やはり俺の奇妙な冒険は間違っているようで間違っていない。 (マグロ屋さん)
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『俺ガイル』×『ジョジョ』:ジョジョの奇妙な冒険~LIVING DEAD GUARDIAN~ 第1話




注意書き

この話は『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』と『ジョジョの奇妙な冒険』のクロスオーバー作品です。厳密に言うと俺ガイルの主人公、比企谷八幡をジョジョの世界にぶち込んだら、というパロディ小説です。
八幡の設定を大幅に変更しており、原作とは別人になっている可能性があります。
生い立ち、年齢、性格などが勝手にいじられてます。

以上のことが駄目な人はブラウザバック推奨です。




時系列

1987~1988年:3部。承太郎たちがDIOを斃す。八幡誕生。仗助、スタンド能力に目覚める
1992年:徐倫誕生。
1995年:孤児だった八幡、承太郎に拾われ、空条家の養子となり、名前を[[rb:空条誠八 > くうじょうじょうや]]と改める。
1999年:4部。承太郎、杜王町を訪れる。町に住む殺人鬼・吉良吉影を追う。






 

 

Prologue

 

 

 

「すみません、少しお尋ねしたいことがあるんですが」

 

その日、広瀬康一はいつものように飼い犬ポリスの散歩をしている途中、声をかけられて立ち止まった。

いつものように、とはいってもこの杜王町のどこかに潜む殺人鬼・吉良吉影との戦闘や、【ハイウェイ・スター】噴上裕也との邂逅を経験しているのでまったくいつも通りというわけでもないのだが。

声の持ち主がいるであろう方を向くと、康一よりも身長の低い子供が立っていた。二人の身長差は十数センチほどだろうか。おそらくその少年は小学生か中学生くらいなのだろう。

 

それにしても、と康一は思った。

 

(どこかで会ったことあるような…?)

 

初めて会う筈の子供なのに、康一は既視感を覚えていた。と言うよりその子供が誰かにとても似ている気がしてならないのだ。

子供は小学生から中学生くらいの年齢と思われる。けっこう整った顔立ちをしていて、頭頂部付近にぴょこんと飛び出たアホ毛が存在を主張している。

 

「えっと…なにかな?僕でよければ力になるけど」

 

特に立て込んでいるわけでもないしその子供がとても礼儀正しい言葉遣いをしていたため、康一は用件を聞く前に快く承るつもりでいた。

 

「ありがとうございます…。杜王グランドホテルに行きたいんですがどうすればいいんでしょうか」

 

 

 

 

――――――――――――――――

――――――――――

―――――

 

 

 

 

「ここのバス停から乗れば杜王グランドホテルまで行けるよ」

 

「…あー、わざわざ案内までしてもらって悪いんですけど、ホテルまで行く必要がなくなったみたいです」

 

「え?それって…」

 

「案内、ありがとうございました」

 

康一がどういうことかと訊く前に、少年は一言礼を言うと走り出していた。

少年が向かっている反対側の歩道を見ると、康一にとって馴染みの深い人物がいた。

 

「仗助くん…?」

 

反対の歩道には康一の友人である東方仗助と、その父親であるジョセフ・ジョースターが連れ立って歩いていた。ジョセフは赤ん坊を抱いている。事情を知っていない者が見ても微笑ましい光景だろう。

ところが康一はすぐに、それどころではないことに気が付いた。

 

「危ない!」

 

車道を走行していた大型トラックが今にも少年を轢きそうなほどに迫っていた。この距離だと仗助の【クレイジー・ダイヤモンド】は射程距離外だし、康一の【エコーズACT2】では大型トラックを動かすほどの文字をすぐに張り付けることは不可能だ。

 

康一はこれから起こるであろう出来事を想像し叫んでいたが、当事者の少年は涼しい表情で眼前のトラックを見つめるとぼそりと呟いた。その声は大きなものではなかったがなぜゆえかよく通る声だった。

 

「……【リビングデッド・ユース】」

 

その瞬間、少年の傍に黒い人影が現れたかと思うと、少年の足元に吸い込まれていくように消えた。そして次の瞬間、少年の体は反対側の歩道に移動していた!

 

(今のはスタンド!!)

