王を目指す一夏と苦労人ウォズ (ワタリ3@活動停止中)
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第1期 王道編
第一話 王を目指す一夏と未来人ウォズ


もし織斑一夏が常盤ソウゴみたいに王様を目指していたら。
そんな感じの話。



『織斑一夏』は王になるの夢を持つちょっと変わった少年だった。

ある日、自分の姉が出場するISの世界大会『第2回モンド・グロッソ』を観に行くため

ドイツに向かうも途中何者かの襲撃に会い誘拐されてしまう。

この後彼に待ち受けている運命・・・私の知る歴史では織斑一夏はこのまま『魔王』への道を歩むはずだったが・・・

現実はそう甘くない。

 

______________________

 

「ふぁ〜よく寝た。」

「おい!人質がなに伸び伸びと寝てんだよ。」

「あぁ、ごめんごめん。」

 

織斑一夏は自分の置かれている状況に不安や恐怖を一切抱かず

のんびりとしていた。

寝起きでぼーっとしながらも辺りを見渡し状況を整理する。

場所はどこかの廃工場、男が三人に女が一人

男性二人は自分にアサルトライフルを向け、もう一人ははスマホで何かのライブ中継を見ている、流れてくる実況から察するにおそらく自分の姉『織斑千冬』が出ている試合を見ているのであろう。

女性は少し離れた場所で通信機を取り出し何処かに連絡を取っている。

最後に自分の状況も確認する。

体は頑丈に縄で柱につながれており、身動きがうまく取れない。

しかし、織斑一夏はこんな絶望的な状況でもどこか余裕の表情を見せていた。

 

「織斑千冬が試合に出てる!?」

「どう言う事だ!情報はちゃんと通達済みだぞ!?」

「まさか見捨てた?そんなはずは無い!彼女は弟思いのはず。」

 

誘拐実行犯である男三人は焦りだした。

モンド・グロッソでの織斑千冬の試合放棄を目的としたこの誘拐作戦が失敗に終わったからである。

唯一の家族である弟が誘拐されたと知れば織斑千冬は試合を放ってでも助けに来ると考えた3人の誘拐犯達は望まない結果を目の当たりにし絶望する。

 

「・・・これだから男は。」

 

通信を終え、そんな男達の失敗にため息をつきながら女性は次の指示を男達に出す。

 

「弟を殺せ。」

「しかし、相手はまだ子供だ!」

「関係ない。それともなんだ?従えないのか?」

「い、いえ」

 

男達は彼女に逆らえない。

女尊男卑の時代だからというのもあるが、彼女の背後についている

『ある組織』に対する恐れが大きい。

 

「私は片付けの準備をする。さっさとやるんだな。」

 

女性が部屋を出ると男達は銃を一夏に向ける。

 

「スマン、悪く思うなよ小僧。」

「俺たちの為死んでくれ。」

「すまない。」

 

「えっと・・・。」

 

男たちは少し訳があり、多額のお金が必要だった。

それを察してか一夏は苦笑いしながらもこう続けた。

 

「・・・まぁ貴方達も訳ありって事で許すよ。」

「小僧…。」

「民が謝ったらちゃんと許す!それが王様でしょ?」

「言ってる事が無茶苦茶だが、いい奴だな。」

「でも、ここで死ぬのは困るな〜。おじさん達も俺を殺したくないでしょ?だったら俺を逃がしてよ!

おじさん達は子供を殺さなくて済むし俺も逃げられる。ほらこれでWIN-WIN!」

 

一夏は笑顔で懇願する。

 

「無理だ、俺たちも後がないんだ。」

「娘の薬代のためだ!」

「許せ小僧!」

「ちょちょちょマジか?マジで!?マジか!!やめてぇ!!」

 

ようやく自分の状況を理解した一夏は悲鳴を上げるが

男達は無慈悲に、震える指をトリガーに掛け思いっきりそれを引く。

 

銃撃音と共に一夏向けて無数の銃弾が発射されるが…

 

『タイムマジーン!』

 

それは一夏に当たる事は無かった。

突如、巨大な金属の塊が一夏を守るように現れ銃弾を防いだのであった。

 

「うわ!?なんだ!?」

「IS!?」

「あんなIS見た事ないぞ!!」

 

ISは人間が纏う様な形状をしているが、目の前に現れた全長7m以上の巨大な金属で出来た人形はISの特徴に全く当てはまらない。

正しくアニメに出てくるような巨大ロボット兵器だった。

 

目に当たる部分にはカタカナでライダーという文字。

銀色を中心とした機体色に蛍光色の黄緑ライン。

近未来的なデザインをしたロボットは男達を見下げていた。

 

「う、撃て!!」

 

男達同時にロボットに向けて銃を連射するが巨大ロボット

『タイムマジーン』にダメージを与えるどころか傷一つ付けることは出来なかった。

 

『邪魔だ、失せたまえ。』

 

タイムマジーンから男性の声が響くと同時に男3人を巨大な脚部で

足払いをし男達を蹴り飛ばす。

 

「「「うわぁああああっ!!」」」

 

情けない声と共に男達は天井を突き抜け

遥か彼方遠くへ飛び去ってしまった。

 

『ご無事なようで安心したよ。』

 

一夏は唖然としていた。

それもそのはず突如現れた謎のロボットによって

理解するまもなく窮地を救われたからだ。

 

タイムマジーンのロボと書かれた胸部パーツが縦に開くと

中から奇妙なタブレットPCを持った男が降り立つ。

見慣れない服装に長めのマフラーを巻いており、どこかミステリアスな雰囲気を醸し出していた。

 

男は一夏の拘束を解き彼の目の前で膝をつき頭を下げる。

 

「お初にお目にかかります、過去の我が魔王。

私の名はウォズ。未来からやってきた貴方の忠実なる僕です。」

 

「えっと…?」

 

何やらよく分からない単語が出てきたことにより困惑する一夏。

それを御構い無しに男は懐からある物を取り出す。

 

「今の銃撃音で女が戻ってきます。さぁ、こちらを」

 

ウォズと名乗った男の手には白い懐中時計の様な物が握られていた。

 

「ん?なんだコレ。」

「白式ミライドウォッチ…あなたの()()()()()()です。」

 

ウォズはリューズをボタンの様に押す。

 

『白式!!』

 

白式?白式って?

そんな一夏の疑問をよそにウォズはその懐中時計を思いっきり一夏の

腹部めがけて押し込んだ。

 

「んごぉ!?」

 

白式ミライドウォッチは一夏の体内に吸収され一夏に力を与える。

 

「いまISを授けました。さぁ今こそ目覚めの時です。我が魔王。」

 

「いきなり何するの!?それに魔王って?!」

「説明は後です。さぁ早くISの展開を。」

 

一夏は完全に置いてけぼり。

外から先ほどの女性が異変に気付いて戻って来る。

突然現れた男ウォズに驚きながらも冷静に自体を見据える。

 

「貴方、何者?」

「今から倒される者に名乗る名などない。」

「っは!男が調子に乗るんじゃない!」

 

女性は自分用にカスタマイズされたIS『ラファール・リヴァイヴ』起動させ銃口をウォズに向ける。

ウォズはその状況に焦ることもなくやれやれと首を振る。

 

「おっと挑発に乗ってしまった。早くIS展開してくれ我が魔王。」

「んなこと言っても、男はISは使えないって!!」

「・・・仕方がない。」

 

ウォズは持っていたタブレットPCに文章を記入する。

 

「『織斑一夏はIS白式を展開するのであった。』」

「はぁ?いったい何を…。」

 

何を言いだすんだ と言おうとすると無意識に口が動く。

 

「来い!白式!!」

 

本当に無意識だった。

掛け声と共に白い鎧が一夏纏われ、そこに()()()I()S()()()()()が君臨する。

 

「男がISを!?」

「本当にISを展開しちゃった。」

 

驚く二人を尻目に、ウォズは手を広げ声高らかに叫ぶ。

 

「祝え!新たな未来を創造し、全てを断ち切る王者の羽衣

その名も『()()()()()』今まさに魔王の歴史が始まった瞬間である。」

「祝えって…急になにを言いだすんだよこの人。」

 

「…男がISを使えたところで何だ…私の敵ではない。」

 

女が銃口を一夏に向けると白式からロックオン警告が鳴り響く。

 

「さぁ、我が魔王。大いなる力を存分にお使いください」

「俺は初心者だけどな…でもなんだか行けそうな気がする!」

 

ISを纏えば同じ土俵、そんな甘い考えを持ちながら一夏は荷電粒子砲を女にめがけて撃つ。

しかし初心者のお粗末な射撃が当たるはずもなく、女は躱しながら的確に銃撃を白式に浴びせる。

 

「大した事ないね!」

「っち!!当たり前だろう!初心者だから!!」

 

反撃の荷電粒子砲…しかし当たらない。

 

「っくそ!他に武器はないのか。」

「雪片が備わっています我が魔王。」

「雪片って千冬姉と同じ!?」

 

一夏は雪片弐型を装備するが相手の猛攻から身動きが取れない。

 

「でも、どうやって近づけば!」

「腕の武装『雪羅』は射撃だけではなく防御機能も備わっています。」

「そうか!だったら!」

 

腕部に装着している『雪羅』からバリアを展開し射撃から身を守りながら強引に距離を詰め接近戦に持ち込もうとするが相手はIS操縦のプロ、そう簡単にはいかなかった。

 

「くっそ!逃げんな!」

「あはは!弱い弱い!そんの程度で私を倒せるのかい?」

 

状況は一夏の完全不利。

しかしウォズは焦らない、何故なら一夏が勝つと分かっていたからだ。

 

剣術経験がある一夏のポテンシャルと女の行きすぎた慢心と油断。

そして()()()()()()()()された『白式』

可能性は低いが少なからず一夏が勝利する未来が存在していた。

後はその勝利の未来を()が導くだけ。

 

「『織斑一夏は僅かな隙を見つけ 零落白夜を叩き込んで戦いに勝利するのであった。』」

 

 

「・・・・そこだ!」

 

一夏は女のスキを見つける。

弾切れのリロードと一瞬の瞬き。

一見そこに叩き込むのは無茶だと思われるが、一夏の勝利は確定したもの。

そのスキに吸い込まれるように、雪片を突き立て発動させた零落白夜によって、相手のISのSEは一気に消し飛ぶ。

 

「なっ!?こいつ動きが!」

「うぉおおお!!

 

そのまま速度を落とさず相手を押し退け思いっきり壁に叩きつける。

 

「がっは!??」

 

SEが無くなったためか衝撃がダイレクトに伝わり女は軽い脳震盪で

気絶する。

 

「…はぁはぁ…やった。」

 

それを見て安堵したのか力が抜け一夏はISを解除しながた地面にへたり込む。

 

「はぁ…はぁ……勝った。」

「お見事です我が魔王。

とりあえず歴史の改変は成功した・・・私はこれで失礼するよ。」

「お、おいまて!お前は一体なんなんだ!?」

「その話はいずれ。」

「うっ!」

 

一夏はウォズに詰め寄るもウォズから放たれた謎の力によって

強烈な睡魔に襲われる。

 

「もう少しで織斑千冬が君を助けに来る。

ここで待ってるといい。ではまたお会いしましょう我が魔王。」

 

『タイムマジーン!!』

 

ウォズはタイムマジーンに乗り込みこの時代を後にした。

 

「…いったい何が。」

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、試合を途中放棄した織斑千冬によって織斑一夏は救助された。

事情聴取されるも巨大ロボットや謎の男が助けに来たこと、自分がISを纏って戦ったことなど当然言える筈も無く、ただ『気絶していただけ』と答えたのであった。

 

 

それから一年後…ウォズと名乗る男はその後姿を見せず一夏はその事件で起きた出来事は全て夢だったのではないかと疑う様になる。

体内にあるIS『白式』はその後の一夏の呼びかけに応じつ沈黙を続け、ウォズも現れない。

 

何事もなかったように日常に戻った一夏はいつも通りに朝食を作り、自分の姉に振る舞う。

 

「おはよう千冬姉」

「あぁ、おはよう。」

 

泊まりの仕事が多い千冬が珍しく帰宅しており一夏は彼女を労って

いつも以上に凝った朝食を作る。

 

「朝ごはん、できてるよ。」

「あぁ、すまない。」

 

互いに朝食を済ませて一夏は誘拐事件がまるで無かったかのように

のんびりと過ごしていた。

 

「しかし、一夏…こんなのんびりして・・・受験勉強は大丈夫か?」

「ん?俺高校行かないよ。王様になるし」

 

王様になるから高校なんて行かなくていいよね?

そう続けると額にお盆が叩きつけられる。

 

千冬が投擲したものだ。

 

「いっだぁ!?」

「はぁ、何処で育て方を間違えたか…。」

「何すんだよ千冬姉!」

 

額をさすりながら千冬につめよる一夏。

 

「王を目指すのはこの際良いとしよう…しかし高校は出とけ。

中卒の王様じゃあかっこ悪いだろう。」

「それもそうだな…分かったよ千冬姉!」

 

はぁ…と再びため息をつく千冬。

一夏の王様になる宣言は今に始まった事ではない。

幼い頃からずっと言ってきたことだ。

もう慣れてしまった自分に対しての自虐を含めたため息。

彼の保護者としてそろそろ将来について真剣に向き合いたいところだが

仕事柄忙しく、その様な時間を取れないでいた。

 

「はぁ・・・私はもう出る、あとを頼むぞ。」

「おう!いってらっしゃい!」

 

千冬を見送るとさっさと皿洗いを済ませて冷蔵庫の在庫を確認

買い出しの準備を始める。

 

「さてと、俺も買い出しに行かないと〜。」

 

戸締りをし、玄関を開けるとそこにはタブレットPCを持った男が立っていた。

 

ウォズだ。

 

「ご機嫌よう我が魔王」

「…夢じゃなかったんだ。」

「現実だよ。」

 

とりあえず家に上がらせて、ウォズにお茶を出しながら

この前聞けなかった事を聞く。

 

「お前は一体何者なんだ?」

「私は貴方の忠実なる僕…。」

「いや、それは知っている!いや、それもまだ意味が分からないけど…俺が知りたいのはお前の正体だ、何故俺を助けた?それにあのISは?」

 

「ふむ…では分かりやすく説明しよう。私は未来からやってきた未来人。

そして私は貴方を魔王にする為にこの時代にやってきた。」

 

「え、マジで?」

 

いきなり未来人と言われて普通は信じないが一年前のあの出来事がある故に思ったよりすんなり受け入れてしまう。

それよりも一夏には気になる単語がある。

 

「それに魔王って…俺って未来王様になるの?」

 

王を目指す一夏にとってそれが最も重要な事だった。

 

ウォズはタブレットPCを操作しそこに書かれている文章を見ながら口を開く。

 

「これは私がいた未来のお話。織斑一夏は最低最悪の魔王『魔王イチカ』として覚醒し世界を征服する…事になっている。」

 

「え、最低最悪?」

 

「ええ、圧倒的な力で全てをねじ伏せ、全世界を掌握し、恐怖で人々を支配した最低最悪の魔王『魔王イチカ』…私は貴方をその未来に導くため直々に…「…それは嫌だな。」」

「は?」

 

一夏の否定に呆気を取られるウォズ。

ウォズが語る魔王は一夏が目指す王とは真逆なものだった。

 

「俺、将来は最高最善の王様になるって決めてるんだ。そんな最低最悪の魔王になるなんて考えられない。」

「…。」

「ごめん、せっかく未来から来たのに…俺は魔王になるつもりなんて。」

「しかし、そうも言ってられないのですよ。」

「え?」

 

意外にもウォズは最低最悪だろうが最高最善だろうがどちらでも良かったのだ。

 

「魔王になるのが一番いいが…私がきたのは別の理由がある。」

 

ウォズは深刻な顔をしながら続ける。

 

「貴方はこのまま行くと一年以内に死にます。」

 

「は?えええええええええ!!!!?」

 

一夏の叫びが家中に響き渡る。

 

「ちょちょちょそれってどう言う事なの!?ウォズって俺が魔王になった未来から来たんだよね?何で俺が1年後死ぬってことになってるの!?」

 

「現在時間軸に大きな歪みが生じ私達がいる未来が消失しつつあります。

その原因が織斑一夏が王に至らず、ぽっくり逝ってしまったのが原因だと分かりました。」

 

「ぽっくりって…なんでまた。」

「それは私にも分かりません。だが、それを阻止するため私がいます。」

「はぁ〜まじか〜。」

 

両手を床につき分かりやすく落ち込む一夏。

 

「俺どうしたらいい?俺どうしても王様になりたいんだ。」

「失礼ながら、我が魔王はどうして王になりたいと?」

「んー分からない。」

「分からない?」

「うん、小さい頃から王様にならなきゃって思ってたから。」

「なるほど、どうやら我が魔王は王への素質が生まれつきある様だ。ならば私も全力でサポートしよう」

「うん、ありがとう・・・で、俺はどうすれば王様になれるの?」

「そうですね・・・。」

 

ウォズはタブレットPCを再び開きなにかを調べる。

 

「さっきから見てるそのタブレットは?」

「これにはこれから起こる未来の出来事が書かれています。」

「へぇー、なんて書いてあんの?」

「我が魔王がこの一年で50回以上死ぬと書かれています。」

「ご、50!?なんで!??」

「さぁ?

まぁ、あくまでも『死ぬかもしれない可能性が有る』という話です。」

 

そう答えるウォズだが、実の所、原因は分かっているがあえてそれを一夏に伝えないでいた。

 

「これを見る限り、我が魔王には早急にIS学園に入学してもらうのがベストです。」

「IS学園!?」

「そう、その地が全ての始まりであり、織斑一夏という人間のターニングポイント。

その学園での生活が未来を決めると言っても過言ではありません。」

「でもあそこは女子校だ!そんな所どうやって…」

「これによると我が魔王は受験予定だった私立藍越学園の試験場を間違えてIS学園の会場へ行ってしまい、その場にあったISを起動してしまった事で人類初の男性適正者として、IS学園に強制入学することになっている...。」

「え、俺そんな波乱万丈な人生が待ってたの!?」

「でも、時期は早い方がいいか…」

 

ウォズは立ち上がる。

 

「外に行きましょう。」

 

ウォズの案内で近くの公園に来た一夏は、何故この場所に来たか理由を尋ねる。

 

「何故公園?」

「ほら、あそこに都合よく設備不良で墜落したISがあります。それに触れてください。」

 

公園の真ん中には何故か大きなクレーターができており中心には日本製の量産型IS『打鉄』が墜落していた。

 

「なんで都合よく墜落してるんだ!?」

「私は近い未来を操る事ができる。

この近辺で飛行訓練を行うと聞いてね、墜落させた。」

「墜落させたってお前とんでもないチート能力持ってる上に、なんてことをしてるんだ!!」

「さぁ、今の内。」

 

一夏のツッコミを無視しウォズは一夏を腕を強引に引き墜落したISを見に来た野次馬をどけ、それに近づく。

パイロットは近くの公衆電話で本部と連絡しておりその場におらず、触れるなら今がチャンスだった。

 

「あぁもう!」

 

一夏はやけになり、ISに触れる。

ウォズの言った通りISは一夏に反応し起動する。

「嘘…男がI Sを起動した!?」

「だ、大スクープじゃ!!」

「信じられない。」

 

 

「どうだウォズ!コレでいいだろ…ってあれ?」

 

周りを見渡してもウォズの姿は無い。

 

「また居なくなった。」

 

これによってIS適性が本来の歴史より早い段階で判明し、織斑一夏のIS学園の入学は受験シーズン前に決定することになったのである。

こうして織斑一夏の王を目指す学園生活が早い段階で幕が開かれたのであった。




このウォズは見た目と性格は黒ウォズ、能力は白ウォズとタイムジャッカーです。


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第二話 IS学園入学初日!

