神器使えや神器使い! (おーり)
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神器「ok G●ogle 宿主 転職」

病み上がりなので初投稿です(こいついっつも病んでんな)


 ――ひととおりの腑分けも済んで、多少理解(わか)ったこともある。

 そう思っているのは俺だけで、実のところ見当違いな見立てをしている可能性もあるが。

 

 悪魔や天使とは、実際のところ人間と大差が無い。

 

 大抵の人外を顕わとする特徴は翼くらいなもので、それらは基本的にそれぞれの性質的特徴にもなる魔力を自ら放出するために発現する器官としての役割しかない。

 日本の怪異で云うところの『正体を明かす』という奴だ。

 魔法だの奇蹟だの仙術だのと呼び方に差異を本人たちは付けたがるモノだが、それはただ使い手が異なっているだけで扱われるエネルギーそのものには大きな差は無く、それこそ本人たちの性質に則って相応の属性を備えさせているに過ぎない(ことわり)なのだ。

 悪魔が扱えば『魔法』となり、天使が扱えば『奇蹟』となり、それぞれに准じこそすれど人間が扱うのは模した技術なので『魔術』となる。

 そして人間のためにとそれらの『術』をグレードダウンさせたうえで教示したのだから、堕天使の扱うモノは『魔術』だ。

 そうして形となる術理は即ち論理的な側面を持つ、どこをどうすればどうしてどうなる、を意識的に再現させる技法なのだから、最終的には科学へと逝き着くわけだ。

 

 まあそんな理屈はさておいて、使い手で技術の銘が変わることは間違いが無い。

 間違いが無いのだから、俺の扱うこれらはやはり『錬金術』と呼ぶべきモノなのだろう。

 

「――ぁ、が……っ、ひ……っ」

 

 ――そんなことを、堕天使の女を解体(バラ)しながらふと思った。

 

 レイナーレと名乗っていたその女は、傍目にはそこいらの女学生と見紛うほどに若い容姿をしていた。

 もういい歳らしいのでそういう印象に見られることはいわゆるひとつの若作り、且つ実際に制服まで用意していたのだからコスプレ的な趣きがあると捉えられる。

 謎の犯罪臭が漂うが、その実やろうとしていたことと言えば若いツバメを引っ掛けることではなく、神器使いが目覚める前に人命ごと刈り取ってしまおうとしていたという普通に刑事事件モノのそれである。

 後々厄介になる種を小物の内に摘んでしまおうという試みは狙いとしても理解できるが、狙われる方からすれば堪った物でもあるまい。

 実際、俺もそういうモノを宿しているので狙われた縁でこうなったわけだが、これが非武装の一般人であればどうよ? と正当防衛を主張しつつ提唱を投げかけるのであった。

 

 しかし困った。

 改めて現状を顧みてみると、犯罪臭はどうにも俺の方から漂いつつあるように思えてくる。

 

 現場は人気(ひとけ)の無い公園。

 恐らくは元より自分が優位の立場に収まらんがために、人払い系の結界的なモノでも張っているのであろう。

 人目が無いことは朗報だが、それがいつまで保つモノかは判別が利かない。

 

 被害者は制服を着た女学生。

 頬と眼窩を赤く腫らせ、左脚は折れて変な方向へ捻じ曲がり、手の甲は踏み潰され肩は砕かれ、腹には大きな致命傷が背中まで貫通しており後数分で息絶える。

 念の為にと喉を裂いておいたので、それ以上声を上げることもできず、掠れた呼吸がか細い悲鳴と漏れるばかり。

 

 加害者は僅かな返り血を浴びた青年。

 血飛沫は微かなモノで、先ほど公園の水道で手も洗ってきたので目立つ程のものでも無い。

 凶器ナシ。おててはきれい。

 ……ふむ。

 

「perfectだウォルター」

 

 思わずインテグラ嬢のように口遊む。

 割と完全犯罪っぽい状況に持って行かせることが可能そうで、俺は今ちょっとばかり気分が良い。

 遭遇当初は後顧の憂いも碌に計算せずに、光の槍を躱しーの奪い取りーのテレフォンパンチで戦意削りーの脚引っ掴んで振り回しーの叩き付けしーの踏みつけて命乞いを聴かずーのトドメは槍で心臓を貰い受ける! みたいな島津流無頼漢殺法を文字通り叩き付けて血に沈めた俺であったが、所詮命を刈り奪る仕事をしておろうが小物狙いでは強くも無かった。

 生き死にに携わるんだから最低限の覚悟くらい備え付けとけ、羽虫狙うのとは違うんやぞ。

 

 問題点はと言えば、例の青田買いモドキをこの女郎(メロウ)は既に他にも決行していたという点。

 どういう文字を使うのかは聞いてないが、アマノユウマなる偽名でヒョウドウイッセーという高校生を誑かし、やることまでやる気だったのかは知らないが最終的には計画通りに殺そうとしていたのだろう。

 このまま女郎の仲間が現れれば、最悪ヒョウドウくんとやらに携わる暇が無いままに遺体は隠され事態も隠蔽されて、一週間後のデートの約束を意味も無くすっぽかされる可哀そうな少年が生まれてしまう。

 少年の心に傷を残すわけにはいかないと、俺は仕方なしに公園付近の電話ボックスへ駆け込むのであった。

 

「あ、もしもし警察ですか」

 

 

 

  ■

 

 

 

 リアス・グレモリーは頭を抱えていた。

 心持ち頭痛を覚えてしまいそうになった原因は、最近報道された猟奇殺人事件に由来するモノだ。

 

 被害者は近隣の高校に通う女子学生で、それが自分の通う駒王学園の生徒では無かったことは救いと言っては救いだろう。

 しかし、駒王町は自分が治めている町だ。

 世の中には一般に知られることなく被害を齎す『ハグレ悪魔』という奴らだっている。

 そういうモノに彼女が引っ掛かったのだとしたら、それを隠匿する暇も無く大々的に報じられたことこそが迷惑の種となるのだろう。

 だが問題点は、そうして大多数の記憶や認識を調整することが難しくなった事態そのものではない。

 その被害者が、知らずこの町に潜伏していた堕天使だった、と朱乃に伝えられた事実。そこに尽きた。

 

「……まずいわね、これが知られてしまうと、堕天使との関係にも亀裂が入りかねないわ」

 

 自分が就任した当初は、この町にもハグレや怪奇事件もたびたび起こっていた。

 元々教会の目も行き届いていない地方都市なので、悪魔には実に棲み易い場所だからだと理解もできたくらいだ。

 ここ最近は静かになっており、ようやく自分の治める土地だということが知れ渡ったのだろう、そう思って平穏な日々をリアスたちは満喫していたというのに。

 

 被害者は左脚を折られ、肩と両手を砕かれて、()()()()()()()()()()心臓を抉り取られて死んでいたらしい。

 顔は判別がつかない、というほどでは無いが、しかし容赦も無く殴られて変形していたと聞いた。

 だが現場に残されていた生徒手帳との照合で、身元の判明ができたらしい。

 

 問題はその後で、確かに学校に通っていた証拠があるのだが、関係者がほぼ現れてくれない。

 被害者遺族すら名乗りを上げない点から、予想外の難航な捜査になってきていると噂になってきていたのだ。

 人間の問題だ、と気に掛けたのも最低限度だったのだが、噂が飛び交う事実に改めて気に懸かり、朱乃に調査を頼んだところで被害者の『種族』が判明したのである。

 戸籍がそもそも偽装されたモノであったのだから、捜査も進まないのも当然の事であった。

 

「というかなんであの堕天使はこの町に居たのよ……、その後も何が起こったわけでもなかったわよね……?」

 

 ハグレ悪魔も姿を見ない。

 この町は酷く平和なままだ。

 堕天使が被害者の猟奇事件以降、他の人間にも気を回しているが、死亡も行方不明も交通事故も無い。

 リアスはただただ面倒そうなことが起こりそうだと、自分の責任で堕天使との関係に今以上の溝が生まれることを危惧して頭を抱えるのであった。

 

 

 

  ■

 

 

 

 公園でひとり、俺は睨むように其処を見つめ続けている。

 黄色いテープが貼られていたこの辺りは今日まで入ることを許されず、事件から一カ月近くが経ってようやく来ることが出来た。

 夕麻ちゃんの、殺された場所に。

 

 歯を食いしばり、叫び出したくなる衝動を呑み込む。

 なんで彼女が殺されなくちゃならなかったのだろうか。

 事件からこれだけ経っても、誰も何も教えちゃくれない。

 

 いや、単なる高校生に教えてくれる警察なんていやしないのはわかっている。

 けれど、一応は恋人だったと名乗りを上げても、俺に其処までの情報が無いことを知ると簡単に追い返された。

 そりゃあ、恋人になったタイミングだって殺されたその日だし、彼女のことを何も知らなかったのも事実だけど……。

 

 其処まで好きだったのか、と訊かれると、自信をもってそうだとは言い切れない。

 でも、この宙ぶらりんな気持ちはそう切り替えられるものでも無い。

 

 一瞬だけだけど、俺だって告白された側だったんだぜ――?

 

『きゃぅっ!』

 

 小さな悲鳴に目を向ければ、ライトグリーンのパンツを捲れ上がったスカートの下に見つけた。

 何に躓いたのかは知らないが、女の子が盛大にすっころんだらしい。

 ……。

 とりあえず、ごっつぁんです!

 

「だ、だいじょうぶか? けがは無い?」

 

 かわいい子であることを願いつつ、ラッキーなハプニングへの感謝を込めて助けに声を掛ける。

 べ、別にナンパってわけじゃねーから!

 心に負っちまった傷を癒すのはエロだって、松田や元浜も言ってただけだからー!

 

『うぅ、どうしてこんなところでころんでしまったのでしょう……』

 

 っ、か、可愛い……!

 

 金髪で小柄な、白人の美少女が其処にいた。

 恰好はなんでか修道服? のそれだし、言葉もわからねーけど、これはお近づきになって損は無いぜ!

 

『……? あの……?』

「っ、ど、どわぁいじょうぶっ!? けがはなかったかなっ!?」

『ぇ、え、あの、す、すみません、わかりません……!』

 

 うぉ、引かれた。

 ちょっと言葉も怪しくなっちまったかな……?

 ――いや、俺は此処から巻き返して見せる! 駒王学園三羽烏の名に懸けて――!

 

『ハァイアーシア、お元気ぃ?』

 

 ――その後、意気込み空しく、颯爽と現れた謎の色黒美女に金髪シスターは掻っ攫われた。

 ……そうですね、挙動不審の男子よりも、知り合いの女性ですよね……。

 

 所詮警察の人にも名乗った途端に、駒王学園(ウチ)の女子から苦情という逮捕要請も上がってきているって注意を受けた変態ですよ……!

 あ、そっちも問題だったんだ。

 もう今日は帰ろう……、帰って松田や元浜とこの問題について解決策を練ろう……。

 

 

 

  ■

 

 

 

 アマノユウマのハニトラ相手、聞き覚えのある名前だと思っていたらウチの先輩だったわ。

 まあ、女子更衣室の覗きや盗撮、下着泥棒なんかの容疑で有名な変態な先輩だし、バイタリティある人だしケアも大して問題ないだろ。

 

 そんなことを思いながら、件の先輩を見送りつつ腕の中の知り合いを見下ろす。

 そんな先輩だから、こういう可憐な小娘を付き合わせたくは無いのですよ。

 思わずイタリア語で捲し立てて追い立てたわけだが、未だ抱きしめられているアーシアは反応が薄い。

 

「? どしたん?」

「――ひょっとして、ソラさんですか?」

「ああ、誰かわかんなかったのか」

 

 というか『向こう』じゃ『ソーリア』と名乗っていたので、その呼び方も正しくは無い。

 まあ愛称と思っているけど、どうにもこの子がそう呼ぶので自分でも定着した節がある。

 こっちでの偽名もそこを捩っての『烏丸イソラ』だ。なんか、落ち着く。

 

 そんな回想に耽りそうになる俺の()を、アーシアはがっしりと鷲掴む。

 おや、何処か目に光が無い?

 

「ど、――どうしてこんなことに!?」

「あっはっは、どうしてだろうねー」

 

 いや、変装でもあるのだけどね。単に。

 とりあえずパッドがズレるからあんまり揉むな。

 




全年齢向け…はいきなりのグロ描写で頓挫したご様子
此奴が絡むといっつもこれだ
でもギリギリR18に傾かないように、と遣って見たくって書きました!

応援してくれると嬉しいです


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アーシア「おっきぃ……チクショウ……(モンミュモンミュ」

新作書き出したら忙しくなるってなんなん?
なんとか週一更新に間に合ったと私信じてる――!

あ、お気に入り登録&感想&高評価ありがとうございます
お礼言っといてなんだけども早い…速くない?


 イタリアの南部端、正しくはアドリア海岸沿いなのだが、沿岸部は基本的に温暖なので大多数がイメージする通りのイタリアの街並みで間違いが無い。緯度は新潟と同じでナポリから山挟んで完全に反対側なので、ともすれば日本海のようなイメージを持たれがちだが。言わなきゃ良かったかそうか。

 

 さておき、国的にはバチカンが特別扱いされてるとはいってもあなたも私もローマの国民、外れたところの分流的とはいえ片田舎だとしても教会を鎮座増しますが国家の通例でもある。日本人がそこいらに神社造ってるのと感覚的には変わらない。そう考えるとむしろ、地図を重ねりゃ本州だけでもポルトガルからドイツ端くらいまで離れてるのに同じ感覚と言語で通そうとする日本人の団結力が不気味にも見えてくるが。言わなきゃ良いかそうだったか。

 

 ともあれ、件の港町の教会が以前のバイト先だ。

 

 

 そもそも俺の神器である【煌めき誘う淫蕩愛婦(カディシュ・エクリプス)】の効果を見越して採用されたはずだったのだが、件のバイト先は全く以てド平和な港町で御座った。

 

 まあ、正式に性能見越されてたらもっとばかすか銃打ち合う場所を優先されていただろうから、教会の人たちの見る目の無さには感謝もしてます。

 

 最悪ロアナプラの暴力教会に赴任させられていた可能性もあったし。

 

 

 そんなところで知り合ったのがこの小娘である。

 

 でもこの子、話を聴くだに北部出身っぽい。

 

 今思えば、相互作用を見越してのチーム分けだった可能性が微粒子レベルで存在していた可能性も無くは無い。

 

 

「アレですか、ソラさんの神器がクレオパトラの飾ってるようなネックレスだから敢えて女装してるんですか、おっぱい良く似合ってますね、ちくしょう」

「いいかげん揉むの辞めない?」

 

 

 ちょっと見ない間になんかダークサイドに堕ちてるし。

 

 というかこの子がおっぱいとか口にするのは酷い違和感が。

 

 

「というか、なんで此処で会えるのかがよくわからないんですけど。辞めた時もいきなりでしたよね?」

 

 

 数分後、予備のパッドを自身のブラに装填して揉みほぐす巨乳アーシアちゃんの姿が其処に――!

 

 そんなに気に入ったのか……。

 

 呆れつつも、質問には答える俺。優しさの化身である。

 

 

「俺がこの町に住んでるのは、まあぶっちゃけ国からの目が行き届いてないからだな。悪魔の管理とやらも杜撰で制限ガバガバなのですっごく生き易い」

「わぁ、菩薩のような微笑み」

 

 

 何せハグレ悪魔(研究対象)がズンドコ侵入してくるからネ☆、とドヤ顔を晒す。

 

 いくら掻っ捌いても罪に問われない奴らが山のようにいらっしゃるので、趣味&ライフワークの研磨に(いとま)が無いんですわ。

 

 はぁーッ、つっらいわーッ、やることが多すぎて時間がたりなくてつっらいわーッ。

 

 

 俺のこれ見よがしな溜め息交じりの回顧はさておいて。

 

 所詮外様である俺が自由に辞められた判断を申請できたこととは違い、アーシアの場合はそうトントンで現場を離れられるわけはない。

 

 彼女の神器である【聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)】は治癒、というか緩い回帰系の限定時間遡航属性であり、かなり貴重な代物なので傷病人を抱え込める教会ならば『奇蹟』と称して何処までも売り出せるからだ。

 

 まかり間違って属性反転なんかの畑違いを覚えたりしなければ、順当に育てば人類史に残るレベルの使い手として成長すること間違いなしな期待の星だったはずだ。

 

 それが何故に、こんな極東の辺鄙な町へ?

 

 

「えー……とですね、これにはよんどころのない事情がありまして」

 

 

 視線で疑問を促すが返答はしどろもどろと、どうにも掴みどころがない。

 

 んー? と顔を覗いてみると、目線を泳がせていた彼女は、

 

 

「~~~っ、そ、ソラさんを探していたんですよっ、悪いですかっ!?」

 

 

 堰を切ったように叫び出していた。

 

 逆切れである。

 

 

 しかし旨い具合に情緒もまともに成長しているようだ。

 

 ボッチだった彼女は同僚との距離感を測りかねて、イイ子でいようとする傾向があったからなぁ。

 

 

 などと親のような心情でアーシアの成長具合をほっこりと噛みしめてる合間も、彼女は言葉を続けていた。

 

 

「っていうかいきなり辞めるってなんですか!? 例の悪魔の男の子が私と関りを持とうと接触してきたことを先手で迎撃したことは、確かにびっくりしましたけど! でも居なくなるにしたって何か言い残していくべきじゃなかったんですか!? お蔭で世界中飛び回ってもう3年なんですけど!?」

「3ねんかぁ、もうそんなに経ったんだなぁ」

「呑気ですかッ!」

 

 

 明らかに周囲にも戦闘技術者が見当たらない片田舎で何故か瀕死になった悪魔という見え見えな罠を、まるで鴨がネギを背負ったように現れた金髪のアレを初手必殺と当時の身体能力でオラオララッシュ喰らわせた頃をほんのりと想起する。

 

 身体の具合も当時とは見違えるレベルなので、今ならば無駄に頑丈だったお蔭で殺し切れなかった彼奴と再びまみえれば確殺もできる。

 

 当時は戦闘技術なんて神器頼りでしかなかったから、純粋な身体能力(ポテンシャル)だけでは追い切れなかったのが悔やまれたのだ。神器は、下手すると被害が独りに押し留められないし。

 

 

「戸籍と本名を調べ直して、祖国の方にも伺ったんですよ? なのにいないし……」

「つーか、俺そもそもポルトガル生まれじゃないからね? 血筋はチベットらしいわ」

「じゃあなんでポルトガル語で『微笑み(ソーリア)』なんて名付けられてるんですか……?」

 

 

 そんなん知りません親父に云え。もう半世紀前に墓の下(鬼籍)に降っているが。

 

 ちなみに母は北欧系。この白髪頭は母方の経緯らしいのだが、親父も金だか茶だかの色でもあったので混じっている節がある。え? 普通はそうはならない? いやそんなん詳しくないし。実際濁った白って感じ()なんだから他に説明の付きようもなんもかんも。

 

 まあ俺の話はもう良いとして、問題はこうしてやってきたアーシアの方である。

 

 

「ところで、世界中渡るにしても伝手が無いでしょうに。どうやったん?」

「あ、そのへんは赴任先を数週単位で取り次いでもらえるように、と。そもそも私の神器を本格的に役立てようとするなら、一か所に籠るのではなくこうして大々的に渡り歩くのが普通でしたし」

 

 

 その辺りはソラさんの教えてくれた通りでしたよね、と掻い摘まれたが、それって自分で売り込み交渉したってことかい。

 

 ほんとに成長したなぁ、と再び育ち具合を噛みしめるのであった。

 

 

 

  ■

 

 

 

 アーシアが三年懸けても彼を探し続けた、その理由には当然ながら根底があった。

 

 『他者を癒す奇蹟の(と一般には思われている)神器』を発現させた彼女は、早くに教会の下へと軟禁され箱入り娘の如くに大切にされてきた。

 

 しかしその反面、その権能をフルに活用するとなれば出会う者たちは傷病人などの痛ましい壊れモノばかりで、仮にも癒されるという奇蹟に晒された彼らがアーシアへと向ける感情はどうしたって崇拝へと昇華される。死の淵を覗いた反動であろう。命を救ってくれた少女が可憐ともなれば、猫も杓子もアーシアを崇める思考へとシフトするのも仕方のない話である。

 

 初めの内はそういうものも仕方のないことだと思っていたが、アーシアは神器を除けばそこいらにいる年頃の少女だ。他者を癒すことに疲労を覚えることも厭わない点を認識してしまうと、感性が善性へ傾いているだけには留まらないレベルの善人だが、それでも普通の少女であることには変わりはない。

 

 むしろ、アーシア自身が自らを『そう』という立ち位置だと誤認していた為に、他人からの評価との差異に生じるジレンマに、彼女はずっと孤独になっていると、他人のぬくもりに餓えて往く日々を過ごしていた。

 

 其処に、結果は違えども同じように過程を積む神器使いとして、当時の烏丸、ソーリア=ダ=エスクリダーオスが『同僚』として現れた。現れて、しまったのだ。

 

 

 烏丸が職を追われたのは、先にも述べた通り悪魔の少年を撃退した『過剰防衛』に端を発する。

 

 妖しいことこの上ない遭遇だったので、後になって調べれば教会内部の心無い信者が手配した背信行為の結末であったことも判明したのだが、そもそも、人間は自ら悪事を働こうという意図を組むことはない。

 

 その理由は性善説などではなく、単純にまともな社会で生活していれば、小狡い誤魔化しなどには程度は在れど、殺人や裏切りなどの誰かを害する行為に取り掛かることは思考の停滞に他ならない。そういう切羽詰まった状況にはよっぽどのことが無い限りはそうそう陥らないモノであり、大概踏み切る前にブレーキを踏む。それが普通の人間であり、真っ当な生き方に傾倒している証左であるのだ。

 

 其処を、烏丸は意図も容易く踏み切った。

 

 オラァ、と見るからな怪我人を拳で凹ませて逝くことは明らかな凶行にしか映らず、クレイジーなダイヤモンドですら真っ青な容赦の無さに流石の教会信者たちでも悪魔相手だとしてもモウヤメタゲテヨォ!と押し留めたほどだ。

 

 そんな平然と行動へのアクセルを振り切れる少年が傍らに居るのだ、アーシアへの悪影響を慮り(周囲が)苦悩するのも到仕方がない。もう遅かった気もするが。

 

 

 そうして突然に去っていった彼へ、アーシアが抱いていたのは最初こそ共感であったのかもしれない。

 

 しかし、男女であるという『違い』。

 

 神器の齎すという結末の『違い』。

 

 何より思考の『違い』に覚えたのは、共感などという拙い感情などではない、とアーシアは感情を挿げ替えてしまった。

 

 自分をまともに、隣で憧憬も無しに『見てくれた』という事実に、何かに縋らざるを得なくなっていた彼女は淡い恋慕を其処に見出し、募る恋慕は愛情へと転化した。

 

 初見で再会したそのとき、明らかに男性であった頃の面影も伺えない女装を見破った。その理屈こそが愛なのだと、アーシアは殊更強固に自覚した。

 

 何より、虹彩が同じであったし、指紋の形も変わっていなかった。

 

 何気に高度なスキャニング能力を発現しているような気がするが、愛が為せる業なのだから納得である。納得しろよ。

 

 

「ところで、わたしたち今どこへ向かってるんですか?」

「え? 教会だろ?」

 

 

 ん? と、お互いに小首を捻る。

 

 

「……私がお世話になる、って言いましたっけ……?」

「いや、さっきの会話の流れで連想できた。アーシアが旅行する目的はさておいて、建前としての仕事の都合で此処に赴任してきたって言うのなら目的地は違えようが無いだろ」

「建前。いえ、確かに建前ですけども」

 

 

 その言い方に僅かながら不安が募る。

 

 自分は彼への思慕と愛で此処まで辿り着いたのだが、その辺りきちんと理解してもらえているのだろうかと。

 

 世の夫婦や恋人のように人目を憚らずに同衾する気は、羞恥の方が勝るがために余り気も乗らないが、しかし。

 

 しかし、吐露とした感情の返事くらいは、きちんと貰えないものかと願うのが乙女心だ。

 

 17ともなれば、如何にコミュニケーションレスだとしてもある程度は育つのである。身体だけではなく、心も。

 

 まあそれはさておき。

 

 

「そもそも、場所を知ってるんですか?」

「この町の教会はひとつだけで、そもそもが何やら訳ありのご様子でね。心配だから俺もついていこうかと」

 

 

 元々、烏丸はアーシアの護衛として居たわけ『ではない』。

 

 ふたりが(まみ)えたのは偶然で、烏丸がアーシアを守ったのも偶然だ。

 

 しかし、其処に感情を理由に据えての言葉が出てしまうと、別である。

 

 

 思わず頬が緩むことを自覚してしまいそうになるアーシアに、ホラ見えたぞ、と目的地に到着したことを指し示す烏丸。

 

 もう少し時間をかけてくれても良かったのに、と気持ちを入れ直して、アーシアは教会の扉を開くのであった。

 

 

「すいませーん、本日から此処に配属となるアーシア=アルジェント、です、けど……………………」

 

 

 

 ――開けた聖堂の真正面、ステンドグラスから夕陽の指し込む礼拝堂の賛歌台の上に、目隠しと猿轡を噛まされた金髪のゴスロリ少女が後手菱縄の亀甲縛りで座せられていた。

 

 

 

「――ッ!?」

 

 

 思わず、グルンと背後の女装男子に視線を向けたアーシアは悪くない。

 

 それをグルンと顔を背けた烏丸も、多分悪くないのであろう。多分。

 

 




行間の開け方にやや不具合を感じるので読み易いかどうかでもご意見欲しいです(本編から目を逸らしつつ)


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ディオなんとか「セー…ッフ! ギリッギリ! セーーーフッッッ!」

タグを増やしました☆


 さておいて。

 人気(ひとけ)が無いどころかもうこれは廃墟なんじゃないかな、と確信できる廃れ具合の教会内部にて、外国人と思しき金髪少女が『(子供には)ミセラレナイヨ!』な有様になっている事案という事態は如何ともし難い。

 

 細かく言ってしまうとこの場には日本人すら不在なので国家権力(K察)の介入こそ誰にとっても避けたい所存なわけなのだが、そういう後々考えるべきことを配慮する隙も無くにアーシアが少女に向かって慌てた、その最大の理由は『心配』であった。

 

 何をされたのか、むしろナニをされてしまったのかとデデドン!な推論と妄想が蔓延る思考もひょっこり貌を覗かせる。邪魔だ消えてろ、お前の出番は全年齢版にはネェ!(R-15含む)

 

 それよりなにより、むしろこの場に『紹介』してくれた誰かさんが事態の原因のひとつなのでは無いのかな、などとうっすら『正解』とも取れそうな連想が生まれつつあるのだが、その辺りはきっと三年越しの信頼に依るモノであろう。イイハナシダナー。

 

 

「それで、いったいどうしたっていうんですか?」

「うぅ、あ、アリガトウゴザイマス……」

 

 

 息も絶え絶えにハイライトの消えた虚ろな目で、少女はアーシアにお礼を告げた。何処か片言風味で。

 明らかに心の根幹的な何かがゴッキリと圧し折れているのが見て取れる。

 

 猿轡を解いた少女はミッテルトと名乗った。

 堕天使らしい彼女は元よりこの教会を根城としており、教会本部に根回しした策によって派遣されてくる聖女から神器を抜き取って奪おうという計画を企てていたレイナーレという堕天使の部下だった、と自白した。

 それを聞いてアーシアは思う。また教会内部で策略かぁ、懲りないなぁ。もう慣れているご様子だった。

 

 それはともかく、件の計画をどちゃくそ赤裸々に当のご本人に語ってしまうのは如何なモノなのか。

 それに対してミッテルトは答える。

 いやもうレイナーレは気づいたら死んでるし、帰って来ない上司の状況が把握できなかった時節に変な色黒白髪に襲撃喰らうし、計画どころか集まっていた部下も討伐されるしでのっぴきならなくなってどうしようもなかった。今は帰って毛布に包まって眠りたい。と。

 完全に心が折れているようで、お嬢様然とした衣装と容姿とは裏腹にスラム育ちのようだった言葉遣いを意訳して、アーシアは件の犯人と思しき色黒白髪(現・女装男子)に目を向けた。

 

 いっしょに話を聴いていた件の見た目エキゾチック系褐色美人はというと、優し気に同情するかの如く頷いていたのだが、何処からか取り出した毛布をミッテルトに優しく被せて、言葉を発した。

 

 

「うんうん、大変だったね――ところで、褐色白髪というのはこんな顔をしていたかな?」

 

 

 一瞬にして変装を解き、元の姿へと変わる褐色白髪。

 茫然と見上げたミッテルトは、凍り付いた顔で――決壊した。ジョバッ、と。

 

 ラフカディオ・ハーン(小泉 八雲)ですね、と現実逃避したアーシアは悪くない。

 

 

 

  ■

 

 

 

 気になったのは、神器に目覚めても居なかった兵藤のパイセンを、堕天使はどうやって特定したのかな、という点である。

 

 神器というのは特有の波動を有するモノであり、それぞれがそれぞれ別種の逸話や伝説やフォークロアを基としているために共通の特徴というモノは備えていない。

 それぞれの銘から聖なるエネルギーだとか、魔に属するのだとか、まあ色々とカテゴリ分けしたがる研究者はいるのだが、実際の効果は根本的に異なっていることはアーシアという前例を見ればわかるはずだ。

 そもそも先立って悪魔や天使の身体的特徴を語った通り、どのエネルギーも大元は同じモノで、種毎のフィルタを通すことでしか類別出来ない程度の差異だから、ほんとに区分けするだけ無駄の極み。

 例えばこの先『聖魔の混合』だとかいう神器が現れたとしても、『本人がそういう性質を備えている』程度の問題なのでそう珍しい話でもないのである。二つ備えるとか、そういうのも出て来るかも知れんし。

 序でに言うと俺の神器も、過程も性能も齎される結果も大量虐殺を敢行できる禄でもない仕様なのに、研究者の視点で見ると聖なる属性へと分けられたりもする。それでいいのか本当に。

 

 話を戻すと、そうして所持者特定の難しい代物を、堕天使がどうやって特定していたのだろうか。そんな疑問が脳裡を過ったわけである。

 しかもその脚でこっちの神器に目覚めている上で隠蔽しているはずの俺にまで辿り着いたのだから、その探査術は目を見張るモノがある。まあ、辿り着いた挙句死んでるから、割とどうしようもない技術力にも思えてくるが。

 

 そんなわけで、町中の堕天使を潰して回って、最後に逝き尽いたのがこの教会である。

 明らかな廃墟であったので、久しぶりに神器でもお披露目しようかなぁ、と現場猫の如くに指定解放(指さし確認)。なんか神父の恰好した奴らがぞろぞろ湧いていたけれど、それこそ明らかな廃墟に屯してる奴らなんて禄でもないこと確定だったので気にせずムチャクチャ神器した。

 そんな彼らの残骸は、今でもまだ此処(地下)に居るのです――。

 

 あとこの堕天使少女は次々死んでいく神父らの中で右往左往してたから掴まえて三日ほど放置プレイしていただけです。神父サーの姫かな、とかしか思ってないよ、マジで。

 俺の神器、人間にいちばん効くから、異種族には効き辛いんだよね。怪我の効能。

 

 

「で、今回のことを遣えば、堕天使に借りを作れると思うんだよね」

「言うことはそれだけですか」

 

 

 顛末を聴き終えたアーシアの前で、正座を強いられている色黒白髪が居た。ていうか俺だった。

 おこなの? なんで?

 

 

「ちゃんと言っとくけど、そこの堕天使少女はキチンと放置してただけだからね。如何わしいことはしていない」

「キチンと放置とはいったい……」

 

 

 聖堂で聖水プレイに及んでしまったのは不可抗力として、なんとか片付け終えたミッテルト少女はぐったりとハイライトの消えた眼差しのまま壁に肩を預けて傾いていた。

 まるでレ●pもとい婦女暴行の行き着いた末のようであるが、ちょっと尊厳が折れただけだから誤解です。

 

 思わず言い訳に及んでしまいそうに末期を語りそうになってしまったが、話を戻そう。

 問題点は『堕天使は神器使いを特定できる』ということ、そして『教会内部も安全潔癖とは言い難い』ということ。この二点。

 どのような生き方を選ぶかは本人次第だが、安定と安心を組織に見出すからこそ人はそういう集団へと属したがるモノなのだ。

 そこに信用を置けなくなるのなれば、手段は模索して然るべきである。

 

 

「というわけで、堕天使側にアーシアの立場を明確に保持してもらおう。寝返るとか裏切るとか、そういうものじゃない。色んな方面から尊厳をこそ立ててもらうっていう方針だ、目指せ神話界のVIP」

「その胡乱な代名詞はさておきまして、……どうしてそこまで色々としてくれるのでしょう?」

 

 

 何処か不安げな顔で、アーシアは問いかける。

 まあ、言いたいことはわかる。

 

 組織の内ゲバに晒された事態を幾つか生き延びて、ひょっとすればもう慣れてるかもしれないが、信用と信頼を何処に置けば良いのかもわからなくなっていることだろう。

 そういうモノに圧しかかられたところで、救いの手を伸ばす者が居れば、それはそれだけで依存の対象にもなってしまうかもしれない。特に信仰という依存を第一で生きる聖職者という人種なれば、特に。

 

 アーシアが今抱いているであろう不安とは、要するにそういうことだろう。

 こいつは本当に信用できるのか、という、また裏切られるのではという不安。

 

 ぶっちゃけ、個人的にはどっちでもいい。

 

 信用も信頼も、根本的には『信じる』という『そうだという決めつけ』に由来する。

 人間の内心とは目に見えないものであり、だからこそ行動と結果でしか信頼は積み重ねられるものではない。

 しかし内心はわからないからこそ、裏切る時には裏切るのが人間だ。

 どうであろうと、絶対性は存在しない。そういうロジックが前提なのである。

 

 俺はというと、まあフレキシブルにどの立場であろうと対応する、そういうスタンスを備えている。

 適当、とも云うが、拘りを抱えていても身動き取れなくなるだけなので、やはり身軽さこそが狙い目であろうか。

 しかしまあ、その中でも人間として、最低限度思うことくらいはあるのだ。

 そこは要するに、人情という見方になるのかもしれない。

 

 

「信用が置けないかもしれないだろうけど、善意であることに違いは無いのさ。というか、根本的にアーシアには良い目にも遭っていて貰うべきだと思ってるけど?」

「え、と……それは、どういう意味で………?」

「だって、キミ、基本的に良い人だし、頑張っているでしょう? それのご褒美さ」

 

 

 努力が報われる。その程度のことが世の中には、あっても良いと思うのですよ。

 

 まあ、俺のやることはことわざ的に棚ぼたか果報を寝て待つようなモノに転換されそうだけども(笑)。

 

 

「ウワァ」

「おうなんだいミッテルトちゃん、目覚め早々一声がそれってのはどうなんだいどういう意味だい」

「いやぁ、酷い目に遭っておいてなんなんすけど、ひとが放心してる横でラヴコメ遣られると寝ても居られないっちゅーか」

 

 

 ラヴコメ?

 と、改めてアーシアを見れば、はわぁ……とでも云うような赤らめ崩した相好で、俺を見つめている様。

 ふむ。

 

 

「起きたのなら丁度いいや、へいへい幼女、お前さん提督だか総督だかに連絡取れる?」

「えっ、スルーっすか? これガン無視でスルーしてイイもんじゃないでしょ!?」

「良いから連絡入れるんだよお前の先行きにも繋がる生命線でもあるんだからなハリーハリー」

「ひ、ひとでなしー!」

 

 

 ヒトでないモノにダブルミーニングで呼ばれつつも急かしつつ、ゴスロリもパンツも引っぺがした装備品と言えば毛布のみな全裸幼女をお仕事へと駆り立てた。

 

 その後に、改めてアーシアへと向き直す。

 放置するとは言ってない。

 

 

「さてアーシア、アーシア聞いてる?」

「……、っ、は、はいっ、なんでひょうか!」

 

 

 眼前でてのひらフリフリ、視界の良好さ確認。

 今回の締めでオチとして、これだけは告げておかなくちゃ話が始まらないのである。

 

 

「アーシアさ、学校生活を送りたいと思わない?」

 




やあいらっしゃい、ミッテルトたんの聖水プレイ会場へようこそ
入場券は感想、参加券はお気に入り登録、gkgkは高評価だ
――お買い得、だろ?


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ミッテルト「酷いタグ(白目」

タグのお蔭かUAが20,000を突破!
お気に入り登録数も900に達しました!
ドン引きですね☆

いえ冗談ですよ。感謝します。けど、相変わらずハーメルン民は変態ばっかりだなぁ(@頑丈な心の棚

全年齢板なので逝き過ぎない表現を、と心掛けているのですが、どうにも聖水プレイはみんなにとってジャブ扱いだったご様子
これ以上を望むと申すか。キタイがオモゥイ!

そんな嬉しい悲鳴を上げつつ一巻分最終話
上手いこと起承転結に基づけたと自負してます


「――というわけで、転入してきたアーシア・アルジェントです」

「同じく北山ミッテルトっす。あ、これアザゼル様からっす、堕天使まんじゅう」

 

「どういうわけなの……」

 

 

 リアス・グレモリーは頭を抱えた。

 デジャヴを感じる。

 

 片方は聖職者とはいえ人間だ。

 駒王町は悪魔が管理している。とはいえ、位置的には人間社会の内側だ。学園は高等学校であり、学力にさえ問題が無ければ、そして政治的な問題さえ含んでいなければ、どのような立ち位置の人間にも門戸を開いている。

 だから、彼女が転入してくることも大きな問題点は無い。

 

 だが、もう片方は、別だ。

 苗字は明らかに取ってつけた適当感が伺えるが、正面から感じるオーラは明らかに人外、堕天使のモノで、事実『神の子を見張るモノ(グリゴリ)』から派遣されてきたと赤裸々に宣言していた。討伐されたいか小娘。

 

 しかし根本的な敵対種族とはいえ、立場を明確に挙げられてしまうと討伐するわけにもいかず、差し出された『だてんしまんじう』と捻った字体でイラストまで入った箱詰め和菓子をリアスは渋々受け取った。16個詰めらしい、黒々とした極光を放つ真白い剣が場違いなイラストで箱の蓋を飾っていた。なんだこれ。

 

 

 詳しく話を聞くところによると、元より駒王町内では『教会』と名乗る野良の悪魔討伐組織が潜んでいたらしく、目の前のアーシア・アルジェントはそれと本家聖堂教会内部の心無い一部からの策略に嵌まり、危うくこの町で命を落とすところであったという。

 目的は彼女の持つ神器が主なのだろう、とは予測されるが、実のところ詳しいことはわかっていない。

 元々世界中を転々と布教活動と共に渡り歩いていた『聖女』なのだが、このまま見通しが悪いままで続投、というわけにもいかない。

 一枚岩ではないことが発覚した教会だけでは彼女を守るに至れない点を指摘され、堕天使陣営の上層部にも掛け合って、とりあえずこの町で3年ほど過ごすことを要請したのだという。

 

 ……知らない間に悪魔陣営も一枚咬ませられていた……。

 教会とグリゴリの間だけででも通せる話に見えるのだが、それをこの町で執り行うということは現場である『悪魔の管轄地』という立ち位置からして強制的に参入『させられている』ことになる。

 何処の策士だ。頭越しに話が付いてしまっていて、今更怒っても駄々を捏ねているようにしか見取られない。

 

 何よりもアーシア自身の『安全のため』という名目で三陣営全体での共同計画を企画されており、下手に話を突っぱねようモノならば『アーシアの信者』が黙っていない。

 悪魔や堕天使との融和にも繋がりそうなこの計画を、潔癖な聖堂教会並びに天界が無視できないのは其処だ。

 何より恐ろしいのは人の数。

 神器に拠る影響が基ではあるが、彼女に救われたことで彼女を支えようという者たちの信仰心は、傾きかけていた一神教の信仰を保持できるほどに膨大になっていた。ジッシツコワイ。

 

 

「話は、わかったわ……。納得は難しいけど……」

「ですよねぇ」

「他人事みたいに言わないで、何より問題視しそうなのは貴女なのよ……!?」

 

 

 ――これはリアスにも知らせられない事実だが、野良の悪魔討伐組織がレイナーレ共々潰れたために、其処に所属していたが生き残れたミッテルトはしかし、そのままグリゴリに易々と所属することを許可されたわけではなかった。

 対立はしても戦争を起こす気は無いアザゼルからすれば、野良の武装集団なんてモノは不和の種でしかない。

 烏丸も知らない点であったが、堕天使だって一枚岩ではないのだ。

 雑魚中の雑魚でしかないミッテルトは、アザゼル本人になど連絡を取れるわけもなく、しかし虚仮の一念でグリゴリに事情と事態と現状と救助を必死で求めた結果、本当に首の皮一枚で生き延びることに成功した。

 その生存と組織所属の第一条件が、今回の顛末となる『アーシア・アルジェントの保護を担う計画の一翼、堕天使陣営の一端として、そのまま駒王町で潜伏調査を続投せよ』という指令である。

 

 そんなわけで、臨死にも似た今際を軽く数回覗いたようにも実感した結果、ミッテルトは緊張の糸が一周廻ってすっかりと寸断されてしまっており、精神的な成長にも似た吹っ切れ具合で差し出された粗茶を啜ってカラカラ嗤っていた。

 仮にとはいえ人間界の街ひとつを所有地とする大貴族なのだから、リアス・グレモリーはミッテルトなんぞ歯牙にも掻けない大悪魔だ。

 それでも平然として居られるのは、ひとえに『どうしようもない事態』を自分以外の別要因で生き延びられたことへの『諦観』である。つまりは大体(D)烏丸の(K)所為(S)だ――。

 

 

 ところで、アーシアの問題って結局政治的な物議が咬んでいるから先に挙がった高校編入への阻害要因として充分に払い落とすことも推挙できそうではあるが、そんなんやったらもちろん信者が物理的には黙っていないのでリアスは泣き寝入りするしかない。現実は非情である。

 

 

「とはいっても、うちも結局は木っ端ですし。馬鹿な真似もしませんので仲良くしませう」

「ぬけぬけとよくも言えたモノね……」

「いやぁ。そちらで堕天使も悪魔化させているご様子を見受けられますし? そう無茶な話とも言い切れないんじゃないかなーって思うんすよね」

 

 

 ちらりと、茶を淹れてくれた姫島朱乃をミッテルトは伺う。

 黒髪の大和撫子が息を呑むことが見て取れた。

 此処で誰よりも豊かな胸部装甲が反動で(たゆ)んだが、それを本能に則って眼福と見做せる人材は未だ不在である。

 

 ()を把握されることは痛手では無いが、其処は朱乃自身が未だに解消できていない葛藤だ。

 デリケートな問題を土足で踏み荒らされることは、リアスだって望んではいない。

 舌打ちしたくなるくらいに腹立たしい態度に、赤髪の女王は歯噛みすることで言葉を呑み込んだ。

 

 それはそれとして、堕天使という点について、もうひとつ解消すべき問題があったことをリアスは問う。

 

 

「――ところで貴女、天野夕麻という堕天使をご存知かしら? 偽名だとは思うのだけど、先日遺体で発見されたわよね、警察に」

「なんのことかわっかんねっす」

「それならせめて目を合わせなさい」

 

 

 ヤベー事件として表沙汰になった人外のことなど語るべきではない。

 語れば藪をつつく羽目にしかならないのだから、死人に口なしとはこのことである。

 

 

 

  ■

 

 

 

 堕天使には、他種族を測れる技術が備え付けられているらしい。

 

 先日の神器使い発見についての質問、それに対するアザゼル総督からの回答がこれだ。

 Yah●o!の質問コーナー並みに雑な回答をされた気もするが、相手がこちらを専門家と見做してい無さそうなので簡潔さを求めるのなら妥当なのだろう。

 

 ある程度、才覚の部分で技術を積んだ人材、例えば戦闘技術なんかを備えた修験者ともなれば、相手の『どうこうを』把握する程度の感覚を備えることも可能である。

 人間にできるのだから、仮にも知識を授けたと宣う堕天使にその技術が積み重ねられている点も納得だ。

 ちなみに俺は出来ない。

 知識と技術と才能で時間と労力と根気を掛ければ、出来る『ようにはなれる』とも思えるが、ぶっちゃけ殴って黙らせた方が手っ取り早いので、手間を懸けることに魅力を感じないのが現状ではあるのだ。

 

 今回の『廃教会を根城にしていた者共』の有していたモノは技術だそうだ。

 堕天使側に払い下げの、まあ要するにスカ●ターの『ようなモノ』で反応の在った人材に総当たりを噛ましていたらしい。ハズレ引いてんじゃねーか。

 

 そしてグリゴリとやらは木っ端堕天使なんぞ見捨てても当然かと思っていたのだが、意外と温情が強いらしい。

 それとも『生き延びられたのだから死ぬまでは働け』と言うブラック企業張りの終身雇用通達の意味合いなのだろうか、公認スパイ兼下っ端としてミッテルトの身柄は俺が所持することとなった。

 何某かの情報を探るためか、若しくは俺との繋がりを保持するためか、彼女への期待はそのまま堕天使の未来より重いが、任命地の関係上、彼女自身の価値は鴻毛より軽い。悲しい。

 

 そんな彼女は才覚を持った武闘家(脳筋)か、技術(パソコン)を持った(ヤカラ)かと分ければ後者だ。

 戦力としてもお察しなので、折角だからと払い下げ品をそのまま使わせて、駒王町を管理するというグレモリー眷属がひとまとめになっているオカルト研究部内を測定させておいた。

 立場という盾で命は守れても、主張という矛が通るかは別問題。

 『元同族が居る』という情報を突けば? と判りやすい弱点があったので、堂々と突かせてもらった。

 

 まあ、それはそれとして、悪魔側にも旨味をぶら下げることも忘れちゃいないが。

 

 

「――それではご清聴願います。『ふたりはプリ●ュア!』」

 

 

 デデッデデ、デデッデデ! と早々に歌い出し、漫画の神様が手掛けた二重人格系アニメのOPかと錯覚してしまいがちな前奏に合わせて声を重ねる。手塚先生が知ったらどんな顔をするのだろうか。意外と好評に受け入れられるのかもしれない。

 

 さておき、ミッテルトと俺とのデュエット。

 ポーズも決めて初代の白と黒を披露する。

 アーシアも参入したがっているが、曲を知らなかったそうなので。ジャブは此処からだ。

 

 

「……なんで女装して来たのかと思ったら、これが理由ですか……」

「へいへい塔城ちゃん目が死んでるぜ。折角のパーティだ楽しもうじゃないか」

 

 

 転入祝い、というわけでクラスでカラオケに乗り出した俺たち。

 程よく盛り上げることが出来た先発を終えて、ステージから白髪仲間のクラスメイトの隣へ舞い戻る。

 本日の主役であるアーシア並びにミッテルトは他のクラスメイトとの交流へ押し出した。主に相手は女子である。高校に上がったばかりの思春期騰がり男子どもは、気恥ずかしさが先走ってどうにも対応が難しいらしい。

 

 

「……正直、烏丸くんのキャラに合わないので困惑してます」

「駒王学園のキュアブラックと呼んで」

「絶対に呼びません。そんな頓珍漢な綽名で日頃から呼んでたら呼ぶ方が莫迦みたいじゃないですか」

 

 

 細けぇことぁ良いからお前も歌うんだよ、このはっぴぃにゅうにゃあってので良いんじゃない?

 あと俺のキャラに関しては然程も言うな。女装もするし、はっちゃけたいときだってある。奏者よ、愛でよ!

 

 選曲して無理にでも背中を押せば、盛り上がる一部クラスメイトら(主に男子。

 何故か妙にしっくりとくるんでんでにゃーんで、という歌い出しは振り付けまで相俟って、あっはっはと哂い飛ばすつもりだったのが完全に裏目である。まあ盛り上がったのならいいや。

 

 

 アーシアは何気に年上だったのだが、学力の点を顧みて1年からリスタートを切ることとなった。

 言葉に関しては烏丸先生のはちみつ授業の成果である。ねっとりと口内を蹂躙することで学ばせてあげた(意味深。

 

 彼女をこの地に留めた主な理由は、先日にも騙った通りご褒美という名目でも合っている。

 しかし、最大の理由は別にあった。

 それは、俺という神器使いの隠れ蓑という、酷く自分勝手な理由である。

 

 基本的に、人外は人間の事なんて気に懸けない。

 そもそも人間と同じように、若しくは人間以上に思考するのならば『自分が特別』な結論に至ることは当然のことだ。

 それを補強するための理屈は捏ね繰り出すが、だからこそ同等か近似値な存在を特別扱いは絶対にしない。

 どのような種族だろうと『自分たちが最優先』。

 野良の堕天使が神器使いを狩ろうと、悪魔からハグレが出て人間を襲おうと、基本的には気に懸けない。

 種として確立するためには人間が必要だろうに、それを無断で利用している時点で彼らの立ち位置は酷く危ういのだがな。緩んだ地盤の上に、砂の城を建設するくらいには危うい。多分施工主は姉歯(ry。

 

 しかし、自分たちが脅かされれば、別となる。

 人間だって、チンパンジーが人間同様のスペックを誇っていれば、おちおち寝ても居られない。ネウロでもそう言ってた。

 

 何処までの人材が『人間が必要』だというその事実を危機として認識しているのかは不明だが、『歯向かえる何か』が出現すれば、現行生存最大神秘の一角としてなりふり構わずに潰しに懸かるのだろう。

 その果てに、どれだけの被害が出るのかも見越した上でも『そうなる』恐れがあるからこそ、俺は俺の神器を出来る限り秘匿するのだ。

 ……ぶっちゃけ、やろうと思えば既存神器のどれもを凌駕する殲滅力を潜在させているからな。こんなん知られたら戦争だろーが。誰だってそうする、俺だってそうする。

 

 アーシアが狙われたことは俺は本当に意図していない。

 しかし彼女を留めるに足るために、適切過ぎる土地が此処しかないことは明白なのだ。

 『悪魔の管理地』という微妙に人間の政治的配慮が届き難い土地である理由は、まあ、過去に色々と不具合というか禄でもない事件が起こって、その忌避感が最大の理由なのだが、今はあんまり関係ない。

 此処である理由とは、管理するグレモリーが人間に対して愛玩動物に抱くような感情を備えているお蔭で、後手に回りながらだが被害が出ることを善しとしない性分であったことだ。

 更に言うと、俺が手作りのパスポートなんかで密入国を果たしても、これこの通り平穏無事に生きていられることも挙げられる。

 

 纏めると、聖堂教会の目が届き難いので籠る限り引き出されずに済み、人間が口出しを憚り難いので迷惑を掛けない程度のルール無視が穏当に罷り通り、悪魔が人間を愛しているので被害は緩やかに抑えられ、誰もが信用していない堕天使が嘴を挟んだことで三つ巴の状況が成立する。

 素晴らしい(ハラショー)

 実に素晴らしい自縄自縛っぷりだ、是非ともそのまま『平和』になっていてくれ。

 

 まあ、無断で隠れ蓑として使ってしまったことは心苦しいので、こうして年頃の少女らしい環境を提供させていただいたのが真相だが。

 堕天使が何処までアーシアを重要視できるかは、やや博打な点もあったのだが、足りない点を補うために俺から神器研究のレポートを幾つか見繕って送っておいたので、ミッテルトが監視兼パシリとして此処に居るのはそういうことなのだろう。

 お蔭で聖女と持て囃されてるのに新興宗教の教祖みたいな立場に成り欠けていたアーシアも、『普通の高校生』として学園入りだ。新学期早々に編入というやや目立つ立ち位置だが、僅差だ僅差、ボッチを脱却できればなお吉。

 

 そんな彼女らの陰に隠れて、俺は平穏な日々を享受できるという寸法よ。

 勝ったな(確信。

 

 

「あ。そういえば、来週からよろしくお願いしますね」

「……ん? 何が?」

 

 

 歌い終え戻ってきた白髪ロリ、塔城小猫に声を掛けられるも、心当たりが無いのでなんとも言えない。

 ややあざとめに小首を傾げてみれば、微かにイラついた表情筋を潜ませつつも、彼女は言葉を続けた。

 

 

「おふたりから聞いてないのですか。立場的な問題でアーシアさんとミッテルトはオカ研に所属することとなったので、関係者の烏丸くんも入部許可を貰っておきました」

「待て」

 

 

 拒否権すらない事後承諾でびっくりだよ……!?