 

間違いない、と康一は思った。つい二ヶ月ほど前にその存在を初めて知ったが、自分もそれを扱う者としてよく知っている。

今しがた少年が出したのはスタンドだ。全体的に黒く、一瞬のことだったからよくは見えなかったがそうでなければ少年のあの移動に説明がつかない。

トラックの運転手が慌ててトラックを停めて降りて駆け寄ってきたが、少年は「自分が飛び出したのが悪いので気にしないでください」と流していた。

 

「康一?コイツは…?」

 

少年を追うように反対の歩道に着いた康一に気が付いた仗助が声をかけるが、康一自身少年のことをよく知っているわけではないので答えようがない。

 

「おお、誠八。どうしたんじゃ?」

 

「どうしたもこうしたもないだろ、じいちゃん…」

 

誠八、と呼ばれた少年はジョセフをじいちゃんと呼んだ。ということはつまり。

 

「「ジョースターさん/ジジイの孫!?」」

 

二人分の驚きの声が響いた。

 

 

 

 

――――――――――――――――

――――――――――

―――――

 

 

 

 

「まあ孫と言っても血が繋がってるわけじゃあないんですけどね。俺は孤児だったんです」

 

「初めて会ったときは、いきなり『弟だ』なんて言って承太郎が連れてくるもんじゃからビビったのう」

 

(確かにそりゃあビビるぜ…)

 

自分も承太郎に父親のことについて話されたときは結構驚いたので、仗助はジョセフの発言に心の中で同意する。

 

「でも夏休みはまだ一週間以上先だよね?誠八くんは学校、どうしたのさ?」

 

「……」

 

(サボりかよ)

 

目を逸らした誠八を見て悟る仗助。

 

「また学校をサボっとんのか、誠八」

 

「いや俺はただじいちゃんの『自分で選んだ道を往け』って教えを忠実に守ってるだけだから」

 

「屁理屈がうまくなりおって…まったく、誰に似たんじゃ…」

 

(ジジイだろ)

 

(ジョースターさんだよね、絶対)

 

「じいちゃんに決まってるだろ」

 

この誠八というこどもは、思ったことが口に出やすいタイプなのかもしれない。

仗助と康一が敢えて口を閉じておいたことをすっぱりと言ってのけるのだから。

 

「ほーう…おじいちゃんに対する口のきき方がなっとらんのう。車道に飛び出しとったし…これは承太郎の説教が必要じゃの」

 

「すみませんでした二度と生意気な口をききませんのでどうか勘弁してください」

 

ニヤニヤしながら言うジョセフに、速攻で謝り倒す誠八。じゃれあっているようにも見えるが承太郎の説教、とジョセフが口にした途端に誠八の顔は真っ青になったのでそれは恐ろしいものなのだろう。

 

「それはそれでわざとらしいじゃろう…やれやれだわい」

 

夏の空にジョセフの呆れ声と赤ん坊の嬉しそうな声が吸い込まれていった。

 

 

 

 

NAME:『空条誠八(じょうや)

もともと孤児で、自分の人生には希望はないと思っていたが、7歳の時に空条承太郎と出会ったことで希望を持つようになった。

孤児の頃に人間の裏の顔を多く目撃してきたため、人が隠し持っている悪意に非常に敏感である。

 

誠………①嘘のない心。

    ②真実。

    ③飾り気がない。

 

STAND:【リビングデッド・ユース】

【破壊力[D]/スピード[A]/射程距離[A~C]/持続力[B]/精密動作性[C]/成長性[A]】

誠八の影の中に居るスタンドで、基本的に実体を持たないため周囲に対して攻撃したり防御したりするなど、触れることは不可能。しかしながら誠八の影を伸縮して、誠八自身の移動に使ったり、他人の影や物体の影に繋いで動かすことができる。一度に動かせる物体の重量には限界があり、最大200㎏ほど。

スタンドの射程距離は誠八の影を延長できる範囲なので、正午が最も短く2~3mほど。日の出直後、日の入り際だと最大で100mほど延ばせる。また、周囲に建物などがあるときは影を重ねることでその分の射程を延ばせる。

 

 

 

 

 

 

誠八の一番長い日・前編

 

 

10:30

 

誠八が杜王町を訪れて三日経った。承太郎やスピードワゴン財団はこの町のどこかに潜んでいる殺人鬼・吉良吉影の捜索を続けているがいまだに足取りは掴めないままだった。

吉良の体格はまさに一般的というほかなく、彼と同じ体格の人物だけでは手がかりが少なすぎた。

 

こうしている間にも吉良の犠牲者は増え続けるかもしれない。

かといって誠八は自分の力でどうこう出来る問題でもないので行動を起こすことはなかった。……表向きは。

誠八は駅やデパートなど人が多く集まる場所を中心にして自分のスタンド【リビングデッド・ユース】を走らせ、それらしい人物に目星を付けては虱潰しに調査していた。

 

(露伴先生に写真を見せてもらったが…流石にこれは厳しい)

 

誠八は三日間この方法を続けているが、焦りの感情が強かった。それは、吉良吉影をまだ見つけられていないというだけでなく、杜王町を訪れる人の数が日ましに増えているからでもあった。時期的に帰省する人や観光客が多いのである。そのせいで街中を捜すと逆に誠八が混乱してしまうこととなった。

 

(一応候補は絞れたが…それでもまだ百人近くいるな…これ以上この町に滞在してると俺だけこのまま夏休みに突入するんじゃあないか?)

