織斑一夏の裏家業 (アイバユウ)
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織斑一夏の裏家業
息抜きがわりにちょくちょく連載することにしました
俺の名前は織斑一夏。一応中学生だが、実は裏では妙な仕事をしている
簡単に言えば掃除屋だ。依頼されれば悪党に限るが殺しをする
まともに生きている人間を狙う事は無い。というよりも狙う必要はない
依頼主の多くは悪党によって被害を受けた人物だ。いつも特定のメールアドレスに依頼内容と金額を書いてもらう
そして納得がいけば俺は仕事を引き受ける。そして狙撃するのだ。いつも
そう、あの時まではいつもの事だった
「今日も依頼ありか。今度のターゲットも女か。男の恨みは怖いな」
依頼主は女至上主義の組織によってけり落とされて地獄の一丁目まで行ってしまった人物の被害者の男だ
依頼料は100万円。殺害してほしいと。俺は事前に調べた。なにかとセキュリティが固いと思っていたからだ
俺はいつものようにあるビルの屋上にいつも仕事で使っているライフル、M24 SWSを構えて発砲のタイミングを待っていた時だった
「こんな夜に悪い事をしているなんて。いっくん。だめだよ」
いっくん。そう呼んでくるのはこの地上で1人だけだ。
「束さん」
「にゃはは。元気そうだね。私のおかげで仕事に励んでいるって聞いたよ」
彼女は携帯中継基地のアンテナに腰掛けた。俺は気にせずターゲットに銃を構えながらこう言った
「おかげさまで商売繁盛していますよ」
そんなことをしゃべりながらもタイミングを計り発砲した。考えれば俺はどこかが壊れているのかもしれない
もう人を殺す事に何の抵抗もないからだ。もう仕事だと割り切っている
弾は奴の家の窓ガラスを貫通して頭に直撃した
「良い腕だね。他で生かしてみない?」
「例えばどこでですか?」
「束さんのセキュリティ面をやってほしいんだな~」
「あなたを狙える人がいますか」
そう、いろいろと技術を開発しているのだから自分の身くらい守れるだろう
俺にはどうでも良い事だ。この仕事が終われば依頼主との関係は消える。
金はすでに振り込まれている。100万円。それが依頼料だ
「いっくん。どうして」
「これが、俺の仕事です」
そう言うと俺はその場から撤収しようとしたとき、ちーちゃんはこのことを知っているのかなといってきた
「千冬姉さんにいうつもりですか?」
「それはいっくんの出方次第だよ」
「望みを聞きましょう」
「私を守って」
俺はその時から彼女のボディーガードを務めることになった。
そして、ISを動かすことになるまでずっと彼女と共に行動をし続けた
俺の手は血で汚れている。数多くの命を殺めてきた。
だから今更綺麗事など言うつもりはないが
大切な人を守るためなら俺は自ら汚れ役になる事を望む
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一夏の裏家業と束
結局のところ、俺は束さんの護衛役をした時から分かっていたのかもしれない
いづれこうなるかもしれないという事を
「ねぇ、いっくん!今日の夕食は何~?」
「今日はカレーです。それでお仕事の方はいかがですか?」
「いっくんの料理のおかげで毎日順調だよ。ところでいっくん。どうしてISに乗れるのに嫌うの?」
そう、ついこの間。なんとなく触ってしまったら起動してしまったのだ。
だが俺にはそんな物はどうでも良い。俺にとって大事なのはここまで生きてくることができた銃が最高の相棒だ
今更乗り換えるつもりは無い。
「俺にとって最高の相棒は銃だけです」
「せっかく面白いアイデアを考え付いたんだけど~」
「束さん。無茶を言うなら出ていきますよ」
そう言うと泣きついてきた。だめだよ~と言って
仕方がない。束さんは料理とかは苦手なのだ。こういったらあれだが俺が来るまでどんな食生活をしていたんだか
だからそれを切り札のカードにしていつもはやり過ごしていた
「俺はISに関わるつもりはありませんので」
束さんの護衛だからここにいるのであってISに乗るのは契約外だ。
俺は契約しているから一緒にいるのであって。そうでなければとっくに出ていっている
依頼はいくらでもあるのだから。俺はいまでもいくつかの依頼を週に何度か受けている。
おかげで俺の銀行口座は桁がすごいことになっている。いったいどうやったらこんなに稼げるのか調べないのか
政府が甘い調査で良かったと思っている。
ちなみに学校はもう行っていない。興味がないからだ。それに自習で十分間に合っている。
今さら、同年齢の連中と一緒に過ごすとかは考えられない
今のこの生活が何となく好きだ。自由だし、
それに俺はISは嫌いだ。人同士の争いの元だからだ
あれがなければ、俺は誘拐されることもなければ千冬姉にも迷惑をかける事は無かった
油断していたのだ。まさか誘拐されるとは
「いっくん。どうしてそんなに銃にこだわるの?」
「銃は決して裏切らない。手間暇さえかければ最高の相棒だから」
それだけだ。別に友人が欲しくないとかと言う意味ではない
ただ、俺と友人になれば誘拐対象とされる可能性がある。親しい友人を傷つけるのが怖いのだ。
もう2度と。俺の大切な人を奪われないようにするために
だから俺は殺し屋のような真似をしているのだ。いつかあの大切な人を殺した女に復讐するために
そのために技術を身に着けてきたのだ。最初は失敗もした。でも今では狙った獲物は必ず仕留め倒す事から猟犬と呼ばれている
俺としては仕事が受けやすくなって嬉しい限りだが。千冬姉が知ればどうなる事やら
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一夏と千冬とIS学園
束さんのところで護衛を含む家事全般をしていたが
ある時彼女がこんなことを言ってきた
「護衛役として行ってくれない?」
束さんは実の妹である箒の事を心配していた。来週にはIS学園に入学することが分かっていたためだ
「契約は束さんの警護だけです。箒にまで範囲を広げるとあなたを守るという任務が果たせない」
俺にとってはいかに確実に任務をこなすかだ。束さんからは毎月お給料をもらっている
あくまでもビジネスとしての付き合いを基本としているからだ。確かに束さんにはいろいろとお世話になったが
だからといって、IS学園に行きたいとは思わない
「表向きはIS学園のセキュリティ担当していってほしいの」
「俺は束さんと箒を天秤にかけた時は、お世話になっているあなたのことを優先します。それでも良いなら」
そう言うと彼女は嬉しそうな表情を浮かべた
それで決まりっという事でというと、さっそく契約書を作ってもらった
俺はすぐにプリントアウトされてきた契約書の中身を入念に確認した
内容に目を通すこと10分ほど。納得できる結果だったのでサインした
束さんは1か月50万円と提示した。ただ見守るだけならそれでいい
ただし俺はある事を確実にわかってもらうために一文をつけ足した
それは決してISには乗らないというものだ。触れる事もしない。
もし俺がISにのれることがばれた時は任務を中断して、姿を消すと
「徹底しているね。いっくん」
「俺はトラブルは嫌いです」
最終的には俺が折れることになった。ISには絶対に乗らない事を条件にして
「箒を守れば良いんですね」
「そうだよ。生徒としていくの?」
「束さんは俺の経歴は知っていると思いますが」
表向きは束さんの代わりに社長を務めている警備会社の警備員という事にしてもらった
千冬姉が今そこで教師をしている事は事前の調査で分かっていた。何て言って会えば良いか俺は少し悩んだ。
学生としていくのではなくセキュリティ担当としていくという事はどう意味があるのか
束さんによると学園長とはすでに交渉済みとの事なのであとは頑張ってと
そう言って家を追い出された。こちらも契約なのだから仕事をするまでだ
追い出された場所は幸い学園の目の前だったので、すぐに受付の人に事情を話すと園内を案内された
すぐに千冬姉が近づいてきた
「一夏。今までどこにいたんだ?」
束さんのところだと伝えると、大丈夫なのかと聞いてきた
束さんは元気にしていると伝えた
「ところで今日は何の用件だ?」
「IS学園特殊警備チームの担当となった織斑一夏だ」
その言葉に千冬姉は驚いていた。一体どんなことあって弟がこんなことを言い出すのかと。
そう思ったのだろう
「人殺しをしたことがあるのか?」
「3桁入っているかも。束さんのところで生活するまでは技術を磨いていたから」
俺の言葉に千冬姉がショックを受けた表情を浮かべていた。
ある意味わかっていた事だが。何せ自分の弟が殺し屋をしているとは
「武器は所持しているのか」
俺は持っていたアタッシュケースを開けるとそこには手榴弾から拳銃。愛用の狙撃銃が収められていた
「今日からセキュリティ面を担当します。学園長のところまで良いですか」
ここから先は契約事項を確認しなければならない。俺は契約以外の仕事をするつもりはない
興味がないからだ
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一夏と武器商人と家族
IS学園の警備担当者として派遣されて数日。俺は警備スタッフの制服を身にまとって警備をしていた
ここはまるで戦場とは違う平和な空気が流れている。もともとIS学園は女子高だが男性教諭も存在する
国語などの普通科目もあるからだ
「広いな」
俺は定期的に巡回していた。ちなみに俺は束さんが専用に作りだした第4世代の最新ISを持っている
使うつもりなどは今のところないが。だが保険変わりだと言って押し付けてきた
いつも俺は銃を携帯している。警備のためだと言って学園長に交渉した結果だ
ちなみに俺の部屋はまるで火薬庫なぐらいに武器弾薬が詰まっている
入手経路はある武器商人から買っている
「織斑一夏さん!」
後ろを振り返ると1年1組の山田先生が来ていた
「何かトラブルでも?」
「それが物資納入担当者の方があなたをご指名で」
「ああ、ココさんですか。ヘクマティアル御一行様を会議室に案内してくれると助かります」
ヘクマティアルのメンバーとは武器調達といった面でいろいろと役にたっている
こちらは金で払う時もあるが束さんが集めてきた数多くの機密情報で払う場合も
俺は会議室に向かうとすでにココさんが待っていた
「ココさん。お元気そうですね。それにヨナ君も」
相変わらず無表情だが不満であるといったことはすぐにわかった
「頼まれていたアサルトライフルと拳銃の弾。それとあなたがご希望していた情報よ」
俺は内容を確認すると商品は相変わらず1級品だ。情報も確認すると金を用意した
金を用意するといっても電子送金で行うために彼らがいる目の前で操作。振り込まれたことを確認してもらうだけだ
『ピッ』
振り込みが確認できた音だ
「それにしても意外よね。あれだけISを嫌っているあなたが警備担当だなんて」
「皮肉はやめてください。仕事と割り切っているからできる事です」
「そんな君がISを持っている。ISを嫌っているものがISを持つ。それが皮肉以外に聞こえるならどういうわけか説明してほしい所ね」
どこで俺がISを所持している情報を得たのかは知らないが。ここは不用意な争いは避けるべきだ
そうでなければあちらのペースに持っていかれかねない
「お話がそれだけならこのあたりで。自分は見回りの仕事があるので」
俺はそう言うとココさんとの商談を終えると会議室を出ていった。外にでると千冬姉がいた
「一夏、お前はどうして」
「これが俺の生き方だから。変えるつもりもないし、変わろうともしない。俺はISのおかげですべてを失った」
「一夏、お前はそれで良いのか?」
「俺は契約の仕事をするだけ。それが終わればまた仕事をする。たとえ血にまみれたとしても俺が行く道は変わらない」
例え千冬姉に止めようとしても、俺の歩みは止まらない。もう姉と弟の関係は完全に断絶している
廊下を歩いているとある人物と出会った。生徒会長の楯無だ。俺はすぐに進む方向を変えて彼女から避けた
あの女は危険だからだ。裏の事を知り過ぎている。特に俺のことを。だから嫌いなのだ
「織斑君。ちょっと良いかな?」
「残念ながらこれから警備がありますので。では失礼します」
すると彼女はこう言ってきた。また逃げるんだと。
「好きに解釈すると良い。だがな。俺は必要なら親兄弟。飼い犬までも殺す。情報を漏らせばお前の大切な妹がどうなるか」
そのあたりを考えるんだなと言うと俺はパトロールに戻った
俺にとって家族など興味はない。とっくの昔に見捨てられているのだから
唯一家族と言えるのは束さんくらいだ。だが今は契約で動いている
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一夏と契約と束
夕方になってもIS学園の訓練施設では多くの女子生徒が訓練していた。
だが彼女らはまだ本物の戦場を知らないゆえの甘さがある様に感じられた
ISでは絶対防御があるから死ぬことはほとんどないが。生身の体で対決したら死者が出る
俺はそういう場面を何度も見てきた。殺し合いの現場はいつだってそうだ
自分が生き残るか相手を殺すかのどちらか。嫌でもどちらかを選ばなければならない
俺はいつものように訓練を眺めていてホルスターに入れている銃を抜こうとしたが
「相変わらずいっくんの気配察知はすごいね」
突然来たのは束さんだ。ちょうど彼女の妹である箒が訓練をしていた
「様子でも見に来たんですか?」
「そんなところだよ。ところで、今夜はお仕事だって聞いたよ」
そう、今夜は仕事だ。依頼料はたっぷりともらっている。女性至上主義者の幹部だ
消すように依頼された。
「殺してほしいと。かなりの悪い人であることは事実なので。それが何か?」
「いっくん。どうしてもやるの?」
「契約ですから」
束さんはため息をついた。呆れているのかもしれないが。女性至上主義者は嫌いだ
俺は男性至上主義も認めるつもりはないが公平な社会であれば良いという考えだ
「もう1つ契約をしない?」
「だめです」
すでに契約をしているのに別の契約をすれば履行できない可能性がある
それに束さんの言ってくる願いが何となくわかってきた。きっとISを使えというのだろう
もしそんな願いなら、俺は確実に学園から姿を消すことになる
あんなもののせいで俺は苦しめられているのだから。確かにココさんの言うとおりだ
ISを持ちながら嫌っている。これがどれだけおかしい事かは分かっている
「契約の内容も聞かないのでどうして断るの?」
「束さんは俺にIS学園に入れって、言いたいんじゃありませんか。憎むべきもののところに行ったらすべてを殺すしかない」
「いっくん」
「俺がここにいるのは契約だから。箒の様子を見るという名の」
それに今更俺が目の前に現れるのも嫌な物だろう。この血にまみれた俺に近づくことなど
俺の手には数多くの血塗られた跡が残っている。だからなのかもしれないが俺は人と仲良くするつもりはない
仲良くなり過ぎたら、いつか的になった時に情が出てしまう。俺はこれでもプロだ。アマチュアとは違う
できるだけ距離を置いた方が良い。迷いなく殺せるから
「いっくん。そこまで」
「もう決まっている事ですから」
俺はそう言うと警備のために巡回に戻った。
今は平和かもしれないがいづれは大騒ぎが起きるような気がしていた
ココさんから得られた情報によるとある組織が介入したがっているとの情報が入っていた
引き続き調査を依頼するためにお金は払っている。この学園の安全を守るためなら多少の出費は仕方がない
「何もなければ良いが」
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一夏と楯無と射撃訓練
巡回を終えて俺はいつものように訓練用に設置された射撃訓練施設に向かおうとした
ここでの警備は腕が鈍ってしまうからだ。仕事に差し支えては問題だ。
幸いまだ数時間はある。依頼主は近くに住んでいる女性至上主義者でいろいろと悪事をやっている
そのため男性たちからはかなり恨まれていた。射撃訓練施設に向かおうとしたとき、またあの楯無が近づいてきた
「何か用事でもあるのか」
「あなたが受けている今回の仕事だけど私達に任せてもらえないかしら」
あの女は何をふざけたことを言っているのかと思った
「悪いが1度引き受けた仕事は断れない。それとも何か?あの女に未練でもあるのか」
「そうじゃないけど。殺されるといろいろと後始末が面倒なのよ」
「悪いが、その依頼は無理だな。俺は引き受けた以上は必ず仕留める」
コードネームは猟犬と呼ばれているのだ。俺のことをみんなそういう。裏社会の人間は
一度でも食らいついたら殺すまで止まる事を知らないからだ
殺す事で快楽を得ているのかもしれない。一応自重はしているつもりだが、俺の頭のネジは少し緩んでいるのかもな
「そう、だったらここで死んでもらうしかないわね」
「校内でのIS展開は規則違反だ。ところでそろそろ出てきたらどうだ。こそこそと隠れている織斑先生」
すると建物の陰から千冬姉が出てきた。ずっと話を聞いていたようだ
子供同士で物騒な話し合いをしているなと言ってきた。確かに物騒な話だがこっちは生活がかかっている。
依頼主にできませんでしたでは報酬の先払いや今後の仕事の依頼に差し障る
「すみませんがもう行きますので」
「待て、一夏!お前はどうしてそこまで」
「俺にもわからない。どうしてなのかは。でもこれだけは言える。俺と千冬姉はもう他人同然だ」
そう言うと俺は射撃訓練施設に向かった。楯無はこういった。
猟犬の名がふさわしい理由が分かったわと。俺は別にどんな呼ばれ方をしても良い。
ただ、千冬姉の弟だなというような扱いをする奴には鉛の弾をプレゼントしてやる
俺は千冬姉の添え物ではない。織斑一夏という人間なのだという事を嫌というほどわからせてやる
かつて1度だけだが俺は経験がある。さすがは織斑千冬の弟だなといった奴がどうなったか
そいつは今頃地面の下で眠っている。俺は俺だ。織斑一夏に違いないのだという事を分からせてやるだけだ
射撃訓練施設に到着するとそこでは山田真耶先生が銃を撃っていた
彼女はISでも狙撃を主に得意としていた。だからこそなのかもしれないが、本物を撃っていても違和感はない
「山田先生も射撃訓練ですか」
「一夏君。どうしてここに?」
「俺もセキュリティ担当なので定期的に銃の訓練を。もちろん学園長の許可はとっていますのでご安心を」
そう言うと俺は腰のホルスターに入っているグロック17を取り出すと的に向かって発砲した
5m先の目標ターゲットに向けて発砲した。人型の的の頭部に10発中、6発を頭部に、残りの4発を胸に命中させた
「す、すごいですね」
まだ皆さんと同じ歳なのにと彼女は褒めてくれたが俺にとってはこれが当たり前だ。
そうでなければプロなどやっていられない
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一夏とISと楯無
その日の夜、東京都内のある雑居ビルの屋上
俺はいつものようにそこで狙撃ライフルを構えていた。
ターゲットの女は高級マンションのリビングでかなり喜びの笑みを浮かべていたが
その笑みが死へのラストスパートだとは思ってもみないだろう
いよいよ発砲しようとしたとき、突然邪魔が入った。あの楯無の関係者だ。面倒な事をしてくれる。
あの女を守ろうとしていた。俺は調査をした時からターゲットがかなりの悪さを知っていた。
何十人もの男性が被害にあってきたか。そんな彼らの嘆きを放っておくわけにはいかないし、これは仕事だ
迷うことなく発砲しようとしたとき、上に気配を感じた
ISを起動させて俺の上にまるで立ちふさがるかのようにいた
「一夏君、悪いけど彼女には法の裁きを受けてもらう事になったわ」
「俺は仕事をさせてもらう。悪いな」
そう言うと携帯電話を取り出した。実は狙撃はフェイク。実際は爆死をというのがリクエストだ
どうやら相当な怒りを抱えていたようでただ撃たれて死ぬだけでは物足りないようだ
だから俺は事前に部屋に侵入して爆薬をセットさせてもらった
携帯電話の番号を発信すると、マンションのあの女の部屋から大規模な爆発があった
「一夏君!」
「俺は仕事をする。邪魔者は抹殺するのが俺のやり方だからな」
「あなたって人は!?」
お前は仕事は仕事と割り切れないところが甘いなと指摘させてもらうと撤退しようとした
だが、彼女の感情はかなりお怒りのご様子だった。まぁ、俺の仕事を邪魔した段階でこうなる事は想定していたはずだ
それができないようでは本当の暗部として生きていくことはできない。
綺麗事では人は救えない。そしてルールの中で居続けるのはただのどこにでもいる家庭で飼われているペットと同じだ
そのきれいごとを捨てることができなければ、プロとは言えない
「俺は別に殺人を正当化するつもりはないが、悪者はいつか裁かれる。だが法ですべてが解決するわけではない」
そう、法律は味方ではない。ただのシステムに過ぎないのだから。
どれほど正しい法律でもそれはシステムであり、システムが機能しなければ法律も機能しない
「楯無、これだけは言っておく。俺の目の前で立ちふさがるというならそれなりの覚悟と度胸を見せるんだな」
そうしなければ相手にならないというと彼女はさすがに怒りを覚えたのかISで攻撃してきた。
俺はとっさに嫌だと思いながら、自分の専用機を起動させた。
「あなた!ISを」
「俺はISの開発者である束さんのところでセキュリティを担当していた。ISぐらい持っていても不思議ではないだろ」
「でも男であるあなたが」
「それについては誰にもわからないな。だがこれだけは言っておく。邪魔をするな。俺は容赦はしない」
決してなと言い切ると屋上から引き揚げていった
俺はその途中で携帯電話で束さんに連絡を入れた
大至急証拠となる映像データを削除してもらうためだ
「束さん、1つお願いがあります」
『もうやっているよ!いっくん!』
「仕事が早くて助かります。できるだけ最優先でお願いします。もし朝までに終わらなかったら面倒な事になるので』
「わかったよ!」
「ではよろしくお願いします」
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一夏とフェンリルと楯無
翌朝、楯無はしつこいぐらい俺のそばから離れようとしない。監視するならもっとおしとやかにしてほしいものだが
「楯無。授業は良いのか?」
「私は重大な使命があるわ。あなたの監視よ」
「それで自分の仲間が殺されたから仕返しをしてやろうとしているのか」
その言葉に楯無は苦々しい表情を浮かべた
俺は再度警告した。俺は自ら選んだレールの上を走っていく。邪魔をしたら破壊するまでだと
「1つだけ教えて。あなたはどうしてそこまで冷徹になれるの?」
「ならこう言わせてもらう。仕事とプライベートは分けるべきだ。俺は仕事は仕事。プライベートはプライベートとわけている」
「人殺しのくせに!」
「俺は生まれついてのおかしなサイコパスかもな。でもこれだけは言ってやる。お前は甘すぎる。暗部のトップにいるなら割り切れ」
人はいつか死ぬのだ。それが遅いか早いかの違いだ。
楯無は割り切れていないのだろう。暗部の長でもあるのなら割り切らなければならない
たとえ人の生死にかかわる事でもどこかで割り切る事が必要なのだ
「確かに甘いかもしれないわ。でもあなたは」
「俺は世界のためにやっているつもりだ。お前たちIS乗りのせいで世界がおかしくなったから綺麗にしてる」
それだけだというと俺は朝食を取りに行った。廊下を歩いていると、山田先生に出会った。
彼女とすれ違った時にわずかにだが嫌な気配を感じて彼女を押し倒す形で横にした
すると銃声が遠くから聞こえてくるとともに彼女がたっていたら頭部の位置の壁に銃弾が埋まっていた
俺はとっさに無線機を手にすると。コードレッドと宣言した。その後強引に柱の陰に隠れるがこちらからは手が出せない
壁にめり込んだ弾を見て、使用した銃器はおそらく対物ライフルであることはわかった
「仕方がないか」
俺は山田先生に合図したら全力で走るように指示した。
「行きますよ。3、2、1、今です!」
俺と山田先生は必死に建物の入り口に向かって走った。
ただ扉にはロックがかかっているのは分かっているためホルスターから銃を抜いた
錠前の部分だけに弾を2発ほど発砲して強引に開錠して建物に入った
「いったい誰が?」
その時だった俺の携帯電話に着信が入ってきた
『久しぶりだな。猟犬』
「まだしぶとく生きていましたか。フェンリル先生」
コードネームフェンリル。俺に銃の扱い方からテロの起こし方まで教えてくれた教師のような存在だ
名前は分からない。自分でも忘れたらしい。だから誰もがフェンリルというコードネームで呼ぶ
腕は超一流だ。
『俺の教え子の実力を確かめたが、この距離でも避けれるとはさすがは俺が見つけた逸材だ。テストは合格にしてやる』
「それはどうも嬉しい事で」
『またいつでも狙ってやるからそのつもりでな。俺達殺し屋に安心する場所は存在しない』
そう言うと通話が切れた
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一夏と学園長と楯無
朝食を取るために食堂に到着するとすでに生徒たちで混みあっていた
俺はいつものように朝食として定食を取ると箒が近づいてきた
「おはよう。箒」
「そうだな。ところでどうしてIS学園で警備の仕事をしている?」
「いろいろと事情があるんだ。それにこれは契約だ。俺は契約通りの仕事をしているだけだからな」
ルールに縛られるのは嫌いだからなと言って俺は外のテーブルに朝食を持っていった
そこはいつもは俺の指定席なのだが今日に限っては別だ
いやな女がいた。まるでISが女しか使えない事を誇らしげに思っているセシリアというやつだ
無知というのは罪だとよく言うが。まさにこの女はそれに分類される。俺がISに乗れることを知ればどんな顔をするか
『警備担当の織斑一夏さん、至急学園長室まで来てください』
「何かあったのか?」
おそらく先ほどの狙撃事案についてだろう。報告はしておいた。詳しい調査は学園の治安を守る部署に依頼しておいた
その報告ができたのかもしれない。俺は面倒だなと思いながら、諦めていくしかないと思った
俺は朝食を早々に食べるとすぐに学園長室に向かった。
「失礼します」
「一夏君、朝から悪いね」
室内には学園長に更識楯無。それに千冬姉に山田先生がいた
「いえ、こちらからも報告が遅れてすみません。あの狙撃は師匠からの俺へのテストでした」
学園の治安を乱す事をして申し訳ありませんと謝罪すると、学園長はそれなら安心だと発言した
「今後このような事がないようにしておきますので。他に何か用件でも」
「生徒会長をしている更識楯無さんから報告があってね。君がISを使えると」
俺の動きをけん制しようというのだろう。警備担当ではなく生徒として飼い殺しにしたいと思っての方策だろうが
俺はISは女性だけにしか反応する事は周知の事実ですという
「そうかしら。私の目の前でISを展開してくれた記録映像があるのに誤魔化せると」
「もし仮にISを動かせたとしても俺には関係のない話です。それに自分の身は自分で守れますので」
他に用件がなければ失礼しますと言って部屋を出た。
面倒ごとに巻き込まれるのは俺の運命なのかと思いながらも巡回に戻った
巡回に戻る前に警備室に行き、今日のイベントを確認する事にした
いろいろと把握していなければ警備にまわれない。
俺は束さんとの契約で基本的に箒の警備についている方が多い
今日の箒の予定で校舎からでるのはスタジアムでの実践訓練のみだ。俺はそこで観戦をしておくだけで良い
なにかあれば最悪、自分の持っているISを動かす。あとは出たとこ勝負だ。
仮にこの件で圧力がかかっても束さんにもみ消しをしてもらうだけだ。
映像やセンサーなどのデータを改ざんすればあとは何とでもなる
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一夏と楯無と無人機
昼休み中だ。実戦訓練が行われるので俺は観客席から見ていた
実戦訓練中は特に警戒が必要だ。千冬姉が担当しているようだがなかなか厳しく訓練している
「あなたも参加したいんじゃないの?」
「楯無、殺されたいのか?お前と俺と勝負をしたらどうなるだろうな」
「私はこう見えても学園最強よ」
「ISに関してはな。だがお前には弱点がある。妹だ。俺にとってはどうでも良いが」
お前ならどう感じるだろうなと強気で言ってやった。するとすぐに感情をあらわにした。怒りの感情をだ
プロとしては失格だ。本当の暗部なら弱点を残すことはあってはならない
俺はそうやって鍛えられた。自分の弱点こそ、真の危機だと
「本気で言っているの?!」
「試してみるか?その本気ってやつを」
その言葉に楯無はまさに怒り心頭といった表情を浮かべた
プロとしては一流とは言えない。俺はすべてを捨てた。千冬姉に何かあっても俺は自分の身を優先する
そうやって生きてきたのだから
「切り捨てるのが上手なのね」
「俺はお前とは違う。一匹狼だ。契約を履行すればそれでおしまいの関係なんだからな」
「‥‥‥‥‥‥気を付ける事ね。私だってあなたの背中を狙っている事を」
「それはこっちも同じだ。俺はこの学園で篠ノ之箒を守る事が契約だ。それ以外の物に興味はない」
そうだ。俺にとってはここにいるのは束さんとの契約があるからだ。なければとっくにどこかに行っている
興味などないからだ。ISなどに。確かにココさんの言ったとおり皮肉な現実だ。
フェンリルからいろいろと教えてもらった時にココさんと1度だけ仕事をした。
なれない実戦だったが良い経験だった。その時だ。警報が鳴ったスタジアムのシールドが破られた
それと同時に俺の携帯電話に連絡が入った。束さんからの緊急連絡だ
「緊急ですね」
『ごめんね!でもその無人機は束さんが送ったものなの。もし危なくなったら助けてあげてくれない?』
「そのためにこの弾をくれたんですか?絶対防御を破る弾丸を」
『まぁね。いっくんの紹介してくれたやつに頼んで作ってもらったんだ!天才でしょ』
実はココさんから売ってもらった弾丸には特殊な製造工程でISの絶対防御をぶち破る事が理論上可能な物が含まれていた
ただし、実際に試し打ちするわけにはいかないので、一か八かの賭けになるが
おかげで値段が高かったが。もしそれだけのことがやってのけることができれば価値は数千倍に高まる
ISが絶対に安全という保証が消えるからだ。明らかに生徒たちは突然のことに戸惑っていた。それは千冬姉も同じだが
楯無はすぐにシールドをぶち破って観客席から内部に入った
俺はその開いたシールドから発砲しようとした。あの弾を使って
発砲した結果、反動がかなりかかったが威力は十分あった
絶対防御のシールドを貫通して弾はコアがある部分に命中した
すると大爆発を起こした。コアに爆弾でも仕込んでいたのかもしれないが
生徒たちが爆発したISに視線を取られているのを確認すると素早く銃をホルスターに直してその場から撤収した
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一夏と保険と生徒会
騒動が一段階ついた時、俺はまた呼び出された。ただし今回は学園長室ではなく生徒会室だったが
室内には楯無のほかにのんびりしている女子がいた。さらに眼鏡をかけたいかにも仕事できる秘書みたいな女子も
「どういうことか1から10まで説明してくれるわよね」
「悪いがこっちにも守秘義務っていうのがあるんだ。俺の行為は篠ノ之箒を守る。そのためならあらゆる情報を封鎖する権限がある」
楯無はどうして俺にそこまで苛立っているのかは分かっている
何もできなかった自分が不甲斐ないと思っているのだろう
「あなたのしたことは明らかに異常よ!銃弾でシールドを破れるわけが!」
「それについては俺は学園と契約を結んだ時に約束したはずだ。俺は俺が抱える一切の秘密を明かさない事を条件に警備を担当すると」
そう、束さんからの脅しのおかげでこの無茶な合意が成立したのだ
感謝して今度は俺の手料理でお礼をしておかないとな
「‥………こっちは良いのよ。あなた1人消すくらい」
「ならこっちは面白い事を教えてやるよ。もし俺に何かあればフェンリルが動く。事の重大さは理解したか」
フェンリルといった瞬間、楯無の顔色が変わった。さすがは裏社会の事をよく知っている事のだけはある
フェンリルの名前を聞いて恐れない者は少ない。たいていの人間はフェンリルに関わろうとはしない
何故ならフェンリルは世界でも有数のテロリストだからだ。いや、テロ行為もすれば金さえ払えば何でもしてくれる
拉致監禁。殺人もいとわない。俺は保険をかけておいた。俺が死亡すればその原因を作ったものに仕返しをするように
毎月一定金額を送金して保険としている
「あなた。まさか」
「ご想像通りだろう。俺はフェンリルの生徒だ。だからあまりしつこいとどうなるか」
次に俺に敵対したら、妹が天国に行くことになると警告してやると余計にむきになる
プロとしては1流とは言えない。俺は生徒会室を出ると警備室に戻った。警備室には俺専用のスペースが確保されている
なにかあった時ここからなすぐに情報確認ができるからだ
「それにしてもだ。本当にISの絶対防御を貫通することができるとは、驚きだな」
本当に撃ってみなければわからないと聞かされていたため、その銃の発砲による反動は思いのほかだった
少し手にしびれが残っているがこれも時間の経過によって治ってくれるだろう
この弾を製造するのにかなりの時間とコストがかかったがそれに似合うだけの価値はある
俺も武器商人としてやっていけるかもしれないが。俺にその気はなかった
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一夏と千冬姉と楯無
夜、俺が警備室で眠っていると何かの気配を感じた。
とっさに俺は枕の下に置いている銃を手にして、警備室内で誰がいる確認した
基本的に夜の警備室に詰めているのは1人の警備担当者と俺だけだ。だがいつもとは違う
そう感じ取ることができた。
「誰だ。こんな時間に」
腕時計を確かめるとすでに午前3時だ。
迷惑な客でなければ良いがと思いながらも拳銃を片手にもち、慎重に俺専用のスペースの仕切り扉を開けた
すると警備室の電気が非常灯になっていた。おかしい。なにかあったとしか考えられない
一夏は腰につけている無線機で他の警備員に状況確認のメッセージを送った
「誰だ!?」
するとそこにいたのは千冬姉だった
「千冬姉、驚かさないでくれると助かるんだが」
「少し話をしても良いか?」
俺は銃をホルスターに収めるとコーヒーメーカーがあるところに行き、カップにコーヒーを注いだ
それを千冬姉に渡した
「こんな時間に何かあったのか?」
「一夏、少し話がしたい」
「………少しぐらいなら」
俺はそう言うと警備室に設置されている応接セットのところまで移動すると対面する形で座った
「どうして束のところにいた」
「契約だから。守ってくれるだけで良いといわれた。それに俺は契約を重視する。それが犯罪であろうと悪人を処罰するだけだ」
「そんなことは警察に!」
「法律では人は裁けない。それに法の外でしか解決できない事もある。俺はもう紙一重を超えているんだ。今更戻るつもりはない」
紙一重の一線を越えた。もう織斑一夏には戻れない。俺は猟犬だ。いったい食らいついたら離さない
必ず仕留め倒す。だから依頼がよく来るのだ。この猟犬というコードネームもフェンリルに育てられたからつけられた。
フェンリルよりは小柄だが、いったん食らいついたら離さない
「お前はそれで」
「千冬姉、これが俺の生き方なんだ。たとえ何人に止められたとしても道は変わらない」
俺は再び眠るには話過ぎたと思い夜間巡回に向かった
静かな夜だ。穢れの知らない星空だが、俺は穢れにまみれている
もう2度とこの穢れを落とす事はできない。この仕事についてから分かった
巡回警備をしていてすぐに殺気に気づいた。俺は気づいていないふりをしながらもスタジアムの方に移動した
そして、警備担当としてのIDカードでスタジアムに入る。中央に立つとそろそろ隠れていないで出てきたらどうだと言ってやった
すると楯無が現れた。懲りない女だなと思った
「それで今回はどんな趣向か聞いておこうか」
「生徒会長として判断をしたまでよ。あなたの実力を判断させてもらうわ!」
いきなりISを起動させるとこちらに向かってきた。殺し合いをしたいみたいだ
俺は起動させることは明らかにこの状況下では不利だと考えた
おそらく彼女の狙いは俺のIS所持している事を分からせて学園に取り込もうというつもりなのだろうが
その時だ。千冬姉が割り込んできた。今回ばかりはナイスタイミングだとほめてやりたい
下手をすれば殺していたかもしれないからだ。楯無を
「織斑先生!なぜ止めるんです!」
「ISはスポーツだ。人殺しの道具ではない」
俺はそれを聞いた時思わず笑いだしてしまった
「よくもそんな茶番が言えるな。千冬姉。最初に軍事的に利用したのは千冬姉なのに」
俺はそう言うとスタジアムを出ていった
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一夏と白騎士事件と亡国機業
俺のあとを追うかのように千冬姉は近づいてきた
「一夏、それをどこで」
「分からないと思っていたのか?千冬姉の戦いスタイルは分かりやすい。昔と変わっていない」
そう、あの白騎士事件の時の映像を確認すればすぐにわかった。あとは束さんに吐かせた
食事をエサにすると素直にしゃべった。こんな世界にした事には申し訳ないと言っていたけど
「あの戦いで何人が死んだからとは言わない。でも人殺しには違いない」
「一夏。やめてくれ!」
「現実さえも見えないのか?人殺しには違いない。俺達姉弟は」
「一夏!」
たとえどんなに苦しくても、それを抱えて生きていくしかない。俺の唯一の才能は人殺しができることだから。
千冬姉は過去から逃げている。だから未来を見ようとしない。
今の現状に甘んじているのだ。未来を見なければないのに
「千冬姉。過去ばかり見ていたら現実を見失う」
俺はそう言うと警備室に戻る途中で無線機からある連絡がきた。不審人物がいると
その場所に行くと数名の女性と少女がたっていた。相手の素性はすぐにわかった。俺の中でのブラックリストに載っているためだ
「亡国か。何の用事だ」
「織斑一夏。我々と手を組まないか。お前の実力はここではいかせていない。もっと活躍できる場を提供したいと思っている」
「具体的にはどんな場所だ?」
「我々と一緒に未来を変えてみないか。こんなおかしな世界、破壊したとは思わないか」
確かに今の世界はおかしい。ISが登場する前はまだ平等があった。しかし今はどうだ
現実はおかしな方向に向かって進んでいる。もう引き返せないところまでだ
「そちらの取引材料は」
「我々はISを潰して平和な世界に。あんな物があるおかげで男女の関係がおかしくなった。こちらの協力者にキャスパーがいる」
そう言われてはい、分かりましたとは答えられなかった。こいつらの事についてはブラックマーケットでもよく話に出てくる
特にヘクマティアル家のキャスパーとはビジネスがあるとココさんからすでに聞いていた
「少し時間を。すぐには返答できない」
分かったというと彼らは姿を消していった。
それにしても厄介な事になったものだ。キャスパーと亡国機業に関連性があるとは
ココさんに情報をもらう必要がある。どれだけあの組織がまともなのか。そして正しいのか
まぁ、世の中正義なんてものは無くても進むものなのだが
「守るべき者ではない連中とは俺は契約しないからな。正義の味方とは言えないのは俺も同じか」
俺は正義なんて言葉を口にしているが正義なんて言葉は誰から見た正義なのだろうか
自分から見た正義。相手から見た正義。第三者から見た正義
どれが正しいのかはわからない。俺達姉弟は血にまみれた世界で生きている
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一夏と過去とラウラ
俺は警備室のソファで仮眠を取っていたが。少し感情を露にしたことに少し後悔していた
俺はテロリストと言っても問題ないレベルまで訓練を受けてきた。そのうえで重要なのは感情を表に出さず。常に冷静沈着にいること
それがどれだけ命を助ける事になるかは身を持って知っている。ある女性至上主義者を殺したときの記憶が戻ってきた
あれはフェンリル先生に初めてお前が狩りの番だといわれて、狙った。俺はすぐにこんなものは終わると思っていた。
たった1発の弾丸で頭部を吹っ飛ばしてやるだけでいいのだから。だがあの時はまだ甘いと先生に言われて徹底的に訓練をさせられた
長距離狙撃は対物ライフルでの狙撃だ。800m先に離れた相手の頭部をまるでスイカを割るかのように吹っ飛ばした
その時にこう言われた。お前はよくやっている。だが俺みたいに。そしてバカみたいに壊れるなと
善人には手を出すなと言われた。俺達はテロリストだが殺すのは悪党だけだと
「いやな記憶だな」
俺はソファに毛布かけて眠りについた。片手には銃を持って
警戒を怠らない方がいい。どこから弾が飛んでくるかわからないのだから
朝日が昇り、今日も1日が始まろうとしていた
俺はいつものように銃などの装備を整えると警備スタッフの制服で警備室を出た
「今日も一日頑張るか」
俺はいつものように朝食を取りに食堂に向かった。その途中で何か嫌な気配を感じた。
凄腕の敵というわけではないが、軍人気質の気配だ。おおよその見当はついている
ラウラ・ボーデヴィッヒだろう。あの女も同じだ。ISが持っているものが優秀なのだと。
そしてあの誘拐事件の時に俺を助けに来た結果、千冬姉が大会で優勝できなかったことを恨んでいるのだろう
仕方がないと思いながら俺は人通りがほとんどない通路を使った。もし狙いが俺ならついてくるだろう
その予想は見事に的中した
「織斑一夏だな」
「もっと殺気を消す事を覚えた方がいい。ラウラ・ボーデヴィッヒ」
「お前が猟犬というのは本当なのか聞きたい」
「だとしたらどうする?」
「フェンリルの居場所について話してもらう。無理やりにでもな!」
彼女はISを起動させてこちらにレールガンをぶっぱなしてきた。派手な演出だ
どうやらフェンリルに恨みがあるようだが。こんなことは日常茶飯事だ
教え子になった時に言われた。必ず居場所を吐かせようという目にあうと。
その時喋るくらいなら直前で死を選べと。喋ったところで殺されるのだから自ら幕を引けと
俺はとっさに右に避けてこういってやった
「残念だが、居場所は知らない。時々向こうから接触してくるだけだ。ところで狙いは何だ?」
