とある復讐者の追憶 (ムリーヌ)
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復讐者

とある戦場。

 

そこは、グリフィンと鉄血の泥沼の激戦が未だに繰り広げられる血の戦線と呼ばれる血に濡れた場所だった。

 

そんな血の戦線の戦場の中心では、勢いよく大斧を振り回し、回りにいるグリフィンの戦術人形を切り飛ばし、散弾銃で吹き飛ばす女がいた。  

 

「ウオォォォォォォッ!!!」

 

女が怒号を挙げながら大斧を連続で振るい、グリフィンの戦術人形を切り飛ばす中、堪らずグリフィン部隊は撤退していく。

 

戦火が広がる戦場の中心・・・風に靡く黒い長髪、鋭く全てを恨んでいる様な紫の瞳、黒い軍服そして、グリフィンの指揮官に支給される血濡れた軍帽とコートを羽織る姿は正に鬼人、世界への復讐者その物だった。

 

その姿を遠くから監察する存在がいた。

 

「良いね・・・リベンジャー、なかなか良い腕をしているじゃないか。なぁ、代理人?」

 

その存在はそう問うと、側にあった画面に映るのはメイドの格好をしているが、事実上の鉄血の指揮官的存在、代理人その人だった。

 

《予想を上回る成果ですね。やはり、通常のリッパーとは違う・・・何かを経験したからこそ、今の体の性能に劣らない力を身に付けたのでしょう・・・引き続き、経過を見ていきましょう。帰還してくださいアルケミスト》

 

「了解。代理人」

 

アルケミストがそう答えると、画面から代理人は消えた。 

 

アルケミストは改めてリベンジャーの方を見ると、斧の先を突き出して部隊に命令していた。

 

「進めぇ!敵の陣形は削れたぞ!グリフィンの鉄グズは全て皆殺しだ!!!」

 

リベンジャーの命令はアルケミストにも届く程に大きく聞こえ、アルケミストは不適に笑いつつも少し恐れを抱く。

 

「強いとはいえ、自身の意思とは無関係に戦う傀儡人形・・・か。全く、代理人も考える事が恐ろしい事だな」

 

アルケミストはそう呟いて帰還の為に立ち去って行く。

 

そんな中、リベンジャーは止まらない。

 

向かって来ようが、逃げようが、命乞いしようが関係なく殺し回った。

 

増悪の宿したその瞳に当てられた心の弱い者は怯え、泣き崩れ、酷い時には失神する者もいる。

 

リベンジャーは恐ろしく、そして強く、強大な鉄血のハイエンドモデルとしてグリフィンの人形達はリベンジャーと当たる事を心の底から恐れる。

 

戦いが一方的になる中、リベンジャーは逃げるグリフィンに更に追撃を仕掛けようとした時、無線がリベンジャーの元に届く。

 

《その位にしなさいな、リベンジャー。もう十分に暴れ終えた筈ですよ?》

 

「代理人・・・!しかし、此処で逃がしては」

 

《これは"命令"です。良いですね》

 

代理人の命令と言って無線を切ると、リベンジャーは先程までの増悪を宿した殺気は消え去り、リベンジャーは我に帰った様に手に持つ大斧の刃を見る。

 

大斧は真っ赤になる程に血で染まっており、体にも返り血が大量に付着していた。

 

「あ、あぁ・・・また・・・私は・・・!」

 

リベンジャーは動揺しきり、手に持っていた大斧と散弾銃を落として頭を抱えながら膝をついた。

 

「私は・・・私はまた・・・もう、嫌だ・・・殺したくない・・・殺したく、ない・・・助けて・・・アウスト・・・」

 

リベンジャーはそのまま泣き崩れ、暫く動く事はなかった。



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ようこそ、地獄へ

グリフィン視点が多めです


血の戦線、鉄血の基地。

 

そこでは、簡素な椅子に腰掛けて各地の戦線から送られて来る報告書に目を通すリベンジャーとビクビクとしながら作業する鉄血兵がいた。

 

「はぁ・・・」

 

リベンジャーが溜め息をついた時、回りの鉄血兵はビクッと体を震わせた。

 

「また、グリフィンが余計な増援を送り込んだ様だ・・・止めとけば良い物を」

 

「し、しかし此処はグリフィンととっては重要な要。執拗に狙うのは当たり前かと」  

 

リベンジャーは意見した鉄血兵を見ると、睨まれたと思ったのか酷く怯えた顔で硬直した。

 

血の戦線・・・SO10地区はグリフィンとそれ以外の勢力にはどうしても喉から手が出るほどに欲しがられる要所だった。

 

SO10地区はこの世界には珍しい・・・いや、もはやもう無いとすら言える環境汚染0の土地で、生存圏の減少が激しい人類にとっては希少すぎる土地だった。

 

故にグリフィンは意地でもSO10地区を攻め落とそうと攻めて来るのだ。

 

その為、グリフィンの攻勢部隊が来ればリベンジャーや鉄血軍の猛攻が待ち受けている為、戦いに決着が着かず、泥沼の激戦区となった。

 

「確かに、な・・・グリフィンにとっては欲しいだろう。だが・・・我々が此処を守る以上は、奪わせはしないさ」

 

リベンジャーはそう言って報告書に再び目を通す。

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~グリフィン視点~

 

血の戦線、第四戦線。

 

そこは、都市街から離れた平原を主に両軍が塹壕を張り巡らせ、野戦砲と曲射砲、機関銃そして無数の対空兵器を設置した突破するのも留まるのも危険な血の戦線の激戦地の一つだった。

 

野戦砲と曲射砲の砲撃が両軍が鳴り続ける中、互いに睨み合っていた。

 

「何なのよ・・・此処は・・・!」

 

グリフィンの戦術人形WA2000は恐怖に震えていた。

 

WA2000 が此処に派遣されてからと言う物の昼夜問わずの砲撃と時より発砲してくる狙撃主に、精神が磨り減らされていた。

 

此処のWA2000 は製造されてからまだ間もなく、ある程度の訓練を受けてから放り込まれた。

 

WA2000 は最初こそ、この血の戦線と呼ばれる地獄を知らなかった。

 

自分がこの地獄を終わらせると考えていざ派遣されると、血の戦線の環境に思い知らされた。

 

砲撃が当たってバラバラになったり、手足を失った同僚がいた。

 

頭を撃たれた同僚もいた。

 

突撃を命じられてそのまま帰らなかった同僚もいた。

 

二人で組んで戦っていれば一人が必ず死んだりする。

 

正に地獄、血塗られた戦場。

 

WA2000 が血の戦線に配属され、そこの指揮官に哀れそうに見られながらこう言われた。

 

運が悪かったな・・・ようこそ、地獄へと。

 

「くそ!くそ!くそぉ!!!」

 

WA2000 はやけくそ気味に撃ちまくっていた時、一発の砲弾が飛来し、WA2000 の近くで被弾して爆発した。

 

WA2000 は吹き飛びはしたが、奇跡的に無傷で済み、塹壕に溜まった冷たい泥水が口に入って咳き込みながら吐き出しただけだった。

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

 

「何をへばっていらっしゃるの?」

 

WA2000 は息を整えていると、目の前に黒い軍帽とコートを羽織る白い髪の少女が立っていた。

 

「Kar98k・・・!」

 

WA2000 は目の前に現れたKar98kに驚いていると、Kar98kは突然、ライフルを構えると、発砲した。

 

WA2000 が発砲された方を見た瞬間、鉄血兵が血を流して倒れ込んできた。

 

「ふふ、哀れな雑兵ですこと・・・WA2000 !鉄血の突撃ですわよ!迎撃の用意をしないとシャベルで殴りますわよ!」

 

「・・・わ、分かってるわよ!やってやる・・・やってやるわよ!幾らだって掛かって来なさいよ!鉄血のボロ人形ども!!!」

 

二人が銃を構えた時、大勢の鉄血兵が突撃してくる様子が嫌でも見える中、発砲し続けた。  

 

地獄の戦場の中、戦いの勝敗は行方知れずだ。




・血の戦線

SO10地区と呼ばれる地区全体の戦場の通称。

環境汚染の無い奇跡の土地で、人類が喉から手が出るほどに欲しがられているが、戦場と化した今、その面影は全く見えない。

各地に激戦地があり、塹壕戦や都市戦等を中心に展開されている。
 
毎回、犠牲者が大多数を占める戦場でもあり、犠牲者の分だけ減れば人員が増やされ、川が真っ赤かな血の川となる程に死人を出している。



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元と今のリッパー

血の戦線にある市街。

 

そこでは、グリフィンの戦術人形達が決死の覚悟でリベンジャーに乱射していた。

 

「何でこんな所でリベンジャーと当たるのよ!」

 

「知らないわよ!とにかく、撃って!撃ちまくるのよ!」

 

グリフィンの戦術人形達はそれぞれの名前に由来する銃を乱射し続けるが、リベンジャーは弾道が見えているとばかりに器用に避けて接近すると、大斧を一人に向けて振り下ろした。

 

大斧をまともにくらった戦術人形は痛みによる悲鳴も挙げられないまま即死し、それを見た他の戦術人形達は青ざめ、自身が殺られまいと更に激しく抵抗する。

 

しかし、リベンジャーはその抵抗を嘲笑う様に避けて散弾銃を突き付ける。

 

「そんなへっぴり腰で私を殺せると思っているのか?舐められたものだな・・・」

 

リベンジャーはそう言うと、散弾銃の引き金を引き、戦術人形の頭を吹き飛ばし、回りにいた戦術人形も大斧で斬り殺した。

 

リベンジャーは戦いを終えると、自身の意識を取り戻し、回りを見た後、溜め息をついた。

 

慣れた事とは言え、強制的な戦いはやはり好きにはなれらかった。

 

「また、か・・・いつまで戦えばいいのだろうな・・・」

 

代理人からの戦闘命令が来ればリベンジャーは意識を失い、別の自分がまるで憎しみを宿してグリフィンの戦術人形達を殺す。

 

グリフィンからは恐れと憎悪、鉄血からは恐怖と処断者の象徴となりつつある。

 

リベンジャーはまた溜め息をついた時、後ろから足音が聞こえ、リベンジャーは素早く散弾銃を向けた。 

 

今は強制的に戦闘を行う身とはいえ、腐ってもハイエンドモデルであるリベンジャーの性能は変わらない為、素早い対応が出来た。

 

「ひゃあ!う、撃たないでください!リベンジャー様!」   

 

「・・・味方か」

 

リベンジャーが散弾銃を向けた先には一体のリッパーが銃をぬいぐるみの様に抱えて腰を抜かしていた。  

 

リベンジャーは味方だと分かると散弾銃を下ろした。

 

「貴様、一人で何をしている?まさか、敵前逃亡の最中だと言う訳ではないだろうな?」

 

「め、滅相もございません!ぶ、部隊とはぐれて・・・それでグリフィンと一人で鉢合わせして死ぬかと思ったら貴方様が助けて下さって・・・ほ、本当に・・・死ぬかと・・・」

 

リッパーはそう言って泣き出してしまい、これにはリベンジャーもリッパーが一人でいる事を問い詰めるのは悪いと思った。

 

「(助けた覚えはないし、グリフィンも私に反応していたとおもうのだがな・・・)」

 

リベンジャーはそう考えるも、味方の一人は助けられたのだから良しとし、泣きじゃくるリッパーの前に屈む。

 

「泣くな。お前も鉄血の兵士なら泣き顔なんて去らすんじゃない」

 

「好きで・・・鉄血の兵士になりたかった訳じゃないんですよ・・・うぅ・・・」  

 

「!?。貴様・・・!」  

 

リベンジャーはリッパーの失言に怒鳴り声を挙げそうになったが、リベンジャーは昔の自分を思い出した。

 

リベンジャー自身、リッパーとして鉄血の兵士となり、好きで兵士になりたかった訳でもないのに銃の撃ち方や訓練の日々、紛争地帯への派遣に、グリフィンとの戦争。

 

望まない戦いばかりに追われ、何時かは戦争とは無縁の生活をしたいと夢見た自身の記憶にリベンジャーは怒りを収めてリッパーを優しく撫でる。

 

「へ・・・?」

 

「・・・今のは聞かなかった事にしてやる。次の失言は無いと思え」

 

「・・・!?。も、申し訳ありません!私はべ、べべ、別に鉄血を非難している訳では!」  

 

「だから何も聞いていないと言っているだろ?本当に・・・慌てん坊な奴だ」

 

リベンジャーはそう言って微笑むと立ち上がり、リッパーを立たせた。

 

