小さな従者の独白 (管理され隊)
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小さな従者の独白
プリンセスナイトを導けというアメス様の託宣によってもたらされたあの出会いは、まさにわたくしにとっては運命でした。
プリンセスナイト、即ちわたくしの主さまは、出会った直後には記憶だけでなく知識すらも失っておられ、一人では生きていく事すらままならなかった程でした。
主さまは偉大なお方です。
わたくしが全てお世話をさせていただくつもりでしたが、お優しい主さまはそのような状態にあっても頑なにわたくしだけに働かせる事を良しとしませんでした。
そうしてわたくしたちの生活の為に働き始めた主さまは、みるみると知識を身につけていきました。
今となっては多少の世間ズレこそ残っていますが、わたくしのお世話など無くとも一人で生きていけるだけの力を身につけてしまいました。
少し寂しくもありましたが、これは主さまの成長であり、喜ばしい事です。これだけならばわたくしも割り切る事が出来たでしょう。
しかし、わたくしと離れ別の仕事をしていく中で、主さまは多くのの女性たちと関係を持つようになってしまっているようなのです。
ある時は姉を名乗る人物から同棲のお誘いを受けたと仰られました。
またある時は、このランドソルを賑わせているトップアイドルとの密会の噂を耳にしました。
このように近頃の主さまからは、非常に多くの女性の陰が見え隠れするようになりました。
わたくし達の所属するギルド「美食殿」のペコリーヌ様とキャル様も魅力的な方々です。お二人も主さまの事は憎からず思っているご様子です。
主さまはいずれ、世界を救う英雄となるとアメス様の託宣にはありました。将来の伴侶となるのに相応しい相手を見つけ出すこともいずれは必要になるのでしょう。
しかし、いつからでしょうか、主さまがわたくしの元を離れわたくしではない誰か別の女性と結ばれる。その事を考えるとどうしようもなくわたくしの胸は張り裂けんばかりに痛むようになったのです。
主さまはお優しい方ですから、伴侶となる女性と結ばれてもわたくしに対しての態度を変えたりするような事はしないでしょう。
しかし、そのような考えすらわたくしを更に追い詰めていきます。中途半端に優しくされるくらいならいっその事わたくしのことなど忘れていただいきたい。そのように考えてしまいます。
もし、主さまがわたくしにお世話を一任して成長する事なく日々を過ごしてくれていたら、わたくしは主さまを独占する事が出来ていたのでしょうか。
わたくしは主さまの伴侶には相応しくありません。
このように優しい主さまの従者であるというだけで幸せであるはずなのに、このような卑しい思考をしているわたくしがそのような立場に相応しいはずがないのです。
このような思いを押し殺す日々にも限界を感じてきました。
主さま、アメス様、どうか愚かなわたくしをお許しください。
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