 

 

「いえ、ミッテルトの話では、堕天使の総督に話を付けたのって烏丸さんだって云うじゃないですか。アーシアさんの云うには元々同僚だったとか。じゃあバリバリに関係者ですし、貴方だけフリーになれるわけないですよ」

「あっ、道理だね……」

 

 

 ぐうの音も出なかった。

 というか情報漏洩酷いぞ。

 これが飼い犬に手を噛まれるって事かい……。

 

 とりあえず、我が家のミッテルトは今後自宅では犬耳を備えさせることが決定した瞬間であった。

 




CVイメージ丹●桜(まだ云う

ところでミッテルトさんの中の人は劣等生のあの子だったそうです
そんなことより地の文多いね!書いてて嫌になってきたよ!


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烏丸「俺の所為じゃなくない?」

どうやらせけんはじうれんきう
よおし! つづきがかけるぞ!

そうおもっていたじきがぼくにもありました(吐血


 おっす! 俺の名前は兵藤一誠!

 駒王学園に通う高校2年の16歳! 好きなモノはおっぱいだ!

 

 おっぱいはいいぞ! 大きければ大きいほどイイ!

 小さいのもこれからの成長を妄想する趣きがあって味があるが、やはり男なら巨乳こそが至高!

 ふんわり、たっぷり、どっしり、たわわにゆっさゆっさにぷるんぷるん! ざっと見繕ってもこれだけ魅力的なオノマトペで表現できるなんて、これ以上ないほどに学術的な考察だとは思わないかね!?

 

 そんなおっぱい大好き男子の代表たるこの俺が通う駒王学園には、まさにそんな女子の魅力を体現したかのようなお姉さま方がいらっしゃる!

 特に代表的なのが、リアス・グレモリー先輩と姫島朱乃先輩だ!

 あー、あのふたりのおっぱいに挟まれてー!

 一回で良いからそういう美味しい状況を味わえないかなぁ! そうなれば死んでもイイくらいだぜ!

 

 ――日頃からそう思っていた。

 その願いが天に届いたとでもいうのだろうか――。

 

 ある日の放課後、俺は先輩たちが所属するオカルト研究部へと、突然に招待されたのだった――ッ!

 

 

「突然呼び立ててしまって申し訳なかったわね、私は3年のリアス・グレモリーよ」

「ぃっ、いえ! 放課後は暇だったんで! このくらいなんてことないっすよー!」

 

 

 ぅおおおおおお! 憧れのおっぱいが目の前にぃいいいいい!

 腕を組んで強調されてるとはいえデケぇ! 同年の女子らと比べてもずっとデカいぞ!

 しかも形もイイ! 服の上からでもわかるくらいの美巨乳! グラビアやAV女優なんて目じゃねーぜ!!

 

 

「同じく、副部長の姫島朱乃ですわ。本日は私たちがお相手いたしますわね?」

「はっ、はいっ! よろしくおねぎゃいしまっしゅ!」

「うふふ、そんなに固くならなくても構いませんわよ」

 

 

 おっひょおおおおおお! 朱乃先輩の方がよりデッケぇええええ!

 お茶を置くために屈んだ拍子に『ゆさっ』って感じの超重量級を至近距離でお目に懸かれてしまいましたッ! 間近で遭遇すると迫力が違うッッ!!

 是非とも! 是非ともおふたりのブツを(ナマ)で拝見したいっす!!!

 

 

「――さて、兵藤くん。いえ、イッセーと呼ばせてもらってもイイかしら?」

「っはい! どうぞどうぞ! お好きに呼んでくださいッ!」

 

 

 脳みそが蕩けそうな、甘い声がテーブルを挟んだリアス先輩から届く。

 これだけ距離が開いてるのに、声だけで勃起してしまいそうになる魅力を覚えざるを得ないッ!

 

 

「これは、そうね、ちょっとした質問なのだけど、イッセー、貴方はこの部をどう思うかしら?」

「へ、へ?」

「いきなり本題に入るのも味気ないでしょう? ちょっとした雑談よ」

「ざ、雑談、ですか?」

「正直に言ってくれても構わないのよ? ただ、年頃の男の子の感性を知っておきたいの。私は、インテリアとしても悪くないと思ってるのだけど」

 

 

 沿う言って、頬に手を当てて(シナ)を作り、部室を、壁を、眺めるように目を逸らす。

 ほぼ同年とは思えない色気をリアス先輩は自然と発し、俺の視線は部室内ではなく、何気なく組まれた脚の先へと注がれてしまう。

 ……。陰で上手く隠れているが、まさか赤、か……?

 

 こ、これはなんとしてでもお近づきになりたくなる!!

 今まで会ってきた女子の中でも、群を抜いた魅力が此処にはあるッッ!!

 そのためには、先ずはこの部に通わせて貰う許可を捥ぎ取ってやるぜ!

 

 

「そ、そうっすね! 紅くて細いってのも趣きがあってイイんじゃないっすか!?」

「そう? あの辺り、ちょっと手が込んでるのよね。滑らかな流線型のフォルムが、素人には出せない(あで)やかさを演出させるつもりで描いてみたのよ」

「あ、艶やかさ……! 悪く、ないっす、嫌いじゃ、ないっす……!」

 

 

 ごくり、と生唾を呑み込む。

 リアス先輩の目線は壁の方を向いているが、俺の視線は先ほどの場所から駆け上って先輩のお乳へ。

 上下を組み合わせる、という妄想を働かせた結果、俺の視界には赤い(レース)の下着姿で座っているリアス先輩を目の当たりにしていた。

 

 ……スッゲェな俺の妄想力……ッ!

 この調子で朱乃先輩の方も妄想捗らせるか……!?

 

 

「気に入ってくれたのなら問題は無いかしら。ねぇイッセー? 提案があるのだけど、」

「っ、は、はいっ! なんでごじゃいましょう!?」

 

 

 俺の方へ向き直った視線に、思わず居住まいを整える。

 悪いことをした気には成って無いが、微笑む先輩に背筋をピンと張り直させてしまう魅力を感じたのだ。

 

 

「貴方、オカルト研究部へ入部する気は無いかしら?」

 

「ありまァす!!!」

 

 

 思わず、脊髄反射で1も2も無く頷いた。

 

 

 

  ■

 

 

 

「――というわけで、新入部員の兵藤一誠だ! 気軽に【イッセー】って呼んでくれ!」

「かしこまっ☆ ヨロシク先輩っ☆」

「なんで第一声が男子なんだよッ!」

 

 

 不満を申すな。

 

 リアスぶっちょと姫島せんぱいのダブルおっぱいコンビでハニトラった結果、流れるような勧誘で神器使いとして堕天使にマークされていた先輩を確保したらしい。

 勧誘の理由は正直に、兵藤先輩の中に眠る神器は狙われている! な、なぁんだってぇ~!? みたいな風に。

 まあ、俺が情報を流したのですけど。

 

 流したのはあくまでも悪魔のみ、それも今回アーシアとミッテルトを駒王に通わせる対価としてグレモリー陣営限定で、だが。

 前回にさらっと流した『悪魔側への旨味』がこれに当たる。

 

 どの程度の神器使いなのかは不明だが、神器を抜き取る技術を持つ堕天使がコロコロしちゃうレベルだとすると多分危険度の方が高い。

 そう判断したのは、手元に先輩の神器を徴収したとしても、リスクが発生するであろうから殺して無かったことにしようそうしよう、とそう目論んだのではと見越した推論だ。

 現場の勝手な判断にも思えなくも無いが。

 仮にその推論が間違っている場合は、ミッテルト以下の雑魚ということにしかならないけれども。

 

 

「で、どうだったんですか?」

「どう……うぅん、難しいわね。覚醒を促してみようかと思ったのだけど、人間のままじゃ身体が耐えられないかもしれなくって……」

「ああ、種類によっちゃあパァンですものね」

 

 

 かといって悪魔へ転生しようかというには、ややリアス先輩の覚悟が決まらないらしい。

 何を抱えているかが測れなくて、眷属として抱えるには視線が下卑すぎたのだとか。

 日頃から男子の劣情を煽るような眼を向けられているのだから気にしなくてもいいのでは、と言ってみたところ、

 

 

「祐斗や貴方の視線を一度覚え(認識し)てしまうとね……、ちょっとハードルが上がっちゃったわ。……というか、その言い方だとまるで私と朱乃が痴女みたいだからやめてくれない?」

「私を巻き込まれるのも不本意なのですけど?」

 

 

 とのこと。

 近似値だ、近似値。

 

 なお、そういった赤裸々な告白までは兵藤先輩には届かせていないらしい。

 まだ身内ではないので、其処まで云う気は無いそうだ。

 

 つーか兵藤先輩、視線気づかれてますやん、胸にばかり目が逝ってるって。

 まあ、同席しているミッテルトや塔城にそういった視線が向いてないので、まだ其処までの危機感は抱く気は無いですが。

 変態ではあっても紳士ではないご様子。こう言葉にすると益々募る犯罪臭。ダメじゃん。

 

 

「とりま、よろしくなアーシアちゃん!」

「あ、はい」

 

 

 控えめな笑顔で、ひとまず握手に応じるアーシアもややそっけない。

 胸を値踏みされている、と上申されたのだが、俺にどうしろと。

 

 

「よろしくねイッセーくん」

「ああはい、よろしくよろしく~」

 

 

 逆に、木場先輩にはおざなりな態度で相手取る。

 個人的にはわかりやすすぎて、嫌いには成れないのだがなぁ。

 

 

「さて、しかしどうしますかね。悪魔合体、もとい転生自体を伝えてないとなると、当初予定していた旨味としては些か不足ですよね」

「ええ。だから、貴方が眷属入りする余地はあるはずよ?」

 

 

 それは拒否したはずですが。

 黒幕のお出ましのごとくアーシア&ミッテルトに連れ立って部室に来た際に提唱されたのだが、俺にメリットが無いので普通にお断りした経緯である。その際に部室の様相にドン引きしてたことも付け加えとく。

 ああ、まだ諦めてないってことも兵藤パイセンの眷属入りを提案すらしてない理由に繋がるのかもしれん。

 

 

「おぅおぅ烏丸ぁ! なぁにリアス部長とイイ雰囲気作ってんだァ!? そういうのは年長である俺の役目だ! 代われッ!」

「もうこれ生死賭けてパァンで確認取って良くないですか?」

「いきなり不穏な擬音で何を提案してるんだお前!?」

 

 

 思わずイラっとしたので指さし確認。

 お前の未来の話だよ(やっつけ。

 

 




イッセーのキャラって何度書いても馴染まないなぁ

嫌いにはなれない、とは言ってますけど危害を加えないとは言いません


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イッセー「はらわたを、ぶちまけさせるなッッ!」

タイトルには主に前話の被害者または敗北者を回していました
今回から縛りが甘くなりそうです

え? 新元号? 何の話っすか?
自分は昨日も今日も仕事してましたよ?
元々平日やん(白目


「「ッ!?」」

 

 

 あ、なんか驚愕の表情で2年男子らが入ってきた。

 部室前で『僕が此処に来るまで気づけないなんて……』みたいなことを呟いてたけど、……なんで入って来て改めて揃って驚いてんの?

 

 というか御二方、校内で此処のところ妖しい噂が流れてるのですが。

 木×兵とか、兵×木とか。

 最初の呼び出しだって、教室へ木場先輩が迎えに行った折に女子らが組み合わせに黄色い声を(ry、っていう話だし。

 ……一緒に行動していて大丈夫なん?

 

 

「ぶ、部長ッ! そちらの超美人な銀髪メイドさんはどちら様ですかッ!?」

 

 

 かと思えば鼻息の荒い兵藤パイセンが一瞬でぶっちょに詰め寄る。

 

 ああ、驚きっていうよりかは、この人の場合『発情』か。

 まあ佇むだけで色気があるもんな、この十六夜咲夜もどきさん。

 

 問題は、ぶっちょの不機嫌さに気づけてない点だけど。

 溜め息を吐く。その理由はメイドにあるのか部員にあるのか。

 まあ、仮にもコミュニティの責任者って立場なんだから、対外的な立ち振る舞いに関しての問題点には嘆息も出るか。

 

 

「……彼女は、」

「いえお嬢様、紹介は不要です」

 

 

 お嬢様、と主君かそれに連なる立場と立てておきながら、遮るように顔を潰す(比喩。

 忠君なれば主の行動を諫めるのは間違いではないけど、今の理由については多分別にあるのだろう。

 

 ――部室の中央に、魔法陣が顕れ始めていた。

 

 

「――ふぅ、人間界の空気は随分と淀んでいrがぶばばばばばばば!!!!?」

 

 

 諸共に炎なんか噴かすから思わず消火器を吹っ掛けてしまった。

 反省します。

 

 で、この鼻毛が伸びそうなCVのホストは誰ぞ。

 

 

 

  ■

 

 

 

 『私は室内で消火器を噴出させました。メンゴ☆』という札を首から引っ提げて部室隅へ。

 コイツ反省してねぇぞ!? と兵藤のパイセンが騒いだけども反省してますって。マジでマジで。

 

 さておいて、俺が無事フェードアウトしている隙に経緯の方を回顧しよう。

 

 事の発端は昨夜の情事。

 兵藤のパイセンが入部してから数日経っており、特に事件らしい事件も起こらずにのんびりと、何故かぶっちょから手渡されたグレモリー家のデータを眺めてたプライベートタイムに遡る。

 

 第4の壁を壊すようなことを言ってしまうようだが、入部の云々からこっち数日はホントに語ることも無かったので割愛だ。ドクシャの目を引くことは無い。

 語らなくてよいことは語るべきではない、という話だな。ピラミッドは沈黙を貴ぶ。

 

 話を戻すが、まあそんなプライベートタイムに何故かぶっちょが『私を抱け』と、扇情的な赤いレースの下着姿でテレポートして来たことが発端といえば発端に当たる。

 

 格好と用件はさておいて、俺、アナタに自分ちの住所教えましたっけ?

 

 テレポートも、まあ良い。

 世の中には巨大ロボを呼び出して戦うセイギの人だって居るのだし、なんだかんだでそういう技術があることは知ってるし、情緒さえ考慮しなけりゃ遣り方を『造ってみる』気はあったしな。

 

 居住に関しては、同居人もいないし、工房も造ってないから問題は無い。

 

 アレか。

 入部の際に書いた入部届。

 アレに何かの術式でも組まれていて、居場所を特定することができたか?

 

 若しくは普通に調査されたか。

 この町では一般人やってるから、違和感持たれないように佇まいを隠すことなく生活してるからな。

 探そうと思えば探せる点が甘かったか。

 

 さて抱いたかどうか。

 個人的には普通に喰ってしまっても良かったのだが。

 返事する暇も無く圧し掛かられて、済し崩しに事に及びそうになる寸前のタイミングで現れたのが、あの十六夜咲夜もどきさんである。

 

 PAD長に見られながら、は流石に嫌だったらしく、一方的に謝罪されると嵐のように去って行かれた。

 生殺しである。

 

 ……まあ、猿でも無いし、ヤれなかったことにこだわる気は無いのだが、事情を聴くうちに普通に巻き込む気満々だったのだなぁ、と莫迦でもわかる。

 

 どうにもこのぶっちょ、結婚というお家騒動から逃れるために、『こっち』に恋人がいるとキセイジジツを偽造(つく)って破談に持ち込む気だったらしい。

 グレモリー家のレポートはその下地か伏線か、取り込む腹積もりは地味に伺えるのだが、その『失敗』をこの場には赤裸々にしないことから顧みるに、策士としてはギリギリだろうかなぁ、とあんまり上手には見受けられない。

 つーか、普通に悪手でしょう。

 

 これは黙って蚊帳の外にいるべきかなぁ、と判断していると、

 

 

「何せ悪魔は子供が出来難いからな、種族の繁栄のためにも、良い血筋は良い血筋同士で番わせて遺すべきだ。リアス、キミだってそう思うだろう?」

 

 

 と、フェニックス家の3男、ライザーさんがそう口走ったので思わず、

 

 

「え? それ可笑しくないっすか?」

 

 

 

  ■

 

 

 

「……どういうつもりだ、そこの人間?」

 

 

 昨夜もいた人間の少年、やや日本人には見受け難い、白髪で褐色肌の少年にライザー・フェニックスが噛みつきます。

 

 此処で口を挟むとは。

 昨夜は事に及ぶ前に留めましたが、まさか本当にリアスと良い仲だとでも云うのでしょうか。

 若しくはリアスに恋慕を抱いている?

 ライザーもそう思ったからこそ、ああして威圧のような視線で彼を伺っているのでしょうが、少年は佇まいを変えないままに事も無げに言葉を返します。

 

 

「いや、グレモリーの権能は知りませんけど、ぶっちょの顕現した能力って確か滅びのなんとかって攻勢魔力ですよね。フェニックスは再生の火でしょう? 組み合わせ最悪じゃないっすか?」

 

 

 ――予想外の理屈が飛び出してきました!?

 

 

「……え?」

「遺伝に関しては絶対的じゃないですけど、指標としてなら確率的には、ねえ。まかり間違って両家の特徴を1:1で引き継いじゃったりすれば両極端な能力発現で打ち消し合う、って推測できるのが普通な気がするんすけど……」

 

 

 初手で消火器を吹きかけられたことで警戒を顕わにしていたライザーでしたが、少年の見立てで絶句しかできない様子。

 斯くいう私も、予想もつかなかったことを当たり前のように語られて、背中に滝のような冷や汗が。

 

 だって、リアスの拒否は予測できましたし、それを呑ませるための案をサーゼクスから預かっていましたし!

 少年の予測が正しいと思えてしまいますと、そんな提案をする悪魔社会が体の良い道化ですよ!?

 というか間違ってないように思えます! 私の息子だってサーゼクスの能力を引き継いでますし!

 片親だけを優遇というのなら構いませんが、『かけ合わせ』を考えての婚約です。断言出来ます。道化ですね!

 

 

「……」

「……」

「……」

 

 

 誰も、何も言えません。

 話を断られることを前提としてしかし仕方のないことなのだと乗り気ではあったライザーも、話を断る気であったけれど自分に理由があると言外に断言されたリアスも、そして事態を片づけるために魔王の提案として嘴を挟む気であった私も。

 どうすればいいんだよこれ、という空気です。

 

 あまりにも予想外の、しかし正論にしか聴こえない予測を建てられて、覆すには理屈が足りないことを自覚してるのでしょう。

 乗り気だったライザーが少年の言葉を突っぱねるべきなのでしょうが、仮に婚約が上手くいったとしても、生まれてくる子供の才能という点を突き付けられるとどうしたって尻込みします。

 

 最初に無礼討ちを噛ませられたはずなのに、いつの間にか少年の独壇場。

 紐で下げられたクリップボードもそのままなのに、恐るべき視点です。

 

 ――ああ。此処を突けば、なんとか、できますか。

 

 

「――素晴らしい視点ですね。そのうえで問いますが、貴方は何者ですか?」

 

「!?」

「ちょっ、グレイフィア!?」

 

 

 ええ、サーゼクスの、魔王の妻であり、給仕者(メイド)である私が問います。

 絶賛したことに子供たちは驚いたようですが、少なくとも間違っているようには見えない上で、間違いを押し通す社会ではない、という自己表明のための言葉でもあります。

 そのうえで、膠着した状況を覆すためには動かなければならない人物が率先しなければいけません。

 

 事態は持ち帰り案件、となるのでしょうが。

 折れる時には折れることも、大人には必要なことですからね。

 

 

「ふむ」

 

 

 ――うゎ、これ見透かされてますね。

 本当にどういう伝手でこんなのを引き入れられたのですかお嬢様。

 グレイフィア・ルキフグス、踏み込むべきタイミング見誤ったんじゃないかなぁーって冷や汗が止まりません。

 

 

「別に名乗るほどのモンでもないっすけどね、問われたのならば返しましょう」

 

 

 立ち上がり、哂うような眼で、私を睥睨する少年。

 なんかもう、これだけで心が折れ欠けているのですが。

 ……今、帰ってもイイですか? ダメですか。そうですか。

 

 

「烏丸イソラ。現代錬金術師を嗜んでおります。どうぞ、これからもヨロシク?」

 

 

 

  ■

 

 

 

 さて。

 此処で今回のお話は終わっておいて、次回に持ち込むべきだったのかもしれないが。

 

 メタメタなことを掲げたのは、同部内の誰もが「お前そんな立ち位置だったの?」みたいな目で俺を見ていた所為でもある。

 

 名乗るとしたらコレしかねえんだよ。

 カテゴリが独特だけど、やってることも基本コレだから語るには他にない。

 自分で定礎した職種に准えて騙ることもイイかも知れんけど、それは語る気のない道化の所業だからね。

 問題は、キチンと通ずるか否か。

 

 

「現代錬金術師、だと? そうか、なるほど……。――リアス」

 

「っえ、な、何かしら?」

 

「すまないが、今回の話は無かったことにしてくれ。こちらから申し込んだことであったが、こうなってはどうしようもない」

 

「「「――は!?」」」

 

 

 おお、通じた。

 驚きの声を上げたのはぶっちょと姫島せんぱい、あと何故か兵藤のパイセンだった。

 

 同じように部内の方々も驚いているようであるが、ぶっちょの婚約自体にはあまり身内の問題として捉えていなかったのかも知れん。まあ少なくともアーシアとミッテルトはそうだけど。

 

 俺の肩書に関して詳しくなかったことも表沙汰になっているな。

 まあ、知らない人はホントに知らないからな。仕方ない。

 

 

「宜しいのですか?」

「グレイフィア殿、そちらの顔に泥を塗るようで恐縮だが、これを受け入れられなければフェニックスの将来にはマイナスでしかない。補填は用意するつもりだが、今は俺の謝罪で受け止めてほしい」

 

 

 と、キチンと頭まで下げるライザーさん。

 イケボでイケメンだぁ。やだ、惚れそう。

 

 

「ちょ、え、い、ええ!?」

 

「落ち着いてくださいお嬢様。わかりました、サーゼクスにはこちらから伝えておきます」

「感謝する」

 

「いや、話が見えないのだけど!? ライザー!? なんで貴方そんなあっさり受け入れてるの!?」

 

 

 んん? 乗り気じゃなかった婚約が破談になったのだから文句は無いと思うのだけど。

 ああ、俺がぶっちょのほうに問題がある、みたいな言い方してるから嫌なのかな。

 別に悪い意味も意図も無いのだけども、その辺は感情の話になるからなぁ。

 

 まあ、話がこのまま流れれば、ぶっちょのお相手探しに今後難航するだろうし、補足くらいは押さえておくかね。

 そんなわけで、説明の方は次回へ続く!

 

 




自分の身体を再生させるフェニックスと、威力を突き詰めれば全てを滅ぼせる魔力の塊に変化するサーゼクス
リアスはサーゼクスの下位互換のようですが、資質的には同等
上手く噛み合わせが成せればハイブリットな究極生命体が誕生しそうですが、似たようなモノの近衛刀太に至るまでにメチャクソ失敗作積み重ねたとか言ってましたし
確率的にもどんだけ無駄撃ちさせるねん、というお話

実はそうやって組み合わせることで両家の弱体化を悪魔社会上層部が狙っていたのでは
バアルの筋肉を見ても悪魔社会が能力重視なのは明白ですし
そう考えるとフェニックス・グレモリー両家の父親が無礼の極みみたいなイッセーを軽く許せる下地は無いのではと思ってます
原作でこれくらいの裏話があったのかも

…あったよね? これくらいの裏設定があったよね?
無い? ハハハまさかそんな何も考えてないなんて無いはず(ry


それはさておきイッセーパァン希望が感想に多い
でも生きてますし。殺して蘇らせて、というフェイズを敢行させるにはイッセーがヘタレ過ぎましたので悪魔化は見送りです
でもならないとは言いません

続きます


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サーゼクス「え? なんで私が副題に?」

俺のターン! ドロー!

視点変更の所為で何気に落ち着けていないグレイフィアさんの科白へ回収(ツッコミ)不足であったことを此処にお詫びしつつ犠牲者として槍玉に挙げられた魔王様を副題に召喚!

真面目な話を公開したい欲求に抗えなかったおーりのライフは半分削れる!



 錬金術、って昔の学問……いえ、眉唾物の詐欺ではありませんでしたか?

 

 悪魔社会に生きているので、こういう人間社会にとってはマニアックな知識については微妙に持ってます。塔城小猫です。

 部内の誰もが抱いたであろう感想を筆頭に提げて、本日は私の目線で物語を俯瞰します。

 

 リアス部長の婚約については、目の前でライザーとグレイフィア様が交わした通りなら見事破談となったことになります。

 なりますが、その理由が納得できない、とリアス部長が抗議を発したことで、未だにおふたりはお帰り頂けないままです。

 

 そもそもの将来性を見越してのご意見、そしてそれを納得されたうえでの破談という音速レベルの段階ロジックです。

 モダンアルケミーなどという眉唾を前提とされれば、『自分に理由がある』という聴こえ方では納得できないことは当然の憤慨でしょうね。

 

 まあ『何故に部長に婚約を通すのか』という理屈建てであって、烏丸くんは部長のことを悪く言ってるわけでは無いことくらいはわかりますけど。

 

 ……わかってますよね? それくらいは?

 

 

「お嬢様、私たちが今回の破談を納得した、その前提を『錬金術というモノに信用を置いている』と見ているのなら不勉強ですよ? そのままご不満を抱くのであれば、婚約とはまた別の理由で冥界へ連れ戻さなければなりません」

 

「えぇ……?」

 

 

 違うのでしょうか。

 

 グレイフィア様は早速私たちの前提を覆してきましたが、同じように考えていたのでしょうリアス部長は否定も肯定も難しいように、困惑の声を上げるだけです。

 

 

「世間一般的に言われる広義での『錬金術』とは、当時の人間の神学(信仰)を前提とした独り善がりが極まった理屈立てだからな。人間が世界を解明するために、見立ても足りないままに『こうであってほしい』という推論で積まれた代物だ。歴史上、現代科学の基盤ではあるが、『そのまま』であれば説得力も足りない学術だからな」

 

 

 違うのですか。

 

 ライザーの補足説明に、おずおずと、兵藤先輩が手を挙げました。

 

 

「あ、あのぅ、俺、よくわからないんですけど、錬金術ってアレっすよね? パァンて柏手を打って金属とかを作り替える……」

 

「漫画の読みすぎっすよパイセン。それはもう能力ですから、学術じゃねーです」

 

 

 科白の後半は烏丸くんの方をwktkな顔つきでチラ見しつつ、でしたが。

 しかし早々に烏丸くんに否定されましたが。

 ご本人は「まあできますけど」と呟いてますけど。

 

 できるんじゃないですか。

 

 

「実際にそのように惜しげも無く晒している者は見たことはありませんが、『そういう幻想(ファンタジィ)』とカテゴリ訣するための『現代版』だそうです」

 

「少年、見栄えはそっちの方が判りやすく見えるだろうが、現代錬金術師のやることはもっと手広いぞ。というか、『それ』を知ってしまうと『そんなの(漫画のような魔法)』は小手先にしか見えん」

 

 

 ああ、そういえば先に納得したのはライザーでした。

 彼は烏丸くんの『やれること』を知った上で納得したのでしょうし、きちんと説明してもらえるのでしょうか。

 

 

「現代錬金術師とはな、まあ『やること』は世間に知られている錬金術師とあまり変わらん。ただ、扱う『素材』と『視点』が違う」

 

 

 思い出すように、噛み締めるように。

 

 ライザーは恐らく、私たちがキチンと納得できるように、語るべき言葉を選びつつ口を開いています。

 

 烏丸くんが自分で説明するのが一番なのでしょうが、自分のことを自分で語ることは要するに詐欺の手口ですからね。それを自覚した上で余り語らないのでしょう。

 めんどくさがっているだけかもしれませんが。

 

 

「彼らが扱う『素材』は、世に謂われる『錬金術師』が思われるようなマテリアル(物質的)な側面だけではない。全体だ」

 

「「「「「「「全体……?」」」」」」」

 

 

 部内のほぼ全員が、異口同音で呟き返しました。

 

 全体、って……全部、ですか?

 ……え? 何処まで……?

 

 

 

  ■

 

 

 

 ぅわ。

 と、知るべきことを知ってしまえば、ドン引きするしかないッスよ。

 

 あの人のどの辺までが脅威なのかが、酷く良く判る一言を齎されちゃえば、もう、ねぇ?

 

 

「詳しいですね、ライザー殿」

 

 

 銀髪巨乳メイドが判りやすいくらいに焼き鳥を称賛してるッス。

 クールぶってるけど、さっきあの人に気圧されてたの見逃してないッスからね。

 まあ、わかるのはアタシみたいな小物ぐらいでしょうけどー。

 

 大体、本来なら話を持っていくべきは魔王じゃなくってグレモリー家の方でしょうが。

 誰も気づいてないっぽいし、アタシが口を挟むことでもないから言わねーけど。

 

 

「ああ、これで間違ってませんでしたか。まあ、悪魔社会全体が彼らと付き合いのあるわけでは無いですからね、知らないと言ってしまえばそれまでなのでしょうが、我が家は敵対も不理解も御免ですから。間違えているわけにはいかないのですよ」

 

「ああ成程」

 

 

「ちょ、ちょっと待って、全体って、え?」

 

 

 完全に超越者同士での会話に成り欠けていたッスけど、それを見越せない赤髪お嬢が口を挟んだッス。

 

 いや、これでわかれよ。

 アタシはもうこれ以上、詳しいところまで踏み込みたくないッスよ?

 

 

「……あー、リアス、『ビッグデータ運用』というモノはご存知か?」

 

「え? えーと、」

 

「政治に経済に軍事に産業、それらの物事を俯瞰するために、身近なところだけではなく世界中、ありとあらゆる分野に置いての情報を総浚いすることを指します。解析には超高性能のスーパーコンピューター数百機を同時起動させるだけの労力とエネルギーが必要とされ、人間個人での分析力では太刀打ちできませんね。悪魔だとしても、無理です」

 

「……………………は!?」

 

 

 全体ってことぁ全体ッスよ。

 アザゼル様が神器専門にヤッてる研究を、更に頭越しに別の分野を見越した上での研究を同時に組み立てられる、っていうことッスよね。

 ……改めて、あの人ホントに人間っすか?

 

 

「いや、其処まで膨大な情報量を一遍に扱いやしませんってメンドクサイ。視点変えて組み替えて、使えるところへ回す。それをするから錬金術師なんですよ、其処まで難しくは無いっすよ」

 

 

 ……カラカラ哂いながら言いますけど、それが『出来ない』から『人間』なんッスよ!

 

 ある程度の解析や研究はそれぞれ別の分野で、例えば理系とか文系とか、そういうカテゴライズを自ら『選択』するものッス。

 だからこそ『研究』は可能になるし、そういう過程を得て『専門分野』っていう棲み分けが成立するッス。

 『横の繋がり』が出来れば、そりゃあ出来ることは増えるッスよ?

 でもそれを繋げるだけの『共立理解』が人間にはどうしたって足りねぇんす。

 

 要するに、相手をキチンと認めて、違う生き方であろうと尊重し合う。

 うちらみたいな人外だって出来てねぇことッス!

 あらゆる面で下位互換な人間に、出来るわけがねぇんスよ!

 

 

 

  ■

 

 

 

「それに名乗ったからといって俺が何でも知っていて何でもできる、と思われたのならば勘違いですな。知ってることは知ってるけれど、出来ないことはきちんとある。現代錬金術師が何故『現代』と銘打っているのかと言えば、『情報の更新』に抵抗が無いことこそが特徴となりますかね。その辺が、史上の詐欺師らと一線を画す立ち位置かと」

 

 

 ……ひょっとしてソラさん、自分が神器を遣えるっていうことを明かしたくないのでしょうか?

 

 私たちが彼のことをグレモリーに紹介したのは、切っ掛けはミッテルトさんの暴露です。

 そのうえでソラさんの立ち位置を私の同僚と紹介したのは、彼を悪魔陣営に引き取らせないためでした。

 

 ……今回のお話はソラさんが拘わるモノでは微塵も無いのです。

 あそこまで立場を明確に説明する必要もありません。

 そのことはソラさん自身も理解しているはずです。

 

 そのうえでああして自分の発言に説得力を抱かせる、その理由はたぶん、神器使いであることを隠した上で自分と敵対するリスクを教えている、ということになるのかも知れませんね。

 問題は、聖堂教会の方にはソラさんの情報は残っているであろうことですが……。

 

 あ。

 

 

「それにしても、若いひとらはまあ仕方ないとして、ライザーさんは何故其処まで理解がおありで? 誰か知り合いでも居ますか、現代錬金術師に」

 

「知り合い、というか、あー……、実はな、」

 

「はい」

 

「ウチから出している『フェニックスの涙』なんだが、それをあそこまで『完成』させたのがそもそも件の現代錬金術師なんだ」

 

「――そうだったのですか?」

 

 

 私が気づいたことはさておいて。

 こっそりと明かした悪魔社会の秘密っぽい情報について、驚愕の様子で問うグレイフィアさん(?)が其処にいました。

 

 ライザーさんとソラさんの会話だったのですが、まあ堂々と言葉を交わしておいて『実は秘密だったんだ』なんてことは言えませんよね。

 

 

「フェニックス家の秘中の秘、なので、グレイフィア様も口外しないように願います。そもそも回復薬として売り出すのですから、自分たちの血統だけで他人にも効果が及ぶようにするにはレシピやら何やらが必要ですから」

 

「ああ。元より関わっているなら、同職の言い分を無視するわけにもいきませんものね」

 

 

 納得したようにソラさんが頷きました。

 早くにライザーさんが納得した理由までは、流石に予想できてなかったみたいです。

 

 

「参考までに訊きますけど、そのひとの名前とか言えます? ラスキン・アーノルド? それともクリストフ?」

 

「俺は会ったことも見たことも無いが、確かカリオストロとか……」

 

「……生きてたのか、あの爺さん」

 

 

 ――知り合いでしたか。

 まあ、同じ職種となれば横の繋がりもありそうですけど。

 

 

「知ってるのか」

 

「むかーし、メイランドっていう師匠に一緒に師事したことがあるんすよ。まあ、俺は他の人にも教えを受けてたので、それだけが同門ってわけでもないんすけど」

 

「そうか。……何か用事でもあったのか? 名を問うたと言うなら、そういうことじゃないか?」

 

 

 ライザーさんが妙に親身です。

 これは、たぶんソラさんと友誼を抱えておこう、という腹積もりでしょうか。

 

 先ほど気づいたことですが、ソラさんだって聖堂教会と悪魔では足並みを揃えようにも隔たりは失くせないということを理解しているはずです。

 そのうえで自分の情報を片方だけに明かすことは、もう片方への敵対行為にシフトする可能性を秘めています。

 勿論、敵同士では情報を擦り合わせることは難しく、どちらが優位に立とうかというマウントの張り合いが対立を促進させる要因となるのですが。

 

 曲がりなりにも、この町は悪魔の領地です。

 其処で身許を明かしたうえで生活するということは、敵地に紛れていることと変わりません。

 ソラさんには自分の裏を任せられる安全圏が無い状況です。

 だからこそ、ソラさんは自分を悪魔へ売り込む必要性があったのだと、私はそう気づきました。

 

 しかし、

 

 

「いやいや、同窓くらいの縁ですから。お気になさらず、そちらはそちらでご用事を終えてくださいな」

 

「そうか。いや、だが何かあったら言ってくれ。折角知り合えたのだからな、キミの頼みならフェニックスとして働くことも吝かではない」

 

 

 しかし完全に身を預けるわけにはいかないのでしょう。

 

 ソラさんは自由なひとです。

 一定の社会に紛れることはなく、何処へなりとも好きに動く。

 その立ち位置を、何よりも優先するのが彼です。

 

 だからこそ、まるで蝙蝠のように付かず離れずを繰り返す。

 ……そんなひとですから、繋ぎ留めてしまいたいと思うことはイケナイことなのでしょうね。

 でも私は――。

 

 

 

  ■

 

 

 

 数日後、ライザー・フェニックスとその眷属と、レーティングゲームとやらで対戦する羽目になった俺が居た。

 

 ――どういう、ことだ……?

 




以上、小猫・ミッテルト・アーシアのロリ3人衆からの目線でお送りいたしました

…アーシアはロリじゃない?
いいんだよ、入ったばかりはロリだったろうが!こまけぇこたぁ(ry

あと地味にクロスオーバーしていたタグを漸く表舞台へ引き摺り出せそうです
え? あの人らは違うだろって?
まあそうですけど、詳しくはまた今度書きますからツッコミネタが出たぞヒャッハー!などと感想で叩かないでいただけるとスゴク・アリガタイ


え、最後?
ほら、ハイスクールD×Dの本分は逃しちゃだめだよォ(ニチャァ


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烏丸「またかよ」

皆様連休は如何お過ごしでしたか?

おーりはもうだめです


『ライザー・フェニックスの僧侶(ビショップ)、リタイア』

 

 

 開始早々、なんもしてないうちからひとり脱落した。

 

 多分、これはアレだな。

 『あなたとは本格的に争う気は在りません』っていう意志表示と、まかり間違っても傷つけたくない『誰か』を今回の事態に介入させるわけにもいかないから退場させた、っていう一挙両得の策。

 ついでに言うと此処の『傷つけたくない』は、物理的と言うよりかは経歴の云々にあたる。

 例えば『家そのもの』が責任を負う形になったとしても、件の『誰か』は実行犯ではないので抜け出せたり、何某かの形で賠償を行動で示すことに繋がせられる。ということだ。

 

 そう謂うなら初めからこの事態になる前に回避しろよ、と言いたいけれど。

 まあフェニックスも逃れられなかったのだろう。

 

 試合前に、グレイシアさんだったか? あの銀髪巨乳の十六夜咲夜みたいなメイドも申し訳なさそうにしていたし。

 本人的には乗り気じゃないが、社会っていうのは板挟みの連続だからなぁ。

 偉い人になったってその辺は変わらない。

 

 

「しかし、どうしたものかねぇ」

 

 

 個人的には負けてもイイのだ。

 だが、そうすると恐らく今現在『俺に』充てられている付加価値は極端に低迷する。

 そうなると、俺の言葉で婚約破棄を納得したフェニックスの顔を潰すことになるし、最悪事態を引っ掻き回したとして『信用』は失墜する。

 リアスぶっちょの婚約云々がどうなるのかは、まあどうでもいいとして。

 

 とりあえず、負けるわけにはいかない。

 これだけは確定事項である。

 

 

「でもなぁ。積極的にやるのもなぁ」

 

 

 やらかせることをやらかして危険人物認定もNo thank you。

 そもそも、個人的に誰が憎いわけでも無いので全力を出すモチベーションが無い。

 まあ、こうして『試合』という体を為して観戦者と審判が意識外に居る時点で、手加減を口にすることは憚られるので言葉にしないが。

 

 というかこういう異空間どうやってるんだ。

 なんだかんだで悪魔の世界、冥界と謂うんだったか、其処に来るのも初めてなのでじっくりと研究したい。

 昔、生まれた処の文献か研究書かで地球内空洞説ってのを読んだ気がするが、それに準じているのかね?

 いや、異界発生のプロセスは確か、歴史上にも何点かあったか。

 ソフィアさんなんかも東京に棲み処造ってるって謂う話だし? あのひとが拘わって空間占拠されてるのを許すわけはない。

 ってことは、此処は日本に通じているようであって通じていない、隙間の――、

 

 

「ああ、今は別だな。さて――」

 

 

 ――気持ちを切り替えよう。

 

 ともあれ、別の空間なれば、外部との接触は不可とする。

 そうなると俺の専売特許である『他人の褌で相撲を取る』が出来ない。

 例えば、他所から使い勝手の良い武器やら兵器やら益荒男やらを呼び出したり連れてきたり? まあ俺だけの専売特許ってわけでも無いが。

 

 ……一応言わせてもらうけど。

 某Go westな原典の岩猿だって、個人の武勇よりはお釈迦様とかに頼ったことの方がずっと多い。

 戦隊ヒーローだって怪人相手に集団でボコることもあるのだし。

 他対1も、誰かに頼ることも『悪』ではない。

 

 ……そう考えると『悪』魔が積極的に自分らが正当だとマウント執ってるこの状況の方が異様だな。

 良しわかった、手加減は辞めよう。

 

 

「――コレで往くか」

 

 

 色々と決めた俺は、懐からあるサイコロ状の『隕鉄』を取り出すのであった。

 

 

 

  ■

 

 

 

 ……敵対するべきではない、と告げたのに……。

 

 いや、わかっています。

 サーゼクスの一存で『無かったことにする』には、影響力を慮ればそもそも不可能であったことです。

 グレモリー家とフェニックス家もまた、共に上層部から良い目で見られていない中堅貴族ですし、どちらからとも破棄を言い出せなかったのでしょう。

 婚約の話を振られて喜び喰いついたのはそもそもライザーでしたが、話題を振ってきたのは二家に関わらない別の貴族の様でしたし……。

 ……烏丸さんの予測の通りなら、両家の血を敢えて薄めるための策としか思えませんね。

 

 そもそも、今回のゲーム自体が覆せない予定であったことが問題なのです。

 現在リアスの扱える眷属は、朱乃・小猫・祐斗。

 封印指定のギャスパーは論外ですし、先日赴いた部室には部員は居ましたが、人間や堕天使をホイホイとゲームに誘うわけにもいきません。

 

 

 ――誘うわけにいかないのに、何故烏丸さんを堂々と引き摺り込みましたか……!

 

 

 確かに、今回予測を立てた、いえ、上層部の企みを看破したのは彼ですが、こうまであからさまに不利な状況を用意する悪辣さはどうなんですか……!?

 

 それを断れなかったサーゼクスにも非はあります! 前言撤回です!

 ゲームを用意するにあたっての告知や会場の設営、出場選手の選抜に観戦席の設置。

 それらを考慮すると1週間や10日では用意し切れないのですから、予め整えてからの選手への調整と告宣が必須であるというのに……!

 

 妹の結婚を認めたくないからと、妹本人にも許可を取らずにゲームの告知を先走るとはどういう了見ですか!?

 

 この辺りはあの日帰ってから初めて知りましたが、何故こういう姑息な真似をやる時ばかり動きが良いのか……!

 断る気満々であったライザーも、今現在頭を抱えていますよ!!!

 

 

『……どうすりゃいいんだ……!』

 

 

 口に出さないでください、マイクが拾っていますよ。

 

 

『ライザーさまぁ、妹様は帰しましたけど、どうしますかぁ?』

『相手が人間なんて舐めてますよぅ、バッラバラにしちゃいましょー!』

 

『マテ、いや待てイル、ネル。……くそぅ、リザインか、いや、此処で投了しても誰だって納得するはずが……!』

 

 

 今、一番可哀想なのは間違いなく彼です。

 本人は烏丸さんとの繋がりを保ちたいというのに、ああして無情にも敵対させられているのですから。

 

 幼い双子を宥めつつ、ライザーは尚も悩み続けます。

 試合が始まっているというのに、陣営である生徒会室から眷属を誰も出さないままに、

 

 

「――は?」

「あ?」

「なん、だと……?」

 

 

 ――烏丸さんの陣地である、オカルト研究部が球状に抉り消えました。

 

 

「………………は?」

 

「……お、おい、審判、いやグレイフィア様、アレは自爆ではないのか、いや、ですか……?」

 

 

 観戦者のひとりがそう尋ねてきます。

 私も目を疑いましたが、今回は選手の総当たり戦が本分です。

 そもそも烏丸さんは悪魔の駒を使用していないので、『敵陣地に赴いてプロモーションを果たす』などのチェス的な要素が無意味になっています。

 

 つまり、会場の破壊、及び陣地の有無については今回に限り無効。

 両チームがゲーム続行可能人数0に至るまで殴り合う、という実に遊び心の無いゲーム(遊戯)が今回のレーティングゲームです。

 ……改めて見直しても酷いですね、コレ……。

 

 

「いえ。烏丸選手は会場に居る様ですから、ゲームは続行されます」

 

「そ、そうかね。いや、見どころが無いままに終わるのでは、と心配していただけなのですがね」

 

 

 ところでどなたですか、この髭は。

 上層部悪魔のひとりなのは伺えますが、口調を統一しなさい鬱陶しい。

 サーゼクスは何処に居ますか、私に仕事を振っておいて。

 

 流石の私も怒りが有頂天に達していたので顔を出し辛いのかも知れませんが、これで観戦に赴いているリアスのところへ逃げていた、などと後で言い出したらどうしてやりましょうか。

 そんなことを思いつつ、私は改めて試合を伺い――え。

 

 

 

  ■

 

 

 

 いや、私も悪いなー、とは思っているんだよ。

 でも大事なリーアたんを守るためだ。

 心を鬼にして決断を下さなくてはならないときもある――。

 

 ――リーアたんの眷属並びに後輩諸君からは、現在進行形で白い眼を向けられているけどね!

 

 

「ホラホラ諸君、魔王が珍しいのはいいから、試合をしっかり見ておこうじゃないか。特にリーアたんはゲーム参戦前なのだし、貴重な見学になるんじゃないかな」

 

「……ハァ。こんなことになってごめんなさいね、アーシア」

 

 

 アレッ、無視!?

 

 

「いくらライザーもグレイフィアも絶賛したからと言って、彼は人間だと言うのに……。完全に趣味の悪い事態にしかならないわ、せめて神器でも使えていれば……」

 

 

 リーアたん、改め妹のリアスは真面目な様子で試合を覗く。

 

 ……実のところ、彼が敗北すればリアスが出る予定になっている。

 彼の試合はエキシビジョンというか、前座というか……。

 正直、貴族上層部らは彼の試合を体の良い見世物程度にしか認識していないだろう。

 

 だからこそのリアス達の観戦が許可されているのだが……、まあ、妹の婚約破棄を理屈で相手側に認めさせた人間であるし、このくらいの試練は越えられる。はずだ。

 妹の血統を悪く言った意趣返しなどではないさ、断じて。うん。

 

 

「いえ、ソラさんならなんとかできるとは思うのですけど……」

 

「え?」

 

 

 リアスの謝罪に返した彼女は、聖女アーシアか。

 現在天界陣営の中でも最大級の信仰を集める彼女が、そこまで信頼しているのか。

 

 ……そういえば、数年前に彼女を篭絡しようとして逃げ帰ってきた若手悪魔が居たな。

 アスタロト家の……。

 

 

「問題は、ソラさんが手加減してくれるかどうか、です」

 

「は?」

 

 

 ――次の瞬間、彼の陣地であるオカルト研究部が消失した。

 

 

「ちょ!? いえレプリカだけども私たちの部室をいきなり!?」

 

「部長!? 驚くところ違くないっすか!?」

 

 

 ……えぇ、何それ。

 というか、消え方がまるで私の【滅びの魔力】に酷似してるのだけど……。

 そういえば、錬金術師とか名乗っていたってグレイフィアが言ってたけど、どういう爆発物を錬成すればそんな真似が……。

 

 そう思考に耽かける、その隙に。

 

 部室跡から跳び出して、一直線に『何か』が生徒会室――つまりライザー・フェニックスの陣営へと吶喊して行った。

 

 

『!? ら、ライザー・フェニックスの女王(クイーン)騎士(ナイト)2名、僧侶(ビショップ)戦車(ルーク)2名、兵士(ポーン)8名、リタイアです!』

 

 

 い、一撃だと!?

 

 

「が、画面変えて! 早く!」

「生徒会室……! っ、ダメです! 定点カメラが破壊されてます!」

「突き抜けてますし、廊下側からなら……!」

 

 

 リアスの眷属たちが大慌てで現状を探る。

 定点カメラ、っていうか使い魔からの映像なのだけどね。

 ……まあ、私の使い魔では無いし、弁償だけ考えておこう。

 

 画面は割と早めに切り替わり、其処に映し出されたのは――。

 

 

『っ、な、ちょ、は、はぁあああああああ!?』

 

『あー。すみませんねライザーさん、この試合、手加減はしないことに決めたので。堂々と負けてくださいな』

 

『そ、それは構わないが、なんだ!? なんだそれは!?』

 

 

 ――茶褐色の武骨な巨体。

 腕部はゴリラのように強靭で、胸部には茨のような棘が鎧のように並んでいる。

 貌は鋭い眼差しが静謐さと共にライザーを見下ろして、口元はマスクのようなモノで覆われていて伺えない。

 

 そんなロボの肩に褐色肌の少年が腰掛けて、狼狽えるライザーと会話していた。

 

 

『なんだ。ふぅむ、何と言ったら良いのやら。まあとにかく、造りました』

 

『説明になっていないぞ!?』

 

『ハハハ。名前はドイツの航空会社から取って【メッサーシュミット】です』

 

『いやちょ、まっ、』

 

 

 そんな会話らしいとも言い切れない会話の最中に、件のメッサーシュミットがコブシを振り上げて、叩き付けた。

 何度も、何度も。

 

 

『……。ら、ライザー・フェニックス、投了(リザイン)。烏丸イソラの、勝利となります』

 

 

 数分後、近年稀に見る惨たらしい試合を披露した後に、誰がどう見ても根負けしたとしか伺えないライザーの投了に、誰もが納得の溜め息を漏らした。

 グレイフィアの勝利宣言も空しく響いた。

 

 ……目論見通りだけども、どうしてこうなった……!

 




連休後半は体力使い切ったのか寝込みウィークとなって身動きが取れませんでした
肋骨がイタァイ! 頭痛もイタァイ! こんなん休みやないやんけ!