 

それだと休み明けにクラスメイトから文句を言われそうだ、なんて考えながら、喉が渇いた誠八はジュースでも買おうとコンビニに立ち寄った。

 

 

 

 

 

 

10:45

 

「あの…コレ、落としましたよ」

 

レジでの精算を終えた彼女が声をかけられて振り返ると、小学生くらいの子供が自分に百円玉を差し出していた。

 

「えっ、私落としたの?それ」

 

「はい、さっきお釣りを入れる時に」

 

そう小学生は言うが、小銭が落ちる音などしただろうか?彼女は自分の財布とレシートを確認すると、成程確かに100円足りない。

 

紙幣や五百円玉ならいざ知らず、百円玉だけなら言われなければ気づかなかっただろう。黙っていれば自分のものにできたかもしれないのにわざわざ教えてくれるとは律儀なものだ、と思いながら彼女は小学生から百円玉を受け取った。

 

「ありがとね、教えてくれて」

 

「当然のことをしたまでなので…」

 

当然、この小学生というのは誠八である。

 

(やっべぇぇぇぇ!小銭が落ちたのが見えたからついスタンドで拾っちまったけどばれてねえよな?)

 

レジに並んでいた女性の手から百円玉が落ちたのが見えたので半ば無意識に影を延ばして拾ってしまったのだ。

 

(いや、俺は悪くねえ。それもこれも全てレシートの上に小銭を文鎮代わりに置いて渡してくる店員が悪い。)

 

心の中で自分に対して言い訳をしながら(さり気なく店員に責任を押し付けながら)誠八はレジへと向かう。

その時だった。

 

ドォン!パリィン!!

 

「!?」

 

聞き慣れない音が鳴り響き、店内の照明が割れた。

大きな音に面食らいながらも、誠八が音源の方向へ視線を向けると、一人の男が天井に向けて右腕を突き上げて立っていた。その手には黒光りする銃が握られている。

 

「ひっ…!」

 

「動いたら撃つぞ!」

 

客の一人が怯えて後退りすると、男は銃を向けて脅す。日本で銃など、一般市民には縁のないものだ。ましてやそんな凶器を向けられれば普通は竦みあがってしまうだろう。その客も例に洩れず、益々怯えて取り乱している。

 

「動くなといったのが聞こえなかったのか!?」

 

(拙い!!)

 

どうも強盗犯の男は気が立っているというかキレているというか、とにかく尋常ではない様子だ。客に銃口を向けて引き金に指を―――――

 

グラッ

 

「んなっ!?」

 

咄嗟にリビングデッド・ユースで強盗犯の足だけを前方にずらす。そうすると重心は前に移動するが上半身が追い付けず後ろに倒れこむ。所謂『膝カックン』と同じだ。

そのまま発砲したことによって銃弾は天井に穴を開けるだけに終わった。

 

(やれやれ…危ないところだったぜ)

 

「クソッ!なんだこの床、ちゃんと掃除してんのかぁ!?」

 

強盗犯の怒りの対象はその客から床に変更されたらしく、何度も乱暴に足を踏み鳴らしながら悪態をついている。

 

(声と体格からして30代くらいの男、目出し帽を被っているから顔は判らないが…あの様子、昼間から酔ってるのか?それともラリってるのか……元からキレ性なのかもしれんが)

 

誠八は後ろから急にポン、と肩を軽くたたかれて振り返った。

 

「二人とも、早くこっちに身を隠してっ」

 

見れば、レジに立っていた店員が誠八と女性を手招きしている。確かにレジ側に身を潜めれば小学生の誠八と小柄な女性(大学生くらいだろうか?)は完全に強盗犯から姿を隠せる。

 

「それにしても店長や先輩たちは何してんだよ…」

 

店員はボソッと呟いていた。確かに、店でこんなことが起こっているのに奥に居るであろう店長などが通報もしないのはおかしい。もう強盗犯が最初に銃を発砲してから5分以上経っているのだ。

 

(もしかして…この奥では……この奥では既にッ!)

