ありふれたハジケリストは世界最狂 (味音ショユ)
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奥義0 物語が始まるちょっと前の話

去年の10月の活動報告に書いたありふれss、ついに開始。

……ネタの構想はあったんです。本当に。
ただ色々ss読んだり違うss書いていたらいつの間にかこんな時期になっただけなんです。




 西暦300X年、地球はマルハーゲ帝国が支配していた。

 マルハーゲ帝国皇帝、ツル・ツルリーナ4世は支配の象徴として、国民の新鮮な毛を直で抜く毛刈りを行っていた。

 そんな暴政に他の国は対抗できず、ただ苦しめられるばかりだった。

 しかし、闇あれば光あり。悪のマルハーゲ帝国に立ち向かう救世主が居た。

 その名はボボボーボ・ボーボボ。

 彼は仲間達と共に幾多の激闘を経て、マルハーゲ帝国を壊滅させた。

 しかし一年後。なんやかんやで蘇っていたツル・ツルリーナ3世が新たな帝国ネオ・マルハーゲ帝国が建国。またも暴政で人々を苦しめるも、ボーボボ達がまあ色々戦って壊滅。

 その後、ピーマンと手を組んだツルリーナ4世が今度は宇宙に帝国を造るも、よく分からない内に壊滅。

そこから数年後に、この物語は始まる。

(※注意、このSSにボーボボの出番はほぼありません)

 

「何故じゃあああああああ!!」

 

 金髪アフロでグラサンの大男、件のボーボボが叫んでいる。が、彼の出番は無いったら無い。

 

「何故じゃああああああああああああああああああああ!!!」

 

 はい、無視してはじめまーす。

 

 


 

 

 とある冬の昼下がり、少女は困っていた。

 少女の名前は白崎香織、中学二年生の女子だ。後に進学する高校では女神と称されるほどの美少女だが、今はその顔を曇らせていた。

 その理由は彼女の視線の先にある。

 

「おいコラクソガキィ! てめぇ何してくれてんだ!?」

「べっちょりついてるじゃねえか!? クリーニング代出せや、おお!?」

「オウッ! オウッ!」

 

 三人組の不良(尚その内一匹はオットセイ)が小さな男の子とお婆さんに絡んでいるのだ。

 原因は男の子の不注意で持っていたたこ焼きをべっとりと付けてしまったのだ。

 男の子は泣きわめき、お婆さんは穏便に済ませようと財布からお札を数枚出すが、不良達の怒りは収まらない。

 

「そんなはした金じゃ足りねえなぁ!?」

「オウッ!」

「財布ごとよこせオラァ!」

 

 札数枚だけじゃ飽き足らず、お婆さんの財布ごと奪おうとする不良達。

 しかしその時

 

「うおおおおおおおおおおおお!!」

 

 咆哮が、その場の空気を切り裂く。

 声のする方へ香織と不良達が目を向けるとそこには

 

「僕は風だ。風になるんだ……!」

 

 リアカーを引きながら疾走する少年と

 

「そうだハジメ、お前は風になれる!」

「その果てがお前の求める世界だ!」

 

 リアカーに乗った青いプルプルした何かと、オレンジ色の太陽に手足を顔がついた何かだった。

 

(何あれ!?)

「おいハジメ、あれ見ろ!」

「どうしたの首領パッチ?」

 

 香織の内心を差し置いて、首領パッチはハジメに声を掛ける。そこには異様な光景を見て固まる不良達の姿が。

 それを見たハジメは疾走を止める。

 そして

 

「ボボボーボ・ボーボボ、ブルーレイボックス絶賛発売中!!」

 

 さっきまで引いていたリアカーを不良達にむかって思いっきりぶん投げた。

 

「「「「「ぎゃあああああああああ!!」」」」」

(えぇ――――――――っ!?)

 

 いきなり攻撃を喰らい、倒れ伏す不良達とリアカーに乗っていた首領パッチ達。

 しかし次の瞬間、オットセイは起き上がり何を思ったのか、リアカーに乗っていたモグモグと青いプルプルを食べ始めた。

 

「う、嬉しい……。このところてん歴40年近い、俺ことところ天の助をついに食べてくれる人が……!」

 

 そして天の助は感極まって泣いていた。

 

「ゲロマズッ!」

 

 だがオットセイはあっさり吐き出した。

 

「このクソカスがァ――――ッ!!」

 

 その言葉を聞いた天の助は怒りに身を任せ、オットセイを魔剣大根ブレードで叩きのめす。

 

「よくも兄貴を!」

(オットセイが兄貴なの!?)

 

 それを見た不良の内一人が、懐からスパゲッティの麺の束を取り出し殴り掛かる。

 

「おっと、そうはいかねえぜ」

 

 だが不良の攻撃を首領パッチは、ドンパッチソードことネギでガキィンという金属音を響かせながら受け止める。そしてギギギという軋む音を鳴らしながらネギとスパゲッティで鍔迫り合いを始めた。

 

(金属音!? 鍔迫り合い!? ネギとスパゲッティで!?)

 

 香織の内心でのツッコミが止まらないが、世界は彼女に容赦などしない。

 

「くそ、あのオレンジ野郎!」

「そうはいかない。お前の相手は僕だ」

 

 首領パッチと鍔迫り合いを繰り広げる不良を助けようと、もう一人の不良が動こうとするがその前にハジメが立ちはだかる。

 

「おもしれえ。だったら不良殺法、ナイフ拳を喰らえ!」

 

 懐からナイフを取り出し、ギラリと光らせながらナイフを舐める不良。

 しかし

 

「遅いよ」

 

 不良が動くより前に地面から触手が生え、不良を拘束した。

 

「納豆真拳奥義、触手。この奥義は触手を生み出し、自在に操ることが出来る」

「何だと、てめえ真拳使いだったのか!?」

(いや、納豆と触手なんの関係も無いじゃん!?)

「そうだ。そしてこれがお前へのとどめ!」

 

 ハジメは手からパック入り納豆を出現させ、飛びかかって納豆を不良の顔面に叩きつけた。

 すると

 

「納豆真拳奥義、BBB(ビーン・バーン・ブロージョン)!!」

(英語間違ってるよ! 最後はBじゃくてPだよ!!)

 

 納豆が爆発し、不良が吹き飛ばされた。

 その不良はそのまま首領パッチともう一人の不良、そして未だにオットセイを痛めつけていた天の助に激突し、全員をなぎ倒した。

 その場に立っているのは、この戦いの見物客を除けばハジメ一人。すなわち

 

「僕の勝ちだ!」

 

 勝利宣言をしたハジメは、絡まれていた男の子とお婆さんを慰める。やがて男の子が泣き止み、お婆さんと去っていく。

 その姿を見ながら、ハジメは放置し、倒れていたリアカーを起こす。と同時に首領パッチと天の助も起き上がっていた。

 

「あ、起きたの二人とも? なら帰るよ」

「「その前に制裁じゃあ!!」」

「グバァ!?」

 

 起きた二人はハジメに跳び蹴りを喰らわせた。

 

「何一人で勝利宣言してんだテメ―!!」

「何度もオレらを巻き込むんじゃね――!!」

 

 そのままハジメをボコボコにする二人。

 それを見ていた香織は

 

(あれが、真拳使い……)

 

 と間違った認識を持った。

 実際にはハジメは真拳使いでもありハジケリストでもあるのだが、それを香織が知るのはもう少し先の話。

 物語の開始まで、あと二年ちょっと。

 

 


 

 

 春の陽気で暖かいとある高校の入学初日。入学式を終えて教室に集まり自己紹介を始めたあたり。

 少女、八重樫雫の心にあったのは高校に入学した事によるちょっとした高揚感と、ほんのちょっとの不安だった。

 その不安の原因は今自己紹介をしているこの男。

 

「南雲ハジメ。ハジケリストと真拳使いを兼任してるので、ハジケ勝負したい方は気軽に声をかけてください。あ、趣味はゲームとアニメ鑑賞なんで、そっちの事でもいいです」

 

 ハジメが語った内容にある。

 ハジケリスト。人生かけてハジケまくる馬鹿、焼き肉の種類、カップ焼きそばのかやくの一種など色々な説のあるよく分からない奴ら。雫も存在は知っていたが会うのは初めてである。

 正直興味がある。八重樫流と剣術道場の娘として、ハジメという意味不明な強者に彼女は強い興味があるのだ。

 断っておくが、別に戦いたいという訳では無い。八重樫雫は戦闘狂に非ず。あくまでどうしてそんな力があるのかに興味があるのだ。

 声を掛けたい。が、ハジケリストじゃない自分がハジケ勝負を挑めるわけもない。更に言うならゲームもアニメも見ない雫が話しかけるには、ちょっと話題に困った。

 雫がそうして悩んでいると、いつの間にか自己紹介も終わったのか、身長百四十センチ位の少女が件のハジメに話しかけていた。

 

「南雲君」

「何? 今季アニメのオススメは鬼○の刃だけど」

「いやそっちじゃなくて。鈴もハジケリストなんだ、勝負しようよ」

「いいよ」

 

 鈴に勝負を挑まれたハジメは不敵な笑みで了承する。

 その言葉と同時に教室の窓がいきなり開き、外から天使の様な白い翼を生やし、スーツを着たおっさんが五人、教室に入ってきた。

 

「……審査員かな?」

「そうだよ!」

「いやどう見ても不審者でしょ!?」

 

 雫は思わずツッコミを入れるが、ハジメ達は無視して話を進める。

 

「ルールはシンプルに、よりハジケた方が勝ちでいいかな?」

「僕はそれでいいよ」

「じゃあ鈴から!」

 

 鈴が開始を宣言すると、彼女は一番近くにあった机の中に手を入れてシャンデリアを引っ張り出す。

 

「シャンデリア~、シャンデリア~!」

 

 それを叫びながら振り回し始める鈴。

 

「シャングリラ~、シャングリラ~!!」

 

 そしてシャンデリアを担いで走り始める鈴。最後には

 

「シャングリラ・フロンティア!!!」

 

 教室の天井にシャンデリアを投げ飛ばし、新しい照明を設置した。

 

「どう!?」

 

 ハジケ終わると同時におっさんに結果を求める鈴。

 おっさん達はすぐに結果を出した。

 

「しめ鯖」「しめ鯖」「しめ鯖」「しめ鯖」「しめ鯖」

「やった!」

「いい結果なのこれ!?」

 

 おっさん達の出した結果に喜ぶ鈴。だが(じょうじん)には理解不能だった。

 しかし

 

「しめ鯖一致で満足するなんて。You still have lots more to work on……(まだまだだね)

「な、何だって!?」

「何で英語なの」

「次は僕の番だ!」

 

 今度はハジメが開始の宣言をし、即座にパック入り納豆を両手に呼びだす。

 するとその2つの納豆の中からそれぞれ、小さなナイフが踊りながら現れた。

 

「今夜はオールナイト!」

「聞いてくれ。俺達のカバーソング、わくわく動物ランドⅡを」

「オウ、イェーイ!!」

 

 そしてなぜかオール宣言。これにハジメもノリノリだ。

 

「「タカサルイヌキジゾウブタイノシシ」」

「ミジ!」「ンコ!!」

「Foooooo!!」

 

 ナイフ達の歌に合わせて踊るハジメ。しかしここで彼はある事に気付いた。それは

 

「納豆両手に持つと踊りにくい!!」

「でしょうね」

 

 踊りにくかった。ので持っていた納豆を両方ともおっさんに投げつけて、ハジメはハジケ終えることにした。

 そしておっさんたちは結果を出した。

 

「鰹節」「鰹節」「鰹節」「くたばれ、ブリキ野郎!」「鰹節」

「1人は最低評価だけど、後は全員満点……」

「あ、あのくたばれブリキ野郎って最低点なのね」

「つまりこの勝負、鈴の負けだよ……ガハッ」

 

 ハジケ勝負はハジメが勝った。

 敗北のショックで、鈴は吐血した。すごく、吐血したい気分だった。

 それを見た雫は慌てる。

 

「ちょっと、大丈夫なの!?」

「ハジケリストだし大丈夫でしょ」

「どういう理屈!?」

 

 ハジメの言葉をガン無視して、鈴の介抱を始める雫。

 一方、無視されたハジメは優しい子なんだな、とちょっと感心していた。

 

 

 この日、八重樫雫は谷口鈴と友達になった。

 物語開始まで、後一年ちょっと。



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奥義1 はじまっちゃった物語

地の文にキャラがツッコミを入れるという手法もボーボボなら許される気がする


 ハジメが入学から一年と少しが過ぎた。その間はハジメなりに楽しく過ごし、また一応テストで平均点を取れる程度には勉強もしている高校生活を過ごしているが、今日は憂鬱だった。

 その理由は今日は月曜日だから、でもあり親の手伝いという名のバイトで徹夜だったせいもある。

 しかし一番の理由は

 

「待ってましたよ南雲先輩! 今日こそあなたを倒してお姉様の心を私達に向けさせます!!」

 

 目の前に居る少女が原因だった。

 後輩ちゃん。本名不詳の後輩であり、八重樫雫の義妹、ソウルシスターズを名乗る集団の一員である。ハジメは知らないが、彼女達は憧れの雫が幼馴染以外の男と関わる事をよく思わっていなので、ハジメとの接触を止めさせたがっている。幼馴染がOKな理由は、雫が恋愛感情は一切ないと明言しているからだ。

 ちなみに、雫はハジメに対しても恋愛感情を一切持っていない。ハジケリストというあり方に対してほんの僅か、雀の涙以下の憧憬と、真拳使いとして人と戦う覚悟に対しての尊敬はある。

 だが恋愛感情は一切ない。なので、別にハジメを倒しても雫は何一つ変わりはしない。

 にも関わらず後輩ちゃんはこんな態度なのでハジメは

 

「冷凍・秋サンマ!!」

「ぎゃあ!!」

 

 冷凍サンマで後輩ちゃんを斬り捨てた。

 

「日本は、腐ってる! 腐ってる!!」

 

 そのまま息もつかせぬ連続攻撃で、哀れな後輩ちゃんは倒れ伏す。

 

「立て、大して効いちゃいない筈だ。今の秋サンマはただの脅しだ」

「いや効いてますけど!? ボロボロですけど私!?」

 

 口で抗議しつつも、平然と喋れるのでダメージは少ない後輩ちゃん。

 これ以上絡まれてもウザいので、ハジメは妥協案を出す事にした。

 

「この鳥を握るんだ」

「何ですかこれ」

「ハジケ鳥だよ」

 

 ハジケ鳥とは、握られると握った人間のハジケ度数に応じて色んな物に変化する鳥である。ハジケ度数が大きい程大きく複雑な物に変化する。ちなみにハジケ度数が何なのかハジメは知らない。

 という説明をした後、ハジメはハジケ鳥を握り、放す。するとハジケ鳥は軽トラに変化した。

 

「ま、こんな物かな。後輩ちゃんがハジケ鳥をさっきの僕と同じ位の物に変化させられたらまた相手してあげるよ」

「舐めないで下さい! それ位にすぐにやってやりますよ!!」

 

 そう言うと後輩ちゃんはハジケ鳥をひったくり、ハジメと同じように握って離した。

 すると

 

「本部、応答を願います」

 

 謎の男に変化した。

 

「ハジケ度数が低いとキャプテン石田になるよ」

「誰ですか!?」

「む、そこにいるのは南雲君じゃないか」

「しかも知り合い!?」

「丁度良かった。実は今度の火星人掃討作戦にこいつを連れて行って欲しいんですけど」

「私を!?」

「よかろう。他のメンバーに挨拶するといい」

 

 キャプテン石田の声と共に、誰かが後輩ちゃんの肩を叩いた。

 彼女が振り向くとそこには

 

「火星人掃討作戦リーダー、糸マンと!」

「副リーダーの紙マンだ!!」

 

 かろうじて人型の糸と紙が居た。

 

「ああ、強風が!」

「飛ばされる~!」

 

 そしてあっさり風で飛ばされていった。

 

「……では火星の最前線は彼女一人という事になるな」

「よろしくお願いします」

「ちょっと待って下さい!?」

 

 しかし、キャプテン石田は後輩ちゃんの懇願など聞かず担いでそのまま走り出した。戦え、キャプテン石田。火星を侵略して地球人の生活圏を広げる為に!

