ありふれたハジケリストは世界最狂 (味音ショユ)
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奥義0 物語が始まるちょっと前の話

去年の10月の活動報告に書いたありふれss、ついに開始。

……ネタの構想はあったんです。本当に。
ただ色々ss読んだり違うss書いていたらいつの間にかこんな時期になっただけなんです。




 西暦300X年、地球はマルハーゲ帝国が支配していた。

 マルハーゲ帝国皇帝、ツル・ツルリーナ4世は支配の象徴として、国民の新鮮な毛を直で抜く毛刈りを行っていた。

 そんな暴政に他の国は対抗できず、ただ苦しめられるばかりだった。

 しかし、闇あれば光あり。悪のマルハーゲ帝国に立ち向かう救世主が居た。

 その名はボボボーボ・ボーボボ。

 彼は仲間達と共に幾多の激闘を経て、マルハーゲ帝国を壊滅させた。

 しかし一年後。なんやかんやで蘇っていたツル・ツルリーナ3世が新たな帝国ネオ・マルハーゲ帝国が建国。またも暴政で人々を苦しめるも、ボーボボ達がまあ色々戦って壊滅。

 その後、ピーマンと手を組んだツルリーナ4世が今度は宇宙に帝国を造るも、よく分からない内に壊滅。

そこから数年後に、この物語は始まる。

(※注意、このSSにボーボボの出番はほぼありません)

 

「何故じゃあああああああ!!」

 

 金髪アフロでグラサンの大男、件のボーボボが叫んでいる。が、彼の出番は無いったら無い。

 

「何故じゃああああああああああああああああああああ!!!」

 

 はい、無視してはじめまーす。

 

 


 

 

 とある冬の昼下がり、少女は困っていた。

 少女の名前は白崎香織、中学二年生の女子だ。後に進学する高校では女神と称されるほどの美少女だが、今はその顔を曇らせていた。

 その理由は彼女の視線の先にある。

 

「おいコラクソガキィ! てめぇ何してくれてんだ!?」

「べっちょりついてるじゃねえか!? クリーニング代出せや、おお!?」

「オウッ! オウッ!」

 

 三人組の不良(尚その内一匹はオットセイ)が小さな男の子とお婆さんに絡んでいるのだ。

 原因は男の子の不注意で持っていたたこ焼きをべっとりと付けてしまったのだ。

 男の子は泣きわめき、お婆さんは穏便に済ませようと財布からお札を数枚出すが、不良達の怒りは収まらない。

 

「そんなはした金じゃ足りねえなぁ!?」

「オウッ!」

「財布ごとよこせオラァ!」

 

 札数枚だけじゃ飽き足らず、お婆さんの財布ごと奪おうとする不良達。

 しかしその時

 

「うおおおおおおおおおおおお!!」

 

 咆哮が、その場の空気を切り裂く。

 声のする方へ香織と不良達が目を向けるとそこには

 

「僕は風だ。風になるんだ……!」

 

 リアカーを引きながら疾走する少年と

 

「そうだハジメ、お前は風になれる!」

「その果てがお前の求める世界だ!」

 

 リアカーに乗った青いプルプルした何かと、オレンジ色の太陽に手足を顔がついた何かだった。

 

(何あれ!?)

「おいハジメ、あれ見ろ!」

「どうしたの首領パッチ?」

 

 香織の内心を差し置いて、首領パッチはハジメに声を掛ける。そこには異様な光景を見て固まる不良達の姿が。

 それを見たハジメは疾走を止める。

 そして

 

「ボボボーボ・ボーボボ、ブルーレイボックス絶賛発売中!!」

 

 さっきまで引いていたリアカーを不良達にむかって思いっきりぶん投げた。

 

「「「「「ぎゃあああああああああ!!」」」」」

(えぇ――――――――っ!?)

 

 いきなり攻撃を喰らい、倒れ伏す不良達とリアカーに乗っていた首領パッチ達。

 しかし次の瞬間、オットセイは起き上がり何を思ったのか、リアカーに乗っていた青いプルプルをモグモグと食べ始めた。

 

「う、嬉しい……。このところてん歴40年近い、俺ことところ天の助をついに食べてくれる人が……!」

 

 そして天の助は感極まって泣いていた。

 

「ゲロマズッ!」

 

 だがオットセイはあっさり吐き出した。

 

「このクソカスがァ――――ッ!!」

 

 その言葉を聞いた天の助は怒りに身を任せ、オットセイを魔剣大根ブレードで叩きのめす。

 

「よくも兄貴を!」

(オットセイが兄貴なの!?)

 

 それを見た不良の内一人が、懐からスパゲッティの麺の束を取り出し殴り掛かる。

 

「おっと、そうはいかねえぜ」

 

 だが不良の攻撃を首領パッチは、ドンパッチソードことネギでガキィンという金属音を響かせながら受け止める。そしてギギギという軋む音を鳴らしながらネギとスパゲッティで鍔迫り合いを始めた。

 

(金属音!? 鍔迫り合い!? ネギとスパゲッティで!?)

 

 香織の内心でのツッコミが止まらないが、世界は彼女に容赦などしない。

 

「くそ、あのオレンジ野郎!」

「そうはいかない。お前の相手は僕だ」

 

 首領パッチと鍔迫り合いを繰り広げる不良を助けようと、もう一人の不良が動こうとするがその前にハジメが立ちはだかる。

 

「おもしれえ。だったら不良殺法、ナイフ拳を喰らえ!」

 

 懐からナイフを取り出し、ギラリと光らせながらナイフを舐める不良。

 しかし

 

「遅いよ」

 

 不良が動くより前に地面から触手が生え、不良を拘束した。

 

「納豆真拳奥義、触手。この奥義は触手を生み出し、自在に操ることが出来る」

「何だと、てめえ真拳使いだったのか!?」

(いや、納豆と触手なんの関係も無いじゃん!?)

「そうだ。そしてこれがお前へのとどめ!」

 

 ハジメは手からパック入り納豆を出現させ、飛びかかって納豆を不良の顔面に叩きつけた。

 すると

 

「納豆真拳奥義、BBB(ビーン・バーン・ブロージョン)!!」

(英語間違ってるよ! 最後はBじゃくてPだよ!!)

 

 納豆が爆発し、不良が吹き飛ばされた。

 その不良はそのまま首領パッチともう一人の不良、そして未だにオットセイを痛めつけていた天の助に激突し、全員をなぎ倒した。

 その場に立っているのは、この戦いの見物客を除けばハジメ一人。すなわち

 

「僕の勝ちだ!」

 

 勝利宣言をしたハジメは、絡まれていた男の子とお婆さんを慰める。やがて男の子が泣き止み、お婆さんと去っていく。

 その姿を見ながら、ハジメは放置し、倒れていたリアカーを起こす。と同時に首領パッチと天の助も起き上がっていた。

 

「あ、起きたの二人とも? なら帰るよ」

「「その前に制裁じゃあ!!」」

「グバァ!?」

 

 起きた二人はハジメに跳び蹴りを喰らわせた。

 

「何一人で勝利宣言してんだテメ―!!」

「何度もオレらを巻き込むんじゃね――!!」

 

 そのままハジメをボコボコにする二人。

 それを見ていた香織は

 

(あれが、真拳使い……)

 

 と間違った認識を持った。

 実際にはハジメは真拳使いでもありハジケリストでもあるのだが、それを香織が知るのはもう少し先の話。

 物語の開始まで、あと二年ちょっと。

 

 


 

 

 春の陽気で暖かいとある高校の入学初日。入学式を終えて教室に集まり自己紹介を始めたあたり。

 少女、八重樫雫の心にあったのは高校に入学した事によるちょっとした高揚感と、ほんのちょっとの不安だった。

 その不安の原因は今自己紹介をしているこの男。

 

「南雲ハジメ。ハジケリストと真拳使いを兼任してるので、ハジケ勝負したい方は気軽に声をかけてください。あ、趣味はゲームとアニメ鑑賞なんで、そっちの事でもいいです」

 

 ハジメが語った内容にある。

 ハジケリスト。人生かけてハジケまくる馬鹿、焼き肉の種類、カップ焼きそばのかやくの一種など色々な説のあるよく分からない奴ら。雫も存在は知っていたが会うのは初めてである。

 正直興味がある。八重樫流と剣術道場の娘として、ハジメという意味不明な強者に彼女は強い興味があるのだ。

 断っておくが、別に戦いたいという訳では無い。八重樫雫は戦闘狂に非ず。あくまでどうしてそんな力があるのかに興味があるのだ。

 声を掛けたい。が、ハジケリストじゃない自分がハジケ勝負を挑めるわけもない。更に言うならゲームもアニメも見ない雫が話しかけるには、ちょっと話題に困った。

 雫がそうして悩んでいると、いつの間にか自己紹介も終わったのか、身長百四十センチ位の少女が件のハジメに話しかけていた。

 

「南雲君」

「何? 今季アニメのオススメは鬼○の刃だけど」

「いやそっちじゃなくて。鈴もハジケリストなんだ、勝負しようよ」

「いいよ」

 

 鈴に勝負を挑まれたハジメは不敵な笑みで了承する。

 その言葉と同時に教室の窓がいきなり開き、外から天使の様な白い翼を生やし、スーツを着たおっさんが五人、教室に入ってきた。

 

「……審査員かな?」

「そうだよ!」

「いやどう見ても不審者でしょ!?」

 

 雫は思わずツッコミを入れるが、ハジメ達は無視して話を進める。

 

「ルールはシンプルに、よりハジケた方が勝ちでいいかな?」

「僕はそれでいいよ」

「じゃあ鈴から!」

 

 鈴が開始を宣言すると、彼女は一番近くにあった机の中に手を入れてシャンデリアを引っ張り出す。

 

「シャンデリア~、シャンデリア~!」

 

 それを叫びながら振り回し始める鈴。

 

「シャングリラ~、シャングリラ~!!」

 

 そしてシャンデリアを担いで走り始める鈴。最後には

 

「シャングリラ・フロンティア!!!」

 

 教室の天井にシャンデリアを投げ飛ばし、新しい照明を設置した。

 

「どう!?」

 

 ハジケ終わると同時におっさんに結果を求める鈴。

 おっさん達はすぐに結果を出した。

 

「しめ鯖」「しめ鯖」「しめ鯖」「しめ鯖」「しめ鯖」

「やった!」

「いい結果なのこれ!?」

 

 おっさん達の出した結果に喜ぶ鈴。だが(じょうじん)には理解不能だった。

 しかし

 

「しめ鯖一致で満足するなんて。You still have lots more to work on……(まだまだだね)

「な、何だって!?」

「何で英語なの」

「次は僕の番だ!」

 

 今度はハジメが開始の宣言をし、即座にパック入り納豆を両手に呼びだす。

 するとその2つの納豆の中からそれぞれ、小さなナイフが踊りながら現れた。

 

「今夜はオールナイト!」

「聞いてくれ。俺達のカバーソング、わくわく動物ランドⅡを」

「オウ、イェーイ!!」

 

 そしてなぜかオール宣言。これにハジメもノリノリだ。

 

「「タカサルイヌキジゾウブタイノシシ」」

「ミジ!」「ンコ!!」

「Foooooo!!」

 

 ナイフ達の歌に合わせて踊るハジメ。しかしここで彼はある事に気付いた。それは

 

「納豆両手に持つと踊りにくい!!」

「でしょうね」

 

 踊りにくかった。ので持っていた納豆を両方ともおっさんに投げつけて、ハジメはハジケ終えることにした。

 そしておっさんたちは結果を出した。

 

「鰹節」「鰹節」「鰹節」「くたばれ、ブリキ野郎!」「鰹節」

「1人は最低評価だけど、後は全員満点……」

「あ、あのくたばれブリキ野郎って最低点なのね」

「つまりこの勝負、鈴の負けだよ……ガハッ」

 

 ハジケ勝負はハジメが勝った。

 敗北のショックで、鈴は吐血した。すごく、吐血したい気分だった。

 それを見た雫は慌てる。

 

「ちょっと、大丈夫なの!?」

「ハジケリストだし大丈夫でしょ」

「どういう理屈!?」

 

 ハジメの言葉をガン無視して、鈴の介抱を始める雫。

 一方、無視されたハジメは優しい子なんだな、とちょっと感心していた。

 

 

 この日、八重樫雫は谷口鈴と友達になった。

 物語開始まで、後一年ちょっと。



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第1章 おいでませトータス 奥義1 はじまっちゃった物語

地の文にキャラがツッコミを入れるという手法もボーボボなら許される気がする


 ハジメが入学から一年と少しが過ぎた。その間はハジメなりに楽しく過ごし、また一応テストで平均点を取れる程度には勉強もしている高校生活を過ごしているが、今日は憂鬱だった。

 その理由は今日は月曜日だから、でもあり親の手伝いという名のバイトで徹夜だったせいもある。

 しかし一番の理由は

 

「待ってましたよ南雲先輩! 今日こそあなたを倒してお姉様の心を私達に向けさせます!!」

 

 目の前に居る少女が原因だった。

 後輩ちゃん。本名不詳の後輩であり、八重樫雫の義妹、ソウルシスターズを名乗る集団の一員である。ハジメは知らないが、彼女達は憧れの雫が幼馴染以外の男と関わる事をよく思わっていなので、ハジメとの接触を止めさせたがっている。幼馴染がOKな理由は、雫が恋愛感情は一切ないと明言しているからだ。

 ちなみに、雫はハジメに対しても恋愛感情を一切持っていない。ハジケリストというあり方に対してほんの僅か、雀の涙以下の憧憬と、真拳使いとして人と戦う覚悟に対しての尊敬はある。

 だが恋愛感情は一切ない。なので、別にハジメを倒しても雫は何一つ変わりはしない。

 にも関わらず後輩ちゃんはこんな態度なのでハジメは

 

「冷凍・秋サンマ!!」

「ぎゃあ!!」

 

 冷凍サンマで後輩ちゃんを斬り捨てた。

 

「日本は、腐ってる! 腐ってる!!」

 

 そのまま息もつかせぬ連続攻撃で、哀れな後輩ちゃんは倒れ伏す。

 

「立て、大して効いちゃいない筈だ。今の秋サンマはただの脅しだ」

「いや効いてますけど!? ボロボロですけど私!?」

 

 口で抗議しつつも、平然と喋れるのでダメージは少ない後輩ちゃん。

 これ以上絡まれてもウザいので、ハジメは妥協案を出す事にした。

 

「この鳥を握るんだ」

「何ですかこれ」

「ハジケ鳥だよ」

 

 ハジケ鳥とは、握られると握った人間のハジケ度数に応じて色んな物に変化する鳥である。ハジケ度数が大きい程大きく複雑な物に変化する。ちなみにハジケ度数が何なのかハジメは知らない。

 という説明をした後、ハジメはハジケ鳥を握り、放す。するとハジケ鳥は軽トラに変化した。

 

「ま、こんな物かな。後輩ちゃんがハジケ鳥をさっきの僕と同じ位の物に変化させられたらまた相手してあげるよ」

「舐めないで下さい! それ位にすぐにやってやりますよ!!」

 

 そう言うと後輩ちゃんはハジケ鳥をひったくり、ハジメと同じように握って離した。

 すると

 

「本部、応答を願います」

 

 謎の男に変化した。

 

「ハジケ度数が低いとキャプテン石田になるよ」

「誰ですか!?」

「む、そこにいるのは南雲君じゃないか」

「しかも知り合い!?」

「丁度良かった。実は今度の火星人掃討作戦にこいつを連れて行って欲しいんですけど」

「私を!?」

「よかろう。他のメンバーに挨拶するといい」

 

 キャプテン石田の声と共に、誰かが後輩ちゃんの肩を叩いた。

 彼女が振り向くとそこには

 

「火星人掃討作戦リーダー、糸マンと!」

「副リーダーの紙マンだ!!」

 

 かろうじて人型の糸と紙が居た。

 

「ああ、強風が!」

「飛ばされる~!」

 

 そしてあっさり風で飛ばされていった。

 

「……では火星の最前線は彼女一人という事になるな」

「よろしくお願いします」

「ちょっと待って下さい!?」

 

 しかし、キャプテン石田は後輩ちゃんの懇願など聞かず担いでそのまま走り出した。戦え、キャプテン石田。火星を侵略して地球人の生活圏を広げる為に!

 

「覚えてろ南雲ハジメ―――っ! この恨み必ず晴らすからなぁ―――っ!!」

 

 背中で後輩ちゃんの恨み節を聞きながら、ハジメは時計を見る。すると、時計は遅刻寸前の時間を指していた。

 

「やばっ!!」

 

 そしてハジメも走り出した。走れ、南雲ハジメ。無遅刻無欠席の為に!

 

 


 

 

「さとうきび畑からこんにちは!」

 

 始業時間直前、遅刻を避ける為ハジメは教室のドアを突き破り突入。壊したドアを納豆真拳で修復しながら、教室の床をゴロゴロと転がり、教卓にスネをぶつけた。

 

「がああああああ! がああああああ!!」

「おはようハジメ。大丈夫?」

「スネがあああああ! 弁慶の泣き所がああああ!!」

 

 痛くて喚いているハジメのスネを、雫が見る。すると

 

『何だよあの牛若丸……。身のこなし軽やかすぎだろありえねえよ……』

 

 弁慶が飲んだくれていた。

 

「本当に弁慶いる――――!? というか泣いてないし!!」

「おはよう南雲君。今日もいつも通りだね」

「また南雲は遅刻寸前か」

「いや、あれはどう考えてもあの後輩が悪いだろ……」

 

 ツッコミを入れる雫に、香織、天之河光輝、坂上竜太郎が話しかけてきた。

 天之河光輝。容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能の完璧超人で、小学生のころから雫の実家である八重樫流道場で剣道を習う門下生で、剣道としてみるなら実力もかなりの物だ。だからモテる。具体的には、常に幼馴染として雫や香織が居る状態でも、最低月に二回は告白される。クソが。

 

「クソが!?」

 

 そんな彼の欠点は正義感が強い、という名の思い込みが激しい点だ。具体的には自分が正しいと思った事は全て正しいと思ってしまう点だ。その所為で、ハジケリストとして好き勝手なふるまいを見せているハジメをよく思っていない。ちなみに、このクラスにはもう一人谷口鈴というハジケリストがいるが、彼女はあれで結構うまく立ち回っているので光輝達とも友人関係を築いている。

 次に、坂上竜太郎。単純な脳筋。終わり。

 

「俺の紹介短えな!?」

 

 竜太郎が虚空にツッコミを入れていると、教室の時計が始業の開始を告げた。

 

『黒下着は始業の合図~』

 

 その時計は黒いブラとパンツを付けた男が歌う時計だった。

 それを見た香織は思う。

 

(あの時計、どこで売ってるのかな……? 欲しくは無いけど)

「あ、やばい寝落ちする」

 

 そしてハジメは夢の世界へと旅立った。

 

 


 

 

「弁当忘れた……」

 

 時は流れて昼休み。ハジメは弁当を忘れたので、念のため持っていた某十秒チャージ二時間キープする奴を飲んだが足りなかった。だから家に電話して、弁当を持ってきてもらい待ち時間は寝て誤魔化そうとしていた。

 購買行けよ、というツッコミも聞こえそうだがハジメの知る限りこの学校の購買は

 

『界王拳、四倍だぁ―――っ!!』

『オラオラオラァ!!』

『あたたたたたたたたた、おわったぁ!!』

 

 というイメージ映像が流れそうなほど修羅の国である。真拳使いのハジメでも空腹状態では行きたくない魔境であった。

 

「ハジメ! 弁当持ってきたわよ――――!!」

 

 しばらくすると教室の外から声がした。弁当がやっと来た、と思いハジメが顔を上げると

 

「「ロングホーントレイン!!」」

 

 電車ごっこをしながら首領パッチと天の助が教室のドアを壊して突入してきた。

 ハジメは納豆真拳で慌ててドアを修復する。

 

「で、弁当は?」

「おう。これだ」

 

 と言いながら天の助はそのままハジメの机の上に乗る。

 

「さあ、俺を食え」

「いや、いらない」

「そう遠慮するなって」

「いやそういうのマジでいいから」

 

 天の助の俺を食え発言を、ハジメは本気で拒絶した。

 その事実がショックで首領パッチに泣きつく天の助。

 

「うわああああん! ハジメが酷いよ―――-っ!!」

「天の助……」

 

 首領パッチは肩をやさしく叩き

 

「荷物纏めて国に帰れ」

 

 三行半を告げた。

 

「やだぷ―! 絶対帰んないもんね―!! ブレイクダンス踊ってやる、シャオ!!」

「うるさい!!」

 

 ドゴォ、という音と共にハジメが天の助を黒板のシミにした所で雫が話しかけてきた。

 

「ちょっとハジメ、この二人は何」

「何って……僕の家の居候だけど」

「い、居候?」

 

 雫の質問に答え切れていないハジメの回答に戸惑う雫。すると今度は鈴が話しかけてきた。

 

「ねえハジメ君。その人ってひょっとして伝説のハジケリスト首領パッチさん!?」

「そうだぜ?」

「ドヤ顔がうざいよ首領パッチ」

「え、本当に!? サイン頂戴!!」

 一介のハジケリストとして憧れの首領パッチに興奮する鈴は、咄嗟に麻婆春雨を取り出しサインをせがむ。首領パッチはそれに『ドドドード・ドー○リオ』と練りわさびで書いて返す。

 

「ありがとう。そしていただきます!」

 

 そのサイン入り麻婆春雨を鈴は躊躇なく食べた。

 

「というか僕の弁当は?」

「ちゃんとあるから心配すんなって」

 

 そう言って首領パッチはゴトリ、という音と共に持ってきた物をハジメの机に置いた。

 それは木管楽器の一種、フルートだった。

 

「全然求めてないフルート!!」

 

 ハジメはフルートを思わず弾き飛ばした。飛ばされたフルートは、ジャイロ回転を刻みながら、ハジメのクラスメイトの檜山大介に激突した。

 

「ぎゃあ!!」

「お、おい大丈夫か!?」

 

 檜山大介。クラスの不良グループのリーダーでありながら、クラス内で彼の評価は『白崎香織に恋をしているのに気付いてもらえない可哀想な人』で概ね一貫しているという変わった男だ。

 そんな檜山はフルートが激突したショックで倒れ、友人に心配されながら片思いしている香織を探した。流石にこんな状況ならちょっと位心配してらえるかも、という甘い期待だった。

 だがしかし、当の香織は

 

「どうやって動いてるの、あなたって?」

「いや俺に聞かれても……」

 

 動いて喋る未知のところてんに興味津々だった。

 

「ガハッ!!」

 

 思わずショックで血を吐くが、そもそもこの世界は血を吐いた程度で心配される程軟な時空では無い。

 ので現在進行形で心配している友人以外はスルーした。

 

「というかいい加減僕の弁当出して」

「悪い悪い。さっきはミスった。本当はこっちだ」

 

 そう言うと首領パッチはドン、という音と共に弁当を机に置いた。

 

「ハイ、シーラカンス」

「わあああああああああああああ!!!」

 

 それは、深海魚の一種シーラカンスの煮つけだった。まさかの深海魚に思わず叫ぶハジメ。しかし次の瞬間には

 

「いただきます!!」

 

 とかぶりついた。

 

「オレも」

「オレもだ」

 

 そして続けてかぶりつく首領パッチと天の助。

 

「いや何であなた達も食べるのシーラカンス!?」

「「だって昼飯まだ食ってねーし」」

 

 そして数分後、三人はシーラカンスを食べ終える。そして首領パッチと天の助は家に帰ろうとした所で

 

 凍りついた、物理で。

 

「何で!?」

「いや八重樫さん、それよりあれ!」

 

 突如凍った二人に驚く雫にむかって、必死になってある方向を指差しながら話しかけるハジメ。雫がハジメの指が示す先を見るとそこには、光輝がいて彼の足元には幾何学的な模様の魔法陣が現れ、やがてそれは教室全体に広がる。

 

「皆、早く教室から出て!!」

 

 それまで突然のことについてこれず固まっていた教室にいる皆だったが、誰かが発したその言葉と同時に魔法陣が爆発したかのようにカッ、と光を放った。

 

 

 これが物語の始まり。

 ありふれたハジケリストが、何かを手に入れる物語の始まりだ。




感想でボーボボがいないからハジケ足りないのでは、という意見をもらいました。
それに関する返答ですが、このSSではボーボボは出ませんが首領パッチと天の助が共に登場するので大丈夫かな、と考えていました。
ありふれ勢もハジメ以外も何人かハジケリスト化しているので、ハジケ不足にはならないと思います。

足りないじゃん、と思ったらそれは作者がハジケ切れていないからという事にしておいてください。


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奥義2 来ちゃった♪異世界

しかし説明会が続くからハジケにくいったらありゃしない


 さっきまでハジメ達を包んでいた光が収まると、辺りは一変していた。

 最初に飛び込んできたのは縦横十メートル程の巨大な壁画だった。それから目をそらして辺りを見回すと、どうやら自分達は巨大な広間にいるようだった。

 ハジメ達は巨大な広間の最奥にある台座のような場所にいるようだ。その台座の周りには、三十人近くの人々が祈りを捧げるように跪いている。

 そのうちの一人、豪華な衣装を着た老人が進み出てきた。

 

「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎いたしますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、よろしくお願い致しますぞ」

 

 と語りかけてきた。

 イシュタルは詳しい話をする、といい別の場所へ案内し始めた。ハジメの周りにいる連れてこられた側の人間は、状況について行けないのか大人しく従うのみ。

 そしてハジメは

 

「いつまで凍ってるのさ」

 

 バシャ、と実は今まで凍り続けていた首領パッチと天の助に熱湯をぶちまけた。

 

「「おあちゃ――――!!」」

 

 


 

 

 現在、場所を移り、十メートル以上ありそうなテーブルがいくつも置いてある大広間に通された。上座に近い方に光輝達が座り、ハジメ達は一番後ろに座っている。

 全員が到着すると、絶妙なタイミングでカートを押しながらメイド達が入ってきた。それも男子の夢を具現化したような美女・美少女メイドが。

 多くの男子がメイド達を凝視し、ハジメもまたその内の一人として、飲み物を給仕してくれたメイドを凝視していたのだがそこで横から首領パッチが袖を引っ張る。

 何事かと思って横を見ると

 

「何よデレデレしちゃって! あんなメイドよりアタシの方が美人でしょ!?」

 

 とメイドコスをしながら首領パッチが迫ってきた。

 

「ないよ」

 

 とハジメがあしらうと、首領パッチは「あなたがハジメをたぶらかしたのね! そうに決まってるわ!!」と言いながらハジメ達に給仕したメイドに突っかかっていた。

 一方、天の助は給仕された飲み物を大人しく味わっていた。

 

「うーん、カモミールの香り……」

 

 ただし体はドロドロと溶けていた。

 

「ひっ……!」

 

 その光景に顔を引きつらせるメイド。それを見たハジメは

 

「はいドーン! ドーン!!」

 

 バールの様な物で首領パッチと天の助を殴り飛ばして黙らせる。そしてメイドを安心させるためこう声をかけた。

 

「安心してください、もう大丈夫です」

「あ、ありがとうございます……」

 

 メイドは明らかに怯えながらそそくさとハジメ達から離れていった。その事実にハジメは軽くへこんだ。

 やがて全員に飲み物が行き渡ったのを確認すると、イシュタルが話し始めた。

 

「さて、あなた方――」

「話長えよ!!」

「いや十文字も話してないけど!?」

 

 イシュタルが話し始めてすぐに、首領パッチがキレてバースデーケーキをイシュタルの顔面に投げつけた。

 突然の凶行に驚きつつも、怒りを見せたのは光輝。まだ何も事情を聞けていないのに話をいきなり中断されたこと、そもそも理由もなく人の顔にケーキをぶつけるなどあってはならないと、光輝は怒り心頭だった。

 

「なんてもっともらしい理由なんだ……」

 

 ハジメが光輝の怒りに心から納得している中、光輝はズカズカとハジメ達の元へ向かい、辿り着くと同時に首領パッチに掴みかかった。

 

「一体何を考えているんだ君は!?」

「この星の痛みを。そして、世界の真実を」

「無駄に遠大だな!?」

 

 光輝が首領パッチの台詞に驚く一方、ハジメは天の助を連れてイシュタルの元へ。

 

「どうすんだハジメ?」

「とりあえず天の助はこの人の顔に付いてるケーキ食べて」

「俺が食うのかこれ!?」

 

 驚愕する天の助の口にケーキを押し込みながら、ハジメは告げる。

 

「今から僕が納豆真拳奥義、豆テレパシーでこの人が伝えたかったことを読み取って要約して皆に話すよ」

「へえ、そんなこと出来るのね……」

 

 雫が感心しているのを尻目に、ハジメはケーキが除かれたイシュタルの眉間に指を置いて奥義を発動した。

 

「納豆真拳奥義、豆テレパシー!!」

 

 奥義の発動と同時に、ハジメの中にイメージ映像が流れ込んでくる。

 

『の・ぼ・り・べ・つ、と言えば?』

『ク・マ・牧場。クマ牧場!』

 

「よし読み取った!」

「今明らかに関係ないイメージ映像流れなかった!?」

 

 雫のツッコミを聞き流して、ハジメは読み取ったことを要約して伝えた。これがその内容である。

 

 

 この世界はトータスという地球とは違う世界だよ。

 トータスには人間族、魔人族、亜人族の三種族がいて、そのうち人間族と魔人族は何百年も戦争をしているよ。

 最近魔人族が魔物の使役に成功して戦力増大したから、人間族がピンチだよ。

 戦えい! 貴様らは神、エヒト様によって呼ばれたのだから、神の御意志の下魔人族と戦えい!!

 

 

「大体こんな感じかな」

「最後明らかにキャラ変わったわね!?」

 

 キャラはともかく、イシュタルが言いたい内容を理解したハジメは少しまずいと感じていた。

 このイシュタルという男、さっきの内容に何の疑いも抱いていない。お世辞にも戦い慣れていると言える人間はハジメ達ハジケリスト位で、後は普通の高校生でしかない。それが分かっているはずなのにイシュタルは、神の言葉だからと彼らが自分達の為に戦ってくれると信じきっている。

 神の意思だから、と嬉々として従う彼にハジメが不信感を抱いていると、立ち上がり猛然と抗議を始める人がいた。

 

「ふざけないで下さい!」

 

 畑山愛子。ハジメ達の高校の社会科教師である。年齢は二十五歳だが、童顔の上に低身長のため中学生にしか見えない、いわゆる合法ロリである。

 そんな愛子が、さっきまでケーキをぶつけられて呆然としていたが、やっと自己を取り戻したイシュタルに向かって食ってかかる。

 

「結局、この子達に戦争させようってことでしょ! やっと手に入った平和なんですよ! やっと強大な悪に怯えなくて済むようになったんですよ! それなのに戦争なんてそんなの許しません! ええ、先生は絶対に許しませんよ! 私達を早く帰して下さい! きっと、ご家族も心配しているはずです! あなた達のしていることはただの誘拐ですよ!」

 

 ぷりぷりと怒る愛子。言っていることはかなり悲壮なのだが、本人の容姿のせいで周りの生徒達はほんわかした気持ちで愛子を眺めている。

 

「なぜ私が話していないにも拘らず話が進んでいるのかは分かりませんが、これだけは確かです。現状、あなた方の帰還は不可能です」

「そ、そんな……」

「あなた方を召喚したのはエヒト様です。我々人間に異世界に干渉するような魔法は使えませんのでな、あなた方が帰還できるかどうかもエヒト様のご意思次第ということですな」

「そ、そんな……」

 

 イシュタルの言葉に脱力しへたり込む天の助。

 

「いやあなたなの!? 愛子先生じゃないの!?」

 

 急に入ってくる天の助に驚く雫。

 それを尻目に、帰れないという事実はクラスメイト内に動揺が広がっていく。

 しかし、その動揺を押し止める男がいた。光輝だ。

 光輝はテーブルを強く叩き、全員の注目を集めてからおもむろに話し始めた。

 

「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようも無いんだ。……俺は、俺は戦おうと思う。昔の地球みたいに、この世界の人達が危険に晒されているのなら、放っておくなんて俺にはできない。それに、人間を救うために召喚されたのなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。……イシュタルさん? どうですか?」

「そうですな。エヒト様も救世書の願いを無下にはしますまい」

「俺達には大きな力があるんですよね? ここに来てから妙に力がみなぎっている感じがします」

「ええ、そうです。ざっと、この世界の者と比べると数倍から数十倍の力を持っていると考えていいでしょうな」

「うん、なら大丈夫。俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も掬って見せる!!」

 

 力強く宣言する光輝。なぜか一瞬だけハジメを睨んだが、その後すぐに皆を見回した。同時に、彼のカリスマはいかんなく発揮され、大半のクラスメイトが希望を見つけたという表情をしている。

 

「へっ、お前ならそう言うと思ったぜ。お前ひとりじゃ心配だからな。……俺もやるぜ」

「龍太郎……」

「今の所、それしかないわよね。……気に食わないけど……私もやるわ」

「雫……」

「え、えっと、雫ちゃんがやるなら私も頑張るよ!」

「香織……」

 

 光輝の幼馴染三人が賛同する。後は流れでクラスメイト達がそれに追従していき、愛子はそれを必死に止めようとするが聞く耳を持ってもらえない。

 その裏でハジメと天の助はひそひそと会話をする。

 

「なあハジメ。この状況、結構ヤバくないか?」

「間違いなくヤバイと思うよ」

「ああ。いざとなったらエヒト神とやらを倒して、この世界の主食をところてんにしなくちゃいけねえな」

「王になる。地位も名誉も、全部手に入るんだ。こいつは、これ以上ないアガリじゃねえのか?」

 

 密かにエヒト神と戦う可能性を想定する二人。

 一方、首領パッチは光輝達、ハジメ達どちらの話にも参加する事無くただひたすら

 

(そういやオレ、今週の金欠少女カネクレン録ったっけ?)