「お前達が起こしたドイツ大使の殺害に関する事だ。身に覚えがあるだろう」
「ああ、その件か。あの女は殺されて当然だ。男をただの道具としか思っていない女だったからな」
特にだ。あの女の場合、男はこの世からいなくなればいいとまで豪語する女至上主義者だ
ISを使って議会にまで圧力をかけていた。あの女の死は政府からの依頼だった
表向きは事故死になっているが。実際は政府上層部からの依頼で俺達が抹消した
どこでそのネタを嗅ぎ付けたのかは知らないが。いらぬ芽は詰んでおいた方がいい
「世の中知らない事の方が幸せという事もあると思うが」
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一夏と簪と銃
まったくこれだからお子様困るものだと俺は思っていた。
世の中そんなきれいごとでは生き残れない事を分かっていない
それに殺した女は悪事をやり過ぎた。だからターゲットにされた。つまり死を持って償ったという事になる
それを理解できないのは事実を知らないからだろう
「ラウラ・ボーデヴィッヒ。真実を知ればお前も俺と同じことをしただろうな。あの女は犯罪者なのだからな」
そう言うと彼女はますます表情を怒りモードに持っていったようだ
あんな女のどこが良いのか。俺はひとまずこの場で携帯電話である人物に連絡した
「悪いんだが、来てもらえると助かる。楯無」
楯無はどうして私がそっちに行かないといけないのよといった感じの返答だったが
ドイツ代表候補生を殺しても良いなら来なくてもいいぞと言うと仕方がないといった感じの声ですぐに向かうと伝えてきた
意外とすぐにやってきた楯無はどういう事情なのか説明を求めてきた
「俺が殺した女について恨んでいるらしい。悪いが学園内での揉め事は生徒会で対処してくれ。俺は外部との警備だからな」
「あなたって、人使いが荒いわね」
「立っている者は親でも使えというだろうが」
とにかくあとは任せたといって俺はその場から去っていった
俺はその後、いつものように巡回をしていた。外部から侵入された痕跡がないかどうかなど徹底的に調べた
今のところ異常は確認されていない。元々治外法権の場所だし本土とは半分隔離みたいな学園だ
出入すれば何かしら痕跡が残る
「一夏さん」
突然声をかけられたが、誰かの姉妹であることはよくわかった。あの楯無の妹だ
「どうかしたか?」
「1つだけ聞いても良いですか?」
「かまわないが」
「どうやったら強くなれますか」
ココさんから渡された資料にあった。コンプレックスを抱えていると。さすがはヘクマティアルの情報網だ
暗部の内部にも流出元がいるのだろう
「ならちょうどいい。これから銃の訓練する所だ。付き合うか?」
「はい」
俺は昨日言った射撃訓練室に行くとホルスターに入れている銃を抜いた
「撃ったことは?」
「ありません」
「楯無も妹に人殺しさせた事はないだろうな。俺と違って」
すると彼女はこう問いかけてきた。どうしてそんなに簡単に割り切れるんですかと
そんなものは簡単だ。相手を人間だと思うから戦えないのだと。
自分に向かって殺そうとしてくる敵だと思えば自然と体が反応するようになると言った
事実なのだから仕方がない。相手が人間だと思えば誰だって抵抗がある
だがそうでなければためらいもなく撃つことは比較的容易だ。俺はいつもそうやって仕事をしている。
俺は予備の拳銃を渡して撃ってみるかと聞くと良いんですかと逆に聞き返してきた
「別に構わない。予備だからな。そっちは」
彼女は慎重に銃を構えると発砲するが、初弾は少し中心から外れた
だが、初めて撃ったわりには上出来の部類だ。
「外れました」
「だが筋は良い。鍛えれば良い腕の狙撃手になるだろうな」
だが俺みたいになるなよと言った。俺がいる世界は汚れ切っている。
綺麗事だけでは生きていけないのが現実なのだから
今度は俺の番だ。俺はターゲットにいつものように頭と胸にそれぞれ発砲した
「すごい」
「俺みたいになるなよ」
「でも強いですよね」
それはそうだが、俺の場合は必要に迫られたからだ。こうでもしなければ生きていけなかったのだから
「俺のような生き方をしていると長生きはできないぞ。ただ言える事は常に自分の信念は捨てない事だ。そうすればいづれは」
俺は銃を返してもらうと訓練施設を出ていった
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一夏と姉妹と成長
いつものように巡回をしていると、俺が持っている携帯端末に侵入者ありの情報が
どこの間抜けか知らないが裏口からノックするとは。センサーが各所に設置され小さな異変でも俺の端末にデータが送られてくる
「行ってみるか」
少し軽く走りながらそこに行くと、そこには意外な人物がいた
楯無だ。どういうつもりか知らないが。わざわざ学園の裏側に誘い出すためにセンサーを使うとは
「あなた、どういうつもり?私の妹に」
「ずいぶんとお怒りだな。さすがは妹を溺愛するあまり遠ざけてしまった姉の出番ってわけだ」
妹を心配するのは分かるが彼女の自由をなくす権利はないはずだ
小鳥がいつかは巣立ちをするように、更識簪にも成長していくにはハードルを越える事が必要だ
「ふざけないで!」
楯無はどこで入手したかは知らないが銃を持っていた
「俺に銃を向けてきたやつで生き残っているのはフェンリル先生だけだ。死ぬ覚悟はできているのか」
あの人には俺はまだ勝てない。実力差があり過ぎるからだ。
だがいづれは俺の地位にしたいと思っている目標だ。嫌な目標というやつもいるかもしれないが
そんなことはどうでも良い事だ
「何を吹き込んだの!」
「もっと冷静な話し合いをするべきだと俺は思うが」
「うるさい!」
相手がトリガーに手をかける前に素早く対応して押し倒した。
「銃の扱いが下手だ。それにISに頼り過ぎだな。冷静に対応できないから安全装置がかかったままだというのに」
残念だったなと伝えて、さらに銃は警備担当して預かっておくと言ってその場から去ろうとした
これでおさまるようなやつではない事は分かり切っていた
「あなたにはわからないわ!この仕事がどれだけ汚いか!」
「だから妹を遠ざけた。それで納得すると思うか?実の妹を思うのは勝手だが、仲間外れされた者の気持ちも考えてやるべきだ」
「それは・・・・・・・」
「ただ遠ざけただけでは誰もが納得すると思うな。本音で語り合う事も重要だ」
俺はそう言うと警備室に戻っていった。このセリフには自分自身への戒めでもあった
俺にも千冬姉との関係は必ずしも良いものとは言えない
改善したいと思っているが、もし接近しすぎて何かあった時には敵に塩を送る様なものだ
こういう家業をしていたら家族という関係は自らの命の代償となりかねない
警備室に戻ると俺はまたソファで仮眠を取り始めた。
ただし手には常にホルスターに入っている銃をいつでも抜ける状況でだが
「眠っている間もこんな習慣がつくなんてな」
楯無にあんな助言をすること自体おかしいのだから。俺も甘くなったと言わざるえない。
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一夏と思い出と箒
俺ははっきり言って人づきあいが好きなタイプじゃない。
だが、彼女だけは別だった。特別な存在だった。俺にはまぶしすぎる存在だったのに。俺のせいで犠牲になった
その時に誓ったのだ。もう2度と大切な人を失う事はさせないと。孤独に生きていく。そう決めた
俺に残ったのは彼女が死ぬ間際に渡してくれたペンダントだけ
それが俺にとってたった1つの思い出の品になるなんて
「最後まで契約は果たすからな」
彼女とした契約。それは俺が生き続ける事。できうる限り
ギリギリの状況になるまで自ら死を選ぶことはしないで思い続けてほしいと
俺は彼女との思い出を胸にしまって生きてきた
『ピーピーピー』
警備室の電話が鳴った。緊急を告げるものではなかった。
ただ警備室には今は俺しかいなかったので仕方がないと思って電話に出た
「今は閑古鳥が鳴いているんだが」
『一夏か。少し良いか?』
「箒か。わざわざ電話でなくても警備室にくらいこれるだろう」
『良いのか?そっちに行っても』
「ちょうど俺しかいないしな。いつでも来てもいいぞ」
すると箒は分かったと言って電話を切った。
俺はいったい何のようなんだと思った。わざわざ電話で在宅確認みたいなマネをするとは
警備室で待っていると箒はすぐにやってきた
「どうしたんだ?授業が始まるぞ」
「少し話がしたくて。時間はあるか?」
「俺がここにいる時は暇な時だけだ。それで話っていうのは?」
「姉さんのところにいたっていうのは間違いないのか」
「束さんのところにいたことは事実だが。俺が好きでいたわけじゃない。契約だったからな。守るという約束のな」
そう言えば箒は束さんの事について触れるのを嫌っているはずなのに
いったいどういう風の吹き回しだろう。優秀な姉を持つと苦労するのはどこも同じなのか
「お前がISを動かしたと噂になっているが」
どこで漏れたのかは容易に検討がついた。恐らくあの楯無がなし崩し的に入学させようという魂胆だろう
まったく外堀から埋めていこうと嫌な事を考える奴だ。
「さぁな。俺には関係のない話だ。俺はここの警備担当。それ以上でもそれ以下でもない」
「そうか」
箒はどこか残念そうな表情を浮かべていた。
どこかで俺も学園に入ればすごせる時間が増えるとでも思っていたのか
それは今は分からないが
「話がそれだけなら俺はちょっと出かけてくるが」
すると箒も教室に戻ると言った。警備室を出ていくのを見届けると俺は
ポケットからペンダントを取り出して、それを少し眺める
ただ、こんな感傷に至っていたらまた命が危なくなると思い直してポケットに戻すと巡回に戻った
巡回と言ってもあるところに向かうために警備室を出たのだ
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一夏と射撃訓練と千冬姉
俺は警備室から出ると俺はある倉庫の前に到着した。表向きはただの倉庫だが実際は武器弾薬保管庫だ
俺はそこに入るためにカードキーを取り出すと読み取り機にかざしたロックを解除
室内に入った。そこにはIS用の武器弾薬以外にも拳銃やアサルトライフル。
対物ライフルまでのまるで展示場のように飾られている
「たまにはこれを撃ってみるか」
手に取ったのは対物ライフルであるバレットM82だ。
時には自分のスペックの最大限発揮するためにこういう銃も撃てないと。
拳銃なら射撃訓練施設で撃つのだが、これはそこで撃つわけにはいかない
威力があり過ぎるので、IS用のスタジアムの使用具合を端末で確認する
すると今から1時間は誰も使わない予定となっている。ちょうどいいと判断して
俺は射撃訓練の予約を入れた。12.7x99mm NATO弾も50発持ち出すとそちらに移動した
スタジアムは静寂に包まれていた。俺は素早くバレットM82を組み立てて弾を装填した
IS射撃訓練用の的を表示させると射撃訓練を開始しようとした
単発で終わるのではなく、まずはマガジンに装填できる10発すべてを撃ち終わるまで続けた
「はずれが1発か。腕が鈍っているな」
最近は狙撃用ライフルか拳銃しか発砲していないため、対物ライフルの反動に最初は対応できていないという事もあった
的から外れたのは1発。ど真ん中を捉えたのは7発。残りの2発少し中心から外れたところだった
「これじゃダメだな」
俺はマガジンを抜くと弾を装填するとライフルにセット。再度発砲訓練を続けた
その後も持ち出した弾をすべて発砲したため銃身が少し熱くなっていた。
こういった時でも正確に的の中心部を狙えるかどうかがプロの腕といったところだ
たとえどんな圧倒的不利な状況であっても不可能を可能とするのが仕事なのだから
50発すべて打ち終えた時には銃身から少し湯気が出ていた
連射で発砲したから多少こうなる事は想定していた
結果から言って、まだまだ俺も甘いという事が分かった
「ずいぶんと良い趣味だな。一夏」
そう声をかけてきたのは千冬姉だ。仕事中だと思ったんだが、どうやら抜けてきたらしい
「どうしてここに?」
「警備室に行ったら無人だったからな。調べたらIS用のスタジアムで射撃訓練をしているとは」
「俺は日々の鍛錬をしているだけだ。それに千冬姉には関係のない事だろ」
「姉として弟の行為を監督する義務があると思うが」
何を今さらと思ってしまったが口には出さなかった
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一夏と家族関係と亡国機業
俺と千冬姉の関係はどう表現したら良いのか。家族という関係ではもう計れなくなっていた
束さんの時にいた時ですら連絡を入れる事は無かった。もう失うのは怖いからだろう
俺の今のような仕事をしていたら家族はただのお荷物になるだけだ
それに千冬姉の名誉を傷つけるだけの存在でもある
千冬姉の事を考えれば俺のことなど忘れてほしいとさえ思う事もある
「千冬姉、俺はもう自立している。千冬姉も俺のことなんか「忘れられるか。たった1人の家族を」」
「それでもだ。俺のそばにいたら千冬姉の名誉が傷つく。だからもう俺には構わないでくれ」
俺はそう言うと千冬姉を冷たくあしらうかのように言ってスタジアムから出ていった
「一夏!私はお前のことを忘れない!絶対だからな!」
俺のことを忘れない。そんなことは一生言われたくない。
いっそのこと嫌われた方が嬉しかったかもしれない。
どこかでひきずってしまっているから。彼女のことを忘れられないのだ
俺のせいで彼女を失ってしまった。犠牲になってしまったのだ。
「どうして俺が生きているんだ!」
思わず壁を殴ってしまった。いつも感じている空白感
ぽっかり空いてしまった穴に俺は、自分で何かを補おうとしているのかもしれない
だが簡単には埋まってくれないのだ。埋まらない穴に俺は仕事で憂さ晴らしを。そう思う事も
俺は再び歩くと倉庫に対物ライフルを返していつもの巡回に戻っていった
巡回をしている時に俺の携帯電話が着信を告げていた。相手はおおよそ察しがついた
「織斑一夏だが」
『この前の返事を聞きたいと思ってね。どうかしら、私達に賛同してくれるかしら?』
「いずれはそちらの立場になるだろうが。今は中立の立場にいる事を望む。そちらに情報を流しても良い」
『IS学園の情報を流しても問題ないのかしら?あなたが守っているのに』
「俺はIS学園の特殊警備担当官だが、それは表向きだ。俺の本来の警護相手は篠ノ之箒だけだ。対象者に実害がなければ好きにしろ」
俺の立場を伝えると相手は分かったわと返してきた。そう、俺の警護対象者は箒だけだ。
あとの連中がどうなろうが俺には気にする事ではない。契約では守るのは箒だけと明記されている
そのついでに学園の警備も行っている過ぎないのだから
「お互い不可侵協定といこう。当面の間はだが」
お互い不可侵。つまり、あちらが学園に手を出してきても、俺は箒が危険にならない限り手を出さない
『あなたがそうしてくれるなら良いわ。フェンリルを怒らせるつもりはないもの。そしてあなたはあの狼の弟子。猟犬』
「その名前で呼ぶな。俺はいずれはフェンリルになってみせる。猟犬の名前は出すな」
そう言うと電話を切った。
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一夏と生徒会と狙撃
学園内を巡回中に偶然にも生徒会室の前を通った
室内を偶然にもみると楯無が眼鏡をかけた優等生と思われる人物に怒られていた
「面白いものだな。天下の生徒会長様が書類1枚もできないなんて」
俺はわざと少し大きめの声で言うと室内にも聞こえていたのだろう。
織斑一夏と大声で名前を呼ぶ楯無の姿があった
憂さ晴らしのつもりで俺はあいつをいじめてやろうと思った
「どういう意味よ!」
「学園最強を誇る生徒会長が書類1枚に怒られるなんて見せられないよな」
「嫌味かしら?!」
「ああ、まったくもってその通りだよ。偶然通ったら面白かったぜ」
すると楯無は怒り心頭と言った感じだ。その横では眼鏡をかけている優等生と思われる生徒が止めようとしていた
「一夏さん!あんまり生徒会長をいじめないでもらえますか?」
「あいつはいじめがいがあるんだ。それに引っかかるあいつにも問題があると思うがな」
「だめです!」
俺は楽しんでいた。この状況を。その時だった。何かの気配を察知して俺は2人を押し倒す形でかばった
するとちょうど立っていた位置の壁側に弾痕があった。それも大口径の銃弾だ
おそらくISを使っての
「こちら一夏。全警備官。コードレッド発令!緊急マニュアルで対応!すべての生徒に身を守る姿勢を取らせろ!」
無線で素早く一斉連絡すると、俺はホルスターから銃を抜いた。
「2人とも動くなよ!」
少し程度の実戦経験しかない者の行動は分かりにくい。逆にプロならお互いの戦法は読みやすい
軍人共はプログラムされているかのように、似たような手法を取る事が多い事をフェンリルから教わっていた
さらにポケットから狙撃用のスコープで確認する。これは束さんの特性でかなりの性能を誇っている。
「IS学園から北2km先にISを確認。至急教師の部隊に伝えろ」
仕掛けてきたのはおそらく連中だろう。不可侵協定なんていらないという事か
それとも自分たちはここまできわどい事をするという意思表示なのか
まったく困った連中だ
『一夏さん、今IS教師部隊が出動。生徒は全員壁に隠れさせた』
「この短時間で上出来だな。こちらは下手に手を出すな」
「一夏君!あなたならなんとかなるんじゃないの?」
「俺は最低限のことはした。あとは専門家に任せる。俺は人相手なら簡単だがIS相手は好きじゃないからな」
そうだ。ISでの戦闘はあまり慣れていない。もちろん束さんのところで特訓はしてきたが俺には銃の方が相性がいい
「それにしてもすごいですね。2kmも離れているのに気配を察知するなんて」
眼鏡をかけている優等生にそう言われたが。こっちは気配を察知しておかなければ殺されかねない立場なのだから
当然と言えば当然の行動なのだ
「問題なのはこれだけ接近されるまで気づかなかった方だ」
「私達も甘いわね」
楯無の言うとおりだ。甘い事は事実だ
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一夏と組織と関係
あのISの襲撃は俺にも想定外だった
まさか俺の目の前でやるとはなかなか度胸のある組織だ
『一夏さん、襲撃をかけてきたISは姿を消しました』
「了解した。総員警戒態勢を維持しつつ、安全確認を完了させて生徒たちを安全確保に努めろ」
『了解』
「まったく、ほっとする」
俺はすぐに携帯情報端末で半径10km圏内の対空レーダー設備を使用して安全チェックを指示した
万が一の場合でも即座に対応できるような状況作りをするためだった
『わかりました。現在のところこの圏内に飛行物体は民間旅客機の物だけです』
「引き続き警戒監視を。何か変化があればすぐに連絡しろ」
指示を終えると俺は押し倒した二人に手を差し伸べて立ち上がるのを手伝った
「あなたに助けられるなんてね」
「俺もだ。それじゃな。俺も仕事があるからな」
これから打ち合わせだ。いろいろな部署に確認もしなければならない
正直なところ面倒だが仕事のうちだ
「俺はとりあえず警備室に行く。あと、自分の身は自分で守れ」
俺はそう言うと駆け足で警備室に戻ると非番の職員も来て安全チェックに追われていた
「正面ゲート付近の守りを固めろ」
格下の俺の指示に誰もが従うのは最初に赴任した時に全員と訓練をして倒したからだ
誰もが俺の指示を最優先で聞くことを伝えるとともに定期的に格闘術を教えている
俺の場合少し行き過ぎた訓練になる事もあるがそれくらいがちょうど良い
「念のため銃器を所持しておけ」
『了解』
武器庫代わりにしている倉庫に向かうとそれぞれ銃を取りに行く。交代で。
警備室を空にするわけにはいかないからだ。今は特にだ
『ピーピーピー』
連中からの連絡だった。まったくもって迷惑な事を
「いったいどういうつもりだ?」
『私達としては今回のことは悪いと思っているわ。タイミングが偶然重なったの。今後は気を付けるわ』
「その言葉を信じて良いんだな」
『ええ、我々の組織のために今後はこういう事は無い事を確約するわ。あなたの目の前では断りなく仕事はしない』
「そうしてくれると俺は助かる」
俺に面倒をかけられると苦労する事になるのだ。俺の役目は主に篠ノ之箒を守る事だ
学園の安全に関しては最優先事項ではない。あくまでも2番目の課題であり1番目は束さんから依頼された箒の安全だ
「一夏君。当面は武装させて警備に入る」
「ああ、そのほうが安全だ。各員には緊張感を持って警戒を促しておくことを忘れるな」
「了解」
あとはこの出来事をどう処理するかだ。おそらく学園側は誰が犯行に及んだのかはわからないだろう
もちろん俺も不可侵協定がある以上どこの組織とは言うつもりはない
一線は超えない事にすることが重要なのだ
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一夏と専用機と連続殺人
あの騒動からというもの、しばらくしてから学園には静かな空気を取り戻した
これでようやく安心できると思っていた。だが、世界は静かにいる事を許そうとはしないようだ
俺には迷惑なことこの上ないのだが
「一夏」
「千冬姉。何か用か」
「お前がISが持っているとかなり噂になっている。真実を話してくれ」
あの生徒会長ははっきり言ってあきらめが悪い。千冬姉に話を持っていくと
「仮に持っていたとしてどうしたい?俺は猟犬だ。必要だったら殺しもする」
「それが家族でもか」
「俺が優先するのは契約だ。互いに納得した契約だから動いている。それに俺に手を出したらどうなるかは裏の連中はよくわかっている」
既に裏社会には俺の名前は通っている。猟犬でありフェンリルの弟子であるという事は
だからこの程度の噂話が出たところで立場が変わる事はない。千冬姉は納得していない表情だったが
フェンリルに手を出したらどうなるかは各国の裏社会が知っている。今までに生き残った者はいない
弟子と言うだけでも、俺1人だ。だから簡単には手を出さない。出せないのが実情だ
「束との契約を優先するのか?家族よりも」
「俺に家族はもういない。千冬姉も俺のことを忘れてくれ」
俺はいづれ消える運命にあるからなと伝えると
「一夏!私は!」
「千冬姉。こうなったらもう止める事はできないんだ。時計の針が戻らないのと同じで」
俺はそう言うとその場から離れる事にした。千冬姉は俺に何かを言いたそうだったが何も言わなかった
廊下を歩いていると楯無が近づいてきた。俺はあえて何も話しかけず無視をすると楯無から話をしてきた
「織斑先生でも説得は無理だったみたいね」
「これは警告だ。次は誰かが犠牲を払う時になるぞ。その時には慈悲なんて期待するな。誓ってやる。猟犬を怒らせるとどうなるか」
「どうなるのかしら?」
俺は耳元である連続殺人の話をした
「あなた!まさか!」
「さぁな。それを証明したいなら実現させてみよう」
わかったわと言うと楯無は歩いて去っていった。その連続殺人は表向きはただの連続殺人だが
実際は裏の世界ではある犯罪組織のメンバーを殺すためのものだ。これは猟犬として依頼された仕事の中で最も大きい
金額もすごかったが、俺1人ではできなくてフェンリル先生の力も借りて行った
その時に得た経験として噂話だとしても。たとえ疑惑だけでも十分なのだという事だ
真実などどうでも良い。聞いた本人がどうとらえるかで行動が変わってくる
そういう事を学んだ。1度でも疑惑を持てばそれは後々効果が出てくる事になる
小さな疑問点を言うだけでも大きな波紋を呼ぶことができる
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一夏と生徒と過去の真実
夕方、俺はいつものように射撃訓練施設で銃を撃っていた
50発も撃ち終えるとそこで一度止める。なぜなら施設に誰かが入ってきたからだ
「確かお前はフランス代表候補生だたな。俺に何か用件か?」
「織斑一夏君ですよね。よかったら少し話でも?」
「確か名前はシャルロット・デュノアだった。俺に話と言うのは?」
つまらない話なら打ち切るぞと言うと織斑君がISを持っているってかなり噂になっているから聞きたくてと
デュノア社の経営状況がひっ迫している事は事前の調査で分かっていた
狙いはおそらく情報だろう。だが簡単に情報戦で負けるほど俺はバカではない
「噂話に踊らされるとは呆れるな。ISは女しか動かせない。常識だと思うが」
「そうだよね。ごめんね。変な事を聞いて」
「悪いが今は訓練中だ。邪魔をしないでくれ」
俺は空になったマガジンを抜くと装填済みの物と交換して再び射撃訓練をした
次々と発砲していった。弾は人型のターゲットの頭部と腹部に集中して命中していた
「すごいね」
「俺には慣れたことだ。悪いが1人にしてくれ。訓練の邪魔はされたくない」
「お邪魔してごめんね」
施設を出ていったのを確認すると、俺は見回りに戻った。すると今度はドイツの代表候補生である女が絡んできた
まったく面倒なものだ。
「ラウラ・ボーデヴィッヒ。こそこそと隠れるのはやめにしないか」
まただ。まったく面倒なやつだ
「もう1つだけ聞きたい。私の部下になぜけがを負わせた!」
「それは俺じゃないし先生でもない。確かに俺達はテロリストかもしれないが、軍に牙は向けない。悪事に加担していない限り」
「ならそれを否定しなかった!軍では有名だったぞ。お前たちの行動によって私の部下をケガさせたと!」
まったく、お子様的な考えを持つものは嫌いだ。俺達にとって評判は重要だ
あの噂は俺達の価値を高めるものと判断してフェンリル先生も否定する事をしなかった
だが、この女に言っても意味がないだろう。聞く気はないのだから
「俺達にとって評判は重要だ。だから放置したまでだ。俺達は手を下していない」
「なら誰なのか教えろ!」
「当時の記録を調べるんだな。意外と近くに敵はいる。特に軍内部でもな」
俺も一応記録を調べた。当時軍は予算獲得のために手段を選んでいられる状況ではなかった
だからこそけが人を出して部隊強化予算案を通したかったことは調べて分かっているが。親切に教えてやる必要はない
真実は自分で調べてこそ価値があるのだから
「お前から真実が聞きたい。教えろ!」
面倒なやつだが答えるつもりは俺にはなかった。
「俺から言えることはただ1つだ。真実は意外と身近にあるという事だ」
そう言うと俺は見回りに戻っていった
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一夏と仕事と姉妹
今日の見回りも終えてもう夜だ。そろそろ俺も夜の仕事の時間だと思って駐車場に止めているバイクに向かった
荷物として狙撃用のライフルを持っている。駐車場に向かう途中で面倒なやつがいた。楯無だ
「今日も仕事らしいわね」
「ああ、ISのおかげで女に復讐したいってやつは大勢いる。おかげで俺のビジネスは順調だ」
「そう。だったらここであなたを始末しても良いわよね」
そう言うと奴は俺に向けて銃を突きつけた
「許可が出たという事か」
政府から暗殺の許可をもらっていなければフェンリル先生の弟子である俺の殺しが認められるとは思えない
自惚れているわけではないが俺にも政府にコネはある。様々な政府機関の人間といろいろと契約をした事があるからだ
「いえ、私の独断。あなたにこれ以上いられると私たち暗部としても放置できないと判断したまでよ」
「こんなことをするとどうなるかわかっているのか?」
こちらにもある切り札があった。あまり使いたくないが。
「どうするつもりなのかしら」
「これは何だと思う?」
そう言うと俺はある携帯端末を取り出した。
「これはある部屋に取り付けてある爆弾のスイッチだ。もしもの保険のために設置させてもらった。お前がそういう行動に出た時に」
するとすぐに何かを分かったようで表情は怒り心頭といった感じだ。
更識簪の部屋に設置されている偽物の爆弾だ。まさか本物を設置するわけにはいかないが、煙だけが出るものだ
簡単に言えば発煙筒だ。
「あなた!私の大切な妹にまさか」
「どうする?俺を止めるか?爆弾を止めるか。好きな方を選べ」
スイッチを押した。残りタイムリミットは3分。寮に行って解体する時間はある
楯無が妹を溺愛している事は知っている。だから利用したまでだ
俺は利用するなら徹底的に利用するまでだ
「次はないと思いなさい!」
楯無は慌てて向かっていった。こちらは仕事に向かうだけだ。狙いは女性絶対主義組織の幹部だ
今回も男性からの依頼だ。その組織によってひどい目に遭って多額の金を払ってまで決着をつけたいと
俺はその依頼を引き受けた。幹部の女はやり過ぎていた。いろいろと。だからこそ、制裁が必要だと考えたまでだ
駐車場に止めているバイクに乗り込むと俺は敷地外へと出ていった。
もちろん、銃の携帯許可は持っているため警察に止められても怪しまれない。
携帯許可もIS学園で仕事をしているからだ。手入れのために持ち出したという言い訳は今までに何度も使っている
それに警察関係者にも俺の協力者は多い。政治家にもだ。もみ消そうと思えばそれほど難しい事ではない
「さっさと嫌な事は忘れて仕事をするか」
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一夏と千冬姉と束さん
俺はいつも通りターゲットが住んでいるマンションを離れた所から狙撃するつもりで配置についていた
今日の依頼はすこし妙だった。あまりにも金が良かった。1人殺すだけで1000万円も出すと
それほどの理由があるのか。とりあえずは目の前の仕事を片付ける事にした
今回使うのは狙撃銃の中でもかなり強力なものだ。バレットM82を使用しての長距離射撃だ
実はターゲットから1kmは離れている。これだけ離れているのには理由がある。
ターゲットが住んでいる場所が警察機構とかなり近くだからだ
「まぁ、大丈夫だと思うがな。1kmも離れていたら勘づかれないだろう」
いよいよ狙撃のタイミングをはかった。女はリビングのソファに座っていた
俺は女がテレビを見始めたのをスコープで確認すると発砲した
弾は毎秒853mで進み。女の頭を吹き飛ばした。
「これで仕事は完了だな」
あとは帰るだけだという時に携帯端末にコールがかかってきた
束さんからの連絡だった
『いっくん。今大丈夫?』
「ええ、仕事を終えたばかりですが少しくらいなら時間はありますよ」
すると束さんはまた悪い事をしたんだねと言ってきた。確かに俺は罪人だが、殺された方にも責任はある
平等な社会を望んでいたなら俺に狙われることはなかったのだから
『実はね。ちーちゃんがうるさいんだよね。私がいっくんをたぶらかしたって』
「面白い冗談ですね」
『そうだよね。私にはそんなつもりはないんだけど。あんまりうるさいと困っちゃうんだよね』
「もしかして千冬姉を殺せとでも?」
『そんなことをお願いするわけないでしょ。でもね。少しはお仕事を控えてもらえると嬉しいなっと思って』
束さんまで言ってくるとは相当裏が深いという事になる
「どうしてですか?」
『ちーちゃんがかなりしつこいんだよね。束さんも困っててね。少しだけで良いからお願いできないかな?』
「いくら束さんのお願いでもこっちは生活と評判がかかっているので」
ご要望には沿う事はできませんと言うといっくんは強情だねと返してきた
仕方がない事だ。俺のような仕事をしていると依頼はいくらでもある
すべて断っていたら今後依頼が来ないようになるかもしれない。それでは困るのだ
確かに俺は壊れているかのかもしれない。殺人を何とも思っていないのだから
『とりあえず箒ちゃんのことは守ってね』
「その件ならお任せください」
俺はライフルを分解して片付けるとバイクでIS学園に戻る事にした
今日の仕事はこれで終わりだ。明日は朝から忙しい。何か学年別対抗試合があるからだ
警備にはさらに厳戒態勢で行わなければならない
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一夏と学年別試合と織斑マドカ
翌朝、俺は他の警備スタッフと警備の打ち合わせをしていた。
打ち合わせは今日のメインイベントである学年別試合の来賓客のセキュリティチェックについてだ
「今回の学年別試合はいろいろと面倒が起きる可能性がある。セキュリティチェックは注意しろ」
俺の気を引き締めるように警備隊員にと伝えると次々と警備ポイントについて報告してきた
「すでに入り口でスキャン装置で凶器などになりそうなものは探知するようにできています」
「観客席の監視も怠るな。この前のような正体不明な敵が潜入している可能性もある」
それはあいつらのことを示しているが。俺からあいつらの情報を提供する必要はない
俺にとって最大の警備対象者は箒だ。束さんとの契約を果たす事が最重要課題で学園の警備は二の次のようなものだ
「少しでも異常があれば俺に報告しろ」
「「「「了解!」」」」
それじゃ解散だというとそれぞれの警備ポジションに向かっていった。
俺の担当は面倒な事が起きてもすぐに対応できるように警備室にいる事にする。
それにもしもの場合には俺はあれを使わなければならない事を覚悟しなければならない
束さんが強引に持つように言われた。もっとも忌み嫌うISを
もちろん、ココさんに製造を依頼した銃弾も使えるがあれは物が高価すぎる
簡単に使ってしまえばすぐに赤字だ。
「まったく因果な仕事だ」
俺はいつものように警備室でセキュリティチェックをしていると警備室のドアをノックしてきた
楯無だ。どうやら昨日の件について文句を言いたいようだ
「昨日はよくもやってくれたわね」
こんな発煙筒をおもちゃにしてくれてと、
「大事な妹を思うならもう俺に絡むな。面倒なだけだ」
「悪いけど、あなた以上に悪だくみを考えている人間が今この学園にいるとは思えないけど」
「人を疫病神みたいな言い方をするな。俺は契約を履行しているだけだ。文句があるなら学園長と話をするんだな」
俺は許可を得ている。昨日の件は脅しだと伝えると、
次に大事な妹に何かしたら覚えておきなさいという捨て台詞を残して出ていった
まったくお子様には困ったものだ。ジョークも分からないとは
「それで、お前はどうなんだ?亡国機業のコードネームM。いや織斑マドカといった方が良いか」
「お前は自分の立場を分かっているのか」
「織斑計画のことか?この手の業界にいればいろいろと情報が入る。社会が嫌になる事だって色々とあるものだ」
織斑計画、遺伝子操作によって最高の人間を作り出す計画。フェンリル先生から教わった。
社会というのがどれだけ汚いかがよくわかった。だからこそあの計画に携わった研究者と研究所はすべて破壊した
「だから我々に協力をするのか?」
「俺は世界がどうこうなっても気にならない。目の前で第3次世界大戦がおころうと自分が契約した内容を履行できれば問題ない」
「私にはどんな気持ちを持っている?」
「俺は人のことを気にすることを止めた殺人マシンだ。お前のことをどうこうするつもりはない。篠ノ之箒にさえ手出ししなければな」
「なるほど、契約だけは守るようだな。上層部からもお前と篠ノ之箒には手を出すなと言われているから何もしない」
それは嬉しい事だ。こちらの邪魔にならなければすべて問題ないからだ
用がないならさっさとスタジアムに戻ったらどうだというとそいつは姿を消した
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一夏と学年別試合と嵐の前の静けさ
俺は警備室で空間モニタを展開して様々な会場の状況を見ていた
今のところ異常はない。沖合にはイージス護衛艦が配備されている。
万が一を想定してのことだろう。そのイージスシステムから送られてくるレーダー情報も受信していた
亡国機業が何かを仕組んでくることは分かっていた。こんなチャンスを見逃すはずが無い
だが俺にとって重要なのは箒の身の安全だ。それさえ確保されれば問題ない
「さて、パーティーはどうなるか楽しみだな。茶番劇だとしても派手にしてほしいところだが」
警備室から対物ライフルであるバレットM82を取り出すとココさんから購入した対IS用弾をマガジンに装填した
暴発したら、面倒なのでマガジンはライフルにはまだ装填していない
「連中がこんなおいしいチャンスを見逃すとは思えないしな」
来賓席の座席を捉えている監視カメラ映像を見てすぐに気づいた。
俺に直接交渉に来た亡国機業の連中がいると。
まぁ見に来るぐらいなら良いが何かあったらと思い、俺は学園のある場所に向かった。
それは校舎の屋上だ。そこからならスタジアムを見下ろすことができる。狙撃には十分だ
空間モニタで試合の状況と監視カメラの映像を確認すると何やら不穏な動きがあった
どこかで何か不審な気配を感じた。そこでイージス護衛艦から送られてきているレーダー情報で確認したところ
かなり上空になるがかすかに何かがレーダーを反射していた。
ただ、あまりに反応が弱く小さいので護衛艦は探知ミスとしていたようだ
「上から狙ってくるわけだ。今の対決は箒が出ているな。できれば他の時にしてくれると助かるんだが」
『こちら貴賓室。不審人物を確認。招待客リストによるとスコール・ミューゼル様となっていますが』
「何か動きがあれば連絡しろ。それまでは警戒を続けろ」
やはり潜入していたが発覚したかと俺は思った。予想はしていたが、問題はいつ行動を起こすかだ
『ピーピーピー』
『一夏君かしら。篠ノ之箒に影響がなければ何をしても文句はないのね』
「ああ、箒に手を出したら猟犬として徹底的につぶすが。他がどうなろうが関係ない。ただ怪我人はあまり出さないでくれると助かる」
『できるだけ気を付けるわ。でもこの次の試合から手を出させてもらうわ』
わかったというと通話を切った。とりあえず警戒は続けるが箒の試合は無事に終了した
次は2年生の試合だ。ただ、念のため狙撃スコープを使って状況を見張っていた
もしもの場合に備えてだ。いくら警備は二の次と言ってもやらないわけにはいかない
「けが人が出ないようにはするか」
その時だった、護衛艦のイージスシステムのレーダーが高速で飛翔する何かを探知した
俺はすぐにパーティーが始まると察知した。
「さて、どんな事になるか高みの見物と行かせてもらうか。少しは手は出すがな」
俺は警備スタッフの状況把握を務めながら配置を変えていった。まずは生徒の避難活動を円滑にできるように
貴賓席の者はもともと個人で雇っているセキュリティスタッフがいる。自分たちの身くらいは守ってもらわないと
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一夏とトラブルと亡国機業
2年生の試合が始まってしばらくしてから、ついにスタジアムで緊急事態が発生した
スタジアムは緊急事態が発生した場合、観客席がまずは保護される。
問題は向こうがどの程度やる気かだ。
「一夏から各チームへ、生徒の避難を最優先に行え。貴賓席は強固な壁だが生徒の座席はそれほどではないからな」
『事前の打ち合わせ通り避難活動を開始中。完了までの時間は15分』
「最優先で避難誘導にあたれ。それと自衛隊に出動を要請しろ」
『すでに手配済みです』
「了解した。俺は雑魚を片付ける」
俺はそう言うと対IS用ライフル弾が込められているマガジンをバレットM82に装填した
薬室に弾を送ると発砲がいつでもできるようにした。
「さて誰なんだ?」
『ピーピーピー』
俺はこの忙しいのに誰なんだと思って電話に出ると貴賓席にいた亡国機業の女からだった
「何を始めるつもりだ?」
『私達の力を見せつけるだけよ。そう言うあなたこそ屋上で何をしているの?』
「俺は保険だ。一応、警備スタッフとしての仕事もあるんでな。安心しろ。篠ノ之箒にちょっかいが出ない限りは手は出さない」
ただし学園施設にある程度被害が出るようなら自衛権を行使させてもらうというと、あと5分待ってと言ってきた
「それでケリがつくのか」
はっきり言って5分でケリがつくとは思えなかった。奴らはやるなら徹底的というタイプに感じたからだ
俺と同類だと
『ええ、まずはこれはお遊びなの。今後はもっと激しくやらせてもらうわ』
「やり過ぎて俺の視界に入らないように気を付けるんだな。俺の銃弾がどんなのかは知っているだろ」
『もちろんよ。ISの絶対防御を貫通する弾。そんなものが市場に流通したら世界が大きく変わる。でも私達にとっては重要な物』
ジレンマねと言ってきた。
『その製造法を知っているのは限られた者だけとなると特にねとも』
「お前達が女性崇拝の組織にならない事を祈っている。そうなったら俺やフェンリルの視界に入る事になる」
『彼を怒らせることはしないわ。あとが怖いもの』
「それは良かった。持て余しているから付き合ってくれるやつを探している。もし本気で死に急ぎたいなら連絡くれ」
俺はそう言うと携帯電話での通話を切った。実際問題、仕事の量は学園に入る前と後ではかなり減っている。
仕方がない事だが腕が鈍っては困る。だからいつもスタジアムを借り切って射撃訓練をしている
ワンホールショットができるまで俺は訓練を受けさせられたのだからその技量を落とさない事が求められている
それだけ俺の仕事は繊細なのだ
『ちょっと一夏君!そんなところで何しているの!』
「うるさい学園最強だな。これくらいのことは始末できないのか?」
楯無から緊急通信だ。
『あなたが仕組んだの!?』
「俺は手を貸していない。どうしても助けてほしいなら助けてやるがどうする?」
『あなたに借りを作るのは嫌だけど、この際文句はいっていられないわ』
「金はあとで請求させてもらう。もちろん割引しておいてやるよ」
そう言うと俺は弾を通常弾に切り替えてスタジアムに入るこむミサイルなどを破壊していった
『さすがは猟犬ね』
「ミサイルの進行方向ぐらい読め。学園最強の看板が泣くぞ」
うるさいっというと通信を切った。ようやく団体さんで来るミサイル攻撃は終了した
俺は無線で各避難を担当している警備スタッフに連絡した
「状況報告を」
『生徒と来賓の避難は完了。けが人は生徒で数名転倒したなどによるものだけです』
「上出来だ。あとは書類で報告書を出してくてくれ。内容は簡単なもので良い。詳しいのは俺が出す」
少しでも詳しく書かれると厄介な内容だった時に対応できないからだ
俺が自分の裁量でチェックして提出した方が良い
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一夏と報酬と織斑計画
あのスタジアムでの一件以来、常時イージス護衛艦が沖合に展開されるようになった
