ナザリックが暗黒大陸に転移しました。【H×H+OVERLOAD】 (平坂美羽)
しおりを挟む

1話

「楽しかった、本当に楽しかったんだ。」

DMMORPG『ユグドラシル』

この手のゲームとしては破格の、

12年間も続いた名作のゲーム。

DMMOといえばこのゲームしかないと言えるほどのものだった。

圧倒的な程の自由度の高さを売りに数多のプレイヤー達を魅了した。

 

だが、それも過去の話である。

 

 

 

今日、全てが終わる。

終わってしまうのだ。

41人で築きあげた宝物達が跡形も無く消え去ってしまう。

12年、長いようで短い時間だった。

みんなと過ごした楽しい思い出もあるけれど、一人、また一人と、ここ(ゲーム)から去っていった時の寂しさや、やるせなさも心に刻みついている。

みんなリアル(現実)の事情があって去っていったのは分かっている。

だけど、寂しいという気持ちに嘘はつけなかった。

 

「......作りこみ、こだわりすぎ」

 

ユグドラシル最終日、最後の時を、俺は1人で迎える。

いや、それだと語弊があるな。仲間たちは来なかった。けれど俺には子供たち(NPC)がいる。

最後の時を、子供たちと共に迎えるのも良いだろう。

 

 

「行こうか、ギルドの証よ。いや――我がギルドの証よ」 

 

▷▶︎▷

 

 

「明日は4時起きだから、これが終わったらすぐに寝ないとな。」

 

あぁ、終わってしまう。

 

  23:59:35、36、37……

 

最後は派手にいこう!

 

「アインズ・ウール・ゴウン万歳!ナザリックに栄光あれ!!」

 

 

23:59:58、59――

 

 

 

辺りは光に包まれ、

幻想の時は終わりを迎えた。

 

 

 

 

 

 

、、、はずだった。

 

 

 

 

 「あれ?」

 

 終わってない?

 サービス停止が停止したのだろうか。

 

「どうなさいましたか?モモンガ様?」 

 

なぜNPCが喋っているんだ!

100年ほど前に流行っていたというラノベの様な展開なのだろうか。

だとしたら、異世界に転移したとか??どうしたら、どうしたらいいのだろう。何が最善だ?||情報を集めなくては!

「セバス!大墳墓を出、周辺地理を確かめ、もし仮に知的生物がいた場合は交渉して友好的にここまで連れてこい。交渉の際は相手の言い分を殆ど聞いても構わない。行動範囲は周辺1キロだ。戦闘行為は極力避けろ」

 

▷▶︎▷

 

暗黒大陸、人類にとっての希望と絶望の場所。

 

万病に効く霊草や、究極の長寿食など、あらゆる希望がそこにはある。人々はそれをリターンとよんだ。

 

しかし、その一方で絶望、リスクも存在する。五大厄災などがある暗黒大陸。ある人曰く、人類が滅亡していないのはたまたまだ、とまで言われている。

 

確かに、リスクはある。けれど、暗黒大陸にあるであろうリターンを獲得すれば、その国は他の国に対して、大きく有利を得られる。そんな考えから、暗黒大陸に対して不可侵条約が結ばれた今でも、密かに船が送り出されていた。

 

「ここらは、何もないみたいだな。リスクも無ければリターンもない。」

 

「おい!気を抜くなよ!一瞬の油断が命取りになるんだからな。」

 

「わかってるって!」

 

国が密かに念能力者の者達を集め、暗黒大陸調査隊を結成したのはもう、随分と昔のことだ。

俺たちの前に2部隊、暗黒大陸に向かったが誰一人として帰っては来なかった。

そんなこともあって、俺たちの任務はどちらかと言うと、前の2部隊の遺品回収が主な目的だ。もしかしたら、その遺品の中に重要なことが書かれたメモ位はあるかもしれないからな。リターンの獲得はその次だ。

 

「おい!なにか来る!速いぞ!!」

 

その言葉で俺たちは切迫した空気になった。

先程までの空気が嘘のように。

敵は明らかに俺たちを目的として向かってきている。

暗黒大陸に知的生物がいるのか?

 

 

「失礼、皆さま私はセバスと申します。少々、お時間を頂いてもよろしいでしょうか。」

 

 

「あ、あぁ」

 

 

「感謝します。私の主があなた方との対話を希望されております。私たちの拠点に是非ご招待したいのですが」

 

「ちょ、ちょっと待ってください。少々お時間を頂いてもよろしいでしょうか?」    

 

そう問いかけた俺の背中は汗で、びしょ濡れだった。

 

暗黒大陸初の知的生物の発見、交渉。

機嫌を損ねたら殺されるかもしれないという恐怖。

 

「かしこまりました。では、一週間後この場所でお待ちいただいてもよろしいでしょうか?お迎えに上がらせていただきます。」    

 

そう言い残すと、セバスという男は去っていった。

 

とにかく、緊急事態だ。急いで本部に連絡しなくては!

