五等分のやり直し (カズめぐ)
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本編
第一話 はじめましてだよな?


どうもかずめぐです!!
最近原作のほうがとってもドロドロしてきて盛り上がってきたので、衝動的に書いちゃいました!
キャラ崩壊とかいろいろしてるかもしれませんが、温かく見守ってください!!
(一つの話が結構短いです)

*お知らせ
  五等分のやり直しの番外編R18は別の場所に移動させました。
  読みたい方は、「五等分のやり直し 番外編」で調べてください。




目が覚めると、目の前にはよく知っている天井があった。

 

(あれ?いつの間に家に帰ってたんだ?俺は確かあいつらの家に向かっていたはず。)

 

寝起きの頭で考えるが何も思い出せない。

すると、らいはから声をかけられた。

 

「お兄ちゃん!いつまで寝てるの!?早くしないと学校遅れちゃうよ!」

 

「学校?もう卒業しただろ?」

 

「はい?何言ってるの??寝ぼけてないで早く支度して!」

 

俺は不思議に思いながらも渋々布団から出て制服に着替え始めた。

 

(卒業式の夢でも見てたのか?)

 

そんなことを考えながら普段はほとんど見ない携帯を開いた。

ディスプレイには今日の日付と時間が当たり前のように表示されていた。

しかし、そこには到底あり得ない数字が表示されていたのである。

 

(えっ?2018年9月8日?最後に携帯を見たのは2020年2月28日だから…?)

 

俺は思わずらいはに聞いた。

「らいは。今日って西暦何年、何月何日だ?」

 

「えっ?お兄ちゃんてばそんなことも忘れちゃったの?今日は2018年9月8日だよ!」

 

「そうか…。ははは、ド忘れしちゃってたよ。あいがとうな、らいは。」

 

「変なお兄ちゃん。」

 

らいはは俺のことをとても不思議な目で見ていたが、それどころではなかった。

 

(嘘だろ…。完全にタイムリープしてんじゃねーかよ…。けどなんでだ?)

 

俺がぶつぶつと考え事をしていると、らいはが思い出したかのように言ってきた。

 

「そうだ、お兄ちゃん。お父さんがいいバイト見つけたんだ。」

 

その言葉を聞いて俺の意識は一気に引き戻された。

 

「えっ?バイト?」

 

「うん。バイト。」

 

(形は違えどこの状況、身に覚えがあるぞ…。)

 

俺は、あることを確認するために、らいはに質問した。

 

「まさかそれって、家庭教師か?」

 

「うん!そうだよ!お兄ちゃんよくわかったね!」

 

らいはが心底驚いた顔を向けてきた。

 

「ははは…。勘だよ…。」

 

最悪の事態が訪れそうで冷や汗が止まらない。

そんなこと知る由もなく、らいはは説明を続ける。

 

「最近引っ越してきた、お金持ちのお家なんだけど娘さんの家庭教師が欲しいんだって」

 

「へー…。そうなのかー。それで、なんていう人の娘さんなんだ?」

 

俺は答えを知っているが間違っていることに期待しながら聞いた。

 

「確か…、中野さんって言う人だったと思う。」

 

「そっそうか…。で、いつからなんだ?」

 

またわかりきっている質問をしてしまった。

 

「今日の放課後からだよ!お兄ちゃん頑張ってね!」

 

「ははは…。ありがとうな…。」

 

俺はそういうと座り込んでしまった。

 

(またあいつらの面倒を見なきゃいけないのか…。しかも一から…。)

 

またぶつぶつと考え事をしているとらいはに声をかけられた。

 

「お兄ちゃん!早く学校行かなきゃ!」

 

そして俺は半強制的に家から追い出された。

家から出ると俺は歩きながらまた考え事をしていた。

 

(そもそも、なんでタイムリープしたんだ。)

 

必死に考えたが、何も思い出せないので、次はあの五つ子について考え始めた。

 

(確か、最初に会ったのは五月だったよな。あの時は失礼なことを言っておこらせたんだっけ?  今度は気を付けないとな。前回の失敗を今回で生かしてみるか。)

 

俺はこの時楽観的に物事を考えすぎていたみたいだ。

それに気付くのはまた先の話であるが…。

 

 

 

午前中の授業を終え俺は食堂に来ていた。

卒業してもう食べれないと思ってたものが食べれるとわかって俺は少し興奮していた。

 

「焼肉定食。焼肉抜きで。」

 

俺はご飯とみそ汁と漬物をトレイの上に乗せ、いつもの席に向かった。

するとそこにはもうすでに五月が座っているのであった。

 

(なんか、以前と少しずつ状況が違うな。ここは仕方ないから出直すか。)

 

そう思い、俺はほかの席を探していたら突然五月が手を振ってきた。

最初は戸惑っていたが手を振っている相手が俺だったのでとりあえず近づいてみた。

 

(この世界では、知り合いだったのか?)

 

そんなことを考えていると、五月から声をかけられた。

 

「上杉君。やっと、会えましたね。」

 

彼女は嬉しそうにそんなことを言ってきた。

少し不思議に思ったが深くは考えずに俺は返事をした。

 

「えっと、はじめましてだよな?」

 

「そうであって、そうでないようなものです。」

 

と彼女は笑って言った。

俺はこの時まだ、彼女が言った本当の意味に気付いていなかったのであった…。




初めて書くのでとにかく文章力がひどい…。
何かご指摘がありましたらよろしくお願いいたします。


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第二話 こんな世界俺は知らない!

ストックがあるうちは一日一話を目標に出していきたいと思います!
とりあえず、初日なんで二話目も出しておきます!

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  五等分のやり直しの番外編R18は別の場所に移動させました。
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学校の食堂で俺は五月と向かい合って座っていた。

 

「今日から、家庭教師をなさるんですよね?」

 

彼女はそんなことを聞いてきた。

 

「あぁ、そうだが…。嫌じゃないのか?」

最初のころ、あれだけ反発されていたので、今の状況に違和感を覚え、いらぬことを聞いてしまった。

すると彼女は遠くを見ながらふと寂しそうな顔で言った。

 

「昔も、家庭教師はつけていましたから。」

 

俺は、このことは初耳だったので正直驚いたが、この世界は以前と少しずつ違っているので、あえてスルーをした。

 

「そうか。なら、今日から早速開始するがいいか?」

 

「はい。よろしくお願いします。」

 

俺は、五月との会話を終え教室に戻った後、また考え事を始めた。

 

(なんかよくわからないが、いいスタートダッシュがきれたな…。しかしなぜ、反発しないんだ?)

 

俺は以前との違いに困惑しながらも前向きにとらえることにした。

 

(まあ、あいつら全員と会ってみれば何かしらわかるだろ。)

 

そう思い、俺は午後の授業にいそしんだ。

HRが終わりあいつらの家に行くために俺は教室を出ようとした。

すると教室の前には特徴的なヘッドホンをしている女の子がいた。

 

(なんで三玖がこんなところにいるんだ?)

 

不思議に思い俺は声をかけようとしたが、この世界ではまだ三玖と面識がないのでやめておいた。

 

(そういえば、前回も五月や二乃と帰っていたし、五月でも待っているのかな?)

 

そう思い俺は三玖の目の前を通り過ぎた。

すると、突然後ろから声をかけられた。

 

「待って。フータロー。」

 

俺はびっくりして後ろを振り返った。

 

「おっ、俺に何の用だ?てか、なぜ名前を知っている…?」

 

俺がこう言うと三玖はなにかにはっと気付き俯いてぼそぼそと独り言を言っていた。

 

「そっか…。まだこの時点では面識がなかったんだった…。せっかく会えたのに…。」

 

三玖の声があまりに小さかったので聞き取れなかった。

 

(まあどうせ、五月から俺のことでも聞いたんだろうな。)

 

そんなことを考えていると三玖が突然顔を上げた。

 

「はっ、はじめまして…。えっと…、中野三玖です…。突然すいません…。」

 

急に自己紹介をしてきて正直びびったが、話を合わせるために俺も自己紹介をした。

 

「俺の名前は上杉風太郎だ。中野ってことはお前も俺の生徒なのか?」

 

「うっ、うん…。よろしく…。」

 

「あぁ、よろしくな。」

 

三玖もあまりに素直なため正直驚いたが家庭教師としては喜ばしい限りだった。

 

「えっと。フータローは私たちの家知らないよね。あっ、案内してあげる…。」

 

三玖が顔を真っ赤にさせながらそんなことを言ってきた。

 

(そういえばこの世界ではまだあいつらの家知らないはずだよな。危ない危ない犯罪者になるところだった。)

 

「よろしく頼む。」

 

俺は笑顔でそう言った。

すると三玖がなにかまたぼそっとつぶやいた。

 

「やっぱり、フータローはフータローだ。」

 

 

「何か言ったか?」

 

「ううん、何でもないよ。行こっか。」

 

なにかはぐらかされた気がするが、俺は三玖と一緒に中野家にむかった。

中野家のマンションにつき俺は三玖と一緒にエレベーターに乗っていた。

 

「えっと、ほかの人はどこにいるんだ?」

 

俺は、ほかの四人の姿が見えなかったので思わず聞いてしまった。

 

「多分もう家についてると思う。」

 

「そっ、そうか。わかった。ありがとうな。」

 

俺はまだあっていない残りの三人がどうしても不安であった。

 

(前回は、素直だった四葉だったが今回は違うかもしれん…。一花は、まあやる気はないだろうが大丈夫であろう。問題は二乃だ。あいつと一からやり直すと思うと、正直倒れそうになる…。)

 

そんなことを考えてるうちに中野家の前まで来てしまった。

 

「開けるよ。」

 

三玖がそう言い扉を開けた。

すると中から一斉に声がしたのだった。

 

「「「「いらっしゃい!!」」」」

 

なんと全員が待ち構えていたのである。

俺が呆気にとられていると、それぞれから声をかけられた。

 

「遅いよ~。お姉さん待ちくたびれちゃったよ、フータロー君!」

 

「上杉!遅すぎよ!もっと早く来なさいよ!」

 

「上杉さーん!遅いですよー!」

 

「さあ、上杉君早く上がってください。」

 

四人の顔は俺と久しぶりに会ったみたいな嬉しそうな、懐かしそうな顔をしていた。

俺は困惑しながらもようやく声が出た。

 

「えっと…。五月以外は初対面だよな…?」

 

「そーだけど?」

 

「それがなによ。」

 

「それがどうしたんですか~?」

 

初対面であるはずの三人は不思議そうな顔をしていた。

 

(いやいや、絶対初対面の人にする声のかけ方ではないだろ!!)

 

こんな風に心の中で叫んでいると、突然五人から腕を引っ張られた。

 

「「「「「さ、早くしよ!」」」」」

 

「ちょっ、急に引っ張るなよ!」

 

(なんなんだこいつら!前回と違って最初から好意的すぎだろ!?俺はこんな世界知らんぞ!)

 

本日二度目の心の叫びはむなしく中野五姉妹によってかき消されたのであった。



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第三話 また成績も五等分…

どうもかずめぐですー。
文末表現がどうしても「~た。」「~である。」で終わることが多く、すごく読みにくくなってて、すいません…。
できるだけ改善はするつもりだけど直ってなくても勘弁。
好評だったら今日ももう一話上げるかもです!(500アクセスくらいあったらかな?)
では、お楽しみください!


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中野家のリビングにて自己紹介が行われていた。

 

「まずは私からだね。私の名前は中野一花。一花って呼んでね。ちなみに一番上のお姉さんです!よろしく!」

 

「二乃よ。よろしく。」

 

「私はさっきもしたけど…。まあ一応しとくね。三玖です。よろしく。」

 

「はーーい!!私は四葉です!よろしくお願いしまーす!」

 

「私も改めて、中野五月です。よろしくお願いします。」

 

「おっ、おう。俺は上杉風太郎。よろしくな。」

 

さっきの玄関のでの出来事がなかったかのごとくいつも通りの五つ子であった。

 

(さて、とりあえず奇跡的に全員揃ってるから始めるか。)

 

「上杉さん!今日は何をするのですか?」

 

四葉が俺の考えてることが分かっているのかと思うくらいナイスタイミングで聞いてきた。

 

「今日は、お前たちの学習状況がどんなものか知りたいのでテストをやってくれ。」

 

「テストか~。懐かしいねー。」

 

一花が訳の分からないことを言っているがほっておこう。

 

「では始めてくれ。」

 

五人が一斉にテストを解き始めた。五人とも勢いよく解答用紙にペンを走らせている。

三十分くらいたち皆の手が止まってきたので採点をすることにした。

 

(結構すらすらと解いていたから意外と点数はいいんじゃないか?)

 

そんな淡い期待を抱きながら俺は採点を始めた。

数分が経ち採点をするにつれて自分の眉間にしわが寄っていくことが分かった。

採点が終わり期待に目を輝かせている彼女たちに俺は一言言ったのである。

 

「なんで、五人合わせて100点なんだよ…。」

 

「あちゃ~、やっぱり駄目だったかー。」

 

と笑いながら長女が言う。

 

「まあこんなもんよね」

 

と次女がなぜか誇らしげに言い、

 

「むぅー。」

 

と三女が頬を膨らまし、

 

「上杉さん!私頑張りましたよね!」

 

と点数なんか気にしてない四女がはしゃぎ、

 

「全然解けませんでした…。」

 

と落ち込んでいる五女の姿があった

 

「まあ、とっちまったもんは仕方ないから、とりあえず復習するぞ。」

 

「「「「「はーい」」」」」

 

5人が声を合わせて返事をした。

 

(なんでみんな素直にはなってるのに頭の中身は変わってないんだよ…。)

 

そんなことを考えながらため息をはいていると、隣にいる一花から声をかけられた。

 

「まあ、私たちこんな感じでおバカさんだからどこにも行かず、ちゃんと面倒見てね☆お姉さんは期待しているぞ!」

 

「わかったよ。どこにも行かず…」

 

俺はこのフレーズを口にしたとたん急に意識が遠くなってきた。

 

(どこにも行かないで…?どこかで聞いたことある気が…?)

 

俺が何かを思い出そうと必死になっていると、

 

<フータロー君…。どこにも行かないで…。>

 

と泣きながらこちらに言ってくる一花の姿が脳裏に浮かんだ。

 

(なんだこの記憶は…。いつのものだ…)

 

俺が深い思考に陥っていると、また一花から声をかけられた。

 

「フータロー君。大丈夫?怖い顔してたよ?」

 

俺ははっと意識を取り戻し慌てて一花に答えた。

 

「何でもない。大丈夫だ。」

 

「そっか。無理はしないでね。」

 

と心配そうな顔で言ってきた。

 

「あぁ、大丈夫。ありがとうな。」

 

俺はそう言い、さっき脳裏に浮かんだ映像のことを一花に聞こうか迷ったがやめた。

 

(きっと、あれは前世の記憶だ。そのうち、なぜ俺はタイムリープをしたのかも思い出すかもしれないな。)

 

そんな感じに今回の疑問に終止符を打ち、ノートを開いて待っている彼女たちに勉強を教えるのであった。

 

 

二時間ほどたち、五つ子の集中力が切れてきたので休憩をはさんだ。

俺は、みんなが二乃が作ったクッキーを食べながらおしゃべりしているのをぼーっと見ているのであった。

すると、突然後ろから声をかけられた。

 

「はい。お茶よ。」

 

「ん、ありがとな。」

 

お茶を渡してきた人物は二乃である。

俺はお茶を受け取り飲もうとしたが、ふと昔のことを思い出した。

 

(そういえばこいつ、前に俺に睡眠薬もってたな…。)

 

俺がそんなことを考えながら、飲むのをためらっていると、二乃が笑いながら声をかけてきた。

 

「薬なんてもってないわよ。」

 

俺は自分が考えていたことが読まれていた気がしたので少し焦りながら答えた。

 

「別にそんなこと考えてねーよ。」

 

そう言うと、俺はお茶を一気に飲み干した。

 

特に体に異変はなかったので俺たちは勉強を再開した。

俺は、まだこの時、薬を盛られていることにまったく気づいていないのであった…。




Qなんで名前がかずめぐなのに五等分の花嫁の書いてるの?

A三玖がかわいいからです。


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第四話 暴走列車二乃

どうもかずめぐです!
お気に入り登録してくれた方、ほんとにありがとうございます!
コメントをくださった方もありがとうございます!
すごく励みになるのでじゃんじゃん送ってください!
では、本編どうぞ!

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目を開けると、そこは知らない場所だった。

 

(ここはどこだ…?)

 

俺は起き上がって周りを見渡したがどこにいるのかわからなかった。

 

(確か、あいつらの家で勉強をしていて…。帰ろうとしたら急に眠くなって、それから…?)

 

俺は何が起きたのか必死思い出そうとしたが思い出せない。

 

(しかし、この部屋はどこかで見たことあるな。)

 

俺が、部屋の中をきょろきょろと見渡していると急に扉が開いた。

扉のほうを見てみると、そこには二乃が立っていた。

 

「なに、人の部屋をきょろきょろとみてんのよ。」

 

「えっ、悪い。ここがどこだか分らなかったもんで…。」

 

俺は焦りながら言い返した。

 

「まあいいけど」

 

といい二乃はこちらをじっと見てきた。

その視線に耐えられなくなった俺は二乃になぜ俺はここにいるのか聞くことにした。

 

「なあ、俺はなんでここで寝てたんだ?」

 

「あんた、覚えてないの?」

 

と二乃が呆れた顔をしていってきた。

 

「あぁ、覚えてないんだ。教えてくれないか?」

 

「あんたが、勉強終わってから急に寝始めたから私の部屋で寝かしてたのよ。」

 

「そっ、そうなのか…。悪かったな…。」

 

俺は自分の行動に驚きながら素直に謝罪の言葉を口にした。

すると二乃はいたずらっぽい笑みを見せ驚きの言葉を口にした。

 

「なーんてね。嘘よ。私があんたに薬を盛って眠らせたの。まあこの部屋に運んだのは事実だけどね。」

 

俺は、薬を盛られるのは初めてはないのでそこまで驚かなかったが、二乃が俺のことを自分の部屋まで運んだことに驚きを隠せなかった。

 

「どっ、どうしてそんなことをしたんだ…。」

 

「まあ、あんたと二人きりで話がしたかったからわね。」

 

「なら、別の機会でもよかったんじゃないか、薬なんて盛らずに。」

 

「今日じゃなきゃダメなのよ。」

 

「なんでだ?」

 

「今日じゃなきゃあんたはまたどこかに行ってしまう気がするから。まあ、先手必勝ってやつよ。」

 

「は??」

 

(そういえば、一花もそんな感じのことを言っていたな…?)

 

「だから、薬を盛ったのよ。」

 

「そうか…。」

 

俺は、納得していなかったが話が進みそうになかったので納得することにした。

 

「で、何が話したかったんだ?」

 

俺はようやく本題を聞くことができた。

二乃少し俯きながら小さな声で言ってきた。

 

「あんたのことが好きなのよ…」

 

二乃の声は小さすぎて俺には聞き取れなかっので、

 

「えっ、なんていったんだ?」

 

と聞き返した。

すると、二乃は、熱があるのではと思うくらい真っ赤な顔をしてこちらをにらみつけてきたのである。

 

「なっ、なんだよ…。」

 

俺は二乃のあまりの迫力にたじろいでしまった。

しばらく沈黙が続いたが、二乃がようやく口を開いた。

 

「だから、あんたのことが好きって言ってるのよ。」

 

今度はしっかり聞こえたが今度は言葉の意味が理解できなかった。

 

(えっ、好き?今、告白されたのか?確かに前にも告白されたが、今回は早すぎないか?まだあって一日もたってないぞ…。)

 

俺は、そんなことを考えながら黙っていると、二乃に怒られた。

 

「何か言いなさいよ。」

 

「俺たちってあってから一日もたってないよな…。なのにどうして…?」

 

「一目惚れよ。」

 

二乃は鼻をふんっとならした。

 

(前回はあんなに嫌われてたのに、今回は一目惚れって…。この世界どうなってんだよ…。)

 

またまた、俺が考え事にふけっていると二乃に返事を催促された。

 

「で、返事は?」

 

「俺たち、会ったばかりだからさすがにな…。」

 

「ふん。わかったわ。ならあたしのこと好きにしてみせるわ。」

 

俺が言葉の意味を理解する前に、二乃にベッドに押し倒されたしまった。

 

「ちょ、お前なにすんだよ。」

 

俺は、抱き着いてきた二乃のことを引きはがそうとしたが、薬の影響で全然力が入らなかった。

 

「だから言ったじゃない。好きにさしてみせるって。」

 

二乃はまたいたずらっぽく笑った。

 

(やばい。このままじゃ犯される。家庭教師ができなくなってしまう…。そうだ、ほかの姉妹に助けてもらえばいいんだ。)

 

俺は名案を思い付きさっそく、行動に移すことにした。

 

「おい、二乃。さすがにここはまずいだろ。ほかの姉妹もいるのだから。」

 

俺は助かったと思ったが、二乃の発言によって再び地獄に落とされたのである。

 

「安心して、フー君。一花はバイトで、三玖と五月は食事に行っていて、四葉はバスケ部の手伝いに行ってるから、この家には誰もいないわ。そう、だれにも邪魔されないの。」

 

(詰んだ…。)

 

二乃がシャツを脱がしてきた。

 

(俺は、家庭教師を続けられるのであろうか…?)

 

俺は、現実逃避をするかのように意識が遠のいていくのであった…。




ストックはまだ十話くらいあるので間隔とか気にせず読みたい人がいたらじゃんじゃん出すんで、コメントください!


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第五話 幸運の四葉

どうもかずめぐです!
リクエストがあったのでもう一話だけ投稿します!
公式さん、人気投票やってくんないかなー。
絶対一回目よりも順位変動してると思うんだよなー。
ちなみにみんなは誰押しかな?


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二乃に襲われそうになり、意識が遠のいてく中、俺の耳に希望の声が聞こえてきた。

 

「ただいま帰りましたー!!」

 

その声の主は四葉であった。

 

(ナイスだ四葉!これで助かるかもしれないぞ!)

 

俺の予想通りに二乃は悔しそうに言い放った。

 

「ちっ、今日はここまでね。でも次こそ、好きにさせてみせるんだから。」

 

そして二乃は自分の部屋を後にした。

身体がまだちゃんと動かない俺は二乃の部屋に取り残されてしまったので仕方なく外の会話を聞くことにした。

 

「おや、二乃はいたのですね!ほかの人たちはいますか???」

 

「一花はバイトで、三玖と五月は食事に行ってるわ。それで上杉は私の部屋でまだ寝てる。」

 

「むっ。じゃあ、今まで二乃は上杉さんと二人きりだったんですか?」

 

「なにもしてないわよ。」

 

「そうなんですか。ならいいです。」

 

「私は夕飯の買い物に行ってくるから、上杉が起きたら帰らしてあげて。」

 

「了解です!」

 

玄関でドアが開く音がした。

 

(ふう。やっと、安心できる。てか、二乃のやつ平然と何もしてないって言いやがったな。ちゃんと今後の対策を打っとかなきゃな…。)

 

ようやく体が動くようになり俺はベッドから起き上がった。

その瞬間、部屋の扉がガチャリと音を立てて空いたので、扉のほうを見てみると、そこには大きなリボンが特徴の四葉の姿があった。

 

「上杉さん、起きたんですね」

 

「あぁ、今起きたとこだ。」

 

(さっきから、目は覚めていたが起き上がったのは今だから嘘にはならんだろ)

 

という言い訳を心の中でしていた。

 

「そうなんですか、なら、寝起きで申し訳ないんですが勉強を教えてもらってもいいですか??」

 

「あぁ、いいぜ。」

 

そうして二人は四葉の部屋で勉強を始めた。

 

 

しばらく時がたち…

 

「四葉…。さっきここは教えたじゃないか…。」

 

「ニシシ、何回聞いてもわかんないんですよ!」

 

満面の笑みでそんなことを言う四葉に対して俺は文句を言う気も失せてしまった。

 

(仕方ない、もう少しかみ砕いて教えてみるか。)

 

 

そして、またしばらく時がたち…

 

「できました!!ありがとうございます、上杉さん!!」

 

「あぁ…。」

 

俺はあまりに要領の悪い四葉に対してげんなりとしてしまっていた。

 

(展開と因数分解を教えるのに二時間かかってしまうとは…。)

 

そんなことを思っているとお腹がグゥーと鳴った。

 

(そういえば今何時だ??)

 

俺は壁にかけてある時計を見た。

 

(うげ、もう十時じゃないかよ!?)

 

「四葉、俺はもう帰るな」

 

「はい!今日はありがとうございました!」

 

そうして、俺は四葉の部屋を後にした。

リビングに出るとそこにはみんなの帰りを待っている二乃がいた。

できるだけ話したくなかった俺は足早に帰ろうとしたが、そんな努力はむなしく二乃に話しかけられてしまった。

 

「あんた、今日は泊っていくんでしょ。」

 

二乃が突然驚くことを口にしたが俺は冷静を装って返事をした。

 

「すまないが、かわいい妹が夕飯を作って待っているのでな。」

 

俺はそういいまた足早に帰ろうとしたが、また二乃に呼び止められた。

 

「ちょっと待ちなさいよ。あんたケータイみたの?」

 

二乃が不思議なことを言う。

 

「いや、見てないが。」

 

「じゃあ見てみなさいよ。」

 

二乃は先ほど同様いたずらっぽい笑みを浮かべている。

俺は何か嫌な予感がして見たくなかったが渋々ケータイを開いた。

そこにはらいはからのメールが一通あるだけだった。

俺は不思議に思い二乃に聞き返してみた。

 

「妹からのメールしかないが、これがどうしたんだ?」

 

「中身見てみなさいよ。」

 

俺は言われるままにメールを開いた。

するとそこには驚くべきことが書かれていたのであった…。

 

【二乃さんから聞いたよ!!お兄ちゃんお仕事頑張ってるって、それでおわりそうにないからお泊りになることをお父さんに聞いたら全然OKだって!お仕事頑張ってね!!】

メールを読み終わった俺の手へ震えていた。

 

 

(なぜ、二乃がらいはの連絡先を知っているんだ…?)

 

二乃は俺の考えてることがまるで分っているかのように先ほど心の中で出した問いに対する答えを言ってきた。

 

「らいはちゃんからお兄ちゃんのことよろしくお願いしますって、家に電話をかけてきたときに仲良くなって連絡先交換したのよ。」

 

二乃はさきほどからずっとニヤニヤした顔でこちらを見ている。

 

(くっ、これじゃ泊る以外道はないじゃないか…)

 

俺が何か打開策はないかと考えていると、二乃が思わぬことを口にした。

 

「安心しなさい。姉妹がいるところでは、手は出さないから。」

 

ある意味安心できる言葉ではなかったがとりあえず信じるしかなかったのである。

 

(俺は無事明日を迎えられるのであろうか…)

 

今、思えば危ない奴は二乃だけじゃないのをこのころの俺は知らないのであった…。




下書きの段階では花火大会省いちゃったけど、書いたほうがいいのかなー??
あと、誤字・脱字が多くて本当にごめんなさい…。


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第六話 三玖と偶然?

どうもかずめぐです!
最近は入学式シーズンでとってもいいですね!
自分も新たな出会いが欲しいです…(泣)
あと、いつも誤字・脱字の修正をしてくれる方々本当にありがとうございます。
これからも、まだあると思いますが、温かい目で見守ってください。
なお今回は、少し過激な部分があるので苦手な方はご遠慮ください。


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中野家に泊まっていくことになった俺は、リビングで二乃と四葉と三人で夕飯を食べていた。

 

(やっぱり、二乃が作った飯はうまいな。)

 

俺が感心していると五月と三玖、そして一花も帰ってきた。

 

「上杉君、まだいたのですか?」

 

五月が不思議な顔で聞いてきた。

俺は事のいきさつを説明しようとすると、急に二乃が割り込んできたのである。

 

「あたしが、勉強のことでいろいろ聞きたいことがあったから、今日は泊まってもらうことにしたの。」

 

五月はなおも不思議そうな顔をしていたが特に反対しないみたいだ。

 

(この世界の俺はなぜここまで好感度が高いんだ…?)

 

思い当たる節がないのでとりあえず考えるのをやめにした。

すると、突然三玖がしゃべりだしたのである。

 

「フータローはどこで寝るの?」

 

「俺は別にリビングでもいいぞ。」

 

「上杉は私が泊まらしたんだし私の部屋を使うといいわ。」

 

それだけは嫌だと俺が口に出そうとすると、思わぬところから提案が出たのである。

 

「フータロー君はじゃんけんで勝った人の部屋で寝てもらおうかな?」

 

なぜ勝った人なんだと突っ込もうとしたがまた、先にしゃべられてしまった。

 

「そうですね、それが一番平等ですし。」

 

五月が一花の意見に賛同した。

 

「では、みんなでじゃんけんしましょう!!せーの!!」

 

「「「「「最初はグー、じゃんけんポイ!」」」」」

 

 

……

 

じゃんけんをしてから数時間後俺は三玖の部屋で寝ていた。

結局、前に泊まりに来た時と同じだったので、多少はくつろげていた。

 

(はぁ…。二乃のやつどうすればいいんだ…。前回はめちゃくちゃ嫌われてたのに、なんで今回は一目惚れとか言って好かれているんだ…?まったくわからない。あまりにも違いすぎるだろ…。)

 

俺は答えの出ない悩みをひたすら続けていた。

夜もだいぶ深まり、朝のほうが近くなってきたころ、突然扉が開いた。

 

(なんだ!?まさか二乃が…?)

 

俺は恐る恐るドアのほうを見たら、そこには三玖がたっていた。

何しに来たのだろうとしばらく見ていたら、突然布団の中に入ってきたのである。

 

「おい!なにしてんだよ!?」

 

俺はとっさに声をかけたが三玖からの返事はない。

不思議に思い顔を覗き込んでみるとかわいい顔をしながら寝息を立てていた。

俺は、地べたで寝ることを考えたがベッドを堪能したかったのでそのまま寝ることにしたのである。

 

(別に、女の子と一緒に寝たかったとかそんな気持ちは一切ない。)

 

俺はそんな自分への言い訳を考えてるうちに眠りについたのであった。

 

 

……

 

ぴちゃぴちゃ

何か水音がして、俺は目が覚めた。

目を開けてみると目の前には三玖がいたのである。

声を出そうとしたが声が出ない。

そう、三玖にキスをされてふさがれていたのであった。

 

(どういう状況だ…?やけにぼーっとするし、これは夢なのか?昼間、二乃とあんなことがあったからってこんな夢見るとは…。俺も相当たまってんだな…。)

 

三玖はいまだにキスを続けている。

 

(さっきからキスばっかだな…。夢なのにいじらしい。よしこちらからもアクションを起こすか。)

 

思い立ったが吉日、俺は欲望のままに三玖の豊満な胸に手を伸ばした。

触れた瞬間三玖の身体がビクッとはね驚いた顔をしながらこちらを見てきたが、小さくうなずき俺にされるがままに胸をもまれていた。

 

(夢にしては感触がとてもリアルだ。マシュマロのように柔らかい。ずっと触っていたくなるような感触だ。)

 

五分ほど三玖の胸をもんでいると、三玖は我慢できなくなったのか俺のいきり立っている息子に手を伸ばしてきたのである。

触れた瞬間三玖は驚きの表情をしていたが意を決して思いっきり握ってきた。

 

「痛い!!三玖もう少し優しく扱ってくれ…」

 

「ごめん…。」

 

三玖は俯いてしっまった。

 

(やれやれ。んっ…、まてよ。痛いって…。ここは夢じゃないのか…?)

 

俺は恐る恐る三玖に確認を取った。

 

「えーっと、これって夢だよな?」

 

すると三玖は不思議そうな顔をして

 

「夢??何言ってるの、フータロー。」

 

と、言ってきたのである。

 

(あっ、終わった…)

 

俺はその場で意識を失ってしまった…。

 




あいまいでぃすたんす更新されないかな…
あれほんとにおもしろい。


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第七話 嘘つき一花

どうもかずめぐです!
下書きでは十五話くらいまで書き上げているのですが、少し行き詰まりを感じています…笑
ストックがなくなったら少しスローペースにはなると思いますが、ストックがあるうちはじゃんじゃん出していきます!
余裕があれば今日、もう一話出すかもしれません!
それでは本編へどうぞ!

*お知らせ
  五等分のやり直しの番外編R18は別の場所に移動させました。
  読みたい方は、「五等分のやり直し 番外編」で調べてください。


朝になり俺は目を覚ました。

何かショッキングな夢を見ていたのか汗をたくさんかいていたので着替えようと起き上がろうとしたところ、隣に何か柔らかい物体がある。心なしか寝息も聞こえてくるみたいだ。

 

(ははは…、まさかなあれは夢なんだから…。)

 

自分にそう言い聞かせ俺は自分の隣にある物体の正体を確かめた。

やはり、三玖である。

 

(あれは、夢ではなかったのか…。)

 

俺は自分がやってしまった過ちを受け止めきれず頭を抱える。

5分ほどたち、ほかの姉妹に目撃されたらもう弁解のしようがないのでソファーで寝ていたことにするために部屋を後にしようとした。

すると、タイミングよく扉が開いたのである。

 

「フータロー君、朝早くごめんね。こっちに三玖がこなかった?」

 

そういい一花が入ってきたのである。

俺は頭が真っ白になりその場で硬直してしまった。

一花はベッドの上で寝ている三玖を確認して呆れた顔をしていた。

俺のほうに向きなおった一花はある提案をしてきた。

 

「フータロー君。このあと私の言うこと一つ聞いてくれるなら、この状況を何とかしてあげるよ。」

 

「もし断ったら…?」

 

「ほかの姉妹にばらす。」

 

一花はにやにやしている。

正直信じていいのかわからなかったが頼る以外の道はなかったので頼ることにした。

 

「…。わかった。よろしく頼む。」

 

「お姉さんに任せなさい!!」

 

とりあえず、ソファーで寝ていろと言われたので俺はソファーで寝ることにした。

 

(ほんとに大丈夫なんだろうか…?)

 

俺は考え事をしていたがいつのまにか眠りについていた。

 

 

 

……

 

「上杉君。起きてください。どうしてここで寝ているんですか。」

 

誰かに揺り起こされた。

俺は目をごしごしこすりながら起こした人物を確認した。

 

「五月か。どうした?」

 

「どうしたと聞いてるのは…。もういいです。朝ご飯を食べてください。」

 

「ん、あぁ。わかった。」

 

俺は一人で朝飯を食べていると、二乃が話しかけてきた。

 

「昨日はよく眠れたかしら??」

 

すごくにやにやしながら聞いてくる。

 

「あぁ、おかげさまでな。」

 

俺はせめてもの反抗で嫌味ったらしく言ってやった。

しかし、その嫌味も意味がないみたいだ。

 

「昨日のこと夢に見たりしなかったの?」

 

そう聞かれた俺は、三玖とのことを思い出して少し顔が赤くなってしまった。

それを見た二乃は勘違いをして

 

「図星なのね」

 

とさっきよりもにやついてこちらを見てきた。

 

(くっそ。こいつらの顔を見ていると三玖のことを思い出しちまう。)

 

打つ手がなく困っていた俺に助け舟が出された。

 

「二乃。あんまりフータロー君のこといじめないの。」

 

「あら、一花いつ起きたの?」

 

「今起きたとこ」

 

「なら早く朝ごはん食べちゃって」

 

そう言って二乃は一花の朝食の準備をし始めた。

ようやく二乃から解放された俺は一花に今朝のことについて確認した。

 

「三玖のこと、本当に大丈夫なんだよな?」

 

「お姉さんにまかせてって言ったじゃん!」

 

飛び切りの笑顔でこちらに言ってきた。

 

(むしろ自信満々すぎて心配なんだが…。)

 

そんなことを考えていると、問題の人物がいる部屋の扉が開いた。

 

「フータロー。起きたんなら声かけてよ。」

 

いきなりの爆弾投下…。

それを聞いた二乃と五月はものすごい形相でこちらを見てきた。

 

「上杉君!一体どういうことですか!?なぜ三玖があなたが寝ていた部屋から!?」

 

五月がのどが張り裂けんばかりの大声で怒鳴ってきた。

 

「あんたどういうこと。なんであんたがその部屋から出てくるのよ。」

 

二乃は怒りの矛先を三玖に向けていた。

 

「二乃には関係ない。フータロー。早くしよ。」

 

三玖は俺の腕をつかんで部屋に引っ張ろうとしてきたので、俺は一花と打ち合わせをした通りの言葉を口にした。

 

「三玖、一体何をしているんだ??」

 

俺は精一杯とぼけた声を出した。

すると、三玖は驚いた顔をしてこちらを見てきたのである。

 

「フータローは覚えてないの??」

 

なぜかむすっとした顔をしている三玖を横目に俺は一花に助けを求めた。

 

「一花説明してくれ!」

 

「はーい。三玖。フータロー君は何もしてないよ?」

 

「適当なことを言わないで」

 

なおもむすっとしている三玖に一花は淡々と嘘の説明を始めた。

 

「三玖、昨日トイレに言ったでしょ?」

 

「うん。それが?」

 

「実は、あの後すぐ私も行ったの。そこに三玖がいなかったからもしかしてって思って、フータロー君が寝てるはずの三玖の部屋を覗いてみたらベッドで寝ている三玖とそれを困った顔で見てるフータロー君がいた

から、私がソファーで寝たらって提案したの。」

 

「そんな…」

 

三玖はまだ信じられない様子だった。

すると五月がふと思い出したかのように

 

「そういえば、上杉君、ソファーで寝てました。」

 

と納得顔で言った。

 

「でしょ?だから、フータロー君は何もしてないよ。」

 

「じゃあ、全部夢だったの…?」

 

三玖は顔を真っ赤にして自分の部屋に入ってしまった。

俺は一花への感謝の気持ちと三玖への罪悪感で頭の中がごちゃごちゃしていた。

隣では、二乃が胸をなでおろしていた。

 

(とりあえず、一件落着なのか…?)

 

とても後味の悪い朝であった。




基本的にR18要素は本編では書きません。
そのかわり、番外編で書くのでよかったらそちらも見てください。


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第八話 素直な五月

どうもかずめぐです!
お気に入り登録100件突破しました!!
本当にありがとうございます!
これからも頑張っていくので応援よろしくお願いします!
では、本編へどうぞ!

*お知らせ
  五等分のやり直しの番外編R18は別の場所に移動させました。
  読みたい方は、「五等分のやり直し 番外編」で調べてください。


 

一花にかばってもらった日から二か月がたとうとしていた。

その間、花火大会やらのイベントはあったが割愛させてもらおう。

 

……    

 

 

定期試験三日前の金曜日の放課後、俺はなぜか五月と二人きりで図書館にて勉強をしていた。

 

「なあ、五月。」

 

「なんですか?」

 

「なんで俺たちしかいないんだ?」

 

「一花はバイト。二乃は友達とショッピング。三玖は日直の仕事で後から来ます。それで四葉はバスケ部の助っ人に行きました。」

 

「あいつら、テスト前に何やってんだよ…。」

 

俺は前回同様、こいつらの父親から全員赤点を回避しないとクビ宣言をされていた。

 

「まあ、焦る気持ちはわかりますが、彼女たちも家ではとても頑張ってますよ。」

 

「それでも、全然伸びないじゃないか…。」

 

「結果はすぐついてくるものではないでしょう?」

 

「まあそうだが。お前も聞いただろ…。赤点回避の話…。このまんまじゃやべーよ。」

 

「なんとかなりますよ。」

 

「…。お前ってそんなてきとーなこと言うやつだっけ…?」

 

「むっ。てきとーじゃないですよ。」

 

「いや、今の状態じゃどうやっても無理だからな。」

 

「ならかけをしませんか?」

 

「賭け?」

 

「えぇ。全員が赤点回避したら私の言うことを一つ聞いてください。」

 

(そういえば一花からいまだに要求されてないな。)

 

そんなことをふと思ったが、すぐに会話に戻った。

 

「わかった。いいぜ。」

 

俺には全員が赤点回避してくれることに越したことはないので了承した。

俺が了承したことで再びお互い黙々と勉強をし始めた。

 

(確か、前回は二乃が何とかしてくれたんだっけな。てか、今まで特に考えてなかったけどなんで俺タイムリープしたんだっけ?)

 

俺が腕を組んで考え事をしていると隣で勉強をしていた五月が心配そうな顔で聞いてきた。

 

「難しい顔をしてどうしたんですか?」

 

「いや、あのな…」

 

俺はタイムリープについての話をするのを少しためらった。

 

(ふつうこんな話したら、馬鹿にされるよな。いや、真面目な五月ならちゃんと聞いてくれるかもな。よし、少し聞き方を変えてみるか。)

 

俺は意を決して、彼女に問いてみた。

 

「タイムリープって信じるか?」

 

五月ははじめ驚いた顔をしていたが徐々に真面目な表情になっていき、穏やかな口調で答えた。

 

「信じますよ。」

 

俺は五月の答えに少し驚いたが再び問いた。

 

「どうしてだ?」

 

「だって…。」

 

五月は少し言葉を詰まらせた。

 

「だって?」

 

「タイムリープがないっていう証明はされてないじゃないですか。」

 

「なるほど。そういう考えか」

 

「えぇ。意外と身近にいるかもしれませんし。」

 

五月が意味深なことを言ったため変な汗をかいてしまった。

 

(まさかばれているのか…?)

 

俺はそんなことないと自分に言い聞かせ、この話を終わらせることにした。

 

「まあ、そうかもな。くだらないことを聞いて悪かったな。勉強再開するか。」

 

「えぇ。」

 

そうして三度、黙々と勉強をし始めたのであった。

結局その日は、図書館が閉館の時間まで誰も来なかった。

 

「結局三玖も来なかったな。」

 

「どうしたんでしょうね?」

 

「さあな、今から家に行って四人にお説教だな。」

 

二人は中野家に向けて歩き始めた。

しばらく沈黙が続いたが沈黙に耐えられなくなり、余計なことを口走ってしまった。

 

「お前って意外と人の話を素直に聞いてくれる奴だったんだな。」

 

「はぁ??」

 

あきらかに不機嫌そうな顔をこちらに向けてきた。

 

(やっべ、そういえばこっちの世界では最初から素直だったな…)

 

俺がどうしようかと悩んでいると、五月が不思議な子音を言った。

 

「確かに最初は突っかかりすぎましたが…。」

 

(あれ、そうだっけ?俺が勘違いしてたのか?)

 

よくわからなかったがとりあえず話がうまくまとまりそうだったので良しとした。

中野家につき、四人のことを叱ってやろうとしたが、なぜかみんな勉強をしていて逆にしかられてしまった。

彼女たちによれば今日は家で勉強するっていったじゃないとのこと。

 

(あれれ…。話がかみ合わないぞ…。)

 

こうして定期試験当日を迎えたのであった。




感想とかバンバン送ってください!
励みになります!
今日はご要望があればもう1話出します!


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第九話 まさかの結果…

どうもかずめぐです!
ご要望があったのでもう一話投稿させてもらいます!
あと少しでストックが切れちゃうな…
でも、皆さんに喜んでほしいので切れるまでじゃんじゃん出します!
では、本編へどうぞ!


*お知らせ
  五等分のやり直しの番外編R18は別の場所に移動させました。
  読みたい方は、「五等分のやり直し 番外編」で調べてください。


 

定期試験が終わり、みんなそれぞれ個表をもっていつもの図書館に集まっていた。

 

「えーっと、あまり期待はしてないがみんなどうだったんだ?」

 

俺が恐る恐るみんなに聞いてみた。

すると先陣切って答えたのは五月だった。

 

「私は、英語が56点、数学が60点、国語が53点、理科が78点で、社会が46点で、一応全科目赤点回避ですね。」

 

「よくやったぞ五月!!」

 

俺は心の底から喜んでいた。

 

(まさか最初からこんな成績をとってくるなんて、素直な五月は一味違うな!!)

 

しかし、問題は残りの四人である。

 

「ほかのやつは、どうだったんだ?」

 

みんなシーンとしている。

 

「そうか…。わかった。まあ、お前らはよく頑張ったよ。」

 

俺は精一杯慰めの言葉を口にしよとしたところ、二乃にさえぎられた。

 

「勘違いしてるところ申し訳ないんだけど、全員赤点回避してるわよ。」

 

俺は、二乃の言った言葉の意味が理解できず聞き直してしまった。

 

「えっ、なんだって??」

 

「だーかーらー、全員赤点回避してるって言ってんの。」

 

「嘘だろ…。」

 

「嘘だと思うなら見てみなさいよ」

 

そういわれ、全員分の個表を手渡された。

手渡された個表は確かに彼女たちの個表である。

しかも、二乃の言う通り全員赤点を回避しているのであった。

 

「どうしてだ…?」

 

俺は心底不思議でならなかった。

 

(前日まであんなにできなかったのにどうしてだ…?)

 

俺がすっかり困惑しきっていると、一花から声をかけられた。

 

「みんな、フータロー君が思っている以上に頑張ってたんだよ。」

 

「お前ら…。」

 

俺がしんみりしていると突然四葉が騒ぎ出した。

 

「では!定期試験も終わったので、林間学校のお話でもしましょうか!!」

 

「は??」

 

あまりに突発的な出来事に俺は固まってしまった。

ほかの4人もさらさら勉強する気はないみたいである。

 

「おい。お前ら。復習はしたのか??」

 

俺が鬼の形相で語り掛けると五月が俺を諭してきた。

 

「まあ、今日くらいはいいじゃないですか。みんな頑張りましたし。」

 

「…。まあ、そうだな。」

 

それを言われるとぐうの音もでないので今日は好きにさせてやることにした。

 

(まあこいつらのおかげでクビにならずに済んだから許してやるか。)

 

俺は席を立ち帰ろうとすると急に四葉に手をつかまれた。

 

「どこに行くんですか、上杉さん。あなたも参加するんですよ!!」

 

(嘘だろ!?帰らしてくれよ!?)

 

心の中でいくら叫んでも、運動能力が俺よりはるかに高い四葉に捕まったら逃げることはできないのであった。

 

 

 

……

 

(一体、何分経ったんだ。よくこんなくだらない事を話し続けられるな。)

 

彼女たちはかれこれ1時間以上林間学校の話をしていた。

眠くなった俺は下を向き、ばれないように寝ることにした。

あと少しで意識が飛ぶというところで四葉に邪魔されたのである。

 

「聞いてますか上杉さん!?」

 

「あぁ、聞いているよ。」

 

俺は聞いていなかったが、適当に答えた。

 

「では、上杉さんはどうおもいますか??」

 

急に四葉から質問をされたのでうまく返答ができずにいたら、四葉が膨れた顔をした。

 

「やっぱり、聞いてないじゃないですかーー!」

 

「すっ、すまん。ぼーっとしてた。で、なんの話だ?」

 

これ以上機嫌を損ねさせてはまずいと思った俺はちゃんと話を聞くことにした。

 

「ですから、キャンプファイヤーで踊った二人は生涯一緒にいる関係になるらしいですよ!!」

 

「なんだその、非科学的な話は。」

 

俺は思わず素直に思ったことを口走ってしまった。

 

(そういえば以前もこんなことを言っていたな。)

 

四葉を見てみると、また膨れ顔をしていたので焦った俺はとっさに隣にいた三玖に話を振った。

 

「三玖はどうおもうんだ??」

 

三玖は突然話を振られ、驚いた顔をしていたがすぐにいつもの顔になり、穏やかな口調でこたえはじめた。

 

「昔は信じてなかったけど…。実際に目の当たりにしてから信じるようになった。」

 

「実際に??どういうことだ?」

 

「秘密。」

 

秘密といわれこれ以上聞けなくなってしまった。

 

「信じてないのは上杉さんだけですよ!」

 

四葉が勝ち誇った顔をしている。

 

「そもそも、俺には恋だの愛だのは勉強のさまたげになるからいらないんだよ。」

 

「へー、そうなんだー。」

 

二乃がニヤニヤしながらこちらを見ている。

 

(ニヤニヤするな…。胃がキリキリする…。)

 

どうやってこの話を終わらせようか考えていると、ちょうど図書館の閉館時間になった。

 

「よし、今日は解散!じゃあな。」

 

俺は逃げるようにその場を去ったのであった。




ふう。九話まで投稿完了。
十話からは林間学校編がスタートします!
林間学校編では今までよりももっとアクションがあるので楽しみにしててください!
(林間学校と言っても、そのお前日からお話はスタートします。)
あと、十三話の後に番外編(R18)を用意したのでお楽しも下さい!
出来たら明日か明後日には上げたいと思ってます!


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第十話 お願い五月さん。

どうもかずめぐです!
ただいま、アンケート実施してます!
お気軽に投票してください!
アンケート結果によっては今後の展開が変わるかもしれません。
それでは、本編へどうぞ!

*お知らせ
  五等分のやり直しの番外編R18は別の場所に移動させました。
  読みたい方は、「五等分のやり直し 番外編」で調べてください。


 

定期試験が終わってから一週間と数日後の日曜日。なぜか俺はショッピングセンターに来ている。

 

(どうしてこうなった…?)

 

さかのぼること二時間前…

 

 

今日は林間学校の前日ということで家庭教師は休みにしたのである。

 

(よし。今日は思う存分自分の勉強ができるぞ。)

 

そう意気込んでちゃぶ台に向かっていると突然インターホンが鳴った。

俺は、インターホンを無視していたが、らいはが出てしまったのである。

そこが運の尽きだということはその時の俺は思いもしなかった。

らいはが玄関のほうで誰かと楽しそうに話していたが、俺は無視して勉強を続けた。

すると、突然、

 

「お邪魔します。」

 

という声とともに誰かが入ってきた。

 

(どこかで聞いたことがある声だな?)

