男でも艦娘になれるって本当ですか!? (夜ノ 朱)
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始まりは突然です





 

群雲(むらくも)

 

先日の適正検査の結果により、上記の者を艦娘とする。

 

______________________

 

中学の卒業式の帰り道。

小学校から一緒だった友人たちと別れ、一人家に帰る途中のことだった。

 

「えーと。ああ、君が例の子だね

話は聞いてる。今日付で君はこの、肥前鎮守府への配属が決定した。」

 

「はあ、おはようございます。

今日もいい天気ですね、昨日の雨がまるで嘘みたいだ。そうは思いませんか?」

 

「私は、君と同じで肥前鎮守府に配属が決まった者だ。

君と違うのは、私は司令官として。君は特型駆逐艦吹雪型の5番艦叢雲として私と一緒に着任するということかな」

 

だめだ…この人は()の話を一切聞いちゃあいねぇや

自らを軍人だ、と名乗り?名乗ってはないよな。

軍人だと告げた男が独壇場で話し始めたのを聞くしかなかった。

 

______________________

 

全ての始まりは、先月。

この国では、中学を卒業すると海軍の適性検査を受けることが義務付けされている。

男子は指令官としての、女子は艦娘としての適性検査が行われている、筈だった。近年では、深海棲艦と呼ばれる化け物たちの動きが活発化しているらしい。それに対し、艦娘並びに司令官の数が足りないことが問題視されていた。

ここで政府は、賭けに出た。

 

適性検査の男女差別化の撤廃。簡単に言うのであれば、司令官の適性検査しか受けることのできなかった男子でも、艦娘の適性検査を受けることが出来る。その逆もしかり、その功も奏してか女性提督の数は増えているらしい。もっとも、今まででは男性艦娘の存在が確認されることはなく、男子高校生を目前とした健全な男子諸君は男子禁制だった艦娘適性検査(アヴァロン)を目指した。

 

もちろん、元々は俺もその口で検査に参加した。そして、見事俺だけが適性検査に合格したのであった。

ちなみに艦娘としてだけでなく、司令官としての適性も出てたらしいが近年では司令官も増えてきており、艦娘の需要があがりその数が足りなくなってきた(俺らはモノじゃねぇぞ)という勝手な理由で艦娘に就職先が決まってしまった哀れな俺なのだ。

 

閑話休題(そんなことより)

 

今、俺の目の前にいる男は見るからに軍人。新品同様なシミ一つ無い軍服に身を包み、腰には軍刀を帯刀している。男の一歩後ろには、眼鏡をかけている女性も立っている。

適性ありとされた者は、ほぼ強制的に従軍することが義務とされている。司令官としてならまだしも、艦娘。俺は生まれてきてから15年間男として生きてきた。今更、女として。それもいつ死ぬかも分からない艦娘としてこの先生きていくなど、耐えれるわけがない!

というわけで、

 

ツバメ ハ ニゲダシタ 。

 

兵法三十六計逃げるに如かず。ってな!

 

ダッ!

 

ガッ!!

 

「申し訳ありませんが、逃がすわけにはいきませんので。

ご了承してください」

 

最後に見たのはアスファルト。きいたのは眼鏡の女性の声だと思わしき女性の声だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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艦娘って何ですか?


この章ではこの世界での艦娘の在り方、扱いをちょっとづつ出しつつも話を進めていきたいと思いませう。





 

「知らない天井だ…」

 

「目が覚めましたか?」

 

お決まりのセリフを言えたかと思えば、アスフォルトとの熱いキスを経験させてくれた女性が視界の隅からひょっこり顔を出してきた。

周りを見渡せば、よくある保健室のような部屋に俺が寝ているベットのほかに二つ並べてあった。

窓の向こうは既に薄暗く、これから明けるというよりかは夜に近づいているようだった。

 

再び視線を眼鏡の女性に戻す。

髪を腰まで伸ばし、眼鏡とカチューシャがトレードマークであろう女性だ。

うん、美人です。

 

「あぁ、あんたか」

 

「ご気分は?」

 

「良くも悪くも、初めてを失った気分さ」

 

「それは、良い経験をされたようですね。」

 

皮肉も通じなければただの自虐ってか

 

「それより、あの日の後日談が気になりません?

興味がおありでしたらお話ししますよ、橋間提督が来られるまでの繋ぎとして」

 

橋間提督…初めて聞くけど、提督=司令官 だとすれば、あの時の男が橋間提督になるわけで。これからの鎮守府(職場)の上司ってわけね

 

「興味があるね、んでもってお姉さんの名前と司令官とどういう関係なんですかい?」

 

「そういえば、名乗り遅れてましたね。私は大淀型軽巡洋艦の1番艦、大淀です。

燕さん、いえ特型駆逐艦、5番艦の叢雲さんと一緒に肥前鎮守府に着任します。ですので、橋間提督とは上司と部下の関係となります。艦隊旗艦として特化設計された軽巡洋艦ですので、戦力としては期待しないでくださいね。それでも万が一の時には出撃()ますけど、その時は緊急時の切り札だと思っておいてくださいね」