 

▷▶︎▷

 

暗黒大陸に調査隊を送り出してから三日後のこと、ハンター協会に通信がはいった。

 

「こちら暗黒大陸調査隊です!緊急事態です!暗黒大陸の知的生物の発見、及び交渉に成功致しました。つきましては、その知的生物の主が治める拠点にて一週間後、対話を希望とのことです。」

 

「それは本当か?!」

 

アイザック=ネテロはその報告を受け、思わずそう叫んだ。

 

暗黒大陸の知的生物の発見、交渉はそれだけの偉業だった。

 

(まさか、暗黒大陸に知的生物がいるとはな、少しばかりやっかいかもしれんのう。)

 

 

「了解した、わしもそちらに向かうとする。」

 

ネテロは、十二支んの一人であり、遺跡ハンターのジン=フリークスと、ハンター協会副会長を務めるパリストン=ヒルに連絡をとって、事態を説明した。  

武闘派として会長になったネテロとしては、こういった未知との遭遇にも詳しく、交渉に長けている人物と共に暗黒大陸に向かいたかったからだ。         

 

 

こうして、3人は暗黒大陸に向かうこととなった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第2話

暗黒大陸調査隊がセバスと名乗る男と接触してから一週間がたった。

 

ついに、約束の日である。

 

時間を特に指定されず、一週間後とだけ言われた為、約束の日の前日から、調査隊+ネテロ、パリストン、ジンはセバスと接触した場所にテントを張って張り込んでいた。

セバスが来た時に誰もいなくてすみませんでしたは、間抜けすぎる。

最悪、怒った相手に殺されかねない。なにしろ、相手には約束を反故にされたという大義名分があるからだ。それだけの事で、と思うかもしれないが、こちらの常識があちらと同じとは限らない。むしろ、常に最悪を想定して動くのが懸命だろう。

 

「わぁ!?」

 

「どうした?!」 

 

「くっ・・・黒い穴が!!」

 

 

仲間が、指を指した方を見ると、確かに黒い穴のようなものがあった。

 

(なんだ?)

 

黒い穴から気配を感じて、穴を見つめる。すると、穴の中から、セバスが出てきて、出てきたあと黒い穴はなくなった。まるで、時空の歪みに吸い込まれたようだった。

 

「皆さま、お待たせしてすみません。」

 

セバスがそう言いながらお辞儀をして、俺たちも慌ててお辞儀をする。全然待ってないから大丈夫ですよ!等と、言いながら。

 

「ところで、こちらの方々は?」

 

と、セバスは3人(ネテロ、パリストン、ジン)を指さす。

 

「その方達は、私たちの上司・・・主です!今回、対話をされるということで、調査隊の私たちだけでは、不安がありましたので・・・。」

 

申し訳ないと、俺は頭を下げた。

 

「大丈夫ですよ、主は様々な方との対話を望まれておりますから」

 

そうセバスに優しく笑いかけられ胸を撫で下ろした。

 

「セバス殿、1つ質問なんじゃが、先程セバス殿が出てきた黒い穴はなんじゃ?」

 

ネテロが聞くと、セバスは何でもないと言うふうに平然と答えた。

 

「あぁ、あれは

《ゲート/異界門》です。私は使えませんので、仲間にここまで送ってもらったんですよ」 

 

「それはその仲間の念能力なのか?」

 

と、ジンが横から会話に入ってきた。

 

「念?何ですか?それは??あれは、魔法ですよ」

 

「・・・・・・」

 

 

我々は言葉を失った。この世界には魔法は存在しない。いや、存在しないと思っていた。お伽噺の中だけの話だと、そう思っていたのだ。けれど、彼らの仲間には魔法を使えるものが多く存在し、なんでも、セバスさんの主は偉大なる魔法使いらしい。

 

「魔法使い!なんだかワクワクしますねぇ」

 

「そうじゃの、まだまだわしが知らぬだけで世界は広かったということじゃな」

 

「そうだな、爺さん。俺も不甲斐なく驚いちまった」

 

パリストン、ネテロ、ジンは一見、未知との遭遇に興奮しているようだったが、内心は焦っていた。

 

(魔法って・・・そんなのありかよ・・・)

 

ジンは心の中で呟いた。

念であれば、まだ対処ができたかもしれない。

けれど、どんな力を秘めているのか未知数の魔法では、あらかじめ予測を立てて行動することが出来ないのだ。

 

(慎重にいかないとマジでやべぇかも)

 

 

▷▶︎▷

 

「アインズ様、セバスから《伝言/メッセージ》が届きました。どうやら、お相手は自分より上位の者を連れてきたようです。」

 

「・・・そうか」

 

この一週間、様々なことがあった。

 

ナザリックが転移した場所から5kmまでをセバスに探らせた。

 

 

どうやらナザリックの周辺はジャングルのようで、変な生物とかもいたりして、デスナイトのように言葉は話せないが、命令を聞くことは出来るようだったので、絶望のオーラを出して従わせた。

 

それらは、アウラの配下となった。

 

まぁ、配下といってもナザリック外の配下ということだが。

 

それから、5キロ圏内の荒地を整えたり、一般メイド達が、対話の相手を迎えるにあたってナザリック内を掃除したりしていた。まあ、俺は報告書を読んだり書類に判子を押すだけの仕事だったが。

 

そして、モモンガは自身をアインズ・ウール・ゴウンと名乗ることに決めた。

ギルド名を背負ってこの地に居続けることに決めたのだ。

 

全てはこの世界のどこかに居るかもしれない仲間たちの目印になるように、アインズ・ウール・ゴウンを不変の伝説とするために。

 

「デミウルゴスよ、対話をするにあたって何か、注意点はあるか?」

 

「いえ、全てはアインズ様の御心のままに。謁見の手筈は整えてありますので、アインズ様はナザリック地下大墳墓の絶対なる支配者としてお相手されて下さい。」

 

「そっそうか・・・」

 

 

(苦手なんだよな〜人前で話すの。リアルでのプレゼンでどれほど緊張したことか。しかも今回の相手は社会的地位の高い人なんだろうし・・・)

 

 

(あぁ〜でも子供たち(NPC)に情けない姿を見せるわけにもいかないし、期待に応える為にも頑張らねば!)

 

 

こうして、アインズは約束の日を迎えることとなった。

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。