ寒い。

ユナが目を開けていてガン見してきている気がするが寒すぎて幻覚が見えているんだろう。

そうだ俺は今宿屋で眠っていて夢を見ているんだこれは夢だ絶対そうだアスナとストレアとユイに囲まれて爆睡しているんだじゃなきゃこんな気持ちいい感じにならないだろ違ったら違ったらでいいけどもし本当なら朝チュンしてからしっぽり

 

「これ、完璧にキマってない……?」

 

パァン、という音と頬にくる衝撃に目を覚ます。

ハッと我に返る衝撃に目を瞬かせると、目の前には心配そうな表情のユナがそこにいた。

 

「大丈夫……?」

 

「オールオッケーとは言わないが、大丈夫だ……変にトリップしちまってた……」

 

ユナの一撃が無かったら、多分そのまま寝てしまっていたかもしれない。

ユナに感謝をしながら、一度主街区に戻るか、と提案してみれば、寒いから賛成、という声が返ってくる。

投げ出していたアイテム類を仕舞ってから、カリバーンを装備。 それから、ユナに今現在で手に入る武器や防具をアイテムチートで取り出してから渡していく。

 

ユナに渡したのは、今の吟遊詩人のような装備では無く、DTを抹殺しようとする服とレヴナント、その他軽鎧だ。

 

「忘れ物はないな? じゃあ行くか」

 

着替え終わったユナを見て、行けると判断してから、洞穴を出て外の様子を確認してみる。

吹雪はやんでいるが、まだまだ雪は降り続いている。

 

もこもこのコートのおかげで寒さはシャットアウト出来てはいるが、ケツが冷たい上にスースーする。

さっきまではあんまり気にしてなかったけど、女の子ってこんなに心許ないんだな……

 

そんな心許ない感覚を抱きながら、ユナと共に主街区方面へと歩き出していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

何時間か何分か分からないが、ようやく砂漠が見えてきた。

 

「あと少しで砂漠だから、用意だけはしといて」

 

と言いながら、砂漠の方へと歩いていく。

蜃気楼の様に揺らめいている砂漠へと足を踏み入れれば、先程までの寒さが嘘のように暑くなり、砂漠用の服装へとチェンジする。

……と言っても、俺はニーソを夏用に変え、ポンチョを羽織るだけ。 ユナも似たような感じのにゴーグルを付け足した程度だ。

そんな砂漠装備に着替えてから、再度行軍を開始する。

 

 

 

砂漠ステージ限定の状態異常に、脱水症状がある。

夏場とかによくなるアレ。

それにならないために、水入りのボトルを交互に飲み回しながら進んでいくと、どこかから悲鳴が聞こえてくる。

ユナに目を向ければ

 

「助けに行こう」

 

と言われた。

無論そのつもりだと返してはDEXをフル稼働させてその悲鳴の場所へと急行する。

無論ユナも俺についてきている。

 

少し遠いが、悲鳴の出処に着けば、4人男の1人女の子という逆ハーレムという感じのパーティが砂漠ナーガやマミー、その他砂漠原産のモンスターに襲われているのが見えた。

2人、3人と殺されていく姿に、自分もこうなるのでは、と震えながらも、勇敢に戦おうとする両手槍を持つ少女と他の男。

ここからだと後2人は死ぬかもしれないと思いながらも、その場所へと向かってひた走る。

 

その場所へ到着するなり、腰に吊り下げているカリバーンを引き抜き、片手用直剣重突進ソードスキルヴォーパル・ストライクの構えを取り深紅では無く、白銀のエフェクトを撒き散らし、自身の周囲に浮遊する複数もの剣の幻想を見る。 1人殺された。

【騎士王】専用片手用直剣重突進ソードスキル、アロンダイト・ストライク。

無意識の発動なのだが、それでも1人だけでも助けられるのならば、と無理にソードスキルを止めようとはせず、システムアシストに身を任せる。もう1人も殺された。

 

残った少女までの40m弱の距離を白銀を纏って飛翔。

周囲に展開していた複数の剣は、その射線上にいたモンスターを抉り切り飛ばしながら進み、俺自身も弾丸となりその少女を囲むモンスターを消し飛ばす。

 

群青の髪の少女の前に着地し、何も言わずにその子に背を向ける。

少女は泣いていた。 絶望もしているだろう。 死にたいのかもしれない。

だが俺は何も言わない。 何を言ったところで、俺は彼女の苦しみ、悲しみは分からない。

例えチートを持っていたとしても、1人だけ残ってしまった少女の心の傷を奪うことは出来ない。

……出来ないが、それを屈服、克服するための時間を稼ぐことは出来る。

 

ユナも、砂山から駆け下りてきて俺の隣に立ち、モンスター共にこの少女は触らせない、と闘気を漲らせている。

 

AI制御のモンスターが、一瞬怯んだように見えたのは気の所為だろう。

じりじりと間合いを詰めてくるモンスターに対し、俺はカリバーンを、ユナはレヴナントを構える。

 

 

 

俺たちを囲むモンスターの群れに穴はなく、逃げ道は無くなった。

だが、逃げる必要はない。 モンスター共が消えるまで殺し穿ち砕き裂き続ければいい。

四角を描くように切る、片手用直剣四連撃ソードスキルバーチカルスクエアの構えを取り、スキルを発動。

本来は青のエフェクトを放出するが、今度は黒銀のエフェクトを発するカリバーン。

【騎士王】専用片手用直剣四連撃ソードスキル、ガラティニア・スクエア。

カリバーンの鋒の延長の様に連なった剣を振るえば、ムチのようにしなることはなく、一体の剣の如く四角に敵を切り裂く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~

何体くらい倒しただろうか。

数えることも面倒くさくなってきた辺りで、青髪の少女は槍を砂の地面に突き立て、それを支えに立ち上がる。

 

「怖いけど、みんなの元に行きたいけど……でも、自殺なんかしたら、みんなに合わせる顔がない……だから、だから……!」

 

「私は……戦う!」

 

ようやく吹っ切れたようだ。

少女は顔を上げ、仲間を殺したモンスターへと目を向ける。 その目に涙や消しきれていない絶望、後悔はあるものの、自暴自棄や焦燥といったものはなかった。

 

背中を向けていた俺とユナに背中を向け

 

「守ってくれて、ありがとうございます……

……えっと、あんな啖呵切った後ですけど、一緒に戦って貰えませんか……?」

 

「あぁ、吹っ切れたらむしろこっちからお願いしようかと思ってたところだよ!」

 

くははっ……と獰猛な笑みを浮かべながら少女の誘いを受け入れる。

流れるようにパーティに招待すれば、それを承諾する少女。

名はサチ。

 

「…よろしくお願いします……!」

 

「あぁ、よろしく……敬語はなくて良いからな?」

 

「は……えっと……うん!」

 

「よろしくね、サチちゃん♪」

 

パーティを組んだ場合のよくある挨拶をお互い交わし、各々の武器を構える。

 

その時のモンスターは地獄を見たみたいだった。

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~

はふぅ……と息を吐きながら、地面へと腰を下ろす。

サチは生きており、俺達も死んではいない。

 

「疲れたぁ……」

 

サチはぐったりとしながらも、やり切った、みんなの仇は討った、とどこかスッキリしたような顔をしている。

 

本当なら、このまま脳を弄りたいのだが、なんかこう……違うんだよなぁ感があり、脳を弄る決心がつかない。

そこで

 

「サチ……もし良ければ、俺達のギルドに入らないか?」

 

と、ギルドリーダー含め、サチ以外のメンバーが死に、壊滅状態になったサチのギルドを統合という形でギルドを作らないかと提案する。

 

だが、サチは首を横に振り

 

「月夜の黒猫団は、ケイタが遺してくれた物だから……

申し出は嬉しいけど、ごめんなさい……

……あ、フレンドなら大丈夫だよ……っ?」

 

フレンドなら問題は無いが、ギルドはダメ、と断られてしまった。

ちょっと残念だな、と思いながらも、サチへとフレンド申請を送信。

すぐに承諾の通知がくる。

 

「……何かあったら、いつでも呼んでくれ。

辛くなった時や、悲しくなった時、パーティ組んでダンジョン攻略でも構わない」

 

「うん、ありがと……

……じゃあ、1つ、お願いしようかな……」

 

ずず……ぃ……と近寄ってくるサチに、少し後ずさるも、なんだ、と問いかけて。

 

「……後で、一緒に寝てほしいなっ……て……」

 

上目遣いで、宿で一緒に寝て欲しい、と言われた。




うーん、サチの性格が思い出せてないから、少しキャラ崩壊起こしているかも……
まぁ、それはそれとして、次回はこの階層をクリアして……
次はシリカかな?
誕生日が一緒だからか、SAOアーケードで出た星五カード、全てシリカなんですよ。 SAO時代のシリカが2枚、ALOのシリカが1枚……


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第7層・やることないからレベリングしときましょう

あんまりえっちぃ事書かずにもう7話。
大罪やオルタナティブ待っててくれてる人もいるけど、俺はもうあっちの2つ書ける気がしない。
というか、こっちもネタ切れやらなんやらで打ち切る可能性が……
……いや、やるよ? 大丈夫、ちゃんとUWくらいまでは行くつもりだよ? 100話くらいで。
だがネタ切れ。 妄想が続かない……歳かねぇ(まだ20代)


レベルアップの音を聴きながら、カリバーンを腰に付けている鞘に納める。

ポリゴンの破砕音に絡ませるように溜息を吐き出して、暗くなっている48層の空……みたいな天井に目を向ける。

 

「そろそろ、他の攻略組がこの層の迷宮区にたどり着くんじゃないか?」

 

「うーん、まだなんじゃないかしら? 今朝までに入った人はいないってユイちゃん言ってたし」

 

同じようにレベリングをしていた(体は普通の)アスナから返答がくる。

なら、攻略組の何人かが迷宮区にたどり着くまでEXPブーストを使用したレベリングを続けようか、と持ちかけたが、みんな一様に眠いと言われ、仕方なくレベリングはそこでストップ。

 

主街区へ向けて歩を進めかけた所で

 

「ぎゅぷっ!?」

 

と右後ろで顔を地面にぶつけたような声を発する魔物が残っていたようだ。

すぐさま鞘に収まっているカリバーンを引き抜き、その声のした方へと顔を向ければ、白いスパッツ(?)に包まれたお尻が草むらから生えていた。

なんとも言えない光景に、ユイを除く女性陣一同うわぁ……と言っている。

ユイはといえば、そのおしりに近付いてから指を(人間でいえば)おまんこの位置にぶっ刺している。

怖いもの知らずというか、探究心が強いというか……

 

「ひぎゃぁぁぁぁ!?」

 

顔が潰れたような声に続き、凄まじい絶叫が辺りに響く。

周りのモンスター共は片付けたからリポップするまでは問題ないが、それでもうるさいものはうるさい。

仕方なくソレの元に歩いていき、ユイにチョップを食らわせてから抱き上げ、白いお尻に声をかける。

 

「……大丈夫?」

 

「大丈夫なわけない……もうお嫁に行けない……」

 

顔から先は地面に埋まっているため分かりづらいが、黄緑を基調とした服を着て、割と胸が大きい。

髪は地面からはみ出ている金色から、金髪なんじゃないかと予想する。

まぁ、どこかの尼さんみたいに紫から金に移行するグラデーションも考えなかった訳では無いが。

 

「うぅ……助けてくださぃ……」

 

「……じゃあ、ケツ引っ張るぞー。 ユイ、ケツを支えてやれ」

 

「はい、パパ!」

 

「うぇっ!? ちょっ」

 

「大きなケツは、抜けましたー!」

 

童話に出てくる大きな蕪に見立てて、うんとこしょー、どっこいしょーを2人でやって、ケツを引っこ抜く。

うわわぁっ!? と引っこ抜かれた金髪の少女(といっても見た目高校生)は盛大に尻もちをつき、俺はユイを抱えて二歩後ろにいる。

 

周りからの目が痛い……

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~

「……助けてくれて、ありがとうございます」

 

ボソリと顔を赤くしたままの少女が、俺たちに礼と名前、どうしてこうなったのかを言う。

 

少女の名前はリーファ。 種族はシルフだと言っていたが、俺とユイ、ストレア以外は、シルフと言う種族に首をかしげている。

無理もないだろう。 神話(?)に詳しくないと分からない種族だから。

まぁ、種族とか聞いても、どうせチートで変えてしまうため、必要ないとは思うが。

 

そして何故落ちたか。

急に転移させられたかと思えば、知らない場所に飛ばされ、羽根もいつの間にか小さくなっていたという。

災難だったなぁ、と自分の産毛すら生えていないつるっつるの幼女顎を撫でながら呟く。

呟きながらもチートの用意はしておいて。

 

……そうだな。

『セイメイの言うことは絶対』『何も疑問に思わない』『外で裸になれば恥ずかしい』『だが死ねという類の命令は聞かない』

という4種類の命令を、脳操作チートを使用して植え付ける。

かくんと脳操作特有の頭に力が入らなくなっている動作が起こっているのを見ながら、植え付けが完了したことを告げる音を聞く。

次にステータスメニューを開き、他のみんなに負けず劣らずのステータスに変更。

後で実験したいことがあるからと、体は変更させずにチートウィンドウを閉じる。

 

「あれ……寝ちゃってた……?」

 

「一瞬な。 すぐに解毒薬使ったから問題はなかったよ」

 

あぁ、よかった……ありがとう。 と安堵するリーファに、そんなことより、これからどうするかと問いかける。

チート使っておいてこの質問は意味の無いことかもしれないと思いつつも、そういった思考は制御していないから、最終的にはリーファの気持ち次第となる。

 

「うん……えっと、もし良かったら、私も仲間に入れて欲しいなぁって……。

助けてもらったんだし、それくらいの恩返しくらいは……」

 

さっきのことを思い出しているのか少し顔を赤くしながらそう言っている。

こちらとしても、攻略組が増えれば万々歳のため、快諾する。

レベルやステータスは上げていたが、武器などは初期装備。 仲間になるのだから、これらはちゃんと与えなければならない。

だがちょっと意地悪して

 

「じゃあまずは武器や防具を作るために採寸するから脱いで」

 

と言った。

さっき植え付けた暗示に、少し矛盾が生じるようにしていたのはこのためだ。

矛盾した結果、どんなことになるかという実験。

身体に関しての実験はまだ先だがな。

 

「い、いや……だけど……採寸して欲しいし……うぅぅ……」

 

顔を真っ赤にして、ゆっくりゆっくり装備を解除していく。

ユイやストレアはじぃ……とリーファが脱いでいくのを見ているが、アスナ、ユナは周りに誰かいないか、見られないように警戒をしている。

俺はデッサンをするような格好をしてどんな格好が似合うかを確認する。

 

「……あれでいいか、めんどくさいし」

 

色々調べたが、めんどくさいと言って、いつもリーファが着ている服をアイテムチートで取り出す。

大きい胸にはこれくらい開いてた方が合う。 とにやけながらリーファに渡せば、すぐさまそれをアイテム化して、着替えを開始する。

光が身体にまとわりつき、緑と白を基調とした服へと形を変える。

 

「……ありがとう……」

 

やはり顔を赤くしたまま、礼を言う。

辱めるのが楽しくなってきそうだな、こりゃ。




……久しぶりの更新。
ダメだな、リハビリを兼ねての投稿だったけど……変になってる。
……………だいたいユウキと5月のせいだ。
SAOアーケードに出てきたユウキを取るためにゲーセンに通いつめたり、五月病がやばかったり、ユウキが可愛かったり、眠い。
……とまぁ、こんな感じになってました。
また週間で投稿を再開できれば……

……では、また次回


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第8層・50層ボス戦Tiamat・the・Roardoragon

原作だと50層のボスの名前とか出てないけど、エンドワールドには出てるようだから、エンドワールドの方のボスを採用してます。
ラストアタックでエリュシデータ落とすから気にしないで。


あの後、主街区に戻った俺たちは、有無を言わさずにリーファをお高そうな服屋に突っ込んだ。

実はその店、PCが経営していたらしく、「適当でいいからね」と言ったのに、結構本気で動くのにも邪魔にならないドレスを作ってくれちゃった。

 

若草色の大きな葉っぱを計8枚束ね、中に履いた白のミニスカーの延長上にその葉っぱが均等に並べられている。

上に関しては、リーファがALOで着ていた服に似ているものの、胸の星型みたいな形をしていたアレが葉っぱに変わり、鎖骨あたりまで覆うようになっているうえに、全体に若草色が混ざっている。

 

……俺の解説だとよくわからない人は、とりあえずまぁドレスだと思ってくれ。

 

何やかんやあってリーファの服選びは終わった。

お金に関しては、提示された金額の倍を置いていった。

 

 

 

 

 

 

 

という訳で、48、49層を速攻でクリアしつつ50層の迷宮区。

迷宮、と言う割には、他の階層の迷宮区と違って空に道が伸びている。

その道を、俺、アスナ、ユイ、ストレア、ユナ、リーファの6人で進んでいる。

サチにも連絡したのだが

 

『ちょっと用事があって……ごめんなさい!』

 

と返事が帰ってきた。

まぁ、これからこのパーティーだけで50層ボスをぶち転がそうとしているから、チートを知っているメンバーだけになってちょうどいいとは思った事は言わないでおこう。

 

空へ空へ伸びていく道を遮るかのように飛んでくる虫や龍や鳥や人形を薙ぎ倒し切り倒し張り倒し進んでいく。

 

「……なんか疲れた」

 

「早いですよパパ。

まだ歩き始めて2時間じゃないですか」

 

「いやもう2時間じゃないですか精神的に疲れるんですよこっちはみんなはまだ歩けるみたいな顔して……えっ、まだ皆さん歩けるんですか……?」

 

死ぬ、という顔をユイに向けていたが、みんなが先にゾロゾロと歩いていくのを見れば、むしろ俺の方がおかしいのかと思ってしまいそうだ。

実際おかしいのかもしれない。

 

そんな俺を見て、「しょうがないなぁ……」とこちらに背中を向けてしゃがみこみ、おんぶしてくれようとしているストレア。

「お姉ちゃんっ……!」と言いそうな衝動を堪えつつストレアの背中にしがみつく。

おっきいおっぱいがストレアの背中に押しつぶされる感覚がまた変な感じなのだが、まぁそれはいいだろう。

 

俺がストレアにおんぶされたためにパーティーの編成順が変更になり、アスナ、リーファ、ユイ、ストレアおんざ俺、ユナとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな感じで危なげなく迷宮区を突破し、ボス部屋の前にたどり着いた。

 

「よっこいしょ……10分後位まで自由行動していいよ。 休憩するなり談笑するなりポーション確認するなりして時間を潰してて。

それが終わってから作戦会議するから」

 

ストレアの背中から降りれば、すぐに皆にそう告げる。

「おー」や「了解」などの声を聞きつつ俺も俺で装備を確認する。

 

装備ウィンドウを開き、装備ウィンドウの他に出現した【セット】の欄に配置されているチート組ボス戦装備と名前のついたボタンをタップする。

すると、今まで装備していた50層前後ならこの装備じゃね、という名前のセットがポリゴンの欠片になって消え去り、代わりに真っ黒の裾の長いコートに黒の柄のない短めのプリーツスカート。 黒のニーソに膝の少し下位までの長さのブーツに加え、黒の肘くらいまで覆う手甲(ガントレット)、おでこ辺りに着ける、二対の黒翼をあしらったピン留め(左髪には2本の左翼のピン留め、右髪には2本の右翼のピン留め)を装備する。

 

これら装備は全て99層で手に入る素材を使っている。

オーバーキルなんじゃないのかと聞かれそうなものだが、死なない為にもこっちは必死なんです。

 

 

 

とりあえずは装備完了。

他のみんなも99層前後で手に入る装備を着ている。

ユイも99層の装備に身を包み、紫電を纏っている短剣を装備している。 体育座りしてるの可愛いんだが。

 

「さて、じゃあまぁ、そんな感じで10分経ったわけだ。

作戦会議を始めるよ」

 

「「「はーい」」」

 

洗脳(?)した少女達をボス部屋の扉の前に集め、作戦会議を始める。

まぁ、作戦会議とは言っても、原作じゃ名前すらも出ていないボスのため、「全力でがんばろう」程度しか言えないんだがな。

 

作戦会議を苦笑いで終わらせ

 

「それじゃあ、勝って帰りましょうか」

 

と笑ってボス部屋の扉に手をかけては、一気に押し開けて中に入りこ

 

「せいっ!」

 

もうとした瞬間にはもうユイが紫電を纏ったナイフを今丁度出現し始めたドラゴンっぽいモンスターの目ん玉目掛けて投げ、片目を潰していた。

 

「早い早い!?」

 

「あ……ごめんなさい……」

 

「いやいいけどもう少し待ってあげようねあのドラゴンっぽいの悶えてるから!?」

 

次からはせめてポップするまで待ってあげようねとユイの頭を撫でてあげてから、腰のカリバーンを鞘から引き抜き構える。

ユイの投げたナイフはソードスキルだったのか、ひとりでにユイの手元に戻ってきている。

 

それを見てから

 

「各々自由に攻撃! ユイはアレが攻撃してきそうなメンバーとタイミングを指示!」

 

ユイと他のメンバーに指示を飛ばしつつ、まだ地面に足をつけ、悶えているティアマト・ザ・ロアードラゴンという名のドラゴンに対し、アロンダイト・ストライクの放つ構えを取る。

すぐさま白銀のライトエフェクトをカリバーンが纏い、俺の周囲に半透明の剣が展開される。

 

あとはシステムアシストに任せるがままに体を動かし、40m弱の距離をティアマトを貫きながら走り(跳び?)きる。

それに遅れるように半透明の剣がティアマトの体に刺さり、爆散。

 

結構距離を取って着地すれば、ソードスキル後の硬直が体を縛める。

それをカバーする様に、ストレアとユイが俺の背中を守り、苦痛に悶え振り回されるティアマトの尾を弾いてくれる。

 

「どっせぇーい!」

 

「ママっ、ユナさんっ、今ですっ!」

 

弾いて床に落ちた尾をストレアが大剣で串刺しにしつつユイがアスナとユナに突撃指令を命じれば、アスナとユナが

 

「やぁぁぁぁーーーーー!!!」

 

「てやぁぁぁぁーーー!」

 

細剣用突進ソードスキル、フラッシング・ペネトレイター。片手直剣用ソードスキル、ヴォーパル・ストライク。

このふたつのソードスキルを使用し突撃を開始。

片やジェットエンジンの様な轟音を、片や音もなく落ちる彗星を纏い、ユナはお腹を、アスナは頭を貫く。

 

ヘッドショットの概念は無いのか、ダメージはあまり変わらない。

だが、たった数発当てただけでHPゲージが2本目の半分に差し掛かっていた。

 

「皆さん、ティアマトが起き上がったら2秒後にジャンプしてください! 2、1、今っ!」

 

HPゲージをチラ見していた時には既にストレアの大剣は抜けていたのか、指示を聞いている最中に立ち上がっていた。

ユイの合図に合わせ跳躍をすれば、ティアマトが地面に咆哮をぶち当て、振動させる。

地面に立っていたらスタンしていただろう。

 

指示を飛ばした当のユイは、これ幸いと言わんばかりにナイフを投げまくっている。

本来、ソードスキルに投げナイフ系のものは無いはずだが、投げたナイフには水色のライトエフェクトが煌めいているし、刺さったナイフが手元に戻ってきている。

 

遠距離系スキルはスローピックや弓だけじゃなかったのか……

 

ユイのSTRも高めにしてあるため、ジャンプしている間だけで2本目のゲージも吹き飛び、三本目に入っていた。 なんかユイだけ攻撃力エグくね? リーファなんてぽかんとしちゃってるよ。

 

ティアマトの咆哮が収まり、着地すればアロンダイト・ストライクをティアマトに放つ。

暴れるティアマトの尻尾をストレアが抑え込む、アスナとユナが突撃する、咆哮をジャンプで避けて、ユイがナイフを投げまくる。

これらの手順を数回ぶちかましてやれば、最後のHPゲージに入った時にモーションパターンが変わるモーションをしようとこちらを睨む。

だが残念なことに咆哮を繰り出そうとしたティアマトの上顎と下顎に容赦なくユイのナイフが突き刺さる。

 

ゴリっとHPが削れ、最後のHPバーの残りが7割。

ここで一斉攻撃だー、と言って突撃するというのもありだが、なんか違う。

つまらない、という訳ではなく、それでいいのかという思いがちろちろ顔を出す。

 

まぁ、もう少しで終わるんだ。

せめて大きな一撃をプレゼントして終わりにしてあげよう。

 

片手直剣用10連撃ソードスキル、ノヴァ・アセンション。 その発動モーションを取れば、金に輝くエフェクトが瞬き始め、周囲に9本もの金色の剣が現れる。

【騎士王】専用片手直剣用10連撃ソードスキル、クラレント・アセンション。

 

ザリザリザリギャリギャリギャリッッと甲高くも禍々しい金属音を響かせながら、俺を中心に展開され、円を描くように金色の剣が地面を抉る。

その状態のまま突きの体勢を取れば、どこかの冥界の女主人よろしく鋒から円を描いていた金色の剣が発射されて行く。

 

ユイによってダウンさせられていたティアマトの、人間でいえば唇辺りに金色の剣が、寸分の狂いなく同じ場所に突き刺さる。

九本全て打ち込めば、ヴォーパル・ストライクの様に突進し、九本の金色の剣が突き刺さった場所を貫く。

 

ティアマト・ザ・ロアードラゴンのHPが消え去り、そのMOBも破砕しポリゴンの欠片へと変じる。

 

少しの余韻の後、クエストクリアの文字と共に鳴り響くファンファーレ。

皆の方を向けば、リーファ以外が喜んでおり、当のリーファは

 

「攻撃しなかった……」

 

と嘆いていた。

 

俺も俺で、ラストアタックボーナスはー……とウィンドウに目をやり確認しようとして。

バキャッ……と割れた、というより折れた音を耳にした。




これを書ききるまで2ヶ月弱。
ティアマトさんいい加減にしてくれと言いたくなったが、ちょっとやりたいことがあったからこれは避けて通れなかったんや。
わいはわるぅない!
……とまぁそんな感じで、久しぶりの1話、どうだったでしょう。
どことなく最後が禁書目録的な効果音だなと感じたあなた、正解です。
新訳読み終わってからやったからだね。

……では、また次回お会いしましょう。


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第9層・折れたカリバーンと新たな剣

前書きってもう何書けばいいかわかんないや。
……とりあえず、新しい剣を探しに行かなきゃね。


見事に真っ二つに割れたカリバーンを左手で掴んだまま、ストレージに収納しようとする。

 

すぐにポリゴンに変換、破砕音を響かせながら消えて行かなかった事から、折れた状態のままのアイテムになったのではないかと考えられるのだが、この時の俺は焦っていてそんな事を考える余裕は無かった。

 

「え、え……えっと、ストレージにしまって取り出して……も折れたまんま変化ないし……えっと、えっと……?」

 

おろおろびくびく、折れたままのカリバーンを再度出現させれば、大きな胸の谷間に挟み込むように抱きしめ、51層へと続く螺旋階段の方へとダッシュする。

 

みんなを置いて行くような行動をしつつも、みんなは何も言わずについてきてくれている。

かける言葉が見つからないだけかもしれないけど。

 

とりあえずは51層の主街区、転移門のある場所へとたどり着けば、転移門をアクティベート。

すぐさま50層主街区、『アルゲード』の街へと転移。 エギルのいる店へと駆け込んだ。

 

 

 

「こりゃあまた……ぼっきり折れちまってるじゃねぇか……」

 

「なんか、50層ボスを倒したらこうなった……」

 

エギルとは1層のボス戦の後からずっと仲良くしている。

原作のキリト同様、色々売り買いし合って親交を深めており、この姿になった後も、「バグでこうなった」と嘘を言いながらも、そんな感じで仲良くしている。

 

「ふむ……折れたカリバーン……か」

 

顎に手を当て、じょりじょりと音がしそうな髭のあたりを人差し指の腹で撫でるようにしながら、「カリバーン、と言えばアーサー王の話だよなぁ……」と呟くエギル。

 

「アーサー王って言えば、エクスカリバーだよね?」

 

「あぁ、そうだな。 誰か詳しい知り合いとかはいないのか?」

 

折れたカリバーンを机の上に置きながら、俺の後ろにいる、ユイ、ユナ、リーファの3人を見る。

 

他のみんなは拠点の宿に帰っているが、何かあればすぐに駆けつけられるようにしている。

 

ユイとユナは首をかしげているが、リーファだけが顎に手を当て

 

「……たしか、カリバーンが折れたあと、アーサー王は湖の貴婦人に会いに行って……そう、そこでカリバーンの代わりの剣を貰っているわ!」

 

ぴこーん、と頭の上に電球を幻視しそうなリーファの笑顔に眩しいなぁ、と目を細めながら、「そんな感じの情報とかは……」とエギルに目線で問いかければ

 

「無論、俺よりアルゴの方が知っているだろうな」

 

との返答。

まぁそりゃそうだと頷けば、アルゴにメッセを飛ばす。

 

「『カリバーンが折れた。 何か剣を直したり、新しい剣を貰ったり出来るクエストはないかな』……っとこんな感じでいいかな」

 

メッセージを送信すればすぐに返信がくるアルゴなのだが、今日はその気配がない。

忙しい用事をこなしているのかもしれないと、少しの間待ってみることにしつつ、エギルに要らない装備品を押し付けていく。

その中には魔剣クラスの物もあり、「こっ、これを俺の店に売ってくれるのか……!?」と悶えていたが、俺はカリバーンがあるし、ユナはSTR要求の高いものは好まないし、リーファは片刃の剣がいいみたいだし、と答えてやれば、じゃあ遠慮なく、とストレージそれらを仕舞いつつ、それらの最安値のコルを俺に送ってくる。

 

「まいどー」

 

にっこにこしているエギルは怖い。

……まぁそれは置いておいて、だ。

アルゴからのメッセージはまだ来ない。 フレンドは解除されてないから死んではいないが……少し心配だな。

 

「ン、マァあんまり心配しなくていいんじゃないカ?」

 

「確かに、アルゴだもんなぁ……ってアルゴ!?」

 

「ヨっ、元気にやってるカ?」

 

「……ボチボチだ」

 

ここでアルゴになんだかんだ言っても躱されそうだから、敢えてボチボチと告げる。

けたけたと笑うアルゴだったが、すぐ真顔になり

 

「それデ、カリバーンが折れたっていうのは本当カ?」

 

「あぁ、50層ボスを討伐し終えた時にぽっきりとね」

 

「そうなのカ……ん、そういえば……いヤ、不確かなモノを顧客に渡すのハ……」

 

うーん、と悩み続けるアルゴ。

不確かなモノというのが気になるが、まぁ今は気にしないでおこう。 アルゴが言い出すまで待機だ。

だが数秒後には意を決した様な顔をして顔を上げるアルゴ。

 

「不確かな情報だガ、それでも買うカ?」

 

「寧ろアルゴの情報を買わないっていう選択肢がない」

 

「……ハハッ、そうカ……ナラ教えてやるゾ。

……ここ、50層の端の方にある村でナ、おじいちゃんNPCが『湖の貴婦人の救済を』という話を延々と話し続けるらしいんヨ。

そのおじいちゃんNPCが出現したのは極最近。 お客からの情報だト、ホンの3時間前だっテ話だナ。

オレっちも行こうと思った矢先に、セー坊に呼び出されたってワケダ」

 

3時間前、それはつまり俺達がボスモンスター、ティアマト・ザ・ロアードラゴンを狩り始めた直後を示している。

……ただの偶然かもと考えれるが、今の俺にはその偶然に縋ってでもカリバーンを直したいという思いがある。

 

「ン、行くナラオレっちも連れてケ。 折れたカリバーンがどんな事になるのか気になるンでナ」

 

ついでニ情報料代わりダ、といい笑顔で言うアルゴに、仕方ないなぁ、という表情とパーティー申請で了承を示す。

すぐにパーティー申請を受諾したアルゴは、「じゃあ着いてきナ」とDEXにモノを言わせてエギルの店を飛び出す。

俺達も店から飛び出し、アルゴの背中を追う。

俺達の後ろから、「また来いよー」というエギルの声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

長い長いおじいちゃんNPCの話が終わり、ようやくクエスト受注画面が出現した。

もちろん受諾する。

 

「……長すぎだろこのじいちゃん……」

 

「こんなNPC、設置してないはずなんですけど……」

 

リーファの背中でぐったりしているユイは、こんな長話するNPCは設置していないはず、と考えているようだ。

それはそれとして、今のおじいちゃんNPCからクエストを受注したことにより、貴婦人がいるらしい湖の場所が特定出来た。

アルゲードを挟んで向かい側にある大樹の傍に、小さな湖があるようで、そこに行けばカリバーン(話の中では折れた聖剣だった)を直せるようだ。

 

ぐったりしているユイをかわりばんこで背負いながら、反対側に向かって全員で突っ走る。

道中のMOBは容赦なく(ユナが)切り伏せ、数分の時間を経て目的地である大樹の根元に到着する。……のだが、肝心の湖がない。

 

「んなバナナ……いや、粉バナナ……」

 

謎な事を言っているが、とりあえずはこんな馬鹿な、と言いたい事だけはわかって欲しい。

取り乱したまま目の前の大樹に寄りかかり、「えー、なんだっけー、何かあったっけー、あのおじいちゃん何か言ってたっけー」とぷるんぷるんおっぱい震わせながら考えるが、何も出てこない。

 

「きゃっ!?」

 

すてーんと音がした方を見てみれば、ユナが足を滑らせて、大樹の向こう側の方へと落ちていったようだ。

 

「なにやってんのさー……」

 

「ご、ごめんなさい……」

 

うー、という顔をしながら、大樹に寄りかかっていた俺に引っ張り出されるユナ。

だがユナのおかげで気がつけた事もあった。

さっきまで俺が寄りかかっていた方とは反対側、森が生い茂る方に目を向ければ、そっち側が大きく窪んでいる。

水があれば、湖と呼べるほどの広さで。

 

「だけど肝心の水がないんじゃ、ただの窪みだよなぁ……」

 

うーむ……と何も思い浮かばないからとストレージから折れたままのカリバーンを取り出す。

 

はぁ……と溜息を吐き出しながら、じー……とカリバーンを眺めること数秒。 あることに気がついた。

よぉくみないと分からなかった事だが、カリバーン自体にうっすらと淡い光がまとわりついており、その光が大樹の方へと伸びていた。

 

「……これ、丁度同じ大きさの切れ目……」

 

カリバーンの折れた刃と同じ大きさの切れ目が大樹に刻まれており、そこに向かってカリバーンの光は伸びていた。

突き刺せ、という意味だと直感的に感じた俺は、ゆっくりとその穴に差し込む。

 

途端に辺り一面は光に包まれ、周りにいたみんなが見えなくなった。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~

ちゅんちゅん、ちちちち……

 

小鳥の囀りで目が覚める。

さっきまでの光はなりを潜め、辺りは暖かい陽射し、気持ちの良い水のせせらぎが世界を占めている。

 

辺りを見回しても敵MOBも仲間たちもいない。 だが、目的のモノを見つけた。

 

湖。

 

俺が目覚めたこの大樹のある小島を中心に、湖が広がっているようだ。

 

大樹の横には、日本風に言うところの東家……西洋とかで言うとなんなんだろうか、な薔薇の庭園とかにありそうなフレームだけの茶屋……みたいな場所がある。

 

「なんだ……湖に来れば、貴婦人に会えると思ったのに……」

 

「あら、私に会いに来てくださったのですか、今代のアーサー……?」

 

ビクン、と体を跳ね起こし、今までしなかった人の気配の方へと視線をやれば、真っ白いドレスに身を包んだ、キャリバー編に出てきたフレイヤの様に美しい女性が楚々と立っていた。




はい(真顔)

……湖の貴婦人の名前って複数あるからどれにしようか悩み中です。

それはそれとして、頭ん中いっぱい詰め込みすぎているせいで変な感じになっちゃいましたが、いかがだったでしょうか?
次回は久しぶりのえっち回になると予想します。
私自体まだまだ想定していないのでどうなるか分かりません。

晴明がまったくよく分からない方向に走っていく。


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第10層・湖の貴婦人・ニミュエ

ニムエにすると俺の頭が誤作動を起こす湖の貴婦人さん。
拡散で乖離で唯一でエクスタシーなニムエさんが来そう。
……そういえば、唯一性ミリオンアーサーってあんまり知られてなかったのな


「あら、私に会いに来てくださったのですか、今代のアーサー……?」

 

振り向いた先には腰までの長い金髪に碧眼、整った顔立ちでどこか儚げな笑顔をみせる、真白なドレスに身を包んだ女性。

どこかキャリバー編に出てきたフレイヤを想起させるその女性は、俺を見てアーサーと言った。

いや違う、と反射的に面倒事に巻き込まれないようにしてしまいそうな前世の俺を押しとどめながら、ここはなんて答えればいいんだろうと首をかしげて考え始めてしまう。

 

そんな俺を見て、少しずつおろおろし始める美女。

「そ、そんなに深く考えなくて大丈夫ですよ……? い、一応こちらもカリバーンが折れたというのを確認しましたしそれを直すために私の元に来てくれたというのもわかってますだからそんなに深く考えないでくださいむしろ私の方が居心地悪くなっちゃいますからぁ……!」

 

なんか早口で捲し立てて勝手に涙目になってるんだが。

何この人可愛いんだけど。

 

「……まぁ、そんな感じで、直して欲しいわけよ」

 

「無理です」

 

即答する女性にふざけてんのかという思いを込めて、「はぁ?」と言う。

さっきまでは可愛かったのに急に可愛げが無くなったんだが。

 

「……いえ、無理ではあるのですが、その……カリバーンの代わりとなる剣ならお渡し出来るのです……」

 

しょぼん、としょぼくれたように下を向くその女性曰く「カリバーンは直せないけど、カリバーンの代わりならある」ということらしい。

 

「それはどんな剣なんだ?」

 

「……銘を、エクスカリバーと」

 

ふむ……分かってはいたが、ここでエクスカリバーか。

 

直すルートじゃなく取り替えるルートな訳ね、と勝手に納得しつつ、「……今名前の前に少し間があったけど、その間はなんだ?」と問いかける。

 

「……勿体つけた方が、どこかカッコイイかなぁ……と」

 

……もうこいつ後で犯す。

あはは……、と笑いながら頬を掻くその女性は、少し待っていてくださいませ、と言って一度大樹の裏側へと回り込む。

よっこいしょー!……というおよそ美女が使ったら台無しになってしまいそうなおっさんくさい掛け声と共に、ガランという重い鋼が転がる音がなり、ざりざりと引っ張ってくる音が響く。

 

「ふぅ……これが、天聖剣エクスカリバーです」

 

そう言って、引きずってきた剣を地面に突き刺す。

現実でそんなことをやったら普通に刃こぼれしたりするのだが、これはゲーム。

引きずってきた事や最初のよっこいしょーは気にしてはいけない気にしたら負けだいいねはいこの話は終わり。

 

「……持てますか?」

 

「よい……あれ意外と軽い」

 

刀身自体はまだ鞘から抜いていないため分からないが、鍔は三つ葉のクローバーを左右に取り付けたような簡素なもの、グリップには黒の握りやすく滑りにくい布を巻き付けてあり、柄頭は両手で握っても痛くないようなとんが〇コーンかたけ〇この里を真っ二つに割り、くっつけたような感じになっている。

よくわからないなら〇けのこの里をそのままくっつければいいよ。

 

その、どこか夜空の剣とヒースクリフのあの剣を合わせたようなエクスカリバーを、鞘からゆっくりと引き抜く。

刀身は白銀。 樋、フラーと呼ばれる刀身の真中を走るぼこっとした部分には剣の紋章が刻まれている。

 

ゆっくりと引き抜き終わり、剣道の待機の構えを取れば、白銀の刀身から光の奔流が溢れ出し、辺り一面を銀世界に染め上げる。

 

光が消え、刀身を見やれば、刀身の左右に白金に染まるワイヤーの様な物が、幾何学模様ではない、何かのマークを浮かべながら漂っている。

それはエクスカリバーを振り回しても離れることはなく、大樹から落ちてきた葉がそのワイヤーのようなものに触れれば、そのまま真っ二つになった。

 

「すごいな……カリバーンと同じくらい手に馴染む……!」

 

「でしょう? 私が丹念に、カリバーンから送られてくる情報を元に今代のアーサーの手に馴染むように調整したんですから!」

 

ぴょんこぴょんこ嬉しそうに跳ねるうさぎ系美女。

可愛い。

だがしれっとカリバーンから情報が送られてた事、エクスカリバーが調整出来ることを暴露しまくっている。

まぁ、俺はいいが……

 

……あれ、そういえば、名前を聞いていなかったような……?

そんなことをうさぎ系美女に呟けば、あぁ、そういえば……と居住まいを正して

 

「申し遅れました。 私、ニミュエと申します」

 

キリッとした顔でせいそーな格好をした所でよっこいしょーやぴょんこぴょんこ跳ねていたのは忘れていないからな。

ニミュエと名乗った女性にこちらも名乗る。

 

「……セイメイ、ですね。

……言いづらいのでアーサーって呼ばせてもらいますね?」

 

「うん、まぁ……いいか」

 

まぁ、仕方ないかと諦めつつ、チートウィンドウを出現させる。

 

NPCであるニミュエにはそれは見えない。 だから首を傾げるだけで何をしているかわかっていないようだ。

脳操作のウィンドウを開き、NPCの欄を開く。

そこにはニミュエの名前だけがあり、躊躇なく名前をタップする。

 

「あっ……」

 

ニミュエはスリープモードのようにかくんと頭を前にたおし、ぐったりして無防備を晒した状態のまま動かなくなった。

 

それをニミュエの頬を突っつき、チートが効いているのを確認してから、ユイやストレアの様にニミュエの行動を司るAIを弄り始める。

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~

こんな感じでいいだろう。

ニミュエの姿は、ただ胸が大きくなっているだけでそれ以外は変化はない。

脳操作のウィンドウを消去すれば、ニミュエは目を覚ました。 が、目がとろん……とした状態で俺を見つめている。

 

「アーサー……私、寝ちゃってましたか……?」

 

くあ……と欠伸をしつつ問いかけてくるニミュエ。

一瞬かくんとしたのは見たが、寝てたかどうかは知らないと嘘を教えつつ、ニミュエに近づいてその大きくなったおっぱいを鷲掴みにする。

 

「?」

 

何をしているのですかと首をかしげているニミュエを他所に、むにむにと揉みしだき続ける。

 

「あの……アーサー……?」

 

「今忙しいからまた後でにしてくれないか」

 

スレンダーなニミュエの体にくっついているメロン大になっている胸の大きさを調整しているから忙しい、と言いながら、本当に大きさを調整し始める。

……ニミュエの体に入れたコマンドのひとつは、俺がニミュエの胸を揉めば、俺がその時いいなと思った大きさの胸になるという物だ。

アバターリメイカーを起動すれば早いのだが、無機質すぎてつまらないでしょ。

 

今はメロン大だが、揉みしだいていけばメロンより少し大きい程度になった。

 

スイカもいいかもしれないが、さすがに歩きづらいのはなぁ……と苦笑いを浮かべつつニミュエの胸から手を離す。

 

胸を揉めば、普通なら擽ったがったり、快楽に悶えたりするはずだが、今のニミュエは不感症の様に首を傾げるだけだ。

それは何故か。

 

答えは、俺がニミュエの胸を触っている間は快楽を感じない。 が、ある事をすればその快楽が倍になって返ってくる、というコマンドを入力しておいたからだ。

……ある事、というのは多分画面の前の君も察しはついているだろう。

そう、交尾だ。 せっくすだ。 ずっこんばっこんだ。

 

胸を弄り始めてから、他の部位を触っても快楽が蓄積されるため、触りまくってから息子を挿入したら多分、ニミュエ壊れるんじゃないかな。

 

まぁ、例え壊れても修復できるからモーマンタイですわ。




……ダメだ、エッチまで行けなかった……書くのに約3ヶ月も掛かってるし……
それに中途半端に終わった……どうしよう……
グラブルやARKやSAOやMGS5や仕事が悪い。


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第11層・天聖剣

どっかの空にある七星剣と、天星器を合わせた結果が天聖剣。
以上、前書き終わり。


「ん……っ、あーさー……♡」

 

俺の上に跨り、俺の息子を容赦なく咥え込むニミュエ。

その腰の動きに合わせて、触手の入った壺の様に俺の息子を吸い、襞を絡めてくる膣と子宮口。

そんな快楽の中、俺はと言うと……

 

「も……かんべんしてくれ……」

 

割とやばいくらい搾られていた。

 

 

どうしてこうなったか今思い出しても馬鹿だったと言わざるを得ない。

湖の貴婦人は、妖精だという説があるのだが、俺が変な解釈をして、「妖精って確か、精液搾る系のやつもいたよな」という、負け筋まっしぐらな考えを起こし、ニミュエに追加してしまった。

 

その結果がこれだ。

メロン大になったおっぱいから母乳を迸らせ、たちゅんたちゅんと軽快な音を響かせて腰をうちつけ、俺の息子の尿道に残った精液すらも搾り取ろうとしてくる。

 

精力が減れば、連動してHPも削られ始めている。

 

「あはぁ……♡ アーサー、まだまだ出ますよねぇ……?」

 

「むりっ、むりだからっ……!」

 

悪魔の笑顔を浮かべるニミュエに対し、首を横に振って無理だと告げる。

だが、悲しきかな、その願いは聞き入れられることはなく、悪魔となった貴婦人は腰を振り続けている。

 

さすがに真面目にやばいと思った俺は、いい加減にしろと言う意味を込め、自信のアバターを変化させる。

息子だけだが、74層だったかのボスをしているグリームアイズの物に変え、一気にニミュエの子宮を貫く。

 

「ふひょっ……!?♡」

 

いきなりの変化に驚いていたが、腹ボコも股裂けもせずにソレを子宮に飲み込んだ様で、ぶっ壊れてくれない。

 

仕方が無いので腰を引き抜こうとするが、ニミュエは嬉しそうに、「まだまだこのおおきなおちんちんで続けてくれるのですね……?♡」と狂気に染まった笑顔で腰を無理やり打ち付け続けて。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

もうこれ以上は本当に枯れる。

HPも残り148。 あと1回出してしまえばそこで終わり。

無理だと悟った俺は、チートウィンドウを表示しては、ニミュエの『淫乱妖精』のスキルを消去し、俺の息子も元のサイズに戻す。

そうすることによって、ようやっとニミュエの腟内から息子は抜け、ニミュエも「あれ……?」という感じに正気にもどった。

 

「私、なにして……?」

 

「俺を押し倒して馬乗りになってるんだよ」

 

「あ……ごめんなさい、アーサー……」

 

ひょいっと降りるが、どこか申し訳なさそうにしている。

……こっちもこっちで申し訳ない感じはあるが。

 

まぁ、取り敢えずの危機は去ったんだ。 あんまり美味しくないポーションを飲み干しながら開きっぱなしだったチートウィンドウを弄り、ニミュエをユイやストレアの様に、俺をご主人様だと認識する様に変更。

取り敢えずはもうこれで良いだろうとチートウィンドウを閉じれば、楚々っと俺の三尺後ろに移動している。

……うん、それは暗に「私を守れ」と言っているスタンスよ?