 

そこで区切り、よろしくお願いします。と右手出されたので握手で返しておく。

 

「まず、一番重要な事ですが。いくら着任時期が同じといえど、あなたは新入り。私はほかの鎮守府からの異動。私の方が艦娘歴も長い先輩ですのでその辺は弁えておいてください。

艦娘の除隊時で一番多い理由は行方不明です。誘拐、凌辱、殺害、どのような行方不明(除隊)を迎えるかは私が握っていると思ってくださいね」

 

あ、この人は鎮守府内で一番怒らせてはいけない人だわ。

 

「わかりましたか」

 

「はい!知らなかったとはいえ、これまでの無礼を失礼しました!」

 

「わかっていただけたのなら良いんです。

では、本題に入りましょう。あの日からは二日経っており、ここはキュウシュウの北部にある肥前鎮守府です。

既にあなたが叢雲として戦う(生きて)行く準備も整っておりますので、この説明が終わればすぐにでも手術を始めたいと思ってます。

手術の内容をお知らせすることは出来ませんが、次起きるときにはその肉体で起きることは無いと考えておいて貰って結構です。

ここまでで何か質問はありますか?」

 

「では、いくつか…その手術の成功率は」

 

「約99%成功します。その為の適性検査です。後遺症等もまずないでしょうね。しかし、ごく一部で後遺症、手術失敗も確認はされています。ですので、最低限覚悟をしておいてください」

 

「その手術は大淀さんも受けたんですか」

 

「いえ、私はドロップ艦と呼ばれる、特定条件下によって海上にて自然発生した艦娘です。

ですので、私は手術を受けていません。先ほど手術内容をお知らせできないと言いましたが、正しくは私は手術を受けていないので知りえない。が正しいのかもしれませんね」

 

そこまで聞き終えたところで扉が開き、司令官が入ってきた

 

「やあ、目覚めたみたいだね!改めて自己紹介。私の名前は橋間 和義、階級は大佐だ。これからは大淀君共々よろしく頼むよ」

 

声はどこにでもいそうな中年男性そのものだというのに、見た目は服の上からでもわかるくらいに鍛えられているであろう肉体だ。

司令官だというのに今回は軍服ではなく、スウェット姿。だというのに、ヒシヒシと伝わってくるプレッシャー。

初めて会ったときは何も思わなかったのに、今回は違う。これが司令官か…

こりゃあ、俺が検査に落ちるのも頷ける。

 

「こちらこそ、後戻りできないところまで来ていることがわかりましたんで…

ですが、司令官一つ聞きたいことがあります。お時間よろしいでしょうか」

 

「もちろんさ、私が答えれる範囲なら何でも答えよう」

 

「ありがとうございます。では、一つだけ、貴方にとって艦娘は道具ですか?それとも仲間と呼べる存在ですか?」

 

「ふむ。」

 

顔色が変わったのを見逃さなかった。段々と険しい顔付に変わっていく。

 

「その質問に答える前に、私から質問させてくれないか」

 

「どうぞ」

 

「君にとってサッカーや野球において、ボールはどういう存在かな?」

 

「…道具ですかね」

 

「つまりは、そういう事だよ。

 

翼少年のようにボールは友達さ

私たちは戦えない、私たちだけでは深海棲艦共には勝てない。

戦うために、勝つために、生きていくために君たち艦娘が必要だ。君たちは仲間であり、娘のような存在だ。

道具扱いするわけが無いだろう?」

 

「わかりました。俺もあなたを含め、この国のために命を懸けます。

手術をお願いします。」

 

 

 

 



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終わりは始まり?

手術を受ける覚悟を決め、司令官に手術の開始をお願いした

 

司令官は大淀さんに視線を向け、アイコンタクトをとると再び俺に視線を戻した。それに対し、大淀さんは何も言わずに俺を一瞥すると目を伏せ、そのまま退室してしまった。

部屋には俺と司令官だけが残された。

 

「燕君、これからする話は他言無用にしてくれ。もちろん、大淀君にもだ」

 

「はい、わかりました。」

 

司令官の言葉には、逆らうことを絶対に許しはしないと言わんばかりの圧が込められていた。

 

 

 

「うむ。覚悟して聞いてほしい、燕君君には一度死んでもらいたい。」

 

言葉が出なかった。

そんな俺を見ながら、司令官は言葉切ることなく話し続けた。まるで、俺という存在には興味を失くしているかのようにも見えてしまった。

 

「艦娘になるために受けてもらう必要が手術とは、ロボトミー手術とよく似た方法で脳の一部を破壊することによって、脳死状態になってもらうことになるだろう。

そして脳を、前の海戦で死んでしまった艦娘の肉体へと移植する。

君の肉体だった身体は、跡が残らないようバラバラにして使える臓器等(パーツ)はドナーに出すことになるだろう。

手術が終われば、君は艦娘の身体に、元の身体はドナーに、もう会うことも見ることも出来なくなるだろう。

そういう手術だ。それに、脳の一部を破壊していることにより感情の欠如が出るかもしれない。

悲しみ。怒り。喜び。そして、痛み。痛みは無いほうが後々便利かもしれないね。さあ、大淀君に手術の準備をしてもらっているところだ。安心してくれ、痛みはない。寧ろ少しの間寝てもらうから、その間には終わっているだろうさ。

どうしたんだい?今更、顔をそんなに白くして。まさか怖気づいたかい?辞めるなら今のうちだぞ?逃げるなら、私しかいない今のうちだぞ?」

 

答えは既に決まっていた。

 

「……くれ」

 

「ん?よく聞こえないぞ?」

 

 

耳の穴かっぽじいてよく聞きやがれ…

 

「早く手術を受けさせてくれって言ってんだ!

