サトシの兄な転生者 (ゼノアplus+)
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番外
主人公設定
以前私のISの作品で新作アンケートをとった。そしてダンまちがトップだった。それを見て次の作品はダンまちだと思った方も多いのではないだろうか?…アレは嘘ではない。
最近久しぶりにポケモンをやると、どハマりしてしまったので書きたくなったのでこうして投稿させていただきました。勿論ダンまちを書かないわけではありません。設定を凝って考えていてまだ出来ていないのです。…まだ原作を2巻しか読んでないなんて言えない。ソード・オラトリアは買ってないことも言えない…
読んでいただけるとわかるのですが、私はなかなか設定に凝るタイプでして。出来るだけ今回を読まなくても大丈夫なようにしたつもりですが、オリジナル設定がいくつかありますので少しずつ紹介していきたいと思います。
まだ主人公の設定しか考えていませんが、気に入ってもらえたら嬉しいです。
主人公:サトル(転生者)
相棒:プラスル(色違い)
サトシの兄で5歳差ある。母親のことは母さんと呼んでいる。アニメとゲームが混ざったような世界でアニポケには見られなかったボックスなどのゲーム要素が存在する。プラスルとは、主人公が10歳の時に旅をホウエン地方から始めた時に出会った。それからホウエン地方で1年、カロス地方で2年、イッシュ地方で半年、シンオウ地方で半年、カントー地方で半年、ジョウト地方で半年を過ごした。この間、旅する地方を変えるたびにマサラタウンには帰っている。
旅立ちの日にオーキド博士にポケモン図鑑を渡され、完成を任された。(アニポケではすでに完成されているような品でポケモンにかざすとデータが分かるが、これはポケモンの個体によってのデータを登録し直接オーキド博士に送るシステムがある。ぶっちゃけて言えばlet's goの図鑑)主人公は個体値まで分かるようになればいいな、程度に思っている。同じような図鑑を各地方の博士にも話が通ってあり、主人公と同じ役目を任された新人トレーナーがいるがホウエン地方にはいなかったためオーキド博士の提案でホウエン地方から旅をスタートした。
サトシが10歳になり旅に出る日にはお祝いに無印のリュックをプレゼントした。サトシの壁となり自分を超えていってほしいと思うようになりジムリーダーを目指す。サトシがイッシュ地方での旅を終える頃にはジムリーダーの資格を首席で取得した。この事はサトシには伝えていない。使用タイプはいつもの手持ちでも多いゴーストタイプ。飛行ポケモン(ボーマンダ)を持ち、自由に動けるジムリーダーとしてポケモン協会より仕事を任されることが多い。
ホウエン地方では、ダイゴや流星の民に気づかれないようにゲンシカイキやレックウザについて調べていた。取得ポケモンはプラスルとボーマンダ(タツベイから) 半年しか滞在予定がなかったが、ボーマンダナイトを手に入れるために追加で半年かけて必死に探した。結果、たまたま知り合ったヒガナに貰った。努力ぅ…
プラスル(色違い)
かみなり
ボルトチェンジ
てだすけ
でんじは
こうそくいどう
くさむすび
でんこうせっか
バトンタッチ
ボーマンダ
ドラゴンテール
かみくだく
ドラゴンクロー
かえんほうしゃ
つばめがえし
りゅうのまい
りゅうせいぐん
ハイドロポンプ
カロス地方では、キーストーンを入手しボーマンダのメガシンカが可能になった。そして、プラターヌ博士の「進化について」の研究に協力し2年を過ごす。一年が経つ頃に一度実家に戻っている。入手ポケモンはギルガルド(ヒトツキから)
キーストーンは髪留め。
ギルガルド
つるぎのまい
アイアンヘッド
かげうち
せいなるつるぎ
キングシールド
シャドークロー
きんぞくおん
ラスターカノン
ここからは特にやるべきことも無くなったため、普通に旅。
イッシュ地方ではジム戦をメイン。修行と共に全てのバッジを集めたがリーグには出場せず。半年というハイペースで行なったがボーマンダがいたため楽に移動。取得ポケモンはシャンデラ(ヒトモシ) タワーオブヘブンでポケモン達に対して祈っていたところ、すり寄ってきたヒトモシに何を思ったかヒウンアイスを上げたところ懐かれてゲットした。
シャンデラ
シャドーボール
オーバーヒート
サイコキネシス
れんごく
まもる
あやしいひかり
ナイトヘッド
シンオウ地方ではジム戦はせずにポケモンコンテストに出場。3回の優勝で出場を辞め、残りの期間を探検セットで色々な石を集めて石マニアに売り捌いていた。しらたま、こんごうだま、はっきんだまがポンポン出た時はこっそりテンガン山やりのはしらに納めた。ギラティナには悪いがはっきんだまもテンガン山に… 取得ポケモンはヨノワール。
ヨノワール
ほのお、れいとう、かみなり、シャドーパンチ
おにび
あやしいひかり
きあいだま
いちゃもん
オリジナル設定
特待生制度 成績優秀者でのジムリーダー資格を取った者は公認ジムが無くとも、ジムリーダーとしての活動が許可される。しかし、実戦的な能力の不足を防ぐため1ヶ月間の現役ジムリーダー、四天王、チャンピオン、いずれかの下に弟子入りをしなくてはならない。基本的には、自分の担当するタイプと同じ者の下へ弟子入りするが、首席にはどの人物への弟子入りも許可されている。勿論本人の許可が必要である。
このほか、ポケモン協会からの指名依頼など多少面倒な仕事を任されることがある。
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モミジ設定
モミジ 13歳 コトキタウン出身
相棒:マイナン(色違い)♀
ホウエン地方コトキタウン出身。父親はホウエン地方、母親がカロス地方出身。12歳の時、旅はホウエン地方を少ししてからアローラ地方に来た。そこでサトルと出会う。かくとうタイプのポケモンが好きで手持ちのほとんどがかくとうタイプで構成されている。ジムバッジは3個。なにかと珍しい個体と出会う体質の持ち主。そのせいか、あまり人前に姿を現さないキテルグマなど危険だったりするポケモンと出会うため不幸が多い。一方で、本当に偶然でカプと出会ったり、『かがやくいし』をもらえたりと幸運でもある。
サトル曰く、「見てて飽きない」とのこと。サトルにバトルで負けて以来、弟子入りしている。変化技や戦術を勉強しリベンジを考えている。サトルがジムリーダーだということは知らない。サトルは「しっかり勉強して修行すれば化ける。ていうか才能はすごい。どんどん吸収していく」とのコメント。
手持ちポケモン
マイナン♀
キノガッサ♂
ワカシャモ♂
アサナン♀
マイナン♀《マイナス》
8歳の頃、モミジと出会いよく遊んでいた。モミジが10歳になり旅に出る時、アチャモをもらったモミジにゲットしてほしいと頼み仲間になる。一対一で活躍することは少ないがダブルバトルなどでサポート役として圧倒的な才能を持つ。色違いで群れから追い出されたという過去を持つ。
でんこうせっか
てだすけ
スパーク
エレキボール
キノガッサ♂《テクニシャン》
トウカの森でキノココとバトルをしてゲット。もともと強い個体だったのがジム戦など、経験を積んで進化した。キノガッサに進化してからマッハパンチなどを覚えたので《テクニシャン》で攻撃力は十分。少しの間進化を拒んでいたため、【キノコのほうし】を覚えた状態でキノガッサになった。
マッハパンチ
キノコのほうし
メガドレイン
めざめるパワー(霊)
ワカシャモ《かそく》
オダマキ博士にもらった最初のポケモン。しかしモミジのポケモンになったすぐ後に、マイナンが加わりマスコット的な役割が取られたことがショック。マイナンに追いつこうとして努力した結果、進化した。モミジの手持ちの中でトップの実力。何気に隠れ特性の《かそく》だがモミジは気づいていない。
サトルのコメント「オダマキ博士……初心者に渡すポケモンくらいちゃんと把握しましょうよ」
ひのこ
つつく
にどげり
かげぶんしん
アサナン《ヨガパワー》
修行のためおくりびやまから離れていた。たどり着いたトウカの森でめいそう中のところ、たまたま通りかかったモミジにスッとゲットされた。目を開けるとボールの中だったため驚いたが、モミジやその手持ちが優しくしてくれているため関係は良好。しかし、モミジが【みきり】のことを知らないため自分の判断で使用することもある。
めいそう
ねんりき
みきり
はっけい
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ちょいちょい出てくるサトルの人脈
今回は、アニポケのサトシの旅路において、サトシ目線で人から聞く『サトル』を見ていきましょう。
※サトシは、話の中で出てくる人物がサトルだと気づく事はほぼ無いです。せいぜい「凄い人がいるんだなぁ……そういえば兄ちゃん今頃何してるんだろう?」くらいです。
私はDPからアニメを見始めたのでAG編以下をほとんど知りません。なんならイッシュ地方までのキャラの口調や性格などもほぼ覚えてないので、想像の範疇で書いています。予めご了承ください。
番外編
〜カントー地方〜
オーキド博士の場合
「サトルが協力してくれたおかげで、ホウエン地方のポケモン図鑑完成が予想以上に進んだよ。しかし、いざ旅を始めるという時にホウエン地方に送り出してしまったのは申し訳なかったのぉ……」
〜ホウエン地方〜
センリの場合
「何年か前だが、プラスルを連れたトレーナーとバトルをしたんだ。あの時ほど、清々しい気持ちで負けた事はない。ジムリーダーとしても大きく前進できた」
オダマキ博士の場合
「君と同じように、カントー地方から来た子がいてね。その子には驚かされてばかりだったよ。強く、賢く、ポケモンとの絆も固い。どことなく、君に似ている気がするよ。突然ホウエン地方に来たのにすぐに旅立って行った。子供らしくも大人びていて、僕が子供の頃を思い出したよ」
〜シンオウ地方〜
シロナの場合
「少し前、色違いのポケモンを連れたトレーナーと出会ったの。その子とのバトルは本当に楽しかったわ。あの頃、負けそうになったのは久しぶりだったわ。でも伝説と呼ばれるポケモンや幻と言われるポケモンの知識があるのはどうしてなのかしら?」
ヒカリの場合
「過去のコンテストの映像を見てたら凄い人がいたの!数回しか出てないのに出場した時は圧倒的な演技とバトルでね、仮面のデザインもなんだけどミステリアスなところがたまらなくて!!この映像なんだけど……えっ、兄ちゃん?ちょっとサトシどういうk……」
〜イッシュ地方〜
アララギ博士の場合(1話あたりでハナコとオーキド博士からサトルのことを聞く)
「あらら……まさかサトル君の弟だったとはねぇ。なんというか年齢の割にはとても大人びていたし、タワーオブヘブンの場所を聞いて来たの。ポケモンを思いやる素晴らしい心を持っている良い子よ。サトシ君も、負けないくらいだけどね」
シャガの場合
「最初はただの小童かと思ったがなかなかやりおる。まさか3体に私の本気の手持ちを全て倒されるとは思わなかった。あのボーマンダもよく鍛えられている。ドラゴン使いとしての素質も充分あるのだが……」
アイリスの場合
「おじいちゃんの言う通りあのお兄さんはすごくカッコよかった。私もあんなドラゴン使いになりたい!ねっ、キバゴ!」
デントの場合
「僕がジムリーダーとしてテイスティングしたポケモンとトレーナーではサトルが最高だったね。いつかまた会ってみたいよ。まさかサトシのお兄さんだとは思わなかったなぁ」
Nの場合
「人間はポケモンの世界に踏み込むべきではない。そう考えていた僕に一筋の光がさしたのはきっとアイツに出会ったからなんだろう。まだ認める気は無いけど、あのプラスルや彼のポケモン達は心の底から主人を好いていた。……そこだけは凄いと思ったよ。認めたくは無いけど」
〜カロス地方〜
プラターヌ博士の場合
「数年前、キーストーンが欲しいと言ってきた少年がいてね。なぜキーストーンを知っているのか聞いても教えてくれなかったんだ。でも、どうしてキーストーンが欲しいか聞いたら『ウチのエースのため』って言ったんだ。その時の彼とそのポケモン達には確かな絆があったよ。実にマーベラスなトレーナーだったよ。研究所の手伝いもしてくれていたんだ。アラン君とも知り合いだし、彼にも聞いてみたらどうかな?」
アランの場合
「ああ、彼か。プラターヌ博士は名前を言ってなかったか?……そうか。彼は、いつもポケモンに寄り添っていたな。研究所にいたポケモンや初心者用のポケモンへの細かい配慮、メガシンカについての研究の手伝いにも熱心で、ガブリアスがよく懐いていたのを覚えているよ。……リザードンとバトルがしてみたい」
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アローラにアローラ!
サトシの帰還 アローラへの0歩目!
1話
ポケットモンスター、縮めて、ポケモン。詳しくはポケモン協会のホームページを見てくれたら俺の説明よりよく分かると思う。
しっかりと自分の所属組織の宣伝をしていくのはポイントが高いな!ウンウン…
「プラ?」
「ん、ああ、ごめんごめんプラスル。ちゃんと紹介するから」
さてと改めまして、皆さん初めまして!俺はサトル、ポケモントレーナーだ。
突然だが俺には日本という国で生まれ育ち、死んだ魚のような目で高校生やってた記憶がある。俗に言う転生者って奴だな。…そうだから別にどうって事はないんだが、一番ビックリしたのはこの世界、自己紹介で分かったと思うけどポケモンワールドなんだぜ?
…もっとビックリしたのがよりによって俺はアニメのポケモンの主人公、サトシの兄貴で俗に言うマサラ人だったって事だ。
いやいや俺の事は良いんだ。まあ聞いてくれよ。いや〜赤ん坊の頃のサトシは可愛かったんだぞ〜。なんかその頃からやんちゃっぽいところが出ててな。それなのに家族には甘えたがりでな〜。成長していくごとにそれが増していってな。俺とサトシは5歳差で俺が旅に出た10歳の頃…まあ5年前か。キラキラした目で旅に出る俺のことを見送ってくれたな。ついつい頭を撫でてしまったぜ!
「プラァ!!」
「いったぁ!?プラスル、ごめんって…」
今しがた俺に【でんじは】を浴びせて来たのが俺の最初のポケモンで相棒のプラスルだ。…え?サトシのピカチュウと被るって?バカッ、俺の自慢の相棒にケチつけてんじゃないよ。これでもうちの濃い面子の中で素の能力、個体値だっけ?それ抜きにしても1番実力がある。しかもウチのプラスルはな、ちょっとわかりにくいけど色違いなんだ。まあ全体的に色が濃くなったって感じだな。
これまでジム戦やコンテストとか、いろんな場所で活躍して来た俺の自慢のポケモンだ。
「プラ♪」
こらこら、頬ずりして来ない。全く可愛いなお前〜。…【ほっぺすりすり】覚えさせて無くてマジでよかった。
ん〜、ほかに言うべき事は… あっ、俺、ジムリーダーやってます。世間一般で認知されてるジムリーダーとは違って、ジムは持ってないんだけどな。正確に言うと…ジムリーダー資格を持ってるって言った方が正しいな。一応ゴーストタイプを専門にしてる。ポケモン?まあまあ、今はいいじゃないか。今の俺はマサラタウンのサトルだからな。
「サトル〜、降りてらっしゃ〜い。そろそろサトシが帰ってくる頃よ〜!」
んっ、母さんの声だ。俺はカントーのポケモン協会本部でジムリーダー資格を取り、色んな人の元で修行した後実家に帰って来ている。この事はサトシには言ってないし、言うつもりもまだない。サプライズって大事だろ?さて、降りないとな。
あっ、そうだ。サトシが帰ってくるっていうのはな、今サトシはカロス地方に行っててそろそろ帰ってくるって連絡があったんだ。…前世でアニメを見てた身としては、こんなのどかな日が続いてた時にカロス地方ではジガルデやらなんやらで凄い危機が迫ってたっていうのが信じられない。アニポケはカロスで見るのをやめた。…こう…個人的に…個人的にね?作画がちょっと…
正直加勢に行きたかったけど、ジムリーダー資格を取る勉強をしてたからな。すまないサトシ…カロスリーグも応援に行けなかった俺を許してくれ… ちゃんと録画をお前の知り合いに布教………配りに行ったから。タケシさんとかカスミさんとか…あっデントさんにもだな。ジムリーダーしか渡してねぇ…。
「プラプラ?プラァ!!」
「ああ、行くから待てって!ちょっ、プラスル、髪留め持っていかないでくれる!?その髪留め無いと、俺のアホ毛が自己主張激しいから返して!!」
髪留め型のキーストーンを俺から奪ったプラスルをおいかけて、ドタドタと一階に降りる。
「ちょっとサトル!!サトシが帰ってくるのが嬉しいのは分かるけど、もう少し落ち着きなさい。もう15でしょう?ねえ、バリちゃん?」
「バリ、バリバリ!」
うんうん、その通りだ。とでも言いたげな母さんのバリヤード(普段はバリさんと呼ぶ)。…お前まで敵に回ったら勝てねえじゃねえか…
「ごめん母さん。ほら、プラスルも早く返してくれ。ちゃんと降りただろ?」
「プラァ…プラッ」
仕方ねえなっ、みたいな顔やめろプラスル。大衆に見せられないような腹立つ顔してんじゃないよ。また、頰をぷにるぞ?
「全く… 母さん俺、ちょっと洗面台行ってくる。癖毛が…また自己主張が激しい…」
「あら、またなの?すぐ戻って来なさいよ。貴方もサトシみたいに帽子かぶってみたら?」
「前にそれやって癖毛が帽子貫通しただろ?この髪留めで直るのも奇跡なんだから」
おかしなことを口走ってるように聞こえるかもしれないが、俺のアホ毛にスーパーマサラ人としての力が詰まってるんじゃないのか?ってレベルで強い。
え〜、ここをこうして…ちょっ、落ち着け俺の髪よ。大人しくお縄…じゃなくて髪留めに着くんだ。
「たっだいま〜!!」
「ピッカピッカァ!!」
やっべ、サトシ帰ってきた。早く直さないと…
「プラッ!!プラプラァ!!」
あっ!!あの裏切り者、抜け駆けしやがった!クッソ… 今度俺のフルメンバーVSプラスルでバトルさせよう。…いや、プラスル勝つな〜、まあいいか。サトシよ、待っててくれ。兄ちゃんすぐ行くからな!!
「あら、サトシ、ピカチュウ、お帰りなさい。今度の旅はどうだった?」
「すっごく楽しかったよママ!!それとね、見たことない色んなポケモン達と出会ったんだ!俺の新しい仲間も出来たし、早く紹介したいよ!!」
「ピカァ!!ピカピカ、ピッカ!!」
「そう、ずいぶん楽しんできたみたいね!とりあえず手を洗ってきなさい。それから、旅でのこと色々聞かせてほしいわ」
「は〜い。ピカチュウ、行こっか」
「プッラァ!!」
「あっ!プラスルじゃないか、久しぶり〜!…てことは兄ちゃんいるのか!?」
母さん!?俺が洗面台にいるの知っててサトシを呼びやがったな!?………あっ、直った。
……よし!
「おうサトシ、お帰り!ピカチュウも元気にしてたか〜?」
「ピッカァ!!」
「兄ちゃんただいま!!兄ちゃんも帰ってきてたんだ」
おお、我が弟よ。やはりカロス帰りはまた一段と男らしくなったな〜。
「まあな。まあサトシ、取り敢えず行ってこい。ほらプラスル、サトシとピカチュウが動けないだろ?時間はたくさんあるんだから」
「プゥラァ………」
俺に対する対応と違いすぎませんかねぇ…
器用にサトシの肩から俺のそばまでやってきて手を差し出してきた。
「プラ」
「いや、今お菓子食べたら飯食えなくなるだろ。母さんの料理だぞ?」
「プラ!?……プラァ……」
プラスルの中でなかなかの葛藤があったらしい。10秒ほど腕を組みじっくり考えて、我慢を選んだ。
「明日のおやつは俺が作ってやるから。何が良い?」
「プラァ?……プラップラァ」
両手で四角形を描くプラスル。…え、ポロック?
「ポロックか?了解、きのみは…いつもので良いか。ボーさんもあれ好きだし」
今の手持ちのきのみで足りるか?……ちょっと足りないなぁ。あとで買いに行くか。
「ママ、兄ちゃん、お待たせ!!」
「ピッピカチュ」
戻ってきたサトシ。こらこらちゃんと手を拭きなさい。
「ピカチュウ〜、明日は俺がポロック作るからな〜。あっ、もちろんバリさんの分もあるぞ」
「ピカ!?ピッカァ!!」
「バリ?バリバリ〜♪」
おいおいそんなに期待されても困るぞ… ピカチュウ、踊り出すんじゃない。カロス地方でセレナちゃんに美味いポフレ作ってもらってただろ?
「サトシとピカチュウはお昼ご飯まだでしょ?サトルもまだだから、みんなで食べましょう」
「やったぁ!!久し振りのママの料理だ!!」
「ありがとう母さん。サトシ落ち着けって、料理は逃げないから」
その後、俺達は昼飯を食べながらサトシの話を聞いたりして時間を過ごした。
…夕方になる前に買い物に出た俺たちがバリさんが引いた福引でアローラ旅行券を当てたことは、まあ皆さん御察しの通りでしょう。
ちなみに旅行券は2枚だったためサトシと母さんが使い、俺は移動費をポケモン協会の経費で落とした。…元々アローラに行く依頼来てたからね?ジムリーダーとしては行くしかないでしょう。
依頼の内容?アローラ地方のポケモン博士であるククイ博士からポケモンリーグを作りたいという要望が来ていたので協会本部としては実習も兼ねて俺を代表としていかせたいらしい。俺が見て聞いて体験したことをデータとしてちょくちょく送るだけの簡単な仕事だ。行動に制限はないし、緩い。ムーンをプレイしていたので知っていたが、ジムがないのでそこを踏まえて俺の意見も送って欲しいとのこと。…島ごとの試練のクリアでいいと思うけどなぁ…
まあ、そういう訳で、また次回!!
…オーキド博士っぽいことしたほうがいいか?
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ジムリーダーのサトル
2話
「プラスル、サトシ達と遊んできな。俺は仕事に行ってくるから」
「プラ?プラッ!」
むっ、今日は頑固だな。まあ良いか、別に困る事ないし。
…あっ、どうも皆さん。アローラ地方に着きサトシと母さん達がバカンスを楽しんでる間に仕事をしないといけないサトルです。…仕事を…しないといけない…サトルです…
取り敢えず、俺のボーマンダのボーさんをライドポケモンとして登録しないといけないみたいだ。…【そらをとぶ】が禁止とか聞いてないぞ。俺は母さんに一言、先にスクールに行くと告げ、ハウオリシティの役所でボーさんを登録、ポケモンスクールの場所を聞きボーさんに乗せてもらって飛ぶ。
「ボーさん、アローラの空はどうだ?」
「マンダァ!!」
「ははっ!そうか、気持ちいいか!俺もだよ。ん、あれだな?ボーさん頼んだ!」
ボーさんはスクールより少し離れた場所に降りる。俺が指示しなくても分かってくれるボーさん流石っす。
「ありがとうボーさん。今度もっと飛ぼうな」
俺はボーさんをボールに戻しスクールに向かって歩く。
「お〜結構敷地広いな〜 これは迷いそうだな、遊びすぎて場所がわからないとかやめろよプラスル?」
「プラプラァ」
するわけねえじゃん、みたいな視線を送っているプラスル。
「お前ホント小生意気になったよな。誰に似たんだ?…ってまあ俺しかいないか。全く、このやろ〜」
「プラッ、プラプラァ♪」
2人仲良くじゃれ合いながら歩いていると、校長室にたどり着いた。
「ここで良いのか?…大丈夫そうだな。んっん… さて、行きましょうかプラスル」
「…プラァ」
俺は口調と声のトーンを変える。所謂、仕事モードってやつだな。ジムリーダー就任後に練習してこうするようになったが、プラスルは気持ち悪いらしい。…俺だってそう思うよ。
コンコン…
「失礼します。この度、ポケモン協会本部より
「おお!よく来てくれたね!さあ、入ってくれ」
オーキド博士によく似た声。この人が博士の従兄弟さんか。博士によるとポケモンギャグが好きで、語尾にポケモンの名前を入れるそうだが、本当か?
「失礼いたします。貴方がオーキド・ユキナリ博士の従兄弟のナリヤ・オーキド校長で間違いないでしょうか?」
初対面からこの言い方は間違っていると思うが、敬語は付け焼き刃なんだ…
「うむ、ナリヤ・オーキドだ。アローラ!!これからよろしく頼ムンナ!」
「おっ、噂のポケモンギャグですね。こちらこそ、よろしくお願いします。…申し訳ありません、アローラとは?」
これは…ギャグと言えるのだろうか。小説じゃ伝わらないけど、顔もそのポケモンに似せている。色んなポケモンを知ってないと出来ないな。アローラ?前世でいうアロハ、みたいなもんか?
「アローラ、というのはじゃな、この地方の挨拶なんじゃよ。だいたいどの時間帯でも使うから覚えている方が良いゾロアーク!」
「おお、そうだ!ユキナリからポケモンの卵を預かってないか?」
「それでしたら、一緒に来た私の弟と母が持っているはずです」
え、博士から連絡行ってないんですの?
「おお!そういえばそうじゃったの、忘れておった。ごめんネンドール!」
「いえ、こちらこそそのまま持ってくればよかったのですがライドポケモンで来たものですから、割れないか心配でして」
ボケたか、と一瞬思ったのは秘密だ。だからプラスル、そんな目でこちらを見るな。
「まあ、気長に待っていようか。そろそろククイ博士も来るはずだからのう…」
「オーキド校長、遅くなってすいません」
む?
「噂をすればじゃな。ククイ博士、よく来てくれたのう」
「いやいや〜、ちょうど休憩時間なので。それで…そちらの子は?」
グラサン薄いな〜。こちらからでも博士の目が見える。
「お初にお目にかかります。この度ククイ博士からの依頼でポケモン協会本部より派遣されました。ジムリーダー、サトルと申します。アローラ地方でのポケモンリーグ建設をお手伝いさせていただきます」
「お、おう。そんなにかしこまらないでくれ。いや、年と立場を考えたら正しいのか?」
いや、俺のは年不相応だから博士が正しいっすよ。
「いえ、今はジムリーダーとしての仕事中ですのでこういう口調にしているだけですので普段はもっと砕けた感じです」
「そうなのか?まあよろしくサトル。そういえば教師としてもここでやってくれるって聞いたんだけど…免許はあるのか?」
フッフッフ…
「はい、年齢的にまだ正式免許は取れないので仮免許ですが、教育職に就くための必修事項はすでに履修済みですのでご心配なく」
「それは頼もしいな!…だったら話は早い。職員室に案内しよう!」
職員室…前世じゃ恐怖の対象でしかなかったんだがな…
「………ふうぅ。ありがとうございますククイ博士。プラスル!移動するぞ、戻ってこ〜い!」
「プラッ!!」
隅っこの方でえっと…ネッコアラだっけ?と遊んでたプラスルを呼び戻す。
相変わらず頭に飛び乗ってくるんだが、髪留めに刺さりそうで怖いから肩にして欲しいんだが…ピカチュウと被るからヤダそうだ。そこは気にするのね…
「じゃあ校長先生、失礼します」
「スクールでの生活、楽しんでくレントラー!」
バッチリ決めていく校長。俺達とククイ博士は廊下を歩きながら話している。
「そういえばそのプラスル、色違いのプラスルか?」
「流石ですね博士。そうなんです、全体的に色が濃くなっただけに見えるんで色違いだと思われないんですよ」
このおかげで変ないざこざも起きなかったしな〜
「色違いのポケモンか… 苦労したんだろうな」
「……はい。まあ、色々ありましたんで。今度話しますよ」
「っ!…ああ、もちろん。それにしてもサトル、その口調の方が接しやすいぞ。生徒達と接するときはそっちにしてくれな」
まあ、そうだよな〜
「そうです?まあ、もともとさっきのは過剰でしたし、しませんよ」
そして職員室に着いた。
「それじゃあ、今日からよろしくな。サトル先生!」
「うっわぁ…むず痒い…」
「ハハッ、まあ慣れだよ」
先生か…このスクールに通う生徒が大体10歳前後だから…小学生くらいか。
「さてと、じゃあ行くか」
「え、行くってどこに?」
「教室だよ。俺が担当してる生徒達との顔合わせだな。個性的な生徒達ばっかりで、きっとサトルもすぐ馴染めるさ」
そうだと良いんだけどなぁ… このくらいの子って難しいからなぁ…
「そうですね、まあ頑張ってみます。プラスルも手伝ってな?」
「プラァ!!」
流石俺の相棒。最初の印象で俺よりコイツの方が人気でそうだけど大丈夫か…?
「ん、あれは…マオか。それと隣にいるのは…」
…ん?あっ、アイツ。
「サトシとピカチュウです。俺の弟で、旅行でアローラに来てるんですよ」
母さんと一緒じゃないのか?
「お2人さん。アローラ!」
行動はやっ!?ちょっ、俺も行かないと…
「ククイ博士!」
「博士?」
「私たちの先生よ!」
あの子、マオって言ったか?…ムーンの時に試練を与えるキャラでいたような…?あっ、ラランテスの… うっ…頭が…
「博士、この子はサトシ!」
「オーキド校長から聞いたよ。もう1人からもな。サトシ、ピカチュウ、ポケモンスクールは良いところだぞ。今日だけでも、楽しんでいってくれ」
「はい!」
「ピカァ!!」
……どうしよう、完全に出るタイミング失った。
「ん?」
「あれは…?」
えっちょっ…ここからじゃよく見えない…
「行ってみよう!」
「あっ、サトシ!」
「2人とも待てって!」
えー…3人とも行ってしまった…
「一体何が…ん…?」
あれは…ムーンにもいたな。スカル団だっけ?見た目と行動が完全にチンピラだった奴ら。
「おいおい、1人3体も出すのかよ…あれは?遠くて見えにくいな… えーと、ズバットに…ヤングースとヤトウモリか」
真っ黒に焼けた肌の少年…ガラガラダンスの試練の人じゃね?てことは…
あっ…、みずタイプとでんきタイプの試練の人もいる。リーリエもじゃないか。…いや、本当に個性的だなククイ博士。これは退屈しないわ。
「プラ、プラ!!」
「ん?どうしたプラスル…って、うお!?」
「ダイナミック…フルフレイム!!!!!!」
巨大すぎる炎がスカル団とそのポケモン達を包み込む。……恐ろし!?ゲンシカイオーガの強い雨でも使えるんじゃねえの…?Zワザヤベェ…リアルに見ると特にな。なんで周りの地形変わらないのだろうか…
「んっ、あれは!?プラスル来い!!」
「プラ?…プラ!!」
「ボーさん…レッツゴー!!」
俺はすぐにボーさんを出し共に飛ぶ。何が起こったのか説明すると、あのチンピラ共のポケモン、もう一体ずついたらしくこっそりと奇襲を狙っていた。
「ボーさん、【かえんほうしゃ】!!三体まとめて薙ぎ払え!!」
「ボゥ…マンダァァァァ!!!」
「ヤト?…ヤトォォォ!?!?」
唯一ヤトウモリだけが気付けたようだがもう遅い。ボーさんの炎が三体を包み…爆ぜた。
「ナイスだボーさん。タイミング完璧だったぞ〜」
「マァンダ〜♪」
頭を撫でてやると気持ち良さそうな声をする。…おっと、みんながこっちみてるな。
「ボーさん、降りてくれ。今度ご褒美やるからな〜」
「マンダ!?マンダァァァァ!!」
「ヒィ!?ボ、ボーマンダッスか!?兄貴、逃げた方が良いっスよ!!」
3人組はすべてのポケモンを戻し、バイクに乗って逃げていった。
……ダセェな。
「大丈夫か2人とも?全く、ちゃんと周りを見てから勝利を確信しろ」
「…………」
……ん?何この雰囲気。
「「「「「誰?」」」」」
「兄ちゃん!!どうしてここに?」
「「「「「兄ちゃん!?」」」」」
あ〜、そっか。そりゃあ知らない人が突然空から降ってきたらビビるか。
「アローラ、皆さん。サトシの兄です。お見知り置きを」
オリジナル要素
サトルの活躍がなかったので、スカル団3人組のポケモンを4匹ずつに。1匹ずつを奇襲させることで勝利しようとしていたがあっけなくボーマンダの前に撃沈。攻撃に気づいたヤトウモリは素質があるかも…?(ないです)
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これからよろしくアローラ地方 …兄弟共々
3話
「アローラ、皆さん。サトシの兄です。お見知り置きを」
「「「「「「「……」」」」」」」
……え?何この空気。
「「うおぉぉぉぉぉ!!!!」」
サトシと色黒半裸君が目を輝かせて叫ぶ。なになにどうしたの?
「兄ちゃん、カッケェー!!」
「今の炎、まるでアーカラの山のようだ…」
「ハハッ!サトルのヤツ、最初っから【ぼうふう】のような勢いでやってくれるなぁ!」
「サトル?サトシのお兄さんって言う人ですか?」
「そうだ。今日からスクールの新しい先生になるからな〜」
あっ、ククイ博士フライング…
「「「「「先生!?」」」」」
「へ?兄ちゃんが先生?」
この子達仲良いな、息ぴったりだぞ?それとサトシ、目をメタモンみたく点にしてまで驚くなよ…
「サトルと言います。多分、君たちのクラスも受け持つからよろしくね」
「マンダァ!!」
突然のボーさんの咆哮に一同驚く。
「すごい…強そうなポケモン!!」
「カッコいい〜!!」
「迫力がすごい!!」
水の子とマオちゃん?と電気の子が寄ってくる。
「ボーマンダだよ。俺の、ポケモンの一体だな」
俺がそうやって3人に説明している合間に、サトシはククイ博士にさっきの炎の子のワザ…Zワザについて聞いていた。話を終えたのかサトシと博士はこちらにやってきて…
「2人とも、【メガトンパンチ】級にいいバトルだったぜ!サトルも、2人を助けてくれてありがとうな」
「いえいえ〜、片方肉親ですし、そっちの子にもなかなか面白い物を見せてもらったんで。なぁプラスル!あの炎、凄かったよな!」
未だボーマンダの背に乗っているプラスルに声をかけると、ひょこっと頭を出して、
「プラァ!!」
と、こちらに走ってきた。…相変わらず、プラスルが四つん這いで走ってくんの慣れんな〜
「プラスル、あの子たちのポケモンはこれから毎日会うことになるからな。仲良くなってこい」
「プラ」
ビシッと敬礼をするプラスル。腕が短くてただただ手を挙げただけになってるのはご愛嬌だ。
「ボーさんもありがとな。またよろしく」
「マンダァ」
「分かってるって、明日みんなでな」
「マンダ!!」
納得もしてもらったことでボールに戻す。なぜあんなに可愛いやつが、前世で悪役っぽいポジションにいたのか…
「…ん?」
「どうしたサトシ?」
「今、ポケモンがいたような気がして…」
ポケモン?そこら中にいるだろ?