「さぁ、行くぞ。ぐずぐずしているとまたグリフィンと戦闘になるからな」

 

「は、はい!」

 

リベンジャーとリッパーは戦場を抜けるべく、歩いて行く。

 

その姿を遠くから見ている四人の少女がいた。

 

「あれがリベンジャー?」

 

「うん!ヘリアンから貰った情報だと間違いないよ」

 

「とんでもない化け物ね・・・銃弾を避ける、大斧で一刀両断、散弾銃で吹き飛ばす。あんなのを調査しないといけないの?」

 

「うぅ・・・鉄臭いし、焼け焦げた匂いがキツくて眠れない・・・」

 

それぞれリベンジャーの事を言うと、茶髪のサイドテールで左目に傷を着けた少女が双眼鏡が下ろす。

 

「・・・まぁ、受けた以上は仕事をこなさないとね。」

 

「そうしないと信用問題になっちゃうもんね。45姉」

 

話終えた四人は素早く、悟られない様にリベンジャーの後を着けていく。



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監視者

リベンジャーとリッパーは鉄血の基地への帰還の為に市街を歩いた。

 

道中、携行ミサイルの弾道や流れ弾が飛んできたり、進軍するグリフィン部隊が遠くから見えたりと慌ただしい戦場の光景が嫌でも目に焼き付いた。

 

「相変わらず慌ただしい物だ」

 

「この状況で落ち着いていられるんですか!?流れ弾が飛んできたり、敵が見えたりしてますよ!?」

 

「落ち着くも何も此処を戦場とする指揮官としてなら慣れなくてはな。それにずっと居てれば慣れる物だが・・・お前は派遣されてまもないのか?動きがまるでなっていない」

 

「うぅ・・・実は製造されてすぐにエクスキューショナー様の部隊に派遣されたのですが・・・訓練で転けた拍子に誤発してしまって・・・」  

 

「まさか・・・エクスキューショナーを殺してないよな?」

 

リベンジャーはこのリッパーの誤発で死亡と言う名の破壊をしてないか不安になったが、リッパーは首を横に振って否定した後、話を続ける。

 

「幸い当たりはしなかったのですが・・・誤発した銃の弾が資材に当たって連動する様に物が落ちたり倒れたりして最終的に鉄骨が倒れてエクスキューショナー様の頭に思いっきり当たってしまって・・・それを気にすぐに左遷させられました」

 

「そ、そうか・・・それは・・・痛そうだな。・・・ふふ

 

リベンジャーは何とも間抜けなエクスキューショナーの珍事にリベンジャーは笑ってしまう。  

 

普通なら鉄骨が倒れたら人間は死ぬが、戦術人形ましてやハイエンドモデルが大量に落ちてきたりしない限り、倒れた鉄骨程度では死んだり大怪我をしない事を知っているからこそ笑いそうになった。

 

「ふふふ・・・ふっははははは!本当に傑作な笑い話だ!流石に笑いを堪えきれんぞ!」

 

「ちょ!?此処はまだ戦場のど真ん中ですよ!そんなに大声を出したら!」

 

「ふふふ・・・すまない。まぁ、不幸だったな。だがそれは別として此処に来た以上は死に物狂いで戦って貰う。前みたいな失言も見逃さない・・・心してこの戦場で戦う様にな」

 

「は、はい!」

 

笑っていたリベンジャーはすぐに威厳のある言葉でリッパーにそう言うと、再び行きだそうとした。

 

だが、リベンジャーは不意に止まり、後ろを振り返る。

 

「ど、どうしましたか?」

 

リッパーは不安そうにリベンジャーにそう問うと、リベンジャーは後ろを見ながら問いに答える。

 

「・・・誰か、いるな・・・数は最低でも四人。恐らくグリフィンだろうな」

 

「ぐ、グリフィン!?」 

 

リッパーはそれを聞いて辺りを見渡すも、空虚だけが支配する廃ビルばかりの光景した見えず、リッパーは何処にいるのか分からずにいた。

 

「お前の性能では奴等は見破れん・・・むしろ、私も気付けたのは幸いだと思える程だ。・・・相手はかなり手練れ、戦うのは少々キツイ物になるかもな」

 

リベンジャーはそう言いながらも前の方を向いて歩き出す。

 

一方で、リベンジャーの睨んでいた場所ではリベンジャーを見張る少女達がひそんでいた。

 

「何なのよ彼奴・・・!彼処からどれだけ離れていると思っているのよ・・・!」

 

少女達の潜む場所とリベンジャー達がいた場所の距離は有に100メートル以上は離れており、しかも建物内に隠れ、念入りにカモフラージュもしており、流石に気配と感だけでは悟られる筈がなかった筈だった。

 

「探知系の機能でもあるのかしら?だとしたら最初からバレてるでしょうし、ましてや勘なんて事は・・・」 

 

気の強そうな少女がそう言い掛けた時、突然、窓ガラスが割れて何者かが突入してきた。

 

少女達は動じずに銃を構えて何者かを見ると、そこには先程まで遠くにいたリベンジャーと脇に抱えられて持たれているリッパーがいた。

 

「やはりいたか、グリフィン。私を付け回して何をしている?」 

 

「あ、あの・・・私を連れてくる意味は?」

 

リッパーが不服そうにそう言うもリベンジャーは気にせず、右手に持つ大斧を向けた。

 

「理由次第では、生かす訳にはいかん・・・何故、私を付けた?答えろ」

 

リベンジャーは威圧感のある声でそう聞くと、少女達はたじろぎつつも、身構えている。

 

その姿にリベンジャーは感心した表情で、大斧を肩に乗せる。

 

「ほぉ、私を前にして怯える姿を晒さないとはな・・・」

 

「私達はそれなりの修羅場を潜り抜けて来たのよ。この位の威圧なんて慣れっこよ」 

 

「そうか・・・なかなか良い兵士だよお前達は。それで・・・目的は私の調査か何かかな?」

 

少女達は図星を突かれたと顔を歪めると、リベンジャーは自身の調査の為に偵察されていたと確信した。

 

「あまり事を私の回りで起こすな・・・例え調査でも、こそこそと、着けられるのはどうにも気色が悪くて好かん。もう、付け回すな。さもなければ・・・皆殺しだ」

 

リベンジャーの警告とも取れる言葉に少女達はまるで心臓を掴まれた様な感覚を受け、汗が止まらなかった。

 

「さて、私はもう疲れたんだ。警告は済ませた・・・最後に聞きたい。お前達は何者だ?普通のグリフィンの部隊ではなさそうだ」 

 

「404小隊・・・私は、UMP45。404小隊の隊長をしてるわ・・・」

  

45は何故かリベンジャーにそう答えてしまう。

 

隠された恐怖からか、または所属を素直に言えば危険を回避できる可能性を45の持つ演算処理能力が叩き出したのか本人でさえ分からなかった。

 

「404小隊・・・ふふ、貴様らは対した者だ。誰一人、恐怖を感じても戦意は落ちなかった・・・お前達も、私を殺せる可能性を持っているだろうな」

 

リベンジャーはそう言ってリッパーを抱えて立ち去った。

 

~404小隊 視点~

 

リベンジャーが立ち去った後、404小隊はへたり込んだ。

 

404小隊が見てきたハイエンドモデルの中ではリベンジャーは断トツで危険な存在だと警鈴が鳴らされたのだ。

 

「・・・9、416、G11。皆、大丈夫?」

 

45は冷や汗をかきながら仲間の安否を確認すると、404小隊の面々は疲れきった顔で答える。

 

「うん、何とか・・・」

 

「・・・今回ばかりは今日が命日になるかと思ったわよ」

 

「もう帰りたい・・・」

 

9達はそう言うと、45も疲れたのか溜め息をつきつつも、無線を手にした。

 

「ヘリアン、応答をお願い。こちら404小隊の45よ」

 

《45か。調査の成果はあったのか?》

 

「・・・リベンジャーと接触したわ。彼奴、私達が遠くから見ていたのに勘づいて・・・どうやったのか、すぐに此方に来た」

 

《何だと!?部隊に損害は・・・?》

 

「幸い、リベンジャーには交戦意思は無かったから全員無事、少し疲れたって所かしら。でも・・・もう流石に彼奴を追って調査なんて無理だと思う」

 

《・・・分かった。お前達がそこまで言う程だ。今回の成果は、リベンジャーには異様な性能を秘めているとだけでも成果は成果だ。大抵は死んで帰ってくる人形しか奴の力を見ていないから貴重な情報だ》

 

45はそれを聞いて少し寒気を感じた。  

 

もし、リベンジャーと交戦したら一体どんな結果が待っていたのか。

 

全滅、勝利の上の大損害、被害を出しつつの撤退戦・・・何れも悪い考えしか出ず、45は考えるのを止めた。 

 

「分かったわ。それじゃあ、また後で」

 

45はそう言って無線を切った。



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血を流せ、勝利の為に ~前編~

リベンジャーが404小隊と接触し、見逃してから三日後、リベンジャーは基地司令部にある通信モニターの前に立って映っている人物に敬礼していた。

 

「リベンジャー、参上した。今回はどんな要件だ・・・代理人?」

 

画面に映る人物、代理人は無表情でリベンジャーを見据えており、リベンジャーは代理人の事をとても嫌いだった。

 

リベンジャーを生かし、望まない戦いをやらせ、何を考えているのか分からない底の知れない・・・リベンジャーにとっては復讐としてアウストの仇を取ろうと思わなくても、代理人に対して自分を生かし、戦争に利用する事に憎悪を燃やしていた。

 

《今回、貴方にはグリフィンの物資輸送経路を叩いて貰います。グリフィンは血の戦線を越えて他の戦線へ弾薬、食料を運び込んでいると情報を掴みました。この輸送経路を叩き、補給路の一部を遮断しなさい》

 

代理人の言葉が終わると同時に画面に目標となる輸送経路の地点が表示された。

 

「ほぉ・・・私も気付かなかったな。まさか、この戦線を通って物資を運び込むとはな。それで、代理人・・・勿論」

 

《拒否権は認めません。拒否しようとするならば・・・また、命令を執行させて貰うまでです》

 

リベンジャーは言葉を遮る様に代理人がそう言うと、リベンジャーは不機嫌な顔で代理人を睨む。

 

「・・・分かった。輸送経路を叩かせて貰おう。どのみち拒否権はないからな」

 

《理解が早くて助かります。では、作戦を速やかに練り、叩きなさい。良いですね、リベンジャー?》

 

「・・・了解」

 

代理人はそう言って通信を終えると、リベンジャーは溜め息をついた。

 

もう慣れた事だと自身に言い聞かせ、輸送経路遮断の為の準備に入るべく、歩いて行く。

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都市街の荒れた道に数台の輸送車と、護衛に当たるグリフィンの人形達が油断なく歩いていた。

 

その光景を遠くから双眼鏡で見るリベンジャーは、どうしてやろうかと思考を凝らしている最中、ふと近くにいたリッパーを見た。

 

リッパーは銃を手に震えており、どうみても戦場の空気に怯えていた。

 

「リッパー。震えるんじゃない・・・兵士としての役目を果たす事を考えるんだ」

 

「・・・し、しかし・・・相手だって私達と同じ様に生きているんよ?立場は違っても同じ人形、笑いあって暮らしていた隣人・・・なのに、どうしてこんな戦争が・・・」

 

「理由なんてあれば幾らでも戦争が出来る。例え、親しくとも・・・戦争の相手となれば容赦なく殺し会う・・・早く覚悟を決めておけ。この先、死地だぞ」

 

リベンジャーがそう言って双眼鏡を再び覗くと、一人の人形が目に入る。

 

その人形は黒い軍帽にコートを羽織り、白く長い髪が特徴的なライフルを持つ人形だった。

 

リベンジャーはその人形を見て手を震わせた。

 

「まさか・・・奴は・・・!」 

 

リベンジャーがそう呟いた時、双眼鏡で覗いていた人形が不意にリベンジャーの方を見つめ始め、不適な笑みを浮かべた。

 

リベンジャーはその姿を見て見つかったのだとすぐに察し、命令を出す。

 

「全部隊に告げる!敵は既に此方を見つけている!速やかに戦闘体制に入り、輸送部隊を撃破せよ!」

 

リベンジャーの命令を受けた鉄血兵達は慌てつつも素早い対応で戦闘体制に入り、待ち構えた。

 

 



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血を流せ、勝利の為に ~中編~

リベンジャー率いる鉄血部隊とグリフィン輸送部隊は互いに認識後、戦闘を開始した。

 

