SSSS.GRIDオルガ (遅太郎)
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1 覚・醒

プロローグと1話。

なんだよ…アカネパート多いじゃねぇか…ヘヘッ


ネリマ市ツツジ台に置かれた高等学校は1つのみである。

そこは若者がいわゆる青春を謳歌するには十分な場所だ。学力並、部活並、と『普通の高校』であると位置付けがなされている。

 

おまけに学外の大型商業施設は校舎と絶妙な位置に建設されているため、生徒たちが放課後を過ごすのにまさに最適と言えるのだ。

 

大半の生徒がツツジ台に自宅を持っているということも重なって、生活する分には町から外にでる必要もない。

 

完璧な町、ツツジ台。

 

 

そんな恵まれたと言える高校の中でも、神に恵まれたと囁かれる生徒が存在した。

 

女子生徒である。名を新城アカネ。

 

その『恵まれた』新城アカネは、ひとり放課後の屋上にいた。

 

彼女を知る人間に、彼女の何が特別か、と問うたらほとんどの確率で

容姿、そう答えるだろう。

 

屋上の柵に腕を乗せ、何かを見ているようで何も見ていないその横顔には、性別問わず振り返らせるような美貌が備わっている。

 

出会う人という人が彼女を『好き』になるのだ。

 

ステータスは容姿、だけでなくコミュニケーション能力の高さ、人への配慮、など人間として完成しているというのが過言ではなくなるほどだと彼女に会った人は口を揃える。

 

空は青く、雲の少ない日だった。

 

新城アカネ自身、自分がいつからどのくらい屋上の柵に身体を預けているか分からなかった。

いや、考えようともしていなかった。

 

陸上部だろうか。部活の掛け声のようなものが法則のない喧騒のように聞こえる。

 

吹奏楽部だろうか。ブォーブォーと管楽器の太い音色が微かに耳に届く。曲は…believe?

 

彼女は、空を見た。

 

轟音がしたから空を見たのか、空を見てから轟音が鳴ったのか。

 

とにかく顔をあげるのと同じタイミングで微細ながらドォーという低い音が聞こえた。

 

空に目を凝らした。

 

 

なに?

 

白昼に1つだけ耀く星。

 

ドォーという音と共に現れたのだろうか。

 

やがてその光は大きく瞬いて、

 

瞬間、割れた。

 

欠片を数える暇もなかった。五つ位だったろうか。

新城アカネは欠片の先を追おうとした、が、もう光の痕跡は微塵も残ってはいなかった。

 

新城アカネは、言い知れぬ不安感を抱いた。

いや、

 

この感情は…

 

不安?

 

違う。

 

あの輝きは…あれを見た私は…

 

新城アカネは、ひとり考えた。

 

 

結論はでなかった。

 

でも…

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

『必ず僕が、傍に居て』

 

遠くから鼻唄が聞こえる。

聴いたことのない節だ。まぁ、俺の覚えてる歌なんざたかが知れてるんだけどな。

 

『支えてあげるよ、其の肩を』

 

俺は、眠ってんのか?

なら、起きなくちゃなんねぇ。

 

目を開ける。

 

 

まず見えたのが天井。電気。消えている。

 

薄暗い部屋を首だけ起こして見渡す。

どうやらソファのようなものに仰向けになっていたらしい。

 

棚、机、観葉植物、そして…

 

「お、起きた」

 

黒髪を揺らして、ひとりの女子がパソコンのモニターから首をこちらに向ける。鼻唄の主か。

 

上はシャツに下はスカート。崩した正装のようだ。

 

なんだ?彼女が寝かしてくれたのか?なら礼をしなくちゃなんね…

 

「…おはよぅ、ございます…」

 

!!

 

びっくりした。

まさかとなりにもうひとりいたとは。

 

焦って声の方向に首を動かす。

赤い髪をした少年だ。シャツにベストにネクタイ。こっちも正装?

 

俺か?俺はいつものマルーン色のスーツだ。

 

黒髪は俺ら二人を見て続ける。

 

「30分くらい寝てて起きなかったんだよ

具合悪いの?大丈夫…?」

 

具合?…特に痛いところもないな。

 

「どうってことねぇよ、大丈夫だ」

 

「家の前で倒れてるからさ、ほんとびっくりした…顔洗う?洗面所、そっちだから」

 

「おぉ、悪い、助かる」

 

俺は遠慮なく使わせてもらうことにした。

言われた方向に足を向かわせる。

 

すると例の少年もついてきた。

 

「よぉ、俺はオルガ・イツカってんだ…あんたは?」

 

少年はぼうっとした表情であ、はい と言って…

 

その表情が、みるみる変わっていく。

何かを深く考えている。

 

見かねた俺は、声をかける。

 

「お、おい、大丈夫かあんた」

 

「…すいません」

 

「?」

 

「俺は…誰でしょうか…?」

 

 

 

…はぁ?




タカキも頑張ってたし、俺も頑張らないと


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