 

そう思い扉のほうを見るとなんと五月がいたのである。

 

「おはようございます。上杉君。」

 

「なぜ、お前がここに…?」

 

俺はもっと早く気付くべきだったと後悔した。

 

(らいはが楽しそうに話している時点で五姉妹のだれかだと気づくべきだった…。)

 

俺がそんなことを考えていると五月は俺の先ほどの問いに答えた。

 

「今日はこれを渡しに来たのです。」

 

そう言うと、五月はカバンの中から分厚い封筒を出した。

 

「なんだこれは…?」

 

俺はその封筒の中身が何なのかがいまいちわからない。

 

「家庭教師代です。」

 

五月は淡々と答える。

 

「一人一日、五千円で十日間。全部で25万円です。」

 

「嘘だろ…。」

 

手渡された封筒の中身を見て俺は固まってしまった。

なんせ初めてこんな大金を手にしたのである。

 

「こんなに、もらって大丈夫なのか??」

 

俺はついつい心配になってしまう。

 

「はい。むしろ安いくらいですよ。わずか一か月ほどで私たちのことを赤点回避させたのですから。

義父もとてもほめていましたよ。」

 

「そ、そうか…」

 

俺はいまだに手の震えが止まらなかった。

そんな俺をらいはが目を輝かせながら見ている。

 

「お兄ちゃんすごい!!」

 

「あぁ、ありがとな。」

 

「では、私はこれで。」

 

五月が帰ろうとすると、らいはが何か思いついたかのように五月に言った。

 

「そうだ!五月さん!お兄ちゃんの服を一緒に買ってあげてくれませんか??」

 

突然のらいはの発言に驚いた俺は思わず、

 

「何言ってんだよと!!」

 

大きな声で叫んでしまった。

そんな様子を見た五月は

 

「私とですか??」

 

と明らかに困った顔をしている。

なので、俺はらいはに

 

「お姉さんのこと困らせちゃだめだぞ」

 

と言い、あきらめさせようとした。

 

すると、らいはは五月に対して目をウルウルさせるながら上目遣いで

 

「ダメ…?」

 

なんていうもんだから、結局服を買いに行くことになってしまったのである。

 

そして冒頭に戻る。

 

「悪いな、五月、迷惑かけちまって。」

 

一通り買い物を終えた俺たちは喫茶店で少し休憩していた。

 

「いえ、全然かまいませんよ。なんて言ったってらいはちゃんの頼みですから。」

 

「ほんとにすまねーな。」

 

「ところでなぜらいはちゃんは突然あのようなことを言い始めたのでしょうか?」

 

五月が不思議そうな顔をしながらこちらを見てくる。

 

「あれだろ。明日が林間学校だからだ。俺は新しい服なんて全然持っていないからな。」

 

「なるほど。」

 

五月は納得したのか手をぽんっとさせていた。

二人とも飲み物を飲み終わったので会計を済ませ外に出ることにした。

すると、突然後ろから声をかけられたのである。

 

「あら、あんたたちこんなところで何してるのよ。」

 

「おやおや、デートですか?お姉さん妬けちゃうなー。」

 

「まさか、二人は付き合ってるの…?」

 

「えっ!?そうなんですかー??」

 

四人がそれぞれ勝手なことを口走っている。

 

「違います。」

 

五月が顔を真っ赤にしながら否定していた。

 

「否定すればするほど怪しいなー。お姉さんに素直に話しちゃいなよー。」

 

「だから違いますってば!上杉君からも説明してください。」

 

「めんどくさいから帰るな。」

 

俺はそういいこの場から逃げようとすると二乃から声をかけられた。

 

「あんたどこ行くの?」

 

「家に帰るんだが?」

 

二乃がニヤニヤしている。

 

(嫌な予感しかしないんだが…。)

 

すると、予想通りむしろ予想のはるか上をいくことを言われたのである。

 

「あんた今日うちに泊まっていくのよ。」

 

「はっ?なんでだよ。」

 

「さっき、らいはちゃんに電話して、明日お兄ちゃんを寝坊させないためにうちに泊まらしていい?って聞いたら二つ返事でいいって言ってくれたわよ。」

 

「嘘だろ…。」

 

日曜夕方の家族連れが多くどことなく幸せな雰囲気が漂うショッピングセンターに一人だけ絶望の顔をした少年がいたのであった。




いつやるかは未定ですが、今後本編とは全く関係のない五姉妹のIFストーリーを一話ずつ番外編で書くと思います。
その中から、アンケートで一番好評だったものをストーリー化させようかなと考えてます。
やってほしいIFストーリーがあったら、感想で送ってください。
*作者の都合上、送られてきたすべてのものが実現されるとは限りません。


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第十一話 三玖と再び

どうもかずめぐです!
アンケート実施してるのでお気軽に答えてください!
それでは本編へどうぞ。


*お知らせ
  五等分のやり直しの番外編R18は別の場所に移動させました。
  読みたい方は、「五等分のやり直し 番外編」で調べてください。


俺は一度家に帰って林間学校の支度をしてから、中野家に来ていた。

 

(らいはのやつ、こいつらと仲良すぎだろ)

 

俺は目の前で人生ゲームをしているこいつらを見てため息をはいた。

 

「フータロー君。ため息はいてると幸せが逃げちゃうよー。」

 

隣にいる一花が笑いながら言ってくる。

 

「そんなの迷信だ。」

 

俺は鼻をふんっとならした。

 

「次は上杉さんの番ですよ~」

 

そう四葉に言われたので俺はルーレットを回した。

 

出た数字は3。

 

俺は自分の駒を3マスだけ進めて読むのは四葉に任せた。

 

「えーっと、不貞がばれて社会的地位を失った。無職になり、10万円を支払う。」

 

「なんだよそのマス!?ほんとに子供のゲームかよ!?」

 

俺はあまりに書いてあることが大人のどろどろした世界のものだったため思わず叫んでしまった。

 

「フータロー。不貞働くんだ。サイテー。」

 

三玖が冷たい目線をこちらに向けてくる。

 

「いや、ゲームの話だからな!?」

 

(ゲームの話を現実にまで反映されたらたまったもんじゃねー。)

 

そう思った俺は時計を見て時間を確認し五つ子たちにそろそろ寝ることを提案をした。

 

「明日は朝早いから、そろそろ寝ないか?」

 

「そうですね。寝坊したら元も子もないですから。」

 

「あぁ、それで、俺はどこで寝ればいいんだ?」

 

「あたしの部屋使っていいわよ。」

 

二乃がまたニヤニヤしている。

 

(こいつはいつからニヤニヤキャラになったんだ。)

 

そんなことを考えていると横やりが入った。

 

「私の部屋を貸すよ。前回は結局ソファーで寝かしちゃったから。」

 

そんなことを言ってるのは三玖であった。

 

(んー、薬を盛った前科がある二乃よりも三玖のほうが安全なのか?いや、二人とも危険だよな。)

 

様子を見ている限り俺の意見は反映されないみたいなので黙って事の成り行きをみていた。

 

「あんたの部屋で寝るとまた部屋に襲いに行くんじゃないのー?」

 

「違う。前回は寝ぼけてただけ。二乃こそさっきからニヤニヤしてなにを企んでいるの。」

 

両者一歩も引かない。

 

すると、長女である一花がある提案をした。

 

「まあまあ。そんな睨み合わないでじゃんけんできめたら?」

 

「確かにそのほうが手っ取り早くていいわね」

 

「うん。負けても文句は無しだよ。」

 

「大丈夫。あたしが勝つから。」

 

「寝言は寝てから言いなよ。」

 

「じゃあいくよー。」

 

一花の合図でじゃんけんが始まった。

 

「「最初はグー。じゃんけん…」」

 

 

……

 

皆が寝静まった午前2時、俺はいまだに寝れずにいた。

 

(やばい。三玖とのことを思い出して全然寝れない。)

 

俺は眠くなるどころか、むしろ元気になってきてしまった。

 

特に下半身が…。

 

(くそ。さすがに人の寝床ですっきりするわけにはいかないし…。)

 

俺が悶々としていると突然ドアが開いた。

 

部屋に入ってきた人物は俺に話しかけてきた。

 

「フータロー、まだ起きてる?」

 

寝てるふりでもしようと思ったがすぐばれると思ったので返事をした。

 

「あぁ、起きてるが、どうしたんだ?」

 

「話したいことがあるの。」

 

「なんの話だ?」

 

「前回のこと。」

 

「…。」

 

俺が返事に困っていると三玖は俺にかまわず独り言のように語り始めた。

 

「私も、一花に言われて自分の都合のいい夢だったのかなって思ったんだけど、やっぱりあの感覚は夢じゃないと思う。夢ならすぐ薄れていくけど、今でも鮮明にフータローの顔も感触もすべて覚えてるんだもん…。」

 

俺はまたはぐらかそうと思ったけどやめた。

さすがにあれだけ好き勝手やっておいて夢だったというのは人としてどうなのかと思われたからだ。

 

「すまん、三玖。あれは夢じゃないんだ。俺が寝ぼけて夢だと思ってやってしまった。本当にすまん。自分勝手なのはわかっているがこのことはほかの姉妹に言わないでくれ。」

 

三玖は俯いていて表情が見えなかったが何かボソッとつぶやいていた。

 

「よかった…。夢じゃなかったんだ…。」

 

「なんて言った?」

 

俺は全く聞こえなかったのでもう一度聞いてみた。

すると、答えは返ってこなかったが、泣いている三玖が突然抱き着いてきたのである。

どうしたものかと思ったが泣いていたのでしばらくそのままにした。

3分ほどたち、ようやく三玖が口を開いた。

 

「ごめん。急に泣き出したりなんかして…。」

 

「いやいいよ。悪いことしたのは俺だから。」

 

「フータローは、私のことが好きだからああいうことしたの…?」

 

不安そうな顔をして三玖が聞いてきた。

 

「…。前にも言ったが、俺は恋だの愛だのとは無縁なんだよ。確かに、三玖のことは人としては好きだ。けれど、異性としてはわからない。」

 

「そっか…。」

 

三玖はまた俯いてしまった。

 

(まあ、嫌われた当然だよな…。性欲のはけ口みたいに扱ったわけだし…。)

 

しばらくすると、三玖は何かを決心したような顔をこちらに向けて、話し始めた。

 

「私は、フータローとキスできて、フータローに触ってもらえてうれしかったよ。」

 

三玖の言ってることが理解できない…。

俺が何もしゃべらないでいると、三玖が話すのを続ける。

 

「私はフータローのことが大好きだから。」

 

三玖はとびっきりの笑顔でそんなことを言ってくる。

 

俺が黙っているとなおも話すのを続けている。

 

「返事はまだしないで。今は無理だってわかってるから。」

 

俺はようやく口を開くことができた。

 

「本当にすまん。」

 

「でも、ぜったいに好きにさせてみせる。」

 

三玖は、とてもやさしい笑顔で笑いかけてきた。

 

その笑顔に俺は思わずドキッとしてしまったのである。

それをごまかすかのように俺は布団を頭からかぶり寝っ転がった。

すると、三玖は何を思ったのか布団の中に入ってきたのである。

 

「なにしてんだよ。早く一花のところに戻らなくて大丈夫なのか?」

 

「大丈夫。出るときにしっかり確認してきたから。」

 

そういうと三玖が背中にくっついてきた。

 

「おい。その凶器を当てるな。襲われたいのか。」

 

「ワザとに当ててるんだもん。責任取ってくれるならいいよ。」

 

「とんでもない女だな。」

 

「えへへ。お嫁さんにしたくなった?」

 

「今のどこにその要素があった。病院にでも行ってこい。」

 

「むう。そんなこと言うと、ほかの人にばらしちゃうよ。」

 

「うっ…。それだけはやめてくれ…。」

 

「抱きしめてキスしてくれたらゆるしてあげるよ。」

 

「…。顔をゆでだこみたいにしながら言うなよ…。」

 

後ろを振り返ってみてみると顔を真っ赤にした三玖の姿があった。

 

「…。だって、恥ずかしい…。でも、してほしかったから…。」

 

「わかったよ…。」

 

ここまでくるとしたほうが早いので、俺は三玖のことを抱き寄せ軽く唇を合わせた。

 

(あーあ。自分で弱みを増やしてしまった…。)

 

しかし不思議と後悔はしていなかった。

 

「うれしい…。」

 

三玖は耳先まで真っ赤にして俺の胸に顔をうずめていた。

しばらくこの態勢でいると胸元から寝息が聞こえてきた。

寝息が聞こえるほうを見てみると三玖がすーすーと寝ていた。

俺はなぜかその顔を見ていると愛おしくなってきた。

 

(俺も相当疲れてんのかな)

 

そんなことを考えていると俺もいつのまにか寝てしまっていた。

 

俺はこの時、扉の前でことの一部始終を聞いていた人がいるのに気づいていなかったのである…。

 



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第十二話 一花の作戦

どうもかずめぐです!
アンケートは今のところ、三玖が圧勝ですね。
でも、二乃と一花が二位争いをしているのは意外でした。
果たして、この後どのような結果に…?
では、本編へどうぞ。

*お知らせ
  五等分のやり直しの番外編R18は別の場所に移動させました。
  読みたい方は、「五等分のやり直し 番外編」で調べてください。


ドアをたたかれる音がして、俺は目が覚めた。

 

「上杉君。起きてください。遅刻しますよ。」

 

声の主は五月である。

俺はドア越しに返事をした。

 

「今起きたから大丈夫だ。」

 

「わかりました。朝ご飯ができてるのですぐ出てきてくださいね。」

 

「あぁ、わかった。」

 

五月が階段を降りる音が聞こえる。

俺は、まだ寝ぼけた頭で昨日のことを考えた。

 

(そういえば三玖はどこに行ったんだ?)

 

周りを見回してみたが三玖の姿はどこにもない。

 

(先に起きたのか。)

 

俺は昨夜のことがほかの姉妹にばれてないかびくびくしながら三玖の部屋から出た。

すると、ちょうど一花の部屋から出てきた三玖と目が合ったのである。

俺は、正直昨日のことがあるので、恥ずかしかったが、

 

「おはよう」

 

と、いつも通りを装い挨拶をした。

しかし、三玖のほうは顔を真っ赤にしながら俺のことを無視して先にリビングに行ってしまったのである。

 

(お前から告白したんだろうが…。)

 

今後の日常に差支えがないか心配になったが、とりあえず林間学校のバスの時間に遅れるわけにはいかないので、俺もリビングに向かい朝食をとることにした。

リビングに行くと五姉妹が楽しそうにおしゃべりをしながら朝食を食べていた。

 

「上杉さーん!起きるの遅いですよー!はっ!?もしかして昨日は楽しみすぎて眠れなかったのですか??」

 

「そんなことあるわけないだろ。」

 

「むう。つまらないですねーー!」

 

四葉がぶーぶー騒いでいるが無視を決め込んだ。

四葉の隣で三玖が大きなあくびをしている。

それを見た四葉は

 

「まさか三玖もですか!?」

 

と、またさわぎだした。

 

(まあ、三玖もあんだけ夜遅くまで起きていれば寝不足になるだろう。)

 

しかし、寝不足なのは俺たちだけではないらしい…

隣で一花も大きなあくびをしていた。

 

「一花、お前も寝不足なのか…?」

 

「なんか明け方目が覚めちゃってね。ははは。」

 

俺は正直一花に昨日の夜のことがばれてるのでは正直びくびくしていたが、とりあえずばれてなさそうなのでほっとした。

騒がしい朝食を終え身支度を整えてから俺たちは中野家を後にした。

 

(そういえば、今回はらいはのやつ熱出さなかったな。)

 

前の世界とこの世界では違う点があることを今までたくさん見てきたので些細な違いはあんまり気にならなくなってきていた。

俺たちは学校につき無事バスに乗ることができたのである。

 

(そういや、前回はこいつらと車で行ったんだっけ?)

 

こういう、ずいぶんと前の記憶は思い出すことができるがタイムリープした時の記憶は全く思い出せない。

 

(いつになったら、思い出すことができるんだ。)

 

俺は、こんなことを考えてるうちにいつのまにか寝てしまった。

 

 

 

……

 

「上杉君。起きてください。着きましたよ。」

 

俺は五月に揺り起こされた。

 

「もう着いたのか?」

 

「ええ。みんなもう降りてますよ。」

 

「そうなのか。わざわざ済まないな。」

 

俺と五月はみんなから少し遅れる形でバスを降りた。

バスを降りると突然腕を引っ張られバスの裏へと連れていかれた。

最初は、誰だか分らなかったが、止まってこちらに向き返したときに顔を確認することができた。

 

「一花。どうしたんだ。」

 

そう。腕を引っ張ったのは一花である。

 

「えーっと…。少し二人きりで話したいことがあって。」

 

「そうか、なら早めに済ませてくれ。」

 

この時俺はまだ寝ぼけていたためしっかりと物事を考えることができていなかった。

後に後悔することとも知らずに…

のんきな俺はそんなこと知る由もなく一花の言葉を待っていた。

しばらくして、一花はようやく重い口を開いたのである。

 

「三玖とは、もう付き合ってるの?」

 

「はっ…?」

 

俺のもともとわずかにしか働いてなかった思考が一瞬にして全停止した。

 

「昨日のやつ、実は聞いちゃってたんだよね…」

 

一花は舌をぺろっと出しながらごめんねポーズをする。

俺が何も話せないでいると、一花はなおもその時の状況の説明を続ける。

 

「実は、三玖が部屋を出た後、あとをつけてたんだよね。それで三玖の部屋の前で全部聞いてたの。」

 

「なぜ、そんなことを…。」

 

「三玖がフータロー君を好きなことは知ってたけど、フータロー君はどうなのかなーって気になったから。」

 

「…。はっきり言わせてもらうが俺は三玖と付き合っていない。」

 

「そうなんだ。ならいいよね。」

 

「ん?なにがだ?」

 

一花は下をむいて黙り込んでしまったが、再び顔を上げた。

 

「お姉さんはここでこないだの権利を行使します!」

 

「権利?なんのことだ?」

 

「もー、忘れないでよー。三玖のことをごまかすの手伝った代わりに言うこと一つ聞くってやつだよー。」

 

「あー、あれか。で、何をお願いするんだ。さすがに死ねとかはやめてくれよ?」

 

「そんなこと言わないってば。」

 

「じゃあなんなんだ?」

 

「私と一緒にキャンプファイヤーで踊って。」

 

「は??そんなのお前なら俺に頼まなくても踊ってくれる奴なんてたくさんいるだろ。」

 

「フータロー君じゃなきゃダメなの。」

 

「なんでだよ。」

 

「だって、好きだから。」

 

「え…。」

 

俺は固まってしまった。

いくら人から言われるのが三回目だとしても、やはり慣れない。いや、前の世界を含めるともっとか。

 

「なんとかいってよ…」

 

一花が恥ずかしそうにもじもじしている。

 

「お前が俺を?」

 

「うん。そうだよ。」

 

「なんでだ…。」

 

「んー、わかんない。」

 

「わかんないってお前…。」

 

「フータロー君。この感情は理屈じゃないんだよ。だからわからないものはわからないの。」

 

「…。そうか。一花。昨日の話を聞いてたらわかっていると思うが…。」

 

「あー、だからまだ返事はしないで。」

 

「えっ…?」

 

「フータロー君が恋だの愛だのに興味ないのはしってるから。でも、絶対好きにさせてみせる。」

 

「そ、そうか…。」

 

「ここまで言ったんだから、キャンプファイヤーで一緒に踊ってくれてもいいよね?」

 

一花がものすごく圧をかけてくる。

 

「善処してみる…。」

 

「善処じゃなくて、絶対ね。踊ってくれなかったら私死んじゃうかも。よし。じゃあみんなも待ってることだし行きますか。」

 

一花は物騒な発言を置き土産にしてすたすたと宿に行ってしまった。

取り残された俺はどうしたらいいのかわからず立ち尽くしていた。

 

(なぜ、こういうところは前回と一緒なんだ…)

 

可能性として一つだけ、思い当たることはあるが、俺にそんなことを聞く勇気はないのであった。

 




やべー…
もう、ストックが全然ねーよ…
夜逃げしても許される世界でありますように…


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第十三話 フータロー争奪戦(1)

どうもかずめぐです!
このお話の続きとして番外編でR18のお話を出すのでよかったらそちらも見てください。
では、本編へどうぞ。


*お知らせ
  五等分のやり直しの番外編R18は別の場所に移動させました。
  読みたい方は、「五等分のやり直し 番外編」で調べてください。


林間学校の初日の夜、俺は肝試しの係になったので四葉と一緒にみんなをおどかしてる真っ最中である。

 

「上杉さん。みんな思った以上に驚いてくれませんね。」

 

「まあ、もう高校生だからな…。」

 

(前回はあれほど驚いていたのになぜ今回はそんなに驚かれない…。驚かれないと意外に悲しいな…。)

 

横を見てみると四葉も同じことを考えていたのかしょぼんとしていた。

すると、前からよく知る三人組が歩いてきた。

 

「フータロー君。お化けならちゃんと隠れなきゃー。」

 

「フータロー、頑張ってね。」

 

「四葉どうしたんですか??」

 

前から来た三人の正体は一花、三玖、五月であった。

 

「四葉はみんながあまり驚いてくれないからしょげてるんだ。」

 

「なるほど。」

 

「しょげてなんかいませんよ!!」

 

「んー。まあ、こんだけ明るければね。」

 

一花が苦笑いをした。

そう、今回はまだ日が沈み切っていないのである。

俺はため息をついていると、とあることに気付いた。

 

「そういえば、二乃はどこにいるんだ?」

 

「あれ?まだきてないの?てっきりお友達と先に来ているもんだと思ってたよ。」

 

「二乃のことだから、めんどくさくてサボってるんだと思う。」

 

「あいつー。俺たちが頑張っているのにおさぼりだとはいい度胸だな。後で懲らしめてやる。」

 

俺がすごく悪い顔をしていると四人にドン引きされてしまった。

三人が行ってしばらくたち、肝試しの終了時刻となった。

さすがに辺りはもう暗くなっていた。

 

「このくらいの暗さがないとやっぱだめだよな。」

 

「ですね。」

 

四葉も隣でうんうんとうなずいている。

 

「四葉、お前はもう片づけをして帰ってていいぞ。俺は、だれか迷子になってないか見回りしてくる。」

 

「了解です!」

 

そうして、俺は四葉と別れた。

 

「はあ、なんで係だからって迷子がいないか探さないといけないんだよ。そもそも、高校生なんだから迷子になんてならないだろ。」

 

俺は一通り周りを見終わり宿に帰ろうとしたところ急に誰かに腕を引っ張られ茂みの中に連れていかれた。

 

「急になにすんだよ!?てか、お前誰だ。」

 

相手の顔を確認しようとしたが暗くてよく見えなかった。

しかし、なんとなく五姉妹のうちのだれかだという予想はついていた。

 

「当ててみなさいよ。」

 

五姉妹のうちの誰かはそう冷たく言い放った。

 

(この口調は…)

 

「二乃だな。」

 

「あら、わかってたのね。」

 

「いや、今口調で気付いた。それより何の用だ?」

 

「はあ?あんたしらっばくれるの?」

 

「なんの話だか全く分からないんだが…。」

 

「なんで、あたしの呼び出しを無視したのよ。」

 

「呼び出し??」

 

「まさか、あんた、メール見てないの??」

 

俺は慌ててケータイを開いた。

そこには二乃からのメールが一通…

 

「すまない。ケータイはほとんど見ないんだ。」

 

「なんだ。わざと無視したわけじゃないのね。ならいいわ。」

 

「で、なんの話があるんだ?呼び出したってことは話したいことがあるんだろ?」

 

「あんた、一花と三玖から告白されたでしょ。」

 

「…。なんの話だ…。」

 

「誤魔化さなくていいから、あの二人の様子を見ればバレバレよ。」

 

どうやら、俺のせいでばれたみたいじゃないみたいだ。

 

「まあでも、あんたのことだから返事はしてないんでしょ。」

 

「よくわかったな。」

 

「あんたのスタンスは十分理解しているから。」

 

「なるほど。」

 

「まあこの話はどうでもいいのよ。」

 

「どうでもいい話を先にするなよ!!」

 

「細かいところはいいじゃない。で、ここからが本題よ。」

 

「なんだよ。」

 

二乃が一歩詰め寄ってきた。

 

「あんた、もうキャンプファイヤーで踊る相手決めた?」

 

「無理やりな…。」

 

(またこの話か…。しかし俺はもう一花と約束してるからな…。)

 

「ちっ、先越されたか。で、相手は誰?」

 

二乃がにらんでくる。

 

「黙秘する…。」

 

「なんでよ。いいじゃない教えてくれても。」

 

「お前がそいつに何するかわからないから言わない。」

 

「姉妹には何もしないわよ。」

 

「姉妹にはって俺には何かするのかよ!?」

 

「あっ、その手があったわね。」

 

二乃が怪しく微笑んだ。

 

「マジで勘弁してくれ…。」

 

二乃はほんとに何かするかもしれないので俺は心の底から勘弁してくれと思った。

 

「まあ、先約がいるなら仕方ないわ。その代わり明日のスキーは一緒に滑りましょ。」

 

「それくらいなら、全然かまわないぞ。」

 

「じゃあ決まりね。そろそろ、宿に帰りましょうか。」

 

俺たちは宿に帰りそれぞれ自分の部屋に戻った。

俺はそのあと風呂と夕飯を済ませ消灯時間まで勉強をしていた。

相部屋の前田は他の部屋に遊びに行ったので、俺は一人で黙々と勉強をすることができた。

 

(ふぅ、そろそろいい時間だしねるか。)

 

時刻はもうすぐ消灯時間の十時になろうとっしていた。

前田はいまだに帰ってこないがほっといて寝ることにしよう。

俺は電気を消して布団の中に潜った。

三分ほど度経つとドアが開けられ誰かが入ってくる音がした。

 

(やっと帰ってきたのか。)

 

しかし、俺は話すのが面倒だったので寝てるふりをしたのである。

今思えばそれが失敗であった。

前田と思われる人物は急に俺の布団にもぐってきたのである。

俺は思わず跳ね起きて、

 

「人の布団に入ってくんな!」

 

と、前田に言いながら、前田のほうに向きなおったのである。

すると、何か柔らかいものに手が触れた。

 

(なんだこれ?こいつこんな柔らかかったっけ?なんかこれ触ったことがある気がするな。)

 

そんなことを考えながら柔らかいものをフニフニしていると、前田と思われる人から声をかけられた。

 

「フータローのえっち…」

 

俺はその人物の声に聞き覚えがあった。

 

(えっ、フータロー?…。まさか…。)

 

「お前、三玖か…。」

 

「うん。当たり。」

 

「なにしてんだよ。」

 

「添い寝しに来た。昨日ので癖になったから。」

 

「…。前田が帰ってくる前に早く帰れ。」

 

「大丈夫。前田君帰ってこないから。」

 

「なんでわかんだよ。」

 

「私が今日は部屋を貸してってお願いしたから。」

 

「…。何してんだよ。絶対あいつ人に言いふらすじゃねーかよ。」

 

「それならそれで別に構わない。」

 

「なんでだよ。付き合ってるって噂されるかもしれないんだぞ。」

 

「うん。そうすればほかの人に私のものだよって牽制できるから。」

 

「怖いわ。そもそも、お前のものになった覚えはない。」

 

「今はね。」

 

「お前には未来予知の能力でもあるのかよ。」

 

「うん。私はフータローのお嫁さんになってるよ。」

 

「あほか。」

 

「えへへ。やっぱりフータローとおしゃべりするのは楽しいや。」

 

三玖が照れながらそんなことを言ってきたせいで俺まで顔が赤くなって気がする。

 

「ねえ、フータロー。朝までここにいていい?」

 

「ダメって言ってもいるんだろ。」

 

「うん。よくわかったね。」

 

「もういいから、さっさと寝ろ。」

 

俺は三玖と自分に半分ずつ布団をかけた。

 

「あったかい。」

 

三玖が満足気にそんなことを言っていたが無視した。

 

(これ以上話していると変になりそうだ。)

 

しかし、三玖はそんなこと気にせずガンガン話しかけてくる。

 

「そうだ、フータロー。キャンプファイヤー、一緒に踊ろうよ。」

 

「すまん。先約がいる。」

 

「むっ、じゃあ、明日のスキー一緒に回ろうよ。」

 

「すまん。それも先約がいる。」

 

「…。ひどいよ。それが告白に対する答えなのね…。」

 

「別にそういうわけじゃ…。」

 

「誰となの?」

 

「キャンプファイヤーは一花で、スキーは二乃だ。」

 

「あーあ。先越されちゃったか…。」

 

三玖はとても残念そうな声でつぶやいた。

 

「すまないな。」

 

「悪いと思ってるなら、誠意みせてよ。」

 

(そもそも別に俺悪くなくないか?)

 

そんなことを考えたが今の三玖には何を言っても無駄であろう。

 

「誠意って…、どうすればいいんだ?」

 

俺は素直に従うことにした。

 

「んー、じゃあ今晩は私の言うこと聞いてね。」

 

「ものにもよるが…。」

 

「えへへ、やった。」

 

三玖はそういい俺に抱き着いてきたのである。

俺は突然背中にたわわに実った凶器を押し付けられ、恥ずかしながら息子が反応してしまった。

 

「おい、当たってるぞ…。」

 

「当ててるんだもん。」

 

「ワザとなら余計にたちが悪いぞ。離せ。」

 

「さっき、触ってたくせに。」

 

「それは何かわからなかったからだ。」

 

「嘘。」

 

「…。お願いだからやめてくれ…。」

 

「そんなに嫌なの…?」

 

三玖が悲しそうな声で聴いてくる。

 

「変になりそうなんだよ。」

 

「変にって??」

 

「いろいろと限界なんだよ。」

 

「我慢しなきゃいいじゃん。私、フータローならいいよ。」

 

その言葉を聞いた瞬間俺の身体の中で何かが崩れる音がした。

そして、俺は三玖の上に覆いかぶさった。

 

「きゃっ」

 

三玖は小さな悲鳴を上げる。

 

「どうなっても知らないからな。」

 

「優しくしてね。」

 

三玖はそういうと俺にキスをしてきた。

俺たちはそのまま日が出始めるころまで何回も何回も抱き合ったのであった…。

 




三玖への愛が止まらない…
でも、そろそろタイムリープについてやらないと読者に怒られそうだな…。
ここんとこ、ずっとイチャイチャしか書いてないし…
林間学校編が終わったらちゃんと書くつもりです。
うん、つもり…

ちなみに、この後の番外編にのせるR18のやつを見なくても、本編についていけなくなることはないので、苦手な人は読まなくて大丈夫です。


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第十四話 フータロー争奪戦(2)

どうもかずめぐです!
林間学校編も残すところこの話を含めて後三話です!
そいて、ストックも後三話しかない…
やべーよ…
では、本編へどうぞ!





 

 

俺は、宿にある食堂で一人で席に着き朝飯を食べていた。

 

(まさか、あんなにハッスルしてしまうなんて…。俺は猿かよ…。)

 

はぁ…とため息をはくと急に目の前にリボンが現れた。

 

「溜息を吐いていると幸せが逃げちゃいますよ??」

 

リボンは非科学的なことを言っているので俺は無視をしてみそ汁をすする。

 

「ちょっと!無視しないでくださいよ!?」

 

「あいにく、知らない人とは話すなと教育されてきたもんでな。」

 

「知らない人とはひどいですよ!」

 

すると、俺とは反対側の机の下から四葉が出てきたのである。

 

「わあー。四葉だったのかー。まったく気づかなかったー。」

 

とめちゃくちゃ棒読みで言うと、

 

「あれれ?ほんとにわからなかったんですね!怒ってすいません!」

 

と素直に謝られてしまったのである。

俺は少しふざけすぎたと思ったため、とっさに話題を変えた。

 

「ところで、ほかのやつらはどうしたんだ?」

 

「一花と五月は他の席で朝ご飯を食べてます。それで、二乃は朝からシャワーを浴びてとてもそわそわしてました。三玖は、なぜかぐったりしていて寝てます。三玖は昨晩何をしていたんでしょうかね?部屋にみんなで集まった時も三玖だけいなかったんですよー。」

 

四葉は心底不思議そうな顔をして俺に聞いてきた。

 

(あいつ…。姉妹で集まってるのに俺のとこくるなよ…。絶対に一花や二乃辺りは怪しむだろ…。)

 

俺は四葉に悟られないように平然を装った。

 

「どっかで夜更かしでもしてたんだろ?」

 

「でも、三玖は私たち以外とあんまり話しませんよ?」

 

四葉は俺のことを疑いのまなざしで見る。

 

(こいつ気付いててわざと聞いてるのか…?)

 

しかし、三玖とのことは絶対に他の人にばれてはいけないのである。

 

(特にあの二人にばれたら、何をされるか分かったもんじゃない…。)

 

俺は、考えただけで身震いがした。

 

「さすがに友達くらいいるだろ?」

 

「いることにはいますけど、明け方まで話し込んでますかね?それも、あんなにつかれるまで。」

 

だんだん、四葉の声がどすのきいたものになっていく。

 

(こいつってこんなに頭切れるやつだったけ…?)

 

俺はなんて返事をしようかと考えていると、ご機嫌な二乃が食堂に入ってくるのが見えた。

俺はとっさに二乃のことを呼んだ。

 

「おい、二乃!こっちにきてくれ!今日のことで聞きたいことがあるんだ!」

 

二乃は俺に呼ばれると不思議そうな顔をして近づいてきた。

その時に、四葉が舌打ちをした気がするが気のせいだろう…。

二乃は四葉の顔をじっと見つめた後、予想もしていなかった一言を言ったのである。

 

「一花。あんたなんで、四葉の変装してんのよ。」

 

「へ?」

 

俺は驚きのあまり変な声を出してしまった。

四葉(?)は俯いたまま動かない。

 

「何か言いなさいよ。」

 

二乃はなおも四葉(?)を責め続ける。

すると四葉(?)は、リボンとかつらをとったのである。

 

「邪魔しないでよね、二乃。」

 

そういったのは紛れもなく一花であった。

 

「邪魔?なんの話よ?そんなことより四葉のふりして何しようとしてたのよ。」

 

「二乃には、関係ない。」

 

「あっそ。行きましょ、フー君。」

 

そういうと、二乃は俺の手を引っ張て食堂から出た。

俺は、食堂から出る間際に一花の顔を見てみたら二乃のことをにらみつけていたのである。

 

(なぜ一花はあんなことを…?)

 

俺は訳が全く分からなかった。

 

「二乃、なんで一花はあんなことを?」

 

「あんたが三玖と色々やってるからでしょ?」

 

「え?」

 

「まあ、私は最後には私のもとに来てくれればそれでいいんだけど、一花は許せないんじゃない?」

 

「何をだ…?」

 

「三玖とだけやったことよ。」

 

「…。なんの話だか全く分からないな…」

 

「わからないの?あんたと三玖が昨晩セッ…「ああーーー!わかったからやめろ!」

 

「なんだわかってるんじゃない」

 

「…。お前こそなんで知ってるんだ…?」

 

「そりゃ、あんなお肌がつやつやしてて満足気な顔をしながら明け方に帰ってきたらみんな気付くわよ。」

 

「…。まさかほかのやつも気付いているのか?」

 

「多分、四葉と五月は気付いてないと思うわよ。」

 

「そうか…。このことは黙っててくれないか…?」

 

「いいけど、タダでとは言わないわよね。」

 

二乃が悪い顔をした。

 

「何をすればいいんだ…?」

 

「林間学校から帰ってから言うわ。」

 

「あんましきついのにはしないでくれよ…。」

 

「まあ、あんたの今後の態度次第じゃない?」

 

「…。わかった…。」

 

「とりあえず、約束通りスキーに行きましょ。」

 

「今日は、体中が痛いからお手柔らかに頼む。」

 

「あんたって、意外とお猿さんだったのね。」

 

「返す言葉もない…。」

 

そうして俺たちは、スキー場に向かった。

 

「あんたって、確か、スキーはじめてだったわよね?」

 

「あぁ、そうだが?」

 

(ほんとは二回目だが、二乃の場合らいはから何かを聞いているかもしれないので話を合わせておこう。)

 

「じゃあ今日は、あたしが一から教えてあげるわ。」

 

「よろしく頼む。」

 

スキー場に出てみると思った以上に人が多く、似たような恰好をしている人が多いため、目を離せばすぐ迷子になりそうな環境だった。

 

「思った以上に人が多いわね。」

 

「年末が近いからじゃないか?」

 

「家族連れが多いってことかしら?」

 

「おそらく。」

 

「じゃあ、フー君にはちょっときついかもしれないけど、少し上級者向けのほうに行きましょ。」

 

「確かに、上級者向けの場所ならそこまで人は多くないだろうが、俺が行って大丈夫なのか?」

 

「あたしがいるから大丈夫よ。行きましょ。」

 

二乃は自信満々に言っているが、俺は不安で仕方なかった。

 

(俺はスキーだけど、二乃はスノボなんだよな…。あいつそこんところわかってるのか…?)

 

上級者向けの場所につき、二乃の一言によって俺の予想が的中したことが判明したのである。

 

「そういえば、あたし、スキー苦手だったんだ…。」

 

「…。帰るか…。」

 

「えぇ…。」

 

結局俺たちは、一度も滑らずに宿に帰ることにした。

宿の前に着くと二乃が

 

「着替えてくるから待ってて。」

 

と部屋に戻ってしまった。

俺が手持無沙汰で二乃のことを待っていると、姉妹のうちの誰かが俺の目の前に現れた。

 

「おはよう。フータロー。」

 

「ん、三玖か。体はもう大丈夫なのか?」

 

「まだ、あちこち痛いけど何とか…。」

 

「あんまし、無理するなよ。」

 

(よし、大丈夫だいつも通り話せてる。)

 

俺は一番危惧していたことを免れたので安堵していた。

 

「フータローは今何してるの?」

 

「二乃が着替えてるのを待ってるんだ。」

 

「そっか、二乃ばっかりずるいな。」

 

「何がだよ。」

 

「フータローを独り占めして。」

 

「お前が言うかよ。」

 

俺はふと三玖の首筋を見た。

普段はヘッドホンを首にかけているので何もつけてないというのはなかなか新鮮である。

しかし、俺はある違和感に気付いてしまった。

 

「お前、三玖じゃないな。」

 

突然、俺にそんなことを言われた、三玖(?)は驚いた表情をしている。

 

「フータロー、急にどうしたの?」

 

「変装してんのはばれてんだよ。お前、一花か?」

 

三玖(?)は、一度目をつぶったかと思ったら突然笑い出したのである。

 

「あはは。なんでばれちゃったのかな。」

 

「三玖にあるはずのものがないからだ。」

 

俺は、昨晩、三玖に脅されてキスマークをつけたのである。

しかし、目の前にいる彼女にはそれがない。

 

「ばれないと思ったんだけどな。」

 

目の前にいる五姉妹のうちの誰かはすごく残念そうな顔をしている。

 

(くそ、三玖ではないことはわかったが、口調やら声やらを変えられてだれだかわからないぞ…)

 

「まあ、ばれちゃしょうがないから、一回出直しますか。」

 

すると突然彼女は走り出した。

 

「ちょ、待てよ!」

 

俺も後を追いかけるが、五姉妹の中で一番足の遅い三玖と同じくらいの速さの俺は当然三玖ではない誰かに追いつけなかったのである。

俺が、あきらめようとした瞬間、彼女は

 

「ちなみに、一花ではないからね。」

 

と言ってどこかに行ってしまった。

俺は、トボトボと宿の前まで戻ってくると、心配そうな顔をした二乃がたっていた。

 

「あんた、どこ行ってたのよ!?」

 

俺は、先ほどのことを話そうか迷ったが、姉妹の仲を悪化させたくなかったので、黙っていることにした。

 

「すまん。ちょっと、トイレに。」

 

「それなら、一言言って行きなさいよ!」

 

「いや、お前いなかったじゃん。」

 

「…。それでも心配したでしょうが。」

 

「ほんとに悪かったな。」

 

「まあ、許してあげるわ。」

 

「ありがとう。ところで、これから何するんだ?」

 

「さっき、四葉から電話がかかってきて、キャンプファイヤーの木を運ぶのを手伝って下さいだそうよ。」

 

「よしじゃあ行くか。」

 

「えぇ。」

 

そうして俺たちは、薪運びを手伝いに行ったのである。




五等分の花嫁とコラボしてるゲームをやって三玖が当たった時の喜びは言葉では言い表せない。


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第十五話 フータロー争奪戦(3)

どうもかずめぐです!
三日間で十話以上出してたのに今日は二話しか出せなくて申し訳ないです。
これからも、こんなペースになっちゃうと思いますが何卒宜しくお願い致します。


俺はキャンプファイヤーの薪を運び終えて自分の部屋に戻ってきていた。

 

(ダメだ。もう身体が動かん…。)

 

俺は昨日から身体を酷使しすぎたため少し寝ることにした。

しかし、あと少しで眠れるというところで邪魔にあったのである。

 

「上杉さーん!!起きてくださいよー!」

 

四葉がノックもせずに部屋に入ってきた。

俺は正直めんどくさかったので無視した。

 

「あれれ?ほんとに寝ちゃってるんですか??」

 

四葉は残念そうな声を上げていたが、急に手のひらをたたいたのである。

 

「そうだ!寝てるってことはいたずらしてもばれないってことですよね!ニシシ。」

 

そう言って、俺に近づいて来ようとしたので、俺は飛び起きた。

 

「待て、四葉!俺は起きてるぞ!」

 

「なーんだ。起きちゃったんですかー。残念。」

 

(こいつ、めちゃくちゃ残念そうな顔してるけど何しようとしたんだ。)

 

俺は、四葉の顔をじーっと見つめた。

 

「どうしたんですか?上杉さん。」

 

俺は今朝のことがあったためか、四葉に変な質問をしてしまった。

 

「お前、本当に四葉か?」

 

「はい!あなたの四葉ですよ!」

 

「おい。原作が違うだろ。」

 

「上杉さん。メタい発言はだめですよ?」

 

(おっと、四葉に注意されてしまったではないか。)

 

俺は気を取り直して、別の質問をした。

 

「ところで、お前はここに何をしに来たんだ?」

 

「上杉さんに見てほしいものがあって呼びに来ちゃいました!」

 

「見てほしいものって?」

 

「それは見るまで秘密です!」

 

(えっ、なにそれ。正直怖い…。)

 

俺がおびえているのを感じ取ったのか四葉は笑いながら

 

「大丈夫です!変なものではありませんから!」

 

と言ってきた。

俺はその言葉を信じて四葉についていくことにした。

 

しばらく歩いていると突然四葉が目隠しをしてきた。

 

「おい。なにをするんだ。」

 

「もう少しで着くので、我慢してください!」

 

俺は正直怖かったが四葉に言われるまま手を引かれて歩いて行った。

 

「着きましたよ!目隠しを外してください!」

 

俺は、目隠しを外した。

すると目の前には、きれいな景色やかわいい生き物がいるわけではなく、かまくらが一個だけあった…。

 

「えーっと、これは?」

 

「え!?かまくらしらないんですか!も~上杉さんてば子供ですねー。」

 

「いや、かまくらは知ってる。俺が聞いてるのはそういうことではなくて、なんでかまくらがあるんだって聞いてるんだ。」

 

「私が作ったからです!」

 

「なんでだよ。」

 

「上杉さんに喜んでもらいたくてです!」

 

「なぜ、俺がかまくらで喜ぶと思った。」

 

「えっ!?逆に喜ばないんですか?」

 

「お前の感性はいかれてるな。」

 

「もー、そこは素直にありがとうって言ってくださいよー。」

 

「頼んだ覚えがない。」

 

「むう。もう、上杉さんは入れてあげませーん。」

 

「まあ別にいいが。ところでこれ一人で作ったのか?」

 

「はい?そうですよ?」

 

俺はさすがに四葉がかわいそうに思えてきた。

 

「まあ、その、俺のためにありがとうな。」

 

「ニシシ。楽しんでいただけましたか?」

 

「あぁ、お前の無邪気さに救われるよ。」

 

これは、心の底からの本心である。

 

「ニシシ。では、入ってみましょう!!」

 

そういわれたので、俺は入り口を探した。

しかし、一周回ったが入り口がない。

 

「四葉…。入り口がないんだが…。」

 

俺は恐る恐る聞いてみる。

 

「入り口は出るときに埋めました!!」

 

予想の斜め上の回答…

 

「なんで、埋めたんだよ…。」

 

「開いてないほうがあったかくなると思ったんで!」

 

「あったかくなっても、入り口がなきゃ入れないだろ!」

 

「あっ!!そうでした!!」

 

(気付いてなかったのかよ…。)

 

俺はもう呆れを通り越して笑いが止まらなくなってしまった。

 

「むう。そんなに笑わなくてもいいじゃないですかー。」

 

俺が笑っている隣で四葉は拗ねている。

 

「悪い悪い。あんまりにも面白すぎて。」

 

「もう、上杉さんなんて知りません!」

 

四葉は拗ねて帰ってしまった。

俺は慌てて四葉を追いかける。

 

「すまんすまん。でもほんとにありがとな。」

 

「ふん。今更遅いですよ。」

 

口ではそんなことを言っているが、どことなく顔は嬉しそうにしていた。

そんなこんなで俺たちは宿に戻ってきたのである。

俺は部屋に戻ると、時計で時間を確認した。

 

(五時四十分か。キャンプファイヤーまでは二十分くらいあるな。)

 

俺が時間までどうしていようか迷っていると、扉をノックする音がした。

 

「上杉君。いますか?」

 

扉の外から声をかけられる。

 

俺は大方誰だか予想ができたので返事をした。

 

「あぁ、いるぞ。」

 

「話があるので中に入ってもよろしいですか?」

 

「話?まあ、いいぞ。」

 

「失礼します。」

 

扉が開き五月が入ってきた。

 

「話ってなんだ?」

 

「少し聞きたいことがありまして。」

 

五月はすごく神妙な面持ちをしていた。

 

「別に構わないぞ。」

 

「では、聞かせてもらいます。上杉君は定期試験前に私と賭けをしたことを覚えていますか?」

 

「あぁ、覚えているぞ。」

 

正直、覚えていなかったが今思い出したので、何となく覚えているふりをした。

この時覚えていないことにしとけばよかったと後悔するとも知らずに…。

 

「なら、よかったです。私は賭けに勝ちましたよね?」

 

「全員赤点回避したからな。確か、一つ言うこと聞くってやつだよな。」

 

「はい。そうです。それを今聞いてもらうことにしました。」

 

「ん。何をすればいいんだ?」

 

「私と一緒にキャンプファイヤーで踊ってください。」

 

「えっ…。」

 

「嫌だとは言わせませんよ。約束ですから。」

 

(こいつらはそろいもそろってなぜ俺と踊りたがるんだ…?)

 

「すまん。五月。先約がいるんだ。」

 

「えっ…。いったい誰ですか…。」

 

俺は言おうかどうか迷ったが言うことにした。

 

「一花だ。」

 

「上杉君は一花と付き合ってるのですか…?」

 

「付き合ってない。」

 

「なら、一花のを断って私と踊ってください。」

 

「すまん。それはできない。」

 

「どうしてですか…。」

 

「一花には大きな借りがあって、断ることができないんだ。」

 

「そうですか…。」

 

五月は今にも泣きだしそうである。

 

「今度必ず埋め合わせをするから今回は許してくれないか?」

 

「約束ですよ…。」

 

俺は五月と約束を交わした。

五月がいなくなった後、俺は時間になったのでキャンプファイヤーの会場へと、向かった。

キャンプファイヤーの会場には生徒がたくさんいたため一花を見つけるのはほぼ不可能のように思われる。

俺は、諦めて階段に座り込んでいると、隣にだれか座ってきたのであった。

 

「やっと見つけたよー。」

 

声の主は一花であった。

ようやく林間学校最後の行事キャンプファイヤーが幕を開けた。

 




林間学校編もいよいよおおずめ!
次でラストです!


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第十六話 結びの伝説

どうもかずめぐです!
とうとう、林間学校編も最終話です!!
最近、どのくらいで終わらせようかってのをずっと考えてるんですが、皆さんはどう思いますか?
では、本編へどうぞ!


 

俺は一花と一緒に階段に座りながら、キャンプファイヤーを眺めていた。

 

「フータロー君。私のこと探すの諦めてたでしょ。」

 

一花が頬を膨らませて俺の顔を覗き込んでくる。

 

「すまん。ここまで人が多いとさすがに無理だと思って…。」

 

「もー、危うくほかの人に話しちゃうところだったよー。」

 

「それだけは勘弁してくれ…。」

 

俺は素直に謝った。

 

「まあ、諦めてここで座ってたことによって見つけられたから、良しとしますか。」

 

そういって、一花は立ち上がった。

 

「どこ行くんだ?」

 

「どこって…。踊りに行くんだよ。ほら、フータロー君も立って。」

 

俺は、一花に手を引かれ、みんなが踊っている群れの中に連れ込まれた。

俺は、いまいちフォークダンスというものが分からなかったが、一花がうまくリードをしてくれたので、何とか様になってるように思われた。

 

「あはは。フータロー君、案外うまいね。」

 

「お前がうまくリードしてくれてるからだろ。」

 

俺たちはそんなとりとめもない会話をしていたが、俺は一花にどうしても聞かなくてはならないことがあったので、その話題を切り出した。

 

「一花、聞きたいことがあるんだが。」

 

「ん?なに?」

 

「なぜ今朝、四葉に化けたんだ…。」

 

「フータロー君。昨晩、三玖とエッチなことしたでしょ。」

 

「…。」

 

二乃の言ってた通り一花にはばれているみたいだ。

 

「黙ってるってことは、そうなんだね?」

 

「ああ…。」

 

俺は素直に認めた。

 

「そっか。やっぱりね。」

 

「それと何か今朝のことが関係あるのか…?」

 

「うん。まあ、薄々そうなのかなとは思ってたけど、確証が持てなかったんだよね。だから、四葉に変装して聞き出そうとしたの。」

 

「なぜ、四葉に…。」

 

「四葉ならフータロー君、警戒心ゼロかなって思ったから。」

 

「確かに最初は警戒心ゼロだったさ。でも、あの四葉は頭が切れすぎてる。さすがに疑ったぞ。」

 

「あちゃー。やっぱり失敗だったかー。」

 

「あぁ。てか、そんなこと聞きだして何がしたかったんだ。」

 

「認めたくなかったんだよね。」

 

「何をだ。」

 

「フータロー君と三玖の仲を。」

 

「どういうことだ?」

 

「だーかーらー。三玖とフータロー君が付き合ってることも認めたくなかったの。昨日は、付き合ってないって言ってたのに私に嘘ついてたんだよね。」

 

「は??」

 

俺は一花の言ってることが全く理解できない。

 

「私、悲しかったんだからね。」

 

「一花。すまん。三玖とはほんとに付き合ってないぞ…。」

 

「えっ??じゃあ昨日の行為は?」

 

「昨日の行為は事実だ…。」

 

一花かがじとーっと俺のことを見てきた。

 

「フータロー君。さすがにそれはだめだよ。」

 

「自覚してる…。」

 

「でも付き合ってないんだ。」

 

一花はどことなく嬉しそうな顔をしている。

しかし、我に返ったのか急に厳しい視線をこちらに向けてきた。

 

「でも、付き合ってないのに、そういう行為はどうかと思うよ、お姉さんは。」

 

「おっしゃるとおりです…。」

 

「これを機にやめるように。」

 

「はい…。」

 

いったん会話が終わったが、俺はもう一個ききたいことを思い出したのできいてみたのである。

 

「お前今日の昼間何してた?」

 

「三玖の看病してたけど?どうして?」

 

「いや、何でもない。」

 

(やはりあれは一花ではなかったのか…。)

 

俺はこれ以上怪しまれないように、話題を変えた。

 

「ところで、三玖は大丈夫なのか?」

 

「ただ疲れてるだけだから大丈夫だと思うよ。」

 

「そうか。ならよかった。」

 

一花は急に俺の耳に顔を近づけてきてつぶやいた。

 

「そんなに激しくしたの??」

 

俺は、一花から顔を離して答えた。

 

「女子がそんなこと聞くな。」

 

「ぶー。けちー。」

 

「ケチとかじゃなくて、お前はもう少し恥じらいを持て。」

 

「恥じらいなんてもってたら、フータロー君とられちゃうじゃんー。」

 

「それとこれとは関係ないだろ。」

 

「えー、あるよー。」

 

「あー、もう。埒が明かねー。てか、俺たちいつまで踊ってればいいんだよ。」

 

「無理やり話題変えたな。でも確かに少し疲れたから休憩しようか。」

 

そうして、俺たちは最初に座っていった階段に戻ってきた。

すると、そこには残りの姉妹が全員いたのであった。

 

「お前たちこんなとこで何してんだよ。」

 

俺はどうやら地雷を踏むのが好きらしい。

 

「どっかの誰かさんに一緒に踊るの断られたから、相手がいないのよ。」

 

「私も。」

 

「…。それは残念だったな…。」

 

俺の胃が悲鳴を上げている。

俺は自分の胃を守るために五月と四葉に話を振った。

 

「お前たちはどうしたんだ?」

 

「私と四葉は…。誰にも誘ってもらえず…。」

 

五月は悲しそうな顔をしている。

すると、天然リボンがさらに追い打ちをかけた。

 

「五月?私は誘われましたけど断ったんですよ??」

 

「えっ…。」

 

五月は驚きのあまり、喋れないのか口をパクパクさせすごい顔をしている。

とりあえず、今の五月には触れないほうがよさげだったので、そっとしておいた。

 

「四葉はなぜ断ったんだ?」

 

「なぜって決まってるじゃないですか!!」

 

「なにがだよ。」

 

「最後はやっぱり上杉さんも含めた全員で締めくくりたかったんですよ!!」

 

「お前って全員でいること好きだよな。」

 

「はい!!今ある幸せを全力でかみしめなきゃですよ!!」

 

「お前らしいな。」

 

「私らしいですか?」

 

「あぁ、お前の考え方は時々参考にさせてもらってる。」

 

「ニシシ。とうとう私が上杉さんの教師をやる日が来ましたかね~。」

 

「自学で十分だから教師はいらん。」

 

「なんですとー!!」

 

俺と四葉がくだらない会話をしていると一花に止められた。

 

「二人とも、いい加減にしなよ。ほら、もうすぐ終わりの時間だから、みんなであれをやろ」

 

「あれですか!!いいですね!!」

 

「あれってなんだ?」

 

「五つ子ポーズよ。」

 

後ろから二乃が会話に入ってきた。

 

「あーあれか。」

 

俺は前にやっていたのを思い出した。

 

「みんな指だして。」

 

一花が合図をすると、ほかの四人は一斉に指を出した。

それぞれが親指と小指を絡め、一つの輪になる。

これが五つ子ポーズだ。

俺がぼーっとそれを見ていると、五月に声をかけられた。

 

「上杉君。ぼーっとしてないで、ここに手を出してください。」

 

五月が指定した場所は輪の真ん中である。

俺はそこに手をだした。

その瞬間、キャンプファイヤーの終わりを告げる花火が打ちあがった。

すると突然四葉が

 

「これからもずっと一緒にいるぞー!!」

 

と叫んだのである。

 

それに続いて、ほかの四人が

 

「「「「おー!!」」」」

 

と叫んだ。

周りもどんちゃん騒ぎをしていて目立つことはなかったがやはり俺には恥ずかしかったので、

俺は小さな声で

 

「おー。」

 

と言った。

 

五つ子は五人で何か楽しげに話している。

俺はそんな彼女たちを見てとても幸せな気分になったのであった。

そんなこんなで俺の林間学校は幕を閉じた。




四葉ってけなげだよね。


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第十七話 四葉の願い

どうもかずめぐです!
今回は少しシリアスですw
血迷いましたw批判覚悟ですw
アンケートやってるのでぜひ参加してください!