 

「覚えてろ南雲ハジメ―――っ! この恨み必ず晴らすからなぁ―――っ!!」

 

 背中で後輩ちゃんの恨み節を聞きながら、ハジメは時計を見る。すると、時計は遅刻寸前の時間を指していた。

 

「やばっ!!」

 

 そしてハジメも走り出した。走れ、南雲ハジメ。無遅刻無欠席の為に!

 

 


 

 

「さとうきび畑からこんにちは!」

 

 始業時間直前、遅刻を避ける為ハジメは教室のドアを突き破り突入。壊したドアを納豆真拳で修復しながら、教室の床をゴロゴロと転がり、教卓にスネをぶつけた。

 

「がああああああ! がああああああ!!」

「おはようハジメ。大丈夫?」

「スネがあああああ! 弁慶の泣き所がああああ!!」

 

 痛くて喚いているハジメのスネを、雫が見る。すると

 

『何だよあの牛若丸……。身のこなし軽やかすぎだろありえねえよ……』

 

 弁慶が飲んだくれていた。

 

「本当に弁慶いる――――!? というか泣いてないし!!」

「おはよう南雲君。今日もいつも通りだね」

「また南雲は遅刻寸前か」

「いや、あれはどう考えてもあの後輩が悪いだろ……」

 

 ツッコミを入れる雫に、香織、天之河光輝、坂上竜太郎が話しかけてきた。

 天之河光輝。容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能の完璧超人で、小学生のころから雫の実家である八重樫流道場で剣道を習う門下生で、剣道としてみるなら実力もかなりの物だ。だからモテる。具体的には、常に幼馴染として雫や香織が居る状態でも、最低月に二回は告白される。クソが。

 

「クソが!?」

 

 そんな彼の欠点は正義感が強い、という名の思い込みが激しい点だ。具体的には自分が正しいと思った事は全て正しいと思ってしまう点だ。その所為で、ハジケリストとして好き勝手なふるまいを見せているハジメをよく思っていない。ちなみに、このクラスにはもう一人谷口鈴というハジケリストがいるが、彼女はあれで結構うまく立ち回っているので光輝達とも友人関係を築いている。

 次に、坂上竜太郎。単純な脳筋。終わり。

 

「俺の紹介短えな!?」

 

 竜太郎が虚空にツッコミを入れていると、教室の時計が始業の開始を告げた。

 

『黒下着は始業の合図~』

 

 その時計は黒いブラとパンツを付けた男が歌う時計だった。

 それを見た香織は思う。

 

(あの時計、どこで売ってるのかな……? 欲しくは無いけど)

「あ、やばい寝落ちする」

 

 そしてハジメは夢の世界へと旅立った。

 

 


 

 

「弁当忘れた……」

 

 時は流れて昼休み。ハジメは弁当を忘れたので、念のため持っていた某十秒チャージ二時間キープする奴を飲んだが足りなかった。だから家に電話して、弁当を持ってきてもらい待ち時間は寝て誤魔化そうとしていた。

 購買行けよ、というツッコミも聞こえそうだがハジメの知る限りこの学校の購買は

 

『界王拳、四倍だぁ―――っ!!』

『オラオラオラァ!!』

『あたたたたたたたたた、おわったぁ!!』

 

 というイメージ映像が流れそうなほど修羅の国である。真拳使いのハジメでも空腹状態では行きたくない魔境であった。

 

「ハジメ! 弁当持ってきたわよ――――!!」

 

 しばらくすると教室の外から声がした。弁当がやっと来た、と思いハジメが顔を上げると

 

「「ロングホーントレイン!!」」

 

 電車ごっこをしながら首領パッチと天の助が教室のドアを壊して突入してきた。

 ハジメは納豆真拳で慌ててドアを修復する。

 

「で、弁当は?」

「おう。これだ」

 

 と言いながら天の助はそのままハジメの机の上に乗る。

 

「さあ、俺を食え」

「いや、いらない」

「そう遠慮するなって」

「いやそういうのマジでいいから」

 

 天の助の俺を食え発言を、ハジメは本気で拒絶した。

 その事実がショックで首領パッチに泣きつく天の助。

 

「うわああああん! ハジメが酷いよ―――-っ!!」

「天の助……」

 

 首領パッチは肩をやさしく叩き

 

「荷物纏めて国に帰れ」

 

 三行半を告げた。

 

「やだぷ―! 絶対帰んないもんね―!! ブレイクダンス踊ってやる、シャオ!!」

「うるさい!!」

 

 ドゴォ、という音と共にハジメが天の助を黒板のシミにした所で雫が話しかけてきた。

 

「ちょっとハジメ、この二人は何」

「何って……僕の家の居候だけど」

「い、居候?」

 

 雫の質問に答え切れていないハジメの回答に戸惑う雫。すると今度は鈴が話しかけてきた。

 

「ねえハジメ君。その人ってひょっとして伝説のハジケリスト首領パッチさん!?」

「そうだぜ?」

「ドヤ顔がうざいよ首領パッチ」

「え、本当に!? サイン頂戴!!」

 一介のハジケリストとして憧れの首領パッチに興奮する鈴は、咄嗟に麻婆春雨を取り出しサインをせがむ。首領パッチはそれに『ドドドード・ドー○リオ』と練りわさびで書いて返す。

 

「ありがとう。そしていただきます!」

 

 そのサイン入り麻婆春雨を鈴は躊躇なく食べた。

 

「というか僕の弁当は?」

「ちゃんとあるから心配すんなって」

 

 そう言って首領パッチはゴトリ、という音と共に持ってきた物をハジメの机に置いた。

 それは木管楽器の一種、フルートだった。

 

「全然求めてないフルート!!」

 

 ハジメはフルートを思わず弾き飛ばした。飛ばされたフルートは、ジャイロ回転を刻みながら、ハジメのクラスメイトの檜山大介に激突した。

 

「ぎゃあ!!」

「お、おい大丈夫か!?」

 

 檜山大介。クラスの不良グループのリーダーでありながら、クラス内で彼の評価は『白崎香織に恋をしているのに気付いてもらえない可哀想な人』で概ね一貫しているという変わった男だ。

 そんな檜山はフルートが激突したショックで倒れ、友人に心配されながら片思いしている香織を探した。流石にこんな状況ならちょっと位心配してらえるかも、という甘い期待だった。

 だがしかし、当の香織は

 

「どうやって動いてるの、あなたって?」

「いや俺に聞かれても……」

 

 動いて喋る未知のところてんに興味津々だった。

 

「ガハッ!!」

 

 思わずショックで血を吐くが、そもそもこの世界は血を吐いた程度で心配される程軟な時空では無い。

 ので現在進行形で心配している友人以外はスルーした。

 

「というかいい加減僕の弁当出して」

「悪い悪い。さっきはミスった。本当はこっちだ」

 

 そう言うと首領パッチはドン、という音と共に弁当を机に置いた。

 

「ハイ、シーラカンス」

「わあああああああああああああ!!!」

 

 それは、深海魚の一種シーラカンスの煮つけだった。まさかの深海魚に思わず叫ぶハジメ。しかし次の瞬間には

 

「いただきます!!」

 

 とかぶりついた。

 

「オレも」

「オレもだ」

 

 そして続けてかぶりつく首領パッチと天の助。

 

「いや何であなた達も食べるのシーラカンス!?」

「「だって昼飯まだ食ってねーし」」

 

 そして数分後、三人はシーラカンスを食べ終える。そして首領パッチと天の助は家に帰ろうとした所で

 

 凍りついた、物理で。

 

「何で!?」

「いや八重樫さん、それよりあれ!」

 

 突如凍った二人に驚く雫にむかって、必死になってある方向を指差しながら話しかけるハジメ。雫がハジメの指が示す先を見るとそこには、光輝がいて彼の足元には幾何学的な模様の魔法陣が現れ、やがてそれは教室全体に広がる。

 

「皆、早く教室から出て!!」

 

 それまで突然のことについてこれず固まっていた教室にいる皆だったが、誰かが発したその言葉と同時に魔法陣が爆発したかのようにカッ、と光を放った。

 

 

 これが物語の始まり。

 ありふれたハジケリストが、何かを手に入れる物語の始まりだ。




感想でボーボボがいないからハジケ足りないのでは、という意見をもらいました。
それに関する返答ですが、このSSではボーボボは出ませんが首領パッチと天の助が共に登場するので大丈夫かな、と考えていました。
ありふれ勢もハジメ以外も何人かハジケリスト化しているので、ハジケ不足にはならないと思います。

足りないじゃん、と思ったらそれは作者がハジケ切れていないからという事にしておいてください。


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奥義2 来ちゃった♪異世界

しかし説明会が続くからハジケにくいったらありゃしない


 さっきまでハジメ達を包んでいた光が収まると、辺りは一変していた。

 最初に飛び込んできたのは縦横十メートル程の巨大な壁画だった。それから目をそらして辺りを見回すと、どうやら自分達は巨大な広間にいるようだった。

 ハジメ達は巨大な広間の最奥にある台座のような場所にいるようだ。その台座の周りには、三十人近くの人々が祈りを捧げるように跪いている。

 そのうちの一人、豪華な衣装を着た老人が進み出てきた。

 

「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎いたしますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、よろしくお願い致しますぞ」

 

 と語りかけてきた。

 イシュタルは詳しい話をする、といい別の場所へ案内し始めた。ハジメの周りにいる連れてこられた側の人間は、状況について行けないのか大人しく従うのみ。

 そしてハジメは

 

「いつまで凍ってるのさ」

 

 バシャ、と実は今まで凍り続けていた首領パッチと天の助に熱湯をぶちまけた。

 

「「おあちゃ――――!!」」

 

 


 

 

 現在、場所を移り、十メートル以上ありそうなテーブルがいくつも置いてある大広間に通された。上座に近い方に光輝達が座り、ハジメ達は一番後ろに座っている。

 全員が到着すると、絶妙なタイミングでカートを押しながらメイド達が入ってきた。それも男子の夢を具現化したような美女・美少女メイドが。

 多くの男子がメイド達を凝視し、ハジメもまたその内の一人として、飲み物を給仕してくれたメイドを凝視していたのだがそこで横から首領パッチが袖を引っ張る。

 何事かと思って横を見ると

 

「何よデレデレしちゃって! あんなメイドよりアタシの方が美人でしょ!?」

 

 とメイドコスをしながら首領パッチが迫ってきた。

 

「ないよ」

 

 とハジメがあしらうと、首領パッチは「あなたがハジメをたぶらかしたのね! そうに決まってるわ!!」と言いながらハジメ達に給仕したメイドに突っかかっていた。

 一方、天の助は給仕された飲み物を大人しく味わっていた。

 

「うーん、カモミールの香り……」

 

 ただし体はドロドロと溶けていた。

 

「ひっ……!」

 

 その光景に顔を引きつらせるメイド。それを見たハジメは

 

「はいドーン! ドーン!!」

 

 バールの様な物で首領パッチと天の助を殴り飛ばして黙らせる。そしてメイドを安心させるためこう声をかけた。

 

「安心してください、もう大丈夫です」

「あ、ありがとうございます……」

 

 メイドは明らかに怯えながらそそくさとハジメ達から離れていった。その事実にハジメは軽くへこんだ。

 やがて全員に飲み物が行き渡ったのを確認すると、イシュタルが話し始めた。

 

「さて、あなた方――」

「話長えよ!!」

「いや十文字も話してないけど!?」

 

 イシュタルが話し始めてすぐに、首領パッチがキレてバースデーケーキをイシュタルの顔面に投げつけた。

 突然の凶行に驚きつつも、怒りを見せたのは光輝。まだ何も事情を聞けていないのに話をいきなり中断されたこと、そもそも理由もなく人の顔にケーキをぶつけるなどあってはならないと、光輝は怒り心頭だった。

 

「なんてもっともらしい理由なんだ……」

 

 ハジメが光輝の怒りに心から納得している中、光輝はズカズカとハジメ達の元へ向かい、辿り着くと同時に首領パッチに掴みかかった。

 

「一体何を考えているんだ君は!?」

「この星の痛みを。そして、世界の真実を」

「無駄に遠大だな!?」

 

 光輝が首領パッチの台詞に驚く一方、ハジメは天の助を連れてイシュタルの元へ。

 

「どうすんだハジメ?」

「とりあえず天の助はこの人の顔に付いてるケーキ食べて」

「俺が食うのかこれ!?」

 

 驚愕する天の助の口にケーキを押し込みながら、ハジメは告げる。

 

「今から僕が納豆真拳奥義、豆テレパシーでこの人が伝えたかったことを読み取って要約して皆に話すよ」

「へえ、そんなこと出来るのね……」

 

 雫が感心しているのを尻目に、ハジメはケーキが除かれたイシュタルの眉間に指を置いて奥義を発動した。

 

「納豆真拳奥義、豆テレパシー!!」

 

 奥義の発動と同時に、ハジメの中にイメージ映像が流れ込んでくる。

 

『の・ぼ・り・べ・つ、と言えば?』

『ク・マ・牧場。クマ牧場!』

 

「よし読み取った!」

「今明らかに関係ないイメージ映像流れなかった!?」

 

 雫のツッコミを聞き流して、ハジメは読み取ったことを要約して伝えた。これがその内容である。

 

 

 この世界はトータスという地球とは違う世界だよ。

 トータスには人間族、魔人族、亜人族の三種族がいて、そのうち人間族と魔人族は何百年も戦争をしているよ。

 最近魔人族が魔物の使役に成功して戦力増大したから、人間族がピンチだよ。

 戦えい! 貴様らは神、エヒト様によって呼ばれたのだから、神の御意志の元魔人族と戦えい!!