何が悪かったんだ。アレか。前回前書きでライフを半分支払った代償か。

そんなことよりイヅナヨシツネだいしゅきぃ…


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ライザー「ついに俺が副題に! もうなにもこはくない!(死亡フラグ」

スーパーではないロボットに誰も触れてくれなくて悲しいおーりです
もうガドガードは誰も覚えてないのかしら…(と書き始め時期思ってたらひとりおりましたヤッター

感想でサーゼクスが決定権を備えてないのが謎、みたいなことを問われ、何故今回こんな話になったのか、と首を傾げられました
ので、この場にて注釈を挟みます
自己解釈でもありますので、あんまり真に受けないでください(よし、言い訳はした

そもそも、原作読んでもサーゼクスにはあんまり決定権も無いのかと
偉い立場になるひとは居ても、尊敬され全部が従うかと言われれば現実でも『そんなことはない』ことと同じように、
舐められてるんじゃないの? と件の感想で投げかけられたまさにその通りに、所詮は歳経た上級貴族(でしたか?)の年功序列精神を諫め切れない若手でしかないです
そんな若手では国家運営である政治は務められませんし、信用が足りません

第一、サーゼクスが魔王になった理由が『グレイフィアを妻にしたいから』だったはず
他にも自分が面倒見ていた子供ら(?)を傷つけられたか殺されたかして、そういう悪魔を出さないために魔王になった、などと理由があったそうですが、それも第一目的ではなしに後付けっぽいですし
国家の発展と維持並びに国民の命と尊厳と将来を考慮するならば王としては充分ですが、最初に掲げた目標、というか『吊るされたニンジン』を掻っ攫って余裕ある状態で「みんなが餓えない世界を造るんだ!」などと言われてどう思うよ?

ちなみに悪魔の駒に関する点は問題点もありますが、それが必要な面も確かにある(と別の方が感想でも言ってました)ので割愛
駒の解釈についてはまた今度書きます

というか、サーゼクス並びに現魔王らの役割って政治に口出しすることじゃないでしょう
戦闘力真っ先に買われてるって、
兵器じゃん

そりゃあそんな立場の人に嘴挟まれたくはないだろうし、年寄りらだって暗躍するさ

尚、それくらいを掻い摘めても政治の云々に烏丸くんは口出ししません
めんどくさいので(笑)


 改めて、現場を見てみましょう。

 

 様式は普通の一軒家。

 昭和から平成に掛けて、平均的な日本人家族が街並みに違和感のないようにと一般的な建築士に依頼すれば出来上がる、二階建ての日本式家屋です。

 塀と添えて植えられた木々が生い茂ったために日当たりは芳しくなさげに見受けられますが、室内から覗けば庭先が洗濯物を干せるくらいの程よい広さですので、然程のマイナスという風にもなりません。

 

 疑問点はと言えば、二階が存在しているのに其処へ向かう階段が見つからないことでしょうか。

 玄関入って直ぐから見上げれば、バルコニーのように木柵で閉ざされた二階層が伺えます。

 

 尋ねたところ、『二階は子供部屋と寝室くらいしかない。一人暮らしには割と不要だったから、階段は取っ払って塞いだんだ』との返答が。

 ……まあ、一階分だけでもliving・kitchen・toilet・bathroomと充分ですし、一人暮らしだと考えればその選択も強ち間違いとは言い切れませんが……。

 

 なお、『不要ならアタシが使ってもイイっすか。ヒャッホー1人部屋ぁー』と喜び勇んで飛んで入ろうとしたミッテルトさんでしたが、ソラさんのダメだという問答無用無音拳に物理的に封殺されてました。

 これ絶対なにか他の事情が働いてますよね!?

 

 そんなソラさんのご自宅を掃除と改築に、私たちが何故赴いたのかと言えば、それこそ色々と事情があるのですが。

 

 

 ―ピンポーン

 

 

「はぁーい。どなたでしょう?」

「あ、レイヴェル、戸を開く前にスコープを覗くのは止めろよ? 3回に1回は目を抉られる」

「どういうトラップですの!?」

 

 

 件の事情となる、レイヴェル・フェニックスさんが呼び鈴に応えて、ソラさんに窘められてました。

 地味に此処の家自体が怖いのは、……暫く目を瞑ります。

 

 

「はい――。?」

 

「今晩わ」

 

 

 玄関を開けて、小首を傾げた彼女の正面から、しわがれた男の人の声が聴こえます。

 

 

「こちらは、ソーリア・エスクリダーオス殿のお宅で宜しかったかな?」

 

「……はい?」

 

 

 続けられた言葉に伺えば、禿頭で背の低い、活辣としたおじいさんが玄関前にてレイヴェルさんを見上げていました。

 彼女が小首を傾げた理由は多分、ソラさんの前の名前を知らないだけでしょうけど。

 

 

「ありゃぁ? クリスじーさんじゃないの」

 

 

 そう言って、部屋の片付けもそこそこに出迎えに赴くソラさん。

 どうやら、本日のお話もまた、色々な人を置いてきぼりにしてしまいそうです。

 

 

 

  ■

 

 

 

「あー。こちら、クリストフ・カラ・ジルナガン。俺の師匠みたいな爺さんな」

「「「貴方が犯人ですか!」」」

 

「待ちなされ少女たち。(ワシ)ャぁこん小僧の人格矯正にまで手を伸ばした覚えも無いわい」

 

 

 異口同音に詰め寄りかけました。思わず。

 反省反省。

 

 

「んで、こちらアーシア・アルジェント、ミッテルト、レイヴェル・フェニックス。これからいっしょに暮らすことになった」

「ほーぅ、それはそれは。色々とアレな小僧じゃが、宜しくしてやっておくれ」

「とりあえず、ヨナルデパズトーリィみたいなCVしてるけど、大概無害な爺さんだから。気さくにクリスじーさんとでも呼んでやってくれ」

 

 

 私たちはそのヨナルデなんとかを知りませんが。

 しかしそうですか。

 

 

「師匠、ということは、このひとも件の現代錬金術師という?」

「そうそれ。まあ、このじーさんは、というよりこのじーさん『も』だけど、他人に教えるより自分で研究する方が性分なひとらだからね。一緒のカテゴリ訣するのも失礼に当たるかもだから、あんまり指さしてやらないように」

「私たちをなんだと思ってるんですか」

 

 

 『指さし』て、『やーい、お前のじいさん現代錬金術師ー』とか嘲笑われた経験でもあるのでしょうか、このひと。

 

 

「ああー、例の『呼び方』のアレかの。儂もそんなん名乗った覚えもありゃせんがの」

 

「え? でも、フェニックスで仕事したひとが……」

 

 

 言いながら、話に付いて来れているのか不明な、フェニックス家の妹さんをチラ見します。

 

 

「っ。そ、そうですわね、カリオストロ様が名乗っていられましたので、(わたくし)どももソラ様を理解したと言っても過言ではありませんわ!」

 

「カリオストロ……、あー、あの。名乗っとるのはアレかラスキンくらいじゃろ」

 

「えぇー……」

 

 

 絶賛したところを『その程度』と見られたのでは、流石にレイヴェルさんでも困惑しますよね。

 話題を振ったのも失敗でしたでしょうか。

 

 

「大体1世紀くらい前ならの、儂らの呼び方は統一されとったのよ。それがここんところ安易に名乗り出すモンが増えだしてのぉ、一緒にされるのも嫌だー、って言い出したラスキンが文献ひっくり返して命名しての」

「まあ、あのひともヤンキー嫌いだからね。俺は嫌いじゃないけど、このカテゴリ」

「そりゃお前さんが若いからじゃい」

 

 

 逆説的にラスキンのジサマも若いのでは? などと取り留めのない会話を続ける御二方。

 どこでどうなってそういう会話に繋がったのかが理解し難いのですが、とりあえず。

 

 

「ところで、本日はどのようなご用件なのでしょう?」

 

「お。おーおー、すっかり忘れとった。スマンの嬢ちゃん」

 

 

 ウシャシャシャシャと哂いながら、クリスさんは淹れたコーヒーをひと口。

 そうして、ひと呼吸置くと、窓の外を見上げました。

 私たちも目を向けると、綺麗な満月が、すっかりと晩くなった空に浮かんでいます。

 

 

「先も小僧が言うたがの、儂ャ研究が趣味でな。ここんところもまた、遊学の最中であったのじゃよ」

「ああ。月の?」

「うむ」

 

 

 それはまた、優雅な。

 

 

「月には蟾蜍(せんじょ)と兎が()るという。特にその兎の搗く餅は不老長寿の丹薬となるという」

「中秋節の團圝餅かぁ」

 

 

 時節も違うのに何を唐突に風流な、とソラさんは続きを促しました。

 

 

「で、そんなん思い出したら餅が喰いたくなっての。ありあわせのモノで兎と臼なら造れたんじゃが、もち米ばかりはそこいらでは都合つかんでの」

「へぇ。買いにでも来たん?」

「んにゃ。造った兎に遣いに出させた」

 

 

 んん?

 

 

「あの、兎をお遣いに出すのはどうかと……」

「あいつらまともに鳴けもしないっすよ?」

「クリストフ様、先ほども思いましたけれど、ひょっとして相当お歳を……」

 

「ええぃ小娘ども、一斉に口を開くでないわい。いや、儂も前の失敗もあるからの、どうかなー、とは思うとったんじゃがの」

 

 

 前にも失敗してるんじゃないですか。

 同じ轍は踏まないようにしましょうよ。

 

 

「どういう愉快な失敗したのかはさておいて、要するに兎に逃げられたんか」

「うむ。この辺りに来ているところで、お前さんの部屋が近いことを思い出しての」

「余裕あるじゃねーか。というか、教えたっけ?」

「前にイリシャに聞いたんじゃよ。あすこに居った金髪フェチと同じような性癖でハレムを造っとるとは思いも寄らんかったが」

「誰が金髪フェチか」

 

 

 また脱線してます。

 でも言われてみればこの家、ブロンド率が高いですよね。

 

 

 

  ■

 

 

 

 さておいて。

 ひとまず兎を掴まえる。

 そういうことになったッス。

 

 

「というか、こんな夜中に街中で兎1匹追い詰めるって、そうとう時間がかかりそうだが」

「ま、心配ないじゃろ。アレは『寂しがりや』じゃからの」

 

 

 そういう現代錬金術師御二方の後を追いつつ、アタシたちは比較的早くに件の兎を発見するに至ったッス。

 ……至りはしたけれど……。

 

 ――プラチナのブロンド。

 ――真白い肌。

 ――豊満な胸に、程よい肉付きの尻と太腿。

 

 そして取ってつけたような垂れたバニーイヤーのカチューシャ。

 

 

「「「……。兎……?」」」

 

 

 路地の裏にて、ズボン脱がせて血塗れでゴミ捨て場に仰向ける男の姿に跨る、そんな全裸の美女を発見し。

 異口同音に、私たちは疑問符を発せざるを得なかった。

 

 あ、よく見ると手套とニーソを付けてたから全裸じゃねッスね。

 だからなんだという話っスけど。

 

 

「寂しかったのは爺さんじゃねーの?」

「お前さんといっしょにするでないわい」

 

 

 あ、そういう趣味もあったんすね、このひと。

 

 

「まあ俺の趣味嗜好に関する風評被害はさておいて。……ところで、そこのウサちゃんが跨っている下でズボン脱がしてる変態、どっかで見たことあるんだけども……」

 

 

 クリスさんの言葉に女子勢の目がソラさんに向きかけたッスけども、続く科白でウサギさんの下へと目をやるッス。

 うん? 確かに見覚えのあるような……。

 

 

「イッセーさぁん!?」

「「あ」」

 

 

 真っ先に気づいたのはアーシアで、続いて気づいたアタシが漏らした言葉。

 しかし、其処に重ねられたソラさんの声が示す意図は、アタシらとはまた別のモノだったッス。

 

 アーシアの驚愕の声には、ウサギさんも驚いたご様子で。

 跨って腰を上下させていたウサギさんは、バンッと跳ねるように変態から離れ、

 

 

「――おおっと」『ギャ!』

 

 

 ――バシン、と手を振るったソラさんの声より先に。

 路地に響いたのは、それに殴られ跳ね除けられたらしいウサギさんの小さな悲鳴だったッス。

 

 

「は。使いっ走りの分際で、随分生意気そうですぜ、旦那ぁ」

「うーむ、前にもそうじゃったが、儂『こういうの』の調教は向いとらんのじゃろか」

 

『キィッ! カッカッカッ! フシュー!』

 

 

 う、兎……?

 

 と、疑問符を再び浮かべざるを得ない姿。

 変態から剥がれ、距離を置いたそれは、先ほどの美女がその大きさのままに変貌した、ヴォーパルなフリークスとしてソラさんを警戒してたッス。

 いちおう、ウサギの名残はあったッスけど……。

 

 緊張感があるんだか無いんだか、わからないままに。

 

 件のウサギは狭い路地中の壁を、ピンボールのように跳ね周る。

 逃げる、わけではなく。

 その行動原理は捕食者側のそれっぽい。

 

 戦うことを選択するとか、ホントにウサギっすかね、これ。

 なお、跳ねるスピードは目で追い切れないレベルで、蹴られた壁はスライスされたように砕かれてるッス。

 

 ――ヤバイ。

 

 

「前歯だけはよう切れるからの。クリティカルにご注意じゃ」

 

「ぉい、材料ナニコレ?」

 

「原地で採掘されました50Kカラットの金剛石を贅沢に研磨し、頭蓋に使用しております( `ー´)ノ」

 

「その貌ヤメロ、腹立つ」

 

 

 前衛(リング)で対峙するソラさんと、後方(セコンド)から助言するクリスさんの会話。

 師と弟子の会話に聴こえねぇ。

 アタシら完全に置いてきぼりッスね。

 

 つーか、

 

 

堕天使(アタシ)が目で追い切れないって、普通にヤバイ怪物じゃねーッスか……!?」

「同じく、悪魔(ワタクシ)でも難しいのですけど……! ソラ様(人間)だけに任せて大丈夫なのですか!?」

 

「はー、おふたりは目で追えてるんですかぁー。私は全然ですねぇー」

 

「「笑って言うこと(です)か!?」」

 

 

 アハハ、と笑い飛ばせるアーシアの精神がわっかんねッス!

 

 

「ええぃ、鬱陶しい!」

 

「「えっ」」

 

 

 ガッ、と。

 アタシらが改めて前方の怪物に警戒を思い知っていた一方で、気づけばウサギさんの首根っこを掴まえて、ドゴドゴドゴドゴドゴドゴゴシャメシャグシャベキョペキ、とメタクソに殴りつけたソラさんが――えぇ……。

 

 

「――えっ。えっと、あのひと、にんげん、ッスよね……?」

「……レーティングゲームの時は、学術家というか研究者の立ち位置だと理解していましたので、『ああした』『何かを造って使う』という戦い方で納得できたのですけど……」

 

 

 素で強いじゃないですか、あのひと。

 そんな意味を込めて、アタシとレイヴェルはソラさんを茫然と見たッス。

 

 

「はぁ。しかし、聖堂教会で携わっていた頃、『牙狩り』と呼ばれる方々の中にも、ああした『クソ殴り要員』のひともいらっしゃいましたよ? クラウスさんと仰りましたかね」

「「人間コワイ」」

 

 

 どのへんがどう『人外に劣る』存在なのか。

 堕天使と悪魔(アタシら)は口を揃えて、彼らに対する警戒を強めたッス。

 

 

 

  ■

 

 

 

 ――さて。

 

 ボッコボコに殴ることでもとい、叩いて直す精神でししょー謹製のウサちゃんを沈めた、その後の話をしよう。

 何故かミッテルトとレイヴェルは背筋を直して、良いお返事で我が家の改装に舞い戻ってくれたことには小首を傾げたが。

 大事なのは住居を整頓させる方針であり、今回のコレはおまけに過ぎない。

 

 クリスのししょーからはお土産と返礼として地産の金剛石をひと山。

 加工すれば何かしらに回せるし、売ってもそこそこ良い金になる。

 

 そうして袋詰め兎を引っ提げて、再び57億キロの旅へと垂直に飛んで行ったししょーを見送り。

 俺たちはアーシアの神器で壊された壁なんかの補修を終えて、ようやくとひと息ついた。

 

 

「……で。こっちはどうよ?」

「ダメですねー。完全に死んでます」

 

 

 ううむ、やっぱり無理だったか。

 限定的な時間遡航を源流とするとはいえ、飽く迄アーシアの神器は『回復』要因。

 そもそも、死者の定義はある見方に付いては一方的なモノであり、歴史を思い直せば彼のイ●ス・●リストだって確実な蘇生は為されていない。

 

 要するに、死んだ人間は生き返らせられない。

 それを可能とする神器も、何処かに在りそうな気もするが。

 それでも治すというのなら、それは『甦り』ではなくて『ほぼ同じ別の何か』となるのだろう。

 

 

「まあいいや。丁度『悪魔の駒』とやらにも興味もあったんだ、リアスぶっちょのところへ持っていこうぜ」

 

 

 この死にたてピチピチのイッセーパイセンをな!

 




クロスオーバー先のリスペクトです(今更


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イッセー「気が付いたら悪魔に転生していた…。な、何が起こったのか(ry」

前回までのあらすじ!

ことの序でのように転生を果たした兵藤一誠!
其れとは別に、唐突に始まった烏丸と金髪美少女3名との同棲生活については一切触れられないのであった!




遅れてしまって申し訳ございません
新しい話を思いついてしまって筆が一切進みませんでした
なお、件の新しい話とやらも進捗状況は一切の不動

心機一転。タイトルとあらすじを変えて仕切り直そうかと思います


「――下手人の名前はバルパー・ガリレイ。聖堂教会の所有する6本のエクスカリバーのうちの5本、天閃(ラピッドリィ)夢幻(ナイトメア)擬態(ミミック)透明(トランスペアレンシー)祝福(ブレッシング)の聖剣を盗み出した大罪人さ。そいつが今、この町に潜伏していると知って、私たちが遣わされたんだ」

 

「なんですって!?」

 

 

 聖堂教会からの伝達として現れた少女たち兼回収人、その片割れの青髪メッシュの科白に驚愕の声を上げるのは駒王町の管理人リアス・グレモリー。

 

 しかし、そんな会話を交わした現場では、然程の動揺をも誘えていない。

 

 語った彼女らも同様なのか、どうにも意味違いに静まり返った会話の『間』に、ちらり。

 

 オカルト研究部の部室隅にて執り行われている、妙な茶番へと視線を向けた。

 

 

「――ふむ。この鼻孔を擽る爽やかな香り、舌に残る微かな苦み。冥界産ダージリンのファーストフラッシュ、更にゴールデンティップスも少量とはいえ含んでいるな、僅かだが甘みも感じる。日本の水道水が紅茶に適しているとはいえ、土地土地に適したゴールデンルールは一朝一夕に呑み込むことも難しい。此処に来て日も浅いであろうに、良い茶を淹れる。恐れ入ったぞ、perfectだグレイシア」

 

「グレイフィアです」

 

 

 本来ならばヒュパッと擬音の出るくらいに指先で示すことで『感謝の極み』と返すのが筋なのであろうが、銀髪メイドは其処まで乗れない名を改める。

 

 というかエセ英国人みたいな真似をして紅茶評論してるこの色黒白髪はなんなのか――ああ師匠も英国人だから経験則としては間違ってはいないのか。

 

 さておき。

 

 無駄に堂に入った関係性で紅茶を嗜む烏丸イソラと、言葉遣いはどうあれ控えの振る舞いで脇に従っているグレイフィア・ルキフグス。

 

 そんなふたりを、というか使者らに気を遣わずにしずしずと銀髪メイド(@爆乳)が紅茶を淹れ始めたことで傍観していた周囲なのであったが、そんな中で真っ先にツッコミを入れたのは――、

 

 

「いやいやいや! 何してんすかアンタ!? っていうかなんで居るんすか!?」

 

 

 何故か、(先日死して蘇った)兵藤一誠その人であった。

 

 

「……いきなり怒鳴り出して、どうしたんですか先輩」

 

「不思議そうな顔すんなよお前も!? っていうか、今あっちシリアスな空気じゃん!? 何してんのお前!?」

 

「アフタヌーンティーを嗜んでいますが」

 

「そういうこと訊いているんじゃねえんだよォォォ!!!」

 

 

 無駄に、勢いと熱がある。

 

 進撃の巨人の奇行種染みた貌で空中に向けてツッコミを入れる人生ゲームに負け続けた高校生のように、なにか『運命的なモノ』に突き動かされている感が凄い男子高校生が此処にいた。

 

 

「えぇ……? じゃあなんなんすかぁ、先日路地裏で脳漿と眼球と(ハラワタ)ぶち撒けてズボン半脱ぎで臨死漂ってた先輩を引き摺ってリアスぶっちょに転生お願いした他でもない可愛い後輩に、何か言いたいことがあるんすかぁ……?」

 

「俺そんなんなってたの!? 手間かけさせたねゴメンね!?」

 

「まあ肉体自体はアーシアの神器で直したんで、力抜けた水袋背負うくらいの労力だった程度なんであんまり気にしてませんけどねぇ」

 

「ほんと手間かけさせたね! でも言いたいことはあるんだゴメン!」

 

 

 烏丸の臨場感溢れる説明に使者らと木場と朱乃とリアスが、揃って『ぉぶえぇ……』と口元を思わず抑えた。

 

 はいては、いない。

 

 

「テイク2だ! なんで、お前がそのメイドさんを傅けさせているんだよォ!? その人この間来た部長のところのメイドさんじゃんかァ!!!」

 

 

 指さし、叫ぶ。

 ヒトを指さすな失礼な奴だ。

 

 

「正確にはリアスの義姉(あね)に当たりましたね。改めて、グレイフィアと申します。以後ヨロシク」

 

 

 指さされた張本人がしれっと答えた。

 

 それに絶句したイッセーに換わって、というわけでは一切ないのだが、リアスが慌てたように問いかけた。

 

 

「以後ヨロシクってどういうこと!? てっきり私はこの間のレーティングゲーム関連で伝え忘れたことが在るとかそういう理由でグレイフィアがやってきていたのだとばかり……!」

 

「それならそれで先立ってリアスに言いますよ。まあ、そのうちリアスにも伝わるかとは思いますが、状況は早いうちに呑み込みたいでしょうしね。納得させる意味も込めて、この場で説明します」

 

 

 そうひと呼吸置いて、

 

 

「実は先日、サーゼクスに三下り半を突き付けて来まして、(いとま)を頂きました。なので(わたくし)、これより烏丸イソラ様にお仕えすることとなります」

 

「「「「「はぁ!?」」」」」

 

「無論、仕える以上は『どのような』奉仕でも応える所存です。メイドとしても、女としても」

 

「「「「「はぁああああああああ!!!???」」」」」

 

 

 揃って驚愕の声を上げたのはオカ研部員のほぼ全員だ。

 

 声を上げずとも、烏丸に連れ立っているアーシア・ミッテルト・レイヴェルは不満顔だ。部室に来る前に話だけは聞いていたのかもしれない。

 

 ちなみに、この発表で何故居るのかわからなかったレイヴェルの印象は諸共露と消えた。ドン☆マイ。

 

 

「えっ、ちょっ、それっ……! 離婚!? 別れたってことなの!?」

 

「お、おちついてちょうだいリアス、まだ『そう』と決まったわけじゃ……!」

 

「いえ……、今のは完全に『そう』ですよ……。うわぁ……、僕これからどんな顔して師匠に会えばいいんだ……」

 

「え、えええええ!? お兄さんとメイドさんってそういう関係だったんですか!? というかサーゼクス様って魔王様でしたよね!?」

 

「なにがどうあれすさまじいすきゃんだるです……、なぜここまでモテるのですか、このひと」

 

「昔から人妻と幼女にはモテるんだよなぁ」

 

 

 落ち着けねぇリアスに朱乃、剣の師匠の在籍してるであろうグレモリー領または魔王眷属組の大わらわっぷりを想定して遠い目をする祐斗、状況を呑み込む以前に前提を知らないので話の重大さに付いて来れないイッセー、驚きすぎて語彙が幼児化してる小猫、しみじみと実感の籠ったキニナル言葉をナゼナノカと呟く烏丸。

 

 まさに現場はカオスであった。

 

 

「落ち着いてください」

 

「混乱させた張本人が言う科白じゃないんだよなぁ」

 

 

 当然至極(まさにそれ)

 

 ちなみにこの場には『聖堂教会の使者』というドチャクソ『外部の者』が居るのだが、先ほどから完全に蚊帳の外且つ空気である。

 

 

 

  ■

 

 

 

「――そ、それで、どういうこと、なの、かしら……?」

 

 

 数分後、どうにか落ち着いた(てい)を取り繕ったリアス・グレモリーが、紅茶の入ったカップをカタカタ揺らしつつ問いかけていた。

 

 

「納得もさせる、と言ったでしょう。貴族足るもの優雅で在れ、とかつて教えた筈でしょうに」

 

 

 優雅さは不在である。グロリアーナは未だ遠い。

 

 何の話かはさておいて、溜め息をひとつ吐くとグレイフィアは早々に話を切り出した。

 

 

「先日のレーティングゲームを知る者ならばわかるかと思いますが、アレは本当に酷いモノでした。近年稀に見る一方的な虐殺、と悪魔社会では恐ろしい記憶と共に語り継がれ始めています」

 

「「「「「「「「ああ……」」」」」」」」

 

 

 その場のオカルト研究部員ほぼ全員が、『いやな、じけんだったね……』とでも言いたげに言葉を漏らした。

 

 唯一、事を引き起こした張本人だけは『俺は悪くねぇ! 俺は悪くねぇ!』と言いたげに顔を歪ませて、――そうじゃねえだろお前は。

 

 

「いえ、実際何が悪かったかといえば、ソラ様を正しく認識せずに禄でもない下策で馬脚を顕した貴族上層部と魔王の謀が原因なのですが。それぞれにそれぞれの思惑があったために大きくも出れないのですから、喩え直接的な原因にソラ様が当たってしまうとしても、『僕は悪くない』とでも嘯いて悠然と佇んでいれば良いんですよ」

 

「それはそれでなんかなぁ」

 

 

 的を得た(まさにそれな)表現でグレイフィアがフォローを入れる。

 

 フォローの入れ方は完全に烏丸寄りだ。喩えは完全に負完全なのだが。

 

 

「話を進めますと、悪魔社会とて信用は大切です。その辺りのフォローがサーゼクスには足りませんでしたので、私が『こうして』身を挺してソラ様に仕えることとなった次第です」

 

「……あの、それ明け透けに言っちゃって良かったの……?」

 

 

 その関連で彼女も来ていますしね、とモノの序ででレイヴェルも紹介されたところで、リアスがおずおずと挙手をした。発言には挙手。コレガダイジ。

 

 さておいて要は、グレイフィアは策を弄している、と堂々と宣言していることがリアスの懸念に当たる。

 

 掻い摘んでしまうと、悪魔社会外敵ばっかじゃけえのォ! → (一応)身内の聖書陣営の足並みも揃えられないで外様に対抗できるわけないやんけ! → ふええ、一番身内に引き入れなくちゃならない天界関連のヤバイ駒(烏丸)に無礼働いてるよぉ… → 人質としてよく熟れた人妻美女は如何でしょうか? 良い身体もしてますぜダンナァ…(ネットリ)。と、まあこんな感じだ。

 

 そしてその問題点は、『沿う云う(くだり)』を簡単に連想できる(グレイフィア)が、釣り針を隠そうともしていないという点に当たる。どうすんだよ悪魔陣営。

 

 

「問題ありません。ソラ様には全て見通されていますし、理由もしっかりとこちらから暴露済みです」

 

「えぇ……?」

 

 

 ドン引きである。

 

 明け透けに策を披露するグレイフィアもだが、それを普通に受け入れている烏丸にもドン引きである。

 

 いま、部内の心がひとつになった。そして、

 

 

「そのうえで、私はソラ様に仕えることを許可されていますし、身体も許しますし愛も囁きます。何も、苦などありもしません」

 

「えぇ……」

 

 

 恋愛に夢を抱いているリアスは、本当に理解できないモノを見る目を元義姉に向けていた。

 

 

「納得できませんか」

 

「できるわけないじゃない……。洗脳でもされたの……?」

 

 

 今リアスの脳内にあるのは、催眠おじさんに『催眠? アリエナイワ』と良いように手籠めにされる某マーガトロイド辺りである。ナニ読んでんのリアスさん。

 

 まあ、最近ではそういうベリーイージーモードの代名詞みたいな彼女に返り討ちに遭う代物も珍しくないらしいが。ナニ読んでるの俺(誰)。

 

 

 冗句はさておいて、実際リアスには理解が及ばない。

 

 グレイフィアとサーゼクスの恋愛話は、冥界では誰もが知る。例えるならば生きた神話とも呼べる。

 

 共に冥界のトップとして種族全体を牽引し、将来有望な子供まで生まれ育っている。

 

 甥に当たるミリキャスにはどう云えば良いのだろうか、と幼子に語るには酷過ぎる現実に、リアスは本気で『世界が滅びればいいのに』と考え始めていた。ヤバイ。

 

 

「洗脳などされていませんよ。そうですね、其処を説明するためにも、私の過去についてキチンと語っておきましょうか」

 

 

 納得させる、と言いましたものね。

 

 そう言って、グレイフィアは言葉を紡ぎ出すのであった。

 

 

「元々、『ルキフグス』は『ルシファー(魔王)』を補佐する家として存在していました。私も血統上例に漏れず、『そういう』意図を含めてバアルの預かりとなっていました。大戦で初代が討ち死にされて以降、落ち目となったルシファー家に魔王としての実績が足りなくなった影響ですね。次の魔王を選定する意図も含めて、私はサーゼクスと出会った。此れが事の『始まり』です」

 

「……聞いたことはあるわ。元々、貴女とお兄様は敵同士だった、って……」

 

 

 そうだったんすか、と暫く黙っていたイッセーが呟くように囁いた。居たのかお前。

 

 なお、静かだったのはグレイフィアという人妻美女が烏丸に肉体的にエロエロなことをしてくれることを宣言してる事実にギリギリと背景で歯ぎしりしていただけなので割愛する。

 

 

「そこでなんやかんやの事件があって、元々『私を』手に入れるために魔王を目指していたサーゼクスは魔王に就任しました。出会ってから50年ほど経っていましたね」

 

「ざっくりしすぎじゃない?」

 

 

 驚きの端折りっぷりである。

 

 なんかもう、愛を感じない。

 

 

「色々とあり過ぎましたので。詳しくは後でサーゼクスに尋ねてみればいいですよ」

 

 

 冥界で語られる超有名なロマンスの裏話が聴けます、などと余計なことも付け加える張本人。

 

 訊く気が猶も失せて往くことを実感する。

 

 

「大事なのは、感情はどうあれ『ルキフグス』の立ち位置はいつだって『魔王』の補佐、という点です」

 

「……わからないわ。それなら、猶更お兄様と離れる理由が無いじゃない………!」

 

 

 だからお前はリアス(無能姫)なのだ、と色んな二次創作で云われている綽名を知るような眼で、グレイフィアは元義妹を眺めていた。

 

 まるで養豚場から出荷前のベルトコンベアを流れるソーセージを眺めるような流し目である。色っぽい。

 

 

「リアス、『魔王』とはなんです?」

 

「……? 悪魔の、王でしょ?」

 

「何はともあれ、どのような種であれど『王』であることは変わらないのですよ。民を導き、民を守り、民のために己を殺す。そのために必要な『国家の発展』と『外敵への警戒』は絶対的に外してはいけません」

 

「……っ、お兄様がそれを怠っている、とでも言うつもり……!?」

 

 

 リアスは激怒した。必ず彼の邪知暴虐の元義姉を兄の下へ傅けさせてやると決意した。

 

 しかし、

 

 

「そ の と お り で す」

 

 

 その怒りは届きはしない。

 

 何故ならば、

 

 

「……っ!?(威圧!? こんな……っ、なんで……っ!?)」

 

 

 グレイフィアの方が、もっとずっと怒っているのだから。

 

 

「王の仕事は顔色を伺うことではありません。暴君と呼ばれようと、身内を蝕む身中の虫は殺さなくてはなりません。それを『やりたくない』という理由で実行し得ない。それはより多くの不幸を生み出すことに繋がるのです。旧魔王家の者を手に掛けたのならば、最後まで潰すべきでした」

 

 

 苛烈すぎるが、其れはかつての光景を知るからこその言葉でもある。

 

 サーゼクスは『件の事件』において、冥界の子供たちを何人か旧魔王家の謀によって亡くしている。

 

 その後の処断を含めて知るグレイフィアは、知らない者たちには判れない事実に憤りを感じていた。

 

 だが、

 

 

「悪魔を増やすために造られた『悪魔の駒』は貴族の玩具に成り下がりました。外敵を減らし、身内を増やす。正しく上手く使えたはずの『一手』は、今では『敵意だけ』を生み出す悪しき文化です」

 

 

 あの、此処に其れで転生したのが何名か居ます……。

 

 憤慨で膨らんでいたはずの張りつめた何かが、一転して萎むことを実感した。

 

 

「サーゼクスは、実力だけは魔王として、象徴(アイコン)として掲げるに足る人物です。ですが、それだけです。何より決断に踏み出せないのならば、魔王など目指すべきでは無かった。私が欲しければ、私を連れて冥界から出奔すれば良かった。支配者としてではなく、ただの男として居れば……」

 

 

 ともあれ、続く言葉には『愛がどうこうの』という地の文も霞む、なんか、こう、あれ? これ惚気じゃね? と疑わんばかりの『想い』が込められている気がしないでもない。

 

 初めっから『こう』で良いじゃねーか! なんで途中途中コミカルなモノを挟んだの!?

 

 

「そ、それなら、今からでもそうすればいいじゃない! 別れることもないでしょう!?」

 

「いいえ――」

 

 

 いつしか消えた威圧感から抜け出し、リアスが声を荒げる。

 

 イッセー? あっ、気絶してる……。まあいいや。

 

 

「いいえ、今まで生きた私は、もう今更冥界を、悪魔の未来を見捨てることは出来ないのです。だからこそ、それがあるからこそ、私はこうして『決断』しました。願わくば、」

 

 

 改めて、胡乱な目を向けている烏丸の傍に控える。

 

 主人公もどうすればいいのかわかんねー、という顔をしていた。

 

 

「願わくば、私の決断を無駄にすることが無いように――」

 

「……グレイフィア」

 

 

 彼女の決意を知る。

 

 その万感の想いを言葉に乗せて、リアスは元義姉を見送っていた。

 

 

 旅立つわけではないが、雰囲気だ、雰囲気。

 

 

「――というわけで、今後ともよろしくお願いいたしますソラ様。是非とも肉体的にも」

 

「ねえグレイフィア、本当にお兄様の事愛してたの?」

 

 

 締め括りの挨拶に胡乱な目が、自然と人妻メイドへ向けられる。

 

 返事は、無かった。

 

 




言っておくけど、『過去』は改変してないからね?
原作でもグレイフィアはこれくらいやる気がするし
だってなんかイッセーを魔王にする気満々でハーレムに加入してなかったか?
魔王の挿げ替えも考慮してるんだから俺はこう解釈するぜ!

ちなみに今回の『本編』で本人は『その後』を特に明白にしてはいませんが寿命の問題も忘れていません
まあつまり、人間相手に色々エロエロさせても、数十から百数年程度だと見切りを初めから付けてる感が消えてないわけで
死ぬまで騙し切れれば彼女の勝ち、って謂う話

サイテーだなコイツ
やっぱ悪魔は悪魔だわ

そしてゼノヴィアとイリナが完全に空気
次回やります


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グレイフィア「くっ、私にいやらし恥ずかしいことをする気ですね…っ!? 私はどうなってもイイですからせめてっ、せめて室内で…っ!(ハァハァ」

感想たくさんあってちょうキモチィィー…
じゃあ返信しろって話ですよね。ガドガード好きが今更たくさん出てきて嬉しいぜ!

べっ、別に性癖とか晒してねーし?
人妻好きーとか誤解だしィ!?(裏声

まあでも乳でっかい娘が売りのラノベだから有効活用してるだけであって、特にメインのリアスとか朱乃とかが刺さらなかったからグレイフィアを出してる感は無くも無い
だからおーりに人妻属性は無いです(ないです

そんなことより前回で一番上手く言えたのは『完全に負完全』という言い回しだったんじゃないかって自画自賛してる(ドヤァ


あっ、本編です


 ――グレイフィア・ルキフグスは敗北した。

 

 これ以上ないほどの負けっぷりだった。

 腰が抜けて、手脚も動かない。ジタバタのバタが追い付かない程度の疲労っぷりだ。仮にも最古参の番外悪魔(エキストラ)の末裔だというのに、だらしねぇ。

 

 だが、そうなった経緯も、結末も、彼女自身仕方のないことだと自覚していた。

 実力不足、などと安易な言い訳を造れたわけではない。

 単純に覚悟が足りず、自分は相手を舐めていた。

 ただ、それだけの話だったのだ。

 

 結果として、彼女は近所中に響き渡るような艶やかな嬌声で喘ぎ声を上げ続け、幾分と続けられた烏丸(ご主人様)の責めに陥落したのだ。

 

 今ではその負けにも自負を抱ける。

 そんな納得(敗北感)を、グレイフィアは噛み締める。

 未だ冷めやらぬ熱を胎に抱いて、グレイフィアは寝台で横たわっていた。

 

 自らの下腹部を愛おしそうに撫でながら、――全裸で。

 

 

 

  ■

 

 

 

「……そろそろ、こちらからも話を切り出して宜しいだろうか」

 

 

 ひと通り話も済んだところで、完全に空気であった聖堂教会使者の片割れが口を挟んできた。

 青髪にメッシュの入ったスタイルの良い女子だ。

 

 

「あー、なんかもう今日は色々あって疲れたし、一回解散しない?」

 

「そんなわけにいくか」

 

 

 同じように疲れているのか、烏丸の提案に青い娘のツッコミはマイルドだ。

 色々と引っ掻き回された場であるので、どちらの心情もわからなくもない。

 

 

「というかソラ、そのままだとキミは悪魔側と見られてしまうぞ。それでいいのか」

 

「ん? っていうか、俺ってまだそっちに籍残ってるの?」

 

 

 アーシアは信仰の直接的な受け皿なのでわかるとして、自分は何か理屈が通るのだろうか、などと言葉を交わす色黒白髪。

 そうしたふたりを、周囲の誰もが疑問符を浮かべて見ていた。

 

 

「キミの神器を易々と手放すと思うのか? 聖女アーシアに匹敵するような破壊の神器など、色々な意味で放逐するものか」

 

「デュリオなんとかってのがいるじゃん」

 

「いるとしても、だ」

 

 

「ちょ、ちょっと待って、待ちなさい」

 

 

 そんな会話に、とうとう我慢しきれずにリアスは待ったをかけていた。

 色々と、手遅れ感が半端ない。

 

 

「なんすか?」

 

「……言いたいことと訊きたいことが多すぎて、何処から手を付けたらいいのか分からなくなりそうなのだけれども……」

 

 

 呑気な顔で言われたとおりに待つ烏丸に、やや据わった(まなこ)で呆れ顔を晒すリアスはそのままに、とりあえずは言葉を探った。

 

 

「先ず、貴方って神器、持っていたの……?」

 

「あ」

 

 

 やべ。とでも言いたげな真顔を晒す。

 

 

「そういうのは早く言いなさいよ!?」

 

「えぇ……、でも今更転生とかナイでしょ? イッセー先輩で駒使ってるじゃないっすか」

 

 

 ツッコミから思わず引いた反応の後に、からから哂って言外に『容量(メモリ)足りるのォ?』と念能力者染みた問いを投げかける烏丸。何処か煽っている感がある。

 

 ちなみに、静かであったイッセー当人は、前回のグレイフィアの威圧で未だ気絶から目を覚まさない。が、静かなので問題は無かった。

 

 

「だ、大丈夫よ! イッセーは駒1つ! 私が支払える最大容量の兵士の駒7つ分あれば、人間のひとりやふたり……!」

 

「リアス、今はその話は置いておきましょう。他に懸念がありますし」

 

 

 そもそも神器の有無で眷属に促してるようにも科白としては伺えるのだが、その辺りは悪魔社会のセンスの話なので、倫理としては省いておいて問題は無い。

 悪魔の駒を扱う者たちにとっては、神器持ちとは一種のレアなのである。例えるならばサファリパークで出現するガルーラかケンタロス、または配布限定のミュウだ。初代の。

 

 閑話休題(それはさておき)

 

 そんな悪魔貴族の神経疑う倫理観が、グレイフィアが懸念していた事態の一端であったのだが、彼女がリアスを嗜めたのは其処が問題なのではない。

 銀髪爆乳メイドは、青髪メッシュの少女と対峙した。

 

 正直、青髪メッシュ的には対応したくない。

 前回の流れで正面に立ちたくないメンタルにされており、気勢がゴリゴリ削がれ続けていた。

 

 

「……貴女、ソラ様とどのようなご関係なのです……?」

 

 

 後ろの方で、それを訊くのは私なのでは……? とアーシア辺りが己を指さしていた。控えめに。

 

 

「関係、ただのセックスフレンドだが」

「ちょ!?」

 

 

 ぶふぅ、と差し出された茶を噴き出し、真っ先に反応したのは使者のもう片割れの方である。

 明るめの茶髪をツインテールにした、活発そうな少女だ。

 

 咽て咳き込みながらも、恥を知らない発言にお隣にいた彼女の襟首へと、少女の手が勢いよく伸びていた。

 

 

「ゼノヴィアぁ!? アンタなに言ってくれちゃってんの!」

 

「苦しいぞイリナ。別に私たちは年頃なのだし、この程度のことで目くじらを立てなくともいいじゃないか」

 

「『この程度』で済むわけあるかァ!!! 宗派! 私たちは教会所属! 清らかな乙女であるべきなの!」

 

「え……? その恰好で処女、だったのか……?」

 

「アンタも同じ恰好で しょ う が !!!」

 

 

 ガックガックと揺すられ乍ら、恥知らずの言い分に真っ赤になって怒鳴りつける清らかな乙女(オボコ)(自称。

 確かに全身タイツというかボンテージというか、際どい恰好の上にマントを羽織るという、日本の昼日中には中々アウトなファンキーファッションで現れた使者らだったのだが、身内側で被弾を処理するとはお釈迦様でも思わなかった。

 ちなみに、今更ながらふたりの名前が漸く判明したのだが、それを気にする者は此処には居ない。

 何故ならば。

 

 とうとうこの発言はドアウトだったのか、ガックンガックン尚も揺すられ続けるゼノヴィアの向かい側で、烏丸がアーシアにメンチを切られて居たためだ。

 その眼は例えば動物(アニマル)が通う小学校なんかで、毎度毎度熊少年の犯行を暴く兎の探偵少女の眼差しによく似ていた。アーシアさん目ェ怖っ。

 

 

「まあマテ。話を聞け。そもそもだ、正直、私自身は教会所属ではあるが、修道女(シスター)と言うには語弊がある。こんな武闘派な修道女(シスター)が居るわけないだろう」

 

「自分で云うのはどうなのよ……?」

 

 

 云うことは尤もなのだが、其処を言ったら戦争だろうが! と、割と方々からもツッコミが聴こえる。

 多分、昨今知られるアレとかソレとかコレなんかに言及が及ぶのだろう。詳しくはググれ。

 

 ちなみにだが、彼女らはあんまりエクソシスト(悪魔退治家)とは呼ばれることは無い。

 何故なのかと問われそうだが、恐らく試験的なモノをクリアしてないのだろう。魂に救済を与えたい少年的には一緒にされてほしくなさそうでもあるし(エクソシスト違い。

 

 

「第一戦場育ちだぞ? 何時死ぬかもわからないのに、処女だなんだので腐らせられるのも御免だ。イリナだって、幼馴染とやらとの思い出だけじゃなく、再会なんかを目標として此処まで来たんじゃないか」

 

「それは……っ、そう、だけど……」

 

 

 改めて酷い設定だと思わrゲフン。

 

 さておき、返答に詰まるイリナが妙に可愛らしいのはCVの効果かと思われる。

 内田●礼は伊達じゃない。

 

 でも貴女の幼馴染、未だ失神してますよ?

 

 

「だから私も日々に悔いが無いように、丁度良さ気に戦場付近をウロツイテいたソラに事を頼んだんだ。なあに、出来たって教会に預ければ問題は無い。人類皆兄妹だ、私たちは仲間だからな!」

 

「オイコラ」

 

 

 サムズアップで良い笑顔を見せるゼノヴィアに、流石の真礼もといイリナもツッコミを入れた。

 ところで今更ながら、彼女らは何処の戦場に携わっていたのだろう。

 

 

「アンタ、まさか……!」

 

「いや、さすがに私も妊娠・出産のコンボまでは体験していない。目標ではあるのだが」

 

「洒落にならないでしょうが……! 私たちもまだ高校生なのよ!?」

 

「高齢出産よりはマシだと思うのだがなぁ。子供を作りたい身体が出来上がっているのだから、相応に生きることは何も間違ってはいない」

 

「言ってることは正しそうだけど……! それ普通に獣と変わらない……!」

 

「イリナも機会が欲しければ誘ってみると良い。ソラは、上手いぞ?」

 

同業他社(教会所属)を誘惑するなァーーーッ!」

 

 

 放課後の旧校舎の一角で、痴女的恰好の敬虔な乙女の絶叫が大きくコダマした。

 

 

「で、漫才はもう良いか?」

 

「誰が漫才かッ! そもそもアンタが……って、そっちはちょっと目を離した隙に、どうなってそうなったのよ」

 

 

 気づけば、アーシアはうーうー唸りながら、烏丸の胸元にぐりぐりと顔を埋めていた。可愛い。

 

 

「まあこっちはこっちで後々修復するさ。それはさておいて、話を続けたいと言うのならこっちからも言いたいことがあるんだが……」

 

 

 自分発言いいすか? と、烏丸がリアスに問うような眼を向ける。

 まだ言いたいことは多々在れど、どうにも雰囲気的に真面目な話と受け取ったのか、リアスは渋々ながらも了承した。

 

 

「そもそもなんだが、エクスカリバーを奪ったとかいうバルパーだったか。ソレ確か研究者だよな、教会所属の」

 

「既に追放されてる。かつて『聖剣計画』でこれまでにない人的被害を齎したからな、狭量ではないつもりだが、身内を殺す者を留める理由は我々にも無い」

 

 

 真面目モードに復帰したゼノヴィアが受け応える。

 翻って、原作アーシアなんかの『行動と結果』を呑み込むのに相応しい理屈で、教会追放の事例を准えている気がする。

 宗教的観点から言えば『悪魔』は『必要悪』であり、乗り越えるための試練や、自己の許容できない不審を呑み込むための理由に准えられるのだが、この悪魔が実体と種族を伴った世界線では確定的な『神または人の敵』に値する。

 よって、敵は許容できず、敵を治癒する彼女が追放されることは仕方のない話であった。

 

 まあ此処(二次)からしたら見通せないIF(もしも)の話はさておいて。

 

 ゼノヴィアの言葉に、イッセーを介抱していた木場祐斗が端の方で顔を顰めている。

 その伝わってきた緊張感にも似た嫌悪の感情に、烏丸が僅かに疑問符のようなモノを顔に浮かべたが、一瞬でそれは消えた。それはそれ、これはこれ。

 

 

「なるほど。計画そのものはもう云年前だったか、トスカが唯一の生き残りだったっけな」

 

「……待て、被害者と面識があるのか?」

 

「アーシアの神器で回復した娘だろ? 少しの間とはいえ、俺も護衛してたんだ。顔くらいは知ってる」

 

 

 祐斗がとてつもなく口を挟みたそうな顔をしていた。

 が、元々烏丸とあまり親しくないという気持ちや、そもそも教会所属であったというグレーな点を顧みて距離の詰め方を測り兼ねている期間だった、という祐斗なりの理屈が先行して言葉にならない。

 人生って奴は、上手くいかないことの方が多すぎる。

 

 

「そっちは良いとして、ただの研究者にエクスカリバー大半盗難されるって、教会の備品管理はどうなってんのよ。使い手が悉く斃されでもしたんか?」

 

「いや、別個に管理されていたのを狙われたらしい。というか、発覚したのは夢幻(ナイトメア)天閃(ラピッドリィ)の所有者が決定されない隙を突かれた、という形だったんだ。それらを一時的に管理していた透明(トランスペアレンシー)の所有者が襲撃されて、な。しかし、それのお蔭で残る2本の所有者も何時しか不明であったことが発覚し、芋づる式にバルパーが犯人なのだと確定された」

 

「なんだその笊な推理」

 

 

 ちなみに、擬態(ミミック)祝福(ブレッシング)はバルパーが狙う数年前にこっそりと烏丸に盗難&研究&破棄されており、彼自身もそのこと自体を忘却していたりする。何してんのお前。

 こいつこいつ、此奴が犯人ですよー。

 

 

「そして肝心のバルパー(研究者)が使い手を圧倒できるか、という点に関してだが……ストラーダ師匠の言うには、第二次大戦頃に討伐を逃した『聖剣に執着を見せていた堕天使』が居たとかでな。バルパーの背後には、そういう別組織の思惑と戦力が働いている可能性が……」

 

「……コカビエルか?」

 

「――は!?」

 

 

 驚きの声を上げたのはイリナだ。

 有名過ぎる堕天使の名が突然挙げられたことで、それが自分が敵対すべき相手なのだと即座に繋がった結果の驚愕だ。

 同時に、それが敵うはずがない、ということを自覚した理解でもあった。

 

 

「……知ってたのか」

 

「あの爺さんも酒が入るとその話ばっかりするからな。いくらマッスルでもいい歳なんだから、深酒は辞めておけって言っといてくれ」

 

「……ああ、そうだな」

 

 

 自嘲するように、ゼノヴィアは微笑(わら)う。

 それは、もう逢えないことを自覚した微笑でもあった。

 

 

「ちょ、ちょっと待ってよゼノヴィア!? そんなのが相手なんて私聞いてないわよ!?」

 

「まあ、不確定情報だからな。そもそも、『駒王町(此処)に』武力介入を嫌った上層部が入れられる戦力が私たちだけだったのだから、こうしたカミカゼトッコウ染みたことになるのも到仕方がない話だ。諦めろ」

 

「良い笑顔で自殺を仄めかすんじゃないわよ!? ヤダー! シニタクナーイ!」

 

 

「そんなお前らに朗報です」

 

 

「「え?」」

 

 

「ジャッジャーン! 私、参上!」

 

 

「「「「「「「「「「いや誰!?」」」」」」」」」」

 

 

 無駄にシリアスだった空気をぶっ壊し、がらりとドアを開けて入室して来た魔女っ娘ファッションの金髪の少女に、誰もが一斉にツッコミを入れた。

 第一声が第一声なのだから、当然の対応だった。

 

 

「初めまして! ルフェイ・ペンドラゴンと申します!」

 

「詳しく言うと、『エクスカリバー』の正式な所有者だ」

 

「「はい?」」

 

 

 名乗り、そして烏丸の注釈に、疑問符を上げたのはイリナと、何故か祐斗。

 そしてゼノヴィアはというと、

 

 

「ペンドラゴン……っ、そういう、ことか……っ」

 

「え? え、なに、どういうこと?」

 

 

 未だ話が見えないイリナを放置し、にやりと笑みを浮かべる。

 理解が及んだと受け取ったのか、烏丸もまた頷いた。

 

 

「ソラ、此処でペンドラゴン家を連れて来るとはな……っ! エクスカリバーは教会の所有だぞー!」

「実際、盗難にも遭ってるんだし。『正式な』権利を名乗れる者に譲渡すべき話だと思わないか? 逸話を遡ればエクスカリバーが正しく教会の庇護下に置かれた歴史も無い」

「くっ、しかしー、そのような戦力を放逐などできるはずがー!」

「ペンドラゴンには支配(ルーラー)のエクスカリバーだってある。対応策は執れる」

「ほんとうにー、できるんだろうなー」

「なんなら最終的には俺が破棄しよう。神器を使えば出来るだろ」

「仕方ないー。――よし。イリナ、帰るぞ」

 

「いやなに今の茶番!?」

 

 

 ものっすげぇ棒読みで話が付いた。

 部内の大勢が『ええええぇ』と言いたげな引いた顔つきをしており、ルフェイだけはニコニコと二人の遣り取りを眺めていた。

 

 

「いや、このまま此処に居ても意味が無いからな。本部に帰ってエクスカリバーの所有権を正式に名乗られた、と報告しよう。死にたくは無いんだろう?」

 

「確かに死にたくはないけど……、それ、大丈夫なの?」

 

 

 話だけを振り返れば大丈夫そうにも伺える。

 しかし、肝心のエクスカリバーそのものはまだ奪還もしていないのだ。

 放置して帰りました、と言えるわけが無い。

 

 

「こういう権利で口出しされるのは、織り込み済みじゃなかったら『ただの迂闊』だ。他に逸話の残る聖剣の所有権を主張したいのなら、話が通っていなかったペンドラゴン家にも話を通しておくべきだったし、そもそも『強い聖剣』だからといって、勝手に『エクスカリバー』って名付けるべきじゃなかったんだ。馬鹿じゃねえの」

 

「え゛?」

 

「『本物の』だったら折れてるわけがねえでしょ、7本ある時点で贋作の証明だわ。以前には日本にもあったみたいだし、メイドインジャパンの可能性もあるぞ」

 

 

 ガックゥ! と何故か祐斗が膝から崩れ落ちていた。

 

 

「イタァイ! えっ、なに!? なにがおこ……、なんすか、この空気……?」

 

 

 その拍子にイッセーが後頭部を強打し、漸く目を覚ましたらしい。

 orzの恰好で沈んでいる祐斗に、何とも言えない顔をしている部内の面々。

 失神前に色々と怖かったグレイフィアは平然と烏丸の後ろに控えているが、何故か烏丸の胸元から離れないアーシアと、見知らぬ少女がいつの間にか現れていたことにも困惑を覚えた。

 

 しかし、彼に説明する文字数()は無い!