林間学校が終わり、早くも一週間がたとうとしていた。

十二月も後半に差し掛かろうとしており、世間はクリスマスムード一色である。

そんな中、俺は学校の屋上へと向かっていた。

 

(なんで、こんな時期に屋上なんだよ。)

 

俺はある人から呼び出しをくらっていたのであった。

そんなことがない限り、この時期に屋上に行こうとするバカはいないだろう。

 

(いや、一人いるな…。)

 

俺は、屋上の扉を開けた。

俺は屋上に出ると、真ん中で仁王立ちをしている少女に話しかけられた。

 

「上杉さん!!遅いで…、くしゅん。」

 

「…。」

 

「寒いですし、中入りましょうか。」

 

結局、俺と四葉は教室で話すことになった。

 

「上杉さん。遅すぎますよー。私風邪ひいちゃうかもです。」

 

「そもそも、この時期に屋上で待ち合わせをする、お前が悪い。」

 

「でも、屋上で待ち合わせって青春ぽくてよくないですか??」

 

「青春よりも、自分の身体を大事にしろ。」

 

「むうー。上杉さんの青春下級者ー。」

 

四葉がいつものごとく頬を膨らませている。

 

「で、何の用事なんだ?」

 

「はっ!危うく忘れるとこでした!危ない危ない。」

 

「…。で、なんなんだよ?」

 

「実はご相談がありまして。」

 

「相談??」

 

「はい。それであまりほかの人には聞かれたくないので、私の部屋でしませんか?」

 

「わかった。けど、ますます屋上で待ち合わせをした意味が分からないぞ。」

 

「言ったじゃないですか。青春ぽくていいと!」

 

「それマジの理由だったのかよ…。」

 

四葉にかなわないことを悟った俺はおとなしく指示に従った。

中野家に着くと、俺はほかの姉妹が留守にしていることに気付く。

 

「四葉。ほかのやつはどうしたんだ?」

 

「みんな出かけてます。一花たちにも聞かれたくなかったので。」

 

「そうなのか。」

 

俺は何やら嫌な予感がしたので四葉に質問をしてみた。

 

「お前、林間学校でかまくら作ったこと覚えてるか?」

 

「はい!入り口を私がふさいじゃったやつですよね!それがどうかしたんですか?」

 

「いやなんでもない。」

 

(よかった。こいつは本物の四葉だ。)

 

俺は安心したため、四葉の部屋へと入っていった。

 

「で、相談ってなんなんだ?」

 

「はい。あの、馬鹿にしないで聞いてくださいね?」

 

「あぁ。」

 

「最近、私たち姉妹の仲が少し悪いんですよ。」

 

「えっ?そうなのか?」

 

俺は全然そんな風に見えなかったので素直に驚く。

 

「はい。」

 

四葉が真剣な顔でうなずいたので事実なのであろう。

なんせ、彼女は嘘をつくのが下手なのだから。

 

「キャンプファイヤーの時は仲良かったじゃないか。」

 

「みんなでいるときはまだ…。」

 

四葉は言葉を詰まらせる。

 

「上杉さん。ここからが本題なんですよ。」

 

「ん?わかった。話してみろ。」

 

急に言われたのでびっくりしたが、とりあえず黙って聞いてみることにした。

 

「実は私たち、タイプリープしてるんですよ。」

 

訂正。俺は黙って聞くことができなかった。

 

「はあ!?」

 

俺はとっさに大きな声を出してしまった。

 

「信じられないかもしれませんが本当なんですよ。」

 

四葉は真剣な目をしている。

 

(確かに、こいつらもしてるんじゃねーかって思い当たる節はあったが、まさかほんとにしてたなんて…。)

 

「てことは、お前たちにとってこれは二度目ってことなのか?」

 

「はい。その通りです。」

 

「そうなのか…。」

 

「前の世界でも、私たちは上杉さんに家庭教師をしてもらってたんですよ。上杉さんは、今よりもはるかにてこずってましたが…。」

 

(俺は、今回別のことでてこずってるけどな…。)

 

俺が黙っていると、なおも四葉は話し続けた。

 

「上杉さんがみんなと真摯に向き合ってくれたおかげで、私たちは赤点を回避することができたんですよ。でも、姉妹の中には上杉さんに恋愛感情を抱く者もいて…。姉妹間で騙し、騙され合いめちゃくちゃになったんですよ。」

 

四葉は今にも泣きそうな顔をしながら話している。

 

(もし俺がこいつらと同じ場所からタイムリープしていたとしても、俺は全くそんなことが起きてるなんて知らなかったぞ…。)

 

「なあ、四葉。その世界にいた俺はどうしたんだ?そのことを知っているのか?」

 

「多分知らないと思います。ずっと、裏でやってましたから。」

 

四葉はとうとう泣き出してしまった。

いつも、あんなに元気にふるまってはいたものの、相当つらい思いをしてきたみたいだ。

 

(本人にはばれてなかったのか…。だとするとまだ俺の可能性もあるな…。)

 

俺はこんなことを考えていてもしょうがないと思ったので、話を進めた。

 

「四葉。お前はどうしたいんだ?」

 

「私は、みんなで仲良く一緒にいたいです。もちろん上杉さんも含めて。」

 

四葉は、泣きながらもにっこりとしてこちらを見た。

 

「そうか。わかった。できる限り協力するが、俺は一体どうしたらいいんだ?」

 

「わからないんです。」

 

「そうか…。」

 

俺はここで四葉に自分もタイムリープしている事実を告げようと思ったがやめた。

 

(同じ場所から来てるかもわからないのに、余計な情報を与えて混乱させるのもよくないからな。

いつかちゃんと話さないとはいけないけど…。)

 

「四葉これから二人で協力していこうな。」

 

「はい。」

 

とりあえずこの場での相談とやらはおわった。

 

「そういえば、上杉さんは、なぜ私の話を信じてくれたのですか??」

 

「まあ、色々思い当たる節もあったし…。お前があれだけ真剣な顔で言っていたから、嘘ではないんだろうなと考えただけだ。」

 

「ニシシ。私は意外に信頼されていたのですね??」

 

四葉がニコニコしながらそんなことを言ってくる。

 

「まあ、馬鹿だけどな。」

 

「それは余計ですよ!!」

 

四葉といつも通りの会話をしたが、ふと気になることがあったので四葉に聞いてみることにした。

 

「ところで四葉。なぜ、タイムリープしたかはわかってるのか?」

 

「わからないです。タイムリープ前後の記憶があまりなくて…。気づいたらなってたみたいな感じです。」

 

「そうか。」

 

(やはり、覚えてなかったか…。)

 

「四葉。またなにかわかったことがあったら、おしえてくれ。」

 

「はい!」

 

俺は四葉と別れ帰路に着いたのであった。

 




Qなぜ急にシリアス回になったんですか?

A最初の設定がないがしろになってたから…w
 結局次回からはいつも通りだけど…


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第十八話 二乃と買い物

どうもかずめぐです!
五等分のやり直し専用のTwitter始めました!
もっと、みんなで五等分の花嫁について語り合いましょう!
アカウント名は「カズめぐ@五等分のやり直し」です!
(まだ初めて日が浅いので出て来ないかも)
いつ投稿するとか、次の企画は何するとかいろいろ情報発信するので是非フォローしてください!
よろしくお願いします!


 

 

四葉からカミングアウトをされてから、一週間がたとうとしていた。

俺は、四葉との約束を守るべくみんなにはばれないようにいつも通りに接しようとしているが、あいつらのほうが態度がよそよそしい。

しかも、最近家庭教師に行ってもほとんど人がいないという惨状であった。

今日にいたっては二乃と二人きりだ。

 

「二乃。なぜみんないないんだ。」

 

「きっと、忙しいのよ。」

 

「俺避けられてるのか?」

 

「さあ?あたしにはわかんないわ。」

 

「最後にもう一つだけ聞くが、お前の策略じゃないよな?」

 

俺は一番聞きたかったことを最後に質問した。

 

「まだ、あたしのこと警戒してるの?」

 

「当たり前だ。薬を盛られて犯されかけたんだからな。」

 

「貞操を守ろうとしてる割には、三玖にほだされてるじゃない。」

 

「それに関しては、ほんとに返す言葉もない…。」

 

「まあ、何もしないから安心しなさい。」

 

「安心はできない。まあでも、信じてやるか。」

 

「あのさ、フー君にお願いがあるんだけどいいかしら?」

 

「お願い?まあ聞くだけ聞く。」

 

「明後日がどんな日か知ってるわよね?」

 

二乃が小学生でもわかるような質問をぶつけてくる。

 

「当たり前だ。クリスマスだろ。」

 

「えぇ。それで、家でクリスマスパーティーをしようと思ってんのよ。あんたも含めて。」

 

「俺は強制なのかよ。」

 

「あら、いやなの?」

 

二乃が圧をかけてくる。

 

(そういや、四葉もみんなでいるときはましって言ってたな…。)

 

「らいはも連れてきてもいいなら、参加する。」

 

「そう言うと思って、らいはちゃんはもう誘ってあるわ。」

 

「お前はいつも手回しが早すぎだろ!」

 

(今思えば、らいはの連絡先を知ってたのもタイムリープのためか。)

 

今更ながらに、色々と伏線が張られてたことに気付く。

 

(俺って、実はめちゃくちゃ馬鹿だったのか…。)

 

俺は改めて勉強だけできてもしょうがないということを認識した。

俺は気を取り直し、二乃に尋ねた。

 

「結局、お願いは何なんだ?」

 

「買出しに付き合ってほしいのよ。荷物が多くて一人じゃ運べないのよね。」

 

「ほかの姉妹に頼めばいいんじゃないか?」

 

「みんな、忙しいらしいのよ。」

 

「そういうことなら任された。」

 

俺は、二乃とどこで待ち合わせるのかを決めてから家に帰った。

 

 

翌日、俺は待ち合わせの場所で二乃のことを待っていた。

 

「あいつ、遅いな。もしかしてこないとかいうオチなんじゃ…。」

 

俺が変な心配をしていると、急に誰かから背中をたたかれたのである。

振り返ってみるとそこには二乃がいた。

 

「おまたせ。待った?」

 

「少しだけな。」

 

「そっか。ごめんね。」

 

「いや全然大丈夫だ。」

 

「うん。なら行くわよ。」

 

俺は、あまりに二乃がかわいかったため二乃が遅刻したことなどどうでもよくなってしまっていたのである。

 

(やっぱり、あいつセンスいいな。)

 

俺はそんなことを考えながら、前を歩いてる二乃についていった。

買い物は二乃がテキパキしていたこともあり、案外早く終わってしまった。

そして、それほど荷物もなかったのである。

 

(なぜ、二乃は俺を誘ったんだ?)

 

考えてみたが全く分からない。

二乃に聞いてみようにも急に

 

「ここでちょっと待ってて。」

 

と、言ったきりどこかにいてしまったので聞けずにいた。

俺は、ベンチに座りながら二乃のことを待っていると、朝と同じように誰かに背中をたたかれたのであった。

俺は振り返ってみると、そこには二乃ではなく五月がいた。

 

「上杉君。こんなところで何をしているのですか?」

 

「お前こそ何してんだよ。」

 

「私は…。秘密です。」

 

「秘密って…。悪いことでもしてんのかよ?」

 

「してませんよ!!」

 

五月が急に大きな声を出した。

すると、周りにいた人たちがひそひそとこちらを見ながら何か話している。

五月は恥ずかしかったのか俯いてしまった。

すると、そこに二乃が帰ってきたのである。

 

「おまたせーって、なんであんたがここにいるのよ!?」

 

二乃が突然叫んだ。

先ほどまで俯いていた五月は急に顔を上げ、二乃に返事をした。

 

「二乃こそ、上杉君とこんなところで何をしているんですか。」

 

「あんたには関係ないでしょ。」

 

「ありますとも。抜け駆けは禁止って約束したじゃありませんか。」

 

「抜け駆けじゃないもの。あたしは明日の買い物を手伝ってもらってただけよ。」

 

二人はどんどんヒートアップしていくのに比例して周りの視線は冷たくなる。

 

「お前ら、けんかはやめろよ。」

 

「あんたは黙ってて!」

 

「上杉君は黙っててください!!」

 

「はい…。」

 

結局、二人が落ち着くまでに十分ほどかかった。

 

(やっぱり、四葉の言う通りだ…。)

 

俺はすっかり疲れてしまった。

結局、荷物は五月がもつことになり、俺はお役御免にされ、二人とも帰ってしまったのである。

一人寂しく残された俺はクリスマスイブを本屋の参考書コーナーで過ごしたのであった…。




やっぱり、日常回は書きやすい。


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第十九話 クリスマスプレゼント

どうもかずめぐです!
Twitter始めたのでよかったら、フォローしてください!
アカウント名は「カズめぐ@五等分のやり直し」です!
ちなみに今回のお話は駄文です。
すいません。


 

 

クリスマス当日、俺はらいはとともに、中野家にきていた。

 

「お兄ちゃん。お姉ちゃんたちはこんなところに住んでるの?」

 

「あぁ。俺もはじめは驚いたよ。」

 

らいははマンションを見上げていた。

中に入ると、五姉妹が玄関で待っていたのである。

 

「「「「「らいはちゃん!いらっしゃい!」」」」」

 

五姉妹は全員らいはに釘付けだ。

 

「一応、俺もいるんだが…。」

 

みんな俺がいないみたいに扱うので一応声をかけてみる。

 

「上杉さん!!いたんですか!?」

 

「ひどいやつらだな。」

 

反応したのは四葉だけだった。

他の四人はというと、らいはを連れてリビングに行ってしまった。

 

「あいつらなんかおかしくね?」

 

「なんかここ最近テンションが高めなんですよ。」

 

「お前はいつも通りでよかったよ。」

 

「ニシシ。」

 

俺は四葉とともに遅れてリビングに入った。

テーブルの上には、今まで食べたことがないような料理がたくさんならんでいる。

らいははそれを見て目を輝かせていた。

 

(やっぱり、もともと買ってあったのか。)

 

俺は昨日買ったものとテーブルに並べられてる食べ物の違いを見てそう確信した。

 

「これ全部食べていいんですか??」

 

らいはが嬉しそうにそんなことを聞く。

 

「えぇ。らいはちゃんのために作ったのだもの。」

 

二乃がニコッとらいはに笑いかけた。

 

「やったー!!」

 

らいはは嬉しそうに叫んだ。。

 

 

……

 

 

料理を食べ終えると、五月が自分の部屋から何やら大きな荷物をもってきた。

 

「これ、みんなからのクリスマスプレゼントです。」

 

そう言って、らいはに手渡す。

 

「私に?」

 

「えぇ。」

 

らいはは箱を受け取ると中身を見た。

すると、中には結構高そうなスクールバッグが入っていたのである。

 

「らいはちゃんはもうすぐ中学生なので、必要かなと思ったんですけど。喜んでもらえましたか?」

 

そう言って、五月はらいはの顔を覗き込んだ。

すると、らいはは泣いていたのである。

 

「お姉ちゃんたち、ほんとにありがとうございます…。」

 

らいはは五つ子に抱き着きにいった。

しばらくすると、らいはは疲れてしまったのか眠ってしまったのである。

 

「らいはちゃん。眠ってしまいましたね。」

 

「そうみたいだな。お前ら、今日は本当にありがとな。らいはのあんなに嬉しそうな顔を久々に見たよ。」

 

「いえ、これくらいで喜んでもらえるなら、お安いもんですよ。」

 

「それでも、ありがとな。」

 

俺は五つ子に深々とお辞儀をした。

顔を上げると、五つ子はなぜか一列に並んで恥ずかしそうにもじもじしている。

 

「お前らどうした?」

 

「実はあなたにもプレゼントがありまして…。」

 

先陣切って言ってきたのは五月である。

 

「プレゼント?俺に?」

 

「はい。これはほんの気持ちです。」

 

五月はそういうと小さな袋を渡してきた。

次に、前に出てきたのは、四葉だった。

 

「上杉さん!これは私からです!」

 

四葉から小さな箱を渡された。

その次に、三玖が出てきて

 

「これは私から。」

 

と言って、ラッピングされた箱を渡してきた。

 

「これは私からよ。」

 

二乃はそういうと小さな箱みたいなものをを投げ渡してきたのである。

最後に一花は、なにやらカードらしきものを渡してきた。

 

「大事に使ってね。」

 

「あぁ、お前らありがとな。」

 

「いつものお礼よ。」

 

「そうですよ!上杉さんにはいつも助けて貰てますし!」

 

「フータロー。私の開けてみて。」

 

俺は三玖に急かされたので開けてみることにした。

箱の中からは、三玖のと同じ種類で色違いのヘッドホンが入っていた。

 

「えへへ。私とおそろいのやつにしてみたの。」

 

三玖は嬉しそうにしている。

しかし、俺にはこれが使えない。

なぜなら…

 

「三玖、すまん…。俺、音楽プレイヤーもってないんだ…。」

 

俺は申し訳なさそうに言った。

すると四葉が急に手を上げたのである。

 

「はい!そんなこともあろうかと、私が用意しました!私のやつを開けてみてください!」

 

俺は四葉に言われた通り、小さな箱を開けてみると中から、音楽プレイヤーが出てきた。

 

「三玖がヘッドホンを買ってるのを見かけたので、こんなこともあろうかと私が音楽プレイヤーを買いました!」

 

「四葉…。ありがとう…。」

 

三玖は泣きそうになりながら四葉にお礼を言った。

 

「ニシシ。上杉さん。喜んでいただけましたか?」

 

「あぁ。四葉も三玖もありがとうな。」

 

俺は二人に礼を言った。

 

「次は、私のを開けてみてください。」

 

そう言ったのは、五月である。

俺は、五月からもらった袋を開けると、中にはとても暖かそうなコートが入っていた。

 

「五月、これは?」

 

「コートです。最近、ずっと寒そうにしていたので。」

 

「ありがとう。最近寒さに耐えられなかったんだよ。」

 

俺はコートを持っていなかったため素直に喜んだ。

 

「どういたしまして。」

 

五月は、にっこりと微笑んだ。

 

「次は私のを開けてよ。」

 

一花は、そう言うと、先ほどの封筒みたいなものを俺に手渡してきた。

俺はその封筒みたいなものを開けると、中には有名レストランのお食事券が二枚入っていた。

 

「一花これは…。」

 

「らいはちゃんと一緒にいってあげて。」

 

「なるほどそういうことか!!ありがとうな!きっと、らいはも喜ぶだろう!」

 

俺はらいはが喜ぶ姿を想像してテンションが上がった。

そんな俺の隣で、五月がプルプルと震えている。

 

「一花…。それをどこで手に入れたのですか…?」

 

「仕事仲間に、そのお店の知り合いがいてちょっと優遇してもらったの。」

 

五月がすごく悔しそうな顔をしている。

不思議に思った俺は五月に聞いてみた。

 

「どうしたんだ?そんな顔して。」

 

「上杉君はしらないんですか!?そこのお店全然予約が取れなくて有名なんですよ??私もまだ行ったことないのに…。」

 

「なるほど…。さすが、有名ブロガー…。」

 

「!?上杉君!それをどこで!?」

 

「いや、多分ここにいるみんな気付いてると思うぞ…。」

 

五月は周りを見渡すと、みんな気まずそうに顔をそらすのであった。

 

「あああああああああああ。」

 

五月は叫んで部屋に入ってしまった。

 

「五月に後で謝っといてくれ…。」

 

俺はほかの姉妹にお願いをした。

このシーンとした空気を変えるために、俺は別の話題を口にした。

 

「ところで、二乃はなにしたんだ?」

 

俺が二乃からもらった小さな箱を開けようとすると二乃に止められたのである。

 

「それは、一人の時に開けて頂戴。」

 

「わ、わかった。」

 

俺は素直に従ったのであった。

俺の第六感が今はあけてはいけないと告げたためだ。

最後に俺は彼女たちに言わなければならないことがあったので、その話をした。

 

「お前らから、プレゼントをもらっといてあれなんだが…。すまん。俺は何も用意してないんだ…。」

 

俺は、深々とお辞儀をして謝った。

 

「別にいいんですよ!これは私たちからのお礼なんですから!」

 

「そうだよ。フータローにはいつもお世話になってるから。」

 

「まあ、あんたのことだから用意してないのはわかってたわよ。」

 

「フータロー君はほんとに何も気にしなくていいからね。」

 

俺には、今日のこいつらが天使に見えた。

 

「このお返しは後日必ずする。」

 

「「「「そっか。楽しみにしてるね」」」」

 

四人は声をそろえて、笑いながら言ってきたのであった。

こうして、幸せなクリスマスは幕を閉じたのである。




クリスマスイベントは平和に終わらせてみました。
でも、そろそろアクションが欲しいと思うので次回以降に期待してください!
簡単ではあるけど、今回ちゃんと伏線をはっておきました!


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第二十話 四葉と定例会議

どうもカズめぐです!
投票の結果、三玖のお嫁さん生活になりました!
投票にご協力いただきありがとうございました!
今後のことに関しては後日、お知らせします。
Twitterもやってるので良かったらフォローしてください!



12月26日、俺と四葉は終業式が終わり一緒に帰っていた。

 

「なあ、四葉。これからどうすればいいんだ?」

 

「どうすればとは?」

 

四葉は話の意味が理解できていないみたいだ。

 

「お前は、みんなでずっと一緒にいたいんだろ?」

 

「はい。そうですが?」

 

「でも、お前の姉達は独り占めする気満々だぞ。」

 

「そうなんですか!?」

 

「あぁ。特に二乃なんて…。」

 

「二乃がどうしたんですか?」

 

「いや、なんでもない。」

 

四葉は不思議そうな顔をしている。

 

(危なかった。ついうっかり話してしまいそうだった。)

 

何を隠したかというと先日のプレゼントの件だ。

俺は、言われた通り家に帰ってから一人で開けた。

すると、中から1通の手紙と一箱のコンドームが出てきたのである。

俺は、ひとまずコンドームには触れずに、手紙を読んで見たのだ。

 

<メリークリスマス。私へのお返しはあんたでいいからね。楽しみにしてるわ。>

 

手紙を読んだ俺は次会ったら絶対に犯されると予感し、がたがた震えていた。

こういうことがあったため、四葉に今後どうすればいいのか聞いたのである。

 

「正直、今の日本の法律じゃあ全員仲良く一緒ってわけにもいかないぞ。」

 

「そうなんですよね。どうしましょうか…。」

 

「俺がそれを聞きたいんだが…。」

 

「私だってわかりませんよー!」

 

「じゃあ、俺が彼女を作って諦めさせるというのは?」

 

「その彼女さん、多分次の日には失踪してますよ。」

 

「怖っ!?じゃあ、姉妹の中で一人に絞るのは?」

 

「んー。結局、それが一番よさそうではありますが、今は様子見ですかね?」

 

四葉がのんきなことを言っている。

 

(こちらは、貞操の危機なんだが…)

 

「今のところ、打開策はないのか…。」

 

「上杉さんは、私たちのこと嫌いなんですか??」

 

「いや、嫌いではないと思う。」

 

「なら、私たちとちゃんと向き合ってれば、必ずいい方向に行きますよ!」

 

「その自信はどこから湧いてくるんだ。」

 

「私の勘です!」

 

俺は、うなだれてしまった。

 

「上杉さん!もう着きましたよ!」

 

彼女はそういうとすっきっぷしながら部屋の中へと入っていった。

そう、今日は久々に全員集まる家庭教師の日なのである。

 

(さすがに二乃も、みんながいる場所では手を出さないだろう…。)

 

俺が部屋に入ると、あいつらはすでに勉強を始めていた。

 

「みんなえらいじゃないか。」

 

俺は素直に感心した。

 

「フータロー君、いらっしゃい。最近忙しくてあんましできてなかったからね。」

 

と、一花が答えた。

確かに、最近はみんながそろうことが非常に少なかったので、あまり、家庭教師をしていなかったのである。

 

「それに、早く宿題終わらせれば、冬休み遊べるし。」

 

三玖は何やら楽しそうに話している。

 

「なにかしたいことでもあるのか?」

 

「うん。たくさんあるよ。フータローと一緒にね。」

 

「俺と一緒に?」

 

「うん。楽しみに待っててね。」

 

「お手柔らかに頼む…。」

 

俺は三玖との会話を終え、少し周りを見渡した。

その時に五月と目があったが、ぷいっと横を向かれてしまったのであった。

 

(昨日のことまだ怒っているのか…。)

 

触らぬ神に祟りなしということで五月はほっといた。

俺は再度、周りを見渡したが、やはり一人いない。

そう、二乃がいないのである。

 

「二乃はどうしたんだ?」

 

「なんか急に用事ができたって出かけちゃったよ。」

 

「そ、そうか。」

 

正直あまり会いたくなかったので、俺は安心した。

 

「よし。じゃあ、今日のうちに宿題終わらせちまうか。」

 

「「「おー!」」」

 

そして俺たちは、黙々と宿題をやり進めたのであった。

若干1名ずっとふてくされていたが、俺は知らん。

 

……

 

家庭教師の仕事を終え、俺は家に帰ってきた。

 

「ただいまー。」

 

らいはからの返事がない。

 

「おーい。誰もいないのか?」

 

居間には誰もいなかったが、浴室から音がしてるので、風呂にでも入っているのであろう。

俺は、参考書を開き勉強を始めた。

しばらくすると、浴室かららいはが出てきた。

 

「おかえり。フー君。」

 

その声を聴くと、俺の背筋は一瞬にして凍り付いた。

 

(えっ、まさか…)

 

俺は恐る恐る後ろを振り返ると、そこにはバスタオルを身体に巻いた二乃がたっていたのである。

 

「なんでここに…」

 

「お兄ちゃんに勉強を教えて貰いたくてと言ったら入れてくれたわ。」

 

「らいははどこだ。」

 

「あんたより先に、お父様が帰ってきてどこか連れていっちゃったわよ。あと、ごゆっくり!って言ってたわ。」

 

「クソ親父め…。」

 

おそらく、親父はらいはと一緒に実家に帰ったのであろう。

 

「勉強しに来たんだろ…。とりあえず服を着ろ。」

 

俺は、焦っていることがばれないように、冷静に正論をぶつける。

しかし、二乃には意味がなかった。

彼女はぶっ壊れているのである。

 

「えぇ。保健の勉強がしたいから、このままで大丈夫よ。」

 

二乃が俺に一歩近づいてくる。

 

「それは俺の専門外だ。」

 

俺はそう言うと、一歩下がった。

二乃が一歩前に出ては俺が一歩前に下がることを繰り返していると、いつの間にか壁際に追い詰められてしまった。

 

「もう逃がさないわよ。」

 

二乃は自分の身体を包んでいたタオルを外した。

俺は必死に目をそらしたが、一度網膜に焼き付いた彼女の裸体が頭から離れなかった。

 

「素直になっちゃいなさいよ。」

 

そう言うと、彼女はキスをしてきた。

やはり、人間は一度味を知ってしまうと、2回目以降抗えないみたいだ。

俺は二乃のことを押し倒し確認する。

 

「ほんとにいいんだな。」

 

「これはあんたからのお返しなんだからいいのよ。」

 

俺は、ひたすら二乃をむさぼったのであった…。

 




二乃のR18どうしようかな


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第二十一話 一花の誘惑

どうもかずめぐです!
Twitterやってるんでよかったらフォローしてください!
三玖のお嫁さん生活は後日投稿します!


 

 

二乃と関係を持ってしまった日から、五日ほど経ち、大晦日を迎えていた。

俺は特に自分の部屋の片付けもなかったので、中野家に来て大掃除の手伝いをしている。

 

「フータロー君。ごめんねー。手伝わせちゃって。」

 

一花は舌を出しながら謝る。

 

「特にやることもなかったから、かまわないぞ。」

 

「ほんと助かるよ。なんせ、この部屋は私ひとりじゃ片付けられなくて。」

 

「ほんと、お前の汚部屋はすごいな…。」

 

俺は、今一花の部屋の掃除を手伝っている。

ほかの姉妹たちは各自自分の部屋を片付けているので、手伝えるのが俺しかいないのだ。

 

「ははは。少し前まではキレイだったのになー。」

 

「嘘をつけ。ほら、さっさとやるぞ。」

 

「はーい。」

 

一花の部屋を掃除していると、とあるものが出てきた。

 

「一花、これは捨てるか?」

 

俺は、スケスケの下着をぼろくなって繊維がダメになってしまった下着だと勘違いして聞いた。

 

「フータロー君。女の子の下着をそんな汚物を持つみたいに扱っちゃダメだよ。」

 

一花にそこそこマジに注意されるが、俺には理由がわからない。

 

「いや、だってこんな繊維がダメになるまで…」

 

「違うから。もともと、そういうデザインなの。」

 

「え?」

 

俺は真実を告げられ急に恥ずかしくなってきた。

 

「何なら着て見せてあげまようか?」

 

一花が仕返しとばかりのそんなことを言ってくる。

 

「すまん…。俺が悪かった…。」

 

「反省したなら許す。」

 

そうして俺たちは掃除を再開した。

しかし、いくら片づけてもなかなか床が見えてこない。

俺たちは、疲れてしまったので少し休憩することにした。

 

「お前の部屋はほんとに魔境だな…。」

 

俺は一花に嫌味を言う。

 

「ははは。ごめんてばー。お礼は今度するからさ、か・ら・だでね」

 

「お前の身体にいくら価値があるんだよ。」

 

俺は正直ドキッとしたが、悟られないように言い返す。

 

「んー。これでも女優だからそれなりにはあるんじゃないのかな?なんなら、フータロー君が試して価値を決めてみる?」

 

「あほなこと言ってないで、掃除再開するぞ。」

 

今日の一花はいつになくぐいぐい来るので俺は逃げることにした。

 

「ぶー。フータロー君のいけずー。」

 

一花は不満そうに立ち上がって、掃除をし始めた。

しばらくすると、一花は急に変な質問をしてきた。

 

「私ってそんなに魅力ないのかな。」

 

「何言ってんだよ?」

 

「だって、フータロー君。私のこと全然かまってくれない。」

 

「はあ?」

 

「二乃と三玖ばっかりずるいよ。」

 

「なんでその二人を上げるんだ。」

 

「だって、抱いたでしょ?」

 

「なんのことだかさっぱりだ…。」

 

「嘘つき。三玖のは自分で白状してたじゃん。」

 

「わかった。三玖のは認めよう。でも、なぜ二乃なんだ。」

 

「ばれてないとでも思った?」

 

「なぜばれた…。」

 

「朝帰りの時点でバレバレ。」

 

「…。」

 

「私だけ、仲間外れなの?」

 

「四葉や五月もいるから安心しろ…。」

 

「あの二人はまだ好きって言ってないでしょ。」

 

「…。とにかく落ち着け。」

 

「落ち着くのは、フータロー君のほうだよ。」

 

「意味が分からないんだが?」

 

「フータロー君は私に落ち着けばいいと思う。」

 

「うまくねーし、顔を赤らめるな!」

 

「だって、恥ずかしかったし。」

 

「もっと恥ずかしがるべきポイント他にあるからな。」

 

「そ、そんなことないよ!多分…。」

 

「わかったから、掃除するぞ。」

 

俺は何とか誤魔化し逃げることができた。

しばらくすると、四葉が部屋を訪ねてきた。

 

「一花ー。もう掃除終わったー?」

 

「あはは。まだ全然終わんないんだよね。」

 

「手伝おうか?」

 

「うん。お願い。」

 

こうして、四葉が掃除に参戦することになった。

すると、四葉はあるものを見つけた。

 

「うわっ。一花。これスケスケじゃん。こんなのいつ着てるの?」

 

四葉が見つけたのは先ほど話題に上がった下着である。

 

「それは、まだ着たことないんだよね。」

 

一花が先ほど言わなかった情報を口にする。

 

「へー。着る予定はあるの?」

 

「んー。そのうちね。」

 

一花はそういいながら俺にウィンクをしてくる。

俺はこの話を続けさせるのはまずいと判断したので、無理やり話をきった。

 

「しゃべってないで掃除しろ。」

 

「「はーい。」」

 

俺たちはまた黙々と掃除を始めた。

 

二時間後ようやく一花の部屋の掃除が終わった。

 

「んー!ようやく終わったよ。」

 

一花が伸びをしながら言う。

 

「普段から掃除しろよ。」

 

「忙しいー。」

 

「空き時間に、少しずつやれ。あんなのじゃ誰も入れないだろ。」

 

「やっぱり、フータロー君は部屋がいいのかな?」

 

一花がニコニコしながら意味が分からないことを言ってきたので、俺は無視して四葉に話しかける。

 

「四葉。俺はもう帰るな。」

 

「はい!今日はありがとうございました!」

 

俺は、中野家のマンションから出て家に帰ろうとすると、とある人に声をかけられた。

 

「上杉君!ちょっと待ってください!」

 

「なんだ?俺忘れ物でもしたか?」

 

「いえ、違います。話したいことがありまして。」

 

「話したいこと?」

 

「えぇ。林間学校の時、埋め合わせをするって言ったの覚えてますか?」

 

「あー。言ったなそんなこと。で、なんだ?」

 

「その埋め合わせを明日してほしいんです。」

 

「明日?」

 

「はい。明日、二人で初詣に行きましょう。」

 

「二人でって、お前ほかの姉妹とはいいのか?」

 

「えぇ。それとも、もう先客がいるのですか?」

 

五月が不安そうな顔で聞いてくる。

 

「いや、ないぞ。」

 

「ならいいですよね!」

 

五月は、目を輝かせていた。

 

「あぁ。いいぞ。」

 

「わかりました。では、詳細は後程連絡いたしますね。」

 

「わかった。」

 

「では、よいお年を。」

 

「あぁ。じゃあな。」

 

こうして俺は年を越したのであった。




毎週日曜日は本編休みまーす。


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第二十二話 雑煮と振袖と五月

どうもかずめぐです!
今日は、フータローの誕生日!
おめでとー!
あと、タイトルが雑かもしれんw
では、本編へどうぞ!


 

元旦の朝七時、俺は五月に指定された待ち合わせ場所に来ていた。

 

(なんでこんな朝早いんだよ…。)

 

俺が大きなあくびをしていると、後ろから声をかけられた。

 

「上杉君。お待たせしました。」

 

振り返ってみると、そこには振袖を着た五月がたっている。

 

「あぁ。あけましておめでとう。今年もよろしくな。」

 

「はい。あけましておめでとうございます」

 

俺たちは、新年のあいさつを済ませ、近所の神社に向かった。

 

「ところで、五月。なんでこんな朝早くなんだ?」

 

「ほかの姉妹が起きる前に来たかったので。」

 

「ほかの姉妹と一緒に来ればいいじゃねーか。」

 

「それは嫌だったんです。それより、上杉君。私の格好に何か感想はないのですか?」

 

「感想?」

 

「はい。女の子が普段と違う格好をしていたら感想を言うもんですよ。」

 

(こいつはなんていう無茶ぶりを…。)

 

俺はもう一度五月のことをしっかり見た。

五月は真っ赤な布地に青い柄が入った振袖を着ていたため、俺にはあれに見えた。

 

「まあ似合ってると思うぞ。」

 

「ほんとですか!?」

 

五月は目を輝かせている。

 

「あぁ。なんか、マリオみたいだ。」

 

「えっ…。」

 

五月はみるみる顔を真っ赤にさせていく。

 

「俺、なんかやばいこと言ったか?」

 

「えぇ、言いましたとも。」

 

五月はこちらを向いて、今にも俺のことを殺しそうな目でにらんできた。

 

「すまん…。」

 

俺は命の危険を感じて素直に謝った。

 

「もういいです。」

 

五月はすねて、すたすたと先に行ってしまった。

俺はそのあとを急いでついていくのであった。

神社に着くと、さすがに元旦なだけあって、すごく混んでいる。

 

「五月。まずどこに行くんだ?」

 

「お詣りです。」

 

五月は、いまだに拗ねていたが、とりあえずお詣りの列に並んだ。

 

「五月。さっきはほんとにすまなかった。」

 

「もういいですよ。上杉君に気の利いた言葉を求めていた私がばかだったんです。」

 

「さりげなく、俺のことディすらないでくれないか?」

 

「これくらいは甘んじて聞き入れるべきです。マリオって言ったんですから。」

 

「すまん…。」

 

「まあ、あとで何かおごってくれたら許してあげます。」

 

「わかった…。」

 

俺にとっては手痛い出費だったが、背に腹は代えられないので、五月の要求をのんだ。

二十分ほど並び、俺たちの番が来たので、俺たちはお詣りをした。

それを、終えると五月は露店を探し始めたのであった。

目当てのものを見つけたのか、急に早足でその店に歩いていったのである。

俺は、ついていくと、五月はお雑煮屋の前で止まったのだった。

 

「上杉君。これをおごってください。」

 

「別にいいが、これでよかったのか?」

 

「はい。新年最初に口にするものはお雑煮と決めているので。」

 

俺は、五月にお雑煮をおごり、ベンチに座って少し休憩をした。

すると、お雑煮を食べ終えた五月はこちらを向き俺に質問をしてきたのである。

 

「上杉君は先ほど何をお願いしてきたのですか?」

 

「五月。神社ってのはお願いするとこじゃなくて、ほんとは決意表明する場所なんだぞ。」

 

「え!?そうなんですか?私お願いしちゃいましたよ…。」

 

「なにを、お願いしたんだ?」

 

「それは秘密です。」

 

「人のやつ聞こうとしたのに、自分のは秘密なのかよ。」

 

「はい。では、上杉君は何を決意表明されたのですか?」

 

「お前らのことを無事卒業させてみせると決意表明した。」

 

「そうですか。なら、私たちも頑張らないとですね。」

 

「あぁ。よろしく頼むぞ。」

 

「はい!」

 

五月とこんなことを話していると、前から四人組が話しかけてきた。

 

「五月。あんた、なんかこそこそしてると思ったら、やっぱり抜け駆けしてたのね。」

 

二乃が五月のことをにらみながらそんなことを言う。

 

(そういえば、できるだけ全員一緒に行動しなきゃいけないんだった…。)

 

俺は四葉と話したことを今更思い出した。

四葉のほうを見てみると、ぷいっと顔をそらされてしまったのである。

 

「別に抜け駆けなんてしてないですよ。」

 

五月が二乃に言い返す。

二人でバチバチしているのを止めに入ったのは一花だった。

 

「ほら、二人ともやめなよ。今ここで会えたんだからいいでしょ?」

 

一花の言葉に三玖も続いた。

 

「みんなで仲良く、公平にいこう。」

 

「わかったわよ。」

 

二乃はさすがに分が悪いと思ったのか引き下がった。

 

(てか、抜け駆けってなんだよ。まったく訳が分からない。)

 

俺が黙ってそんなことを考えていると、急に一花に話しかけられた。

 

「フータロー君。早く私たちの家に行こ?お姉さん、寒くて死んじゃいそうだよー。」

 

一花は手に息を吐いて温めるそぶりをする。

 

「お前ら、お詣りはもう終わったのか?」

 

「うん。さっきね。」

 

「わかった。なら、行くか。」

 

こうして、元旦の前半戦は終わったのであった。




実は、みなさんに報告しなくてはいけないことがあります。
気付いてる方もいると思いますが、先日の投票で一位に輝いた「三玖のお嫁さん生活」よりも、先に「女優一花の嫉妬」をあげてしまいました。
もともと、二位の作品をサプライズで上げようとは思ってたんですが、三玖のやつよりも先に出来上がってしまい、こっそりと上げました。
「三玖のお嫁さん生活」も今頑張って書いてるので、怒らないでいただけるとありがたいです。
本当に申し訳ございませんでした。


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第二十三話 百人一首大会

どうもかずめぐです!
複アカ禁止らしいので消しちゃいましたw
だから昨日の話は忘れてください!
では、本編へどうぞ!


 

 

俺は、神社から中野家へと移動した。

中野家に着くと、いきなり百人一首をすることになったのである。

俺はあまりに突然な出来事だったため、素朴な疑問を口にした。

 

「なぜ、百人一首なんだ?」

 

この問いに答えたのは、四葉であった。

 

「お正月だからですよ!」

 

「いや、確かにそうだけども。なぜ、このタイミングなんだ?」

 

「読み手をやってほしかったからです!」

 

「なるほど…。」

 

俺は、四葉に読み札を渡された。

最初は、断ってやろうかと思っていたが、あまりにやる気な五人を見ていると、断りづらくなってしまった。

 

「お前らなんでそんなにやる気なんだ?」

 

「勝った人には特典があるから。」

 

「特典?なんだそれ。」

 

「秘密。」

 

「…。まあ、いいけど、お前ら最近秘密ごとが多いよな。」

 

「そんなことより早く読んでよー。お姉さん、待ちくたびれちゃった。」

 

「わかったよ。」

 

俺はしぶしぶ札を読み始める。

 

「人はいさ 心も知らず ふるさとは…」

 

「はい。」

 

俺が読み切る前に静かに札をとったのは三玖であった。

 

「三玖。お前覚えてるのか?」

 

「うん。勉強したから。」

 

(その意欲を本当の勉強に生かしてほしいんだけどな…。)

 

俺はそんなことを考えていたが、周りに急かされたので次の札を読んだ。

 

「長からむ 心も知らず 黒髪の…」

 

「これね!」

 

またまた、読み終わる前に誰かが札をとった。

 

「この歌好きなのよね。」

 

とったのは二乃だった。

 

「なんで好きなの?」

 

二乃の発言を不思議に思ったのか、四葉が二乃に質問をした。

 

「この歌は、契りを結んだ後に相手が心変わりしないか思い悩む心情を詠む歌なのよ。」

 

二乃はにやにやしながらそんなことを言っている。

 

「へー、そうなんだー?」

 

四葉は歌自体の意味は理解したが、二乃がこの歌を好きな理由はわからないみたいだ。

しかし、俺には心当たりがあった…。

 

(確かに言いようによっては契りだけど…。そもそも、俺は二乃になびいたわけでもなく…。てか、こんな危険なことを他の姉妹の前で言うなんて、あいつは何を考えているんだ…?)

 

そんな俺の隣で三玖が頬を膨らませていた。

 

「二乃も勉強したんだ。」

 

「当たり前じゃない。あんたにのいいようにはさせないわ。」

 

二人ともめちゃくちゃバチバチしている。

姉妹のバチバチを止めたのはまた一花だった。

 

「二人とも、次やるよー。」

 

俺は、一花にウィンクで合図されたので、次の札をよむ。

 

「忘らるる…。」

 

「はい!」

 

今度は一句目で、誰かが札をとった。

 

「この歌は、男に冷たくされながらも、その身を案じちゃうところがすごくいいんだよね。」

 

一花は、ちらちらとこちらを見ながら言ってくる。

 

(俺は別に冷たくしてないし…。してないよな…?)

 

俺は、真冬なのに汗が止まらない。

 

(そういえば、三玖がとった歌も人の心の移りやすさを諷してる歌だったな。なんかこれ、姉妹そろって俺のこといじめに来てるのか…?)

 

俺は疑心暗鬼になってしまったが、悟られるわけにはいかないので、次の歌を読んだ。

 

「瀬…。」

 

「瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に あはんとぞ思ふ。」

 

隣で、五月が俺よりも早く歌を詠みながらとった。

 

「一字きまりでしたよね。上杉君。」

 

「あぁ…。よく覚えたな。」

 

「この歌は、仲を裂かれても将来は必ず添い遂げようという一途な心を詠んでいて、私にぴったしだと思って覚えたんですよ。」

 

「ははは…。そうなのか。」

 

(黒だ。こいつら完璧黒だ…。)

 

俺は、最後の希望の四葉のほうを見てみるとまったく訳の分からないという顔をしていた。

 

(お前だけはぶかれてるのか…。)

 

俺が哀れな目で四葉を見ていると他の四人に急かされた。

 

「フータロー君。早く次読んでよ。」

 

「早くしなさいよ。」

 

「フータロー。間が長い。」

 

「上杉君。早く次行きましょう。」

 

四人とも目がギラギラしている。

俺の胃は悲鳴を上げていたが何とか百首読み終わることができた。

四葉を除いた四人は終始バチバチしていた。

 

(なんでこいつらこんなにがちなんだ…?特典がそんなにすごいのか…?)

 

そう思った俺は勝者が誰なのかを聞いてみた。

 

「結局誰が勝ったんだ?」

 

「私は、一枚しか取れませんでした…。」

 

四葉がしょんぼりとしている。

 

「お前はそもそも特典の話聞いてたのか?」

 

「いえ、さっきが初耳でした。」

 

「お前はぶられてんな。」

 

「みたいです…。」

 

四葉とお俺が話してるうちに他の四人も数え終わったみたいであった。

 

「私は、結局十六枚しか取れなかったよ。」

 

一花が悔しそうにしている。

 

「あたしは、二十七枚よ。」

 

「私は、十七枚でした。」

 

二乃も五月も一花同様悔しそうにしている。

 

「てことは。」

 

俺は、三玖のほうを向くと三玖は小さくガッツポーズをして

 

「私は、三十九枚だったよ。」

 

と、嬉しそうな顔をしていた。

 

「結局、負けちゃったか。」

 

「今回は、完敗だったわ。」

 

「私の勉強不足でした。」

 

三人とも潔く負けを認めている。

結局、わけのわからない俺と四葉は終始ほっとかれる形だったのである。

こうして、ようやく長かった元旦が終わったのであった。




IFストーリーに関しては、一花と三玖のは書くけど、ほかの三作品を読みたい人もいるのかな?
いるのであれば、順番は後回しになっちゃうけど、書こうかな。


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第二十四話 三玖とデート?

どうもかずめぐです!
昨日は、本編休んですいません!
ちょっと、ストックが尽きてきたので必死に書きましたw
これからも、本編ちょくちょく休んで番外編だすかもしれませんが、飽きないで読んでいただけると嬉しいです!
では、本編へどうぞ!


 

 

百人一首大会から四日ほど経ち、俺は三玖と歴史博物館に来ていた。

ここで、なぜ、三玖と一緒に歴史博物館にいるのかを説明しよう。

今朝、起きたらなぜか三玖が俺の家にいてそのまま強引に連れてこられたのである。

その間、三玖からの説明は一切ない。

 

「三玖。今の状況を説明してくれないか?」

 

俺は三玖に聞く。

 

「フータロー。この兜かっこいい…。」

 

しかし、三玖は全く聞いていなかった…。

諦めた俺は、まだ勉強のできる博物館だったためいろいろと見て回ることにした。

見て回ってる間、なぜかずっと三玖に手をつながれている。

 

「三玖。さっきからなんで、ずっと手をつないでいるんだ?」

 

「はぐれないため。」

 

「俺はそんなに子供じゃない。」

 

「細かいことはいいから。」

 

俺は、三玖からの謎の圧を受けたため、おとなしく従った。

そんな中、ふと百人一首大会のことを思い出した。

 

「そういえば、百人一首大会の特典てなんだったんだ?」

 

「これだよ。」

 

「これ?」

 

「うん。フータローを一日好きにしていい権利。」

 

「おい。俺の意思はどこに行った。てか、そんなものをかけてたのかよ。」

 

「正しくは、一日フータローと二人きりでいても邪魔されない権利だけどね。」

 

「なんだよ、それ。」

 

「フータローは気付いてないの?」

 

「なににだ?」

 

「最近、五つ子の誰かと二人きりでいると、誰かしらが邪魔しに来るでしょ?」

 

「確かに、二乃の時といい、五月の時といい…。」

 

「そう。だから、今日は誰にも邪魔されないの。」

 

「なるほど。」

 

俺は、心当たりがあったためか納得(?)した。

 

「それで、お前は歴史博物館に来たわけか。お前らしいな。」

 

「うん。私でよかったでしょ?」

 

「え?なんでだ?」

 

「私と四葉以外だったら大変な目にあってたと思うよ。」

 

「どうして?」

 

「一花は、最近何か良からぬことを企んでいるし、二乃は相変わらず肉食だし、五月は最近なんか目をギラギラさせてるから。」

 

「確かに…。」

 

(一花は、最近すごく誘惑してくるし、二乃はもう危険以外何物でもない。五月は、なんか狩る者の目をしていて怖いからな…。)

 

俺は、三玖の意見がごもっともだったため、三玖でよかったと思い始めた。

 

「私は、フータローとこうやって話せてるだけで満足だから。」

 

三玖は笑顔でそんなことを言ってくるため、俺はドキッとしてしまう。

 

「ほかの場所回ろうぜ。」

 

俺は、誤魔化すためにそんな提案をした。

 

「わかった。」

 

三玖は少し膨れていたが、意外と素直に従ってくれた。

それから、しばらく博物館の中を見て回り、全部回り終わったので、俺たちは博物館を出ることにした。

 

「次はどこに行くんだ?」

 

俺は、何気なくそんなことを聞いてみる。

すると、三玖は少し身体をビクッとさせた。

 

「お城の見学だよ。」

 

「城?ここら辺にあったか?」

 

「うん。」

 

「そうか。知らなかったな。」

 

心なしか、三玖は嘘をついているような気もしたが、とりあえずついて行ってみた。

しばらくすると、三玖が突然ある場所の前で止まった。

 

「着いたよ。このお城を見学しよう。」

 

三玖がそう言ってお城を指さす。

 

「お前、お城って…。」

 

俺は、三玖が指さすお城を見て思わず絶句してしまった。

 

「じゃあ、はいろうか。」

 

三玖は何食わぬ顔でお城(?)に入ろうとしたが、俺は腕をつかんで止めた。

 

「ちょっと待て。ここはお城じゃないぞ。」

 

「え。そうなの?」

 

「とぼけるな。仮にこれがお城だったとしてもこれは西洋風じゃねーか。」

 

「最近、西洋のお城にも興味が出てきて…。」

 

「じゃあ、ドイツにあるお城を一つ答えてみろ。」

 

「…。バームクーヘン…。」

 

「それは、確かにドイツ語だが全然違う。見え透いた嘘をつくな。」

 

「まあでも、とりあえず入ってみようよ。楽しそうだよ。」

 

「おい。ここがどこだか分ってるのか?」

 

「お城。」

 

「お前ここを読んでみろ。」

 

俺はそう言って、看板を指さす。

 

「ホテル・オアシス…。」

 

三玖はぼそぼそとつぶやくように看板を読んだ。

 

「お前、絶対ここがラブホだってわかってただろ。」

 

「…。」

 

三玖は何も答えない。

 

「お前、さっき私でよかったねとか言ってたじゃねーかよ…。」

 

「だって、フータロー。最近私に全然かまってくれないし…。」

 

「うっ…。まあ確かに…。」

 

(確かに、三玖の言う通り、俺は林間学校以降三玖のことを避けている…。)

 

「それに関してはすまなかった。」

 

「じゃあ、はいろ?」

 

「それとこれとは話が違うだろ。」

 

「むう。」

 

三玖は頬を膨らませる。

 

(頬を膨らませる仕草は五つ子共通のしぐさなのだろうか。)

 

俺が、そんな話にまったく関係のないことを考えていると、三玖が妥協した。

 

「わかったよ。今回は、おとなしく引く。安心安全が売りだから。」

 

「わかってくれて、助かる。」

 

「その代わり、もっと私にかまって欲しい。」

 

「わかった…。善処する。」

 

「うん。なら帰ろうか。」

 

「あぁ。」

 

そうして、俺たちは帰路についたのであった。




これって、いつまで続くんだろw


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第二十五話 二乃の策略

どうもかずめぐです!
いつのまにかここまで来ちゃいましたねw
実は、ストックでは三十話までいきました!
はじめはこんな続くと思わなかったけど、いつも読んでくれる皆様のおかげでここまでこれました!
本当にありがとうございます!
それと、これからもよろしくお願いします!


 

 

始業式前日中野家にて…

 

「お前ら、宿題は終業式の日に終わらしたんじゃねーのかよ。」

 

誰からも返事がない。

そう、こいつらは冬休みの宿題を今頃になってやり始めたのだ。

 

「初日に、三分の一くらい終わっていたので大丈夫かなと…。」

 

五月が、申し訳なさそうにつぶやく。

 

「大丈夫じゃねーから。この状況なんだろ。」

 

俺がそう言うと、五月は頭を抱えてしまった。

 

「まあまあ、今からやれば間に合うよ。」

 

一花がすかさずフォローを入れてくる。

 

「お前も終わってないんだから、早くやれよ。」

 

「はーい。」

 

俺は、五つ子に鞭を打ち宿題をやらせた。

少し経つと、二乃が突然出かける準備をし始めた。

 

「おい。どこに行くんだ。宿題が優先だぞ。」

 

「あたし、宿題終わらせてるわよ。」

 

「え?」

 

二乃の課題を見てみると確かに終わっている。

 

「他の人とは違って、コツコツやっておいたのよ。」

 

「えらいな。」

 

「ほら、分かったなら、あんたも準備しなさい。」

 

突然二乃がそんなことを言い出したので、四葉以外全員二乃のほうを向いた。

 

「準備って何のだ?」

 

俺は訳が分からなかったので二乃に確認をとる。

 

「買い物のてつだいをしてほしいのよ。」

 

「お前だけで十分なんじゃ?」

 

俺は、こないだのことを思い出しそうきいてみる。

 

「明日から、新学期だからいろいろ買いこんでおきたいのよ。」

 

「わかった。なら、手伝うか。」

 

俺は、まっとうな理由を言われたので、準備をしようとしたところ一花に止められた。

 

「まって。フータロー君にうちのこと手伝わせるのは悪いから、私が行くよ。」

 

「あんたは宿題してなさいよ。」

 

俺が答えるより早くに二乃が答えた。

俺はそれに続いた。

 

「まあ、お前らは時間がないんだから宿題やっとけ。」

 

俺の言葉を聞いた一花はどこか悔しそうな顔をしていたが気のせいだろ。

三玖に至ってはジトーっとこちらを見てくる。

五月は…。

見なかったことにしよう。

こうして、一悶着あったが俺と二乃は買い物に出かけた。

買い物に行く途中で俺は二乃に聞きたかったことを聞いた。

 

「そういえば、なんでお前は計画的に宿題をやってたんだ?」

 

「こうなることを予想してたからよ。」

 

「こうなるって?」

 

「ほかの四人は宿題を終わらせてなくて、あたしとフー君が買い物に行けるってことよ。」

 

「お前そこまで考えてたのかよ…。」

 

「二人きりになる機会を作るためには、ここまで考えないといけないのよ。」

 

「そんなに、二人きりになりたいのかよ。」

 

「愚問ね。好きな人と二人でいたいっていうのは当然の欲求でしょ。」

 

「みんなで一緒じゃダメなのか?」

 

「だめよ。」

 

二乃はきっぱりと言い切った。

 

(四葉…。やっぱり、お前の姉たちは独占欲がすごいぞ…。)

 

俺は、心の中でそっとつぶやいたのであった。

しばらく歩き、俺たちはショッピングセンターについた。

 

「二乃。今日は何を買うんだ?」

 

「とりあえず、二日分の食料とお弁当箱、それから洗剤とかの消耗品かしらね。」

 

「普通に多いな。よし。ひとつずつ回っていくか。」

 

「えぇ。」

 

こうして、俺たちはひとつずつ回っていった。

先に、食料品と消耗品を買い、最後に雑貨屋に来ていた。

 

「どのお弁当箱がいいかしら。」

 

二乃がそんな質問をしてくる。

 

「誰が使うんだ。」

 

「あたしが使うわ。」

 

「なら、この赤いやつとかいいんじゃないか?」

 

俺は、赤くてかわいらしい弁当箱を指さす。

しかし、二乃は俺の言うことを無視して黒くて少し大きめの弁当箱を選んだのである。

 

「二乃。お前俺の意見最初から聞く気なかっただろ…。」

 

「聞きはしたじゃない。」

 

二乃はいたずらっぽい笑みを浮かべてそんなことを言う。

 

「じゃあ、そろそろ帰りましょ。」

 

「そうだな。あいつらのことも心配だし。」

 

こうして俺たちは中野家へと帰ったのであった。




え??
番外編をかけって??
聞こえなーい。


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第二十六話 冬休み最後の夜(1)

どうもかずめぐです!
Twitterやってるんでよかったらフォローしてください!
あと、よかったら高評価してもらえると嬉しいです!