 

 どうでもいいことを考えていた。

 それに気付いた光輝が思わず突っかかりそうになるが、その前にハジメが気づいて首領パッチの元へ走る。

 

「やる気出しなよ首領パッチ。これあげるからさ」

 

 そう言ってハジメが出したのは、食パンの袋を止めるアレ*1だった。首領パッチは迷うことなく飛びつき叫ぶ。

 

「ああ。やってやろうぜ! カツオ神復活をな!!」

「何にも聞いてないじゃないか!!」

「うわらばっ!!」

 

 とりあえず、ハジメは首領パッチを殴り飛ばした。

 

 


 

 

 その後、実は今まで神山の頂上に居たハジメ達は神山の麓にあるハイドリヒ王国に向かった。

 王宮に着くと、ハジメ達は王族の紹介を受け、晩餐会が開かれた。

 そして晩餐会が終わり、各自に一室ずつ与えられた部屋に案内され、ハジメは天蓋付きのベッドに愕然としながらも、疲れたのでベッドにダイブしてそのまま意識を落とした。

*1正式名称:バック・クロージャー



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奥義3 ステータスプレート

今回、最初だけ光輝視点です


 翌日、早速訓練と座学が始まった。

 まず、集まった生徒達に小さな長方形の銀色のプレートが配られた。不思議そうに配られたプレートを見る生徒達に、騎士団長メルド・ロギンスが直々に説明を始めた。

 騎士団長が指導とは豪華だと思いつつも、これは俺達がそれだけ期待されているんだなと光輝は考えていた。

 メルド団長本人は、「むしろ面倒な雑事を副長に押し付ける理由が出来て助かった」と豪快に笑っていたが。

 

「よし、全員に配り終わったな? このプレートは、ステータスプレートと呼ばれている。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示してくれる物だ。最も信頼のある身分証明書でもある。これがあれば迷子になっても平気だからな、失くすなよ?」

 

 その後、メルドはステータスプレートとアーティファクトの説明を簡単に済ませ、いよいよクラスメイト達はステータスプレートの魔法陣に血を擦り付けた。光輝も同じように血を擦りつけ表を見る。

 

 

===============================

天之河光輝 17歳 男 レベル:1

天職:勇者

筋力:100

体力:100

耐性:100

敏捷:100

魔力:100

魔耐:100

技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・強力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解

===============================

 

 

 表示されたステータスを見て、ゲームみたいだなと思う光輝。他のクラスメイト達もマジマジと自分のステータスを見ている。

 その後、ステータスとレベル、そして天職について説明をメルドから受けた一同。そしてそれぞれのステータスを報告する段になり、光輝はメルドに見せた。

 

「ほお~、流石勇者様だな。レベル1で既に三桁か……技能も普通は二つ三つなんだがな……規格外な奴め! 頼もしい限りだ!」

「いや~、あはは……」

 

 団長の称賛に照れたように頭を掻く光輝。ちなみにメルドのレベルは62、ステータス平均は300前後。これがこの世界のトップレベルの強さである。レベル1で三分の一にまで迫っている光輝がいかに規格外か分かるものだ。

 光輝に続き、他のクラスメイト達もステータスをメルドに見せる。ほぼ全員が戦闘系天職で、十分強いのだが光輝には及ばない。それを見て光輝は、自分が先頭に立って皆を率いなければ、と決意を新たにした。

 途中、鈴のステータスの一部に小数点が混ざっているという事態が起こり、メルドが訝し気に何度も確認していたが、光輝達はハジケリストだし、と特に気にしなかった。

 そして最後に南雲ハジメ、首領パッチ、ところ天の助の三人が残った。

 光輝は思う。後の二人は全く知らないので何とも言えないが、少なくとも南雲は真拳使いだから実力は確かだろう。でもこの世界に来て俺も力が膨れ上がっている。これなら俺も負けない筈だし、南雲はお世辞にもリーダーに向いているとは思えないからできれば出しゃばらないでほしい。

と思っている間にハジメはメルド団長にステータスを見せる。そのステータスは

 

 

===============================

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:まだまだ

天職:納豆戦士

筋力:すごい

体力:やばい

耐性:ぱない

敏捷:はやい

魔力:あるよ

魔耐:そこそこ

技能:納豆真拳・ハジケリスト・言語理解

===============================

 

 

 おかしかった。

 

「「「文字――――――――――!?」」」

 

 年齢以外の数字があるべき部分に文字、しかも小学生の感想みたいな言葉が書いてあることにツッコミが抑えられない一同。

 

「というか天職の納豆戦士とはなんだ!?」

 

 あまりの異常に答えが来るとは思わない問いを投げるメルド。

 

「納豆戦士とは、納豆真拳を一定以上極めた者に送られる称号の事で――」

「いきなりどうしたんだ雫!? おかしいぞ!?」

 

 まさかの雫がいきなり納豆戦士について解説をはじめてしまい、思わずパニックになる光輝。

 

(あいつ、ヘッポコ丸キャラだったのか……)

 

 解説する雫を見た首領パッチが密かにそんなことを思っていたのには、誰も気付かなかった。

 そして数分後、何とか全員が落ち着き次は天の助のステータスを見ることになった。

 

「というか僕程度でこんなにはしゃいでて大丈夫かな……。残り二人に耐えられるの?」

「不安だね」

 

 という会話がハジメと鈴の間でひっそり行われていたのは内緒の話。

 そうこうしている間に、天の助のステータスが表示される。

 

 

===============================

ところ天の助 賞味期限切れ 男 レベル:ぬ

天職:錬成師

筋力:ぬ

体力:ぬ

耐性:ぬ

敏捷:ぬ

魔力:ぬ

魔耐:ぬ

技能:錬成・プルプル真拳・ハジケリスト・ぬ・寒天・言語理解

===============================

 

 

「「「ぬって何だ―――――――!?」」」

 

 数字の部分がまさかの平仮名一文字、その事実に誰もが耐えられない。

 

「というか俺寒天なの!?」

 

 そして当人も、自分の技能に寒天がある事に驚いていた。

 

「ところでメルド団長、錬成師ってどういう職業なんですか?」

 

 それらを差し置いてハジメは気になったことを尋ねる。メルドは躊躇いつつ返答した。

 

「ああ、その、何だ、錬成師というのは、まぁ、言ってみれば鍛冶職のことだ。鍛冶する時に便利だとか……」

「つまり雑魚ってことですね」

「焼きそばパン買ってこいよ天の助!」

 

 メルドの答えを聞いて躊躇なく雑魚認定するハジメと、便乗する首領パッチ。しかし天の助も、舐められたまま終われなかった。

 

「錬成師舐めんじゃね――! 錬成流奥義、ランスランスレボリューション!!」

 

 天の助の奥義発動と共に、どこからともなく大量の槍が空に現れ、ハジメ達に容赦なく降り注いだ。

 

「「ぎゃああああ――――――! 錬成師強ええ―――――!!」」

「いや知らんぞこんな技!?」

 

 メルドが錬成師の未知なる力に驚く。というかツッコミを入れる。

 一方、クラスメイト達はいい加減疲れてきたので、話をさっさと進めたかったので、首領パッチにステータスを見せるように頼んだ。

 

「つまりトリって奴だな。コケコッコー!」

「鶏!?」

 

 そして首領パッチもノリノリでステータスを見せた。

 

 

===============================

首領パッチ 現在、過去、未来は総てヨグ=ソトースの内に一なり 男 レベル:チョゲプリェ……

天職:決闘者(デュエリスト)

筋力:フライ

体力:スカイ

耐性:プルコギ

敏捷:カウントダウン

魔力:ギリギリchop

魔耐:恋はスリル、ショック、サスペンス

技能:シャイニングドロー・積み込み・状態異常耐性・ハジケリスト[+キング]・言語理解?

===============================

 

 

「「「もはや意味分からん!!」」」

「というか何で途中からコ○ンのオープニングになってんだよ!?」

 

 あまりの意味不明さに、クラスメイト達は総出でツッコミを入れている。

 だがメルドは、今まで出会った事の無い異常に着いてこれずフリーズしてしまった。皆はハジメ達を放っておいて必死で、メルドの復旧に必死になるのだった。

 

「というか僕の技能ほぼ全部自前じゃんか!!」

「グバァ!!」

 

 そしてハジメは檜山に八つ当たりをしていた。

 

 


 

 

 ステータスプレートを渡されてから二週間が経った。

 クラスメイト達はメルド率いる騎士達や、宮廷魔術師達に訓練を受けていたが、ハジメ達をどう訓練すればいいのか分からず匙を投げられていた。

 ハジメ達は人の訓練を手伝ったり、好き勝手ハジケたり、時には王立図書館で魔物やこの世界の情報を調べたり、首領パッチの天職に合わせて遊戯王カードで遊んだりしていた。

 

「これで終わりだ! ブラックパラディンの攻撃、超・魔・導・烈・波・斬!!」

「ぐわあああああああああああ!!」

「とこ馬……。憎しみの果てに真の勝利は無い……」

「図書館では静かに!」

「「ぎゃあ!!」」

 

 図書館ではしゃぎながらデュエルしていた為、司書にハードカバーの本で首領パッチ達は殴られた。

 

「いや、司書なんだから本は大事にしないといけないんじゃ……」

「あなたは始末する。今ここ絶対に! ネバーエンドブックライフ!!」

「ぐわあああああああああああ!!」

 

 ハジメに図星を付かれた司書は、大量の本を投げつけてハジメに攻撃をしてしまった。

 

「何これ理不尽……」

「「よくあるよくある」」

 

 


 

 

 雫達が訓練施設に集まると、そこは戦場だった。

 幾人もの魔術師達が倒れ伏し、幾人もの騎士達が戦いを挑む。

 騎士達が向ける矛の先にある物は首領パッチが変身した姿、無敵要塞ザイガス。その頂上ではハジメが高笑いをしていた。

 

「フフフフフ、アーハッハッハッハッハ! 今日こそ我等納豆が主食になる日だ。お前達は跪けっ!」

「そんなことはさせねえ! オレ達心太がこの世界の主食となる。いくぞお前ら!!」

「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」」」

 

 ハジメに相対するはところ天の助率いる騎士達。そうこれは、この世界の主食を決める聖戦(ジハード)である。

 

「いや訓練施設で何してるのよこの人達!?」

 

 雫のツッコミが響き渡るが、誰も聞き届けない。

 そしてこれは戦い。敗者も当然いる。魔術師達が倒れ伏す中に紛れて、鈴も倒れていた。

 

「こ、ここまでかな……。鈴はただ、この世界の主食をサーモンサンドにしたかっただけなのに……」

「鈴! しっかりして、鈴!!」

 

 倒れている鈴に呼びかける少女が居る。彼女は中村恵里、鈴の友人であり雫達の友人でもある。メガネを掛け、ナチュラルボブにした黒髪の美人で図書委員だ。性格は基本的に大人しいが、時には鈴と馬鹿やったりもする。が、ハジケリストではない、筈。

 

「え、エリリン……。エリリンと過ごした一年。悪く、無かったよ……」

「鈴――――――――――!!」

 

 鈴はその言葉と共に、ガクッという音を出しながら動かなくなった。

 

「鈴……。私、サーモンサンド別に好きじゃないよ……」

「そうなの!?」

 

 そしてすぐに復活した。

 

「良かったー。実は鈴も別に好きじゃないんだよね」

「じゃあ何で主食にしようとしたのよ!?」

 

 鈴の衝撃の言葉に思わず叫ぶ雫。その言葉と同時にメルドがやって来て叫ぶ。

 

「お前達、今日の訓練はここまでだ!!」

 

 訓練の終了と同時に、今まで倒れていた人達は起き上がり、無敵要塞ザイガスは元の首領パッチに戻る。

 そう、これは訓練だったのだ。

 

「ジハードとか言ってたじゃないの……」

「あらやだジハードとか言ってるわあの子」

「こんな戦いで主食が決まる訳ないじゃないの~」

「可愛い勘違いねえ」

(ムカつく)

 

 なぜかオネエ口調になったバカ三人の言葉に、そこはかとなく苛立ちを覚える雫。それと同時にメルドはハジメの元へ行った。

 

「しかしこの要塞戦の訓練を提案してくれたハジメには感謝しかないな。おかげで騎士達も気持ちが引き締まったぞ」

「いえいえ、出来ることをやったまでです」

「これハジメの提案だったの!?」

「しかしこの世界の主食をかけての戦いという設定に意味はあるのか……?」

「やっぱり意味は分からないのね! 良かったけど!!」

 

 ブツブツと考えながら立ち去ろうとするメルドだったが、唐突に止まり伝えるべきことを野太い声で告げた。

 

「おっと忘れていた。明日から、実戦訓練の一環として【オルクス大迷宮】へ遠征に行く。必要な物はこちらで用意してあるが、今までの王都外での魔物との実戦訓練とは一線を画すと思ってくれ! まぁ、要するに気合い入れろってことだ! 今日はゆっくり休めよ! では、解散!」

 

 そう言って今度こそ去っていくメルドを見送りながら、雫はあることに気付いた。

 

「あれ、今日結局私達訓練してない……?」



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奥義4 月下の語らい。今明かされる過去!

 【オルクス大迷宮】

 

 それは、全百階層からなると言われている大迷宮である。七大迷宮というこの世界有数の危険地帯の一つで、階層が深くなるにつれ強力な魔物が出現する。にも関わらず、この迷宮は冒険者や新兵などの訓練に非常に人気がある。それは、階層により魔物の強さが図りやすいからということと、出現の魔物に比べ遥かに良質の魔石を体内に抱えているからだ。

 魔石とは、魔物を魔物足らしめる力の核をいう。強力な魔物ほど良質で大きな核を備えている。魔石は軍関係だけでなく、日常生活にも必要な大変需要の高い品であり、高く売れる。

 

「何か魔石に関してだけ説明短くない?」

「だって僕ら多分換金アイテムとしか使わないだろうし……」

 

 という会話もあったがハジメ達はメルド率いる騎士団員複数名と共に、オルクス大迷宮へ挑戦する冒険者の達の為の街ホルアドへ到着した。新兵訓練によく使われる王国直営の宿屋があり、そこに泊まる。

 

「で、僕らは三人部屋か」

「まあまあ、いいじゃねえかハジメ」

「正直知らない奴と同じ部屋で寝るって落ち着かねえしな」

「ウキッ」

 

 そして夜、日本でいう丑三つ時よりは少し早い時間帯。ハジメ、首領パッチ、天の助、猿はハジメ達にあてがわれた部屋でトランプのババ抜きをやっていた。

 

「あ、僕一抜けだ」

「ハジメてめえ、さてはイカサマしやがったな!?」

(イ、イカ様? どんなお方かしら!?)

「ウキィ?」

 

 ハジメが一番に抜けたので、天の助に難癖を付けられていると突然部屋の扉がノックされた。

 

「ハジメ、起きてる?」

 

 ノックをしたのは雫だった。ハジメは慌ててドアを開ける。

 

「どうしたのこんな時間に? 何か連絡事項でも?」

「いいえ。そうじゃなくて、少しあなたと話したかったの。部屋に入ってもいい?」

「うん、いいよ」

「おい、バカやめろ!」

 

 ハジメが雫を部屋に招き入れようとすると、なぜか首領パッチが止めた。何か部屋に入れられない理由があったっけ? と思いながら振り向く。

 するとそこには、神々しい光を放ちながら徐々に消えていく猿の姿があった。

 

「何事!?」

「くっ。あの猿には、ハジケリスト以外の人間に見られると成仏する習性があるんだ!」

「しまった忘れてた!」

「何その習性!? 幽霊なの!?」

「ウキ、ウキィ……」

 

 ハジメ達が慌てている間にも、猿はどんどん薄くなりながら何かを呟いている。

 

「――――ウッキィ

 

 そして最期には、その言葉だけを残して完全に消え去った。

 

「「猿――――――――!!」」

 

 猿の消失に泣き叫ぶ首領パッチと天の助。その光景を見ているハジメは、何も言わずただ佇んでいた。雫も思わずちょっとだけしんみりする。

 

「「何言ってるかさっぱり分かんねえ!!」」

「ええ――――――――-っ!?」

「良かった僕だけじゃなかったんだ!」

「誰も分かってないじゃないの!!」

 

 今明かされる衝撃の事実に唖然とする雫。一方、ハジメ達は猿が消えた悲しみを乗り越えて、トランプで次は何をするか話し始めた。

 

「次何する? またババ抜き?」

「ぶっちゃけ飽きたなそれ」

「次はポーカーやろうぜ。勝ったら天の助ボコれるルールで」

「!?」

「それ天の助が勝ったらどうなるの?」

「自分で自分をボコればいいだろ」

「!!?」

 

 どう聞いても天の助に不利なルールが積み上がっていく中、それを見ながら雫は口の中で呟く。

 

「三人とも余裕ね……」

「まあ、僕はともかくこの二人は歴戦だからね」

「え?」

 

 まさか聞かれているとは思わなかった雫が思わず返事をしてしまう。一方ハジメは、特に気にすることなく話を進める。

 

「この二人はあのボボボーボ・ボーボボと一緒に旅をして、毛狩り隊と戦っていたからね」

「え!? ボーボボって仲間が居たの!?」

 

 ハジメの言葉に驚く雫。

 実の所、マルハーゲ帝国を倒したボボボーボ・ボーボボという男に知名度はあるが、彼に仲間がいたことは一般にはあまり知られていない。

 実際に敵対した毛狩り隊や、マルハーゲ帝国の幹部勢ならば知っているかもしれないが、少なくとも一般人なら知らないと思っていいレベルである。

 その事に天の助と首領パッチは不満だった。

 

「クソッ。オレにも知名度があれば今頃――――」

 

『キャー、天の助様よ――!』

『いつも心太食べてます!』

『ぬグッズも勿論買い占めてますわ!』

『ねは消え失せろおおおおお!!』

 

「みたいな女性ファンがいた筈!」

「ビックリする位俗ね」

 

 天の助の願望に呆れる雫。一方、首領パッチも自分の願望をさらけ出した。

 

「そうだ、オレにも知名度があればきっと――――」

 

『ウホ! ウホウホ!!』

『モゥ~!』

『ホーホケキョ!』

『サラダバー!!』

 

「みたいな動物ランドを建設することが……」

「最後のは何!? 動物なの!?」

 

 雫は最後の叫びにツッコミを入れつつ、ハジメに気になったことを聞いてみた。

 

「ところでハジメ。何でボーボボと旅をしていたっていう二人と一緒に暮らしてるの?」

「……そう言えば僕も知らないな」

「何で知らないのよ!?」

 

 知っていなきゃおかしい筈のことを知らないハジメに思わず叫ぶ雫。

 一方、首領パッチ達はその言葉を聞いて、白くて長い髭を蓄えながら神妙に話し始めた。

 

(その髭何なの?)

「いよいよ話す時が来たか……」

「ハジメの血塗られた過去をな……」

「え、そんな危険な感じなの?」

 

 ハジメの疑問を差し置いて、回想のはじまりはじまり。

 

 


 

 

 それはボーボボと共に戦い続け、ピーマン帝国が滅亡してしばらくしてからのことだった。

 

「毛の王国生き残り襲撃事件?」

「ああ」

 

 ボーボボが突然首領パッチと天の助にそんな話を持ってきた。

 要約するとこうだ。

 各地に散らばる毛の王国の生き残りが、最近何者かに襲撃を受けている。

 ということでお前ら護衛して来い。

 

「こんな感じだ分かったか――――っ!!」

「分かりましたああああ!!」

「いや、護衛はいいけどよ」

 

 ボーボボに電気アンマされている首領パッチを無視して、天の助は少し質問する。

 

「護衛って、俺らだけで足りるのか? 毛の王国の生き残りってそんなに少なかったっけ?」

「いや、生き残りの殆どが新・毛の王国の住人なんだ。だからお前らに護衛して欲しいのはそれ以外の内一人だ」

「新・毛の王国って、大丈夫なのか?」

「ビービビ兄も改心したって聞いたし、大丈夫じゃね?」

 

 ビービビ兄。本名ビビビービ・ビービビとは、ボーボボの兄にして毛の王国の滅亡の元凶である。ビービビは毛の王国を我がものとする為に、一度毛の王国を滅ぼして新しく自分の国に造り直した過去がある。

 だがボーボボに倒され、その後ツル・ツルリーナ3世に毛玉を奪われ一時的に死亡していたが、ツルリーナ3世が倒されたことで毛玉がビービビの元に戻り蘇生した。

 その際、何があったのか不明だが思う所があったらしく、性格が多少穏やかになったそうだ。

 

「で、頼んでいいか?」

「オレはいいぜ。首領パッチは?」

「とりあえず電気アンマやめろおおおおお!!」

「あ、忘れてた」

 

 こうして首領パッチ達は南雲ハジメの元へやって来た。

 そこにはいたのは

 

「やあ、僕の名前はスペースマン。僕と一緒に宇宙の為に戦おう!」

 

 宇宙から来た戦士、スペースマンだった。

 スペースマンは宇宙から来た戦士で、悪の銀河皇帝ダークエンペラーを追って地球へやって来た。

 首領パッチ達はスペースマンと共にダークエンペラーを探し、ついに辿り着く。

 しかし

 

「クッ、強い!」

「これが銀河皇帝の力か……!」

 

 ダークエンペラーに追い詰められていた。彼は、銀河の暗黒パワーを巧みに使いスペースマン達に本領を発揮させなかったのだ。

 そしてダークエンペラーは首領パッチにむかってとどめを刺そうと近づく。その瞬間。

 

「そんなことはさせない! 首領パッチは僕が守る!!」

 

 なんと、スペースマンはダークエンペラーに飛びつき、ドゴォォオオン、という轟音を響かせて自爆してしまった。

 余りの光景に思わず目を背ける首領パッチ、けれど。

 

「ば、馬鹿な……。このダークエンペラーがここまでのダメージを受けるとは……」

 

 ダークエンペラーは生きていた。だが息も絶え絶えだ。首領パッチ達はとどめを刺すべく走り出す。

 

「ここは退く……。覚えておれスペースマンの仲間どもよ……」

 

 しかし、首領パッチ達が攻撃するよりも先にダークエンペラーは別次元へ逃げてしまった。

 最後に残ったのは首領パッチと天の助の二人。

 

「「うわああああああああああああああああ!!」」

 

 二人はただ、仲間の死に慟哭するのみだった。

 

 


 

 

「そうしてオレ達はスペースマンの遺志を継いで、別次元に逃げたダークエンペラーを探している」

「そんな悲しい過去があったなんて……」

(スペースマンって誰?)

 

 首領パッチの話を聞いて泣いているハジメと、戸惑っている雫。

 すると次の瞬間、外からいきなりナイフが飛んできた。それを首領パッチは指で挟んで受け止める。

 

「クッ、失敗か!」

 

 その言葉と共に、攻撃の主の気配が遠ざかるのをハジメは感じた。そして首領パッチと天の助は気付く、この声はダークエンペラーの物だと。

 

「逃がさない。納豆真拳奥義、マメールラーメンブラスト!」

 

 ハジメは納豆ラーメンが入ったどんぶりを振りかぶり、ダークエンペラーに投げつける。そして命中し、ダークエンペラーは爆発した。

 

「何で!?」

「あいつの身体は、機械だったんだ」

「それの維持の為に、多くの人間を味噌汁に変え喰らい続け来たんだ……」

「だがそれも今日で終わりだ。この僕、南雲ハジメの手でね!」

「いやハジメとどめ以外何の関係もないでしょ!」

「うん」

 

 なぜかしたり顔だったハジメにツッコミを入れる雫。そしてそのツッコミの矛先は、首領パッチと天の助へと向かう。

 

「というかあなた達の因縁、完全に無関係のハジメに取られてるけどいいの!?」

「「別に……」」

「いいの!?」

「大事なのは真実に向かおうとする意志だ。たとえ仇は討てなくても、討つ気はあったから別にいい。違うかい?」

「あってるか間違ってるかかなり微妙だけどとりあえず腹立つ!!」

 

 突如巻き起こされるツッコミ所のオンパレードに思わず息切れする雫。やがてしばらくすると、息を整えて笑う彼女の姿。

 

「―-ありがとう、ハジメ」

「え?」

 

 そして唐突に告げられた感謝に、ハジメは思わず生返事だった。

 

「実は不安だったの。初めての迷宮とか、そもそも今こうやって戦争に参加するのは正しかったのかって」

 

 それは今まで誰にも話したことの無い彼女の本音。それをハジメ達は黙って聞いている。

 

「でもハジメ達見てたらなんか馬鹿らしくなっちゃって。そうよね、結局私達は戦争参加を選んだし、迷宮もやれるだけやらなきゃしょうがないわよね。そう思えたの」

 

 それだけ言って雫は、ハジメ達の部屋から去っていた。

 後に残されたのは部屋の主たる馬鹿三人。彼らは同時に一言一句違わない言葉を発した。

 

「「「結局何しに来たんだ……?」」」

 




特殊タグって超便利ですね


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奥義5 ベヒモス襲来!

色々なことがあった平成が終わり、今日から令和が始まりますね。
このSSも令和になってパワーアップ、していくくらいの気持ちで頑張ってハジケていきたいです。


 ハジメ達は現在、オルクス大迷宮の正面入り口がある広場に集まっていた。

 ハジメの想像では、迷宮の入口はテ○ルズオブシリーズみたいに薄暗く陰気なイメージだったのだが、実際は博物館の入場ゲートのように管理された入口があった。なんでも、ここでステータスプレートをチェックして出入りを記録する事で死亡者数を正確に把握するそうな。

 ハジメ達は、メルドから離れないようについて行った。

 

 そして迷宮の中。

 中は明かりも無いのにある程度周りが見えるほどの明るさを保っている。その中を先頭が光輝達勇者パーティ。後ろにクラスメイト達が何人かに分かれてパーティを組んでいる。そして最後尾にはハジメ達三人が、四畳半ほどの大きさの板にキャスターを付けた物の上に乗り、それを騎士達に引かせながらハジメは迷宮入口がある広場にあった露店で売っているお菓子を食べつつジャンプを読み、天の助はところてん促進グッズの裁縫、首領パッチはししおどしだった。

 

「いや何寛いでるのよ!?」

 

 そして雫はキレた。当然である。今日自分達は訓練に来ているのに、後ろでサボられたらキレる。誰だってそうなる。

 

「カマトトぶってんじゃないわよ!!」

「ハジメのメインヒロイン気取りなんてさせないんだから!!」

「いやどこをどう見たらそうなるのよ!?」

 

 しかし首領パッチと天の助は逆ギレ。それに雫は戸惑う。

 

「う、うぅ……。こんなラブコメ主人公みたいなことが現実に起きるなんて……」

 

 一方、ハジメは自分を取り合われるというシチュエーションに思わず泣いていた。

 

「この状況嬉しい!?」

「うーん、そうでもないね」

 

 そして一瞬で冷静になった。学校で女神と称される雫はともかく、心太と見た目金平糖に迫られても嬉しくは無かった。

 

「何よハジメ。アタシらじゃ嬉しくないっていうの? メインヒロインにはふさわしくないって!?」

「アタイらと八重樫、どっちがいいかはっきり言えよオラァ!?」

 

 冷静になったハジメに凄む天の助と首領パッチ。首領パッチは状況次第では答えにくい質問付きだ。

 

「そりゃ八重樫さんだけど」

「ハレンチ―――――――!!」

「古手川さ――――――ん!!」

「ぎゃあああああああああああああ!!」

 

 しかしハジメは即答し、それに対して首領パッチは目潰しをした。

 痛さの余り思わず転がるハジメ。そのまま転がっていると、進路上に灰色の毛玉が現れた。

 がそのまま轢き殺した。それを見たメルドはなんとも言えない表情で解説する。

 

「あー、今ハジメが轢き殺したのはラットマンという魔物だ。すばしっこいが大した魔物じゃない。次出てきたら光輝達、戦ってみろ」

 

 どこかゆるい空気の中、迷宮の壁の隙間から再びラットマンが現れた。

 光輝達はそれを特に苦戦もせず撃破。強いて言うなら、魔石の回収も考えずオーバーキルしてしまったのをメルドに叱られた位だ。

 そこからは特に問題も無く交代しながら戦闘を繰り返し、迷宮を下っていた。

 そしてニ十階層に到着。ここの終わり、次の階層に続く階段が今日の訓練のゴール地点である。

しばらく探索していると突然先頭を行く光輝達とメルドが立ち止まり、戦闘態勢に入る。

 その直後、迷宮の壁が突然変色しながら起き上がった。擬態能力を持った魔物である。

 

「ロックマウントだ! 二本の上に注意しろ! 豪腕だぞ!」

 

 メルドの声が響く。そして光輝達と戦闘が始まった。

 戦闘そのものは光輝達の圧勝だったが、何を思ったのか光輝が必要以上の威力の技を出し、ロックマウントのみならず後ろの壁も破壊した。

 光輝はいい笑顔だったが、メルドは迷宮の崩落を考えろと叱る。

 

「てかさ、もう少し静かにしてよ。オレテレビ見てんだからさ」

 

 一方、天の助は寝っころがりながらテレビを見ていた。その後ろでは、ハジメと首領パッチがバトミントンで遊んでいる。

 

「こいつら引っ叩きたい……!」

 

 光輝が静かに怒りを燃やしていると、ふと香織が崩れた壁の方に視線を向けた。

 

「……あれ、何かな? キラキラしてる……」

 

 その言葉に全員が香織の指差す方を見ると、そこには青白く発光する鉱物が壁から生えていた。

 

「あれはグランツ鉱石だな。いわば宝石の原石だ。加工して指輪などにすると喜ばれるらしく、求婚の際に選ばれる宝石にもトップ三に入る代物だ。大きさも中々だ。珍しい」

「素敵……」

「本当。まるでアタイの為にある石だわ……」

 

 メルドの説明を聞いて、香織と首領パッチが頬を染めてうっとりしている。

 

「だったら俺らで回収しようぜ!」

「おっと、パチ美さんのハートを頂くのは私ですよ」

「いやそれはいらねえよ!?」

 

 そう言って唐突に動き出し、グランツ鉱石の元へ走りだしたのは檜山と天の助だ。二人を見てメルドは制止を呼びかけるが、二人は聞こえないふりをしてそのまま進み、ついにグランツ鉱石の元へ辿り着く。

 

「団長! トラップです!」

「ッ!?」

「何やってるんだよ団長!?」

「止まるんじゃねえぞ……」

 

 檜山と天の助が辿り着き、ハジメが希望の花を咲かせているのと同時に、実はトラップが無いか調べていた騎士団員が叫ぶ。しかしそれは何の意味もなさない。檜山がグランツ鉱石に触れた瞬間、鉱石を中心に魔法陣が広がる。

 クラスメイト達は魔法陣から離れようとするが、その前に魔法陣が光り陣の内側に居た全員を転移させた。転移先は巨大な橋の上、その中間地点だった。橋の下には何も見えない、深淵の如き闇が広がっている。橋の両サイドにはそれぞれ、奥へと続く階段と上階への階段が見える。

 

「お前達、すぐに立ち上がって、あの階段の場所まで行け。急げ!」

 

 階段を確認したメルドが、険しい表情で指示を飛ばし、クラスメイト達はそれに応じてわたわたと動き出す。

 しかし、迷宮のトラップは転移だけでは無かった。階段側の端の入口に現われた魔法陣から、骨の体に剣を携えたトラムソルジャーという魔物が大量に出現した。そして反対側にも魔法陣が現れ、一体の巨大な魔物が現れる。

 その巨大な魔物を茫然と見つめるメルドの呟きが、なぜか明瞭に響いた。

 

「まさか……ベヒモスなのか……」

「ベヒモス!? かつて人間がもっともオルクスを深く潜った六十五層に出てくる魔物の!?」

「つまりここは六十五層!? なんてこった、どうりで……」

 

 メルドの呟きに驚くハジメ。それに呼応して首領パッチは得心したとばかり頷く。

 その首領パッチの背後には――

 

「土地が安かった訳だ。パチンコ店作っちまったぜ!」

「こんな所客来ないわよ!?」

 

 パチンコ店が出来ていた。そして店の中には――

 

「うおおおおおお!!」

「きた……っ! リーチだ……っ!!」

 

 パチンコしているハジメと天の助の姿があった。

 

「この状況で!?」

 

 しかし数秒後、天の助が泣きながら店から出てくる。

 

「うわああああん! 十万負けちゃった――――!!」

 

 泣き叫びながら天の助は魔剣大根ブレード*1を携え、突撃する。

 

「プルプル真拳奥義、敗北パチプロ怒りの乱舞!」

「八つ当たりでしょそれ!?」

 

 天の助が奥義で大根を振り回し、トラムソルジャー達を吹き飛ばしていく。しかし骨の集団はまだまだ数が多い。

 その数秒後、ハジメは財布をニヤニヤ見ながら出てきた。

 

「いやー勝った勝った。これでしばらく遊んで暮らせるな」

 

 しかしハジメが出てきた瞬間、ガチャンと婦警のコスプレをした鈴に右手首に手錠を掛けられてこう告げられる。

 

「賭博罪で、逮捕」

「丁度いい」

 

 しかしハジメは不敵な笑みを見せ、鈴の腕を掴みそのままグルグルと回り始めた。回転スピードはどんどん早くなる。

 

「このSS&令和最初の協力奥義はこれで行くよ!」

 

 そして余りの速さに、ついにハジメ達は竜巻を発生させた。

 

「協力奥義、ポリスサイクロン!!」

 

 ハジメ達は次々とトラムソルジャーを吹き飛ばし、橋の外に落としていく。しかし橋の上にいるのはトラムソルジャーだけではない。魔物が集まっているせいでパニックになっているクラスメイト達もいるのだ。

 ハジメ達が起こした竜巻が強く、クラスメイトの一人が橋から落ちそうになる。

 

「やばっ」

 

 だからハジメは咄嗟に手を離して竜巻を止め、落ちそうになっているクラスメイトを助けた。

 一方鈴は、手を離された勢いでそのまま飛ばされて

 

「「ギャア!」」

 

 檜山に激突して停止した。

 それを無視してハジメ達三人は集まって話し合い始める。

 

「ヤバい。クラスメイトが邪魔で大技が出せない」

「何とかあいつら落ち着けないと!」

「アタイが脱いで気を引くわ!」

「キモい!」

 

 脱ぐ宣言をした首領パッチをドカッと鈍器で黙らせて、ハジメと天の助は頭を捻らせる。そしてハジメはひらめいた。

 

「そうだ。天之河君やメルド団長なら皆を落ちつけられる!」

「成程。それであいつらどこに居るんだ?」

 

 二人が光輝とメルド探すと、ベヒモス相手に足止めしている姿が見えた。二人は首領パッチを抱えてそっちに走り出す。

 

 

 光輝達は、ベヒモスの手前で言い争っていた。

 騎士団員達が総出で魔法による障壁を作り、ベヒモスの突進をかろうじて防いでいるが、時間の問題だ。

 

「ええい、くそ! もうもたんぞ! 光輝、早く撤退しろ! お前達も早く行け!」

「嫌です! メルドさんを置いていくわけには――ブハッ!!」

 

 メルドを置いて行きたくない光輝は、ベヒモスを倒すと意気込んでいたが横から飛んできた首領パッチに話を阻害された。

 

「いきなり何をするんだ!」

「黙れ! そしてあれを見るんだ!!」

 

 いきなり攻撃されて怒る光輝に、それ以上の怒気で返すハジメ。ハジメは、パニックになり逃げ惑うクラスメイト達の方に指を向け、光輝にその光景を見せる。

 

「天之河君がクラスメイト達を何とか落ち着けるんだ! それが出来るのは君しか居ないんだ! 後ろも見ろよ主人公になれなさそうなスペックの癖に!!」

「どういう罵声!?」

「あ、ああ分かった……。すみませんメルド団長! 先に撤退します!」

 

 どこか釈然としないものの、クラスメイト達を放っておくわけにもいかないので撤退する光輝。

 

「さあ他の皆も。騎士団の皆さんも早く! ベヒモスの足止めは僕らが――」

「下がれぇ――!」

 

 引き受けます、という言おうとした瞬間、障壁が壊れベヒモスの突進がこっちに脅威として向かって来る。

 だが

 

「リバースカードオープン。攻撃の無力化!」

 

 首領パッチがいつの間にか左腕に付けていたデュエルディスクにセットしてあるリバースカードを発動し、ベヒモスの攻撃を止めた。

 デュエルディスクを具現化し、遊戯王カードの効果を実体化させる。これが天職決闘者の力である。

 

「ハジメ、長くは持たないぞ!」

「分かってる。皆早く撤退して。そこに居られると巻き込みそうで大技出しにくいから」

「撤退促すのってそんな理由なの!?」

「「つーかオレらなら万が一巻き込んでもいいのかよ!?」」

 

 バカ二人の言葉をハジメは黙殺し、メルド達を撤退させる。そして万が一にも技の効果範囲に入らないことを確認してから、ハジメはこう言った。

 

「よし、僕が足止めするから天の助はとどめを」

「おう、任せろ!」

「納豆真拳奥義、ビーンボムラッシュ!」

 

 奥義の発動と共に、ベヒモスの上空数メートルほどの高さに三メートル位の大きさの納豆が現れ、そこから大量の大豆をばら撒いている。その大豆がベヒモスに命中すると、爆発が起こりベヒモスに着実なダメージを与えていた。

 

「兄ちゃんの仇!」

「グバァ!!」

 

 途中、コーヒー豆が混ざりハジメを攻撃したが、些事なので誰も気に留めなかった。

 

「いや些事では無いでしょ!?」

「今だ天の助、やって!」

「行くぜ!!」

 

 雫はツッコミを入れるが、当のハジメすらスルーして話を進め、天の助は空に跳びあがる。

 

「プルプル真拳奥義、ところてんセイバー!!」

 

 そして心太でできた剣を取り出し、兜割の要領でベヒモスの頭部に剣を叩きこむ。これで終わり、と誰もが思ったが――

 

 プルン

 心太でできた剣に切れ味があるはずも無く、天の助は何も斬れないまますごすごと戻ってきた。

 

「ゴメン、駄目だった」

「何やってんのお前――――!!」

 

 ハジメは天の助を蹴り飛ばし、ベヒモスに叩きこむもダメージは与えられず天の助は粉々になった。

 そうこうしている間に攻撃の無力化の効果も切れ、再びベヒモスが攻撃できるようになった。

 ベヒモスは突進を始め、ハジメ達のかなり手前で跳躍し、赤熱化した頭部を下に向けて隕石の様に落下してくる。

 

「納豆真拳奥義、決して切れない(ネバーエンド)ネバネバ!」

 

 ハジメは咄嗟に、納豆の糸をクモの巣の様に張り巡らせ、ベヒモスの攻撃を受け止めた。だがベヒモスの着地を許してしまったので、再び突進されるのも時間の問題だ。

 さてどうしよう、とハジメが頭を捻らせた所で首領パッチが話しかけてくる。

 

「ハジメ、ここはオレに任せてくれ。天職決闘者の力、見せてやるぜ!」

「いいけど、駄目だったら北京原人に売り飛ばす。コーラまみれにして売り飛ばす」

「!?」

 

 ハジメの脅迫に恐れおののきながらも、首領パッチはデュエルディスクにセットしたデッキに指を置く。

 

「オレのターン、ドロー!」

 

 首領パッチがカードを引いたと同時に、ベヒモスは納豆の糸を取ろうと暴れはじめる。

 そこに天の助が飛び込んでくる。

 

「プルプル真拳奥義、極上料理! さあオレを食え――――!!」

 

 大皿に自分を盛り付け、ポン酢をかけながら飛び込んでくる天の助に対し、ベヒモスは咆哮で答えた。その咆哮で天の助はあらぬ方向へ飛んでいく。

 その隙に首領パッチの展開が始まった。

 

「オレはサポートカード、チェレンを発動。この効果でデッキから三枚ドロー!!」

「いきなりゲーム違う! それポケ○ンカード!!」

「そして通常ドロー以外でこのカードがドローされた時、糸こんにゃくを特殊召喚!」

「糸こんにゃく!?」

「そして卵を召喚! さらに卵がフィールドにある時、牛筋を特殊召喚できる。来い、牛筋!」

「さっきから何これ!? おでん!?」

「そしてこれら三体をリリースすることで、こいつを特殊召喚できる。来い、レベル十!」

 

 首領パッチの言葉と共に、宙にベヒモスを超える巨大な何かの影が現れる。やがて影が消え、その姿を見せた。

 

「焼きうどん!!」

「あの具材から何で麺類――――!?」

 

 そう、十メートル程の大きさの皿に山盛りになった焼きうどんの姿が。

 その光景に思わず雫は頭を抱えてしまった。

 

「焼きうどんの攻撃、うどんアタック!」

 

 首領パッチの指示で、焼きうどんはベヒモスにむかって上空から落下していく。ベヒモスは身体でそれを受け止めるも、大きさの違いからか徐々に押しつぶされていく。

 しかし完全に押しつぶされる前に、足場である橋に異変が起こった。

 ピキッ、と橋がひび割れたかと思った瞬間、ベヒモス達が居た部分の足場が完全に崩落したのだ。ベヒモスの度重なる攻撃、ハジメの奥義、そして焼きうどんの攻撃に足場が耐えられなかったのだ。

 ベヒモスも抵抗を試みるも、焼きうどんと一緒に成すすべなく奈落の底へ落ちていく。

 

「よし、ベヒモスを倒したぞ!」

「いやぁ、ベヒモスは強敵でしたね……」

「Yeah! Foooooo!!」

 

 上からハジメ、天の助、首領パッチの順にベヒモス撃破に喜ぶ一同。しかしそれは大きな罠だった。戦闘が終わったと誰もが思ったその瞬間、奈落に落ちた筈の焼きうどんがバカ三人の足に絡みつき、奈落へと引きずり込もうとしてきたのだ。

 

「ヤメロー! シニタクナーイ!」

「オンドゥルルラギッタンディスカー!」

「図ったなキシリア――――!!」

 

 各々抵抗するも、その行為が実を結ぶ事は無く最後には

 

「「「おのれイタリア人め――――――――――!!!」」」

「何でイタリア人!?」

 

 奈落へと落ちて行った。

 

 

 はてさてこの先、ハジケリスト三人はどうなってしまうのか?