日本政府も黙っているわけにはいかなかったようだ。俺がいる事を知って依頼をしてくるくらいだからだ
だがその仕事は断っておいた。俺は篠ノ之箒を守る事が目的でここにいるという事を伝えた
そのおまけで手を貸しているだけだと。俺は生徒会室に来ていた。もちろん楯無からある物を受け取るためだ
「まったく、どうしてあなたにお金を払わないといけないのかしら」
「弾代もタダというわけにはいかないからな」
俺は楯無から分厚い封筒を受け取っていた。まぁ仕事をしたのだから報酬を受け取る権利はある
「楯無の金払いの良さに参るよ。良い金づる拾った」
「あなたって人は!」
からかいやすい奴だ。すぐにこちらのペースに引き込める
もっと暗部にいるなら冷静な対応をするべきなのだろうが
「冗談だ。まぁ今後は気を付けるんだな。俺はある程度しか働かない主義だからな」
「それってつまり篠ノ之箒の生命にかかわる事がなければ問題ないという立場だからかしら」
「好きに思っていればいいが。俺は契約で動いている。それだけは言っておく」
俺は生徒会室を出ようとすると楯無がある事を言いはじめた。
俺にとっては最大の禁句をだ
「織斑計画を知っているかしら?」
「ああ、知っている。詳細な事も含めてな。それがなんだ?」
「あの研究に携わっていた施設と関係者が全員皆殺しにされている事について意見は?」
俺はこういった。殺されて当然のやつもいると。楯無はどうやらある程度情報を掴んでいる可能性があった
だがこちらから詳細な情報を話す必要はない
「あなたを殺人罪で逮捕する事はできるわ」
「それで俺を脅しているつもりか?俺はお前よりも深い闇を知っている。政府の連中にもいろいろとコネがある。電話1本で解決だ」
必要ならお前達を殺しても良いとまで言ってやった。俺は俺のやり方でケリをつける
文句は聞かないし聞くつもりもない
「あなたって、金でしかものさしをはからないのかしら?」
「俺には俺なりの信念のもとで動いている」
話は終わりだと俺は言うと俺は生徒会室を出ていき巡回に戻った。
もう夕方だ。太陽が水平線の向こうに沈もうとしている
「平和か」
平和など存在しない。犠牲の上に成り立つ平和なら存在するが
完全な平和などありえないのだ。現実問題として
人間が生きていくうえで争いのたねは常にどこかに付きまとう
そして経済とはその血塗られた上に成り立っているのだ。
だからこそ俺のような仕事が必要とされる。もし世の中が完全に平和なら俺のような仕事はないだろう
世界で平和が必要だと言っているのはミサイルや武器を売りながら争いに加担しているようなやつばかりだ
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一夏と簪と優しさ
その日の夜、俺はスタジアム近くにある整備室に向かった
もう、消灯時間のはずなのだが誰かが作業をしているからだ
監視カメラの映像で確認したらあの楯無の妹だった
「おい。もうとっくに寮に帰る時間だぞ」
「織斑一夏さん」
この前の爆弾と言ったが、実際は発煙筒だが。その件では彼女に負担をかけたことには悪いとは思っていた
だがこっちも仕事がある。利用できるものは何でもする主義なので
「この前は悪かったな。こっちにもいろいろと事情があったからな」
「姉さんから聞きました。いつ仕込んだんですか。発煙筒を」
それは聞かない方が花という物だと言ってごまかした。まさか勝手に部屋に入ったとは言いにくい
ましてやこんな場所で誰が聞いているかわからないような状況下では特にだ
「それで何をしているんだ?」
彼女は必死になってISの機体のプログラミングをしている様子だったが確認のために聞いた
「これは‥‥‥」
「まぁ言いたくないなら言わなくても良い。徹夜するなら缶コーヒーでも飲むか」
もらいますと言うので缶コーヒーを渡した。
彼女は本当に1人で組み上げているようだった。俺にも多少の心得はある。
束さんのところで何度かデバックをしてきたので、それなりには理解しているつもりだ
そうでなければ今持っているIS機体の整備ができるわけがない。まぁ今のところ使う予定がない事は良い事だが
「1つ聞いても良いですか?」
「何だ?質問なら受け付けるぞ」
「本当のところどうなんですか?」
私を殺そうと思ったことはあるんですかと聞いてきた。また答えにくい質問だが
「それはお前達が女性至上主義者にでもならない限りはありえないな。俺の依頼主はそういう連中から被害を受けた者ばかりだからな」
だからお前も悪人にはなるなよと言ってやった
それとこの部分が間違っているぞとプログラミングで間違っているところを指摘。
俺は早く帰るんだぞと言って整備室を出ていった
「ずいぶんと優しいんですね。一夏さんは」
「俺が優しい?冗談はやめろ」
そう声をかけてきたのは生徒会長といつも仕事をしている布仏虚だった
1年生にいるあの能天気な少女の姉だ
「でも一夏さんはわざわざ心配だからここに来た。違いますか?」
「さぁな。どう思うかはお前たち次第だ。それと楯無にこういっておけ。いつまでも逃げていると妹は苦しむだけだとな」
やっぱり優しい人ですと彼女は言うと整備室に入っていた。
俺はまったくどこまでもお節介なところは抜けないなと思いながらも巡回に入った
夜は静かだ。月も満月のようで明るい。綺麗だ。そしてIS学園は海沿いにあるため波の音がする
自然の息吹を感じられる。だが、人はすぐに壊してしまう。
それがどんなに美しく、何物にも代えられないものだとしても人は壊してしまう
ものだけではない。命だってそうだ。俺も人殺しなのだから
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一夏と家族と仕事
俺はIS学園の広場のようなところでベンチに座って缶コーヒーを飲んでいた
「あとは部屋に帰って寝るか」
以前よりも高い防犯設備を導入した。なにかあれば俺の携帯端末で確認できるようにしている
缶コーヒーを飲み終えると俺はベンチから立ち上がり歩き出そうとした
「一夏」
「千冬姉。何か用か?」
「もう1度戻ってこないか」
「それは無理だ。千冬姉。俺は壊れているから戻ったところでまた同じ道に戻るだけだ」
時計の針は歩むことを忘れないように永遠に進んでいる。
俺も同じだ。もうあの温かい場所に戻る事はできない
裏社会で生きていくしかもう道は残されていない
『ピーピーピー』
「どうかしたか?」
俺の携帯端末に着信が入ってきた。
千冬姉には用事ができたと言ってその場から離れて電話に出た
『一夏君。元気そうね』
相手はココ・ヘクマティアルだった。
「ココさん。そちらは今どこに?」
『南アフリカよ。1つ仕事頼まれてくれないかしら』
いろいろとサービスをするわという言葉に可能なら対応しますがと返した
依頼内容はシンプルだ。彼女の兄であるキャスパーの取引相手とトラブったという事だ
ならキャスパー自身が動けばいいのだが別件で忙しいとのこと
そこでココさんとよく知る仲である俺に話が回ってきたようだ
「チェキータさんは知っているんですか?」
『猟犬に任せるならかまわないと』
「場所は?」
今端末を送るわと言うとある組織の拠点だった。女性至上主義者の拠点とされているところだった
受けてくれたら報酬として1000万円払うと。ちなみに派手に花火をぶちかましてくれとの依頼だった
「わかりました。数日以内には結果が出せると思いますので」
情報端末に送られてきた情報によるとターゲットはキャスパーの支払いをしたが偽札だった
バカな事をしたものだ。彼らにそんなことをすれなどうなるか。俺だって後が怖い
「一夏!もう殺しはやめろ!」
「今更だ。俺はテロリストとして生きていく。だからもう関わるな。織斑千冬さん」
俺はそう言うとその場から去っていった。その後ろでは千冬姉が泣いていた
だが俺にはどうする事もできない。この家業に入った以上一緒にいれば狙われる
だったら決別するしかないのだ。たとえどんなに深い仲でもだ。
それが宿命なのだから。俺は狙撃ライフルやC-4などの爆薬を取りに行った
あのヘクマティアルを怒らせるとどうなるか。後悔してもらう事にした
ちなみに今回の仕事で最大の難関は狙撃ポイントが限られるからだ
そこである協力してくれそうな人間に連絡を取った
「大至急頼みがある。報酬は出すからヘリの操縦を頼みたい」
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一夏と暗殺と逮捕
東京都内某所
一夏はヘリに乗って対物ライフルを構えていた。
狙いは1km先のターゲット。今回の依頼主はココさんだが、他にも数人から今回の対象者について依頼があった
そんな彼らの共通点は1つだ。ターゲットに人生をぼろぼろされて、なにもかも失ってしまった。彼らからも依頼を受ける事にした
今回の報酬1000万円。なかなかの大仕事だが。建物の位置関係上ヘリを使う必要があった
フェンリル先生の紹介で会ったことのある人物でヘリから戦闘機、そして大型輸送機まで操縦できるベテランだ
名前は教えてくれないのでいつも名前の話をしたりしない
「狙いは1km先だな」
「お前の腕が試されるところだな。猟犬」
ロングキルショットは極めて難しい。さまざまな風の影響も考慮にいれなければならない
ミスは許されない1発勝負だ。俺はバレットM82を構えて発砲態勢に入った
「そろそろ始めるか」
彼に俺はこの位置で固定する指示するとホバリング体制を維持した
数秒後、俺の放った弾丸は秒速800mで飛んでいった。そしてターゲットの頭を貫通した
まるでスイカが割れるかのように頭部が吹き飛んでしまった
仕事としては十分だが、もう1つする事がある。それはあの部屋を吹き飛ばす事だ。
既に宅配便で植木鉢を送っておいた。女の知り合いの名前で
中にはプラスチック爆弾が仕込まれている。スイッチ1つでドカンといってしまった
「キャスパーさん、部屋ごと吹き飛ばしておきましたので」
『仕事が早いね。どうだい。僕と手を組まないかい?』
「今は仕事が忙しいのでまたの機会にでも。では失礼します」
そういって通話を切ると引き上げようとしたときだった
「織斑一夏!殺人容疑で逮捕する!」
楯無も一緒にいた。どうやら本当に俺を怒らせたいようだ
ISも展開している。俺と本気で敵対したいようだ。おれはバレットM82の弾丸を対IS用のものに切り替えた
念のための措置だ
「どうする?」
「ヘリをヘリポートを下してくれ」
了解と言うとヘリは着陸すると俺は降りてすぐにヘリパイロットには離脱するように指示した
「俺を逮捕するという事の意味は分かっているんだろうな」
「もちろんよ。あなたの身柄は私が預かるわ。もう殺しはさせない」
「まぁ良いだろう。素直に抵抗しないで逮捕されよう。だけど、このお返しはさせてもらうからな」
俺は素直に警察によって逮捕された。もっともすぐに釈放されることは分かっていた
今回の仕事の依頼主が依頼主だからだ。ヘクマティアルからの依頼なら何らかの関与をしてくるだろう
そのために保険はかけている
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一夏と警察と楯無
警察に捕まってすぐに俺は留置場に入れられると思っていたが応接室に通された
「今回の逮捕は形だけだからな。更識には上は逆らえない所があるが、こちらとしては現場で体を張ってくれている君には感謝している」
「こちらとしてもすぐに釈放されるなら気にしませんのでご安心を」
あなた方が敵対側にまわらない限り攻撃対象にはなりませんのでと
俺と警察上層部とはそれなりに繋がりがある。だからこそ留置場ではなく応接室に通されたのだ
「それで、今回はどのように?」
「表向きは部屋はガス爆発したという事にしておく。猟犬の名は伏せておこう」
「そうしてくれると助かる」
すると警察幹部から1冊のファイルが渡された
「彼女にはいろいろと苦労をかけさせられていたから。君が掃除をしてくれたおかげで助かる」
つまりターゲットは政治的に面倒なやつだったようだ。キャスパーが嫌がるタイプのようだ
俺に話を持ってきたのは警察関係者に協力者がいる事を調べ上げてのことだろう
どこまでも利口なビジネスマンだ
「それで、俺はいつ外に出れる?」
「もう出ていってもらって構わないが、ただ出口には更識楯無がいる」
「俺は猟犬だ。それぐらいのことは慣れている」
俺はいつものように押収されたはずの銃器が入ったカバンを受け取ると応接室を出ていった
そうすると携帯にメールが入ってきた。キャスパーからだ。あとの処理はしてくれるそうだ
「もう出てきたの?ずいぶんと余裕ね」
「楯無。お前達がどうあがこうが無駄な事だ。警察は味方してくれない」
その言葉に法律を何だと思っているのと俺にぶつけた
法律で人は裁けない事はお前が一番よく知っている事だろうと言い返してやった
「それでもよ。私達は法と人を守る事にしている。だから秩序があるのよ!」
「悪いが俺には法律なんてどうでもいい。俺にとって重要なのは契約だ。お前たち暗部がどう関与しようと俺には友達が多い」
政府・警察・軍・テロ組織。俺には友人は多い。協力してくれる人は軽く3桁を超えている。
だからこそ俺の存在は公になる事は無かった。これまでも、そしてこれからもだ
俺は陰の存在であり、さまざまに恩を売り俺は情報か金のどちらかの利益を得る
「なら我々と協力しなさい」
「俺は篠ノ之箒を守るのが仕事だ。お前達と契約したところでメリットがあるとは思えない」
それにだ。俺とお前は犬猿の仲だと言ってやった。そんな状態でお互いの協力関係が築けるとは思えないと
「次に同じことをした時は私がこの手で決着をつけるしかないわね」
「なら俺はお前を殺す。俺は何者も信用しない。国も組織にも忠誠は誓わない。俺が守るのは契約だけだ。履行が終われば消える」
俺はタクシーに乗り込むと警察署からIS学園に戻っていった
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一夏とヘクマティアルと楯無
IS学園に戻ってきたが、静かなものだ。
「まったく徹夜明けにこれとはな」
学園に戻ってきたころにはもう朝日が出ようとしていた
俺としては少しは休みたいがそう言っていられない。
いつ何があるかわからないからだ。俺は仮眠をとるために警備室に移動した
仮眠用の部屋に移ると携帯端末をそばにおいて睡眠を取り始めた
なにかあってもいいように手にはオートマチック銃を握っていた
数時間の仮眠を取り終えると、すぐに朝日が出てきた時間になり警備室内の時計から8時を示すチャイムが鳴った
「数時間しか眠れないのは久しぶりだな」
俺は警備室を出ると食堂に向かった。朝の栄養補給は重要だ
廊下を歩いていると携帯電話が着信を告げていた。相手はココさんからだ
「ココさん。昨日の件ならキャスパーさんにお礼を言っておいてください」
『キャスパー兄さんがあなたに仕事を依頼するなんて珍しい事よ。それで、亡国機業とはどうするの?』
「いきなり本題ですか。そうですね。俺の行動に支障がない範囲なら協力しても良いと返事をしておきました」
『私もキャスパー兄さんの計画には参加するつもりよ。このままISが拡大し続けたら世界平和にならないから』
ココさんは以前から世界平和のために武器商人をしていると言っていた。
確かにISが存在し続ければ女性至上主義が台頭し続けて平和になる事は無い
いずれは男と女で戦争になるかもしれない。ISは数が限られるが、銃は誰にでも扱える
「ココさんは平和を願っていましたね」
『私の願いは世界平和よ』
俺は、自分もその願いが叶えば良いと思っていますというと電話を切った
確かに俺はISによってすべてを失った。織斑計画も含めてだが
あんな計画のおかげで俺は生まれた。自然の摂理に反する産まれ方をした
身体能力が高い事はこの家業では良い事だが。フェンリル先生にこういわれた
いずれは生まれたことを後悔するときが来ると
実際のところもうしている。後悔を。俺が生まれたせいでラウラ・ボーデヴィッヒが生まれた
どこまでも嫌な話だ
「一夏。今日は遅いな」
「箒か。俺もいろいろと忙しいからな」
声をかけてきた箒はもう朝食を食べ終えたようだ。
俺はいつものようにサンドイッチなど簡単なものにすると、携帯端末で情報収集をしながら食べていた
「ずいぶんと余裕ね。織斑一夏」
「わざわざ喧嘩を売りに来たのか?楯無」
朝っぱらから嫌なやつと巡り合ったものだ
「あなたを監視するのが仕事だもの」
「お前よりは俺は仕事はしていると思うが。また生徒会の仕事をさぼっているとあの眼鏡が似合う女子に追いかけられるぞ」
「ずいぶんと気配りができるじゃない」
楯無はそう思っているなら行動を自重してもらえると嬉しいんだけどと言うが
俺にはそのつもりはない。俺は俺のやりたいようにする。邪魔するものは排除するまでだ
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一夏とミサイルと束
食事を取り終えると俺は警備室で各種センサーから得られる情報で各警備担当者に配置状況を指示していた
「お前はよっぽど暇らしいな」
楯無は外でずっとこっちを見ている。離れるつもりはないようだが、
監視カメラがあの少女が楯無を探しているのを確認すると俺は連絡してやった
すると彼女はすぐにやってきた
「生徒会長の仕事があります!」
そう言って強引に連れていかれた。ようやく平和な時間を作り出すことができた
平和が一番だが、俺にとっては平和すぎると仕事がなくなる。因果な仕事だ
退屈した俺は巡回に行くことにした。
もうすでに授業が始まっている時間なので俺はスタジアムに向かった
ちょうど、箒たちのクラスがそこで実習をしているからだ
「今のところ周囲のレーダーにも敵対勢力は引っかからずか」
携帯端末でデータを確認しながらも移動をしていた
スタジアムにつくと俺は観客席に座り、千冬姉の指導を見ていた
俺にとってはもうISの操縦から整備まで、束さんから教えてもらっているので聞いているのは復習代わりだ
『一夏さん、自衛隊から入電。所属不明の飛翔体が接近しているとの』
「ISか?」
『いえ、ミサイルの可能性が高いとのことです。護衛艦は迎撃態勢に入っています』
トラブルが降ってきたようだ。
俺はすぐに撃墜にしくじった時の対応措置に入った
携帯端末でレーダー情報を確認すると、高速で飛翔する物体。
護衛艦から送られてきた映像などによるとミサイルだ
数秒後には迎撃された。俺は引き続き警戒態勢を維持するように指示する
念のため俺は内心では嫌だったが認識票になっているISを展開できるようにした。
認識票になっているのは俺が持っていても怪しまれないからだ
「誰からのプレゼントなのか知りたいところが」
『ピーピーピー』
「織斑一夏」
『束さんだよ!いっくん。さっきミサイルがきたって話だったけど大丈夫?』
「どうせ見ていたんだと思っていますけど、護衛艦が無事に破壊してくれました。それで何かお話ですか?」
『実はね。いっくんにも活躍してほしい所があるの。ある研究施設を襲ってほしいんだけど』
研究施設という言葉に俺は敏感に反応した。内容はシンプルだ。まだこりていない連中がいたようだ
織斑計画の続編をしようというバカがいたらしい
「わかりました。場所は分かりますか?」
『もう端末に送っておいたからあとはよろしくね』
場所は東京の山奥だ。こんな山奥に研究所を作ってまだあの計画を推し進めようとする人間がいるとは
まったく嫌な連中だ。この地球上から抹消するためには嫌ではあるがISを使った方が良いだろう
俺のISはステルス機能がある。それにエネルギーはかなり食らうが、研究所を破壊することができるエネルギー砲もある
一応、俺がISを持っていることは機密扱いになっている。知っているものは限られた者だけだ。
だからこそ使用には警戒をしなければならないのだ
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一夏と研究所と楯無
俺はその日の夜に研究所に向かった。もちろん途中まではバイクでだが
研究所はかなり山奥に設置されていた。それも表向きはバイオテックの研究所という形だ
そういう研究所にしておいた方が何かと都合が良いのだろう
いろいろと遺伝子操作をするうえで機材の購入などで怪しまれないようにする上では
バイクを研究所から少し離れた森の中に止めて、束さんが渡してくれたIS、俺はラーズグリーズと呼んでいるが
そいつを展開した。内心では嫌だと思っていたが研究所を破壊するにはこれが最も簡単だからだ
このISは束さんがかなり力を入れて生み出したので、第4世代でありながらもそれを上回る高性能を持っている
装備はエネルギー砲のほかに、ナイフや銃など様々な武装を持っている。
ちなみにステルス性にも優れていて、レーダーにも探知されない素材を使っている
「それじゃ、さっさと始末をするか」
行くぞと心の中で言うと俺は研究所上空に位置につくと、エネルギー砲を発射するための充填に入った
数秒後には大きくエネルギーを消費するがそれに似合うだけの威力を持つエネルギー砲の発射できる状態になった
俺は迷うことなくそれを発射して研究所を破壊した。なにもかも、跡形も残さないように
砂煙がなくなるとそこには大きなクレーターが誕生した。
まるで大きな爆弾が爆発したかのような。
「これで仕事は終わりだな」
周囲に生命反応は確認されなかったので俺は地上に戻り、ISを解除。
バイクに再び乗り込むと、すぐにその場から去る事にした。
あとに残されていたのは、誰があの研究所を運営していたか
そこは束さんに調べてもらうしかない
それほかにも束さんにしてもらわなければならないことはある
もっとも重要なのはマスコミを抑え込んでもらう必要がある
猟犬が関わっていたのなれば何か裏事情があると思われかねない
「いやな仕事だ」
俺はバイクに乗ってIS学園に戻っていった。その途中で戦闘機が低空飛行しているのを確認した。
1度バイクを止めて双眼鏡で確認するとF-35の航空自衛隊の最新鋭機だ
どうやら政府の上役が絡んでいるようだ。そういう連中には消えてもらうしかない
こういうのはモグラたたきのようなものだが、猟犬が動き出したと知る事になると1度は収まるだろう
まだまだ台風の嵐はこれからというものだ
「いろいろと情報が必要だな。ここはココさんに協力を求めた方が良いかもしれない」
ココさんならいろいろとコネクションを持っている。それに彼女に製造してもらった対IS銃弾。
あれで駆け引きをすれば大きく事は動く事になるだろう。バイクのアクセルを全開にした時、携帯端末がISの反応を示した
「またあいつか。楯無」
俺はバイクの速度を上げて研究所から離れた高台にバイクを止めた
「ずいぶんと早い到着だな。だが手遅れだったな」
「織斑一夏!あなたっていう人はもっとまともな方法を思いつかないの!?」
「生存者を残せばまた研究所が作られる。この世から消してしまった方が良い」
「最低ね。あなたを逮捕したところで証拠なんてないものだし」
「だったら見逃してもらおうか。これでも忙しいのでな」
ところが楯無は自身のISで攻撃しようとしてきた。
俺は仕方なくIS用の弾丸を装填した拳銃の弾を奴の肩に向かって発砲してやった
シールドを突破して、肩をかすめた。瞬時に回避行動をとったようだ。腕は良いようだ
「あなた、その弾丸は!?」
「対IS用の弾丸。絶対防御である機体でもそのシールドを突破する。意味は分かるな」
俺は含みを持たせるような形で話をした。もし交渉決裂したらこの弾丸を市場に出すと
そんな事になるとISによる絶対防御は突破される。そうなればどうなるか。世界がひっくり返る
「望みは?」
「今回はここまでだ。俺は猟犬だ。俺に噛み付かれた奴は必ず仕留める。そのリストにお前の妹を載せたくないならな」
俺はそう言うとバイクを再び走らせ始めて学園に戻った
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一夏と亡国機業と不法侵入者
あれから数日。平和な日々が続いていた
いつもの警備業務だけであるが、いつもどこかで監視されているのは分かっていた
楯無だ。あいつは諦めが悪い。というよりもしつこいのだ
だが、あいつも少しは利口になってきた。一定の距離を保っての監視だ
一線を超えるようなことはしなくなった
「まぁ、進歩したとは言えるな」
問題なのは亡国機業だ。連中が何を仕掛けてくるか。
俺は箒を守れさえすれば学園がどうなろうが知ったことではない
契約は必ず履行する。それこそが俺の価値なのだから
プロとしての数値を示す値でもある。いかに任務を全うしたか
ちょうど屋上の給水塔のところで日向ぼっこしている時携帯端末から通信を知らせるアラームが鳴った
「そろそろかかってくる頃だと思っていたが。随分と時間がかかったな」
『あの研究所は私達で処理するつもりだったのに手間が省けたわ』
亡国機業も狙っていたようだ。ただ、彼らがただの研究所を破壊するだけとは思えない。研究員を利用する可能性があった
だから俺はすべてを消したのだ
「まぁサービスしておく。俺にとってもあの手の研究施設は放置できないからな」
『でもあそこまで派手にやらなくても良いんじゃない?マスコミは騒いでいるわよ。テロかもしれないと』
「俺はテロリストの分類に入るからな。間違ってはいない。それにだ。あんな研究所を放置している政府に問題がある」
『それについては同意見ね。政府はまだ織斑計画を忘れられないようね。今度研究所を見つけたら知らせてくれるかしら』
気が向いたらなと言って通信を切ったが、俺にはやる気はまったくない
連中に利用されるのだけはごめんだからだ。俺は猟犬だ。集団で群れるのは好きじゃない
一匹狼の方が何かと都合が良いのだ。そんなことを考えながら、校舎の方を巡回している時だった
侵入者がいるとの連絡を受けた。そいつは裏の海側から侵入してきたようだ。
位置情報を確認すると俺は箒のクラスの真下に出ることが分かった
俺は急いで走ると箒のクラスのドアを開けると
「何だ一夏。授業中だぞ」
千冬姉がそう言ったが俺は何も答えずに向こうの窓に向かって走る。
ホルスターから銃を抜いて窓ガラスを破壊そこから飛び降りた
ここは2階だ。いくら2階でも安全とは言えないが緊急事態だ
俺が降りるとちょうど犯人の正面で会う事になった
生徒が見ている事も考慮して始めは格闘術で対処した
「お前を不法侵入の容疑で逮捕する!」
ところがこいつはしつこく俺に殴りかかってきた。俺は頬を差し出す代わりに膝に鉛の弾をぶち込んだ
「おい!ここまでやるか!」
俺の銃の発砲音に気づいたのか多くの生徒が窓から見ていた
「お前はとんでもないやつを怒らせたという事だ。猟犬をな」
「お前が、あの猟犬だと!?」
耳元でささやいたのに大声で言ったので俺は銃口を膝に当てて喋れないようにした
「もう1発食らいたいか!」
「手を引く!だからフェンリルには連絡しないでくれ!」
昔、ひどい目にあわされたようだ。いったい何をしたんだか。先生は
「とにかく、救急で病院に行ってもらうが逃げたら頭に穴が開くことは俺が保証してやる」
そう言うと他の警備担当もやってきたので身柄を預けた
「こいつを頼む」
俺はとりあえずその場から引き上げる事にした
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一夏と簪と射撃訓練
あの騒動によって面倒な報告書を書かされる羽目になった
さらに侵入ルートを調べてセキュリティ強化。まったく損な仕事だ
「一夏さん。少し良いですか?」
警備室を訪れたのは楯無の妹だ
俺は話しぐらいなら聞いてやっても良いかと思い構わないぞと答えた
「どうしてお姉ちゃんはあなたのことを目の敵にしているんですか?」
「あいつはお前のことを心の底から愛している。だから汚い世界を見せたくないんだろうな」
「汚い世界ですか?」
そう、俺達のように血まみれの世界に妹を近づけたくない。
俺はお節介かもしれないがあいつのことは分かっている。本当はこの妹を大切にしているのだ
「血まみれの現場に行かせたくない。それがあいつの本音だ。俺達の世界では人殺しは日常茶飯事だ」
それで稼いでいるのだから。そんな世界に妹を巻き込みたくないんだろうなと言ってやった
すると彼女はどうしてそれを私に言ってくれないんですかと聞いてきた
「真実を知らない方が幸せな事もある。世の中はゆがんでいるだから。手を繋いで仲良くいこうとはいけない世界だからな」
「1つだけお願いがあるんです」
俺は時間があれば付き合うがと言うと、銃の取り扱い方法などを教えてほしいとのことだった
「意味を分かっているのか?そういうのを学ぶという事は危険な世界に行くという事だぞ」
彼女はこういった。自分の身を守れるようになりたいだけだという事なので
俺は時間がある時なら付き合ってやると。ちょうど今からなら1時間空いているから練習には付き合えるがと
彼女はよろしくお願いしますと言ってきた。まったく姉妹揃って面倒な
まぁいい、人に教えるという事は自分にとっても復習をするのと同等だからだ
俺は楯無の妹、いや更識簪と一緒に射撃訓練エリアに行った
俺はいつも装備しているグロック17を取り出す。彼女には小型リボルバーを渡した。
まだ9mm口径を撃つには早いと判断したからだ
「銃に慣れるのは良い事もあるし悪い事もある。気を付けて扱え」
リボルバーを持たした。発砲すると的に命中した。数発撃ったがすべて的に命中
銃の扱いはまだまだだが筋はかなりいい
上手く訓練すれば射撃においてはいい成績を出せるだろう
ただしそれは的がただの的の場合に限るが
実際に人を撃つにはそれなりの覚悟が必要だ
自分がそいつの人生を終わらせる。その事の重さをよく理解しなければならない
だからこそ俺は殺されても当然の人物しか狙わないのだ
法では裁けない人間を。法律は味方してくれない。ただのシステムだ
そんな人々を救うには法の外に出てやるしかない
それが俺のやり方だ。文句を言うやつは無視するだけだ。
「これからも銃の扱い方を教えてもらう事はできますか?」
「楯無が必死になって守っているのにそれを反故にしたいのか」
俺としては迷惑な事になるだけだが、どことなくほっとけないと思ってしまった
俺もまだまだ甘い人間だ
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一夏と簪と楯無
射撃訓練室から出ると、明らかに私は怒っていますという顔をしている楯無がいた
「私の妹に銃の扱い方を教えて」
どういうつもりなのと。俺は頼まれたから手伝っただけだというと後ろから歩いてきた彼女がある一言を言った
「私だって自分の身くらい自分で守る。お姉ちゃんには頼らない!」
その言葉にかなり楯無は衝撃を受けたようだ。
まぁいつかは人は自立するものだが。まさか今この状況で言うとは
なかなか度胸がある
「私にだってやりたいことがあるのにお姉ちゃんが邪魔をするの!」
「私は穢れた世界に踏み込んでほしくないだけなの」
「そんなのお姉ちゃんの勝手でしょ!私は自分のやりたいようにするだけ!一夏さんを悪者にしないで」
そう言うと更識簪は走り去っていった
予想はしていたが楯無はかなりご機嫌斜めの様子だった。
もっとも俺には関係のない事だが
「やってくれたわね」
「お前は過保護すぎなんだ。もっと自立させることを手伝ってやるべきだったな」
「あなたに何が分かるの!あの子には幸せに生きてほしいのに!」
「俺だって同じ境遇だからよくわかる。あいつはいづれお前の手から離れる。どういう道を選んでも尊重してやるだけにするんだ」
俺だってもしあの時に道を選べたら状況が変わっていただろう
こんな道に走る事は無かったかもしれない。だがそれも可能性に過ぎない
起こってしまったことを戻す事はできないのだ。時計の針が戻らないのと同じで
過ぎてしまったことを後悔しても遅い。前を見て歩みを続けるしかないのだ
「織斑一夏。私はあなたを!」
いつものセリフだが今までとは状況が違うようだ
「だったらここで俺を殺すか。そうすればあいつの心はますます遠くなる。ジレンマだな」
最初に問題を作ったのはお前だと言ってやると俺はその場から去っていった
楯無とあいつの妹の関係は俺と千冬姉に似ているのかもしれない
だから俺は手を貸したのかもしれない。
とりあえず俺は警備室に戻るとそこで銃の手入れをしていた
銃の手入れを怠れば死に繋がる事が嫌というほどわかっているからだ
暇があれば銃を分解して掃除をする。それが俺の日課だ
俺は銃の手入れを終えると自分用に割り当てられているデスクで事務仕事をしていた
報告書を作成していたのだ。警備スタッフとしていろいろな書類を決裁しなければならない
表向きには警備スタッフの上司がいるが。現場では俺の判断が優先されることになっている
報告書を仕上げていると、箒がやってきた
「姉さんから私を守るように言われたって噂が流れているが本当なのか」
箒は警備室に入ってくると直球で質問してきた
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一夏と箒とトラブルの種
俺は箒の質問にどう答えようか考えた
箒が束さんを嫌っている事は知っている
「なぜそんなことを聞く?」
今まで触れてこなかった話題なのになぜ今頃になって聞いてきたのか
「知りたいからだ。私を守るためにいるのかどうか」
「俺は答えられない。悪いな」
まさか箒を守るためにここにいるとは言うわけにはいかない。
俺は陰から見守るのが仕事だからだ。
「なぜだ!お前はどこで道を」
俺は道を外れた。外れたというよりも普通の人生を送る事は諦めたのだ
だからテロリストをしている。
「俺はもう壊れているんだ。人としてまっとうな人生を送る事はできない」
俺は歩む人生はきっと綺麗な花畑の道ではなく、血と油でできた最悪の道だ
「これだけは言っておく。お前は束さんのことを嫌っているようだが、束さんはお前のことを大切にしている」
「姉さんのせいであんな目に遭ったのに、それで納得できると思うのか!」
束さんは箒のことを本当に心配している。だから俺に身辺警護を頼んできたのだ
「無知は罪だ」
俺はそう言うと校舎内を巡回し始めた
平和というのは素晴らしいものだが実際は違う
平和になるには代償が必要だ。何もなくて平和になる事はありえない
その代表がISだ。表向きISはスポーツだが実際は軍事的野心を持たせるものだ
今では通常兵器に対する予算は削減されているが。ISの開発費は増える一方だ
これでどうやって平和だといえるのか。俺はそう聞いてやりたい。政治家や軍事組織の連中に
そんなことを考えながら校舎内を巡回していると携帯端末にセキュリティ警報が出た
場所は校舎の裏側。
「今度は何だ」
俺はそこに行ってみると、亡国機業のMが。織斑計画の生き残りであるマドカだった
「わざわざ俺の張ったアラートシステムを鳴らしてくれて何の用件だ」
「1つ仕事を頼みたい。報酬は出す」
具体的にと聞くと明日の実習中にあるISが暴走する手はずになっているとのこと
それについて介入しないでほしいという事だった。
もちろん観客に被害が出そうになったときは自衛権の行使は認めるとの
「なるほど、お前達はISの危険性を証明したいわけだ」
「察しが良いのは助かる。それ答えは?」
「俺はISを嫌っている。答えは決まっているが、できれば生徒にはけが人は出さないでくれると助かる」
後始末が面倒だからなと言うと分かったといって封筒を渡して姿を消した
中を見ると報酬として金が入っていた。
「IS嫌いの組織が暴走事故を引き起こすか」
亡国機業がどこまでの考えを持っているのかを本格的に考える時が来たようだ
状況によってはこちらからアプローチも必要だ。ただ見ているだけでは読めない事もある
そこに楯無が近づいてきた。どうやら警備アラームを知ってきたのだろう
「今度は何?」
「ネコだ。センサーの感度が良すぎたんだろう。あとで調整をしておく」
適当に誤魔化しておいたがどこまで信用するか。まぁ、さっきの会話は聞かれてはいないだろうことは分かっている
それだけでも十分だ
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一夏と実技訓練と暴走事故
俺は朝に行われるISを使った実習で起こるであろう暴走事故に備えをしていた
ある情報筋によるとドイツ代表候補生のISにVTシステムを搭載しているとのことだ
面倒な事に、そのクラスには箒がいる。
俺としては単独で暴れてくれるならありがたいが、
箒を巻き込むような事態になれば実力行使あるのみだ
幸いなことにスタジアムの地面は砂だ。
砂嵐をまき散らす形で注意をそらして俺のISで暴走事案と止めるプランを考えていた
「本当のところは何もない事を祈るんだがな」
自分のISを使うことは避けたい。理由は簡単だ。公式には俺はISを所持していないことになっているからだ
だがそう悠長なことは言っていられない状況下に追い込まれたら最後だ
いくら観客席に人がいないとはいえ生徒たちはスタジアム内にいるのだ
箒も含まれている。契約上箒を守る事に集中するが
亡国機業がどこまでやる気があるのか。
仕方なく倉庫に行ってバレットM82を取り出すと対IS弾をマガジンに装填した
ある程度暴走させてから止めればいい。そうすればISに危惧する者もあらわれるだろう
パフォーマンスとしてはそれで十分だろう
「あとは俺が射撃でうまく狙えるかどうかだな」
俺はスタジアムの高台で対赤外線シートをかぶっていバレットM82を構えていた
いつ暴走事故を起こすかわからない以上ここで待機するしかない。
もし暴走事故を起こしてくれたらISの危険性を理解してくれることを祈るばかりだ
確かに最初は宇宙開発が目的だったはずなのに今は兵器扱い
束さんが可哀そうだった。せっかくの自信作を軍備に使われるとは
本来の目的はすっかり忘れられている。
束さんにも想定外だったのだろう。まぁあの白騎士事件を起こした時点で軍備かはわかりきっていた事だが
核兵器と同じだ。たった1種類の兵器によって世界は大きく変わってしまった
いよいよドイツ代表候補生であるラウラ・ボーデヴィッヒの機体運用テストを始めた時トラブルが発生した
いわゆる暴走事故というよりもVTシステムによるものだ
俺はいつでもコアを撃ち抜く準備に入った
その時だった。またしても邪魔者が現れた。楯無だ
「ずいぶんと遅い登場だな」
「あなたこそ、まさかコアごと破壊するつもりじゃないでしょうね?」
「さぁな」
俺はそう言うと手段を暴走するISの足元を狙った
弾は絶対防御を貫通して装備の一部を破壊。
ただ予想よりも向こうの強度があったようであまり被害は出せなかった
相手はこちらに視線を向けたのを確認すると俺は首にかけているドッグタグを取り出した
そして起動コードをいつでも唱えられる状態にした
俺のISは束さんの特別製で強力すぎるゆえに起動には専用のコードが必要なのだ
強すぎる力は争いを呼ぶという言葉もある事だからだ
「コアを破壊する」
「大事なコアよ!破壊なんてしたら!」
「それなら、お前が死ぬ気で止めるか。あのISを。さっさと選べ」
分かったわよと楯無が言って自分のISを起動させて向かった
その後の決着は言うまでもない。ISでは最強を誇っているのだから決着はすぐについた
俺はまだ幸運だったと思った
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一夏と事情聴取とヘクマティアル
俺は理事長室に呼ばれた。
ISの絶対防御を突破した弾の件についてだ
「一夏君。今回の件は問題なるよ」
「なら俺をクビにすればいい。悪いが秘匿特権を捨てるつもりはない」
「一夏」
千冬姉が俺に止めるかのように言うが、俺は情報開示するつもりはない
もし開示するくらいなら俺はすべてを隠蔽するつもりだった
ちなみにあの暴走事故の時の監視カメラの映像はすべて束さんによって潰してもらった
人の証言だけはどうにもならないが。絶対防御を突破できる弾等の話を信用する奴は少ない
隠蔽自体はそれほど難しい事ではない
「一夏、絶対防御を破った弾を認めろ」
「千冬姉、証拠はあるのか」
楯無が睨んでこちらに向かって言ってきた
「映像記録はすべて削除されている以上証言だけが頼り。あなたの仕業ね」
束さんに頼んであらゆる情報を書き換えてもらったのだ。
もちろんそれぞれのISにもその時の記録映像を抹消するようにうまく裏工作をしてもらった
「どうだかな。とにかくだ。明確な証拠を並べない限り俺は認めない。警備に戻る」
そう言って俺は理事長室を出ようとしたとき、ある事を思い出してこういった
「もし、仮にの話だがISの絶対防御が破れる弾があるなら、世界中で男女関係が元に戻るだろうがこっちにとっては痛手だ」
「一夏!」
「織斑一夏!」
千冬姉と楯無が俺を責めるかのように言うが事実なのだからしょうがない
俺にはもう元に戻る方法はない。完全に壊れたのだから
「これだけははっきりしておこう。俺は猟犬だ。邪魔をすればたとえ地面が血まみれになっても歩みを止めない」
そう言うと俺は理事長室を出でる
そのまま警備室に向かった。その途中で携帯電話に着信が入ってきた。相手は亡国機業だ
「なかなか楽しいショーだった」
『こちらとしてもある種の警鐘はならせた。あとは芽吹くかどうかだ』
「俺としては芽吹いても芽吹かなくてもどちらでも良い。興味のない話だからな」
そう言うと通話を切った。
『ピーピーピー』
ココ・ヘクマティアルからの連絡だった。来るとは思ったが狙いはあの弾の製造に関する事だろう
「ココさん。そろそろ連絡来ると思っていました」
『キャスパー兄さんから聞いたわよ。派手な事をしたって。ねぇ、あの弾を大量生産しても良いかしら?』
「コストの方がかかると思いますが」
『でも売れる事は確実な商品なんだけど』
確かにISの絶対防御を破壊できる弾となると高値でも取引されるだろう
だがそれではこちらが困る。今は
「もう少し時間をください。下手に量産されると対抗策が練られる恐れがありますので」
『わかったわ』
俺は世の中上手くいかないものだと思いながらも警備室に戻っていった
その道中に保健室に寄っていくことにした。ちょっとした気まぐれだ
通り道にあるから別に良いかと
室内に入るとラウラ・ボーデヴィッヒがベットで眠っていた
保健室の担当に様子を聞くと疲れているだけだという事だ
俺の弾の影響がなかっただけ幸運だ。もし射程に入っていたら今頃天国に行っていた
運の良いやつだと思いながらも、とりあえず様子は見たことだし警備室へと再び戻る行動を起こした
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一夏と簪と楯無と関係