 

 

中野家に帰ってみると、リビングには誰もいなかった。

 

「二乃。あいつらどこ行ったんだ。」

 

「多分、それぞれ自分の部屋で宿題をやってるんじゃないかしら?」

 

「終わってると思うか?」

 

「微妙ね。」

 

二乃は、渋い表情でそう言う。

心配になった俺は、それぞれの部屋を訪ねてみることにした。

ちなみに、二乃は夕飯の準備をしている。

俺は、まず五月の部屋のドアをノックをした。

すると、

 

「入っていいですよ」

 

と、返事が返ってきたので、俺は五月の部屋に入った。

 

「五月。宿題は終わったか?」

 

「あと、一ページで終わります。」

 

「そうか。それならよかった。頑張れよ。」

 

俺はそう言うと、ほかの人の確認をするため五月の部屋を出ようとしたが五月に呼び止められてしまった。

 

「宿題でわからないところがあったので、聞いてもいいですか?」

 

「あぁ。いいぞ。」

 

まっとうな理由だったので俺は快諾した。

 

「ありがとうございます。」

 

「で、どこが分からないんだ?」

 

「この小説の問題なんですが。」

 

俺は、五月が指さした場所を読む。

 

「これは、夏目漱石のこころか?」

 

「はい。それで、この私がKに対して一緒の人を好きなのを黙っていたことに対してあなたはどう思いますかという問題ですが、上杉君はどう思いますか?」

 

俺は正直、そんな問題に見覚えがなかったが、とてもまじめに聞いているのでちゃんと答えることにした。

 

「まあ、隠してること自体そこまで問題はないが、この後の行動がまずいよな。Kに黙って、その人のことを嫁に貰ってしまってるからな。」

 

「ですよね。やはり、行動に出るからには黙っていてはだめですよね。」

 

五月は何か思うところがあるみたいで、少し下を向いてしまった。

俺は、気になったがとりあえず他の人の部屋に確認しに行かなくてはならなかったので、五月に確認をとった。

 

「五月。もう大丈夫か?」

 

「はい。引き留めてしまいすいませんでした。」

 

「気にすんな。」

 

俺はそう言い、部屋を出ようとしたが、また引き留められた。

 

「上杉君。」

 

「なんだ?」

 

俺が振り返ったら突然五月に唇を奪われたのである。

 

「なっ…。お前…。」

 

俺は、なぜキスされたのか全く分からなかった。

目の前には顔を真っ赤にさせた五月がいる。

 

「おっ、教えてくれたお礼です…。」

 

五月は今にも、消え入りそうな声でそうつぶやく。

 

「お礼??」

 

俺がそう聞き返すと、五月に部屋から追い出されてしまった。

 

(一体何だったんだ…。)

 

俺は、状況が全く飲み込めず、フリーズしてしまった。

数分後、とりあえず今やるべきことをやろうと自分に言い聞かせ、四葉の部屋のドアをノックした。

しかし、返事がない。

どうやら、四葉は留守みたいだ。

俺は仕方なく、次に三玖の部屋のドアをノックした。

 

「だれ?」

 

中から、三玖の声がする。

 

「俺だ。」

 

「フータローなの?」

 

「あぁ。そうだ。」

 

「わかった。やっと、かまってくれるんだ。」

 

三玖はそう言うと突然ドアを開け、俺のことを部屋の中に引っ張りいれたのであった…。



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第二十七話 冬休み最後の夜(2)

どうもかずめぐです!
なんか、ネタが全然思いつかなくなってきたので、ストックがなくなったら少し休むかもです。


 

 

俺はなぜか三玖にベッドに押し倒されている。

 

「三玖。いったい何をしているんだ?」

 

「なんでって。かまいに来てくれたんじゃないの。」

 

三玖は不思議そうな顔をして聞き返してくる。

 

「いや、そもそもかまうってなんだよ。俺は、宿題が終わったか聞きに来ただけだ。」

 

「えっ…。」

 

三玖は俯いてしまった。

 

「いや、あの、その。宿題終わったか?」

 

俺は、三玖に少しビビりながら聞いてみる。

すると、顔を上げた三玖はいつもの無表情だったけれど、少し怒っているような口調で、

 

「終わってる。」

 

と小さくつぶやくのであった。

 

「そ、そうか。なら俺はもう行くな。」

 

何か嫌な予感がしたため、俺は起き上がり部屋を去ろうとしたが、五月同様に呼び止められてしまった。

 

「フータロー。ちょっと待って。」

 

「なんだ、三玖…?」

 

「フータローはこないだ私が言ったこともう忘れちゃったの。」

 

「かまってほしいってやつか…?」

 

「うん。覚えてるんじゃん。」

 

「しかし、かまうって言ったってどうしたらいいんだ…。」

 

「じゃあ、まずベッドに横になって。」

 

「三玖。それは違うと思うぞ。」

 

俺は食い気味に否定する。

しかし、なおも三玖は引く気配がない。

 

「間違ってないよ。だから、フータローはベッドに横になって。」

 

「じゃあ聞くが、ベッドに横になって何をするんだ。」

 

「…。お話。」

 

「それは、座ってできることだろ。」

 

「むう。」

 

「三玖。お前は、安心安全が売りなんじゃないのか?」

 

「…。フータローはひどいよ。」

 

「なにがだよ。」

 

「約束したのに、全然守ってくれない。」

 

「それは悪いと思ってるが、今日はすまん。やらなきゃいけないことがあるんだ。今度必ず埋め合わせするから。」

 

「わかった。」

 

なんとか、三玖は引き下がってくれたので、俺は気を取り直し一花の部屋に行った。

 

「おい。一花いるか?」

 

俺は、ドア越しに呼びかけるが返事がない。

しかし、四葉の時と違い一花は寝てる可能性があるので、俺は部屋に入ることにした。

本当なら、女の子の部屋に無断で入るわけにはいかないが、今は仕方ない。

緊急を要しているのだから。

俺は、部屋に入ってみると何やらベッドの上でもぞもぞ動いている物体を見つけた。

 

「一花。起きてるのか?」

 

もぞもぞ動いている物体に声をかけると、物体はピタッと動きを止めた。

 

「フータロー君、そこにいるの…?」

 

「あぁ。すまないが、返事をしても答えがなかったので勝手に入らせてもらった。」

 

「女の子の部屋に勝手に入っちゃダメだよ…。」

 

「しかし、こちらも急用があったもんで。」

 

「急用って?」

 

「一花。お前、宿題は終わったか?」

 

「あー。宿題か。終わってるよ。」

 

「そうか。それならよかった。じゃあ、邪魔して悪かったな。」

 

「えっ…。フータロー君、私が何してたか分かったの…?」

 

「ん?寝てたんじゃないのか?」

 

「あぁ。そうだよね。寝てたんだよ。あはは。」

 

一花はやけに慌てていたが、俺にはなんでなのかまったくわからなかった。

 

「一花。どうしたんだ?そもそもなぜずっと布団をかぶっている?体調でも悪いのか?」

 

俺は心配になったので、一花の布団をめくろうとした。

すると、一花は叫んで俺のことを止めてきた。

 

「今はだめ!」

 

「どうしてだ?」

 

「服着てないから…。はずい…。」

 

「すっ、すまん!」

 

(確かこいつは、寝てるとき服脱ぐ奴だった…。)

 

俺は、急に申し訳なくなったので、早急に部屋を去ることにした。

 

「一花。すまなかった。俺は、もう行くからな。」

 

「あっ、うん。私こそごめんね。」

 

俺は一花の部屋から出た。

リビングに戻ってみたが、誰もいなかったので、俺は四葉のことは諦めて帰ることにした。

家から出ようと、玄関の前に立つと、ひとりでに扉があいたのである。

すると、外からリボンが入ってきた。

 

「ただいまー!あれ!?上杉さん、何してるんですか?」

 

「お前、どこに行ってたんだ。」

 

「バスケ部の助っ人です!」

 

「…。もちろん、宿題は終わらせてるよな。」

 

「ほとんどやってませんよ!シシシ。」

 

「嘘だろ…。」

 

俺は、その場に座り込んでしまった。

まだ、冬休み最後の夜は終わらないみたいだ…。




一花さんは何をしてたんでしょうかね。
次回は、四葉推しが待ちに待った久しぶりの四葉オンリー会です!


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第二十八話 冬休み最後の夜(3)

どうもかずめぐです!
最近、なんか寄り道ばっかりしてて、お話が進んでない気がする…。



 

時刻は二十三時、今俺は四葉の部屋にいる。

なぜかというと、泊まり込みでうさ耳リボンに宿題をやらせなきゃいけないからだ。

事の発端は、数時間前にさかのぼる。

俺が帰ろうとしたところ、四葉と玄関で鉢合わせ、宿題全然終わってない宣言をされてしまったのだ。

一度は、絶望して座り込んでしまった俺だが、徹夜すれば何とかなりそうだったので、一晩中こいつに宿題を教えるため、俺は中野家に泊まることを決心したのである。

そして今に至る。

 

「上杉さん。眠いですー。」

 

四葉があくびをしながらそんなことを言う。

 

「しゃべってる暇があるなら、さっさとやれ。終わるまで寝かさないからな。」

 

「むう。さっきから、三時間ぐらいぶっ通しでやってるので少し休憩させてくださいよー。」

 

四葉の言う通り、三時間ぐらいぶっ通しでやっている。

 

「わかった。少しだけだからな。」

 

「やったー!」

 

そう言って、四葉はベッドに横になった。

 

「おい。寝るなよ。」

 

「寝ませんよー。ところで、上杉さん。最近どうですか?」

 

「なんの話だ?」

 

「私たち、五つ子との関係です!」

 

「あー。それについてなんだが…。」

 

「はい?」

 

「例えばだぞ?姉妹の誰かと特別な仲になってしまった場合ってどうすればいいんだ?」

 

「全員、公平に仲良くなるべきです!」

 

「もし、仲良くしなかったら?」

 

「きっと、ギスギスするでしょうね。」

 

「例えば、どんな風に?」

 

「誰かの邪魔をしたりとかでしょうか?」

 

「なるほど…。もう、そうなってる場合はどうするんだ?」

 

「上杉さん。まさか…。」

 

「いや、例えばの話だからな。」

 

「それなら、全員に同じことをしてあげるべきです!」

 

「やっぱり、みんな仲良く一緒ルートしかないのか…。」

 

「え!?上杉さん、もしかしてだれか好きになったんですか!?」

 

今日一番四葉の目が輝いている。

 

「それはない。いまだに、誰かを好きになるとかそういうのはわからん。」

 

「もー、恋愛下級者ですねー。」

 

「じゃあ、お前は誰か好きになったことあるのか?」

 

「そりゃありますとも!」

 

四葉は自慢気に言ってきたので、少しいじめることにした。

 

「へー。じゃあ、勉強のために、その話詳しく聞かせてくれよ。」

 

「え!?それはちょっと…。」

 

「あんなに自慢気だったのになんで話せないんだ?」

 

「うー。あっ!そんなことより勉強をしましょう!」

 

四葉は急に立ち上がると、椅子に座り勉強を始めたのであった。

真面目に勉強をしている四葉の隣で、俺は英単語を覚えていた。

しばらくすると、四葉がこちらを向いてきて、真面目な顔で言ってきたのである。

 

「私は、どんなことになろうとも上杉さんの味方ですからね。」

 

いつになく、真面目な四葉に俺は驚いてしまった。

 

「味方ってなんだよ。」

 

「私は、上杉さんのことをずっと応援してます。」

 

「そ、そうか。ありがとうな。」

 

「いえ、勉強を教えてもらってる恩返しですよ。」

 

「別にそんなことはしなくてもいいんだがな。」

 

「私がしたいんです!」

 

「わ、わかった。ならさっそく相談してもいいか?」

 

「相談ですか!?私でよければ是非!」

 

心なしか、四葉は楽しそうだ。

 

「実は、お前の姉たちの独占欲が強すぎて困ってるんだよ。だれも、みんなで一緒とか望んでないぞ。」

 

「やっぱり、そうなんですか。」

 

「知ってたのか??」

 

「全くです!」

 

「じゃあ、日本語間違えてるぞお前。」

 

「にしし。細かいことはいいんですよ!お話続けてください!」

 

「細かくはないけどな…。まあいい。それで、結局どうしたらいいのかわかんないんだよ。」

 

「むうー。確かにそれは難しいですね。」

 

四葉がくちびるの先をとがらせ困った顔をしている。

 

「だから、結局一人に絞るしかないんじゃないか?」

 

「むう。なら、私にしませんか?」

 

「は!?」

 

四葉が突然変なことを言い出したので驚いてしまった。

 

「私なら、上杉さんを困らせませんよ。」

 

「えっ、いや、でも…。さすがにそれはないだろ。」

 

俺が狼狽えていると突然四葉がクスッと笑った。

 

「なーんて、冗談ですよ!やーい、騙されたー!」

 

俺は、四葉に腹を立て怒ろうとしたができなかった。

彼女は、なぜか泣いていたのである。

 

「なんで泣いてるんだ。」

 

「あれ?おかしいなー。目にゴミでも入ったんですかね??」

 

「いや、お前…。」

 

俺がしゃべろうとすると四葉に止められてしまった。

 

「私、宿題終わりましたし、そろそろ寝ましょう!明日起きれなくなっちゃいます!」

 

「あぁ。そうだな。」

 

俺は、心の中にわだかまりが残っていたが四葉の提案を素直に聞きいれた。

せっかく、宿題をやったのに遅刻したら本末転倒だからである。

 

「じゃあ、俺はソファーで寝るな。」

 

「はい。上杉さん、おやすみなさい!」

 

「あぁ。お休み。」

 

俺はこうして、四葉の部屋を後にした。

しかし、心の中はもやもやしたままである。

結局、俺は一睡もできずに、夜明けとともに家に帰ったのであった…。




次回は、一花さんが出てきます!


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第二十九話 一花と映画

どうもかずめぐです!
なんか、最近、原作のほうの一花がかわいそうになってきた…


 

 

始業式の日、俺は眠くて全く機能していない脳みそを使い、昨日の夜のことをずっと考えていた。

 

(なぜ四葉はあそこで泣いていたんだ…。まったくわからない…。)

 

俺はあれこれと考えを巡らせるものの全然答えが出てこなかった。

そして、いつの間にか放課後になっていたのである。

今日は、家庭教師もなく、ほかの用事もなかったので、まっすぐ家に帰ろうと教室を出ると、一花が俺のことを待っていた。

 

「フータロー君。この後暇かな?」

 

「残念ながら、デートの予定が入ってる。すまないな。」

 

俺はめんどくさかったので、適当な理由をつけて逃げることにした。

しかし、一花は逃がしてくれなかったのである。

 

「嘘はだめだよ。お姉さん、傷ついちゃうから。」

 

「嘘じゃなかったら、相当失礼だぞ、お前。」

 

「じゃなかったらって言ってる時点で嘘じゃん。」

 

「仮に本当にデートだったらどうすんだよ。」

 

「デートだったらなおさら行かせませーん。」

 

「お前は暴君なのか。」

 

「うん。そうだよ。」

 

「はぁ。で、なにすればいいんだ?」

 

俺は諦めて一花に従うことにした。

 

「私と一緒に映画に行って欲しいの。」

 

「映画?なんでだ?」

 

「私が出てる映画が今日から公開だから、見てほしいなあって。」

 

「なるほどそういうことか。」

 

はじめは映画なんて興味なかったが、一花が出ていると聞いて、少し興味を持った。

 

「んじゃ、映画館に行こっか。」

 

俺たちは映画館へと向かった。

映画館に着くと、一花はチケットを買いに行ってしまったため、俺は手持無沙汰である。

暇だった俺は、置いてあった映画のパンフレットを見ることにした。

 

(これが一花の出てる映画か。)

 

俺は、映画の説明が書いてあるところを読む。

すると、とあることに気付いてしまった。

 

(一花の役死ぬやつじゃん…。あいつ死にすぎだろ…。)

 

俺がそんなことを考えていると、一花が帰ってきた。

 

「お待たせ。」

 

「買いに行ってもらって悪いな。いくらだった?」

 

俺は財布を出し金を出そうとしたが、一花に止められてしまった。

 

「今日は、私が誘ったからおごるよ。」

 

「いや、さすがにそれは…。」

 

「いいの。お姉さんにまかせなさい!」

 

「わかった。ありがとな。」

 

「うん。じゃあ、そろそろ始まるから行こっか。」

 

こうして俺たちは劇場内へと入った。

しばらくして、映画が始まり、一花が出てきたので、一花のほうを見てみると、なんと、眠っていたのである。

 

(開始五分で寝るのかよ…。まさかこいつ授業中もこんな感じなんじゃ…。)

 

俺がそんな心配をしているうちに、映画はどんどん進み、とうとう一花は死んでしまった。

 

(もう死んだよ…。てか、この映画テンポ早すぎだし、あんまりおもしろくないし、よく見たら客全然いないな…。)

 

俺はそんな余計なことを考えてるうちにどんどん睡魔に襲われ、結局、一花同様寝てしまったのである。

 

 

 

……

 

 

 

「フータロー君。起きて。」

 

「ん?どうした?」

 

俺は、一花に揺り起こされ、目をこすりながら聞き返した。

 

「もう映画終わったよ。」

 

「あっ…。」

 

俺はようやく自分が映画を見ていたということを思い出し、急に申し訳なくなった。

 

「すまん、一花。昨日寝てなくて、どうしても眠かったんだ。」

 

「まあ、私も寝ちゃったから、いいよ。それよりも、どうだった?私の演技。」

 

「演技自体はすごくよかったが、お前死にすぎじゃないか?」

 

「あはは。でも、安心して。次の映画は、死なないから。」

 

「へー。そうなのか。」

 

「うん。だから、次も一緒に見に行こうね。」

 

「そうだな、女優一花さんと女優一花さんを拝みに行きますか。」

 

「もーやめてよー。その呼び方は、恥ずかしい。」

 

一花がぽかぽかと俺をたたく。

 

「これで少しは私に惚れ直した?」

 

「もともと惚れてなんかいないんだが。」

 

一花のタチの悪いボケに俺は丁寧にツッコミを入れた。

すると、一花は嬉しそうな顔で答えたのである。

 

「まあ、最後は私のところに来てくれるって信じてるよ。」

 

「あほなこと言ってないで帰るぞ。」

 

俺はなんて返したらわからなくなってしまったので、逃げることにした。

 

「もー。待ってよー。」

 

一花が走って俺を追いかけてくる。

こうして、俺たちは夕日で赤く染まった道を歩いて帰っていったのであった。

 




そろそろ本題進めないとな
風邪ひいた


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第三十話 二乃とお弁当

どうもかずめぐです!
とうとう三十話到達!



 

 

冬休みが明けてから三日目の昼、俺は二乃に屋上に呼び出されていた。

冬なだけあって、さすがに屋上は寒い。

俺は凍えながら、なかなか来ない二乃を待っている。

数分後、ようやく屋上の扉が開き、二乃が姿を現した。

 

「待たせちゃって、悪かったわね。」

 

「ほんとだよ。めちゃくちゃ寒かったんだからな。」

 

「悪かったって言ってるじゃない。」

 

「そもそもなぜ屋上なんだ?」

 

「誰にも邪魔されたくないからよ。」

 

俺は二乃のその言葉を聞き、一瞬にして背筋が凍り付いた。

 

(まさか、こいつ学校で…?)

 

しかし、今回は俺の予測は間違っていたみたいだ。

二乃はなにやら弁当らしきものを持っている。

 

「それどうしたんだ?」

 

「あんたにお弁当作ってきたのよ。」

 

そう言うと、二乃は弁当が包まれた風呂敷を俺に渡してきた。

 

「俺に?なんでだ?」

 

「まずは胃袋からつかんでやろうかと思って。それと、一緒にお昼を食べる口実が欲しかったからよ。」

 

二乃があまりに素直に言ってくるため、俺は少し照れ臭くなってしまった。

 

「そ、そうなのか。ありがとうな。」

 

俺はそう言うと、ベンチに座り、風呂敷を開いた。

すると中から、あの時に買っていた、黒い弁当箱が出てきたのである。

 

「二乃、これは?」

 

「あの時に、買ったものよ。あんたが選んだピンクのやつもよかったけど、さすがにあんたが使うにはね。」

 

「なるほど。そういうことだったのか。」

 

俺は、あの時なぜ黒いやつを買ったのか今納得した。

 

「早く食べてみてよ。」

 

俺は二乃にせかされ、お弁当を一口たべようとしたが、寸前で手が止まった。

なぜかというと、あることを確認しなくてはならなかったからだ。

 

「二乃。これ、薬入ってないよな?」

 

「当たり前じゃない。いれるわけないでしょ。」

 

「そうかならよかった。」

 

安心した俺は、止めていた手を動かし、食べたのである。

 

「うん。うまいな。」

 

「そう。よかったわ。」

 

二乃はすかしてるような態度をとっていたが、口元はすごくにやけていた。

 

「お前は食べないのか?」

 

「今日はもう教室で食べてきちゃったのよ。」

 

「だから遅かったのか。」

 

「しょうがないじゃない。今日は、とっても警戒されてて、抜け出すのが大変だったんだから。」

 

「何に、警戒されてたんだよ。」

 

「それは、秘密よ。」

 

「お前らは本当に秘密ごとが多いな。」

 

「そんなことより、あんたに聞きたいことがあるんだけどいいかしら。」

 

話を強引に変えられたが、軌道修正するのもめんどくさかったので、よしとした。

 

「俺に答えられることであればいいぞ。」

 

「あんた、昨日一花と映画に行ったでしょ。」

 

俺は、二乃の言葉に一瞬にして固まる。

 

(なぜ、二乃が知っているんだ…?)

 

俺の頭の中はパニック状態だったが、本能的に誤魔化さなければいけないと思ったので、とっさにとぼけたふりをしてしまった。

 

「さあ?なんのことだ?」

 

「へー。しらばっくれるんだ。」

 

「ほんとに身に覚えがないんだが。」

 

俺はあくまでしらをきる。

しかし、二乃が見せてきた証拠によって、俺は一気に追い込まれてしまった。

 

「じゃあ、この写真は何よ。」

 

二乃がそう言って見せてきたのは、映画館から出てきた俺と一花を写メったものであった。

 

「そ、それをどこで…。」

 

「そんなことはどうでもいいのよ。で、これを見てもしらばっくれるの?」

 

「…。一花と昨日映画に行きました…。」

 

俺は結局、吐いてしまった。

 

「どっちから誘ったの。」

 

「一花だ。」

 

「そう。なら、別にいいわ。」

 

「俺だったらどうなってたんだ?」

 

「殺してたわね。」

 

「は!?嘘だろ??」

 

「本当よ。あんただったら間違いなく殺してたわ。」

 

「怖すぎだろ…。」

 

俺はこんなことしないと心の中で固く誓うのであった。

しかし、なおも二乃からの攻撃はやまない。

 

「で、なんで嘘ついたのよ。」

 

「とっさについてしまったんだ…。」

 

「へー。そうなんだ。」

 

二乃の顔は笑っているのに、目は全く笑っていなかった。

それが、さらに俺の恐怖心を煽る。

 

「本当に、すまなかった。何でもするから許してくれ…。」

 

「わかったわ。なら許してあげる。」

 

俺は自分でも馬鹿な発言をしてしまったと、後悔したが、もう取り消すことはできなかった。

目の前にいる二乃は、この言葉を待っていましたと言わんばかりの顔をしているからだ。

 

「じゃあ、さっそくお願いしようかしら。」

 

「できるだけ、やさしめで頼む…。」

 

「じゃあ、明日からもお弁当を作ってきてあげるから、私と一緒にお昼を食べなさい。」

 

「え?そんなことでいいのか?」

 

俺は、要求があまりにやさしかったため、思わず聞き返してしまった。

 

「今回はこれで許してあげるわ。感謝しなさい。」

 

こうして、次の日から二乃と昼食を共にするのであった。

しかし、これがほかの姉妹から注目を浴びる結果になるとはこの時の俺は、考えもしなかったのである…。




4/28の四葉の日に四葉がメインの回をあげます!
楽しみにしててください!


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第三十一話 三玖と埋め合わせ

どうもかずめぐです!
最近気づいたんだけど、テストのイベント二回あるはずなのに、一回しかやってない…。


 

 

一月もあっという間に過ぎていき、もうじき二月になるというところまで来ていた。

そんな、一月下旬の日曜日、俺は隣町の駅まで来ている。

なぜかというと、ここで待ち合わせをしているからだ。

 

「お待たせ。遅くなってごめん。」

 

待ち合わせ時間から五分ほど遅れて、俺を呼び出した人物が来た。

 

「三玖。なぜ、こんな遠いところで待ち合わせなんだ?」

 

俺は彼女のほうに向きなおり聞く。

 

「それは後で説明する。とりあえず行こ。」

 

三玖はそう言うと、歩き出してしまった。

そう、今回俺のことを呼びだしたのは三玖なのである。

この前の埋め合わせやらなんやらと言われ、ここまで呼び出されたのだ。

俺は、遅れてきたくせにさっさと歩き始めてしまった三玖に呆れてしまったが、仕方なくついていく事にした。

しばらく三玖の後をついって行ったが、なかなか三玖は止まらない。

しびれを切らした俺は三玖にどこに行くのか尋ねたのである。

 

「三玖。いったいどこに行こうとしているんだ?」

 

「水族館。」

 

「なんで、またそんなとこに。」

 

「前からずっと行きたいと思ってたから。」

 

「そうなのか。水族館好きなのか?」

 

「うん。熱帯魚を見るのが好きなの。」

 

「でも、水族館に行くなら反対の道だぞ。」

 

俺たちは今、水族館とは反対の方向に歩いてきているのである。

 

「うん。わかってる。これでいいの。」

 

「どうしてだ?」

 

「まかないといけないから。」

 

「まくって、なにを?」

 

「多分、二乃かな。」

 

「二乃!?あいつが来ているのか?」

 

「うん。」

 

俺は後ろを振り向いて確認してみたが、二乃の姿は見当たらない。

 

「いないじゃないか。」

 

「そんな堂々とつけてきてるわけないじゃん。」

 

「確かに…。だが、お前の勘違いという線もあるんじゃないのか?」

 

「それはない。家を出た時から、つけられてるから。」

 

「なぜ二乃は一体そんなことを…。」

 

「弱味を握るためだよ。」

 

「弱味?」

 

「うん。フータローも最近心当たりあるでしょ?」

 

俺は一つだけ心当たりがあることに気付く。

 

「一花と映画見に行ったときに写真を撮られてたやつか…。」

 

「そう。それ。まさか、それでフータローのお昼時間を独占されるとは思ってなかった。」

 

今回は、一緒にお昼ご飯を食べるということだけで済んだが、次は何をされるかわかったもんではないなと思った俺は三玖にお願いをした。

 

「三玖。全力でまいてくれ。」

 

「うん。もとからそのつもり。」

 

俺たちはこうして遠回りをして水族館に行くことになったのである。

水族館に着くと、俺は二乃がいないか確認するため周りをきょろきょろと見回った。

しかし、先ほども肉眼では二乃を見つけられなかったため、ここは三玖にまかせることにした。

 

「三玖。二乃はまだつけてきてるか?」

 

俺の問いに三玖はしばらくじーっと周りを見渡してから答えた。

 

「多分いないと思う。気配がない。」

 

「気配って…。そんなもので判断できるのか。」

 

「うん。五つ子だから。」

 

「何でも五つ子って言えばいいってわけではないんだがな…。」

 

「細かいとこはいいから。早く行こうよ。」

 

そう言うと、三玖は俺の袖を引いて歩きだした。

水族館に入ると、三玖は他のものには目もくれず、真っ先に熱帯魚がいる場所に向かったのである。

普段の様子からは考えられないほど、とても素早く動いていたため、俺は驚きのあまり開いた口がふさがらなくなってしまった。

しかし、三玖はそんなこと露知らず、熱帯魚に見入っている。

 

「三玖。そろそろ、ほかの場所に移動しないか?あんまり張り付いてると、ほかの客の迷惑になるぞ。」

 

先ほどから周りの客の視線が痛かったので、俺は三玖にそう提案した。

 

「あと少し。あと少しだけ待って。」

 

三玖が戦国武将以外でこんなにも熱中しているところを見たことなかった俺は仕方ないので、周りの視線に耐えながら、三玖を待つという選択肢を選んだ。

しばらくして、三玖が満足したようだったので、俺たちは足早にその場を去った。

 

「三玖。お前そんなに熱帯魚好きなのか?」

 

俺は歩きながら三玖に質問をする。

 

「うん。好き。戦国武将と同じくらい好き。」

 

「そ、そんなになのか…。」

 

(三玖の戦国武将と肩を並べるということは、よっぽど好きなんだろうな。)

 

俺がそんなことを考えていると、三玖は俺ににっこり笑いかけてきた。

 

「でも、フータローが一番好きだよ。」

 

「な、何言ってんだよ。」

 

「赤くなってる。かわいい。」

 

俺は、突然好きと言われてしまったため、相当動揺してしまったらしい。

三玖に指摘されるくらい、顔が赤くなってるみたいだ。

 

「そんなこと言ってないで、次行くぞ。」

 

俺はこれ以上顔を見られないようにするため、さっさとほかの場所に移動した。

後ろから三玖も、俺に小走りでついてくる。

しばらくすると、三玖が俺に話しかけてきた。

 

「なんか、まともなデートみたいだね。」

 

「確かにそうではあるな。」

 

俺は三玖のほうに向きなおると、三玖は真っ赤な顔をしていた。

 

「なんで、好きは恥ずかしげもなく言えて、デートは真っ赤になるんだよ。羞恥心バグってるだろ。」

 

「だって、デートって意識すると…。フータローはこういうの初めて…?」

 

「残念ながら初めてではない。先日、一花と映画を見に行ったからな。」

 

(俺は何をぺらぺらと話しているんだ…?)

 

俺はどうやら間抜けらしい。

また自分で自分の首を絞めてしまった。

 

「むう。一花に先越された…。でも、フータローの初めては私だもん。」

 

「お前は公の場で何を堂々と言ってんだ。」

 

「周りにアピールしなきゃと思って。」

 

「なにをだよ。」

 

「フータローは私のものだよって。」

 

「時と場所を考えろ。そもそも、俺はお前のものじゃない。」

 

「初めて奪ったのに?」

 

「だから、場所を考えろ。なんでお前今日、そんなに饒舌なんだよ。」

 

「…。緊張してるのと、フータローといれて嬉しいから。」

 

「…。もういい。全部見終わったし帰るぞ。」

 

「まだ帰りたくない。」

 

「だめだ。お前の姉たちが、しびれを切らす前に帰るぞ。」

 

「確かにそれは危険かも。わかった。帰ろっか。」

 

こうして、三玖との埋め合わせデートが終わったのであった。




ゴールデンウイークも平常運転の予定


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第三十二話 四葉の告白

どうもかずめぐです!
今日は、四葉の日なので四葉回です!
では、本編へどうぞ!


 

 

三玖と水族館に行ってから一週間ほどが経った、二月の最初の土曜日。

俺はあいつらの家庭教師をすべく、中野家へと向かっている。

中野家のマンションに着き、インターホンを鳴らすと、四葉が出てきた。

 

「お!上杉さんですね!上がってください!」

 

「お、おう。」

 

四葉はそう言うと、インターホンを切り、マンションのドアを開けた。

俺はマンションの中に入り、そこからさらにあいつらの部屋へと向かう。

その途中、何度も帰りたくなったが、我慢してあいつらの部屋の前に到着する。

なぜ帰りたくなったかというと、四葉がいるからだ。

冬休み最後の日の一件以来、俺は四葉にどう接していいかわからなくなり、今まで避けてきてしまった。

しかし、こんなとこでくよくよしていても仕方がないので、俺はあいつらの家に入った。

 

「お邪魔するぞ。」

 

「上杉さん!いらっしゃーい!」

 

出迎えたのは、四葉だけだった。

 

「ほかのやつらはどうしてるんだ?」

 

「…。ほかの人たちは出かけちゃいました…。ニシシ…。」

 

「え。てことは、お前だけしかいないのか?」

 

「そういうことになりますね。」

 

「う、嘘だろ…。」

 

「まあ、随時みんな帰ってくると思うので、先に始めてましょうよ!」

 

四葉はそう言うと、俺の手を引き、リビングへと連れてった。

はじめは、四葉と二人きりでどうなるか不安で仕方なかったが、四葉がいつも通り明るく接してくれたおかげで、俺もいつも通りの受け答えをすることができた。

しかし、このままいけば無事に終わると油断したためか、俺が余計な一言を言ったせいで、今の空気がぶち壊れてしまった。

 

「そういえば、ほかの四人はなんで家庭教師の日にわざわざ出かけてんだ。確かに、今のあいつらなら赤点回避は簡単だろうけれど、さすがに家庭教師の日に予定を入れないだろ。」

 

「すいません。私のせいなんです。」

 

「は??どういうことだ?」

 

「私がみんなに嘘をついたんです。今日は図書館でやるよと。」

 

「なぜそんなことを。」

 

「上杉さんと二人きりでお話がしたかったので。」

 

四葉の顔からはいつもの笑顔が消え、真面目な顔をしている。

俺は四葉の顔を見て四葉が何を話したいのか何となく察することができたので、覚悟を決め、聞くことにした。

 

「話ってなんだ。」

 

「上杉さんはみんなで一緒に幸せになれる方法ってあると思いますか。」

 

「正直言ってないと思う。」

 

「どうしてですか?」

 

「世の中、誰かの幸せによって別の誰かが不幸になるなんて珍しくない話だ。競い合い、奪い合い、そうやって勝ち取る幸せってのもあるだろう。そして、お前の姉たちが得ようとしている幸せはまさしくこれだからだ。」

 

「やっぱり、すべてを得ようとするなんて、おこがましいですよね。別の世界の上杉さんにもそう言われました。」

 

「そ、そうなのか。」

 

俺も四葉にこんな話をしたことある気がするが、今は置いておこう。

 

「上杉さん。私はとてもお人好しです。」

 

「あぁ、知ってるが?」

 

「そんなお人好しな私にもやっぱり譲れないものがありました。」

 

「お前に譲れないものって、珍しいな。」

 

「はい。今までは我慢してみんなが幸せになれるようにサポート役に徹してきましたが、もうやめました。」

 

「ん?ちょっと待て。なんの話をしてるんだ。」

 

俺は何かとても嫌な予感がする。

四葉は先ほどまでとてもまじめな表情をしていたが、急にいつものニコニコ笑顔になった。

 

「上杉さんのことは誰にも渡したくないんです!」

 

「は!?お前急になに言ってんだよ…?」

 

「上杉さんのことが好きって言ってるんです!」

 

「…。お前までそんなこと言ってると、本当にやばいんだが…。」

 

「大丈夫です。安心してください。あくまで、私は上杉さんの幸せが優先なので、上杉さんが困るようなことはしませんよ!」

 

「それならよかった…。」

 

「ニシシ。でも、黙ってみてるのはやめたんです!私も選んでもらえるように頑張るのでちゃんと見ていてくださいね!」

 

「…。勝手にしろ…。」

 

「あー。上杉さん、赤くなってるー。」

 

「こっちみんな!」

 

俺はやっぱりこの手の話が苦手なようだ。

四回目にして、いまだになれない。

 

「ところで、上杉さん。私が告白してもあまり驚きませんでしたね。どうしてですか?」

 

「この前の反応を見てもしかしたらとは思っていたんだ…。」

 

「鈍感なのにそういうところは気付くんですね。」

 

四葉の視線が痛い…。

俺はその視線から逃げるため話をそらした。

 

「ところで、お前の姉たちは図書館にもういるのか?」

 

「あ!!忘れてました!そろそろ行かないとです!」

 

四葉はそう言うと急に慌てて支度をしだした。

 

「じゃあ、俺は先に行ってるからな。」

 

俺は四葉から逃げるように家を後にしようとしたが、四葉に止められてしまった。

 

「シシシ。逃がしませんよ!今は私のターンなんですから!」

 

「わかった。逃げないから離せ…。」

 

「私はそこまで上杉さんに高望みはしません。でも、少しでもいいから私のこと見てくださいね!」

 

四葉がとびっきりの笑顔でそんなことを言うので俺はまた顔が赤くなってしまった。

 

「あー!また赤くなってるー!上杉さんの恋愛下級者ー。」

 

「そんなこと言ってると、置いてくぞ。」

 

「わー、待ってください!」

 

俺たちはこうして、少し気まずい関係からむしろ前よりも心の距離が近づいた関係になったのであった。




四葉はキーパーソンやな。
急いで書いたためかなんかいまいちになってしまった。
四葉推しの人はすまん。


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第三十三話 五月とM・A・Y

どうもかずめぐです!
GWも三日が過ぎましたが、全然実感がわかないw


 

 

二月のある日の放課後のこと。

俺は荷物をまとめ、学校から家に帰る準備をしていた。

すると、ある人から話しかけられる。

 

「上杉君。この後時間よろしいですか?」

 

俺は口調で誰が話しかけてきたか分かったので、後ろを振り返らずに返事をした。

 

「すまない。このあとは、デートの予定が入っているんだ。」

 

「それは、一花の時にも使ってましたよね。」

 

「なんで、お前が知っているんだよ。」

 

俺はようやくここで振り返り、誰と話しているのか確認する。

やはり、五月であった。

 

「たまたま聞こえたんです。」

 

「ほんとにたまたまかよ。」

 

「…。」

 

「そこは、はいと言ってくれ…。」

 

「まあこの話は置いときましょう。で、この後よろしいですか?」

 

五月が先ほどよりも圧をかけて聞いてくる。

こうなってしまっては一花同様、抵抗しても無駄なので、素直に従うことにした。

 

「まあ、特に予定はない。何をすればいいんだ。」

 

「少しついてきてください。」

 

そう言うと、五月は俺の腕をぐいぐいと引っ張り、学校内を歩いていく。

正直言って、ほかの姉妹に見られるとめちゃくちゃ厄介なのでやめてもらいたい。

先日の四葉の宣言のせいで、とうとう俺の安息地はなくなってしまったのである。

そんなことを考えながら、歩いているといつのまにか駅まで来ていた。

 

「電車に乗るのか?」

 

「はい。少しだけ。」

 

こうして俺たちは、電車に二、三駅だけ乗り、目的の駅についたのであった。

しかし、俺には五月がどこに行こうとしているのかが、全く見当がつかない。

 

「なあ、五月。そろそろ、どこに行くか教えてくれてもいいんじゃないか?」

 

「そうですね。では、話しましょう。」

 

五月はそう言うと、突然スマホを俺に渡してきた。

 

「これは?」

 

「有名レビュアーM・A・Yのマイページです。上杉君は私がそのM・A・Yっていう人物だということはご存知ですよね?」

 

「あぁ。知っているが。それと何の関係が?」

 

「クリスマスの時はよくも恥をかかせてくれましたね。」

 

五月が俺をにらみつけてくる。

 

「それはすまなかったと思ってるが、今は関係ないだろ。」

 

「まあいいでしょう。今回は、M・A・Yとしてのお仕事を手伝ってほしいんですよ。」

 

「どういうことだ?」

 

「今から行く場所は、二人じゃないと予約が取れない場所でして、上杉君に手伝ってもらおうかと。」

 

「なるほど。訳はわかったが、なぜ俺なんだ?ほかの姉妹でもよくないか?」

 

「さすがに姉妹の前だと恥ずかしいです。」

 

「俺ならいいのかよ。」

 

「はい。上杉君なら空気みたいなものなので。」

 

「さりげなく貶すな。それは、二乃のキャラだろ。」

 

「最近、二乃が丸くなってしまったので、私が代役を務めようかと。」

 

「いらんことしなくていい。まあ、そう言う理由なら付き合ってやるよ。」

 

「ありがとうございます。」

 

こうして、俺たちは目的地へ向けて歩き出した。

しばらく歩いていると、目的地に着いたらしく、五月が歩くのをやめた。

 

「ここが、予約を取った場所です。」

 

俺は五月が指さすほうを見てみると、驚きのあまり固まってしまった。

同時に、なぜ五月がほかの姉妹ではなく、俺にお願いをしたのかが、看板を一目見て分かったのである。

 

「おい。五月。」

 

「な、なんでしょうか…?」

 

「この看板にカップル限定と書いてあるんだが、気のせいか?」

 

「あ、あれ?なんでしょうかこれは??は、はじめて知りました…。」

 

「下手くそか。どおりでほかの姉妹を誘わないわけだ。」

 

「まあ、細かいことはいいじゃないですか。早く入りましょうよ。お腹がすきました~。」

 

「あほっぽく言っても、誤魔化されないぞ。俺は帰る。」

 

「待ってください。帰るというなら、こちらにも手があります。」

 

「なんだよ。」

 

「上杉君とここまで来たことを、ほかの姉妹に言いますよ。」

 

「うっ…。それだけはやめてくれ…。」

 

五月は俺の弱点を的確についてくる。

あの姉妹にこのことがばれたら、俺の身体の無事は保証されないであろう。

 

「なら、一緒に入ってくれますよね?」

 

「わかった…。その代わり、絶対に言うなよ…。」

 

「はい。もちろんです。」

 

なぜ、五つ子はこういう時に限って、頭が切れるのだろう。

少しは、勉強に生かしてほしい。

 

「上杉君。今日はM・A・Yとして予約を取っていないので、その名前を出さないでくださいね。」

 

「ん、わかった。」

 

こうして俺たちは店の中に入ったのである。

 

「いらっしゃいませ。二名様でよろしいですか?」

 

「あの、予約した中野と申しますが。」

 

「あ、中野様ですね。では、こちらの席へご案内します。」

 

俺たちは店員に案内された席に着いた。

 

「五月。ところでここは、何のお店なんだ?」

 

「最近、女子高生の間で流行ってる、カップル限定のお店です。」

 

「それは、看板を見て分かった。そうじゃなくて、どういう料理のお店なんだ?」

 

「喫茶店みたいな感じなのですが、出てくるものがカップル限定感がすごいと聞いてます。」

 

「なるほど…。で、今回は何を頼んだんだ?」

 

「カップルコースと言うものを予約しました…。」

 

「前にも誰かに言ったが、顔を真っ赤にさせるくらいなら、初めからするなよ…。」

 

五月の顔は湯気が出そうなくらい真っ赤である。

こんなやり取りをしていると、店員が飲み物を運んできた。

 

「こちら、オレンジジュースになります。」

 

俺は、そのオレンジジュースを見た瞬間、また固まってしまった。

ジュース自体は何も変哲もない、オレンジジュースだ。

しかし、ストローが漫画で見るみたいな一本に対して、飲み口が二つあるやつだったのである。

 

「五月。ジュースは全部やる。」

 

「上杉君も飲まないとだめですよ…。」

 

「なんでだよ。」

 

「店員がちゃんとチェックしてるんですよ…。」

 

「なんで、この店を選んだんだ…。」

 

「そ、そんなことより、早く飲みましょうよ!」

 

結局俺たちは、へんてこなストローでジュースを飲むことになった。

その後も、スプーンが一個しかないオムライスが出てきたりと、色々なことがあったが、何とか乗り切ることができた。

そして今は、最後の記念撮影ということで、なぜか五月とツーショットをとらされている。

 

「では、いきますよー。はい、チーズ。とれましたよー。」

 

「ありがとうございます。」

 

五月はなぜか嬉しそうにしていたが、俺の気のせいだろう。

ようやく、解放された俺たちは来た道を戻っている。

 

「なあ、なんであそこに行こうと思ったんだ。」

 

「秘密です。」

 

「秘密なのかよ…。」

 

「はい。でも、今日は本当にありがとうございました。」

 

「あぁ。この前のわびということで許してくれ。」

 

「む。まあいいでしょう。」

 

「ありがとな。あと、さっき撮った写真絶対に他のやつに見せるなよ。」

 

「当たり前じゃないですか!こんなの一生の汚点ですよ。」

 

「なら、なぜ大事そうに持っている。」

 

「ほかの人に見られたらまずいので…。」

 

五月は目が泳いでいたが、気にしないことにした。

こうして、俺たちは冬の寒空の下帰路につくのであった。




次回はバレンタイン回ですね。


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第三十四話 バレンタイン戦争(1)

どうもかずめぐです!
とうとう平成も終わりですねw
今回は本編の後におまけもつけているので是非読んでみてください!
本編の内容薄いかも…
ごめんなさい…


 

 

今日は、二月十四日。

世間でいう、煮干しの日である。

ていうのは、冗談だ。

さすがに俺でも今日が何の日か知っている。

そう、今日はバレンタインだ。

前までの俺なら、別に普段通りすごしていたであろう。

前の世界でも、三玖から一か月前くらいからずっともらっていた程度だったからだ。

しかし、今回は訳が違う。

家庭教師の日でもないのに、あいつらの家に呼び出されているのだ。

正直不安でしかない。

適当な理由でもつけて断ろうと思ったが、先にらいはのほうにアポを取られていたため、行かなくてはならなくなってしまった。

 

「お邪魔するぞ。」

 

俺はそう言い中野家のドアを開ける。

 

「上杉さーん!おそいですよ!」

 

「フータロー君。やっときたね!さあ、あがってあがって!」

 

出迎えてくれたのは、四葉と一花だった。

やけにテンションが高いのでますます不安なる。

リビングへと入ると、そこには二乃、三玖、五月がすでに座って待っていた。

 

「あんた、遅いわよ。」

 

「これでも全速力できたつもりだ。」

 

もちろん嘘である。

 

「フータロー、私たちから渡したいものがあるの。」

 

「渡したいもの?」

 

「ええ、上杉君。今日が何の日だかご存知ですか?」

 

五月が三玖と俺の間に割り込んで聞いてきた。

 

「さすがにそれは俺でもわかるぞ。」

 

「へー、あんたでもわかるんだ。」

 

二乃がニヤニヤしながら馬鹿にしたような口調でそんなことを言ってくる。

 

「今日は煮干しの日だろ?」

 

俺がふざけてそんなことを言うと、みんな固まってしまったのである。

しばらくすると、意識が戻ってきたようで、みな思い思いのことを口にしていた。

 

「まさか、フータロー君がここまで世間に疎かったなんて…。」

 

「あんた、それ本気で言ってるの?」

 

「フータロー…。」

 

「上杉さん。恋愛下級者すぎますよー!」

 

「呆れてしまいました…。」

 

さすがに、ここまで言われると腹が立つので、俺はふざけていただけというう旨を伝えた。

 

「ふざけていただけだ。今日はバレンタインだろ?」

 

「なーんだ。ふざけてただけなんだ。お姉さんは本気で心配しちゃったよ。」

 

一花が胸をなでおろしながらそんなことを言っている。

 

「で、それが何の関係があるんだ?」

 

「あんた、ほんとににぶいのね。」

 

また、二乃が俺のことを馬鹿にしてくる。

前回こいつが丸くなったのを認めてしまったが、それは撤回しておこう。

 

「今日は、みんなから上杉さんにチョコを渡すんです!」

 

四葉が楽しそうに話している。

 

「チョコ?みんなから俺に?まともなものなんだろうな?」

 

「はい。喧嘩にならないように、みんなで同じタイミングに渡そうといううことで、今日は来てもらったんです。」

 

「なんで喧嘩が起きるんだよ…。」

 

「フータロー。それを聞くのは野暮だと思う。」

 

「そうですよ!今日は日ごろの感謝と言うことで受け取ってください!」

 

「わかった。ここは素直にありがたく受け取るか。」

 

こうして、バレンタインチョコのプレゼント大会が始まったのであった…。

 

 

 

 

 

~おまけ~(注)本編とは全く関係ありません!

 

「上杉君。とうとう平成も終わってしまいましたね。」

 

「あぁ。そうだな。ところでお前らは新元号知ってるのか?」

 

「もちろんですよ!確か、昭和でしたよね!」

 

「一つ戻ってるんだが…。」

 

「四葉、違うよ。確か、平和だったとお姉さんは思うな。」

 

「確かに、平和が一番だが、違う。さすがに三玖ならわかるんじゃないか?」

 

「うん。もちろん。令和でしょ。」

 

「正解だ。さすが、三玖だな。」

 

「では、正解も出たとこですし、みんなに令和の目標でも聞いてみましょうよ。」

 

「それは、いい考えね。じゃあ、まず一花からよ。」

 

「えっ!?私!?えーっと…。女優として成功するかな…。」

 

「おー!一花さすがだね!」

 

「私はもうこれで終わり。次は二乃ね。」

 

「私は…。んー…。ぱっと思いつかないわね。先に三玖が言ってちょうだい。」

 

「私は、フータローのお嫁さん。」

 

「は!?」

 

「三玖!?何を言ってるんですか!?」

 

「えへへ。」

 

「えへへ、じゃないわよ!それなら私だってフー君のお嫁さんになりたいわよ!」

 

「二乃。お前まで何を言ってるんだ…。」

 

「そんなこと言ったら、私だってフータロー君のお嫁さんになりたいよ!私が、一番稼いでるからフータロー君のこと楽させてあげれるよ。」

 

「五月!ちょっとやばいことになってるから、とりあえず終わらせてくれ!」

 

「は、はい!?今日はここで終わりです。続きは明日にどうぞ。」

 

続く…




おまけがしょうもなかった…
令和もよろしくお願いします。


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第三十五話 バレンタイン戦争(2)

どうもかずめぐです!
ゴールデンウイークもとうとう折り返し地点まで来ましたね!
皆さんはどうお過ごしですか??