ジオウトリニティ回にてまさかのブレイド救済!
いやーよかった、よかった・・・。


IS学園に通う普通の高校生『織斑一夏』には将来『魔王』になる未来が待っていたハズであった・・・。

時間軸が歪み歴史が改変され、織斑一夏は王に覚醒することなく一年以内に死亡するという偽りの未来に移り変わってしまったのである。

その未来を修正するべく未来からの訪問者『ウォズ』は、織斑一夏に『未来の白式』を与えることで未来改変を目論むのであった。

しかし、これによって歴史は大きく修正されるが、一夏が死亡する運命は変わらずにいた。

ウォズは新たな歴史改変案として予定より早く彼のIS適性を見出すことで身柄を強制的にIS学園へ移し

残りの中学生活をIS学園で過ごさせることによってISに触れる機会を増やし織斑一夏自身の強化時間にあてがうのであったが・・・。

 

それから数ヶ月後。

正式にIS学園の一年生として入学した、織斑一夏はこれから始まる女子校生活に不安を抱いていたのであった。

 

「では、皆さん順番に自己紹介をお願いします。」

 

(はぁ〜ついに始まっちゃったよ。)

 

IS学園にいた時はほぼ他の生徒に会う機会がなかった織斑一夏は、初めて自分以外の生徒、それも女子を

目の当たりし、これからの学園生活に不安を抱いていた。

 

「織斑君お願いします!」

 

「はい!織斑一夏です。

将来の夢は王様になることです!よろしくお願いします。」

 

副担任の山田真耶に名を呼ばれ、一夏は席から立ち上がり自己紹介をする。

しかし、王を目指す普通ではない夢を大大的にいう一夏に対し、他の生徒は困惑をし、中には茶化すように笑う者もいた。

「王様?」

「王様って・・・。」

「あはは!王様って!」

 

そんな反応に気づかず一夏は自己紹介が終わった事に満足し席に着こうとしたが、何者かによって放たれた首席名簿に頭部をぶつけ

頭を抱えるのであった。

 

「あいった!!」

 

「もう少し真面目な自己紹介ができないのか、馬鹿者。」

 

犯人は自分の姉、織斑千冬であった。

クラス担任を務める彼女は用があったのか予定より少し遅れて教室に現れた。

 

「っげ、信長!」

 

「誰が、魔王だ。」

 

「いつ・・・!!。」

 

今度はゲンコツを食らう。

 

「待たせたな山田先生。」

「いえいえ。」

「今日からこのクラスの担任を務める織斑千冬だ。

この一年、お前たちを使い物にするためにビシバシ鍛えるから覚悟しろ。」

 

 

「「「「「きゃぁぁぁああああ!!」」」」」

 

織斑千冬の登場にほとんどの生徒が黄色い声を張り上げる。

 

「千冬様よー!」

 

「憧れでした!」

 

「あなた様に会えてもう死ねる!!」

 

「君のためなら死ねる!!」

 

「チフユーヌ!!」

 

それもそのはず織斑千冬といえば元日本代表選手であり第1回IS世界大会「モンド・グロッソ」で総合と格闘部門を優勝

無敗記録を持つ彼女は今は伝説と呼ばれている人物であり

彼女に憧れてこの学園に入学した生徒も多いのだ。

 

「騒がしい静かにしろ。

それと急遽入学することになった生徒を紹介する。」

入れ!!」

 

千冬の呼びかけと同時に、教室のドアが開かれる。

 

「え!?」

 

入室した生徒を見て思わず一夏は驚きの声を漏らす。

 

ISの男性制服に身を包み、室内でありながらもマフラーを巻いており

左手に見慣れないタブレットPCを持ち歩いているその人物は・・・

 

「自己紹介しろ、常盤。」

 

「私の名は常盤ウォズ・・・よろしくね。」

 

ウォズだった。

棒読みながら名前を名乗り、お辞儀をする。

 

その姿を見たクラスメイト全員が再び声を上げる。

 

「「「きゃぁぁあああああ!!」」」」

 

「男よ!二人目の男!!」

「このクラスでよかったぁ!!」

「めっちゃタイプなんですけど〜」

「あら、イケメンじゃない」

 

再びの大音量で一夏は耳を塞ぎ、山田先生と千冬が苦笑いをする。

 

「お前ももう少しまともな挨拶をだな・・・。」

「で、では常盤君の質問コーナーとしましょう!質問がある人は・・・」

「いえ、私は自分の事を語るのは苦手でして、私の席は?」

「あ、え、えっと・・・織斑君の後ろの席、です。」

「わかりました、山田先生。」

 

自分の提案を否定され、悲しみの表情を浮かべる山田先生を尻目にウォズは一夏の後ろの席に着く。

 

 その後LHRが終わり一夏は後ろにいるウォズに話しかける。

 

「ウォズ、お前も来たのか。」

「もちろんだ我が魔・・・いいえ、ここは一夏くんと呼ぼう。

私は貴方をサポートしなければならないのでね。こうして入学したほうが好都合だ。」

「いやー、安心したよ。男がもう一人いると少し気がラクになる。」

 

一人だけだと耐えられそうにないと続けると、一人の女子生徒が一夏に話しかける。

 

「ちょっといいか一夏。」

「お?おおお!」

 

その人物はどうやら一夏の知り合いのようだった。

 

「箒じゃん!久しぶり!」

「あ、ああ、少し話がある。屋上にいいか?」

「ウォズ、行ってきていいか?」

 

「・・・・。」

 

「ウォズ?」

 

一夏の問いになぜか答えないウォズ、どうやら箒を見ているようだった。

 

「・・・時間がないから早くすませるといい。」

 

少し間を空けて答えるウォズ。

 

 

一夏の知り合い・・・幼馴染みの『篠ノ之箒』と屋上へと場所を移す。

 

「しかし、久々だな箒。」

「あ、あぁそうだな。」

 

箒は久々にあった幼馴染との距離感が図れず少し、控え気味の返事をする。

 

「そういえば剣道の県大会優勝したって?すごいじゃん!」

「な、なぜ知ってる!?」

「そりゃぁ新聞に載ってたからな。」

「なぜ新聞をみる!みるな!」

「うん、理不尽。」

 

箒は自分のことを知っていた一夏に対して顔を赤くする。

 

「立派になったもんだな。

そうだ!もし王様になったら俺の側近にしてあげよう!」

「・・・自己紹介の時もそうだったが、まだその夢は諦めてなかったんだな。」

「当然でしょ!俺は最高最善の王様になるって決めてるんだ!」

 

 

「・・・・・まったく、一夏は変わらないな。」

 

 

箒は変わらない昔のままの幼馴染の姿に思わず歓喜に浸る。

変わらない、本当にあの頃のままだ。

 

そう思っているとなぜか学園のチャイムが5分早くなり始める。

 

「あれ?チャイム・・・なんか早いな・・・まぁいいや続きはまた後でな。」

「あぁ・・・。」

 

二人は教室に戻り始めると、一つの目線・・・ウォズが入り口の陰から二人の様子を見ていた。

タブレットが開かれておりそこには『不調でIS学園のチャイムが予定より早く鳴ると』と書かれていた。

 

チャイムはウォズが意図的に鳴らした物だった。

ウォズはタブレットPCを操作しある資料をみる。

 

篠ノ之箒・・・。

ISの生みの親『篠ノ之束』の妹で織斑一夏の幼な馴染み。

小学生の頃から織斑一夏に好意を抱くも小学4年生の時に『重要人物保護プログラム』によっての各地の学校を転々と転校することを余儀なくされるが、のちにこのIS学園で再開。

積極的にアプローチをするもその恋が実ることがなかった。

 

これに書かれていることは未来のこと。

しかし続きに書かれている項目にウォズは眉をひそめる。

 

彼女の存在は大いに危険だ・・・我が魔王の道を阻む邪悪な障害。

最悪の場合抹殺も視野に入れないといけない。

しかし、彼女の後ろにはあの篠ノ之束がいる・・・彼女の処置は慎重にならなければ。

 

ウォズは篠ノ之箒に対してかなり警戒をしていた。

 

 

 

 

 

「織斑くんここまで分かりますか。」

「んんー、微妙。」

「微妙・・・ですか・・・?。」

 

織斑一夏は最初の授業の内容を理解しようと四苦八苦してた。

 

「ちゃんと参考書は読んだか?」

「あぁ、あの厚い奴?読んだけど途中で寝ちゃって。」

 

その答えを聞いた千冬は名簿で一夏の頭を叩く。

 

「っがぁ!!」

「二ヶ月ほど猶予があったハズだ・・・一週間以内に全部覚えろ。」

「そんなー。」

 

その様子をウォズは後ろから少し冷たい目で見つめていた。

 

(我が魔王がなぜ王になれないか分かった気がするよ。)

 

ウォズは心の中でため息をする。

 

「常盤くんはわかりますか?」

「えぇ、だいたいは。」

「常盤、後でこのバカに教えてやってくれ。」

「わかりました。」

 

 

授業が終わり、ウォズは一夏に対して説教じみたことを言う。

 

「この数ヶ月間IS学園でなにをしていたのですか・・・我が魔王?」

「だって俺王様になる予定だったし、あんま勉強してないんだよね。」

「失礼ながら言わせてもらうが・・・魔王なめてんのですか?」

「っひ!ごめんなさい!」

「ISは危険な代物であることをお忘れなく・・・まともにISが扱えないようだと魔王どころの話じゃない。

まったく・・・夜私の部屋に来るといい、ISに関して手取り足取り教えましょう。」

 

「恩にきるぜウォズ!」

 

その会話を聞いた他の生徒たちは

 

(織斑君と常盤君が夜な夜なお勉強会(意味深)だって!?)

(((もしかしてあの二人って!!)))

 

(間違えない)

 

(((((できてる)))))

 

と勘違いしていた。

 

「・・・・何か寒気がしたのだが。」

「・・・お、俺も。」

 

 

 

 

「ちょっと、よろしくって?」

「ん?君は?」

 

二人の元に金髪の生徒が訪れる。

 

「まぁ?わたくしをご存じない?」

 

「一夏君、彼女はセシリア・オルコット…イギリスの代表候補生で名門貴族のお嬢様・・・

IS学園の試験も首席で合格したようで学内でもそこそこ有名人です。」

「え!?貴族!?」

「貴方はご存知のようで安心しました。」

 

「・・・ええ、あなたの事はよーく知っていますよ。」

 

「うわー!貴族なんて初めて見たよ!うわー!」

 

突如セシリアの全身を舐め回すように観察する一夏。

王を目指す一夏にとって『貴族』というのは代表候補生や首席よりも最も関心を持った情報だった。

 

「な、なんなんですの?」

 

突然のことに困惑するセシリア。

その様子にウォズは呆れながらも咳払いをし話を続ける。

 

「んん!! それで、代表候補生殿が私たちに何かご用で?」

「唯一の男性がどのような感じかと思いましてね。なにかパッとしませんわね。

日本の男性も所詮この程度ということですね。」

「なんかすげーディスられてるんだけど。」

「彼女は男嫌いで自信家なのです、ご辛抱を。」

 

「まぁ、わたくしは優秀ですから、あなた達のような底辺な人間でもやさーしく接してあげます。

分からないことがあったら・・・そうですね。

泣いて頭を下げれば教えてさしあげてもよくってよ?

なにせこの私、セシリア・オルコットは入試で唯一、教官を倒したエリート中のエリート・・・

『神の才能』を持ったこの私が教えて差し上げるのですから。あなた達はこの後懇願することになるでしょう!」

 

「神の才能って言い出したぞ。大丈夫かこいつ。」

「ええ、私も予想以上のことで少し困惑しております。」

 

さすがのウォズもセシリアの性格に困惑する。

 

「さぁ、神の才能にひれ伏しなさい!!おーほほほほ!」

 

セシリアは胸を張り高らかに笑い声をあげる。

その様子に一夏や周りの生徒は苦笑いするしかなかった。

 

 

「おいおーい、よく恥ずかしいこと言えるなこのイギリス人。」

 

(((いや、織斑君も結構恥ずかしいこと言ってたよ。)))

 

将来の夢は王と大々的に言った一夏も人のことは言えないとクラス中の人は誰もが思った。

 

「いえ、結構。

私は一人でできますし一夏くんの指導は私が受け持ちます。

どうぞお引き取りを。」

 

そんなセシリアをウォズは丁重にお断りする。

 

「なんなんですの?男のくせにその態度!

この神を拒否するとおっしゃるのですか?」

 

「おいおいおい、ついに自分のことを神って言っちゃったよ。」

「貴方はまだ候補生止まり、自分を優先した方が良いのでは?」

 

代表候補生であって代表ではない。

自分たちに構っている暇は無いのでは?とウォズは言う。

 

「それもそうですわね・・・また来ますわ。」

 

ウォズの言うことに納得したセシリアは自分の席に戻るのであった。

 

「いいのか?」

「・・・彼女もまた危険な存在です。」

「え!?なんでまた・・・ってなんか、わかる気がする。」

 

自分を神という輩にまともな奴はいないと一夏は思った。

 

「それも未来タブレットからの情報?」

 

ウォズは一夏の問いに頷きタブレットPCを開く。

 

セシリア・オルコット。

名門貴族オルコット家の跡取りでイギリスの代表候補生。

クラス試合で織斑一夏に惚れ、篠ノ之箒同様アプローチをするが

なぜか振る舞った手料理の中に大量の劇薬が混入、それを食した織斑一夏は生死を彷徨う重体になる。

 

と、タブレットには書かれていた。

それを見たウォズは少し冷汗を流しながら一夏に告げる。

 

「このままいくと貴方はセシリア・オルコットによって殺される可能性が有ります。」

「えええ!?なんで!?!?」

「キーワードは・・・サンドイッチ。」

「サンドイッチ!!?何か兵器の隠語か何かか!?」

 

「うるさいぞ!静かにしろ!授業を始める。」

 

チャイムがなり二人の会話を入室してきた千冬が一喝で絶たせる。

しかし、ウォズが言ったことがきなり一夏は小声で会話を続ける。

 

「ど、どうするればいい・・・。

「彼女とはあまり関わりを持たないほうがいい。」

「でもよう、彼女が俺を殺すような子とは思えないなぁ。」

 

同じクラスの仲間だし。

その言葉にウォズは密かに眉をひそめるのであった。

 

(まぁいいでしょう。

セシリア・オルコット…貴女は精々我が魔王の大いなる肥やしになってもらいましょう。)

 

王を成長せるためだったらなんだって利用するし手段は選ばない。

ウォズは密かに黒い考えを抱くのであった。

 

 

 

 

「はい!私は織斑君がいいと思います!」

 

「え!?」

 

突然名前を呼ばれた一夏は驚きの声をあげる。

 

「聞いてなかったのか馬鹿者。」

 

「あいた。」

 

千冬は一夏に再びゲンコツを食らわす。

 

「今からクラス代表を決める。自薦他薦問わない。」

 

クラス代表・・・学校行事の会議や、クラスに関する雑務を担当するのが主な内容だが、

クラス対抗のISバトルに参加することが大きな役割だろう。

 

クラスの中で一番の実力者がこの役を担ったほうがいいのだが、クラスの女子たちは唯一の男性に花を持たせるべく。

織斑一夏、常盤ウォズを推薦するのであった。

 

「私も織斑君!!」

 

「男だから活躍しないと!」

 

「私は常盤君がいいなー!」

 

「私も私も!」

 

「織斑と常盤か・・・他には?」

 

「ちょっと待ってください!」

 

その推薦に納得がいかないイギリス代表候補生セシリア・オルコットが席を立つ。

 

「男が代表なんて、とんだ恥さらしですわ!

この神セシリア・オルコットにそのような屈辱に一年間あじわえって言うのですか? 

だいたい、文化も後進的な島国で暮らさなければならないこと自体わたくしには耐え難い苦痛でありまして・・・。」

 

なぜか日本を罵倒し始めるセシリア。

その抗議の影響で徐々にクラス内の空気が悪くなる。

 

「これだから日本国はISの技術が進歩せず・・・。」

 

「ダメだよオルコットさん!」

 

それに痺れを切らした一夏は席を立ち

 

「そんなこと言っちゃダメだよ!

オルコットさんがクラス代表になりたいのは分かった。

でも代表っていうのは皆んなからの信用と信頼がないといけない。」

 

力強い一夏の瞳がセシリアをじっと見据える。

 

「ここにいる人 全員仲間だ!仲間を悪くいう奴にクラス代表は任せられない!」

「……!」

「俺、織斑一夏はクラス代表に志願します。」

「…ほう。」

 

一夏のセリフに関心した千冬は少しだけ微笑み、周りを見る。

 

「そうか、他にいないか?」

 

 

「・・・お待ちを。」

 

セシリアが手を挙げ、一夏の方を見る。

 

「確かに貴方の言うとうりです。失言でした…この場で皆様に謝罪します・・・申し訳有りませんでした。」

 

クラス全員に向けて頭をさげるセシリア。

 

「しかしわたくしもイギリス代表候補生としての意地がありますし、それにクラス代表には学年トーナメントがあります。

強い人が代表にならないことには意味がありません。故ある程度実力がある私がクラス代表になるべきです。」

 

そして少しだけ深呼吸をして続ける。

 

「わたくし、セシリア・オルコットもクラス代表に志願致します。

そして織斑一夏さん・・・貴方に決闘を申し込みます。」

 

「・・・うん、いいよ。その方はわかりやすい。」

 

決闘・・・勝った方がクラス代表を務める。

二人に闘志が湧く。

 

「よし、一週間後、代表を決める試合を行う。織斑、常盤、オルコットはそれぞれ準備をするように。」

「わかりました。」

 

セシリアは返事をし、席に着こうとするが一夏に呼び止められる。

 

「オルコットさん。」

「?」

「俺、負けないから。」

 

一夏は満面の笑みでセシリアに宣言するのであった・・・が。

 

「「「!?」」」

 

一夏の笑顔に思わずセシリアを含めたクラスメイト全員が一夏に心を奪われた。

 

「え・・・えぇ、楽しみに・・・してます。」

 

さすがのセシリアも一夏の顔が見れず顔を真っ赤にしながら席に着く。

 

その様子を見たウォズは少し関心しながらも頭をかかえる。

 

流石我が魔王、一瞬で多くの人を魅了するとは…。

しかしその魔性の笑みはあらゆる人を幸福にすると共に

不幸を与え…自分をも滅ぼすことにお気づきを。

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ〜俺勝てるかな〜。」

 

放課後、自分が言ったこととはいえ試合に不安を抱く一夏。

 

「なぁ俺勝てると思うウォズ?」

 

後ろの席にいる未来の僕に相談するも、彼の姿がいつの間にか消えていた。

 

「あれ?いない?」

 

周りの生徒に彼の所在を聞いても、知らないと答え不思議に思っているところに山田先生が現れる。

 

 

「よかったーまだ残っていてくれて。

はい、こちら新しい寮の鍵です。」

 

寮の鍵を一夏に渡すも一夏は顔を傾ける。

 

「え、あれ?前の部屋と違う?」

「はい、ごめんなさい、部屋数と定員の関係で少し調整が入りまして。」

 

「1025号室・・・ウォズと同じ部屋?」

「いいえ違います、常盤君は一人部屋になります。」

「え?別?」

 

同じ男同士相部屋なると考えていたが、どうやら違うらしい。

 

「荷物はすでに移動済みだ・・・それと織斑、お前に特別に専用機が届く。」

 

山田先生に続いて千冬も教室に現れる。

 

「専用機?マジっすか?」

 

専用のISが渡される・・・。

専用機といえば前にウォズによって『白式』と呼ばれる未来のISが体内に吸収されていることを思い出す。

 

「専用機・・・でも俺・・・」

 

言葉が詰まる。

いきなり自分が専用機を持っていると言っても事態が混乱するだけだし

出せと言われてもアレ以降反応を見せない・・・どっちにしろ困る状況を作ることには変わりがないため

知らぬ存ぜぬが一番いいだろうと判断し首を振る。

 

「なんだ?」

「いや、なんでもない。」

「そうか、しかし来るのに時間が掛かるようだ。

専用機で訓練はできないと思え」

 

ISを使った訓練ができないのか・・・。

訓練に関してはウォズと相談した方がいいなと考えた一夏はとりあえず寮に戻ることにした。

 

「おーっほほ!!!

安心しましたわ。訓練機で私に挑みなど虫ケラが神に挑むことと同じこと。これで少しは私を楽しませて

「あ、あのオルコットさん…織斑君はもういませんよ?」

 

「ええ!?」

 

 

 

 

 

 

「1025・・・1025・・・あ、ここか。」

 

寮に戻った一夏は新しい部屋の前に来る。

ノックもせずそのまま入室し、前の部屋と比べて室内が広いことに驚きながらも同室の相手を探す。

 

「シャワールーム?」

 

シャワールームから音が聞こえる・・・どうやらシャワーを浴びているだろうと判断した一夏はあることに気づく。

いや、まて、同室がウォズでは無いということは・・・相手は女!?

 

「同室の者か?すまない、汗をかいていたのでな、先にシャワーを・・・。」

 

不味い!

シャワールームの扉が開かれ、バスタオルを巻いた女性が現れる。

長い黒髪に、豊かなバスト・・・。

その女性は自分の幼馴染、篠ノ之箒だった。

 

「ほ・・・箒。」

「・・・・・・一夏。」

 

一瞬ぽかんとした箒だったが事態を把握し反射的に近くにあった竹刀を手にとり、一夏に斬りかかる。

 

「ちょ!?それはシャレになんないって。」

 

一夏は後退するも足が縺れその場に倒れこむと、高速で接近する竹刀に思わず目をつむった。

 

「・・・!!!・・・ってあれ?」

 

しかし竹刀はいつまでたっても一夏に当たることは無かった。

不思議と思い目を開けると、そこには小さな緑色の塊が竹刀を白刃取りで止めていたのであった。

 

「ええ!?またロボット!?」

 

その姿はまさに小型の人形ロボット

 

『スイカアームズ、あっ小玉!!』

 

「なに!?」

 

小さい見た目とは裏腹に強力な力で竹刀を弾き飛ばすと、倒れた一夏雑にを持ち上げ、1025号室から急いで彼を運び出すのであった。

 

「な!?まて、逃げるな!」

 

「っちょちょと、どこに連れて行くの!?」

 

二人を無視し、小さなロボットは寮の廊下を走り抜ける。

 

「え・・・なにやってるの織斑君?」

「わー!小さなロボットだー!」

「どこいくのー?織斑君!」

「いや、ちょっと俺もわからない。」

 

手のひらサイズのロボットに運ばれているというなんともシュールな光景に通りすがる生徒は思わず振り返る。

なんだか恥ずかしくなってきた一夏は一人で歩けるよと、小さなロボット『コダマスイカアームズ』に話しかけると

それを理解したのか足を止め一夏を下ろす。

そして付いて来いと言わんばかりに一夏のズボンの裾を引っ張るのであった。

 

「おおお、おう。」

 

コダマスイカアームズについて行くと突き当たりにある部屋に止まる。

 

「1068号室・・・ここに入れと?」

 

コダマスイカアームズが頷くと、ドアをあけ彼を部屋に誘う。

 

「ご無事ですか、我が魔王。」

 

その部屋にいたのはウォズだった。

 

「ウォズ?そうか・・・ウォズの部屋だったのか。」

「まったく見張りをつけてよかったよ。

君はあのままだと篠ノ之箒によって大怪我を負わせるからね。」

 

「あ、ありがとう・・・って・・・今はそんなことはいいや、箒に謝らないと。」

 

そう言いながら部屋を出ようとするとウォズが止める。

 

「貴方はとんだお人好しだ。

本来の歴史であれば、我が魔王は篠ノ之箒の放った竹刀によって全治半年の大怪我を負うとかいてある。それでも頭をさげると?」

「俺が悪いんだ、当然だろ?」

 

ケッロと答える一夏に対してウォズはため息をする。

 

「・・・まったく。

忠告します我が魔王。篠ノ之箒は大いに危険な存在です。」

「え!?なんでまた。」

「それは、いずれわかります。

とりあえず今夜はここにいた方がいい、一晩経てば相手も熱が下がるだろう、明日謝罪をすればいい。」

「・・・あぁそうだな、そうしとく。」

「謝罪をする魔王・・・見たくない物だ。」

「悪いことしたらちゃんと謝る!それが王様でしょ?」

「魔王はもっとどっしりと構えるべきです。」

 

そう言いながらウォズはコダマスイカアームズを変形させウォッチ型にすると腕にあるホルダーにつける。

その一連の動作に未来ってすげー、と感心している一夏に対しウォズはあることを提案する。

 

「丁度いい、約束通り座学をしましょうか我が魔王。」

「っげ・・・。」

 

勉強が苦手の王は思いっきり嫌な顔をする。

 

「げ、ではありません。ちゃんと相手を分析しないと勝てる試合も勝てません。

こちらにセシリア・オルコットに関するデータをご用意しました、こちらを使い・・・。」

「大丈夫だよ!ほら!前だってIS戦で勝てたし。」

「あの時は私がコレで勝たせたのです。貴方の実力ではありません。」

 

一夏にタブレットPCを見せる。

 

「え、そうなの!?」

「今の貴方は未来の高性能なISを持っているだけで、経験や能力はまるで足りない。

相手は代表候補生・・・知識も経験豊富、勝てる要素がないに等しい。」

 

タブレットPCを開き未来の情報を口にする。

 

「現に本来の未来だったら・・・貴方はセシリア・オルコットに無様な負け方をします。」

「まじで?」

「ええ、訓練もろくにせず、大口だけ叩いて自分のISの性能や性質を知らないで突っ込んで自滅です。」

「自滅!?」

「それはもう本当に我が魔王なのかと疑いたくなるような試合内容でした。」

「えぇ・・・・・・。」

「試合に勝ちたければ大人しく私の施しを受けるのです。」

「・・・はぁ。」

 

そんな負け方はしたく無いと。

観念したように一夏は両手を挙げ、備え付けの机に座る。

 

「・・・・・うん、わかった。オルコットさんにああ言ったんだ。ちゃんと実力をつけないと。」

「その粋です。」

「しかし、ウォズってIS使えるの?」

「えぇ、勿論…ISでは無いが専用機に当たるものは一応持っていますが、これは未来の物・・・今は使うことはないでしょう。」

 

そう言いながらウォズはコダマスイカアームズとは同じホルダーに付けてあるもう一つのウォッチ・・・

『ウォズミライドウォッチ』を見ながら答えるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんですって・・・専用機の件をなかった事に?どういう事ですか!!!」

 

同時刻、自主訓練を終えた2年のイギリス代表候補生『レティー・テイラー』は誰もい無い更衣室で

電話の相手に怒号を浴びせるのであった。

 

「代表候補を外す?不正?なに意味わからない事言っているんですか!!不正なんてしてません!!