「飛んでたんだ。黄色くて鳥みたいで…トサカ?があって…」
はぁ?…ソイツは…まさか…
「まさか、カプ・コケコ?」
ククイ博士がそういった。サトシよ…お前またか…
「メレメレ島の守り神、カプ・コケコを見たのですか?」
「守り神?……さっきの博士の話の島巡りの……」
はぁ…つくづく伝説や神と呼ばれるポケモンに縁があるようだな… 頼むから危ない感じにならないでくれよ…
〜夜〜
俺たちは母さんと合流して、夕食をとっていた。サトシは母さんに今日起こった事を凄く楽しそうに話していた。
「何か良いことあったの?」
「え?」
「だって元気に疲れてるもの」
……やっぱ、母さんには敵わないねぇ、なぁ、サトシ?」
「今日はホントに楽しそうだったもんなサトシ」
「うん!だからさ、先生としてアローラ地方に残る兄ちゃんが羨ましいぜ!!」
サトシ…
「ケーコー!!」
「あれは……」
鳥っぽい声が聞こえた後サトシはピカチュウを連れてレストランを飛び出していった。
「アイツ……はぁ、母さん、連れ戻して来るよ」
「良いわよ。それよりさサトル?」
「ん?」
……まあ、言いたいことはわかるよ。
「サトシのこと、お願い出来る?」
「任せろ」
言われなくても分かってるさ、母さん。
その後、腕にZリングとデンキZをつけてきたサトシに勝手にどこかに行くなとゲンコツを一発入れて許しました。カプ・コケコさん、変なことしないでいただきたい…
〜翌日〜
「凄いんだよククイ博士の家!地下にはね、トレーニングルームまであるんだ!」
朝っぱらからサトシは元気だな。サトシはテレビ電話で母さんと会話している。
今俺たち兄弟がいるのはククイ博士の家だ。サトシがアローラに残ることが決まって、最初は俺の借りてる宿で共に住もうとしたのだがククイ博士が研究を手伝う代わりに、と家に住まわせてくれたのだ。…ついでに俺も。よって、宿はキャンセル。浮いた経費はククイ博士に納めた。俺はあまり食べなくても大丈夫だが育ち盛りのサトシはめっちゃ食うからな。少しでも宿代になってくれればいいのだが…
あ、俺は普通にスーツに着替えてて会話に参加していない。…暑いのにスーツ着る方がおかしい気もするけど…かといって周りに合わせようとすれば、裸に白衣のククイ博士、アロハ…アローラシャツを着てる校長など、ろくな服装の人間がいない。結果無難なスーツになった。…経費で…落ちなかったんです。
「サトシもう行かないと遅れるぞ?」
「ええ!?兄ちゃん早くいってくれよ!ポケモンスクール今日からなんだ。行ってきま〜す!!」
「行ってらっしゃい。楽しんできて!」
サトシとピカチュウがダッシュで出て行く。
「あなたは行かないでいいの?サトル先生?」
「やめてよ母さん。俺は、サトシが荒らしてないかと鍵をかけないといけないからね。ボーさんに頼んだらすぐ着くし」
「そう…サトルも気をつけて行ってらっしゃいね。サトシのこと、よろしく頼むわ」
「うん。じゃあ、行ってきます」
そして通話を切る。
「プラスル、行こうか」
「プッラ!」
「部屋良〜し」
「プラ〜」
俺に合わせてプラスルも指をさしながら言う。
「洗濯物良〜し」
「プラ〜」
「鍵良〜し」
「プラ〜」
全てオッケ〜 さてと、
「みんな出てきて」
俺は4つのボールを投げた。
「マンダ!!」
「……」
「……」
「……」
もはやおなじみボーマンダのボーさん。初登場の無言三人衆、上からギルガルドのガルさん、シャンデラのデラさん、ヨノワールのヨ〜さんだ。ポイントはヨ〜さんって伸ばすところだ。ちなみに無言だが仕草は大きいし表情で感情はわかりやすいぞ。
「みんな今日からもよろしく!!また違う地方で慣れないかもしれないけど少なくとも俺の生徒たちとそのポケモンはいい奴らだから仲良くしてやってくれ」
「プラッ!!」
と敬礼になってない敬礼をするプラスル。
「マンダァ!!」
アローラの空を知ってしまった空飛び厨、ボーさん。
「……!!」
キンキン!と気合を入れて盾を鳴らすギルさん。…【つるぎのまい】まで使わないで。PP減るから…
「……」
腕?をフワンフワン上下に動かしているデラさん。ついに回り出した。
「……?」
寝てたな。って誰でもわかるほど寝ぼけてるヨ〜さん。多分話も聞いてないんだろなぁ…。アローラの日差しでお茶を飲みながら(腹の口から)日向ぼっこする様子が目に浮かぶ。
「じゃあ行くか、後でまたすぐ出すからよろしくな」
ボーさんとプラスルを残し、無言三人衆を戻す。言い忘れてたが必要があればプラスルもボールに戻るからな?
「じゃあボーさん今日もスクールまでよろしく」
「マンダァ!!」
少し飛んでいて、下を見るとピカチュウと競争してるっぽいサトシ。…スーパーマサラ人てすげぇな。ポケモンとスピードで張り合えるんだなぁ… 俺はそんなことできなかったから普通にマサラ人だったけど。
あっ、アローラの風は気持ちいいですね。
本人は気づいていないが、ポケモンに追いつけなかったといってもそれは手持ちの鍛えられているポケモンと比べた結果であり、普通レベルのポケモンなら余裕で追いつける。スーパーマサラ人の血は先にサトルに宿っているのだからね、仕方ないね。
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新任教師サトルと自己紹介
4話
「サトル、アローラ」
職員室までにいろんな子に挨拶された。しっかり教育されてるし、連れてるポケモンも楽しそうだな。こんな感じのスクールをこっち側の地方に増やした方がいい気がしてきた…そして職員室に着くと、
「アローラ、ククイ博士」
最初にククイ博士に挨拶されたので返す。…まだ慣れん。
「サトシは置いてきたのか?」
「はい、ここら辺の地理も覚えないといけないですからね。これも勉強ですから。あっ、俺はもう覚えましたんでしっかりボーさんと飛んできました」
この世界良いなぁ…出勤と退勤、両方空飛んで帰れるんだぜ?前世だったら領空侵犯で撃ち落とされてる。
「もう覚えたのか、【しんそく】並の速さだな」
「意外とすぐ覚えれましたよ。今度の休みにとりあえず全ての島を回ろうと思います。…ライドポケモンで島渡っても大丈夫ですよね?」
「あ、ああ…大丈夫だけど… まさか、全ての島の地理覚えたのか?」
博士が信じられないような目でこっちを見てくる。変なこと言ったか?
「完璧に…ではないですけど主要な街や公共施設などは網羅しました」
「…優秀な講師が増えて嬉しいよ。…おっと、そろそろ朝礼の時間だ。新任の挨拶もあるから、考えといてくれよ」
挨拶!?
「うげっ…俺、そういうの得意じゃないんですけど…てか、今からですか?」
「なぁに、簡単で大丈夫さ。…どうせオーキド校長が微妙な雰囲気を作って誰も気にしなくなるから」
聞かれないように小さな声で言った博士…ポケモンギャグか。…受けは取れないけど良いネタだと思うけどなぁ…受けは取れないけど。
「あはは…分かりました」
その後、滞りなく朝礼と新任の挨拶も済みほかの教職員の人と話したりして時間が近づいてきた。
「よしサトル、教室に行くか」
「了解です。教育係になってもらってすいません。お手数かけます」
朝礼で決まった俺の扱いは、教育実習生に近いものだった。1人の教師の元で学ぶという感じだ。ククイ博士が立候補してくれたのでこうして改めてお礼を言っている。
「良いってことよ。アローラでは人もポケモンも助け合って生きているからな」
「なるほど、街で野生のポケモンが販売品などのきのみを持っていくのはそういうことか…覚えておきます」
旅のとき使ってた携帯できる調理器具持ってきて正解だったかもな〜
「あっ、そういえばサトル先生は生徒たちにどんなことを教えるんだ?」
「そうですねぇ…一般科目やポケモンについてはほかの先生方がしっかりやってくれるでしょうから…う〜ん」
俺だから教えれることとかやりたいよなぁ…
「サトル先生ならではってことか…ここにくる前は旅をしてたんだよな?」
「えっ、はい。まだまだ行ってない地方もありますけど6つの地方を回りました。あとは、息抜きでオレンジ諸島も少し行きましたね」
水の都、アルトマーレも行ったな〜 …俺の前にもアイツらが来てくれると思ってなかったけど。今度行ったらまたお菓子作ってやるか。
「じゃあ、ちょうど良いじゃないか」
「え?」
ちょうど良い?………あっ!!
「そうか、俺が旅してきて体験した事を伝えたらいいのか…現役トレーナーの体験談は大いに興味をそそられるものもあるし、そうしたらほかの地方への興味も出て生徒の卒業後の選択肢も広がる…」
「お、おう…最後のは考えてなかったな」
ボソッと博士が何か言ったが聞こえなかった。
「今日の先生の授業はオーキド校長のポケモンサイエンスの後だな。まあ最初の時間は自己紹介で終わるだろうから、どちらかといえばコミュニケーションの方が大事だ」
コミュニケーション…前世ではマジで無理だったなぁ…
「まあ、良い子達でしたしうちのポケモン達ともすぐに仲良く慣れますよ。今日は全員と触れ合ってもらおうと思いますし」
「プラスルとボーマンダ以外のポケモンもか。どんなポケモンがいるのか気になるなぁ」
「それは出してからのお楽しみってことで」
朝ちゃんと言ったから大丈夫だとは思うけどな…まず無口だからコミュニケーションが取れるかどうか…
「サトル先生、そろそろだぞ」
「っ!…緊張してきました」
「【かたくなる】し過ぎないようにな」
一応、会ったことある子たちだからまだましかな?
「あっ、兄ちゃん、ククイ博士!!」
よく効いた声の主へ顔を向けると…
「おお、サトシ来たか」
「アローラ、サトシ。昨日はよく眠れたか?」
「アローラ!ククイ博士。もうぐっすりでした!」
サトシに楽しみすぎて寝れないという言葉はないからな。なんなら明日しっかり楽しむために寝るっていう感じだ。
「そうか、それは良かった。……ん?それは…Zリング…しかもデンキZまで…カプ・コケコの仕業か…?」
サトシのリングに気づいたククイ博士がチラッとこちらに目を向ける。俺はそうです、と頷き反応を返した。
「へぇ…カプ・コケコがここまで…面白い」
ニヤッとしながらいう博士を、初めて研究者っぽいと思いました。すいません…
「サトシ、楽しみか?」
「うん!楽しい事がいっぱいありそう!兄ちゃんの授業も楽しみだし」
おお…嬉しいこと言ってくれるじゃん。
「そうかそうか、でもなサトシ…せめてスクールでは先生と…いや、面倒だからいいか」
「?」
サトシが首を傾げていると、ネッコアラと話してたっぽいピカチュウもこっちへ来た。
「ピカッ!!」
俺に飛び込んでくるピカチュウをキャッチ。
「うおっ、どうしたピカチュウ?急にこっちに来て…って、こらお前。よだれを垂らすんじゃない。分かった、家帰ってから作ってやるから我慢しなさい。てか、さっき朝飯食べたよね君!?」
「チュウ〜♪」
お菓子をねだってきたピカチュウを撫で回しながらサトシに渡す。
「サトシとピカチュウは元気いっぱいだな。よし、揃ったことだし、教室に入るか」
話していたら教室についていたようだ。俺はネクタイを確認し気持ちを引き締める。
「「「アローラ!」」」
「「「「「アローラ!」」」」」
教室に入ってきた俺たちに気づいたみんながこちらに視線を向ける。カキ君はやっぱサトシのZリングが気になるか。
すぐにみんな席に着き、それぞれのパートナーも側にいる。
「アローラ!!」
サトシが勢いよく挨拶。
「サトシも今日からこのポケモンスクールの仲間だ。わからない事があったら【てだすけ】してやってくれ」
「俺、ポケモンマスターになりたいんだ。こっちの事色々教えてくれよな!よろしく!!」
「そして、今日から先生としてここにきたサトル先生だ。サトシ同様慣れない事が多いだろうから手伝ってくれな」
俺の番か…
「みんなアローラ。カントー地方出身のサトルだ。先生としてここにいるけど、15歳だからみんなとも歳が近い。あんまり緊張せずに話しかけてくれたら嬉しいかな」
その時、カタカタと腰のボールが動き出す。…そうか、出たいよな。
「プラッ!!」
「ピッカァ!!」
俺がボールを手に取る前に勝手にプラスルが出てきた。
「それと、コイツもな。みんなのポケモン達とも仲良く慣れたら嬉しい」
〜サンサンもっと熱くなれ〜
1分30秒ほど謎の音楽が聞こえた気がしたが…気のせいだろう…
自己紹介が終わり、ククイ博士が連絡事項を伝え終わるとみんなはサトシのとこに集まった。やっぱ同年代の子の方が気になるよなぁ… てかやっと名前覚えた。カキ君、リーリエちゃんは覚えていたけどそれ以外がなぁ…とか思ってたんだ。アシマリの子がスイレン、アマカジの子がマオ、トゲデマルの子がマーマネだな。…見た目通りのタイプって感じだな〜
俺とククイ博士はそんな生徒達を眺めていた。みんなやはりサトシのZリングが気になるらしい。それに答えたサトシは、カキ君にZワザについて教えれていた。Zワザは神聖でなくてはならない、か…俺には扱いきれないな、メガシンカで精一杯だ。
「【10まんボルト】と【かえんほうしゃ】ぶつかり合いか…良いねぇ…」
「それ結構大惨事だと思いますけど…」
「ハハッ、良いじゃないか!仲良くなれたんだからな」
「そうですねぇ」
ククイ博士の例えも良いところついてるなぁ…
「よしみんな、そろそろポケモンサイエンスの時間だぜ。今日の講師はオーキド校長だ」
そしてチャイムがなる。気づかなかったけどよく聞いたらポケセンの回復音だ…ハマりそう、耐久動画みたいなの欲しいな。
オーキド校長の授業はなかなか為になった。リージョンフォームについては俺もあまり詳しくはない為、知りたいと思っていた。今回は俺も同席させてもらったが、授業の進め方も上手で尊敬できる。…ただ思ったのが、あのアローラナッシーどっから教室に入れたの?あっ…サトシが吹っ飛ばされたのは自業自得なんで。スーパーマサラ人の体もあるから怪我もなかったし。
次は俺の番だ。
「みんな、次は俺の授業だ。…って言いたいところだけど、俺はみんなと仲良くなりたいしレクリエーション的な感じで遊ぼうと思う。俺のポケモン達も一緒にな」
「兄ちゃんのポケモン!?やったぁ!!俺初めて見るよ!!」
こらこらサトシ、落ち着きなさい。
「その前にお互い自己紹介だ。みんなの事、俺に教えてくれ」
「はいはーい!!私からやる!!」
元気よく手を挙げたのはマオちゃん。
「じゃあマオちゃんよろしく!」
「はーい!私はマオって言います。アイナ食堂の看板娘です!こっちはアマカジ、うちの看板ポケモンで大切なパートナーなんです」
「カジッ!!」
食堂の娘っていうのはゲームと変わってないな。
「へぇ…アイナ食堂の。今度行ってみようかな」
「是非来てください!!」
若い子は元気だな〜
「じゃあ次は…」
「私が行きます」
次に立候補したのはスイレンちゃん。
「じゃあ、どうぞ!」
「スイレンです。実家は漁業をしていて妹が2人います。水タイプのポケモンと釣りが好きです。この子がアシマリって言って、私のパートナーです」
「アウッ」
釣りかぁ…あれはいい思い出と言って良いのかなぁ…
「俺もジョウト地方で釣りはよくしたよ。ハクリューを釣ったことがあるんだが、群ごと怒らせてな。めっちゃ追いかけられたことがある」
「ハクリュー…すごい!!」
キラキラした目で見てくる。あの時はプラスルが頑張ってくれたさ。…【かみなり】一発で終わったけど。
「次は僕の番!」
「マチュ!」
ポケモンと一緒に手を挙げたのはマーマネ君。
「よろしく!」
「僕の名前はマーマネ!いろんな情報を集めるのが好きなんだ!こっちが相棒のトゲデマル。いつもデータを取るのを手伝ってくれる自慢の相棒だよ!」
「マッチュ!!」
この子は多方面で将来有望だな。
「すごいな!俺はそういう細かい作業苦手だから羨ましいよ」
「ま、まーね!…エヘヘ」
「じゃあ俺がいこう」
「おっ、カキ君か」
…この子はゲームで面白かったな。…あの山男はいつ入ってきたのかわからないけど。
「俺はカキ。アーカラ島出身で実家が牧場をやっています。毎朝いろんな場所にリザードンと絞りたてのモーモーミルクを配達しています。相棒はバクガメスで、背中の棘に触れると爆発するから気をつけてほしいです」
「了解、今度ウチのボーさんと一緒に配達手伝うよ」
「ッ!…ありがとうございます!」
キリッとした顔が少し綻んだ。おやっ?楽しみにしてもらえてるのか?
「では、最後はわたくしですね」
「うん、リーリエちゃんよろしく」
ポケモンを連れてないけどまだパートナーがいないのか?
「リーリエです。趣味はポケモンに関する本を読むことやお世話です。まだパートナーはいませんが、いつか必ず!」
「リーリエはまずポケモンに触れるようにならないとね〜」
「うっ…触れます!理論的結論に基づき、私がその気になれば…きっと…」
あ〜、何かトラウマがあってポケモンもさわれないタイプか。
「なるほどね…俺も協力するから少しずつ克服していこうな。前にもそういう子と会ったことがあるけど、小さなきっかけで触れるようになったからさ」
「…はいっ!!」
うん、いい返事だ。
「さてと、じゃあ最後は俺だな」
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激突!メガシンカVSZワザ!
5話
「さてと、じゃあ最後は俺だな」
生徒たちには自己紹介をしてもらった。あとは俺だけだ。
「俺の名前はサトル。カントー地方のマサラタウン出身でサトシの兄だ。今は15歳で10歳の時にいろんな地方を旅したな。それでこいつがプラスル。俺の5年来の相棒だ」
「プラッ!!」
みんな興味深そうに話を聞いてくれている。
「こんなもんかな。何か聞きたいこととかあるか?」
「はい!」
「サトシ…まあ良っか。なんだ?」
「兄ちゃんはどんなポケモン持ってるの?」
またそれか、まあ気になるよなぁ…見せたことないもんな。
「後でみんなの前で紹介するから落ち着きなさい」
「分かった!楽しみだなぁ!」
「俺からも良いですか?」
カキ君が手をあげる。
「なんだい?」
「先生の前髪にある髪留め、何か力を感じるのですが…」
へぇ…キーストーンの力を感じ取るのか。Zワザとメガシンカにも何か共通点があるのか?
「これは特別製だからかな。普通とはちょっと違う鉱石を付けてるんだ」
「あの遺伝子のような模様の石…へぇ…サトルは使い手か」
おっ、ククイ博士は気づいたか。こっちの地方はメガストーンとキーストーンがないと聞いていたけど、まあポケモンの姿はワザにも直結するし知ってて当然か。
「その髪留め、凄い綺麗ですね!」
「おっ、そうか?ありがとな。結構前からつけててお気に入りなんだ」
マオがそう言ってくれる。まあウチのボーさんとの絆の証だから当然だな。
「はーい!プラスルとはどこで出会ったんですか?」
「マチュ!」
マーマネ君が聞いてくる。
「よくぞ聞いてくれた!っと言いたいんだけど、それを語ると時間が足りないんだ。ごめんな」
色々あったからなぁ…
「彼女はいますか?」
「アウ?」
新任教師あるあるだ…スイレンちゃん流石だね…
「居ないよ。ずっと旅をしてたからね」
まだ15だしあんまり求めてないかなぁ〜ってね。同年代でリア充いたらちょっと腹たつけど。
「ええ〜!!先生モテそうなのに?」
いや、そんなことないからマオちゃん。俺ほとんど一人旅だったし、唯一共に行動した女性もヒガナさんだけだったから。…俺のボーマンダナイトを求める1年間のホウエン地方の旅の結果、ヒガナさんがスッとくれたのは良い…悲しい思い出だ。流星の民って何個ボーマンダナイト持ってるんですかねぇ…メガボーマンダ対決させられたし。勝ったけどね。
「俺あんまり人と関わらないようにしてたからねぇ〜 そういうのはないかな〜」
「何故、ですか?」
リーリエちゃんが純粋な疑問をぶつけてくる。
「……後で言おうと思ってたんだけどな。まあいいか、ククイ博士、プラスルの画像とかって見れます?」
「え?あ、ああちょっと待ってくれ………これで良いか?…てか、良いのか?」
真正面から撮影されたプラスルの画像を検索してくれた。
「はい、バッチリです。…これも一つの勉強ですよ。黒板に移したりは?」
「おう、これで出来るぞ」
流石ククイ博士、仕事が早い。……プラスル、傷つけたらゴメン。
プラスルは俺の視線に気づき、笑顔を見せてくれた。
「みんな、これが通常のプラスルだ。そして…プラスル!ちょっとここに来て」
「プラ」
俺が呼ぶと、プラスルはヒョイっと教卓の上に乗る。
「何か違う?」
「いいや、分からん…」
「先生のプラスルの方が毛並みが綺麗」
「スイレン、そこじゃないでしょ」
「兄ちゃん?」
リーリエちゃん以外は分かってなさそうだな。後、スイレンちゃんは若干惜しい。
「あの!」
みんなの目線がリーリエちゃんに集中する。
「先生のプラスル、その…全体的に画像のプラスルより体色が濃いい気がします」
「え、ホント?……あっ、ホントだ!!」
「じゃあ先生のプラスルって…」
「「「「「色違い!?」」」」」
みんな驚いてるなぁ…まあ珍しいか。でも、色違いのポケモンが生まれる確率は確かゲーム準拠だと4000とちょっと分の1くらい。世界中のポケモンの数を考えたら結構多い数だ。でも、あまり見かけない理由がちゃんとある。
「兄ちゃん…プラスルって色違いのポケモンだったの!?俺、気づかなかったよ…」
「流石にサトシは気づいてろよ…もう結構会ってんだから。さてと、リーリエちゃん、さっきの人と関わらないようにしてた理由、分かるかな?」
なんか授業っぽくなったな。
「………色違いのポケモンは珍しいから、無理にでも捕まえようとする人間がいる。…と言うことですか?」
「正解、よく勉強してるね」
リーリエちゃんは座学は問題ないかな?
「プラスル、もういいぞ。ゴメンな」
「プラッ!!」
プラスルはブンブン頭を振り、大丈夫って教えてくれた。
「まあ、ただ色違いってだけだし、今のコイツはたくさん鍛えたからそんなことにはならないけどな。うん、とりあえず質問はこんなもんかな。他にあればまた聞いてくれ」
「「「「「「は〜い」」」」」」
みんな息が揃っててよろしい。
「じゃあ、グラウンドに出るか。俺のポケモン達を紹介しよう」
〜移動後〜
「よし、じゃあみんな出てきて!」
俺は4つのボールを投げ、ポケモン達を呼び出す。
「マンダ」
「「「………」」」
「「「「「「おお〜!!」」」」」」
一列に並んで出てきたボーさんとガルさん、デラさん、ヨ〜さん。
その列にプラスルも加わり、合計五体の俺の全ての手持ちが集まった。
「順に紹介するな。左から、おなじみプラスル」
「プラッ!!」
いつもの敬礼になってない敬礼。
「ボーマンダ」
「マンダァ!!」
勢いよく咆哮する。
「ギルガルド」
「……」キンキンッ…!
盾を鳴らして気合のほどを伝えてくる。
「シャンデラ」
「……」
空中で体を軸に回転したりして踊っている。
「ヨノワール」
「……?」
朝出した時からまた寝てたらしいヨ〜さん。…最近おじいちゃん化が進みすぎて怖いんだけど。
「どうだ?カッコイイだろ、俺の自慢のポケモン達は」
「うん!兄ちゃん、バトルしようよ!俺、戦ってみたい!」
「見た目的に…ゴーストタイプかな?どれも初めてみるポケモンばっかり」
サトシがキラッキラした目でバトルをせがんでくるが…いやいや、ダメだから。マオちゃんは凄い興味深そうだな。
「おっ、シャンデラは炎タイプだな。…良い炎だ」
「迫力ある〜!」
「本で読んだことあります。どのポケモンも進化に特定の道具が必要だったはずです。…凄い!!」
「ゴーストタイプのポケモンってあんまり見たことないんだよね!データを取ってみたい!」
みんながいろんな感想を言ってくれる。
「サトシはまた今度な。リーリエちゃんよく知ってるね。ギルガルドとシャンデラは進化するときに『やみのいし』が必要で、ヨノワールは進化前のサマヨールに『れいかいのぬの』を持たせて人と交換しないといけないんだ」
「む、難しい…」
『れいかいのぬの」に関しては、ゲームでギラティナがいる『もどりのどうくつ』に、余ってた『はっきんだま』をそれっぽいところにお供えしたら喜んで案内してもらえた。多分映画で出た、反転世界との入り口が作りやすいのかな?明らかにこの世界、アニメとゲームが混ざってて情報が不確かだし。…『終わりの洞窟』ではジガルデ・コアにお菓子作ってあげたらめっちゃ喜ばれました。『やみのいし』を3個くれるくらいには… 今更考えたら俺も伝説との遭遇率高い?いや、気のせいか。
「それと、コイツら三体は基本喋らずに身振り手振りで感情表現するからな」
俺がそう言うと、三体とも表情だけにこやかなものになり気分良さそうにフワフワしている。
「マンダ」
「「「………」」」
ボーさんに諌められてちゃんと列に戻る。流石姐さん、纏め役は違うね。…あっ、プラスルとヨ〜さんとガルさんは雄、ボーさんとデラさんは雌だ
「みんな、この子達が俺の生徒達だ。仲良くしてくれよな」
「プラッ!!」
「マンダ」
「「「……!」」」
そして、ポケモン達はポケモン達で集まって遊び始めた。特に、新しいメンバーであるウチのポケモン達は人気で、ジェスチャーでもみんなには伝わっているようだった。…ウチのポケモンのコミュニケーション能力の高さに驚きです。
「カキくん、さっき髪留めについて聞いてきたね?」
「は、はい」
「みんなにこの髪留めの本来の用途を見せる。このメンバーの中でも特に実力もあってZワザも使える君にバトルを申し込む。いいかい?」
ZワザVSメガシンカ…ポケモンとの絆を紡き、形にした者同士のバトル。
「ッ!!ぜひっ!!お願いします!!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「これより、カキとサトルのポケモン勝負を始める。使用ポケモンは一体。どちらかが戦闘不能になったら終了だ。両者ポケモンを」
「頼むぞ、バクガメス!!」
「ボーさん…いや、let's go、ボーマンダ!!」
俺とカキ以外は端に避け、審判はククイ博士だ。
「ボーマンダ、アローラに来てからの初めてのバトル、楽しんでいこう」
「マンダ」
「俺、兄ちゃんのバトル見るの初めてだ」
「え、そうなの?」
「うん、いつも俺とはバトルしてくれなくて…だから、凄く楽しみなんだ!兄ちゃんがどんなバトルをするのか」
「ボーマンダ、これを」
「……マンダァ」
俺はカバンからメガストーン付きのスカーフを取り出し、首に巻く。
「両者準備はいいか?……では、始め!!」
「カキ君、まずは小手調べだ。ボーマンダ!」
「バクガメス!!」
「「【かえんほうしゃ】だ!!」」
「ガメッ!!」
「マンダァァ!!」
二つの【かえんほうしゃ】が激突、そしてそれらは相殺された。
「ボーマンダ、【りゅうのまい】…ギアを上げていくぞ」
「マンダ」
「ッ!させるか、バクガメス、もう一度【かえんほうしゃ】だ!」
「ガメスッ!!」
【りゅうのまい】の途中に攻撃すれば中断できると思っているだろう。実際、集中力が切れて止まってしまう、学校でもまあ多分習うんだろうな。でも、これは教科書通りのバトルじゃない。
「ボーマンダ、維持しながら飛んで回避。…大丈夫、練習通りだ」
本当に集中しているのだろう。無言で回避するボーマンダ。……多分、2回は積めたかな。
「バクガメスに【かみくだく】だ」
すばやさが二段階上がったボーマンダのスピードをバクガメスは捉えることが出来ず攻撃を食らってしまう。
「ガメッ…」
…思ったよりダメージ入ってないな。
「技を使いながら他の動きをするなんて…博士、出来るんですか?」
「いや、そうそう出来ることじゃない。今使った【りゅうのまい】は自身のこうげきとすばやさを上げる技だ。自分の能力を高める技は多大な集中力が必要になってくる。サトルとボーマンダはとてもレベルの高いトレーナーとポケモンだとわかる。みんな、この勝負しっかり見ておくんだぞ。世界を旅してきたトレーナーを観察するんだ」
博士解説ありがとうございます。さてと、
「カキ君、君とバクガメスはこんなもんじゃないだろう。もっと、見せてみろ」
「…言われなくても!!バクガメス、気合いを入れて攻めていくぞ!!」
「ガメッ!!」
俺の言葉で気持ちを入れ直したカキ君とバクガメス。ちゃんとオンオフも出来るし、流石だな。
「バクガメス、【ドラゴンテール】だ!!」
「ガァァメッ!!」
先ほどとは比べ物にならないスピードで近づいてくるバクガメス。
「ボーマンダ、こちらも【ドラゴンテール】!!」
同じ技がぶつかれば、差が出るのは素の能力。しかし…
「一撃にこだわるなバクガメス!!弾いて連続で【ドラゴンテール】!!」
「ガメッ!ガメッ!ガメッ!ガメェェ!!!」
重い一撃を喰らわそうとしたボーマンダの【ドラゴンテール】は躱され、ボーマンダより軽い一撃が何度も繰り返しボーマンダを傷つけていく。
「ボーマンダ!?…まだ行けるな!!周りに【りゅうせいぐん】!!」
「グゥ…!!マンダァァァァ!!!」
必死に耐えながらもしっかり大技を発動し、空から隕石が降り注いだ。
「バクガメス、【トラップシェル】で耐えろ!!」
爆風で周りが見えない……結果は……
「バクガメスとボーマンダは共に健在だが、バクガメスのダメージの方が大きいな。おそらく、あと数回の攻防で決着がつく。バクガメスの場合は、Zワザ一発が限界だろう」
ククイ博士がそう言う。…まあその通りだが、
「カキ君、今の【ドラゴンテール】は良い判断だった。俺もしてやられたよ。【りゅうせいぐん】にトラップシェルを使用した事もだ。隕石が当たる直前にトラップシェルで隕石を爆発させて防いだ…流石、大試練を突破した者だ。敬意を表して、次の一撃で決着をつけよう」
「ありがとうございます!バクガメスいけるな?」
「ガメスッ!!」
いいコンビだな。…でも、俺たちも負けてない。
「ボーマンダ、やるぞ」
「マンダッ!!」
俺は髪留め…いや、キーストーンに指を当てる。
「先生は何をしているのでしょうか?」
「石に…手を当てた?」
「兄ちゃん?……まさか、じゃああの石って!?」
「サトシは見たことあるか。みんな、これもよく見ておくんだ。ポケモンをさらに深く知るには、これも知らないといけないからな」
キーストーンから光が溢れ出しボーマンダも光に包まれる。
「俺たちは、誰よりも早く、誰よりも強く…全てを超えていく!!………………ボーマンダ、メガシンカ!!」
光が弾け、その姿が現れる。…メガボーマンダ。少し角張り羽も大きく、飛行するのに適したフォルムになった。もちろん飛行だけではない全体的な能力向上。
「マンダァァァァァァァ!!!!!!」
「メガ……シンカ……?」
この地方ではキーストーンやメガストーンは発掘されない。…つまりメガシンカという概念が薄い。逆に俺たちがZ技を知らなかったのと同じ事だ。
「今はバトルに集中だカキ君。君が乱れては、バクガメスも全力を出せないぞ」
「ッ…はい!!バクガメス、行けるか?」
「ガメッ!!!」
気合十分、良いねぇ…若い子は。
「俺の全身!全霊!全力!全てのZよ!アーカラの山のごとく、熱き炎となって燃えよ!!」
ポーズを決めているカキ君を目に、俺は指示を出す。
「ボーマンダ、【りゅうのまい】…決めるぞ」
そしてカキ君のポーズが完成し、バクガメスに力が注がれる。
「…行きます!【ダイナミックフルフレイム】!!!!」
「ボーマンダ、両手で【ドラゴンクロー】!!お前の持てる全ての力を出し切れ!!」
巨大な炎の塊がバクガメスから発射されボーマンダに襲いかかる。ボーマンダは真正面から【ドラゴンクロー】で突っ込む形になった。
「無茶過ぎます!!Zワザに対して、真正面からだなんて!!」
「リーリエの言う通りだよ!メガシンカ?って言うのがどれほど凄いのか分からないけど、カキのZワザには…!!」
「リーリエ、マーマネ、憶測で物を言っちゃいけない。それに…見てみれば分かることだよ」
その通り、これは授業でもある。見て、聞いて、試して、学んで、もっと強くなれる。
刹那……爆発……またも煙で何も見えなくなる……
「ボーマンダは!?」
心配するなサトシ、カロス地方でお前だって色んなメガシンカを見てきただろう?
「マンダァァァァ!!!!!」
煙の中から咆哮、ボーマンダは見事にあの炎を打ち破りバクガメスへと迫る。
「なにッ!?」
「ガメッ!?」
「よくやったボーマンダ!!【ドラゴンクロー】!!」
そして【りゅうのまい】を3回積んだボーマンダの鋭い一撃がバクガメスに刺さった。
「バクガメスッ!?」
「ガッ…メェ……」
目を回して倒れたバクガメス。ちなみにこれはゲームでいうひんしではなく、ただ気絶してるだけだ。
「バクガメス戦闘不能!よってこの勝負、サトルとボーマンダの勝利だ!」
ククイ博士のジャッジでバトルが終わる。
「……勝っちゃった」
「凄かった……本当に」
「凄すぎて言葉が出ないよ〜」
「Zワザに打ち勝つなんて…」
「スッゲェ!!」
みんなが驚愕の言葉と視線でボーマンダと俺を見ている。
「ボーマンダ、お疲れ様。最高のバトルだった」
「マンダッ」
そして、バトルが終わったことによりボーマンダのメガシンカが解け、元の姿に戻った。
「バクガメス、良い勝負だったぞ。……強かったな、あの人とボーマンダは」
「ガメェェ……」
「カキ君、これをバクガメスに」
俺は『すごいきずぐすり』と『オボンのみ』をカキ君に渡した。
「ありがとうございます先生。バクガメス、ちょっと染みるぞ」
治療行為もスクールで習ったのか、手際よくしている。…バクガメスが大体元気になると…
「先生、バトルありがとうございました。俺たちもまだまだです」
「いいや、素晴らしいバトルだった。後でちゃんとポケモンセンターに行かないとな」
くすりやきのみで体力を回復したと言っても、体が完全に治ったわけじゃないからな。結局専門的なことは、ジョーイさんが一番だ。
「みんな、ちゃんとみたか?今の現象はメガシンカと言ってだな…」
「サトル先生、教えることだけが勉強じゃないんだよ?」
…なるほど、そういう事か。
「…そうですね、よしみんな、今日のバトルについて自分なりに家で考えてみてくれ。メガシンカとはどういう現象なのか、Zワザとの共通点は?思いつく事をなんでもだ」
「「「「「「ええ〜!!」」」」」」
ハッハッハァ!!頑張れ若人よぉ!!これもまた勉強だ!!…別に前世の俺も学校生活で死ぬほど課題をこなしてきたのに君達だけ無いのはずるいとか思ってないぞ〜
あっ、この後カキ君と一緒にポケセン行きました。カフェっぽいのもあったんで、奢りました。美味しかったです。
オリジナル
サトシは今までの旅の事はちゃんと覚えている。メガシンカやキズナ現象も語る側として話すかもしれない…
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アローラサプライズ!…守り神も添えて
6話
「うおー!いっただっきまーす!」
元気な声がリビングから聞こえる。サトシの奴、本当に飯を楽しむよなぁ…ああいう感性もトレーナーには大事だな。あっ…どうも皆さん、サトルです。現在、スクールでの授業が終わりククイ博士の家…まあ俺とサトシの今の家で夕食の時間だ。俺はククイ博士の料理を手伝い、洗い物をしていた。
「アローラプレート、この地方の家庭料理さ。美味いか?」
「最高最高!!」
サトシよ、美味いのはわかるけどそれは適当な返事に聞こえるからやめなさい。
「そうか?最高か。サトルも一旦切り上げて、一緒に食べないか?プラスル達の分も用意してあるし」
「そうしましょうか。あっ、でも少し時間もらって良いですか?ウチのポケモン達デカイですし、夜が好きなんで、外に用意しないと」
…本音は木造のこの家をデラさんの体の炎で燃やしてしまわないか心配なのだけど…もちろんデカイってのもある。ボーさんは絶対入らないしな。
「了解、夜の外は少し肌寒いから気をつけてくれよ」
「はい」
そして扉をでてポケモン達を出す。
「みんな、ご飯にしよう。今日はククイ博士がアローラ名物のアローラプレートを作ってくれたぞ」
「プラッ!!」
「マンダァ♪」
「「「………♪」」」
おっ、好感触。…なんか悔しいから今度ククイ博士に作りかた教わろう。
「プラァ…プラプラ」
俺の料理の方が好きだって?コイツ……あっ、涙出そう。ありがとうなぁプラスル。
俺がプラスルを撫で回していると、食べ終わったらしいみんなが自分も自分も、と一斉に押し寄せてくる。
「ちょっ、お前ら一気にくるなって…合計で何キロあると思ってん……デウェ!?」
総重量約550キロ。意外も意外、ヨ〜さんが一番重く、次にボーさん。続いてガルさん、デラさん、プラスルだ。いや、今はどうでも良い!!重い!!幸せな重さって分かってるけど重い!!…誰か…助けて…
「マン〜……ダ!?マンダ!!」
ボーさんが気づいたらしく号令をかけてくれた。…ありがとうございます姐さん!!
「ハハッ、サトルの奴、ポケモン達に愛されてるな」
博士、見てたんなら助けてください。夜中にデラさん強襲させますよ?紫の炎だけ見えてめっちゃ怖いですから。
とりあえずみんながアローラプレートを食べ終わったのでプラスル以外ボールに戻す。そしてそそくさとプラスルは中に入ってしまった。…そんなに寒いか。
「ピィカ!」
「プラッ!」
「ピカチュウとプラスルも、イワンコとすっかり仲良くなったようだな」
どうやらすぐに中に戻ったのはイワンコとピカチュウと遊びたかったかららしい。
「イワンコ人懐っこいし。ご馳走さま」
「早いな!?…お前らもか」
俺が中に入ると、すでに食べ終わっていたサトシとピカチュウ達。
「こらサトシ、もうちょっと味わってゆっくり食べなさい」
「十分味わったって兄ちゃん。すごく美味しかったし、おいで、イワンコ」
「アン!」
「全く…じゃあ俺も、いただきます。……美味し!?」
これは確かに食がすすむ!!