 

バレンタインデー、中野家にて。

今まさに、チョコのプレゼント大会が始まろうとしていた。

 

「じゃあ、私からいくね。はい、フータロー君。」

 

まず最初に渡してきたのは一花だった。

 

「ありがとう。で、これはなんだ?」

 

俺は少し大きめの箱を受け取り聞き返す。

 

「これは私の知り合いが紹介してくれた有名なお店のチョコだよ。」

 

「クリスマスの時と言い、お前顔広すぎだろ。」

 

「まあ、お仕事頑張ってるからね。」

 

「そうなのか。よく頑張ってるんだな。だが学業をおろそかにするなよ。」

 

「わかってるよー。ほら、頑張ってる人にはなでなでしたほうがいいんだよ。」

 

そう言うと、一花が頭を突き出してきた。

俺は仕方なく頭をなでようとしたが、二乃に止められたのである。

 

「一花。なに、抜け駆けしようとしてんのよ。はい、これは私から。」

 

二乃は強引に俺と一花の間に入り、きれいにラッピングされた箱を渡してきた。

 

「これは?」

 

「手作りの、フォンダンショコラよ。感謝しなさい。」

 

「聞いたことない名前だが、とりあえず、ありがとな。」

 

二乃はふんと鼻を鳴らし、威張っているように見えたが、顔はめちゃくちゃにやけていた。

続いて前に出てきたのは三玖である。

 

「はい。これ私から。」

 

三玖はそう言うと、ラップにくるまれたチョコケーキのようなものを渡してきた。

俺は受け取ったものをしっかり見てみると、そこにはドクロマークが浮かび上がっていたのである。

 

「三玖…。これドクロマークがあるんだが…。」

 

「えっ、嘘。見せて。」

 

三玖は自分が作ったチョコケーキらしきものをじっくりと観察していた。

 

「これ、ダメなほうのドクロマークだ…。いいほうのやつに変えてくるね…。」

 

「ドクロマークにいいほうも、悪いほうもないだろ。」

 

「…。今回は一人で作ったから、上手くいかなくて…。でも、味は大丈夫だから食べてね。」

 

三玖から謎の圧がかかる。

 

「わかった…。ありがとな…。」

 

ほんとはめちゃくちゃ心配だったが、とりあえずお礼を言っておくことにした。

順番的に次は四葉だろうと思っていたら、次に渡してきたのは五月だった。

 

「これは、私からです。義理なので勘違いしないでくださいね。」

 

「そんなもん言われなくってもわかってる。」

 

俺は五月の言葉を聞き、一つの疑問が出てきた。

五月は義理としっかり言っていたが、前半の三人は言ってないのである。

怖くなった俺は、考えることを放棄したのだった。

 

「これはなんなんだ?」

 

俺は五月に聞いてみる。

 

「これは、私のおすすめの場所のトリュフチョコです。」

 

「なんだそれ、世界三大珍味の仲間か?」

 

「違います。とりあえず食べればわかると思うので、あとで食べてみてください。」

 

「わかった。ありがとな。」

 

俺は五月に礼を言い、最後の一人のほうに向きなおった。

そう、四葉である。

実は先ほどからこいつだけ馬鹿でかい袋を持っていたので、気になって仕方がなかったのだ。

 

「上杉さん!次は私からですよー!これどうぞ!」

 

四葉は怪しげなでかい袋を手渡してきた。

俺は袋の中身を覗き込むと、中には大量の五円チョコが入っているのである。

 

「四葉これは?」

 

「ししし。驚きましたか??なんと、五円チョコ三百枚はいってるんですよ!」

 

「三百枚!?なんでそんなに??」

 

「らいはちゃんと一緒にたくさん食べてほしくて。ニシシ。」

 

「なるほど!それは最高だな!ありがとな!」

 

「いえいえ、喜んでくれてうれしいです!」

 

四葉と俺がこんな感じでバカ騒ぎをしていると、ほかの四人は俺たちのことを冷めた目で見ていた。

まあ、正直言って俺が悪い。

他の高そうなチョコや手作りのものよりも、五円チョコで一番喜んでしまったからだ。

でも、仕方ない。

らいはの名前を出されたら、普通喜ぶだろ。

こんな言い訳を考えていると、俺はあることを思い出した。

 

「お前ら、くれたのは本当にありがたいんだが、クリスマス同様お返しがちょっと…。みんなまとめてでもいいか…?」

 

「えー、それはさすがにお姉さんいやだなー。」

 

「ならこういうのはどうかしら?」

 

「なになに?」

 

「一番おいしかった人だけがお返しをもらえるというのはどう?」

 

「それはだめ。二乃、料理得意だからってずるいよ。」

 

「そうですよ。それに、上杉君は貧乏舌なので、おいしいものの優劣なんて付けられませんよ。」

 

「確かにそうね。」

 

「じゃあこんなのはどう??今度の期末試験で一番合計点数が高かった人がお返しをもらえるっていうのは。」

 

「それはいいわね。」

 

「うん。それでいいと思う。」

 

「確かにそれだと試験勉強も頑張れて、一石二鳥ですね。」

 

勝手に話がどんどん進んでいくのを、俺と四葉は端からぼーっと眺めていた。

 

「どんどん話が進みますね。」

 

「そうだな…。お前は参加しなくてもよかったのか?」

 

「はい。私が参加できる雰囲気ではなかったので。あと、私はもうお返し貰いましたし。ししし。」

 

「は??何もあげてない気がするんだが。」

 

「私は上杉さんが喜んでくれただけで十分なんですよ!」

 

「…。お前はそんな恥ずかしいセリフをサラッと…。」

 

「ちょっと、あんたたち。何端っこでイチャイチャしてんのよ。」

 

「してねーよ。」

 

「してないってば!」

 

「ふん。どうだか。」

 

「それで、結局どうなったんだ。」

 

「期末試験で一番点数が高かった人が一日上杉君を好きにできるというのに決まりました。」

 

「え??お返しって、プレゼントとかじゃないのかよ。」

 

「だって、フータロー君、お金あんましないから無理させちゃ悪いなと。これならお金かからないしね。」

 

一花がニコッとして言う。

確かにこれならお金はかからないが、命の危険がありそうで怖い。

 

「別のことにしないか?」

 

「ダメ。もう決まったから。」

 

また、三玖から圧をかけられた。

 

「てことで、これからちゃんと勉強見なさいよね。」

 

こうして、バレンタインが終わり、地獄のテスト勉強が始まったのであった…。

 

 

 

 

~おまけ~(注)本編とは関係ありません。前回の続きです。

 

「前回は、中途半端なとこで終わってしまったので、今回は残りの三人に聞いていきたいと思います。」

 

「三人?四葉とお前以外に誰がいるんだ?」

 

「そんなの決まってるではありませんか。」

 

「そうですよ!上杉さんは本当に鈍感ですね!」

 

「鈍感で悪かったな。じゃあ、早く答えを教えてくれよ。」

 

「わかりました。正解はこの人です。」

 

「やあ。上杉君。娘たちが世話になっているね。」

 

「お、お父さん!?」

 

「君にお父さんと呼ばれる筋合いはないんだが。」

 

「あ、あの…。どうしてこちらに…?」

 

「娘たちが君のお嫁さんになりたがってるのを耳にしてね。君にくぎを刺しに来たんだよ。」

 

「どうしてそれをご存じなのですか…?」

 

「五月くんから聞いたよ。」

 

「五月!?あれ、どこに行った!?」

 

「さっき、どこかに行っちゃいましたよ。」

 

「あいつ…。許さん…。」

 

「それで、上杉君。」

 

「は、はい!?」

 

「君はあくまで家庭教師だ。娘たちとには紳士的に接してくれると信じてるよ。」

 

「俺はそのつもりで接しています。俺はね…。」

 

「ならいいだろう。じゃあ、そろそろ僕は仕事もあるし、帰ることにするよ。」

 

「ははは。さよなら。」

 

「上杉さん。大丈夫ですか?」

 

「大丈夫じゃねーよ…。てか、やらなきゃいけないことが一個もできてないじゃないかよ…。」

 

「でも、五月もいませんし、また次回じゃないですか?」

 

「そうだな…。では、また次回にお会いしましょう…。」

 

多分続く…




おまけ続かないかも。
あと、3,4,5と家を離れるので、上げられないかもです。
今日中にストックが貯められればあげます。
そこら辺に関してはTwitterで情報を発信してるのでそちらを見ていただけるとありがたいです。


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第三十六話 試験勉強~一花の場合~

どうもかずめぐです!
最近、昔のやつを見直してみたんですけど、五つ子が引っ越してきてから年末までを二十話弱で書いているのに、年始からの一か月半を十五話くらいかけて書いてるんですよね…。
なんか、ほんとにテンポが悪くて申し訳ないです…


 

 

試験まで残り二週間。

私は何から勉強しようかと悩んでいた。

フータロー君はテストまで毎日来てくれることになったが、平日は姉妹をローテーションで個別に教え、土日には全体で授業をすることになったので、私は週一でしか個別に質問ができない。

しかも、私の個別レッスンは週初めの月曜なのだ。

今日が日曜なので、何とか明日までに聞くことをまとめておかなくてはならない。

私はテスト範囲表を見てなおも悩む。

得意な理系科目をもっと伸ばすべきか、それとも苦手な国語を重点的にやるべきか…

考えれば考えるほど答えが出てこない。

結局、決められないまま次の日になってしまった。

学校が終わってから、私の部屋は汚くて勉強ができないため、図書館で勉強をすることになった。

 

「よし。じゃあ、今日は何をする?」

 

フータロー君が私に問いかける。

 

「フータロー君。得意な科目を伸ばすのと、苦手な科目を伸ばすのってどっちが楽かな?」

 

「得意なものはもともと点が高いわけだから、そこからさらに伸ばそうとするのは苦手な科目を伸ばすより大変なことだと思うぞ。」

 

「やっぱりそっか。じゃあ、私には国語を重点的に教えてもらってもいいかな?」

 

「了解だ。じゃあ、まず現文、古文、漢文。どれからやるか?」

 

「んー。一番面白そうな古文からやるよ。」

 

「わかった。なら、この問題を解いてみてくれ。今回のテスト範囲だ。」

 

フータロー君からプリントを手渡された。

 

「これはフータロー君が作ったの?」

 

「あぁ。定期試験の模試みたいなものだから、真面目に解けよ。」

 

「そっか。ありがとね。」

 

私はフータロー君にお礼を言い、問題を解き始めた。

今回のテスト範囲は源氏物語みたいだ。

源氏物語なら聞いたことあるし、解けるかもしれない。

しかし、現実はそう甘くなかった。

全然解けなかったのである。

 

「フータロー君…。全然わかんないんだけど…。」

 

「だろうな。源氏物語は古文の中でも難しい部類だ。センターなんかに出た時も極端に平均点が低くなるぐらいだからな。」

 

「そうなんだ…。やっぱり私には無理なのかなー。」

 

「一花。いきなり問題が解けるはずないだろ。まずは基礎からやらないとだめだ。」

 

「じゃあなんで、いきなり解かせたのよ!」

 

「お前はめんどくさがり屋だし、いきなり基礎をやれって言っても聞かないだろ。」

 

「うっ、確かに…。」

 

さすがフータロー君。

よく私のことが分かっていらっしゃる…。

 

「だからまず古文単語からやるぞ。」

 

「古文単語なら私だって、それなりには覚えてるよ。一応前回は、赤点とってないわけだし。」

 

「ふっ。なら全問正解したらご褒美をくれてやる。」

 

「えっ!?ほんとに??」

 

「あぁ。だが、その代わり間違えたらたんまり宿題増やすからな。」

 

「わかった。いいよ。受けて立つよ。」

 

「第一問なべて。」

 

「えーっと、総じてだっけ?」

 

「正解だ。」

 

「やった!ところで全部で何問なの?」

 

「三問だ。」

 

「じゃあ、あと二問だね。お姉さん頑張っちゃうぞ!」

 

「第二問かこつ。」

 

「えーっと…。なんだっけ?」

 

「もう答えられないのか?」

 

フータロー君が私のことを鼻で笑いながら見てくる。

 

「もうちょっと待って!思い出すから。」

 

私は頭をフル回転させ考えたが全く答えが出てこなかった。

 

「フータロー君…。お姉さんは降参だよ…。」

 

「まだ二問目だぞ。情けない。」

 

「むう。みなまで言わなくていいじゃん。」

 

「まあ、そういうことでお前の負けだ。意外と覚えているつもりでも、結構忘れてることが多い。だから、しっかり覚えさえすれば点数はおのずと上がってくる。あと、文法もやんなきゃダメだけどな。」

 

そう言うと、フータロー君はカバンの中からプリントの束を出してきた。

 

「えーっと、これは何…?」

 

「試験対策用のプリントだ。俺が寝ずに作ってきた。」

 

「わざわざこんなのまで作ってくれたんだ…。ありがとね…。」

 

「ああ。じゃあ、さっそく勉強するぞ。」

 

そうして、あっという間に時は過ぎていった。

勉強をやっていくにつれ私の国語の成績はみるみる上がっていき、人並みの数字が取れるとこまで来た。

そして、試験本番を迎える。

試験を迎えるにあたって、私は一つ決めたことがある。

もし、今回のテストで一位になったら、ホワイトデーの日に改めてフータロー君に告白をする。

前の世界ではできなかったけど、今回こそは絶対にしたい。

だから、ほかの子には負けるわけにはいかない。

こうして、私の試験が幕を開けたのであった。

 




次は二乃~。


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第三十七話 試験勉強~二乃の場合~

どうもかずめぐです!
今日は五つ子の誕生日!!
みんなおめでとう!


 

 

試験二週間前の火曜日。

私は、自分の部屋でフー君とマンツーマンで勉強をしていた。

 

「ねえ、この単語何?」

 

「それは、センシティブとよんで敏感なとかそういう意味だ。」

 

「へー。なら、私もセンシティブだった?」

 

「…。ふざけてるのか?」

 

「ふざけてないわよ。」

 

フー君が困っている姿を見るのはほんとに楽しい。

自然とにやけてきてしまう。

 

「ほら、真面目にやれ。」

 

フー君は私の質問を適当にあしらい、勉強することを促してきた。

でも、私もただ勉強しているだけだはつまらないので、時々フー君をいじっては楽しんでいる。

しかし、こういう楽しい時間はあっという間に過ぎて行ってしまうもので、終わりの時間が来てしまった。

 

「よし。じゃあ、そろそろ帰るな。このあともしっかり勉強しろよ。」

 

「言われなくてもわかってるわよ。」

 

私はフー君のことを見送り、再び自室に戻ってきた。

席に着き勉強を始めるが、唐突に喪失感に襲われ、全然集中ができないのである。

どうやら私はもうフー君なしではダメみたいだ。

けれど、彼は私にまったくなびいてくれない。

私は深いため息をつき、ベッドに横になった。

すると、扉がノックされ、五月が声をかけてきた。

 

「二乃。お風呂が空きましたので入っちゃってください。」

 

「わかったわ。」

 

「それと、大きなため息が聞こえましたが、何かあったのですか?」

 

五月が心配そうな声で聴いてくる。

 

「なんでもないわよ。」

 

「そうですか。でも、あまり無理はしないでくださいね。」

 

「あのさ、五月。」

 

私は、あることが聞きたくて五月を呼び止めた。

 

「はい?なんですか?」

 

「あんたって、誰かに告白されたことってある?」

 

「告白ですか…。恥ずかしながらないですね…。」

 

「じゃあ、もし告白されたとして、そいつのことが気になったりするものかしら?」

 

「んー。やっぱり多少なりと気になってしまうのではないのですかね?」

 

「やっぱりそうよね。一花が嘘ついてたんだわ。」

 

私は昔のことを思い出し心の中で舌打ちをする。

やっぱり、一花は女狐ね。

私が心の中で一花に悪態をついていると、五月は不思議そうに私のことを眺めていた。

 

「一花がどうかしたんですか?」

 

「なんでもないわよ。それより、五月。あんたは、隠し事とかしてないでしょうね。」

 

「きゅ、急に何ですか??」

 

「ちょっと気になったから聞いただけよ。」

 

「人に言えないから隠し事なんですよ…。」

 

「それもそうね。」

 

「はい。でも、急にどうしたんですか?」

 

「私もよくわからないのよ。ずっと、ここら辺がもやもやするのよね。」

 

そう言い、胸のあたりを指さす。

 

「え??大丈夫ですか…?病院に行ったほうが…?」

 

「大丈夫よ。病気ではないわ。」

 

「なら、良いのですが…。」

 

「はあ。いっそのこと閉じ込めておけたらいいのに。」

 

私は自分でも気づかぬうちにとんでもない発言をしてしまっていた。

 

「二乃!?急になに言ってるんですか??」

 

案の定五月が驚いてパニックになっている。

私は、そのあと必死に五月を誤魔化し事なきを得た。

でも、ぽろっと無意識のうちに口から出るということは、本心なのであろう。

私はフー君のことを独り占めしたいのだ。

他の人を蹴落としてでも手に入れたい。

だから、そのためにも今回の試験で一番をとる。

そして、フー君のことを独り占めするのだ。

私はそれからたくさん勉強をして、とうとう試験当日を迎えたのであった。




次は三玖~。


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第三十八話 試験勉強~四葉の場合~

どうもかずめぐです!
前回の終わりに確か今回は三玖回って言った気がするんですけど、急遽四葉にしました!
三十九話で三玖にしたかったからです…w


 

 

私はもう自分の気持ちに嘘をつきたくない。

だから、ホワイトデーのご褒美をもらうために、今日も元気に勉強をする。

 

「上杉さんー!ここがわかりません!」

 

「ここは、場合分けをして解くんだ。」

 

「場合分けってなんですか??」

 

「お前な…。」

 

上杉さんが呆れた顔で私を見てくる。

 

「ししし。教えてくださいよー!」

 

「わかったから。落ち着け。」

 

上杉さんはしぶしぶ私に教えているが、私にとってこの時間は幸せ以外何物でもないのである。

自然と笑みがこぼれてきてしまう。

前の私ならこれだけで満足できていた。

しかし、この関係が続くことはないとわかった今、もう抑えきれない。

 

「上杉さん!少し休憩しませんか?」

 

数時間ぶっ通しで勉強をしていたため、私はそう提案する。

 

「そうだな。少し休憩にするか。」

 

そう言うと、上杉さんは椅子に座り自分の勉強を始めてしまった。

私は上杉さんと話したかったため無理やり話しかける。

 

「上杉さん~!お話ししましょうよ~!」

 

「俺は今勉強中だ。」

 

「ちょっとくらいいいじゃないですか!」

 

私はそう言い上杉さんの手を引っ張る。

 

「うわっ!わかった。わかったから離せ!」

 

上杉さんは椅子から引きずり落とされそうになったため、私の提案を飲んでくれた。

 

「で、なんの話をするんだ?」

 

「考えていませんでした!」

 

「よし。なら、俺は勉強に戻るぞ。」

 

「ちょっと、待ってください!えっと…。誰にするかもう決めたんですか??」

 

「は!?なんの話だよ。」

 

「だから~、私たちの中で誰にするのかもう決めたんですか?」

 

「そもそも、なぜお前らの誰か限定なんだ。」

 

「まさか!?他にできたんですか??」

 

「できてない。」

 

「よかったです。で、誰にしたんですか??」

 

「まだ、決めてない。そもそも、お前らじゃないかもしれないしな。」

 

「私たち以外を選ぶと、痛い目にあいますよ?」

 

「怖いわ。なんで俺がそんな目に合わなきゃいけないんだ。」

 

「上杉さんじゃなくて相手の女の人です。」

 

「なおさら怖いな。四葉。お前はそんなキャラじゃないだろ…。」

 

上杉さんが悲しそうな顔で私を見てくる。

 

「私はいつでも上杉さんの味方なので安心してください!でも、一花とかはそうはいかないでしょうが。」

 

「確かにお前の言う通りなんだよな…。」

 

「だから、私にしませんか??」

 

「…。お前、最近積極的すぎないか…。」

 

「にしし。遠慮してたらダメだって気付いたので!」

 

「そのまま気付かないでほしかったんだがな…。」

 

「気付いたものは仕方ないですよ!ですから、ホワイトデーのご褒美絶対貰いますからね!」

 

私は上杉さんにピースサインをしてそう宣言した。

 

「はあ。勝手にしろ。でも、その前にちゃんと勉強するぞ。」

 

「はい!頑張りましょう!」

 

私たちはそうして勉強を再開した。

家庭教師の時間が終わり、上杉さんが帰った後、私は自分の部屋で今日やったことの復習をしていた。

すると、誰かが扉をノックしたのである。

 

「四葉。入ってもいい?」

 

「一花?どうしたの?」

 

扉を開けて入ってきたのは、一花であった。

 

「ちょっと、話があるんだけどいいかな。」

 

「なに??」

 

「前に四葉、私に我慢しないでしたいことしてほしいって言ったよね。」

 

「うん。言ったよ。前の世界だった気がする。」

 

「うん。だから、私は私のやりたいようにする。」

 

「え?どういうこと?」

 

「四葉はフータロー君のこと好きなの?」

 

「…。一花…。」

 

「私は大好き。だから誰にもとられたくない。前は失敗しちゃったけど、今回は失敗するわけにはいかないの。」

 

「どうしてそれを私に…?」

 

「四葉もフータロー君に告白したんでしょ。だから、宣戦布告にきたの。」

 

「一花。前みたいなことはしないでね…。」

 

「…。私は何が何でも勝ってみせる…。」

 

一花はそう言うと部屋を後にした。

確かに、私は上杉さんのことが好き。

でも、それ以上に姉妹のことが大切なのだ。

一人、部屋に取り残された私は、何とも言えない気持ちになり、その気持ちを引きずったままテスト当日を迎えたのであった…。




五等分の花嫁アニメ二期おめでと!
二乃推しが増える気がするなw
おまけはいつかちゃんと書きます…w


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第三十九話 試験勉強~三玖の場合~

どうもかずめぐです!
ゴールデンウイークもとうとう終わってしまいましたね…
まあ、でもここからまた頑張っていきましょう!
そんなわけで、今日は三十九話と言うことで、三玖のお話です!


 

 

平等じゃなく公平にいこう。

フータローは私にそう言ってくれた。

私はその言葉にとても救われた気がする。

フータローは私の大好きな人。

でも、今は教師と生徒の関係なのでその先がない。

だから、今回のテストで一番をとってフータローに認めてもらうんだ。

 

「フータロー。もうこれ終わった。次のやつないの?」

 

「お前早いな。ほんとにわかってるのか?」

 

「うん。大丈夫。学校がない日は八時間。ある日は四時間勉強してるから。」

 

「すごいな…。なんでそこまで張り切ってるんだ?」

 

「秘密。」

 

「…。まさかお前もホワイトデーのご褒美狙いか…?」

 

「違う。ご褒美はあくまでおまけ。私はほかの姉妹とは違う。」

 

「…。なら、なおさら気になるんだが。」

 

「秘密だよ。」

 

「わかったよ…。ほら、これが次のやつだ。」

 

フータローは私に手作りの問題集を渡してくれた。

 

「ありがとう。」

 

「正直言って、それはテストの内容よりも難しいから、やらなくてもいいぞ。」

 

「んーん。せっかく作ってくれたんだからやる。これが解けるようになったらテストはへっちゃらってことでしょ。」

 

「まあ、そうなるな。」

 

私は問題集を開いて中身を見てみた。

すると、中にはフータローが言ってた通り、難しそうな問題ばかりが並んでいる。

 

「わからないとこがあったらちゃんと聞けよ。」

 

「うん。わかった。」

 

私は早速問題にとりかかったのであった。

 

 

 

……

一時間後。

 

「フータロー。これどういう意味。」

 

「いや、これはめちゃくちゃ有名な言い回しだろ。」

 

「知らない。私にはわからないから教えてよ。」

 

「月が綺麗ですねは、夏目漱石が言うにはI LOVE YOUだそうだ。」

 

「へー。I LOVE YOUって?。」

 

「は?愛してるだろ。」

 

「もう一回。」

 

「愛してるって…。三玖。お前わざとか。」

 

「ち、ちがうよ。よく聞こえなかっただけ…。誰も、フータローから愛してるなんて言ってほしくて聞いたわけじゃなくて、たまたま、これが本当にわからなかったから聞いたの。それと、これの返事は死んでもいいわが有名らしいよ。」

 

「お前、完璧に確信犯じゃねーか。」

 

「…。フータロー。月が綺麗だね。」

 

「部屋の中だから、月なんて見えん。さっさと、勉強しろ。」

 

「むぅ。フータローのいけず。」

 

「三玖。お前のさっきまでのやる気はどこに消えたんだ。」

 

私はようやくフータローに言われて、本来の目的を思い出した。

認めてもらいたくて、頑張ってるのに呆れさせては元も子もない。

 

「わかった。ちゃんとやる。」

 

私は気合を入れなおし、再び机に向きなおって勉強を始めた。

こうして私は、一日四時間以上、試験当日まで欠かさず勉強をし、試験に臨んだのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

~おまけ~三十五話のおまけの続き

 

「おい。五月。お前こないだはよくも逃げてくれたな。」

 

「な、何のことでしょうか…。」

 

「四葉!五月を取り押さえろ!」

 

「わかりました!!」

 

「四葉!離してください!どうして、上杉君に協力するのですか??」

 

「私はいつでも上杉さんの味方だからだよ!にしし。」

 

「そんな…。」

 

「よし。五月。お前にはたっぷり仕返しをさせてもらうからな。」

 

「な、何をする気ですか…。」

 

「とりあえず、このおまけの流れ的に、令和の目標でも聞こうか。」

 

「目標ですか…。あるにはありますが、言いたくありません。」

 

「言いたくないのか。なら、当ててやろうか?」

 

「上杉君にはわかりませんよ。」

 

「俺を甘く見るなよ。お前の令和の目標は、平成よりも多くのおいしいものを食べて、レビューを書くことだろ!」

 

「それもありますけど、本意は違います。」

 

「なに!?違うのか。」

 

「上杉さん!五月は上杉さんとりょ「四葉!!!!」

 

「どうしたの五月?」

 

「それ以上言ったら怒りますよ。」

 

「俺と何がしたいんだ??」

 

「何でもありません!もうこれで終わりにします!次回は四葉です。」

 




アニメ二期が始まるのが先か、この小説が終わるのが先か…


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第四十話 試験勉強~五月の場合~

どうもかずめぐです!
原作もようやく、進み始めたのでネタが考えやすくなったw


 

私には将来の夢がある。

そのためにも今は勉強を頑張らなくてはならない。

だから、ほかの姉妹に負けるようなのではだめなのだ。

 

「上杉君。答え合わせをしてもらってもいいですか?」

 

「わかった。ちょっと待ってろ。」

 

上杉君は私が解き終わった解答用紙に赤ペンを走らせる。

私はそれをぼーっと眺めていたが、ふとききたいことができたので話しかけてみた。

 

「上杉君。最近、二乃の様子が少しおかしいのですが、何か心当たりはありませんか?」

 

二乃という単語が出てきたとたん、彼は急にペンを走らせるのを止めた。

 

「さあ?ま、まったく心当たりがないな…。」

 

そんなことを言っているが、明らかに彼の目は泳いでいるし、動揺しているのが瞬時に分かった。

なんだか、隠し事の匂いがします。

 

「ほんとですか??二乃はボソッと、閉じ込めておけたらいいのにとか言ってましたよ。」

 

「嘘だろ…。今度から気を付けなければ…。」

 

「やはり何か心当たりがあるんですね。」

 

「なにもない。ほら、採点終わったぞ。」

 

彼は誤魔化すように、採点が終わった解答用紙を私に返してきた。

 

「むぅ。あとでちゃんと聞きますからね。」

 

「おしゃべりはこの問題の復習をしてからにしろ。少しレベルを上げただけで、めちゃくちゃミスが増えてるぞ。」

 

私は解答用紙を見てみると、確かに間違いだらけであった。

 

「…。これ今日中に終わりますか…?」

 

「さあな。だが、やらないよりはましだから、少しでも多くやるぞ。」

 

「わかりました…。」

 

その後も、復習をし続けたが、彼がいる間には終わりきらず、結局聞き出すことはできなかったのであった。

リビングで私がため息をついていると、一花が突然話しかけてきた。

 

「五月ちゃん。どうしたの?なにかあった?」

 

「一花…。あなたももう何かしてるんですか?」

 

「ははは。それは秘密だよ。それとも、五月ちゃんもとうとう参戦したのかな?」

 

「私はそんなことしてません。」

 

「そっか。でも、もし、参戦するのであれば、私は容赦しないよ。」

 

「それはどういう意味ですか。」

 

「いつかはわかると思うよ。」

 

一花はそう言うと自分の部屋へと戻っていってしまった。

一人リビングに取り残された私はまた溜息を吐く。

すると、四葉がお風呂から出てきたのであった。

 

「あれ?五月何してるの??」

 

「少し、ぼーっとしてました。」

 

「体調悪いの?」

 

「いえ、大丈夫ですよ。」

 

「そっか。ならよかった。」

 

「四葉。あなたも上杉君のことが好きなのですか?」

 

「えっ!?急にどうしたの??」

 

「ちょっと、聞きたくなりまして。」

 

「んー…。好きだよ…。恥ずかしい…。」

 

「そうですか。」

 

「そういう五月はどうなの??」

 

「私は…。好きです…。」

 

「そっか。じゃあ、私たちはライバルだね。」

 

「でも、私は姉妹の仲がこれで悪くなるのは嫌なんです…。」

 

「うん。それは私もだよ。上杉さんを好きなのと同じくらい姉妹のことも好きだから。にしし。」

 

四葉が私に微笑みかけてくる。

そんな四葉を見ていると、自然と涙が流れてきてしまった。

 

「ですが、姉妹の中には何が何でも手に入れようとしてる人もいて…。」

 

「一花や二乃だよね。一花に関しては前の時みたいに周りが見えなくなってるみたい。このまんまだと、姉妹の仲が悪くなるのは目に見えてるから、私と五月で協力して何とかしようよ!だから泣かないで。」

 

「なんとかって…。何か策はあるのですか…?」

 

「ししし。一応あるよ!」

 

「そうですか。わかりました。なら、私と四葉で何とかしてみせましょう。」

 

「おー!!」

 

「話を聞いてもらったら楽になりました。四葉。ありがとうございます。」

 

「んーん。もとはといえば私が悪いんだし…。五月もあんまり我慢しないでね。」

 

「はい。まずは、テストを頑張りましょう!」

 

「うん!!」

 

今はまだ伝えることはできないこの気持ちを、いつかは彼に伝えたい。

そして、姉妹とも仲良くしていきたい。

そう強く思ったのであったのである。

こうして、私は四葉のおかげで晴れやかな気持ちでテストを迎えることにができた。




次回はいよいよ結果発表!
結果は得意科目に関しては優遇したけど、それ以外は完全ランダム…w
誰が1位か予想してみよう!!


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第四十一話 試験結果

どうもかずめぐです!
久しぶりに語り手がフータローw


 

 

期末試験が終わってから、一週間後の放課後。

俺たちは、いつもの図書館に集合していた。

 

「まあ、お前らの勉強量からみて、赤点はさすがにないと思うんだが、どうだったんだ?」

 

俺は恐る恐る五つ子に聞く。

 

「赤点なんて今更とるわけないじゃない。ただ、その今回はそんなに勉強に集中できなかったから、勝ってる気がしないわ…。」

 

はじめは威勢がよかったがだんだんとしりすぼみに二乃が言った。

 

「そうなのか。じゃあ、まず二乃から得点を教えてくれ。」

 

「うっ…。私は国語が62点、数学48点、理科50点、社会64点、英語84点で合計は308点よ…。」

 

「そんなに、取れているのか。正直もっと低いと思っていた。」

 

俺は思った以上に二乃が点数をとれていたため、正直驚いた。

 

「でも、ほかの子のほうが絶対高いはずよ。」

 

二乃が悔しそうに言う。

 

「そうなのか?じゃあ、次は五月のを教えてくれ。」

 

「私は国語が52点、数学64点、理科99点、社会49点、英語が69点で合計333点でした。」

 

「やっぱり負けてたわ…。」

 

「さすが五月だな。よくやった。五月と三玖が同じような出来だったから、点数も似たようなものか?」

 

「うん。でも、私のほうが2点高い。合計335点だよ。」

 

「おー、三玖もさすがだな。まあ、一花は仕事しながらだったから仕方ないとして、今回の一番は三玖なのか?」

 

「上杉さん!!私のことを忘れないでくださいよ!」

 

うさ耳リボンが俺の目の前に現れた。

 

「四葉は聞くまでもないろ。」

 

「むう!私は一応314点も取ってるんですからね!ほめてくださいよ!」

 

「なんだと!?お前がそんなにとっているのか!?」

 

「嘘…。四葉にまで負けたの…。」

 

俺が驚いている隣で、二乃はものすごくショックを受けていた。

そんなこと気付きもせず、うさ耳リボンはしゃべり続ける。

 

「さすがに三玖には勝てませんけど、私だって頑張ってるんですからね!」

 

「…。よく頑張ったな。」

 

「にしし!」

 

俺が四葉をほめていると、急に一花が間に割り込んできた。

 

「フータロー君。ちょっと待って。私の個表を見てよ。」

 

そう言うと、一花は個表を手渡してきたのである。

俺は個表を受け取り、一花の成績を目にすると驚きのあまり声が出なくなってしまった。

そんな様子に、しびれを切らしたのか二乃が俺から個表を取り上げ、一花の成績を読み上げ始めたのである。

 

「なによ、もったいぶっちゃって。えーっと、国語が81点、数学86点、理科86点、社会76点、英語72点で、合計401点…。」

 

「フータロー君。わかったでしょ?勝手に決めつけちゃダメだって。」

 

「あぁ…、すまなかった…。」

 

俺はなんとか話せるようになったが、ほかの姉妹は驚きのあまり話せないみたいだ。

 

「今回はお姉さんの勝ちだね。フータロー君。ホワイトデーのご褒美、楽しみにしてるからね!」

 

そう言うと、一花は俺にウィンクをしてきた。

 

「一花…。どうして…。」

 

ようやく口を開けるようになったほかの姉妹は、ものすごく悔しそうな顔で一花を見ている。

そんな様子のほかの姉妹を無視して、一花はまた俺に話しかけてきた。

 

「フータロー君。ご褒美についてはまた今度連絡するね。」

 

「お手柔らかに頼む…。」

 

この時の俺は、一花が何を企んでいるか何もわかっていないのであった…。




今回は一花さんの勝ちでしたねw


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第四十二話 ホワイトデーのご褒美(1)

どうもかずめぐです!
今回と次回は主に一花回です!


 

三月十四日。

午前十時。

俺は一花に中野家に呼び出されていた。

 

「なんであんたがここにいんのよ。」

 

中野家に着くと、明らかに不機嫌そうな二乃に出迎えられた。

 

「一花にここに呼び出されたんだ。」

 

俺は不機嫌そうな二乃に急いで真実を告げる。

 

「まさか私たちに見せつけようっていう魂胆じゃないわよね。」

 

真実を告げたのに二乃はさらに不機嫌になってしまった。

 

「さすがに、それはないんじゃないか。ただの待ち合わせ場所だろ。」

 

俺はすかさずフォローを入れ二乃の機嫌を取る。

 

「ふん。どうかしらね。」

 

二乃が鼻を鳴らす。

俺はこの空気に耐えれなくなり、一花の居場所を聞くことにした。

 

「一花はどこにいるんだ?」

 

「三十分くらい前に出かけたわよ。」

 

「は??嘘だろ?」

 

「ほんとよ。嘘つくメリットがないじゃない。」

 

二乃の言ってることはどうやら本当らしい。

二乃と玄関に行って調べてみたが、一花の靴がなかったのである。

 

「一花のやつどこ行ったんだよ。」

 

「さあ。わからないわ。電話でもかけてみたら?」

 

「なるほど。その手があったか。」

 

俺は携帯を手に取り、電話をかけようとしたができなかったのである。

 

「…。充電するの忘れてた…。」

 

「はあ??あんたバカなの?しょうがないわね、私の携帯使いなさい。」

 

そう言うと、二乃は自分の携帯を手渡してきた。

 

「ありがとな。」

 

やけに二乃が協力的なのに一抹の不安を感じるが、ここは疑っていてもしょうがないので、素直に礼を言い、携帯を借りることにした。

しかし、一花に電話をかけても出ないのである。

 

「二乃…。出ないんだが…。」

 

「少し経ったら、かけなおしてみなさい。」

 

俺は二乃に言われた通り、数分経ってから、一花に電話かけることにした。

数分が経ち、一花に再び電話をかけようとしたら、突然ドアが開いたのである。

 

「ただいまー。フータロー君もう来てる??」

 

ドアから入ってきたのは、大きな買い物袋を持った一花であった。

 

「お前どこ行ってたんだよ。」

 

「あはは。ごめんごめん。思った以上に買い物が長引いちゃって。」

 

一花は舌をペロッと出しながら謝ってくる。

 

「なんの買い物してたのよ。」

 

俺が聞こうと思っていたことを、俺よりも早く二乃が不機嫌そうに聞いた。

 

「食材の買い出しだよ。」

 

「あんた、今日当番だったっけ。」

 

「んーん。今日は五月だったと思うよー。」

 

「なら、なんであんたが行ってるのよ。」

 

「これは、家の買い出しじゃなくて、個人のための買い出しだから。」

 

「はあ?どういうことよ。」

 

「フータロー君に手作り料理を食べさせてあげます。」

 

「まさか、あんた…。」

 

「うん。今日はお家デートだよ。」

 

「嘘だろ…。」

 

俺は一花から放たれた衝撃的な一言に、言葉を詰まらせる。

 

「やっぱり、私の言ったとおりだったじゃない…。」

 

二乃はそう言いながら俺のことをにらんできた。

 

「一花。今からでも外に遊びに行かないか?」

 

俺は苦肉の策として外で遊ぶように促してみる。

 

「んーん。もう決めたから。ちなみに、フータロー君。今日お泊りだからね。」

 

「「は!?」」

 

俺と二乃は同時に驚きの声を上げた。

 

「そんな急に決められても困るんだが…。」

 

「そ、そうよ。さすがに急すぎるわよ。」

 

俺たちは何とか最悪の事態から逃れるため一花を説得するが、どうやら無意味みたいだ。

 

「大丈夫だよ。もうらいはちゃんにも連絡してあるから。」

 

もう彼女は止まらない。

 

「今日は目一杯楽しもうね。」

 

一花そう言うとウィンクをしてきた。

今日はまだ始まったばかりである…。




次回お楽しみに!


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第四十三話 ホワイトデーのご褒美(2)

どうもかずめぐです!
今回もホワイトデーのご褒美編です!



 

三月十四日の昼下がり。

俺はあまりに奇妙な状況に身を置かれ、今にも胃に穴が開きそうだ。

台所には上機嫌そうに鼻歌を歌いながら、俺に昼飯を作っている一花がいる。

そして、リビングのほうにはこちらをずっと監視している二乃がいるのだ。

俺はその二人の間くらいにあるテーブルの前に座らされているため、板挟み状態である。

 

「フータロー君。もうすぐできるから待っててね。」

 

「あぁ。お前のご褒美なのに作らせて悪いな…。」

 

「これが私にとってご褒美だから気にしないで。」

 

一花は笑いながらそんなことを言ってくる。

笑っている一花に対して二乃の顔はどんどん恐ろしいことになっていることに一花は気付いてるのだろうか…。

俺は神経をすり減らしどんどん食欲がなくなっていく。

しかし、黙っててもなにもいいことはないので、とりあえず一花に気になることを聞いてみた。

 

「なあ、一花。二乃以外のやつはどこに行ったんだ?」

 

「バイトだよ。」

 

「バイト??なんだそれ。初めて聞いたぞ。」

 

「あっ、これ隠してるんだった…。」

 

一花はしまったという顔をしている。

 

「いつからバイトなんてしてるんだ。」

 

「試験が終わった後からだから、ほんの最近だよ。」

 

「勉強に支障がないといいんだが…。それに、なぜバイトなんて。金にでも困ってるのか?」

 

「そういうわけじゃないと思うよ。それぞれ、ちゃんとやりたいことがあるからしてるんだよ。」

 

「まあ、そういうことなら仕方ないか。俺はお前らの保護者ではないからこれ以上は言わないことにしよう。」

 

「そう言ってもらえると助かるよ。」

 

「あぁ、でも、勉強はおろそかにするなと伝えておいてくれ。」

 

「はーい。」

 

一花はそう言うと、黙って料理をし始めた。

何か難しい事でもしているのだろうか。

とにかく、話しかけないほうがよさそうな空気だったので、俺は二乃に話しかけた。

 

「二乃はバイトしてないのか?」

 

「してるけど、今日は休みなのよ。でも、こんなことになるならシフトいれればよかったわ。」

 

「それは、俺のせいではないんだが…。」

 

二乃に嫌味を言われ、俺の胃が悲鳴を上げる。

 

「最悪な休日よ。」

 

二乃は心底嫌な顔をしていった。

 

「なら、でかけたらどうだ?」

 

「いやよ。こんなことが行われてるなんて知っちゃったらほっとけるわけないでしょ。特にあの女狐だけは絶対にほっとけないわよ。」

 

「もー。女狐呼ばわりなんてひどいなー。」

 

いつのまにか一花が俺の背後にいる。

一花はケチャップでハートが描かれたオムライスが乗った皿を持っていた。

どうやら、料理は完成したらしい。

 

「一花。もう作り終わったのか?」

 

俺は話をそらすために、一花に話しかけた。

しかし、俺の努力は二乃の一言によって無意味なものとなってしまった。

 

「女狐に女狐と言ってなにが悪いのよ。」

 

「二乃だけには言われたくないな。」

 

「はあ?私のどこが女狐なのよ。」

 

「まあ、今はフータロー君との時間だから。二乃とは後でね。」

 

一花はそう言うと俺の目の前に来た。

一花に軽くあしらわれた二乃は今にも怒りが爆発しそうな顔をしている。

俺は二乃に悟られないように、一花にこっそりと耳打ちをした。

 

「一花。なんでわざわざ、二乃を怒らすようなことを言ったんだ?普段のお前なら、もっと違う言い方ができただろ。」

 

「二乃がせっかくの時間を邪魔するから少し意地悪したくなっちゃって。」

 

一花は下をペロッと出し、謝罪を口にする。

 

「じゃあ、今からでもいいから二乃に謝ったらどうだ??」

 

「むう。女狐って言われたからいやかなー。」

 

「そこは、大人になってくれよ…。」

 

「私まだ子供だもん。」

 

「頼むよ。」

 

「もー、仕方ないなー。」

 

「ありがとな。」

 

一花は立ち上がり、二乃の前に移動した。

俺はやっとこの空気が少しはよくなると思って安心していたが、一花から放たれた言葉により、俺は再び地獄に突き落とされたのであった。

 

「二乃。私が試験で勝ってフータロー君のこと独り占めしちゃってごめんね。」

 

「あんたのそういうとこが女狐って言ってるのよ!」

 

案の定、一花の言葉で二乃は再びめちゃくちゃ怒り出したのである。

正直もう帰りたい…。

しかし、この願いは叶うことなく、俺は地獄に居続けなくてはならないのであった…。




次回で一応終わらせるつもりだけど、もう一話続く可能性もある。


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第四十四話 ホワイトデーのご褒美(3)

どうもかずめぐです!
長かったホワイトデーのご褒美も今回で終わりです!
今回は少し過激かも。


 

三月十四日、午後十時過ぎ。

俺は中野家で風呂に入っている。

正直、昼からの記憶が曖昧だ。

確か、あの後も、一花が二乃をからかい、二乃がいちいちそれに反応する。

それの繰り返しだった。

はたからみれば、ただの姉妹のじゃれ合いなんだが、そこに俺が絡んでいるところが余計にタチが悪い。

さらに、そこにほかの姉妹まで帰ってきて、もうお祭り騒ぎだ。

俺はなすすべなく、自分の胃がキリキリ痛むのに耐えていた。

そして、今に至る。

もうこの後はさすがに寝るだけだと思うんだが、寝ることが最後にして一番の難関なのだ。

一花のことだから自分の部屋で一緒にとか言い出しそうである。

そしたら、またお祭り騒ぎになるだろう。

俺は深いため息をつき、湯船を眺める。

すると、突然扉の向こうから、一花が声をかけてきた。

 

「フータロー君。湯加減はどう?」

 

「全然問題ない。」

 

「そっか。ならよかった。お風呂から出たら私の部屋に来てね。」

 

「えっ。ちょ、一花。」

 

一花が何か不穏なことを口走った気がしたため、一花にもう一度聞き返そうとしたが、彼女はすでに洗面所にいなかった。

やられてしまった。

聞き間違いでなければ一番最悪な事態である。

俺は再び、大きなため息をつき、湯船を眺めるのであった。

しばらくして、俺は風呂から出た。

なかなか、今から迎える最悪の事態に決心がつかず、気付けばもう十一時を過ぎていたのである。

俺はパジャマに着替え、頭を乾かし、リビングに向かった。

幸運なことにリビングには誰もおらず、俺はすんなりと一花の部屋に行くことができたのだった。

俺はノックをし一花の部屋へと入る。

中の電気は消えていたが、窓からさすかすかな月明かりのおかげで、部屋の中を見ることができた。

なんと、きれいに片付いているのである。

俺は驚きつつも一花がいるであろうベッドの横まで来た。

しかし、一花はピクリとも動かない。

 

「おい。一花。寝てんのか?」

 

返事がなかった代わりに、俺は一花に腕を引っ張られ、無理やり布団の中に引きづりこまれた。

「おい!なにすんだよ!?」

 

「もー。フータロー君。遅いから待ちくたびれちゃったじゃん。」

 

一花は頬を膨らませている。

俺はこいつが服を着ていないことに気付いた。

しかし、それで動揺していることを悟られては一花の思うつぼなので、俺は冷静なふりをして答える。

 

「風呂が気持ちよくてな。すこし、長くはいってたんだ。」

 

「え。風呂で気持ちよく??フータロー君。人の家のお風呂でナニしてたの…。」

 

「タチの悪い聞き間違いをするな。」

 

「えっ!?立ちの悪い?フータロー君、大丈夫…?」

 

こいつはだめだ。

壊れてやがる。

俺はこの話題は無視することにして、次の話題を振った。

 

「一花。俺はどこで寝ればいいんだ?」

 

「ここで私とねればいいんだよ。」

 

一花が言うとなんだか別の意味に聞こえる気がするが、気のせいであろう。

 

「ここって、このベッドでか?」

 

「うん。そうだよ?」

 

「さすがにそれはまずくないか?」

 

「まずくないよ。それと、これはご褒美なんだからね。」

 

「うっ、わかった。寝るだけだからな。」

 

俺はそう言うと一花に背を向け、寝る態勢にはいる。

 

「フータロー君。なんでそっち向いちゃうの。こっち向いてよ。」

 

一花がぴったりと俺の背中にくっついってくる。

もちろん、五つ子最大の武器であるあれも背中に押し付けられている。

 

「一花。俺は眠いんだ。もう少し離れてくれないか。」

 

「むう。どうして、フータロー君は後ろにこんな美少女がいるのに何もしないのかな?」

 

「俺は紳士だからだ。」

 

自分で言って恥ずかしくなったが、一花を黙らせるため俺は恥ずかしさに耐えた。

 

「まさか、フータロー君。ほんとにお風呂でナニしてたの??それで今が賢者タイムというわけですか。」

 

恥ずかしさに耐えたも関わらず、一花はとんでもない解釈をしていたため、努力が無駄になってしまった。

 

「俺はそんなことはしない。時間の無駄だからな。」

 

もちろん嘘である。

俺だって年頃の男の子だ。

たまにはする。

 

「えっ!?フータロー君してないの??大丈夫?」

 

「大丈夫だ。」

 

「すごいね。私なんてしょっちゅうしてるよ。」

 

一花からとてつもない爆弾が投下された。

 

「どうしてそれを俺に言った…?」

 

俺はあまりに衝撃的なことを告白されたため動揺を隠しきれずにいる。

 

「えっ。フータロー君にはばれてると思ったから。えへへ。」

 

「全く知らなかったんだが…。」

 

「えっ!?そうなの??冬休み最後の日にばれてるのかと思ったよ!お姉さんの勘違いだったのか!あはは、恥ずかしいね…。」

 

あの、布団の中でもぞもぞしていたのは一人でナニをしてたからなのか…。

 

俺は今更知りたくもない事実を知り、ショックを受ける。

 

「いつも、フータロー君のことを思いながらしてるんだよ。」

 

「なぜその話を続ける!?恥ずかしいんじゃなかったのか??」

 

「あはは。なんか、吹っ切れたから、この際話しちゃおうかと。」

 

「やめてくれ…。なんともいえない気分なんだ…。」

 

「えっ!?フータロー君興奮してるの??えっち~。」

 

「ちょっと、黙ってくれ。」

 

俺は一花の口を手でふさいだが、一花はふさいだ手を甘噛みしてきたのである。

 

「お前、何してんだよ!?」

 

「ねぇ、お姉さん、もう我慢できないみたい。」

一花は頬を上気させ目がとろんとしている。

俺はこの顔をほかの姉妹で見たことがある。

そう、発情した顔だ。

 

「一花。深呼吸しろ。少し落ち着け。」

 

「落ち着けないよ。ねぇ、フータロー君。」

 

「な、なんだ??」

 

一花の唇と俺の耳が触れるか触れないかくらいの距離で一花はささやいた。

 

「私と楽しいことしよ。」

 

その瞬間、勢いよく部屋のドアが開いたのである。

 

「一花!?何をしてるのですか??」

 

「あんた、何しようとしてんのよ!?」

 

部屋に入ってきていきなり怒鳴り散らしてきたのは、二乃と五月であった。

 

「もー、私のご褒美なんだから邪魔しないでよ。」

 

「もう、そのご褒美の時間は終わりましたよ。今日は三月十五日です。」

 

「ほら、あんたもさっさと部屋から出なさい。」

 

二乃はそう言うと、俺の腕を引っ張り、部屋から引きずり出した。

 

「はあ。フータロー君。続きはまた今度ね。」

 

一花はそう言うと布団をかぶり寝っ転がってしまった。

一花の部屋から引きずり出された俺はリビングに行くとなんとそこには三玖と四葉もいたのである。

 

「お前らこんな時間に何してんだ??」

 

「フータローこそナニしてたの。」

 

「そうですよ。上杉さん。ナニしてたのですか。」

 

心なしか二人とも怒っているように見える。

まさか、全部聞いてたのか…。

 

「上杉君。今から洗いざらいすべてはいてもらいますからね。」

 

「えっ?何を?」

 

「その、ナニをよ。」

 

「俺は何もしていないんだが…。」

 

「言い訳は後で聞きます。」

 

こうして、一花以外の姉妹によって俺は夜通し尋問をされるのであった…

 




次回は春休み回かな。


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第四十五話 ミックスパラダイス(1)

どうもかずめぐです!
先日は風邪をひてしまい、あげることができずすいませんでした…。
今日から、春休みの旅行編です!


地獄のホワイトデーからしばらく経ち、春休みを迎えていた。

どうやら運命の力は強力いらしい。

俺は前の世界同様、同じ場所に家族で旅行に来ているのだ。

今回、俺は買い物に行かず、この旅行を避けようとしたのだが、意味がなかった。

なんと、らいはが申し込んでいたのである。

そして、運命のいたずらのごとく当たってしまったのだ。

 

「お兄ちゃんも早くおいでよー!」

 

鐘のほうにいるらいはが俺のことをせかす。

 

「おい!風太郎!お前も早く来いよ!絶景だぞ!」

 

このみっともなく子供みたい騒いでるのは俺の親父だ。

俺は二人に急かされ、早足で鐘の方へと向かう。

 

「お兄ちゃん!すごくいい景色だね!」

 

「あぁ、そうだな。確かにいい景色だ。」

 

俺はらいはの言葉に相槌を打つ。

正直言って、今は景色などと話してる場合ではないのだ。

前の世界と同じなら、もうすぐあいつらが…。

そんなことを考えていると、何やら下の方から誰かが来る音がする。

姿を現したそいつは、やはり俺が考えていた人物であった。

 

「やっぱり、上杉さんもいたんですね!」

 

あれ?

なにかがおかしい。

目の前にいるやつは五月の格好をしているはずなのに、口調は四葉だ。

 

「お前、なんで五月の格好してるんだ?」

 

「はっ!!変装してるの忘れてました…。」

「あー。前に言ってたみんな同じ恰好するって話のやつか。」

 

「違うよ。フータロー君。」

 

俺と四葉が話しているとその間に一花が割り込んできた。

 

「違うって…。お前はなんで元の姿のまんまなんだ?」

 

「あはは。まあ、色々訳があるんだよ。ちなみに私は一花じゃないから。」

 

「は??お前なに言ってんだよ。」

 

「一花の言う通りよ。訳は後で説明するから、今はおとなしくしてなさい。」

 

二乃が話に割り込んできた。

 

「二乃。どういうことだよ。」

 

「私は二乃じゃないし、今はおとなしくしてなさいって言ってるでしょ。」

 

俺と二乃(?)がそんなやり取りをしてると、下からさらに誰かが来た。

下からは、三玖と四葉(?)と俺が最も会いたくなかった人物が来たのである。

 

「やはり、旅にはトラブルがつきものだね。」

 

そう、俺が会いたくなかった人物はこいつらの父親である。

 

「ははは。こんなとこで会うなんて偶然ですねお父さん!いつも娘さんたちにお世話になってます!」

 

俺はまだこの世界ではこいつらの父親に対して何もやらかしてはいないので、良好な関係を築こうと努力する。

 

「君が上杉風太郎君だね。娘たちがいつも世話になっているよ。しかし、今は家族水入らずの時間だ。どっかいってくれないかね。あと、君にお父さんと呼ばれる筋合いはないんだが。」

 

「あはは。そうですよね!失礼いたしました!」

 

俺はそう言い、この場から立ち去る。

旅館のほうに行き、らいはたちと合流した。

 

「遅かったじゃねーか。知り合いにでも会ったのか?」

 

「ま、まあな…。」

 

「もしかして、五月さんたち??」

 

「なんでそう思うんだ?」

 

「この旅行の応募を五月さんと一緒にしたから!」

 

「なるほどそういうことか。」

 

「うん!それで、五月さんたちも来てるの??」

 

「あぁ…。来てるぞ。」

 

「やったー!後で遊んでもらお!」

 

「あんまし、家族水入らずの時間を邪魔するなよ。」

 

「はーい!」

 

こうして俺たちは、旅館の部屋へと向かったのであった。

俺は部屋に着き、三十分ほど経ってから携帯を開き五月に電話をした。

こういうこともあろうかと、今回はちゃんと充電してきたのである。

 

「もしもし?五月か?」

 

「はい。そうですが?」

 

「今から少し話したいことがあるんだが、会えるか?」

 

「今なら父もおじいちゃんのところに行ってますので、会えますよ。」

 

「なら、旅館の中庭でいいか?」

 

「いえ、私たちの部屋に来てください。」

 

「お前らの部屋??わかった。」

 

俺は電話を切り、前にあいつらが止まっていた部屋へと向かった。

部屋の前に着き、俺は扉を開ける。

 

「五月。来たぞ。」

 

部屋の中に入ると、いつもの格好をした五姉妹がいた。

 

「フータロー。そこに座って。」

 

「ん。あぁ。」

 

俺は三玖に指定された場所に座った。

 

「それで今回はどういうわけなんだ?」

 

俺は単刀直入に先ほどあったことを聞く。

 

「フータロー君。驚かないで聞いてね?」

 

「わかった。」

 

「今回は、みんながそれぞれ違う人に変装してるのよ。」

 

「は!?どういうことだよ??」

 

「上杉さんに誰か当ててほしいんですよ!」

 

「なんのために…。」

 

「フータローなら、それはもうわかってるでしょ。」

 

正直全く分からない…。

前回の三玖の時だって理由はわからなかったのだ…。

しかし、そんなことを口に出すと何されるかわからないのでとりあえず黙ることにした。

 

「お前らの、おじいちゃんは大丈夫なのか…?」

 

「大丈夫ですよ。私たちが変装するので誰が誰だか当ててみてと言ったら、すごい乗り気でしたので。」

 

「なんだと…。つまり、お前は五月の格好をしてるが、五月じゃないんだな。」

 

「そういうことです。」

 

「ちなみに、ずっと同じ格好をしてるわけじゃなくて、ちょくちょく変装してる人を変えるからね。」

 

「つまり、その場で当てないといけないというわけなのか…。」

 

「そういうことね。まあ、せいぜい頑張りなさいよ。」

 

「上杉さん!本物の五つ子ゲームのスタートです!」

 

俺はまだこの時このゲームのことをなめていた。

これが悪夢の始まりだとも知らずに…。




みんなも一緒に誰が誰だか当ててみよう!