 

誠八は『最悪のパターン』に思い至ってしまった。

そう、それはコンビニ強盗がこの男一人ではなく、

 

ゴトッ

 

「レジの金を全てこの袋に入れろ」

 

「なっ…」

 

複数犯であるということだ。

 

 

 

 

 

10:55

 

(この男が奥から出てくると同時に硝煙の臭いもした…ということはやはりこの奥では…)

 

店員の後頭部に銃を突きつけたもう一人の犯人。こちらも目出し帽を被っているが30代の男だろう。握っている銃には消音器(サイレンサー)が装着されており、これらのことから導き出される結論は―――

 

「もしかして、店長たちはっ…!」

 

「ああ、既に死んでるよ」

 

「――――ッ!!」

 

店員の顔が歪む。その表情には驚き、悲しみ、怒りなど様々な感情が表れていた。

だがしかし銃を突きつけられてはどうすることもできないのか、男に言われた通りレジの金を袋の中に入れている。

 

「おい、まだなのかよ!?」

 

「落ち着け、慌てる必要はない。金を手にしたらすぐに立ち去ればいい」

 

一人目の犯人ががなり立てながらレジの方へと大股で歩いてくる。二人目は冷静に男を宥めながらも店員が妙な動きをしないか一挙手一投足を監視している。

しかし、強盗犯はどちらも誠八と女性に気づいていないようだ。二人目の強盗犯が出てくるより早く店員が二人を隠してくれたので、下手に動かなければばれることはないだろう。

 

誠八はリビングデッド・ユースで店内の様子を把握していた。

① 強盗犯は二人組。一人はレジの側、もう一人は商品の棚の傍に居る。

② 店員は一人。奥にいるスタッフは3人おり、3人とも死亡している。

③ 客は自分と女性を含めて5人。自分たちを除けば全員パンの棚の前に並べて座らされている。

 

「終わったな」

 

冷静な強盗犯がそう言ったところから察するに、誠八が思考している間に店員は金を袋に移し終えたのだろう。

 

誠八は女性の方へ向くと頭を下げた。

 

「…すみません、俺があなたを引き留めたせいでこんなことになってしまって」

 

誠八が小銭を渡すために彼女を呼び止めなければ今頃何事もなくこのコンビニを立ち去ることが出来ていた筈だ。誠八はそのことに申し訳なさを感じていた。

ところが女性は微笑んだ。

 

「気にしなくていいのよ、あなたは親切心でやったことだもの、恥じる必要はないわ」

 

「……」

 

『自分で決めた道を往けばいいんじゃ、誠八』

 

脳裏に祖父であり師でもあるジョセフの言葉が過った。

 

「よし、引き上げるぞ」

 

強盗犯たちは金の入った袋を持って出入り口へと向かう。

 

このまま何もせずにやり過ごせばいい。そして強盗犯が去った後で通報すればいい。日本の警察は優秀だ。きっと奴等を見つけ出して逮捕してくれるだろう。

 

…だが、もし逮捕できなければ?

 

既に犯人たちは殺人に手を染めており、罪悪感も覚えていないようだ。

そういう連中は犯罪慣れしている可能性が高いし、また同じことを繰り返すだろう。

コンビニ強盗というのは成功しても数万円程度しか手に入らないのだ。だからこそ大金が関わる銀行強盗などに比べて足が付きにくく、何度も繰り返す。

 

(人の命が失われてるのに俺はこんな隅っこで蹲ってることしかできないってのか?)

 

今にも犯人たちはコンビニの外へと出て行こうとしている。

 

(だからって俺に何が出来る?スタンドは物を動かすか周囲を探るくらいしかできない。小学生にしちゃあパワーはある方だと思うが大の男二人、それも銃を持ってる連中に勝てるわけがねえ)

 

でも、それでも。

 

(自分の無力さを言い訳にして行動しないのは昔の俺の癖だ。あの頃の俺がいるから今の俺がいることは揺るぎのない事実だ。それでも自分が嫌いな頃のままで何にも成長できなくていいのか?)