 

「なんで俺の後ろに……?」

 

「それは……ご主人様が胸を張って歩けるように……です♡」

 

「ニミュエ、それ間違ってる。 男の後ろに下がらせているのは自分の嫁が斬られない様にする為だからね?」

 

そうなのですか!? とNPCらしからぬ驚きようを見せるニミュエ。

頭痛を堪える様に頭をおさえ、取り敢えず、と声を出す。

 

「帰る方法は?」

 

「あ、それなら大樹のこの穴にその聖剣を突き立てて貰えば……」

 

「それはこのエクスカリバー? それとも俺のエクスカリバー?」

 

天聖剣の方か俺の息子かと問えば、顔を赤くすることなく首をかしげ、何を言ってるの、と言った顔をしている。

なんでもない、とため息を吐きつつ受け取ったエクスカリバーを逆手に持ち、大樹の穴へとソレを突き立てる。

来た時と同じように光が溢れ出し、視界を真白に染め上げる。

そんな中でも、背中に触れる柔らかな感触と、手の中にある柄の感触だけはしっかり残っていた。

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

柔らかく真白だった光が薄まれば、そこは窪みがあるだけの大樹の傍だった。

周りを見渡せば、ユイ、アルゴ、リーファ、ユナの4人が眩しそうに目を覆っていた。

空を見上げれば、そんなに時間は経っていないのか、夕焼けの気配がない青空だった。

あの湖に何日かいたような気がするが、向こうとこっちで時の流れが違うのかなぁ、とよく分からない考えを思い浮かべるが、気にしないでおこう。

 

「ンー……ようやっと視力が戻って来タ……」

 

目を擦り、眩しさをどうにか消せたアルゴが呟く。

そんなアルゴのステータスを見てもブラインドのデバフは付いていないから、単純に眩しかっただけだろう。

 

「アルゴ」

 

「んぁ、どーしタセー坊……っテ、その剣!?」

 

バっと目を見開き俺に近づいては、逆手に持っていた俺のエクスカリバーを色んな角度から観察し始める。

 

「ん゛ンっ……無事直せたんだナ?」

 

「あぁ、無事滞りなく。 ……まぁ、直したというか新調したんだがな」

 

はしゃぎかけていたアルゴは、咳払いをして俺に問いかけてくる。

無問題と答え、辺りで擬似ブラインドにかかっている皆の様子を見に行く。

 

みんな目を擦って擬似ブラインドを解除し、事の顛末を伝えれば、それぞれが「直って良かった」と言ってくれた。

 

 

 

 

「それで、その人がニミュエさん?」

 

リーファの問いかけに首を巡らせるが、辺りには見当たらない。

何処にいるのかとリーファに問いかければ、「ほらあそこ」と大樹に向けて指を指している。

指さしている方をよくよく注視すれば、金色の光が木の影からはみ出している。

じっ……と見つめていれば、そろりと顔を覗かせ、俺が見つめていることに気がつけばすぐさま顔を引っ込めるニミュエ。

子供っぽい。

 

「……そう、あれがニミュエ。 訳あって俺たちに同行することになった」

 

頬を掻きながら苦笑いすれば、皆揃って疑惑の目を向けてくる。

 

ユナとリーファは「ナンパしたんじゃないの」という目線、アルゴは「恥ずかしい情報でも握ったカ?」な目線、ユイに至っては、「またれいぷですか」と冷たい目線。

いいえ、逆レです。

 

新しい剣は手に入れたけど、説得が難しそうだなぁ、とため息を吐き、説得を試み始めた。




短いね。 絡みのシーンが。
難しいんだ。 彼らを動かすのは。

……とまぁ、どっかの全裸で黄金造りだす変態みたいな言い方しました。
短くて申し訳なかったです。

最近忙しくてまともに小説を読んでなくて、展開が上手くできないのです。
ごめんなさい嘘ですアプリなアリシゼーションで星四ユージオとアスナとティーゼが仲間になってくれちゃったからレベリングしてたんです。だから上手く展開出来なくて……

……次回、番外編(の予定)『試しにスライムになってみた俺はこうする』の1本です。
次回もまた見てくださいね、ジャンケン・ぽん( ᐛ )وグフフフフ


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第12層・スライムになってみた俺はこうする

番外編と言ったな。
あれは嘘だ。

……よくよく考えてみたら番外編にする必要が無かったんだよ……


新しいエクスカリバーと新しい仲間(奴隷)を手に入れた俺は、そろそろシリカを仲間に引き入れるために他のみんなは宿に置いて捜索を開始。

中層を探していればいつかは見つかるかなぁとあんまり期待を持たずに探していたが、相手は中層域のアイドル。

似たような感じなユナに、フレンドかと問いかければ、もちろんというメッセージが返ってきた。

アイドルや歌姫って交友関係広いのね。

 

 

 

ある用事を済ませてからユナのメッセージに従い、シリカがいる場所へと向かえば、数人のモブと赤毛の長身の女で言い争いをしている所だった。

 

「帰還後のアイテム分配なんだけど。 あんたはそのトカゲが回復してくれるんだから、ヒール結晶は必要ないわよね」

 

「そういうあなたこそ、ろくに前面に出ないで後ろをちょろちょろしてばっかりなんだから、クリスタルなんか使わないんじゃないですか!」

 

「アイテムなんかいりません。 あなたとはもう絶対に組まない、あたしを欲しいっていうパーティーは他にも山ほどあるんですからね!」

 

ありゃりゃ、啖呵切って飛び出しちゃったよ……

原作であれば、シリカはこのままドランク・エイプに愛竜のピナをぶっころころされてしまう。

仕方がない、少しめんどくさいけど助けるとするか。

 

 

 

がさがさと腰くらいまである草を掻き分けながらシリカの向かった方へと歩いていく。

シリカはシリカで森の奥へと歩を進めながら愚痴を言っているようで、後ろから着いてきている俺やいつの間にかポップしたドランク・エイプに気がついていない様だ。

 

ハイドスキルは使っていないにも関わらず、ドランク・エイプはこちらを一瞥し、軽く頭を下げるだけで攻撃はしてこない。

同じように頭を下げ返し、増えていくエイプ達と一緒にシリカの後を追う。

 

「……あれ、ここどこだっけ……?」

 

いつの間にこんな奥地に来ていたのかと辺りを見回し始めるシリカ。

俺やエイプ達はシリカに見つからないように隠れ、俺はエクスカリバーに手を掛け、エイプ達は襲う好機を探し始める。

 

「……ピナ、ここ、どこかわかる……?」

 

水色の毛を持つ愛竜に声をかけるが、返ってくるのはきゅるる……?と首を傾げながら分からないと言ったような声。

ため息を吐き、下を向いたところでエイプ達が動き出し、シリカを取り囲み始める。

一応、襲うが殺さないようにチートウィンドウを開いて設定。

動けなくなるくらいのダメージで済むようにしてから、ウィンドウを閉じて居合の構えを取る。

 

「……んー……ひっ!?」

 

マップを見て首を傾げていたシリカは、今になってようやく囲まれていた事に気がついた様だ。

パーティーメンバーがいれば問題なく片付けられる数だが、今のシリカはピナを数に数えても、良くて1.8人。 対するエイプは6体。

適切な間合いを取ってエイプの1体に斬りかかるも、残りの5体が棍棒でシリカを殴りつけ、地面に叩きつける。

叩きつけられてもどうにか起き上がり、再度攻撃するが、同じことの繰り返しになってしまっている。

ピナも黙って主人がやられるのを見ている訳ではなく、シリカのHPが緑の場合はシリカに攻撃するのはやめろと言わんばかりにエイプに攻撃し、HPが黄色になれば、ヒーリングブレスでシリカを回復しているが、焼石に水だろう。

 

シリカのHPが残り3割、ピナが残り2割を切った辺りでエクスカリバーを抜き放ち、今まさにピナのHPを動けない程度に吹き飛ばそうとするエイプに向け、アロンダイト・ストライクを発動。 ジェットエンジンの様な音と複数の白銀の剣を纏い突撃を開始。

はじめに、俺のエクスカリバーがエイプの腕を切り飛ばし、次に俺の周りを漂っていた幻の剣が周辺のエイプや、腕を切り飛ばされたエイプのHPを全損させる。

さらばだ、会釈してくれたドランク・エイプよ……

 

呆然とピナを抱きしめているシリカに、「大丈夫かい、お嬢さん?」とキメ顔でクールに問いかけるが、この体だ。 シリカはぶふっ、と吹き出していた。

 

「ふふふっ……あっ、ごめんなさい、大丈夫です……!」

 

笑いを堪えつつも無事を伝えてくる。

だがポーションが切れ、回復結晶も貰っていないシリカのHPは3割しかない。

笑ったことに対し、ジト目をしながら懐を漁ってハイ・ポーションを四つ取り出してそれを全てシリカに渡す。

 

「今はそれで大丈夫かな? 周りのモンスターはいないはずだし」

 

「え、えっと、ありがとうございます……これだけじゃなく、助けてくれたことも」

 

「いいのいいの。 困ってる子は放っておけない質だから」

 

ピナにポーションを飲ませながら頭を下げてくるシリカにそう言って。

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「ええと……それで、なんてお礼したら……」

 

「んー……気にしなくて良いのに……」

 

「それじゃあ私の気が収まりません! ピナも私も死んじゃいそうになった所を助けてくれたのに……」

 

お互い自己紹介も済まし、臨時のパーティーを組んで主街区までの道のりを歩いている最中にそんなことを言い出すシリカ。

俺は生きてたんだからそれでいいと言うが、シリカはそんなわけにはいかない、と頑としてお礼をすると言い続けている。

 

「あぁもう、分かった、分かったから。じゃあ、そうだな……ペットを蘇生出来るアイテムがあるんだけど、ソレを一緒に取りに行ってくれないかな。 勿論、私がちゃんと護衛するから……」

 

「はいっ、その程度なら問題ないです!」

 

「あ、でもここから数層上……」

 

「あぅ……それだと難しいかも……」

 

「……まぁ、お願いしてるのはこっちだから、それ相応の装備や報酬は渡します」

 

「じゃあ……大丈夫……?」

 

論点をずらしていき、最終的にはあの花を取りに行く事がお礼となるようにしてから、今日は遅いし……とシリカを連れて宿に向かうが、その前に女の子みたいな名前をした細いキノコ男と、厨二病の様な名前をした太めの男が声をかけてきた。

 

「シリカちゃん、大丈夫だった?」

 

「パーティー抜けちゃったみたいだけど、また一緒にパーティー組まない?」

 

馴れ馴れしくシリカに言い寄ってくる元パーティーメンバーのモブたちを困ったような笑顔であははだのえへへだの言って、明らかに嫌そうな雰囲気を出していた。

だがシリカは

 

「い、いまはこの人と組んでますのでっ!」

 

と俺の腕を抱きしめながら、こちらを巻き込んで来た。

 

あぁん? みたいな感じでこちらを見ようとしていたようだが、俺の今の体は美少女そのもの。

途端に掌返して、君もシリカちゃんと一緒にどう? だの俺たちの姫になってくれだの言い寄って来たためについ

 

「うるせぇぞ、お前ら纏めて酢で焼いてモヤシ酢豚にしてやろうか」

 

と超絶笑顔で中指立てながら言ってしまった。

こういう輩には逆効果かもしれないと思ったが、既に手遅れ。

豚は豚らしくぶひぃぃ、と鳴き、モヤシはモヤシで有難うございますっ、と土下座していた。

全力で引いているシリカに違うんだと便名しようとしていたら。

 

「あらぁ、無事だったのね、シリカちゃん……?」

 

挑発、侮蔑、落胆、そういった感情を込めた声がモヤシ酢豚の後ろから聞こえた。

血のように赤い髪をポニーテールにした女、ロザリアが、モヤシ酢豚を横に退け、前に進み出てきた。

 

「まるで死んだ方が良かった、というような口ぶりですね」

 

「心外ね、そんなことこれっぽっちも思ってないわよぉ?」

 

これでもかと挑発の感情を込めまくった言葉があるだろうか。

俺は無いと思う。 反語。 になってない。

 

「それで、こんどは自分と同じような子を捕まえてこき使おうとしている訳ね?」

 

「はぁっ!? こき使おうなんてっ……」

 

「はい、落ち着いてシリカ」

 

激昴して反発しそうになっているシリカの肩に手を置き、落ち着かせようとする。

それに気がついた様子のシリカは深呼吸してをしてロザリアからふんっ、と目をそらす。

 

「私からお願いしたんですよ。 友人が、死んだペットを生き返らせる"プネウマの花"が欲しいと言うので、ソレを一緒に探してくれそうなシリカさんに」

 

プネウマの花、と強調して言ったのは、勿論ロザリアを筆頭とするオレンジギルド、タイタンズギルドを誘き出すためだ。

その言葉を聞いて、ロザリアの表情が少し変わった。

変わったと言っても、眉が少し上がり、口元が数瞬歪んだ程度だが。

 

「そ、まぁ、私には関係ないことだけどねぇ」

 

「そうですね。 私も友人の情報を喋りすぎました。 …そろそろお腹がすいたので、失礼しますね?」

 

モヤシ酢豚はあからさまに残念そうな声を上げるが、ロザリアが憎々しげな表情をして離れていけば、ロザリアの後を追ってこの場を離れていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

「あ、あの、大丈夫だったんですか……?」

 

俺がプネウマの花についての情報を話した事に対して心配そうにするシリカ。

 

無問題(モーマンタイ)。 一切気にしなくていいよ。

あいつ……いや、あいつらなら来てくれるだろうし」

 

えっ? と聞き返すシリカに、なんでもないと言って宿屋を目指す。

その途中に美味しそうな匂いが俺たちの鼻を擽る。

 

「作戦会議も含めて、ここで夕飯食べちゃおうか」

 

「は、はいっ……!」

 

そうして、お肉のいい匂いのする洋食屋の様な建物へと入っていき、席に案内されてからお高そうなお肉や飲み物を注文していく。

NPCのウェイトレスが頭を下げ、厨房に走っていくのを見ながら、明日の事なんだけど、とシリカに話を切り出す。

 

「目的の物はこの数層上、47層の思い出の丘と呼ばれる場所。 そこに咲くプネウマの花と呼ばれる花」

 

「47層……ですか……」

 

「うん、47層。 今のシリカだとちょっと危ないかもな場所だけど、今からあげる物を装備すれば、安全マージンよりも少し上くらいの戦力は持てるはず」

 

「そんな装備が……?」

 

シリカの声に頷きながら自身のメニューウィンドウを操作し、シリカにチートで取り出した装備を渡していく。

今回は特例として、最前線である51層から数層上ではなく、10数層上……65層の装備を取り寄せてある。 シリカに死なれたら嫌だし。

 

その性能を見たシリカは目を見開き

 

「こっ、こんなにも凄い装備貰えません!」

 

と椅子からガタリと立ち上がり、再度トレードで押し返そうとするが、俺はそれを拒否する。

その程度の装備なら沢山持ってて嵩張るから、シリカに似合いそうなものを出しただけだよ、と言えば漸く頷き、渋々座るシリカ。

 

丁度頼んだものが来たため、一度その話を切り上げて食事に舌鼓を打ち始める。

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~

食事が終わってから、明日の朝に位に出発するからと、転移門広場が目の前のちょっとお高い宿をとることになったのだが、シリカが同じ部屋の方が安上がりだと言った結果、二人一緒の部屋で寝ることになった。

(見た目)女の子だから完璧油断しきっちゃってるシリカさんは少し俺の胸を見て自分の胸を触ったりはしたもののほぼ躊躇いもなく下着姿になってそのままベッドでごろごろし始めたさて俺もごろごろし始めるか頼む止めないでくれ俺はこれでも冷静だシリカが眠るまでまだ時間はあるだろうからピナともっと親睦を深めるのもいいかもしれないと手招きしてみれば軽くひと鳴きして笑顔のようなものを浮かべながらこちらに寄ってきてくれたよっしゃなでなでしたるでなでなでなでなで。

 

……ピナを撫でて漸く落ち着いた。

童貞みたいなキョドり方だったが、シリカには気づかれていない様で、「うへぇ~……」とゆったりぐったりしちゃっている。

抱っこして撫でまくっていたピナを、ベッドの上に座ってから膝の上に移して撫で直しはじめつつ、シリカにもう一度概要を伝える。

 

 

 

予定を最後の方までシリカに伝えれば、漸くそこで部屋の外にいるプレイヤーの気配に気がついた。

失態と言えば失態か。 話に夢中になっていると気が付かなくなるのはどうにかした方がいいかもしれないな。

 

気配が足音を立てずに階段の方へと走っていったようだが、チートウィンドウでしっかり名前やアバターを確認している。

ちょいちょいっとチートウィンドウを操作すれば、すぐに閉じてピナ撫でと説明を再開する。

 

 

~~~~~~~~

 

暗くなった部屋の中、寝息を立てているシリカとピナ。

起こさないように注意しながらチートウィンドウを出現させ、自分のアバターウィンドウを表示する。

いつの間にかチートウィンドウにアプデが来ていたようで、シリカが寝る前にその通知が来たのだ。

 

内容はプレイヤー及びNPCのモンスター化。

ゴブリンから100層のボスまで、様々な姿になることができるようだ。

 

さっそくアバターをセーブしてから、自身の姿をスライム……パラサイトスライムへと変化させる。

このモンスターは名前の通り、寄生するスライム。

プレイヤーに寄生し、一定時間操られるというエロ同人によく生息していそうなスライムだ。

見た目はレモン風味なスライム。 だが中身はプレイヤーを操れるスライム。

 

隣のベッドですやすや眠っているシリカとピナに気が付かれないように近寄り、下着姿のシリカの下半身の方へとずりずり這って行く感じに進んでいく。

目の前には布に覆われた無毛のクレバス。

モンスターの様な思考にはなっていないものの、うずうずむずむずと体が疼く。

下着をどかそうと手を伸ばすが、スライム体だからか布を突き抜けてしまう。

仕方ないと布を退かすのを諦め、ゆっくりとシリカのクレバスへと体を挿入し始める。

 

「……入った」

 

ピクン、と肩を震わせ、ゆっくりと体を起こして。

 

「掌握、完了」




もうね、シリカは4番目に好きだからか、結構伸びたね。

スライム、とは言ったけど最後しか行けなかったぜ……

あと……何を言おうとしたか忘れました。


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第13層・いつもとは違う弄り方

第何層って書き忘れることがしばしばあるのをどうにかしたいな。

……そろそろゲームクリアしたいけど……まだフィリアとかレインとかと仲良く(意味深)なってないんだよなぁ……
フィリアをホロウエリアに送るつもりは、ねーです。

あ、そうだ、途中もしかしたらグロに部類されるかもしれないので、注意お願いします


「掌握、完了」

 

シリカのおまんこから体内へと侵入、そのまま体を浸透させるように体を馴染ませていってからシリカの体を乗っ取る。

めんどくさい過程だが、痛みが感じられるようなものであれば、多分圏内だから出来ない。 だから仕方がない事なのだ。

 

ピナは主が乗っ取られている事に気付くことは無いようで、すやすやと寝息を立て続けている。

どこまですれば起きるかと試してみたい気持ちはあるが、触れぬ神になんとやら、薮を突っついて蛇……ならぬ竜を出す必要もないだろう。

 

隣に眠っているピナを起こさないように体を起こし、右手を振ってメニューウィンドウを表示する。

プレイヤーID等が変化しているにもかかわらず、チートコマンドのボタンが表示されている。 まぁ、寄生しているのだからそれも当然か。

とりあえず、とオナニーしようとすれば、警告ウィンドウが出現した。

そこにはこう書かれていた。

 

『パラサイトスライムはプレイヤーに寄生すれば、アバターを操ることが出来ます。 しかし、変身したパラサイトスライムがアバターを操れば、そのアバターの持ち主が自分の意思で行動した事だと認識します』

 

……つまり?

…………あー、この状態で俺がシリカにオナニーさせれば、それは自分がむらむらしたからオナニーしたと認識するってことか。

 

認識変化、誤認……色々言い方はあるが、脳操作に近い感じか。

あまり変わらない気がするが、そこは気持ちの持ちようだと頭を振り、再度ベッドへと体を倒す。

 

「……俺の強く望んだ意思も反映されるのかな」

 

物は試し、と呟き、『私はセイメイさまのペット』『私一人の時の、セイメイさまの呼び方はお兄ちゃん』『朝セイメイさまを起こす時はおはようフェラ』……

などなど自己暗示の様にシリカの頭に刻み込む。

え、なに、変態? 知ってる。

 

とりあえずはこんな感じでいいだろう。 シリカの中から抜けるためにお腹に力を込める。

すると、ぬるぬるっとおまんこから黄色いスライムが抜けていくのに比例し、頭が、体が、意識が重く、眠るような感じで意識が無くなる。

 

(体感時間で)すぐに目を覚まし、自分のベッドに移動するためにぬるぬるぬるぬると体を動かして自分のベッドに潜り込んでからチートウィンドウを開き、セーブしていたアバターに変化させる。

途端に眠気が押し寄せてくる。 それに任せて目を閉じた。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~

「ん……じゅる……はむ……」

 

ちゅんちゅんと鳥の囀りで目を覚ますだろうと思っていたのだが、それよりも大きな何かを啜る音と、下半身に感じる柔らかさで目を覚ます。

ピナは未だにベッドの上で丸まっているが、ピナの主人が見当たらない。 きょろきょろと辺りを見回せば、俺の下半身辺りが盛り上がっているのに気がつく。

足がその膨らみに拘束されているのか、上半身だけ使ってシーツを剥ぎ取る。

そこにはゆっくりだが、それでも使命感に駆られている様な顔でおちんちんを舐め続けているシリカがいた。

一瞬飛び跳ねそうになるも、そういえば俺が命じたやつだったわ、と思い出して落ち着く。

 

落ち着く、と言ってもそれは上半身だけの話で、下半身は落ち着くことはなくビンビンに反り返っている。

『おはようフェラ』をちゃんと守っているようで、オナる事や挿入などはしてこようとはしない。

そこでようやっと気がついたのか

 

「おはようございます、お兄ちゃん♪」

 

と太陽のような笑顔で俺に挨拶してくる。

無論俺もおはようと返すが、挨拶に合わせてじゅぞっと吸われたために口内へとどびゅっと朝イチの濃い精液を吐き出してしまった。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

この世界は事後処理しなくて済むのが良いね。

そんな事を思いながら、昨日渡した装備を着てクルクル回っているシリカを見つめる。

 

「どうですか、お兄ちゃん……?」

 

「うん、可愛い。 人前に出さないで自分だけの奴隷人形(アイドル)になって欲しい位だよ」

 

「さ、さすがにそれは恥ずかしいです……」

 

顔を赤くしているシリカに何度か可愛いと言ってから、再度シリカの装いに目をやる。

今シリカが着ている装備は、見た目はキリトがシリカに渡した装備そのままだが、付与されているステータスが全く違う。

パッシブでPOW308%ブースト、DEX206%ブースト、STR706%ブースト。

アクティブでソードスキル威力206%ブースト。

というチートもりもりの装備となっている。

 

「さて、それじゃあ出発しようか」

 

「はい!」

 

クルクル回っていたシリカを連れ、チェックアウトしてから転移門広場へと向かって歩いていく。

途中何度か二人揃ってパーティーに入らないかと勧誘を受けたが、だいたい罵声を浴びせて追い払ってやった。

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~

「ふわぁ……ここが47層ですか……?」

 

転移門から出れば、そこは花いっぱいの広場。

デートスポットとして有名な花園の街だが、目的はデートでもピクニックでもない。

はしゃいでいるシリカに、そうだと頷きながら目的のもののある場所へと向かって歩いていく。

そんな俺の後ろを「わぁ~……」だの「綺麗だなぁ……」だのと小さく呟きながらシリカがついてきている。

 

「えっと……お兄ちゃん、ここからどれくらいで目的地につきそうですか……?」

 

「ん、そだなぁ……3、40分位かな」

 

「3、40分位ですか……わかりましひゃぁっ!?」

 

変な声が聞こえたナーと後ろを振り向けば、足をモンスターの触手に拘束され、宙ぶらりんの状態でスカートを押さえているシリカと触手の元である花の様なモンスターが見える。

 

「みっ、見ないでくださぁい!!」

 

「無理」

 

「ひんっ!? ……こ、このっ、いい加減にしろぉっ!!」

 

シリカのまっさらで毛すらも生えていないぱんつもはいていないなだらかな丘をガン見しながら無理だと告げれば涙目になってナイフをブンブン振り回すシリカだがそれでも当たっていないどうしようもないなと思いつつエクスカリバーを抜き放ちそのまま上段から剣道で言うところの面を放つように振り下ろせば縦に真っ二つになってシリカのなにもはいていないおまんこが俺の顔面に落ちてきたよし理性ぶっ飛ばしてるけど頭は冷えたいいね俺は冷静だ。

 

「ちょっ、お兄ちゃっ……くんかくんかしないでくださぁいっ!!」

 

ごすっという音と共に顔面にシリカの膝がめり込む。

いつもの様に変態トリップしていたが、その一撃で目が覚めた。 ごめんとありがとうをシリカに言えば、今度はモンスターや人のいないところでお願いしますと返ってきた。

つまりえっち自体は良いみたいだ。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

そんなこんながあってプネウマの花が咲く祭壇にたどり着き、シリカに頼んでプネウマの花を取ってもらった後の帰り道。

 

市街地に続く街道を分かつ川に架けられた橋の上で、俺の索敵スキルにハイドスキルを使用しているオレンジプレイヤーの反応が引っかかった。

すぐさまシリカの前に手を出し、そこで止まれの合図を送る。

 

「……お兄ちゃん……?」

 

「私が逃げろって言ったら、すぐに転移結晶を使って逃げてね……?」

 

後ろ手に転移結晶をシリカに渡しつつ、前方で隠れている、俺たちを襲撃しようとしている者達に向けて声を張り上げる。

 

「そこにいるのは分かっている、隠れてないで出てきたらどう?」

 

「……あらあら、私のハイドを見破るなんて……流石ねぇ……?」

 

「その程度のハイドスキルで隠れていたなんて言えるの? そんなクソみたいな熟練度ならまだスライムの方がまだマシよ?」

 

「このっ……まぁ、いいわぁ……? その様子ならきちんとプネウマの花を確保出来たみたいね?」

 

俺の声で自分では優雅だと思っていそうな格好で木の影から出てくる襲撃者、ロザリア。

俺、ゲット出来た喜びとか顔に出ないけど……

なんで確保出来たって分かったのか不思議だがまぁいいだろう。

 

「確保出来たからと言って、貴方になにか関係が? 関係ないですよね? 渡せと言われても渡す気は毛頭ありませんので」

 

この体でいるとなんだか気が強くなってる気がする。 昔はあんなに人の顔色を見て話してたのになぁ……。

そんな思考に気付いていないロザリアは渡す気のない俺の周りを手下共に命令して囲ませている。

 

「セイメイさん……!」

 

「大丈夫、この程度なら無問題(モーマンタイ)だよ」

 

「っ……やっちまいな、お前たち!」

 

俺とシリカのやり取りに腹を立てたのか、ロザリアが手下共に「殺れ」と命令を受け出す。

ウィィィィ!と手下共が俺のアバターを剣や短剣やメイスや刀や曲刀や爪で切り抉り穿ち卸し削り裂いても、俺のHPは一向に減らない。

手下共が疲弊していくのをあくび混じりに眺めていたが、漸くひとりが手を止めて口を開いた。

 

「あっ、姉御ぉ……こいつ、一切ダメージ受けてねぇですぜ……」

 

「そんな事あるはずがないわっ、ただ少しだけHPが高いだけでそんなはずは……!」

 

おーおー、狼狽えちゃってまぁ……

……飽きてきたからネタばらししちゃいますか。

首をぼきりと直角に曲げ、口角を三日月のように釣り、今回のためだけに用意したフリル沢山のゴスロリ服の膝まで隠す花弁を逆さにした様なスカートの端を引っ張りお辞儀をして。

 

「狼狽えちゃってまぁ……可愛いですねぇ? そんな可愛いあなた達に自己紹介をしてあげましょう。 私はセイメイ。 最前線の中核を担う者」

 

俺の後ろ姿だけを見ているシリカからは悲鳴は聞こえないが、俺の前にいたロザリア以下手下共数名は今の俺のポーズと表情、それから今の自己紹介(笑)を聞いて恐怖している様で、上擦った声で悲鳴をあげたり逃げようとしたり腰が抜けてしまった者もいるようだ。

俺は悪魔かな?

 

「今回の私の目的は、プネウマの花の確保と、あなた達『タイタンズハンド』の捕縛及び投獄。 ……依頼主は十日前に38層であなた達が襲ったギルド、『シルバーフラグス』のリーダー」

 

「っ……あの貧乏なギルドのリーダーが……」

 

昨日、シリカを探す前に済ませていた用事。

それは、最前線転移門前で、泣きながら仇討ちをしてくれるプレイヤーを探していた男に会いに行く事だった。

 

「でもその人は、依頼を受けた私に向かって、あなた達を殺してくれては言いませんでした。 黒鉄宮の牢獄に入れてくれと、そう言いました。 ……あなたに、その人の気持ちが分かりますか?」

 

「……わかんないわよ」

 

ぎりりと奥歯を噛み締めるような音が鳴り響いて。

 

「でしょうね。 あなたはそういう人だ。 だから私はあなた達『タイタンズハンド』を黒鉄宮に半殺しにしてからぶち込むことにしました」

 

表情を消したまま、転移結晶を懐から取り出したロザリアに向かって跳躍。

エクスカリバーに白銀の光を纏わせ、ロザリアの腕を切り落とす。

途端に俺のカーソルが緑からオレンジに変わるがこれは仕方が無いと頭を振る。

 

「ぎぁぁぁっ!? わ、私の腕がァァっ!!??」

 

あやべ、昨日なんか依頼主から聞いた話にすげぇイラついたからロザリアのペインアブソーバーを0にしてたの忘れてた。

汚ぇ叫び声をあげながらゴロゴロ転がるロザリアの髪を掴み引き摺りあげてから、依頼主から預かった回廊結晶を取り出し、起動するための句を唱える。

 

「コリドー、オープン」

 

揺らめく陽炎のように空間が歪み、転移門とは違う回廊が生成される。

その中に片腕がないロザリアを投げ込み、手下共を口角を釣り上げた状態でシャフ度する。

それを見た手下共は一人残らず黒鉄宮に続く回廊へと身を投げ込んでいった。

 

シリカ曰く、この時の俺の目にハイライトはなかったらしい。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~

「……ごめんね、シリカ。 あいつらを誘き出すためにあんなお願いしちゃって」

 

「いえ……なんだかんだで楽しかったですし……」

 

俺と同じ速度で歩くシリカは俯き、その表情は推し量れない。

チートウィンドウを見れば何を考えているかなど即座にわかるが、そういったものは今は使いたくない。

いやまぁ、さっきもいじってた奴が何を言うかって言われそうだけど。

 

「もう、すぐに前線に帰っちゃうんですか……?」

 

「んー……そうだね、前に使ってた剣が折れてから今まで数日間離れちゃってたし……」

 

その言葉にそうですか……と更にしゅんとするシリカ。

 

「……良かったら、私のギルドに入らない? ……ギルドと言っても、まだ立ち上げたわけじゃないけどさ」

 

そうすれば、いつでもお話できるよ、という意味を込めて提案をシリカに聞かせて。

それを聞いたシリカは顔を上げ、涙を拭うような仕草をみせてから表情を緩ませ───────────




はい、これにてシリカ編は終了となります。
いやぁ、2話揃って5000文字越え、辛かったです。
えっちっち要素はほぼ無いに等しかったですが、ほんの数カ所原作に似てる部分があるかもー……?(怒られそう……?)
それはそれとして、セイメイ君の新たな一面が見られましたが、如何でしたでしょうか。 私としてもまさかセイメイ君がここまで暴走するとは思いませんでした。 ロザリアさん好きな人はごめんなさい。

次回はクリスマス当日までに、クリスマス編……番外編を上げるつもりです。
出来るかなぁ……頑張るかぁ……プレゼント何にしようかなぁ……
もしかしたら正月ネタになるかもしれない……


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第14層・攻略組のクリスマス

あぁ……新年明けちゃった……
……今年も本作品をよろしくお願いします。
……そしてやっぱり番外は無いことに……
キリトが背教者ニコラスをぶち転がすのがシリカ出る前だったり、49層辺りですが、あまり気にしないでくれると幸いです。
気にする、という方は、チート使ってるせいでキリトがいる時系列的より早く進んだ、と考えてくれれば、と。


青いエフェクトを抜ければ、そこはカラフルで煌びやかな装飾が施された始まりの町だった。

最近色々やっていて今日が何日だったか、という感覚が消し飛んでいたが、どうにか今日がクリスマスだということを思い出した。

 

ギルド創設をする為に寄っただけだったのだが、こうもキラキラとクリスマスでござい、と喧伝されているなら、クリスマスケーキとか買わないわけには行かないだろう。

多分皆食べたがるだろうし。

 

サービス開始時はNPCしかやっていなかった出店が、今やプレイヤーまでもが出店し、転移門広場から少し出ただけでごちゃごちゃと渋谷や原宿みたいな有様だ。

出店があるからお祭りかな?

 

まぁそれはいいとして、今はギルド創設が最優先だ。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~

血盟騎士団やドラゴンナイツ、そんな厨二っぽい名前を冠したギルドが最前線の中核を担っている。

原作では、アスナが副団長を務めていたが、この世界では別な美しい少女が副団長を務めているみたいだ。

キリッとしたつり目に炎を宿した瞳、薄紫色の腰まで届きそうな手入れされた長髪、スラッと長い手足、の割に大きい胸、背丈は165cm位、見た目に違わない騎士道然とした物言い。

アスナとは色々と対照的だが、団を纏めあげる才能はどこか似ている。

その少女の名前はPercival(パーシヴァル)。 円卓の騎士達の中で、唯一聖杯を見つけることのできた英傑の名だ。

 

そんな少女がなぜか犬耳と犬しっぽを付けて俺の後ろを着いてきているんだが。

……何があったっけ?

 

確か、転移門から出て、ギルド創設するために歩いていたら、少しロードが入って……

……その時に暇だから『ロード明けて最初に見たプレイヤーもしくはNPCは、俺の犬になる』っていうよく分からん内容のチートを付与して……

 

ってバッチリそれが原因じゃねーか。

しょうがないので解除しようとしたが、堅物委員長なパーシヴァルをうちの陣営に引き入れられるならこのままでもいいかとため息を吐きつつ、犬耳&犬しっぽを付けたパーシヴァル()をつれて歩いていく。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~

途中何度かパーシヴァルが足が痛い(パーシヴァルはヨツンヴァイン)と止まったものの、ほぼ何も無くギルド総合本部みたいな所に辿り着く。

 

「ギルド登録の方はこちらでーす」

 

良くある中世風な建物。

酒場や宿も兼ねているのか、カウンターが約3つ。

正方形を"Y字"に3等分にしたような感じで、入口は"Y"の下の部分。

左には宿のカウンターに2階へと繋がる階段。 右には酒場。 正面にギルドカウンターがある。

説明下手乙。

 

真正面で手を振っているウケツケジョー……ではなく、受付嬢の方へと向かい、声をかける。

 

「ギルド登録したいんだけど、ここで大丈夫?」

 

「はい、こちらで大丈夫ですよ。 では、こちらに必要事項を記入して、注意事項をよく読んでから提出してください」

 

メニューウィンドウが強制的に開き、アカウント作成時のような画面が現れる。

といっても、ギルド名だったり、募集文だったり……ソシャゲでギルドとか、そういった団体を作る時に出されるよくあるやつだったが。

 

募集文は必要ないからデフォルトの【よろしくお願いします】でいいとして、ギルド名はどうするか……

 

「うーん……あれでいいかな。 俺も俺でアレだし……」

 

あれ。

イギリスの人に分かるかと聞けば、大抵は分かると言うであろう騎士団。

アーサー王を頭に据えた、【円卓の騎士団】

 

厨二心がランナウェイする名前をつけてから、決定ボタンを押す。

すると今度はギルドのエンブレムを作る画面が出てきた。

数百種位ある模様を組み合せたり、自分で物を作ったり出来るみたいだ。

 

「苦手なんだよな、こういうやつ作るの……」

 

血盟騎士団は剣とその下にK.O.Bと書いてあるシンプルだが意匠の凝ったもの。

サチだけが残っている月夜の黒猫団は、月を背景に座る黒猫という名前に由来してのもの。

色々な物があるが、そこまで凝った物にしなくてもいいだろう。

 

盾を背景に、剣が三本。 刃の半ばで交差している。(✱←こんな感じ)

どこかで見たことがあるような感じはするが、まぁ、いいだろう。

とりあえずはこれにして作成完了のボタンを押せば

 

「はい、これでギルドの創設は完了しました。 諸々の確認事項はヘルプ画面から見れますので、そちらをご確認下さい。

それでは、よいギルドライフを」

 

と受付嬢との会話が終了する。

それ以降は何もイベントが無いようで、あとは帰るだけ。

 

パーシヴァルを引っ張りながら、そこから出ていこうと出口に歩いていけば、左前方にある酒場からどこかで聞いたことがあるようなため息が聞こえた。

 

「んなぁぁぁ……今日もハズレかぁ……」

 

「あんまり焦っても仕方ないよ、フィリア。 気長に行こ?」

 

「とは言ってもなぁ……もうかれこれひと月だよ? 私はもう待ちたくない……」

 

「……んー……じゃあもう少しだけ探して、ダメだったら諦めよ?」

 

「それもやだぁ……」

 

声の主は、円卓に座った茶髪と赤髪の少女たちだった。

茶髪の子ははへそ出しルックに水色のシーフの様な格好。

赤髪の子は機動性と実用性に優れたメイド服をさらに改造したような格好。

 

ストレアと同様に、原作では出てこない2人、フィリアとレインだった。

あまり街にはいないらしいフィリアをここで見つけられたのはラッキーだ、ということでチートウィンドウを即座に出現させ、この建物内にいる俺を除くプレイヤーの脳を弄り始める。

 

プレイヤー一覧を見れば、フィリアやレイン、(パーシヴァル)の他に、酒場のカウンターで食器を拭いているおっさん、その目の前でお酒飲んでなんか泣いている女性、お酒の代わりにミルク飲んでいる可愛らしい幼女(?)がいた。

とりあえずその3人にここで起こることは認識できない、記憶に残らない、と埋め込んでから、幼女(?)に、次に会うことがあったら、俺のことをご主人様だと認識するようにセットする。

 

それを終えたことを確認すれば、次はフィリアとレインだ。

フィリアは……うーん、うーん……?

何がいいんだ?

頭抱えて唸るが一切いい案が出てこない。 いつもやってるような、ご主人様と思い込む、というのが安牌だが、それだとバリエーションが貧弱すぎてコアなリピーターしか面白みが無いだろう……

そうだな……俺の事を一番のお宝だと思い込むも、周りに俺を狙っているのが複数いるから、手出しは出来ないものの擦り寄ってくる……と。

で、レインは……俺の事を雇い主だと思い込み、鍛治から奉仕まで、色々しなければならない……。

とまぁ、こんな感じでいいか。

後は、今仮拠点にしている宿の場所を2人の頭に追加してやれば、チートウィンドウを閉じる。

周りのプレイヤーが頭を上げ、辺りを見回している間に、パーシヴァルを引っ張ってそこを後にした。

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

さて、次はギルドハウスを探さなきゃなんだが、いい感じのギルドハウスとか俺には分からない。

ので、オススメな物件は無いかとアルゴに頼んで調べてもらっている。

その際

 

「依頼されたのなラやるけド、文句は受け付けないゾ?」

 

と念押しされた。

あまり不動産とかの依頼はやっていないのか、自信が無いようだった。

 

「……さて、待ってる間、どうすっかなぁ」

 

椅子(パーシヴァル)に座りながら、髭のない滑らかな顎を摩って首を捻る。

数秒経たずにパーシヴァルの退団申請とかさせないとダメか、という考えが浮上してくる。

ちょっと面倒くさいものの、血盟騎士団のメンバー全員の頭を弄れば解決出来るだろう、とっととやってしまうか?

 

「いや、止めておこう。 無いとは思うが、あのヒースクリフだしなぁ……」

 

このチートを無力化出来るとは思えないが、絶対に無いとは言いきれないため、手を出すのを止める。

とりあえず、パーシヴァルに退団する様に命じれば、どうにかなるはずだろう。

よいしょ、とパーシヴァルから降りて、退団して来るように命じる。

分かったと頷くパーシヴァルだが、一向にその場を動こうとしない。

 

「……あ、今椅子にしてるんだった」

 

すぐに、頭の中は俺に対する忠誠でいっぱいな人間へと戻し、パーシヴァルを送り出す。

 

 

 

 

送り出してから数分と経たずにアルゴからメッセージが飛んできた。

 

『オススメは上4つ、下に行くにつれて立地が悪くなっテいく、っていう感じダ。 こんなんでいいカ?』

 

「ほうほう、西西中東……『おう、こんな感じで大丈夫だ。 報酬はコレに添付する。 またよろしく頼むよ』っと」

 

メッセージに報酬の5Mコルを付けてソレをアルゴに送りつつ、送られてきた画像を眺める。

上から、ホグワー〇城みたいなお城、西洋風な豪邸、中華建築、じゃぱにーずとらでぃしょなるBUKEYASIKI

 

……武家屋敷だな。

掃除とかはしなくてもいいが、ホグ〇ーツとか中華建築とか迷いそうで嫌だった。

なら西洋風な豪邸でもいいだろう、と言われるかもしれないが、日本人だもの、武家屋敷みたいなギルドハウスの方が俺としてはポイント高かった。

 

すぐさま転移門広場へと足を向けて歩き出した。




書き始めは12月の20日だったのに、もう2月……早い、早すぎるよっ……
間が開きすぎたせいで書き方もおかしくなってるんじゃないかな。
つらふぃん……


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第15層・円卓と黒猫

あれ、今何月だっけ?
3月?
……いやもう5月じゃねぇか!?

皆様、如何お過ごしでしょうか。
お身体の御加減はいかがでしょうか?
この時期は暑くなりがちですが、コロナや熱中症に負けぬよう気をつけていきましょう。


ギルドハウスを購入してから数日が経った。

パーシヴァルの脱退が滞り無く済み、フィリアとレインが合流、洗脳及び改造済のメンバーをギルドに迎え入れ終わっている。

 

歓迎パーティとクリスマス、あとついでに忘年会などなど様々な行事がこの数日に集約されていた。

 

そんな数日間の最後の日、12月31日。

サチと一緒に21層の砂漠へと赴いている。

サチ以外の黒猫団のメンバーが散っていった場所に、サチと摘んできた匊や百合、桔梗等の花に限りなく近い花を手向ける。

ドロップという扱いで10分前後で消滅してしまうが、言わぬが花だろう。

 

「……ありがとう、付き合ってくれて」

 

「あぁ……気にするな」

 

アスナとストレアに無理を言って作ってもらった喪服を着たサチを見ないように隣に立ち、優しく頭を撫でてやる。

ぐずぐずとし始めたサチの頭を包むようにそのまま抱きしめてやれば、堰き止めていた涙が決壊したかのように、嗚咽を漏らしながら涙を零し始める。

 

優しく、優しく、サチが泣き止むまで撫で続けていたが、いつの間にか嗚咽や鼻をすするような音が無くなっていた。

軽くちらりと顔を覗き込めば、泣き疲れて眠っているようだった。

四苦八苦しながらサチをおんぶをし、転移結晶を使ってギルドホームのある街へと転移をした。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~

サチを客間の布団で寝かせてから、会議室なのに居間みたいな雰囲気になっている部屋へと赴く。

 

部屋の中にはアスナ、ユイ、ユナ、レイン、あと見知らぬ幼女を含めた5人が、98層の素材でどんな武器が作れるのだろうかと会議というより女子会を開いていた。

女子会だと言い切る理由が、机の上に配置された軽食やお菓子類のせいだと言っておこう。

 

「まぁ、女子会は開いていても問題はないのだが……知らない幼女をギルドホームに連れ込むのはどうかと思う」

 

「失礼な、これでも今年24!」

 

「その見た目で24は無理があると思うというか口にでてたのか俺ぇっ!?」

 

毎度考えていることが口に出ちゃっているのはどういう事なのだろう、今後の課題にしていきたいと思います。

……まぁ、それはいいとして、そんな24歳が何故ここにいるのかと(幼女だと言ったことを謝りもせず)問いかけてみる。

 

「それはもちろん、皆さんに招待してもらったからだ! クワッ!」

 

幼……その人は椅子から立ち上がり厨二病全力疾走なカッコイイと思っちゃってそうな、髪に隠れた左目の前に右手を持ってきて、左手を胸を支えるような感じのポーズを取る。

 

ようやくそこで、彼女の全体像を見ることが出来た。

身長は目測で138cm、胸は92cm……お腹とお尻は分からないが、とりあえず小さい。

髪は薄緑で、瞳も同じような色。 だが、左目は髪で隠されているためよく見えない。 厨二病全開なので、オッドアイの可能性もあるかもしれない。

髪はぎりぎり肩にかかりそうな片目隠すウェーブショート。

 

天然物のロリ巨乳だな。

……まぁ、それはいいとして、この合法ロリはどこの誰だろうか。

 

「ボクはデスサイズによって冥界より招かれし魔族の娘、ガウェイン!」

 

聞いてもいないのに、バッと隠れた左目に右手を翳し、左手を左上に、右足を軸足にして左足を横にスライド、遠目から見たら"X"に見えなくもない格好をして、ガウェインと名乗ってくれる厨二病24歳。

 

「ガウェ院」

 

「ガウェ院じゃない、ガウェインだ!」

 

私も行きましょう、とか言わないからな! とどっかのゴリラの真似はしたくないのか、機先を制することが出来たとドヤ顔しながらびしっと指を指してくる厨二病。

 

「人を指さしちゃいけません」

 

ガウェインの指を掴み、ガウェインの手の甲に向けて痛みが出るように押し込む。

いだいいだいと大声あげるガウェインだが、俺はやめずに押し込んで。

 

「わ、わかった、謝る、謝るからぁ!」

 

半べそになりながら謝ると連呼するガウェインの指を仕方なく放してやれば、痛そうに指を振ってから

 

「……指さしてごめんなさい」

 

と拗ねた子供の様な顔をしながら謝ってくる。 ちゃんと謝れるのはいい事だ。

ロリって言ったことを謝らない俺が言うのもどうかと思うが。

 

それはそれとして、何故こんな厨二病合法ロリ巨乳を捕まえてきたのだろう?

俺は何も命令はしていないのに。

 

チラ、とアスナの方を向けば、セイ君がパーシヴァルを捕まえてきたなら、私達も1人くらい捕まえてきても大丈夫でしょう、というような本来視線にそんな細かな情報載せられないだろうと叫びたくなるような視線が返ってきた。

あっ、そう……と額に手を当ててアスナへと返す。

 

「……まぁ、いいか……」

 

ぼそりと諦めの言葉を吐きながらチートウィンドウを表示。

ガウェインの名前をタップすれば、目を虚ろに首を項垂れさせる。

この状態のままガウェインの手を俺が持ち、無理やりステータスウィンドウを開き、ガウェインが今ギルドに入っているか確認してみる。

だが、パーシヴァルとは違い、ガウェインはギルドに入ってはいなかった様で、ギルドに関係する窓を開いても【無所属です、ギルドに加入するか、創立してください】の文字しか出てこなかった。

 

それなら好都合。 にたりと悪い笑みを浮かべながら、ギルド加入申請をガウェインの手で進めていき、俺たちのギルド【円卓の騎士】へ加入申請を送る。

即座に俺のメール欄に加入申請を知らせる報告が来たことを確認すれば、承認ボタンを押す。

晴れてガウェインは俺たち【円卓の騎士】の一員となった。

 

だが、まだこの状態でガウェインを自由にはしない。

体関係の改造は必要ないだろうが、記憶などの改造は必要だろう。

俺たち【円卓の騎士】のメンバーの名前全てと、どこで出会って仲良くなって、どんな理由でギルドに入ったかなどの記憶を捏造し、頭の中に突っ込んでやる。

ついでにセイメイの雌奴隷も打ち込んでからチートウィンドウを消す。

 

ぐぅぐぅと寝息を立て始めたガウェインを、ユナに頼んで寝室へと運んでもらってから、そういえば、とアスナの方を向いて。

 

「サチがいるから、あけましておめでとう、などの物は無しに。 年越しそばは例外とする」

 

「うん、分かった。 じゃあそろそろ用意始めちゃいましょうか」

 

ユイとレインを連れて部屋から出ていく。 それを見計らったのかのように、いつの間にかに目が覚めていたサチが部屋へと入ってくる。

 

「おはよう、サチ。 よく眠れた?」

 

「ん……うん、なんだかすごい久しぶりに爆睡しちゃった気がする……」

 

えへへ、と恥ずかしそうに笑みを浮かべるサチに、沢山眠れるのはいい事だ、と笑みを返す。

 

「それで……えっと……」

 

「……?」

 

部屋の中央にある机の方には来ずに、もじもじと出入口であるドアの前で動かないサチ。

ここはサチが言い出せるまで待つ場面だろうな。

 

「……も、もし良かったら、私の……」

 

「……」

 

「私達、月夜の黒猫団と、同盟を……」

 

「あぁ、いいとも」

 

尻すぼみ気味になっていたサチの言葉に被せるように、同盟の申し入れを承諾する。

少し泣きそうだったサチの顔が次第に笑顔になっていくが、ただし、という言葉に体を硬くする。

 

「あぁ、そんなに怖がらなくていい。 戦力増強の話だよ」

 

「えっと……それはつまり、新しい人をメンバーにしろって事……?」

 

「そうそう」

 

もともと同じ学校の部活メンバーが集まっていた黒猫団だからか、サチは少し嫌そうな顔をしたが、頭を横に振って自分の頬をペちペちと叩き。

 

「分かった、ギルメン募集してきます……!」

 

黒猫団が存続するためにはそれしかないだろう、と思ったのだろうか。

まぁ、その後のことを考えていないようだが……。

しょうがない、そこはちょちょいと操作するか。

 

「じゃあ、行ってきます!」

 

即座に行動に移すべくギルドホームから出ていく行動派の化身サチ。

はやいなぁと思いながら、キッチンにいるアスナたちに外に出てくる旨を伝え、すぐにサチの追跡を始める。

 

すぐにサチは見つかった。

主街区の掲示板に募集の貼り紙(といっても、オブジェクト化されたアイテムだが)を貼り付けている。

それを見てもすぐには近付かず、少ししてサチが居なくなるのを確認してから、誰にもみられない路地裏に移動し、今の自分の体を保存してから別な体へと作り替える。

精度とかは気にせずとりあえずはこれでいいだろう、という事で獅子王アルトリアの姿を真似てみた。

無論、息子は生えたままです。

 

そんな体でサチの貼り付けた貼り紙の方へと近寄り、内容を見てみる。

色々と書いてあるが、まぁ、それは良いだろう。

内容よりそれを見たプレイヤーに用があるんだ。 だがずっとそこでスタンバる訳には行かないから、貼り紙にチートウィンドウを開く。

 

『この貼り紙を見た攻略組、もしくはそれに準ずる美少女、美女は入団しなければならない』『入団する場合、今入っている団を抜けなければならない』『団長であるサチ、同盟であるセイメイに危害を加えることは出来ない』『上記二人の命令は、命に関わるものを除き絶対』『採用人数に届かない場合のみ、男を高レベル美女化させる』

 

と、サチよりも俺が楽しめるようにしてしまったが、まぁ良いだろう。

るんるんとその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~

俺がギルドホームに戻ってから数時間後。

どたどたと走って帰ってきたサチ。

 

「セイメイっ……!」

 

ばたんと俺の私室の扉を開けながら、中に踏み込んできたサチの顔はどこか嬉しそうに、だが少しどうしていいか分からないという表情だった。

 

「おかえり、その顔はいい感じの人が何人か入ってくれたみたいだね?」

 

「うんっ、うん……っ! 攻略組や、それに連なる人達が沢山入ってくれた!」

 

「よろしい、ならば同盟だ」




サチと黒猫団の増強が主な予定だったのに、月を重ねていく毎にガウェイン入れてしまう流れになってしまっていた。


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第16層・ヒースクリフ

もう長い間空いちゃったので、ヒースクリフ戦です。
え、昨日上げたばかりだろ、だって?
……そうだねぇ、上げたねぇ……でも、いい加減現実に戻したくなっちゃいました。


「それでは、行くとしよう」

 

赤の鎧に身を包んだ男、ヒースクリフはそう号令をかけてボス部屋へと続く扉へと向き直る。

それに合わせた訳では無いが、ちらりと俺の後ろにいる円卓の騎士のメンバーと、月夜の黒猫団のメンバーを見やる。

 

歴戦の風格、というものは見いだせないが、それでも第1層からここまで登ってきたみんなは、俺には輝いて見えた。

 

 

あの後、サチと同盟を結んだ俺達円卓の騎士は、サチ率いる月夜の黒猫団と合同で74層辺りのボスまでノンストップで狩り続けた。

元血盟騎士団の副団長だったパーシヴァルに頼み、『74層まで攻略完了、75層のマッピングもボス部屋前までなら完了』という旨をヒースクリフに送って貰った。

数分でヒースクリフから返信が来て、『ならば、早期決着が望ましいだろう。 2日後、74層の転移門広場に招集をかける』と書かれていた。

 

 

さて、回想と仲間を見る時間は終わりだ。

エギルやクライン達風林火山、最終的には倒すヒースクリフ率いる血盟騎士団、俺たち円卓の騎士とサチの月夜の黒猫団。

全員が鬨の声を上げて部屋の中へと侵入。

 

中は円形のフィールドでそれなりに明るい。 しかし、その場所にはボスの姿が無い。

みんなは辺りを見回しているが、俺とヒースクリフだけは上空……天井を見上げた。

 

原作通り、天井に張り付いた状態でこちらを睥睨する骨の百足< The Skull Reaper >

 

「上だ!」

 

誰が発したのだろうか。 皆が一様に上を見上げ、スカルリーパーの異様を目にする。

あれはやばい、と腰を抜かしそうになる者、かかって来いと奮起する者、少し涙目になってるユナ。

様々な反応を示すが、それを見て楽しむという機能は無いのだろうスカルリーパー。 すぐさま落下を開始し、一番最初にスカルリーパーを見つけた俺に切りかかってきた。

 

エクスカリバーを鞘から居合の様に抜刀し、スカルリーパーの鎌にぶつける。

落下分の重さはある筈だが、問題なくその鎌を弾き返し、ソードスキルの構えを取る。

【騎士王】専用片手直剣用10連撃ソードスキル、クラレント・アセンション。

金色に光る10本の剣の進む道をエクスカリバーの鋒で指定してやるだけで、その10本の剣はその道を遮るものを容赦なく貫く。

それはスカルリーパーでさえも例外ではなく、ゲージ一本消し飛ばすほどの穴を開けて金色の剣達は飛翔する。

 

苦痛に悶え、鎌をあたり構わず振り回すスカルリーパーだが、ソレをヒースクリフ、ストレア、レインが受け止める。

その隙に百足足に気をつけながら、レイドメンバー達が横っ腹をぶん殴っていく。

割とあの百足足のダメージ、えげつないらしいからね……

 

それはそれとして、円卓の騎士、黒猫団両ギルドメンバーには、98層で取れる素材を使用した武器を持たせているため、ごりっごりスカルリーパーの体力が削れていく。

それのおかげか、さっきの鎌を受け止め横から殴る戦法を数回やるだけで、HPバーがラスト一本の赤ゲージまで行き、もう一度クラレント・アセンションをぶちかましてやるだけでスカルリーパーはポリゴンの塊へと姿を変えてしまった。

 

スカルリーパー戦はあっけない最後だった。

周りのプレイヤー達も、本当にこれで終わったのかと疑心暗鬼になったが、『Congratulation』の文字が空中に出現すれば、どわっと喜びの声が上がる。

 

ギルドメンバーで抱き合うもの、よくやったと別々のギルド同士で称え合うもの、なぜかぐったりしているリーファ。

 

俺も息を吐きながら座りたい衝動があったが、今はそれよりも優先すべきことがある。

チートウィンドウを表示し、AGIをそれなりに上昇させてから、ヒースクリフの視界外から高速の奇襲を仕掛ける。

だが、やはりヒースクリフには刃が届かなかった。

『immortalobject』の文字が書かれた紫色の六角形のパネルに阻まれている。

 

不死存在、破壊不能オブジェクト、普通のプレイヤーにはありえない属性。

 

「セイメイ、なにを……」

 

ヒースクリフの近くにいたパーシヴァルが俺の行動を咎めようと目を向けるが、そのパネルをみてピタリと動きを止めた。

 

剣を引き、ゆっくりと後ろへと下がってから

 

「自分で作ったこの世界で生き抜いてきたけど、最終的に魔王として君臨できなかった感想は?」

 

挑発気味にヒースクリフへと質問をなげかけ、どう言った反応を見せるかと口角を釣り上げて。

 

「……感想はない、が、なぜ気付いたのか参考までに教えて貰えるかな……?」

 

「さてね、気付く要因なんて各所にあった、としか言う気は無いよ。 ……だがまぁ、強いて言うならHPバーが黄色まで行かないこと、神聖剣なんていうありもしないスキルのこと、あとは……まぁいいか」

 

「そうか……あまり気が付かせないようにと気を張っていたのだがね。

……予定では後略が95層に達するまでは明かさないつもりだったのだがな」

 

苦笑いを混じえながら、自身の考えを明かしていくが、すぐに超然とした笑みへと変化させ

 

「──確かに私は茅場晶彦だ。 付け加えれば、最上層で君達を待つはずだったこのゲームの最終ボスでもある」

 

「最強の勇者が最凶の魔王になるってシナリオか。 悪趣味」

 

「はははっ、なかなかいいシナリオだっただろう? だが、それも全体の4分の3で看破されるとは思っていなかったがね」

 

どことなく金属が混じった笑い声を上げながら、ヒースクリフが管理者ウィンドウを表示。 俺を除く、この場にいるプレイヤーに麻痺デバフを付与する。

 

ちらりとヒースクリフの向こう側に見える月夜の黒猫団を見れば、バタバタと麻痺のアイコンを点滅させながら倒れていくのが見えた。

 

「まさかとは思うが、ここで全員殺して隠蔽する、なんてことはしないよな?」

 

「まさか。 そんな理不尽な真似はしないさ。

予定を早めて、紅玉宮で君達の訪れを楽しみに待つことにする……が、その前に。

私の正体を看破した君に報奨を支払わないとね。

チャンスをあげよう。 今この場で私と戦うチャンスを。 無論不死属性は解除する。 私に勝てばゲームはクリアされ、全プレイヤーがこの世界からログアウト出来る。 ……どうかな?」

 

「ノった」

 

「……思い切りのいいのは嫌いじゃないが、私が何か仕出かすとは考えないのかな?」

 

一瞬きょとんとされるが、俺は首を横に振り

 

「するんだったら俺を麻痺にして殺すだろう。 それに、ここでゲームクリアする、というのも面白いものだろう?」

 

にっ、と歯を見せるように笑みを浮かべれば、それを見て吹き出すヒースクリフ。

 

「そうだな……確かにそうだ。 では死合うとしよう」

 

【changed into mortal object】と書かれたメッセージが表示される。 不死属性が解除され、通常と同じダメージが入るようになった。

 

「セイ君……だめっ……」

 

「大丈夫だアスナ、俺は止まらねぇからよ……!」

 

フラグブレイカーの名は伊達じゃねぇ、と笑みを浮かべながら円卓の騎士のメンバー達を見る。

次いで、エクスカリバーを構える。

 

「セイメイ、やめろ……!」

 

「セイメイっ……!」

 

エギルやクライン、ユイ、ストレア、ユナ、サチ、リーファ、ニミュエ、シリカ、フィリア、レイン、パーシヴァルにガウェイン。

みんなから俺を止める声が飛んでくるが、俺は右手を持ち上げ、ぐっと親指を立てるだけにとどめる。

 

「そろそろ、いいかな?」

 

「あぁ、待たせたな。 ……円卓の騎士団団長、セイメイ」

 

「血盟騎士団団長及びゲームマスター、ヒースクリフ」

 

「「参る!」」

 

掛け声と共に息を吐き出し、床を蹴る。

システムアシスト等は一切使わず、右下段から逆袈裟斬りに切り上げる。

それをヒースクリフは左手に持つ盾を下げるだけで難なく受け止める。

剣と盾がぶつかり火花を散らすが、すぐにヒースクリフの剣が目の前へと伸びてくる。

盾の向きに合わせてエクスカリバーを滑らせ、盾に押さえられた状態から脱しつつ、それの反動で盾に体重をかけていたせいでバランスを崩したヒースクリフの剣を、盾側へと避ける。

 

必然的にガラ空きになる胴に向け、片手剣体術合同ソードスキル、メテオストライクを放つ。

一撃目に拳法にある鉄山靠、肩甲骨辺りを相手にぶつけるという技を繰り出し、上段の二撃目に繋げるものだが、二撃目はしっかり盾にガードされ、ソードスキルはキャンセルされる。

一瞬の技後硬直に勝利を確信し、必殺のソードスキルを叩き込もうとするヒースクリフ。

だが、ソードスキルをキャンセルされたエクスカリバーから、また別なソードスキルのライトエフェクトが溢れ出し始め、ヒースクリフの顔に驚愕が生まれる。

盾に防がれたのは丁度中段、ならばとスキルコネクトが出来るであろうと選択したソードスキル

【騎士王】専用片手用直剣最上級20連撃ソードスキル、The Nightmare

白に黒の線が入り交じったライトエフェクトを迸らせながら、中段からの突きに始まり、切り上げ袈裟斬り逆袈裟切りおろし、それこそ悪夢のような攻撃を続け20連撃目に人型であれば首の位置を貫く突きを放つ。

 

ヒースクリフ、茅場晶彦はその突きを穏やかな笑みで受け入れた。

それと同時に、茅場のHPゲージはゼロを示し、無数のポリゴンへとその姿を変え、崩れ去っていった。

 

「……」

 

「……」

 

辺りに静寂が訪れかけるが、けたたましいファンファーレと

 

『2023年1月3日午後13時22分、ゲームはクリアされました。 ゲームはクリアされました』

 

というアナウンスが辺りを占めた。

 

それに遅れるように、辺りから歓喜の声が上がり始めた。

 

「やった……」

 

「これで俺たち、帰れるんだ……!」

 

「やったなセイメイ……!」

 

仲間の肩に手を回しはしゃぐ風林火山のメンバー達、漸くゲームクリア出来たことに涙する血盟騎士団メンバー、ゲームクリア出来たよ、という報告をするために形見のアイテムを取り出すサチ、ぷんすこして怒ってきそうな円卓の騎士団全員。

 

それぞれがそれぞれの喜びを噛み締めている中、1人、また1人と転移結晶を使った時のようなエフェクトを撒き散らし、どこかへと消えていく。

 

「……そういえば、俺はどうなるんだろうか」

 

ボス部屋にいたみんながゲーム内から退去してから、ぼそりと俺の体のことを思い出したように呟く。

だがまぁどうにかなるだろう、と頭を振って、青い光が降ってくるのを待つ。

少しすればようやく俺の番になったのか、青い光が俺の体を包んだ。

 

そこで、ぷつりと俺の意識が途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~

何か、久しぶりな匂いがする。

 

……あぁ、空気か。

 

薬や消毒の匂いも微かに感じる。

 

オゾンの臭い匂いまで。

 

ゆっくりと目を開ける。 その途端、強烈な光に眼を焼かれ掛け、慌てて目を閉じる。

 

再度目を開けてみれば、ようやくそれが太陽の光だと言うことに気がつく。

 

見慣れない薄ピンクの混じった白い天井、その部屋の外でぱたぱたと忙しない複数の足音。

 

むくり、というより、のっそりと体を起き上がらせ、頭に感じる重く硬い感触へと手を伸ばす。

 

その硬い感触のものは呆気なく外れ、自分の大きな胸の前へと……

 

「……ぁ……?」

 

大きな、胸……?

 

「……ぁ……ゃ……こ……ゃ……!!??」

 

なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??




はい、いかがだったでしょうか。
最後の最後、セイメイ君の今後に期待できそうな胸(おっぱい)『ぱいおつ』

最終章だと思ったか?
まだ続くんじゃよ

とまぁそれは置いておいて、久しぶりのマジバトル。 短いながらも沢山書き込んだ気がします。 頭いてぇ。

ヒースクリフとの問答ですが、これは入れざるを得ない、入れないとなんでバトルするか分からない、と思ったので、ほんの少しだけ入れました。
もしダメって言われたら、修正します。

アインクラッド編を最後まで見ていただき、ありがとうございました。
ここまで来れたのは皆様の感想やお気に入り等のおかげです。
こんなクソみたいな文章力ですが、宜しければ、これからも是非見に来てやって下さい。

それじゃあ、今回はこの辺にして、また次回会いましょう。


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ALO編
第17層・新しくも古い我が家


前回の最後は病院のベッドの上で目が覚めた所まで。
今回はベッドの上からですが、数週間リハビリが終わった後からの話になります。
……リハビリなうなんて誰も見たくないでしょ?


「……はぁ……病院食、うんめぇ……」

 

ほわほわはむはむとロリ並に小さい口で病院食を胃に落としていく。

昔は味気ないだのなんだのと言われているが、最近では肉じゃがとかミネストローネとか匂いのあまり強くなく、それなり以上に栄養のあり尚且つんまいものが提供されている。

 

だが、この姿……SAO内での俺のアバター、セイメイの体では栄養管理されているうえに量を調節されている病院食でさえも半分程度しか食べることが出来ない。

 

「……おなかいっぱい……勿体ないのにお腹入らない……」

 

お腹を擦りながら、未だお皿の上に残っているお肉料理や野菜が勿体ない。 だがおなかいっぱいで体が食べることを拒否してしまっている。

しょうがない……と諦め、食事が運ばれてくる配膳ボックスへと返しに行こうとスマホを掴んでベッドから立ち上がる。

どたぷんとストレアと同じ大きさの胸がゆれ、今の体の不自由さを思い知る。

体は小さい胸はデカい。 これだけで肩が凝るし動きが鈍くなる。

 

ため息を吐きながらベッドの上にあるお盆を持ち上げて配膳ボックスの方へと持っていき、食後の運動をする為に中庭へと足を向ける。

 

 

 

というわけで中庭に来た。

どこかの自然公園みたいな感じで、芝生で寝転がったり、キャッチボールなんかしている患者もいる。

そんな光景を横目に、軽く散歩を開始。

明るくも暖かい、1月とは思えない気候を堪能しながら、中庭をぐるぐる周回する。

 

「散歩はいい……ベリッシモいい……」

 

ぼけらぁ……とした顔で散歩していると

 

「セイ……はるみぃー!」

 

ストレアが俺にダイレクトアタックという名のおっぱいぼんばーを背中にかましてくる。

肩甲骨に胸が、頭頂部顎がクリーンヒットし、2人揃って悶える羽目に。

 

 

なぜストレアがこの世界にいるのか、そしてなぜ俺の名前がハルアキではなくハルミなのか、疑問は尽きない。 だが、そういった疑問は無くなることはなくとも、慣れるだろう。

ストレアやユイがこの世界に居るのは問題ない。 名前や体も馴染めば大丈夫。

だがチートは?

この世界にはチートを使うウィンドウは出てこない。 SAOの時のように人差し指と中指を揃えて縦に振っても何も表示されない。

 

もしかしたら、SAOの中でのみ扱える代物だったのかもしれない。

 

 

「いったぁぁ……」

 

「……ッッッ」

 

片や顎を片や頭を押さえて悶える2人。

傍から見れば変なふたりだなぁ、と思われるかもしれない。

 

まぁ、どうでもいいが。

 

「……それで、急にどうしたんだよ、ストレア」

 

「急にも何も、今日私が来るって言っておいたでしょ?」

 

「ごめん、完璧忘れてた」

 

「だろーと思った」

 

だからこうした、と言うような表情を作るストレアに手刀をかまし、悶えた際に付着した砂埃をパンパン払いながら立ち上がる。

よいしょと立ち上がったストレアから、そういえばと声が掛かった。

 

「晴美、いつ退院できるの?」

 

「わからん」

 

実際先生から何も聞かされていないため、不明のままだった。

そうなんだぁ、軽く納得するストレア。 だが急に走り出し、聞いてくるねー。 と言って病院の中に入っていってしまった。

嵐のような、という比喩はストレアのためにあるんじゃないのか……?

 

 

 

「よいしょ……あれ、そういえば……」

 

木陰のベンチに腰を下ろし、一息ついてからズボンの右ポケットに違和感を覚える。

ポケットに手を突っ込み、違和感のある物体を取り出せば、俺が前に持っていたスマホよりも大きい電源の入っていないスマホが目の前に現れた。

 

「これって……今からだと……4年前のやつだよな……?」

 

カバーはついていないがフィルムはついている、素っ気ない感じのスマホ。

特筆すべき点はないが、前に持っていたスマホの後継機であることがわかった。

電源の付け方も一緒だろうと側面のスイッチを押し込めば、よくあるロゴが出た後にパスワードを求められずにホーム画面が表示された。

 

チート、の文字が入ったアプリケーションアイコンと共に。

 

 

 

 