 

 

「大体こんな感じかな」

「最後明らかにキャラ変わったわね!?」

 

 キャラはともかく、イシュタルが言いたい内容を理解したハジメは少しまずいと感じていた。

 このイシュタルという男、さっきの内容に何の疑いも抱いていない。お世辞にも戦い慣れていると言える人間はハジメ達ハジケリスト位で、後は普通の高校生でしかない。それが分かっているはずなのにイシュタルは、神の言葉だからと彼らが自分達の為に戦ってくれると信じきっている。

 神の意思だから、と嬉々として従う彼にハジメが不信感を抱いていると、立ち上がり猛然と抗議を始める人がいた。

 

「ふざけないで下さい!」

 

 畑山愛子。ハジメ達の高校の社会科教師である。年齢は二十五歳だが、童顔の上に低身長のため中学生にしか見えない、いわゆる合法ロリである。

 そんな愛子が、さっきまでケーキをぶつけられて呆然としていたが、やっと自己を取り戻したイシュタルに向かって食ってかかる。

 

「結局、この子達に戦争させようってことでしょ! やっと手に入った平和なんですよ! やっと強大な悪に怯えなくて済むようになったんですよ! それなのに戦争なんてそんなの許しません! ええ、先生は絶対に許しませんよ! 私達を早く帰して下さい! きっと、ご家族も心配しているはずです! あなた達のしていることはただの誘拐ですよ!」

 

 ぷりぷりと怒る愛子。言っていることはかなり悲壮なのだが、本人の容姿のせいで周りの生徒達はほんわかした気持ちで愛子を眺めている。

 

「なぜ私が話していないにも拘らず話が進んでいるのかは分かりませんが、これだけは確かです。現状、あなた方の帰還は不可能です」

「そ、そんな……」

「あなた方を召喚したのはエヒト様です。我々人間に異世界に干渉するような魔法は使えませんのでな、あなた方が帰還できるかどうかもエヒト様のご意思次第ということですな」

「そ、そんな……」

 

 イシュタルの言葉に脱力しへたり込む天の助。

 

「いやあなたなの!? 愛子先生じゃないの!?」

 

 急に入ってくる天の助に驚く雫。

 それを尻目に、帰れないという事実はクラスメイト内に動揺が広がっていく。

 しかし、その動揺を押し止める男がいた。光輝だ。

 光輝はテーブルを強く叩き、全員の注目を集めてからおもむろに話し始めた。

 

「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようも無いんだ。……俺は、俺は戦おうと思う。昔の地球みたいに、この世界の人達が危険に晒されているのなら、放っておくなんて俺にはできない。それに、人間を救うために召喚されたのなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。……イシュタルさん? どうですか?」

「そうですな。エヒト様も救世書の願いを無下にはしますまい」

「俺達には大きな力があるんですよね? ここに来てから妙に力がみなぎっている感じがします」

「ええ、そうです。ざっと、この世界の者と比べると数倍から数十倍の力を持っていると考えていいでしょうな」

「うん、なら大丈夫。俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も掬って見せる!!」

 

 力強く宣言する光輝。なぜか一瞬だけハジメを睨んだが、その後すぐに皆を見回した。同時に、彼のカリスマはいかんなく発揮され、大半のクラスメイトが希望を見つけたという表情をしている。

 

「へっ、お前ならそう言うと思ったぜ。お前ひとりじゃ心配だからな。……俺もやるぜ」

「龍太郎……」

「今の所、それしかないわよね。……気に食わないけど……私もやるわ」

「雫……」

「え、えっと、雫ちゃんがやるなら私も頑張るよ!」

「香織……」

 

 光輝の幼馴染三人が賛同する。後は流れでクラスメイト達がそれに追従していき、愛子はそれを必死に止めようとするが聞く耳を持ってもらえない。

 その裏でハジメと天の助はひそひそと会話をする。

 

「なあハジメ。この状況、結構ヤバくないか?」

「間違いなくヤバイと思うよ」

「ああ。いざとなったらエヒト神とやらを倒して、この世界の主食をところてんにしなくちゃいけねえな」

「王になる。地位も名誉も、全部手に入るんだ。こいつは、これ以上ないアガリじゃねえのか?」

 

 密かにエヒト神と戦う可能性を想定する二人。

 一方、首領パッチは光輝達、ハジメ達どちらの話にも参加する事無くただひたすら

 

(そういやオレ、今週の金欠少女カネクレン録ったっけ?)

 

 どうでもいいことを考えていた。

 それに気付いた光輝が思わず突っかかりそうになるが、その前にハジメが気づいて首領パッチの元へ走る。

 

「やる気出しなよ首領パッチ。これあげるからさ」

 

 そう言ってハジメが出したのは、食パンの袋を止めるアレ*1だった。首領パッチは迷うことなく飛びつき叫ぶ。

 

「ああ。やってやろうぜ! カツオ神復活をな!!」

「何にも聞いてないじゃないか!!」

「うわらばっ!!」

 

 とりあえず、ハジメは首領パッチを殴り飛ばした。

 

 


 

 

 その後、実は今まで神山の頂上に居たハジメ達は神山の麓にあるハイドリヒ王国に向かった。

 王宮に着くと、ハジメ達は王族の紹介を受け、晩餐会が開かれた。

 そして晩餐会が終わり、各自に一室ずつ与えられた部屋に案内され、ハジメは天蓋付きのベッドに愕然としながらも、疲れたのでベッドにダイブしてそのまま意識を落とした。

*1正式名称:バック・クロージャー



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奥義3 ステータスプレート

今回、最初だけ光輝視点です


 翌日、早速訓練と座学が始まった。

 まず、集まった生徒達に小さな長方形の銀色のプレートが配られた。不思議そうに配られたプレートを見る生徒達に、騎士団長メルド・ロギンスが直々に説明を始めた。

 騎士団長が指導とは豪華だと思いつつも、これは俺達がそれだけ期待されているんだなと光輝は考えていた。

 メルド団長本人は、「むしろ面倒な雑事を副長に押し付ける理由が出来て助かった」と豪快に笑っていたが。

 

「よし、全員に配り終わったな? このプレートは、ステータスプレートと呼ばれている。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示してくれる物だ。最も信頼のある身分証明書でもある。これがあれば迷子になっても平気だからな、失くすなよ?」

 

 その後、メルドはステータスプレートとアーティファクトの説明を簡単に済ませ、いよいよクラスメイト達はステータスプレートの魔法陣に血を擦り付けた。光輝も同じように血を擦りつけ表を見る。

 

 

===============================

天之河光輝 17歳 男 レベル:1

天職:勇者

筋力:100

体力:100

耐性:100

敏捷:100

魔力:100

魔耐:100

技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・強力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解

===============================

 

 

 表示されたステータスを見て、ゲームみたいだなと思う光輝。他のクラスメイト達もマジマジと自分のステータスを見ている。

 その後、ステータスとレベル、そして天職について説明をメルドから受けた一同。そしてそれぞれのステータスを報告する段になり、光輝はメルドに見せた。

 

「ほお~、流石勇者様だな。レベル1で既に三桁か……技能も普通は二つ三つなんだがな……規格外な奴め! 頼もしい限りだ!」

「いや~、あはは……」

 

 団長の称賛に照れたように頭を掻く光輝。ちなみにメルドのレベルは62、ステータス平均は300前後。これがこの世界のトップレベルの強さである。レベル1で三分の一にまで迫っている光輝がいかに規格外か分かるものだ。

 光輝に続き、他のクラスメイト達もステータスをメルドに見せる。ほぼ全員が戦闘系天職で、十分強いのだが光輝には及ばない。それを見て光輝は、自分が先頭に立って皆を率いなければ、と決意を新たにした。

 途中、鈴のステータスの一部に小数点が混ざっているという事態が起こり、メルドが訝し気に何度も確認していたが、光輝達はハジケリストだし、と特に気にしなかった。

 そして最後に南雲ハジメ、首領パッチ、ところ天の助の三人が残った。

 光輝は思う。後の二人は全く知らないので何とも言えないが、少なくとも南雲は真拳使いだから実力は確かだろう。でもこの世界に来て俺も力が膨れ上がっている。これなら俺も負けない筈だし、南雲はお世辞にもリーダーに向いているとは思えないからできれば出しゃばらないでほしい。

と思っている間にハジメはメルド団長にステータスを見せる。そのステータスは

 

 

===============================

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:まだまだ

天職:納豆戦士

筋力:すごい

体力:やばい

耐性:ぱない

敏捷:はやい

魔力:あるよ

魔耐:そこそこ

技能:納豆真拳・ハジケリスト・言語理解

===============================

 

 

 おかしかった。

 

「「「文字――――――――――!?」」」

 

 年齢以外の数字があるべき部分に文字、しかも小学生の感想みたいな言葉が書いてあることにツッコミが抑えられない一同。

 

「というか天職の納豆戦士とはなんだ!?」

 

 あまりの異常に答えが来るとは思わない問いを投げるメルド。

 

「納豆戦士とは、納豆真拳を一定以上極めた者に送られる称号の事で――」

「いきなりどうしたんだ雫!? おかしいぞ!?」

 

 まさかの雫がいきなり納豆戦士について解説をはじめてしまい、思わずパニックになる光輝。

 

(あいつ、ヘッポコ丸キャラだったのか……)

 

 解説する雫を見た首領パッチが密かにそんなことを思っていたのには、誰も気付かなかった。

 そして数分後、何とか全員が落ち着き次は天の助のステータスを見ることになった。

 

「というか僕程度でこんなにはしゃいでて大丈夫かな……。残り二人に耐えられるの?」

「不安だね」

 

 という会話がハジメと鈴の間でひっそり行われていたのは内緒の話。

 そうこうしている間に、天の助のステータスが表示される。

 

 

===============================

ところ天の助 賞味期限切れ 男 レベル:ぬ

天職:錬成師

筋力:ぬ

体力:ぬ

耐性:ぬ

敏捷:ぬ

魔力:ぬ

魔耐:ぬ

技能:錬成・プルプル真拳・ハジケリスト・ぬ・寒天・言語理解

===============================

 

 

「「「ぬって何だ―――――――!?」」」

 

 数字の部分がまさかの平仮名一文字、その事実に誰もが耐えられない。

 

「というか俺寒天なの!?」

 

 そして当人も、自分の技能に寒天がある事に驚いていた。

 

「ところでメルド団長、錬成師ってどういう職業なんですか?」

 

 それらを差し置いてハジメは気になったことを尋ねる。メルドは躊躇いつつ返答した。

 

「ああ、その、何だ、錬成師というのは、まぁ、言ってみれば鍛冶職のことだ。鍛冶する時に便利だとか……」

「つまり雑魚ってことですね」

「焼きそばパン買ってこいよ天の助!」

 

 メルドの答えを聞いて躊躇なく雑魚認定するハジメと、便乗する首領パッチ。しかし天の助も、舐められたまま終われなかった。

 

「錬成師舐めんじゃね――! 錬成流奥義、ランスランスレボリューション!!」

 

 天の助の奥義発動と共に、どこからともなく大量の槍が空に現れ、ハジメ達に容赦なく降り注いだ。

 

「「ぎゃああああ――――――! 錬成師強ええ―――――!!」」

「いや知らんぞこんな技!?」

 

 メルドが錬成師の未知なる力に驚く。というかツッコミを入れる。

 一方、クラスメイト達はいい加減疲れてきたので、話をさっさと進めたかったので、首領パッチにステータスを見せるように頼んだ。

 

「つまりトリって奴だな。コケコッコー!」

「鶏!?」

 

 そして首領パッチもノリノリでステータスを見せた。

 

 

===============================

首領パッチ 現在、過去、未来は総てヨグ=ソトースの内に一なり 男 レベル:チョゲプリェ……

天職:決闘者(デュエリスト)

筋力:フライ

体力:スカイ

耐性:プルコギ

敏捷:カウントダウン

魔力:ギリギリchop

魔耐:恋はスリル、ショック、サスペンス

技能:シャイニングドロー・積み込み・状態異常耐性・ハジケリスト[+キング]・言語理解?