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第四十六話 ミックスパラダイス(2)

どうもかずめぐです!
ややこしい設定にしたため自分でも困惑してます…w


俺は五つ子ゲームを挑まれてから、まず五月の格好をしているやつを連れ出した。

 

「お前四葉だろ。」

 

「う、上杉さん…。な、なんのことですか~?」

 

明らかに目の前にいるやつは動揺している。

 

「そもそも、俺の呼び方を間違えてる時点で、詰めが甘すぎる。」

 

「はっ!!やってしまいました…。」

 

「よし、これで先ず一人はクリアだ。お前だけは楽で助かった。」

 

「うー…。全然嬉しくないですよー…。」

 

「なあ、四葉。なんでこんなことしてるんだ?」

 

「みんな上杉さんに自分を当ててほしいんですよ。」

 

「なんでだよ。」

 

「私たちの見分け方は昔、お母さんが言ってました。愛があれば見分けられると。」

 

「あー、あのトンデモ理論か…。」

 

「はい。ですので、みんな見分けてほしいのですよ!」

 

「つまり、見分けてもらえたら愛されてると解釈してるわけか?」

 

「その通りです!」

 

「あほらしい。そんなのに付き合ってられるか。俺は自分の部屋に戻るぞ。」

 

「ちょ!!上杉さん!!」

 

俺は四葉に呼ばれた気がしたが、かまわず自分の部屋に戻る。

部屋に戻ると親父とらいはが何やら話していた。

 

「あ!お兄ちゃん、ちょうどいいところに来たね!少し旅館の周りを散策しようよ!」

 

「散策?わかった。行くか。」

 

「やったー!お父さんも行こうよ!」

 

「俺はすまないが仕事の電話をしなきゃいけないから、風太郎に任してもいいか?」

 

「あぁ、全然かまわないぞ。」

 

「わかった!お仕事頑張ってね!」

 

「おう!気を付けて行ってくるんだぞ!」

 

「うん!」

 

こうして俺とらいはは散策に出かけた。

 

「ねえねえ!ここの景色すごくきれいだよ!」

 

「すごいな…。」

 

目の前には確かに息をのむほどきれいな景色が広がっている。

前に来たときは、色々と必死だったため、周りの景色なんて全く見ていなかったのである。

そのため、目の前にある景色に俺は感動を覚えた。

俺が景色に見惚れていると、らいはが何かに気付いた。

 

「お兄ちゃん。前から誰か来るよ?」

 

俺はらいはに指摘され前の方を見る。

すると、前からうさ耳リボンを付けた少女が歩いてきた。

 

「わお!上杉さんとらいはちゃん!どうしてこんなところにいるんですか??」

 

「お前こそ何してんだよ。」

 

「私は元気が有り余ってるので散歩をしてました!」

 

「いや、お前四葉じゃないからそんな体力ないだろ。」

 

「上杉さん?何を言ってるのですか??」

 

四葉(?)が首をかしげてとぼける。

 

「そうだよ、お兄ちゃん!何言ってるの??四葉さんは四葉さんだよ!」

 

「さすがらいはちゃん!いい子ですね!」

 

「うん!四葉さんも一緒に散策しない?」

 

「散策ですか??いいですよ!」

 

「やったー!」

 

なにやら、らいはと四葉(?)で勝手に話が進んでいる。

 

「お兄ちゃん!四葉さん!早く行こ!」

 

らいははそう言うと小走りに先に行ってしまった。

取り残された俺は隣にいる四葉(?)に話しかける。

 

「結局、お前らの五つ子ゲームに付き合わされるのか…。」

 

「上杉さんに当ててほしいんです。」

 

「本物の四葉もそんなことを言ってたな。当てられたらいい事でもあるのか?」

 

「単純に嬉しいんですよ!好きな人に見分けてもらうというのは!」

 

「そんなもんなのか。」

 

「はい!」

 

とりあえず、この四葉(?)は一花、二乃、三玖の誰かであろう。

 

「仕方ない。受けて立ってやるか。どうせ、強制的に参加させられるなら、さっさと当てて、終わらせるか。」

 

「はい!頑張ってくださいね!」

 

こうしてようやく五つ子ゲームが本当にスタートしたのであった。




この後どうしよ…


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第四十七話 ミックスパラダイス(3)

どうもかずめぐです!
最近、テンポが悪くてごめんなさい。


 

「お兄ちゃん!四葉さん!早くー!」

 

らいはが前の方で俺らのことをせかす。

 

「あいつなんであんなに元気なんだ…。」

 

俺たちはかれこれ二時間以上歩き回っているのだ。

体力はとうに限界を迎えている。

 

「若いからですよ…。」

 

どうやら、隣にいる四葉(?)もばてているようだ。

ばて具合で誰か見分けようとしたが、さすがにここまで歩き回ると、本物の四葉以外全員ばてるであろうから、この方法では見分けがつかない。

 

「そういえばこれ、外すとペナルティーとかあるのか?」

 

「騙せた回数分上杉さんを好きにできるんですよ!」

 

「俺の権利はどこに消えた。」

 

「それとも、騙された回数×10000円の減給がいいですか?」

 

「おい。それはさすがに無理なんじゃないか?」

 

「大丈夫です!お父さんには許可をとってあります!」

 

「嘘だろ…。」

 

「家庭教師なら生徒の判別くらいつけれないと任せられないと言ってました!」

 

「確かにごもっともだ…。」

 

「ですが、さすがに減給はかわいそうなので好きにできる権利にしたんですよ!」

 

屈託のない笑顔で(?)が言ってくる。

こういうところも本物の四葉そっくりだ。

 

「これって、お前らにとってはどっちに転んでもいい事なんじゃないのか?」

 

「まあそうなんですけど、やっぱり当ててほしいですよ!」

 

「やっぱり、やりたくなくなってきたんだが…。」

 

「えー!!じゃあ、こうしましょう!当てることができたらあてた人を好きにしていいという風に!」

 

「別に何もしたくないんだが。」

 

「むう。上杉さんのいけず~!!普通の男子高校生なら喜ぶはずですよ!」

 

「悪かったな普通じゃなくて。じゃあ、こうしよう。」

 

「はい??なんですか?」

 

「当てられたやつは、四月にある模試まで余計なことはせずに勉強に専念してもらおうか。」

 

「うっ…。でも、それでやる気になっていただけるのなら…。」

 

「よし、これで交渉成立だな。ほかの姉妹にも伝えておいてくれ。」

 

「はい!では、さっそく私が誰なのか当ててください!」

 

「いや、無理だろ。」

 

「どうしてですか??」

 

「全く分からないからだ。」

 

「むう。一日一回は絶対に聞きますからね!」

 

「鬼畜か。」

 

俺はむくれている四葉(?)を無視して、らいはのもとへと向かった。

らいはは誰かと話しているようで、話し声が聞こえる。

とっても嫌な予感がするが、俺はらいはと話している人物を確認した。

らいはと話していたのは二乃(?)であった。

 

「お前こんなとこで何してんだよ。」

 

「散歩してただけよ。らいはちゃんと会ったのも偶然なんだから。」

 

「そうだよ、お兄ちゃん!二乃さんがそこで私のこと待ってただけだよ!」

 

らいはが無邪気にそんなことを言う。

それを聞いた俺は二乃(?)のことをじとーっと見た。

 

「おい。何が偶然だって?」

 

俺が二乃(?)に詰め寄っていると、後ろから四葉(?)がきた。

 

「上杉さーん!置いていかないでくださいよー!おや、前にいるのは二乃ですか??」

 

「なんだ、四葉もいたのね。」

 

「二乃は何してるの?」

 

「散歩よ。」

 

「へー、そうなんだー!そうだ二乃!」

 

四葉は二乃の方に駆け寄り何やら耳打ちをし始めた。

 

「おい、お前ら。何話してるんだ?」

 

俺は何か危険なことを企んでいるだろうと考え、声をかける。

 

「さっき、上杉さんと決めた五つ子ゲームのルールを話してたのです!」

 

「なるほど。だが、なぜ、こっそり話す必要があったんだ?」

 

「にしし。雰囲気ですよ。雰囲気。」

 

「わけわからん。」

 

しかし、こうしてあらためてみると二乃(?)も二乃にしか見えない。

ほんとに当てれるのだろうか…。

 

「なあ、お前ら姉妹は誰が誰だかわかるんだよな?」

 

「当たり前じゃない。いまさら何言ってんのよ。」

 

喋り方まで二乃そっくりだ。

 

「どうやって見分けてるんだ?」

 

「顔を見れば一発よ。」

 

「全然わからん…。」

 

「私のこともわからないの?」

 

「あぁ。まったくわからない。」

 

「やっぱり、ダメね。こいつには無理よ。」

 

「二乃~、諦めるには早いよー!」

 

「じゃあ、ここで当ててもらいましょ。」

 

「そうだね。最初の回答をしてもらおうか!」

 

何やら姉妹で話が進んでいる。

最近、よく会話においていかれるな。

そんなことを考えていると、二乃(?)が俺の方に一歩出てきた。

 

「私が誰だか言ってみなさい。」

 

「無理だろ。」

 

「いいから。初回はサービスとして罰はなしにしてあげるわ。」

 

「それなら…。」

 

俺は考える。

目の前にいるやつが誰なのかを。

四葉ではないことは確かだ。

そして、本人の二乃でもないだろう。

となると…

 

「三玖か?」

 

「残念。ハズレよ。」

 

「くっそ。やっぱり無理だろ。」

 

俺は悔しかったのでもう一度しっかり二乃(?)の顔を見た。

しかし、誰だか全くわからない。

諦めようと顔をそらそうとした瞬間、うしろかららいはが急に抱き着いてきた。

 

「お兄ちゃん!遅いよー!」

 

「うわっ!」

 

俺は勢い余り二乃(?)にぶつかって、お互い抱き合う形で倒れてしまった。

 

「ちょ!!フータロー君!それは!」

 

二乃(?)は叫びながら俺のことを押しのけ急いで立ち上がる。

 

「変態!四葉、こんな奴はほっといてもう行きましょ。」

 

「う、うん。」

 

そう言うと、二乃(?)と四葉(?)は足早にどこかに行ってしまったのである。

取り残された俺は先ほどの言動に何か違和感を感じていた。

 

「お兄ちゃん大丈夫?」

 

俺が倒れたままでいると、らいはが心配そうに声をかけてきた。

 

「何とか大丈夫だ。もう、あんなことはするなよ。」

 

「うん。二乃さんと四葉さんどこかいちゃったね。」

 

「あぁ。旅館に帰ったんだろ。俺たちもそろそろ帰るか?」

 

「うん!」

 

こうして俺たちも旅館に帰ったのである。

旅館に帰ってる途中、俺はあることに気付いた。

さっきの、二乃(?)は驚きのあまり、俺のことを普段の呼び方で呼んでいたのである。

フータロー君。

彼女はそう呼んでいた。

つまり、一花だ。

なるほど、彼女たちが驚いて普段のしゃべり方に戻るようなことをすればいいのか。

なんとなく、攻略方法が分かってきた。

俺はとりあえず二乃(?)の正体を暴くべく、彼女を探したが、その日は彼女だけに限らず、誰とも会えなかったのであった…。

 




姉妹は姉妹で作戦会議?
当ててほしいんじゃなかったの??


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第四十八話 ミックスパラダイス(4)

どうもかずめぐです!
今回ようやく話が動いたかな…w


 

旅行二日目の朝。

俺は眠くて仕方ないので、布団にくるまっている。

昨夜、一花に電話をして答えを確認しようとしたが彼女は電話に出なかった。

なので、折り返し電話が来るまでずっと起きて待っていたのである。

しかし、今になっても何の音沙汰もない。

 

「お兄ちゃん起きて。朝だよ。」

 

らいはが俺のことを起こしてきた。

 

「このまま寝かせてくれ。眠いんだ。」

 

「もー!お父さん!お兄ちゃんが起きない!」

 

「ガハハハッ!なんだ風太郎!ワクワクして眠れなかったのか?」

 

親父のテンションが朝から高くて鬱陶しい。

 

「ちげーよ。普通に眠いだけだ。」

 

「そうか。なら、俺とらいはは散策に行ってくる。」

 

「散策って…。昨日もあれほどしてたじゃねーか…。」

 

「今日は昨日とは別のとこに行くんだよ!」

 

「そ、そうか…。」

 

こうして、親父とらいはは散策に出かけてしまった。

部屋に取り残された俺は惰眠をむさぼるため、再び瞼を閉じる。

あと少しで眠りそうになっていると、突然携帯が鳴り始めた。

少しイラつく気持ちを抑えて俺は携帯を手に取る。

ほんとは無視してもよかったのだが、一花かもしれないので一応電話の相手を確認した。

中野五月。

ディスプレイにはそう表示されていた。

俺は携帯をそっと置き、再び眠りにつこうとするが、留守番サービスを設定していなかったため、携帯はいつまでもなり続けている。

いくら待っても鳴りやまないので、俺は仕方なく電話にでた。

 

「もしもし。なんの用だ?」

 

「上杉君。あなた、携帯を一回手に取った後、私からの着信だったのでそっと置きなおしましたね。」

 

「そんなことはしてない。」

 

どっからか見られているのであろうか…?

俺は不安になり周りを確認するが、五月の姿は見当たらない。

 

「まあ、いいでしょう。上杉君。あなたに話したいことがるので、この後会えますか?」

 

「話したいこと?わかった。場所は?」

 

「誓いの鐘のところに来てください。」

 

「誓いの鐘?あぁ、あそこか。わかった。」

 

「では、また後程。」

 

俺は電話を切り、身支度を整え、鐘のところに向かう。

鐘のところに着くと、そこにはすでに五月(?)がたっていた。

 

「悪い。待たせたな。」

 

「私も今来たところです。」

 

俺はあることを確認するため五月の顔をじっと見る。

すると、五月は少し恥ずかしそうに下を向いてしまった。

 

「私の顔に何かついてますか…?」

 

「いや、お前は本物の五月なのかと思ってな。本物なのか?」

 

「それがあなたの答えでいいですか?」

 

「いや、やっぱりもう少し考えさせてくれ。」

 

俺は自信がないため解答を取り消した。

昨日は四葉が五月に変装していたが、今はどうやら違うらしい。

明らかに五月の再現度が高くなっている。

俺は今はまだわかりそうになかったので、まず五月(?)の話を聞くことにした。

 

「で、話って何なんだ?」

 

「誰が誰に変装するかを一日ごとに変えることにしました。」

 

「やっぱりそうなのか。」

 

ということは、どうやら一花を取り逃がしてしまったらしい。

俺は心の中で舌打ちをする。

しかし、ここで文句を言っても仕方ないので、俺は五月(?)と会話を続けた。

 

「話ってそれだけか?それだけなら、電話でもよかったんじゃ?」

 

「いえ…、実はもう一つありまして…。」

 

「なんだ?」

 

なぜか、五月(?)は急にもじもじしだした。

 

「こっちの方が本題なんです…。」

 

「わかった。話してみろ。」

 

「上杉君。私…。」

 

五月(?)は顔を真っ赤にして何かごにょごにょと言っている。

しかし、あまりにも小声だったため聞き取れない。

 

「すまない、全く聞こえないんだが…。」

 

「…。私はあなたのことが好きなんです。」

 

「はっ…?お前なに言ってんだよ…??てか、お前誰なんだよ…。」

 

俺は、驚きの発言をした五月(?)に質問をする。

しかし、五月(?)は全く聞いてなかった。

顔がさっきよりも真っ赤になっており、何かぶつぶつとつぶやいている。

 

「もう黙っていられなかったのです…。こうでもしないと言えません…。」

 

だから、お前誰だよ…。

俺はどうしようもなく、ただただ立ち尽くしているだけであった…。




誰なんだーーーー??


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第四十九話 ミックスパラダイス(5)

どうもかずめぐです!
連続でお休みしてすいません。
今回のやつは休んでた割に全然出来がよくないです…。


嵐のように告白をした五月(?)は俺のことをおいてどこかに行ってしまった。

追いかければ正体が分かったかもしれないが、あの時の俺はひどく混乱をしていて、それどころではなかったのである。

一人、鐘のところに取り残された俺はぼーっと景色を眺めて先ほどのことに関して考えごとをする。

あいつは一体誰だったのであろうか。

本物の五月なのだろうか。

もう五月以外の四人は告白済みなので、残されたのは本物だけなのである。

それとも、誰かが意図的に五月に変装して告白したのだろうか。

結局何もわからない。

俺は答えの出ない考えに意識をさいていたので、後ろから誰かが来てることに気付いっていなかった。

 

「フータロー君。何してるの?」

 

俺は後ろを振り向き、声の主を確かめる。

 

「…。恰好は一花だけど中身は違うんだよな…。」

 

俺の目の前には一花(?)がいた。

 

「あはは。どうなんだろうね。」

 

「まあいい。お前こそこんなところで何をしてるんだ。」

 

「私は散歩してただけだよ~。」

 

「お前ら姉妹の間で散歩はやりすぎだろ。」

 

「えっ?そんなことないと思うよ。」

 

「そうなのか。まあ、そんなことはどうでもいいんだ。お前は誰なんだ。」

 

「フータロー君?何言ってるのかな?どこからどう見ても一花でしょ?」

 

「くっ、口調まで完璧か…。なら四葉ではないな。」

 

俺は目の前にいるやつが誰なのかを当てるため推理を続ける。

しかし、全然わからない。

なので、俺は少し強引な手に出ることにした。

俺は黙って一花(?)に近づく。

けれど、あと数歩のところで一花(?)に止められてしまった。

 

「フータロー君。もうその手には乗らないよ。姉妹間で情報共有はしてあるんだから。」

 

どうやら何をしようとしていたかばれていたみたいだ。

仕方ないので、俺はあまり使いたくはなかったが、最後の手段をとることにした。

 

「なあ、一花。お前が本物の一花と言うなら、一つだけ質問してもいいか?」

 

「ん?いいよ?」

 

「こないだ俺に話してくれたしょっちゅうやってることは最近もやってるのか?」

 

俺は人として最低だと思う。

しかし、もうこの方法しかないのだ…。

目の前にいる一花(?)は顔を真っ赤にさせてわなわなと震えている。

まさかこいつ…。

 

「お前、本物の一花だったんだな。」

 

「…。フータロー君。さすがにそれはないんじゃないかな。私じゃなかったらどうするつもりだったの。」

 

「すまん…。もうこれしか方法がなくてな…。」

 

「こんな当てられ方嬉しくないよ。」

 

せっかく、誰か当てたのにすごく微妙な空気になってしまった。

俺はこの空気に耐えられず、たまらず変なことを口走る。

 

「すまん。何でもするから許してくれ。」

 

「じゃあ、今夜この部屋に来て。」

 

一花はそう言うと、ポケットからカギを出して渡して来た。

 

「これは…?」

 

「私が別個にとっておいた部屋のカギだよ。」

 

「なんでこんなものを…?」

 

「あはは。この展開が計画通りだからだよ。」

 

「は??嘘だろ?」

 

「ふふふ。嘘だよ。全部嘘。じゃあ、お姉さんは宿に帰るね。今夜、待ってるからちゃんと来るんだぞ。」

 

一花はそう言うと、宿の方へと帰って行ってしまった。

 

一人、取り残された俺はボソッとつぶやく。

 

「はめられた…。」

 

こうして、一花と今夜会う約束をしてしまったのであった。



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第五十話 ミックスパラダイス(6)

どうもかずめぐです!
祝五十話達成しました!
今まで、こんな下手くそなものをお読みいただき本当にありがとうございます!
これからも頑張るので応援よろしくお願いします!


 

とりあえず宿に戻った俺は、一花からもらった鍵の部屋を確認しに行った。

部屋の中を見ると、一花が企んでることが一目でわかってしまった。

布団が一つしかないのである。

俺は驚くのと同時に少しだけほっとした。

なぜなら、早めに知ることができたので、対策が打てるのだ。

夜まではまだ十分時間がある。

俺は一度頭をリフレッシュさせるため、温泉へと向かった。

服を脱ぎ、男湯に入り、一息つく。

すると、数分後、誰かが温泉に入ってきたのである。

俺は入って来た人のことは気にせず、温泉につかっていると、後ろから声をかけられた。

 

「あら、奇遇じゃない。あんたとはお風呂でよく会うわね。」

 

…。

男湯のはずなのに女性の声が聞こえる。

俺が黙っていると、そいつはさらに話しかけてきた。

 

「なんで無視するのよ。こっち向きなさい。」

 

「いやだ。何されるか分かったもんじゃない。」

 

俺は声だけで抵抗したが、どうやら無意味みたいだ。

彼女は俺の前側に回り込んできたのである。

俺は彼女の姿を視界に入れて驚いた。

なんと、タオルを巻いていないのである。

 

「お前、なんでタオル巻いてないんだよ!?」

 

俺はとっさに目をそらす。

 

「あら、温泉でタオルを巻いてはいるのはマナー違反なのよ。知らなかったの?」

 

「知ってるわ。そもそも、なんで男湯にいるんだよ。」

 

「フー君がはいっていくのが見えたからよ。」

 

「…。ほかの客が来る前にさっさと出ろ。」

 

「大丈夫よ。私たち以外に宿泊客はいないから。」

 

「全然大丈夫じゃない…。倫理的にアウトだ…。そもそもお前は誰なんだ。」

 

「当ててみなさいよ。あんたなら、この身体見慣れてるでしょ。」

 

「見慣れてない。誤解を招くような発言はやめろ。」

 

「ほくろの位置まで把握してるくせに。」

 

「そんなものをした覚えはない。てか、このぐいぐいくる感じ。お前二乃だろ。」

 

「あら、よくわかったわね。正解よ。」

 

「こんなことをする奴はお前しかいないからな。ほら、満足しただろ。早く出てけ。」

 

「ふふふ。正解したフー君にはご褒美を上げるわ。」

 

二乃はそう言うと、俺にじわりじわりと近づいてくる。

 

「ちょ、二乃!落ち着けって!」

 

「充分落ち着いてるわ。」

 

落ち着いてるどころか、彼女の眼はめちゃくちゃ据わっている。

 

「誰か、助けてくれ!」

 

俺がそう叫ぶと、温泉にまた誰かはいってきた。

 

「上杉さん!どうしたんですか!?」

 

来たのは四葉の格好をしたやつである。

なぜ、男湯にこうも堂々と女性が入ってこれるのだろうか。

こいつらの倫理観はぶっ壊れていやがる。

けれど、男性だからって中野父がきたら俺に命はないので、命があるだけラッキーとしよう。

 

「おい!助けてくれ!二乃が暴走して止まらないんだ!」

 

彼女にそう告げると、彼女は二乃のことを捕まえて温泉から引きずり出そうとする。

 

「二乃!ここ男湯だよ!早く出ないと!」

 

「そんなの関係ないわよ。今からフー君と愛を育むんだからだから邪魔しないで!」

 

「上杉さーん!二乃がおかしくなっちゃいました。」

 

俺は二乃の顔を見てみたが、先ほどよりもやばい顔をしていた。

 

「わかった。ひとまず、俺がここから出ればそいつも落ち着くだろう。」

 

「そうですね!なら、私はここで二乃を抑えてます!」

 

「あぁ、助かったぜ。」

 

こうして俺は温泉から無事に脱出することができた。

俺は急いで服を着て自分の部屋へと帰る。

とりあえず一安心だが、これで終わりではない。

二乃のあの様子からして、まだ何かしかけてくるだろう。

それに、まだ三玖の格好をしたやつにもあっていない。

夜には一花との約束もあるのだ。

とりあえず、俺は今夜に向けて対策を練ることにした。

しかし、この対策がかえって逆効果だということをこの時の俺は知らないのであった…。



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第五十一話 ミックスパラダイス(7)

どうもかずめぐです!
ミックスパラダイスのだいぶ長くなってきましたね…w
でも、次回かその次くらいで終わる予定です!
あと、今回は一花推しの人閲覧注意…。


 

結局、部屋にこもっていたのもあって、あれ以降特に何も起きなかった。

そして、夜を迎えたのである。

その間、俺が考えた作戦はこうだ。

四葉に今回のことを伝え、何かあったら助けてもらうという算段だ。

すでに、四葉には伝えてあるので、段取りはばっちりである。

約束の時を迎え、俺は一花から渡された鍵の部屋に入った。

そこには、既に一花がいたのである。

 

「いらっしゃい。フータロー君。来てくれてありがとね。」

 

一花はすごく嬉しそうな笑みを浮かべ、こちらを見てくる。

しかし、その嬉しそうな笑みの中にどことなく寂しげな表情があるのを俺は見落とさなかった。

 

「お前が来いって言ったんだろ。」

 

「あはは。そうだったね。フータロー君、少しお姉さんとお話しよっか。」

 

俺は一花に促され畳の上に座った。

 

「まず、何から話そうかな。」

 

「そんなに話したいことがあるのか?」

 

「うん。あるよ。」

 

「なんだ。話してみろよ。」

 

「えーっと、まず言わなきゃいけないことがあって…。四葉のこと薬で眠らせちゃったんだよね…。」

 

「えっ…。てことは…。」

 

「うん。ここに四葉は来ないよ。」

 

「嘘だろ…。なぜ、計画がばれた…。」

 

「だって、四葉の挙動がおかしかったから。」

 

「あいつ…。こんな時に…。てか、そこまでする必要あったのか?」

 

「うん。今回だけは絶対に邪魔されたくなかったから。」

 

「なにをだよ…。」

 

「この後することだよ。その前にもう少しお話ししようか。」

 

「…。わかった。」

 

「私ねこの学校辞めるんだ。」

 

「は…?」

 

俺は一花が言ってることが全く理解できなかった。

 

「今、学校をやめるって言ったか…?」

 

「うん。言ったよ。」

 

どうやら聞き間違いじゃないみたいだ。

こいつは本当に学校をやめると言っている。

 

「それは女優業と何か関係があるのか…。」

 

「うん。もっと、本気で仕事したいから。新学期から今より融通のきく学校に転校するの。」

 

「なるほど…。ほかの姉妹は知ってるのか…?」

 

「まだ知らない。フータロー君に最初に話したくて。」

 

「お前の親父は知ってるのか?」

 

「うん。お父さんには許可もらった。」

 

「そうか…。まあ、俺からは頑張れとしか言えん。」

 

「あはは。急にこんなこと言ってごめんね。」

 

一花はまた寂しげな表情を浮かべながら、笑っている。

さっきもこの表情をしていたのはこれが理由だったのか。

 

「ちゃんと、ほかの姉妹にも言うんだぞ。」

 

「わかってるよ。あと、私、あのマンションも出るんだ。」

 

「は??なぜ、そこまでする必要がある?」

 

「新しい学校は今住んでる場所からだと遠くてね。あと、事務所も近いし。」

 

「…。そうか。寂しくなるな。」

 

俺がぼそりとそうつぶやくと、一花は俺に急に抱き着いてきた。

 

「だから、思い出作りしよ。フータロー君。」

 

「思い出作りってどういうことだよ。」

 

俺は一花を引きはがそうとするが、思った以上に一花の力が強く引きはがせなかった。

 

「フータロー君にあまり会えなくなっちゃうから、寂しくならないようにと。」

 

「…。で、何をするんだ?」

 

「そんなの決まってるよ。セ「それ以上言うな!」

 

俺は一花が危険な単語を口にしようとしていた気がしたため、必死に遮った。

 

「あはは。そんなに必死にならなくても。冗談だから。」

 

「必死になるわ。冗談でもきつすぎる。」

 

「むう。そんなこと言うと、お姉さん泣いちゃうぞ。」

 

「勘弁してくれ…。」

 

俺は泣かれたくはないので頭を下げる。

 

「ねえ、フータロー君。」

 

「なんだ?」

 

「今夜は何もしないから、添い寝してくれないかな。」

 

「信用できないんだが。」

 

「お願い…。」

 

一花は今にも泣きだしそうな顔で懇願してきた。

さすがに、ここまでお願いされて断るのもあれなので、俺は仕方なく承諾した。

 

「本当に何もしないならいいぞ。」

 

「ほんと!?やった!」

 

こうして、俺は朝まで一花に添い寝するのであった。

 




これで、一花が嫁レースから離脱したりとか、出番が少なくなるというわけじゃないので、一花推しの人は怒らないでください…。


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第五十二話 ミックスパラダイス(8)

どうもかずめぐです!
長かったミックスパラダイスも今回で終わりです!


 

朝、日が出る前に目を覚ました俺は周りを見渡すと、もうそこには一花の姿はなかった。

おそらく、自分の部屋に帰ったのであろう。

そもそも、あいつの父親はこのことを知ってるのだろうか。

もし、隠しているなら、ばれた時に俺は殺されかねない。

俺はそんなことを考えつつ、とりあえず自分の部屋に戻って、二度寝することにした。

部屋に戻ると、親父とらいはが気持ちよさそうに寝ている。

俺は二人のことを起こさないように静かに布団に入り、二度寝をした。

 

……

 

「お兄ちゃん!起きて!朝だよ!」

 

俺は昨日もこのセリフを聞いた気がする。

 

「あと少し…。」

 

「ダメ!!午後にはもう帰っちゃうんだから、起きて!」

 

「わかった…。」

 

俺はまだ眠かったが、仕方なく起きる。

しかし、起きたものの、何もすることがなかったため、温泉に入ることにした。

脱衣所で服を脱ぎ、温泉に入ると、奥の方に人影が二つ見えた。

 

「カーッ!堪んねーな!お前も一杯どうだマルオ!」

 

「上杉。僕を名前で呼ぶな。それに酒は苦手だ。特別な日にだけと決めている。」

 

「ったく、お前は昔から堅ぇーんだよ。長湯して少しはふやかしたらどーだ。」

 

…。

前回同様、親父が中野父に絡んでいる。

 

「おっ!風太郎じゃねーか!お前もこっちにこいよ!」

 

俺は親父に捕まり、中野父と親父の間に入る形で湯船につかることになった…。

しばらく、三人とも黙っていたが、ふいに中野父が口を開いたのである。

 

「上杉くん。君に少し聞きたいことがあるんだが。」

 

「はい。なんでしょうか?」

 

「昨日、一花君が深夜にどこか行っていたらしいんだが知らないかい。」

 

「な、何も知りません。」

 

俺は一花が何も言っていないことを瞬時に察し、とっさに嘘をついた。

 

「そうか。わかった。それに、あと一ついいかね。」

 

「は、はい。」

 

「君のおかげで、娘たちはだいぶ勉強ができるようになったみたいだ。礼を言おう。」

 

「はあ…。」

 

中野父が礼を言うなんて珍しい…。

 

「しかし、君はあくまで家庭教師だ。娘たちには紳士的に接してくれると信じてるよ。」

 

「は、はい。もちろんです…。」

 

今までに散々紳士的じゃない行動をしてきたため、少し心苦しい…。

しかし、ここでばれてしまったら俺の命はないので、また嘘をついてしまった…。

しばらくして、俺は温泉から上がり、帰りの支度をした。

 

「お兄ちゃん。支度終わった?」

 

「あぁ、終わったぞ。」

 

「よし、じゃあ帰るか!」

 

俺たちは宿から出ようとすると、ちょうど中野家の人たちと玄関で鉢合わせする形になった。

…。

今日はなぜか全員五月の格好をしている。

これでは五月の森の再来だ。

しかし、彼女らは俺のことを無視して、爺さんと別れの挨拶をしていた。

そういえば今回、爺さんと何も話していない気がする。

今回は特に世話になってないが、一応宿に止めてもらったので挨拶をすることにした。

 

「爺さん。お世話になりました。」

 

俺は礼を言い、頭を下げる。

その時、爺さんが何かつぶやいた。

 

「愛があれば何度でもまた巡り合える。」

 

「えっ?」

 

愛があれば??

そのあとなんて言った?

爺さんの声が、小さかったため後半の部分がよく聞き取れなかったのである。

俺は爺さんにもう一度聞き返そうとしたが、らいはに先を急かされたため、断念せざるを得なかった。

 

「お兄ちゃん!船の時間になっちゃうよー。私たち先行ってるね。」

 

「わ、わかった。今行く。」

 

「…。また、あなたが元気なうちに会いに来ます。その時にまた聞かしてください。」

 

爺さんは聞いているのか、いないのかわからなかったが、とりあえず船の時間もあるので急いでらいはたちを追いかけた。

らいはたちは思った以上に先に行っているようで、鐘のところまで来ても追いつくことができない。

しかし、鐘のところに誰かがたっていることに気付く。

立っていたのは、五月の格好をした五姉妹のうちの誰かであった。

 

「おい。そんなとこで何してんだ?早くしないと船が出ちまうぞ。」

 

俺がそう声をかけると、突然彼女は俺に近づき、キスをしてきたのである。

 

「は…?」

 

俺があまりに突然な出来事に呆然としていると、彼女は小走りでどこかに行ってしまった。

 

「またかよ…。」

 

俺の独り言がむなしく空に響き渡り、長かった旅行が終わるのであった。

 

 




長かった…


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第五十三話 一花と新居

どうもかずめぐです!
今日から日常編に戻ります!


 

春休みも後半に差し掛かってきたある日。

俺は最寄駅から二、三個離れた駅まで来ていた。

理由は、とある人物に呼び出されたからである。

 

「フータロー君、お待たせ。待った?」

 

「いや、今来たところだ。」

 

俺は声のするほうを向く。

そう、今回俺のことを呼びだしたのは、一花である。

 

「そっか。なら、早速行こっか。」

 

「あぁ。てか、俺はなんで呼び出されたんだ?」

 

一花に言われるがままこの場所に来たが、いまだに呼び出された理由がわからない。

 

「あれ?言ってなかったかな??」

 

「言われた覚えがないぞ。」

 

「そっか。まあ、目的地に着けばわかるよ。」

 

「結局教えてくれないのか…。」

 

こうして俺たちはしばらく歩き、とあるマンションの前に着いた。

 

「ここは?」

 

「私の新しい家だよ。」

 

「そういえば、引っ越すって言ってたな。」

 

「むう、ひどいなー。今まで忘れてたでしょー。」

 

一花がくちびるをとがらせ、拗ねた顔をする。

 

「忘れてなかったぞ…。」

 

「あー、嘘ついたー。」

 

「うっ…。そんなことより、俺は今日何をすればいいんだ?」

 

このままでは、分が悪いと思った俺はとっさに話をそらした。

 

「むっ、話そらしたな。まあいいけど。今日は荷解きを手伝ってもらいたくて呼び出したんだよ。」

 

「荷解き??てか、なんで俺なんだ?」

 

「んー。フータロー君にしかこの場所を教えたくなかったからかな。」

 

一花がさらっと笑顔で不穏なことを口にする。

 

「てことは、ほかの姉妹には教えてないのか…?」

 

「うん。そうだよ。だから、ずっと二人きりだよ。」

 

「…。ちょっと用事思い出したから帰るな。」

 

俺は身の危険を感じたため、この場から逃げ出そうとした。

しかし、一花にがっちりと捕まり逃げることができなかったのである。

 

「フータロー君。嘘はだめだよ。」

 

こうして、無理やりマンションの中に連れていかれたのであった。

一花の部屋は、一人用にしては広く、2LDKの部屋だった。

 

「一花。一人暮らしにしては広くないか?」

 

「一人暮らしならね。」

 

一花が不敵な笑みを浮かべたのを俺は見逃さなかった。

 

「ほかに誰か暮らすのか…?」

 

「今のところその予定はないよ。」

 

「そ、そうか…。」

 

なんだかとても嫌な予感がするが、気のせいだろうか…。

 

「うん。じゃあ、荷解き始めようか。」

 

こうして、俺たちは荷解きを始めたのである。

 

「一花。次はどの段ボールを開ければいい?」

 

「次はこれ開けて。」

 

一花が指をさした段ボールを開けると、中から衣服が出てきた。

 

「これはどこに?」

 

「あー、そこのタンスに適当に入れといて。」

 

「わかった。」

 

俺は言われた通り、タンスに服をしまっていると、奥の方からきわどい感じの下着が出て来たのである。

 

「一花。これも同じ場所でいいのか?」

 

俺は指の先でその下着をつまみ、一花に聞く。

 

「フータロー君。前にも言ったけど、女の子の下着をそんな汚物を持つような感じで扱っちゃダメだよ。」

 

一花はワナワナと震え、俺に言ってくる。

 

「す、すまない…。これはどうしたらいいんだ。」

 

「それは、タンスの一番奥に入れといて。」

 

この後も、しばらく荷解きを続け、ようやくすべての荷解きを終えることができた。

 

「フータロー君。今日はありがとうね。」

 

「まあ、俺からの引っ越し祝いだ。」

 

「ふふふ。じゃあ、私からは今までの家庭教師のお礼としてこれを上げるね。」

 

一花は何やら小さい封筒を俺に手渡してきた。

俺は封筒の中身を確認すると、中にはなにやら鍵らしきものが入っている。

 

「一花、これは?」

 

「ここの、合鍵だよ。」

 

「は??」

 

「フータロー君がいつでも来れるように作っておいたんだ。あと、2LDKにしたのもフータロー君の部屋を作るためだよ。」

 

「どういうことだよ…。」

 

「つまり、疲れちゃったり、私に会いたくなったときはいつでもここにきていいからね。ほかの姉妹はこれないからいい場所だと思うよ。」

 

「お前ってやつは…。」

 

こうして俺は多分使わないであろう、一花の部屋の合鍵を手に入れるのであった。




積極的な一花さん。


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第五十四話 四葉の苦悩

どうもかずめぐです!
今日で、春休みのお話も一区切りになります。


 

春休みの最終日。

俺はとある一人の生徒のため、特別授業を開いている。

 

「上杉さん、そろそろ終わりにしませんか??」

 

「だめだ。そもそも、お前が宿題を何もしてなかったのが悪いんだろ。よくここまでためられたな。」

 

「ニシシ。そこまで褒められると照れます…。」

 

「褒めてないからな。」

 

「むむむ。三玖とかはもう終わってるんですか?」

 

「あぁ。お前以外は全員終わらせてるぞ。」

 

「さすが私の姉妹ですね!」

 

「誇らし気にすんなよ。てか、お前なんかキャラ変わってねーか?」

 

「そうですか?まあ、自分に素直になったからではないですか?」

 

「なるほど。確実に悪い方向に変わってるな。」

 

「なんでですかー!?」

 

四葉が頬を膨らませこちらを見てくる。

 

「明らかに、昔より厄介になっている。」

 

「ぶー。上杉さんは女心というものをわかってないですねー。」

 

「別にわからなくても困らん。それより、お前はさっさと宿題をやれ。お前は見破られたんだから、模試まで余計なことはせずに勉強をしろ。」

 

「えっ!?初日のあれも含まれてるんですか!?」

 

「当たり前だろ。」

 

「納得いきませんけど、わかりました…。黙って宿題します…。」

 

こうして、四葉は黙々と宿題をやり始めたのである。

しばらくすると、また四葉が俺に話しかけてきた。

 

「上杉さん。一花はどうして引っ越してしまったのでしょうか。」

 

「女優業を頑張りたいからだろ。」

 

俺は一花から聞いてた通りのことを四葉に告げる。

しかし、四葉はどこか納得のいかない顔をしている。

 

「ほんとにそれだけなのでしょうか。」

 

「どういうことだ?」

 

俺は四葉の質問に質問で返す。

 

「前の世界で一花は転校しなくてもそこそこ女優業をこなしてたんですよ。なのに、今回は引っ越してしまうなんて。何か裏がありそうな気がするんですよね。」

 

「…。お前ってそこまで考えられるやつだったっけ?まさか、まだ五つ子ゲームは続いているのか?」

 

俺はあまりに四葉らしくない発言をしている彼女に疑いの目を向ける。

 

「上杉さんは今まで私のことをなんだと思ってたんですか!?」

 

「天然バカのうさ耳リボン。」

 

「ひ、ひどいです…。」

 

四葉はしゅんとして下を向いてしまった。

さすがに言い過ぎたと思った俺はすかさず話をすり替える。

 

「まあ、直接会って聞いてみたらいいんじゃねーの?」

 

「直接聞きたいんですが、忙しいのかなかなか連絡が取れないんですよ。」

 

「なら、家に直接行ってみたらどうだ?」

 

俺は発言をしてから気付いた。

一花はこいつらに家の場所を教えていないのである。

案の定、四葉はその旨を俺に言ってきた。

 

「私たちは一花の新しいお家がどこなのか知らないんですよ。」

 

「へー、そうなのかー。」

俺は自分が知っていることがばれないように、知らないふりをする。

そもそも、ばらしてもいい事なのかもしれないが、ばらしたら一花に何をされるか分かったものではないので、とりあえず隠しておく。

 

「上杉さんも知らないのですか…。」

 

「あぁ、すまないな…。」

 

「いえいえ、上杉さんは何も悪くないですよ。」

 

四葉はそんなことを言っているが、顔はとても悲しそうである。

 

「やっぱり、お前にとっては五人で一緒にいることが一番大切なのか?」

 

「はい…。お母さんの教えですから…。」

 

「だが、いずれみんな独り立ちするだろうな。」

 

「…。やっぱりそうですよね…。」

 

「ずっと一緒なんて現実的にほぼ不可能だ。だが、お前らが家族っていう事実だけはずっと変わらないんだから、それでいいんじゃないのか。」

 

「そうですよね。こんなことでくよくよしてちゃダメですよね。」

 

「あぁ、そんな悲しい顔ばっかりしてると、幸せが逃げちまうぞ。」

 

「にしし。そうですね!笑いましょう!」

 

「やっと、元気出したか。」

 

「はい!上杉さん、ありがとうございます!」

 

「まあ、俺は何もしてないがな。ところで、宿題は終わったのか?」

 

「えーっと…。実はずいぶん前に終わらせてるんですよね…。ししし…。」

 

「え?じゃあ、なんで、やってるふりしてたんだ?」

 

「上杉さんと二人きりになりたかったからです。」

 

四葉がとびきりの笑顔でそんなことを言ってきた。

こいつは、恥ずかしいことをこうも堂々と…。

 

「…。終わったんなら俺は帰る。」

 

俺は少し顔が赤くなってるのを悟られないため、さっさと部屋から出ようとした。

 

「あっ!上杉さんのいけずー!もう少しお話ししましょうよ!」

 

「宿題が終わったなら、ここにいる理由がない。じゃあな。」

 

「ぶー。では、また明日です!クラス同じになるといいですね!」

 

「それには同意できない。」

 

「なんでですか!」

 

俺はここで返事をせずドアを閉めた。

部屋の中では、まだ四葉が騒いでる音が聞こえる。

こうして、長かった春休みも終わりを迎えたのであった。




次回は新学年!


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第五十五話 五月の決意

どうもかずめぐです!
今回からようやく三年生です!


 

桜が満開の新学年初日。

俺は張り出された新しいクラス表に目を通す。

やはり見間違えではないみたいだ。

二乃、三玖、四葉、五月と同じクラスに配属されている。

俺が一人で溜息を吐いていると、後ろの方から四葉が笑いながら話しかけてきた。

 

「ししし!やっぱり同じクラスになりましたね!」

 

「やっぱりってなんだよ。」

 

「それは秘密です!」

 

「意味わからん。」

 

俺が四葉とこんな会話をしていると、いつの間にか残りの3人も俺のもとに来ていた。

 

「フー君。同じクラスになったわね。覚悟しなさい。」

 

「なにをだよ…。」

 

「フータロー。よろしくね。」

 

「あぁ。よろしくな。」

 

「う、上杉君!よ、よろしくお願いします…。」

 

「いや、お前どうしたんだよ…。」

 

「何でもないです…。」

 

俺はこいつらと軽く会話を交わし、すぐ教室へと向かった。

自分の席に着き、しばらく待っていると新しい担任の先生が教室に入ってきたのである。

 

「みんな席に着けー。ホームルーム始めるぞー。」

 

いつもなら先生の言ってることをスルーして勉強をしているのだが、今回は違う。

前回の反省を生かさなくてはならないからだ。

 

「お前らは今日から三年生だ。最高学年として自覚を持つようにな。」

 

今のところ何も起きずに先生の話は進んでいる。

しかし、油断してはいけない。

あいつがいつ行動するかはわからないからだ。

 

「じゃあ、学級委員を決めたいと思います。」

 

俺がそんなことを考えていると、先生の口から俺が一番警戒してた言葉が放たれた。

 

「はい。私がやります。」

 

やはり、予想通りここで行動に移してきた。

俺は声のする方を向き、誰が立候補したのか確認したが、その人物は俺が予想していた人物とは違ったのである。

手をあげ、立っていたのは五月だった。

 

「えーっと、女子でほかに立候補するやつはいないか?いないなら、中野五月さんにお願いするぞ。」

 

他に立候補するものはなく、女子の学級委員は五月に決まってしまった。

なぜ、四葉ではなく五月なのだろうか。

俺には五月が立候補した理由が全く分からない。

 

「じゃあ、次は男子を決めてくれ。せっかくだから、中野さん進行お願いするよ。」

 

「わかりました。」

 

五月は先生に頼まれて教壇の前に行く。

 

「男子の学級委員をやりたい人はいますか?いないのであれば、推薦したい人がいるのですが。」

 

五月がなにやら不穏なワードを口にした。

推薦て、まさか…。

俺は必死に誰か立候補してくれないか祈ったが、誰も手を上げることはなかった。

 

「いないようなので、私は男子の学級委員に上杉風太郎君を推薦したいと思います。」

 

やはり、五月は俺のことを推薦してきた。

しかし、こちらにも手はある。

2度も陥れられて堪るか。

 

「俺よりも武田のほうが適任だと思うんだが。」

 

そう、俺が使った手とは武田のことを推薦することだ。

あいつのことだから、自分から立候補すると思っていたが違うらしい。

なので、俺はこの手段をとったのである。

クラスからも、やっぱり武田だよなと言う声がちらほら聞こえてきている。

これによって、あとで武田が調子に乗るかもしれないが、今は背に腹は代えられない。

何としてでも、学級委員にならないようにしなくてはならないのだ。

しかし、武田は俺が考えていたこととはまたっく違うことを言ったのである。

 

「推薦されたのは光栄だけど、僕はそれを受けることはできないよ。なぜなら、学級委員から直々の指名なのだからね。みんなも上杉君に任してみてはどうかね?」

 

武田の発言により、せっかく武田で決まりかかってた、学級委員の座が再び俺の方に戻ってきてしまった。

しかも先ほどとは状況が違い、クラスのみんなから信頼を得ている武田の後押しもあるので、俺がやらざる得ない状況になってしまった。

 

「では、上杉君。お願い致しますね。」

 

こうして俺は、人生で2度目の学級委員をやることになったのであった…。

 




とうとう武田登場。


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第五十六話 武田の宣戦布告

どうもかずめぐです!
今日はなんと武田回!


 

俺が学級委員に任命されてから次の日のトイレでのこと…。

 

「やあ、上杉君。こんなところで会うなんて奇遇だね。」

 

「武田…。」

 

突然トイレで用を足している俺に武田が話しかけてきたのである。

 

「君が僕の名前を憶えていてくれるなんて、実に光栄だよ。」

 

「御託はいいから、さっさと用件を言え。」

 

「フフフ。相変わらず君はせっかちだね。」

 

「こっちは早く帰りたいんだ。」

 

「わかったよ。本題に入らせてもらうよ。先日、中野さんたちの父親と先日お話をさせてもらったのさ。」

 

結局こういう展開なのか…。

俺が心の中で文句を言っている間にも武田は話を続ける。

 

「そこで、今度の全国模試で僕が君よりも順位が高かったら、中野さんたちの家庭教師を引き受けることになったのさ。」

 

「なんでそんな、回りくどいことするんだよ。」

 

「フフフ。それは、僕が本気の君を倒したいからだよ。なんせ、僕たちは永遠のライバルなのだからね。」

 

武田が華麗にウィンクを決めて、そんなことを言ってくる。

 

「別にそんなことしなくても、お前との勝負は引き受けてやるよ。」

 

「えっ!?どうしてだい?」

 

さっきまで余裕の表情だった武田の顔がいっきに驚きの表情に変わった。

 

「お前は夢のためにも一番にならなくちゃならないんだろ。」

 

「上杉君。君はどこでそれを。」

 

「さあな。風のうわさじゃないか。」

 

「ハハハ。まあそんなことはいい。それより、なんて嬉しい日なんだろうか。あの上杉君が僕と正々堂々勝負してくれるだなんて。上杉君。僕は負けないからね。」

 

「完膚なきまでに叩きのめしてやるよ。」

 

「ハハハ。それでこそ、僕の永遠のライバルであり、永遠の友だよ!」

 

武田はなぜか嬉しそうに笑っている。

こいつ、こんな奴だったっけ…。

まあ、なんにせよ俺が武田に負けることはないだろう。

前回は頭の悪い五つ子全員に教えながら自分の勉強をしていたためきつかった。

しかし、今回は一人少ないうえに、みんなそこそこ頭がよくなってるので教えることも少ないのだ。

だから、俺が武田に負ける理由はない。

俺がそんなことを考えていると、突然武田が気持ち悪いことを言い出した。

 

「上杉君。この後時間はあるかい?よければ一緒にお茶でもどうかな?」

 

「すまん。この後は予定が入ってるんだ。」

 

「そうか。残念だね。じゃあ、また明日学校で。」

 

「あぁ。じゃあな。」

 

こうして俺はようやく武田から解放された。

しかし、あいつはあんなことを言うやつだったろうか。

まさか、お茶に誘われるとは…。

俺がそんなことを考えながら下駄箱に行くと、昇降口のとこに誰かたってることに気付くのであった。

その人物は、俺が来たことに気付くと、小走りで俺の方に近づいてきたのである。

 

「フータロー。遅かったね。」

 

「三玖。なんでここに?」

 

昇降口で立っていた人物は三玖であった。

 

「フータローのこと待ってたからだよ。」

 

「なんでだ?」

 

なぜだか、とっても嫌な予感がする。

俺の第六感がそう告げている。

 

「これから、買い物に付き合ってほしいの。」

 

「断る。」

 

「むう。ダメだよ。私のことは当てれなかったんだから言うこと聞かなきゃ。」

 

「…。わかった…。」

 

「やった。」

 

三玖は小さくガッツポーズをした。

こうして俺は、五つ子ゲームの罰ゲームを行使され、三玖の買い物に付き合う羽目になったのであった。




次回は三玖回!


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第五十七話 三玖と放課後

どうもかずめぐです!
少し間が空いてしまってすいません!
ずっと、俺ガイル見てました…w
てなわけで、今日は三玖回です!


 

俺は今、三玖とショッピングモールにいる。

 

「フータロー。これ似合うかな。」

 

「に、似合うんじゃないか…?」

 

「そっか。なら買おっかな。」

 

「…。それより三玖さん。なぜ俺たちはこんなことを…?」

 

俺は今の状況がいまいち理解できず、三玖に聞く。

確かに買い物に付き合えとは言われたが、服選びをさせられるなんて…。

 

「フータローは黙って私に従えばいいの。」

 

三玖は無表情でそんなことを言ってくる。

 

「三玖…。お前なんか怒ってないか…?」

 

「別に怒ってないよ。」

 

三玖は俺に指摘されたら、明らかにむっとした顔をした。

 

「やっぱり怒ってるだろ…。俺がいったいなにしたって言うんだ。」

 

「別にフータローだけが一花の新居を知ってて、みんなに隠してることに怒ってるわけでもなく、武田君と勝手に勝負したことを怒ってるわけでもないからね。」

 

「お前わざとらしすぎるぞ…。」

 

俺は小さくため息をつき、三玖にさらに聞く。

 

「なんで、全部知ってんだよ。」

 

「たまたま聞いちゃっただけだよ。」

 

「そんな理由がまかり通るわけないだろ。そもそも、武田とは男子トイレで話してたし、一花の話しは誰にもしたことがない。正直に言え。」

 

「むう。フータローの後に武田君がトイレに入ったのを見て、こっそり外から聞き耳を立ててました。あと、一花のは駅で見かけたのでこっそりついていきました。」

 

「正直に言われると、少し引くな…。」

 

俺は三玖がストーカまがいのことをしてることを聞き、寒気がした。

 

「みんなに隠し事をしてるフータローが悪いんだよ。」

 

「それに関しては確かに俺が悪かったな。すまない。だが、なぜ、お前も一花の新居を知ってるのにほかの姉妹に教えないんだ?」

 

「一花にも何か考えがあるんだと思う。それに、平等より公平に一花にもチャンスがあってもいいと思うから。」

 

「なるほど、お前もお前なりに考えてるんだな。」

 

俺は久々に三玖に感心していたが、もう一つどうしても聞かなきゃいけないことがあった。

 

「三玖。なぜ、お前は男子トイレに聞き耳を立てていた。絵面としては相当やばいだろ。」

 

「さっきも言ったじゃん。フータローが入ってくのが見えたから、外で待伏せしようとしたら、武田君が入っていったから、聞き耳を立ててたんだよ。」

 

三玖がなぜか自信満々にそんなことを言ってくる。

 

「それに関しては、衝動的行動だったのかよ…。」

 

俺は三玖のしょうもない理由にまた溜息を吐く。

しかし、三玖はそんな様子の俺は知らんぷりで、別の話題をし始めた。

 

「ねえ、フータロー何か欲しいものない?」

 

「急にどうしたんだ?」

 

「もうすぐ、フータローの誕生日だから、何かプレゼントしたくて。」

 

「もうそんな時期か。」

 

俺は三玖に言われて初めて自分の誕生日が近いことに気が付いた。

 

「うん。だから、欲しいものを聞いてるの。」

 

三玖は真剣なまなざしで俺のことを見てくる。

 

「欲しいものか。特に思い浮かばないな。」

 

「じゃあ、私のチョイスでいいの?」

 

なぜか三玖がニヤッとする。

すこし疑問に思った俺は恐る恐る三玖に聞く。

 

「ちなみにお前のチョイスだと何をくれるんだ?」

 

「私の名前とハンコがはいった婚姻届。」

 

「そのプレゼントは重過ぎる…。それに、お前は未成年だから親の許可が必要なんだぞ…。」

 

「大丈夫。何とかするから。」

 

三玖はそう言うと俺に笑いかけてきた。

周りにいる人から見たら、この笑顔はかわいいものなのだろうが、今の俺からは恐怖心しかわいてこない。

 

「三玖…。頼むから何か別のものにしてくれ…。」

 

俺は三玖に必死にお願いした。

プレゼントをもらう方が他のものにしてくれと頼むのは、とても違和感のある行為だが、今はそんなことを言ってる場合ではない。

とにかく、三玖の考えを改めさせなくてはならないのだ。

 

「でも、これ以外私があげれるものはないよ。初めてだってあげちゃったし…。」

 

三玖はもじもじしながら言う。

 

「もじもじしながらそんなこと言わないでくれ…。周りに誤解されるだろ…。いや、誤解ではないのだけれど…。」

 

「えへへ。あの時は幸せだったな。」

 

「…。もうその話をするな…。頭が痛くなる…。」

 

「ひどいな…。私は初めてをフータローにあげたのに、フータローにとってはどうでもいい事だったんだね…。」

 

三玖がわざとらしく落ち込んだふりをする。

 

「別にそういうことを言ってるわけじゃ…。」

 

「じゃあ、婚姻届受け取ってくれる?」

 

俺はどうやら三玖の手のひらで転がされてるらしい。

もう何を言っても駄目だ。

 

「わかった。受け取るだけだからな…。」

 

俺はとりあえず受け取るだけという口約束を交わすことにした。

 

「やった。じゃあ、さっそく準備するね。」

 

「じゅ、準備?」

 

「うん。今からお父さんのところに行く。だから、フータロー。また明日学校でね。」

 

三玖はそれだけ言うと、あっという間にこの場からいなくなってしまった。

こうして、三玖との放課後デートは幕を閉じたのであった…。




愛が重い三玖さん…w


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第五十八話 二乃の駆け引き

どうもかずめぐです!
最近、ペースが遅くてほんとにごめんなさい…
今日は二乃回です。


 

とある週末のこと。

俺は二乃にマンツーマンで授業をしている。

なぜかというと、二乃は俺に旅行で正体がばれたので約束通り、模試まで余計なことをせず勉強をしなくてはならないからだ。

しかし、彼女たちは充分一人でもできる力を持ち合わせているので、今は課題を出し、それを一人で解かしているという状況である。

俺はその間もちろん自分の勉強をしている。

 

「ねえ。ちょっと、いいかしら。」

 

お互いに黙々と勉強をしている中、突然二乃が話しかけてきた。

 

「ん?なんだ?」

 

俺は参考書から目を離さずに返事をする。

 

「話したいことがあるのよ。」

 

「話したいこと?」

俺はこの時初めて、二乃の方へと向き直った。

彼女のことを見ると、彼女はすでにペンを置き、こちらのことをまっすぐに見ているのである。

 

「わかった。なら少し休憩しよう。」

 

俺はいったん勉強を中断し、彼女の話を聞く態勢に入る。

 

「で、何が話したかったんだ?」

 

「私、告白されたのよ。」

 

「そうか。よかったな。」

 

「え?」

 

俺は何か変なことを言ったのだろうか。

目の前にいる彼女はすごく不思議そうな顔をしているのだ。

 

「私、告白されたのよ?」

 

二乃がなぜ同じことを言ってくる。

 

「二回も言わなくても聞こえてるぞ。それになんで、疑問形なんだよ。」

 

「聞こえてたのに、あの反応なのね。」

 

二乃は先ほどまで不思議そうな顔をしていたのに、なぜか今は怒りの表情になっている。

そんな二乃の気迫に怖気づいた俺は余計なことを聞いてしまったのであった。

 

「俺、なんか変なこと言ったか…?」

 

「アンタねー!私が告白されてもなんとも思わないわけ!?」

 

二乃はすごい剣幕で言ってくる。

なるほど。

二乃は俺にヤキモチ的なものを妬いてほしかったみたいだ。

 

「アンタに期待した私がばかだったわ。」

 

二乃はひとりでに文句を言いながらため息を吐く。

 

「いや、そもそも俺らは付き合ってないんだからそんな期待はするなよ。」

 

「そんなのわかってるわよ。」

 

「絶対わかってないだろ…。」

 

二乃は先ほどから不機嫌度がマックスなのか、腕くみしながら俺のことをずっとにらんできている。

 

「はぁ。あんたがこんな感じなら告白してくれた人と付き合ってみようかしら。」

 

「いいんじゃないか?」

 

どうやら、俺はまた失言をしてしまったらしい。

目の前にいる二乃は怒りでわなわなと震えている。

しかし、何と返せば正解だったのだろうか。

俺には全く分からない。

俺がこんなことを考えていると、二乃は突然立ち上がり、無言で部屋から出て行ってしまった。

さすがにここでフォローを入れないと今後の生活に影響を与えると思ったので、俺は二乃のことを追いかけ、部屋から出る。

階段を降り、リビングの方に行くと、キッチンに行く二乃の後姿をとらえる。

 

「二乃。何をするんだ?」

 

俺はとりあえず二乃に話しかけた。

 

「気分転換にお菓子作るのよ。」

 

二乃はこちらのことを見向きもせず冷たく言い放つ。

 

「そ、そうか…。」

 

二乃の気迫に再び怖気ついてしまった俺は彼女から逃げるかのように部屋に戻ったのであった。

しばらくすると、クッキーが入った皿を持った二乃が部屋に入ってきたのである。

 

「作りすぎちゃったから食べて。」

 

二乃はそう言うと、クッキーの入った皿を俺の前に置く。

俺はその皿に手を伸ばしてクッキーをとり、口に入れた。

うまい。

やはり、二乃が作る料理はうまいな。

俺が心の中で感想を述べていると、二乃が突然話しかけてきた。

 

「さっきは、すまなかったわね。私が意地悪しすぎたわ。」

 

「え、あっ、あぁ。」

 

二乃が素直に謝ってきたので俺は驚いてしまった。

そんな俺の様子を見て二乃がまたこちらを睨んできたのである。

 

「なによ。」

 

「な、なんでもないぞ。それより、さっき言ってた告白は受けるのか?」

 

「えっ?フー君、気になるの??」

 

「あぁ。気になるぞ。」

 

俺の言葉を聞くと二乃は顔を赤らめた。

 

「それって…。」

 

「あぁ。そいつと付き合ったことによって成績が落ちるかもしれないからな。」

 

俺はまた余計なことを言ってしまった。

今回に関しては違うことも言えただろうと今更ながらに反省している。

しかし、どうしても思ったことを言ってしまうのだ。

 

「アンタ、私のことなんだと思ってるのよ!?」

 

こうして俺は二乃にきつくお灸をすえられるのであった…。

 




もうすぐ、お気に入り登録が1000件に行きます!
本当にありがとうございます!
お気に入り登録が1000件に到達したら、Twitterの方で今後の方針についての発表をするので是非見てください!