・・・私は努力してわざわざ日本に、IS学園に来たのですよ!急に外すって言われても困ります。」

 

「セシリア・オルコット?一年ぼっちの子を優先すると?ふざけないでください!私はあの子より優秀です!

名門貴族がなんなんですか・・・私は自分の実力でここまで・・・ってもしもし?」

 

レティーは抗議を続けようとするが、電話は一方的に切られてしまう。

 

「せっかくの思い出掴んだ代表候補なのに、こんなのって・・・なんなのよ!!!」

 

彼女は端末を思いっきり壁に向かって投げると、ベンチに頭を抱えて座る。

しかし、端末の落下音がしないと違和感を覚え、少し顔をあげると投げたはずの端末が宙に静止していたのだ。

そう、まるで時間が止まったかのように・・・。

 

「え!?な・・なに!・」

 

『お困りのよーだね。』

 

後ろから少女の声が聞こえる。

 

「誰!?」

 

振り向くとそこにはフードを被った少女が立っていた。

IS学園の制服は着ておらず、その代わり大小様々なハトメがついた桜色の服を着ていた。

 

『私はタイムジャッカー・・・私と契約したらいいもの上げるよ?』

「タイムジャッカー?」

 

聞きなれない組織名で警戒するレティーだったが少女は気にせずに話を続ける。

 

『君は専用機を貰えないでいたよね?・・・このまま行くと貴方は世界大会にでる夢を叶えられずに

IS学園でなーんの成果も上げられ無くて、祖国に帰っても実家でつまらなーい生活を過ごして残りの人生を

費やすたーいくつな人生が待っているよ?

でもね安心してね。

私と契約してくれたら私が君に専用機を上げよう。

それもちょー高性能なちょーすごいISを。』

「貴方は・・・いったい。」

 

レティーは思わず後ろに一歩下がる、しかし少女は逃がさないよ と距離を一気に詰めあるものを取り出す。

 

『まぁ、勝手に契約しちゃうけどね。』

 

手に持っていた黒いウォッチをレティーの腹部に押し付けると、レティーの何かを吸収しその形を変える。

 

『さぁ、ウォズ。君はどうするのかな?』

 

変色したウォッチのリューズを押すと禍々しい音声が発せられる。

 

『・・・ブルーティアーズ!』

 

 




こちらのタイムジャッカーはオリキャラになります!ご注意を!


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第三話 超越 前編

前後に分けます!
ブラックホールの画像が公開されましたね。
ブラックホールと聞いてあのライダーを思い浮かべたのは俺だけじゃないはず!!


「あの・・・箒、昨日はごめん。」

 

早朝、1025号室前・・・一夏は箒に頭を下げていた。

 

「・・・・・・。」

「飯、おごるから許して!このとうり!」

 

手を合わせ懇願する一夏。

あまりの低姿勢に少し呆れる箒だったが一晩で怒りの熱もある程度下がり

取り敢えず一夏許すことにした。

 

「はぁ・・・わかった許そう。」

「ありがとう!箒。」

 

笑顔で喜ぶ一夏を前に若干ドキっとする箒。

その後一夏の誘いで朝食をとるため食堂へ向かった。

 

「昨日はどこに居たんだ?」

「ウォズの部屋。試合に向けていろいろ勉強してた、おかげで寝不足だよ。」

 

ウォズの熱血指導によって睡眠時間を減らされ、寝不足の一夏はあくびしながら答える。

 

箒は前から気になっていたことを質問する。

 

「あの、一夏・・・剣道は続けているのか?」

「剣道?あー、やめたよ。」

 

あっけらかんと答えいる一夏に対し箒は信じられないと言わんばかしに声を荒げる。

「やめた!?何故だ!?」

「なぜって、家のことがあったしね、時間がなくなった。」

 

王を目指す一夏もさすがに家庭のことを考える。

姉と二人暮しのため、バイトをしながら家事をしており剣道をやる時間がなかったのだ。

「・・・・・そんな。」

 

剣道は箒にとって一夏との唯一の繋がり。

理由を知らいない箒は、まるで一方的に繋がりを断ち切られたような感覚になり

頭に血がのぼる。

 

「鍛え直す。」

「え?」

「鍛え直す!付いてこい!!」

 

箒は一夏の腕を強引に引っ張る。

 

「え、っちょ!朝食は!!」

「後ででいい!!」

「いやいや、時間がないよ!!」

 

強引に剣道場に連れてこられた一夏はしぶしぶ防具を着て、箒と試合をする。

結果は当然箒の勝ち。

 

「いっつー」

「なぜ、そこまで弱くなっている!!」

「いやいやだって!ブランクがある人と県大会優勝者じゃあ普通こうなるだろ!」

「一夏はISを学ぶ前にまずは剣道を・・・。」

 

ISを学ぶ前に剣道を鍛えなおすべき と箒は続け、試合をもう一本やろと竹刀を構えるが

ある男によってそれは阻止される。

 

「そこまでにしてもらおうか、篠ノ之箒。」

 

道場の入り口にウォズが現れる。

 

「ウォズ・・・。」

「食堂にいないと思ったら、こんなところに・・・ほら、おにぎりを作っといた。

一時限が始める前に食べるといい。」

 

ウォズは手に持っていた包みを一夏に投げ渡す。

 

「ありがとうウォズ!!」

「貴様は・・・お前には関係ない、これは一夏と私の問題だ。」

「剣術だけ習ってもISが操縦ができなければ無意味。どちらを優先するかは明白だ。

それに君は一夏君を強くすることはできない・・・むしろその成長を妨げる。」

 

「なんだと?どういうことだ!!」

 

「おっと、少し言いすぎた、すまない忘れてくれ。

でも一夏くんは連れて行くよ、君も授業に遅れないように。」

 

「おい!待て!」

 

無視して一夏を連れ出すウォズ。

それを止めようと箒は手元に持っていた竹刀を構えて

ウォズに向かっていく。

 

「止まれ!!」

 

大きく振りかぶりウォズを殴ろうとした瞬間

ウォズはとっさに振り向きマフラーを蛇の様に操り始め箒の竹刀を止める。

そしてそのまま竹刀投げ飛ばし流れる様に彼女の体にマフラー巻きつけ拘束する。

 

「な!?」

「っみ・・・未来のマフラーってすっげー。」

 

一夏が感心しているとウォズは物凄い剣幕で箒を睨みつける。

 

「生身の人間に対して竹刀を振りかざす・・・それが武道だと?」

 

「あ…す、すま…!。」

「では失礼。」

 

箒も流石に自分に非があると気づき、謝ろうとするが

ウォズは箒の言葉を最後まで聞かずにマフラーを解いて道場を後にする。

 

「す、すまん箒!また後でな。」

 

 

 

一夏もウォズ跡を追いかける。

 

「ウォ・・・ウォズ。箒も悪気があった分けじゃあ・・・」

「本来の歴史だと、貴方は篠ノ之箒に何度も殺されかけることになるだろう。」

「!?」

 

未来タブレットの情報は確か。

篠ノ之箒は暴力的な女性であり、織斑一夏を殺害する可能性が高い人物の一人…ウォズもセシリア以上に強く警告する。

 

「あれでお分かりになられたでしょう?

彼女は強情だ・・・気に食わないことがあれば暴力で訴える、そいう女だ。

我が魔王が死ぬ未来がある以上、例え幼馴染であろうと彼女に近づくのは避けてほしい。」

 

「箒はそんな奴じゃない!!」

 

一夏は珍しく声を上げる。

 

「箒は俺の大切な友達だ!友達が友達がを殺すわけ無いだろ!」

 

一夏の甘い考えに苛立ちを覚えるウォズ。

幼馴染に殺される未来があろうと一夏は決して信じない男だった。

 

「…そうだと私も心から願いたいよ。()()()敵に回したくないしね。」

 

妹を激愛している天災『篠ノ之束』・・・

彼女が何か行動を起こせばウォズでも止めることは難しい。

故に箒の対象は難しい上に自分の思い通りに動いてくれない一夏に頭を悩ます。

 

「とにかく、私以外の人物からの施しを受けないように。

王に至る未来を望むなら・・・それが賢明だ。」

 

従わないと王になれない…

すこし脅しみたいな言い回しをするウォズ。

 

「・・・・・・。」

 

一夏もそれを察して苦い表情をする。

 

「とりあえず、少し付いてきてくれ…見せたいものがある。」

「?」

 

場所を移しISの格納庫の片隅。

そこに一機のISが格納されていた。

 

「これって・・・。」

 

訓練機ではない見慣れないISに一夏は疑問を抱く。

 

「これは、この時代の『白式』です。」

「でも、千冬姉が遅れるって…。」

「本来の歴史ならばね…これを使った」

 

ウォズはタブレットを見せると一夏は納得する。

 

「でも、なんだか形状が違うね。」

 

機体色は白というより灰色、形状もシンプルで記憶の中の白式とかなり違いがあった。

 

「それはそうです、フォーマットもファーストシフトもしていませんから。さぁ我が魔王…白式に触れてください。」

 

「?」

 

疑問を持ちながら言われた通り白式に触れると一夏の体内から

電気とノイズを走らせた『白式ミライドウォッチ』が現れ、それと共鳴するかのように白式自体も電気とノイズを走らせる。

そして互いに細かい光の粒子となり一夏の右手に集結、新たな『白式ミライドウォッチ』が生成される。

  

「か、過去と未来の白式が一つに。」

 

「これで白式が統合されました。

こちらを。」

 

ウォズは自分も腕に嵌めている同型機で色違いの

『白いライドウォッチホルダー』を一夏に渡す。

一夏はそれを左腕に付け『白式ミライドウォッチ』を装着する。

 

「これうまく展開出来るはずです。」

 

「分かった…こい白式!」

 

左腕を前に突き刺しながら白式の名を叫ぶと純白のISが展開される。

誘拐事件で展開した白式と同じものだ。

 

「おぉ、ちゃんと出た!」

 

「『白式・雪羅』か…」

 

しかしウォズは展開された白式をみてどこか納得していない表情を見せる。

 

「え?なんか問題?」

「雪羅は本来この時間軸上での形態であって

私の世界の時間軸・・『未来の白式』本来の形態ではないのです。

この時代に合わせたるため一時形状を退化・・・いや、形態を()()()()()()()と言った方がいいのか…魔王としての力が覚醒すれば本来の姿に戻るだろう…。」

 

今一夏が展開している『白式・雪羅』はウォズが未来から持ってきた『未来の白式』とは別物だった。

ウォズが一夏に授かった『未来の白式』はウォズの世界『魔王イチカ』が存在する時間軸の物でああり

『織斑一夏が死亡する』時間軸の物ではない…つまりそこで矛盾が生じ、次元レベルの修正によって『未来の白式』は『織斑一夏が死亡する』時間軸での未来の形状『白式・雪羅』の形を取ることによって矛盾をなくしているということだ。

 

「なんかややこしいな・・・どういう事?」

 

しかし一夏はこの内容を理解できず顔を傾ける。

 

「未来の白式はこの時代の白式ではないということだ。」

「ますますわからなくなってきたぞ??」

「・・・まぁ、良いでしょう。これからは訓練は白式を使って行います。

第1アリーナ使用許可を取ってあるので放課後そちらで訓練をしましょう。」

 

ウォズ説明を諦めた。

 

 

 

一週間後、クラス代表を決める試合が第一アリーナで行われた。

一組の生徒の他、人類初の男性IS操縦士である織斑一夏がどのような戦いをするのか興味をもった別クラスの生徒も複数人見学に着ていた。

一夏は待機室で体をほぐしながら相手の準備が終わるまで待機をしており、その場に何故かウォズの姿はなく、代わりにいた篠ノ之箒と会話を始める。

 

「箒?こんなところで何をしてるんだ?」

「あ、いや・・・その、心配になって。」

 

この一週間一夏は箒の部屋ではなく、ウォズ部屋で寝泊りをしていた。

箒自身は戻ってきてほしいと考えているが、試合に向けた訓練で忙しそうにしていたために、なかなか話を切り出せないでいたのだ。

 

「大丈夫、ウォズとめっちゃ訓練したから自信ある。」

 

ウォズの名前を聞き若干体をビクつかせる箒。

暴行の一件で自分の印象を悪くしたのではないかと恐れを抱いていたのだ。

 

「そ、そうか・・・ならいいんだ。」

 

「箒。」

 

一夏は箒の目を見る。

 

「今度、また剣道教えてくれよな?」

 

友人や仲間を大切にしている一夏は箒の不安を感じ取って

自分は気にしてないよと笑顔で箒に語る。

 

「あ、あぁ!いつでも来い!」

 

『織斑君準備はいいですか?』

 

待機室内に山田先生の声がスピーカーから流れる。

 

「はい!いつでもいけます!」

『ではカタパルトについて下さい。』

 

一夏は白式を展開しカタパルトに脚部をはめる。

 

「じゃぁ、言ってくるよ箒。」

「あぁ、勝手こい!」

「織斑一夏、白式・雪羅 いきます!」

 

カタパルトが勢い良く射出され白式はアリーナのスタジアムに飛び出す。

飛行訓練はある程度積んでおり、難なく飛行する白式。

 

その様子をアリーナの管制室から見ていた山田先生と千冬は安心した表情を見せるがあることに

気がつき表情を変える。

 

「あれ?カタログデータと違う武装していますね。」

「そうだな、機体性能もだいぶ誤差がある。」

 

それもそのはず、すでにセカンドシフトしている状態であるため

資料と大幅に違いがあるには当然の事だった。

 

「なにか改良をしたのですかね?」

「・・・・・・。」

 

千冬は顎に手を当て鋭い眼差しでモニターに移る一夏もとい白式を見る。

 

「束の仕業?・・・いや、違うか?」

 

 

 

「来ましたわね。負ける覚悟はよろしくって?」

 

先に着ていたセシリアが、一夏に挑発をする。

 

「負ける気はねー。いい試合にしようぜ?オルコットさん!」

 

一夏の笑顔で若干、ドキっとするセシリアだったが、試合開始のアラームですぐに冷静になる。

 

「さぁ! 踊りなさい、セシリアオルコットとこのブルーティアーズが奏でるワルツで!!」 

 

「うぉおおおお!!」

 

 

 

 

試合は互角。

その状況を見て感心する山田先生。

 

「すごいですね織斑君・・・代表候補生と互角なんて。」

「・・・・・・。」

「織斑先生?」

「ん?なんだ山田先生?」

「あ、いえ。何か考え事でも?」

「あぁ、少し違和感を感じてな・・・。」

 

千冬はモニターを見る。

 

「違和感ですか?」

「一夏はIS初心者だ、そんな奴が代表候補生相手に互角などおかしな話だ。」

 

例えISのことはある程度知ってても稼働時間は代表候補生と比べて明らかに少ない、素人

それなのに一夏はその代表候補生とほぼ互角の実力を所持していた。

「あー、でも常盤君と時間ギリギリまで訓練していたようだし、そこで何かコツとか掴んだのでは?」

 

山田先生はその原因は常盤ウォズではないかと答える。

 

「常盤と?」

 

「えぇ、なにやら熱心に教えていました。青春ですねー。」

 

(常盤ウォズ・・・貴様はいったい何者だ。)

 

常盤ウォズ_突然現れた二人目のIS適性者。

彼のことはよく知らないが一夏の知り合いの様だった。

 

一夏をここまで鍛え上げるにはISの知識とある程度の実力が必要不可欠

女性ならともかくISに触れる事の少ない男性であるウォズがどこでそんな知識と経験得たのか

もしかすると何処かのスパイ?しかし一夏を鍛えてなんのメリットがあるのだろうか・・・。

千冬はウォズに対し疑惑を持つ様になる。

 

 

 

一方、ウォズ本人は他の生徒とから離れ、通常立ち入り禁止場所になっている来訪者用の席に腰掛け一人試合を見ていた。

 

(さすが・・・飲み込みが早い。

が、我が魔王だったら手をかざすだけで瞬殺だ。)

 

我が魔王…

ウォズは未来の一夏…魔王イチカの事を思い浮かべる。

大勢のIS軍隊をたった一人で壊滅に追い込んだ最低最悪の魔王。

その力の断片はこの試合をしても現れることはなかった。

 

顔を上げ、雲一つない青空を眺める。

 

「逢魔の日はまだ先か…。」

 

 

 

 

 

 

 

「な、なかなかやりますわね・・・予想以上です!」

 

試合は意外にもセシリアの劣勢で進んでいた。

素人同然と思っていた織斑一夏の実力は自分の予想より遥かに上回っており

レーザー射撃を雪片で切り裂いて相殺する荒技、BT兵器による死角からのオールレンジ攻撃をいとも容易く避ける反射神経とセンス

たった一週間でこのようなレベルまで力をつけた一夏のポテンシャルと努力を素直に評価すると同時に自分の勝利のビジョンが見えなくなることにセシリアは焦りを感じる。

 

そしてついにBT兵器の一基が破壊されてしまう。

 

「な、BTを!?」

 

それから連鎖するように次々とBT兵器を荷電粒子砲や雪片によって落とし、

残りは切り札である2基だけになってしまう。

 

「これでどうだ!!」

瞬時加速(イグニッション・ブースト)!?」

 

一夏はイグニッションブーストを使い一気にセシリアとの間を詰め

雪羅を構える。

 

「掛かりましたわね!BTは二基残ってましてよ。」

 

残りの二基に装填されているミサイルを一斉に打ち出し、一夏に命中させ

勝利を確信したセシリアは、笑みを浮かべるがそれはすぐに焦りへと戻る。

 

一夏は落とされていなかった。

 

雪羅のシールドによってミサイルを防いだのだ。

 

「知ってたよ!」

 

スターライトmkIIIを雪羅の爪で掴みゼロ距離荷電粒子号で破壊。

そしてそのまま流れるように零落白夜を発動させた雪片でセシリアを斬りつける。

 

「インターセプター!」

 

セシリアはショートブレードで受け止めるも一夏は分かっていたように口角上げる。

 

「零落白夜は剣だけじゃ無いんだぜ?」

「な!?」

 

一夏は何と()()()()()()

あっけに取られたセシリアに向けて零落白夜を発動させた雪羅の爪でブルーティアーズのシールドバリアーを思いっきり切り裂さいた。

 

「きゃぁぁぁあああ!!」

 

そしてそのままトドメとして荷電粒子砲を打ち出しブルーティアーズのSEをゼロにする。

 

『勝者、織斑一夏』

 

「よっしゃ!。」

 

勝負は一夏の圧勝。

まさかの展開に会場は静まり返る。

それもそのはず、殆どの生徒が一夏の敗北を予想していたのだ。

男は女より弱い…女尊男卑が当たりな世界で、誰しもが当たり前の感覚で(一夏)が負けるものだと思っていた

結果は皆の予想を裏切る形に終わった。

 

 

「ま…まさか勝ってしまうなんて。姉として鼻が高いんじゃないですか?」

「…そうだな。」

 

まさかの一夏の勝利に管制室にいる教師二人も驚愕の表情をする。

 

 

「よし!今度はウォズに頼らなくて勝ったぞ!」

「・・・まさか神たるわたくしが負けるとは。」

 

ISは解除され、そのままアリーナに座り込むセシリア

その様子を心配したのか一夏が近寄る。

 

「大丈夫オルコットさん?少しやりすぎたかな?」

 

「笑に来たいのですか?神だ神だと言っていた癖に無様に負けた

セシリア・オルゴット(笑)を笑いに来たのですね!」

 

「いや、別にそんな事思ってないよ。

何だよセシリア・オル()()()って…語呂いいな。」

 

セシリアは男というものは皆、父のようヘコヘコ頭を下げる弱い人間だと思っていた。

しかし、その考え方は一夏との戦いで改めるのではあったが、強い悔しさと惨めさを感じ

一夏の差し伸べられた手を拒む。

 

「いや、ただ俺はセシリアを心配で…」

「嫌味にしか聞こえませんわ!」

 

砂埃を払い、一夏に背を向けピットに戻るセシリア。

一夏はその後ろ姿をただただ見つめることしかできなかった。

 

「なんか、怒られちゃったな…。」

 

自分も戻ろうとしたその時。

 

「セシリア・オルコット。」

 

セシリアの前に一人の生徒が立ちはだかった。

 

「貴女は確か二年のレティ・テイラー先輩・・・どうしてここへ?」

 

「知り合いか?」

 

一夏も気になり、セシリアの元へ行く。

 

「ええ、同じイギリスの代表候補生です。」

 

代表候補生・・・その言葉を聞いてレティーの中で何かが切れた。

 

「お前を殺してやる!!」

 

『ブルーティアーズ』

 

レティーは禍々しいオーラとともに青いIS型の怪人へと姿を変える。

そしてそのままレザーライフルを展開し、生身のセシリア向かってそれを射撃をする。

「!!!」

「きゃぁ!?」

 

しかし、その攻撃は割って入った一夏の斬撃によって無力化される。

 

「お前!生身の人間に向かってなにやってんだ!!」

 

『黙れ!!そこをどけぇええええ!!』

 

背部から鳥の羽のようなパーツが4基射出され、それぞれ一夏に向けてレーザー攻撃をする。

「っく!!これは?!」

「BT兵器!?」

 

そう、それはまさしくブルー・ティアーズと同じBT兵器。

 

「ごめん!オルコットさん!」

 

「お、織斑さん!?」

 

流石に全方位攻撃からセシリアを守れないと判断した一夏のはセシリアをお姫様抱っこのように抱き上げ、ピットに向かって飛び立つ。

しかし、それをさせないとばかりに謎のISは攻撃を続ける。

 

「っち!?」

 

避けながらもなんとかピットに向かうが、ピットの入り口は頑丈なシェルターで閉ざされていた。

 

「な!?」

 

 

 

 

「織斑!織斑!一夏!」

 

「連絡つながりません!・・・システムが何者かによってロックされています。」

 

管制室にいる教師二人は謎の敵に対し一夏とセシリアに撤退命令を出そうとするが通信の不具合や

謎のシステムのロックによって対応できずにいた。

 

「なんだと!?いったい彼女は何者だ?」

「2年のイギリスの代表候補生ですど・・・まさ何処かのスパイ?織斑君を狙って!」

「いいや、彼女は明らかにオルコットを狙っている・・・取り敢えず生徒たちに避難指示後を。」

 