===============================

 

 

「「「もはや意味分からん!!」」」

「というか何で途中からコ○ンのオープニングになってんだよ!?」

 

 あまりの意味不明さに、クラスメイト達は総出でツッコミを入れている。

 だがメルドは、今まで出会った事の無い異常に着いてこれずフリーズしてしまった。皆はハジメ達を放っておいて必死で、メルドの復旧に必死になるのだった。

 

「というか僕の技能ほぼ全部自前じゃんか!!」

「グバァ!!」

 

 そしてハジメは檜山に八つ当たりをしていた。

 

 


 

 

 ステータスプレートを渡されてから二週間が経った。

 クラスメイト達はメルド率いる騎士達や、宮廷魔術師達に訓練を受けていたが、ハジメ達をどう訓練すればいいのか分からず匙を投げられていた。

 ハジメ達は人の訓練を手伝ったり、好き勝手ハジケたり、時には王立図書館で魔物やこの世界の情報を調べたり、首領パッチの天職に合わせて遊戯王カードで遊んだりしていた。

 

「これで終わりだ! ブラックパラディンの攻撃、超・魔・導・烈・波・斬!!」

「ぐわあああああああああああ!!」

「とこ馬……。憎しみの果てに真の勝利は無い……」

「図書館では静かに!」

「「ぎゃあ!!」」

 

 図書館ではしゃぎながらデュエルしていた為、司書にハードカバーの本で首領パッチ達は殴られた。

 

「いや、司書なんだから本は大事にしないといけないんじゃ……」

「あなたは始末する。今ここ絶対に! ネバーエンドブックライフ!!」

「ぐわあああああああああああ!!」

 

 ハジメに図星を付かれた司書は、大量の本を投げつけてハジメに攻撃をしてしまった。

 

「何これ理不尽……」

「「よくあるよくある」」

 

 


 

 

 雫達が訓練施設に集まると、そこは戦場だった。

 幾人もの魔術師達が倒れ伏し、幾人もの騎士達が戦いを挑む。

 騎士達が向ける矛の先にある物は首領パッチが変身した姿、無敵要塞ザイガス。その頂上ではハジメが高笑いをしていた。

 

「フフフフフ、アーハッハッハッハッハ! 今日こそ我等納豆が主食になる日だ。お前達は跪けっ!」

「そんなことはさせねえ! オレ達心太がこの世界の主食となる。いくぞお前ら!!」

「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」」」

 

 ハジメに相対するはところ天の助率いる騎士達。そうこれは、この世界の主食を決める聖戦(ジハード)である。

 

「いや訓練施設で何してるのよこの人達!?」

 

 雫のツッコミが響き渡るが、誰も聞き届けない。

 そしてこれは戦い。敗者も当然いる。魔術師達が倒れ伏す中に紛れて、鈴も倒れていた。

 

「こ、ここまでかな……。鈴はただ、この世界の主食をサーモンサンドにしたかっただけなのに……」

「鈴! しっかりして、鈴!!」

 

 倒れている鈴に呼びかける少女が居る。彼女は中村恵里、鈴の友人であり雫達の友人でもある。メガネを掛け、ナチュラルボブにした黒髪の美人で図書委員だ。性格は基本的に大人しいが、時には鈴と馬鹿やったりもする。が、ハジケリストではない、筈。

 

「え、エリリン……。エリリンと過ごした一年。悪く、無かったよ……」

「鈴――――――――――!!」

 

 鈴はその言葉と共に、ガクッという音を出しながら動かなくなった。

 

「鈴……。私、サーモンサンド別に好きじゃないよ……」

「そうなの!?」

 

 そしてすぐに復活した。

 

「良かったー。実は鈴も別に好きじゃないんだよね」

「じゃあ何で主食にしようとしたのよ!?」

 

 鈴の衝撃の言葉に思わず叫ぶ雫。その言葉と同時にメルドがやって来て叫ぶ。

 

「お前達、今日の訓練はここまでだ!!」

 

 訓練の終了と同時に、今まで倒れていた人達は起き上がり、無敵要塞ザイガスは元の首領パッチに戻る。

 そう、これは訓練だったのだ。

 

「ジハードとか言ってたじゃないの……」

「あらやだジハードとか言ってるわあの子」

「こんな戦いで主食が決まる訳ないじゃないの~」

「可愛い勘違いねえ」

(ムカつく)

 

 なぜかオネエ口調になったバカ三人の言葉に、そこはかとなく苛立ちを覚える雫。それと同時にメルドはハジメの元へ行った。

 

「しかしこの要塞戦の訓練を提案してくれたハジメには感謝しかないな。おかげで騎士達も気持ちが引き締まったぞ」

「いえいえ、出来ることをやったまでです」

「これハジメの提案だったの!?」

「しかしこの世界の主食をかけての戦いという設定に意味はあるのか……?」

「やっぱり意味は分からないのね! 良かったけど!!」

 

 ブツブツと考えながら立ち去ろうとするメルドだったが、唐突に止まり伝えるべきことを野太い声で告げた。

 

「おっと忘れていた。明日から、実戦訓練の一環として【オルクス大迷宮】へ遠征に行く。必要な物はこちらで用意してあるが、今までの王都外での魔物との実戦訓練とは一線を画すと思ってくれ! まぁ、要するに気合い入れろってことだ! 今日はゆっくり休めよ! では、解散!」

 

 そう言って今度こそ去っていくメルドを見送りながら、雫はあることに気付いた。

 

「あれ、今日結局私達訓練してない……?」



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奥義4 月下の語らい。今明かされる過去!

 【オルクス大迷宮】

 

 それは、全百階層からなると言われている大迷宮である。七大迷宮というこの世界有数の危険地帯の一つで、階層が深くなるにつれ強力な魔物が出現する。にも関わらず、この迷宮は冒険者や新兵などの訓練に非常に人気がある。それは、階層により魔物の強さが図りやすいからということと、出現の魔物に比べ遥かに良質の魔石を体内に抱えているからだ。

 魔石とは、魔物を魔物足らしめる力の核をいう。強力な魔物ほど良質で大きな核を備えている。魔石は軍関係だけでなく、日常生活にも必要な大変需要の高い品であり、高く売れる。

 

「何か魔石に関してだけ説明短くない?」

「だって僕ら多分換金アイテムとしか使わないだろうし……」

 

 という会話もあったがハジメ達はメルド率いる騎士団員複数名と共に、オルクス大迷宮へ挑戦する冒険者の達の為の街ホルアドへ到着した。新兵訓練によく使われる王国直営の宿屋があり、そこに泊まる。

 

「で、僕らは三人部屋か」

「まあまあ、いいじゃねえかハジメ」

「正直知らない奴と同じ部屋で寝るって落ち着かねえしな」

「ウキッ」

 

 そして夜、日本でいう丑三つ時よりは少し早い時間帯。ハジメ、首領パッチ、天の助、猿はハジメ達にあてがわれた部屋でトランプのババ抜きをやっていた。

 

「あ、僕一抜けだ」

「ハジメてめえ、さてはイカサマしやがったな!?」

(イ、イカ様? どんなお方かしら!?)

「ウキィ?」

 

 ハジメが一番に抜けたので、天の助に難癖を付けられていると突然部屋の扉がノックされた。

 

「ハジメ、起きてる?」

 

 ノックをしたのは雫だった。ハジメは慌ててドアを開ける。

 

「どうしたのこんな時間に? 何か連絡事項でも?」

「いいえ。そうじゃなくて、少しあなたと話したかったの。部屋に入ってもいい?」

「うん、いいよ」

「おい、バカやめろ!」

 

 ハジメが雫を部屋に招き入れようとすると、なぜか首領パッチが止めた。何か部屋に入れられない理由があったっけ? と思いながら振り向く。

 するとそこには、神々しい光を放ちながら徐々に消えていく猿の姿があった。

 

「何事!?」

「くっ。あの猿には、ハジケリスト以外の人間に見られると成仏する習性があるんだ!」

「しまった忘れてた!」

「何その習性!? 幽霊なの!?」

「ウキ、ウキィ……」

 

 ハジメ達が慌てている間にも、猿はどんどん薄くなりながら何かを呟いている。

 

「――――ウッキィ

 

 そして最期には、その言葉だけを残して完全に消え去った。

 

「「猿――――――――!!」」

 

 猿の消失に泣き叫ぶ首領パッチと天の助。その光景を見ているハジメは、何も言わずただ佇んでいた。雫も思わずちょっとだけしんみりする。

 

「「何言ってるかさっぱり分かんねえ!!」」

「ええ――――――――-っ!?」

「良かった僕だけじゃなかったんだ!」

「誰も分かってないじゃないの!!」

 

 今明かされる衝撃の事実に唖然とする雫。一方、ハジメ達は猿が消えた悲しみを乗り越えて、トランプで次は何をするか話し始めた。

 

「次何する? またババ抜き?」

「ぶっちゃけ飽きたなそれ」

「次はポーカーやろうぜ。勝ったら天の助ボコれるルールで」

「!?」

「それ天の助が勝ったらどうなるの?」

「自分で自分をボコればいいだろ」

「!!?」

 

 どう聞いても天の助に不利なルールが積み上がっていく中、それを見ながら雫は口の中で呟く。

 

「三人とも余裕ね……」

「まあ、僕はともかくこの二人は歴戦だからね」

「え?」

 

 まさか聞かれているとは思わなかった雫が思わず返事をしてしまう。一方ハジメは、特に気にすることなく話を進める。

 

「この二人はあのボボボーボ・ボーボボと一緒に旅をして、毛狩り隊と戦っていたからね」

「え!? ボーボボって仲間が居たの!?」

 

 ハジメの言葉に驚く雫。

 実の所、マルハーゲ帝国を倒したボボボーボ・ボーボボという男に知名度はあるが、彼に仲間がいたことは一般にはあまり知られていない。

 実際に敵対した毛狩り隊や、マルハーゲ帝国の幹部勢ならば知っているかもしれないが、少なくとも一般人なら知らないと思っていいレベルである。

 その事に天の助と首領パッチは不満だった。

 

「クソッ。オレにも知名度があれば今頃――――」

 

『キャー、天の助様よ――!』

『いつも心太食べてます!』

『ぬグッズも勿論買い占めてますわ!』

『ねは消え失せろおおおおお!!』

 

「みたいな女性ファンがいた筈!」

「ビックリする位俗ね」

 

 天の助の願望に呆れる雫。一方、首領パッチも自分の願望をさらけ出した。

 

「そうだ、オレにも知名度があればきっと――――」

 

『ウホ! ウホウホ!!』

『モゥ~!』

『ホーホケキョ!』

『サラダバー!!』

 

「みたいな動物ランドを建設することが……」

「最後のは何!? 動物なの!?」

 

 雫は最後の叫びにツッコミを入れつつ、ハジメに気になったことを聞いてみた。

 

「ところでハジメ。何でボーボボと旅をしていたっていう二人と一緒に暮らしてるの?」

「……そう言えば僕も知らないな」

「何で知らないのよ!?」

 

 知っていなきゃおかしい筈のことを知らないハジメに思わず叫ぶ雫。

 一方、首領パッチ達はその言葉を聞いて、白くて長い髭を蓄えながら神妙に話し始めた。

 

(その髭何なの?)

「いよいよ話す時が来たか……」

「ハジメの血塗られた過去をな……」

「え、そんな危険な感じなの?」

 

 ハジメの疑問を差し置いて、回想のはじまりはじまり。

 

 


 

 

 それはボーボボと共に戦い続け、ピーマン帝国が滅亡してしばらくしてからのことだった。

 

「毛の王国生き残り襲撃事件?」

「ああ」

 

 ボーボボが突然首領パッチと天の助にそんな話を持ってきた。

 要約するとこうだ。

 各地に散らばる毛の王国の生き残りが、最近何者かに襲撃を受けている。

 ということでお前ら護衛して来い。

 

「こんな感じだ分かったか――――っ!!」

「分かりましたああああ!!」

「いや、護衛はいいけどよ」

 

 ボーボボに電気アンマされている首領パッチを無視して、天の助は少し質問する。

 

「護衛って、俺らだけで足りるのか? 毛の王国の生き残りってそんなに少なかったっけ?」

「いや、生き残りの殆どが新・毛の王国の住人なんだ。だからお前らに護衛して欲しいのはそれ以外の内一人だ」

「新・毛の王国って、大丈夫なのか?」

「ビービビ兄も改心したって聞いたし、大丈夫じゃね?」

 

 ビービビ兄。本名ビビビービ・ビービビとは、ボーボボの兄にして毛の王国の滅亡の元凶である。ビービビは毛の王国を我がものとする為に、一度毛の王国を滅ぼして新しく自分の国に造り直した過去がある。

 だがボーボボに倒され、その後ツル・ツルリーナ3世に毛玉を奪われ一時的に死亡していたが、ツルリーナ3世が倒されたことで毛玉がビービビの元に戻り蘇生した。

 その際、何があったのか不明だが思う所があったらしく、性格が多少穏やかになったそうだ。

 

「で、頼んでいいか?」

「オレはいいぜ。首領パッチは?」

「とりあえず電気アンマやめろおおおおお!!」

「あ、忘れてた」

 

 こうして首領パッチ達は南雲ハジメの元へやって来た。

 そこにはいたのは

 

「やあ、僕の名前はスペースマン。僕と一緒に宇宙の為に戦おう!」

 

 宇宙から来た戦士、スペースマンだった。

 スペースマンは宇宙から来た戦士で、悪の銀河皇帝ダークエンペラーを追って地球へやって来た。

 首領パッチ達はスペースマンと共にダークエンペラーを探し、ついに辿り着く。

 しかし

 

「クッ、強い!」

「これが銀河皇帝の力か……!」

 

 ダークエンペラーに追い詰められていた。彼は、銀河の暗黒パワーを巧みに使いスペースマン達に本領を発揮させなかったのだ。

 そしてダークエンペラーは首領パッチにむかってとどめを刺そうと近づく。その瞬間。

 

「そんなことはさせない! 首領パッチは僕が守る!!」

 

 なんと、スペースマンはダークエンペラーに飛びつき、ドゴォォオオン、という轟音を響かせて自爆してしまった。

 余りの光景に思わず目を背ける首領パッチ、けれど。

 

「ば、馬鹿な……。このダークエンペラーがここまでのダメージを受けるとは……」

 

 ダークエンペラーは生きていた。だが息も絶え絶えだ。首領パッチ達はとどめを刺すべく走り出す。

 

「ここは退く……。覚えておれスペースマンの仲間どもよ……」

 

 しかし、首領パッチ達が攻撃するよりも先にダークエンペラーは別次元へ逃げてしまった。

 最後に残ったのは首領パッチと天の助の二人。

 

「「うわああああああああああああああああ!!」」

 

 二人はただ、仲間の死に慟哭するのみだった。

 

 


 

 

「そうしてオレ達はスペースマンの遺志を継いで、別次元に逃げたダークエンペラーを探している」

「そんな悲しい過去があったなんて……」

(スペースマンって誰?)