覚悟ならとうの昔にしてらあ!ロボトミーだろうがカンパニーだろうが、どっちでもいい!」

 

覚悟なら既にしている。先の言葉に偽りなんて一切ない、この肉体がなくなろうと、痛みを失くしたとしてもだ。

 

 

「ふははははははは!」

 

俺が答えを言い切るとほぼ同時に、司令官は笑い出した。

 

「聞こえたかい、大淀君!この少年は一五歳にも関わらず、こんな大見得を切ってくれたぞ」

 

司令官は大淀さんが出て行ったドアに話しかけ、そのドアは大淀さんによって開かれた

 

「明らかにやりすぎです、提督。

私が言えたことではないのですが、脅しが過ぎます。後々後ろから撃たれても知りませんよ」

 

脅し?ということは、どういうことだってばよ

 

「いやあ、すまないすまない。先ほどの手術内容は全部嘘だ、詳しくは私も知らないんだ。

だが、君の覚悟は伝わったよ。どうかそれが、若さゆえの無謀さゆえの蛮勇じゃないことに期待しているよ」

 

最後に、実際の手術はこの隣の部屋で行われるらしいよ、詳しくは自分で考えて実践してくれ。とだけ残し大淀さんと入れ替わるように退室していった。

 

「では、改めまして。提督が言われたように、隣の部屋にて既に準備がされています。

中にいるはずの、妖精(・・)さんの指示に従ってくださいね。提督の適性があった貴方なら妖精さんの姿も、運が良ければ声をも聴くことが出来るはずですよ」

 

それだけ言い残し、大淀さんも退室していった。

 

話がとんとん拍子で進みすぎる。理解が追い付かないが、とりあえず隣の部屋に行こう。大淀さんの言う通りなら、部屋の中に妖精さんがいてくれてるらしい。

 

 

_____________

 

_________

 

____

 

 

部屋の中には、酸素カプセルのようなものが一機だけ存在していた。

近寄って中を除けば、何やら培養液のような青みがかった液体が詰まっていた。

 

「きたようですね」

 

「まってましたよー」

 

「ごたくはいいからさっさとはいんなー」

 

 

とても抑揚のない話声が聞こえたと思えば、視界は暗転。気づけば既に酸素カプセルのような物の中に入れられていた。

 

「ちょ!説明くらいしろよ!」

 

「そんなひまはないんだー」

 

「これは入渠ドック(にゅうきょどっく)ですよー」

 

「めがさめたらおまえはかんむすだー」

 

 

まさに、取り付く島もないような状態でことが進んでいく。

 

「だんだん」

 

「あなたはー」

 

「ねむくなーる」

 

 

 

この声を最後に俺の意識は失われていった。

 

 

 

 

 

 




ようやく、名前だけ出ていた叢雲が登場するかも…?

橋間司令は、やりすぎることも多いけど以外にいい人なのかも、知れませんね??

次回
…!…出撃するわ!ふっ、いよいよ戦場ね!

をお送りいたします(嘘)



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力と代償と

 

 

あれからどれくらい経ったんだろう。

 

意識はあるんだけど、身体が動かないな…目も開かない。

 

ガラッ

 

 

誰か入ってきたな

 

「妖精さん、あれからもう3時間ほど経つけれども、結果はどうなったのかな?」

 

司令官か、司令官の言う通りならもおう3時間も経つのか。

 

「せいこうしたけど」

 

「めをさまさないんだー」

 

「どないしましょー」

 

 

「電気でも流してみるかい

一発で起きてくれると思うんだ、どう思う?」

 

 

「いいかんがえですね」

 

「おきたあとおこられるかもですよー」

 

「でもおもしろそうですー」

 

やばい!

培養液の中なのに、汗をかいてるような気がする

意味もないだろうが、汗を拭う動作を入れて再び考える。

 

深海戦艦と戦う前からピンチじゃないか、身体は動かないしどうしようもな…

って、身体が動いてるじゃないか!