鉄血兵達はスナイパーライフルを所持し、使いこなすイェーガーと攻撃力と素早さは無いが、鉄壁の壁役として味方を守るガードのコンボは凄まじく、またリッパーの数と素早さを生かした戦闘でグリフィンを押していく。

 

「このまま押し続けろ!敵に隙が出来しだい突撃を決行する!」

 

リベンジャーがそう指示した時、リベンジャーの頬を掠める様に銃弾が飛び、リベンジャーは久しく感じられる冷や汗の伝る感触を感じた。

 

銃弾の飛んでき位置にはライフルを構えて不気味に笑う女で、リベンジャーは舌打ちしつつ戦闘体勢に入った。

 

「行くぞ!ブルート隊、私に続けぇ!!!」

 

リベンジャーの怒号の如き命令を受けたブルート達はリベンジャーと共に突撃していく。

 

リベンジャーは放たれる銃弾を避けつつ、近接戦に特化したブルート達と共に戦闘の間合いに入ると、大斧を戦術人形の一体振るった。

 

大斧をまともに食らった戦術人形は体が両断されて体が分かれながら倒れた。

 

「M1911!!!」

 

両断された人形の名前を叫ぶ長髪の気の強そうな人形で、リベンジャーの次の狙いはその人形に向いた。

 

人形はリベンジャーを狙いつつ乱射するも、リベンジャーの異様な身体能力によって避けられ、遂に接近を許した。

 

「嘘・・・いや・・・死にたくない・・・!」

 

「・・・終わりだ」

 

リベンジャーは絶望にうちしがれる人形に向けて大斧を振るおうとした時、リベンジャーの肩を撃ち抜く様に銃弾が飛来した。

 

銃弾はリベンジャーの装甲を貫けず、止まり、リベンジャーは痛みに耐えながら撃たれた方向を見ると、ライフルを構えた白髪の人形が立っていた。

 

「徹甲弾で貫けないなんて・・・何て頑丈なハイエンドモデルなんでしょう・・・ね」

 

「Kar98k・・・!」

 

「あら?やはり私の堪は間違っていなかったと言う事ですね・・・リベンジャー・・・いえ、リッパー」

 

Kar98k はそう不適に笑いつつライフルを素早く撃つ準備をし、臨戦体勢に入った。

 

「WA2000。貴方は離れてなさい・・・この子は・・・私の獲物ですわ」

 

Kar98k の言葉をWA2000 が聞いた瞬間、背筋を凍らせて固まった。

 

WA2000 は固まっていると、リベンジャーは無表情でKar98kを睨む。

 

「成る程・・・一騎討ちでもしたいと?」

 

「短く、分かりやすく言えば・・・そうなりますわね」

 

Kar98k がそう言うと、リベンジャーは大斧と散弾銃を手に身構えると、Kar98k と対峙する。

 

「容赦はしない・・・アウストの為にも、自分の為にも」

 

「覚悟はよろしくて?・・・リベンジャー」

 

二人の強者の殺気は敵味方問わず、震え上がらせた。

 

リベンジャーは無慈悲で容赦の無い鉄血の戦士。

 

Kar98k は冷酷で敵を貫く事に快楽を見いだす狙撃主。

 

どちらも狂った様な経歴を持つ者として、両陣営の兵士達はどちらに勝敗が行くかは分からなかった。



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血を流せ、勝利の為に ~後編~

リベンジャーとKar98k の二人が対峙する中、近くにいる物は動きを止め、成り行きを見守っていた。

 

血の戦線において最も戦功を挙げ続けるグリフィンと鉄血の強者である二人の威圧感は敵味方関係なく恐怖に駆らせる。

 

そんな二人は構いなく、互いを威圧しあい戦闘を開始した。

 

最初に仕掛けたのはリベンジャーで、素早く散弾銃を構えたが、Kar98kが咄嗟にシャベルを手に取り、横凪ぎに振るうと、リベンジャーの散弾銃は照準を外し、検討違いの所に銃弾が散った。

 

Kar98kはリベンジャーの散弾銃を弾いて隙を作ると、ライフルを片手で持ち、中腰で構えると、リベンジャーの顔めがけて撃ち込み、リベンジャーは頭を素早くずらして被弾を回避した。

 

リベンジャーは大斧を素早く振い、Kar98k は素早く避けて行くと、再びライフルを発砲、今度はリベンジャーの脇腹に当たるが、リベンジャーは銃弾を物ともせず、Kar98k に突進し、壁に叩きつけ、散弾銃を発砲したがKar98k は再び避けた。

 

「ふふふ・・・随分と鈍いこと」

 

「すばしっこい奴だ。だが、次は・・・殺る」

 

「あらあら血気盛んな子ね」

 

Kar98k はそう言うと、コートの下から短刀を抜くと、ライフルの先端に取り付けた。

 

所謂銃剣で、銃の射程と槍の様なリーチを持つ近接武器となったのだ。 

 

「意外だな。狙撃に特化したお前が接近戦をするのか?」

 

「狙撃を行う者が常に狙撃だけをするとは思わない事ですわね。狙撃主たる者・・・時として接近戦もこなせてこそ生き残れるのですから」

 

Kar98k はそう言ってライフルを愛しそうに撫でた後、素早く銃剣を突き出し、リベンジャーに襲い掛かり、リベンジャーは銃剣を避けると大斧で反撃し、Kar98k は大斧を上手く避けるとリベンジャーの腹に銃剣を勢いよく、深く突き刺した。

 

「がはッ!」

 

リベンジャーは銃剣の鋭い突きに根絶し、大斧と散弾銃を力無く落としてしまう。

 

それを見たKar98k は不適に笑った瞬間、背中に激痛を感じ体勢を崩した。

 

「ぐッ・・・まさか、まだ武器を持っているなんて・・・」

 

「・・・常に用意はしておく物だ。このナイフの様に」

 

リベンジャーは出血する腹を押さえながら手に持つ血濡れのナイフをKar98k に見せた。

 

「ふふ、貴方・・・戦いが嫌いな癖に猪口才な事をしているのですね」

 

「これも経験だ・・・メインの武器を失った時に得た」

 

リベンジャーはそう言って力強く立ち、Kar98k も背中の傷の痛みに耐えながら立ち上がる。

 

「・・・お前だけは殺す。私の因縁を一つ消す為に、アウストの為に」

 

「やれる物ならやって下さいな・・・容赦は致しませんわよ?」

 

「望む所だ!!!」

 

リベンジャーはそう言ってナイフ片手に向かおうとした時、耳に着けてある連絡用の無線がなる。

 

《そこまでですリベンジャー。撤退しなさい》

 

「代理人!?」

 

《輸送部隊は撤退しました。もうそこに用はありません・・・速やかに撤退しなさい》

 

「・・・しかし」

 

《これは命令です。良いですね・・・》

 

代理人はそう強めに言って無線を切ると、リベンジャーは悔しそうにKar98k を睨み付け、Kar98k は不適に笑う。

 

「あら、貴方の上司かしら?内容は・・・撤退でしたっけ?」

 

「・・・そうだ。貴様を殺すのはまだ先らしい」

 

「一々、上司の命令なんて聞かなくても良いのでは?」

 

「命令だからな。私は・・・ただ逆らえないだけだ」

 

リベンジャーはそう言ってナイフをしまい、大斧と散弾銃を手にして立ち去る。



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片隅の記憶

リベンシャーは非常に不機嫌だった。

 

Kar98k との戦いを代理人に邪魔され、決着を着けられずに終わり、過去との因縁を絶つ事が出来なかった。

 

その為、リベンシャーは不機嫌で回りに殺気を漏らす程にイライラし、鉄血兵達を怯えさせてしまっていた。

 

リベンシャーは苛立ちを覚えながら戦闘の報告書を纏めていたが、溜め息をつき、書類仕事をしていた机から立ち上がると扉の元に歩き出す。

 

「ど、何処へ?」

 

「視察だ。たまには回りの状況を自ら確認しなければならんし、気分転換も必要だ」

 

リベンシャーはそう言って執務室を後にし、リベンシャーのいなくなった執務室に残された鉄血兵達は安堵する。

________________

__________

_____

 

リベンシャーは外に出て気分転換の次いでに視察を行っていた。

 

リベンシャーは歩きながら回りを見ると、物資を運んだり、銃の整備をしている鉄血兵達をチラホラと見かけ、リベンシャーの姿を見た鉄血兵達は慌てて敬礼し、リベンシャーは敬礼に答えて敬礼を返しつつ歩いていると、訓練場に行き着いた。

 

そこでは鉄血兵達が頻繁に訓練を行っているが、今回はたった一人で訓練をするリッパーしかいなかった。

 

「励んでいるか?」

 

「り、リベンシャー様!?え、えーと」

 

リッパーは慌てて敬礼しようとするがリベンシャーに制される。

 

リベンシャーはリッパーが撃っていた的を見ると、銃弾は見事に大きく外している。

 

「当たらないのか?」

 

「えーと・・・はい。上手く当てられなくて」

 

リッパーは溜め息をつくと、リベンシャーは軽く苦笑いした。

 

「しょうがない奴だな。仕方ない・・・そんな理由で死なれても困るから私が訓練を着けてやろう」

 

「えッ!?し、しかし・・・忙しいのでは?」

 

「生憎、視察と言っただけの散歩みたいな物だよ。嫌か?」

 

「い、いえ!喜んで訓練を着けさせて頂きます!」

 

リベンシャーがリッパーの言葉に微笑むと、頭にズキリとした感覚の痛みがリベンシャーに走った。

 

リベンシャーは額を少し押さえた後、少し時間を置いてまた痛みが無いか確かめたが痛みは来ず、気のせいだとリベンシャーは考え、リッパーの指導を始める。

 

「さて・・・先ずは構えだ。お前の場合は銃の反動を無理矢理抑えようとする癖がある。反動を無理に抑えようとするな、反動を逃がす様に撃って見ろ」

  

リベンシャーに促されたリッパーは言われた通り反動を逃がす様に撃つと、上手く銃弾が飛ぶ。     

 

「そうだ。やれば出来るじゃないか」

 

『そうです。やれば出来るじゃないですか』

 

リベンシャーはまた頭に痛みが走る感覚を受けると同時に、リッパーに言った様な似た様な言葉が響いた。

 

リベンシャーは額を抑え、痛みを押さえていると一つの映像が流れる。

 

それは、リベンシャーがリッパーとして間もない頃、訓練場で銃の訓練をしていた時の物だった。

 

そこではリベンシャーと後ろでリベンシャーと同じようにリッパーに教えている様に近くに誰かがリベンシャーに銃の撃ち方を教える者がいた。

 

『銃は扱いによって様々な力を発揮します。その力の引き出し方は貴方次第・・・貴方は筋が良いですし、きっと上手く生き残っていけますよ』

 

『はい!×××様!』 

 

リベンシャーは肝心な名前と姿が全く分からない事に不振を覚えた。

 

まるで見られたくない、聞かれたくないと言わんばかりに姿がボヤけ、名前にノイズが走った聞こえないのだ。

   

リベンシャーは言ったいなんなのだと考えていると、リッパーが此方を見ている事に気付いた。

 

「あ、あの・・・大丈夫・・・ですか?」

 

「あ、あぁ・・・大丈夫だ。それよりも、お前は筋が良いな。きっと、この先の戦いにも生き残っていけるぞ」

 

「あ、ありがとうございます!リベンシャー様!」

 

リベンシャーは微笑む中、記憶の中にいる人物が誰なのか分からない事に不振を覚えつつ戻って行った。



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グリフィン視点 狂った戦場

SO10地区のグリフィンの基地。

 

SO10 地区の基地は他の基地と外見は同じであるが、塹壕や土嚢、有刺鉄線のバリケード、機関銃に対空兵器等と簡素ながらも厳重な防衛線が敷かれていた。

 

その基地内では慌ただしく動き回る人形達がいた。

 

「負傷者が来たわよ!空きはあるの!」

 

「満員よ!応急措置で対応するしかないわ!」

 

「鉄血が侵攻してきた!出撃するよ!」

 

人形達はそれぞれの役目を背負って駆け回る中、WA2000は自分に与えられた任務を終えて報告の為に指揮官の執務室に向かっていた。

 

WA2000は狙撃手として多くの鉄血兵を殺した。

 

WA2000は多くの鉄血兵の個性を見た。

 

撃たれた仲間を救おうとして撃ち殺される鉄血兵、負傷して助けを求める鉄血兵、死ぬ事を嫌がり涙を流す鉄血兵・・・

 

