UMP9は如何にして本当の家族を得たか (瑞雲さん)
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UMP9は如何にして本当の家族を得たか

(私は力尽きましたという看板を括っている)


私はUMP45だ。

 

正確には、404 Not Found小隊(存在が明確ではない部隊)の隊長であるUMP45のコピーモデルである。

私が作られた理由はつまり、部隊の存在を否定するためであり、隊員の出自を攪乱するためであり

或いはもし部隊に欠員が出た時に補填を行うための部品でもあるのだろう。

たとえば既に、()()()()()()()()()()いても不思議ではない。*1

 

私はUMP45(スワンプマン)だ。

けれど、たとえ何時か無為に存在を否定されるのだと解っていてもきっとそれに抗うだろう。

 

私はUMP45(オリジナル)の断片だ。だから思いを識っている。だから声高に謳うのだ。

 

私の場所はここにある。きっと誰にも穢させるものか。

 

 

 

「指揮官、これにサインしてくれませんか?」

「んん?」

 

ある日のことだった。

いつものように戦術人形を送り、人類の領地を巡回させて蔓延る異物を排除する。

そうして残骸を回収して捌き、被害を計算し、任務を更新して収支を付け一日を終える。

そんな通常業務の終わり、夜も更けた時分に副官のUMP45が一枚の書類を紛れ込ませてきた。

 

婚姻届。

なるほど、ジョークじゃねーの。

 

45(よんごー)、お前こういう悪戯も久しぶりだなあ」

 

割と以前は馴染んだものだった。

まだ自身が指揮官として着任したばかりの頃、鉄血重工の自律人形(ブッ壊れた鉄クズ)共はその本拠(S地区)から溢れだし

近隣地区であったここにも押し寄せてきていた。

今でこそ我らがG&K社の奮闘あって連中を元のS地区まで押し戻してはいるものの

当時ぺーぺーの新米だった自分は、これにひぃひぃ言いながら対処していた。

同時期に製造され、着任したUMP45の助けと励ましがなければとうに心折れていただろう。

だからあの時を懐かしんでこんなことをしたのかと筆を置き、UMP45に向き直った。

 

そして、重みを感じて、頬に熱い吐息を感じた。

 

 

 

「しきかーん……冗談じゃないよ……?」

 

目の前に亜麻色があった。

立ち上がるのにも、押しのけるにも、思わず見惚れた。

 

「私ね。UMP45(よんご)なの。電子戦は得意よ」

「404小隊。名前とか、知ってるでしょ?」

 

膝の上にUMP45が座っていた。

作戦中は外骨格で鎧われている足がぎゅうと腰を締め付ける。

二人分の重みを受けた椅子が抗議を上げた。

 

「多分 私、いつかは居なくなる(Not Found)わ」

「ただの妄想かもしれないけれど、だから怖くてしょうがないの」

「ひとつでも、やってみたいことがあるの」

 

腋を通して、背もたれの間に腕が差し込まれる。

更にぎゅうと絡めとられて、亜麻色が頬を撫でた。

 

「それが意味がなくったっていいの」

「……安心が欲しいの……楔だって……」

「その、ほら。……私の拡張性、試してみたっていいんだよ?」

「……よくある人形ジョークだけどね?」

 

耳元で、すがるように。

どうか溶けてしまえと、震えた声で。

 

 

ああ。だから婚姻届なのか。

なるほど。ジョークじゃねーの。

 

 

 

亜麻色の少女は、UMP45は本気だった。

何を調べて、何を思いつめたのかはわからないけれど、けれどそれが嬉しかった。

だから安心してくれと、ぎゅうと抱きしめ返してとある物を渡したいと思った。

 

「そこまでしてくれたらな、45(よんごー)。渡したいものがある」

 

そう言って、UMP45を抱きしめたまま片手で机を探る。

 

取り出したのは小さな箱。

 

自律人形は女の子。知られれば騒ぎになるのは知っていたから隠していた。

搬送されてくる物資に紛れて入っていた覚えのないもの。

同梱されていた紙片に"好きに使ってほしい"とメモ書きとペルシカリアの名前が入っていた。

暇人、なのだろうか。直に顔を合わせたことはない相手なのだが。

 

「ん……指揮官、私もね。渡したいものがあるの」

 

そう言って、UMP45もジャンバーのポケットを探る。

 

取り出したのは小さな箱。

 

お互いに開いてみれば、誓約指輪が一組ずつ。

 

用意の良さに二人、顔を見合わせて、思わず笑った。

 

 

 

「……なあ、ところで人形のお前がどうやってそれを仕入れた」

「えっ、その、ええっと」

 

「……」

「……」

 

「……やさしくしてね?しきかぁーいたいいだいい゛た゛い゛!!!」

45(よんごー)、UMP45(よんご)!お前何やった!本気で何触ったテメーッ!!」

*1全員オリジナルです。





かみさま、わたしにはお願いがあります。
どうかわたしに家族をください。
こころから抱きしめて、こころから抱きしめてもらえる、そんな仲間をください。
きっとここなら見つかります。
ここには45(よんごー)姉がいます。G11もいます。416はまだいないけれど、きっとすぐに出会えます。
みんな、わたしも、きっと本物ではないだろうけれど……。

「ああ、居た!9(ないん)、ちょっといいか!」
「指揮官?45(よんごー)姉も?」
「丁度よかったわ、9(ないん)。とりあえずこれにサインして頂戴」
「えっ? ……えっ、これって誓やく」
「お前にこれを貰ってほしい。45(よんごー)にも渡してある」
「えっ」
9(ないん)。これで貴女も本当の家族よ」
「えっ」
「文句はあるだろうが、お前と45(よんごー)が最初で最後だ。それこそ誓っていい」
「えっ」

……けれど神様、教えてください。
本当の家族になる事って、なんか、こう、通りがかりに雑に殴ってくるものなんでしょうか…。


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