 

 

「…!」

 

「このけはいはー」

 

「むらくもがおきたんじゃー!」

 

最後の妖精さんは、キャラが未だに定まってないじゃないか

 

 

ガッ…シュー

 

妖精さんに扉を開けて貰えたようだ。

 

 

「おっ、燕君、いや叢雲君も起きたようだね

気分はどうだい?身体や感覚に違和感はないかい?」

 

 「えぇ、今のところは特に。

電気ショックで起こされることが無くてよかったですよ」

 

司令官は俺の言葉を聞いて、

小言で 聞こえてたんだね、ははは…。

と零している司令官を無視して妖精さんのいる方へ起き上がり、進む。

 

「妖精さんたちも、好き勝手言ってくれたようだね。

聞こえてたんだぞー」

 

 

「き、きのせいじゃないですか」

 

「このふたりがいってましたぞー」

 

「ふぁーーー」

 

 

まあ、許してあげようじゃないの。

…さっきから結構目を擦ってはいるんだけど視界がぼやけたままっていうか…ん~?

 

 

「妖精さん、カプセルの中にいたときからなんだけど、全然視界が回復しないんだよね

俺以外でも同じようなことが起きたとか、何か詳しいこと知らないかな?」

 

 

「め ですかー?」

 

「せつぞくふりょう ですかー?」

 

「ちょっとしつれいしますぞ」

 

最後の妖精さんが、赤い毛むくじゃらの声真似(似てない)をしたかと思うと俺の顔を目掛けて飛翔した。

 

「!?」

 

「たんしょうとう、しょうしゃー!」

 

俺の両の瞼をこじ開け、他の二人(?)の妖精さんに号令を出した。

 

「ほいさー!」

 

「あいさー!」

 

良い返事をすると同時に、いつの間にか持っていた探照灯の灯りを両目に向けて浴びせてくる。

 

(妖精さんって結構力強いんだなぁ…)

一切の抵抗を許すことなく、俺の目を検査?を終了した。

 

______

 

___

 

_

 

 

「けんさけっかはおってれんらくするのだ」

 

「きょうはむりです」

 

「かほうはねてまて!」

 

「目が見えないんじゃ、今日は海上訓練等は難しそうだね。

だから、本日は艦の歴史、艤装の基本情報、深海棲艦の情報等を学んでもらおうと思うよ。その辺は先ほどの入渠ドックで寝ている間に学べるよ、ザックリ言うなら睡眠学習かな。

 

妖精さんたちを待つ間に、済ませておくのもいいみたいだね

あの様子じゃ、しばらく時間もかかりそうだね、最悪の状態も覚悟しておく必要があるかもね。何か状況が変わり次第、此方から連絡するよ

 

とりあえず今日の業務はそれくらいかな、無理せず焦る必要はないからね」

 

司令官って一度話し出すと此方の話を聞かない、マシンガントークが多いね。

入渠ドックと言ったら、さっきのカプセルだろうけど場所がわからんな

 

最悪な状況…失明。

もしそうなった場合は、どうやって戦えばいいのか、それ以前に戦うことが出来るのだろうか…

 

 

 

 

 

 





お疲れ様です。
毎度毎度投稿が午前2時で、そんな時間にも関わらず読んでくれている人がいるというのはすごくうれしくて、モチベーションも高まります。
この場を借りてお礼申し上げま候…

これからも叢雲さんをよろしくお願いします


そういえば私が初期艦に選んだ娘は、電ちゃんでした(笑)


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それでは、ここから訓練の時間です


6周年おめでとうございます!
金剛改二丙本当可愛いですね、うちの鎮守府の金剛は練度も素材も足りずに改二で止まってるんですけどね

3-4での大破率が高すぎて、春季が来る前にバケツが…

ご利用は計画的に。。。



 

失明。

 

なんてすることもなく、起きた時には何不自由なく今まで以上の解像度で周囲を見ることが出来た。

 

心配そうに覗き見する大淀さん

 

パンツを必死見ようとしている司令官

 

にやにやをやめない妖精さん’s

 

とりあえず、入渠ドックから出してもらってから司令官は蹴り飛ばそう。

同性だから何してもいいってわけじゃないからな、うん。

 

________

 

____

 

_

 

 

「兎にも角にも、叢雲さんが無事でよかったです。

肥前鎮守府始まって早々、鎮守府近海警備任務に出撃する羽目になると思ってませんでしたよ」

 

聞くところによると、気絶したまま着任し、そのまま手術を受けて全く働かない俺の代わりに遠征、護衛任務、近海警備その他諸々働き詰めだったらしい。

最初から頭が上がらなかったのに、もっと上がらなくなってしまった。

 

「すみません、大淀さん。

この埋め合わせは必ずしますんで「甘いものが食べたいです。」ご用意させていただきます。」

 

「よろしい。その心意気に免じて、叢雲さんの海上移動訓練や戦闘訓練の訓練時の面倒も見てあげます。

叢雲さんには、早く一人前になって貰わないと私も困りますからね」

 

「恐縮です。」

 

 

「これで、叢雲君が正式に加入してくれた。

君も、自分の新しい身体に関して興味もあるだろう。君の部屋を準備してある、そこで着替えるついでに鏡で確認してくればいい。

30分後、君に艦娘としての訓練を受けてもらう。

そして、今日より1週間後。深海棲艦によって奪われていた、鎮守府近海海域の奪還作戦を開始する。そのことを頭に入れて1週間を過ごして貰いたい。

ここまでで、質問はあるかい?」

 

さらっと問題発言がでたけど相手にしないでいいだろう。一番大事なのは、出撃できるのは俺一人ということになる。マジで?