 

 

「では、私たちは即刻国元に帰る。今ソラが言ったことをそのまま伝えてやれば大概話は通るだろうし、事の始末もソラなら任せられる。イリナ、最後に破壊の聖剣(エクスカリバー・ディストラクション)をルフェイ嬢へ」

 

「えっ。いいの?」

 

「良いも何も。権利を主張されたのだから仕方がないさ。いやー、残念だなー、私たちの冒険は此処で終わってしまったなー」

 

「……まあ、死ぬよりはいいわよね。はい」

 

「ありがとうございます!」

 

 

 ニコニコしたまま、イリナが何気に所持していた最後の一本をルフェイが受け取る。

 それを烏丸が、――横から圧し折った。聖剣逝ったァァァァァアアアア!!!

 

 

「へぅおい!?」

 

「ん? これで証明にもなったろ? 破棄は間違いなくやっとく、安心して帰れ」

 

「ん゛っ、んん゛~~~……っ」

 

 

 素手だった件について。

 ――神器は!?

 

 色々と言いたいことがあったが、目の前で壊されたことにルフェイの笑顔も変わりはしない。

 真っ先にツッコみ、言葉を呑み込まざるを得なかったイリナは、苦渋の顔付きで良い笑顔の烏丸からの帰宅宣告を請けざるを得ない。

 チクショウ、なんて言ったら良いんだ……!

 

 

「フ、流石だなソラ。こんなところで何をやっているのかと初めは思ったが、その調子は狂いもしないらしい」

 

「お前俺をどういう目で見てるの」

 

 

 それを、お前が言う権利は、無い。

 

 

「久しぶりに逢えて嬉しかったよ。なあソラ、キミさえ良ければなんだが、今夜、空いてるか……?」

 

「帰れ」

 

 

 とりあえず、良い笑顔のままに烏丸は彼女らを追い払ったそうな。

 どっとはらい。

 

 ――え? 冒頭の描写?

 もうわかってんだろ。詳細は省く!

 

 




ゼノヴィアはヤリタイサカリのフレンズなんだねスゴーイ!

すみません。言ってみたかっただけです
なおゼノヴィアは教会に育児放棄する気で預けるつもりは一切なく、単純に自分も育っているから大丈夫だろう、みたいな考えだったと言っておきます。見通しが甘ァい!


なんか今更レイナーレを速攻片付けた件に言及して粘着してる人が感想にいらっしゃるご様子
随分な云われ様ですけど、クロスオーバー先の世界線からするとそこいらの少女が被害に遭うのも平常運転なのでなんとも言いようがねぇ

なので返信も向こう様の書いている作品にも特に触れることなく放置してます
生暖かい目で見守れば良いのかしら



予想外に長くなりました
今回のは前情報あるんなら初めっから言っとけや、みたいな話です
作中のなんちゃってエクスカリバーにはそもそもツッコミどころしかないんだから、ルフェイが出てくればそらそう(なる)よ、という解釈で

そして裏側でしっかりと暗躍してる烏丸
何してんのお前(もはや合言葉で挨拶)
でも聖剣というかその材料に関してはクロス先で通説がありますので、気になっちゃったらしいからね、仕方がないね

次回はルフェイも交わっての聖剣奪還作戦。get back ride!


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破壊・擬態・祝福の聖剣「あああぁぁぁァァァァァアアアアアア!!!」

お気に入り登録・感想・誤字報告感謝です
…なんかね? 前話だけで句読点とてにをはに関してモノスゲェツッコミ入れてくるひとがいらっしゃったの…。か、感謝です(泣き
ところでクリスじーさんの挨拶に誤字報告してくる方、「今晩わ」でも問題は無いから。ひらがなにすると違和感も無いから。誤字一回拒否ったのだから再度修正点入れなくて良いから。…別の人か?

そしてなんか一瞬だけど日刊ランキングに名を連ねたご様子。35位でした
ホンマヤモン!ウソヤナイモン!ホントニトトロイタンダモン!

ちなみにだけど、前回こっそりとキディグレイドやゲットバッカーズを思い返しながら書いた部分があったけども誰にも触れられなかったのでスルーを推奨(小声



前回までのあらすじッ!
内田と種田が戦線離脱ッ


 さらばだ聖剣(エクスカリバー)! 良い人生だったッ!

 

 と、桜の大輪を幻視しつつ花見酒で幕を引くヤブ医者のテンションの如く「圧し折れるかな?」と試して視たわけだけど。

 折ってから今更思い出したけど、前にも2本くらい()ってたわ。

 改めて証明する必要も無かったかねぇ?

 

 まあ、今日日(きょうび)の聖剣って大概が属性付与程度しか施されてない(ナマクラ)ばかりだからねー。

 対悪魔に特化させ過ぎて、本来の錬鉄の在り方や歴史上の『実在』を顧みない。

 剣としての扱いも、『格』としての立場も諸共に不十分。

 何より属性に拘り過ぎて製鉄の段階で技術不足な時点で、常温超電導すら下地に置けないんじゃ『神話劣化』ってな話だよ。造語だけど。

 

 『其れ』を骨格に敷いて、ハイブリッドに『造られた』俺の手で壊せない道理は、ねぇよなぁ。

 アップデート前ならまだしも、ここ数年でヒヒイロカネ錬態調整も済んでるんだから。

 同種の合金か古代神格か、ソレに伴う共振作用でも発する『何か』が出揃わない限り『ほぼ』敵なし、ってのが『俺』なのだし。

 

 つまりは、目下のところ『研究者』っていうのが一番の留意点ってところか。

 

 

「さてそんなわけで。先ずは相手の狙い目を推理していこうか、と思うんだ」

 

 

 ニッコリ哂って柏手ひとつ。

 正義の味方でも悪の組織でも、それを『敵』と認めたなら最初の手筈は決まってる。

 

 『探して狩る』、此れに尽きるのさね。

 

 

「愉しそうですね!」

 

「愉しいね。後顧の憂いなく蹂躙の限りを尽くしても構わない相手が出てくる、というのは、実に愉しい」

 

「本物の悪魔よりも悪魔らしい貌で嗤ってるわね……」

 

 

 リアスぶっちょが引き攣った貌で呟く。

 まさに猛禽の如く、今の俺は微笑んでいることだろう。

 

 ――戦争を、しようじゃあないか。

 ヒトは結局、()()()()()が何処までも好きなんだ。

 善人も悪人も、聖人も罪人も、男も女も、大人も子供も、生者も死者も、鬼も神も仏も、天使も悪魔も堕天使も、誰も彼もが相手を乗り越えて自分が勝ち上がることが何処までも好きなんだ。

 

 難敵? 斃せれば快感を知るだろう?

 天敵? 乗り越えれば実感を得るだろう?

 強敵? 斃さなくちゃお前の大事なモノは奪われるだけだぜ?

 

 宿敵も好敵手も残敵も弱敵も、蹴散らしたい衝動に駆られるのがヒトのサガ。

 望むと望まざるとに己を別けることも無い。

 勝ちたいように勝とうじゃないか、誰だって勝負事は大好きなのだからさ――。

 

 負けるかもしれない? それは負けた後で考えろ。

 獲らぬ狸のなんとやらとも謂うし。

 消極的じゃ勝てるモノも勝てやしない。

 

 まあ、俺の場合は勝つか負けるかじゃないんだけども。

 

 

「いや、それよりもまずは色々と説明が欲しいんだけどよ」

 

 

 と、俺の奮起に水を差すのは、先ほど目覚めたばかりの兵藤先輩。

 説明? と小首を傾げる。

 

 

「状況がな、訳が分からなすぎるんだ」

 

「それは、失神していた先輩の落ち度では」

 

 

 なんで気を失ってたのだっけ。

 ソラくんわかんにゃい (´・ω・)?

 

 

「いやそれは確かにそうだけども! 気づけば青髪とツインテールは帰ったし! 知らない娘がシレっと部室に居るし! そもそも今日は来週に迫った球技大会の部活対抗ドッチボールに関するミーティングがなかったか!? いつの間にか烏丸主体で物騒な話にシフトし掛けてることにイチ学生が異議を唱えるのは間違っているカナ!?」

 

「おお、なんかスゲェ勢いで頭良さそうに言い切りましたね。転生ってやっぱスペック騰がるんですかね」

 

「何気に前までの俺をdisってないかソレ!?」

 

 

 実際のところ、死者の蘇生が眉唾なのでGANTZや亜人や鏡の門(ルッキングラス)理論で語ると『本物の別人』に成っている可能性も僅かながらにあるのだが。

 まあ我思う故に我在りとも謂うし、この場でノリと勢いで生きていそうな先輩の正体と中身がどう在れど、外観には差異が無いのだから別段問題視するモノ(理屈)でも無いか。

 最悪本人が葛藤に嵌まらなければ、其れがスワンプマンだろうがルサンチマンだろうが転生者だろうがⅤチューバーだろうが問題は無いのです。

 

 

「ふむ。それじゃあチーム分けから行きましょうか。まず(まと)として真っ先に狙われそうな兵藤先輩は内野正面、主人公っぽい立ち位置(ポジション)を自覚してもらいつつ敵チームを煽って逝きましょう。当てられるべく投げられる剛速球を正面で受け取ってもらい、主砲・(ブルマ)塔城へのゴロボールによる自然なパスで受け継がせ、至近距離で薙ぎ払わせます。此れで、一殺(ワンデッド)

 

「違う! そうじゃない!」

 

 

 なんで?

 

 

「えっ?」

 

「その本気でわからない顔はヤメロォ! それはドッチの話じゃねーか! そっちじゃねーよ! 説明責任果たせよォッッッ!」

 

「センパイ、ドッチじゃなくてドッヂです」

 

「どうでもいいわ!!!」

 

 

 違ったのか。

 本題だと云うから戦争(クリーク)そっちのけで球技大会のシフトを組もうかと話を引き継いだのに。

 

 

「っていうか、ドッチボールの話題にしたって物騒が過ぎるぞ……! 普通に俺と相手をひとり殺してる……!」

 

「やだなぁ、上手く味方を殺して相手を罠に嵌めるのがチェスの基本じゃないですか。リアスぶっちょだってこれくらい考えられますよ」

 

「其処で私を引き合いに出さないで欲しいんだけど……。っていうかチェスってそんな物騒なゲームじゃないでしょ? ……朱乃、無いわよね?」

 

「自信が無くなってるじゃないですの。……グレイフィア様、無いですわよね?」

 

「木乃伊取りが木乃伊に。無いわけが無いですね、チェスは本来『そういうモノ』です」

 

「……というか私が自然と変態染みた恰好(ブルマ)にされてる件について少し話し(ツッコミ)ませんか?」

 

「皆さん話題が逸れて逝ってますよー」

 

 

 何故か未だに落ち込み継続中の木場先輩は静かだが、最後にアーシアのツッコミでひとくくり。

 だがヒートアップした会議は留まることを知らなかった。

 

 というか狙われそうってなんだよ、という兵藤先輩の疑問符を皮切りに、学内で話題の痴女先輩ふたりにマスコット&イケメン付きの部活動に何故か特例的に入部を許されてる変態じゃないですか狙われないわけが無い、という真実(こたえ)を引き合いに差し出し、未だ貴方の中では私の印象そうですの!? と朱乃先輩に問い詰められ距離を狭められる乳が当たる。そういうとこやぞ。

 っていうか私も痴女じゃあないんだけど!? とリアスぶっちょの臨界が早々に突破し、ブルマがイケメンとの関連とはドッチじゃなくてドッヂがエクスカリバー呑み込んで地球は滅亡する! と議論の題目が方々へと散って往く。

 

 どうしてこうなった。

 

 

「ええい! しーずーまーれー!!!」

 

 

 鎮まれ鎮まれぃ! と最終的にミッテルトの絶叫が響き渡った。

 きっと前世は助さん。……格さんだっけ?

 

 

「話が進まないし纏まりもしないのでアタシが議長を務めるッス! 文句あるか!?」

 

「「「「「ナイッス」」」」」

 

 

 誰ともなしに、そう云った。

 そういうことと、なった。

 

 

 

  ■

 

 

 

「改めまして、ルフェイ・ペンドラゴンです! ペンドラゴン家の末裔、ということになっている家系の娘です! 兄の名はアーサーです!」

 

「まあ、見た通りに色々と属性過多な魔女っ娘だよ。設定的には明らかに無理くり後付けされた感が極まってるけど、本人が言うように表向きの話だから。だからさっきの話で通じない理屈(部分)があることを分かった奴はアレだ、察しろ」

 

「どういうことなの……」

 

 

 とりあえず、球技大会のミーティングに関しては今は良いらしい。

 どうにも生徒会の面々との顔見せも含めて色々と予定が入っていたらしいが、人吉善吉のパチモンみたいな先輩を通じてまた後日の申し送りと相成った。

 まあこっちの事情がゴタゴタし過ぎて整理ついてないからね。仕方ないね。

 しかしチラと見えた支取の会長&真羅(マーラ)の副会長は何故にテニスの恰好を。

 

 さておいて。

 なので、問われた新参少女の説明から話題は入る。

 

 しかし茫然と呟くリアスぶっちょの反応を顧みるに、理解の追い付いていない部分が彼女にもあるらしい。

 察したらしいグレイフィアや、元からそこそこ知っているアーシアなんかは黙しているのだが。

 

 ……あっ、これアーシアの場合はこの場から移動したくないだけだな?

 彼女、姿勢が楽なのか俺の胸元から顔を上げようともしねぇ。

 

 

「うーんと、アレですよ! 要するにヴァチカンも絶対的な立場じゃないっていう話です! 悪魔討伐こそ推奨してますけど、実際に動員掛けようとすれば戦争になるのは目に見えてますし!」

 

 

 そもそも今回のバルパーみたいに、他にもヴァチカンって被害を出し過ぎてるんだよなぁ。

 人類救済または安寧が教会の本分なはずなのに、対抗戦力確保のために人材の使い潰しが罷り通っちまった。

 そういう本末転倒を行動で示してしまったから、さぁ大変。

 ヴァチカンは求心力をとっくに失ってますよ、と謂う話。

 

 そりゃあ別の信仰としてアーシアに傾くのも仕方がねぇわ。

 教祖で信仰対象が美少女だもん。誰だってそうする。俺だってそうする。

 

 

「『戦う力』だけを求める時代じゃ無い、という話ですね! 大事なのは『国民が安全に日々を暮らせること』ですし、防衛力としてでも分かりやすい『戦力(エクスカリバー)』なんて今更要らない子の筆頭ですよ! 在れば便利かも知れませんけど!」

 

「ああ、だから折っても何も言わなかったのですわね。いえ、折れる方も折れる方ですけど」

 

 

 姫島先輩が、とてつもなく何か言いたげな目をこちらへ向けている。

 折れるんだから、良いじゃん。

 

 

「えーと、一応聞いておきたいんだけど、烏丸とはどういう関係なんだ? そもそも烏丸って教会? バチカン? の所属だろ?」

 

 

 兵藤先輩は、どうにもチラチラとルフェイのスカートに目を向けながら、自分でも把握していなさそうなことをおっくり返しひっくり返し問いかけていた。

 まあ、元気っ子だからね。ごちうさのチマメ隊レベルの。

 動くたびに色々とピョンピョンする娘だから、男の視線が向けられるのも致し方ない。

 

 でもアンタ胸のでっかい娘が好みなんでしょ?

 それとも女子なら誰でもイイの?

 それっぽい疑惑は僅かながらにあるっちゃああるけども。更衣室覗きとかさ。

 

 

「関係ですか? ソラさんの師匠のお友達の伝手で師事をひと時受けたことが……」

 

 

 云いながら、自分でも立ち位置を行方不明に置きかけているご様子。

 多分言葉も若干間違っている。

 

 言葉尻が窄み、元気が失くなっていきつつも。

 悩みで湯気が上り始めた頃、ようやくピンと来たのか顔を上げた。

 

 

「! お母さんがソラさんの再婚予定です!」

 

「どういうことですか」

 

 

 うわ、びっくりした。

 

 控えていたグレイフィアがずずいと傍で問いかけてくる。

 というか、部内の視線は自然と俺へと向けられている。

 えー……、俺が説明するの?

 




【悲報】烏丸、人生敵しかいない【ルナティックモード確定?】
だがしかし、本題が、片付かない…! あと議長務めてるはずのミッテルトたんが空気

なお烏丸視点での『ニッコリ哂って柏手ひとつ』が判り辛いというお方は、クロス先5巻での某魔女さんの「新しい眼鏡をつくろう!」をご参照いただければ近しいです

あとイリナの挨拶が不十分だったご様子でイッセーに幼馴染と認識されていないっぽい
まあ、再会したら悪魔で変態だったらね…目も合わせたくないよね…。あっ、変態扱いまでは知らないか?

ヴァチカン云々は現実ともリンクしてる感が微レ存
いぇーいマリア様見てるー?www
地方神父が世界中で児童虐待しまくってた話見てたー?www
…ホント笑えねぇわ

次回、オリジナル設定挟みます


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小猫「えっ、私? が、がんばります。にゃー…!」

もうずいぶん前の話でもありますので時系列が妖しくなってきてます
使い魔の後に生徒会と顔合わせだったか。テニヌは何処に入るんだったか…

…あれ? アニメオリジナルだっけ?


前回のあらすじ
烏丸、冒頭の爆死フラグを回収し無事また死亡(自爆とも云う


 なんていうことはない。

 単純にルフェイの実家に顔出しした伝手で、彼女の母親に気に入られて多少爛れた関係が繋がれた程度の仲である。

 アーサーくんには拒否られているので、正式採用という話でもない。

 

 

「爛れた時点で、もうダメなのでは……?」

 

 

 シャラップ塔城ちゃん。

 核心を突くんじゃない。

 

 そういうことは『大概の方々』が把握しているだろうけれども、口にしないのが『お約束』だ。

 大人しく、音為しくしつつ『アッハイ』とでも頷いておくのもまた『お約束』という噺だよ。

 ユーコピー?

 

 

「コピ?」

 

「通じなかったか、女子高生の合言葉だとかで使ってみたのだけど。了承するときは『アイコピー』と返すのが礼儀だそうだぜ。ユーコピー?」

 

「わかりました」

 

「アイコピーだっつってんだろうが」

 

 

 塔城ちゃんとの小粋な漫談はさておいて。

 

 俺としては『人妻や幼女には好かれる』という前言を撤回することなく踏襲した、その程度の内訳であるからして、別段恥じることも無いのである。

 有言実行。

 世に謂う『男らしさ』とは、多分こういうことなのではなかろうか。

 

 ――なのでアーシアさん? いい加減、この正座を解いても宜しいですよね?

 

 

「ダメです♪」

 

 

 わぁ良い笑顔……っ!

 

 部室の床に敷かれた、表側を斜にギザギザカットを施した石板に(じか)と座り、重石代わりにアーシアさんを抱いての小1時間正座の刑。

 アーシアさんが体重掛けてくるので、脛は痛いが柔らかさと程よい体臭で俺の息子がおっきしそうになる緊急事態だ。

 命の危機を感じると子孫を残そうと生物は頑張るとかいう、アレだ。多分。

 やわこいなー、いいにほいだなぁー。

 

 ――クソッ! なんて容赦の無い刑罰を仕掛けてくるんだこの聖女ッ!

 見て見ろイッセー先輩のあの貌をッ! 血涙流して後輩のために怒りを我慢してやがるッ!

 アレを見て何とも思わないなんて、この部には人非人しかいないのかッ!

 

 

「いえ、あのひとの感情は(シモ)方面に駄々滑りしてますので、烏丸くんが言うほどの後輩想いというわけでも無いですよ」

 

「断言するね小猫ちゃんッ!? そ、そんなことはないぜ! 烏丸を其処まで虐めるのは辞めるんだ! 俺が代わりに罰を受けるッ! さあアーシアちゃんカモンっ☆」

 

「ところでソラさん、『人妻と幼女』と云うからには他にも余罪在りますよね? カウントもう1時間追加です♪」

 

「そ、そんなことはないしィ!? この学園で程よく距離が稼げたと思ってる塔城ちゃんのことですしィ!?」

 

「誰が幼女ですか。別に距離も近づいてないと思いますけど。なんなら物理的に互いの距離を0に換えましょうか?」

 

「そういうところだと思いますけど……」

 

 

 のそり、とアーシアさんの隣に腰掛けてくる塔城ちゃん。

 要するに俺の膝の上に重石替わり追加。

 やわこい刑罰もワンプッシュである。

 

 名は体を表すとでも謂うのか、無駄に猫っぽいムーヴを偶にこうして敢行してくるのだから、そりゃあ入学直後からしたら距離稼げてると思うわけでありまして。

 これを思い違いと評するには、俺にゃ青春ポイントが未だ足らねぇ。

 

 でもいい加減塔城ちゃんを変換するとき搭乗やら登場って間違って打っちゃうから、そろそろ名前呼びにしてくれても良いのよ? ってソラくんも思います。

 ホラ、距離を狭めるには呼び方から、って誰もがわかってることでしょう? 女子から歩み寄って貰わないと年頃男子としては気遣いが先立ってしまうのん。

 

 しかし電波なオフトゥン美少女やジョジョな叔母さんも居ないのでマイナスに加算されることも無いはずなのに、何故に俺のポイントは不十分なままなのか。

 ブリキ絵じゃ無いから無計塁とでも云うのであろうか、天の神様よ。

 

 

「……なぁ、無視は辞めてくれませんかね……?」

 

 

 キラッ☆と歯を煌めかせたポーズのままに、イッセー先輩は目の幅に涙を流していた。

 滂沱、というやつである。

 

 

 

  ■

 

 

 

「さて。話を元に戻そうか」

 

「そッスね。で、なんでしたっけ?」

 

「兄は年頃らしく拒否の(てい)ですが、私としてはソラさんのことをダディとお呼びすることはやぶさかでも無いんです!」

 

「そっちの話じゃねーッスよ……」

 

 

 仕切り直したいコンビ片割れのミッテルトが力無く、床にorzを決め込んだ。

 待て、諦めるんじゃない。

 諦めたらそこで試合終了だって、安西先生も言って――、

 

 

「しかし、仮にとはいえペンドラゴンは立場もあるでしょう。ソラさんを取り込むには、些か(しがらみ)が多すぎやしませんか?」

 

 

 ――グレイフィアまで話に乗り、orzトリオがカルテットに換わる。

 絶望した俺とミッテルト、先立って絶望していた木場&イッセー先輩コンビを放置し、彼女らは話を進めるのである。

 

 多分、本題は一切進んでない。

 

 

「母は――、アルトリア・ペンドラゴンは元々嫁入りなので、家系図そのものには携わっていませんね! ソラさんとの仲も良好のようですし、父だったひととはもう別れて母個人の幸せを選んでもらっても構わないですね!」

 

「なんだか聴くだにギリギリなお名前の方ですけど、まあ、取り込もうとしているわけでは無いようなので黙認します。あとはソラさんの意思次第でしょうし。ちなみに御父上のお名前は伺っても?」

 

「確かサトゥー・ペンドラゴンとか云ったはずです!」

 

「苗字に苗字じゃないですか」

 

 

 どうなってんですかそれ。

 と、アーシアが何故か俺の将来を采配していた。

 

 ちなみに件の佐藤さん、ここしばらく行方不明のご様子で、ルフェイ並びにマザーペンドラゴンはそんな放蕩おっさんにすっかり愛想を尽かしているために青い果実に嵌まって締まったらしい。

 上手いこと言ったな、俺。

 

 

 

  ■

 

 

 

「仕切り直そう」

 

「同感っス」

 

 

 こんなんアルトリアランサーじゃないですかヤダー、というマザーペンドラゴンの写真を拝見したアーシアがその豊満さに泣き声を上げたことを皮切りに、俺たちは絶望の淵から蘇った。

 色々とアレ過ぎる情報が飛び交った気がするが、話を進めるのに問題はナイ。

 

 なお唯一反抗を示しているアーサー某くんは『次元を渡る剣技』だか何かで世界中を渡り歩き、放蕩おっさんの捜索に乗り出している最中であるらしい。

 頑張れアーサーくん、お前だけが勝利の鍵だ。

 期待を抱く俺とは裏腹に、彼自身からは蛇蝎の如く嫌われているので仲間意識も無いのだけれど。

 

 序でに言うと、あの子俺以上に負け犬臭いからなぁ。

 勝てない、とは言わないけど、なんだか無駄白星ばかり挙げて肝心要の勝負は黒星率が高そうというか、そんな気配。

 仲間に備えても、勝率下がるだけで勝ちの目は薄いから、こんな距離感でも問題ないのかもしれない。

 

 

「ハイハイ、あんまり関係ないところの葛藤は無視するッスよ。それで? 結局ソラさんは何が言いたいんすか」

 

「ああうん。いやね? そのバルパー何某は、なんでこんなところにまでやってきたのかな、っていう話。予測だけは付いてるんだけど、聞きたい?」

 

 

 考えても仕方のない問題はさておいて。

 

 この町に持ち込まれたというエクスカリバー(駄聖剣)×3と、付属の児童虐待性犯罪者(バルパーガリレイ)、あと実力的にテロリストっぽい堕天使(コカビエル)の狙いを想定してみよう。

 そんな試みを口に出す。

 

 そうすると、ミッテルトは途端に嫌そうな顔をした。

 何故に。

 

 

「……とりあえず、ルビが色々と酷いのはさておいて。全体俯瞰が常識とやらな現代錬金術師サマの話なら、誰だって聴いておきたいと思うッスよ? 多分、想定の酷さに誰もが目を背けたくなりそうな予感もするッスけど……」

 

「現実はいつだって嫌なことやこんなはずじゃなかったことばっかりだよな」

 

「言ってることは正しいけどアンタに謂われたくはねーッス」

 

 

 現実は苦く苦しく正しいからこそ、現実を見せる苦言は『苦言(この文字)』足り得る、って偉い人が言ってた。気がする。

 

 正しいだけじゃ人は聴かない? でも逆説法の甘言は大概唆すための言葉だよね。

 甘やかすことは優しくされることとは別問題だってばよ。

 甘さと優しさを区別できなくなっちゃお仕舞いだと思うのよ。

 お前は優しくも無い? そんなことはないよ?

 

 本気で優しさが無いのなら、言葉にはしないでしょ?

 興味が湧かないよりはマシじゃない。

 

 

「多分だけど、性犯罪者の狙い目は研究そのものなんだろうなぁ、と。あ、イッセー先輩のことじゃねえっすよ?」

 

「それは誰でも気づいてることじゃないかな」

「誰が性犯罪者だ……」

 

 

 木場先輩とイッセー先輩がマイルドに、力無くツッコミを入れつつ復活した。

 ――これよりorzカルテットは、音楽性の違いにより、解散するッッッ!!!

 

 

「ああ、言葉が足りませんでしたね。児童虐待系性犯罪者のことです」

 

「性犯罪者を否定しろ……ッ」

 

「まだ力無さそうだなぁ」

 

 

 ちなみに撤回はしない。

 反省しなさい、覗き&セクハラの常習犯(@性犯罪者)

 

 

「……そっちのことはともかく、バルパーの狙いなんて初めからわかってるじゃないか」

 

「なあなあで済ませちゃダメな話でもありますが……。いえね、剣は結局のところ武器であって、使い手が居なくちゃ話にならないんすよ。で、聖剣の使い手なんて割とレアっぽいですし、それが性犯罪者に傍仕えているのかなぁ、と」

 

「……ん? いや、ちょっとまって、順序立てて説明して?」

 

 

 え、めんどくさ。

 

 

「ですからね、聖剣の研究のために必要なモノは、聖剣本体だけじゃ足りねえんです。どっかで剣士でも調達すれば話は別ですが、そこまでは情報が足りねぇので置いときます。そこで話は戻りますが、性犯罪者の目的は研究で、此処は悪魔の領地です。聖剣が天敵と言っても過言じゃない種族の治める、ね」

 

「……危機じゃないか……!!」

 

 

 だからその話をゼノヴィアとかがしていただろうに。

 ……してなかったっけ?

 

 

「えーと、コカビエルじゃ使えないのか?」

 

「『所持』は出来るでしょうけど、『使う』となると相性悪いでしょーね。オーラが邪魔ですわ」

 

 

 だから属性付与だけで聖別決めてるんだろうなぁ。

 誰にでも使える武器じゃ威厳が保てないから。

 でも武器は武器だよ(無慈悲。

 

 

「バチカンはイタリアから海を越えて山越えて、僕らの街へやってきた性犯罪者の目的は研究第一。じゃあ必要なモノを一つずつ踏んでいけば、今の状況も居場所も目星は付きます。『使い手』『討伐対象』それ以前に『安全性』」

 

 

 悪魔の領地となるからには正反対の言葉になるだろうけれども、逆に考えれば此処は件の性犯罪者にしてみれば割と安全地帯でもある。

 そもそもが、

 

 

「バチカンから追放されて聖剣の強奪までしてるんだから、表立って手出しできない管理地へ逃げ込むことは理屈に合う。と、此処まで考えれば一石二鳥は成ってるわけです」

 

「加えて堕天使の後ろ盾……、引っ掻き回すには充分すぎる戦力だね」

 

「いやぁ、其処は考えなくても良いんじゃないッスかね……」

 

 

 と、コカビエルに関しては否定を指し、先輩方からの不審にも食い下がらないミッテルト。

 

 実際、そうだよなぁ、とは思う。

 そもそもミッテルトの立ち位置が、状況を戦争へ追い立てるモノではなく協調と共立を擁立させる『堕天使総督』の理屈に沿っているのだから、コカビエルは堕天使『全体』からは背いている形だ。

 納得を買うには難しいだろうが、単騎を脅威と見做すのも難しいので、警戒すべきモノは矢張り先に挙げた通りのアレにしかならない。

 続けて浮かぶ疑問点は、じゃあコカビエルの狙いってなんじゃらほい、というモノだけど、そこはまあまた後日ってことで。

 

 しかしまあ、其処も警戒するというのなら、させておいても問題は無いのだろう。

 方針は決まっているわけだし。

 

 

「じゃあ今後、先輩方は単独行動を控えて、活動も自粛の方向性で」

 

「えっ、契約とかもか?」

 

「当たり前でしょうが。聞きましたよ? 悪魔になったのに魔力が足りないから転位も出来ないイッセー先輩。加えて、夜の街を何故かうろついたために死ぬ羽目になったイッセー先輩。アンタだけで死亡フラグバリ立ちじゃないっすか。死にたいんすか?」

 

「それ言っちゃダメな奴ゥ!!!」

 

 

 会話に加わらなかった残りの面子は……。

 まあ後で教えておけば良いか。

 

 以上、会合終わり! 閉廷! 解散!

 




>クソお世話になりましたッッッ!!!
解散するッ、からのコンボ。多分違う

オチが弱い?
次回に続けば良いんだルォン!?


原作との相違点を上げますと、
バチカンからの使者が来たのが早かった。コレですね

自分の立ち位置()を思い出した祐斗が単独行動する暇も無しに、事件があったのなら方々へ明かして置けや、という平和と救済を目的とする()バチカンへの行動力と即応力に多少のブーストを掛けてあります
というのも、追放されてないアーシアが悪魔の領地に居ることと、以前にやらかしていたりもする要するに前科アリの烏丸がフラフラしてるために危機意識を煽った形です

でも今回の大事な部分は前半部じゃなかったかと思われるのん
アーサーくんの評価が何気に酷すぎるし…

なおペンドラゴン家はオリ設定です
元ネタをアーシアさんも把握してますのでクロスではなくそっくりさん。多分
放蕩おっさんは異世界でロリハーレム形成してるんじゃないかな、って妄想してます。戯言ですが

次回、また自己解釈が挟まれます


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アーサー「本人顔出ししてないのに評判ヒックゥイ…!」

出来ちゃったので連続投稿です。読み飛ばした方はおひとつ戻れ

本日の議題は『死者の定義と逝き尽く果て』について

独自解釈を挟みます
異論は認める


前回のあらすじ
アルトリアランサーとのネットリセッ(ry


 そもそもが、何故この地に悪魔だけではなく堕天使までひょっこり顔出ししていたのかというと、此処が冥界への入り口になっているからに他ならない。

 

 基督教、いちいち変換がめんどくさいので某C教と略すが、其処での教義に依れば『悪魔たちの住まう土地』即ち『地獄』はエルサレム、現在のパレスチナの、地下深くに存在しているとされている。

 天国と共に其処らは『死者の魂の逝き尽く先』であったのだが、ちょっと現実に当て嵌めて理解してみようと思う。

 

 まず、この『世界』において、死者の魂を監督する立場は実在していない。

 

 命は死んだらそれまでで、基本どのような神魔にも取り扱えも出来やしない。

 それは、神器がほぼ偶発的に世界中の人間の『誰か』へ引き継がれることと、同じように『英雄の魂』なる物を受け継いだと自称する人間が時折見つかることに起因する、俺なりの『解釈』だ。

 

 ジッサイ間違ってないと思うんだよなぁ。

 キチンと管理できていると言うのなら、そもそも某C教が教義上認めていない『転生』が普通に受け入れられているわけもないし、それこそ悪魔も天使も堕天使も、それぞれに充てられているはずの『役割』を機械的にシステム的に熟すだけの概念に置き換わっているはずだ。

 生きて、考えて、好きに動くのなら、それはもう人と変わらん。

 

 兎も角。

 そうした役割を熟さないからこそ、彼らは自分たちが生きるための場所を確保し、其処に『死者』というリソースを還元しない情報素子を保有するだけの余裕を抱けるわけもない。

 つまり、死んだ人間が逝き尽く『天国と地獄』は実在が危ぶまれている、そういう結論に辿り着く。

 以前に知り合いの天使に聞いた話だと、天界には『煉獄』という死者を取りまとめるために『辺獄』を参考にして神が造ったとされる空間があるらしいが。

 

 ……いや、煉獄って確かルシファーの失墜で地獄を反対側へ突き出ることで偶発的に出来た山じゃ無かったか。

 立ち位置的には問題は無いのだろうけど、神が造ったとか言われるとルシファーの反逆がマッチポンプみたいに伺えるから言い方換えたら?

 

 つーかホントに其処がキチンと死者を取り扱ってるって云うのなら、ここいらに流転もせずに漂っている幽霊とかは何なのよ、という話に逝き尽くのさ。

 教義的には『改宗を果たせなかった者』が『罪を償う場所』らしいけど、ぶっちゃけ『辺獄』との違いが判らん。

 適当な場所でうろつく悪霊とかも連れてってやれよ。

 

 話を戻すが。

 地獄は地獄ではなく、死者が辿り着いても居場所が無い。

 では其処はどうなっているのかというと、冥界と呼ばれていて、悪魔と堕天使が住み着いている異世界に今は成っている。

 

 で、その入り口が、駒王町にあるわけよ。

 

 まあ、堕天使も悪魔も、人間社会の何処そこで適度に居場所も造って隠れ住んではいるのだけれど、要するに本拠地への行路が此処ってなる話だな。

 そりゃあハグレ悪魔も多いはずだわ。

 しかも悪魔の領地なのだから、悪魔社会から『はぐれた』奴らにとっては不倶戴天の忌むべき敵。その恩恵を知らず受けている住民らだ、被害は鰻登りになるのも致し方なし。

 

 序でに言うとバチカンにとっても救済に値しない。

 往年のソドムとゴモラに匹敵するレベル。

 むしろ駒王町が地獄なんじゃね? 住んでる奴らが危機に晒され過ぎてて草しか生えないわ。

 

 ともあれ、主要流通経路を掌握すればスタンスは優位に立てる。

 堕天使がふっつーに侵入していたのも、そもそもが冥界に繋がっているからで、雑魚もとい実力不足の下っ端がデカい貌を晒して居られたのも、その辺りをキチンと把握できていないように伺えた年若い悪魔が管理者に当たっていたからだな。

 ふむ。

 ひょっとしてこれも狙っていたのかね。

 

 敢えて穴にしか見えない実績も実力も足りない若手を宛てることでハグレやら敵やらを集約させ、他の地方に冥界発の『被害』を及ぼさせないための『生餌』。

 現魔王ってぶっちょの実兄だったはずなのだけど、ここらへん身内にも容赦なく取り扱えているって云うのなら実に王の視点ではあるけれど。

 

 まあ、色々と方々へ紆余曲折あった俯瞰はここらへんにして。

 

 

「で。今日はどういうご用件ですか、イッセー(自殺志願)先輩」

 

「ルビ可笑しくね!?」

 

 

 危ないって云った矢先、独りでウチにまで来た莫迦には此れで充分。

 今何時だと思ってんだ、グレイフィア啼かせ続けてもう深夜廻ってんだぞ。

 

 

「別に起きていたからイイですけど、普通にこんな時間に伺って来られても困りますよ」

 

 

 いっしょに迎えたアーシアが、寝間着から部屋着に着替え終えて不満を口にする。

 それでも茶を出すのを忘れないのは、応対力としては破格の嫁力だ。日本語って不自由。

 

 で、メイドは何やってんだ。

 夜の御勤めで力尽きているとか、言い訳にならんぞ。

 

 

「いや、色々と考えてたら眠れなくってさ。っていうか、夜の方が元気が有り余ってる感じがして……」

 

「ああ。悪魔って陽の光に弱いらしいから、逆説的に夜の方が活性化するそうですよ。夜行性ですね」

 

「……動物みたいに喩えるなよ」

 

「ハハハ、タスマニアデビルとか、上手いことをw」

 

「言ってないからね!?」

 

 

 あれ、そういえば夜行性の割には元気なはず(ヤングアニマル)のメイドはめっさダウンしてるな。

 あとでもういっかい生態調べ直すか?

 

 

「で、なんで来たんスか? 元気になったンなら、そういうお店にイケばいいんじゃないんスかね?」

 

「そういうはなしじゃねえよ!?」

 

「そうなんスか?」

 

 

 さらりと、ミッテルトがシモネタでイッセー先輩を弄る。

 どうした幼女、何があった。

 

 

「どこぞの色黒白髪なんかはお元気な女悪魔を満足させる程度には手練手管が充足してるッスからね。転生したてなら、そっちの方かと思った程度ッスよ」

 

「……(わたくし)では無いので、こちらを伺われても困るのですが……」

 

 

 続けられたミッテルトの科白に、イッセー先輩の目は同席したレイヴェルに向けられ、困惑した彼女が絞り出すように返す。

 

 イヤらしい目つきだ。

 血走ったそれを、皿のように広げて伺う様はとてつもない童貞臭を漂わせる。

 

 レイヴェルの言の葉に嫌悪感が滲むのも、致し方のないことだと思われ。

 ちなみに話に加わっていないが、この家に泊まっているルフェイはスヤスヤとご就寝中である。

 魔女っ娘の割にはめっさ昼型なんだよなぁ、アイツ。

 

 

「先輩、仮にとはいえ腹上死シタんすから、そんな童貞丸出しの目つきで年頃の女子を伺うのは辞めたらどうですか……?」

 

「ど、どどど童貞ちゃうわ! って待って!? 俺そういう死に方だったの!? 覚えてないんだけど!?」

 

「童貞じゃ無いのを覚えているのに?」

 

「ネタだよ言わせんな!」

 

 

 悲しい自爆はさておいて。

 

 

「ていうか、何処まで覚えてるんです? そもそもあの日はなんで外にいて、どういう経緯でウサギさんに跨られてアヒンアヒン言ってたんです?」

 

「アヒンアヒン云う前に死んでなかったッスか?」

 

「スタイルだけは良かったので誘惑されるのも納得でしたけれど」

 

「主よ、このドチャクソ罪深き者たちになんか大いなる罰を……!」

 

 

 許しを請わないんすね、アーシアさん。

 

 あと今祈るのは辞めたげて。

 なんかイッセー先輩がヒギィって唸ってる。

 

 

「なん……っだ、今のダメージ……っ!?」

 

「目の前で祈られたり、教会行ったりすると昇天する程度には逝くらしいっすよ。クソ弱点多いな悪魔www」

 

「草を生やすな! つかホントに多いな弱点!」

 

 

 レイヴェルが普通にしていられる辺り、転生悪魔って本物の悪魔と呼んでいいのかは若干齟齬が残るのだけれども。

 そういやあ、昔傷ついたはずなのに堂々ひょっこりと教会前まで顔を出した悪魔も居たな。

 

 

「えーと、あの日は確か、松田と元浜とイイ感じのDVDを視聴して、帰りがけにナンパして……」

 

「で、成功率は?」

 

「33-0……いや、そこ聞く必要なくね?」

 

「率聞いたのに点数で表記するとか何なんすか」

 

「逆にケチ付けるとかお前がなんなんだよ」

 

 

 記憶に関しての問いなんだから問題はない。

 そのはず。

 

 

「あとは……って、今夜の目的は違うんだよ。キチンと理由があるんだって」

 

「手土産も無しに?」

 

 

 手土産代わりに俺と契約して研究材料(モルモット)になってよ!

 どこぞの孵卵器のように、俺は決め顔でこう言った。

 

 

「だから、ルビ……っ!」

 

「悪魔としての初体験ですよ。なぁに、怖くなーい、怖くなーい……」

 

「怖ぇぇよ!?」

 

 

 成りたてピチピチの転生悪魔(実験材料ぉ)……!

 

 

「その目ヤメロォ!? つーか本題入らせてくれって! 俺を強くして欲しいんだよ!」

 

「……。それを早く言ってください」

 

「俺が悪いの!?」

 

 

 

  ■

 

 

 

「えーと、じゃあ先ずは生存力の底上げから逝きましょうか」

 

「おぅンッッッ!?」

 

 

 謂われるがままに神器を発現させ、構えた瞬間に俺はぶん投げられた!?

 待って! もうちょっと説明欲しいんだけど!?

 

 【龍の手(トゥワイス・クリティカル)】というのが俺の神器らしい。

 部長曰く、数ある神器の中では『ありふれたもの』らしく、一定時間実力を倍にするだけ、と説明された。

 

 ……ありふれた能力で世界最強を目指すんですね! わかりました! レッツポジティブシンキーング!

 

 ってなれるか馬鹿か!

 部長の落胆した目!

 っていうかどっちかというと『可哀そうなモノを見る目』だよ!

 結果的に死んだから発現できたものの、烏丸にされるがままに発動促されてたら無駄死にも良い所じゃねえか!

 

 なるほど、こういう『はずれ』が当たる可能性もあったから、部長は初め俺に【悪魔の駒(イーヴィル・ピース)】を使うことを躊躇ってたんだな……。

 いざやってみると、視力を倍にしてマンション上層に住んでる女子大生のお姉さんの着替えを覗いたり、走る速度を倍にして鬼の形相で追いかけてくる婦警さんから爆走するくらいしかできてねぇ……!

 

 こんなんじゃ『もしも』って時に良い恰好見せて、部長や朱乃さんを惚れさせるような男にはなれねぇ!

 

 おっぱいハーレムをォォォ! 実現させるたァめにもォォォ!

 

 俺は敵であろう烏丸にも頭を下げェェェる所存だァァァ!!!

 

 

「フンガッフ!?」

 

 

 って思っていたのになんだコレ?

 

 投げ飛ばされて、何故か烏丸ん()の二階に着地した。

 ……右肩から着地、……うん、着地だよッ!

 

 いや、其処は良い。

 問題は、此処が変な場所だっていう点だ。

 

 二階はなんでか階段が無く、バルコニーみたいな柵から玄関を覗ける位置取り。

 奥へ続いているのだろうけど、此処で何をさせようって言うんだ?

 

 

「あとは、其処でとりあえず生き延びてみてください」

 

 

 階下からそんな声を掛けられる。

 ……って、は? なんか奥の方に死体みたいな色の裸の子供が――、

 

 

 ――思った瞬間、青白い手が全身を物凄い力で掴みk――

 

 

 

   ■

 

 

 

 ……。

 見上げていたら真理の扉に引き摺り込まれたエドワード・エルリックみたいにイッセーさんが消失した件について。

 

 

「ちょ、だ、大丈夫ですのアレェ!?」

 

 

 今まで私たちこういうところに住んでいたんですの!?

 イッセーさんの安否よりも、自分たちの今後と今までの方がスッゴイ不安なのですけど!?

 

 

「棲み処は二階みたいでなぁ。踏み入らなけりゃ大丈夫」

 

「アー……。来立てのアタシが遮られた理由って……」

 

 

 遠い目をしたミッテルトさんが今更になって身震いしてますわ。

 ですわよね。

 アレ、多分そこらの堕天使では立ち向かうのも無理ですわ。

 

 当然、私も無理ですわ!

 

 

「……あの、ホロスコープを覗くと3回に1回は目を抉られる、というのは……?」

 

「うん。それもアレの影響だなぁ」

 

「陣地踏み越えてるじゃないですかぁ……!」

 

 

 気づいたアーシアさんが小さく悲鳴を上げました。

 というか、グレイフィア様は大丈夫として、ルフェイさんはよくスイヨスイヨと寝息を立てられていますわね。色んな意味で。

 

 

「まあ仕方がないでしょ。俺ぁ口先で成仏させられるほど説法も上手くないからね」

 

「理屈と理論で説くことが専売特許の現代錬金術師の科白ではありませんわ……」

 

「それでもダメなときは、まあ二階部分か家ごと吹っ飛ばして更地にするさ」

 

 

 最終的に力技で片を付けるその癖、直しません……?

 




>わったっしっはヤーングなアニマル♪
云いたかっただけ!


実際にある言葉から独自設定でWikiにも載っているので、伝承と照らし合わせてみると「何言ってんのコイツ?」って真顔になるw
「そういう設定です」と真顔で返されるのがオチだろうけど、既にある教義に抵触するレベルで名称と設定持ち込まれてカオスが留まることを知らないのでホンッッット勘弁してほしいw

ほんと、よく焚書事案にならないよ、このラノベw
キリスt某C教って、寛大だね!


ちなみに駒王町のはぐれ被害が多いのは自己解釈ですが、あんまり原作読んでも間違ってないキガスルのは私だけでしょうか

そして以前にちょい触れた烏丸ん家の事情
元ネタは着信アリ。あれ? 違ったっけ?

2話連続投稿でした
さぁて、次回の負け犬は?


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グレイフィア「✖✖✖✖ッ! ✖✖✖✖✖✖✖ーーッッ!!(ry」

週一更新を維持できないクソザコ遅筆でごめんなさい(誠意のある土下座

でも感想にも原因あると思うの
解釈と設定の擦り合わせでメンタル削りつつ面白いモノを、と拡大解釈にまでは届かないように『無理のない範囲』で描こうとしてるのに、

出てくる感想は軒並み『人妻関連』なのだもの

…こんなイカガワシイところに居られるかッ! 俺はなろうに帰らせてもらうッ!
(そうしてオリジナルの続きに行き詰って舞い戻ってくる作者の姿が其処に――!)


なお年齢版に沿わない科白が飛び出しましたので本日の副題は伏字とさせていただきます
ご了承ください



前回のあらすじ
そっかぁ呪怨かぁ! スッキリィーーー!!!