~~~~~~~~

「はるみぃ~、おまたせ~」

 

ストレアが手を振りながら戻ってきた。 収穫はあったようで、俺の体調が良ければ今日にでも退院出来る、という事らしい。

 

「急だなおい……」

 

「そうだねぇ……晴美はもう満足した?」

 

「満足ってなんだよ、体調どうだじゃないのかよ」

 

あははー、とはぐらかされたが、まぁいい。

とりあえずは、とストレアの手を握りながら立ち上がり、俺が起きた時にストレアが持ってきてくれた荷物を片付けに病室に戻る。

 

その途中に担当の(割かし美人だがストレアには負ける)先生に会い

 

「もう退院しちゃうの……?」

 

「はい、妹も待ってますので」

 

そう……と寂しそうにする先生に、営業スマイルをぶつけつつ病室へと向かう。

妹。 ユイの事を見た先生が、『可愛らしい妹さんねぇ』と誤解してくれたため、そういうことにしてある。

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~

あの後すぐに荷物をまとめた後に退院の手続きを済ませて病院を出た。

 

……といっても、俺の家が今ちゃんとあるかどうかも分からない。

とりあえずストレアの後を追う。 近場に駅は無いうえに周りは田んぼだらけ。 この場所がどこかも分からない。

 

「なぁ、ストレア。 ここって何処だ?」

 

「ん? 加須だよ?」

 

「加須だぁ……!?」

 

加須、埼玉県の市であるが俺はよく知らない。 前に俺が住んでいたのは、川越だったからね……

 

「……じゃあ、家はどこで、そこまでどうやって帰るんだ……?」

 

「えっと、家は川越で、そこまでは私の車で」

 

「は……?」

 

は……?

 

「え?」

 

ストレアはおかしなことを言っていないように首を傾げるが俺には何を言っているのか理解できない理解できないと言うより理解したくないという方が的確かなんでストレアがそんな車とか運転できるんだそしてなんで

 

「えい」

 

「わぷっ」

 

ストレアの柔らかな胸に包まれ、思考の暴走も止まった。

なんでストレアが車に乗れるかは置いておこう、安全運転してくれるかが問題だが……

 

俺を抱きしめたまま車がある場所へと進んでいくのがわかる。

駐車場に着いたあたりから人目が増えた気がして、ストレアの胸の間から顔を無理やり離し、どの車だと問いかける。

その時、「あんっ……」なんて声が聞こえたが無視をしてどれだと再度問いかければ、ストレアは「あれよー」なんて言いながら白いワンボックスカーを指指す。

 

そそくさとその車に移動すれば鍵を開けてもらえるのを待ち、はやくはやく、と急かすように手招きする。

 

「もう、せっかちさんねぇ」

 

にっこり笑顔でお姉さんしちゃってるストレアは、可愛い妹が増えたような声でそんなことを呟き。

ハンドバッグにしまっていた車の鍵を取り出せば、ワイヤレスで鍵を開けて。

 

なんだろう、ものすごくほほえま~……な視線をあたりから感じるんだが……

釈然としないまま助手席に乗り込み、ストレアが来るのを待つ。

 

「おまたせ、せっかちちゃん♪」

 

「やかましい、はよ出せはよ」

 

はいはい、と笑みを浮かべたままのストレアが車のエンジンを掛け、駐車場を後にする。

 

 

 

そういえば、スマホに入っていたチートって書かれていたアイコンはなんなのだろうか。

ストレアは鼻歌を歌いながらハイヤーの運ちゃんも真っ青な華麗で安全な運転をしているため、酔いそうになる心配はない。 ということで、ストレアに持たされていたハンドバックに手を突っ込みスマホを取り出す。(一応、今の服装はなぜこれを着させられているのか分からないが、ゴスロリ)

 

パスワードも入れずにホーム画面に移動でき、目的のアプリを発見。

逡巡も躊躇もなくポチッとそのアプリを起動。

 

タイトル画面も何も出ず、くるくると6つの白い玉が円を描き、数秒後に人、物、場所、その他、とSAOのチートウィンドウとは打って変わり、簡素な仕上がりになっている。

 

まず今の俺の体をどうにかしよう。

人の欄をタップ。 すると俺を含む近くにいる人間の名前がスマホの画面に表示される。

すぐに俺の名前をタップすれば、今の俺の詳細が表示される。 身長体重スリーサイズおちんちんの長さ太さ玉の有り無し大きさ、果ては昨日の夕飯まで。

スリーサイズにしか用が無いためそこら辺は無視でいいだろう。 とりあえずはスリーサイズをタップし、表示された四角い枠を更にタップ。 表示されたキーボードに82と記載。

確定ボタンをタップすると、現実に反映しますか、と表示されるが、気にせずタップ。

一瞬の立ちくらみ(座りくらみ?)の後、胸が比較的小さくなったからか肩凝りや胸がすごく揺れる感覚が無くなった。

 

この感覚も初めてだなぁと感慨に耽っていたのだが、ストレアのもうすぐ着くよー、という声で現実に引き戻される。

……もしかして、立ちくらみもどきの時間、結構長かった……?

 

 

 

そんなこんなで、川越の自宅がある住所へと到着。

……はて、うちは確かに武家屋敷みたいな風体の家でしたが、お隣も武家屋敷みたいな家だったか……?

うーん、普通の一軒家だったはずだけどなぁ……おかしいなぁ……

ストレアがバックで車を車庫に入れる前に、先に降りてる、といって下車。 隣のお宅の前へと行けば、そこには桐ヶ谷の表札が。

 

……いやいやまさかまさか……

 

そんなわけ……『ぴんぽーん』ドゥワッチ押しちまったぜ。

 

『はーい』

 

聞こえてきたのはリーファ……桐ヶ谷直葉の声だった。

こちらからは見えないが、カメラ付きインターホンのため向こうには俺のことが丸見えだろう。

がちゃんと音がすれば、どたどたと足音を立ててドアを叩き開ける。

 

「セイメイ君!?」

 

「はぁい、リーファ。 こっちじゃ晴美って呼んでねー」

 

「あ、うん……私も、直葉で」

 

下駄を履いて飛び出てきた直葉にこっちでの名前を教え、教えてもらった。

知っているが。

 

いやー、2週間ぶり? 元気にしてた? 入院したんだっけ? などなど、双方の質問のキャッチボールがとんでもなく長く続く。

 

 

 

「いやぁ、揃って無事に帰って来れてよかったぁ……」

 

「そうだねぇ……」

 

いつの間にか庭の縁側へと話の舞台を移しており、話し続けていた。

話の腰を折り、ちょっちごめんよー、といってスマホを取り出す。

チートを起動し、人をタップ。 表示された名前欄にある桐ヶ谷直葉を再度タップ。

するとSAOの時のように頭をかくんと落とし、動かなくなる。

 

『あまぁい母乳体質』『晴美とのセックスは断れない』『処女無毛ろりまんこ中身は触手』

とよく分からない設定を付け足し、反映させる。

ふわぁぁ……と欠伸をした直葉に

 

「えっちしよう」

 

「うん、いいよ~」

 

唐突にえっちしようと言われても、動揺を示すことなくOKを出された。

いつものジャージ姿の直葉を縁側で押し倒し、ジャージをたくしあげるように命じる。

顔を赤くしながらたくしあげる直葉に

 

「可愛いよ……」

 

と笑顔で言ってやれば、顔を真っ赤にしてジャージを顔の位置まで引き上げてしまった。

仕方が無いのでジャージの下と下着を俺がおろしてやれば、そこには先ほど指定したロリ無毛まんこが鎮座していた。

 

そこに右手の指を這わせ始めながら、左手で直葉の胸を掬いあげる。

乳首を俺の口の前へと持ってくれば、滲みだし始めた母乳を吸うように乳首に吸い付いて。

 

「んんっっ……♡♡」

 

びくんと身体を震わせるが、布を噛んだ状態のような甘い声しか漏らしてくれない。

ムスッとした顔で直葉の顔を見るが、ジャージで隠れている直葉の顔は見えない。

仕方ないとばかりに弄っていた右手を止め、よいしょと場所を移動し、おちんちんを直葉のろりまんこへと押し当てる。

びくんと身体を震わせるが、抵抗らしい抵抗はしてこない。

本当なら痛くしないようにしてやろうとしたが、その予定を取りやめ、押し付けたままのぼっきおちんちんを直葉の腟内へと無理やり押し込む。

 

「んぎっ……ぁっ……♡」

 

破瓜の痛みに耐えるかの様な声を漏らすも、やはりジャージから顔を出すことはしない。

というか、触手おまんこなんかにしなきゃ良かった。

 

おちんちん搾り取るかのような膣の動きのせいですぐに直葉の腟内へとザーメン吐き出し、休む暇もなく次の絶頂へと導かれ始める。

分からせるつもりが分からせられちゃうという事か、これは。

そんな考えが頭をよぎるも、男(今はふたなり)の意地を見せるために無理やり膣圧を振り切るように子宮口へと押し込んでいく。

だが、ここでも膣触手の猛攻にあい、子宮口押し広げることが適わず射精してしまう。

やばい、本気でやばい……

3発目が出た辺りから、子宮が降りてきたのか、子宮口にぐっぽりおちんちんがささり、捕らわれてしまった。

 

その時に一度直葉が絶頂したが、それよりも搾られるのをどうにかしなければならない。

びゅるびゅるととめどなく精液流れ出るのを感じながら、近くに落ちていたスマホへと手を伸ばす。

 

必然的に直葉の子宮口に引っかかってるおちんちんは抜けず、ゆっくりと引っ張り出しそうになったが、ギリギリのところでスマホに手が届いた。

 

チートをすぐに開いて直葉の腟内触手化を解除し、俺のおちんちんを引き抜けるように子宮口をおっぴろげ、どうにか引き抜く。

その際、子宮内に精液しこたま入っていたように見えるが、気にしないようにしよう……

 

「……しんどい……」

 

「……っ……♡」

 

何故かまだびくんびくんしている直葉のでろでろになったおまんこを守るために下着やハーフパンツを履かせ、もう自由にしていいよ、と声をかけてからその場から立った。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~

「しんどい……」

 

チートで足腰を強化して家の前へと戻れば、家の前でストレアが待っていてくれた。

 

「ん、おかえり」

 

「あぁ、ただいま」




……なんか、久しぶりにえっちをかいた気がするが、駄文だね……

はい、おはようございます、こんにちは、こんばんは。
現実に戻ってきてから一発目のえっちが、隣の家の女の子というね、なんともこう……おまわりさんのやっかいになりそうな事案ですね。
チートがあれば無問題ですが。

はてさて、次回のザザえもんは?
「ユイです。 最近はパパに構って貰えない上にあんまり出番も貰えてません。 改善の要求をしたいと思います」


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第18層・菊岡誠二郎

ここでようやく菊さんです。
本来なら前回あたりに出そうと思ってたんですが予想以上にセイメイ君が上手く動いてくれないので、今回になってしまったという訳です。

では、本編どうぞ。


直葉とえっちしてから数日経ったある日、総務省職員を名乗る男、菊岡誠二郎が訪ねてきた。

 

「初めまして、晴美さん。 ……それとも、セイメイ君って言った方がいいかな?」

 

正直、帰れって言いたいところだが、シノンに会ったりセブンに会ったりアンダーワールドに行ったりする為には、菊岡と可能な限り仲良く(?)なっておかなければならない。

というわけで、仕方なく菊岡を家にあげ、居間へと通す事になった。

 

「どうぞ」

 

「やぁ、これはどうも」

 

俺と菊岡が椅子に座った所に、もこもこの薄桃色のニットに白のミニプリーツスカート、黒タイツのユイが温かいお茶を持ってきてくれた。

それを置くと、俺たちに頭を下げて部屋の外へと歩いていく。

 

「妹さんかな?」

 

「はい、そんな感じです」

 

少しぼかしつつも頷く。

菊岡が受け取ったお茶を一飲みしてから、まずは自己紹介からだね、と切り出す。

 

「僕は菊岡誠二郎、総務省の人間で、今回のSAO事件について調査を行っている者です」

 

「……私は、知って入ると思いますが、葉山 晴美(はやま はるみ)です」

 

本来の俺の名前は葉山晴明。 まぁ、今は関係ないか。

 

「それで、SAO事件についてなんですが……」

 

「その前にひとつ、敬語はやめて頂いて結構ですよ?」

 

「……分かったよ」

 

菊岡は苦笑いをしつつ、自分の本当の気持ちが見透かされたのかもという表情を隠そうとしていたが、俺はそれには気付かないふりをした。

 

 

 

 

それから数十分程SAO内でどんなことがあり、どんなことをしたのか、チートに関連することを除いて大抵のことを話した。

菊岡の質問に俺が答えたりもした。

 

そうこうしているうちに打ち解け始め、バイトしないかと持ちかけられた。

 

「ふむ、バイト……ですか?」

 

「そう。 仮想世界の中で起こる事件……というより調査かな? それをSAOをクリアした君にやってもらいたいんだ」

 

「ふむ……バイトっぽくないですね」

 

「報酬とかも用意しておくよ」

 

「ノった」

 

報酬、という言葉に弱いのかすぐにOKを出す。

まぁ、シノン達に会うためでもあるが。

 

「じゃあ、そんな感じで大丈夫かな。 ……あぁ、これ名刺ね」

 

机の上に置かれた名刺を受け取り、こちらも電話番号とLIN〇のIDを菊岡に教えて。

 

「そうそう、こちらからも必要な情報は提供するから、気になったこととかあったらいつでも連絡してくれて構わないからね」

 

眼鏡の位置を直しながら報酬に似た物を提示してくれる。 なら、とずいっと顔を菊岡に近づけ

 

「ログが残ってるなら分かるよね? 円卓の騎士団メンバー全員とその同盟である月夜の黒猫団リーダー、サチの滞在場所を教えてくれ」

 

「えーと……そういうのは出来ないんだ……」

 

「じゃあ降りようかな」

 

「わ、わかった、じゃあせめて君のとこのメンバーだけにしてくれ。 それならどうにか出来る」

 

いいだろうと少し悩んだ末に答え、円卓の騎士団の現住所と入院している場所を聞き出すことに成功。 サチは……うん、サチはまた後で会えるだろう。

 

「……それで、最初のバイト内容なんだけど……」

 

「ふむ……?」

 

神妙な顔をしてある写真をバッグから取り出す菊岡。

その写真を机の上に置き、俺の前にずずっと押してくる。

ぶれぶれで画質も荒い写真だが、栗色の髪に特徴的な顔。

 

「……この顔に見覚えは?」

 

「……アスナ」

 

「やはりそうか……」

 

ふむ……と顎に手を当て、どうしたものかと唸る菊岡に、どういう事だと問いかけて。

 

「……率直に言おう。 まだ、明日奈さんは目覚めていない」

 

「は……? いや、いやいや、ちゃんとゲームクリアしましたよ……? なんで、なんでアスナが……?」

 

分かっている。 全てわかっていての演技だが、どれだけ俺の顔が悲痛に歪んでいたのだろうか。 菊岡がなぜか申し訳なさそうに口を開く。

 

「ナーヴギアに細工がされていたのか、電波に細工されていたのかは分からない。 だが分かるのは、彼女がまだ電脳の檻に囚われているという事だけだ。

それで、なぜバイトといった形式を取ったかと言うと、明日奈さんのご両親が直々に依頼をして下さったんだ」

 

内容は省くが、と申し訳なさそうな表情に苦笑いを含めて。

 

詰まるところ、菊岡にアスナを助け出してくれと両親が頼み込み、自分には無理だからとアスナと長い間居た俺に白羽の矢が立ったという訳だ。

 

「君に利益しかないと思うんだけど、受けてくれるかい?」

 

「……わかりました、その話、乗ります」

 

交渉成立、と笑みを浮かべながら菊岡が俺に差し出したのは、アルヴヘイム・オンラインという妖精主体のゲームだった。

 

 

 

 

「それじゃあ僕はそろそろ」

 

「あ、はい、色々ありがとうございました」

 

「こちらこそだよ。 ……吉報、期待しているからね」

 

椅子から立ち上がり、部屋から出ていこうとする菊岡を追い、玄関先まで見送った。

 

 

 

 

~~~~~~~~~

「ユイ、ストレア、ダイブするから用意して」

 

「わかりました、アスナさんを助けに行くんですね?」

 

「あぁ」

 

了解です! と元気よく敬礼してくる2人の頭を撫でてやってから、一度2人を部屋に帰す。

それを見送ってから自室へと入り込み、ナーヴギアを手に取ってから菊岡から受け取ったアルヴヘイム・オンラインのカセットを入れて頭に被り、ベッドへと身体を投げ出す。

 

「リンク・スタート!」

 

ナーヴギアの音声認識の起動コマンドを言い、虹彩の向こう側へと向かって。

 

 

welcome to ALOの文字が表示され、一番最初にあるプロフィールを設定する場所に召喚(?)される。

目の前にはキーボードのようなコンソールがあり、そこで名前を打ち込むようだ。

SAOの時のようにセイメイにしようとしたのだがこの体も脳波も女だ。 心機一転女の子な名前にしよう。

 

「……サニー?」

 

ぽちぽちっと打ち込んでいくが、どことなく違和感。

 

「……ザーニッヒ……?」

 

たしかドイツ語だったはず。 だが女の子女の子していない。

 

「……やん……」

 

中国語は無理だわ。 読めないし話せない。

 

仕方ない、セイメイでいいや。

ぽちぽちっと慣れた手つきで名前を打ち込んで種族選択ボタンをタップ。

ALOではアバター制作がなく自動生成みたいだ。

 

すらぁ……と種族を流し見して行けば、ランダムとはまた違った『アンノウン』といういかにも特殊そうな真っ黒なシルエットだけのアバターが配置されている。

それに心惹かれ、アンノウンのボタンをタップ。 その下にあった完了のボタンを押せば、即座に暗転し自由落下を開始……した瞬間には地面とキスをしていた。

 

「あーもー! どんなバグだよちくしょう!」

 

顔面泥だらけ、土の味はあまりしないが、口の中になんかじゃりじゃりした感覚があるため、ぺっぺと口の中の異物を吐き出す。

 

うぇー……と舌を出して指の腹で舌に付いた土を払っていたが、周りの景色に気が付き、それどころではないかもしれない、と頭を横に振る。

 

「なんじゃぁ、ここはぁ……!」

 

ぽろりとおかしな言葉が出たが、気にならないほどの巨大で七色の光が辺りを照らす水晶。

それがいくつもいくつも辺りに配置されている。

 

ほわぁ……と息を吐き出しながら、そういえばと自分のステータスを確認しなければという考えが浮かぶ。

 

すぐさま左手の人差し指と中指を揃えてウィンドウを表示……出来なかった。

あっれぇ……? と首傾げたが、そういえば右手だったという事を思い出して事なきを得た。

 

ステータス・どこかで見たことがあるような。

アイテム・文字化け

装備・主神の紐 主神の紐 主神の剣《レーヴァンティーン》

種族・オーディン ウォーデン オティヌス おでん

 

「……は?」

 

いや、種族欄のおでんはまだマシだろう。 紐ってなんだよ紐って。 レベル1の勇者だって皮か麻の服だぞ? 9の主人公は皮でも麻でもなかったぞいい加減にしろ。

 

ぐちぐちと頭の中で文句垂れ流しながらステータスなどを見ていたが、ふと肌寒いと思い視線を下に向ける。

たわわに実った果実の先っぽを隠すように赤の紐がしっかりとガード。 同じようにおまたの辺りに手をやれば、こちらもしっかりマメを隠すように紐がガードしているようだ。

 

「……いい加減にしろ……!」




うーん……現実の導入が雑ですねー。
どうしようか悩んでいたら菊さんが変な方向にかってに進んでいったり、晴美がふざけたり、おでんだったり……
とりあえず、今回はここでストップでお願いします。


~~~~~~~~~~~
「で、弁明は?」
腕の靭帯痛めたり、足の指折ったり、APEXのチャンピオンになったり、黄昏の森で金貨さがして頑張ったりしてたらこんな時期になっちゃいました。
「成程。 で?」
あ、次回予告?
次回は……うーん、もしかしたらセブンが出るかもしれないし出ないかもしれない。
「違うそうじゃn」(ばつん)


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第19層・魔法と羽根

ずぇんくぁいむぁどぇぬぉぅあるぁすずぃ!(前回までのあらすじぃ!)

おでん。


「とりあえずそうだな……服を変えよう、服を」

 

辺りを見た感じではNPCしか居ないようだが、恥ずかしいものは恥ずかしい。

アイテムウィンドウをとっとと開いて装備を変更……しようにもアイテム全てが文字化けしている為装備が出来ない。

仕方ないからチートウィンドウを開き、今の自分に合いそうな装備を探しつつ、人目につかなそうな裏路地へそそくさと歩いていく。

 

裏路地へと足を踏み入れれば、ピンク色のお店の前で妖精というより悪魔の様な羽根を持った美女達がピンクな色香を醸し出しながら俺を手招きしている。 アインクラッドにいた時であれば誘いに乗っていたかもしれないが、今はそんな暇はない。

ごめんねー、という顔を(自分の中では)してその前を通り過ぎ、更に奥まった場所へと進んでいく。

袋小路へとたどり着けば、ようやく足を止めていつの間にか詰めていた息を吐き出す。 ふと、鏡のように光が反射している小さな窓に目を向ける。

一面の雪景色よりもなお白く、毛先が緩くドリルを巻いている腰までの長さを持つ髪、くりっとして少し釣り気味で気の強そうな碧い左目、右目には右頬をほんの少しだけ覆う、少し大きめなどんな原理でくっついているか分からない眼帯。

そんな今の自分がそこに映っていたのだ。

 

「今回も美少女……」

 

そう、美少女なのだ。 可愛いのだ。 昔の俺だったら絶対に手を出せない御令嬢で庶民のサンプルで拉致られない限り相見えることが絶対に不可能な美少女なのだ。

 

そんな美少女がほぼ半裸。 やべぇはやくしねぇとおとこどもにつかまってれいぷされちまうはやくにあうふくをみつけないとおっこれとかいいんじゃないかなこのまんととかいやまんとよりもはやく

 

「ふんっ!」

 

ごしゃぁっっ!! と壁に頭突きをかまし、一度思考の正常化を図る。

無論嫌な痛みは頭に来るが、それがいい感じに気付けになる。

 

そこからは今の体に合いそうな服をどれがいいかな、これがいいかな、と女の子の様に一喜一憂しながら着替えを始めた。

 

 

 

 

 

「よし、こんなんでいいだろ」

 

数十分前後を掛けてお腹ペコペコなお姫様風味なドレスチョイスし、色合いを黒と灰色が混ざった水色へと変更して着込んでいく。

 

それが終われば飛行やら魔法やらを練習しなければならない。

随意飛行、コントローラーでの飛行、2種類ある飛行方法をどちらかひとつ覚えなければ。

 

ユイやストレアも他の種族の初期スポーン地点で練習しているだろう多分。

早めに覚えて2人を驚かしてやろうという小さな野望を胸に抱きつつ、原作でリーファがキリトにやっていた事を思い出す。

肩甲骨あたりに意識をやって……新しい器官を感じて……

 

しゃりりん……と鈴の音のようなものを響かせながら、白の半透明の羽根が三対現れる。

ソレに意識を向けながら、筋肉を動かすような、無理やりくっつけた義手を操るような感覚で羽根を小さく震わせる。

それだけで足が地面から離れ、宙へと飛び立つ。

道具を使わずに人が空を飛ぶという現実ではありえない感覚に爽快感というか、快感というか、よく分からない感じが俺の中を駆け巡る。

 

楽しい。

 

アスナを助ける為に来たはずなのに、楽しんでしまっている。

原作でリーファがハマっていたのにも頷ける。

そんな飛行……浮遊体験の後、ゆっくりと体を倒し、飛行しようと試みる。 案外簡単にスピードを上げられ、簡単に飛行することが出来るようになった。

 

「……さて、そろそろ止まるかぶるしゅっ……!?」

 

ランディングの仕方を覚えていなかった事に気が付かず、そのまま飛行機が着陸するかのような体勢をとり、着地しようとしては、しっかり足を躓かせて一直線に転がっていく。

広場のど真ん中にある時計にダイレクトアタックをかまし、漸く転がるのがストップ。

 

舌を噛まなかっただけ良かった。

いやまぁ、この世界で舌を噛んでも舌に違和感あるだけで実際に死にはしないとは思うが……

 

……NPCなのかプレイヤーなのか分からないが、周りの視線が痛い……

スカートの中が見えるのもお構い無しに飛び上がり、そそくさとその場を飛び去る。

 

「次はもう少し人がいないところで飛ぼう……」

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「……そういえば、ここはどこなのだろうか」

 

原作では見たことがない都市。

シルフの首都であるスイルベーンやケットシーの首都であるフリーシア、実際原作でも見たことないが、その他種族の都市とも違うと思う。

 

とりあえずマップを見ようと、よそ見運転ならぬよそ見飛行をしながらメニューウィンドウを表示させる。

その中からマップを選び、タップ。

表示されたマップの端にこの名前が表示されていた。

 

『神都・アスガルド』

 

「……カミサマの都やん!?」

 

変な絶叫をしてしまいながら、ゆっくり降下。

特に障害になるようなものがない公園のような場所で着地を決め、座れそうな場所を探す。

広場になっている場所に複数ベンチが置いてある。 そのうちのひとつに腰掛け、頭を押さえて項垂れる。

 

しらないよそんな場所世界樹の所まで行くのにどれくらいかかるのというかまずユイやストレアと合流しなきゃだしまずはそうしなきゃいけない良しそうしようでもちょっと待て飛んでいくのにどれくらい時間がかかるまずここがどこに位置してるか分からないからなんとも言えないんだが鯖違いとかだったら一生会えないぞよしそうなったら……

 

「すー……はー……よし、落ち着いた」

 

いつもなら殴って変な思考を止めていたが、珍しく深呼吸だけで止めることが出来た。

 

「……まぁ、とりあえずは、アスガルドから出る事を第1に考えよう。

最悪チート使って抜け出すことも考えておかないとだな……」

 

誰に聞かせるわけでもなく、ブツブツと独り言ちりながらこれからのことを考え始める。

ユイは聞いていないが、ストレアはノーム族になるということを知っているため、まずはストレアとの合流を第1に考えよう。

 

そんな思考を小さく独り言で垂れ流しながら開きっぱなしにしていたアスガルドのマップをじっと見つめていれば、そのマップが拡大できることに気がついた。

 

今更かよ、とツッコまれそうな事柄だが、今の俺にはとてつもなく有難いことだった。

その拡大したマップ上にはしっかり施設のアイコンや施設名が記されており、自分の穴だらけな北欧神話の知識の中にある、主要な施設の名前を複数見つけることが出来た。

ならば、絶対にあるであろう施設の名前を探してみれば、簡単にその場所を見つけられた。

 

『虹の橋・ビフレスト』

 

本家の北欧神話では、ビフレストは地球のあるミッドガルドからアスガルドへと、神を送り届けるために使われた虹の橋だったらしい。

もしそれを転移門のように扱えるものであれば、豊穣神であるフレイが治めるアルヴヘイムへとたどり着けるだろう。

その期待を胸に、ビフレストのある場所へと飛び立った。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~

「なんで通してくれないの!?」

 

「主神・不許可・汝・許可証・不携帯・故・汝・通行・不可」

 

「あぁもうっ! さっきから同じことばっかり……!」

 

マップ上でビフレストと表示されていた、世界樹並に大きな門のある場所へと到着したのだが、とある歌姫の声と発声はしっかりしているのに、単語でしか話さない機械じみた声が言い争いをしているのを見てしまった。

 

歌姫の方は頭を抱えながらうがーっ、と天を仰ぎ見ているが、機械(仮)は動じず歌姫を見下ろすだけだ。

 

そんな2人に気付かれない様に近付き、素通りしようとしたのだが……

 

「主神・我主・通行可・目的地・選択」

 

グリィッ! と首を90°曲げてコチラを見てきた機械(仮)。 その言葉に反応して更にコチラを見てくる歌姫。

 

やめて見ないで私を面倒事に巻き込まないでやだやだ早く妖精郷に行くのー! という自分でもよく分からない表情をしながら門の方へと走ろうとするが

 

「待って!」

 

という少女の声にピタリと止まってしまい、声のした方へと目を向けて。

 

「……なんでしょうか……?」

 

と面倒事に頭を突っ込んでしまった。

 

こちら側に寄ってくる青を基調とした、白と水色のアイドル衣装に身を包み、艶々の銀髪を靡かせる音楽妖精族(プーカ)の歌姫、セブン。

本物、こんなに小さいんだなぁ、なんて(今の)自分もそれなりに小さいのに失礼なことを考えているのを見透かされたのか、じっとりした目でコチラを見上げてくる。

 

「……なんか、失礼なこと考えてないかしら?」

 

「いえ特には。 ……それより、なにか御用ですか……?」

 

「……単刀直入に聞くわ。 貴方、プレイヤーで、北欧神話の主神、オーディンじゃないかしら?」

 

本当に単刀直入だなぁ……嫌いじゃない。 というか、割とセブンも好き。

 

「プレイヤーなのは当たり、オーディンは半分当たり」

 

「半分? それって、名前がオーディンって痛い名前だったりするってこと?」

 

「ちゃうねんそうじゃないねん。 ……ん゛んっ……一応、種族がオーディンになっているって事」

 

その言葉に納得が言ったのか、セブンは、あー……という表情をしている。

 

「種族がオーディン……種族が神、それも神個人……この場合は個神かしら……? まぁ、それはいいとして、妖精10種族以外になるプレイヤーがいるなんて……」

 

ぶつぶつと独り言を続けるセブンに

 

「あのー……おでんだから何なんでしょうか……?」

 

「……ん? あぁ、ごめんなさいね、オーディンなら、主神と呼ばれていた貴方なら、あの堅物を説得して私をあっちの世界に戻してもらえるかもしれないって思ったの。 だから、門に向かっていった貴方を引き止めたって訳」

 

「あーなるほどそういうわけね完璧にわかったわ」

 

「……わかってないわよね?」

 

気のせい気のせい、と目を逸らしながら両手を振り。

 

もっとわかりやすい説明が必要かしら、とセブンに問われたが、丁寧にお断りを入れておき、「堅物を説得」というセブンの注文に取り掛かるためにヘイムダルへと向き直る。

 

「承認・音楽妖精族・個体名セブン・通行・許可」

 

「あっるぇ!? まだ何も言ってないよ!?」

 

「まぁいいじゃない、許可してくれるって言ってるんだから、それに乗っかっちゃいましょ?」

 

「いいのかそれで」

 

「いいのいいの」

 

セブンの押しに押し切られた訳では無いが、問題があったら何か言われるだろうと諦め、セブンを連れ立って門の方へ

 

「そういえば、名乗ってなかったわね。私はセブン、よろしくね?」

 

「わ……俺は、セイメイ。 訳あってオーディンなんて種族になってるけど、中身は普通の、運営側じゃない一般プレイヤーデス」

 

「あら、そうなのね? じゃあセイメイ、С уважением」

 

「え、なんて?」

 

「ロシア語の、"これからよろしくね"っていう言葉よ。 知っておいた方が得する時もあるから、辞書とか持っていてもいいかもしれないわよ?」

 

なるほどわからん。 ふふん、とナイムネを張りながらドヤ顔しているセブンに、しっかり日本語でよろしくと言ってから、ここでようやくチートウィンドウを表示。

 

『妖精郷に戻るために手伝ってもらったんだから、何か一つどんな願いでも叶えてあげなくてはならない』

 

という、バレたらやばいかもしれない強迫観念みたいなものをセブンへと埋め込む。

するとどうだろうか、鼻歌を歌いながら門へと向かおうとし始めたセブンが再度こちらを向き

 

「……ねぇセイメイ、私にできる範囲で、何かできることは無い……?」

 

なんて、少し顔を赤くした状態でこちらを向いて。

 

「何でも言って! できる限りの事は何でもするから!」

 

ん、いまなんでもって。

……なんて馬鹿なことは言わず、ただ淡々と、セブンへと、ある一言を告げる。

 

「なんでも……なら、セブン。 俺がキミに望むのは……」




おまたせしましたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
ほんっっっとぉぉぉぉに申し訳ない!!
大丈夫、生きてましたよ!
ネタが思い浮かばずかれこれ……何ヶ月?
まぁいいや、タルコフだとかうまぴょいしてたりとか媚薬掛けて卵産ませたりだとか色々してたけど、しっかり生きてます。
次回はえっちあり? 無し? 私にもわからん。
とりあえずはキリのいい……いいかこれ……? まぁ、そんな感じで、今回はここまで! また次回、近いうちに、お会いしましょう!