 

「司令官、出撃するのは俺だけの単機出撃になるのか?

流石にその行為は、無謀としか言いようがないと思うんだけど」

 

「叢雲の言うとおりだ。流石に民間上がり、それも艦娘としてでは生後1週間では無謀すぎる。

ということで、私は君と別れてから工廠へ向かう。そこで、新しい艦娘を建造するつもりだ。成功するかは賭けだが、何もしないよりマシだろう。

成功すれば直ちに、叢雲君と同じ訓練を始めてもらおうと持っている。

そういうことだから、出撃するときは叢雲君とその子の二人で出撃してもらおうと思っている。納得していただけかな?」

 

「そういうことなら納得した。

駆逐艦叢雲、これより30分の休憩に入り、その後訓練に入ります」

 

______

___

 

余談だが、妖精さんに聞いたところ燕のように民間上がりは少なくなく、世間一般的に知られている艦娘とは性格や口調等が違うっていう艦娘も少ない。

よって燕のような叢雲も、珍しくはないらしい。もちろん、元が男という艦娘は燕が初めてではあるが。

 

閑話休題(そんなこんなで)

 

 

妖精さんの案内で自室へ来てみたが、見事に殺風景。

女の子らしさは姿見があるだけで、後は丸机にベット、クローゼットだけという設計。

 

「はじめての女子の部屋がこんなんか…」

 

一言零しながら姿見の前に立つ。

 

吹雪型駆逐艦 叢雲

 

「こう見る分はすごく可愛いってのに、中身が俺っていうだけで何か萎えるわ

早く艤装に着替えて、訓練室に行きますか」

 

今着ている服は上下別の軍支給の寝間着、今まで入院中だったのだからそういうものだろう。

上着を脱ぎ、艤装に着替え…る前に、鏡で確認。

 

「これは…うむ。サイスより形というわけか。

小ぶりながらも、形、ハリは素晴らしいな。いつまでも触っていられるようだ、やべ、〇ってきたわ。

生理現象といえども、自分の身体で…自分の身体?」

 

一度、さわるのはやめて鏡を向き直る。

鏡に映るのは、誰もが知るであろう吹雪型の5番艦叢雲。

の下腹部が異常に盛り上がっていた。。

 

 

「ふぅ…

まあ、そういう日もあるよな。訓練に遅れたら大淀さんに、なに言われるかわからないからな。

さー訓練だ、訓練。」

 

気付かなかったことにした。

 

______

 

___

 

_

 

 

「お待たせしました、大淀さん。」

 

「いえ、ちゃんと5分前ですよ。いい心がけです」

 

場所は変わって、訓練場。

鎮守府内にある地下施設の一つで、海にも通じており同じフロアには出撃ルームもある。

 

「では、訓練内容の説明をします。

時間は限られてますが、焦りは禁物です。まずは、海になれるところから。

叢雲さん、泳ぎは得意ですか?」

 

「え、はい。

得意というほどではありませんが、クロールからバタフライまでの一通りは泳げますよ」

 

自慢ではないが、小学生の時からスイミングスクールに通っており泳ぎは得意なほうだった。

 

「それは素晴らしい。

では、今から3時間みっちり泳いできてください。その間、陸に上がることを禁じます。

それが終わり次第、海上歩行訓練に入りたいと思います。」

 

は?

 





ここで、先にこの世界での海上歩行の解説をば
簡単に想像してもらうならば、バランスボールの上のみを移動するようなものです。
立つだけでも難しいって話です。

大淀さんが最初に指示を出した、泳ぎはスタミナを使い果たす必要があったからですね。ピンとこない人は、自来也がナルトに口寄せを覚えさせるときに行っていたチャクラを使い果たしていたのををイメージしてもらっておkです。


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邂逅と出撃と

大淀さんが教えてくれている時間が正しければ、泳ぎ始めて1時間が経った。

クロールに始まり、平泳ぎ、背泳ぎ、バタフライ。この4種類をひたすらにローテーション、止まることは許されずに泳ぎ続けた。

 

そして、私は海と一つになったおぼれた。

 

 

「大淀君、叢雲君、建造成功した…よ!?」

 

「初雪……です……よろしく!?」

 

 

「あら、提督に初雪さん。

ん~、ちょうど(溺れて)キリもいいですし休憩にしましょうか」

 

 

初雪は後にこう語ったという。

「…もうやだ、帰りたい。」

 

 

____

 

 

__

 

 

目が覚めてみれば、海の中ではなく床の上で寝転んでいた。記憶を失っていたみたいだ。

 

「大丈夫…?叢雲ちゃん」 

 

声を掛けられた。

声のする方を、上半身を起こし探す。そこにいたのは…

 

 

「初雪…?」

 

見たことなどなかったが、わかる。

間違うなんてありえない。俺になかったはずの、艦としての記憶がそう告げていた。

 

ドサッ!