何れも他の地区の戦場では見られない現象で、例外を除いて他の地区の鉄血兵達は皆、無表情で機械じみたしゃべり方をする。

 

だが、此処は無表情ではなく寧ろ個性溢れる人の様な表情と性格、感情があった。

 

WA2000は何故、此処まで鉄血兵に個性があるのかKar98k に聞いた所、彼女曰く、此処の鉄血兵達は元から個性を持ち合わせ、この戦場で心を壊して無個性の鉄血兵が生まれ、各地に送られているのだと。

 

WA2000は理解が出来なかった。

 

何故、心が壊れれば他の地区に送られるのか・・・それもKar98k 曰く、心が壊れた鉄血兵の方が人間を殺しやすいから送られるのだと。

 

故に心が壊れるか死ぬまでこの血の戦線に立って戦わなければならないのだと聞かされだ。

 

WA2000は疲れきった表情で歩いていると、Kar98k が満面の笑みを浮かべて泣き叫んでいるバイザーの無く、傷だらけのイェーガーを引き摺りながら歩いていた。

 

「な、何してるのKar98k・・・? 」

 

「あら、WA2000。何って・・・この子の護送ですわ。この辺りをウロチョロしてたから捕まえたのよ。ゆっくりと・・・尋問して・・・楽しませて貰うつもりよ・・・」

 

「ひッ!?」

 

イェーガーはKar98k の不適な笑みと言葉に恐怖で声を挙げると、Kar98k は不適な笑みを浮かべつつイェーガーの頬を撫でる。

 

「何をされたいのかしら・・・爪剥ぎ?傷口に塩を満面なく塗られる?水責め?歯を抜かれる?それとも・・・男達に群がられて強姦されるとか?まぁ、全部やるでしょうけど」

 

イェーガーはそれを聞いて先程の泣き叫んでいた声よりも更に大きな悲鳴を挙げて逃げようとするが、Kar98k の力に敵わず逃げられない。

 

「嫌だ嫌だ嫌だぁッ!!!尋問なんて受けたくない!助けてッ!!!!!!」

 

イェーガーは暴れて抵抗するがKar98k は容赦なく引き摺ろうとした時、向こうから無償髭を生やし、髪がボサボサの指揮官の専用だが、軍帽とコートを取り去ったグリフィンの制服を着た男がやって来たがやって来た。

 

「何をしているKar98k ?」

 

「あら?指揮官。何って・・・今からこのイェーガーを尋問するのですわ」

 

「嫌だ・・・助けて・・・!」

 

イェーガーは恐怖で震えながら何度同じ言葉を繰り返し呟いている。

 

「何をどうしたらそう恐怖するんだ・・・」

 

「少し・・・此処に来る前にちょっと」

 

Kar98k はそう言ってイェーガーを引き摺って行き、イェーガーは叫びながら基地の中へと消えていった。

 

「・・・すまないなWA2000。彼奴の事は気にするな」

 

「指揮官・・・あのイェーガーはどうなるのですか?」

 

「良くて痛みや精神的な拷問。悪ければ・・・最悪、彼奴が呼び寄せた男どもに輪されるだろうな。彼奴は鉄血の事になれば容赦は無いからな」

 

指揮官の言葉にWA2000はゾッとし、指揮官は溜め息をつきつつ、頭をかきながら歩いて去った。

 

「・・・狂ってる。この戦場は・・・本当に、狂ってる」

 

WA2000はただ、この狂った戦場に対してそう呟くしかなかった。

 

此処の人形達は生きる為に鉄血を殺し、殺され、恨み、憎しみ、復讐し、思うがままに殺戮と拷問を行うこの血の戦線に。



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リベンジャーの苦悩

リベンジャーは執務室で溜め息をついた。

 

三日前に行方不明となった偵察部隊の一員であるイェーガーが発見されたのだが、イェーガーの姿は裸のうえに両目と片方の手足がなく、切り傷や火傷が目立つ酷い姿だったと言う報告だった。

 

イェーガーは生きてはいるが精神的に不安定であり、修復と記憶の初期化が行われたが初期化しても消えない恐怖に駆られて取り乱す事があると報告に挙がった。

 

リベンジャーは何があったのかイェーガーの記憶を辿り映像に写し出して覗くと顔をしかめ画面を睨み付けた。  

  

そこにはイェーガーの視点で写し出され、数人の男達に群がられて強姦されている物だった。

 

強姦が終わればKar98k の激しい拷問が待っていた。

 

片方の手足をゆっくりと切られ、ナイフで抉られながら切られ、熱で真っ赤になった鉄棒を押し付けられ、顔を水の中に無理矢理突っ込まれる等とされた後に指でイェーガーの目を抉られてそこで映像が途切れた。

 

別に目的があっての尋問ではないのはリベンジャーには分かった。

  

何故ならKar98k はイェーガーが苦しむのをずっと笑っていたのだから。

 

リベンジャーはイェーガーの件はリベンジャー自身が預り他言無用とした。

 

イェーガーのされた仕打ちを聞いた鉄血兵達が怒りのあまり無謀な行為をさせない様にする為とイェーガー自身の為でもあった。

 

「・・・それでリー。被害にあったイェーガーの様子は?」 

 

リーとは、数多くいるリッパーがいる中でかなりややこしい為、識別する為にリベンジャーが適当に着けた物だがリッパーことリーは嬉しそうに微笑んだそうだ。

 

「何とも言えません。ずっと放心状態でして・・・」

 

「そうか・・・彼女のメンタルケアを続けてくれ。後は処遇をどうするかだな・・・」

 

リベンジャーは溜め息をまたついた。

 

心を大きく傷つけたイェーガーはもはやまともに戦場に立てるのか怪しく、リベンジャーは後方に勤めさせようか悩んでいた時、扉がノックされた。

 

「入れ」

 

リベンジャーがそう言うと扉が開かれ、鉄血兵が入室と同時に敬礼する。

 

「リベンジャー様。本部より連絡です。至急、モニター室にお越しください」

 

「分かった。リー、後の事は頼んだぞ」

 

リベンジャーはそう言ってモニター室に歩いていく。

_____________________

_____________

_____

 

リベンジャーはモニター室に来ると、画面前に立ってみるとすぐに嫌な顔に変えた。

 

《いやっほぉ~!リベンジャー、元気にしてた?》

 

そこにはサイドテールと元気過ぎる笑顔が特徴の人物が手を振りながら応答してきた。

 

リベンジャーは溜め息をつき、対応する。

 

「アーキテクト。一体何の用だ?」

 

《リベンジャー。貴方って長い事、メンテナンスしてないじゃん。だから一回、メンテナンスするから本部に戻ってきてほしんだ》

 

「断る。メンテナンス以前に私はこの戦線の指揮を任せられているのだぞ。簡単に離れる訳にはいかん」

 

リベンジャーはそっぽを向きながら答えると、アーキテクトは画面に顔を近づけてリベンジャーを怒る。

 

《そんなの困るよ!ちゃんとメンテナンスしないと体持たないよ!》

 

「忙しいのと離れられないのは事実なのだから無理だ。それに本部に戻れば代理人と鉢合わせするのは目に見えてるだろ」

 

アーキテクトはそれを聞いて苦笑いする。

 

リベンジャーと代理人の不仲なのは鉄血内では有名な話で、画面越しからでも険悪な雰囲気を出す二人を直接会わせるなと言う鉄血の暗黙の掟が存在する程だ。  

 

《大丈夫だよ!ゲーガーに何とかしてもらうから!》

 

「お前な・・・ゲーガーばかりに苦労を掛けさせるな。馬鹿め」

 

「馬鹿じゃないもん!皆はアホだって言うもん!」

 

「意味は同じだろうが!」

 

リベンジャーはそうツッコムと、アーキテクトはリベンジャーが自分では梃子でも動かないと分かると、最終手段に出た。

 

《代理人!代理人~!》

 

「何を!?どうして代理人を呼ぼうとする!」

 

「こうなったら強制執行システムで連れてこさせようと思って」

 

アーキテクトはテヘッ☆と言って舌を出しつつ頭を軽く拳骨で当てるとまた代理人を呼び出す姿勢を見せる。

 

《代理人!!!》

 

「分かった!分かったから代理人を呼ぶな!!!」

 

《じゃあ、来てくれるよね!》

 

「・・・行けば良いのだろ行けば」

 

アーキテクトはそれを聞いて喜ぶと、アーキテクトの後ろにいつの間にか代理人が立っており、リベンジャーはアーキテクトがやらかしたと悟り、静かにモニターを切った。

 

リベンジャーはモニターを切る前にアーキテクトの悲鳴が聞こえたのは恐らく幻聴だろうと無理矢理そう思い込む事にした。




・強制執行システム

リベンジャーに搭載されている命令を強制的に執行させるシステム。

このシステムは代理人の命令に反応する様にプログラムされ、リベンジャーを強制的に命令を遂行させる。

・鉄血兵 リー

イェーガーシリーズの鉄血製の新米リッパー。

新米故にドジを踏んだり、気の弱さを見せるが、激戦の中を生きてこれる運の強さはある。

リッパーの中では心優しく、仲間や敵であるグリフィンの人形達を気に掛けたり、戦争で殺し会う事を極端に嫌う。

リベンジャーに気に入られ、妹の様に可愛がられ、リベンジャーの仕事の補佐をする様になる。  

リーと言う名前はリベンジャーが識別する為に適当に着けたあだ名みたいな物だが、リー本人は気に入っている。


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鉄血~前編~

鉄血工造本部。

 

蝶事件以降、今は支部も含め、鉄血製戦術人形による支配下に置かれている。

 

その本部に、リベンジャーはメンテナンスの為に嫌々ながらもリーと共に一時的に帰還した。

 

リベンジャーが帰って来た姿を目撃した本部の鉄血兵達は距離をおいて遠巻きにリベンジャーを見ていると、向こうから満面の笑みで走ってくるアーキテクトが現れた。

 

「やっと帰ってきたねリベンジャー!さぁ、メンテナンスに行こ!メンテナンスが終わったら次いでにデストロイヤーとお菓子食べない?」

 

「分かったからそんなに急かすな。あと、メンテナンスだけを受けに来たんだ。長く戦場を離れられん」

 

「真面目だね~。じゃあ、行こうか・・・て、その子だれ?」

 

アーキテクトはリベンジャーの隣にいるリーを見て質問すると、リーはアーキテクトを前に緊張しているのかかなり固まっている。

 

「私の可愛い部下だ。残すのは流石になと思ってな」

 

「へぇ~。リベンジャーにもそんな子が出来たんだ。強面なのに」

 

「強面は余計だ」

 

「まぁまぁ良いじゃん!ほら、早く行こう!君も早く!」

 

「おい、あんまり引っ張るな!」

 

リベンジャーとリーはアーキテクトに手を引かれて行き、整備室に向かおうとした矢先、前からリベンジャーと絶対に組み合わせてはならない存在が歩いて来た。

 

「あら、リベンジャー。帰ってきていたのですね」

 

「・・・代理人」

 

代理人は相変わらずの無表情でリベンジャーを見つめ、リベンジャーはあからさまに不機嫌な顔になる。 

 

アーキテクトとリーは二人の間に漂う不吉な雰囲気に震え上がっていると、代理人が最初に口を開いた。

 

「メンテナンスはまだですか?早く終わらせて次の任務をこなして貰いたいものです」

 

「貴方に言われなくとも分かっている。私は自分の勤めを忘れて此処に来た訳ではないさ・・・アーキテクト、早く行くぞ」

 

リベンジャーはそう言ってアーキテクトとリーを連れて代理人の元から去る。

 

残された代理人はリベンジャーを暫く見つめていた時、代理人の後ろから黒い長髪の少女がやって来た。

 

「あら、あの子帰ってたの?」

 

「えぇ、メンテナンスの為に一時帰還してます」

 

「そうなの。ねぇ、久しぶりに間近であってどう思ったの?リベンジャーは貴方にとって」

 

「それ以上言うのは許しませんよドリーマー。私とリベンジャーとの間には何もありません」

 

代理人はそう言うと立ち去って行き、ドリーマーは溜め息をつきながら代理人の後ろ姿を見つめていた。

 

 



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鉄血~後編~

お待たせしました。

今回、グリフィン視点も混じっております。

※微量の下手くそな百合要素があります(恋愛ではない)。


代理人と別れたリベンジャーはアーキテクトによるメンテナンスを受けていた。

 

アーキテクトはお馬鹿で自由人だが技術的な面では優秀な存在な為、兵器開発や改良等の責任者である。

 