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第五十九話 誕生日の災難(1)

どうもかずめぐです!
ついに、お気に入り登録が1000件こえました!
本当にありがとうございます!
今後ともによろしくお願いします!


 

四月十三日土曜日。

俺は一花に呼び出され、一花の家まで来ている。

しかし、来てみたはいいものの一花はどうやら留守みたいだ。

さすがに女性の家の前で立って待っているのもあれなので、俺は合鍵を使い中に入った。

家の中に入ってみて驚いたんだが、なんと一花の部屋がきれいなのである。

俺がひとりでに感心していると、扉から一花が入ってきた。

 

「あれ、フータロー君。もう来てたんだ。」

 

「あぁ。先に上がらせてもらったぞ。」

 

一花のことを見てみると、手には食料が入った袋を持っている。

おそらく買出しにでも行っていたのであろう。

 

「フータロー君。合鍵使ってくれたんだ。」

 

なぜか一花は嬉しそうにしている。

 

「まあ、さすがに女性の部屋の前で突っ立って待ってると不審者扱いされかねないからな。」

 

「渡したときはあれほど使わないって顔してたのに?」

 

「うっ…。確かにそうだったが、さすがに不審者にはなりたくなかったからな…。」

 

「まあ、いつでも使っていいからね。」

 

一花は俺に向かってウィンクをする。

なんだか、負けた気がして少し嫌だった俺はとっさに話題をそらした。

 

「ところで一花。なんでこんなに部屋がきれいなんだ?」

 

「何その質問。すこし失礼でしょー。」

 

一花は先ほどの嬉しそうな顔とは打って変わり、膨れた顔をしている。

 

「お前は汚部屋を作る天才だから怒られても困るんだが…。」

 

「まあ確かにそこは否定できないけど…。」

 

「だろうな。で、誰に片づけてもらったんだ?」

 

「三玖だよ。なぜか、私の家の場所知ってたから。」

 

「あー、三玖か。あいつ、俺たちのことつけてきたらしいからな。」

 

「うん。全部聞いた。お姉さんは油断してたみたいだよ。」

 

「別にそういうわけではないと思うんだが…。」

 

「ははは。まあ、ゆっくりしていって。」

 

一花はそう言うと冷蔵庫に買ってきたものを入れ始めた。

俺はとりあえず近くにあった椅子に座り、一花の様子をうかがう。

 

「そういえば、一花。俺は今日なんで呼び出されたんだ?」

 

「あれ言ってなかったっけ?」

 

「一応、手伝ってほしいことがあるとは言われてたが、詳しいことは何も聞いてない。」

 

「そっか。ごめんごめん。」

 

「で、何をすればいいんだ?」

 

「ベッドを組み立てるのを手伝って。」

 

「ベッド??まだ、お前の部屋になかったのか?」

 

「んーん。私のじゃないよ。」

 

「えっ…。」

 

一花の発言になんだか嫌な予感がする。

 

「フータロー君のだよ。」

 

やはり嫌な予感は的中した。

 

「なぜ、俺のなんだ…?」

 

「まあ、いいからいいから。」

 

「全然よくないんだが…。」

 

「じゃあ、さっそく取り掛かるよ!」

 

結局、俺は一花の勢いに負け、ベッドを組み立てることになったのである。

 

「一花。ここの場所でいいのか?」

 

「うん。そこで大丈夫だよ。」

 

俺は組み立てたベッドを一花に指定された場所に運び、一息つく。

まあ、実際作った場所から動かしていないんだが。

 

「お疲れ様。」

 

一花はそう言うと、俺に麦茶の入ったコップを差し出してきた。

 

「おぉ。ありがとうな。」

 

俺はコップを受け取り、礼を言う。

コップに口をつけ、麦茶を口に含むと、ひんやりとした感覚がとても心地よかった。

俺がまったりと麦茶を飲んでいると、突然一花が不思議なことを言い出したのである。

 

「フータロー君。今日は泊っていくよね。」

 

「はっ??」

 

なぜか、俺の意識はここで途絶えてしまった…。

 



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第六十話 誕生日の災難(2)

どうもかずめぐです!
今後の展開の都合により、IFストーリー消しますね。


 

目を覚ますと、そこは知らない天井だった。

俺は一体どれくらい寝てたのであろうか。

あたりは真っ暗である。

俺がそんなことを考えていると、突然扉が開き、電気がついた。

 

「フータロー君。起きたんだ。」

 

「あぁ。今起きたとこだ。」

 

「そっか。突然倒れるように寝ちゃったからお姉さんは驚いたんだぞ。」

 

「そ、そうなのか…。それは、すまなかったな。」

 

俺は一花に一応謝る。

しかし、これは絶対薬を盛られているのであろう。

俺の第六感がそう告げている。

そして、身の危険を感じた俺はさっさとここから撤退することにした。

 

「一花。悪いが、もう帰るな。」

 

「今日は泊まっていきなよー。」

 

「それはできない。らいはが家で待っているからな。」

 

俺は勝ち誇った顔をして一花に告げる。

しかし、一花の一言によって俺は窮地に立たされてしまうのであった。

 

「らいはちゃんにはもう連絡してあるし、それにもう終電行っちゃたよ。」

 

「嘘だろ??俺は何時間寝てたんだ??」

 

「大体八時間くらいかな?」

 

「マジかよ…。」

 

これは想定外の状況である。

まんまと一花にはめられてしまった。

 

「だから、泊まっていきなね。」

 

こうして俺は一花の家に泊まることになったのであった。

一花と一緒に深夜の軽めの夕食を済ませ、俺は風呂に入っている。

幸い、俺が眠るであろう部屋には内カギがついていた。

鍵さえかけてしまえば、一花は何もできないであろう。

俺は風呂から上がり、その部屋へと向かう。

しかし、部屋に着くと、自分の考えが浅はかだということを思い知らされてしまうのであった。

なんとそこには既に一花がいるのである。

 

「一花。そこで何をしてるんだ?」

 

「フータロー君のこと待てたんだよ。」

 

「なんでだよ。」

 

「少し話したいことがあって。」

 

「なら、リビングに行かないか?」

 

俺は何とかして一花をこの部屋から出すために誘導する。

 

「この部屋がいい。あと、そこのカギ壊れてるからね。」

 

「そ、そうなのか。な、ならこの部屋でもいっか…。」

 

結局俺は一花の手のひらの上で転がされてるだけみたいだ。

ここまで来たら何もできないので、俺は一花の話をちゃんと聞くことにした。

 

「で、何が話したいんだ?」

 

「フータロー君は明日の話聞いてる?」

 

「あー、あいつらが誕生日会開くってやつだろ?」

 

「うん。それ。」

 

「模試前だってのにのんきだよな。」

 

「もー、そんなこと言わないのー。みんなフータロー君のことが祝いたいだけなんだよ!」

 

「まあ、悪い気はしないがな…。てか、それがどうしたんだよ。」

 

「ははは。それで、フータロー君は誰かから誕生日プレゼントもうもらったのかなって。」

 

「まだ、もらってないが?多分、明日なんじゃないか?」

 

「そっか。よかった。」

 

一花がホッとしたような顔をする。

 

「なんでそんなこと聞くんだ?」

 

「私が一番最初に誕生日プレゼントを渡したかったから。」

 

「なるほど。そんなにこだわるもんか?」

 

「うん。だから受け取ってね。」

 

一花はそう言うと何かを口に含み突然俺にキスをしてきた。

その時に何か液体が一花の口から俺の口へと移される。

俺は驚いて思わずそれを飲み込んでしまった。

 

「一花。お前なにを…。」

 

「ごめんね、フータロー君。でも、どうしてももらって欲しくて。」

 

「なにをだよ…。」

 

先ほどからなぜか、体がとても熱い。

 

「私の初めて。」

 

「まさか…。お前…。」

 

「うん。お薬を飲んでもらった。」

 

だから先ほどから体が熱くて仕方ないのか…。

そして、俺の息子の自己主張も激しい。

 

「フータロー君。しよ。」

 

一花はもう一度俺にキスをしてきた。

俺は我慢できずに、一花の身体をむさぼる。

こうして、二人は一夜を共にするのであった…。

 




頑張って週二回あげよう…


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第六十一話 誕生日の災難(3)

どうもかずめぐです!
最近雨が多くてなえなえですね…


 

目を覚ますと、隣に裸の一花が寝ている。

やはり俺はやってしまったようだ。

三玖、二乃に続いて、今度は一花とまで身体の関係を持ってしまった。

五人中三人。

もうやってないほうが少ない。

俺が後悔の念に駆られていると、隣で一花が目を覚ました。

 

「ん、フータロー君。おはよ。」

 

「あぁ。一花、俺はやってしまったのか?」

 

「うん。そうだよ。」

 

「そ、そうか。俺なんかですまなかったな…。」

 

「私はフータロー君でよかったよ。」

 

一花が微笑みながらそんなことを言ってくる。

ここまでするということはこいつらの俺に対する気持ちは本気なのであろう。

さすがにこいつらの気持ちを蔑ろにするわけにもいかない。

俺も真剣に向き合うべきである。

最近、三玖と二乃に対して少し冷たい態度をとってしまっていたから、そこらへんもフォローしなくてはならない。

 

「フータロー君。そんな怖い顔してどうしたの?」

 

俺が考え事をしていると、心配そうに隣にいる一花が話しかけてきた。

 

「すこし考えごとをしていたんだ。」

 

「そっか。でもね、少しやばいんだよね。」

 

一花はそう言いながら時計を指さした。

デジタル時計には十一時半と表示されている。

俺は冷や汗を垂らしながら一花に聞く。

 

「なあ、一花。集合時間て何時だ…?」

 

「…。十二時だよ…。」

 

俺と一花は飛び起き、急いで支度をした。

支度が終わると、家を飛び出し、駅まで全力疾走だ。

 

「ハアハア…。一花、これ間に合わなくないか…?」

 

「うん…。私はもう少し遅れるって連絡したよ。」

 

「なるほど。その手があったか。」

 

俺は自分の携帯を開き、あいつらに連絡をしようと思ったができなかった。

 

「充電がない…。」

 

「私が連絡しといてあげようか?」

 

「いや、さすがにそれはまずいだろ。一緒にいますよって言ってるようなもんだぞ。」

 

「確かに…。じゃあ、どうするの?」

 

「駅前に公衆電話があったから、そこで連絡をする。」

 

こうして俺たちは駅に着いた。

俺と一花はさすがに一緒に行くのはまずいということで、俺が電話をしてる間に、先に一花を行かせることにした。

一人残された俺は中野家に電話をかける。

 

『もしもし。』

 

電話に出たのは声的に三玖だろう。

 

「三玖。俺だ俺。」

 

『オレオレ詐欺には引っ掛かりません。』

 

三玖はそう言うと電話を切ってしまった。

俺は気を取り直し、もう一度中野家に電話をかける。

 

『もしもし!』

 

今度は声的に四葉だろう。

 

「四葉。俺だ。上杉だ。」

 

『上杉さん!?一体どうしたんですか?』

 

「すまないんだが。少し、遅れるとみんな言っといてくれないか?」

 

『それは構いませんが。何かあったんですか?』

 

「たいしたことじゃないから気にするな。」

 

『そうですか。では、後程お会いしましょう!』

 

俺は電話を切り、一息つく。

なんとか、連絡をすることはできた。

しかし、人を待たせているのでたいしてゆっくりはできず、俺は急いで中野家へと向かうのであった。




今回は特に動きなしですね。


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第六十二話 誕生日の災難(4)

どうもかずめぐです!
久しぶりの投稿ですね…w
忘れられてるかもしれませんが一応上げますねw


 

春の日差しがとても心地の良い四月十四日の日曜日。

俺は五つ子に招待された誕生日会に来ていた。

 

「遅れてしまってすまない。」

 

俺は開口一番謝罪を述べる。

 

「それは全然かまわないんですけど?何かあったのですか?」

 

四葉が不思議そうな顔で俺に聞いてきた。

 

「普通に寝坊しただけだ…。」

 

「寝坊なんて珍しいですね。昨日の夜何かしてたのですか?」

 

今度は五月が俺に質問をしてくる。

しかし、俺はこの質問をまともに返すわけにはいけない。

なぜなら、俺は昨日の夜こいつらの姉である一花とナニをしてしまったのだから。

なので、嘘をつくことにした。

 

「もうすぐ模試だからな。勉強をしてたんだよ。」

 

「なるほど。あなたらしい理由ですね。」

 

とりあえず、五月は納得してくれたみたいだ。

先ほどこいつらと真面目に向き合うと決心したばかりなのに嘘をつくのは少し気が引けたが、この状況なら仕方がないであろう。

正面からまともにぶつかって大惨事を起こすくらいなら多少の嘘もかわいいものだ。

 

「ところで、ほかのやつはどこにいるんだ?」

 

「一花は遅れるって連絡があったのですが、まだ来てないみたいですね。二乃と三玖は台所で料理をしてます。」

 

「そ、そうなのか。」

 

一花は俺よりも先に行ったくせになぜまだついていないのだろうか。

俺があれこれと色々考えてると、四葉が突然話しかけてきた。

 

「上杉さん!こんなところで立ち話もなんですし、リビングの方に行きましょうよ!」

 

「そうだな。」

 

こうして俺たちはリビングへと向かう。

リビングに着くと、奥の方の台所で調理をしている二乃と三玖を見つけた。

向こうも俺に気付いたらしく俺に声をかけてきた。

 

「フー君、いらっしゃい。遅かったわね。」

 

「ちょっと寝坊してな。」

 

「フータロー。さっきは電話切っちゃってごめん…。」

 

「いや、あれは名乗らなかった俺が悪かったから気にするな。」

 

二乃や三玖とこんな会話をしていると、リビングに一花が入ってきた。

 

「みんな、遅れてごめんね。」

 

「一花。遅かったですね。何をしてたのですか?」

 

五月が何やら疑いのまなざしで一花に問いかける。

 

「ちょっと買い物をしてたら遅れちゃった。」

 

一花はそう言うと、何やら袋をこちらに見せてきた。

 

「次からは気を付けてくださいね。」

 

五月はそう言うと台所の方に行ってしまった。

すこし機嫌が悪いのか…?

俺がそんなことを考えていると、いつの間にかテーブルの上にはたくさんの料理が運ばれていたのである。

 

「これ全部二乃と三玖で作ったのか?」

 

「ええ。そうよ。まあ、ほとんど私だけど。」

 

「むっ。私だって頑張ったもん。」

 

「あんたは野菜切ってただけでしょ。味付けとかは全部私がしたのよ。」

 

「それは二乃がやらせてくれなかったから…。」

 

「当たり前でしょ。あんたにやらせたらせっかくの誕生日会が台無しよ。」

 

なぜかこちらもギスギスしている…。

俺は不思議に思い四葉に聞いてみた。

 

「何かあったのか?」

 

「私にも全然わかんないです。昨日までは普通だったのですが…。」

 

俺と四葉が話していると、突然五月が手をたたいてこう言いだしたのである。

 

「料理が冷める前に、早くいただきましょう!」

 

やっぱり、こいつの食欲は恐ろしい。

しかし、今回に限ってはこいつのおかげでギスギスした空気が和らいだので、五月の食欲に感謝しよう。

こうしてようやく俺の誕生日会が始まったのであった。



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第六十三話 誕生日の災難(5)

どうもかずめぐです!
あげるのが遅くなってしまってほんとに申し訳ないです…。
気長に待っていただけると嬉しいです。


 

昼飯を食べ終わった後、俺たちは特にすることもなく手持無沙汰になっていた。

しばらくすると、四葉が突然立ち上がり部屋から何か箱のようなものを持ってきたのである。

 

「みんな!これやろうよ!」

 

四葉はそう言うと、俺たちの前にその箱を置いた。

俺はその箱を見て、嫌な記憶を思い出す。

 

「おい、四葉。これは前にやったことあるあれじゃねーのか?」

 

「ふふふ。残念ですが今回のはあれの進化バージョンです!」

 

「あれからまだ進化できるのかよ…。怖すぎてやりたくないんだが…。」

 

「えっ!?そんなこと言わずにやりましょうよー!」

 

四葉が駄々をこねる。

すると、隣にいた一花が俺に向かってこう言ってきた。

 

「フータロー君。ここは大人になってやってあげなよ。」

 

「仕方ないな。四葉準備するぞ。」

 

「はい!」

 

こうして俺たちは、あれ(人生ゲーム大人バージョン)をやることになったのであった。

 

「誰から始める?」

 

俺と四葉は準備をし終わり、みんなに聞いた。

 

「フータローの誕生日だし、フータローからでいいと思う。」

 

「そうか。なら俺からいかしてもらうな。」

 

俺はルーレットを回す。

出た目は5。

 

「えーっと、職業マス。教師の職業カードを受け取る。おっ、教師になったのか。」

 

俺は教師の職業カードを受け取り、自分の順番を終えようとする。

しかし、突然五月が文句を言ってきたのであった。

 

「私が教師になりたかったので、あなたはやめてください!」

 

「なんでお前に指図されなきゃいけないんだよ!?」

 

「職業はそれぞれ一人ずつしかつけないからです!」

 

「お前、それでもし俺がフリーターになったらどうすんだよ。」

 

「そんなの知りません!あなたの人生なんですから。」

 

「無責任な奴め。俺は譲らないからな。」

 

俺はそう言うと、今度こそ自分の番を終える。

五月は明らかに膨れた顔をしていたが、ここはあえてほっておくことにした。

その後、みんな一回ずつルーレットを回し終え、一人を除いてそれぞれ職業につくことができていた。

なんの偶然かわからないが、一花は女優、二乃はシェフ、三玖は歴史家、四葉はスポーツ選手といった職業になったのである。

さきほど、俺につっかかてきた五月はというと、教師以外の職業は嫌ですと言って、自らフリーターの道を選んだのであった。

それからは特に何事もなくゲームは進んでいったのだが、結婚マスを境にこのゲームが本領を発揮し始めたのである。

最初にその被害にあったのは四葉だ。

 

「えーっと、ドーピング検査で陽性が反応が出たため、スポーツ選手なら職を失う…。」

 

「四葉、そんなことしてたんだ…。」

 

「してないよ!これゲームだからね??上杉さんは信じてくれますよね?」

 

「四葉。罪はちゃんと償えよ。」

 

俺は四葉の肩に手を置き、諭すように言った。

 

「そんなー…。」

 

四葉はそう言うとシュンとしてしまった。

次に被害にあったのは一花だった。

 

「人気歌手との不倫が発覚。女優なら職を失うって…。」

 

「まあ、一花ならあり得るかもね。」

 

「えっ??うそでしょ??」

 

「まあ確かに…。」

 

俺は今までの一花の行動を思い出し相槌を打つ。

 

「ひ、ひどいや…。」

 

四葉に続き、一花までもが拗ねてしまった。

この後も、二乃や三玖、俺も被害にあったというのは言うまでもないだろう。

みんながこんなにこのゲームの被害にあってる中、五月だけは全く被害にあっていなかった。

なぜかというと、五月はフリーターになっただけではなく、結婚にも失敗し、家を買うこともできなかったからだ。

五月はゲームの被害にあわず(ある意味ではあっているのだが)、邪魔されることが少なかったのか一番最初にゴールをし、所持金も一番多かったのであった。

しかし、五月は全く嬉しそうではない。

 

「なんか釈然としません。」

 

「お前も変なマスにあたりたかったのか?」

 

「そういうわけではないですけど…。」

 

「なら、いいじゃねーかよ。」

 

「でも、なんか釈然としないんですよー!」

こうして、俺たちはこのゲームを二度としないと誓ったのであった。

 




この回が必要だったかはいまだに疑問。
原作がサクサク進んでるのにこっちは全然進まない…


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第六十四話 誕生日の災難(6)

どうもかずめぐです!
何とか、前回だした時から、近いうちに次話を出すことができました…
今回でようやく誕生日編も終わりです!
何とか原作に追いつけるように頑張りたいと思います!


ゲームを終えると、彼女たちは突然そわそわし始めた。

普段は察しが悪いことで有名な俺だが、今回ばかりは彼女たちがそわそわしている理由がわかる。

きっと俺にプレゼントを渡そうとしてくれているのだ。

しかし、彼女たちはそわそわしているだけで動き出す気配が全くない。

俺は外していた時の保険もかけて、彼女たちに遠回しに聞いた。

 

「さっきからそわそわしてどうしたんだ?この後何かあるのか?」

 

「えーっと、その…。プレゼントを渡したいんですが…。」

 

なぜか申し訳なさそうに五月が答える。

 

「そ、そうなのか。あ、ありがとな…。」

 

五月につられて俺もおどおどした感じで答えてしまった。

そんな微妙な空気が漂う中、突然一花が口を開いたのである。

 

「こんな空気になっちゃうのもあれだから、みんなで一斉に渡そうか。」

 

「えぇ、そうね。それが一番だわ。」

 

二乃が腕を組みながら答える。

 

「それがいいと思う。」

 

今度は三玖が一花に賛同した。

その後ろで、四葉と五月はが黙ってうなずいている。

 

「じゃあ、みんなプレゼントを持ってこようか。」

 

一花がそう言うと彼女たちはそれぞれ自分の部屋へと戻っていった。

どうやら、誰が最初に渡すのか姉妹間で牽制してたみたいだ。

それを見かねた一花は先ほどのような提案をしていたのであろう。

理由は言わないが、やはり一花は策士である。

こんなことを考えてると、みんなそれぞれ部屋から出てきた。

俺の前に横一列にならんでいる。

この光景を見るとクリスマスの時を思いだす。

確かあの時も、プレゼントを渡していたはずだ。

 

「まず私からいくね。」

 

そう言って先陣を切ってきたのは一花だった。

一花からは、すでにもらっているような気がするが今は言わないでおこう。

 

「はい、フータロー君。誕生日おめでとう。」

 

一花はそう言うと、俺に小さな小包を渡してきた。

 

「ありがとな。」

 

俺は一花に礼を言う。

 

「んーん。まあ、フータロー君に似合うかわかんないけど…。開けて確かめてみてよ!」

 

一花にそう言われ俺は小包を開けた。

すると、中からイヤリングが出てきたのである。

 

「これは、イヤリングだよな?」

 

「うん。そーだよ。フータロー君、つけてみてよ。」

 

俺はイヤリングを自分の耳につける。

 

「思った以上に似合ってるね。よかったよ。」

 

「思った以上ってなんだよ!?まあ、ありがとうな。」

 

「えへへ。どういたしまして。あとね、それ私とおそろいなんだ。」

 

一花はそう言うと、耳の横の髪をかき上げ、俺に見せてきた。

 

「…。うかつにつけれなくなっちまったぜ…。」

 

「気にしなきゃいいじゃん。」

 

「イチャイチャタイムはおしまい。次私の番だから。」

 

一花と俺が話していると、突然二乃が割り込んできた。

若干機嫌が悪そうにみえる。

おそらく、一花と話過ぎたためであろう。

 

「す、すまない。」

 

俺はとりあえず二乃に謝った。

 

「ふん。これは私からよ。」

 

二乃はそう言うと、俺に小さな箱のようなものを渡してくる。

俺はそれを受けとったが、なんだか嫌な気がしてならない。

なぜかというと、前回、二乃にしてやられたためだ。

 

「二乃、開けてみてもいいか…?」

 

俺は一刻も早く中身が知りたかったので二乃に聞く。

 

「いいわよ。」

 

二乃はぶっきらぼうにそう言い放った。

俺は急いで小箱を開け、中身を確認する。

すると、中から万年筆が出てきた。

しかも、俺のイニシャルまで入っている。

 

「二乃…。」

 

俺は思っていたのよりも数百倍ましなものをプレゼントされたので感動の視線を二乃に向けた。

 

「なによ。そんな感動した顔しちゃって。そんなにうれしかったの?」

 

「あぁ。すげー嬉しい。ありがとう。疑って悪かったな!」

 

「はぁ??あんた何を疑ってたのよ!?」

 

「クリスマスの時はあれだったから…。」

 

俺がぼそりというと、二乃はあの時のことを思い出したのか顔がみるみると赤くなっていった。

 

「あの時は、あれよ…。いろいろ焦ってたから…。」

 

二乃はなぜか慌てふためいている。

すると、そんな様子を見て怪しいと思ったのか、五月が会話に交じってきた。

 

「あの時って、なんのことですか。」

 

「な、なんでもないわよ!」

 

二乃はそう言うと、下を向いてしまった。

 

「隠し事の匂いがします。」

 

五月は納得がいかないのか、まだ怪しんでいる。

しかし、二乃が何も話さなくなってしまったので、五月は俺の方に向き直り、何やらチケットのようなものを俺に渡してきた。

 

「お、お、お誕生日おめでとうございましゅ…。こ、これはプレゼントです…。」

 

五月くれたものは、遊園地のチケット二枚だった。

 

「あ、ありがとな。」

 

五月がきょどってるせいで、こちらもきょどってしまう。

 

「あ、あの…。チケット二枚あるので、今度私といきましぇんか…?」

 

五月の一言で場が凍り付いた。

えっ…?

今なんて言った…?

一緒に…?

俺が状況の理解に苦しんでいると、再び五月が喋りだした。

 

「そ、そのチケット実はカップル用でして…。別に上杉君となんて行きたくないんですけど、上杉君はほかに誘える女の子なんていないと思うので、私が一緒に行ってあげようかなと…。」

 

なぜか、今回はすごく饒舌だ。

俺がそんなことを考えていると、一花が会話に交じってきた。

 

「私、フータロー君と行きたいから、五月ちゃんの代わりに行ってあげるよ!」

 

一花の言葉に再び場が凍り付く。

 

「い、一花!無理しなくてもいいんですよ…。」

 

「んーん。全然無理してないよ!」

 

五月は半べそ状態で、必死に一花に食らいつく。

しかし、こういうので一花が負けることがるのだろうか。

俺が傍観をしていると、一花が突然ふふっと笑い、五月に諭すように話しかけた。

 

「五月ちゃん。素直にならないと、本当にお姉さんが行っちゃうぞ。」

 

五月は堪忍したのか、俺の方に向き直り、

 

「上杉君…。一緒に行ってくれませんか…?」

 

と言ってきたのである。

俺はあまりに素直な五月にびっくりして、

 

「お、おう。」

 

と、そっけない返事しかできなかった。

その後、四葉と三玖もプレゼントを渡すのかと思ったら、四葉はまだ準備が終わってなく、三玖はまた今度渡すということで、誕生日会はこれにてお開きとなったのである。

これでようやく、騒がしくも楽しい俺の誕生日が終わったのであった。



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第六十五話 四葉と千羽鶴と桜

どうもかずめぐです!
すこし、リアルの生活の方も落ち着いてきたので、これからはこれくらいの頻度で更新したいと思います!


 

誕生日会の次の日、俺は四葉に呼び出されたため、放課後の教室で一人勉強をしている。

 

「上杉さん!お待たせしました!」

 

四葉が勢いよく教室に入ってきた。

 

「お前今までどこにいたんだよ。」

 

「ちょっと、職員室に呼び出されてまして…。」

 

「いったい、何したんだ。」

 

「すこし、宿題を忘れてしまいまして…。」

 

「はっ?お前いまさら何やってんだよ?」

 

俺は四葉に睨みをきかせる。

 

「そ、そんなことより、これを見てください!」

 

四葉は誤魔化すように話題をすり替えた。

そして、何やら少し大きめの袋を持ってきて俺に渡す。

 

「これは?」

 

「ししし。中を見てみてください!」

 

俺は言われるがまま袋の中身を見る。

するとそこには、千羽鶴と思われるものが入っていた。

 

「四葉…。これは…。」

 

俺は四葉の顔を見て聞く。

 

「千羽鶴です!私が全部折りました!上杉さんに勉強頑張ってもらいたかったので!」

 

「そうなのか。ありがとうな。」

 

俺は感謝の言葉を口にする。

しかし、俺はもう一つこの馬鹿に言わなきゃいけないことがある。

 

「四葉。まさか、これが原因で勉強がおろそかになってたりしないだろうな。」

 

「そ、そんなことないですよ~…。」

 

四葉は俺から目をそらしながらそんなことを言っている。

俺のために頑張ってくれたので、正直嬉しい気持ちでいっぱいなのだが…。

 

「四葉。頑張ってくれたのは嬉しいんだが、宿題はちゃんとやんなきゃダメだぞ。」

 

俺は四葉の肩に手を置き、言い聞かせる。

 

「上杉さんに喜んでもらいたくて、ついつい夢中になっちゃいました…。」

 

「はぁ。まあ過ぎてしまったことはしょうがない。これありがとうな。」

 

「はい!お誕生日おめでとうございます!」

 

「おう。ところで、忘れた宿題はもう終わってるのか?」

 

「いえ…。まだこの通り白紙です…。」

 

四葉は白紙の宿題を見せてきた。

 

「よし。なら、わかんないとこは教えてやるから、今ここでちゃっちゃとやってしまおう。」

 

「いいんですか!?ありがとうございます!」

 

こうして、俺たちは放課後の誰もいない教室で宿題をするのであった。

それから一時間ほど経ち、ようやく四葉の宿題を終えることができた。

 

「やっと終わりました…。」

 

「お疲れ様。早く先生に出して来いよ。」

 

「はい!上杉さん、ここで待っててくださいね。」

 

「なんでだ?」

 

「一緒に帰りたいからに決まってるからではないですか!」

 

四葉は舌を出しながらそう言うと、さっさと職員室に向かってしまった。

一か月前と比べ、だいぶ日が伸びたのか十七時過ぎでも外はまだ明るい。

俺はふと窓の外を見る。

外では、夕日をバックに散った桜が風で巻き上げられ、とても幻想的な景色になっている。

ぼんやりと眺めていると、いつの間にか戻ってきていた四葉に話しかけられた。

 

「おまたせしました!ん?なにしてるんですか?」

 

「ちょと、ぼーっとしてただけだ。」

 

「上杉さんがぼーっとしてるなんて珍しいですね。何かあったのですか?」

 

四葉が心配そうにこちらを見てくる。

 

「いや、何もないぞ。それよりも、さっさと帰ろうぜ。」

 

「そうですね。帰りましょう!」

 

こうして俺と四葉は学校を出た。

 

「上杉さん。模試の勉強は順調ですか?」

 

突然、四葉がこんなことを聞いてきた。

 

「まあ、順調だな。武田にも勝てると思うぞ。」

 

「にしし。ならよかったです。」

 

四葉が笑いかけてくる。

 

「なんでそんなこと聞くんだ?」

 

「私たちが勉強の邪魔してたら申し訳ないなと思ったので…。」

 

「なるほど。全然そんなことはないぞ。」

 

「ししし。上杉さんにはやめてほしくないので頑張ってくださいね!」

 

「あぁ、任せておけ。」

 

ここで会話が一回終わる。

しかし、立て続けに四葉が俺に質問をしてきた。

 

「最近、一花や二乃、三玖とかとなんかありましたか?」

 

「何もないぞ…。」

 

何もないわけなく、むしろナニをしてしまっているのだが、それはさすがに言えず、俺は嘘をつく。

 

「どうして突然…?」

 

俺は逆に四葉に質問をした。

 

「最近、上杉さんの私たちとの接し方が変わった気がしたので。」

 

「なるほど。」

 

「だから、何かあったのかなと思いまして。」

 

「まあ、あったとしたら、俺の心の変化かな。」

 

「えっ!?まさか、私たちの誰かを好きになったんですか!?」

 

四葉が驚きの表情をする。

 

「ちげーよ。」

 

俺は否定する。

 

「じゃあ、まさか私たちじゃない人のことを好きに…。」

 

今度は悲しそうな顔をしている。

こいつの感情はほんとに忙しいな。

 

「それもちげーよ。」

 

「じゃあ、どういうことなんですか?」

 

四葉が困り切った顔で聞いてくる。

その顔を見て、少しいじめたい気持ちが芽生えたが、これ以上混乱させて話がややこしくなっても面倒なので、ここは正直に話すことにした。

 

「お前らの気持ちと真剣に向き合うことにしたんだよ。」

 

「えっ??どういうことですか?」

 

「まあ、なんというか。お前らの真剣な気持ちに、俺も真剣に返すってことだよ。」

 

「じゃあ、私たちの誰かを好きになるってことですか?」

 

「まあ、単純に言うとそういうことだな。でも、いい加減な気持ちじゃなくて真剣にだからな。」

 

「上杉さんは私たちの誰かと結婚するということですか?」

 

「すごい飛躍させるな…。まあ最終的にはそうなるかもしれん。」

 

「ししし。私嬉しいです。」

 

四葉が先ほどの笑顔とは違い、ほんとに幸せそうな顔をしながらこちらを見てくる。

 

「なんでだ?」

 

「上杉さんが真剣に私たちのことを考えてくれてるからです。」

 

「そ、そうか。」

 

「はい。私も頑張んなきゃですね。」

 

「えっ?」

 

突然、四葉が走り出した。

少し前にあった、桜の木の下で立ち止まると、こちらを向き直る。

そして、ニコッと笑いながらこう言った。

 

「ほかの人だけじゃなくて、私のこともちゃんと見てくださいね!」

 

桜がひらひらと散っているのも相まって、四葉の姿はある物語のヒロインのように見えた。

俺はその美しさに声が出ず固まってしまう。

四葉はそんな俺を

 

「ししし。私に見惚れちゃってどうしたんですか??」

 

と、バカにしてくる。

 

「そんなんじゃねーよ!」

 

俺は走って四葉を追いかける。

 

「うわー!上杉さんがおこった!!」

 

こうして、二人とも帰路につくのであった。

きっと、この時からであろう。

彼女たちとの関係が徐々に変わっていったのは…。

 




次回は多分三玖回。


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第六十六話 三玖とけじめ

どうもかずめぐです!
更新が遅くなって本当に申し訳ないです…。
書きためをしていたデータが不手際で消えてしまい、しばらくやる気をなくしていました…。
これからも更新は遅くなってしまうと思いますが、少しづつ書いていきたいと思うので、応援よろしくお願いします。
頑張って完結にまでもっていきたいと思います。


 

四葉から誕生日プレゼントをもらってから一週間がたった。

その間に、俺たちは模試を終えていた。

俺は万全の状態で臨んだため、おそらく満点であろう。

まあ、結果が出るまでは安心できないんだが。

しかし、一週間ほど前からなぜか武田が俺に絡んでこない。

絡んでこないどころか、なんだか避けられている気がする。

何かしたのかと思ったが、俺には心当たりがない。

なので、話があるということで一緒に帰っている三玖に聞いてみた。

 

「なあ、三玖。お前武田に何かしたのか?」

 

「えっ?何もしてないよ?」

 

三玖は言葉ではそう言ってるが、目は明らかに泳いでいる。

 

「やっぱりお前かよ…。」

 

俺は思わずため息を吐く。

 

「そんなことより、フータロー、渡したいものがあるんだけど。」

 

三玖はわざとらしく話をそらしたかと思えば、何やらカバンから小さな封筒を出してきた。

 

「これはなんだ?」

 

「誕生日プレゼントだよ。」

 

「えっ、てことは…。」

 

俺は封筒の中身を出す。

すると、中には予想通りのものが入っていた。

 

「話ってこれのことだったのか。てか、よく用意できたな。」

 

「うん。私、頑張ったんだよ。」

 

三玖が得意気に言ってくる。

本来であれば、頑張ったことは褒めるべきなのだが、今回ばかりはそうできない。

しかし、三玖の気持ちを蔑ろにするわけにもいかないので、俺は今後どうしようかと考える。

 

「なあ、三玖。話があるんだが。」

 

俺は考えがまとまり三玖に話しかけた。

 

「どうしたの?書き方がわからないの?」

 

「いや、そうじゃなくて…」

 

「あっ、いつ出しに行くかって相談だよね。」

 

「いや、それも違う。てか、お前、安心安全が売りだったんじゃないのか??」

 

「もうなりふり構ってられないから。」

 

一瞬、三玖が寂しそうな顔をしているように見えた。

 

「何かあったのか…?」

 

俺は心配になり聞いた。

 

「何かあったのは、フータローの方だよ。最近のフータローなんだか雰囲気が違うし、四葉と一花の機嫌がやけにいいもん。」

 

「なんだそんなことか。」

 

俺はもっと何かやばい事でもあったのかと思っていたため、安心してホッと息を吐く。

 

「むっ。私にとっては重要なことなんだもん。」

 

三玖は俺が息を吐いたのを呆れられたととったのか、少し拗ねているようだ。

 

「まあ、話したいことは、三玖が感じてるそれについてなんだ。」

 

俺は三玖の目を見ながら言う。

 

「えっ?どういうこと??」

 

三玖は意味が分からないのか困惑している。

 

「お前らとちゃんと向き合うことにしたんだ。」

 

困惑している三玖に俺は続けてそう言った。

 

「つまり、それって…?」

 

未だにピンと来てないのか、三玖が俺に聞き返す。

俺は三玖が分かるように四葉に言った言葉をそのまま告げた。

 

「お前らの気持ちに真剣に向き合うってことだ。」

 

「じゃあ、私のことを好きになってくれるの?」

 

三玖が普段の表情からは想像できないくらいに目をキラキラさせ聞いてくる。

 

「そうなるかもしれないし。そうならないかもしれない。」

 

俺はそんな三玖の圧に負けないようにしながら真実を告げた。

 

「むー。でも、私たち五人に絞ったってことだよね。」

 

「まあ、そういうことになる。」

 

「そっか。フータロー、ありがとう。」

 

「えっ??まだ何もしてないんだが…。」

 

「んーん。今の私があるのはフータローのおかげだから。今の私を見つけてくれてありがとう。」

 

三玖はとっびきりの笑顔でそんなことを言ってくる。

しかし、四葉といい、三玖といい、こいつらは急に恥ずかしいようなことを平気で言ってくる。

言われてるこっちが照れてしまう。

 

「まあ、そのなんだ。俺もお前がいなければ、こんなに人と関われなかったと思う。だから、その、ありがとうな。」

 

俺も思わず感謝の言葉を口にしてしまい、すごく恥ずかしい。

その、恥ずかしさを紛らわすために俺は別の話題を口にした。

 

「えーっと、そういうことだから、これは返しとくな。」

 

俺はそう言い、三玖に封筒を返した。

 

「そうだね。でも、私を選んでくれた時は、ちゃんと受けとってね。」

 

「…。善処する。」

 

こうして、三玖にもしっかりと自分の意向を伝えることができた。

あと、告白をされてるのは二乃だけなので、二乃には近いうちに告げよう。

しかし、この後あんなことが起こるなんて今の俺は知る由もなかったのである…。



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第六十七話 策士な二乃

どうもかずめぐです!
全然あげれなくてすみません…。
まあ、理由は忙しいのとなかなか案が浮かばないからですね…。
もう一つ別作品を上げてるので、そちらの方も見ていただけるとありがたいです!


 

とある土曜の昼下がり。

俺はなぜか、あいつらのマンションに来ていた。

そして目の前には二乃がいる。

 

「二乃。なぜ俺はここにいるんだ?」

 

「私が呼んだからよ。そんなことも忘れたの?」

 

「いや、そういうことではなくて…。」

 

「何が言いたいのよ。」

 

「なぜ、俺は呼び出されたんだ?」

 

俺は何も理由を告げられずに、二乃にここに呼び出されていた。

そして、彼女に理由を聞いてもなぜかはぐらかされてしまう。

 

「もう少しで教えてあげるから、おとなしく待ってなさい。」

 

そう言うと、二乃はキッチンに消えて行ってしまった。

俺は二乃の姿を目で追っていると、ふと甘い匂いがすることに気付く。

何か、作っているのであろうか。

しばらくすると、二乃がお皿を持ってキッチンから出てきた。

 

「これは??」

 

「アップルパイよ。」

 

俺の目の前にはめちゃくちゃうまそうに皿に盛りつけられたアップルパイがある。

 

「なぜ、アップルパイ?」

 

俺は素朴な疑問をぶつける。

 

「フー君に食べてほしかったから。」

 

「俺に?」

 

「えぇ。まずは胃袋からつかもうと思って。」

 

二乃がすました顔で恥ずかしいことを言ってくる。

ここで、俺は二乃に言わなくてはならないことがあるのを思い出した。

 

「なあ、二乃。」

 

「なにかしら?」

 

「大事な話がある。」

 

俺は真剣な顔で言う。

しかし、二乃の返事は俺の予想の斜め上を行くものだった。

 

「あれでしょ。私たちと真剣に向き合うっていう。」

 

「へっ?」

 

俺は自分が話そうと思っていたことを二乃に先に言われたことに驚いて変な声を上げてしまった。

 

「それとも違う話だった?」

 

二乃が俺の顔を覗き込みながら聞いてくる。

 

「いや、あってるんだが…。それ誰から聞いたんだ?」

 

「四葉よ。」

 

「あいつ…。」

 

「こないだすごくうれしそうに話してたわ。」

 

「ハア。」

 

俺はため息を吐く。

説明する手間が省けたと思えば楽なのかもしれないが、こういう大事なことは自分の言葉で伝えたかったので、とても複雑である。

 

「まあ、そういうことだ。」

 

とりあえず、俺はこの話を締めることにした。

 

「わかったわ。それより、冷める前にアップルパイ食べちゃって。」

 

「わかった。ありがたくいただこう。」

 

俺はそう言い、アップルパイを一口食べる。

やはり、めちゃくちゃうまい。

こいつマジで将来店出せるんじゃないのか?

俺がそんなことを考えながら食していると、二乃が感想を求めてきた。

 

「どう?おいしい?」

 

「あぁ。めちゃくちゃうまい。」

 

俺は二乃に素直に感想を述べる。

二乃は嬉しそうな顔をしていたが、俺がその顔を見ていることに気付くと、急に顔を引き締めたのである。

 

「まあ、あんた貧乏舌だから、聞いても意味ないわね。」

 

引き締めた顔をしたかと思ったら、なぜか急に毒を吐かれた。

いつもならうまく受け流すのだが、今回は少しイラっとしたので仕返しをすることにした。

 

「確かに、俺は貧乏舌だ。だが、俺のために作ってくれたってだけでうまく感じるんだよ。」

 

俺がこういうと、二乃は一気に顔が赤くなったのである。

 

「あんた!!なに突然言ってんの??別にあんたのために作ったわけじゃないんだから!」

 

…。

最近、恋愛の本で読んだ反応そのものだ…。

これがツンデレというやつなのか…。

ほんとにこういうやつがいるんだな。

 

「まあ、いいわ。それより、話があるから食べ終わったら私の部屋に来てちょうだい。」

 

俺が勝手に恋愛の本にたいして感心していると、二乃がそんなことを言ってきた。

 

「ん、わかった。」

 

俺は返事をし、再びアップルパイを口にする。

そして、この後事件は起きたのであった…。



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第六十八話 真面目な五月

どうもかずめぐです!
久しぶりの投稿になってしまいすいません…。
これ以外にも別の作品を書いているのでそちらも読んでいただけると嬉しいです!


 

目を覚ますとそこは、知っている天井だった。

どうやら俺はまた二乃に薬を盛られてしまったらしい。

最近は多少なりとおとなしくなったと思っていたが、隙を見せたらこれだ。

俺は起き上がろうと、身体を動かそうとした。

しかし、身体は動かない。

どうやらまだ薬が効いてるらしい。

そんなことを考えていると、扉が開き、二乃が入ってきた。

 

「あら、起きたのね。」

 

「あぁ、それよりこれはどういうことだ?」

 

どうやら口は動かせるみたいだ。

 

「フー君が突然寝ちゃったんじゃない。」

 

二乃が妖艶な笑みを浮かべる。

どうやらしらを切るみたいだ。

 

「また、薬を盛ったのか?」

 

「なんのことかしら?」

 

「身体が動かないんだが。」

 

「フー君は疲れてるのよ。だから、もう少し休んでたら?」

 

「それはさすがに無理があるんじゃないか…?」

 

「仕方ないわね。正直に言うわ。薬を盛ったわ。これで満足??」

 

二乃はなぜか逆ギレをしている。

ここで、それを指摘すると火に油なのでやめておこう。

 

「どうして、こんなことをしたんだ?」

 

俺はやさしく問いかける。

 

「フー君があんなこと言ったからでしょ。」

 

「あんなこと??」

 

俺は何か言ったのだろうか?

特に思い当たらない。

 

「すまない。特に思い当たらないんだが…。俺が何を言ったか、教えてくれないか。」

 

「真剣に突きあうって言ったわよね。」

 

「あー、それか…。俺は付き合うじゃなくて向き合うって言った気がするんだが…。」

 

「真剣に向き合うってことは、私たちの誰かと最終的には突き合うってことと同じことでしょ。」

 

「確かに、最終的にはそうなるだろうな。だが、それがこれと何の関係があるんだ??」

 

俺がそう言うと、突然二乃が俺の上にまたがってきた。

 

「に…二乃…??どうしたんだ…??」

 

「どうせ、突き合うなら今でもいいじゃない。私たちはもう突き合った仲なんだし。」

 

「はっ??何を言っているんだ??俺がいつお前と付き合った??」

 

俺には二乃の言ってることが理解できなかった。

しかし、これだけはわかる。

絶対ろくなことにならない。

 

「あれは確か、クリスマスの次の日よ。」

 

「クリスマスの次の日??」

 

俺は記憶を必死に探る。

そして、一つの答えにたどり着いた。

なるほど、道理で話がかみ合わないわけだ…。

 

「二乃、お前の言うつきあうって突進の突の字なのか?」

 

「えぇ、そうよ。それ以外に何があるのかしら。」

 

二乃は俺のことを見下した感じの笑みで見てきた。

実際、体勢的には見下されてるんだが…。

 

「いや、私が言ってることが正しいみたいな雰囲気を出してるが、全然正しくないからな。」

 

「そんなことどうでもいいわよ。私は既成事実さえ作れれば。」

 

そう言うと、二乃は俺のシャツに手をかける。

その瞬間、突然勢いよくドアが開いた。

 

「何をしているのですか。」

 

ドアのほうを向くとそこには五月が立っていたのである。

 

「アンタこそ何してるのよ。」

 

「私は、家に帰ってきたら上杉君の靴があったので探していたんです。」

 

「タイミング悪いわね。」

 

二乃はため息を吐いている。

とにかく俺は助かったのか??

二乃にはすまないが、みんなと真剣に向き合うと決めた以上、そういうことはできないのである。

 

「それより何をしているのですか。」

 

「アンタには関係ないわ。」

 

「関係あります!!私だって…。」

 

五月はなぜかもじもじしている。

 

「なによ?」

 

二乃はなぜかにやにやしていた。

今度は五月をいじめて楽しんでいるのであろうか?

 

「私だってみんなと同じで…。」

 

なんだか、今日の五月は歯切れが悪い。

 

「素直になっちゃいなさいよ。」

 

今度は二乃がやさしく諭すように言った。

すると、何かの覚悟を決めたのか、俺の方を急に向いてきた。

 

「私だって上杉君のことが好きなんです!!私だけのけ者にされるのは嫌なんですよ。」

 

五月の突然な告白に俺は思わず固まってしまった。

二乃は前から知っていたのか、いたずらっぽい笑みを浮かべて俺たちのことを見ている。

てか、これ自体二乃が仕組んだことなんじゃないかと思えてきた。

そうなると、二乃はかなりの策士である。

しかし、俺はこんなことを考えてる場合ではない。

 

「五月、気持ちは嬉しいんだが…。いますぐ返事を返すことはできない…。すまない…。」

 

「それはわかっていたのでいいんです。でも、これからはちゃんと私のことも彼女候補に入れてくださいね。」

 

そう言う、五月の顔は真っ赤だ。

相当無理しているのであろう。

 

「あぁ、公平にいくよ。」

 

こうして、本当の意味で五人と真剣に向き合っていくことになったのであった。




俺ガイルも原作が終わり、冴えカノもアニメ版が終わってしまいましたね。
こういうラブコメだと、最終的に誰を選んだかでいつも論争が起きてますね…
まあ、全員が納得している結末なんて書けないのではと思う今日この頃です…。


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第六十九話 一花と真実

どうもかずめぐです!
今回は無理矢理、プロローグのことを回収する回です。
かなりこじつけやめちゃくなとこがあります。
それに、無駄にだらだらと長いです…。
苦手な方はそっとブラウザを閉じてください…。


 

五つ子たちと真剣に向き合うと宣言してから半月ほどが経った、五月三日。

ゴールデンウィーク真っ只中なのにも関わらず俺は一花にアパートに呼び出されていた。

 

「で、何の用なんだ?」

 

俺は先ほどから向かいの席でどこから買ってきたのかわからないフラペチーノを飲んでいる一花に話しかける。

 

「まーまー。そんなに焦んないでよー。」

 

「帰って勉強をしたいんだが。」

 

「私たちと真剣に向き合ってくれるんでしょ?」

 

「うっ…。確かにそうだが…。」

 

俺は痛いところを突かれ黙ってしまう。

 

「なら、もう少し待ってくれてもいいよね??」

 

一花が微笑みながら言ってきた。

なんだか、一花の手のひらの上で踊らされてるのが癪だが、仕方ない。

ここは黙って待って居よう。

俺がしばらく黙っていると、今度は一花の方から話しかけてきた。

 

「ねぇ、フータロー君。」

 

「なんだ?」

 

「今日呼び出したのはね、フータロー君に大事な話があるからなんだ。」

 

一花はいつの間にかフラペチーノを飲み終わっており、真剣な表情で俺の顔を見つめていた。

 

「大事な話ってのは何なんだ?」

 

俺はあまりに真剣な空気に固唾をのむ。

 

「大事な話だからちゃんと聞いてね。」

 

「あぁ。わかった。」

 

「じゃあ、まず質問していい?」

 

「ん?別に構わないぞ。」

 

俺がそう言うと、一花は少し黙ってしまった。

そんな中、俺は一花の顔をじっと見ながら、一花の口が開かれるのを待っていた。

数十秒後、ようやく一花は口を開いた。

しかし、その発言はとんでもないものだったのである。

 

「フータロー君は私たちと出会うのは何度目かな。」

 

俺は一花の言ってることが瞬時には理解できなかった。

しかし、時間が経つにつれて少しずつ理解していく。

 

「一花、それは…。」

 

俺はなんて答えていいのかわからず言葉を詰まらせる。

 

「聞き方が悪かったから、改めて聞くね。フータロー君は何週目なの?」

 

一花のこの質問で俺はようやく現状が理解できた。

 

「一花は知ってたんだな。俺がタイムリープしてたことを。」

 

「私だけじゃないよ。みんな知ってる。」

 

「えっ…?それってつまり…。」

 

「うん。みんなタイムリープしている。」

 

「やはりな…。」

 

「あれ?気付いてたんだ?」

 

一花はとても驚いた表情をしていた。

そんなに俺って鈍感だと思われてたのか??