「サトルも良い食べっぷりだな。作った側からすると嬉しい限りだよ」
いや、これは……なかなか……アローラプレートって言うくらいだから、アローラでしか取れない物を使ってるのか?
「いてッいててて…」
「おっ?」
「ピィカァ?」
「アンアン!」
「ピカ…チュウ〜」
サトシとピカチュウの首をイワンコがめっちゃ首の岩でゴリゴリしてるな…痛そう。
「イワンコが首のところに岩を擦りつけるのは、仲間同士の挨拶だ。よっぽどお前たちのこと気に入ったんだなぁ」
「へぇ…そうなのかイワンコ?」
「アンアン!」
「いててて…」
その後も嬉しそうにゴリゴリし続けるイワンコ。…ん?こっちにも来た?
「アン!」
「……ッッ、おお〜俺にもしてくれるのか〜。俺もお前のこと気に入ったぞ〜、仲良くしような!」
「アンアン!」
「兄ちゃんすげぇ!痛く無いの?」
「痛いけど、我慢だよ。ポケモンからのアプローチも柔軟に対応しないとな。ポケモンに悪気はないんだから」
「……うん!!」
博士が電話で席を外したけど…誰からだ?
〜翌日〜
「サトシ、ピカチュウ、起きろ。遅刻するぞ」
「ん〜?兄ちゃん?なんでもう着替えて…ッ!?もうこんな時間!?」
「ピカッ!?」
いつの間に家を出たのだろうか、ククイ博士はもうおらず俺とサトシだけ。しかもサトシももう起きてると思って先に支度をしていた。…結構時間まずいな。
「サトシ、今日は特別にボーさんに乗せてってやる。起こさなかった俺も悪いしな」
「ボーマンダに!!やったぁ!!すぐ着替えてくる!!」
嬉しすぎてちゃんと準備し始めた!?
「あっ、ピカチュウ先にこれ食べてて。朝だから食べやすい物にしたけどゆっくりね」
「ピカァ!」
ぽりぽりとフーズを食べるピカチュウ。可愛い。
バチっ!っと腰のボールから電気が…嫉妬すんなって、あとで撫で回してやるから。さっき、ちゃんと朝飯食っただろ?
「どういたしまして。サトシにもパン用意したから、食っとけよ!」
「ありがとう兄ちゃん!いただきます!」
いや、もう準備したのかよ!?
「先に外で待ってるぞ。…ボーさん、頼んだ!」
「マンダ」
ボールから出し今日のコンディションをチェックする。……良さそうだな。
「今日はサトシも一緒なんだけど…行けるか?」
「マンダ!」
任せろ、か。頼りになるなぁ。
「兄ちゃんおまたせ!あっ、ボーマンダ。アローラ!今日はよろしくな!」
「ピカッ!」
首を振るボーさん。
「よし、じゃあ行くか。ちゃんと捕まってるんだぞ?」
「うん!…おわぁ!?」
サトシとピカチュウが乗るとすぐに飛び立つ。…ボーさん、そんなに空を飛びたかったか。まあ、多少高度を上げたらすぐにスクールが見えてくるからそこまで感慨とか無い。
「うわぁ…スッゲェ!!」
景色自体は飛行機でも見てるけど、こうやって島を直接空から見るのは新鮮なんだろうな。
「風が気持ちいいだろ?アローラは本当に空気が澄んでるよな」
「兄ちゃん…」
「ん?どうしたサトシ」
「俺、アローラ地方に来て良かったよ」
「そうか……俺もだよ。さてと、もう着くぞ」
「はっや!?」
「ハハッ、歩くとそこそこ距離があるけど、飛んだらすぐだからな!……ん?」
アレは……あ〜、そう言う事ね。だからククイ博士は……全く。
「サトシ、少し離れたところで降りるから歩くぞ」
「うん」
そして着陸。……着陸で良いのか?まあ俺たちはボーさんから降りた。
「いつもありがとな。今日は重かったろ?」
「マンダァ」
まだまだ余裕、か。
「ありがとうボーマンダ!また乗せてくれよなぁ!」
「マンダ!」
「いつでもどうぞ、ってよ。良かったな気に入られて。前は振り落とされた奴がいたからな」
「え……」
「ピカ……」
うわっ、すごい顔。XYサトシまでだったら絶対こんな顔見れないぞ。
「冗談だよ。ほら、行くぞ」
ごめんなサトシ、冗談じゃないんだ。何故か、少し前に知り合ったハンサムさんだけは振り落としてたんだ…何故だ?
「うん!ピカチュウ、スクールまで競争しようぜ!」
「ピカァ!!」
元気よくピカチュウが言うのと同時に2人が走り出す。
「兄ちゃん、置いてくよ!!」
「お、おい!……全く、カロスから帰ってきた時はすごい大人びてた気がするんだけどなぁ… 俺も行くか」
そしてスクールに到着。するとそこには、出待ちされていてクラッカーとアシマリのバルーンを食らったサトシとピカチュウ。
「「「アローラサプラーイズ!!」」」
「ピカァ?」
「アローラ…サプライズ?」
「なんだサトシ、楽しそうじゃん?」
「あ、先生遅い!!」
「ごめんって」
「驚いたかサトシ?」
「当たり前だろ?」
カキ君の手を借りて立ち上がったサトシ。俺もサトシの隣に立つ。
「サトシと先生のサプライズ歓迎会を開くことにしたんだ!今のは、最初のサプライズ」
「最初?」
「サトシと先生!二つ目のサプライズは僕、マーマネとトゲデマルからの挑戦状だぁ!!」
……マーマネ君、サプライズは先に言ったら意味がなくなるよ?嬉しいけどね。サトシを歓迎してくれてるのは。
「挑戦…?ってポケモンバトルか!?オッケー!受けて立つぜ!なっ、ピカチュウ?」
「ピカァ!」
「「……え?/ピカ?」」
「はいはーい!これは、先に風船を全部割った方が勝ちゲ〜ム!!」
「……えぇ?」
だと思ったよ。まともなサプライズじゃなさそうなのは目に見えてたし。
「風船を割るのは、ポケモンでも人間でも構わないからね」
「なるほどね。ポケモンの技は?」
「もちろん、使って良いですよ!!思いっきりやっちゃってください!!」
マオちゃんは実況とかの才能あるかな?
「……割る?……風船を?」
ニヤッと、サトシとピカチュウが口元を歪める。
「それなら簡単だぜ!!」
「ピッカァ!!」
あーあ、慢心王かな?
「そうだなぁ…let's go、ガルさん」
「……」
「この風船達を全部割ったら勝ちなんだと。行けるかい?」
「……!!」
ブンブンと盾を持ってる手を振り回す。危ないからやめなさい。……ボーさんの【かえんほうしゃ】で焼き払ったら早いとか言わない。楽しまないと。……えっ?ガルさんでもあまり変わらない?ハッハッハッ!……察しの良すぎる人は3積み【つるぎのまい】【せいなるつるぎ】か、耳元【きんぞくおん】のどっちか選ばせてやるぞ♪
……取り乱した。すまない。ちょっと本音が出ただけなんだ。
「よーい!」
やっべ始まる。
「スタート!」
俺とサトシ、マーマネ君が一斉に風船の場所へ走り出す。
「ふん〜!……あれ?結構硬い」
「ビィカァ…チュウ!」
サトシペアはようやく一個ずつ割れたっぽいな。…よし、じゃあ俺も。
「ガルさん、投げるぞ。ほいほいほい」
両手で交互に風船を投げ、宙に浮いたところをガルさんの切っ先で割ったもらう。
「はい」
「マチュ」
「はい次」
マーマネ君はトゲデマルの背中の棘に風船を当てて割っていた。順調だな。
「2人とも早い…」
「サトシもピカチュウも頑張って!」
「ポケモンの技、使っても良いんですよ!」
「そ、そっか」
さっき俺が聞いたのにもう忘れたのかサトシよ…
「よぉ〜し!ピカチュウ、【10まんボルト】で一気に割るぞ!」
「ピカチュウ!!」
「ニヤリ」
「あっ、サトシ、トゲデマルは…」
特性のせいで、でんき技は…てか、マーマネ君、自分でニヤリって言っちゃうのかい。
「ピィカァ…!」
「トゲデマル、チャーンス!」
「マチュ!」
「チュウ〜!!」
「マチュ!」
風船を狙ったピカチュウの【10まんボルト】はしっかりトゲデマルに当たる。…そりゃそうだ。
「えぇ!?」
「ピカッ!?」
ピカチュウの電気をまとったトゲデマル。
「トゲデマル、【びりびりちくちく】!!」
「マ〜チュ〜!!」
体を回転させたトゲデマルは次々と風船を割っていく。
「どういうこと?」
「トゲデマルはね、《ひらいしん》の特性を持ってるんだ。棘で電撃吸収が出来て、しかも電気を技としても放つことができるんだ」
「凄いぜトゲデマル!!」
サトシ…お前カロスリーグで特性《ひらいしん》のメガジュカイン見ただろ…
「おいおい、感心してる場合か?」
「ああっ、しまった!」
サトシが特性のことを聞いてて油断している間にトゲデマルが全ての風船を破り終わる。ついでにこちらも全て割終わった。
「このバトル、マーマネ&トゲデマルの勝ち!先生とギルガルドも惜しかったね!」
「やったね、トゲデマル!」
「マチュ!」
「負けたぁ…」
「ガルさんドンマイ、範囲技、覚えるか?」
「……」
ブンブンと首?刀身?を横に振るガルさん。流石、己の剣は曲げないね〜 カッコいい生き方してるな。
「お疲れガルさん。楽しかったな」
「……!」
ガルさんをボールに戻す。楽しそうだったな。
「サトシ、先生、3番目のサプライズは私達とのバトルです!」
「ん?……見られてる?……俺じゃ無いな。考えられるのは……カプ・コケコがサトシを見てる?…いや、流石に気のせいか」
「兄ちゃん、なんか言った?」
「いやなんでもないよサトシ、じゃあ次は…let's go、ヨ〜さん!」
「ピッカチュウ〜!」
「アウッアウッ」
「……♪」
ピカチュウがトップ、時点でヨ〜さん、最後にアシマリが水辺に向かって走る。……ごめんねみんな、うちのメンツでこれにまともに参加できるのプラスルかヨ〜さんだけなんだ。ボーさんは明らかに無理だし、ガルさんは体が錆びる。デラさんに至っては死にかける。プラスルは泳ぐ気分じゃないとか言いやがるし… 分かってる、ヨ〜さんが走ってないのは分かってる…本当にごめん…
「次はスイミングとランニングを合わせた競技、ポケモンアクアスロン!!勝つのは誰かなぁ?」
「いっけぇピカチュウ!!」
「ピカチュウもアシマリもヨノワールもみんな頑張れ〜!!」
「ヨ〜さん、ペースはしっかりな!」
ペースも何もヨ〜さんはスピードを落とさずクルクル踊りながら走っている(走ってはない)
「ピッカァ!」
陸上でのスピードにおいて分があるピカチュウが一番乗りで水に入った。続いてヨ〜さん。泳ぎに自信があるのかちゃんと水に入り綺麗なクロールでグングン進んでいく。
……でもなヨ〜さん。本当はこんなこと言いたくないんだ…君、足が無いから加速がめっちゃしにくいんだ……
「良いぞ!そのままゴールだぁ!!」
「ヨ〜さん!!腕だけじゃキツいから無理しないで!!つったらヤバイから!!」
「サトシ…そう上手くいくかな?」
その時、ピカチュウの下を影が通った。そう、アシマリである。ちなみに本格的にヤバそうだったのでヨ〜さんはリタイアさせました。…よく頑張った。今度浮き輪買ってあげる…
「えぇ!?」
「ピカ!?」
「もう一息だよ!」
スイレンちゃんがアシマリを追って走る。
「アウ〜!!」
水中から飛び出てビシッとポーズを決めるアシマリ。流石水ポケモン、水中なら敵なしだな。
「よく頑張ったね、アシマリ!えらいえらい!」
「水の中を時速40キロで泳ぐアシマリ!流石です!」
「へぇ」
「ピカチュウゥ…」
「よくやったなぁピカチュウ!!」
「ピカ〜」
タオルでピカチュウを拭いてやるサトシ。うん、風邪引いたら不味いもんな。
「ピカチュウ!!」
そして俺とサトシにカキ君が寄ってくる。
「4番目のサプライズは、俺とサトシ、先生で勝負だ!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「行け行け〜!!」
「頑張れ〜!!」
ケンタロスに乗ったサトシとカキ君を応援してる俺たち。…え、俺ですか?……せっかく企画してもらって申し訳なかったんだけど、俺陸を走るポケモンは酔うんだ…空なら大丈夫なんだけど、揺れるからかな、すっごく酔って…死を感じる…
「サトシ〜カキ君〜俺の分まで頑張れ〜!!」
校舎の上の方でイワンコを抱えたククイ博士とオーキド校長がこちらを見ながら話している。…珍しくイワンコを連れてきてるあたり、博士もサプライズメンバーかな?
そうこう考えている間にカキ君がサトシに勝利。ククイ博士も校庭に降りてきた。
「ククイ博士、イワンコ?」
「俺たちが、5番目のサプライズ。サトシ、ピカチュウ、サトル、ポケモンバトルで勝負だ」
やっぱりね。
「おお〜!!ポケモンバトル…しかもククイ博士と!最高のサプライズだぜ!」
「ポケモン博士とのバトルは初めてだな…楽しみだ」
俺たちが闘志を燃やしていると…
「その前に!アイナ食堂の看板娘、マオちゃんが腕をふるった料理でランチタイムだよぉ〜」
「ランチ?」
グゥ〜…
「お腹減った〜」
〜教室にて〜
「おっ待たせ〜!はい、みんなもどうぞ」
昼食〜。流石に看板娘というだけあって飯もめっちゃ美味い。
「コーケコー!!」
「え?あの声は?」
サトシがそう言って空の方を見た瞬間、目の前にカプ・コケコが現れた。
「おわっ!?」
「メレメレ島の守り神、カプ・コケコ!?」
「初めて見た…」
「サトシ下がれ!!プラスル、伝説級が相手だ、構えろ!!」
「プラァ…!!」
いつもの掛け声なしにプラスルを出し警戒態勢に入る。
「待って兄ちゃん!!大丈夫だから…」
そう言ってカプ・コケコに近づいていくサトシ。
「だが……!」
「会えてよかった。Zリングのお礼、まだ言ってなかったもんね」
「コケー…?」
いや、分かってなさそうなんだけど……
刹那、カプ・コケコの姿がブレて、消えた。
「ッッ!?プラスル、見えるか?」
「プ…プラ!」
マジかよ相棒流石だな。
「なんだ!?」
とてつもないスピードで辺りを飛び回っている。…何が目的だよ?
「うわっ!」
そしてカプ・コケコがサトシの帽子をとったかと思うとそのまま森の方へ飛んで行ってしまった。
「あっ!俺の帽子!!」
カプ・コケコを追いかけ、サトシが行ってしまった。それを追いかけるように他のメンバーも続く。
「博士、俺は先に行きます。博士は後ろからマーマネ君とかリーリエちゃんをお願いします」
「ああ、分かった!」
俺は、マーマネ君とリーリエちゃんを追い抜きカキ君達のところに。
「先生早!?」
「流石、サトシの兄弟…じゃなかった、サトシはこの先です!」
「あい分かった。焦って来るなよ、いそいで怪我をするよりは良い」
「カッコいい…」
「ああ、なんかこう、凄いな先生は…」
俺は丸太を飛び越えさらに先に行く。…カキ君、マオちゃん、スイレンちゃんにキラキラした目で見られたけどその時の俺は知る由もない。
「バトル…伝説級が…?」
サトシとコケコのバトルが始まろうとしていると他のメンバーも追いついてきた。
「5番目のサプライズは、俺じゃなくカプ・コケコか…」
いや、今上手いこと言ってる場合じゃないです。
「わたくし、本で読んだことあります。カプ・コケコは好奇心旺盛なポケモンで昔から島の人たちにポケモンバトルやアローラ相撲を挑むことがあったと」
「分かったよカプ・コケコ!俺たちとバトルしようぜ!」
サトシィ!?もうちょっと考えて行動してぇ!?
「ちょっ…サトシ!」
「クルル〜!!」
あっ、コケコさんもうやる気満々なんですね、分かります。
その後少しの間ドンパチやったサトシとコケコ。コケコはさらにスピードを上げ、まさかのサトシにダイレクトアタック仕掛けていた。が、直前で止まりサトシのデンキZを触る。
「これは…」
おいおいまさか…そういう魂胆か…
「使えってことか?ZリングとデンキZを…」
「カークルルー」
「どうすればいいかさっぱりだけど、やろうぜピカチュウ!俺たちのZワザを!」
「ピカピカァ!!」
ぶっつけでなんとかなるものなのか…?
「サトシ……」
俺とみんなが心配そうにサトシを見ている。
「出せるかな…Zワザ…」
「よぉーし!!」
サトシが両腕をクロスさせ、カプ・コケコに合わせてポーズを決める。
「いっけぇピカチュウ!!これが俺たちの……全力だァァァァ!!!!」
ピカチュウが電気エネルギーの塊を殴ると、カプ・コケコに一直線に飛んでいく。
「でんきタイプのZワザ!?」
「スパーキングギガボルト!?」
サトシとピカチュウの放ったZワザがカプ・コケコを包み、爆ぜた。とてつもない爆風に飛ばされそうになる。……結果は、
「クルル……」
ダメージがあったとは到底思えない様子で浮いているカプ・コケコの姿が… あたりの木がなぎ倒されているので相当の威力はあったはずだが、流石は準伝説級のポケモンということか…
「コーケコー!!」
カプ・コケコが声を上げたと同時に、どこかへ飛び立っていった。
「カプ・コケコ!!待って!!」
「サトシー!大丈夫!?」
「ああ」
「信じられない…あれがサトシとピカチュウの力なの!?」
マオちゃんとカキ君がサトシに駆け寄る。…威力は本当はもっとあっていいレベルのはずなんだが…まだ熟練度が足りないしな。ドンマイ、サトシ。これから成長するさ。
「そのZクリスタル…砕けたか。Zワザを使うにはまだ早いって事だ。…試練だって受けてないしな」
試練…ねぇ… ジムリーダーとして見ると、若干難しいかなぁ… ジムリーダーっていうのは基本、挑戦してきた相手のレベルに合わせてジム用のポケモンを使う。しかし島巡りのぬしポケモン達は、一体しかいないしどちらかというとそのぬしポケモンがトレーナーを認めるシステムだ。実力も高いし、トレーナーに合わせるって事が出来ないから元々実力があるトレーナーじゃないと制覇は難しい。……まあ、そこをなんとかしてポケモンリーグ建設まで持ってくのが仕事だから、おいおい考えますかね。……ゲームの知識から行くとかのスカル団には島巡りに失敗した者が多いっぽいし、注意して考えないと。
その後サトシが島巡り挑戦を宣言して1日は終わった。……頑張れよサトシ。暇な時は特訓につきやってやるよ。……本気で。
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サトルとモミジ、プラスルとマイナン
7話
「ここがアローラ地方……空気も澄んでて、自然豊かで、凄く良いところだと思わない、マイナン?」
「マイッ!!」
「ただ一つ失敗したなぁ……」
「マイ?」
「こんなに太陽が照りつけると思ってなくて日焼け止め持ってきてないし、タイツと七分袖が暑い……」
「……マイ〜」
「あっ!初めて見るポケモンだ!森の方かぁ… マイナン、いってみようよ!」
「マ、マイ!?マイマイ〜!!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜ハウオリシティ〜
「プラスル、なんか欲しいものあるか?」
「プラァ……プラッ!」
「ん、どれだ?……アイス?……ああ、デラさんにか」
「プラァ!」
やあ、サトルだ。サトシが島巡り挑戦を宣言したのが昨日の事。俺はククイ博士に頼まれた買い出しを終え適当に街を歩いていた。
「ッ…プラ」
「今度はどれだ?……湯のみ?ヨ〜さんにだな。確かに最近日向ぼっこしてるけどさ。ゴーストタイプなのに……」
プラスルが選ぶものが大体俺の手持ちのためなものについて。自分のも選んでええんやで?
「プラ?……プラァ」
ないですかそうですか。
「ハハッ、まあまた何か欲しいものができたら買ってやるよ。お前意外と欲がないのな。ここでしか食べれないような物もあるぞ?」
「プラッ、プラプラァ!」
「俺のが良い?要は家に帰ってから作れってことか……分かったよ。みんなの分もな」
駄弁りながら歩いていく。ちなみにプラスルは頭の上だ。コラコラ、髪留めをチョンチョンするでない。崩れたらどうしてくれる…
「ん?……あれは?」
よく見ると森の方に走っていく女の子と1匹。ここら辺で見ない子だな。危なそうだし、ちょっと様子を見にいくか。……ストーカーじゃないからな?
「森は空から見えないし……走るか。プラスル、一旦戻ってくれる?」
「プラッ」
「ありがとう」
素直に返事してくれるプラスル、マジ感謝。
「さてと…ボーさん出てきて。雑用悪いんだけどこれ家に届けてくれる?多分サトシかククイ博士はまだ家に居ると思うから」
「マンダァ」
「よろしくね、俺が戻ったらまたおやつ作るよ」
「マンダ!!」
おやつと聞いた瞬間に全力で飛び去っていくボーさん……もしや俺って手持ちのポケモン達に餌付けしすぎ?
「確か、あの子が行った方向は……獣道に沿ってるな」
じゃあ、let's go俺!……この時、この後スクールがある事はすっかり忘れております。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜森の中、モミジside〜
「ねえねえマイナン、あのポケモンなんて言う子かなぁ?」
私の名前はモミジ。ホウエン地方から夢のためにアローラ地方で修行をするために来たの。名前がジョウト地方っぽいって言われるし、髪が金髪だからホウエンっぽくないとも言われてきた。お母さんがジョウト地方出身で、お父さんがカロス地方出身。小さい頃にホウエン地方に引っ越して生活してる時にパートナーのマイナンと出会ったの。その時はポケモンに詳しくなかったから知らなかったけど色違いのマイナンだったのよね〜。
「マイィ……マイマイ!」
「どうしたのマイナン?宿は予約してるから大丈夫よ。道だって、さっき来た方向に帰れ……ば……」
振り返ると先程歩いた獣道は見えず……
「ね、ねえ…マイナン?」
「……マイ?」
「もしかしなくても私達……迷った?」
「マイ」
「だよねぇ〜 ……初日から迷子とか、私ついてないな〜」
「マイ〜」
こんな呑気に会話してる場合じゃないんだけど……現実見たくない……
「クゥ〜」
「ふぇ?」
「マイ〜?」
「いや、今凄く可愛い声聞こえなかった?」
なんかこう…くぅ〜って?
「マイ?……マイマイ」
「え〜聞こえたって〜」
「クゥ〜!」
「あ、ほらあっちの方から…」
声が聞こえた方を見ると、体の大半が黒くて、頭と肉球がピンク、耳の部分だけカチューシャをしてるみたいに白い熊?っぽいポケモンがいた。
「マ、マイ!?」
「うっわぁ〜!可愛い〜!!なにあの子、初めて見るポケモンだけど凄く可愛い!!」
私の声であのポケモンはこっちに気づいた。
「クゥ〜」
あのポケモンはこっちに笑顔を浮かべ両手を大きく振っている。
「え!?凄く友好的じゃない!やっほ〜!」
私も手を振って近づこうとするけどさっきからマイナンが服を引っ張ってる。
「どうしたのマイナン?マイナンも行きましょ!」
「マイ!!マイマイ!!」
「なんでそんなに必死に首を振ってるの?凄く良い子そうじゃない?」
「マイ〜!!」
遂には涙目。えっ…そんなに…?
「わ、分かったわよ…ちょっと様子を見るくらいなら良い?」
「……マイィ」
渋々…と言った感じのマイナン。ここまで渋るのも珍しいわね。
「クゥ!!」
「…え?」
突然あのポケモンが動き出し、腕を振るっただけで隣の木が幹から折れた。……あの見た目で!?
「マイ!?マイマイ!!」
「早く逃げないと!?……キャ!?」
急ぎすぎて足元の木の根っこでコケちゃった……マズイ……とりあえずマイナンだけは!!
「マイナン、人でもポケモンでも良いから呼んできて!」
「マ、マイ!?マイマイマイ!!」
「良いから早く!!」
「……マイ!!」
決心したのか四つん這いで走ってくマイナン。……ありがとうね。
「クゥ〜!」
「私も逃げないと……痛っ……足怪我してる……でも、気にしてられない!!」
痛みをこらえて走る。多分こっちでしょ。
「クゥ〜」
「あのポケモン足はやっ!?なんでアローラ初日からこんな目に〜!!」
私、モミジ。ホウエン地方からはるばるアローラ地方まで来たの。絶賛、逃走中です。………ふざけるなぁぁぁぁぁ!!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜サトルside〜
「参ったな……ボーさんと話してたせいか完全に見失った……」
さっきから偶〜に幹がへし折られたような木を見るんだけど……この森そんなやばいポケモンいんの?
「もっと急ぐか……ん?」
奥から何か走ってくるな……
「プラスル、ちょっと構えてくれるか…?」
「プラッ!」
プラスルをボールから出し警戒態勢。
「マイィ……」
「プラスル?いや、頰がマイナス……マイナンか」
耳とかが黄緑色だな……まさか色違い?ていうか確かメレメレ島で野生のマイナンなんか見たことないぞ…
「プ、プラ!?」
「おっと、そうだ!!……すまん一回俺のボールに入ってくれ」
そう言って、未使用のボールを触れさせるが反応しない。
「人のポケモン!?……まさか、さっきの子か!マイナン、君のトレーナーはどこだ?」
「マイ!」
色違いのマイナンはさっきやって来た方向を指す。
「そうか、分かった。すぐ行く!ヨ〜さん出てきて」
「zzz……ッ……?」
「寝てるとこゴメンけどこの子運んでプラスルについてきてくれ。俺は先に行く」
「………」
親指だけ立ててグーサイン。
「ありがとう。よろしくな!」
そう言ってちょっと走ると、靴の跡と若干の血。
「この根っこに引っかかったか、血痕は……あの方向!……いた!!」
こういう時だけ、マサラスペックに感謝するよ。
「ッ!?!?マズイ、キテルグマか!」
俺がやってたムーンの図鑑情報には確か……
『ごうわんポケモン』
仲間と抱きしめ合う癖がある。その力で背骨を砕かれて
世を去るトレーナーも多い?………ッッ!?
「いや、怖すぎるだろ!?ちょっ、今まさにその瞬間が訪れようとしてる!?…ガルさん、let's go!!あの子を【キングシールド】で守れ!!」
「……!?……!!」
ボールから出てきて状況を把握したのか、真っ直ぐ飛んでいくガルさん。流石、状況把握能力はウチのメンツで一番だ。
俺も走るが本気のガルさんには追いつけない。…いや当たり前だけどな?
「ギルガッ!!!」
ガルさんが女の子の前に行き【キングシールド】を発動させ、キテルグマの両腕を防ぐ。てか今ガルさん喋った?久しぶりに声聞いたな…… おっと、そんな場合じゃない。
「大丈夫か!!」
「え?あっ……えっと、大丈夫です……」
「詳しくは後だ、とりあえず遠くに逃げるぞ!ガルさん、俺たちが離脱したら、周りの木を切って通れなくしてくれ!」
「ギル…!!」
俺は女の子をお姫様抱っこの要領で抱えすぐに走る。
「ふぇ!?ちょっとあの…こういうのはもっと…///」
「ゴメンけど喋るとした噛むよ!ガルさん今だ!」
「………!!」
俺の合図を受けガルさんも離脱、周りの木を切り倒した。
「クゥ……」
それで興味を失ったのか、キテルグマは別の方向へと歩いていく。……よかった。
「……行ったみたいだな。ふぅ……ガルさんありがとう、おかげで助かったよ」
「………///」
「ハハッ、思わず他人の前で声出した事気にしてんのか?いつも言ってるけどいい声してるんだからいいじゃん?」
「…!!………///」
「ゴメンって…だから頼むから恥ずかしそうに精神操って記憶消すのやめてもらっていいですか!?」
アブナカッタ……
「プラ〜!」
「お、プラスル追いついたか」
「マイッ!!」
「あっ、マイナン!!」
「うおっ、ちょっと暴れないd……うわッ!?」
「へ?…キャア!?」
女の子が動いた時に俺のバランスが崩れて倒れる。
「……いてて、大丈夫?……うん?」
「マイナンゥ……グスッ……ひっぐ……よかったぁ……!!」
「マイ!?…マイ〜」
恐怖から解放されたせいだろうか、思いっきり涙を流してマイナンに抱きつく女の子と、それを仕方なさそうに慰めるマイナン。このマイナンすげぇな。
「ヨ〜さん、ガルさん。頑張ってくれてありがとう。家に帰ったらおやつ用意するから、一旦ボールに戻ってくれる?」
俺が小声でそう言うと、状況を察したのか素直に戻ってくれる。ウチの子達優秀すぎて泣けるわ…
「もう大丈夫だから…安心して。……大丈夫だから」
俺は女の子の頭を撫でて落ち着かせる。ポケモンサマーキャンプの手伝いで夜泣きしてた子達はこれで泣き止んだけど…
「ぐすっ……助けてくれてありがとうございましたぁ……!!」
「うお!?……っと、気にしないで。それよりもさ、俺をここに呼んでくれたのはこの子なんだ。だから、お礼はマイナンにね」
泣きながら抱きついてきた女の子。うーん、煩悩……ハッ!?いかんいかん。
「……そうなのマイナン?」
「マイッ」
「マイナン…ありがどうねぇ〜!!」
「マ、マイィ…」
今度はマイナンに抱きつく女の子。若干マイナンが苦しそうだけど、まあこれもスキンシップだよね。
「プラ…」
「いてっ…わかってるよ。少し周りを見ててくれないか?」
「プラッ!」
プラスルに頰をはたかれた俺だがちゃんとわかってる。
「ちょっといいかい?」
「…はい。何ですか?」
おっ、泣き止んだか。
「君、足怪我してるよね?応急処置だけど、させてもらえるかな?」
「え…あっ、ホントだ。ッッ……痛ッ」
「ちゃんと認識したら痛みが来たかな。ちょっと染みるよ」
「ッッッッ!!……痛いですぅ」
まあ染みるよね〜。
「ゴメンゴメン、はい終わり。ガーゼとか持ってなかったから、手ぬぐいで悪いけど、巻いておくね」
「え!?いえ、そこまでして貰うわけには!汚れますし…」
「気にしない気にしない。それより、立てる?」
「はい、大丈夫でs…いたッ!」
「マイ…?」
「ちょっと難しいか、ほら、どうぞ」
俺は背中を向けしゃがむ。いわゆるおんぶだ。
「ふぇ!?そ、その……」
「…まあ恥ずかしいか、じゃあヨ〜さんに乗せてもr…「それもちょっと!!」……ゴーストタイプのポケモンは苦手な感じ?」
「その……小さい頃、ジュペッタにイタズラされて…それから…克服したいんですけど…機会がなくて」
なるほどね〜。それにしてもジュペッタか、イタズラ系ならゲンガーとかだと思ってたけど。ゴーストタイプのスキンシップはイタズラだったりするしなぁ…個体差あるけど。
「ウチのゴーストタイプ以外で人を運べるのは今手元にいないし、恥ずかしいのはわかるけどおんぶにしようか」
「……すいません、ありがとうございます」
そうしておんぶ。ん〜、女の子って結構軽いのな。
「マイナンはボールに戻る?」
「マイ…」
「一緒に歩く?」
「マイ!!」
仲よさそうだな〜。
「プラスルもそろそろ戻ってくるはずなんだけど……あ、来た」
「プラ〜!」
辺りを見てきたプラスルは手に帽子を持っていた。
「あっ、私のだ!」
「なるほど、プラスルお手柄だな。悪いけど被せてあげてくれるか?」
「プラッ!」
プラスルは器用に、器用に俺を踏みつけながら頭の上に登り帽子をかぶせてあげた。この野郎……俺が今無防備なのをいいことに…!
「プラスルちゃんありがとう!大事なものだから良かった…!!」
「プラッ」
「マイッ、マイマイ!」
「プラ?プラッ!」
「もう仲良くなったみたいですね」
「まあ、プラスルとマイナンは種族的にも似通ってるからな。気の合う部分が多かったんだろう。ホウエンにいた時、野生でもよく仲良くしてたのを見たことあるし」
「えっ、ホウエン出身なんですか?私もなんです!」
マジ?金髪だし、イッシュかカロスとか、外国モチーフ系の地方かと思ってたけど…
「いや、俺はカントー出身だよ。旅はホウエン地方からスタートしてたけどね。オダマキ博士にはだいぶ世話になったよ」
あと、ヒガナさんにもなぁ……
「わ、私もオダマキ博士には良くしてもらいました。この子の事も……お世話になって」
「ああ、マイナンか。まあ色違いは珍しいからな。ウチのプラスルもだけど」
「え?ウチのって……」
「おっ、道が見えてきたぞ」
会話を切るようで悪いが悠長なこと言ってられないんでな。
「さてと、ここからは帰りやす……い……?」
やっと道っぽい道に戻ってきたと思った俺たちだが、目の前にはウチのクラスのサトシたちがいるではないか……え、なんで?
「「「「「先生!?」」」」」
「兄ちゃん!?」
「え、お前たちなんでいるの?」
「いや、先生こそ何してるんですか?ククイ博士が今日は休むって言ってたし……それにその人は……」
ククイ博士……気を使ってくれてたのか……すいません。あんまり心の中で半裸博士とか思わないようにします。
「森の中でポケモンにキテルグマに襲われかけててな。助けてたんだよ」
「「「「「「キテルグマに!?」」」」」」
「え、なに、そんなに……?」
「今、ロケット団がキテルグマに連れていかれて……」
ロケット団……?あの人ら今度はアローラにまで来てたのか。ていうか連れていかれたって……まああの人らならギャグ補正で大丈夫だろうけど、背骨に南無………今度差し入れするか。
「あの……この子達は?」
「ん、ああ、俺の生徒だよ。近くのスクールのな」
「生徒さん!?じゃあ、先生…?」
「まあ、そうだな。最近なったばかりだけど」
「……凄い!!」
……なんかこう、直接褒められるのも気恥ずかしいな。
「スイレン、あの2人なんかいい雰囲気じゃない?」
「先生楽しそう…」
あの2人なんか言ってる?……気のせいか。
「サトシ達はこの後もフィールドワークか?」
「うん!森のポケモンをゲットするんだ!」
「そうか、あんまり奥まで行くなよ。俺はこの子をポケモンセンターまで送って行くから。ククイ博士にも伝えといてくれ」
「分かった!」
「サトシ、誰ロト?」
「俺の兄ちゃんだよ!」
「サトシのお兄さん!?よロトしく!!」
「ロトム図鑑か。よろしくな」
「じゃあ兄ちゃん、行ってくる!!」
「「「「「行ってきま〜す!!」」」」」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
サトシ一行が行った後、俺達はポケモンセンターに到着。
「はい、これで終わりよ。それにしても災難だったわね。森でキテルグマに会うなんて」
「そんなに珍しいんですか?」
「俺も一応、辺りの森は全部見回ったつもりだけど…キテルグマがいるのは知らなかったよ」
「あらあら、サトル君も知らなかったの?まあ滅多に人前に出てこないから知らないのも仕方ないわ」
「へぇ… あっ、俺そろそろ家に戻りますね。今日頑張ってくれたポケモン達におやつ作らないといけないんで」
「分かったわ。じゃあ私は少し休憩しようかしら。今は人いないし」
ジョーイさんがそれでいいのか……
「君も、気をつけてね。マイナンも元気で」
「あっ、はい。ありがとうございました!!」
「マイッ!!」
「どういたしまして。それじゃ」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜モミジside〜
「あの、ジョーイさん」
「どうしたの?はい、お茶をどうぞ」
「あ、ありがとうございます。その…サトルってあの人の名前ですか?」
「え?サトル君言ってなかったのね。そうよ、ポケモンスクールの新任教師のサトル君。たまに此処にも手伝いに来てくれるのよ」
サトルさんって言うんだ。……かっこいい人だったなぁ。
「でも、先生っていうには若くないですか?」
「だってまだ15歳だもの。優しいし、知識もあるからお客さんにも人気なのよ」
「15歳!?私より2上なだけなのに……あっ!?」
「えっ、どうしたの?」
「私……サトルさんのポケモンにちゃんとお礼言ってない……」
「マイィ……」
一方、サトルは……
「あっ!?」
「プラッ?」
「あの子の名前聞いてない……」
「プラァ………」
ククイ家にて
「みんな〜出来たぞ〜」
「プラッ!!」
「マンダァ!!」
「「「………!!」」」
「ボーさん、荷物持って行ってくれてありがとな」
「マンダァ♪」
「ヨ〜さんとガルさんも今日は本当に助かったよ」
「………♪」
「プラスルも警戒してくれて助かった」
「プラッ!!」
「………」
「デラさん悪かったって。流石に森でデラさん出したら燃えかねないだろ?」
「………」
「次のバトルはデラさん出すからさ」
「………?」
「マジだって。久しぶりにバトルしたいだろ?誰としたい?」
「………!!」
「カキ君のバクガメス?」
「!!」
「頼んでみるよ。だから、機嫌なおしてくれな?」
「………♪」
よかったぁ……
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スイレン先生の課外授業、サトシの決意
8話
森で怪我をした女の子をポケモンセンターまで連れていった翌日。サトシたちがフィールドワークをしている間にククイ博士と事務作業をしていた。途中、カキ君たちが来てサトシとマオちゃんがポケモンセンターに行ったと聞いた。
まあ、サトシなら大丈夫だろう。何だかんだ言ってポケモンの事を第一に考えてるし、なんならポケモンの1匹や2匹くらい捕まえて帰ってくるだろう。
その日の夕方、マジでポケモン捕まえて帰ってきた。しかもモクローだと……なぜサトシは御三家ポケモンとの遭遇率が高いんだろうか……モクローの最終進化系のジュナイパーはゴーストタイプだから羨ましい。……にしてもサトシのモクロー、よく寝るな。いつのまにかヨ〜さんが枕にして一緒に寝そうなんだけど……ウチの手持ちに振舞ってたオヤツをちょっとあげたらすぐに懐かれました。……餌付けに思えてきた自分が恐ろしい。いや、喜んでもらえるのは嬉しいけどね?後は……ロトムに、俺が研究用にオーキド博士からもらった図鑑を渡すとすっごい喜んでもらえた。
「なあサトル、今度の海でのフィールドワークの釣りなんだが、スイレンに任せようと思うんだ」
「いいと思いますよ。俺たちの中でアローラの海をよく知ってるのはスイレンちゃんだけですし、俺はなぜかイッシュ地方を旅してからはプルリルが5割くらいの確率で釣れるんですよね」
「ハハッ!ゴーストタイプに愛されてるなサトル。流石はゴーストタイプのジムリーダーだ」
「やっぱそうですよね〜。まだアローラでは釣りをしたことないんで、もしかしたらダダリンとか釣れたり?」
「それは本当にシャレにならないぞ!?まあ、サトルがいれば大丈夫だと思うけどな」
ハッハッハ、ククイ博士でも十分対処出来るでしょうに。
「多分大丈夫ですよ。今回は船を探すわけでもないですし。そういえばライドポケモンはどうするんですか?」
「ラプラスとホエルコがいるから大丈夫だ。問題はリーリエ なんだが……」
「それも大丈夫だと思います。リーリエちゃんなら、ちゃんと準備するでしょう」
「……たしかに。まあ、このくらいか。俺はまだやる事があるから先に帰ってていいぞサトル」
手伝いは……大丈夫そうだな。
「分かりました。それじゃあお先に失礼します」
〜翌日〜
俺とククイ博士はサトシ達に明日の海での課外授業について説明していた。
「ああ!?俺釣り竿持ってないー!!」
「えっ……あっ、サトシの分忘れてた……すまん」
「私の家にたくさんあるから、サトシに貸します」
〜翌日〜
今日は海での課外授業、みんな楽しみにしていたようだ。特に、リーリエ ちゃんはポケモンに触るのを防ぐため宇宙服のような物をきている。
「じゃあスイレン、ここからは君が先生だ」
「あ、はい!」緊張している。
「えと……えと……」
「頑張って、スイレン先生」
「マチュマチュ!」
「しっかりな」
みんな仲良いなぁ。
「皆さん釣り竿は持ってきていますか?」
「もちろん!バッチリだぜ!」
そう言ってサトシはピカチュウのルアーがついた釣り竿を出す。そういうのあるのか……ていうかみんなそれぞれルアーが個性的だな。ポケモン全種類あるのか?