警備室に戻った俺はパソコンで報告書を作っていた。
もちろん形だけのものだが、作らないという選択はなかった
これでも警備スタッフとしてリーダー格なのだ。
報告書は作成しておかないと。
「面倒だな」
そんなことを言いながらもデスクワークをこなしていった
報告書を作成して決済済みの書類棚に置くと俺は仮眠を取る事にした
眠れるときに眠るというのは俺が最初のころに学んだことだ。こういう仕事をしていると特にだ
まだこの時間帯は平和だ。授業中であり大抵の人間は校舎で座学を受けている
それにレーダーにも反応はない。俺が設置した各種センサーにもだ
多少はゆっくりとすることができる時間ができるというものだ
だがそんな平穏な時間は意外とあっさりと過ぎ去っていくものだ
少し休んでいる間に授業が終わりの時間になり夕方になっていた
「疲れがたまっているみたいだな。体調管理を万全にしないと」
プロとして失格だなと思うと警備室から出ていき巡回に向かった
「一夏さん」
「ああ、簪か。また銃の訓練でも受けたいのか?」
「いえ、ISの作成についてアドバイスをもらえればと思って」
「俺も完璧に知っているわけじゃないぞ。まぁ専門家に教えてもらってはいるが」
「それって、篠ノ之束博士のことですよね。お姉ちゃんたちが隠れて話をしているのを聞いちゃって」
「お前も人を頼る事を覚えたか」
まぁ良いだろうと思って付き合ってやる事にした。お人よしなのかもしれいないが
少し手伝うくらいなら問題ないだろう。俺と簪は一緒に整備室に行くと彼女のISの整備を手伝っていった
プログラミングに関してはなかなかの技術者だ。
ただ、一部プログラムの数値ができていないところがあったのでそこを補正していった
「そろそろ退散する事にする。面倒な客がきたからな」
「それってお姉ちゃんですか?」
「ああ、俺とお前との関係を快く思っていないからな。迷惑をかけるわけにもいかない。なにかあればまた手伝ってやるから」
そう言って俺は整備室を出ていった。すると予想通り楯無が睨みつけるかのようにこちらを見ていた
「どうやら楯無、お前とは永遠に相性が合う事はなさそうだな」
「それについてはまったくの同意見ね。殺人マニア」
「酷い言い方だな。俺はこう見えても平和を求めているんだがな」
とてもそうは見えないわと言うと今後2度と私の妹に手を出すなと彼女は強い口調で言ったが
俺はこう言い返してやった
「お前が止めたとしてもお前の妹は歩みを止める事は無い。妹との関係を放置するからそうなるんだ」
「それはあなたの得た経験談なの?」
俺はさぁなと言うと整備室を出ていった
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一夏と束と千冬姉と関係
夕方になって俺は夕食を取るために食堂に向かった
生徒たちの話題はもちろん今日の暴走事故だ
ラウラ・ボーデヴィッヒの機体暴走事故がVTシステムによるものであることはすでに周知の事実だった
外部に漏れるのは防ぐ事はできても人の口までは塞ぐ事はできない
多少の情報漏れは仕方がない事だ。こうなる事を狙っているのが亡国機業なのだから
彼らにとってはISは男女平等を目指す組織としては邪魔な存在だ
「一夏、噂になっているぞ。お前がISのコアを撃ち抜こうとしたと」
箒が近づいてくるとそんなことを言ってきた。まったく抜かりの無いやつだ
楯無は。いろいろと攻めてきて俺を兵糧攻めにでもしようとでも思っているのか
あいつもこういったらあれだが、ひねくれものだ
「箒、ISの絶対防御を破れる弾なんかないだろ。そんなものがあったら今頃大騒動になっている」
俺は表向きの理由だけを話してが、実際はその弾が存在することを認めるわけにはいかない
もし存在すればIS学園で面倒な事になる。俺としてはそんな状況は好ましくない
契約で箒は守る事になっているが安全は保証できないからだ
「そんなうわさを信じるなんてお前らしくないぞ」
俺はそう言うと夕食を取る事にした
いつものように、いつものメニューの定食をとる。
俺は食堂の全般が見やすい位置に座り食事を取り始めた
いくらここの窓が防弾だと言っても危険がないとは言えない
いつ何があるかわからないからこそ、それを想定するのが仕事だからだ
「まったく、苦労するな」
俺は食事をしていると千冬姉が来て俺のそばに座った
「一夏。束と話をした」
「束さんは何か話したのか?」
「あいつ、お前のことでは何も話せないと」
そう、契約する前に約束したのだ。俺のことについては一切触れないように
余計な事で仕事に関して邪魔されたくないからだ
「一夏、お前は今後どうするつもりなんだ?」
「千冬姉。もう俺に構うのはやめてくれ。その方が千冬姉を傷つけなくて済む。もう忘れてくれ」
俺はそう言うと食事を終えて席から立ち上がろうとした
「一夏!」
俺は千冬姉の言葉に振り返りたかったが、それを許されない事はもう分かっている
俺はもう汚れすぎている。汚い世界で。一度でもはまってしまってはもう抜ける事はできないのだ
暗黒の世界で生きている俺には千冬姉はまぶしすぎた。
俺なんかをもう切り捨ててほしい。前を向いて生きていってほしいのだ
「一夏さん、どうしてあんなに頑ななんですか」
「布仏虚。お前には関係のない事だ。それに俺は今非常に機嫌が悪い。鉛弾を食らいたくなかったらさっさとどけ」
俺はそう言うと食堂を出ていった。警備室に戻ると愛用のオートマチック銃を分解して整備をした
手抜かりがあってはいけないからだ。ちなみに銃は2丁持っている。1丁はオートマチック銃のグロック17。
もう1丁はリボルバーのS&W M686だ。オートマチック銃が使えなくなった時に備えてリボルバーを持っている
いつものように整備を終えると俺は仮眠をとるために仮眠室に向かった
もちろん無線と携帯端末の電源は入っている
緊急時には即座に対応できる
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一夏と楯無とヘクマティアルの関係
仮眠が思いのほか長引いてしまった。どうやら俺の体力が限界に近かったようだ
まだまだ俺は未熟者という事だろう。フェンリル先生ならそういうだろうからだ
あの人の体力にはついていけないところがある。どんな不可能でも可能にする
俺はあの人に様々な事を学ぶことができた
その多くが今の俺を作り出した。冷徹で時には非情な判断も下す
だからこそ俺は今まで生き延びることができた。
そうでなければ不可能だった。今の俺があるのは
幸せは勝手に来るものではない。自分から勝ち取っていくものだ
それがどれだけ周りから愚かに見えようとも、戦っていくしかないのだ
価値があると信じているから。戦うのだ
幸せになる方程式がないから
「さて、もう授業時間はは終わりか」
もう授業時間は終わり。放課後は多くの生徒が自主訓練でスタジアムでISの実践をしているころだろう
俺は携帯端末で箒の位置を調べると剣道部で練習をしていた
一応確認のために向かう事にした。その途中で楯無と出会った
「あなた、ヘクマティアルと関係があったのね」
「そのネタを掴むのにずいぶんと手間がかかったな。もう少し情報収集能力を高めたらどうだ。楯無」
「あなたに言われると癪だけど。今は悠長なことは言っていられないの。真実を話して」
真実か。それは人の数だけ存在する。どれを信じるかは人次第だが
俺はこう答えた。自分で探してみろと
「ヘクマティアルは情報封鎖のプロよ。簡単に情報提供をしてくれるとは思えないわ」
だから俺に聞いているのだと言った。俺が楯無に話す義理はない
「せいぜい頑張るんだな」
「あなたって本当に協調性っていうのがないのね」
「テロリストに協調性を求める方がどうかしている。あの人からこう教えられた。善意があればそこに罠を感じろとな」
良い事があれば必ず落とし穴がある事を示している。だからこそ俺は一匹狼なのだ
決して他人と交わる事はしない。契約を重んじている
俺は話がそれだけならもう行くというと剣道部の部室に向かった
剣道部では箒が練習をしていた。他の部員と共に
箒がこちらに気づいたようで近づいてきた
「一夏も練習に参加するか?」
「いややめておこう。俺はもう剣道は捨てた。それに知っているだろ。俺がどんなことをしてきたか」
箒は噂では聞いているが事実なのかと言ってきた
そう、学園内では誰が触れ回ったかは知らないが俺が殺し屋をしていることが分かっている
誰がしゃべったのかはおおよそ見当はついているが、
もう1度同じことをしたら地獄を見せてやると思い、今は行動にすることを控えていた
「まぁ、当たっているかもしれないし当たってないかもしれない。俺には答えられない」
俺はそう言うと剣道部での箒の鍛錬を見ていた
まぁ俺は剣道は今更できない。俺は殺しの技術の方に磨きをかけているからだ
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一夏とトラブルとミサイル
剣道部の練習状況を見ながら俺は携帯端末はたびたび見ていた
定期的に他の警備担当官から連絡が入ってくる。今のところ異常はない
「今日もこのまま異常なく終われば良いんだがな」
だがそんな願いをしている時にかなわない事はよくわかっている
不幸は突然とやってくるものだからだ
『ピーピーピー』
「まったく今度は何だ?」
『すみません。ミサイルが接近中との通報あり。イージスシステム搭載型の護衛艦が迎撃態勢に入っています』
「到達所要時間は?」
『10分』
俺は携帯端末でレーダー情報をチェック。すると高速で飛行する飛翔体を確認した
「すぐに避難命令を出せ。急げ。それと自衛隊に連絡して迎撃を最優先にするようにリクエストオーダーを出しておけ」
『了解』
次の瞬間サイレンが鳴り始めた。緊急事態を示すもので俺は剣道部にいる全員にシェルターに避難するように指示する
IS学園には万が一に備えて地下シェルターが存在する。
もちろん使われたことは今まではなかったが。それが役に立つときが来た
「全員急げよ」
俺はすぐに情報端末でミサイルの軌道を計算していた。その結果学園ではなく護衛艦を狙っていることが分かった
一方護衛艦も迎撃ミサイルを発射したのを確認した
「いったいどこの連中だ」
IS学園を狙うなら理解できるが護衛艦を狙う理由が俺には理解できなかった
反政府組織の可能性もあるがわざわざここにいる護衛艦を狙うか
「あとで調べる必要があるな」
『ミサイル到達まで60秒』
しかし到達前に迎撃されたことが確認された。なぜ学園ではないのかを調べなければ
同じことが繰り返されては迷惑だ。俺はすぐに発射地点に関するデータを集めると共に避難命令の解除のタイミングを考えた
「同じことを繰り返すわけにはいかないからな」
生徒たちは次々と地下シェルターに避難していった。
まだ安全が確保されていない以上最大限の警戒が必要だ
『生徒の避難完了。自衛隊から入電、他に高速飛翔体は確認されずとのことですが』
「引き続き警戒態勢を維持しろ」
俺としては早めに生徒たちを解放したいがケガでもされた面倒なだけだ
今は安全最優先で対応するに限る
『発射地点は不明との情報ありです。どうしますか。一夏さん』
「念のため警戒態勢を維持しつつ生徒を寮に帰せ。今日の部活動はここまでだ」
『了解。報告書はできるだけ早く提出します』
そうしてくれと俺は伝えると自衛隊の関係者とコンタクトを取った
「織斑一夏だ。状況は?」
『発射地点は海上からだ。現場にいたのは大型貨物船であることまでわかっている。これから拿捕する予定だ』
俺は自衛隊関係者にも強力なコネがある。だからこそいろいろと貸しがあり、情報操作は容易だ
「わかった。感謝する」
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一夏と後始末と疑惑
その日の夕方、俺は会議室に呼び出された
理由は簡単だ。警備体制について生徒会側と打ち合わせをするためだが
本音を言えば俺はあいつとは関わりたくない。
だがこれも仕事だと思って割り切った
「自衛隊にはこちらで話を通しておきましたので」
「ずいぶんと根回しが早いわね。あなたがやったんじゃないの?」
「楯無、俺は篠ノ之箒を守る事が任務だ。学園を潰せとは聞いていない」
「一夏君、やはりここはIS学園に入学というのが」
「学園長。この際ですのではっきりさせておきますが契約で動いているだけです」
俺は学園でかごの鳥にするつもりなら出ていくまでだと言った
箒を守る方法は別にこの学園にいるだけの方法ではない
学園の外からでも見張る事はできる。この学園を守るのはあくまでもおまけのようなものだ
「わかりました。一夏君、引き続き警備スタッフとして業務を行ってください」
その言葉に楯無はなぜそんなことを認めるのですかと抗議の声を上げた
学園長は仕方がない事もあるのですと言って納得させた
「楯無、お前がどれほど抵抗しても無駄な事は多い。せいぜい頑張るんだな」
俺はそう言うと学園長室を出ていった
廊下を歩きながら俺はある人物に連絡をした
「亡国機業。お前達の差し金か?」
『あなたにケンカを売るほどバカじゃないわ。私達は無関係よ』
「そうか。なら良いんだが」
『もし私達だったどうするつもりだったのかしら?』
「その時は残念な結果になっただろう。言えるのはここまでだ」
俺はそう言うと通話を切った。残念な結果とは俺が亡国機業を潰しに入るという事だ
必要なら手段は選ばない。親兄弟、必要ならペットの飼い犬まで殺すという徹底的にやる
警備室に戻るとすでにほかの警備スタッフが集まっていた
「遅れて悪い。学園長に止められていたからな」
「上層部の意向は?」
「俺をIS学園にいれようとしている。言っておくが俺にはそんなつもりはないからな。そんなうわさ話を聞いても無視しろ」
そう言うとさっそく状況報告を求めた
軽傷者が何名か出たが。軽傷と言ってもシェルターに避難するときに転倒した等の軽傷だった
重傷者が出なければ問題ない。問題なのはどこの勢力なのかまだ分からないからだ。
防衛省を通じて当面の間はイージス艦を学園周囲に常時1隻を配置してもらう事にした
「まったく、どこの勢力かわからないと対応も難しいな。当面の間は警戒態勢を維持しながら交代で休みを。忙しいが交代で巡回」
俺は集まっている警備スタッフに伝えると警備に問題がある個所を見つけたらすぐに報告するように指示した
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一夏と昔話と過去
夜になり、IS学園は平和だ
静かな時間が流れるが俺にとってはこのような時間が貴重な訓練時間となる
俺は事前に予約しておいたIS訓練施設に入る
手には対物ライフルであるバレットM82を持って訓練施設に入った
幸いなことに今日は『仕事』はない。訓練のために時間を費やすことができる
しかしそこには邪魔者がいた。あの楯無だ
「相変わらずだな。ストーカーよりたちが悪いぞ」
「あなたから目を離すわけにいかないのよ」
好きにしろと俺は言うと900m先に的を設定すると対物ライフルに弾を装填して腹ばいになって構えた
「腕は良いわね」
「鍛えられたからな。フェンリル先生に」
「1つ質問しても良いかしら。あなたみたいな男の子がどうしてあんなテロリストと関わったのかしら」
先生との出会いは突然だった。俺が誘拐された時偶然にもそこを拠点としていた彼と会ってしまった
その時の話は以前聞かされたことがある。本当は俺を含めた全員を皆殺しにしようと思ったそうだ
仕事の邪魔をしたのだからと。だが俺の存在を知ると誘拐犯だけを殺し俺にこういった
姉に頼らなくても済むがお前が生まれてきた本当の真実が知りたくないかと。
そして知った。あの嫌な計画。織斑計画だ。
すべては仕組まれていたことを知って俺は日本に帰国した後、電話をした
全部承知の上でだ。おかげで銃の扱い方からテロの起こし方。
様々な要人たちとパイプができた。だからこそ今の俺があるのだ
だがそんな身の上話をするほどバカじゃな
「好きに考えるんだな」
俺はそう言うとターゲット代わりの的に狙撃した
「相変わらず嫌味を言いたくなるほどの正確なショットね」
ターゲットの代わりマーカーの中心部を確実に射抜いていた
こっちはこれでご飯を頂いているのだから当然だ。その時仕事用の携帯電話に着信が入ってきた
『ピーピーピー』
「織斑一夏だが‥‥‥‥‥ああ、わかった」
「一夏君。もうやめなさい」
「悪いがこれは俺の背負った運命の道だ。たとえいばらの道であっても進むしかない。時間が戻らないのと同じだ」
「人殺しには変わりない」
「お前は裏社会でも本当の裏を知らないから綺麗事が言えるんだ。俺は裏社会の中でもより深い世界で生きてきた」
俺はそう言うと対物ライフルを専用のケースに収めるとすぐに部屋に戻った
今回は現場までは付き合うつもりはないようで楯無も寮に戻っていった
俺にとっては好都合だが。さっそく必要な装備をカバンに詰め込むとバイク置き場に向かった
しかしそこにはある難関があった
「一夏、お願いだ。もうやめてくれ」
「千冬姉。俺は闇を知り過ぎた。もう手遅れだから、ほっといてくれ」
俺はそう言うとバイクにまたがり学園から出ると都内のターゲットを狙撃できるポイントまで向かった
決して後ろを振り返る事はしなかった。振り返れば決意が揺らぎそうだったからだ
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一夏とヘクマティアルと仕事
俺は日中になってからしか動かない相手のため、朝から都内のある場所の屋上で待機していた
いつものように狙撃するための最適なポイントにいた。距離にしてわずか200m。簡単な仕事のはずだった
『ピーピーピー』
電話をかけてきたのはココ・ヘクマティアルだった
「ココさん、日本に来ているとは意外ですね」
『その相手を仕留めるのは10分待ってくれないかしら。あとは任せるから』
「ビジネスパートナーだったんですか」
『そういうわけじゃないけど、彼とは最後に依頼料をもらわないと損をするのよ。もちろんお願いを聞いてくれたら手数料は払うわ』
「わかりました。10分以内にケリをつけてください」
10分待つだけで手数料がもらえるなら問題ない。
ココさんが室内に入るとヨナ君たちも一緒だった
さらに周囲には厳しい視線を感じていた。万が一に備えてのことだろう
ココさん専属の民間軍事会社の仲間が張り付いているのだろう
10分ほど経過したところで取引が成立したみたいで彼らは退室した。
それを見届けると再び電話がかかってきてあとはお好きにと言った
俺は言うまでもなく、1発で頭部に弾をプレゼントした。
この距離だ。気づかれることはないだろう
仕事が終わりノートパソコンで自分の仕事用の口座をチェックすると確かにお金が振り込まれていた
1万ドルが。ココさんの会社から支払われていた
『待ってくれてありがとう。それと邪魔者も片付けてくれて助かるわ。ああいうのは私は嫌いなのよね』
「ココさんも女性絶対主義には反対派でしたか」
『私の世界平和の前では邪魔なだけよ』
そう言うと通話が切れるとともに周囲から感じていた厳しい視線も消えた
さすがはプロだ。動きが早い。俺は仕事を終えたことを依頼人に連絡する
すると金はもう振り込んでいると伝えてきた
携帯情報端末で口座情報を確認すると確かに振り込まれていた
100万円が。前金として100万円振り込まれていたので合計で200万円
依頼人の名前が誰なのかは俺にとって興味のあることではないがいつも一応調べている
今回の依頼人も女性絶対主義組織の人間によって人生を壊された人間だった
「女の恨みは怖いと昔はいったが、今は男の恨みの方が怖いな」
俺は引き上げようとしたとき、また携帯電話に連絡が入ってきた
「束さん。なにかありました?」
『いっくんの最近のお仕事ぶりを見てて心配なっただけだよ』
「俺の心はいつもと同じで真っ青なブルーですのでご安心を」
平常心を保てなければテロリストとしては命取りだ
「まぁいろいろ苦労はしていますけど」
『ちーちゃんもうるさいんだよ。いっくんがISに乗れるならどうして教えてくれなかったんだって』
千冬姉には詳しく話さないでくださいとお願いすると通話を切った
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一夏と簪と練習時間
その日の夕方に俺は学園に戻ると警備室に向かった。
明日と明後日は土曜日と日曜日で授業はない。ただ、訓練のためにISの練習をするものが増える
そういう時に限って面倒ごとが来るのだ。訓練の場所のためのスタジアムの場所の取り合いや訓練機の取り合い
限りあるものだから仕方がない。その時無線が鳴った
『一夏さん、更識簪さんがあなたを呼んでいますが』
「ああ、すぐ行く」
俺は仕方がないなと思いながら警備室を出ていった。整備室に向かった
そこでは簪が1人で頑張っていたがどうもエラー出るようで苦労していた
「お困りごとか?」
俺は別にISの専門家というわけではないのだがというコメントは今はやめておこう
「実はここの射撃管制システムについて」
「見せてみろ」
俺はそう言うとプログラムを見せてもらった。その結果、あるアルゴリズムがおかしい事に気づいた
「ここの値が間違っているんじゃないか?」
「見てみます」
修正した値を入れたところ無事に射撃管制システムは問題なく立ち上がった
「これで完成です」
俺は良かったなと言うと、ようやく簪のISのプログラミングが終了した
苦労したのだろう。ここまでするのに。完成させただけでも実力は高いと評価できる
「それでどうする。今日はスタジアムの練習は夜までいっぱいだぞ」
「そうなんですか」
「しょうがないな。俺の午後7時からの長距離狙撃訓練で使う予定だった1時間だけなら空けてやる」
「良いんですか!」
「ああ、気にするな」
そう言うと俺は整備室を出ていった。本来ならば長距離狙撃の訓練はしたいが、あいつを見ていると昔の俺を考えてしまう
あのつらく、悲しい日々を。一人で食事を作り一人で生活する。
それがどれだけつらい事なのかは、誰にもわからないだろう
いくら今さら千冬姉に何を言われてももう手遅れなのだから
『ピーピーピー』
「亡国機業か?何か用事か」
『また面倒ごとを起こすかもしれないから事前に伝えておこうと思ってね』
「まったくお前達は平等にしたいのか戦争をしたいのかわからない奴だな」
『私でもそう思うわ。でも上には逆らえないの。あなたには申し訳ないけど』
「まぁ、好きにしろ。一応言っておくが、あまり派手にするなよ。こっちにも限度っていうのがあるからな」
『大丈夫よ。自衛隊の参加を招くような事態にはしないわ。学園内のトラブルという程度にしておくから』
「俺としてはどちらも歓迎はしないが自重してもらえるならありがたい」
亡国機業の連中はこういった。篠ノ之箒には手を出さないと
フェンリルと猟犬の獲物にはなりたくないからとな。
まぁ俺としても先生に動かれたらあとに残されるのは破壊の爪後だけになる事は分かっているが
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一夏と簪と関係
IS訓練スタジアム。俺は簪のIS稼働状況をモニタリングしていた
「なかなかいい動きだ」
姉と比べられていつも劣等感を感じているのだろうが彼女の実力は本物だ
おそらくうまく育てばかなりISパイロットとしては将来有望な人材になる
スタジアムの観客席には楯無が座っていた
妹のことを心配しているのだろう。俺が唆したようなものだから
まぁ、妹離れするにはいい機会だ。
「それで千冬姉はどういうつもりだ?」
「お前の時間を譲るとはどういう風の吹き回しだ」
「俺だって多少の融通の利く人間だ。1時間は明日も取っている。今日の1時間分を明日で取り返せばいい」
まぁそう自分に言い聞かせているのかもしれないが
どこかで彼女のことを昔の自分に重ねているのかもしれない
「なら私の希望も聞いてくれ」
「俺は自分のやりたいようにする。誰の指図も受けない」
人に助けられることはもうとっくに捨てた。
俺は見捨てられたのだ。あの大会の時に。だから今の俺がある
「一夏!」
千冬姉の止める声に俺は耳を貸す事は無い
「俺は千冬姉の道具じゃない。1人の人間だ。自分の道くらい作れる」
そうだ、俺はもう自立しているのだ。昔の俺とは違う
「もう交わる事のない道を歩いている。もう何もかもが違う」
「それでもお前との関係は」
「織斑計画」
その言葉に千冬姉はどこでその情報をと言った感じの顔をしていた
俺は何も話す事は無いと思って簪のISのデータ収集を行っていた。
あとで彼女に提供してバックアップをしてやるためだ
千冬姉は管制室を出ていった。
『どうですか?一夏さん』
「ああ、データ収集はほぼ完了だ。もうやめておくか?」
『はい』
ちょうど1時間のタイムを切ろうとしていた時だ。次に使用するグループもいるのも事実だ
俺もいろいろと用事があるからこのあたりで終わりにしたかった
『ピーピーピー』
仕事用の携帯電話でキャスパー・ヘクマティアルからの連絡だった
「緊急ですか?キャスパーさん」
『君が亡国機業と関わる事になったとのことを受けてね。状況を聞いておきたくて』
「不可侵協定の状況です。今のところはですが」
『僕としても君が噛んでくれると嬉しいんだけど』
俺としては中立側にいると伝えると通話を切った
今の俺の立場ははっきり言って微妙だ。反IS派の亡国機業とは中立
生みの親である束さんからは箒の警護。どう選んだったところでジレンマを抱える事に
「まったく弱ったものだ」
俺は少し弱音を吐いてしまった。プロとしては失格だが
ため息をつきたくなる状況だ。データを纏めてメモリディスクに保存すると簪がやってきた
「すみません一夏さん。いろいろとしてもらって」
「俺の気まぐれだからな気にするな。それじゃ、俺は別件があるからもう行く」
そう言うと管制室を出ていった
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一夏と簪と決意
その日の夜、俺はいつものようにバイクに乗って都市部に向かっていた。
今日のターゲットはある大物女性政治家だ
いつものように依頼主は男。ただしちょっとばかり面倒な事があった
依頼主はその女性政治家の夫だ。彼は妻にひどい目にあったためか、我慢の限界に来たのだろう
報酬として500万円出すから確実に仕留めてほしいと
ちなみに始末の仕方は特に選択しなかった
狙撃でも爆殺でも構わないと。やってしまえばすべて問題ないと
それにしてもだ。夫が妻に対して暗殺を求めるなんて
俺達の世の中はどうかしている
「まぁ、俺にとっては仕事が入ってきてちょうど良いが」
その時だった。後方からISの反応があった。俺は思わず楯無がちょっかいをかけてきたのかと思ったが
機体識別コードから更識簪の物だった。俺はバイクを止め、少し待っていると彼女は地上に降りると同時にISを解除した
「こんな夜中に出かけていると面倒な事になるぞ」
「お願いします!同行させてもらえませんか?」
「自ら汚い水を飲みに来る事は無いと思うが」
「私も更識の一員です。覚悟はあります」
簪の目は明らかに覚悟を決めている目だった
俺は少し考えた後仕方がないというと後ろに座れと言ってバイクに乗り込むと彼女も乗り込んだ
「少し飛ばすからな。それとあとで楯無に怒られても俺に振るなよ」
「分かっています」
俺はいつもよりも遅れているため通常よりも加速して都内に向かっていった
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IS学園 生徒会室
「簪ちゃんがいないですって!」
私には寝耳の水だった。そしてまさかと思ったが織斑一夏の位置を検索する。
簪ちゃんと一緒にいる事が上空を警戒している航空自衛隊の早期警戒管制機からIS識別コードが出ていることが分かった
「いったいどういう?」
その時本音がやってきた。いつもののんびりした顔ではなく慌てていた
「カンちゃんのベッドにこれが」
本音が差し出してきた手紙には私も覚悟を決めたと書かれていた。
つまり自ら汚れた水に接する事だ。それはもっとも私にとっては避けてほしい事だ
私が楯無を襲名したのはすべて妹を守るつもりだった
それがすべて裏目に出たという事だというなら、私の罪なのかもしれない
「すぐに追いかけるわよ!」
私はすぐに生徒会室を出ると大急ぎで織斑一夏を追いかけていった
なんとしても阻止しなければならないからだ
「織斑一夏!どこまで私を苦しめたら気がすむの」
私は恨み言を言いながらも校舎外に出るとISを展開して都市部に向かった
追いつけばまだ良いが既にかなりこちらは時間をロスしている。到着したらもう終わっているという事も想定される
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一夏と姉妹と喧嘩
東京都市部、俺はいつものようにターゲットが狙えるビルの屋上に狙撃ライフルを構えてい
簪は周囲の状況を見張らせていた。ターゲットの距離は500m
だが少しでも不安材料があれば事態はややこしくなる
警察が出入り口を張り込んでいた。ただ室内には警察関係者はいない。
そのためチャンスは一度きりだ。ミスったら俺が死ぬはめになる。
簪にはある事を頼んでいる。周辺の気象情報の確認だ。こういった小さなことでも重要だ
銃弾は直線的に進む事は無く。風や重力の影響で弾道は変化する。
そのためのデータ収集と計算をしてみるかと提言したのだ
「それにしてもどういう心の変化だ?まさかとは思うが俺みたいになれたいと思っているならやめておけ」
「どうしてです?」
「銃は人を変える。9割が助かるなら1割を切り捨てなければならない時もある」
その時だった俺の携帯情報端末に楯無が来ていることを示していた
おまけに通信も入ってきた
『ずいぶんとお仕事に苦労していないわね』
「楯無か。あまり邪魔をしてほしくないがな。せっかくお前の妹がやる気を見せているのに」
『ふざけないで!私はあの子を守りたかっただけよ。こんな汚い世界から』
だが結果は逆効果だったようだ
「悪いが今忙しいからあとでかけ直す」
通信を切ると狙撃体制に入った
「風は東から西に2m」
「上出来だ」
俺は冷静に判断をする簪にほめると照準を合わせた
そして、対象者が窓際に来た時にバレットM82の弾丸を発砲した
今回は頭ではなく胴体に命中させた。まだ彼女にその時の光景を見せるのは早いと判断したからだ
もちろんフェンリル先生からすればそれだけ甘いと言われるだろうが
今回だけの措置だと。その時だったISを身にまとった楯無が現れた
表情は言うまでもないだろう。ご機嫌が良いものとは思えない
「やってくれたわね」
「ここで俺を殺すか?」
「クッ」
それができない事を俺は計算していた。妹の前で殺しはしたくない
俺なら例え千冬姉の前でも殺しはする。やらなければ自分がやられるし何も守れない
「お前はどうする?」
そこに簪のルームメイトである本音が出てきた。手には小型の銃を持って
俺が知っている普段の彼女の姿からは想像もできない姿だ
「かんちゃん!それ以上いかないで!」
「本音。これは私が決めたことなの。もうお姉ちゃんに邪魔はさせない」
「どうする楯無。ここで俺を撃つか。それとも見逃すか。どっちにしても妹とは距離ができる」
俺も正直なところお荷物が増えるかもしれないが、腕は良いのは確かだ。
きっと狙撃に関しては経験を積めば良い線までいける。風の流れなどの空気の変動に伴う読みのセンスも良い
「俺は仕事を終えた。姉妹の問題は自分たちでケリをつけるんだな」
俺はそう言うと引き上げようとした。しかし簪が服を引っ張った
彼女は俺にこういった。見届けてもらえないですかと
「お姉ちゃんは私のやる事に全部、口出ししないで!これは自分で決めたの!」
「簪ちゃん!汚い世界にいる事の意味を知らないから言えるんだよ!」
こんなところで大声を出して喧嘩などをしてほしくないのが俺としての立場なのだが
今は2人は意地になっている事は誰の目に見ても明らかだ
仕方がないと思って俺は仲裁に出るしかなかった
「こんなところでもめても話は終わらないと思うが。それ以上やりあいたいなら学園でやれ」
俺は簪の腕をつかんで1階の駐車スペースに置いているバイクに向かった
楯無は分かったのか引き上げていった
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一夏と簪と分岐点
IS学園に戻った俺と簪だが、バイクの駐輪場ではすでに楯無が待っていた
「かんちゃん」
「お前達の問題だ。しっかりと話し合うんだな」
俺はそう言うと背中を押してやった
「あなたにも話があるんだけど」
「楯無。俺は別に何か特別なことをしたわけじゃない。付き合いたいなら好きにしろと言ったまでだ」
俺の言葉に楯無は納得していないという表情を浮かべていた
当然だろう。あいつにとっては俺は大切なお姫様を奪った悪魔なのだから
「一夏、こんな夜中に騒動を起こすな」
「俺は何も悪くない。楯無が文句を言ってきているだけで俺には実害はない」
千冬姉が出てきたのでここはさっさと警備室の仮眠室に戻りたかった
面倒はごめんだからだ
「織斑一夏!あなたを私は絶対に許さないんだから」
「何度も聞いたな。そのセリフ。セリフだけでやる気はないんじゃないのか」
俺はわざと挑発していた。乗ってくれば少しは楽しめる
すると楯無は本気で殺されたいのねと言うが俺も想像はしていない展開になった
あの簪が俺の前に立ち姉である楯無に立ち向かったのだ
「一夏さんは関係ない!それに私はお姉ちゃんの付属品じゃないの!」
「カンちゃん」
「本音も黙っていて!これは私とお姉ちゃんの問題なんだから」
俺はとりあえず撤収する事にした
「喧嘩は2人で何とかするんだな。俺としての意見は小鳥はいつか巣立つものだとだけ助言しておく」
そう伝えると警備室に向かった。
警備室に戻って情報収集だ。警察の動きを知るためだ。もちろん俺が逮捕されるような事は無いだろう
あちらに親しい友人はいる。貸しのある人物も。嫌な言い方になるがもみ消しはそれほど難しいほどではない
俺は警備室に戻り、情報収集を終えると仮眠室で睡眠を取り始めた
いろいろと今日は疲れた。お子様の相手にだが
まぁそういう俺もお子様だが、ちょっとネジが緩いお子様だ
翌朝、俺は午前5時に目が覚めた。いや起きないとしかたない状況になっていたと言った方が正確だ
起こされたのだ。簪に
「こんな朝早くにどうした?」
「お姉ちゃんより強くなりたいんです」
「意味は分かっているんだろうな?強くなるという事はその代償も払う事になるんだぞ」
俺はその代償がどれほど高くつくか分かっている
実際に様々なことを経験してきたからだ。様々な大切なものを捨てる事になる
「覚悟はできています」
俺は少し考えた。俺は確かに『人殺し』としては業界では腕は良い
だが教えるとなると話は変わってくる。
「2度と元の生活には戻れないかもしれない。今のお前の代表候補生としての資格を失う可能性もあるんだぞ」
「分かっています。すべてを納得したうえでここに来ているんです」
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一夏と簪と銃の扱い
IS学園 射撃訓練室
俺は簪と一緒に来ていた。朝なら楯無に邪魔されない事を分かって来たとのことだった
「こいつを使ってみるといい。S&W M686だ」
俺は銃器保管用の倉庫からそいつを持ち出してきた。いきなり大型拳銃を撃たせるわけにはいかない
まずは下準備が大切だ。その事はフェンリル先生からよく教わった
何事も基礎訓練が重要だという事を。基礎訓練をしっかりしておけば何事にも対応できる。
基礎がしっかりできているからこそ、様々な応用ができる
簪は装填されている弾を確実に発砲。的にはほとんどど真ん中に命中していた
「上出来だ。だが本当に良いのか?お前が決めたなら俺は止めないが」
「お姉ちゃんに何を言っても無駄です。私の意見なんて聞く気はないんです」
俺はある事を分かっていた。射撃訓練室の外で楯無がいる事を
だがあえて簪には何も伝えるつもりはなかった。
偽善者かもしれないが俺としては簪にはこの道は向いていないと思っていた
確かに銃の腕は良い。だがそれと俺のやっている仕事は別だ
さまざまなものを犠牲にしなければならない。何もかも捨て、闇の世界で生きていく
それがどれだけ苦痛なものであるかは俺はすぐに知った。だがこれしか道はないと思った
毎日1人きりなら俺はいてもいなくても同じなのだと
すべてを捨てて、フェンリル先生に教わることを決断した
「弾はまだある。好きなだけ練習すれば良い。俺はちょっと外の空気を吸ってくる」
「ありがとうございます」
俺はひとまず訓練室から出るとドアの横に隠れるように立っている楯無に話を振った
「結局のところ、お前は失敗したな」
「否定はしないわ。あの子は優しすぎる。暗部としては無理だった」
「それに関しては俺も同意見だが。だが自分を守る事を教えるべきだったな。たとえどんなにつらい事でもだ」
俺はそう言うと室内に戻っていった
俺が室内に戻ろうとしたときはもう後悔しているわと言って訓練室のそばから去っていったのを気配で分かった
室内に戻りターゲットの的を見るとほぼ中心に命中していた
「良い腕だ。ISにも活かせるくらいにな」
あまり連続で撃っても体に良くない事から俺は今日はこの辺にしておけと言った
「一夏さんって本当は優しいんですね」
「俺が優しい?そう思うのはごく一部だけだ。俺は切り捨てるのが上手だからな。必要な時になったらお前もそうなるぞ」
「でも今は優しい。違いますか?」
そう思うなら好きに思えと言うと簪が持っていた銃を回収すると、今度は俺が銃の訓練を始めた
装備しているグロック17をホルスターから抜いて、的に向かって発砲した
何度かマガジンを交換して全部で50発近く発砲した。的の中心をすべて撃ち抜いていた
「すごいですね」
「これくらいは当たり前だ」
こういう事で仕事をしているのだから当然と言えば当然だ
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一夏と殺し合いと楯無
俺と簪は訓練室でのトレーニングを終えるとそれぞれに分かれた
簪には授業がある。俺は警備の仕事だ。問題なのは楯無の方だ
さっき携帯電話にメールが来ていた。スタジアムに来いと
俺は嫌な予感をしていた。まさかとは思ったが
そのため対IS用銃弾を持ってきた。スタジアムに到着するとそこには楯無が自身の専用機を展開していた
「どういう趣向だ?」
「あなたを殺すのよ」
「そいつはずいぶんと過激な思考だな。お前も一線を越えてみたくなったか?権力で脅すのではなく血で血を洗う戦争ごっこに」
奴はこういった。どうとでも解釈すれば良いと
我慢ができない領域まで行ったのだろう
「お前の妹はうまく育てばIS乗りとしては優秀な成績を得れるだろうが。俺を殺したらお前は嫌われるな」
「分かっているわよ!でもこれ以上は見逃す事はできないわ!」
俺はため息をついた。これだから嫌いなんだ。こういうやつが
「悪いが今は勝負をしたい気分じゃないんだが」
「ならこうしましょう。あなたが勝てば当面の間は現状維持。私が勝てばIS学園への編入」
「それはできない話だ」
こっちの仕事にも差し障る。それに表ざたになったら仕事ができなくなる
楯無は良いわと言うと俺にISの武器を向けた。
その時だった。またしても千冬姉が出てきた
「朝から騒動を起こすな」
「俺は起こしていない。あいつが最初にケンカを売ってきただけだ」
千冬姉にそう言うと俺はスタジアムを出ていくことにした
誰が学園内で自分が持っている専用機を展開する事はお断りだ
証拠の抹消する時間がない。IS学園に入るくらいなら俺はすべての縁を断ち切って学園を出ていく
裏の社会で影のように生きる
「楯無。進んでしまった時計を戻す事はできない」
俺はそう言うとスタジアムから出ていき巡回警備に戻っていった
生徒たちは今日もこれから厳しい座学と実技があるとため息をつく者と頑張ろうとする者の2種類に分けられる
俺はどちらかと言うと実戦が好きだ。座学は面倒だからだ。何事も体で覚えるのが一番だ。
もちろん基礎訓練は重要だが
「まったくもって困ったものだ」
廊下を歩いているとラウラ・ボーデヴィッヒと出会った
俺は無視しようとしたが、相手から話しかけてきた
「あの事件の真相を調べた」
「そうか」
俺はそれだけの返事をするとすれ違おうとするとラウラが俺の腕をつかんだ
「確かにお前の言うとおりだった。私も裏事情を知っていれば以前のようなことはしなかった。悪かった」
「別に俺にとってはどうでもいい事だ。謝られても俺は仕事をしただけだからな」
俺はそう言うとその場から歩いてラウラから離れていった
「1つ聞きたい。猟犬として今の世界をどう見る?」
「そうだな。仮にの話だがISさえなければ、俺は殺し屋なんかにならなかった。それだけは言える」
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一夏と束さんと仕事の関係
俺はいつものように朝食を食べるために食堂に向かった
いつもと同じ毎日を過ごすのだ。まったく面倒な世の中だ
まぁ、こんな社会だからこそ俺のような仕事が生まれたのだから
妙な感じに思えた。食堂に向かっている時途中で箒と偶然にも出会った
「一夏。疲れているな」
「箒、俺だって人間だ。いろいろと苦労する事があるんだ」
「そう言えば生徒会長が私に何とかしてくれないかとしつこいぞ」
楯無のやつ。千冬姉がだめならさらに外堀から埋めようとしているようだ
「放置しておけ。じきに解決してやるから」
「そうかしら。私は簡単には諦めないわよ」
後から楯無が近づいてきた。
俺はとっさにホルスターから銃を抜きそうになったが何とか踏みとどまった
「あなたを何としても学園に入れてみせるわ。手段は問わないからそのつもりで」
「そんなことは一生かかっても無理だろうな。まぁせいぜい頑張る事だ」
『ピーピーピー』
俺の携帯電話が着信を告げていた。俺は一度柱の陰に隠れてから電話に出た
万が一電話が狙撃のタイミングだという可能性を考慮しての対応だ
「だれだ?」
『やっほー!いっくん。実は1つ仕事をお願いしたいんだけどだめかな?』
「束さん。どういう仕事ですか?」
『まぁ簡単に言えばある研究所を吹き飛ばしてくれたら嬉しいんだけど。前から探していた織斑計画の研究を続けていた所があってね』
「わかりました。座標を送ってください。あとで処理します」