 

初雪が勢いよく抱き着いてきて、その勢いのまま初雪の下敷きにになるように床に倒れた。

 

 

「叢雲ちゃん…!こわ、かった、また…私の目の前で、沈んじゃうんじゃないかって…!よかったよぉ…!」

 

 

泣きじゃくる初雪の身体を抱きしめ、片手で頭をなでる。

 

 

 

「ごめんね、あの日からずっと苦しかったよね、辛かったよね。

また会えて、こうしてまた肩を並べて戦えるんだ。今度は、初雪をおいて行ったりなんかしないよ」

 

 

 

初雪と会うのは初めてだったし、俺自身意図して言葉が出たわけじゃなかった。

艦であった叢雲が、俺の身体を介して初雪に伝えたのかもしれない。

 

 

 

そういう事にしておこう。

 

 

程無くして、泣き止んだ初雪は俺の身体から離れてそっぽを向いてしまった。

 

 

「実際に肩を並べて戦ったのは、ガダルカナルで怒られた時くらいしか覚えてないし…」

 

「いやいや、もっと有ったっじゃないか、なんで寄りにもよってそのエピソードなんだよ」

 

初雪の顔を見れば、うっすら赤みがかっている。

 

「…恥ずかしがってるのか」

 

この独り言が聞こえていたのか、初雪の顔がもっと紅く染まった。

 

「う…!もういいし、引きこもる。」

 

パン!

 

「はい、休憩は終わります。初雪さんも、ちょうど艤装もそのまま装備してきているので、一緒に海上歩行訓練に参加してもらいましょうか」

 

手を叩き、初雪に対して死の宣告をする大淀さん。

どんどん顔が歪んでいく初雪の手を引っ張り、再び海に入っていくことにした。

 

_____

 

___

 

_

 

 

1週間がたち、出撃の日がやってきた。

出撃の日の朝、初雪と二人並んで司令官の前にたっていた。

 

「うむ。

先日から予定していたように、鎮守府近海海域奪還作戦を開始する!

本日マルハチマルマルよりその、第一作戦となる鎮守府正面海域を攻略する。二人には、叢雲を旗艦とし、初雪を随伴艦として出撃してもらう、細かい作戦はない。君たちの今日までの訓練の成果を示してくれ!

偵察してきてくれた妖精さんたちが言うには、駆逐イ級と軽巡ホ級の集まりだ。君たちの実力をもってすれば、チハとシャーマンみたいなもんさ。力でねじ伏せてこい!」

 

「了解、マルハチマルマルより、初雪を随伴艦に旗艦叢雲出撃します。」

「初雪、りょうかい…です」

 

______

出撃ドック

 

「初雪、絶対一緒に帰ってくるよ。だから…」

 

「ありがと…がんばる」

 

「うん。」

 

 

初雪と少ない時間だったけど話して出撃準備を整える。

 

 

『半径1㎞敵影なし、ドック開けます。』

 

出撃ドック内に、大淀さんの声でアナウンスが入る。

 

 

「いよいよ、戦場だな。…出撃する!」

「ん、行きます。」

 

 

____

 

__

 

_

 

 

結果的に言えば、誰一人ケガすることなく勝てた。

もうこれでもかって程には、圧勝だった

 

大淀さんの鬼のような訓練をこなした俺たちにとっては、イ級の砲撃も、ホ級の雷撃も避けるに容易く。

こちらは砲撃も雷撃も必要とせず、至近距離まで近づき主砲で一撃。どんな相手だろうと、零距離からの攻撃を避けること何て出来ずに沈んでいった。

 

「こんなんでいいんだっけ?」

 

「まあ、明日から本気出す…から見てて」

 

 

閑話休題(そんなこんなで)

 

 

俺たちの初陣は幕を閉じた。

 

 





初めて、感想をいただけましたことにこの場をお借りして、感謝申し上げます!
投稿する時間は、これまで同様午前2時のまま行きたいと思いますが、私事で申し訳ございませんが投稿間隔を二日に一度になります。
感想や評価、お気に入り登録をしてもらえることで、私のモチベが上がり、叢雲が脱ぎます!(嘘です)

これからも、よろしくお願いいたします。

解説?

チハたん…九七式中戦車。九五式軽戦車 ハ号と共に日本の主力戦車だが機械的信頼性に関して優れないところがあったらしく弱かった。

シャーマン…M4中戦車シャーマン。第二次世界大戦時にアメリカ合衆国が開発・製造された中戦車。1970年まで現役で活動しており、日本にも供給されている。


未だに、秋津洲ちゃんは着任してもらえません。


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建造と民間出と

おはにちばんわ

予定していた以上に間が空いてしました、申し訳ございません
書き貯めは昔してたんですけども、いざ投稿しようとするときにコレジャナイ感に襲われることが多くて書き貯めをしないことにしています。
そのせいで、二日に一度の更新を休んでしまうことが今後もあるかもしれませんが、その時には、各自自分の運営する鎮守府に在籍する叢雲のまだ見ぬ41㎝れんそうほうを連装砲を想像しつつお待ちください。

それはそれとしてして、皆さんもスキモノですね(ゲス顔)