「おお!カッコいい!」
サトシがマーマネ君の釣り竿を見て言う。
「ま、まーね!たとえたとえホエルオーが相手でも折れない強さを持つハイパーロッド!1秒間に300回転巻き上げるスーパーリール!全てを兼ね備えた夢の釣り竿、ウルトラDXマスター02!」
……ごめん、マーマネ君。性能がすごいのはわかるんだけど、名前が長い。
「サトル先生は釣り竿どんなの何ですか?」
「ん、見たいかい?これだよ」
俺はバッグから折りたたみ式の釣り竿を出す。ルアーはオスのプルリルだ。チョイスは何となくです。
「折りたたみ式、スイレンと一緒だね」
「まあ、旅をしてたから持ち運びに便利な方が良かったんだ」
「なるほど〜」
「ふふ、では、ライドポケモンに乗ってください。今日はラプラスの他に、ホエルコも一緒に釣りポイントに向かいます」
じゃあ……
「ホエルコ、よろしくな」
「ホエ〜」
移動中
結構遠くまで来たな……あっ、ヤドンだ。ん?尻尾を水に浸けて……?サメハダー釣れてる!?……そういや、ヤドンの尻尾って甘いんだっけ?あのヤドンすげぇな。
「プラスル、酔ってないか?」
「プラッ!」
大丈夫そうだな。船だったらコイツ酔うんだよな。ボールに戻してるけど
釣りポイントに到着し、スイレンちゃんが説明。流石にカイオーガは釣れないっすよ。釣れたら……ていういたら強制的にホウエンに帰らすわ。……ゲンシカイキなんかしたらアローラ終わるし。ここまでレックウザさん来るとは限らないし。……ヒガナさんに連絡するのダルいし。
「じゃあみんな釣り竿を用意して……そしてルアーを思いっきり海に投げ込む!」
「ピ……ピカチュウ……」
ピカチュウも尻尾を海に垂らす。さっきヤドンは釣れてたけど、いけるのか?
俺もルアーを投げ、時を待つ。
「釣りのコツはウキに反応があったら、そのタイミングで一気に合わせて巻き上げる!」
「ママン!」
「あっ、ママンボウだ!」
おお〜、すごいな。流石はスイレンちゃん、海のエキスパートだな。
「釣れたら、ポケモンフーズで仲良くなってスキンシップ!」
「ママン〜」
あそこまで早く仲良くなるのは人徳か?
その後もサニーゴ、ママンボウ、ラブカス、ケイコウオを釣り上げ仲良くなっていく。
「さすが海のスイレン!」
「よっ、名人」
「匠の技が【だいばくはつ】だ!みんなの調子はどうかな?」
ククイ博士も大絶賛。
「ピカッ?ピカピカッ!」
「来たッ!!」
お、サトシもあたりが来たか。しかし、早すぎたのか、釣れない。
「タイミングが早すぎロト」
ロトムもすごいな、今のでわかるとは。
「来たッ」
マオちゃんにもあたりが来たようだが遅い
「タイミングが遅すぎロト」
「「いちいち、うるさい!!」」
まあ、わざわざ指摘されたら怒るわな。……あっ来た。
「よっと」
「プルッ」
「あっ、プルリルだ!兄ちゃんすげぇ!」
まあ、いつも通りって感じだな。今回もメスか。……やっぱルアーがオスだからか?
「先生の竿捌き……綺麗」
「まあ、旅の途中に結構してたからな。はい、どうぞ。びっくりしたよな〜」
「プルッ!」
「美味いか〜?ありがとうな〜」
「プル〜!」
そして海に帰っていくプルリル。ゴーストパの一体にブルンゲル入れても良いかもなぁ〜
「スキンシップ、慣れてる」
「まあ、プルリルとは良く出会ってたからな。ちなみにこれ、だいたいのプルリルが喜ぶ用に調節したポケモンフーズ。いるかいスイレンちゃん?」
「欲しいです!あと、レシピも!」
「分かった、今度紙に書いてあげるよ」
「サトルもなかなか【あくまのキッス】が得意だな」
ククイ博士、人聞き悪いんでやめてもらえません?その例え。
すこし経って
「カ〜キ〜、釣れないね〜」マオ
「勘違いするな、俺はほのおタイプの使い手、みずタイプとは相性が良くないのさ」カキ
「ふふ、マーマネは?」マオ
「話しかけないで、今波の高低差と風の強さ、水温を入力してポケモンを釣るのにベストなポイントを探してるんだ。さらに出現率を計算してから……」マーマネ
「まず釣り糸を垂らさないか?」カキ
「だから話しかけないで」マーマネ
少し時間が経って
「ん、またお前か、そんなにフーズ美味かったか?」
「プル〜♪」
「先生、またプルリル釣ってる〜。これで4回目だよ〜?」
「流石にもうなくなったから、ごめんな〜」
「プル、プル〜」
腕をブンブン振って今度こそ帰っていくプルリル。なんかまた会いそうだな〜。
「ピカ?……ピカァ!?…ピッ…カチュ…ピィカァ……チュウ!」
「うわっ、コイキング!?」サトシ
まさかのピカチュウも尻尾にあたりが来て釣り?あげたのはコイキング。そのまま宙をまいたどり着いたのはサトシの腕の中。そして逃げたいのかひたすら尾びれでサトシの頰をビンタしている。……コイキングって【はたく】覚えたっけ?
「ピィカァ……」
「き、来ました!」
おっ、リーリエちゃんもヒットか。さて何が釣れたのか……
「ミロカロス!?」
「やるねぇ、リーリエ !」ククイ
「こ、これはレアケース……」マーマネ
「うわっ、野生のミロカロスとか初めて見た」
どっかのチャンピオンのミロカロスしか見たことなかったな。ていうかリーリエ ちゃん引っ張られてるな……助けに行かないと。
「リーリエ 、落ち着いて!」
「待ってろ、今そっちに行く!」
サトシがめっちゃジャンプしてリーリエちゃんの元へいく。しかしミロカロスに弾き飛ばされ海にドボン。盛大に吹っ飛んだな……
そしてリーリエ ちゃんの糸が切れバランスを崩し転倒。本人が持ってかれなくて良かった……
「ミロカロスは?」
逃げたな、多分。
ピー!!
ククイ博士が笛を鳴らす。
「そこまで、休憩にしようぜ!」
そして俺達は近くの砂浜に上がって休憩を取る。
「みんな待っててくれよな!」
「「「フ〜!!」」」
「「「ホエ〜!!」」」
ニョロモやサニーゴなどがいる。結構ポケモン達もいるのな。すっと目を向けると宇宙服みたいなのを脱ぎ、疲れた様子のリーリエちゃん。
「休憩は15分だ!」
ククイ博士の言葉を聞いて休憩する。と言っても俺がする事って言っても遊んでるプラスル達を眺めるくらいなんだが……
と、その時、空からニャースの顔型の気球が降りてきてラプラス達ライドポケモンを捕獲した。……まさか、
「アロォォォォラァァァァ!!生徒諸君!!」
聞き覚えのある声……ハァ……マジでこっちまできたのか。
「なんなのアンタ達!?」
「なんなのアンタ達!?…と聞かれたら……」
「聞かせてあげよう我らの名を……」
さてとアローラでの口上はどんなのかな?
「花顔柳腰羞月閉花、儚きこの世に咲く一輪の悪の華、ムサシ!」
「飛竜乗雲英姿颯爽、切なきこの世に一矢報いる悪の使徒、コジロウ!」
「一蓮托生連帯責任、親しき仲にも小判輝く悪の星、ニャース!」
「「ロケット団、参上!!」」
「なのニャ!」
「ソーナンス!」
おお〜、パチパチ。心の中でだけど。決まってるじゃないか。ニャースに関してはちょっと仲が良いのか悪いのか分からなかったけど。
「ジャリーズの諸君〜」
「ラプラス達はロケット団ライドポケモン部隊に任命したのだ!」
「ポケモン達は頂いて行くわよ……って……ん?ねぇ、アンタ達、あそこにいるのって?」
「誰かいるのニャ……ニャ!?」
「げッ!?」
「「「サトル!?」」」
「あ、どうも〜、久しぶり〜。サカキさん元気にしてる?」
「もちろんお元気ニャ!!……じゃないニャ!!なんでサトルがここにいるニャ!!」
え?なんでって……
「そりゃあ、俺この子らの教師だし?なんならサトシの兄ですぜ?言ってなかった?」
「「「え!?/ニャ!?」」」
俺がそういうと3人は屈んで話し始める。どうせ、聞いてないぞ!とかサトルがいるなら無理じゃない?とか言ってるんだろう。
「兄ちゃんロケット団と知り合いなの?」
「ん?ああ、ちょっと前にな。喋るニャース珍しかったし、エピソード聞いたら泣けてきてなぁ……」
ていうかアニメでだいたい知ってたけどね。ダイアモンドパール以降しか知らないけど。世代的に。
「でも、ポケモンを奪う悪い奴らだよ!?」
「もちろんそこに関しては徹底的にやるさ、なあプラスル?」
「プラッ!!」
サカキさんには注意したんだけどなぁ。ジムリーダーになる前だからあんまり意味なかったけど。あっ、秘書の人は結構タイプでした。
「と、とりあえず、今日のところは引かせてもらう!」
「ライドポケモン以外の雑魚もいるみたいだけど、ついでに頂いて行くわ!」
「……雑魚?」
「ッ!?」
ビビった……スイレンちゃん怖!?怒らせたらいけないタイプだったか……
「それじゃあ……」
「「「帰る」」」
「ソーナンス!」
「させねぇよ、プラスル、【かみなり】」
「プラッ!!」
俺が指示すると、プラスルはロケット団の気球の進行方向に【かみなり】を放つ。
ドゴォォン!!
という音と共に特大の電気が近くの砂浜に落ちる。…プラスル海に落とさないように気を使ったのか。命中率とかいう問題じゃないなこれ、さすが相棒。
「ひ、久し振りにサトルのプラスルのワザを見たニャ……」
「いつ見てもサトルのポケモンすごいなぁ……とか言ってる場合じゃない!!」
ヘイヘーイ、ロケット団ビビってるゥ〜。気球止めちゃって良かったのか〜い?
「ロトム、動くなよ〜!」
ん、サトシが何かするみたいだな。
「ピカチュウ、ラプラス達を助け出すぞ!」
「ピカァ!!」
ピカチュウがロトムに向かって飛ぶ。……まさか、
「【アイアンテール】!!」
ロトムを足蹴にピカチュウはさらにジャンプ。そのままの勢いでラプラス達を捕まえているエネルギーの檻を破壊した。
「「「何!?」」」
「よし!」
「クルル〜」
モクロー今起きたのかよ……マイペースすぎるだろ……
解放されたラプラス達はそのまま下に落下しているが……真下には岩が
「マズイ!岩に当たるぞ!」
「えぇ!?」
俺の手持ちじゃあの量は支えきれない……どうするべきか。
「アシマリ、私たちで!!」
「アウ!!」
するとアシマリが海に潜り岩付近まで到達すると、飛び上がり特大のバルーンを展開した。
「バルーン、発射!!」
「アウッ!!」
バルーンはラプラス達の落下地点で止まり、落ちてきたラプラス達を弾き、海に落とさせた。あのアシマリ、プロか……
「やった!」
「すっげぇ……」
「驚くべき現象を確認ロト!」
「できたねアシマリ!みんな助けたよ、バルーンで!」
「アウッ、アウアウ!!」
アシマリはパチパチと手を叩く。うん、マジで拍手ものだよ。
「こニャー!!」
「なんて事を!!」
「せっかくのライドポケモン部隊だったのにぃ!!」
「……許さない……アンタ達」
……いや、あの……スイレンさん、怖いっす。……俺の出る幕ないじゃないですか〜。
「うるさいわね!行け、ミミッキュ!!」
「ミミッキュ!?マジで!?」
ムサシがミミッキュ捕まえたのか!?良いなぁ、俺もミミッキュ捕まえたいな〜。てかゴージャスボールって……アレ絶対コジロウのコレクションだろ……
コジロウ南無。
「【シャドーボール】!!」
ミミッキュはロトムに乗ってるピカチュウに向けて【シャドーボール】を放つ。……まさかの特殊型?
「バルーン!!」
アシマリがバルーンを放ち、【シャドーボール】を弾き返す。……え、そんなに強度あんの?あのバルーン。
そのまま気球へ直撃。
「モクロー、【このは】!!」
さらにサトシからの追撃。
「じゃあ俺らも一撃入れようk……ん?」
プラスルに指示を出そうとしたが、水平線の向こうから何かがやってくる。
「「「なにこの感じ〜?」」」
「ソーナンス〜!?」
「……水上を走るキテルグマ?データ、アップデートロト」
「ピィカ……」
「……この前サトシが言ってたのって、こういう感じ?」
その後、サトシがバルーンに包まれて落ちたりしたがなんの問題もなし。今日の課外授業も成功?で終わった。
〜夜、砂浜にて〜
「なあピカチュウ……」
「ピカ?」
サトシとピカチュウは砂浜で海を眺めていた。
「兄ちゃんとプラスル。一言でしか指示出してなかったのに、息ぴったりだった」
「ピカ」
「プラスルも、あんなにすごい技を使ってたよな」
「ピカ」
「俺達も、あそこまで行けるかな」
「ピカ……ピカピカ!!」
「……そうだよな。追い越さないとなピカチュウ。よし、!!明日も頑張ろうピカチュウ。目指すは打倒兄ちゃんだぁ!!」
「ピッカチュウ!!」
「サトシ〜、夕飯出来たぞ〜。みんな待ってるから、早く戻ってこ〜い!」
「分かった〜!!……へへっ、行こうぜピカチュウ!!」
「ピッカ!!」
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いざラナキラマウンテンへ!
9話
「行ってらっしゃいククイ博士!」
元気のいいサトシの声が外で聞こえる。今日は休日だけど、ククイ博士は研究者同士の会合みたいなので今しがた家を出た。
俺はというと、まあ朝食の食器の片付けとか博士の白衣の洗濯をしている。……白衣ってあんまり洗うようなものじゃないんだけど、博士は素肌に直に着てるし洗ったほうがいい。
「サトシ、俺も今日は用事があって出ないといけないんだ。留守番頼めるか?」
「うん!コイツらと特訓してる!」
「ピカッ!」
「クルルゥ……zzz」
「アンッ!」
「僕も協力するロト!」
一名寝てるけどいい返事だ。
「そうか、昼飯は作っといたから、適当な時間に食べなさい。キッチンに置いとくからな」
「分かった!」
「それと……俺、用事が夕方までかかりそうだからさ、お使いも頼んでいいか?」
今日の分くらいで冷蔵庫の中身がなくなるからなぁ……
「任せて兄ちゃん!」
「ありがとうなサトシ。……そうだ、これで好きなもの買ってこい」
俺はサトシに少しお金を渡す。
「んじゃ、行ってくる」
「行ってらっしゃ〜い!」
……島間って勝手に飛んでいって良いんだっけ。やめとくか、わからない事をしてミスっても嫌だしな。
「プラスル、出ておいで」
「プラッ」
「一緒に歩こうぜ、面倒だったら頭の上に乗ってて良いし」
「プラ〜」
仕方ねえなと言わんばかりに頭を振り、俺によじ登るプラスル。
「プラァ?」
「ラナキラマウンテンって言ってな。ウラウラ島にあるんだよ。ポケモンリーグ建設予定地?になる筈なんだ」
「プ……ラ?」
難しいか〜
「ポケモンリーグはわかるだろ?あれをどこに作るかって事だよ」
「プラ〜」
「ちなみに雪山だからめっちゃ寒い」
「プラッ!?」
「多分な〜」
まあ、十中八九寒いだろうな。ゲームだとコオリZ落ちてたし(関係ない)
ちなみにボーさんを出してないのはウラウラ島の位置を正確に覚えてないからです。
「見えたぞ、今日はあの船に乗って行くぞ」
街の船着場へ到着。今日乗る船はよくある普通の連絡船だ。
「さてと、じゃあ行こうかプラスル。また、見たことないポケモンがいるかもな」
「プラ?…プッラ!」
〜一方、サトシは……〜
「あーあ……ちらかしやがって……」
いろんな物が散乱しまくったククイ家。遊んでいたピカチュウたちがモクローにぶつかり、驚いて起きたモクローが棚の物を吹っ飛ばし、それで埋もれたピカチュウが電撃を撒き散らす。
サトシが飲んでいたジュースが入ったコップも倒れ服はびしょ濡れだ。
「これは……兄ちゃんに怒られる!?」
「ピカ!?」
「クル…?」
「クゥン?」
「そんなにロト?ちゃんと片付けて、謝ったら許してくれるロト!」
ロトムは当たり前と行った感じでサトシに言う。しかし……
「ロトムは兄ちゃんが怒ったのを見たことがないから言えるけど、怒った時の兄ちゃんは恐ろしすぎるんだ!」
「あのサトルがロト?予測不可能ロト」
「ピカッ!ピカピカ!……チュウ〜」
「ピカチュウもロト?……でも、とりあえず片付けるロト〜!」
原作より、洗濯機やら料理やらの被害がないだけまだマシということは、誰も知る由も無い。
〜サトル〜
「うっし、到着だ!」
「プラッ!」
やって来ましたウラウラ島!え、着くのが早い?ハハッ、なんのことだかわからんなぁ?
「マリエシティ……やっぱジョウトのエンジュシティ似てるな〜。舞妓さんとかいるのか?」
「プラッ?」
マリエシティを歩くこと数分。
「おお〜、あれ五重の塔っぽいな。ヒヒダルマの顔がついてるけど。んっ?羊羹かあれ?プラスル、ちょっと食べていこうぜ」
「プラッ!!」
……街のことを知るのも、仕事の一環だよな!!ウンウン。
バチッ
「すいません調子に乗りました……」
「プラ」
分かればよろしい、さあ早く羊羹をよこせ。……ってことか?コイツめ…
「はい、プラスル。トサキント型だったぞ。すごい食べにくいな!」
「プ……プラァ……」
トサキント型の羊羹……すげぇけど、これを切ることにすごい抵抗がある。プラスルも微妙な顔してんな。
「プ……プ……プラァ!」
おお!プラスルお前勇者か!?がっつり尻尾の部分切った。
「プラァ♪」
「美味いか?じゃあ俺も頂こうかな。………美味ッ!メチャクチャ美味いなこれ」
その後もパクパクと食べ進める俺たち。
「あっ……」
「プラ?」
そして残ったのは、頭部……
「プラスル、お前食べていいぞ?俺は十分堪能したから」
「プラッ、プラプラ、プラァ」
いやいや、そちらこそ。とでも言うように皿をこっちに寄せてくるプラスル。……頭部だけ残ったトサキントとか罪悪感で食えねえよ!?
「遠慮すんなって……なっ?プラスル?」
「プラ……プラプラ……?」
俺たちが謎の意地の張り合いを続けていると……
「ケラ〜」
「「あっ!? / プラッ!?」」
飛んできたツツケラがパクッと食べて行ってしまった。
「「…………」」
「丸く収まった……てことで良いのか?」
「プゥ……ラ?」
少し変な雰囲気が流れたが、気を取り直して行動再開。
「えっと……あ、あのすいません。ちょっとお聞きしても良いですか」
俺は通りすがりのおばあちゃんに声かける。
「どうしたんだい?」
「この島のしまキングのクチナシさんにお会いしたいんですけど、どこに行けば会えますか?」
「しまキングなら………この道をずっと歩いて行ったら交番があってね〜。そこにいるはずだよ」
「分かりました。ありがとうございます」
「しまめぐりの途中かい?」
「いえ、仕事でして」
「若いのに偉いねぇ〜」
「プラッ」
「おや、可愛い子も一緒で」
ちょっと会話をして、もう一回礼を言って俺たちは歩き出す。
「お前がいるおかげで人に話しかけるときも雰囲気が和らぐからありがたいよ」
「プラッ」
「ん?バス停?」
そこには時刻表が書かれている。
「ウラウラ島交番前?………バスがあるってことはそこそこ距離ありそうだな………」
「プラ?」
「いや、バスはちょっと……多分酔う」
「プラプラァ……」
「仕方ない。歩くか。まだ昼にもなってないし」
「プラ」
〜またまたサトシ〜
「よし、なんとか片付いた〜」
「疲れたロト〜」
「ペカ〜」
グデ〜ンとなったサトシ達。先ほどの大惨事を片付け終わった後のようだ。
「なんかお腹すいて来ちゃった……」
「まだお昼前ロトよ?あんまり食べるとお昼ご飯たべれなくなるロト」
「お使い行ったときになんか買って食べるよ!兄ちゃんが作ってくれたのは……これだ!いっただっきまーす!」
作り置きの昼食とポケモンフーズを全員で食べ始める。なんだかんだでピカチュウたちもお腹が空いていたようだ。
「美味い!」
「ピカッ!」
〜サトル〜
「いやこんなところに交番あるのかよ?」
「プラプラァ〜」
結構歩いて来た俺たち。見渡す限り森、という中で道だけが続いている。
「プラスル、疲れてないか?……ってお前は頭に乗ってたんだったな」
「プラ?」
「なんでもないさ。……ん?あれは……」
見えて来たのは、メレメレ島でもよく見かける形の交番。
「あれか……やっと着いたな」
ちなみにプラスルはボールに戻った。寝るらしい。
「アローラ、しまキングのクチナシさんはいらっしゃいますでしょうか?」
「………ニャ〜」
「え!?……ビビった、ニャースか」
足元を見たら沢山のアローラニャースがいた。
「ここを溜まり場にしてんのか。……にしてもくつろいでんな」
「はぁ〜、誰だあんちゃん?」
おっと、奥から人が……
「この度アローラ地方にポケモンリーグを作る協力のために、カントー地方ポケモン協会より派遣されて来ました。ジムリーダーのサトルです。以後お見知り置きを」
出て来たのはやる気のなさそうな中年のおっさん。
「そんなかたっ苦しいのはやめてくれ。俺はクチナシだ。……でわざわざこんなところまで何の用だ?まさかしまめぐりじゃないんだろ?」
「はい。ポケモンリーグをどこに作るか、という点で候補を何箇所か絞ったのでその視察に来ました。つきまして、ラナキラマウンテンに入りたいのです。その許可をいただきたいと思いまして」
ダメなのに勝手に入って、ジムリーダーの品格を落とすわけにはいかない。
「そんなわざわざ許可なんぞ取りに来なくても……勝手に入っていいぞ。ほら許可は出したから、行った行った。俺は忙しいんだ」
この人よく警官としまキングになれたな……
「はあ……分かりました。では失礼します。お忙しい中すいませんでした」
俺は出て行こうとする。しかし……
「ちょっと待ったあんちゃん。サトルって言ってたな。ジムリーダーって事はタイプ統一してんだろ?何タイプだ?」
「一応、ゴーストタイプですけど?」
三体しかいないし、ボーさんとプラスルがいるから統一はしてないけど。
「……ZリングとゴーストZ、欲しくないか?」
「は?」
突然何を言いだすんだこの人、唐突にやる気出して。
「なんだ、欲しくないのか?」
「どっちかって言われると、必要ではないですね」
「へぇ……どうしてだ?」
「過ぎた力は人を堕落させますし、何より私はしまめぐりの儀式を受けていません」
「しまめぐりなんぞ形骸化してるだけだ。別にしまめぐりを受けていなくてもZリングとZクリスタルを持っている者もいる」
しまキングが言うセリフじゃないな。
「だからですよ。カプに気に入られたなどのような特殊な事例以外で特別扱いをされるのは嫌なんです。私は……人の努力を、否定されたくはない。それはその人が必死の思いで積み上げて来たものだから」
まず、俺はキーストーンとメガストーンも持ってるしな。ゲームで言うところのグズマとか、スカル団のような奴らが生まれる原因の一つだ。
「……なるほど、サカキが自慢していたのも分かる」
「今何かおっしゃいました?」
「なんでもねぇさ。いやすまん。もういい、その言葉は人前ではあんまり言わない方が良い」
「はぁ……ご忠告痛み入ります。では失礼します」
なんだったんだ?
「ニャ〜」
「ん、じゃあな」
俺は外に出てあらかじめ聞いていたラナキラマウンテンの方に進む。
「変な人だったな。……ここなら出せるか。ボーさん」
「ガウッ」
少し広めの道に出てボールからボーさんをだす。
「ここからあの山まで頼めるか、結構寒いから近くまででいいぞ」
「マンダッ!」
「じゃあ……GO!」
一気に飛翔する。
「今日もいい調子だなボーさん。最近こんな感じばっかりでごめんな」
「マンダ」
大丈夫、と首を振って伝えてくれる。
「んー……あの場所にしようか」
「マンダァ」
俺が指定した地点にしっかりと足をつけ着地。
「ありがとうボーさん」
そしてボールに戻す。
「プラスルは……まだ寝てるだろうな」
まあ一人で行くか。ちゃんと上着持って来たしいけるだろ。
「おっ、ユキワラシだ。あれは……白いロコンて事はアローラの姿か」
こおりポケモンがやっぱり多いな。チラッとこっち見てくるけど慣れているのか素通りしていく。
「コォン」
「ロコン、どうしたすり寄って来て?食べ物か?こおりポケモンが好みそうなものは……」
「コン!」
「うおっと……どうした?」
ロコンが俺のズボンを噛んで引っ張っている。
「こっちに来い、って事か?」
「コンコン!」
何があるのか、どうして俺なのか、疑問は多いがまあ行ってみるしかない。
ついていくと、そこそこ大きい洞窟が見えて来た。そこでロコンが止まりこちらを見てくる。
「コォン」
「行けってか?分かった」
俺は1人で洞窟を進む。ズバットの鳴き声が聞こえるけど襲ってこないあたり様子見ってところか。
「なんかさらに寒くなって来たな……プラスルはボールの中にいてよかったかもな」
今回はデラさんの出番かな。相手によるけど。
さらに進むと光が見えて来た。
「あそこか、一体何が……ッ、眩しい」
光に目をやられたが少し待つと回復。そして見えた光景は、
「ッ!?こんな場所があったのか……」
とてつもなく広い空間、空が見えるので山は貫通しているのだろう。しかも周りには花が咲いている。この寒さで、よく咲いている…… ポケモン達の姿も見える。憩いの場、と言ったところか。
「ロコンはなんで俺にここへ来させたのんだ?人間が踏み込んでいい領域じゃないぞ……」
「クォーーーーン!!」
「ッ!!この声は……?」
目を向けるとこ、この場所の中心でこちらを向き寝そべっているキュウコンの姿があった。
俺は近づき話しかける。
「俺を呼んだのはお前か、キュウコン?」
コクッ、っと頷く。
「どうしてだ?なあキュウコn……ッ!?……それは」
キュウコンはその体を丸めて、タマゴを温めていた。
「そうか……お前、その子を産むのに頑張ったんだな……」
体力を消耗しすぎたのか震えているキュウコン。俺は専門家ではないけど、これくらいは分かる。
このキュウコンはもう長くない。産んでから今までもわずかな体力で守り続けて来たのだろう。他のポケモン達も集まって来た。
「良いのか?野生のアローラのキュウコンは確か人間を避けていたはずだ。人間である俺をここに招かないほうがよかったんじゃないのか?」
「クォン」
キュウコンが別の方向を見る。そこには赤色が目立つポケモンが……
「……カプ・ブルル。ウラウラ島の守り神か。つまるところ……認められたって事で良いのかな」
どのタイミングで……あっ、そういやクチナシさんが変なこと聞いて来たな。あの時もいたのかカプ・ブルル。
「クォン」
「もう一つ聞きたい。それは、カプ・ブルルが認めたから、じゃなくてお前の意思か?お前が、その子を本当に守りたいから俺に……人間に預けるのか?」
俺はキュウコン目を見て聞く。
「クォーーーーン!!」
「……お前の気持ち、しっかり受け取った。任せろ」
俺はキュウコンに近づき、タマゴに触る。冷たいけど暖かい、命の温もりだ。
俺はカバンからタマゴ用の携帯カプセルを取り出す。なんでこんなの持ってるかって?使うかもしれないと思って買ってたんだよ。
「今からタマゴをこれに入れるんだ。何かしてあげるか?」
「………クォン!」
「おお……」
キュウコンはオーロラベールを発動し辺り一面に広げた。
「見えてないだろうけど、きっと伝わってるぜ」
親からの我が子に対する最期の愛情。
「この子に相応しいパートナーを絶対見つけてやる……じゃあな」
そして俺は洞窟を出る。
「コォン……」
「ロコン、待っててくれてたのか。もしかして、お前の兄弟になる予定だったか?」
「コン!」
元気よく返事するロコン。
「コイツは俺たちがちゃんと育てるから、安心しろ」
「……コン!」
信じてくれたようだ。
「ボーさん出てきて。今日はこのままメレメレ島に帰るよ」
「マンダ?」
「ああ、このタマゴをオーキド校長に預ける。俺よりは詳しいし、ちゃんと対応してくれるからな」
「マンダァ!」
サトシ達が持ってきたタマゴもあるから扱いはわかるだろうしな。
「朝くらいの速さで頼む。丁重に扱わないといけないしな」
「ガウッ」
そして俺は、ポケモンスクールに向かい、休日出勤していたオーキド校長に話を通して、タマゴを預かってもらった。俺自身の手で孵化させるには他の仕事が多すぎる。オーキド校長が暇ってわけじゃないけど、引き受けてくれたことには感謝だ。
「……もう夕方か。帰るか、サトシの奴ちゃんとお使い言ってくれてんのかな……」
ひと段落ついて、どっと疲れが襲ってきた。
Pi Pi Pi……
「ん?誰だ……アローラ?」
『アローラ、サトル!もう用事は終わったのか?』
どうやらククイ博士のようだ。
「ククイ博士、今ちょうど終わりましたよ。博士の方もですか?」
『さっきな。今サトシとマーマネと一緒なんだが、これからアイナ食堂で夕飯なんだ。来れるか?』
マーマネ君も?
「スクールから出たんですぐ行けますよ。てか、サトシにお使い頼んだんですけど荷物大丈夫なんです?」
『あー、そのことなんだが……かくかくしかじかで……』
デパートでロケット団?あの人ら懲りねえな。まあ、仕方ないか。
「了解です。じゃあすぐ行くんで先入ってて下さい。【ウルトラダッシュアタック】で行くんで!」
『おう!じゃあお言葉に【あまえる】をして【さきどり】して待ってるぜ』
「『………ハハハ!!』」
その後、無事合流しみんなで夕飯を食べた。飯に反応して起きてきたプラスルも一緒にな。
………本来の目的である、ポケモンリーグ建設候補地の視察はすっかり忘れていた。仕方ないね、結構濃い1日だったし。
今回は完全オリジナルで、リーリエ のロコン出生の秘密を書いてみました。アニメではまだ語られていない事なので勝手にやっちゃって良いのかわかりませんでしたが、まあ大丈夫でしょっというノリです。
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ニャビーとムーランド、新たな出会い
そういえば新しいポケモンの最新情報が出ましたね。自分は野生のゴルーグがシングルエンカウントで出てた画像を見てテンションが爆上がりしましたね。……スイッチ持ってないんですけどね。……スイッチほしいなぁ……
10話
今日はククイ博士が俺たちの昼飯を作ってくれた。普段は俺が作っているが、ククイ博士も料理ができるからな。たまにやってくれるんだ。しかも美味いんだから、楽しみが増えるってもんだ。
そして現在はスクールにいる。朝、登校中のサトシが野生?のニャビーに昼飯を取られていたから血涙を惜しんでサトシに俺のコロッケサンドをあげた。コロッケサンドはサトシのために犠牲となった。サトシの成長に関わるからまあ全然良いんだけどね。……俺?前世で超えれなかった170センチ超えたから満足だよ。
「で、なくなった昼飯を買いにきたわけですが……」
「プラ?」
コイツ誰に向けて言ってんの?みたいな視線を感じる。
「言っとくけどお前の分もピカチュウにあげたからな?」
「プラ!?」
「だから今買いにきてるんだよ。あそこのマラサダ屋でいいか?」
「プラッ」
立ち直りが早くて結構。
「好みのやつ選んでいいぞ」
そしてマラサダ屋についた。
「アローラ!何にいたしましょう?」
「アローラ。う〜ん……プラスル、先に選んで」
「プ〜ラ〜……プラッ!」
プラスルが選んだのは甘いマラサダだ。
てことは……すばやさが上がる系の性格?……ゲームのシステムってこの世界でも通用するのか?