『お願いね』
通話を終えると俺の持っている携帯端末にデータが送られてきた。
そこも以前の研究所と同じような山間部だ。表向きはバイオテック企業となっていた
まったく連中は懲りないものだと俺はそう思いながらもとりあえず朝食を食べる事にした
だだのんびり食事をとっている事もなくできるだけ早く食事を取り食堂を出る。
そのまま警備のために張り巡らされているセンサーをチェックを行った
「ついてくるな。楯無」
「別に良いわよね。私もこの学園を守る義務があるんだから」
「お前達はISという檻の中で暮らしているからそんな油断な行動ができるんだろうな。俺は檻の外でしか活動していないからな」
楯無はどういう意味よと聞いてきた
そんなことも分からないでよく暗部の長をやっていられるなと返してやった
学園の裏側にあるフェンスをチェックしていると網が破られている箇所を見つけた
「侵入者か」
まったくと俺はため息をつきながら携帯端末でここ周辺の監視カメラの映像をチェックした
その結果は大当たりだ。ここから潜り込んだ奴がいた。監視システムをごまかしていた
「織斑一夏から警備担当へ。侵入者がいる可能性大。警戒して対応せよ」
『了解』
「ずいぶんと頼りにされているのね」
楯無はまるで嫌味のように言う
「俺が鍛えているからな。ここの警備員は、はじめの頃は甘かったが。今では優秀な部類に入る人間に生まれ変わった」
『ピーピーピー』
1年生の校舎側に入る不審人物を確保の連絡が入ってきた
俺はそのまま拘束しろと言うとその現場に向かった
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一夏と学園と襲撃
不審人物が警備室に連行されてくる。その人物のことは一夏はよく知っていた。
「こんなところに来るとはな。パラッス」
彼は以前からフェンリルに狙われていた。彼が唯一逃した獲物だ
「猟犬!どうしてお前がここにいる」
「俺は契約でここにいるが。お前は残念だったな、ここで人生を終える事になるかもな」
話の内容次第だがと俺が警告すると奴は身震いを起こした
「信じてくれ!俺は唆されただけだ。IS学園で混乱を起こしてくれと。頼む!フェンリルには!」
さすがはフェンリル先生だ。小物でも恐ろしさは知っているという事だ
「お前がどこまで喋るかによるな。誰の差し金だ?」
「侵入だけすれば良いと。警報装置を作動させるだけで1万ドルくれるというから」
俺はその言葉を聞き、危機感を察知した。こいつがデコイなら面倒な事になると
「お前を不法侵入の容疑で逮捕する。それで誰に依頼された?」
「名前はルクソーシ・キンブリット。傭兵だ」
その名前は戦場でよく聞いた。金さえ払えば何でもしてくれる。
ただしフェンリルとはやりあう事は無い。いや、やりあったことはない
狙いについて追及するとISを奪ってブラックマーケットで売るためだという事が分かった
「良いだろう。その話が事実なら無罪放免というわけにはいかないが。警察には協力的だったと話しておく」
連行しろと言うと学園の外で待機していた警察に身柄を引き渡されていった
「一夏から各警備担当。ルクソーシ・キンブリットという傭兵が侵入してくる可能性がある。見つけても1人で対応するな」
傭兵と警備スタッフだとだたでさえ戦闘力に大きな違いが出る。下手にこちらの戦力低下は避けるべきだ
『正面ゲートに不審者を確認。銃撃戦が展開中』
俺はその無線連絡を受けて走って正面ゲートに向かっていった
ルクソーシ・キンブリット相手に警備員では相手にならない事はすぐに想像できた
正面ゲートに向かう前に武器弾薬倉庫によりアサルトライフルなどを持ち出すとすぐに駆けつけた
するとまだ銃撃戦が展開していた。
「まったく、いやな仕事だ」
俺はRPG-7を発射した。まずは威嚇が目的だ
これ以上の戦闘行為は避けるべきだ。マスコミの目もある
下手に騒げば大騒動になる
RPG-7が発射されると相手はさすがに手を引くかと思ったが
逆にさらに攻撃を強めてきた。まさにやるなら徹底的というタイプだ
俺は仕方がないと思って拡声器を手にした
「俺は織斑一夏。猟犬だ。これ以上手を出せばお前をフェンリルに引き渡すぞ」
拡声器で相手に呼び掛けると相手は攻撃を止めた
『ピーピーピー』
俺の携帯電話に着信が入ってきた。いつも仕事用で使っているものだ
『本当に猟犬か?』
「試してみる気があるというなら俺は必ずフェンリル先生に仕事を頼む。そうなったらどっちが勝つかはわかるよな」
『わかった。引き上げる』
そう言うと通話が終了して車の走行音が遠くに聞こえてきた
現場から去っていった
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一夏と襲撃と後始末
俺は戦闘の後始末に追われていた。正面ゲートの修理をすぐに依頼しておいた
工事が完了するまでは警備担当を常時配置して対応するしかない
それまでは懸念材料が増えるがやむ終えない
今回の襲撃により猟犬である俺がここで警備している事は裏社会に漏れるだろう
できればそういう事態は避けたかった。下手に注目が集まれば警備する側にとっては面倒な事になる
「こちらの死傷者は?」
「重傷者はいません。弾がかすったりした軽傷者はいますが」
「引き続き警戒態勢を維持しつつ、学園関係者の安全を確保せよ」
俺の指示に各警備担当はそれぞれ動き始めた
これは嵐の前の静けさなのかもしれないと俺は考えていた
猟犬である俺がいることが分かれば、他の勢力がこちらに手を出してくるかもしれない
そうなればこの学園も戦場になる事は確実だ
そうなる前に何か手を打たなければならない
「ココさんに情報をもらえるように頼んでみるか」
ココ・ヘクマティアルさんなら何か情報を握っているはずだ
この際、仕方がない。金を払って情報を得る必要がある
そうでもしなければ護衛対象の箒にも影響が出る可能性は極めて高い
学園も危険にさらされる。学園だけなら俺は関知しないが箒の安全が絡むとなると面倒な事になる
「まったく厄日だな」
俺はそんなことを愚痴りながら他のセンサーに反応がないかどうか調べたが
今のところは異常は確認されなかった
「どうしてこんなに余計な仕事を増やしてくれるんだろうな」
俺はそんなことを愚痴りながら、情報が必要だという事を考えていた
多少はこちらの情報を流す必要があるが。規則に違反しない範囲で提供する事は合意されている
俺はひとまず警備室に戻った。衛星携帯電話でココさんに連絡を取った
『は~い。一夏君から連絡とは珍しいわね』
「実は調べてほしい事があるのですが」
『こっちは情報料を払ってもらえるならいくらでも受け付けるわよ』
IS学園を狙っているような組織についての情報が欲しいので調べていただけますかと一夏が頼む
ココ・ヘクマティアルはできるだけ早めに情報を揃えておくわと言って通話が切れた
これで保険はかける事はできた。
「あとは情報待ちだな」
そこに楯無がやってきた。
来て早々どうしてと。あなたがここに来てからこんなにトラブルが発生するのかしらと言ってきた
それはこっちが聞きたいことだ
「さぁな。もしかしたら俺は神様に試されているのかもしれないな」
「あなたが神を信じるなんて酔狂な話にしか聞こえないわよ」
確かにその通りだ。殺し屋が神に祈っていたら仕事なんてできるはずが無い
むしろ神様の中でも死神に愛されている方が幸運なのかもしれない
俺はそんなことを考えながら警備室で報告書作りを始めた
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一夏と訓練と簪
その日の夕方、俺は警備室で仮眠を取っていた
昼間に仕事をしたから少しのクールダウンの時間が欲しかった
すでに授業も終わり、生徒たちは部活動も終わりの時間のため寮に戻っていく女子ばかりだった
俺は思いのほか眠り過ぎたなと思いながらも、巡回のための工程表を作り始めた
『ピーピーピー』
「ココさん。仕事が早いですね」
『1万ドルで手を打つけど問題ないかしら』
俺は今から電子送金するので確認してほしいと言った
彼女は確認したというとデータを送ってきた
IS学園を狙っている奴はかなりいることが分かった
面倒なことこの上ない。亡国機業もそのうちの1つだった
彼らにとってIS学園はもっとも重要なターゲットだ
だが俺がいる以上下手に手を出せばフェンリルに追い回されることになる
そういう事態は避けたいというジレンマになっているのだろう
「俺としてはこんなところに長期間いるだけでもつらいんだがな」
愚痴りながらも報告書を作成していた。そこに更識簪が入ってきた
「どうかしたか」
「私を強く鍛えてもらえませんか」
突然なことに俺は驚きながらも、意味は分かっているのかと聞き返した
俺が鍛えるとなるとただの武術ではない。暗殺などの戦闘訓練だ。
一線を超える事になるかもしれない。それでも良いのかと俺は聞くと
「この前の射殺の時に分かったんです。私もお姉ちゃんみたいに強くなりたいと」
「暗殺術を学べば解決する事じゃないぞ」
「でも鍛えられれば、ISでの鍛錬にもつながる。基礎訓練が重要ですよね」
俺は仕方がないと思い教官役を引き受ける事にした。ただし条件を出した
「一応言っておくが、俺の訓練は甘い物じゃない。厳しくさせてもらうぞ」
すると彼女は覚悟はできていると言った
俺が教えるのはただの護身術じゃない。暗殺術やテロの方法。
やり方次第では戦闘能力向上に繋がるが、一歩間違えれば暗殺者に育ってしまう
報告書をとりあえず作成を終えて、決済済みの棚に置くと学園内の格闘術訓練室を誰も使っていない事を確認
「それじゃ、まずは格闘術からだ」
「はい!」
俺と簪は一緒に格闘術訓練室に向かうと更衣室で格闘術訓練用の服装に着替えた
衝撃緩衝用の防護道具を簪に装着させる。俺はそういうのは着用しない
俺はゴム製の小型サバイバルナイフを渡して訓練を始めた
「準備は良いか。言っておくが俺は手を抜かない。俺を殺すつもりでかかってこい」
「わかりました」
結果は数分で結果は出た。一夏が本気にならなくても格闘術で一夏が余裕に勝った
当たり前と言えば当たり前だが。戦闘格闘術では一夏にすぐに勝てるわけがない
「まだあきらめません」
「続きをしたいところだが後ろに怖い顔を浮かべたお前の姉がいる。俺は殺されたくないから今日のところはこれだけにしておこう」
また格闘術のレクチャーをしたければ時間があればいつでも付き合ってやると伝えた。
俺は格闘術訓練室を出ていこうとするとき言ってやった。
「楯無。お前がいくら抵抗しても妹の歩みは止まらない」
そう言うと俺は訓練室を出ていった
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一夏と仕事と思い出
簪の訓練を終えると俺は更衣室で服を着替えると巡回に戻った
もう少しで部活動の時間も終わる。俺ものんびりしたいなと思っていた
『ピーピーピー』
楯無から俺の携帯電話に着信だった
どうせ嫌味でも言いたいのだろうと思いながらも電話に出た
「何か文句でも言いたいのか?」
『少し話があるのよ。生徒会室に来てもらえる?』
「わかった。すぐに行く」
念のため、対IS用銃弾が装填されているマガジンを持っているのを確認。
それから校舎の生徒会室に向かった。すでに部活が終了している時間なので校舎内は静かだった
「静かだな」
生徒会室に到着すると室内から大声で怒られている声が丸聞こえだった
「まったく、少しは成長という言葉は知らないのか」
俺はため息をつきながらも生徒会室のドアをノックして入っていった
「何か緊急の用件か?」
楯無は少しねと言った。俺は何を聞かれるかは予想ができていた
一番大切な妹の話であることは分かっていた
「あの子にこれ以上危険なことをさせないでもらえないかしら」
「お前はシスコンか。聞くだけ無駄だったな」
まったくもって、妹のためなら手段を択ばないのだから。
それが本当に彼女のためになっていると思い込んでいる
「大事な妹を私達が居るような危険な世界にいれたくないの。分かってくれるわよね」
まったくどこまでも妹のことを大切に思っているかはわかるが
「俺は来る者は拒まず。去る者は追いかけない主義だからな。簪が嫌というまでは付き合ってやるだけだ」
「どうしても分かりましたと返事はしてくれないみたいね」
「お前も妹離れをするんだな。まるで親鳥が小鳥を守っているようにしか見えないぞ」
俺はそう言うと生徒会室を出ていき警備室に戻っていった
校舎の廊下を歩いていると外に夕日が見えた
俺は彼女のことを思い出していた。この人生でたった1度の出会い
たった数日でも彼女との時間は楽しかったし嬉しかった
でも彼女はもういない。俺の目の前で殺された。ボディーガードが仕事をミスして護衛対象が殺されるなんて
最悪のミスだ。彼女が息を引き取る直前に俺にペンダント渡してきた。
ペンダントには2人で撮った写真が入っていた。彼女は俺の腕の中で息を引き取った
そんな彼女のことと同じような考えを俺は簪に感じているのかもしれない
「もう1度会えるなら、やり直したいな」
彼女がいなくなって俺は歯止めが利かなくなった。
まるで坂道を下るボールのように俺はどんどん危険な仕事をこなしていった
彼女がいた頃はまだここまでひどくなかった
生きていてくれたら、きっと今とは違っていただろうが。今更そんなことを言っても仕方がない
だからこそ俺は彼女が失ったものを背負って生きていくしかないのだ
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一夏と林間学校と狙い
夜になって、会議室で1年生の林間学校について話し合いがあった
もちろん俺も同行するしかない。箒の生命を守るためには同行せざるえないからだ
場所が海辺という事もあり海上から狙われることはないだろう。
問題なのは砂浜の近くにある高台の森だ。あそこから狙撃されたら面倒だ
「織斑一夏君。何か意見はあるかね」
「学園長。砂浜で自由行動の時間は俺はそばの高台の森で警戒している。狙撃するならあそこから狙われやすい」
学園長も地図を見て、俺の判断に同意してくれた
「つまり狙われる可能性があると?」
「俺がIS学園を狙うならこのチャンスを逃す事は無い」
一斉に殺すなら派手にできる。
「爆発物捜査犬も手配してくれ。浜辺のビーチの捜索をしておく」
自衛隊と警察には俺から話をしておくと伝えた
どちらにも優秀な危険物対応チームがいる。もしもの場合に備えて対応するだ
千冬姉がそこまでする必要がるのかと俺に質問してきた
「IS学園の生徒は狙われやすい。俺は警護に徹する」
「わかりました。一夏君は護衛を」
さらに俺は武器の外部持ち出し許可を求めた。学園内では国際法で認められている
しかし外では認められない。確かにいつもの仕事のようにちょっと抜け出すくらいなら問題は処理できるが
林間学校中は最低でも数日かかる。持ち出し許可をもらっておいた方が良い
「持ち出す武器のリストを作って提出を」
「感謝します」
その会話を聞いていて千冬姉が表情を曇らせていた
よっぽど俺が銃を持つことを嫌っているようだ。だが俺はこれがないと死ぬ事になる
その後もいろいろと協議が続いた。俺はその後の話については聞くだけにした
協議が終わると俺は部屋を出ようとした。その時、学園長に止められた
「今回は君に警護をすべて頼む事になる」
「分かっています。ただし最初に契約をした通り、俺は篠ノ之箒の護衛を主任務です。箒の方が危険な場合はそちらを優先します」
「わかっているよ」
では失礼しますと言うと部屋を出ていった。
警備室に戻る途中で楯無と出会った
「もう寮に戻っている時間だろ」
「あなたみたいな危険物がいるのに私がのんびりするわけにはいかないのよ」
「俺は歩く爆弾か?」
「そうよ。私の中では爆弾というよりも核弾頭と言ったところかしら」
俺はそんなに危険かと愚痴りたくなった。別に俺は誰もを皆殺しにするほど悪じゃない
一応線引きはしているつもりだ。多少世間一般からはずれているかもしれないが
「確かにそうかもな。だがお前もだろ。ただ違うのはお前はIS乗り。俺は殺し屋。どこが違うんだろうな」
更識家は代々暗部として活動してきた。俺はフェンリル先生から直接指導された殺し屋でありテロリストだ
更識ですら恐れるフェンリル先生の実力。簡単には勝てそうにない
それでも俺にとっては大きな目標だ。いつか追い抜いてやると思っている
ただ以前に先生に話したときにこういわれた。俺には才能があると
その事は織斑計画を知った時に理由が分かっている。俺はデザイナーベビーだ
だから普通の人間よりも身体能力は高い。だからこそフェンリル先生の訓練についていくことができたのだ
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一夏と自衛隊とアメリカ軍
そして林間学校の出発の日を迎えた。俺は武器などをおさめたトランクケースをバスに積み込んでもらった
道中何があっても良いように腰のホルスターには2丁のグロック17を持っている
俺はバス座席の一番前に乗り込んでいた。今のところは異常はない
ちなみに向こうではバイクを借りれるようにレンタル会社に依頼をしておいた
「まったく今回ばかりは楯無がいないから静かに過ごせそうだな」
情報端末を操作して周辺のレーダー情報を確認していた
レーダー画面は自衛隊の自動警戒管制システムのデータが映し出されていた
これもいろいろと貸しのある政財界のコネを活用して獲得した方法だ。俺は自衛隊にも協力者は多い。
保険として俺は自衛隊に念のため林間学校を行う沖合に護衛艦の配置を要請していた
防衛省もすぐにわかったと言って護衛艦を。かなり協力的だ
「何もなければ良いんだが」
俺はバスの座席に座ってノートパソコンを操作していた。
自衛隊から送られてきているレーダー画面に注視していた
なにかあればすぐに行動できるようにだ
ちなみにこのバスの運転手について俺は様々な角度から裏付けを取っている
危険人物でない事は確認できていた
『ピーピーピー』
俺の衛星携帯電話が着信を告げていた
「織斑一夏だ」
『いっくんも林間学校で過ごすみたいだね!』
束さんからの電話だった。まったく何を考えているのか読みにくい人だ
「仕事ですから。それに契約の仕事は必ず全うします」
『お願いね。いっくん!』
通話が切れると俺はため息をついた。林間学校ではISの実地訓練がある
そこで俺は独自の情報で俺は宿から少し離れたところでアメリカが開発したISの運用テストがある事を確認していた
それにきっと束さんはからんでくることは容易に想像ができた
「まったくアメリカも何を考えているんだか」
ISの軍事転用は認められていない。表向きはだが。
実態は研究開発が行われているの現実だ。その時前方で停車しているセダン車両がいた
俺はバスの運転手に停車するように言い、俺だけ降りて腰の銃のホルスターに手をやって慎重に調べに行った
車爆弾の可能性があるからだ。車内を確認すると1人の男性が口から泡を吹いた状態で苦しんでいた
俺はすぐに救急車を手配した。10分ほどで救急車は駆けつけてきたので後は本職に任せてバスに戻った
「発進してくれ」
「わかった」
俺は何か嫌な予感がした。こんなところで車を止めて口から泡を吹いた状況の人物がいた
タイミングは良すぎる。念のため俺は警戒レベルを上げる事にした
もしあれが何かの前兆なら旅館や林間学校の自由行動が認められる時間に手を出してくる組織があるかもしれない
そういった事態から食い止めるのも一応仕事だ
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一夏とフェンリルと謀略
宿に無事に到着すると俺は周辺のチェックに入った
何か侵入に好都合な場所を探したところ数か所発見できたためセンサーを設置した
さらに宿の監視カメラの映像を俺の携帯端末で見られるように宿の持ち主に許可をもらった
俺は1人部屋でとりあえず部屋につくと持ってきたアタッシュケースからノートパソコンなどの情報端末
そしてアサルトライフルなどの整備を行った。銃の整備は日課だ。
『ピーピーピー』
俺の衛星携帯電話に連絡が入ってきた。番号は非通知だが相手の察しはついた
この衛星電話の番号を知っているのはヘクマティアル関係者と束さん。そしてフェンリル先生だ
「一夏です」
『元気そうだな。最近はずいぶんとご無沙汰だったらしいな』
「仕事はこなしているのでご心配はしなくても大丈夫です」
なら良いがと先生は言った。あるトラブル情報があると言ってきた
どうやら亡国機業が動いたようだ。
今度のデモンストレーションはアメリカ軍が開発したISを暴走させるという物だ
「ISの軍事化を押さえるためとはいえ無茶な計画ですね」
『だが連中は本気だ』
「フェンリル先生のご希望は?」
『そうだな。まぁ少しは暴れさせればいいだろう』
「その心は?」
『世界に刺激があっても問題ないだろ』
先生は楽しみが欲しいのだ。
表向きはアメリカの軍事転用を目的としたIS開発を止めるために騒動を起こさせる
アメリカ国内の始末を先生がつけるという事だ。簡単に言えば最近は暴れたり足りないのだろう
「研究施設を破壊するつもりですか?」
『すでに依頼を受けている。お前にも仕事を頼みたい。あのISが暴れ出したら破壊しろ。報酬として1万ドルを亡国機業が出す』
「一応言っておきますが。コアごと破壊する事になりますよ」
『亡国機業は別にどうでも良いらしい。仕事だと思って割り切れ』
そう言うと先生は通話を切った。
観客のいる大パーティーになる事は確実だ。
「面白くなってきたな」
出し物はさしずめ亡国機業とIS学園の生徒。ただし、篠ノ之箒の命は守らなければならない
久しぶりに厳しい任務だ。最悪の場合、束さんが作り上げたISを頼らなければならないかもしれない
そうした事態は避けたいのだが。亡国機業側に加担しすぎるわけにはいかない
彼らとは不可侵協定を締結しているのだから。まさに微妙なものだ
IS学園側に全面的につくわけにもいかない。囚人のジレンマのような状況だが
そこをなんとかするのが俺の持っている技術とテクニックだ
「俺にも刺激がある林間学校の時間になりそうだな」
たまには俺も最大能力を発揮して、実力以上に性能が出るかどうかを調べる事が必要だ
自分の力量を計算するためにも重要な事だ
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一夏と林間学校とトラブル
林間学校の初日は砂浜のビーチでの自由行動だ
誰もが水着を着て楽しんでいる。俺は高台から狙撃銃で警戒していた
無防備な瞬間が最も危険だからだ。ましてやビーチで遊んでいる時に狙われるとは思ってもいないだろう
俺がもし殺すならこのタイミングは外さない。ビーチの沖合にはイージスシステム搭載の護衛艦が停泊している。
彼らから得られたデータはこっちの携帯端末にも送られるように要請しておいた
今のところ不審な点は確認されていない
「何事もなく時計の針は進んでほしいな」
『ピーピーピー』
またしても衛星携帯電話が着信を告げていた
「誰だ?」
『あなた、何をしているの?』
いつものように非通知だったため誰なのか確認した
声のトーンでだいたいの予想はついたが念のためだ
「亡国機業か。俺はただの見張りだ。今ここでやりあいたいのか?」
『フェンリルから連絡があったわ。あなたも少しは協力してくれるってね。本当かしら』
全面協力というよりは中立より少し協力側にいるという事に過ぎないと言ってやった
『下手に介入しないでもらえると助かるわ』
「分かっている。だが篠ノ之箒に何かありそうなときは問答無用で介入する」
『彼女には手を出さないわ』
その方が俺としても対応しやすい。
俺は狙撃銃のスコープで砂浜を見ながら周辺レーダー情報も時々確認していた
アメリカ海軍の艦船が沖合に展開している事は確認済みだ。さらに海上自衛隊の護衛艦もいる
表向きは共同での実験なのだろうが、実際はアメリカ側の意向が大きく反映されている
「さてどうなるか」
そして俺の持っている携帯情報端末がアラートを鳴らし始めた
試験運転中のISに異常データが転送されているという事を示すものだった
ショータイムだ。すぐにビーチにいた生徒を千冬姉が集めるとビーチから旅館に戻っていった
俺も引き上げることにした。
「ここから面白くなってくるかもしれないな」
俺はさっさと旅館に戻った。あまり遅いと疑いを持たれる恐れがある
旅館に戻って千冬姉と専用機持ちだけで計画が練られていた
その中には意外な人物が混じっていた
「いっくん!久しぶり!」
いつもの服装に兎耳をつけた束さんがいた。
「束さん。元気そうですね」
「一夏、何の用件だ?」
「別に。ただいろいろと情報を集めるのに盗聴なんて真似をされるのは嫌だろうと思って直接出向いただけだ」
だから俺はこの場にはいない者と思って話をすればいいと言った
千冬姉はそうかと言うと別に追い出す事は無かった
俺は作戦内容を聞きながら対応措置を練っていた
最悪の場合、遠距離から攻撃をしなければならない。俺がISを持っている事は秘密だ
もし発覚すれば大問題になる。束さんは箒のためにISを用意してきたようだ
これを機会に束さんは既成事実を作るつもりだ
その後の作戦会議は順調に進み地上と上空の両方から攻撃を仕掛ける事にした
地上からはラウラ・ボーデヴィッヒ。空中戦は箒とセシリア・オルコットと凰 鈴音が担当する事に
そこで俺は対物ライフルの用意を行って射程ギリギリの位置にポジションにつくことにした
もちろん対IS弾でだ。
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一夏と簪と狙撃
その日の夕方。いよいよショータイムの時間を迎えた。
俺は射程ギリギリの位置でバレットM82を構えていた
どうやら相手はまだ動いていない。上空で静止していた
亡国機業がどこまでやるつもりかは分からないが。最悪の状況で行動する必要があった
「さて、亡国機業のお手並み拝見といこうか」
その時だった。後ろに何者かの気配を感じとっさにホルスターから銃を抜いて草むらに向けた
「誰だ!」
「一夏さん!撃たないでください!」
現れたのは更識簪だった。どうやら後をつけてきたらしい
「どうしたんだ?」
「何かお手伝いをしたくて」
まったく物好きだなと思った
「分かっているんだろうな。手伝うという事は相手を殺す事もあるんだぞ」
そう、俺の仕事を手伝うということは人の命を自らが決めることになる
さらに今回使用する対IS弾の場合、絶対防御は貫通する。今回はあの暴走ISが無人であることは予想していた。
無人とはいえ、初弾で命中させなければこちらが死ぬリスクが上がる
まさに一発勝負なのだ。ただ狙撃には1人よりかは補助をしてくれる人がいる方が良い
1人が距離や風向きなどの補佐的な役割を担ってくれたら効率が良いからだ
「覚悟はできています」
「良いだろう。俺のアタッシュケースに狙撃補佐用の機材が入っている。それで風速と相手の距離を正確に測ってくれ」
了解ですと言うと彼女はすぐに機材を用意して腹ばいになってスタンバイした
「ずいぶんと手慣れているがどうしたんだ」
すると彼女は教本を読み漁ったのでと言った。
まったくこっちの世界に染まらないでほしいと思っている姉がいるのに
彼女はますます深みにはまっているようだ。
どこまで続くかわからないが。望むならいろいろと手助けはしてやる
彼女はいろいろな意味で筋が良い。磨けばかなり腕のいい狙撃者となることわかる
「どうだ。状況は?」
「今のところ動きはありません。いっそのこと、今片付けませんか?」
確かにだ。今、処理すれば楽だろう。だがせっかくのイベントをぶち壊すのはあまりにもったいない
それに亡国機業との立場もあるしフェンリル先生のお楽しみを取るのは失礼だ
「まぁ、多少は喜劇を楽しまないとな。観客席から状況を見れば面白いかもしれない」
「楽しんでいるんですか?」
「まぁな。こんな戦闘状況は久しぶりだ。少しはストレス解消に貢献してもらわないとな」
簪はそんなにストレスが溜まっているんですかと聞いてきた
俺にとって警備の仕事は暇だからな。戦場で居る方が落ち着くと
確かに俺にとって戦場でいる方が居心地は良い
その時だった。俺が持っている携帯情報端末に映し出されているレーダー画面に反応があった
専用機持ちが動きを見せたのだ。俺はスコープでのぞいていつでも発砲できる状況でスタンバイした
「簪、リアルタイムで状況を伝えろ。手伝うのが本気であるならな」
「分かっています」
そしていよいよショータイムが始まった。地上と上空からの攻撃をしたものの、軍事運用を目的のISに手こずっていた
亡国機業は徹底的にやるつもりだ。箒たちにむかってかなり派手に攻撃していた
俺も狙撃体制に入った。距離は1kmも離れている。簡単には発覚しない
ただし初弾で命中させなければこっちは死ぬだろう
「簪、いつでもISを展開できる状況にしておけ。俺はすぐに逃げるがな」
「死ぬ覚悟はできています」
長生きできないぞというが簪はかなり強くなったようだ
どこまでも付き合いますと言ってきた
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一夏と簪とコア破壊
そしていよいよ追い詰められた。専用機持ちたちがだ
俺は発砲する事を決断に迫られた
「簪、距離と風速を伝えろ。そろそろ仕上げだ」
『ピーピーピー』
一夏が持つ衛星携帯電話に着信が入ってきた
非通知だったが相手はすぐに察しがついた
「そろそろ良いか?」
『ええ、あとはお好きに』
そう言うと通話が切れた。俺は簪の情報を基に照準を合わせて発砲
弾は見事にISのコアに命中した。そのまま墜落していった。
どうやら無人だったという予想は当たっていたようだ
俺と簪はすぐにその場から引き上げた。
「引き上げるぞ」
「了解です」
近くに止めているバイクに乗ると簪を後ろに乗せて走り出した
俺と簪は旅館までバイクに乗って走行していく。戻ったところでこっちの動きは分からないと踏んでいる
仮に何か握られていたとしてもこっちにはいろいろと切り札はある
黙らせることはそれほど難しい事ではない
「一夏さん。これからも私を鍛えてくれますか?」
「良いのか?俺がやるという事は格闘術だけじゃないぞ」
「暗殺術でも強くなれるなら」
なら鍛えてやると言いながら旅館に向かってバイクを走らせた。
そして旅館に到着すると千冬姉が待っていた
「一夏、お前どこに行っていた」
「彼女と夜のデートだ。俺は別に生徒じゃないんだ。女だけの場所にいるのはつらいからな。息抜きに付き合ってもらっただけだ」
「それでどうして銃が必要だ?」
確かにただのデートならこんなものを持ってくる必要があるとは思えないだろうが
こっちはいつ死神が訪れるかわからない身だ。自分の身は自分で守ると言ってなんとかその場を潜り抜けた
「俺は兵士だ。言っておくが彼女には責任はない。俺が付き合ってくれと言って誘っただけだからな」
一応弁護はしておいた。わざわざ俺を追いかけてきたぐらいだ。多少の手心は差し伸べる
自ら危険に飛び込もうというのだ。それに彼女のような逸材はなかなか見つからない
仮に本命でなくても補佐役としては十分に務まる。バックアップがあればいろいろと助かるのは事実だ。
「一夏、少し話がある。更識は部屋に戻れ」
はいと言うとその場から逃げるかのように簪は部屋に戻っていった
確かにこの場の空気はあまり良いものではない。
「お前がコアを破壊したのか」
「俺はバイクで散歩に行っていただけだ。それに俺は生徒じゃない。どう行動しようが勝手だ」
そう言うとその場から去ろうとした
「一夏!なぜだ!」
「もう道は変わらない。俺は自ら選んだ。誰にも強制されず決断した」
それだけの話だというと俺は部屋に戻っていった
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一夏と楯無と苦しみ
林間合宿から戻って数日が経過したころ。夜に訓練に行く前、楯無が俺がいる警備室に押しかけてきた
もちろん話題は言うまでもなく、可愛くて仕方がない妹のことだ
「織斑一夏!あの子をたぶらかさないで!」
「まるで母親だな」
IS学園に戻ってから、ほぼ毎日射撃訓練をしていた。
最初は小型のリボルバーだけだったが、今は9mmのオートマチック拳銃を撃たせるまでに進歩した
短時間でこの急成長ぶりはなかなかのものだ。いろいろな意味で簪は成長している
そういったことで成長することを最も望んでいないのは姉である楯無だ
「いったい私をどこまで苦しめたら気がすむの!」
「まったく、簪は自立を目指している。それを尊重してやれよ」
「自立するのは良い事なのはわかるけど。そのために私よりも汚い世界を見せるなんて!」
確かに俺のいる世界は楯無のいる世界よりも汚いかもしれない
そんな中でも生きていくことができるというのは覚悟が必要だ
それでも彼女はそれを望んだ。だったら俺は手伝うだけだ
道案内として。たとえ途中で道を変えるならそうすれば良い
俺は強制はしない。本人の意思を尊重するだけだ
「人は自ら決断して歩むものだ。誰かに強制されたらそれは道ではないんだぞ」
「うっ‥‥‥‥‥‥」
「俺はまた訓練に行くからな」
俺はそう言うと訓練のために予約しておいたISのスタジアムに向かった
途中でバレットM82を取りに行っての上での行動だ。12.7x99mm NATO弾を100発持ち出した
今回はこいつを撃たせようというのだ。狙撃銃でも良かったのだが。
林間合宿での狙撃補佐の冷静な判断能力を見てこれを選んだ
スタジアムに到着するとすでに俺が彼女に渡した迷彩服を着用していた
「今日はこいつだ」
「それって対物ライフルですよね」
「ああ、バレットM82。言っておくが反動を吸収しきれなかったら体を痛めるがやめておくか」
「いえ、何事も訓練と実践ですから」
俺は最初はこんなものを撃てと言われたら断ると思ったのだが、どこまでも強くなったものだ
簪の心の整理と覚悟はできているようだ。それと俺が教材として与えた銃の取扱説明書をよく見ているらしく
分解した状態のバレットM82を渡すと自分で組み立てていった
「よく勉強しているし、ここ数日で大きく成長したな。いろいろな意味で」
「教本はしっかり読んでいます」
そんなことを言いながらも数分でバレットM82を組み立て終わった。
俺は空のマガジンと弾を渡した。簪は1発ずつ込めると銃に組み入れマガジンを装填してスライドを引き1発装填
今回は人型のターゲットを1km先に設置した。
俺は双眼鏡で的の状況を確認しいつでもいいぞと合図をすると簪は迷うことなく的の頭部に命中させた
さらに次弾はターゲットの胸に命中させた
「よし1撃必殺。上出来だ。だがこれは地面での発砲だ。ヘリなんかを使ったら振動などを考慮に入れなくてはならない」
そうだ。地面に接地しているからまだ楽なのだ。これがヘリでの狙撃となると様々な要素が絡んでくる
ヘリによる上下左右の微妙な振動だ。それでも1発で仕留めるのことができればかなり腕が良いと言える
「今度夜に時間があったらもっときつい訓練をさせてやるが」
「お願いします」
「そうだな。近接格闘術についても学んでみるか?」
人に教えるという事は俺自身も実力を確認することができる
自分の技術を高める事にもなる
「体力が必要だが」
「もし習得できるなら、頑張ります」
「わかった。明日の夕方に警備室に来ると良い」
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一夏と簪と威嚇
その日の夜、俺はいつものように警備のため巡回していた
もう誰もが眠っている時間である午前0時だ
静かな時間だと感じていたがそこに緊張感があり張り詰めた空気を漂わせた人間が現れた
「一夏」
「千冬姉、何かあったのか?」
「どこまで知っている」
何をとは俺は聞かなかった。おおよその察しはついていた。ここ最近千冬姉はいろいろと調べ事をしていたことを
悪いとは思ったが職員室に設置している盗聴器の音からある程度把握していた
「さぁな」
「一夏、もう人殺しはやめてくれ!お前を失いたくない」
「何度も言ったはずだ。千冬姉。今更引き返したところで待っているのは死だけだ。ならたとえ血にまみれた道でも歩むしかない」
俺はそういったが事実だ。今更、俺が普通の人と同じ生活ができるはずが無い
多くの血を流してきた。だからこそ狙われるのは分かり切っている
いくらフェンリルの弟子だからと言っても一般生活に戻れば状況は変わる
ならこの修羅の道を歩んだ方が良い
その方が生きていきやすい
「一夏!」
「千冬姉。俺達は実験の産物だ。でもだ、今更モルモットになるつもりはない」
俺は振り返る事はしないで歩き始めた。
もう何もかもが遅すぎているのだ。その後も歩き続けて巡回業務をこなしていった
『ピーピーピー』
「織斑一夏だ」
『元気にしているかしら。1つ仕事をお願いできない?報酬はそれなりに出すわ』
電話の相手はココ・ヘクマティアルさんからのものだった。
内容はいたってシンプル。ある人物に警告をしてほしいというものだ
警告だから殺す必要はないとのこと。あくまでも脅しだけで良いと
報酬は出すとのことだった。俺は分かりましたと言うと携帯情報端末に関連データを送るように依頼
すぐに情報は送られてきた。通話が終了すると俺は1度携帯電話を取り出して簪に渡している携帯電話にかけた
『何ですか?』
「簪、実地訓練に興味があるなら付き合え」
『すぐに用意します』
「気づかれるなよ」
10分ほど寮の前で待っていると動きやすい服装に着替えた簪が到着した
俺と簪はバイクに乗り込むと都内に向かって、バイクを走らせ始めた
「どうして誘ってくれたんですか?」
「今回は依頼は殺しじゃないからな。いきなり人を撃つのは嫌だろ。今回は驚かすのが目的だ。報酬はもらっている」
途中にある広い駐車場にバイクを止めるとすぐにヘリがやってきた
俺がさっきココさんから連絡を受けてすぐに手配した。もちろん自衛隊のヘリだ。護衛艦から発艦してもらった
自衛隊の関係者に協力を求めたところ意外なくらい簡単に許可が下りた
どうやらココさんの手配のようだ。感謝しないといけないな
ターゲットは都内の高級高層マンションに住んでいる。ヘリを使っての狙撃だ。
俺は持ってきた対物ライフルであるバレットM82を組み立てた
「やってみるか」
俺は簪にそう言った
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簪と狙撃と姉妹関係
やってみるかと言った俺の言葉に簪は良いんですかと聞いてきた
「別に人に当てるわけじゃない。あくまでも脅しが目的だ。経験を積むならこの機会を十分活用すれば良い」
分かりましたと簪は言うとヘリの機内でバレットM82の狙撃スコープを覗いた
慎重に照準を合わせていった。俺は距離と風向きを伝える補佐役を担当した。
「ターゲットのそばの壁掛け時計を狙います」
「いいぞ。撃て」
次の瞬間、反動にも慣れてきたのか。発射された弾は多少それたが時計には命中した
「もう1発撃ちますか?」
「いや、警告はした」
ターゲットは明らかに動揺の表情を見せていた。依頼としては文句のない仕事だ
俺はヘリのパイロットに駐車場にヘリを戻すように依頼した
その途中でレーダーマップにある事が表示された。
「簪、お前の姉さんが怒りに来たぞ」
「大丈夫です。もう迷いません」
気持ちは決まったようだ。このまま俺の訓練を受けていくと
どんどんと強くなりたいと
俺達は結局、ヘリの出発地点に着陸するとすぐに楯無のISも到着した
「姉さんにしっかり言ってやれ」
「はい!」
覚悟を決めたことは彼女の表情からすぐにわかった
もう隠すつもりはないと。自ら宣言するつもりなのだ
歩みを止めるつもりはない。
「簪ちゃん!」
「お姉ちゃん。私は決めたの。このまま一夏さんと共に歩む!ISだって返してもいい。代表候補生のポストだって捨てても良い!」
「どうして」
さすがに彼女の意志の強さに楯無は相当なショックを受けていた
「一夏さんはいつも私の意思を尊重してくれた。強制はせず、自らの意思で決めろって。そうすればやがて道は開けるって」
「でも、人殺しになるんだよ!」
「すべての人が法律で裁けるわけじゃない!それにお姉ちゃんだって似たようなことをしているのに私だけいつも仲間外れ」
そんなことはもういやなのだと簪ははっきりと意思表示をした
確かに俺は強制はしない。本人が共に歩みたいなら歩みを手伝ってやる
それに簪の言う事は正論だ。楯無の家は代々暗部をやっている。なのに自分だけ除け者にされたらいやな気持ちになる
俺にもその気持ちはよくわかる
「楯無、どうやらお前の負けのようだ」
「織斑一夏!」
「言っておくが彼女の言うとおり、俺は強制していない。来る者は拒まず、去る者は追わずというのが俺の考えだからな」
俺はこっちの世界に本気で興味があるなら支えてやる。
それが俺にとっては最高のパートナーになるからだ。今後仕事をして上でパートナーがいる事は重要だ
「だからってどうして!」
「お前が彼女のことを思っているなら態度で表すべきだった。それだけの話だ」
俺は内心ではすでに手遅れだがなと思った。初めから時計の針は狂っていた。
その狂いを少しでも直すようにもっていかなかったからこそ、こういう結果を招いた
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一夏と簪と楯無と狙われ
「すべて手後れだってこと。つまり時間切れだ」
俺と簪はその後、駐車場に止めているバイクに乗って帰ろうとした
その時、携帯情報端末が警告音を出した
俺は簪を引っ張って素早く駐車場の中にある工事用の鉄骨を盾にして隠れた
その直後銃弾が飛んできたが、そのほとんどが隠れた俺達と楯無の両方に向かっていた。
狙いは俺達か、それとも楯無か。かなり判断が難しいところだ
それに亡国機業なら俺に敵対する事は今のところないはずだ
「自分の身は守れるな」
俺はヘリから降ろしたばかりの対物ライフル、バレットM82を渡した
「大丈夫です!」
「俺がバイクを取りに行く間、援護しろ。方向は分かっているか」
「だいたいは」
「よし、気をつけろ!」
俺は急いで駐車場に止めているバイクに乗り込むと素早くエンジンを始動させて簪のところに向かった
その間にも発砲の音はやまなかった
「お姉ちゃんは大丈夫ですか」
「ISの絶対防御がある。大丈夫だろう」
簪は素早くバイクの後部に乗り込んだ。俺はアクセル全開でその場から脱出していった
楯無も急いで引き上げていった。ところがだ。バイク走行中の俺達に照準を合わせられていた