「あら! お隣の、えぇと……」

 

「! グレイフィアと申します、坂口さん。こんにちは」

 

「まぁ日本語がお上手……えぇ、はい、こんにちは」

 

 

 買い物帰り、隣家の坂口さんの奥様に呼び止められました。

 ご近所付き合いは大事です、挨拶をしないなんてことはありえません。

 

 勿論、今の私の恰好も。

 メイド服などではなく、TPOに合わせた日本の主婦が着るような物にエプロンを穿いた意匠。

 思えば、幾ら王に仕えるからと言って、何故(ナニユエ)あの頃の私は常にメイド服を着ていたのでしょうか。

 魔王の妻なのだから、相応の恰好を見せないと周囲に嘲られるということを自覚できませんでしたね。

 サーゼクスが何も言わないで了承していたからと言って、それに甘えるのでは良妻としては失格でした。

 

 悪魔なので『良い』必要も無いのですが。

 

 

「初めはねぇ、外国の方たちが揃いも揃って住み始めてどうなるかしら、って思っていたのだけど、杞憂だったわねぇ」

 

「郷に入っては郷に従え、とも知っていますし。殊更何か特殊な真似をする理由もありませんわ」

 

「えぇえぇ、その辺りはもう心配してないわ。けどねぇ、お若い旦那様なのだからしょうがないのでしょうけど、ちょっと、声の方を、ね……? 夜の。もうすこーしだけ、抑えてもらえたら……って」

 

「! も、申し訳ありません、つい……」

 

 

 この場に居ないソラ様を理由に言い繕うこともできますが、旦那様の立場を悪し様に口から漏らす妻など辺りへ信用もされません。

 なので私は『自らに非が在る』と口にはせずとも、態度で示すことしか選択肢には無いのです。

 

 実際、ソラ様の手練手管が凄すぎることも原因なのですが。

 

 それを主張するのも妻としては減点。

 グレイフィアはほんのりと頬を染めて科を造ります。

 それだけで坂口さんも「あらあらまあまあ」と理解を示していただけますので、問題はありませんね。

 

 

 

  ■

 

 

 

 買い物を終えて帰宅すれば、家の二階部分が消失していました。

 本日の導入と私の配慮はなんだったのか、というくらいのビフォーアフターっぷりです。

 

 

「おー、お帰りー」

 

「ただいま帰りました。……で、どうしたんですか、アレ……と、其れは?」

 

 

 まさかのリフォームに驚きつつも、(おもて)には出さないように努めつつ質問。

 しかし、リビングで寛ぐソラ様の手元にある『絵画』のようなナニカに、私は自然と警戒を顕わとして居ました。

 

 

「いや、怨念が領域を飛び越えてるって騒がれたからさ、ちょっと隔離してみた」

 

 

 なんでもないかのように弄びつつ、黒々とした絵画をコンコンとノックのように叩きます。

 絵に対する行為では無いことは明らかなのですが、『そう』したとしても一切の忌避を感じないのは『ソレ』自体が普通に禄でもない品であると見て分かるためでしょう。

 

 額縁に仕切られているソレは、一見すれば平坦に黒の絵の具で塗りたくられたかのようにも伺えます。>ケテ……

 しかし人の手が及んだことで随所に歪な、波濤にも似た情景が引き延ばされているようにも錯覚されるのです。>タ……ス……

 それは差乍ら漆黒の闇夜を写す凪いだ海原。

 覗くモノを見返す、穴倉よりも深い原初の混沌を(カタチ)と換えたかのような、悪魔をも魅了させ得る出来栄えです。>……タス、ケテ……

 

 ところで先ほどから囁かれているコレは何なんでしょうか。

 何か、鉄錆にも似た香りが部屋に漂っている気もします。

 アロマとしては趣味が悪いですよね。

 

 

「それで? 二階に放置していた兵藤君はどうしたのですか?」

 

 

 鍛えるとかいう名目で、怨念の中にここ数日程放置していたはず。

 私が尋ねる筋合いも無いのですが、先ほどリアスから渋々ながら連絡もありましたので。

 こちらも渋々ながら問いかければ、あっけらかんとした返事が。

 

 

「中」

 

 

 と。

 絵画を指さして。

 

 おおぅ……。

 

 

 

  ■

 

 

 

「そうそう、バルパー見つけたわ」

 

「早いですね」

 

 

 私がリフォームの手続きを、人間の、ではなく冥界の伝手で執っていれば、そんな言葉がさらりと投げかけられました。

 半ば予想できた即応性でしたので、然して驚く幅も少なく、何でもないことのように返事が出来ます。

 

 それよりもやはり冥界のリフォーム会社は仕事が早いのが美点です。

 遣り様によってはご近所の引っ越し(強制)も視野に入れての改築改装の拡大化も視野に入れられるのですが、そうすれば間違いなく人間社会にとっては迷惑行為に値します。

 よっぽどの考え無しでも無い限りは手を出したりはしないはずですが、今回は、どうしたモノでしょうか。

 

 正直、怨念が集中していた領域と座標に新しく建物を構築してしまうと、再び苗床と化してしまわないかと心配にもなりますからね。

 坂口さんには悪いですが、もっと良い物件に移り住んでもらいましょうか。

 

 

「やだコイツ、舌の根も乾かないうちから迷惑行為を選択肢に入れてる……」

 

「私が挿入()れて欲しいのは今はひとりだけですよ。それで、居場所が割れたのなら早速捕らえるのですか?」

 

 

 手元を覗き込まれて通達の一部を、何気に心内まで覗かれつつも呆れられましたので軽い『本音』で返します。

 軽口を交わせる仲とはよく言いますが、軽くとも重くとも、口を交わすことに違いはないので。

 言葉の形はどうであっても、情緒に換わりは在りません。

 

 実質、床上のクッションに座り込んだ私を、後ろから抱くようにして手元を覗き込むという今の姿勢は、程よく夜半の情事に連なる思惑が浮かびます。

 ……話の途中ですが、他の娘たちも姿が伺えませんし、昨夜の続きに推移してもらっても構いませんよね……?

 

 ちなみに基本非力な小娘の皆様は比較戦力が及ばないので、レイヴェルの伝手で一時的にフェニックス家の安全地帯へ引き籠って貰っています。

 テロリストが街中に潜伏中であったことと同義でしたし、ソラ様の采配は強ち間違いとは言い切れませんよね。

 いえ、()が独り占めできるとか、そういうことは考えておりませんでしたが。

 

 

「ん。だから、通報しといた」

 

「待ってください」

 

 

 自然と乳房に手を添えさせつつも、返ってきた言葉にはツッコミどころが多すぎます!

 あっ、今は、ァン――……、

 

 

 

  ■

 

 

 

 【速報】皆殺しの大司教、バルパー・ガリレイ逮捕【ケジメ案件】

 

1.名無しの未逮捕野郎

 

 本日未明、不法入国者のバルパー・ガリレイ氏が銃刀法違反で強制捜査の上に逮捕されたことが判明した。

 場所は駒王町の某アパート

 付近の交番に勤務する坂口巡査と他数名の警察官を伴って、色々と聞くに堪えない惚けっぷりで強制連行される姿はモテモテ王国の宇宙人を思い出させてくれてクソワロタw

 

 

2.名無しの傍観者

 

 ツッコミどころが多すぎるw

 

 

3.名無しの傍観者

 

 懐かしいなモテモテ王国とかw

 

 

4.名無しの以下略

 

 つか、誰ヨ、バルパーって

 連想するに、ボケた爺さんでFA?

 

 

5.名無しの未逮捕野郎

 

 知らん。

 

 

6.名無しの以下略

 

 知らんのかいwww

 

 

7.名無しの未逮捕野郎

 

 いや、本人が名乗ってたんだわ

 

 「儂を誰だと思っておる! 彼の皆殺しの大司教、バルパー・ガリレイであるぞ!」

 「はいはいお爺ちゃん、それはもう聞いたから」

 「パスポートも無しにどうやって来たんだこの爺さん」

 「離せ離せ! 儂はエクスカリバーを合体させるんじゃ! 儂の研究が教会で最も優れておるんじゃー!」

 「ねえ、この爺ちゃんヤバイ薬もキめてない?」

 

 これが隣部屋から聴こえて来た会話であるwww

 

 

8.名無しの傍観者

 

 お隣www

 

 

9.名無しの傍観者

 

 壁薄www

 

 

10.名無しの以下略

 

 エwクwスwカwリwバwーwwww

 

 いや、なんでよ(真顔

 アレって教会絡んでないでしょ?

 ちょっとバチカンに連絡とってみる

 

 

11.名無しの傍観者

 

 >10は何者なんだw

 

 

12.名無しの傍観者

 

 少なくとも痛い二つ名持ちとフィクションの区別がついてないヤバイ爺さんってことはツタワタw

 

 

13.名無しの未逮捕野郎

 

 つか騒ぎで表に出てみれば結構な野次馬でふええってなったw

 で、部屋の中もちょっとだけ覗けたんだけど、

 

 本人の言う通り司教? 神父? な恰好で、祭壇まであってガチの宗教関係者っぽい

 

 コレ、教会に本気で問い詰めた方が良くないか?

 こんなの野放しにしてたのかよw

 

 

14.名無しの傍観者

 

 教会「ウチにはそんな子おりません」

 

 

15.名無しの傍観者

 

 バチカン「ウチも無関係です」

 

 

16.名無しの以下略

 

 本気で知らない子なのか切り捨て案件なのか…

 判断に悩むところですね…

 

 

 

  ■

 

 

 

「……仮にも悪魔や堕天使に連なる案件でしょうに、『表側』に関わらせるとは……」

 

「ひと通り楽しんでから真面目な話を切り出されてもなぁ」

 

 

 グレイフィアは着崩した衣服を整えつつ、手鏡で自分の顔を見直していた。

 汗などで化粧が乱れていたが、ある程度ならば魔力で均せるので文字通り手直し。

 しかし薄まった口紅までは増やせないので、此ればかりは塗り直すしかないと判断する。

 まさか行為の過程で自分の素肌に付け直されたモノを戻すのも、それはそれで抵抗があった。

 

 下着も乱れたことに関しては、諦めるとする。

 多少『下』の方が異物感が残れども、ブラを付け直すには着衣の乱れを整えたことが余計な過程になっていた。

 またシないとも限らないし、という彼女自身の連想の方が原因ではある。

 此処に勤め始めてからというもの、グレイフィアの色惚けは拍車懸かりが馬車馬の如くに駆け足であった(過重表現。

 

 

「しかし、問題ではあるかと思いますよ? 人間社会のルールに則るとはいえ、悪魔や堕天使には人間だけでは通用しないのが普通です。今回のコレは、コカビエルが拘わっていることは間違いが無いのですから。もし、彼がなりふり構わずに警官たちを返り討ちにしてバルパーを奪還していたら……」

 

 

 色惚けではあるが、烏丸と関わるようになって物の見方が多角的になり始めたことも間違いではない。

 そうして連想される予測を口にすれば、しかし、

 

 烏丸はどこ吹く風で、飄々とした顔つきのまま言葉を紡いだ。

 

 

「――例えば、筆立てからボールペンを取り出したとしよう」

 

「……?」

 

「それは自分専用というわけじゃない。他の誰が使ったのかもわからない、管理だって杜撰な一本だ。当然、書けるかどうかを一回は見ておきたいから、チラシの裏とかメモの端とか、適当なところに『試し書き』をするよな?」

 

「……っ、まさか……」

 

 

 グレイフィアには、直ぐに連想が繋げられた。

 烏丸の『言いたいこと』を、彼女が思い至れる『ように』なったのは、悪いことではない。

 

 しかし――、

 

 

「コカビエルがどうするか、社会がどうするか、『裏』がどうするか。俺にとっては、大体そんなもんだよ」

 

 

 烏丸は、善人であるというわけでは、ない。

 

 

 

  ■

 

 

 

 一方で、コカビエルは頭を抱えていた。

 デジャヴを感じる。

 




誰を味方としているわけでもないので、烏丸は大概割と酷い手段を執れます
でもまあ同類の方々は大体そんな感じでしたよね?

文中初めて掲示板ネタを使いました
用法用量がこれで合っているのか。判断に悩みます

コカビエルに関しては基本として原作通り
他作品では色々と拡大解釈の上で
『実はこういう思惑があったんだ!』
みたいな人になっているのが多く見受けられますが、

原作の方で回収する感が無い『咬ませ犬』だったのでそのまま使います
ご了承の上、次回をお楽しみに


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バルパー「ウソ、儂の出番少なすぎ…!」

誤字報告、並びに感想感謝です。クソ面白い感想並んで貰えててめっさ笑かせてもらってますw
ところで、気づけば運対喰らって消去されてる人も居たりするのだけど、
何が書かれていたのか思い出せません…読者様の防衛力しゅごぉい…

あ、科。これはシナと読みます。誤字ってません


Wikiを見直すとグレイフィアさんは主人公に諭されて家庭へ戻ったらしいです()

――日和ったな原作者()ィィィ!
不評を頂いたのかも知れんけども、どういうふうに展開もっていったところで、書き初めに人妻ルート偏らせた時点で巻跨いじゃったら言い訳不可だろうに…(尚こちらでも思い知ってる模様
イッセーが魔王という重荷を背負いたくないから人妻ルート全力回避したようにしか伺えないのは穿ち過ぎじゃろうか


ところでイッセー中の人と小猫中の人がご結婚なされたそうですおめでとうございます

これで寝取り描写が捗ります(ニチャァ…
いえ冗談ですけどね?



前回のあらすじ
バルパー逮捕されたって掲示板で言ってた
元ネタは夜中に隣家から外にまで響いてきた親娘喧嘩だとかいう作者の実体験。娘と思しき女子の怒鳴り声にはわわと狼狽えるおっさんの困惑が響いたとある夏の夜

それはさておきあらすじ本題
――イソラは属さない。自分がイレギュラー且つマイノリティであるという自覚を持つから
――イソラは群れない。自分が最強であるとは云わないが社会に馴染めないことを既知としているから
烏丸「…そろそろ狩るか(ニチャァ…」



「――来たか」

 

 

 ザしッ、と。

 

 駒王学園のグラウンドに、幾人かの生徒が居並ぶ。

 鋼翼の男性と対峙する。

 

 腕を大きく広げるは堕天使コカビエル。

 その名は『神の星』を意味し、かつて堕天した200の天使の一角。

 4番目に名を連ねる、天体の動きを知識として人に授けた、巨人の始祖のひと柱とされている。

 

 聖書に記された墜ちた天使、と人は云う。

 だがそれは史上最初の転生天使メタトロンが生前に記した天の見聞録『エノク書』のことを指し、教会自身は此れを外典即ち正しい教えの中ではない、と呼ぶモノも居るという。どっちやねん。

 

 名の語源はコカブ――こぐま座のβ、かつての北極星を意味するとされているが、其処は定かではない。

 閑話休題(それはさておき)

 

 そんな件のコカビエルは、『対峙した者たち』を正面に見据えたその時。

 ――明らかに、落胆した。

 

 

「コカビエル……ッ! いきなり喧嘩を売るなんて、やってくれるわね! 戦争にでもしたいのかしら貴方はッ!?」

 

「……そうとも、魔王の妹よ。もう一度起こせば、勝利は俺たちが掴める」

 

 

 対峙した生徒らの内、赤髪の美女――リアス・グレモリーが激昂する。

 

 年頃は少女であるのだが、スタイルと言い顔立ちと言い美女と呼ぶに差し支えは無い。

 そうして、そうした彼女が激情のままに叫んだりすれば、色々と、コワイ。

 

 だがコカビエルはどこ吹く風。

 年輪(とし)を重ねた老獪な人外なだけは在り、所詮は小娘の激昂など意にも返さない。

 

 

「戦争がしたければ勝手に教会を相手取れば良いのですわッ! 悪魔の領地に聖剣まで持ち込むなんて……! 此れだから恥知らずの堕天使は……!」

 

「貴様が堕天使を語るな、バラキエルの娘が。命惜しさに悪魔に媚びを売った半端な血の小娘に、俺の妄執が理解できるものかよ」

 

「あのひとは関係無いッッッ!」

 

 

 同じように、しかし違う理由で激情に駆られる姫島朱乃を、コカビエルが煽れば実に容易くかぶりを振るった。

 精神的な未熟さは年頃を思い返せば仕方が無いのかもしれないが、あまりにも簡単に言葉を交わし、しかも感情を思うがままに顕わとする有様に敵乍ら心配になってしまう。

 

 金髪の少年剣士は表情からして上の空。

 唯一警戒らしい警戒をしているのは、最も小柄な少女くらいにしか伺えなかった。

 

 ――敵乍ら、心配になってしまう。

 二度目だが、大事なことなので。

 コカビエルは内心で、盛大に溜め息を吐いた。

 

 

「そうだ、関係無い。かつての同胞(はらから)だろうが、手加減はしない。死にたくなければ下がれ、小娘共」

 

 

 ――正直、狙いは彼女たちではない。

 冒頭の科白は完全にコカビエルの先走り。

 来たかと思えば来てなかった、これは恥ずかしい。

 

 どうしてこうなったのかと言えば、彼が駒王学園に宣戦布告を(したた)めたためだ。

 一筆書いて送ったところで、現れたのが期待外れだった肩透かし感は中々に、大きい。

 

 バルパー・ガリレイが逮捕され、盗んだ3本の聖剣は警察署に預けられた。

 文だけ読むと中々ビビッドな展開だ。

 行政のチカラが、ぱない。

 

 力尽くで奪い返すことは出来る。

 しかし、それをやれば人間側への宣戦布告に値する。

 

 人外は得てして人間社会の事情に疎い。

 理由は、寿命の差異。

 生き方の差異、だ。

 生きられる時間に違いがあるからこそ、人間は生き急ぎ、人外は緩慢に生きる。

 故に、文化の、意識の温度差が生まれる。

 人間に敵意を抱けば、何処が逆鱗に触れるのか、何処まで返されるのか、其れを把握し切れない。

 

 コカビエルは戦闘狂であり、戦争狂だ。

 だがそれは勝利を目指すからこその闘争であり、勝てると確信するが故の行動規定でもある。

 確信が持てない闘争にまでは、踏み込もうとはしないのだ。

 そうした部分は彼の弟子にも引き継がれていたりするのだが、今は割愛とする。

 

 話を戻せば、コカビエルが学園に施したのは、大々的な術式だ。

 効果のほどは色々と。

 術者(コカビエル)が付近に居て、術理を施しているのだから『どのように』でも変動が利く。

 

 当然、そういった『爆弾』を自領に仕掛けられて、黙っていられるリアスでは無かった。

 何より、駒王学園旧校舎には、未だ引き籠ったままの眷属が居る。

 ある意味人質を取られた形で在り、リアスは其れを察せられないようにとも意識していた。

 

 

「……もうわかっているだろうが、貴様らの領内での統治の出来栄えは上手くいっている。まんまとシテやられた気分だ。しかし、それで泣き寝入りするほど、俺も甘くも無いのでな。――警察に押収された聖剣を、俺の下へ返せ。話は其れからだ」

 

「――えっ」

 

「え?」

 

 

 暫し、此処にいる全員の間に、疑問符が浮かぶ。

 

 お互いに、お互いの内心と今の状況を、僅かな会話で察して――、

 

 

「……貴様ら、まさかバルパーが銃刀法違反で逮捕されたのを把握して無かっt」

 

「そ、そんな取引に応じるとでも云うの!? 貴方は此処で仕留めさせていただくわッ!」

 

 

 斯くして、戦いの火蓋は切って落とされた――!

 

 

 

  ■

 

 

 

 ところで、この世界に於ける強者らについて、少々触れてみようと思う。

 

 上位10柱。

 そこらへんはまず、ウロボロス・オーフィスを筆頭とする。

 錬金術の記号風情が、いつしか偉くなったものだ。

 

 インドはヒンドゥの三柱神(トリニティ)、シヴァ、ヴィシュヌ、ブラフマー。

 こいつらは同体の、時期に置いての違う姿のはずなのだが、何故に別個なのか。

 

 インドからリストラでもされたのか、雷神インドラと同神のはずの帝釈天。

 ブラフマーも仏教系では梵天と呼ばれてる。

 

 北欧はアイスランドからノルウェーに掛けてのキリスト教化される前のゲルマン信仰に基づく、バイキングなどが語り謳ったスカンディナヴィア神話並びにゲルマン神話から、終末戦争(ラグナロク)に於いての死が確定している雷神トール。

 しかもフェンリルではなくヨルムンガルドに呑まれて死ぬ。

 猫と間違えて持ち上げたりするから、そうなる。

 

 ギリシア神話からテュポーン、ハーデス。

 尚長音記号はギリシア語『らしさ』で付いてるだけなので、外して読まれても間違いではない。

 

 出番が無いアテン、ルー。

 エジプトもケルトも古い神話なのに、名前だけで使われてる感が凄い。

 テュポンも何気にエジプトが出典でもあるのだが。

 

 これだけでツッコミどころ多数だが、とりあえずはここいらが上位とされている。

 テュポーンとフェンリルは同等となるらしいのだが、怪物の王たるテュポーンがどうにも理知的な存在で出張ってるらしい(メタ。

 

 更に真なる魔王サーゼクスやアジュカなんかが全力を出せば食い込める、などというのが造物主(作者)の言い分だ。

 では、強者たる条件とは何なのか。

 

 どうにも、トップ3に技量系が食い込まない辺り、単に扱えるエネルギーの差異でしか無いように伺える。

 

 本来、強弱とは相対的なモノである。

 此れが出来るから強い。

 その見方も間違いでは無いが、強弱の指標はルールに則って、生存競争を度外視して、ようやく比較できるモノで『しかない』。

 極論、勝ち負けに直結できるから強弱の指標が判りやすく為されているのであって、勝敗を差配出来てしまえば誰がどう強かろうと関係は無いモノだ。

 その事実はどのような状況下に於いても変動は無く、それを決定付けられる程の強者とは、即ち単純なスペックの差が明暗を分けるのである。

 

 実力者()の技量を推し量ったところで、ではコカビエルはどうなのか。

 

 堕天使が上位に食い込まず、何処辺りに介在しているのかが不明だが。

 名を遺す者はそれなりに、練度とスペックが相当に培われていると仮定しても過言では無い。

 一説に因れば、星々の運行を操作し天変地異を引き起こさせる、などとも云われている。

 天体の測量を伝えた『だけ』なはずなので、星を操れる方向へ干渉力を伴うのは穿ち過ぎな解釈だとも思われるのだが、まあ『あの宗教』だから、うん。

 

 逸話はともかく。

 人間最強候補であるヴァスコ・ストラーダと対峙して生き延びた点を顧みても、彼は実力者であると見て間違いでは無い。

 人間ということで軽く見られがちであるが、彼の老人剣士は対峙した最上級悪魔でさえも屠ったとされ、むしろ生き延びて再起出来ている者の方が少ない。

 

 神魔の大戦を経験し、自分よりも上位の者らと対峙して生き延び、後人へ知識と知恵を伝えられる。

 更に人外であるために、肉体は全盛のそれから衰えることを知らず、鍛えれば鍛えるほどに頑強に強靭に洗練されて征く。

 これを弱いと評するには、些か目の付け所が可笑しいと言わざるを得ないだろう。

 

 

「くっ! こんなところで……ッ!」

「ぁぁあああっ!」

「……ッ!」

「負ける、ものかぁああああ!」

 

 

 ――まあ、そんな評価を顕わとしたところで。

 

 

「祐斗! 先走り過ぎないで! ケルベロスの首はひとつでは無いのよっ!?」

 

 

 そもそも、戦っても居ないのだが。

 

 

「うわぁあああ!」

 

 

 黒い墨のような毛皮に覆われた、獰猛な巨体に祐斗の戟は弾かれる。

 5メートルはありそうなそれは、最早犬と呼ぶよりも百獣の王をも凌駕する体格を備えており、地獄の門を守り許可なく立ち入る者を食い殺すとの逸話通りに、畏怖と猛威をその身体に顕わとしていた。

 ちなみに件の首らは伸びたりしない。蛇などではなくて犬なのだから、当然だ。

 

 コカビエルが術式を利用して呼び出したのは、冥府の番犬。

 そもそもリアス並びにその眷属たち程度など、相手取る気も無かったのだから対処だっておざなりだ。

 ケルベロスに対応するだけで必死な彼女らを、今のうちに背後から襲ってしまえば、この茶番も事足りる。

 

 リアスは母から譲り受けた滅びの魔力を。

 朱乃は自身の魔力を、最も形成しやすい雷の属性に今では変化させ浴びせている。

 

 しかしそれらは、結局のところ魔力――エネルギーのいち形態でしかない。

 単純なスペックの差。

 巨体に抗い切れない膂力の差異が強靭な防御力を備えさせ、それぞれの攻撃を雲散霧消とさせている。

 

 祐斗が備えているのは、自身の神器(セイクリッド・ギア)・【魔剣創造(ソード・バース)】から生み出され続ける別個の魔力波長を伴った数々の魔剣だ。

 しかし、今の戦い方では、決してケルベロスに届かない。

 

 【騎士の駒】によって転生した彼の長所は、『速度』に重視を置いた反射神経の鋭敏化と、不随意筋の強化によって齎されるスタミナの効率化だ。

 筋繊維密度の増加と骨格筋代謝の即応化によって見た目にそぐわない『膂力』が強化される【戦車】ならばともかく、獣と鍔競り合うには向いていない。

 

 神器のそれも、具現化させる刀剣の部類に数多くの属性を備えさせられる『手数の多様さ』こそが長所なのであって、魔獣を斬り払うには単純に火力が足りないのだ。

 

 そうして吹き飛ばされた祐斗を、『余力のある獣』が狙わない道理などは、無かった。

 

 

「く、ぁ……ッ!」

 

「……っ、危ない、祐斗先輩……!」

 

「ぁぐぅ!?」

 

 

 魔獣の喰らいついてくる首を狙ったのでは、間に合わない。

 故に、小猫は祐斗を蹴り飛ばすことで自身毎、その場から反動で退避を目論んだ。

 

 計算外だったのは威力が思いの外強く、祐斗に10tトラックが撥ねるが如くの衝撃が襲い掛かったこと。

 合わせて、ケルベロスの首は3つだったことだ。

 

 ――飛び退った其処を、また別の首が喰らいつかんと大口を開けていた。

 

 

「――ぁ」

 

 

 情景が、スローモーションで流れる。

 

 危機に瀕し、脳が生き延びる手段を模索しようと時間を圧縮(クロック・アップ)する現象だ。

 

 しかし其処は中空。

 

 姿勢を変えるならばともかく、移動は既に無理である。

 

 残念ながら、小猫の命は此処で尽き――、

 

 

 

「――おいおい、あぶなっかしいなぁ塔城ちゃんは」

 

 

 

 ――ることは、無かった。

 少女の眼前に立ち塞がった少年は、腕一本でケルベロスの(アギト)を抑えていた。

 

 噛み砕く力とは、どのような動物でも口を開く力よりも強く出来ている。

 鰐などは特に顕著だが、顎の長さを備えた動物は、狩りのためにこそその咬合力を備えさせている。

 ちなみにそういった獣は咬む=咀嚼にはならず、特に犬なんかは食物に関しては丸呑みが主であるらしい。

 

 ともあれ。

 まるでオートメイルの義腕に食らいつくキメラの如く、ひと口で小柄な少女くらいならば半分までイケるケルベロスの口は、開けさせられたまま固まっていた。

 

 それを抑え込めているのが、小猫の危機に颯爽と駆け付けた少年である。

 ていうか烏丸だった。

 出待ちでもしてたん?

 

 

「……ちょ、丁度いいタイミングで助けに来ますね。何処かで覗いてましたか?」

 

「現在進行系で危機を救っているのになんていう言い草だ。まあ、間違っちゃいないけどな」

 

 

 駒王学園の制服に身を包んだ色黒の男子は、地の文と同じ感想を抱いた愛玩系白髪少女に苦笑する。

 照れ隠しだと、信じたい。

 

 

「つーか、コイツやっぱケルベロスで合ってる? ナベリウスとかネビロスは何やってるんだよ、お仲間で原典じゃねえのかよ」

 

「ソラ! 大丈夫なの!?」

 

「っていうか俺呼ばれてないんですけど? 呼びなさいよ、部活仲間の危機くらい駆け付けますよ」

 

「……信用問題じゃないですか? あとナベリウス家は断絶してます」

 

 

 驚きの声を上げるリアスに、憮然と平然と言い返す。

 食い止められているケルベロスが、空気だ。

 

 あっという間に空気が弛緩したが、その中で。

 

 

「――ようやく姿を見せたな」

 

 

 コカビエルが、少年を高台から見下ろして言い放った。

 

 

「待っていたぞ、煌めき誘う淫蕩愛婦(カディシュ・エクリプス)の使い手よ!!!」

 

 

「……何処かでお会いしましたっけ……?」

 

 

 烏丸は、常に平常運転だった。

 




一筆認めるコカビエルさん…

拝啓リアスグレモリー様、とか書き出したのだろうか
『季節の節目となりましてますますご健勝のことと存じます。さてこの度はあなた方の通う駒王学園に我が術式を仕掛けさせていただきました。止められるモノならば止めて見せるがいい!くくく、アァーッハッハッハッハッ!かしこ』『PS、口惜しかったらお兄ちゃんにでも泣きつけば?』
これくらいまでは妄想したけども

コカビエル中の人が地獄の鬼いさんだったのは知ってましたが、
他にも探ってみるとドリフの土方とかぬら孫の青田坊とかBLEACHの茶渡とかのシブイキャラだったのでネタに出来ねぇやw


作中の悪魔の駒の強化理屈に関しては独自解釈です
速度や力や魔力が別個に強化される。じゃあそれってどういう理屈よ?
そんなツッコミが多数見かけられますので、個人的に解釈しました。ツッコミ入れるんならもっと細かくやらないとね

【騎士】は反射神経や不随意筋が強化されますので、スタミナが付く代わりに撃たれ弱く
【戦車】は筋繊維密度の増加と骨格筋代謝の即応化により膂力が見た目にそぐわない威力に変わりますが、燃費の悪さが目立ちます。作中の小猫の大食いとロスヴァイセの百均ド嵌まりにはそんな裏設定があったって私信じてる
魔力とかいう不思議な力で強化されてる?
物理舐めんなファンタジー



たまに思い出したようにつけられた評価一覧を覗きます
すると、ホント思い出したように過去作に低評価がポポーンとツイてたりするんですね
一番最近のは烏丸R
☆1「詳しく書かないことを面白いと本気で思っている」1話

え、俺何書いたっけ…?
そう思って読み返すと、第1話ってホント散文っぷりが酷くってw
エロネタでも官能系でもないしねw
自分でも思い出せないネタが幾つかあってガチで凹みましたwww

…削除するかな(真面目
猛省してます


さぁて、次回の(ry


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烏丸「俺の所為じゃなくない!?」

【悲報】前書きの烏丸、渾身のヒソカネタに触れても貰えず【しかし残当】
1話中のネタが渋滞起こすレベルでドンツク込めすぎなんじゃろか…


前後編みたいに話の続きを引き継いでます

感想では色々と予測が立てられましたが、当たりが見当たりませんでしたので心置きなく正解発表に移りたいと思います

ん、なんか真面目にやるのも違うな


せいかいはっぴょ~う☆
さぁ、烏丸の神器の正体、当てた人はだ~れだっ?(CV茅野●衣(未許可


 ちょっと待ってよ。

 みんなから白い目で見られてる感があるんだけど?

 

 今回の騒動、お前のせいかよ、みたいな。

 言葉にはしてないけど、そんな空気があるんだけど!?

 

 あと鬱陶しいので三つ首犬を黙らせる。

 お座り、の要領で、鼻先を殴って大地へ叩き付けておく。

 動物の弱点は鼻! みんな、覚えておけよな!

 

 

「それを力技で対処できるのは烏丸くんくらいです……」

 

「やろうと思えば塔城ちゃんでも出来るだろ。まあ、こっちはいいんだ」

 

 

 とりあえず、荒ぶっている顔色の悪そうな堕天使のひとと向き合う。

 距離を取られているが、警戒されるのも仕方がない。

 

 

「コカビエルさん、だっけ? なんか興奮してるみたいだけど、落ち着きなよ。先ずは話し合おう」

 

 

 人間、対話が大事だって、何処かの首相も言ってたよ。

 多分、若干、科白が違うけど。

 

 

「そのひと、云った直後に撃たれてるじゃないですか……」

 

「実は少しだけど会話もできたらしい、っていう説もあってね」

 

 

 のんびり、とペースを乱すことなく言の葉を交わす。

 すーぐ脱線するけど、調子を持つことって結構重要。

 なんか、姫島先輩とか木場先輩とか、どうにも精神的に不調っぽいし?

 

 

「落ち着け、だと? 貴様を前にしてか……? ククク、無理だな……!」

 

「なんでそんな敵対心剥き出しなの……」

 

 

 堕天使の人にドチャクソ嫌われるような、そんな真似はバレてないよ?

 

 

「ソラ、貴方なんでそこまで警戒されているの……?」

 

「いやぁ、見当もつかないっす」

 

 

 見兼ねたのか、リアスぶっちょに小声で問われる。

 

 いや、ホントにバレてないよね?

 気に懸かる事と言えば、前にこの辺りに居たミッテルトの同僚だった堕天使をヌッタヌタに弑たげたくらいだよ?

 

 でもさぁ、バレたとしてもさぁ。

 自分が命を刈り取ろうと向かって来たのだから、どういう風に処分されようと言い訳は不可じゃない?

 俺、悪くないじゃん。

 何か文句あんの?

 

 

「フン、魔王の妹と言えど、そいつが『ナニ』かまでは把握していないようだな。上手く隠したものだ」

 

 

 なんか、言い方的にそれっぽい……。

 

 えー……? 危害を加えに来たんだから迎え撃つじゃん。

 気分悪いわぁ……、なんで其処まで言うかなぁ……。

 

 

「ナニシロ、そいつが神器を使えば、人間どころか俺たち堕天使や悪魔、更には天使までをも滅ぼし尽くせる。平気な顔をして付き合っていられるなどと、正気を疑うぞ」

 

「あ、そっちか」

 

「つ、付き合ってはいないわよ!? その、まだ……」

 

 

 ぶっちょ、ぶっちょ、真面目な話だから、なんか顔を背けて赤くなってたりしないで?

 あと俺にはアンタにフラグ建てた覚えもねぇ。

 

 

「どういう、ことですの……? そういえば、烏丸くんの神器については詳しくは聞いていませんでしたが……」

 

 

 真面目枠なのか、姫島先輩がコカビーの言葉尻を引き継いだ。

 男の尻を受け付けるとかスゲェ変態に伺えて来てしまうのだが、そう変換する俺の脳内だけの問題なので自重する。

 

 

「ふむ。その様子だと、一切を知らないか。まあいい、ひとつ、講義をしてやろう」

 

「よろしくおねがいします」

 

 

 挨拶は大事だよね。

 そう思って応えたら全員から、正気かコイツ、みたいな目を向けられた。

 おい、コカビエル。お前もかよ。

 

 

「……この国に住む者だ、『言霊』というモノくらい知っているだろう。モノには名が宿り、その本質を捉えている」

 

「形而上にはあっても、細分化したのは儒教と、言語の多様化を最先端で突っ走るこの国っすからね。考え方は他の国家でも生まれてるけど、一番説明しやすいのがこの言葉だよ、って説明してくれてますね」

 

「詳細まで語らなくて良い……!」

 

 

 怒られた。

 すみません。

 

 

「名は体を表す。特に上位の実力者たちは、自身の技に相応の名をつけたりもしている。流派、とも云えるな」

 

「あぁ、嘘かホントか、技名を叫ぶと1.3倍に威力が上がる、って奴ね。牙狩りのひとたちなんかは、討伐の成功率高めるために勧んでやってるらしい」

 

「それは、僅差じゃないですかね……?」

 

 

 実際どうだかは知らない。

 でもやるのは、多分ロマンとかそういう概念じゃないかな。

 

 そんなことを、小首を傾げた塔城ちゃんへと返しておいた。

 

 

「『名付け』は本質を備えさせると同時に、原典を確固たるものとして根付かせる。先ほど、貴様も口にしたな。『ケルベロス』から派生した『ネビロス』並びに『ナベリウス』という悪魔のことを」

 

「あー。でも廃絶しちゃってたら研究捗らねぇなぁ……」

 

「仮にとはいえ悪魔の陣営に近いのですから、そういう発言はどうかと……」

 

「私は、小猫が気にしていないのなら良いのだけどね、別に……」

 

 

 塔城ちゃんは何か、思うところでもあるのだろうか、件の家系に。

 逆にリアスぶっちょのほうは気に掛けていない。

 多分だが、塔城ちゃんの出自に何かしら関わっているのだろう。

 

 

「気になるというのならば教えてやるが、多少の研究成果とも呼べるのが先ほどの番犬どもだ。仮にとはいえギリシアの怪物だが、こちらで扱えるのは聖書側に傍流が引っ掛かっているためだ。フェニックスもエジプトのベンヌ鳥が原典だろう、バアル、アスタロト、ベルゼブブ、レヴィヤタン、此奴らも出自は聖書ではない。本質が別にあるからこそ、彼奴等は『ああして』平然として居られるのさ」

 

 

 おん?

 何か、コカビエルが奥歯に物の挟まったような説明を。

 

 舌打ちのように顔を歪めて、彼は続けた。

 

 

「……その概念の理屈は、神器にも顕れている。例えば、ありふれた神器である『龍の手(トゥワイス・クリティカル)』。コレの意味するところは『会心の二撃』、龍には掠りともしていないが、能力の本質である『倍加』を的確に表している」

 

 

 ほんとに龍に掠りもしてない。

 けど、俺的にはそれはそれで別の理屈が働いてると思うんだよね。

 

 

「他にも、聖書の神に討たれたことで聖列に並び、かつての神の残滓を遺すモノもあったな……。例えば、『停止世界の邪眼(フォービドゥン・バロール・ビュー)』なんかもそうだ。アレは、ケルトの古き魔王の残滓だからな」

 

「……何処かで覗いてたか? 随分と近い奴らに詳しいじゃないか」

 

 

 思わず敬語が取れる。

 覗くなら別だ。

 深淵を除くモノは深淵に目潰しされても文句言えないのだぜ?

 

 

「言ったろう、貴様を待っていた、と。近しいモノ達ならば、多少は調べる。神器に関しては、俺たち堕天使が最も研究しているからな」

 

「……ああ。そういえば、そちらの総督さんも人工神器とか造ってましたっけね。堕天使製なのに『人工』って(笑) 『閃光と暗黒の(ブレイザー・シャイニング・オア)龍絶剣(・ダークネスブレード)』とかは完成したんですかァ?」

 

「そちらも随分と詳しいじゃないか……!」

 

 

 メンチ切り合うレベルで見つめ合う俺とコカビエル。

 ケンカ売ってんだろ? 買うよ? 言い値で買えるよ?

 

 

「詳しいのならば序でに教えてやろう。俺が貴様を警戒した理由、それは、先ほども言ったが貴様の神器にある。確か、煌めき誘う淫蕩愛婦(カディシュ・エクリプス)だったな。上手いミスリードを狙ったものだ」

 

 

 ……。

 

 

「これの正式名称は『カデシュ・エクリプス』だろう? エジプトの神性、人間の性行為『そのもの』を奉納させたとされる性愛の神カデシュを指す。カディシュなどという神は実在しない、貴様はたった一文字加えるだけで、それそのものの本質を崩すことなく、神器の権能を正確に働かせ続けたわけだ……! ……おい、何故目を逸らす?」

 

 

 ……言えない。

 単純に、自分の神器を登録するときに誤植っただけなんて、云えない……!

 

 

「……烏丸くんの神器に封じられている? その神が、どういうのかはともかく。それで貴方のようなひとが狙うのは意味不明です。奥さんでも寝取られましたか」

 

「フン。そんな結末が付いて回るほど、俺の人生は浅くなどない。小娘には、想像も付かんのだろうがな」

 

 

 へい、塔城ちゃん、へい。

 的確に今、リアスぶっちょにダメージ入ったよ? やめたげて?

 

 

「より事細かく続けるならば、その神器の本質はその神そのもの『ではない』。そのカデシュが、かつてどういう立ち位置だったのか、それはな、とある神の愛人を務めていた、その一点こそが脅威なのだ」

 

 

 会話で此方の陣営が微妙に続戦不能に陥り欠けているのに対して、コカビエルは堂々と言葉を続ける。

 まあ、此処まで説明されちゃったらな。

 最後までやらせてあげよう。

 

 

「『矢の王』」

 

 

 こちらを見下ろして、言い放つ。

 名を顕わとされたそれに、ピンと来るものは居なかった。

 だからといって、説明が終わりだとは、絶対にならない。

 

 

「その神は、強大な力を秘めていながら、明確に働きを抑制できる逸話も、配偶神も、親兄弟すらも居なかった。唯一語られたのが、カデシュとの愛人関係。だからこそ、その力を誘致する、それがその神器の本質だ」

 

「……何者なのよ、その神、矢の王とやらは……」

 

「伝えられた名を呼ぶならば、ラシャプ、またはレシェフと呼ばれていた」

 

 

 リアスぶっちょが疑問視し、姫島先輩が怪訝に疑い、塔城ちゃんは小首を傾げた。

 そんな中で、驚愕の顔を晒していたのは、

 

 

「……そんな、まさか……!」

 

 

 木場先輩が。

 知っているのか、木場先輩(らいでん)

 

 

「神の火……!?」

 

「え……?」

 

「ほう、貴様は元教会関係者か。その通り」

 

 

 嬉しそうにコカビエルは続ける。

 反応があって、良かったね。

 

 

「神の火、神の雷、熱病、ヤハウェの炎、火を付けるもの、照らすもの。弓矢と死を司り、稲妻と悪疫をばらまき、ネルガルやアポロン、果てはヘラクレスとも習合した強大な神だ。聖書に於いては、神の火そのものをレシェフという言葉のまま載せ、それを意訳させている。わかるか? それを、その神器の使い手は、意図も容易く呼び起せる。そいつだけで、数多くの軍事バランスが崩れる! 警戒に値するには、充分すぎる見方だろう……!」

 

 

 まあ、警戒されますよね。

 だから黙っていたんだけど。

 

 

「……? 待ってください、おかしいでしょう……?」

 

 

 誰もが唖然とも茫然とも取れる表情をこちらへ向ける中、姫島先輩が口を開く。

 弱弱しくも、投げかけられた疑問符は、言葉に流される彼女らを振り向かせるのに充分だった。

 

 

「どうして、神の力とも呼べるそれが、神器で簡単に扱えるんですの……!? 神器に配することなく、神自身が封じれば良い話じゃないですか……!」

 

「それに気付いちゃったかー……」

 

「貴方の事ですよ、烏丸くん」

 

 

 俺の軽い言い分に、多少は普段の様相を取り戻せたのか。

 塔城ちゃんは、あちゃーとデコに手をヤル俺を軽く諫めた。

 

 

「そんなことは簡単だ。神に、其れをやる力が無い」

 

 

 キチンと答えてあげるコカビエルさん。

 何気に、このひとかなり優しいのでは、と思えてきた。

 

 

「より云うのならば、神がそもそも生きていないのだ。なにせ、かつての大戦で初代魔王だけではなく、彼の神までもが死に絶えたのだからな!」

 

「な、なんですって!?」

「そんな……!」

「嘘だ、じゃあ、僕たちは、なんのために……!」

 

 

 リアスぶっちょ、姫島先輩、木場先輩がそれぞれダメージを受けてる。

 つか、そんなに? 塔城ちゃんはそうでもないのに?

 

 

「……こちらを見られても、困ります」

 

「まあ、聖書の陣営に染まってる反応、って奴なのかね」

 

 

 めのまえが、まっくらになった……!

 たぶん、今あのひとたちそんな感じ。

 

 

「さて。雑魚が戦意を喪失したところで、本題に移ろうじゃないか」

 

「雑魚て。さっきも思ったけど、どうにも初めっから俺狙いっぽいよなぁ。それならそれでこんな回りくどい真似をしなければいいのに」

 

「直接貴様を狙っても、躱されるのがオチだろうからな。迂遠に攻めなければ離脱されることが見えているのだ、このくらいの罠は張る」

 

 

 コカビエルは悪びれもせずに言い放つ。

 向こう様からすれば敵も敵だろうから、配慮が無いのはわかるがね。

 

 でもまあ、その理屈は普通に予測は付いてた。

 エクスカリバーの研究なんて、駒王に足を踏み入れなくとも出来るモノだ。

 

 

「……思うに、あの(ジジイ)が逮捕時、どうにも挙動不審が過ぎたけども……。それもアンタの仕業だったり? 頭の可笑しくなったり、判断が甘くなる薬でも打ったかね?」

 

 

 折角なので、答え合わせ。

 そもそもが、今回の事件は初めから違和感しか無いのだ。

 

 幾ら教会から追放されたからと言って、バルパーの爺が堕天使に尻尾を振るとは考えにくい。

 仮にも教会内部で神を崇めていた奴が、追放された程度で敵へ宗旨替えするほど容易いわけがあるかよ。

 お前らどんだけ気分で生きてるんだ、って奴だよ。

 

 

「……いや、あの爺は、割と初めからあんな感じだ。だからまあ、簡単に公的権力にしょっ引かれたのも目を付けられたのも、挙動からして納得はしたさ……」

 

「あ、はい」

 

 

 遠い目で云われる。

 お、おつかれさまです。

 

 やっぱ教会関連はくそだな!(よつばと感。

 

 

「本題に入ろう。貴様、我らに降る気は無いか? 貴様の戦力が在れば、この三つ巴の冷戦も終止符を打てる。我ら堕天使の完全勝利、という結末でな!」

 

「いやぁ、それは無いな」

 

 

 脊髄反射に近いレベルで返事をしたが、うん、改めて反芻してもそれはない。

 

 というか、予測が付きやすいのもどうかね?

 

 

「正直そもそも人外の意地の張り合いに惹かれるモノがねぇからねぇ。アンタらが例えば何かしらの保証をするって言っても、何処かしら『上』が居る世界で、四つに組もうって奴を全面的に推しだそうなんて集団じゃ旨味はねぇのさよ」

 

「……チッ、まあ、簡単に頷かないのは目に見えていたがな」

 

 

 何より、信用が無いことが致命的なんだけどね。

 そちらにも、こちらにも。

 

 

「……ところで、俺がわざわざ此処に足を踏み入れた、別の理由は見えたかな?」

 

 

 光の槍を片手に造り、コカビエルは云う。

 話が変わった? いいや、変わっていない。

 

 その『理由』も、とっくに予測がついている。

 

 

「貴様がいくら及び腰になろうとも、戦争が始まれば話は別だろう? それだけの力があるのだ、有無を言わさずに日常は引っ掻き回される」

 

 

 そう。

 そこは、俺だけの判断じゃ決まらない。

 

 『戦争』になれば、手が届き切らない『周囲』から真綿で絞められるように削られて往くだろう。

 それを止めようとすれば、尚の事『俺』はその世界へ引き摺り込まれて往く。

 

 

「魔王の妹の首ならば、戦端を開くのに十分すぎると思わないか?」

 

 

 ――予想通りに。

 

 コカビエルの光の槍は、リアスぶっちょを目掛けて――、

 

 いなかった。

 

 

「先ずは前準備だ。戦争がしやすいように、恥知らずの元身内から削らせてもらう――ッ!」

 

 

「――えっ」

 

 

 切っ先を向けられたのは姫島先輩で――、

 

 其処は流石に理由もまだ詳しくなかったので追い付けず――、

 

 為す術も無く、彼女の命が失われ――、

 

 

 

 

 

 

 

    「――おっぱい」

 

 

 

 

 

 

 

 ――る、ことは、無かった。

 

 

「……ッ!? なん、だと……ッ!?」

 

 

 コカビエルの光の槍は、その場に現れた仮面の男によって防がれていた。

 

 決して甘くは無いであろう、悪魔を滅ぼせるはずの威力を備えた一撃を。

 彼は事も無げに片手で受け止めて、握り潰すように掻き消して見せる。

 

 彼は、龍を模した赤い仮面、いや、覆面を纏っている。

 身体は鎧、正しくはライダースジャケットのような、線が露わとなる装甲の甘い、『紅い衣装』だ。

 

 少女のように茫然と見上げる姫島先輩の前へ立ち塞がり。

 彼女を庇うかのように前へと歩む。

 

 

「姿が、違うが……まさか、」

 

 

 コカビエルは、自分の中での答えを、恐れと共に口にした。

 

 

「今代の、赤龍帝か……!?」

 

 

「いいや。アンタがありふれたと評した、『龍の手(トゥワイス・クリティカル)』の使い手だよ」

 

 

 懐から抜け出した(兵藤一誠)を、俺は舌打ちと共に見送るのであった。

 




気遣いの出来る烏丸。違いの分かる男(ダバダーダーダー

でもその気遣い割と無駄ァ!


感想欄ではバビロンの大淫婦だとか人妻を落とす神器だとか予測がたくさん建てられてましたね
正解はエジプトのドマイナー女神でした!わかったひといねえだろこれ

あと人妻落とすのは素でやれてるから。神器働いてねぇから(それはそれで大問題


ナベリウスだかネビロスだかは小猫と黒歌の元主だったそうです
ケルベロスを聖書陣営が取り扱えた理屈、本文でのは予測です。保証はない

龍の手ルビの意訳は二撃決殺でも構わないけどもね
名付け親がポケモン好きっぽいから敢えて安易な意訳です。俺の所為じゃねぇ


そして話が終わらなかった…!
次回へ続きます。文句のある人は深淵から目潰し☆


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サーゼクス「また知らない間に私がディスられてる…。しかも身内に…」

コカビーが軍事云々語ってましたが、当の烏丸は「そうかなぁ」という感じで眺めてました
注釈的に彼なりの内心を加えさせてもらいますと「ソドム&ゴモラは撃ったら相対も何も無いので即終了。でも身バレしてたら事前で躱されるからなぁ」です
個人戦力ってバランスがどうのという話じゃないですよね


前回のあらすじ
ヒーローみたいに参上したイッセー!
でも読者からは不評の嵐だ!
どうする作者!?


「ア、アゲノ゛ザン゛……! マモ゛ル゛……! オデ、マモ゛ル゛……!」

 

「その声……! イッセーくんですのッ!?」

 

 

 いや、アレ人語忘れかけてませんかね。

 

 朱乃さんの前に立ち塞がり、コカビエルの光の槍を受け止め、獣化ウイルスに汚染されたみたいに朦朧(グルル……!)と喉を震わせるあのひとを。

 当の朱乃さんはどうにも、熱の籠もったような眼差しで見上げています。

 

 窮地を救われて熱を上げる前に、戦地で自分が無様を晒したことについて考えるべきなんじゃないでしょうか。

 私? 私は別に烏丸くんに入れ込んでなんていませんし。ホントですし。

 人妻誑し込んじゃう同級生ですし。普通に考えても無理ですよ。……ホントですよ?

 

 で、その烏丸くんですが、

 

 

「……今、舌打ちしましたよね?」

 

「シテナイヨー」

 

 

 兵藤先輩が飛び出して行ったところを、ややイラついたような眼差しで見ていました。

 今も、返事が棒読みですし。

 

 ……とりあえず、軍事的にどうのだとか、神話的にどうのだとか、コカビエルが色々と説明してくれましたが。

 今は、烏丸くんにキチンと問うべきことがあります。

 

 私は、彼に庇われた位置から、少しだけ身を乗り出して服の背を摘まみました。

 ……彼がロリコンっぽいから身体的特徴を生かして仕草で甘えれば好意的に見てもらえるかもという配慮であってそれ以上では無いですホントです。

 

 

「で。何をどうしたら『ああ』なるんですか」

 

「……。塔城ちゃん、聞くべきことってそれで合ってるの……?」

 

 

 若干、呆れたような顔をされてる気がします。

 

 

「コカビエルがどう謂おうと、烏丸くんが私たちに危害を加えようとしていないことは明白ですから。それよりも『何をやらかしたのか』ということの方が重要です。前科があることを忘れてませんよね?」

 

「わはー、信用なーい☆」

 

 

 言葉振りはさておいて、どうにも嬉しそうな顔をしてますね。

 べ、別にホントにそれだけですしっ。

 コカビエルに良いように謂われたことを傷ついているようだ、なんて思ったわけじゃ無いんですからねっ。

 そんな内心なんて無いんですから見透かされてるように感じるのも勘違いですっ。

 

 

「信用はしているわよ。貴方は事後承諾でも説明をしてくれるものね」

 

 

 今は私のターンです。邪魔すんじゃねぇですよ部長」

 

「小猫!? 私あなたの主なのだけど!?」

 

 

 思わず本音が漏れました。

 

 

「それで、兵藤先輩は何処に隠し持っていたんですか? しばらく見なかったから平和、じゃなかった、清々していたのですが」

 

「言い繕えていないわよ……」

 

 

 失礼、咬みました。

 

 

「うん、まあ、種明かししちゃうとココ」

 

 

 と、見せられたのは、黒々とした一枚の絵画――(以下略。

 

 

「……ひと目でSAN値が限界一杯まで削られましたよ。なんなんですか、ソレ……」

 

「コっ、コカビエルなんかよりずっと害悪な代物じゃないの……ッ! そんなものをどうしようっていうのよ……!?」

 

 

 比較対象が可笑しい気がします。

 今になって思うと、コカビエルは私たちに対してあまり敵意なんて持ってませんでしたよね。

 

 そして、目の前の絵画からは世の全てに対する怨嗟、憎悪、敵意、害意……!