最近、巨大な大砲を作る事に夢中になっているとリベンジャーは聞いているが、そんな物はリベンジャーにとってはどうでも良かった。  

 

作業台に寝かされ、作業用のアームがリベンジャーの身体の隅々まで調べる。

 

「身体正常、演算処理能力正常、記憶回路正常、その他に異常は特に無し。彼処の戦場に出ててよく此処まで正常だね?」

 

「上手く戦えれば余裕があるくらいなだけだ。さっさと終わらせろ」

 

「はいはーい。相変わらずお堅い事で」

 

アーキテクトはケタケタと笑いながらそう言うと、リベンジャーは溜め息をつくと、メンテナンスは終わったのか作業用のアームがリベンジャーから離れていく。

 

「メンテナンス終わったよ~。動作確認するから少し立ってね」

 

アーキテクトに促されてリベンジャーは立つと、腕を動かしたり、歩いたり、手を閉じたり開いたりする。

 

「うん。基本動作は問題無し・・・なら、大丈夫かな」

 

「本当に大丈夫なのか?」

 

「もう、リベンジャー!大丈夫だよ!たぶん・・・」

 

アーキテクトの言葉にリベンジャーは不安に駆られたが良しとし、装備を手に取る。

 

「メンテナンスが終わったならもう用はない。帰らせて貰う」

 

「ちょっと!すぐに帰るなんて勿体ないよ!ほらほら、此方に来て!武器も置いて!折角なんだからお菓子を食べようよ。デストロイヤーも喜ぶから」

 

「いや、私には・・・て、おい!何処に連れて行くつもりだ!」

 

リベンジャーは無理矢理、武器を取り上げられるとアーキテクトに引っ張られて連れて行かれる。

 

リベンジャーはアーキテクトの行動に溜め息をつきつつ、少し微笑んだ。

________________

_________

____

 

その頃、SO10地区の基地ではKar98kが荒れに荒れて回りを荒らしていた。

 

その姿は普段、戦っている時も笑っているKar98kに見られない程に恐ろしい形相をしており、WA2000を含めて誰も近付こうとはしなかった。

 

「あ、あの・・・指揮官。彼女に何が?」

 

「つい最近、リベンジャーがメンテナンスに出たと言う情報を受けてな。彼奴が奇襲を掛けるべきだと言って俺が却下した」

 

「ッ!?何故、そんな良い機会を!」

 

「俺もチャンスだと思ったさ・・・だが、上が地区の制圧を優先した。つまり、俺達は地区未制圧の元凶を取り逃がすはめになったんだよ。彼奴には悪いが・・・仕方ない」

 

指揮官はそう言って立ち去ると、大きな音が響き渡り、WA2000は音のした方を向くと、力強く蹴り飛ばしたのか大量の廃材が遠くまで散らばっており、Kar98kは息を整えて落ち着いている。

 

「Kar98k・・・?」

 

「WA2000・・・見苦し物を見せましたわね・・・やっと、リベンジャーを仕留められると思ったのにこんな結果になるなんて思いもしませんでしたわ・・・上層部の馬鹿みたいな考えで・・・奴を仕留めればこの地区の戦争は終わる筈なのに・・・!」

 

「Kar98k・・・」

 

WA2000はKar98kの瞳に涙が流れているのに気付いた。

 

普段は常に余裕の笑みを浮かべながら敵を残酷に殺し、拷問し、煽る為に虐待後の捕虜を捨てたりする程の行為をするあのKar98kが泣いたのだ。

 

WA2000は戸惑っていると、Kar98kはいつの間にか泣き終えてWA2000の方を見る。

 

「・・・私の涙を見るなんて、なかなか図太い趣味ですわね?」

 

「え、いえ!その・・・見るつもりは・・・」

 

「冗談ですわ。ねぇ、WA2000・・・」

 

「え、何・・・むぐッ!?」

 

WA2000はKar98kの顔が間近にあり、口元に何かが当たっているのを感じた。

 

WA2000は何をされているのか分かると、Kar98kを引き剥がそうとするも力では叶わず、WA2000の舌がKar98kの舌でされるがまま弄ばれ、受け入れさせられる。

 

やがて、Kar98kが顔を放して行為を終えると微笑む。

 

「ふふ、少し無理矢理過ぎましたか?まぁ、人の涙を見たお返しですわ」

 

「す、少しじゃない!?かなり本格的なキスしたわよね!?い、いきなりキスなんて・・・し、ししし、しかも女同士で!?///」

 

WA2000は赤面してKar98kに怒鳴ると、Kar98kはニヤニヤしている。

 

「あら?まさか、初でしたか?ごめんなさいね、初めてが私で」

 

「Kar98k!!!」

 

WA2000は怒鳴り声を挙げてKar98kを怒るのだった。




いろいろ様の救済依頼であったグリフィンの襲撃がなかったらの話になっております。

いろいろ様。

ありがとうございますm(_ _)m


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小さな命

遅くなりました(;>_<;)


SO10地区の戦場は、鉄血側の指揮官であるリベンジャーの不在がグリフィン側に漏れ、グリフィンの激しい攻勢が始まっていた。

 

「行け!行け!行けぇ!!!リベンジャーは不在だ!この機を絶対に逃すな!」

 

グリフィンの戦術人形トンプソンがそう叫ぶと、グリフィンの部隊と言う部隊が攻勢の勢いに乗って行き、侵攻し、鉄血側は苦戦を強いられていく。

 

苦戦を強いられる前に鉄血兵達はリベンジャーに緊急の入電を入れようとしたが、グリフィン側の電波妨害の為、リベンジャーはおろか、他の鉄血管轄下の地区や近隣の基地にすら入電出来なかった。

 

「くそ!グリフィンの鉄屑共め!」

 

「増援は?増援はまだなの!」

 

「駄目よ!何処も手一杯で増援所か動かせる兵士すらないわ!」

 

鉄血兵達はグリフィンの突然の攻勢に驚き、指揮官不在の混乱を起こすも何とか戦い、持ちこたえようと防衛に専念する。

 

「砲兵隊・・・撃てぇ!!!」

 

鉄血兵の一人がそう叫ぶと、鉄血兵の砲兵が歩兵砲と呼ばれる大砲を一斉に発射、着弾と同時に鉄血兵が機関銃を一斉に乱射する。

 

「くそ・・・!一時的に後退するぞ!退け!」

 

鉄血兵達の決死の抵抗に堪らず、トンプソンの号令でグリフィンは後退し始め、グリフィンの猛攻を何とか一時的に凌ぎきった。

 

「・・・次はすぐに来るぞ。次の防衛に備えろ!奴等の事だ。リベンジャー様の不在の間に出来る限りに我々の領内を食い潰そうとしてくるぞ!」

 

下士官としての役割を持つ鉄血兵がそう叫ぶと、鉄血兵達はすぐに再戦闘の為に準備を開始する。

 

その中にはかつて、Kar98kの拷問を受けたイェーガーの姿もあった。

 

イェーガーは消えないトラウマをKar98kに刻まれて以降、戦闘に出る事を控えていたが、グリフィンがリベンジャーの不在を突いた事で、人手不足となり、イェーガーは精神的に負担を抱えてでも戦闘に参加するしかなかった。

 

イェーガーはライフルの弾を確認しようとマガジンを抜いた時、マガジンを落とした。

 

イェーガーは自分の手を見ると酷く震えており、隣にいたガードが心配する。

 

「大丈夫?無理なら上官に何とか打診するよ?。上官だって貴方の事情は知ってるから」

 

「・・・大丈夫です。戦えます」

 

イェーガーはそう言ってマガジンを拾い弾を確認した後、マガジンを装填してグリフィンのいる方向を見る。

 

グリフィンは後退し、遠くにある瓦礫や弾除けの為のバリケードの奥から鉄血の出方を伺っている。

 

グリフィンと鉄血によるSO10地区の戦いは戦闘が繰り返されるばかりで、互いに疲弊しきっている中、生き残る為に相手を殺すしかないのだと改めてイェーガーは考える。

 

イェーガーは銃を構え、グリフィンの人形が頭を出そうとしていないかと身構えていると、鉄血の陣営の近くを影でコソコソと動く人影を見つけ、イェーガーは素早く照準を合わせると発砲した。

 

人影は弾が当たったのか倒れ込んだ。

 

「どうしたの?何を撃ったの?」

 

「・・・人影が近くにいたから。見てくる」

 

「ち、ちょっと!」

 

仲間の制止を聞かず、イェーガーは人影が倒れた場所へと向かうとそこにはグリフィンでも鉄血でもなく人間の女が倒れていた。

 

人間の女は虫の息で腕の中に何かを抱えている。

 

イェーガーは腕の中をよく見てみるとそこにあったのは小さな赤ん坊だった。

 

「お願い・・・この子だけは・・・!」

 

女はイェーガーの存在に気づいているのか身を震わせて赤ん坊を守る様に自身の死にかけの体で隠す。

 

イェーガーは自分が何を撃ってしまったのかに気付き、銃を落とした。

 

「わ、私は・・・」

 

イェーガーはグリフィンだと思って撃った筈だった。

 

だが、撃ったのは赤ん坊を連れた弾丸に貫かれて倒れ付した母親。

 

イェーガーは必死に何を撃って、何を殺してしまったのかと徐々に理解し始めた時には既に女性は死に絶え、泣いている赤ん坊だけが残される。

 

「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」

 

イェーガーは母親を撃ち殺した事実に、イェーガーは泣き崩れて謝罪言葉を何度も連呼する中、数人の足音がグリフィン側から聞こえてきた。

 

イェーガーはこのまま居ればまた捕まり酷い仕打ちを受けると頭に過ると、銃を手に走りだそうとした時、赤ん坊の鳴き声が聞こえ、イェーガーは振り向くと死んだ母親の下で大きな泣き声を挙げている赤ん坊がおり、イェーガーはグリフィンが迫る中、静かに立ち尽くした後、母親に近付き、退かすと、赤ん坊を抱き上げて走り去る。

 

「ごめんなさい・・・本当に、ごめんなさい・・・」

 

イェーガーは泣きながら赤ん坊を抱えて帰還する。



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帰還

再度、遅くなりました!m(_ _)m




SO10地区の各地で激戦が繰り広げられる中、リベンジャーは本部から帰還すると唖然とした。

 

いざ、帰って来れば鉄血兵達が慌ただしく動き回り、負傷者が運ばれたりしていた。

 

「おい、何があった!」

 

「リベンジャー様!グリフィンが貴方様の不在を狙って攻勢を仕掛けてきました!」

 

「なに?私の不在は極秘の筈だぞ?」

 

「何処から情報が漏れた様で!今、各地の戦線は何とか抑えています!」

 

鉄血兵の報告にリベンジャーは舌打ちすると、自身の武器を手に歩き出す。

 

「とにかく、グリフィンを叩くぞ!動ける者は私に続け!り!行くぞ、リー!」

 

「は、はい!」

 

リベンジャーはリーを連れて戦場へと向かった。

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___________

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リベンジャーが戦場へやって来ると、そこでは鉄血兵達がボロボロになりながらも必死に交戦している姿が多く見られ、中には足や腕を失っても武器を片手に立ち向かおうとする者もいた。

 

「お前達・・・」

 

リベンジャーはこの惨状を見てやはり離れるべきではなかったと後悔するも、すぐに割り切り鉄血の指揮官として振る舞う。

 

「お前達!」

 

「リベンジャー様!?」

 

リベンジャーの登場に鉄血兵達は一斉にリベンジャーに注目する。

 

この戦況の事をどう説明しようか悩んでいるのか冷や汗を流す者、リベンジャーのいない間に進攻され苦戦を強いられた失態を咎められるのかと怯える者等と回りからちらほらと見られ、リベンジャーは其々、違う反応をする鉄血兵達に無表情で見つめた後、口を開く。

 

「私がいない間・・・よく耐えたな。ありがとう。おかげで私がいない間にこの地区を失う所だった。お前達のおかげだ。ありがとう」

 

リベンジャーの労う言葉に鉄血兵達は唖然としていると、リベンジャーは続ける。

 

「さて・・・グリフィンの鉄屑共は私のいない間を狙い、火事場泥棒の如くこの地区を奪い去ろうとした。これは許す訳にはいなかい。まだ戦える者は私に続け!グリフィンの鉄屑を追い払うぞ!」

 

リベンジャーの命令に鉄血兵達は一斉に怒声を挙げ、武器を掲げた。

 