ノゲノ○みたいに2年以上間開ける、なんてことはしないように頑張る。

PS.6/10 タイトル間違えてたから修正

あ、後、最後の方のカタカナはわざとだからね。 誤字じゃないよ!


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第20層・えちえちするかと思った? 残念、オベイロンぶちのめすだけでした。

タイトルで既にネタバレ。
ALO編クリアしたら、ちょっと遊びを入れたりオリキャラ再登場させたり電撃文庫のキャラクロスオーバーさせたりしたい。
というか、させる為にとっとと倒しに行きます。
……あっ、領主会談は開催しないので、2人は無事でつ。


セブンへのお願い。 そんなものひとつだろう。

 

『俺の性奴隷になれ。 ただし、研究とか忙しかったらそっちを優先すること』

 

というものをセブンに言えば

 

「えぇ、問題ないわ。 えぇと……せいどれい、せいどれいね……? じゃあ、研究が忙しくなかったら、アナタの家に行って奉仕とかしちゃうわね。 勿論、ゲーム中でもいつでも呼び出してくれて構わないわ」

 

性奴隷という言葉に首を傾げるセブンだったが、奴隷という単語だけ知っていたようで、奉仕する、と言ってくれた。

なら後で遠慮なく呼びつけよう、と心に決めて。

 

「ん……せいどれいになるだけでいいのかしら?」

 

「ん、あぁ、それだけで問題ないよ。 ……フレンド登録したら行こうか」

 

性奴隷にするだけでは呼び出せないだろうから、とフレンドコードを交換。 それを終えれば、行こうか、とビフレストの方へと歩いていく。

 

「……あっ、ごめんセブン、ちょっと忘れ物したからここでお別れだわ……」

 

「そう……わかったわ。 До свидания(ダズヴィダーニャ)セイメイ」

 

ダズヴィダーニャ、とセブンに返せば、嬉しそうに笑みを浮かべ、手を振りながらビフレストへと足を進めて行った。

水面に石を投げ込んだ時に出来る波紋を生じさせながらセブンは消えた。

 

それを見てからヘイムダルへと目を向けて。

 

「ヘイムダル、俺を世界樹の上……開発者サイドに連れて行け」

 

「了承・虹橋・起動」

 

セブンやユイ、ストレア、アスナ達ともたくさんえちえちしたい。 とっととオベイロンぶち転がさなければえちえち出来ない。

ならば無理やりにでも行けるか試してみようとしたのだが、無理やりじゃなくても行けるみたいだ。

しかもビフレストを即座に起動してくれた。 オーディンという自分の種族と、ヘイムダルに感謝しながら、ビフレストへと足を踏み入れる。

 

一瞬Minecraftのネザーゲートを通るような歪みを感じるが、すぐにそれが晴れる。

すると既にそこはアスガルドではなく、金の鉄格子に囲まれた部屋で。

 

「……流石ビフレストだな……」

 

いきなりゴールであるアスナ……ティターニアの寝室へと飛ばされているが、探す手間が省けたから良しとしよう。

苦笑いを浮かべながらきょろきょろと辺りを見回せば、アスナが驚いた顔をしている。

 

「やぁ、アスナ。 迎えに来たよ」

 

「えっ……迎えに……って、もしかして、セイくん!?」

 

Exactly(その通り)……まーたこんな可愛らしい体になっちゃったけど、セイメイだよ」

 

「ぁ……ダメっ、今ここにきちゃダメだよセイくんっ……!

オベイロンが……須郷伸之が来ちゃう……!」

 

昔、俺が改造した体ではない、本来の体を模したアバターの髪を振り乱しながら、危ないから、自分は大丈夫だから、と俺を須郷から遠ざけようとしているようだ。

 

「はぁ……こんな見た目になっちゃってるけど、SAOクリアしたの俺だぞ……?」

 

断じてひけらかしている訳では無い。 断じて。

そうだけど……と言い淀むアスナ。 やはりGM(ゲームマスター)には勝てない、とアスナは思っているのかもしれない。

 

「秘策はあるし、誰が来たって」

 

「おやおやぁ? 面白い方法で管理者エリアに入り込んできた害虫が居ると思ったら、SAOをクリアした英雄サマじゃないかぁ!」

 

ぬっとりした声でアスナとの会話に割って入ってくる変態、オベイロン。

出入口に背中を向けていたせいで顔は見えていないが、多分俺の事を忌々しげに見ているんじゃないだろうか。

実際、背中に掛かる圧がヤバい。

 

「やぁ、オベイロン。 調子はどうだい?」

 

「最悪だよ。 キミが進入禁止アドレスにビフレストを使って侵入してくるんだからね。

ここは僕とティターニア……明日奈だけの城になるはずだったんだからね!」

 

軽い調子で挨拶をしたが、がっつり噛み付かれた。

まぁ、こっちも奴隷(の予定)のアスナを攫われて、もそっと楽しめるかなと思ってたALOも碌に……いや、楽しんでたな。

……まぁ、今はそれはいいや。 とりあえず、アスナ攫われて気分最悪だけどね! 死刑!!

 

なんかごちゃごちゃ言っているようだが、無視だ無視。

主神の剣の柄に手を乗せ、一息に抜き放つ。

 

「おやおやァ? キミ、もしかしてこの妖精王オベイロン様に楯突こうと言うのかなァ?

甘い、甘いよォ! 僕に楯突こうなんて1万と2000年早いんだよォ! 重力まほぉっっ!!」

 

多分、管理者ウィンドウだろうものを呼び出しながら、重力魔法と叫ぶオベイロン。

滑稽ですねぇ、神相手に妖精の王如きがイキるとか。

……しっかり重力魔法は効いており、足が地面に埋まりかけているが特に苦しくはないし、原作のキリトみたいに地べたに這いつくばったりはしない。

 

「へぇ、それが次のアプデで実装予定の重力魔法かー……で? それが何? こんな魔法作ったけど体験してみてどうかって感想言えばいいのかな? ゴミ。 下の下の下の中。 ぶっちゃけ足が埋まりかけてるの凄いなー程度だよ」

 

「なっ、何故だ、なぜこの重力下で動けるっ!?」

 

「え? 神だから」

 

「はっ……?」

 

んまぁ、確かにそんな反応するよねぇ。

……というか、感想言ってあげたのに感謝の言葉が来なかったんだけど。 なに、お前そんな教育受けてるの?

なんていう感想しか抱けなかったが、とりあえずは良いだろう。

主神の剣もそろそろ待ちくたびれているだろうし、切り裂くとしようか。

ゆっくり、ゆっくりとオベイロンへと歩を進めるが、それとは逆に、一歩一歩アスナの方に後退りをするオベイロン。

 

「……っ、あ、アスナがどうなってもいいのかァ!?」

 

アスナの手にぶつかり、倒れそうになってからいい障害物兼人質がいるのを思い出したのか、重力魔法でベチャっと地面に縫い付けられているアスナの髪を掴み、引き起こそうとしているオベイロンが脅迫してくる。

 

「んー……確かにそれは嫌だね。

……チートウィンドウ、音声操作モード」

 

小さく、オベイロンに聞こえない程度のボリュームでチートを起動。

『ペインアブソーバ全カット』『管理者権限剥奪』『プレイヤーIDアスナを転移、画面端』

たった3つだけのチートだが、これでオベイロンも大人しく……

 

「なっ、ぼ、僕よりも高位のアカウントだとォ!?」

 

なってくれてない。

それどころか、もっとぎゃーぎゃー喚き立てている。

やべぇ、五月蝿すぎてキレそう。

 

「えぇい、なら僕直々に賊を叩き切ってくれる! 『オブジェクトID・エクスキャリバーをジェネレート』!!!」

 

虚空に手を翳し、何かが降ってくるのを待っている様子。

……だが特に変化はない。

 

「おいっ、何やってるッ、早く、早くエクスキャリバーを寄越せェッ、このポンコツがァッ!!」

 

「はぁ……『オブジェクトID・エクスキャリバーをジェネレート』」

 

哀れだなぁ、と小さくため息を吐いてから、エクスキャリバーを代わりに呼び出してやりながら、原作のキリト同様に投げ渡そうとして

 

「あっ」

 

やらかした。

 

「へ……?

……ぎゃぁぁぁぁぁ!? ぼ、僕の目がァァァァ!?!?!?」

 

アンダースローで投げた筈のエクスキャリバーだったのだが、投擲スキルが発動してしまったようでしっかりオベイロンの右目を貫通。

これ死んでないかなっておもったけど、ポリゴンの欠片になってないからまだ死んでいなさそうだ。

 

「……まぁ、いいか。 ほら、抜くぞー」

 

「ぎぃぁぁぁ、や、やめっ、やめろぉぉぉぉぉ!?」

 

引っこ抜き突き刺し引っこ抜き突き刺し引っこ抜き腕を切り落とし足を切り落とし突き刺しチートで体力回復引っこ抜きもう片方の目を突き刺し引っこ抜きち〇ぽ切り落とし脳天に突き刺し、ヘッドショット判定でポリゴンの欠片になってしまった。

 

「クソ、もう少し虐めたかったのに……」

 

「……っ、も、もう、十分だよ、セイ君……っ」

 

重力魔法は既に解除されているが、埋まりかけていたダメージがあるようで、少し苦しそうな表情をしながら後ろから抱きしめてくるアスナ。

 

「……しょうがないな」

 

と小さく呟いてから、アスナの腕の中でぐるりと回り、アスナの方を向いてから軽々と持ち上げる。

きゃぁっ、と小さな悲鳴が聞こえだが、気にせずベッドまで連れていき、降ろしてから上に覆い被さるように

 

「……色々用事を済ませたら、また色々しよう」

 

「……うん」




……雑な終わり方だな今回!?
しかも3000文字しかかけてない……
ごめんね、(オベイロンに)イライラしてたのが爆発してこんな感じになっちゃった!
あと書き方忘れた。

……それはそれとして、次回はめんど……アレだから後日談にしようかな。
それじゃあ、また次回!!





「……ん、私の出番は……?」
白衣をたなびかせて1人のプレイヤーを待っていた科学者は、放置されていることに気がついてしまった。
だが、作者が彼を登場させることは、多分もうないだろう。 知らないけど


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第21層・そして未来へ。

お久しぶりでっ、でっ、
ほんっっっっとぉぉぉぅぉうにお久しぶりです!!
生きてます!
死にたくなったこといっぱいあったけど生きてます!
ごめんなさい、割と今の情勢じゃ不謹慎極まりないです。
申し訳ないです。

前回までのあらすじ。
SAO時代の姿のまま現実に戻ってきた晴明(晴美)。
そんな晴明を待っていたのは姉となったストレア、妹になったユイ。
それと、知り合いの中で唯一戻ってきてないアスナの情報を持ってる菊岡誠二郎だった。
菊岡のバイトにノる事にした晴明は、ALOに早速ダイブしてまたチートを使う。
チートと神の力を使ってとりあえずオベイロンを撃破した。
だが、アスナを現実に戻してからが、ある意味大変だったのかもしれない。


「それで、菊岡さん。 アスナの入院している病院は何処?」

 

『明日奈君が入院しているのは、所沢の総合病院だ』

 

ALOでアスナをログアウトさせた俺は、須郷伸之達に囚われていたプレイヤー達を一斉にログアウトさせてからすぐさまログアウトを実行。

原作のようにヒースクリフ……茅場晶彦のデータがうんぬんかんぬんすることはせず、そのまま帰ってきてしまった。

……後々なにかされるかもしれないが、今はいいだろう。

 

ログアウトした俺はすぐさま菊岡に、アスナ助けたから入院してる場所教えろとラブコールを飛ばした。

SAO帰還者全員の無事を確認したのであろう菊岡は、すぐさまアスナの入院している病院を教えてくれた。

 

自室から廊下に顔を出して周りの音を聞いてみるが、特に音がしない。

……ストレアもユイもまだALOから帰ってきてないか……

そりゃそうか、まだログインしてから数時間くらいしか経ってないし……

 

2人をログアウトさせて連れていくことも出来るが、動きが制限される可能性もあるし、なんなら須郷とのバトル中に人質に取られる可能性もあるため連れていかない。

……だが、そうなると移動手段が無い。

 

「いや、まてよ……?」

 

すぐさまスマホを取り出し、チートを起動。

自分の体を調整を開始する。

現実だと肩凝りとかヤバいから胸はフラットに、身長は165cmに、体型は洋画に出てきそうな「脚長っ!」って言ってしまいそうな感じに、顔はロリから大人な感じにレベルアップする程度に抑え、次に免許証をチートで作りだす。

前世は車もバイクも運転してたからな、わっはっは。

反映ボタンを押せば目の前がぐにゃぁん……と立ちくらみ。

キュッと目を閉じ、再度開ければ身長が伸びている。

 

「……前世より低い」

 

前世は170cmちょっとあったしなぁ……と懐かしむも、そんな余裕は今は無いと頭を横に振り、次のチートを実行していく。

 

チートで作り出したライダースーツにちょっと厚めでプレテクターがしっかり入っているジャケットを羽織り、フルフェイスのメットを被ってから手袋をする。

……ブーツだな! ヒールとかなんて履いたら多分折れたりギア上がらなかったりするだろうし!

誰かに見せるわけじゃないしあぶないから、とブーツを作り出し玄関で履く。

しっかりきっちり紐を縛ってから玄関を出れば、車が3台入る車庫へと向かう。

……満月が頭上を照らしている。

アスナがこの世界に帰ってきたのを知らせようとしているのだろうか。

……考えすぎだろうな。

門を開けて中に入り込めば、目の前には黒いスポーツタイプのバイクが置かれている。

前世の愛車はハーレーダムットソンだったけど、今世ではTANIHAだ。

 

ハンドルに鍵を差し、ロックを解除してからシートに跨り、エンジン始動させるために鍵を回す。

軽快だが重めの音を発して目を覚ますバイクを撫でてからハンドルを握る。

……直葉がALOにログインしてなかったら気づかれるかもなぁ。

そんな考えを振り切るようにハンドルをまわし、クラッチを離した。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~

あぁ、これが風を切って走る感覚なのね……きんもちぃ~⤴︎︎

……赤毛の決闘者の様なトリップを脳内でしながら、目的地である病院へと到着する。

駐車場の出入口と夜間出入口はかなり遠い……

しかもその前に須郷との戦闘か……

 

いや、ここは真正面からぶん殴ろう。

 

駐車場に停まっているバンの後方から回るように夜間出入口へ向かうが、目の前にゆらりと人影が現れ、銀に光る何かをこちらへと振るって来た。

もちろん、それはナイフだ。

だが来るのが分かっていればこちらも対処が出来る。

ナイフの軌道から顔を逸らし、カウンターの右拳を闖入者の右目にぶち込む。

ぶしっ、ミチッ、グチッ……と嫌な音が聞こえてくるが気にせずに拳を振り抜けば、闖入者はかなり弾き飛ばされた。

 

「は、ぁ……? お、おまっ、なぜっ、いや、なにをしたか、分かっているのかッ!?」

 

「分かっているが知ったこっちゃねぇよ」

 

「おまっ、おまえっ……!! 私の顔をこんな事にしただけでなくっ、私の、おれの、俺のキャリアまでぶち壊したんだぞっ!」

 

「あーあー、喚くな屑が。 殺すぞ?」

 

須郷の元に近寄り、未だに喚き散らかしている須郷の口に嵌るように蹴りを入れる。

パキュッ、と硬いものが割れるような音がしたが気にしなくていいだろう。

 

「ほぁ、ほぁえ……っ」

 

「うるせぇな……靴入れられても喋るならもう殺すしかねぇんだが?」

 

恨み……と言うよりは怒りや憎悪だろうか。

俺のアスナを奪おうとした須郷伸之という人間へ向けての憎悪。

その辺の負の感情を全てぶつけようとしている。

この現実での初めての負の感情の発露だろう。

殺してやりたい。

 

だがここで殺してしまえば俺/君が犯罪者となる。

 

いまならまだ正当防衛で済む。

 

そんな声が聞こえた。

 

……須郷の口からブーツを引き抜けば、白い破片がパラパラと落ちる。

 

「ほぁえっ……こぉ、こぉしてあぅ……! あぅなぉ、ぉあえのぁぉぅぉ……!」

 

ころしてやる、あすなも、おまえのかぞくも。

須郷はそういったのかもしれない。

 

「やってみろよ」

 

落ちていたナイフを拾い、ソレを振り上げて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~

夜間出入口に併設されている守衛室に、やっと目を覚ました家族の見舞いに来たのに外で暴漢に襲われた、という事を伝えて中に入り込む。

……即座の事情聴取が始まる可能性があったから、やっと目を覚ました家族の見舞い、と言っている。

チートの被害者と書いて嫁と読む(逆かもしれねェ……)から、あながち間違いではないだろう。

守衛さんはすぐさま分かりました、と言って俺を通してくれた。

守衛室から連絡が行ったのだろうか、近場のナースステーションに行けば、看護師さんが俺を待っていてくれた。

 

「ぇ、と……あすな、ゆうきあすなのしんるい、なのですが……」

 

あぁ、さっきの影響か、口が回らない。

怒りをぶつけた後ってかなり喉が渇く。

だが看護師さんはしっかり分かってくれたらしく、すぐに部屋を教えてくれた。

 

アスナのいる病室の前に来ても、まだ少し、今までの行いのせいで葛藤する自分がいる。

チートで作り出した感情を植え付けてしまったアスナに、どんな顔をして会えばいいのだろう。

謝ればいいのか、笑えばいいのか。

いっその事、アスナの中から俺の記憶だけ消してしまえばいいかもしれない。

そんな気さえ起きてくる。

あぁ、そうだ、そうしよう。

………スマホを取りだす手は震えている。

 

……記憶を消すなら、1度顔を見てからでも、遅くはないだろう。

震える手で持っていたスマホをジャケットのポケットに仕舞い、軽くノックの後、部屋の中へと入る。

 

窓とカーテンが開いているのだろう。 病室内は寒く、仄かに月明かりと風が入ってきている。

……キリトのように、まだ意識が戻っていなかったらどうしよう、なんて考えは無い。

だが、さっき頭にあった恐れの様なものがまた首をもたげてくる。

 

怖い。

 

背中を押す声は聞こえない。

今ここだけは、俺を後押ししないでくれ。

今押されてしまえば罪悪感で潰されてしまう。

だから。

 

「だれ……?」

 

しかし、俺の意思とは裏腹に、病室を仕切るカーテンの向こうから声が投げられた。

それだけで、頭の中にあった恐れは膨らんでしまう。

だが、恐怖で縫い付けられてしまっているような足を、どうにか1歩を踏み出してみれば、すんなりと前に進めてしまった。

 

「……アスナ……」

 

「あっ……ふふっ、セイ君」

 

一瞬驚いたように声を漏らし、すぐに微笑みへと変わるアスナの表情。

名前を呼んでくれた。

笑みを見せてくれた。

 

「アスナ……ごめん……」

 

「なぁに、またなにかチートとかで、やらかしちゃったの?」

 

「ぇ……?」

 

誰にも話していない、致命の一言を言われた。

 

「なん、で……?」

 

「え? なんでって、最初から、知ってたよ? 第1層の、ボス攻略会議で……」

 

あぁ、気付かれていたのか。

 

「私の事、おもちゃにする気だったのも、恋愛感情の、数値をいじってたことも。 なんだったら、アバターを変えたことも、ね?」

 

全て、気づかれている。

いや、頭の中では分かっていたのかもしれない。

いつか誰かにチートが気づかれるかもしれないと。

記憶処理をしていないのだから当たり前だろう。

俺はまた、スマホへと手を伸ばす。

 

だが、「でも」と続けられた言葉で、手は止まってしまう。

 

「でも、それでも、セイ君……晴明君は私を無碍に扱わなかった。

私を殺さなかった。私に仲間をくれた。私に未来をくれた。 私を、何も残せず、死ぬかもしれなかった私を救ってくれた。 私を生かしてくれた。 私を……愛してくれた。

だから、私は許しちゃう。 本当はすっごい怒らなくちゃなんだろうけど、縁を切らなくちゃいけないんだろうけど、私にはもう、それは出来ない」

 

かしゃん、と何かを落としてしまった。

だが、いまはいい。

目の前が歪む。

あぁ、あぁ……

 

「だから、ね? そんな悲しそうな顔はしないで? 消えたいだとか、私の記憶を消すだとか、そんなことは考えなくていいよ」

 

まだ目が完全に見えているわけではないアスナは、少し見当違いな方を見つつ手を広げて。

 

「流石に病院だから、えっちなことは出来ないけど、ぎゅーってすることは、できるから……ね?」

 

まだ帰ってきたばかりでたどたどしい言葉使いで、俺を誘う。

鼻水やら涙やらでぐしょぐしょになってしまっている顔を、申し訳なさそうに、だがアスナの胸に預けるように、抱きしめて。

アスナはそんなこと気にしていないよ、と言うように俺を抱きしめてくれた。

 

……少しして、ゆっくりと顔を上げれば、にこにこと笑みを見せているアスナと目が合った。

気恥しさで目を逸らし、もぞもぞとアスナの腕の中から抜け出して。

 

「……あ、そういえば、自己紹介がまだだったね」

 

目の前にご馳走が運ばれてきたかのような声音でアスナが言う。

 

「あー……えーと……今じゃないとダメ?」

 

「もちろん♪」

 

「……葉山 晴明です。 おかえり、アスナ」

 

「結城 明日奈です。 ただいま、セイ君」

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~

あの後、すぐに明日奈の両親が駆けつけ、俺は挨拶やら何やらで明日奈の両親から色々聞かれたりしていた。

もちろん、駐車場で失禁しながら伸びていた須郷伸之のことも。

 

しょうがないと割り切ったが、明日奈の両親が来てから数分後にポリスメンが来た。

その後は警察署まで任意同行されて朝方まで警察のお世話になってしまった。

過剰防衛だってさ。

ナイフ持ってたからってボコボコにしすぎだって怒られたよ。

 

おかげで家に朝帰り。

しっかり朝食を作ってくれていたユイには感謝しかないが、食べたあとはしっかりお説教食らった。

ログアウトしたなら私かストレアのどちらか、もしくはどちらとも起こしてください、ってな感じで。

 

 

……あぁ、そういえば、原作ではオベイロンを倒してから受け取っていたザ・シードについてなんだけど、しっかり俺も受け取ったよ。

待っていてくれたセブンやリーファに挨拶しに行こうとログインしたらね、真っ暗な空間に茅場晶彦が居て、その時に渡された。

 

『君がログアウトするのが早かったから渡しそびれてしまったよ』

 

なんて皮肉混じりに渡して来た。

突き返す訳にも行かないから、後でエギルにでも投げつければいいじゃろ。

 

それはそれとして、リーファとセブンには怒られた。

あれだけ待たせたくせにー!だって。

お詫びにセブンには、リアルで会った時に子種のプレゼント。 リーファは新しい武器回収を約束させられた。

 

ゲームで一日、警察署と謝り倒しで一日。

長く濃厚な2日がこれでようやく終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~

都内某所・ダイシーカフェ

「それじゃあ、SAO攻略おめでとう! かんぱーい!」

 

「「「「「かんぱーい!!」」」」」

 

エギル……アンドリュー・ギルバート・ミルズが夫婦で経営しているカフェを貸し切って、わいわいがやがやとSAO攻略パーティが催されている。

乾杯の音頭を取ってくれたのは、SAO内ではかなり有名なピンク髪……リズベット。

アスナ繋がりで呼ばれてる、と思うかもしれないが、実は50層のカリバーンぼっきり事件まではリズにメンテをしてもらってたんだ。

それ以降はね……メンテ必要ないエクスカリバー手に入っちゃったから……

まぁ、それは置いておいて……

 

「あら、ご主人様、飲んでますかぁ……?」

 

「もー、ニミュエ、酔っ払って絡んじゃダメだよ?」

 

「そうですよ!」

 

べろんべろんに酔っ払っているニミュエ。

ソレを窘める姉ふたり……ストレアとユイ。

3人がカウンターの席に座っている俺の方に絡み……話をしに来る。

 

「あー、飲んでる飲んでる。 お茶を」

 

「烏龍茶だな」

 

こまけぇ……という視線に、気にするな、と獰猛な笑みを見せるチョコマッチョ(エギル)

へぇへぇ、と頷きながら、酔っ払い以外の2人に、酔いつぶれたりする前に水にするよう伝えて空いている席に向かわせる。

すると次は気持ち的ナイト君とウニがやってきた。

 

「やぁ、久しぶりだね。 60層のボス以来かな?」

 

「おう、元気しとるか?」

 

「あぁ、大体それくらいかな、元気にしとるよ」

 

ディアベルとキバオウのふたりも参加していたようで、2人の声の大きさにどこか懐かしさを感じているメンツも少なくなさそうだ。

……あ、今の俺の体は初期の俺の体に戻してある。 そのため2人とも何も感じずに声をかけてきてくれたのだろう。

 

「なんや、自分SAO終わった後も何かやっとったみたいやんけ」

 

「色々あんだよ」

 

「はぁん? またけったいな事件に首突っ込んどったんやろ」

 

「まぁまぁ、キバオウさん、今はパーティの最中なんだし、SAOの話をしようじゃないか」

 

「……ま、せやな」

 

ディアベルが察して話を切り上げてくれた。

割と気が利く男だよね、あいつ。

 

Приват!(プリヴィエート)、セイメイ」

 

「こんにちは、セイメイ君」

 

なんかレインとセブンが一緒に来てるんだけど。

あれ、いつの間に姉妹仲戻って……あれ……?

ロストソング忘れた……??

まぁいいや……

 

「やぁ、2人とも。 楽しんでる?」

 

「えぇ、とっても!」

 

「しっかり楽しませてもらってるけど……その……七色も招待してたんだね、セイメイ君……いつ知り合ったの?」

 

「ALOで」

 

「そ、そっかぁ……」

 

なんかちょっとショックそうなレインをセブンが大丈夫? と聞きながら別な場所に向かっていった。

もちろんセブンは去り際にДасвидания(ダズヴィダーニャ)としっかり言って手を振っていた。

 

「ね、セイメイ君、隣いいかな?」

 

茶髪の女の子が声をかけてきた。

もちろんと返すと、茶髪の……ユナが丸椅子に腰掛ける。

 

「彼は、ちゃんと送って上げられたかい?」

 

「うん、しっかりノーチラス……えいじくんを送ってあげられたよ」

 

「そっか」

 

今参加しているメンツのなかで、1人愛しかった人を無くした少女。

優しく頭を撫でてやる。

ちょっと鼻をすすりながら、ちょっと席を外すね、といって店の奥へと向かっていった。

多分奥の部屋でちょっと泣いてくるのだろう。

 

「お兄ちゃん!」

 

「セイメイ君!」

 

「「また女の子泣かせたんですね!」んだね!」

 

「泣かせてなーい」

 

妹ーズ……

シリカと直葉の2人による問い詰め。

色々あったんだよ、と無理やり納得させて2人をぺいっとした。

 

「……落ち着かん」

 

「そりゃそうだろ。 セイメイ、お前は女の子を誑かしすぎてんだよ。 あっち見てみろ、クラインが1人で酒飲みながら不貞腐れてるぞ」

 

「せやかて工藤」

 

「俺は工藤じゃねぇぞ」

 

ぐでぇ……とバーカウンターに突っ伏しながらエギルとやり取りを続ける。

要は、女の子いっぱい侍らせているんだからそれくらいの気苦労は諦めろ、だそうだ。

 

「侍らせているって言やぁ、アレだな、円卓の騎士数人が来てないみたいだな?」

 

「侍らせているわけじゃねぇよ。 侍らせてるわ。 パーさんやガウェ院は仕事の都合がつかなかったんだと。 トリスたんとランスロは連絡がつかなかった」

 

「あー、なるほど」

 

かなり気まぐれな連中だしなぁ……

パーさん……パーシヴァルは例外だけど。

 

「あ、そうだ、エギル、例の種はどうなってる?」

 

「お、ようやくその話が出たか」

 

すっ……とノートPCの画面をこちらに見せてくるエギル。

それを覗き込めば、どこかの動画サイトのようなウェブページが開いており、小さな窓で種子……ザ・シードネクサスを監視、右のコメント欄のようなところに現在のダウンロード数や作られたゲーム数等が表示されている。

 

「数ヵ月でざっと20万位か」

 

「かなりダウンロードされてるな……」

 

「まぁな、無料のVRパッケージだ。 誰もが欲しがるものだからな」

 

「それもそうか」

 

大きめのサーバー、通信環境、そこら辺を揃えれば、素人でもVRゲームを作れるようになったんだ。

そりゃそうだよな。

 

「今は俺が管理してるが、もう少ししたら俺が管理しなくても済みそうになる」

 

「んぉ、巣立ちか?」

 

「まぁ、似たようなもんだ。 ミラーサイトもいくつか作られてきているしな」

 

「そうか。 ……迷惑かけるが、巣立つまで見てやっていてくれ」

 

「しゃーねぇな」

 

獰猛に笑うエギルに合わせ、こちらも笑みを見せる。

それが合図になったのか……

 

「二次会はALOのユグドラシルシティ、時間は今日の20時、みんな、忘れないでよね!」

 

リズがまた1段高いステージのようなところで宣言した。

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~

満天の空に輝く星。

湖をそのまま持ってきたかのような大きな満月。

ひとり寂しく、空を踊る。

 

「……楽しかったな」

 

楽しかった。

チートで手に入れた縁だったことを抜きにしても楽しかった。

前世やチートを使わなかったら、もしかしたら手に入らなかったかもしれない。

 

……いつかは、その事を言わないといけないかもな。

 

怒られるかもしれない、失望されるかもしれない、犯罪者と罵られるかもしれない。

なんだったら、殺されてもおかしくない。

……望み薄だけど、アスナみたいに許してくれるかもしれない。

望み薄だけどね。

 

……そういえば、今日のパーティ中、アスナとだけ話してないような……

 

「セイ君」

 

そんな考えを読み取ったのか、不意に背後からアスナの声が聞こえる。

 

「あ、アスナか……どうしたん」

 

ぽす……と背中にアスナが寄りかかってくる。

 

「大丈夫だよ、セイメイ君。 君は確かにみんなに怒られるようなことはしたけど、みんな許してくれるはずだよ。

……SAOをクリアした英雄だからって訳じゃないよ?」

 

みんな、君がいい人って知っているから。 と背中越しに聞こえる。

 

「そうだといいな」

 

「そうだよ。 絶対」

 

背中越しに聞こえる声は確信をもっている。

そう思えるほどに力強く、どこか儚げだ。

 

「……よし、うん、言いたいこと全部言えた!」

 

「ん、ん」

 

余韻がなげすてられた!

 

「ほら、そろそろ集合場所に行かないと遅れちゃうよ」

 

「……確かに、もうそんな時間だ」

 

アスナが差し出した手を握り、共に空を翔ける。

目的地はあまり遠くは無い、ユグドラシルシティの上空だ。

 

「……間に合ったよね?」

 

「多分。 20時言ってたしな」

 

リズの言葉を思い出しながら、集合場所間違えたか、とか時間ズレてないかと確認していれば、ユグドラシルシティの方から声が聞こえてくる。

 

「あぁ、大丈夫そうだね」

 

「そうだ……っ、アスナ、月、月見て」

 

「えっ、なに……月食?」

 

「いや、あれは……」

 

辺りを影が覆う。

月の光が翳り、歪な何かが光を遮る。

巨大な、いつか誰かが夢想した、天空に聳える100層の城。

 

「浮遊城アインクラッド……」

 

俺の言葉を継いで、その城の名を零すアスナ。

ぶるりと背中が震える。

また、あの日々を……

 

「ふふっ……大丈夫だよ、セイ君。 今度はみんなもいるんだし」

 

「……あぁ、そうだな」

 

武者震いなのか別な何かなのかは分からないが、怯えているように思われてしまったようだ。

苦笑いを浮かべ、アスナに肯定して。

 

 

さっきまで遠くにいたメンバーが、次々にアインクラッドへと向かって羽ばたいて行った。

 

「それじゃあ、私達も行こっか?」

 

「……そうだな、俺たちも行こう」

 

背中の羽をあやつりくるりとアスナの方を向けば、エスコートをするように手を差し伸べて。

アスナはそれに応じて手を重ねてくれる。

それだけで今は満足だ。




3年ぶりの新作、如何だったでしょうか。
最近はかなり忙しすぎて小説書くのも読むのも、ゲームやるのも作るのも、動画見るの……動画は作るのだけだな。 全部辛くなってまして……
久しぶりに書けたのは……1つ心のつっかえが取れたからでしょうか。
まぁ、とりあえず、ストレスは貯めるものではありませんね。
それでは、今回はここで筆……もとい、スマホと手を置かせて頂きます。



作中のバイクはハーレーダビッドソンとかヤマハとか。




転職してぇぇぇぇえよぉぇぉぉぉ!!!


Ps.サチに関しまして、整合性が取れなくなったため削除させて頂きました。
サチ好きの方には申し訳ないのですが、サチ再登場までお待ちください。


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GGO編
第22層・新天地へ


それはそれとして、今回はちょっと特殊に……出来ればいいなぁ!

晴明くん特殊にして!
「無茶言うな!」
つるぎのまいしていいからぁ……
「それは物理だ」

Ps.なんかサブタイトルとか前のセーブデータ使われてた。


……なるほど、確かにこれは面白いな……

Mob(モブ)PC(プレイヤーキャラ)も簡単に溶けていく。

死んだら装備品がランダムドロップっていうタルコフしてるのが少し納得いかないが、それでも楽しい。

……あ、いや、チートでどんな武器でも防具でも用意出来る俺がそんなこと言っちゃダメだな……

まぁ、問題は無いな。

 

なんて言っている間にもう1人.338 Lapua Magnum FMJ(ラプアマグナム フルメタル・ジャケット)弾で頭と胴をさよならバイバイする。

対物ライフル弾を軽々しく人に向けて撃つな、と言われてしまう。

だが、これはゲームだ。

VRなタルコフだと思えばいい。

それだけで頭から殺人に対しての忌避感は消え、戦場に立つことが出来る。

 

息を吸い、吐き出し、止め、指を引き絞る。

軽いノックバックの後また1人、頭を弾けさせる。

流石にゲームだから脳髄が弾けたりはしない。 割と安心して撃てる。

 

おっとと、バレた。

流石に同じ場所で5人はやりすぎたな。

すぐさまブッシュ(低木)から体を起こし、SAO時代から引き継いでいるAGI(アジリティ)に物を言わせて森林地帯へと飛び出した。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

「……はぁ、デス・ガン事件……」

 

「そう。 GGO……ガンゲイル・オンラインでの首都、グロッケンという場所のとある酒場にて、黒い襤褸衣を纏ったプレイヤーが、えぇと……ちょうど配信されていたMMOトゥモローという番組に出ていたゼクシード氏に向けて銃を発砲。 それで……」

 

「あぁ、いい、わかった、もういいやめて、周りの目が痛いから」

 

「そ、そうかい?」

 

銀座のお高級なお喫茶。

そこで俺たちは針のむしろになっていた。

主に俺の目の前で呑気にでけぇパフェ食ってるガリ眼鏡のせいなんだがな。

 

ほれへ、ひみのへんはいは(それで、君の見解は)?」

 

「今聞く? それ今聞くか普通?」

 

針のむしろ中でよく聞けるな。

呆れ通り越してちょい怒りの感情が湧き上がってくるのを感じる。

だがまぁ、こいつ……菊岡誠二郎は雇用主だ。

 

円卓の騎士団のメンバーとサチの連絡先(バイト代)も、今俺が食べている、この……菊岡の顔が見えないほどデカいジャンボスチョコプリンパフェホイップクリームマシマシの代金も全てコイツ持ちだ。

ぶっちゃけ今の俺には関係ないが、これ一つでガチャ30連位は引けるんじゃなかろうか。

 

そんな甘すぎ高すぎな1品をはむはむと158cm金髪縦ロールなお嬢様風な格好をした俺がそれを食べ進めながら

 

「絶対無理。 頭レンチンならまだしも、心臓が止まってるだけ、なんて無理」

 

こちらを睨みつけてくるばば……マダム達に気を使っている訳では無いが、あんまり注目されたくない勢の俺は軽い表現に留め、菊岡に返答する。

 

「やっぱり無理だよね……薬物反応を調べようとしても腐敗が進んじゃってなかなか調べられなくてさ……」

 

おいバカ

 

「ん゛んっ゛」

 

言わんこっちゃ……言ってないけど。

せめて分かりにくく”腐乱けん死体ん(ふらんけんしたいん)”とでも言っておけばいいのに……

 

まぁ、あきらめるか……

 

「それで、君にはGGOにログインして調べてみてほしいんだ」

 

「報酬は?」

 

「ケーキ代」

 

「話にならねぇ」

 

「そうか……じゃあ、サチ君の連絡さ」

 

「ノった」

 

「うん、凄まじい食いつきっぷりだね」

 

まぁ、そりゃあね。

サチだけまだ教えて貰っていないから、食いつくに決まっているじゃないか。

 

「必要な物はこっちで用意するから、君はこの病院に行って貰いたいんだ」

 

住所や部屋番号が書かれたメモを差し出してくる。

病院。

……あぁ、心電図とか色々見ておきたいのか。

 

「その必要は無いよ。 どうせ死なないし、死ねないし。 あと多分……死因は筋弛緩剤の致死量の投与だろう。 ガイシャの自宅は古いタイプの電子ロックだろ? それくらいならマスターキーでも使用すれば入れる。 シリンダー錠も上手くピッキングすればカチャ、よ。

住所なんかも……これは分からないが、大会とかなんかそこら辺の賞品とかがリアルに送られて来るんだろ。

それを背後から覗いたりスコープやら双眼鏡、単眼鏡なんかで見ながらメモすりゃ住所が取れる。

んで、標的の家にいってピッキングしてから誰も入って来れないだろーなんて呑気に考えてゲームにダイブしてるやつの静脈にぶっすりしちゃえば一撃。 タイミングなんかは時計見てたりして、何時に合わせて決行、みたいにしているんでしょ。

まぁ、その場合は2人前後で各個移動しないと間に合わなかったりするけどね」

 

流石に、原作知識です! なんて言えるようなものでは無いからな……

なんでそう思うのか、なんて聞かれたら流石に閉口せざるを得ないが。

 

「……そうか、そうか! 確かに一人暮らし相手ならそれでどうとでも出来る!

ありがとう晴美さん、おかげで捜査が進むよ!」

 

あ、よかった、質問とか飛んでこなかった。

……あ、でもそうだ。

 

「菊岡さん、もし違った時が怖いから、私もGGOに入る。

たしか明日とか明後日にBOBとかいう大きな大会もあったはずだから」

 

「了解したよ。 じゃあ……場所とかはどうする? 君は3人暮らしだから問題は無いだろうけど……」

 

「ううーん……自分で無いって言ったくせにやっぱり怖いから……なんて理由で病院の一室借りるのってアリ?」

 

「あっはっは、大丈夫、アリだよ」

 

ならよかった、じゃあそれで、と残りのプリンやフレークを食べ終え、席を立つ。

 

「ご馳走様です、菊岡さん。 それでは、明日の午前10時から一室お借り致しますわ」

 

「あ、う、うん、わかった」

 

唐突に口調を変えた俺に面食らったのだろう。

フッ、と目を細めニヤリと笑ってから軽く頭を下げ、お高いお喫茶を後にする。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~

さて、明日からBOBだが、どうするか。

武器もそうだけど、シノンに会うには……

 

銀座からの帰りの電車内で、いくつかの懸念点を挙げていく。

 

武器に関しては幾つかお気に入りがあるからそれを出せばいい。

弾薬も作れるらしいから、そこら辺も……

プレイヤースキルは……まぁ、実銃は撃ったことあるし前世でサバゲもやってたから……あぁ、いや、GGOとサバゲは違うから少し頭切り替えないとな……

あと……

 

『次は、本川越、本川越です』

 

考えているとあっという間に目的地へと到着してしまった。

小さく欠伸をしながら、割と目を引く金髪ドリルをたなびかせて電車を降りる。

やはり視線が痛い。

視線が痛いと嫌なので、多目的トイレに一度入り込んだ。

 

「いっその事目を引かないような格好にするか」

 

スマホを取り出し、チートを起動。

自分の名前をタップし、詳細を表示。

割とお嬢様スタイルが気に入っちゃってしまった為、今の体設定を保存し、新しい体をカスタマイズし始める。

 

「……黒髪ロング……いや、三つ編みもいいな……」

 

ちょうど洗面台に鏡が付いているため、カスタマイズしやすい。

……いやまぁ、スマホの画面でも見れるけど、それだと味気ないし、正面からしか分からない。

鏡なら傍から見たらどう見えるかがわかりやすいのだ。

とりあえず、と黒髪ツイン三つ編み。

ロングみたいな感じなのだが、こう……肩口辺りで一旦纏め、そこから下を三つ編みにしている。

顔は甘ロリ風。 タレ目にダークブラウンな瞳。

身長は150cm位で、胸はB位。 もちろん下もまぁまぁな大きさのが生えてる。

服装は流石に寒いから、上はベージュの萌え袖になるセーターで、下は黒のミニスカート。 デニールが140位の白いタイツ。 靴はヒールの高くない黒いブーツだ。

一応、この上に黒いコートを羽織って完成。

前は開けてない。 寒いし。

周りの記憶にも反映されるようにして、設定を完了。

少しだけ立ちくらみがして、反映まで済んだら多目的トイレを後にする。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~

「ただいまー」

 

「あ、おかえりなさい、パパ!」

 

「おかえりー」

 

「おかえりなさい、セイ君」

 

「ん、ただい……あれ、明日奈来てたんだ」

 

いつものようにユイ、ストレアの声に続いて明日奈の声が聞こえた。

ただいまー、とリビングに1度顔を出せば、何だかみんなニヤニヤ笑みを浮かべている。

イッタイナニガマッテイルンダッ

 

とりあえず手洗いうがいを済ませ、コートを脱ぎながらリビングへと向かう。

 

「そいで、今日はどったのさ、明日奈」

 

「んー? ちょっとねー♪」

 

「そっすか……」

 

「それで、今回はどんな仕事のお話をしてきたの?」

 

ソファに座った俺を見て、にっこにこしてるアスナから出た言葉はこれだった。

出た瞬間ユイの顔が「また約束破りましたね、パパ」というようなガッツリ温度下げた表情になった。 約束したことないんだけど。

ストレアはストレアでニヤニヤは止めず、逃げられないように後ろから胸を中心として腕を十字に交差させるロックの仕方をしてきた。

 

「ぇあ、えーとー……GGOっていうゲームのお仕事……」

 

「ふぅーん……? それで?」

 

「そ、それで……? 内部調査……って言えばいいのかな。 大会出るって……」

 

嘘は言ってない。

本当のことも少ししか言ってない。

言ったら言ったで私も行くってみんな言うだろうし。

 

「そう……それで?」

 

「あ、報酬の話? 報酬は、サチの居場所……」

 

「……随分サチさんの事気にかけてるわね」

 

「それはそうだろう。 同盟相手……いや、違うな。 唯一、俺がチートを使いたくないと思わせた少女だ……っていうのも違うな……うーん……」

 

明日奈の視線の先でうんうん唸っていると、根負けしたように息を吐いて。

 

「もう、わかった。 言い難いなら言わなくて大丈夫」

 

苦笑いを見せる明日奈に悪いな、と頭を撫でて。

でも、と頭を撫でる手を拘束され

 

「絶対に無事で帰って来ること!」

 

と釘を刺されてしまった。

もちろん、ストレア、ユイの2人も

 

「そーだよ。 無事じゃなかったらお姉さんいっぱい怒っちゃうからね!」

 

「私も、パパが無事じゃなかったら嫌です!」

 

なんて、強めに言われてしまった。

こうなってしまっては、無事に帰ってこないと、だな。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~

あの後、ユイと明日奈が作ってくれた料理に舌鼓を打ち、みんなでお風呂に入った。

原作のアリスのようなロボットではなく、しっかりと生身だということを思い知らされた。

具体的には……ストレアのおっぱいと明日奈のおっぱいで前後を洗われた……

ユイはユイで湯船に入った俺のモノを両腿で挟んでずりずりしてた……

 

「お風呂場でのえっちはダメなんだってば……」

 

部屋に戻り、生乾きの髪を放置したままベッドにダイブ。

ちょっと精神的、股間的ダメージを受けながら、ナーヴギア……ではなく、アミュスフィアを手に取る。

ナーヴギア自体は回収されていないが、それを使うにはリスクが伴うため、ただの置物となってしまっている。

ぶっちゃけ俺には必要のないものだったのだが、菊岡さんが根回ししたのだろう。 何故か回収されなかった。

 

……まぁ、それはいいや。

アミュスフィアを頭に装着し、バイザーを下ろしてから起動の句を唱える。

 

「リンクスタート」

 

通常通り起動を果たすが、まだGGOの購入はしていない。

Ste〇mみたいなものがあるため、そこで購入をして行く。

パッケージ、デラックスセット……ダークネスフォール……?

