バカとテストと召喚獣withグリモア! 〜君と僕で紡ぐ青春(いま)〜 (ウォーズ -IKUSA-)
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Episode.0
第0話 分かれ道


どうもです!

2作目のバカテス小説、始動します!
はじめましての方も、1作目を読んでくれている方も、どうぞよろしくお願いします!

ではまずプロローグです、どうぞ!


明久side

 

 

これは、僕たちが振り分け試験を受ける数日前のこと。

 

「そろそろ振り分け試験だね。ハルと飛彩は、どのクラスに行くか決めてるでしょ?」

 

「もちろん、Aクラスだよ! その為に勉強頑張って来てるからね」

 

「当然だ。そうでなきゃ、こうしてハルとアキに勉強を教える訳がない」

 

話の中に出て来た2人の少年……、真境名晴陽(まじきなはるひ)唯島飛彩(ただしまひいろ)は僕が小学生の頃からの親友。

1年のとき飛彩とは違うクラスだったけど、今でもこんな風に勉強したり遊んだりしている。

 

「すまないなハル、アキ。“あんなこと”がなければ、お前たちが馬鹿を演じる必要なんてなかったのに……」

 

「飛彩……。まだ“あのこと”を気にしてるの? あれは僕が自分を抑えられなかったせいだから、飛彩が責任を感じなくて良いんだよ」

 

「そうだよ。“あのこと”に対する処罰が観察処分者(コレ)で済むなら軽いものさ」

 

 

そう。飛彩の発言で気付く人もいるだろうが、僕とハルは観察処分者だ。観察処分者とは、学園生活を送る上で問題のある生徒に課せられるペナルティであり、通称“馬鹿の代名詞”である。

なぜそのようなものに任命されたのか……。それはまた、別の機会に語ることにしよう。

 

 

「だから、僕もアキも気にしてないからそういう暗い話はしないで。 これから先の学園生活の方が大事だよ♪」

 

「……わかった。ありがとうハル、お前の明るさに救われるぞ」

 

「そういえば、環もAクラス目指してるんだよね? 誰と勉強してるの?」

 

「んー? 智花と怜と夏海とももと一緒に勉強してるって聞いたよ」

 

「そっかぁ、みんなもAクラスになれるといいね」

 

「その為にも俺も本気を出そう」

 

「じゃ、頑張ろ♪」

 

「「うん(ああ)」」

 

 

こうして僕たちは、試験直前まで勉強に打ち込むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

〜振り分け試験当日〜

 

 

そしてついに振り分け試験の日になった。

この試験の成績の良し悪しで、今後の学園生活を左右すると言っても過言ではなく、みんな上位クラスを目指すべく懸命に問題を解いている。

 

(難しいっては聞いてたけど、あんなに勉強したんだ。大丈夫。今回の試験……、間違いなくAクラスに行ける!)

 

そう確信した僕は、順調にペンを走らせていると……。

 

「はぁ、はぁ……。ふぅ……」

 

隣の席から苦しそうな声が聞こえて来たので見てみると、声の主は僕の幼馴染の1人で、大切な人でもある女の子……南智花(みなみともか)だった。

フラフラになりながらも必死に試験を受けていたが、徐々にペースが落ちて行き、席から崩れ落ちてしまった。

 

「智花ッ!」

 

完全に床に落ちる前に受け止める。大事には至らないとは思うけど、念の為だからね。

 

「あ……。ア、キ……、くん……」

 

「大丈夫、智花ッ!」

 

「だめ……。わたしは、だいじょ……ぶ……。だか……ら、試験……、受け……て……」

 

消えそうな声でこう言う智花。こんな姿を見ると、胸が痛くなる。

 

 

“早く保健室に連れて行かないと”

 

 

そんなことを考えていると、試験官を務める教師が近付いて来た。

 

 

「何をしている吉井、席へ戻れ。南、体調が悪いのか? それなら保健室へ行っても構わんが……、試験途中の退室は無得点になるぞ」

 

「待ってください、先生! 付き添いは付けてあげないんですか!?」

 

「お前は黙っていろ吉井。さあどうする、南。退室するか?」

 

「た、退室……、します……」

 

「そうか。なら、行ってよろしい」

 

 

こう告げただけで何もしない試験官に、心底腹が立った。苦しそうな生徒を思いやれない、こんなヤツが教師だなんて……。

 

 

「智花ッ! 大丈夫だよ、僕が一緒に行くから!」

 

「で、でも……。アキ……くん……」

 

「こういうときは、素直に甘えて良いんだよ?」

 

席を立って智花を支える。

 

「勝手なことをするな、吉井! お前も無得点にするぞ!!」

 

「こんなに苦しそうな女の子を、1人で保健室に行かせるなんておかしいですよ! なんで付き添ってあげないんですか!? 彼女を見捨てるくらいなら、無得点になる方を選びますよ僕は!!」

 

「き、貴様……」

 

「それでは失礼します」

 

そう言って智花を背負いながら、保健室へと向かう。

教室を出る前にハルと目が合った。

 

(ハル)

 

(なに? アキ)

 

(僕は智花を保健室へ連れて行くよ。ハルはこのまま、Aクラスを目指して)

 

(わかった)

 

こんな風にアイコンタクトを取って、教室から出る。

後で何言われるかわかんないけど……、まあ良いや。智花の体調が大事だからね。

 

 

明久side out

 

 

 

 

 

晴陽side

 

 

(行ったか……)

 

 

僕はアキと智花を見送った後、再び試験問題と向き合う。アキの想いを無駄にしない為に気合を入れて問題を解いて行くと、

 

「俺に意見しやがって。……学園のクズが……」

 

担当教師がこう呟くのが聞こえた。

 

「なに……?」

 

誰よりも真っ直ぐで、誰よりも友達想いなアキをクズ、だって……? 気が付けば、あの教師のシャツを掴んでいた。

 

「おい。アンタ今何て言った? その言葉、聞き捨てならねぇぞ!」

 

「貴様も俺に楯突くのか、真境名! こんなことをすると貴様も無得点に……」

 

「黙れ」

 

「ひっ!」

 

一喝すると、担当教師は情けない声を上げる。さっきまで強気でいた姿は見る影もない。

 

「真境名晴陽、退室します。……アンタ、最低だよ」

 

 

ただ立ち尽くす教師にこう告げて、僕は教室を出て行った。

 

 

 

 

その後、保健室で智花を寝かせていたアキと合流して、これまでの一部始終を話して聞かせた。

 

「それで退室したんだ? 僕は良いんだけど、環とももは納得するの?」

 

「ううん……。多分、怒られるだろうな……。だからちゃんと話はするよ」

 

「なら、僕も一緒にいるよ。元はと言えば僕が原因でもあるからね」

 

「アキ……。ごめん、ありがとう」

 

「良いんだよ。気にしないで」

 

 

 

振り分け試験終了後、環とももに事情を説明した。

案の定最初は怒られたが、アキも一緒になって謝ったので何とか許してもらえた。

 

結局Fクラスは避けられなくなったが、仕方ない。これからのことを考えて行こう。

 

そう思って振り分け試験を終えたのだった。

 

 

晴陽side out

 

 

 

 

 

飛彩side

 

 

「ハルとアキはFクラス……か」

 

 

俺は2人から聞かされたことを思い出して、こう呟く。

こんな結果になったのは残念だが、一方であの2人らしいとも思った。大切な人の為なら、損得抜きで手を差し伸べるのは容易なことじゃない。

それができるからこそ、俺はハルとアキを親友として誇れる。

 

 

「俺はAクラスで仲間たち(とも)を導く。お前たちも自分の仲間たち(とも)と共に立ち向かって来い……!」

 

 

2人と戦うことを心のどこかで楽しみにしながら、俺はこの日を終えた。

 

 

See you next stage……




明久「振り分け試験で智花を庇ったことでFクラスへ行くことが確定した僕とハル。結果については後悔してない、大事なのはこれからのことだ。きっと楽しいことが待ってる……ハズ?」


明久「次回ッ!『バカとテストと召喚獣withグリモア!』、『新学期!』。 Let's go……fight!!」


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〜キャラ紹介〜 (オリキャラside)

どうもです!

まずはオリキャラ紹介からして行きます。

それではどうぞ!


名前:真境名 晴陽(まじきな はるひ)

 

イメージCV:村瀬 歩

 

性別:男

 

所属クラス:Fクラス

 

容姿:一見すると少女のような顔立ちで、所謂触覚ヘアー。華奢に見えるが鍛えられており、両手にフィンガーグローブをはめている。

 

身長:167cm

 

髪の色:黒紫色

 

瞳の色:空色

 

性格:優しくて友人想い。また、見た目と裏腹に厳しさも併せ持つ。

大切な人たちを貶したり、傷付ける人には一切容赦しない。

 

一人称:僕(戦うときとキレたときは俺)

 

二人称:君、あなた(敵視している人はお前、若しくはテメェ)

 

得意科目と苦手科目:文系科目(特に現代国語)が得意。苦手な科目は数学と物理と化学。

 

召喚獣の見た目と武器:晴陽をデフォルメした姿に、BLA◯◯LUEのジ◯=キ◯ラギの衣装の色違い(紫)。

武器は日本刀を2本装備し、二刀流とツインブレード形態を状況に応じて使い分ける。

 

腕輪の能力:

闇(消費点数不明) その名の通り、闇を操る。攻撃方法によって、消費点数は変化する。

 

 

解説:

本作のオリジナルキャラクターにして、主人公その1。

明久と飛彩は小学生の頃からの親友同士。妹の環が可愛くて仕方ないところもあるが、基本的に彼女の自主性を尊重している為、兄妹仲は良好。

 

観察処分者になっているが、明久が原作と違う経緯の為、彼も同様である。

智花と怜と夏海とももとも仲が良く、特にももは中学生の終わり頃から意識していき、彼女も満更でもないようだ。

 

外見からは想像しにくいが琉球空手が特技であり、中学生時代は『轟龍』と呼ばれていた。

ただ、ある理由から彼自身はこのことを良く思っていない。

 

 

 

名前:唯島 飛彩(ただしま ひいろ)

 

イメージCV:緑川 光

 

性別:男

 

所属クラス:Aクラス代表

 

容姿:ガ◯ダムWのヒ◯ロ・◯イ

 

身長:178cm

 

髪の色:黒っぽい茶色

 

瞳の色:青

 

性格:基本的に冷静沈着。無愛想に思われがちだが、友人想いな一面も持つ静かな熱血漢。

 

一人称:俺

 

二人称:お前、貴様(敵視している人に対して)

 

得意科目と苦手科目:全てが得意科目。苦手科目は特になし。

 

召喚獣の見た目と武器:飛彩をデフォルメした姿にウ◯ングガ◯◯ムプ◯ト◯ロを模したアーマーを装着した、所謂『MS少年』。

※1年生の2学期まではウ◯ングガ◯◯ム(E◯版)風のアーマーだった。

武器はツインバスターライフルに、ビームサーベルを2本装備。背部ウイングユニットによって、飛行することも可能(ブーストが残り少なくなると着地する)。

 

腕輪の能力:

◇ローリング・バスターライフル(消費点数150点) 2丁のバスターライフルを左右一直線にビームを照射、360度回転する範囲攻撃。制圧力が非常に高い。

◇ツインバスターライフル・フルパワー(消費点数200点) こちらはバスターライフルを2丁連結して照射する。ローリングに比べて横方向の攻撃範囲が狭い代わりに、射程距離と破壊力は上回る。

 

 

解説:

本作のオリジナルキャラクター。

文月学園に資金及び技術提供を行っている企業のひとつ、『唯島コーポレーション』の御曹司であり、後継者となる為に幼い頃から帝王学を叩き込まれて来た。

 

そのこともあって小学4年生までは友達がいなかったが、明久と晴陽と環と出会い、彼にとって初めての友達で、親友となる。これを皮切りに、智花と怜と夏海とももとも仲良くなった。

最近では風子と良い感じになっている(結果、夏海に少し苦手意識を持たれてしまった)が、彼女が風紀委員長という立場から、(一部を除いて)このことは2人の秘密である。

 

小学生〜中学生時代の間で晴陽から琉球空手を習ってメキメキと力を着けていき、明久と晴陽にも劣らない戦闘能力を身に着けた。

天才ではあるが、「自分より強いヤツは必ずいる」という考えを持つが故、常に鍛錬を怠らない努力家でもある。

 

晴陽の『轟龍』、明久の『烈龍』に倣って、彼の異名は『飛龍』とされている。

 

 

 

名前:真境名 環(まじきな たまき)

 

イメージCV:高橋 李依

 

性別:女

 

所属クラス:Aクラス

 

容姿:体つき(と身長)を除けば晴陽と瓜二つで後ろ髪が長め。実は着やせするタイプで、隠れ巨乳。

 

身長:162cm

 

髪の色:黒紫色

 

瞳の色:空色

 

性格:天真爛漫な元気っ娘で甘えん坊。

 

一人称:あたし、(親しい人たちの前ではたまき)

 

二人称:君、あなた

 

得意科目と苦手科目:理系科目(特に数学)が得意。苦手な科目は文系科目。それでも300点は下回らない。

 

召喚獣の見た目と武器:環をデフォルメした姿に、舞-乙◯iM◯のマ◯◯ター◯ーブ(桃色)を模した戦闘服。

武器はヴ◯イサー◯の五大剣に似た長剣。

 

腕輪の能力:

◇光(消費点数不明) 兄の闇と対になる能力。こちらも攻撃方法によって、消費点数は変化する。

 

 

解説:

本作のオリジナルキャラクターで、晴陽の双子の妹。

晴陽が環を溺愛するように、彼女も兄のことが大好きなブラコンである。

 

その為何か困ったことがあれば、まずは晴陽に相談するほど。

智花と怜と夏海とももは小学生の頃からの親友同士で、特にももと仲が良い。

兄の友人である明久と飛彩との仲も良好。

 

明久と兄に比べると一歩劣るが、その辺のチンピラなら撃退できるだけの戦闘スキルを持つ。

 

 

 

名前:叢雲 歩夢(むらくも あゆむ)

 

イメージCV:飯島 寛騎

 

性別:男

 

所属クラス:Fクラス

 

容姿:仮◯ライ◯ーエ◯◯イドの宝◯◯夢

 

身長:180cm

 

髪の色:黒

 

瞳の色:黒っぽい茶色

 

性格:ノリの良いお調子者。夢の為にどこまでも頑張る真面目な面も併せ持つ。

 

一人称:俺。偶に僕

 

二人称:君、あなた。敵意を持っている相手はお前、若しくはアンタ

 

得意科目と苦手科目:情報と化学と生物が得意。それ以外の科目でも得意とまではいかないが、腕輪を使用できる程度の成績を残せる。

 

召喚獣の見た目と武器:歩夢をデフォルメし、フ◯◯ター・◯アに酷似したエ◯◯イドカラーのアーマーを纏った姿(召喚獣の髪もピンクになる)。

武器は通常時ではガ◯◯コ◯ブレ◯◯ー。後述の腕輪を発動すると、ガ◯◯コン◯ース◯◯シ◯ーが使用可能となる。

 

腕輪の能力:

兄弟(ブラザーズ) (消費点数100点) 召喚獣が2体に分裂し、緑とオレンジを基調としたカラーリングになる(尚、分裂時は一方が攻撃とスピードに優れたオフェンスシフト、もう一方が防御とテクニックに優れたディフェンスシフトと呼称)。思考も分裂している為、各々の判断で連携を取ることが可能。それ故に、戦力が1体分増えるので単純ながら強力。

ただ、他の召喚系の腕輪と異なり1人で2体の召喚獣を操作しなければならない為、やはりと言うか召喚者本人に掛かる負担が大きい。

更に分裂時は点数も半減となり、片方が倒されると一気に劣勢を強いられやすくなる。

 

 

解説:

本作のオリジナルキャラクター。

小学生の頃は親の仕事の都合で友達がおらず、本人曰く「ゲームが友達」だったと言う。

 

中学に進学してから晴陽と明久の友人となり、彼らを通して飛彩、晴明、紫童、環、智花、怜、夏海、ももとも仲良くなった。

しかし、中学2年の2学期開始時に交通事故で生死の境を彷徨う重症を負い、その後の治療の為に入院生活を余儀なくされる。

 

一時は自暴自棄になっていたが、紆余曲折を経て立ち直った。この出来事が医師を志す切欠となる。

高校1年次の2学期終了間際に文月学園に編入し、進級時に晴陽たちとも再会した。

 

ゲームが友達だったこともあって、その腕前は上々。特に対戦型格闘ゲームが得意で、『AYU』というオンラインネームで活動中。

ちなみにこのことは、一部を除いて文月学園のゲーマーたちも知らない。

 

尚、戦闘能力に関しては中の上、身体能力は高めであるらしい(晴陽談)。




以上、オリキャラ紹介でした。

バカテスキャラとグリモアキャラの紹介は後で分けて書いていこうと思います。

前回お伝えした、読者参加企画も行います。
詳しくは活動報告をご覧くださいませ。

それではまた。


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〜キャラ紹介〜 (バカテスside)

バカテス勢のキャラ紹介です。

本作ではほぼ全員が、原作とキャラが違っています。
この点はご了承ください。


名前:吉井 明久(よしい あきひさ)

 

イメージCV:下野 紘

 

性別:男

 

所属クラス:Fクラス

 

容姿:原作準拠だが、両手にフィンガーグローブをはめている。

 

身長:175cm

 

性格:原作準拠。ただし、本家よりも学力が上。

 

一人称:僕

 

二人称:君(キレたら乱暴な口調になったりする)

 

得意科目と苦手科目:得意科目は日本史と世界史と家庭科。苦手科目は古典と化学。

 

召喚獣の見た目と武器:明久をデフォルメした姿に、白線の入った黒いロングコートを基調とした衣装。武器は大太刀。

 

腕輪の能力:

武装変換(ウェポン・チェンジ)(消費点数30点) 武器を変更する。現時点で変更できる武器は、バスターキャノンとクロー。もちろん、大太刀に戻すことも可能。

※一度変更した武器を再度変更及び、大太刀に戻す際は無消費で戻せる。また、バスターキャノンのエネルギーチャージは毎回10点消費する。

全武装強襲(フルウェポン・アサルト) (消費点数100点) 自身が使用する武器を全て使った連続攻撃。最後は大太刀の薙ぎ払いで締める。

 

 

解説:

原作主人公であり、本作の主人公その2。

晴陽と飛彩は小学生の頃からの幼馴染で親友。

また、智花と怜と夏海とももと環とも仲が良く、特に智花のことは誰よりも大切に想っている。

ただ、一緒にいるのが当たり前になっていたからか、あと一歩が踏み出せない状態にある。

 

雄二は中学生の頃に出会ってからの付き合いだが、互いの不幸を喜ばない。寧ろ幸せを願っている。

 

秀吉を男として見ていて、彼に似合う女子と結ばれて欲しいと思っている。

 

上記の理由で瑞希との関わりは薄く、恋愛感情はない。

 

美波は高校1年生のときに告白されたが、結果的に振る。しばらくはギクシャクしていたが、友人として落ち着く。

 

晴陽と共に飛彩から勉強を習っていたこともあって、成績はAクラス上位を狙えるレベル。だが観察処分者になっている為、学園ではあえてバカを演じている。

 

観察処分者になったきっかけは、“あのこと”によるもの。

観察処分者ではあるが、彼の人間性を理解している人たちからの評判は良く、学園内では晴陽と飛彩共々ファンが多い。

 

FFF団に非加入で、討伐対象(誤字に非ず)。

 

晴陽と同様にケンカが強く、中学生時代は『烈龍』と呼ばれていた。尚、晴陽と2人同時に扱う場合は『双龍』と呼ばれている模様。

 

 

 

名前:坂本 雄二(さかもと ゆうじ)

 

イメージCV:鈴木 達央

 

性別:男

 

所属クラス:Fクラス代表

 

容姿:原作準拠

 

身長:185cm

 

性格:原作準拠だが、少し良心的。

 

一人称:俺

 

二人称:お前、テメェ

 

得意科目と苦手科目:突出して得意な科目はないが、苦手科目もない。あえて得意科目を挙げるとすると、文系科目。

 

召喚獣の見た目と武器:雄二をデフォルメした姿に、原作と同じ衣装。武器は大型のガントレット。

 

腕輪の能力:

会心全開(クリティカル・ブースト)(消費点数80点) 与ダメージを2倍(急所に当てた場合は3倍)にする。戦死しない限り効果は永続するが、被ダメージも1.35倍になる為、常に危険が伴う。危なくなったら任意で解除することもできる。

 

 

解説:

本来ならAクラスに行ける学力なのだが、Aクラスに挑む為にわざと点数を調整してFクラスへ行った男子生徒。

尚、その際彼の行動に乗った龍季も一緒に着いて来た。

 

霧島翔子と朝比奈龍季は小学生の頃からの幼馴染。

龍季は相棒、翔子に至っては口に出さないが、大切な人として想っている。

 

『神童』から『悪鬼羅刹』と呼ばれるようになった経緯は、いじめられていた翔子と龍季を守ろうとした結果によるもの。

 

明久と晴陽は中学生の頃に出会ってからの親友で悪友。

明久たちを通じて出会った飛彩は、自分と違うタイプの人間だと感じているが、互いに認め合う関係でいつか超えたいと思っている。

 

FFF団には加入しておらず、彼らの非常識な行動は悩みの種になっている。




以上、バカテス勢でした。

今は明久と雄二だけですが、他のキャラも後ほど追記しますので、今しばらくお待ちを。

毎回言ってますが、オリキャラ募集も行なっています。そちらについては、活動報告を覗いてくださいませ。

では、また。


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〜キャラ紹介〜 (KOFside)

KOF勢のキャラ紹介です。

本作における彼らは「あり得たかもしれない可能性」を私なりに解釈している為、他のキャラと同様原作と異なっています。

この点はご了承ください。


名前:草薙 京(くさなぎ きょう)

 

イメージCV:前野 智昭

 

性別:男

 

所属クラス:3年裏Aクラス

 

容姿:原作準拠(バンダナなし)

 

身長:186cm

 

性格:比較的原作準拠だが、本家よりは常識を弁えるようになった。

 

一人称:俺

 

二人称:お前、テメェ、君

 

得意科目と苦手科目:文系全般(特に現代国語が学年トップ)が得意。苦手科目は特になし。

 

召喚獣の見た目と武器:京をデフォルメした姿に、ネスツ編の衣装。武器は神剣(天羽々斬)。

※2年生の1学期まではオロチ編の衣装だったが、アップデート時に変更したらしい。

 

腕輪の能力:

◇草薙流奥義(消費点数90点〜) 草薙流古武術の炎を纏った強力な技を使う。消費点数は技の強さに比例する。

 

 

解説:

KOFシリーズのオロチ編の主人公であり、本作における3年生sideのメイン格。

虎千代、つかさ、チトセ、鳴子、あやせは小学生の頃からの幼馴染で仲が良い。

庵とも幼馴染で、互いに認め合うライバル同士。彼らのことをよく知らない人からは仲が悪いと思われがちだが、別にそんなことはない。

 

虎千代は中学2年生の2学期から意識し出す。しかし今の関係が変わることを恐れて、素直に「好き」と言えずにいる(虎千代は京が自身に好意を寄せていることは知っている模様)。

 

明久と晴陽は中学生時代に面識はあったが、2年次に西村宗一から(無理矢理)指導係に任命されてから本格的に関わることに。当初は接し方に戸惑うこともあったが見所のある所を気に入り、今では良好な関係を築いている。

また、他の2年生たちは明久たち経由で交流しているそうな。

 

庵、虎千代、つかさと並んで『四英傑』の一角を担い、『十三騎士・ランスロット』の称号を有する文武両道な男子生徒である。

それ故に人気も高いが、同じくらいアンチも多い(特に男子生徒に多く、代表的なのは常夏コンビ)。

 

ちなみに戦闘能力は非常に高く、晴陽と明久2人同時に相手しても手玉に取る程強い(これは庵と虎千代とつかさにも同じことが言える)。

ただし西村宗一とジェイソン・デラー、我妻梅には勝てないらしく、彼らを尊敬すると同時に越えることを目標としている。

 

 

 

名前:八神 庵(やがみ いおり)

 

イメージCV:星野 貴紀

 

性別:男

 

所属クラス:3年裏Aクラス

 

容姿:原作準拠。髪は赤っぽい茶髪。

 

身長:188cm

 

性格:比較的原作準拠だが、本家よりも優しさを見せるようになった(京以外に)。

 

一人称:俺

 

二人称:貴様、お前

 

得意科目と苦手科目:全てが得意科目。苦手科目は特になし。

 

召喚獣の見た目と武器:庵をデフォルメした姿に、原作におけるバンドマン風の衣装。武器はクロー。

 

腕輪の能力:

◇八神流奥義(消費点数90点〜) 八神流古武術の炎を纏った強力な技を使う。似た特徴を持つ草薙流奥義とは対になっている。

 

解説:

原作と同じで、京の永遠のライバルであり『四英傑』の1人にして、『十三騎士・ガウェイン』の称号を有する男子生徒。

虎千代、つかさ、チトセ、鳴子、あやせは小学生の頃からの幼馴染で仲が良い。

京は前述の通りライバルだが、険悪ではなくまずまずな関係。

口には出さないものの、庵にとって京は小学生の頃から憧れの存在であり、そんな彼を超えたいと思っている。

 

文月学園の学生寮で1人暮らしをしており、料理と家事は一通りできるとのこと。

 

明久と晴陽は中学生時代に面識はあったが、2年次に西村宗一から(無理矢理)指導係に任命されてから本格的に関わることに。それ以降は京と同じ経緯を辿って、現在に至る。

尚、庵は晴陽を指導し、京が明久を指導しているようだ。

 

京とは違ったタイプの人物である故に彼もまた人気がある方だが、雰囲気のせいで誤解されやすく敬遠する生徒もいる。

 

 




以上、KOF勢でした。

他の登場予定のキャラも随時追記予定ですので、今しばらくお待ちください。

オリキャラ募集は随時行っておりますので、活動報告をご覧の上、応募してくださいませ。

それではまた。


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〜キャラ紹介〜 (グリモアside)

グリモア勢のキャラ紹介です。

本作の彼女たちはあくまで一般人であり尚且つ、原作と設定が異なる部分があります。(バカテス勢とオリキャラの介入の為)
その点はご了承くださいませ。


名前:南 智花(みなみ ともか)

 

イメージCV:石原 夏織

 

性別:女

 

所属クラス:Fクラス

 

容姿:原作準拠

 

身長:155cm

 

性格:原作準拠

 

一人称:わたし

 

二人称:あなた

 

得意科目と苦手科目:家庭科と保健体育が得意。苦手科目は古典と現代社会。

召喚獣の見た目と武器:智花をデフォルメした姿に、原作の戦闘衣装。武器は両手剣。

 

腕輪の能力:

(ファイア)(消費点数50点〜) 炎属性による攻撃を行う。属性型の腕輪全てに共通するが、強力な攻撃ほど点数消費も多め。

◇ファイア・ショット(消費点数50点) 炎の弾を放つ、オーソドックスな技。

◇ファイア・インパクト(消費点数80点) 拳に炎を纏った強力なパンチを繰り出す。

 

 

解説:

本作のメインヒロイン。

明久と怜と夏海とももは、小学生の頃からの幼馴染で親友。晴陽、環、飛彩とは、明久を通じて仲良くなった(飛彩は5年生のとき)。

 

明久に惚れていてお互いに両想いだが、一緒にいるのが当たり前になり過ぎてその先へ進むことを躊躇う友達以上恋人未満な状態にある。

 

手先が器用で大抵のことはできる。料理に関してはおにぎりは美味しく作れるが、それ以外はお察しな腕前(ただ、これでも昔に比べたらかなり進歩した方らしい)。

このことは本人も自覚していて、いつか明久におにぎり以外の料理も『美味しい』と言ってもらえるように日々奮闘中。そんな様子を怜と夏海とももは、優しく見守っている。

 

 

 

名前:神凪 怜(かんなぎ れい)

 

イメージCV:喜多村 英梨

 

性別:女

 

所属クラス:Aクラス

 

容姿:原作準拠

 

身長:165cm

 

性格:原作準拠

 

一人称:私

 

二人称:お前、君

 

得意科目と苦手科目:得意科目は文系科目(特に現代国語と古典)。苦手科目は物理と化学。

 

召喚獣の見た目と武器:怜をデフォルメした姿に、原作の戦闘衣装。武器は刀身に文字が刻まれた日本刀。

 

腕輪の能力:

斬撃(消費点数は攻撃方法によって変動)

◇一閃の太刀(消費点数60点) 一気に踏み込んで、すれ違うと同時に斬り捨てる。

◇乱舞の太刀(消費点数90点) 連続斬りを浴びせる。攻撃範囲が広く、多くの敵を巻き込みやすい。

◇征鬼一刀(消費点数100点) 神戯一刀流の技の1つ。当てられると大抵は戦死、良くても瀕死になる。

 

 

解説:

学園生であると同時に、学園にほど近い神凪神社の見習い巫女でもある少女。

学業の傍ら、休みの日には神社の手伝いをしている。

 

明久と智花と夏海とももは、小学生の頃に出会ってからの親友。明久経由で晴陽と環と飛彩とも仲が良い。

 

風紀委員会に所属している為少々堅い印象はあるが、その分頼もしさは学年屈指。

神凪家から代々伝わる剣術……神戯一刀流を体得していて、武器格闘術は明久たち以上の実力を持つ。その為、護身用に特注の模造刀を携行している。

 

 

 

名前:岸田 夏海(きしだ なつみ)

 

イメージCV:南條 愛乃

 

性別:女

 

所属クラス:Fクラス

 

容姿:原作準拠

 

身長:147cm

 

性格:原作準拠

 

一人称:あたし

 

二人称:あんた

 

得意科目と苦手科目:得意科目は現代社会と情報。苦手科目は数学と古典。

 

召喚獣の見た目と武器:夏海をデフォルメした姿に、原作の戦闘衣装。武器はカメラと飛蹴甲(ひしゅうこう)

 

腕輪の能力:

武機覇拳流(脚) 読んで字の如く、武機覇拳流の脚技を使う。技によって消費点数が変わる。

◇羅刹刃(消費点数40点) 爪先にエネルギーを集中させて、無数の連撃を放つ。

◇魔槍連脚(消費点数60点) 上中下3発のエネルギーの刃を放ち、敵を切り裂く遠距離攻撃。

◇閃剣斬(消費点数80点) 高く飛び上がって、強烈な踵落としを叩き込む。現時点で最大の技。

 

※技の元ネタは、ス◯◯ーロ◯◯ト大戦◯4のヴァ◯◯ーズ。

 

 

解説:

康太と共に報道部に所属している少女。

あらゆる三面記事をかき集めるべく走り回っているゴシップ記事担当(ちなみに康太は写真担当)。

 

明久と智花と怜とももは、小学生の頃に出会ってからの親友。晴陽と環との仲も良いが、なぜか飛彩だけはちょっと苦手(風子と親しいから。ただし、嫌いな訳ではない)。

 

その性質上、彼女自身がトラブルの原因となることも多く、康太共々風紀委員のお世話になるのはある意味お約束。

まだまだ未熟だが、いつかは父のようなジャーナリストになるのを夢見て、日々学園を駆け抜けている。

 

 

 

名前:桃世 (ももせ) もも

 

イメージCV:阿澄 佳奈

 

性別:女

 

所属クラス:Aクラス

 

容姿:原作準拠

 

身長:154cm

 

性格:原作準拠

 

一人称:あたし

 

二人称:あなた

 

得意科目と苦手科目:数学と家庭科が得意。苦手科目は物理と世界史。

 

召喚獣の見た目と武器:ももをデフォルメした姿に、原作の戦闘衣装。武器は変形機能が付いた2丁のライフル。

 

腕輪の能力:

ラピッド・ファイア(消費点数50点) 連射して弾幕を張る。下位クラスならこれでも圧倒できる。

C(チャージ)ショット(消費点数80点) 威力を高めたエネルギー弾を発射。連射はできない代わりに、隙は小さめ(当てたとき限定)。

 

 

解説:

本作のもう1人のメインヒロインで、購買部に所属している元気っ娘。

明久と智花と怜と夏海は小学生の頃に出会ってからの親友で、明久を通じて晴陽と環と飛彩とも仲良くなる。

 

晴陽については元々好意を寄せていたが、高校1年の頃に起きたとある出来事を経て、完全に好きになる(まだ付き合ってはいない)。

その為、購買部に来る男子たちの告白は全て断っているらしい。

明久と飛彩は2人がいつ結ばれるのか、密かに待っている。

 

 

 

名前:水無月 風子(みなづき ふうこ)

 

イメージCV:赤崎 千夏

 

性別:女

 

所属クラス:Aクラス

 

容姿:原作準拠

 

身長:150cm

 

性格:原作準拠

 

一人称:ウチ

 

二人称:アンタさん

 

得意科目と苦手科目:基本的に全ての科目が得意。苦手科目はなし。

 

召喚獣の見た目と武器:風子をデフォルメした姿に、原作の戦闘衣装。武器は変形機能付きのデスサイズ。

 

腕輪の能力:

断罪(消費点数140点) デスサイズによる斬撃で瀕死にさせる(急所に当てれば即死)。

槍形態(スピア・フォーム)(消費点数30点) デスサイズをスピアに変形させる。その逆も可能。

 

 

解説:

風紀委員会所属の少女。

幼い外見、ヤル気のなさそうな言動とは裏腹に、違反を見つけたら瞬く間に拘束、処罰を与える『鬼の風紀委員長』。

学園の治安を乱すFFF団(と一部の五剣メンバー)に頭を痛めており、取り締まり対象としている(彼ら以外にも悩みの種はある模様)。

 

その一方で、自分の行動に責任が持てるなら、ある程度のことは容認するという柔軟さも併せ持つ。

 

怜と紗妃とイヴは同じ風紀委員会所属で、親しい友人同士。また、環からは『ふーちゃん』と呼ばれており、彼女との仲も良好。

明久と晴陽と飛彩は、ちょっとした勘違いから親しくなっていき、特に飛彩は下の名前で呼ぶ数少ない人物。

しかし、風紀委員長という立場である為か、普段は苗字で呼んでいる。

 

 

 

名前:氷川 紗妃(ひかわ さき)

 

イメージCV:名塚 佳織

 

性別:女

 

所属クラス:Aクラス

 

容姿:原作準拠

 

身長:159cm

 

性格:原作準拠だが、本家よりは柔軟な思考になった。

 

一人称:私

 

二人称:あなた

 

得意科目と苦手科目:文系科目(特に現代社会)が得意。苦手科目は保健体育。

 

召喚獣の見た目と武器:紗妃をデフォルメした姿に、原作の戦闘衣装。武器は巻物とペン。

 

腕輪の能力:

具現化(消費点数不明) 巻物に文字を書き込んで、それに対応した攻撃を行う。何を具現化するかによって、点数が変動する。武器の名前を書き込めば、戦死しない限り効果は永続する。

 

 

解説:

風紀委員会に所属している少女。

副委員長でもある彼女は、怜と風子以上に厳しく取り締まる為、生徒たちから恐れられている。

反面、スコーンが好物で恋愛に興味津々な可愛らしい一面もあることから、ファンは多かったりする。

 

怜と風子とイヴは同じ風紀委員会所属で、親しい友人同士。

Aクラスにいる生徒は皆、軒並み関係は良い方。

当然だが、FFF団は要取り締まり対象。

 

 

 

名前:冬樹 (ふゆき) イヴ

 

イメージCV:大久保 瑠美

 

性別:女

 

所属クラス:Aクラス

 

容姿:原作準拠

 

身長:155cm

 

性格:概ね原作準拠。人間関係は少し前向きになった。

 

一人称:私

 

二人称:あなた

 

得意科目と苦手科目:得意科目は現代国語と数学と現代社会と英語。苦手科目はなし。

 

召喚獣の見た目と武器:イヴをデフォルメした姿に、原作の戦闘衣装。武器はレイピア。

 

腕輪の能力:

(アイス)(消費点数40点〜) 氷属性による攻撃を行う。攻撃方法は武器に属性付与したり、技を繰り出すなど多彩。こちらも強力な攻撃ほど点数消費も多め。

 

 

解説:

風紀委員会に所属している少女。

真面目な優等生であるが、冷徹な面が目立つからか、外見とは裏腹に近寄りがたい印象を持たれている。

 

怜と風子と紗妃は同じ風紀委員会所属で、親しい友人同士。

それ故に、風子からはもっと周囲に心を開いて欲しいと思われている。

 

ノエルは双子の妹で、才能はあるのに真面目に頑張ろうとしない彼女に頭を痛めることもあるが、姉妹仲は良い。

 

 

 

名前:冬樹 (ふゆき) ノエル

 

イメージCV:原 紗友里

 

性別:女

 

所属クラス:Fクラス

 

容姿:原作準拠

 

身長:155cm

 

性格:原作準拠

 

一人称:あたし

 

二人称:あなた

 

得意科目と苦手科目:得意科目は保健体育と生物と英語。苦手科目は現代国語と数学と現代社会。

 

召喚獣の見た目と武器:ノエルをデフォルメした姿に、原作の戦闘衣装。武器は巨大な四方手裏剣(斬撃にも使用可能)。

 

腕輪の能力:

(ファイア)(消費点数50点〜)炎属性による攻撃を行う。性能は智花のものと概ね同様。

 

 

解説:

『みんなのサポーター』を自称する少女。

人手が足りない部活に呼ばれては、役目を果たして去って行く。

 

その為多くの部活からスカウトされるが、「依怙贔屓したくない」という理由で全て断っている。

 

智花と怜と夏海とももと環は中学生の頃に出会ってからの友人同士。

明久と晴陽と飛彩との仲も良く、明確に「好き」と発言しているが、恋愛感情はない。これについては明久たち曰く、「兄に甘える妹みたいなもの」とのこと(明久と飛彩に妹はいない)。

 

イヴは双子の姉で怒られることもあるが、基本的に優しい彼女のことが大好き。

優等生の姉を尊敬していて、いつかは肩を並べられるようになるのが目標。

 

 

 

名前:朝比奈 龍季(あさひな たつき)

 

イメージCV:豊口 めぐみ

 

性別:女

 

所属クラス:Fクラス

 

容姿:原作準拠

 

身長:164cm

 

性格:原作準拠

 

一人称:俺

 

二人称:オメー、テメェ

 

得意科目と苦手科目:得意科目は現代国語と日本史と世界史。苦手科目は物理と地理と英語。

 

召喚獣の見た目と武器:龍季をデフォルメした姿に原作の戦闘衣装。武器はロッド。

 

腕輪の能力:

雷神(消費点数60点〜) 雷属性による攻撃を行う。原理は愛子のものに似ている。

 

 

解説:

学園では珍しい不良女子で、中学生時代は『おてんば姫』と呼ばれていた少女。

 

雄二と翔子は小学生の頃からの幼馴染で親友。

一時期雄二に想いを寄せていた時期もあったが、雄二の気持ちが翔子に向けられていることを悟って、身を引いている。

 

雄二が自分と翔子を守る為に暴力事件を起こした際、「私が弱いから2人に迷惑が掛かった」と考えてしまい、自分なりに体を鍛えてケンカに明け暮れる日々を送ることに。

また、この頃に一人称が「俺」になった。

 

その為学園では積極的に彼女と関わろうとする生徒は少ないが、雄二と翔子は今までと変わらずに接している。

 

明久と晴陽と飛彩は文月学園に入学してから親しくなり、少しずつ彼女の交友関係は広がりを見せている。

 

尚、Fクラス内では事実上のNo.2である模様。

 

 

 

名前:瑠璃川 春乃(るりかわ はるの)

 

イメージCV:三澤 紗千香

 

性別:女

 

所属クラス:Aクラス

 

容姿:原作準拠

 

身長:164cm

 

性格:原作準拠だが、周囲とある程度は友好的。

 

一人称:あたし

 

二人称:アンタ、貴様

 

得意科目と苦手科目:得意科目は物理と化学と日本史と家庭科。苦手科目は特になし。

 

召喚獣の見た目と武器:春乃をデフォルメした姿に原作の戦闘衣装。武器はスピア。

 

腕輪の能力:

水竜(消費点数60点〜) 水属性による攻撃を行う。消費点数は攻撃方法によって変動する。

 

 

解説:

Aクラスのトップ20位以内の実力者の1人で、それ相応の学力とクールな佇まいから人気は高い。

 

しかしその実態は、そんな表面をぶち壊すほどのシスコン。

何よりも妹が大事で、妹に近づく悪い虫は排除すると発言して憚らない。

 

誤解のないように言っておくと、あくまで妹が絡んだ場合の話であり、普段は評判通りの生徒である。

 

このシスコンという面を知っているのは明久と晴陽と環と智花と龍季とイヴとノエルで、特に晴陽はシスコン仲間の同士とのこと。

 

ちなみに妹は長月中学に通っている。

 