アリーナ内の警報を鳴らし生徒たちに避難指示を出す。

アリーナにいる生徒が急いで避難している中、流れに逆らう様にウォズは一夏が良く見える通常のアリーナ席に移動する。

 

 

「あれはアナザーIS!?どうしてこの時代に・・・まさか。」

 

ウォズは謎のISに対し驚きの表情を見せるが、それを創り出した人物に心当たりがあった。

 

『そうだよー。』

 

少女の声と共に周りの風景が静止する。

やはりかという表情を浮かべたウォズは声の方向を向く。

そこにはレティーに強引に契約を結んだフードを深く被ったタイムジャッカーの少女がいた。

 

「タイムジャッカー『リアス』。」

 

ウォズは静かに少女の名前を口にする。

 

『久しぶりだねーウォズ…元気にしてたー?』

「やはりお前の仕業か。」

 

歴史が変わった原因・・・それはタイムジャッカーの介入に原因があるのではないかと

ウォズは睨んでいた。

 

「目的は何だ?」

『知ってるでしょ?・・・織斑一夏の抹殺と新たな王の創造。』

「今時間軸で起きている歪み…それも君の仕業か?」

『あーあれね。』

 

リアスは少し考えると笑顔で答える。

 

『そうだよー・・・と言ったら?』

「始末する。」

 

ウォズは腕のホルダーから『ウォズミライドウォッチ』を取り出しリューズを押す。

 

 

『ウォズ!』

 

 

そして腰回りに現れたドライバーに装填しようとするが

リアスは慌てた表情でそれを止める。

 

『嘘だよ!冗談だって!ウォズを揶揄っただーけ。

時間の歪みだか何だか知らないけど、私は一切関係ありませーん!。」

 

「なんだと?」

 

嘘か誠かそれは彼女のみぞ知る・・・そう言われてハイそうですかと信じるウォズではない。

 

「どっちにしろお前は始末する運命だ。」

 

『おっかねー、逃げろー!』

 

リアスは全速力で入り口まで走り出す。

それを追いかけたウォズだったが、曲がり角でリアスの姿を見失う。

 

「逃したか。」

 

ウォズミライドウォッチをホルダーに戻し別のウォッチ

銀色のウォッチ…『ファイズフォンX』と入れ替え一夏にプライベートチャンネルで通話をかける。

通信妨害を受けている状況ではあるがファイズフォンXは過去と未来に通話が可能、妨害程度で通話不能にはならない。

 

「聞こえますか?我が魔王」

 

『ウォズか?丁度良かった!千冬姉に連絡つかなくて困ってたんだ。

こいつは一体何か知ってるんだろ?』

「ええ、それはアナザーIS。」

『アナザーIS?』

「詳しい説明は詳しい省きますが、アナザーISはISであってISではない物…機械というよりかは怪人に近い存在です。」

『こいつらも未来人か何かか?』

「少し違う、未来の技術で生まれたのは確かだが中身はこの時代の人間だ。恐らく今は暴走して理性を失っているのだろう。」

『だったらどうにかして止めないと!』

「しかしアナザーISは元となったISでしか倒せない。」

『元となったIS?』

 

アナザーISについては謎が多いが、現段階で分かっていることはアナザーISは元となったISで倒すことが可能

しかし、逆に言うとそれ以外のISもしくはそれ以外の兵器の攻撃を一切受け付けないのだ。

 

「そう、恐らくそのアナザーISはブルー・ティアーズだ。」

『オルコットさん専用機か!』

 

一夏はセシリアならアナザーISを倒せると思いセシリアを見る。

 

「オルコットさん!ブルー・ティアーズって起動できる?」

 

「い、いいえ。先ほどの試合でSEがつきました。」

 

そう言いながらイヤリングの形状をしているブルーティアーズの待機状態に触れようとするが。

 

「あ、あら!?ブルー・ティアーズがない!?」

「なんだって!?」

 

解除したら自動的に待機状態になるはずのISが彼女の手元になかったのだ。

 

『やはりか。

アナザー・ブルー・ティアーズは歴史から外れ他者に渡ったブルー・ティアーズ…アナザー・ブルー・ティアーズこそがこの時代のブルー・ティアーズそのものだ。』

 

まるで早口言葉かラップみたいな台詞に若干苦笑いする一夏。

 

「なんかすげーややこしいけど、いわゆるブルー・ティアーズが奪われて使えないってことか?」

『そう解釈して良い。』

「だったらどそうすれば!?」

 

『それは・・・』

 

「その女をよこせ!!!」

 

ウォズに倒し方を聞こうにもアナザーBTの攻撃に遭い通話を中断する。

BT兵器を回避しながら一夏は自分にできることを考える。

 

「コイツ!オルコットさんを的確に狙ってきやがる!」

 

攻撃は読める。

明らかにセシリアを狙った射撃。

避けることは安易だが、生身のセシリアを抱えた状態では動きが制限されてしまう。

 

「一夏さん…私を置いて逃げてください。」

 

明らかに自分が足を引張ていると感じたセシリアが一夏に言う。

 

「馬鹿!そんな事出来るかよ!!」

 

そんなセシリアに一夏は強い眼差しで答える。

 

「仲間を見捨てる奴なんて王様になんかなれない!!

セシリア・オルコットは俺の仲間だ絶対に守る!!」

 

「一夏さん。」

 

_なんて熱くてお優しい方・・・今までそのような男性と出会ったことはありませんでした。

セシリアの胸の鼓動がだんだん早くなる。

 

(この感覚・・・間違いありません。わたくしは織斑一夏さんに恋をしてしまいました。)

 

その瞬間一夏の纏う白式に変化が現れる。

 

ノイズが走る。

そのノイズが段々と大きくなり、白式が古いテレビ映像の様に荒く強くブレていく。

 

「な、なんだ!?」

 

驚く一夏をよそに、ブレは銀色の光を放ちながら白式のシルエットを変えていく。

 

「セカンドシフト!?」

「いや、違う・・・なんだ?」

 

「おぉ・・・遂に覚醒を!」

 

千冬と山田先生は自分の知識にない現象に困惑し

ウォズはこの現象を待ちわびてた様に歓喜する。

 

「間違いない…その雄姿…正しく魔王の力!!」

 

光が収まり白式の新たな姿が明らかになる。

機体色は白と白銀…。

頭部は顔全体を隠すフルフェイスに使用に変化し、ダイヤルの装飾と新たに加わったV字アンテナは時計の針の様に10時10分をさす…

背部のギアモチーフのカスタムウイングが合わさりその姿は正しく『白銀の時計台』

時を統べる、ISの王『白式・超越(ビヨンド)』がここに降臨しする。

 

 

 

 

「祝え!全ISの力を受け継ぎ、過去と未来を知ろしめす王者の羽衣。

その名も『白式・超越(ビヨンド)』今まさに時の王者が現代に降臨した瞬間である。」

 

 

 

 

 

 



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第四話 超越 後編

スマホから投稿!
若干変になっているかも知れません!!
後日修正します!


ウォズはスタジアム中央に現れ、声高らかに白式を祝福した。

 

「うぉ、ウォズ!?

いつの間にそんなとこに・・・てか、危ねえぞ!!」

「と、常盤さん!?」

 

しかし場所はアナザーBTの攻撃が飛び交う非常に危険な場所

そこにISを纏わずに現れたウォズに驚く一夏とセシリア。

 

「私の事はいい、だが残念なことにそのままの状態ではアナザーISには勝てない。」

 

マゼンタカラー…見方によってはISという文字に見えなくも無い形のバイザーが

アナザーBT(ブルー・ティアーズ)を見る。

 

「じゃあどうやって!!」

 

未来の情報から攻略法を探すためタブレット開くが、そこに書かれていた内容が大きく変化していた。

ウォズは少し驚くが原因を直ぐに理解する。

 

ー未来が変わったのだ。

 

それもセシリア・オルコットに関する未来・・・。

ウォズはすぐさま情報読み取り、アナザーISの攻略法のを見出す。

 

(なるほど、これはセシリア・オルコットとの絆を深めた場合の歴史…だったらその歴史を()()()()()もらおう。)

 

ウォズは懐から黒いウォッチ…『ブランクミライドウォッチ』を取り出すとタブレットに文章を記入する。

 

『ブルー・ティアーズミライドウォッチが生まれた』

  

すると黒いブランクミライドウォッチが輝き始め青と白のウォッチに生まれ変わる。

 

「我が魔王!こちらを!」

 

ウォッチを空中にいる一夏に向けて投げ、一夏はアナザーBTの攻撃を避けながら片手でそれをキャッチする。

 

「うぉ!?なんだこれ」

 

「『ブルーティアーズミライドウォッチ』・・・

『白式・超越(ビヨンド)』本来の力を引き出すモノです。

さぁ、それを腰に巻いているドライバーに!」

 

「ドライバー?」

 

腰部分を触れると、そこには今までになかった白い装置が付いていた。

 

「これか!」

 

セシリアをウォズの側に下ろし、

アナザーBTと向かい合いながらウォッチのリューズを押す。

 

『ブルーティアーズ!』

 

そしてドライバーの窪みに装填し、もう一度リューズを押す。

 

『アクション!』

 

軽快な待機音楽とともに背後から白い時計台のビジョンが現れ、そのままドライバーのレバーを押し込む。

 

『投影!フューチャータイム!』

 

蒼い光が全身を包み白式に新たな装甲と武装を形成する。

 

『狙い撃ち!蒼雫…フューチャーリングブルーティアーズ!

ティアーズ!』

 

装甲がない部分を補う様に、新たに蒼い装甲が展開され全身装甲使用のISへと変化。

バイザーのISの文字はクリアグリーンに変色し、胸装甲には大きく『BLUE・TEARS』の文字。

カスタムウイングのギアが変形し新たな武装…六基のBT兵器が装備され、その姿はまるで

セシリアのIS『ブルーティアーズ』を『白式』が()()したかの様になっていた。

 

「うぉおおおお!?何これ!!」

「まさか…ブルーティアーズですの!?」

 

白式の変化に驚く二人

それを他所にウィズは手を広げ再び祝福する。

 

「祝え!全ISの力を受け継ぎ過去と未来を知ろしめす王者の羽衣。

その名も『白式・フューチャーリング蒼雫(ブルー・ティアーズ)』今まさにISの力を継承した瞬間である。」

 

「あ、またやるんだそれ。

でも…なんだか行けそうな気がする!!」

 

『ジカンギレード!ジュウ!』

 

雪羅の代わりに出現した新たな武器、字換エネルギー銃剣『ジカンギレード』を展開しながらカスタムウイングから生成されたBT兵器を

アナザーBTに向けて打ち出す。

 

「行け!ブルーティアーズ!!」

 

BT兵器を一度も扱ったことが無い一夏だが、白式・超越の固有能力

『フーチャリング』の効果によってミライドウォッチから自動的にBT兵器の運用方法が一夏の脳内にインストールされる。

 

『ブルーティアーズ!』

 

相手も負けじとBT兵器打ち出し、互いにオールレンジ攻撃の打ち合いになるが、一夏の方が実力が上、相手のBT兵器は全て破壊されてしまう。

 

「!?」

 

「さぁ、トドメです。もう一度レバーを!」

「分かった!」

 

ウォズの指示に従いレバーを引きもう一度押し込む

 

『ビヨンドザタイム!タイムストームレイザー!!』

 

 

ウォッチに内包されたエネルギーが解放され、出力の上がったBT兵器が一夏背後に円を描くように整列する。

 

『いっけぇええええ!!!』

 

BT兵器は高速回転しながらレーザーを一斉掃射し、アナザーBTも負けじとレーザーライフルを放つが出力が上がった白式のレーザーを相殺し切れずにそのままレーザー攻撃を受けてしまう。

 

「あがぁ!!」

 

まともに食らったアナザーBTは爆発を起こしながらスタジアムに墜落し、姿を元の人の状態に戻す。

元に戻ったレティーの体内からアナザーウォッチが勢い良く飛び出し、壊れるように消滅

レティー自身は暴走による疲労とダメージによってその場に倒れそのまま気絶する。

 

「ふぅ・・・」

 

一夏は安全を確認すると、ミライドウォッチをドライバーから外しISを解除、少し深呼吸しながらセシリアの方を見る。

 

「オルコットさん大丈夫!?」

 

駆け足でセシリアの元に行き、座り込んでいる彼女にそっと手を差し伸べる。

セシリアは軽く返事をしながら差し出した一夏の手を両手で包む。

 

「え・・・」

「セシリアとお呼びください。」

「え!?」

 

そして、そのまま立ち上がるのと同時に一夏に抱きつき、頬に軽く口づけをする。

 

「ちょ、ちょっと!なに!?」

 

当然のことにビックリした一夏はセシリアから慌てて距離を離す。

 

「わたくしあなたを気に入りました・・・絶対にわたくしの虜にしていずれ信者にして差し上げますわ!」

 

「お、おう。」

 

突然何を言い出すのかと一夏は戸惑いを見せる。

 

その様子を半ば呆れながら見ていたウォズはそのままスタジアムを後にする。

 

 

「はぁ・・・結局セシリア・オルコットを落としてしまわれましたか我が魔王。

流石の私も『運命』を変える事は出来なかったか。

まぁそれで()()()のミライドウォッチが生成できたのですから、良しとしましょう。」

 

歴史は確実に変化している。

織斑一夏が魔王に至る道はまだ完全には閉ざされていないのは確かだが、死亡する未来は変わらずにいる。

それに加えタイムジャッカー『リアス』彼女の存在・・・一夏死亡に何らかの関係がある事には違いは無いが、いったい何のために?

新たな王の創造とは一体。

警戒心は強まるばかりであった。

 

 

 

ウォズはそんな事を考えながらアリーナを出ようとすると、入り口を封鎖するように織斑千冬のが立っていた。

 

「まて、常盤。話がある。」

「これはこれは、織斑先生…私にご用で?」

「常盤・・・なにか知っているだろ?」

 

刃物のような鋭い視線…流石のウォズも人類最強の前では

手出しは出来ない。

 

「なにか、とは?」

「とぼけても無駄だ。あの謎のISと白式について、なにか知っているだろう?」

 

流石にあれだけ動けば彼女に気づかれる。

しかし、それはウォズにとって想定内であった。

 

「貴女なら・・・話してもいいかもしれませんね。」

 

ウォズは千冬に自分が未来人であること、一夏の未来、白式、そして謎のISについて一夏に言ったことと同じ内容を話した。

 

「そんな話、信じるとでも?」

 

しかし当然ながら千冬は疑いの目をウォズに向ける。

 

「いいえ、貴女は信じます。

・・・そうですね、ここで未来人らしく予言をしましょう。」

 

「ほう?」

 

「予言が当たったら、私の言うことを信じて頂きたい。」

 

「・・・いいだろう。」

 

千冬は少し考えそれを承諾する。

 

ウォズはタブレットを開き未来で起こるであろう出来事を

千冬に伝え、そのまま静かにタブレットを閉じる。

 

「ほう、それは大層な予言だな。」

「答え合わせはまたいずれ。」

 

ウォズは千冬にお辞儀をし歩き出す、そしてすれ違いざまに小声で千冬に耳打ちをする。

 

「では、また明日お会いしましょう織斑先生・・・いえ、白騎士殿。」

 

白騎士・・・。

その単語を聞いた瞬間、珍しく冷や汗を流しながら目を見開く千冬。

 

「っ!お前!?」

 

千冬はとっさに振り向くが、ウォズの姿は既に消えていた。

 

「まさか・・・本当に。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一夏君、この状況は一体?」

 

事件から数日たった日の昼休み。

ウォズは一夏に誘われ、一緒に昼食を取ろうと屋上に来たのはいいものの、その場には自分のほかに危険だと散々警告したはずの人物

『篠ノ之箒』と『セシリア・オルコット』の姿があったことにウォズは頭を抱える。

 

「いや、せっかくの仲間同士、友情を深めようと思って。」

 

一夏のあまりのお節介にウォズは呆れたように軽いため息をする。

 

「聞いたぞウォズ、クラスの人とあまり話をしないんだって?

だめだぞ、学園生活を共にする仲間同士ちゃんとコミュニケーションをとらないと。」

 

ウォズは一夏の肩を掴み他の二人に聞こえないよう小声で話す。

 

(コミュニケーションは兎も角、よりにもよって何故

セシリア・オルコットと篠ノ之箒を誘った!言ったはずだ、彼女達は危険だと!)

(いやいや、ウォズは二人のことをよく知らないからそんなこと言えるんだ。)

(よーく知ってる!だから警告している!)

(俺はそんなの信じないね)

(全くこの我が魔王は!)

 

一夏の甘い考え方に頭を悩ませながらウォズは二人の危険人物を見る。

箒はかなり不機嫌で仏頂面をしており

セシリアはニコニコしてながらも心では笑っていないと雰囲気で分かった。

恐らくなにか勘違いさせるような誘い方をしたのだろうとウォズは考える。

 

「それに箒、何かウォズに言う事あるだろ?」

 

それを聞いた箒は一瞬ビックっと体を震わせ、少し咳払いをしながら

ウォズを見る。

 

「と、常盤…先日は…その、すまなかった!」

 

箒は頭を下げた。

先日…恐らく道場での一件だろう。

ウォズは箒の意外な行動に目を見開く。

ずっと暴力的な人だと思っていた人物が素直に頭を下げたのだ。

一夏に言われてやった感はあるが、それでも謝罪する箒の姿勢にウォズは素直に驚く。

 

ウォズ自身は竹刀で殴りかかったこと自体あまり気にしていなかった。

むしろ一夏に彼女がいかに危険な人物かを証明する為、あえて攻撃を煽るような行動をしたのだ。

しかし、箒が謝罪をしてしまったことで一夏の中の彼女に対する好感度が上がってしまい

自分の行動が無駄になったことに苛立ちを覚える。

 

「…気にしてない。」

 

「そうか、良かった。」

 

良くは無い。とウォズ心の中で呟く。

 

「さて、じゃ、飯食おうぜ?」

 

一夏はレジャーシートの上に座り持参した弁当箱を取り出す。

他の三人もつられるように座るが互いに距離をある程度開けてながら座る。

 

「一夏さん!わたくしサンドイッチを作ってまいりましたの!」

 

「お!本当か!?」

 

サンドイッチ…その単語を聞いた瞬間、ウォズは顔を上げる。

 

「お、美味しそうだな。」

 

セシリアが持っているピクニックバスケットの中には綺麗に並べられたサンドイッチ。

一見普通に見えるがそれを見たウォズは顔色を青くさせる。

 

「さぁ、神のお恵みを有り難く受け取りなさい!!一夏さん、あーん」

「な!?」

サンドイッチを一つ掴み一夏の口元に運ぶセシリア。

その行動に思わず声を上げる箒。

それと同時にウォズは素早く一夏の背後に回り

 

「お待ちを!それは食べないほうがいい!」

 

そしてそのまま一夏を羽交い締めにする。

 

「ウォズ!?」

「彼女の手料理は食べないほうがいい!」

「そ、そうだぞ一夏!私の唐揚げの方が美味いに決まっている。」

 

箒は弁当箱を急いで取り出し自作の唐揚げを一夏に見せる。

こればかしはナイスとウォズは心の中で箒に感謝するが、一夏は止まらない。

 

「まぁ、なんて失礼な方達!」

「そうだぜ?せっかくセシリアが作ってくれた物だし、ちゃんと食べなくちゃ!」

 

「はい!一夏さん…あーん。」

 

「我が魔王!!」

「もごぉぉぉぉお!?」

 

ウォズは両手で一夏の口元を強引に塞ぐ最終手段をとる。

 

「オルコット君、君は自分の料理の一度食した方がいい。」

 

「まぁ、神の才能を疑いますの?」

 

セシリアはサンドイッチをウォズの前に持ってくる。

 

「味付けは完璧ですわ、香りもほら、お気に入りの香水をかけましたの。」

 

「「「……」」」

 

それを聞いて固まるウォズと一夏と箒

確かにローズのいい香りがする…しかしそれはサンドイッチからしていい匂いだろうか?

 

「い、今何と?」

 

箒は聞き返す。

 

「お気に入りの香水…」

 

「馬鹿かお前は!料理に香水など使わん!!」

 

「それだけではありませんわ!

本来使わない素材をふんだんに使ったこのサンドイッチはまさに…神級の一品!」

 

サンドイッチの中を見せようと食パンを捲る。

すると何故だか神々しい光が辺りを照らした、原因はサンドイッチ。

サンドイッチの中身が光っているのだ。

 

「これぞ神の才能ですわ!」

 

「何を入れたらそんな光を放つサンドイッチが生まれる!!?」

 

光るサンドイッチを作ってしまうなど悪い意味で才能的だ。

流石の一夏もこれは食えないと判断し食べるの諦めるが

セシリアは涙目になって一夏に訴える。

 

「一生懸命作りました…食べてくださりませんの?」

 

「…」

 

悲しませたく無い。

そんな正義感に駆られ、一夏はウォズ振り払いセシリアのサンドイッチ口に頬張る。

 

「一夏!?」

「我が魔王!?」

 

結果は言わずもがな…一夏の顔は真っ赤になったと思いきや

急に青くなり、そのままその場に倒れてしまう。

 

「まぁ、一夏さん!あまりの美味しさに倒れてしまいましたのね!」

「お前の目はどうなってる!!」

「しっかりしてください!我が魔王!」

 

ウォズはとっさにタブレット開き。

『織斑一夏はセシリア・オルコットのサンドイッチに耐える』

と記入し、一夏を抱え上げる。

 

「ウォ・・・ウォズ。」

「…なんて馬鹿な真似を。」

「俺・・・少しは、お前のこと・・・信じるよ。」

 

そこで完全に一夏の意識が途絶える。

 

「ん我がまぁぉおおおおおおお!!!!」

 

ウォズの叫びが雲ひとつない青空に響き渡った。

 

 

 

 

 

__こうして、ひとまずは歴史にはない大きな事件を乗り越えることはできた・・・しかし、一夏の死の未来はまだ変わらずにいる。

これから起きる、事件・・・無人機の襲撃に黒きISの暴走・・・そして、鐘の事件。

それ以外にも一夏が死んでしまう可能性のある出来事は数多くある。

一夏を魔王にすべく、そしてお守りするべく私は心を鬼にしなければなりません・・・。

 

これから来る中国からの使者。

彼女は篠ノ之箒に続いてもっとも私が警戒する人物の一人

 

最悪、我が魔王の為・・・彼女を抹殺しなければならない。




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第五話 怒りのドラゴン 前編

思ったより早くできたので投稿します!