リベンジャーは陣頭に立ち、歩き出すと他の鉄血兵達もリベンジャーに続いていく。

 

その姿を遠くから見たグリフィンの人形の一人が震えながら叫ぶ。

 

「リベンジャーよ!リベンジャーが戻ってきたわ!此方に向かって来てる!!!」

 

その言葉にグリフィンの人形達は驚きと恐怖に包まれた。

 

恐れの象徴であるリベンジャーが帰還し、今から自分達を蹂躙しようと迫っていると聞けば恐怖で支配されて当然だった。

 

「い、嫌だ・・・嫌だぁ!!!」

 

「ちょ、ちょっと!?」

 

グリフィンの人形の一人がリベンジャーがいる方向とは真逆の方に走り出して逃げようとした時、頭を撃たれて倒れた。

 

発砲された方を人形達が見ると、そこにはトンプソンが逃走しようとした人形の方に向けて銃を構えていた。

 

「敵前逃亡は死があるのみだ。私は受けた命令にのみ従って動けば良い・・・戦闘体制!リベンジャーと鉄血の雑魚共を迎え打つぞ!」

 

トンプソンの命令に人形達は不安を抱えながら配置に付き、銃を構えてリベンジャー達を待ち受ける。

 

リベンジャーと鉄血兵達がグリフィンの陣地に迫る中、合図を待つ人形達にトンプソンは命令する。

 

「撃てぇ!!!」

 

トンプソンの命令で人形達は一斉に発砲すると、リベンジャーは上手く避け、他の鉄血兵達は攻撃を受け、倒れて行く。

 

だが、鉄血兵の中には銃弾を受けても倒れず突き進む者もおり、リベンジャーと共に射程に入るとリベンジャーも命令を下す。

 

「攻撃だ。撃てぇ!!!」

 

リベンジャーの命令で鉄血兵達は移動しながら発砲し、その発砲された弾が何人かのグリフィンの人形達に当たり、負傷したり死亡する人形といた。

 

「怯むな!撃ち続けろ!」

 

トンプソンはそう叫び、自らも発砲する。

 

「突き進め!命中率など気にするな!移動しなが撃ち続けろ!」

 

リベンジャーがそう叫び、鉄血兵達の進軍は続く。

 

やがて互いに近くまで来ると、リベンジャーは大斧を一人の人形に向けて振るい、切り裂くと、他の鉄血兵達も続々と突撃する。

 

銃を撃ったり、物や拳で殴ったり、ナイフによる近接戦を行ったりと、グリフィンと鉄血による混戦が繰り広げられる中、リベンジャーは大斧を振るい、散弾銃を撃ち、グリフィンを蹂躙して回る中、トンプソンがリベンジャーに向かっていく。

 

「うおぉぉぉぉッ!!!」

 

トンプソンは銃を乱射しながらリベンジャーに向かっていくが、リベンジャーは避け、トンプソンに向かって走り出す。

 

トンプソンは自分の銃の弾が無くなると、ナイフを抜き、リベンジャーに刃を向けて走る。

 

「食らえぇぇぇぇぇッ!!!」 

 

トンプソンがそう叫び、リベンジャーに迫った。

 

だが、そこでトンプソンは横から銃弾を何発も受け、倒れた。

 

リベンジャーが銃弾の飛んだ方向を見ると、そこにはリーが震えながら銃を構えていた。

 

「リー・・・」 

 

「り、リベンジャー様・・・わ、私・・・」

 

リーは震えが止まらず、リベンジャーの元に来ると、リベンジャーはリーを抱き締める。

 

「・・・大丈夫だ。お前は正しい事をした。お前は悪くない」

 

「で、ですが・・・私・・・」

 

「これは戦争なんだ・・・敵以外に誰が責める?」

 

リベンジャーがそう言って微笑んだ時、撃たれてたトンプソンが口から血を吐きながら虚ろな目でリベンジャーを見る。

 

「くそ・・・鉄血のゴミ共め・・・お前達がこんな戦争さえ仕掛けなければ皆は・・・!」

 

「この戦争はお前達の主人である人間の不始末だ。私達は戦えと言われたから戦っているだけで好きで貴様らに戦争を仕掛けてはいないのだが?」

 

「同じ、事だ・・・!貴様らが・・・戦争を始めたんだ・・・同罪なんだよ・・・私は、お前達を・・・許さ・・・な・・・い・・・」

 

トンプソンはそう言って息を引き取ると、回りももうすぐ終わりなのか多くの鉄血兵が立ち、多くのグリフィンの人形達が倒れ付していた。

 

リベンジャーはそれを見ると、高らかに大斧を掲げる。

 

「我々の勝利だ!我々は・・・負けはしない!鉄血こそが勝者であり、正義!グリフィンこそが敗者であり、悪だ!鉄血に栄光を!グリフィンに死を!!!」

 

「「「「鉄血に栄光を!!!」」」」

 

 

「「「「グリフィンの死を!!!」」」」

 

鉄血兵達はリベンジャーに続く様にそう叫び、武器を掲げた。

 

そこにはリベンジャーを恐れる者はおらず、寧ろ英雄として見る者が多くいた。

 

この時、リベンジャー達、鉄血軍は一枚岩となった。

__________________

____________

_____

 

一週間後、グリフィン本部。

 

そこではクルーガーが通信機の前にして話していた。

 

「そうか・・・やはり負けたか」

 

「残念ながら。リベンジャーに悟られない様に通信妨害も念入りにしていたのですが予想外の早さで帰還しました。それで進攻部隊の一角がやられました。しかも、その3日後には他の進攻部隊も電撃的に撃破。最悪の痛手です」

 

クルーガーの話し相手はSO10地区の指揮官で、指揮官は今回の進攻作戦の戦果報告を行っていた。

 

クルーガーは唸りながら今回の最悪の敗北に頭を悩ませると、指揮官は提言する。

 

「社長。やはりSO10地区から手を引くべきだ。今回もそうですが毎回の様に大きな被害が出続けている。このままでは他の戦線の攻めも守りも薄くなります。しかも・・・そちらではとんでもない事も起こっているのですよ?」

 

クルーガーがその言葉を聞いた時、社長室にあるテレビからニュースが流れる。

 

《続いてのニュースです。今日、戦闘で負傷し、戦闘は不可とされ民生人形として生活している人形達が反戦デモを行っていたおります。人形達は全てSO10地区から多くが戻っており、帰還した人形達は今でもSO10地区の悲惨な戦闘を行う人形達の為にデモを行っていたいるそうです。現場から映像を流します》

 

ニュースキャスターがそう言うと映像が変わり、そこには多くの人形達がデモ行進を行ったいた。

 

《SO10地区のこれ以上の戦闘は認めない!》

 

《戦闘を即座に停止せよ!》

 

《仲間達にこれ以上苦しませるな!》

 

人形達はそう叫びながら行進し、戦争反対のプラカードを掲げて練り歩く。

 

治安部隊が近くにいるが、特に動きもせずついて歩くだけで、元仲間に銃を向ける事に抵抗を感じる事や仮にも元戦術人形である彼女達を刺激したくないからでもある。

 

クルーガーがその映像を見た後、溜め息を吐くと、指揮官に伝える。

 

「分かっている・・・だが、戦闘は続行する」

 

「社長!」

 

「分かっている。だからそこ、次の作戦を気に最後とする」

 

「最後?つまり、次負ければ手を引くと?」

 

「今の発言は聞かなかった事にしてやろう。負けて終えるのではない。勝利で終わる。次の作戦にはS09地区の指揮官とその人形達の力を借りる」

 

「S09地区から?確かにあそこは戦果こそ挙げてますが日の浅い指揮官でしょ?何故・・・?」

 

指揮官は分からないと首を傾げると、クルーガーは少し微笑む。

 

「分かっている。だが・・・あの指揮官ならやれそうな気がしてな・・・追加戦力としてAR小隊、404小隊も入れる。これなら納得するか?」

 

「AR小隊に404小隊まで?・・・分かりました。そこまで決意が厚いなら止めはしませんが、後悔しないでくださいね」

 

指揮官はそう言って通信を切ると、クルーガーは椅子に深く座り直した。

 

「もう後が無い・・・頼んだぞ。地獄を終わらせてくれ」

 

クルーガーはそう呟くと再びニュースを見るのだった。



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更なる進攻

グリフィンの進攻を食い止めたリベンジャーは次の戦いに備え、鉄血の弾薬や物資の確認を執務室で行っていた。

 

グリフィンに大きな痛手を与えたが、鉄血もグリフィンの大規模進攻によって大きな痛手を負い、建て直すには時間が必要だった。

 

この戦い以降、リベンジャーの回りは大きく変わった。

 

リーはトンプソンをリベンジャーを守る為に撃ち殺した時から落ち込んでいた。

 

気が弱く、優しい一面を持つリーだからこそだが、リベンジャーは今後、戦いに影響しないか心配していた。

 

イェーガーは戦いが起こった戦場から赤ん坊を連れて帰った日から前線を退き、今もリベンジャーの目の前で優しい微笑みと悲しみを浮かべて赤ん坊の世話をしている。

 

この赤ん坊と母親についてリベンジャーが調べると隣の地区が遊軍の鉄血部隊に制圧され、包囲しつつグリフィンの支配地区への道を閉鎖、此方に誘導する様に包囲の一部を解いて難民が流れる様にしていた。

 

イェーガーの赤ん坊と母親も逃げ場を失い、誘導されるがままにSO10地区へと逃げて来ていた所、運悪くイェーガーに誤認される形で母親は撃たれたのだ。

 

イェーガーはせめてもの罪滅ぼしとして赤ん坊を育てるとリベンジャーに伝え、リベンジャー自身も何も言わず、リベンジャーも赤ん坊の事を可愛がった。

 

鉄血兵達はグリフィン進攻以降、リベンジャーを恐れず、尊敬と敬意の眼差しを向ける様になった。

 

SO10地区の鉄血軍が一枚岩になろうとしかけていた時、リベンジャーは鉄血兵からもたらされた情報に驚愕する事になる。

 

「AR小隊が動いただと?」

 

「はい。何でも、この戦いに決着を着ける為に派遣されるとグリフィンから情報を得た諜報部隊からの知らせです」

 

リベンジャーはそれを聞いて自身の過去の記憶が甦った。

 

リベンジャーになる前の姿であるリッパーであった時、外の風に当たっていた所をAR小隊に鹵獲され、グリフィンの駐屯地に連行されてそこでKar98kからの激しい拷問を受ける切っ掛けになった。

 

AR小隊の名はリベンジャーにとっては過去のトラウマの一つと言えるそんな存在だ。

 

「・・・各、戦線に厳重警戒体制を取れと伝えろ。各地の部隊に通達。敵は最後の底力で我々を始末するつもりだ」

 

「分かりました。すぐに」

 

命令を受けた鉄血兵の言葉を遮る様に爆発音が鳴り響く。

 

「何事だッ!」

 

リベンジャーが爆発音を聞いてそう怒鳴ると、一人の鉄血兵が慌てて入ってきた。

 

「て、敵襲!リベンジャー様、敵襲です!」

 

「敵だと!グリフィンの何処の部隊だ!」

 

「しょ、正体は不明!敵の攻撃により基地の対空兵器を破壊され、対空戦闘が出来ません!」

 

鉄血兵の知らせにリベンジャーは舌打ちした時、また慌てた様子の鉄血兵が入ってきた。

 

「リベンジャー様!グリフィンが再び進攻しました!鉄血の防衛線を突破しつつ此方にまっすぐ向かってきています!」

 

「迎撃だ!各部隊に緊急通達!グリフィンの進攻を阻止するんだ!突破されればこの基地が危うくなる・・・次の防衛線で何としても食い止める。集結地帯は此処だ」

 

リベンジャーがそう言って指を指したのは基地から少し離れた塹壕構築地帯だった。

____________________

___________

_____

 

その頃、リベンジャーのいる基地から離れた塹壕構築地帯ではグリフィンのSO10地区とS09地区の人形部隊とAR小隊がいた。

 

「どうやら破壊工作は成功したようだな」

 

「そうですわね。これで追加の部隊や補給を行えますわ」

 

塹壕の中から話ながら基地の様子を伺うKar98kとAR小隊のM16は双眼鏡で鉄血兵が前の塹壕に集結している姿を確認する。

 

「流石に勘づくか・・・突破は厳しいぞ?」

 

「何を今更?どうせ鉄血は皆殺しにするつもりだったのです。彼方から来るやら好都合ですわ」

 

Kar98kの言葉にM16は顔をしかめると、無線が入る。

 