 

 

名前:松島(まつしま) みちる

 

イメージCV:貞森 光季

 

性別:女

 

所属クラス:Dクラス

 

容姿:原作準拠

 

身長:154cm

 

性格:原作準拠

 

一人称:あたし

 

二人称:君、あなた

 

得意科目と苦手科目:保健体育が得意。苦手科目は数学と化学と英語。

召喚獣の見た目と武器:みちるをデフォルメした姿に、原作の戦闘衣装。武器はジャベリン。

 

腕輪の能力:

ファイア・バースト(消費点数100点〜) ファイアの派生系で炎の炸裂弾を放ち、放った場所は焦土と化す。威力と攻撃範囲が非常に優秀だが、消費点数が最低でも100点と高めで、気軽に連発できない一芸特化の大技。

その為、集団戦で使うことを推奨される。

 

 

解説:

陸上部に所属している少女で、智花とは中学生の頃に同じ部活に所属してからの友人同士。

智花を通じて明久と晴陽と夏海と環とももとも仲良くなった。

 

気分屋な一面があり、浮き沈みが激しいのが欠点だが、良い方向に作用すればちゃんと結果を出す「やればできる子」である。

 

 

 

名前:武田 虎千代(たけだ とらちよ)

 

イメージCV:ゆきの さつき

 

性別:女

 

所属クラス:3年裏Aクラス代表

 

容姿:原作準拠

 

身長:176cm

 

性格:基本的に原作準拠だが、本家よりも少女らしい一面を見せる。

 

一人称:アタシ

 

二人称:お前

 

得意科目と苦手科目:全てが得意科目。苦手科目は特になし。

召喚獣の見た目と武器:虎千代をデフォルメした姿に、原作の戦闘衣装。武器は大型の槍。

 

腕輪の能力:

プラズマ(消費点数60点〜) 電撃を纏わせる。主に武器による攻撃、素手による攻撃の威力の上乗せに使う。

消費点数の高い全体攻撃もあるとか。

 

 

解説:

3年生の首席にして、生徒会長も務める少女。

在学生の中で総合成績トップ、戦闘能力も最上位クラスで彼女と同じ土俵に立てるのは限られた生徒のみとされる程の女傑。

 

京、庵、つかさ、チトセ、鳴子、あやせは小学生の頃からの幼馴染で仲が良い。

また、京に関しては好意を寄せていることに気付いており、彼から告白されるのを待っている状態。

 

良くも悪くも、個性的なメンバーが揃う裏Aクラスを纏め上げる統率力とカリスマ性を持ち、自らも前線に立つバトルマニアの一面もある。

 

『四英傑』の1人であり、『十三騎士』の頂点たる『キング・アーサー』の称号を有している。

 

 

 

名前:生天目(なばため) つかさ

 

イメージCV:浅川 悠

 

性別:女

 

所属クラス:3年裏Aクラス

 

容姿:原作準拠

 

身長:178cm

 

性格:一応原作準拠だが、協調性と面倒見の良さも見せる(あくまで原作と比較して)。

 

一人称:私

 

二人称:貴様

 

得意科目と苦手科目:保健体育が得意で、本人曰く実技(物理)らしい。苦手科目は特になし。

召喚獣の見た目と武器:つかさをデフォルメした姿に、原作の戦闘衣装。武器は方天画戟。(真・三◯◯双シリーズの◯布の武器をイメージ)

 

腕輪の能力:

鯨沈(消費点数50点〜) 消費点数に応じて攻撃力、スピードを上昇させる。強化レベルは最大でレベル8まであり、レベルが高い程効果も高い。また、レベル3以降からは繰り出す攻撃に衝撃波が付与される。

シンプルながら強力だが、その分本人に掛かる負担が大きい。

この為か、実戦ではレベル5までに留めている。

 

 

解説:

『四英傑』の1人であり、『十三騎士・トリスタン』の称号を有する女子生徒。

学園屈指の戦闘能力の持ち主であり、戦うことこそ生きがいと語る生粋の戦闘狂。

 

虎千代、京、庵、チトセ、鳴子、あやせは小学生の頃からの幼馴染で仲が良く、特に虎千代、京、庵は全力でタイマンを張れる数少ない存在で、ライバル同士でもある。

常に強者を求めており、気に入った人物は鍛えようとする(自分と戦って欲しいから。中でも晴陽と明久はお気に入りの代表格)。

 

そのような事情からか、『彼女にしたくないランキング』で2位を大きく突き放して1位にランクインしてしまっている。

一応フォローしておくと、つかさに女性としての魅力がないわけではなく、男としてのプライドが砕かれるというのが理由らしい。

 

 

 

 

名前:朱鷺坂(ときさか) チトセ

 

イメージCV:水樹 奈々

 

性別:女

 

所属クラス:3年裏Aクラス

 

容姿:原作準拠

 

身長:172cm

 

性格:原作準拠

 

一人称:私

 

二人称:君

 

得意科目と苦手科目:文系全般が得意。苦手科目は特になし。

召喚獣の見た目と武器:チトセをデフォルメした姿に、原作の戦闘衣装。武器はハルバード。

 

腕輪の能力:

エレメント(消費点数50点〜) 詳細が明かされていないが、様々な属性を操る能力とされている。ちなみに、チトセが得意とするのは風属性。

 

 

解説:

漢字表記は『千歳』。

『十三騎士・ペリノア』の称号を有する裏Aクラス上位10位以内の実力者。

 

虎千代、つかさ、京、庵、鳴子、あやせは小学生の頃からの幼馴染で仲が良い。

庵とは付き合っていると専らの噂だが、本人たちは肯定も否定もしていない。

文月学園の学生寮で1人暮らしをしており、前述の噂も庵と一緒にいる姿をよく見るのが理由だとか。

 

四英傑が別格な為忘れてしまいそうだが、そもそも裏Aクラス自体が他のクラスとは一線を画す実力者揃いなので、チトセも虎千代たちに匹敵する戦闘能力を誇る(流石に肉弾戦は譲るが)。

 

長月中学に通っている従姉妹がいるらしい。

 

 

 

名前:遊佐 鳴子(ゆさ なるこ)

 

イメージCV:瀬戸 麻沙美

 

性別:女

 

所属クラス:3年裏Aクラス

 

容姿:原作準拠

 

身長:168cm

 

性格:原作準拠

 

一人称:僕

 

二人称:君

 

得意科目と苦手科目:情報と技術が得意(共に学年最上位クラス)。苦手科目は特になし。

召喚獣の見た目と武器:鳴子をデフォルメした姿に、原作の戦闘衣装。武器はサーベル。

 

腕輪の能力:

(サンダー)(消費点数60点〜) 武器に付与したり、攻撃や防御にも使用する等汎用性が高い。属性付与型の中では扱いが難しい部類で、炎や氷等と比べると使用者は少ない。

 

 

解説:

報道部部長にして、夏海と康太の師匠。

『十三騎士・ダゴネット』の称号を有する裏Aクラス上位20位以内の実力者。

 

京、庵、虎千代、つかさ、チトセ、あやせは小学生の頃からの幼馴染で仲が良い(たまに京を昔のことでからかったりしているが)。

 

報道部の部長らしく、「壁に耳あり障子に目あり」をモットーにありとあらゆる情報をかき集めており、秘密のノートには学園生はおろか政治家のスキャンダル等膨大な量の記録が記されているらしい。

 

情報戦において彼女の右に出る者はいないと言われる程であり、味方なら心強いが敵なら途轍もなくやっかいな存在として、みんなから頼られている。

 

 

 

名前:海老名(えびな) あやせ

 

イメージCV:原田 ひとみ

 

性別:女

 

所属クラス:3年裏Aクラス

 

容姿:原作準拠

 

身長:168cm

 

性格:原作準拠

 

一人称:わたし

 

二人称:あなた

 

得意科目と苦手科目:

家庭科と美術が得意。苦手科目は特になし。

召喚獣の見た目と武器:あやせをデフォルメした姿に、原作の戦闘衣装。武器は錫杖(仮◯ラ◯◯ーレ◯◯ルが使用するものに似ている)。

 

腕輪の能力:

ゴーレム(消費点数60点〜) 巨人兵を召喚、使役する。最大で8体召喚可能で、消費点数を増やせばその分ゴーレムが強くなる。もちろん、耐久力も設定されているので倒されると一気に不利な状況に陥ることも。戦況と点数と相談して使うことを推奨される。

 

 

解説:

歓談部の部長であり、『十三騎士・ケイ』の称号を有する裏Aクラス上位20位以内の実力者。

 

京、庵、虎千代、つかさ、チトセ、鳴子は小学生の頃からの幼馴染で仲が良い。

裏Aクラス屈指の武闘派である4人を物怖じせずに止められる人物の1人。

 

歓談部の部室を訪れると、お茶とお菓子と笑顔で出迎えてくれるお姉さん。

どんな話題でも丁寧に対応してくれるので、癒しを求めて彼女の元に訪れる生徒は多い(FFF団からは女神と崇められているとか)。

 

基本的に誰にでも優しい彼女だが、非常識な輩には本気で怒ることもある。




以上、グリモア勢でした。

他のキャラについては、現在思案中です。
今しばらくお待ちください。

オリキャラ募集は随時行っておりますので、活動報告をご覧の上、応募してくださいませ。

それではまた。


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〜用語集〜

タイトルの通り、本作のキーワード集です。

ストーリーが進むと追記する場合もあります。


◇文月学園高等学校

 

◆私立校にして、世界初の『試験召喚システム』を導入した試験校でもある学校。代表的なスポンサーは『唯島コーポレーション』、『霧島財閥』等。

これらの企業による資金提供によって数々の恩恵にあやかっている(例として学費が通常の私立校よりも安い、クラスのランクが高い程設備が充実しているのはこの為)。

その裏側で、後述する召喚獣関連の技術に目を付けた団体に技術盗用を図られたりすることがしばしばあり、内部事情が穏やかとは言えない状況にある。

 

 

◇制服

 

◆文月学園の制服は私立校に於けるオーソドックスなものに、ネクタイのラインとスラックスとスカートを学年毎で識別するように色分けがされる(今年度は3年生が緑、2年生は青、1年生は赤)。

更に、生徒会会長と副会長を務める生徒は特別仕様の白い制服を着用することが伝統となっている。

 

 

◇召喚獣

 

◆全長80㎝程の召喚者の分身。後述のテストを受けた人間が、召喚フィールド内で『試獣召喚(サモン)』というワードを発することで出現する。テストの点数がそのまま召喚獣のHPとなり、攻撃力・防御力も点数を基準とする。

たとえ1桁の点数でもゴリラ並みのパワーを持つが、一部の例外を除いて基本的には、他の召喚獣や仮想体しか触れることができない。

これは、物理干渉による被害(生徒の傷害、器物損壊)を出さないようにする為である。

 

 

◇タイプ

 

◆召喚獣には大きく分けて攻撃型と防御型が存在する(episode.1時点)。主な特徴として、攻撃型は与ダメージとスピードと言った攻撃能力に優れる反面、防御力が低い傾向にあり、防御型は被ダメージの軽減と状態異常耐性が高い代わりに攻撃力が低いと言った点がある。

尚、全ての召喚獣がこれに倣っている訳ではなく、あくまでも目安と捉えるのが適切な模様。

 

 

◇試験召喚戦争

 

◆前述の召喚獣を用いて行われるクラス単位の戦争。文月学園は成績ごとにクラスが分かれており、この戦争は主にクラスの設備を賭けて行われるのが特徴。基本的なルールは、相手の代表を『戦死』させることが勝利条件。

下位クラスが勝利した場合、敗北した上位クラスの設備を交換する権利が与えられ、逆に敗北した場合は設備のランクが下がることになる。

その為、上位クラスが試召戦争をするメリットはほぼ皆無に等しく、宣戦布告した下位クラスの使者はしばしば、リンチを受けることになる(前述した抱えている問題のひとつ)。

基本的にクラス全員で行う対抗戦だが、両クラスの合意の上でかつ、テストの点数を用いていれば、別の方法での勝負も可能となる。

 

 

◇戦闘システム

 

◆召喚獣のHPはテストの点数となるのは前述の通りで、腕輪の使用や防御をするごとに減っていく。

点数が0になった召喚獣は「戦死」し、戦死した召喚獣の召喚者は試召戦争終結までの間、補習室送りとなる。

テストの点数は自動回復しないが、別室で「補給試験」を受けることにより、点数を回復する(例外あり)。

これにより点数が高い方が有利だが、召喚者の操作技術、戦術等により多少の点数差でも互角以上に立ち回ることが可能。

 

 

◇テスト

 

◆文月学園のテストは通常のテストと異なり点数上限が存在せず、時間内であれば無制限に問題を解くことができる。基本的には「1科目につき400点以上」が成績優秀者の目安となる。

科目は現代国語、古典、数学、物理、化学、生物、日本史、世界史、地理、現代社会、英語、情報、保健体育の13科目に、その合計である総合科目の計14科目。

また、総合科目の合計に当てはまらない科目として技術、芸術、音楽、家庭科も含めた総計18科目を使用する。

(稀に英語以外の外国語を使用する場合もある)

 

 

◇腕輪

 

◆上記のテストの点数が単科目400点以上(総合科目は4000点以上)の生徒の召喚獣には「腕輪」が与えられ、点数を消費する代わりに腕輪に対応した特殊能力が使用可能になる。

大抵の場合は1つの腕輪に1つの能力だが、複数の能力を保持している場合もある。ただし、それらは選択肢に幅が広がるが点数消費も激しくなる為、使い分けがより重要となる。

 

 

◇四英傑

 

◆『グレート・フォー』と読む。

文月学園の各学年で成績上位者4名に送られる称号。3年生は後述の『十三騎士』とは別に付与される。

今年度の2年生に関しては、『唯島飛彩』・『霧島翔子』・『水無月風子』の3名は確定しているが、残りの1名を『玲泉昇瑠』とするか、『綺羅星日和』とするかは意見が割れている模様。

 

 

◇十三騎士

 

◆『ザ・ナイツ・オブ・サーティーン』と読む。

こちらは3年裏Aクラス全員に送られる称号。名前の由来にあるように、対象者の成績に応じて『円卓の騎士』の名を拝命する。

勘違いされやすいが「『円卓の騎士』に名を連ねたことのある者の名」であり、13名しか選ばれないということではない。

 

 

◇観察処分者

 

◆学園生活を送る上で問題のある生徒に課せられる処分で、文月学園における馬鹿の代名詞。

主な役目は教師の雑用係であり、雑用をこなす為に観察処分者の召喚獣は特例として物に触れることが可能。その代わり、召喚獣の受けた痛みや疲労は召喚者にフィードバックされる仕様となっている。

作中では明久と晴陽が任命されているが、彼らの場合は後述する事情によるものであり、問題がある為任命されたというのは表向きなものに過ぎない。

 

 

◇あのこと

 

◆明久と晴陽が観察処分者に任命されるきっかけとなった事件のこと。

2人以外では飛彩とももを筆頭とした友人たちが当事者であり、最終的には前述通りの処分となったが、彼らの証言がなければ晴陽は退学の可能性すらあったという。

詳細は今のところ、当事者たちと教師陣しか知らないが、明久と晴陽と飛彩にとって、それぞれ苦い思いをした出来事と言える。

 

 

◇四大財閥

 

◆この世界の日本に於いて、一大勢力を築く大企業の通称。

『唯島コーポレーション』、『霧島財閥』、『宵宮グループ』、『星平財閥』がそれぞれ該当。

共通する特徴として、どの企業も『試験召喚システム』を採用した私立校のスポンサーとして名を連ねており、互いに商売敵でもある。

ここ数年の間に『神宮寺・グローバル・ジャベリン』(以後JGJ)や『風花重工』等の新興勢力も台頭し、更なる鎬の削り合いが予想されているとか。

 

 

◇A未満同盟

 

◆文月学園には生徒会や風紀委員会といった正式な組織とは別に、非公認で結成された団体がいくつか確認されている。

A未満同盟もその内の1つで、所属メンバーは全員女生徒且つ“貧乳であること”が特徴的(裏では『ちっぱい同盟』という身も蓋もない通称で呼ばれているらしい)。

更に、A未満のAとは『我妻浅梨』のことであり、バストサイズで男に負けていることも所属の条件となっている。

合言葉は『巨乳と美乳は敵』。

 

 

 




以上となります。

今書いてあるのは大まかに決めていることなので、これ以外で設定を提案する方がいらっしゃいましたら、オリキャラ募集の際に書いて頂いても構いません。

オリキャラ募集については、活動報告を覗いてみてくださいね。
それではまた。


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Episode.1 試験召喚戦争
第1話 新学期!


「前回のあらすじッ!」

Aクラスを目指して振り分け試験を受けていた僕は、体調を崩していた智花と共に途中退室してFクラス行きが確定した。
後悔はしてない。智花も一緒に行かなきゃ意味がないからだ。あの後晴陽も途中退室したことが分かって、最善かどうかはわからないけど、結果には良かったのかも……。そう思うことにしたのだった。


晴陽side

 

 

春。それは出会いと別れと始まりの季節だけど、みんなは好きかな? 僕は好きだ。新しいクラス、新しいクラスメイトと学園生活を送ることを考えるとワクワクするからね。

そんな訳で、これからのことを想い期待に胸を膨らませ、僕ともも、妹の環は文月学園へ続く上り坂を歩いていた。

 

 

「んー……、今日も良い天気だねぇ。それにしても環ー、どうせ起こしてくれるならもっと優しく起こして欲しかったな……」

 

「たまきは何度も起こそうとしたよ? 1回で起きてくれないお兄ちゃんが悪いんだよ」

 

「う……、返す言葉もございません……」

 

「まあまあ、たまちゃん。時間は充分あるし、遅刻する訳じゃないから許してあげようよ。ね?」

 

「ももちゃん……。じゃあお兄ちゃん、たまきを撫でて」

 

そう言って環は頭を差し出して来た。

 

「環? ここでやるの?」

 

「いいから撫でて、お兄ちゃん!」

 

「……はい」

 

僕は環の頭を優しく撫でた。今みたいに機嫌が悪いときと、落ち込んでるときとかはこんな風にしている。幸いにも、僕たち以外に人がいなかったのは助かった。

 

「えへへ、これで今日からまた頑張れるよ。お兄ちゃん、ありがとー!」

 

“ギュッ”

 

「おっと!」

 

「良かったね、たまちゃん♪」

 

上機嫌で僕に抱きつく環を見て、笑顔になるもも。環が満足して離れると再び通学路を歩いて行き、しばらくすると見慣れた顔触れが見えて来た。

 

 

「あれは……。おーいアキー、智花ー、怜ー、夏海ー!」

 

「ん? ハル、環、もも。ここだよー!」

 

アキも僕たちに気付いて手招きする。

 

「みんな、おはよっ」

 

「「「「おはよう(おはよっ)」」」」

 

ここにいるみんなは小学生の頃からの幼馴染同士で、大切な人たちだ。こんな風に登校するのは最早、いつものことと言っていい。

 

 

「途中退室って聞いたけど大丈夫だった、智ちゃん?」

 

「大丈夫だよ、たまちゃん。心配してくれてありがとね」

 

「だがこんなことになったのは私の責任だ。一緒に勉強しているときに気付いていれば……。すまない、智花」

 

「いいよ、怜ちゃん。もう過ぎたことだから。Fクラスになっても夏海ちゃんと晴陽くんはいるし、それに……、アキくんがいてくれるから不安はないの」

 

「智花……」

 

 

悔やむようにこう言う怜。智花がこう返すと、アキは嬉しそうな表情を見せた。

 

「ほほう……。朝からお熱いですな、お2人さん♪」

 

「ちょ……! そんなんじゃないよ、夏海ちゃん!」

 

2人の様子を夏海がからかい、その後も僕たちは歩いて行く。

目的地である文月学園に到着すると、校門に大柄な男が待っていた。

 

「「「おはようございます、鉄……西鉄先生」」」

 

「「「「おはようございます、西村先生」」」」

 

「おはよう吉井、真境名兄妹、南、神凪、岸田、桃世。ところで吉井、真境名兄、岸田」

 

「「「はい、先生」」」

 

「西村先生と呼べ。補習の時間を増やされたくないならな」

 

「やだなぁ西村先生、冗談ですよ♪」

 

「それならいいが……」

 

 

この男性教諭は西村宗一(にしむらそういち)先生。1年次における僕とアキと夏海の担任にして、生活指導及び補習担当の教師だ。浅黒い肌に鍛え抜かれた鋼のような体を持ち、趣味はトライアスロンということもあって付けられた渾名は“鉄人”である。

 

 

「まあいい。お前たちにこれを渡そう、受け取れ」

 

『『『『『ありがとうございます』』』』』

 

そう言って西村先生は封筒を取り出し、僕たちに一通ずつ渡した。

 

「これに入っているのは、クラス分けの用紙ですよね?」

 

渡された封筒を手に、僕は西村先生に聞いた。

 

「そうだ」

 

「でも、なんでこんなやり方をするんですか?」

 

「普通なら掲示板に張り出すが、文月学園(ここ)は世界的にも注目されている試験校の1つだからな。ある種の決まりみたいなものと思ってくれ。……これで良いか、真境名妹」

 

「はい。納得できました」

 

環の疑問に西村先生がこう答えると、環も含めてみんなが学園の事情を垣間見るた気分になった。僕たちは封筒を開け、それぞれ中の入っていた紙を開く。

 

「やったぁ、Aクラスだ!」

 

「あたしもだよ、たまちゃん!」

 

「うむ。私もだ」

 

「本当に!」

 

「そうだよお兄ちゃん。見て♪」

 

 

僕たちが確認すると3人の紙には、

 

 

“真境名 環 Aクラス”

 

“桃世 もも Aクラス”

 

“神凪 怜 Aクラス”

 

 

と書かれていた。

 

 

「頑張ったね、3人とも」

 

「「「うん(ああ)」」」

 

「良かったな真境名妹、桃世、神凪。これは日々の積み重ねの結果だ。今後も精進するように」

 

「「「ありがとうございます、西村先生」」」

 

 

その間に僕たち4人も紙をチェックすると、

 

 

“真境名 晴陽 Fクラス”

 

“吉井 明久 Fクラス”

 

“南 智花 Fクラス”

 

“岸田 夏海 Fクラス”

 

 

予想通り、Fクラスと書かれていた。

 

「それから吉井、南。すまなかったな」

 

「「どうしてですか?」」

 

「あのようなアクシデントがあったんだ。本来なら再試験をさせてあげたいが、依怙贔屓すると示しがつかないということで却下されてしまった。本当にすまない……」

 

「顔を上げてください。あれは、僕がやりたいと思ったからやったことなんです。西村先生が責任を感じる必要はないんですよ」

 

「アキくん……」

 

「そう言ってくれると助かる。……吉井、お前のしたことは人として正しい。中には批判するヤツもいるだろうが、その優しさを大事にしてくれ」

 

アキの返答に対して、西村先生はこう告げる。“あのとき”も今のように親身になってくれたこともあって、西村先生は僕たちの恩師だ。彼のおかげで僕は文月学園(ここ)にいられる。

 

「だが真境名兄、岸田。お前たちまで退室したのは、感心せんな?」

 

「申し訳ありません。ですが何も知らない、知ろうともしない人にアキを貶されるのは見過ごせなかったんです。自己満足と言われたらそれまででしょうけど」

 

「あたしは智花だけがFクラスなのは忍びないと思ったのと、もうひとつは……。勘、ですね」

 

「ふむ……、そうか」

 

僕と夏海の返事に頷く西村先生。側から見れば、確かに僕たちの行動は自己満足だ。でも自分で選んだことだから、後悔はしてない。

 

 

「それと吉井、真境名兄。唯島からお前たちへ伝言を預かっている」

 

「飛彩が?」

 

「一体なんですか?」

 

「『アキたちのことをよろしくお願いします』……とな。立場上依怙贔屓はできないが、可能な範囲でサポートすることを頼まれた」

 

「そうでしたか……(ありがとう、飛彩)」

 

「あと少しでHRも始まるだろう、早く行くと良い」

 

『『『『はい!!』』』』

 

西村先生に挨拶をして、僕たちは校舎へ向かって行った。

 

 

「す、すごい……」

 

「アキくん……。これって教室なんだよね?」

 

「それにしては、立派過ぎると思うが……」

 

 

3階に上がった僕たちは窓からAクラスの教室を眺めると、目の前の光景に圧倒されていた。

教室の面積は通常の6倍で中の設備も豪華と言って良く、どれだけお金を掛けているんだろうと全員が思った。

 

「私たちとはここまでだな」

 

「そうだね。……みんな、飛彩の力になってあげてね」

 

「おっけー! ひーくんのことは、たまきたちに任せて、お兄ちゃん♪」

 

「できる限り、手を尽くそう」

 

「ありがとう。また放課後にね」

 

「うん! ハルくんと明久くんと智ちゃんと夏海ちゃんも頑張ってね♪」

 

「わかったよ」

 

「みんなもね」

 

「ありがとう、ももちゃん」

 

「任せなさい♪」

 

「あ、それから……」

 

何かを思い出したように、ももは鞄の中を探ると。

 

「はい、今日のお弁当♪」

 

「いつもありがとう、もも」

 

「どういたしまして、ハルくん♪」

 

お弁当を渡してくれた。これも去年からだが、今年はより特別に感じるのは、Fクラスに決まったからだろうか。

 

「お? 晴陽も隅に置けないねぇ〜」

 

「な……。そう言うの良いから、夏海!」

 

この様子を見てまたも夏海がからかって来る。僕たちの間では、よく見る光景のひとつだ。

 

「とにかく、もう行こう?」

 

「「「ああ(うん)(ええ)」」」

 

Aクラス組と別れた僕たちは、Fクラスへ向けて進んで行った。そこで目にしたものは……、

 

 

 

 

 

 

「これは……。……ハル」

 

「わかってるアキ、考えてることはみんな一緒だから」

 

「なら、口に出して言いましょうか」

 

(コクッ)

 

「せーのッ、」

 

「「「「ここって教室?」」」」

 

 

目にしたものは、Fクラスのプレートが掛けてある掘っ建て小屋。そう形容するしかないものだった。

 

 

 

「Aクラスを見た後だと、落差が酷すぎるよ……」

 

「同感ね……」

 

「信じたくないけど、この現実を受け入れよう……。みんな、覚悟はできたかな?」

 

「OKだよ、ハル」

 

「わたしも大丈夫」

 

「ええ、できてるわ!」

 

「じゃあ、行くよ……」

 

 

意を決して、僕たちはFクラスへ足を踏み入れる。

これから共に過ごす仲間たちの待つ場所へ。

 

 

See you next stage……




「第1話はこんな感じ。どうだった?」

「始まったばかりだけど、1作目と同じように楽しんでくれると嬉しいな☆」

「それじゃあ、また次回で会おうね!」

「「シーユー!!」」




晴陽「期待と不安が入り混じりつつ、教室へ足を踏み入れると手荒い歓迎が待ち受ける。
それを何とか退けた僕らの目の前にいたのは、中学時代から顔馴染みのアイツらだった!」


晴陽「次回ッ!『バカとテストと召喚獣withグリモア!』、『仲間たち』。 Let's go……fight!!」


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第2話 仲間たち

「前回のあらすじッ!」

西村先生からのエールを受け取った僕こと明久と智花、晴陽、夏海の4名は最低の設備と噂されるFクラスを前に意を決して突入する。扉の向こうで僕たちを待っていたのは……?




明久side

 

 

「じゃあ、行くよ……」

 

ハルがそう言って僕たちがFクラスの教室に入ろうとする、まさにそのときだった。

 

 

「ねぇ、ハル」

 

「アキ?」

 

「扉を開けるのは、ちょっと待って欲しい」

 

「どうしたのよ明久? ここまで来て怖気付いた?」

 

「いや……。上手く言えないんだけど、嫌な予感がするんだよ」

 

 

僕の言葉に夏海は疑問を抱いていたが、ハルは何となく察してくれた。どうやら彼も同じことを考えていたらしい。

 

「アキも気付くなんて、やるじゃない」

 

「まあね」

 

「アキくん、晴陽くん。一体どういうことなの?」

 

「そうよ。あんたたちだけで完結しないで、あたしたちにもわかるように教えなさい」

 

状況がよくわからない智花と夏海が、僕たちに問い詰めて来る。教えようと思ったが、ハルとアイコンタクトを取ると、この結論を出す。

 

「智花、夏海。口で説明するよりも、これから起こることを見た方が早いと思う。2人とも、後ろに下がって」

 

「何があっても、僕たちから離れないでね」

 

「「わかったよ(わ)」」

 

そう言うと智花は僕の後ろに、夏海はハルの後ろに隠れる。これで彼女たちの安全は確保できた。

 

「じゃあ、今度こそ開けるよ。いいね?」

 

「うん、わかった」

 

((コクッ))

 

 

もう何が起きても驚かない。覚悟も決まった僕たちは、扉を開けて教室へ入る。

 

 

「おはよーございまーす♪」

 

「総員、狙えぇッ!」

 

『『『『イェス・マイロード!!』』』』

 

 

ハルが挨拶して教室に入ると、黒いフードを被った連中……FFF団が刃を出した状態のカッターを投げつけて来た。

 

 

「アキッ!」

 

「わかってるよ、ハルッ!」

 

だいたいこうなることを想定していた僕たちは、飛んで来たカッターを鞄を盾にして全て受け止めた。

そして後ろを振り返って、2人にケガがないことを確認する。

 

((良かったぁ〜……))

 

『『『『チィ……ッ!』』』』

 

 

智花と夏海は突然の出来事に呆然としていたが、そんなリアクションができるのを見て僕たちは心の底から安堵する。

それを見たFFF団は、舌打ちをしていた。

 

「さて……。君たち、何のマネかな?」

 

「黙れ異端者! キサマらに発言権はない!」

 

「異端者には死の鉄槌を!」

 

「……何ソレ? 意味わかんないんだけど」

 

僕たちがさっきの行為について問い詰めると、FFF団(コイツら)は支離滅裂な返答をした。これに呆れながら僕も聞き返す。

 

「わからないか? では諸君に問う、男とはなんだ?」

 

『『『『愛を捨て哀に生きるもの!!』』』』

 

「よろしい、それでは諸君! これよりFFF団反逆者、吉井明久と真境名晴陽の処刑を執り行う!」

 

『『『『イェス・マイロード!!』』』』

 

「ちょっと待て。なんで“俺”たちが処刑されなきゃならないんだ?」

 

ハルの一人称が“俺”に変わった。FFF団(コイツら)に対して、キレている状態だ。

 

「知りたいなら教えてやろう。……女子とイチャついているからだ!」

 

「「……はい?」」

 

「学園でもトップレベルの美少女、真境名環、南智花、神凪怜、岸田夏海、桃世ももと仲良くしているのが羨ましいんじゃゴラァ!」

 

((何言ってんの、コイツら))

 

 

須川くんの発言には僕もハルも呆れるしかなかった。智花と怜と夏海とももと環は僕たちの幼馴染で大切な人だから、仲良くして当たり前だ。環はハルの妹でもあるしね。

それに反逆者って言ってるけど、僕たちは何も悪いことしてないから、処刑されてやる訳にはいかない。

 

「なぁ、お前ら。1つ聞いていいか」

 

「遺言なら聞いてやろう。なんだ?」

 

「お前ら、俺たちにカッター投げつけただろ? あれは俺たちがガードしたから良かったが、もし後ろの人に当たったらどうするつもりだったんだ?」

 

「そ、それは……」

 

ハルの問いに、須川くんが狼狽える。どうやら僕たちへの嫉妬心から、後先考えずにやったようだ。

 

「ケガでもされたら、責任取れるの? 取れないよね? だったら軽率な行動は慎むべきだけど……」

 

『『『『ひ、ヒィッ!!』』』』

 

一連の行為で僕も頭に来ていたので、こう問い詰めるとFFF団は震え上がった。

 

「先に仕掛けて来たのは、FFF団(お前ら)だぞ」

 

「なら、やられるのは本望だよね」

 

「「お祈りは済ませたか……?」」

 

『『『『『助けてくれェェェッ!!!』』』』』

 

 

 

 

〜数分後〜

 

 

 

 

僕たちによる一方的な虐殺の後、FFF団(ゴキブリども)が山積みになっていた(死んではいない)。

 

「うわぁ……。派手にやったわね」

 

「ねぇアキくん、晴陽くん。この人たち、生きてるよね?」

 

「大丈夫だよ。死なない程度には本気出したけど」

 

「それにFFF団(コイツら)は、武器まで使ってたからね。僕たちは素手だから正当防衛は成立するよ、多分」

 

気絶しているFFF団(ゴキブリども)を見て、僕たちはこう返す。ハルの一人称も元に戻ったようだ。

 

 

「久々に見たが、“双龍”は健在だな」

 

「まったくだぜ」

 

「その声……、雄二(ゆうじ)龍季(たつき)か!」

 

「2人とも、どうしてFクラス(ここ)にいるの?」

 

声のする方を見て、僕と智花は驚いた。なぜならそこには、僕たちの親友で悪友でもある、坂本雄二(さかもとゆうじ)朝比奈龍季(あさひなたつき)がいたからだ。

 

「ああ。F(この)クラスでやりたいことがあったから、ここに来た」

 

「俺は雄二の考えに乗ったのさ」

 

「ちなみに、Fクラスの代表は俺だ」

 

「そうなんだ。霧島さんは、よく許してくれたね?」

 

「ま、まあ……な」

 

ハルがこう聞くと、雄二が歯切れの悪い返事をする。

 

「説得は結構大変だったらしいぜ。な、雄二?」

 

「それを言うな、龍季……」

 

「へぇ〜……。それにしても意外ね、龍季。あんたはてっきり、Aクラスに行くもんだと思ってたわよ?」

 

今度は夏海が龍季に対してこう聞く。龍季は学園内では不良扱いだが意外にも成績優秀な方で、Fクラスに来るハズはないと思っていたからだ。

 

「逆に聞くぜ。俺がAクラスにいる姿を想像できるか?」

 

「「「全然?」」」

 

「少しは悩む素ぶりを見せろよ! ケンカ売ってんのか、テメーらは!」

 

「落ち着いて、龍季ちゃん!」

 

僕とハルと夏海の返事で暴れそうになる龍季を、智花と背丈が同じくらいの女の子が止める。あれ? ひょっとしてこの娘は……。

 

「止めるんじゃねぇ、ノエル!」

 

「ノエルちゃん? あなたもいるの?」

 

「うん、そうだよ♪」

 

この娘は冬樹(ふゆき)姉妹の双子の妹、冬樹(ふゆき)ノエル。姉の冬樹(ふゆき)イヴが優等生で、彼女から勉強を習っているならAクラスは確実に行けたと思う。

でもここにいるということは……。

 

「……ノエル。真面目に試験、受けてなかったでしょ?」

 

「え? ソ、ソンナコトナイヨ」

 

「じゃあ、なんで目が泳いでいるのかな?」

 

「それは……」

 

僕たちの質問にノエルはかなり動揺している。深呼吸をすると、落ち着きを取り戻してこう言った。

 

「お姉ちゃんと一緒のクラスになるつもりだったよ? だけど、晴陽くんと明久くんと智ちゃんと夏海ちゃんと同じクラスだったらもっと楽しいと思ったから、わざと点数調整したの♪」

 

「「そ、そうなんだ……」」

 

「でも、イヴちゃんに何か言われなかった?」

 

「最初はすごく怒られたよ……。でも、『これはあなたが決めたことだから、後悔のないようにしっかりやりなさい』って言って、何とか許してもらえたの」

 

「ふ〜ん……、そうなのね」

 

「オイオイ……。盛り上がってるところ悪いんだが、俺たちの存在忘れてないかハル、アキ?」

 

「同感じゃ」

 

「……以下同文」

 

「「晴明(はるあき)秀吉 (ひでよし)康太(こうた)もいるんだ?」」

 

 

ノエルの話を聞いている最中、また聞き慣れた声が聞こえたので視線を移すと、蔵馬晴明 (くらまはるあき)木下秀吉 (きのしたひでよし)土屋康太(つちやこうた)もいた。

普通なら彼らもAクラスを狙える学力なので、ここにいるということは、多分雄二と似たような理由だろう。

ただ、1人だけを除いては。

 

「聞いたよ晴明。通学途中で、交通事故に遭ったんだってね。体の方は大丈夫?」

 

「大丈夫だアキ。心配掛けさせてすまん」

 

「どうして晴明もFクラスに来ちゃったの?」

 

「実はあの日……」

 

ハルが質問すると晴明はこう言って、振り分け試験当日のことを話して聞かせた。

大まかに纏めると、通学途中で車に轢かれそうになった女の子を庇った結果、自分が車に轢かれる形になってしまったらしい。幸い怪我は大したことなかったが、結局その日以降の試験は全て受けられなくなってしまったようだ。

 

 

「でも、晴明のやったことは勇気のいる行動だと思う。中々できることじゃないから、自分を褒めてあげて? 少なくとも僕とアキは晴明のこと、尊敬するよ」

 

「ハル……、ありがとな」

 

「どういたしまして」

 

「それで、ハルとアキがFクラス(ここ)に来た理由を聞かせてくれないか? 俺はお前たちならAクラスに行けると思っていたからな」

 

「じゃあ、今度は僕たちの番だね」

 

晴明の次は、僕たちの事情を説明した。

 

「そうか……。でもハル、アキ。お前たちはFクラス(ここ)に来たことを後悔してないのか?」

 

「後悔してないって言ったら、嘘になるかな。だけど、あのとき智花を助けなかったらもっと後悔してた。今はこれで良かったんだって思ってる」

 

「僕は半分勢いだったところもあるけど、自分が納得する選択をしたつもりだよ」

 

「なるほど……、お前たちらしいな。Fクラスになったことは残念だけど、おかげで元気出たぜ」

 

「礼には及ばないよ、晴明」

 

僕たちの話を聞いて、晴明も笑顔になる。さっきまでの浮かない顔が、嘘のようだ。

 

「あ! そう言えば雄二、龍季! さっきのFFF団見てたのなら、助けて欲しかったよ!」

 

「うん! 結構面倒だったんだからね!」

 

「助けたいのは山々だったが、FFF団(コイツら)の相手は1回で十分だと思ってな……」

 

「ああ。思い出すだけで、腹立つぜ……」

 

「……もしかして雄二も?」

 

「俺も襲撃された。まあ、龍季も一緒だったから苦労はしなかったけどな」

 

まったく……、雄二も狙ってたのか。2人がそれぞれ『悪鬼羅刹』、『おてんば姫』って呼ばれたの知っててやったのなら、愚かとしか言いようがない。

 

「じゃあ、康太と晴明は?」

 

「俺と康太は秀吉とノエルの護衛をしていた。2人をFFF団(コイツら)の毒牙に掛ける訳にはいかないからな」

 

「……(コクリ)」

 

この発言で、僕とハルは何となく察した。女の子に飢えているFFF団のことだ。ノエルだけでは飽き足らず、(男なのに)秀吉まで狙おうとするほど節操のない集団だからね。改めて、智花と夏海を下がらせて正解だと思ったよ。

 

「秀吉、ノエル。災難だったね」

 

「明久よ。そう言ってくれると助かるのじゃ……」

 

「うん、あたしも。みんなのことは大好きだけどFFF団(あの人たち)、時々ギラついた目付きになるからあんまり関わりたくないよ……」

 

これから2人に訪れるであろう苦難を想像した僕たちは、智花と夏海共々守ろうと心に誓った。

 

「ところで、僕たちの席はどこかな?」

 

座席のことが気になっていたハルが質問する。

 

「ああ、それなんだが……。特に決まってないから自由に座って良いぜ」

 

「そ、そうなんだ……」

 

改めて教室内を見回すと、床の代わりに畳(しかもかなり古い)、机と椅子の代わりに卓袱台と座布団(これも古いのが多い)が置いてある。

いくら何でもこんなことがあっていいのか?