 ありとあらゆるものを滅ぼし尽くさんとする呪いの念が籠められているのが、肌で感じ取れます……!

 素手で抱えていて、良く平気ですね……!

 

 

「コレでどうしよう、なんて気は無いっすよ。イッセー先輩は、今の今までコレの中に居ました」

 

「……ああ。それで『ああ』なっちゃったんですね。納得です……」

 

「いや、それにしたって、あの強化っぷりはレベルの桁が可笑しいよね……?」

 

 

 木場先輩まで近づいてきました。

 ちなみに、話の合間に兵藤先輩はシャァァ!と獣のような唸り声を上げてコカビエルへ吶喊しています。

 

 朱乃さんはヒロインムーヴのままです。

 邪魔になりますからさっさと下がりなさい。

 

 

「んー。まあ折角なので色々種明かししますけど、前にゼノヴィアらが帰った後で、先輩がウチに来たんですよね、鍛えてくれって」

 

「ああ。それで鍛錬を、」

 

「でも俺そういう伝手は無いので、手っ取り早く『強く』なれるように改造しました」

 

「待って」

 

 

 テンポよく、木場先輩の震えた声が烏丸くんの平然とした科白にツッコミを入れました。

 

 でも見ればわかりますよ。

 どう見たって、真面(まとも)な手法で強化されてないじゃないですか、アレ。

 

 

「ちなみに、具体的にどのようにやったのかを訊いても……?」

 

「ふむ。さて此処に、とある現代錬金術師から拝借した『カイゾウニンジャレポート』なる物があります」

 

「先ほどの絵画もそうですがどうやって懐に仕舞ってたんですか。四次元なポケットですか」

 

「ツッコミどころが違うわよ小猫」

 

 

 現代錬金術師風収納術です☆と、イラっとする笑顔で応えられました。

 イラッ☆

 

 

「こちらの筆者の弁に寄るところに依りますと、『薬物投与ナシに大脳新皮質の働きを抑制し、大脳辺縁系を活性化、ホモサピエンスの限界性能一杯一杯まで引き出せる体質と性能とノウハウを備えた一族』というモノが日本にはいらっしゃったご様子で」

 

「……それ、人間の話?」

 

「ですよ?」

 

「人類コワイ……」

 

 

 人類出の木場先輩の言っていい科白じゃないですよ。

 人類コワイ。

 

 

「いくらなんでも一朝一夕でイッセー先輩をそんなもんに換えるのも難しいので、」

 

「出来ないって、言わない辺りが烏丸くんだよね」

 

「難しいので。続けて載せられていた『その中枢神経を生かし、よりアッパーレベルの肉体を構築するために、動植物並びに昆虫類爬虫類の身体機能を人間大に引き上げて組み込む改造換装手術』というモノに注目しました」

 

「このゲス野郎!」

 

 

 まんま改造人間じゃないですか!

 道理で仮面ラ●ダー臭がすると思ったんですよ!

 

 

「ひとの眷属に何をしてくれてるのよ……」

 

「部長、もっと怒るべきです。下手をしたら私たちも知らない間に『何に』されるかわかったものじゃないですよ」

 

「め、珍しいわね、小猫がそんなはっきりと……」

 

 

 この辺りはもう信頼とか信用とかじゃなくて、単純に動物的本能的恐怖に近いです……!

 これだから化生上がりじゃない悪魔は危機意識が足りないって謂われるんですよ……!

 

 

「塔城ちゃんに物凄く怒られちゃったので、今後こういう施術するときは皆さんにも了解取ります……」

 

「そ、そうしてもらえると助かるわ……?」

 

 

 シュンとしてますが、違う、そうじゃない。

 そもそもやろうとするなって話です……!

 

 

「――で、仕舞っておいた理由は、細胞組成が定着する冷却期間みたいなモノですね。ついでに外界の視覚情報を遮断することで思考機能の拡張を促し、自覚的に意識が加速することで自身を見つめ直せる疑似的な『精神●時の部屋』を目論んで封印していたんですがね。仕上げ前に自発的に逃亡するとは良い度胸だ

 

「やっぱり舌打ちしましたよね?」

 

 

 最後、ちいさくボソッと何か口走りましたよ?

 

 

「だって一応は脳機能の拡張も施しましたしぃー、大脳辺縁系は活性化すると本能に基づいた行動にも抑制が利かなくなるから注意の必要があったんですものー。性犯罪者を堂々野に放つ真似を俺みたいな善人が見逃せると思ってるんですか?」

 

「善人とやらは上級生に無免許改造手術なんて施しません」

 

 

 前々から思ってましたけど、このひとひとりで悪の組織みたいな真似しますよね。

 其処に所属する『悪の科学者』って感じです。

 

 

「……やったことは、わかったわ。……上手く納得は出来難いけど……」

 

 

 頭を抱えて言葉を絞り出すリアス部長に、烏丸くんは笑顔で【勝訴】の紙を広げます。

 そんなわけあるか、後で反省文書きなさい。

 

 

「でも、それならそれで、イッセーに組み込んだのはいったい何? コカビエルに匹敵するだなんて……」

 

 

 はたと、思い出して、先ほどから交わされているであろう戦闘現場へと目を向けました。

 

 気が付けば、コカビエルと兵藤先輩は互角に組み合っています。

 何処のΖ戦士かと見紛わんばかりの打撃の応酬。

 お互いにオゥラを迸らせ、獣と戦士の雄叫びを上げながら殴り合っていました。

 

 完全に此処だけ世界観が違う気がするのは、私だけでしょうか。

 

 

「……匹敵、かなぁ」

 

「え?」

 

「いえ。組み込んだのは、神器から抽出した龍の因子ですよ。ドラゴン系神器は大概封印されてるモノだ、って前にレポートで読んだので」

 

 

 それは、何処で出回っているレポートなのでしょうかね。

 

 

「で、でも、『龍の手』はありふれた神器よ? それであれほどの龍が封じられているだなんて……」

 

「コカビエルも誤認してますが、『龍の手』に封じられてる龍って赤龍帝ですよ?」

 

 

 その辺りのことは詳しくないのですが、詳しいであろうリアス部長は一瞬言葉に詰まっていました。

 

 僅かなフリーズの後、声を上げて驚きます。

 

 

「……はぁ!? そんなわけないでしょう!? 赤龍帝が封じられているのは、『赤龍帝の籠手』っていう専用の神器があって……!」

 

「いや、ぶっちゃけ赤龍帝でもない他のドラゴンに倍加の権能なんて無いでしょ? じゃあ、『龍の手』に封じられてる龍は赤龍帝でしょ」

 

「……!?」

 

 

 ……理屈は通ります、が。

 

 

「『龍の手』全部が、って想定してるんですか?」

 

「日本にもあるだろ、本社と分社みたいなのが。アレは、魂とやらを祀るのに各地で分けて祀って、でもその祈願は本霊に習合するっていうやり方だったかな。今風に言うと、サーバを主とするアプリみたいなモノ?」

 

「……そういわれると、納得できそうですね」

 

 

 そしてアップデートで【赤龍帝】にバージョンアップ出来得る、と。

 運営の仕事次第、って感じでもあります。

 

 

「じゃ、じゃあ、この先イッセーの神器は『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』に進化するかもしれない、ってこと?」

 

「……望みは薄いし、望まない方が良いんじゃないかなぁ」

 

「なんでよ!?」

 

 

 腕組んで唸る烏丸くんを、動揺したリアス部長ががっくんがっくん揺らしてました。

 反動で乳が、揺れる揺れるチッ

 

 

「イッセー先輩、一回死んでるのに覚醒みたいなのも()て無いですし、ぶっちゃけ『才能無い』の部類に入りませんかね?」

 

「其処は言わないで欲しいわ……。魔力も無いから、薄々は気づいていたけど……」

 

 

 烏丸くんの両肩を掴んだまま、リアス部長は顔を逸らして目を伏せました。

 

 ですよねぇ。

 この先どういうブートキャンプに放り込んだとしても、命の危機を乗り越えたはずの状況から生還してるのにアレなのでは、正直かなり望み薄です。

 

 何か、神とか運命めいたモノに好かれでもしない限りは、劇的なレベルアップは見込めませんよね。

 まあ悪魔は寿命が長いので、じっくりと時間と適切な手法を掛ければ、どうにかはなるかと思いますけど。

 それでも本人のやる気次第です。

 

 

「で。そもそも赤龍帝ってペンドラゴンの、曳いてはブリテンの守護神ですから。聖剣を折ることを許可する今の政治的背景を注視するペンドラゴンが、復活した赤龍帝を認めると思いますか?」

 

「………………ルフェイに、殺されかねないわね、イッセーが」

 

「ねぇ?」

 

 

 レベルアップ(覚醒進化)することが死亡フラグに繋がっていることまで判明しました。

 なんでこんなギリギリな生存ルート予定されてるんでしょう、あのひと。

 

 あまり尊敬できない先輩(変態)ですが、思わず出荷前の豚を眺めるような眼を向けてしまいそうです。

 多分、運命に愛されてるのかとは思いますが。別ベクトルで。

 

 

「で、やっぱり互角とは言い難いでしょう。取ってつけた改造も、未完成ですからねー」

 

「え?」

 

 

 ゴシャァアアア! と。

 

 コカビエルのアトラスパンチが決まったァーーー!

 兵藤先輩ダウンッ! 立てなぁーい!!!

 

 

「イッセーくん!!!」

 

「――虚は突かれた、」

 

 

 斃れる兵藤先輩へ、悲痛な声で呼びかける朱乃さん。

 それを見ながら、烏丸くんは一歩前へ。

 

 

「が、獣の形振りで勝てると思ったか……!? この程度、戦争を乗り越えた俺には屁でもない!!!」

 

 

「そりゃあ、コカビエルは海千山千の猛者だろうし、技術があるし。勝てるとは思えねぇ。残当ってやつですな」

 

「結構肉体言語で沈めているように見えますが……?」

 

 

 技術とは、どのあたりに。

 

 

 

「さぁ、前座はこのぐらいで良いだろう。出てこい神器使い!! 貴様を下して、俺が神になる!!!」

 

 

 

 ――ん?

 

 

 

「三日天下のフラグが経った(ニチャァ……」

 

 

 

 あっ。

 

 小声で烏丸くんが呟いたことで、僅かな合間の違和感の理由にも納得。

 そして、声高に宣言したコカビエルに聴こえるように、

 

 

 

「今だギャスパー! コカビエルを停めろッッッ!!!」

 

 

 

 ――瞬間、

 

 

 

「――!? 『停止世界の邪眼(フォービドゥン・バロール・ビュー)』の使い手だと――!?」

 

 

 

 誰も居ない背後へとコカビエルは振り向いて――、

 

 

 

「…………!? っ、し、しまっ、」

 

 

 

 即、罠で策だと、気づいたのか、

 コカビエルが再び振り返った其処には、【黒い絵画】を向けて哂う烏丸くんの姿が――……、

 

 

 

  ■

 

 

 

 その時の彼の横顔は、本物の吸血鬼よりもずっと吸血鬼らしい、ぞっとするような笑顔でした。

 ……いや、其処は神器使いましょうよ……。

 




――下に恐ろしきは人の業…

――人を呪わば穴二つ…

――いっぺん、しんでみる?



斃すときは一撃がベスト
斃せない相手でも、地獄送り、みたいな封印系はけっこう有効だよね、っていう話

赤龍帝と龍の手に関しては独自解釈です


それはそうと、
作中で小猫が自分のことを化生上がり、つまり妖怪からの進化的な?と書いちゃいましたが、
基本怨念やら概念やらから派生する妖怪どもですが、この世界線では原作に基づいてワイルドハーフ形式で想定させていただきます
親が妖怪なら子も妖怪、なんかようかい?みたいな
小猫も黒歌も親が居ますし、クノエだったかのフォックスは親子丼ですし

でもこの子たち完全な獣に変化は出来ないっぽいから、化生上がりって自分で描いちゃって既に違和感w
それなのに原作では獣の本能がしっかりと根付いてるっていう謎の設定w
原点がワイルドハーフ系でも育ちはヒトっぽいのに何故こうなってるのw

そんな矛盾に書いてから気づきました
誰か分かりやすい答えを教えてくりゃれ

次回、聖剣編決着!


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神器「私の出番はドコ…? ココ…?(虚ろ目」

遅れまして申し訳ない
大体20話目? あ、19か。更新のお時間です
始まる前に個人的な言い訳と注釈


一応言っておきますが、作者も烏丸も別にイッセーの事嫌ってるというわけでもないです

個人的には原作でやったこと(学園規模での覗き&セクハラ行為)とその被害者への懸念がありますので、程度の低い嫌がらせにも似た『痛い目』に合わせることに躊躇は無いですが、更生の機会くらいは用意しても良いくらいには配慮は出来ます
でも、原作での欲望駄々漏れキャラが前提にあるから、中々に性格改変まで踏み込まないと矯正不可なんじゃなかろうか…みたいな想定が付いてきますので、どうしても舵取りが難儀になってしまうのです…
そしておそらくはその性欲が主柱となっている『無理を通して道理を引っ込める』動きも組み込んでしまうので、前回みたいに最終調整前に逃亡される、みたいな展開が生まれた状態です
これで烏丸が敵組織とかだったら確実に復讐者フラグがバリ立ちでしたw

ちなみに烏丸は『ちょっと珍しいタイプのモルモット』くらいの認識です
特別嫌っているわけでも無く『そこそこ前評判が悪い先輩』なので、命を奪うことに躊躇しないレベルなわけでは無いですが『多少無茶に扱っても問題ないかも』みたいなスナック感覚で施術します
オテガルモルモットゥー!

ちなみにカイゾウニンジャレポートはクロス先原作から拝借してます。最終巻です
中身的にはモザイクオーガン手術じゃねーのかと言われてますが、そちらも元ネタはショ●カーまたはブラックのRXみたいなところもありますし、こういう発想は何処にでも出てるよねと個人的には思います
ていうかMO手術またはバグズ手術クロスは別の人が書いた覚えがあるので、コレ本題にはしない方がいいかなーっと回避した次第
みんな違ってみんないい。これでいいじゃない! そういう話じゃないな。うん

俺的にはアラクニドみたいにどこら辺まで再現可能な技術として現実的に落とし込めるかということを突き詰めていきたいのですが、それやっちゃうともう本気でアンチ・ヘイトに突破しそうなので我慢してるんです。ホントですよ?

以上、裏設定でした


前回までのあらすじ
死闘を繰り広げてコカビエル討伐完了!
駒王学園に平和が戻った!


「ヨッシャァ!!! 天気は快晴、調子は良好、絶好の球技大会日和って奴だぜ! 掛かって来いテメェら! 漢イッセー! オカルト研究部の威信を背負ったこの俺に、撤退の二文字は無い!」

 

「キャー♪ 頑張ってくださいイッセーくーん♪」

 

 

 テロリストの襲撃に遭った駒王町。

 一時はどうなる事かと思ったけど、部長たちや警察の方々の協力の下、町には大きな被害が齎されることなく無事に事件は終息したらしい。

 

 俺はと言えば、その間烏丸のところで修行という名の拷問を受けていたから記憶も曖昧なのだけど。

 

 しかしどうやら、俺は最後の一歩で件のテロリスト、コカビエルとかいう堕天使を捕まえることに貢献したようで、その時に朱乃さんを助けたとも聞かされて。

 

 

 ――多少謎が残るが、結果として俺に爆乳お姉さんの【彼女】が出来ました……ッ!

 

 

 体操服で黄色い声援を浴びせ、明らかな好意を送ってくれる朱乃さん。

 周囲の目も憚らず、ファンがアイドルを応援するかの如くハート目で手をぶんぶんと振る姿を見てしまうと、疑いようのないことなのだとはっきりと確信できるぜっ!

 

 つーか豊かなお胸がいっしょになってぷるんぷるん揺れる……ッ♡

 おうおう羨ましいか童貞どもっ、あのおっぱいが俺のなんだぜっ!

 

 

『……ッ、兵藤を殺せェェェーーーッッッ!!!』

『『『『ウォォオオオオオオオオッッッ!!!!』』』』

 

 

 地を揺るがすほどの、駒王学園全男子からとも取れそうな雄叫び……ッ!

 

 しかし! 今の俺はそんなものに圧し負けるほど柔ではないわッッッ!!!

 

 

「改めて言うぜ。掛かって来い野郎ども!!! 烏丸の拷問を生き延びた俺が! お前ら程度に怯みも、あ、ちょっ、ふ、複数同時に股間を狙うのはラメェエエエエエ!?」

 

 

 ドッジボールのはずが、全校男子VS俺という構図のまま。

 コートの一角で私刑(リンチ)が始まった――。

 

 

 

  ■

 

 

 

 現在は部対抗ではなく、純粋に学年別クラス対抗だった、はずなのだが。

 イッセーがハーレム(比率、男子一色)を形成してモテモテ(死語)を達成したその様子を睥睨して、小猫は小さく溜め息を吐いた。

 

 全校掛けてのお祭り騒ぎ。

 元々行事には積極的に取り組む学園であり、日頃の学業からの解放、更に年頃も相俟っての節制の緩さが『球技大会』という本分を丸無視するレベルで盛行されている。

 テンション爆上げ☆ という奴である。

 

 コカビエルの襲撃を乗り越えた事実を関係者以外が把握していないことは当然だが、それこそ裏を知る者たちには周知の事実だ。

 それもまた、初夏という然程も熱気の無い陽気であるにも関わらず、上昇気流に乗るかの如くにテンションが煌々と高まって往くことにブレーキを掛けようともしない理由のひとつに当たるのかも知れない。

 

 無事を互いに思い知れた。

 生の悦びなるモノを彼らは承知し、この『祭り』を全力で楽しむのであろう。

 

 そういった推測に推測を重ねた憶測程度の学術的探究はさておいて。

 

 小猫が疲れたように溜め息を吐いた。

 その理由はもうひとつある。

 

 

「――さぁ、全身全霊を以て、応援するわよッ!」

 

 

 エキゾチックな褐色肌の美女が、チアリーダー姿で真横に居る。

 その事実に辟易としているのである。

 

 ていうか、女装した烏丸だった。

 

 

「……もう烏丸くんにどういう感情を向ければ良いのかわかりません……ッ!」

 

 

 結構気になるクラスメイト男子が友人男子に「今日は帰りたくない」と宣言した姿を目の当たりにした島田さんみたいな精神で(かぶり)を振るう。

 以前にもやっていたからと還って耐性が付くはずもなく、快活に哂うそこそこきょぬーの美女にしか伺えない烏丸という、中々サイコパスな文面に小猫は先日以上にSAN値を削られていた。

 頭を抱えた指先がカタカタと、震える。

 

 それは恐怖か幻肢痛かと葛藤する一方で、そんな美女の球技大会参入に沸き立つのは名も知らぬ男子たち(モブ)

『い、いったい誰だ、何者なんだあの美女は…!?』『ふっ、ご存じないのですか?』『彼女こそが我らが1年が誇る絶対的宇宙idol烏丸イソラ』『そう、最終兵器アイドルとは彼女の事です!』『ヤック、デカルチャー…!』

 と、なんだか珍妙なパラダイムシフトが劇的ケミストリしていたり。女子じゃねーよ。

 

 そんな一幕に全然関係無いが、通りすがった肥満気味のイッヌがヒャンヒャン哭いた。バッボーイ。

 

 

「ほらほら、塔城ちゃんも着替えて着替えて。イッセー先輩を応援して全校からのヘイトバリ集めて遊ぼうぜ☆」

 

「なんですかその悪辣通り過ぎて非道にも程がある揶揄(からか)い方は。西片くんだってされたことないでしょうよ」

 

 

 今にも泣きそうなドン引きの眼差しで狼狽える白髪幼女が、巷でウワサの褐色白髪を見上げていた。

 精神的に、ヤバい。

 

 

「あ、あれ、小猫ちゃん、疲れてます?」

「疲れるのも無理ないと思うッスけどね、こんなん無差別テロと変わりないッスよ」

「小猫さんの痛痒(ダメージ)は其処では無いかと思われますわ」

「みなさーん、がんばってくださーい!」

 

 

 おびえた様子のギャスパー、呆れた様子のミッテルト、諦観したレイヴェル、単純に学校行事が楽しいのか参加者『全員を応援』するアーシア。

 烏丸に引き続き、4人ともチアガールな恰好での学園復帰である。

 

 二大お姉さまの片割れが1人へ集約した影響か、彼女たちのコスプレには男子たちの熱気も再上昇。

 今なら飛竜昇天破も再現できそうな程度には、学園のボルテージはグングンに上り詰めている。

 

 さておいて、何の裏も無しに笑顔を振り撒くアーシアは、小猫の削れたマインドもじんわり回復するレベル。

 流石は限定的時間回帰権能神器を備えた聖女だ、実績が誇らしい。

 ちなみにルフェイは報告のために一端帰国した。

 

 

「……あれっ?」

 

 

 と、気づく。

 

 あれれ~、おかしいぞ~?

 先日まで姿の無かったクラスメイトが、しれっと混じってないかな~?

 

 そんな想いを込めた眼差しで、紅い縁の眼鏡を掛けた某女装吸血鬼へ視線を向ける。

 俗に言う、ジト目だ。

 普段と変わらない。

 

 

「な、何か……?」

 

「……ギャーくん、引きこもりはどうしましたか」

 

「えっ!? で、出て来ちゃダメなんですか!? ソラくんから貰った眼鏡(コレ)がありますから、折角なのでリハビリにと思ったんですけど……!?」

 

 

 ダメとは言わないが、腑に落ちない。

 此れか、ミッテルトの言っていた無差別テロとは。

 参入したチアガールの5分の2がガールじゃない。

 なんという(トラップ)

 

 というか、自分より距離が近くなってる気がするのはアレか、同じ女装野郎だからなのか。

 

 色々と言いたいことを呑み込んで、小猫は微笑みを浮かべた。

 アーシアの様相でマインドが回復したお蔭でもあった。

 流石は聖女。わびさびがある。

 

 

「いえ、無事にクラスメイトに戻れたのなら何も言いません。というか、烏丸くんと交流があったんですね」

 

「そりゃあ、部室に封印指定があったら覗くでしょ。普通」

 

「他の人のプライベートルームの可能性もあるんですからそういう真似はどうかと……」

 

 

 封印指定のプライベートルーム、自分で云ってて謎な状態だ。

 KEEPOUTの黄色いテープで施錠されている様を思い返せば、逆説的に汚部屋に思い当たりそうなので邁進的スルーを決めた。

 

 

「……今更ですけど、変態(アレ)放っておいて良いんですか? 最終調整前とかなんとか、云ってませんでしたっけ?」

 

「塔城ちゃん、先輩を指さして変態呼ばわりはどうよ」

 

 

 口語で云えば呼びはルビなので問題は無い。

 気づく方が可笑しい話である。

 

 やんわりと窘めつつ特に否定らしい否定も間に挟まずに、烏丸は小猫の隣にすとんと腰を落とした。

 座る所作にも色気がある。

 程好い膨らみと骨格はどうやって表現しているのか。

 質問しておいてなんだが、小猫はそっちの方が気になった。

 

 

「気になったのはキチンと肉体が自己崩壊起こさずに定着するか、って点もあったけど、どちらかと言えば性格矯正の方が主題だったからね。コレは元々長期を予定していたことだから、おまけ且つ本題ではあったけれど」

 

「さらっと怖いこと口走ってますけど……。矯正、ですか?」

 

「? そりゃあ、変に強力な性能持たせたまま人格に信用が無いモノを放置なんてできないでしょ?」

 

 

 その辺りは納得のいく話ではある。

 しかし、小猫が気になったのは其処では無い。

 

 

「烏丸くんの場合、時間がかかるモノなら無理をせずにそのまま自分で壊しちゃうのかと思ってました」

 

「ヤダ、この子真っ直ぐな目でとんでもなくサイコパスなこと口走ってる……」

 

 

 サイコパスな文面を生み出した張本人に恐れ戦かれたくは無い小猫だった。

 

 

「あのね、俺は其処まで非道じゃないからね? そりゃあやったことはやったことだけど、イッセー先輩の命を軽く奪う気なんて微塵も無いから」

 

「全く説得力の無い説得どうもありがとうございます。命を奪う気が無いのなら上級生の脳みそポックルとかしないでしょう」

 

「誰がネフェルピトーだ」

 

 

 そもそも件のネフェルピトーがゴンさんに伸されたような結末を先日イッセーはコカビエル相手に顕わとしたわけであるがry。

 ――やめよう、この話は色々な方面に敵を作る。

 

 

「というか、脳みその中枢神経をどうのこうの、というしゅじゅちゅは人格矯正にはならないんですか?」

 

((しゅじゅちゅ。))うん、まあね。人格の形成に必要なのは『記憶と経験の連続性』で、人格はそれらが形作る『枠型』だ。脳本来の働きはそういった『記憶』を整理することだけど、俺が施したのは身体制御のリミッター解除に値する部分。回路的に組み直して『切り替え』が出来るように調整した程度だからなぁ、本人の認識の程度に依るけど、記憶に関してはノータッチだったから其処まで手は回らなかったよ。薬物投与で記憶障害を施すこともできたのだけど、本格的に矯正するなら、日常レベルで常習的に洗脳学習を施さないとね」

 

「いっかい記憶喪失させて新しい環境に落とし込むとか、そういう……?」

 

「嫌いじゃないぜ、そういう冒涜的な力技」

 

 

 さらりとイッセーの人権とか倫理とかが無視されているのだが、其処を指摘するほど彼女らの会話に気を配る者は居ない。

 小猫が噛んだ点に関しては、可愛らしかったのでそれこそノータッチを決め込んだ烏丸であった。

 

 

「個人の経験や感動を根幹に本人が形作られている、と云う人は言うけれど、そもそもが状況と状態を連ねた『対応』のことを仮に人格って呼んでいるだけだしねぇ。パターンで云えば26万2144通り、八卦に八卦を重ねた六四卦の三乗、人間の在り様は有限だよ、心理も含めてね、特別なんて無い」

 

「突然なんですか」

 

「ん、まあちょっとした易占の話。血液型と星座で占う以前にもヒトの類型は分類されていた、っていうこと。脳科学序でに語りたくなっちまったぜ」

 

 

 にひひ、と哂って烏丸は云う。

 やだ、美人さん。

 思わずトゥンクと胸の高鳴りを小猫は感じた。イバラの道だ。

 

 

「結局のところ、其れの心の内なんて読めるモノでも無いからねぇ、読んでも良いことなんて別段無いのだし。人間はやったことが全てだ、其処に責任を負う立場が納まったのなら、俺としてはもう良いかなぁってね。塔城ちゃんにも怒られちゃったし」

 

「はぁ……、反省しているのなら蒸し返す気は無いですけど……。……それ、朱乃さんに丸投げしてません?」

 

「だってイッセー先輩を囲う宣言貰っちゃってるし」

 

 

 曖昧に頷いて、しかし、何とも言いようのない呆れの交じった眼差しが烏丸を見据えた。

 ――話は戻る。

 

 コカビエルを封印直後、彼らの下へ現れたのはグレイフィアだった。

 元来、魔力を備えた者たちが多量に一つ所に集まると、個人の魔力が複合的な影響を及ぼして位相を『ずらす』。

 物理的に違う宇宙への回廊を繋ぐ空洞なんていうモノも実在するが、この現世は影響力を及ぼせるほどの熱量を備えた存在も闊歩する混沌の巷だ。

 彼らが住まう箇所が世界中に点在する以上、それを確保するだけの理屈が相応に働く。

 

 そういう『別次元』とも取れる空間は、今回駒王町にも生まれようとしていた。

 しかし、そもそも駒王町は冥界へ続く異界が既に形成されている、日本上の特異点でもある。

 そういうところに新たに異界が生まれるとなれば、今度は冥界へ渡れなくなる恐れが生じるのだ。

 駒王学園に通うふたりの貴族悪魔のうち、ソーナ・シトリーが戦列に交わらなかった理屈は其処に当たる。

 彼女は、学園が別位相にずれ込むことを防ぐため、学園を結界で覆うことによって対処を施す役割を担っていた。

 

 とはいえ、コカビエルの備えた魔力は膨大だ。

 いち貴族では対抗できないのだから、一時的にずれ込むことは既に見込まれており、ソーナは対処というよりは立て直しを視野に入れて結界を施していた。

 その先に駒王町への被害は見込まれていなかったが、其処は其れ、ソーナは勝手にサーゼクスへの連絡を入れることで、後に起こるであろう問題への対処を『偉い人』へ丸投げしたとも云える。

 個人が片付けられない問題へ、上司が責任を取る形で嘴を挟むことは、どうしたって避けられようのない事象だ。

 その点は納得するしかないのだが、問題点が一つ。

 

 件の上司と密接に関わっていると思われていた秘書(グレイフィア)が、彼女らの行動を監督する気が無かった、という点である。

 

 そういうわけで。

 別段監督も何もする気は無く、烏丸の策上コカビエルの油断を誘うための定石として『女王は動かざるが鉄則』を担っていたグレイフィアは、彼らの戦闘を伺っていた白龍皇を捕縛して彼らの前へ現れた。

 捕らえられた猫の子のように、ドン引きの表情で首根っこを捕まえられていた白龍皇は、鎧姿で堕天使総督からの依頼を彼らに伝達したのであった。

 

 

「……どうなりますかねぇ、この先」

 

「先ずは、会談とやらが成功することを考えようよ。俺としては遂に来たか、とは思うけど」

 

「でも、実現しますか? 世界一仲の悪い陣営ですよ、聖書陣営って」

 

「んふふ。しかも結託すれば結託したで、絶対に場を荒らしに嘴挟まれるだろうからね。世界一の嫌われ陣営でもあるのだし」

 

「うわ、嬉しそう……」

 

 

 にやにや笑って現状を紐解く烏丸に、思わず引く小猫。

 思い返すのは、先日の出来事、その結末だ。

 

 コカビエルの暴走に間に合わなかった白龍皇は、事の決着を落とし前という形で達成することが出来なかった。

 そもそも、堕天使の陣営に彼という戦力が備わっていたことを、今回の事件で明るみにする思惑すらも外された感が否めない。

 そういう一歩目から踏み外しているのを知ってか知らずか、白龍皇は封印されしコカビエルの一枚絵を引き渡すように、烏丸へと進言して来たのだ。

 それを易々承諾し、手渡そうとしたところで躊躇した白龍皇は、中々に危機意識が働いている、と烏丸は感心もしていた。

 

 

「結局引き取らずに帰っちゃいましたしね。その場で連絡取るとは思いませんでしたけど」

 

「持ち帰ることが不可能だ、ってあちらさんが判断したんだから、そりゃ仕方ないよ。その流れ序でで決まった事態に、それぞれがどう動くか、っていうのが今回の見世物なの」

 

「悪趣味……」

 

 

 そう、三陣営会談は連絡序でで決定されていた。

 

 その場に天界所属(仮)の烏丸、冥界所属(仮)のグレイフィア、堕天使所属の白龍皇が揃っていた事実が、恐らくは堕天使総督からすると大きい。

 それぞれがそれぞれ、話を確実に上司へ伺い立てられる立場だと、総督は判断したことだろう。

 話は通せる、しかし、だ。

 

 

「駒王学園を大舞台に選抜する、これはなぁ。なぁ?」

 

「……。勝手に話を奨めちゃえば、納得しないヒトの方がずっと多いですよね……」

 

 

 巻き込まれる人間。

 通すべき話を通されずに取り決められる各神話。

 そして、三陣営の加害者と被害者。

 

 堕天使総督はコカビエルの引き渡しの段取り序でに、纏めるべき時期が来たのだと判断したのだろう。

 だがそれは恐らく、時期尚早であるのだと言わざるを得ない。

 

 関係無いが、その間にイッセーの最終調整と快復に施術を施そうと、いそいそと血に塗れた見るからにヤベェ手術具を懐から取り出した烏丸を見て、必死で彼の保護を願い出たのが朱乃だったりする。

 主はリアスなのだが、惚れた腫れたの内心が働いたのか、部長は最後らへん空気扱いだった。

 今も割とそんな感じだ。

 

 

「お、そうだった。そういえば木場先輩」

 

「はい?」

 

「あのひと聖剣計画っていう教会の負の面の被害者だったんだってな。連絡入れたら、同じ被害者の子が会いたがってたのだわ、云っといて」

 

「え、そうだったんですか。わかりました、伝えておきます。……いや、烏丸くん自分で伝えたら良いじゃないですか」

 

 

 一瞬納得し掛けた、が、改めて同じ部活なのだから、自分で伝えればいいじゃない。

 そう思って前言を撤回する小猫に、烏丸は胸の谷間から手紙を取り出した。

 

 

「俺は用事があるのだよん。ラブレター貰っちゃってね」

 

「死ね」

 

「ストレートな罵倒ゥーー!」

 

 

 色んな意味で殺意が迸る小猫であった。

 




(聴こえますか読者の皆さん…今、貴方の心に語りかけてます…西片くんがわからない子は『からかい上手』で検索を掛けるのです…)


メガネ金髪ショタチア女装子…捗るなぁ…
眼鏡の出所はお察し

なお、イッセーは卒業したわけでもなく予定が立っただけで煽ってます
そういうとこやぞ


長くなりましたが纏めに入りました
これで大体起こったことはツタワタとワタシおもテルヨ!


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ヴァーリ「ま、まだだ、俺の出番は此処からなんだ…」

またネタを随所に散らばらせる作者が書き詰めちゃったらしい…
拾われないネタが多すぎる。供養しなきゃ…

誤字報告感想多謝
こんな前書きがくどい作品を続きも読んでもらっていつもありがたいです
本日もまた、お飲み物などを片手にお読みください

そして別段更新もしてないのになろうの方でもお気に入り登録が増えたりしてる謎
世界ってまだまだ神秘に満ちてる

追伸
感想で予測が的中してたけども続き書いたよ。――押し通すッ!


「使い魔、っすか?」

 

 

 球技大会も無事終わり、普通の学生生活と悪魔の活動、両立にヒイコラ言い始めた頃。

 

 俺はリアス部長に、あることを提案されていた。

 

 

「そう。イッセー、貴方にも必要になってきたと思ってるのよ」

 

「えーと……、それって部長の蝙蝠ちゃんみたいな?」

 

 

 口に出してハッと気づいた。

 それって、俺にも美少女の手下が出来るってことじゃね?

 部長の蝙蝠ちゃんも人間サイズに変身出来てたし、ペットに美少女が出来るということじゃね?

 つまり、合法的にエロいことし放題――、

 

 

「イッセーくん?」

 

「や、やだなぁ朱乃さん、何も不埒なことは考えてないっすよ!」

 

「その発言が全てを物語っているよね」

 

 

 美人で爆乳な彼女だけども他の女子に色目を使うのを見逃してはくれない。

 無論、朱乃さんに不満なんてあるはずも無いので必死で否定するのだが、冷ややかな声音は完全に見透かされているようであった。

 

 つーか俺に信用が無いのか?

 其処はフォローしてくれよ木場ァ!

 

 

ケダモノフレンズ……今その話を出す、ということは、予約が取れましたか」

 

「ええ。来れない子たちには悪いけど、今を逃すといつになるか分からないのよ。そもそも、これって悪魔の問題だからあの子たちにはあんまり関係無いのだけどね」

 

 

 小猫ちゃんが高級レストランに行くかの如くのノリで問い、部長もまた気負うことなく応える。

 しかし予約制とか、高級志向な捉え方は庶民には難しいっす!

 つーか小猫ちゃん? よく聴こえなかったけど、最初の方なんかボソッと小さく呟いてなかった?

 

 部内に居ないのは、アーシアちゃんにミッテルトちゃん、レイヴェルちゃんに烏丸だ。

 つまりはいつもの面々。

 ひとりを除いて悪魔では無いから、確かに関係は無さそうだ。

 興味は浮かびそうではあるけどな、誰だって。

 

 

「とりあえず、イッセーくん、私、リアス、祐斗くん、小猫ちゃん、この5人で転位ですわね」

 

「あれ? ギャスパーちゃんはいいんすか?」

 

 

 ちらっと、先日の球技大会だけ見かけた眼鏡の娘を気に掛ける。

 後輩だとは教えられたが、その後は交流が碌に無い。

 そもそも普段何処に居るのかすら知らないって、どうよ?

 

 

「ああ、あの子はそもそもアウトドアも苦手な傾向にあるから……。というか、元々封印指定されてるから勝手に出歩くのも許可は下りてないはずだったのだけど……。あと、ギャスパーはだんs」

 

「スイマセン部長、私も今回は不参加で」

 

 

 部長の科白を遮るようなカタチになっていたが、小猫ちゃんが挙手する。

 なんだろう、最後らへん、どうしても聞いておかなくちゃならないことを口走っていた気がする……。

 

 

「ルフェイさん、彼女が正式に来日する前に北欧家具に負けないイイ感じのモノを確保しておきたいので、町の雑貨屋さんを巡りたいのです」

 

「町の雑貨屋にどれだけの重荷を背(プレッシャー)負わせるつもりなの。あと、それ明らかに貴女が不参加する理由じゃ無いと思うのだけど……、」

 

「あっ、おなか痛くなってきました、いたたたた、これは生理ですね」

 

「明らかに棒読み! なんで其処まで行きたくないの!?」

 

 

 よ、よくわからねーけど、女の子の身体に関することには俺には触れらんねぇ。

 ていうか俺の用件だから付き合いたくないとか、そんな理由じゃ無いよね? そうだと信じたい。

 

 とにかく、俺たちは使い魔を探しに出発――(以下略。

 

 

 

  ■

 

 

 

 たとえ火の中水の中~。

 前衛(木場)後衛(朱乃)後衛(リアス)雑兵(イッセー)、と。

 RPGならば攻略済みダンジョンへ参入初期キャラをレベリングのために向かう火力&周回重視なパーティを編成し、彼らは使い魔の森へと旅立った。

 

 その地で「使い魔ゲットだぜ!」と宣う任●堂に喧嘩売ってるとしか思えないおっさんと出会ったり――、

 人体に害を及ぼさないが何故か衣服だけを溶かすスラ太郎と名付けられし粘体に襲われ小猫が危機回避していたことが明るみに出たり――、

 筋骨隆々身の丈3メートルのウンディーネたちのガチ肉弾バトルにイッセーが滂沱の涙を流したり――、

 偶然出くわしたユニコーンに乙女の敵と云われんがばかりにイッセーが股間を潰されたり――、

 「御意」と鳴いて襲い掛かる直立歩行人寸大の齧歯類と対峙したり、と。

 

 まあ色んな出会いがあったのだが、――割愛する(無慈悲。

 

 一方で、頑なに異界探邦を拒んだ白髪幼女は何をしていたのかと云うと――。

 

 

「……ふむむ、普通に男子の恰好ですか。遊びでは無いようですね」

 

 

 トレンチコートにサングラスに古新聞という、見るからに妖しい恰好で。

 電柱の陰からひょっこり顔を覗かせ、とある人物を尾行していた。

 

 視線の先に居るのは毎度おなじみ色黒白髪。

 なんかもう、此奴を尾行する、っていうだけで危険度がウナギライジングに至るのは作者の感性だけであろーか。

 

 気分的には幻影旅団を追いかけるゴンとキルアなのかも知れないが、気配を絶っすることが出来るわけでも無いので普通に怪しい。

 道行く人たちはそんな幼女の奇行を垣間見てギョと目を見開くのだが、数舜後には「この町だからなぁ」みたいな顔で頷いて去って行く。

 訓練されている。流石はT葉県。奇っ怪の集約する地方として名高いだけはある(偏見。

 

 さておいて。

 

 

「しかし、アーシアさんやグレイフィアさまの姿が無いですね。そのうえで単独とは、やはり言ってないのでしょうか」

 

 

 思い返すは先日のこと。

 球技大会最中にてラヴレタァなる珍妙なアイテムを晒された小猫は、その送り主はどれほどの奇特なモノなのかと問い詰めた。

 

 それをあっさりと暴露(ゲロ)るほどクズぃくは無かったが、それで納得する小猫ではない。

 しかも本日この通り、いつもの面々を連れ出さずに町へ遊びへ出掛けた烏丸、という現行犯。

 体育祭では女装して背景(バッグ)に『余だよ!』と文字の幻覚すら浮かばせるレベルの王威(色気)を醸した烏丸が、男子の恰好で遊びに出る事態は確実に暴挙である。

 

 人妻寝取り(グレイフィア)という『前科』が実例としてある現状で、烏丸の行動に対しては不審の方が比重は大きい。

 どう鑑みても修羅の戦場という連想しか浮かばなかった小猫は、そういうなんやかんやを回避するためにも烏丸を尾行していたのである。ホントである。

 

 そうして尾行して数十分、人気の少ない公園に烏丸は辿り着いた。

 以前に殺人事件があった場所だ。理由はお察し。

 

 

「――出てこいよ、居るのはわかってるんだぜ?」

 

 

 正面へ向けて烏丸が口を開いた。

 

 すわバレていたのか、と身構えた小猫であったが、何気に殺気にも似た緊張感を醸し出している烏丸の前へは、顔を覗かせるのも普通の女子高生には及び腰にならざろう得なくなる。

 普通の女子高生は『すわ』などという表現を扱いはしないが。

 

 そしてその数舜で、彼の前へ姿を顕わとした集団が居た。

 小猫のことでは無かった様だ。

 

 

「……」

 

「素敵なラブレターどうも。簡潔で心に響いた。あんな返事を返すことしかできなかったのが、実に心苦しい」

 

 

 彼らは、姿を現したのは良いとして、何を口にすべきかを迷っている様子であった。

 その隙間に、烏丸が飄々と口を開く。

 相手を小莫迦にしているような、しかし常と変わらぬ普段使いのままの口調で。

 

 小猫からは伺えないが、恐らくはいつものように愉しそうに、猛禽にも似た笑みを浮かべて居ることであろう。

 相手は誰だかは知らないが思わず、小猫は相手にしんみりと同情の思いを抱いた。

 

 

「……っ、わかっていながら、何故ゲオルクを殺した……! 俺たちが、何をした……!?」

 

「? なんだ、誰か死んだのか?」

 

 

 中華的なコンセプトと思しき恰好の青年が、怒りを込めた形相で睨みつける。

 周囲の者たちも、似たような感情を烏丸へ向けていた。

 それを必死に抑えつけているかのようだが、当の本人には伝わりはしない。

 

 

「惚けるな! ゲオルクの神器を、どうやったかは知らないが奪い取ったろう!? 神器使いは神器を奪われると死に至る……! 俺たちの仲間を殺しておいて、無事で済むと思うなよ……!!!」

 

「ああ、アレ神器だったのか。雑魚っぱw」

 

 

 後ろから覗いていてもわかる、メタクソにヒトを舐めた笑顔を烏丸は向けていた。

 瞬間、対峙していた奴らが殺気を膨れ上がらせる。

 

 しかし、

 

 

「……今更武装しても。しかも、ケルベロスより脅威が無いですね、アレ」

 

 

 小猫は冷静に分析する。

 剣を構えた少女に、白髪の青年。

 拳を構えた大男と、槍を顕現させたのは烏丸と言葉を交わしていた青年だ。

 

 誰も此れも『人間』。

 何処かに強靭さのようなモノを潜ませてはいるが、恐らくはまだ悪魔に及ばない。

 

 そうすると、悪魔や堕天使なんかの人外を凌駕できる、烏丸には一切脅威に至らないのだと、過不足なく判断がついたのだ。

 

 

「ッ貴様ァ!」

 

「うん。なに?」

 

「なぶッ、」

 

 

 ゴリャメシャァァァ――、と。

 

 叫んだ槍の青年が、顔面を膝で砕かれた。

 見ていたが、画像をコマ落ちしたように烏丸が其処に至っていたのだ。

 

 悪魔の動体視力は多少はヒトを凌駕するものの、超越とまでは行きはしない。しかし、

 

 

「相変わらず、人間とは思えない動きで不意打ちしますね、烏丸くん……」

 

 

 『見えなかった』事実を、小猫はゴクリンコと息を呑んで唸って嘆息した。

 

 単に、意識の外側を、呼吸の合間を縫うように稼働する『達人の動き』をトレースしたに過ぎない。

 スペックが向上しているのだから、あとは技術でカバーする。

 その程度の話だと、烏丸は云うだろう。

 

 しかしそれは余り周囲には知られていない話で。

 序でに言うと、その技術的な部分をあまり『理解しようとしない』のが、超越していると思い込んでいる神話や幻想の住人らの言い分である。

 人間の限界値を、人間がそもそも把握していない。

 だからこそ起こる『意識の格差』。

 それを明確に明白に出来るには時間がかかり、その『かかる時間』を座して待つ程、烏丸は其処まで甘くは無かった。

 

 

「おいおいおい、こんな不意打ちでダウンするなら殺気なんて飛ばすなよ」

 

「ぁ、が、ぐ……!」

 

 

 フライングニードロップで真っ先に潰した槍のヒトの頭を掴み、会話の続きを彼は促す。

 尚、序でのように周囲の者らはバラけさせられていた。

 

 剣を構えた青年は、脱力からの腰の力で放たれた速く鋭く重い突きで内臓を潰された。

 大男は両の脚を、ローキックで紙屑のように圧し折られた。

 少女は睨まれただけで腰を抜かし、地に染みを造っていた。

 

 ――どいつもこいつも、再起不能だ。

 

 

「答え合わせをするけど、転位系転送系壁抜け系は大概対処済みだ。『こっち』に許可なしに触れて来たんだから、そりゃあ悪意ありと見做して逆干渉して原因を取っ払うわ」

 

「……!? そ、んな、真似……! じん、きに、干、渉……!?」

 

「……自分らが使う物くらい把握しとけ。道具は道具、武器は武器、そんでもって技術は技術だ」

 

 

 呆れて、しかし烏丸は言葉を続ける。

 

 

「例えば、お前らがこうやって強硬手段に出て来たことから、『そういう』白兵戦専門の武装集団、つまりは自分の肉体に自信を持つ武闘家のようなモノだとして話を通そう。そういう『武闘家』が体を鍛えることと同じように、『俺たち』は現象を分析し把握し理論に換え、仕組みを解析し問題を解決し仕組みを利用する。例えば火薬を調合したり、例えば内燃機関を汲み上げたり、例えば飛翔体を制御したり、例えば核反応を発見したり。それが『学者』っていう人種だ、覚えとけ」

 

 

 何が言いたいかっていうと、こういう後詰めを巡らせるのはお前らだけじゃない、って謂う話だ。

 そう続けて、指を鳴らす。

 

 合図を受けて、そこいらの藪からグレイフィアが姿を現した。

 その手には数人の少年少女らが、首根っこを捕まえられていた。

 場外試合に定評のあるグレイフィアさんである。

 

 

「早くに不意討ちを仕掛けるものですからタイミングが、多少手間取りました」

 

「悪いね。でもまあ、これで俺がそこらの女児に言い寄られてホイホイ付き合いに赴いたのでは無いのだとわかっただろうからアーシアにしっかり証言してほしい」

 

「それは構いませんが……私が助言しても、効果は無いのでは……?」

 

 

 やや恐縮したように、烏丸の科白後半が迫真に迫った声音に聴こえたのは恐らく気のせいではない。

 どうやらアーシアには疑われていたらしい。

 ジットリとした目で不満そうに「むーっ」と剥れる彼女を、小猫も思い出していた。

 

 

「そこはもうひとりの証人に頼もうかと」

 

「ああ、成程」

 

 

 二人の目がこちらに向いていた。

 バレテーラ。

 北アメリカ訛りで小猫は内心独り言ちる。

 

 

「さて。こうしてお前らの援護役も再起不能なわけで、打てる手がもう無いと思うのだけどその前に、ひとつだけ聞いておきたいことがあったんだ」

 

 

 割と『最強なふたり』が、怯えた目を浮かべる少女や、卑屈な負け犬の眼差しを晒す青年たちを前にする。

 このふたりがいっそプリキ●アの原点的な立ち位置に値するのでは、と小猫は益体も無いことを考えて傍観していた。

 悪くない見世物だったので、駄菓子のひとつでも持ってくればよかったと後悔もしていた。

 

 

「――お前らさ、結局誰?」

 

 

 そして烏丸のそんな質問に、明らかに青年たちの心も圧し折れていた。

 




出番が増えたよ! やったねリアスちゃん!


・ケダモノフレンズ
 ひともじ加えるだけで印象は随分変わる
 作者はポピーザクラウンを思い出しました

・御意
 縦皴が目立つ齧歯類
 さぁ!紐に吊るされて鍋の具材を漁るが良い!シーラタキ!シーラタキ!

・ウナギライジング
 何処かで見た覚えがあるのだけど何処でだったのか曖昧
 響きが悪くないので採用しました。未許可です

・すわ
 それを使ったかつての女子高生も実はコスプレだったことが発覚
 詳しくはスパイラル外伝小説にて

・バレテーラ
 某プレイストゥプレイスで名を馳せた北アメリカ訛り
 元はトリコロールな日常系女子の先駆け四コマなのだが、多分知ってる人は少ない


もっと更新速くナリターイ…


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英雄派「初手完封とかねーよ…」

に、ににに日刊7位ィ!?
嘘だろオイ!?
(一時です。現在は不明)

サブタイ→覇気が無いなぁ英雄派。どうしたどうしたそんなんじゃ英雄として名を挙げるなんて夢のまた夢だぞ!プルスウルトラ!