「じゃあ甘いマラサダと……大きいマラサダ2つください」
「かしこまりました!……………お待たせしました。こちら甘いマラサダ1つと大きいマラサダ2つです!お買い上げありがとうございました〜!」
マラサダを買った後俺たちは近くのテーブル席に座った。
「ほいプラスル。喉に詰まったらいけないからゆっくり食えよ〜」
「プラ〜………プラ!?」
「ああ!だから言っただろ!ほら水だ。落ち着いて飲むんだぞ」
「プ……プ……プラ〜」
「美味いか。じゃあ俺も……美味い!」
そんなこんなで俺の昼は過ぎていった。
〜放課後〜
「よし、後は……洗剤だな」
「洗剤?」
現在スクールの授業も終わりククイ博士とサトシと共に街に買い出しに来ている。食材は買ったので後は日用品だな。
「食器用とか洗濯機用とか、大体のものの詰め替え用のやつでしたよね?」
「そうだな」
俺たちが話していると、野生のニャビーがサトシの横をすぐに通り過ぎた。
「あっ!待てー!」
「お、おいサトシ!どうしたんだ!」
「僕が説明するロト!」
ロトムの説明によると、コロッケサンドを取られたのでゲットしてとっちめてやろうという算段らしい。……いや、どういうことだってばよ。
俺と博士がサトシを追いかけると、俺がいつもきのみを買っているおばあちゃんのところにサトシたちとニャビーがいた。
「俺のコロッケサンド〜!!」
「俺の分あげたんだから我慢しなさいサトシ」
「また作ってやるよ!」
コロッケサンドの恨みっていうか、取られたこと自体が悔しそうだな。
その後も一日中ニャビーのことを考えていたサトシ。クッションとモクローを間違えたりと色々ミスっていた。
〜翌日〜
午後までしっかり教師としての仕事を終え、夕方になり今から帰ろうかという時間。ククイ博士は先に帰っているので後は俺が職員室の鍵を閉めるだけだ。……という時に、カキ君がリザードンに乗って俺のところにやってきた。
「アローラ。さっきぶりだねカキ君、何かあった?」
「いえ、サトシがポケモンセンターからニャビーを追って走って行って……通りすがりにサトル先生に伝えておいてくれって頼まれて」
「あ〜……了解。わざわざありがとう」
全く……いつもいつも考えなしに行動して……まあ、それがサトシのいいところでもあるし、ポケモンとの触れ合い方なんだろうな。
「何か変わった様子はあった?」
「えっと……ニャビーがエレザードカラーをつけてて……あっ!サトシの腕に引っかき傷とか噛み傷とかがたくさんついてました。多分ニャビーにやられたんだと思います」
「なるほど……なあカキ君。サトシってさ、どういう奴?」
「え…?」
「まだ短いけど、一緒に過ごしてみてどんな印象?」
サトシなら多分大丈夫だろう。ポケモンに対する愛情は、誰にも負けてないからな。心配だけど、だからこそっていう信頼感もある。そのかわり、幼い頃に同年代の子からの印象は良くなかったからどうしても気になってしまう。
「そうですね……なんというか、不思議な奴です、サトシは。最初は変な奴だなって思ってたんですけど、サトシのモクローとか見てると、ポケモンのことが大好きなんだなって思います。悪い奴じゃないですし、友達です」
「そうだね。俺もサトシの1番の魅力はそこだと思う。突然の事だけど、ありがとう。これからも仲良くしてやってくれな」
「ッ、はい!もちろん!じゃあ俺は帰りますね」
「うん、気をつけて。わざわざありがとう」
「はい、ではまた明日!」
そっか……サトシも成長したんだなぁ……なんか感慨深いなぁ……うん、このまま帰るか。サトシは……夜には帰ってくるだろ。
〜夜〜
「ククイ博士!鍋こんなもんですか?」
「ん〜……そうだな。もう少し火を通しとくか」
「了解です」
「プラスル、アイツらの様子見てきてくれ。もうすぐ飯ができるってのも加えて頼む!」
「プラ〜」
自分でドアを開けて外に出るプラスル。器用だな……夜は俺の手持ちを全員出している。一日中ボールの中ってのも気が滅入るだろうしな。ヨ〜さんがフラフラ〜っとどこか行きそうだけどボーさんがちゃんと見ててくれるから安心して任せている。さすがウチの姉御。ボーさんもウチの面子に当てられたのか夜が好きだからな。
「このくらいか……こっち出来ました。何か手伝いますか?」
「いや、ちょうど俺も終わったところだ。後はサトシが帰ってくるのを待つだけなんだが……」
「プラ!」
「ん、どうした?」
「たっだいま〜!」
「完璧なタイミングだな」
ちょうどサトシが帰ってきたみたいだ。
「お帰りサトシ……って、どうしたそのニャビー?」
「実は……」
かくかくしかじか。……ふむ。ペルシアンのリージョンフォームがね〜。まああくタイプは悪知恵働くし、そういう奴もいるわな。野生か?でも街の方に逃げたんだったら人のポケモンか。……猫かぶってんだな多分。いやペルシアンは猫だけど。
「サトシ、傷だらけじゃないか!?」
「あっ本当だ。救急箱どこだっけな……」
「これくらいへっちゃらだって!な、ニャビー!」
「……ニャウ」
えーと……確かこの辺に……あ、あったあった。
「プラスル、ちょっとニャビーと遊んでてくれ。あ、エレザードカラーは外さないようにな」
「プラッ」
「ほらサトシ、ちょっと傷見せろ」
「え、うん。ニャビー、大人しくしてるんだぞ」
「しみるからな……」
「だから大丈夫だって……ッ!?いったぁ!?」
まあ、痛くしてるし。これでも説教の代わりにはなるだろ。
「よし、これで大丈夫だ」
「すっごく痛かったんだけど!」
「ニャビーを助けたっていう証だろ?カッコイイじゃねえか」
「……たしかに!」
「よし、手を洗ってうがいしてこい。もう飯だからな」
「よっしゃあ!ご飯だ!」
そんで俺らは飯を食った。ニャビーは少し落ち着いた様子で、サトシの膝に収まっていた。野生のニャビーはなつきにくいって聞いたんだけどな……サトシだから出来るんだろうなぁ。
少し羨ましいけど、俺は自分の手持ちで精一杯だからな。俺の手の届く範囲は狭いから。
「……全く、毛布くらいかけて寝ろよ。アローラの夜は寒いってのに」
俺はサトシに毛布をかけニャビーを包み込むようにかける。何か違和感が……なるほどね。
「鍵は開けておくけど、抜け出そうなんて思うなよ?ニャビー」
ピクッ
ちゃんと聞こえていたのか一瞬耳が動く。
「俺も寝るか……明日も早いしな〜」
俺はロフトから降りて鍵を開け、自分の寝床に戻る。
少しすると……
「ニャ、ニャビー!?」
サトシの声が聞こえてきた。……やっぱ俺も行こう。夜に保護者なしで出歩くのはマズイからな。
サトシが走っていったのを後ろから見届けてから、
「デラさん!いるか?」
「………?」
ちゃんと声が聞こえたらしく、空から戻ってきたデラさん。
「出番だよ。ボールに戻ってくれ」
「………!!」
喜んでる……やっぱアローラに来てから出番一度もなかったからな……
「さてと……行きますか!」
俺の携帯にはロトムの位置情報分かる奴が付いてるから位置は問題ない。ククイ博士が付けてくれたから大丈夫でしょ。
それから少し走り、森の方へ近づいていく。
「ペルシァ〜」
「ん、今の声は……」
ペルシアンか…… まさかニャビーを追いかけてんのか?しつこいな。
すると、草むらからペルシアンが飛び出し、サトシたちの方へ走っていった。
「クソッ、出遅れた。急がないと!」
さらに走る。もう、街は見えない。……結構深くまでいくんだな。
そしてもう古くなっている屋敷が見えた。
「あそこか!」
俺は走る速度を上げ、屋敷の中に入る。
「サトシ!」
「え、兄ちゃん!?」
中に入ると、サトシとピカチュウ、ロトム、ニャビーがいて、ソファに見るからに老齢のムーランドもいる。
「そういう事か……いや、とりあえず外に出るんだ!もうすぐ…」
「ペルシァ!」
……ッ!間に合わなかったか。
全員が声の方を向くと、割れた窓ガラスから侵入したらしいペルシアンがこちらを見ていた。
「シァ!」
「ヤバイ!みんな外に出ろ!let's go!デラさん、【まもる】!!」
おそらく、【はかいこうせん】と思わしき技の発射態勢になったペルシアンを見て俺はデラさんを出す。
「………!!」
全員が逃げた後デラさんはしっかりペルシアンの攻撃を防ぐ。
そして俺たちも外に出てペルシアンに備える。ペルシアンが出てくると、
「しつこい奴だなぁ………」
サトシがそういう。
「あくタイプらしいからな……仕方ないんだろ」
「ムーランド、下がっててくれ!」
「ニャウ!」
「ニャビー、無理はするなよ」
俺たちとペルシアンはにらみ合い……
「ピカチュウ、【10まんボルト】!!」
「ニャウ!!」
「狙いすぎだサトシ!デラさん、【シャドーボール】!少し上を狙え!」
「……!」
ピカチュウとニャビーの攻撃をジャンプして避けたペルシアンだが、ジャンプしたところに【シャドーボール】が直撃。しかし……
「ペルシャァ!!」
「チッ、やっぱ効かないか」
あくタイプには相性が悪い。なんでもなさそうにペルシアン頭を振り、ムーランドに迫る。
「危ない!」
「なっ、サトシ!?」
ペルシアンがムーランドに向けて繰り出した【ひっかく】をサトシが腕で受ける。
無茶しやがって!!
「どきやがれ!!」
俺はペルシアンに体でぶつかり引き離す。ポケモン虐待に引っかかりそうだけど仕掛けてきたのはあっちだし仕方ない。
その後、ニャビーが【ひのこ】で牽制するがもろともしないペルシアン。仕方ないと俺がデラさんに指示を出そうとすると……
「ウォッフ!」
ムーランドがニャビーに向かって何かを伝える。
「ニャ〜……ウ!!」
「ペルシィァ!?」
先ほどとは比べものにならない大きさの【ひのこ】が放たれ、ペルシアンに直撃した。……あれ【ひのこ】とは言いたくねぇな。
焦げた自分の体に驚いているペルシアンに俺は追撃をかける。
「デラさん、【あやしいひかり】」
止まっているペルシアンに外すわけもなく混乱状態にする。 俺はペルシアンと目を合わせ、
「お前は主人の言うことを忠実に守り、他のポケモンに悪さをしない良い子だ。違うか?」
「ペ……ルシァ……?」
「ポケモンが他の子をいじめてたら助けたい、だよな?」
「ペル……シャア」
「うん、良い子だ。お前の主人が待ってるぞ。早く帰って元気な姿を見せてあげな」
「ペルシァ!」
ペルシアンは俺の言葉に同意を示し、帰っていった。
「ふぅ……この手段使いたくはなかったんだけどな。これでもう悪さはしないだろ。デラさんもごめんな」
「………」
フルフルと首?体?を振り気にしてないと伝えてくれる。
「戻って良いぞ。ありがとうな」
デラさんを戻しサトシの方に駆け寄る。
「サトシ、腕は大丈夫か?」
「うん、ムーランドを守った証だから……大丈夫!」
「……ッ!サトシ……帰ろうか」
翌日、サトシと一緒にきのみを届けにきたが、ニャビーとムーランドの姿はなかった。おそらく引っ越したのだろうと思いながらおばあちゃんのとこへ行くと、きのみを食べているニャビーがいた。
まあ、ムーランドを守れたし、サトシとニャビーは仲良くなったっぽいし、一件落着かな?
そろそろ、授業でどこから話すか考えとかないとなぁ……
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特別授業とサトルの弟子!?
11話
〜ある日〜
「サトル君、ちょっといいかい、カイリキー?」
「オーキド校長、何でしょう?」
「この前君から預かったタマゴがあっただろう?少し提案があってね」
先日、キュウコンから託されたタマゴ。俺はタマゴの扱いがわからないからオーキド校長に預かってもらっていたものだ。
「ッ!!提案、とは……」
「本当なら君に任せるべきなんだが……生徒に託す、というのはどうだろう」
「生徒……サトシ達に、でしょうか?」
「うむ。ポケモンのタマゴというのは実に貴重なものだ。新しい生命の誕生の瞬間、その過程、全てにおいてトレーナーの知識としては申し分ない。だからこそ、生徒達に任せることで勉強の一環にしたいのだよ」
オーキド校長がいつものポケモンギャグを言っていない。そしてこんなにも熱意が伝わってくる。
「それは、とてもいい案だと思います。特に、リーリエちゃんは興味を持つでしょうね」
「その通り。そしてその判断を君に委ねたいのだよ」
「………そうですね。俺が育てたい、そういう気持ちももちろんあります。……ですが、任せてみましょう。ポケモンのことが好きなあの子達なら、きっと、生まれてくる子ともすぐに仲良くなれますよ」
「……そうか、君がそう言ってくれてよかった。では、私は今度行う特別授業の準備でもしようかネッコアラ!」
「ハハッ、俺も手伝いますよ。様子を見に行きたいですし。ユキナリ博士が送ってきたタマゴも興味があります」
「おお、そうか!ありがとウパー!」
〜数日後〜
「オーキド校長、連れてきました」
あの会話から数日、俺とオーキド校長は校長室でサトシ達を待っていた。タマゴを託すために。
「おお〜、待ってタマンタ、マンタイン!」
「あれ、兄ちゃん。教室にいないと思ったらここにいたの?」
「まあな、ちょっとオーキド校長と話してたんだ」
「プラッ!」
「おう、お帰りプラスル。楽しかったか?」
「プラァ」
今日はサトシ達に預けていたプラスル。まあピカチュウとか、仲がいい子達と一緒の方がいいからな。……他の奴らも出してやれたらいいんだけどな〜
「おっ、タマゴが2つ?」
「サトシ君がカントーから運んできてくれたものがこっち、そして先日ある人物がラナキラマウンテンで発見したタマゴだ」
生徒達も興味深そうにタマゴを見ている。
「なんのタマゴか、解析は済んでるんですか?」
「それは、後のお楽しみだよマーマネ君」
……サトシが持ってきたやつはともかく、もう一つはなんとなく分かってるんだよな。
「そこでだ、1つは私が育てもう1つは君達が、と言うのはどうかな?」
「私達がですか?」
「これも大切な授業だ。ポケモンをタマゴから育てるのも勉強になるからな」
ククイ博士もそう言う。ちなみに昨晩サトシが寝た後に話は通しておいた。進んで協力してくれたのがありがたい。
「みんなでお世話をすればいいのですね?」
「そうだ。タマゴの状態を毎日観察してその変化を記録するんだ。分かりやすいだろ?」
「そうそうソーナンス!」
なんかロケット団のソーナンス思い出すな。……ミラーコートで物理技も返せると思われてるのが不憫だ。
「もちろん、愛情も忘れずにな。ポケモンは、ちゃんと返してくれるからな」
おっ、今のは我ながら良いことを言ったのでは?
「じゃあまずは、好きなタマゴを選んでくれ」
「どっちが良いかなぁ?」
俺的には是非とも俺が持ってきた方を選んでほしい。良いパートナーを見つけるって言う約束もあるし。
「迷うね」
「ねえ!リーリエ はどっちが良いと思う?」
「え?……えーっと」
少し悩むリーリエちゃん。
「わたくし的には、こっち」
リーリエ ちゃんが選んだのは、俺が持ってきた白いタマゴ。……これはもしや
「なんで?」
「ここの模様が、お花みたいで可愛いから」
「ほんとだ、可愛い!」
「可愛い……」
「そんな理由……?」
「まあ、良いじゃん!」
「じゃあこの子で決まり」
おお、選んでくれたか。
「どんなポケモンだろうな?」
「さあな、強いやつだと面白い」
カキ君なんか俺とバトルしてから燃え上がってるな。……いやいつもか。
「これにて、私とサトル先生の特別授業はおしまい。よろしくコダック、ゴルダック!」
「みんな、頑張れよ。……その子を頼んだ」
「「「「「はい!!」」」」」
うん、良い返事だ。
生徒達がタマゴを持って退室した。
「これも、偶然ですかねぇ?」
「どうだろうな。運命、ってやつかもな」
「ククイ博士はなかなかロマンチックだネンドール!」
オーキド校長はもう1つを持ちながらギャグを言う。危ないですって。
「ハハッ、まああの子達なら大丈夫でしょう。サトルも付いてますしね」
「そんなに期待しないでくださいよ。俺はタマゴに関してはあんまり詳しくないんです。これから扱うでしょうけど」
「そうなのか?」
「はい、ジムリーダーは通常自分のジムを持ってるんです。しかも挑戦者のバッジの数に合わせてポケモンの実力を調整します。だからジム用のポケモンが必要になってくるんです」
……あんまりジム用って言う言葉は好きじゃないんだけどな。
「なるほど!そのポケモンをタマゴから育てるってことだな。……でもそれなら、野生でも良いんじゃないか?」
「なんか悪い気がするんですよ。自然の中で暮らしてるポケモンをゲットしてジム用にするっっていうのは。もちろん、慕ってくれるんなら別ですけどね」
「サトルはポケモンの事をよく考えてるなぁ。生徒達も見習ってほしいよ、ヨーテリー!」
いやいや、そこまで言われてもねぇ?だって、タマゴからジム用のポケモンを育てたって、最初から役割が決まってるようなもんでしょ?すごい罪悪感がある。……まあ、そこらはポケモン達に判断を委ねるけど。
「そういや、サトルは行かなくてよかったのか?あの子達と一緒に」
「いやぁ……うちのデラさんの特性が《ほのおのからだ》でして……」
「ああ、タマゴが早く孵るのか」
「ええ、だからレポートを書くのにはちょっと難しいので」
「そんなに気にしなくても良いんじゃぞ?」
「そうですかね〜」
こうして、スクールでの時間は過ぎていった。その間教室では、リーリエちゃんがポケモンに触れないのを克服する一環でタマゴ係になることが決まったらしい。どうやって家まで運ぶのかと思えば、サトシが付いて行った。サトシが行くんだったら……何かハプニングが起きる気がするけど、考え過ぎかな。
「それじゃあお先に失礼しますね、ククイ博士」
「おう、今日もポケモンセンターに行くのか?」
「はい、プラスルも行きたいでしょうし」
「だったら、ポケモン用のブラシを買ってきて貰えるか?イワンコの奴がもうボロボロでなぁ」
「了解です」
イワンコは首の岩だったり、元気だったりでよくブラシが駄目になるから、よく買い換えるんだ。
「ボーさん、頼んだ」
「マンダ」
〜移動〜
「アローラ!」
「アローラ、サトル君。今日も来てくれたのね」
「はい、アローラに馴染むにはここが一番ですから」
「いつも助かってるわ。今日はいつもとは違うことをやって欲しいんだけど、良いかしら?」
何かあったのだろうか?
「何ですか?」
「強いトレーナーがバトルしてるのよ。どんどん運び込まれてくるから、バトルして少し引き止めておいてほしいのよ」
えぇ……そう言う感じか。バトルか〜、久しぶりだな。
「分かりました。相手はどんな人ですか?」
「サトル君もあったことある子よ」
「え?」
〜〜〜〜〜
というわけでやってきましたバトルフィールド。俺の知ってる人って言ってもアローラに来てからまだあんまり知り合い増えてないんだけどな……
「次の相手はあなた?」
ん、どこかで聞いた声だな。
「ああ、ジョーイさんから頼まれてな……って、君は……」
「え?……あっ!サトルさん!」
バトルをしていたのはこの前キテルグマから助けた女の子だった。
「君がバトルをしてたのか?」
「はっ、はい。修行のつもりで……」
へぇ……てことはマイナンでバトルしてたのか?
「プラスル出ておいで」
「あっ、じゃあ私も。マイナン!」
「プラッ」「マイッ」
お互いにポケモンを出す。
「遊んできて良いぞ」
「行っておいでマイナン」
おお、尻尾を合わせて電気出してる。
「さてと、トレーナー同士だしとりあえず……やろうか」
「ッ!はい!」
目と目があったらポケモンバトル!とまでは言わないけどな。
「今回は……let's goシャンデラ!」
「……!」
やる気は十分だな。
「お願い、ワカシャモ!」
「シャモ!」
お〜、なんかホウエンって感じだな。
「わあ〜見たことないポケモンだ。あの……図鑑で見て良いですか?」
「ああ、どうぞ」
「ありがとうございます!えっと…………シャンデラ、ゴースト・ほのおタイプ……ゴ……ゴーストタイプ!?」
あ〜、そういえばゴーストタイプ苦手って言ってたな……
「魂……吸い取られるんですか?」
「シャモ!?」
「へ?あっ、ああ、そういえばそんなこと書いてあったな。しないさ、なあシャンデラ?」
「………!!」
「しないってさ」
俺の図鑑はロトムに渡したからなぁ……今更だけどバトルの時はフルネームでポケモンのこと呼ぶからな?
「じゃあ始めよう。審判は……プラスル!審判やってくれるか?」
「プラ〜」
「1匹戦闘不能になったら終了でいいかい?」
「はい!」
「プラ〜……プラ!!」
プラスルが腕を振り下ろし、バトルが始まった。
「ワカシャモ、気合い入れていくよ!【にどげり】!!」
「……へ?」
「シャ〜モ!!」
ワカシャモがシャンデラに向けて飛び、蹴ろうとしてくる。…………え?
「シャモ!?」
そして案の定シャンデラの体を貫通しダメージは入らない。いやまあ、ゴーストタイプにかくとうタイプの技は効かないし。諦めずに放つ二度目の蹴りももちろん体を貫通した。
「どうして!?」
「かくとうタイプの技はゴーストタイプには効果がないんだけど……」
「え!?……あっ、そうだったぁ……」
ドジにも程があるだろ……
「じゃあ次は俺からだな。シャンデラ【シャドーボール】」
「……!」
自分の蹴りが効かないことに驚いていたワカシャモは避けることができず、食らってしまう。
「シャモォ……!」
「ワカシャモ、大丈夫!?」
「シャァモ!」
なかなか耐久力あるな。特攻がアホみたいに高いシャンデラの一撃を耐えるとはね〜。
「かくとうタイプが効かないんだったら……ワカシャモ、【ひのこ】よ!」
「シャモ!!」
「シャンデラ、かき消せるな?」
「………」
一瞬こちらを向いて頷き、腕?の炎でワカシャモの【ひのこ】をかき消す。
「うそ……まだまだ、【つつく】!!」
「…ッ!速い!?」
「シャ〜モ!!」
先ほどよりスピードが上がったワカシャモがシャンデラに向かう。俺はそのスピードに驚きシャンデラに指示を出すのが遅れてしまった。
「………!?」
「シャンデラ、大丈夫か!」
「………!」
結構なスピードで突かれたからダメージがあるな……
それよりもあのワカシャモ……まさか《かそく》持ちか。すごい珍しい個体だな。しかももともとスピードも速いし……
「なかなか強い。びっくりしたよ、ワカシャモのスピードには」
「ありがとうございます。この子の自慢の1つです!」
「シャモシャモ!」
特性のおかげでもあるってことは気づいてないか。まあ関係も良好だし、そうだな……改善点は、バトルスタイルを確立することと知識量を増やすことってところかな。良いねぇ、俺も最初の頃はああいう初々しさがあったな。何度プラスルとタツベイ(今のボーさん)に迷惑かけたか……
「まあ、そろそろ終わりにしようか、シャンデラ、【あやしいひかり】」
そろそろって言ってもあんまり時間経ってないけどな。
「シャ……モ?シャ〜モ〜?」
「こんらん状態……ワカシャモ、目を覚まして!!」
「【れんごく】だ」
「………!!」
俺がそう指示するとシャンデラはワカシャモを覆うように炎で包み込む。
そしてその炎が消えると……
「ワカシャモ!?」
その場に倒れ、目を回したワカシャモの姿が。
「プラッ!プラプラッ、プラ!」
多分、「ワカシャモ戦闘不能、よってこの勝負シャンデラの勝ち!」みたいなことを言ってるんだろう。
「大丈夫ワカシャモ?」
「シャモ……」
「これを食べさせてあげて。オボンのみだよ」
「あっ、ありがとうございます!ほらワカシャモ」
「……シャモ!」
「デラさんもお疲れ様。はいこれ」
ワカシャモが復活したのを確認してデラさんにオボンのみを渡す。
「………♪」
最近まともなバトルさせて無いからな。ご機嫌だ。
「一応、ジョーイさんに見せたほうがいいよ。ジョーイさんがいうには、連戦してたんでしょ?」
「はい……そうですね。ちょっと行ってきます。マイナン、ちょっと待っててね」
「マイ!」
そしてワカシャモをボールに戻してポケモンセンターに走っていく。
「ふぅ……バトルしたのはカキ君としたのが最後だな。次は……ヨ〜さんにしよう」
夜中に各自で特訓はしてるみたいだけど、やっぱ鈍ってそうだからな。
「プラッ」「マイ〜!」
「完全に懐かれたなプラスル。ていうか、色違いが2匹いる場面ていうのもそうそう見ないな。ロトムは残念がるだろうな」
さっきからマイナンがプラスルに飛びついてじゃれついている。なんかサトシのピカチュウに飛びつくトゲデマルみたいな感じだ。
「デラさんありがとう。戻っていいぞ」
「………」
頷いてボールに戻ってくれる。
「サトルさ〜ん」
「戻ってきたね。ワカシャモは?」
「大丈夫だと思います。ジョーイさんも簡単なチェックだけで終わるって言ってましたし」
「そうか、良かった。そういえばなんで俺の名前を?言ったっけ?」
あった時もそうだが、やっぱり名乗った記憶が無い。
「この前助けてもらった時に、ジョーイさんから聞いたんです。……あっ、自己紹介がまだでした!」
「フッ、そういえばそうだったね」
たしかにこの子の名前知らないな。
「改めまして、私はモミジって言います。13歳でホウエン地方のコトキタウン出身で、アローラには修行で来ました!」
「うん、ありがとう。じゃあ俺もだな。俺はサトル、15歳でカントー地方のマサラタウン出身。今はこのメレメレ島のポケモンスクールで教師をやってるんだ。よろしくな」
「はいっ、よろしくお願いします!」
笑顔が眩しい、雰囲気だけでいい子だってよくわかる。
「バトルフィールドでっていうのもなんだし、中に入ろうか。プラスル、行くぞ〜」
「プ……プラァ……」
ハハ、マイナンと遊ぶのに疲れたか?最近ぐうたらしてるお前にはいい刺激だろ。
「あっ!こらマイナン、プラスルちゃんに迷惑かけちゃダメでしょ?」
「マイ?マイィ……」
「大丈夫だよ。プラスルも楽しそうだったしな」
「プラッ」「マイマイ!」
尻尾を合わせることで電気がバチバチしてる。なんかレックウザとデオキシスの映画でこんな感じのあったな。……映画の舞台の街って行ったことないな。今度アルトマーレに行ってみるか。
そしてポケモンセンターの中に入った俺達にジョーイさんが近づいてきた。
「モミジちゃん。ワカシャモのチェック終わったわよ〜」
「シャモッ!」
「ワカシャモ!ありがとうございます、ジョーイさん」
「どういたしまして。ごゆっくり〜」
そう言ってジョーイさんは奥に行った。
さてはひと段落ついたから休憩しに行ったな?しかも言い方に他意が含まれている気がする……
「あっ、あの……」
「ん?どうした?」
「ギルガルドにこの前のお礼を言いたいんです。会わせてもらってもいいですか?」
「いいけど、大丈夫?ゴーストタイプ苦手じゃ無かったっけ」
「いえ、どんな相手でも助けてもらったのですから、苦手とか言えないです!」
おお、光が……後光が見える。根がむちゃくちゃ良い子だ。
「わかった。ガルさん、出てこい」
「………?」
「この前助けた子がいるだろ?お礼が言いたいんだって」
「……!」
思い出したらしいわざわざブレードフォルムになって手を叩いた。……器用だな。
「ギッ、ギルガルドさん!この前は助けてくれてありがとうございましゅ!」
あっ、噛んだ
「………ギルッ」
キャアアアアアシャベッタアアアアア!?
……成長が、成長が感じられる。モミジちゃんに感謝。
「……!!……///」
ベシベシと俺の肩を叩くガルさん。痛いって……
「恥ずかしいから戻りたい?モミジちゃん、もう良いのか?」
「はい、ありがとうございました!」
「いえいえ〜。ガルさんお疲れ様」
ガルさんをボールに戻す。
「ギルガルドさんの声ってカッコいいですね〜」
「やっぱり?俺的には人に自慢したいくらいなんだけど、本人が恥ずかしがってるんだよ」
「へぇ〜 、もったいないですね〜」
デラさんとヨ〜さんは違う理由で声出さないけど、まあ本人達次第だしな〜。
「そういえば!サトルさんってすごくポケモンバトル強いですよね」
「そうか?俺レベルなら結構見たことあるよ?」
チャンピオン勢なんかもうキレが違うよね、プライベートはともかく。狂ったような石マニア、私生活が末期の金髪、放浪人、ドラゴンが好きすぎてヤバイ人………あれ、まともなのってカルネさんだけ?
いや、やめよう。石マニアとかは俺のこと察知していつのまにか近くにいたりするし、私生活が末期の金髪さんは考古学?神話学?(よく覚えてない)とかで色んなところにいるし……
まあ他には……ヒガナさんとか、大人気なくジム用ポケモンではなく本気出してきやがったシャガのジジイとか、他にももっといると思う、アラン君とか。そういや、俺ポケモンリーグって出たことないな。バッジもイッシュのしか持ってないし。
「世界って広いんですね。私もなれるかなぁ……」
「才能は充分感じられたし、これから経験を積んでいけばきっと凄いトレーナーになれるさ。俺の弟もそうだし」
オレンジリーグ優勝とか、カロスリーグ準優勝とかな。
「そ、そうですか?実感無いなぁ……」
「まあ、これからだよ」
凄い説教っぽくなってしまった。いやジムリーダーとしてはこういう方がいいのかもしれないけど……
「これからどうするんだ?」
「え?」
「ずっとここでバトルするっていうわけでもないでしょ?新しくポケモンをゲットしたりするのかなって」
「考えてなかったぁ……どうするマイナン、ワカシャモ?」
「マ、マイ?」「シャモ?」
考えてないんかい、てか2匹とも分かってないな。……ふぅむ。
「俺が教えようか?仕事があるから休みの日しかできないけどな」
「え……?良いんですか!!」
ガバッ!っと此方を向くモミジちゃん。
「ああ、若い子の才能が開花せずに散っていくのは本意じゃないからな〜」
「若い子って……サトルさんと2つしか違わないですよ」
すまんな。前世と合わせて17+15でもう精神年齢は32だ。実感無いし、前世と感覚変わらないから気にして無いけど。
「ハハッ、忘れてくれ。で、どうする?」
「ぜひっ!!お願いします、サトルさん!!」
今日、俺に弟子ができました。携帯番号も交換したけど別に他意は無いぞ?
あっ、サトシが言うにリーリエちゃんはタマゴを触れるようになったようです。野生のヤトウモリから守ったそうで。……おじさんは子供の成長が嬉しいよ。
……やめだ。虚しくなってきた。
「プラッ…」
何やってんだみたいな目でこっちを見るなプラスル。色々あるんだよ。……ネタが無えんだよ!!
終わり方が雑ですいません……試験一週間前でまともな思考が出来ていないんです(言い訳)
更新が遅くなります。
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しまキングとの邂逅
ということでゆっくりですが活動再開です。最近はサンムーンのフリーバトルばっかりで全く筆が進んでおりません(泣) USUMどっちか買いたいけどお金が……
12話
〜とある朝〜
「俺、もっともっと強くなってもう一度カプ・コケコとバトルしたいんだ!Zワザもまた使ってみたい!なっ、ピカチュウ?」
「ピカ!」
「おおサトシ、【ブラストバーン】並みに燃えてるなぁ!」
「じゃあもっともっと特訓して、勉強も頑張らないとな、サトシ」
おはよう、朝食の食器を洗っているサトルだ。みんな聞いてくれ。今朝はサトシがロトムより先に起きていたんだ。珍しい……いや珍しいなんて言葉じゃ足りないな。今日はマジで禁止伝説級とでも会うんじゃなかろうか。……やめよう、サトシならあり得る。
……ピカチュウ、適量で朝飯出したはずなのになぜそこまで体積が大きく見えるんだ?プラスルも呆然もしてるぞ。
「うげっ!?……頑張りまぁ〜す」
「よろしい。……フフッ」
俺も勉強が嫌いな時期……あったっけな?前世の小学生の頃……もう体感時間20年以上前だからなぁ。ポケモンは見たら思い出せたりするけど、自分のことは思い出せんな。
「確か、Zクリスタルは島めぐりっていうのをするとゲットできるんだよね?」
「ああ、それをゲットできる方法は色々あるが、確実なのはそれだな」
サトシと向かい合って話しているククイ博士がそう説明する。……この前、クチナシさんにくれようとしたけど断ったんだよなぁ。まだこれからのことそんなに決めてないし。俺一応カントーポケモン協会の公務員(ジムリーダー)だし。
「島めぐりってどんなことするの?」
「島めぐりは、それぞれの島にいる島キングや島クイーンが出す試練や、大試練を突破することだな。その形式はバトルだったりそうじゃなかったり色々ある」
「へぇ〜!」
「サトル、よく知ってるな。調べたのか?」
「えっ!?ま、まあアローラに住んでますし、慣れるためにも色んなことを知りたいですからね」
嘘です。前世の知識を思い出しました。ゲーム版だけどね。
「僕が説明したかったロト……」
「島めぐり……楽しそう!!」
「楽しそうって……相手は島キングだぞ?甘くみると痛い目にあうぞ」
「まあ、島の代表みたいなもんだからな。バトルもめっちゃ強いんだろうな。ちょっと試練関係なしに戦ってみたい」
「サトルもか……」
ちょうど、ピカチュウ、プラスル、イワンコも食べ終わったようだ。
「とにかく、近いうちにメレメレ島の島キング、ハラさんに会いに行こう」
「はい!」
……あ、そういえば挨拶にまだ行ってなかったな。今度アーカラ島とポニ島にも行かないと。
……ポニ島って島キングいるのか?
そして……支度が整ったので、
「行ってきます!」
「洗濯物、食器、掃除、戸締り……よし、鍵もかけましたし行きますか。プラスル、どうする?」
「プラッ!」
「お前ホントに頭に乗るの好きだな……」
「イワンコ、留守番頼んだぞ」
「アンッ!」
いつも通りイワンコに留守番を任せて俺たちは出かける。イワンコが通れる道をちゃんと作ってあったのでイワンコはいつでも中に戻れるから安心だ。さすがククイ博士。
少し経って……
パイナップル?の畑が見える道を歩いている俺たち。人が結構集まっている場所を見つけた。
「ピカァ?」
「あれは……」
「アクシデント、ロト?」
『皆さん、この道は材木が撤去されるまで通行禁止となります!別の道へ迂回してください!』
近寄ってみてみると、どうやら運んでいた材木が落ちて道を塞いだらしいな。
運んでいたであろう男の人と、ケンタロス3頭がいた。
「何事ですか、ジュンサーさん」
ジュンサーさんの話によれば、野生のコラッタとラッタが作物を荒らし回っているらしい。アローラのコラッタとラッタ。確か……悪タイプだっけな。
余談だがジュンサーさんもスクール出身らしい。
「let's goヨ〜さん。俺たちも手伝おう!」
「………!」
今日は寝てなかったんだな。
ヨ〜さんは元々のパワーもあるので一気に材木を運んでいる。
「俺も行けるか?……よっと、意外と軽いな」
俺も2本両腕で抱えて運び出す。
「兄ちゃんすげぇ〜!!」
「ハリィ……」
「ん、この声は……」
ふと声の主の方を向くと、材木をその大きな手で運んでいるハリテヤマの姿が。ハリテヤマがいるってことは……
「すげぇ、軽々運んでる!」
色黒で黄色く服を着た恰幅のいい人も材木を運んでいた。ああ、あの人が……
「あの人が島キングのハラさんだよ」
「手伝います」
「俺も!ふん!!……うぅ〜!!」
「ハハッ、サトシにはまだ無理そうだな」
「む……」
次の材木を運ぼうとすると、ハラさんが一瞬、サトシのZリングに目を向けた気がした。
「ありがとうございます島キング!」
「な〜に、島に起きた問題を解決することも島キングの役目ですからな。そこの君とヨノワールも手伝ってくれてありがとう!」
「いえ、困った時はお互い様ですよ」
「………!」
ヨ〜さんも親指を立てて返事をしている。
「すぐに応援がくると思います……噂をすれば、」
サイレンの音が聞こえそちらを向くとカイリキーが車から降りてきていた。
「リキッ!」「リッキ!」
カイリキー達によって材木がどんどん運ばれていく。4本も腕があるのって便利だな。
そして、全ての材木を処理し終わった。
「皆さんご協力感謝します!」
パチパチパチパチ!