 

「とりあえず、座ろうか」

 

「「「うん」」」

 

ハルがこう言うと、僕たちは窓際あたりの席を確保した。窓際から1番後ろの席は智花、その隣は僕、そして僕の前はハル、智花の前は夏海が座った。

 

 

その後ハルを先頭に、みんなが自己紹介していった。

 

「また、みんな一緒だね。何はともあれ、今年もよろしく」

 

『『『『『ああ(ええ)(うん)、よろしく(なのじゃ)(ね)』』』』』

 

ハルの呼びかけにみんなが笑顔で答えた。まあ、F(こんな)クラスでもみんながいれば、きっと大丈夫。

僕とハルはそう考えていた。

 

 

See you next stage……




「以上、第2話でした!」

「今作はこんな風に、早い段階からオリキャラも絡めたストーリー展開になるけど、楽しめるものになるように頑張るよ(主に作者が)」

「あまり作者のハードルを上げないようにね、アキ」

「わかってるよハル。それじゃあまた次回にお会いしましょー♪」

「じゃぁねー!」




明久「親友兼悪友の坂本雄二を筆頭に、去年の顔馴染みたちがFクラスに集う。
教室はボロボロ、それ以外のクラスメイトはやる気がないと前途多難な状況下で、新たな救いの手が舞い降りる!」


明久「次回ッ!『バカとテストと召喚獣withグリモア!』、『自己紹介! 〜in Fクラス〜』。 Let's go……fight!!」


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第3話 自己紹介! 〜in Fクラス〜

「前回のあらすじッ!」

「手荒な歓迎から智花たちを守り抜いて教室に入った僕たちを待っていたのは雄二や龍季を始めとした去年のクラスメイト兼友人たちだった。今年はどんな楽しいことが起きるかな?」





晴陽side

 

 

「みんな、おはよっ!」

 

HRまでまだ時間があったので教室で待っていると、赤い髪をポニーテールに纏めた少女と、ダークブロンドのショートヘアの少年が教室に入って来た。

 

『『『『『おはよっ』』』』』

 

美波(みなみ)もFクラスなんだ?」

 

「そうよ晴陽。今年も同じクラスで嬉しいわ」

 

ポニーテールが特徴的な少女の名前は島田美波(しまだみなみ)。ドイツからの帰国子女で、去年は僕とアキ、そしてここにいるメンバーとは同じクラスだった。

 

「そう言ってくれるとこっちも嬉しくなるね♪ ……ところで美波。アキから聞いたんだけど、隣の子は美波の友達?」

 

「ええ。紹介するわ、ウチと同じくドイツ出身のクルト・アードラーよ」

 

「なら僕たちも自己紹介しなきゃね。良いでしょ、みんな?」

 

『『『『『ああ(うん)(ええ)(うむ)』』』』』

 

「じゃあ、僕から。僕は真境名晴陽。アキから話は聞いてると思うけど、よろしく☆」

 

 

〜以下、少年少女自己紹介中〜

 

 

「ハルヒにハルアキにユージとヒデヨシ、コータ、トモカ、ナツミ、タツキ、ノエルだね。ボクはクルト。クルト・アードラーです! こちらこそ、よろしくね♪」

 

『『『『『よろしく(なのじゃ)(ね)』』』』』

 

うん、掴みはバッチリだからきっと仲良くなれる。まぁこの後自己紹介するんだけど、早いうちにやっておく方が良いよね? 親交を深める意味でもさ。

 

「ねぇねぇ。入ったときから気になってたんだけど、アレはなぁに?」

 

「アレ? そうだね……。ひと言で言えば、“ゴミ”……、かな?」

 

山積みになっているクラスメイトたちを指差しながら聞いたクルトに、アキがこう答えた。結構酷い言い草だが、これまでのFFF団(コイツら)の所業を振り返ると、だいたいあってるのが悲しいところだ。

 

「そうなんだ? あの人たちは仲間じゃないの?」

 

「クルト。残念だけど、アキの言ってることは本当よ」

 

「もしそうだとしても、なんか可哀想だな……」

 

FFF団(コイツら)を思いやれるこの子は、なんて優しいんだろう。僕も含めたみんながそう感じ取った。でもFFF団(コイツら)は、その優しさに付け上がるかもしれない。なら、この子も踏みにじられないように守っていこう。このとき、みんなの気持ちが1つになった。

 

 

 

「あの〜。HRを始めますので、そろそろ席についてくださいね」

 

 

声のする方を向くと、ヨレヨレのスーツを着た男の人が教室へ入って来た。気絶していたクラスメイトたちも、それに気付いて復活する。

 

 

 

彼の名前は福原慎(ふくはらしん)

見た目こそ冴えないおじさんに見えるが、生徒のことを第一に考えられる教師の1人だ。

西村先生と並んで僕たちが信頼している教師であり、「人は見た目によらない」を体現する人物の代表格である。

 

 

「え〜、おはようございます。私があなたたちFクラスの担任の……、福原慎です。よろしくお願いします」

 

 

福原先生がチョークで名前を書こうと黒板に向いたが……、すぐに僕たちの方に向き直る。

 

((((((チョークすらないんだ……))))))

 

この待遇に、僕たちは唖然とするしかなかった。

 

「最初に設備が支給されているか、確認します。何か不備があれば申し出てください。また、必要なものがあれば極力自分で調達して来てくださいね」

 

「せんせー、俺の座布団に綿が入ってないです」

 

「我慢してください」

 

「先生、俺の卓袱台の脚が折れてます」

 

「木工ボンドを支給しますので、あとで自分で直してください」

 

「先生、窓が割れてて風が寒いです……」

 

「良いでしょう。ビニール袋とセロハンテープの支給を申請しておきます」

 

「先生、畳がカビ臭いんですけど……」

 

「ファ◯◯ーズも支給しておきますので、自分で消臭してくださいね」

 

 

この言葉で気付いたが、確かに畳が臭い。ここ数年は間違いなく交換していないだろう。

しかもそれだけに留まらず、教室内を見回すと壁は所々傷が入っていたり、蜘蛛の巣が張ってあったり、落書きも目立っていた。いくらなんでもこれはヤバい。

 

 

「確認は以上でしょうか? よろしければ、自己紹介を始めますよ」

 

 

正直、危険人物が多いこのクラスの連中(アキたちは別だよ♪)は軽く聞き流して置こう。何人か進んで、秀吉の番が回って来る。

 

 

「木下秀吉じゃ。演劇部に所属しておる。誤解のないように言っておくが、わしは男じゃからな!」

 

 

『『『『『なぁにぃぃぃぃッ?!!!』』』』』

 

 

……うるせぇ。僕も含めた仲間たちはみんなそう思った。

まあ、秀吉には双子の姉の木下優子さんがいるから、女の子と見間違うのは無理もないのかもしれないが。

 

「待て! 確かに秀吉は男だと言ったが、女じゃないとは言ってない! つまり、秀吉は男と女のふたつを兼ねる『第3の性別・秀吉』なんだ!!」

 

「その手があったかぁッ!!」

 

「お前、頭良いな!!」

 

『『『『そんな訳ない(だろ)(でしょ)……』』』』

 

 

なぜそんな発想にたどり着くのだろうか。もしバカコンテストがあれば、コイツらは文句なしの優勝候補だろう。

……全然嬉しくないけど。

 

「お主ら、人の言うこと聞いておったか!? わしは男じゃぞ!!」

 

『『『『『秀吉ラブリィィィッ!!!!』』』』』

 

「……とにかく、よろしくなのじゃ……」

 

諦めて席へ戻って来る秀吉。大丈夫だよ、後でみんなで慰めてあげるから。

 

「……土屋康太」

 

次は康太の番だが、やはりというか連中の反応が薄い。仮にもこれから共にするクラスメイトなのに。

ヤツらからすれば、女の子がいるかどうかが重要なんだろうな。

 

「島田美波です。ドイツ育ちなので、日本語の読み書きと、英語がちょっと苦手です。趣味は吉井明久と真境名晴陽をからかうことです☆」

 

「「ちょおおおッ、美波ィ!?」」

 

「安心しなさい2人とも。キリのいいところで止めてるから」

 

自分の自己紹介を終えて、席に戻って来た美波。何だかんだで彼女との付き合いも長い方で、1年生の終わり頃にアキに告白したんだけど、断ったんだよね。……智花の為に。

 

「ふっ……」

 

「晴明? どうしたの?」

 

「こうして見てると、あの時ギクシャクしてたのが懐かしく感じてな」

 

「……そうかも」

 

 

アキが告白を断ってしばらくは、2人の空気が気まずかったのを覚えてる。でも今はこうして、気兼ねなく笑い合えるようになって良かったと思う。

 

「いやっほーい! みんなのサポ役、ノエルちゃんだよー! よろしくね♪」

 

『『『『『うぉぉぉぉぉッ!! ノエルちゃん、俺と付き合ってくれぇぇぇッ!!!』』』』』

 

 

「あなたたち気持ち悪いから、やだ☆」

 

 

『『『『『チクショォォォッ!!!』』』』』

 

ノエルの自己紹介のとき、めっちゃ食い付いたなコイツら。でも全員玉砕されたようだ。それで良いよ、ノエル。

そもそもディセとイヴが許すとも思えないしね。2人に認められているなら話は別だけど。

 

「朝比奈龍季だ。痛い目に遭いたくなきゃ、言葉と行動に気を付けろよな」

 

龍季はそう言ってクラスメイトたちを睨み付ける。雄二と一緒にやられたときのことを思い出したのか、みんな無言で頷いていた。

 

 

「ボクはクルト。クルト・アードラーです! よろしくね!」

 

クルトが愛らしい笑顔で自己紹介する。こう言っちゃアレだが、男の僕でもかわいいと思う。アキたちも、同じことを考えていたらしい。

 

 

『『『『『クルト、ラブリ……』』』』』

 

 

“ギロッ!!”

 

 

『『『『『ヒィッ!!!』』』』』

 

 

ラブコールを送ろうとした馬鹿どもに、僕とアキと晴明と雄二と龍季で睨み付けると情けない声を上げて、その後静かになった。

 

 

「岸田夏海よ。報道部に所属してるわ。あんたたちの秘密はあたしが握ってるから、変な行動をしたら……。わかってるわね?」

 

 

これがハッタリなのは僕たちはわかってるが、夏海は報道部に所属している為、説得力がある。

 

 

「蔵馬晴明だ。漢字は一緒だけど『せいめい』って間違えないように頼むぜ。あと、俺は風紀委員だから迷惑行為を見つけたら取り締まるからそのつもりでな」

 

 

晴明は風紀委員会に所属してる。中学生の頃も所属してるって聞いたけど、その理由が怜と一緒にいたいということを知ってるのは、僕とアキと飛彩くらいだ。

 

「南智花です! 趣味は料理です。よろしくお願いしますね♪」

 

「南さん、是非俺に料理を……」

 

「いや、俺の方に……」

 

「何を言ってる! それは俺が……」

 

馬鹿どもが騒ぎ立てると、智花が戸惑っている。この様子に僕たちは呆れ果て、アキは殺気を放っていたので落ち着かせようとしたとき。

 

「ごめんなさい。わたしは下心丸出しの人たちとは関わりたくないです。そして、あなたたちに料理を作ることもありません」

 

 

『『『『『そんなぁ……』』』』』

 

 

きっぱりと言う智花に落胆するクラスメイトたち。残念でもないし当然だ。いきなり告白まがいのことをしたら拒絶するに決まってる。アキの方を見ると、安心したような表情をしていた。それを見た智花も優しく微笑む。

2人がくっつくのはいつだろう……。そんなことを考えていると、今度はアキの番になった。

 

 

「吉井明久です。僕のことは気軽に“ダーリン”って呼んでくださいねッ☆」

 

『『『『『ダーーリーーンッ!!!!!』』』』』

 

((((((ふ、不愉快だ……!!))))))

 

「……ダーリン……」

 

野太い声の大合唱に僕たちはこう思った。もちろん、言ったアキ(本人)も。智花は恥ずかしそうに、聞き取りにくい音量で言ってた。

 

「失礼、忘れて良いよ……」

 

「……アキ」

 

みんなを代表して、僕がアキに問いかける。

 

「冗談のつもりだったんだけど、まさか乗って来るとは思わなかったんだ。ごめん……」

 

「良いんだよ。でも次からは気を付けてね?」

 

「うん……」

 

次は僕の番だね。

 

 

「真境名晴陽。1年間よろしく。僕の大切な人たちに手を出したら……」

 

“ビッ!!”

 

親指を上げて、その指で首を掻っ切る仕草をして見せる。

 

「コレだから、覚えておいてね♪」

 

『『『『『わかりましたぁッ!!!!!』』』』』

 

 

こう言っておけば大丈夫かな? でもコイツらは物覚え悪そうだしね。まあ、そのときはそのときだ。こんな風に考えて自分の席に戻ったときだった。

 

 

“ガラガラッ”

 

 

「「「あの……。遅く、なりました……」」」

 

その言葉と共に入って来たのは、姫路姉弟……姫路瑞希(ひめじみずき)姫路和希(ひめじかずき)、そして宵宮グループのお嬢様……宵宮蝶影(よいみやちかげ)だった。

 

 

See you next stage……




「今回は最初が美波で、最後の方で姫路さんが読者様のオリキャラと登場したね」

「彼らに限らず、送って頂いたオリキャラたちは少しずつ出番が巡って来るから、今後を楽しみにしてくれたら嬉しいぞ〜」

「今日はここまで。また次回に会おうね!」

「シーユー!」




明久「自己紹介の最中、新たにやって来た姫路姉弟と宵宮蝶影にFFF団は舞い上がった。
そんな彼らを尻目に、僕は雄二に試召戦争を起こすことを持ち掛ける。すると、彼も戦争を起こすつもりでいたので万事OKと思ったら……。
……ハル! なんで反対するの!?」


明久「次回ッ!『バカとテストと召喚獣withグリモア!』、『提案』。 Let's go……fight!!」


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第4話 提案

「前回のあらすじッ!」

福原先生の一声で始まったFクラスの自己紹介。
見れば見る程、教室と友人たち以外のクラスメイトたちの質の低さに呆れるばかりだけど、その途中で姫路瑞希さんと姫路和希くん、宵宮蝶影さんがやって来た。




明久side

 

 

姫路姉弟と宵宮蝶影。この3人の登場に、一部を除いたクラスメイトたちがざわつく。そんなときでも冷静に構えていた福原先生が彼女たちに話し掛ける。

 

「丁度良いところに来ました。姫路瑞希さん、和希くん、宵宮蝶影さん。今自己紹介の最中なのであなたたちもお願いします」

 

「「「はい、わかりました(〜)」」」

 

「えっと……、姫路瑞希です。よろしくお願いします」

 

「弟の姫路和希です……。よ、よろしく……お願いします……」

 

「宵宮蝶影です〜。これからよろしくね〜」

 

姫路姉弟と宵宮さんが自己紹介を始める。それと同時に。

 

 

『『『『『美少女バンザーイ!!!』』』』』

 

「「「わっ!?」」」

 

 

クラスメイトたちの歓喜の声が上がった。女の子(内1人は男)が来て嬉しいのはわかるけど、体裁とか考えようよ。

 

 

「あぅ……。瑞希〜、この人たちこわいよぅ……」

 

「カズくん!?」

 

「心配しないで〜。ちかげと瑞希ちゃんがいるから大丈夫だよ〜」

 

姫路くんが後ろに隠れてしまった。そう言えば、彼はお姉ちゃん子だという話を聞いたことがある。多分F(この)クラスのほとんどの人が初対面だろう。姉と宵宮さん以外に知ってる人がいないのは辛いと感じるはずだ。

 

 

「やめなよ!」

 

 

そんな状況を見かねたハルが、クラスメイトたちを一喝する。

 

「舞い上がる気持ちはわかるけど、もう少し気を遣おうよ。怯えている子もいるじゃないか」

 

「「「「「わ、悪い……」」」」」

 

「まったく……。大丈夫かい、姫路くん」

 

「あ……、うん……」

 

「彼らは君たちが来たのが嬉しくてつい、騒いじゃっただけなんだ。だからあまり嫌わないでやってね?」

 

「……わかった」

 

「姫路さんと宵宮さんもいいかな?」

 

「「はい(OKだよ〜)」」

 

「良し。じゃあ、また後でね」

 

3人が頷き、ハルも自分の席に戻った。さっきまでは怯えていた姫路くんに、少し笑顔が戻るのを見た僕たちは、ハルのことを流石だと思った。本人は認めないと思うけど。

 

「あの、ちょっといいですか?」

 

「「「はい、なんですか(何)(なぁに〜)?」」」

 

「3人はどうしてF(この)クラスに来たんですか?」

 

 

あのさぁ……。この言い方は正直言って、ないと思う。気持ちはわかるけど、他にも聞き方はあったハズだ。とは言え普通に考えたら、姫路姉弟と宵宮さんがここにいるのはおかしいと思うのも事実。3人とも成績優秀で、Aクラスは確実だからね。

 

「その……。試験途中で熱が出て、途中退室しまして……」

 

「ボクも瑞希と同じだぞ〜」

 

「ちかげはお腹が空いて寝ちゃったの〜」

 

この言葉にみんなが納得する。姫路姉弟は2人とも体が弱い方だし、宵宮さんは優秀ではあるけど食べるか寝るかしか頭にないらしく、それが原因ということだ。

 

「あ。そういえば俺も熱(の問題)が出たから、Fクラス(ここ)に来たんだよ」

 

「化学のことか? 確かに難しかったよな」

 

「俺は弟が事故に遭ったって聞いて、それが気になってしまってさ」

 

「うるせぇ1人っ子」

 

「前の晩、彼女が寝かせてくれなくてな……」

 

「今年1番の大嘘をありがとう」

 

(((((何言ってん(だ)(の)コイツら(この人たち)は?)))))

 

それに便乗してクラスメイトたちがあれこれ言いだすのを見た僕たちは、呆れる以外になかった。

 

「俺は桃世さんと環ちゃんから告白される……」

 

“ギロッ!!”

 

「という夢を見たんだ……」

 

ハルがももと環から告白されるという妄言を吐いたクラスメイトを睨み付ける。

 

 

「ねぇ、それってギャグ? それとも本気? ギャグなら面白くないし、マジで言ってるのなら覚悟しておきなよ君たち?」

 

「嘘です、すいませんでした……」

 

そのクラスメイトに目が笑ってない笑顔でこう言うと、ヤツは速攻で謝った。

こうなることがわかっているなら、言わなきゃいいのにと心から思う。

 

「「「では(それじゃあ)、1年間よろしくお願いしますッ(よろしく……)(よろしくね〜)」」」

 

 

自己紹介を終えた3人は、僕たちのいる席の周辺で空いてるところに座った。

 

「あの……、真境名くん」

 

「ん、姫路さん?」

 

姫路さんがハルに話しかけて来た。もちろん、和希くん(ややこしいから名前で呼ぶよ)も隣にいる。

 

「さっきはありがとうございました。……ほら、カズくんもお礼を言いましょう?」

 

「(コクリ) えっと、真境名。さっきはその……、……ありがと」

 

「どういたしまして」

 

「ふぇ?」

 

和希くんがお礼を言うと、ハルは柔らかな笑みを見せる。それを見た彼は思わず俯いてしまった。

 

「ごめんなさい、真境名くん。カズくんは引っ込み思案ですけど、私にとっては良い子なんです」

 

「そっか……。大丈夫だよ、少しずつ慣れていけば良いんだから。和希くん。知らない人ばかりで大変かもしれないけど、みんな良い人だからこれからよろしくね?」

 

「うん、わかった……」

 

ハルが優しく言うと、和希くんも笑顔になった。やはり兄弟がいると、対処の仕方をわかっているのだろうか。

 

 

“バンバン”

 

 

「はいはい。静かにしてくださいね」

 

 

バキィッ バラバラバラ………。

 

 

福原先生が教卓を叩いて注意すると、一瞬にして教卓が崩れ落ちた。

 

「え〜……。替えを用意してきますので、少し待っていてくださいね」

 

福原先生は教卓を取りに出て行った。教卓すらもボロだなんて……、こんなことがあっていいのか?

 

 

「……ねぇハル、雄二、晴明。ちょっといいかな?」

 

「「「どうした(の)?」」」

 

「とりあえず廊下に出よう。話はそれからだよ」

 

ハルと雄二と晴明を呼んで廊下に出た。

 

「それで、話って?」

 

Fクラス(この教室)のことだよ。いくらFクラスとは言え、アレはあり得ないよ」

 

「それは俺も思った。他のクラスと比べても、ここはダントツだからな」

 

晴明の言う通りだ。卓袱台と座布団がFクラスの設備とはいえ、あんな状態なのは許されないと思う。

 

「そう。だからこその提案なんだ。『試召戦争(ししょうせんそう)』やってみようよ」

 

「「「試召戦争を?」」」

 

(コクッ)

 

僕はハルたちに持ち掛ける。

 

「なるほど……。南の為か?」

 

「うん。まあ正確には、智花も含めた女子生徒と和希くんとクルトの為だよ」

 

「ふむ。俺もAクラスに挑む為に、F(この)クラスに来たからな。良いぜ、協力してやる。お前たちはどうだ? 晴陽、晴明」

 

雄二は協力するつもりのようだ。その勢いでハルと晴明にも聞いてくると……、

 

「待って、アキ」

 

「ハル? どうしたの?」

 

ハルが待ったを掛ける。

 

「僕もできるだけ協力したい。でも、目的によっては反対するからね」

 

「どうしてさ?」

 

「アキは智花たちの為に試召戦争をしたいって言ったよね? Aクラスには飛彩たちがいるのはわかるでしょ?」

 

「あ……」

 

「飛彩たちだけじゃない。Aクラスにいる生徒はみんな努力した末に勝ち取ったんだ。なのに、僕たち以外のFクラスの連中……そうだね、FFF団かな。ソイツらがAクラスの生徒を押し退けてまであの設備を手に入れるのは、間違ってると思うよ」

 

「ハルと同意見だ、アキ。設備が目的なら俺も賛成しかねるぜ」

 

2人に言われてはっとする。智花たちの為って言ったけど、飛彩たちAクラスのみんなのことを考えていなかった。肝心なところで周りが見えていなかった自分は、まだまだなんだと感じた。

 

「そうだったねハル、晴明。言われてから気付いたよ。これじゃあダメだよね……、ごめん」

 

「わかれば良いんだアキ、誰にだって間違いはある。でもそこから最良な手段を考えて実行するのが大事だからな?」

 

「うん。わかったよ、晴明」

 

「それじゃあ、他にどんな方法を取るのさ?」

 

「まあ待て、晴陽。何も設備を奪うだけが報酬じゃないだろ?」

 

 

僕たちの話を聞いていた雄二が助け舟を出す。

 

 

「「「雄二?」」」

 

「つまり、設備以外の報酬にしてもらえば良いんだよ」

 

「それって!」

 

「ああ。報酬をこの教室の改修にしてもらえば、万事解決だ」

 

その手があったか。僕はただ、戦争を仕掛けるということしか考えていなかったから雄二の提案は有り難かった。

 

「確かに名案だが……、その要求は通るのか?」

 

「そのことだが問題ない。Aクラスに勝つ、若しくは良い勝負をすれば良い。それなら、学園長(ババァ)も無視しないハズだ」

 

晴明の疑問に、雄二は自信有り気に答えた。

 

「これなら良いだろ? 晴陽、晴明」

 

「わかった。それなら僕もOKだよ」

 

「お前の案に乗ったぞ、雄二」

 

「決まりだな。そうなれば、次は作戦を考える番だ。そろそろ先生も戻って来るから教室に入るぞ」

 

「「「OKだ(だよ)」」」

 

やるべきことは決まった、あとは目標達成に向けてどう動くかだ。そう決意を固めた僕たちは教室へ戻って行った。

 

 

See you next stage……




「和希くんと蝶影はちゃんと出番が回った訳だけど……、キャラ描写はこれでいいかな? 意見があったら、是非コメントしてね。問題があれば直すから(作者が)」

「そろそろAクラスsideも見せたいところだね。次は士気を上げるところだから、6話でAクラスのメンバーを見せたいと思ってるよ」

「じゃあ、今日はここまで!」

「次回も楽しみにしてくれると嬉しいな☆」

「また会おう!」

「シーユー♪」




晴陽「試召戦争に一時は反対してたけど、雄二からのアイディアに納得し、改めて戦争を起こす決意を固める僕たち。
このことをみんなに伝えると予想通り、クラスメイトの大半はお通夜状態に。
しかし、雄二はそんな彼らをやる気にさせるべく、引き金を引こうとしていた……!」


晴陽「次回ッ!『バカとテストと召喚獣withグリモア!』、『士気高揚』。Let's go……fight!!」


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第5話 士気高揚

「前回のあらすじッ!」

試召戦争を起こすことに反対だったハルは、雄二から設備交換以外の報酬を要求するというアイディアに納得してくれた。今度はクラスメイトたちを説得する番だ!



晴陽side

 

 

僕たちが教室に戻ると、福原先生も新しい教卓を持って来ていた。中断していた自己紹介も特に問題なく進んでいき、最後の1人になった。

 

「坂本くん、君が最後の1人です。確かF(この)クラスの代表でしたね? お願いしますよ」

 

「了解!」

 

 

力強く返事した雄二は教卓の前に立つ。

 

 

「代表の坂本雄二だ。俺のことは代表でも坂本でも、好きなように呼ぶと良い。……さあ、お前たち。Aクラスは冷暖房完備の上、座席はリクライニングシートを標準装備なのは知ってると思う。それらを踏まえて聞くぞ……、不満はないか?」

 

 

『『『『『大アリじゃあッ!!!!!』』』』』

 

 

クラスメイトたちの魂の叫び。こうして見ると、雄二の人心掌握術はすごいと感心する。

 

「だろう? 俺だってこの現状は大いに不満だ。代表として、これは無視できない」

 

「いくら学費が安いからって、この設備はあんまりだ! 改善を要求する!」

 

「まったくだ! Aクラスだって同じ学費だろ? こんなの酷すぎるぞ!」

 

口に出さないだけで、みんな酷いって思ってたんだ。だったらちゃんと勉強して、上位クラスに行けば済む話なのにね。

 

「そこで代表として提案だが………。俺たちFクラスは、Aクラスに『試験召喚戦争』を仕掛けようと思う!」

 

雄二が高らかに宣言するが、その言葉を無謀な挑戦と捉えてしまったらしく、

 

「無理だ……」

 

「勝てっこないよ……」

 

「これ以上設備を落とされるのはやだ」

 

「姫路姉妹がいてくれたらそれで良い」

 

「俺は宵宮さんだな」

 

「なら俺は南さんを選ぶ」

 

「じゃあ俺はノエルちゃんだ」

 

みんな沈んだようにこう言った。後半の4人がラブコール送ってるのは無視するとして、後でアキを落ち着かせなきゃね。智花にラブコールしてたヤツに殺気を送っていたし。

……とりあえずそれは置いといて、みんながそう言うのも理解できる。何せAクラスとFクラスでは、戦力差が大きいからね。『戦いは数』という言葉はあるけど、Aクラス1人に対してFクラス3人……いや、5人でも太刀打ちできないだろう。

普通なら、ね。

 

 

「安心しろ。大丈夫だ、必ず勝てる。俺が勝たせてみせる!」

 

「馬鹿なことを言うなよ」

 

「何の根拠があるんだ?」

 

自信有り気な雄二の言葉に、須川くんと横溝くんが疑わしげに聞いた。

 

「根拠ならあるぞ。このクラスには試召戦争に勝つ為の戦力……手札があるからな。それを今から説明する」

 

そして、次なる言葉にクラスメイトたちがざわつく。それから雄二は康太に視線を移した。

 

「おい、康太。いつまでも姫路のスカートを覗いていないで、こっちに来い」

 

「…………!!(ブンブン)」

 

「きゃっ!?」

 

必死に顔と手を左右に振って否定する康太。またやってたんだね。姫路さんも少しは警戒した方がいいだろう。正直言って、無防備な気がする。

 

「まず1人目は土屋康太。コイツがあの有名な寡黙なる性識者(ムッツリーニ)だ」

 

「…………!!(ブンブン)」

 

「ムッツリーニだと!」

 

「馬鹿な、ヤツがそうだというのか!?」

 

「だが見ろ。あそこまで明らかな覗きの証拠を未だに隠そうとしているぞ……」

 

「ああ。ムッツリの名に恥じない姿だ」

 

「「「???」」」

 

申し訳ないけど、恥じるべきだと思う。

ノエルと姫路さんと宵宮さんは、何のことだかわかってないようだけどそれで良い。何も知らない方が幸せなことは世の中にはあるからね。

 

「姫路姉弟と宵宮蝶影のことはみんなもわかっているだろう。F(この)クラスの主力の一角だ」

 

「わ、私ですか?」

 

「……ボクが?」

 

「ちかげも〜?」

 

「ああ。期待してるぞ」

 

雄二の言葉を聞いて照れたのか、和希くんが俯いた。そんな彼を姫路さんと宵宮さんがフォローしている。ともあれ、この3人がいるのは実に頼もしいだろう。

 

 

「そうだ。俺たちには姫路姉妹と宵宮さんがついている!」

 

「3人がいれば怖いものなしだ!」

 

「姫路姉妹ラブリー!」

 

「宵宮さん、付き合ってくださいッ!」

 

 

だからさ、雄二の言うこと聞いてた? 和希くんは男だよ? しかもドサクサに紛れてラブコールしてるヤツもいるし。士気が高まるのは良いけどさ。それに、宵宮さんは想い人がいるから諦めようよ。

 

 

「そして蔵馬晴明は文系科目……とりわけ、日本史が優れている。Aクラスの連中でも上回れるか怪しいほどにな」

 

そう、晴明の日本史の成績は学年トップだ。僕とアキの得意科目の1つに日本史(この科目)が加わったのは、彼の指導の賜物である。

 

「それに南智花、岸田夏海、朝比奈龍季、冬樹ノエルも訳あってFクラスだが、Aクラスに対抗できるだけの実力を持っている!」

 

「南さんもいるんだった!」

 

「岸田はムッツリーニと同じで、“あの人”の弟子だよな?」

 

「朝比奈はじゃじゃ馬だと思ってたけど、スゲーらしいぜ」

 

「ノエルちゃんは冬樹イヴの双子の妹だからな!」

 

「……おい。誰か失礼なこと言わなかったか?」

 

「抑えて龍季ちゃん! ここは我慢だよ!」

 

「……フン」

 

微妙に貶された龍季は不機嫌そうだったけど、ノエルが宥めたので一応静まった。

 

「木下秀吉は古典、島田美波は数学、クルト・アードラーは世界史……と、それぞれ個々に強みがある!」

 

「おお、すごいな!」

 

「なんか行けそうな気がするぞ!」

 

「もちろん、俺もベストを尽くす」

 

「坂本は昔『神童』って呼ばれてたよな」

 

「Aクラスレベルの実力者がたくさんいるって訳か!」

 

「やる気が出て来た!」

 

大きな戦力がいるとわかって、クラスの士気は最高潮に達する。

 

「そして、俺たちのジョーカー……。吉井明久と真境名晴陽だっている!!」

 

 

……シーン―――

 

 

僕とアキの名前を告げた瞬間、さっきまでとは打って変わって静かになった。

 

 

「誰だ、吉井と真境名って?」

 

「そんなヤツらこのクラスにいたか?」

 

いや待って。さっき自己紹介したクラスメイトのことを忘れるって、どうなの? ギャグだよね? もし本気だったら、冗談抜きでコイツらの頭が心配だ。

 

 

「諸君、思い出すんだ。吉井と真境名は我らの何かな?」

 

あ、須川くん。なんだかんだで彼は……。

 

『『『『『我らの敵! 反逆者だ!!』』』』』

 

「うむ。わかっているではないか」

 

前言撤回、須川くん(コイツ)も同類だった。

 

「コイツらがジョーカーの根拠は?」

 

「わかった、そこまで言うなら教えてやる。コイツらの肩書きは……、『観察処分者』だ!」

 

横溝くんの疑問に、雄二は僕とアキの肩書きを伝える。

 

「それって馬鹿の代名詞だったか?」

 

「こんなのが切り札だなんて……」

 

「『神童』も地に落ちたか……」

 

「期待ハズレだぜ」

 

好き勝手言うクラスメイトたちに、僕たちが観察処分者になった事情を知ってるメンバー(特に晴明)が険しい顔になる。僕とアキの為に怒ってくれるのは、とても嬉しかった。

 

「ねぇねぇ、坂本くん」

 

「どうした、宵宮」

 

「観察処分者ってなぁに?」

 

 

宵宮さんが無邪気に聞いて来る。彼女は意図してなかったが、結果的に重々しい空気を変えてくれたようだ。

 

「基本的には教師の雑用係だな。力仕事といった雑用を、特例として物に触れる召喚獣でこなすのが役目だ」

 

「そうなんだ〜。召喚獣は力持ちって聞いたし〜、吉井くんと真境名くんすご〜い♪」

 

宵宮さんが、尊敬の眼差しで僕とアキを見る。ちなみに、智花がヤキモチを焼いてるように見えたのは内緒だ。

 

「あ、ありがとう……。でも、そんな大したものじゃないよ? 召喚獣の負担の何割かは、僕たちに返ってくるからね」

 

「うん。それに教師の承認がないと召喚できないから、デメリットの方が多いんだ」

 

「と言うことは、気軽に召喚できないヤツが2人もいるってことか?」

 

横溝くんの言うことは尤もだ。2人もまともに戦えないのは、不安だろう。……僕とアキが正真正銘の馬鹿だったらの話だが。

 

「少ないが、ちゃんとメリットもある。観察処分者であるということは、召喚獣の扱いは学年中の誰よりも優れているということだ。 ……わかっているな? だから明久と晴陽は切り札(ジョーカー)だ!!」

 

「そうか! それなら問題ないな!」

 

「わかれば良い。……みんな。この待遇は、大いに不満だろう!」

 

『『『『『当たり前だぁッ!!!』』』』』

 

「ならば全員(ペン)を執れ! 出陣の準備だ!」

 

『『『『『おおーッ!!!』』』』』

 

「俺たちに必要なのは卓袱台じゃねぇ! Aクラスのシステムデスクだぁ!」

 

『『『『『おっしゃぁーッ!!!』』』』』

 

「「「「お、おーっ!」」」」

 

 

やっぱり雄二の統率力はすごいや。どん底だった士気を、最大まで持っていったのだから。

智花たち(と一部の男子)も何とかついて行ってる。

 

「まずはDクラスから攻めようと思う。明久、晴陽。Dクラスの宣戦布告に使者として行ってくれないか?」

 

「「うん。わかった」」

 

「頼んだぜ」

 

 

僕とアキは宣戦布告の為Dクラスへ向かった。

 

 

 

 

 

〜Dクラス教室〜

 

 

“ガラッ”

 

 

「「失礼します」」

 

「Fクラス大使の真境名晴陽と」

 

「吉井明久です」

 

「え? 晴陽くんと明久くんじゃない!」

 

扉を開けると、1人の女子生徒が出て来た。

彼女は松島(まつしま)みちる。智花と同じ部活に所属していて、智花を通して仲良くなった女の子だ。

 

「やあ、みちる」

 

「Dクラスだったんだね」

 

「今Fクラスって聞いたけど、どういうこと? Aクラスを目指したんじゃなかったの?」

 

「それは俺も知りたいところだな」

 

近づいてきたこの男子生徒は玲泉昇瑠(れいせんのぼる)。宵宮グループの次期総帥にして、宵宮蝶影の想い人。つまり、婚約者である。

 

「昇瑠もいるのか。それなら説明しなきゃね」

 

 

 

〜事情説明中〜

 

 

 

「……という訳なんだ」

 

「なるほどね。智ちゃんは大丈夫かな?」

 

「(コクッ)夏海もノエルも一緒だよ」

 

「そうか。蝶影様はどうだ?」

 

「姫路さんと和希くんもFクラスだから大丈夫だよ」

 

「良かった……。礼を言うぞ明久、晴陽」

 

「「どうも♪」」

 

 

おっといけない、つい話し込んじゃった。僕たちは一応使者として来ているからね。

 

「それはそうと、代表は誰なんだい?」

 

「俺がD(この)クラスの代表だ」

 

そう言って現れた男子生徒は平賀源二(ひらがげんじ)。去年はクラスが違ったが、中学生の頃からの付き合いになる。毎回って訳じゃないけど、たまには遊んだりする仲だ。

 

 

「源二! 君だったのかい?」

 

「そうだ。晴陽、明久。だいたいわかってるが、あえて聞くぞ。用件はなんだ?」

 

「話が早くて助かるね」

 

僕とアキは呼吸を合わせてこう告げる。

 

「「僕たちFクラスは、Dクラスに試召戦争を申し込むよ!!」」

 

「やっぱりな。Fクラス(そっち)には坂本がいるだろ?」

 

「わかってたんだ?」

 

「ああ。初日から仕掛けてくるのはヤツ以外にいないからな。それで、開戦は何時からだ?」

 

「午後1時からで良い?」

 

「構わないぞ」

 

「じゃあ、また後でね♪」

 

そう言って僕たちがFクラスへ帰ろうとしたとき。

 

「ちょっと待ちな!」

 

「下級クラスのくせに生意気だぞ!」

 

やっぱりこうなるよね。まあ、予想通りではあるのだけど。

 

「仕方ないか。……ハル」

 

「OK、アキ」

 

襲い掛かって来たDクラス生徒の背後に一瞬で回って、気絶させた。

 

「それくらいにしておけ。お前たちでは明久と晴陽(あの2人)に勝てない」

 

「ありがとね源二。助かったよ」

 

「礼には及ばないぞ。こんなヤツらでも大事な仲間で、戦力だからな」

 

「ちゃんと代表できてるじゃない」

 

「褒めても何も出ないぞ?」

 

「ううん、本心だよ? 戦い甲斐があるからね」

 

僕の言葉に源二は嬉しそうな顔をした。

 

「それじゃあ今度こそ、また後でね」

 

「明久くん、晴陽くん! 智ちゃんと夏海ちゃんとノエルちゃんによろしくね!」

 

「蝶影様にも言っておいてくれ!」

 

「わかってるよ♪」

 

こうして僕たちはFクラスへと戻って行った。下克上は、ここから始まる……。

 

 

See you next stage……




「第5話でしたー♪ ここから試召戦争に突入だ!」

「でもその前に、Aクラスsideの話も挟むよ。というわけで、次回は飛彩とAクラスメンバーが中心になる(予定)だよ♪」

「そろそろAクラスメンバーも見たい! という読者様もいらっしゃるかと思われるので頑張ってね、作者!」

「次回も楽しみにしててね☆」

「シーユー♪」




飛彩「Fクラスが試召戦争を起こす少し前。Aクラスでも自己紹介が始まる。見慣れた顔ぶれが集う中、癖のある生徒もまた在籍していた。
……面白い。だからこそ代表になった甲斐がある……!」


飛彩「次回。『バカとテストと召喚獣withグリモア!』、『自己紹介! 〜in Aクラス〜』。 Let's go……fight!!」


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第5.5話 自己紹介! 〜in Aクラス〜

「前回のあらすじッ!」

試召戦争に向けて雄二がクラスメイトへ演説する。
最初は弱気だったヤツらも首脳陣の心強さに触発されたらしく、やる気を起こした。
ワクワクが止まらないね!


時間は少し遡る……。

 

 

 

飛彩side

 

 

あの振り分け試験から数週間が過ぎ、今日から新学期が始まる。俺はいつもより早く学校に来ていた。目的はもちろん、どこのクラスに振り分けられたか確認する為である。

 

「おはよう、唯島。随分と早かったな」

 

「おはようございます、西村先生。自分がどのクラスに所属しているか気になっていたので、早く来ました」

 

「うむ。良い心掛けだ、その姿勢こそ大事なものだぞ。そして、コレが振り分け試験の結果だ」

 

そう言った西村先生から封筒を受け取り、中に入っている紙を見ると、

 

 

 

“唯島 飛彩 Aクラス主席”

 

 

 

こう書かれていた。

 

 

「それにしても唯島、お前に何があった? 元から優秀だとわかっていたが……」

 

「そうですね……。強いて言うなら、みんなの手本になりたいと思ったから……でしょうか」

 

「なるほど、唯島の男としての矜持という訳か。代表としてクラスメイトたちを纏め上げるのは容易いことではないが、お前には素質があると俺は信じている。頑張れよ」

 

西村先生から激励の言葉を贈られて、思わず胸が熱くなった。

 

「はい、西村先生。……ひとつお願いをしても構いませんか?」

 

「お前が頼みごととは珍しいな。どうした?」

 

「ハルとアキのフォローをして欲しいんです。『観察処分者』というレッテルの為に、良く思わない生徒もいるので……」

 

我ながらワガママな頼みごとだと思った。でも西村先生もいてくれたら、こんなに心強いことはないだろう。

 

「わかった。全ての生徒と平等に向き合うのが俺のポリシーだが、そこまで言うならできる限りのことをしよう。この1年間、全力で楽しむといい」

 

「ありがとうございます」

 

 

そう答えてAクラスの教室へ向かった。

 

 

 

 

〜Aクラス教室〜

 

 

 

「ここがAクラスの教室か……」

 

 

教室に入って、思わず呟く。

唯島家からの資金提供による産物だとはわかっていても、教室内の豪華さを見ればこう思うのは必然だ。……まあ、他にも資金提供している企業はあるのだが。

 

自分の机を探して席に座り、改めて設備を確認する。椅子はリクライニングシートが使われており、巨大なプラズマディスプレイとノートパソコン、個人エアコンetc……。コレ以外にも希望を出せば、多分導入するだろう。Aクラスとはいえ、ちょっとやりすぎじゃないのか……?