PS
感想にて喜ばれたトリコロールな日常系女子先駆け四コマは予想の通りです。ご安心を



『祈り、囁き、念じろ――オオっと!?』

 

『ぉ、おおおお!? お、おいイッセー! それリアス先輩か!?』

『これ再現度どれくらいだ!? お前リアス先輩まで毒牙に掛けやがったかァ!』

『いや待て! それよりも先に決めることがある! ――5万までなら出せるぞ!!!』

『いいえ! 私なら7万出すわ!』

『俺に寄越せぇ! 8万!』

『9万!』

『9万5000!』

 

『お前ら勝手にオークション始めんじゃねぇ!? 誰が渡すか! 此れは俺が家宝として持ち帰って飾るんだ!』

 

『いいえ兵藤くん。コレは今日の英会話の教材ですから、授業後キチンと提出してくださいね』

 

 

「――っていうことがあったんすよ……」

 

「……えっ。ていうことは、職員室に私の裸像があるっていうこと?」

 

「まあ、粘土ですから。服とかを着せる余裕も無かったっすね」

 

 

 予想もしてなかった事態にリアスは頭を抱えていた。

 今年になってからこういう事態が多すぎる。

 原因はいったいなんなのだろうか。

 

 

「というか、英会話の授業でなんで粘土弄り……。幼稚園ですか、駒王(ココ)は……」

 

「明らかに正確な判断力失ってますわよね。先生方の認識に、何らかの阻害が施されてるのでしょうか?」

 

 

 小猫とレイヴェルの会話に、リアスははっと思い当たる。

 それを目ざとく見つけたのが、アーシアだった。

 

 

「……そういえば部長、この学校、普通にデュラハンの方とか、明らかな見た目の人外の方々がいらっしゃいましたよね。その辺り、どうやって誤魔化しているんですか?」

 

「………………。に、認識阻害の術式を、少々……」

 

「明らかにそれが原因ですよね!?」

 

 

 身から出た錆、自業自得だった。

 

 

「あっ、安心してください! 出来栄えは完璧に近い再現度! うちのクラスの部長ファンからは血涙流す程口惜しがられてますから!」

 

「それの何に安心する要素があるというの!? というかイッセー、貴方そこまで断言できるほど私の身体を、いったいいつ把握したのかしら……?」

 

「そこは妄想でカバーしたっす!」

 

 

 何はともあれ、再現度の適格性はともかく、自身の裸像を不特定多数に伺われるという事態だ。

 流石に痴女みたいに羞恥心を捨てていないリアスは、サムズアップした良い笑顔の下僕をチカライッパイに殴り飛ばしたい衝動に駆られていた。

 

 

「イッセーくん……? なぜそこでわたしのはだかをさいげんしようとしなかったのですの……?」

 

「ヒィッ!?」

 

 

 衝動に駆られたが、今イッセーに絡むのは得策ではない。

 ハイライトの消失した眼で、朱乃が幽鬼のように縋り寄る姿を見てしまうと己の語気も霞む。

 恋人関係と言えども流石のイッセーすら恐れ戦いた様相に、南無三と合掌した。

 

 それに、今の問題点はそんな物語端で触れられるような本題とは別(スピンオフ)の比ではないのだ。

 

 

「や、やあグレイフィア、ひさしぶり、だね……?」

 

「そうでしょうか。離れてから、然程も経っていないかと」

 

 

 自分の授業参観に来ていた兄、サーゼクスが。

 烏丸の授業参観に来ていた義姉、グレイフィアと対峙していた。

 

 簡潔に言って、修羅場である。

 

 

「そ、そんなことはないさ! 僕はキミが居なくなってからというモノ、一日千秋の思いで悲しみに暮れる日々を過ごして――!」

 

「私たちの新婚時代と比較すれば、それほどでもないでしょう? 今では、そんな初々しい時代があったかしら、と疑問にも思いますけど」

 

 

 グレイフィアの科白にサーゼクスのアルカイックな微笑が引き攣る。

 返す言葉を選択し切れず、旦那は沈黙を以て座り直した。

 

 一瞬の攻防で、御通夜みたいになった空気の中リアスは嘆く。

 心中が読めねぇ……ッ!

 

 実際にそう思考が連なったのかはともかく、グレイフィアがどういう思いを現在抱いているのかが全く読めない。

 こちらに来た当初は、自分たちの前で愛にも似た想いを高らかに吐露していたはずなのだが。

 

 気まずさが急転直下で下落したリアスは、我関せずと学食のカレーをもっきゅもっきゅ貪ってる烏丸に小声で囁いた。

 

 

「――ちょっと! なんで関係無いような顔でご飯を食べられるの!? これ貴方が招いた事態でしょう!?」

 

「……?」

 

「いや其処で小首を傾げるのはおかしいでしょう!?」

 

 

 なお、現場にはオカルト研究部の面々と魔王夫婦しか居ない。

 リアスの父親であるジオティクスも来訪を画策していたようだが、グレイフィアと邂逅することを予測したサーゼクス自身の説得によって未然に防がれたらしい。

 傍目には別れた女房を迎えに父親同伴で説得に来る旦那のようであるから、普通に情けないのでそうするのも納得だ。

 

 ごぎゅり、と咀嚼途中のカレーを呑み込んで烏丸は云う。

 

 

「『ご飯を食べる』って言い方、なんか可愛いですよね。育ちの良さが伺えます」

 

「関係なくない!?」

 

 

 叫んでしまったが、何気にリアスも悪い気はしていない。

 少しばかり頬が緩んでいた。

 

 

「というか、此れって俺こそ関係無いのでは。グレイフィアがウチに来たのは彼女の判断ですし、俺だっておふたりを仲違いさせようとは思っても無いですよ」

 

「そ、そうなの、かしら?」

 

「まあ、思ってないだけで別に仲を取り持とうという気も起きないのですけど」

 

「其処は思っているだけに留めましょうよ」

 

 

 アーシアのツッコミにリアスも無言で同意した。

 

 いつも一言多い。

 これが烏丸クオリティ。

 

 正直は美徳などと言い出したのは何処のドイツだと云うんだ。

 

 

「……帰って来てくれないかグレイフィア。正直、キミと離れているだけで心が苦しいんだ」

 

「泣き落としは聴きませんよ。そもそも、私の意思で離れたのですから。帰るわけが無いでしょう」

 

 

 にべもない。

 

 顔色ひとつ変えようともしない彼女に、サーゼクスはかける言葉を失っている。

 尻に敷かれていたとは思っていたが、これが惚れた方の負け、というやつなのか。

 

 リアスはまたひとつ大人の恋愛を学んだ。

 多分、学ぶべきじゃないことだ。

 

 

「~~っ、いいかげんにしてくれ! 僕はキミが居ないだけではない! キミがそうやって立場も顧みないでいることも嫌なんだ! 母親としての立場はどうした!? ミリキャスを放っておいて、キミはいったい何をしているっていうんだ!?」

 

 

 学食で叫ぶべきことじゃない。

 それはサーゼクスだって分かっていたはずだったのだが、塩対応の連続で心が折れてるのかもしれない。

 判断力が低迷でもしてるのか、とうとう高圧的にサーゼクスは怒鳴っていた。

 しかし、

 

 

「其処で子供を理由にするのは筋が違いますよ、サーゼクス()

 

 

 グレイフィアは静かに、認識阻害の結界を貼っていた。

 サーゼクスの痴態を晒さない配慮かも知れない。

 でもさっきそれ、リアスが怒られていなかった?

 

 

「そもそも、本日学園に顔を出したのも、現在『あの家』で対外的に保護者としての立場に収まっているための選択です。預かっているレイヴェルさんの学園での日々の様子を、フェニックスに報告する必要がありますから」

 

 

 感情に感情で返すことは無い。

 返さなければならない、という理屈がそもそも無いのだ。

 それが通用するのは、せめて同じ土俵に居るモノにしか値しない。

 

 

「つーか、其処で子供を出汁にして自分の理屈を通すことほど情けないのは明白だろーが。カッコ悪いぜ、今のお前」

 

 

 と、認識阻害を跨いで、口を挟んできたのは、

 

 

「っ!? アザゼル……!? なぜ、此処に……!?」

 

「よっ、久しぶり」

 

 

 堕天使の総督。

 神の子を見張る者(グリゴリ)のアザゼルが、アロハシャツのチンピラスタイルで堂々と現れた。

 

 

「先ほど振りですね、アザゼル」

 

「おう。話には聞いていたが、ガチで別れたんだなお前ら。浮気でもしたのかw サーゼクスw」

 

「そんなことしていない! それに別れてもいない! 質問に答えろ!」

 

「そう怒鳴るなって。余裕ねーぞ寝取られ野郎」

 

 

 ――その瞬間、周囲がカタカタと地震のように揺れ出した。

 

 明らかに、アザゼルに煽られたサーゼクスの影響だ。

 だが、

 

 

「――おい堕天使総督、無駄に煽るな。飯が不味くなるだろ」

 

「――へぇ。今のお前が鎮めたのか、俺がやる必要があると思ったが、やるなぁ」

 

「デモンストレーションは必須だろ。現状が見えてない魔王様に、キチンと説明が欲しいんだろ、グレイフィア?」

 

 

 一瞬で、影響力は雲散霧消となった。

 サーゼクス自身もどうなったのかが把握し切れておらず、平然とアザゼルと会話を交わす色黒の少年に目を向ける。

 

 以前にも姿を見たことがあるそいつ、烏丸イソラは、気安く自身の妻へ言葉を投げかけていた。

 

 

「ええ、上々です。お手数をおかけして申し訳ございません」

 

「大変だな、お前も」

 

 

 自分以上に話が通じる。

 その様を見せつけられたようで頭に血が上るが、しかし、

 

 

「ああサーゼクス、さっきの質問だがグレイフィアがとっくに答えてるぞ。あいつは『先ほど振り』って言ってたろうが」

 

「……? どういうことだ……?」

 

「だからぁ、俺も授業参観に来ていたんだよ。其処の小僧らとウチのミッテルトは同じクラスだからな」

 

 

 保護者枠だったのか、お前。

 そんな感じの目で、アザゼルを見遣るサーゼクスが其処に居た。

 

 

「――ごちそうさま」

 

 

 柏手で、律儀に言葉を紡いで礼で仕舞う。

 カレーを喰い終わった烏丸と、ほぼ同じ程度のタイミングで食事を終えていた1年ズがわたわたと席を立っていた。

 ガチで空気が悪くなり出したので、こんなところに居られるか!みたいな心情が働いたのかもしれない。

 この辺りはサーゼクスが悪い。

 

 

「魔王様、教えておこう。人間も、其処まで舐められる程度じゃ無いんだ」

 

「……? そんなつもりは、無い、が……?」

 

「そうかい? じゃあそのうえでキチンと考えてくれ。()を」

 

 

 いつも一言多い烏丸だったが、この時は何故か言葉を限っていた。

 その状態に何人かが小首を傾げ、視界の端でイッセーがハイライトオフ朱乃に詰め寄られ涙目で救難信号を送って来ている姿を垣間見て、――スルーした。

 君子は危ういモノに近寄らないのである。

 見捨てられたイッセーはアイエエエエ!?と泣いた。

 

 さておき。

 烏丸と共にグレイフィアも去ろうとしているその今際に、サーゼクスは、

 

 

「ま、待ってくれグレイフィア! 最後にひとつだけ! 訊いても良いか!」

 

 

 藁にも縋る思いで、去り行く彼女に問いかけた。

 

 

「……なんでしょう。次の授業がありますので、簡潔に」

 

「め、メイド服は、着ていないの、かい?」

 

 

 アザゼルは思う。

 確かに今はサーゼクスの知るメイド姿ではない、TPOに任せた人妻スタイルであるけれども。

 それでいいのか、質問は。

 

 

「――貴方に仕える必要も無いのに、着る意味はありませんよ」

 

「――っ」

 

 

 胸を撃たれたような顔をするサーゼクスに、

 

 

「……こいつら、わっかんねぇ」

 

 

 アザゼルの言葉が、静かになった食堂にただ響いた。

 




前にも書いたから各個人のやりたいことや想いの果ては通じているはず

それでも通じないと云うのならば次回に解説


必要ないのなら解説という名のグレイフィア回は消失して会談に突入します
聖剣譲渡?ねぇよ


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サーゼクス「だ、誰が寝取られ野郎だ!」

解説回という名のグレイフィア回
物事の理解云々よりも、正直こう書いたために希望があったのだとオモテル

というか前回の締めがアンケみたいな引きになっちまって正直すんませんでした


「グレイフィア……、メイド服以外でもやっぱり美人だったなぁ。何を着ていても似合うのは間違えようも無かったけど、人間界で暮らすようになって益々美人になった感じがするし。青少年の若い心を下手に擽らないか、心配だ」

 

「えぇ……、その感想で良いんすか……」

 

 

 このひと、根本的に危機意識足りないんじゃなかろうか。

 兵藤イッセーは訝しんだ。

 

 置いていかれた魔王共々、言い訳を聞き入れてもらえず拗ねてへそを曲げた朱乃に「イッセーくんなんて知りませんわっ! プンっ!」と無駄に可愛らしく置いていかれたイッセーは、連れ立って駒王の街中を歩いていた。

 

 どうにも本来は人間界の様相を物見遊山に、とリアスか朱乃の主従コンビが案内する予定だったらしいのだが、見ての通り(こじ)れたので予定はキャンセル。

 

 というか、学園内で魔法少女のコスプレをした保護者が出たとか、そんな騒動に搔き乱されて予定消化が追い付いていないのが現状だった。

 

 そんな報連相も届いていない彼らは、時間潰しにも似た感覚で街中へ繰り出していた。

 

 「置いていかれた者同士」などとサーゼクスから誘った形だが、人間社会に当て嵌めれば、来日していた諸外国の貴賓がボディガード不在のままフラフラと放浪を始めた感じだ。

 

 イッセーの訝しみの宛先は的が違うのだが、別の意味で意外と的を射ていた。

 本人にも罪状が加算される。

 

 

「ふっ、どうやらキミには大人の恋愛の機微がまだ良く判らなかったようだね。良いだろう、リーアたんに置いていかれたことだし、しっかりと説明してあげよう」

 

「悲しいことを自慢げに語らんでください」

 

 

 目上の立場なのだが、本人が気にしてないので口調はフランクなままだ。

 

 云われたら流石に考え無しの高校生男子だって正すくらいはするはずだが、如何せんサーゼクス本人が自身のことを『魔王らしくない』と自負しているくらいである。

 

 妹の眷属であることも相俟って、『敬意を立てさせる』という貴族社会なればとてつもなく重要な事柄をなあなあのままにしてしまっていた。

 

 何が原因かって云えば、相乗的に同罪である。

 そういうとこやぞ。

 

 

「実はね、グレイフィアが常にメイド服を着ていたのは、彼女の趣味だったんだ」

 

「え? でも、こっちに来てから着てるの、見たことないっすよ?」

 

「そうだろうとも。しかし、僕が言っても決して辞めなかった。流石に休日にまでメイド服では居なかったけど、その時は『ミリキャスの母』という立場を立てていたようだからね。表に陰にと、僕たちを常に立ててくれている。実に有能で、決して自分本位で事を考えたりはしない女性なんだよ」

 

 

 はぁ、と理解の足りない頭で、曖昧にイッセーは頷く。

 とりあえず、自分の母親がそんな風に『休み無し』でフル稼働していたらと思うと、やるせなさの方が強い。

 帰ったら少しは家事の手伝いくらいするべきかな、と頭の片隅で日々の母に感謝した。

 

 

「つまりだね、グレイフィアにはグレイフィアなりの、『僕には明かせない』物の考え方が其処に理由としてあるんだ。そんな彼女が、自分の趣味であるメイド服も着ていない。これがどういうことか、わかるだろう?」

 

「いや、俺馬鹿だから、その辺はよく判んねえんですけど」

 

 

 そもそも、本当にメイド服着用(それ)を趣味にする女性とか居るんじゃろうか。

 似非方言でイッセーは訝しむ。

 

 

「アレは、僕に宛てたメッセージなのさ! メイド服を着ていない、つまり彼に仕えているわけじゃない。彼女の心は、常に僕たちの為を思って今も行動してくれている。僕はそう判断したね!」

 

 

 訝しんだイッセーの心中など微塵も知らず、サーゼクスは興奮した様子で声高に宣言した。

 どうでもいいが街中でメイドメイドと、先ほどから色々どうなのか。

 

 

「……えーと、とりあえずグレイフィアさんみたいな美人さんが、年頃の男子高校生の家に居ついている状態は、気にならないんすか? 俺だったら辛抱溜まりませんが」

 

「ふっ、キミはやっぱり見る目があるね。まあグレイフィアは美人だからね、朱乃くんみたいな彼女が出来ていなければ、キミでさえどうなっていたかもわからないさ」

 

「ふへへ、いやぁ恐縮っす」

 

 

 『どうなっていたかわからない』のはイッセーの処遇に関してである。

 褒めているわけではない。

 

 

「しかしまあ、彼の家にはそもそもフェニックス家のレイヴェル嬢も居候しているのだろう? そんな中で下手に手を出すような考え無しなんているはずも無いさ。それに、仮に手を出されたとしても、僕のグレイフィアがそう簡単に身体を許すはずも無いからね! 何せ僕らの間には『愛』という絆があるんだから!」

 

 

 話題が滑らかに(シモ)にシフトして、『ヤバいモノ』を見る目が増えた。

 だが彼らはそんな周囲の目にも、薄氷の上をダンスっていたことにも気づかない。

 

 しかしダンスっていた張本人、イッセーそのひとはあることに独り、気づく。

 

 

「(アレ? そういや、烏丸(アイツ)ってセフレとか普通にいるくらいモテてなかったっけ? いやまあ、それでもサーゼクス様が其処まで言うんだし、グレイフィアさんが前に言ってたエロエロな許可とかも未然かも知れんしな。黙っとこ)」

 

 

 

  ■

 

 

 

 要するに、悪魔はというか聖書陣営は現状が『追い詰められている』という事実だ。

 

 傍目には好き勝手且つ自由に生きていて、そうは見えないのだろうが。

 『好き勝手に出来る』ということは、敵を作り続けていることに躊躇いが無い、ということに繋がる。

 

 元より侵略を繰り返してきた陣営なだけはあって、それこそ彼らの望むことだろう。

 しかしグレイフィアがかつて懸念した通り、神話と幻想の住人だけでは『人間』には及ばないのである。

 

 生存力が、文化を培う力が、対応性が、繁殖力が、何より、――討伐性が。

 

 聖書陣営が侵略を繰り返した背景に『聖書という神話』が控えていようと、それを支えているのは『人間の数』なのだから。

 

 

「しかし、悪魔らしくない悪魔だよなぁ、魔王様。あそこまで真摯に愛を謳うたぁ、精神的な未熟さとか脆さとかトラウマとかを懸念しちまう。両親に捨てられでもしたのかね?」

 

「サーゼクスの両親は、んっ、どちらも健在です。恐らくは、ぁん、自身の特異性が影響しているのか、と、あっ」

 

 

 グレイフィアは嬌声を上げながら、烏丸に跨っていた。

 メイド服どころか衣服を全部取っ払い、正面から抱き着いている形で、胡坐を掻いた少年にしがみ付いていた。

 仕草は木に登る有袋類(コアラ)のようで文面なれば可愛らしいが、人妻がそれをやると云うのがもうダメだ。

 

 イッセーの懸念は見事に的を射ていた。

 的中率が、パナい。

 

 

「ああ、滅びの魔力が形をとった存在、だとか言われてるんだよな。今日のアレで、危機感キチンと持てたら良いけど」

 

「流石に、あっ、自分の魔力に、んっ、干渉されたことを知れ、ば、分かるかとおもっ、うのっ、ですっ、ぁあんっ」

 

 

 胸板で潰れた乳房が圧迫されたまま擦れ、その度にグレイフィアの言葉は途切れて。

 胎の中を擽られるような感触に、快感が背筋を登る。

 むしろ熱を伴ったソレは、脈打つ心臓が其処に収まっているかのような異物感があるので、ヒトに拠っては拷問にも准えられるのかも知れない。

 

 だがグレイフィアからすればそんなことは無い。

 そのまま新しい命を授からせてもらえるような、宗教家に喩えるならば、神勅を授けられるかのような期待感が強い。

 そのまま罰が当たれば宜しい。

 

 

「いや、流石にそれがわからないわけはないだろ、自分を脅かすモノだよ?」

 

「……今まで、それをキチンと把握していなかったから、心配なのです」

 

 

 グレイフィアの抱き着く腕が、より顕著に烏丸を抱きしめる。

 今となっては愛しては居ないが、それを捨てられるほど割り切れるくらい離れられているわけではないのだ。

 

 そう。

 グレイフィアの身体は、もうサーゼクスを求めるほどに愛してなどいない。

 そのことに、彼女自身も自覚していた。

 それほどになるくらい、彼女は此処で、少年に身体を捧げていた。

 

 

 先にも語ったはずだが改めて。

 グレイフィアがメイド服を常に着ていたのは、彼女がサーゼクスの『下』であることをアピールするための体現だ。

 

 元々【ルキフグス】は【魔王を補佐、あるいは支持する】悪魔だ。

 かつてはその家出身のグレイフィアを手に入れるためにサーゼクスは魔王になることを決意し、経緯は省くが大王に認められるにも至った。

 

 しかし、それで納得しないのがかつての四大魔王の血族だ。

 彼らは自分たちが冥界の中心的な立ち位置から省かれたことに不満を持っているが、元を糺せば悪魔生来の意識と生態から外れるような社会へシフトしていったことが原因でもある。

 当然、それは実力で支配が行き届かせられなかった彼ら自身の自業自得で、彼らは単に自分たちを崇拝させようと無理を通そうとした結果排除されたに過ぎない。

 

 だが、未だ血統を繋いでいる。

 それを裏から援助しているのは、悪魔社会の『かつて』に期待と重要性を抱いている数多くの貴族たち。

 そういう彼らは発言力も家の力も未だ衰えておらず、冥界で反発などを興されれば社会はあっという間に混乱し、その被害を最も負うのは弱い民衆だろう。

 

 グレイフィアの『メイド服』には、そういう『かつての因習を蔑ろにしているのではない』という、彼らへ向けたアピール(意味)があったのだ。

 間違っても、愛でも無ければ、趣味でもない。

 

 

 無言で、烏丸の掌がグレイフィアの肩を撫でる。

 滑らかな素肌を、安堵させるかのように、静かに抱き寄せる。

 

 初めは娼婦のように奉仕していた彼女であったが、今ではもう違う。

 恋人に慰められる生娘のように、愛を欲する妻母のように。

 獣のような愛撫や交合(まぐわい)を求めすぎて、嬌声が溢れた夜も何度もあったが。

 

 グレイフィアは蕩けた眼差しで彼と向き合い、溶け合うような口づけを交わした。

 唇を重ねて、舌を絡め合って、お互いの唾液が混ざり、体温を高め合う。

 次第に再び腰は弾み出し、グレイフィアの身体は悦びながらその衝動を味わった。

 

 

 サーゼクスを脅かすモノはそうそう無い。

 それが彼が【魔王】という悪魔の旗印に選出された最大の理由で在り、冥界を侵犯させない他神話への牽制でもあった。

 

 謂わば、政治を語る前の『準備段階』。

 自身らの民の安全性確保と将来への補償、並びに繁栄のための安寧を得られる生活基盤。

 それを全て守るための『軍事的優位性』。

 

 『平和』とはそうそう容易く手にできるモノではなく、其処に至るために歴史的な血と汗と命を積み重ねて、初めて得られるからこそ尊い、希少なモノだ。

 

 そして、その平和を脅かすモノは『平和な時期』即ち『平時』にこそ常に生まれ得る。

 その代表というわけでは無いが、こうして烏丸が出張って来た。

 グレイフィアは、それにいちはやく気づいてしまった。

 

 気づいたからには、防がなくてはならない。

 魔王を補佐するのだから。

 冥界を守るのだから。

 

 人身御供になることで防がれると、そう彼女なりの価値を示し。

 それを言葉にせずとも通じ合った、類稀なる優しさを顕わとした『危機』。

 

 しかし――、

 

 

「あっあっ、そこっ、そこぉっ」

 

 

 抑えきれなくなった彼女は、悦楽の声を上げていた。

 太腿を相手の腰へと抱き着けて。

 抱き絞めるように乳房を自ら押し付けて、胎を潰すように繋がっていた。

 

 意味の在ることでは、既に無い。

 身体を差し出したことは初め為れど、グレイフィアはもう其処に『理由』や『理屈』を見通していない。

 

 男女だからこそ、身体で繋げてしまえば離れられないと、最初にそう睨んだ。

 それはその通りで、もうグレイフィアは烏丸無しでは居られないように出来てしまっていた。

 

 勿論、天界に繋がりがあるとか。

 他神話からの脅威に備えられる前線的情報集約箇所として成立している、とか。

 本人が齎せる現代錬金術の妙技として、悪魔の繁栄に役立てる技術がある、とか。

 

 色々と理屈は並べられる。

 しかし、其処にグレイフィア本人が出張る必要性が実は無い、とは決して認めようとしない。

 

 『機微が肝要なので情報漏洩を懸念し、表立っては何を説明するわけにもいかない。』

 『本人の立ち位置が天界寄りなので、立場上対立する王の成長を促すわけにはいかない。』

 

 そういう建前の理屈で、グレイフィアはサーゼクスとは馴れ合いの立場に戻るわけにはいかないのだ。

 『魔王』なのだから『愛』ではなく政治を語れ。

 とか思っても居ない。

 

 そして身体で繋ぎ留めることが最初の目的であったからこそ。

 グレイフィアは本日もこうして、烏丸に抱かれることで【信頼】を『造っている』のである。

 

 本当だ。

 

 

「……ひと足早くに帰ったかと思ったら、随分とお盛んですわね。まだ日も沈んでいませんわよ」

 

「あっあっ……あっ。あら、お帰りなさいレイヴェルさん。日中でも活動できるように悪魔が弱点を克服するために『運動』で身体を動かす――、何も問題点などはありません。ですよね?」

 

「無理がありますわ」

 

 

 ぎゅう、としがみ付いた身体をグレイフィアが離さないまま、滔々と語った屁理屈を切って捨てるレイヴェル。

 共に暮らすようになって暫く経つ所為か、彼女は彼女で色々と慣れていた。

 好き者の兄が居たから、それも影響しているのかも知れない。

 

 

「というか、グレイフィア様は私の参観に来ていたのでしょう、建前上は。最後まで付き合ってくださいませ」

 

「すみません。身体が火照ってしまいまして。んっ、あんっ」

 

「最早悪びれもしない……」

 

 

 そして再開。

 怒っているわけではないが、呆れた目を向けざろう得ない。

 

 

「その火照った理由なんかは、やはりサーゼクス様と再会したことが理由に?」

 

 

 呆れたが、ふと気になったのでレイヴェルは質問した。

 元々冥界では最大の恋愛結婚を果たした魔王夫妻だ。

 それがこの場で堂々と不倫してるのだから、ゴシップのネタとして興味本位が強いのかも知れないが。

 

 

「いえ、特にそういうわけでは……」

 

 

 本気で何とも思ってない表情で、息を整えながらグレイフィアが答えた。

 愛とか絆とか、完全に幻想であったらしい。

 

 

「ただ、仕えることがなくなってメイド服もずっと着ていませんね、と返事を最後に答えたことに連想して、ソラ様にご奉仕するのに衣服なんて要らなかったことに行き付いたので」

 

「……日常生活で裸エプロンとかは、止めてくださいね?」

 

「それは要望次第です。……何かコスプレとか必要ですか、ソラ様?」

 

「日頃からコスプレ要求するほど餓えてないけどなぁ……」

 

「……確かバニーとかが好きだと言っておりませんでした?」

 

「いやそれはグレイフィアみたいなむっちりだと王道過ぎて逆にこうアーシアかミッテルトみたいな未成熟系に着させることで生じる背徳感が興奮をそそるなんでもない」

 

 

 レイヴェルの挟んだ質問に、見事に語るに落ちていた。

 この場ほど意味の無い『なんでもない』をレイヴェルは初めて聞いた。

 恐らくは死後数日後の心臓マッサージぐらい意味が無い。

 

 

「あんっ、さらに大きくぅっ!」

 

「なんでも良いんですか貴女は」

 

 

 そしてそんな烏丸に興奮するグレイフィア。

 レイヴェルのツッコミが空しく響いた。

 

 

「……そういえば、そっちはどうだったんだ? 何か進展とか?」

 

「いいえ、特に何も。サーゼクス様は『談合はしない!』とか言って早々にアザゼルさんと別れましたし、そのアザゼルさんは立場上保護者としてミッテルトさんの生活態度なんかを先生へ尋ねて、あとは軽く他の保護者の方とお茶をして帰りましたわ。警戒のために私とアーシア様も付き合いましたけど、ファミレスでドリンクバーフュージョンを楽しんだ程度でしたわね」

 

「そか。アーシアとミッテルトは?」

 

「少々、時間を取ってもらいましたわ。本当は、建前上グレイフィア様にも保護者の方々と交流を図ってもらうのが正しいのでしたでしょうけど」

 

 

 素知らぬ顔で嬌声を上げ続ける人妻に、レイヴェルは呆れたように息を吐いた。

 比較的まともだった堕天使総督と比較すると、悪魔の奔放さがひときわ目立った所為かも知れない。

 

 

「ん? 『取ってもらった』?」

 

 

 そして、平然と行為を辞めない烏丸だが、言葉が気になる。

 

 

「……お気づきになられましたわね。正しくは、ソラ様にお頼みしたいことがあるのですわ」

 

 

 一拍、間を置いて、レイヴェルは語る。

 

 

「――ソラ様、どうか、私を抱いてくださいませんか?」

 

「えっ。良いけど?」

 

「理由は、――えっ?」

 

「え?」

 

 

 あっさりと答えられたことで妙な間が生じた。

 グレイフィアの艶の乗った嬌声だけが、リビングに延々と響いていた。

 




これで説明になっただろうか…

R18にならないように、表現ギリギリです


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おーり「なんで?」

感想「これはアウト」
感想「素直にR18に戻ってくれば?」
感想「運営通報対象発見したわ。見逃されたくば後は、わかるな?」

作者「あああああああああああああああああああああ」


大体こんな感じの感想欄
おーり は はっきょう した !

直接描写無いじゃない! チ●●もマ●●もセ●●●のセの字も無いじゃない!
要するに見方によってはマッサージをしていてグレイフィアさんがそれに離れられなくなっているという見方だってできるじゃない! NTRじゃないかもしれないじゃない!!!

謂わばシュレディンガーの烏丸。直接ヤベーコトシタとは描いていないのに想像力が豊かな読者だぜ
罰としてレイヴェルのシーンはカットだ!
話を進めるぞオラァン!



「――闇の力を秘めし()よ、真の姿を我の前へ示せ。

 契約の下、イソラが命じる――。

 

 レリィーーーーズ!!!」

 

 

 瞬間――、

 

 闇が、噴出した――。

 

 

『「『「『「 ギャハハはっはハハハはっはァァァアア!!!

 

  アアアアアアアアアアアワアアアワワッァワッァアアアア!!!!!

 

    いやあああああああああああ!!!

 

    アアアアアアアアアアア

 

   アアアアアァァウァワッァァアアアッッッ!!! 」』」』」

 

 

 背筋も凍るような悲鳴が、腹を殴りつけるような怒号が、泣きたくなるような怨念が、

 

 絶望が、絶叫が、慟哭が、悲嘆が、憐憫が、憎悪が、劣情が、悔恨が、殺意が、恐怖が――。

 

 ――ありとあらゆる人間の負の感情が、その『一枚の絵画』から一斉に噴き出したのだ。

 

 

 それを為したのが『魔法少女のコスプレ』をした褐色肌の、美女に見えるように『女装している少年』であるのだから、世の中は本当にわからないことばかりである。

 

 全く以てあの野郎と云えば。

 冗談みたいな恰好で、冗談みたいな科白を吐いたかと思えば、

 冗談と思いたい結果を出してくれるのだから、手に負えない。

 

 地獄かな。

 アザゼルは他人事みたいに、目の前の状況を見渡して独り言ちた。

 

 ヒトは其れを、現実逃避と云う。

 

 

「みっ、ミカエル様ぁ! 下がってぇ! 此れ不味いぃ! 黙示録かも知れないぃ!」

「は、はは、ははは、だ、だいじょうぶですよ、ガブリエル、二天龍が暴れた時と比べれば、このくらい……!」

「こ、声が震えているぞミカエル? なぁに、冥界はこれくらいの怨霊や悪霊いつも見る風景さ、簡単に、消せる……!」

「お兄様も脚が震えてるけど、それ武者震いかしら?」

「人間界ヤバいよう! ソーナちゃん今直ぐ帰ろう!?」

「こんなのが平常だと思わないでよお姉ちゃん!」

 

 

 天界代表と悪魔代表が揃って使い物にならない。

 見事にパニックに陥り、駒王学園グラウンド(現場)は混沌の巷と化していた。

 

 

「……おいヴァーリ、お前の神器ならイケる……ヴァーリ? あれ? どこ行った?」

 

「――すまないアザゼル。俺には、無理だ……ッ!」

 

「あっアイツ!? 気が付けばずっと遠くに! 野生動物並みの危機意識働かせてんじゃねえよ! ご自慢の闘争本能はどうした!?」

 

 

 白銀の鎧を纏った少年が、誰よりもずっと遠い、校舎の屋上へと駆け上っていた。

 解放実験の開始時、つまり詠唱最初には隣に居たはずなのだが。

 

 

「とりあえず、埒が明かないわ。ソラー! どうせ貴方なら、それどうにかできるんでしょーう!?」

 

 

 唯一平然としていたリアスが、声を張り上げて呼びかける。

 耐性でもついてるのかもしれないが、この場に『それ』をやらかした張本人がいるから安心しているのかも知れない。

 

 そしてその張本人はと云うと、

 

 

「もっちろーん、むわぁーかせてっ☆」

 

 

 と、めがっさ調子に乗っていた。

 腹立つ☆

 

 

「さてさて、事前に何かしようものなら説明先にしろ、って言われましたので説明しよう!

 

 こちらに取り出したるは『ある魔法』を封じ込めた1枚のカード。

 所謂【呪符】と同じようなモノ、え、判り辛い? グリー●アイランドの魔法カードと同じと思えばいーよ。

 

 これはとある『解放ワード』を唱えることで効果を発揮し、事態を収束するのに一役買える優れものなのであります(ケ●ロ軍曹風」

 

 

「悠長に喋っておらんではよ鎮めろ! ヤベェぞその後ろの!?」

 

 

 怨霊の怨念が濃さを増して、見るからに今から第二段階へ進化します、とでも言うかのように変貌が進む。

 喩えるなら、ナックルと対峙したモントゥトゥユピーの見開き頁(変貌)に近い。

 絶望感が、凄かった。

 

 危機感を煽られたアザゼルは、勿体ぶる烏丸(ver魔法少女風コスプレ褐色美女)へ言を飛ばしていた。

 わかる。

 

 

「――おーらい。解放しますぜ、超重力子三極同時渦動励起術式――、

 

 『 三 千 大 千 世 界 』!!!

 

 

 

『「『「『「 ギャハはァァァ――アアァ!?  ア、アアアアアアアアアアワアアアワワッァァアアアアアアアアアアああああああああああアアアアアアアアアアああああああああああアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!?????????????????」』」』」

 

 

 ――ひっどい。

 

 

 瞬間現れた三っつの黒い球体が、怨念の外側を巡るように旋回し、ベリベリバリバリと超高速で分解して征く。

 

 引き剥がされたそれぞれは粉微塵となって、ブラックホールのようなそれに巻き込まれて消えて往く。

 

 烏丸の言葉が真正ならば、それらは間違いなく『星』と同等のそれであると伺える。

 

 

 色々と推測は立つが、アザゼルが最初に見立てた感想は最初の一言だ。

 見る間に削られ消失して逝くそれらを睥睨して、彼らは一様に茫然と見送るのみであった――。

 

 

 

  ■

 

 

 

「――和平を結ぼうじゃないか。急いで」

「「異論は無い」」

 

「おぅ? すごいトントン拍子で話が進んでいるようだねぇ。なんだいなんだい、何かいいことでもあったのかい?」

 

「出たな。諸悪の根源」

 

「諸悪の根源!?」

 

 

 心外だ、とでも謂わんばかりに鸚鵡返しで驚愕する。

 

 会談の場に、着替え終えた烏丸が駒王の制服で現れた。

 場はと云えば、会談が烏丸の言の通りにトントンで進んでいた。

 それを遮られたから、ではないが、アザゼルは呑気に現れた少年に思わず本音を吐いていた。

 

 堕天使総督(アザゼル)の提案に大天使長(ミカエル)魔王(サーゼクス)が同句同音で頷いて、同席していた駒王学園在学のリアスとソーナは異論も無しに苦笑している。

 平和(ゴキゲン)な会談だ――。

 

 

 さてこの場に居る面子だが。

 冥界側は、駒王学園在学生のリアスとソーナ、そしてその眷属一同。

 大会議室を使っているのだが、部屋が狭いくらい大人数だ。

 なおそちら側にオカルト研究部員一同が揃っているので、アーシアやミッテルト、レイヴェルにグレイフィアも其処に並んでいる。

 

 魔王はサーゼクスだけではなく、黒髪のコスプレ少女もいる。

 何故か、烏丸にキラキラとした眼差しを向けている。

 嫌な予感がする。

 

 アザゼルの背後には白龍の鎧、ヴァーリ・ルシファーと名乗った今代の白龍皇が。

 ミカエルの背後には美少女寄りの美女天使がひとりと、何故かゼノヴィアにイリナ。

 そして白髪おさげの、小学生くらいの少女がそれぞれ控えていた。

 

 

「お前の言う通り、話は纏まってるからな。ちょいと雑談にでも移るか、

 

 ――なんだよアレは、あんなの見せられて『相手の腹を探る』だとか『良い条件』とか狙うか馬鹿か……!」

 

 

 アザゼルの言い分は完全にクレームである。

 同じ立場のミカエルにサーゼクスも、似た様に苦笑するに留まった。

 

 

「怨念物理で削るとかねぇよ! 魔力感知も無かったぞさっきの! どういう代物だ魔法って嘘だろ!?」

 

「そういやコカビエルはどうだった? 生きてた?」

 

「質問に答えろよ!?」

 

 

 懊悩から思わずツッコミを入れたが、雑談と提示したのはそもそも自分だ。

 なので、大人なアザゼルは努めて静かに、

 

 

「……生きてたよバカヤロウ。ていうか生かせておく方が拷問じゃねえのか、ってくらい衰弱してたよ。今後数十年から数百年懸けねぇと生来の実力には戻れねぇだろうな、アレぁ」

 

「そいつは重畳」

 

「クソ外道か。やらかしたのはあいつ自身だから、これ以上は文句も云えねぇけどよ……」

 

 

 そもそも、今回は『封印されしコカビエル』を引き渡す用件の方が烏丸の中では重視されていた。

 やるべきことをやったので彼自身は心持ちスッキリとしている。

 コスプレと女装の意味は果たしてあったのだろうか。

 

 そしてそんな烏丸のどこ吹く風な感想に、思わずアザゼルもツッコミを入れざろう得ない。

 的確に、彼の本質を捉えていたとも云える。

 

 

「おいミカエル、コイツほんとうに大丈夫なのか。此処まで好き勝手させて、責任管理どうなってんだ」

 

「いえ、彼は彼で、それなりに事態の収束にも働いてくれてますから。それに、相応に物事の善悪くらいは判断していますよ。……いますよね?」

 

「信用なーい」

 

 

 ケラケラと嗤う。

 烏丸はキチンと答えなかった。

 

 言質取らせねぇつもりか。

 アザゼルは掴みどころのない少年に、本気で戦慄した。

 組織長であるミカエルが子ダヌキに見えるくらいの大ダヌキである。

 

 

「というか、俺の直属の上司って今日は来て無いの? なんで? さぼり?」

 

「ああ、ウリエルは……ええ、貴方に会うと問い詰められて泣かされると言って逃げてます」

 

「おい」

 

 

 一瞬言い淀んだが、烏丸の言う通りなのでミカエルは明け透けに答えた。

 アザゼルのツッコミが空しく響く。

 

 ミカエルはそんなアザゼルから顔を逸らしたので、詳しい所を本人に同句で尋ねることにした。

 

 

「おい?」

 

「いや、だって教会じゃウリエルって未だ堕天使扱いなのに、なんで四大天使長に選抜されてるのかな、って。本人に訊いただけだけど?」

 

「クソ外道か」

 

 

 先と同じ感想が出た。

 そして同じように戦慄を覚えた。

 

 

「えっ、ウリエル様って、そうなの……?」

 

「むしろなんでお前が知らないんだイリナ。本当に教徒か?」

 

「イリナさん、ウリエル様は千年以上前に『強すぎる』『信仰を主以上に集めすぎる』という理由で、教会から正式に堕天使に認定されたんですよ。今でもそれは解かれていません」

 

「理由酷くない?」

 

「まあ、聖書陣営だからなぁ……」

 

 

 三人娘らが呑気に会話していた。

 締め括ったのはゼノヴィアだが、それを自分らで云うのだから中々に手酷い話だ。

 

 

「あ、どっかで見た貌かと思えばトスカじゃん。元気? 聖書の粗、今日も探してる?」

 

「お久しぶりですソラさま。はい。先日も神父さまをひとり泣かせました」

 

「こえーよお前ら。それが今の教会のデフォルトなの?」

 

「いえ、彼女らくらいですよ、これくらい特殊なのは……」

 

 

 まさか日に何度も戦慄を覚える日が来ようとは。

 アザゼルは平然と烏丸と会話する、白髪の少女に慄いていた。

 ミカエルの科白には説得力は無いが、彼女が彼女的に教会に食って掛かれていることにはそれなりに理由がある。

 

 

「今日はミカエルさまのお供をすることを口実に、イザイヤに会わせてもらえると聞いたので」

 

「へぇ。誰?」

 

「それ僕だね」

 

 

 ひょい、と手を挙げたのが木場だ。

 とはいっても、烏丸が来る前に多少の再会は済ませてあったので、今更特別何かあるわけでもない。

 

 

「木場先輩、別の名前があったんすね」

 

「それ、キミには言われたくないかな」

 

 

 本当である。

 

 

「ミカエル様ぁ、宜しいですかぁ?」

 

「? ガブリエル? 何かありましたか?」

 

「ガブリエル?」

 

 

 と、天使長らの遣り取りに、烏丸が怪訝な顔を見せた。

 

 その様相には大概の者らが疑問符を浮かべたのだが、

 

 

「……いや、お前、ハニエルじゃなかった?」

 

 

 続けられた、『彼女』の顔を見た烏丸の言葉で、猶更疑問は広がり、

 

 

「そうそう、そうだよね。ガブリエルちゃんはもっと別の人だったはずだよ?」

 

 

 と、セラフォルーの科白で、駒王在学生らが一様に驚いていた。

 

 

「……そうだな。ミカエル、どういうことだ? そちらで何かが起こっていたと云うのならば、説明が欲しい」

 

「ああ。触れなかったようだから放置していたが、事の序でだ。言質まで出ちまったのだから、詳細は知っておきたいな」

 

 

 サーゼクスとアザゼルが、ここぞとばかりに追及を始めた。

 

 会談時は烏丸の脅威で事を早めに推し進めたが、余裕が出てきたら話は別だ。

 しかも、それを突いたのは他でもない天界の陣営自身。

 其処に乗らない話は無い。

 

 しかし、

 

 

「構いませんぅ。私としてはぁ、何も咎められることでもありませんからぁ。

 

 ――皆様ぁ、改めましてぇ。

 

 『ガブリエル』を襲名しましたぁ、元『ハニエル』で御座いますぅ。

 

 何卒宜しくお願い致しますぅ」

 

「「「襲名?」」」

 

 

 間延びした語尾の、特徴的なのんびり加減の少女の自己紹介に、代表者一同が驚いた。

 驚いた、が。

 

 

「……ああ、そうか。そう考えれば、ある、のか……?」

 

「ええ~? それならそうと言って欲しかったのになぁ~」

 

 

 元より、冥界では二代目三代目の悪魔貴族が居る。

 サーゼクスやセラフォルーからすれば、思いのほか単純な理屈で、早くに納得が出来た。

 

 しかし、初代からずっと『本人』であるアザゼルからすると、違う。

 

 

「……ミカエル、何があった? 元ガブリエルとやらは、何処に行ったんだ?」

 

 

 天使だって死ぬが、名を馳せた彼ら彼女らは一種の『神格』だ。

 ウリエルが協会認定で堕とされたために、未だ天使長という『立場』に収まっていられるように、彼らは神話を主張するに足る『立ち位置』を揺さぶられても、相応に強靭な存在性を確立できる。

 

 それが代替えするとなると、相応の事件があった、としか見立てられない。

 

 

「……わかりません。最近、東京の一角で『召喚』されたらしいのですが、それからなんとも……」

 

「……そうか。チッ、まさか、奴らか……?」

 

「アザゼル? 何か……?」

 

 

 実は『眩桃館』という名のある骨董屋の魔女が拘わっていたりするのだが、

 

 それはさておき。

 

 

「それよりもぉ、覚えていてくれたのですねぇ、ソラ様ぁ」

 

「「「「「「「「様ぁ?」」」」」」」」

 

 

 何故か、彼女の言葉に、場に居た数名の少女らが耳聡く引っ掛かる。

 なんとなくだが、その理屈を推して測れる烏丸が、其処に居た。

 




挿絵のガブリエルさまが処女懐胎とかできると思えない

ので、こういう理由で。原作挿絵でマイクロビキニ着ていたおんにゃのこそのままのイメージですからご安心を。改ざん無し!

悪魔だって二代目三代目おるんだからぁ

と書いてみたけど、アザゼルが気になるのも納得できるので、

ウリエルの立ち位置と比較して設定練って見た。

実際、ウリエルって二つ名が『地獄を見張る者』とかなってるから、

実力発揮すれば冥界くらいひとひねりのはずだヨ! なにせ太陽の化身だからね!


ちなみに元ガブリエル様は某魔女さんの蘊蓄になってます@クロスオーバー


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怨念「ワイがなにしたっていうんや…」

誤字報告・感想多謝。本日もお読みにいらしてくださり誠に感謝です


まあまあ、堕ち付いてくださいな
作者としてはチキンレースをやりたかったわけでもエロ方面へシフトしたかったわけでも無しに、単純にどの程度まで自分が『書けるのか』を試したかっただけ、執筆力の確認と18との境界線の見極めなので。荒ぶる勿れ感想欄ヨ鎮まり給え(愛鷹の如く

とりあえず、反響やら反省やら猛抗やらと感想欄での上へ下への大騒ぎは良くも悪くも耳が痛い反面面白かったので、推測販促なんでも御座れ。あれ? 俺この調子で書いても良いんじゃね? みたいな精神状態に一周廻って成り欠けてた感じ。反省しろよ

でも速攻で続き上げて物事の事態や推移を説明果たすつもりだったけど仕事がねー!
疲れもあるからねー!
書くだけの時間も取れないってねー!

そんなわけで遅れたことへの謝罪もこの場で、
諸々併せて色々御免!


レイヴェルの『理由』については書かないとは言わないので、今後にお待ちください
あるだろー、こういうのー
物語の伏線を忘れた頃に回収するやーつ!

頂いたご意見ご感想は今後に活用しもす


とりあえず、この作品のコンセプトは

ぼくのかんがえた神様転生じゃないチートキャラで何処までむそうできるかな?

みたいな、普通の二次創作な部分があります
現実的な目線とツッコミをぶちかます、最低限アンチ・ヘイトに至らない二次を心掛けていますので、
此処が変だよニホンジンなところがあったらこれからもビシバシご意見をください
でも単なる罵倒や陰口は簡便な! おれそんなにめんたるつよくない

なお作者は鈴村●一のCVで脳内に幾度となく「アンタって人はァーーー!」と叫ばせながら書いてます(無許可



PS:骨董屋の魔女がわからないと感想でちらほら見かけましたので店の名を追記(カキコ)。とりあえずこれで誤認は無いだろ、とクロス先を読ませる仕事をしました

もいっこPS:あらすじの無法がわからないとの声も頂いたのですが、造語ですので不法との差異と捉えてください。多分『不法侵入』以上にドアウトです



 会談は(つつが)なく終了した。

 

 何か途中、色々と妙な方面へ話題がシフトしたが其処は其れ、雑談の範囲内だったので問題は無かった。

 何処かの団体がテロリストの如くに乱入してきたりなども無く、誰かの眷属が無断使用されるような事態も無かった。

 自分でも云っててなんのことかわからんが、少なくとも会談の場に『居ない人物』は『いなかった』のでこれもまた問題ナシ。

 本日結ばれた協定は、学園の名を取って『駒王協定』と名付けられることとなる。

 

 神器の名付けを真っ先に執ったと思われる聖書陣営が名付けたとは思えないくらいに安直だった。

 さては偽物だなオメー?

 

 

「それで、ガブリエル様とソラさんはどういうご関係なんですか?」

 

 

 終了直後、アーシアの質問が出たその瞬間、会議室中の目が向くのが判る。

 

 むしろ此処からが本番だ。

 生き延びるために、神経を尖らせろ……っ!

 

 

「アーシアちゃんさぁ……、それ今聞かなきゃダメなこと……?」

 

「いえ、普通に皆さん気になってると思いますけど。私もですし」

 

 

 そんなことねーよ。

 大人な『皆さん』なら空気くらい読むよ。

 読むだろ?

 

 

「まあそうだな。大方のところは予想が付くが、詳しいところはお前自身の口から聞きたいね」

 

 

 と、口を開いたのがアザゼル。

 此れだから堕天使は。そのニヨニヨとした厭らしい笑いを辞めろ。

 

 懸念があったから連絡したが、ミッテルトの授業参観で先立って来れる『名目』を教えるんじゃなかった。

 雑談だし口が滑ったことも事実だったから個人的な悪評は黙認したが、お前らが神器狩りとかで人間食い物にしてきた歴史忘れんじゃねーぞべらぼうめぃ(江戸弁。

 

 

「私としても気になるね。いや、これはこちらから出向要員が居るから聞くことであって、個人的な意図など無いけれど」

 

 

 と、追従したのがサーゼクス。

 魔王のブルータス! そんなんだから嫁さんがいつまでも帰らないんだ!

 

 いや、言外に「自分たち(悪魔)と協定結ぶ以前から付き合いが濃厚だけども、それと付き合いのあったとみられる天使を上位に据えて天界どうなの?」と訊いているのはわかるんだ。

 でも、実際そっちより自分の方どうにかしろよ。

 ほんとに、これからどうするつもりなの?