《姉さん》

 

「M4か?」

 

《皆、準備が出来たよ。何時でも行ける》

 

「分かった。指揮官の合図で始めるとしよう」

 

M16はそう言って自身の武器を手にした。



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最後の戦い~前編~

鉄血が対応に遅れながらもグリフィンと対峙する形で塹壕内でグリフィンの攻撃を待ち構えていた。

 

塹壕内では鉄血兵達が緊張の最中にいる中で、リーが俯きながら銃を抱え込む様な姿勢をとっていた。

 

「リー?俯いてるけど大丈夫?」

 

隣にいた鉄血兵が話しかけて手を肩に置こうとした時、リーの口が微かに動き、何かを呟いているのを見た時、その言葉が聞こえた。

 

「私はグリフィンを倒せる、私はグリフィンを殺せる、私は出来る、私は引き金を引ける、私は絶対に殺せる」

 

普段はそんな物騒な事を言わないリーの口からそう聞こえた鉄血兵は背筋を凍らせると、リーの肩を掴み話しかける。

 

「り、リー?聞こえてる?」

 

「す、すみません。つい・・・」

 

「そ、そう・・・さっきから大丈夫なの?さっきから変よ」

 

「大丈夫です。私は、戦えますから・・・」

 

リーはそう言ってまたうつ向いてまたブツブツと一人言を言い始め、鉄血兵士はこれ以上は関わらない様にしていた時、塹壕の上から飛び降りる様にリベンジャーが入ってきた。

 

「状況は?」

 

「グリフィン側の増援が空から次々と来ています。対空兵器を潰されている以上は迎撃も出来ず、また多くの兵士達も撃破された為に戦況的に数では負けてます。更にAR小隊を始めとした精鋭部隊が複数確認されたとも報告が」

 

「数でも質でも負けているのか・・・」

 

リベンジャーは鉄血兵の報告を受け、この最悪の戦況をどう覆すか考えていると、グリフィン側からスピーカーが使われているのか大きな声が戦場に響く。

 

《此方、G&KのKar98kですわ。私達は貴殿方を包囲しつつあります。単刀直入に言いますわ。大人しく降伏なさってください。降伏すれば手荒な事はしないと約束しますわ》

 

Kar98kからの降伏勧告。

 

リベンジャーはそれを聞いて表情一つ変えずに暫く動かなかった。

 

鉄血兵達はリベンジャーの指示を待って静かに見守っていると、リベンジャーはニヤリと笑った。

 

「彼奴が手荒な真似をしない?大人しく降伏?・・・馬鹿馬鹿しい。私を・・・私達、鉄血を舐めているのか?だとしたら愚かだ。奴の本意は分からんが我々は降伏などしない。全力で徹底交戦するのみだ。全軍、よく聞け!」

 

リベンジャーは鉄血兵達を見渡すと、迷いのない瞳を持つ鉄血兵達がリベンジャーに注がれていた。

 

「我々はこれより、グリフィンに対して徹底交戦を行う!死にたくない者は包囲される前に去れ!臆病者はいらん!共に戦う者は私に続け!私の元が共に戦うお前達の墓場だ!我々は不利だ!だが、負けはしない!我々は数が少ない!だが、我々は誰よりも強い!さぁ、やるぞ!私の勇敢な兵士達よ!私と共に死地を駆け抜けるぞ!」

 

リベンジャーの言葉に鉄血兵達は銃を高らかに上げて歓声を挙げた。

 

その声はスピーカーを使わずして戦場に響き、グリフィン側を唖然とさせた。

 

その様子を見たKar98kはニヤリと笑い、銃を手にした。

 

「どうやら降伏はしないようですわね」

 

「そうみたいだな・・・」

 

「M16。これで貴殿方の上司からの通達は終わりですわね?そろそろ・・・鉄血を皆殺しにしても構いませんわよね?」

 

Kar98kの言葉にM16は頷くと、Kar98kは無線を手にすると、SO10地区の部隊に命令する。

 

「諸君。敵は降伏勧告を無視しましたわ。予定通り、これよりS09地区の部隊と連携し、鉄血の愚かなゴミ達を片付けますわよ。指揮官達の指示に従いつつ、進軍し、敵を・・・鉄血を皆殺しになさい」

 

Kar98kはそう言い終わると、無線を置いた。

 

「さぁ、行きましょう。これで終わらせてやりますわ・・・」

 

Kar98kはそう言ってホイッスルを手にし、口に咥えると戦場に鳴り響かせた。



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最後の戦い~後編~

ドルフロの製造を行っていたら春田さんとワーちゃんをダブルで迎えました(初めて見た時は唖然しました)

遂に自分にも二人を迎えられて嬉しいです!


グリフィンの部隊が塹壕を飛び出して迫って来るのを見たリベンジャーは素早く指示を飛ばす。

 

「戦闘用意!構えろ!」

 

リベンジャーの指示で鉄血兵達は銃を構えると待機し、リベンジャーの合図を待つ。

 

グリフィンの部隊が迫る中、リベンジャーは静かに有効射程に入るのを待ち、やがて一定の距離まで迫られた所でリベンジャーは合図を出す。

 

「撃てぇ!!!」

 

リベンジャーの合図で鉄血兵達は一斉に発砲し、グリフィンの部隊は次々と被害を被っていく。

 

だが、グリフィンも負けるかとばかりに発砲し、鉄血兵達にも被害を出していく。

 

グリフィンは被害を出しつつも迫り、鉄血側の塹壕一つに遂に接近を許した。

 

グリフィンの部隊が次々と塹壕に侵入し、鉄血兵が発砲されたり白兵戦による近接的な攻撃を受けて倒れていく。

 

「防衛線の一つがやられました!」

 

「慌てるな!撃ち続けろ!」

 

リベンジャーはそう命令すると、無線機を使って各地と連絡を取っていた鉄血兵達が慌てて報告する。

 

「リベンジャー様!無線より報告です!後方の補給物資が何者かに爆破されました!弾薬が持ちません!」

 

「無線より報告!前線の野砲部隊がグリフィンの部隊に突破され壊滅しました!S09地区の部隊と思われます!」

 

「リベンジャー様!AR小隊によって側面の防衛線が突破されかけていると報告が!」

 

「補給は敵から奪ってでも持ちこたえろ!野砲部隊が壊滅したからと言っても負けた訳ではない!新たな防衛線を構築しろ!側面の部隊には援軍を送れ!此所の部隊を削っても構わん!」

 

リベンジャーは次々と起こる事態に対象する中、リベンジャーの頬を掠める様に銃弾が飛んだ。

 

リベンジャーは銃弾が飛んできた方向を見るとそこにはKar98kが銃を構えて不適に笑っていた。

 

「Kar98k・・・!」

 

リベンジャーはKar98kを認識すると鋭い目で睨み付けた時、リベンジャーの瞳がKar98kの後ろから飛んでくる無数の砲弾を捉えた。

 

「伏せろぉ!!!」

 

リベンジャーがそう叫んだ時には砲弾が降り注いだ。

_________________

___________

______

 

その頃、WA2000は塹壕から塹壕へと移動しつつ鉄血兵を狙撃し、倒しながら突破口を開こうとしていた。

 

「此処で・・・此処でこの戦いを終わらせる!」

 

WA2000はそう叫びながら照準を合わせようとした時、横から鉄血のリッパーが飛び掛かり、押し倒された。

 

そのリッパーはリーで、WA2000を押し倒した後、首を両手で絞める。

 

「殺す・・・グリフィンは殺す・・・殺してやる・・・!」 

 

リーはそう呟きながらWA2000の首を絞めていき、WA2000は意識を手放しそうになるが、力を振り絞ってリーを蹴りあげると、ナイフを抜いて身構える。

 

リーも蹴りあげられたが、すぐに体勢を立て直し、ナイフを抜いてWA2000に襲い掛かる。

 

WA2000はリーのナイフを受け止め、互いに掴み合う状態でナイフを刺そうと押し合う。

 

暫くその状態が続いた後、WA2000はリーの腹に膝蹴りを入れると、WA2000はナイフをリーに突き立て、リーは地面に倒れた。

 

WA2000はリーにナイフを突き立てた後、息を荒く吐いて立ち尽くしている時、遠くから声が響く。

 

「リーかやられた!」

 

「あのクソ人形が!」

 

「撃ち殺せ!」

 

その声を聞いたWA2000は銃弾が飛ぶ中、自分の銃を拾いその場からすぐに立ち去った。



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別れ

砲撃にあったリベンジャーは目を覚ますとそこは基地の基地の中だった。

 

基地内は慌ただしく、時より聞こえる銃声と爆発音が響く。

 

リベンジャーは頭を押さえつつ起き上がると、鉄血兵の一人が駆け寄って来た。

 

「リベンジャー様!お目覚めになられたのですね!」

 

「あぁ・・・戦況は?」

 

「・・・悪いです。今は後退し、基地内で籠城を行っていますが長くは持ちこたえられません。今は膠着状態にあって、グリフィンがすぐに攻めては来ないと思います」

 

「そうか・・・」

 

鉄血兵の言葉にリベンジャーは項垂れると、リーの存在を思い出した。

 

「リーは?リーは何処に?」

 

「リーは・・・その・・・」

 

「リーは何処だと聞いている?何処だ?」

 

リベンジャーは威圧感のある言葉でそう聞くと、観念する様に鉄血兵は答える。

 

「リーはグリフィンとの交戦で負傷しました・・・危険な状態です。此所の設備ではとても治りません。本部でないと。今は医療室に応急措置をしてイェーガーに見てもらっています」

 

リベンジャーはそれを聞いて起き上がると、悪い予感を捨てつつリーの元にすぐに向かった。

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____

 

リベンジャーは医療室の扉を勢いよく開け放つと、そこには負傷した鉄血兵で溢れかえり、痛みからの唸り声が響く地獄だった。

 

鉄血兵達がリベンジャーに注目する中、リベンジャーはリーを探すとそこに赤ん坊を抱いたイェーガーと腹に血の滲んだ包帯が巻かれたリーが寝かされていた。

 

イェーガーはリベンジャーの存在に気付くとリーの隣を明け、リベンジャーはリーの隣に立った。

 

「リー。私だ、リベンジャーだ・・・」

 

「・・・リベンジャー、様?」

 

「そうだ・・・馬鹿者が。無茶をしたな?幾ら有事でもこんな姿を私に見せるなど・・・とんでもない失態だぞ」

 

リベンジャーはそう悲しみを込めて言う。

 

「すみません。私は例え此所が地獄でも、壊されたくなかったんです・・・此処が無ければリベンジャー様や皆とは出会わなかった・・・だから私は・・・私は・・・!」

 

リーは泣きながら喋ろうとするも、リベンジャーに手で頬を撫でられて止められる。

 

「もう良い・・・私達はどのみち負ける・・・残念だが・・・リー。他の負傷者達と共にこの地区を離脱しろ。お前はもう戦えない、本部へ行け」

 

リベンジャーの命令にリーは驚愕のあまり痛みを忘れてリベンジャーの腕を掴んだ。

 

「そんな・・・!嫌です!私も・・・私も最後まで戦います!だからそんな事は言わないでください!お願いします!リベンジャー様!」

 

「・・・リーを輸送部隊の元へ連れていけ。他の死傷者達もだ」

 

リーの懇願にリベンジャーは俯きながらも他の鉄血兵に命令を下し、鉄血兵達は黙って従った。

 

「リベンジャー様!リベンジャー様!!!」

 

リーは必死に手を伸ばしてリベンジャーの名前を叫ぶも、鉄血兵達はリーを担架に乗せて他の負傷者を抱えた鉄血兵達と共に立ち去っていった。

 

「・・・イェーガー。お前も行くんだ。子供もいるだろ?」

 

「私は此処に残ります。仮に本部へ後退してもこの子は人間として処理されてしまいます。そんな事になるならグリフィンの部隊に託した方がマシです」

 

「そうか・・・」

 

リベンジャーはそれを聞いてイェーガーは立ち去らないと考えると次に来るグリフィンの攻撃に備える為に移動しようとした矢先、リベンジャーのコートの端を何かが掴んでいる事に気付き、リベンジャーは振り返る。

 

コートを掴んでいたのはイェーガーに抱かれている赤ん坊で、コートを掴みながら無邪気にリベンジャーにもう片方の手を伸ばしながら笑っていた。

 

リベンジャーは困った笑みを浮かべながら赤ん坊からゆっくりとコートを放させると頭を撫でる。

 