 

解はもう、出ている。

 

(いいわけないだろ)

 

ザクッ

 

「いでぇっ!」

 

「どうした?」

 

粗暴な強盗犯が叫ぶと、冷静な方も足を止める。

 

「お、俺の脚にっ、なんだこりゃああぁ!?」

 

粗暴男の脚には幾つもの破片が刺さっていた。

その破片は最初に発砲した際に割れた照明のもの。誠八がスタンドを使って男の脚めがけて高速で移動させて刺したのだ。

 

(パワーはない…それでも尖った物体を高速で移動させれば立派な凶器になり得るんだぜ)

 

「クソッ!さっきの床といい、この店はどうなってやがんだよ!」

 

破片を抜きながら悪態をつく男。冷静男はそれが終わるのを待っているようだ。

冷静男は待っている間に、あるものを見つけて拾い上げた。

 

「コーラ…?さっきまでこんなものあったか…?」

 

冷静男が拾い上げたのはコーラ。それを怪訝そうに見つめている。

誠八の隣では女性と店員が「何が起こっているのか解らない」といった表情をしていた。

 

(そのコーラはさっき俺がドリンクの棚から取ったやつだ。そして今そこに転がしといた)

 

誠八は隠れるのをやめて犯人たちを見ながらニヤリと笑う。

 

(思いっ切り振りまくってからな)

 

プシュッ!

 

「うおおっ!?」

 

冷静男が訝しみながらもキャップを回したことにより、噴出したコーラの威力によってキャップは飛び道具のような勢いで冷静男の右目にヒットした。

 

(良し!!)

 

冷静男は目の痛みにコーラのボトルを手放す。ボトルは残りのコーラを撒き散らしながら床に落ち―――なかった。

 

「クソ…ようやく抜き終わったぜ…おい!とっととずらかr」ボッ

 

ちょうど、破片を抜き終えて立ち上がった粗暴男の脳天にボトルが直撃したのだ。

中身は半分ほど残っていたので軽度の脳震盪を起こすくらいのショックを与えられるだろう。

昏倒する粗暴男。誠八はその混乱に乗じて、あるものを掴んで走り出した。

それは荷造り用の紐である。影で奥から引っ張ってきたものだ。

 

(今のうちに二人ともこれで縛り上げるしかねえ!)

 

「くっ、このガキ!」

 

誠八が思っていたよりも早く、冷静男が立て直した。誠八に向けて銃を構え、発砲しようとする。

 

「うおおおおッ!!」

 

避け切れない、誠八がそう判断し目を瞑った時、店員が雄叫びをあげながら突進してき、誠八を庇うように強盗犯に飛び掛かった。

 

「チィッ、離れやがれ、貴様!」

 

強盗犯は思い切り店員を突き飛ばすと、棚に激突した店員に銃口を向ける。

 

「どうやら仕事仲間と同じところに逝きたいみたいだな。望み通り殺してやるよ」

 

(させるかよ!)

 

誠八は手にしたビニール紐を強盗犯の持つ銃に向けて投げる。

普通なら荷造り用の紐のように軽すぎたり形状が変化しやすかったりする物は、投げても空気抵抗に負けて全然飛ばないのだが、誠八が投げたものは特別だった。

 

コォォォォォ

 

波紋法。それは四千年以上続く技術。

特殊な呼吸により、太陽のエネルギーを波のような形で放出し、その技は様々な使い方が出来る。例えば、柔らかいものに波紋を流してバリアーをつくるとか。

 

(俺の波紋は未熟もいいとこだ。だがこいつらが現れてから呼吸に集中してたから充分なほど練れてるぜ!!)

 

ドバチィッ!

 

波紋を流し込んだビニール紐は銃弾をはじき、はじかれた弾丸はこれも天井に穴を開ける。

強盗犯も含めその場にいた者全員、何が起こったのか解らなかっただろう。

しかし直感とでもいうべきものが働いたのか、強盗犯は再び誠八に銃を向けた。

 

 

 

 

 

11:05

 

「怪我は無いか、誠八」

 

「…兄さん…ああ、俺は特に何ともないよ」

 

「は…!?いっ、いつの間にいたんだお前えぇぇぇ!!」

 

突如として背後に現れた承太郎に対して叫ぶ強盗犯。先ほどまでは冷徹ぶりを如何なく発揮していたようだが、想定外の事態に驚きが限界に達したらしく、承太郎に銃を向けると叫びながら続けざまに二発撃った。

 

「店の奥から血の匂いがするな。こいつがやったということか」

 

放たれた弾丸は二発とも承太郎に命中することはなく、ドアのガラスに命中して罅を入れた。

 

「既に警察がこの店に向かっている。逃げることはできないだろう」

 

今度は突き飛ばされた店員を介抱しながら言う承太郎。何故承太郎が移動しているのか、誰も見えなかったし、誠八以外は理解できていない。

 