亡国機業じゃない。狙いは間違いなく俺達だ
「簪!しっかりつかまっていろ!」
俺は急停止させて、大木の陰に隠れた。簪からバレットM82を受け取ると狙撃スコープで確認した。
相手は1km先にいた。迷彩服を着用していた。どう見ても猟犬の俺を狙っているようだ
「簪、こんな汚い世界でも入りたいか。泥沼になるぞ」
警告するように言うと覚悟はできていますと意思表示をはっきりした
まったく、何か決めるまではハツカネズミのようにぐるぐる回るのに物事を決めると肝が据わっている
俺は狙撃の補佐を頼むと対物ライフルを構えて発砲した。それも2発を
「直撃です」
俺はあえて両腕を狙った。腕が使い物にならなくなったら殺し屋としては終わったも同然だ
「腕を狙ったんですか?」
「そうだ。殺すと面倒になるからな」
どうしてですかと聞いてきた簪に警告だと答えた
俺に手を出したらこういう目に遭うということを伝えるのだ
殺してしまうとそのメッセージを伝えることができる人物がいなくなってしまう
そうなればまた狙われる可能性が高くなるだけだ
「他にはいないみたいだな」
俺は簪に言った。
こんな汚い世界を自ら望んで歩むことに悩みはないのかと
すると彼女はこういった。覚悟を決めたら強いんですと
なら徹底的に仕込んでやるまでだ
「明日から毎日夕方からトレーニングをするか?」
「お願いします!」
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一夏と簪と覚悟
翌日の夕方から俺は簪の基礎訓練から始め、指導を行い始めた
簪は俺の厳しい訓練についてきていた。はっきり言って彼女の実力はなかなかのものだ
初めは俺の訓練についていくことはできなかったが、次々とマスターしていった
彼女は鍛錬を通じてISの代表候補生としての資格を返還する事も考えるようになっていた
数日後にはどこで鍛えているのかは知らないが徐々に体が訓練に慣れてきたようだ
最近は近接格闘術以外にナイフ格闘戦などの鍛錬にもついてきた
彼女にも元々才能があることが分かった。普段は隠れていてわからないのだが
素質は十分にあることがわかった。彼女の努力と頑張りはかなりのものだ
更識の家系の中では実力が隠れていたが本物だと俺は実感していた
その日の夕方からもゴム製のナイフを使って訓練を行っていた
「もう体が慣れてきたようだな」
「はい!」
簪は毎日のように訓練をしていて体力もかなりついてきた
さらに日中は彼女は完成したISの専用機を使った訓練も行っていたが、
夕方からの俺の訓練のおかげどうかわからないが
めきめきと頭角を露にしていた。
「それで本気でいってるのか。代表候補生をやめれば学園にはいられないぞ」
「そういう道を選べると思ったんです。陰に隠れて生きていく。お姉ちゃんは表立って動くけど」
「楯無は暗部でも表に近い。俺は陰で生きている。そんな生活をしていると窮屈だぞ」
2度と戻れないからこそ俺は慎重に選ぶように言った
大型船舶と同じで小さな選択でも、この選択は巨大なタンカーのようなものだ
エンジンを止めても急には止まらない。つまり引き返せないという事だ
「もう決めたことですから」
俺は分かったと答えた。ある訓練をする事にした
射撃訓練の中でもかなり特別のものだ。
簡単に言えば普段の射撃訓練用の的から、家族の画像が張られた的でもためらいなく撃てるか
家族すら犠牲にできるほど覚悟があるのかという事を示してもらう
「これから行う射撃訓練で少しでも戸惑いを見せたら、この道を走るのはやめておけ」
すると彼女はこういった。家族を撃てと言うんですねと
「察しが良いな。その覚悟はあるのか」
「もちろんです」
俺と簪は射撃訓練施設に向かうことにした
彼女が本気で身内ですら撃つことができるかのテストだ
迷いを見せたら自分が死ぬ事になる。時には冷徹な判断をしなければならない
そして射撃訓練施設で彼女にグロック17を渡すと最初は普通の的だった
途中から彼女の家族のものに変えた。それでも彼女は確実に殺せる急所に命中させた
同じようなことを何度か繰り返した。マガジンを何度か交換して合計100発近く撃ったが
普通のまとも家族の画像のまとも全部命中していた。確実に殺せるところに
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一夏と簪と相棒
射撃訓練を終えた俺と簪は施設を出た
するとだ。まぁ予想はしていたが楯無はかなりご立腹の様子だった
相変わらずと言ったところだろう
「簪は覚悟を決めた。俺はそれを命令はしていないし本人の意思だ。尊重してやるんだな」
俺は以前と同じセリフを言ってその場を離れようとした
これもまぁ予想できていた事だが、楯無は俺の腕を持って話があるわと言ってきた
仕方がないと思って俺は付き合う事にした
そのまま施設の陰、つまり簪からは見えないところで話をした
「あの子を守ると約束してくれるわよね」
「せっかくできた優秀な相棒になれそうな人間、簪がそうなることを望む限り努力はする」
「なら約束しなさい。あの子を守ると」
「何度も言うが努力はする。だから俺は彼女にもこう伝えた。時には冷徹な判断が必要だと」
「約束しろ!」
「わかった。相棒になったら共に歩むものとして守る。約束する」
俺がそう言うと楯無は必ずよと言うとその場を去っていった
「せっかくできた相棒だ。大切にする」
俺は自分に言い聞かせるように言うと訓練施設の前で待っていた簪にまた明日なと伝えた
彼女は寮に。俺は警備室に戻っていった。警備室に戻り俺はソファで眠ろうとしていた。
衛星携帯電話に着信が入ってきた。相手はフェンリル先生だ
『お前が教師役を務める事になるとはな』
どこで聞きつけたんだか。もしかしたら俺達に対する狙撃はそれを見るためだったのかという疑念を持った
「フェンリル先生。どこでそのネタを」
『それは教えられないな。ただお前も弟子を取るとはな。しっかり育ててやるんだな』
そう言うと電話は切れた。俺はため息をつくと軽く眠りについた
5時間ほど睡眠をとると俺は目を覚ました。定期巡回の時間だからだ。今の時間は真夜中だ
よほどのことがない限り静かな時間で過ごせるはずだ
射撃訓練施設のところに近づくと誰かが練習に使っていた
使っている銃をおおよそ見当がついた。
俺は銃の発砲音でどの銃かだいたい見当が付けれる
「簪、朝から練習すると腕を痛めるぞ」
「もうISとは縁を切る事にしました」
「代表候補生を降りたのか?」
はいと簪は返事した。俺でもなかなかすぐに判断できない事を素早く対応
その心意気には感心した。
「なら学園長に頼んでみるか。警備担当になれるように」
「お願いします」
「わかった。学園長には朝のうちに伝える。簪、相棒として頑張ってもらうからな」
「はい!」
そう返事をする簪の足元には大量の薬莢が落ちていた
標的の的には9割の確率で即死となるポイントに命中した
「銃の腕前はすごいな。俺でもここまでなるのに時間がかかったのに」
素質は本物という事をまざまざと見せつけられた
俺は密かにある事をある人物に頼むことにしようとしていた
束さんだ。簪のために専用機を用意してもらう
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一夏と簪と騒動の用意
IS学園 学園長執務室
「更識簪さん。本当に良いんですね?」
俺は簪を連れて学園長のところにいた。彼女を警備担当にさせるためだ。
ちなみに楯無も覚悟をしたのか余計なことを言ってくる事は無かった
「はい。覚悟の上です」
「わかりました。更識簪さん。あなたを一夏君と同様に警備担当者とします。ところでISは返還したのですか?」
「日本代表候補生を降りると伝えてから返還しました」
まさかこの数日でここまでの動きを見せるとは正直言って俺にも予想できなかった
だが彼女の目は真剣だった。本当に黒く汚れた世界に行くことを望んでいた
「ではこの書類にサインを」
内容をしっかりと確認したうえで、簪は書類にサインした
「一夏君、あとは君に任せるよ」
「分かっています。簪、訓練でもしようか。格闘術の」
俺が学園長室を出るとそこには楯無が待っていた
簪に先に行って準備体操でもしておくように指示する
彼女は分かったと言い、その場から離れていった
「もう1度言うけど、簪ちゃんを守る事は約束してもらうわよ」
「しつこいようだが、守っていく。せっかくできた相棒だ。共に歩むだけだ」
俺はそう言うと訓練室に向かった。その向かう道中で束さんに連絡した
「束さん、お願いがあります」
『いっくんからお願いなんてすっごく珍しい!』
「更識簪の専用機を用意してもらえますか?」
『彼女を落としたんだ。いっくんもよくやるよね』
束さんは何か面白そうな声で答えた
別に俺が望んだ結果ではない。それに落としたとは恋愛なんかしていない
俺に恋愛に興味はない。実力があるかないかだけだ
『とりあえず彼女の個人データをハッキングでもらうからできるだけ早く用意するね』
そう言うと通信が切れた。あとは簪の訓練だけだ
今日から簪はIS学園の生徒ではなく俺の相棒だ
『ピーピーピー』
衛星携帯電話に着信が入ってきた。相手は身元を明かしたくないところのようだ。
だがこの携帯番号を知っているのは限られる
『更識簪が代表候補生降りて、学園の警備部門に入ったという情報は確かなの?』
「その通りだ。今日から俺の相棒だ。ISも返しているから狙うなよ」
『まぁいいわ。候補生から降りるなら狙う理由はないわ。敵を少なくして効率よく攻めたいもの』
「そうか。それで次の舞台は何か教えてくれるのか?」
『そうね。学園に侵入して適当に混乱状態に落とすつもりらしい』
「混乱中にISのコアを奪うつもりだろう?」
『この作戦がうまくいけばの話だけど。それじゃね』
通話を終えた衛星携帯電話を耳元から離すと俺はため息をついた
まだまだショータイムはあるという事だ
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一夏と簪とナイフ戦闘訓練
俺は簪が待っている格闘訓練室に入ると俺は戦闘服を着用した
今回もナイフ戦だ。ただし練習用のため、使うのはゴム製のものなので刺されても痛みはない
「俺を殺すつもりでかかってこい。さもないと簪、自分が死ぬと思え」
俺は手加減しても良いが、簪は本当に殺すつもりでやってこないとこの訓練の意味はない
「分かっています」
彼女は素早く行動して距離を詰めるとまずは格闘術で対応した
なかなか切り替えの早い判断だ。ナイフ戦ではいかに相手を動けなくするかで勝敗が変わってくる
無駄な動きを一切見せず的確に急所を狙ってくる。確実に殺せるように
なかなかの実力の持ち主だ。1度経験して失敗したら2度目では同じ失敗はしない
俺は今でもフェンリル先生に教えてもらったのと同じ訓練をしているが。
彼女はそれについてくるどころかそれ以上に上達している
ナイフ戦をしているが俺の方に分があるようだ。まぁ当然と言えば当然だ
経験がものをいう社会だ。簡単にこの手の格闘術を、それも短時間でマスターできるわけではない
もちろん俺もある程度技量を判断するために本気は出さなかった
それと手加減をしていたため、俺は簪の首元にナイフをつきけけてやり一時休憩を取る事にした
「この短時間でなかなかの成長ぶりだな」
「そうですか?私にはまだまだ弱点があると思うのですが」
「こうやって訓練を続けていたら、すぐに体が慣れてくる。気にするな」
その後も俺と簪は訓練を続けた。見た目以上に彼女には体力があるようだ
負けても負けても立ち上がってもう1度と挑戦してきた
俺は1時間を経過したのを見て今日はここまでだと言った
あまり長時間の訓練で詰め込み式でやっては効率が悪い
じっくり時間をかけてきた得ていく方が効率的だ
「これから定期巡回だが付き合うか?」
「もちろんです」
俺は簪と一緒に巡回を始めた。簪の腰にはグロック17が収まったホルスターがあった
俺と同じ銃だ。俺はあえて一緒のものを支給した。万が一のときお互いマガジンを瞬時に交換できるからだ
予備のマガジンを俺は3つ装備している。簪も同じだ。いつでも交換ができるようにしている。
「一夏さん、どうして私を認めてくれたんですか?」
「それはいずれ分かる。それまでは頑張ってついてくるんだな」
俺の言葉に彼女は「はい!」と元気に返事をした
俺も体は子供だが、思考回路は大人だ。それに彼女の気持ちは痛いほどわかる
簪は姉のせいでいろいろと苦労をしてきた。俺も同じだ。
それもあの計画を知っているおかげで余計に腹が立つ
人間の尊厳を何だと思っているのかと
千冬姉との関係は家族でも遺伝子上では違いかもしれない。そんなことは今さらどうでも良い
俺はドイツでの拉致事件以降、フェンリル先生に教えを受けたおかげかもしれない
そして生まれ変わった。法律では罰することができない犯罪者を殺す役目を持った殺し屋に
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一夏と簪と武器商人
俺と簪は定期巡回をしているとき携帯情報端末に侵入者のアラートが鳴った
現場に駆け付けると1頭のネコを見つけた。偶然にもセンサーに引っかかったのだ
「まったくはた迷惑な奴」
「知っているんですか?」
ああ、この猫は侵入事案の常連だ。1日1度は侵入してくる。
おかげで警報が鳴るたびに駆け付けないといけない面倒な奴だが
元々森で育った山猫らしいので放置しているのだ。
「こいつはここが好きなんだろうな。だが警備においては穴を作る訳にはいかないからな」
とりあえず、もう限界だから保護だなと俺は言う。
そこで簪にペット用のケージが警備室にあるからとってくるようにと伝えた
これ以上無駄な事に時間を割くわけにもいかないからだ
ここではペットの飼育環境では少し難しい
ならば引き取り手を探すためにそういう保護活動をしている彼らにお願いするのが最もいい解決法だ
俺は別に武術だけで物事を解決する事は無い。時には駆け引きでうまく取引を持ちかける事もある。
動物たちに罪はない。彼らは自然の中で育まれた大切な存在だ
新しい新天地でもなじむだろう
「一夏さん!ケージを持ってきました」
簪がそう言うとケージを地面に下ろした。しかし簪が誘導しても動きはないようだ。
そこで俺がケージを受け取りネコのそばに置くと、おいと合図をするとネコはすんなりとケージに入っていった
「すごいですね」
「まぁ、いろいろとやってくれたからな。簪、警備室にこの猫を届けておいてくれ」
俺は引き続き巡回に行くと伝えるとともに、警備室で監視カメラの映像をチェックしておくように指示を出した
「了解」
俺は引き続き巡回に戻った。それからしばらくして無線が入ってきた
『一夏さん、ココ・ヘクマティアルさんという方が来ていますが』
簪の言葉にいつものように会議室に通す事にした
ついでに簪の紹介をする事も忘れないでおこう
俺はいつものように会議室に向かう。途中で簪と合流した
「どういう方なんですか?」
「簪も知っておいた方が良い。ココ・ヘクマティアル。武器商人だ」
会議室に入るといつものようにココさんがスーツ姿で待っていた
すると早速、からかい始めた
「あなたが猟犬の弟子ね。初めまして。ココ・ヘクマティアルと言います」
「初めまして更識簪です」
それじゃさっさと取引を行いましょうと言うと大型のアタッシュケースが机の上に置かれた
俺はココさんにいつものように中身を確認してもと聞くと、構わないわと答えた
注文した商品を確認するとどれも新品で質の高い商品だ。問題ない
「では振り込みをしましょう。いつものように電子送金で」
ココさんは送金用の機械を置くと俺はカードを差し込み必要なデータを入力
すぐに送金は完了した。
「いつもありがとう。では私達はこれで失礼するわ」
簪は銃や弾ならここに保管されている物を使ったらいいと思いますがと聞いてきた
確かにそうだが。精密射撃においては高級品質の弾薬の方が安定的に発砲できる
だからこそいつも彼らに商品を納品してもらっているのだ。
もちろん、このお金は学園ではなく俺が自腹で出しているので誰にも文句は言わせない
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一夏と簪と勤務開始
俺はココさんから購入した武器弾薬が入ったアタッシュケースを持って学園の廊下を歩いていた
「そう言えば簪。どこで寝る予定なんだ?」
「まだ決まっていませんが、どうしたら」
「なら引き続き寮の部屋で寝泊まりをしておけ。学園長には俺から話す。寮内の警備と言う名目でな」
「良いんですか?」
俺は問題ないと言った。寮の方にも警備をしておいた方が良い
夜の方が狙われるリスクが高い事もあるからだ
日中は多くの目撃者がいるが夜になれば警備担当者以外は寝静まっている
そうなれば侵入して破壊工作をする者もあらわれる
そう伝えると俺はココさんから預かったアタッシュケースを渡した
「もう1丁のグロック17とマガジンが3個に弾が100発。自分の身は自ら守れ」
「わかりました」
「それと毎日朝7時には射撃訓練施設に来いよ。銃の取り扱いの訓練だ」
俺の言葉に簪は分かりましたと言うとアタッシュケースを受け取った
それと俺からのささやかなお守りを渡した。お守りと言ってもかなり物騒なものだが
「最後に着替えたときに服の下に着ておけ。薄型だが9mmの弾までなら防いでくれる薄着用防弾シャツだ」
ありがとうございますと言うと簪は受け取った
「それじゃ、今はここまでだ。初勤務はこれからする事になるからな。荷物置いたら警備室に来てくれ」
俺の言葉に分かりましたと言うと急いで寮に戻った。俺は警備室に戻ると何となく銃の手入れをした
走ってきたのか簪が大急ぎで警備室に来た
「そこまで早くなくてもよかったんだが」
簪は腰にホルスターをつけグロック17を装備していた
とりあえずは携帯情報端末を渡した。何かトラブルがあればすぐに連携できるようにだ
「巡回に行くか」
「そうですね」
俺と簪は巡回に入った。巡回と言っても各種センサーが正常に機能しているかどうかのチェックだ
ただすべてを調べていたら時間がかかる。学園内には様々なセンサーがある。
だからこそ携帯情報端末を持って異変があればそこに急行する
「一夏さん、どうして弟子にしてくれたんですか?」
「そうだな。しいて言えば、俺は利用できるのは利用するタイプだからな」
「私もそうしろと?」
「そうだ。俺のような仕事をしていると自然とそうなる」
俺自身はそう思いたいだけなのかもしれない。本当なら弟子なんて取るつもりはなかった。
だが見ていられなかったのだ。あまりにも苦しそうな姉妹関係を
「あと、さん付けはいらないからな。同じ歳なんだからな」
そう答えると簪はこの業界に誘ってくれた先輩ですのでといった
あまりお勧めはしたくないのだが、本人が望むなら手伝うだけだ
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一夏と簪と不法侵入者
いつものように巡回をしていた。今日は日曜日のため生徒たちは自主練などに励んでいた
「平和ですね」
「まぁな。だが覚悟しておくことだな。そんなことを言っていられるのは今のうちだけだ」
そう現実というのはかなり複雑なのだ。
時には冷徹な判断を下す。家族すら切り離さなければならない
彼女はそれだけの決意をしたのだ
『ピーピーピー』
俺が持っている携帯端末が侵入者の通報を知らせるアラートが鳴った
場所は監視カメラなどの死角の位置だ。すぐに向かう。
簪とともに向かうとちょうど建物の陰から出てくるところと鉢合わせだった
「おい!不法侵入者!」
俺はホルスターからグロック17を抜くとすぐに発砲できる用意をした
簪もホルスターから銃を抜いて一緒に追いかけていった
俺と簪は途中の建物の陰で2つに分かれる場所で見失った
そこで2手に分かれて行動することにした
「何かあれば無線で知らせろ。声が出せないときは緊急ボタンを押せ」
「了解」
俺はとりあえず慎重に警戒しながら向かったがこちらは空振りだった
無線機から簪の声が聞こえてきた
『一夏さん!見つけました!スタジアムの方に向かっています!』
「すぐに向かう」
俺は鍛えられた足を自慢にしているので全速力で向かった。
すると銃弾の音が聞こえた
『侵入者の身柄を確保!』
簪からの無線に大急ぎで向かうと片足を撃たれて倒れている男がいた
俺が駆けつけるまでの間に足に命中させて逃走を止めた。
簡単にはできないことだ。走りながら照準を合わせる。
銃の訓練を相当受けていなければできる芸当ではない
それだけ簪の成長能力が高いということでもある
「上出来だ。殺さなくてな。こいつにはいろいろと喋ってもらわないといけないからな」
とりあえず俺は手を後ろに回して手錠をかけた。簪に事情聴取の光景は見せられないと判断した。
俺が事情聴取となると多少は無茶をいつもしている。だからこそ抑止力として効果があるのだ。
ここに手を出したらどうなるかということを
「とりあえず止血をしておかないと死ぬからな」
俺はそう呟くと簪に引き続き巡回をするように指示した
「何かあれば無線で呼んでくれて構わないからな。その時はすぐに向かう」
俺はとりあえず医療室に向かった。この学園には医療設備も整えられているので問題ない
そこで治療を受けさせて事情聴取を行えばいいだけのことだ
「お前もついてないな。俺が警備しているところに来るとはな」
「どういう意味だ?」
「俺は猟犬だ。わざわざ好き好んでくるということは自殺行為だ。フェンリルが黙っているかどうか」
「じょ、冗談はよせよ」
「試してみるか?」
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一夏と簪と事情聴取
IS学園の医療室に連行した男。そこで簡単に治療を受けると取調室に向かった。取調室には俺と犯人の男だけだ。
ただマジックミラーがある。監視から見ることはできるのだが俺が取り調べをするときは閉鎖されている
あれはあくまでもパフォーマンスなのだ。
「名前は?」
「本名をいう馬鹿だと思うか?コードネームなら喋ってやる。ヘイズだ」
「ヘイズ。初めましてと言っておこうか。俺は織斑一夏だ」
「女に撃たせるぐらいだから大したことないんだろ」
俺はあくまでも冷静に答えた。
だが女に撃たせたという言葉に少しは苛立ちを覚えた。
「俺はフェンリル先生からいろいろと教わった。フェンリル先生が狼なら俺は猟犬と呼ばれている。意味はわかるか?」
だがこいつはどうやら信用する気はないようだ。まだ余裕の笑みを浮かべている。
さすがはプロだ。だんまりを決め込んであとは楽に釈放されると思っているようだ
「猟犬がこんなガキなわけないだろ。どうせ取り調べなんてただ話せばいいと思っているんだろ」
軽口を叩けるぐらいなら派手にやってもいいだろうと俺は簪が撃った足をぐりぐりと攻撃した
「これでも冗談に聞こえるなら。お前はさぞかし楽な仕事をしているんだろうな。俺はそこらの甘い奴だというなら覚悟するんだな」
試してみるかというと俺はグロック17を抜いて傷の部分に押し付けた
「本当にお前が猟犬だと!。ふざけるな!あれだけのことをやっているのがこんなガキだと!?」
「そうだ。何なら試してみるか。フェンリル先生に連絡してお前の始末のつけ方を。相談してもいいんだぞ」
俺の言葉にさすがに本気であることを察したのか。表情を変えて分かったと返事をした
依頼主に関する情報を明かせば無罪放免というわけにはいかないが
病院に行けるように手配してやると脅しをかけた
するとさすがにフェンリル先生に睨まれるのは嫌なのか。ぺらぺらとしゃべった
依頼主はIS学園のことを良く思っていない男たちだと。
電話番号を記した紙を受け取ると俺は奴を学校外の医療機関に搬送するように指示した
「こいつが主犯か」
電話番号を見てすぐにわかった。フィクサーとして活躍している大物だ
反IS運動を指揮しているともいわれている男の1人だ
「また警告をしておかないとまずいな。今はここに手を出したら俺がいることをな」
電話番号から逆探知をしたらIS学園の外の近くのホテルに泊まっていることがすぐにわかった
「脅しが必要だな。簪に手伝わせるか」
無線で簪を呼び戻した
「簪。警備室に戻ってきてくれ」
俺は夜のお仕事をするぞと伝えた
『殺しですか?』
「簪、今回も脅しだけだ。警告射撃だが。ある程度ターゲットは設定させる。的にうまく当てることができれば訓練を続けてやる」
『わかりました。やってみます』
始まりの鐘は鳴りだした。あとはどうやって収拾するか
面白くなってきたと思ってきた。
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警告狙撃と簪と束さん
その日の夕方、俺は簪は高級マンションから1km離れたところでスタンバイされていた
「殺しはしないんですか?」
「簪、いきなり人を撃てとは言わない。まずは正確に的に当てることができるかどうかだ」
俺はそういうと風の方位と距離を伝えた。ただ今回は別にどこにあたろうとしても問題ない
ターゲットにけがか脅しをかけることが目的ではないからだ
猟犬がIS学園にいることをアピールすことが狙いだからだ
俺はそのホテルの部屋に電話をかけた
『誰だ?』
「これは警告だ。IS学園に手を出すな。猟犬とフェンリルに殺されるのが嫌ならな」
『そんなはったりにのると思っているのか』
はったりかどうかは今に分かるというと俺は簪にバレットM82を発砲するように合図をした
銃弾は男のすぐそばに命中した。
「これが最後の警告だ。二度と手を出さないと約束するなら、この場から去ってやるがまだやる気があるなら天国に行かせる」
俺は簪に合図をすると再度バレットM82を発砲。相手のすぐそばを通過していった
さらにすごいことにわずかにかすり傷を負わせるという。偶然なのか狙ったのかはわからないが
警告には十分だ
「わかったか?」
『わかった。猟犬がいる限りは狙わない』
利口な判断だと俺は言うと撤退していくことにした
「簪、狙ったのか?」
「風速を計算に入れていました。ただ本当はもう少し外すつもりだったのですが」
簪はすみませんといったが俺にとっては上出来だと評価した。
威嚇としては最も効果的なものになったからだ。ただ俺の狙いとは少し違ったが
「まぁ合格点だろう。1kmも離れているのに、風速の計算も入れていたなら上出来だ」
引き上げようかと言って、俺と簪は引き上げようとしたときだった。
そのビルのアンテナに人が立っていた。誰なのかは俺にはすぐに察しがついた
だから俺は銃を向けることをしなかった。だが簪は気配を感じたのかすぐにホルスターから拳銃を抜いた
素早い対応だ。
「束さん。こんなところに居て良いんですか」
「この人があの・・・・・・・・」
「簪、篠ノ之束さんだ。実はあるものを依頼しておいた。お前にはもう必要ないとは思うが保険にはなる」
「いっくんからお願いされたら断れないもんね」
束さんは今夜一晩簪のことを借りてもいいかなと聞いてきたので俺は構わないと返事をした
「簪、良い経験だから行ってこい」
するといつものようにニンジンロケットの2人が乗り込むとその場から離れていった
表向き俺たちはISを持っていないことになっているので表から行くわけにはいかない
そこで束さんの出番であることを依頼した。
報酬として俺の特別の日にしか作らなかった料理メニューをと言ったらすぐに食いついた
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一夏と楯無と情報戦
俺はとりあえず学園に戻ってくる。おそらく簪が戻ってくるのは早くても明日の朝だろう
束さんには無理を言ったことはわかっている。だが箒を守るのに1人よりも2人のほうがいい
それに女だから守りやすいところもある。男の俺ではカバーできないところも多いのだから
「一夏さん。お嬢様が話があるので生徒会室に来てほしいと」
メガネがよく似合う生徒会の書記をしている彼女に声をかけられた
俺はまぁいいだろうと返事をすると生徒会室に向かった
生徒会室に入ると相変わらずの楯無の顔があった
「あなた。何を企んでいるの?篠ノ之束にコンタクトを取って私の妹に何を」
どこでかぎつけたのかわからないが。束さんとコンタクトを取ったのを知っていた
俺を監視しているということはよく理解できた。何を聞きたいのかはおおよそ想定できた
「それは言えないな。聞きたいなら本人に聞くことだ。もっとも、簪が簡単にしゃべるような人間じゃないだろうがな」
「どうしてそこまで言い切れるの?」
私なら姉の力を使ってというが実際問題のところ楯無に無理がある
決別した関係にあるのだから。簪の意思は明確だ
それにだ。俺は簪に訓練をする前にあることを言った
情報戦で最も重要なのはこちらの手札を見せないことが何よりも重要だと
相手よりも有利な情報を握っているほど勝率は高くなる
「まぁいいわ。必ず聞き出して見せるから」
「そう簡単にしゃべるとは思えないが、まぁ頑張るんだな」
俺は用件はそれだけかと聞くと楯無は他にはないわと返してきた
「それじゃ俺は警備室に帰らせてもらう」
俺は生徒会室を出ると警備室に向かって歩いていった
今頃束さんのところで簪がみっちりとトレーニングをしているはずだ
そのために目の前においしい餌を置いておいた。束さん用の俺のおいしい料理という切り札を
ISの訓練について終われば、あとは身体能力をどれだけ伸ばせることができるか。
それをはっきりと知っておかないとパートナーなどは邪魔者でしかない
簪はしっかりと自分の意思で選んだ道だ。たとえ修羅の道であってもそれを歩むと決めたのだ
俺はそれを尊重してパートナーとして組んでいくだけだ。
それにだ。1人よりも2人のほうが仕事がやりやすいことがあることは事実だ
警備室に戻ると俺は束さんに連絡を取ろうと思ったが、今はやめておいたほうがいいと思った
いつどこで監視されているかわからない。楯無はかなりしつこいだけに警戒するべきだ
公に俺がISを持っていることが分かれば亡国機業との関係もある。
連中も俺が持っていることはおおよそ察しがついているかもしれないが
公にならなければ問題にはならないだろうと考えていた
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一夏とIS学園と襲撃
俺はいつも通りの朝を迎えた。今のところ各種センサーに異常は確認されていない
携帯電話を見ると簪からメールが来ていた。予定では昼頃には戻るとのことだ
俺は携帯電話で連絡してわかったと伝え、巡回をしようとした時だ。
携帯情報端末から異常を知らせる警告が鳴り始めた
「何があった!?」
『正面ゲートに武装集団を確認!』
「数は?」
『10人ほど。どうします?』
10人ならこちらで対応できる。ただ相手がどんな武器を持っているかわからないので
念のため武器庫にあるアサルトライフルを交代で取りにくるように指示
俺もH&KG36を途中の武器庫から取り出すとすぐに正面ゲートに向かった
そこでは激しい銃撃戦が展開されていた
「手の焼ける連中だな」
警備担当官は拳銃で相手をしていた。
しかしそんなもので何とかなるような連中でないことはすぐに察しがついた
俺はアサルトライフルで相手の足を狙った。
胸などは防弾チョッキをしていても足まではカバーしていないと考えたからだ
足を狙ったところ相手はほぼ全員制圧することができた
問題なのは依頼主だ。誰がここまでのことを依頼したのか。
念入りに調べる必要がある
「全員医療センターに搬送しろ。それと警察に連絡して事情聴取をさせておいてくれ」
「わかりました」
俺はけがはしていないが。ほかの警備担当の者の中には重傷者がいた。
彼らもすぐに医療センターに搬送するように指示した
「まったく、いったいどこの連中が?」
亡国機業かもしれないが連中が俺にケンカを売るために実力行使をしてきたとは思えない
いったい連中の狙いは何なのか。ISを奪うためか、生徒を抹殺するためか
どちらにしても背後関係をかなり調べなければならない
「派手にやってくれたな」
コネを使えばそれほど難しいことではないが。
そういうものはできるだけ使用したくない。
今後にもっと重要な場面で必要になるかもしれないからだ
「とりあえず、警察の事情聴取に期待するか」
俺はそう自分に言い聞かすかのように言うと警備室に戻ることにした
警備担当官が負傷した人物の穴をどうやって埋めるべきか考える必要があった
各種センサーなどの機械による警備は通常通り使えるが。
人による警備はそう簡単に穴埋めできるものではない
簡単にやると言っても、ここは治外法権に近いところのためだ
仮にすぐに採用者を見つけるとしても背後関係などを調べなければならない
最低でも1週間は必要だ。限られた人員で。疲労などの疲れもあることも考慮すると
かなり苦労しそうだ。俺は面倒なことになったとすぐにわかった
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一夏と被害と学園長との相談
俺は昼過ぎから学園長とともに今後の警備体制について話し合っていた
「一夏君、被害は?」
「人的なものが大きいです。壁などはすぐに修復できましが人材に関しては当面の間は厳しいです」
穴埋めができるとするならと聞いてきたので。金をかければできるが俺としては信頼できる仲間は少ないと答えた
確かにこの業界は信用だが大事だ。ただ、IS学園に利益を求めて警備に入るものもいる
簡単に言えばスパイということだ。身元調査をしなければならない
面倒な事ではあるが学園内の平和を守るためには、しばらくの間は教師陣にも協力を仰ぐしかない
「更識簪さんについては?」
「今外部で訓練を受けてもらっています」
まさかISを受け取りに行っているとは言えない。
表向きは簪は外部での警備訓練を受けているということになっている
もちろん、あちらでもいろいろと仕込まれてくるだろうが
「それで人的なものについてはどうするつもりですか?」
俺の言葉に学園長はあるリストを渡してきた。それは自衛隊からの臨時出向者リストだった
俺とは何度か会ったことのある人物ばかりだった。
この学園長の情報収集能力の高さはなかなかのものだと俺は思った
問題はどこまで知っているのかということだ
「どこまで把握を?」
「一夏君、君がISを持っていることまで把握しています。でもそれは伏せられているほうが良い。間違っていないと思いますが」
どこまで知っているのかわからない以上、下手に返答をするとまずいと俺は即座に判断した
俺は自衛隊からの出向予定者リストを持って学園長室を出て行った
廊下に出ると俺は大きなため息をついた。問題がまた降ってきたからだ
自衛隊出向者になったことは警備訓練をする必要がないということではありがたいが
俺のことを上司として認めさせるためには戦って理解させるしかないと思った
戦闘訓練をするのは良いが、いろいろと苦労が出てくる
「どうして俺のところにだけトラブルが来るんだ。幸運の女神に見放されているのかもしれないが」
1人ごとを呟きながら俺は警備室に戻った。まずこの自衛隊関係者について調べるためだ
万が一ということもあるので、いろいろな手段を使って情報を集める必要がある
俺は警備室で預かったリストから彼らの背後関係を調べはじめた
自衛隊の多くの関係者は俺と何度か関係を持ったことがある
もちろん味方としてだが。時には敵対するような状況になったが最終的には自衛隊側についた
彼らの正義が正しかったからだ
まだ俺のことを覚えているなら訓練は比較的簡単に済ませることができるだろう
相手は戦闘訓練を受けているのだから
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一夏と応援に来る自衛隊と簪
俺は自衛隊から出向してくる隊員たちのリストを見ながらそれぞれの配置を考えていた
渡された出向部隊の上官をしているのは俺に仕事を依頼してきたこともある人物だ
正確には自衛隊内のモグラ探し、つまりスパイを探すように依頼してきた指揮官だ
名前は水野ユウ一等陸佐。仕事にプライドを持っていて必要ならどんな手段も使う
俺と似たようなタイプだ。ただ組織内で動いているのと単独で動くかの違いだ
「信頼できる人物がいるなら交渉も簡単にいきそうだ」
俺が連絡を取ろうとしたとき衛星携帯電話に連絡が入ってきた
「織斑一夏だ」
『相変わらずだな。猟犬。水野ユウだ』
彼からの連絡に俺は良いタイミングだとすぐに思った
今ここである程度情報収集とそのほかのことについて情報共有をしておくべきと判断したからだ
「今回はご迷惑をかける形になって申し訳ないです」
『そちらにはいろいろと手伝ってもらったこともあるからな恩返しのつもりだ』
それで状況はと仕事の話に入った
「隊員たちのセキュリティチェックはどうですか?」
すると一通りのデータを今から俺の端末に送ってくれるとのことだった
感謝の言葉を言うと受信体制に入った。データはすぐに送られてきた
「なかなかの精鋭ぞろいですね」
『猟犬に戦闘訓練で鍛えられたことのある隊員を中心に人員を手配した』
つまりこちらから余計なことは必要最小限で済むということだ
俺にしてみればかなり仕事のやりやすくなる一方なので少し安心した
「では、いつこちらに?」
『2時間以内には到着する。一応装備はフル装備をさせている。バックアップメンバーもそっちに向かっている』
素早い対応だ。俺はご協力に感謝するというと後の話は会ってからと言った
あちらも詳細なことについては会ってからいろいろと調整したいとのことだった
電話では本音が語れないことも多い。俺はわかりましたと言うと電話を切った
すると衛星電話に着信があった。相手は簪からだった
「調子はどうだ?」
『厳しいです。束博士は』
「まぁしっかりと訓練を受けてこい。こっちのことは心配するな」
俺は簪の声がかなり疲れていることで束さんが手厳しい訓練を受けさせていることをわかった
まぁ俺との訓練に比べれば楽だとは思うが
俺はまぁ頑張れと言うと簪もわかりましたと言って通話が終了した
「苦労は多そうだ」
お互いに苦労している。今のところだが。俺の問題はどの程度修復できるか。
人的損害については今のところ何とかなるが。どこまで持つかはわからない
「面倒なことにならなければいいんだがな」
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一夏と簪と自衛隊員
俺は夜になって派遣されてきた自衛隊の隊員たちと話をすることにした
タイミングが良い事に簪も戻っていた。かなり疲れた表情をしていたが
彼女の持っているISも俺と一緒でドッグタグ状態が待機モードとなっていた
「どうだった。束さんは」
「厳しくてついていけないところも。でもしっかりマスターしてきました」
私も頑張りましたと言った顔をしていたので安心だなと俺は言った
俺はさっそく現状について話した
「自衛隊の方と話ですか?」
「ああ、すでに俺の知り合いが動いてくれている。今夜中には来てもらえる」
ただし日付が変わってからでないと行動はできないからなと言った
俺は少しぐらいは休めるだろうと伝えて、もう1つの仮眠室のベッドで寝るように簪に言うと大丈夫だと返してきた
まぁ、本人が大丈夫と言っているなら問題ないだろう。
「簪、わかっていると思うが俺とお前がISを所持していることは機密事項だ」
「篠ノ之束博士からも状況は聞いています。緊急時以外は使用不可だと」
さすがは束さんだ。短時間で素早い勉強をさせてくれたようだ
俺が持っている無線機に自衛隊の隊員が来てくれたと連絡が入ってきた
簪と一緒に俺は警備室に向かった
「自衛隊でも仕事をしていたんですか?」
俺はいろいろと経験はしていると答えるだけにとどめておいた
自衛隊やほかの国の軍事組織とはフェンリル先生と一緒にいろいろとしているからだ
話さないほうが良い事もある。特に今は。
警備室に到着すると迷彩服姿の陸上自衛隊の隊員がすでに集まっていた
「お待たせしてすみません」
「一夏君、こうやって面と向かって会うのは久しぶりだな」
今回派遣されてきたチームのリーダーである水野ユウ一等陸佐と早速話をした
「できる事なら皆さんにご迷惑をかけることは避けたかったのですが事情が事情ですので」
「すでに海上自衛隊からミサイル攻撃があったとの情報を得ている」
さすがは自衛隊内部では連携が取れているようだ。
「それで彼女が一夏君の相棒か?」
「ええ、まだまだ実戦経験は少ないですが優秀ですよ」
その言葉に俺がそんな表現をするということは本当に優秀な人間なんだなと返ってきた
「初めまして。更識簪さん。陸上自衛隊の水野ユウ一等陸佐です。よろしく」
初めて会うことを考慮してか。彼は優しそうな口調で話しかけた
簪も自己紹介を簡単にした。
「私の方こそよろしくお願いします」
簪の自己紹介が終わると猟犬の弟子になるとはなと彼は言った
「訓練は厳しいだろ」
「もう慣れました」
俺はその言葉を聞き簪にまだまだ厳しいのはこれからだと忠告した
簪にはまだまだ教えることがある。特にナイフを使っての戦闘訓練など
今までのはあくまでも銃の扱い方が中心だった
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一夏と簪と今後の方針
自己紹介をある程度すると俺は派遣されてきた自衛隊の隊員との調整を始めた
問題なのはどこに配置するかだ。彼らには主に学園の外部との接触ポイントである各種出入り口に配置をどうかと考えていた
あまり学生に厳重な警備を見せれば何かあるとすぐに勘づかれる可能性ある
だからこそある程度は配置に関しては慎重に検討しなければならない
表向き自衛隊がここに介入していることが分かった場合、ISに関して統括している国際機関から何を言われるかわからない
そういうリスクは避けなければならない
「自衛隊の方には主に学園周囲の警戒をお願いしたいのですが」
すると派遣されてきた自衛隊のリーダー格の水野ユウさんはある程度調整はしている言ってきた
「一夏君の提案には反対意見はない。確かに国際機関ににらまれたときに自衛隊まで騒動が発展するのは避けたい」
「事前に調整してもらって感謝します。では今後の対応ですが、すでにマスコミ対応は学園長が行っています」
マスコミ対応というのはここ最近での学園での騒動についてだ。
表ざたにした大問題になることばかり起きている。俺としては迷惑な事ばかりだが
できればそういうのは避けたいのだが。俺には亡国機業との協定がある
このことに関しては何があっても話すわけにはいかない。
「では早速ですがそれぞれの警備ポイントの警戒をお願いします」