 

 首領パッチの話を聞いて泣いているハジメと、戸惑っている雫。

 すると次の瞬間、外からいきなりナイフが飛んできた。それを首領パッチは指で挟んで受け止める。

 

「クッ、失敗か!」

 

 その言葉と共に、攻撃の主の気配が遠ざかるのをハジメは感じた。そして首領パッチと天の助は気付く、この声はダークエンペラーの物だと。

 

「逃がさない。納豆真拳奥義、マメールラーメンブラスト!」

 

 ハジメは納豆ラーメンが入ったどんぶりを振りかぶり、ダークエンペラーに投げつける。そして命中し、ダークエンペラーは爆発した。

 

「何で!?」

「あいつの身体は、機械だったんだ」

「それの維持の為に、多くの人間を味噌汁に変え喰らい続け来たんだ……」

「だがそれも今日で終わりだ。この僕、南雲ハジメの手でね!」

「いやハジメとどめ以外何の関係もないでしょ!」

「うん」

 

 なぜかしたり顔だったハジメにツッコミを入れる雫。そしてそのツッコミの矛先は、首領パッチと天の助へと向かう。

 

「というかあなた達の因縁、完全に無関係のハジメに取られてるけどいいの!?」

「「別に……」」

「いいの!?」

「大事なのは真実に向かおうとする意志だ。たとえ仇は討てなくても、討つ気はあったから別にいい。違うかい?」

「あってるか間違ってるかかなり微妙だけどとりあえず腹立つ!!」

 

 突如巻き起こされるツッコミ所のオンパレードに思わず息切れする雫。やがてしばらくすると、息を整えて笑う彼女の姿。

 

「―-ありがとう、ハジメ」

「え?」

 

 そして唐突に告げられた感謝に、ハジメは思わず生返事だった。

 

「実は不安だったの。初めての迷宮とか、そもそも今こうやって戦争に参加するのは正しかったのかって」

 

 それは今まで誰にも話したことの無い彼女の本音。それをハジメ達は黙って聞いている。

 

「でもハジメ達見てたらなんか馬鹿らしくなっちゃって。そうよね、結局私達は戦争参加を選んだし、迷宮もやれるだけやらなきゃしょうがないわよね。そう思えたの」

 

 それだけ言って雫は、ハジメ達の部屋から去っていた。

 後に残されたのは部屋の主たる馬鹿三人。彼らは同時に一言一句違わない言葉を発した。

 

「「「結局何しに来たんだ……?」」」

 




特殊タグって超便利ですね


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奥義5 ベヒモス襲来!

色々なことがあった平成が終わり、今日から令和が始まりますね。
このSSも令和になってパワーアップ、していくくらいの気持ちで頑張ってハジケていきたいです。


 ハジメ達は現在、オルクス大迷宮の正面入り口がある広場に集まっていた。

 ハジメの想像では、迷宮の入口はテ○ルズオブシリーズみたいに薄暗く陰気なイメージだったのだが、実際は博物館の入場ゲートのように管理された入口があった。なんでも、ここでステータスプレートをチェックして出入りを記録する事で死亡者数を正確に把握するそうな。

 ハジメ達は、メルドから離れないようについて行った。

 

 そして迷宮の中。

 中は明かりも無いのにある程度周りが見えるほどの明るさを保っている。その中を先頭が光輝達勇者パーティ。後ろにクラスメイト達が何人かに分かれてパーティを組んでいる。そして最後尾にはハジメ達三人が、四畳半ほどの大きさの板にキャスターを付けた物の上に乗り、それを騎士達に引かせながらハジメは迷宮入口がある広場にあった露店で売っているお菓子を食べつつジャンプを読み、天の助はところてん促進グッズの裁縫、首領パッチはししおどしだった。

 

「いや何寛いでるのよ!?」

 

 そして雫はキレた。当然である。今日自分達は訓練に来ているのに、後ろでサボられたらキレる。誰だってそうなる。

 

「カマトトぶってんじゃないわよ!!」

「ハジメのメインヒロイン気取りなんてさせないんだから!!」

「いやどこをどう見たらそうなるのよ!?」

 

 しかし首領パッチと天の助は逆ギレ。それに雫は戸惑う。

 

「う、うぅ……。こんなラブコメ主人公みたいなことが現実に起きるなんて……」

 

 一方、ハジメは自分を取り合われるというシチュエーションに思わず泣いていた。

 

「この状況嬉しい!?」

「うーん、そうでもないね」

 

 そして一瞬で冷静になった。学校で女神と称される雫はともかく、心太と見た目金平糖に迫られても嬉しくは無かった。

 

「何よハジメ。アタシらじゃ嬉しくないっていうの? メインヒロインにはふさわしくないって!?」

「アタイらと八重樫、どっちがいいかはっきり言えよオラァ!?」

 

 冷静になったハジメに凄む天の助と首領パッチ。首領パッチは状況次第では答えにくい質問付きだ。

 

「そりゃ八重樫さんだけど」

「ハレンチ―――――――!!」

「古手川さ――――――ん!!」

「ぎゃあああああああああああああ!!」

 

 しかしハジメは即答し、それに対して首領パッチは目潰しをした。

 痛さの余り思わず転がるハジメ。そのまま転がっていると、進路上に灰色の毛玉が現れた。

 がそのまま轢き殺した。それを見たメルドはなんとも言えない表情で解説する。

 

「あー、今ハジメが轢き殺したのはラットマンという魔物だ。すばしっこいが大した魔物じゃない。次出てきたら光輝達、戦ってみろ」

 

 どこかゆるい空気の中、迷宮の壁の隙間から再びラットマンが現れた。

 光輝達はそれを特に苦戦もせず撃破。強いて言うなら、魔石の回収も考えずオーバーキルしてしまったのをメルドに叱られた位だ。

 そこからは特に問題も無く交代しながら戦闘を繰り返し、迷宮を下っていた。

 そしてニ十階層に到着。ここの終わり、次の階層に続く階段が今日の訓練のゴール地点である。

しばらく探索していると突然先頭を行く光輝達とメルドが立ち止まり、戦闘態勢に入る。

 その直後、迷宮の壁が突然変色しながら起き上がった。擬態能力を持った魔物である。

 

「ロックマウントだ! 二本の上に注意しろ! 豪腕だぞ!」

 

 メルドの声が響く。そして光輝達と戦闘が始まった。

 戦闘そのものは光輝達の圧勝だったが、何を思ったのか光輝が必要以上の威力の技を出し、ロックマウントのみならず後ろの壁も破壊した。

 光輝はいい笑顔だったが、メルドは迷宮の崩落を考えろと叱る。

 

「てかさ、もう少し静かにしてよ。オレテレビ見てんだからさ」

 

 一方、天の助は寝っころがりながらテレビを見ていた。その後ろでは、ハジメと首領パッチがバトミントンで遊んでいる。

 

「こいつら引っ叩きたい……!」

 

 光輝が静かに怒りを燃やしていると、ふと香織が崩れた壁の方に視線を向けた。

 

「……あれ、何かな? キラキラしてる……」

 

 その言葉に全員が香織の指差す方を見ると、そこには青白く発光する鉱物が壁から生えていた。

 

「あれはグランツ鉱石だな。いわば宝石の原石だ。加工して指輪などにすると喜ばれるらしく、求婚の際に選ばれる宝石にもトップ三に入る代物だ。大きさも中々だ。珍しい」

「素敵……」

「本当。まるでアタイの為にある石だわ……」

 

 メルドの説明を聞いて、香織と首領パッチが頬を染めてうっとりしている。

 

「だったら俺らで回収しようぜ!」

「おっと、パチ美さんのハートを頂くのは私ですよ」

「いやそれはいらねえよ!?」

 

 そう言って唐突に動き出し、グランツ鉱石の元へ走りだしたのは檜山と天の助だ。二人を見てメルドは制止を呼びかけるが、二人は聞こえないふりをしてそのまま進み、ついにグランツ鉱石の元へ辿り着く。

 

「団長! トラップです!」

「ッ!?」

「何やってるんだよ団長!?」

「止まるんじゃねえぞ……」

 

 檜山と天の助が辿り着き、ハジメが希望の花を咲かせているのと同時に、実はトラップが無いか調べていた騎士団員が叫ぶ。しかしそれは何の意味もなさない。檜山がグランツ鉱石に触れた瞬間、鉱石を中心に魔法陣が広がる。

 クラスメイト達は魔法陣から離れようとするが、その前に魔法陣が光り陣の内側に居た全員を転移させた。転移先は巨大な橋の上、その中間地点だった。橋の下には何も見えない、深淵の如き闇が広がっている。橋の両サイドにはそれぞれ、奥へと続く階段と上階への階段が見える。

 

「お前達、すぐに立ち上がって、あの階段の場所まで行け。急げ!」

 

 階段を確認したメルドが、険しい表情で指示を飛ばし、クラスメイト達はそれに応じてわたわたと動き出す。

 しかし、迷宮のトラップは転移だけでは無かった。階段側の端の入口に現われた魔法陣から、骨の体に剣を携えたトラムソルジャーという魔物が大量に出現した。そして反対側にも魔法陣が現れ、一体の巨大な魔物が現れる。

 その巨大な魔物を茫然と見つめるメルドの呟きが、なぜか明瞭に響いた。

 

「まさか……ベヒモスなのか……」

「ベヒモス!? かつて人間がもっともオルクスを深く潜った六十五層に出てくる魔物の!?」

「つまりここは六十五層!? なんてこった、どうりで……」

 

 メルドの呟きに驚くハジメ。それに呼応して首領パッチは得心したとばかり頷く。

 その首領パッチの背後には――

 

「土地が安かった訳だ。パチンコ店作っちまったぜ!」

「こんな所客来ないわよ!?」

 

 パチンコ店が出来ていた。そして店の中には――

 

「うおおおおおお!!」

「きた……っ! リーチだ……っ!!」

 

 パチンコしているハジメと天の助の姿があった。

 

「この状況で!?」

 

 しかし数秒後、天の助が泣きながら店から出てくる。

 

「うわああああん! 十万負けちゃった――――!!」

 

 泣き叫びながら天の助は魔剣大根ブレード*1を携え、突撃する。

 

「プルプル真拳奥義、敗北パチプロ怒りの乱舞!」

「八つ当たりでしょそれ!?」

 

 天の助が奥義で大根を振り回し、トラムソルジャー達を吹き飛ばしていく。しかし骨の集団はまだまだ数が多い。

 その数秒後、ハジメは財布をニヤニヤ見ながら出てきた。

 

「いやー勝った勝った。これでしばらく遊んで暮らせるな」

 

 しかしハジメが出てきた瞬間、ガチャンと婦警のコスプレをした鈴に右手首に手錠を掛けられてこう告げられる。

 

「賭博罪で、逮捕」

「丁度いい」

 

 しかしハジメは不敵な笑みを見せ、鈴の腕を掴みそのままグルグルと回り始めた。回転スピードはどんどん早くなる。

 

「このSS&令和最初の協力奥義はこれで行くよ!」

 

 そして余りの速さに、ついにハジメ達は竜巻を発生させた。

 

「協力奥義、ポリスサイクロン!!」

 

 ハジメ達は次々とトラムソルジャーを吹き飛ばし、橋の外に落としていく。しかし橋の上にいるのはトラムソルジャーだけではない。魔物が集まっているせいでパニックになっているクラスメイト達もいるのだ。

 ハジメ達が起こした竜巻が強く、クラスメイトの一人が橋から落ちそうになる。

 

「やばっ」

 

 だからハジメは咄嗟に手を離して竜巻を止め、落ちそうになっているクラスメイトを助けた。

 一方鈴は、手を離された勢いでそのまま飛ばされて

 

「「ギャア!」」

 

 檜山に激突して停止した。

 それを無視してハジメ達三人は集まって話し合い始める。

 

「ヤバい。クラスメイトが邪魔で大技が出せない」

「何とかあいつら落ち着けないと!」

「アタイが脱いで気を引くわ!」

「キモい!」

 

 脱ぐ宣言をした首領パッチをドカッと鈍器で黙らせて、ハジメと天の助は頭を捻らせる。そしてハジメはひらめいた。

 

「そうだ。天之河君やメルド団長なら皆を落ちつけられる!」

「成程。それであいつらどこに居るんだ?」

 

 二人が光輝とメルド探すと、ベヒモス相手に足止めしている姿が見えた。二人は首領パッチを抱えてそっちに走り出す。

 

 

 光輝達は、ベヒモスの手前で言い争っていた。

 騎士団員達が総出で魔法による障壁を作り、ベヒモスの突進をかろうじて防いでいるが、時間の問題だ。

 

「ええい、くそ! もうもたんぞ! 光輝、早く撤退しろ! お前達も早く行け!」

「嫌です! メルドさんを置いていくわけには――ブハッ!!」

 

 メルドを置いて行きたくない光輝は、ベヒモスを倒すと意気込んでいたが横から飛んできた首領パッチに話を阻害された。

 

「いきなり何をするんだ!」

「黙れ! そしてあれを見るんだ!!」

 

 いきなり攻撃されて怒る光輝に、それ以上の怒気で返すハジメ。ハジメは、パニックになり逃げ惑うクラスメイト達の方に指を向け、光輝にその光景を見せる。

 

「天之河君がクラスメイト達を何とか落ち着けるんだ! それが出来るのは君しか居ないんだ! 後ろも見ろよ主人公になれなさそうなスペックの癖に!!」

「どういう罵声!?」

「あ、ああ分かった……。すみませんメルド団長! 先に撤退します!」

 

 どこか釈然としないものの、クラスメイト達を放っておくわけにもいかないので撤退する光輝。

 

「さあ他の皆も。騎士団の皆さんも早く! ベヒモスの足止めは僕らが――」

「下がれぇ――!」

 

 引き受けます、という言おうとした瞬間、障壁が壊れベヒモスの突進がこっちに脅威として向かって来る。

 だが

 

「リバースカードオープン。攻撃の無力化!」

 

 首領パッチがいつの間にか左腕に付けていたデュエルディスクにセットしてあるリバースカードを発動し、ベヒモスの攻撃を止めた。

 デュエルディスクを具現化し、遊戯王カードの効果を実体化させる。これが天職決闘者の力である。

 

「ハジメ、長くは持たないぞ!」

「分かってる。皆早く撤退して。そこに居られると巻き込みそうで大技出しにくいから」

「撤退促すのってそんな理由なの!?」

「「つーかオレらなら万が一巻き込んでもいいのかよ!?」」

 

 バカ二人の言葉をハジメは黙殺し、メルド達を撤退させる。そして万が一にも技の効果範囲に入らないことを確認してから、ハジメはこう言った。

 

「よし、僕が足止めするから天の助はとどめを」

「おう、任せろ!」

「納豆真拳奥義、ビーンボムラッシュ!」

 