 

「おはよう、飛彩」

 

「シドか。おはよう」

 

そんな風に考えていると、右目を紫の長髪で隠した男子生徒が話し掛けてくる。

彼の名前は羽ノ宮紫童(うのみやしどう)。中学生の頃に出会い、去年は同じクラスだった男で、ハルとアキと同じくらいに親友だ。

 

「俺の予想だと、お前が主席だと思うが……どうだ?」

 

「その通りだ。よくわかったな?」

 

「お前の努力を知ってるからな。……ところで飛彩、ハルとアキはどうした? あの2人はAクラス(ここ)に来ると思っていたが……」

 

「ハルとアキはFクラスだ」

 

「なに? どういうことだ?」

 

「実は……」

 

俺は振り分け試験のときの出来事を教えた。

 

「なるほど、そんなことがあったのか……」

 

「聞いたときは驚いたさ。でも心のどこかでは期待してるんだ、あの2人(ハルとアキ)と戦えると思うとな」

 

「気が合うな。俺もそう思っているぞ……」

 

 

シドとそんな風に話をしていると、幼馴染で友人のももと環と怜が教室に入って来た。

 

 

「「「おはよう(おはよっ)。飛彩(くん)(ひーくん)、羽ノ宮(くん)(シドくん)」」」

 

「おはようもも、環、怜」

 

「意外に早かったな、3人とも」

 

「うん。新学期だからいつもより早起きしちゃった♪」

 

「ああ。途中で晴陽たちと合流してな」

 

「それでみんなで一緒に来たの♪」

 

なんとなくだが、ハルは半ば強引に起こされたであろうことを想像した。その前に環が優しく起こそうとしたことも。

 

「色々あるが、今年はよろしく頼むぞ。みんな」

 

「「「「よろしく(な) (ねー♪)」」」」

 

その後も後雑談をしている間に続々と生徒が教室に入って来て、HRの時間になった。

 

「みなさん進級おめでとうございます。私が2年Aクラスの担任の高橋洋子(たかはしようこ)です、よろしくお願いします」

 

そう言って自己紹介したのは、A(この)クラスの担任で学年主任の高橋先生だった。

ハルとアキが『例の事件』に巻き込まれた際に、庇ってくれた教師の1人だ。

後ろのプラズマディスプレイに彼女の名前が大きく写っている。

 

 

「設備の確認をします。ノートパソコン、個人エアコン、冷蔵庫、リクライニングシート。その他の施設に不備のある方は挙手をお願いします」

 

……高橋先生、間違いなく充分だと思う。これで不満がある生徒はまずいない。もしいたら、是非ともそいつの顔を見たいものだ。

 

「まず始めに自己紹介をしてもらいます。そうですね、出席番号順に始めましょう」

 

そうして出席番号順に、自己紹介が始まった。

 

「羽ノ宮紫童。よろしく」

 

シドはシンプルだな。

 

「神凪怜だ。風紀委員会に所属している。よろしく頼むぞ」

 

怜も真面目だ。彼女らしい。

 

木下優子(きのしたゆうこ)です。1年間よろしくお願いします」

 

優子も同じクラスか。彼女も優等生だから当然だろう。

 

「……霧島翔子(きりしましょうこ)です。よろしくお願いします」

 

霧島も相変わらずだな。

 

「1年の終わりに転入してきた工藤愛子(くどうあいこ)です。好きな食べ物はシュークリームで、スリーサイズは上から78・56・79! 特技はパンチラだよ。よろしく♪」

 

声を聞いたとき、一瞬夏海かと思ったがテンションと容姿が違うので、別人だとわかる。

 

「工藤さん……?」

 

「やだなぁ。冗談だよ?」

 

女子生徒に窘められつつ、工藤は席に座る。

 

久保利光(くぼとしみつ)です。これから1年間、よろしくお願いします」

 

久保もAクラスか。どうやら今年も、友人知人が多そうだ。

 

「シャロ・マーガトロイドです。よろしくなのであります」

 

彼女は確か……、宵宮蝶影の従者だったか? 同じクラスになるのは多分初めてだ。

 

 

 

 

〜以下省略中〜

 

 

 

 

氷川紗妃(ひかわさき)です。私がいるからには、どんな違反も見逃しません」

 

氷川紗妃。彼女も怜と同じ風紀委員会所属の副委員長。風紀委員のメンバーの中では取り締まりが厳しめなことで有名で、さっき工藤を注意したのも彼女だ。

 

「ビショップ・ニルヴァーナだ。堅くなり過ぎず、気楽に行こうぜ。今年もよろしく〜♪」

 

ビショップ・ニルヴァーナ。明るくノリが軽いが、医師を目指して頑張る意外な一面も持つ男だ。

今年も頼りにしているぞ?

 

冬樹(ふゆき)イヴ、です。……他に言葉が必要ですか?」

 

イヴは前に比べたらマシになったとはいえ、まだ遠慮しているのだろうか……。

 

冬樹(ふゆき)ディセです。風紀委員会に所属しています。みなさんのことは信じていますが、Aクラスの生徒として節度ある行動をしてくださいね」

 

ディセも俺の知り合いの中では静かな方だが、イヴとノエルの為に頑張れる男だとハルとアキから聞いている。

 

真境名環(まじきなたまき)と言います。真境名晴陽(まじきなはるひ)の双子の妹です。これからよろしくね♪」

 

環が元気良く自己紹介すると、教室がざわつき始める。

 

「真境名晴陽って、アイツのことか?」

 

「俺、知ってるぜ。吉井明久(よしいあきひさ)共々、観察処分者に任命された学園のクズだろ?」

 

「可哀想に。酷いヤツだよな、真境名晴陽と吉井明久は。環ちゃんに迷惑掛けてよ」

 

「み、みんな……。違うよ……」

 

次々と2人の悪口を言われて環が顔を曇らせ、泣き出しそうになっていた。

 

「おい、お前たち……」

 

「いい加減にしろ、テメェら!!」

 

見兼ねて注意しようとすると、シドが先に口を挟んだ。語気を強めていて怒りを露わにしている。

 

「テメェら、ハルとアキのことをクズって言ったか? 何も知らないくせに、勝手なことを言うなッ!!」

 

普段は物静かで滅多に感情を表に出さないシドだが、友人のこととなれば話は別。今みたいに貶されたら黙ってはいない。

 

「確かに観察処分者に任命されたのは事実だ。けど、望んでそうなったんじゃねぇ! 特にそこの2人!!」

 

「「はいッ!」」

 

「テメェら2人は環の前で堂々と悪口言ってくれたな? 大切な兄と親友(ダチ)が目の前で貶されて、環がどれだけ傷付くか考えなかったのか?!」

 

「「す、すみませんッ!!」」

 

「そもそもハルとアキはなぁ……!!」

 

「シド、それくらいでいい」

 

ヒートアップしそうなシドをここで止める。

 

「止めるな飛彩、コイツらは言って聞かせなきゃいけねぇ。それともお前は、ハルとアキを貶されて悔しくないのか?」

 

「悔しいさ。でもこのままじゃ、シドの立場が悪くなる。その気持ちだけでも充分だ」

 

「あたしも大丈夫だから。お兄ちゃんと明くんの為にシドくんまで印象が悪くなったら、あたしも悲しいよ……」

 

「……わかった。そこまで言うなら、俺はこれ以上は言わない」

 

俺と環の言葉に一応納得したシドは席に着いた。

 

「アンタさんたち落ち着いてくだせー。真境名兄と吉井が観察処分者なのは事実でごぜーますが、羽ノ宮が言おうとしたように、事件に巻き込まれて不本意ながら任命されてしまったんです。決して学業や生活態度が原因ではありませんよ」

 

状況を静観していた水無月風子(みなづきふうこ)がクラスメイトたちに説明する。

 

「ウチら風紀委員も1年間2人を見て来ましたが、学園生活上で問題はありませんでした。決して噂を鵜呑みにしてはいけねーですよ」

 

「個人的には優良かどうかはともかく、少なくとも問題児ではないと私も思います」

 

「私も彼らと親交がありますが、『馬鹿の代名詞』などと言われる程ではありません」

 

「私も義兄さんと同意見です」

 

風子に続いて、氷川とイヴとディセも弁護するのを見て嬉しくなる。俺たち以外にも風子を筆頭に、ちゃんと見てくれている人がいることに。

 

「「「わ、わかりました……」」」

 

説明に納得した生徒たちはこう答えて、重々しかった空気が和らいだ。

 

 

「ありがとう、水無月」

 

「構いませんよ唯島。これはウチらの意志ですから」

 

(貸し1つですよ? 飛彩……)

 

(わかってるさ、風子……)

 

風子にお礼を言って、中断していた自己紹介を再開させる。

 

「水無月風子。ご存知かと思いますが、風紀委員長です。お見知り置きくだせー」

 

一見やる気のなさそうな言動をしている風子だが、校則違反を見つけると素早く拘束し、処罰を与える仕事人だ。

もちろん厳しいだけが彼女の全てではないが、多くの生徒はもう1つの顔を知らない。

 

「桃世ももです! 購買部に所属してます。ご利用の際は、是非ご贔屓にお願いしますね♪」

 

ももは相変わらず愛らしい笑顔を振りまいてくる。彼女に告白する男子は数知れず、しかしその全てを断っているという。理由はハルの為だと知っているのは一部の人間だけだ。

 

瑠璃川春乃(るりかわはるの)。……まあ、よろしく。最低限は働くから」

 

瑠璃川は素っ気なく挨拶する。彼女に関しては、ハルとアキからも重度のシスコンとしか聞いてない。

これから共にするクラスメイトである以上、彼女とも親交を深めないといけないな……。

 

「では、クラス代表を紹介します。唯島くん、お願いします」

 

「わかりました、高橋先生」

 

高橋先生に指名されて、教卓の上に立つ。

 

「Aクラス代表の唯島飛彩だ。代表になったからには、みんなの学園生活が良いものになるよう全力を尽くそう。1年間よろしくな」

 

 

“パチパチ……”

 

 

自己紹介を終えた俺は、クラスメイトたちからの拍手を受けて自分の席へと戻る。

そして着席すると、制服の上に白衣を着た男子生徒が教室に入って来た。

 

「……すいません、遅れました」

 

「待っていました、白岩(しらいわ)くん。自己紹介はあなたが最後ですよ」

 

「はい、高橋先生。……白岩翼(しらいわつばさ)だ。これからよろしく頼む」

 

少し長めの赤い髪と赤い瞳の少年……白岩翼が自己紹介した。

詳しいことは知らないが、試験召喚システム関連の調整を行なっている数少ない生徒の1人。

それ故に多くの生徒たちは彼のことを『召喚獣博士』とか、『バレットドクター』などと呼んでいる。

 

「揃いましたね。みなさん、唯島くんを代表にこれから1年間互いに協力し高め合い、全てのクラスの手本として恥じぬよう、頑張ってください」

 

『『『『『はいッ!!』』』』』

 

高橋先生の言葉に、みんなが奮い立った。

 

 

俺にはわかる、お前たちは必ずAクラス(ここ)に来るだろう。そのときを楽しみにしているぞ。ハル、アキ。

 

 

See you next stage……




「第5.5話は以上だ。楽しんでもらえたかい?」

「投稿に時間が掛かって、本当にごめんね。作者に代わってお詫びするよ」

「FクラスとAクラス勢のメインは殆ど登場した訳だけど、まだ登場してないキャラたちもいるから楽しみにしてね♪ (Bクラスとか、Cクラスとか)」

「今回はこんなとこかな」

「じゃ、次回も楽しみにしててね。今回よりは時間掛からない……ハズ!」

「うーん? ちょっと不安だけど、気長に待ってくれるといいな☆」

「「シーユー!」」



明久「Dクラスへ宣戦布告したその日の午後。束の間の休息を経て、今年初の試召戦争が幕を開ける! 行くよハル! みんなで勝利を掴み取ろう!」


明久「次回ッ!『バカとテストと召喚獣withグリモア!』、『初陣』。 Let's go……fight!!」


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第6話 初陣

「前回のあらすじッ!」

学年首席の飛彩がいるAクラスでも自己紹介をしていた。
どうやらゴタゴタがあったみたいだけど、なんとか収まったようで良かったよ〜。
代表としてこれから頑張ってね、飛彩!


晴陽side

 

 

「今戻ったよ」

 

「お疲れ。ありがとな、2人とも」

 

「「どういたしまして♪」」

 

雄二がDクラスから戻った僕たちを労った。

 

「良し、これから屋上でミーティングを行う。昼飯もそこで食うからみんなを呼んで来てくれ」

 

「「うん、わかった」」

 

そう答えた僕たちは、智花たちを呼んで屋上へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

外へ出ると雲ひとつない、のどかな日差しが僕たちを照らしている。試召戦争のミーティングじゃなかったらもっと良かっただろう。

ここにいるメンバーは僕、アキ、智花を始めとしたFクラス首脳陣で固められている。

中々の大人数だと今更ながらに思った。

 

 

「はい、アキくん」

 

「ありがとう智花」

 

智花がアキに弁当を渡した。中身はやっぱり……。

 

「今日もおにぎりなのね?」

 

「夏海ちゃん! ちゃんと具も入ってるよ!」

 

「不思議よね〜。おにぎりは普通に作れるのに、他の料理はパッとしないからね〜」

 

「あぅ……」

 

夏海が智花の料理の腕前についてイジっている。智花は手先が器用なのになぜか料理に関しては、おにぎり以外がお世辞にも美味しいとは言えないのだ。

実際、僕とアキと夏海が被害に遭っていたしね。ただ、これでも昔に比べたらかなり進歩した方だと思う。

 

「良いよ。こうして作ってくれるだけでも嬉しいんだ。また時間があるときに僕が料理を教えてあげるからね?」

 

「うん! いつかは他の料理も美味しいって言ってもらえるように、わたし……頑張るから♪」

 

「期待してるよ、智花」

 

アキが励ますと、智花も笑顔になった。そんな2人の間に桃色空間が広がるものだから、

 

「あの! 吉井くんと智ちゃんはどんな関係なんですか?」

 

「そうね。ウチもそれが気になるわ」

 

「ちかげも〜」

 

「「そ、それは……」」

 

事情を知らない姫路さんと宵宮さんと美波が興味有りげに聞いて来た。もちろん、僕と夏海と晴明のように知ってる人もいるけど、これを機に話しておこうということになり、小学生の頃からの幼馴染と聞いたら納得した。

 

「へぇ〜。ロマンがあるねアキヒサ、トモカ!」

 

「智ちゃんが羨ましいなぁ」

 

「べ、別に羨ましくねーし!」

 

「ボクにもこんな日が来るのかなぁ……」

 

クルトとノエルと龍季と和希くんがそれぞれ感想を言う。僕と夏海と晴明、Aクラスにいる飛彩とももと環と怜はずっと見てきた光景なので、いつくっついてくれるんだろうかと一喜一憂する日々が続いている。まあ、僕も人のこと言えないけど。

 

「とりあえずこの話は後でな。明久、晴陽。お前たちから見てDクラスはどうだ?」

 

「うーん。少なくとも、今のFクラスよりは強いと思うよ」

 

「そうだねハル。みちると昇瑠がいるから、一筋縄じゃいかないね」

 

「なるほどな……。わかった」

 

「ねぇアキくん! みちるちゃんはDクラスにいるの?」

 

「昇瑠くんと会ったんだぁ。どうだった〜?」

 

雄二に報告すると、みちると昇瑠の名前が出たことに反応した智花と宵宮さんが聞いて来た。2人の成績は上位クラスを狙えるレベルだし、昇瑠に至っては飛彩と霧島さんと水無月さんと首席争いできるだけの実力を兼ね備えている。

Dクラスになった理由だが、みちるは振り分け試験の結果にムラがあったからで、昇瑠は宵宮さんを見守りたいからだとか。

だったらFクラスでも良かったんじゃね?って思ったのはここだけの話だ。

 

「うん。戻ったらよろしく言って欲しいって頼まれたんだ」

 

「昇瑠も心配してたみたいだからね。今の状況伝えたら安心してたよ」

 

「そうなんだ。アキくん、晴陽くん。ありがとう」

 

「ちかげもありがとうなの〜♪」

 

「「良いんだよ」」

 

「そういえばユウジ。なんでDクラスから先に攻めるの? 手堅く行くなら、Eクラスの方が良いでしょ?」

 

「クルトの言いたいことはわかるが……。単純な話、Fクラスより実力は上だが戦うまでもないからだ」

 

こんなやりとりの裏でクルトが雄二に質問して来る。するとこのように返した。

 

「そう言うことか。それなら納得がいくぜ」

 

「俺の狙いがわかるのか。晴明」

 

「だいたいな」

 

晴明は何かを察したらしく、雄二を肯定する。

 

「それでも僕たちよりは格上だよ?」

 

「普通ならそう思うよね。でもアキ、周りの面子を良く見てごらん?」

 

「うん。そうだね……、3人の幼馴染と悪友も3人、優等生の双子に双子の片割れが2人、お嬢様と帰国子女とみんなの弟分が1人と……。ああ、そう言うことか!」

 

「そう。ここにいるのは、様々な理由でFクラスになったイレギュラーなメンバーさ。全力でやり合えば、今の状態でもEクラスには勝てるよ」

 

とはいえ、Eクラスにもイレギュラーな生徒はいるけどね。

 

「じゃが雄二よ。そのような回りくどいことをせんでも、最初からAクラスに挑む方が良いではないかのう?」

 

「できればそうしたいが、初陣だからな。景気付けと今後の対Aクラス戦の為に必要なプロセスって訳だ」

 

「まずは目の前の戦いに勝つことが先だよ。じゃなきゃ何も始まらない」

 

「そうだな晴陽、お前の言う通りだ。すまないが、お前たちの力を貸して欲しい。……頼む」

 

『『『『うん(ええ)、わかった(よ〜)!!』』』』

 

「良し。これから作戦を説明するから、各自内容と自分の役割を把握しておいてくれ。あと、飯もちゃんと食っとけよ」

 

 

こうしてDクラス戦に向けたミーティング(と昼食)が行われる。その最中、宵宮さんの弁当の量にほぼ全員が総ツッコミしたこと、ももから渡された弁当を再びイジられた以外は特に問題なく進んでいった。

 

 

晴陽side out

 

 

 

 

 

少し時間が流れて……

 

 

 

 

〜召喚システム制御兼実験室〜

 

 

???side

 

 

「……時間ね」

 

私……宍戸結希(ししどゆき)は、白衣を着て“仕事”モードに切り替えた。科学とオカルトの融合で生まれた試験召喚獣。未だ解明されていないブラックボックスとも言える存在のシステム制御や調整のサポートと、個々のデータ収集を行っている。

ちなみに、私が受け持っているのは自分の所属であるCクラスとDクラスが私の担当だ。

 

「ごめん結希、遅くなったわ」

 

「大丈夫よ(そら)。これから始めるところだから」

 

今制御室に入って来たのは、仕事仲間で友人の如月天(きさらぎそら)。彼女はEクラスとFクラスを担当している。

 

「それにしてもやってくれるじゃない。初日から試召戦争を仕掛けるなんてね」

 

「でも私たちとしては好都合よ。Fクラス(かれら)のおかげで結果的に召喚獣の研究が一歩進む」

 

「まあ、それには同意するわ。召喚獣の調整は白岩がやってくれるのね?」

 

「ええ。私たちは自分の担当クラスのデータ収集に集中しましょう」

 

「OKよ、結希」

 

さあ、あなたたちの実力(ちから)を見せてもらうわ。吉井くん、真境名くん。

 

 

 

結希side out

 

 

 

 

 

 

 

同時刻 〜3年“裏”Aクラス教室〜

 

 

京side

 

 

「始まるか……」

 

クラスメイトたちが自習している中、俺は静かに呟く。

 

「どうした(きょう)? 嬉しそうな顔をして」

 

虎千代(とらちよ)か。2年Fクラスのヤツらが試召戦争するらしいんだ。そう思うとワクワクするのさ」

 

俺の表情が緩んでいるのに気付いた武田虎千代(たけだとらちよ)が話し掛ける。3年“裏”Aクラス代表にして生徒会長でもある彼女は、小学生の頃からの幼馴染だ。

 

「新学期初日から試召戦争を? ふふっ、中々面白いことをするのね。好きよ、そう言うの」

 

「ホントだね、まるで去年の誰かさんみたいだよ」

 

「去年のことは言わないでくれ、鳴子(なるこ)。今思えば、かなり大胆なことをしたと思ってるんだ」

 

「まあまあ、良いじゃないですか。でも鳴子(なるこ)ちゃん、あまり京くんをいじめないでくださいね?」

 

「わかってるよ、あやせ」

 

朱鷺坂(ときさか)チトセと遊佐鳴子(ゆさなるこ)海老名(えびな)あやせも会話に混ざる。虎千代と同じで、この3人も幼馴染だ。

 

「みなさんは、どちらが勝つと思いますか〜?」

 

「「Fクラスだ(だね)」」

 

あやせの言葉に俺と鳴子はこう答える。

 

「即答ね。2人とも」

 

「当然さ。夏海と康太はどこのクラスにいても、恥ずかしくないように鍛えてるからね」

 

「そうだな。明久と晴陽もいるんだ、負ける訳がない」

 

「随分と信頼しているんだな?」

 

「ああ。お前もそう思うだろ、八神(やがみ)

 

虎千代の問いに答えたあと、長髪の男子生徒……八神庵(やがみいおり)に話題を振る。ヤツも幼馴染兼腐れ縁であると同時に……、ライバルだ。

 

「何を聞くかと思えば……。そんなことか」

 

「おいおい、そう言うなよ。晴陽(おとうとぶん)のことが気にならないのか? 俺は気になるぜ」

 

そう。あの2人はそれぞれ明久は俺が、晴陽は八神が文武両面で鍛えていた。元々鉄人が俺たちに無理矢理指導係に任命したことから始まったが、何かと見所があって気に入り現在に至っている。

 

「みなまで言うな。結果がわかりきっていることに興味はない」

 

「良く言うぜ、ホントは気になってる癖によ」

 

「フン、くだらん……」

 

相変わらず無愛想な態度を取る八神だが、微かに笑ったのが見えた。……まあ、指摘しても否定するだろうからあえて言わないでおく。

 

大丈夫だと思うが、一応アイツらが勝つのを祈っておくか。頑張れよ明久、晴陽。

 

 

京side out

 

 

 

 

 

〜回復試験会場〜

 

 

晴陽side

 

 

Dクラスとの試召戦争が始まって30分。僕とアキ、智花、晴明、姫路さん、和希くん、宵宮さんは回復試験を受けている。ここにいるのは振り分け試験の際に、途中退室や欠席などで無得点になってしまったメンバーだ。

 

「そろそろだね。大丈夫、アキ?」

 

「良いよ。じゃあ行こうか、ハル」

 

「もう良いの、2人とも?」

 

ある程度試験を済ませて出撃の準備をしている僕たちに、智花が尋ねる。

 

「うん。僕とハルはこれくらいで十分だよ」

 

今回の僕たちの役割は露払い。早い段階で援護に行くこと、そして真の実力をDクラスの生徒たちに悟らせない為だ。まあ、みちると昇瑠と源二は把握してるのだけど。

とはいえ、一部を除いて大抵の生徒は観察処分者である僕たちのことを馬鹿だと思っているから、都合が良かったりする。

 

「ハル。俺も一緒に行こうか?」

 

「晴明はもう少し試験を受けて。しばらくは僕たちだけでも大丈夫だからさ」

 

「そうか。みんなを頼むぞアキ、ハル」

 

「「ありがとう。じゃあ行くね!」」

 

僕たちは試験を受けているみんなにこう告げた。

 

「いってらっしゃい!」

 

「必ず来ますから!」

 

「……頑張れ2人とも」

 

「ファイトなの〜」

 

それぞれの声援を受けて、僕たちは試験会場を後にした。

 

 

 

 

「……こっからだぞ。準備はできてるか?」

 

「うん。こっちはOK、いつでも行けるさ……!」

 

「流石だな。それでこそ“俺”の相棒だ」

 

「それはどうも」

 

「んじゃ、アキ……」

 

「(コクッ)ハル……」

 

「「行くぜ(よ)!!」」

 

 

戦闘モードに入った俺たちは、掛け声と共に戦場へ向かった。

 

 

See you next stage……




「第6話はこんな感じ。やっと試召戦争に取り掛かれるぞ!」

「早い段階で京先輩と虎千代先輩たちが出たのにはびっくりだよ。作者も思い切ったことするね」

「あくまでメインは僕たち2年生だけど、3年生sideも出番を作れたら良いなって思ってるよ」

「相変わらずの不定期更新だけど、なるべく投稿が途切れないように善処するそうだから、気長に待ってあげてね」

「では! また次回に会おうね♪」

「シーユー♪」



晴陽「Dクラスと戦うFクラスはやはりと言うべきか、点数の差で押されるも、俺たちを始めとした首脳陣で血路を開く。そんな中、美波たちの前にあの女が立ち塞がった。待ってろよ美波、ノエル、クルト! そいつの相手は俺がする!」


晴陽「次回ッ!『バカとテストと召喚獣withグリモア!』、『奮戦』。 Let's go……fight!!」


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第7話 奮戦

「前回のあらすじッ!」

宣戦布告後の昼休みを経てついに始まる試召戦争。回復試験の点数もそこそこに、僕とハルは戦場へ駆け出す。
Fクラスのデビュー戦……、派手に行くよ!


〜Fクラス本陣〜

 

 

明久side

 

 

「来たな明久、晴陽」

 

僕とハルは各部隊の状況の確認の為、雄二のいる本陣に到着した。護衛として龍季がそばについている。

 

「ああ。それで状況はどうだ、雄二」

 

ハルの話し方が変わっているのを見て、雄二は少し驚いたような表情を見せたが直ぐに戻ってこう伝えた。

 

「秀吉が率いる先攻部隊が松島の部隊と、島田が率いる第2部隊がそれぞれ交戦中。いずれも援護が必要だ」

 

「OKだよ雄二。じゃあ早速行くからね!」

 

「頼むぞ2人とも」

 

「雄二のことは俺に任せな!」

 

2人の激励を背に僕たちは前線へと走って行った。

 

 

「ハル、君は美波たちの援護に向かって。僕は秀吉たちのところに行く」

 

「みちるがいるところだな。大丈夫か?」

 

「わからない。でも行かなきゃみんなが危ない」

 

「そうか。俺もだけど、無理はするなよ」

 

「うん。ハルも気を付けて」

 

こうして僕たちは別行動を取る。さて。みちるが相手だとちょっとキツイけど、やってみますか。

 

 

明久side out

 

 

 

 

 

秀吉side

 

 

「……戦況は不利」

 

「うむ……。じゃがあと少しで援護が来る。それまで持ち堪えるのじゃ!」

 

『『『『『了解!!!』』』』』

 

わしらは松島の部隊と交戦していた。とはいえ流石は上位クラス、実力が2枚も上手じゃ。

全力でないとはいえ、わしと康太と岸田と須川は防戦を強いられている。

 

「くっ! Fクラスのくせに小賢しいな。いい加減やられろよ!」

 

「お生憎様。やられろと言われて、はいそうですかってやられる馬鹿はいないわよ!」

 

それでも操作技術でなんとか凌いでいたときだった。

 

「あたしに任せて! 連中を一気に吹き飛ばすよ!」

 

「頼むぜ松島さん!」

 

松島の召喚獣が右腕を構える。左手をよく見ると、そこには腕輪がしてあった。

 

「マズイ! みんな離れるのじゃ!!」

 

「「「ええ (……承知)(わかった)!!」」」

 

「遅いよ! 腕輪発動、“ファイア・バースト”!!」

 

 

 

現代国語

 

 

Fクラス

 

木下 秀吉:32点

 

土屋 康太:9点

 

岸田 夏海:28点

 

須川 亮:16点

 

Fクラスモブ×6:0点

 

 

 

Dクラス

 

松島 みちる:304点

 

Dクラスモブ×9:平均118点

 

 

松島の腕輪による攻撃で、一気に6人が戦死する。わしと康太と岸田と須川も何とか回避したが爆風の余波でダメージを受けた。

 

 

 

「戦死者は補習ぅぅぅッ!!」

 

「鉄人だ! やめてくれ、補習室に行きたくない!」

 

「諦めろ、捕虜は全員戦争終了まで特別講義だ! いつ終戦するかはわからんが、それまできっちり指導してやる!」

 

「お願いします、見逃して! あんな拷問、耐えられない!!」

 

「拷問? 違うな、これは立派な教育だ! 喜ぶといい。終わる頃には趣味は勉強、尊敬するのは二宮金次郎といった理想的な生徒にしてやるぞ!!」

 

「それは教育じゃなくて洗脳……、いやぁぁぁぁぁッ!! 誰か助けてぇぇぇぇぇぇッ!!!」

 

 

西村先生が戦死した生徒(クラスメイト)たちを担いで補習室へと連れて行った。ふと思うんじゃが、あんな風に纏めて担いで行ける西村先生は人間なんじゃろうか?

 

 

「くっ……。康太、岸田、須川よ。大丈夫かの?」

 

「……正直、厳しい」

 

「あたしも。これ以上は流石に……」

 

「俺も限界だ」

 

「みんな! 一気に決めるよ! 夏海ちゃん、あたしたちも負ける訳にはいかないの。悪く思わないでね!」

 

「ここまでなの……?」

 

多勢に無勢、その上満身創痍。打つ手がないまま、戦死を覚悟したときじゃった。

 

 

「やあみんな、待たせたね」

 

「「「「明久(吉井)!!」」」」

 

 

わしらの親友が助けに来たのじゃ。

 

 

 

秀吉side out

 

 

 

 

 

 

明久side

 

 

「やあみんな、待たせたね」

 

「「「「明久(吉井)!!」」」」

 

僕は先攻部隊の交戦地点にたどり着いた。あと少し遅れていたら、秀吉たちが戦死していたところだ。

 

「すまぬ明久。部隊の半数以上が戦死してしまって、残ったのはわしらだけじゃ」

 

「ええ。悔しいけど、これ以上は限界よ」

 

「でも無事で良かったよ。あとは僕に任せて、秀吉はみんなと撤退するんだ」

 

「了解なのじゃ」

 

「わかったわ」

 

「……委細承知」

 

「頼んだぞ」

 

そう言って秀吉たちを後方へ下がらせた。さて、みんなが粘ってくれたんだ。僕も頑張らないとね。

 

「Fクラス吉井明久。ここにいるDクラス全員と現代国語で勝負を申し込みます!」

 

『『『な、なんだと!!』』』

 

「本気なの、明久くん?」

 

「うん。本気だよ、みちる。試獣召喚(サモン)ッ!!」

 

 

 

現代国語

 

 

Fクラス

 

吉井 明久:75点

 

 

魔法陣から僕の召喚獣が姿を見せた。黒いロングコートを基調とした戦闘服を身に纏い、大太刀を装備している。

 

「ねぇ明久くん。点数低くないかな?」

 

「みちる。これにはちょっと訳があってね……」

 

「そう。……わかった、明久くんが良いならそれ以上は聞かないよ。みんな、点数が低いからって油断しないでね!」

 

『『『『了解ッ!!』』』』

 

みちるは僕の点数に疑問を持ちながらも、気持ちを切り替えて自分のクラスメイトたちを指揮する。

 

「覚悟しろ吉井! 1人で勝負挑んだことを後悔させてやる!!」

 

「行くぜ!」

 

Dクラスの生徒2人が突撃して来た。

 

「遅い!」

 

彼らの攻撃を即座に避けて、それと同時に大太刀の一撃を急所に当てる。

 

 

現代国語

 

 

Dクラス

 

DクラスモブK:0点

 

DクラスモブP:0点

 

 

 

「やられた!?」

 

「そんな。こっちの攻撃を当てる前にやられるなんて……」

 

自分たちより点数が低い召喚獣にやられたことで動揺が走る。

 

「点数が低くても操作技術を駆使するのと、急所狙いを心掛ければ戦えるのさ!」

 

「代表の言った通り、観察処分者とはいえ只の馬鹿じゃないってことか!」

 

「怯むな! 確かに2人やられたが、数ではまだこっちが有利なんだ。みんなで攻めよう!」

 

「そう言う訳だから明久くん。悪いけどここで退場してもらうよ!」

 

みちるがクラスメイトと共に、僕を取り囲んで攻め落とそうとする。

 

「うーん。これはちょっと分が悪いかな?」

 

「なら降参するの?」

 

「その気はないよ。どうやら僕にも援護が来たみたいだからね」

 

「えっ?」

 

「アキくん!」

 

 

この言葉と共に現れたのは智花だった。

 

 

 

明久side out

 

 

 

 

 

智花side

 

 

「アキくん!」

 

「やっと来たね、智花。回復試験は終わったの?」

 

「バッチリだよ! 夏海ちゃんたちは無事だった?」

 

「うん。もう撤退したから大丈夫」

 

「あとはみちるちゃんたちと戦えば良いんだよね?」

 

「そう。智花はみちるをお願い。僕は残りのメンバーを相手するよ!」

 

「OKアキくん! 行くよ、試獣召喚(サモン)ッ!!」

 

 

 

現代国語

 

 

Fクラス

 

南 智花:401点

 

 

 

 

魔法陣からピンクと白の魔法少女風の戦闘服を身に纏い、両手剣を装備したわたしの召喚獣が姿を見せた。

 

「勝負だよ、みちるちゃん!」

 

「智ちゃん! あたしだって負けないから!」

 

わたしとみちるちゃんは、対峙してしばらく睨み合った。そして次の瞬間……。

 

 

「「やあッ!!」」

 

 

お互いの得物をぶつけ合う。威力ではわたしの方が上だけど、リーチではみちるちゃんの方が有利だ。

 

「くっ……!」

 

「点数ではそっちに分があるけど今回はわたしが勝たせてもらうよ、智ちゃん!」

 

できれば使わずに倒したかったけど……、仕方ないね。

 

「腕輪発動、“ファイア・ショット”!!」

 

腕輪(ソレ)を使うのはわかってたよ!」

 

腕輪の攻撃を回避された。でもこれで良い。

 

「ううん、ファイア・ショットは牽制なの。だからわたしの狙いはコレだよ!」

 

「ま、まさかッ!」

 

「ええいッ!!」

 

回避直後の一瞬の隙を見逃さずに一気に踏み込み、両手剣で胴体を刺し貫いた。

 

 

 

 

 

現代国語

 

 

Fクラス

 

南 智花:298点

 

 

 

Dクラス

 

松島 みちる:0点

 

 

 

「わたしの勝ちだよ、みちるちゃん」

 

「そうだね、智ちゃん。もう少しであたしが勝ちそうだったけど」

 

「点数的にわたしが有利だったから勝てたの。同じ条件だったらわからないよ」

 

「だけど良い勝負だったよ。また戦おうね」

 

「うん!」

 

「終わったようだね」

 

アキくんが声を掛けて来た。どうやらアキくんの方も終わったみたいだ。

 

「すごいね明久くん。数では不利だったのにみんな倒しちゃうなんて」

 

「それ程でもないさ」

 

「今回は負けたけど、次はあたしが勝つよ!」

 

「僕たちも負けるつもりはないからね」

 

「話は終わったな? 戦死者は補習だぞ」

 

どこからともなく現れた西村先生に担がれたみちるちゃんたちを見送って、わたしとアキくんは改めて顔を見合わせた。

 

「お疲れ、智花。間に合って良かった」

 

「えへへ。アキくんにはまだ倒れて欲しくなかったからだよ」

 

「ありがとう。でもまだ終わってないから先を急ごう」

 

「わかったよ、アキくん!」

 

 

そしてわたしとアキくんは、合流地点を目指して戦場を駆けて行った。

 

 

智花side out

 

 

 

 

 

晴陽side

 

 

俺は美波たちを援護する為に、戦場を動き回っていた。そしてついに見つけたのだが、残っているのは美波とクルトとノエルだけだった。

しかもDクラスの誰かと交戦中なので、一先ず様子を見てみることにした。

 

 

 

生物

 

 

Fクラス

 

島田 美波:51点

 

クルト・アードラー:39点

 

冬樹 ノエル:48点

 

 

 

Dクラス

 

清水 美春:102点

 

 

 

「ミナミッ!」

 

「美波ちゃん!」

 

「大丈夫よクルト、ノエル。あなたたちには指一本触れさせないわ!」

 

「ああ……。冬樹さんと一緒にそんな豚野郎も守ろうとするとは、なんて優しくて凛々しいのでしょう、お姉様……」

 

戦っている相手は……清水さんか。これはまた厄介なのに絡まれてるな。

 

「美春。もういい加減にウチのことは諦めてくれないかしら?」

 

「嫌です! 美春はまだ諦めません!」

 

「何度も言ってるでしょ! ウチは普通に男子が好きなんだから!」

 

「そうだよミハル! もうやめようよこんなこと!」

 

「黙れ! 貴様の意見は聞いてないです、この豚野郎!!」

 

うわぁ……、何この修羅場は。マジで近付くの躊躇うぞ。

 

「えっと……、あたしは無視ですか?」

 

「心配しなくても大丈夫です、冬樹さん。お姉様と一緒にあなたも愛して差し上げます」

 

「で、できれば遠慮したいなぁ……」

 

「マズイわ! このままじゃウチらの貞操が危ない!!」

 

「安心してください。何も怖いことはありません、全てを美春に委ねてくださいまし!」

 

全然安心できねぇ! おい清水さん。君は一体何をする気なんだ!?

 

「やめてミハル! どうしてもミナミとノエルを連れて行くなら、ボクを倒してからにして!!」

 

「「クルト!!」」

 

クルトが美波とノエルの前に立ち塞がった。これには清水さんも少し驚いたようだが、

 

「言われなくても貴様は最初から排除するつもりですわ。ここで死になさい、クルト・アードラー!!」

 

そう言って剣をクルトの召喚獣に突き立てたときだった。

 

「そこまでだ清水さん! 試獣召喚(サモン)ッ!!」

 

 

生物

 

 

Fクラス

 

真境名 晴陽:98点

 

 

 

 

召喚獣を呼び寄せて、清水さんの攻撃からクルトを守った。俺の召喚獣は制服に紫の陣羽織を纏った戦闘服と日本刀を2本装備している。

 

「「晴陽(くん)ッ!!」」

 

「ハルヒッ!!」

 

「き、貴様ッ! 邪魔をするなッ!」

 

突然の乱入に、清水さんが怒りを見せる。

 

「助けに来たぜ美波、ノエル。それから良くやったなクルト、男らしかったぞ。あとは俺に任せろ!」

 

「「「うんッ!」」」

 

「さて清水さん、話はある程度聞かせてもらった。好きだから諦めたくない気持ちは理解できる。でも、相手の気持ちを無視するなんてのはどうかと思うぞ」

 

「うるさい! お姉様だって美春のことが好きなんです! きっとそうだ、そうに決まってます!!」

 

ダメだ。興奮し過ぎて俺の話を聞こうとしない。

 

「そんな一方的に好意を押し付けていい訳ないだろ! ふざけんな!!」

 

「……コロス。ミハルノジャマヲスルヤツハ、ミンナコロシテヤル……!!」

 

完全な殺戮マシーンへと変貌を遂げる清水さん。こうなってしまったら時間を掛けずに速攻で仕留めたいところだ。多分大丈夫だろうけど。

 

「シネ、ブタヤロウ!!」

 

「おっと!」

 

ものすごい勢いで突撃して来た。当たればちょっとヤバイかもしれないけど、攻撃が直線的なので避けやすい。

 

「来い。次で終わりだ」

 

「イワズトモ……!」

 

再び突っ込んで来た清水さんを回避と同時に急所を斬り裂いて戦死させた。

 

 

 

生物

 

 

Fクラス

 

真境名 晴陽:98点

 

 

 

Dクラス

 

清水 美春:0点

 

 

 

 

「戦死者は補習ぅぅぅッ!!」

 

「西村先生。清水さんには道徳の補習も追加でお願いしますね」

 

「いいだろう。さあ来い清水、これからたっぷりと指導してやるからな」

 

「覚えておいてください真境名晴陽、クルト・アードラー! それとお姉様! 美春は絶対に諦めませんからね!!」

 

正直諦めて欲しい。美波は間違いなく、君を恋愛対象として見てないから。

 

「ふぅ……。間に合って良かった」

 

「ありがとう晴陽。アンタのおかげでウチとノエルの貞操は守られたわ」

 

「どういたしまして♪」

 

「ところで晴陽くん。ちょっと話し方が変わってるけど、どうしたの?」

 

ああ、この3人は初めて見るのか。これは説明しないとな。

 

 

 

〜説明中〜

 

 

 

「そうなんだ。それなら納得だね」

 

「わかってくれたら嬉しい。3人とも点数が残り少ないだろ? 早く回復試験受けて来な」

 

「ハルヒはどうするの?」

 

「俺はアキと合流する。まだ敵も残っているしな」

 

「わかったわ。じゃあ、あとはお願いね」

 

「回復したらあたしたちも来るよ!」

 

「ああ!」

 

 

サムズアップを返して美波たちと別れる。

それから俺はアキと合流する為に、この場を離れて行った。

 

 

See you next stage……




「Dクラス戦の前半は僕と智花とハルが頑張る感じだったね」

「清水さんは早く片付いたけど、アレは正直ホラーだったな……」

「お疲れだね、よくやった……と思うよ」

「ありがと」

「次回はDクラス戦のクライマックス。締めくくるのは……、おっと次回のお楽しみ!」

「それじゃあまた会おうね!」

「シーユー♪」



明久「清水さんを退けたハルが僕と智花と合流する。途中で蝶影ちゃんも従えて、Dクラス代表の源二を捉えたけど多勢に無勢で窮地に立つ。……しかしこの戦いを決めたのは彼だった!」


明久「次回ッ!『バカとテストと召喚獣withグリモア!』、『決着』。 Let's go……fight!!」


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第8話 決着

「前回のあらすじッ!」

回復試験も程々に戦場へ飛び出した僕とハルは、それぞれの行き先でハルが清水さんを、僕は智花と共にみちるを撃破した。
ここからは、味方の援護を待ちながらDクラス本陣を目指して行く……!