俺と初雪の主砲を受け、沈みゆくホ級見送る

 

ドックで学んだ知識によれば

深海棲艦が生まれる仕組みは完全に把握している訳では無いが、過去の大戦で沈んでいった軍船に怨念が宿り深海棲艦へと変貌したと考えられる。

という風に学んだ。

お国の為にと戦っていた…筈なのに、たかが6,70年で自国に仇なす存在に変り果てるとはね。

 

「叢雲ちゃん…あれ、見て…なんだろう、キレイ。」

 

初雪が指さすところは、ホ級が沈んでいった場所。そこには、ホ級と入れ替わるように浮いてくる青く輝く靄のような塊だった。形も質量も説明が出来ないのに、存在は確認できた。

 

「どう、するの…?」

 

不安そうに、聞いてくる初雪に軽く微笑んで答える。

 

「持って帰ろう。始めて見たけど、たぶんこれがドロップ艦の元になる物質なんだと思う。俺もドックでの知識しかないし、詳しくは分からないんだけど、大淀さんか司令官なら何かわかるかもしれないからね。

初雪が持って帰ってくれる?言い出したのは俺だけど、俺は旗艦だから何かあったときに臨機応変の対応がとれるようにしたいからさ。頼める?」

 

「そういうことなら、任せて!」

 

初雪が、靄の塊に近づき塊を丁寧に掬い取る。靄は何でもないような感じで、両手に収まった。

 

気になったので、持っている感触は?と聞いてみれば、特に重みもなく持っていることを意識してなければ、持っていることさえも忘れてしまうくらいらしい。

スライムのようなものかと思っていたが、どうやら違うらしい。

 

__________

 

「第一艦隊旗艦叢雲、以下初雪も無事帰投しました。」

 

「うむ、お疲れ様。

報告を聞くところによれば、ドロップ艦と思われるモノを保護したらしいね。」

 

青靄のことだろう。保護というより、回収に近い形だったけど。

 

「はい、ホ級が沈むのと入れ替わるようにして、青い靄のような塊が浮上してきたので、その物体をかい、保護してきました。」

 

「青色。なら、駆逐艦で間違いないだろう。

ドロップ艦についてはこっちで対応する。何かあれば追って知らせよう、ご苦労だった。下がって補給と必要であれば入渠を済ませておくといい。」

 

「了解しました、吹雪型駆逐艦叢雲、同じく吹雪型初雪両名共に補給に入ります。」

 

退室し、再び指令室に入る。

 

「司令官、さっき言ってた靄についてなんだけど青色以外にも存在するのか?」

 

先ほどの報告時の口調とは違い、砕けた言い方で司令官に質問する。

 

「口調は諦めてるけど、せめて入室の時にはノックはしようね、叢雲。」

 

「別に、俺と二人しかいないんだし良いじゃないか、あまり気にしすぎてるとハゲるぞ」

 

初雪は先に補給に、大淀さんは別室で大本営に提出する書類の作成をしているため指令室には二人しかいない状況だ。

 

「そう簡単にハゲてたまるか。

まあ、いい。質問は靄の色に関してだったな。

それに関して簡単に説明するなら、駆逐艦は青。軽巡は緑。重巡は紫。選管は黄色。空母系は赤。潜水艦は白。補給艦と水母は橙。って感じか

これに当てはまらない艦種とかも確認されているらしいが、俺は見たことないから詳しくは分からんな」

 

「なるほど、だからさっきは駆逐艦だと分かったのか。」

 

「そういうことだ、質問は以上ならさっさと補給に行くんだ。

俺はドロップした靄をもって工廠にいくから、興味があるならついてくるか?」

 

「遠慮しまーす。これから、初雪が甘いものが食べたいって言ってたから甘いもの食べに行くのさ」

 

「初雪が言ってたのか?叢雲が食べたいってわけじゃなくか?」

 

ニヤニヤしながら聞いてくる、司令官の顔は出来るだけ見ないようにして退出する。

 

「もちろん、初雪がだ。

初雪の頼みとあれば、断る理由がないだろう?」

 

二ヤケ面の司令官を軽く睨んでから退出する、甘いものを食べるのはこの基地に来て初めてだったりする。

イチゴの乗ったショートケーキや、こだわり卵を使ったプリン。

和の者で言うなら、産地にもこだわって作られたわらび餅に羊羹。

 

別に、初雪のためなんだからな!

 

 

 




GW期間中だからと言って、仕事がないと誰が言うたか!

社畜に10連休は存在しないようですね。
同じく、連休のない同士諸君は明日も頑張りましょうね。

休みだという諸君もゆっくり休んでくださいね

因みにうちの叢雲ちゃんは12㎝単装砲です。


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ケーキとプリンはちょっぴり塩味


更新遅れてしまい申し訳ありませんでした!!!
それと誤字報告ありがとうございました!

今回はドロップ艦のあの子が登場します!