ここにいる人が拍手をする。ヨ〜さんもしてた。
「ハラさん!俺、島めぐりで……」
「分かってます」
「え?」
「待っていますよ。近いうち、博士と一緒にいらっしゃい」
「そうさせていただきます」
「やったぁ!!」
全く、サトシは元気だな。
「ヨ〜さん、お疲れ様。ありがとうな」
「………!!」
気にすんな、みたいな感じで手を振るヨ〜さん。昔は全くわからなかったな〜。そして、ヨ〜さんをボールに戻す。
「ハラさん、少しお時間よろしいでしょうか?」
「君は……先程はとても良い手際でしたな」
「うちのヨノワールもパワーが自慢ですから。……サトルと申します。これを……」
俺はヨ〜さんとハラさんの方へ行き挨拶とともに名刺を渡す。
「ふむ……おお、君が。なるほど、分かりました。我が家で話をしましょう」
ハラさんにも話は通っているようだ。
「ありがとうございます。ククイ博士、行ってきて良いですか?」
「ああ、任せっきりで悪いな」
ククイ博士の了承を得て、次にサトシに話しかける。
「すまんサトシ、今から仕事だ」
「うん!兄ちゃん頑張って!行ってらっしゃ〜い!」
やる気が出た。
「サトル君、でしたかな。元気の良い弟君ですな」
「ええ、自慢の弟ですよ。無茶しすぎるのがたまに傷ですけど」
「あの年頃ならちょうど良いでしょう。サトル君も経験があるのでは?」
うぐっ、流石島キング。
「ええ……俺譲りなんでしょうかねぇ」
「私にも孫がいましてな。今はアローラを離れているのですが……」
それから、ハラさんの家に着くまで弟、孫談義が続いた。
そしてハラさんの家に着き……
「さあ、どうぞこちらへ」
「失礼します」
ソファへ案内される。
「それでは、改めて自己紹介を。カントー地方ポケモン協会から派遣されました。ジムリーダーのサトルと申します。この度は、ククイ博士のご依頼により、ポケモンリーグ建設のサポートをさせていただきます。ご挨拶が遅くなって申し訳ありません」
「いえ、サトル君にも忙しいみたいですからな。私もククイ博士に話は聞いています」
やはりか、まあ昔からの夢って言ってたからな。ハラさんなら知ってるだろう。
「そうでしたか。……単刀直入にお聞きしますが、アローラに他地方の行事を持ち込むのは島キングとしてはどうでしょうか」
「問題ないでしょうな。アローラの発展のためにも良いものは受け入れていくべきでしょう」
「なるほど。最近、ラナキラマウンテンに行ったのです。ポケモンリーグ建設の候補地として私がイメージしていたので」
「ふむ、なぜラナキラマウンテンを?」
ゲームで建設されてたから、なんて言えないしな。ちゃんと調べたし。
「アローラのことを調べていると、島めぐりを終えたトレーナーがラナキラマウンテンでバトルをする。そういう、ものが書いてありました。これまでの修行の成果を示す場ということが書いてあったので伝統的にもふさわしいかと思いました」
「おお、よく調べていますな。今は廃れて風習ではありますが、昔はそのようなことも行われていました。最近は島めぐり達成者も少なく行われていないのです」
そうなのか……
「ですが、ラナキラマウンテンは良くないと判断しました。あそこは野生のポケモンも住んでいましたから。人間の都合で開発はできません」
「ふむ、賢明な判断ですな。……他の地方のポケモンリーグについて、教えていただけますかな?」
……よく考えたら俺ポケモンリーグの出場経験0だ。
「はい、私も出場したことは無いのですが。ポケモンリーグはそれぞれの地方にある公式ジム……まあアローラでいう、試練や大試練を突破し8個集めた者のみが出場できるハイレベルなポケモンバトルの大会です。一年周期で開催しています」
「サトル君はジムリーダーとおっしゃっていましたな。名前から察するに、私達島キングや島クイーンのように挑戦者を試す者という解釈でよろしいですかな?」
「その通りです。ジムリーダーは挑戦者の実力を、各々が持つジムにて実際にバトルして確かめます。島めぐりとは違い、純粋に実力が試されるので強ければ良い、そう思ってしまうトレーナーも少なくありません。そして各地方、大きな街に1つジムが設置されています。これは、ジムに挑戦する者が順調に行ってちょうど一年で全てのジム回れるようにした結果です」
「ほう……しかしアローラでは難しいですな」
そこなんだよなぁ……
「そうですね。島同士は船を利用しなければいけませんし、1つの島も1日あれば大体回りきることができるでしょう。ポケモンジムは、この地方にはあまり適していないと思います」
「そうですな。さて……どうしたものか」
ハラさんが細目でこちらを見ている気がする……なるほどね。
「あえて、ポケモンジムを設置しないというのも1つの手ですね」
「ほう……というと?」
「この地方は人口も他の地方に比べて少ないですし、全ての島を回ってないのであまり言えませんけど土地も少なくジムリーダーとして活動できる人材も少ないです。ハラさんのおっしゃる通り良いところは受け入れていくべきですが、できないところや必要のないところを無理することもありません」
「たしかに、そうですな。しかし、それでは根本的な解決にはなっていないですな」
その通りだ。ポケモンジムがないんじゃポケモンリーグが開催できない。……しかし、それは
「では、
「ッ……どういうものですかな?」
反応があったな……
「そうですね。言い方は適切ではないですがお祭りのような感じです。既存のものとは違って誰でも、楽しんで参加できるポケモンリーグです。もちろん想像上のものなので実現できるか、現実的かも分かりませんし、ククイ博士や、他の島キングや島クイーンの方も交じえて協議しないといけません」
「なるほど……真剣なバトルをするポケモンリーグより、楽しめるポケモンリーグですか……ポケモン協会の人間としては、予想外な提案で驚きですなぁ」
まあ、
「私は協会より、アローラ地方ポケモンリーグ建設においてそこそこの権限を頂いています。協会の方向性とは少し離れているかもしれませんが、その土地にあった企画をしたいと考えています」
「……合格、ですかな。サトル君、私はアローラリーグ開催に全面的に協力いたしましょう。先程は君を試していたのです」
「なんとなく気づいてましたよハラさん。こっちはヒヤヒヤしてました」
少し前から、別の方向にも視線感じてたし。なんなの?俺そんなに守り神達から信用ない?
「さすがですな。まあ、この話はまたククイ博士を交えて話し合いましょう。……そういえばサトル君、ポケモンリーグの映像などは持っていませんかな?参考程度に見てみたいのです」
ポケモンリーグのバトル……映像……だと?……フッフッフ……とっておきがありますとも。
「ちょうど今持っていますよ。一番最近行われたカロス地方のポケモンリーグの映像です。どの試合にしますか?おススメはやはり決勝戦ですね、いや……決勝戦にしましょう」
「え、ええ……では」
カロス地方のポケモンリーグの決勝戦といえば皆様もうお気づきでしょう。
『ゲッコウガ!!』
『リザードン!我が心に答えよ、キーストーン!進化を超えろ……メガシンカ!!』
俺が再生したのは、サトシのゲッコウガが《きずなへんげ》し、アランさんのリザードンがXにメガシンカした場面だ。
「おお……サトシ君。なるほど、サトル君が妙に進めてきたのはこれですか」
「ええ、ですが身内贔屓を抜いても、これは素晴らしいバトルです。本当は6対6なんですが、ポケモンリーグの白熱したバトルと、観客席の盛り上がりが最も大きいこの2体のバトルがいいと思いました」
「……どうやらその通りのようですな。このメガシンカしたリザードンとゲッコウガ……でしたかな。よく鍛えられている。そして何より、サトシ君と相手の選手がとても楽しそうにバトルをしている。これがポケモンリーグ……素晴らしい」
ハラさんが言い終わるのとほぼ同時に、ゲッコウガが倒れた。
『ゲッコウガ戦闘不能、よって勝者、リザードン!』
『『『『『うおーーーーー!!!!!』』』』』
「サトル君、私も、この地方のポケモンリーグが楽しみになってきました。必ず、成功させましょうぞ!」
「……はい!」
どうやら、第一印象は良かったようだ。
ガサガサッ……
「「ッ!!」」
「………」
「カプ・コケコ……」
音がした方を見ると、窓から映像見ていたのだろうか、カプ・コケコがこちらを見ていた。心なしか、その顔は満足そうに見える。俺たちは外に出てカプ・コケコと向き合う。
「話しかけても大丈夫でしょうか……」
「ええ、おそらく……」
マジか……じゃあ早速。
「カプ・コケコよ……先日は私の弟、サトシにZリングを与えていただきありがとうございます」
「……コケェ」
「サトシは……貴方の期待以上に強くなるでしょう。俺もその手伝いをするつもりです。いつか、バトルしてあげてください」
「………!」
「うお!?」
突然カプ・コケコが飛び去った。……ビビった。
「サトル君も気に入られたようですな、カプ・コケコに」
「え?……今のでですか?」
「カプ・コケコとまともに話ができるのは、私くらいですからな」
「さっき話して大丈夫って言ってませんでしたっけ!?」
「ハッハッハッ、冗談のつもりだったのですがまさか本当に話しかけに行くとは思いませんでしたなぁ」
守り神相手でも冗談仕掛けるなんてすげぇなハラさん。全く、ハラハラさせられたぜぃ……
おもんねーわ、やめよう。
「俺を気にいるような要素ないと思うんだけどなぁ……」
「守り神のみぞ知る、ということですな(私はなんとなくカプ・コケコの気持ちがわかりましたがな)」
伝説や幻や準伝説達たちのことはよくわからないな。変なところで気に入ったりするから。
「さてと、サトル君。私がサトシ君に試練を出すとき見学しますかな?記録媒体への録画も構いませんぞ」
「いいんですか?神聖な儀式の場ですよね」
「アローラの新たな歴史のためですからな」
ありがたい。試練や大試練は報告しないといけなかったからな。口で伝えるには難しい。
「ハラさんの大試練、思いっきりやってください。サトシはピンチになれば燃えるタイプですからね。サトシのゼンリョクは、一味違いますよ」
「ほう……楽しみですなぁ」
……すまん、サトシ。ハラさんの本気度を上げてしまったかもしれない。
「ふむ、もういい時間ですな」
「確かに……俺、夕飯の準備をしないといけないんで今日は失礼します。また会議をしましょう。今度はククイ博士も交えて」
「そうですな。ではまた」
そう言って俺は帰路に着いた。
〜〜〜〜〜〜〜〜
「疲れた……プラスル、あとで思いっきり抱きついていい?」
『ガタガタガタッ……』
俺がプラスルのボールに向かって聞くと、めっちゃボールが揺れだした。……そんなに嫌かテメェ、泣くぞ。
「じゃあボーさん……『ガタガタ……』お前もか……」
今ならメガシンカ出来ない自信があるね(白目)
「デラさんは……熱いしガルさんは俺が切られる。ヨ〜さんは……逆に俺が潰されるな」
仕方ない、あとでサトシにモクローを借りよう(錯乱)
「サトルさ〜ん!」
聞き覚えのある声を向くと、モミジちゃんがこちらに走ってきていた。
「アローラ、モミジちゃん。こんな時間にどうした?」
「いえ……あの……聞きたいことが……あって」
「うん、一回落ち着こうか」
息切れするほど走ったのか……深呼吸をして落ち着いたモミジちゃん。
「落ち着いたね。それで、聞きたいことって?」
「今日、アーカラ島に行ったんです。それで適当に森を散策してたら、見たことないポケモンと出会って……これを貰ったんです」
モミジちゃん……メレメレ島の森で酷い目にあったのに懲りないな……
モミジちゃんが見せてきたのは、どこかで見たような形の黄色い石だ。……え?
「ごめん、モミジちゃんが出会ったポケモンてどんな感じだった?」
「人がタマゴ?みたいなのに乗って帽子をかぶってるって感じでした」
「………」
いや、絶対アイツやん。え、うっそマジ?そんな簡単に出会えるもんなん?
「ち、ちなみに……色とか、声とか……は?」
「色は人っぽい部分が黒くて、他の部分がピンクでした。声はですね……テテテテ〜って言ってました。すごく可愛い声で、歌っているみたいでした!」
カプ・テテフ!?しかもなんで『運命』なの!?この世界にその曲存在してなかっただろ!!
「……モミジちゃん、何もされなかった?」
「え?……野生のポケモンとバトルした後の私のキノガッサを回復させてくれました!なんかキラキラ光る粉?みたいな物で。すごく綺麗だったんですよ〜」
襲われてはいないみたいだ……いや、情報量が多すぎる。
「サトルさん?結局、これってなんなんでしょうか?」
「あ、ああ……Zリングって知ってる?」
「……知らないです」
「そっか……じゃあカプ・テテフっていう名前は?」
「うーん……?」
「分かった、今度連絡するからこの島のしまキングのところに行こうか。そっちの方が分かりやすいし。その石は大切に持ってたほうが良いよ」
「そうなんですか?……まあ、サトルさんがそういうのなら」
なぜ、俺が言ったら、なのだろうか。いや深くは考えまい。女の子のことは分からん。
「ああ、今すぐじゃなくてごめんな。……そうだ、うちで夕飯食べていかないか?今から用意するから少しかかるけど」
「えっ!?い、いえ、悪いですよ!」
「子供がそんなに遠慮するもんじゃないさ」
「私サトルさんと2つしか違わないです!!今日はポケモンセンターのジョーイさんにお呼ばれしてるんです。最近仲が良くて……」
へぇ……なかなか珍しいなぁ。女性ってすごい。
「なるほどね。じゃあまた今度な。気をつけて帰ってね」
「あっ、はい!ありがとうございます!じゃあ、さよなら!」
そしてモミジちゃんはまた走っていった。……時間取らせすぎたかな?
「ふぅ……なんでカプ・テテフが偶然で一般人に歌ってるところ見つかるんだよ…… いや、モミジちゃんが運がいいのか」
だとしてもすげぇな。テテフって確か残忍な性格らしいから襲われなくてよかった…… にしてもなんでZリングの原石なんて渡すのだろうか?
…………まあ、いいや。帰ろう。
〜アーカラ島〜
「ワカシャモ、【にどげり】!」
「シャモ!!」
モミジのワカシャモが放った蹴りが野生のカリキリを吹っ飛ばす。モミジが駆け寄ってカリキリを見ると目を回している。
モミジはきずぐすりを使ってカリキリを治してあげた。
「バトルしてくれてありがとうね。はい、オボンのみ」
野生のポケモンにも気を使うところが手持ちのポケモンにも好印象だ。
「ワカシャモありがとう!さてと、次はどんな子と出会えるかな〜」
ポケモンを戻して森を歩くモミジ。この前キテルグマに襲われたのに……学習していない。ガサガサと草をかき分け、森を抜けると広場のような場所に出た。
「テテテテ〜」
「え?」
「テテ?」
モミジとピンク色のポケモンの目があった。皆さまご存知カプ・テテフである。人間に見つかったことが意外なのか、興味深かそうにモミジを見ている。
「わぁ……綺麗なポケモン。なんていうのかな〜」
「テテ〜……テテ〜?」
テテフはモミジの周りを回って観察する。すると……
「テテ!テテテテ〜」
「え……ここにいろってこと?」
「テテ!」
突然、モミジの前に現れ、その手で指示しどこかに飛び去っていった。
〜数分後〜
「テテテ〜」
「あっ、戻って来た。こっちだよ〜!」
一応、島の守り神であるが、この時のモミジには知る由もない。
「テテ」
「これを……私に?」
「テテッ!」
テテフが持って来たのは、本編でサトルに見せた黄色い『かがやくいし』
「テテテ〜!」
「あっ、待って!」
モミジの言葉も届かず、テテフは飛び立って行った。
「もらって……良いのかな?」
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少女の決断
13話
〜翌日〜
「サトシ、準備は出来てるか?」
「うん、バッチリ!」
「じゃあ……行ってらっしゃい。俺も後で行くよ」
「行ってきま〜す!!」
「ピッカァ!!」
「サトル、いつも任せて悪いな」
「いえいえ〜、ククイ博士、サトシの事お願いします」
「了解、任された。行ってきます」
「行ってらっしゃ〜い」
……行ったか。
皆さんどうも昨日ぶり、サトルだ。今日はサトシがハラさんに試練をお願いしに行った。まあ、いつでも良いって言ったのはハラさんだからね。行動力の化身サトシなら次の日あたりに行くとは思ってたよ。
「プラスル〜、あいつらを呼んできてくれ。近くの日陰にいると思うから」
「プラ〜」
「アン!」
「おっ、イワンコも行ってくれるのか?よし、頼んだぞ〜」
ククイ博士がイワンコのために作った出入り口からプラスルとイワンコが出て行く。イワンコもウチの濃いメンツに慣れてくれてよかったぜ。
ちなみに、今は手持ちを全員外に出している。まあちょっとの事ではアイツら平然と対処するしな。問題ない。
前に野宿していて俺が寝ている間に、ポケモンハンターに襲われた時があった。その時は俺が起きると所々凍ってるのに丸焦げになったポケモンハンターとマニューラが縄に縛られて気絶していた。……うちの手持ちが優秀すぎて泣ける。もう俺要らないのでは?
「さてと、家事もだいたい終わったな。……この見覚えのあるマスクはそっとククイ博士のタンスに入れておこう」
イヤ、オレハナニモミテナイケドナ。
「モミジちゃん電話出るかな?」
……prrr……prrr
携帯で電話をかける。……正直この地方で携帯とか使えないもんだと思ってました、すいません。
「もしもし、サトルです。
『もしもし、サトルさん?どうしたんですか?』
「昨日の件なんだけど、今日でも良いかい?都合が良くてね」
『全然大丈夫です。わざわざありがとうございます!!』
「オッケー、じゃあ昨日の場所で待ち合わせしよう。……2時間後でどうかな?」
『分かりました!よろしくお願いします!!」
「うん、じゃあまた後でね」
そして通話終了。……モミジちゃん心広すぎね?昨日の今日だぞ。予定もあっただろうに……
さてと……2時間後って言ったのは良いけど暇だな。何かする事は……
〜その頃のモミジ〜
「ふふふ……♪」
突然かかってきた電話。何気に友達の少ないモミジには誰からの電話なのかすぐにわかった。まさか昨日の今日で連絡してくるとは思わなかったが、そんなことは今のモミジにとってはどうでもいい。
(サトルさんと一緒にお出かけだなんて!これってもしかしてデート?)
「マ……マイ?」
相棒の少し引き気味の声も届かない。この恋する乙女はある意味で盲目的なのだ。
(キャー!!私たちまだお付き合いもしてないのに!!待ってモミジ。私はサトルさんの弟子、いついかなる時も弟子ということを忘れてはいけないのよ!!……でもやっぱりデートだよねぇ〜エヘヘ〜♪)
突然ブンブンと首を振ったり、顔に両手を持ってきて体をクネクネさせる主人に思わずマイナンは逃げた。マイナンは感じ取ったのだ。
今のモミジはヤバイと……
ダッシュして向かった先は同じ主人を持つ仲間の元。しかしそこはそこで喧嘩中というカオス。今日もマイナンの苦難は始まる。……しかし最近仲良くなった、自分と同じ色違いのプラスルに会えることは何気に楽しみなのであった。
〜2時間後〜
「プラァ……」
「お前……俺の頭の上でよくそんなにくつろげるな。何でそんなにバランス取れるんだよ」
あの後、外に出してた手持ち達を回収しに行くのに、地味に時間を使った。そろそろ待ち合わせの時間なんだが……まあ気長に待つか。
「サトルさ〜ん!」
……噂をすれば来たようだ。
「アローラ、モミジちゃん」
「あ、アローラ、サトルさん。遅くなりました」
まだ、アローラ式に慣れてないっぽいな〜。恥ずかしさが伝わってくる。
「いいや、丁度だよ。……飲み物いるかい?」
「大丈夫です!」
「マイ〜!」
モミジちゃんが来た方向から疲れ切った様子のマイナンが走ってくる。……置いてきたんかい。
「あっ、マイナン!大丈夫?」
「マイィ……」
「ほい、プラスルよろしく」
「プラ?……プラ!」
地面でぐで〜ってなっているマイナンを見て、俺はプラスルに水筒から注いだ水を持って行かせる。プラスルは、なんで自分が持っていくの?みたいな顔してたけどな。……ポケモンにも鈍感ってあるんやな。
……あっ、特性で《どんかん》ってあったな。
「プラッ」
「マイ?マイ!」
「ありがとうプラスルちゃん。……マイナン、落ち着いた?」
「マイ」
状況も落ち着いたらしい。……いや自分で言うのもなんだが、面白くないな。
「じゃあ行こうか」
「はい!」
そして俺たちはハラさんの家に向かって歩き出す。まあそこまで遠くもないし、すぐ着くだろう。
「そういや、キノガッサを持ってるって言ってたけど他にも手持ちはいるのかい?」
「えっと、マイナンと、ワカシャモ、キノガッサ、アサナンがいます」
なんか俺みたいな構成だな。
「かくとうタイプが多いな。好きなの?」
「かくとうタイプは好きですけど、意識してゲットしたわけじゃないんですよね。ワカシャモは元々アチャモですし、キノガッサもキノココでしたから」
たしかに、進化してかくとうタイプが増えたってことか。うちの面子も意識したわけじゃないからな〜。まあ、そういう縁があってゴーストタイプのジムリーダーにも慣れたんだけどね。
「俺も似たようなもんだな〜。……ホウエンを旅してたんだよね?ジムはどこまで行ったの?」
「えっと……ツツジさんに勝って、トウキさんにも勝って……テッセンさんにも勝って、アスナさんに負けてアローラに来たので3つです!」
「センリさんのところには行かなかったんだ。確か……コトキタウン出身って言ってたから一番近くなかったっけ?」
コトキタウンからだったら……すぐ隣の街だったような……?
「そうですよ。よくお母さんと一緒に買い物に行きました。でも、一番近くて馴染みがあるところだから、最後に行きたくて」
笑顔でモミジちゃんが言う。やっぱこの子、心意気も十分だな。……一年でジムを周り切らないといけないことを抜けばね?トクサネシティやルネシティからトウカシティの距離考えたら……やめよう。悲しくなる。
「それに、友達もトウカシティにいたのでポケモンたちを自慢したかったですし!」
「友達?」
「はい!ハルカちゃんて言うんですけど、語尾に『かも〜』って言う面白い子なんですよ〜」
「へ……へぇ……なかなか個性的な子だな」
この子何気に原作キャラと会ってるゥ!?……あれ?俺はホウエン編見てないけどハルカのポケモンにもアチャモがいたような……?覚えてないや。
「おっ、着いたな。ここが今日お世話になる、しまキングのハラさんの家だ」
「大きい家ですね〜」
本当にすぐ着いたな。まだサトシ達は話し込んでるのだろうか……もしくは試練の場に向かった?
「プラスル、マイナン、少し大人しくしててくれよな」
「プラ」「マイ!」
当たり前だと言わんばかりのプラスルと元気のいいマイナン。……主人に似てるなこいつら。プラスルに関しては特に、俺が育て方をミスったか?
そして俺たちが家に近づくと、勝手に扉が開いた。……いや、誰かが出てきた。
「あっ、ククイ博士」
「サトルじゃないか。俺たちは丁度終わったぞ。……ん、そっちの子は……ああ、モミジって言う子か。サトルから聞いてるよ」
「えっ、あっ、はい。モミジっていいます!ホウエン地方から来ました!」
突然現れた、日焼け真っ黒の半裸に白衣の男(ククイ博士)にビビっているのか緊張しているのか、モミジちゃんが少しビクビクしながら挨拶する。
「よろしくな。俺はククイ。今アローラ地方でポケモンの技について研究してるんだ。ポケモンスクールで教師もやってる。わからないことがあったらいつでも聞きに来なさい。なんなら編入も待ってるぞ」
「あっ、ありがとうございます!」
しっかりと宣伝もしていくあたりさすが大人だな。……俺も同じようなことしたことあるな(1話冒頭)
「そういえばククイ博士、サトシは?」
「もうすぐ出てくるはず……ほら、出てきた」
「う〜ん……うん?」
なにやら悩んでいる様子のサトシが扉から出てきた。奥にはハラさんも見える。……サトシが悩むのも珍しいな。ハラさんが何か言ったのか?
「サトシ、どうだった?」
「……う〜ん……?」
「サ、サトシ?」
「う〜ん……」
「サトシ!?」
ついに反抗期がきたのかサトシ!?俺は……兄は悲しい……
俺を無視して少しずつ歩くサトシ……どうしたのと言うのだ……今まで兄ちゃん兄ちゃんと俺の後ろを追いかけてきてくれたのに…………いや、最近そうでもねぇな。……寂しい。
ちなみにピカチュウはプラマイコンビと遊んでる。ロトムは色違い2体を前に興奮しながら写真を撮ってる。
「ハハッ、心配しすぎだぞサトル。大丈夫だ。ハラさんから課題を出されて悩んでいるんだよ」
「あっ、なるほど。俺はてっきり、ついにサトシにも反抗期が来たのかと……」
「まだ10歳だぞ……ちょっと早いな。サトルは、これからか?」
そういや俺、前世でも反抗期らしい反抗期を経験してないな。
「反抗する相手がいないんでねぇ……ククイ博士、迷惑かけたらすんません」
「子供らしくていいと思うけどな。……おっと、サトシに着いてないとな。じゃあ、また後でなサトル」
「はい、頼みます。ロトム!ピカチュウ!置いていかれるぞ〜!」
「ピカッ!?」「サトシ、待つロト〜!!あっ、サトル、写真ありがとうロト!!」
お前が勝手に撮ってたんだろ…… そんな言葉を投げかける前に行ってしまった。
「サトルさん、今のは?」
「ああ、この前あっただろ?弟のサトシに、その相棒のピカチュウと……あいつどういう立ち位置なんだろう?まあポケモン図鑑に入ったことで喋れるようになったロトムだな」
「サトルさんの弟さん……なんか腕につけてましたね」
「Zリングって言ってな。まあ、すぐにわかるさ」
サトシ達を背に俺たちはハラさんの家に入る。
コンコン
「ハラさん、お邪魔します」
「おっ、お邪魔します」
「おやサトル君、昨日ぶりですな。どうかされましたかな?」
「ええ、ちょっとご相談があって」
「ふむ、そちらの少女は?」
「モミジって言います。修行のためにアローラに来ました!」
「元気が良いですなぁ。私はハラ、このメレメレ島のしまキングをしています」
昨日も来たなぁ……申し訳ないです。連日兄弟共々。
「それでサトル君どうしたのですかな?」
「実はこの子が……モミジちゃん、昨日のアレを出してもらえる?」
「はい。ちょっと待ってください……この辺に……あった!」
ゴソゴソとカバンを探し取り出したもの。
「っ!?それは……」
「やはりですか。これは、Zリングの原材料ですね」
「……これはどういう経緯で?」
ハラさんは訝しげな視線をモミジちゃんに向けてそう聞く。
「えっと……昨日アーカラ島に行ったんですけど、ピンク色のタマゴみたいなものに入って、人っぽい形をしてるかわいいポケモンにもらったんです」
「なんと!!カプ・テテフが……珍しい。余程のことがないと出会う事はないのですがなぁ……モミジ君に、なにかを感じたのかもしれませんな」
「そうでないと、こんな代物をくれないでしょうし。……さて、
俺の含みを持たせた発言にハラさんは深く考える。
「……それを見定めるのが、私達の役目ですからな。ふむ、モミジ君、島めぐりに挑戦してみませんかな?」
「島……めぐり?」
「このアローラ地方で、古くから執り行われてきた『儀式』とも言える風習ですな。成長を促すためのものですが、島の守り神から直接これを貰ったのなら挑んでもいいでしょう」
「俺は実際に見たことがないからあまり言えないけど、モミジちゃんの目的の修行にもなるよ」
「……」
まだ実感できていないのか、戸惑いの表情で考えている。
「……強くなれますか?」
「それは、君の頑張り次第ですな。ですが、資質は十分にあります。あのカプ・テテフが認めたのなら尚更」
「サトルさん?」
「俺も出来るだけ協力する。うちには島めぐりに挑戦してる弟もいるからな。サポートは任せろ!」
「……」
やっぱり、不安かな。突然過ぎるからね。
カタカタ……「マイッ!」
「マイナン、勝手に出てきちゃダメでしょ!」
「マイ!マイマイ、マイ!」
「マイ…ナン?」
短いその腕を必死に振って伝えようとするマイナン。
「一緒にやりたい、って言ってるんじゃないかな?」
「マイナン……そうなの?」
「マイッ!!」
「……ハラさん、サトルさん。私……島めぐりに挑戦します!!」
「しまキング、ハラ……しかと聞き届けましたぞ!」
こうしてモミジちゃんの島めぐり挑戦が決定した。若いっていいねぇ(15歳の思考)ハラさんも満足げな表情だ。
やっぱり、パートナーの存在っていうのは大きいなプラスル。俺もいつも、お前に助けられてる。ありがとうな。
カタカタ……っとボールが少し揺れる。
「ところでモミジ君、この石を預からせていただけないですかな?」
「どうしてですか?」
「Zリングに加工するため、だよ」
「Zリング……?」
「これです」
ハラさんは隣の部屋に行き、白い、サトシもつけているあのZリングを持ってきた。
「ここにひし形状の窪みがあるでしょう?これは、試練を突破するとその証として受け取るZクリスタルというものを嵌めるためなのですな」
ハラさんはさらに、少し大きめの箱を持ってきた。
「わあ……綺麗」
「これがZクリスタルですな。ここにあるのは18種類、分かりますかな?」
「18……?あっ!ポケモンのタイプの数!」
俺も黙ってみているけど、口を挟める雰囲気でもないなぁ……
「そう!Zクリスタルは各タイプごとに種類があり、そのタイプの技を覚えているポケモンが使用することができるのですな」
「使用……?」
「モミジちゃん、参考映像をどうぞ」
「あっ、ありがとうございます!」
『ダイナミック……フルフレイム!!』
この前許可を取って、撮影させてもらったのだ。カキ君、協力ありがとう!
「これが……Zクリスタルを使った攻撃」
「我々はZ技と呼んでいます。しかしZクリスタルとZリングがあればいいというわけではないのです。ポケモンとトレーナー、2人の心が一つとなり、特定のポーズと共に
「ポケモンとトレーナーの全力……すごいです……」
初めて見るZ技にトレーナーとしての好奇心が強いのだろう。わずかに口角が上がっている。俺も初めてみたときは興奮したからな。
「ハラさん……どうして、私だったのでしょうか?」
「ふむ……長年しまキングを務めて来ましたが、出せる答えは……守り神のみぞ知る、ですな。守り神は気まぐれですからなぁ」
「なるほ……ど?」
さすがは神様だよ。テテフの逆鱗に触れなかっただけ運がいいと思う。
「この原石をZリングへと加工するのに少し時間がかかるので、完成したらサトル君に預けてもいいですかな?」
「俺に、ですか?」
「ええ、会うことも多いでしょう?」
「まあ確かに、週一でコーチをする予定ですので。でもいいんですかハラさん。しまキングがZリングを渡すべきでは……?」
「昔ならそうすべきでしょうが、大丈夫でしょう」
「そういうことなら……」
なぜ俺なのだろうか?まあ信頼の証だと考えればいいか。
「では私は早速準備に取り掛かるとしますかな」
「っ、じゃあ俺たちはお暇しようか」
「わかりました。マイナン、行こっか」
「マイ」
「「お邪魔しました!」」
「こちらこそ、貴重な体験を聞かせてもらって感謝ですな」
そして俺たちは家を出る。
「さてと、どうする?宿まで送るよ」
「いえ、歩いて帰ろうと思います。出会ってないポケモン達に出会えるかもしれないので!」
「了解。気をつけてな」
「はい!サトルさんもお気をつけて!」
「ボーさん、頼む」
「マンダ!」
「わぁ……ボーマンダだ!」
すごいキラキラした目のモミジちゃんを横目に、俺はボーさんをボールから出しその背に乗る
そしてモミジちゃんに手を振りながら飛翔を開始。
「サトルさ〜ん!さようなら〜!」
「よし、ボーさん、let's go!」
こうして、1日が終わった。昼飯に誘えばよかったかもしれないと気づいたのは、家に帰った後だった。
〜その後〜
「う〜ん……」
「サトシ、昼ごはんだぞ?食べないのか?」
「う〜ん……」
「サ、サトシ?」
「う〜ん……」
「サトシィィィ!?!?」
ある兄弟のポケモン達はその主人達を横目に楽しく遊んでいる。ロトムはなぜか弟の唸りを数えているようだ。兄は「反抗期だァァァァ!!!!」と叫び、弟は聞こえていないのか「う〜ん……」と考え込むばかりだ。
ちなみに夜も同じような光景が繰り返されるのであった。
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弟の試練
14話
「よし、今日はここまでにしよう。復習のプリントを作ってるから次の授業までにやっておくように!」
「「「「「「え〜!!」」」」」」
「ちなみに全問正解だった子には休憩時間にプラスルと遊ばせてあげよう」
「「「「「「頑張ります!!」」」」」」
「よろしい!」
ガタガタガタガタ!!!!
腰のボールがありえない速さで揺れているが気にしない。しかも最近運動してないから体重増えてきてるんだよ。せいぜい鬼ごっこして運動してこい。
現在、サトシ達のクラスではない教室で授業を行なっている。静かに授業を聞いてくれる良い子達だ。
「次の授業は……サトシ達のところか。……サトシは復活しているだろうか」
昨日からずっと、うーん、しか言ってなかったサトシだが無事にハラさんからの質問に答えられたのだろうか?最近悪さしてるコラッタとラッタ達の撃退だったか?調べたけどヤングースやデカグースの力で解決しているらしい。サトシがちゃんと調べていれば良いんだけども。……まあ、そんなことしてないよな。
「アローラ、授業の準備出来てるか……って、どうした?」
サトシ達のホームルームについた俺はみんなに呼びかける。
「あっ、先生!サトシがずっとこんな調子で……」
「朝から、うーん、ばかり繰り返しているんです。何かあったんですか?」
「……サトシから聞けば良いさ。朝からずっとか?授業中も?」
「は、はい……」
「授業中も」
みんなが教えてくれる。どうやらサトシはずっと悩み混んでいるらしい。しかし、俺の不機嫌が伝わったのか少し表情が硬い。
「すぅ……サトシィィィ!!」
「おわっ!?……兄ちゃん?」
突然大声で呼ばれて驚いたサトシは椅子から転げ落ちる。
「サトシ、ハラさんからの課題に悩むのは大いに結構だけど、授業にもちゃんと集中しなさい」
「うっ……ごめんなさい。でも、全然分からなくて」
「ちゃんと友達に相談したのか?」
「えっ?」
「一人で考え込むなんて、サトシらしくない。ハラさんは人と相談してはいけないなんて言ってないんじゃないか?」
「……あっ!」
気づいたらしい。それと同時に、カキ君達もサトシによる。
「そうだぞサトシ。聞かせてくれよ」
「私たちもお手伝いしたいです!」
「おお、サトルがいつになくお兄ちゃんしてるロト……」
「ほほう?ロトム、ちょっと話し合おうか?」
「エッ!?……遠慮するロト」
「ピカッ!!」
「ピカチュウ……うん。みんな、手伝って欲しい!」
生徒達が一致団結しているところに、俺は割り込む。……申し訳ないとは思ってるからな?
「その前に!授業の時間だ。今日はポケモンの生態について勉強します。コラッタ達のことではないからお前達で頑張るんだぞ」
「「「「「「はい!!」」」」」」
相変わらず、良い返事だ。……最近コレしか言ってないな。
〜森、キテルグマの住処〜
「ねえ」
「ん?どうしたムサシ」
「サトルがアローラに来てること、サカキ様に言った方がいいんじゃないの?」
「確かに……サカキ様もサトルの事気に入ってるしニャ〜」
「ソーナンス!!」
最近キテルグマに養われ始めたロケット団一行は、サトルについて話し合っていた。
「そうだな〜。些細なことでも報告したほうがいいし、報告するか!……次の定期報告っていつだったか?」
「ん〜……あれ、いつだったかしらね」
ビービービー!!