 

「さすがに気付くだろ。お前らの態度があからさますぎる。」

 

「まあ、確かにそうだね。そこは反省しなきゃ。」

 

「と言っても、俺自身半信半疑だったんだがな。」

 

「四葉とは話してたんでしょ?フータロー君だけじゃなくて私たちもしてるってことは。」

 

「あぁ、そうだ。」

 

「四葉はほかに何か言ってた?」

 

「いや、特には。」

 

「そっか。はなさなかったんだね。」

 

一花は寂しそうな笑みを浮かべていた。

 

「ちなみに、フータロー君はどこまで記憶があるの?」

 

「卒業式の前日に携帯を見たのと、卒業式のことは覚えている。」

 

「卒業式の後に起きたことは?」

 

「残念だが思い出せない…。」

 

「そっか、じゃあこの先のことは?例えば修学旅行とか。」

 

俺は一花にそう言われたので、修学旅行のことを思い出そうとする。

しかし、なぜか思い出すことができなかった。

つい最近のことまでは思い出せていたのに…。

 

「思い出せない…。」

 

「でも、林間学校とか春休みのことは覚えてるんだよね。」

 

「あぁ。それは鮮明に思い出せる。」

 

「まあ、過ぎ去ったことだから思い出しやすいのかな?この先も日にちが近づけば思い出すんじゃないかな?」

 

一花がのんきにそんなことを言っている。

 

「そう言うもんなのか…?」

 

「そこらへんはよくわからないかな。」

 

「結局よくわからないのか…。」

 

まあ、これは仕方ない。

その時なったらまた考えよう。

それよりも俺には聞かなくてはならないことがあるのだ。

 

「なあ、一花。卒業式の後何が起きたんだ?」

 

今の俺にはこれが最も重要な案件である。

 

「簡潔に言うと、フータロー君はその日死んじゃったんだよ。」

 

一花は重要なことをなんとも味気ない感じに言い放った。

まあ、だが大方予想通りである。

何となくそうなんじゃないかと思っていた。

 

「しかし、なんでタイムリープなんてしたんだ?」

 

「原理についてはわかんないかな。」

 

一花はなぜか含みのある言い方をする。

 

「他は知ってるのか?」

 

「私たちとフータロー君のきずなとでもいうべきなのかな?」

 

「いや、意味が分からないんだが…。」

 

「まあ、結局私もよくわからないかな。わかってることは、フータロー君と私たちがまた巡り合ってるということ。」

 

「まあ、そうだな…。結局それしかわからないのか…。」

 

「うん。そうだね。」

 

ここでいったん会話が途切れそうだったので俺は一花にとある質問をしてみた。

 

「一花。お前は何度目なんだ。」

 

「なんで、そんなことを聞くのかな?四葉に聞いてるんじゃないの?」

 

「確かに、四葉は私たち二度目なんですと言った。しかし、四葉にも卒業式の後の記憶はなかったんだ。なぜ、一花は覚えているんだ?」

 

「あの子が嘘をついてるだけかもよ?」

 

「それはないだろう。四葉は嘘をつくのが下手だからな。」

 

「じゃあ、四葉だけ忘れちゃったのかな?」

 

一花はおちょくったような口調で言ってくる。

 

しかし、顔は真剣そのものだった。

 

「なあ、一花。正直に答えてくれ。」

 

俺は一花に真剣に聞く。

 

「ねぇ、フータロー君。パラレルワールドって知ってる?」

 

一花は俺の質問には答えず、逆に質問を俺にぶつけてきた。

 

「一花。俺の質問に答えてくれないか。」

 

「これが答えになるからフータロー君は私の質問に答えて。」

 

「わかった…。」

 

俺は一花の圧に負けてしまったのである。

 

「じゃあ、もう一回聞くね。パラレルワールドて知ってる?」

 

「あぁ。平行世界だろ。」

 

「うん。そうだよ。じゃあ、平行世界はいくつあるのかな?」

 

「そんなの分からないだろ。」

 

俺はいまいち一花の質問の意味が分からない。

 

「わからないよね。じゃあ、君がAという平行世界から来たとして、ほんとに私もAという平行世界から来てるのかな?」

 

「…。それもわからないな…。」

 

「うん。でも、共通点はあるよね。」

 

「あぁ…。どの世界でも俺が死んでるっていうことか…?」

 

「うん。そうだね。」

 

「つまり、何が言いたいんだ??」

 

俺はやはり一花が言わんとしていることが分からない。

 

「全部人から教えてもらっちゃダメだよ。フータロー君がそう言ってたでしょ。」

 

一花がいたずらっぽい笑みを浮かべた。

くっ…。

まさか、自分の言葉が自分にかえってくるとは…。

しかし、こればっかりはどうしてもわからない。

 

「一花。もう少しヒントをくれないか…?」

 

「んー。私以外の四人は君と同じ平行世界Aから来てるよ。」

 

「つまり、一花、お前だけは違うんだな。」

 

「そういうことになるね。」

 

「俺の世界の一花はどこに行ったんだ?」

 

「それはわからない。」

 

「お前は俺がいた世界で接してきた一花じゃないってことなのか?」

 

「そうであってそうでないと言えるのかな。」

 

「どういうことだ??」

 

さっきから、もう頭の中がぐちゃぐちゃすぎて混乱しそうだ。

普通の勉強の方が百倍簡単である。

 

「結末が一緒ってことは、その過程もほぼほぼ一緒ってことでしょ?」

 

「確かにそうなるかもな…。」

 

「つまり、私は君と接していた。君も私も同じ体験をしてるんだから。」

 

「なるほど…。」

 

ホントになるほどなのかはわからないがとりあえず納得することにした。

 

「まあ、私は君が死んだところを二回見てるんだと思うけどね。」

 

また、一花がさらっと重要なことを言った。

最初にそれを言ってほしかったんだがな…。

 

「二回とも同じ過程で、同じ結末だったのか?」

 

「結末は一緒でも過程は違ったと思うよ。」

 

 

「そうなのか?」

 

「うん。私の一回目はフータロー君たちと同じ一回目だと思う。」

 

「あぁ。それで?」

 

「二回目は、私だけタイムリープしたことになってた。」

 

「つまり、お前だけ二回目だったのか?」

 

「うん。でも、今のフータロー君と同じ状態で、きおくが曖昧だったの。それでまた、同じ結末になっちゃったのかな?そこはよく覚えてないや。」

 

「で、今回は三回目なのか。」

 

「うん。そうだよ。」

 

「しかし、なぜ記憶が残ってるんだ?」

 

「残ってる記憶は一回目だけ。君たちと同じ記憶。二回目はフータロー君同様曖昧なの。」

 

「でも、俺が死ぬ原因は覚えてるんだろ?なら、助かるんじゃないか?」

 

「私にできるのは一つのフラグを折ることだけ。今回はみんな二回目以降だし、今までとは全くパターンが違うから別のフラグが発生するかも。」

 

「なんだよそれ…。」

 

「現にフータロー君は三人も手籠めにしちゃってるんだから。」

 

今度の一花の笑みは非常に怖いものだった…。

 

「まあ、今後何が起こるかはわからないってことだな?」

 

俺は無理やり話を逸らす。

 

「そういうことだね。まあ、フータロー君が誰を選ぶのかにかかってるかもしれないけどね。」

 

「マジなのか…?」

 

「私を選んでおけば絶対安全だよ?」

 

「どうしてそう言い張れる?」

 

「私なら、無理やりみんなが笑える関係にできるから。だからさ…。」

 

一花はそう言うと、突然俺に抱き着いてきて、俺の胸に顔を埋めてきた。

 

「い、一花!?急にどうしたんだ??」

 

俺は一花をはがすために一花の肩に手を置いた。

すると、俺は彼女が震えていることに気付くのであった。

 

「一花?泣いてるのか…?」

 

俺がそう聞くと、一花は小さな声で何かを話している。

俺はそれに耳を傾けた。

 

「フータロー君…。もう、私にあんな悲しい思いをさせないで…。」

 

それを聞いた俺はがらにもなく一花のことをそっと抱き返し、泣き止むまで頭をなで続けるのであった。

 



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第七十話 五月の気持ち

どうもカズめぐです。
急に思いついたので書きました。


5月4日の朝。

俺は重たいまぶたを擦りながら布団から起き上がる。

昨日は一花から衝撃的なことを聞いたため、全然眠れなかったのだ。

顔を洗いに行くために立ち上がった俺は家に誰もいないことに気づく。

親父は仕事なのだろうが、らいははどうしたのだろう。

友達と遊んでいるのだろうか。

そんな事を考えても答えなど出ないので、俺は顔を洗い、勉強を始めることにした。

今日は、一日中予定がないので勉強に集中することが出来る。

俺は余計なことを考えたくないため、ひたすら勉強に打ち込んだ。

 

……

 

12時のチャイムがなり、俺は勉強を始めてから3時間以上経ってることに気付いた。

その間、一切休憩していないので相当集中していたのだろう。

そんな事を考えていると、突然、家のドアが開いた。

 

「ただいまー!」

 

「お邪魔します。」

 

俺は声が2つしたことに気付き、玄関に目を向ける。

なんとそこにはらいはだけではなく、五月までいたのである。

 

「なんで、五月が…?」

 

「らいはちゃんに誘われたので…。」

 

「今日は五月さんと遊ぶ約束をしてたの!それで、お昼ご飯を私が作るから家に来てもらったの!」

 

「なるほど…。」

 

俺は納得していないが納得する。

心の整理が着くまでは、あまり五つ子に会いたくなかったが仕方ない。

特に五月ならまだマシだろう。

いや、全然マシではないな。

先日、告白されたばっかりであった…。

少しこの場に居辛く感じたので、俺は出かけることにした。

 

「らいは。少し出かけてくるな。」

 

「ダメ!!お兄ちゃんはここで五月さんのお相手してて!」

 

「なんでだ??」

 

「私、買い忘れたものがあってそれを買いに行かなきゃ行かないの。」

 

「それこそ俺が行くべきなんじゃ?」

 

「お兄ちゃん。いいから、座っててね。」

 

らいはは笑顔だけど、めちゃくちゃ怖い顔をしていた。

よく分からないが、ここは大人しく従っておこう…。

 

「わかった…。気をつけて行ってこいよ。」

 

「うん!行ってきます!」

 

こうして、らいはは買い物に出かけた。

取り残された俺と五月はどちらも言葉を発することなくお互いに沈黙を守っている。

数分がたち、この空気に耐えられなくなったのかようやく五月が口を開いた。

 

「昨日は何をしていたのですか?」

 

「えっ、昨日か…?」

 

昨日は…。

 

「昨日は少し出かけてたな。」

 

「どこにですか??」

 

「えーっと、近所のデパートだ。」

 

「嘘は良くないですよ。」

 

なぜ、嘘だと分かるんだ…?

それに目がめちゃくちゃ怖い。

 

「ところで、そんな事を聞いてどうするんだ…?」

 

俺はなんとか話を逸らさせようと頑張る。

しかし、五月は全く動じなかった。

 

「上杉君。真剣に向き合ってくれるのでしょう?」

 

「…。昨日は一花の家に行っていた。」

 

「なぜ、最初、嘘をついたのですか?」

 

「分からない…。後ろめたかったのかもしれない。」

 

「そうですか。やはり事実だったのですね。」

 

五月は、はぁーっとため息を吐く。

 

「ところで、なんで俺が一花の家に行ったことを知ってたんだ…?」

 

「昨日の夜に五つ子のラインで一花が上杉君とお家デートをしたと言ったんですよ。」

 

「あいつ…。」

 

そもそも、お家デートというような雰囲気では全くなかったのだが…。

 

「で、お前はそれを確認して何がしたかったんだ?」

 

俺は五月がこのことを聞いてきた意図がわからず直接聞いてみる。

 

「不公平だと思うんですよ。」

 

五月はボソリと言う。

 

「どういうことだ…?」

 

「私も上杉君とデートがしたいです。私だって上杉君のことが好きなんですよ。」

 

五月は自分のセリフが恥ずかしかったのか顔が真っ赤だ。

 

「それを言うために、今日ここに来たのか?」

 

「いいえ、これはついでです。」

 

「ついでなのか…。」

 

「ついでですが本気です。してくれると言ってくれるまで、私はここを動きません。」

 

どうやら、デートがしたいというのは本気みたいだ。

顔が真剣である。

五月は1度決めたことは意地でも通そうとするので、承諾する以外の道はないだろう。

 

「わかった。いつすればいいんだ。」

 

「明日です。」

 

「いや、明日って…。」

 

「はい。明日は私たちの誕生日です。ですが、誕生日会は夜にやるので昼間は私とデートしてください。」

 

「いや、しかし…。」

 

「少しくらい私がいい思いしたっていいじゃないですか。結局、遊園地にだって一緒に行ってくれてませんし。」

 

「それは確かにそうだな…。」

 

「それでは、明日は9時に駅前に集合でいいですね。」

 

「わかった…。この事ってほかの姉妹には…?」

 

「もちろん自慢します。」

 

五月はなぜか勝ち誇った顔をしている。

告白以来、枷が外れたのだろうか。

すごく、堂々としている。

 

「そうか…。わかった…。程々にしろよ…。」

 

こうして、俺は五月と遊園地にデートに行くことになったのであった。

 

 

 



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第七十一話 五等分されない誕生日(1)

どうもカズめぐです。
何とか、完結させたいと思います。
気長にお待ちください。


5月5日の朝。

今日は、五つ子達の誕生日である。

誕生日会は夜からだが、とりあえず「おめでとう」と連絡はしておいた。

しかし、みんなお怒りなのだろうか、誰からも返事がない。

俺はため息を吐き、この状態のきっかけを作った人物を駅で待っている。

数分後、その人物が到着した。

 

「お待たせしました。」

 

「いや、全然待ってないぞ。いま来たとこだ。」

 

俺はらいはから教えてもらった決め台詞を言う。

 

「あなたがそんな事を言えるなんて驚きです。」

 

「そうか。まあ、とりあえず電車に乗ろう。」

 

「そうですね。では、行きましょうか。」

 

こうして俺達は遊園地に向かうために電車に乗った。

俺は電車の中で五月にずっと気になってたことを聞く。

 

「みんななんか怒ってないか?」

 

「怒ってましたよ。」

 

五月はくすくす笑いながら言ってきた。

俺からしたら全然笑えない話なんだが…

 

「やっぱりか。今朝、連絡したのに返事が来なかったからな。」

 

「まあ、今はみんなのことより私のことを考えてくださいよ。」

 

五月は顔を真っ赤にしながらそんなことを言っている。

 

「いつも思うんだが、恥ずかしいなら言わなきゃいいだろう。」

 

「はっきり言わないと、鈍感な上杉くんは気づかないじゃないですか。」

 

五月がプクーと頬をふくらませる。

こういう所はやはり五つ子だ。

他の姉妹と瓜二つである。

 

「今、他の人の事考えてましたね。」

 

五月が冷たい視線を送ってくる。

なぜ、分かるんだ。

怖すぎる。

ここは、下手に嘘をつくとややこしくなりそうなので正直に謝ることにした。

 

「すまない…。」

 

「正直に謝ってくれたので今回は許します。でも、次はないですからね。」

 

「肝に銘じておく。」

 

こんな事を話していると、電車は目的の駅まで着いた。

俺達は電車降り、歩いて遊園地に向かう。

 

「そういえば、なぜ遊園地に来たかったんだ?」

「女の子は好きな人と1度は遊園地に来てみたいものなんですよ。」

 

「そうなのか…。」

 

あまりにもストレートに好きな人と言われてしまい、俺は少し照れてしまった。

照れているのがバレないように、俺は話を逸らした。

 

「着いたら、まず何をするんだ?」

 

「まずはジェットコースターに乗ります。」

 

「いきなりかよ…。」

 

「で、そのあとはお化け屋敷に行きます。」

 

「何時頃に帰る予定なんだ?」

 

「デートで帰り時間を聞くのは御法度ですよ。」

 

「初耳だ…。お前よくそんなこと知ってるな。」

 

「べ、べつに勉強した訳では無いですよ!?」

 

「別に聞いてないぞ。」

 

どうやら、デートについて予習をしてきたみたいだ。

五月のキョドり具合を見れば分かる。

そうしてる間に俺達は遊園地に着いた。

その後、俺達は五月がたてた予定通りにアトラクションを周り、遊園地を満喫した。

そして今は最後の観覧車に乗り始めたところだ。

 

「上杉くん。今日はありがとうございました。おかげで最高の誕生日です。」

 

五月がにっこりと微笑みながら行ってくる。

夕焼けと相まって余計に綺麗に見えた。

 

「こちらこそありがとうな。俺も遊園地なんて久しぶりに来て楽しかった。」

 

「そうですか。それなら良かったです。」

 

「あぁ。だいぶ高い所まで登ってきたな。もうすぐ頂上なんじゃないのか?」

 

俺は窓の外を見ながら五月に聞く。

しかし、返事はない。

俺は不思議に思い五月の方をむくと、五月は下を向いていた。

数秒後、五月は顔を上げた。

五月の顔を見るとなにか決心した顔をしている。

 

「どうかしたのか?」

 

「上杉くん。お願いがあるのですが。」

 

「お願い?聞ける範囲でなら聞くぞ。」

 

「ここで私にキスしてください。」

 

俺は五月の発言に固まる。

今、五月はキスしてくれと言ったのか…?

頭の整理が追いつかない。

 

「上杉くん、聞いてますか?」

 

「一応聞いてるぞ…。」

 

「なら、もうすぐ頂上なので早めにお願いします。」

 

「いや、待て。まだするとは言ってない。」

 

「してくれないのですか?他の姉妹にはしているのに?」

 

五月が首を傾げてそんな事を言ってくる。

どうやら、逃れるすべはないみたいだ。

 

「わかった…。なら、目を瞑ってくれないか…?」

 

俺は覚悟を決め五月に言う。

それを聞いた五月は目を瞑り、こちらに顔を向けてきた。

俺は五月の顔に自分の顔を近付け、唇を重ねる。

ほんの数秒の出来事なのにとても長く感じられた。

五月の顔から離れると、五月は静かに目を開けた。

 

「キスってこんなに幸せな気持ちになるんですね。」

 

五月はとても嬉しそうにそんなことを語る。

俺はなんて言っていいのかわからなかったので、とりあえず相槌だけ打った。

「上杉くん。改めて、今日は本当にありがとうございました、」

 

お礼を言ってくる五月の顔は今までになく、可憐で見蕩れてしまうほど美しく、とても幸せそうなものであった。

その後、俺達は観覧車から降り、帰路に着くのであった。

 

 

 




五月回はとりあえず終了。


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第七十二話 五等分されない誕生日(2)

どうもカズめぐです。
原作はもう終わっちゃいそうですね。
何とかこっちも、終わらせられるように予定していた細いイベント会などを省いて、テンポよく進めたいと思います。


5月5日の夜。

中野家にて。

誕生日会のはずなのに、何故か部屋は沈黙に包まれていた。

心当たりはめちゃくちゃある。

しかし、今回に至ってはどうしようもなかったのだ。

と、心の中で言い訳をする。

そんな中、四葉が口を開いた。

 

「せっかくの誕生日会なんだから盛り上がろうよ!ねっ!」

 

しかし、他の4人は反応しない。

また、沈黙…。

しばらくして、今度は三玖が口を開いた。

 

「誕生日デート。私も行きたかったな。」

 

その言葉は俺の心にグサッと刺さる。

 

「すまない。お前達に事前に話すべきだったな。」

 

「そうよ。今朝、出かける寸前の五月に言われて、止めることすら出来なかったわ。」

 

と、二乃が言う。

とういうか、事前に通告されてたら止めに入ってたんですね…。

 

「お詫びと言ってはなんだが、その、なんだ。今度、埋め合わせをするってことじゃダメか?」

 

「その言葉を待ってたのよ。フー君♡」

 

「えっ?」

 

先程まで眉間にシワを寄せていた二乃は今では満面の笑みである。

三玖と四葉も嬉しそうな顔をしていた。

五月だけはこめかみを指で抑えて唸っている。

ちなみに一花はどうしても撮影から抜け出せなかったので、今日は不在だ。

 

「フータロー。言質とったからね。」

 

「上杉さん!もう撤回は出来ませんよ!!」

 

3人のはしゃぎ方を見て俺はようやく事の顛末を理解した。

恐らくこいつらは、怒っている演技をしていたのだ。

 

「お前らまさか…。」

 

「そうよ。演技よ。」

 

「まさか、四葉にまで騙されるなんて…。」

 

「四葉はこういうの苦手そうだから、素のままでいてもらった。」

 

「なるほど。確かにこいつは怒ってる風ではなかったな。」

 

「なっ!?上杉さん!一応私も少しは怒ってるんですからね!?」

 

ん?

なぜだろう。

四葉の発言に違和感を感じる。

 

「もしかして、ほんとに怒ってはいたのか…?」

 

俺は違和感の正体を直接聞いた。

 

「まあね。朝は怒ってたけど、過ぎたことはしょうがないってなって、この作戦をみんなに提案したわ。」

 

と二乃が言う。

まあ、怒られても仕方ない。

本来みんなを公平に祝うべき誕生日なのに1人にだけ特別な待遇をしてしまったのだ。

怒られて当然である。

しかし、こいつらはこいつらなりに考えて、少しオブラートに包んだやり方で俺に怒りをぶつけたのだろう。

こいつらには感謝しなければならない。

 

「その、なんだ。ありがとうな。」

 

俺はお礼を言う。

 

「そこはごめんなさいじゃないのかしら?」

 

二乃がくすくす笑いながらそんなことを言ってきた。

 

「フータローもう気にしなくていいよ。ちゃんと言質は取ったから。」

 

「そうですよー!せっかくですから誕生日会を楽しみましょう!」

 

「そうだな。じゃあ、改めて言わせてくれ。誕生日おめでとう。」

 

こうして、無事平和に(?)誕生日会を楽しむ事ができ、ゴールデンウィーク最終日は幕を閉じたのであった。

 




デート回はやらないかも。
そこは読者の反応を見てかな。


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第七十三話 気まぐれ一花

どうもカズめぐです。
いつも拙い文章を読んでいただきありがとうございます。
これからも頑張るのでよろしくお願いします。


5つ子の誕生日から3週間ほどが経つ5月の下旬。

教室の雰囲気はなんだがソワソワしていた。

まあ、ある意味仕方の無いことなのだが、みんな少し浮き足立ちすぎだろ…。

そう、今日は修学旅行の班決めなのである。

俺は学級委員なので、みんなの前に立って仕切らなければならい。

前回も思ったことだが、みんなの前に立って仕切るということはほんとに大変である。

しかし、やるからにはしっかりとこなさなければならない。

 

「これから修学旅行の班決めを行いたいと思います。」

 

「班は5人までで組んでください。組み終わったら私たちのところまで伝えに来てください。」

 

俺ともう1人の学級委員の五月が仕切る。

しかし、俺が班決めをすると言った途端、クラスは大盛り上がりになってしまったので、五月の言うことを聞いているやつはいるのだろうか。

 

「ほんとにみんな話を聞いてるのか?」

 

「まあ、わかりませんが、私たちはやるべき事をこなしましょう。」

 

「そうだな。てか、俺達も組まないとだしな。」

 

「それなら心配いりませんよ。」

 

なぜか、五月がニコッと微笑みかけてくる。

その笑顔に俺は嫌な予感がした。

 

「五月。その班の名簿の紙見せてくれないか。」

 

「どうぞ。」

 

五月に渡された紙を見ると、そこにはある意味予想通りのことが書かれていた。

しかも、ご丁寧にボールペンで。

 

「五月。これはなんだ。」

 

「私たちの班ですよ。」

 

「なぜ、そこに俺が入っている?」

 

「ちょうど、5人になりますので。」

 

そう、こいつらは一花を除いた4人と俺で班を構成し、記入したのである。

 

「誰の差し金だ?」

 

「全員です。」

 

全員か…。

これは覆せそうにないな。

まあ、こいつらと一緒というのも悪くわない。

 

「はぁ、仕方ないな。」

 

俺は渋々承諾する。

 

「意外です。すんなり受け入れるんですね。」

 

「まあな。お前らとでも悪くはないと思ったんだ。」

 

「ちょっと!!恥ずかしいこと言わないでくださいよ!」

 

五月が照れて顔を真っ赤にする。

いや、恥ずかしいことは五月の方が今まで散々言ってきてる気がするんだが…。

その後、何やかんやでほかのクラスメイトの班もすんなり決まり、放課後となった。

俺は帰りの支度をして、教室から出ようとする。

今日は、行かなきゃ行けない場所があるのだ。

 

「フータロー。一緒に帰ろ。」

 

三玖が教室を出ようとする俺を誘ってきた。

 

「すまない。今日は少し用事が入ってるんだ。」

 

「そっか。浮気?」

 

「いや、違うだろ。浮気ってなんだよ。」

 

「女の人に会いに行くのかなって。」

 

…。

勘が鋭いな。

確かにそうである。

しかし、ここで本当のことを言うとややこしくなるのでここは適当に誤魔化す事にした。

 

「ただの用事だ。」

 

「そっか。浮気はバレるからね。」

 

そう言うと、三玖は先に教室から出ていってしまった。

三玖が言うと、少し寒気がする。

なぜなら、前に尾行をされたことがあったからだ。

その後、俺は周りに気を付けつつ目的地へと向かった。

そして、俺は目的地のインターフォンを押す。

 

「はーい。」

 

「すまない。少し遅くなった。」

 

「全然大丈夫だよ。あがってあがって。」

 

そう言われ、俺は中に入る。

そう、今日の用事とは一花に会いに来ることだ。

俺と一花はテーブルを挟み、向かいあわせで座った。

 

「で、今日はフータローくんからお呼び出しだけど。どうしたのかな?またしたくなっちゃった??」

 

一花がいたずらっぽく笑う。

 

「そんなわけないだろ。真面目な用事だ。」

 

「むすっ。そう言われると傷付いちゃうなー。なにも、話したく無くなっちゃうなー。」

 

一花は俺が今日ここに来た理由を分かってるのだろうか。

わざとらしく、泣き真似をしてこちらの様子を伺っている。

 

「いや、その、すまない。傷つけたのなら謝る。」

 

「まあ、別に大丈夫だけどね。で、それで何が聞きたいのかな?」

 

「こないだの話についてだ。」

 

俺は真面目なトーンで一花に聞く。

 

「俺が死ぬのを避けるにはどうしたらいいんだ。」

 

そう、ずっとこれが聞きたかったのである。

今はまだ半年以上先のことだが、いつ歯車が狂い出すか分からない。

だから、少しでも早く知っておきたいのだ。

俺が死んだ理由を。

しかし、一花は俺が望んでいた答えを言ってはくれなかった。

 

「ごめんね。それは言えない。」

 

「なんでなんだ?」

 

「今はまだ言えないかな。」

 

「これを言ったら、私はすごい嫌な人になっちゃう。」

「どういうことだ?」

 

「んーん。出来る限り私もバッドエンドにならないように協力する。」

 

「なら、教えてくれてもいいんじゃないのか?」

 

「だめ。これはほんとに最後の手段だから。それにまだこうなるとは限らいし。」

 

「つまり、ある条件を満たすと、死ぬ可能性があるってことか?」

 

「そうだね。それかもういっその事卒業式休んじゃえば?」

 

「確かにそれもありだな。」

 

一花の言うことは的を得ている。

確かに卒業式の日に死ぬなら、家から出なければいい。

そうすれば死ぬ確率はすごく低くなるだろう。

しかし、らいはや親父になんと説明すればいいのだろうか。

本当のことを言っても信じてもらえないだろう。

そうなると、休むのは無理である。

一花もそれがわかっているみたいだ。

少し、苦笑いをしている。

 

「まあ、他にも色々と方法は考えようよ。」

 

「そうだな。ありがとう。」

 

「んーん。私のためでもあるから。」

 

一花はそう言うと、今度はなにか閃いたのか別のことを聞いてきた。

 

「そういえば、修学旅行の班はどうなったの??」

「俺とあいつら4人の班だ。」

 

「あー!やっばり…。いいな、フータローくんと同じ班なんて…。」

 

「そんなにいいものなのか?」

 

「当たり前でしょ!お姉さんは嫉妬しちゃうよ…。」

 

「そ、そうなのか…。」

 

若干、一花の勢いに俺は引き気味である。

しかし、次の瞬間何かいいことでも思いついたのか、とても悪い顔をしていた。

 

「そうだ。私もついて行けばいいんだ。」

 

「えっ?」

 

「私も1人で京都旅行に行けばいいんだよ!フータローくん!修学旅行の日程教えて!」

 

「それは別に構わないが、仕事は大丈夫なのか?」

 

「大丈夫!今は特にお仕事入ってないから。」

 

…。

それはそれでどうなのだろうか。

俺はこんな事を考えたが口に出すのはやめた。

 

「そうか。もし着いてくるなら、アイツらには事前に伝えておけよ。」

 

「えー。サプライズだよ。」

 

「…。まあ勝手にしてくれ。」

 

俺は一花にらそう言うと、時計を確認した。

時刻はもう18時である。

 

「俺はそろそろ帰るな。」

 

「えっ、泊まっていかないの?」

 

一花は不思議そうな顔をしていた。

いや、なぜ泊まるのがデフォルトなんだ。

不思議なのはこっちの方である。

 

「家でらいはが待ってるからな。」

 

俺は真っ当な理由をいい、席を立った。

 

「そっか。じゃあ、またね。」

 

「あぁ、またな。」

 

俺は一花の家を後にして、帰路に着く。

何やら、修学旅行は一波乱ありそうな予感もするが、まあいいだろう。

俺はそんなことを考えながら、家へと帰るのであった。

 

 




百話までに終わるのであろうか…。
いや、終わらせたい…。


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第七十四話 修学旅行(1)

どうもカズめぐです〜
最近はDeadbyDaylightばっかりやってて、色々と疎かになっている…笑
良かったら、フレンド募集してます!


6月の某日。

俺達は今、京都にいる。

そう、とうとうこの日を迎えたのであった。

修学旅行である。

 

「まずは金閣寺に行くわよ。」

 

「銀閣寺がいい。」

 

「班長は私なんだから、従いなさいよ!」

 

「まあまあ、落ち着いてください。」

 

「そうだよ!せっかくの修学旅行なんだから楽しくいこうよ!」

 

早速、こいつらは何やら揉めている。

俺がそんな様子を端から見ていると、突然、二乃と三玖がこちらに話を振ってきた。

 

「フー君はどっちの方がいいと思う?」

 

「フータローも銀閣寺がいいよね。」

 

圧がすごい…。

これは、どっちを答えても喧嘩になるやつだな…。

さて、どうしたものか。

そんな事を考えていると、急に俺達の背後から誰が話しかけてきた。

 

「私は龍安寺に行きたいな。」

 

俺が後ろを振り向くと、そこには一花がいた。

 

「なんで、一花が??」

 

俺以外の人はみんな不思議そうな顔をしている。

まあ、そりゃそうだろう。

俺も事前に伝えられてなければ、驚くに違いない。

 

「ふふふ。せっかくの修学旅行だから着いてきちゃった。」

 

と、一花がハニカミながら言っている。

 

「じゃあ、みんなで一緒にまわれるんだね!」

 

大多数が、ポカーンとしてる中、四葉だけは非常に嬉しそうである。

 

「そういう事だね。そういえば、久しぶりに全員集合だね。」

 

「確かにそうね。誕生日会も一花だけは不参加だったし。」

 

「一花。仕事は大丈夫なの?」

 

「まあ、なんとかなるよー。」

 

「一花がそういうのであれば、ここはみんなで楽しみましょう。」

 

「そうね。せっかくだし。でも、行き先だけは譲れないわ。」

 

「私も譲れない。」

 

「二人とも、喧嘩しちゃダメだよ。だから、ここはお姉さんに任せなさい!」

 

「そうですね。二乃と三玖が喧嘩し始めると、日が暮れてしまうので、ここは一花に任せましょう。」

 

「あはは。五月ちゃんに任されちゃった。」

 

「仕方ないわね。その代わり、ちゃんと金閣寺もプランに入れなさいよ。」

 

「銀閣寺も。」

 

「任せなさい!」

 

こうして、一花が来てくれたおかげで、喧嘩が始まることは無く、割と穏便に済ませることができた。

そして、俺達は今バスの中にいる。

俺はバスの中から外の景色を見ている。

あまり見た事のない景色のはずなのに、なぜかとても懐かしい気分になる。

確かに、小学生の頃にも来たことがある。

しかし、それだけでこんなに懐かしい気分になるのだろうか。

俺は何か、大事なことを忘れているのだろうか。

…。

思い出せない。

俺がこんなことを考えてるいると、隣にいる一花が何かを察したのか、話しかけてきた。

 

「何か、思い出した?」

 

「いや、何も…。」

 

「そっか。でも、いずれ思い出すよ。」

 

「そういうものなのか?」

 

「うん。そして、これを思い出したら、死んだ原因も思い出すかもね。」

 

一花がサラリと大事なことを言う。

 

「えっ。そんなに重要な記憶なのか?」

 

「うん。そうだよ。」

 

「まじか…。全然思い出せない。」

 

「そんなフータローくんにヒントを上げるね。君は、1回この場所に来たことがあるよね。その時に誰と会ったのかな?」

 

「誰と…会った…?」

 

「うん。誰と会ったのかな。」

 

「ここで、俺の生き方を変えてくれた女の子に会った。でも、それをなぜ一花が?」

 

「じゃあ、もう1つヒント。その女の子は私たちの誰かです。」

 

「あっ…。」

 

俺は一花からその言葉を聞いた瞬間、全てを思い出した。

しかし、そのあと、俺は目の前が急に真っ白になり、記憶が途絶えるのであった…。

 



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第七十五話 修学旅行(2)

どうもカズめぐです。
最近、花粉のせいで、鼻がぐじゅぐじゅです…



目を覚ますと、そこは知らない天井だった。

知らない天井を見るのは何度目だろう。

今までは人為的なもので気を失っていたが、今回は違う。

目を覚ますと、また記憶がなくなってるのかと思ったが、そうでも無いらしい。

気を失う以前の記憶もしっかり覚えている。

そう、俺は過去のことを思い出して気を失ったのだ。

おおかた、脳が情報の多さに処理落ちでも起こしたのだろう。

そんなくだらないことを考えていると、病室に誰か入ってきた。

 

「フータローくん!目を覚ましたの?」

 

ドアのほうを見るとそこには一花が立っていた。

 

「一花か。」

 

俺は一花に声をかける。

 

「よかった。その様子を見る限り平気そうだね。」

 

一花がホッと息を吐く。

 

「ところで、ほかのやつらはどうしたんだ?」

 

「みんななら宿に戻ってるよ。今ここには私と先生しかいない。」

 

「そうか。で、先生はどこにいるんだ?」

 

「先生は手続きを済ませてるところだよ。」

 

「なるほど。じゃあ、とりあえずここで待ってればいいんだな。」

 

「うん。そうだね。」

 

一花との会話が一区切りつき、沈黙が訪れる。

しばらく、お互いに黙ったまんまだったが、俺は一花に話さなくてはいけないことがあったので、一花に話しかけた。

 

「なあ、一花。」

 

「なーに?フータロー君。」

 

「俺、記憶…」

 

俺が大事なことを言おうとした途端、病室に先生が入ってきて、遮られてしまった。

 

「おっ、上杉。目を覚ましたのか。大丈夫か?」

 

「はい。もう大丈夫です。」

 

「そうか。それはよかった。貧血だったらしいが、念のため今日はここに泊まってくれ。」

 

「わかりました。」

 

「先生はもう宿に戻るけど、困ったことがあったらすぐに連絡をくれよ。」

 

「はい。ありがとうございます。」

 

線背は俺との会話を終えると、今度は一花に話しかけた。

 

「中野はこの後どうするんだ?」

 

「もう少し、上杉君の様子を見てから、ホテルに向かいます。」

 

「そうか。くれぐれも気を付けるんだぞ。」

 

「はい。」

 

こうして先生は去っていった。

先生が病室から出たのを確認してから。俺は再び一花に話しかける。

 

「一花。俺、記憶が戻ったんだ。」

 

今度は誰にも遮られることなく伝えることができた。

 

「そっか。じゃあ、どうして死んじゃったのかも思い出したのかな。」

 

「ああ。俺は卒業式の後に…。」

 

俺は、卒業式の後にはしゃいでいて不注意だった四葉をかばう形で車にはねられてしまったのだ。

と、言おうとしたが、言うのをためらった。

わざわざ口にしなくても一花はわかっているだろう。

 

「ちゃんと思い出したんだね。私たちのだれを選んだのかもも。」

 

一花も明言を避けたいのか、少しはぐらかして聞いてくる。

 

「ああ。俺は四葉を選んだ。」

 

「うん。君は四葉を選んだ。記憶が戻って四葉への好意も思い出したかな?」

 

「それは…。正直わからない…。確かに記憶は戻ったが、俺は違う道を歩んでいる。だからこの先どうなるかなんて俺にはわからない。」

 

そう。ほんとにわからないのだ。

ちょっとしたことで未来なんて変わってしまうのだから。

 

「そっか。でもね、私は二回も同じ結末を見てきたんだよ。いろいろと状況も違うにも関わらず。」

 

相当辛い思いをしてきたのだろう。

一花はとても悲しそうな顔をしている。

 

「しかし、変わると信じるしかないだろ。」

 

「うん。そうだね。だから、私頑張るよ。たとえ、フータロー君に選ばれなかったとしても、私は君を守りたい。」

 

「そうか…。」

 

俺は一花のあまりにも真剣な表情に何も言えなくなってしまった。

すると、一花は立ち上がり扉のほうに歩いていった。

 

「そろそろ時間だから帰るね。ほかの子には私から連絡しとくから。フータロー君はゆっくり休みなよ。じゃあ、また明日ね。」

 

「あぁ。ほかのやつにもよろしく頼む。今日はありがとうな。」

 

「どういたしまして。おやすみ。」

 

そういうと、一花は病室から出て行った。

一人取り残された俺は、これからのことを考えながら眠りにつくのであった

 



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第七十六話修学旅行(3)

とうとう最終巻が発売されましたね!
ねぎ先生本当にお疲れさまでした!!



修学旅行二日目の朝。

俺は病院で目を覚まし、簡単な検査を受けてから、病院を後にした。

病院から出ると、一花を除いた姉妹たちが出迎えてくれた。

 

「フー君。大丈夫だったの?」

 

「ああ。ただの貧血だから、もう大丈夫だ。」

 

「本当に心配したんですからね。」

 

「うん。私もすごく心配した。」

 

「本当にすまない。心配してくれてありがとうな。」

 

「では、あまり上杉さんに無理させないように京都巡りをしましょう!」

 

四葉が右腕を突き上げ、「おー!」と言っている。

俺はそんな四葉を見ながら、どうしても気になっていることを、四人に聞いてみた。

 

「なあ、一花はどうしたんだ?」

 

「一花はもう東京に帰っちゃったわよ。」

 

二乃が強がりながらも少し寂しそうに言う。

 

「今日から、またお仕事なんだって。」

 

三玖が追加の情報を教えてくれた。

 

「そうか。悪いことをしたな…。」

 

一花は昨日しか休みがなかったのに俺の看病に付き合ってくれたらしい。

これは、帰ったらお礼をしなきゃいけない案件だ。

 

「というわけで、今日は私たち五人で京都をまわりましょう。」

 

五月がそういうと、みんな一斉にバス停に歩き出した。

その後、俺たちはバスを乗り継ぎ、龍安寺に向かった。

俺はバスで移動中、昨日の事を思い出しながら、今後について考える。

全部思い出したからと言って、何かが劇的に変わるわけではないが、変化がないわけでもない。

こいつらとの接し方も多少変わってしまうのだろうか。

俺は今の気持ちと、過去の気持ちがごちゃごちゃに混ざり合ってうまく考えがまとまらないでいる。

昔の俺は確かに四葉が好きだった。

しかし、今は誰が好きなのかわからない。

いや、全員好きなのかもしれない。

だが、俺は一つの答えを導き出すと、あいつらに宣言した。

なので、選ばなきゃいけないのだ。

その先にたとえ死という運命があったとしても。

 

「上杉さん。考えごとですか?」

 

よっぽど俺が気難しい顔をしていたのか、心配そうに隣に座っていた四葉が話しかけてきた。

 

「まあ、ちょっとな。」

 

「悩み事なら私が聞きますよ!!」

 

「そうか。なら、質問なんだが、抗えない運命ってのはあると思うか?」

 

よっぽど、切羽詰まっていたのか俺はらしくもない質問を四葉にぶつけてしまった。

気づいた時には遅し。

四葉は困った表情を浮かべている。

 

「抗えない運命ですか…。う~ん…。」

 

「すまない。やっぱり忘れてくれ。」

 

「いいえ!忘れません!今日中には答えを出しときますね!」

 

「あ、いや、別に…」

 

俺は四葉の事を止めようとしたが、四葉は何やらスマホをいじることに夢中になってしまったため、止めることを断念した。

そうこうしているうちに、俺たちは龍安寺についたのであった。

 

「やっと、着きましたね。少しお腹がすいてしまいました。」

 

五月がバスから降りて開口一番にそんなことを口走っている。

 

「あんたはいつも空腹じゃない。」

 

二乃がすかさず突っ込みを入れた。

 

「そ、そんなことはないですよ!」

 

五月が思わず大声で反論をする。

それに、二乃がすかさず何かを言おうとしたが、三玖に止められていた。

 

「お寺だから、静かにして。」

 

さすが、歴女である。

こういうことに関しては厳しい。

その後、俺たちは静かに龍安寺を満喫するのであった。

 




自分のは未完で終わる気がしてきた。


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第七十七話修学旅行(4)

どうもかずめぐです。
リクエストが多かったので頑張って書きました。
遅くなってしまいすいません…。
これからも、ペースは悪いと思いますがよろしくお願いします。


 

修学旅行二日目の自由行動が終わり、俺たちはホテルに戻ってきていた。

そして、今は大浴場で入浴中である。

 

「上杉君。昨日は大丈夫だったかい?」

 

「あぁ、ただの貧血だ。」

 

「そうか。それならよかった。」

 

「心配してくれてありがとうな、武田。」

 

「ははは。そりゃ心配するよ。僕たちは友達なのだからね。」

 

「そうか。いったん、友達かどうかは置いとくとして、お前に質問がある。」

 

「なんだい、上杉君?」

 

「なんで、お前はこんなに距離が近いんだ?」

 

俺はようやくここで、武田に聞きたかったことを聞くことができた。

なぜかこいつはガラガラの大浴場にも関わらず、腕と腕がぶつかり合うくらいの距離にいるのだ。

正直、怖いんだが…。

 

「ははは、それは愚問だよ上杉君。僕たちは友達じゃないか。」

 

武田は笑いながらそんなことを言っている。

 

「いや、友達でもこの距離感はおかしいだろ。」

 

「そんなことはないさ。僕が読んだ本にはこれが正しいと書いてあったよ。」

 

「それ、何の本だよ!?」

 

「まあ、いいじゃないか。細かいことは気にしないでくれ。」

 

「気にするんだが…。」

 

俺が少し距離を開けても、武田は何食わぬ顔で距離を縮めてくる。

 

「ところで上杉君?今日のハーレムはどうだったんだい?」

 

俺がどう距離をとろうか考えていると、突然武田がそんなことを聞いてきた。

 

「別にハーレムってわけじゃないんだが…。」

 

「ふふふ。そんなことを言いつつ、君は彼女たちのだれかを選ぶんだろう?」

 

武田が不敵な笑みを浮かべて聞いてくる。

 

「…。お前にはお見通しってわけか。」

 

「当たり前だよ。ずっと、見てきたのだからね。」

 

「さすがにその発言は引くぞ…。」

 

「まあ、これに関しては勉強と違って最適解はないのだから、君の好きなようにすればいいと思うよ。」

 

「まさか、このことで武田に諭されるとはな…。まあ、心配してくれてありがとうな。」

 

「ふふ。では、そろそろ出るとしようかね。」

 

「そうだな。」

 

こうして俺たちは、大浴場から出たのだった。

その後、俺たちは夕食を済ませ、あとは寝るだけになった。

消灯まではまだ時間があるので、ロビーにあるお土産屋さんに行った。

すると、そこには三玖がいた。

 

「フ、フータロー、こんなとこでどうしたの??」

 

「消灯前にらいはへのお土産でも見ておこうかなと思ったんだ。」

 

「そうなんだ。」

 

「ああ、三玖は何してるんだ?」

 

「私も…。お土産を見ようかなと…。」

 

なんだか、今の三玖は歯切れが悪い。

何かあったのだろうか?

 

「三玖。なにかあったのか?」

 

「えっ…?何にもないよ…。」

 

「正直に答えてくれ。」

 

俺は三玖を問い詰める。

 

「そ、その…。フータローに会いたいと思って、ロビーに来たら、本当に会えたからびっくりした…。」

 

三玖はすごく恥ずかしそうに俯きながら言っている。

なんだか、野暮なことを聞いてしまったみたいだ。

しかし、いざ言われると、恥ずかしいものなんだな…。

 

「そ、そうか…。問い詰めて悪かったな…。」

 

「んーん。大丈夫だよ。」

 

「そうか。なら、よかった。」

 

俺はホッとして息を吐きだす。

 

「そろそろ、消灯の時間だから部屋に戻るか。」

 

「そうだね。また明日ね。おやすみ。」

 

「あぁ、おやすみ。」

 

こうして、修学旅行二日目が終わったのであった。

 



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第七十八話 修学旅行(5)

どうもかずめぐです。
お久です。
最近はfgoとホロライブにハマってます!



修学旅行3日目。

俺たちは清水寺に来ていた。

しかし、人がすごく多かったため、俺はみんなとはぐれてしまった。

携帯で呼び出そうと思ったが、充電するのを忘れてしまったため、画面が真っ暗だ。

仕方ないので、俺は一人でぶらぶらすることにした。

全てを思い出した今、この場所もすごく懐かしく感じる。

とにかく、京都では色々なことがあった。

そんな風に感傷に浸っていると、人混みの中にうさ耳リボンを見つけた。

 

「四葉なにしてんだ?」

 

俺が声をかけると、四葉は恐る恐る振り返り、俺の方を見てくる。

声をかけた相手が俺だということを確認して安心したのか、息をはぁーっと吐きながら俺に話しかけてきた。

 

「よかったです。合流できました。」

 

「えっ?まさか、四葉も迷子なのか?」

 

「はい!そうなんです!気づいたら一人になってました!あれ?お前もってことはもしかして上杉さんも…?」

 

「あぁ、そうだ。俺も迷子だ。」

 

「…。携帯持ってますか…?」

 

「持ってるが、充電切れだな。」

 

「私はホテルの部屋に忘れてきちゃいました…。えへへ…。」

 

「まあ、こんなとこでぐずぐずしてても仕方ないし、ぐるっと周ってみるか?」

 

「上杉さんが良ければ是非!」

 

こうして、俺は四葉と2人で清水寺を回ることになった。

少しすると、四葉が突然閃いたかのように俺に話しかけてきた。

 

「上杉さん。あの、昨日の質問に答えてもいいですか?」

 

「あぁ、あの質問か。そういえば、まだ答えてもらってなかったな。」

 

「はい。ですので、今から答えますね。」

 

「わかった。」

 

「私の答えとしては抗えない運命なんてないと思います。なぜなら、一つ一つの行動の違いで結果は変わっていくからです。」

 

俺は四葉らしくないまともな返答に少し驚いてしまった。

 

「誰の受け売りだ…?」

 

「うっ…。二乃です…。」

 

「やっぱりな…。」

 

やはり、四葉が考えた答えではなかったみたいだ。

 

「でも、私もそれを聞いてなるほどってなったので、私の意見でもあります!」

 

「そうだな。四葉にこの質問をした俺が悪かったよ…。」

 

「うっ…。お役に立てずごめんなさい.…。」

 

「いや、いいんだ。少しでも俺の力になろうと二乃にまで聞いてくれたんだから感謝してる。」

 

「そう言ってもらえると助かります…。」

 

「あぁ。ありがとな。」

 

「いえいえ。それより、どうしてこんなこと聞いたんですか?」

 

四葉が心配そうにこちらを見ている。

四葉にはかねてからこの件に関して協力してもらってるので素直に話してしまいたいが、内容が内容なので話すことを躊躇ってしまう。

自分自身が俺の死に関わってしまったと聞いたら、優しい彼女のことだから自分のことをすごく責めるだろう。

そんな四葉の姿を俺は見たくない。

なので、今はまだ隠しておくことに決めた。

 

「いや、特に理由はない。ふと思っただけだ。」

 

俺は何食わぬ顔で嘘をつく。

後ろめたさで申し訳なくなるが。

今は仕方ないと自分に言い聞かせる。

 

「何にもないならいいですけどー。怪しいですね。」

 

四葉は俺のことを疑いの目で見てくる。

普段は騙されやすいのに、どうしてこういうことだけ勘が鋭いのだろうか…。

 

「いや、本当になんでもないからな。」

 

俺は怪しまれてはいけないので四葉に念を押す。

 

「むっ。今回はそういうことにしときますね。でも、なにかあったらちゃんと私にも話してくださいね!」

 

「わかった。ちゃんと話す。」

 

「約束ですよ!」

 

そう言って四葉は小指を出してきた。

 

「これは??」

 

俺は?を浮かべる。

 

「指切りげんまんです!嘘ついたら針千本飲ませちゃいますからね!」

 

「おっ、おう…。」

 

俺はこうして四葉と指切りげんまんをしてなんとかこの場を乗り切ることができた。

その後、他の3人とも無事に合流することができ、残りの時間で色々な場所にまわることになったのであった。

 

 

 

 

 

 



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第七十九話 修学旅行(6)

お久しぶりです。
アンケートを取ってからだいぶ時間が経ってしまい、すいません
約3年ぶりの続編投稿なので、色々とおかしいところがあると思いますが、あたたかい目で見守って頂けると幸いです
メッセージなどは、すごく励みになるのでじゃんじゃん送ってきてください
これからも、よろしくお願いします



修学旅行3日目の夜

俺は1人で温泉に入っていた

外の景色を見ながらふと考える

前の修学旅行では、色々なことがあった

それと比べると、今回はだいぶ平和である

 

「こんな平和に過ごしてていいんだろうか…。」

 

俺はこの先起こることに対しての不安からか、この様な事を呟いていた

しばらく、考え込んでいたが、のぼせそうになったので、温泉から出た

 

「あら、奇遇ね。」

 

脱衣所から出ると、ちょうど二乃と鉢合わせた

本当にたまたまなのだろうか…?

心でこんな事を考えつつも、口では別のことを言う

 

「二乃か。こんなところで、なにしてるんだ?」

 

「ちょうど、温泉からあがったところよ。」

 

「そうか。なら、湯冷めしないように早めに部屋に戻れよ。」

 

俺はそう言い残し、この場を立ち去ろうとする

しかし、二乃に引きとめられてしまった

 

「ちょっと待って。」

 

「どうしたんだ?」

 

「この後、暇なら軽くお散歩でもしない?」

 

「はぁ…。湯冷めしない程度にだぞ。」

 

こうして、二乃と少し散歩することになった

 

「ねぇ、フー君。」

 

隣で歩いている二乃が話しかけてきた

 

「なんだ?」

 

「前に、私たちと真剣に向き合うって話をしてたじゃない?」

 

「あぁ、したな。」

 

「誰か1人に絞るの?」

 

「今の所、そのつもりでいる。」

 

「そっか。まあ、ゆっくり考えなさい。」

 

「待たせて、すまないな。」

 

「いいのよ。最後に私の隣にいてくれれば。」

 

「どこの世紀末覇者だよ…。」

 

「それほど、アンタにぞっこんなのよ。」

 

「なるほどなぁ…。」

 

俺は顔を上げ、夜空を見る

その様子を黙って、二乃は見ていた

 

「なあ、二乃。」

 

「なに?」

 

「何が正解だと思う。」

 

俺はあえて主語を言わなかった

二乃なら察してくれると思ったからだ

 

「それは、私にもわからないわよ。」

 

二乃は毅然とした態度で言う

 

「そうか。やっぱり、そうだよな。」

 

「えぇ。でも、別に正解を選ぶ必要はないんじゃないかしら?」

 

「どうしてだ?」

 

「正解なんてものは、その時々で変わるじゃない。」

 

「まあ、確かにそうだな。」

 

「だから、自分が1番納得できる選択をすればいいんじゃないかしら?」

 

「なるほどな。お前らしいな。」

 

「褒め言葉として、受け取っとくわ。」

 

「いや、褒めてるんだけどな…。」

 

俺が呆れ顔でいると、二乃がイタズラが成功した子供のような顔で笑ってきた

 

「はぁ。少し冷えてきたし、帰るか。」

 

「えぇ、そうね。」

 

俺たちは旅館に戻った

そして、俺は今自室の布団の中で考え事をしている

やはり、二乃の助言通り、正解ばかりを追い求めるのではなく、自分が納得できる選択を模索していこう

そんな事を考えているうちに俺は眠りについてしまった

こうして、修学旅行3日目は終わったのである

 

 




内容を思い出すために、全部読み返したが、なかなかに恥ずかしいものでした
リハビリなので、展開は全然進んでませんが、楽しんでいただけたら幸いです


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