晴陽side

 

 

「アキー、智花ー!」

 

「「ハル(晴陽くん)!」」

 

「上手く行ったんだな、2人とも?」

 

「もちろんさ!」

 

美波とクルトとノエルと別れた俺は、先に合流ポイントで待っていたアキと智花と合流した。

 

「みちるちゃんがいたけど、何とか勝てたよ」

 

「良し、作戦の第1段階は成功だ。援護が来るまでにできるだけ戦力を削っていくぞアキ、智花!」

 

「「了解だよ!」」

 

 

 

 

そして現在。先へと進んだ俺たちは、崩壊寸前の味方部隊から戦況を引き継いで戦っていた。

 

 

「うおおおッ!!」

 

「てやあああッ!!」

 

「逃がさないッ!!」

 

『『『『なんだとぉぉぉッ?!!』』』』

 

 

 

 

現代国語

 

 

Fクラス

 

真境名 晴陽:61点

 

吉井 明久:49点

 

南 智花:278点

 

 

 

Dクラス

 

Dクラスモブ×8:0点

 

 

 

「良し……。これで結構片付いたか?」

 

「前線の方はね。だけど、本隊の方に戦力が集中してるハズ。昇瑠がいないのが何よりの証拠だよ」

 

「これだけ倒してもまだなのね……。アキくん、晴陽くん。大丈夫?」

 

「流石にちょっと危ないから、一旦下がらせるよ」

 

「ああ。俺もだ」

 

点数にまだ余裕がある智花が心配しているので、俺たちは召喚を解く。本陣にたどり着くまで戦死できないからな。

 

「くっ、なんて強さだ! これじゃ俺たちまでやられてしまう!」

 

「こうなったら、数学の船越先生を呼ぼう! それまで現代社会のフィールドで乗り切るぞ!」

 

『『『『了解、負けてたまるか!!』』』』

 

仲間の戦死を目の当たりにするも、Dクラス生徒たちの戦意は折れず、寧ろ奮い立っていた。

 

「アキ、智花。アイツら、数学勝負に持ち込むつもりだぞ。ここはひとつ、やってみるか?」

 

「僕たちが殲滅するのが先か、あっちが有利になるのが先か……でしょ? 良いじゃない、やってやろうよ! 智花もできるよね?」

 

「うん! わたしもOKだよ!」

 

「じゃあ2人とも、始めるぞ……」

 

「「了解ッ!!」」

 

覚悟を決めた俺たちは、再び召喚獣を呼び寄せようとしたそのときだった。

 

 

“ピンポンパンポーン♪”

 

 

『あー、あー。船越先生、船越先生』

 

この声……、確か近藤だったか。何をする気だ?

 

『2年Fクラス吉井明久くんと真境名晴陽くんが体育館裏で待っています』

 

な……ッ!?

 

『生徒と教師の垣根を越えた、男と女の大事な話があるそうです。至急体育館裏へ来てください』

 

「「……あの馬鹿野郎があああッ!!!」」

 

マジで何やってくれちゃってんの!? 船越先生と言えば婚期を逃して、ついには学園の生徒にまで単位を盾に交際を迫るようになった、学園屈指の危険人物だぞ! 俺たちの人生を弄ぶつもりか!

 

「ハハッ。ヤバイね、コレ……」

 

「ああ、マジヤベェよ……」

 

どうにか平常心を保とうとするが、手が震えているのと冷や汗をかいているのがハッキリわかる。今すぐにでも逃げ出したいが、生憎今は戦争真っ最中。勝手なことはできない。

 

“ギュッ”

 

「大丈夫だよアキくん、晴陽くん」

 

「「智花……」」

 

智花が俺たちの手を握っている。それだけでも気持ちが大分落ち着いた。

 

「わたしがそばにいるから。心配しないで」

 

「うん……。ありがとう、智花」

 

「OK、仕切り直しだ……」

 

『繰り返します、船越先生。吉井明久くんと真境名晴陽くんが待っています。至急……』

 

『『ふざけないでぇぇぇッ!!!!』』

 

『え!? なんで桃世さんと環ちゃんが……ってぎゃああああッ!!!!』

 

俺たちが気を取り直すと、ドアを開く音と近藤の悲鳴が聞こえた。もう2人別の声も聞こえるが……、ももと環か! 一体なぜここに……?

 

『あー船越先生、今の放送はこの生徒の照れ隠しです。当生徒は放送室で待っています。彼の想いを受け止めてあげてくださいね』

 

「た、助かった〜……」

 

「良かったね♪」

 

「ああ。2人とも頼りになるよ」

 

窮地を救った大切な想い人と妹に、俺たちは心から感謝するのだった。

 

 

晴陽side out

 

 

 

 

 

 

 

 

飛彩side

 

 

「暇だね、ももちゃん」

 

「仕方ないよ、たまちゃん。自習だもん」

 

「それならコレを見てみるか? 2人とも」

 

FクラスがDクラスに試召戦争している為、Aクラスは自習となった。自習課題を終わらせた俺は、ももと環に読んでいたものを見せる。

 

「Fクラス生徒のリスト? コレがどうかしたの、ひーくん?」

 

「ハルたちはいずれAクラス(ここ)に来るハズ。その為にメンバーの把握と対策が必要だと思ってな」

 

「「なるほどね」」

 

「面白そーなことしてますね、唯島」

 

「水無月。丁度良い、お前たちも目を通してくれ」

 

風子たちも近付いてきたので、Aクラス首脳陣が俺の周りに集まって来る。

 

 

「今回の試召戦争、FクラスとDクラスのどっちが勝つと思う?」

 

『『『『Fクラスだ(ね)(ですね)(だよ)(だな)』』』』

 

久保の質問に全員が同時に答えた。

 

「やっぱりそう思うんだね?」

 

「当然だよ久保くん。お兄ちゃんと明久くんがいるもん」

 

「……うん。雄二もいるから」

 

「それをゆーなら、蔵馬と冬樹の妹さんもいますからねー」

 

環と霧島と風子がこう言うと、みんな納得したような表情を見せた。Fクラスの面子を見ればそう思うのも当然だろう。

 

 

 

“ピンポンパンポーン♪”

 

 

 

こんな風に話していると、不意に放送が聞こえてきた。

 

『あー、あー。船越先生、船越先生』

 

スピーカーからFクラス生徒の声が流れたのでおそらく作戦の一環だろう。しかし、その次に聞こえたのは……。

 

『2年Fクラス吉井明久くんと真境名晴陽くんが体育館裏で待っています』

 

ん? なんだ、これは?

 

『生徒と教師の垣根を越えた、男と女の大事な話があるそうです。至急体育館裏へ来てください』

 

『『…… あの馬鹿野郎があああッ!!!』』

 

「……今のは何?」

 

「船越先生といーましたね?」

 

「うん。“あの”船越先生だね」

 

「それは色々とマズイのではありませんか?」

 

「ああ。ハルとアキが危ない」

 

 

この放送が坂本の指示なのか一瞬考えたが、ヤツが自分の手札を捨てるマネをしてまでやるとは思えない。2人の叫び声が聞こえたことも考慮すると、放送を流しているヤツの独断だろう。

 

 

「……ひーくん」

 

「どうした環……、ハッ!」

 

環が席を立つ。笑顔ではあるが目が笑ってない上に、紅いオーラを発しているように見える。

 

「あたし、ちょっと用事ができたから行って良いよね? ね?」

 

「あ、ああ……。だが程々に頼むぞ?」

 

「大丈夫♪」

 

「たまちゃん! あたしも行っていい?」

 

「……良いよ、ももちゃん! 一緒に行こ!」

 

「うん!」

 

「ひーくん、あとはお願い」

 

そう言って環とももは教室を出て行った。俺がやるつもりだったのだが……。まあ良い、2人に任せよう。

 

 

飛彩side out

 

 

 

 

 

 

ももside

 

 

あたしはたまちゃんと一緒に、放送室へ向かっていた。不思議と体が温まっているのがわかる。

 

「ねえ、ももちゃん」

 

「何? たまちゃん」

 

「こういうの、好きじゃないって言ってたから意外だって思ったの。ももちゃんは優しいから……」

 

「でも、あたしはそこまでできた子じゃないよ? 嫌なことされたり、大切な男性(ひと)が危険な目に遭ったら怒ったり助けに行ったりするよ。今みたいにね」

 

「そっか……。とりあえず急ごうよ。こんなことをするお馬鹿さんは許さないんだから!」

 

「うん。あたしも同じ気持ちだよ!」

 

話している内に放送室の前まで来た。そして……。

 

『繰り返します、船越先生。吉井明久くんと真境名晴陽くんが待っています。至急……』

 

「「えーいッ!」」

 

勢いよく扉を開けて突入する。

 

『『ふざけないでぇぇぇッ!!!!』』

 

『え!? なんで桃世さんと環ちゃんが……ってぎゃああああッ!!!!』

 

そして、放送を流していた男子生徒を確保した。

 

『あー、船越先生。今の放送はこの生徒の照れ隠しです、当生徒は放送室で待っています。彼の想いを受け止めてあげてくださいね』

 

続けて、船越先生へ向けて放送を流した。これでハルくんと明久くんは大丈夫だろう。

 

「じゃ、戻ろっか?」

 

「そうだね、たまちゃん」

 

目的を果たしたあたしとたまちゃんは、Aクラスへ戻って行った。

 

 

ももside out

 

 

 

 

 

明久side

 

 

態勢を整えた僕たちは、改めてDクラス中堅部隊と向き合っていた。

 

「明久くーん、晴陽くーん、智ちゃーん! お待たせなのー!」

 

「「「宵宮さん(蝶影ちゃん)!」」」

 

時を同じくして宵宮さんも参戦する。良いタイミングで援軍が来たと思う。

 

「丁度良いところに来たね宵宮さん。助かったよ」

 

「うん! ちかげ、頑張るのー! 試獣召喚(サモン)ッ!!」

 

 

 

現代社会

 

 

Fクラス

 

宵宮 蝶影:446点

 

 

『『『『な、なんだあの点数は!?』』』』

 

「時間稼ぎした甲斐があったな」

 

 

宵宮さんの点数に驚きを隠せないDクラス生徒たちを見て、ハルはこう言った。

魔法陣が形成され、そこから宵宮さんの召喚獣が現れる。青いウェイトレス風の衣装を纏ったデフォルメ宵宮さんといった姿だ。で、肝心の武器はと言うと……。

 

 

 

 

「……ねぇ蝶影ちゃん。それって……」

 

「これ〜? 焼きそばパンだよ〜」

 

『『『『焼きそばパンんんんッ?!!!』』』』

 

 

 

この発言に、僕も含めた全員が驚きの声を上げる。

 

 

 

「びっくりさせやがって……。これなら大したことないな!」

 

「点数が高くても、所詮は見掛け倒しだ。吉井たちの前に宵宮さんをやるぞ!」

 

『『『『ああ(ええ)!!』』』』

 

「……アキ」

 

「うん。無茶だけど……ッ!」

 

Dクラス生徒たちの召喚獣が攻め込むのを見て、僕とハルが再び召喚しようとしたときだった。

 

 

「ここはちかげがやるのー!」

 

宵宮さんが両手を広げてこう告げる。

 

「大丈夫、蝶影ちゃん?」

 

「うん! 絶対勝つのー!」

 

ちょっと不安だけど、本人はやる気なのでここは任せてみることにした。

 

「1人でやる気か?」

 

「ふん、寧ろ好都合だ。武器が食べ物なら苦労はしないからな!」

 

「ああ〜、焼きそばパン甘く見てるの〜。後悔しても知らないよ〜?」

 

宵宮さんの召喚獣が焼きそばパンから麺を取り出して、天へと投げる。そして次の瞬間、

 

「いけぇ〜、“そ〜ば〜レイン”ッ!!」

 

『『『『うわあああッ! なんだこれは、体が動かない(わ)!!』』』』

 

投げ入れた麺が召喚獣めがけて降り注ぐ。もがけばもがく程絡み付いて身動きが取れずにいた。

 

「「「す、すごいな(ね)……」」」

 

「決めちゃうの〜! “そ〜ば〜プレス”ッ!!」

 

今度は焼きそばパンそのものを投げ入れた。再び見えて来る頃には巨大化しており、急降下で落ちて来たソレは相手の召喚獣たちをまとめて押し潰した。

 

 

 

 

Dクラス

 

Dクラスモブ×10:0点

 

 

 

「戦死者は補習ぅぅぅッ!!」

 

『『『『いやあ! こんな屈辱的な負け方いやああああああああッ!!!』』』』

 

「「「…………」」」

 

戦死したDクラス生徒たちを一気に担いで行く西村先生を見送りながら、僕たちは彼らに同情した。

宵宮さんが味方で良かったと心の底からそう思ったよ。

 

「焼きそばパンは最強なの〜」

 

「あはは……、そうだね……」

 

「さて。そろそろ本陣に乗り込むぞアキ、智花、宵宮さん。下手に討ち取ろうとか考えるなよ」

 

「まだここに来てない誰かにやらせる……ってことで良いよね?」

 

「そう。俺たちはあくまで源二の気を逸らすことに集中するんだ」

 

「「「わかった(よ)(の〜)」」」

 

そして僕たちは本陣へ向かう。勝利まであと一息だ。

 

 

 

〜Dクラス本陣〜

 

 

「むっ! 来たか明久、晴陽!」

 

「ああ、宣言通りにな!」

 

「「「「Fクラス真境名晴陽、吉井明久、南智花、宵宮蝶影がDクラス代表平賀源二に……」」」」

 

『『『やらせるか(やらせない)! 試獣召喚(サモン)ッ!!』』』

 

 

世界史

 

 

Fクラス

 

真境名 晴陽:93点

 

吉井 明久:98点

 

南 智花:204点

 

宵宮 蝶影:241点

 

 

 

Dクラス

 

玲泉 昇瑠:407点

 

玉野 美紀:138点

 

Dクラス近衛部隊×6:平均109点

 

 

 

待ち構えていた昇瑠と玉野さんを筆頭に、近衛部隊が召喚獣を呼び寄せた。

 

「この場に辿り着いたことを嬉しく思います。しかし俺の前に立ち塞がるなら、ご友人もいようと容赦はいたしません、蝶影様!!」

 

「流石だと褒めておこう明久、晴陽。だが近衛部隊を破っても、消耗が激しいのは目に見えている。お前たちの負けだ」

 

追い詰められて苦い表情をする。源二の言う通り、普通なら僕たちはここで終わりだ。……“普通”なら、ね。

 

「だから後は頼むぜ、晴明!」

 

「なんだとッ!?」

 

「任せておきな、ハルッ!」

 

ハルの掛け声と共に晴明が到着する。

 

「蔵馬……晴明ッ!!」

 

「悪い平賀、これも戦法だからな。Fクラス、蔵馬晴明。Dクラス代表平賀源二に世界史勝負を申し込むぜ! 試獣召喚(サモン)ッ!!」

 

 

世界史

 

 

Fクラス

 

蔵馬 晴明:476点

 

 

 

Dクラス

 

平賀 源二:153点

 

 

 

「くっ……!」

 

晴明の召喚獣が急速接近し、源二の召喚獣の急所を蹴り飛ばして一瞬で勝敗が決まった。

 

「戦争終結! 勝者Fクラス!!」

 

どこからともなく現れた西村先生が終結を告げる。ここに、Fクラス対Dクラスの戦争はFクラスの勝利で幕を下ろした。

 

 

See you next stage……




「無事に(?)Dクラス戦終わったよー♪ どうだった?」

「そう、“やっと”だよ? この先思いやられるよ……」

「次はBクラス戦……なんだけど、その間にAクラスsideの話をやる予定だって」

「今回もそうだったように、多分また遅れるだろうから読者の皆様は気長に待ってくれると嬉しいな☆」

「それじゃあ、また次回に!」

「シーユー!」



明久「晴明の一撃で勝利を収めた我らがFクラスは、今後の戦争の布石としてDクラスと同盟を結ぶ。勝利の余韻が残る中、Aクラスの七島真志(ななしままさし)が現れた! 同時に其々の思惑が交差する……!」


明久「次回ッ!『バカとテストと召喚獣withグリモア!』、『戦後対談』。 Let's go……fight!!」


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第9話 戦後対談

「前回のあらすじッ!」

Dクラス本陣を目指す道中、味方の裏切り(?)に遭いピンチになっちゃったけど、ももと環のお陰で僕たちの貞操は守られた!
蝶影ちゃんとも合流後、またしても窮地に。しかし最後はヒーローの如くやって来た晴明の手で勝利を収める……!


晴陽side

 

 

「戦争終結! 勝者Fクラス!!」

 

『『『『よっしゃああああああッ!!!』』』』

 

西村先生が戦争終結を告げると共に、クラスメイトたちの歓声が上がる。

 

「すげぇ……。俺たちDクラスに勝ったんだ!」

 

「坂本が言ってたことは本当だったな! 吉井と真境名様様だぜ!」

 

「まったくだ!」

 

(調子良いよ君たちは……)

 

(うん。始まる前は、不満言ってたのにね)

 

戦争開始前と今とでは、明らかな手のひら返しっぷりに呆れながらも、褒められていることに悪い気はしなかったので心の中に留めておいた。

 

「やられたよ。まさか蔵馬までFクラスだったなんてな……」

 

「ごめん、源二」

 

「気にするなよ。お前たち以外にも注意を向けなかった俺のせいだから、晴陽が謝ることじゃない」

 

こう答える源二が眩しく見えるよ。連中もこの潔さ、見習って欲しいな。

 

「それじゃあ早速だけど、戦後対談に入ろうか坂本」

 

「構わんぞ」

 

「DクラスはFクラスに設備を明け渡す。でも今日はもう遅いから、明日でも良いか?」

 

「その必要はないぞ平賀。俺たちはDクラスの設備を奪うつもりはないからな」

 

これは戦争前のミーティングで取らないと決めていたことだ。もちろん、僕たちの目当ては設備なんかじゃない。

 

「おい、どういうことだ坂本!」

 

「せっかく苦労したのに、何もなしかよ!」

 

「落ち着け。……良いか、戦争前に言ったことを思い出せ。俺たちの目標はAクラスだ。もしここで設備を手に入れたら、上を目指さなくなる連中が出て来る。それだけは避けたい」

 

この言葉に、Fクラスの生徒たちがはっとする。ここで自分たちの目標を思い出したようだ。

 

「本当に良いのか、坂本?」

 

「そうだな……、それならひとつ条件がある。この戦争を和平による終結にする代わりにFクラスと不可侵条約を結んで欲しい」

 

「不可侵条約を? 何が目的だ?」

 

「必要に応じて、Fクラスの手伝いをしてもらう。安心しろ、悪いようにはしない」

 

「意図がよくわからないが……。……わかった、その条件飲もう」

 

雄二の申し出に源二は訝しげだったけど、少し考えた後納得してこう言った。

 

「交渉成立だな。よろしく頼む」

 

「ありがとう坂本。Aクラスとの試召戦争上手く行くよう、応援してるぞ!」

 

「お世辞でも受け取っとくぜ?」

 

「そんなことないさ。お前の策略と、晴陽と明久を筆頭に戦力が揃っているんだ。きっと勝機はあると思う」

 

「サンキュ、源二。ベストを尽くすよ」

 

「ああ。頑張れよ晴陽、明久」

 

僕たちにエールを送ると、源二はDクラスへ戻った。

 

「お前たち、ご苦労だった! 明日はBクラス戦に向けて補給試験をするから、今日は帰ってゆっくり休め!」

 

雄二がそう言うと、教室にいるFクラス生徒は支度をして帰って行く。それから僕たちFクラス首脳陣がこの場に残った。

 

「さて、改めて礼を言おう。晴陽、明久、晴明、南、宵宮。良くやった」

 

「ここでも双龍が活躍してくれたからな」

 

「そうね。あんたたちのおかげで勝てたって言えるわ」

 

雄二、龍季、夏海の言葉にみんながうんうんと頷いている。なんだかくすぐったい。

 

「ありがとう。だけどみんなが時間稼ぎをしてくれたから、僕たちも思い切って攻めることができたんだよ」

 

「(コクッ) それに思ってた以上にみんな操作が上手かったし、昇瑠とみちるのように手強い生徒もいて、楽とは言えなかったよね」

 

「ああ。何とか勝てたが、次回以降は今回のようにはいかないと思う。他のクラスにもAクラス並みの学力を持った生徒がいると考えた方が良い」

 

「そうか。……わかった、それなら以降の作戦を見直す必要があるな。お前たち、今度のBクラス戦は少し本気を出して臨んでくれ」

 

『『『『わかった(ぜ)(わ)(よ)(の〜)』』』』

 

僕とアキと晴明の言葉を聞いた雄二がBクラス戦の方針を告げると、みんな決意を新たに頷いた。

 

「随分と調子が良さそうだね」

 

すると声が聞こえたのでその方向を向くと、Fクラス教室の前に誰かがいるのが見える。

 

「君は……、誰だい?」

 

「通りすがりのAクラス生徒……、とでも言っておこうかな」

 

アキの問いに彼は淡々と答えた。

 

「君たちの目標は、僕たちAクラスだろう?」

 

「ほう……、なぜそう思う?」

 

「Dクラスとの試召戦争からおかしいと思ってたんだ。何せ試召戦争の後、設備の交換が行われていなかったからね」

 

「だったらどうする?」

 

「君たちが挑むのなら、そのときは僕が相手しよう。……Aクラスの生徒として!」

 

雄二との問答を経て、彼は僕たちに戦意を向けた。その発言に思わず何人か身構えたけど、

 

「安心してくれ、今戦う気はないよ。あくまで“戦う意思”があることを伝えに来ただけだからね」

 

こう言って彼は振り返ると教室に戻ろうとした、そのときだった。

 

「「まーくん(真志)ッ!」」

 

姫路さんと和希くんが彼を呼び止める。すると再び振り返ってこう言った。

 

「ああ。忘れる所だったよ瑞希、和希。Fクラス(そっち)に来たって聞いたけど、大丈夫かい?」

 

「はい! ここにいるみなさん、良い人ばかりですよ♪ 蝶影ちゃんもいますし」

 

「ボクも同じだぞ、真志ぃ」

 

「そう、それなら良かった……」

 

姫路さんと和希くんがこう言うと、さっきまでの態度とは打って変わって優しそうな表情を見せた。

 

「だが戦争となれば話は別。たとえ君たちが相手でも、手加減はしないからそのつもりでいてくれ。……それから、蔵馬くん」

 

「……なんだ、七島」

 

「失望したよ、君はこうなる前に止めるべきだった。なのに加担する側になるとは……。やはり僕たちは戦うべき運命(さだめ)か……」

 

「七島……ッ!!」

 

「せいぜい無様な姿を見せないようにすることだね。君たちと戦うときを待っているよ」

 

そう言って七島くんはFクラスを出て行った。彼が去った後は何とも言えない空気が漂っている。

 

「ねぇ瑞希ちゃん、和希くん。さっきの七島くんって人は知り合いなの?」

 

「はい、中学生の頃からの友達です」

 

「ボクと瑞希に対して優しいんだぞー」

 

ノエルの質問に対して、姫路さんと和希くんはこう答えた。なるほど、さっきの2人に対する態度を見れば納得がいく。

 

「でもみなさんには厳しそうでした。どうしてでしょうか?」

 

「……ハル、アキ」

 

「「晴明?」」

 

「悪い、風紀委員の活動があるから先行くわ。じゃあな、みんな」

 

姫路さんの言葉を耳に、晴明は荷物を纏めて教室を出て行った。

 

「「「「…………」」」」

 

「あー、うん……。じゃあ明日は予定通り補給試験だから、今日のところはもう帰って良いぞ」

 

雄二は帰るように伝えると、みんなも荷物を纏める。夏海は部活が同じ康太と一緒に出て行き(ついでにノエルと美波とクルトもついて行った)、僕はアキと智花と一緒に行って、飛彩とももと環を待つことにした。

 

 

晴陽side out

 

 

 

 

 

〜召喚システム制御兼実験室〜

 

 

???side

 

 

「Fクラスが勝ったようね、天」

 

「ええ。でも前例があるとはいえ、今年のFクラスは例年より強くないかしら?」

 

「でもそれはFクラスに限った話じゃないわ。DクラスにもAクラス並みの生徒がいたし、他のクラスも同じことよ」

 

「それもそうね、結希」

 

俺の隣で宍戸さんと如月さんがこのような会話をしている。本来ならFクラスに振り分けられた俺も試召戦争に参戦するハズだったが、「実験(テスト)」に協力して欲しいということで、今回は見送っていた。当然ながら教室にも来てないが、学園長からの了承は得ているので大丈夫だ。……多分。

 

「お疲れ様宍戸、如月。僕の方も終わったよ」

 

「ありがとう樋上(ひがみ)くん、―――くん。あなたたちが取ってくれたデータが新開発の腕輪の実用化に一歩近づくわ」

 

「礼に及ばないよ宍戸さん。俺も自分の召喚獣を操作することができて、お互い一石二鳥だろ?」

 

「そうね」

 

俺と一緒に実験室から出て来た色白の男子生徒は樋上夏彦(ひがみなつひこ)。爽やかそうな名前とは程遠い容姿で、周囲の印象もイマイチ(らしい)だが人当たりは割と普通で、意外と負けず嫌いな男だ。

 

「ねぇ、新型の腕輪ってなんだい? 俺の召喚獣を実験に使ったのと関係あるだろ?」

 

「それはまだ言えないわ、―――。でも近いうちに披露する……とだけ言っておくわよ」

 

「そうか、それならこれ以上は聞かないでおくよ。お披露目、期待しとくぜ」

 

「ええ、楽しみにしてて。それから、実験も今日でとりあえず修了よ」

 

如月さんの言葉に思わず顔が綻ぶ。

 

「じゃあ、次の試召戦争は参戦して良いってことだよな?」

 

「構わないわ」

 

確認の為に聞くと、宍戸さんはこう答えた。

 

「良し! Dクラス戦は出られなかった分、次の戦争は思い切り暴れるぞ!」

 

「今度戦争するときは僕たちのうち、誰かと戦うことになるだろう。まあ、僕は負けるつもりはないから覚悟しておくんだね、―――」

 

「私もよ」

 

「挑まれたら勝つ気で行くわ!」

 

「お手柔らかに頼むぜ?」

 

俺が奮い立つと樋上、宍戸さん、如月さんも戦意をみせる。待っててくれよハル、アキ。俺もそこへ行くからな!

 

 

???side out

 

 

 

 

 

同時刻 〜文月学園某所〜

 

 

???side

 

 

「Fクラスが勝ったッスね」

 

「俺っちは予想してたっすよ服部。あれだけ戦力が揃ってて、代表は坂本と来た。これで負けるのがおかしいっす」

 

「ボクも同意見だよ、―――。中でも真境名と吉井は連中のジョーカーだしな」

 

Fクラス対Dクラスの戦争を見届けていた俺っちは、恋人の楯野望(たてののぞみ)とクラスメイトの服部梓(はっとりあずさ)とこんな会話をしていた。真境名や吉井たちといずれ戦うかもしれないというのに、気持ちが高揚してるのを感じる。

 

「多分、Fクラスの次のターゲットはBクラスッス。自分はだいひょーに報告しますけど、お2人はどうするッスか?」

 

「それなら俺っちも行かせてもらうっす。良いだろ、望ん?」

 

「―――と一緒ならボクは別に構わないぞ」

 

「んじゃ、行くッスよ♪」

 

こうして俺っちたちはその場を離れた。君たちと戦うの楽しみにしてるっすよ真境名、吉井。

 

 

???side out

 

 

 

 

 

さらに同時刻 〜文月学園某所〜

 

 

???side

 

 

今回の試召戦争はFクラスが勝ったのね。これまでにも下位クラスが上位クラスに勝利するというのは前例はあったけど、今年は例年以上に戦力が充実しているわね。……わたくしの所属しているBクラスも充実度合いで言えば、Aクラスにも劣らないと言えるけど。

 

「きゅぅ!」

 

「あら、どうしたの?」

 

そばにいたわたくしの分身……召喚獣が立ち上がる。普通、召喚獣は教師の承認がなければ召喚できないが、わたくしの場合は、諸事情で学園内にいる場合に限って常時召喚できる特別仕様だ。もちろん、観察処分者の召喚獣と同様に物理干渉能力を持っている。

 

「きゅぅ!」

 

「そう……。あなたも感じているの? わたくしたちがFクラスと戦うことを」

 

(コクッ)

 

こう尋ねると召喚獣は頷く。基本的に召喚獣は召喚者の分身という側面を持つが、わたくしの召喚獣は他の生徒とは違って自我を持っているかのように行動している。これについては前例がないそうだ。

 

「行きましょう、相棒。為すべきことを成す為に」

 

「きゅぅ!」

 

Fクラスが攻めて来るのなら、この状況を利用するまで。そう考えたわたくしは行動を開始した。

 

 

???side out

 

 

 

 

 

飛彩side

 

 

Fクラス対Dクラス戦の結果は俺たちAクラスにも情報が届いた。首脳陣以外のクラスメイトたちからは驚きの声が上がっている。

 

「やはりFクラスが勝ったよーですね。戦力と坂本の策略が合わされば当然とも言えますが」

 

「……それで唯島、これからどうするの?」

 

「下位クラスとは言え、舐めてかかると足元を掬われる。操作技術の向上も兼ねて俺たちも試召戦争を仕掛けよう」

 

風子と霧島がこう言うと、今後の方針をみんなに伝えた。

 

「飛彩、どのクラスに戦争を仕掛けるんだ?」

 

「Cクラスだ。坂本は次にBクラスに仕掛けるだろう。確定じゃないが、どちらかが他のクラスと連携を取る可能性もある。それを封じるのと、Aクラス(俺たち)の実力を示す機会だからな」

 

「なるほど……」

 

「だからみんな、準備を怠らないでくれ」

 

怜の質問にこう答えると、みんなが頷いた。

 

「代表。僭越だけど僕の考えを聞いてくれないかな?」

 

「七島か。わかった、仲間の意見を聞くことも上の義務だ。それで、どうした?」

 

クラスメイトの男子、七島真志(ななしままさし)が話し掛けて来る。

 

「今試召戦争をするって話だけど、個人的にFクラスと戦うべきだよ」

 

「なぜそう思う?」

 

「新学期初日から試召戦争をする連中は、自分の欲の為に行動する迷惑なヤツらだからね。早いうちに抑え込むのが得策だと思うんだ」

 

「「「「「「!!!」」」」」」

 

七島の発言を聞いて、ももと怜とイヴと優子は顔を顰め、環とシドと霧島とディセに至っては怒りを露わにしている。

 

「おい七島! テメェ、俺や水無月が言ったことをもう忘れたのか!?」

 

「それにその口振りでは、真境名くんと吉井くんだけでなく、ノエルや他の訳あってFクラスになった生徒を貶しているように聞こえますが……?」

 

「……雄二や吉井たちはそんな人じゃない」

 

「そうだよ七島くん! 流石に今のは許せないよ!!」

 

シドが七島の胸ぐらを掴んで掛かり、ディセと霧島と環も続けて言う。 Aクラス内に不穏な空気が漂い始める。

 

「でも僕は、間違ったことを言ったとは思ってない。たとえ理由があったとしても、Fクラスに行ったということは、その程度の生徒ってことだろ?」

 

「良いだろう。試召戦争の前にまずテメェを斃す、七島真志ッ!!」

 

「やる気かい? 僕は代表や霧島さんと水無月さんには及ばないが、君よりは強い自信がある。勝てると思うのかな、羽ノ宮くん」

 

「上から人を見る態度……。テメェのその口振りが鼻に付くんだよ……!!」

 

「羽ノ宮くん、私も手を貸します! ……さて、いくら強いと言えど先程の発言で反感を持っている生徒も戦うでしょう。そうなると君に勝機はありませんよ、七島くん」

 

「言うじゃないか冬樹くん。なら……、試してみるかい?」

 

一触即発の状況にクラスメイトたちがざわついている。これでは収集がつかない。

 

 

「静かにしろ」

 

 

怒りとも悲しみとも言えない調子で一喝すると、みんな静かになった。

 

「俺たちがこれからすることは仲間割れじゃないだろう。シド、ディセ、それにみんな。お前たちの気持ちはわかる。だからこそ抑えて欲しい、売り言葉に買い言葉はいけない。七島の言い分も理解はできるが、言葉に気を付けてくれ。何度も言うが、Fクラスには望まない形で振り分けられた生徒もいるし、何よりA(この)クラスにはFクラスに身内や友人がいる生徒が多数在籍しているからな」

 

「「「「「「飛彩(代表)……」」」」」」

 

「そして逆の立場になって考えてみろ七島。お前の身内や友人がFクラスにいたとする。そこにさっきのお前の言葉を掛けられたら、どう思う?」

 

こう言うと七島はハッとして俯く。とりあえずはわかってくれただろうか。

 

「わかってくれたのなら、もうこんなことはしないでくれ。頼む」

 

そして全員が頷いた。

 

「良し……。試召戦争についてはさっき言った通りだ。今日は休んで明日に備えてくれ」

 

『『『『了解ッ!!』』』』

 

号令を掛けて、一先ずは解散となった。ハルやアキたちは全力で向かって来るだろう。俺たちも全力で応えないとな……。

そう考えながら、目の前のCクラス戦に向けて思案を巡らせるのだった。

 

 

See you next stage……




「次回以降のCクラス戦(予定)につながる回だけど、どうだった?」

「ここからCクラスのキャラを出して行くつもりだから、その辺りは楽しみにして欲しい」

「……以上かな? 特に言うことがないけど、気長に待っててね♪」

「それじゃあ、また会おう!」

「シーユー♪」



晴陽「七島真志の挑発を受けた僕たちは、Aクラスとの戦いに決意を新たにする中、Dクラスの面々が敗北の現実を思い知る。更に時を同じくして、とある女子生徒が康太たちと接触して来た……!」


晴陽「次回ッ!『バカとテストと召喚獣withグリモア!』、『動き出す者たち Part①』。 Let's go……fight!!」


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第9.5話 動き出す者たち Part①

「前回のあらすじッ!」

Dクラスと同盟を結んだその後、Aクラスの七島真志がFクラスを牽制する。彼から強者の雰囲気を感じ取ると同時に、姫路姉弟とは特別な関係にあることを思わせた。
他にも様々な思惑があったりなかったり……? この先も油断できないよ〜……。


戦後対談を終えたDクラスにて。

 

 

昇瑠side

 

 

「すまない、みんな。俺が油断してたばかりに負けてしまって……」

 

 

戦後対談が終わってクラスメイトの大半が帰った後、源二が残ったDクラス首脳陣に土下座している。

形としては和平で終結したとはいえ、Fクラスに負けたという現実は想像していた以上にのしかかっていた。

 

「今回は良かったが、普通なら設備を奪われても文句は言えなかった。俺は代表失格だ……」

 

「顔を上げてくれ、源二。Fクラスの戦力を測り損ねた俺にも責任がある。お前だけに背負わせはしない」

 

自分で全ての責任を背負おうとする源二を見ていられなかった俺は、手を差し出してこう告げる。

 

「そうだよ代表。あたしも智ちゃんとの戦いに負けちゃったからね……」

 

「私も近衛部隊としての役目、果たせなかったな。玲泉くんと同じように油断してたわ……」

 

「ウチも。みっちと違って吉井たちが来る前に、律と一緒に退場させられたし」

 

「ああ。全然役に立てなかったな、あたしら」

 

俺の言葉に続いて松島と玉野も同じように言った。後に続いたサイドポニーの女子は、間宮千佳(まみやちか)。Dクラス内では上位の実力で、気になる男子に告白してはフラれる……ということを繰り返していることを除けば、割と普通の女の子だ。

そして、ぱっつんショートの子は音無律(おとなしりつ)。音楽が好きで歌も上手いそうだが、ギターと歌詞のセンスが悪いと噂に聞いている。

 

「源二、敗北が悔しいのは良くわかる。俺たちも同じ気持ちだからな」

 

「昇瑠、みんな……。俺は……」

 

「それでも自分が許せないと思うなら強くなればいい。次に試召戦争を挑まれても、負けないように」

 

「……そうだな。昇瑠、恥を忍んでお願いしよう。俺を鍛えてくれないか」

 

「良いだろう。ただし、代表だからと言って手加減なしだ。やるからには本気で行くぜ!」

 

「よろしく頼むぞ……!」

 

問答を経て、源二が奮い立つ。気持ちの切り替えは上手くいったようだな。

 

「さて。源二もそうだが、お前たちも今以上に鍛えるぞ松島、間宮、音無、玉野」

 

「うん! やられたままではいられないからね!」

 

「ええ。ウチだって意地はあるから!(なんでこうなっちゃったのよ……)」

 

「貸した借りは返さないとな!」

 

「あんな思いはもうしたくないから……!」

 

「良い返事だ。しっかり付いて来いよ!」

 

「「「「OK(だよ)(よ)(だぜ)!」」」」

 

全ては蝶影様を見守る為にD(この)クラスに来たが……、思わぬ目標ができたな。俺も今より強くなろう。みんなの返事を聞いたとき、そう思った。

 

 

昇瑠side out

 

 

 

 

 

麗椰side

 

 

俺は獅雄麗椰(ししおれいや)。親の仕事の都合で文月市を離れていたが、1年の終わり頃に戻って来て振り分け試験でCクラスになった。

今日は新学期初日でFクラスがDクラスに試召戦争を仕掛けたという話題で持ち切りだった。中でも観察処分者の真境名晴陽と吉井明久が活躍した事実は揺るぎなく、俺自身としても興味深くはあった。

だがそれ以上に気になっていたことは、

 

「美春、元気かな」

 

Dクラスの清水美春だ。彼女は小学生の頃からの幼馴染で、いじめられていたのを助けてから気に入られて、何をするにも一緒だった。

最初は正直鬱陶しいと感じたこともあったけど、何だかんだで悪くないと思ってたな。中学に上がる前に離れ離れになったけど今でも思い出すよ、満面の笑みで俺の名前を呼んでついて来る姿を。

 

「少しは成長したのかな? まだあの頃のようについて来てくれるのかな?」

 

あれこれ考えていると、誰かが近付く。背丈こそ伸びているが、特徴的なツインドリルの髪型は見間違うはずはない。ずっと会いたかった幼馴染が目の前に来ていた。

 

「よう、美春! 小学生以来だな。俺だよ、獅雄麗椰だよ!」

 

声を掛けると美春は気付いたらしく、振り向いた。俺としては感動の再会を期待していたが、掛けられた言葉は残酷なものだった。

 

「何の用ですか、豚野郎」

 

「な……ッ!」

 

一瞬言葉を失った。あの頃の記憶にあった幼馴染の姿はそこにはなく、まるで虫ケラを見るような目でこう告げる彼女がそこにいた。俺はそれが信じられなかった。

 

「どうしたんだよ美春。俺がわからないのか」

 

「……ああ、あなたの名前を聞いて思い出しました。美春の気持ちを弄んだ最低野郎ですね」

 

「違うんだ。俺はずっとお前のことを……」

 

「うるさい! 美春はお慕いしている方がいます。あなたのことは過ぎ去った思い出です、わかったらこれ以上美春に関わろうとしないでください。さようなら、豚野郎」

 

一方的に告げると美春はこの場を離れて行った。

 

「どうしてなんだ……、美春……」

 

また会えたことは嬉しい。なのに、見ない内に変わってしまったという現実を見せられた俺はショックを受けた。

すれ違いは誰にでもある、時間を置いてもう一度話をしよう。でも今だけは泣きたい。

俺は静かに涙を流すしかなかった……。

 

 

麗椰side out

 

 

 

 

 

康太side

 

 

試召戦争を終えて解散した俺と夏海は、報道部の活動の為に学園を探索していた。ついでに、ノエルと島田とクルトもいるが……。

 

「……で、お前たちもついて来たのか」

 