何その闇堕ち。

とりあえずデラックスセットを購入し、毎月の通信料用のクレカを登録する。

するとすぐにダウンロードが開始され、秒で終わった。

 

「いいなぁこの回線! 前世でも欲しかったなぁ!」

 

前世の回線はかなりゴミだったから……

とりあえずダウンロードが終われば、GGOのアイコンを選択。

すぐさまゲームへのダイブが開始され、浮遊感が俺の体を包む。

 

『welcome to GGO!』

 

タイトルロゴや種族選択なんかは表示されず、名前設定だけしたあとただようこそGGOへ、というテロップのようなものが表示されて薄暗い空がネオンで飾り付けされた世界へと産み落とされた。

 

「……なんか、息苦しいところだなぁ……」

 

近未来で宇宙戦争してた、なんて設定のゲームらしいが、それが原因なんだろうか。

まぁ、多分違うだろう。

そう頭を横に振れば、ぱさりぱさりと顔に髪が掛かる。

またか。

いや、もう慣れた。

ちらりと自分の横に配置されている、向こう側が全く見通せない代わりにしっかり反射してくれるガラスに目をやる。

 

身長は130cmくらい、真っ白で腰あたりまであるロングヘアー、どれだけ目を見開いても半眼から開かない眠たそうなタレ目、赤と青のオッドアイ、手足は細く、胸もCくらいだろうか。

ロリコンが喜びそうなアルビノオッドアイロリだ。 属性盛りすぎ。

 

小さくため息をついていると、パイロット帽にゴーグルを掛けた男がこちらに走りよってきた。

 

「お、おおおおじょうちゃん、ちょちょ、ちょっと待ってくれぃ! あんた、そのアバター、F9900番代の超希少アバターだろ!? 俺にアカウントごと売らないか!? クレジットで6000万……いや、8000万出す!」

 

「いや、これは……」

 

「わ、わかった! 9000……いや、1億3000万だ!」

 

「……コンバートだから渡すことは出来ないんですの、ごめんなさいね?」

 

この手の物に不慣れだが、断らなければ色々と問題が起こる。

何より金なんて俺には不要なものだし。

俺のその意思が伝わったのか、男はすごい残念そうなため息を吐き出した。

 

「そうかあ……わかった、じゃあもしそのアカウントを売る気になったら俺に連絡してくれ……」

 

そう言って名刺みたいなものを押し付けて帰って行った。

……あ、フレンド登録された……

 

……とりあえず、通過儀礼(?)を経たので、次の用事を済ませに行く。

街中を歩きながら、武器屋、防具屋を見て回る。

もちろん、見て回るだけだ。 俺の好きな武器があるかどうかの確認。

もしなかったら残念。 売ってなかったら後でチートで取りだす。 売ってたらラッキー。 沢山あったら……弾代高いのかな? というふうに考えることにした。

その途中でシノンに会えれば僥倖、ということで足を進める。

 

……かなり広い。

グロッケンってかなり広いのね。

チートを使い、STRとAGIを可能な限り上げたり、面白そうな武器を眺めたりしていても全然端につかない。

もしかしたら端につかないような作りになっているのかもしれないが、もしそうなら諦めるしかない。

……というか、シノンにも会えない。

明日この辺をうろついていればシノンに会えるだろう、なんて淡い期待をしてもいいのだろうが、もし会えなかったら辛いからとチートの力を借りることにした。

 

チートウィンドウを表示すると、SAOの時と同じように、かなりの量と大きさのモノが表示される。

その中から人のウィンドウを表示し、その中からシノンの名前を探す。

 

見つけた。

グロッケンの中にいてあまり離れていない場所にいる。

この体なら警戒もされないだろう。

最初は気弱系で行くか。

 

ということで、シノンがショッピングしている場所へと赴き、ガチガチの初心者装備で、いかにもこのゲームは初心者ですオーラを出し始める。

と言ったところでちょうどお店から出てきた。

 

「んー……? ここどこぉ……?」

 

きょろきょろ……ウィンドウに表示されているマップと辺りの地形を噛み合せるように視線をマップと周りの景色を行ったり来たり。

うぅん、とその場で立ち止まり、マップとにらめっこしていると

 

「どうしたの、あなた、迷子?」

 

とシノンが声をかけてきてくれた。

 

「ひゃいっ!?」

 

「そんなに驚かなくても大丈夫よ、別にとって食ったりする訳じゃないし……

……貴方、初心者よね?」

 

「あ、えと、はい、このゲームはドが付くほど……というより、少し前に初ログインです……」

 

「なるほど……

……もし、貴方が良かったらなんだけど、色々とレクチャーしてあげようか?」

 

「はぇ……い、いいんですか?」

 

願ってもいない提案だ。

だが、少し不安を覚える演技をする。

 

「大丈夫よ、さっきも言ったように取って食うわけじゃないから。

こんな殺伐としたゲームで女の子の友達が出来るのが嬉しい……あ、ごめんなさい、出来たら嬉しいな、ね」

 

「そ、うですか……じゃあ、えっと……私でよければ、お願いします」

 

「えぇ、よろしくね。 ……私はシノン、貴方は?」

 

「あ、はい、タマモ、といいます!」

 

玉藻の前、玉藻御前、一説では妲己とも言われている九尾の妖狐。

安倍晴明が祓いきれなかった傾国の狐。

女の子アバターなのにセイメイは無いだろう、ということでこの名前にしてみた。

 

まだ、彼女にチートは使わない。

使うのはBOBが始まる前だ。

 

「それじゃいきましょ、タマモちゃん」

 

「はい、お願いします、シノンさん」

 

今は、女の子としてショッピングを楽しもう。

 

 

 

 

 

「……ところで、タマモ”ちゃん”でいいのよね?」

 

「はい、見た目こんなですから」

 




その場その場で考えているから、後書きなんかも色々書いていてもセーブデータを間違えると一瞬で分からなくなる。
しかも、1回睡眠とると余計に……

それはそれとして、今回のおふろ内容は後で色々しようかなって考えてます。 別の話で。




……じつは、菊岡にはアリシゼーションとは違う場所でもクズ野郎を演じて貰うつもりです。


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第23層・おかいもの!

……やー、やめておくか。
まずキャラ覚えてねぇ……

本当ならドルフロでも巻き込むかって考えてたんだけど、数回やって辞めたせいでキャラが……
ニケも無理だったよ……
でもその代わりあのキャラに仕込んだよ!


「あれ……? そういえば、貴方……所持金ってどんな感じなの?」

 

シノンの言葉にあ゜っ……と変な声で返してしまった。

 

「……その様子じゃ、あんまり持っていなさそうね……」

 

「た、たしか、デラックスパッケージ買ったので……うん、1万クレジット……」

 

指を振るい、通常のウィンドウを表示しつつ今の自分の全財産をちら、と見る。

通常エディションの初期所持金額よりは高いが、それでも1万。

安いライフルかハンドガン位しか買えないだろうな。

 

「良かったら、私が少し貸しましょうか?」

 

「ダメ、それはダメです。 返すアテがなくてずるずる引き摺るので……!」

 

「そ、そう……?」

 

「そうです! ……むー……と言ってもなぁ……」

 

お金は借りない宣言をしたが、どうするか。

チートで出せるが、それは違うし……と考えたところで、チートが使えるか確認していなかったことに気がついた。

すぐさま指を振り、メニュー欄にチートの3文字が並んでいることを確認。

ホッと一息。

どうしたの? と少し怪訝そうにしているシノンに

 

「あ、いえ、その……手っ取り早く稼げる場所はありませんか? カジノとか……」

 

「えぇ……と、そうね……近場の武器屋に一攫千金、みたいな感じのミニゲームがあるわね。

あとは、その裏路地にカジノがあるわ」

 

やっぱりゲームの世界。 色々違うなぁ……

 

「BOBの登録締切までは……1日ちょい……カジノなら稼げるかな……?」

 

「えっ、貴方、初心者なのにもうBOBでるの?」

 

「え? あ、はい、ちょっと出なきゃ行けない理由がありまして……」

 

「そう……」

 

なんかちょっと可哀想な子、というような視線に変わったように見えるんだが?

犯したろかこのやろう。 女の子だけど。

 

「なら、そうね。 カジノがちょうどいいはずよ。 時間も1日あるし。 勝てればその分景品と交換出来るし」

 

ついてきて、と手を引いてくれるシノン。

……あれ、お姉ちゃんですか?

 

「数日はバイト休みだし、シュピーゲルも今日は来ないって言ってたから……オールは出来そう。 だけど、意識持たせるために4時間は寝たいから……最大5時間ね」

 

現在23時。

 

「あ、えと、色々教えてもらった上に、そんな長い時間拘束してたら悪いですよ……」

 

「……ん、ふふっ、気にしなくて大丈夫よ。 私が好きでやっているんだもの」

 

気にする。

俺はそういう男だった。

 

「む、む……なら、カジノで大勝したらなにか奢りますね」

 

「もう、ほんとに気にしなくていいのに」

 

しょうがないなぁ、というような雰囲気を醸し出しているシノンに、ふんすと鼻息を強く出して息巻いているように見せて。

 

「ほら、ここよ」

 

「casino、ですね」

 

「何で急にネイティブに……?」

 

「そういうお年頃ですから」

 

そんな感じでシノンに連れられて入ったカジノは割と静かな場所だった。

こう……ウェスタン風味でかなり治安が悪そうな感じではあった裏路地とは違い、中はしっかりとした……言うなれば高級ホテルが運営していそうなカジノだ。

 

スロット、ルーレット、ブラックジャック、ポーカー、ダービー、大富豪(?)、丁半(??)、花札(???)などなど、凡そカジノと言えば、と言えるものから、カジノより賭場の方が似合うだろといえるものまである。

スロットに至っては、かなり大きなものや壁に埋め込まれているものまであり、壁に埋め込まれているスロットは水をぶっかけて回す仕掛けになっているようだ。

……触れると痺れて、水をかけると分裂するエイとは戦ってねぇぞ。

 

それはさておき、シノンに案内されるまま換金所へとやってきた。

所持金を1000クレジット残して全てメダルへと替える。

 

ただし、ここからはチートを使わせてもらう。

と言っても、倍率をバグらせるだけだが。

チートウィンドウを表示し、俺のLUCKと倍率をはね上げる。

 

「私も少しやろうかしら」

 

付き合いで言ってくれているのか、そう言って1万を換金していた。

 

シノンも準備が出来たことだし、ちょうど2席空いているブラックジャックの席に座る。

 

「ルールは知っていますか?」

 

ディーラーNPCはこちらに問いかけるが、もちろん知っているため縦に頷く。

では、と頷き返すディーラー。

 

「それでは、ベットタイムです」

 

ディーラーの声は淡々と進行していく。

もちろん俺はオールイン。

手持ちのメダルを卓上に重ねる。

 

「……あら、かなり強気なのね?」

 

「そですね。 初めてですが、これくらいなら行けます」

 

そう……とどこか残念そうにしている白髪に濃い紫色の服を着た女性が呟く。

その横でシノンは手持ちの半分をかけていた。

 

「それでは、ベット終了です」

 

ディーラーがその言葉と共にカードを各プレイヤーとディーラーで順繰りに配置していく。

1人2枚。

ディーラー側は1枚だけ表で、もう1枚は裏側だ。 理由はー……知らない。

スペードのQだ。

他のプレイヤーは2枚とも表面で配置される。

1人目、12。 5のダイヤと7のスペード

2人目、10。4のハートと6のダイヤ

俺、21。 ブラックジャック。 スペードのAとK

白髪お姉さん、20。ハートのA、ダイヤのQ

シノン、18。 クローバーの10、スペードの8

 

「続きまして、カードの追加です」

 

俺はブラックジャックの為ゲーム自体クリアしているが、その前に周りのみんな順繰りにカードを1枚、2枚と要求していく。

 

今更だが、ブラックジャックとは、簡単に言ってしまえばカードの数字が21に近ければ近いほどいい。

21以下でディーラーよりも上の数字をだせば勝ち。

 

2~10まではそのまま数字として換算され、絵札……J、Q、Kの3枚は共に10として換算される。

Aのみ11、もしくは1として換算される。

 

ブラックジャックという役は、Aと10を初手で引ければ出来る役なのだ。

カジノによるが、当たれば1.5倍から2.5倍までの間で配当が加算される。

つまり、今の俺なら割とお金が加算される。

 

「では、ディーラー、カードオープンです」

 

ひっくり返された札はスペードのJ

 

周りから息を飲む音が、隣からは「えっ、はっ……??」という困惑の声が。

 

これも場所によって変わるルールなのだが、ディーラーとカードの柄が同じ、数字が連番、又はその両方が揃った場合も配当が上がる。

 

ストレートフラッシュ……あぁ、いや、ロイヤルストレートフラッシュか。

ポーカーみたいと言われそうだが、まぁ、そうなんだろう。 よく知らない。

 

配当は700倍。

めっちゃほくほく。

 

「あ、あなた、凄い運ね……?」

 

「そーでしょうか?」

 

白髪女性がかなり驚いているが、こちらはきょとんとした表情を見せたままだ。

チート使ってたりしないわよね……なんて言葉が聞こえてきたが、ディーラーがベットを締め切ります、と声を出したので、今度は全ベットと言って顔の向きを戻す。

 

シノンは……あ、白くなってるしメダルが出ていない。

負けたようだ。

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~

大☆勝☆利

いやまぁ、チート使ってるから勝つのは当たり前だけどね。

それはそれとして、カジノ限定のアイテム欄にしまわれているメダルにニヤニヤしながら換金所へと向かう。

もちろんだが、クレジットには換金してくれない。

お高いアイテムや武器を交換しているようだ。

それらの中で一番高い武器と弾薬など、明日以降で必要そうなものと交換し、あとは高く売れるものをシノンに聞いて貰いまくっていく。

 

「って、あれ……かなり高くて手が出ないスコープじゃない……あんなものまであるのね……」

 

というシノンの言葉に、それを一つだけ追加で交換しておいた。

後でありがとうの意味を込めて渡そう。

その時か着替え中にチート打ち込も。

 

交換終わったし、換金所から去ろうとした所で、後ろから声をかけられた。

 

「まって!」

 

なんだなんだと振り向けば、さっき横にいた白髪の女性がいた。

……よくよく見たらかなりえっちな体型をしている。

 

「はい、なにか御用ですか?」

 

ユイの性格を自分なりにトレースしつつ、くるりと振り向く。

 

「あなた……いえ、まずは自己紹介からね。 私はツェリスカ、よろしくね?」

 

「あ、はい、私はタマモです。 で、この人が……」

 

「シノンよ。 ……ツェリスカってあの、無冠の女王よね……?」

 

「えぇそうよ」

 

無冠の女王? と首を傾げるようにして見せるが、そんなことより、とツェリスカが話を先に進める。

 

「あなた、イカサマ……チートなんかはしていないのよね?」

 

「……薮からスティック……心外ですね。 ただ運が良かっただけですよ。 多分」

 

ブラックジャックしかやっていないため、レートに関しての操作は意味をなさなかったが、LUCKを上げている。 それくらいしかしてないからな!

 

などとても言えないが。

まぁ、そうか……と頭を振るツェリスカ。

 

「そうよね……チートに関してはあのハゲが血眼になるほどブロックしてるはずだものね……」

 

ハゲw

……ツェリスカの言葉がしっかり聞こえてきたが、いちいち追求はしない。

 

「ごめんなさい、私の勘違いだったわ」

 

「いえいえ、大丈夫ですよ」

 

ただし、と言葉を繋ぎながらチートウィンドウを表示。

ツェリスカの名前をタップし、横にチート一覧を表示。

《絶対服従》《強制フレンド登録》《俺のチートに関して違和感を覚えない》《脱……》いや、最後のこれはやめておこう。 シノンいるし。

 

一瞬だけ意識がどこか行っていたような表情を見せるツェリスカに困惑するシノンだが、当のツェリスカは

 

「ごめんなさい、すこしラグっ(遅延し)ちゃった」

 

と、一瞬惚けた理由を告げた。

 

「いえ、大丈夫ですよ。 それじゃあ、私達はそろそろ行きますね?」

 

「えぇ、引き止めてごめんなさいね」

 

シノンを連れて換金所から出ていく。

 

「貴方、とんでもない人に声をかけられたわね……」

 

「そうなんですか?」

 

「えぇ。 あの人……ツェリスカって言うのは、大会などには一切出ない。 その代わりなのか、PK技術や大型Mobの討伐技術はかなりの腕を持ってるなんて話もあるわ」

 

「それゆえに無冠の女王……?」

 

「……さぁね。 まぁ、大会に出ていないって言うのは本当の事なんだけど、戦闘技術に関しては噂程度のものだから」

 

戦闘技術なんかもかなり凄いのを持っているのを俺は知っている。

だが、ゲーム知識ってだけだから披露…という名の暴露はする気は無い。

 

「まぁ、それは置いておきましょ」

 

シノンは1度この話を打ち切り、ある店の前で止まる。

……質屋って書いてあるね。

 

「普通のアイテムショップでも売り買いは出来るけど、ものを売るにはこの質屋が1番よ。 ショップよりも高値で買い取ってくれるし、なんなら安値で割とレアなアイテムとか売っているから」

 

「なるほど」

 

自動ドアを潜り、店内へと入る。

細長い店内に、所狭しとと銃やグレネード、防具や服なんかが配置されている。

 

きょろきょろと銃を見たりグレネードを見たりしながら、奥のトレーダーNPCへと近づく。

 

「らっしゃせー」

 

「……売却、お願いします」

 

「あいよー」

 

NPCの言葉に続いて、売却ウィンドウが表示された。

自分のストレージに詰め込まれている要らない交換品を全て売却ウィンドウに投げ込むと……

大体32億クレジットになった。

 

かなり稼いだなー、なんてにっこにこになりながら、売却ボタンを押す。

にへにへ、これで色んなもの買えるぞ、嬉しいな。 アレするか、ピトフーイみたいにショットガン2丁、サブマシンガン2丁、LMG2丁、マサムネとかの光剣2本とか……

今の俺のSTRなら持てる持てる。

全部LMGにしても楽しいけど、試合後に全日本マシンガンラバーズに勧誘されちゃうからやめとく。

 

よし、トリップ終わり。

ちょっと引きかけているシノンを見て咳払いをしつつ質屋から出る。

 

「そういえばシノンさん、RMT(リアルマネートレード)とかがあるって聞いたんですけど……」

 

「あるにはあるけど……貴方、お金持ちだったりする?」

 

「まぁ、それなりには」

 

「……なら、大丈夫かしら……」

 

どことなく歯切れが悪いシノン。

総督府……BOB参加受付端末のある場所まで行くと告げられる。

 

RMT取引、あんまり好きじゃないのかな。

……いやまぁ、俺も前世は好きじゃなかった。 セーブデータ取引とか何が楽しいんだか。

 

近未来な街並みを歩いている際に、ちら、とトライク……前輪が1つなのに対して、後輪が2つのバイクのようなものがレンタルされているのが目に入る。

 

「シノンさん、ちょっといいですか?」

 

「えっ?」

 

くいくいっと手を引いて、トライクの方に向かう。

 

「ちょっとドライブと洒落込みましょう♪」

 

「えっ、貴方運転できるの!?」

 

「ふふっ、運転出来ちゃうんです」

 

どやぁ、とあんまりない胸を逸らしてどやって見せながら、自分から先にシートにお尻を付ける。 ちょい冷たい。 その後シノンに手を差し伸べ、後ろに乗りやすいようにしてあげながら乗り込ませる。

 

すぐにタッチパネルに手のひらを押し付け、クレジットを払う。

現代現代では珍しくなってきたガソリン車のエンジン音を聞き、やっぱりいいよなぁ、これ……なんて感慨深くなりながらも、ブレーキペダルを軽く踏み、ぶっ飛ばない様にしながらハンドルを回してクラッチを離す。

数フレーム後にブレーキペダルを離し、トライクを発車させる。

バイクと違い、重さとかがかなり違うがそれでも割と簡単に動いてくれる。

……自分の買ったりしたらカスタマイズとか出来んのかな。

 

「かなり難しいって話なのに、凄いわね」

 

「ふふふっ、実は運転したことがあるもので」

 

「へぇ……」

 

「それじゃあ、少し飛ばしますね!」

 

「えっ……きゃぁっ!」

 

ギアを上げ、アクセルを更に回せば、どんどん速度が上がっていく。

振り落とされないように腰にしがみついてくるシノンを感じながら、まばらに進む車やバイクをすり抜けるように進んでいく。

 

「……っ、あははっ、楽しい!」

 

「ん、良かった!」

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~

総督府にはそんなにかからずに到着した。

 

このトライクの場合はスタンドがないようなので、エンジンを止めるだけに留め、バイクから降りる。

降りる時は逆に手を貸すと降りにくくなるため、シノンには手を貸さずに、こう降りるのだ、と教える。

 

しっかりそれを実践してトライクから降りては、こっちよ、と手招きしている。

 

それについて行き、総督府の中に入れば、かなり広いエントランスが出迎えてくれる。

中央には穴……? とそれに掛る十字の橋。

正面にはかなり大きめのコンソールが10台前後。

左右にはなにかの受付のようなものがある。

 

シノンは正面右側のコンソールを指さして。

 

「あれがRMTの端末、その隣にあるのがBOBやその他大会に出るのに必要な端末よ」

 

「ふむふむ。 では、左右にある受付は……?」

 

「さぁ……? 私もそこは使ったことがないから分からないわ……ごめんなさい」

 

「いえ、いえ、大丈夫ですよ。 ……後で行ってみますね」

 

「えぇ、そうして貰えると助かるわ」

 

「……それはそれとして、BOBの参加登録ってもう出来るんですか?」

 

「できるも何も、明日……もうそろそろ今日ね。 今日の12時が締切よ。

……もしかして、当日登録だと思ってた?」

 

「……」

 

スーッと目逸らし。

それに気づいたシノンはぷふっ……と小さく笑っていた。

しかたねぇだろぅい!

 

「その辺は考えてなかったのね」

 

「むぐぐ……酷いですシノンさん」

 

「ふふっ、ごめんごめん」

 

いまだにくっくっと笑いをこらえるようにしているシノンをじとりと見つめて。

 

「……とりあえず、今のうちに登録しちゃいましょうか。 トレードの方はまた後で」

 

「そうね」

 

まだにやにやとし続けるシノンが登録端末のところに行ったのを見つつ、俺も端末の前に立つ。

参加登録自体は簡単に済ませられたが、次にでてきた『大会上位入賞時、物理賞品を配送致します。 住所を入力せずに次の項目に行けますが、賞品が受け取れない場合がございます』という文字をみて。

 

「あー、これだなぁ……」

 

チートウィンドウを表示。

辺にいるプレイヤーネームを表示する。

……が、今は件の死銃……ステルベン、シュピーゲルの名前は見つからなかった。

 

物的証拠が無いため、菊岡にもこの2人の事を話せない。

……いやまぁ、手口話した時点でアウトな気はしないでもないが、2人のことを話したら関与してるんじゃないかって勘違いされるかもしれないからな。

手遅れな気がしないでもないが。

 

「終わった?」

 

ひょっこりと横のブースから顔を出してくるシノン。

割とマジめにびくっ、と体震わせ、まだ、というように首を横に振る。

 

「そう……何かわからない所でもある?」

 

「あ、いえ、そのー……住所どうしようかなって悩んでまして……」

 

「あぁ、上位入賞者に贈られる賞品ね? アレ、かなりしっかりとしたモデルガンだから、もしリアルで大丈夫そうなら入力しておいても損は無いわよ」

 

「ん、ん……じゃあ、入力しちゃいます」

 

「じゃあ、後ろで待ってるから、入力し終わったら来てね」

 

はい、と頷いてから端末に顔を戻す。

……いないのは確認しているが、一応……と不可視モードに切り替えて、手早く住所を書き込む。

よしこれでおーけー!

次行こ次!

 

「シノンさーん、おわりましたー!」

 

「お疲れ様、じゃあ次はRMTね?」

 

「はい。 あの……右端でしたよね」

 

「えぇ、そうよ」

 

「じゃあ、ちょっと行ってきます!」

 

「えぇ。 ……どんな武器が良いかとか、聞いてくれたら教えてあげられるけど、大丈夫?」

 

お姉ちゃん……! こんな見た目だから母性でも出ているのだろうか。

流石に銃の種類とか知ってるから……

 

「大丈夫ですよお姉ちゃん。 私、これでもいろんな銃知ってますし」

 

ふんす、と気合を入れるようなモーションを取り、素でお姉ちゃんと言ってしまった事に気づかない。

 

「……そう……今お姉ちゃんって呼んだ?」

 

「……ぁ……」

 

にやにやしだすシノンに、割とマジめに恥ずかしいと思ってしまった俺は、後ろ向いて早足でRMT端末へと急ぐ。

 

ムスッとしたままRMT画面へアクセス。

一瞬のロードの後、すぐに大量の武器防具装備品パーツなどなどが列挙される。

……いっぱいあるぅ……

だが……だが、俺が欲しい武器はあれひとつ。

 

検索欄にて、.338 Lapua Magnumの関連銃を検索する。

幾つか候補が出てくるが……お、あったった。

『MK-18 MOD 1 Mjölnir』

ボルトアクションかと思いきや、セミオートで対物弾をばかばか撃てる変態銃だ。

と言っても、マガジンの容量が10発だから、そんなにいっぱいは撃てないけどね。

 

コレを一丁購入。

次に弾薬を100発くらいでいいだろう。 マガジンと一緒に購入。

……重量はまだまだ、かな……

サブウェポンに……軽いのがいいか……?

うーむ……Mk-18……ちょい重いな……

あ、Vector行ってみるか。

 

9×19mm弾を使用するVector(ベクター) 改造次第じゃかなりのロングバレルになるが、今回はサブウェポンだ。

腰から吊り下げやすいカスタマイズにしよう。

……腰から……???

 

カスタマイズ用のパーツやら何やらを買い終え、ホクホク顔でシノンの元に戻る。

 

「おかえりなさい。 その顔は、目当てのものを買えたって顔ね?」

 

「はい、 Mk-18を買いました♪」

 

「ぶっ……とんでもない化け物銃買ったわね……

……銃に関しては人のこと言えないけど……」

 

へカートIIも似たようなものだもんなー、なんてニコニコしながら考える。

両方とも括りとしては対物ライフルに分類される。

弾薬に関してはどっちの方がいいかと問われたらわかんね、としか言えないが、とりあえず両方とも化け物弾薬を使っている。

 

「それじゃあ、この後狩りに出る?」

 

「……いえ、今日はこのまま落ちようと思います」

 

「そう。 じゃあ、また明日……かしら?」

 

「はい! ……あ、シノンさん!」

 

ベンチから立ち上がり、ウィンドウを表示したシノンを呼び止める。

 

「今日はありがとうございました。 ……それで、えっと……これ、良かったら……」

 

シノンに、ラッピングされたアイテムを差し出す。

ちょっと困惑げに受け取るシノンに、開けてみてください、と促す。

ラッピングを開けると、中からドックタグを付けるような細いチェーンネックレスが出てきた。

 

「これ……」

 

「ちょっと味気ないですけど、お礼のドックタグネックレスです。 とんでもない効果つきなんですよ?」

 

リロード速度上昇、弾薬消費を確率でなしにする、目視した敵からの攻撃をどんな弾薬でも1度だけキャンセルする。

 

「……こんなの渡して、私と当たったらどうするのよ?」

 

「2発目を期待します!」

 

「なによそれ……」

 

苦笑いを見せるシノンが、ありがと、と笑みを俺に見せてくれた。

 

それに笑みで返して、それでは、明日また決勝で! とGGOからログアウトした。

 

……スコープは、また今度渡す。

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~

……変な子。

 

「また明日、か……」

 

タマモが去ったのを見届け、私は装備画面を開いた。

彼女から貰ったドックタグネックレスを、今使っているものと入れ替える。

劇的な変化などは無いが、明日明後日、かなりお世話になるかもしれない。

 

「そういえば、フレンド登録してなかったわね……」

 

はた、と装備を変えている途中で気が付き、明日また、会えたら交換したいな。 なんて思う。

 

……私もそろそろ落ちて寝よう。 明日……というよりもう今日になったBOBに向けて英気を養わないと……

 

「明日、決勝で会えるといいわね」

 

 




はてはてさて、今回はちょっとおかいものしたりcasino(ねいてぃぶ)行ったりしました。
自己解釈な部分があるせいでルールとかあっちゃこっちゃ行ったりしていますがそこは……目を瞑っていただけると……

それで、Mk-18について。
タルコフ民なら大体わかるであろう変態銃。
ゲーム内最強と言われている.338ラプアマグナムを打ち出せる唯二無三の銃です。
数シーズン前の知識しかないけど、当たれば大体1発で相手が死ぬ銃です。
銃が分からない人は1発どこかに当たれば死ぬ銃だって覚えて帰ってね!

記憶頼りに書いているから色々わからなくなってます。
ので、SAOIIのアニメ見直してます。
後で小説見なきゃなぁ……
時間ないなぁ……時間欲しい。

ほなまた!




……ゼクシードの中身の重村とユナが知りあいだったら発狂しそう。

それはそれとして、黒星ってがっつりスライド握られてても撃てるものなんかね。 無理ではないか……? いやぁ……???


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第24層・待機時間にて

本編を読むにあたり、今更ですが……
前提条件として、SAO本編をアニメで見ているか原作読んでいるか。
もし観てなかったり読んでなかったら、今まで説明なかったから難しかったんじゃね? と思ってます。
……まぁ、多分見てない人はコレ見ない気がするけど。


15時からのBoB予選、それに勝ち残れば決勝でシノンと当たる。

彼女はE-12番、俺はE-26番。

予選決勝の2人は無条件で本戦へと登れるようだ。

……まぁ、彼女なら危なげなく登りつめるだろう。

 

 

 

アミュスフィアを頭から外し、体を起こす。

仮想空間とはまた違う体の重さを思い出した俺の体は、ちょっと違和感を発する。

……俺でこれなんだ。 レンはかなり違和感やばいのではないだろうか。

まぁ、まだこの時期はやってないだろうが……

 

それはそれとして、今日の昼……いや、昨日の昼に作り上げた新しい掌を見つめ、小さくため息を吐く。

妹ロールプレイ自体は難なくこなせるが、少しはしゃぎすぎた。

一応シノンにはお礼を渡せたからいいが……

 

ベッドから立ち上がり、マイナスな思考を打ち消すように頭を振りながら1階へと降りていく。

 

「あ、まだ寝てなかったんだ」

 

「GGOにダイブしてたからね」

 

明日奈がリビングで座っていた。

よくよく見ると膝にストレアが頭を乗せており、ユイが肩にもたれかかって眠っている。

時計をチラと見てみれば、現在2時、ということは4時間近く騒いでいたのか……?

その考えを読み取ったのか、明日奈が

 

「んー、1時前後にはストレアさんは寝に入っていたかなぁ。ユイちゃんも大体それぐらい」

 

「なんか……ごめんね?」

 

「ううん、大丈夫。 母親の仕事だもんね?」

 

「……」

 

明日奈には頭が上がらない。

 

「もう、変なことは考えなくていいよ」

 

「変なこととな……?」

 

「そう。 どうせ頭が上がらない、ありがとう、みたいなこと考えてたんでしょ。 変なこと、はさすがに言い過ぎだけど、これは私が好きでやってる事なんだし、 SAO内でとはいえしっかり結婚もしてたんだから。 母親として、あなたのお嫁さんとして、恥ずかしくないようにって、ね?」

 

……ええ子や……

色々煩悩に塗れててごめんなさい……

 

「むぅ……む、む、むぅ……」

 

情けない声しか出せない……ちょっと色々、むぅ……

 

「で、明日はどんな感じなの?」

 

反応が期待できなさそうな話題から明日奈が逸らしてくれた。

明日、明後日の予選、本戦の感じを軽く説明すると、ふむふむと頷いていた。

 

「明日はギリギリ応援できるかな。 明後日は問題ないね」

 

「送っていかなくて大丈夫か……?」

 

「うん、ストレアさんが『二日酔いなってなかったら送っていくね~?』って言ってくれたから」

 

それ二日酔いフラグでは?

そんな俺の心配を他所にすやすやと寝息を立てるストレア。

軽く目眩を起こしそうになりながら、ユイとストレアに拘束されている明日奈の前に行く。

 

「……とりあえず、2人とも起こすか運ぶかしようか」

 

「そうだね。 ……落とさないように、ね?」

 

「わかってる」

 

俺はストレアを、明日奈はユイを担当し、2人を寝室へと連れていく。

一応、俺たち3人の部屋、交尾部屋、客間、客間、地下と6LDK地下付きの一軒家が俺たちの家だ。

ユイの部屋は俺の部屋の隣。 ストレアは1階奥の部屋。 客間は玄関入って左だ。

お隣の桐ヶ谷さん家を思い浮かべてくれればわかるかな?

とりあえずそんな感じだ。

 

2人を寝かせてリビングに戻ってきた俺たちは、ソファに座って小さく息を吐き出す。

明日奈の方は少し不安と不満があるようなため息だ。

どうかしたのか、という視線に気が付かれてしまったのか、じとりとした目を向けてくる。

 

「またチート使って女の子手篭めにしたでしょ」

 

「可愛い子をコレクションしたくなる癖ですねあきらめてくださいお願いします性なんです滋賀なんです千葉」

 

「あーもー……千葉でも滋賀でも佐賀でもいいけど、本妻は私なんだからね?」

 

本妻宣言。

明日奈は明日奈で『あ、しまった』というような顔をしている。

優しいなぁ……色々したのに……やさしいなぁ……

……なんだろ、目からバブルスプレッドが……

 

「……愛人とか第2、第3夫人とか増やしてもいいけど、私が1番なの、忘れないでよ? 忘れないなら……まぁ、人道に反しなければ何しても……」

 

先細りな声でそういう明日奈。

可愛いかよ。

 

「とにかく! お嫁さんは私一人! 不倫してもいいけど、最後にはしっかり帰ってきてよね!」

 

「あぁ、分かってるよ。 例え100年、200年離れ離れになっても、俺は君の元に帰る。 沢山女の子連れて」

 

「せっかくカッコよかったのに最後ので台無しだよ!?」

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~

「……はぁ……」

 

現実に戻ってきた。

このまま眠ってしまえば、明日のお昼前には目が覚めるだろう。

だがなんだろう、ちょっとそんな気分になれない。

ちょっと部屋が暑いからだろうか?

暖房が効きすぎているのかも。

ベッド上のテーブルに手を伸ばし、リモコンに指を押し当てて温度を2度下げる。

 

ちょっとだけそのままでいて、腕を引き戻してアミュスフィアを頭から外す。

 

「……タマモちゃん、か……」

 

一緒にお買い物して、カジノいって、ドライブをして、BoBにエントリーして、プレゼント……お礼をされて。

少しの間だけど、なんとなく妹みたいな感じだなぁ、なんて思ってしまった見た目少女な女の子の事が気になる。

 

明日は、そんな子と戦うことになる。

 

「本当は撃ちたくないけど、勝負するからには……」

 

手をギュッと握って、指を指すように前に突き出し、トリガーを引くような仕草をしてしまった。

無意識とはいえ、それをやってしまったと認識してしまえば、胃の中から酸っぱいものが込み上げてくる。

目の前が歪む。

過去の、あの映像が頭の中にフラッシュバックしそうになる。

……でも、あの顔……アルビノの少女の嬉しそうな、朗らかな笑顔が浮かび、発作が少し収まり始めている。

 

……強さだけじゃなくて、優しい記憶なんかも、発作に効くのかしら……?

そんなことを考える余裕すら出てきた。

 

「なら、新川君との……っ」

 

なぜか、彼のことを考えると、頭の奥が痛み、またフラッシュバックしそうになった。

 

……どうして?

タマモとの記憶なら穏やかになれるのに、新川君だと悪化する……

分からない、どうして……?

 

……いくら悩んでもその答えは出ないまま。

なら、やはり当初の目的通り、BoB参加者の全てを殺す。

そうすれば本当の強さが……

 

……はぁ……

タマモが私を狂わせたんだろう。

全員殺そうが何をしようが、本当の強さが手に入らないって分かってしまった。

会ってたった3、4時間しか経っていない女の子に変えられてしまった。

信念というか、柱を折られてしまった感覚。

 

決勝、彼女を撃てるかな……

出来ることなら、撃ちたくないけど……

 

「あぁもう……頭がこんがらがっちゃう……」

 

ベッドから起き上がり、狭いけど割と快適な部屋を抜け、廊下に設えられているキッチンへと出る。

冷蔵庫の中から水を取りだし、一気飲みしてからベッドに戻る。

 

枕に顔を押し付けるように飛び込み、かなり大きなため息を漏らして。

 

「……んっ」

 

くちゅ……と音を立てて指を自分の股の間に指を入れる。

彼女の顔を、笑顔を、声を、動きを思い出す。

それに合わせて指をゆっくりと前後させ、自分の膣を擦っていく。

ちゅく、ちゅぷ……と軽い水音を響かせながら、彼女との短く長い4時間を思い起こす。

 

「ん、ふ、ぅ……」

 

枕に顔を埋めたまま、枕を噛んで声を漏らさないように。

かりっ、かりっ……膣を引っ掻き、もどかしい快楽を得て、彼女との楽しかったドライブを思い出す。

 

「たまも……たまも……っ」

 

噛んでいた枕から口を離し、彼女の名前を呼びながら高みへと登っていき、膣に出し入れしている指を1本から一気に3本に増やし、じゅぽじゅぽと激しめに抽挿を続ける。

……彼女が男だったら、どれくらいのちんぽがあるのかな……

なんて変なことを考えてしまっているのに気が付かずに激しく自分のおまんこを攻める。 攻める。

 

「いっ……んっんんっ……!!」

 

カリッ、と勃起したクリトリスに親指が当たってしまい、ぷしっ……とイッてしまった。

 

「……お風呂、入り直さなきゃ……」

 

絶頂したばかりの脱力した頭の中で、そんなことが浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~

菊岡が用意してくれた病院……所沢総合病院のカウンターにて、予約してる葉山ですー、といったら病室が案内された。

 

「あれ、安岐さん?」

 

「あ、久しぶりだね、葉山クン。 元気にしてたかい? 彼女さん……結城さんはお元気?」

 

このパツキンメガネ三つ編みの図書委員風味なオッパイナースは安岐ナツキ。

明日奈のリハビリを担当していたナースである。

 

明日奈はさんなのに、何で俺だけ君付けなのかと言うと……

 

……明日奈のリハビリ中に1回だけ安岐さんのおっぱいをガン見してしまったから。

 

男の子っぽいねぇ、なんてにやにやした笑みを見せながらたゆんたゆんと揺らしていた。 明日奈に気づかれないように。

 

「はい、元気ですよ。 ちょっとお嫁さん力上がりすぎてますけど」

 

「へぇー……? 大事な大事な人に何かあったら嫌だから、なんじゃないかなぁ?」

 

「……まぁ、かもしれませんね」

 

「ほーう……?」

 

そのニヤニヤやめなさい……と言いたいけど言えない。

小さく溜息を吐き

 

「今日明日、私の体をお願いします。 今日は17時から、明日は20時からって予定になってます」

 

「はい、りょーかいよ」

 

「それじゃあ……」

 

軽く頷く安岐さんに促され、病院の硬いベッドに寝転がり、アミュスフィアを頭に被る。

 

「リンクスタート」

 

いつものように、アミュスフィアを通して電脳の世界へと落ちていく感覚に体を……意識を委ねる。

軽い浮遊感の後、意識は晴明・晴美の体を抜け、タマモへと置換され、血と硝煙と砂の香りが広がる荒野に堕ちた船へと落とされる。

 

「……現在13時2分……予定より2分遅れたけど許容範囲だな。 さて……あわっ…」

 

「おっと……」

 

歩き出そうと振り向いた瞬間、大きめだが細身の銀髪の青年とぶつかってしまった。

 

「あわ、わ……ごめんなさい……」

 

「ぁ、こちらこそごめんなさい」

 

……この声、どこかで聞いたことある声だな。

ちら、と頭を下げたまま前で謝っている青年の顔を盗み見る。

整った顔立ちだが、どこか陰のあるような青年。

シノンのお友達のシュピーゲル君だ。

 

「ぁ、と、その……ごめんなさいでしたー!」

 

「あ、ちょっと!」

 

だだだーっと知らない青年にぶつかられて謝られてー、をされてしまった小心者少女エミュを発動し、脱兎の如く逃げる。

今あいつに顔を覚えられると色々不味い。

いや特に不味くは無いが。

 

とりあえず総督府周辺のショップで買い物でもしてようそうしよう。

 

というわけで、出てすぐ横にいた闇市おじさんに声をかける。

 

「らっしゃい、お嬢ちゃん。 今日は何の用だい?」

 

Zenit RK-1 Foregrip(斜めグリップ)売ってませんか?」

 

「……専門的すぎて分かりにくすぎる名前だけど斜めグリップってことならこれかい?」

 

出された物は斜めグリップ。

だけど目当てのものでは無い。

 

「別なものです」

 

「んー……それだとないなぁ……」

 

「そですか……」

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~

いつもの浮遊感の後、私の意識はシノンへと切り替わり、シノンとしての体に変わる。

目を開けば昨日と変わらない総督府のロビーだ。

ただ、彼女の姿は無い。

 

「おーい、シノン!」

 

「っ……しゅ、シュピーゲル……」

 

「……どうしたんだい?」

 

「う、ううん、なんでもないわ、なんでも……」

 

「そう? 体が不調を訴えていたら何時でも僕に言ってね……?」

 

「え、えぇ、ありがとう……」

 

昨日の発作の時の影響か、新川君……シュピーゲルの顔を見れない。

いつもなら普通に接せるのに……

きょうは凄く、気持ち悪い。

 

「シノン、今日はしっかり応援するからね。 もちろん明日も応援するよ。 まずは目指せ、予選優勝、だよ!」

 

励まし、応援してくれているのだろう。 いつもの私なら、ちょっと擽ったそうにしながら笑みを返して「ありがとう」というのだろう。

なのに、それすらも吐き気がする。

いつもの発作よりは軽いが、気持ち悪い。

 

「ありがとう、シュピーゲル……

……ごめんなさい、今ちょっと、1人にして……」

 

「っ……やっぱり体調が……」

 

「触れないで! ……あっ……ごめんなさ……」

 

シュピーゲルが凄く汚らわしいものに見えてしまった。

唯一私が心を許した彼を跳ね除けてしまった。

 

「ううん、大丈夫だよシノン。 シノンもたまにはそういうことあるよね……。 うん、大丈夫。 とりあえず今日は離れた場所で応援してるから」

 

「しんか……シュピーゲル……」

 

離れていった彼を止めることは出来ない。

私は1度跳ね除けてしまった。

それだけで、彼を止める術はなくなってしまったのだから。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~

「なんだか曇らせの気配がするぞ……?」

 

「誰ですかあなた」

 

「あ、私? クレハです」

 

「そうですか」

 

唐突に出てきて何言ってんだこの頭どピンク女。

そんな表情をしつつ闇市おじさんと頭どピンクから離れる。

だが、頭どピンクの言うように、総督府の中で割と修羅場してる気配がした。

シノンとシュピーゲルが喧嘩したのだろうか。

シュピーゲルが出口に向かってかなり早歩きで向かってくる。

それを避けようとするが、小さい身体が災いしてかなりぶつかられる。

 

「わっ……たった……」

 

「おっとっと……」

 

頭どピンク……クレハがしっかりと支えてくれたが、シュピーゲルはぶつかったことにも気付かないままどこかへと行ってしまった。

 

「なにあれ、感じ悪い……」

 

「修羅場ァ、してる感じでしたからね。 仕方ないですよ」

 

自分が関連している事だとは、一切気づいていないから言える事だ。

……この状態だと声掛けにくいな……

でも行かなきゃ多分精神壊れそうだな……?

 

「支えてくれてありがとうございます、クレハさん」

 

支えたままだったクレハの腕から抜け、せっかくだからツェリスカと同じチートを使っておいて、いつでも呼び出せるようにしてから離れた。

 

 

「……シノンさん、こんにちは」

 

「っ……え、えぇ、こんにちは、タマモちゃん」

 

「どうしたんですか、顔色、すごい悪いですよ?」

 

「大丈夫、大丈夫よ……」

 

どう見ても大丈夫には見えないが、本人が大丈夫というのなら大丈夫なのだろう。

……チート使って無理やりトラウマを克服させることは出来るが、それだと意味がない。

何よりつまらないからな。

 

「分かりました。 でも、無理はしないでくださいね。 なんだったら相談でもカウンセリングでもしますからね?」

 

「……えぇ、酷くなったら、お願いするかも」

 

話してたらなんか顔色が少し良くなっているように見える。

わかりましたと笑みを見せると、そろそろで予選が始まるとアナウンスが入った。

 

「……そろそろ予選が始まります。 着替えに行きましょう?」

 

「そうね……」

 

シノンに手を貸しながら、地下の待機エリアへと向かう。

その最中に、シノンがきゅぅぅっ……と手を強く握りしめて来た。

……シノンとキリトの立場逆転してそうだなぁ……

 

待機エリアに着けば、そのまま更衣室へと向かう。

部屋の端の椅子にシノンを座らせれば、思いをぶつける。

 

「シノンさん、今からきついことを言います。 耳を塞いでもいいですし、逃げてもいいです。 なんなら決勝に立たなくてもいい。 心して聞いてくださいね」

 

胡乱げな表情でこちらを見つめるシノンに今この姿で出せるめいっぱいの声量で俺の思いを叩きつける。

 

「甘ったれるな!!」

 

「過去のトラウマがなんだ! 手を伸ばしてくれた友人の手を払ったからなんだ! そんなのただの言い訳だ! そんなものは逃げ道だ!」

 

「お前はただの弱いシノンか? 違うだろう! お前は氷の狙撃手と呼ばれた強いシノンだろう! 仮想空間だろうが現実だろうがその事実は変わらねぇ!」

 

「えーと……つまり……戦場で敵を倒し、笑うことが出来る強者の中身が銃を持ったり友達を軽く傷つけた程度で泣くような者じゃねぇだろ」

 

「ゲームとリアルじゃ、世界も、からだも、違うでしょ……」

 

「違わねぇ!! ゲームも、リアルも、全て本物だ! 今ここに生きている! それが全てだ! 」

 

思いの丈をぶつけるが、実際意見がまとめられて無さすぎて聞くに堪えない内容だろう。

だが、俺の言いたいことはなんとなく伝わっているようで、少しずつ表情に力が戻っていっているのが見て取れる。

 

「ゲームも現実も、それぞれにとって本物。 ゲームで何かを克服出来れば、現実でも克服出来る。

いつかは、ですが」

 

「……ふふっ、それもそうね」

 

「吹っ切れましたか?」

 

「えぇ、それなりには」

 

「なら、今はそれでいいです」

 

「ん、ありがとう」

 

「どういたしまして。 このお礼は……決勝で返して貰わねぇとな」

 

「望むところよ」

 

お互いグーパン……グータッチで拳を合わせる、なんていう男っぽいことを(‎片方中身男だが)する。

と、ちょうどそこでリミットだったのか、戦場へとそれぞれ飛ばされる。

 

吹っ切れたなら少し強くなってるかもしれないなー。

 

 




はい、シノンにブチキレ回でした。
なんでこうなった?
おーい、晴明……じゃねぇわ、タマモだわ。
なんでこうなった?
「多分あんたの眠気と深夜テンションのせいだろ」
かもしれないな! 夜勤辛い!
「寝ろ」

そんな感じなせいで支離滅裂な物言いになったりしてるかもですが、許してください。

というわけで、次回からBoB編スタートです!
多分。


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第25層・予選

データ飛んだ……データ……でーたぁ……
つらい……

前回の病院のシーン、加筆しました。
安岐さん絡みシーンが無くなってたのを確認したたたためです。

「データ飛んだせいでおかしくなってる」

いつものこと。


「……そこっ!」

 

指をトリガーに掛けず発砲時に一息でトリガーを引き絞る。

.338ラプア弾が、本来なら出現するはずのバレッドラインを出現させずに飛翔していく。

 

飛翔した先は分厚そうな煉瓦の壁。

その向こうにいる何故か鎧武者姿の敵。 確か……錆衛門だったかな。

そいつの頭を煉瓦、鎧諸共撃ち抜き消し飛ばす。

 

deadのタグが、そいつの頭があった位置でピコンと表示されると、Congratulationの文字とともにファンファーレが鳴り響いた。

 

小さく息を吐き出せば、見計らったかのように転移のエフェクトを出して待機ドームへと飛ばされる。

 

さすがに2回戦目ともなれば、少し人数は少なくなっているな……

きょろきょろとドーム内を見渡せば、待機してるやつ、何かを飲んでるやつ、武器のメンテをしてるやつ、観戦してるやつ、観戦してるシュピーゲル、襤褸衣マントと、十人十色な奴らが……

 

「おぉい!?」

 

何人かがこちらを見てきた。 なんかこう……可愛いなぁ、とかロリ……とか、大体変な感じな視線。

さぶいぼが出そうな視線。

 

ぶるりと身体を震わせ、その視線から逃れるように襤褸マントの方へと向かう。

座っている襤褸マントの前に立ち、逃げられないように。

 

「おい、お前」

 

「……誰だ、お前は」

 

「セイメイ」

 

「……お前、鏖殺者か」

 

「ネーミングセンス。 せめて騎士王とかあっただろ」

 

「……それで、なんの、ようだ?」

 

「あぁ、そうだったそうだった。 ……お前、未だに人殺ししているんだってな?」

 

「それが、どうした」

 

銀のマスクに揺れる赤い光の目。

その奥にあるであろう顔は一切見えず、感情の抑揚が小さい。

何を考えているか読めない。 人を殺している事を否定をせず、殺人をしているということになんの感情を持っていなさそうな声音で返してくる襤褸マント。

あぁ、これは話し合いじゃどうにも出来ない。

 

「いや、それがお前か確認したかっただけだ。 今はな」

 

「……お前には、俺は、殺せない。 捕まえられない」

 

俺の思考……殺すか捕まえる、という思考を読んだのかと疑いたくなるほど的確に返答してくる。

 

「お前は、俺を、殺し損ねた。 だから、次は、俺がお前を、殺す」

 

デデン!