「すまないな・・・こんな戦争さえ無ければお前は今頃、本当の両親と暮らせていたのにな・・・」

 

リベンジャーはそう悲しげに言うと赤ん坊は相変わらず笑っている。

 

まだ幼い子供故に戦争を知らず、こうして笑っているのはリベンジャーにとっては希望その物に見えた。

 

リベンジャーは今度こそグリフィンの攻撃に備えるべく移動した。



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復讐者の最後

リベンジャーはグリフィンの攻撃に備える為に移動していた時、基地内に銃声が響いていた。

 

リベンジャーには分かっていた。

 

グリフィンは既に基地を攻撃し、内部に侵入している事に気づいていた。

 

だからこそ、早めにリー達を後退させ、残りは殿として戦う事になったのだ。

 

リベンジャーは回りから聞こえる銃声や爆発音を聞きながら途中で立ち尽くしていると、リベンジャーの目の前の影からKar98kが不適に笑いながら現れた。

 

「Kar98k・・・!」

 

「あら、お久し振りですわね。砲撃で死んだと思ったのですが・・・どうでも良いですわね。もう貴方は終りですわ。大人しく死んでください」

 

「終わるのは貴様だ!貴様だけは此処で葬り去る!」

 

リベンジャーはそう叫び、大斧を手にKar98kに襲い掛かろうとしたが、リベンジャーの大斧を手にする腕に銃弾が貫いたのだ。

 

リベンジャーは痛みで大斧を落とすと、今度は散弾銃で狙うがまた腕に銃弾が当たり、両腕が使えなくなり、そしめまた銃弾が飛び、足を片方やられた。

 

リベンジャーはKar98kが発砲していない事に気付き、撃たれた方向を見ると、そこには銃を構えるWA2000がそこにいた。

 

「貴様・・・!何処までも露骨な奴だな!」

 

「確実にこの戦いを終わらせるには貴方が死なないといけないのですわ。例え卑怯だとしても・・・これで終わりにできますわね」

 

Kar98kはそう言ってリベンジャーの近くまで来ると、頭に向けて銃口を向けた。

 

「遺言は?」

 

Kar98kの言葉にリベンジャーは睨むのを止め、笑いながらKar98kに対して最後の言葉を言った。

 

「くたばれ」

 

Kar98kはそれを聞いた瞬間、引き金を引き、リベンジャーの頭を撃ち抜いた。

 

リベンジャーは頭を撃たれ、倒れると、血を大量に流して動かなくなった。

 

息絶えたリベンジャーの近くで転がっているグリフィンの軍帽をKar98kは拾うと静かに抱き締めた。

 

「アウスト・・・ごめんなさい。私、貴方との最後の約束すら守れませんでしたわ・・・彼女だけは必ず見逃すと約束したのに・・・」

 

Kar98kはそう悲しげに呟く。

 

Kar98kはアウストを殺す前にある約束をした。

 

その約束とはリベンジャーの命だけは取らないアウストとそう約束したのだ。

 

「でも・・・貴方が悪いのですからね。私を・・・仲間達を置いて逃げた報いですわ。せいぜい、あの世で後悔なさってください」

 

Kar98kはそう言うと軍帽を投げ、軍帽は近くで燃えていた炎の中に入り、燃えていく。

 

その様子に目も暮れず、Kar98kはWA2000共に立ち去った。



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鉄血END
復讐は受け継がれ


十数年前、血の戦線と呼ばれた戦場があった。

 

長く、地獄の様な戦いは鉄血の指揮官であるリベンジャーの死で幕を閉じた。

 

この戦いで鉄血は多くの犠牲と捕虜を出し、大きな痛手となるが、グリフィン側も無視できない痛手となり、結果としては未だにグリフィンと鉄血は膠着状態の情勢だった。

 

この戦い以降、血の戦線から生き残り、民生人形となった戦術人形達は平和を唱え、平和主義団体と共にデモを繰り返す様になった。

 

民生人形にならず、現役で戦術人形として戦う者もおり、彼女達の激戦区での戦いが活かされていると同時に精神的に不安定な一面を持つ者も多かった。

 

1日居れば誰かが必ず死ぬとさえ言われた死地を生き残った一人であるKar98kは人の通りが無い道を歩く。

 

Kar98kの歩くその姿は何処か覇気が無く、ただ歩く中、Kar98kの目の前に黒い短髪で黒い軍服とコートを羽織る紫色の瞳をした女が現れたのだ。

 

Kar98kは一瞬、リベンジャーが生きて現れたかと驚いたが、すぐに別人だと認識する。

 

Kar98kと女が対峙すると、女は口を開く。

 

「元SO10地区所属のKar98kですね?」

 

「それがどうかしましたか?」

 

「・・・やっと・・・やっと見つけました。貴方がリベンジャーを殺したのですね」

 

「それがどうか」

 

Kar98kは言葉の途中で発砲音ざ響き、Kar98kは自分の腹を見ると、出血していた。

 

Kar98kは女を見ると、その手には拳銃が握られ、銃口に煙が舞っている。

 

「リベンジャー様の仇です。そこで苦しみながら死になさい」

 

女はそう言うと拳銃をしまい、後ろを向いて歩き出す。

 

Kar98kは拳銃の弾で受けた傷が思っていた以上に重症で、簡単には死なない位置に撃たれた事を悟った。

 

「あの女・・・まさかリベンジャーの元にこんな悪趣味な撃ち方をする人がいるなんて・・・私も人の事は言えませんが・・・アウスト・・・私ももうすぐそちらに行きます・・・貴方に対する怨み言は沢山ありますから・・・覚悟をして待っていてください・・・」

 

Kar98kはそう呟くと微笑みゆっくりと目を閉じ、そのまま動かなくなった。

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Kar98kを射殺した女は近くのトンネルの中に入り、立った状態で壁にもたれた。

 

女は溜め息をつくと、Kar98kを撃った拳銃を取り出し見つめた。

 

女は静かに見つめる拳銃を持つ腕は微かに震え、女はその場に座り込む。

 

「やっぱり・・・人殺しは慣れないものですね・・・」

 

女がそう呟いた時、女の懐から音が鳴り、女は懐からケータイを取り出して電話に出た。

 

「はい」

 

《あ、リーさん?人形運用の講義で聞いた編成の組み合わせについてなんですがまだ分からない事がありまして・・・》

 

「そう、分かったわ。今からそっちに行くから待ってなさい」

 

リーはそう言うとケータイを切ると、また電話がなり、電話に出た。

 

「はい」

 

アベンジャー(報復者)。私です。代理人です》

 

「代理人?また珍しいですね。貴方から連絡を・・・しかも、ケータイで」

 

《誰もハイエンドモデル同士が民間用のケータイで話しているとは思いませんよ。それより、そちらでの任務は順調ですか?》

 

「はい。問題ありません。グリフィンは私が人間だと思い込んでいる様です。問題なく情報収集を行っています。それと・・・Kar98kを見つけ出し、仕留めました。リベンジャー様の仇を取る事がやっと出来ました」

 

《そうですか・・・アベンジャー。貴方は本当に後悔はなかったのですか?自らとはいえ、ハイエンドになる道を選んだ事を》

 

代理人は何処か悲しげな声でそう聞くと、アベンジャーは間を置いてから話す。

 

「後悔はしていません。寧ろ、私はリベンジャー様の仇を取れるならなんでもする覚悟でした。それに後悔なんて今更ないです」

 

《そうですか・・・アベンジャー。引き続き、任務を全うしてください》

 

「分かりました。では」

 

リーことアベンジャーはそう言って切ると、今度こそ歩き出す。

 

「仇を討った。ですが何でしょうか・・・私はまだ、何かに対して憎い・・・何故、まだ憎んでいるのでしょうか・・・教えてください・・・リベンジャー様・・・」

 

アベンジャーはそう呟きながら歩き、暗闇に消えていった。

 

 

 

悲しみは消えない、復讐は受け継がれ、悲劇は止む事は知らない・・・ 

 

 

 

【鉄血sideEND:鉄血兵リーの復讐】



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グリフィンEND
家族


とある復讐者の追憶の最終回です。




SO10地区の戦い通称、血の戦線が終戦してから十数年の月日が流れた。

 

SO10地区は戦後、復興の為にやって来た人々に驚愕と悲しみを与えた。

 

戦後の戦場後には見渡す限りに敵味方問わずに人形の残骸が転がっており、どの人形も悲しげな表情をして息絶えていた。

 

人々は人形達の悲劇を目の当たりにし、悲しみと情けなさを感じ、復興を行いつつ人形達をグリフィン、鉄血問わずに埋葬した。

 

やがて、ある程度に復興が終わると、街の中心に人形達の慰霊碑が置かれ、街のシンボルであると同時に悲劇を繰り返さないと言う気持ちの現れだった。

 

そんな街に寝息をたてている少女がおり、まだ眠そうな目を少し開けて近くにあった目覚まし時計を見る。

 

暫く動かずにじっと見ていた少女は時計の時刻をはっきりと認識した瞬間、勢いよく起き上がった。

 

「大変!遅刻しちゃう!」

 

少女は大慌てで赤が特徴的な軍服の様な制服に着替え、部屋を出る。

 

少女が部屋を出ると、台所で鼻歌を歌いながら朝食を作る黒髪の長いポニーテールが特徴的な女性イェーガーがいた。

 

イェーガーは鉄血基地内で突入してきたグリフィンに対して降伏し、一時捕虜となった。

 

イェーガーにとってやって来たグリフィンの部隊がS09地区の部隊だった事が幸いし、捕虜として過ごしたあと、サリーを育てる事が監視つきではあるが許され、今に当たる。

 

「お母さん!何で起こしてくれなかったの!?」

 

「あら、おはようサリー。今日は早いわね?」

 

「何言ってるの!もう7時45分だよ!遅刻だよ!」

 

「え?まだ5時になったばかりじゃない?」

 

「へ?」

 

サリーは壁に掛けられている時計を見ると、そこには確かに5時となっていた。

 

暫くの無言の中、サリーは椅子に座ると両手で顔を隠して恥ずかしそうに落ち込む。

 

「うぅ~まさか時計が止まってたなんて・・・」

 

「そそっかしい子ね。朝食が出来るまで二度寝する?」

 

「止めとく。それで寝坊したら洒落にならないもん・・・」 

 

サリーはそう言うとイェーガーは笑った。

_________________

_________

____

 

暫くして、出勤の時間となったサリーは無駄に早起きした分、ゆっくりと準備して出勤しようとしていた矢先、インターフォンがなった。

 

「はーい」  

 

女性が玄関を開けるとそこには戦術人形のWA2000がいた。

 

「あら、WA2000さん。おはようございます」

 

「おはようイェーガーさん。マリーはいるかしら?」

 

「えぇ、丁度出勤しようとしている所よ。マリー!WA2000さんが来てるわよ!」

 

イェーガーがそう言うと、マリーは荷物を持って現れた。

 

「お待たせワーちゃん!」  

 

「ワーちゃん言うな!こんなんでも貴方の担当教練官なのよ。少しは上の立場の私を」

 

「はいはい分かったから。ほら行こ!遅刻しちゃうし、リー教官を待たせちゃったら悪いから!」

 

「ちょっと!引っ張らないでよ!」

 

サリーに引っ張られて怒るWA2000だが何処か嬉しそうな雰囲気でサリーと共に出掛けて行く。

 

そんな二人をイェーガーは笑顔で見送った。

 

 

【グリフィンsideEND:幸せな家族】




【設定】

●オリジナルハイエンドモデル

名前:アベンジャー(報復者)

容姿(ハイエンドモデル):黒色の短髪で、紫の瞳が特徴的な東洋人と西洋人のハーフの様な顔だち。黒い軍服とスカート、タイツを身に付け、軍用の黒いコートを肩に掛けている。

容姿(グリフィン潜入):服の色を黒からグリフィン仕様の赤に変え、コートを脱ぎ去っただけ。

専用武器:二丁のサブマシンガンと2本のククリ刀

説明:新たに憎しみを糧として生まれた鉄血の最新ハイエンドモデル。

普段はグリフィンの上級代行官及び研修生達の教官としてリー=エル=シェパードと偽名を名乗って情報を鉄血に流している。

●オリキャラ

名前:サリー

容姿:茶髪で肩まで伸ばした短髪、少女らしい顔つき。グリフィンの制服を主に着ている

説明:グリフィンの指揮官の研修生。 

イェーガーに育てられ、グリフィンの指揮官となる為に研修生として日々、リーや教練官として付いているWA2000から研修を受けている。


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