「うん! あたしはみんなのサポ役なの♪ それで今日は報道部をお助けするから、遠慮なしだよ2人とも」

 

「その割にはノリが軽いわね?」

 

「えー、いいじゃん! こう人数が多いといつもと違うこと起きそうだし、何より探検隊っぽくていいよね♪ そう思うでしょ美波ちゃん、クルト?」

 

「え? まあ、そうね……」

 

「賑やかで楽しいと思うよ、ノエル!」

 

ノエルが2人に振ると、島田は戸惑うように答える。反対にクルトは煽っていた。

 

「「イェーイ!」」

 

「なんかごめんね土屋、夏海」

 

「……大丈夫だ、気にするな」

 

「部長以外ではあたしたち2人だけだったから、結構楽しいわよ」

 

「助かるわ」

 

謝る島田を夏海と一緒にフォローする。……実は美少女3人(1人は男)に囲まれているのは役得ではないかと思ったのは秘密。

 

 

 

ネタを求めて1時間と数十分、今日は収穫なしかと思い撤収しようか声を掛けようとしたときだった。

 

 

「きゅっ!」

 

黒髪ロングに大正浪漫時代の女子学生の服装をした召喚獣が、俺たちの前に現れた。

 

「えっと……、ミナミ。召喚獣って、普通は教師が召喚フィールドを展開して初めて召喚できるんだよね?」

 

「そうよクルト。でも誰かが召喚フィールドを展開した形跡はないわね……」

 

「じゃあ、この子は一体何なの……?」

 

目の前の光景に、クルトも島田もノエルも首を傾げている。もちろん夏海も冷静を装う俺も、疑問に思うばかりだ。

 

「きゅっ!」

 

「あっ! 待ちなさい!」

 

そんな俺たちの考えを他所に、召喚獣は背を向けて走って行く。夏海の声と共に後を追うが、どうも違和感を感じる。

 

「ねぇ。追いかけてて思うんだけど、この子あたしたちを誘ってない?」

 

「気が合うわね。ウチも全く同じこと考えていたわ、夏海」

 

夏海と島田の言う通りだ。単に逃げるなら、俺たちを撒けば良い。だが、目の前のそいつ(召喚獣)は道案内をしているように見える。

まるで、俺たちを誰かに会わせようとするように。

 

「きゅっ!」

 

「君について行けば良いんだよね?」

 

ノエルの言葉に召喚獣は頷き、振り返るとそのまま進んで行く。どこへ向かうのかわからないまま俺たちは後へ続いて行き、そして……。

 

 

「……ここで良いのか?」

 

「きゅっ!」

 

俺の質問に召喚獣は声を上げる。目の前に見えるのは誰も使っていない空き教室だ。文月学園に入学して以来、ここに来るのは初めてかもしれない。

 

「これは入れってことだよね?」

 

「でも罠かもしれないわよ」

 

「だけど罠だったら、こんな回りくどいやり方はしないんじゃないかなぁ?」

 

「考えても仕方ないわ。どの道、この教室に入る以外の選択肢はなさそうよ。あんたもそう思うでしょ、康太」

 

「……ああ。ここまで来て引き返すのは、報道部員の名折れだ。全ての責任は俺が取る。行くぞ、お前たち」

 

「「「「ええ(うん)」」」」

 

俺たちは意を決して、空き教室の扉を開ける。同時に召喚獣も入って行ったのでこれまで同様、後を追った(もちろん、扉は閉めて)。

 

「きゅっ!」

 

「連れて来てくれたのね……、ありがとう」

 

召喚獣の元に辿り着くと、召喚主と思われる女子生徒の頭に飛び乗った。目を閉じている為表情が見えないが、ただならぬ雰囲気を纏っていた。

 

「……お前は?」

 

「あら、お友達も一緒でしたか。足音から察するに……5人くらいかしら?」

 

「足音? ひょっとしてあんた、あたしたちの姿が見えないの?」

 

「はい。わたくしの目は文月学園に入学して以来、景色も人も写していません。この子がわたくしの目の代わりになっているのです」

 

「きゅっ!」

 

この発言で俺たちは、目の前の女子生徒が失明しているということを察した。

よくよく考えてみたら、召喚獣は召喚主の分身である為意思を持つことはあり得ない。だが例の召喚獣は、まるで自分の意思で行動しているかのようだ。あの女子生徒の目の代わり発言と照らし合わせたら、理解できる。

 

「申し遅れました、わたくしは綺羅星日和(きらぼしひより)と申します。そこにいるのですね? お会いできて光栄です、土屋康太さん、岸田夏海さん、冬樹ノエルさん、島田美波さん、クルト・アードラーさん」

 

「「「「「!!!」」」」」

 

俺たちは心底驚いた。なぜなら、誰1人として彼女に名前を名乗っていないからだ。

 

「そんなに驚かないでください。わたくしはお話をしたいだけですよ」

 

「きゅっ!」

 

相変わらず物腰柔らかに語り掛ける綺羅星。穏やかなのになぜだろう、彼女からは晴陽や明久と同じオーラを感じる。

 

「……その言葉、信じて良いんだな?」

 

「はい」

 

念を押すと彼女は優しく微笑む。どうやら話をしたいということは本当のようだ。

 

「……良し。お前を信じよう、綺羅星日和。本題の前にいくつか聞かせてくれ」

 

「ええ。何なりと」

 

「……その召喚獣は一体なんだ? なぜ召喚フィールドもなしに実体化している?」

 

「この子は試験運用の一環として“学園内での召喚獣の常時召喚の許可”が例外的にされています。わたくしが盲目(こんな状態)ですから……」

 

「……そうか」

 

「じゃあ、意思を持ってるのはどうしてなの?」

 

「ごめんなさい、これに関してはわたくしもわかりません。ただ、召喚獣は科学とオカルトの融合の産物と聞いているので、何かしらの理由でそのような現象もあり得ると……」

 

クルトの質問については、流石に答えられなかったようだ。まあ召喚獣自体、未だに解明されていないブラックボックスだから仕方のないことだが。

 

「……わかった、質問に答えてくれて感謝する。今度はお前の話を聞かせてくれ」

 

「はい、あなたたちをお呼びしたのは他でもありません……。次の試召戦争について、お伝えしなければならないことがあります」

 

「きゅっ!」

 

綺羅星は語り出す。それは、これから俺たちが挑もうとしているBクラス戦に関わることだった……。

 

 

康太side out

 

 

 

 

 

〜翌日〜

 

 

晴陽side

 

 

いつものように明久たちと登校した僕はFクラスの教室に入って行く。今日は珍しく、クラスメイト全員が遅刻することなく揃っていた。

 

「えー、みなさんおはようございます。HRを始める前に、諸事情で昨日は来られなかった生徒がいますので紹介しますね。では2人とも、入って来てください」

 

「「はい、わかりました」」

 

福原先生の言葉に、2人の生徒が返事する。

 

「ウッヒョー、1人は女子だぜぇ!!」

 

『『『『バンザーイ!!!』』』』

 

((((((((ハァ……))))))))

 

僕たちは呆れてため息を吐くしかなかった。って言うか、もう1人が男子とわかると無視したな? まったくコイツらは……。

 

叢雲歩夢(むらくもあゆむ)だ。1日遅れだけど、よろしくな!」

 

『『『『イケメンは敵……!!』』』』

 

もうここまで露骨だといっそ清々しい。……待て、今あゆむって言ったかな? アキも晴明も反応してたけど。

 

篠原直美(しのはらなおみ)です。インターンに参加してたのでFクラスになってしまいましたが、みなさんと仲良くなりたいと思っています。よろしくお願いしまぁす♪」

 

『『『『よろしく、直美ちゃんッ!!!』』』』

 

「「フンッ!!」」

 

FFF団はとってもわかりやすい反応で、篠原さんを歓迎する。それを見た龍季と美波は、心底嫌そうな顔をした。

 

「はいはい。嬉しいのはわかりますが、静かにしましょうね」

 

福原先生が教卓を叩いて注意すると、“また”教卓がボロボロに崩れ落ちる。これに慣れてしまった自分が怖い。

 

「えー……。替えの教卓を持って来ますので、みなさん待っててくださいね」

 

教卓を取りに福原先生は出て行った。その直後、先程自己紹介した男子生徒が僕とアキと晴明に手招きする。とりあえず、みんなには一言言って廊下に出た。

 

「久しぶり、みんな」

 

見た目こそ随分変わったが、纏っている雰囲気は変わらない。

叢雲歩夢。僕たちが中学生になってからの親友だ。

 

「アユ! 僕らの方こそ久しぶりだね!」

 

「本当だよ。中学2年の冬に引っ越しちゃうんだからね」

 

「ああ。だけど、文月学園に入学していたのは驚いたぞ。そうなら、俺たちに言ってくれたら良かったのに」

 

「悪い悪い、リハビリが長引いて伝えるのが遅くなったんだ」

 

「そうなんだ〜」

 

こうして昔話に花を咲かせて行く。以前お見舞いに来たときよりも明るくなってて良かったよ。

 

「そうだ、お前たちのことも聞かせてくれないか? 学園長から聞かされるまではFクラス(ここ)に来たことが信じられなくてさ」

 

僕たちは一瞬顔を見合わせたけど、すぐに向き直って今日までのことを話した。

 

「そうか……、智花が……。でもお前たちはこの結果に後悔してないだろ? 晴明はちょっと違うかもだけど……」

 

「「「当然だ((もちろんさ))!」」」

 

「ふ……、これも巡り合わせってヤツか。篠原さんもそうだけど、またよろしく頼むぜ♪」

 

そう言って僕たちは互いにグータッチを交わす。それから雄二たちにもアユを紹介する為に教室へ戻った。

 

 

See you next stage……

 




「千佳と律って、Dクラスだったんだ?」

「うん。今作ではそういう設定だってさ。まだ見ぬキャラはいるので、徐々に解禁して行くよ♪」

「誰がどう出るか想像しながら、今後の展開を楽しんでくれるといいなぁ〜」

「……とまぁ、今回はこの辺で」

「じゃあ、また次回に会おうね!」

「シーユー♪」



飛彩「Fクラスの大金星を知った俺たちAクラスも、兼ねてより予定していたCクラスとの戦争に臨む。例年であれば負けることはないとされるが、今年度は一味違うと言う。……ならば見せてもらうぞ、Cクラス(お前たち)実力(ちから)を!」


飛彩「次回。『バカとテストと召喚獣withグリモア!』、『第2の初陣』。 Let's go……fight!!」


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第10話 第2の初陣

「前回のあらすじッ!」

源二たちDクラスが強くなることを誓い合ったり、清水さんと獅雄麗椰くんが悲しい再会をしたり、康太たちがBクラスの綺羅星日和さんと遭遇したり……。戦争が終わった後も濃い1日だった。
その翌日には叢雲歩夢……アユと篠原直美さんも加入したことでまた賑やかに。これなら負ける気がしない……かも?


明久side

 

 

「おはよう吉井くん、真境名くん。今日は早いわね」

 

「「おはようございます、我妻(わがつま)先生」」

 

Dクラス戦を終えて2日後。僕とハルは始業時刻よりも1時間半以上も早く学校に来ると、我妻梅(わがつまうめ)先生が声を掛ける。

文月学園のOGにして我が校2人目の補習担当教諭でもある彼女は、西村先生が忙しいときは代わりに僕たちの勉強を見てくれている。

 

「こんなに早く来るということは、生天目さんに呼ばれたの?」

 

「はい。『組手をやろう』と言われました」

 

「そう。でも学生の本分は勉強だから、無理しない程度にお願いね?」

 

「わかってますよ」

 

「あ、それから……。Dクラスとの試召戦争に勝利したそうね。教師として贔屓するのは良くないけど、あなたたち2人も含めたFクラスがどこまでやれるか楽しみにしてるわ。頑張ってね」

 

「「ありがとうございます」」

 

こうして我妻先生と別れた僕たちは、目的地である多目的武道場へ向かった。

 

 

 

 

〜多目的武道場〜

 

 

「「たのもー!」」

 

「来たな。吉井明久、真境名晴陽」

 

「待ってたよ、2人とも!」

 

「おはよう明久くん、晴陽くん!」

 

道場に入った僕たちを3人の先輩が出迎えた。

最初に声を掛けたのは、僕よりも背の高いショートヘアの先輩……生天目(なばため)つかさ。裏Aクラス四英傑(グレート・フォー)の1人で、京先輩と庵先輩の幼馴染でもある。

噂では、保健体育の実力が康太以上と言われているとか。

隣にいる三つ編みの先輩は、坂崎百合(さかざきゆり)。今年の3月に卒業した坂崎亮(さかざきりょう)先輩の妹で、兄と同じく極限流空手を特技としている。

最後に、黒髪に緑のメッシュが入っている子は円野真理佳(まどかのまりか)。ヒーローに憧れているヒーローマニアで、ボーイッシュな外見も相まってアクティブな女の子だ。

 

 

「おはようございます。つかさ先輩、ユリ先輩」

 

「真理佳もいるんだね。多分組手をやってたんだろうけど……、もう1人はどこにいるの?」

 

「明久くん、晴陽くん。アレを見て」

 

真理佳の視線を追うと、そこにはとても大きな男子生徒がのびているのが見える。

 

緋炎(ひえん)先輩だ! 一体どうしたんですか!?」

 

「それがな、少し本気を出したら鳩尾に当たってしまったのだ……」

 

そのときを振り返って、つかさ先輩はこう語る。全学年中五指に入る巨体を誇り、身体能力もトップクラスの鳳城緋炎(ほうじょうひえん)先輩だが、戦闘技術は素人だ。

だから直々に鍛えられる対象になったって聞いたけど……。つかさ先輩、少しは自重してあげてください。アナタは只でさえ強いんですから。

 

「こういうこともあると思って、君たちも呼んだんだよ。真吾くんには逃げられちゃったけどね……。ダメだった?」

 

「いえ、大丈夫です。丁度良い朝の運動になりますから」

 

「良かった〜……、じゃあ2人とも。ストレッチが終わったら、早速組手を始めようね。まずは……、晴陽くんとやろうかな。真理佳ちゃんは引き続きあたしとだよ♪」

 

「「OKです、ユリ先輩!!」」

 

ハルは真理佳と一緒に、ユリ先輩とやるのか。……ん? ということは……。

 

「貴様は私からだ、明久。久々に気合入れてしごいてやる」

 

「は、はい。お手柔らかにお願いしますよ、つかさ先輩……」

 

こうして互いに相手を交代しながら、僕たちは汗を流していった……。

 

 

 

 

〜1時間後〜

 

 

「ああ〜、全身が痛い……。手加減を知らないのかな、あの人(つかさ先輩)は……」

 

「僕も思った。ユリ先輩を見習って欲しいよね」

 

「あはは……。でもそれだけ期待してるってことじゃないかな? ボクはまだそのレベルじゃないから、2人が羨ましいよ」

 

「「そうかなぁ?」」

 

組手を終えた僕とハルと真理佳はシャワーを浴びて、その足で教室へ向かっていた。ちなみに緋炎先輩は、終わり際に目を覚ましたそうだ。

 

「真理佳って、Dクラスでしょ? 初日に来てなかったのはなんで?」

 

「その……、ちょっと体調を崩してて……」

 

「へぇ〜、そうなんだ。真理佳もバカじゃないってことが証明されたね♪」

 

「むーっ! ボクだってやればできるんだから!」

 

「ごめん真理佳。冗談だよ」

 

こんな風におしゃべりしていると、Dクラスの前まで来ていた。

 

「それじゃあ、ボクとはここまでだね。今日も1日頑張ろうね明久くん、晴陽くん!」

 

「うん。昇瑠と源二と真吾とみちるによろしく言っておいてね」

 

「じゃあ、また後で会おう」

 

 

Vサインを送った真理佳と別れて、Fクラスの教室へと向かった。当然だが、僕たちが1番乗りだからか教室内には誰もいない。

 

「HRまで時間あるからそれまで休もうか、ハル」

 

「さんせー……」

 

言うが早いか、ハルは眠り出す。多分今日は自習だろう。呑気に考えながらタイマーをセットして、僕も顔を伏せた。

 

 

明久side out

 

 

 

 

 

 

時間が流れて……。

 

 

 

 

風子side

 

 

ついにこの日が来ました。ウチらAクラスの初陣の日が。普通なら最高クラス故、戦争などする必要はねーですが、今年は全クラスに実力者がばらけてるので油断は禁物です。

 

「よし……。みんな聞いてくれ、今日はCクラスとの試召戦争だ。下位クラスと言えど、侮ってはいけない。気を引き締めて行くぞ!」

 

『『『『『おおーッ!!!』』』』』

 

「では水無月。Cクラスに宣戦布告をしてくれ」

 

「りょーかいです、だいひょー。氷川、行きましょーか」

 

「わかりました、水無月委員長」

 

飛彩の指名を受けて、ウチは氷川と共にCクラスへ向かいました。

 

 

 

 

〜Cクラス教室前〜

 

 

「さて。これから宣戦布告しますがきんちょーしてねーですか、氷川?」

 

「大丈夫です。お気遣い、感謝します」

 

「さいですか。ほんなら、行きますよ」

 

Cクラスの扉を開けて、ウチらは中へ入りました。

 

「ごきげんよーです、Cクラスの皆さん。清く正しく生きてます?」

 

「ア、アンタたちは水無月風子と氷川紗妃!! 風紀委員の2人がなんでここに!?」

 

「そうね。天下のAクラス様がここに来るのが理解できないわ。一体何の用かしら?」

 

最初に発言したのは守谷月詠(もりやつくよ)。所謂隠れAクラスというべき生徒の内の一人で、軍師に強い拘りを持っているらしいです。

次いてはC(この)クラスの代表、小山友香(こやまゆうか)。特に尖った部分はありませんが、頑張ればAクラス下位は行けたであろう学力を備えていると聞きます。

 

「ここにいる何名かは察しているでしょうが、あえて言いますよ。私たちAクラスはCクラスに試召戦争を申し込みます!」

 

『『『『何だって(何ですって)!?』』』』

 

氷川が宣言すると、Cクラスの生徒たちがざわつき始めました。そりゃそーです、まさか上位クラスが自分たちに宣戦布告をするなんて夢にも思いませんから。

 

「開戦は今日の午後1時からです。よろしいですね、小山さん?」

 

「……わかったわ、私たちに拒否権はないもの。引き受けるわよ」

 

「では、私たちの用は済んだので失礼します。戻りましょう、委員長」

 

「そーですね」

 

「待って。1ついいかな?」

 

戻ろうとしたウチらを、1人の女子生徒が呼び止めました。

 

「アンタさんは……、矢坂小夜子(やさかさよこ)ですね」

 

「あたしのこと知ってるんだ? 流石は風紀委員長ね。まあそこは置いといて、質問だよ。あたしたちがAクラスに勝てば設備を交換できる。でもキミたちからすれば割に合わないと思うけど、そこんとこどうなの?」

 

「心配してくれなくてもだいじょーぶです」

 

「ふぅん、中々強気じゃない。自分たちが負けるかもとか、考えないんだ?」

 

「とーぜんです、ウチらは勝つ気で挑んで来てますから。……矢坂さん。ウチからもアンタさんに聞かせてくだせー」

 

この言葉に矢坂は目を丸くしました。

 

「本気になれば、Aクラスは確実だったハズです。そのアンタさんがなぜCクラスにいるんですか?」

 

「うーん……。普通の学校生活を送りたいから……かな」

 

「優子と話はしたんですか?」

 

「してないよ」

 

「さいですか……」

 

ウチはそれ以上は聞きませんでした。これは優子と矢坂の問題。ウチらが軽々と首を突っ込んで解決できるとは限りません。……2人が助けを求めれば話は別ですが。

 

「先程お伝えした通り、午後1時に開戦でよろしいですね?」

 

「構わないわ」

 

「ではウチらはこれで失礼します。また後ほど会いましょ。氷川、戻りますよ」

 

「はい」

 

小山に確認を取り、ウチと氷川はAクラスへ戻りました。負ける気はありませんが、気を引き締める。飛彩の言ったことを思い出しながら、自分に言い聞かせました。

 

 

風子side out

 

 

 

 

友香side

 

 

他のクラスから挑まれるかもって思ったけど、まさかAクラスが先になるなんてね。しかもこんなときに……。

でも仕方ないわ、悩んでなんていられない。代表として私がするべきことはこれだろう。

 

「みんな聞いて! 相手はAクラス、悔しいけど今の私たちじゃどこまで立ち向かえるかわからない! だけどこうなったからにはベストを尽くそうと思うの! お願い、私に力を貸して!」

 

「いいわ、やってやろうじゃない! 任せなさい友香、ツクが勝利に導くわよ!」

 

「流石ツクちゃんです! 私もやりますよー!」

 

「めんどくせーな。……ま、良いか」

 

「仕方ないから力貸してあげる。……べ、別に友香の為じゃないし!」

 

私の呼びかけに守谷さんと我妻くんと来栖さん、ボードディッヒさんが応えた。そして……。

 

「小山さんがそこまで言うなら、あたしも頑張りますかね」

 

「面白れぇ……、俺も戦いたくてウズウズしてたところさ。やる気満々だぜッ!」

 

「気は進まないけど、挑んで来るなら……!」

 

「良いだろう。いずれ戦うことになる相手がこちらから来てくれたのは都合が良いからな」

 

矢坂さんと狡噛くん、獅雄くん、十波くんも声を上げる。

 

「そうだ。戦う前から弱気じゃダメだよな」

 

「あのFクラスだって上位クラスと渡り合ったんだ。俺たちができないハズがない」

 

「そうよ、気持ちで負けないようにしなきゃ!」

 

『『『『『おおーッ!!!』』』』』

 

続々と声が上がって、気付けば士気は最高潮に達している。新学期初日のFクラスに触発されたこともあるのだろう。今回ばかりは、Fクラスに感謝ね。

今の私に何ができるかわからないけど、やれるだけやってみよう。そう考えながら、開戦に備えるようクラスメイトたちに伝えるのだった。

 

 

See you next stage……




「作中で言及されていたつかさ先輩と登場予定だったユリ先輩、今回は顔見せの緋炎先輩と、今回は3年生キャラも解禁したよ」

「真理佳も出たね。真吾はユリ先輩に存在を言わせた程度だけど、どうするのかな?」

「まあ、その内出るハズだよ」

「案外早いタイミングかも……」

「今回はこんな感じ。じゃあ、また次回に会おうね!」

「シーユー♪」



風子「ついにウチらAクラスも試召戦争するときが来ました。心のどこかで余裕な空気はありましたが、Cクラスは予想以上の猛攻で向かって来やがりますね。飛彩みてーに……って訳じゃねーですけど、やってやろーじゃありませんか」


風子「次回。『バカとテストと召喚獣withグリモア!』、『交戦開始』。 Let's go……fight!!」


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第11話 交戦開始

「前回のあらすじッ!」

数日前から『AクラスとCクラスが試召戦争をする』と噂になっていたけど今日この日、ついに現実の物に。
現状ではAクラス有利らしいけど、戦力が上手い具合にバラけているから油断はできない。
頑張れ、飛彩!


康太side

 

 

「えー、AクラスがCクラスに試召戦争を仕掛けたので本日は自習です」

 

福原先生がそう言って教室から出て行く。クラスメイトの大半は喜んでいるが、俺たちFクラス首脳陣は違っていた。

 

「Aクラスが試召戦争だって?」

 

「そうらしいな。でも何のために? 戦争を仕掛けるメリットはないハズだが……」

 

龍季の言葉に雄二がこう返答する。まあ、試召戦争のルールを知っていればこう考えるのが普通。

だが……。

 

「飛彩にとってはちゃんと意味があるんだよ」

 

「どういうことだ明久?」

 

「飛彩はね、常に本気で物事に取り組むんだ。勉強にしろ、スポーツにしろ、遊びにしろ……。今回の戦争もそう。Fクラス(僕たち)が挑むことを知ってるハズだから、一度経験した上で戦い方をAクラスのみんなに叩き込もうとしているんだ」

 

明久は唯島について語った。なるほど、幼馴染としてヤツを長く見てきたからなのか、その言葉に重みを感じる。

きっと、晴陽と晴明と夏海と南も同じように考えるだろう。

 

「そうか。ならば、いずれ戦う相手の実力をここで知っておく必要があるな。……康太」

 

「……なんだ雄二」

 

「AクラスとCクラスの試召戦争でAクラス陣営を探って来い。Cクラスも余裕があれば探って良いが、Aクラスの方を優先しろ」

 

「……了解」

 

雄二からの要請を受けて偵察の準備をする。

 

「康太、あたしも行こうかしら?」

 

「……大丈夫だ。今回は1人の方がやりやすい」

 

「わかったわ。でもヘマをしちゃダメよ?」

 

「……俺を誰だと思ってるんだ夏海? 報道部の名に懸けて役目を果たす。約束しよう」

 

そう言うと、夏海は笑顔で返した。

 

「……では、行くぞ」

 

「頼むぜ」

 

雄二の言葉を背に、俺はAクラス対Cクラスの試召戦争の場へと向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

そして現在。俺は戦場の天井裏に行くと、文月学園の制服に赤いマフラーを巻いている女子生徒が既にスタンバイしていた。

 

「ちわーッス☆」

 

「……お前は、服部梓(はっとりあずさ)……!」

 

彼女の名前は服部梓。風紀委員会に所属していて、中学生時代からの俺のライバルだ。真面目な生徒が多い風紀委員の中では観点が一般生徒に近く、晴明と並んで話しやすいと評判である。

 

「誰かと思えばつっちーじゃないッスか。せっかくの自習時間を敵情視察に費やしていいんスか?」

 

「……それはお互い様だろう。この戦争をお前が偵察するメリットがあるとも思えないが……」

 

「うーん。メリットという程じゃないッスけど、自分はCクラス……厳密に言うと、小山さんに用があるんスよ」

 

どうやら梓も思惑があってここにいるようだ。小山に用とは、Bクラス代表の根本絡みか。

 

「……とりあえず戦況を見守ろう。本来の目的とは別で、お前にも有益なハズだ」

 

「そうッスね。それじゃあ、両クラスのお手並み拝見と行きましょうか」

 

 

おそらくAクラスが有利だろうが、CクラスもFクラス(俺たち)のように戦力が揃っているから終わるまではわからない。

そんなことを考えながら、俺は梓と共に偵察をすることにした。

 

 

康太side out

 

 

 

 

 

 

〜Cクラス本陣〜

 

 

友香side

 

 

「どうしたの代表? 緊張してる?」

 

「宍戸さん……。ええ、大丈夫よ」

 

教室に本隊を構える中、落ち着かない私を宍戸さんが気遣って声を掛けた。召喚システムを管理している科学者にして、CクラスのNo.2でもある彼女には何かと助けられている。

 

「無理もないわ。初めての試召戦争、それもAクラスから挑まれるもの。そうなるのは寧ろ自然な反応、決して恥じることではないわ」

 

「ありがとう」

 

「普通にやり合っても勝機はないから、攻め手を多くして戦うのが得策。だから守谷さんを中心にした遊撃隊、十波くんと矢坂さんの別働隊で先手を取る。そして、残った本隊で代表を護衛しましょう」

 

『『『『『『了解だ(よ)!!』』』』』』

 

「新野さんもよろしいかしら?」

 

「わかったよ、宍戸さん!」

 

宍戸さんの指揮にみんなが応えた。本当、どっちが代表かわからなくなるわね……。

 

「そんな自信なさげな顔をしないで。さっきクラスメイトたちの士気を上げたあなたはどこに行ったの? 誰が何を思おうと、C(この)クラスの代表は小山さんよ。しっかり構えていれば、必ずあなたに応えてくれるわ」

 

「……そうね、やってみる」

 

私の返答に宍戸さんが少し笑ったような気がした。さあ。言葉通り、私らしくやるだけよ……!

 

 

友香side out

 

 

 

 

 

 

竜弥side

 

 

俺は狡噛竜弥(こうがみたつや)。Cクラスに所属してる。

Aクラスとの試召戦争では前線の遊撃隊に割り振られていて、メンバーは俺、守谷、来栖、浅梨、リヴィ。そして麗椰だ。

このメンツになった理由は宍戸曰く、少しでも勝機を見出す為の手段……らしい。

 

「天才軍師のツクがいるからには必ず勝利を目指すわ! ついて来なさいよ、アンタたち!」

 

『『『『『『おおーッ(ええ)!!』』』』』』

 

「気合入ってますね、ツクちゃん!」

 

「フン、いつものことだろ」

 

「まあ……。やる気になっているなら、大丈夫じゃないの?」

 

守谷がクラスメイトたちを奮い立たせているのを見て、浅梨と来栖とリヴィがそれぞれ感想を述べる。

言い方は正直アレだが、自信に満ち溢れて物怖じしない態度に頼もしさすら感じられるのは素直に感心した。

 

「麗椰?」

 

「あ、ああ……」

 

「“心ここに在らず”って感じだな。大丈夫か?」

 

一方で麗椰が上の空だったから、それが気になった俺は彼に声を掛ける。

 

「何があったか知らねぇが、今は戦争中だ。油断してると自分だけじゃなく、仲間も危険だ。やる気がないなら下がってな!」

 

「ちょっと(ほむら)!」

 

「そこまで言わなくても……」

 

「獅雄の事情がどうであれ、悩んでたらやられる。アタシらは向かってくる敵を倒すだけだし、腑抜けたヤツを気に掛ける程余裕はないんだ。違うか?」

 

「ええ。悔しいけど、焔の言う通りね」

 

守谷と浅梨の言葉に対して、無情にもこう返す来栖とリヴィ。確かに言ってることは正しいけど……。

 

「けどよ……!」

 

「大丈夫だ、竜弥」

 

「麗椰……」

 

俺からも何か言おうとすると、麗椰が口を開いた。

 

「俺自身の問題だから気にするな。今は戦争に集中するさ」

 

「……わかった。何かあったら、遠慮なく言えよ? 相談乗るからな」

 

「ありがとう」

 

麗椰が多少だが、やる気を取り戻す。その様子を見た周りのみんなも緊張がほぐれたようだ。……相変わらず来栖は仏頂面だったが。

守谷曰く、「焔は普段からあんな感じだけど、根は悪い子じゃないから嫌わないであげて」だそうな。

 

「おいアンタら、静かにしな。連中、おいでなすったみてぇだぞ……」

 

来栖がそう呼び掛けると、Aクラスの先遣隊が近づいて来た。見たところ、久保利光と工藤愛子、佐藤美穂を中心に部隊を組んでいる。

 

「久保くん! Cクラスの先遣隊が見えたよ!」

 

「向こうの戦力がどれ程のものかわからない以上、慎重に攻めよう。みんな、行くぞ!」

 

『『『『『『了解(だよ)(です)ッ!!』』』』』』

 

どうやら俺たちの存在に気付いたらしい。側には我妻梅(わがつまうめ)先生と大門五郎(だいもんごろう)先生を連れている。

これでわかった人もいるだろうが、我妻先生と浅梨は歳の離れた姉弟だ。そんなこともあって(全員ではないが)Cクラス内では呼びが被らないように先生を苗字で、浅梨を名前呼びにしている。

 

「さあみんな、行くわよ!」

 

『『『『『『OKッ!!』』』』』』

 

守谷の号令と共に俺たちも進軍すると同時に、我妻先生と大門先生がそれぞれ、化学と保健体育のフィールドを展開する。

 

 

『『『『『『『『試獣召喚(サモン)ッ!!』』』』』』』』

 

 

 

 

保健体育

 

Cクラス

 

狡噛 竜弥:479点

 

来栖 焔:456点

 

獅雄 麗椰:417点

 

Cクラスモブ×7:平均212点

 

 

 

Aクラス

 

工藤 愛子:515点

 

Aクラスモブ×9:平均327点

 

 

 

 

化学

 

Cクラス

 

リヴィ・アルテミナ・ボードディッヒ:461点

 

守谷 月詠:435点

 

我妻 浅梨:423点

 

Cクラスモブ×7:平均208点

 

 

 

Aクラス

 

久保 利光:440点

 

佐藤 美穂:398点

 

Aクラスモブ×8:平均339点

 

 

 

 

『『『『『『な、何だアレは!?』』』』』』』

 

「CクラスにもAクラス並みの成績を持つ生徒がいるのですか……!」

 

「あはは……。コレちょっとヤバイかもねー……」

 

「想像以上だよ……」

 

 

久保たちを筆頭にAクラス陣営に動揺が走った。そりゃそうだ。普通、C(この)クラスでは見ないような点数だからな。

まあ、苦手科目の場合ここまでは取れないけど。

ちなみに召喚獣の見た目だが、俺は赤と黒ベースのライダースジャケットを纏っている。守谷は緑のチャイナドレス風の戦闘服に軍師帽を被り、リヴィは守谷の戦闘服のデザインと色違いを、来栖はノースリーブパーカーを羽織った動きやすい衣装、浅梨は白い魔法少女といった出で立ち、麗椰は黒一色の軍服を纏っていた。

 

 

「来ないの? それならツクたちから仕掛けるわ! 腕輪発動、“戦術指揮”!!」

 

守谷が腕輪を発動させると、化学のフィールド内の味方の能力が上がった。

 

「竜弥。アンタは焔と麗椰と一緒に、愛子の部隊を攻めなさい。良いわね?」

 

「任せとけって、守谷」

 

「行くわよ! 全軍、攻撃開始!!」

 

『『『『『『了解ッ!!』』』』』』』

 

そしてすかさず攻め入るのを忘れない。俺は守谷の指令を受け、来栖と麗椰を中心とした部隊で工藤の元へ向かう。

 

「くっ! 負けないんだから!」

 

工藤も腕輪を発動させて、巨大な戦斧(アックス)に雷を纏わせる。

 

「みんな構えろ! 来るぞッ!!」

 

「いけぇ、“雷の斬撃(サンダー・スラッシュ)”ッ!!」

 

 

 

 

保健体育

 

Cクラス

 

狡噛 竜弥:409点

 

来栖 焔:386点

 

獅雄 麗椰:347点

 

Cクラスモブ×7:0点

 

 

 

Aクラス

 

工藤 愛子:425点

 

Aクラスモブ×9:平均327点

 

 

 

 

放たれた雷の刃で、俺と来栖と麗椰以外のクラスメイトが一気に戦死させられた。何とか避けた俺たちも70点程削られている。

 

 

「戦死者は補習……!!」

 

『『『『嫌だ! 補習室は嫌だぁぁッ!!!』』』』

 

 

戦死したクラスメイトたちは大門先生が担いで連行して行った。柔道部の顧問である彼は教師陣の中でも1番デカく(204㎝)、西村先生とはまた違った迫力がある。

うん。化け物だな、大門先生(あの人)も。

 

「あとはキミたちだけだよ♪」

 

「ちっ……」

 

工藤が勝ち誇ったように笑った。他のAクラス生徒も無傷だし、依然として向こうに分がある。

 

「オイオイ、勝った気でいるのが早くないか? まだ3人残ってるんだぜ?」

 

「負け惜しみを!」

 

「たかが3人で何ができると言うんだ? こっちは1人も減ってないぞ!」

 

俺が挑発すると2人の生徒が噛み付くように言った。まあ、そいつらの言葉は正しい。傍から見れば俺たちが不利だからな。

 

「何ができる……ねぇ。テメーら、アタシたちの点数見ただろ? 工藤にできることがアタシたちにできないと思っていたのか?」

 

「強がりを言うな!」

 

「強がってるのはお前たちの方だろ?」

 

『『『『『『なっ……!!』』』』』』

 

来栖がさらに煽って反論したところに、麗椰も追い打ちを掛ける。工藤以外は揺さぶられていた。

 

「みんな怯まないで! ボクが狡噛くんたちを倒すから、援護をお願い!」

 

『『『『『OK(よ)、工藤(さん)!!』』』』』

 

「一声で士気が戻った……。この部隊の中心格だけはあるみてぇだな」

 

工藤が鼓舞するのを見て来栖が思わず舌を巻く。俺と麗椰も同じことを思った。

 

「面白れぇ……、だからこそ勝ちたくなったよ。 来栖、麗椰、行くぜ!」

 

「「わかった(ああ!!)」」

 

俺と麗椰が部隊員に、来栖が工藤にそれぞれ攻めて行く。

 

「喰らいな! “獣王拳”『灼熱』!!」

 

『『『『『うわぁぁぁッ!!!』』』』』

 

 

 

保健体育

 

Cクラス

 

狡噛 竜弥:349点

 

 

 

Aクラス

 

Aクラスモブ×5:0点

 

 

 

 

炎を纏わせた攻撃で5人を戦死させる。そして……。

 

 

 

「“焰の弾丸(フレイム・バレット)”!!」

 

『『『『そんなバカな?!』』』』

 

 

 

Cクラス

 

獅雄 麗椰:317点

 

 

 

Aクラス

 

Aクラスモブ×4:0点

 

 

 

 

麗椰もアサルトライフルの一斉掃射で4人を倒す。これで残るは工藤だけだ。

 

「みんなッ! ……こうなったら刺し違えてでもキミを倒すよ、来栖さん!」

 

「良い気迫だ。でもよ工藤、1つ言っておく。この勝負、アタシの勝ちだ」

 

「やってみなきゃわかんないジャン? この一撃で決めてみせる!」

 

そう言って工藤は、さっきクラスメイトを一掃した攻撃をコンパクトにして、戦斧(アックス)で斬り掛かった。

 

「バイバイ、来栖さん!」

 

「……なるほどな、良い攻撃だと思う。でもそんな大振りじゃアタシに当たらねぇぞ!」

 

「嘘……ッ!」

 

決まれば戦死するであろう工藤の攻撃を避けてみせた来栖。彼女の反撃が始まる。

 

「ボディがガラ空きだ! “マグラッシュ”!!」

 

 

 

 

Cクラス

 

来栖 焔:326点

 

 

 

Aクラス

 

工藤 愛子:0点

 

 

 

 

来栖のブレードトンファーによる連続攻撃が決まり、工藤の敗北となった。

 

「うう……、負けちゃった……」

 

「へへ、燃えたろ……」

 

工藤の言葉を背に、勝利した来栖が人差し指の指先を口元に持って来てこう呟く。

多分3年生の草薙先輩のマネだろうけど、何も言わないでおいた。

 

「戦死者は補習(よ)(……)!!」

 

戦闘終了を見届けた我妻先生と大門先生が、工藤さんも含めたAクラス生徒を担いで補習室へと連れて行った。

……というか我妻先生もできるのか?! 西村先生の弟子っては聞いてたけど、ヤベーだろ!

などと思いながらも少しの間、俺たちは勝利の余韻を噛みしめるのだった。

 

 

Aクラス対Cクラス 遭遇戦:Cクラス勝利

 

 

 

竜弥side out

 

 

 

 

 

 

 

Another side

 

 

Cクラス遊撃隊が勝利を収めたころ……

 

 

()っこ……」

 

「小夜子……、アンタはアタシが……!」

 

 

かつては競い合った親友(もの)同士が対峙する。

 

また別のところでも……

 

 

「冬樹ディセ、ビショップ・ニルヴァーナ。俺の相手はお前たちか(本当は鈴村がいて欲しかったが、仕方ないな)。……いいだろう、相手になってやる」

 

「君ですか、十波義行(となみよしゆき)くん……(主力が1人なのが気掛かりですが、考えるだけ無駄のようですね)。私たちの前に立つ以上、容赦はしません! 行きますよ、ビショップくん!」

 

「了解だ、ディセ。俺たちだって負けられねぇ!」

 

 

少年たちが向き合っていた。

 

戦いは始まったばかりである……。

 

 

See you next stage……




「こう言うことだったんだ」

「そう。原作よりも早いタイミングで負け戦が来ちゃったんだよ……」

「しかも改定前からこの展開は決まっていたという……。工藤さん、本当にゴメンね……」

「その分良いとこもあった……と思いたい……!(でもネームドに負けたのはなぁ……)」

「久保くんと佐藤さんについては、また後ほど加筆予定だよー」

「え、マジ?」

「うん、マジ。まずは投稿を優先しましたと」

「だからもう少し待っててね?」

「今回はここまで。じゃあ、また次回にお会いしましょー!」

「「シーユー!」」



優子「A・C両クラスが激突したのと同時刻、アタシは矢坂小夜子と向き合う。アタシが認めたライバルだって、……親友だって思ってたのに……。覚悟しなさい小夜子、アンタなんかに負けないんだからッ!!」


優子「次回ッ!『バカとテストと召喚獣withグリモア!』、『優子VS小夜子』。 Let's go……fight!!」


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第12話 優子vs小夜子

「前回のあらすじッ!」

工藤さんや久保くんを中心とした先遣隊を差し向けたAクラス陣営に対してCクラスは月詠と焔、浅梨を軸に攻めて来た。
結果、Cクラス陣営が前哨戦を制して幸先の良いスタートを切る。とは言えAクラス陣営からすればまだ小手調。ここからが本番であると共に時を同じくして、優子さんと矢坂さんが今まさに激突しようとしていた!