 待て、次回!

 

「何かサイボーグク○ちゃん風に締めてきた!!」

*1ただの大根



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奥義6 バカ達のいない地上&バカ達のいる奈落の底

改めて言いますがこのSSはありふれとボーボボのクロスオーバーSSです。
なので序盤はありふれ成分が強めとなっております。多分。


というか今までがボーボボ一色すぎた。
これっていわゆる蹂躙クロスなんじゃ……。


 ハジケリスト三人が奈落の底へ落ちていく光景。それをただ黙って見ているクラスメイト達と騎士団員達。

 彼らはハジメ達が危険な目に遭っているとは思わない。否、遭っていたとしても何とかしていると信じて疑わない。

 一方で、自らの危機が無くなった訳では無い。

 

「皆呆けるな! ハジメ達なら生きている筈だから早く脱出するぞ! 俺達はまだ危機を脱しちゃいないんだからな!!」

 

 焼きうどんに人間一人とよく分からないのが二人、引きずり込まれるという光景を目にし思わず呆けてしまったが、正気に戻るのが一番早かったのはメルドだった。

メルドはクラスメイト達と騎士達に必死に呼びかける。ベヒモスは奈落に落ちたといえ、トラムソルジャーを呼び出す魔法陣はいまだ健在で、続々と数を増やしている。

 

「光輝。お前が先陣を切るんだ。殿は俺達がやる」

「分かりましたメルドさん。皆、俺に続け!」

 

 メルドの指示で光輝が先陣を切り、トラムソルジャーを倒しながらついに階段への脱出を果たす。

 その後、三十階以上あるのではないかと思うほど長い階段を上りきると、そこには魔法陣が書かれた壁が。その魔法陣に罠が無いか確認してから、メルドが魔力を流すと壁が回転扉となって回転する。扉を潜ると、そこは元の二十階層の部屋だった。しかし休む暇はない。今度はそのまま地上まで進み、そして遂に一階の正面門へと辿り着いた。クラスメイトは皆我先にと脱出する。

 

「イヤッフゥー! やっと戻って来たあああああ!!」

 

 そして一番に脱出した鈴が喜びのあまり迷宮入口前の広場で、亀の甲羅を踏みつけながらピロリンピロリンと謎の電子音を発生させていた。

 

「いや無限1UPしてるわねこれ!?」

「何回やっても、ちびファイヤーマ○オになれないんだけど!!」

「知らないわよ!?」

 

 


 

 

 ホルアドの町に戻った一同は、宿屋に戻った途端檜山を責めたてた。人的被害はほぼ十割死なないであろう南雲ハジメ達だったので、檜山が泣きながら謝罪をし、これを光輝が許すことで一応の決着はついた。

 そして時間は流れ夜。幾人の生徒は話し合っているが、ほとんどの生徒は間近に迫った命の危機に疲れ果て、深い眠りについていた。

 そう、ほとんどである。話し合っている生徒以外の全てでは無い。

 その生徒は、ただ夜風を浴びたくて散歩しているだけだった。だが今は――

 

「ふーん、あの三人はバランスを壊すイレギュラーねえ……」

 

 何者かと会話をしていた。会話している生徒の声は聞こえるが、もう一人の声は聞こえず姿も見えない。

 

「え、あれであいつら死んだかって? ないね。あの三人がたかだか奈落に落ちた程度で死ぬなんてありえない。というか三人の内二人は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、あんな程度で死なれちゃ逆に腹立つし」

 

 ハジメ達を語るその口ぶりは、他のクラスメイト達の前では絶対に見せないであろう熱を帯びている。それは憎悪。ハジメ達、正確に言えば首領パッチと天の助に対し、この生徒は明確に憎しみを抱いている。

 その理由が会話相手も気になったのか、尋ねたようだ。

 

「僕が昔、生涯を懸けて忠誠を誓った相手をあいつらに殺されたんだよ。だから復讐の機会を狙っていたんだけど、まだ敵いそうにないから潜んでるって訳」

 

 その答えに何を思ったのか。会話相手はどんな返答を返したのか、それはこの生徒以外に聞こえない。

 

「それ本当なら手伝ってもいいよ。他のクラスメイト達はちょっと可哀想だけど、あの方ほどの優先順位は無いし。だけど」

 

 そこで生徒は言葉を区切り、はっきりと断言した。

 

「僕が忠義を誓うのはあの方だけだ。お前達を手伝うのはいいけど、心まで従えられると思うな」

 

 その言葉に対して会話相手は何も返さない。代わりに違う事を問いかけたらしい。

 

「バランス? ならこっちにしたことと同じことを向こうにもすればいいんじゃないの? 人が駄目なら物でもいいし。まあ人を呼ぶなら、ハジケリストを呼んだ方が良いと思うよ。これは一応忠告のつもりだから」

 

 生徒の言葉に何を返すわけでもなく、会話相手は気配を消した。どうやら、この場を去ったようだ。

 

「じゃ、僕も帰ろうかな」

 

 


 

 

 それから翌日。クラスメイトと騎士達はハイリヒ王国王宮に戻った。とても迷宮内で実戦訓練を続行できる状態では無かったし、勇者の同胞が一時的に脱落した以上、国王にも教会にも報告は必要だった。

 帰還を果たし、ハジメ達の一時的な脱落を伝えると、王国側の人間は特に大きな反応を見せなかった。実の所、偉大なエヒト神に与えられたステータスプレートを狂わせる存在として、ハジメ達はエヒト神に敬虔な信者程忌み嫌われていたのだ。

 国王やイシュタルはそれを表だって見せはしなかったが、中には物陰とはいえハジメ達を悪し様に罵る者までいた。

 しかし、それを知った鈴が貴族に噛みついた。

 

「ハァ……ハァ……敗北者……? 取り消してよ、今の言葉……!?」

「取り消せだと? 断じて取り消すつもりはない」

「やめろ……!!」

「この数日の間、馬鹿騒ぎをしてまともに訓練もしない……。実に無意味な男達ではないか?」

「ハジメは鈴達に生き場所をくれたんだ! お前にハジメの偉大さの何が分かる!!」

「人間族はエヒト神に従わなければ生きる価値なし! ステータスプレートを狂わせる悪魔に生き場所はいらん!! 馬鹿ひげは敗北者として死ぬ! 神の秩序を崩す者には、お誂え向きだろうが!!!」

「馬鹿ひげはこの時代を作った大ハジケリストだ!! 鈴を救ってくれた人を馬鹿にすんじゃねぇ!! この時代の名が! 馬鹿ひげだァ!!」

「いや馬鹿ひげって誰!? ハジメのこと!?」

 

 という一幕があった。そしてもう一つ。

 

「我々は最大戦力を一時的にですが失いました。あのベヒモスすら危なげなく倒す存在をです」

 

 とメルドが進言したことで、ハジメを悪し様に罵った者には厳罰が下されることになった。

 それを受けてか、クラスメイトの中にはハジメ達が帰ってくるまで訓練は中止しよう、と言い出す者まで現れた。実の所、光輝がこの戦争に参加すると言い出してそれに便乗した者の大半は、真拳使いで強者のハジメをあてにしていた。自分が戦わなくてもそのうち帰れる、みたいな甘えがあった。しかし、今回のことでいずれ帰って来るにせよそれまでは圧倒的な戦力低下の中で戦わなければならなくなり、それに怯える者が多かった。

 教会としてはいい顔はしなかった。なんとか戦ってもらおうと、あの手この手で毎日復帰をやんわりと促してくる。

 それに猛抗議したのは愛子だ。愛子の天職は作農師という非戦闘職ながら、特殊かつ激レアな代物である。農地開拓に専念させれば、糧食問題は解決してしまう可能性が高い天職だ。

 そんな愛子は、戦えない生徒を無理矢理戦場戦場に送り出すような真似をよしとはしなかった。そして、教会側も愛子との関係悪化を恐れてそれを受け入れ、訓練は希望者のみとなった。

 結果、訓練するのは勇者パーティーと檜山パーティー、そして永山重呉のパーティーのみとなった。しかしそれも、ハジメ達が帰るまでの一時的なことになると騎士達は思っていた。

 さて、件のハジメ達は何をしているのだろうか。時は少し巻き戻る。

 

 


 

 

「痛っ……。ここは……? そうだ、僕は確か焼きうどんに引きずり込まれて……」

 

 ハジメが目を覚ますと、そこはやはり迷宮の中だった。周りは薄暗いが緑光石の発行のおかげで何も見えない訳じゃない。どうやら、床に寝かされていたらしい。

 

「そうだ。首領パッチに天の助は!?」

 

 ハジメがこの状況で最初に考えたことは、仲間のことだった。一緒に落ちた筈なのに姿がどこにも見えない。更に言うなら、自分達を引きずり込んだ張本人(?)の焼きうどんの姿も見えない。

 ハジメはとりあえず二人を探そうと、あてもなく迷宮を歩く。そうしてしばらくすると、どこかで戦っているかのような音が聞こえた。ハジメが音の発生源まで向かうとそこには

 尻尾が二本ある二尾狼の群れが。

 空中を蹴ることが可能で、上の二尾狼位なら一蹴できる蹴りウサギが。

 その蹴りウサギすら恐れるこの迷宮、この階層の頂点である鋭い爪を持った爪熊が。

 そして探していた首領パッチと天の助が。

 

「ら、らめぇぇえええ!! あっ、あああああっ! い、いやああああああ! そんなに激しくしない、でぇ! 私を求めないでぇ……っ!」

 

 エロゲ声優みたいなボイスで喘いでいる焼きうどん相手に、一丸となって攻撃を加えていた。

 

「MMOのレイドボス戦みたいになってる……!」

 

 それを見たハジメは思わず呟く。その声に気付いたのか、首領パッチがハジメに向かって叫ぶ。

 

「おいハジメ。早くてめえも手伝え!」

「いやこれどういう状況なの?」

 

 ハジメの疑問に首領パッチと天の助は、アメリカンな感じで手を広げ、やれやれと首を横に振った。

 

(こいつらぶっ潰したい……)

「オレ達は目が覚めてから、とりあえずハジメを探そうとウロウロしてたんだ」

「そしたら喘いでいる焼きうどんを見つけてな。とりあえず食糧を確保しようと思って戦ってたんだ」

「なんか魔物がいる訳は?」

「「知らん。そんなことはオレ達の管轄外だ」」

 

 ドゴォドゴォ、と何も考えていないバカ二人を膝蹴りで沈め、どうしたものかとハジメが考えていると、横から声がかかる。

 

「まあそう言いなさんな兄さん。確かにあんたらとわしらは不倶戴天の敵同士。じゃが少しぐらいなら、こうして肩を並べて未知の敵と戦うっちゅうんも、悪くねえとは思わんかい?」

 

 ハジメが声のする方を見るとそこには、タバコを吸いながらサングラスを掛け、任侠映画の登場人物みたいな口調で話しかけてくる蹴りウサギが一匹いた。

 ハジメはその蹴りウサギの耳を掴み

 

「何一時的に組んだライバルみたいなツラしてるのお前!」

「グバァ!」

「あぁん!」

 

 そのまま焼きうどんに投げつけた。そしてハジメは戦闘態勢を整える。

 

「まあとりあえず、後のことは焼きうどんぶっ殺してから考えるか」

「ぶっ殺すなんて言葉は使うな! ぶっ殺したなら使ってもいい!!」

「パチシュートの兄貴ィ!」

「いくぞハッジ!」

 

 いつの間にか復活した首領パッチが、ハジメに啖呵を切ってから焼きうどんに突撃する。

 そしてハジメは

 

「僕は今日、兄貴を超える!」

 

 ズダダダダダダダ、とマシンガンで首領パッチを強襲した。

 

「ぎゃああああああああ!!」

「キ モ チ イ イ……」

(マ○ー2のギーグみたいになっとる。怖っ)

 

 首領パッチの巻き添えで攻撃を受けた焼きうどんの言葉に、ちょっと戦慄する天の助。

 そんなことは知らないハジメは、首領パッチソード*1を上に掲げ叫んだ。

 

「ここが我らの死に場所と知れ! いざ、開戦だ!!」

「「「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」

 

 ハジメの叫びになぜか魔物達が呼応し、一斉に焼きうどんにむかって突撃する。

 その後ろで天の助は

 

「なんか、最後の方で祈らなきゃ倒せなさそうだしぬつ像に祈っとこ」

 

 顔がぬになった仏像を手に、必死に拝んでいた。

*1ただのネギ



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奥義7 奈落の底の少女

今までやっていた遊戯王がどの程度分かるかのアンケート、これ以上やっても結果が変動しないと思うので終了します。
予想以上に票が割れましたが、遊戯王DMまでなら七割以上の人が分かるみたいなので、そこまで見れば問題ないようにします。
が、基本ボーボボとありふれなので遊戯王分からなくても大きな問題はありません。

ちなみに、全部分かるの票が多かった場合、シンクロやエクシーズ召喚を何の説明もなく使うつもりでした。オーバーレイユニットに関する説明もするつもりはありませんでした。

ではこれからもこのSSをよろしくお願いします。


 焼きうどんとの激闘は終わった。

 幾匹もの魔物が犠牲となったが、ハジメ達は勝利した。そして今、戦いに参加した皆で焼きうどんを食べている。

 

「うーまーいーぞー!!!」

「素晴らしい! 思い出したぞ、聞こえるぞ! 私は料理を作りたかった! ただ美味しい物を作りたかった!!」

「お茶漬けポリポリサーラサラ! お茶漬けポリポリサーラサラ!」

「そんなに美味いですかねえ……。この焼きうどん」

 

 バカ三人の焼きうどんを食べたリアクションのテンションの高さに、ちょっと引いている蹴りウサギ。

 

「「「は? 何言ってんのお前?」」」

「じゃああのテンションは何だよ!?」

 

 しかし見事なまでに梯子を外され、思わず叫ぶ蹴りウサギ。

 やがて皆が焼きうどんを食べ終わる頃、ハジメはずっと気になっていた事を皆に尋ねる。

 

「ところで僕らはさ、このオルクス大迷宮から出たいんだけど、出口ってどこか分かる?」

 

 ハジメとしては普通の質問。首領パッチや天の助もそういや聞いてなかったなと呟く。だが問われた魔物達は、一斉に気まずそうな表情を見せる。

 

「どうしたの? そんな揚げパンがいきなり意志を持って反逆して来たみたいな顔して」

「どんな顔だよ!?」

「昔一回あった」

「あったの!?」

 

 ハジメの言動にツッコミを入れる蹴りウサギ。それを遮って爪熊が話し出した。

 

「ハジメさん。ここから出るには最下層まで行くしかありませんぜ」

「え、そうなの?」

「そもそもオルクス大迷宮は二つあるんでさあ。一つは上で人間達が今現在必死こいて攻略している表の大迷宮。そしてその下には真のオルクス大迷宮があるんでさあ。ハジメさん達が今いるのは真のオルクス大迷宮。一度入ればクリアまで出られない超難易度のダンジョンでさあ」

「何それクソゲーじゃん。クリア後に攻略すべきダンジョンだよそれ」

「ペーパーマ○オRPGでいうなら百階ダンジョンみたいな物か」

「うわめんどくせぇ」

 

 爪熊の説明に、バカ三人は滅茶苦茶愚痴っていた。が、しばらくすると立ち上がり、ブーブー言いながらも出発を決意した。

 

「よし行こう! 首領パッチ、天の助、蹴りウサギ!」

「「おう!」」

「何で俺も!?」

 

 勝手にメンバーに加えられキレる蹴りウサギ。当然の反論だった。

 

「……ツッコミが、ツッコミが必要なんだよ僕らには……!」

「このSSがどうなってもいいってかぁ!?」

「変な方向に暴走するぞコラァ!?」

「わ、分かったよ……」

 

 しかしハジメ達に凄まれて、蹴りウサギはしぶしぶ同行を決意した。

 

「出発ぅ、進行ぉ!!」

 

 こうしてハジメ達は出発した。

 その間、彼らは暴れまくった。

 

「ところ10(テン)! ところ10(テン)!!」

「オリゴ10(トウ)! オリゴ10(トウ)!!」

「オレは後藤じゃない! オレは佐藤なんだ!!」

 

 力の限りはしゃぎまくった。そうして一体どれだけの時間が経ったのか分からないが、気付けばハジメ達は五十層に到着する。

 五十層をしばらく探索していると、変な空間に出くわした。

 高さ三メートル程の荘厳な両開きの扉の両脇に、二対の一つ目巨人の彫刻が壁に半分埋まっているのだ。

 天の助は扉を開けようと、押したり引いたりしているが欠片も動く気配を見せない。

 

「駄目だ、全く開かねえ。どうするハジメ?」

「力づくでぶち壊す!」

「強引ね……。でも素敵」

 

 ハジメがぶち壊す宣言をした後、懐からピアニカのような物を取り出した。

 

「何だそれ」

「王城の宝物庫から貰ってきた。その名も救世鈍器ピアニカソード!」

「何だその名前!?」

 

 蹴りウサギのツッコミを背に、ハジメは扉を何度もガンガンと音を響かせながら叩く。

 そして五分後

 

「駄目だった」

 

 扉は開かなかった。それどころか無傷だった。

 

「使えねえ!」

「ぐばっ!」

 

 首領パッチに腹パンされ、その場に倒れ伏すハジメ。

 それを無視して首領パッチはデュエルディスクでカードを発動する。

 

「マジックカード発動、サイクロン! これで扉を破壊するぜ!」

 

 カードの発動と同時に、強力なサイクロンが発生。そのまま扉を吹き飛ばした。

 

「サイクロンは魔法や罠を破壊するカード。扉も魔法で塞がっているなら破壊できる思ったが、大当たりだぜ!」

「パチ戯の奴、そこまで考えて……」

「ふぅん。それでこそオレのライバルだ。さあ決着をつけるぞ、パチ戯!」

「ああ、行くぜとこ馬!」

「「決闘(デュエル)!」」

「いきなり!?」

 

 首領パッチと天の助がデュエルを始めたと同時に、壁に埋まっていた一つ目巨人の像達が動き出す。その様はまるでファンタジーに出てくるサイクロプスだ。

 サイクロプス達は最初に壊れた扉を見て、次にハジメ達を見て、また扉を見る。見事な二度見だった。

 そして、お前何してくれてんの!? と言いたげな表情で再びハジメ達に向き直ろうとした所で

 

「納豆真拳奥義、納豆インチーズフォンジュ!!」

「プルプル真拳奥義、ところてんワンダーランド!!」

「ハジケ奥義、しめ鯖天国インロンドン!!」

 

 バカ三人の総攻撃を受け、サイクロプス達は何もできないままやられてしまった。

 

「どんな攻撃か全く分かんねえ!」

「納豆インチーズフォンジュをぶつけただけだよ」

「心をところてんワンダーランドにしただけさ」

「しめ鯖天国インロンドンに精神を転移させただけだぞ」

「詳細聞いても分かんねえ!!」

 

 蹴りウサギの疑問は解消されないまま、四人は扉の中に入る。しかし中は扉があった部分の外からの明かりを差し引いても、暗闇で何も見えない。

 

「前が見えねェ」

「首領パッチ、発光して」

「あいよ」

「お前光んの!?」

 

 ハジメの頼みで首領パッチが光ると、中が薄暗いながらも少し見えるようになった。

 中は、外にさっきまで合った扉に負けない程に荘厳で、艶やかな石造りでできていた。その中央には、巨大な正方形の石が置いてある。

 四人がその石に近づこうとすると

 

「血、血、血、血が欲しい」

 

 歌っている少女の声が聞こえた。

 

「歌怖っ!」

「マリィ!」

「ミカァ!」

 

 四人が声のする方へ向かうと、巨大な正方形に埋め込まれている少女の姿があった。

 上半身から下と両手が埋め込まれて、顔だけが出ている状態で長い金髪が垂れ下がっていた。見た目十二、三歳位の少女の紅顔の瞳が、四人を見つめている。

 長い間閉じ込められていたのか随分やつれているが、美しい少女であることがよく分かる。そんな少女に見つめられ、ハジメは照れたのか目を逸らした。

 

「おいおい、何照れてんだよ~」

「何よ何よ! この世界ハジメを誘惑する女が多すぎるのよ!!」

 

 照れているハジメをからかう天の助と、少女に嫉妬する首領パッチ。二人を無視してハジメは少女に話しかけた。

 

「えっと……。君はこんな所でどうして封印されてるの?」

「まさかこれは、封印されしエクゾディア!」

「絶対違えよ!」

「分かったぞ。こいつはカツオ神の末裔だ!」

「カツオ神って何だよ!?」

「チェストオオオオオオオ!!」

「「GUWA!」」

「ジャクソン風!?」

 

 話が進まないのでバカ二人を黙らせるハジメ。それを見て少女はポツリポツリと語り始めた。

 

「私、先祖返りの吸血鬼で凄い力持ってるの。だから国の皆の為に頑張ってたけど、ある日家臣の皆が、お前はもう必要ないって言って。おじ様がこれからは自分が王だって……。それでも良かったけど、私に凄い力があるから危険だって。それで殺せないから、封印するって……」

「それでここに?」

「うん」

「君はどこかの王族だったの?」

「そう」

「殺せないってのは?」

「勝手に治る。怪我してもすぐに治る。首落とされてもその内に治る」

「成程。君もハジケリストなんだな」

「それは知らない」

「どういう判断基準だよ!?」

「後、私は魔力を直接操れる。魔法陣もいらない」

「マジかよ……」

 

 最後の少女の言葉に驚く蹴りウサギ。

 この世界、トータスの魔法は体内の魔力を詠唱により魔法陣に注ぎこまなければ発動しない。それは人間族も魔人族も共通である。魔力を直接操る術を持つのは魔物だけである。

 それを魔物以外が持つという事は、ある種この世界の規格から外れるということだ。だから蹴りウサギは驚いていた。

 ちなみに、もっとこの世界の規格から外れた力を持つバカ三人は特に何も思ってなかった。

 

「ま、とりあえず助けてやるか」

「そうだな。こいつはところてん主義に目覚めそうだし」

 

 いつの間にか復活した首領パッチと天の助が、少女を助ける方向で話を進める。しかしその前に、と首領パッチが前振りしてから少女に向かって一言。

 

「おいガキ、助けるのはいいけどこのSSのヒロインはオレだからな。それを忘れるなよ」

「金平糖がヒロインなんて笑止千万。ヒロインの座は私の物」

「ああ!? やんのかこら!?」

「ヒロインはどっちがいいかハジメに決めてもらえばいい」

「それだ! よしハジメ。どっちがヒロインにふさわしいかはっきり言ってやれ!」

 

 少女と首領パッチに問い詰められるハジメ。その問いに彼は刹那の間もおかず即答した。

 

「そりゃこの子だよ」

「フッ……」

「……ドスケベ」

「!?」

 

 ハジメが少女を選んだせいで荒れる場。その状況を無視して天の助は魔法陣を書き、少女を封印している正方形に手を置き、魔力を流して魔法を発動した。

 

「錬成!」

 

 錬成を発動する天の助。しかし正方形は魔力に抵抗するかのように錬成を弾く。それでも天の助は諦めず錬成を続ける。

 しかし正方形の形を変える前に、天の助の魔力が尽きそうになる。このままでは魔力が尽き、天の助は無為に魔力を使うという結果に終わってしまうだろう。しかしその前に助けは来た。

 

「オラオラオラァ!」

「五月は節分だ――――っ!!」

 

 ハジメと首領パッチの二人が、納豆を天の助にぶちまけていた。これぞハジケ流魔力補充である。

 

「嫌がらせにしか見えねえ――――っ!?」

「おおおおおおおお――――――――――っ!!」

 

 魔力補充の甲斐あってか、少女を封印していた正方形は少しずつ融解していき、少女の枷を外していく。そして全ての枷が外れたと同時に、封印していた正方形は『ね』の形になっていた。

 

「ね!?」

「ねの野郎……!!」

 

 変形した立方体に怒りを燃やす天の助。

 その横では、枷から解放された少女が、服すら纏わず佇んでいる。それなりに膨らんだ胸部にハジメの目が行くより前に

 

「奥義、墨汁バルス!」

「目が、目がアアアアアア!!」

 

 首領パッチに視界を墨汁で塞がれ、悶絶していた。その隙に天の助が少女に、青地の生地にぬの文字が大量に書かれた、ぬのパジャマを着せた。

 やがて視力が戻ったハジメが、そのパジャマを見て思わず呟く。

 

「「パジャマ、クソダサい……」」

 

 奇しくもその呟きは目の前の少女と噛みあい、二人はどちらともなく握手をした。

 その直後、少女がハッと目を見開いてハジメ達に尋ねる。

 

「……あなたたち、名前は?」

 

 そういえば名乗って無かった、と気づいた三人は名乗る。

 

「僕は……Z団団長ハジメ・イツカだぞ……」

「パチ月・オーガス」

「私は天ギリス・ファリド」

「真面目に名乗って」

 

 ドパンドパンドパン

 

「「「だからよ、止まるんじゃねぇぞ……」」」

 

 少女が発砲して、バカ三人に希望の花を咲かせたところで、見かねた蹴りウサギが三人を紹介した。

 

「それで、君の名前は?」

 

 少女はハジメ、首領パッチ、天の助と大事な物を刻み込むかのように三人の名前を繰り返し呟く。そして、問いに答えようとしたが、思い直してハジメ達にお願いをした。

 

「……名前、付けて」

「付けてって……。名前忘れたの?」

「違う。もう前の名前はいらない。……新しい名前が欲しい」

「急にそう言われてもねえ……」

 

 裏切られた過去を忘れたいのか、心機一転したいのか、とにかく新しい名前を求める少女。ハジメ達はその気持ちを汲んで、考えに考えてそれぞれ新しい名前のアイデアを告げる。

 

「ユーエスエー」

「ニャク太郎」

「ハジケニウム」

「「「さあ好きなのを選べ!!」」」

「ロクな選択肢ねえ――――――!?」

 

 ハジケリスト達が出した名前に、ちょっと首をひねりながら考える少女。

 やがて少女は、自らの名を宣言した。

 

「私は、ユーエスエー・ニャクタロウ・ハジケニウム。普段は略してユエと名乗ることにする」

「まさかの総取り!?」

 

 選択肢とは提示された物以外もある、そんなことを思い知る蹴りウサギだった。



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奥義8 封印部屋の化物

ネタがすっと出てくれない……。


 首領パッチが気配に気付いたのは、偶然だった。

 

「皆、上だ――――――っ!!」

「何か言ったか?」

「僕のログには何もないな」

 

 首領パッチは叫んだと同時に、ユエと蹴りウサギを抱きかかえその場から跳んで離れる。その瞬間、上から四本のハサミと二本の尻尾、そして八本の足を持った、体長五メートル程の巨大なサソリの様な魔物が降ってきたのだ。首領パッチが跳ぶのを後一瞬遅らせていれば、ユエと蹴りウサギは押しつぶされていただろう。

 

「「ぎゃああああああああああああああ!!」」

 

 ちなみに聞いてなかったハジメと天の助は普通に潰されていた。

 

「何だこの重みは―――!? めちゃ痛え――――――っ!!」

「こ、この重み……。まさかあの時の!?」

 

 その言葉と共に、回想が始まった。

 

 


 

 

【サソリ売りのハジメ】

 

「何か始まった!?」

 

 それはハジメがまだ五歳の頃、雪の降る冬の日、彼はカゴいっぱいにある物を詰めて路上で売って生活していた。

 

『いりませんか……。誰かいりませんか……?』

 

 そのある物とは

 

『この毒性が非常に強いオブトサソリ、いりませんか?』

 

 デスストーカーとも呼ばれる、非常に毒性の強いサソリだった。

 

「物騒な物売ってんなオイ!?」

『いじめっ子や嫌な上司の暗殺にも使えますよ……』

「殺人勧めんな!!」

『ほう、それは本当かね?』

 

 ハジメが必死に宣伝していると、一人の紳士が話しかけてきた。

 

『はい。試しに誰か言ってみてください! 殺してきますから!!』

『ふむ、では○○社の宣伝部長を……』

 

 紳士から暗殺の依頼を受け、ハジメはその内容をサソリに伝えた。

 

『さあ行くんだオブトサソリ! 宣伝部長をこの世から消し去ってしまえ――っ!』

『断る。我は誇り高きデスストーカー。貴様などに従いはせぬ!』

 

 サソリは一瞬の隙を付き、ハジメの元から逃げ出した。それを見ていた紳士は携帯を取り出し、電話を掛けた。

 

『もしもし警察かね。今ここに殺し屋の子供が――』

『サソリを踊り食え!!』

 

 警察に通報しようとする紳士に、ハジメはカゴに残っているサソリをぶちまけ、その場を逃げ出した。

 これが後に語られる、ようこそサソリパーク事件である。

 

【サソリ売りのハジメ 終わり】

 

 


 

 

「間違いない、こいつはあの時逃げ出したサソリだ!」

「絶対違うだろ!?」

 

 現実に戻ってきた蹴りウサギは、ハジメの妄言にツッコむ。というかそもそも、この魔物はサソリっぽいだけで別にサソリじゃない。あえていうならサソリモドキだ。

 

「だったらこんな所で潰れてる場合じゃない!」

 

 ハジメは潰れている状況から、サソリモドキを持ち上げ

 

「どっせい!」

 

 天井へと放り投げる。その隙に二人は首領パッチ達の傍へ走った。

 

「さて、飼い主に噛みつくとどうなるか、その身にしっかり教えてあげないとね」

「ペットの不始末は飼い主が始末するものって、私は思う」

「僕!?」

「サソリの素揚げ、心太和えってのはどうだ? うまそうに見えねえか?」

「食いたくねえ……」

「ワンワンワーン!」

 

 そしてドシーン、とサソリモドキが着地したと同時に、五人はサソリモドキに向かって走り出した。

 それに対応して、サソリモドキは一本目の尻尾から紫色の液体を発射する。狙いはユエだ。

 

「ハジメガード」

「ぐわあああああああ!!」

 

 ユエはそれをハジメでガードして防ぐ。

 一方、攻撃をもろに受けたハジメは徐々に溶けていく。紫色の液体の正体は溶解液だったのだ。そして最後にはこうなった。

 ハジメスライムが あらわれた!

 

「モンスターになってる!?」

 

 ハジメスライムのこうげき ねばねばがため!

 ハジメスライムは サソリモドキのうごきをとめた!