IS学園に通う普通の高校生『織斑一夏』には将来『魔王』になる未来が待っていたはずであった。

タイムジャッカー『リアス』の妨害でアナザーISと対立した織斑一夏であったが

『未来の白式』本来の力『白式・超越』に覚醒し、セシリア・オルコット専用機『ブルー・ティアーズ』の力宿した形態フューチャーリングBTによってアナザーIS撃破に成功したのであった。

 

ウォズの予定どうり超越に覚醒したとならば、ミライドウォッチ収集が今後の主な課題になるだろう。

しかしミライドウィッチを生成できるISは第三世代から・・・その世代は今の時代だとようやく量産の目星がつく頃で種類は著しく少ない。

今後生成できるであろうミライドウォッチの数は凡そ3種程度

一夏はどのようにしてミライドウォッチを手に入れるのか、

そしてウォズは一夏の死ぬ運命を変える事が出来るのか。

彼らの戦いは始まったばかりである。

 

 

 

 

 

 

「来たね。」

 

ウォズはそっとタブレットPCを閉じ、タイムマジーンのメインモニターの一部を拡大する。

 

そこに映し出されたのは黒いIS

 

進路方向と照らし合わせるとその黒いISはまっすぐとIS学園に向かって行っていることがわかる。

 

「織斑先生、予言通りに来ましたよ。」

 

学園にいる織斑千冬に通信を入れる。

 

『まさか本当に来るとは・・・。』

「これで少しは信じてくださいましたか?」

『お前が提示した予言はまだある、全て当たるまでは無理だな』

「お厳しい事で」

 

ウォズがいる場所はIS学園から少し離れた海域

タイムマジーンのビークルモードであたりを飛行しながら周回、謎のISを待ち伏せ今に至る。

現在IS学園ではクラス対抗トーナメントが行われており、謎のISの目的はその対抗戦に出場している織斑一夏であることは、未来を知るウォズにはすでに分かっていたことだった。

 

「少々敵に回したく無い相手だが、我が魔王の王道を邪魔をする者は例え貴女であろうと!」

 

ウォズはタイムマジーンの速度を上げその謎のISに向かって飛行、

ホルダーから取り出した自分の名前と同じウォッチを前に構えリューズを押す。

 

『ウォズ!』

 

謎のISも接近するタイムマジーンに反応して戦闘態勢に入る。

 

『タイムマジーン!!』

 

タイムマジーンはロボモードに変形、ライダーの文字がキラリと謎のISを睨みつける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「織斑一夏君!決勝進出おめでとぉぉぉおお!!」」」

「あはは、ありがとう…でもまたパーティ?勝つごとにやるの?」

 

一夏は順調にトーナメントを上がり、ついに決勝前に進んだ。

クラスメイトはそれを祝うべく、食堂を貸し切りにし一夏の応援と決勝進出祝いのを含めたパーティが開かれた。

しかしパーティ自体は三回目・・・勝つたびに開かれるパーティーにかなり疲れた表情を見せる一夏だった。

 

「いいじゃん織斑君!こういう行事は皆んなで盛り上げないと!」

「流石織斑先生の弟!全試合無償で勝つなど、まさに千冬様伝説の再来よ!」

「デサート券も目の前!今夜はじゃんじゃん飲むぞ!!」

 

「「「「おーーーーー!」」」

 

「未成年だからお酒は飲んじゃダメだぞ!?」

 

みんなワイワイ、ケーキやらバイキングやらを楽しみ、わやわやと騒ぎ立てる。

一夏の周りにも女の子が集まり、女特有のマシンガントークが繰り広げられる。

 

「織斑君本当強いよねー、何か秘密の特訓とかしてる?」

「秘密って訳じゃあ無いけど、毎日ウォズとISで訓練しているぐらいしか…。」

「あー、常盤君ね」

 

トークの中で常盤ウォズの話題が上がる。

ウォズは一夏以外の生徒とあまり関わりを持とうとしない。

クラスメイト達の間でもウォズについて何の情報もない状態であった。

 

「常盤君って何者なんだろう…。」

 

「あまり話したこと無いからわかんないよねー。」

「ISの実施授業を見た感じ操縦はうまいのよね。」

「あ、私織斑君と常盤君が訓練してるとこ見たことあります!」

「うんうん!織斑君と互角に戦ってたよねー。」

「じゃあ、結構強いのかな?」

「でも、専用機持ちではないからどうなんだろ?」

「なんかいつも織斑君の側にいるよねー。」

「そうそう!常盤君見かける時結構の割合で織斑と一緒だよね。」

 

「あれですか?やっぱり二人はそっちの関係?」

 

そっちの関係?

腐った女子の質問に思わず飲んでいたジュースを吹き出す一夏。

 

「いやいやそんな訳で無いだろ!!男が二人しか居ないんだ

自然にそうなるだろ?。」

 

「そんなんこと言って実際はどうなんですか?」

 

「ウォズは…。」

 

自分はウォズをどう思っているか考える。

突然現れた未来人・・・。

なぜか箒とセシリアを敵視し、自分を鍛えてくれる友人?

 

いつも馬鹿にされていた『王様になる』という夢を真剣にサポートしてくれる

数少ない自分の夢を認めてくれたIS学園唯一の男子生徒。

 

あれ?案外自分はウォズに対して好感度が高いな。

 

 

「俺の夢を…真剣に応援してくれている友達?みたいな…。」

 

「「「きゃぁーーーーーー!!」」」

 

クラスメイトの黄色い声が食堂に響き渡る。

 

「なんか尊い!尊いよ!!」

「完全にあっちの関係じゃ無いですかやだー。」

「今年の夏コミはこれでイケるな!」

 

「いやいや!お前ら少しその腐った思考から離れようよ!?」

 

 

 

その後、千冬が消灯の知らせが来るまでパーティーが続き22時にようやく寮の部屋に帰ってこれた一夏。

ドッサとベットに横になり、天井を見る。

 

「はぁ…連続パーティーは流石に疲れるよ。

それに女子の会話になかなか付いていけないし。」

 

疲れたと、ため息をしたと同時に扉の開閉音が聞こえる。

 

「おや、先に戻られていましたか我が魔王。」

 

入ってきたのはウォズだった。

結局のところ部屋割りは寮長である織斑千冬と相談し、ウォズと相部屋になることが決まった。

若干納得していなかった箒だったが、思春期真っ只中の状態の男女二人を一緒にするのは良くないとの

判断に至った。

 

「あ、お帰りウォズ。

そう言えば今日の試合会場に居なかったけど、どこ行ってたの?」

 

準決勝が行われた今日

応援席にウォズの姿はなかったのだ。

 

「少し邪魔者を排除していた。」

「邪魔者?」

「本来の歴史によると、クラス対抗トーナメントは謎の無人機ISの乱入により中止になると書いてある。」

「無人機ISだって?」

「ええ、歴史通りであれば我が魔王が負傷しながらも打つと書いてありますが、流石にそれでは困るので私自ら排除に向かいました。」

「マジかよ。」

 

一夏の試合を邪魔させないように無人機IS『ゴーレム』を相手に待ち構えていたのだ。

そんなウォズの働きに関心ながら、一夏は気になっていたことを話した。

 

「なぁ、ウォズは何で俺に使えているんだ?」

「言った筈です、私は貴方の忠実なる僕…。」

「いや、それは分かってる!なぜ未来の俺に使えているんだって話。」

 

未来の自分がウォズに一体何をしたのか・・・どうしてそんなに忠誠心が有るのか純粋に気になった。

 

「我が魔王には返し切れない恩が有ります。」

 

「…恩?それって一体…。」

「これは未来の話…これ以上話すことはありません。」

 

ウォズは首を横に振り、自分用に入れていたお茶を静かに啜る。

本人が話したがらないのなら無理に聞こうとせず一夏は取り敢えず

納得する事にする。

「…分かった。」

 

「さて、決勝は明後日…今のうちに相手の情報を」

「お休みーウォズー。」

 

一夏はウォズから逃げるようにベットに潜り込んだ。

 

「……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、一夏、ウォズ、セシリア、箒が一緒に食堂で朝食を摂っていると

女子達の会話がふいと耳に入る。

 

「聞いたー?例の話?」

 

「聞いた聞いた!二組の転校生の話でしょ?」

 

「そうそう!なんでも中国の代表候補生だって!」

 

 

 

 

「中国の代表候補生かー。」

 

中国という単語に反応し、一夏が呟く

 

「気になりますの?一夏さん?」

「まぁな、中国には知り合いがいてな。」

 

一夏の脳内にツインテールの少女を思い浮かべる。

 

「まぁ、そうでしたの。」

「おう、幼馴染で中学の時良くつるんでたなー。」

 

「お、幼馴染は私だろ!?」

 

バンっと机を叩き立ち上がる箒。

 

「机を叩かないでくれ篠ノ之箒、味噌汁が溢れる。」

「す、すまん。」

 

ウォズに注意され、すこし体を縮めませながら着席をする箒。

 

「いや、箒と入れ替えで入ってきた子だって、なんていうかセカンド幼馴染?」

「セ…セカンド。」

「ウォズはどうせ知ってるだろ?彼女の事?」

「ええ、知っていますよ。

どうやら上手くは行かなかったようですが・・・。」

 

ウォズはタブレットを見ながらそう答える

 

上手くいかなかった?

 

一体なのことを言っているのか理解できなかった一夏。

 

「え?なんの話?」

「それは「いいいいい一夏さん!今彼女!彼女とおっしゃいましたわね!まさかその幼馴染と言うのは女性の方ですの!?」

 

しかし、その答えを聞く前にセシリアが割って入り慌てて一夏を問い詰め始めた。

 

「え、そうだけど…。」

「一夏!私という幼馴染が居ながら他の幼馴染と浮気か!?」

 

今度は箒が机を()()()立ち上がりセシリアと一緒になって一夏を問い詰めた。

その2人に対しウォズはご飯を食べながら冷たい目線を送るのであった。

 

「どう言う意味だよそれ…。」

 

箒のセリフに困惑する一夏。

そこにある生徒が一夏の名前を呼ぶ。

 

「一夏!」

 

 

「あ、噂をすれば!紹介するよ彼女が幼馴染の…。

って、ええええ!?鈴!?どうしてここに!?」

 

この場に居ないはずの一夏の幼馴染である『凰鈴音』の登場に思わず声をあげて驚く一夏。

 

「どう?驚いたでしょ?内緒でこの学園に編入してきたの!」

「はぁーマジかよ…驚いたな・・・。」

 

一夏を頭を掻きながら、鈴との再会を喜ぶ。

 

「お前バカだから偏差値の高いIS学園に絶対入学出来ないと思ってたから。

また会えて嬉しいぜ。」

「バ…バカ言うんじゃ無いわよ!せめて運動付けなさいよ!運動バカって!」

「いや、運動バカはいいのかよ。」

 

四人席に強引に入っていき、一夏との会話を楽しむ鈴。

その様子に苛立ちと嫉妬を覚えた箒とセシリアはかなり不機嫌な表情で二人を見ていた。

 

「まっさか中国の代表候補生になってたなんてなー。」

 

「ふふん!昔から私は運動が得意って知ってるでしょ?

中国政府がその才能を認めたわけ。」

 

「運動しか取り柄なかったもんな!」

 

「そういうこと!!」

 

一夏の言葉に棘がある事に気付かない鈴。

 

 

「こほん、こほん!」

「一夏…彼女が例の?」

 

「おう!幼馴染の凰鈴音。

鈴、こいつが篠ノ之箒だ。前話した。」

 

「貴方があの篠ノ之箒ね…。」

 

鈴は箒の顔を凝視する。

すると何かを察し、ニヤリとした表情で箒に言う。

 

「な、なんだ?」

「私、負けないわよ。」

「!!」

 

負けない・・・互いに恋敵として認識され、箒はムッとした表情で鈴に言い返す。

 

「私こそ・・・」

「こほん!わたくしの事もお忘れなく?

わたくしはセシリア・オルコット…イギリスの代表候補生にして神の才能をもつ…。」

「ねーねー、私が居なくて寂しかった?」

「え?あ、うーん…。」

 

セシリアが箒のセリフを妨げ、自己紹介を始めるが鈴はセシリアを無視し一夏に擦り寄る。

さすがの一夏も鈴の冷たい態度に苦笑いを隠しきれない。

 

「ちょっと!最後まで話を聞きなさい!」

「悪いけど他の国の事なんてどうでもいいのよねー。」

「な、なんですってー!!」

 

セシリアが鈴に言い寄っている隙にウォズは食べ終わった朝食のトレーをもって一夏の元へ行く。

 

「我が魔王、少し宜しいですか?」

「え?お、おう」

 

一夏を連れ、三人から見えない位置にある柱の陰に場所を移動し、小声で話す。

 

「我が魔王…失礼ながらあの『鳳鈴音』という女は…。」

「いや待て、分かるぞお前の言いたい事。」

 

一夏はすぐに察した。

 

「あいつも危険だって言いたいだろ?」

「ご名答、この先の未来…貴方は彼女に殺される可能性が高い。

数日編入を遅らせるよう手段は尽くしたのですがやはりこの学園に来るのは『運命』だったようでしてね

、出来れば在学中彼女とは関わりを」「いや、それは無理だ。」

「……。」

 

一夏は真剣な顔でウォズを見る。

 

「鈴は大切な幼馴染で親友だ…彼女の事は俺が一番知っている。

そんなこと…絶対にあり得ない。」

 

鈴とは心を許しあっている『親友』といっても過言ではない関係だ。

箒やセシリアよりも彼女との関係はより深く暑いものであり

仲間や友人を最も大切する一夏にとってウォズの言った忠告は絶対的に信じる事ができない内容だった。

 

「……では、私から言う事は何もありません。」

「え?」

「では、私は先に教室に行ってます。放課後訓練がある事をお忘れなく。」

 

しかしそれは、ウォズもわかっていた事だった。

以外にも食い下がって来なかった事に対し驚く一夏を他所に、さっさと食堂を出るウォズ。

そして、少し歩いたところでタブレットを開いた。

 

(我が魔王が『鳳鈴音』に関して、私の言う事に耳を貸さない事は知っていた。

本当は始末したいところだが…。)

 

『鳳鈴音』

中国の代表候補生であり織斑一夏の二人目の幼馴染。

可愛らしい見た目とは裏腹に気性が荒く一夏に危害を加えるであろう危険人物の一人。

小学五年のとき一夏と同じ小学校へと転校、最初は仲が悪かったものの彼女の窮地を織斑一夏が救った事により

二人は互いに絆を深め、次第に親友と呼べる関係に至った・・・が、彼女自身は密かに恋心を抱く。

両親の離婚の関係で中国に帰国する時、織斑一夏にプロポーズを図るが、意味を勘違いされ不発に終わる。

その後一夏に会うべく中国政府に無理やり融通を通しIS学園に途中編入し今に至るが・・・

 

 

タブレットに書かれている鈴の未来や過去の経歴に目を通し、ウォズは鼻で笑う。

 

(どうやら…私が直接手を下す必要は無いようだ。)

 

 

タブレットに書かれていた情報には続きがある・・・それは、

 

 

 

 

 

 

 

『凰鈴音』の死亡に関する情報だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の放課後、第二アリーナにてウォズと一夏は明日の決勝に向けて特訓をしていた。

 

『ジカンギレード ケン!』

 

『ジカンデスピアー ヤリスギ!』

 

一夏とウォズは互いに武器を取り出し、睨み合う。

ウォズが纏っているのは貸し出し用の訓練機、日本第二世代量産型機IS『打鉄』

しかし、持っている武器は明らかに、打鉄の武器ではなかった。

槍のような武器・・・どこか一夏の持っている『ジカンギレード』に似ている部分があった。

 

「ずっと思ってたんだけど、それ打鉄の武器じゃ無いんだろ?」

「ええ、これはI()S()()()()()()()に搭載されている武器です。こっちの方が使い勝手がいいのでね。」

 

ウォズはそう答えると、ジカンデスピアーを構え一夏に攻撃を仕掛ける。

 

「では、行くぞ、一夏君!」

「っく!!」

 

迫り来るウォズの攻撃をジカンギレードで受ける、一夏。

 

「うぉぉぉおおおおお!!」

 

一夏も負けじと攻撃を仕掛け、互いに距離をとったところで、刃を折りたたむ。

 

『ジュウ!』

 

今度はエネルギー弾をウォズに向けて発射、ウォズも刃部分を折りたたみ『?』のような形をした形状に変形させる。

 

『ツエスギ!』

 

その先端からバリアーが生成され、一夏のエネルギー弾を跳ね返す。

バリアならと一夏は片手に雪片弐型を装備し零落白夜を発動、無効化能力を使いそのバリアを切り裂こうと接近すようとするが・・・

 

『カマシスギ!』

 

ジカンデスピアを鎌状にし一夏にカウンターをかける。

 

「な!?」

 

とっさに二本の剣で攻撃を受けるが、ウォズは片手にISに備え付けてある実弾銃を装備し、一夏に銃撃を与える。

 

「っく!」

「どうした、我が魔王・・・相手の()()()()()()()()()。貴方ならできるはずだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこまで!」

 

「はぁ…はぁ…。」

 

模擬試合は一時間もかかり、結果はSEの僅差でウォズの勝ちとなった。

 

「いい調子だ我が魔王…これで明日の試合は問題無いだろう。」

「またウォズに負けた!」

 

ISを解除し悔しそうにスタジアムに大の字になる一夏。

 

「いいえ、私も段々と追い詰められてきました。

もう少しで私の実力を上回るでしょう・・・では私はISを返却してくるので失礼する。」

 

「おう、先に帰ってるぞ!」

 

 

一夏も更衣室に戻り、ベンチで少し休憩をする。

しばらくすると、頬に何か冷たい感覚がし、驚きながら横を見る。

 

「な!?」

「はいコレ。」

 

そこにいたのはスポーツドリンクを持っていた鈴だった。

鈴は一夏が訓練していることを知り、スポーツドリンクを持参し待機していたのであった。

 

「お、鈴!

気がきくじゃん!サンキュ!」

 

スポーツドリンクを受け取り、それを喉に流し込む一夏

それを見ながら鈴は一夏の隣に座りある事を聞く。

 

「聞いたわよ、まーだ王様になりたいんだって?」

「ああ!俺は将来最高最善の王になる!」

 

鈴も一夏の王になりたいという夢を知っていた。

 

「ぶれないなー」

 

少しの間会えないでいたが、相変わらずの一夏であり、安心をする鈴。

そして、中国に帰国前に交わしたある『約束』の話を持ち出す。

 

「ねぇ、あのさ。」

「なんだ?」

 

鈴は顔を赤し、心拍数が早くなる。

その約束の内容故の症状。

 

一呼吸し、覚悟を決め話を続ける。

 

「その、中国に行く前に私とした約束って覚えてる?」

「約束?」

「そう!約束!覚えているわよね?!」

 

一夏は目をつむり、記憶を巻き戻す。

 

「ああ・・・覚えてるぜ!」

「本当!?じゃあ・・・・返事は?」

「戻ったら酢豚、毎日おごってくれる話だろ?」

 

 

「は?」

 

 

一夏の返事に絶句する鈴

 

「鈴の酢豚うまいんだよな!それを毎日食えるなんて・・・ありがと。」

 

 

 

 

思った返事が返ってこない上に誠心誠意、勇気を振り絞って言った『告白』を勘違いした一夏に対し

鈴は人生最高レベルで激怒する。

 

「さいってー!!!」

 

鈴は思いっきり立ち上がり、一夏の胸ぐらをつかむ。

 

「え、ちょちょちょ!?」

「女の子の約束をちゃんと覚えてないなんて最低よ!」

「いや、覚えていただろちゃんと!『料理が上達したら、毎日あたしの酢豚を食べてくれる?』って

つまりそういうことだろ?」

「意味が違うのよ意味が!」

「意味?意味って?」

 

『貴方が好きです』という意味、しかし素直になれない鈴が言えるはずもなく、ただただ怒鳴るばかりだった。

 

「自分で考えなさい!!」

 

鈴の怒りのボルテージが限界値を突破。

反対側の腕にISを部分展開すると、それを思いっきり一夏の顔面めがけて振りかざす。

 

「ちょ!ばっ!」

「バカ!知らない!」

 

ドッゴン!と大きな音を立てながら吹き飛ばされる一夏。

鈴は怒りで顔を赤くしながら更衣室を後にする。

 

「いっつ…って、あれ?」

 

殴られたであろう頬を撫でながら一夏が立ち上がる。

しかし痛みは吹き飛ばされた時の痛みだけで、顔面自体はなぜか無傷だった。

 

足元に手のひらサイズのロボ『コダマスイカアームズ』が煙を上げながら倒れてた。

 

「お、お前が守ってくれたのか?」

 

しかし返事は無し、コダマスイカアームズは壊れ、機能を停止していた。

予め護身用にウォズから渡されいたコダマスイカアームズ。

彼はあの一瞬で一夏をかばいISの攻撃を全て受け止め、その役目を果たしたのだ。

一夏は小さな救世主を拾い上げ、頭部を撫でる。

 

「そうか、ありがとう。」

 

後でウォズに頼んで修理してもらおうな、と言葉を続け、鈴が出て行った方を見る。

 

「鈴怒ってな…何でだろ…約束は覚えているのに。」

 

 

 

 

 

 

「おつかれー!」

 

「お疲れ様!」

 

第一アリーナ前。

一年二組のクラス代表『三条美香』とその友達『村上純子』は試合に向けた訓練を終え

寮へ帰宅しようと道を歩いていた。

 

「明日の試合頑張ってよ?明日の相手はあの千冬様の弟だし

今んところ無償で勝ってるからかなり手ごわいよー。」

 

そう、一夏はほぼ無傷で勝っているダークホース的存在。

美香自身も今回の訓練はかなり気合を入れて行っていた。

 

「大丈夫!特訓はバッチりだし予習も済んでる、必ず勝って皆んなの為にデサート券手に入れるよ!」

「おー!その粋だ!」

 

「ねぇ、今の二組クラス代表って貴方?」

 

二人が盛り上がっていると、そこに『鳳鈴音』が現れる。

 

「え、貴方は確か今日転校してた。」

 

「代表…変わりなさい!」

 

「え?」

 

「だから!代表変われって言ってんの!」

 

鈴は腕を組み代表である美香を睨みつけ威圧する。

 

「はぁ?ちょっと待って!

そんな事急に言われて無理に決まってるでしょ!」

 

純子が鈴の前に立ちはだかり、美香を下がらせる。

 

「それに美香は明日の為に一生懸命特訓して…。」

 

「専用機は?」

「え?」

「専用機…持ってないでしょ?

それに私は中国の代表候補生…実力差は明らかわよね?

強い奴が代表になって何が悪いのよ?」

 

鈴は自分の専用機であるピンク色のブレスレットを二人に見せつける。

 

「そ、そんなのアンタの勝手じゃん!