 

 

「『ガブリエル』の座は暫定ですが、私の見立てでは問題は無いかと思いますよ。それとソラ、ウリエルのことはもうやめて差し上げてください。いつまでも泣かれていると仕事に差し障ります」

 

「あー、炉の管理でしたっけ? わかりました。程々に泣かせます」

 

「やめてください」

 

 

 と、事の序でに注意してくる超上司(ミカエル)

 このひとは、まあ、うん。

 良いけどね、別に。

 応えるべき点は其処じゃない、って誰もが思うけども、うん、善良な証拠だ。

 

 

「炉?」

 

「天界のシステムだそーですよ。信者の信仰を集めて、天使や他の人間に奇蹟として再配布するためのモノを、俺が便宜上そう呼んでます。今じゃ大雑把なモノで、効率良く動いちゃいませんが」

 

 

 リアスぶっちょの質問に適度に答える。

 直接見たわけじゃないが、学徒としてエネルギーの行き先と収束点、あと使い道くらいは把握してある。

 魔力を観測できるんだから、ヒトの思念の成れの果ての、その転換先を測れれば源流だって辿れるさ。

 

 問題はそのエネルギーが足りなくなったらこの先どうするのか、っていう点なのだけどもね。

 システム造った奴は其処を考えなかったのかね? 空焚きとか熾したら本気でやっべーぞ。

 

 

「………………いえ、それを明け透けに言われては、困るのですが……」

 

「其処は俺が『間違ってます』くらい言って誤魔化してくださいよ、最低『沈黙する』とか」

 

「善処します……」

 

 

 ほんと善人だなぁ、ミカエルさまは。

 

 

「お前ならなんとかできるんじゃねーのか? 『神の矢』だろ?」

 

「それやった途端に神罰が何処までも下ってもイイって云うのなら試すけど」

 

「やめろ」

「やめるんだ」

「やめてくださいね」

 

「じゃあ提案すんじゃねーですよ」

 

 

 攻撃属性が強すぎるからね。

 トップ3が揃って止めに来たので、使う予定の無い神器はしまっちゃいましょうねー。

 

 で、何の話だったっけ?

 

 

「いや。そっちはさておき、この場は少人数で纏まってるからな。本当に言い辛いことだって云うのなら、いっそ此処で明け透けにしておいた方が先々悪くねぇと思うぞ? 最悪、俺らも物事の隠蔽に回れる」

 

 

 ぐむ。

 忘れていなかったか。

 神器莫迦ってだけじゃねーな、このヒト。

 

 

「あー。まあ、其処まで深い話でも無いんだ。ただ、ハニエルが俺の筆卸しの相手だったってだけで」

 

「いやそれ結構重要なのでは……!?」

 

 

 おっとミカエル様にクリティカルのご様子。

 まあこのひと童貞っぽいからなぁ、経験のアレコレじゃなしに、潔癖性というかなんというか。

 

 でも実際、言いたくなかっただけなのよ。

 初めてのお相手とか、恥ずかしくない?

 

 

「……え、ありなの、それ……?」

「手慣れてるから私じゃないとは思っていたが……」

「なんでもないことみたいに言われると然程の問題じゃないようにも聴こえますけど……」

「……。おねしょた、ですか?」

「「「トスカ(ちゃん)!?」」」

 

 

 天界所属組がこそこそ話してた。

 うん。トスカので割と合ってる。

 当時の年齢&身体的にそれくらいだわ。

 

 

「どんどんソラの女性遍歴が明らかになるわね……」

「……いつかの槍トリアさんじゃなかったのですね」

「そっちで覚えている小猫ちゃんも相当だよ?」

「お、おとなな関係ですぅ……!」

 

 

 と、オカ研組。

 ちなみにイッセー先輩には一瞬それなりの憎悪の目で睨まれた気がしたが、姫島先輩のアイアンクローで沈黙してるので誰も触れなかった。

 

 

「……堕天、してないッスか?」

 

 

 ミッテルトのその一言に、全員がバッとハニエル――現ガブリエルの方を向いた。

 

 

「……詳しくは語りませんがぁ、『生で半日ズッコンバッコン』ですぅ……♡」

 

「「「「「「いやそれ充分詳細だから!!!」」」」」」」

 

 

 ドアウトな言い分が飛び出した。

 誰がとは言わないが、方々からツッコミが捗った。

 

 (シモ)の意味じゃねーぞ。

 

 

 

  ■

 

 

 

 なんで堕天してないのか、とより詳しく聞くと「私はぁ、愛していますからぁ♡」と意味深な科白で返されてなんとも言いようの無い会談終了直後雑談終了。

 

 まあ、愛してるなら問題は無いな。

 そういう事例は、そこそこあるし。

 ぼくせかのモクレンとかね。

 

 うん、終わった話なんだ。

 獲物を狙う目でロックオンされているとか、そんなことは無かったんだ……!

 

 誰もが言葉を選べないまま、なあなあに解散すべきかと迷い出したところで、

 

 

「そ、そういえば、気になっていたことがあるんですが!」

 

 

 またアーシアちゃんなのぉ?

 多分、そんな目をしていた。

 

 

「こ、今度のは大丈夫ですってば!」

 

「大丈夫の意味は詳しくは聞かない。で、何?」

 

「は、はい! えーと、今回の協定は、聖書陣営の私たちが連携して、他の神話からの影響に対してどうするべきか、みたいなことでしたよね?」

 

 

 おお、ほんとに真面目な話だった。

 

 

「うん、まあ概ね合ってるな」

 

「はい。それで、気になっていたのですけど、それを何故日本でやってるのでしょうか?」

 

「あー」

 

 

 まあ、其処はアーシアには通じ辛いのか。

 コカビエルが神の不在を言っちゃって、それをとりあえず其処のリアスぶっちょとその眷属が知っちゃった、というのが問題点で、知ってる奴らを遠ざけるのも目を付けられる理由になるから『事の次第』を片づけるまでは話に付き合わせよう。

 というのが理由なのだが。

 

 というか、日本以外だと『被害者&加害者&外周』の反骨精神が強すぎて協定結ぶ以前に足並み揃わねぇからね!

 

 

「まあ、そうね。ほら、駒王町って冥界への入り口があるじゃない。他の入り口が塞がれちゃってるから、三種族が集まりやすいのが此処なんだよ」

 

「……? あれ? 『神曲』ではエルサレムの地下に地獄の門があるとか……」

 

「そっちはもう塞がれてるし、そもそも『地獄』だし」

 

 

 『隠れ里』的な異界は数多くあるが、元より『こちら』に居る大半の悪魔が日本で活動しているのだ。

 入り口が他に在ればそっちで行き来できるのだろうが、そうでなければ此処に『はぐれ』が集まる理由にならない。

 

 ……そう考えると、神の『年齢』も見えて来るけどな。

 とりあえず、デビ●マンみたいに人間の歴史より以前から地球上に存在していた、とかでは無いだろうなぁ。

 

 

「でもそうすると……、日本神話の方には、話を通さなくて良いんですか?」

 

「それは……、ジッサイどうなん?」

 

 

 と、折角なのでこの場に居る面々に話を振る。

 が、

 

 

「……おい、どいつもこいつも小首を傾げるって、どうよ?」

 

 

 誰もが、疑問符を浮かべて、答えに詰まった。

 

 

「ぶっちょう?」

 

「なんか呼び方のニュアンスが可笑しいけど……、とりあえず、私は会ってもいないわね。土地神みたいなのも居なかったし、地元の神社は朱乃の家になってるわ」

 

「……悪魔なのに巫女服着てたのはなんでかと思ってたら」

 

 

 あれって神の眷属を意味したはずなのだがね。

 教会のシスターがC教の尼さんなのだから意味合い的には同じはずだから、悪魔からするとかなり敵対行為してるはずなんだけども。

 

 

「此処は、僕ら(悪魔)が来日した時には色々と手が届いていなかったからね。冥界への入り口を確保してからは100年から150年くらい時期を見て、戦後の復興に合わせて日本に違和感の無い町を造ったんだよ。住んでいる住民は人間だが、その頃には人間との共存も視野に入れていたから。試し始めた政策のひとつ、だったかな」

 

「ソドムやゴモラほどじゃないけど、悪魔が仕事を『しやすい町』っていうコンセプトだったのよね☆」

 

 

 と、魔王側の意見。

 ふむ。まあ堂々と動いていられるのだから、それくらいの前提はあって然るべきだよなぁ。

 それに合わせて堕天使やはぐれエクソシストまでうろつけるのだから、安全マージンゼロな町だけども。

 

 

「で、日本神話勢は?」

 

「……一切姿を見てないな。神社とかには結界が敷いてあるのもあったから、完全にいないというわけじゃないと思うのだけど……」

 

「神社ブッコミしたんか」

 

 

 場合によっては日本神話勢に喧嘩売る行為だろうよ。

 しかし、それで反応なし、となると。

 

 

「……ひょっとして、日本神話って実在してない?」

 

「はぁ? いや、そんなわけはねえだろ。確かだが、邪龍の中にヤマタノオロチっていうのが居たはずだぞ、封印されてる」

 

「あー、ヤマタノ。つーか、そいつって何処に居る妖怪……龍? 神? いやオロチだから蛇、蛇神か。つーことは、土地神? 三輪山の主と混合に値するのかね」

 

「待て待て、邪龍っつったろーが。つーか、出雲の神話、だよな。なんで奈良の山が出てくるんだ」

 

「はぁ? スサノオのオロチ退治は奈良の神話だろーが」

 

「んん?」

 

 

 学者のクセにナニ言ってんだコイツ。

 専門違うからと言って調べもしないで、文句を挟むんじゃないよ。

 

 

「しかし、まあそうか。そう考えると納得だ。形骸化されてて概念上だけの神話だから、悪魔がずんどこ侵入していても無反応か。懸念が一つ減ったぞ、良かったなお前ら」

 

「……いや、待て。独りで納得してないで詳しく語れ。つーかよくもまあ上から目線で云えるなお前」

 

 

 えっ。やること『やらかしてる』ひとたちだからあんまり敬意も払う必要も無いかな、って一瞬思ったのだけど、

 

 

「まあ、それもそうか。反省反省、すみませんミカエル様。上から増上慢になり過ぎました」

 

……いや、反省点違うだろ

悪い子ではないのですが、彼なりのルールに則って生きてますからね。それに、下手に口出しして歴史を比較されると、ウリエルみたいに泣かされますし

お前の甘やかしがこうなった原因か?

そもそも育てていません。『暴力』に訴えないだけマシじゃないですか

……ああ、それもそうか

 

「いいや、気にしていないさ。それよりも、懸念とはなんだい? 気づいたことなら教えて欲しいのだがね?」

 

 

 こそこそと、しっかり聴こえるのだが囁き合うアザゼルとミカエル様を他所に、にこやかにサーゼクスが俺の謝罪を受け入れた。

 お前じゃねーよ。

 

 というか、

 

 

「……ソドムとゴモラを反省に活かせて無いのなら、懸念とは言わねーと思いますがね」

 

 

 神話上、アレはやり過ぎて『怒りに触れた』はずなのに。

 人間堕落させ過ぎると社会にも迷惑だ、ということを此奴らマジで理解してねぇのか。

 神が居ないからと言って、人間を舐めても良いってわけじゃねーからな、おい。

 

 

「え?」

 

「いや、なんでも。憶測で推測ですがね、日本神話勢は多分実在してません。日本人の執り立てる儀式や生活の中には形骸化されているのでしょうけど、他の神話群みたいに『人格』は働いてないかと思われます」

 

「それは、あるのか……? 仮にも此処まで名の在る神話だぞ?」

 

 

 アザゼルが疑惑の眼差しのまま口を挟む。

 

 

「あるんでしょうなぁ。つーか、そもそも日本神話って異色なんですよね、他の神話と比べても」

 

「そうなのか?」

 

「……読めばわかるでしょう。大事な要素がすっぽ抜けてんですけどね、『人間の創造』っていう、何処の国の神話にも必ずあって然るべき事項が」

 

「……なんだって?」

 

 

 神話の名を冠しながら、其処を描かないのだから本当に異常だ。

 聖書ですら土塊から人間生み出してるのに、この国の『神』は人間を作りも産みもしなかった。

 つまり、

 

 

「この国の神話は要するに『歴史』なんですよ。切った貼ったで辻褄併せだけれども、『過去』であるから『今』には『居ない』。他の神話にも見習ってほしいですね」

 

 

 特にラヴクラフト神話群な!

 おめーら目覚める(顕現)だけでこの世が終わるじゃねーか!

 呼んでねぇ出てくんな!

 

 

 

  ■

 

 

 

 雑談も終わり、そろそろマジで解散するか、とみんなの意識が傾いてきた最後の最後に。

 

 

「――そういえばアザゼル、ひとつ、疑問があるのですが」

 

「なんだよ」

 

 

 ややぶっきらぼうに。

 ミカエル様の言葉に返すアザゼル。

 自分が知らなかった事実を年下の、しかも人間に教えられて不機嫌なのかも知れぬ。

 『学徒』ではなく『研究者』を自称するのならば、未知を既知とすることは掛け替えのない悦びに勝るはずなのだが。

 

 

「貴方は神器使いを集め、研究していましたね。それは、私たちは戦争を再び起こすためなのだと、そう思っていたのですが、」

 

「僕も聞きたいね。そのはずだったキミから、今回の和平の話が出て来た。それでも僕らはキミを信用できない。何故、其処まで戦力を集めようとしていた?」

 

 

 ――まあ、よっぽどの使い手でも出ない限りはそうそう軍事バランス崩すようなのも無いけどな、神器って。

 過剰に評価し過ぎな気がするわ。

 

 あと悪魔、お前らも多種族転生させて戦力拡張してるじゃねーか。

 『国民』を増やすつもりなだけなら目を瞑れたけど、貴族がやってることぁ堕天使の神器狩りと然程も変わらねぇからな?

 信用できない? そんなの『敵国』なんだから当然だろうが。何言ってんだ『国家元首』。

 

 

「――備えてたんだよ」

 

 

 胡乱な目を魔王へ向ける俺だが、それとは関係なしに会話は続く。

 

 

「備える? いったい、何に」

 

「今はまだ全体像も掴めちゃいねぇが、きな臭い動きが各地にある。そいつらに対抗するために、俺の研究が役に立つ、そう思っていたわけだ」

 

「要領を得ないな。いったいなんだ、そいつらは?」

 

「――そいつらの、名前だけは把握してある。【禍の団(カオス・ブリゲード)】、奴らは、そう名乗っている――」

 

「――え?」

 

 

 思わず、

 

 声を上げたのは、他でもない俺だった。

 自然と、みんなの目が集まる。

 

 

「それって……、4年くらい前にサタナエル、堕天使が設立した神器使いの集団じゃなかったっけ?」

 

 

 だからこの間の襲って来たソウ……? 早漏? とかいう奴らも、あんまり追撃せずに見逃したのに。

 堕天使への牽制やら目溢しやら、色々と使えるかなと思って。

 

 ていうかそれを『俺がやっちゃった☆ テヘペロ』みたいな結末だったからアザゼルへも俺が授業参観の話を教えたのだけども!?

 袖の下のつもりだったのにぃー! 教え損かよぉー!

 




・ハニエル
 愛の天使。アフロディテとかと習合もしたりするいわゆる『性愛』も司る天使
 この世界線では天使はおせっせ致すと打点するとかいう設定があったけど、そしたら人間の繁栄もねぇので『愛のあるなんとか』なら問題ナシになるんじゃねーの? とこういう立ち位置の属性持ちを想像してみた。つまり、捏造では無く解釈なので問題も無い
 某ドロップアウトにそんな名前の天使も居た気がする。つまりそういうことか。ヤダ、厭らしい娘…

・ブルータス
 常に「お前もか!」と罵られるのでそういうタイプの代名詞
 某ご町内系魔法少女な作品では「ブルータスも言ったわ。お前もか、と」と主人公が言う科白がある。ブルータスは言ってない

・トスカ
 聖剣計画で木場といっしょに実験動物にされてた娘。処分される直前に結界みたいなので自分守って誰にも手出しできなくした所為で肉体年齢が云々という合法ロリ。でも木場と同年なのだろうから未成年なので合法じゃない。トラップだ!
 この世界線だとアーシアがほいほい動き回っていたので早めに復活。その辺り割愛されてるけど、多分みんな想像ついただろうからイイヨネ?
 アーシア教信者

・ぼくせか
 やや古い漫画の『僕の地球を守って』というタイトルなのだが何故かみんなそう略す。ルビがあるのか?(勘違いの可能性が微レ存
 主人公の前世であるモクレンさんは処女の証をおせっせしたのに失わなかった聖女。現在その子供世代の物語が継続中。終わらない…終わらない…

・エルサレムの地獄
 ダンテの『神曲』に記載されてる聖書の『あの世観』。マレブランケなんかも此処に載っており、DD世界の『古い記録に彼らの名が記されてる』という設定を読むと現冥界の総年数と悪魔の最大年数なんかが割り出せる。やっちまったなぁ!
 なんでかっつーと、その『事件』がサーゼクスが魔王に選任された事件で、旧魔王の前世代が軒並み死ぬから。仮に此れがダンテが詩を書く前の事件だったとすると、少なく見積もって800年前の事件になる。サーゼクスがそこまで高齢になっていると、息子と妹が出来たタイミングが遅すぎて(家族)愛を注ぐ云々はとうに枯渇してると思われる。そもそもその頃にようやく『悪魔の活動』が表沙汰になっている歴史があるので、それまで秘匿していてなんで今更?みたいな、または其処で零落したのか…みたいな感想に至る。おいおいおいサーゼクスが魔王になって悪魔がより堕落してるイメージ出て来たぞ。つーかそうなると活動当初から『悪魔』を自発的に遣り出す偉く姑息な魔王になるぞ。まさかあの好青年キャラでそんなわけはないよね? という理屈。サーゼクスアンチではなくて人格考慮しての解釈よー。推してるのさ!
 そんなわけで。神曲が所謂『古い文献』で、冥界の歴史は千年未満だと推測。エルサレムの地獄が当初よりあったけど、200~150年前くらいに引っ越しで日本に悪魔が来た説を推します。沖田の転生的に

・日本神話
 実は現存するといっちゃん日本人に厳しい神話
 出てくる神様大体怨霊! 逸る祭りは大概座礁! 人死に多めでイケニエ希望! 此れが神道俺たちゃ仏道! 崇め奉れご利益頂戴、逆逆ご利益なんだそりゃ? 神様大体不活動前提、邪魔されたくなきゃ鎮めて祀れ! YO! YO!
 そんな感じが日本神話。とりあえず韻踏んでみた。製作時間1分弱の即興作。才能あるんじゃね?(自画自賛
 だって主神が一日に千人殺すとか宣う神話だしぃー?
 何処の神社だって『どうかなにもしないでください』が前提です。間違えんな
 そんなわけで作中の解釈。DD世界はそうなんじゃねーの? と、クロス先も『そう』なので乗っかって見た。そうでなければ神剣勝手に使い廻されてNoリアクションの説明が付かん。アレもそれなりに神様宿ってるはずだしなぁ

・デビルマン
 永井豪の有名な漫画。ヒロインとその一家や主人公の仲間たちが魔女狩りにあって身体的にバラバラにされる話
 色んな漫画家がリメイクを繰り返しており、高遠るいの作品だとヒロイン生存ルートに突入。悪魔の正体についても語られた。解釈なのかオリジナルなのかは不明
 件の漫画家は色々とネタを備えているのだが、いまひとつ一世を風靡するに至ることにまでは届かないマイナーな作家。最近はHカップグラビアアイドルの拳闘漫画を描いている。絶対運命黙示録拳とか好きなのだが(うろ覚えなので間違ってる可能性が微レ存

・ラヴクラフト神話群
 『そのもの』ではないですが、『この世界線』はクロスオーバーなので『居ます』
 原作には出ない? それは原作者の(勝手な言い分)でしょ? 神話矛盾ドチャクソ起こしておいてそれだけ逃げるとかできると思ってるの?

・追記
 スサノオ自体は登場するが、彼のオロチ退治は出雲神話をまとめた出雲国風土記には載ってない
 つまり、『大和出雲』の神話。QED

・おーりせんせいの『なんだこいつら』講座
 ヴァーリ裏切りは無し
 普通に考えてアイツが裏切る意味が本気でわからない
 そもそも、三つ巴で『他の奴ら全部敵!』みたいな態度だったのが今更結託したところで足並みなんて揃うはずも無いのは当然で、それを周りだって良く思うはずも無いのだから邪魔やら横槍やらが入ってくるのは目に見えているよね?
 それなら、ヴァーリの『強い奴と戦いたい』という欲求はそこそこ満たせる。まさか敵だらけで孤軍奮闘する泥船に乗るのが嫌だったとか、そんなわけはないでしょう? テロリストなんてそういうモノの筆頭やん
 つかあいつ心理状態かなり曖昧だぞ。ダディやじーじのことを嫌ってるのに誇らしげにルシファーの名前を名乗ったり。大体強い奴と戦いたいなら一番強いのがお前の頭にいるじゃねーか、オーフィスっていう夢幻がよぉ!?
 そんなわけで。この世界線のヴァーリは周りから突かれることを覚悟でwktkしながら敵を待ってます


おっと予定文字数突破。また次回
今後ともよろしく。カいたら出す!


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アザゼル「…こんな屈辱は初めてだ…ッ」

前回の内容について、表現の間違いがありましたね

日本神話が実在しない、と書きましたが、烏丸は『歴史』とも語っています
過去に相応のモノが実存し、しかし今は無い。そういうことを作者としては書きたかったはずでした
つまり、『実在』しない、ではなく『現存』しない、と説明するべきでした。言葉のチョイス間違えちゃったよー
そうすると、形而上にある記号としての神話がエネルギーの汲出口として取り扱える、ということも芋づる式に語れますので、神話武器とか祝詞とか神代の怪物とかが出てこれる説明にも矛盾が生じなかったはずでした

お手数ですが、今後は『そう』だと把握するか、誤字報告機能を有効に扱って調整を願います。話自体はもう書いちゃったし。呑んだつばは捨てられません
小説って難しいネ!

作者はこういう単純だけど重要なひと言を間違えます
なんでだろう。友人が少ないから意思疎通の回数が比較して少なくなっていざ語る時に言葉の選出に手間取るのかな


あ。誤字報告並びに感想、毎度読了感謝です
でもあらすじに関してのは細かい誤字とかじゃなくて説明に対しての意見なんかが参考として欲しいっす。夢幻とか打点とか。いいじゃないニュアンス伝われば。本編じゃ無いんだから


 会談は恙なく終了した(笑)。

 

 正しくは、無理矢理に形だけ整えた、と言うべきか。

 前々から把握していた堕天使情報を溢したことを皮切りに、互いの信用の無さがめがっさ浮き彫りになって更にgdgdになって終息したのである。

 

 流石は聖書陣営! 期待を裏切らないネ☆

 

 まあつまりは、問題は元からあったという話だ。

 形式だけで話を済ませて、どちら側も相手が悪いと自責を認めず、足並み揃える以前に歩み寄ろうという姿勢を見せようともしねぇ。

 実際、どっちにも問題があって、お互いに加害者な三つ巴だから、被害者意識の観点からだと永遠に話が終わらないのだよね。

 要するに、――俺は悪くぬぇ。

 

 

「……烏丸くんがあの場面で沈黙を保っていれば、多少はマシになったのではないですか?」

 

「そうしたらアザゼルの、堕天使戦役投入の余地を造って悪魔領を内側から浸食されてたね。何年計画かも予測し切れん。疑惑が『伏せ札』のまま協定が結ばれたりすれば、将来的に悪魔がどの程度まで生き延びれたのか疑わしいわー」

 

 

 飽く迄予測、だけどそれくらいは想定してそう。

 さすが堕天使、汚いわー。

 

 個人としちゃグレイフィアやレイヴェルのこともあってそういう疑惑くらいは払拭するけども、『全体』までは知ったこっちゃねぇしねぇ。

 それこそ『そうなったら』、いやそう『なってなくとも』魔王の領分でしょうよ。働け。

 

 

「お蔭でアザゼル様は駒王進入禁止言い渡されたッス。まあ仕方ないし、疑惑の芽を備えていたのも本人ッスからね。でも、ウチの保護者枠から学園の教師枠へランクアップを狙っていたっぽいッスよ、計画的に」

 

「一度保護者認定下りてるのにそっちが通るわけねぇだろ。それとも悪魔みたいに洗脳施すつもりだったのかね」

 

 

 やっぱり信用ならないわ。

 大体、こんな異界との境目に堕天使代表の一角が居座ろうとする時点でアウトだろ。

 まともな思考出来てりゃ、他の陣営からも許可が下りるわけもねぇ。

 見通しが甘いなァ。

 

 それとも、何か事件でも起こしてマッチポンプ的に解決して、其処から自分が関わっても問題無さそうな責でも負う気だったのかもね。

 身内でも裏切らせて敵対組織に大々的に仕込んで、責任は自分が取る! とか言ったり?

 

 サーゼクスもミカエル様も、感情でモノを判断する癖が付いてるからなぁ。

 其処を擽ればあっさりと許可卸せそうだわ。

 危ないなぁ。

 

 

「……やはり、平和とはそう易々とは得られないモノなのでしょうか」

 

「そりゃね。だから尊い、って話なのだし。でもまあ、達成するだけなら簡単なんだよ。維持が難しいだけでね」

 

「え?」

 

 

 アーシアの憂いに、俺は指を穴の形にして、覗く。

 単なるポーズなので意味は無い。

 

 

「全部均してまっ平らにしちまえば、全部平等で不公平も無い。不和も格差も無い、平和な世界の完成だ」

 

 

 悪平等、って言うそうだがね。

 

 でもまあ、人間には『自由』があるから。

 其処に当て嵌められたくなくなって、抜け出そうとして、隣を出し抜こうとして、結局は維持できなくなって仕舞うのだけども。

 儘ならないよなぁ、世界って。

 

 

「それは、」

 

「というか、聖書側がそういうことをやったから今の世の中なんだよ。『身内』に許容できる『みんな』は限りがあるから、内々だけで維持しようとして不備が出て、しわ寄せが後々自分の首を絞める。個人で完結させられれば、それはそれで完成系に至れるのだけどね」

 

 

 それを『悟る』と仏教では語る。

 

 ……そういえば仏教系もあんまり出しゃばってこないな。

 ミロクとか、シャカとか、ニョライとか、ブッダとか。

 でかい立場の神仙仏は動いてるって聞いた覚えも無い。

 アレも日本神話みたいに意識や人格を備えさせないで弁えてるのかも知れん。

 世界は神のモノじゃない、っていう点を。

 

 

「……前々から思っていたのですが、ソラ様は中々にエキセントリックな宗教観をお持ちですわよね? 歴史を俯瞰しているから、とも捉えられますが。天界所属の割に、本分は別に置いてありそうですわ」

 

「まあ、聖書陣営からしたら異端も異端だろうさ。そもそも聖別も受けてねぇから、あっちが勝手に俺を陣内に組み込みたがってるだけだと言っておくけど。本分は……」

 

 

 ……考えてみれば、どの当たりだろう。

 ダディは確かチベットの山奥出身だったっはずだから、俺も仏教系? いや、あの辺は地域別に色分けも区分も細やかに難しいから一概にそうとは断定できんか。

 それにマザーが欧州、西か北だったはずだから……、本名って何気に洗礼受けてる扱いになるのか?

 ……あ、師匠は英国人だから聖書系が比率多めになってきた。

 つーか神器が聖書寄り……いや、原典に近いからエジプト系か。

 

 

「……うん。わからんね。もうアーシア教信者で良いや」

 

「そんな適当な」

 

 

 でも見て見ろアーシアさんを。

 こちとらどこぞのエロ漫画家名みたいな名乗りをしたのに、本人が両頬に手を当ててニマニマと幸せそうだ。

 これ、もうそれで良くない?

 

 ちなみにこの噺の合間にルフェイの転校生挨拶は終了していた。

 「ヨロシクオネガイシマース!」と片言で元気に挨拶する5人目の金髪女子として、クラスの熱気は最高潮に達していた。

 

 

 

  ■

 

 

 

 ――いや待て。

 女子枠にギャスパーが混じってる。

 

 今更だけどウチのクラス、性癖の訓練され過ぎじゃない!?

 

 

「本日から駒王学園に通うことになりました! みなさんよろしくお願いしますっ!」

 

「ええ。よろしくね、ルフェイ」

 

 

 胡乱な回想を回顧する俺を他所に、オカ研にて改めての自己紹介を果たすルフェイ。

 此処まで元気な子は生涯通しても見たことない。

 この子だけで過剰な気がするので他はあんまり要らないが。

 

 

「というか、口調どうした。むしろさっきのがどうした、って感じだったのだけど」

 

「ああ、よろしくデース! と、こういうやつですか!」

 

「そう、それ」

 

 

 どこぞの金剛か金色なモザイクのキャラかと見紛う語尾を口遊んでいたので、顔を知ったるこちらからは多少遠巻きに見守ってしまった。

 

 

「英国出身はこうすると優しく扱われる、とお母さまに教わったのデース!」

 

「碌なこと教えんなあの槍トリア」

 

 

 一歩間違えばカトゥーンで無双する遊戯王もどきか海鮮一家の孫だぞ。

 ハニエルの語尾もギリギリだったが。

 

 

「さて、と。みんな揃ったところで、定例会議を始めるわよ」

 

 

 冗長にのんべんだらりと雑話を交わしていても良かったのだが、ぶっちょはそうではないらしい。

 さすがはぶっちょ、意識が高い。

 

 幾人かが声を揃えて元気よく『はい!』と答える中、やはりルフェイは「Hai!」とひとりズレていた。

 それだとアイオワっぽくない?

 

 

「平和だったこの町に、コカビエルがやって来てから色々とあったわ。聖剣は結局警察預かりのままだし、流れで結ぼうとした協定はやっぱりグダグダに終わったし」

 

 

 そういえば。

 すっかり忘れてた。今から侵入して圧し折ってこようかな。

 

 

「まあ、足並み揃えるには時期尚早だったって話でしょう。でっかいことをやろうとする方々の動きは、下からせっつかんほうが身のためですぜ」

 

「私としては、どうしてバルパーが警察に捕まる事態になったのかを詳しく知っておきたいのだけども……」

 

「それはだれにもわからないんじゃないかなぁ」

 

 

 さりげなく、周囲を睥睨する振りをしながら目を逸らす。

 棒読みになったのは、秘密だ。

 

 

「まあ、それもそうよね。色々と事態は進んだのだし、私たちが悪魔家業をようやく再開できるようになった方が大事だわ」

 

 

 そうそうその通りだ。

 前向きに考えよう。

 

 俺とかアーシアなんかは悪魔じゃ全然無いから、それが部の方針かと謂われると全く賛同できないのだけど。

 

 

「と、話を進める前に、ソラ。……結局、アレってなんだったのかしら?」

 

「おやん?」

 

 

 おいおいおい、しっかりしてくれよぶっちょ。

 

 

「えーと、天使悪魔堕天使で三竦みの状態がずっと続いて、しかし寄生プレイを続けるにはシェアが足りないので棲み分けをしっかりと決めてこれ以上身内の数を減らすことを善しとしないように、と云うのがそもそものコンセプトでしてね、」

 

「いえ、そこじゃないわよ。あの、絵? あれってなんだったの?」

 

「あ、それですか」

 

 

 会談内容について把握し切れてないわけでは無かったらしい。烏丸安心。

 しかし、今更ぁ?

 

 

「まあ、この辺りに留まっていた怨念を物理的に抑えた奴、と言っちゃえば簡単なモノですが」

 

「……でも、結局は人間由来、なのよね? お兄様やミカエル、アザゼルなんかも警戒していたわ。私も……」

 

「コカビエル封印できるくらいだから、そうなるのも自然かと思いますけど」

 

 

 前置きして、

 

 

「一言で『怨念』と評せますが、実態は連鎖的に人間を引き込んで自分を保とうとする見境の無い『呪い』でした。時間経過と共に、圧しても圧しても膨れ上がる反発心の強い奴、そんな集積体でしたね」

 

 

 だから、最終的には超重力子三つ分で周回させて削り取った、物理的な作用で『成仏』させるしか無かったのだけど。

 口先で唆せないのがツライね。

 ガチ仏教徒じゃねぇから説法には慣れんわ。

 

 

「お蔭で内部は歪曲して、何でも取り込める程度に空間が出来上がっちゃっていて。まあ、其処に放り込んだのでイッセー先輩の改造経過短縮には最適でしたが」

 

 

 視界の隅で先輩がブルリと身震いしていた。

 おやん? 何かな、この『それを利用するコイツコワイ』みたいな周囲の視線。

 

 

「なんにせよ、人間の意識の集合体なんてどっかの破壊神だって勝てないんだから、たかだか三竦みで二進も三進も行かなくなってる方々になんて荷が重いのは当然ですってば」

 

 

 カイヤンワンだって人の闇には勝てなかったのだ。

 一人分の死者の念とかならまだしも、それに近いモノは普通に危ないでしょうよ。

 宇宙に飛び出すこともしない、この星で戦争繰り返してる奴らには、どうしたって勝てないモノだったのさ。

 無限の空でも目指して見ろや。

 

 今更だけど、霧の神器に攫われかけた時。

 アレにコンマ数秒ほどの『考える時間』を用意されていなかったら、『もしも』そのまま地球の公転周期に置いていかれるような『移動』を施されていたとすれば、下手に大気圏外へ放り出されていたりもすれば……。

 そういうIF(もしも)が想定できるからこそ、不意打ちをしてきた舐め腐ったあの神器使いどもは放置できなかった。

 堕天使への牽制の心算で見逃したけど、其処すら身内でないのならば単なる野良とそう変わらん。

 次は見逃さん。

 次は刈る。

 

 

「……因みに、封印を解除するとき、女装とコスプレをしていた意味は?」

 

「そういう場面ならそういう恰好かな、って。ノリで」

 

「ノリで」

 

 

 納得いかなさそうな顔をしなはる。

 

 

「……いやノリって」

 

「大事でしょう! そういうノリ!」

 

「ごり押しで押し通そうとしてるわね……!?」

 

 

 大体、魔王の一角だって魔法少女じゃないっすか!

 会談最後に連絡先交換したけど、アレは善しでこっちは悪しは納得いかないっすよ!

 

 

「……、はぁ。まあ、いいわよ。趣味に関しては既にギャスパーが居るから、ね。納得は行かないけど、駄目とは言わないわ」

 

「あざーっす」

 

 

 良し。

 これで来週に約束した魔法少女番組のオーディションにセラフォルーを招待できる。

 

 言質は獲ったぞ……!?

 

 

 後日、お茶の間でテレビを見てたら知った(身内)がキャピルンと登場したことにブフォと咽る生徒会長が居たことを、俺は知る由もない。

 




【悲報】ルフェイ、孫る【海鮮系】
鱈ⓒ「ぼくぅまたなにかやっちゃたでぇすかぁー?」

おもいついただけなんだ


やっちまったのでアザゼル教師化は無し
つかミッテルトの保護者として出てきた時点でわかってたと思われ
元々採用に関しても原作でもアレだろうよ

仏教系の活躍について
帝釈天はほんとあそこらでも下の下の方だから(震え
つーかヤクシとかナタクとかも居ないキガスルのは俺だけか

ところで。色々と迷惑な威力とか発する神器の数々だけども、この星の神話に由来して人間の感情に依存しているのだから、星を脱するレベルにまでは到達しないのじゃないかな、と推測。え? そういう名前の奴もある? じゃあギリシャ系かな。ダーキシメター
現代錬金術は神の定めた法則ではなく現代的な総算術を利用するだけ利用する方式なのでやろうと思えば色々出来るのだが、だからこそ烏丸は神器の『限界』まではまだ把握していないと思われる
つまり、過剰評価で狙われる英雄派。おいおいおいおい死んだわあいつら


愛とか平和について語られた、とても大事な回でした
時系列的に夏休みに届かないので未だ冥界入りしません。もう少し遊びます


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死の確定したau派「嘘やん」

お待たせいたしましたのでキングクリムゾン!

そういえばお気に入り登録が3000を突破してたご様子です。絶大感謝おーり感激


PS:結局骨董屋の魔女がわからんと感想で未だに云われたけどとりあえずタグ読んでや。この宵闇っての作品名だから


 戦車について、詳しいだろうか?

 

 全ての地上兵器を直接射撃で破壊出来得る高初速砲の『攻撃力』。

 その自身の砲をゼロ距離で防ぎきれる複合装甲の備える『防御力』。

 そして総重量50t前後に至る巨体を時速70キロで駆け巡らせられる『機動力』。

 

 以上三つの『戦地に於いて重要視される要素』をバランス良く、高スペックな状態で併せ持つが故に敵陣を思う様に蹂躙し得る、『最強の地上兵器』。

 人間の地力だけの『武力』では点か線かでしか対応し切れないことに対して、面による『蹂躙』を如何無く発揮出来る『武器』だ。

 

 怪獣映画なんかでは『咬ませ犬』みたいに踏み潰されるからといって、まかり間違っても舐めてかかってはいけない上限(レベル)の存在だ。

 話だけで知るジャコランタンの一部にはアンチタンクトルーパーなどという『対戦車歩兵部隊』とか云うのもあったが、それだって根本的に脳のネジがぶっ飛んでいるから出来る対処だ。

 正気でヤられて堪るかい。

 

 ……どっかの英国紳士はそれを演習だとか言って「戦車(タンク)を相手取るなら、縦だ」などと、大剣一本の生身でドイツ製ヤークトティーガーをぶっ飛ばしたわけだが……。

 やっぱ頭おかしいよぉ、ラスキnあ、いやどっかの英国紳士ぃ……。

 

 ――話を戻すが。

 それくらいの評価を得ているのだから、相応にレベル(上限)振り切らないと詐欺に当たらない?

 

 

「で、それが小猫を『改造』した言い訳かしら?」

 

「暇だったので。つい」

 

「おうコラ」

 

 

 リアスぶっちょらしからぬ荒ぶる声音と視線でドスを利かせられた。

 ふぇぇ、ガチで怒ってるよぉ……。

 

 

「待ってください部長。私も、強くなりたいと云ったのは事実なんです。だから、烏丸くんを責めるのはやめてください」

 

「塔城ちゃん……」

 

 

 守るように俺の前へ立つ塔城ちゃん。

 身長が足りない。

 

 リアスぶっちょと俺の間に自ら挟まれると、喩えるなら親の喧嘩を諫める娘みたいな差異が生まれるわけだけども。

 しかしながら、そうして俺のことを守ろうとしてくれることにトゥンク…と涙腺が緩む。

 ちっさいのに、おっきくなって……!

 

 未だお互い苗字呼びだけども、そんな心の距離もナチュラルにスルーできるくらいにはお互い仲良しだよね!

 

 

「……小猫、私は、貴女にも怒っているのだけども……!?」

 

「……手加減できずに兵藤先輩を半殺しにしてしまい申し訳ありませんでした」

 

 

 ああ、うん。

 あれは、嫌な事件だったね……。

 

 同じ改造悪魔ということで、同スペック対決としゃれこませたのだけども。

 ……まさかイッセー先輩が手も足も出せずに、手も足も捥ぎ取られるとは。

 おしゃかさまでもわからねぇはなしだったよね。

 

 なんでか、ブリキ●ダンスを思い出したわ。

 あと化●語劇場版。

 

 

「……おかしいなぁ。イッセー先輩はコカビエルに負けたとはいえ、ドラゴンとしての性能を発揮できるスペックに仕上げてあるはずなんだけど。塔城ちゃんの性能なら相討ちならさておき、あそこまで惨敗するなんて」

 

「この子反省してないわよ。小猫、良いの、コレで?」

 

「部長が言っても説得力は無いです」

 

「私は良いのよ」

 

 

 なにがよ。

 

 

「んー。違和感とかは無いんだよな? 戦闘時の意識ははっきりしてた?」

 

「はい。やってしまった私が云うのもなんですが、負けるわけにはいかない、と悪魔の先輩としてやる気を漲らせたら、つい」

 

「ついじゃ仕方ないよな」

 

 

 つい、じゃあ仕方がない。

 わかるわ。

 

 なお、半死半生を彷徨ったイッセー先輩はアーシアの神器で既に回復済みだ。

 いつものごとく慌ててたアーシア(可愛い)がヘヤァホヤァ! と手足を付け乍ら聖母の微笑(トワイライトヒーリング)を発動させていたのだが、時間回帰なのだからそこまで慌てる必要も無かったのでは。

 手足の付け所を間違うわけもなしに、と考えかけたが、もしそうだったら正しく回復系として推論を考察し直す必要がある。

 勿体無いことしたかねぇ。

 

 頷き合っている俺たちに、呆れたようにぶっちょは溜め息を吐いた。

 

 

「……小猫、最近ソラに毒され過ぎなんじゃないかしら。あんまりおイタが過ぎると、おやつも減らすわよ……?」

 

 

 ……部長、刑罰、甘すぎません?

 

 思わず敬語で思考が纏まってしまう。

 あと半死人出欠けてて『おイタ』って。

 

 最近、命の軽さが悪目立ちしてます。

 

 

「じゃあ兵藤先輩の更衣室覗きをなんとか辞めさせてください。他の女子からも苦情が来てるんですよ」

 

 

 おっと塔城ちゃん怯みもしねぇ!

 

 思えば、先の模擬戦ではそういう不満が爆発した形でスペックを上回ったのかも知れん。

 阿良●木暦を嬲り殺すドラマ●ルギーみたいに振り回してたし。

 

 でもカイゾウニンジャレポートから察せられる獣成分が塔城ちゃんのほうに強めにあった、という考察も捨てがたい。

 ううむ、悩む。

 

 

「う、っそ、それは……。……? ソラ?」

 

「……元から強化されていた骨格筋と即応筋の筋繊維密度の過密化は成功。反射神経の鋭敏化も、意識も付いてきている。しかし【僧侶】レベルの心臓からの血流高圧速化を割り振るには体格が圧倒的に足りないし、でも足りないからと継ぎ足すことは美学に反する。『このまま』からの強化……、魔力は詰め込み過ぎると過剰供給で暴走する危険もあるし……。くそっ、やっぱり塔城ちゃんのおっぱいを膨らませるしか道は無いのか……!」

 

「真面目な話かと思って聞いてたら方向性完全に間違えてるわよ!? 大丈夫なのソラ!? イッセーみたいなこと言い出したのだけど!?」

 

「むしろその方向性ならどんとこいです。手術みたいな最終手段に頼らないのなら」

 

「『改造』を受けた張本人(あなた)が何を言ってるの」

 

 

 小スペック&ハイパワーの科学の先達ならば誰でも嵌まる理論考察(ロマン)を重ねていたのだが、気づけばリアスぶっちょと塔城ちゃんが後ろの方でナニヤラ静かに会話を交わしていた。

 思考途中、荒ぶるぶっちょに遮られた気もしたのだが。

 

 とりあえず、まともに獣の因子を取り入れさせると体格がずんぐりするだけで人間型の女性としての美しさは削られるので、その辺りを考慮しつつ改造計画を詰めていこうと話し合いました(まる)

 

 

 

  ■

 

 

 

 激動の数週間であった(小学生並みの感想。

 

 何時の間に約束を取り次いで居たのか、セラフォルー相手に魔法少女オーディションなどというけったいなイベントに合同参加したり。

 テニス部の安倍清芽が契約していたラミアに惚れられて、里へ連れて帰られようとしていたり。

 非公式集団の駒王学園四天王『幻の五人目』として、彼らの集団ポージングに『お仕置きよ!』のポーズでしれっと紛れ込んでいたり(尚、未女装。

 これらが烏丸の関わった大体の出来事だ。

 キィキィ鳴くだけで言葉は分からなかったが、何故だかあのラミアには妙な親近感を覚えたのをリアスは忘れていない。

 

 ちなみにイッセーはイッセーで、契約先で不可解な人間関係を構築しているらしい。

 何の因果か、珍妙な依頼人と事件に遭遇するのに暇が無い。

 あの二人が特に色々と問題児、……なのは否定できないが、主犯となって事件を起こしてきたわけでも無いので、彼らが悪いとはリアスとしても思いたくは無いのだが……。

 

 そんな激動を乗り越えて、彼女と眷属は冥界へ里帰りの時期に差し掛かっていた。

 手の空いたオカルト研究部員+アルファでグレイフィアも同道して、今は冥界へ続く列車に揺られている。

 

 

「えっ、改造じゃなかったの?」

 

「私だって、そんなほいほい身体を許したりはしません。大体、寝て起きたら強くなれるとか、漫画じゃ無いんですから。キチンと経緯くらいは自分でも把握したいです」

 

「俺は問答無用で放り込まれたんだけど……」

 

「イッセー先輩の時は、まあ暇ってわけじゃ無かったっすからね。手っ取り早い手段を執るのは常套でしょう?」

 

「許可くらい取ろうぜ!?」

 

 

 小猫との会話にイッセーが愚痴り、烏丸がそのくらいで死ぬわけで無しに、と草でも生やしているかのように言い捨てる。

 お蔭でより激昂するイッセーなのだが、元はと云えば自分に相談も無しに手っ取り早い手段(烏丸)に飛びついた短絡な思慮の無さが原因だ。

 烏丸は烏丸で、赤龍帝にでも成られたらルフェイに狩られる未来しか見えない、との理屈で成長を促す(改造する)ことに邁進的だったらしいので、正直有難いと云えば有難いのだが。

 

 ともあれ、今は小猫との会話が重要だ。

 隋心的に、リアスはふたりの言い分をスルーすることと決めていた。

 ストレスフルの意味合いも兼ねているかも知れない。

 

 

「小猫……」

 

「なんでしょう。言っておきますけど、私は烏丸くんに頼ること自体は否定しませんよ。手段を選んで強くなれるのですから、取れる手段で進歩することは間違いじゃないはずです」

 

「うん、それは問題ないわ」

 

「……?」

 

 

 てっきり説教が来るのかと思っていた小猫は真顔になる。

 表情に差異が無いので、違いが誰にも分からない。

 

 

「それよりも、もっと言ってやって。あの人妻なのに自由に身体を預けてしまっている元義姉に!」

 

「まあなんて言い分なのでしょう。そんな育て方をした覚えはありませんよ?」

 

「私だってこんなひとに育てられたくは無かった……!」

 

 

 ずびしぃ、と指を指されたのは他でもないグレイフィアだ。

 気が付けば、この義姉妹の溝は随分と深くなってしまっていたらしい。

 

 そして件のグレイフィアは現在、烏丸に横から抱く形で貼り付いている。

 時折見るアーシアの『何とも言えない顔』が普通に怖いリアスだが、それよりもこれから実家に行こうというのに何してんじゃこの人妻は、という感情の方が勝っている。

 領内の住人に目撃されでもしたら、目も当てられない。

 

 

「本当に酷い言い分ね。悪魔として、欲望に忠実になることを教えたのは誰だと思ってるのかしら」

 

「同時に、コレと決めた人以外には貞淑になることを教えてくれたのも貴女よ。お願いだからもっと自重してお姉さま……!」

 

「リアス……」

 

 

 最早懐かしい呼び方だ。

 加えて泣きそうな声で縋るような在り方なので、同性であっても鼓動が走るほどの威力がある。

 

 

「私はもう貴女の姉では無いわ」

 

「にべも無い!」

 

 

 が、グレイフィアさん揺るがない!

 バッサリ斬り捨てられたリアスは、チクショウ!と崩れ落ち(床ダンし)た。

 

 ちなみに、同じように『女』を教わっていた朱乃は、イッセー相手にグレイフィアと同じように貼り付いていた。

 牽制の意味も込めているかもしれない。

 

 それはともかく。

 

 

「それに、リアスの心配は杞憂だわ。私たちの目的地はグレモリー領ではありませんから」

 

「……ミリキャスに顔も見せないの……?」

 

「どのような顔をして会えと」

 

 

 確かにそうだけど。

 確かにそうだけど!

 

 大事なことなので二回、リアスは心の中で繰り返した。

 

 

「私たちの目的地はフェニックス領です。だから、私としては里帰りでもなんでもないですね」

 

「フェニックス領?」

 

 

 言葉にされて、思わずレイヴェルを探した。

 アーシアやルフェイと一緒の席で、談笑していた元婚約者の妹を見つけると、ほぼ同時のタイミングでグレイフィアが説明を続けた。

 

 

「なんでも、彼女は彼女で実家の方からソラ様との関係を探られていたようで。駒王に残れる手段として、仲の良さを見せつけるのだとか。元々フェニックスはソラ様には好意的ですし、そんなわざとらしい手に頼らなくとも杞憂だと思いますけどね」

 

「へー……。……? ちょっとまって?」

 

 

 生返事を返して、気づく。

 

 

「それなら、貴女じゃなくてレイヴェルがソラと近くなくては説得力が無いんじゃないかしら」

 

「自領に着いたら否応なしに近くなられる小娘ですよ。譲ると思いますか?」

 

 

 この人妻、単に自分が貼り付いていたいから()やっているだけらしい。

 

 

「離れなさい」

 

「いやです!」

 

 

 力強い拒否で、キャットファイト第二戦目が始まった。

 当初の相手である小猫は放置である。

 

 放置された小猫は、同じように火中なのに放置されっぱなしの烏丸に、ふと、気になる点を問いかけた。

 

 

「……そういえば、冥界は人間にとっては毒だと以前に聞いた覚えがあるのですが」

 

「ああ。そういやそうらしいね、知ってたんだ?」

 

「逆にそれを把握してたのに来れる精神が気になりますよ」

 

 

 思わず、ドン引きする。

 当然対策くらいはしてあるのだろうが、奨んで毒へ飛び込むのはどういう心理で執れる行動なのか。

 勝てるか負けるか分からない戦いへ身を投じさせられる、海賊王の息子みたいな少年漫画的なスタンスは烏丸に似合わないなぁ、と引いた脳裡で思考した。

 

 

「暇なので、是非語ってみてください。どういう理屈で冥界は人間にとって毒なのか」

 

「奨めて来られる辺りホントに暇なのナ。うーんと、毒である理屈は、そもそも影響力の違いだ。自我の脆い、他者の認識を鵜呑みにしたような価値基準の甘い存在は、イドに引き摺られて自己の形が変わってしまう世界。其処が冥界だ。先ずは、冥界がある(・・)位置がそもそもとある外宇宙へ繋がる回廊の上に展開していてね、」

 

 

 さらっと、説明を始められたわけだが。

 しかし現状、烏丸はリアスとグレイフィアがもみくちゃにキャットファイトを繰り広げているお蔭で、おっぱいサンドに絡まって晒されているので真面目さが伝わらない。

 とりあえず、この爆乳義姉妹もげればいいのに。

 

 そんなことを、小猫はふっと思い描いた。

 




・魔法少女オーディション
 原作展開踏襲。ミルキーは無いけど、多分一種の収束点。えるぷさいこんぐるぅ。外交官であるセラフォルーを持て成そうと烏丸がアホみたいな思考で閃いた。時に道化を演じてでも悪魔の旨味を得ようとする、外交官の鑑なのでは、と烏丸は意外とセラフォルーを評価している。多分過言

・ラミア
 某モンスター娘に於いては精力の在る雄を本能的に求め、更に乱交でまぐわって子孫を残す習性があるという。リアスが親近感を覚えたのは果たしてどういう理由なのか…

・駒王学園四天王
 初等部から大学まで、幅広く『なんか特殊っぽいじつりょくしゃ』を選りすぐった年齢層バラッバラな四人組。スカウトされたので参加したけど場をかき乱す気も無いから顔だけ出すね、とは本人の談だが、そんな適当さで対峙した生徒会の胃の痛みは半端ない。その経由でオカ研に話が来てリアスも頭を悩ませた


ずっと前に書いてた『理由』の伏線をあっさり回収
でもみんな予想くらいついてたと思うの
まあ此処からどれだけ二転三転できるかが腕の見せ所…(ハードル上げ

あと人妻強調し過ぎて別段問題ないんじゃないかな、って最近思うようになってきた
ヤバイ(語彙消失


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