……すれ違いざまに言われたような幻視をしながら、小さく息を吐き出す。

 

「俺に殺されかけて捕まってしまったお前が、か?」

 

精一杯の強がり……いや、実際強がりな訳では無いが、こう……なんかちょっと怖い。

精神が体に引っ張られているのか、嫌悪というか、恐怖を覚える。

 

「……」

 

ジジ……と仮面に浮かぶ赤い光が明滅した気がする。

ちょっとイラッとしてたかな?

ニヤリと笑みを浮かべ、追い討ちする。

 

「どうせ今回もお前は負ける。 今回は実際には殺せねぇから心置きなく殺れる。 そしてお前を捕まえる。 お前の共犯者2人もな」

 

「……っ」

 

明らかな動揺。

だが、すぐに立ち直り

 

「不可能だ。 お前は、俺の名前を、思い出せないのだから」

 

「へぇ……?」

 

昔のキャラネームを思い出せないなら、住所の割り出しとかそういうのは不可能だろう、なんて考えているのだろう。

だが、それは無駄。

だが、今はそれを言ったらつまらないだろう。

もしかしたら後で戦うかもしれないからね!

 

「……用は、それだけか?」

 

「あぁ、それだけだ。 ……殺すなよ?」

 

釘を指したところで無意味だろう。

こいつは、もう根っからの人殺しとなってしまっている気がする。

……どうなるかな。

 

なんて考えていたら、第3戦のフィールドへと飛ばされた。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

1分間の待機時間の後、砂漠のステージへと飛ばされた。

見晴らしが良すぎる。

サンドカモ(砂原迷彩)ならかなり見えにくくなるんじゃなかろうか。

サンドカモなら、だけど。

 

かなり遠目の方に、しっかり砂の上に伏せているプレイヤーが見える。

すぐにミョルニルを構え、発砲。

だが……

 

「んっ!?」

 

転がって避けられた。

いやまぁ、多分向こうからも見えてるだろうから、バレッドラインを良ければいいだけだろうけどさ。

 

……しかたなし。

スコープを覗いたままトリガーから指を離し、トリガーに触れない程度に抑える。

トリガーに触れていないため、バレッドラインやバレッドサークルは表示されない。

Mやシャーリーがやっている、バレッドライン無し狙撃だ。

アレ、実は銃触ってるなら割と出来るものなのよ。

トリガーなんて触ってたら暴発とかするかもしれないし。

 

バレッドラインが見えないため、安心と判断したのだろう。 転がりおじさんはゆっくりとこちらを伺いながら立ち上がり、銃……M4のカスタマイズだろうか、かなりゴテゴテしたソレを構えようとし、出来なかった。

左顎、首、左肩が消え去り、M4に見えるソレを落としてdeadタグが表示された。

 

聞き飽きたファンファーレが鳴り響き、また同じ待機ドームへ転送された。

 

数秒の暗転の後、待機ドームに戻ってきた。

……あれ、シノンとシュピーゲル君だ。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~

「シノン、お疲れ様。 凄いね、もう本線出場確定だよ」

 

「ぁ、シュピーゲル……うん、ありがとう」

 

さっきの、タマモちゃんに怒られる前の気持ち悪さは、全部じゃないけど、無くなっている。

いつもの笑い方、話し方、身の振り方。 まだ少しぎこちないけど、どうにか繕えるようにはなってきた。

 

「やっぱりシノンは凄い、君は本物の力を持ってるんだね……」

 

本物の力って、なに……?

良く君の口から力っていう言葉が出るけど、私にはそんなものは無い。

それなのに、彼からは「本物の力」だの「強い心」だのしか言われない。

ただ力を肯定しているだけ。

 

それに比べて、タマモちゃんは……

ううん、比べられない。 比べちゃいけない。

 

彼女は彼女で、シュピーゲルはシュピーゲル……

シュピーゲルは彼女にはなれないし、彼女には勝てない。

 

「……ごめんなさい、シュピーゲル。 ちょっと、次の相手は本気で行かないと勝てないから。 1人にしてくれないかしら」

 

「そ、そうだよね。 ごめん、シノン。

……ねぇ、シノン、大会が終わったらさ、僕と……僕と一緒に……」

 

「シュピーゲル」

 

「っ……」

 

「大丈夫、いつか……もっと強くなれたら、また戻ってくるから」

 

……それは無い、と言いきれてしまう。

シュピーゲル……新川君の事を考えると、嫌悪感が出てきてしまう。

まだ、私をいじめ……集ってくるあの3人の方がまだマシ。

 

「わかった。 それまで待ってるから」

 

「えぇ、待ってて」

 

……大会が終わったら、貴方とはもう合わないようにする、なんてまだ言えない。

まだ、私の心は弱いままだから。

ここでそれを言って、お互いに傷つくことが恐ろしいんだ。

 

 

…………タマモちゃんの事を考えると、不思議と強くなれる気がしてるのは、気のせいかな。

 

 

目の前が青い光に包まれる。

このマップは……大陸間高速道路かしら。

 

……なら……あのバスが行けるわね。

辺りを見回せば、二階建てのバスが目の前に鎮座している。

 

そのバスの扉をこじ開け、中へと入り込む。

2回へと駆け上がり、通路に倒れ込みながらバイポッド(二脚)を展開し、狙撃準備に入る。

 

多分、彼女よりも早くいい位置につけただろう。

そう思い、索敵のためにスコープを覗き込むと、彼女も……タマモもこちらを狙うようにスコープを覗き込んでいた。

 

「っ……!!」

 

即座に引き金を引く。

タマモも迎撃するように発砲炎を見せる。

だが、窓ガラスが割れ、横の座席が吹き飛んだだけで済んだ。

 

……ボルトを起こし、手前に引く。

チャンバー(薬室)内にマガジン(弾倉)から次の弾薬が送り込まれる。

確認することなくボルトを押し込み、元の位置に倒す。

……彼女は、なぜ撃ってこないのだろう? なぜ、バレッドラインが見えないのだろう?

スコープを覗いていると、リロードしたりは一切しておらず、ただこちらを見ている。

その気になれば、.338ラプア弾を10発連射出来るセミオート銃なのに。

 

ぶんぶんと頭を振り、戦闘に必要が無い余計な思考を放棄する。

 

再度引き金を引く。 轟音と共に必殺の弾丸が空を舞う。

タマモが同様の爆音を鳴らし、バスの天井や座席から何かが当たった音がする。

撃ち返されているのか、それとも。

 

「くっ……」

 

それとも、の方を想像してしまった。

彼女のことを思うと、心が安らぎ。 だが、それでも、今この勝負は別だ。

再度チャンバーに弾薬を送り込み、再度トリガーを引こうとしたところで、スコープの先でタイム、と彼女が言った気がした。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~

たーいむ!!

と口を大きくあけ、シノンに見えるように、聞こえるように言ってから、手をぶんぶんと振る。

 

俺は、シノンと、決闘スタイルで勝敗をつけたいんだ!

とは言うつもりは無い。 ……ごめんやっぱり言う。

 

それはそれとして、ちゃんと吹っ切れたかどうかが気になっている。

もし吹っ切れていなければ、撃たれてやる訳には行かないから。

とりあえずシノンが近付いて来れるように、マガジンを引っこ抜き、チャージングハンドルを引いて薬室内に装填されている弾薬を外にはじき出す。

ミョルニルを地面に置いては、つぎはベクターに取り掛かる。

と言ってもこちらもほぼ同じで、マガジンを引っこ抜いて薬室から弾薬を抜くだけだ。

それだけで戦意はないことがわかるだろう。

……まぁ、もしシノンが関係ねぇズドーン! するタイプならもう撃ってるだろう。

 

「はっ、はっ……」

 

シノンの息遣いが聞こえる。

へカートIIのマガジンはささっていない。 だが多分薬室には1発入っているかもしれない。

警戒するため、それくらいならするだろう。

 

「ありがとうございますシノンさん、タイムに乗ってくれて」

 

「……それはいいけど、なんで武装解除してるのよ。 乗ったフリして撃ち殺すかもしれないわよ?」

 

「もしそうならそれでもいいです。 私はただ確認したかっただけなので」

 

「確認……? あぁ、さっきのあれね。 ……大丈夫よ、今のところは」

 

「そですか。 なら、撃ち殺されても大丈夫ですね」

 

見た目上では確かに顔色なども戻ってきている。

シュピーゲル君と仲直りしたのかな?

 

決別してくれても良かったのに。

 

「……それだけのために呼んだの?」

 

「はい。 もしさっきみたいな状態であれば、私は撃たれたくなかったですし撃ちたくなかったです。 勝っても嬉しくないですから」

 

「そう……」

 

苦笑いを浮かべるシノンに、はい! といい笑顔(当社比)を見せる。

呆れた……みたいな顔してる。

 

「はぁ……呆れた。 それじゃあどうやって決着つけるの?」

 

「……考えてはいました。 こう……数メートルから数十メートル離れて、私が弾を投げて、落ちたと同時に……」

 

「あぁ、決闘スタイルね。 いいんじゃないかしら?

……でも、お互いスナイパーライフル。 サブはそれぞれSMG(サブマシンガン)とハンドガン。 かなり違うように思えるけど」

 

「う゛っ……そうなんですよね……

……1回仕切り直します?」

 

「んー……いいわよ、決闘スタイルで。

ただし、お互い1発限り。 当たった方……もし当たっても死ななかったら降参するってどうかしら?」

 

「いいですね、ノッた!」

 

じゃあそれで、と離れていくシノン。

こちらも、さっき取りだした.338ラプアを握りしめ、ミョルニルとベクターを抱えて離れていく。

 

20mくらいだろうか。

お互いが離れて位置についたところで、チャージングハンドルを引いて薬室に弾を入れる。

マガジンをささずとも1発だけなら入れていくことが可能だ。

チャージングハンドルを離せば、カシュン、と軽い音を立てて薬室に弾を押し込んでくれる。

それを確認してから、いつの間にか持っていたグレネードを手に取る。

ソレをシノンに見せて、ギョッとされた。

20m離れていると音聞こえないだろうから、と思ってのことだが……

 

 

 

とりあえずそれでいい、とOKを貰えたので、ミョルニルを構える。

ほぼ必中の距離。

どちらとも放てば当たる距離。

機械仕掛けのグレネードのスイッチを押しこみ、ピピッと鳴ったのを確認してから高速道の下に投げる。

爆発までは1秒前後。

すぐに狙撃体勢に入り、シノンの足を狙う。

 

炸裂音。

 

グレネードの爆音が聞こえた瞬間、トリガーを引き絞った。

2つ目、3つ目の爆音が響き、痛みが走る。

ガラスの割れる音が響き、横に倒れてしまう。

ちら、とそちらを見れば、シノンは逆の方に倒れているのが見えた。

 

「……相打ち、ですね。 どうしましょうか?」

 

「……あなたの方が発砲音早かったし、あなたでいいわよ。 降参するわ。 リザイン!」

 

諦めた、というより、自分の反射神経の無さにため息をつくように、イライラをぶつけるように、表示されたリザインウィンドウに手をたたきつけていた。

 

甲高いファンファーレと共に、予選Eブロックの勝者が決まった。

 

 




次回、BoB本戦。

シノンのシーンとか増やしてみたけど、どうだったじゃろうか。
マザーズ・ロザリオ編のアスナ視点でいくつかやろうと思っての先駆けだったんじゃが……

反響があれば、マザーズ・ロザリオ編で取り入れる予定です。

ではでは、一度この辺で。

……キャリバー編とマザーズ・ロザリオ編観て泣きそうになってます。
ユウキには笑っていて欲しいですね。
欲しいですね。
ほしいですよね。


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第26層・本線開始

おはこんばんちは。
今回からBoB本線だよ!
2回で終わらせる予定だよ!
懐かしい物や、知ってたらすげぇ! って言えるものまで用意したよ!
説明文雑でごめんなさい。
あれの説明の仕方なんてわからんよ……

……それと、ALO編終了時の打ち上げのサチを削除致しました。
ストーリー上変なことになったので。


安岐さんも大人な女性って感じがして良いよねぇ……

……ちょっと子供っぽいところもあるけど、優しくしてくれる感じとか……

 

「パパ、何を考えているのですか?」

 

「あぁ、いや、明日の本戦、どうやって戦うかなぁって」

 

BoB予選が終わり、安岐さんと明日の予定について話してからすぐに家へと帰った。

そして、帰ってきてすぐにお風呂へと直行した。

 

その際に、ユイから背中流してくれる提案を受けたため承諾して今に至るというわけだ。

 

「……本戦のフィールドはかなり広いって言ってましたよね」

 

「そうだね。 10kmって書いてあった」

 

「わぁ……かなり広い……」

 

じゃばー……と背中からお湯をかけて貰い、今度はこっちが洗う番というようにユイを椅子に座らせる。

ユイからスポンジを受け取り、背中を優しくごしごししていきながら明日の概要と良くしてもらっているシノンのことを伝える。

 

「……それなら、そのシノンさんという方と共闘するのもアリなんじゃないでしょうか?」

 

「一応、そうするつもり。 どうにかして探す予定なんだけど、真反対に湧いたらどうするかなぁって」

 

「そこは……車でもバイクでも、なんでしたらALOみたいに飛んでいくのなんてどうでしょうか?」

 

「んー、羽生やして飛んでみるか」

 

なんてユイの背中を洗いながら冗談を言ってみる。

それを聞いて嬉しそうに笑うユイ。

 

「じゃあ、明日の配信は絶対観なきゃ、ですね」

 

「銃撃戦の時はさすがに当たり判定大きくなる気がするから外してて映らないんじゃないかなぁ?」

 

「む、じゃあ銃撃戦中に生やしてください」

 

「おーい、ユイさん? 当たり判定でかくなるって言ったでしょー」

 

ぷくっと頬を膨らませたユイがこちらを見てきた為、苦笑い浮かべながら反論。

むすーっとしたままのため、小さくため息をついてから、スポンジをユイの腿に落とし、キュッ……と。

 

「ひゃぁっ!? ぱ、パパ!?」

 

「んー?」

 

乳首を軽くつまみ、くにくにっと軽く捻る。

びくびくっ……と体を揺らすユイに、不機嫌な子に機嫌よくしてもらうために乳首イキを経験してもらおう、と告げる。

 

「んんっ、ママやストレアに、バレちゃいますよぅっ……」

 

「バレたらバレたらだよ。 ……っていうか、明日奈来てるの?」

 

予選開始から5時間。 つまり、22時。

それなのに今いるってことは、また泊まりに来たのだろうか。

お母さん怒らない……??

あのお母さんかなり怒る気がするのだけど??

 

「は、はい……」

 

くにくにとしていると、ユイの体から力が抜けはじめている。

軽くイったのだろう。

よしよし、とユイの頭を撫でてやって。

 

「はーるーあーきーくん?」

 

鬼の声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~

リビングで、明日奈の前で正座させられていた。

もちろん湯船に入ってない&全裸でだ。

1月の寒さは

 

「もう! ユイちゃんにそんなこと教えちゃダメ! まだ小さいんだから!」

 

「……じゃあ、ストレアはどうなのさ。 ストレアはユイより歳……歳? 年下なんだし」

 

「ストレアさんは……見た目大人だからいいの!」

 

その理論からいったら……

 

「シリカは?」

 

「シリカちゃんはもう高校生だから……!」

 

「ならまだ中学生な直葉は?」

 

「直葉ちゃんは……えーと……は、話をすり替えないの!」

 

へーい、と返すと、もう! と頬を膨らませて怒る明日奈。

ユイはというと、のぼせたのかストレアに膝枕され、撫でられている。

 

「……えっちは、私とかに持ちかければいいのに……」

 

「なんか言った?」

 

「なんでもないっ!」

 

ユイの方を見ていた為、耳に入ってこなかった。

 

 

 

とりあえず、ユイにはあまりやるな、と明日奈から厳命された。

そっかーとしか言いようがないが、仕方がないだろう。

 

とりあえず、明日のために早く寝るとしよう。

 

ストレア抱き枕にして。

 

 

 

~~~~~~~~

~BoB本戦開始、1時間くらい前~

 

昨日は晴美に抱き枕にされてなかなか眠りにつけなかったけど、今は凄い絶好調!

これなら色んなことが凄いできる気がするよ!

 

……と言っても、あんまり晴美にはバレないようにしないとなんだけど……

 

「それじゃあユイ、あたしも行ってくるね」

 

「はい、行ってらっしゃいです、ストレア」

 

ユイにあとのことを任せて、あたしもGGOにログインする。

……最近ようやく見慣れ始めたカラフルな接続画面を見ながら、GGOへと降り立つ。

アバターの見た目はコンバートしたからなのか、それ以外の要因なのか分からないけど、SAO……現実と同じ姿。

だけど、名前だけはバレないように変えてあるよ。

ストーリーテラー……物語を作るもの。

捻りなんてどっかにやっちゃったけど、バレなきゃ大丈夫だよね。

 

それはそれとして、今のあたしの獲物はメインに7.62x51mm NATO弾を使用する方のミニミ軽機関銃。

サブにカールグスタフ 84mm無反動砲……いわゆるロケットランチャーだね。

STR、VIT(ストレングス、バイタリティ)型だから、重いものも簡単に持ち上げちゃうよ!

 

……まぁ、だったらミニガンとか持っても良かったかもだけど、そこはそれ。

 

BoB予選は難なく優勝出来たから、これでも行けるはずだよね。

 

……それじゃあ、開始まで何してよっかな……

新しい迷彩もいいかもだけど……

……うーん……RMT覗いてみよっかな。

 

総督府へとあたしは走った。

 

 

勿論、そこまで遠くない場所で落ちているため、すぐにたどり着いた。

RMTの端末の前には誰もいないため、簡単にアクセスできる。

 

すらーっと流し見していくと、変なものが色々売られていた。

紐水着だとか、こう……まいくろびきに……? とか。

あめりかってこういうのアリなんだっけ……?

 

……セイメイ、喜ぶかな……

 

ウィンドウに表示されているそれらを押しそうになってしまったが、よくよく考えたら自分で作れることに気がついたので、買わないでおいた。

そのかわり、防具やサブで持てそうなグレネードランチャー……MGL140(フカ次郎の持ってるアレ)を購入した。

 

……そろそろ待機ドームに行って、隠れておこうかな。

 

大会登録端末とRMTの端末を挟むようにワープポイントが配置されており、ソレを踏めば待機ドームへと転移される。

転移した先は、総督府ロビーとはまた違う喧騒に包まれている。

賑やかなのは好きだけど、こう……がちゃがちゃにやにやって感じの騒がしさは少し苦手。

セイメイ……晴美以外の男の視線が嫌だ、って言うのもあるかも。

こう、気持ち悪いというか。

 

「おいおい、なんだよォ、こんなかわいこちゃんも参加してんのかァ?」

 

「シノンといい、タマモといい、銃士Xといい、今回のBoBには女の子多くねぇかァ?」

 

こりゃぁ今回の闇風は簡単に優勝出来ちまうだろォなァ、なんて品のない会話をしている世紀末モヒカンとスキンヘッド。

ここが圏外なら多分射殺してるんじゃないかな。

あたしはそれを無視して幾つかあるうちの一つである第3更衣室へと足を運ぶ。

 

スライドドアを開き、中を覗けば誰もいない。

よしよし……

 

するりと中に入り込めば、等間隔で設置されている化粧台のような物に備え付けられているひし形の椅子に座る。

 

服、今のうちに着替えておこうかな……?

といっても、ライダースーツのようなぴっちりスーツからぴっちりスーツに変えるだけっていう、変わったの? って言われそうな着替えだけど。

 

……しっかりリグ(マガジンとか入れるベストみたいなやつ)とか付けるのもありかな……

いやいや、それだとあたしの武器が……

胸を見下ろしながら頭を横に振る。

 

とりあえず今のところはライダースーツ(通常装備)でいいだろう。 ということにして着替え始める。

 

「そういえば、せい……タマモはしっかり準備してるかな……?」

 

着替えが終わり、自分の腕時計を見やる。

時刻は19時50分。

装備点検してたらすぐに過ぎ去りそうな時間。

 

ミニミを実体化させて、弾薬をしっかり確認する。

あたし作の徹甲炸裂弾(アーマー貫いて爆発する弾)がしっかりベルトに括り付けられ、ボックスマガジンに繋がっているのを確認。

 

グレネードランチャーの弾もしっかり確認して、ストレージに詰まっているのを確認。

 

あとはー……うん、タマモとシノンに見つからないように、かな?

 

じゅんびおっけー!

 

「頑張っちゃうぞー、おーっ!」

 

気合いを入れ、そのままフィールドへと飛ばされた。

 

 

 

~~~~~~~~

……そっげき‪っ☆

 

……サトウクズマさんのように変な声出さなくても狙撃自体は出来るが、なんとなく言ってしまう。

普通ならバレる可能性もある為、言わない方がいいのだが……

 

っと……次々。

 

ミョルニルにサプレッサー(消音器)を装着しているが、それでもかなりの爆音を響かせ、敵プレイヤーの頭を吹き飛ばす。

 

やはりこれは楽しい。

でも、BoB中は問題ないが、装備品などのランダムドロップは少し納得がいかない。

チート使ってる俺が言えたことでは無いが……

 

セミオートのミョルニルが、次々と屠っていく。

また1人、Lapua Magnum FMJ弾で頭と胴をさよならバイバイする。

対物ライフル弾を軽々しく人に向けて撃つな、と言われてしまう。

だが、これはゲームだ。

VRなタルコフだと思えばいい。

それだけで頭から殺人に対しての忌避感は消え、戦場に立つことが出来る。

 

息を吸い、吐き出し、止め、指を引き絞る。

軽いノックバックの後また1人、頭を弾けさせる。

流石にゲームだから脳髄が弾けたりはしない。 割と安心して撃てる。

 

おっとと、バレた。

流石に同じ場所で5人はやりすぎたな。

すぐさまブッシュ低木から体を起こし、SAO時代から引き継いでいるAGIに物を言わせて森林地帯へ抜け出す。

 

「ふひひっ……まずは5キル……」

 

変な笑い声が盛れた気がするが、気にせず次に行こう。

木々を縫うように、割と長いミョルニルをぶつけないようにするりするりと進んでいく。

と、そこでぴぴぴっ……と腕時計からアラームが鳴った。

 

全員に配られているであろうサテライトスキャン端末を取り出し、それの電源を入れる。

ホログラムが投影されるそれは、下手をするとバレる可能性もある。

だが気にせずに全体マップを表示する。

 

表示して数秒後にマップスキャンが開始された。

右上からジョジョにオラオラ……徐々に情報が開示され、光点がいくつか表示されていく。

それを片端からタップする。

 

「……お、いた」

 

かなり近場にシノンが潜んでいる。

その向こうからダインとペイルライダーが付かず離れずな位置で走ってきているようだ。

 

もちろん俺の名前も見えてます。

しっかりタマモって書いてあるね。

シノンの後方100mくらいかな。

ダイン、ペイルライダーの銃撃音がしっかり聞こえてるよ。

 

AGIに物言わせ、一気にシノンの所まで走る。

それに気づいたのだろうシノンがこちらを向いて腰に装備しているホルスターに手を伸ばした。

距離を詰め、抜かれる前に抱きしめるような格好で押さえ込む。

 

「しーっ、叫ばないで、銃も抜かないで下さい」

 

「っ……あなた、なんでここに……?」

 

「んー……シノンさんがいたから、じゃだめですか?」

 

「真面目に……」

 

「シノンさんがここにいから、というのはあながち間違ってませんよ。 近場にいたのはまぐれですけどね。

……私の中で要警戒な人の内の1人が、彼……ペイルライダーなんですよ。 その戦い方を見ておきたいなーって」

 

「……そう。 真面目な答えだったのね……」

 

真面目ですとも。

 

「それで? 私が近くにいたから来たって言ってたけど、撃たれるとは思わないの?」

 

「もし撃たれたら撃たれたら。 まぁ、今はやめていただけると嬉しいですけどね」

 

「……じゃあ、今はやめておいてあげる」

 

「ありがとうございます」

 

抱きしめている感じになっているシノンを離すと、すぐ横にスライドしてミョルニルを構え、スコープを覗く。

 

「……伏せうちだと集弾性能は上がるけど、ペイルライダーには難しいんじゃないか……?」

 

「え……?」

 

スコープの先にはうつ伏せになり、SG550を構えるダインが映る。

その向こうからは仮面……と言うよりヘルメットだろうか。

ハルユ……シルバークロウのようなメットみたいな感じだなー……

なんて考えながら、ペイルライダーのアクロバティックな移動を見守る。

 

「……アクロバットスキルがかなり高いわね、あのペイルライダーってやつ……」

 

「楽しそうですねぇ……」

 

「何呑気なこと言ってるのよ!?」

 

あははーと受け流しながら、ダインが射殺されたのと、ペイルライダーが麻痺弾で倒れたのを見た。

 

「……シノンさん、そろそろ」

 

「そろそろ……? っ!?」

 

麻痺弾が飛んできたであろう方向……橋の影から滲み出るように現れた襤褸マント。

それを見たのだろうシノンから息を飲む音が聞こえた。

 

「アレだ。 シノンさん、アレが十字をきる仕草をしたらあの襤褸マントを撃ってください」

 

「えっ、なんで……?」

 

「いいから」

 

「わ、分かった……」

 

有無を言わさない低音で威圧するように言っては、それに従うシノンの後に続いて襤褸マントへと照準を合わせる。

トリガーには指はかけない。

いつかは分からないが、襤褸マントは俺たちを視界に入れている。

そのため、トリガーに指をかけたら予測線が出てしまう。

 

襤褸マントはペイルライダーの前に立ち、十字をきる仕草をした。

その瞬間、シノンと俺はトリガーを引いた。

2つの爆音がひとつに交わるような音を出し、弾を押し出す。

 

撃ちだした弾は襤褸マントへと飛翔する。

だが襤褸マントは体をずらし、シノンの弾を避ける。

が、その避けた先に俺の.338ラプア弾が迫る。

これは予測できなかったようで、どうにか体を捻るだけで精一杯だったようだ。

右肩から提げていた襤褸マントのメインアーム、L115A1(サイレントアサシン)バレル(銃身)にぶち当たり、へし折った。

 

一瞬呆然とするかのように立ちすくむが、すぐにこちらを向いてから逃げるように姿を消す。

 

それを見計らったかのように麻痺が切れたペイルライダーはすぐに立ち上がって周りをきょろきょろ。

こちらに気がついたのか、すぐにその場を離脱して行った。

……頭を一瞬倒したように見えたのは気のせいだろうか。

 

「……逃がしてよかったの?」

 

「手痛い攻撃でも窮地の救援でも、胸熱な感じはありますから」

 

「それで負けたら許さないわよ……?」

 

呆れたようにそういうシノンに苦笑いを見せてから、正座をして

 

「ありがとうございました、シノンさん。 あなたのおかげで第1目標がクリア出来ました」

 

「な、なに……? 急にそんなに改まって……第1目標……?」

 

「はい。 あの襤褸マントがどういった奴かご存知ですか?」

 

「……ううん、知らないわ」

 

「……死銃のお話って知っていますか?」

 

「それなら、まぁ……って、まさか、あの襤褸マントが……?」

 

「理解が早くて助かります」

 

そんな……と口を手で覆うシノンを見ながら、あれがどういった者なのかを掻い摘んで教える。

 

「ゲームで本当に……」

 

顔を青くし、少しだけ震えている。

まぁ、それはそうだろうね。

 

「ただ、あいつのライフルは壊れているはずなので、もう麻痺弾は……」

 

と、そこで、L115A1のバレルをへし折っただけなのを思い出し、まだ襤褸マントの、死銃の悪夢が終わった訳では無いと分かってしまった。

 

その様子に気づいたのか、シノンが顔をこちらに向け、どうしたの……? と問うて来る。

 

「……まだ、あの襤褸マントが人を殺す可能性があります」

 

「っ……」

 

バレルに当たっただけなら、バレルを交換するだけで撃ててしまう。

砂やホコリが入らないようにしなければならないが、それでもメンテナンススキルが高ければ数分で戻ってきてしまうかもしれない。

それどころか、更に殺戮を広げるかもしれない。

 

まぁ、通常キルなら参加者少なくなるからいいが。

多分それを求めてるんじゃないよなぁ。

 

「とりあえず、私はあの襤褸マントを追います。 マーキングはしたので、追跡からキルまでは容易ですので」

 

「ま、まって……私も、一緒に……」

 

「……んー……分かりました。 最後は一騎打ち、しなきゃですもんね」

 

暗に、最後まで生き残れ、と言いながらシノンを立ち上げさせる。

恐怖かなにかで腰が抜けていないか心配になったが、問題は無さそうだ。

 

立ち上がったシノンの手を引き、低木の隙間を通り抜けて橋の手前に降りて、襤褸マントが逃げていった方へ走り始める。

 

 

 

 

~~~~~~~~

数分走れば、都市部近くにたどり着けた。

走っている最中に心の整理が出来たのか、表情がいつものシノンへと戻っていた。

 

絶対に最後まで生き残る、っていう炎が見えている気がする。

……ちょくちょくシノンの弱い部分と強い部分が見え隠れしててなんか楽しいというか嬉しい感じがする。

 

「……あと数秒でスキャン開始なはずなので、マップの確認をしてください。 私は表にいるので、屋内で確認お願いします」

 

「えっ、ちょっ、それって……囮になるってこと!?」

 

「そういうことです」

 

「それはダメ!」

 

「近場に誰かいたらグレ投げ込まれますよね。 それなら狙撃された方が対処が楽です」

 

「それは、そうだけど……」

 

「まぁ、もし襤褸マントが先に潜んでたらシノンさんがやられるかもですが」

 

「…………」

 

じっとりとした視線をぶつけてくるシノンにあはははー、と笑ってみせる。

シノンはシノンで諦めたようにため息を吐き出し、分かったわ、と言うと近場……都市部手前の小さな工場のような場所へと入っていった。

 

さて。

 

ズルじゃねぇかと言われそうなアレでも出してみるか。

 

肩にミョルニルから伸びるストリングを掛け、背負うような形にしてから、なんだか久しぶりに感じるチートウィンドウを表示。

とあるバカ重い銃……銃? 銃とは呼べないソレを4丁……丁でいいのか……?を取り出し、縦に2つずつ融合。

持ち手は1つ、銃身は上下12門。

 

イメージは、イチイの弓を纏う少女の武器。

 

ミニガンより大きく長い、ガトリングのようなもの。

弾幕を張るならこれが最適解だ。

 

「……別な武器も楽しそうだな……後で魔改造してみるか……」

 

両手に12門ずつの砲門を備えたガトリングを構え、接近してくるであろう敵を待ち構える。

無論ここで負ける訳には行かないため、チートで予測線を表示しておく。

まぁ、多分なくても避けるのは容易いけど。

 

スキャンが開始された。

 

一応俺も端末を出して、マップを表示しておく。

近場には数人いるようだ。

 

「ええと……ドームの上に銃士Xさん、その近くに2人……あ、相打ちしてる。 んで……一人来たな。 ひきにくぱすた……? うすしおたらことか、SAO時代にいた濃口醤油の親戚か……?」

 

あとは……消えている襤褸マントを表示するように弄る。

すると、割と近くに光点が表示された。

 

なるほど、野外でメンテナンスするんだ。

……というか、したようだ。

少しずつ光点が俺たちから離れていく。

 

他のターゲットにでも行くのか。

 

まぁ、まずは目の前のひきにくぱすたに集中しなきゃな。

 

ガトリングを回し始め、目の前に飛び出してきたひきにくぱすたに向けてトリガーを引く。

暴風雨の様な音を吐き出しながら、ひきにくぱすたを文字通り挽肉へと変えていく。

HPが全損してDEADタグが表示されたのを見てから砲身の向きを変え、逃げていった襤褸マントの方に向ける。

多分届かないとは思うが……

 

轟音と共に弾丸の雨を降らせるが、当たった様子は無い。

 

やっぱり届かないか。

 

仕方ないか、と諦めつつ漁夫狙いが来ていないかを確認するために端末わ再度起動させる。

だが、もうスキャン時間が終わっていたようで、周りには誰も見えなかった。

 

二丁の多門複合ガトリングをストレージにしまいながら、シノンが隠れた工場に向かう。

 

 

 

「シノンさーん?」

 

工場の中に入り込み、シノンへと声をかければ、奥の方からひょこりと顔を出して手招きしてきた。

どうしたのだろうと首を傾げながら、そちらの方に向かって見れば。

 

「こんなのがあったんだけど……貴方、これ乗れたりする……?」

 

「乗れるかは分かりませんが、前二輪後ろ一輪のトライクでしょうから、多分乗れるんじゃないですかね?」

 

「えぇ……」

 

黒いボディの、かなり大型のトライク。

だが、何故か少し平べったい印象を受ける。

こう……なんて言えばいいかな……

左右のタイヤをからブレーキペダルがある辺までゴツゴツしたフレームが真っ直ぐ伸びており、斜め40°くらいに上向きに刃が向いている、かなり大型の刃が伸びている。 その先には縦握りのハンドル。

その間には、エンジンなんかが詰まっているであろう感じの長いフレーム。

これを挟むようにタイヤが配置されている。

前輪の方からシートへと目をずらせば、スポーツタイプのバイクと似たような感じのシートだが、辛うじて2人乗れそう。

その後ろには、かなり大きいタイヤ。

そのタイヤをがっちりと太いフレームで固定し、外れないようにされている。

 

なんだろう、説明の仕方がわからない。

 

とりあえずどこか、青い星を背負った少女が乗っていたようなトライクだ。

女帝でも、夢の中に出てきた方でもない。

 

しかもその横にお誂え向きに大砲のような武器が配置されていた。

全体で大体100cm位のもので、砲口の上下左右に爪のようなものが配置されており、大体70cmくらいが砲身。 その爪のようなものも砲身に沿って配置されている。

砲身の終端部分はリボルバーのようなシリンダーが配置されており、それに合わせるように砲身が曲線を描いている。

シリンダーのようなものからは15cm程度の箱のようなものがあり、その中にピストルグリップ(銃の握るところ)が配置されている。

その箱の側面からは、ミニガン風味の持つところがあるが、たぶんこれは使わずに腕力だけで撃てって言うんだろうな。

 

うん、やれって言ってるようにしか見えない。

 

「で、どうするの?」

 

「さすがに無理ですね……ウィリーしちゃうかもしれないですし……」

 

なんて軽口を叩いていた。

 

 

 

あれ、なんでたおれてるんだ?

 

体力は……うん、あんまり減っていない。

 

状態異常は……麻痺。

 

……やられた。

 

シノンは、と頭をどうにかして動かしてみれば、同じように麻痺で倒れているのが確認できる。

麻痺耐性を入れていなかった己を叱責するように、無理やり右腕に刺さっている麻痺弾へと手を伸ばす。

だがギリギリで届かない。

 

それを嘲笑うかのように、ぐにゃりと空間を歪めるように赤目の襤褸マントが姿を現した。

 

こちらを一瞥し、興味をなくしたようにシノンへと向き直る。

左手で十字をきり、ホルスターへ収められている黒い銃……ノリンコ54式黒星(ヘイシン)へと手を伸ばす。

マントを弾くようにホルスターに収められていたそれを抜き放ち、シノンに見せつけるようにそれの全体像を数秒見せ続ける。

 

当のシノンの顔は驚愕と恐怖に染まっていた。

アバターを貫通して青い顔までしていた。

 

引き金をゆっくりゆっくりと引き絞ろうとしている襤褸マント。

もちろん、俺が打たせたりなんてさせるはずがない。

 

腕に刺さっていた麻痺弾を引き抜き、倒れた際に一緒に倒れたのであろう大筒に手を突っ込み、振り回して襤褸マントに叩きつける。

 

「持ってけ!」

 

叫ぶと同時にトリガーを引き、青い光弾を筒の先から発射。

遠くにぶっ飛んで行ったのを見てから、目を瞑ったままのシノンを抱き上げ、トライクに乗せる。

しっかりシートを跨がないと大変なことになりそうなため、まだ麻痺や発作で動けないシノンを背負う為にチートで紐を取りだして俺とシノンを括り、へカートと大筒を後輪から伸びるフレームに乗せる。

ちょっと銃身がはみ出てるが、割と乗っかる。

とりあえず、と固定し、出せるようにしてからトライクのエンジンをかける。

ジジジ……と軽い起動音の後は、ほぼ音がしない。 電気自動車程度のフィール音と言えばいいのだろうか。 その程度しかしない。

 

ハンドルの間に小さな画面が取り付けられている。

エンジン始動に合わせて、その画面も起動した。

その画面には、BLACK TRIKEと表示されていた。

 

それを気にせず、すぐにアクセルを回してその工場を離脱。

 

背後から軽い音を立てて黒星を撃っている襤褸マントが見えるが、木と俺の動きによって当たることは無かった。

 

離脱成功。 後は1度隠れられる場所に行こう。




ユイに手を出したら明日奈にはんごろしにされます。

ブラックトライクとロックシューター、皆さんご存知でしたでしょうか?
知らないひと、わからないひとは【ブラック★ロックシューター The・game ブラックトライク】で調べてみましょう。
同じ要領でロックシューターって調べたら多分大筒の方も出るかもしれませんね。

あれの説明はマジで分からん。

とりあえずはGGO中盤。
シノンの暴露とか、タマモの暴露とか、文にしたいけど原作とほぼ変わらなくなるので、半分はストレア……すとーりーてらーさんの話になります。たぶん。
原作のままにすると怒られちゃうので。

それじゃ、また次回、おあいしましょー。


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第27層・さいしゅうせんそう

夜勤中、仕事がなければ小説を書いているが、どう足掻いても眠いです。
そんな体崩壊RTA待ったナシな作者作の小説を見ていきやがれください。
今も半分寝落ちながら前書き書いてます。
故にぶんぽうが酷くてもあたたたたたたほわたぁ! な目で見てやってください。


「どりゃりゃりゃりゃー!」

 

分隊支援火器であるミニミを、ボックスマガジンの中身が無くなるまで打ち続ける。

トリガーハッピーっていいよね。

 

半壊した廃屋の窓から少しだけ顔と銃口を出し、狙い、トリガーを引く。

ドガガガガッ!! とかなりの音量を吐き出しながら7.62mm弾を撃ち出す。

隠れていたプレイヤーの頭やら体やらを撃ち抜き、DEADタグをいくつも作り出していく。

 

ぴここここーん! ってなって、すっごいきもちいー!

 

えーと、これで……8人かな?

 

周りのタグを見回し、息を吐き出してからミニミを持ち上げる。

次はどこに行こうかなぁ?

タマモを探しに行きたいけど……っと、そろそろスキャン時間。

 

マップの左上からぶわーっと波が広がっていって、プレイヤーの位置が表示されていく。

かなり人数が減ってる。

残り……4人だね。

たぷたぷっとあたし以外の3人……タマモ、闇風、SHOGUN。

……あ、闇風がタマモの方に向かって移動始めた。

 

じゃあ、私はちょっと近場にいるSHOGUNを……

 

ミニミをストレージにしまい、代わりにロケットランチャーを取り出す。

これを打ち込めば、かなり綺麗な花火が上がりそうなんだよね。

 

ソレを担ぎあげれば、廃屋の裏に隠しておいたかなり大きい車へと乗り込み、エンジンをかける。

……ゾンビ映画とかだったらエンジンかからないってあるよねー。

 

なんて、ゲーム内じゃほぼ起こらない事を想像して苦笑い。

あたしも、晴明に感化……っていうより現実世界に馴染みすぎちゃったのかなぁ。

 

森林をかなりの速度で車飛ばしながら、SHOGUNのいた位置へ向かう。

 

……流石に音が聞こえているのか、軽めの音を響かせながら銃を撃ってくるSHOGUN。

音の感じからして割と近場……進行方向右側……大体2次方向かな?

右足に細長い棒を取り付け、アクセルを踏めるようにする。

かなり無理な体勢で天井の蓋をはね上げ、立ち上がってから左足をハンドルに押し付ける。

流石に初めてのことだから上手く運転が……っとと。

あそこだねー!

 

ちょっと小高い山があって、そこにいるSHOGUNがあたしを撃ってきている。

……あぁもうっ!

天井邪魔だしおっぱいもむぎゅーって潰れちゃう!

ふんっ!

 

いっちばん最初に買ったカゲミツB7(青い光剣)をストレージから取り出し、一閃。

天板の一部と銃座の前面ガードを切り飛ばして体を晒す。

カゲミツを再度ストレージにしまってからロケランを手に取り、未だにSMGであたしを撃ってきているSHOGUNに向けてソレをぶっぱなす。

 

寸分たがわず、とはいかなかったけど、着弾点はほぼドンピシャ。

DEADタグが煌めいたのがみえた。

 

すぐに足先につけている棒を取り払い、シートにしっかり座っては、ロケランをストレージにしまいミニミを取り出す。

 

残りは闇風だけ。

 

闇風を倒してしまえば、降参でも自爆でも、なんだったら対決してもいいかもだけど……

まぁ、それは最後まで生き残ったらかな。

 

 

なんて、そんなことを考えているうちに砂漠へと到着した。

闇風とタマモのいる場所。

……なにか違和感があるような?

こう、残り全部はめ終わったと思ってたパズルのピースがしっかりはまってないというか、形は似てるのに全然はまらない千年なパズルとか……

 

そんな違和感の正体を探していたせいか、気付くのに遅れてしまった。

遥か彼方からエネルギー弾みたいなものが飛んできていた。

それに気がついたのは、車のバンパーが光弾に食いちぎられた後。

すぐさま車から飛び出し、砂原へと伏せる。

 

「なにいまの……」

 

ぼそりと口をついて出た言葉に呆然としながらも、すぐに頭を切り替えるように横に振り、光弾の飛んできた方へと目を向ける。

 

あれは……タマモ! ……と、誰……?

 

かなり近接戦をしているタマモとぼろぼろなマントを着た黒い棒を持つ男。

タマモもタマモで、長い大筒で戦ってる。

大筒と棒を振り回しているのを援護したいけど……見てるしかないのかなぁ……

 

 

 

 

~~~~~~~~

「あぁぁぁっっっ!!」

 

「っ……!」

 

左腕に装備している大筒を振り下ろし、トリガーを引く。

その度にしっかりと光弾を発射し、襤褸マントに焼け跡をつけていく。

負けじと細剣4連撃技・カドラプルペインを打ち込んでくる赤目。

 

「たのしいなぁ、楽しいなぁ! 久しぶりの高揚感だ! もっと楽しませろ、赤目のザザ!!」

 

「くっ……」

 

赤目の体は揺れ、俺の打ち込みをどうにかこうにか捌いている。

だが全ては捌ききれていない。

そのため、3~4発に1発ほど光弾が体を削っていっている。

 

「おまえ、やはり、殺戮者……!」

 

「鏖殺者と呼んで欲しいなぁ!」

 

思い起こすはラフコフ討伐戦。

アスナが死にかけた、あの戦。

仕方がなかったとはいえ、2人殺した、と原作ではキリトが言っていた。

その2人のプレイヤーネームも、本名も知らないと言った。

 

だからなんだ。

 

そんな物知ったことか。

 

そんなものは背負う必要の無いものだ。

 

殺した咎なぞ、殺したやつの墓標にでも刻んでやれ。

 

赤目のエストックを蹴り上げ、それの反動に合わせてバク転して距離を取る。

すぐさま大筒を構え、光弾を発射してからもう少し距離をとる。

 

こちらへと向かってくる赤目に合わせ、右手のミョルニルを構え、発砲。

砂に足を取られたのか、一瞬よろける赤目の肩を抉りとる。

弾切れになったミョルニルを投げ捨てる。

 

「ぐっ、うぅっ……!」

 

「さぁ、フィナーレといこうじゃないか!!」

 

「ふざけ、るな……!」

 

「ふざけるな? はははははは!!! ふざけてなんていねぇよ! こんな楽しい楽しい戦い、ふざけてなんていられねぇよ!」

 

久しぶりの肉弾戦。

突きを繰り出してくる赤目のエストックに合わせ、こちらは空いている右手の掌底をエストックの側面に押し当て、そのまま力を入れて攻撃を逸らす。

 

勢いに任せて一回転をし、左手の大筒を赤目の脇腹に叩き込もうとするが、肘と膝で挟まれて衝撃を逃がされる。

 

挟まれた大筒はへし折られてしまった。

だが、次はこれがある、とガトリングを取り出す。

一瞬唖然とした雰囲気をしていたが、すぐにガトリングを蹴りあげようとしてくる赤目めがけトリガーを引けば、運悪く足先がバレルとバレルに挟まり引きちぎれた。

 

「っっっっ!!!」

 

「いてぇよなぁ? 苦しいよなぁ?」

 

足を引き、悶えそうになっている体を抑えるようにエストックを持つ右手を左手で握りしめ打ち込んでくる。

 

「今までお前が殺してきた人間や食べてきたパンの枚数なんて知ったことじゃねぇ。 だが、だが。 お前は、お前らはアスナを殺そうとした。 シノンを殺そうとした。 それだけでテメェは痛み、苦しまなければならねぇんだ。

もちろん、共犯者共も同じ目に合わせてやる」

 

振りの遅くなったエストックを右手で掴み、ガトリングを脇腹目掛けて……

 

「長ぇ!!!」

 

脇腹に向けて打つことが出来ず、無理やり叩きつける。

軽くない赤目を吹き飛ばし、トリガーを引いて弾幕の嵐を巻き起こし、赤目に浴びせる。

 

「ぐ、ぐくっ……!」

 

2回ぐらい死んでいそうな威力のものを複数浴びせているのに未だに死んでいない赤目だが、多分そろそろ死ぬだろう。

そんな予感がする。

その予感を信じ、1歩、踏み出した。

 

 

甘かった。

 

 

エストックの尖端が跳ね上がり、俺の右目を貫いた。

 

「が、ぁっ、かなりいてぇ!」

 

かなり痛い。

ペインアブソーバがあまり効いていない、というのは本当だったようで、こう……脳の奥をヤスリで削られるような痛みがある。

かなり痛い。

 

だが、これで捉えた(捕らえた)

 

ガトリングで殴るのも大筒で撃つのもライフルで爆殺(?)するのも楽しいが、今は最適解じゃない。

今は愚策でしかない。

ならばどうするか。

 

「ぶん殴る!」

 

目にある異物を意識から外し、少女の細腕で大の男のマスク付き顔面をぶん殴る。

STRカンストだ、痛いだろう!