美香は日本代表を目指しているの!ここで活躍しないと…。」

「私に関係無いわ。しのごの言わずに変わりなさいよ!」

 

 

鈴は純子をどかし、美香を突き飛ばした。

 

「う!」

「美香!!」

 

美香は思いっきり地面に尻餅を付き、怯える目で鈴を見る。

 

「ヒョロっちいわね、もっと筋肉つけなさい筋肉。そんな貧弱じゃあ日本代表なんて無理ね。

現代表候補生の私が言うんだから確かよ。」

 

「なっ!なんですって・・・あんたいい加減に!!」

「強い人が代表になった方がいいんじゃない?貴女達もデザート券が手に入るし、私は試合に出れる。

ウェンウェンな関係ってヤツ。」

 

おそらくWIN-WINと言いたいのだろうが

今は突っ込んでいる場合ではない。

 

「あなたね!!」

 

それを聞いた純子が今にも殴りかかりそうな剣幕で鈴に向かっていく。

 

「待って純子ちゃん…。」

「え、美香!?。」

 

しかしそれを美香が止める。

 

「そうよね・・・私より強い人が代表になった方が皆んなの為だよね?」

「あら?話が分かるじゃない。

じゃあそう言う事で先生に話付けといて。」

「あ、ちょっと待ちなさい!」

 

美香の返事に納得し、純子の呼び止めを無視しながらその場を後にする鈴。

鈴の姿が消えると同時に美香は体を震わせながら近くのベンチに座りこんだ。

 

 

「美香!貴方それで良いの?!」

「…彼女、専用機持ちだし代表候補だし…純子ちゃんも皆んなも勝率は高い方がいいでしょ?」

「美香の夢は!夢はどうするの!?ここで活躍して企業や政府にアピールして、いずれ日本の代表になるんじゃ無いの?」

「……チャンスはまだあるよ…きっと。」

「……。」

 

ポツリと美香の太ももに雫が落ちる。

 

「美香・・・貴女。」

「ごめん純子ちゃん…少し1人にして。」

 

美香は目を擦りながら純子に弱々しい声で話す。

純子は何を言っていいのかわからず、寮の前で待っていると美香に伝えその場を後にする。

 

一人っきりになった美香はISスーツの入ったバックの持ち手を

悔しさや怒りを込めて強く握り締める。

 

『悔しいよねー ?そうだよねー?』

 

時間が止まり、美香の隣にフードを被った少女が現れる

 

「え!?君は?」

 

『私タイムジャッカーのリアス!貴女にとってとーっても美味しい事教えて上げる。』

 

「え?」

 

タイムジャッカーリアスは懐からアナザーウォッチを取り出す。

 

『私と契約すればなーんと、ちょー強力な専用機がこの場で貰えまーす。

専用機さえ有れば貴女にも勝機があるし何よりもアイツを見返せる存在になるよー?』

 

「…専用機」

 

『専用機が無ければー試合で活躍する事もなく、代表になる夢が砕け散っちゃいますよー。

さぁ?どーする?』

 

「……私は。」

 

美香自身、ちゃんとした実力で専用機を手に入れたかった。

返答に悩んでいるとリアスは一瞬、無表情になる。

 

『まぁ、勝手にしちゃうんだけどね』

 

リアスは返答を聞かずに、アナザーウォッチを彼女の腹部めがけて押し込む。

アナザーBTのように力を吸収し形を変えた新たなアナザーウォッチに満足し笑みを浮かべるリアス。

リューズを押すと禍々しい音声とともに新たなアナザーISの名を読み上げる。

 

 

 

 

 

 

『甲龍』



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第六話 怒りのドラゴン 中編

だいぶ遅くなりました!
違う小説執筆中のため多分次も遅くなります…。



一年クラス対抗トーナメント決勝戦当日。

会場には一年生徒全員と織斑一夏の活躍を見に来た他の上級生生徒の一部が試合を見に来ており

定員数が120パーセントを超える程の、熱気にあふれていた。

 

管制室にいる山田先生はそれを感心しながらも同時に

なぜか自分の隣に当たり前の様に座っている常盤ウォズの存在が気になっていた。

 

「あのー…。」

 

「何でしょう山田先生?」

 

「常盤君はどうしてここに居るのでしょうか?ここは関係者以外

立ち入り禁止のはずじゃ…。」

 

「私が許可した。」

 

ウォズの代わりに入室してきた千冬が答える

 

「お、織斑先生!?」

「この場所の方が色々と都合が良いだろう。」

 

管制室はアリーナ全体が監視できいつ敵がきても良いよう対応が出来る。

少しは自分を信用してくれたのかと嬉しく思うウォズ。

 

「おや、随分と信用してくださったようで?」

「勘違いするな、近くにいた方がお前を監視出来る。」

 

悪魔でも自分の監視名目と素直になってない千冬に対して

ウォズはやれやれと言わんばかしに両腕を軽く上げる。

 

「一夏の様子はどうだ?」

 

「試合に向けた訓練は完璧、後は本人次第でしょう。」

 

三人は巨大なモニターの片隅に映る待機室を見る。

試合に向けて準備運動をしている一組の代表選手織斑一夏とその応援に来たクラスメイトの箒とセシリアの姿があった。

 

 

 

「相手は所詮一般生徒・・・一夏さんの敵ではありません!」

「いや、油断はいけないよセシリア…。俺は全力でいく!」

 

一夏はセシリアに対し少し苦笑いを浮かべながらも

気合を入れ直し、白式を展開する。

 

「頑張れ一夏、応援しているぞ!」

「ありがとう箒!」

 

箒のエールに右腕を上げ、カタパルトに脚部を乗せ射出準備をする。

 

「織斑一夏…行きます!」

 

 

 

スタジアムの中央で五分ほど待っていると何故か対戦相手である二組クラス代表選手がISを纏わぬままISスーツ姿でスタジアムに出てくる。

 

不審に思った一夏は二組クラス代表『三条美香』に声をかける。

 

「え、えっと三条さん?その、ISは?」

 

美香は口角上げ、生気の無い目で一夏を見る。

 

「有るよ…とっておきの。」

 

瞬間美香の体を黒いオーラが包み肉体を変えていく。

白目をむき歯茎が露出した、ピンク色の異形。

爬虫類の鱗の様な装甲は生々しく、その姿は正しく龍の怪物。

 

形状はだいぶ違うが以前対立したIS型の怪人

『アナザーIS』だと一夏は直ぐに理解する。

 

「まさか、お前!!」

 

一夏は素早く武器を構えるが…。

謎の衝撃波によって自分の体が数十メートル吹き飛ぶ。

 

直ぐに姿勢を立て直すが 又もや謎の衝撃波によって吹き飛び観客席を守るシールドに激突する。

 

「っぐ!!今のは!?」

 

止まってはダメだ!

そう判断し、一夏は不規則に白式を飛行させアナザーIS翻弄する。

 

 

「ま、何なんですかアレ!?」

「あれはアナザーIS!?」

 

アナザーISの出現は管制室にいる三人にも分かった。

 

「この前のと同じやつか?」

「ええ。」

「あのIS…中国の第3世代機『甲龍』と同じ反応を示しています。」

 

山田先生はアナザーISのコアを読み取りそれが中国の機体

『甲龍』で有ると千冬報告する。

 

「さしずめ『アナザー甲龍』ですね。」

 

それを聞いたウォズはアナザーISを命名する。

 

「どうして、来るのが分からなかった?」

 

ウォズは未来を知る未来人。

以前彼が提示した予言にこの様な事件は聞かされていなかった。

意図して隠していたのかそれとも…。

 

「未来を知っていてもアナザーISの出現まではわかりません。あれは歴史から外れたもの…ですから未来の情報には載りません。」

 

歴史とは違う歪んだ存在…それがアナザー系統の怪人の特徴。

その出現を予知することは未来のタブレットでも不可能なのだ。

 

 

 

「お前、一体何なんだ!」

『どう?私の専用機…これで貴方を倒して日本の代表になるの!!』

 

「ぐぅあ!?」

 

またもや謎の衝撃波が一夏を襲う。

 

「また!?今の攻撃。」

『我が魔王』

 

白式に通信が入る…相手はウォズだ。

 

「ウォズか!あれもアナザーISという奴だろ?」

『そう、あれはアナザー甲龍。』

「『甲龍』?」

 

数日前の授業で聞いた覚えがある…。

中国の第3世代ISだったか。

一夏は記憶を辿り、『甲龍』には弾道が見えない武装が搭載されている事を思い出す。

 

「…だったらあの攻撃…衝撃砲って訳か。」

『ええ、勝つ条件は前回のアナザーBTと同じ。』

「同じ甲龍の力をぶつける・・・か。しかしIS学園に中国の第三世代なんか無いぞ?」

 

『凰が持っているはずだ』

 

ウォズとの通信のはずが自分の姉である千冬の声が

流れてきた事に驚く一夏。

 

『千冬姉!?どうしてウォズと?』

 

 

「織斑先生と呼べ・・・まぁ、ちょっとな。山田先生、凰と連絡取れるか?」

「今コールしています。」

 

山田先生は端末を操作し、鈴が持つ専用ISに通信を入れる。

 

「出ませんね。」

 

しかし数分経っても彼女からの返事は無かった。

 

「彼女のことだ…織斑か自分のクラスの応援にアリーナに来ているはずだが。」

「・・・・・・もしや。」

 

ウォズは眉を潜める。

 

「どうした常盤?」

「彼女はあのアナザーISに・・・。」

 

そう、彼には心当たりがあった。

ウッチホルダーから赤い鳥の絵柄が入った銀色のウォッチを取り出し

鳥型に変形させる。

 

『タカウォッチロイドー♪(タカ!)』

「な、何ですかそれ!?」

「鳳鈴音を探してくれ」

 

驚く山田先生を無視しウォズは『タカウォッチロイド』に指示を出す。

 

『サーチホーク!(探しタカ・タカー♪)』

 

それに頷き、何処かに向かって飛行するタカウォッチロイド。

ウォズも後を追う様に管制室を出る。

 

「お、おい!どこに行く常盤!」

「コレ通りだったら彼女はおそらくこの世にいない。」

 

ウォズは千冬にタブレットを見せる。

 

「・・・・・・なんだと!?」

 

千冬は額に汗を滲ませる。

数分後ウォズの所へ戻って来たタカウォッチロイドの案内で

校庭のかなり端にある目立たない木の下で寝そべっている少女を

発見する。

 

 

「…やはり。」

「・・・・・凰。」

 

そこにいたのは見るに耐えない無残な姿をした一夏の幼馴染『鳳鈴音』

 

「この外傷…恐らく衝撃砲によるもの。アナザー甲龍が彼女を殺害したようだ。…死ぬのはわかっていたが、まさかアナザーISの仕業だったとは。」

「貴様!凰が死ぬのをわかっていて見捨てたのか!?」

「見捨てたなんて人聞き悪い、これは歴史通りの出来事だ。

それに…。」

 

ウォズは鈴を見る。

 

「彼女は非常に感情的で、暴力的…気に食わない事があれば規則を平気で破り、生身の人間に兵器を用いて攻撃する・・・彼女は危険人物だ。未来が織斑一夏の死に傾いている今、彼女が居なくなるのは我が魔王を守るのに好都合だった。」

 

言い返そうにも千冬も鈴の暴力性は前々から知っていた。

教師として、知り合いとして、彼女を擁護できない自分に苛立ちを覚える。

 

「・・・しかし、彼女は一夏の大切にしている友達の一人だ。

そんなことをしても一夏が悲しむだけだぞ。」

 

「・・・・・・それは重々理解しています。」

 

ウォズ表情に若干の曇りを見せる。

 

「「……。」」

 

しばらく沈黙が続くが

それを断ち切るかの様にファイズフォンXから着信音が鳴る。

 

『〜♪』

 

「…我が魔王」

 

「一夏!」

 

電話の相手は織斑一夏。

親友の死などどの様にして伝えればいいのか…酷く悩む千冬を無視し

ウォズは電話に出、千冬に聞こえるようにスピーカーモードにする。

 

『ウォズ、そういえば鈴って中国の代表候補生だったよな、専用機持っているんだろ?それでどうにかならないか?』

 

何時も馬鹿で鈍感な弟だが、どうしてそこに気が付いてしまったのか

千冬は何か言おうと口を開くが言葉が出でない。

ウォズは弟想いの彼女がこの様な残酷な現状を一夏本人に言うのは

不可能判断し千冬に変わり現状を告げる。

 

「我が魔王…凰鈴音はアナザーISによって殺されました。」

 

 

 

 

『・・・・・・は?』

 

 

 

「今から甲龍のミライドウォッチを持ってそちらに行くのでお待ちを。」

『おい、待てよ・・・鈴が死んだって・・・嘘だろ?』

 

「……事実だ。」

 

千冬も覚悟を決め、一度深く深呼吸し一夏にウォズの言うことが真実と伝える。

 

「……。」

 

スピーカーの奥で絶句する一夏。

 

ウォズは鈴の元へ近寄る。

 

「彼女は本来の『甲龍』の持ち主。彼女自身からミライドウオッチが生成可能です。それを使い、アナザーISを倒してください我が魔王。

悲しむのはその後です。」

 

鈴の遺体にかざしたブランクミライドウォッチはピンク色の発光と共に『甲龍ミライドウォッチ』に変化する。

 

 

 

 

 

「鈴が…。」

 

一夏は目を見開きウォズと千冬が言った事実を飲み込めないでいた。

鈴という名前に反応しアナザー甲龍は軽く鼻で笑う。

 

『あぁ、そう言えば彼女…最後に貴方の名前呼んでたわね…知り合いだったの?』

「お前が…鈴を殺したのか?」

 

一夏の問いに対してアナザー甲龍は「あちゃーっ」と額叩いた。

『あー、死体見つかっちゃのかー…そうだよ、私が殺した。』

 

あっさりと自分がやったと認めたアナザー甲龍。

悪気がない言いように一夏の中の感情は火山の如く噴火する。

 

「お前ぇぇぇええええ!!なんで鈴を殺したぁぁぁああああ!!!」

 

ジカンギレードをケンモードにしアナザー甲龍に突進する一夏

 

「なんで!なんでなんでなんで!!」

 

一夏はひたすら負の感情的に任せてアナザー甲龍を切った。

 

切って切って切って切り裂いた。

しかしダメージは与えられてもアナザー甲龍は直ぐに傷を癒す。

アナザーISはオリジナルのISでないと倒せない。

それを分かっていながらも一夏は彼女に対する無意味な攻撃を止める事が出来なった。

 

『うるさい!!』

 

アナザー甲龍は必要以上に攻撃してくる一夏に対し苛立ちを込めた

衝撃砲を食らわせる。

 

「ぐぁ!!」

 

近距離で命中した衝撃砲は白式のSEを大幅に減らす。

 

『なぜ殺した?・・・そんなの当たり前じゃない!』

 

大型の青龍刀を二本装備し、お返しだと言わんばかりに一夏に斬りかかるアナザー甲龍。

『彼女は私をクラス代表から強引に降ろして、自分が代表になろうとした。』

 

「ぐぅ!!」

 

ジカンギレードと雪片を使い青龍刀を受け止め鍔迫り合いになる。

 

『私は必死で特訓して、クラスの皆んなの期待に応えるために…自分の夢を叶える為に今まで頑張ってきたのに!!』

 

脚部を一夏の腹部にぶつけ、衝撃砲を撃つ。

 

「っがぁぁ!!」

 

『あの女は私の全てを奪おうとした!私の全てを否定した!自分の都合を棚に上げて!!』

 

二本の青龍刀の連結し、衝撃砲で吹き飛んだ一夏にめがけてそれを

投擲。

一夏は直ぐさま態勢を立て直し飛んでくる青龍刀をジカンギレードのエネルギー弾で打ち抜き軌道をそらし、何とか回避をするが…

 

『あの女がいるとクラス代表の座が奪われる…私の夢が奪われる…だから殺した!』

 

再び打ち出された衝撃砲で白式はバランスを崩しスタジアムに墜落する。

 

「っぐ!鈴が・・・そんなこと、するわけ…!」

 

そんなことするハズが無いと思いたい一夏だった…

しかし彼女…アナザー甲龍から発せられる怒りは本物だった。

三条美香という生徒は責任感が強くかなりの努力家だという評判は

一夏の耳にも入っている。

その三条美香がここまで怒り散らしているということは

彼女の言う事が全て嘘とは言い難い。

 

何故鈴は彼女に酷い事を言ったのか。

何故強引にクラス代表になろうとした…。

 

その答えは自ずとわかった。

 

「まさかクラス代表になって、俺と・・・。」

 

自分と戦うため。

それ以外考えられない。

 

昨日の喧嘩…

自分を敗北させる事で鈴は鬱憤を晴らそうとしたのだ。

 

 

『さぁ、試合を続けましょう?この試合に勝ったら私の夢にまた一歩近づける!』

 

アナザー甲龍はスタジアムに落ちた二本の青龍刀を拾い上げ、一夏に向かって斬りかかる。

 

「・・・・っぐ!!」

 

白式を立て直すが回避が間に合わない。

とっさに防御態勢を取ろうとする。

しかし、その攻撃は何者かの妨害によって止められる。

 

『なに!?』

 

『タイムマジーン!』

 

斬撃を受け止めたのはウォズが操る『タイムマジーン』

タイムマジーンはそのまま二本の青龍刀を蹴り上げ無防備になったアナザー甲龍に向けて飛び蹴りを繰り出す。

 

『っく!』

 

「ウォズか!」

 

アナザー甲龍をスタジアムの端まで吹き飛ばし安全を確保したところでコックピットのハッチを開きウォズは『甲龍ミライドウォッチ』を一夏に向けて投げる。

 

「我が魔王!!」

 

一夏はウォッチをキャッチしリューズを押す。

 

『甲龍』

 

そして、そのままBTミライドウォッチと同じ手順でドライバーに

装填、固有能力のフューチャータイムを発動させる。

 

『投影!!フューチャータイム!』

 

ピンク色の装甲が形成され、鈴の専用機だった

『甲龍』を投影する。

 

『甲・燃・龍!!フューチャリング甲龍!甲龍!!』

 

胸部装甲に大きく『甲』と『龍』の文字。

V字のアンテナが龍の角の様に伸び、背部には龍の頭部を模した二基の衝撃砲。

二本の大型青龍刀を携え、『白式・超越フューチャーリング甲龍』は演舞の様に舞い、武器をかまえる。

 

『祝え!全ISの力を受け継ぎ過去と未来を知ろしめす王者の衣。

その名も『白式・超越・フューチャーリング甲龍』

また一つISの力を継承した瞬間である。』

 

タイムマジーンの中から一夏を祝福するウォズ。

 

『こんなところで負けられない!』

 

復帰して衝撃砲を打つアナザー甲龍…それを相殺する様に一夏も衝撃砲を打ち出す。

 

『な!?』

自分と同じ武装で相殺されたことに驚くアナザー甲龍。

 

「いくぞ!!」

 

『っく!!』

 

接近する一夏に対し抵抗の衝撃砲を打つ。

一夏は青龍刀を連結し前方で回転させる事によって衝撃砲のダメージを防ぎ、一定の距離に来たところでそのまま青龍刀を投擲する。

 

投擲した青龍刀は相手の二基の内の右側一基の衝撃砲に命中し破壊。

 

『…!!』

 

そしてそのまま、イグニッションブーストで接近し零落白夜でもう一基の衝撃砲を切り落とす。

 

衝撃砲の爆風で怯むアナザー甲龍…その隙を突き

ドライバーのレバーを引き押し込みウォッチのエネルギー衝撃砲にチャージする。

 

『ビヨンドザタイム!超圧縮衝撃波道!!』

 

『嫌!私は!私は!!!

亡くなったお姉ちゃんとの約束を果たすために・・・私は!!!』

 

打ち出された高出力の砲弾はアナザー甲龍に命中し、地面に激突。

衝撃で出来た巨大なクレーターがその威力を物語っていた。

 

 

『ぐぁああああああ!!!』

 

直撃を食らったアナザー甲龍は爆発四散。

爆煙の中から三条美香が現れ、体内からアナザーウォッチが飛び出し消滅、そのまま気絶をする。

 

 

「……。」

 

戦いには勝ったが生まれる虚無感。

自分の知らないところで犠牲があった。

大切な存在である幼馴染で親友の『鳳鈴音』の死。

誰がやった?それは目の前にいるアナザー甲龍こと三条美香だ…。

が、加害者の前にしても一夏は彼女を憎む事が出来無かった。

彼女の夢を鈴が奪おうとした…鈴はそれ相応の報復を受けたのだと納得してしまう自分がいる。

もし、その時に自分がいれば鈴を止められたのかもしれない。

鈴を救えたかも知れない。

元を辿ればちゃんと約束を理解できなかった自分が悪い。

 

一夏はひたすら自分を呪い後悔をした。

鈴を殺したのは自分だと。

 

「……あああああああああああ!!」

 

一夏の叫びがスタジアに響き渡る。

 

 

 

 

 

 

「……。」

 

事件が起きてから3日後・・・。

鈴の遺体があった木下には多くの花が手向けられていた。

一夏、箒、セシリアも花を手向け、手を合わせる。

 

「・・・鈴」

 

一夏はこの三日間、この場所に通い詰めている。

それもそのはず、鈴の遺体は中国政府の手回しで即急に遺族に送られ、一夏は鈴の遺体に会うことができなかったのだ。

最後に覚えているの鈴の表情は口論で激怒した顔。

 

なぜあの時喧嘩をしてしまったのか・・・一夏に強い後悔が残る。

 

「すまん二人とも、一人にしてくれないか?」

 

ここにいれば、鈴に会える・・・そう思ってしまう。

 

「一夏さん…わかりました…先にもどってますわね。」

 

「…一夏。」

 

二人がその場を去り、しばらく経つとポツリと雨が降る。

一滴二滴と徐々に数を増していき、大雨となって一夏を濡らす。

 

「俺が…俺のせい…。」

 

しかし、いくら濡れおうと一夏はその場から離れない。

離れることができなかった。

 

「鈴、ごめんな・・・守れなくて。」

 

そう呟くと突如、雨粒が止まる。

雨音は続いている…止んだ訳ではない。

 

「いつまでもそこに居られますとお体に悪いですよ、我が魔王。」

 

ウォズが自分の傘に中に一夏を入れたのだった。

 

「自分を恨むのは筋違いだ。

凰鈴音は三条美香の意思を無視し強引にクラス代表になろうとした。そしてその結果がこれだ。」

 

「分かっているよそんなこと・・・でも。」

 

一夏はウォズ傘を払いのけ立ち上がる。

 

「俺がちゃんと鈴の約束を覚えていたら…こんな事にはならなかった!それに三条さんも、俺がいたら。」

 

「運命に抗うのは難しい。」

 

ウォズの言い草に違和感を覚える。

そういえば、鈴もウォズに警戒されてた人物・・・あの時自分に警告はしてはいたが深くは言ってこなかった。

 

まさか・・・、

 

「…ウォズは知ってたんだろ?鈴が死ぬって。」

 

「……えぇ。未来の情報には三条美香が鳳鈴音を殺害する…そう書かれていました。原因がアナザーISとは分かりませんでしたが。」

 

一夏の頭に血がのぼる。

 

「なぜ教えなかった!教えてくれたら…俺が止めたのに!!」

「彼女が死ぬのは運命…まだ王ではない貴方には止められません。」

「っく!!」

 

一夏は拳を握りしめウォズに殴りかかる。

しかしウォズは体をそらし拳をよける。

 

「避けんな!」

 

再び拳を突き出すが今度は片手で受け止める。

 

「そんなこと…やってみなくちゃ分かんないだろ!!。

…親友1人救えない奴なんて王様になんかなれない!