現実は無情、今である。
「なっ!?お前ら早く並べ!!」
シュッと全員が小型の投影機の前に立つ。
『定期報告の時間だ。お前たち、成果を聞こう』
画面にはカントーのペルシアンを侍らせたロケット団のボス、サカキの姿が。別件があるのか分からないが、マトリの姿はない。
「「「はッ!!」」」
「アローラのポケモンには格別強い個体がいるそうです。通常の個体よりも体が大きく能力も高いのだとか」
『ほうッ……捕獲することができれば、我がロケット団の貴重な戦力になり得るな。お前たちで捕獲は出来そうか?』
サカキは興味深そうに報告を聞く。
「もちろん!……と言いたいところですが、正直戦力が足りません。現地のポケモンを捕獲しただけではいささか……」
『ふむ……精鋭部隊の派遣も検討しておこう。他には?』
「別件になるのですが……」
コジロウの引き気味の声にサカキは反応する。
『言ってみろ』
「アローラ地方に、サトルが来ていますのニャ」
『サトルが……!!フフフッ……良い報告が聞けた。これからもせいぜい励め』
アニメでは放送できない、大人の汚い会話だった。
「「「ありがとうございます!!(ニャ!!)」」」
「ソーナンス!!」
『期待している』
そして通信が終了する。その日は、サカキの期待に応えるためキテルグマのとこから出て行こうとするが、当然連れ戻されるのだが余談である。
「クックック、ボーナスをやるか。サトルからも、いい働きをしたものにはそれ相応の報酬を、と言われたものだしな。私から出向く事も検討しておこう」
明らかに不穏な独り言がどこかで発せられた気がするが、本人しか知り得ないので割愛。
〜放課後〜
「兄ちゃん、俺ハラさんの所に行ってくる!」
「おっ……答えは出たのか?」
「うん!!ヤングースとかデカグース達の力を借りるんだ!!」
「……なるほどな。よし、行ってらっしゃい。サトシ、ピカチュウ」
「行ってきます!!」「ピッカ!!」
……あんなスピードで走っていって、バッグで寝てるモクローが起きないのは本当にすげえな。……さてと、早く終わらせて俺も行くか。せっかくハラさんに勧められたしな。
この後むちゃくちゃ仕事した。
〜少し経って〜
「ボーさんありがとう」
「マンダァ」
あの後速攻で仕事を終わらせた俺は、ボーさんに乗ってハラさんのところまでやってきた。
「おお、サトル君ちょうどよかったですなぁ。丁度今から試練を行おうとしていたのですな」
「あっ、兄ちゃん!」
ボーさんから降りてハラさんの家の敷地内に入ると、ちょうど2人が家から出てきた。……俺、毎回タイミングよすぎるな。
「ハラさん、この度は本当にありがとうございます。神聖な儀式の場に立ち会う事や撮影の許可まで頂いて……」
「いえいえ、アローラのためですからなぁ。カプ・コケコもお許しになるでしょう。何より、サトル君の事を気に入っていますからなぁ」
「そうだといいのですが……」
そこがちょっと不安なんだよなぁ……
「兄ちゃん?なんの話?」
「なんでもないさ。ほら、行こうぜ」
俺たちは試練を行う場所まで歩いていく。
話を聞く感じ、どうにも主ポケモンはラッタじゃなくてデカグースっぽいんだよなぁ。ゲームの知識はあてにできんな。
〜試練の洞窟〜
「ここが……」
前言撤回、洞窟の構造ゲームの時と全く同じだわ。いや〜ムーンまでやってて良かったわ〜(熱い手のひら返し)
「ロトム、映像を録画してもらえるか?できれば写真もセットで」
「もちろんロト!あとでコピーして渡してあげるロト」
「サンキューなロトム。サトシ、ピカチュウ、準備は?」
「バッチリだぜ兄ちゃん!なっ、ピカチュウ?」
「ピッカ!」
「ふむ、では主ポケモンを呼び出しますかな」
そして、ハラさんが洞窟の奥に向かって叫ぶ。すると、奥から足音が聞こえてきた。現れたのはヤングースとデカグースだ、しかし……
「普通の個体に見えますが……」
「その通りですサトル君。あれは主ポケモンの仲間、まずは彼らをポケモンバトルで倒すのですな」
「バトル!!だったら……ピカチュウ、モクロー!!」
「ピッカ!」「……zzz」
「へ?」
「寝てるな」
「寝てるロト」
ダブルバトルが始まる……と思った矢先に、ボールから出てきたモクローが寝ているという珍事。いや、モクローだったら日常茶飯事か。ハハッ、ポケモンの個性っていうのは面白いなぁ。
「モクロー起きろ!!」「ピカッ!!」
「ポッ!?」
「あっ、起きた」
「よし、じゃあ行くぜ!」
ヤングース達も構える。
サトシのバトルはダイジェストでお送りしよう。苦情は作者にどうぞ。(えっ……by作者)
「ピカチュウ【10まんボルト】、モクロー【たいあたり】だ!!」
デカグースに【10まんボルト】、ヤングースに【たいあたり】がヒットし戦闘不能になる。モクロー……すげぇな。音もなく忍び寄るあれはもはや天性の才能と言ってもいいだろうな。
そして次に現れるのは……
「グゥゥゥゥス!!」
「いや、デカすぎだろ!?」
「通常の3倍はあるロト!!」
さっきのデカグースの3倍ほどある、主ポケモンのデカグース。その巨体にはオレンジ色のオーラも見える。主ポケモンの特有の能力上昇のオーラだろう。……ていうか、ここの主ってラッタじゃなかった?アニメ世界とゲーム世界はやっぱ違うんだろうか。
その後、モクローは寝てしまったのでピカチュウ一体でバトルを開始。あの巨体とパワーで繰り出される【すなかけ】はもはや【すなあらし】に匹敵するレベルだった。歴戦のピカチュウでもその威力にはなす術がなく、強力な攻撃をヒットさせられる。
俺もプラスルでならどうするか対策を考えたが、あの巨体なら【くさむすび】で躓かせてから【でんじは】を確実に当てて【でんこうせっか】で削っていくってところか。最悪の場合の奥の手もあるし、問題ないな。
「ピカチュウッ、電気を駆け上がるんだッ!!」
「ピカァ!!」
………………はッ?えっちょアレどうなってんの!?えっ……おかしいな、砂って電気を纏えるっけ?砂鉄?いや、アレは厳密には鉄ではなかったはずなんだがなぁ……原理がわからん。
巻き上げられた【すなかけ】の砂に向かって放ったピカチュウの【10まんボルト】は砂で留まっていて、ピカチュウはその電気を足場にして巻き上げられた砂の上からデカグースに攻撃を与えていた。
「えぇ……プラスル、お前アレをどんな時も確実に成功させれるか?」
フルフルッ……
無理だそうだ。いや、普通に考えて無理だ。まずその発想が思いつかねぇよ……流石だ、サトシ……。
「ハハッ……ハラさん……」
「どうしましたかな?」
「俺の弟、マジで凄くないですか?」
「……ハッハッハッ!!そうですなぁ、私も予想外でしたな。サトシ君は、とてもいいトレーナーですなぁ……」
そしてそのまま【でんこうせっか】で攻撃を与え続けたピカチュウはデカグースの巨体を押し倒し、戦闘不能まで持っていった。
「試練そこまでッ!!この勝負、挑戦者サトシの勝利ッ!!」
「よっしゃあッ!!」
「ピッカァ!!」
「ロトム、録画停止だ。ありがとうな」
「どういたしましてロト。いい動画が撮れたロトよ〜」
「グ、グース……」
「ッ、デカグースッ!!」
サトシとピカチュウは起き上がったデカグースに駆け寄り肩を貸す。デカグースはサトシの助けを断るが代わりに何かを渡した。
「おぉ!!あれは……」
「ここからじゃ良く見えないな………ハラさん、あれは?」
「ノーマルZですな。主ポケモンがサトシ君を認めたという事ですな。普通は早々渡されるものではないのですな」
「なるほど……サトシのデカグースに対する思い遣りが通じたと……なんともサトシらしい」
今までの旅路でもそうだったしな。ゴウカザルやチャオブー、最近だとゲッコウガだったな。まだまだいるが、皆がサトシからの愛情を受けているから。リザードンとか酷かったしな。アレ?ほのおタイプ率高い……高くない?
「Zクリスタル……ゲットだぜッ!!」
「ピッピカチュウッ!!」
しっかりとポーズを決めていくサトシ。生では初めて見たな……
「お疲れ様サトシ、そしておめでとう。俺が見ない間に随分と強くなったな」
「ありがとう兄ちゃん。でも兄ちゃん、俺とバトルしてくれないからわからないでしょ?」
「ごもっともだな。まあ、いつかバトルしてやるよ。ふさわしい場所でな」
ジムリーダーとして、挑戦を受けてやるよ。
「むぅ……絶対だよ?」
「おう」
その日の夕食はいつもよりちょっと豪華にした。特にポケモン達には大好評だった。最近見かけたけどククイ博士って色んなポケモン持ってるのな。なんか俺らがいない時間見つけてポケモン達と食事したのをみたんだよ。たまたま早く仕事が終わった時にな。
〜翌日〜
「皆さん準備はいいですか?」
町にある大きな倉庫の前で俺、サトシ、ククイ博士、ハラさん、ジュンサーさん、昨日サトシが戦ったデカグース達が並んでいる。今回は最初の目的である、作物を荒らすラッタ達をしばくためだ。
「ヨ〜さん、扉が開いたら連続で【きあいだま】だ。威嚇程度の威力でな」
「……」グッ
ヨ〜さんがこちらをみてサムズアップしてきた。準備もバッチリっぽいな。
バァン!!
「「「「「「ッ!?」」」」」」
「ヨノワール、【きあいだま】!!」
ジュンサーさんが扉を開けると中には数え切れないほどのラッタとコラッタ達が驚いたようにこちらをみてくる。俺はヨ〜さんに指示を出しデカグース達も【すなかけ】や【かみつく】でラッタ達を吹っ飛ばしていく。
「すっげぇ!!」
「サトル君のヨノワール……先日も見ましたが素晴らしいパワーですな」
「ありがとうございます。……ッ、皆さん避けて!!ラッタ達が逃げます!!」
俺の声でその場にいた人たちが左右に避ける。待ってましたとばかりにラッタ達が森の方へ逃げていった。
「「「グースッ!!」」」
「……♪」
「お疲れ様ヨ〜さん。ありがとな」
ヨ〜さんをボールに戻す。
「協力感謝します!!」
「いえいえ、これもしまキングの仕事ですからなぁ」
「グース……」
「あら?」
ジュンサーさんが主デカグースと一緒にいたデカグースに目をつけた。どうしたんだ?
「あなた……なかなか見所があるわね。私のパートナーにならない?」
「グ……ス?」
デカグースも迷っているようで主デカグースの方を向いた。
「……グスッ」
「グース!!」
主デカグースが頷く。ジュンサーさんもその反応を見てにっこりだ。
「これからよろしく、デカグース」
「グスッ」
「あっ……ボールが……」
どうやら、空いているボールを持っていないらしい。俺は、一体分の手持ちの空きがあるので持ち歩いているボールを取り出してジュンサーさんに声をかける。
「よかったら俺のボール使ってください。余ってるんで」
「いいの?じゃあ遠慮なく……一緒に来てくれる?」
「グスッ!!」
ジュンサーさんが差し出したボールに、デカグースは手を触れボールに吸い込まれゲットした時のカチッっという音がなる。
「これからよろしくね」
カタッ
サトシの試練突破、モミジちゃんのZリング、街の問題の解決、ジュンサーさんのデカグースゲット。とても濃い日が続いた。
「そうでした。サトル君、これを」
「ハラさん?……あぁ、これが」
「はい。モミジ君のZリングです。渡してあげてください、それと、いつでも島めぐりへ来てくださいとも伝えて欲しいですな」
「分かりました。責任を持って渡します」
「頼みましたぞ」
俺が見たことある真っ白なリングではなく、リングの部分がピンクだ。それに、Zクリスタルを嵌めるはずの場所が少しおかしい。謎の突起もある。おそらく……俺の知らないウルトラサンムーンの物なんだろうな。
そうだ、今度のハラさんとの大試練に誘ってみるか。
皆さまお気づきいただけただろうか……今回、相棒ポケモンであるはずのプラスルが登場していないことを……ボールをガッタガタ揺らしているだけだと言うことを……
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スケールの違う再会
???
×××ポケモン
特性:◯◯◯時『プレッシャー』、◇◇◇時『ふゆう』
技:シャドーボール
ドラゴンテール
シャドーダイブ
……隠す意味ないなコレ。
15話
「いくぞピカチュウ!!これが俺たちの……ゼンリョクだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!【ウルトラダッシュアタック】!!」
「ピッカアァァァァァァ!!」
ピカチュウが一筋の閃光となってカクトウZ技を放っているハリテヤマに突撃、見事戦闘不能にまで追い込んだ。
「いよっしゃぁぁぁぁ!!!!兄ちゃん、大試練突破したよ!!」
「ああ、見てたぞサトシ!!ピカチュウとモクローも素晴らしいバトルだった」
毎度毎度時が経つのが早い?……勘弁してくれ。どこまでがネタバレになるかわからねぇから容易にお見せできないんだよ。
「プラッ」ペシッ
「ハッ!?俺は一体誰に言っていたんだ……」
少々取り乱したようだ。ええー、現在はハラさんの大試練をサトシが突破したところだ。詳しくはアニメを見てくれ(どんな描写か俺は知らないけど)
えっ?モミジちゃん?手持ちの子が体調を崩したからポケモンセンターで看病するってさ。べ、別に寂しくはねぇよ。
「おめでとうサトシ君。力強く、トレーナーとポケモンの絆が感じられる良いバトルでしたな!!」
「ハラさん……ありがとうございます!!」
「さて、大試練を突破したサトシ君にはこのカクトウZをお渡ししましょう……ッ!?」
ハラさんが取り出したZクリスタルが突如消えた。いや、正確には奪われたというべきだな。俺も、準伝説のスピードを目で追えるくらいにはマサラ人してるのかぁ……(遠い目)
「ぬ……これは、デンキZ。なるほど、カプ・コケコですな。全く、サトシ君も苦労しますなぁ」
「へ?」
「おっと、こちらの事です。では改めて、大試練を突破したサトシ君にはこのデンキZをお渡ししましょう」
「ありがとうございます!!デンキZ、ゲットだぜッ!!」
「ピッピカチュウッ!!」
お約束のサトシの決めポーズ。雰囲気をぶち壊すようで悪いが多分15、6歳を過ぎたあたりから黒歴史として残るだろうな……
物凄い横着をしたがこの日はこれで終了した。もちろん夕食は死ぬほど豪華にしたぜ。サトル特製カレーだ。
〜翌日〜
「兄ちゃん!!俺、カキんちに行ってくる!!
「え、今からか?……ああ、カキ君は許可したのか?」
「うん。だよなピカチュウ、モクロー?」
「ピッカッ!!」
「クロッ!!」
「なるほど、あんまり無理するなよ?昨日の疲労がまだ残ってるだろうからな」
「大丈夫だって。行ってきまーす!!」
おお、サトシがついに友達の家に遊びに行くようになったのか……小さい頃はポケモンの事ばっかりで友達なんて1人も……いや、俺もだったわ。なんなら今だって同年代の友人、あんまりいないな。ヒガナさん、アランさん、……Nは友人にカウントしていいのかな?
あ、ちなみに俺は休みだ。スクールは休みだが教師には仕事がある。だが今まで過剰に仕事をしていたせいか、ククイ博士から休めと言われてしまった。いや別に疲労はないんだけどなぁ……まあ2週間分の教材を作ったのはさすがにやりすぎたかなぁ〜って思ったけどさ。
…………ねぇ知ってる?
俺、ジムリーダーなんだよ?なのにジムも持ってなくてさ。なんなら得意タイプのゴーストポケモンだって3匹しかいない。それでさ、ポケモン協会本部からの指令を受けて遥々アローラまで来たのはいいよ?たださぁ……新米ジムリーダーにポケモンリーグ設立なんて大役任せる?補助員もなしで?
……まあここで愚痴っても仕方がない。今日は仕事のことをは忘れて休むと決めたのだ。
今日は心ゆくまでガラル地方について勉強するんだよぉ!!なんだよドラパルド君。君ゴースト・ドラゴンなのかい。面子を見た感じ、ドラパルドかジュラルドンって言うポケモンが600族っぽいね。……サニーゴのリージョンフォームはゴーストタイプか。いやこれどう見てもサンゴ礁の白化現象じゃ……(殴
〜そんなこんなで昼過ぎになった頃〜
「やべぇ……ガラルのジム制度結構俺向きでは?今からでも……はっ!?いやいやそんなことは流石に……」
パキッ……ピシッ……
「ん……?」
何やらガラスが割れるような音が……って、あぁ。
「ギャウゥ……」
「久しぶりティナ。元気してたか?」
「〜〜〜!!」
自室……地下のちょっとしたスペースを俺の部屋っぽくさせてもらってるだけだが、そこの空間にヒビが入って割れた。そしてその中から特長的な黄色い牙?を持つポケモンが顔を出した。
「あ〜、そういや地方を移ったから居場所が分かんなかったのか。ゴメンな……ていうかお前、ちょっと大きくなったか?」
「グルゥ……?」
「まぁ、自分じゃ分かんないよな。今日はどうする?俺がそっちに行くか、お前が来るか。ちなみにここはアローラ地方っていう、大体いつでも暑くて太陽が眩しい場所だ
「グギャ!?……ギャウゥゥ」
「はいはい。そっちに行けばいいのね。書き置きしとかないとな……これでよし。ああ、アナログ時計も用意しないと」
あっちに行くには色々と準備しないといけない。その前に一度外に出る。
「全員集合ッ!!久しぶりにあっちに行くぞ!!」
「「「「「……………!!!!!」」」」」
案外近くに居たのだろう。ウチの家族達は全員瞬時に俺の元に帰ってきた。プラスルは【でんこうせっか】まで使っている。
「は、早かったな……よし、じゃあ一旦ボールに戻ってくれ」
全員をボールに戻し、自室に戻った。
「ギャウ」
「お待たせ。じゃあ行こう」
パリンッ!!
空間の裂け目が人が1人入れる程度にまで広がった。
「よいしょっと……ふぅ、相変わらずここは変な空間だな」
足場が浮いていて何故か重力も変なことになっている。俗に言う『やぶれたせかい』だ。ここまで言えば皆様わかるだろう。はんこつポケモンのギラティナ。俺が旅をしていた時に出会った、伝説のポケモンだ。
Dシンオウ地方を旅したときにゲットしたヨマワルがサマヨールとなり、ヨノワールに進化させるために必要だった『れいかいのぬの』……それを手に入れるためDPの知識から『もどりのどうくつ』に特攻したんだ。結果的になぜかギラティナと知り合いになった。
「ギャウ!!」
「あーはいはい分かったよ。よっと」
5個のボールを空中に投げ全員を呼び出した。
「お前らはティナと遊んでてくれ。俺はちょっと挨拶してくるよ。ヨ〜さん、行こう」
「………!」
サムズアップしてついてきてくれるヨ〜さん。ここでくらい喋ればいいのになぁ。
少し歩いたところで、俺が以前起きっぱなしにしている鏡の場所に到着した。
「ギラティナ様、お邪魔しています」
「………」
敬語で挨拶をして数分。鏡に、水の波紋のようなものが広がって巨大なポケモンが現れる。
『………』
オリジンフォルムのギラティナ。約、10メートルほどはあるだろうその巨体は、その特性『ふゆう』によって浮いている。
「あ、そういえば……シェイミの時やアルセウスの時にギラティナ様が気にかけていた人間……どうやら私の弟だったようです。弟が御世話になりました」
『………!』
「名前ですか?サトシですね」
『………!!』
このギラティナは所謂映画の個体だ。普段は反転世界で暮しているらしいが、偶にこちらにいるギラティナの様子を見に来るらしい。神と呼ばれるだけあって流石に常識破りだ。2匹いるのはさすがに俺にも分かんないけどな。
『………』
「いやあの……さすがにギラティナ様とよく会う事を言うのは……その一応ギラティナ様神話の存在ですからね!?」
『………』
「あっ、ちょ、ギラティナ様!?そんなにしょげないでくださいよ、また『はっきんだま』掘り当ててきますから!!」
『………、……』
一瞬動きが止まったが、すぐに反転世界に戻っていってしまった。えぇ……
ちなみに俺がギラティナ様の言葉が分かるのは、ヨ〜さんがジェスチャーでいい感じに伝えてくれるからだ。
「こんなもんかな。ヨ〜さん、ありがとな」
「………!」
「戻ろっか」
それからまた歩き出した俺たち。
「覚えてるかヨ〜さん。まだヨマワルだった頃、ティナを見た瞬間にお互いビビって隠れてたよな。お前は俺の後ろに、ティナは岩陰に」
「………///」
「ガルさんがピンチだと勘違いしてボールから出てきて【キングシールド】で守って、ボーさんは俺にメガシンカをさせようとしてくるし」
俺がティナって呼んでるギラティナは、2メートル程度しかない。どうやら成長期らしい。会うたびに大きくなってる気がするからな。『やぶれたせかい』は基本人間が来れる場所じゃないからポケモンハンターの心配もなく、ギラティナという個体の安心できる場所なのだろう。
「結局ギラティナ様が来て、『はっきんだま』を渡して『れいかいのぬの』を貰ったんだった。いつのまにかお前ら、ティナとも仲良くなってるし」
「………」
ウンウンと腕を組みながらうなづいている。
「さてそろそろついt……へっ!?」
「………!?」
戻ってきたと思ったらなんということだろう。プラスル以外全員地に伏してるではないか。
「プラスル……何事?」
「プラ、プラプラ!!プーラ!!」
「うーん……分からん。ヨ〜さんよろしく」
「……!!…!!………!!」
「あぁ、ティナに頼まれてバトルしてたのね。それで、ガルさんとデラさんは【シャドーダイブ】で不意を突かれて戦闘不能。ボーさんはメガシンカ出来ないのを忘れている間に【ドラゴンテール】でやられたと。プラスルは?」
「………………!!」
「【でんじは】して、【こうそくいどう】しながら【かみなり】連打?鬼畜かお前は……てかティナ『まひ』状態かよ!?ティナァァァァ!!まひなおし、すぐにかけるからな!!」
思ったよりガチでバトルしてたらしい。ていうか、お前ら……いくら相手が伝説だからといっても流石に不甲斐ないぞ。
「大丈夫かティナ?」
「ギャウゥ!!」
「さ、流石は伝説だな……」
まひなおしをかけただけで全回復。なんならまだバトルしようとねだってくる始末である。
「あ〜じゃあヨ〜さん、やるか?」
「………?……!!」
「ギャウッ!!」
こうしてヨノワール vs ギラティナのバトルが始まった。
「先手必勝!!ヨノワール【あやしいひかり】」
「……!!」
両手から薄暗い光の球を出したヨノワールはティナに向かって放出。しかし、なんでもなさそうに体を捻ることで回避したティナは【シャドーボール】でヨノワールに発射。
「【シャドーパンチ】で迎撃。そのままティナにも当てろ」
「……!!……ッ!!」
「ギャ、ギャゥ!?」
【シャドーボール】はもちろん、しっかりティナの胴体にまで当てたようだ。
「畳み掛けるぞ、右手で【れいとうパンチ】、左手で【ほのおのパンチ】」
「ギャウッ!!」
水色と赤色のエネルギーを纏ってティナに肉薄。だが負けじとティナも【ドラゴンテール】で弾いてくる。
「……ッ!?」
「ヨノワール、大丈夫か!?」
「………!!」
幼体といっても2メートル級、その大きさの尻尾から繰り出される【ドラゴンテール】の勢いに押し負けてしまった。
「強くなったなティナ。これじゃボーマンダをメガシンカしないといけないかもな」
「ギャウギャウッ♪」
「でも強くなったからといって油断してると、足元を救われるぞ?。【おにび】だ」
「……!!」
「ギャ!?」
喜びの舞を踊っているティナの背後に忍び寄っていたヨノワールは、避けられないほどの至近距離で【おにび】を当てた。命中率なんてなぁ……関係ないのさ!!
「ギャァァァァ!!」
「ッ……【いちゃもん】」
「……!」
「……ギュウ!?」
【ドラゴンテール】をしようとしていたので、同じ技を連続で出すことのできない【いちゃもん】で技を封じ込めた。そうでなくても、【おにび】で『やけど』にすると同時に物理技の威力も半減するから十分耐えれるけどな。ティナも技が出せずに困惑しているようだ。
「両手で【シャドーパンチ】。これでとどめ……だが、こんなもんだ。まだまだ甘いなティナ」
ヨノワールがティナにパンチしようとして寸止めした。
「ギャウ!!」
「ちょ、痛いって……悔しいのは分かったから!!ああ今のうちにやけどなおしっと。ほら、オボンの実も食べて」
よほど悔しいのか腕を噛んでくる。甘噛みじゃなかったから持ってかれてるな……
「ギャァァウ♪」
「おお、美味いか。本当にうまそうに食べるよなお前。本当は食べなくても生きていけるんだろうけど、人生……ポケ生?にも楽しみは必要だよな」
「ギャウ」
すっごい笑顔だ。
ピピピッ………
「ん?……うわ、もう夕方なのか。やっべ夕飯の支度しないと……」
「ギャウゥ?」
「ああ、今日はここまでだ。……そんなに落ち込むなよ。いつでも遊んでやるさ」
「…………ギャウ!!」
「おう、絶対だ。じゃあまたよろしく」
「〜〜ギャウ!!」
ティナが気合を入れたと同時に、また空間の裂け目ができた。出口は外らしい。
「よっと。それじゃあまたなティナ」
「ギャゥ……」
「プラッ!!」
「マンダッ!!」
「「「………!!!!」」」
「………ギャウッ!!」
そうして裂け目は閉じた。
「……お前ら、ティナとバトルしてだいぶ疲れただろ。帰って夕飯にしよう。今日はゆっくり休もうな」
〜夜〜
「ククイ博士、サトシはまだ帰ってきてないんですか?」
「ん、聞いてないのか?今日はカキの家に泊まりにいってるぞ?」
「……泊まりとは聞いてないですねぇ。サトシの分も飯作っちゃったよ」
「ハハハッ、そうだなぁ……今日のMVPにあげたらどうだ?」
「MVP……ヨ〜さんだな。ヨ〜さん、今日は頑張ったから大盛りだぜ!!」
「………!!!!!!」
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アローラパンケーキレース
「ドイデ……ドイデェ……(私とコジロウの出会い……もしかして全カット?)」
「そうらしいぞヒドイデ。どうやらサトルのやつの活躍はなかったからだそうだ。ひどい話だよなぁ全く」
「ドイデ!!ヒドイデ!!」
……すんませんby作者
16話
「アローラパンケーキレース?」
「今度ハウオリシティで開催される年に一度のイベントです!!先生は出ないんですか?」
今日は普通にスクールの時間。サトシ達のクラスとは違うクラスで授業をしていた。そろそろチャイムが鳴るだろうという時に、このクラスの生徒の1人がアローラパンケーキレースというものについて聞いてきた。
「うーん……レースってことは優勝したら何かあるのか?」
「えっとぉ……なんだっけ?」
「僕知ってる!確か、1年間のアローラパンケーキの無料パスだ!!」
「へぇ、結構豪華だな。よし、俺らも出るかプラスル」
「プラァ……?プラッ!!」
「わぁ、私絶対に見に行きます!!」
「あ、僕も!!」「俺も行きたい!!」
「あたしは勿論レースに参加するわ!!」
学校の子って何故か授業で話題が出るとそこから派生して騒ぐよなぁ……いや、元気だからいいんだけど。
「はいはい、静かに!!他のクラスに聞こえない程度で喋りなさい。今日の授業はもう予定まで進んだからここまでだ」
「「「「「「はぁ〜い!!」」」」」」
毎回言ってるけどマジで素直でいい子達だな。
「先生〜プラスルと遊んでもいいですか〜?」
「いいよ。プラスル行ってらっしゃい」
「プラ〜」
ちょっと前まではたくさんの人に撫でまわされるから乗り気じゃなかったプラスルだが、最近は可愛がられてチヤホヤされるのを楽しんでいるらしい。
さて、アローラパンケーキレースね。検索検索っと……ふむふむ。へぇ……何段も積み重なったパンケーキをポケモンと協力してゴールまで運ぶのか。去年の大会は……アローラライチュウが優勝。あ、飛んで運ぶのありなんだ。じゃあプラスル以外でも出れる……って、人がポケモンの乗っているカートを引くのか。ボーさんとヨ〜さんは無理だな。軽く3桁は重量あるし。デラさんはまずパンケーキを持てない。プラスルは……体格的にキツイか。じゃあ、ガルさんだな。体重もちょうど良いしパンケーキも持てるし、決まりだ。
カ〜ンカ〜ンカカカ〜ン
「よし、今日の授業は終わりだ。日直、挨拶を頼む」
「起立、礼!!」
「「「「「「ありがとうございました!!」」」」」」
「はい、お疲れ様。気をつけて帰れよ〜」
教室を出て職員室に戻った俺は早速ククイ博士にきいてみた。
「ククイ博士、さっき生徒からアローラパンケーキレースの事を聞いたんですが、誰でも出場可能なんですか?」
「おお、そうだぞ。去年は確か……ノアさんが優勝したんだった。パンケーキ屋のな」
「ライチュウのトレーナーですか?」
「ああ、ノアさんのところのパンケーキは最高に美味いんだ。そうだ、今日は買い出しの後にサトシを連れて寄ってから帰るか。どこかの居候さんのお陰で余裕があるしな」
「あはは……それと同じくらいどこかの居候たちのお陰で食料を消費してますけどね。了解です、じゃあサトシを連れて来ますね」
「頼んだぜサトル」
〜放課後〜
「よし、買い出しはこれで終了だ」
「博士、こんなに買って大丈夫?」
「食いしん坊の居候がたくさんいるからな〜」
「あはは……」
街のスーパーで買い物をしたククイ博士、俺、サトシは途中にあるパンケーキ屋の前で立ち止まった。へぇ……ここが。
「ちょっと休憩してくか」
「やったぁ!!」
「……お金足りたかな?」
「プラァ……」
頭の上でペチペチと俺の頭を叩くプラスル。こんな時くらい気にするなと言われているようだ。
店内に入ると暖色系で統一された明るい店内が目に入る。これは……男1人じゃ来にくいな。いや、プラスルを連れてたら大丈夫か。
「いらっしゃいませ〜」
「ライライ〜」
お、アイツが去年の優勝者のライチュウか。……ほんとに浮いてるんだな。本物のアローラライチュウは見たことなかったから興味があるんだよ。パートナーは……このウェイトレスさんね。確かノアさんだったな。
「あら、ククイ博士」
「やぁノアさん。今日も賑わってるね」
「お陰さまで」
「あ!!アローラパンケーキレースだ!!」
サトシが壁に飾ってあるポスターを見て言った。なんだ、知ってたのか。だったら話は早いな。
「ぜひ出てみてね。すっごく楽しいから」
「兄ちゃん、出ようよ!!」
「俺はもともと出る予定だったからな。ガルさんと出るよ」
「プラァ〜」
そして俺たちは席に案内される。うわ、料理の写真やべぇ……軽く10枚はパンケーキが乗ってるぞ。これみんなよく食べれるな……いや俺も食えるけどさ。そしてプラスル。行儀が悪いから降りなさい。それと自分は出なくてよかった……みたいな声を出さない。ククイ博士にお前を出場させてもらうぞ?
注文をして程なく、パンケーキが運ばれてきた。ノアさんは両手に2皿、ライチュウは1皿を持っている。俺が頼んだのはフィラの実を使った赤いソースが香ばしい香りを放つパンケーキだ。フィラの実は辛いからパンケーキには合わないだろ、というそこの君。……メタいけどアニポケの飯はだいたい美味いから問題ないさ。……きっとね?
「「「いただきます…………美味いッ!!」」」
パンケーキの生地は一枚一枚がしっかり分厚いのに甘さが染み渡っている。しかもフィラのソースの辛さがその甘さを邪魔することなくベストマッチだ。おぉ……マジで美味いなこれ。
「プラ」
「ああ……悪いプラスル。はいあーん」
「…………プラァ!!」
「そうだよなぁ。マジで美味いよな」
どうやらプラスルもご満悦のようだ。両手をほっぺに当てて首をブンブン振っている。サトシや博士に食べさせてもらったピカチュウとイワンコも美味しそうな表情をしている。俺たちはそのままパンケーキをとても楽しんだ。……普通に一食分とった気分だよ。今度モミジちゃんにも教えてあげよう。いや、女の子だしもう知ってるかな。
食後、ノアさんの提案でアローラパンケーキレースの練習をすることになった。夕方、すぐ近くの公園に行きライチュウやピカチュウはパンケーキを運びながら走っている。浮いて走るライチュウは余裕そうに走破。パンケーキを背中に乗せ、バランスをとりながら走っているピカチュウは疲労困憊だ。……よし、俺も。
「let's goガルさん。じゃあ、はいこれ」
「………?」
「ああ、かくかくしかじか……っていうか記憶を覗いていいぞ」
「………」
パンケーキを渡そうとする俺に首を傾げながら、ガルさんは盾を持ってない右手で俺の頭を触って記憶を覗いている。
「………!!」
「お、やる気だなガルさん。じゃあ行ってみようか」
事情を理解したガルさんは俺からパンケーキを受け取って右手で持った。
「じゃあまずは、ここをぐるっと一周な。最初だからタイムは気にせず落とさないことに集中だ」
「………!」
ススス〜っとゆっくり俺が指定したコースを行っている。やはり右手に重心がよっているのか少しやりにくそうだ。半周くらいしたら慣れてきたのかすぐにバランスが良くなった。
「あら、サトル君のギルガルド凄いわね……初めてでここまで出来るなんて。今年はライチュウのライバルは多そうね♪」
「ライィ……」
ノアさんがガルさんの走りを見てウンウンと頷いている。隣で浮いているライチュウもガルさんを見ながら闘志を燃やしているようだ。
「ガルさん、目指せ優勝ッ!!」
「…………!!」キンッキンッ!!
盾を叩いて感情の高鳴りを伝えてくるガルさん。しかしパンケーキは崩れない……これがガルさんクオリティ。
〜レース当日〜
「ガルさん。コンディションは?」
「……!!」
「良いねぇ」
当日、受付を終えてサトシ達と一旦別れた俺はMCの説明を聞きながらガルさんと話していた。
コースは単純。まず人がパンケーキを持って中継地点まで行く。次にそこで待っている、自分のポケモンが乗ったカートを引きながら次の地点まで走る。そして最後は、ポケモン達がゴールまで走る。という三段構えだ。ガルさんの体重なら全然余裕で引けるので問題はない。
「サトルさん?」
「ん?……モミジちゃん。久しぶり」
「お久しぶりです!!この間はすいません」
「いやいや、手持ちの子の体調が悪かったんだししょうがないよ。良くなった?」
「あ、はい!!今日もその子でレースに出場するんです!!」
元気な笑顔で俺にそう言ってくるモミジちゃん。こういうイベント事もしっかり出るらしい。……そうだ、後でZリングを渡さないとな。
「出てきてアサナン」
「ナン」
「おぉ……力強い目だな。やる気バッチリだ」
モミジちゃんのモンスターボールから出てきたのはアサナン。【ねんりき】で浮いている。
「パンケーキも【ねんりき】で?」
「はい。でも集中力を使うから無理しないかが心配で……」
「ナン!!」
「はは、心配なさそうだ。アサナン、頑張れよ」
「ナンッ!!」
ガルさんを見ながら良い返事を返すアサナン。ガルさんも心なしかライバルを見るような目で見ている。
「じゃあガルさん、行ってらっしゃい。すぐに行くからな」
「アサナン、見ててね!」
俺達はパンケーキを受け取ってからスタート地点に行った。ポケモン達は一つ目の中継地点で俺達を待つ。どうやらカキ君達も出場するようだ。俺がこの前授業をしたクラスの子も何人か出ている。怪我しなければ良いんだが……
「よーい……スタートッ!!」
空砲が鳴り響いてレースが始まった。俺は少し早めに走って一番前に躍り出る。体力は衰えていないようだな。まだまだ現役だぜ俺は。なんたって15歳だからな!!なんなら発展途上だ!!」
「兄ちゃんはやッ!?俺も負けてらんねえぜ!!」
途中、平均台があり、後ろをチラッと見てみれば何人かが脱落していた。マーマネ君も脱落か……
「ガルさんッ、一位で来たぞ!!」
「……ッ!!」
障害物は何個かあったが軽く抜けて中継地点までたどり着いた。パンケーキをガルさんに渡して、俺はカートの紐を持って走る。……思ったより重い?
「サトルさん追いつきましたよ!!」
「うおっ?……モミジちゃん結構早いな」
気づけば、周りに他の出場者が少しずつ追いついてきていた。モミジちゃんのアサナンは両手でしっかりバランスをとっていた。
「俺たちはパンケーキレースに向いてないッ!!」
後ろからカキ君らしき叫び声が聞こえてくる。そりゃぁ……バクガメスの体重的に……運ぶのは無理だろうね。
そのまま特に順位の変動もなく、レースは最終局面へ。走り終わった俺はガルさんに激励の言葉をかけてガルさんを見送った。
「はぁ……はぁ……アサナン頑張って〜」
隣ではヘトヘトのモミジちゃんが膝に手を当てて呼吸を整えていた。
「おつかれモミジちゃん。はい、『おいしいみず』観客席に行こうか」
「ありがとう……ございます……ぷはぁっ!!い、生き返るぅ……」
俺が手渡した『おいしいみず』を飲んで少し回復したようだ。……人にも効果あるのかこれ?
観客席に戻ると、サトシ達はすでに戻っていた。
「あ、兄ちゃん、モミジも。こっち空いてるよ!!」
俺達を呼ぶサトシ。どうやら今までに何度かポケセンで出会ったりしているらしい。モミジちゃんも、スイレンちゃん、マオちゃん、リーリエちゃんのところに行って映像を見ながら話を始めていた。
現在の順位は1位ガルさん、2位ライチュウ、3位ピカチュウ。後ろにアサナンやアシマリ、アマカジ、ミミッキュが続いている。……ん?あのミミッキュって確か……ああ、あの人らも出てるのか。大方、優勝商品の1年間のパンケーキ無料券に惹かれたんだろう。
途中、ミミッキュがピカチュウに【シャドーボール】を放とうとしてアシマリとアマカジと一緒に退場してしまった。あの子の恨みは相当なものだな……流石ゴーストタイプ。
「あっ……ガルさん抜かれてるぞッ!!」
ここで言っても聞こえてないけど、言わずにはいられない。余裕そうな顔をしたライチュウがガルさんを抜いたからだ。ピカチュウもその様子を見て負けじと加速しガルさんを抜いた。ガルさんもその2匹を見て触発されたのか加速し2匹に並んだ。何気に後ろの方でアサナンが両手でパンケーキを持ちながら自分を【ねんりき】で浮かして移動している。何故か目を瞑っているが。もしやサイコパワーかなんかで周囲の様子が見えてるのか?先頭集団のガルさん、ライチュウ、ピカチュウに続いて次の集団は、アサナン、ネッコアラ、(ハリボテ感満載の)キテルグマだ。
「アサナ〜ン!!いっけ〜!!」
「ピカチュウ!!もっとだ〜!!」
「良い夢見てるかネッコアラ〜」
「ニャ……キテルグマ頑張れッ!!」
「ガルさん、ラストスパートだッ!!」
「ライチュウ、一気に決めるのよ!!」
各々が自分のポケモンに激励。しかし、キテルグマが突然、急激なスピードアップをしてガルさん達を抜いて一位になった。……なんでエンジンついてんだよ。見たらわかるだろ運営……あれ中身ソーナンスとニャースじゃねえか。……いや、おもしろいからもうちょっと見とこう。
「キィィィィ!!!!」
「ひっ!?」
そして響く鳴き声。コース前方から突然本物のキテルグマが現れてニセモノを破壊した。もちろん中身のニャース達は失格。
モミジちゃんが悲鳴を上げている。どうやらこのキテルグマ、この前モミジちゃんが襲われかけた個体と同じらしい。トラウマのようだ。モミジちゃんがすこしず〜つ俺の方によってきている。大丈夫だからね?