 奥義の発動と共に、ベヒモスの上空数メートルほどの高さに三メートル位の大きさの納豆が現れ、そこから大量の大豆をばら撒いている。その大豆がベヒモスに命中すると、爆発が起こりベヒモスに着実なダメージを与えていた。

 

「兄ちゃんの仇!」

「グバァ!!」

 

 途中、コーヒー豆が混ざりハジメを攻撃したが、些事なので誰も気に留めなかった。

 

「いや些事では無いでしょ!?」

「今だ天の助、やって!」

「行くぜ!!」

 

 雫はツッコミを入れるが、当のハジメすらスルーして話を進め、天の助は空に跳びあがる。

 

「プルプル真拳奥義、ところてんセイバー!!」

 

 そして心太でできた剣を取り出し、兜割の要領でベヒモスの頭部に剣を叩きこむ。これで終わり、と誰もが思ったが――

 

 プルン

 心太でできた剣に切れ味があるはずも無く、天の助は何も斬れないまますごすごと戻ってきた。

 

「ゴメン、駄目だった」

「何やってんのお前――――!!」

 

 ハジメは天の助を蹴り飛ばし、ベヒモスに叩きこむもダメージは与えられず天の助は粉々になった。

 そうこうしている間に攻撃の無力化の効果も切れ、再びベヒモスが攻撃できるようになった。

 ベヒモスは突進を始め、ハジメ達のかなり手前で跳躍し、赤熱化した頭部を下に向けて隕石の様に落下してくる。

 

「納豆真拳奥義、決して切れない(ネバーエンド)ネバネバ!」

 

 ハジメは咄嗟に、納豆の糸をクモの巣の様に張り巡らせ、ベヒモスの攻撃を受け止めた。だがベヒモスの着地を許してしまったので、再び突進されるのも時間の問題だ。

 さてどうしよう、とハジメが頭を捻らせた所で首領パッチが話しかけてくる。

 

「ハジメ、ここはオレに任せてくれ。天職決闘者の力、見せてやるぜ!」

「いいけど、駄目だったら北京原人に売り飛ばす。コーラまみれにして売り飛ばす」

「!?」

 

 ハジメの脅迫に恐れおののきながらも、首領パッチはデュエルディスクにセットしたデッキに指を置く。

 

「オレのターン、ドロー!」

 

 首領パッチがカードを引いたと同時に、ベヒモスは納豆の糸を取ろうと暴れはじめる。

 そこに天の助が飛び込んでくる。

 

「プルプル真拳奥義、極上料理! さあオレを食え――――!!」

 

 大皿に自分を盛り付け、ポン酢をかけながら飛び込んでくる天の助に対し、ベヒモスは咆哮で答えた。その咆哮で天の助はあらぬ方向へ飛んでいく。

 その隙に首領パッチの展開が始まった。

 

「オレはサポートカード、チェレンを発動。この効果でデッキから三枚ドロー!!」

「いきなりゲーム違う! それポケ○ンカード!!」

「そして通常ドロー以外でこのカードがドローされた時、糸こんにゃくを特殊召喚!」

「糸こんにゃく!?」

「そして卵を召喚! さらに卵がフィールドにある時、牛筋を特殊召喚できる。来い、牛筋!」

「さっきから何これ!? おでん!?」

「そしてこれら三体をリリースすることで、こいつを特殊召喚できる。来い、レベル十!」

 

 首領パッチの言葉と共に、宙にベヒモスを超える巨大な何かの影が現れる。やがて影が消え、その姿を見せた。

 

「焼きうどん!!」

「あの具材から何で麺類――――!?」

 

 そう、十メートル程の大きさの皿に山盛りになった焼きうどんの姿が。

 その光景に思わず雫は頭を抱えてしまった。

 

「焼きうどんの攻撃、うどんアタック!」

 

 首領パッチの指示で、焼きうどんはベヒモスにむかって上空から落下していく。ベヒモスは身体でそれを受け止めるも、大きさの違いからか徐々に押しつぶされていく。

 しかし完全に押しつぶされる前に、足場である橋に異変が起こった。

 ピキッ、と橋がひび割れたかと思った瞬間、ベヒモス達が居た部分の足場が完全に崩落したのだ。ベヒモスの度重なる攻撃、ハジメの奥義、そして焼きうどんの攻撃に足場が耐えられなかったのだ。

 ベヒモスも抵抗を試みるも、焼きうどんと一緒に成すすべなく奈落の底へ落ちていく。

 

「よし、ベヒモスを倒したぞ!」

「いやぁ、ベヒモスは強敵でしたね……」

「Yeah! Foooooo!!」

 

 上からハジメ、天の助、首領パッチの順にベヒモス撃破に喜ぶ一同。しかしそれは大きな罠だった。戦闘が終わったと誰もが思ったその瞬間、奈落に落ちた筈の焼きうどんがバカ三人の足に絡みつき、奈落へと引きずり込もうとしてきたのだ。

 

「ヤメロー! シニタクナーイ!」

「オンドゥルルラギッタンディスカー!」

「図ったなキシリア――――!!」

 

 各々抵抗するも、その行為が実を結ぶ事は無く最後には

 

「「「おのれイタリア人め――――――――――!!!」」」

「何でイタリア人!?」

 

 奈落へと落ちて行った。

 

 

 はてさてこの先、ハジケリスト三人はどうなってしまうのか?

 待て、次回!

 

「何かサイボーグク○ちゃん風に締めてきた!!」

*1ただの大根



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奥義6 バカ達のいない地上&バカ達のいる奈落の底

改めて言いますがこのSSはありふれとボーボボのクロスオーバーSSです。
なので序盤はありふれ成分が強めとなっております。多分。


というか今までがボーボボ一色すぎた。
これっていわゆる蹂躙クロスなんじゃ……。


 ハジケリスト三人が奈落の底へ落ちていく光景。それをただ黙って見ているクラスメイト達と騎士団員達。

 彼らはハジメ達が危険な目に遭っているとは思わない。否、遭っていたとしても何とかしていると信じて疑わない。

 一方で、自らの危機が無くなった訳では無い。

 

「皆呆けるな! ハジメ達なら生きている筈だから早く脱出するぞ! 俺達はまだ危機を脱しちゃいないんだからな!!」

 

 焼きうどんに人間一人とよく分からないのが二人、引きずり込まれるという光景を目にし思わず呆けてしまったが、正気に戻るのが一番早かったのはメルドだった。

メルドはクラスメイト達と騎士達に必死に呼びかける。ベヒモスは奈落に落ちたといえ、トラムソルジャーを呼び出す魔法陣はいまだ健在で、続々と数を増やしている。

 

「光輝。お前が先陣を切るんだ。殿は俺達がやる」

「分かりましたメルドさん。皆、俺に続け!」

 

 メルドの指示で光輝が先陣を切り、トラムソルジャーを倒しながらついに階段への脱出を果たす。

 その後、三十階以上あるのではないかと思うほど長い階段を上りきると、そこには魔法陣が書かれた壁が。その魔法陣に罠が無いか確認してから、メルドが魔力を流すと壁が回転扉となって回転する。扉を潜ると、そこは元の二十階層の部屋だった。しかし休む暇はない。今度はそのまま地上まで進み、そして遂に一階の正面門へと辿り着いた。クラスメイトは皆我先にと脱出する。

 

「イヤッフゥー! やっと戻って来たあああああ!!」

 

 そして一番に脱出した鈴が喜びのあまり迷宮入口前の広場で、亀の甲羅を踏みつけながらピロリンピロリンと謎の電子音を発生させていた。

 

「いや無限1UPしてるわねこれ!?」

「何回やっても、ちびファイヤーマ○オになれないんだけど!!」

「知らないわよ!?」

 

 


 

 

 ホルアドの町に戻った一同は、宿屋に戻った途端檜山を責めたてた。人的被害はほぼ十割死なないであろう南雲ハジメ達だったので、檜山が泣きながら謝罪をし、これを光輝が許すことで一応の決着はついた。

 そして時間は流れ夜。幾人の生徒は話し合っているが、ほとんどの生徒は間近に迫った命の危機に疲れ果て、深い眠りについていた。

 そう、ほとんどである。話し合っている生徒以外の全てでは無い。

 その生徒は、ただ夜風を浴びたくて散歩しているだけだった。だが今は――

 

「ふーん、あの三人はバランスを壊すイレギュラーねえ……」

 

 何者かと会話をしていた。会話している生徒の声は聞こえるが、もう一人の声は聞こえず姿も見えない。

 

「え、あれであいつら死んだかって? ないね。あの三人がたかだか奈落に落ちた程度で死ぬなんてありえない。というか三人の内二人は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、あんな程度で死なれちゃ逆に腹立つし」

 

 ハジメ達を語るその口ぶりは、他のクラスメイト達の前では絶対に見せないであろう熱を帯びている。それは憎悪。ハジメ達、正確に言えば首領パッチと天の助に対し、この生徒は明確に憎しみを抱いている。

 その理由が会話相手も気になったのか、尋ねたようだ。

 

「僕が昔、生涯を懸けて忠誠を誓った相手をあいつらに殺されたんだよ。だから復讐の機会を狙っていたんだけど、まだ敵いそうにないから潜んでるって訳」

 

 その答えに何を思ったのか。会話相手はどんな返答を返したのか、それはこの生徒以外に聞こえない。

 

「それ本当なら手伝ってもいいよ。他のクラスメイト達はちょっと可哀想だけど、あの方ほどの優先順位は無いし。だけど」

 

 そこで生徒は言葉を区切り、はっきりと断言した。

 

「僕が忠義を誓うのはあの方だけだ。お前達を手伝うのはいいけど、心まで従えられると思うな」

 

 その言葉に対して会話相手は何も返さない。代わりに違う事を問いかけたらしい。

 

「バランス? ならこっちにしたことと同じことを向こうにもすればいいんじゃないの? 人が駄目なら物でもいいし。まあ人を呼ぶなら、ハジケリストを呼んだ方が良いと思うよ。これは一応忠告のつもりだから」

 

 生徒の言葉に何を返すわけでもなく、会話相手は気配を消した。どうやら、この場を去ったようだ。

 

「じゃ、僕も帰ろうかな」

 

 


 

 

 それから翌日。クラスメイトと騎士達はハイリヒ王国王宮に戻った。とても迷宮内で実戦訓練を続行できる状態では無かったし、勇者の同胞が一時的に脱落した以上、国王にも教会にも報告は必要だった。

 帰還を果たし、ハジメ達の一時的な脱落を伝えると、王国側の人間は特に大きな反応を見せなかった。実の所、偉大なエヒト神に与えられたステータスプレートを狂わせる存在として、ハジメ達はエヒト神に敬虔な信者程忌み嫌われていたのだ。

 国王やイシュタルはそれを表だって見せはしなかったが、中には物陰とはいえハジメ達を悪し様に罵る者までいた。

 しかし、それを知った鈴が貴族に噛みついた。

 

「ハァ……ハァ……敗北者……? 取り消してよ、今の言葉……!?」

「取り消せだと? 断じて取り消すつもりはない」

「やめろ……!!」

「この数日の間、馬鹿騒ぎをしてまともに訓練もしない……。実に無意味な男達ではないか?」

「ハジメは鈴達に生き場所をくれたんだ! お前にハジメの偉大さの何が分かる!!」

「人間族はエヒト神に従わなければ生きる価値なし! ステータスプレートを狂わせる悪魔に生き場所はいらん!! 馬鹿ひげは敗北者として死ぬ! 神の秩序を崩す者には、お誂え向きだろうが!!!」

「馬鹿ひげはこの時代を作った大ハジケリストだ!! 鈴を救ってくれた人を馬鹿にすんじゃねぇ!! この時代の名が! 馬鹿ひげだァ!!」

「いや馬鹿ひげって誰!? ハジメのこと!?」

 

 という一幕があった。そしてもう一つ。

 

「我々は最大戦力を一時的にですが失いました。あのベヒモスすら危なげなく倒す存在をです」

 

 とメルドが進言したことで、ハジメを悪し様に罵った者には厳罰が下されることになった。

 それを受けてか、クラスメイトの中にはハジメ達が帰ってくるまで訓練は中止しよう、と言い出す者まで現れた。実の所、光輝がこの戦争に参加すると言い出してそれに便乗した者の大半は、真拳使いで強者のハジメをあてにしていた。自分が戦わなくてもそのうち帰れる、みたいな甘えがあった。しかし、今回のことでいずれ帰って来るにせよそれまでは圧倒的な戦力低下の中で戦わなければならなくなり、それに怯える者が多かった。

 教会としてはいい顔はしなかった。なんとか戦ってもらおうと、あの手この手で毎日復帰をやんわりと促してくる。

 それに猛抗議したのは愛子だ。愛子の天職は作農師という非戦闘職ながら、特殊かつ激レアな代物である。農地開拓に専念させれば、糧食問題は解決してしまう可能性が高い天職だ。

 そんな愛子は、戦えない生徒を無理矢理戦場戦場に送り出すような真似をよしとはしなかった。そして、教会側も愛子との関係悪化を恐れてそれを受け入れ、訓練は希望者のみとなった。

 結果、訓練するのは勇者パーティーと檜山パーティー、そして永山重呉のパーティーのみとなった。しかしそれも、ハジメ達が帰るまでの一時的なことになると騎士達は思っていた。

 さて、件のハジメ達は何をしているのだろうか。時は少し巻き戻る。

 

 


 

 

「痛っ……。ここは……? そうだ、僕は確か焼きうどんに引きずり込まれて……」

 

 ハジメが目を覚ますと、そこはやはり迷宮の中だった。周りは薄暗いが緑光石の発行のおかげで何も見えない訳じゃない。どうやら、床に寝かされていたらしい。

 

「そうだ。首領パッチに天の助は!?」

 

 ハジメがこの状況で最初に考えたことは、仲間のことだった。一緒に落ちた筈なのに姿がどこにも見えない。更に言うなら、自分達を引きずり込んだ張本人(?)の焼きうどんの姿も見えない。

 ハジメはとりあえず二人を探そうと、あてもなく迷宮を歩く。そうしてしばらくすると、どこかで戦っているかのような音が聞こえた。ハジメが音の発生源まで向かうとそこには

 尻尾が二本ある二尾狼の群れが。

 空中を蹴ることが可能で、上の二尾狼位なら一蹴できる蹴りウサギが。

 その蹴りウサギすら恐れるこの迷宮、この階層の頂点である鋭い爪を持った爪熊が。

 そして探していた首領パッチと天の助が。

 