No side

 

 

〜3年裏Aクラス教室〜

 

 

「むむむ……」

 

文月学園の制服にフードを被った薄い紫のセミショートヘアが特徴的な少女が、水晶玉から試召戦争の様子を伺っている。

彼女の名前は西原(さいばら)ゆえ()。一見小学生かと見紛う程小柄だがれっきとした高校3年生であり、戦闘向きの人材が多い裏Aクラス内では珍しいサポート向きの貴重な存在だ。

 

「ゆえ子。状況はどうなってんだ?」

 

「遭遇戦はCクラスが勝利しました。現時点ではそちらが有利ですよ、京くん」

 

京が話し掛けるとゆえ子はこのように答える。

新学期初日にDクラスに挑んだFクラスがそうだったように、中位レベルとはいえCクラスもまた、上位クラスのAクラスと互角に戦えているという事実を知った首脳陣は目を丸くする同時に嬉しくもあった。

当然だ。自分たちの後を継ぐかもしれない後輩たちが下の学年に集い、持てる力をぶつけ合っているのだから。

 

「そうか。今戦っている連中で、私を満足させてくれるヤツはいるのだろうな?」

 

「滾っているな、つかさ。アタシも後輩たちと手合わせするのが楽しみだから気持ちはわかるぞ」

 

「ですが会長、生天目さん。あなた方2人と草薙くんと八神くんは『四英傑』と称される裏Aクラスの中心。軽はずみな行動は自重してください」

 

虎千代とつかさがこう言うと、腰まである黒い長髪をポニーテールに纏めた少女……水瀬薫子(みなせかおるこ)が2人を窘めた。

生徒会副会長を務めている彼女は、武闘派の虎千代を支える才女でもある。

 

「なるほど。……そういえばCクラスには月詠と焔と浅梨がいたな。師匠としての観点から、アイツらはどうだエレン、メアリー、レオナ?」

 

ここで会話に混ざった緋炎が、3人の少女に声を掛けた。

眼帯をつけた少女……エレン・アメディック、金髪が特徴的な少女……メアリー・ウィリアムズ、青髪をポニーテールに纏めた少女……レオナ・ハイデルン。彼女たちは1年次に来日して来た、海外からの留学生だ。

 

「うむ。守谷は直接戦闘よりも指揮の仕方を中心に鍛えているな」

 

「ワガツマはアタイに近いタイプだから、遠距離での効率的な攻めをレクチャーしてるぜ」

 

「そうね……。来栖さんには、基本的なこと以外は自由にさせているわ。私のやり方はあまり人に勧められるものじゃないから」

 

「まだ足並みが揃っていない感はあるが、訓練を積めば今よりも連携の精度が上がっていくだろう」

 

「ふむ……、そうか」

 

3人がこう答えると緋炎は嬉しそうな顔で頷いた。彼にとっても、優秀な後輩たちが台頭して来るのが楽しみで仕方ないのだろう。

 

「ところでキョウ。ちょっと聞きたいんだけどよ」

 

「なんだよメアリー」

 

「クルスのヤツ、結構前からだけどオメーのとこにも来てるだろ? ヨシイとかヤブキもいるのに、苦労しねぇのか?」

 

「それは私も思ったぞ草薙。近頃はお前の真似までしだすからな」

 

ふとメアリーが京に尋ね、エレンもそれに便乗する。直接鍛えている身としては気にもなるだろう。

 

「去年の2学期の後半から押し掛けて来たんだよ。メアリーの言う通り、明久も真吾も鍛えているからどうしようか迷ったけど、必死だったから断るのも悪いと思ってそのまま受け入れたのさ」

 

「そう……」

 

「なんだかんだで、後輩の面倒をちゃんと見るのが京の良いところかな。モテる男は辛いねぇ」

 

「ちょ……、やめろって鳴子」

 

京の答えにレオナは納得し、鳴子は茶化しながらも褒めるものだから、普段はクールを装う彼は照れている。

 

「へぇ〜、そうなんだぁ……」

 

「ん、なんだ……?」

 

一連の流れを聞いていた黒いロングヘアーの女子生徒が京をジト目で見つめてこう呟く。彼女の名は村正衣玖(むらまさいく)。裏Aクラスに相応しい実力を持つと同時に学園屈指の狂人とも評される少女だ。

 

「明久くんもいるのになぁ〜。草薙くんばっかりずるい……」

 

「……おい村正、見ただけで殺せそうな目で俺を見るのをやめろよ」

 

「良いのかなぁ草薙くん、焔ちゃんにまで手を出して。虎ちゃんと薫子ちゃんに言いつけちゃおうかなぁ〜?」

 

「変なことを言うな! 焔は弟子以上の感情は持ってねぇ……ってちょっと待て薫子! そんな顔で見るな、頼むから!」

 

「災難だな、京」

 

衣玖と薫子に睨まれる京を見て庵がこう言った。仲が悪い訳ではないハズなのだが、彼が困った状況に陥るのが面白いらしい。

 

「八神! 見てるんなら助けろよ!」

 

「俺が素直に助けると思っているのか。自分でなんとかして見せろ、それくらいは容易いだろう?」

 

「テメェ……!!」

 

「その辺にしろ庵、村正。薫子も落ち着け。アタシがいる以上は裏A(この)クラスで揉めごとを起こさせないから、そのつもりでいるんだ」

 

「フン……」

 

「代表……」

 

「わかったよ、虎ちゃん」

 

見かねた虎千代が庵と衣玖と薫子を宥める。衣玖の方はやや不満気な表情だったが、自分の中で折り合いを付けたようだ。

 

「大丈夫か、京?」

 

「サンキュー虎千代、恩に着るよ」

 

「アタシとお前の仲だ。気にするな」

 

そんな様子を暖かい目で見られていることに気付いた2人はすぐに元の席に戻って自習を再開し、周りもそれに倣った。

彼らの実力が見れるのはまだ先のようである……。

 

 

 

 

 

「ふふふ……、この戦争の勝者はどちらか。それを知るのは天のみぞ……です」

 

「まだやってたのか……」

 

 

 

No side out

 

 

 

 

 

優子side

 

 

アタシは今、Cクラスの部隊と向き合っている。それを率いているのはさよちん……矢坂小夜子だ。

 

「小夜子ッ、どうしてアンタは……!」

 

「前にも言ったでしょ? あたしは普通の学園生活を楽しみたいって。だからC(この)クラスに来たんだよ」

 

「だけど、Aクラスに来てもできることでしょう? やってく自信がないんだったら、アタシがついてるから……」

 

「優っこ……。気持ちは嬉しいけど、それだと優っこの負担になるよ……」

 

「そう……。言っても届かないのなら、やるしかないわね。福原先生、お願いします!」

 

「はい、わかりました」

 

「行くよ、優っこ……!」

 

話し合いが平行線になった以上は戦う以外にない。小夜子もそれを感じていたのだろう。福原先生に社会科のフィールドを展開してもらい、両クラスが臨戦態勢になる。

 

 

 

 

『『『『『『『『試獣召喚(サモン)ッ!!』』』』』』』』

 

 

 

 

 

 

現代社会

 

Aクラス

 

木下 優子:405点

 

Aクラスモブ×5:平均327点

 

 

 

Cクラス

 

矢坂 小夜子:389点

 

Cクラスモブ×5:平均224点

 

 

 

 

 

 

双方が召喚獣を呼び寄せた。アタシの召喚獣は黄緑色を基調とした鎧に大型のランスを携行している。対して小夜子の召喚獣は、怜とは違うデザインの巫女服に神楽鈴を持っていた。

 

「流石だね優っこ。辛い時期でも頑張れたのは優っこが一緒にいて、励ましてくれてたからだよ」

 

「……すごく惜しいわ小夜子。アンタとは今年も同じクラスで居られると思ってたから。でも今は、倒すべき敵……!」

 

「これは戦争だからね。恨むのはナシだよ!」

 

「ええ……! みんな、周りの部隊員をお願い! 隊長格はアタシがやるわ!」

 

『『『『『わかった(わよ)!!』』』』』

 

クラスメイトたちに指示を送り、アタシは小夜子との一騎打ちに臨んだ。

 

 

“キンッ!”

 

“ガギィッ!”

 

 

「えいッ!!」

 

「むううッ!!」

 

 

アタシのランスと小夜子の神楽鈴がぶつかって金属音が響く。リーチと点数だけならアタシが有利だけど、小夜子はどの攻撃にも落ち着いて対処している。

 

 

「なんで当たらないの!?」

 

「あたしを軽く見ちゃいけないよ優っこ。キミの癖は全部お見通しなんだからさ」

 

「小夜子ッ!!」

 

 

早く仕留めたい気持ちが先走って攻めが単調になっていくアタシ。小夜子も小夜子で着実にダメージを稼いでいくが、いかんせん決定打に欠けていた。

 

 

 

 

現代社会

 

Aクラス

 

木下 優子:328点

 

 

 

Cクラス

 

矢坂 小夜子:341点

 

 

 

 

それでも地道な攻めが功を奏したのか、点数差は逆転していた。このままではアタシが負けてしまう。

 

 

「一か八か、やってみるわ……」

 

ランスに力を込めて小夜子へ特攻を掛ける。その間に点数を減らされていくが関係ない。勝つ為には迷ってなんていられないのだ。

 

「てやぁッ!!」

 

 

“ガギンッ!”

 

 

「武器が……!」

 

 

神楽鈴を弾き飛ばし、小夜子の召喚獣が丸腰になった。このチャンス、逃さない!

 

 

「腕輪発動! 行くわよ、小夜子!!!」

 

「くぅッ……!」

 

すかさず腕輪を発動し、ランスに暴風を纏わせる。それによって増した突進力で小夜子を捉えた。

 

 

「“スパイラル・クラッシュ”!!」

 

 

 

 

 

現代社会

 

Aクラス

 

木下 優子:102点

 

 

 

Cクラス

 

矢坂 小夜子:0点

 

 

 

腕輪の力で増した攻撃力を以って、小夜子を撃破し勝利する。

 

 

「アタシの勝ちね小夜子。どう? 悔しいでしょう?」

 

「ふふっ……、やっぱり優っこはすごいなぁ。あたしじゃちょっと敵わないや」

 

小夜子にあの頃の気持ちを思い出させる為に挑発したのに、悔しがるどころか素直に褒め称えている。まるで子か兄弟の成長を喜ぶように。

 

「な、なによそれ……!」

 

「戦死者は補習よ!!」

 

アタシが怒りに震え始めると同時に、我妻先生が戦死した生徒たちを担いでいた。その中にはCクラス生徒と自分のクラスメイトも混じっていたので、そちらの戦闘も終わったようだ。

 

「お疲れ様木下さん。いい戦いだったようね」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

我妻先生が労いの言葉を掛ける。無下にする訳にもいかなかったので丁寧に答えた。

そして小夜子も担いで補習室へと連行して行くのを見送った。

 

「木下さん、終わったよ」

 

残ったクラスメイトの1人がこう言った。彼女ともう1人しか生存者がいなかったらしい。

 

「お疲れ様。あなたたちはこのまま回復試験を受けて来なさい。アタシは後から合流するわ」

 

「「了解」」

 

 

2人はそう答えてこの場から離れて行った。残ったのはアタシだけ。

 

 

「なんなのよ! 負けたのになんであんな風に笑っていられるの? アタシが認めたライバルで親友だと思ってたのに……。小夜子のバカ…………ッ!!」

 

 

勝ったハズなのに、なぜか負けたような気持ちだ。やり場のない苛立ちをアタシはぶつけることしかできなかった……。

 

 

See you next stage……




「一応優子さんが勝った訳だけど……。なんか後味が悪いと言うか、スッキリしないね」

「すれ違う2人……、和解……或いは元の仲良しに戻るには時間が必要かなぁ……」

「これに関する話は機会があればまたそのうち、ってとこだね」

「次回のバトルも好カード……なハズ! 多分……」

「そう言うことで……、またねー!」

「シーユー♪」



ディセ「ビショップくん含めた戦友と共に進軍した私たちを待っていたのはCクラス陣営の主力の一角…… 十波義行くんでした。『2人でなら行ける』。そう信じていたのですが、その考えは誤りであることを思い知ることになります……」


ディセ「次回。『バカとテストと召喚獣withグリモア!』、『ディセ&ビショップVS義行』。 Let's go……fight!!」


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第13話 ディセ&ビショップVS義行

「前回のあらすじッ!」

互いに親友兼ライバル同士とされる優子さんと矢坂さんの真剣勝負。
途中までは矢坂さんが有利だったけど、最終的には腕輪を使える優子さんが勝利を掴む。でも勝ったハズなのに、当の本人は不満そうだった……。
その裏では京先輩がゴタゴタしてたらしいけど、触れない方が良いよね……?


〜Aクラス本陣〜

 

 

飛彩side

 

 

「代表ッ!」

 

「シャロか。どうした?」

 

「はい。工藤さんと久保くんと佐藤さんを中心とした先遣隊がCクラスの遊撃隊と交戦。ですがCクラス側の猛攻の前に沈黙しました!!」

 

「「「「何だって(ですって)?!」」」」

 

現状を把握するべく偵察に遣わせていたシャロからの報告を聞いた本陣のメンバーは、驚愕の声を上げる。

 

「彼らもAクラス20位以内の実力者です。それをこーも突破するたぁーやりますね……」

 

「やはり工藤さんたちでは荷が重かったのか……。……代表、僕が出撃()よう。Cクラスの連中を倒して来るよ!」

 

「待て、七島」

 

出撃しようとした七島を収める。

 

「どうしてだ! 僕と代表と白岩くん、そして霧島さんと水無月さんが行けば、勝つのは容易いハズじゃないか!」

 

「お前の言うことも一理ある。確かに俺たち5人なら戦況を覆すことは簡単だ。だがそれでは送り出したクラスメイトたちを信頼していないことになる。重ねて言うが、今後他のクラスから挑まれても負けない為にみんなの実力の向上を図ることが大事だ」

 

「だ、だけど!」

 

「今は堪えろ。機が訪れたら出撃するから、ここに居るメンバーはいつでも行けるように準備をしていてくれ」

 

「「「「了解(だ)(です)」」」」

 

「……わかったよ、代表」

 

この戦争の目的を改めて説明し、本陣のメンバーにも指令を送る。食い下がった七島も納得してくれたようだ。

 

「ところで、中堅部隊は誰が控えているんだ?」

 

「はい。右翼には真境名さんと桃世さん、左翼には氷川さんとイヴさん、中央には羽ノ宮くんと神凪さんが陣取っています」

 

「そうか……、ではシャロ。中堅部隊のみんなにCクラス遊撃隊と遭遇したら迎え撃つよう伝えてくれ。どこに援護へ向かうかの判断はお前に任せる。頼んだぞ」

 

「了解であります、代表」

 

シャロはそう答えて本陣を後にした。

想像通り……、いや想像していた以上にCクラス(あちら)も戦力が充実しているという訳か。

すんなり行くとは思っていなかったがやるな。それでこそAクラス(おれたち)が戦う意義があるというものだ。

木下とディセとビショップの情報がないのが気になるが……。

 

 

※注) この時点での飛彩は優子が勝利したことを知りません。

 

 

うるさいぞ、静かにしろ。

 

 

「どーしました、だいひょー?」

 

「大丈夫だ水無月、霧島。問題ない」

 

「……誰に向かって話していたの?」

 

「いや……、何となくツッコミを入れたくなっただけだ。気にするな」

 

「「さいですか(……そう)……」」

 

風子と霧島は訝しげだったが、大丈夫だと言うと納得したように顔を見合わせて持ち場へ戻る。

俺の方も気を取り直して、攻め込む算段を立てて行くのだった。

 

 

飛彩side out

 

 

 

 

少し時間が経過し……。

 

 

 

 

 

康太side

 

 

「Aクラスが有利かと思ったッスけど、Cクラスも侮れないッスね〜。前哨戦を制したことで自信が付いて、現時点ではCクラスに勢いがあるッス。そう思わないッスか、つっちー?」

 

「……ああ。そうだな」

 

屋根裏でAクラス対Cクラスの試召戦争を見守っていた俺と梓は、当初の予想を覆してAクラスに対して互角に渡り合っているCクラスを目の当たりにし、舌を巻いている。

本命でないとはいえ、先遣隊も工藤愛子や久保利光と佐藤美穂といった上位20位以内の生徒を主軸に組んでいたハズ。これを打ち破った連中は彼らと同等かそれ以上だと言うのか。

 

「……だが戦力を削られたとはいえ、未だに余力を残しているAクラスも厄介と言えるな。実際、先遣隊と木下優子以外の主要メンバーが交戦していない。Cクラスがやっと五分に持って行っただけだ」

 

「今の勢いを保って押し切るか、あるいはどんでん返しが待っているのか……。まだまだ先が読めないッスね」

 

「……(コクッ)この戦争の結果が俺たちの今後を占うだろう。引き続き状況を見守るぞ、梓」

 

「りょーかいッス、つっちー」

 

俺と梓は戦場に視線を戻す。……さて。ここからどう巻き返して行くか見させてもらおう、唯島飛彩。

 

 

康太side out

 

 

 

 

ディセside

 

 

私はビショップくんも含めたクラスメイト数人と共に、数学の長谷川先生を連れた十波義行くん率いる部隊と向き合っています。

見たところ、注意すべきなのは彼くらいのようですが……。何のつもりでしょうか?

 

「1つ良いか十波。俺とディセを相手に、主軸がお前1人なのは余程自信があるのか、或いは俺たちに対する挑発か?」

 

「答える程のものではないが……、俺の腕輪の特性を見込んだ宍戸さんの判断だ」

 

「「そう(です)か……」」

 

ビショップくんの問いに対して十波くんはこう返しました。そう言えば向こうには宍戸結希さんがいましたね。……なるほど、彼女ならやりかねないことです。

 

「これで納得したか? もう話すことがないならやらせてもらおう。長谷川先生、お願いします」

 

「わかりました、フィールド展開ッ!」

 

「始めるぞ。試獣召喚(サモン)ッ!!」

 

「「「OKッ、十波(くん)! 試獣召喚(サモン)ッ!!」」」

 

数学のフィールドが展開され、十波くん率いる部隊が召喚獣を呼び寄せました。

十波くんの召喚獣は彼をデフォルメした姿に、青を基調とした改造制服とゴーグル付きの学生帽に青いスカーフを巻いています。そして、炎のように紅い2本のロングソードを携行し、他のCクラス生徒の召喚獣よりも強そうです。

 

「みなさん! 私に続いてくださいッ!」

 

「ああ!」

 

「「わかった(わ)!」」

 

「「「「試獣召喚(サモン)ッ!!」」」」

 

私もビショップくんたちに指示を出して召喚獣を呼び寄せます。

魔方陣から現れた私の召喚獣は白と金を基調とした軽装鎧を身に纏った騎士のような出で立ちで、武器は見た目がサーベル、刀身と鞘が日本刀という特殊な刀を携行しています。

対してビショップくんの召喚獣は、黒い海賊帽に緑色のシャツと赤いショール、さらに白いストールを纏った海賊の親玉を思わせる派手な格好です。

武器も、金色のカットラスとマスケット銃というこれまた海賊をイメージしたものでした。

 

「ひゅ〜ぅ☆ こうして見ると不思議な組み合わせだな。そう思わないか、ディセ?」

 

「目先の相手に集中してくださいビショップくん。……ですが私も同じことを考えてましたよ」

 

軽口を叩くビショップくんを窘めつつも同意すると、目を見合わせて笑い合います。実を言えば初の実戦ということもあって緊張していましたが、このやり取りで落ち着きを取り戻しました。

意図してやったのかはわかりませんが、彼には感謝ですね。

 

 

 

数学

 

Aクラス

 

冬樹 ディセ:442点

 

ビショップ・ニルヴァーナ:435点

 

Aクラスモブ×2:平均343点

 

 

 

Cクラス

 

十波 義行:458点

 

Cクラスモブ×3:平均251点

 

 

 

「ディセくん、私たちは召喚しなくて良かったの?」

 

「構いません。もしもの時の為に連れて来ましたが……、君たちは唯島くんの下へ向かって、今の状況を伝えてください」

 

「ここは俺たちが抑える!」

 

「「わかった(わ)!」」

 

まだ召喚してないクラスメイトの1人が尋ねて来たので、私とビショップくんがこう返答すると、彼女はもう1人のクラスメイトと一緒にこの場を離れて行きました。

 

 

「さあ、行きますよ十波くん! 覚悟してください!」

 

「俺たちのデビュー戦だ、楽しもうぜ!」

 

「返り討ちにしてやるぞ!」

 

 

“ガギンッ!”

 

 

双方の掛け声を皮切りに戦闘開始となりました。武器がぶつかって金属音が響きます。

 

「一先ず俺と遊んでもらうぜ、十波」

 

「ちいッ!」

 

「良いですよビショップくん! まずは、あなたたちから退場させて頂きます!」

 

ビショップくんが十波くんをカットラスによる斬撃とマスケット銃での銃撃を織り交ぜながら引きつけている内に、私はクラスメイトと共にCクラス部隊員を一点に集中させました。

 

「君たちは下がってください!」

 

「「わかった(わ)!」」

 

「喰らいなさい、“ライトニング・ストライク”!!」

 

 

 

数学

 

Aクラス

 

冬樹 ディセ:372点

 

Aクラスモブ×2:平均331点

 

 

 

Cクラス

 

Cクラスモブ×3:平均0点

 

 

 

「「「そんな(バカな)ッ?!」」」

 

仲間を後退させた後、腕輪による広範囲の雷撃で一網打尽にしました。少し点数消費が大きかったですが、許容範囲内です。

 

「戦死者は補習よ!!」

 

「「「補習は嫌だー!!(でも我妻先生だったら良いかな?)」」」

 

瞬間移動の如く現れた我妻先生が、戦死した生徒を連行して行きます。途中で何か聞こえた気がしますが……、無視することにしましょう。

 

「こっちは片付きました。これから援護に来ます」

 

「助かるぜ」

 

十波くんと交戦中のビショップくんの下へ召喚獣を移動させます。ですが、あまりにもあっさりとし過ぎている。これで良いのでしょうか?

 

「考えても仕方ありませんね、今は十波くんを倒すことに集中しなければ。……では行きますよ、ビショップくん!」

 

「OKだ、ディセ!」

 

「「“グラビティ・ブリッツ”!!」」

 

私の腕輪とビショップくんの腕輪による複合攻撃を十波くんに向けて放ちました。回避は間に合わなかったらしく、命中した様ですが……。

 

「どういうことだ?」

 

ビショップくんが疑問の声を上げていたので質問しようとすると、十波くんが話し始めます。

 

「『腕輪による攻撃を受けたのになぜ無傷なのか』……って言いたそうだな。俺も腕輪の能力を使ったからだ」

 

「それはわかっています。私たちが言いたいのは、『なぜ召喚した時以上に点数が回復しているのか』と言うことです!」

 

 

 

数学

 

Aクラス

 

冬樹 ディセ:322点

 

ビショップ・ニルヴァーナ:346点

 

Aクラスモブ×2:平均331点

 

 

 

Cクラス

 

十波 義行:498点

 

 

 

点数を見てみると私が言うように、召喚時の40点も点数が回復しています。これについて十波くんは話し続けました。

 

「知りたいなら教えてやろう。俺が今使ったのは“ブレードターン”。この腕輪の効果は、他の腕輪によるダメージや特殊効果を防いだ場合、その腕輪の消費点数の値だけ、点数を回復する!」

 

「「「「な、何だって(ですって)!?」」」」

 

「あともう1つ教えるぞ。これは宍戸さんから教わったが……、腕輪の能力は拡張性がある場合と複数の能力を内包している場合がある。俺は後者で、ブレードターン以外にも能力はあるぞ!」

 

「「「「ッ!!!」」」」

 

「次は俺の番だ冬樹、ニルヴァーナ。……爆ぜ散れ、“エクスプロード”!!」

 

 

 

数学

 

Aクラス

 

冬樹 ディセ:252点

 

ビショップ・ニルヴァーナ:276点

 

Aクラスモブ×2:平均0点

 

 

 

Cクラス

 

十波 義行:378点

 

 

 

「「うわぁ(キャァ)ッ!!」」

 

「「くっ……!」」

 

私とビショップくんは何とか直撃を回避しましたがクラスメイト2人は間に合わずに戦死してしまい、西村先生に連行されました。

こちらも70点程削られています。

 

「アレを避けるとはやるな。流石にAクラス上位の実力者なだけはある。だが、エクスプロードが普通の爆撃だと思ってもらっては困るぞ」

 

「何だと言うのですか……!」

 

「エクスプロードの追加効果。この腕輪による攻撃を受けた召喚獣は5分間、防御力が30%減少のデバフ効果を受ける!」

 

「フン、やってくれたな十波!」

 

攻撃の威力だけでなくデバフのおまけ付きですか……。どうする、どうやって立ち回る? 私がそのように悩んで態勢が整わない内に、

 

「どちらから倒しても俺が有利なのは変わらないが……。まずはお前からやらせてもらおう、冬樹ディセ!!」

 

「しまっ……!」

 

十波くんが攻め込んで行きます。防御しようにも間に合わない、戦死を覚悟したそのときでした。

 

「やらせねぇぞ!」

 

「「!!!」」

 

 

数学

 

Aクラス

 

冬樹 ディセ:252点

 

ビショップ・ニルヴァーナ:0点

 

 

 

Cクラス

 

十波 義行:378点

 

 

 

ビショップくんの召喚獣が私の召喚獣を庇うように前へ出て、十波くんの召喚獣の攻撃を心臓に受けました。

 

「ヤベ、ヘマしちまった……」

 

「ビショップくん、どうして……!」

 

「敵にスキを見せちゃダメだぜディセ。ボヤボヤしてると今みたいにやられるぞ?」

 

私がスキを見せたばかりにビショップくんが……、何ということを……。

 

「ごめんなさいビショップくん! 私がしっかりしていればこんなことには……」

 

「何謝ってんだよディセ。仲間だから、友達だから助けんのは当たり前だろ? 俺はやられたが、お前は無事だった。それで良いじゃねぇか」

 

「ですが……!」

 

「俺がいなくなって今より厳しい状況になるだろうが、直に援護も来るハズだ。お前なら切り抜けられると信じている。……頼んだぞ」

 

「戦死者は補習ッ!!」

 

今度は瞬間移動の如く現れた西村先生が、ビショップくんを担いで補習室に連行して行きました。ここに残ったのは、私と十波くんだけです。

点数的には依然私が不利ですが、ここで倒れる訳には行きません。

再び刀を構えて十波くんと向き合います。

 

「順番が逆になってしまったが……。今度こそお前の番だ、冬樹ディセ」

 

「やれるものならやってみなさい!!」

 

 

(ビショップくん、みなさん……。君たちの犠牲を無駄にはしません。私はどこまでも戦い抜いて見せます!!)

 

 

 

 

ディセside out

 

 

 

 

 

 

飛彩side

 

 

「「「「代表!」」」」

 

本陣で構えている中、別の部隊に割り振っていたクラスメイトたちが戻って来た。

 

「どうしたお前たち?」

 

「「えっと!」」

 

「ごめん、私から言うね。私は木下さんと一緒の部隊で矢坂さんと戦って勝利したよ」

 

「そうか。それで、そっちはどうだ?」

 

「俺たちは十波の部隊と交戦しているんだが、全滅の可能性も考慮したディセが俺たち2人を連絡要員に回したんだ。だから今は状況がわからない」

 

優子の方は勝利したか……、良くやったな。矢坂と戦ったと言うことはとりあえず置いておこう。問題は中堅部隊とディセたちか。勝ったと思いたいが、敗北の可能性も考慮しなければな……。

 

「わかった、報告してくれてありがとう。まだ点数に余裕があるなら、お前たちも来てくれるか?」

 

「「「「はいッ!!」」」」

 

「だいひょー。ってこたぁー、もう行きますか?」

 

「もちろんだ水無月。……みんな聞いてくれ、これまで待たせて本当にすまなかった。ここから俺たちも進軍する。良いな?」

 

「「「「了解ッ!!」」」」

 

ここにいる全員が声高らかに返答し、士気も上々だ。この戦争必ず勝つ、勝ってみせる!

 

 

See you next stage……




「こういうことかあ。そりゃあ悩むよね……」

「うん。今後もオリキャラ同士(読者様投稿キャラも含む)の戦いは必ず出てきます。勝敗等によっては見るのが辛くなる面が出てしまうことはご了承くださいね」

「こんなトコかな? 特に言うことがないとも言う……」

「次回で決着! 勝つのはどっちか、目を離すなッ!」

「シーユー!」



飛彩「対Cクラスも終盤を迎え、俺も含めた大本命も進軍する。俺を信じて着いて来てくれたみんなの為にもこの戦い、勝たせてもらう……!」


飛彩「次回。『バカとテストと召喚獣withグリモア!』、『幕引き 』。 Let's go……fight!!」


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第14話 幕引き

「前回のあらすじッ!」

十波くんと戦うディセとビショップ。2対1で有利と思いきや、腕輪を駆使した十波くんの前にディセを残して全員倒された。 残るディセも点数面で不利な状況となって絶対絶命の危機に!
これを受けて、ついに飛彩たちが出陣する……!


飛彩side

 

 

「来たわね、代表」

 

「瑠璃川か……」

 

「さっきから姿が見えねーと思ったら、何してたんですか?」

 

「部隊から逸れていたCクラスの子たちを遭遇する毎に倒して回っていたわ」

 

本陣から飛び出した俺たちを瑠璃川春乃が待ち構えていた。

シャロの報告の中に名前が無かった為、風子が質問をするとこのように答える。

 

「お前の動きを把握してなくて申し訳ない。だが俺の知らない所で貢献してくれたことは感謝する。礼を言うぞ、瑠璃川」

 

「気にしなくて良いわ唯島。言ったハズよ、最低限は働くって」

 

彼女を労うと「これくらい当然」と言わんばかりに返事したが、微かに笑みを浮かべていた。

本当に「微かに」だが。

 

「それで? アンタたちはこれから本陣を攻めるんでしょう。誰をどこに行かせるかは大体見当つくけど……、あたしの力はまだ必要かしら?」

 

「そーですね、まだ戦争は継続中ですし。……ではアンタさんは氷川と冬樹姉の援護に行ってもらいましょーか。よろしーですね、瑠璃川?」

 

「(あの2人の所ね)……ええ。頼まれたからには期待に応えるわよ」

 

瑠璃川はそう答えて、Cクラス遊撃隊のいずれかと交戦しているであろう氷川とイヴがいる左翼へと向かった。残った仲間たちにも再度指示を出す。

 

「さて、他のメンバーについてだが……。七島は中央にいるシドと怜の援護、翼は俺の護衛、水無月と霧島は宍戸の足止めをしてくれ。楽な任務とは言えないが、お前たちならできると信じているぞ」

 

「任せてくれ!」

 

「了解した、代表」

 

「宍戸さんですか……。いーでしょう、やってやりますよ」

 

「……わかった」

 

それぞれが自分の役割を認識し、行動を開始する。俺も俺の役目を果たすとしよう。

 

 

飛彩side out

 

 

 

 

 

紫童side

 

 

「大丈夫か、怜」

 

「ああ。まだ行ける……!」

 

 

俺は怜と一緒にCクラスの生徒と戦っているんだが……。ヤツは予想以上に強く、俺たち以外は既に戦死してしまった。

2対1でこっちが有利に思えるのだが、点数の方ではあちらに分がある。

 

 

 

 

化学

 

Aクラス

 

羽ノ宮 紫童:287点

 

神凪 怜:172点

 

 

 

 

Cクラス

 

十波 義行:339点

 

arms:218点

 

 

 

 

「くっ! ディセとビショップを破るとはやるじゃないか、十波。しかも武器(そんなもの)まで使うとは……」

 

「うむ。私も羽ノ宮も、俄かには信じられなかったからな……」

 

「1番驚いているのは俺自身だ、2人とも。実力者の彼らを相手に勝てるとは考えていなかったからな。だが、俺が冬樹ディセとビショップ・ニルヴァーナに勝ったというのは紛れもない事実だ」

 

 

ハッタリにも思える発言だが“あるモノ”を見ると、十波の言葉が事実だと悟った。

なぜならヤツの召喚獣が持っていた武器が、ビショップの召喚獣の武器だったからだ。

 

 

「『サルベージ』。自分と同じフィールドで、敵味方問わず召喚獣が戦死した時に点数を払い発動。戦死した召喚獣の武器を使うことができる。尚、戦死した召喚獣が腕輪持ちの場合は武器の点数を払うことで能力を使える。また、同時装備は2つまで。ストックは最大5つまでだ」

 

「さっきの範囲攻撃だけじゃなかったということか。……侮れんな」

 

「だがここでやられては、ディセやビショップに申し訳ない。やるしかないな……!」

 

 

俺と怜が再び武器を構え直すと、誰かが近づくのが見える。どうやら同じAクラスの生徒らしいのだが……。

 

「やあ羽ノ宮くん、神凪さん。助けに来たよ」

 

「七島……真志!」

 

「なぜお前がここにいる?」

 

 

やって来たのは七島だった。この前のこともあって、俺たちは彼を怪訝な表情で問いかける。

 

「そんな顔をしないでくれ。僕を君たちの元へ行くよう指示したのは代表……、唯島くんだ」

 

「飛彩が?」

 

(コクッ)

 

「見たところ苦戦してるようだね。点数も減っているようだし……、僕も共に戦おう」

 

「テメェ……!」

 

「羽ノ宮! 悔しいが、七島の言ってることは事実だ。ヤツの言うように連携で十波を倒すしかない。私情は一旦置いて行くぞ」

 

「わかった怜。……七島、お前と合わせてやる。だが勘違いするなよ、俺はお前を認めた訳じゃない。飛彩の助けになる為にやっているだけだからな」

 

「構わない。あくまで君たちをアシストするのが役目だ。目的が達成されるなら、それだけでも僕が来た意味があるよ」

 

そう、確かに納得はしていない。しかし、ここで敗北か勝利の2択を迫られるのならヤツと協力することを選ぼう……。

自分にそう言い聞かせて俺と怜、そして七島という恐らくこの場限りの3人一組(スリーマンセル)を結成した。

 

「話は済んだな? 援軍が来たところで俺が有利なのは変わらない。このままお前たちを倒し、唯島も落とす!」

 

「……調子に乗るなよ、十波くん」

 

「「七島……?」」

 

「……ッ?!」

 

さっきまでの落ち着いた態度から一変して、睨みつけるような表情でこう告げた七島に俺たちは困惑し、十波は動揺する。

 

「冬樹くんとビショップくんを破ったことは、正直予想外だった。君の実力を認めよう」

 

(スゥ……)

 

「だけど、Aクラス内でも最上級とされる僕ですら霧島さんや水無月さん、唯島くんには及ばない。しかも“全力を出してない状態で”、だ。それを君程度の男が彼を倒そうなどとは、烏滸がましいにも程がある。その自信、僕たちがへし折ってやるよ……! 試獣召喚(サモン)ッ!!」

 

紫色の魔法陣が展開され、そこから黒ベースの騎士服にフード付きローブを羽織った召喚獣が飛び出す。

武器も最上級と言うだけあり、魔法剣と魔導書を装備し、強者のオーラを漂わせた。

 

 

 

化学

 

Aクラス

 

七島 真志:555点

 

 

 

「これが七島の召喚獣……。すごい力を感じるぞ」

 

「私もそう思うよ、羽ノ宮」

 

「本当なら使うつもりはなかったけど、今回は特別に奥の手を見せよう。“デュアル”!!」

 

七島がそう叫ぶと腕輪が発光し、細長い体と複数の目、ワニのような頭部に2本の長い角が生えた魔竜が姿を見せる。

巨大な外見に相応しい威圧感を放っており、味方で良かったとこのときばかりは思った。

 

「お前の言葉通り、確かに強そうだが……。それでも俺は負けはしない!」

 

「これを見ても闘志が衰えないのは賞賛に値する。でもやると言った以上、僕たちの勝利は絶対だ。……行くぞ羽ノ宮くん、神凪さん」

 

「「ああ(わかった)」」

 

陣形を組んで十波に攻め込む。単純に突撃を掛ける形になっているが、これにはちゃんと狙いがある。

 

「どうやって攻めるのか少し期待したが、結局それか。纏めて仕留めてやる、“エクスプロード”!!」

 

「掛かったね、ギムレー!!」

 

「グォォォン!!」

 

十波の腕輪の攻撃を魔竜が身代わりになる。

数では不利な為一網打尽にしようとしたのを見越し、あえて手を出させる手段を取ったという訳だ。

 

「“デュアル”によって召喚された竜はいずれの行動にもクールタイムがあるが、あらゆる攻撃のダメージやデバフ効果を無効にする!」

 

「チッ!」

 

「今度はこっちの番だよ……! 羽ノ宮くん、神凪さん! ここから離れてくれ!」

 

「「了解!」」

 

「いけぇッ!!」

 

七島がこう言うと、魔竜がブレスを十波に向けて放つ。

 

「そう来るのなら……、ビショップ・ニルヴァーナ。お前の力、借りるぞ」

 

十波もビショップのマスケット銃から重力波を発射して応戦する。しばらくは両者互角だったが、徐々に魔竜のブレスが押して来た。

 

「……マズイな。仕方ない、武器を放棄する!」

 

「俺のこと、忘れてないよな十波?」

 

「これも使うしかないか!」

 

マスケット銃を手放した十波を俺が追撃する。

俺の武器は日本刀2本だからか、ヤツもストックしていたディセの刀を展開された魔法陣から引き抜いて迎撃態勢を取った。

 

「それ以上、仲間の武器を使われるのは見たくないからここで潰す!」

 

 

“ジャギンッ……!!”