 

「スライムであることを十全に利用してる!? 後なんでずっとドラ○エ風!?」

「よくやったぜハジメ!」

「後はオレ達に任せろ!」

 

 バカ二人は叫び、それぞれ首領パッチソードと魔剣大根ブレードを取り出す。そしてそれらに、青地に『ぬ』とびっしり書かれたハンカチ、ぬのハンカチを巻きつけた。

 

「これで首領パッチソードはぬンパッチソードに」

「魔剣大根ブレードはぬ剣大根ブレードに進化したぜ!」

「進化なのかそれ!?」

「「喰らえ――――――っ!!」」

 

 すると二人は互いに剣を振りかざし、サソリモドキに向かっていく。

 

「キィィィィィイイ!!」

 

 サソリモドキは四本のハサミを振り回し、抵抗するが二人には当たらない。

 そして

 

「「協力奥義、ハジケぬトラッシュ・クロス!!」」

「技名言い辛え!!」

 

 二人は全く同じタイミングで、サソリモドキに攻撃を叩きこむ。

 

「キィシャァァアア!!」

 

 その予想外に緻密な攻撃に悲鳴を上げ、思わずよろめくサソリモドキ。しかし決定的なダメージではないのか、すぐに調子を取り戻して溶解液を出す尻尾とは違う方から、今度は針が散弾の様に撃ちだされた。

 

「「グバッ!」」

 

 二人は吹き飛ばされ、ユエと蹴りウサギの元へ戻ってきた。

 

「使えねえじゃねえかぬのハンカチィ!!」

 

 そして首領パッチは、ビリビリとぬのハンカチを引きちぎり、破片にして投げ捨てる。

 

「オレのぬのハンカチィィィィイイイイイイ!!!」

 

 その破片を泣き叫びながら必死に集める天の助。そこにハジメも人型を取り戻してやってきた。

 

「さて、どうしよう。何か硬いよアレ」

「硬いなら柔らかくすればいい。つまり――」

「話し合おう。平和とは、凝り固まった怒りを解きほぐすことなのだから」

「いや無理だろ。相手サソリだぞ」

「ハジメ、首領パッチ、天の助。お願いがある」

 

 想像以上にサソリモドキが硬く、どうしようか頭を悩ませるバカ三人にユエが話しかける。

 

「何? 今忙しいんだけど」

「私を信じて、血を吸わせてほしい」

「血なんてケチ臭いことは言わねえ。オレごと食え!」

「いらない。血だけでいいの天の助」

「食えよ! オレはところてんなんだぞ!!」

「正直味以前に天の助分のところてんは多い」

「何だよ。たった四十五パック分なのに……」

「多い」

「そうか、じゃあ一口だけでいいからさ! なあ!?」

「……分かった」

 

 天の助の熱意、というかごり押しに負け、ユエは渋々天の助を一口食べる。

 

「ハッハッハー! どうだオレの味は!?」

「無理」

「無理!?」

 

 ユエのあんまりな評価に落ち込む天の助。そんな天の助に首領パッチが一言。

 

「天の助」

「何だよ首領パッチ。こんな無様なオレに何を言うってんだ」

「いやもうお前が不味いなんてネタ飽き飽きなんだよ」

「」

 

 首領パッチの言葉に凍りつく天の助。

 ショックのあまり天の助は懐から銃を取り出し、ドパァンと自分の頭を打ち抜いた。

 

「自殺した!?」

「天の助――――――っ!!」

 

 倒れ行く天の助に駆け寄るハジメ。ハジメはそのまま

 

「甘ったれるな――――――――――っ!!」

「ぎゃああああああああああああああああ!!」

 

 天の助をサソリモドキに蹴り飛ばした。その際天の助はサソリモドキの溶解液と散弾針を受けていたが、誰も気には留めなかった。

 

「次はオレかぁ~? オレの血は凄いぞ。なんせ首領パッチエキスだからな。身体に入れればオレと同じ思考になるんだぜ」

「死んでも嫌」

「!?」

「となると僕か」

「うん、頂戴」

 

 ユエはハジメの首筋に噛みつき、血を飲む。しばらく飲み、やがて一言ボソリと呟いた。

 

「味は一言でいうなら……」

「言うなら?」

「メロンソーダ」

「何で!?」

「「「どれどれ?」」」

 

 ユエの言葉が真実かどうか気になったバカ三人は、ハジメの血を注射器で抜きそれぞれ飲む。その結果は

 

「「「本当だ……、メロンソーダだ……」」」

「まあそれはともかく、ごちそうさま。これで――」

 

 そう言うとユエは、サソリモドキに向けて片手を伸ばす。同時に莫大な魔力が吹き上がり、黄金色が暗闇を薙ぎ払った。

 

「魔法が使える。“蒼天„」

 

 そしてユエが呟くと、サソリモドキの頭上に直径六メートル程の青白い炎の球体が出来上がる。直撃した訳でもないのにサソリモドキは悲鳴を上げ、離脱しようとする。

 だがユエはそれを許しはしない。青白い炎はユエの指先に合わせてサソリモドキを追尾し、ついに直撃した。

 

「HEEEEYYYY、あァァァんまりだァァァァァ!!」

「それどっちかと言うと燃やす奴の悲鳴じゃねえか!?」

 

 サソリモドキがかつてない絶叫を上げる。炎が命中した背中は焼けただれ、あと一息で倒せそうだ。

 

「ハジメ、とどめはお願い」

「任せて! 高熱で熱せられた後で急速に冷やすと崩れやすくなるって前にポ○スペで読んだことがある!」

「漫画の知識かよ」

「だから納豆真拳奥義、アイシクルフィールド!!」

 

 ハジメが奥義名を叫ぶ。そしてハジメは悟空のコスプレをしてから一言。

 

「ふ、布団が……ふっとんだ!」

「ブフッ」

 

 ハジメがダジャレを言うと、界王様のコスプレをしていた首領パッチと蹴りウサギ以外のこの部屋の全てが凍りついた。

 

「凍った――――!? 確かに寒かったけど!!」

「そして協力奥義、ダイヤモンドところてんダスト!」

 

 次にハジメは凍った天の助を殴り飛ばす。すると、凍ったところてんの結晶がダイヤモンドの散弾のようになりサソリモドキに襲い掛かる。

 最後には――

 

「キシュアアアアアアアアアアア!!」

 

 かろうじて声だけは出せるようになっていたサソリモドキが、断末魔を上げながら崩れ去った。

 

「勝った……!? ハジメのペットは、死んだ……!?」

「いや今思うとあれ多分僕が使ってたサソリじゃないと思うんだよね。ハサミとか足の数が違うし」

「だろうな!!」

 

 ユエとハジメは勝利の余韻に浸っていた。一方首領パッチと天の助は

 

「戦闘の勝利と新しい仲間を祝って」

「宴だ――――っ!!」

 

 地面に大量のチクワを植えながら、酒とツマミの準備をしていた。

 

「何でチクワ!?」

「豆食え豆!」

「生き血も必須」

「ちっ、しゃあねえな……」

 

 天の助は豆乳と生き血を追加で用意し、ハジメとユエにそれぞれ手渡す。首領パッチはコーラ、天の助はところてんドリンクを持ち、全員が歌舞伎の黒子の格好をし、頭にタケノコを乗せる。

 

「それじゃあ皆。乾杯!」

「「「かんぱーい!!」」」

「格好ヤベえ!!」

 

 ハジメが音頭を取って、宴は始まった。



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奥義9 迷宮道中馬鹿栗毛

待たせちまってすまなかったな!(悟空風)

……ありふれ一章を面白く書いてる二次作家はすごいなあ……。
原作だと一番面白い所とか言われてるけど、弄りにくいんだよなあ……。


 封印の部屋にいる四人は、宴をしながらお互いのことについて話し合っていた。

 

「ふーん、ユエはずっと閉じ込められてたのか」

「そう。欲に目を眩ませた叔父が私を殺そうとしたけど、私の“自動再生„で殺しきれないからやむを得ずここに封印したの」

「大変だったんだな……。よし、キングオブ不幸の称号はお前にやるよ!」

「クイーンじゃね?」

「どっちにしろいらない」

「ちょっと待って。僕本でさ、吸血鬼族は三百年前に滅んだって見たんだけど……」

 

 ハジメのその言葉に、思わずバカ三人はユエをジロジロと見てしまう。

 そしてそれぞれボソッ、と呟いた。

 

「三百歳……。ロリババア……」

「B・B・A! バ・バ・ア!!」

「お婆ちゃーん、お小遣いちょうだーい!!」

「ハジメ以外誰も呟いてねえ!?」

「“凍雨„」

 

 ハジメ達の容赦ない言葉にキレたユエが魔法を発動すると、鋭い氷の針がまるで雨の様にハジメ達に降ってきた。それを三人は回避できない。

 

「「「ぎゃああああああああああああああ!!」」」

「女性に年齢の話はマナー違反」

「容赦の欠片もねえ!!」

「どうせ死なない」

「そりゃそうだけどさ……」

 

 呆れる蹴りウサギを尻目に、ハジメ達はすぐに復活しユエに抗議。裁判すら辞さない構えで、すぐそこにある裁判所に駆け込む。

 

「何で裁判所あるんだよ!?」

 

 そこでハジメ達は裁判長の巨大ムカデに懸命に訴えるが、彼の返答は冷たい物だった。

 

「ドュフ、ユエちゃんは可愛いから無罪です。というか怒らせるそっちが悪いでしょ常識的に考えて」

 

 ドパンドパンドパン

 

 気づけば、天の助は裁判長を撃ち殺していた。

 

「殺した!?」

「ぶっ殺すと心の中で思ったなら、その時既に行動は終わってるんだッ!」

「ぶっちゃけキモかった。今時あんなの現実にはいない」

「だろだろ?」

 

 ムカデを殺したことで盛り上がる天の助とユエ。そんな天の助に向かって首領パッチは

 

 ドパンドパンドパン

 

 躊躇なく発砲した。

 

「こいつは、死んでいいハジケリストだから」

「そうなの!?」

「プロシュート兄貴のネタはオレが前にやったってのに、こんなに短いスパンでもう一度やるなんざハジケリストの名折れだろ」

「厳しっ!?」

「ああ、そうだ首領パッチ。真のハジケリストを目指す。それが僕達の唯一のルールだからな」

「ハジ之内君……」

 

 いつの間にか城之内のコスプレをしたハジメが、首領パッチをかばい立てする。そんな首領パッチに向かってハジメは

 

 ドパンドパンドパン

 

 躊躇なく発砲した。

 

「何で!?」

「こいつは、僕のカレーパンを食べた」

「それだけかよ!?」

 

 その後、ハジメが首領パッチと天の助にじょうろで水をかけて復活させてから、肝心なことを話し始めた。

 

「肝心な話って、何?」

「いや、ユエが仲間になったって体で話進めてたけど、ユエ的にはどうなの?」

「なるよ」

 

 その言葉を聞いたバカ三人は、左手首に×と付けた状態で左腕を空に掲げる。

 

「「「オレ(僕)達は、ずっと仲間だ!」」」

「ワン○ースかよ」

「しかもそれ別れ際のシーンだし」

 

 こうしてユエが仲間になった。

 その後、出発の為に準備をしていたハジメ達だったが、ユエはあることが気になったので尋ねる。

 

「そう言えば、ハジメ達はどこに向かってるの?」

「最下層だよ。そこまでいけばこの迷宮から出られるって、爪熊が言ってたし」

「……なんで魔物が喋ってるの?」

「さあ? 蹴りウサギ、何で?」

「いや今聞くのかそれ!?」

 

 いきなり世界設定を根本から揺るがす質問をされ、思わず悩んでしまう蹴りウサギ。しばらくそうして悩んでいたが、気付けばユエの方が飽きて四人は出発してしまった。

 

「いや興味ないなら掘り下げるなよ!!」

 

 その所業にキレながら、蹴りウサギも追いかけ始めた。

 

 


 

 

 ユエが仲間になってから、ハジメ達は順調に階層を下っていた。ユエは全属性魔法を持ち、それらを無詠唱でバンバン使えるチート性能だったので、ぶっちゃけハジメ達はハジケ、蹴りウサギはツッコミ以外やることが無くなる位順調だった。

 そんな五人が次に降り立った階層で最初に目にしたものは、樹海だった。十メートルを超える木々が鬱蒼と茂っており、容易に通れないことを明確に示していた。

 

「これは地上から行くのは難しそうだし、空中から行こう。納豆真拳奥義、フライングB(ビーン)!!」

 

 ハジメが奥義を発動させると、人が乗れるだけの大きさの納豆型のなにかが現れた。が、どう見ても飛べそうな物体では無い。

 

「飛べんのかこれ?」

「飛ぶには鳥の力を借りるんだ」

 

 ハジメがそう言うと、鳥が数羽現れる。

 その鳥は、トサカを頭に持ち、地面を歩いてやってきた。

 

「鶏じゃねーか!!」

「え、ちょっと待って!? 鶏!?」

 

 慌てたハジメはスマホを取り出し、どこかに電話を掛ける。

 

「ちょっと派遣会社さん? 僕空を飛ぶために鳥が欲しいって言いましたよね!? 鶏が来たんですけど!?」

「派遣バイトなのこの鶏!?」

「時給880円ッス」

「安っ!」

 

 その後、しばらく電話をしていたハジメだったが、やがて話が終わったのか電話を切る。その後、嫌そうな顔をしながら鶏達に向かって言った。

 

「えー、君達にはこの納豆型飛行船を掴んで空を飛んでもらいます」

「すいません。俺ら鶏なんスけど」

「関係ない、飛べ」

「うっす」

 

 ハジメは鶏の反論を睨みをきかせて封殺した。

 

「規定時間飛べなかったら、その分給料から引くから。あ、怪我したら医療費はこっちで負担するんで」

「優しいのか厳しいのかよく分かんねえ……」

 

 こうしてハジメプロデュースの空の旅が始まった。

 当初ハジメ以外の全員が不安げにしていたが、無事空を飛び、気付けば樹海の上を動いていた。

 

「おお、すげえなあ!」

「サラマンダーより、ずっとはやい!」

「乗ったことあんのかオイ」

 

 初めての空の旅にちょっと浮かれるユエと蹴りウサギ。樹海という歩くには物騒な地域も、空の旅なら一気にのんびりした旅に早変わり、と二人はウキウキだった。そうしてしばらく下界を眺めていると、ユエがあることに気付く。

 

「蹴りウサギ、見てあれ」

「ん?」

 

 ユエが指差す方向に蹴りウサギが視線を向けると、巨大な爬虫類、ティラノサウルスによく似た魔物が走っていた。

 

「恐竜いる恐竜!」

「はしゃいでるなあ……」

「あと頭に向日葵生えてる!」

「何で!?」

「“緋愴„」

「この流れで攻撃するのか」

 

 ティラノサウルスを見て騒いだと思った刹那、手元に円錐型の槍を作り出し、一直線にティラノに向かって突き刺さり、そのまま貫通。命中した個所とその周囲の肉を焼きと化して絶命させる。地響きを立てながら横倒しになるティラノ。

 そして、ポトリと地面に落ちる頭の花。

 

「何だあの花」

「きっと魔物達に流行中のファッション」

「蹴りウサギは流行に疎いからな」

「うるせえバカ二人! あんなファッションあるか!!」

 

 いつの間にか天の助が話に混ざりながら、ティラノの頭に生えていた花について話す三人。分が悪いと思った蹴りウサギは、あてにならないと思いながらハジメと首領パッチを探す。しかし、飛行船の中に二人の姿は無い。

 

「あれ、あいつらどこ行った?」

「首領パッチならこっちだぞ」

 

 天の助の言う方を蹴りウサギが見る。するとそこには

 

「お花畑よ~! お花畑よ~!!」

「「「「「「「「「「シャァアアア!!」」」」」」」」」」

 

 二百体近くの、頭に様々な花を生やした魔物に追われながら、樹海を堪能している首領パッチの姿があった。

 

「バカが一匹下に降りてる――――!?」

 

 そしてその後ろには

 

「環境破壊は気持ちいいゾイ!」

 

 と言いながら火炎放射器で樹海や魔物を燃やすハジメの姿があった。

 

「言ってる台詞が酷過ぎる! てか何で自分から飛行船を出て行くんだ!?」

「そもそも最初から乗ってない」

「乗ってなかったのかよ!?」

「すんませんお客さん」

 

 衝撃の事実に驚きが止まない蹴りウサギの元に、飛んでいる鶏からさらなる追撃が加えられる。

 

「もう無理ッス。飛べないッス」

「え」

 

 その言葉と共に、いきなり落下し始める飛行船。ユエ達は素早く飛び降りて、飛行船から脱出した。

 

「着地!」

「ギャア!」

 

 ユエは、天の助をクッションに着地。蹴りウサギは自分の技能、天歩[+空力]という空中に足場を作る固有魔法で特に苦も無く地上に降り立った。

 そして、飛行船は爆発炎上して辺り一面は火の海と化す。

 

「大惨事だ――――――!?」

 

 ちなみに鶏達は

 

「すんません、こんがり焼けちゃいました」

 

 フライドチキンになっていた。

 

「調理されてる――――――!?」

「あ、うまい」

 

 調理された元鶏を、いつの間にかやってきたハジメはムシャムシャと食べる。一方、ユエ達三人はフライドチキンを敵に投げつけて攻撃していた。

 

「死ねオラァ!」

「くたばれ!」

「消えて」

 

 投げつけられたチキンは爆発し、魔物達を吹き飛ばしていく。

 

「何で爆発するんだよ鶏が!?」

 

 その時、爆発に巻き込まれながらも吹き飛ばされたのは頭の花だけという運のいい魔物が一匹いた。その魔物は、ヴェロキラプトルという某映画でラプトルと呼ばれていた恐竜の様な魔物だった。ラプトルは、花が取れたと同時にさっきまで頭に生えていた花をまるで親の仇の様に踏みつけていた。

 すると、他の花を付けたままの魔物の集団が花が取れたラプトルを集団で苛めている。

 それを見たハジメは思った。

 

「あれがファッションの流行に取り残された奴の末路……」

「絶対違えよ!!」

「ハジメ、あれは多分寄生されている。花を植え付けている本体が居る筈」

「「「あーそっちか」」」

 

 こうして、花を植え付けている本体を探すことになったハジメ達。爆炎が渦巻く中、暑さに耐えながらハジメ達。

 そうこうしていると、ハジメ達は怪しい場所を見つけた。それは、樹海を抜けた先に見える迷宮の壁、その中央にある縦割れの洞窟らしき場所だ。

 火事でてんやわんやになっている魔物達だったが、頭に花を付けた魔物は縦割れの洞窟へ向かおうとすると、ハジメ達を止めようと動くのだ。まあその直後に、炎に巻かれて息絶えるのだが。

 

「無様なもんだ」

「ひでえ……」

 

 こうして縦割れの洞窟に突入するハジメ達。そのまましばらく歩いていると、大きな広間に辿り着く。広間の奥にはさらに道が続いている。五人は何の警戒もせず進む。

 そしてハジメ達が部屋の中央までたどり着くと、いきなり全方位から緑色の玉が無数に飛んできた。

 それを見てハジメは奥義を発動した。

 

「納豆真拳奥義、桜山ディフェンスクラブ召喚!!」

「「「「「桜山! ファイト、オー!!」」」」」

「誰だよ!?」

 

 ハジメは桜山ディフェンスクラブの部員を五人召喚し、ハジメ達を囲むように守らせる。呼び出された部員達は、手足、時に頭、時にビームで玉を弾いていく。

 

「ビーム!?」

 

 しかしこの玉、実は寄生の証である花を植え付ける効果がある。今まで散々見てきた魔物の頭に生えていた花だ。

 その為、部員達は玉を受け止める度に寄生されディフェンスを放棄し、ハジメ達に攻撃してしまう。

 

「すみません、死んでください!」

「納豆真拳奥義、武古貫気(ぶっこぬき)!!」

 

 しかしハジメは部員達に植え付けられた花を、即座に引っこ抜いていく。そのせいで、部員が玉を受ける→花を植え付けられる→ハジメが引っこ抜くの永久機関が誕生していた。

 

「まさに無限ループ!」

「何だこの地味な絵面」

 

 そんな光景がしばらく続いた後。向こうが焦れたのか、新手が姿を現す。

 アウラウネ、人間の女の姿をとった植物のモンスターだ。もっとも、日本では美しい少女の印象が強いが目の前のアルラウネにはそんな印象を持ちようがない程に醜悪な顔をしており、無数のツルが触手の様にウネウネと動いていて気味が悪い。

 それを見て最初に動いたのは天の助だった。

 

「その動きはところてんだけの物だ――――!!」

「絶対違うと思う」

 

 魔剣大根ブレードを構え、アルラウネに向かっていく天の助。しかし軌道上に妨害する何者かの姿が。

 

「天の助……ごめんね……」

 

 その正体はなんとユエだった。彼女の頭には、偶然か必然か、吸血鬼にはよく似合う深紅の薔薇が咲き誇っている。

 ユエは操られていることを悔しく思い、唇から血を流しながら天の助に風の魔法を撃ち込んで切り刻んだ。

 

「魔物さん、ところてんはいかがですか?」

 

 そして天の助は船盛りとなって、アルラウネに己を売り込んでいた。

 アルラウネは躊躇なく玉を撃ちこみ、花を植え付けて天の助を傀儡にする。

 

「何してんのあいつ!?」

 

 蹴りウサギのツッコミを背に、ハジメと首領パッチはどうするか必死に思案していると、ユエと天の助が悲痛な叫びを上げた。

 

「ハジメ! ……私はいいから、撃って!」

「いやいや待て待て! 撃つな撃つな撃つな!!」

 

 覚悟を決めた様子のユエ。それはハジメ達の足手まといになりたくないという固い意志が生み出した、心からの覚悟だ。

 さて、この行動に対しハジメ達は

 

「分かった!」

「オレ達に任せろ!!」

 

 躊躇なくハジメはミサイルランチャー、首領パッチはロケットランチャーを構えて

 

「オラオラオラァ!!」

「死にやがれ――――――――!!」

 

 アルラウネをユエ、天の助諸共砲撃し続けた。

 

「仲間二人に対する配慮がまるでねぇ―――――――!?」

 

 やがて二人が持っていた武器が弾切れとなり、攻撃が終わる。そして攻撃で生じた煙が消えた時立っていたのは一人の少女。

 

「ハァ……ハァ……。ハジメ……」

 

 ユエだった。それを見た首領パッチは

 

「まだ息があったか―――――!!」

「ぎゃああああああ!!」

「えぇ!?」

 

 追撃した。

 一方、ハジメはアルラウネに息があるか確かめる。が、ハジメの心配とは裏腹にアルラウネは完全に息絶えていた。

 それを聞いてふぅ、と安心して息を吐く首領パッチ。しかし危機は終わっていない。

 

「首領パッチ?」

 

 地獄の底から響くような怨嗟の声。その声の正体はさっき追い打ちをかけられたユエだった。ユエは首領パッチに魔法を行使する。

 

「“凍柩„」

 

 ユエが魔法を発動すると、首領パッチの足元が凍りつき、最終的には全身が凍りついてしまう。

 それを見たハジメは迷うことなく逃走を選ぶが、ユエの魔法行使は何よりも早く、ハジメにも同じ魔法が掛けられる。その結果

 

「うわああああああああああ! 電柱になってる――――――――!!」

「何で!?」

 

 ハジメは電柱になった。

 ユエは納得いかず、しばらく電柱になったハジメを蹴り続ける。が、それはまた別の話。



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奥義10 最奥のガーディアン

パロネタを結構入れていますが、オルガとオンドゥル以外反応無くてさみしい……

ひょっとして、伝わってない!?


 アルラウネを倒し、ハジメと首領パッチがユエにキレられてから随分経った。あの後、ハジメが電柱から元に戻るまでユエに蹴られ続けたが、ユエは蹴っていて足が痛くなったのかそれ以上特に何かをすることも無く、そのまま仲直りして迷宮攻略に勤しんでいた。ちなみに天の助は普通に生きていて、しばらくしてからユエと一緒にハジメを攻撃していたが、そっちはパンチで黙らされていた。

 そして遂に、ハジメ達は九十九層にまでたどり着いた。次は百層だからボス戦かな、とハジメ達は話し合う。

 

「なんでボス戦あるって思うんだ?」

 

 蹴りウサギが質問すると、ユエが百層に続く道の入口の少し手前を指差して答える。

 

「ほらあそこ、セーブポイントある」

「セーブポイント!?」

 

 蹴りウサギがユエの指差す先に目を向けると、そこには薄緑に光る真円の上にカタカナのコを少し傾けたようなものと、その下に細長いクリスタルの様な物が浮かんでいた。

 

「うわ、FF7のセーブポイントみたいのが本当にあるよ……」

「でもこれに触れても僕ら全回復しないんだけど」

「ユーザフレンドリーって言葉を知らねえのかよ」

 

 セーブポイントに向かって凄むハジメと天の助。それを見た首領パッチは二人を鼻で笑った。

 

「ハッ、最近のJRPGに毒され過ぎた温いゲーマー共が。そんな奴がいっぱしのゲーマー気取りの口をきくなんて虫唾が走るぜ」

「は? 舐めてんの?」

「オレ等にいっぱしの口きかれたくなかったら、黙らせてみてくださいよセンパァイ……!!」

「あ? テメェ等誰に向かって言ってんだ?」

 

 バカ三人の間で一触触発の空気が張りつめる。その中で悠然とユエは三人に近づき、粛々とただ一言を告げる。

 

「ラウンド1、ファイッ」

「「「おっしゃ―――――――っ!!」」」

「何煽ってんだ――――――――!?」

 

 ユエのコールに応じて殴り合いを始めるハジメ達。蹴りウサギは慌ててそれを止めようとするが、ユエが耳を掴んで阻む。

 

「何で止めるんだよ!?」

「心配しなくていい。あれは彼らなりの気力充実法。ああやって互いの気力を高め合っている」

「そ、そうなのか……?」

 

 半信半疑でハジメ達の様子を見る蹴りウサギ。

 

「打倒ボスキャラ!」

 

 視線の先にはハジメの顔に拳を叩きこむ首領パッチが。

 

「打倒ボスキャラ!!」

 

 首領パッチの顔面を地面に叩きつける天の助が。

 

「打倒ボスニアヘルツェゴビナ!!」

 

 天の助の目を潰すハジメの姿があった。

 

「打倒鴎台高校!!」

「打倒ディアボロ!!」

「打倒鬼舞辻無惨!!」

「バラバラじゃねーか!!」

 

 そしてひたすら殴りあう三人。その勢いで土煙が舞い三人の姿を隠す。

 やがて数分後、殴り合いが終わり煙が晴れた先の三人は

 

「よし……行くよ……」

「あぁ……」

「ハァ……ハァ……」

 

 全身包帯まみれで、フラフラの姿だった。

 

「死にかけてる―――――――――!?」

 

 そんな状況で出発する三人。その後を着いていくユエと蹴りウサギ。

 しばらく歩いていると、三人はなぜか回復し普通に歩いていた。一方、それを見ていた蹴りウサギとユエは別に何かを思う訳でもなくそのまま後ろをついて行く。むしろユエが放ったこの一言の方が蹴りウサギには衝撃だった。

 

「ハジケリストって、常識通じない」

 

 お前もだよ、と蹴りウサギはツッコミを入れたかった。

 そして百層に到着。

 そこは、無数の強大な柱に支えられた広大な空間だった。螺旋模様と木のツルが巻きついたよう彫刻が彫られている巨大な柱が、一定間隔で並んでいる。天井までは三十メートル以上あり、地面は平らで綺麗な物である。どこか荘厳さを感じさせる空間だった。

 ハジメ達は特に警戒する事も無く足を踏み入れる。すると、全ての柱が淡く輝き始めた。柱はハジメ達を起点に奥の方へ順次輝いていく。

 

「ラスボスのフロアみたいだ」

「ぶっちゃけどこかで見たことある」

 

 ハジメとユエが好き勝手に表しながら奥へと進んで行くと、巨大な扉に行き当たる。全長十メートルはある巨大な両開きの扉に、印象的な七角形の頂点に描かれた紋様を筆頭に美しい彫刻が彫られていた。

 そして首領パッチは迷うことなく扉に落書きをしようと走り出し、最後の柱の間を超えると、いきなり扉とハジメ達の間に三十メートル程の巨大な魔法陣が現れた。その魔法陣にハジメは見覚えがあった。自身が奈落に落ちる切っ掛けとなったベヒモスを呼び出したあの魔法陣だ。だがあれは直径十メートル程だったのに対し、目の前の魔法陣は三倍の大きさがある上により複雑だ。

 

「つまり、ベヒモスより強大な魔物が出て来るって訳かな……」

「ヤダ、アタシ怖い!」

「邪魔」

 

 怯えてユエに抱き着く首領パッチを蹴り飛ばす光景を横に、ハジメ達は魔物が現れるのを待つ。

 魔法陣がより強く輝くと、ついに弾けるように光を放つ。

そして光が収まった時現れたのは、体長三十メートル程、それぞれ違う色の紋様を付けた六つの頭に、長い首を持った化け物。例えるならヒュドラだ。

 

「「「「「「クルゥァァアアン!!」」」」」」

 

 六対の瞳がハジメ達を睨み、六つの口が咆哮する。それは侵入者に対する裁きか、ここまで来た探索者への敬意か。

 赤い紋様が刻まれた頭が口を開き、火炎放射を放つ。

 

「「奥義、バカガード」」

「「何ィ――――――!?」」

 

 ハジメは首領パッチを、ユエは天の助を盾に炎を防ぐ。やがて炎が収まると、同時にハジメは首領パッチを投げ飛ばした。

 

「そのまま協力奥義、フレイムバカ爆弾!!」

 

 投げ飛ばされた首領パッチは、赤頭に取りつき、ハジメに向かって語りかける。

 

「さよなら、ハジさん。どうか死なないで……」

 

 その言葉と共に、彼は自爆した。

 辺りに漂う煙は、爆発した事実と威力のすさまじさを物語る。その証拠に、赤頭は影も形も無く消し飛んでいた。

 ハジメは思わず叫ぶ。

 

「首領パッチ――――――――――っ!!」

「何?」

「わあああああああああああああああああ!?」

「じゃあさっき爆発したのは誰だよ!?」

 

 そして後ろから返事が来た。ハジメは驚き、蹴りウサギはツッコミを入れる。

 ツッコミの答えはユエから来た。

 

「ほら見てこれ、バルーンアート」

「さっきの首領パッチバルーンアートだったの!?」

 

 納得がいかない蹴りウサギだったが、とにもかくにもまずは頭を一つ落とせて幸先が良いと思う一同。しかし次の瞬間、白い紋様の入った頭が「クルゥアン!」と叫ぶと、吹き飛ばした筈の赤頭が完全に元通りになった。

 

「あの白頭が回復役か……」

「ならまずはあいつを潰すぜ!」

「分かった」

 

 青い紋様の頭が口から氷の礫を吐きだし、それを回避しながらハジメと天の助とユエは白頭を狙う。

 

「ところてんマグナム!」

「“緋槍”!」

 

 ところてんと燃え盛る槍が白頭に迫るが、その前に二つがぶつかり合う。だがそれは対消滅ではなく、合体である。

 

「「協力奥義、緋槍天マグナム!!」」

 

 燃え盛る槍はところてんを軸に据えることで更に強固と化し、そのまま白頭を貫くはずだった。しかし、その前に黄色の紋様の頭が射線に入り頭を肥大化させ、淡く黄色に輝いたと思ったら緋槍天マグナムを受け止めてしまった。流石に無傷ではないが、その傷も白頭があっさりと治してしまう。

 

「そんな、盾役までいるなんて……」

「ならば次にご飯に詰めて!」

 

 絶望するユエの横で、燃え盛るところてんを弁当に詰めるハジメ。そして新たな奥義を発動する。

 

「納豆真拳奥義、フライング弁当販売!!」

「何その技!?」

 

 ハジメが弁当を投げると、弁当は六つに分裂しそれぞれの口に押し込まれていく。

 

「食え~! 食え~!!」

「中身はご飯と納豆に燃え盛るところてん入りの特製幕の内弁当だ!!」

「微塵も幕の内じゃねえ――――――――――!?」

 

 食べることを強要する天の助と、得意気に眺めるハジメ。しかしヒュドラは押し込められた弁当を全て吐きだし、ハジメ達の元へ返す。

 

「「ギャアアアアアアアア!! 返品ラッシュ―――――――――!!」」

 

 返品された弁当に叩きつけられ、壁までノーバウンドで吹き飛ばされるハジメと天の助。それでもなんてことないように立ち上がり、小さく一言。

 

「「また、食べてもらえなかったか……」」

「何がしたかったんだよ!?」

「オレも続くぜ!」

 

 二人の攻勢に続くために、首領パッチはデュエルディスクを構えデッキに指を置く。

 

「オレのターン、ドロー!」

 

 カードを引く首領パッチ。しかしその瞬間、今まで目立った動きを見せなかった黒い紋様の頭が光る。

 

「IYAAAAAAAAAA!!」

 

 すると首領パッチがいきなり恐怖の叫びを上げ、デッキから手を放し蹲ってしまった。それを見たハジメは慌てて駆け寄ろうとするが、緑の紋様の頭が風刃を無数に放ってくる。

 

「くっ!」

「“凍獄”」

 

 足を止めそうになるハジメ。しかしユエが魔法を発動すると、辺り一面が一瞬で凍結し風刃を防ぐ氷の壁が出来上がった。その壁も赤頭の火炎放射で解かされてしまうが、ハジメが首領パッチの元へ辿り着くには十分だ。

 

「ビスケット!」

「……」

 

 首領パッチの元に辿り着き、必死に呼びかけるハジメ。しかし返事はない。

 

「おい、どうした!? ビスケット!!」

「……」

 

 肩を掴み、必死に揺らしながら呼びかけるハジメ。それでも返事は無い。そして肩はどことか言ってはいけない。

 

「返事をしろ! ビスケットォ!!」

「いや返事しねえだろそりゃ! ビスケットじゃねえもんそいつ!!」

「…………え……」

 

 ハジメの呼びかけに、やっと蹴りウサギのツッコミが入る。しかし首領パッチは蹴りウサギのツッコミを裏切り、何かを言っている。

 

「それ以上……オレの前で……梨穂子と希の侮辱は……許さねえ……」

「誰もそんな話してねえよ!!」

「名瀬の兄貴!」

「そこはビスケットじゃねえのかよ!?」

 

 怒涛の蹴りウサギのツッコミに安心感すら覚えるハジメと首領パッチ。そして首領パッチはポツポツと語り始める。

 なんでも、黒頭が光ったと思ったらいきなり強烈な不安に襲われ、悪夢を見てしまったらしい。

 

「ところでその悪夢って?」

「ああ。大量のバニーガールがオレを持て成してきて、オレはその中心で葉巻を吸ってるんだ」

「どこが悪夢だ―――――――――っ!!」

 

 ハジメは首領パッチを蹴り飛ばし、そのままスタンピングに移行した。

 

「悪夢じゃなかったのかよ! 何だよその夢僕が見たいよ!!」

「見たいのかよ」

「落ち着いてハジメ」

 

 いつの間にかやって来たユエと天の助がハジメを押しとめる。それで落ち着いてハジメは言った。

 

「まあ、それは置いておこう。それより思ったんだけど、そろそろ僕も全力って奴を見せておこうかなって」

「全力?」

「隠し玉でもあんのか?」

 

 疑問を示すユエと天の助。二人にハジメは不敵な笑みで応える。

 

「ああ、首領パッチ達にも見せたことない僕の全力の一端。究極奥義って奴をね。それであいつを倒す!」

 

 果たしてハジメの究極奥義とは?

 その詳細は、待て次回!

 

「ここで引くの?」

「次回もチェケラ!!」

「今時チェケラって使わなくね……?」



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奥義11 本邦初公開。これがハジメの究極奥義!

実はこの話のサブタイトルの本邦初公開の部分、ここでしか見れない! にするアイデアもありました。
が、もしこのSS以外にありふれ×ボーボボのSSができたら詐欺になるのではと考えボツにしました。


「納豆真拳究極奥義、聖納豆遊戯場(ハジメゲームプレイング)!!」

 

 ハジメが究極奥義を発動させると、迷宮の最奥であり柱と扉しかない空間が、一瞬で宇宙、ゲーセン、廃洋館、学校、ピラミッド、クイズ番組会場、剣が刺さった台座のある混沌とした世界に変化した。

 

「なんだよ、この光景……!?」

「ここは僕の作りだした世界。この世界は僕が考えた七つのゲームを実際に体験できるのさ!」

「うわ、凄い不安!」

 

 ハジメの説明に得体のしれない不安を感じてしまう蹴りウサギ。しかしハジメはそんなことを考慮する男では無い。

 

「早速一つ目のゲームを発表するよ! まずはアレだ!!」

 

 そう叫んだハジメが指す先には、バニーガールの格好をしたユエが『ロボットゲーム』と書かれたボードを掲げて立っている。

 

「何でバニー!?」

「コンパニオンと言ったらバニーでしょ」

「…………」

 

 ハジメの言葉は蹴りウサギから返答を奪った。それを横に置いてユエはゲームの説明を始めた。

 

「このゲームは皆が書いたイラストを元に材料を使ってロボを作ることができる。皆も早速書いてみて」

 

 そう言いながらユエは首領パッチと天の助にボードとマジックを渡す。そして五秒後

 

「「出来た!」」

「早っ!?」

 

 二人は書き上げたイラストをユエに渡す。それをユエは洗濯機に叩きこむ。

 

「何で!?」

「こうすることで材料が発表される。そして連コイン連コイン!!」

「洗濯機回す意味は!?」

 

 蹴りウサギの叫びとは裏腹に、連コインで回る洗濯機はロボ作りに必要な材料を欲求する。

 その材料とは、卵、鶏肉、ご飯、タマネギ、だしであった。

 

「これで全部」

「親子丼の材料じゃねーか!!」

「だからこれを洗濯機に入れる」

 

 いつの間にかユエの手には親子丼があり、それをダイレクトで洗濯機に入れた。

 

「完成品そのままいった―――――――!?」

 

 そして五分後、ついにロボは姿を見せる。

 それは巨大な丼にご飯を入れ、上にはだしを効かせた卵とタマネギを乗せたものだった。

 

「玉子丼じゃねーか! 育児放棄かよ親どこ行った!?」

「今うまいこと言った」

「玉子丼だけに」

「クソうぜえなこのタッグ!!」

 

 ツッコミを揶揄してくるハジメとユエにキレる蹴りウサギ。

 その後ろでは、完成したロボのコックピット乗り込み早速発進させる首領パッチと天の助の姿が。

 玉子丼は飛び上がり、ヒュドラの元へ向かう。

 それを見たヒュドラは、炎、風、氷を飛ばして攻撃するが玉子丼にいくら直撃しても怯むことは無い。

 

「無駄無駄無駄ァ!」

「オレらのデザインしたこの『インフィニット・タマゴドン』に、そんな攻撃は素麺みたいなもんだぜ!」

「ロボの名前だせえ!!」

「天の助、アレやれ!」

「おう!!」

 

 首領パッチの言葉に応じて、天の助がコックピットにあるボタンを叩く。すると、タマゴドンから巨大な手が何本も生え、ヒュドラの首を一本一本押さえていく。そして白頭に近づき、タマゴドンに突っ込ませる。そして響いてくるのは「クルゥアン! クルゥアン!!」という白頭の悲鳴と、バキボキと何かが砕ける音。やがて、その音が止みタマゴドンがヒュドラから離れる。

 そこにあったのは、白頭を無くしたヒュドラの姿だった。

 

「玉子丼に白頭食われた――――――――――!!?」

 

 蹴りウサギのツッコミを背に、ゲフッと鳴らしながら首領パッチと天の助を下ろして飛び去っていくタマゴドン。

 

「「タマゴドン少尉に敬礼!」」

「結構階級高いな!?」

「さあ続いてのゲームはこれだ!」

 

 敬礼するバカ二人を無視し、ハジメは再びバニーガールのユエを指す。ユエが持っているボードには『ピンボール』と書かれている。

 

「ピンボール!?」

「フリッパー、セットアップ!!」

 

 ハジメが宣言すると、首領パッチと天の助のハジメから見て手前の位置にフリッパーが出現。そのまま二人を打ち出す。

 

「オラオラオラァ―――――――!!」

「ぎゃああああああああああああ!!」

「ハジメテメ―――――――――!!」

 

 しかし二人はヒュドラに命中するどころか、まるで見当はずれの方向へ飛んで行ってしまう。

 

「ユエ!」

「ん」

 

 それを見たユエはロケットランチャーを構え、二人に向かって発射。その爆風で二人はヒュドラの元へ向かう。

 

「そしてボール追加」

「え?」

 

 更にハジメもフリッパーの前に投げ飛ばされ、打ち出され、ロケットランチャーの後押しにより一気にヒュドラの元へ。

 

「「「「協力奥義、バカルテットシンフォニー!!」」」」

 

 そして三人の突撃とユエのロケットランチャーで、ヒュドラに大ダメージを与えた。

 

「もはやピンボール全く関係ねえ―――――――――――!!」

「そして次はこれだ!」

『ホラーゲーム』

 

 ユエがボードを掲げると同時に、周りの光景が色々混じり合ったカオスから薄汚れた洋館へと変わっていく。

 

「ホラーゲームと言ったら廃洋館。ここでは数多のクリーチャーが集い、人間達を襲う! さあ、この恐怖に耐えられるかな!?」

 

 意気揚揚と高らかに叫ぶハジメ。しかし、この空間には現状、吸血鬼、コンペートーもどき、ところてん、蹴りウサギ、ヒュドラとハジメ以外人間はいなかった。

 それに気付いたハジメは軽く咳払いをしてから、言い直した。

 

「この廃洋館のクリーチャーはヒュドラを襲う!」

「えらく限定的になったな!!」

 

 ハジメの言葉と共に数多のクリーチャー達がヒュドラへ向かう。しかし仮にもボスキャラ、ヒュドラはゾンビ達を炎、氷、風の力で薙ぎ払っていく。この状況を見かねてか、クリーチャーの一匹が声をあげた。

 

「フッ、ここは俺に任せな」

 

 そいつは、トンビだった。

 

「ゾンビじゃねーのかよ!?」

 

 飛び出したトンビは、巧みな飛行でヒュドラの攻撃を躱しつつ、一方的にダメージを与えていく。

 

「トンビレーザー! トンビキャノン! トンビーム!」

「トンビ要素どこにもねえ!! トンビームって何だよ!?