俺は最高最善の王になる男だ…運命なんてこの俺が変えてやる!!」

 

 

 

「我が魔王・・・。」

 

 

 

ウォズは一夏の姿に魔王イチカの影を見る。

そして自分の過去を思い出す。

 

傷だらけの自分の体。

鳴り止まない爆撃音。

黄金の背中。

 

その背中を持つ男が自分を見る。

 

自分は問いた_どうして助けた?と

男…王は答える_我は生れながら王…僕を守るのも王の役目。

 

正直のところ過去の主人が自分の知る主人では無いと

疑っていたウォズ。

しかし彼の本質は未来になっても変わっていないと悟る。

 

「全く…世話のかかる我が魔王だ。」

 

 

ウォズは一夏の拳を離す。

 

「分かった。非を認めよう・・・すまなかった。我が魔王。」

 

謝罪を込めて軽く頭をさげるウォズ。

 

「…え」

 

実の所、彼は鈴を見捨てた事に少しばかし罪悪感を覚えていたのだ。

魔王の為だったら犠牲は惜しまない、と決心していたウォズであったが、心のどこかに残っていた人間の良心が彼をそう思わせた。

 

「お詫びに、鳳鈴音の運命を変える手段を教えよう。」

 

ウォズは鈴は救えると一夏に言う。

 

「え、どいうことだ?」

 

しかし疑問が出る。

鈴はすでに死んでいる…死んだ者どう救うのか。

 

「簡単だ。」

 

ウォズはファイズフォンXを操作する。

 

『ターイムマジーン』

 

するとウォズの上空の空間に穴が空き一機のバイク型の飛行物が

現れる。

ウォズのタイムマジーンだ。

 

「そうか、過去を変えれば鈴が救える!」

 

「しかし運命というのは呪いみたいなもの…いつまでも纏わりつく。過去改変で一時的に彼女を救えたとしてもいつかの未来、彼女はまた死の運命辿る可能性がある…それでも救うのかい?我が魔王。」

 

ウォズは一夏の目を見る。

 

「当たり前だ、そんな運命なんて俺が打ち砕く!」



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第七話 怒りのドラゴン 後編

鈴が倒れたまんまだといけないと思って急ピッチで仕上げました


_____________________________

 

 

____四日前

 

 

 

「私に関係無いわ。しのごの言わずに変わりなさいよ!」

 

 

鈴は純子をどかし、美香を突き飛ばした。

 

「う!」

「美香!!」

 

美香は思いっきり地面に尻餅を付き、怯える目で鈴を見る。

 

「ヒョロっちいわね、もっと筋肉つけなさい筋肉。そんな貧弱じゃあ日本代表なんて無理ね。

現代表候補生の私が言うんだから確かよ。」

 

「なっ!なんですって・・・あんたいい加減に!!」

「強い人が代表になった方がいいんじゃない?貴女達もデザート券が手に入るし、私は試合に出れる。

ウェンウェンな関係ってヤツ。」

 

おそらくWIN-WINと言いたいのだろうが

今は突っ込んでいる場合ではない。

 

「あなたね!!」

 

それを聞いた純子が今にも殴りかかりそうな剣幕で鈴に向かっていく。

 

「鈴!」

 

しかし、その間に一人の男が割って入った。

 

「い、一夏!?」

 

「お、織斑君?」

 

その人は先ほどまで第二アリーナにいた筈の織斑一夏だった。

正確には未来の織斑一夏だ。

ウォズのタイムマジーンで過去へ飛び、アナザー甲龍が生まれる前の時間に鈴を止めるべく、そして()()()()()()()を救うべく降り立った。

 

「何やってんだよ…鈴!」

 

一夏は鈴に強い眼差しを向ける。

その瞳は姉の織斑千冬に瓜二つ、鈴は少したじろぐ。

 

「あ、あんたには関係ないでしょ!」

「いいや、関係あるさ…今のお前、最低だぞ!」

「何ですって!!」

 

鈴は顔を真っ赤にさせ一夏に詰め寄る・・・しかし、一夏はひるむことなく彼女の瞳をじっと見た。

 

「三条さんにはな、お姉さんが居たんだ…日本の代表候補生で優秀な選手だった…けど、不治の病で亡くなられた。」

 

「「!?」」

「な・・・なんで。」

 

一夏以外の三人が驚く。

 

「彼女は亡くなる前にお姉さんと約束したんだ、姉の代わりに自分が

日本代表になるって。そして今日までずっと努力を積み重ねてた。」

 

「…何でその事を。」

 

「ごめん三条さん、未来の貴方に聞いた。」

 

タイムマジーンで過去に行く前の三日間、鈴の墓参り以外にも一夏は怪人化によってダメージを負っていた彼女にもお見舞いに行っていた。

その時、三条美香自身から、なぜ代表を目指しているかその理由を聞かされていた。

 

「??」

 

過去の三条美香は当然、一夏の言っている意味がわからなく、頭にハテナを浮かべる。

 

「お前も努力家だから彼女の気持ちがわかるはずだ!彼女には彼女の夢があるのに…お前それを強引に奪おうとしているんだ!」

 

「……。」

 

「目を覚ましてくれ・・・お前が俺と戦いたいのは分かっている。相手ならいつでもしてやる。だけど、人の気持ちを簡単に無視して無理やり夢を奪うのはやめろ!そんなの俺の知っている『鳳鈴音』じゃない!」

 

一夏の声が当たりに響く。

鈴は始めてみる一夏の表情に驚きながらも自分の愚行を思い返す。

 

「……!」

 

「ウォズ、三条さんを。」

 

一夏は近くに待機していたウォズに三条美香の保護を任せる。

これによって、三条美香がアナザーISになることなくなった。

 

「さぁ、こちらに。」

「うん…行こ、純子ちゃん」

「あ、うん。」

 

三人が去り、その空間にしばらく沈黙が流れる。

数分たち鈴がポツリと呟く。

 

 

「何なのよ…。」

 

一言・・・その一言でまるでせき止められていた川の様に次々と言葉が出る。

 

「人の気持ち人の気持ちって…私の気待ちなんて全然分かってないくせに!偉そうに言わないで!」

 

鈴の頬に涙が伝う。

 

「あんたなんか・・・あんたなんか!!」

 

衝撃砲を部分展開しようと、ISを呼び出そうとするが。

 

「鈴!」

 

鈴は一夏によって抱きしめられる。

 

「い、一夏!?」

 

急なことに驚く鈴。

一夏は彼女を落ち着かせるようにそっと頭を撫でる。

 

「分かっているよ…ごめんな、鈴。」

 

三日間ずっと悔やんでいた、後悔していた。

そして考え続けた・・・鈴のあの時の言葉の意味。

過去に降り立ち一夏はようやく鈴に謝ることができた。

 

「え?」

 

「そうだな、俺も人の事は言えない。後から分かったんだ…前の約束の意味。俺の勘違いじゃなかったら…」

 

好きって意味だったんだろ?

一夏は呟く。

 

「……あ。」

 

少し引き離したところで、一夏の瞳にも涙が浮かんでいることに気づく。

そして理解する、彼は自分のことを想って叱っているのだと。

 

「ごめん、気づけなくて…人の気持ちが分からない王様なんて笑っちゃうよな。でも、自分の思い通りにならないからあれこれ構わず攻撃するのは、悪者と同じことだ。鈴・・・お前は違うだろ?」

 

「ご、ごめんなさい…一夏・・・私。」

 

そして鈴は後悔する、自分の愚行で他人を、愛する人を傷つけたことに。

 

「俺もごめんな…鈴」

 

指で鈴の涙をそっと拭う一夏。

そしてニカっと微笑みを浮かべ、鈴にいう。

 

「・・・後で三条さんにも謝ろうな。」

 

「・・・うん。」

 

一夏は鈴から離れ、三条美香の元へ行こうとするが・・・

 

 

 

 

世界にノイズが走る。時間が止まったのだ。

 

 

「な・・・なんだ」

 

 

 

体が動かない、まるで金縛りにあっているような感覚だ。

そして、彼の前に一人の少女が現れる。

 

タイムジャッカーのリアスだ。

 

『あーあー、何してくれてんの?』

 

「お前は・・・。」

 

少女は一夏に向かって手をかざす。

 

「ぐぁ!!」

 

「一夏!?」

 

時が動き出し、一夏は謎の力によって吹き飛ばされ、近くの樹木に体を強く打ち付ける。

 

「あなた一体!・・・うっ」

 

鈴は、目の前に現れた少女に対してかなり警戒をするが、またもや謎の力によって深い眠りにつく。

 

「り、鈴!!お前・・鈴に何をし・・・た!?」

 

痛む体を抑えながら立ち上がり一夏は目の前の少女を睨みつける。

 

『大丈夫だよー、ただ寝かしただけだよ?あーあ、せっかくいい契約者を見つけたのに、台無しにしてくれちゃってさー』

 

「契約者って・・・まさかお前がウォズの言ってた!」

 

『そう、タイムジャッカー『リアス』だよー。』

 

リアスはよろしくーと両手を振る。

 

「お前が・・・お前の目的はなんだ!」

 

『うーん、君を倒すことと新たな王の創造だよ。』

 

「俺を・・・殺すのか?」

 

『いやいやー私が貴方を倒しても意味がないよ!

アナザーISが君を倒さないと王の力を継承することできないんだよねー、面倒なことに。』

 

「我が魔王!」

 

二人を寮に送り届けていたウォズが異変を察知し、一夏の元へ行く。

そして目の前のタイムジャッカーリアスの存在に気付き、盾になるように一夏の前に立つ。

 

『ウォズかー、やってくれたね君?過去改変は禁忌だよ?』

 

「タイムジャッカーリアス・・・君が言うかね、そのセリフ?」

 

『まぁいいや、計画変更。』

 

リアスは側に生えている木に向かって右手を伸ばす。

すると何かの力が働き、掃除機みたいに木の陰に隠れていた者が引き寄せられ、ある一人の女子生徒がリアスに捕まる。

 

「きゃぁ!?」

 

「な!?君はさっきの。」

 

捕まったのは三条美香の友達、村上純子だった。

純子は美香と共に寮へ帰宅していたが、一夏と鈴の様子が気になりこっそりと木の影から二人を見ていたのだ。

リアスはアナザーウォッチを彼女の腹部に当て、『甲龍アナザーウォッチ』を生成、そして強引に彼女をアナザーISへと変異させる。

 

『甲龍…。』

 

『今ここで織斑一夏を抹殺することにするよ。』

 

タイムジャッカーリアスはその場を去り、後のことをアナザー甲龍に任せる。

 

『ぐっるるるるぁぁぁあああああ!!』

 

アナザー甲龍は雄叫びを上げ、ウォズと一夏に襲いかかろうとするが、近くで意識を失っていた鈴の存在に気づく。

まずいと、一夏は白式を呼び出そうとするが、それをウォズが止める。

 

「まってくれ、我が魔王。」

 

「ウォ・・・ウォズ!なんで! このままだと、鈴が!」

 

「今の状態の貴方に無理をさせるわけにはいかない。

それに過去で白式を展開すると色々と面倒なので、ここは私が。」

 

無許可でのIS展開が禁止されているのもあるが、

現在この時空には白式が二つ存在している状態、もし展開してしまうといろいろと混乱する事態を引き起こす可能性がある。

それを避ける為にISとは違う兵器を用いてアナザーISに挑む。

 

「ど、どうすんだよ?」

 

「甲龍ミライドウォッチをお借りします。」

 

「わかった。」

 

一夏はウォズに甲龍ミライドウォッチを手渡す。

ウォズはそれを腕のホルダーにつけ、そして入れ替えるようにもう一つのミライドウォッチを取りだしリューズを押す。

 

『ウォズ』

 

「う・・・ウォズ?」

 

自分の名前が入ったミライドウォッチ?という疑問を浮かべる一夏。

ウォズの腰に白式・超越に付いてた同型のドライバーの色違いが現れ、同じ要領でミライドウォッチを装填する。

 

『アクション!』

 

白式とは違ったリズムの待機音が流れ、ウォズの背後にスマートウォッチ型のヴィジョンが現れる。

ウォズは左腕を広げ、そしてそのまま勢い良くレバーをドライバーに押し込む。

 

 

 

「変身!」

 

 

 

 

『投影!フューチャータイム

スゴイ!ジダイ!ミライ!カメンライダーウォズ!ウォズ!!』

 

そして装着される見た事ないパワードスーツ。

 

「我が名は()()()ライダーウォズ…未来の創造者である!」

 

額に『カメン』というマークがついた頭部に銀色のアンダースーツ、そして全身に走る黄緑色のライン。

複眼は一夏の『IS』とは違いタイムマジーンと同じ『ライダー』の文字…その見た目はまさにスマートウォッチの擬人化。

 

以前、ウォズが言っていた専用機に当たるモノ・・・それが今ウォズが身にまとっているモノなのかと理解する一夏。

 

『ジカンデスピアー!カマシスギ!』

 

ウォズはジカンデスピアーを構えアナザー甲龍に斬りかかり、ターゲットを鈴から自分へと逸らす。

 

『がっぁああああ!!!』

 

アナザー甲龍は喚きながら衝撃砲を撃つがジカンデスピアーのツエモードで発生させたバリアによって防がれる。

ウォズはバリアを張りながら、タブレットPCを開き音声入力で文章を書く。

 

「『抗戦するアナザー甲龍だったが、ウォズのフューチャリング甲龍に手も足も出ないのであった。』」

 

タブレットを閉じ、一夏から預かった『甲龍ミライドウォッチ』を取り出しリューズを押す。

 

『甲龍』

 

そしてウォズミライドウォッチと入れ替えレバーを入れる。

 

『投影!フューチャータイム!甲・燃・龍!!フューチャリング甲龍!甲龍!!』

 

白式と同じ能力・・・ウォズの姿が変わる。

龍の様なツノが生え、ピンク色の装甲がまとわれる。

両肩のスマートウォッチ型の肩当『インストールショルダー』が衝撃砲へと変形し、複眼が『ライダー』から『甲龍』へと変化。

ウォズもまた中国の第三世代IS『甲龍』の姿を投影したのであった。

 

二つの衝撃砲を打ち、アナザー甲龍を怯ませる。

抗戦しようにもウォズのタブレットの効果で一切の攻撃を与えることができずアナザー甲龍はウォズが持つ青竜刀で翻弄されていくのであった。

そしてある一定のダメージを与えると、ウォズはレバーを引き、ウォッチのエネルギーを青竜刀に流し込む。

 

 

『ビヨンドザタイム!舞え舞え切り!!』

 

舞いながらアナザー甲龍を切りつけ、最後に両肩の衝撃砲でとどめを刺す。

 

『ぐぁぁぁあああああああああ!!』

 

アナザー甲龍は撃破され、元の姿『村上純子』に戻り、アナザーウォッチは体内から飛び出し消失する。

 

「す…すげぇ。」

「いえいえ、貴方ほどではない。」

 

苦戦することなく、アナザーISを倒したことに感心する一夏。

 

「うぅ・・・私は。」

 

「君はまっすぐ保健室に行くんだ。」

 

「え、あ・・・うん?あ、わかった。」

 

アナザーISになってから直ぐウォズに倒されたおかげで彼女は精神汚染を免れ軽傷で済んだ。

意識が朦朧としながらもウォズの言うことを聞き入れ、のろのろと保健室へと歩き出す。

念のためタブレットPCに彼女が保健室へ行き着くように記入し、そのまま変身を解きながら一夏の方を向く。

 

「過去改変は成功した・・・では、現代に戻りましょう我が魔王。怪我の手当てをしなければ。」

 

「あぁ、ちょっと待っててくれ。」

 

一夏は体に鞭を入れながら立ち上がり、地面に倒れていた鈴をベンチに寝かせる。そして風を引かない様に自分の上着をかけ、そっと呟く。

 

「また未来でな・・・鈴。」

 

 

 

一夏は待機していたタイムマジーンに乗り込み、過去を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

過去改変を試みた結果、鳳鈴音の死ぬ未来は回避された。

現代に戻った一夏達は改変された四日間の出来事をウォズのタブレットを用いって整理した。

アナザー甲龍の襲撃はなくなり、大会は予定通りに開催された。

三条美香の見事な戦術で一度はピンチに陥った一夏であったが特訓の成果が生かされ三条美香を打つことに成功、勝利を手にしたのであった。

優勝は織斑一夏ではあったが三条美香の戦術はある企業に評価され、美香は後にその企業と契約を果たし、2年に上がると同時に専用機を授与することを約束された。

その後クラスメイトが優勝商品であるデザート券を使い三日三晩、『織斑一夏くん優勝おめでとうパーティー』という名の

ケーキバイキングを楽しみ、その最終日に過去から戻って来たと確認をする。

 

「鈴は・・・助かったのか?」

 

鈴の安否を心配する一夏。

改変を行ったがイマイチ実感がわかない。

 

ウォズは鈴の未来の経歴を見て、死ぬ運命がないかどうか調べる。

 

「怪しい部分があるが、死ぬ運命は避けられたようだ。」

 

「そうか・・・よかったのか?」

 

怪しい部分というのが気になるが、一応は運命を打破することはできた様だった。

 

「えぇ、まさか運命を変えるとは・・・まったく貴方という人は恐ろしい、それでこそ魔王だ。」

 

「(コンコン)一夏・・・いる?」

 

ドアのノック音と共に鈴の声が聞こえる。

鈴の声を聞いたことで彼女が生きているとようやく実感がわいた一夏は急いで、扉を開き、鈴の顔を見た。

 

「鈴・・・だよな?」

 

そこにいたのは正しく親友の『鳳鈴音』だった。

 

「え、そうだけど・・・どうしたの?」

 

「いや、なんでもない。」

 

生きている・・・一夏は自然と笑みがこぼれた。

 

「少し話せる?」

「あ、あぁ・・・。」

 

「私は席を外そう…何かあったら呼んでくれ。」

 

ウォズは空気を読み()()()()()向かう、二人きりとなった一夏と鈴はベットに座わり話をする。

 

「大丈夫だったか?」

「うん、ちゃんと三条さんに謝ってきた。」

「いや、そうじゃ・・・いや、それもそうだ。」

 

一夏はタイムジャッカーとアナザーISに襲われた時のことを聞きたかったがそれも重要なことだ。

 

「許してもらえたか?」

「なんとか、ね。」

 

鈴は少しため息をつく。

 

「私、ダメね・・・いっつも感情が先走っちゃう。」

「はは、昔からそうだもんな、でも、それが鈴のいいところだと思うぜ?」

「どこがよ?」

「何でもかんでもガツンと物を言えて、バカだけど努力家で。」

「バカってなによ!バカって!」

 

「ははは、ごめんごめん。」

「もう、バカ。」

 

中学時代から続いているやり取りに懐かしさを覚えながら、あることを思い出す。

 

「私、嫌なヤツだったわよね・・・昔、私をいじめていたあいつらと同じ。」

 

中学時代、中国から来た転校生と言うことでいじめの対象になっていた鈴。

自分をいじめていた子も先日の自分のように他人の気持ちを考えないで罵詈雑言を浴びせてきた。

その窮地を助けてくれたのはたった一人・・・織斑一夏だった。

一夏はいじめが嫌いだった・・・だから、自分がいじめっ子のと同じ存在になってしまったことに後悔を覚える。

 

「いや、鈴は彼奴らとは違う・・・しっかり謝れたじゃねーか。」

 

しかし、違うと一夏は力強く言う。

あの時のいじめっ子と決定的に違うところ、それは自分から謝罪ができたことだ。

その言葉に鈴の気持ちが少し晴れる。

 

「ふふ、ありがとう・・・それと、コレ」

 

鈴は手に持っていた袋を一夏に渡す。

 

「これは・・・。」

 

「あの時・・・なぜかベンチで寝ていた時にかけてあったヤツ・・・一夏のでしょ?」

 

中に入っていたのは先ほど一夏が鈴にかけた上着だった。

綺麗にアイロン掛けされている。

 

「あぁ」

 

「ありがとう、でもなんで起こしてくれなかったのよ!」

 

どうやらタイムジャッカーやアナザーISのことは覚えていないようだ。

 

「あ、いや、気持ちよさそうに寝てたから、つい」

 

一夏は下手なことは言えず、適当に誤魔化す。

 

「まぁいいわ・・・いい匂いだったし。」

「え?」

「な、なんでもない!」

 

思わず口が滑った鈴であった。

 

「そのさ、あの時、約束の意味がわかったって言ったじゃん。」

「そう・・・だな?」

 

鈴は顔を赤くする。

 

「その、へへへ、返事と・・とかは?」

 

「あー・・・。」

 

一夏は困っていた。

鈴は大切な親友だ。

一緒にいて愉快だし、鈴のことは好きだ。

ただしそれが恋愛感情なのか聞かれたら、わからないと答える。

長らく返答に困っていると、鈴がいきなり立ち上がる。

 

「・・・やっぱいい!」

「え?」

「断れて関係悪くさせたくないし・・・今のままでいい!!」

 

鈴はくるっと一回転し一夏を見つめ、彼の唇に人差し指を当て

 

 

 

「ただし覚悟しなさい!絶対に振り向かせてみせるから!いっぱいアピールしちゃうから!」

 

 

 

と笑顔でそう言った。

 

「・・・わかった。」

 

一夏もそれにつられて、笑顔になり部屋中に笑い声が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この時代に来ていたのか・・・カッシーン。」

 

同時刻、ウォズは屋上である人物と会話していた。

 

「貴様、無駄な時間改変をしたようだな。」

 

ウォズの背後に立っているのは槍を持った金と黒の怪人・・・『カッシーン』

彼は未来からウォズがいるこの時代に来ていた。

 

「無駄ではない、我が魔王が望んだことだ。」

「お前の主人は魔王イチカ・・・過去の織斑一夏ではない。」

 

ウォズは振り返り、カッシーンを見る。

頭部にはカメンライダーウォズと同じ『カメン』の文字が入ったマークが小さく入っている。

これは魔王イチカの僕という証であり、彼はウォズの同僚に当たる存在だった。

 

「それで、私になにかようで?」

「来に食わん態度だ、まぁいい・・・我が魔王からお前に褒美だそうだ。」

 

カッシーンは紅いミライドウオッチを差し出す。

 

「これは・・・。」

「来るべき未来で必要になる・・・持っとけ。」

 

ウォズはそれを受け取り、ホルダーではなくタブレットPCにかざし、データ状でその中に保存する。

 

「要件は済んだのだろ?早く元の時代に戻ったらどうだ?」

「言われなくとも。」

 

カッシーンはウォズとは別のタイムマジーンで未来へ戻ろうとするが、少し足を止め前を向いたままウォズに話しかける。

 

「お前にもし不手際があったら私が後を引き継ぐ、せいぜい頑張るんだな。」

「私は常に我が魔王のために尽くしている、お前の出番はない。」

 