俺がそういうと隊員たちは了解したようでそれぞれ配置につくために警備室を出て行った
「それにしてもだ。一夏君が弟子を取るとは想像もしなかったな。フェンリル先生の了解を得ているのか」
「もう知っていると思いますが。先生はいつでもどこでも最新情報を握っているので」
俺がそういうと彼は俺自身にも様々なルートがあるだろと指摘してきた。確かにルートはいろいろと持っている
だからこそ、もめ事を起こしたときに何も無かったことようににすることができるのだ
「確かにその通りだな。必要なら俺も訓練に手伝うぞ」
「感謝します。CQBの訓練を手伝ってもらえますか。まずは肉体的に鍛えていかないと思っているので」
「確かにその通りだな。いくら技術が身についても体がついてこなければ意味がないからな」
そう、技術は習得できてもそれを使いこなせるには身体能力を向上させる訓練が必要だ
「簪。俺以外にも彼がコーチをしてくれる。かなり厳しいからな。痣の1つや2つはできるかもしれないが」
それでもやりたいかというと簪はわかっていますと答えた
俺としては女の子に痣など残したくはないが、相棒となる以上徹底的に鍛えぬかないと命取りになりかねない
パートナーになる以上どこまで能力があるかを見極めなければ、
自分たちの信頼関係の問題につながる
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簪の素質と評価
俺は警備室でとりあえず待機することにした。これで当面の間、警備担当者の不足は補える
簪と俺はとりあえず仮眠をとることにした。
「寮でゆっくり休むといい」
「ですが夜の警備は「それは心配するな。自衛隊の精鋭隊員が各所で配置についている。トラブルがあればすぐに連絡するからな」
「わかりました」
俺はとりあえず簪を寮に戻した。万が一に備えての対応だ
寮の警戒は厳重のほうが良い。今は特に
「それで俺だけを残した理由を聞きたい」
「水野ユウ一等陸佐、あなたの目から見て簪をどう思う?」
「素質は十分に持ち合わせている。鍛えれば優秀な成績を収めるだろう」
俺と意見は一緒だがあることを忠告してきた
「人殺しは慣れてしまうとあとがどうなろうと気にしない」
それはその通りだ。人殺しに慣れてしまうと危険だ。
見境なく仕事を引き受けてしまったら悪に完全に染まってしまう。
俺にこんなことを言う資格はないのだが。いつかは知らせる必要がある
境界線がどこなのか理解しなければならない
「鍛えるときは気を付けることにするんだな。更識簪は確かに更識では力が少ないかもしれない。だがそれはISでの戦闘ではだが」
「そうですね。ISでの戦争はまだまだ力不足だ。だが、ISを使わない戦闘では話は別。違いますか?」
「その点に関しては俺も認めよう。彼女を鍛えれば特殊部隊での訓練にも付き合えるだろう。猟犬が育てたなら特にな」
確かにそうかもしれないがそれをゴールにするべきではないだろう。俺たちにゴールや試合終了はないのだから
いつまでも永遠に戦場で戦わなければならないのだから。平和に世界にいる時間はもうないのだから
これが俺たちが選んだ世界なのだから。俺は引き続き各センサーの情報を一等陸佐に報告した
「形勢はかなり不利の状況下」
「残念ながら。今いろいろと手をまわしていますが当面はこの人員でやるしかないのが現状」
「確かに俺たちの指令が回ってきたの正解だな。一夏君とはそれなりの関係もあるし私の部下も訓練で技量は知っている」
うまく車輪が回りそうだと彼は言うが俺としてはうまく車輪が回らないほうが怖い
立場がどちらが上か知らしめる必要がないからだ。俺としてはありがたい
「俺としてもあなたに仕事を依頼できたことを感謝しています。何か圧力があったのですか?」
俺の言葉に防衛省の上層部から何度も助けてくれたからと言ってこれはプレゼントだと話しかけた
これがただのプレゼントなら良いが何か裏事情があるのではないかと疑ってしまう
まぁこの仕事をしていれば当然のことだが
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一夏と簪と訓練
まだ太陽が出ていない午前4時ごろから俺はトレーニングをしている。
簪はまだ眠っているだろう。俺にとっては念入りに準備体操が必要だ。まずは体を慣らしていく
5時から水野ユウ一等陸佐とCQBの訓練を行う予定だ
その為にも体を動かして準備しなければこっちがけがをしてしまう。
相手は戦闘のプロだ。念には念を入れる必要がある
俺はしばらく準備体操をしていると簪がトレーニング施設に出てきた
「お疲れのようだな」
「お姉ちゃんが」
みなまで言わなくても簡単に想像がついた。
まるで嫁姑のような関係なのだろうということは
「苦労することは覚悟していただろ」
俺はそう言って慰めると簪も準備体操を始めた
「簪、今回の戦闘訓練は自衛隊の猛者が指導してくれる。厳しい訓練だが耐えられるか?」
忠告するかのように俺が言うと簪は分かっていますと
「一夏。簪さんはもう準備体操は終わったか」
「今、準備体操しています。まずナイフ戦闘も含めた格闘術の訓練をしますか?」
俺の提案に彼は了承してくれた
「そうだな。まずは身体能力を測るには最適だ」
では早速というと簪には俺たちのをお手本という形で
5分間だけの訓練を先に見せることにしたた
ナイフと言っても本物を使うわけにはいかない。ゴム製のナイフだ
そして俺と水野ユウ一等陸佐との戦闘が行われていた
俺は全力で相手にすることにした。下手に力を抜いたらけがをするからだ
訓練といっても実戦だと思ってするのが当然のことだ
相手はさすがに自衛隊で鍛えられてきたベテラン兵士のため、俺もいつものようにはいかない
こういう訓練は実戦が最も有効な訓練方法だ。教本を読むだけの訓練だけではカバーすることはできない
真剣に勝負を挑んだのは良かったが、相手は毎日のように訓練をしている兵士だ
俺もさすがに負けてしまった。これは俺にとっては大きなミスだ
「簪。本気でやれよ。痛い目を見るぞ」
簪はわかっていますというと念のため防具をつけての訓練を始めた
相手にしているの軍用戦闘格闘術のベテランだ。下手に力を抜けば怪我をする
やるからには徹底的にやったほうが良い。その方が訓練としても効率的だ。
呑み込みが早い簪なら1週間も訓練すれば格闘術ではかなりのものになるだろう
それから様々な銃の取り扱い方や戦術の練り方など。いろいろと教えなければならないことは多い
いくら教本を読んでも実際に体験してみないとわからないことはある
その場の判断で生死が決まるのだから。簪の格闘術訓練が始まったが、俺の想像以上にかなりハイレベルのものだ
姉と比べられてきたとよく言われているが簪はかなりの実力の持ち主だ
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一夏の訓練と勧誘
簪と水野ユウ一等陸佐との格闘術はかなり続いていた。
身長などの不利なこともあったと俺は思っていたが、簪をそれを逆に利用していた
細かに動いて確実に仕留めるためにナイフ戦を展開していた
ある程度訓練をさせると休憩のために、一休みの時間を取ることにした
「もう限界だろ」
俺はそういいながらミネラルウォーターのペットボトルを渡した
「はい。正直に言うと隙がなくて」
「まぁ俺も近接戦闘は苦手だ。銃での狙撃が多いからな。だが体を鍛えておいて損はない」
特に俺と同じ道を歩むなら、殺気を感じられるほどの敏感な感覚がなければ死ぬだけだと警告した
簪はまだそのあたりはわからないだろうと俺は思っていた。そんなに簡単に得ることはできない
こういうのは長年の訓練と実戦を経験しなければ難しい
「一夏さんはどうやって?」
「俺は最も過激な方法だったな。眠っているところに銃を突き付けてきて突然発砲だ。危うく死ぬことになりそうになった」
「過激ですね」
簪の言うとおりだ。あまりに過激だが短期間で会得するにはそれが最も効果的だ
親しい友人ですら常に味方だとは思うなというのが先生から得た重要な教訓だ
特にどこから銃弾や始末屋が来るかわからないということをいやというほど叩き込まれた
おかげでこんなに敏感なセンサーが身についた。
だからこそ生きているのだ。もし違っていたらとっくに天国で楽しくしている
「まぁ、簪はゆっくりと教わると良い。確実に習得しておかないとろくなことにならないからな」
簪に俺がそういうと彼女はわかりましたと言った
今はまだ実感がないかもしれないが、戦場で頼れるのは自分だけだ
生き残るためには自分が持っている能力をフルに発揮する必要がある
そうしければ待っているのは死だけだ。そうなりたくなければ徹底的に訓練をしていくしかない。
そして戦場でそれらを発揮しなければ認められないのだ
すべては究極なトラブルに備えて行動する。常に周囲を警戒して危機意識を持ち続ける。
自らを生き残らせることができるのは己の実力を常に向上させていくことを続けるしかない
「もう1度だけでも良いので戦闘訓練をしてもらえますか?」
「問題ない。それに一夏君の実力が落ちていないかしっかり確認するためにも見ておきたい」
俺は簪からゴム製の訓練用ナイフを受け取ると近接戦闘訓練を始めた
さすがは常に鍛えられている猛者だ。
銃による狙撃訓練が中心にしか最近はしていなかったので体が少し鈍っていた
しかしすぐに気を引き締めると戦闘訓練を続けた
「ここまでにしよう」
彼がそう言ってくれたところで俺との戦闘訓練は終了した
「さすがはフェンリルの弟子だな。その若さでそれだけの戦闘能力。自衛隊で働かないか」
俺はまだ未成年ですと反論するが。
表舞台からは姿を消しているなら問題ないぞとフォローするかのように言った
確かにそうだ。俺は表舞台ではほとんど知られていない。一部では死亡説が出ているほどに
ここにいる事を知っていることは限られた人物だけだ。
情報を漏らすものがいなければの話だが。裏社会でその情報が回ったとしても
一般生活をしている人々にその情報が回ることはまずない
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一夏とフェンリルとの関係
俺と簪は水野ユウ一等陸佐との訓練を終えるとパトロールに入ることにした
8時になり、俺と簪は朝食を食べるために食堂に向かった
「それで楯無とはどうなんだ?」
「お姉ちゃんはまだ戻ってくるべきだと言っています」
でも私は戻るつもりはありませんと簪ははっきりと言った
まぁ、本人にここまでの決意をさせたのが楯無への反抗だとするならかなり荒療治と言える
もう簪は自分の道を決断して歩きだしている。それも最も危険な道を
本人は自分の決断を間違っていないと確信していた
それはそれで良いことだ。決断は自分自身でしてこそ価値がある
他人から誘導されているだけではそれは決断とは言えない
「これから毎日、近接戦闘術の訓練は継続してくれることになった」
「自衛隊の皆さんは任務があると思うのですが」
簪の疑問に俺は教官はあの水野一等陸佐だと話した
「水野一等陸佐は近接戦闘のプロだ。自衛隊の訓練学校でも教官を務めていたくらいにな」
教え方は厳しいが基本から身に着けるには最適な教官だと簪に話をした
基本ができていれば応用は難しい事ではない。
「一夏さんは、その、フェンリルって人とはどんな風に?」
「俺の場合はまずは基礎を叩きこまれた。徹底的にな。もう鬼のような日々だったが今は感謝している」
おかげで俺は今も生きていられる。
もし先生から教えられたことを完全に習得できなければ死んでいた
それだけに今の自分の姿があるのはすべて先生のおかげだ
そして真実も知ることはできた。
「先生を嫌ったりしていない。むしろ出会えたことに俺はうれしいと感じる」
「師弟関係としてですか」
「まぁな。先生からはいろいろな有力者に顔を売っておけと言われて、数多くの仕事を引き受けた」
そういった経験のおかげで俺は裏社会でも生きていくことができた
もし何も知らずに突っ込んでいたら俺は死んでいた。
「ただ、先生は突然抜き打ちで確認してくるからな。気を休めることはあまりない」
この前の学校での先生からの狙撃についてのことを思い出してしまう
「ずいぶんと会話が弾んでいるわね。織斑一夏」
会話に割り込んできたのは楯無だ。顔は表面上は笑っていたが、敵意を感じる表情にも近かった
「せっかくの朝食をまずくするのはやめてくれると嬉しいんだが。簪、少し席を外してくれ。ちょっと楯無と話がある」
俺がそう言うと簪は別の席に移動した。
その席に楯無が座ってどこか深刻そうな表情をしていた
「それで、俺に近づいてきたのは何かあるんだろう」
「・・・・・・・・・・・・やっぱりやめておくわ」
楯無はそう言うと席を立ち移動していった。
「何かあったな」
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簪とトラブル多発
俺は朝食を食べた後、楯無の妙な言葉に何かあると考えて調べることにした。
簪には警備のために自衛隊員の男性とタッグを組んでもらって警備巡回をしてもらっている
「何があったのか知っておかないとな」
トラブルのためは減らしておきたいなと思いながらいろいろと調べた
様々なところにコンタクトを取り、何が起きているのか調べた
結果は大当たりだ。昨日、反IS組織が派手に動いたことが分かった
ただし亡国機業ではないことは確認できた。彼らのやり方のしては雑すぎる
そして2人が狙撃されてた。
「これか」
狙撃されたのはISの軍事運用化をメインとする国防技術開発をしていた研究者だった
どうやら亡国機業以外にも反ISグループが現れたようだ
「いったいどこの組織だ?」
---------------------------------
私は自衛隊の隊員である霧崎さんと巡回警備をしていた。
すでに授業中のため廊下は静かなものだ。
「猟犬の弟子とはな。厳しい訓練を受けているだろう?」
私は今のパートナーである彼からの言葉に厳しいですと答えた
確かに一夏さんの訓練は厳しいけどすべては私の安全のためにしてくれている
だからこそ私も必死に努力して追いつこうとしているのだ
『ピーピーピー』
私の携帯情報端末に不法侵入用のセンサーに反応があったことを示す情報が表示された
「簪、センサーに引っかかったのか?」
「はい。学園が管理しているISの部品格納庫です」
私と霧崎さんと一緒にその現場に向かうとIS学園の生徒がいた。それも2年生だ
「あなた、なにをしているの?」
「これは、その」
彼女の手にはある物が握られているのを確認。私は腰のホルスターから銃を抜いた
女子生徒が所持していたのはスタングレネードと手榴弾だ。何かをするつもりだったのかもしれない。
私はすぐに銃口を向けた
「一歩でも動いたら撃ちます」
私の言葉にそれほど威圧感は与えられないが今のパートナーである霧崎さんの言葉は威力があった
「死にたくなければ動くなよ」
霧崎さんは慎重に彼女は動きを見せなかったが私はあることを知っていた
彼女が専用機持ちを嫌っていることをだ。
そしてここはIS専用機の予備パーツが置かれている隔離プラントの出入り口付近
破壊工作をするつもりであったことは私にも容易に想像がついた
霧崎さんもホルスターから銃を抜いていた
彼女は私たちの行動を見てさすがに分が悪いと思ったのだろう。
あまり抵抗せずに身柄を確保された
「事情聴取をしないといけないですね」
「そこは一夏君と話してみないとわからないな」
私は一夏さんの実力を知っているんですかと聞く。
霧崎さんは優秀な兵士だということは間違いないよと答えた
とりあえず私と霧崎さんは彼女を連れて警備室に向かった。
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事情聴取と家宅捜索
IS学園 警備室取調スペース
簪と霧崎さんに身柄を確保された女子生徒は取調室に入れられていた
俺と彼女の2人きりだがマジックミラーで外部からは中は丸見えだ
これも公平性を保つための措置だ
「どうしてあんなことをした?」
俺の言葉に彼女は何も語ろうとしない。完全沈黙という黙秘権を行使するようだ。
俺としてはこいつをさっさと母国に送り返してやりたい
「私はただ・・・・・・・・・・・」
彼女は何も証言するつもりはないようだ。そこで母国に問い合わせることにした
これ以上問題を生じさせるわけにはいかないからだ
厄介事はさっさと処理するに限る。俺は霧崎さんに見張りを頼むと外で待機している簪と話をした
「簪、彼女の部屋の捜索を頼む。俺がするわけにはいかないからな」
俺の指示に簪はわかりましたと答えた。
確かに俺が寮の部屋を捜索するわけにはいかない
ここは今も寮で生活している簪に行ってもらう方がトラブルは減る
あとは簪から何か情報をもたらされればいいのだが
そこに水野ユウ一等陸佐が到着した
「さっそくトラブルのようだね」
自衛隊の彼らが到着して早々にこんなトラブルになるとは
俺も想定以上に何か裏があるということだ
「今、本国に問い合わせています」
もしただの専用機持ちに対する恨みだけならいいのだが
もっと裏があれば厄介だ。もしかしたら亡国機業とつながっているという可能性もある
俺としてもそういう事態は避けたい。今の段階で直接対立したくはない
だが時には攻撃も重要だ
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私は一夏さんに言われたとおり彼女の部屋を調べていた。何か怪しいものがないかどうか。
その様子を見られないようにするために女性の警備担当の人が廊下で見張ってくれていた
彼女のベッドサイドの引き出しを開けたとき驚いた
「これって」
私が見つけたのは上級生のIS専用機持ち、つまりお姉ちゃん達に対する攻撃マニュアルだ
まずは彼女がデコイになって警備担当を集める手順が書かれていた
「簪から一夏さん。IS学園への攻撃に関する文書を確認」
私はすぐに一夏さんに無線を入れた。すぐに証拠書類を持って退避するように指示してきた
さらに外に出ると火災報知機を作動させた。寮に残っていた生徒を避難させるようにとの指示も
私はすぐに退室すると外で待機していた警備担当の女性と状況確認。
次のお互いの行動を確認した
「私は生徒の避難誘導をするわ。簪さん。あなたは一夏君へ情報を持ち帰って報告を」
彼女と手順を確認すると私たちはすぐに次の行動を開始した
火災報知機は作動していたが。本当に火災そのものはないため放水装置などの自動消火設備の作動は確認できなかった
私はこのテロのマニュアル通りで私が犯人なら寮生全員を殺すプランを練っているはずだと思っていた
幸いなことに寮にはもうほとんど生徒はいないはずだが念のために作動させたのだ。
寮は空っぽになった。ただし学園に対する攻撃となると校舎も含まれている可能性がある
私は少しお姉ちゃんのことを心配しながらも自分の役割を忘れなかった
今の重要課題はこの攻撃マニュアルを一夏さんに持っていくことだ
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トラブルの対応方法について
IS学園 警備室
俺と水野一等陸佐と協議をしていた。
攻撃するならどこがいいか想定していた。
「こちらが攻撃するなら校舎だろうね」
「同意見です。問題は叩くドアが多すぎること。一気にけりをつけないと」
俺が懸念していたのは間違った行動をすれば連鎖的に行動を起こされることだ
そんな事態だけは避けなければならない
「どうする?」
俺と水野一等陸佐はお互いに考えていた。その時だ。取調室内にいた女子生徒が倒れた
確認すると彼女はけいれんを起こしていた。もしかしたら何かを仕込んでいたのかもしれない
すぐに医療スタッフを呼んで最優先で治療をするように指示した
俺はもう待っていられないとして学園全体に警報を出すことを考えた
「もう迷っていられない」
彼の言葉に俺はすぐに緊急避難のボタンを押そうとしたが直前に止められた
「待ったほうが良い」
「どういうことですか?」
各階に警備をしている者を派遣することで、人数での圧力をかけるという案を提案してきた
そうすれば万が一の時にすぐに状況把握ができると。
それに緊急事態だと宣言すると沖合で警戒している海上自衛隊も動く
もろもろの騒動を計算に入れるとここは少数精鋭で対応するべきだとも
「そうですね。海上自衛隊にまで迷惑はかけたくありませんし。ここは水野一等陸佐の意見でいきましょう」
俺としても大騒動に発展するような事態は避けたい。ただでさえ自衛隊に迷惑をかけているのだから
これ以上負担をかけるわけにはいかないのだ
『ピーピーピー』
「織斑一夏だ」
学園内にある保健室から連絡があった。
保健室といっても簡単な治療ができるようにある程度の設備と女性医師が配置されている
『彼女ですが胃洗浄したところ、幸いなことに一命はとりとめました』
それは良いニュースだ。証人が消されては意味がない
問題はそこまでして守りたい秘密が何なのかだ。
いったいどこまで闇が深いのか。俺は行動を開始しようとしたとき無線連絡が入ってきた。
爆弾があると。ただし場所がちょっと厄介だった。
校舎内の1年1組。千冬姉のクラスだ。問題は下手に避難活動ができないということだ。
そんなことをすれば相手は感づいてすぐ行動を起こす可能性がある
まだだれが主犯なのかわかっていない段階では行動は慎重なところが求められる
今後の対応次第で学園に被害を出すか出さないかが決まってくる
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IS学園校舎内 1年1組のクラス付近
私は霧崎さんと一緒に1年1組の近くに配置についていた。
一夏さんの合図でどんな対応できるようにスタンバイをしていた
「どうします?」
「まだ上官からの命令待ちだ。ここは待つほうが良い」
一夏さんからの連絡待ちをしていながら霧崎さんと話をしていた。もちろん小さな声でだ
『簪、聞こえるか』
「一夏さん。こちらは1年1組のそばにいます」
『引き続き監視を霧崎さんと行ってくれ。これからは時間との戦いだ』
「了解。霧崎さんは爆弾処理とかの経験は?」
爆弾といったのは万が一に備えてだ。パートナーの力量を知ることは極めて重要だ
そうでなければお互い命を預けられない。
「俺はこれでも特殊部隊に一時期いたことがある。爆弾の種類にもよるがある程度なら簡単に処理できる」
その言葉を聞いて私は霧崎さんと一緒にいてよかったと本当に思った。
私は武器の扱い方などは知っているけど、爆弾を処理したこともないしそういった訓練も受けていない
ここはプロに任せるべきだ。
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IS学園と爆弾
IS学園 警備室
俺は校舎内に設置されている監視カメラの映像を調べていた
どこかにヒントになるものがないかどうか。水野一等陸佐と一緒にだ
「不審な動きといってもこれだけの広さだけに絞り込むのは難しいな」
IS学園は広すぎるという欠点がある。おかげで調べるのは楽な仕事ではない
いくら監視カメラがあるといってもまだ彼女以外の仲間が誰なのかわかっていない。
本格的に攻撃するつもりなら、まだ攻撃人員がいるはずだ
『2年生クラスの廊下にある消火器に小型の不審物を確認。タイマー機能付きの爆弾と思われます』
自衛隊員からの報告に俺は水野一等陸佐に判断を任せた
「解体を開始せよ。ただし勘づかれないように慎重に」
彼の指示なら自衛隊員も指揮系統に問題は生じることはないだろう
あらゆる意味でプロなのだから。上官である水野一等陸佐の指示のほうが良い
「爆弾が1つとは思えない」
「こちらも同感だ。仮にこちらがISを憎んでいる犯人なら徹底的にやるだろう」
「警戒レベルを上げるように学園長に進言してみます」
問題なのはどこまで攻撃をするつもりがあるかだ
もし学園そのものをすべて破壊するならもっと大掛かりなことをやりかねない
だが、見つかったのはすべて小型の爆弾。どれも殺傷能力は高いとは言えない
「何か引っかかっているって顔をしているね」
「もし本気でやるならどこを狙います?」
「こちらが狙うなら一気に吹き飛ばせるところを狙う」
そう考えるとあるところしかないことに気づいた。
地下にある電気機械室だ。あそこには停電の時に使用する自家発電機が設置されている
燃料タンクはその隣の部屋で大量に保管されている。吹き飛ばせば大きなパニックを生む
そうなれば多くの生徒が犠牲になる可能性は極めて高い。
そこで警備室で監視カメラの映像を調べた。
する10分前から映像がループに固定されていることに気づいた
「ここですね」
水野一等陸佐はすぐに無線で地下電気室に向かうように指示した
「間に合えばいいですけど」
『こちら地下電気機械室に到着。あと5分で爆弾が爆発する。これより解体する』
その無線を聞くとループにされてた映像が元に戻り自衛隊の隊員たちが映し出された
彼らは素早く解体に入った。そして2分ほどで爆弾を解体した
あとはほかにあるかどうかだ。これで2つ目だ。
まだあるかもしれない
「警戒態勢は解除できないですね」
「同意見だよ」
まだほかに爆弾があればタイマーは残り3分ほどだろう
俺が犯人なら一気に爆発することを選ぶ。そして3分が経過したが爆発はなかった
つまりあの2つの爆弾だけだったということだろう。
それはそれでよかったが問題なのは誰があんなところ設置したかだ
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爆弾魔の身柄確保
俺は自衛隊の隊員が解体した爆弾から指紋を採取して誰が設置したか割り出そうとしていた
爆弾の解体に無事に成功したため、爆発をしていないこともあり指紋などを採取することは容易だった
複数の指紋を採取すると俺はそれを学園の生徒の指紋と照合することにした
IS学園の生徒は入学時に指紋やDNA採取について認める書類にサインをしている
これは万が一に備えての対応だ
『ピッ』
ヒットしたのは1年生の生徒だ。
それもその生徒は歪んだ思想を持っているとして要注意人物と指定されていた
「どうするか?」
生徒は千冬姉にいるクラスだ。下手に手を出したら自爆する可能性がある
水野一等陸佐と話し合いして、踏み込んで方が良いといった
それと無線などは使えないようにジャミングをかけたうえでだと
少しは時間を稼げると。俺は水野一等陸佐の提案に乗ることにした
「タイミングをミスったら死にますね」
「その通りだよ。まさに我々の運命が決めるようなものだ」
俺は水野一等陸佐と一緒に警備室を出て1年生の教室を監視できるところで隠れながら見ていた
どうやら確保予定の人物は何も起こらないことに違和感を覚えているようだ
これで容疑は決まったも同然だ。確実に
「突入しますか?」
「少し待ったほうが良い。今屋上からロープで下降してきている隊員がいる」
つまりのところ、逃がさないためには一気に容疑者を制圧することだ
水野一等陸佐が合図を出すと一気に突入した。突然のことに教室内の生徒たちは驚いてた
「お前をIS破壊行為と爆弾製造の容疑で逮捕する」
俺はすぐに彼女に対して後ろ手錠をすると拘束した
「一夏さん?!」
山田先生は驚いていたが俺たちはそんなことはどうでもよくて、拘束した彼女を連行していった
まだまだいろいろとしゃべってもらう必要があるからだ。
いったいテロ行為がどこまで進んでいるのかについて早急に必要が。
状況が悪化したらかなりまずいことになる
俺と水野一等陸佐は彼女を連れて警備室にある取調室に向かった
取調室に到着した俺たちはすぐに事情聴取を始めた
「いったい誰が依頼した?」
「・・・・・・・・・・・・・」
俺の質問に女子生徒は沈黙で答えた
「ほかに仲間がいるのか?それとも本国からの指示か」
「・・・・・・・・・・」
何も話すつもりがないことは俺でも分かった
見張りのための自衛隊の隊員を室内に入ってもらい警備を依頼してから部屋から出た
「どう思いますか?」
「彼女の単独行動とは思えない。バックに何かあるだろう」
「スポンサーがなければ成立しない任務ですし」
そう、俺でも分かることだ
これだけのことを1人や2人でできるとは思えない
まだほかにも仲間がいるはずだという公算が高い
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取り調べと簪のパートナー
俺は取り調べを一通りしたが彼女は何も語ろうとしない
これでは手の出しようがない。念のため彼女の本国に問い合わせたが何も知らないと
まぁ当然と言えば当然だ。命令を出したとなると国家ぐるみの犯行となる
そうなれば国家の体裁を失う可能性がある。ISを失うのだ。
それがどれほど高い代償になるかはわかりきっている
面倒なことを避けるためなら彼女を切り捨てるだろう
「どうします?」
「あとはこっちで任せてもらえるかな」
「一等陸佐には何か落とすだけの材料が?」
「この件を政治的に利用する。本省と話をしたらこちらにあとは委ねてほしいと」
つまりこれを理由に彼女の所属国に対して圧力をかけるということだ
それはそれで面白い見世物になるだろうが。俺としてはほかに犯人がいないことを確かめたい
「念のためその後に経過事項についても情報提供をお願いできますか?」
「この件はこの学園の安全にかかわることになる可能性が高いから理解はしているよ」
理解はしているということは国家機密に該当する部分は明かすことはないと
俺としても厄介なことに巻き込まれることは避けたい
国家間の争いになれば、ここの不可侵協定が事実上破られる可能性がある
最悪の場合、戦争という事態にもなる。お互いをにらみ続ける冷戦だが
それでも戦争には変わりない。いずれは代理戦争になり、今度は当事国同士の争いになる
「できるだけ早く対応をお願いします」
「あとはこちらでしておくよ。一夏君にも情報が回るように上層部には伝えておくから」
俺はよろしくお願いしますというと警備室を出ていった
----------------------------
IS学園 学園施設内
私と霧崎さんは引き続き巡回をしていた。もちろん警戒態勢を取っていた。
「簪、肩の力を抜け。緊張感を持つのは重要だが、常に気を張っていると疲れるだけだ」
霧崎さんの言葉に私はわかりましたと答えたけど、どこで線引きをするのかわからなかった
迷惑をかけたくないが。霧崎さんは武器戦術戦闘のプロだ。私も彼らにおいていかれないように訓練を続けていくしかない
『簪、霧崎さんとのコンビはどうだ?』
携帯情報端末に一夏さんから連絡が入ってきた。私は問題なしですと答えた
もう少しで授業と授業の間の休憩時間だ。その時に何かあるかもしれない
一夏さんは警戒は続けろというと通信を終えた
「相変わらずだな。猟犬は。簪、君のことをかなり気にかけているようだ。しっかりとついていくんだな」
おいていかれないように訓練を積んでと霧崎さんに言われた。
「私も一夏さんには負け続けるつもりはありません。いつか同じくらいにまでレベルアップをしたいので」
「第2の猟犬を目指すわけか。楽しみだな。成長していくところが」
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警戒と張り込み
俺は学園が休憩時間になることを見越してあることをするために動いていた
ISの機材保管施設近くでの張り込みだ。
第2第3の犯行が予想されるからだ。水野一等陸佐には映像で監視をお願いしている。
「誰も来なければいいんだが」
『一夏君。女子生徒が1人そっちに向かったみたいだね』
「了解」
一等陸佐からの報告にまだやる気があることが分かった。
念のため、その生徒の情報を携帯情報端末で調べた
記録を見る限り綺麗なものだ。表向きには
だが実際はその生徒の出身国はIS開発に少し遅れが出ていることが分かっていた
おそらく狙いは最先端の技術を盗むか破壊するかだろう
「また始めるわけだ」
各国の利権が絡んでいるだけに
ここは産業スパイが多いと思っていたがここまでとは
「なりふり構っていられない連中が増えたわけだ」
生徒が機材保管施設の正面ゲートに到着すると
どこで入手したのかわかないがセキュリティカードを持っていた
「そこまでだ。大人しくすれば命までは取らない」
「離して!」
俺は強引だが背中にグロック17を当てて再度脅しをかけた
「動いたら撃つぞ」
「どうしてここに来ることが!」
「単純だからな。バックアップにはバックアップを重ねる」
確実に獲物を捕らえるためには騙し騙されの駆け引きなのだ
「とにかく連行する」
俺は女子生徒に後ろ手錠をかけると自衛隊員にここの警備を任せて彼女を連行していった
さっきまでの威勢はどこに行ったのか借りてきた猫のように静かだった
とにかく危険物を所持していない確認すると小型拳銃を所持していた。
おまけにC-4を500g。どさくさに紛れて情報収集といったところだろう
なかなか利口なやつだと俺は思った。問題はどこまで連中がやる気があるかだ
2重3重の予備の方法を用意しているのだから。まだ続きがあるかもしれない
俺は無線で簪を呼びここの倉庫を見張るように指示した
「わかりました」
「必要なら発砲してでも止めろ。良いな。迷ったら死ぬからな」
「わかっています」
俺はあえて危険な忠告をしたが。
実際問題として、それくらいしないとリスクは減らせない
だが簪はよくわかっているようだ。
腰の銃ホルスターを確認してすぐに抜けるようにした
「簪。これからの24時間が山場だ。俺は学園長に緊急の倉庫使用禁止を進言する。俺が良いというまでいかなる理由でも排除しろ」
「了解。つまり何かあれば発砲しても良いということですか」
俺はどんな手段でも使えという。
「宝物を守るつもりでいろ。それだけだ。守るためなら手段は問うな」
「わかりました」
「霧崎さん。よろしくお願いします」
俺は簪の相棒である霧崎さんにも声をかけた
彼は任せろと言ってくれたので心強い
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事情聴取と裏世界
俺は女子生徒を連れて警備室の取調室に入った
「誰の差し金だ」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「答えるつもりはないなら。それなりの覚悟があるといことか?」
強く押しても効果はないようだ。俺はある事をするべきかと考えた
はっきり言ってあまりに人道的な事ではないが、他の学生の命を救う手段がこれしかないなら
やって見せるだけの度胸はある。元々先生に教えてもらった。
必要なら手段を問うなと。どんな些細な情報もこちらがうまく誘導すればたどり着く
脅しとしてパフォーマンスは重要だということも
「答えないならそのつもりでいろ。だがな、俺は警察と違って手段は問わない」
俺は取調室から出るとあるものを取りに行った。
車に使われているバッテリーとケーブルだ。
本気でだんまりを決め込むだけの度胸があるならだが、
女子生徒は俺が持ってきた物を見て表情を変えた
「残念だが時間がない。人道的に話をするのはここまでだ。知っていることを全て喋る気がないなら電気ショックで死ぬかもな」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
仕方がないというと俺はケーブルをバッテリーにつないだ。
「俺がやらないと思っているなら大間違いだ。俺はどんなことをしても吐かせるからな」
俺はケーブルを彼女に近づけるとさすがにやばいことを知ったようだ
「わ、わかりました!喋ります」
さすがに俺のパフォーマンスに素直にしゃべり始めた
それによると彼女が所属する国は研究開発に行き詰っていた
最新の情報を得ようと倉庫に侵入することになったのだ
それにしても俺がいる事は知っているはずなのにわざわざ襲撃するとは
その国の連中はかなり頭のねじが緩んでいるようだ
「本国に連絡したところでおそらく彼女の独走だというだろうね」
水野ユウ一等陸佐の言うとおりだ。まさか国が諜報活動を彼女に指示していたとなれば
国家活動に影響を及ぼす。なら彼女を切り捨てるほうが効率的だ
世の中きれいごとだけでは生きていけないのだから
俺は決断を迫られていた。このままただ追放していただけでは同じようなことを繰り返すだろう
綺麗事だけで世の中は回らない。手段は限定されていた
「仕方がないか」
俺は先生に電話した。久しぶりに暴れてもらおうと
衛星携帯電話を手にすると先生への短縮ダイヤルで連絡を取った
『面白いことになっているようだな』
さすがは先生だ。つい数分前の情報も掌握しているとは
「先生の力をお借りしたいのですが」
『ちょうどいい暇つぶしになるそうだ。俺の端末にデータを送れ。あとはこっちで始末しておく』
先生への連絡を終えると生徒の母国の状況が一気に悪くなることは容易に想定できた
先生を敵に回して生きていけるはずがない。一度食らいついたら意地でも離さない
相手が死ぬまで
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政治という名の取引
IS学園 警備室
俺は警備室の取調室でマジックミラー越しに外から見ていた
取り調べを受けた女子生徒はまだ恐怖のせいなのか震えているように感じられた
当然と言えば当然の事なのだが
ISを破壊する。つまりコアを1つでも破壊すればその被害は国際関係にまで影響する
ただ、俺と簪は新規に束さんに依頼してISを製作してもらった
あまり強く言えないのが現状だ
取り調べをしている陸上自衛隊の隊員は少しずつではあるが情報を引き出してくれている
俺は生かすか殺すのどちらかしか考えない
立ち止まっていたら死ぬのは我が身なのだから
本国に送還したら刑務所か外交の材料にされるだけ
国家に真の友人はいないのだから
国同士が固いつながりを持っているという幸せな世界を想像しているならそれは間抜けだ
騙し騙されの戦場で戦っているのだから
「一夏さん。彼女の部屋を調べましたが攻撃に関する資料は確認されず」
「簪。隅々まで調べたんだろうな?」
「もちろん。シャワー室からトイレまで」
俺はなかなか徹底していると思った。まぁここでミスをするようでは死んでしまうが
「彼女の過去48時間の行動を各種センサーから確認しろ。他に仲間がいないか「不審な動きがないかですね」そうだ」
分かりましたと言うと簪は警備室の情報端末を使って調べ始めた
「一夏君。あとは政府に任せてもらえるかな」
「彼女を政治的道具に?」
俺は明らかにそうだと思った。表向き自衛隊はここにはいない。
だからこそ、政府上層部はこの事案を政治的取引として処理するつもりがあるのだ
「君に任せられている」
「少し待っていてもらえますか。先生に動いてもらっているので」
「フェンリルが動くとは君も無茶をする。残されるのは灰になる」
「今後、同様の事案を起こさせないためにも一定の処理が必要ですので」
俺はこれ以上問題は起こさせるわけにはいかないのだ
立場的にもそうだが。こちらの態度を明確に示すのにはよい機会だということも思っていた
俺が、猟犬がいるとなると各国が理解すれば簡単には手を出してこないだろう
そう言う事も計算に入れての俺の行動だ。フェンリル先生には実働を。俺は情報戦を展開するだけだ
警備室にあるテレビモニタに緊急ニュースが入ってきた
彼女の母国の政府関係者の政界辞任が発表されたのだ
「フェンリル先生に貸しを作ったことになるけど、あとは外から楽しませてもらおう」
「政府のお偉方にはとんでもないところに足を踏み入れたと後悔するだろうね」
一等陸佐の言うとおりだ。俺は彼女の国に爆弾を放り投げるようなことをしたのだ
これもIS学園への介入を阻止するためだ
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トラブル解消
IS学園 警備室
取り調べを終えた女子は日本政府に引き渡された。
彼女が連行されていく途中でニュース速報が流れた
ある政府の有力与党政治家が政権を放棄するという事態などだ
「派手に遊びまわっているな」
テレビ報道では様々な国が外交的圧力をかけていると報道されていた
IS学園を破壊しようとしたのだから当然と言えば当然の結果だ
もっとも、フェンリル先生が本気を出したら残されるのは死体だけだ
「ひどい結果になりそうだ」
『ピーピーピー』
フェンリル先生からの電話だった
「先生、お遊びは終わりましたか?」
『存分に暴れてやった。それにマスコミに政府の影の部分を流させた。これで連中は終わりだろう』
「派手にしましたね」
『お前もだろ。猟犬。女の子相手にバッテリーを使うという拷問は』
俺は必要だったからしたからですと答えた
拷問に必要なのはこちらが徹底的にやる気があるということをアピールすることだ
その為に感電拷問は最も効果的だ。究極の人生選択なのだ
彼女が本国に戻されても国は彼女をパージするだろう
所詮はトカゲのしっぽなのだから
「必要ならどんな手段を使って証言を引き出せ。ミスをすれば自分が死にますから」
『よくわかっているな。だが、この一件は面白くなってきそうだ』
俺はどういう意味なのか分からないが先生は何も言わずに電話を切った
まだ何かあるようだ。これから先に。
おそらくだが。とんでもない出来事が待っていることは
「いったい何を考えているのかあまり想像もしたくないな」
そこに簪が戻ってきた
「調子はどうだ?」
「苦労はしていますが頑張ります」
俺は胆が据わった女は怖いなと思った。
やると決めた以上にはとことん力量をアップしていく
楯無が心配するのもわかるが彼女には殺し屋としての才能があったのは事実だ
能力の高さでは姉妹としてはそれほど変わらないだろう。銃の扱い方や狙撃での照準能力
どれを見ても珍しいものだ
「簪、お前はここで学園内の監視カメラをチェックしろ。俺は巡回に回る」
「わかりました。誰か補佐を」
「1人で頑張るんだな。これも訓練の1つだ。いくつもの事を同時に処理することがな」
「了解」
そこに無線連絡が入ってきた。自衛隊の隊員からだった
『そこにいるのが新米か』
「その通りです」
俺がそう答えると彼は鍛えぬかないと殺されるぞと言って通信を切った
そんなことはわかりきっている。この業界に1度でも足を踏み入れたら逃げられない。
死ぬまでつかり続けづけなければ生きることはできないのだ
『猟犬。気を付けるんだな』
「わかっていますのでご心配なく」
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狙いは誰か?