「ら、らめぇぇえええ!! あっ、あああああっ! い、いやああああああ! そんなに激しくしない、でぇ! 私を求めないでぇ……っ!」

 

 エロゲ声優みたいなボイスで喘いでいる焼きうどん相手に、一丸となって攻撃を加えていた。

 

「MMOのレイドボス戦みたいになってる……!」

 

 それを見たハジメは思わず呟く。その声に気付いたのか、首領パッチがハジメに向かって叫ぶ。

 

「おいハジメ。早くてめえも手伝え!」

「いやこれどういう状況なの?」

 

 ハジメの疑問に首領パッチと天の助は、アメリカンな感じで手を広げ、やれやれと首を横に振った。

 

(こいつらぶっ潰したい……)

「オレ達は目が覚めてから、とりあえずハジメを探そうとウロウロしてたんだ」

「そしたら喘いでいる焼きうどんを見つけてな。とりあえず食糧を確保しようと思って戦ってたんだ」

「なんか魔物がいる訳は?」

「「知らん。そんなことはオレ達の管轄外だ」」

 

 ドゴォドゴォ、と何も考えていないバカ二人を膝蹴りで沈め、どうしたものかとハジメが考えていると、横から声がかかる。

 

「まあそう言いなさんな兄さん。確かにあんたらとわしらは不倶戴天の敵同士。じゃが少しぐらいなら、こうして肩を並べて未知の敵と戦うっちゅうんも、悪くねえとは思わんかい?」

 

 ハジメが声のする方を見るとそこには、タバコを吸いながらサングラスを掛け、任侠映画の登場人物みたいな口調で話しかけてくる蹴りウサギが一匹いた。

 ハジメはその蹴りウサギの耳を掴み

 

「何一時的に組んだライバルみたいなツラしてるのお前!」

「グバァ!」

「あぁん!」

 

 そのまま焼きうどんに投げつけた。そしてハジメは戦闘態勢を整える。

 

「まあとりあえず、後のことは焼きうどんぶっ殺してから考えるか」

「ぶっ殺すなんて言葉は使うな! ぶっ殺したなら使ってもいい!!」

「パチシュートの兄貴ィ!」

「いくぞハッジ!」

 

 いつの間にか復活した首領パッチが、ハジメに啖呵を切ってから焼きうどんに突撃する。

 そしてハジメは

 

「僕は今日、兄貴を超える!」

 

 ズダダダダダダダ、とマシンガンで首領パッチを強襲した。

 

「ぎゃああああああああ!!」

「キ モ チ イ イ……」

(マ○ー2のギーグみたいになっとる。怖っ)

 

 首領パッチの巻き添えで攻撃を受けた焼きうどんの言葉に、ちょっと戦慄する天の助。

 そんなことは知らないハジメは、首領パッチソード*1を上に掲げ叫んだ。

 

「ここが我らの死に場所と知れ! いざ、開戦だ!!」

「「「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」

 

 ハジメの叫びになぜか魔物達が呼応し、一斉に焼きうどんにむかって突撃する。

 その後ろで天の助は

 

「なんか、最後の方で祈らなきゃ倒せなさそうだしぬつ像に祈っとこ」

 

 顔がぬになった仏像を手に、必死に拝んでいた。

*1ただのネギ



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奥義7 奈落の底の少女

今までやっていた遊戯王がどの程度分かるかのアンケート、これ以上やっても結果が変動しないと思うので終了します。
予想以上に票が割れましたが、遊戯王DMまでなら七割以上の人が分かるみたいなので、そこまで見れば問題ないようにします。
が、基本ボーボボとありふれなので遊戯王分からなくても大きな問題はありません。

ちなみに、全部分かるの票が多かった場合、シンクロやエクシーズ召喚を何の説明もなく使うつもりでした。オーバーレイユニットに関する説明もするつもりはありませんでした。

ではこれからもこのSSをよろしくお願いします。


 焼きうどんとの激闘は終わった。

 幾匹もの魔物が犠牲となったが、ハジメ達は勝利した。そして今、戦いに参加した皆で焼きうどんを食べている。

 

「うーまーいーぞー!!!」

「素晴らしい! 思い出したぞ、聞こえるぞ! 私は料理を作りたかった! ただ美味しい物を作りたかった!!」

「お茶漬けポリポリサーラサラ! お茶漬けポリポリサーラサラ!」

「そんなに美味いですかねえ……。この焼きうどん」

 

 バカ三人の焼きうどんを食べたリアクションのテンションの高さに、ちょっと引いている蹴りウサギ。

 

「「「は? 何言ってんのお前?」」」

「じゃああのテンションは何だよ!?」

 

 しかし見事なまでに梯子を外され、思わず叫ぶ蹴りウサギ。

 やがて皆が焼きうどんを食べ終わる頃、ハジメはずっと気になっていた事を皆に尋ねる。

 

「ところで僕らはさ、このオルクス大迷宮から出たいんだけど、出口ってどこか分かる?」

 

 ハジメとしては普通の質問。首領パッチや天の助もそういや聞いてなかったなと呟く。だが問われた魔物達は、一斉に気まずそうな表情を見せる。

 

「どうしたの? そんな揚げパンがいきなり意志を持って反逆して来たみたいな顔して」

「どんな顔だよ!?」

「昔一回あった」

「あったの!?」

 

 ハジメの言動にツッコミを入れる蹴りウサギ。それを遮って爪熊が話し出した。

 

「ハジメさん。ここから出るには最下層まで行くしかありませんぜ」

「え、そうなの?」

「そもそもオルクス大迷宮は二つあるんでさあ。一つは上で人間達が今現在必死こいて攻略している表の大迷宮。そしてその下には真のオルクス大迷宮があるんでさあ。ハジメさん達が今いるのは真のオルクス大迷宮。一度入ればクリアまで出られない超難易度のダンジョンでさあ」

「何それクソゲーじゃん。クリア後に攻略すべきダンジョンだよそれ」

「ペーパーマ○オRPGでいうなら百階ダンジョンみたいな物か」

「うわめんどくせぇ」

 

 爪熊の説明に、バカ三人は滅茶苦茶愚痴っていた。が、しばらくすると立ち上がり、ブーブー言いながらも出発を決意した。

 

「よし行こう! 首領パッチ、天の助、蹴りウサギ!」

「「おう!」」

「何で俺も!?」

 

 勝手にメンバーに加えられキレる蹴りウサギ。当然の反論だった。

 

「……ツッコミが、ツッコミが必要なんだよ僕らには……!」

「このSSがどうなってもいいってかぁ!?」

「変な方向に暴走するぞコラァ!?」

「わ、分かったよ……」

 

 しかしハジメ達に凄まれて、蹴りウサギはしぶしぶ同行を決意した。

 

「出発ぅ、進行ぉ!!」

 

 こうしてハジメ達は出発した。

 その間、彼らは暴れまくった。

 

「ところ10(テン)! ところ10(テン)!!」

「オリゴ10(トウ)! オリゴ10(トウ)!!」

「オレは後藤じゃない! オレは佐藤なんだ!!」

 

 力の限りはしゃぎまくった。そうして一体どれだけの時間が経ったのか分からないが、気付けばハジメ達は五十層に到着する。

 五十層をしばらく探索していると、変な空間に出くわした。

 高さ三メートル程の荘厳な両開きの扉の両脇に、二対の一つ目巨人の彫刻が壁に半分埋まっているのだ。

 天の助は扉を開けようと、押したり引いたりしているが欠片も動く気配を見せない。

 

「駄目だ、全く開かねえ。どうするハジメ?」

「力づくでぶち壊す!」

「強引ね……。でも素敵」

 

 ハジメがぶち壊す宣言をした後、懐からピアニカのような物を取り出した。

 

「何だそれ」

「王城の宝物庫から貰ってきた。その名も救世鈍器ピアニカソード!」

「何だその名前!?」

 

 蹴りウサギのツッコミを背に、ハジメは扉を何度もガンガンと音を響かせながら叩く。

 そして五分後

 

「駄目だった」

 

 扉は開かなかった。それどころか無傷だった。

 

「使えねえ!」

「ぐばっ!」

 

 首領パッチに腹パンされ、その場に倒れ伏すハジメ。

 それを無視して首領パッチはデュエルディスクでカードを発動する。

 

「マジックカード発動、サイクロン! これで扉を破壊するぜ!」

 

 カードの発動と同時に、強力なサイクロンが発生。そのまま扉を吹き飛ばした。

 

「サイクロンは魔法や罠を破壊するカード。扉も魔法で塞がっているなら破壊できる思ったが、大当たりだぜ!」

「パチ戯の奴、そこまで考えて……」

「ふぅん。それでこそオレのライバルだ。さあ決着をつけるぞ、パチ戯!」

「ああ、行くぜとこ馬!」

「「決闘(デュエル)!」」

「いきなり!?」

 

 首領パッチと天の助がデュエルを始めたと同時に、壁に埋まっていた一つ目巨人の像達が動き出す。その様はまるでファンタジーに出てくるサイクロプスだ。

 サイクロプス達は最初に壊れた扉を見て、次にハジメ達を見て、また扉を見る。見事な二度見だった。

 そして、お前何してくれてんの!? と言いたげな表情で再びハジメ達に向き直ろうとした所で

 

「納豆真拳奥義、納豆インチーズフォンジュ!!」

「プルプル真拳奥義、ところてんワンダーランド!!」

「ハジケ奥義、しめ鯖天国インロンドン!!」

 

 バカ三人の総攻撃を受け、サイクロプス達は何もできないままやられてしまった。

 

「どんな攻撃か全く分かんねえ!」

「納豆インチーズフォンジュをぶつけただけだよ」

「心をところてんワンダーランドにしただけさ」

「しめ鯖天国インロンドンに精神を転移させただけだぞ」

「詳細聞いても分かんねえ!!」

 

 蹴りウサギの疑問は解消されないまま、四人は扉の中に入る。しかし中は扉があった部分の外からの明かりを差し引いても、暗闇で何も見えない。

 

「前が見えねェ」

「首領パッチ、発光して」

「あいよ」

「お前光んの!?」

 

 ハジメの頼みで首領パッチが光ると、中が薄暗いながらも少し見えるようになった。

 中は、外にさっきまで合った扉に負けない程に荘厳で、艶やかな石造りでできていた。その中央には、巨大な正方形の石が置いてある。

 四人がその石に近づこうとすると

 

「血、血、血、血が欲しい」

 

 歌っている少女の声が聞こえた。

 

「歌怖っ!」

「マリィ!」

「ミカァ!」

 

 四人が声のする方へ向かうと、巨大な正方形に埋め込まれている少女の姿があった。

 上半身から下と両手が埋め込まれて、顔だけが出ている状態で長い金髪が垂れ下がっていた。見た目十二、三歳位の少女の紅顔の瞳が、四人を見つめている。

 長い間閉じ込められていたのか随分やつれているが、美しい少女であることがよく分かる。そんな少女に見つめられ、ハジメは照れたのか目を逸らした。

 

「おいおい、何照れてんだよ~」

「何よ何よ! この世界ハジメを誘惑する女が多すぎるのよ!!」

 

 照れているハジメをからかう天の助と、少女に嫉妬する首領パッチ。二人を無視してハジメは少女に話しかけた。

 

「えっと……。君はこんな所でどうして封印されてるの?」

「まさかこれは、封印されしエクゾディア!」

「絶対違えよ!」

「分かったぞ。こいつはカツオ神の末裔だ!」

「カツオ神って何だよ!?」

「チェストオオオオオオオ!!」

「「GUWA!」」

「ジャクソン風!?」

 

 話が進まないのでバカ二人を黙らせるハジメ。それを見て少女はポツリポツリと語り始めた。

 

「私、先祖返りの吸血鬼で凄い力持ってるの。だから国の皆の為に頑張ってたけど、ある日家臣の皆が、お前はもう必要ないって言って。おじ様がこれからは自分が王だって……。それでも良かったけど、私に凄い力があるから危険だって。それで殺せないから、封印するって……」

「それでここに?」

「うん」

「君はどこかの王族だったの?」

「そう」

「殺せないってのは?」

「勝手に治る。怪我してもすぐに治る。首落とされてもその内に治る」

「成程。君もハジケリストなんだな」

「それは知らない」

「どういう判断基準だよ!?」

「後、私は魔力を直接操れる。魔法陣もいらない」

「マジかよ……」

 

 最後の少女の言葉に驚く蹴りウサギ。

 この世界、トータスの魔法は体内の魔力を詠唱により魔法陣に注ぎこまなければ発動しない。それは人間族も魔人族も共通である。魔力を直接操る術を持つのは魔物だけである。

 それを魔物以外が持つという事は、ある種この世界の規格から外れるということだ。だから蹴りウサギは驚いていた。

 ちなみに、もっとこの世界の規格から外れた力を持つバカ三人は特に何も思ってなかった。

 

「ま、とりあえず助けてやるか」

「そうだな。こいつはところてん主義に目覚めそうだし」

 

 いつの間にか復活した首領パッチと天の助が、少女を助ける方向で話を進める。しかしその前に、と首領パッチが前振りしてから少女に向かって一言。

 

「おいガキ、助けるのはいいけどこのSSのヒロインはオレだからな。それを忘れるなよ」

「金平糖がヒロインなんて笑止千万。ヒロインの座は私の物」

「ああ!? やんのかこら!?」

「ヒロインはどっちがいいかハジメに決めてもらえばいい」

「それだ! よしハジメ。どっちがヒロインにふさわしいかはっきり言ってやれ!」

 

 少女と首領パッチに問い詰められるハジメ。その問いに彼は刹那の間もおかず即答した。

 

「そりゃこの子だよ」

「フッ……」

「……ドスケベ」

「!?」

 

 ハジメが少女を選んだせいで荒れる場。その状況を無視して天の助は魔法陣を書き、少女を封印している正方形に手を置き、魔力を流して魔法を発動した。

 

「錬成!」

 

 錬成を発動する天の助。しかし正方形は魔力に抵抗するかのように錬成を弾く。それでも天の助は諦めず錬成を続ける。

 しかし正方形の形を変える前に、天の助の魔力が尽きそうになる。このままでは魔力が尽き、天の助は無為に魔力を使うという結果に終わってしまうだろう。しかしその前に助けは来た。

 

「オラオラオラァ!」

「五月は節分だ――――っ!!」

 