「フッ、トンビ要素ならあるさ。俺の見た目だ」

「もはや見た目トンビの破壊兵器だろ!」

「虫型メカって、近未来系ゲームのザコキャラにいそう」

 

 蹴りウサギのツッコミに対し、適当な感想を述べるユエ。それらを差し置いて奥義は次のステージに進んで行く。

 

「お次はこれだ!」

『恋愛シミュレーション』

 

 ユエがボードを掲げたと同時に、ハジメは黒を基調とした軍服に着替え、詠唱を開始した。

 

Wo war ich(かつて何処かで) schon einmal und(そしてこれほど) war so selig(幸福だったことがあるだろうか)

 Ich war ein Bub’,da hab’ ich die noch nicht gekannt.(幼い私はまだあなたを知らなかった)

 Wer bin den ich?(いったい私は誰なのだろう) Wie komm’denn ich zu ihr?(いったいどうして) Wie kommt den sie zu mir?(私はあなたの許に来たのだろう)

 Sophie, Welken Sie(ゆえに恋人よ 枯れ落ちろ)

 Show a Corpse(死骸を晒せ)

 Briah(創造)

 Der Rosenkavalier Schwarzwald(死森の薔薇騎士)

 

 ハジメが詠唱を終えると同時に、辺りを闇が包んだかと誰もが思う。だがすぐに空に月明かりが灯り、周りを照らす。そこにあるのは確かな安心感。

 ただ一つ不安を与えるところは、その月に恐ろしい顔が浮かんでいることだろう。

 

「何で月に顔あるんだよ!?」

「堕ちろ――」

 

 そして月はハジメの言葉に応じて地上に落ちて行き、最後にはヒュドラを押しつぶした。

 

「奥義、フォールザムーン」

「攻撃のスケール超でけえ――――――――――!!」

 

 しばらくするとヒュドラを押しつぶしていた月は空に戻り、それに伴ってハジメも元の服装に着替え直す。

 

「さて、次のゲームは――」

「それはオレの役目だ――――――――――!!」

「ぐばぁ!!」

「何か飛んできた!?」

 

 ハジメが次のゲームに移行しようとしたとき、なぜか天の助が飛んできてハジメをクロスチョップで吹き飛ばす。

 

「そして次のゲームはこれだ!!」

 

 天の助が叫ぶと、ユエの代わりにバニーガールと化した首領パッチがボードを掲げる。なお、ユエは縛られて動けない。

 

「はぁーい、ここからはユエに変わりましてバニーガールのパチ美がお送りしまーす」

「いつの間にか変わってる!?」

「やめて。私に乱暴するんでしょう! エロ同人みたいに! エロ同人みたいに!!」

「エロ同人言うな」

 

 妄言を吐いているユエを無視して、首領パッチは『ぬ献上ゲーム3』と書かれたボードを掲げた。

 

「何だよぬ献上ゲームって!?」

「説明しましょう。ぬ献上ゲームとはを」

 

 蹴りウサギの要望に応え、天の助が説明を始めた。

 ぬ献上ゲームとは、空から降ってくるぬをキャッチし、ピラミッドの上に居る天の助様に献上するゲームである。

 この時、一緒に落ちてくるねをキャッチしてはいけない。

 

「うわー、つまんなそう……」

 

 さらに3のみの追加要素として、対戦要素がある。これは、1Pを左、2Pを右に置き左右で対戦が出来る用になった。

 

「これで真のぬ王を決められるのだ!」

「ぬ王って何だよ」

 

 いつの間にか生えたピラミッドの頂上で、ふんぞり返っている天の助に蹴りウサギが白い目を向ける中、1P側にハジメが、2P側にヒュドラが構える。そして決戦が始まった。

 しかし勝負は一方的だった。

 五つの首を持ち、それらをフル活用することで効率的にぬを献上し続けるヒュドラ。さらにヒュドラ本体の巨体を生かし、ピラミッドを登ることなくぬを渡し続けられるのだ。これではいくらハジメのスペックが凄くても勝ち目は無い。

 そのまま逆転劇もなく、順当にヒュドラが勝利した。

 

「おめでとうヒュドラ君。これはぬ王の証だ」

 

 そう言って天の助はヒュドラに、ぬのハチマキとぬのハンカチを渡した。

 ヒュドラはキレて、天の助とハジメに何も言うこと無く攻撃した。

 

「ぐわあああああああああああああ!!」

「何で僕まで!?」

「そして次はこれだ!!」

 

 バニー首領パッチが宣言し、そのまま『クイズゲーム』と書かれたボードを掲げる。その瞬間、クイズ番組のセットが出現し、天の助、ハジメ、ヒュドラの順で解答席に並んだ。そして首領パッチとユエは司会者の立ち位置になっていた。

 そのままユエが問題を読み始める。

 

「早押しクイズです。問題――」

 

 ピンポン、と問題が読まれる前にハジメがボタンを押す。

 

「ハジメ、正解は?」

「越後○菓ぁ!!」

「不正解。じゃあ改めて問題を読むね」

「正直そのネタは来ると思ってたけど、ユエの対応が予想以上に冷てえ……」

 

 ユエのハジメへの対応に蹴りウサギが少しだけ同情しているが、誰も気には留めず話は進んで行く。

 

「問題。不思議の国のアリスの作者名は?」

 

 今度は問題が読み終わった刹那、ピンポンと天の助がボタンの音を鳴らす。

 

「天の助、答えを」

「グリム兄弟!」

「残念。違う」

「嘘だろ!?」

 

 外したことにショックを受け、その場に膝を付く天の助。それを見下しながら今度はヒュドラがボタンを押した。

 

「ヒュドラ、答えを」

「クルゥアン!(ルイス・キャロル!)」

「正解」

「クルゥアン!(やった!)」

「やるじゃねえか!」

「おめでとう。正解したヒュドラには――」

 

 そう言いながらユエは懐をゴソゴソと漁り、目的のものをヒュドラに差し出す。

 

「賞品として、サバ缶二つ」

「ショボッ!?」

「そして回答が一番つまらなかったハジメには、首領パッチから罰ゲーム」

「ああ。オレのターン、ドロー」

 

 ユエに応じてカードを引く首領パッチ。そしてそのまま魔法カードを発動した。

 

「オレは魔法カード、死者蘇生を発動! 来い、究極竜騎士(マスターオブドラゴンナイト)!!」

 

 首領パッチが呼び出したモンスターは、白き体に青き眼を持つ三ツ首の竜の上に、決闘王(デュエルキング)が従える混沌の戦士を乗せた遊戯王で最も高い固定ステータスを持つ最強のモンスターである。

 

究極竜騎士(マスターオブドラゴンナイト)の攻撃、ギャラクシー・クラッシャー!!」

 

 竜にある三つの口と、戦士の持つ剣から出るビームは、やがて一つに混じり合い最強の攻撃としてハジメを襲う。

 だが、その攻撃は強すぎた。攻撃はハジメだけに留まらず、横に居た天の助とヒュドラも巻き添えにし究極竜騎士(マスターオブドラゴンナイト)の強さを示している。

 

「「ぎゃああああああああああああああああああ!!」」

「全員喰らってる――――――――――!?」

「そしてラストはコレだ!!」

『ロールプレイングゲーム』

 

 首領パッチがボードを掲げたと同時に、世界はハジメが最初に造った光景に戻る。そしてこの世界にあった剣が刺さった台座の横には、創造主たるハジメの姿が。

 

「トドメは僕が貰う!」

 

 その言葉と共に、ハジメは剣を台座から引き抜いた。

 その剣は毀れ一つ無く、松明を幾本も集めたかのような輝きを放つ剣だった。まるでかの聖剣のようだ。

 

「納豆真拳超奥義、エクス……」

 

 ハジメは剣を構えながら、ヒュドラに向かって飛びかかる。

 一方のヒュドラは、いままで受けたダメージが積み重なり動く事も出来ずただ最期の時を待つばかり。

 

「カリ―――――――――――!!」

「パチモンじゃねーか!!」

 

 ハジメは剣を振り下ろし、ヒュドラは正しく一刀両断された。

 両断されたヒュドラの死体は、そのまま左右に別れて倒れ伏す。まるでハジメ達に道を開けるかのように。

 

「決着ゥ―――――――――――――――――!!」

 

 そしてハジメは叫ぶのだった。



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奥義12 実質一択の選択肢

今回は締めということで、ハジケ控えめ文字数も少なめです。


 ヒュドラが倒れると同時に扉が開き、中に入るとるとそこはまるで別世界だった。

 闇が支配していた今までと異なり、空には太陽に似た輝く球体が辺りを照らし、奥の壁は一面が滝となっていた。近くには何も植えられていないが畑もある。

 

「とりあえずおしるこでもまくか」

「何で!?」

 

 首領パッチが畑におしるこをまき始めた。その畑の反対側にはベッドルームがあり、奥には岩壁を加工した住居がある。

 ハジメ達四人は首領パッチを放っておいて住居を調べることにした。

 一階には誰もいない台所、リビング、トイレが。奥に進むと巨大な温泉があった。

 

「「わーい、お風呂だ―!」」

 

 風呂を見つけたハジメと天の助は、魂に染みついた習性か迷うことなく服を脱いで飛び込む。

 

「おあちゃああああああああ!!」

 

 そしてハジメは一秒もかからず出てきた。

 よく見ると風呂は沸騰しており、まともな人間なら火傷は免れないだろう。

 

「いや入る前に気付けよ!!」

 

 そんな風呂に入ってしまった天の助は

 

「溶けてまーす」

「うわグロッ……」

「さながら昼ドラみたいにドロドロ」

「いや助けてやれよ!?」

 

 とりあえず天の助を助けてから二階に上がる四人。そこで書斎や工房らしき部屋を発見するも、封印されているのか開けることはできない。

 

「これはイベント見てからじゃないと開かないタイプの扉」

「あー、あるある」

「どうでもいいけどゲーム脳で行動するのやめね?」

 

 という会話をしながら今度は三階へ。三回は一部屋しかなく、奥にある扉を開けると直径七、八メートル程の精密な魔法陣が部屋の中央に刻まれている。

 そしてその魔法陣の向こう側には、ローブを纏い白骨化した誰かの死体がある。

 だがそれよりも注目すべきなのは、魔法陣の中に居る

 

「おー、遅かったなお前ら」

「何でお前居るんだよ!?」

 

 首領パッチの姿。首領パッチは魔法陣の中心でラジコンを走らせながら遊んでいる。それを見た四人は、魔法陣には何の仕掛けもないと無警戒に首領パッチに近寄る。

 そして魔法陣の中に入った瞬間、純白の光が部屋を染め上げる。

 

「どうなってんだよこれ!? 何で首領パッチが居るのに反応しなかったんだこの魔法陣!?」

「おそらくこの部屋に入ってから魔法陣を踏まないと発動しないシステムだった」

「つまりバグでこの部屋に入ったら、一旦部屋に出てから入り直さないとイベントが発生しないってことか」

「リアルタイムアタックでもやってんのかお前ら!?」

 

 蹴りウサギがハジメとユエにキレたと同時に光は収まり、五人が視界を取り戻すと目の前に黒衣の青年が立っていた。

 黒衣の青年は話しはじめる。

 

「試練を乗り越えよくたどり着いた。私の名はオスカー・オルクス。この迷宮を創った者だ。反逆者と言えば分かるかな?」

「は?」

「何それ?」

「知らねえぞ?」

 

 そしていきなり躓いた。見かねたユエが反逆者について説明する。

 曰く、神代に神に反逆し世界を滅ぼそうとした七人の眷属が居たそうだ。しかし、その目論見は破られ世界の果てへ逃げ出したとか。

 

 だがユエの説明と、これからオスカーが話す内容は大きく異なっていた。

 オスカーは自らを解放者と名乗り、話しはじめる。

 彼の言葉によれば、この世界の戦争は神の遊戯として産み出されたものらしい。

 それに気づいた解放者達は、人を神から解放しようと神を殺そうと画策した。

 が、神々は人々を扇動し解放者は反逆者として追い詰められた。

 最後に残ったのは中心の七人だけだった。彼らは自分達では神を討てないと判断し、それぞれ迷宮を創り、それを突破した強者に自分達の力を譲り未来への希望を残した。

 

「そしてもう一つの希望、ハジケリストについても話をしておこう」

「ハジケリストだって!?」

「この世界にもハジメみたいなのがいるの?」

「ユエとかいるじゃねえか」

「え? 私ハジケリストの分類なの?」

「むしろそれ以外の何なんだよお前は!?」

 

 蹴りウサギの叫びなど無いかのように、オスカーはハジケリストについて話しはじめる。

 ある時、オスカー達は異世界からやってきたハジケリストと名乗る謎の男と出会う。謎の力で魔物などを倒していく様に、オスカー達は希望を見た。

 が、ある時彼は帰る方法を見つけたと自分の世界へ帰ってしまう。その前にハジケリストとは何かを教えてくれと頼むオスカー達だったが、彼は言葉で説明できるものじゃない、今までの振る舞いを見て判断しろ、とだけ言って去ってしまう。

 唯一、仲間のミレディだけはハジケを何となく理解していたようだったが、他の誰も理解できず、結局戦力には出来なかったらしい。

 だからもし、そのハジケリストと出会うことがあればこう言ってほしい。

 

「君のこれからが自由な意思の下にあらんことを」

 

 そう話を締めくくり、オスカーの姿は消えた。

 それと同時に神代の魔法である、生成魔法を覚えた。使う機会があるかは知らないが。

 

「シ、シリアスが……長い……」

「死ぬ! 死んでしまうぞ天寿郎!」

「うるせえよ!!」

「何か、色々ととんでもないことを聞いちゃったな……」

 

 ハジケ不足で死にかけているバカ二人を脇に追いやって、ハジメは小さく呟く。

 

「ん、ハジメはどうするの?」

「そんなの決まってるよ」

 

 オスカーの話を聞いてどうするのか尋ねてくるユエに、ハジメ、否ハジメ達は迷うことなく返答する。

 

「「「神々をぶっ殺すさ」」」

(そうすれば、僕はモテモテのハーレムライフを過ごせるかもしれない!!)

(オレが主人公! やることなすこと全て肯定されるなろう主人公になるんだ!!)

(オレが新たなる神となり、ところてんを主食にする!!)

「お前ら我欲しかねえのかよ!!」

「まあそれはそれとして、二人はどうするの? 僕らについてくる?」

 

 バカ三人の薄汚い内心にツッコミを入れる蹴りウサギ。

 それを無視してハジメは、ユエと蹴りウサギに尋ねた。

 

「私は当然ついて行く。ただし蹴りウサギ、あなたはダメ」

「俺なんかした? いや、ついて行くつもりはなかったけどさ。怖いし」

 

 蹴りウサギの問いかけに、ユエは血の涙を流しながら、怨嗟を纏った声で答える。

 

「私のヒロインの座は、誰にも渡さない……!!」

「その顔と言動が既にヒロインじゃねえよ」

 

 ユエの血を吐く叫びをスルーした蹴りウサギは、オスカーの遺体を運び出そうとしているバカ三人の姿を見た。

 

「何してんだ?」

「それ畑の肥料にでもするの?」

「やだユエったら非道!」

「鬼! 悪魔!」

「破壊神!」

「破壊神!?」

「……傷つく」

 

 バカ三人の言動に落ち込むユエ。

 そうこうしながら一行は二階まで降りるが、そこでユエが引き留める。

 

「ちょっと待って」

「どうしたのユエ?」

「ちょっとそれ貸して」

 

 そう言ってオスカーの指にあった指輪を引き抜くユエ。しかし抜き方が乱暴だったせいか、そのまま手首から先が地面に落ちてしまう。

 

「あ、取れた」

「うわあああああああああああああ!!」

「アメ撒いとけばチャラ!」

「東京バナナ食べて下さーい!!」

「死体が食ったら怖えーよ!!」

 

 慌てふためくバカ三人。一方ユエは、封印されている扉に指輪を近づける。すると封印は解け、扉が開くようになった。

 

「やっぱり。この指輪がここの封印を解く鍵。ならこれは一緒に埋めるわけにはいかない」

「いやこっち手伝えよ!?」

 

 一人納得しているユエにキレる蹴りウサギ。

 その後、オスカーを埋められる場所がここしかないということで畑の隅に埋め、簡素ではあるが墓を作った。

 そして封印を解いた先にある書斎で脱出方法を知ったり、工房で宝物庫というドラえ○んのポケットの様なアーティファクトを手に入れたりした。

 後はまあ、なんやかんやあって二日後。

 

「雑だな説明!!」

 

 遂にハジメ達は、地上に向けて出発することにした。

 それぞれ蹴りウサギに向かって別れの言葉を告げている。

 

「ツッコミありがとうね」

「次はところてん食えよ」

「ヒロインの座は渡さないけど、いい友達になれたと思ってる」

「未来で会おう。イタリアで……」

「どこだよイタリア!?」

 

 その言葉を最後に、ハジメ達はオルクス大迷宮を脱出した。

 これは、世界を解き放つ物語である。

 

「という感じで締めたらイケてない?」

「格好いい。解き放つというのもハジケリストにかかってる」

「台無しじゃねーか!!」

 

 転移した筈なのに、蹴りウサギのツッコミが聞こえてきた。



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第2章 森、兎、ライセンにて。 奥義13 新たなるツッコミ! 奴の名はシア!!

ほぼ一か月ぶりなので前回までのあらすじ


オスカー「頼む……倒してくれ……。エヒトを……、トータス人とハジケリストの手で……」
ハジメ「オラにも分けてもらうぞ。その誇り……」

大体こんな感じだった。


ユエ「大体あってる」



 オルクス大迷宮を脱出したハジメ達の目に映った光景は、洞窟だった。

 

「なぜだ」

「普通に考えて秘密の通路は隠す」

「「確かに」」

 

 ハジメの疑問にユエが答え、それに首領パッチと天の助が賛同する。

 とはいえ日の光を浴びられると思ったらまだ洞窟なので、全員テンションが低い。のでブーブー言いながら洞窟を脱出する。

 そしてついに、ハジメ達にとっては一か月ぶりの、ユエにとっては三百年ぶりの太陽を一身に浴びる。

 

復活(リ・ボーン)! 戻って来たぞ僕ゥ!」

「三百年だ……もう休暇は十分楽しんだよ私……!!」

 

 久方ぶりの太陽にテンションを上げるハジメとユエ。

 

「「ぐわああああああああああああああああ!!」」

 

 その後ろで、闇の中に居る期間が長かったせいか闇の者と化した首領パッチと天の助が、太陽の光で浄化されかかっていた。

 

「大変だ! 納豆真拳奥義、闇エネルギー注入!!」

 

 慌ててハジメは大量の泥を、首領パッチと天の助にぶちまけて事なきを得た。

 

「何ゆえもがき、生きるのか? 滅びこそ我が喜び。死にゆく者こそ美しい。さあ、我が腕の中で息絶えるがよい!」

「オレが……、食品としてあるまじき姿に……」

「元とそんなに変わらない」

「え!?」

「んなことより、ここは一体どこなんだよ?」

 

 泥を浴びたこととユエの発言にショックを受ける天の助を尻目に、ゾー○と化し身長がハジメの二倍くらいになった首領パッチがもっともな疑問を抱く。その質問に答えようとハジメが少し頭をひねり、すぐに答えを出した。

 

「ここは、ライセン大峡谷だ」

 

 【ライセン大峡谷】

 そこは、西にあるグリューエンド大砂漠から東のハルツィナ樹海まで大陸を南部に分断する巨大な峡谷である。断崖の下はほとんど魔法が使えず、強力にして凶悪な魔物が多数生息する、地上の人間にとっては処刑所の同義の地獄。

 

「って前に読んだ本に書いてた」

「ちょっとー、マジヤバくなーい?」

「多分オルクスよりはましだと思う」

「でもこんな所長く居たくねーぞ」

「僕もそう思うにゃわん。じゃあ、樹海と砂漠のどっちに行く?」

 

 ハジメの質問に、首領パッチは化粧をしながら即答した。

 

「当然樹海よ! だって砂漠なんて行ったら化粧が乱れちゃうじゃない!!」

「オレも嫌だな。溶けそうだし」

「じゃ、樹海で。ユエもそれでいい?」

「ん」

 

 こうしてハジメ達は樹海へ向かうことになった。しかしその前に

 

「いい加減ゾ○マサイズの首領パッチがウザいから光の力で戻そ」

 

 と言ってハジメは虫眼鏡を太陽に向け、光を集めて首領パッチに当てた。

 

「熱っ!」

 

 こうして首領パッチは○ーマから元の姿に戻り、一行は出発した。三輪車で。

 

 

 ライセン大峡谷は基本的に東西に真っ直ぐ伸びた断崖なので、脇道は殆どなく道なりに進めば迷うことなく樹海へ辿り着ける。

 その為ハジメ達は全力で三輪車を漕ぎ、前に進み続ける。

 しばらく進んでいると、大型の魔物が現れた。かつて見たティラノモドキに似ているが、頭が二つある。双頭のティラノモドキだ。

 しかし真に注目すべきは、双頭ティラノではない。その足元で半泣きになりながら逃げ惑うウサミミ少女だ。

 

「兎人族?」

「何でこんな所にいるの?」

「とりあえず助けてから話聞くか」

 

 ハジメとユエが疑問の声を出す中、天の助はウサミミ少女を助けようと走り出す。すると、向こうも天の助に気付いたのかこっちに向かって泣きながら走ってきた。

 

「だずげでぐだざーい! お願いじまずぅ~!」

 

 泣き叫ぶウサミミ少女。彼女は助かったと安堵する。が、目の前にいる相手はそんなにまともな奴らでは無い。

 天の助とウサミミ少女の距離が近づき、ウサミミ少女の姿が鮮明になった途端、天の助はオカンみたいな服を着て

 

「なんて恰好してるのアンタは――――っ!!」

 

 といきなり怒りだした。

 

「えぇ!?」

 

 ウサミミ少女は驚くが、天の助が怒る理由は彼女の格好にある。

 彼女は、双頭ティラノに襲われたためか服がボロボロで、見えてはいけない場所すら見えそうになってしまっている。が、仮にボロボロでなかったとしても、上半身は水着のビキニの様な服に、下半身はミニスカートという中々露出度の高い格好である。

 そんな服装にオカンと化した天の助は怒りを覚えたのだ。

 

「年頃の乙女がそんな肌を露出するもんじゃないの! ホラ、このぬの腹巻付けて!」

「嫌ですよそんな腹巻!!」

 

 ぬの文字が書かれた腹巻を付けさせようとする天の助と、それを拒絶するウサミミ少女はもみ合う。一方、その後ろから双頭ティラノは変わらずシアを狙って追いかけてきていた。

 

「しょうがない。私が行く」

 

 見てられなくなったユエが三輪車を降りて、双頭ティラノを倒そうと適当な魔法を行使しようとする。

 ところで、このライセン大峡谷。魔法を使おうとすると、魔力が分解されるという難儀な場所である。そしてユエはその事実を知らず、違和感を覚えながらもいつも通りに魔力を篭めた。その結果。

 

「…………」

 

 緋愴を使おうとしたが、魔力が分解され初級魔法レベルにまで威力が低下し、もはやたき火レベルの火力となって双頭ティラノに命中する。当然、そんな攻撃に双頭ティラノはビクともしない。

 

「え、えぇ……?」

 

 ウサミミ少女の戸惑いの声が辺りに響く。自分を助けようとしてくれたとはいえ、結果何の効果を生み出していない魔法を目の前で行使されては仕方ないかもしれない。

 

「奥義、ウナギフレイム」

 

 ので、ユエは持っていたウナギに火を吐かせることで誤魔化した。

 

「誤魔化せてませんよ!?」

「おっしゃー! トドメはオレに任せろ!!」

 

 ユエの攻撃を見て、今度は首領パッチがデュエルディスクを構えデッキに指を置く。

 

「オレのターン、ドロー! メインステップ! オレは双魚賊神ピスケガレオンを召喚!!」

「遊戯王かと思ったらバト○ピ始まりましたけど!?」

「双魚賊神ピスケガレオン、サーガブレイヴでは活躍できるといいね」

「不足コストはブレイドラとブレイドラとブレイドラから確保!!」

「ブレイドラ多すぎません!?」

 

 首領パッチの宣言でソウルコアが無くなり、ブレイドラ三体はトラッシュに送られる。そして現れるのは、深海魚と海賊船を合わせた様な外見をしている神の力を持つカードのうち一枚。

 双頭のティラノごときが敵う訳もなく、ティラノはあっさりその命を散らした。

 

「大丈夫?」

 

 キコキコと三輪車を漕ぎながら、ハジメがウサミミ少女を心配して彼女に近づいていく。

 一方、ウサミミ少女はそのティラノの死体を見て、希望を見つけたような目をしながらハジメ達にこう言った。

 

「助けて頂きありがとうございます! 私は兎人族ハウリアの長の娘、シア・ハウリアと言います! いきなりですが私の仲間を助けて下さい!!」

「意外と図々しいなこいつ」

 

 シアの突然の発言に思わず非難的な口調を向ける天の助。だが首領パッチもユエもそりゃそうじゃ、とオー○ド博士のコスプレをしながら頷く。

 

「いや図々しいのは認めますけど! でもコスプレの意味は!?」

「無い」

「!?」

 

 しかしハジメは、シアの露出している部分を無言でチラチラと見ている。このハジメ、意外と青少年らしい欲求がある。が、それをあからさまに表に出したりはしない。

 

「ま、まあまずは落ち着いて誕生日ケーキでも食べなよ」

「何でいきなり誕生日ケーキ!?」

「ユエが持ってるウナギさんが誕生日だから」

「ウナギの誕生日!? というかさん付け!?」

 

 怒涛の勢いでツッコミを入れるシア。一方、急に話題の矛先を向けられたウナギは首を横に振ってからこう言った。

 

「いや、おいは誕生日じゃなか」

「食えやコラァ!! このケーキ日持ちしないんだよ!!」

 

 ハジメに無理矢理ケーキを押しこめられ、苦しみながらもそれを食べきるウナギ。

 するとなんということでしょう。ケーキのあまりの美味しさにウナギは背中に翼が生え、それを使ってどこかへ去っていく。

 

「飛んだ――――――――――――!?」

「ありがとうウナギさん……」

「ウナギ様……」

「ウナギ閣下……」

「どんどん階級が上がっていきますね!?」

 

 上からユエ、天の助、首領パッチの順にウナギを見送る一同。やがてウナギが見えなくなったと同時に、ハジメが三輪車から降りてシアに問いかけた。

 

「で、仲間を助けて欲しいってどういうこと?」

「ここで話題戻るんですか!?」

「早く話さないと話が進まない」

「……はい」

 

 どこか釈然としないものの、シアは極力簡潔に話すことにした。

 

 

 シア達兎人族は、ハルツィナ樹海で数百人規模の集落を作ってひっそり暮らしていたよ。

 そんな兎人族の一つ、ハウリア族にある日魔力を持ち直接魔力を操る術と、固有魔法が使える女の子が生まれたよ。

 魔物と同じ力を持っているのが亜人族の国、フェアベルゲンにバレると迫害どころか処刑されるから、ハウリア総出で女の子を隠してたけど十六年経ってから見つかっちゃったよ。

 だからハウリア一族は樹海から出て北の山脈を目指したけど、ハイリヒ王国の同盟国、ヘルシャー帝国の兵士に見つかっちゃったよ。

 帝国は完全実力主義で、弱い亜人族を捕まえては奴隷にしているよ。

 全滅を避ける為に、ここまで帝国は追ってこないだろうと考えて、一か八か魔法が使えないライセン大峡谷に逃げてきたよ。

 でも帝国の奴らずっと入口に陣取って待ち構えてるし、峡谷の魔物もこっち狙って来るしもう大ピンチ!

 このままじゃ全滅必至! プリーズヘルプミー!!

 

 

「……という感じです」

「「「話長え……」」」

「うわっ、露骨にやる気無い! お願いします。助けてくれたら私が何でもしますから!」

「……え?」

 

 何でもするという言葉に若干心が揺れるハジメ。

 

 ドパンドパンドパン

 

 しかし、ユエに希望の花を咲かせられることでハジメは馬鹿な考えを持てなくなった。

 

「だからよ、止まるんじゃねえぞ……」

「色香に迷わないでハジメ」

「すっかりこのSSの定番ネタとなったオルガ」

「巨乳のウサミミ美少女に翻弄されるエルフのハジメ」

「エルフなんですかその人!?」

「ソクラテ○ラ式遊戯王やめて」

 

 とりあえずハジメが黙った所で、代表してユエが話を進めることになった。

 

「まあ、あなた達を助けてあげてもいい」

「本当ですか!?」

「でもタダじゃない」

「と、言いますと?」

 

 シアが疑問を訴えると、ユエではなく首領パッチがドヤ顔で答えた。

 

「ククク、勿論この私にイケメンハウリアで構成されたホストクラブ会員権を……」

 

 首領パッチの妄言、それをユエは首領パッチの顔に手をかざし

 

「破壊」

「あああああああああああああああああああああ!!」

 

 破壊し、塵一つ残さず消滅させることで妨げた。

 

「ザマパッチ―――――――――――――!!」

「破壊された―――――――――――――!?」

「フフフ、神は不滅だ」

「僕は……、Z団団長ハジメ・イツカだぞ……! これくらいなんてことは無い!!」

「生き返ってる!?」

 

 撃たれたり消滅した筈の存在が普通に喋っているという事実に、ちょっとついて行けないシア。しかしユエは構わず話を進める。

 

「シア、私達があなた達を助ける代わりに、ハウリアには樹海の道案内を頼みたい」

「そんなことなら勿論お引き受けします! よろしくお願いします!!」

 

 こうして、ハジメ達はシア達を助けることになった。という所でシアから質問。

 

「ところで、皆さんのお名前は……?」

「そういえば名乗ってなかったね」

 

 そういう訳で自己紹介。

 

「地獄からの使者、南雲ハジメ!」

「オレは、(スーパー)パチータだ」

『混沌よりも這いよるハジケリスト、とこ川禊。よろしく仲良くして下さいっ!』

「童貞十三騎士団馬鹿円卓第十三位、ユーエスエー・ニャクタロウ・ハジケニウム」

「統一感ありませんねこのメンツ!?」




次回更新は来週です。


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奥義14 バカとハウリアと帝国兵

いよいよ今夜、アニメありふれの一話が放送されますね。
いろんな意味でワクワクしています。


「シアの家族を助ける前に、言っておくことがある」

「何でしょう?」

 

 シアの家族を助ける為、まずは家族の元へ行くことになったハジメ達。しかし、出発前になって急にユエが神妙な顔で何か話しはじめる。ユエに合わせ、シア達も真剣な表情で耳を傾けた。

 

「私の服装、まったく描写されてないけどぬのパジャマから着替えてるから! 今は原作二巻以降、アニメキービジュアルの服装になってるから!!」

「いきなりどうしました!?」

「そして僕は原作序盤で来ていた学生服だよ」

「原作で着ていたあの黒コートは!?」

「黒髪であんなの着こなせるのキリトさんだけだし……」

「「そしてオレ達はいつもどおりだ」」

「服着てないじゃないですか!!」

「じゃあぬのスーツを着よう」

「あたいはセーラー服を」

「着てどうなるんですか!?」

 

 


 

 

【めきめきハジケハイスクール  第一話 恋の始まり】

 

「何か始まったですぅ!?」

 

 はぁ~い、あたいパチ江。どこにでもいるごく普通の女子高生! あたいは今、彼ピッピと付き合ってるの。その彼氏は

 

「やあ、パチ江君。今日も元気だね」

 

 ぬのスーツを着こなす天の助先生。天の助先生は、とっても人気があるイケメンところてん先生なの。え? 何でそんな人と普通のあたいが付き合ってるのかって? それはね――

 

「ところでパチ江君、今月の茄子奉納はまだかね?」

 

 先生の大好きな茄子を毎月奉納してるから! だから今日、その秋茄子を持ってきてたんだけど……。

 

「ごめんなさい先生! 今月の茄子、学校に行く途中飢えている沼の主がいたからあげちゃったの! お願い、明日持ってくるから!」

「ならば貴様に用など無い」

 

 そう言って天の助先生は懐から呪いのナイフ、ナスリッパーを取り出しあたいに向ける。

 

「せ、先生やめて下さい!」

「私と付き合いたい女子などいくらでもいるのだよ。次はそうだな、あの鯖味噌君にしよう。彼女ならいい茄子を持ってきて来るだろうさ」

「いやああああああああああああああああ!!」

 

 先生のナスリッパーがあたいに振り下ろされそうになり、あたいが思わず目を閉じたまさにその刹那

 

 ガシッ

 

 という音が聞こえ、目を開けるとそこには今朝茄子を渡した沼の主、サーベルタイガーがナスリッパーを止めている姿が。

 

「沼の主さん!」

「パチ江さんに手を出すな!」

「ぐわあああああああああああああ!!」

 

 天の助先生のナスリッパーを巧みに奪い取り、そのまま先生の喉笛を躊躇なく掻っ切る沼の主さん。

 その瞬間あたいは気付いたの。あたい、新しい恋をしてるって……。

 魅了持ち産業廃棄物の天の助先生に恋するあたいはもういない。

 今のあたいは、沼の主サーベルタイガーに恋する女子高生、パチ江!!