堪らずエストックを離し、ガードし始めた赤目。

すぐさまそのエストックを目から引き抜き、細腕暴力の再開。

主に手で顔を、足で股間を狙って。

 

男のタマキンはね、かなり痛いからね。

 

かなり渾身の力を込め、足を振りあげれば、赤目の股間からぐぬちゃぁっ……って音を出し、倒れこんでは、DEADタグを回してしまった。

 

「あぁ、くそ、もう終わりかぁ……」

 

しかも最後の一撃がタマキンクラッシュ。

不名誉すぎて外歩けないだろうなw

 

……あー、ダメージでかくていたい。

 

あとは、シノンだけか。

 

闇風は作戦通り倒してくれているだろう。

 

半壊して倒れている塔の上にいるシノンに手を振り、倒したことを告げる。

投げ出したミョルニルを構え、スコープを覗き込んでみれば、ぐっ、とサムズアップしていた。

 

 

 

 

それからすぐに合流したのだが、違和感があった。

だが、その違和感も直ぐに消えた。

2人ともお疲れ様ー、なんてにやにやしたストレアがこちらに来たからだ。

だれ? なんてシノンに聞かれたりしていたりしたが、知り合いだと答え、その話は一旦終了。

その代わり、どう決着をつけるかという話になった。

 

まぁ、決着はだいたい予想はしていたグレネードで3人一緒に死んで1位。

 

もっと熱い戦いを見たかった人にはごめんなさいね、としか言えないやつだったよ。

 

そして、だ。

最終的にリアルで死んだのは1人だけだった。

ペイルライダー君は生き残れたようだ。 しんだけど。

 

……まぁ、そんなこんなで、BoBも無事終了した。

 

だが、シノンの家にすぐ向かわなければならない。

最後のおおしごとが残っているからな。

 

安岐さんの静止も聞かず、礼と詫びを言ってから病院を飛び出し、駐車場に停めていたバイクに跨る。

しっかりメットをしてからエンジンをかけ、発進する。

 

すぐに行かなければならない。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~

「やぁ、朝田さん、ボクだよ。 優勝おめでとう。 待ちきれなくて逢いに来ちゃった」

 

「あ、し、新川君……」

 

ドア越しに彼がいる。

今1番会いたくなかった彼が。

 

……タマモ……晴美が来てくれるって言ってたから、それを待ってもいいけど……ううん、ダメ、彼とはしっかり向き合うって決めたじゃない。

大丈夫。 (晴美)も、彼女(シノン)もしっかり感じてるから……

 

「すぐ、開けるね……」

 

そういって部屋のロックを外していく。

 

全て外し終わり、ドアノブに手をかけようとした瞬間にガチャリとドアが開けられた。

 

「こんばんは、朝田さん」

 

「う、うん、こんばんは……」

 

……鳥肌が立ってしまっている。

軽く深呼吸をしようとし、けほっ……とむせてしまった。

なにか、甘い匂いが……?

 

「あぁ、お祝いのケーキ。 ちょっといい所のを奮発してきちゃった」

 

「そうなんだ……ありがとう……?」

 

……話が続かない。

 

「……あ、そうだ、朝田さん。 前の返事、聞かせて欲しいな……?」

 

「え、ま、前の……?」

 

「ほら、あの……待っててってやつ」

 

「え、と……その……」

 

困った。

その返答についてなんて答えればいいのかが分からない。

向き合う、とは言っても、この人の彼女としては生きていけない。

だから、断るか、振るしかない。

 

「……ごめんなさい、新川君。 やっぱり私」

 

「あぁ……あいつのせいなんだね」

 

「え……?」

 

「あのガキのせいなんだね? あんな、ガキの……」

 

「しんかわ、くん……?」

 

「そんなのだめだよ朝田さん朝田さんには僕しかいないんだ僕だけしかわかってあげられないんだだからあんなやつより僕を選びなよあんなやつより僕の方が君を守ってあげられるし恐怖を一緒に乗り越えてあげるしなにより僕の方が金持ちだから医者の息子なんてかなりの優良物件だよ僕にしなよ僕のものになれよなんで首を縦に振らないんだよあぁそうかそういうことかあいつのせいだなあいつがいるから朝田さん詩乃は僕を見てくれないんだなそうなんだだったら君と僕が2人だけで過ごせる場所に連れていくよそれなら問題ないし生まれ変わっても一緒にいられるからねどこがいいかなぁALOみたいなファンタジーな世界もいいよねGGOみたいな鉄錆臭い世界も面白そうインセクサイトみたいな虫みたいな世界は勘弁だなぁでも詩乃なら可愛い蝶にでもなるんだろうなぁ」

 

「ひっ……い、いや……!」

 

のしのしと私の上に乗ってくる新川君。

ゲームの中とは違い、私にはその手を払う程の筋力は無い。

いとも簡単に取り押さえられ、手首を縛られてしまった。

 

「やめ、て……しんかわ、くん……!」

 

必死に説得を試みるが、彼は止まらない。

 

「ああ死ぬ前に処女は散らしたいよね僕も童貞は捨てたいから一緒だねじゃあ死ぬ前にセックスでもしようかセックスしたら2人で1緒に死んで……」

 

目がとび出そうなほど目を見開いている新川君。

見ていられない、と目を閉じてしまったが、かちゃかちゃ、という音で目を開かざるを得ない。

その金属音は新川君のベルトの音だ。

ズボンと下着を下ろし、引っ張り出してきたのはほっっそくてみっっじかいゴミみたいなちんぽだった。

 

「これでしっかりよがらせてあげるよ」

 

死ねば?

内なるシノンの言葉に頭を横に振り、新川君の短小を蹴りあげる。

 

「うぼぁっ!? 」

 

玉無し種無しでも痛いのか、跳ね飛んでいた。

 

すぐさま玄関へと走り、鍵を開け、チェーンロックを解除したところで足首を掴まれる。

 

「あさださんあさださんあさださんあさださんあさださんあさださんあさだっしのしのしのしのしのしのしのしのしのしのしのしのしのぉぉぉ!!」

 

なんて言ってるか分からなくなるほどの絶叫。

それに合わせて振るわれる腕とよく分からない……注射器みたいなもの。

だけどそれは今すぐ打つつもりは無いのか、持っていない手で掴み、押し倒し、服を破り捨てる、ということをしている。

 

怖い。

 

「しのしのしのしのしのしのしのしのぉぉぉ!!」

 

たすけて、せいめい……!!

 

「おじゃましまぁす!!」

 

目の前で新川君の首が変な方向に曲がって飛んで行った。

体を起こし、恐怖で溢れてしまった物を隠すように座って。

ちらりと、闖入者の方を見る。

 

「シノン、これ羽織って外行きなさい。 外にいる紫の子か黒い子、橙の子でもいいな。 彼女たちにたすけてって言いなさい。 いや、橙の子が1番いいかも」

 

黒いジャケットを着せて、頭を撫でてくれる女性。

どこかで聞いたことのある声。

 

「……タマモ……?」

 

「正解。

……元もだち(もとともだち)、気絶させるよ」

 

「っ……お願い」

 

「承った」

 

それだけ言って、彼女は部屋の中で悶えている変態に向かっていった。

 

 

 

 

~~~~~~~~

「うわ、ちっさ」

 

「っ、の……クソアマがぁ!!」

 

立ち上がり突撃してきた短小ゴミちんぽ君の額に指を押し当て、合気の要領で短小クソゴミちんぽ君を床にたたき落とす。

下の階の人ごめんなさいねー。

 

「はい、おわり」

 

「まだ終わってない!」

 

あ、やべ。

右手に握りしめていた注射器を持った腕に膝蹴りを見舞い、床に叩きつける。

 

ぷしゅっ……という音と共に溢れ出る薬品。

だがそれは、誰に当たることも無く、カーペットに染み込んでいってしまった。

 

「……で? これでおしまい?」

 

「くっ……ぬぬ……」

 

まだだ、とは言えずに唸るだけ。

ぶっちゃけもう相手してやる必要が無い。

速やかに意識を刈り取る為にとりあえず顔面をぶん殴る。

殴る。

殴る。

殴る。

殴る。

殴る。

殴る。

殴る。

それでも意識は刈り取れません。

殴る。

膝。

殴る。

肘。

殴る。

殴る。

首をぐりっと1発。

そこまでやってようやく意識を刈り取れた。

 

流石にこれ以上殴る必要は無い。

 

首の骨死にかけだろうし。

 

詩乃は……あぁ、ちゃんと下に降りられたな。

これは……まぁ、そろそろ警察が来るだろうし、”見た目だけ外傷無し”に戻しておこう。

 

スマホを弄り、チートから新川恭二という男を少しだけ書き換えた。

 

そんなことをしているうちに、パトカーが到着し、警察が突入しようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~

それからは、事情聴取などで1日拘束されたりなんかはしていたが、すぐに俺は解放。

詩乃も同じ感じだった。

 

その後は謝罪だったり説明会だったり。

菊岡を交えてそれらをクリアし、つぎの条件だった地方銀行の元銀行員のお姉さんやその娘ちゃんを呼んだりした。

 

一連の死銃事件は、一通りのフラグはこなし切った。

……この後の話は、どうなっていくのだろうか。

 




駆け足でGGO編完了です。
次はどうしましょう。
ユウキかな。
キャリバー編はぶっちゃけ……あー、いや、フレイヤ拉致るか?
それも面白そうだなぁ。また家にNPCが増える。
ニミュエはどうしてるかって?
都心で一人暮らしのOLしてる。

それでは、次回、ルート決まったらお会いしましょう!

ユウキは生存ルートにする。 絶対に。
……ただエッチはしたくないなぁ……幸せにしたいなぁ……
一夫多妻制にすっか。

あと、あとあと、クィネラに乗っ取られた”誰か”ってエロくないかな。
暇があったらIFでやってみてもいかもなー。


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ALO-絶剣-編
第28層・重い話


おはこんばんちはー!
ユウキとサチ、どっちがえっちしにくいか?
サチ。
な私です。
さて、今回のお話に入る前に少しだけ。
新章に入るにあたって(あたってないけど)少しだけ書き方を変えました。
一人称視点から三人称視点やね。
私の感じ方しだいで戻すかもしれませんが、良かったら感想なんかをコメントに書いていってね。
それじゃあ、本編どうぞ。


「えーと……ぎおんしょうじゃの……??」

 

「リズ、まだそこなの……?」

 

「ふわぁ……」

 

「シリカー、起きないと宿題終わらないよー?」

 

「ここをこうして……こうで……」

 

「あ、シノンさん、これはこっちですよ」

 

「えっ? あ、ほんとだ……」

 

「ふぁ~ん、おしゃけおいしぃ~♡」

 

「ニミュエさん、本当にお酒大好きですね……」

 

「すぴー……」

 

「すやすや……」

 

26層、ちょっとだけ増設をしたログハウス。

その中で女の子たちが集まっている。

 

数人は宿題を。 1人は酒盛りを。 2人は一緒に昼寝を。 1人は寝落ちしかけの1人をおこそうとしている。

 

ぎゅうぎゅう詰め、とはなっていないが、ちょっと手狭だ。

それもそうだろう。

歌姫と呼ばれている白髪の少女のよこで一緒に眠っている、星海の髪を束ね子供のような顔で眠っているが、寝相がおっさんぽくなっている少女……青年に集められた……見初められた? 少女たちが何人もいるのだから。

 

見た目少女、中身青年なソレの名前は葉山 晴美。

本名、葉山 晴明。

 

異世界より転移してきた正真正銘のチーター。

 

どんなことでも思い通りに出来るであろうチートを授けられている。

 

そんな男が、揺り椅子の上で白い髪の歌姫を抱きしめて眠っている。

そんなすぴすぴと眠られるとこっちまで眠くなってきちゃう、とアスナやリズベットが文句を言っていた時があったが、いまはもう諦めているようだ。

 

そんなあったかログハウスの中で宿題を続けている数人が……特にシリカが夢の中へと落ちていった。

 

「……もう」

 

起こそうと頑張っていたストレアだったが、諦めたようで苦笑い。

空いているスペースへと座り込み、周りの宿題進行状況を見る。

 

「アスナとシノンはあと少しで終わりそうだね。 リズとリーファはー……あと二教科?」

 

「ん、アタシはあと理科だけよ」

 

「私はー……現文と世界史。 数学があと少しで終わりそうなので、実質二教科ですね」

 

「となると、残りはシリカだね」

 

「くぴぃ……」

 

かくんかくんと頭を縦に揺らしながら眠ってしまっているシリカをみんなで眺めながら苦笑い。

 

「やっぱりあれの影響が凄まじいわね……」

 

シリカに向けられていた目が一斉に暖炉の前で揺り椅子に揺られる少女2人に向けられる。

 

宿題が終わっているユナと、まず学校とか行ってないセイメイ。

膝の上にピナが眠っている。

暖かい室温でそんなものを見せられてしまえば、誰だって眠くなってしまうだろう。

 

「最近、すっごい忙しかったみたいだから……」

 

「へー……何やってたの?」

 

「……リズやしののんは知ってるか分からないけど、サチさんに会いに行ってたんだって」

 

「えっ、あのサチさんにですか?」

 

「そう。 私たち、円卓の騎士団の同盟ギルド、月夜の黒猫団のリーダーだった子」

 

概要だけ軽く、ね?

とアスナは1呼吸置いて軽く話し始めた。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~

シノンを助け、元銀行員のお母さんと娘の親子ふたりに合わせてから数日後。

セイメイ……晴美は菊岡誠二郎に呼びだされていた。

 

銀座にある、いつものカフェに呼び出された晴美は、菊岡から一通の封筒を受け取った。

それを開け、中身を見てみれば、サチの現在の所在が記されていた。

 

横浜北総合病院。

 

ナーヴギアは外れているが、とある理由によって未だ入院をしているようだ。

 

菊岡はケーキを食べ進めていたが、晴美はすぐにそれを持ってカフェから飛び出た。

チートを使い、周りに人間は晴美が起こす異常に気が付かない。という空間を作り出してからバイクを召喚。 体や服もそれに合わせた物にして、すぐに横浜へと向かった。

 

 

 

~~

しっかりと体をサチに会った時の状態にしてから受付にてサチ、という名前を出すと、待合席で少し待っていて欲しいと言われた。

数分して、サチさんの担当医をしている倉橋という眼鏡の医者が出てきた。

 

「……不躾な質問したとなってしまうのですが、あなたは……サチさんとどういった関係なんでしょうか?」

 

「……友人です。 とあるゲームで、一緒に戦った」

 

「なるほど。 であるなら、多分……」

 

それ以上、倉橋は何も言わなかった。

 

ここです、と彼は軽く、中にいる人物へと来室の挨拶をする。

なかからすぐにはーい、と声が帰ってきた。

 

「失礼します。 サチさん、調子はいかがですか?」

 

「えーと……体の方はかなり調子がいいですよ。 ただ……記憶はまだ戻っていないですし、自分の名前も……」

 

なかから聞こえてきた声は確かにサチだった。

 

「……お客さんが来ているのですが、お通しして大丈夫ですか?」

 

「お客さん……?」

 

困惑しているような雰囲気が部屋の外に漏れてきている。

だが、許可が出たようで、倉橋が手招きをしていた。

その手招きに釣られるように、晴美は病室へと足を踏み入れた。

 

「……やぁ、サチ」

 

「………?」

 

「や、そ、そうか……え、と……75層以来だね……?」

 

「……ごめんなさい、私、記憶がなくて……あなたの事、見覚えがないんです……」

 

「あ、あぁ、そっか……ええと……」

 

外で話を聞いた時からわかっていたが、サチは記憶がない。

SAOで出会った時から、ではない。

産まれてきてから、ナーヴギアから解放されるまでの十数年の記憶。

SAOで使用していた名前以外、その一切が無くなっていると、サチ本人の口から聞かされた。

 

チート行使を考えたが、そうもいかない。

記憶は、脳は、チートでいじることが出来るが、それ以上のものはどんな副作用があるか分からない。

そんなものをサチに使うことは出来ない。

 

いや、使ってもいいのかもしれないが、使ってしまえば、死ぬまで晴美は自信を呪うだろう。

 

「……なら、そうだね……君と初めて会った時の話でもしようか」

 

しっかりと、かなり重い話になるかもだけど、と注釈を入れたが、サチは頭を縦に振った。

 

「まずは……」

 

セイメイは全てを話した。

サチの友達……月夜の黒猫団の仲間たちの事。

それからどうしたかなど、クリアするまでのことを。

 

だが、彼女は終始物語を聞く少女でしか無かった。

仲間の死を乗り越えた少女ではなかった。

 

「……とまぁ、こんな所かな」

 

「……あ、聞かせてくれて、ありがとう」

 

「あぁ……。 ……面会時間そろそろ終わりだから……また来るよ」

 

記憶を無くしていようが、儚げな笑顔はゲームの中だろうが外だろうが変わらないようだ。

それじゃ、といって病室を出るが、それを見計らったかのように倉橋が晴美の方に寄ってくる。

 

話があるのですが、と。

 

診察室のような、あまり人の声が聞こえない小さな部屋へと通された。

 

「……えぇと……どこから話しましょうか……」

 

連れて来はしたが、どう話すか決めきれていないようだ。

 

「……あまりこういう話をするものでは無いと分かってはいるのですが……実はサチさんは、戸籍などの情報が一切無いんです」

 

「……は?」

 

「どこで生まれた、どこで育った、本名等全てが消されておりました」

 

「……理解が及ばないんですが……記憶と共に生きてきた全ての痕跡が消え去った、みたいな感じですか……?」

 

「そういうことです。 SFじみていますが……」

 

訳が分からない。

 

「じ、じゃあ、サチはどこで保護されたんですか?」

 

「……近くにある女性専用の漫画喫茶です」

 

なぜ? なんて疑問が浮かぶが、今はもう確認するすべがないのだろう。

話を聞いていく限りサチという名前とサチの体以外、サチという人間を示すものが無い。

保険証なんかも無く、親も出てこない。

 

……俺以外にチート使いでもいるのか、それとも本当に何かあったのか、くらいしか想像ができない。

 

「それで、なのですが……」

 

「……記憶以外健康なんだから、病院に置いておけない、という感じですか?」

 

「言い方は悪くなってしまいますが、要はそうなってしまいます」

 

「……分かりました」

 

病院の総意なのだろう。

 

 

結局そのあとは、サチの体調を見つつ、サチとどうするかの話し合いをしてどうするかを決めることとなった。

晴美は、ウチに来れば、なんて考えているようだが。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~

「っていう感じらしいよ」

 

「……またセイメイん家に人増える感じなの?」

 

「まだわからないけどね」

 

「……結局はサチの返事待ちになっちまってるんだよ。 2、3日待って、って言われてるんだが……」

 

「なーるほどぅえぁっ!?」

 

セイメイが起きていた事に驚き、跳ね上がるリズベット。

それを見てため息をこぼしては

 

「まぁ、それが気になって夜も眠れてない訳だ。 2日目だ」

 

「そ、そう……」

 

一応受け入れ態勢は出来ている。

物置っぽくなっていた部屋をしっかり綺麗にして1人なら充分広く使えるような部屋に変えてある。

だから返事待ち。

 

「……まぁ、気を揉んでいても仕方ないからな。 なにか明るい話題でも無いか?」

 

「明るくなれないわよ!」

 

「それもそうだなぁ……」

 

明日にはなにか進展があるかもしれない、とセイメイはログアウトして行った。

 

残された数名は、宿題やる気など失せたかのように暗い顔をしていた。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~

翌日、明日奈のスマホに、晴美から「サチの受け入れが決まった。 役所行って養子縁組(か、それに準ずるものを)してくる」という連絡が入っていた。

 

ほっと胸をなでおろし、朝食を食べに行くために部屋を出ていった。

 

 

 

他の面子にも同様の連絡をしているようで、みんな胸をなでおろしていた。

 

 

 

 

~~~~~~~~~

「……ところで、ゼッケンって、知ってる?」

 

サチを受け入れ、数日がたった夕方頃。

いつものログハウスでリズベットがそう切り出す。

 

「運動会でもやるの?」

 

「違う違う。 チョー強い剣士の通り名。 絶対無敵の剣だとか、絶対最強の剣だとか、絶対否定の剣って意味」

 

「え、なにそれ、知らない……」

 

「まぁ、アスナもセイメイも、最近まともにログインしてなかったものねー」

 

「セイ君家の手伝いとか行っちゃってたからね……」

 

「通い妻も程々にしないと、色々大変なことになるわよー」

 

「も、もう、茶化さないのっ!」

 

シリカ、リズ、アスナ、ユイ、リーファの5人しかいない部屋(なお3人ともお昼寝)に響くアスナの声。

 

はいはい落ち着いて、と宥めるリズベットが続けて。

 

「んで、そのゼッケンが挑戦者を探してるんだって」

 

「へー……」

 

「反応うっすいわねぇ……」

 

「まぁ、ちょっとね」

 

「……勝った報酬が、OSS(オリジナルソードスキル)って聞いてもそんな反応続けられるかしらん?」

 

「えっ、それ本当なの!? なん連撃?」

 

「なんと、脅威の11連撃」

 

「11!?」

 

OSS(オリジナルソードスキル)。 新アインクラッドが実装され、実に半年だろうか。

新しく実装された要素で、自分で考えたソードスキルを作ることが出来る機能だ。

面白そう、とアスナも挑戦したことがあるのだが、自分独自のものは作れなかった。

そう、これはかなり難しいものなのだ。

既存ソードスキルとも、誰かが既に作ったものとも違うものを実行しなければならず、ソードスキル並の速さで武器を振らなければならないという鬼畜仕様。

 

「なんか出来たー」

 

なんて言って作ったセイメイでも8連撃だった。

あたおか。

 

「そう、11。 それを景品にしてるんだって」

 

「……」

 

「あ、やっぱ気になるんだ。 なら、毎日15時位に、24層の湖に浮かぶ小島に行ってみなされ。 さすればねがいがかなうであろー」

 

「なにそれ……」

 

老けたおじいさんみたいな声を出すリズベットに苦笑いを見せるアスナ。

じゃあ、明日行ってみよっかな……なんて。

 

 

 

ぶつり。

 

 

 

唐突に、目の前が暗転した。




はい、というわけでね。
4000文字くらいしか書けないくらいちょっとダメージが出てる私です。
サチ関連だと真面目に心折りにくる。
というかちょっと文がおかしくなる。
つらい。
……まぁいいや。
サチ回収したから次回以降は記憶ないサチも登場するかも。
あとユウキもしっかり回収します。
誰が戦うかは……まだ不明だし、なんなら途中までセイメイ目線でもいいかもしれぬ。




……頭に関してはチート使わなかったけど、ウイルスに対してはチート使うし、体にも使う。
頭には使えない使いたくない。




絶対否定の剣……ルシファーに素材タカりにいかないと。


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第29層・少女の家出。その後の未来

夜勤中マッハで書き上げたせいであたまいたーい。

前書きって結局何書けばいいのやら。

まぁいいや。
とりあえず、変な感じになってるかもしれないですので、そこんとこ夜露死苦


……?

 

自身の部屋の匂いに紛れ、嫌な香水の臭いが混じっている。

 

ため息はつけない。 この、いま目の前にいるであろう人の前では、ため息1つついてはいけない。

 

「……母さん」

 

そろりと目を開ければ、そこには暗いベージュのスーツを着込んだ母さんがいた。

 

「明日奈、ソレを外して起きなさい。 夕食の時間に7分遅れているわよ」

 

アミュスフィアを外しながら、体を起こす。

私にもみんなとの時間があるのに、それを裂くようなことをしなくても、とLANケーブルを持った母さんに反論する。

 

「……だからって、電源コードを引き抜かなくたっていいじゃない。 耳元で声をかけるか体を揺すってさえくれれば、中に通知が来るんだから」

 

「そんなの知らないわよ。 ……ほら、早くなさい」

 

「今日はいらない」

 

「……そう、勝手になさい」

 

部屋から母さんが出ていったのに、しつこく残る臭い。

それを換気しようと窓を開ける。

 

寒い。

1月の寒風が部屋の中を席巻する。

 

……またアミュスフィアを被って、みんながいる暖かなログハウスへと戻りたい。

でも、それは今はできない。 したくない。

今戻ってしまったら、多分、愚痴とか色々吐き出してしまうから。

 

……ピロン♪

 

「わひゃっ!?」

 

鬱々とした、鋭い冷たさを持つ空気の中、スマホの音が響いた。

 

すぐに画面をタップすれば、リズからメッセージが届いた音だとわかった。

 

『おつー。 お母さんに電源コードでも抜かれた? まぁ、そーゆーのよくあるよねぇ。 ほら、クリア出来たのに掃除機かけ始めようとしたお母さんに電源抜かれてデータが飛んだ赤い帽子の髭の……って、そうじゃないそうじゃない。

とりあえず返事が来たら、みんなには大丈夫だったって伝えておくからね。

明日は15時前後に集合だぞー。 忘れないでよー? おやすみー!』

 

……リズらしいというか……

 

『あはは、ちょっとね。

明日15時、了解だよ。 みんなによろしくね。 おやすみ、リズ』

 

送ってからスマホを机に置く。

 

「……」

 

小さくため息を吐き出す。

その息は白く染まっている。

 

……よし。

 

意を決してベッドから起き上がっては、クローゼットからお出かけ用のコーデを取り出していく。

 

寒いから暖かいのを、ということで、ベージュのニットをメインに、ワインレッドのスカートと白のタイツ。 コートもワインレッドで併せ、それを着込んでいく。

着替え終わったらすぐさまスマホを手に取り、階下へと向かう。

お手伝いさんはもう帰ったようで、リビングから顔を出したりはしなかった。

 

食堂へ軽く顔を出しては、あの人がいるのを確認。

 

「……少し、外出してきます」

 

「待ちなさい明日奈。 もう遅いのよ、今からの外出は……」

 

もう聞いていたくない。

リビングの扉を締め、すぐに玄関へと向かう。

 

ヒールの高くない黒のブーツを履き、家を出る。

 

冬の突き刺す空気がまた私の体を貫く。

だが今は構ってる暇は無い。

すぐさま玄関、庭、門から飛び出し、大通りへと向かう。

 

この時間でも多くはないまでも、それなりにタクシーは通っている。

 

ちょっと大通りを走れば、すぐにタクシーはつかまる。

 

息を整えながら、川越の、彼女()の家の住所を伝えながらタクシーへと乗り込む。

 

……あの家には、すぐには帰れない。

 

 

 

……あれ、部屋の窓閉めてきたっけ?

~~~~~~~~~

 

おおよそ1時間程度で目的地へと到着する。

タクシーから降り、ゆっくりと家の前に歩いていき、インターホンを押す。

 

『はーい』

 

家の中から声が聞こえ、軽い足音が響く。

ガラララッと扉が開けば、ピンクのニットに白スカートを着込んだユイちゃんが出てきた。

 

「ママ!? こ、こんな時間にどうしたんですか?」

 

まだ19時30分だが、ちょっと遅かっただろうか。

なんて言ったものか、と悩んでいたのだが、ちょうど奥から

 

「んぉ、明日奈?」

 

珍しく大人っぽい女性に姿を変えている晴明君が黒いスウェット姿で出てきた。

 

「あ、こ、こんばんは、ユイちゃん、晴明君」

 

「おう、こんばんは」

 

「はい、こんばんはです、ママ」

 

「んで、家出か?」

 

「……あ、あはは……正解。

ちょっと家にいたくなくて……」

 

「そっか。んじゃあ、気の済むまでここに居ればいいよ。 ここは明日奈の家みたいなもんなんだから」

 

「……じゃあ、お言葉に甘えます」

 

やっぱり、晴明君はやさしい。

優しすぎる。

……だから惹かれた、って言うのはあるのかも。

 

「ストレアー、ベッドメイク頼んでいいかー?」

 

「よくなーい。 晴美自分でやりなさーい」

 

「じゃあ洗濯物自分で洗えよ! いつもいつもそこらに投げ捨てられてるブラとか誰が洗ってると思ってんだ!」

 

「あ、それ多分ニミュエのー」

 

「マジですかごめんなさい!」

 

惹かれた、のかなぁ……?

 

「……はぁ……ごめんな、明日奈。 色々うるさくて」

 

「ううん、大丈夫。 むしろ聞いてて楽しいよ?」

 

「ほんっとにもうしわけない……」

 

かなーり渋い顔して謝ってくる晴明君に苦笑いしながら、いつも貸してくれている部屋に案内してくれる晴明君の後を追う。

 

案内してくれる部屋は1階の和室だ。

とはいっても全面障子張りとか襖という訳ではない。

入口は1つしかなく、箪笥や押入れなどで壁の一角が占拠されている。

別な一角には、畳ベッド、というものだろうか。

それが置かれている。

他にも、座椅子やそれに合わせた机、薄型壁掛けテレビなど。

それなりに高級な旅館に箪笥などを置いた、と言えば想像しやすいだろうか。

 

さすがに、自室みたいに自動で開くクローゼットとか引き出しとかは無い。

 

「いつも通り風呂は自由。 ご飯は朝7時から9時、昼11時から13時、夜18時から24時まで。 好きな時間にリビングにおいで。 一応、これから夕飯だから、食べてないならどうぞ。

……まぁ、朝は俺死んでるだろうから、キッチンに立ってる誰かに声掛けて。

服に関してはー……後でタンス覗いてみ」

 

「ふふっ、はーい。 ありがと、ハルくん」

 

「気にすんなー」

 

その心遣いが、私の心を暖かくしてくれる。

 

「ありがと」

 

部屋から出ていく晴明君に聞こえないように、もう一度呟く。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~

さて、どうしたもんかな。

 

「ストレア、明日奈んちに電話しなきゃなんだけど……」

 

「あ、もうしておいたよ。 家出してるので、うちで預かってますーって」

 

「反応は?」

 

「一瞬ふじこしそうな感じはしたけど、すぐ冷静になって帰ってくるよう説得出来ないか、って言ってきた」

 

「ほう、それで?」

 

「えーと……家庭の事情はこっちじゃ分からないけど、帰りたくなるまでは居させてあげたいって言ったら分かりましたって強めに言ってガチャ切りされたよ」

 

「そっかー……ん、ありがとうストレア」

 

ふじこるとかこっちでもあんのか……

とりあえず、結城家には連絡済。ポリスメンとか呼ばれても誘拐とかじゃないんで問題なし。

明日奈が帰る気になるまでは帰れとは言うつもりない。

 

まぁもしお母さんが乗り込んでこられたら俺特製の筋肉空間に送り込むが。

 

……んまぁ、こんな所か。

 

とりあえずのやることは終了。

あとはまぁ、居させてあげられるだけ居させてあげる。

 

……あ、やべやべ、鍋に火かけっぱなしだった。

 

本日の夕飯はシチューなのだ。

火にかけっぱなしにしてると煮込まりすぎるからなー。

 

カレーは辛さ増すけどシチューは……まぁ、あまりあじ変はしないか。

 

台所へと戻れば、火加減を調整してくれていた紗知に礼を言い、その隣に立つ。

 

「ねぇ、セイメイ、今の人って……?」

 

「あぁ、明日奈だよ。 ほら、前話したろ? 一番最初に俺の嫁になったって」

 

「……あー」

 

「微妙に覚えてなさそうな声で頷くな……」

 

紗知(サチ)。 記憶を無くし、生まれを亡くし、存在さえも失した少女を俺が保護した。

 

『記憶は無いけど、生きていたい。 生きていかなきゃならない。 私の代わりに、命をなくした誰かのために』

 

あの日見せた信念の欠片を、記憶をなくしても大事に抱えている少女を、俺は放っておく事が出来なかった。

 

だから引き取った。

……さすがに、サチ、というプレイヤーネームだけの、名前もない状態だと色々不便だから、と葉山 紗知(はやま さち)の名前をあげた。

 

もちろん、正式な書類なども菊岡に手伝ってもらいながら仕上げた。

 

養子、ということになっているのだが……

 

今この家に俺の両親はいない。

つまり、養子縁組を組める人間がいないはずなのだが、何故かニミュエ……葉山 二三江(はやま ふみえ)が養母になっている。

 

宇宙猫。

 

どういうことだってばよ、ということで戸籍なんかも市役所で出してもらったら、しっかり親が二三江となっていた。(あとついでにいうと、(ユイ)(レイ)……ストレア)

 

……閑話休題(それはそれとして)

サチは晴れて葉山家の一員となったのだ。

 

「セイメイ、焦げちゃうよ?」

 

その言葉に記憶の箪笥から顔を引っ張りあげられ、あわてて目の前でかなりぐつぐつ煮立ちはじめたシチューの火を止める。

 

「あぶねー……ありがとう、紗知」

 

「ふふっ、どういたしまして」

 

夜飯台無しにしたらみんなから怒られてしまうから、紗知の注意は助かった。

 

「それじゃあ、各々よそって持ってけー」

 

シチュー用の皿、ご飯用の皿、シチューライスの皿をそれぞれ用意し、スプーンと胡椒を含め、各々で持ってけ、と指示を出す。

俺はシチューライス派。

 

それぞれがそれぞれの好みによそい終わり、席に着いた所で明日奈がリビングへとやってきた。 しっかりお腹鳴らして。

 

「あはは……お腹すいちゃった」

 

「いらっしゃい、明日奈。 今日はシチューだから、ビュッフェスタイルみたいな感じだ。 好きによそってくれい」

 

「ん、はぁい」

 

「星型の人参とか、いっぱい切ったんですよ」

 

「あたしもあたしもー」

 

「ストレアはソファでゲームやってたろ。 バッジは何個集まった?」

 

「んーと、まだ6個」

 

「それ、サボりじゃ……?」

 

あははは、と食卓は笑いで包まれる。

明日奈がよそい終わり、椅子に着いては、皆でいただきます斉唱をした。

 

 

 

 

~~~~~翌日~~~~~

14時30分。

明日奈はユイを伴ってALOへとダイブして行った。 ユウキとのデュエルに行ったのだろう。

それを確認してから、夕飯の仕込みを始める。

と言っても、今日は簡単なものにする予定だ。

シチューもあと1回分は残っているため、付け合せをちょこちょこっと作るだけ。

ちょっとした肉料理、酒のつまみを作っていく。

 

……そんな中、どうするか、という思いが唐突に出てきた。

それを振り払うかのように、フライパンを揺らし続ける。

 

だが、考え始めてしまったソレを唐突に放棄することは出来ない。

 

どうするか……ユウキのAIDSに関しては、かなり末期だと言われている。

彼女にその話を持ち出しても多分……いや、確実に拒絶するだろう。

 

なら、勝手に治すか……?

それもダメだ。 あとの揺り戻しが怖い。 あるかわかんないけど。

 

「となると、根気にかけるしかないか……?」

 

「なんの話?」

 

「あぁ、いや……」

 

紗知がひょこりとキッチンに現れた。

自分一人で解決出来れば良かったが、いい解決法が思い浮かばない。

これ幸い……という訳では無いが、他の意見も聞きたかったため、ちょっと濁しながら問いかける。

 

「……ゲームの話なんだが、一人の女の子が病気と戦っているが、ソレの手助けをするか待っているか。 どっちにしたらいいのかなぁってさ」

 

「んー……私なら、手助けしちゃう、かなぁ……?」

 

「ほう、どうして?」

 

「……手助けして貰えると、それだけで勇気が出るから。 立ち向かうことが出来るから。

私も前に、誰かに助けて貰って、勇気をもてた様な気がするから……っていうのじゃ、だめかな……?」

 

「ダメじゃないさ。 俺とは違う意見が欲しかったからね」

 

ふむ……SAOの記憶が少しでもあるのだろうか?

あの砂漠の階層の……

 

「あ、また焦げるよ」

 

「わ、とっ、と……」

 

焦がすと文句言われる。

フライパンを揺らしながら、紗知の頭を撫でて。

 

「ありがとう紗知。 参考になったよ」

 

「どういたしまして」

 

ふりふりと手を軽く振りながら、キッチンから出ていく紗知。

それを見送ってから、フライパンの上を転がしていた肉料理を皿に盛り付けては、冷まし始める。

温めても美味しい、冷めても美味しい鶏皮胡麻甘だれ。

 

それにラップをかけてから自室へと戻る。

明日奈とユウキを追うつもりだ。

 

ベッドに飛び込み、アミュスフィアを被る。

 

「リンク・スタート」

 

その起動句を入れれば、即座に俺を電脳の世界へと意識を飛ばしてくれる。

 

短い起動プロセスと七色の虹彩が過ぎれば、目の前はもう仮想世界。

ALO内に存在する浮遊城アインクラッド・22層の森にあるログハウスで目覚める。

 

Привет(プリヴィエィト)、セイメイ」

 

「ん、あぁ、こんにちは、セブン。 来ていたんだ」

 

「えぇ、仕事も一息ついたから、その気分転換も兼ねてね」

 

「ほう、お疲れ様」

 

「ありがと。 それで……引き止めたわたしが言うのもナンなんだけど、急いでなかった?」

 

「せやな、急いでた。 また後で」

 

「えぇ、До свидания(ダズヴィダーニヤ)セイメイ」

 

久しぶりに来ていたセブンとの挨拶を軽く済ませ、ログハウスを飛び出る。

 

星空色のロングヘアをたなびかせて空を駆る。

 

 

 

~~~~~~~~~

「……わたし、かなり扱いが雑ね。 せいどれいになれって言ったのに、あんまりそういったことしてくれないし」

~~~~~~~~~

 

 

 

……あれ、そういえば……現実で病院に行ってから色々やれば良かったのでは?

 

今更な思考が頭を占める。

現実の方が色々やりやすかったりするが……まぁいいか。

 

とりあえずは……と、スリーピングナイツのメンツとアスナの顔合わせには間に合ったようだ。

 

アスナ達の声が聞こえる位置に陣取……る前に、今の姿をセーブ。

モブっぽいシルフの姿へと体を作り替えてから陣取る。

 

自己紹介は既に済んでいるようで、今は作戦会議中のようだ。

 

……未来視みたいなチートあるかな。

 

チートウィンドウを久しぶりに呼び出しては、それのMOD一覧もどきを呼び出し、スクロール。

選択したキャラの未来を表示できるソレを発見しては、取得し、そのまま起動してユウキへ照準を合わせる。

 

………………

あぁ、そうか。 そうか……なんだ。 なら、これは必要ないな。

 

数分しかこの場に居ないが、気にせず立ち上がり、店の外へと出る。

 

「はは……あぁ、そうか……そうか……クリアが早かったからか……? それともリーファが来たからか……? なんだっていいさ。 彼女がアスナと一緒に生きているなら……」

 

空を見上げ、息を吐き出し、彼女の未来を思いながら、小さく零す。

 

俺の力が必要とならない未来。

俺の力がないと実現しないと思い込んでいた未来。

 

ここでは無い……いや、このザ・シードの中でもない、かの地下世界。

アンダーワールド。

そこで剣を振るう、剣神。

 

VRワールドではない、現実世界。

(見た目)木造住宅。

白銀の瞳を持つ管理者、紫紺の髪を持つ少女。 2人が言い争い、終いには共に笑いあう。

 

そんな未来が見えた。

見えてしまった。

 

「なんだよ、かなり色々考えてたのに、全部無駄になっちまった」

 

だがそれでいい。

 

「……あぁ、みつけた。 ここにいたのね?」

 

かなり歩いてしまっていたのか、路地裏に来てしまっていた。

そんな俺を見つけてくれた、水色の虹。

 

「……おいで?」

 

どんな顔をしていたのだろう。

優しく手招きをされてしまえば、抗うすべはなく、その小さな胸に収まってしまった。

 

情けなく、みっともなく、大人気なく、小さな女の子の胸で、泣いてしまった。




はい。

晴明がなにかする必要はなかったのよ。

晴明が来た、というだけで紫紺の妖精は回復へと向かうのだから。


自分で書いといてアレなんだけど……一瞬泣きそうになっちまったよ。
また次回、会いましょう。


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第30層・もう30層だってよ!

30話達成!!
久しぶりにここまで続いたよ……ありがとう皆……

1話から見てくれている人、見てくれていた人、最近見始めた人、私の更新が遅すぎて見るの辞めちゃった人。
全ての人に感謝を。
……こういうのは50話でやるもんじゃないのかって?
また失踪するかもしれないから、30話でやるのじゃ。


「……っ、あっ♡ せいめっ、はげしっ…♡」

 

「っ、っ……♡」

 

ユウキがこれから先、生きていくという安心。

小さな女の子相手に泣き顔見られたという恥ずかしさ。

セブンのバブみ。

単純にむらむらした。

 

それら全ての要因が合わさってしまった結果、今に至る。

 

小さな膣は俺の剛直全てを飲み込むことが出来ておらず、少し動かしただけで子宮口をノックしてしまっている。

 

小さいオナホを無理やりこじ開け、子宮口すら押し広げて子宮内に侵入する。

入り込んだちんぽをがっちりホールドするように子宮口が収縮し、雁首の下の隙間を埋める。

先端を子宮壁にくちゅくちゅと擦りつけ、雄汁を出すために先走り液を塗り込む。

金玉の中身がぐぐっとせり上がってくる。

 

「あっ♡ あ、んっ…せいめいっ、でそう? いいよ、だして、ほしい……っ」

 

「っ……♡」

 

俺は腰を振りながらセブンの体を抱き締め、その小さな口を口でふさぐ そしてそのまま一滴残らず精液を流し込み、大量の精液で子宮を満たす。

子宮に入りきらなかった分は逆流し、結合部の隙間から溢れ出す。

 

「んむっ!? ん、んっ、んっ……♡」

 

小さな舌に自分の舌を絡めながら最後の一滴まで流し込む。

もう入らないと、そう分かっていても、本能がそうさせる。

 

「ぷはっ……はぁ……はぁー……はぁー……」

 

長い射精を終え、ゆっくりとちんぽを引き抜くと、ごぽっと膣から精液が溢れ出す。

 

「あ、あぅ……♡」

 

セブンはぴくぴくと体を痙攣させながらベッドに倒れ込み、そのまま意識を失う。

俺はそんな少女の頭を撫でながら、小さくつぶやいた。

 

「ありがとう、セブン……」

 

 

~~~~~~~

「はぁぁぁぁ………やっちまった」

 

1人、ゆっくりと星色の髪を靡かせながらイグドラシルシティを歩く。

 

もちろんしっかりとセブンに謝り、セブンがログアウトするのを見届けてから街に出ている。

 

……セブンはもっと激しくてもいい、なんて言ってたが、まぁ、うん……

多分アスナよりレインにシメられる。

 

「……エクスキャリバーでも取りに行くか」

 

どうせ明日まで暇だろうし。

という雑な理由から、ソロでスリュムヘイム攻略へと乗り出すことになった。

 

「ヘイムダル、聞こえているか。 ビフレストでスリュムヘイムまで送ってくれ」

 

『了承・虹橋・起動』

 

久しぶりに声をかけたが、ヘイムダルは不満すら言わずに虹の橋ビフレストを起動してくれた。

前と同じ虹のゲートみたいな物が現れ、そこに入れば歪みが起こり、氷の城の最上層へと出てきた。

 

「さてここからが本番です。 出入口に背中を向けて、右に1歩、左に3歩進みます」

 

言って、右にカニ歩きで1歩。 左に3歩動く。

 

「続きましては、背中を壁に押し付けながら、2歩後ろに下がります」

 

2歩、とは言うが、壁に背中を押し付けているため動けない。 だが足踏みすることは出来る。

 

「そして、最後に拾うモーションをするとあら不思議。 無を取得」

 

「 」を手に入れた。 というテロップが表示されたのを確認すれば、それを実体化。

無を実体化とかどうやってんのって言われそうだが、気にしないで欲しい。

 

掌に感触と重さを感じる。

 

その取り出したままの無を手に持ったまま、スリュムヘイムの縁に立つ。

足を広げ、その下を潜らせるように無を出入口に投げ放てば、一気に下に行ける階段が出現した。

 

「ショートカットになるだけじゃなく、スリュムにも大ダメージが与えられるトンデモアイテムって凄いよね。 アイテム欄に勝手に戻るし」

 

そう、このアイテムは使ってもアイテム欄に勝手に戻るのだ。

無を使うってよくわかんないけど。

 

まぁいいや。

 

階層をスキップ出来るグリッチ……バグ……? を使用して出現させた階段は、割と不安定なようでちょくちょくラグが起きたり体が半分になるような感覚を受ける。

 

誰も見ていないからと、体半分の感覚を受けている時に「デュアルコアCPU」とかアホみたいな小ボケカマしながら下へ下へ。

 

外から見たら3階層位であろう場所に到着。

少しの迷宮、大きめのボス部屋。

サソリだかムカデだかがいるって話だ。

 

グングニるかレヴァればすぐに終わるかなぁ。

 

ボス部屋までの道を進み、巨人の首を跳ね飛ばし、あっという間に巨大なボス部屋の扉の前まで到着。

 

寄り道して宝箱開ければいいのにって思ったが、まぁ……それで遅れたらユイにどんな顔されるか分からないから……

 

「ほな、おぷーん」

 

ぐいっと軽く押し込めば、反対側の壁まで扉が吹っ飛ぶ。

STRが高いとかそういう訳では無いはずだが……

 

「まぁ、よく分からないがボス戦ボスせ……」

 

壁まで飛んで行った扉の向こうで、ムカデだかサソリだかの節足動物みたいな足がポリゴンに変わったのが見えた。

 

「……はよ帰れって……?」

 

軽くショックを受けながら、壁に埋まった扉の下に出現した通路を通る。

 

 

 

~~~~~~~~~~

「そういえば、この通路って……」

 

3層と4層の間の通路には、|フレイヤ<髭のデカいオッサン>がいる。

セイメイからはまだ見えていないが、カーブの終端辺りにフレイヤが閉じ込められている氷の牢がある。

別の道が無いため、必ずそこを通らなければならない。

 

「……」

 

なにかおかしな所はないか、というようにセイメイは自分の体を見回す。

 

160cmの高くもなく低くもない身長、腰あたりまでの長さで、さらに片目を隠した星空色のロングヘアー、暗い青色の服、腰に佩いた主神の剣、黒のブーツ。

 

無いな、と頷くセイメイ。

もしあったとしてもNPCであるフレイヤには一切関係がない。

もし中身がいれば変わるだろうが、それは無いだろう。

 

「あ、でも……おっさん化するんだろ……? どーすっかな」

 

原作通りなら巨大化するわおっさん化するわな(偽)フレイヤ。

それが嫌なのか、フレイヤ本人がいいのか、ブツブツとチートウィンドウを表示している。

 

「……介入して……クエスト内容を変更……トールじゃなくてマジのフレイヤにして……」

 

フレイヤ本人の方が良かったようだ。

 

数分で設定を完了させたセイメイは、チートウィンドウを消してからずんずんと奥へと進む。

カーブしている通路を進めば、右手側に簡易的な牢屋が見えてきた。

中にはもちろんフレイヤが居る。

 

「もし、そこの方……っ」

 

足音が聞こえたのだろうか。

まだ向こうからは見えていないのに声を掛けてきている。

その声に応じるかのように早足で牢屋の近くまでよれば、息を飲む音が聞こえた。

 

「オーディン、様……」

 

「……フレイヤ。 まさか君がここにいるなんてね」

 

セイメイをオーディンと呼んだ。

ならば、と頭を回し、オーディンとして振舞おうとロールプレイする。

 

「トールにでも頼まれたか? ミョルニルをスリュムに奪われたから取り返すの手伝え、みたいな」

 

「……その通りですわ。 スリュムに取り入り、ミョルニルを取り戻せばすぐに駆けつける、と仰っておりましたが……」

 

「まだ取り戻せていないから駆けつけない、と……」

 

頷くフレイヤ。

その辺はチートで覗いていなかったのだろうセイメイは、ふむふむと顎に手を当て頷いていた。

 

「なら、私と来るか?」

 

「っ……オーディン様と?」

 

「あぁ。 スリュムに用があるし、フレイヤ……君にも色々してもらいたいことがあるからな」

 

色々と、と再度呟く。

それが聞こえていたのかいないのか、フレイヤは傅く様に片膝座りになり、頭をセイメイに下げる。

 

「主神の御心のままに」

 

フレイヤがセイメイにそう言うと、セイメイは主神の剣を一閃。

フレイヤを捕らえていた氷の牢屋と手枷を壊す。

 

「ありがとうございます、オーディン様」

 

「あぁ」

 