 ハジメと首領パッチの二人が、納豆を天の助にぶちまけていた。これぞハジケ流魔力補充である。

 

「嫌がらせにしか見えねえ――――っ!?」

「おおおおおおおお――――――――――っ!!」

 

 魔力補充の甲斐あってか、少女を封印していた正方形は少しずつ融解していき、少女の枷を外していく。そして全ての枷が外れたと同時に、封印していた正方形は『ね』の形になっていた。

 

「ね!?」

「ねの野郎……!!」

 

 変形した立方体に怒りを燃やす天の助。

 その横では、枷から解放された少女が、服すら纏わず佇んでいる。それなりに膨らんだ胸部にハジメの目が行くより前に

 

「奥義、墨汁バルス!」

「目が、目がアアアアアア!!」

 

 首領パッチに視界を墨汁で塞がれ、悶絶していた。その隙に天の助が少女に、青地の生地にぬの文字が大量に書かれた、ぬのパジャマを着せた。

 やがて視力が戻ったハジメが、そのパジャマを見て思わず呟く。

 

「「パジャマ、クソダサい……」」

 

 奇しくもその呟きは目の前の少女と噛みあい、二人はどちらともなく握手をした。

 その直後、少女がハッと目を見開いてハジメ達に尋ねる。

 

「……あなたたち、名前は?」

 

 そういえば名乗って無かった、と気づいた三人は名乗る。

 

「僕は……Z団団長ハジメ・イツカだぞ……」

「パチ月・オーガス」

「私は天ギリス・ファリド」

「真面目に名乗って」

 

 ドパンドパンドパン

 

「「「だからよ、止まるんじゃねぇぞ……」」」

 

 少女が発砲して、バカ三人に希望の花を咲かせたところで、見かねた蹴りウサギが三人を紹介した。

 

「それで、君の名前は?」

 

 少女はハジメ、首領パッチ、天の助と大事な物を刻み込むかのように三人の名前を繰り返し呟く。そして、問いに答えようとしたが、思い直してハジメ達にお願いをした。

 

「……名前、付けて」

「付けてって……。名前忘れたの?」

「違う。もう前の名前はいらない。……新しい名前が欲しい」

「急にそう言われてもねえ……」

 

 裏切られた過去を忘れたいのか、心機一転したいのか、とにかく新しい名前を求める少女。ハジメ達はその気持ちを汲んで、考えに考えてそれぞれ新しい名前のアイデアを告げる。

 

「ユーエスエー」

「ニャク太郎」

「ハジケニウム」

「「「さあ好きなのを選べ!!」」」

「ロクな選択肢ねえ――――――!?」

 

 ハジケリスト達が出した名前に、ちょっと首をひねりながら考える少女。

 やがて少女は、自らの名を宣言した。

 

「私は、ユーエスエー・ニャクタロウ・ハジケニウム。普段は略してユエと名乗ることにする」

「まさかの総取り!?」

 

 選択肢とは提示された物以外もある、そんなことを思い知る蹴りウサギだった。



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奥義8 封印部屋の化物

ネタがすっと出てくれない……。


 首領パッチが気配に気付いたのは、偶然だった。

 

「皆、上だ――――――っ!!」

「何か言ったか?」

「僕のログには何もないな」

 

 首領パッチは叫んだと同時に、ユエと蹴りウサギを抱きかかえその場から跳んで離れる。その瞬間、上から四本のハサミと二本の尻尾、そして八本の足を持った、体長五メートル程の巨大なサソリの様な魔物が降ってきたのだ。首領パッチが跳ぶのを後一瞬遅らせていれば、ユエと蹴りウサギは押しつぶされていただろう。

 

「「ぎゃああああああああああああああ!!」」

 

 ちなみに聞いてなかったハジメと天の助は普通に潰されていた。

 

「何だこの重みは―――!? めちゃ痛え――――――っ!!」

「こ、この重み……。まさかあの時の!?」

 

 その言葉と共に、回想が始まった。

 

 


 

 

【サソリ売りのハジメ】

 

「何か始まった!?」

 

 それはハジメがまだ五歳の頃、雪の降る冬の日、彼はカゴいっぱいにある物を詰めて路上で売って生活していた。

 

『いりませんか……。誰かいりませんか……?』

 

 そのある物とは

 

『この毒性が非常に強いオブトサソリ、いりませんか?』

 

 デスストーカーとも呼ばれる、非常に毒性の強いサソリだった。

 

「物騒な物売ってんなオイ!?」

『いじめっ子や嫌な上司の暗殺にも使えますよ……』

「殺人勧めんな!!」

『ほう、それは本当かね?』

 

 ハジメが必死に宣伝していると、一人の紳士が話しかけてきた。

 

『はい。試しに誰か言ってみてください! 殺してきますから!!』

『ふむ、では○○社の宣伝部長を……』

 

 紳士から暗殺の依頼を受け、ハジメはその内容をサソリに伝えた。

 

『さあ行くんだオブトサソリ! 宣伝部長をこの世から消し去ってしまえ――っ!』

『断る。我は誇り高きデスストーカー。貴様などに従いはせぬ!』

 

 サソリは一瞬の隙を付き、ハジメの元から逃げ出した。それを見ていた紳士は携帯を取り出し、電話を掛けた。

 

『もしもし警察かね。今ここに殺し屋の子供が――』

『サソリを踊り食え!!』

 

 警察に通報しようとする紳士に、ハジメはカゴに残っているサソリをぶちまけ、その場を逃げ出した。

 これが後に語られる、ようこそサソリパーク事件である。

 

【サソリ売りのハジメ 終わり】

 

 


 

 

「間違いない、こいつはあの時逃げ出したサソリだ!」

「絶対違うだろ!?」

 

 現実に戻ってきた蹴りウサギは、ハジメの妄言にツッコむ。というかそもそも、この魔物はサソリっぽいだけで別にサソリじゃない。あえていうならサソリモドキだ。

 

「だったらこんな所で潰れてる場合じゃない!」

 

 ハジメは潰れている状況から、サソリモドキを持ち上げ

 

「どっせい!」

 

 天井へと放り投げる。その隙に二人は首領パッチ達の傍へ走った。

 

「さて、飼い主に噛みつくとどうなるか、その身にしっかり教えてあげないとね」

「ペットの不始末は飼い主が始末するものって、私は思う」

「僕!?」

「サソリの素揚げ、心太和えってのはどうだ? うまそうに見えねえか?」

「食いたくねえ……」

「ワンワンワーン!」

 

 そしてドシーン、とサソリモドキが着地したと同時に、五人はサソリモドキに向かって走り出した。

 それに対応して、サソリモドキは一本目の尻尾から紫色の液体を発射する。狙いはユエだ。

 

「ハジメガード」

「ぐわあああああああ!!」

 

 ユエはそれをハジメでガードして防ぐ。

 一方、攻撃をもろに受けたハジメは徐々に溶けていく。紫色の液体の正体は溶解液だったのだ。そして最後にはこうなった。

 ハジメスライムが あらわれた!

 

「モンスターになってる!?」

 

 ハジメスライムのこうげき ねばねばがため!

 ハジメスライムは サソリモドキのうごきをとめた!

 

「スライムであることを十全に利用してる!? 後なんでずっとドラ○エ風!?」

「よくやったぜハジメ!」

「後はオレ達に任せろ!」

 

 バカ二人は叫び、それぞれ首領パッチソードと魔剣大根ブレードを取り出す。そしてそれらに、青地に『ぬ』とびっしり書かれたハンカチ、ぬのハンカチを巻きつけた。

 

「これで首領パッチソードはぬンパッチソードに」

「魔剣大根ブレードはぬ剣大根ブレードに進化したぜ!」

「進化なのかそれ!?」

「「喰らえ――――――っ!!」」

 

 すると二人は互いに剣を振りかざし、サソリモドキに向かっていく。

 

「キィィィィィイイ!!」

 

 サソリモドキは四本のハサミを振り回し、抵抗するが二人には当たらない。

 そして

 

「「協力奥義、ハジケぬトラッシュ・クロス!!」」

「技名言い辛え!!」

 

 二人は全く同じタイミングで、サソリモドキに攻撃を叩きこむ。

 

「キィシャァァアア!!」

 

 その予想外に緻密な攻撃に悲鳴を上げ、思わずよろめくサソリモドキ。しかし決定的なダメージではないのか、すぐに調子を取り戻して溶解液を出す尻尾とは違う方から、今度は針が散弾の様に撃ちだされた。

 

「「グバッ!」」

 

 二人は吹き飛ばされ、ユエと蹴りウサギの元へ戻ってきた。

 

「使えねえじゃねえかぬのハンカチィ!!」

 

 そして首領パッチは、ビリビリとぬのハンカチを引きちぎり、破片にして投げ捨てる。

 

「オレのぬのハンカチィィィィイイイイイイ!!!」

 

 その破片を泣き叫びながら必死に集める天の助。そこにハジメも人型を取り戻してやってきた。

 

「さて、どうしよう。何か硬いよアレ」

「硬いなら柔らかくすればいい。つまり――」

「話し合おう。平和とは、凝り固まった怒りを解きほぐすことなのだから」

「いや無理だろ。相手サソリだぞ」

「ハジメ、首領パッチ、天の助。お願いがある」

 

 想像以上にサソリモドキが硬く、どうしようか頭を悩ませるバカ三人にユエが話しかける。

 

「何? 今忙しいんだけど」

「私を信じて、血を吸わせてほしい」

「血なんてケチ臭いことは言わねえ。オレごと食え!」

「いらない。血だけでいいの天の助」

「食えよ! オレはところてんなんだぞ!!」

「正直味以前に天の助分のところてんは多い」

「何だよ。たった四十五パック分なのに……」

「多い」

「そうか、じゃあ一口だけでいいからさ! なあ!?」

「……分かった」

 

 天の助の熱意、というかごり押しに負け、ユエは渋々天の助を一口食べる。

 

「ハッハッハー! どうだオレの味は!?」

「無理」

「無理!?」

 

 ユエのあんまりな評価に落ち込む天の助。そんな天の助に首領パッチが一言。

 

「天の助」

「何だよ首領パッチ。こんな無様なオレに何を言うってんだ」

「いやもうお前が不味いなんてネタ飽き飽きなんだよ」

「」

 

 首領パッチの言葉に凍りつく天の助。

 ショックのあまり天の助は懐から銃を取り出し、ドパァンと自分の頭を打ち抜いた。

 

「自殺した!?」

「天の助――――――っ!!」

 

 倒れ行く天の助に駆け寄るハジメ。ハジメはそのまま

 

「甘ったれるな――――――――――っ!!」

「ぎゃああああああああああああああああ!!」

 

 天の助をサソリモドキに蹴り飛ばした。その際天の助はサソリモドキの溶解液と散弾針を受けていたが、誰も気には留めなかった。

 

「次はオレかぁ~? オレの血は凄いぞ。なんせ首領パッチエキスだからな。身体に入れればオレと同じ思考になるんだぜ」

「死んでも嫌」

「!?」

「となると僕か」

「うん、頂戴」

 

 ユエはハジメの首筋に噛みつき、血を飲む。しばらく飲み、やがて一言ボソリと呟いた。

 

「味は一言でいうなら……」

「言うなら?」

「メロンソーダ」

「何で!?」

「「「どれどれ?」」」

 

 ユエの言葉が真実かどうか気になったバカ三人は、ハジメの血を注射器で抜きそれぞれ飲む。その結果は

 

「「「本当だ……、メロンソーダだ……」」」

「まあそれはともかく、ごちそうさま。これで――」

 

 そう言うとユエは、サソリモドキに向けて片手を伸ばす。同時に莫大な魔力が吹き上がり、黄金色が暗闇を薙ぎ払った。

 

「魔法が使える。“蒼天„」

 

 そしてユエが呟くと、サソリモドキの頭上に直径六メートル程の青白い炎の球体が出来上がる。直撃した訳でもないのにサソリモドキは悲鳴を上げ、離脱しようとする。

 だがユエはそれを許しはしない。青白い炎はユエの指先に合わせてサソリモドキを追尾し、ついに直撃した。

 

「HEEEEYYYY、あァァァんまりだァァァァァ!!」

「それどっちかと言うと燃やす奴の悲鳴じゃねえか!?」

 

 サソリモドキがかつてない絶叫を上げる。炎が命中した背中は焼けただれ、あと一息で倒せそうだ。

 

「ハジメ、とどめはお願い」

「任せて! 高熱で熱せられた後で急速に冷やすと崩れやすくなるって前にポ○スペで読んだことがある!」

「漫画の知識かよ」

「だから納豆真拳奥義、アイシクルフィールド!!」

 

 ハジメが奥義名を叫ぶ。そしてハジメは悟空のコスプレをしてから一言。

 

「ふ、布団が……ふっとんだ!」

「ブフッ」

 

 ハジメがダジャレを言うと、界王様のコスプレをしていた首領パッチと蹴りウサギ以外のこの部屋の全てが凍りついた。

 

「凍った――――!? 確かに寒かったけど!!」

「そして協力奥義、ダイヤモンドところてんダスト!」

 

 次にハジメは凍った天の助を殴り飛ばす。すると、凍ったところてんの結晶がダイヤモンドの散弾のようになりサソリモドキに襲い掛かる。

 最後には――

 

「キシュアアアアアアアアアアア!!」

 

 かろうじて声だけは出せるようになっていたサソリモドキが、断末魔を上げながら崩れ去った。

 

「勝った……!? ハジメのペットは、死んだ……!?」

「いや今思うとあれ多分僕が使ってたサソリじゃないと思うんだよね。ハサミとか足の数が違うし」

「だろうな!!」

 

 ユエとハジメは勝利の余韻に浸っていた。一方首領パッチと天の助は

 

「戦闘の勝利と新しい仲間を祝って」

「宴だ――――っ!!」

 

 地面に大量のチクワを植えながら、酒とツマミの準備をしていた。

 

「何でチクワ!?」

「豆食え豆!」

「生き血も必須」

「ちっ、しゃあねえな……」

 

 天の助は豆乳と生き血を追加で用意し、ハジメとユエにそれぞれ手渡す。首領パッチはコーラ、天の助はところてんドリンクを持ち、全員が歌舞伎の黒子の格好をし、頭にタケノコを乗せる。

 

「それじゃあ皆。乾杯!」

「「「かんぱーい!!」」」

「格好ヤベえ!!」

 

 ハジメが音頭を取って、宴は始まった。



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