承太郎のスタンド、【スタープラチナ】は、圧倒的なパワーとスピードに精密性も兼ね備え、それだけでも超が付くほど強力なうえに、2、3秒ほど時を止めることが出来るという絶大なアドバンテージを有している。時が止まっているのに2、3秒間というのもおかしな話だが、承太郎の感覚ではそのくらいだということだ。

 

誰にも悟られることなくコンビニの中に入ってこられたのも、強盗犯の撃った銃弾を躱せたのも全ては「時を止める」能力があるからだ。もっとも銃で武装した程度では承太郎が時を止めずとも敵う筈もないのだが。

 

誠八は承太郎の言葉を聞いてコンビニの外を見る。丁度、野次馬をかき分けて警察が到着していた。

おそらく承太郎も誠八と同様に吉良の手掛かりを探っていたのだろう。そしてコンビニの周りにできた人だかりを見て何かが起きていることを察し、時を止めて店内に入ってきたのだ。

 

「警察だ!動くな!」

 

数人の警官がドアを開けて入ってくる。勿論銃を強盗犯に向けながらだ。

強盗犯は最後の悪あがきとばかりに警官たちに向かって引き金を引くが、弾は出ない。

店の奥で3人殺害して、そのあと店員に向けて発砲した分と承太郎に向けて2発撃った。計6発の弾丸を全て撃ち尽くしたため、弾切れになったのである。

 

その後、冷静男は倒れた粗暴男の銃を拾おうとするも承太郎によって阻まれ、抵抗の意志を見せるも為す術なくお縄に着くこととなった。

 

 

 

 

 

13:30

 

あの後警察で事情聴取を受けたり、店員やレジに隠れた女性も含めた客たちから感謝されたりして結構時間が掛かってしまった。

 

そして承太郎の説教もだ。誠八にとってはこれが一番長く感じたが、これはまだ地獄の序章に過ぎなかった。

承太郎→ジョセフ→電話でホリィと貞夫→電話でスージーQ→仗助、億泰、康一の三人組

という流れでお説教フルコースだったのだ。フルコースで言うと前菜の時点で既に誠八にとってはジ・エンドだったわけだが。

というかホリィは「危ないことしちゃだめよ」とは言っていたがいつの間にか最近ご近所でこんなことがあっただの野菜が値上がりして大変だのといった話になっていた。スージーQに至っては最初から最後まで世間話だった。

仗助たちからは「お前やるなー!」とお褒めの言葉をいただいた。

 

(あれ?結局兄さんとじいちゃんと親父くらいからしか説教されてなくね?)

 

まあ、それでも皆最後には「よく頑張った」と言っていた。

 

「誠八、今回の件は確かに手放しで褒めることはできないことだ。だがお前が立ち向かったという事実は絶対に消えない。それだけは覚えておけ」

 

「…ああ」

 

承太郎の言葉に、誠八は大きく頷いてみせた。

 

 

To Be Continued…

 






あとがきにそえて。

みなさんどうも初めまして。マグロ屋です。
まあ自分で書いてても読んでても「なんだこの駄文」と思うような文章でしたのでコレを読んでいる方がいるのかどうかも判りませんが。

この小説、とある方の『俺ガイル』×『ジョジョ』のクロスオーバー小説を読んで、「もし初めから八幡が『ジョジョの奇妙な冒険』側の登場人物だったなら?」という妄想から生まれたものです。

ですがここで問題が一つ。八幡をジョジョの世界にどのように放り込むのか。実は作者の目指す結末に辿り着くためには、八幡が『ジョジョの奇妙な冒険第四部』から登場する必要があったのです。(これ以上書くとネタバレになってしまうので書きませんが。)
結局のところ八幡の年齢を原作よりも上げる、という二次創作ではよくあるパターンに着地しました。

今回はプロローグと第1話を兼ねていたためこれだけの長さに収まりましたが、次回からは長くなるかもしれません。そうなると話をさらに分割することになる可能性もあります。一話を約10,000字ほどで書き上げたいので…




一応補足

空条誠八は承太郎に出会うまで欲望と裏切りに満ちた世界よりもさらに下層で生きていたため、いざとなったらかなりダーティーな手段も用いるくらいにはいろいろとキまってる奴です。原作八幡の自分を徹底的に切れる冷静さに加え、ジョセフ直伝の知略謀略エトセトラ…も付け加わることになります。
とはいえ、まだまだ未熟なのでこれから様々な人に触れて成長していく予定です。





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