 

【めきめきハジケハイスクール 第一話 恋の始まり 終】

 

 


 

 

「何だったんですか今の話!?」

「シア行くよ」

 

 突然始まった寸劇にツッコミを入れるシアに、ユエが救急車の運転席に乗り込みながら話しかける。その救急車どこから持ってきたんですか、とシアは言おうかと思ったが、さっきから理解不能の事態が立て続けに起こっているので面倒くさかった。ので黙って救急車に乗り込んだ。

 そしていざ出発となった段階でユエが一言。

 

「ハジメ、運転代わって。足がアクセルに届かない」

「それ乗る前に気付きませんか!?」

「気付かなかった!!」

「」

 

 あまりにもはっきりと断言され、シアは何も言えない。

 そんな空気の中、ハジメの運転で救急車は出発した。

 

 

「ヒャッハー! 道を開けろ雑魚モンスター共!!」

「馬鹿な……、邪神が二体だと!?」

 

 天の助が慄く中、ハジメが駆る消防車と首領パッチが召喚した邪神ドレット・ルートと邪神アバターがライセン大峡谷のモンスターを阿鼻叫喚の地獄に叩きこむ。

 片や未知の異世界の機械、片や圧倒的な力を持つ邪神が二柱。モンスターが恐怖で逃げ惑うには十分だろう。

 しかし彼らは処刑と同義の地獄の住人。そう簡単に引くことは許されない。

 だがその蛮勇の代償は、死という形で彼らを襲い続けた。

 

「というか乗り物変わってる―――――!?」

 

 そしてそのままハウリア達が逃げ惑う中に突入。ハイベリアというワイバーンみたいなモンスターに襲われ、彼らが悲嘆に暮れる中突如現れた消防車と邪神二柱はさながら嵐の様だ。

 ハウリアの子供を襲いかけたハイベリアを轢き殺し、ユエと天の助は消防士のコスプレをして外に飛び出す。

 

「火事はどこだ?」

「あそこです、隊長」

 

 ユエが指差す先には、芋を焼いている首領パッチの姿が。

 

「何だ?」

 

 天の助は迷うことなくウォーターカッターを用意し、首領パッチとその後ろに居たハイベリアをついでに切り刻む。

 

「ウォーターカッターの時点で火を消す気ありませんよね!?」

 

 しかしハイベリアは未だ数匹残っている。だがその残りも

 

「納豆真拳奥義、マーメイドイン豆井戸!!」

 

 ハジメによって掃討される。

 その光景を見たハウリア達は思った。さっきシアの声が聞こえた。それに今、この人達はハイベリアを倒し、私達を助けてくれた。つまり、この人達はハウリアを助ける為にシアが呼んでくれたのでは?

 そう考えたハウリア達はハジメの元へ集う。

 

「おお、助けてくれたのですね!」

「ありがとうございます!」

「お礼に我らの尻尾をもふもふさせてあげます!」

「納豆真拳奥義、シベリア鉄道納豆風味!!」

 

 そのハウリア達を、ハジメは掃討した。

 

「ハジメさん、何でハウリアの人達まで!?」

「ウザくて……」

「というか大丈夫ですか父様!?」

 

 ハジメが掃討したハウリアの中には、シアの父も居たらしく心配し駆け寄るシア。しかし、シアの父は多少痛がる素振りを見せながらも普通に立ち上がって一言。

 

「痛たた……。シアを助けた人は随分と照れ屋ですな」

「父様!」

「シア! 無事でよかった!!」

 

 ウサミミを生やした初老の男性、シアの父親が娘との再会を喜ぶ。そして互いにひとしきり喜んだあと、ハジメ達の方へ向き直った。

 

「ハジメ殿でよろしいか? 私はカム。シアの父にしてハウリアの族長をしております」

 

 カムの自己紹介。その後に感謝の言葉を告げながら深々と下げ、追随するように後ろに居た他のハウリアも頭を下げる。

 

「いえ、こちらにもメリットのあることですから」

 

 ハジメは礼を受け取り、その上でシアと話した内容を説明した。

 

「成程。そういう事でしたらお任せください。ところで――」

 

 そう言葉を区切ってカムは首領パッチと天の助を一瞥してから、再度ハジメに向き合って問う。

 

「あの二人は、一体? 人間族ではありませんよね?」

「ただの非常食と産業廃棄物です、お気になさらず」

「それは凄く気になりますな!?」

 

 カムの驚愕。そしてそれを耳聡く首領パッチ達は聞いていた。

 

「オイコラァ! どっちが非常食でどっちが産業廃棄物だオラァ!?」

「オレだよな!? このところ天の助が非常食だよな!?」

「それは、無い。そんな現実は……絶対にありえない……!!」

 

 血を吐くようなハジメの叫び。その言葉にショックを受け、地に崩れ落ちる天の助。そんな二人を放っておいて、ユエとハウリア達は出発していた。

 

 


 

 

 ハウリア族四十二人を引き連れ、ぞろぞろと峡谷を歩く一行。

 当然魔物達が襲い掛かってくるが、ハジメの納豆真拳やユエの魔法で容易に倒せるので脅威には全くならない。後は適当に救急車や消防車を投げつけていれば、魔物も彼らは獲物というより関わってはいけない奴らだと学ぶ。

 結果、危険な峡谷を抜けるというよりツアー旅行の団体みたいな雰囲気がハウリアの中で漂い始めていた。

 そうこうしていると、一行は遂にライセン大峡谷から脱出できる場所に辿り着いた。長い長い階段が、岸壁に沿って造られている。

 ハジメがその階段を何気なく眺めていると、シアが不安げに話しかけてきた。

 

「帝国兵はまだ居るでしょうか?」

「どうだろう? とっくに帰ってもおかしくないけど……」

「それに、もしまだ帝国兵が居たら……ハジメさん、どうしますか? 殺しますか?」

「僕は殺さないよ。いくらモットーが殺戮、恐怖政治、血祭りの三ヶ条の僕らでも、殺しは流儀じゃないから」

「そうなの?」

「矛盾してますねそれ!?」

 

 ハジメの答えに疑問符で返したのはユエだった。ハジメ達の普段の行いから、殺しに躊躇があるとは思えなかったからだ。

 

「いや、別にアメコミのヒーローみたいな不殺を掲げているわけじゃないけど。いざとなったらコックピットぶっ刺すキラ・ヤ○ト的な不殺だけど」

「どうしようも無かったら殺すんですね」

「まあそんな感じで」

 

 という世間話をしながら階段を上っていく一行。やがて頂上に辿り着き、ライセン大峡谷からの脱出を果たす。

 登り切った崖の上には――

 

「おいおいマジかよ。生き残ってやがったのか。隊長の命令だから仕方なく残ってただけなんだがなぁ~。こりゃいい土産ができそうだ」

 

 三十人の帝国兵がたむろしていた。周りには大型の馬車数台と、野営跡が残っている。全員が軍服を纏っており、剣や槍、盾を構えながらハジメ達を見て驚いた表情を見せるが、すぐに喜色を浮かべ、品定めをするようにハウリアを見渡す。

 

「小隊長! 白髪の兎人もいますよ! 隊長が欲しがってましたよね?」

「シュコー……シュコー……」

「いやああああ助けてええええええええ!!」

「何だお前ら!?」

 

 帝国兵達は、ハウリアを獲物として眺めていたがいつの間にか向こうに行き、ダース・ベ○ダーのコスプレをした天の助と、縛られて囚われている首領パッチを見て驚く。

 それを好機と見るやいなや、ハジメは叫ぶ。

 

「首領パッチを放せ!」

「いや兎人にしか用ねえよ! つーか何だお前? 亜人じゃねえよな?」

「見ての通り人間だよ」

「はぁ~? 何で人間が兎人族と一緒にいるんだ? まあいいや。あのよく分かんねえ二人引き取って、兎人族置いてどっかいけや」

 

 ハジメの存在に疑問を抱くも、すぐに脇に置いて命令だけ出す帝国兵の一人。当然ハジメは従うはずも無い。

 

「フッ。お琴割りだ!!」

 

 持っていた琴を帝国兵の一人に降りおろし、そのまま気絶させた。

 これを見た帝国兵達は、さっきまでの空気から一変し武器を構えてハジメに殺意を向け、後方に居た帝国兵の十人が詠唱を始める。

 一方、ハジメは泣いていた。

 

「うえぇぇ~ん、ファルシオン君に借りた琴壊しちゃったよ~!」

「そりゃあんな勢いで振り下ろせば壊れますよ」

「大丈夫、私が一緒に謝ってあげる」

 

 そういってユエは壊れた琴を持って帝国兵の元へ向かう。帝国兵は何だかよく分からないが、とりあえず持っている剣を振り下ろす。しかしユエはそれを回避し

 

「お詫びの辛味噌。生まれ変われる程強くなれるよ」

「意味が分かりません!」

 

 辛味噌を帝国兵の顔面にぶちまけた。当然、帝国兵は怒り狂い暴言をぶちまける。

 

「何しやがるこのアマァ! 上等だ、てめえは正気がなくなるまで犯した後奴隷商に売り払って――」

「もう琴の話は終わった!!」

 

 しかし、帝国兵が言い終わるより先にユエは飛び上がり、自身の膝裏を帝国兵の後頭部に叩きつけた。プロレスで言うシャイニングウィザードである。

 そのままユエは違う帝国兵の背後に回り

 

「怒りの乙女ドロップ!!」

 

 バックドロップで気絶させた。

 

「何でさっきからプロレス技ばっかり使うんですか!?」

「よし、僕も続いて叩き潰す!」

 

 それに続きハジメも飛び出し、ハエ叩きを構え攻撃する。

 

「オラオラオラァ!!」

「「「ぐわああああああああああああ!!」」」

 

 ハエ叩きで次々帝国兵を倒していった。

 

「本当に叩き潰してる――――――――!?」

「起き上がった後夜に使う用のユエ特製ブロマイドセッティング!!」

 

 そしてユエは、ハジメが気絶させた帝国兵の傍に自身のブロマイドを置いていく。

 

「その行為に何の意味が!?」

「それよりシア、首領パッチ殿と天の助殿は!?」

「そういえばあの二人はどこに!?」

 

 カムの言葉で二人の存在を思い出したシアは、慌てて二人を探す。するとすぐに後方の詠唱していた部隊の傍に、二人が居る事に気付く。

 

「や、やめろぉ……」

「俺が悪かったから、塩漬けだけは……!」

「くそぉ、何てことだ……!」

「いやああああああああ、ヒロインの私を放してええええええ!!」

 

 塩漬けにされた帝国兵達の姿がある。しかしその後ろには、首領パッチを人質に取り天の助の動きを止める帝国兵最後の希望の姿があった。

 

「いやどういう状況ですかこれ!?」

「首領パッチ!!」

 

 人質にされた首領パッチを見て、迷うことなく飛び出すハジメ。

 やがて首領パッチ、天の助、帝国兵三人の傍に辿り着く。そして天の助の足を掴み

 

「その男に」

「え?」

「人質の価値は、無い!!」

 

 そのまま首領パッチ諸共帝国兵を攻撃した。

 攻撃したハジメはすぐさまハエ叩きで追撃を仕掛ける。するとそれに首領パッチと天の助も加わる。

 

「さあ吐け! さらった他の兎人族はどこへやったんだ!? 帝国に移送したのか!?」

「ヒロインの身体にベタベタ触ってんじゃねえぞこのハゲ!!」

「ところてんの塩漬けを食え! ところてんを崇めろ!!」

「分かった話す! 話すから! 多分全部移送済みだ! 人数は絞ったから……」

 

 “人数を絞った„。その言葉の意味を首領パッチと天の助以外の全員が察した。それはつまり、売れそうにない老人などは殺したということだ。帝国兵の言葉に、悲痛な表情を浮かべるハウリア達。

 

「この、ド外道がぁ――――――っ!!」

「ぐはぁ!!」

 

 そしてハジメは、ハエ叩きでそのまま帝国兵を斬り伏せた。

 

「ハエ叩きでどうやって!?」

 

 血を吹きだし、倒れ伏す帝国兵。それをハジメは一瞥した後、帝国兵の大型馬車を一台だけ残して、ハウリア達を乗せる為に使うことにした。

 無論、四十人いるハウリア全員を乗せることは出来ないので、老人や子供を中心に乗せ若者はそのまま歩かせてから、一行は目的地である樹海に進路を取り、再び出発した。



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奥義15 遂に現れたあの男

 七大迷宮の一つにして、深部に亜人族の国フェアベルゲンを抱えるハルティナ樹海への到着をを目前に控える中、馬車を走らせながらハジメとユエは取り留めのない話をしていた。

 

「ハジメ、さっきの帝国兵……」

「何、殺さなかったことが不満?」

「別にどうでもいい。――危なくないなら本当に殺さないんだ、って思っただけ」

「あの程度の相手をヤバイと思ってたら、僕の故郷じゃ生きていけないよ」

 

 ユエは大きな感心と小さな心配を向けているが、ハジメからすれば小学生の頃襲われて戦ったことのあるケガリーメンの方が強かった、と思っている。

 あの時のケガリーメンが持っていたラーメンが豚骨ラーメンだったら、抵抗を諦めてパゲメンされるレベルだった。醤油ラーメンだったから命を捨てる覚悟で戦えた、とハジメは昔を思い出していた。

 

「でもちょっと心配。今は危なくなったら殺すって言うけど、主人公のキャラが初期と中盤以降で変わるとかよくあること。その内ブレードチルドレンの一人みたいに、殺すくらいなら殺される方がマシとか言ったりしない?」

「いや言わないけど……。めっちゃ懐かしいねスパイ○ル……」

「今なら原作通りにもう一回アニメ化出来そう」

「三クールは欲しいね」

 

 という、割と真面目な話の筈だったのに気付けば漫画談義になりながら話していると、いつの間にか樹海の手前に到着した。

 

「てかオレの出番少ねえ!!」

「がはっ!!」

 

 そして首領パッチはカムを殴り飛ばしていた。

 

「痛たた……。それでは、ハジメ殿、ユエ殿、首領パッチ殿、天の助殿。中に入ったら決して我らから離れないで下さい。貴方方を中心に進みますが、逸れると厄介ですからな。それと、行先は森の深部、大樹の下でよろしいのですな?」

「うん、そこでお願い」

「ん、大樹ってなんだ? てか何でそこに行くことになってんだ?」

 

 カムとハジメの会話を聞いていた天の助が思わず口を出す。それを聞いて二人だけで話を進め過ぎた、と思ったハジメはちゃんと説明することにした。

 

「あー、そういえば天の助達には言ってなかったっけ。まず大樹っていうのは、カムさんから聞いたんだけど、ハルツィナ樹海の一番奥にある巨大な一本樹木で、亜人族には神聖な場所として扱われているんだって」

「ほうほう」

「それ聞いて、最初はハルツィナ樹海が大迷宮かなって思ってたけど、そんな所に人住めるわけないし、じゃあとりあえず怪しそうな所行くかって思って」

「お前さあ……」

 

 説明を聞いた天の助は、ハジメの肩を両手でつかんで一言。

 

「そう言うことは、先に言えよ」

「ごめーんね♪」

「許す」

「いいんですかあんな雑な謝罪で!?」

 

 ハジメと天の助が和解した所で、カムが再び話しかけてくる。

 

「ではハジメ殿達は出来る限り気配を消してもらえますかな。我らは御尋ね者なので、他の集落の者に見つかると厄介です」

「うふふ、オッケー」

「それ何キャラですか」

 

 ハジメがそう言った後、ユエは奈落で培った方法で気配を薄くする。そしてハジメは段ボールを被り、天の助は木のコスプレを着て、首領パッチは変形してイガグリの姿になった。

 

「「「完璧な気配消しだ……」」」

「どこがですか!?」

「では行きましょうか」

「父様!?」

 

 こうしてハジメ達は出発した。しばらく道なき道を突き進む。途中、魔物に襲われる事もあったが、概ね問題なく樹海を進んで行く。

 しかし数時間後、無数の気配に囲まれハジメ達は歩みを止めた。カム達はウサミミを動かして索敵をし、囲んでいる相手の正体に気付いたのか苦虫を噛み潰したような表情を見せた。

 ユエも正体に気が付き、面倒そうな表情を見せる。

 そしてハジメ達は、未だ気付かれていないと思い棒立ちしている。

 

「いや気付かれてますから! その意味の無い気配消し解いてくださいよ!!」

「「「えー……」」」

 

 文句を垂れながら気配消しを解くバカ三人。そして普段の格好に戻った時、囲んでいる相手の正体を目撃した。

 その相手の正体は――

 

「お前達、なぜ人間といる! 種族と属名と名前を名乗れ!!」

 

 虎模様の耳と尻尾を付けた、筋骨隆々の亜人だった。

 虎の亜人はシアを目で捉えると、怒りを隠すことなく見せつけハウリアを怯ませた。

 

「白い髪の亜人……? 貴様等、報告のあったハウリア族か……。亜人族の面汚し共め! 長年同胞を騙し続け意味後を匿うだけでなく、今度は人間族を招き入れるとは! 反逆罪だ! もはや弁明を聞く必要もない! 全員この場で処刑す――」

「そうカリカリすんなよ~」

「せっかくの新歓コンパだ。飲め飲め!」

 

 怒り狂い、問答無用で攻撃命令を出そうとする虎の亜人に、新歓コンパに馴染めていない新人に接する先輩みたいに接する首領パッチと天の助。首領パッチは肩を組んでいるだけだが、天の助は日本酒の瓶をそのまま虎の亜人の口に突っ込んでいる。

 

「はい。のーんでのーんで飲んで」

 

 そしてユエは悪乗りして一気コールをしていた。完全にアルハラだ。

 だがしかし、アルハラという悪を許さない男がこの場に居る。

 

「アルハラ駄目絶対!!」

「「「「ぎゃあああああああああああああ!!」」」」

 

 アルハラしていたバカ三人を、虎の亜人諸共マシンガンで銃撃するハジメ。そして虎の亜人を助け起こしてから話しかけた。

 

「落ち着いて下さい。僕らは別に争うつもりは――」

「黙れ黙れ! 貴様等人間族の言うことなど信用できるか!!」

「この場に人間族って僕しか居ませんけど」

「じゃああの金髪の小娘は何だ!?」

I am vampire(私は吸血鬼です)!」

「なぜ英語!?」

「信じられるかそんなこと! ええい、もう問答は終わりだ!! 貴様等全員皆殺しに――」

 

 ユエの言葉を信じず一蹴し、襲い掛かろうとする虎の亜人。しかし、その言葉は最後まで語られることは無かった。

 なぜなら、さっきまで目の前にいた筈のハジメがいつの間にか虎の亜人の遥か後方に立ち、更に彼の肩には『ところてん促進!』と書かれた襷が駆けられていた。

 

「いや何ですかその襷!?」

「ば、馬鹿な……! 見えなかっただと……!!」

 

 そしてハジメの一連の行動に虎の亜人は戦慄する。自分の動体視力を超える速度で動き、しかも攻撃せず明らかにからかっているとしか思えない襷を掛けるという行動。これが意味するところは即ち、自分はまだまだ本気を出していない、その気になればお前らなど一瞬で始末できるという意思表示に他ならない。

 

「何か勝手に深読みしてません!?」

「まあ、これで分かったんじゃないですか。僕とあなたの、実力差って奴が、ね」

「ウザい」

 

 ツッコミを入れまくるシアをよそに、ドヤ顔で脅しにかかるハジメ。しかしその顔がウザかったのか、ユエに容赦なく発砲された。

 

「……馬鹿野郎――! ユエ田ァ! 誰を撃ってる! ふざけるなあああああ!!」

「オルガじゃ、ない……!?」

「馬鹿な……、パターンを変えてきやがった!?」

 

 今まで撃たれていたらとりあえずオルガだった今までと違うハジメに、少なからず戦慄を覚えるユエと天の助。そして首領パッチは

 

「やめてくれええええええええ!!」

 

 ドパンドパンドパン

 

 オチの為、実写ドラマ版松田になって追撃していた。

 

「魅カム……! 何してるぅ……? そいつらを、殺せぇぇ……!!」

「何なんだ……。何なんだこいつらは!?」

 

 ハジケリストというものを生まれて初めて目撃し、その余りに理解を越えた振る舞いに、遂に恐怖すら覚え始めた虎の亜人。

その心の隙をついて、ユエが淡々と語りかける。

 

「落ち着いて。私達はただ樹海の最奥にある大樹の下へ行きたいだけ」

「……本当か?」

「信じるも信じないもあなたの勝手。だけど私達に嘘をつく理由は無い」

 

 ユエの言葉に考える虎の亜人。

 ――確かにこの小娘の言う通り、私ではもはやこいつらに勝つビジョンは思い浮かばない。仮にこの場に居る仲間とともに掛かっても、どうなるか予想がつかない。ならば、通すべきではないか? 恐るべき相手と無理に相対するより、話し合いで解決すべきではないか、と。

 

「分かった、信じよう。だがこれだけは聞かせてくれ。お前達は、何の為に大樹の下へ向かうのだ?」

「そこに本当の大迷宮の入口があると思うから。最初はこの樹海そのものが大迷宮とか思ったけど、魔物が弱すぎるし、亜人さえ協力してくれたら突破できる場所を試練とは呼ばない」

「……」

 

 虎の亜人は正直何を言われているか分からなかった。だが少なくとも嘘をついている様子も見えず、また自分に選択肢など無い。

 

「いつの間にか随分選択肢が減りましたね……」

「ハジメがちょっと脅かしただけなのにな」

 

 シアと天の助が虎の亜人に好き勝手言うのを尻目に、彼は国の上層部へ使いを出す。そしてユエ達に待ってもらうように言い、ユエも大人しく従った。ちなみにハジメは死んでいる。

 

「イギリスのフィッシュ&チップス! 何で美味しく作れない? なんでなんでなんで?」

「油……」

 

 首領パッチと天の助は普段通りハジケていた。

 そして数時間後、霧の奥から新たな亜人が数人現れた。それと同時にハジメも生き返った。

 彼らの中心に尖った長耳を持つ初老の森人族がおり、彼が長老なんだろうな、とユエは思った。

 

「ふむ、お前さん達がここに来た人間族……かね? 名は何という?」

「ハジリー……です」

「ユエガスでございます」

「キャプテン・パチリカ」

「オレは豆腐殺隊天柱、竈門天の助だ!」

「誰も本名名乗ってないですぅ!!」

「ふむ、南雲ハジメにユエ。それに首領パッチとところ天の助か」

「理解してる!?」

 

 長老っぽい人の理解力に驚愕するシア。しかし長老はそれを歯牙にかけることもなく、淡々と話を進める。

 

「私はアルフレリック・ハイピスト。フェアベルゲンの長老の座を一つ預からせてもらっている。さて、お前さん達は解放者という言葉を知っているか?」

「ええ。オルクス大迷宮の最下層で、解放者のオスカー・オルクスが残した映像を見たので知っていますが……」

「ふむ」

 

 質問の意図が分からず、訝しがりながらも素直に答えるハジメ。その一方でアルフレリックは驚愕していた。なぜならば、解放者もオスカーの名前も、長老達とごく僅かな側近しか知らないことだからだ。

 だからと言って、アルフレリックはハジメの言葉を無条件で鵜呑みには出来ない。亜人族の上層部に情報を漏らした者がいる可能性もあるのだから。

 

「それを証明できるか?」

「証明と言われましても……」

「これがある」

 

 アルフレリックの問いに首を捻るハジメだが、ユエが即座に懐からオルクスの指輪を見せる。それに刻まれた紋章を見て、アルフレリックは目を見開いた。

 

「成程。確かにお前さん達は嘘をついていないらしい。よかろう、とりあえずフェアベルゲンに来るがいい。私の名でハウリア達も一緒に滞在を許そう」

 

 アルフレリックの言葉に、ハウリアと周囲の亜人族が驚愕の表情を浮かべる。そして虎の亜人を筆頭に猛烈な抗議の声が上がりそうになった。だがその前に新たな気配が一つ現れる。

 

「案ずるな。その者達の内二人は私の戦友だ」

 

 その気配の主は、見た目はオ○Qみたいでありながら人間の手足を持った不審な男だった。だが、首領パッチと天の助は間違いなくこの男を知っている。

 そう、彼の名は

 

「「サービスマン!!」」

「久しぶりだな、二人とも」

 

 サービスマンだった。彼はは首領パッチ達と久々の再会を喜び合うと、なぜ自分がここに居るのかを話しはじめた。

 彼曰く、ある日前触れもなくこのハルツィナ樹海に転移したらしい。

 あてもなく彷徨っていると、魔物に襲われた亜人族を見つけ助けた。

 すると恩返しとばかりに、その亜人族にフェアベルゲンに招待された。ちなみに亜人からは、外見のせいで人間族とは思われていない。

 そして色々あって、異界のハジケリストを知っている長老達と関わりを持ち、今に至る。

 

「―――という訳だ」

「何か色々すっ飛ばしてません?」

「詳細に説明されても尺の無駄」

 

 サービスマンの説明を聞き、大変だったんだな、と思うバカ二人。それと同時に、サービスマンが現れたことで、アルフレリックの発言に批判的だった亜人族が徐々に落ち着き始めていた。

 そんな中、ハジメは一人目を輝かせていた。

 

「あれが、時に数百万ドルの金を動かすと言われているサービスマンか。一体どんなサービスをしてくれるんだ?」

「ほう、少年は私のサービスがお望みか」

「はい!」

「戦友二人の仲間とあれば、惜しむ理由は無い。サービス!!」

 

 ハジメの頼みを快く引き受け、サービスマンはサービスをする。

 そのサービスとは、サービスマンの布を惜しげもなくたくし上げ股間を、もっというならチ○コを見せつけるものである。これが漫画なら股間に黒丸が、アニメなら逆光で見えないのだが、ハジメ達の視界にはそんな物は無い。

 

「いやあああああああああああ変態ですううううううううううう!!」

 

 よってサービスを直に目撃したシアは叫び、ハジメは

 

「オラァ!!」

「ごふっ!!」

 

 サービスマンを殴り飛ばし、気絶させた。

 

「ではフェアベルゲンに出発しましょうか」

「え、なぜです?」

 

 一連の流れを黙って見ていたアルフレリックの言葉に、思わず問いかけるハジメ。その問いに対する回答は明確だった。

 

「あなたが気絶させたサービスマン殿は、あなたに運んでいただきたい」

「あ、はい。すみません」

「何でこんなに信頼勝ち取っているんですか、あの露出狂……」

 

 シアの力無い疑問の声をBGMに、ハジメ達はフェアベルゲンに出発した。



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奥義16 通常攻撃が魚雷でボケ殺しの先生は好きですか?

ありふれのアニメを見ているとこのSSと空気違い過ぎて笑います。
それはそれとして、ありふれは知ってるけどボーボボはよく知らないって人はこのSS読んでいないのでしょうか?
私、気になります!


 フェアベルゲンに到着したハジメ一行は、そのまま残りの長老達と大迷宮や解放者について話し合うことになった。

 結果、信頼されているサービスマンの助けもあり以下のように決まった。

・ハウリアはフェベルゲンから追放。十日後以降は一切かかわりは持たないこと。

・十日後に霧が晴れ、大樹の下まで行けるようになるので、それまではハウリア含めて滞在の許可を出すこと。

 正直、シアどころか一族全員が処刑されることすら覚悟していたハウリアからすれば望外の幸福だ。これが成されたのはハジメ達の強さと、サービスマンの信頼があってこそだ。ハウリア達は彼らに深く深く感謝した。すごいぞサービスマン。あっぱれサービスマン。ところてんくらいすごい。

 

「ところてん!?」

「さあ今すぐサービスマン&ところてんを奉る準備をするんだ」

 

 ※ 先ほどの地の文が一部天の助に乗っ取られていました。お詫びいたします。

 

「乗っ取られていたんですか!?」

 

 それはそれとしてハジメは一つのことが気にかかり、アルフレリックに質問をする。

 

「あの、十日後に大樹に行けるってどういうことですか?」

「……? 大樹の周囲は特に霧が濃いからな。亜人族でも一定周期に訪れる霧が弱まる時期でなければ、行くことが出来ん。それで次に行けるようになるのは十日後だ。亜人族なら誰でも知っているはずだぞ」

「あ」

 

 アルフレリックの疑問の言葉に、カムが冷や汗を流しながら呟く。それだけでハジメは、カムが霧のことを忘れていたと察した。

 

「い、いや待って下さいハジメ殿! 私は確かに忘れていましたが、シアや他の誰かが言ってくれれば済んだ話! これは言わなかったハウリアの皆のせいでもあります!!」

「なっ!? 父様逆ギレですか!? 私は父様が自信たっぷりに請け負うから、何かおかしいなと思いましたけど、時期だったのかと……。つまり父様が悪いですぅ!!」

「そうですよ族長! 張り切っていて堂々としてたから僕らの勘違いかなって……」

 

 その場で醜く責任を押し付け合うハウリア達。そんな彼らに向かって、ハジメは目を見開いて叫んだ。

 

「あなた達を詐欺罪と器物損壊罪で訴えます!」

「いや器物損壊はしてませんよね!?」

「理由は勿論お分かりですね? あなた達が僕らを騙し、セーブデータを破壊したからです」

「セーブデータ!?」

「覚悟の準備をしておいてください。とろろプールに入ってもらいます」

「とろろプールって何ですか!?」

「とろろプールの、おなーりー」

 

 シアのツッコミと同時に、ひな人形の右大臣のような格好をしたユエが鼓を叩くと、奥からとろろがたっぷり入った数メートル四方のプールを、首領パッチと天の助が押してやってきた。

 

「ぶち込まれる楽しみにしておいて下さい! いいですね!!」

「え、ちょ、待っ!?」

 

 シアが戸惑いの声をあげるが、ハウリア達が具体的な逃走を開始するより速く、ハジメは彼らの背後に回り、突き(ラッシュ)で彼らをとろろプールに叩きこみ始めた。

 

「豆豆豆豆豆豆豆豆豆豆豆豆豆豆豆豆豆豆!」

「ぎゃああああああああああああああああああああああああ!!」

Beaaaaaa(ビィィィィィ)verrrrrr(バァァァァァ)!!」

「ビーバー!?」

「豆豆豆豆豆豆豆豆豆豆豆豆豆豆豆豆豆豆豆、豆ェッ!!」

「ぐわああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 ハウリア全員をとろろプールに叩きこみ、彼らが痒みに苦しんでいるさまを見ながら、ハジメはポツりと一言。

 

「フッ、まるで将棋だな……」

「意味が分かりません―――――――――――!!」

「さあ、とろろ和えの私を食べなさ~い」

「断固辞退する」

 

 そして首領パッチとユエはいつも通りだった。

 

 


 

 

「と、いう訳でハウリア達には戦闘訓練を受けてもらいます」

 

 フェアベルゲンの滞在を許されたとはいえ、ハウリア族は基本的に白い眼で見られるので、なるだけ都市の外れの方にやってきた。そして周りに他の人がいない位都市の外れに着いた所で、ハジメは唐突に戦闘訓練を宣言した。その言葉にハウリア族は、ざわざわと困惑する。

 

「戦闘訓練? 我々がですか? なぜです?」

 

 困惑する一族を代表し、カムがハジメに尋ねる。その問いにハジメはため息交じりに答えた。

 

「だって、十日後になって大樹に着いたら、僕らハウリアを護る理由が無くなるよ。というか、こんな人数を引き連れて旅なんかしたくない。けど、ハウリアを死なせたくはない。だったらもう、ハウリア自身に戦う力を与えるしかない? ドゥーユーアンダースタンド?」

「そ、それは分かります。ですが、我々にハジメ殿の様に戦う力は……」

「戦えない奴なんていない! 戦うか、戦わないか。その違いがあるだけだ!!」

「天の助殿……」

 

 竦むカムに向かって、天の助が激励を飛ばす。その後ろで

 

「なんか聞いたことのある台詞ですね……」

「GGO編のキリトさん」

 

 シアとユエが、元ネタを解説しながら白い眼で見ていた。

 それはともかく、ハウリア族の戦闘訓練が始まる。

 まずハジメは、人数分のナイフをフェアベルゲンで貰って来てハウリア族に渡す。ハジメの考えでは、ハウリア族は運動能力が高いので不意打ちに特化した戦い方、所謂暗殺者が向いていると思い、その方向で伸ばそうと考えていた。

 だがハジメの考えは甘かった。その理由はハウリア族の性格にある。彼らは虫も殺せない、それどころか虫や花を踏まないように避けて歩くような優しい集団である。

 どれくらい優しいのかというと

 

「ああ、どうか罪深い私を許してくれぇ~」

「ごめんさないっ! ごめんなさいっ! それでも私はやるしかないのぉ!!」

「ふっ、これが刃を向けた私への罰というものか……」

 

 上記の台詞が魔物を一匹殺す度に出てくる位優しい集団である。

 ハジメとしても人の優しさを否定したくはない。ないのだが。

 

「マジでウザい……!」

 

 流石に魔物殺す度に三文芝居やられてイライラしない程、ハジメは気の長い男では無い。否、ハジメはまだ押さえている方である。首領パッチに至っては苛立ちのあまり

 

「お前ら揃いも揃って、タピオカ頼んでんじゃねえ!!」

「タピオカ!?」

 

 手榴弾をハウリアに投げつける始末。

 

「「「「ぎゃああああああああああああああああ!!!!」」」」

「お花さんは僕が守る!」

 

 爆発と同時に、なぜかハジメは咄嗟に手榴弾に巻き込まれそうになった花を守る。しかし、爆発が収まったと同時に花から目と口が生えてきた。そう、この花は魔物だったのだ。

 

「ゲッヘッヘ、俺はキラーフラワー。人間族など花だと思って油断した所を頂く魔物なのさ」

「じゃあ食べよ。バクッ」

「ガハァ!!」

「うわあああああああああ! 魔物は人間にとって毒だったの忘れてたああああああ!!」

 

 花型の魔物を食べ、もだえ苦しむハジメ。もしこの場に神水と呼ばれる回復薬があれば、髪の色が白くなり、身長が十センチ以上伸びた上で助かっただろう。だがこの場にそんな物は無い。よって運命は決まっている。

 

「ちくしょおおおおお! ちくしょおおおおおお!! ちくしょおおおおおおおお!!!」

「シノォォオオオオオオオオ!!」

 

 こうしてハジメはまた死んだ。ちなみにシノと叫んだのはカムである。

 

「父様なんですか!?」

「任務完了いたしました。ユエ閣下」

「うむ、大儀である」

「大儀!?」

 

 ハジメが死んでいる一方で、手榴弾を投げた首領パッチはユエに傅く。

 それらを尻目に、天の助はハウリアの戦えない精神を何とかする方法を思いついた。

 

「そうだ、あの奥義だ首領パッチ! あれを使えば!!」

「おお、その手があったか!!」

「え、何? あの奥義に何かあったっけ?」

 

 天の助の言葉に賛同する首領パッチ。一方、起き上がったハジメは心当たりがないのか首を捻る。

 

「いいからやれって。やりゃ分かる」

「そう? じゃあ、やろうか」

 

 最終的に首領パッチの言葉に納得し、ハジメは適当に構える。それに合わせて残りの二人も適当に構え、詠唱を始めた。

 

In der Nacht,wo alles schlaft(ものみな眠る小夜中に)――」

「滲み出す混濁の紋章――」

I am the bone of my sword(――体は剣で出来ている)

「詠唱バラバラですぅ!!」

 

 三人とも作品から違う詠唱を好き勝手に唱えている。だがそれら三つは過程を経てやがて一つとなり、ここに奥義の発動を成した。

 

「「「奥義、時よ止まれ。旧スク水は何よりも素晴らしいから!!」」」

「変な方向に一つになった―――――――!?」

 

 奥義が発動すると同時に、空からステンドグラスが割れたかのような音が響く。皆が見上げると、空から何かがこっちに向かって来るのが見える。

 

「……ざ……ゆ……な……」

 

 空から来る者が、何かを言っているがよく聞こえない。しかし、首領パッチと天の助はこの声の主が分かる。

 

「お…ざけ…ゆ……な……!」

 

 徐々に近づいてくる声に、不安を隠せずざわざわし始めるハウリア達。そしてついに声の主はこの場に降り立つ。

 

「おふざけは許さない!」

「「「ぎゃああああああああああああああああああああ!!」」」

 

 空からやって来た者はバカ三人を跳ね飛ばし、そのまま土煙を巻き上げ皆の視界を奪う。やがて煙が晴れた時、そこに居るのは

 

「なぜなら私は、魚雷だから!!」

 