「ふっふっふ……今だガルさんッ!!ピカチュウ達が驚いている隙に……ってガルさん!?」
唖然として立ち止まってしまっているピカチュウとライチュウ。しかしガルさんは問題ない……と思っていたんだけど……どうやらキテルグマが出てきたときの風圧でパンケーキが吹っ飛ばされたらしい。ガルさん……お疲れ様。
目に見えて落ち込んでいるガルさんの周りに集まるベトベトン達。どうやら落ちたパンケーキはベトベトンが食べてくれるらしい。ゴミ処理みたいで悪い気がする。
「……あっ!!アサナン行っちゃえ!!」
気づけば、アサナンとネッコアラが一位争いをしていた。ピカチュウとライチュウも負けじと2匹を追いかけ、そして……
「決まったぁぁぁああああ!!これはッ!!……優勝は、ネッコアラですッ!!続いて2位はアサナン!!3位はなんとピカチュウとライチュウの同着です!!これは予想だにしなかった結果になりましたッ!!」
「あぁ……惜しかったぁ……」
モミジちゃんは悔しそうにしながらも笑っていた。楽しかったんだろう。さて、俺もガルさんを労いに行こうかな。
ずぅん……という効果音がつきそうなレベルで落ち込んでいるガルさん。
「お疲れ様。良く頑張ったな。今日はご馳走だ」
「…………ギルゥ」
「本当にお疲れ様。来年もアローラにいたらリベンジしような」
「………ッ!!」
来年、というワードを聞いてガルさんのテンションも戻った。おやおや……これは来年も出ないといけないな。
「よし!!早速帰って飯を作ろう!!今日はみんなでパーティーだッ!!」
「………ッ!!!!」
「プラッ!!」
勝手にボールから出てきたプラスルも一緒になって騒ぐ。そんな感じで、サトシや博士と一緒にワイワイと感想を言い合いながら家に戻った。
レース終了後
「モミジちゃんお疲れ様。アサナンもな。いいレースだったな」
「ナンッ」
「サトルさん、お疲れ様です」
「モミジちゃん、はいこれ」
「……これは?」
「ハラさんから預かった君のZリングだ。Zクリスタルは無いけど、とりあえず持っておいたらいいよ」
「これが……ありがとうございます!!」
「ああ、じゃあまた明日ね。どうせだし明日はワカシャモ以外の手持ちの子と一緒に特訓しようか」
「是非、お願いしますッ!!」
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ハッピーバースデー
17話
アローラパンケーキレースの翌日、いつも通りに出勤した俺はHRの時間まで職員室で書類仕事をしていた。プラスルが頭の上にいるので若干バランスを取りながら、だ。そんな時……
「サトル先生!!今すぐ来て!!」
マオちゃんが大急ぎでやってきて俺の名前を呼んだ。ほかの先生方もなんだなんだとマオちゃんを見ている。
「どうした?」
「リーリエがお世話してる卵が孵ったの!!」
「ッ!!わかった、すぐにいこう。プラスル起きろ」
「……プラ?プラ!!」
待ちに待った日がやってきた。ククイ博士がいないが仕方ない。とりあえずは俺達だけで向かう。
「ガルさん達をつれてきていれば良かったかな」
新たな生命の誕生の瞬間。ゴーストポケモンにとっては複雑な心境だろうが、そうだからこそ立ち会わせてやりたかった。ちなみに、ボーさんとプラスルしかいません。他のメンツはのんびりするってよ。
そうして教室までたどり着いた俺は、刺激しないように一旦部屋の外から様子を見た。しかしその時……
「みんな!!これを見てクレッフィ!!」
「ぐはぁっ!?」
「プラッ!?」
後ろから走ってきたオーキド校長が俺にぶつかり、俺が吹っ飛ばされた。校長の手には、俺達がアローラに来た時に渡したタマゴが。しかも少し発光している……え、そう言う感じ?
起き上がって校長が机にタマゴを置くと、タマゴが帰ってカントー地方のロコンが生まれたのだった。
「コォン……」
「コゥン?」
ふと隣を見れば、リーリエが世話をしていたタマゴの方からもアローラのロコンが孵っていた。両方ロコンとかどんな偶然やねん……
「リーリエはどうしてロコンに触らないんだ?」
「あー……いつもので触れないっぽくて」
ふむ……自分が世話をしていたタマゴでも無理か。まあしょうがないだろう。トラウマ系は仕方ない。なぁボーさん?
カタカタッ……
ふっ……ごめんって。腰のボールが揺れてボーさんが抗議してきた。
「コゥン……」
アローラロコン……ああ、長いからリーリエがタマゴの時に呼んでいたシロン、と呼ぼう。シロンはやはり生まれたばかりで不安なのか、リーリエの方に近づいた。
「へう……」
リーリエが変な声を出している。まあ慣れていくしかない。頑張れリーリエ。そして、サトシ達が順々に自己紹介をして行った。途中サトシが凍らされたり燃やされたりと一悶着あったが、孵ったばかりの子にテンション高く詰め寄るのも良くない。
「じゃあ次、サトル先生!」
スイレンちゃんの声で、俺もシロンに近寄った。
「やぁ、サトルって言う。コイツはパートナーのプラスルだ。生まれたばかりで不安な事もあると思うけどよろしくな」
「プラプラ〜!!」
「…………?」スンスン
簡単に挨拶したらシロンが首を傾げながら擦り寄って来て俺の匂いを嗅いでいる。
「コォンッ!!」
「うわっと……結構冷たいなぁお前。アッハハ……くすぐったいぞ」
突然腹部にタックルしてきたのでなんとか捕まえる。そして顔を擦り付けてきた。なんで懐かれてるんだろうなぁ俺。カントーロコンは好奇心旺盛なタイプで、ポケモン達ともすぐに仲良くなっていた。プラスルもいつのまにかな。
「あれ?先生に懐いちゃったみたい」
「今のところ、リーリエと先生にしか懐かないっぽいね〜」
「どうしてでしょうか?」
みんながシロンを眺めながら疑問を口に出していく。いや、正直俺も分からん……
「ふむ……おそらく、サトル先生がその子見つけてきたからじゃないかナックラー!!」
「「「「「「えっ!?」」」」」」
「あ、そう言う事か。お前タマゴの時から覚えてたんだな〜。嬉しいぞこのやろう」
「コン!!」
まあ確かにラナキラマウンテンでキュウコンからタマゴを受け取ったのは俺だが……あ、今度兄ロコンにも会わせてあげたいな。
「え、ちょっ……え?先生がシロンを見つけてきたの?」
「兄ちゃんいつのまに……」
「あー……この前、ウラウラ島に行くことがあってな。折角だからラナキラマウンテンに行ったら色々あったんだ」
少し内容を濁して言う。その方がいいだろうし。
「うん、一回降りてくれ」
「コゥン」
素直に俺の腕から降りてくれる。うん、いい子だ。
「そういえば、校長。両方生まれたって事は、タマゴの観察は終了ですか?」
「ああ確かに。でも、このままこのロコン達を育ててみるのはどうだろう?」
俺がふと、校長に聞いてみたがどうやら良い方向に進みそうだ。
「この子は……サトル先生、育ててみるカイロス?」
「コン?」
校長がカントーロコンを抱きながら俺に聞いてきた。うーん……
「コン!!」
「ぬ?」
どうやら校長の方がいいらしい。じゃあ決まりだ。
「校長の方が良いみたいですよ」
「そのようだね。じゃあこの子は私が、その子は君達で育ててみるといい」
校長が生徒達にシロンを任せることにした。まあその方が良いだろう。
「なあ?」
「コン?」
「誰と一緒にいたい?」
俺はしゃがんで、シロンに聞いた。大体答えは分かってるし、他のみんなも笑っている。でもこういうのはこの子の意思確認も大事だ。
「コォン……コンッ!!」
少しずつ歩みを進めたシロンは、リーリエの前で立ち止まって吠えた。
「え……わたくし?」
「リーリエちゃんがいいらしい。皆は不満か?」
「「「「「「「まさか!!」」」」」」」
満場一致だ。
「あとはリーリエちゃんが良いかだ」
「えっと……わたくしでいいのですか?」
「コォン?……コン!!」
嬉しそうに声を上げて何かを待っている。ここまで来ればやることは一つ。
「リーリエちゃん、これを」
「モンスターボール……分かりました!!」
俺は常備している未使用のボールを渡し下がる。
「すぅ……行きます!!モンスターボール!!」
「あてっ!?」
かなりの大振りで投げられ、大きく弧を描いたボールはゆっくりと直撃、サトシの頭にだ。
「コン」
「あっ……」
転がったボールを見たシロンはそれに近寄り、自分からスイッチを押してボールに入った。特有の音が鳴り、最後にカチッと鳴った。自分からボールに入ってくるのを見るとヒトモシだったころのデラさんを思い出す。イッシュで出会った時はわざわざ俺のカバンのチャックを空けてボールに触れてきたからな。プラスルが食ってたヒウンアイスに味をしめたっぽいんだよ。ああ、思い出したら久しぶりにヒウンアイスを食べたくなってきた。
「シロン……ゲットです!!」
この日、一人のポケモントレーナーが誕生した。彼女はその身にトラウマを抱え、ポケモンを触ることが出来ない。それでもポケモンに対して真摯に向き合い、良く勉強し、理解しようとする姿勢はとても評価できる。ジムリーダーとして、先生として、そして何より少し先輩のトレーナーとして、彼女が望むなら出来るだけ手伝おう。
「サトル先生!!時間があればその……一緒に帰りませんか!?」
「……へ?」
どうやら俺の出番は、すぐに来たらしい。
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デート?デートなの?
受験終わった!!!!
半年ほどおまたせしました!!(土下座)
18話
「お待たせリーリエちゃん」
「いえ!!こちらこそ急にお願いしてすみませんでした」
放課後、手っ取り早く仕事を済ませた俺(というかククイ博士が早く終業させてくれた)は校門の前へと急ぎ俺を待っていたリーリエちゃんに声を掛けた。礼儀正しいリーリエちゃんは快く返事を返してくれた。いい子や……まあ、まだシロンには触れないらしく、何かきっかけがあれば良いのだが……どうせロケット団とかスカル団来るやろ。忘れてたけどアニポケ世界だし。
「じゃあ行こうか……っていうか、どこに行くんだ?」
「シロンの好みを知りたいので街に行きます。その……知識はあるんですけど、いざ本当にポケモンをゲットしたとなると不安なので経験豊富な先生にアドバイスが頂けたらうれしいです」
「なるほどね。それくらいなら全然構わないよ」
そりゃまあ……初めてポケモンをゲットすれば不安にもなるか。俺だってプラスルをゲットしてからというものの、病気にならないか、人間の食事を与えていいのかとか、勉強して知ってたはずなのに不安で一杯だったからな。
…………さて。
「……楽しんでこいデラさん。夕飯に間に合うように帰って来いよ」
「………♪」
「サトル先生?何か仰いました?」
「いやなんでもない」
俺はリーリエちゃんにバレないよう森の暗いところにデラさんを出す。デラさんは楽しそうな表情を浮かべるとそのまま何処かに行った。やはりゴーストタイプ、悪戯は好きらしい。
何をしているかだって?いやー、どうにも俺らをつけてきてる奴らがいるっぽくてねぇ。
「「うわぁぁぁぁぁぁ!?!?」」
「ん?……今何か悲鳴のような物が聞こえませんでした?」
「さ、さあ……俺は特に何も……」
デラさん……脅かすのはいいけど少し抑えてくれ……ていうか声的にサトシとマオちゃんだな。大方リーリエちゃんのことが心配になって付いてきたんだろう。良い友達を持ったなサトシ、兄ちゃん嬉しいぞ……!!
「あの、先生……聞きたいことがあるんです」
「ん?」
「この子……シロンのタマゴを見つけたときのこと……知りたいんです!!」
「ああ、そのことね……」
俺がラナキラマウンテンでキュウコンに出会いタマゴを受け取ったこと、言って良いのだろうか?俺はもうそういう出会いは別れは慣れてしまったため割り切れるが、リーリエちゃんはポケモンと触れ合う経験がまだ少ない上にまだ子供。……少し、早いんじゃないのか。
「そうだな……誰にも話さないと約束するならいい。でも、辛い話になるよ?」
「ッ……聞きます!!シロンのトレーナーですから!!」
「……良いね。じゃあまずは、俺が別の仕事でウラウラ島に行ったときのことからだ」
俺はすべて話した。ラナキラマウンテンの中腹にある洞窟、シロンの兄にあたるロコンに案内されて向かった先はそこに住む氷ポケモン達。
氷点下を下回るであろうそこに咲く綺麗な花々。
その中央で横になりシロンだったタマゴを抱えていた母親キュウコン。
自分の命はもう長くなくこれ以上育てられないから、と渡されたシロンだっただったタマゴ。
母親からの最後の愛情といって展開された美しい『オーロラベール』
タマゴを抱えた俺を心配そうに見る兄ロコン。
……おそらく、息絶えたであろうキュウコン。
「……使いなリーリエちゃん」
「ありがどう……ございまず……」
カプ・ブルルのことは特に言わなかった。関係無いしな。涙を堪えきれなかったリーリエちゃんに未使用の予備ハンカチを渡す。まあ10歳そこらの子にはキツイ話だ。
「コォン……?」
「大丈夫よシロン……ッ」
心配そうな目でリーリエちゃんを見るシロンに触れようとしたが、しかしまた目の前でストップしてしまう。
「いつか、必ずそこに連れて行く。もちろん2人ともね。お前の兄さんにも合わせてやりたいしな〜」
「コン?……コンッ!!」
意味がわかっているのかいないのか、俺が頭を撫でてやると嬉しそうに返事をするシロン。まあ、シロンが兄ロコンに会うときには多分、キュウコンになってるだろうけどな……多分だけど、あそこのヌシになるんだったら『こおりのいし』を渡されるだろうし。
「すいません、みっともないところを見せてしまいました……」
「気にしなくていいよ。俺だってリーリエちゃんと同じくらいに時には色々悩んだりしたしな」
「え!!サトル先生にもそんな経験が……?」
「まあマサラタウンのスクールにも通わずひたすら家で勉強して、自信を持っていざ旅立ってみるとアレが出来ないこれが出来ない。
やり方も分からなければ相談できる人もいない。最初のパートナーだったプラスルが病気にならないか心配だったし、野宿の時は料理すら苦労したさ」
「旅……興味深いです……!!でも、先生がそこまで苦労するのでしたら相当なんですね」
「まあ結構ね。それに比べてリーリエちゃんにはククイ博士やオーキド校長っていうしっかりした大人や、いつでも頼れる仲間が居るだろ?頼れる人がいるならしっかり頼ったほうがいい。もちろん、一人でやってみることは大事だけどね。これからもっと知識も経験も増やしていこう」
「ッ……はい!!」
うん、いい返事だ。おお、なんか今の俺めっちゃ先生っぽくない?……生徒と2人っきりで出かけてる時点でダメか。
「まっ、サトシが居るなら経験に困ることはないと思うよ」
「どうしてですか?」
「いろんな地方のポケモンリーグ……ああ、その地方での最強を決める大会なんだけどね。そこで最高で準優勝してたり、各地の伝説と呼ばれるポケモンと出会ったり、世界征服を企む悪の組織と戦ったりと、本当に経験値を得るには最高の舞台で戦ってきたからな、サトシは」
「サトシの強さの秘密はそこにあるんですね!!」
「兄としては、あんまりそういう危険に突っ込んでいって欲しくないんだけどなぁ……アイツ感覚で動くタイプだから止められないし」
「ふふっ、でもそれがサトシの良いところですよね。どこまでもポケモンのことが大好きなんだなって伝わってきます」
「その通りだから余計に心配でねぇ……ああごめんねリーリエちゃん。さっきから自分語りばっかりで」
「いえ!!先生の貴重な話が聞けて嬉しいです。また色々聞いて良いですか?」
「ああ、いつでも」
本当にええ子やなぁ……こんな子が近くにいてくれるサトシはやっぱ恵まれてるな。サトシの猪突猛進も、カスミさんとか女性の旅仲間のお陰でうまくコントロールされてたし良いよな。
え、俺?…………1人いるけど、ヒントとしてはホウエン地方で一時期一緒に旅をしてた。これでわからない人は『想像力が足りないよ?』ああ、別に地球が終わる規模のことは俺の代には起こってないから大丈夫。普通に旅してた途中で偶々出会っただけだ。
「……逆に言えば俺にはライバルっていうライバルがいないから向上心とかあんまないのかもな」
「何か言いました?」
「いや、何でもないよ。そろそろ行こうか。うちの食いしん坊が腹が減ったって喚いてるし」
「え?……あら。プラスルったら」
腰のホルダーからボールを取り出してみれば、ガタガタガタガタとプラスルのボールが揺れている。多分……話が長いって言いたいんだろう。はいはい分かったよ。すぐマラサダ買うから落ち着けって。
そのままハウオリシティまで歩いた俺達は、ペロリームの看板が立つマラサダショップへと足を運んだ。途中いつものパンケーキ屋にプラスルが勝手に行こうとしたのでチョップして引きずった。お前そんなキャラじゃねえだろ。5年間培ってきた印象がこの1、2ヶ月で変わってんだよ。
「ほらプラスル。好きなの選べ、ちなみにここで食ったらおやつ無しな」
「プラッ!?プラァ………………プラ」
嘘だろお前、みたいな……っていうかマスコットポケモンがしちゃいけないような顔面で俺をみた後3分くらい悩んでから一つのマラサダを指さした、いや食うんかい。噂に聞くしわしわピカチュウくらい凄かったぞ。
「はいよ。後はボーさん達にっと……よし、リーリエちゃん選べたかい?」
「はい!シロンの好みを知りたくて色んなマラサダを買いました!!」
「あー……うん、食べさせすぎないようにね?」
さ、さすがエーテル財団のご令嬢……マラサダってそこそこ値段するのにな。
「プラァァァァアアアア!!!!」
「おいコラ……プラスル、水飲め。お前でんきタイプだろ……火を吹くな」
なんで辛いマラサダにしたんだよ……あーあー、耳だけじゃなく毛まで真っ赤になって……
「………コン!!」
「そう、それがお気に入りなのね!」
リーリエちゃんが買った6つのマラサダのうち、ピンクのトッピングがしてあるものを食べたシロンはなんだか嬉しそうだ。残りのマラサダはどうするんだろうか……
「サトルさんは食べないんですか?」
「ああ、最近減量中でね。ここに来てから運動っていう運動をしてないから……特にコイツとかな」
「……プラ」
「あまり我慢するのも良くないですよ?」
「その通り。まぁ、無理はしてないさ」
目を逸らすな。最近はプラスルの適正体重まで少し戻ったから良しとするが。
その後、間食を俺達は店を出た。
「リーリエちゃん、他に行きたいところは?」
「この先にとっても景色の良いところがあるんです!!シロンに見せてあげたくて」
「了解」
そのまま少し歩いて住宅街の道を歩く俺達。しかし、そこに空気を読まない奴らが現れた。
「ちょっと待って、シャレオツ帽子のジャリガール。そしてサトル」
「貴方達は……」
「貴方達は、といわれt(ry)」
長いんでカット。え、見せ場?コイツ等にはいらないだろ。今から一撃で吹き飛ばしてやるよロケット団。
「ボーさん、let's go」
「「「げっ、ボーマンダ(ニャ)!?」」」
「ソーナンス!?」
「アンタ等良い度胸だな、俺が居るってのに」
「ふん!!ドラゴンタイプのボーマンダが、フェアリータイプのミミッキュに勝てるとでも?ミミッキュ、ボーマンダを倒したらピカチュウがやってくるかもしれないわよ!」
「キュ……?」
「リーリエちゃん、ダッシュ」
「え、あ……はい!!」
ピカチュウにしか興味がないミミッキュをムサシさんは上手く焚きつけたようだ。俺はリーリエちゃんに逃げるよう言って、戦闘態勢に入る……街中だとボーさんじゃ動きにくいか?
「逃すか!!」
「こらー、待つニャ!!」
「ソーナンス!!」
「なっ……チッ、逃げられたか」
コジロウさんとニャース、あとソーナンスに横をすり抜けられてしまった。上手く逃げてくれると良いんだけど……
「ボーさん、【つばめがえし】」
「………キュ」
ボーさんの突撃を上手く躱したミミッキュが尻尾代わりの木を大きくして襲ってきた。
「あれは……【ウッドハンマー】か、バレルロールで避けて【かえんほうしゃ】、命中したらそのまま【ハイドロポンプ】で押し流せ!!」
「ちょ……ミミッキュ!?」
ミミッキュの渾身の【ウッドハンマー】をスカらせたボーさんは【かえんほうしゃ】を浴びせた。
「……キュ!?」
「や、やな感じ〜!?」
特性の【ばけのかわ】の一度だけダメージを防いだミミッキュだが、どうやら布に火がついたらしい。慌てたように火を消そうとするミミッキュにハイドロポンプをぶち当て鎮火しながらムサシと共に吹き飛ばした。
「…………布、焦げてなきゃ良いけど。ッ、リーリエちゃん!!」
ムサシさんが星になったのを確認して、すぐさま走る。何やら変な影が空中を通り過ぎた気がしたけど、今はリーリエちゃんが先だ。無事でいてくれ……
〜モミジ〜
「マイナン、さっきのバトルとっても良かったね!!ラストの【スパーク】特に良い感じだったわ!!」
「マーイ!!」
今日も今日とでポケモンバトルの修行に明け暮れている私、モミジです!!
さっきのツツケラ、なかなか良い動きだったけど最近サトルさんにバトルの特訓をしてもらうようになった私とマイナンの敵じゃない。なんて、サトルさんに油断しすぎっておこられちゃうかな?
「次は誰にバトルしてもらおっかn……「シロンッ!!」……え、何!?って、あれは……お願いアサナン、【ねんりき】で助けてあげて!!」
「サナッ!!」
何やら悲鳴のような声が聞こえたと思ったら、親方空から女の子(とポケモン)が!!
すぐに腰のボールからアサナンを出して【ねんりき】で地面に激突寸前の女の子を助けることが出来た。良かったぁ……ってあれ?
「リーリエ!!大丈夫!?」
「ふぇ……?モ、モミジさん……ありがとうございます!!」
なんでここにリーリエが?っていうかどうして空から?そのポケモンは?色々聞きたいことはあるけど、とりあえずリーリエが無事で良かった!!
「あぁ?誰だ……って、あれマイナンか?若干色が……ってことは色違い!?ゲットしたらサカキ様に喜んでもらえる!!」
「リーリエ、あの人誰?」
「人のポケモンを捕まえようとする、悪い人達です!!」
それって、ちょっと前にあったマグマ団、アクア団の事件みたいな!?あの青い髪の人もなんちゃら団っていう所の人……!!
「ちょっと貴方達!!そんなこと許さないからね!!」
「白いロコンのついでに、もっとすごいポケモンに出会えるなんてな!!纏めてゲットだ!!」
「色違いのマイナンなんて滅多に出会えないニャ!!」
「ニャースが喋った!?」
ニャ、ニャニャニャ……ニャースが喋ってる!?え、なんで!?今のニャースってもしかして人の言葉を話せるの!?
「ニャ〜……久しぶりの反応でちょっと懐かしかったり、嬉しかったりだニャー……ってそんなことはどうでも良いのニャ!!」
「シロン、【こなゆき】!!」
「「「え?」」」「ソーナンス?」
「クー!!」
私が喋るニャースに驚いてたら、いつのまにか立ち上がってたリーリエがシロン?って子に指示を出してあの人達を氷漬けにしてた。リーリエ……すごい……
ひぇ……なんか今、聞き覚えがある鳴き声が……あれ、悪い人達がいない……?
「リーリエちゃ〜ん!!無事か!?」
「あ、サトル先生。大丈夫です!!モミジさんが助けてくれました!!」
「サトルさん!?」
「おぉ、モミジちゃんも。そっか、君が……リーリエちゃんを助けてくれてありがとう」
「いえ……無事でよかったです!!」
はわわわわわ……なななんでここにサトルさんが!?今日は一気に凄いことが起こりすぎてるよ!!
「あ、プラスル出てこい」
「プラ?プラァ〜」
「マイ!?マイマイ!!」
マイナン……プラスルに会えて嬉しそう。
「あれ、リーリエちゃん。いつのまにかシロンに触れてるな……」
「え……あ、そうみたいです!!」
「コンッ!!」
あ、そっか。リーリエってポケモンに触れなかったんだっけ。じゃあさっきの咄嗟の出来事がきっかけになったんだ。
「良かったねリーリエ、おめでとう!!」
「モミジさん、ありがとうございます!!」
「無事にシロンと仲良くなれたみたいでよかったよ。今日は大成功だったな」
「はい、半日も付き合ってもらってありがとうございましたサトル先生!!」
「…………………半日??」
半日……半日?え、サトルさんとリーリエちゃんが半日一緒に過ごしてたの……?
「デー……ト?」
「へ!?い、いえ!!デートではありません!?サ、サトル先生には、シロンの事で色々とお世話になっただけで……」
「そうだぞモミジちゃん。ポケモントレーナーになったばかりだし、ポケモンに触れないってのもあって結構心配だったからな」
「ぇ……むぅ……」
あ、サトルさんダメなパターンの人だ……それにリーリエも無意識か知らないけどなんか脹れてるし……あ〜……はぁ……リーリエ可愛いから、強そうだなぁ……
その後はリーリエにこれでもかっていうくらいお礼を言われて、その場を後にしました。マイナンが名残惜しそうにしてたけど、まあ今日はリーリエ譲ってあげなくもない。別に週1で会えるから余裕ぶってるわけじゃないし。
あーもう、今日は帰ってすぐ寝よう!
〜ククイ博士宅〜
「サトシ……復唱」
「ヒトノアトヲツケルノハヨクナイコトデス」
「よろしい」
「ヒトノアトヲツケルノハヨクナイコトデス」
「ピッピカ〜!?」
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サトルの休日withデラさん
19話
『モシッ!!』
『え、おわっ!?ヒトモシ?なんでここに……ってそっか、そりゃそうだよな。ははっ、びっくりした』
えあ?あー……懐かしい、デラさんか……
『モシ?…………モシ!!』
『おお?なんだよ、え、浮いた!?ヒトモシって飛べるっけ!?ちょ、お前ゲームじゃ飛んでるところ見たことっ…………へ?なんでリュックを……』
ハハッ、そういやこんな感じだったっけな?他のゴーストポケモンの例に漏れずイタズラ好きだったし。まあちょっと食欲に正直だけど。いやそこがいいんだけどさ
『モシ…モシ……モシィ!!』
『あ、それ結構並んで買ったヒウンアイス!!……欲しいのか?』
『モッシ!!』
『えー……あーうん……ま、いいか。ほら、ちょっと貸してみ?』
『モシ?』
溶けないようにしっかりした容器に入ってたっけなぁ……やべ、思い出したら食べたくなってきた……
『こーしてっと、ほら』
『モシ!?モッシ!!』
おいおい、急いで食べんなよ……喉つまらすぞ〜ってあれ?そんなことなかったような……?
『美味そうに食べやがって……』
『モシ』
ビビったよなぁ……俺の空のモンボなんかリュックから盗みやがって……
『あちょ、それモンスターボール!!プラスルとボーマンダとニダンギルの……じゃない!!入ってないやつ!?』
『モ〜シ』
『え?』
俺が呆けてるうちに、突起部のボタンを自主的に押しボールに入ったデラさん(ヒトモシ)はピコンとそのまま捕獲された。
『えぇぇぇぇぇぇぇ!?!?!?』
あぁ……懐かしいなぁ……あれから俺達、頑張ったよなデラさん。
『…………』
◆
「……あれ?ああ、夢?いつものやつか」
おはよう諸君。なかなか懐かしい夢を見たサトルだ。あれはイッシュ地方のタワーオブヘブン……ポケモンの墓地で冥福を祈ってた時の事だよ。まあ俺の昔話はいずれ話すしここじゃ置いておいていいだろう。
「おはようデラさん」
「………♪」
何故唐突にこんな夢を見たかっていうと、そもそもたまにある事だ。案の定俺に腕?(シャンデラの体から4本伸びてるやつ)を絡めて昼寝中に潜り込んできたらしい。
「この甘えん坊め」
「………♪」
「プラスルは?」
「………」
「モミジちゃんのとこ?なんで……って、そういう事か。まったく、変なとこで律儀だよなアイツ」
今日はデラさんの日らしい。なんか昔からいつのまにか俺の手持ちの間で決まってたんだけど、俺がオフで予定が無い日は順番制で一日中俺を独占できるのだとさ。それでプラスルは遊びに行ってるらしい。アイツが自主的にマイナンのとこ行くのも珍しいな……他のメンツもどっかにいるんだろうけどボーさんだけはマジで分からん。以前、俺がジムリーダーの勉強中にジョウトのアサギシティからカントーのシオンタウンまで飛んでたらしいからな。
「……博士とサトシは、いないらしいな」
「…………」
博士は分からんけどサトシは遊びに、か。元気でいいねぇ…………友達が増えてお兄ちゃん嬉しいよ。いや……ほんとにさ。なあデラさん、お前はもしかしたら俺よりそう思うんじゃねえの?
「……………………」
「俺ほどじゃない?……またまたそんな謙遜してからに……まあいいか」
デラさんったらサトシのことが可愛かったのか、昔はよく一緒に遊んでは記憶吸ってたからな。小1時間安全な行為か確かめたから後遺症もないらしい。じゃなかったらプラスルでフルボッコだよ。なぜかサトシにそれ知られるのは恥ずかしかったらしい。
「デーラさん」
「?」
「アイス食いに行くか」
「!!!!」
とんでもない喜びようである。タワーオブヘブンでの出会い以降アイスが好物となったデラさんはいろんな地方でいろんなアイスを食った。食いに食いまくった。ゴーストであり、ほのおタイプであることが幸い?したのかいくら食べても太らず虫歯(そもそも歯があるのかも分からない)もなく味わった後はすぐ消化?して次をねだってくる。今でこそ自重という言葉を覚えているがランプラー時代は本当にやばかった。
「最近懐に余裕があってなー」
「!?」
「ま、たまにはいいだろ?」
「!!!!!!!!」
「こらこら熱い熱い。家燃やす気かって」
感情大爆発。勢い余って炎が大きくなった。とくせいが【ほのおのからだ】だから余計に熱い。忘れてるかもしれないけど俺抱き付かれてるからね?
「んじゃ、思い立ったが吉日……行くか!!」
「……!!」
そうと決まれば話は早い。デラさんと手分けして掃除、皿洗い、戸締まりを済ませ一応冷蔵庫の中を見ておく。
「ふむふむ……」
さらさらっとスマホに足りない物をリストアップしていく。何が良かったってサトシはほとんど嫌いなものがない。なんでも良く食べるしまあそういうふうに母さんや俺が言って聞かせてたからだ。
「デラさん、お土産何がいいと思う?」
「…………」
「そう言うと思ったよ」
アイス、ノータイムで返事したデラさんの声はうわずっていてよほど楽しみだと伺える。
え、喋ってない?ああ、そういえばそうだったわ。
別に隠してることじゃないし今更だけどちゃんと説明をしておこう。わかりにくいので種族名で呼ぶな?
ギルガルド、シャンデラ、ヨノワールの3体は俺に
これもまた今更なんだけど俺って転生者?っていう存在に該当する。この15年一度も同類に出会ったことはないけど、自分の経験から推測するに記憶を保持したままの輪廻転生しかも世界を超えた?ことでこの世界の住民とは魂の質が違うらしい。きっかけは俺が旅デビューする直前に出会ったあるトレーナーのサマヨール。トレーナーによるとあまり人に懐かないらしいんだけど、興味深そうに俺を見つめた後友好的に接してくれた。その時はなんとも思わなかったんだが色々経験してのこの結論だ。
ということで、転生して魂が一般人とは違う俺はゴーストポケモンの目に付きやすく興味を引きやすいらしい。もちろん危ないケースもあった。過度なイタズラ好きくらいならいいんだが、場合によってはマジで魂狙いにきた奴もいたからな。そんな俺に対して当時ニダンギルだったガルさんが提案してきたのがさっき言った取り憑くって方法。
まああれだ。コイツは俺のだからお前ら手を出すなよーってやつ。それがギルガルド、シャンデラ、ヨノワールの3体分。まあ並大抵のゴーストポケモンにはちょっかいかけられなくなったよ。我の強いポケモンにはやられた時もあったけど、それは全て俺達の実力不足。鍛えに鍛えまくって今じゃ全く無くなった。その分……ティナとかギラティナ様とか、まあ言う必要も無いけどゴーストかくとうのアイツとか例外に目をつけられる機会も増えた。
ただ悪い話ばっかりじゃない。1番最初の話に戻ろう。この2、3年間ずっと手持ち達に取り憑いてもらってたお陰か分からないがぶっちゃけて言うとテレパシー的なことが出来るようになったのである。手持ちの間でだけだがね?証拠にティナやギラティナ様の仰ることは全く分からない(高次元過ぎて人間じゃわからない説はある)。そんなこんなでまあサイキッカーとかのレベルじゃないが、多少そういうことができるようになったという話だ。
さて、みなさんお楽しみ悪い話のお時間だ。コレが原因で喋らなくなった輩の話をしよう。そう、デラさんである。何があったかと思うかもしれないが至って簡単、テレパシー出来るんなら喋らなくていいんじゃね?を体現しやがったのだ。そんな状態が3年近く続き最早発声を必要としなくなったデラさんはモノの見事に喋らなくなった。必要とあれば喋るだろうがそんな場面はアローラにいる限りなさそうだしな。
「鍵、オッケー。行こうか」
「………」
鍵を閉めてデラさんと歩き始める。今日はボーさんもどっか行ってるし普通に歩きだ。たまにはこういうのも良いだろう。
「最近、お前らが暇してるんじゃないのかって思ってさ」
「………?」
「いや、カントーで俺が勉強してる時あんまり構ってやれなかっただろ?最後の方は
「………」
デラさんは別に好戦的な方じゃない。でも、鈍るからたまにはするべきだという考えはある。
「言い方悪いけどさ……モミジちゃんじゃ物足りなくなってるじゃん?」
「…………」
当たり前の話だが、ジムリーダーであると同時にイッシュジムバッジ8個歴代最速攻略した俺と、ホウエンジム3個止まりのモミジちゃんとでは雲泥の差がある。だからこそ指導という形が成立するんだけどな。さらにモミジちゃんの手持ち内でのメインウェポンはかくとう技。ゴースト主体の俺に対しては『みやぶる』とか使わなければそもそも厳しい。
「アローラでの仕事がひと段落したらどうする?」
「…………」
答えない。こんな時期からこの話を投げかけるのは少し酷だろうか。ウチの手持ちはみんなコミュニケーション能力も高く既にこの島の野生ポケモン達との間でも仲の良いポジションにいる。離れたくないという気持ちはもちろんあるだろうし楽しいんだろう。
「ごめん、まだ当分終わんねぇしいいよ。それよりほら」
「……!!」
話をしているうちに街に着いた俺達。デラさんもそれに気づきさっきのことを忘れてアイスに目を輝かせている。
「お!!食べにくいで有名なフリージオアイスバーがあるぞ。行こうぜ!!」
「…………!!」
た、食べにくい……!!ただでさえアイスバーで硬いのにフリージオ型であるが故に棒を保てていない。死ぬほど食べづらい!!
だが、それが良い!!
「………!!!!」
「よし次だ!!」
シンプルイズベスト、モーモーミルクのバニラアイス。コレが原点にして頂点……!!
「くっ……頭が!?」
キーンという頭の痛み。だがそれが良い!!(bot)
さすがに連続してアイスを食べ続けるのは健康的に良くないので一度休憩を挟む。やっぱね、結局はね、おいしい水なんですわ。
「………」
「え、もういいのか?た、体調悪い?」
「………」
手で×を作ってそうではない事をアピールして来た。
「………」
ふむふむ。えー、要約すると……もう満足したから皆で遊ぼうとのことだ。
「全く…お前が1番、俺らのこと好きだよな」
「………///」
照れてる照れてる。
「じゃあ、お土産買って帰るか」
「…………シャン」
「おう……って、ひっさしぶりに聞いたな」
それから俺達はサトシ達やプラスル達のお土産にアイスを買った。デラさんがそわそわしながらついてきているが、自分の熱でアイスが溶けないか心配なのだろう。しっかりと保冷バッグを持ってきているのでそんな心配は無用なのだがこういうデラさんも可愛いので当分放置しておくとする。
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