「だといいがな。」

 

そう言い残し、カッシーンは未来へと帰還した。

 

ウォズは星空を見上げ、現状を整理する。

 

_かくして、我が魔王の過去改変により鳳鈴音の死の運命を打破することに成功した。

しかし、この行為が今後の未来に良い結果を招くかどうかは不明だ。

どっちにしろ、二つ目のミライドウォッチは手に入った、着実に我が魔王は王への道を歩みだしている。

 

今後起こるであろう偽りの戦姫の事件・・・流れからするにこの事件にもアナザーISが関わってくるかもしれない。

我が魔王のためにも、真の歴史へと彼を導かなければならない・・・やることは山積みのようだ。




登場しましたカメンライダーウォズ!
誤字ではありませんよ!この話では仮面ではなくカメンと表記します!
最初は登場する予定はなかったけど、ジオウ見てたら出したくなっちゃってw
鈴が死んでいろいろお騒げせしましたが、もともと復活する予定でしたのでご安心を。

次はシャルとラウラ 
と言ってもあんまり進んでいないので、投稿まで時間はかかりそう・・・申し訳ないです。


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第八話 ギンギラな悪夢

だいぶお待たせしました!!!!
でも、今回は短めです。申し訳ねぇ。


「やったな!箒!セシリア!鈴!シャル!ラウラ!。」

 

一夏は歓喜した。

場所は何処かの海域。仲間と共に強敵に打ち勝ち、一夏たちは勝利の余韻に浸っていた

しかし、その余韻は日の出と共に現れた者によって終止符を打つ。

 

隕石だ。

 

隕石様に巨大な結晶の塊が彼らの目の先で墜落。

表面の熱で海は沸騰し、水蒸気爆発と共に結晶は、木っ端微塵に砕け散る。

 

『……は!!』

 

水蒸気を振り払い、中から現れたには人型。

未確認円盤のようなハットを被り、惑星の軌道図のようなアンダースーツ。そして所々に恒星や惑星が描かれた円形のパーツはその者が宇宙から使者という事を表していた。

 

「な、なんだ!?」

「IS…じゃないわね。」

 

『そうだ。』

 

宇宙からの使者は黒いマントをなびかせながら、手のひらにエネルギーを溜め、黒いISを纏う銀髪の少女ラウラに警告なしに打ち込む。

 

「な!?がぁぁ!!」

 

たった一撃で黒いISのシールドエネルギーが底をつき少女は生身で海面へと投げ出される。

 

「ラウラ!!あんた!!」

 

それを見た鈴が激情し謎の使者に青龍刀で攻撃を仕掛けるも、手の平に生成された透明な球体によって跳ね返され、ラウラに当てた同じ技を鈴に食らわせる。

 

「っがぁ!?」

 

鈴のISも消滅し、彼女も海面へと消える。

 

「鈴!! クソ!行くぞシャルロット!セシリア!一夏!」

 

「分かった!」

 

「援護はお任せを。」

 

紅いISを纏った箒を先頭に攻撃を仕掛ける三人

 

「ま、まて!」

 

一夏の脳裏に悪い予感が走る。

 

「な!?」

「ぐぁ!?」

 

三人の攻撃は謎の使者には全く通用しなかった。

箒の近接攻撃は謎の力のよって動きを封じられ、シャルの銃撃を箒を肉壁にする事で防じ、セシリアのレーザー攻撃も使者が手をひと捻りするだけで射線を曲げられ、そのままシャルに命中する。そしてトドメとして使者は星々をかき集める様に生成したエネルギー光弾を肉壁にしていた箒に向けて解き放ち、そのままの流れで両腕に新たに生成した太陽の様に燃え盛る火球をセシリアとシャルに投げつけ三人目を無慈悲に葬った。

 

謎の使者はあざ笑う。

 

『ははは…無意味な事を』

 

「皆んな!!…お前ぇぇええ!!」

 

一夏は仲間の仇を打とうと攻撃を仕掛けるが攻撃は当たらなかった。

外した訳ではない、いくら雪片で攻撃しようともすり抜けてしまうのだ。まるで実態のない幻影を切っているような感覚。

 

「な、なんで。」

 

使者は口を開く。

 

『全宇宙を支配する不変の法はただ一つ…全ての物は滅びゆく!』

 

使者は両腕で円を描きながら巨大なエネルギー光弾を生成する。

 

「な…なんなんだお前!!」

 

『我が名は…カメンライダー…ギ…ンガ』

 

使者は名乗るも声がかすれ上手く聞き取れない。

 

「え?」

 

『宇宙の裁…を…が…我が…魔』

 

次第に視界にノイズが走り使者とは違う声が紛れ、だんだんと意識が覚醒していく。

 

「なんて?」

 

『キバ…て…『我が魔王!!!』

 

 

「我が魔王!!!」

 

 

 

目を開くとそこにはウォズの顔。

急に視界に飛び込んできたウォズに驚き一夏は飛び起きる。

 

「うわ!?」

「よかった…ようやくお目覚めになられたか。」

 

「俺は一体。」

 

周りを見渡す。

場所は教室の自分の席。ウォズ以外に箒とセシリアが自分を心配そうに見つめていた。

 

 

「セシリア・オルコットのサンドイッチを食べて気絶してたのです。」

 

一夏の質問にウォズが答える。

 

「あぁ…そうだっけ。」

 

一夏は思い出す。

今朝、寝坊して朝食を摂らなかった事を話していたらセシリアから自分のために作ってくれた昼食用のサンドイッチの一つを手渡され、自分は好意を断りきれずに意を決して食べてしまったのだ。

 

先ほど体感していたのはセシリアのサンドイッチによって生み出された悪夢。

一夏は夢であった事に対しホッと胸をなでおろす。

 

「全く…目を離すとすぐこれだ。これで6回目。これ以上セシリア・オルコットの手料理を食べるはやめて貰いたい。」

 

「でも…。」

せっかく自分の為に作ってくれた物を粗末にするなど。

最高最善の王を目指す一夏にとっては難しいことだった。

 

「「でも」ではありません…それに。」

 

ウォズはセシリアを睨みつける。

 

「セシリア・オルコット…お前は殺人犯になりたいのか?これ以上一夏君を苦しめるのはやめて頂きたい。」

 

「そんなつもりはありませんんわ。一夏さんには神の才能で作り出された美味しい美味しい愛情を込めた手料理を食べさせてあげたいのです!」

 

「セシリア・オルコット…この際はっきり言いましょう。貴女に料理を作る才能は無い…この際二度と料理ができない様にして差し上げましょうか?」

 

「まぁ、なんて野蛮な。」

 

未来ノートを使えば可能だ。

流石にそれはまずいと思い一夏は二人の間に割って入る。

 

「ま、まあまあ!セシリアも悪気があった訳ではないしね。」

 

「一夏君…しかし。」

「おーら、皆席につけー。」

 

納得しないウォズのセリフは聞きなれない男の声によって遮られる。

ワイシャツの上から白衣を着た癖っ毛のその人物は教卓に立ち出席名簿を開きながらクラス全体を見渡した。

 

その男は学園の教員の一人であった。

 

「え、誰!?」

 

見慣れない人物に一夏は声を上げて反応する。

 

「そうか、一部の人は会うのが初めてか。俺は選択授業の宇宙工学担当教員『多杉銀河』だ。山田先生と織斑先生は多忙な為、朝のSHRは俺がする事になった。」

 

一夏は宇宙工学を選択していない為彼と会う機会が無かった。

 

「男の先生も居たんだな。」

「俺はお呼ばれだ。この学園の正式な講師では無い。」

 

多杉は生徒の名前を読み上げ一通り点呼を取ると、改めて目線をクラス全体に移す。

 

「さてと、いきなりで悪いんだが転校生を紹介する。

おーい待たせたな、入ってくれ!」

 

多杉は廊下に待っている転校生を呼び出す。

扉が開き教室に入ってきたのは中性的な顔立ちをした金髪の美少年だった。

 

「初めまして、シャルル・デュノアです。」

「お、男?」

 

生徒の誰かが反応する。

 

「はい、同じ境遇の人が居ると聞いてフランスから来ました。」

 

入ってきたのはまさかの男性だった。

同じ境遇と言うことは一夏と同じ男性適正者。

まさかの転校生に女子生徒達は歓声を上げる。

 

「「「きゃぁあああああああ!!」」」

 

「男よ!三人目の男!」

 

「常盤君と織斑君とは違う王子様系!」

 

「守ってあげたいタイプ!」

 

 

「あれ、どこかで…。」

一夏は初対面の筈のシャルルに既視感を感じていた。

何処で見たことがあるような…しかし思い出せない。

 

 

「うっぐ、朝から元気がいいなこのクラスは…織斑先生も大変だ。」

 

多杉は耳を塞ぎながらこの騒がしいクラスの担任を思い浮かべながら苦笑いする。

 

「あ、ははは…。」

 

シャルルもそんな多杉のセリフに同感する。

 

「織斑君と常盤君…悪いけど彼の面倒を見てやってくれないか?同じ男同士気は楽だろう。」

 

「はい、わかりました。」

 

「俺も授業の準備があるからこれでSHRは終わりだ。自己紹介は各自でね。ではまた!」

 

多杉は教室出て、準備室に向かおうとするが、胸ポケットに入っている携帯電話が震えだす。

 

「もしもし、俺だ…ってお前か…学校にいる時は電話するなって言っただろう?」

 

電話の相手に多杉は呆れ顔になる。

 

「お前がこの学園に送り出したんだろ?お陰でこちとら多忙な日々だ。……なに?……はいはい、分かったよ。分かりましたよ。」

 

多杉は降参だと言わんばかしに手を上げ、携帯電話を耳から話す。

 

「じゃあ後でな、束。」

 

そう言い残し、多杉は目的地に向かった。




謎の教員が登場!いったい何者だ!?


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第九話 宇宙の彼方の…

どうもお久しぶりです。
久々の投稿ですね…おまたせしました(土下座)
続きやろうやろうと思って気がつけばジオウは終わりゼロワンへ。
ジオウ全話見た上で若干 プロップを修正をしていました。


多杉銀河はIS学園の特別講師だ。

自分の授業を終え、車を自宅に向けて走らせていると、ある者がその行手を阻んだ。

 

「うぉぉっぉお!?」

 

道路の真ん中に人が現れて急ブレーキをかける多杉。

その者は向かってくる車に対し逃げはせず、そのままバンパーこ上に足を乗せ強引に車を止める。

 

「だ!あぶねーだろうが!!!!」

 

多杉は車を急いで降り轢きそうになった相手に怒号を浴びせるが、その者が直ぐにIS学園の生徒だと気づく。

 

「って、あれ…お前確か一組の…。」

 

IS学園の唯一の男子生徒、名前を忘れるわけない。

「常盤…お前ここで何やってるんだ。」

 

制服に長いマフラーという奇抜なファッションをしている生徒は記憶の中で一人しかいない。

常盤ウォズだ。

 

「多杉銀河…少し私に付き合って貰いたい。」

 

 

 

 

 

 

IS学園では一組と二組が合同で実技授業を行なっていた。

その最中、一夏は自分の姉から向けられる視線に耐えていた。

 

 「あー、えっと…ウォズは…その。」

 

ウォズはSHRの後すぐ「私は今日の授業には出ない」と一言だけ言い残し何処かへ行ってしまった。

千冬の授業をすっぽ抜かすなど自殺行為に等しい所業をやり遂げたウォズをどうにかして庇おうと一夏は色々と言い訳を考える。

しかし姉の視線は刃物同然、首元に刃を突きつけられた感覚に陥り、一夏の頭は真っ白になる。

 

「何だ?はっきり言え!」

「その、えーっと…「欠席する」って。」

 

嘘はつけない。

そう判断した一夏は大人しく正直答えた。

 

「…そうか、分かった。」

「え?」

 

しかし予想外の事に千冬は案外呆気なくウォズの欠席を認めた。

その違和感と驚きに思わず声が出てしまう。

 

「授業を始める!整列しろ!!」

 

千冬はそんな一夏を他所に、両手を叩き生徒に整列する様に指示を出す。

 

「今日の合同授業の内容は実技だ。手始めに代表候補生には一回模擬戦をしてもらう。相手は…」

 

「きゃぁあああ、退いてください!!」

 

千冬が言い終わる前に空から声が聞こえる。

上を向くとISに乗った山田先生がこちらに向かって落下しているのが見える。

 

「退いてぇぇぇええ!!」

 

周りの生徒は急いで避難をするがこのままだと山田先生は地面に激突してしまう、ISには絶対防御が有るため怪我などはしないと理解しているが一夏の体は彼女を救おうと勝手に動く。

 

「危ない!」

 

一夏は素早く白式を展開し地面すれすれで山田先生をキャッチする。

 

「大丈夫ですか?山田先生!」

「あ、織斑君…ありがとうございます。」

 

山田は久方ぶりのIS操縦で手元が狂ってしまいISを教える立場としてコレは恥ずべき姿だと 落ち込むと同時に、今起きている状況に対し顔を赤くする。

 

彼女は今、IS越しでは有るが男の人にお姫様抱っこをしてもらっている状態だ。

 

「いーなー山田先生。」

「織斑君にお姫様抱っこされてるー。」

 

「いや、あの、これは//」

 

生徒に茶化され山田の顔はさらに真っ赤になり今にも沸騰しそうな勢いだ。

 

「まるで白馬の王子さまだね!あ、私うまいこと言った。」

「おもんなし。」

 

白式と白馬をかけたギャグだろう。

 

「王子!?いやー照れるなー。山田姫…お怪我は有りませんか?」

 

王子という単語に反応し一夏は調子に乗る。

 

「も、もう。織斑君ったら……っひ!?」

 

一夏の爽やかフェイスに思わず見惚れてしまった山田。

しかし、背後から発せられる殺気を感じ取り、軽く悲鳴を上げながらゆっくりとその方へ顔を向ける。

 

「「「…一夏(さん)」」」

 

そこには嫉妬と殺気のオーラを纏ったポニーテール、ツインテール

、金髪の3人組が一夏を睨み付けていた。

 

「あ、あの、は、早く下ろしてください!」

 

このままでは織斑君の身が危ない!

そう感じ取った山田は一夏を急した。

 

「はい、どうぞお姫様…なんつって!」

「一夏ぁああああ!!!」

 

テヘペロと言わんばかりに笑う一夏に対し、鈴の堪忍袋の尾が切れ即座に甲龍を展開し青龍刀を一夏に向けて投擲する。

 

「危ね!?」

 

一夏はそれをギリギリで交わす。

 

「一夏!あんたねー。」

「おほほ、一夏さん…私という者がありながら。」

 

セシリアも鈴に続きブルー・ティアーズを展開し、殺気を漂わせながら一夏に詰め寄る。

 

「お、お前ら…どうした?」

 

なぜ自分が責められているのか理解できない一夏。

二人に対しじりじりと後退りをする。

 

「おい、貴様ら。」

 

しかしその二人は鬼神の殺気によって動きを封じられる。

 

「「「ひぃ!?」」」

 

「誰がIS使用の許可を出した?」

 

規則により無断でISを展開してはいけない。

それを破った鈴とセシリア…ついでに一夏は千冬の逆鱗に触れてしまう。

 

「山田先生…内容を変更だ。私も参戦する。」

「え!?」

 

 

その後3人は千冬にボロ雑巾の様にされた。

 

 

 

 

「酷い目にあった。」

「さ、災難だったね。」

 

授業が終わり一夏はベンチで横になり疲労した肉体を休めていた。

シャルルは苦笑いを浮かべながら着替えを高速で終わらせて、一夏の隣に座る

 

「なぁ、織斑って呼ぶと千冬姉と被るから気軽に一夏で良いよ?俺もシャルルって呼ぶから」

「分かった、じゃあ一夏って呼ぶね。」

 

一夏は身をお越し自分も着替えようとロッカーに向かう。

 

「そう言えばシャルルの部屋割りってどうなるんだ?」

「えっと、山田先生が一夏と同じ部屋だって…。」

「え、じゃあウォズは?」

「常盤君は一人部屋に戻るみたい。」

 

部屋番は1025号室…かつて箒が使っていた部屋だった。

箒が移動し、ウォズは本来の一人部屋に戻る。

 

「そっか。じゃあ、これから宜しくなシャルル…よいしょ。」

「うん…って、うぉあ!?」

 

一夏はISスーツを脱いだ瞬間、シャルルは何故か顔を両手で覆い隠す。

 

「ん?どうしたんだ?」

「な、何でもない!僕は先に戻ってるね!」

「お、おう。」

 

シャルルは荷物を纏めて駆け足で更衣室を出て行く。

 

(あ、そう言えば…ウォズはシャルルの事をどう思っているんだろう。)

 

なにかと自分に近しい人物に対し異様な警戒心を見せていたウォズ。

シャルルも唯一の男性適性者という事で今後深く関わっていくだろう。

彼もまた自分の命を危険に晒す存在であるか否か…今度あったら話を聞こうと考える一夏であった。

 

 

 

 

 

 

「大丈夫バレてない。」

 

 

更衣室を出た彼は壁にもたれ掛かり息を整える。

男の体を見慣れてない自分には、鍛えられた一夏の体は些か刺激が強すぎた。

 

彼…いや彼女は自分の置かれている立場を整理する。

 

シャルル・デュノアは本名ではない、唯一の男性適性者である織斑一夏に近づく為に名付けられた偽りの名だ。

 

父が経営しているデュノア社は現在、IS開発の遅れで経営危機に陥っている。

それを打破する為、篠ノ之束が直々に完成させたい第3世代IS『白式』のデータが必要だった。

男と偽ったのは織斑一夏に接触しやすくする為。

自分の役割は彼の隙を見て、デュノア社に白式のデータを送る事。

 

もしバレてしまったら…考えたくもない。

 

(なんで、こうなったのだろう。)

 

母が死に父の元で嫌々働かされる毎日。

こんな犯罪までやらせるなんて…。

 

(僕は…唯普通に生きたかった…昔に戻りたい。)

 

だが此処まで来てしまった…後戻りはできない。

いざバレてしまったらコレを使って逃げれば良い。

 

シャルルは鞄から謎の少女からお守りとして貰った…黒いアナザーウォッチを取り出し祈るようにそれを握りしめた。

 

 

 

 

同時刻

ウォズは多杉を連れ、無人の採掘場跡地に来ていた。

 

「おいおい、ここってよく特撮で使われる採掘場じゃねーか…何?撮影でも始まるのか?お前もしかして東○の関係者か?」

 

危機感のない多杉に対し眉をひそめるウォズ。

軽く咳払いし口を開く。

 

「多杉銀河…単刀直入に聞こう。君は何者だ?タイムジョッカーか?」

「な、なに?未来戦隊?いや、それはタイムレンジャーか…。」

 

多杉のボケをスルーし自分のタブレットPCを見るウォズ。

多杉銀河…ウォズは過去に織斑一夏に関わる人全員の名前を覚えているが、彼の名は知らない。

つまり本来この時間軸に存在しない人物。

ウォズにとって彼の存在はイレギュラーだった。

 

「私はお前を知らない…このタブレットに多杉銀河と言う名は記されてない。つまりお前は本来この時間に存在しない筈の人間だ。」

「ひ、酷い良い様だな…なんの話かさっぱりだ。俺が何者かだって?朝言ったじゃねーか。俺はIS学園の教員だ。」

「悪魔でも惚けるつまりか…だったら私にも考えがある。」

 

未来のタブレットに名前が書かれていない存在…ウォズと同じ未来人かタイムジャッカーの二択しかない。

 

どっちにしろ未来人の介入は歴史を変えてしまう。

ウォズが取る行動はただ一つ。

 

『ウォズ』

 

「変身。」

 

『カメンライダーウォズ!ウォズ!』

 

ウォズはカメンライダーウォズに変身し武器を構える。

つまり排除だ。

 

『ジカンデスピアー!ヤリスギ!』

 

「な、ななにぃ!?変身した!?」

 

目の目で特撮ヒーローの如く変身したウォズに驚く多杉。

 

『我が魔王の覇道を邪魔をする者は誰であろうと倒す。』

 

生身の人間にも関わらずにウォズは容赦なく攻撃する。

 

「っく!!危ねぇ!!」

 

多杉はなんとかウォズの猛攻を躱す。

 

「はぁ…アイツの言っていた事はこの事か!」

 

『…何の話だ?』

 

多杉の謎めいたセリフ思わず動きを止める。

 

「束が言うこともたまには役に立つな。」

『束だと?篠ノ之束の事を言っているのか?』

 

篠ノ之束…その名を聞いた瞬間ウォズは額に汗をにじませる。

 

「そうだ、かの有名なISの生みの親、篠ノ之束だ。俺は彼女とちょっとした縁があってね。IS学園に来る際にお前に注意する様に言われてたんだ。まさかお前がそんなとんでも兵器を持っているとは思わなかったが。」

 

多杉は白衣についた砂埃を払いながらウォズのカメンの文字を睨む。

 

「常盤ウォズ…お前こそ何者だ?束が言うにはお前は白式に何らの細工をして彼女の計画を妨害しているらしいが…もしかして亡国企業か?織斑一夏に何をしようとしている?」

『あんなのと一緒にしないでくれるかい?私は彼を王への道…覇道へと導いているだけだ。彼が向かうべき未来の為に。』

「へ、胡散くせーな。だったら俺は一教員としてお前の胡散臭い計画を止めてやるよ。」

 

多杉は両足をガッと広げ、力強く地面を踏む。そして右腕を天にかざし、キザな表情を浮かべる。

 

「なんせ俺は教師にして、この宇宙の平和を守る為に戦うヒーローなのだからな!こい!ギンガァドライバァァァァアアアア!」

 

多杉が叫んだ瞬間、彼の腰に円盤型のバックルが嵌められたドライバーが現れる。

 

『なに!?』

 「変身!!」

 

多杉はドライバーの円盤を強く叩く。

 

『ギンギンギラギラギャラクシー!宇宙の彼方のファンタジー!』

 

音楽と共に多杉と似た声の音声が辺りに響き渡る。

 

『カメンライダーギンガ!』

 

星空の様なマントを靡かせ、未確認円盤のような物を被った仮面のヒーロー。

カメンライダーギンガがここに参上した。

 

『俺は宇宙からの使者、カメンライダーギンガ!!』

 

ギンガはポーズを決めるとスーパー戦隊よろしく後ろが大爆発し、彼の登場を派手に際立たせる。

 

その様子に思わず唖然としたがウォズだが直ぐに彼が自分の敵だと理解し、ジカンデスピアーを構える。

 

『カメンライダーだと?カメンライダーは我が魔王に仕える戦士の称号だ。お前などが名乗って良い物ではない!』

『は!知らねーな。仮面のヒーローだからカメンライダーって名乗っているたけだ!』

 

今まさに過去でライダーバトルが勃発する。

 

 

 




見直していたら誤字を大漁に見つけたので徐々に修正していきます。


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