 大きな魚雷にギャル風な女性の顔と、手足が生えているという、凄まじく形容しがたい何かだった。

 

「「「誰!?」」」

 

 ハジメとユエ、それにシアが疑問を抱く中、魚雷は首領パッチ達に詰め寄っていた。

 

「ちょっとあなた達! またふざけてたでしょ!? おふざけは許さないわよ!!」

「ヒイイィィ……! 違うんです魚雷ガール先生……!!」

「あいつらです! あのハウリア族のせいでふざけるハメになったんです!!」

「え!?」

 

 魚雷ガールに詰め寄られている二人は、ハウリア族を理由になんとか自分達に非が来ないようにしている。

 実の所、ハジメは知らないが天の助と首領パッチは魚雷ガールを呼び出し、ハウリア族の訓練を頼むためにあの奥義を使ったのだ。そしてその奥義はおふざけにカウントされた。よって二人は嘘を言っている訳では無い。

 とはいえ、ハウリア族としては知らないので、カムは必死に言葉を尽くすしかない。

 

「ち、違います! その二人が、二人が勝手にふざけたんです! 本当です!!」

「しゃらくせえ!」

「がはぁ!!」

「父様―――――――!!」

 

 魚雷ガールの正拳付きで沈められるカム。彼にシアは思わず叫びながら駆け寄っていく。

 

「祟りじゃ! 竜神様の祟りじゃ!! 生贄を捧げるから静まりたまえ―――――!!」

「生贄です」

 

 神主の服を着て、お祓い棒を振り回しながら錯乱するハジメと、巫女服を着て生贄になっているユエ。そんな二人を見た魚雷ガールの行動は決まっている。

 

「何とち狂ってんのよこの田吾作が―――――――!!!」

「「ぐわああああああああああああああ!!」」

 

 魚雷ガールは二人に容赦なく突撃し、地に沈める。

 そして立っているのは魚雷ガールとシアだけになった時、魚雷ガールは話しかけた。

 

「ねえそこのあなた。私がどうして呼ばれたのか知ってるかしら?」

「ええと、何となく想像はつきますが……」

「なら説明して頂戴」

「はい……」

 

 魚雷ガールに求められ、事の経緯を説明するシア。

 その後ろで、ハジメは天の助に魚雷ガールが何者かを聞いていた。

 

「で、誰なのあの魚雷?」

「あの人は魚雷ガール。元マルハーゲ四天王の一人で、オレ達の先生で、ボケ殺しだ」

「ボケ殺し?」

「ボケ殺しってのはな――」

 

 


 

 

「ボケ殺しとは、遥か昔に絶滅したと言われる伝説の男達。彼らの前ではどんなおふざけも封殺されてしまうと言うわ」

「雫ちゃんどうしたの?」

 

 


 

 

「――ということだ」

「成程、八重樫さんの説明でよく分かったよ」

「オレは!?」

 

 ハジメと天の助の話が終わったと同時に、シアと魚雷ガールの話も終わり魚雷がハジメ達の方を見て、こう言った。

 

「話は大体シアから聞いたわ。あなた達が私にハウリア族の訓練教官を頼みたいと言うのなら、いいわ。やってあげる」

「マジですか!?」

「やった!」

「オレら暇じゃね? 何する?」

「スマブラ? 桃鉄?」

 

 急きょ空いた十日間をどうやって潰すか考えるバカ四人。だが魚雷ガールにそんな甘えは通用しない。

 

「何言ってるの? あなた達も訓練を受けるのよ」

「「「「なぜっ!?」」」」

「だって、あなた達は私の可愛い生徒だもの……」

 

 魚雷ガールの返答で絶望の淵に沈む首領パッチと天の助。しかしハジメとユエは納得しない。

 

「いや、僕とユエは初対面ですよね!?」

「関係ないわ。私の生徒の友達と言うことはもう生徒と同義よ」

「えぇ……」

 

 何とかして、とハジメは首領パッチ達に目線で訴えかけるも返答は『やめとけ』の一択。しかしユエは、抜け道を見つけたとばかりに言い訳を繰り広げた。

 

「待って。私は同じ魔力操作持ちとしてシアに特別な訓練を付ける必要がある」

「そう言えばそんなことも言ってたわね。特別よ」

「やった。シア行こう。すぐ行こう。優しくするから」

「いやハジメさん達は!?」

「大丈夫大丈夫多分きっと大丈夫」

「凄く不安が残る返事!!」

 

 こうしてユエは、シアを連れて逃げるように去って行った。

 

「貴様アアア! 逃げるなアア! 責任から逃げるなアア!!」

 

 背後から聞こえるハジメの怨嗟の声は、聞こえないことにして。



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奥義17 変貌と書いてハウリアと読ませよう……

ギャグのキレは悪くなっていますが、僕は元気です。

PS.一部ネタの差し替えをしました。


 訓練開始から十日間が過ぎた。

 その間にシアはユエが魔力を操作できる理由と、それにより三百年間奈落の底で封印されていたことを聞いて泣いたり、実戦訓練の末ユエの頬に傷をつけられる位に実力が付いたり、躊躇いはまだあるものの魔物相手なら攻撃を振るえる心を手に入れた。

 

「それで、前に言っていたお願いって何?」

「はい。私はユエさん達の仲間になって、旅について行きたいです!」

 

 そして十日目となった今、シアはユエに自身の願いを伝えた。

 シアが旅について行きたい理由は二つある。一つ目は純粋にユエ達と仲良くなりたいから。二つ目は、家族に心配をかけない為だ。

 シアは元々旅に出るつもりだった。なぜなら、ハウリアの異分子である自分がいつまでも居ると家族は常に危険に晒される。だが一人旅などしようものならハウリア総出で止めにかかるだろう。しかしハジメ達と一緒なら安心して送り出してくれるに違いない、とシアは思っている。

 

「まあ、私はいいよ」

 

 そしてユエは、シアの考えを全部察知したうえで肯定した。ユエからすれば、別にシアが多少の打算を持っていようと咎める気は全くない。それに――

 

「ツッコミ役は欲しいし」

「すみません。今不穏なこと言いませんでした!?」

「そろそろ戻ろう。他のハウリア達とハジメ達の様子も気になる」

「いや私も気になってますけど! ちょっと!?」

 

 シアの発言を無視して、ユエはハジメ達の元へ向かっていく。それを背後から見ながらシアは思った。

 

(何でユエさん、ずっとサンバの格好だったんでしょうか……)

 

 


 

 

 ユエとシアが他のハウリア族と再会するのは、別にむずかしいことでは無かった。十日前に二人が別れた場所に行けば、そこにちゃんとハウリア族はちゃんといた。

 

「先生、ご命令の通り魔物を狩ってきました」

「……一匹でいいと言った筈よ?」

「ええ、そうなんですがね? 殺っている途中でお仲間がわらわら出てきやして……」

「丁重にお出迎えしてやったんですよ」

「魔物の分際で生意気な奴らでしたよ」

「晒しとけばよかったかしらね……」

 

 でもキャラはおかしかった。なんかワイルドになっていた。少なくとも前話で書かれていた優しい、という設定は完全に消し飛んでいた。それを見たシアは思わず魚雷ガールに向かって吠える。

 

「いやどういうことですかこれぇ!?」

「教育の結果よ」

「完全に別キャラになってるじゃないですか!!」

「落ち着けシア。私達はこの世の真理を先生から教わっただけだ」

「し、真理?」

 

 荒れるシアを見かねて宥めるカム。ただしカムもワイルドになっているのでシアは懐疑的になっている。

 そんな状態のシアを知ってか知らずか、カムは誇らしげに言い切った。

 

「この世の問題は九割は暴力で解決できる」

「優しかった父様は死んでしまったですぅ! もう居ないんですぅ!」

「だけど、この胸に、一つになって生き続ける!!」

「何でユエさんと!?」

「ジョーク」

「それより魚雷さん! こんな原型をなくすような教育があなたのやり方なんですか!!」

「フッ、確かにあなたの言うことはもっともよ。だけどこれだけは言わせて頂戴」

 

 シアの言うことに心からの共感を覚えつつも、魚雷は教育した当人として言うべきを言った。

 

「こんな筈じゃなかったわよ――――――――――――――!!」

「「「「「ぎゃああああああああああああああああああああ!!」」」」」

「ええ―――――――――――――――――――――――っ!?」

 

 いきなり突撃しハウリアを撥ね飛ばしていく光景を無視して、シアは驚きのあまり叫んだ。

 

「本当はもっと、強さの中に優しさを残す戦士にするつもりだったのよ。こんな感じで」

 

『神に会えたら言っとけ!! 放っとけってな!!!』

 

「いやこのイメージ像おかしくないですか!?」

「この時期のガッツだと微妙な気がする」

「というかハジメさん達はどこにいるんですか!? あの人達からも何か言って下さいよ!!」

「ハジメ達ならあそこよ」

 

 魚雷ガールが指差す先をシアが見ると、確かにハジメ、首領パッチ、ところ天の助の三人はいる。

 ただし彼らは獣の毛皮で作った服を着て、石で出来た武器を持った状態で、狩ってきたであろう魔物を焼いて食べている。

 

「ウンババ」

「ウバッホラ」

「オラオハー」

「原始人になってる――――――――――――!?」

「ちなみにさっきの原始人と化したハジメ達の言葉を翻訳するとこうなる」

 

『ウンババ(好きなバーチャルYouTuberっている?)』

『ウバッホラ(うーん、オレはもこ田めめめかな)』

『オラオハー(オレは神楽めめだな)』

 

「話題は現代的だ!?」

「アンタ達ふざけすぎ――――――――――っ!!」

「「「ぎゃああああああああああああああああ!!」」」

 

 ハジケリスト達が突撃されている光景には特に心は動かないシア。しかし魚雷ガールの次の行動には驚かされた。

 

「む、ふざけた奴のオーラを遠くに発見! ぶっ殺すギョラ―――――!!」

 

 魚雷ガールはハジメ達を撥ね飛ばした後、そのまま虚空へと向けて飛びだってしまった。シアはそれをただ茫然と見上げている。

 

「……どうします、この状況?」

「とりあえずさっさと出発したい。でないと大樹に辿り着けない」

「ですね……」

 

 


 

 

 ハジメ達が居るフェアベルゲンの上空に、一人の女性が浮かんでいる。

 銀髪碧眼で白のドレス甲冑を纏った美人だが、瞳には感情と言えるものは何も浮かんでいない。

 彼女の名前はノイント。トータスの神、エヒトが作りだした真なる神の使徒と呼ばれる存在である。

 彼女はホルアドの町で、ハジメのクラスメイトの一人と会話した後、イレギュラーである南雲ハジメ達ハジケリストを捜索していた。会話したクラスメイトの言葉を鵜呑みにした訳では無いが、万が一があっても困るからという判断だった。

 そして今、件の南雲ハジメを発見したのだが――

 

「邪魔ギョラ!!」

 

 いきなり飛んできた魚雷に撥ねられ、何も分からないままノイントは意識を失っていく。意識が完全に消える間際、ノイントは思考する。

 

(また新しいイレギュラー。どうやら、事は慎重に運ばねばならないらしいですね……)

 

 こうして、神の使徒ノイントは実力行使するにしても、時と場所を選ばねばならないという結論を出した。

 その考えがハジメ達の前に立ちはだかるのはいつになるのか、それを知る者はまだ居ない。

 

 


 

 

「なぁにこれぇ」

 

 これが、実際の大樹に辿り着き目撃したハジメの第一声だった。

 途方もない大きさの木が目の前にあるが、肝心の大樹が枯れているのである。しかも、周りの木々は青々と輝いているにも関わらずだ。

 それを疑問に思いながらもハジメ達は大樹の根元まで歩み寄る。そこには石板が建てられていた。

 石板にはオルクスの部屋の扉に刻まれていた物と全く同じ物がある。ここが大迷宮の入口なのは間違いないだろう。

 

「で、こっからどうすんの?」

「カツオ神でも呼ぶ?」

「あの神里帰りするから呼ぶなって言ってたような……」

「いやカツオ神ってなんですか?」

「そんなことより、皆これを見て」

 

 ハジメ達のどうでもいい話に割り込んで、ユエは石板の裏側を指差す。そこには表の紋様に対応する様に小さな窪みが空いていた。

 ハジメがそれにオルクスの指輪を合うようにハメると、石板が輝きだした。

 しばらく光っていたが、やがてその輝きが収まると文字が浮かび上がる。そこにはこう書かれていた。

 

 “四つの証„

 “再生の力„

 “紡がれた絆の道標„

 “すべてを有する者に新たな試練の道は開かれるだろう„

 

「どゆこと?」

「四つの証は、多分他の迷宮の証」

「紡がれた絆の道標は、私達亜人族の案内人のことでしょうか?」

「再生の力ならオレが心当たりあるぜ!!」

 

 石板の文字の意味にハジメ達が頭を捻っていると、天の助がおもむろに手を上げてきた。当然、ハジメ達は胡散臭そうに天の助を見る。だが天の助は自信満々だ。

 

「何も言うなハジメ。そこで黙って見ていろ! うおおおおおおおおお!!」

 

 天の助は叫びながらハウリア族に突貫していき、どこからか巨大な皿を取り出し自身を盛り付けた。

 

「さあハウリアの皆。美味しいところてんパーティーの時間だよ! オレを召し上がれ!」

 

 天の助の突然の言葉に戸惑うハウリア達。当然だろう。自分達の恩人の一人が、いきなり自身を食えと言ってきて、素直に食べられる人がどれだけいるのか。

 そんな状況を見かねて、首領パッチが助け舟を出した。

 

「食べてやってください。それが、天の助への一番の供養です」

「いやオレ死んでねーけど!?」

「これ、少ないけどご香典だよ……」

 

 そう言ってハジメは大量のレシートを天の助の傍に、まるで刺身のツマの様に盛り付ける。

 

(ご香典レシート!?)

「では、私が頂きましょうか」

 

 やがてカムが箸を持ち、天の助を一口食べる。

 

「父様、味はどうですか?」

「例えるならフィレオフィッs――マズッ!!」

「フィレオフィッシュ!?」

「フィレオフィッシュが不味いわけじゃない。天の助が不味い」

「うぅ……、皆酷い……。」

 

 体の一部を食べられた天の助は、そのまま石板の元へ向かい手をかざす。そしてしばらくすると、天の助の食べられた部分が再生した。

 

「これがオレの再生の力だ!!」

 

 しかし何も起こらない。

 

「全然駄目じゃんか!!」

「「がはぁ!!」」

 

 ハジメがユエを天の助に投げつけて黙らせたところで、今度は首領パッチが無言で手を上げていた。

 

「もうめんどくせえし、オレが中から入って開けてきてやるよ」

「え、そんなこと出来るの!?」

「まあ見てろって」

 

 そう言うと首領パッチは大樹に背を向けて、いきなりしゃがむ。そして

 

「イヤッフゥー! イヤッフゥー!! イイイイイイイイイイイイイ」

「あ、あれはマ○オ64RTA必須のケツワープ!」

「親のケツワープより見たケツワープ」

「もっと親のケツワープ見ろ」

「マ○オ64のTASかRTA動画見たことないと意味分かりませんよこのくだり……」

 

 首領パッチのケツワープで大樹のポリゴンの隙間に入り込み、見事大樹の中に入った首領パッチ。そのまま中に居る首領パッチの声が、外に状況を伝えてくれる。

 

「お、お前はあの時のエビバーガー!」「やめてぇ! ヒロインのあたしを辱めないでぇ!」「巾着巾着ゥ!」「それは、アウストラルピテクス復活の!?」「ちくわ大明神」「ム、ム、ムムムムーンサイド……!」

 

 しかしその言葉を最後に、首領パッチの声は聞こえなくなった。

 

「というか中で一体何が!?」

「おーい、お前ら!」

 

 次の瞬間、空から首領パッチの声が響いてくる。皆が見上げるとそこにはガ○ダムバルバトス・ルプスレプスと化した首領パッチの姿があった。

 

「いやー、ダンジョンで酷い目に遭っちまったよ」

「原型残ってない―――――――――――っ!?」

「じゃあもう諦めて、他の迷宮攻略してから来ようか」

「そうだな」

 

 面倒くさがりながらも、諦めて他の迷宮へ行くことにしたハジメ達。するとカムが話しかけてきた。

 

「ハジメ殿。この度はシアを連れていくと聞きました」

「え、そうなの?」

「あ、そういえばユエさんにしか言ってません!!」

 

 すっかり忘れていたシアは、慌ててハジメ達に仲間になりたい旨を話す。

 

「ど、どうでしょうか……?」

「OK!」

 

 ズドン

 

「な、な、なんじゃこりゃあああ!?」

「ところてんでしょ」

 

 天の助を射殺しながら了承するハジメ。後は流れでシアの仲間入りが決定した。そしてカムの話に戻る。

 

「そんなシアに皆で歌を送ろう。せーのっ!」

「「「デーレ○スでー、かーきんし過ぎて、売っちゃったホーンダのオデッセイー」」」

「何の歌ですか!?」

「本当は仰げば尊しを歌いたかった」

「退くべき時に退くのは恥じゃないから(震え声)」

 

 ハウリア族が歌うよく分からない歌を背に、ハジメ達は首領パッチに乗り込んで出発する。

 途中で町を経由して目指すはライセン大峡谷。そこにある大迷宮をついでに探しながら、大火山に行くのが目的だ。

 その説明を受けた後、シアはボソリと疑問を呟いた。

 

「ところで、首領パッチさんいつになったら戻るんですか?」

「次回には戻ってるよ」



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奥義18 ブルックの町にて

前話のネタを少しだけ改訂しているので見ていない方は読んでいただけると嬉しいです。話の筋は特に変わっていないので見なくても支障はありません。

……ネタにしておいてあれですが、売っちゃったホンダのオデッセイって実話なんですか?


パチダムパチバトス・ルプスレプスに乗って移動していたハジメ一行は、ようやく遠くに町が見えてきた。このまま歩いて行けば問題なく町まで着くが、その前にハジメはシアにある物を渡す。

 

「シア。町に入る前にこれを付けて」

「これは、首輪ですか?」

 

 渡した物は首輪だった。なぜ渡すかと言うと、亜人族が人間族の町にいればそれだけで目立ち、しかも奴隷でなければ超重ギガンティスを運ぶ紫ピク○ンの如く男が集まり、彼女を我が物にしようとするだろう。

 

「例えがよく分かりません!!」

「ピク○ン百匹集ってる状況をイメージすればいいから」

 

 だが首輪を付けていれば、シアを欲しがる男達は誰かの奴隷だと思い、手を出そうとはしない。

 

「ということだから、付けて」

「えぇ……でも……」

 

 ハジメの説明に納得はするが、奴隷扱い、というより仲間が嬉々として奴隷を囲うような人と思われたくないシアは難色を示す。

 しかし、何を勘違いしたのか天の助が話に割り込んできた。

 

「分かった。デザインが不満なんだな。ならこれはどうだ!?」

 

 そう言って取り出したのは、ところてんだった。正確に言うなら首輪みたいな形状をしたところてんだった。

 

「嫌ですよこんなヌメヌメしそうな首輪!?」

「えっ!?」

「そうだぜ天の助。お前それ常温で放置してたら発光するじゃねえか」

「何でできてるんですかこれ!?」

 

 ところてん(?)で出来た首輪を地面に叩きつけるシア。それを見て天の助はショックを受けるが、そんなことはどうでもいいとばかりに次は首領パッチが首輪を出す。

 

「じゃあオレのはどうだ? たまに杉山さんの声が聞こえるけど」

「誰!?」

『覚悟はいいか? 俺はできてる』

(ブチャラティ?)

「ASB版」

「普通に怖いですぅ!」

 

 再び首輪を叩きつけるシア。そしてバカ二人が勘違いしていることにやっとツッコミを入れた。

 

「それ以前に私はデザインを理由に首輪を嫌がってるわけじゃありません! というか奴隷でも無い亜人族が居ると目立つって言いますけど、首領パッチさんや天の助さんの方が明らかに目立ちそうじゃないですか!!」

「じゃあシアは首領パッチ達と同じ扱いでいいの?」

「えっ」

「武器にもするし盾にもする。そして存分にハジケてもらう。そんな風に扱うけど、いいの?」

「…………」

 

 カチャカチャ

 

 ハジメの脅しに屈したシアは無言で首輪を付けた。

 

「「オレらってそんなレベルで拒否されるような扱い受けてる?」」

「間違いなく」

 

 そしてバカ二人の問いに、ユエは無情な答えを返した。

 

 


 

 

 首輪で一悶着あったものの、遂に町の門まで辿り着いた。すると、門の横にある門番の詰所から門番らしき男が出てきて、ハジメを呼び止める。

 

「止まってくれ。ステータスプレートを。あと、町に来た目的は?」

「食料の補給がメインです」

 

 ふ~ん、と気の無い相槌をする門番にステータスプレートを持っているバカ三人は大人しく渡す。ハジメと天の助のステータスプレートは見られても特に問題は無かったが、首領パッチのを見た途端目を瞬かせ、遠くにかざすなどして何度も見直している。

 

「あ、やべ」

 

 それを見た首領パッチが思わずやっちまった、と言わんばかりの声を出した。

 唐突だが、ステータスプレートにはステータスの数値と技能欄を隠蔽する機能がある。戦闘を生業とする者からすれば、情報漏洩は致命的だからだ。その機能をハジメと天の助は使っていたのだが、首領パッチはすっかり忘れていた。

 ちなみに、これが現時点の首領パッチのステータスである。

 

===============================

首領パッチ オレ達は永遠になれない刹那だ レベル:ぶっちゃけアリ○ール

天職:決闘者(デュエリスト)

筋力:ゴリラ以下

体力:ベニクラゲ位

耐性:タスマニアデビル四十五匹分

敏捷:チーターと互角だったら良かったのに

魔力:ハゲタカよりはあるんじゃない?

魔耐:あの時のあいつと同じだな、お前は……

技能:シャイニングドロー・積み込み・状態異常耐性・ハジケリスト[+キング]・言語理解?

===============================

 

「いやどういうことだよ!!」

 

 そして門番は吠えた。それは、長年この町で過ごしてきた住人でも聞いたことがないであろうの叫びだった。

 が、ハジメとしてはこれ以上グダグダと足止めを喰らいたくは無いので門番と馴れ馴れしく肩を組み、こう言った。

 

「ステータスが文字、そんな時もありますって」

「どんな時だ!?」

「煩いな。早く入れろよ」

 

 いい加減イライラしてきたハジメに凄まれ、門番はツッコミを放棄した。

 その後、ユエやシアのステータスプレートの提示を求められたが、ユエは紛失、シアはサンバ・カーニバル係だから無いと説明し、通行の許可を得た。

 

「サンバ・カーニバル係ってなんですか!?」

「すみません。素材の換金場所って分かりますか?」

「あん? それなら、中央の道を真っ直ぐ行けば冒険者ギルドがある。店に直接持ち込むならギルドで聞けば、簡単な地図をくれるからそれで分かるぞ」

「ありがとうございます」

「応! 我等、冒険者ギルドに進撃せし!!」

「トラトラトラァ!!」

 

 こうしてハジメ達はこの町、ブルックへと入って行った。

 

 


 

 

 冒険者ギルドに着いたハジメ達は、躊躇なく入口のドアを蹴破り中へと飛び込んだ。

 

「素材換金の時間だああああああああああああああああ!!」

「魚。私は魚! フィッシュなのよ!!」

「ブルック名物ところてんはいかがっすかー!!」

 

 換金する用の樹海の魔物の素材を振り回しながら叫ぶハジメ。魚の真似をしながら飛び跳ねる首領パッチ。ところてんを勝手にブルック名物にしながら売りさばこうとする天の助。ハジケリストとしては普通の光景だが、周りには迷惑だ。

 

「うるさい」

 

 ドパンドパンドパン

 

 なのでいつもみたいにユエがバカ三人を射殺し、ハジメが持っていた素材を引ったくりそのまま受付嬢らしきおばちゃんに突きだした。

 

「素材の買取お願い」

「いや、それはいいけど。あんたの仲間は大丈夫なのかい?」

「大丈夫だ、問題ない」

「そうかい……。じゃあ、まずステータスプレートを出してくれるかい?」

「え?」

 

 ユエの疑問に、おばちゃんは簡素に答えてくれた。

 おばちゃん曰く、冒険者であれば素材の買取額が一割増になり、さらにギルドと提携している宿や店は一割程度は割り引いてくれたりするそうだ。

 

「で、どうする? 登録するかい? 登録には千ルタ必要だよ」

「えっと……」

 

 おばちゃんの言葉に悩むユエ。千ルタ、日本で換算するなら千円位は素材を売ることで払えるとは思うが、そもそもユエはステータスプレートを持ってない。無論再発行はしてもらえるが、その場合自身の特異性が一切合財表に出てしまう。だから

 

 ドパンドパン

 

 ハジメに二発銃弾を撃ち込んで、ユエは身体を揺さぶって起こしにかかった。

 

「ハジメ起きて。冒険者登録にはステータスプレートがいるから」

「起こす気ありますか!?」

「グ、ガガ……」

 

 ユエの言葉で起き上がるハジメ。しかし様子がおかしい。肌は青白くなり、目は白目をむき、言葉も覚束ず涎を垂れ流している。

 

「ニンゲン、クウ……」

 

 そう、ハジメはゾンビになってしまったのだ。

 

「キアリー! キアリー!」

「それ毒消しの呪文ですよね!?」

「我ハコノ世ノ闇ヲ知リ、ソシテ染マッタ者……」

「ハジメさん闇堕ちしてる――――――――――っ!?」

 

 その後、五分くらいかけてハジメは元に戻った。その間に首領パッチと天の助も復活し、とりあえず三人は冒険者登録をすることにした。

 

「本当はシアにクイーンズブ○イドの聖なるポーズをさせようかと思ったけど、文章でさせても今一つだからやめた」

「そんな裏話暴露されましても……」

「こう言っておけば、イラスト投稿サイトに誰かが聖なるポーズをしたシアを投稿するかもしれない」

「願望が浅ましい!!」

「ならここはオレと天の助が聖なるポーズをするしかないな」

「ああ」

 

 そう言うと二人は足を広げ、M字開脚を見せようとした所で

 

「キモイんだよコラァ!!」

「「グバァ!!」」

 

 ハジメが蹴り飛ばして阻止した。

 その後、持ち込んだ素材は四十八万七千ルタで買い取られ、その内三千ルタを使いバカ三人は晴れて冒険者となった。

 そして門番が言っていた地図を貰い、それを見ながら宿屋に行き今日を終えた。

 

 


 

 

 翌日、ハジメ達は町に出ていた。旅の荷物の準備の為だ。必要なのは食料品関係と薬関係、そしてシアの衣服だ。この内食料品と薬関係はハジメと天の助に任せ、ユエ、首領パッチ、シアの三人は服を買いに行くことにした。

 ギルド受付のおばちゃん、本名キャサリンから貰った地図にはおすすめの服屋一つとっても普段着用、礼服専門店、冒険者や旅人用の店と分けて記載されている。痒い所に手が届く実にいい地図だ。

 三人は早速とある冒険者向きの店に足を運んだ。ある程度の普段着もまとめて買えるという点が決め手だった。

 その店は品ぞろえ豊富、良品質、実用的、されど見た目も忘れずといういい店だった。

 ただそこには――

 

「あら~ん、いらっしゃい❥可愛い子達ねぇん。おねぇさん嬉しいから、た~っぷりサービスしちゃうわよぉ~ん」

 

 化物が居た。身長二メートル強、全身がムキムキのマッチョで劇画家と思うほど濃い顔。禿頭の天辺には一房の長い髪が生えており、ラー○ンマンみたく三つ編みで纏めてある。

 

「「ヒイイイイィィィ!!」」

「」

 

 ユエと首領パッチは怯えて抱き合い、シアに至っては絶句している。それにも関わらず化物は物凄い笑顔で身体をくねらせながら近づいてくるので、ついユエは呟いてしまった。

 

「……人間?」

「だぁ~れが伝説級の魔物すら裸足で逃げ出す、見ただけで正気度がゼロを通り越してマイナスに突入する様な化物だゴラァァアア!!」

「って首領パッチが言ってました」

「え、オレ!?」

 

 恐怖のあまり仲間を人身御供にしてしまうユエ。しかしこの化物は平等だった。

 

「連帯責任!!」

「「グバァ!!」」

 

 化物からラリアットを喰らい、ダメージを受ける二人。特にユエは腰の辺りから上半身と下半身が分裂し、上は天井に突き刺さり、下はそのまま倒れ伏した。

 

「大惨事起きてる――――――――――!?」

「心配しないで」

 

 天井に刺さったユエの上半身を見ながら叫ぶシアに、下半身が唐突に話しかけた。そして出てきたのはまさかの愚痴である。

 

「ユエさんの下半身が喋ってる!?」

「あんな奴いなくてもいい。男なんていっつも顔か胸しか見てないんだから、あっちはあっちで幸せにやると思う。でもメインキャラのユエの座は下半身である私が貰う。これからの時代は下半身オンリー系ヒロインが来る」

「それ多分妖怪かなにかですよ!!」

「そんなことは言っちゃ駄目だぜ」

 

 下半身の無茶苦茶な発言に待ったをかける存在が。声がした方向を見ると、それは首領パッチの天辺に生えているトゲだった。

 

「トゲまで喋るんですか!?」

「トゲ太先輩……」

「オレは尻派なんだ。上半身だけの女の子なんて、そんなの寂しいだろ?」

「先輩がそうまでいうなら……。私、普通の女の子になります。とうっ!」

 

 トゲ太先輩の言葉を受け、一つに戻る決断をした下半身は天井に刺さっている上半身の元へジャンプし、合体した。

 その瞬間、辺りが一瞬だけ光に覆われ、晴れた時そこにいたのは、二メートル半位のゴ○ラだった。

 

「何で!?」

「と思った?」

 

 シアがツッコミを入れた後、ゴ○ラの背中に実はあったジッパーが開かれ、中から元のユエが現れた。

 

「私、復活」

「着ぐるみだったんですか!?」

 

 そしてユエの復活を見届けたトゲ太先輩はの魂は天に上り、あるべき所へ帰って行った。

 

「トゲ太先輩は何者なんですか!?」

「ただの、トゲさ」

 

 シアの疑問に首領パッチはドヤ顔で応えるが、当然シアは納得しない。でも聞いてもまともな答えが返ってくるとは思えないので、シアは諦めた。

 

「というか、私のお店で騒がないでほしいわぁん」

「「「ごめんなさい」」」

 

 化物に凄まれ、三人はハジケまくったことと人外扱いしたことを必死に謝罪し許しを得た。

 その後、シアの服を見事に見立ててもらったので、化物改め店長のクリスタベルを三人は見直し、人って見かけじゃないんだなぁ、と心の底から思ったという。

 そして別行動していたハジメ、天の助と合流し宿をチェックアウト。

 目指すはライセン大迷宮、旅の再開だ。

 

「何最後だけ綺麗に締めようとしてるの?」

「つーかオレ、最近全然ハジケてなくね?」

 

 ハジメと天の助の不満には、そっと蓋をして。



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奥義19 遂に来た! 解放者のウザい奴!!

「あ、そうだ。シアにこれ渡しとくよ」

 

 出発直前、ハジメはシアに登場が奥義7以来の救世鈍器ピアニカソードを投げ渡す。それを受け取ったシアは凄く微妙な表情を浮かべながら尋ねた。

 

「……あの、何ですかこれ?」

「救世鈍器ピアニカソード。ハイドリヒ王国の宝物庫にあった武器だよ」

「見た目はともかく結構な業物ですね!? 何でそんな物を私に?」

「いや、過去作から引っ張ってきた一発ネタだったんだけど、もう一回位出す機会無いと寂しいし……」

「史上稀に見る酷い理由!!」

「それと武器を持ってないシアに対するプレゼントって言うのもあるよ」

「そんな取ってつけたように言われましても!!」

「おーい、馬車用意したぞー」

 

 ツッコミ続けるシアを尻目に、天の助が二人を呼んでいる。その言葉を聞いて二人は天の助の元へ。そこにあったのは――

 

「用意したぞ。ぬの馬車をな!」

 

 一面にぬの文字が敷き詰められた馬車と、それを引く馬型のゼリー状の生物だった。

 

「馬車がキモいですぅ!!」

「ならこっちにする?」

 

 そう言ってハジメが用意したのは、キャンピンガー程の大きさを誇る豆型の車だった。

 

「ロクな移動手段無い――――――――――っ!!」

「ぬの馬車」

「豆の車」

「あなたはどの車が好き?」

「新春キャンペーン実施中!」

「四人がかりでやるネタが古い!」

「ガールフ○ンド(仮)のネタになったお正月CMって2014年のだし。時の流れは恐ろしい」

 

 ボソリと小声でネタ解説をしながらユエは豆の車に乗り込み、シア、ハジメ、首領パッチも後に続く。

 一人残された天の助は、ショックで叫んだ。

 

「ウンコだけじゃなく豆にも負けた! ショック!!」

「はいや――――!!」

 

 ショックを受けている天の助を、首領パッチが投げ縄で捉える。そしてそのまま豆の車は発進し、天の助を引きずりながら出発していった。

 

「あああああああああああああああああああ!!」

「天の助さ――――――――――――――ん!!」

「「イエーイ!」」

 

 引きずられる天の助を見て叫ぶシア、対してハジメと首領パッチはハイタッチで互いをたたえ合う。その光景にシアは迷わずツッコミを入れた。

 

「いや何でハイタッチ!?」

「あいつは、僕のカレーパンを食べた」

「オレもフルーツサンド食われた」

「それだけ!?」

 

 


 

 

 ライセン大峡谷に入ってしばらく経った。

 その間、魔物に多少襲われたものの特に問題なく進み、ハジメ達がオルクス大迷宮から出てきた転移陣が隠されている洞窟も通り過ぎて二日程進んだ辺りまで辿り着いていた。

 そして今、ハジメ達は首領パッチの提案でバーベキューをしている。野菜とバーベキューコンロは豆の車の中にあり、肉は買っておいたクルルー鳥*1を使った。

 

「まさかバーベキューコンロと野菜が豆の車の中にあるなんて、僕ビックリしたよ」

「あの車ハジメさんが出しましたよね!?」

 

 ハジメがしたまさかの言動にシアはツッコミを入れつつも、皆は焼けたバーベキューを食べながら思い思いに駄弁っていた。

 

「何かこうしてバーベキューやってると、ボーボボ達と旅してた時を思い出すな」

「ああ、そういやボーボボの提案でこういうのよくやったよな」

「へぇ~、そうなの?」

 

 首領パッチと天の助の思い出話に、ハジメは興味を示す。一方、ユエは話に入れず若干膨れ面を見せ、シアは純粋に疑問をぶつけた。

 

「あの、ボーボボってどなたですか?」

 

 シアのなんてことの無い質問。しかしハジメ達は一瞬だけ意外な顔をするが、すぐに納得して返答した。

 

「ボーボボっていうのは、僕らの世界では有名な英雄でね。世界を支配していた悪の帝国を滅ぼした英雄なんだよ」

「んで、オレと天の助はそいつと一緒に帝国と戦ってたんだぜ」

「……気になる」

「お、そうか? ならオレがいかに主人公してたか教えてやるよ! 今夜は徹夜だな」

 

 首領パッチが思い出話で徹夜を提案し、ユエもそれにノっている。だがその前に天の助が一言。

 

「思い出話はいいけど、その前にオレはカバを狩って来るぜ」

「カバ!?」

「カバのバックには金魚がいるから気を付けてね」

「金魚!?」

 

 そう言って天の助はその場を離れる。そしてしばらくすると天の助が慌てて戻ってきた。

 

「てえへんだてえへんでぃ! 皆こっちにきてくれぃ!」

「何キャラですか」

 

 皆は何事だと思いながらも天の助に連れられるがままに進む。そして辿り着いた場所には、壁面と一枚岩の間に隙間が空いていた。天の助はそのまま隙間に入っていくので、皆もそれに続く。

 入った先には結構広い空間があり、中ほどの壁面には看板があり、それに反して妙に女の子らしい丸っこい字でこう彫られていた。

 

 “おいでませ! ミレディ・ライセンのドキワク大迷宮へ♪„

 

「何ですかこのポップな文章は」

「……胡散臭い。でも多分本物。ミレディって書いてるし」

「ミレディ?」

「解放者の一人の名前」

 

 ミレディ。その名は、オスカーの手記に出てきた解放者の一人の名前である。解放者、世間には反逆者として伝わっているが、名前自体は全くと言っていいほど広まっていない。その名がここにあると言うことは、ここがライセン大迷宮である可能性は非常に高いということである。

 だがそれはそれとして、文章がウザかったので首領パッチと天の助は石板の文章に“In ナウマンゾウのウンコ„と書き足していた。これにより文章は”おいでませ! ミレディ・ライセンのドキワク大迷宮In ナウマンゾウのウンコへ♪„となった。

 

「なぜナウマンゾウ!?」

 

 一方ハジメは周りを全く気にせず大迷宮の入口を探していた。そして奥の壁にハジメが触れると、いきなりからくり扉の様に回転し、ハジメはそのまま壁の向こうへと姿を消した。ユエ達は慌ててハジメを追いかけて扉の奥へ飛び込む。そして入った瞬間、ヒュヒュヒュと無数の風切り音を響かせて矢が飛んできた。

 

「お願い防いで。天使さん!」

「任せろ! プルプル真拳奥義、ぬのハンカチシェルター!!」

 

 ユエの頼みに応じ、ぬのハンカチで出来たシェルターを呼び出す天の助。しかしハンカチで矢が防げるわけもなく、五本程矢を弾いた後全部の矢がユエ、首領パッチ、天の助に命中した。

 

「いやむしろ何で五本弾けてるんですか!?」

 

 そして弾かれた五本の矢は――

 

「だからよ、止まるんじゃねえぞ……」

 

 先にこの部屋に入っていたハジメに命中し、希望の花を咲かせる羽目になっていた。

 

「ハジメさんがまた死んでる! いつもみたいに!!」

 

 それを無視してユエは、部屋の中央にある石板を見る。そこには入口と同じ文字でこう書かれていた。

 

 “ビビった? ねえ、ビビっちゃった? ちびってたりして、ニヤニヤ„

 “それとも怪我した? もしかして誰か死んじゃった? ……ぶふっ„

 

「何て言い草だ。僕を殺した責任、取って貰わなくちゃな」

「伝奇物のエロゲーならメインヒロイン張れそう、その台詞」

「月○リメイクまだー?」

 

 石板の文章に怒りを覚えながらも、大迷宮に挑もうと通路沿いに進もうとするハジメ達。しかし、ある程度進んだと思うと前触れもなく

 

 ピィ―――――――ッ!!