 

甘味屋 間宮。各鎮守府には、必ず存在しておりそれは司令官が着任するより先に着任している。

鎮守府がその機能を果たすことが出来るようになると、同時に着任しているとか、海軍の都市伝説の一つに数えられている。

その都市伝説を真だと言わんばかりに、間宮や伊良子の建造に成功した例はただの一度も確認されていない。

 

「待たせたかね、報告に時間がかかってな。

補給はもう済んだかい?」

 

そんな間宮の一席で、メニューとにらめっこ中の初雪に声をかけた。

 

「あ、叢雲ちゃん!補給は、すんだよ。…叢雲ちゃんは…?」

 

「俺も補給は済んだよ。戦闘も少なく済んだから、補給時間も短縮できたのかな

初雪が頑張ってくれたからだね、ありがとうね」

 

「ううん…叢雲ちゃんが、いてくれたからだよ。私の方こそ、ありがと…」

 

「案外、その通りかもね。もっと感謝してもいいんだよ?」

 

恥ずかしそうに、メニューで顔を覆うような仕草をとる初雪を横目に、軽口でおどけて見せる。

 

「もぅ…叢雲、ちゃんってば…」

 

「あははは、それより何食べるか決まった?」(ていっ)

 

頬を膨らませながら、此方を上目で睨む初雪の頬を軽く指でサンドしながら、話を逸らす。

 

「ぶー…まだ、ショートケーキと、プリンで…悩んでて、決めれてないの。

夕食のことを、考えたら、二個も食べれないし…」

 

「なら、ちょうどいいじゃん。」

 

不思議そうな顔をする初雪。そんな初雪を尻目に、近くの机の台拭き掛け中だった伊良子に声をかける。

 

「伊良子さん、ショートケーキとプリンを一つずつお願いします。」

 

「わかりました、少し待っててくださいね」

 

伊良子は、愛想よく対応してくれた後に奥に消えていった。

状況が読めていないのか、不思議そうな表情のままの初雪の方に向き直る。

 

「俺もちょうど、両方とも食べたくて悩んでたんだ。半分こでもどうかな?嫌だったならたn「嫌じゃないよ」ならよかった」

 

これで、嫌がられてたなら明日以降に初雪に合わす顔がなかったな。

 

それから、ショートケーキとプリンが来るまでの時間は、特に他愛ない会話をして待っていた。

 

「あ、あの!私も…相席してもいいかな!」

 

早速来たのかと、思ったがそこに立っていたのは…

 

「確か、七駆の…」

 

「あ、私は特型駆逐艦…綾波型の潮です。」

 

実物は始めて見たけど、すごく大きいです。

これが…巨乳ッ!!

 

「あの、そんなに睨まないでください…」

 

「ごめんごめん!相席の件だったね、俺は構わないよ。初雪は?」

 

顔を赤らめ、少し涙目になった潮に、一言謝罪を入れて話を戻すことにする。

 

「私も、大丈夫。だよ?」

 

潮は初雪の返事を聞き、嬉しそうに初雪の隣に座った。

 

「俺たちに声をかけたってことは、先の戦いのドロップ艦が潮ってことか?」

 

「はい。ですので、お二人のことは提督から先ほど工廠にて聞いています。

提督は、その後まだ書類が残っているからと、指令室に戻られました。

その際に、叢雲さんが初雪さんとで甘味を食べてるだろうから、一緒に食べておいでとのことでしたので、ご迷惑でしたか?」

 

「まっさかカーニバル!そんなことないよ!むしろ、一緒に食べれてラッキーだよ。」

 

「それなら、よかったです!」

 

「うんうん。それはそうと、俺らは先に注文しちゃったんだけど潮は注文してた?」

 

「はい。っと、どうやら伊良子さんが持ってきてくれたみたいです!」

 

潮が言い切るのと同じタイミングで、伊良子が後ろからトレイを片手に注文の品を持ってきていた。

 

「お待たせしました。イチゴのショートケーキと、こだわり卵のプリンに、ミルクにこだわったミルクレープになります」

 

持ってきた商品を机の中央に置いて、伊良子は奥の方に戻っていった。

 

「私はこのミルクレープなんですけど、お二人は?」

 

なるほど…ミルクにこだわった結果があの乳になるってわけね、わかりました。

 

「二人で、半分こするの」

 

「そういうことでしたら、潮のミルクレープも食べてみますか?」

 

「いいの…?」

 

「もちろんです!はい、あーん」

 

潮は自分のミルクレープを、一口サイズにカットしフォークで掬い、初雪の口元まで運ぶ。

 

「あむ。…美味しい!お返し、あーん」

 

初雪は嬉しそうに、頬張るとお返しにプリンを掬い潮に食べさせる。

 

「嬉しいです。あむ!」

 

 

二人で楽しそうにしてるのを眺める僕。

 

甘くておいしい筈の、プリンやケーキはちょっぴりしょっぱい味がしました。

 

 

 

 





ドロップ艦は潮ちゃんでした!
駆逐艦の中でも特に大きい部類で実はトップなんじゃないかって思ってます(笑)

この鎮守府では、結構ハキハキしてる印象を与える潮ちゃんをイメージして着任してもらいました。
だって初雪とみわけがつかなくなりそうですし…(小声)


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