俺は警備室を出ると巡回に回った。
トラブルさえなければ平和なものなのだが。
ここでは些細なトラブルが日常的に起きる。面倒な場所だが
仕事としてはやりがいがある。だがプロとしては静かすぎるのも問題だ
『ピーピーピー』
「ココさん。何かトラブルでも?」
俺の衛星電話に電話をしてきたのは武器商人のココ・ヘクマティアルさんだ
『お願いがあるの。ある女が私の邪魔をしてくれている。でも私は今東欧にいるから』
「どんなことをしたのか。依頼を受ける価値があるのか知りたいので」
ココさんによると明日来日する女性政治家は女性崇拝者行為で様々な問題を起こしていた
今回来日するのも事実上の亡命に近い形によるものだという事だ
日本政府としてもいろいろな事情から引き受けるしかないようだ
現日本政権に様々な恩を売ってきたためだということになっている
『引き受けてもらえるかしら?』
「少し時間をください。こちらでも対象者になるか調べる必要がありますので」
『良い返事が聞こえることを期待しているわ』
ココさんはそういうと通話を切った
俺はさっそく携帯情報端末で情報を確認した
その結果はココさんの言うとおりだ。かなりの暗い部分があることを確認できた
狙撃のタイミングは1度だけしかないことが分かった
IS学園近くにある港に豪華客船で来日する手はずになっていた
学園で幅を利かせようというのだろう
「なるほど。俺のルールでは殺す理由はありそうだな」
その時だ。警備室にイギリス代表候補性のセシリア・オルコットが入ってきた
「これはこれは、イギリス代表候補性が何の用件ですか?」
「私としてもこんなことを聞きたくはないのですが、フェンリルの弟子はあなたなのでしょうか?」
どうやらどっかの馬鹿が何かを企んでいるようだ。
そこでまずはIS学園にいる彼女を利用するつもりであることは俺にもすぐ察しがついた
「もしそうだったらどうなるんだ?」
「あなたは知っているのですか?私の両親が死んだ理由を」
「悪いが何も知らない。他をあたってくれ」
その時だ。セシリア・オルコットの肩を貫通したライフル弾が床にめり込んだのは
突然のことに俺も驚いた。代表候補生を餌にするとは正気じゃない
そんなことをすれば国家間の対立になりかねない。現状でさえそうなのだから
いわゆる冷戦の状況にあるのだから。国際連合安全保障理事会常任理事国の国たちは技術開発に必死なのだ
「大丈夫か?!」
俺はこちらに向かって倒れてくる彼女を受け止めると机の陰に隠れた
無線機ですぐに緊急事態を宣言した。
「弾は貫通している。どうやら狙われているのは俺以外にもいるようだな」
俺はすぐにターゲットがオルコットであることが分かった。
弾の弾道を計算に入れた時俺に当てるつもりなら無理な弾道を描いている
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狙撃後の対応
俺はその後、セシリア・オルコットを保健室に連れて行った。もちろん警戒しながらだ
幸いなことに弾はきれいに貫通している。狙いがどちらだったのかについては調べないと危険だ
今後の俺の行動に大きく影響することは確実だからだ
「状況はどうだ?」
IS学園の保健室に派遣されている医務官に話を聞いた
「幸いなことに弾はきれいに貫通していますので1週間ほどで傷痕は治るでしょう」
医務官の女性の答えに俺はとりあえずホッとした
問題なのは誰が攻撃を仕掛けてきたのかだ。俺は警備室に戻った
そこにはすでに自衛隊の彼らが捜査に入っていた。
もしかしたら国際問題になる可能性があるだけに早期に決着をつける必要がある
「弾の口径は何ですか?」
俺は狙撃された地点で回収できた弾丸のことを聞かれているのだという事はすぐに理解した
おそらくだが、という言葉を付け加えて答えた
「.338Lapua Magだった」
使用された銃の候補としてはいろいろとあるが最も簡単なものはM24SWSだ
有効射程は800m。医務室の情報端末で周辺の各種センサーのデータを調べた
その結果はセシリアが撃たれた直前にヘリが飛行しているのが確認できた
この辺りは民間ヘリはもちろんのことだが、自衛隊などの軍用ヘリも飛行制限区域になっている
飛行するには事前に許可が必要なのだ。
「どこのヘリだ?」
調べたものの識別信号ではわからなかった。
そこで自衛隊のレーダー網にアクセスさせてもらって行き先を調べたところ海上で突然姿を消した
おそらく亡国機業の連中だろう。もしくは反IS団体による攻撃の可能性もある
「一夏さん」
簪が巡回を中断して戻ってきた
「簪、どこのだれかはわからないがこの場所にテロを仕掛けようとする連中が増えたようだ」
「どうします?」
「念のため学園内のセキュリティチェックをするんだ。もぐりこんだ可能性もある」
わかりましたというと簪は部屋を出ていった
俺は弾丸の線条痕を警察などのデータベースと照合する作業に入った
「さて、どこかで記録されていたら良いんだが」
相手は凄腕なんてものではない。素人の犯行という事は絶対にありえない
ヘリから撃ったのであれば風速計測などを考慮してしなければならない。
それができるのは極めて難しく限られた人間だ。軍人ならば特殊部隊の人間だろう
俺でも弾道計算をして発砲するのは極めて難しい。
それも正確に的を射抜くとなるとかなりの訓練が必要だ。
それをやってのけた。問題はターゲットがどちらかだ。
俺なのか。それともIS学園の生徒であるセシリア・オルコットかだ
俺であれば事は簡単なのだが、セシリア・オルコットならばIS学園全体が危険になる
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銃の扱い方の訓練
俺はとりあえず医務室を出ると警備室に戻った
狙撃された彼女に関する報告書を作成して本国に伝えなければならない
「面倒な仕事だな」
俺はそんなことを愚痴りながら情報端末で報告書を作成を始めた
報告書を作成していると簪が入ってきた
セシリアさんについてはどうしますかと聞いてきた
「一応、狙撃のターゲットにされたんだ。しばらくは警戒を促しておいてくれ。簪、お前が警護を担当しろ」
「わかりました。誰が撃ってきたのかは分かったんですか?」
「それについては今もわからない。狙撃されたということは彼女に恨みを持つ者かもしれない」
あるいはISに関して否定的な連中からの攻撃の可能性が十分疑われる
簪に俺はよく警戒して張り付いておくように指示を出した
男の俺や自衛隊員が警護するより同性の簪の方が警護も行いやすい
今は誰が犯人か突き止める方を優先すべきだ
第2や第3の狙撃があるかもしれないからだ
「まったく面倒で厄介なトラブルが発生したな」
「それには同意見です。セシリアさんはかなり動揺しています。学園長に依頼して部屋を同室にしてもらいました」
「仕事が分かってきたな。大切な護衛対象者だ。何としても守り抜け」
「はい」
「それと他にも攻撃を仕掛けてくる奴がいる可能性も忘れるな」
「了解です」
「もし良かったら少し訓練をしてみるか。銃の扱い方に関する力量も見ておきたいからな。いや、付き合え」
俺は半ば強引に簪にそう言うと射撃訓練室に向かった
簪に射撃訓練をさせた後は、俺はある試験を課題として出した
それはオートマチック銃の分解と組み立てにどれくらい時間がかかるかというタイムを競うものだ
どんな状況下でも銃は不具合が起きるかわからない以上、
いつでも銃を分解して組み立てなおす練習は体にしみこませておいた方が良い
「難しいですね」
「教本を読んでいる成果はあるようだな。銃の分解と組み立ての練習は重要だ。常に警戒を。それが俺達には必要だ」
簪に伝えると今度は俺がお手本を見せるかのように銃の分解と組み立てを見せた
俺にとっては慣れたものだからすぐにできた
「早いですね」
俺は簪にこれくらいの芸当は見えなくてもできないと死ぬことになると伝えた
確かにその通りだ。戦場ではいつ銃が壊れるかわからない。
そのためいつでもどんな銃でも使えるように訓練を受けてきたのだ。
フェンリル先生に。対物ライフルからリボルバーまで様々な銃の分解と組み立てを経験してきた
だからこそこんなことは手慣れたものなのだ
「そういえばいいものを渡しておく」
俺は武器保管庫からH&KG36を取り出してきた。
100発の銃弾が入った弾のケースと空のマガジンもセットでだ
弾は自分でマガジンに装填して使えとも指示を出しておいた
ちなみに装填されている弾はISの絶対防御を突破できる特別仕様の弾だ
つまり頭を狙えば死ぬということである
俺は当然のように覚悟を決めるように伝えると警備に戻らせた
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学園長への報告
報告書はある程度、形になるとそれをプリントアウトして決裁した
俺の直属上司は学園長だ。学園長に決済をしてもらえば報告書の処理は終わる
書類を学園長室に届ける前にある事を行った。
それは自分が持っている銃の弾の補充と装備である
「慣れっていうのも怖いな」
いつの間にか、この部屋を出る前に必ず銃の装備確認をするようになった
まるで安心できる場所がこの警備室しかないかのように
それはそれで嫌な習慣だと思ってしまった
「とりあえず報告書を持っていくか」
俺は作成した報告書を持って学園長室に向かった
学園長室に向かう間は別に誰とも接触することはなかった
部屋に到着するとドアをノックして了解の返事をもらうと入室した
「セシリア・オルコット候補生が撃たれた案件についての中間報告書です」
「その件にあなたも絡んでいるんじゃないの?」
室内には学園長の他に楯無もいた。どうやら俺が関与していると思っているようだ
「仮にの話だが俺が関わっていたら狙いを外すようなミスはしない」
「そうかしら?あなたもこう思ったんじゃないの。IS学園への脅威判定を引き上げるためにとでも」
「そんなことをして何のメリットがある」
そう、俺としては平和なIS学園の方が望ましい
それにこの学園に猟犬がいる事は知っているはずだ。裏社会では特に
だとしたら簡単に手を出してくる人間はいないはずだ
猟犬とフェンリルの関係は知っている裏社会の住民は多い
「当面の間ですが、セシリア・オルコット候補生に関しては簪に警護を任せています」
女子同士なのだから警護は当然の配慮だ
さすがに男子である俺や自衛隊員がするべきではない。
ただし応援で来てくれている自衛隊員の中には女性隊員がいるので
寮内の警護などを任せる事にしている
「今後の警備状況については一夏君に任せます」
「わかりました。警備体制を強化して今後の対応にあたります」
「自衛隊との連携はスムーズなのですか?」
「以前仕事で組んだことがある隊員ばかりなので問題ありません」
「そうですか。では引き続きIS学園の警備に関しては一夏君に任せます」
「わかりました。可能な限り対応します」
そう言うと学園長室を出た。俺が退室するのと同時に楯無も同時に出た
俺はそこで少し意地の悪い事をしてやった。
「何か嫌味でも言いたいのか?それともお前の可愛い妹を奪ったことを恨んでいるのか」
「・・・・・・・・・・何でもないわよ」
楯無はそう言うと俺のそばから離れていった
「相変わらずか」
心のどこかでは楯無は簪が血で汚れた世界に浸かっている事を心配しているのだろう
血のつがった姉妹なのだから当然と言えば当然である
俺と千冬姉とは違う。俺と千冬姉は血縁関係があるかと言われると微妙だ
なぜなら俺たちは実験の産物で生み出されたものなのだから
家族というものに執着していない。俺はだが。
千冬姉は俺が血に浸かった世界にいる事は許せないことはわかっている
でももう戻る事はできない。猟犬として活動しているのだから
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不審な行動
俺はパトロールの巡回に戻った。1年1組には簪が張り付いている
万が一に備えての対応だ。もちろん防弾ベストを着用しているし、銃も装備している
最悪の事態を想定して、専用機であるISも持っているが。
よほどの緊急事態でもない限り使用するなと伝えている
もし持っている事が発覚すると大騒動になる
どこからコアをもらったかを話さなければならないからだ
いくら束さんからだと言ったとしても、今度は束さんがどこにいるかを強制的にも自白させる可能性がある
そういうリスクは冒せないのだ。今はまだ
リスク評価の観点から言って、今は様々な情報を伏せておいた方が好都合だ
問題は今後の騒動についてだ。いったい何が発生するかわからない
何とか放課後を迎えることができた。とりあえず授業中に銃弾のあらしが降る事はなかった
『こちら簪。一夏さん、状況はどうですか?』
「今のところ問題ない。だが警戒態勢を維持しろ。いつどこで狙ってくるかわからないからな」
最大の問題は亡国機業(ファントム・タスク)であるが他の反IS組織が狙ってくる可能性がある
ここには襲われるだけの材料がこのIS学園にはあちらこちらに転がっているのだ
警戒は常に必要である。
「簪、セシリアの行動監視を続けろ。再度狙われる可能性がある」
『了解』
俺は簪に指示を出すと巡回パトロールに戻った
警備する立場としては、これ以上のトラブルは避けたい
生徒に危害が加えられることになればこちらとしても微妙な立場になる
一応、俺は篠ノ之箒の警備を専門にしているが、
巻き沿いで他の生徒にまで被害を及ぶことを避けているだけだ
その理由は1つだ。箒が心の傷を負うのを防ぐため。
精神ケアも俺の担当である。
束さんとの契約で精神的なショックを負わないようにするのも契約の内容に含まれている
その時無線連絡が入ってきた
『一夏さん。簪です。1年1組で不審な行動をする女子生徒を確認』
「警戒態勢を維持しろ。今は手を出すな」
簪はわかりましたと答える
不用意に手を出して爆弾でも爆発されたら迷惑をこうむるのはこっちだ
それを避けるためにも今は状況監視が良い
俺は警備担当として知られているが、簪はそうではないと思っている生徒が多い
それを考えると彼女に偵察を行わさせる方が安全である
相手が行動を起こすのはおそらく休憩時間に入ってからだろう
俺はできるだけ早く1年1組に向かった
トラブルは早期に解決することが優先されることだし箒のいるクラスだ
一応契約の範囲に入っている。箒が狙われている可能性がある以上、リスクは冒せない
とにかく俺は簪が報告してきた不審な行動をする女子生徒を携帯情報端末で監視した
男性である俺が近くにいたら警戒される。
IS学園の監視システムで得られた情報を携帯情報端末で確認しながら監視を続けた
「何をするつもりだ?」
女子生徒は2年生の女性教諭に接近していった。
まさかナイフでも持ち出して女性教諭を刺すのではないかと警戒した
しかし、行動は全く別の物だった。女子生徒は教諭に何かのメモリーカードを手渡していた
情報の横流しの決定的瞬間をつかんだ。すぐに2人の身柄を拘束させることにした
情報流出は各国の利害関係に関わる重大案件だ
そんなトラブルを学園にまで持ち込まれるのはお断りだ
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尋問の開始
情報流出の案件で身柄を拘束した1年生の女子生徒と教師の尋問をこれから行うことにした
まぁ俺は見ておくだけだ。子供だから女性教諭の取り調べは大人の方が良い
ただし女子生徒の取り調べは俺が行う。
こちらは猛烈に圧力をかけていくつもりでいる
あとはIS学園の治安維持をしている生徒会に任せても良い
楯無はかなり嫌な顔をするだろうが、こっちは連中に恩を売れる
「いろいろと迷惑をかけたわね」
楯無の言葉に俺はもっと情報を調べる事だなと伝えた
「それにしても簪は極めて有能だ。あいつはきっと戦闘のプロとして成長するだろうな」
俺はあえて嫌味たっぷりにして楯無に伝えると妹のことは必ず守りなさいと言って取調室に入っていった
言われなくても守ってやるつもりだ。簪は俺と似ている。
家族関係も含めてだが。だから俺は何とかしてやろうと思っているのかもしれない
簪も何かきっかけが必要だったのかもしれない。
自分について必要な物が何かを分からなかったから戸惑いをしていた
そのきっかけになったのが銃であることは少しどころかかなり問題ありであるが
「まぁ、世の中分からないものだな」
『ピーピーピー』
俺の携帯電話に着信が入ってきた。発信者はココ・ヘクマティアルさんだ。
はっきり言って嫌な予感になる事は確実に。
何か仕事を依頼してくるのか。それとも別の思惑があるのか
「ココさん。織斑一夏です」
『実はお願いしたい仕事があるの。報酬は払うわ』
「ココさんが処理できない案件ですか?どんな過激な戦場に放り込まれることになるかあまり想像したくないのですが」
ココさんのチームメンバーには豊富な技術を持っているはずなの、
直属の部下である彼ら動かさないということは危険であることは確実である
それも通常の危険度ではないだろうと俺は感じたが、予想は大きく外れていた
『あなたにある人物の警護を任せたいの。ダメかしら?』
ココさんが警護を求める人物とはいったい誰なのか
俺はIS学園の警備でその手のことは管轄外だと思うのですかと答える
『警護対象者はIS学園の1年生に所属している人物よ。イギリス代表候補生。もうわかるわよね?』
「なるほど。イギリスから依頼があったということですか」
俺の言葉にココさんは察しが良くて助かるわと。
イギリスとしてもセシリア・オルコットという貴重な戦力になりそうな人物が殺されたら大問題だ
それもどこが狙っているかわからないとなるとなおさらのことである
「依頼料は頂けるのか質問しても?」
こちらも仕事だ。
報酬なしで引き受けるのはよほどのことでもない限りはしたくない
『依頼料として1日1万ドルを用意するわ。イギリスに貸しを作るのにいろいろと都合が良いから』
ココさんとしても世界平和のためにも各国に貸しを作る事でいろいろと都合が良いのだろう
1日1万ドルとはかなり割の良い仕事である。
イギリスにとっても貴重な戦力を守るためには金はいくらでも払ってくることは俺でもわかる
失ったら最初からやり直さなければならない。そんな事は簡単な事ではない
「わかりました。ただし俺の相棒で良ければ、常に監視対象に置かせますが、異論はありますか?」
簪はセシリア・オルコットの護衛に入っている。
このまま彼女に継続的に護衛を行ってもらう方が、同じ女性同士で問題は少ない
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簪の任務
ココさんとの話はその後、無事にまとめられた
1日1万ドルの報酬の一部は簪に出さなければならない
身辺警護に関しては簪とセシリア・オルコットはしばらくは寮の部屋は同室にしなければならない
男性である俺が同室で警護するのは問題がある。色々な意味で
そこで簪の価値が大きく出てくるというものだ
「簪。しばらくは大変だろうが頼めるか?」
「一夏さん。私も覚悟はできています。これがどれほど辛い仕事であることも」
簪はよく自分の立ち位置を理解していた。
自らの命に代えてでも守り抜く。それが身辺警護というものだ。
アサルトライフルを常に持っているわけにはいかないが拳銃は装備しておかないと
IS学園の窓ガラスは今は防弾ガラスにする工事が進んでいる
リスクを減らすにはハード面からお金をかけることも必要になる
学園長にもそのことを伝えているので円滑に作業が進められている
「簪。仕事を引き受けた以上はどんなことがあろうと守り切れ。お前の実力を見させてもらう」
「わかりました」
簪はやる気がかなりある様子だ。
彼女の力量について見極めるのにちょうどいい感じの仕事だ
IS学園に直接攻撃を仕掛けてくる連中はかなり限定されてくる
それでも警備体制には厳重にすることが求められる
隔離されているとはいっても、完ぺきというものは存在しない
完ぺきに守り切れるかどうかを見極めることができるにはもってこいの仕事である
「簪。わかっているだろうが対応できないような事案に発展する前にすぐに連絡すること」
しっかりとやれと俺は彼女に伝えると簪は手に負えなくなる前に連絡すると答えた
簪で対応できない事案になること。それは相手がISを使ってきた時だ
俺と簪は束さんが特注で作ってくれたものを持っている
だがそれは伏せられている情報だ。
もしこれが漏れたらとんでもない大スキャンダルに発展する。
それはこちらとしてはいろいろと都合が悪い。
こちらの情報漏れはあってはならないのだ
必ず情報封鎖をしなければ今後の活動に影響してくる
「とにかくしっかりとな」
簪はわかりましたというとセシリアと同じ部屋に向かった
それにしてもココさんからの依頼となると守り切るしかない
イギリス政府からの正式要請となるとなおさらである
あちらの国にとってもセシリア・オルコットが国益に重要な人材であることはわかっている
もし危害が加えられることになれば大騒動になることは誰の目から見ても明らかだ
何としても守り切るしかない。そのためには簪に頑張ってもらわなければならない
彼女はいろいろな意味で優秀だ。短期間で様々な訓練を受けてきた
それだけに簪の能力が試される
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俺の行動方針
俺は警備室に戻るとセシリア・オルコットに危害を加えそうな人物を調べ始めた
問題が起きる前に摘発しなければならない。
だからこそ守るためにはあらゆる情報が必要になる
コネを利用して様々な政府機関に問い合わせて情報を集めた
IS学園に入学している生徒の中に危険思想を持っている人物がいるかどうか。
それを確認するためには必要なことである
フェンリル先生のコネがここで大きく役に立った
もちろん、俺も先生と一緒に仕事をしてきたこともあり多くの権力者とのつながりがある
特に各国の軍や警察組織にだ。こちらはいろいろと恩を売ってきた
利息付きで返済してもらう時が来たということだ
それに自国の有力選手を守るためなら多少の強引さは認めてくれる
多くの国々から情報提供を依頼するとすぐに動いてくれた
おかげでこちらは楽に今後の戦略を練ることができた
セシリア・オルコットを狙っているのは詳細な情報はまだ来ていないが、
ある国が絡んでいることがわかっている。正確にはアメリカだ
アメリカ軍統合参謀本部の友人の話によると内部抗争が起きている
イギリスにすべてを持っていかれるのはどこも面白くないのは当然である
少しでも開発を遅らせるために妨害工作に出てきたらしい
さらに問題なのはこの件にCIAが絡んでいるということだ
もしこのままの状況が進めばかなり危険なことになる
穏やかに解決したいところだが現実には不可能になってしまう
簪の護衛もどこまで持つか。連中はセシリアを殺すことも辞さないだろう
巻き沿いなど気にすることはない。
「かなり危険だな」
俺はこう考えたIS学園は特殊な環境だ。日本の法律が適用されることはない
つまり好き勝手に隠れてすることは不可能ではないということだ
CIAやアメリカ軍が何を仕掛けてくるかは想像したくない
圧力をかけてもらうにも、規模が大きすぎる
「少し嫌な状況になりつつありか」
ここは伝家の宝刀を使うことを検討し始めた
フェンリル先生に動いてもらうのも良いかもしれない
先生が本気を出せば不穏分子は殺されることは確実だ
「フェンリル先生に動いてもらうしかないか」
私が衛星電話ができる携帯情報端末を取り出すと連絡をしようとしたが、
警備室に楯無が入ってきた
「織斑一夏。あなたはどんな悪だくみをしているの?」
「簪には警護をしてもらっているだけだ。まだ血なまぐさい世界を見せるには少しは早すぎる」
それにお前とは今は一定の距離をとる方が良いからなと楯無に伝えた
今この女に動かれるといろいろと面倒である
これは俺の獲物だ。確実に仕留めなければならない
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道の選び方
楯無は警備室に入ると俺にいきなりそう言った
「私の大切な妹に何をさせるつもりなの」
「お前の大切な妹には護衛をさせている。セシリア・オルコットのだが。何か不満でもあるのか?」
「傷つけないと約束したわよね?あなたはいったい何を考えているの?」
楯無は完全なシスコンだ。妹である簪を先頭から遠ざけようとしている
また楯無は戦場を見てきたのだから。妹にそんな思いはしてほしくないと考えているのだろう
だが簪は俺と同じで傭兵扱いだ。戦闘になればつらい道を歩むことも増える
そんな血まみれの道を歩む覚悟はできているのかと俺は迫った
簪は覚悟はできていますとはっきりと答えた
有能な人材になることは時間をかければわかってくる
覚悟がなければこの傭兵家業は務まらない
いつ死ぬかもわからないのだから。だから家族とは距離を置く必要がある
まぁ簪の姉は楯無だ。簡単につかまるようなことはないだろう
それでも脅迫の材料に使われることは容易に想像できる
だからこそ時には実の家族でさえも切り離すだけの度胸と覚悟が求められる
彼女はそれを承諾したから俺は今後も簪を鍛えていくつもりだ
「簪は将来有望な人材だ。きっといい傭兵になるかもな」
「あなた!私の妹を守るといったはずよ!」
「ああ。守るさ。契約は履行する。だが戦場ではどうなるかは想像もつかない」
戦場では些細な行動であってもけがをするようなことになるかもしれない
そのために時には厳しい任務を経験することは良いことだ
厳しい任務を経験していればいざという時に素早く行動を選択できる
人間の力量を図るには時には子供を追い込むことで分かる場合もある
「簪は有能だ。姉である楯無がいなければもっと早く開花したかもしれないが」
「私のせいで大切な妹が力を出せないと?」
「お前だってわかっているはずだろ。姉という大きな壁を壊すのは簡単なことではない」
「それはあなたのことを言っているのかしら。織斑一夏にとって織斑千冬は最大の壁であったと?」
「否定はしない。それに俺にはほかにもいろいろと裏がある。お前が想像できないくらいにな」
俺と千冬姉の存在はあまりにも特殊なのだ。
デザイナベビーのような形で生み出された存在である
もし俺がその計画を知らなかったらこんな形になることはなかっただろう
フェンリル先生に俺には特殊な人間であることを知らされた時に決めたのだ
もう俺は誰の誘導も受けるつもりはないと。自らが得た情報で自らの歩む道を選ぶ
必ず歩む道を自らの頭で考えてだれにも誘導されることなく決断を下していく
たとえ血まみれの道であっても俺が決めた道なら後悔などすることはしない
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選んだ道ゆえの宿命
「でも気を付けるんだな。俺のような道を選ぶということは姉から自立することを示している」
いつかは離れていくことになることは確実だ。
家族を持てば脅迫されることになる材料を作ることになる
そういったリスクをなくすために家族とは縁を切る道を選ぶしかない
たとえどれほど大切な家族であってもだ。
こういう言い方をするとひどいが、血で汚れた道を歩むということはそうなる運命である
「それは私に妹離れをしろって言いたいの?」
「子供はいつか親離れをする生き物だ。だから俺は千冬姉から離れる道を選んだ」
だから簪も俺と同じ道を歩むしかもう残されていない
姉である楯無から離れる道を選んでいくしか残されていないと気付いてくるだろう
仕方がないことだ。それが運命なのだから
小鳥はいつかは巣立つのと同じである。そして新しい道を自ら選択して飛び立つ
飛び立つ先は誰にも予想することはできない
優秀な人材になることは間違いないが簪がどの道を選ぶかは俺にも想像できない
「簪は相棒としては優秀だ。最後の分かれ道までともに歩む」
それがお前と交わした契約だろと伝えると楯無は警備室を出ていった
俺は簪に巣からトビ立てる方法を教えた。そして巣立つことが時には重要である事を伝えた
簪の能力はかなり高い。狙撃をさせたらかなりの良質な成績を収めたことから見て明らかだ
姉である楯無はそれと抑止しようとしていたが、むしろそれは逆効果だ
立ち入るなと言われるとは言ってみたくなるのは当然のことである
だからこそ簪は巣立つ道を選んだ。何もかも捨ててだ
俺は千冬姉を捨てる道を選んだ。もう交わることはない。
仮に接触があったとしてもそれは事務的なことでしか存在しない
千冬姉が殺される道は避けるにはこの手法しかなかった
家族を捨てなければ暗殺者にはなれない
「簪の姉は妹に感情を持ちすぎだな。楯無もプロなら切り捨てなければならないことがあることを分からないと」
楯無はまだまだ甘い考えの持ち主だ。
家族が脅迫されたらどうするべきかを考えていないのかもしれない
それではプロとしては失格。1人の人間が守れるのは数名しかないのだ
だが殺し屋になれば守ることはほぼ不可能だ。
だからすべての縁を切るしか道は残されていない
もし1つでも残っているとそこをつかれて脅迫されることはよくある話だ
完全に切り離さなければ守ることはできない。自分を守るためにはそれしか道はない
「簪にはつらい運命だな」
どちらにしても選択したのは彼女だ。なら俺はそれができるように手助けをするしかない
もとから引き受けた仕事だ。パートナーとしてふさわしくなるまで厳しくトレーニングをしなければならない
少しでも怠れば俺たちは死ぬ運命になる。孤独に生きていくしかないのだ
悲しいことにそれが俺たちが選んだ道である
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親鳥と小鳥
俺はとりあえず警備室で監視カメラの映像をチェックしていた
さらに各所に設置したセンサーに不審なものが探知されていないかも入念に確認した
些細なことであっても今のこの状況下では見逃すことはできない
もしトラブルという当たりくじを見つけ出したらすぐに摘発しなければどんなバカ騒ぎになるか
「それにしても知らない方が幸せっていうのは当たっている。千冬姉」
俺が千冬姉に話しかけるように声を出すと警備室に入ってきた
何か悩み事でもあるのかどうかについては知らないが。
陰でこっそり何かされるより、時には正面からぶち当たった方が良い時もある
「束とはなぜ契約をした?」
「俺はビジネスをしているだけだ。必要なら邪魔者は排除する。たとえそれが殺しであってもだ」
「一夏。もうやめてくれ」
千冬姉が何度求めることをしても俺は立ち止まるわけにはいかない
前に進むしか解決することはないのだ。
「千冬姉。この道を選んだ時にもう覚悟はできている。いつかは小鳥が巣立つのと同じで俺も自由に広い空を飛ぶ」
ただそれが早いか遅いかの違いだけだと、千冬姉に伝えた
千冬姉の顔を俺は見ることはしなかった。
どんな表情をしているかは想像できる。家族の縁を切ると宣言したのだ
千冬姉にとって俺はたった1つの家族だ。千冬姉は厳しいけどそれは俺のことを思っての判断だ
そんな俺からもうさようならだと言われて簡単に納得するわけがない
すぐに分かったと納得する人物がいたら、その方がむしろ驚きだ
とにかく俺はIS学園内の監視カメラの映像をチェックした
今は迷っている暇などは存在しない。少しでも早く問題解決のために動かなければならない
立ち止まれば死ぬ可能性が高まるだけなのだから
だから歩み続けるしかない。たとえ血まみれの道であってもだ
すでに俺が歩んでいる道は血まみれの状況である
簪も同じ道を歩むと決断したのだ
まだ本当の血まみれの道を見せていないが、いつかはその光景を見ることになるだろう
その時に迷うことなく前を歩み続けることができるかが殺し屋になれるかどうかがわかる
「セシリア・オルコットの経歴を調べるか。それも深いところまで」
俺は彼女が生まれてからここに来るまでの記録をすべて調べ上げた
彼女は名門貴族の出身だ。両親はすでに死亡している
両親の死亡原因は列車事故が原因であった
「いろいろと苦労しているようだな」
それにしてもイギリスに喧嘩を売る人間はかなり無茶なことをしたものだ
どこの組織が工作活動のために絡んでいるのか調べるのもかなり苦労している
コネで記録を調べてもらっても良いのだが。簡単に事を進めるかどうかはまだ決めていない
下手に工作活動をしていると情報が漏れると俺の活動に影響が出てくる
そんなことになればIS学園以外の仕事にも影響が出てくる
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冷徹な目線
俺はセシリア・オルコットの情報について裏まで念入りに調べた
小さなトラブルから国を巻き込むような大きなトラブルも含めて
「両親の死亡は何か裏があるな。あまりにもタイミングが良すぎる」
その結果はあるものに行きついてしまった
セシリア・オルコットの両親が死亡したのはある犯罪組織が絡んでいた
彼女を利用するために実の両親を殺して事実の隠ぺいをした
全ては自らの発言力と影響力を確保するために、彼女の近親者が動いていた
結末としては最悪なものだ。彼女は両親が死亡したことを受けて努力した
だがそれすらも計画に組み込まれたことだった。
「俺と同じだな」
俺の織斑計画と同じでセシリアは利用されている。
問題なのは彼女が代表候補であることだ。表立って吹聴するわけにはいかない
裏でこっそりとするしかないことはわかっている。
状況が悪化した時に俺の立ち位置が問題視されたらトラブルが大きくなりすぎる
俺は現状において唯一の『ISを使える男』なのだから。
この事実は何が何でも封鎖しなければいけない。
情報が漏れたらもっと危険なことになりかねない。
何か攻撃を仕掛けてくるなら当然お返しはするつもりではあるが
それもこっそりと俺が関与していることを伏せて。
裏社会では俺に手を出したらどうなるかを分からせることが重要だ。
表面に浮き出ることは避けなければならない。
俺がここにいることを分からせることで先生の存在価値をうまく利用する
こんな方法はできればしたくはないが文句を言っているような暇はない
大きなトラブルに発展する前に対処しなければ、問題が大きく膨らみ続けるだけに。
「問題はイギリスか」
今は簪に護衛をさせている。
だがこの手の仕事は経験がものを言ってくる。
それだけにトラブルが発生した場合にはすぐに対応方法を思いつくことが最も求められてくる
それができなければ俺がいつもしている『仕事』をできるはずがない。
冷徹に、必要なら親や兄弟だけでなく、
どんな立ち位置にいる人間も殺すことができなければ自らの立ち位置を悪くするだけである。
「それにしても大きなトラブルになるのは十分予測できる」
今のうちに手を打つことが安全確保のためには必要になる
この事実は嘘偽りのない事実だ
俺はその事実をもとに人脈をフル活用して対応することが求められているのだ。
俺がこのIS学園に入り最大の理由は束さんから箒を守るためであり、
箒の安全を守るためなら血まみれの道を歩むことが必要がある
箒が無事なら他の連中がどうなろうと俺は関係ない。
千冬姉が危険な状況があっても、束さんから依頼された箒の安全確保ができるなら、
家族や親友がターゲットになっても知ったことではない。
束さんから依頼された箒を守れればそれでいいのだ
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