 

 という音が鳴り響いた。

 

「な、何の音ですか!?」

「まさか、万引きか!?」

「おいハジメ、このぬの絵本は何だぁ? きちんと清算してもらわないと困るんだけどなぁ?」

「し、知らない! 僕はそんな絵本万引きしてない!! 僕が万引きしたのはダイナマイトバディ女子大生というエロ本だ!!」

「万引きはしてたんですね!?」

「「万引き駄目絶対!!」」

「ぎゃああああああああああああああああ!!!」

 

 ハジメは二人の怒りを買い、爆発してしまった。

 

「ぬの絵本?」

 

 いきなり爆破されたハジメを無視して、ぬの絵本が気になったユエは天の助から奪い取り、シアと二人で読み始める。その本にはこう書かれていた。

 

 “ぬぬーぬぬぬぬ、ぬぬぬぬぬぬ、ぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ、ぬぬぬぬぬぬぬ。„

 

「読めない!!」

 

 ユエは怒りの余りぬの絵本を引きちぎった。

 

「オレの絵本が――――――――――!?」

 

 泣きながらちぎれた絵本の断片を拾い集める天の助。そうこうしている間に音は止み、それと同時に壁に映写機で投影されたかのような画面が現れ、映像が流れ始める。

 その映像は、カブトムシの交尾だった。

 

「何で!?」

『あ、間違えた』

 

 と思ったその刹那、映像が切り替わりニコちゃんマークの仮面を付けた白いローブを付けたゴーレムが画面に映る。

 

『はーい! 皆大好きミレディさんだよー!!』

「いやそれよりさっきの映像もうちょっと見せてよ! 結構貴重だよ!!」

「オレの今年の自由研究、アレを見た感想にするから見せろよ!!」

『ちょっと黙ってて』

 

 ミレディの言葉と同時に、無数の矢が飛来してハジメと天の助を貫く。そしてゴホン、と咳払いをして無理矢理仕切り直し、ミレディはまた話しはじめた。

 

『というわけで、美少女解放者にしてこの迷宮の主、ミレディ・ライセンでーす! よっろしっくねー!!』

「何が美少女だよ」

「雑なキャラデザしやがって」

「作画楽そうだなオイ」

『ちょっと待って! 今は元の身体が死んでるからこんなゴーレムに意識移してるけど、人間の時の私は本当に美少女だから! オーくんとかメイド服着てたら色んな意味でガチガチだったから! グー○ルでミレディって検索したら、サジェストで真っ先に出てくる私を舐めないで欲しいね!!』

「ミレディってあなたか靴のブランドしかないと思うけど」

『そういうこと言うのは無しで』

 

 ハジケリスト四人に塩対応されながら、それでも話を続けるミレディ。その様を見てこの人メンタル強いな、とシアは思った。

 

『まあそれは置いといて、ここからが本題。さっきのピィ――――ッ、って音は一定以上のハジケリストがこの迷宮に挑もうとすると鳴るシステムで、そのハジケリストにはある権利を賭けて挑戦が出来るの』

「権利?」

『うん。その名もダンジョンオールカットの権利!』

「オールカット!?」

 

 ミレディのあまりの発言に思わず叫ぶシア。しかし話は止まらない。

 

『まあぶっちゃけ私はハジケリストなら神殺しをしてくれるって期待してるからさ、ダンジョンパートはいいかな~って思う訳。でもタダじゃないよ。ここでハジケてもらって、私がそれを合格だと思ったらダンジョンを半分カット。そしてその先で今度は私が用意した刺客とハジケ勝負をしてもらうから、それに勝ったら残りもカット。そしてボス戦って感じかな』

「合格出来なかったら?」

『その時は頑張ってダンジョン攻略して』

「成程、分かりやすいな」

「そういうことなら最初は僕が――」

「待てよハジメ。オレにやらせろ」

「首領パッチ……」

 

 ミレディが提示するダンジョンオールカットの権利を手に入れる為、挑戦を名乗り出た首領パッチ。果たして権利を手に入れることができるのか?

 

『次回をお楽しみに!!』

「仲間面して締めの台詞取らないで」

 

 いきなりナレーションの締めに割り込んできたミレディが映る画面に、ユエがロケットランチャーを発射した。

 

『ぎゃああああああああああああああああああ!!』

「何で画面越しなのにダメージ受けてるんですか!?」

*1地球で言う鶏



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奥義20 ハジケ対決二番勝負

『さあ、見せてもらおうか! 君のハジケを!!』

「ああ、いくぜ」

 

 首領パッチが宣言したと同時に、首領パッチソードを天に掲げる。

 

「オラァ!!」

「へぶっ!?」

 

 それをユエの顔面に投げつけてから、首領パッチはハジケ始めた。

 

「カジキマグロには何でツノある? 何でツノある? その秘密を教えてあげちゃうよ♪」

 

 歌いながら踊る首領パッチ。その様はまさにミュージカル。

 そして首領パッチは懐から黒のボールペンを取り出し、地面に植えはじめた。

 

「始まったばっかだけどちょっとハーフタイム入りまーす! 黒のボールペン植えなきゃ……。植えなきゃパパが醤油かけすぎ罪で無期懲役喰らっちゃうよ……」

 

 しかし、首領パッチは植えている途中のボールペンを上に放り出し、いつの間にか近くにあったカジキマグロのツノを手に取る。

 

「でもそんなもんどうでもいいわボケェ! もうお前はパパじゃなくて、たまに会うお小遣いをくれるおじさんだ!! ママが再婚したんじゃあ!!」

 

 そのままツノをへし折り、狂気を含んだ笑みでミュージカルを再開した。首領パッチはツノを振り回しながら、歌い続ける。

 

「だーかーらーぼーくはー、ツノを手にするよー。そーのーたーめーのー、カジキマグロさっ!」

 

 首領パッチはツノを巧みに振り、自分で植えたボールペンを切り裂く。その結果、切り裂かれたボールペンからインクが漏れ出し、迷宮の床を黒く染める。

 すると、ツノをへし折られたカジキマグロが暴れ出し、インクがこぼれた床にまで撥ねながらやってきた。

 

「どうして!? どうしてそんなに暴れるのパパ!? そんなことしたってママはもう新しいパパを選んだんだよ!? お願いだから刑務所で大人しくしてよ!!」

 

 首領パッチは必死に説得するが、カジキマグロは意に介さないどころかさらに暴れまわる始末。しかし、首領パッチにはその行動の意図が見えた。

 

「そうかい……。パパはどうあっても新しいパパを殺すんだね……。じゃあ――」

 

 首領パッチはカジキマグロを持ち上げ、

 

「行ってこいよ!!」

 

 そのまま投げつけた。

 

「ぐはぁ!!」

 

 投げつけられたカジキマグロは天の助を貫き、そのまま後ろの床に突き刺さった。

 

「これで終わったんだ……。じゃあ、もうこれは必要ない……」

 

 最後に首領パッチは、持っていたツノをへし折る。それと同時に、ツノとカジキマグロに青い炎が付き、最後には灰も残さず消え失せた。

 そうして残ったのは、倒れ伏すユエと天の助、余りのハジケっぷりに思わず拍手をするハジメ、唖然とするシア。最後に、もうハジケ終わったとばかりにミレディの方に視線を向ける首領パッチだった。

 一方、ミレディは満面の笑みで両手をサムズアップさせながら判定を下す。

 

『ん~~~~~~~~~~~~~~~~~、合格っ!!』

 

 ミレディの言葉と同時に、地響きが起こる。やがて地響きが鳴りやむと、そこには一面にねと書かれた車が現れた。

 

『はい、じゃあこれに乗ってね。次のステージにイクゾー』

「デッデッデデデデ!(カーン)デデデデ!」

「カーンが入ってる。+114514点」

「唐突なRTA要素」

「待て!」

 

 ハジメ達は特に異論もなく、ねの車に乗り込もうとするのだがそこに待ったをかける者が一人。誰かは当然決まっている。天の助だ。

 

「オレはねの車なんて認めねえ! そんなのに乗る位なら、真面目にこの迷宮を攻略してやるぜ!! なあ、皆もそうだろ!?」

 

 天の助のねに対する強い敵意が、叫びに乗って一同に伝わってくる。

 

「いや、ねの車に乗るけど……」

「そもそも何でそんなにねを嫌っているんですか?」

 

 だが女性陣には天の助の気持ちを意にも介さず

 

「そんなに乗りたくないなら一人で行ってよ」

「行くのじゃ。TOKORO‐BOYよ」

 

 バカ二人に至っては、天の助をペットボトルロケットに括り付けて天の助を排除しようとする始末。

 

「ハジメ、発射しろ」

「ハッ。提督!!」

「あああああぁぁぁぁぁぁ……!」

 

 そしてペットボトルロケットは打ち出され、天の助は正規ルートでライセン大迷宮に挑むことになった。

 

「じゃ、僕らも行こうか」

 

 一方、ハジメ達は大人しくねの車に乗り込み、出発した。

 

 


 

 

 ねの車に乗り案内された次の場所は、茶道の際客を招きもてなす為の施設である茶室だった。

 

「なんで迷宮内に茶室を……?」

「茶道はハジケリスト達の嗜みだ。ハジケリストは茶室でのみリラックスできる。恐らくここはこの迷宮の休憩所だ」

「でもハジケリストは茶道に始まり茶道に終わるからね。今回は休憩所じゃなくて、ハジケ勝負の場と見た方がよさそうだ」

「な、成程……」

 

 首領パッチとハジメのいつになく真面目な解説に、シアが感心しながら茶室の戸を引く。そこでシアが見たものは

 

「おう、遅かったなお前ら」

 

 四メートル程に巨大化していた天の助と

 

「ええやろ、なあ……。ちょっとだけやからさあ……」

「や、やめろ! 俺とお前は敵同士なんだ!!」

 

 コーヒーカップに無理矢理迫るティーカップの姿があった。

 

「絶対休憩出来ませんよここじゃ!!」

「ところでティーカップ×コーヒーカップっぽいけど、ボーイズラブのタグ付けないと駄目じゃない?」

「僕の観察眼によると、コーヒーカップは女性だから大丈夫だよ。いわゆる俺っ娘って奴」

「文字じゃ伝わらないですぅ!!」

「絵があっても伝わらねえだろ」

 

 シアの叫びが茶室を揺るがす。その間に天の助は元の大きさに戻り、コーヒーカップはティーカップを茶室の壁に五寸釘で張り付けにしてから、ハジメ達へ体を向ける。

 

「板垣死すとも自由は死せず……ガクッ」

「ティーカップ死んだ――――――――――っ!?」

「よく来たなお前ら! 俺はこの休憩所の番人、コーヒーカップだ! 俺と茶道勝負して勝てばボス戦までショートカット出来るぜ!」

「予想してた通りだね。ならここは僕が――」

「いいや、ここはオレが行こう」

 

 ハジケ勝負に挑もうとするハジメを、今度は天の助が引き留める。その言動にハジメは怒りを見せた。

 

「あのさぁ! さっきから何で僕のハジケパート盗ろうとする訳!? さっきはそっち(ボーボボキャラ)がハジケたんだから、次はこっち(ありふれキャラ)にハジケさせてよ!!」

「何で……だと……!?」

 

 ハジメの怒気に天の助は一切怯むことなく、それどころかハジメ以上の怒りを見せて応戦する。

 

「ありふれ側のお前ら最近出番取り過ぎなんだよ!!」

「ええ!?」

「奥義14とか見返せよ! 帝国兵と戦ってる時、ハジメとユエが好き勝手やってる間オレと首領パッチ完全に裏方扱いじゃねえか!!」

「いや、確かに最近ユエが出張ってた感はあるけど……。でもそっち原作終了後じゃん! 立場的には四部の承太郎みたいなものじゃん!! そっちは多少すっこんでてもいいでしょ!?」

「クロスSSだぞこれ! 互いの原作を平等に扱えよ!! 蹂躙クロスとか地雷扱いだろうが!!」

「雰囲気はボーボボ一色だよ! 読者の九割九分がこのSSはボーボボSSだと認識してるよ!!」

「シナリオはありふれだからバランスは取れてるって!!」

「え? そう!?」

 

 ヒートアップしていく二人の口論。しかしそこにシアが、冷や水の如き一言を浴びせる。

 

「正直どっちでもいいんで、早く話進めませんか?」

「え、いやオレら今大事な話してんだけど……」

「あんまり長々メタ発言する方がよっぽどアレなんで」

「あ、はい。そうですね……」

 

 決して荒くないシアの言動。しかしなぜか抗いがたい恐怖を覚えた二人は、大人しく口論を止め、じゃんけんでどっちがコーヒーカップと勝負するかを決める。結果は天の助となり、ハジメは悔しさのあまりUNOを用意し始めた。

 

「ハジメさんあんまり悔しがってませんね!?」

「こっちはオレが出る」

「そうか。じゃあ、始めるぜ!」

 

 コーヒーカップの宣言と同時に、ハジメ、ユエ、首領パッチの三人は茶室の戸を引き外へ出て行く。

 

「出て行くんですか!?」

「ハジケリストの茶道対決の時は、ツッコミスト以外は茶室に入ってならない、って家庭科の教科書に書いてたから……」

「家庭科!?」

「じゃあ私達はUNOやってるから」

「え、ちょ、私もUNO混ぜてくださ――」

 

 シアの言葉は最後まで紡がれること無く、戸は無情にも閉まり、天の助とコーヒーカップの茶道対決が始まるのだった。

 

 ―茶道対決 開始―

 

 ハジメ達が茶室から出て行き、天の助も後ろに続く。

 なぜならそれが勝負の作法。招き入れられることからハジケられなくて何がハジケリストか。

 ということで茶室内はシアとコーヒーカップの二人きり。コーヒーカップは一心不乱にお茶を点て、シアは黙って見ている。ぶっちゃけ、シアは凄く気まずい。

 

「失礼します」

 

 シアが早くしてくれませんか、と内心で呟いていると外から天の助の声。

 

「どうぞ」

 

 その声にコーヒーカップが返答する。

 と同時に、機動隊の装備を身に付けた天の助が、後ろに同じ格好をした幾人かを従え戸を蹴破り茶室に突入してきた。

 

「何で機動隊!?」

 

 そして銃口をコーヒーカップに向け、脅しをかける。

 

「お茶だ! お茶を出せ!!」

(やってることは強盗だ――――――っ!?)

「はい、ただいま……」

 

 慌ててお茶を点て、そそくさと天の助に出すコーヒーカップ。

 コーヒーカップが出したものは、マグカップの中に湯気を上げながら並々と入っているココアだった。

 

「初手お茶じゃない!! というかさっき点てたお茶は!?

「ふむ、中々のお手前……。なら次はこちらが」

 

 コーヒーカップのココアに舌鼓を打った天の助は、お返しとばかりにお茶を点て、コーヒーカップに差し出す。

 

「どうぞ。ところてんドリンクです」

「何ですかそれ!?」

「バカな……。薄味にも拘らず何だこの不愉快な味は……!?」

「不味いんですか……」

 

 コーヒーカップがところてんドリンクの味に恐れおののいた所で、攻守を交代。

 

「攻守!?」

 

 今度は天の助が最初から茶室に居て持て成す側にとなり、コーヒーカップは持て成される側となった。

 

「失礼します」

「どうぞ」

 

 天の助の了承の声と同時に、モヒカンのカツラを付け火炎放射器を構えたコーヒーカップが戸を蹴破り、天の助に火炎放射器を向け凄む。

 

「ヒャッハー! 水だ! 水を寄越せ!!」

「北斗のやられ役みたいになってる!?」

「フッ」

 

 コーヒーカップの脅迫。しかし天の助は短く笑うのみ。

しかし天の助が笑うと同時に、コーヒーカップの足元の床が開き、奈落へと落ちていく。そして底にあったものは

 

「喰らえコーヒーカップ! 半径二十メートル、ところてんスプラッシュを!!」

 

 奈落一杯に埋め尽くされた、大量のところてんだった。

 

「やめろおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

「最早新手の地獄絵図です―――――――っ!!」

「三日前から仕込んでおきました」

「そうなんですか!?」

 

 奈落の底でところてんに溺れるコーヒーカップ。彼女の身体は口はもとより、コーヒーを入れるべきである御椀の部分もところてんに浸食された。

よって彼女はもうコーヒーを入れられない敗残兵。ならば彼女の末路は一つ。

 死だ。

 

「死ぬの!?」

 

 コーヒーカップがところてんの中で無念に息絶えると同時に、茶室の壁が開かれ奥からトロッコが現れた。

 

『よくぞコーヒーカップを倒したね。ならばそのトロッコに乗るがよい!』

「いきなり出てきて何キャラですかミレディさん」

『果たしてトロッコの先に待ち受ける物とは!?』

「ミレディさんは知ってますよね」

『次回に続く!!』

「無視ですか」

「おいミレディ!」

 

 いきなり現れ、画面越しに力技で締めに掛かるミレディ。しかしそれに待ったをかける声が。

 

「ウゼェ」

 

 声の主は首領パッチだった。

 首領パッチはミレディが映る画面に向かってミサイルランチャーを叩きこむ。

 

「くたばっちまえ―――――――――――――――っ!!」

『ぎゃあああああああああああああああ!!』

「だから何で映像越しにダメージが!?」




過去最高にハジケていた話では?(自己評価)


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奥義21 私の背中にはバカがいる

更新頻度遅い挙句、アニメに追い越されるとか笑っちゃうんすよね。
いや笑えませんけど。

……でも二章を二話で終わらせるのは予想外でした


 トロッコに乗り移動した先は、灰色の壁面と程ほどの明るさを保った空間に、十メートル四方の立方体の物体がいくつも浮かび、一定間隔で移動する不思議な場所だった。

 

「3Dマ○オのアクションステージみたいだ」

「この形態のステージサン○ャインでよく見たな」

 

 ハジメと天の助が好き勝手な感想を述べている一方、ユエはいくつもある立方体の中心にある、巨大な物体、というよりもはや足場に目をやっている。

 

「定石で考えるなら、あそこにボスがいる」

「じゃあさっさと行こうぜ。この――」

 

 ユエの言葉に首領パッチは返答しながら

 

「大砲でな!」

 

 近くに備え付けてあった、大砲に身体を突っ込んだ。

 

「何で大砲が!?」

「マ○オだとよく見る光景」

「行くぜぇ―――――――――っ!!」

 

 首領パッチの叫びの直後、爆音が響きそのまま飛んでいく。

 大砲ごと。

 

「まさかの光景!!」

「ああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 そして首領パッチは、目標としている足場とはまるで違う方向に跳んでいき、そのまま落下していった。

 

「大変ですぅ―――――――――――っ!?」

「正直予想してた」

「呼び戻すの面倒くせえな」

「クッキーか何かで呼べるかな」

 

 首領パッチを心配するシア。一方バカ三人は愚痴を呟きながら宙を舞い、目標となる足場を目指そうとする。

 

「飛んでる――――――――――――っ!?」

「ほら、シアも早く」

「いや私飛べません!!」

「全く、仕方ないな」

 

 ハジメがそう呟くと、バカ三人は体育祭などでよく見る騎馬の構えをし、上にシアを乗せてから、再び宙を舞う。

 

「なぜ騎馬?」

 

 シアの疑問には誰も答えることは無く、特に障害も無いまま足場に到着。

 足場に着いたハジメはまず、床に大量のクリップをぶちまける。すると、落下していった首領パッチが執念で足場までバタフライで戻ってきて、クリップを貪り食う。

 

「バタフライで!?」

「ゲッヘッヘ……、このクリップは全部オイラのだ……。グハァ!!」

 

 そしてそのままクリップは食べられないことに気付き、吐き出してからキレる。

 

「何でオレにクリップを食わせたハジメェ!!」

「勝手に食べただけじゃん!?」

 

 喧嘩しだしたハジメと首領パッチの背で、大剣を携え、全身甲冑のデザインをして、数メートル大のゴーレムが五十体上から舞い降り、さながら騎士の如く整列し、胸の前で大剣を構える。

 そして騎士の主、王としてデザインは騎士ゴーレムと同じだが全長が二十メートル弱、右手は赤熱化し、左手には鎖を巻きつけてフレイル型のモーニングスターを装備したゴーレムが同じように降りてきた。

 

「遂にやって来たわに! ハジケリストの諸君!!」

 

 その巨大ゴーレムから響くのは、入口でも聞いたこの迷宮の主、ミレディ・ライセンの声。前に見た姿との違い、見た目と声の噛み合わなさに戸惑いながら、おずおずとシアはミレディに尋ねる。

 

「あの、その姿は……?」

「キャラデザ変えた?」

「これボス仕様だから。ぶっちゃけるけど本体は別にあるよ。可愛いミレディちゃんが無くなるなんて世界の損失だしね~」

「いやあなたの本体がそれでも私は消し飛ばす気満々だけど」

「怖っ!?」

 

 ユエの発言に恐れおののくミレディ。一方、残りのバカ三人は

 

「いいよいいよ仕上がってるよそのゴーレムボディ!」

「キレてるよー! 筋肉キレてるよー!!」

「肩にちっちゃいジープ乗せてんのかい!」

 

 なぜかミレディに向かって、ボディビル大会のかけ声をかけていた。

 

「何で急に!?」

 

 そして声を掛けられた彼女も、ノリノリでサイドチェストやモストマスキュラーなどのポージングを見せつける。

 

「ノリノリだ―――――――――――――――っ!?」

「さて、ポージングも見せたことだし質問をするけどいい? 答えは聞いてないけど」

「そのテンションの高低差やめて。耳キーンってなるから」

「質問をするよ!!」

(絶対に話を進めるという鋼の意志を感じるですぅ)

 

 ミレディの強い意志をくんで大人しくするハジメ達。静かになったハジメ達を見て、ミレディは話しはじめた。

 

「静かになるまで五分もかかりました。じゃあ聞くけど、君達は何で神代魔法を求めるの? 目的は何?」

 

 ミレディのシンプルな質問。だが言葉に荒々しさや飾り気は無くても、虚偽は許さないという思いは明確に伝わってくる。

 その問いに、ハジメは迷うことなく返答した。

 

「オスカー・オルクスの部屋で僕達はこの世界の真実、エヒト神にまつわる話を聞いた」

「あ、オーくんの所行ったんだ」

「そして決めた。僕達はエヒトを殺して」

 

 そこで一旦言葉を区切り、ハジメだけでなく仲間達も息を大きく吸い一斉に叫んだ。

 

「英雄になって、なろう主人公ばりのハーレムを手に入れる!!」

「オレが真の主人公になる!!」

「新たなる神となり、ところてんをこの世界の主食とする!!」

「私はヒロインなんだ……! 誰がなんと言おうとこのSSのヒロインなんだ……!!」

「……成り行き?」

 

 訂正。ユエとシア以外のバカ三人が叫んでいた。

 一方、ハジメ達の答えを聞いたミレディはというと

 

「ブッ! アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」

 

 大爆笑していた。二十メートル程のゴーレムの体でありながら、器用に腹を抱えて笑っていた。

 やがてひとしきり笑って、まだ笑いが残りながらミレディは言葉を紡ぐ。

 

「いや、やっぱりハジケリストって凄いね……! 私の予想なんて軽々超えていく……! うん、そんな理由でいいんじゃない? 私達解放者もエヒトを殺したいと思っているのは、別に正義の為じゃないし。酒の席でエヒトぶっ殺して~、とか言ってたし」

「どんな集団だったんですか解放者って……?」

 

 シアが素朴な疑問を口にするが、ミレディは返答することなく、ハジメ達と同じくらいに力強く叫ぶ。

 

「理由については問題なし! さあ、ボス戦だよ。命をかけて、かかってこい!」

「結局映画本編では言わなかった台詞定期」

 

 


 

 

 ハジメ達ハジケリスト VS ミレディ with GRM50。

 この戦いの一番槍を貰ったのは、意外にもユエであった。

 

「こういうタイプの敵は火力をボスに一点集中させて倒せば雑魚も倒せる、って相場が決まっている」

 

 言いながらユエは天の助の背後に回り、ところてんマグナムを出す為に拳を構える。しかし拳を突きだした瞬間、天の助は身体を捻って回避し、そのままユエの背後に回った。

 そして天の助は逆にユエに向かって、拳を振り抜いた。、

 

「内蔵マグナム!!」

「人殺し―――――――――――っ!!」

「吸血鬼だろ」

 

 首領パッチの冷めたツッコミを添えて、ユエの内臓はミレディに向かっていく。

 

 ベチャッ

 

「…………」

 

 だが所詮は内蔵。ミレディに何のダメージを与えることも無く、彼女に当たった内臓はそのまま床に落ちた。

 

「あれ!? 私の内臓何の役にも立ってない!?」

「役立たず!!」

「私!?」

 

 ダメージを与えられなかったユエはハジメに蹴られ、そのままゴーレムの元へ跳ばされる。一方、ゴーレムは飛んできたユエに対し冷静な対処として、上に弾き飛ばした。

 

「ユエさん踏んだり蹴ったりですぅ――――――――――――!?」

「ありゃりゃ、そこのコンペートーとゼリーもどきは凄いけど他は大したことないのかな?」

「誰がコンペートーだコラァ!? オレは妖精だ!!」

「ところてんを舐めるな――――――――――っ!!」

「フッ……」

 

 ミレディの発言に自己中心的な理由でキレる首領パッチと天の助。二人を無視してハジメは鼻で笑う。その態度にミレディは疑問を投げかける。

 

「随分余裕だね?」

「当然さ。ユエは吸血鬼族最後の生き残り。つまりあいつは、ハジケリスト歴三百年の超武術家ってことさ!!」

「武術家ではありませんよね!?」

 

 ハジメの信頼に満ちた言葉。それに答えるか如く、ユエは戦場にもう一度戻ってきた。

 

「ロードローラーだッ!!」

 

 建設現場で地面を押し固める機械、ロードローラーを携えて。

 

「どこから持ってきたんですかそれ!?」

「無駄無駄無駄ァ!!」

 

 ロードローラーでゴーレムを押しつぶし、ダメ押しで肘を使ってロードローラー越しに突き(ラッシュ)を叩きこむ。

 ユエの猛攻に耐えきれず砕け散るゴーレム。しかし壊れた傍から即座に再構成され、元の形を取り戻そうとする。

 

「凍柩」

 

 だがその前にユエの魔法で凍らせてしまえば、復活は大きく遅れる。

 

「嘘!? 何でこの迷宮で上級魔法が使えるの!?」

 

 ユエの放った魔法に驚くミレディ。

 この迷宮には強力な魔法分解作用が働いており、実は魔法に関して天才的なユエであっても中級魔法が精々、上級魔法であれば一度が限度レベルでしか魔法が使えない。もしユエ以外であれば、魔法が全て封印されでくの坊以下の扱いが精々となるだろう。

 

「魔法分解作用については、UNOの時に気付いている」

「UNOの時に一体何が……!?」

「それなら分解されても問題ないだけの魔力をつぎ込めばいいだけ」

「そんな強引な手で……!?」

 

 シンプルな力業で魔法を発動するユエ。その事実に恐れおののくミレディは、自身が操るゴーレムのうち数体をユエに差し向ける。

 

「へぇ……。向かって来るの? 逃げずにこのYUEに近づいてくるの?」

「もう完全に別の吸血鬼になってませんか!?」

 

 自身を警戒するミレディに向かって余裕の表情を見せるユエ。しかしここで彼女はあることに気付く。

 この魔力消費が高い迷宮で、自身は上級魔法を使った。その結果の魔力消費は、今以降魔法を使わず戦ってもなお戦闘に支障が出る程の疲労を受けてしまっている。そしてゴーレムはまだ四十体以上残っている。このことが示すものは――

 

(ひょっとして私、やっちゃった?)

「ユエさんのバカ―――――――――――――――――――っ!!」

 

 ユエは序盤から、ガス欠になってしまったということである。

 なぜこんなに戦術眼がないのか、その理由を説明しよう。

 まずユエは吸血鬼として圧倒的な力と魔力、魔法の適性を持っている上に、ハジケリストとして戦うことが出来る。

 彼女の力は魔力と魔法の適性だけでそこらの相手は無双できるレベルである。その上ハジケリストとして戦えるのだから、実質叔父に封印されるまでは負けなし。苦戦といえばハジメ達に解放されてから戦ったヒュドラ位である。

 そう、ユエは魔法ぶっぱしてれば大抵勝てるので、戦闘で考えると言う経験が殆ど無いのだ。更に言うなら、ここまで魔力を消費することすら初めてである。

 そうとは知らないミレディは、数体のゴーレムを一斉にユエに殴り掛からせる。

 もしここにいるのがユエだけだったら終わりだろう。

 だが彼女は一人じゃない。彼女の背中には馬鹿(ハジメたち)がいる。

 

「納豆真拳奥義、決して切れない(ネバーエンド)ネバネバ!」

 

 ハジメがゴーレムを拘束して動きを止め

 

「ハジケ奥義、輪ゴム鉄砲!」

「プルプル真拳奥義、ところてんアロー!」

「何ですかこのしょっぱい攻撃!?」

 

 首領パッチの輪ゴムと、天の助のところてんがゴーレムを砕く。

 

「砕けた!?」

 

 ミレディが驚いた刹那、ハジメはシアに叫んだ。

 

「今だ、行くんだシア!!」

 

 ハジメの叫びに、ユエ達も追従する。

 

「今のうちにミレディを狙って攻撃して。大丈夫。私が鍛えたあなたなら出来る」

「お前修行頑張ってただろ! オレら見てないけど!!」

「行きなさいシンジ君。誰でも無い、あなた自身の為に!!」

(シンジ君?)

 

 後半二人の激励に疑問を覚えながらも、シアはピアニカソードを構えてミレディに突貫する。当然ミレディもゴーレムをけしかけるが、シアはデビルバットゴーストばりの動きで躱し、とうとうミレディに辿り着く。

 

「とうっ!」

 

 そのままシアはミレディの頭に向かって飛びかかり、ピアニカソードで殴りぬける。が、ミレディゴーレムの内部には、この世界最高の硬度を誇るアザンチウム鉱石で膜を作っていた。なのでダメージが通らない。

 シアはそれでも何度も攻撃し、ついにヒビを入れることが出来た。

 

「でもヒビまでしか許してあーげないっ」

 

 しかしミレディが抵抗しない理由は無い。左手に装備しているモーニングスターを振り回し、シアを遠くに追いやった。

 

「くっ、なんて硬さだ。昭和の頑固教師さながらだ」

「ハジメさん。その例えはおかしいです」

「でもマジでどーすんだよ!?」

「ところてんギフトセットを使えば、或いは……」

「何も起きませんよ!!」

「核を狙おう」

 

 焦る一同に向かってユエは言う。核を壊すのはゴーレムを倒すセオリーである。ユエは基本に忠実に行くことにした。だがここで違う問題が発生する。

 

「分かりましたユエさん。それで核の場所はどこでしょう?」

「……知らない」

「えぇ!?」

「任せろ! オレのぬ感覚で見抜く!!」

 

 天の助の言葉と共に、あたりにぬの文字が浮かぶ。そしてぬの文字が最終的に、ミレディの右脇腹に集まった。

 

「見つけた! 右脇腹が核だな!!」

「え、違うけど?」

「右脇腹目がけて行くぜ!! ぬ―――――――っ!! ぬぬ―――――――――っ!!」

「だから違うって」

 

 ミレディの困惑を無視して彼女の右脇腹に、ぬのハンカチやパジャマなど数多のぬグッズを持ちながら突進する天の助。しかしミレディ本人に辿り着く前に、ゴーレムの集団にボコられ、ボロボロになって戻ってきた。

 

「ダメだった」

「だろうね」

「コアの場所も見抜けてませんし」

 

 ハジメとシアの酷評に隅でさめざめと泣く天の助を無視して、ミレディが話しかけてきた。

 

「キャハハ。どうやら手詰まりのようだね? 跪いて命乞いをすれば、外に送っていってレベル上げた後リターンマッチをさせてあげてもよくってよ」

「その必要はないね」

 

 ミレディの嘲笑混じりの言葉に、ハジメは毅然とした態度で即答した。

 

「そうかな~? いくら君達がハジケリストでも、この状況は無理じゃない?」

「違うよ。僕ら(ハジケリスト)には、いつだって無限の可能性があるんだ。それを今見せてやる! ユエ、首領パッチはアレをお願い!!」

「分かった。私達の全力を見せてあげる」

「ああ、やっちまえ二人とも! オレのターン、ドロー!!」

 

 ハジメの言葉にユエは頷き、首領パッチはデュエルディスクを構えてカードをドロー。そしてそのまま引いたカードを発動させる。

 

「オレは魔法カード、融合を発動! フィールドのハジメとユエを融合させる!!」

「ゆ、融合だと!?」

 

 天の助の驚きの声をBGMにしながら、ハジメとユエはそれぞれ光となって一つに混じり合っていく。だがそれを、ミレディが棒立ちで見ている理由は無い。

 

「目の前でやってるんだし、阻止されても文句言っちゃだめだからね~」

 

 ミレディは赤熱化した右手を、迷うことなくハジメとユエに向けて振るう。それを阻止できない限り、融合は止められるとミレディは思っていた。

 

「……」

 

 だが現実は違う。

 ミレディの右手は身長百七十センチ以上、銀髪でスタイル抜群、深紅のパーティードレスを身に纏った美女が、羽子板で受け止めていた。

 

「羽子板で止めた――――――――――――――――――――っ!?」

「……羽子板セイバーは伊達じゃないわ」

 

 そのまま美女は羽子板セイバーを無造作に振り回し、二十メートル以上はあるミレディを弾き飛ばした。

 ミレディは空中で体制を整えながら上手く着地したが、あまりにも簡単に弾き飛ばされたことに驚きが隠せない。

 そんな状態の彼女を無視して、美女は羽子板セイバーを突き付けながら名乗った。

 

「……私は南雲ハジメとユーエスエー・ニャクタロウ・ハジケニウムが融合した戦士、ハジータ。あなたを倒す者よ」

 

 その後ろで、首領パッチ達がコソコソ小声で喋っている。

 

「もろゴジータじゃねえか……」

「じゃあ次回はハジウムに改名しとくか?」

「改名の可能性あるんですか!?」




ボーボボSSで6000字越えは少し長すぎたかもしれません


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