パーティ申請をしてきたフレイヤに許可を出し、パーティへと加入させると、視界の左上にフレイヤの体力バーが表示された。

原作通りMPが異様に高い。

だがまぁ……多分あまり使わないだろう。

 

セイメイは小さく苦笑いしながら、フレイヤを伴い4層へ続く道と階段を踏破する。

 

階段を降りきった先には、3層の扉よりも大きい扉が鎮座していた。

軽く押すがビクともしない。

流石に3層よりは重く硬いようだ。

 

「いいか?」

 

「はい。 オーディン様の御心のままに」

 

その言葉に合わせて多量のバフをセイメイに付与していく。

それを確認してから扉を蹴り開ける。

 

『ほう……まさかアース神族の大将が出張ってくるとはな?』

 

「ぶぇっくし」

 

『ふっふっふ、風邪か? オーディンともあろうものがか』

 

「さみぃんだよお前の鼻息!」

 

『お大事にな!』

 

「やかましいわ!! つか話聞け!」

 

「……オーディン様、オーディン様」

 

「分かってるよ」

 

どこかの魔王のようなテンションでセイメイの身を案じてくれる巨大な髭にキレるが、背中側からドスドスと肘打ちしてくるフレイヤに分かっていると返しながら頭を冷静にして。

 

『それで、アース神族の大将が余に何の用だ? まさかとは思うが、余とそこなフレイヤとの婚姻の見届け人でもしてくれるのか?』

 

「熨斗袋にゲイボルグ包もうか? 簡単に死ねるよ? つか死ね?」

 

『まぁ、そうであろうな。 ではそうさな。 死合いぞ』

 

影に隠れていた部屋に火が点る。

長い廊下の先に見える青白い巨人。

その巨人は白い息を吐き出しながら立ち上がり、7本のHPバーを表示させる。

 

「斬奪」

 

ソードスキルでも、ただカッコつけで言った訳でもない。

それこそ、活人剣を旨とする機械仕掛けの殺人鬼の剣が如く。

主神……戦神の刃を引き抜き、

一歩で音超え、

二歩で肉薄、

三歩で心の臓を抉り、

四歩で心の臓を奪い、

五歩で握り潰す。

 

7本あったHPバーは一撃(?)で全て消し飛んだ。

霜の巨人族の王はただの電子の欠片へと崩れ去った。

 

「えっ……?」

 

「何を驚いている」

 

「いえ、でも、その、え……? ど、どういうこと、ですか?」

 

「……神核を砕いた、と言えばわかるか?」

 

「全く!」

 

でしょうね。

神核とかいってるけど、ただ心臓握りつぶしただけ。

それをしただけでスリュムは崩れ去ってしまった。

 

「分かりませんが、とりあえずスリュムを倒した、ということでいいですよね」

 

「あぁ。 それじゃあ……」

 

チートウィンドウを表示。

フレイヤのステータスを奴隷へと書き換える。

もちろん、現実への拉致もする。

 

「……承知しました、ご主人様」

 

打ち込んだチートがしっかり根付いたのだろう。

セイメイを見る目にはハートが宿っていた。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~

「はぁぁ!? また1人増えたの!?」

~~~~~~~~

 

 

 

 

「……」

 

「……はぁ……見境無さすぎだよ、まったくもう……」

 

葉山家リビングにて、新しく増えたフレイヤと一緒に葉山家メンバー達+明日奈の視線を受け、正座でハリネズミになっている。

 

「いや、その……可愛かったもので、つい……」

 

「……つい、じゃないでしょ!

ハーレム目指すのもいいけど、全員しっかり管理できてる訳じゃないんだからね?」

 

お隣の直葉ちゃんとか、シリカちゃんとか! と痛いところを的確に突いてくる細剣使いの明日奈さん。

せめて管理以外の言葉でまとめようよ明日奈さん。

 

「いやぁ、あのー……でも……」

 

「でももへったくれも無いわよ。 ……だからといって返して(帰して)来なさいとはもう言えない……よね?」

 

「……言えない!」

 

言えないことは無いが言わない。

 

はぁぁぁ………と大きなため息を出し、しょうがないなぁ……という雰囲気を出す明日奈に内心ドキドキな晴美。

 

「まぁ、ここはハル君のお家だから、私が何か仕切ったりとかできる訳じゃないから文句は言わないけどさ」

 

……許された?

明日奈のしょうがないなぁ顔を見つめるが、変化は無い。

つまり、許されたのだ。

 

良かったぁ……と一息つくが、大事なことをひとつ忘れていた。

 

夕食、1人前足りない。 ということに。




シレッとエクスキャリバー回収忘れてる。

スリュムヘイム残ったままなので、今度取りに行きましょうねー。

「……マザーズロザリオ編終わったらどうするのさ」

取りに行かずにアンダーワールドにぶち込むからよろしく。

「よろしくじゃないんだが!?」




あ、そうそう。
今回、始めの濡れ場はAIのべりすとを使用してます。
ちょっと違和感あるかもだけど、生暖かい目で見守ってやってください。

あと、深夜テンション+頭痛で変な感じになっとるとこもあるので、そこも……


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第31層・一方通行

サブタイにルビ振りって行けるのかな?

だめでした。

そういえば、晴明の呼び方が「ハル」で固定されそうだな?



昨日の夜はしっかり明日奈達に怒られ、搾られ、かなりカラッカラになってしまっていた。

だが、今日もまた新しく、だが忙しく、今日を生きる気力と精力とぱわーとパワーとPOWERが溢れる。

 

要は朝勃ち。

 

昨日取り忘れていたエクスキャリバーはこんな所にあったようだ。

 

「すぅ……」

 

それはそれとして、今晴明の横に眠っている金髪について説明をしよう。

 

彼女はフレイヤ……|葉山 焔<はやま ほむら>

 

世間の扱いとしては、晴明の叔母に当たるように設定してある。

両親にするとかなり面倒なことになるだろうという判断から、そういうことにした。

 

まぁ、そんな叔母が晴明のベッドでおっぱい丸出しの状態で横になっているという久しぶりな事態に晴明の頭がショートしかかる。

 

小さく息を吐き、それを収めてから、風邪ひかないようにしっかり布団をかけてやってから着替えを始める。

 

と言っても、また後でベッドに横になってALOへとダイブするのだから、動きやすいジャージだ。

 

クローゼットから適当なのを引っ張り出し、それを着込んでいく。

 

寝る時に邪魔になるからとバッサリ切り落としたようにしてある髪を一部長くし、ソレを三つ編みに。

小さなお下げみたいにしつつ、こんな感じで大丈夫かなと備え付けの鏡に目をやる。

 

黒い外ハネショートに耳の前に三つ編み。

ちょっと強気な赤目なつり目。

胸も控えめ……というかまな板。

そのため、未だに張ったままのテントが見える。

 

「どうすっかな……フレイヤを……?」

 

焔を生贄に朝勃ちを治めるか、それとも……と悩んだ結果、結局朝勃ちしたまま1階へと降りる。

 

「おはよ、明日奈」

 

「おは……おそよう、ハルくん。 もうそろそろ14時だよ?」

 

「あー……ごめん。 休みだと起きるのが遅くなっちゃうから……」

 

「あはは……まぁ、それがハルくんらしいというか……」

 

「ぐぬぅ ……まぁいっか。 そういえば、今日予定アリだろ?頑張って行ってきなね」

 

「うん、がんばってくるね」

 

とは言っても、何処か行く訳ではなくスリーピングナイツの面々とボス狩りに行く予定だ。

つまりベッドの上でバーサーカーになるわけだ。

 

……それは置いておいて、冷蔵庫の中にあった|誰かが買ってきてくれていた<ユイのですとしっかり書かれた>プリンを食べる。

 

「それじゃあ行ってくるね」

 

「あぁ、いってらっしゃい」

 

フリフリと軽く手を振ってリビングを出ていく明日奈を同じように手を振って見送る。

 

「……ぷっちんしてもよかったかもな」

 

カップを濯ぎ、しっかりゴミ箱に捨ててから部屋へと戻る。

 

この後ユイにガン泣きされるとも知らずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~

第27層、ボス部屋前。

 

「コミケ?」

 

「なわけないだろ。 これからボス戦やるんだよ」

 

「ほぇ~?」

 

「てなわけだから、ここから先は今は通行止めだ」

 

「そっかー」

 

じゃあしょうがないなー、という感じでその場を後にする。

だがもちろん何もしない訳では無い。

アスナやユウキ達が来るまでに少し数を減らしておくつもりだ。

 

とは言っても、大掛かりな仕掛けやら何やらを用意している暇も手間も時間も無い。

やるならアサシネイト。

 

暗殺するならセイメイの格好……星空色の髪型や群青より深い黒の鎧などはバレやすい。

ので。

 

回廊を埋めつくしている多種多様な種族からなるギルド連中から離れ、誰もいない所へダッシュで行く。

 

(ここまでの人数が来ているなら、あと数分から十数分でアスナ達は戻ってくるだろう。 しれっと追加されてるプリセット機能をしてみるか)

 

いつの間にか、アバターメイクの画面にプリセット機能が追加されていた。

なに、なんか投稿フォームとかあんの? どこの運営だよ。 アプデ告知してよ。

頭の中でニコニコしてそうな動画のコメントが流れながら、それを開く。

ずらっっっ……と今まで……前世と今世に見てきたアニメキャラや人物の一覧が表示された。

男から女。 果ては動物まで。

 

ここまであるなら、彼女にしよう。

どう足掻いても暗殺に向いてなさそうな服装だけど。

 

セイメイはとある魔法科高校の生徒を洗濯する。

黒髪ドリル、赤と黒のフリフリしまくったゴスロリ、さらにフリフリしてるヘッドドレス。

羽根や耳はさすがにバレるからと、しっかりスプリガンにしてある。

 

「さて……」

 

超すごい硬いピックを数十本手に持ち、ALOでは本来起動しない魔法を自信に転写。

擬似的な瞬間移動……特定の空間同士を入れ替え、瞬間移動に見せかける魔法を行使。

知らんギルド連中の最後方の天井に張り付く形でスタンバイ。

 

誰もこちら側を向いていないタイミングで超すごい硬いピックをギルド連中の無防備な頭目掛けて投げつけていく。

 

「かっ」「こっ」「あふん」

 

変な声漏らしたりして消滅する変人共数人。

 

「……本数足りないや」

 

最後方の数十人を消し飛ばしただけで超すごい硬いピックは無くなってしまった。

 

あまりなかったため仕方なかったが。

 

「なんだなんだぁ? 回線落ちか?」

 

「と言う割には死体残ってるけどな。 おーい、聞こえてるならさっさと戻ってこいよー」

 

死体残るの忘れていたセイメイは頭を抱えている。

 

ここはSAOではないのだ。

 

仕方がないからと擬似瞬間移動を再度使用し、今度はちょっと離れた位置に飛んだ。

 

そして、誰かにメールを送っていた。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~

ひとつ向こうの十字路からガヤガヤと声がする。

そろそろ来たようだ。

 

姿をいつもの星空色の髪の姿……いや、髪の先端から中頃まで白夜の如き白へと変えた姿に変え、ローブを被り、ギルド連中に紛れるように隊列に加わる。

周りに気づかれないようにチラチラ周りを見れば、同じような格好をしたプレイヤーが数人紛れている。

 

『この層は無理でも、次の層は……皆で絶対に倒そう!』

 

アスナの声が回廊に響く。

あぁ、その啖呵は、凄くいいな。

 

「……っ!」

 

一気に地面を踏み込み、ギルド連中の増援部隊を一息に踏み越える。

スカートだけどね。

見せパン履いてるからね!

 

着地の瞬間、主神の剣を地面に突き刺し、速度を殺す。

 

ゆっくりと星空と白夜の髪を靡かせながら立ち上がりながら。

 

「悪ィな、こっから先は一方通行だ」

 

背後から息を飲む音、セイメイの名を呼ぶ声、困惑の息遣いが聞こえる。

 

だが、振り向かせてはくれないのが目の前のサラマンダーだ。

 

「おいおい……戦神さんよ。 いくらあんたでもこの数を喰うのは無理じゃね?」

 

「さァ、どぉだろぉなァ? 試す事は無かったンでなァ?」

 

「まぁ、そりゃそうだ。 そんじゃたっぷり味わってくれ」

 

そう言って目の前のデコ出しサラマンダーが隊の真ん中辺にいるメイジ隊へと声を掛ける。

 

聞こえ始める魔法詠唱。

 

槍、矢、追尾弾。

 

魔法自体使うことは少ないセイメイだが、魔法剣士を始めたサチの詠唱を聞いているため、色々覚えてしまった。

そのため、今聞こえてくる文節を聞くだけでどんな魔法が飛んでくるか分かる。

 

それはそれとして遅い。

同時発動してセイメイにぶつけるつもりなのだろう。

だが遅すぎる。

 

『多重・高速詠唱』

 

さすがに待つ必要が無いと感じたセイメイが4つの魔法の同時詠唱を開始した。

セイメイが放つ魔法は斬撃、刺突、打撃、爆裂。

 

シレッと同時詠唱をしているが、文字、音程、強弱、指の動きの4種で魔法を起動している。

 

魔法ではなくSSでも良さそうだが、セイメイの癖であるなんとなくだろう。

 

射出される魔法にそれぞれ対応する武器を取りだし、それに魔法を付与し、迎撃させる。

爆裂のみ武器は使わず、増援の半分を消し飛ばす威力で投擲。

 

「セイメイ君!?」

 

「あぶなっ!!」

 

「あ、ごめーん!」

 

数人の女の子の声が、増援の後ろから聞こえてくる。

少し層が薄く、手伝いに来てくれた数人に被害が行きそうだった。

 

「ハルくん……みんな……」

 

「ここは俺たちが抑える。 最短で、最速で、真っ直ぐに! 決めてこい、アスナ!!」

 

「……うん!」

 

背後で細剣を抜剣する音が響く。

だが、セイメイはそちらを向くことなく主神の剣を構える。

 

「《招来》グングニル!」

 

単一式句を唱え、左手に|主神の槍<グングニル>を呼び出す。

すっぽりと収まる細枝のような槍は、見た目に反してかなり重い。

STR値が足りない訳では無い。

ゲーム的な力が働いているのだろう。

 

ソレをサイドスローでぶん投げ、同様に主神の剣もやり投げの要領でかっ飛ばす。

何故か? こうするためだ。

 

近場にいる、縦を構えたままのタンクサラマンダーに脚力のみで接近し、頭と肩を掴み引き裂く。

すぐさま近場にいた別なタンクに掴みかかり、首をへし折る。

ベクトル反転ー、とかやってみたいが、この世界では難しいだろう。

出来なくはないだろうが。

 

背後で扉が閉まるような音がする。

 

「……」

 

へし折った首を投げ捨てる。

そのまま伸ばした右手親指を立て、アスナ達の武運を祈る。

 

ごごん……と音を立てて扉が閉まりきった。

 

「さて……サチ、フィリア、レイン、あとクライン! 死ぬ準備はいいか!」

 

「「「やだ!」」」

 

「ですよね! ……んじゃあ、こいつら殲滅して、アスナ達に笑顔でピースしてやろうぜ」

 

「それならまぁ……?」

 

「ま、死なないなら安いんじゃねぇか?」

 

「あのゲームじゃないから、死んでも実際に死ぬわけじゃないし……」

 

「でもデスペナがね……」

 

各々がギルド連中を挟んでのんびり会話している。

それを黙って聞いている奴らでは無いが、それでも軽々処理されていく。

 

サチは飛びかかって来ようとするサラマンダー、シルフ、スプリガンをまとめて薙ぎ払い、返す刀(薙刀……? 槍……?)でその後ろにいたウンディーネを串刺しに。

レインはOSS、千刀流、サウザンド・レインで後方の敵を縦裂きにしている。

フィリアはちょこまか動き、敵に毒ナイフで麻痺や毒の状態異常にしていき、麻痺が切れそうになったら追加で麻痺を入れている。 麻痺ハメは普通に害悪戦法。

クラインは一人一人的確に斬り殺しているようだ。

 

ならば、とセイメイは、投げたら必ず戻ってくる槍とそれを使い無理やりひっぱりもどしてきた剣を掴み、目の前で狼狽えている増援部隊にのデコ出しサラマンダーの頭を切り飛ばすために飛びかかり、しっかり切り飛ばしつつ盾を構え突撃してきたノームの喉を槍で抉り飛ばす。

 

「49人ってこんなに多かったっけ?」

 

「あー……多分後から後から……逐次投入とかリスポーンしてるんじゃねぇか?」

 

「あぁ……」

 

クラインがこちらへと回ってきた為、愚痴……というか思ったことを零す。

 

「まぁ、ここまでやってるんだ。 相手方も相当御冠だろうさ」

 

「はぁ……ゾッとしねぇな」

 

「確蟹」

 

その蟹、食えたらいいんだけどなぁと軽口を叩きながら、迫るノームを叩き斬る。

 

「クライン、可愛い子とか女の子とかもしっかり斬るんだぞ」

 

「わ、わぁってるっての!」

 

「ならよし」

 

とは言いつつこちらに流れてくる敵の比率は男4に女6。

対してクラインは男7に女3。 しかも筋肉モリモリな女が多い。

 

「だぁぁ! やっぱり斬りにくいんだよぉ!!」

 

「草」

 

「あぁっ! セイメイてめっ、今笑いやがったな!?」

 

「ほれ、前向け前。 ファイヤーボールきたぞ」

 

「んぇっ!? だ、わっ、んげぇっ!?」

 

顔面クリティカル。

しっかり4分の1体力を減らしたクラインにヒールポーションを叩きつけてから、お返しにとグングニルを投擲。

ファイヤーボールをぶつけた魔術師モドキは逃げ出すが、グングニルは必中の槍。

どこぞのケルトの英雄が持つ一投一殺の魔槍とは違う。

アレ、投げ返せちゃうからね。

グングニルはよく心臓を外す槍とは違い、掴まれて投げ返されようが、狙った相手を確実に仕留める。

逃げた魔術師モドキを貫き殺し、セイメイの手元に戻ってくる。

 

「次だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

「……打ち止めか?」

 

さすがにゾンビアタック等をする余裕も装備も無くなったのだろう。

最後は呆気なくサチの一撃でこの戦闘の幕が降ろされた。

 

「お疲れ様、皆」

 

「「つかれたー……」」

 

「この借しは後で酒でも奢ってもらわにゃぁな!」

 

「今日のお夕飯はセイメイにも手伝ってもらわないと」

 

「っ、おいハルの字よぉ! おめぇマジでサチちゃんと同じ屋根の下なのかよ!?」

 

「あぁ。 言ってなかったっけ?」

 

「聞いてねぇよォ!?

……はぁ、ったくよぉ……アスナっていうキレーでカワイー奥さんがいるってのに、ほかの女の子にも手を出してるってのかよぉ……

これだからモテ男……いやモテ女……? ま、どっちにせようらやまけしからん。

1人くらい分けてくれよぉ……」

 

「いつかいい人見つかるよ。 知らんけど」

 

「「いや知らんのかい」」

 

クラインとフィリアのツッコミに笑っていると、唐突にポーン、という音がした。

 

ボス部屋のロックが解除された様だ。

4人を引き連れ急いでボス部屋を開ける。

 

「……あはは、本当に7人でクリアしたんだね」

 

セイメイの言葉に、激戦を戦い抜いた戦士たちがにっこにこしながらピースサインを見せてくれた。




「悪ィな、こっから先は一方通行だ」

「まさか、一方通行(アクセラレータ)!?」

「違います」

とりあえず、27層クリアです。
スリーピングナイツメンバーの取り入れはユウキだけですが、スリーピングナイツのリーダーなので攻略参加とかの強制はしないつもりです。
まぁ、もしかしたらスリーピングナイツ全員ログハウスに入り浸ってたりするかもだけど。

ニミュエなど大人組元NPCは社会人しているので、基本居ません。
クライン? あいつは年末年始配送の仕事ねぇだろ。 エギルは自営業なので論外。
ニミュエは何故か残業マシマシ休みナシナシなBLACKな企業。
フレイヤは何故か残業ナシナシ休みマシマシ給料大盛りな超ホワイト企業。
おかしいなぁ……?


という感じなので、もっと大人組と絡みが欲しい、みたいな意見がない限り、偶にえっちしに出てくるくらい、ですかね。

それでは、また次回お会いしましょう。


Ps.ネタが多すぎかどうか、皆さんの意見が知りたいため、アンケート設置致しました。
良ければ投票お願い致します。
結果によって、増やしたり減らしたりします。

Ps2. 後書きもルビ振れない……




次回はどうしようかな。
いっその事闇キリト君でも出す?
「スタァバァストストリィムゥ」
とかいうエロ漫画先生に一瞬でたキリト君。
ほらあれ……

「打倒角○文庫!」
達○「ふっ」
ホ○「わっちかや?」
キリ○「スタァバァストストリィムゥ」


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第32層・別離

一応、晴美の出身は現代日本。
どこかの作品のキャラとかではなく、現実……いま私たちがいる世界からの転移者、という感じです。
なので、2021年位までのアニメやゲームは色々知っています。

そこを踏まえて……踏まえなくてもいいや!
ゆっくりみていってね!!!!


27層のボスを倒したアスナとスリーピングナイツは俺たちの拠点となっているログハウスでささやかな打ち上げをやっていた。

その後に1層、黒鉄宮へと向かった。

 

だが、そこでアスナとユウキに何かがあったのだろう。

原作通りに、ユウキはアスナの前から消えてしまった。

 

多分姉ちゃんって呼んだのだろう。

 

ユウキは自分がもう長くは無い、と感じてしまっているのだろう。

 

だからアスナの前から消えた。

 

 

 

1週間程度時間が経ったある日、晴美の下に一通のメールが届いた。

 

紗知の担当医をしていた倉橋からのメールだった。

 

晴美の主観で要約した内容はこうだった。

1週間くらい前から塞ぎ込んでしまっている患者から何人かの名前が出た。 その名前の中にセイメイが居たから連絡をとった。 何か知っていたら……

 

晴美はそれに返事を出した。

もしかしたらだが、と前置きをしてから

全てでは無いが知っていること。

|連れ<明日奈>がかなり親しい間柄になっていたかもしれない事。

 

可能な限り倉橋に伝え、その患者に会うことは可能か、というお願いもした。

 

最初は渋りそうな字面だったのだが、可能な限り教えたからか、OKが出た。

 

学校から帰ってきた上の空な明日奈にもしかしたらユウキに会えるかもしれない事を告げる。

すると掴みかかりそうな顔でどこか問いかけてきた。

 

紗知が入院していた病院だと教えると、すぐに行きたい、と晴美に掴みかかりそうだった。

 

少し悩む晴美を明日奈がじっと見つめていた。

晴美はすぐに折れたようで、明日奈のライダースーツをチートで作り出し、それに着替えるように言った。

 

ぴっちりライダースーツの上に羽織るライダースジャケット、プロテクターなんかも用意し、晴美は自分の姿を作り替える。

少女の見た目から大人な姿へ。

 

それが終われば、車庫からスポーツタイプだが少し大型のバイクを運び出す。

道路に出る前で止めると、ちょうど明日奈が家から出てきた。

 

すぐに明日奈を乗せ、晴美も跨がれば、横浜へ向けてハンドルを捻った。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~

学校終わりからのバイクで1.3時間。

うっすらと赤く色付く空の下、目的地である病院へと到着した。

明日奈を下ろし、中に入っては、受付にてセイメイの名前と倉橋に用がある事を告げる。

おかけになって少々お待ちくださいと言って受付の人は奥に入っていった。

 

少しして、眼鏡の優男……倉橋が顔を出した。

 

私はただの付き添いですので、と明日奈を紹介しつつセイメイはここで待つことを選んだ。

 

ほぼ丸投げになっているが、倉橋は気にした様子はなく、請け負った、というように頷いてから明日奈を連れて行く。

 

戻ってくるまで時間はあるだろうから、と病院に併設されているカフェへと足を運ぶ。

 

……大丈夫だよね。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~

数時間ほど時間を潰していると、晴美が待っているカフェに明日奈が来た。

 

泣いたような微かな跡が残っているが、それを見ないようにしつつ帰るか、と晴美は明日奈を撫でた。

 

駐車場にあるバイクの元まで向かう最中、明日奈が

 

「……ねぇ、ハル君……」

 

と小さく晴美の袖を引っ張ってきた。

何事かと振り向けば、寂しそうな、悲しそうな、それでいて申し訳なさそうな曖昧な表情を作っている。

 

他人を……木綿季を巻き込む。 晴美を巻き込む。 そういった願いを持ってしまった。

そんな表情だ。

 

「ダメ。 他人の運命を無理矢理捻じ曲げることはしたくない。 特に、病気とか寿命とかで死ぬ運命の人をね」

 

「君がそれを言うのはだめじゃない……?」

 

「俺だからこそだよ。 あとはまぁ……死者や重病、難病なんかを治せてしまったら、今の医療が衰退していく。

俺が居なくなった後……あぁ、いや、今すぐにという訳じゃないから泣きそうな顔するなって……

まぁ、チートで病気などをかなり長い期間治していた俺が死んだりとかした場合、衰退している医学、医療はどうなる?」

 

「えぇと……パンクしたり、お医者さんがいなくなってたりする……?」

 

「そう。 そこで、俺が最初に言った医療が衰退していくってとこに繋がるわけだ」

 

うーん……? と説明が苦手な晴美に説明をさせた明日奈はまだ分からないと首を傾げたまま。

小さくため息をついた晴美はもっと単純に

 

「お金貰えないのに医者続ける人はいないでしょ。

……いるかもしれないけど」

 

医療機器然り、医療道具然り。

給料なんかもそうだ。

そういったものを貰ったり払ったり出来ないのに、医者、という職業につく人はいないだろう。

 

辻医者だろうが黒いジャックだろうが、対価を貰っているのだ。

 

「まぁ、要はチートを使ってまで人を治すことはしない」

 

「……じゃあ、医療のレベルをもっと上げたりとかは?」

 

「しない」

 

「……」

 

泣き出しそうな明日奈を見てしまうと、心が痛む。

仕方がない事なのだが、罪悪感がね。

 

「……まぁ、そんな事しなくても、いい方向には転ぶと思うよ」

 

ぽんぽんと頭を撫でてやりながら小さく呟く。

 

「えっ……それって……?」

 

「見てからの……というよりは……あー、なんて言えばいいんだ……? その日になったらわかる……でいいか?」

 

「なにそれ……」

 

とりあえずだ、と明日奈の頭を撫でてやりながら、停めてあるバイクの側まで行く。

 

「明日からもしっかり学校行くぞ?」

 

「……うん、分かってる」

 

ヘルメットをしっかり被らせ、ライダースーツのジッパーを上げさせる。

 

バイクに跨り、明日奈を後ろに乗せたら、割と強めにお腹周りを抱きしめてきた。

 

『あー……なんだ。 明日、楽しみにしててくれ』

 

『……えっ?』

 

明日奈の疑問に答えることなくバイクを発車させた。

 

 

数分後、ヘルメットに増設してあるマイクとスピーカーがあるのだが、ソレのマイクの方のボタンを操作し、同じように増設してある明日奈のヘルメットとのペアリングを解除する。

 

ポケットの中の自身のスマホに接続するボタンを押しては、S○riを起動する。

 

そのまま、どこかへ電話をかけはじめた。

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~

「明日奈、着いたよ」

 

「……うん」

 

川越の自宅へと戻ってきた晴美、明日奈の2人は途中あまり話をしなかったのか、雰囲気が暗かった。

 

「……ごめんハル君……今日、夜ご飯いらないや……」

 

「分かった。 バナナとかもあるから、もしお腹すいたら食べなね」

 

「うん、ありがとう……」

 

精一杯の笑顔を見せる明日奈。

やるせない気持ちや無力さでも感じているのだろう。

わかる、すっごいわかる。

 

ヘルメットを俺に押付けた明日奈は家に入っていってしまった。

 

「……もうちょっとちゃんとした説明出来たら良かったんだけどね……

……あ、もしもし」

 

家の扉が閉まりきっているのを確認すれば、またどこかへ電話をかけ始めた。

 

「はい、はい。 例の件で、倉橋先生と……はい、お願いします」

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~

翌朝

明日奈は1人で学校に向かったようだ。

 

ユイから、明日奈の様子が少しおかしかった事を聞き、ちょっとやりすぎたかも、と後悔していた。

 

……説明の方法とか、ユイを交えればすこし変わっていたかもしれない、と過ぎた時間に後悔をして。

 

だが、そうもしていられない。

 

晴美も制服に着替え、リュック型の鞄を背負い家を飛び出す。

 

一応、帰還者学校の生徒ではあるのだ。 サボりがちなだけで。

 

サボりがちだが、今日は必ず行かなければならないと、ガレージからスクーターを引っ張り出してきた。

 

それには一辺40cm程の青いキューブが括り付けられていた。

それに触れないようにしつつスクーターに乗り込み、ハンドルをまわしアクセルふかして文字通り家を飛び出でる。

 

そのまま、明日奈の行く先を迂回しながら、学校へとスクーターを転がす。

 

 

 

スクーターだから割と早くつける。

 

ソレを駐輪場にしっかり停め、鍵とかチェーンとかでガチガチにしてから、青いキューブに手袋をしてから触れる。

ソレを括っている紐を解き、持ち上げては、帰還者学校で数多ある部活のひとつであり、晴美含め部員が3人くらいしかいない『特殊科学技術研究部』……通称とっかん部の部室へと走った。

 

部室の中では、校長と明日奈のクラス担任が居た。

 

「おはようございます、先生方。

先日は相談に乗っていただいてありがとうございます」

 

「いやいや、構わんよ。

病気の少女を学校に通わせてあげたい、という君の気持ちに心動かされたのだからね」

 

「そう言っていただけるのなら幸いです」

 

チートは使用していない。

そうしなくとも、この学校の校長や先生達なら快く受け入れてくれると考えていたからだ。

……実際、帰還者学校の先生をやっているのだからね。

言い方は悪いが、お人好しが多いのだ。

 

「それでー……その箱がそうなのかい?」

 

「あぁ、いえ、これは素体です。 コレにアクセスしてもらって、体を作ってー……まぁ、その話は今度ゆっくり」

 

ぶっちゃけブラックボックスだから分からん、という表情を浮かべる晴美。

 

「で、少々失礼しますね」

 

鞄からスマホを取り出し、とある人物へと電話をかける。

 

「お世話になってます、葉山です。 はい、はい。 例の準備が出来ました。

そちらは大丈夫そうですか?」

 

とある人物……倉橋の直通のPHSに電話を掛け、準備が出来たことを告げると、後ろから元気な声で

 

『こっちも準備できてるよー!』

 

と聞こえてきた。

問題なさそうだ。

 

「それでは、これから作業に入りますが……その、キューブの都合上すっぽんぽんで出てくる可能性もありますので、先生方は一旦部室の外にお願いします」

 

世紀の発明を見れないとは……とちょっと残念そうな2人を部室の外に追い出してからスマホをキューブの上に乗せる。

 

とある世界……アズールレーンの世界から呼び出した箱、メンタルキューブ。

力の与え方次第で古の艦の力を行使する少女や別なナニカを作り出せる代物。

 

メディキュボイドに接続されている紺野木綿季という個人から意識の波長をこのメンタルキューブへと送り、そこからユウキの体を……

……まぁ、あれだ、アバター作成と似たようなものだ。

 

「倉橋先生、準備出来ました」

 

その言葉を合図に、一度通話が切れる。

すぐに電話がかかってくるが、その電話番号は倉橋のPHSでは無い。

俺はキューブに触らないようにスマホの通話ボタンを押す。

 

するとすぐにキューブがどろりと溶け始めた。

 

ユウキの意識をコピーし、最適な体を構成しているのだろう。

多分、木綿季に1番近い姿になるのではなかろうか。

 

ゆっくりと、溶けたキューブがひとつにまとまり始める。

時間にして5分くらいだろうか。

5分程でユウキの体が作り出されていく。

ALOで元気よく跳ね回る|闇妖精族<インプ>の少女によく似た姿に。

違うところと言えば、髪と瞳が黒に近い灰色、耳が人耳な位だ。

 

そしてやっぱり全裸。

 

キューブが完全にユウキの姿になったのを確認すれば、すぐさま毛布を召喚し、ユウキの上にかける。

 

「ユウキ、意識はちゃんとこっちに来ているかい?」

 

「うん、ばっちり来てるよ」

 

目を閉じたままにひひ、と嬉しそうに声を出す目の前のユウキ。

ほっと胸をなでおろしては、ユウキの体に触れていく。

 

「痛いところ、違和感があるところ、その他何か気になる箇所はある?」

 

「ん、ん……ちょっとまだ視界がぼやけてるかなぁ……? こう、寝起きで目を擦ったら……みたいな」

 

「……それなら多分時間が解決してくれるね。 じゃあ……」

 

「あーー!!」

 

「どしたよ!?」

 

「なんでボク全裸!?」

 

……それはね……と説明しながら、ユウキの体のサイズに併せた制服を鞄から取り出していく。

とりあえずはこれ着てくれ、と言っては、着替えを見ないよう、誰にもみられないように注意しつつ待つ。

 

「そ、そろそろ、いいよ?」

 

許可が出たので、そろりそろりと後ろを見る。

するとそこには、ALO寄りだがちゃんと木綿季の面影をもつ、帰還者学校の制服に身を包んだユウキが立っていた。

 

「えへへ……どうかな、似合う?」

 

「……あぁ、しっかり似合ってるよ」

 

一瞬涙が出そうになってしまった。

それをどうにか堪え、ユウキにイイネする。

 

「……なんだか久しぶりだなぁ。 校舎の匂いって言うのかな。校舎の匂いとか埃っぽい匂いとか。 VR世界だったらこんなの体験できないよ……」

 

なんだか目がしょぼしょぼしてきたよ……と目元をぐしぐし拭うユウキを撫でつつ、こちら側から声がかかるのを待っている校長達を入れて大丈夫かと問いかける。

 

「……余韻を感じさせてくれないタイプって言われない?」

 

「そんな余韻なんかに浸ってたら明日奈に会えないし授業にも出れんくなるよ」

 

「あー……よし! 大丈夫だよ」

 

目元を再度ぐしぐし拭い、問題ないとアピール。

それを聞いてから中に入ってきて大丈夫だと中から声をかけて。

 

「それで……成功したのかい?」

 

「はい、見ての通り。 成功しました」

 

「は、初めまして、|紺野 木綿季<こんの ゆうき>です」

 

ばっ、と頭を下げる木綿季を見てわっはっは、と笑う校長。

 

「あぁ、すまない。 しっかり成功しているみたいだね。 おほん、私はこの学校の校長です。 よろしく、紺野さん」

 

「はいっ、お願いしますっ」

 

「で、私が君がはいるクラスの担任です」

 

「よ、よろしくお願いしますっ」

 

かなり挨拶に全力な木綿季を皆笑顔に。

 

「うぅ……」

 

だが木綿季ちょっと恥ずかしいのか、対校長が苦手なのか、周りに聞こえない音量で唸っていた。

 

「ふっふっふ……いやぁ、申し訳ない。

……この調子であるなら、授業を普通に受けてもらうことは可能だね?」

 

「そうですね。 木綿季さん……あぁ、木綿季さんと呼んで大丈夫ですか?」

 

「あ、はい、大丈夫です」

 

「それでは……木綿季さんなら大丈夫だと思います」

 

校長も担任もにこにこしっぱなし。

転校生が初だから、という可能性が無きにしも非ずなためだと晴美は予想している。

 

「それでは……葉山君、先生と一緒に紺野さんを教室まで案内してあげなさい」

 

「分かりました。

……ありがとうございます、校長先生」

 

うむうむと嬉しそうに部室を出ていく校長に頭を下げる。

同じように晴美の近くで頭を下げる木綿季に笑みが零れる。

 

 

校長がいなくなったのを確認すれば、さて、と担任が声を出す。

 

「それじゃあ、木綿季さん、教室にいきましょうか」

 

「はい。 お願いします」

 

木綿季の言葉に頷いた担任は、木綿季、晴美を引き連れて部室を出ていった。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~

はぁ……ワクワクするなぁ……!

高校生活なんてしたことないからちょっと怖いけど、それでもすっごい楽しみ!

 

セイメイさ……違う違う……晴美さんのお陰でアスナとも会えるし、またしたかった学校生活も出来るし……なんて言うか、ボク、幸せ者だなぁ……

 

「大丈夫、木綿季?」

 

「うん、大丈夫、大丈夫……ちょっと緊張でね」

 

えへへ、と晴美さんに笑ってみせる。

 

……うん、転校したての子って、こんな感じだったんだね。

うぅ、自己紹介とかどんなこと言えばいいんだろ……

……えぇい、そんなこと考えずに、当たって砕けろ! 砕けちゃダメだけど!!

 

「さ、ここですよ。 私の合図で入ってきてくださいね」

 

「は、はい!」

 

「じゃあ、私はここで見てますね」

 

「えぇ、お願いします」

 

「よし、がんばるぞー……!」

 

晴美さんはここで見てくれてるし、先生も優しそうな人だから大丈夫……

 

大丈夫大丈夫、と頭で考えていたら、先生方中に入っていった。

 

「……見たら驚くぞー?」

 

晴美さんはそんなことを言うが、なんとなく罪悪感を感じているような表情になっている。

なにかしたのかな……

 

「はい、それじゃホームルームの最後に、転校生を紹介します。 入ってきてください」

 

あ、行かなくちゃ。

ボクはゆっくり顔を上げ、教室のドアを開けて教室へとはいる。

ゆっくり、ゆっくりと。

でも、ちょっとだけギクシャクしちゃう。

 

ぁ……

 

明日奈が居た。

すっごい驚いてて立ち上がっちゃってる。

晴美さんが言ってた驚くぞーって、明日奈のことだったんだね。

 

にっこりと笑みを見せながら、教壇の横に立つ。

 

うん、落ち着いた。

明日奈が見ていてくれるんだ。

落ち着かないわけが無いよ。

 

「はじめまして、紺野木綿季です。 よろしくお願いします!」

 

でも、好きな物とか、特技とか、全部端折っちゃった。

 

「ありがとうございます、木綿季さん。

それでは、席は……結城さんの横が空いてますね」

 

そこに座ってください、と先生に言われる前に明日奈の方に向かう。

 

「明日奈ぁ!」

 

「っ……木綿季!」

 

抱きついて明日奈の感触を確かめたいけど、流石にみんなの前じゃ怒られちゃいそうだから手を握るだけ。

 

ありゃ、明日奈泣いちゃった……

 

どうしたんだろ?

 

「明日奈……大丈夫?」

 

「うん、うん……大丈夫、大丈夫だよ」

 

ぽろぽろと溢れる涙を、晴美さんが入れてくれていたハンカチで拭いてあげる。

 

「……ありがとう、木綿季。 もう大丈夫」

 

「そう? 良かった」

 

「あー……そろそろ結城さんは泣きやみましたか?」

 

「あ、ご、ごめんなさい!」

 

いつの間にか女子ガードがボク達の周りに出来ており、男子や先生に見せない感じになってた。

 

しかも、泣き止んだのを確認すれば、忍者の如くさささっと自分たちの席に戻っていってたよ。

 

明日奈の隣に座り、晴美さんの方を見れば、手を振ってどこかに行ってしまった。

 

自分の教室に戻ったのかな?

 

……

 

「ありがとう、晴美さん」

 

 




はい。

メンタルキューブのくだりにつきまして。
メンタルキューブというブラックボックスでユウキのアバターを作成。
ソレをメディキュボイドに繋がった木綿季が動かしている……
要は、ALOのユウキが現実に来た、みたいな感じです。

……アバターは、ある時までそのままユウキのまま。

……NPCsとは違うからね。

それでは、また次回、お会いしましょう。





明日奈と木綿季の再開は、悲しい結末には絶対にさせねぇ。


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第33層・断章・1人は進み、1人は留まり、1人は……

今回は文章短めです。
活動報告の方に追加で書きなぐったものがあるからではありません。

では何故か?

……なぜ?


「はー……楽しかった!」

 

「それは、まぁ、良かった……なんだろうけど、木綿季、数学とか分かった?」

 

「ぜんっぜん分からなかった! 数学Bなんて言われても全然Bじゃないもん! 因数分解とか名前は聞いたことあるんだけどなぁ……」

 

明日奈と一緒に、お家へと帰る帰り道。

今日の授業……数学とか全くわからなかった、なんて話を明日奈と2人でお話しながら帰ってる。

晴美さんは用があるからって言って先に帰っちゃった。

一緒に買い物とか食べ歩きとかしたかったんだけどね。

 

めんたる……きゅーぶ……?

とかいうもので作った体だから、食事なんかも普通に取れるんだって。

……どんな原理なんだろうね?

 

「ところで明日奈……怒ってる?」

 

「ちょっとね。 あ、木綿季に怒ってるわけじゃないよ?」

 

「あー……晴美さん、かな? 内緒のサプライズだったりしたから……」

 

「うん、そう。 ……もー、ほんとに……」

 

「あはは……」

 

晴美さんのおかげで、旅立つ前の思い出作りや心残りが解消されるから、あまり責めないであげて欲しいけど……多分、無理だよね。

明日奈の方を見ながらそんなことを考えるけど、明日奈には気づいて貰えない。

 

「……はぁ……そろそろ、お家帰らないとなぁ……」

 

唐突に小さく呟いた明日奈に

 

「え、今帰ってるのが明日奈のおうちじゃないの?」

 

「あ……えーと、今帰ってるのはハル君……晴明君……あー……えーと、晴美ちゃんのお家なんだ。

私、ちょっと家出しちゃってて……」

 

「あぁ……なるほど。

……明日奈、家出の理由についてはボクは知らないし、踏み込むつもりはないけれど……

ちゃんと相手とぶつからないと、伝わらないことだってあるよ。

……あと、今言わないと永遠に言えなくなってしまうことがあるから、ね?」

 

「木綿季……」

 

お母さん、お父さん、姉ちゃん。 ボクは3人に色々教えてもらった。

だけど、皆逝ってしまった。

ありがとうも言えないまま、3人とも死んでしまった。

明日奈にはそんなことになって欲しくない。

 

「……ありがとう、木綿季。 私、ハル君の家に戻ったら、家に帰ってみる」

 

「うん、分かった」

 

……明日奈なら大丈夫だよ。

明日奈は強いから。

 

口には出さなくても、この気持ちは伝わってると思いたい。

 

……口に出すの、ちょっと恥ずかしいし……

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~

そんなこんなで葉山家についたんだけど……

 

「武家屋敷……って言うんだっけ……おっきいね……」

 

「そうだね……っていうか、なんだか少し大きくなってる……?」

 

なんだかいつもと違う、と明日奈が困惑してるけど、なんでなんだろ?

 

「そりゃあ、隣の家買い取って広げたからね」

 

玄関の扉が開き、中から晴美さんが顔を出してきた。

買い取ったってなに……?

 

「ん、いやぁ、最近うちの家族が増えまくってきたからね。

家大きくするためには隣の……あぁ、桐ヶ谷家とは反対のお家と後ろのお家を買収しなきゃならなかったのよ」

 

んー……?????

百歩譲って、買収は分かるけど、そんな短期間で家って増築できたっけ……?

 

「増築はちょっとずるしたけど気にしないでいいよ」

 

思考でも読んだのか、晴美さんから先出しされてしまった。

気にしないでもいい、なんて言われたら気になっちゃうんだよねぇ……

でも世の中余計なことに首を突っ込まないのが長生きの秘訣って姉ちゃんに言われてたし……

 

「ま、とりあえず上がって上がって。 木綿季の部屋は明日奈の部屋の隣に用意してあるから」

 

「……あ、ハル君……!」

 

ボクを案内しようとしてくれている晴美さんを明日奈が呼び止める。

 

「私、その……1度家に帰ろうと思うの」

 

晴美さんぬき明日奈を見つめる目がスっと細くなる。

値踏みをしているのだろうか、真意を探っているのだろうか。

不思議な視線。

相槌などはなく、無言で続きを促している。

 

「母さんに謝って、今の自分を知ってもらって、今の私が見ている世界を見てもらいたい。

ここが私の、私たちが生きるもうひとつの世界だって知ってもらいたい。

だから……」

 

ちらりと晴美さんの方を見てみると、細めていた目が閉じられていた。

呆れていたりもう知らない、というような表情ではなく、笑顔だった。

 

「あぁ、行っておいで。 しっかりとお母さんに分かってきてもらいなね。

……と、なると……ログハウスに誰かいると不都合だから……

ユイ、ログインして皆を狩りに誘っておいて」

 

「はーい、分かりました!」

 

明日奈と明日奈のお母さんだけで話し合いが出来るように晴美さんが……ええと、ユイちゃん……? に声を掛けていた。

 

「ありがとう、ハル君……!」

 

「おうよ。 しっかりお母さんにぶつかって、しっかり自分の伝えたいことをぶつけてきなね」

 

「うん!」

 

「……あ、ストレア、明日奈送ったって」

 

「はーい」

 

……色んな女の人の声がするけど、ここはシェアハウスなのかな……?

今聞いただけでも、明日奈、晴美さん、ユイちゃん、ストレア……さん?の4人。

 

いっぱいいそうだなぁ……なんて考えていると、晴美さんに手招きされた。

それについて行きながら、明日奈にいってらっしゃい(?)をする。

 

返答してくれた明日奈の表情は明るく、陰は見当たらなかった。

 

 

 

 

 

~~~~~~~

「で、こっちは明日奈が使ってた部屋で、こっちが今日から木綿季の部屋だよ。 家具なんかは備え付けのものを使ってもらって構わないけど、もし模様替えとかしたかったらいつでも言ってね。 STR値が高い俺やストレアが手伝うから」

 

「あ、ありがとう。

……ねぇ、晴美さん、ボクのこの体っていつまで……あ、ううん、なんでもない……」

 

「あー……まぁそうだな。 リハビリ終わるまでかな」

 

「えっ……?」

 

「あー、いや、リハビリ始めたあたりがいいかなぁ……」

 

「えっ、えっ……?」

 

「まぁ、どっちでも問題ないか。

木綿季なら、しっかり自分の足で立てる」

 

「それって、どういう……?」

 

「木綿季はさ、明日奈と会ってから、何となく体の調子が良くなってきてたり、周りがなにか変化したりしてる気はしないかい?」

 

「……たしかに、ちょっと動きが良くなったり、先生の表情が明るくなってる気がする」

 

「だろう? つまりそういう事だ」

 

「む、む……どういうこと?」

 

「そういうこと。 それ以上は今は言えんなー」

 

「ぶー……」

 

~~~~~~~~~

それ以上言うと、どうなるか分からないから。

晴美が見た未来は変わってしまう可能性がある。

固定観念ではないか、思い込みではないか。

と晴美は心の隅で考えてはいるが、危ない橋は渡りたくない。

そのため、少しぼかしつつリハビリ頑張れ、と言うだけに留めた。

 

アウトだと言われそうなものだが、その程度であれば修正は効くだろう。

 

それはそれとして、だ。

 

木綿季に葉山家での生活の仕方を教えては、今家にいるメンバーと顔合わせをさせようと考える。

 

「木綿季、人見知りはしないかい?」

 

「唐突だね? まぁ……人見知りはしないけど」

 

「なら問題はなさそうだね。 後で皆を紹介するよ。 それまで荷物整理したり確認したりしておいてね。 足りないものがあったらいつでも声掛けてくれい」

 

はぁい、と小気味良く返事する木綿季を置いて部屋を出る。

……メンタルキューブを通して、今の木綿季の本体は少しずつ回復するだろう。

というかしてある。

してくれなければ困る。

 

そんな考えをしつつ部屋へと戻る。

 

「……はぁぁぁ……」

 

詰めていた息を吐き出す。

ひと仕事……いや、ふた仕事位終わらせたような気さえしてしまう。

脆く繊細な蜘蛛の糸を手繰り寄せるが如く。

木綿季の運命を回復への道へと固定させる。

そのためのメンタルキューブ。

 

「……ちょっと、疲れた」

 

ベッドへと倒れ込み、小さく、誰にも聞かれないように嗚咽を零す。

 

部屋の扉が締まりきっておらず、何人かに見られていることに気が付かずに。




晴明君が疲れ果ててるからですね。
彼最近動きたがらない。

こう……空間勃起力が枯渇してきてます。
性欲はあるのに気力がね。

「じゃあ来週はボクの出番かなー?」

「いえ、せっかくなので私が……」

なんかいい妄想できないかなぁ。

「無視された!?」

では、また次回お会いしましょう。


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