 

 

「なん……だと!」

 

切断(スライサー)。あらゆるものを斬り裂く……!」

 

腕輪を発動して武器を斬り捨てる。敵が使っていたとはいえ、味方の武器を破壊するのはあまり気持ちの良いものではないな……。

 

「今だ怜、やれぇッ!」

 

「ああ! お前たちが作ってくれたチャンス、逃しはしない!」

 

「は、速い……!」

 

「神戯一刀流奥義……、“征鬼一刀”ッ!!」

 

 

 

化学

 

Aクラス

 

羽ノ宮 紫童:237点

 

神凪 怜:72点

 

七島 真志:405点

 

 

Cクラス

 

十波 義行:0点

 

 

 

 

丸腰になった隙を逃さず、怜が上段おろし斬りを叩き込む。

文字通りの一撃必殺だ。

 

 

「十波、私たちの勝ちだ」

 

「くっ。俺もまだまだということか……」

 

「戦死者は補習ッ!!」

 

 

勝敗が決まったのを嗅ぎつけた西村先生が十波を連れて行き、静寂が訪れた。

 

「……七島。この借りは必ず返すが、今回はお前がいたから勝てた。感謝する」

 

「だが、お前のハルたちに対する認識が変わらないなら今回限りだからな?」

 

「ありがとう神凪さん。羽ノ宮くん……。君の言葉、心に留めておこう」

 

とは言ったが、中々良いコンビネーションだった。七島の考えが変わるきっかけがあれば、また組んでも良いだろう……。

俺はそんな風に考えていた。

 

 

紫童side out

 

 

 

 

 

〜Cクラス本陣〜

 

 

飛彩side

 

 

「この先は小山と近衛部隊がいるから一気に攻め落とす。良いな、翼?」

 

「心得たぞ、代表」

 

「では行くぞ」

 

みんながそれぞれの部隊と交戦している中、俺は翼と共に小山と護衛部隊のいるCクラス教室へ突入した。ここまで来れば負けはしないだろうが……、慢心せずに行くか。

 

 

「小山、ここで全てを終わらせる……!」

 

「唯島くん……! 負けるとわかっていても、引く訳にはいかないの! みんな、行くわよ!」

 

『『『『『試獣召喚(サモン)ッ!!』』』』』

 

 

古典

 

Aクラス

 

唯島 飛彩:483点

 

白岩 翼:407点

 

 

Cクラス

 

小山 友香:354点

 

新野 すみれ:261点

 

Cクラスモブ×9:平均219点

 

 

 

「唯島も白岩も400点越えじゃないか!」

 

「こんなの勝てる訳ないよぉ!」

 

「召喚したものは仕方ない、こうなったらやぶれかぶれだよ!」

 

「「「「「おおーッ!!」」」」」

 

覚悟を決めて挑む姿を見て、俺は素直に感心した。この姿勢がAクラス全体に浸透すれば……文字通りの最強になれるかもしれない。

 

「お前たちは俺が相手しよう。……来い!」

 

近衛部隊の相手は翼がやるようだ。……ならば、俺の相手はもう決まっている。

 

「前よりも強くなっているな。だがそれでも俺には及ばない。……小山。お前を……倒す」

 

「……ッ!!」

 

高く飛び上がり、ツインバスターライフルを腕輪の力によるフルパワーで照射する。

最初の内は小山もどうにか凌いでいたが、最終的に極太ビームに呑み込まれて召喚獣が消滅した。

 

「戦争終結! 勝者Aクラス!!」

 

小山の戦死を察知した西村先生が、またしてもどこからともなく現れて、終結の号令を出す。

予想外なこともあったが、とりあえずは勝ったことを素直に喜びたい。

 

「任務、完了……」

 

 

See you next stage……




「どうだった? 久々だったけど、楽しんでくれたのなら嬉しいです♪」

「諸事情で難産だったらしいからおかしい点があったら指摘してあげてくれると助かるよ!」

「次はBクラス戦を予定してるけど、その前に戦後対談が待ってるね」

「それだじゃない気もするけど……」

「……とまあ、こんなトコで次回に会おうね!」

「シーユー!」



明久「勝利を決めたAクラスがCクラスとの戦後対談に。だけど交渉の際に小山さんの反応からある男の存在がちらつく。そして、我らがFクラスでも康太が数日前に綺羅星さんが語った内容を首脳陣にもたらしたのだった……」


明久「次回ッ!『バカとテストと召喚獣withグリモア!』、『動き出す者たち Part②』。 Let's go……fight!!」


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第15話 動き出す者たち Part②

「前回のあらすじッ!」


ディセとビショップの後を引き継いで十波くんと戦う怜とシド。またしても苦戦してしまうけど、助っ人に現れた七島くんのアシストを受けてついに撃破に成功。
対する飛彩の方も小山さんの成長に感嘆しながらも、圧倒的な力の差で単独撃破。Aクラスの勝利が確定した。


梓side

 

 

「……終わったか」

 

「そのようッスね。だいたい予想できてたッスけど……」

 

Aクラス対Cクラスの戦争は自分たちの予想通り、 Aクラスの勝利に終わったッス。

予想外の結末を期待してなかった訳じゃないッスけど、最上位クラスの威厳を保つという点ではこれで良かったかもしれないッスね。

 

「……Cクラスの陣容も中々だな。この偵察は充分過ぎるほどの価値があった」

 

「それは自分も同意見ッス。いずれは戦うことになるかもしれないッスから。……これからどうするッスか、つっちー?」

 

「……一先ずFクラスに戻るつもりだ。雄二に今回のことを報告する必要がある」

 

一呼吸置いてさらに続けるッス。

 

「……次の戦争の為に、な」

 

「それなら今度の標的は、Bクラス(自分たち)ッスか?」

 

「……(コクッ)」

 

さっきまでの軽い空気と打って変わって、敵同士が対峙するような空気を漂わせながら言葉を交わす。自分の返事につっちーは静かに頷いた。

 

「……クラス単位の戦争は抜きで考えても、中学生時代から競い合った者同士として白黒を着けたい。先に勝つのは俺だ、梓」

 

「今の言葉、そっくりそのままお返しするッスよ。……つっちー」

 

まるで獲物を捕らえたハンターの如き鋭い眼光で見つめるつっちーに負けじと、自分も見つめ返す。

しばらくの静寂が過ぎるとその空気も薄れたッス。

 

「……では、俺は行くぞ。そのときは良い勝負をしよう」

 

「望むところッス……!」

 

つっちーはそう答えてこの場を離れたッス。

 

 

「話は済みましたか、服部さん?」

 

「うわぁッ?! ……って、誰かと思えば神山(かみやま)くんじゃないッスか。いるなら一言言って欲しいッス」

 

「邪魔をしては悪いと思って気を遣ったつもりでしたが……、これは失礼しました」

 

入れ違いで現れたのは、ウェーブのかかった赤い長髪が特徴的な男子生徒……神山孝基(かみやまこうき)くん。

表向きでは3つに分かれたBクラス勢力の1つである、反代表派メンバーの1人ッス。

 

「一応君は反代表派ということになってるッスけど、実際は自分たちと同じ勢力に所属するスパイなんスからね。何かあったんスか?」

 

「はい。大文字(だいもんじ)くんが独断専行を行なっているらしいので、それらの報告と対策を代表に進言しようと思っていました。その道中で君と土屋くんに出くわした……という訳です」

 

「またッスか……。大文字くんが何かやらかす度にクラスのみんなが迷惑するのがなんでわからないんスかね……?」

 

大文字代門(だいもんじだいもん)。曲がりなりにも上位クラスに所属しているから一応外面はそこそこッスけど、その裏では去年の根本くん以上に卑怯・卑劣・陰険の3拍子揃った外道ッス。

彼の所業は被害に遭った生徒の多くが知るところッスが、妙に悪知恵の働く男でそれらの証拠を悉く隠滅しており、証拠不十分で不問になったことが多いッス。

それ故に個人的恨みもあるッスけど、風紀委員会としても彼は要注意生徒としてマークしてるッス。

 

「ねぇ神山くん。大文字くんの独断専行ッスけど、その内の1つは自分が潰そうと思うッスが……、どうッスか?」

 

「構いませんが……、なぜです?」

 

「実は……。これは風の噂なんスけど、どうやら大文字くんは次に戦争を仕掛けて来るFクラスに対してCクラスをぶつけようとしてるらしいッス。……Cクラス代表の小山友香さんを脅迫して」

 

「なんですって? 彼は勝利の代償にBクラス(私たち)の評判を貶めるつもりですか……! 確かにそれを見過ごす訳にはいきませんね。……良いでしょう服部さん、Cクラスの方はあなたにお任せします。彼の企みを1つ削ってやってください」

 

 

少し一考する様子を見せた神山くんは思い立つが早いか、自分に依頼したッス。

 

「委細承知ッス。これ以上一緒にいたら何か勘潜られそうッスから自分はもう行くッスよ。一応、神山くんとは“対立”してる体ッスからね」

 

「はい、わかってますよ」

 

 

神山くんの返事を聞いて頷くと、自分もこの場を離れたッス。さて、やってみましょうかね。

 

 

梓side out

 

 

 

 

 

 

風子side

 

 

「さて。これからAクラスで戦後対談を行うが……、小山以外で来る生徒はいるか?」

 

Cクラス戦の終戦後、飛彩が全員に呼び掛けました。単に対談をするだけならCクラス教室でも良いでしょーが、飛彩曰く「小山から何かを感じ取った」らしくこのような形にしたのだそーです。

 

「私が行くわ。これは副代表としての責任よ」

 

「……俺も行こう。前線で長く戦った方だからな」

 

「他にいるか? あと1人くらいまでなら、同行しても構わないぞ」

 

 

最初に宍戸さん、次に十波くんが名乗り出しました。再度飛彩が呼び掛けると、その場の全員が顔を見合わせています。

戦後対談とはいえ、最上位クラスの教室へ行く訳なのできんちょーしてるのかもしれねーですね。

 

「それなら、俺が行く」

 

「獅雄か。これで締め切ろうと思うが、異論はないな?」

 

獅雄くんが立候補し、最終確認を取ります。

 

「ないようだな。では小山友香、宍戸結希、十波義行、獅雄麗椰。以上4名を戦後対談の代表者として来ることを許可する。氷川、優子。小山たちを案内してやれ」

 

「「わかりました(わかったわ)、代表」」

 

Cクラス全員一致で決まったメンバーを引き連れて、ウチらは自分のホームであるAクラスへ戻りました。

 

 

風子side out

 

 

 

 

 

 

〜Aクラス教室〜

 

 

友香side

 

 

私は今、Aクラスの教室で戦後対談を行っている。前半の奮闘で「ひょっとしたら」と思ったけど、最終的に唯島くん直々に討ち取られて敗戦となった。

わかっていても敗戦(コレ)はキツイわね。

 

「小山。通常の試召戦争のルールに則るとCクラス(お前たち)の設備のランクが下がる。これはわかるな?」

 

「ええ。唯島くん」

 

「だがAクラス(俺たち)の目的はあくまで“実戦経験”。俺としても、設備の質を落とす気はない。これはAクラス全員の総意だ」

 

「「えっ(何)?」」

 

この言葉に私と十波くんは動揺し、宍戸さんと獅雄くんは何も言わずに見据える。

 

「そこでお前たちと交渉したい。悪いようにはしないから、聞いて欲しい」

 

「その条件はなんだ?」

 

獅雄くんが訝しげに聞くと、唯島くんは続けてこう言った。

 

「FクラスがAクラスを目指して、試召戦争を起こしているのは知っているだろう。俺から提示する条件はただ1つ、『Fクラスに横槍を入れないこと』だ。それができれば今回は見逃そう」

 

「それだけで良いの、唯島くん?」

 

宍戸さんが尋ねると唯島くんは静かに頷いた。確かにそれだけで済むなら喜んで受け入れたいわね。

 

「でも……。それじゃ、帰って来ないわ……」

 

「どーしました、小山さん?」

 

「お前から感じた違和感は間違いなかったようだな。小山、何があったのか教えてくれるか? 一部の者を除いて、ここでの会話を俺たち以外に聞かれることはないから安心して欲しい」

 

「じ、実は……」

 

 

いつの間にか涙目になっていた私に気付いた水無月さんが声を掛け、唯島くんもそれに続く。私は彼らに事の経緯を話した。

大文字代門くんに恭二からもらった髪飾りを奪われたこと、返して欲しければBクラスに協力してFクラスと戦えと脅されたことを。

 

「大文字代門くん……、ですか」

 

「いかにも彼のやりそうなことですね。脅迫のネタを使い、自分の手を汚さずに要求を押し通す。困ったものです……」

 

「……わかった。協力者が必要になるが、お前の不安は俺たちが拭おう」

 

ディセくんと氷川さんは大文字くんの所業を聞かされて頭を痛め、唯島くんが優しく声を掛ける。

 

「さて……、そこにいるのはわかっているぞ。出て来たらどうだ、服部」

 

 

“シュタッ!”

 

 

「いつから気付いてたんスか、唯島くん?」

 

「戦後対談が始まったときからだ」

 

一呼吸置いて唯島くんが声を掛けると、天井から服部梓さんが降りて来た。

 

「裏で色々聞かせてもらったッスよ。小山さん、ウチの大文字くんがやらかしたこと、Bクラスを代表して謝らせてくださいッス」

 

「大丈夫よ、服部さんのせいじゃないわ」

 

「いえいえ、身内の不始末は片付けて置かないと気が済まないッス。それで、自分は何をすれば良いッスか?」

 

服部さんが大文字くんの所業を代わりに謝罪して来たので宥めると、今度はお詫びを申し出して来る。

 

「うーん、そうね……。それなら、私の髪飾りを取り返してくれないかしら?」

 

「ん? それだけで良いんスか?」

 

彼女の申し出に私がこう言うと、服部さんはキョトンとした表情を見せる。

 

「ええ。それさえ取り戻せば、私たちCクラスは唯島くんたちの要求を断る理由はないもの」

 

「服部。ウチからもおねげーします。これは風紀委員長としてではなく、友人としてのお願いです」

 

「……わかったッス。いいんちょーがそこまで言うなら、やらない理由はないッスね。この梓ちゃんにお任せくださいッス!」

 

水無月さんの後押しが効いたのか、服部さんもそう答えると即座に姿を消した。忍者だと言う噂は本当なのね。

 

 

 

 

〜しばらくお待ちください〜

 

 

 

 

「おまたせしましたッス! 髪飾り、取り返して来たッスよ小山さん♪」

 

それからしばらくして、服部さんがAクラス教室に戻って来た。風呂敷に包まれた髪飾りも一緒に。

 

「ああ……。誕生日に恭二がくれた髪飾り……、戻って来てくれて良かった……。本当にありがとう、服部さん……!」

 

「どういたしまして、お役に立てて嬉しいッス。また何かあればいつでも頼ってくださいッスよ♪」

 

服部さんにどうやって取り戻したのか聞いてみたけど、「企業秘密ッス♪」と躱されてしまった。とは言え、こうして髪飾りが戻って来たからそこまで気にするほどでもなかったけども。

 

「ごくろーさんでした服部。アンタさんはもう戻ってけっこーですよ。ごきょーりょく、感謝します」

 

「はい。ではいいんちょー、そしてみなさん。自分はこれで失礼するッス」

 

服部さんはそう言うと姿を消した。今度、何かお礼をしてあげなきゃね。

 

「目的の物も返って来たところでもう一度問う。俺たちの要求に応えてくれるか?」

 

「ええ。Cクラス(私たち)は、Aクラスの要求を受け入れましょう」

 

宍戸さんが私の代わりに了承の意を伝える。

それからは、今後突撃して来るであろう大文字くんの対処をメインとした話し合いを進めて戦後対談は終了した。

負けはしたけど結果的に何も失わず、大切なものも戻って来たので良しとしよう。髪飾りを見つめながらそう思った。

 

 

友香side out

 

 

 

 

義行side

 

 

「ハァ……」

 

Aクラスとの戦後対談を終えて代表たちと別れた俺は、誰もいない多目的広場でため息を吐いていた。

設備が下がることはなかったとはいえ、敗戦がこうも堪えるなんて……。あの強さを持つ七島でさえ、唯島や霧島、水無月、白岩に及ばないなら俺なんかが勝てるはずがなかったんだ。

 

「弱いな、俺は……」

 

力なく呟き、思い上がった自分を恥じていると誰かが近づいて来るのが見えた。

 

「……十波、くん?」

 

「お前は……、誰だ?」

 

声のする方を向くと、薄いブロンドヘアの女子生徒が姿を見せる。彼女は確か……。

 

「まだあなたには名乗っていなかったわね。私は立華卯衣(たちばなうい)。Bクラス所属で天文部にも所属してる。そして……、鈴村真唯(すずむらまい)ちゃんの友人でもあるわ」

 

「何? 鈴村の?」

 

鈴村の名前を出されたことに反応すると、立華は静かに頷いた。

そう言えば前に水無月から許可を得て鈴村のパーソナルデータを見せてもらったときに、彼女も同じ孤児院出身だと知ったが……。こうして会うのは初めてか。

 

「真唯ちゃんからあなたのことを聞かされて、ずっと話をしてみたいと思っていたの。少し時間をくれないかしら」

 

「構わない」

 

断る理由もない為その場で了承した俺は、立華と言葉を交わし合うことにした……。

 

 

義行side out

 

 

 

 

〜Fクラス教室〜

 

 

康太side

 

 

「……今戻ったぞ雄二」

 

「ご苦労だったな康太。早速だが聞かせてくれ」

 

教室に戻った俺は、この場に残ったFクラス首脳陣にAクラス対Cクラス戦の顛末と両陣営の戦力を伝える。

新学期が始まって間もない為早急な判断はできないが、今後の対策として有用とのことで感謝された。

 

「まだ何かあるのか、康太?」

 

「……この前Bクラスの生徒と接触した。そのときに話した内容を共有したいと思うが……。夏海、島田、ノエル、クルト、構わないな?」

 

「大丈夫よ康太。どの道話すべき内容なら、伝えて損はないハズだから。あんたたちもそれで良いでしょう?」

 

「「「うん(ええ)」」」

 

夏海たちも納得したので、数日前に綺羅星から聞かされたことをみんなに話していく。

 

 

 

 

 

 

〜回想〜

 

 

「……伝えたいこと、か?」

 

「はい。わたくしたちBクラスは、根本恭二くんが代表です。それに関する内部事情は知っていますね?」

 

「知ってるよ。根本くんが気に入らない反対派と擁立派、その両方にも属さない傍観派に分裂してるって、お姉ちゃんが言ってた」

 

このことは俺も噂で聞いている。かつて根本は卑怯・卑劣を地で行く男で、唯島や見捨てずにいてくれたクラスメイトのお陰で更生できたが、それでも信用できない連中が未だに当時のことを引き合いに足の引っ張り合いをしているということを。

 

「根本くんが更生して、代表としての責務を果たそうとしているのはあなたたちもご存知でしょう。

ですが、中にはかつての悪評をダシに根本下ろしを企む生徒もいます。その内の1人が大文字代門くんです」

 

「大文字代門? 誰、その人?」

 

「クルトは1年の2学期後半に転校して来たから知らないけど……、アイツは根本の方が100万倍もマシだったと思うほどのド外道よ。幸いウチは被害に遭ってないけど、表に出てないだけで数々の犯罪スレスレの所業を重ねているって噂よ」

 

「そのくせずる賢さは一級品だから、普段風紀委員会とは敵対してるあたしたちも大文字絡みでは協力体制を敷くくらいヤバイ男ね」

 

クルトの質問に夏海と島田が顔を顰めながらこう答えた。俺も口には出さなかったが、ヤツに対しては腹に据えている。

 

「……なるほど。それで大文字のヤツが何かを仕掛けてくる……と。話してくれるのはありがたいが、大丈夫なのか?」

 

「正直わたくしも迷いました。これが利敵行為になるのではないかと。ですがわたくし個人としては、反代表派を見過ごす訳にもいきません。なので、このような形でもあなたたちに伝えたくてこうさせて頂きました」

 

「きゅっ!」

 

綺羅星が答えると彼女の召喚獣も声を上げる。彼女なりにクラスのことを憂いて行動に移したのだろう。

 

 

「その代わり戦場で出会えば、たとえあなたたちであっても容赦なく蹴散らします」

 

「……それで良い。情けを掛けてもらうほど、俺たちは弱くない」

 

穏やかな空気が一変し、目の前に刃を突き立てるような闘気を放った綺羅星がこう言うと俺たちも見つめ返す。

とりあえず、懸念事項を抑えたのは収穫だ。

 

『日和ー、どこにいるのー?』

 

遠くから聞こえる女子生徒の声で、俺たちは現実に戻った。どうやら綺羅星を探しているようだ。

 

「ここにいたのね」

 

「春乃!」

 

空き教室に入って来た女子生徒は瑠璃川春乃だった。綺羅星とは妹同士が仲が良い関係で彼女たちも親友同士だとか。

 

「で? なんでアンタたちもここにいるわけ? まさかと思うけど、日和に変なことしてないだろうな?」

 

「「「「してません、してません!!」」」」

 

「……!!(フルフル)」

 

俺たちの姿を見た途端に瑠璃川の態度が一変する。普段の物静かな佇まいとは全然違うから正直怖かった。

 

「落ち着いて春乃。土屋くんたちは私が呼んだの。別に何も酷いことはされてないから安心して」

 

「本当に?」

 

「本当よ」

 

「きゅっ!」

 

瑠璃川はまだ疑っていたが、召喚獣も同意するように声を上げたので渋々ながら納得してくれた。

 

「何もないなら早く帰りましょう日和。秋穂と雪華が待っているわ」

 

「ええ。そうね」

 

「……良いアンタたち、今回は日和に免じて見逃してあげる。だけど調子に乗るなよ。少しでも日和に危害を加えようとするなら、誰であっても容赦はしないから覚えておきなさい。……特に土屋」

 

「……ッ!!」

 

「こらこら春乃、私は大丈夫だから怖い顔しないでくださいな? ではみなさん、ごきげんよう」

 

瑠璃川から名指しされて恐怖を感じたが、綺羅星が宥めた後に一礼し、空き教室から出て行く。俺たちもこの後の予定はなかったので、現地解散した。

、空き教室から出て行く。俺たちもこの後の予定はなかったので、現地解散した。

 

 

〜回想終了〜

 

 

 

 

 

 

「……と言う訳だ」

 

「なるほど。そこで瑠璃川が出て来たのは謎だが、一番の問題はやはり反根本派の連中か。みんな、Bクラス戦を何を仕掛けられるかわからんからその辺りは警戒しててくれ。良いな?」

 

『『『『『『『『OKッ!』』』』』』』』

 

みんな思うことはそれぞれあるだろう。俺もお前との戦いを楽しみにしている、待っていろ梓。

 

 

康太side out

 

 

 

 

孝基side

 

 

「よう、神山。首尾はどうだぁ?」

 

「ええ。上々ですよ、大文字くん」

 

服部さんと別れた私は、反代表派のアジトへ身を置いています。表向きでは大文字くん以下、彼らの同士という体ですが、実は私が根本くん側の人間だと言うことはバレてないようです。それに気付かないのは実に滑稽ですね。

 

「方法がどうであれ、この世は勝ったヤツが強い。強いということは、そいつが正義ってワケだ。キーキキキキッ!」

 

「黙ってろよクズ。僕たちは根本くんに反対する者と言う共通点があるけど、君はあくまで同士であって仲間じゃない。そんなところを見てるとねじ伏せたくなる」

 

風花(かざはな)くんの言う通りだ。俺も君のそう言う下卑たところは見るだけで不快だ。そんなんだから、周りから卑怯・卑劣って言われるのがわからないのか」

 

「ああ? 何言ってんだ風花、崎山(さきやま)ァ? 卑怯・卑劣は俺様にとっちゃ誉め言葉よ!!」

 

「なら、根本くんの前に君を潰そうかなぁ……!」

 

「気が合うね崎山くん。僕も手伝おうか?」

 

「俺様に噛み付こうってか! なら行け、青空(あおぞら)! コイツら蹴散らして良いぞ!」

 

「……わかった」

 

大文字くんが崎山英隆(さきやまひでたか)くん、風花大宙(かざはなたかひろ)くんを焚き付け、青空蒼祐(あおぞらそうすけ)くんを差し向けて一触即発状態になっています。……仕方ありませんね。

 

「みなさんそこまでです。我々は“同士”なのですよ。ここで潰し合っては元も子もありません。どうか私に免じて収めてくれませんか?」

 

「わかったよ。確かに君の言う通りだ」

 

「ああ。こんなことで無様な姿を晒したくないからな」

 

「……礼を言うぞ神山」

 

どうにか納得してくれたようですね。これまでの状況を見る限り、青空くんは大文字くんに弱味でも握られているのでしょうか? せめて彼だけでも引き込みたいところです。

 

「流石神山。やはり俺たちのナンバー2にお前を置いて正解だなぁ。これからも頼りにさせてもらうぜぇ」

 

「勿体ないお言葉、恐縮です」

 

「良いかお前ら。明日以降Fクラス(馬鹿ども)Bクラス(俺様たち)に攻めて来る。俺様の作戦の通りに動いて勝利を引き寄せろよ?」

 

「善処いたします」

 

「……お前に従う」

 

「君の指示で動くのはシャクだけど、僕なりに役に立つさ」

 

「この場は乗ってやろうじゃないか」

 

大文字くんの言葉に私たちはそれぞれの言葉で返事しました。ええ、働きますよ。ただし、それはあなたに対してではありません。私は根本くんたちの為に動くのです。

あなたの好きにはさせません。覚悟していただきますよ、……大文字代門くん……!

 

 

See you next stage……




「久々に書いたら長くなったけど、楽しんでくれたかな?」

「今回もそうだけど、おかしい点があったら指摘してあげてね♪」

「ちなみに今回初登場の崎山英隆くん、風花大宙くん、青空蒼祐くんの元ネタは平成ライダーに登場したキャラたちだよ。気になったら元ネタを探してみるのも良いかもね」

「次は十波義行くんと、今回は言及だけだった鈴村真唯ちゃんにスポットを当てたサブエピソードを予定してます」

「相変わらずの不定期投稿だけど、本編の方も頑張るから応援してあげてね!」

「シーユー♪」



義行「戦後対談の後、多目的広場で佇んでいた俺は、戦争中に七島が発した言葉を振り返り、自分が思い上がっていたという事実を突き付けられた。そんな中、立華卯衣(たちばなうい)が俺の前に現れる。彼女との語らいの中でとある少女の名前が出たとき、去年の出来事を思い返す」


義行「次回。『バカとテストと召喚獣withグリモア!』、『遭遇(であい)と依頼』。 Let's go……fight!!」


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第15.5話 遭遇(であい)と依頼

「前回のあらすじッ!」

AクラスとCクラスの戦後対談は、Cクラス側が横槍を入れないことを条件に、設備のランクは下げないと言う形で合意した。
僕たちFクラスの首脳陣は数日前に綺羅星さんと接触した康太たちの話からBクラスの現状を知る。そしてその不和を招いている中心人物が大文字代門だと言うことも……。裏で何か企んでいるヤツがいる以上何も起きない……ってことはないよね。

他方では、多目的広場で1人佇んでいた十波くんに立華卯衣さんが声を掛けて来る……。


話は1年前に遡る……。

 

 

〜回想〜

 

 

義行side

 

 

文月学園に入学して2週間ほど経った。同じ中学校出身の開田賢司(かいだけんじ)を除き、殆どの生徒が初対面という中で始まった学園生活だが、入学してから新しい友人もできて何だかんだで快適に過ごせている。

 

やっとクラスメイトたちとも打ち解けて来たと実感したある日のこと。1日の授業を終えて家路に着いていると、遠くから悲鳴に似た叫び声が聞こえて来る。

 

「なんだ……?」

 

「そこを退いてぇぇぇッ!!」

 

気付いて振り返るも時既に遅し、走って来た女の子とぶつかった。俺は何ともなかったがその子はぶつかった拍子に尻餅をついてしまったらしい。

 

「おい、大丈夫か?」

 

「ひいッ!? す、すみ! すみません! どうかお許しぉぉぉぉぉッ!?」

 

起こしてあげようと手を伸ばすと、紫色のショートヘアが特徴的な彼女は俺の顔を見るや否や土下座する。大したことないハズだが、その怯えように戸惑いを隠せなかった。

 

「……あのな、怒ってないから顔を上げろ。そして俺の目を見てくれ。できるな?」

 

「は、はい……」

 

 

再び声を掛けると恐る恐るだが返事をし、とりあえず彼女が落ち着くのを待つことにした。

 

「ところでお前、どこのクラスだ? 校内で全く見かけなかったんだが……」

 

「ふぇ? あ、あた、あたしですか? それはですねぇ……、補習室! 補習室です!」

 

「補習室? どういうことだ?」

 

「あわわわ……、これには理由がありましてぇ……。どうか聞いてくださいぃぃ……」

 

ある程度落ち着きを取り戻した彼女は身の上を語り始める。数年前に両親を亡くして孤児院に引き取られたこと、そこで初めて友達ができたこと、孤児院の先生の勧めで文月学園に進学したこと。

そして人付き合いが苦手な為、基本的に補習室で授業を受けていることを話してくれた。

 

「という訳ですぅぅぅ……」

 

「そうか……、色々あったんだな。だが、なぜそのことを俺に?」

 

「あの……。変だと思うかもしれないですが、あなたになら話しても大丈夫かな……って何言ってるんだろあたしぃ?!」

 

“スッ……”

 

「あ……」

 

「落ち着け。お前の過去に何があろうと、そこまで気にしない。寧ろ初対面の俺にここまで話してくれて感謝するくらいだ」

 

「はい、ありがとうございます……」

 

再びあたふたし始めた彼女を優しく静止する。このときなぜかはわからないが、この子は俺が守らなければという気持ちが芽生えた。

 

 

鈴村(すずむら)ー、どこだー?」

 

「いるなら返事してくだせー」

 

 

しばらくすると、人を探しているらしき声が聞こえて来た。恐らく彼女を探しているのだろう。

 

「あ! 唯島くん、水無月さん! ここですー!」

 

「ここにいましたか」

 

声の主は俺たちと同じ文月学園の制服を着ている男女だった。確か2人は……。入試時の成績上位者、唯島飛彩と水無月風子か。そしてこの子は鈴村って名前なのか……。

 

「見つかって良かった……。急に走り出すからどうしたのか心配したぞ?」

 

「ひッ! す、すみませんッ!!」

 

「だいじょーぶですよ鈴村さん。ウチらはアンタさんのことはある程度わかってるつもりです。態々突っ込んでいたら身が持ちませんから」

 

「本当ですかぁ?」

 

「安心しろ、本当だ。わかったら早く帰ろう。天文部以外の生徒に見つかるのはマズイからな」

 

「はいぃ……」

 

一連の流れを察するに、どうやら教師陣と一部の生徒を除いて鈴村と引き合わせてはいけないであろうことは理解できた。

 

「鈴村さんを見つけてくれてありがとーごぜーます、十波くん。アンタさんも気をつけて下校してくだせー。彼女のことはくれぐれもご内密におねげーしますよ」

 

俺が鈴村を見かけたのは偶然だったのだが……。

まあいい、ここは素直に受け取っておこう。

 

「わかった、約束は守ろう。……そうだ鈴村、お前にはちゃんと名乗らないとな。俺は十波義行(となみよしゆき)、よろしく」

 

「あたしは真唯……、鈴村真唯(すずむらまい)!」

 

「用は済んだな? 十波、学園内で彼女を見かけることがあったなら仲良くしてやってくれ」

 

「ああ、良いだろう」

 

「では行きましょーか、鈴村さん」

 

唯島に対してそう答えると、2人は鈴村を連れてこの場を離れて行く。

これが鈴村真唯との出会いだった。

 

 

〜回想終了〜

 

 

 

 

そして現在。俺は多目的広場で立華卯衣と話をしている。内容はほぼ鈴村のことで、補習室以外では天文部で活動していることや立華以外にも友達ができて楽しく過ごせていると聞いた。

鈴村と出会ってからというもの、学園にいるときは彼女のことを考える時間が増えて1人で寂しくないか、誰かに見つかっていじめられはしてないかと考えていたが、天文部での鈴村の様子を聞くとそれは杞憂だと知った。

 

「それで振り分け試験のとき、真唯ちゃんと私たちは『一緒のクラスになろう』って話をしてたの。結果としては離れ離れになったけど、真唯ちゃんのクラスにあなたがいて良かったわ。唯島くんと水無月さんと天文部以外で知っているのは十波くんだけだったから」

 

「そ、そうか……」

 

「クラスが違う関係上、私たちは部活以外で一緒にいる時間は短いから真唯ちゃんのことお願いね。……十波くん」

 

「任せておけ、立華」

 

 

返事を聞いた立華は、安心したような表情を浮かべて多目的広場を後にする。

そして自分を鍛え直すこと、鈴村をクラスに受け入れる手筈を考える為に俺もこの場を去った。

 

 

義行side out

 

 

 

 

 

晴陽side

 

 

Fクラス首脳陣の話し合いの後智花たちとは別れ、僕とアキは再び多目的道場へ向かった。……もう1人も連れて。

 

「なんで俺も一緒なんスか晴陽くん、明久くん?」

 

「ユリ先輩から呼ばれてたのに逃げたからだよ、真吾」

 

「うんうん、僕と焔と真吾は戦闘経験を積まないとね。……京先輩からもそう教わったでしょ?」

 

「まあ、草薙さんはそう言ってたッスけど……」

 

白いバンダナを鉢巻風に巻いている彼は矢吹真吾(やぶきしんご)。中学生の頃から京先輩と縁のあるパシr……もとい一番弟子らしい。

京先輩曰く、実力はまだまだだが格闘センスと身体能力、そしてタフネスぶりとガッツでは僕たち以上とのことで、型にはまればもっと伸びると評価されている。

 

「気分が乗らないときもあるかもだけど、苦手意識を持つのは良くないよ!」

 

「それは違うッス! 別につかさ先輩が怖いからとかじゃないッスよ!」

 

「あれ? 僕は一言もつかさ先輩だなんて言ってないよ? ……言い付けちゃおうかなー?」

 

「それだけはやめて、晴陽くん!」

 

「冗談だよ真吾。本当に言うわけないじゃん♪」

 

「うーん、なんか納得できないッス……」

 

少しむくれていた真吾をアキと一緒に宥めている内に多目的道場に着いた。

 

 

「加州! 今日こそはお前から一本取らせてもらうぞ!」

 

「せや! 1人じゃ無理でもオレと研吾が組めば加州はんに勝てるハズや!」

 

「良いですね。掛かって来なさい小嶋くん、拳崇くん! 全て捌いてみせますよ!」

 

 

そこでは3年裏Aクラス所属の加州則宗(かしゅうのりむね)小嶋研吾(こじまけんご)椎拳崇(しいけんすう)が苛烈なスパーリングを行なっていた。

この内、加州先輩と研吾先輩は裏Aクラスの成績上位10位以内のメンバーであり(研吾先輩は若干劣るが)、文月四英傑である京先輩、庵先輩、虎千代先輩、つかさ先輩に匹敵する実力を持つ精鋭である。

そんな2人に着いていける拳崇先輩も充分すごいのだけど。

 

 

 

〜5分後〜

 

 

「ふ……、今回も引き分けか。拳崇もいて未だにこれとは……。まだまだ底が知れんな、加州則宗」

 

「オレも今までで一番動いたで、研吾……」

 

「簡単に一本取られては『五剣』のトップの名折れですから。まあ、一番の驚きは拳崇くんが成長したことでしょうか。もっと向上心があれば尚良しです。……さて。小休憩が終わりましたら君たちも相手しましょうか真境名くん、吉井くん、矢吹くん。丁度3人いることですし」

 

「「!!!」」

 

「あ、気付いてましたか」

 

「伊達に裏Aクラスにいるわけではありませんから。この2人(小嶋くんと拳崇くん)も同じことです」

 

加州先輩の言葉を肯定するように2人も頷いた。僕たちが道場に来た時点で気付いてたとは……、なんて人たちだ。

 

「……晴陽、明久。お前たちに聞きたいことがある」

 

「「はい、研吾先輩」」

 

青空蒼祐(あおぞらそうすけ)を知っているか?」

 

「知ってるも何も、同じ中学校出身で僕たちの友達ですよ。真吾は学校違ってましたけど」

 

研吾先輩が蒼祐のことを聞いたので、アキがこう答えた。確か1年の頃中国武術研究会に入部したって聞いて……、いつの頃からか参加しなくなったのを覚えてる。

 

「去年の2学期後半辺りからパッタリと顔を見せなくなってな。問いただしても『迷惑を掛けたくない』としか言わず、連絡も殆ど取らなくなってしまったのだ。お前たちから何があったか聞いてはくれないか?」

 

「オレからも頼むで。蒼祐のヤツが来なくなってからアテナも心配しとる。もししょーもない理由なら先輩として叱らなアカン、この通りや」

 

研吾先輩と拳崇先輩が頭を下げてお願いして来た。マイナーな部活故に入部希望者が少ない中入部して来た貴重な後輩を気に掛けているのがわかる。

 

「わかりました研吾先輩、拳崇先輩。僕とアキが引きずってでも連れて来ますから」

 

「俺はすることないッスか?」

 

「真吾はDクラスの同盟があるでしょ? そのときにお願いすると思うから、心算はしててね」

 

「OKッスよ」

 

「お前たち……、ありがとう」

 

研吾先輩が改めて礼をする。このやり取りの横で加州先輩が何か思案する仕草を見せていたのだが、僕たちはそれに気付くことはなかった。

 

 

「さて、小休憩も終わりました。これからスパーリングをローテーションで組みます。3人とも準備運動をしてください。終わり次第始めますよ!」

 

「「「はい、よろしくお願いします!!!」」」

 

 

アンダーウェアと道着に着替えた僕たちは小休憩を挟みつつ、下校時間になるまで加州先輩たちと様々な形でスパーリングをする。

終盤になっても勢いが衰えない3人を前に、終わる頃には僕もハルも真吾もヘロヘロになっていた。

 

 

 

 

寮に戻って風呂と夕飯を済ませてからは、対Bクラス戦の為に勉強し、蒼祐とどう向き合うか思案する。

 

 

「ふぅ……、勝つこと以外にもやることが増えたな。……大丈夫だよね、多分」

 

 

誰にも聞かれることのない独り言を呟いて、その日は眠りに着いた。

 

 

See you next stage……




「以上、第15.5話でした♪ 楽しんでくれたかな?」

「今回回想のみの登場になった鈴村さんに限らずチョイ役だったり、名前しか出てないキャラも多いけど、本編の進行に合わせて徐々に登場するから気長に待っててね」

「次はBクラス戦なんだけど今で言っとくね、3話以上消費するよ」

「それだけ見せ場があるってこと?」

「うん。でも作者のハードルは上げ過ぎないでよ? 善処はするそうだけど……ね」

「そんな訳で次回にまた会おう!」

「シーユー♪」



晴陽「宣戦布告へ赴いた僕たちは、Bクラスにいた友人と語らいながらも本来の役目を果たすと悪い意味で噂の大文字代門と向き合う。その側には研吾先輩からの依頼対象である蒼祐の姿も。更には誰かの視線も感じ取ったんだけど……、アイツは一体何なんだ!?」


晴陽「次回ッ!『バカとテストと召喚獣withグリモア!』、『Bクラスへの挑戦』。 Let's go……fight!!」


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第16話 Bクラスへの挑戦

「前回のあらすじッ!」

戦後に黄昏ていた十波くんの回想と立華さんとの語らいの中で、見たことも聞いたこともない女子生徒の名前が出てくる。
飛彩は何か知ってそうだけど、いつかは会うときが来るのか……。
一方の僕たちは、道場へ向かう。そこで研吾先輩から蒼祐のことを頼まれたのだった。


明久side

 

 

Aクラス対Cクラスの戦争から一夜明けて、僕とハルは昨日と同じ時間に登校した。

いつもなら多目的道場で体を動かす所だが、恐らく今日はBクラスとの戦争だろう。それに備えて勉強するべく校舎へ向かうと……、

 

「よぉ明久、晴陽」

 

「「雄二、龍季!」」

 

「俺たちが一番乗りだ」

 

既に雄二と龍季が教室で予習をしている。今日も僕たちが一番乗りだと思っていたので軽く驚いた。

 

「Dクラス戦はオメーらに任せてた所もあったからな。俺たちも少しは貢献しようと思って勉強しに来たのさ」

 

「そうなんだ?」

 

「ああ。今度の戦争はDクラスのときのようには行かないから少し本気を出すつもりだ」

 

「なるほどね。じゃあ一緒に勉強しよっか♪ ハルもそれで良い?」

 

「「「うん((良いぜ))」」」

 

こうして僕たち4人は一ヶ所に集まって互いに確認し合いながら勉強を進めて行った。

 

 

 

 

 

 

その後HRも終えて、クラスメイトたちには回復試験を受けてもらう旨を伝える。次にやるべきことはBクラスへの宣戦布告だけど……。

 

「今回も僕とハルで行くよ雄二。どうせ使者は碌な目に合わないだろうから、あしらい方を心得ている僕たちの方が都合良いんだ」

 

「それはありがたいが……、良いのかお前たち?」

 

「大丈夫だよ雄二。それに研吾先輩からある生徒の現状を確認して欲しいって頼まれたからね」

 

「研吾って……、『五剣』の小嶋研吾のことか!」

 

研吾先輩の名前を聞いて思わず声を上げる雄二。一部を除いたクラスメイト(野郎ども)も似たような反応をしていただろう。

 

 

五剣……文月学園に於いて生徒会及び風紀委員会に並ぶ3大組織の一角で、所謂自警団だ。

メンバーは先に出た研吾先輩以外では加州則宗先輩と魂鋼盾之介(たまがねじゅんのすけ)先輩、1年生の千桜雪羽(ちざくらゆきは)ちゃん、そして村正……、衣玖先輩。

活動内容は風紀委員会と似ているけど、学園全体を見据えた風紀委員会と異なり『一般生徒の庇護』、『問題生徒の矯正』等に特化している。

基本的に良い人揃いの組織だけど、村正先輩だけは僕とハルにとって因縁の人だから、正直好きになれそうにない。

魂鋼先輩はハルと一緒に何処かで会ったことがある気がするけど……、何だったっけ。

……まあ、良いか。

 

 

「知ってるんだ雄二?」

 

「俺の戦闘技術を見込んだのか、中武研に誘われているんだ。……とりあえず今は断っているがな」

 

「そう……」

 

「まあ、この話は後だ。で、その目当ての生徒がBクラスにいるという訳か?」

 

「(コクッ) だから確かめようと思う。もし“アイツ”が関わっているなら何とかしたいんだ」

 

「雄二、僕からもお願い。研吾先輩はお世話になっているし、何よりも“彼”は友達だから」

 

「わかった。なら、宣戦布告はお前たちに任せるぞ」

 

僕とハルの申し出に雄二は2つ返事で了承した。早速Bクラスへ向かおうとすると、

 

「待ちなさい明久、晴陽。行くならあたしも連れて行って」

 

「「夏海?」」

 

夏海が呼び止める。前に綺羅星さんと接触したハズだから用はないものだと僕もハルもそう思っていた。

 

「あんたたちに会いたい人がいるように、あたしにも顔を会わせたい子がいるの。嫌とは言わないわね?」

 

「いいの夏海? 僕たちは使者として行くわけだから、それなりの対応はされるよ?」

 

「大丈夫。報道部のゴシップネタ班副班長として、康太と色んなトラブルに遭遇しては切り抜けて来たから心配無用よ!」

 

「そうなのかのう?」

 

「……問題ない」

 

「「「「「「本当(に)(ですか)(なの)(〜)(か)?」」」」」」

 

秀吉の疑問に対して、康太が自信有り気に肯定した。首脳陣も含めてみんな不安がっていたが、本人たちが言うのだから大丈夫なのだろう。

……多分。

 

「まあいい、岸田も一緒に行きな。くれぐれも用心しろよ?」

 

「「「了解(よ)!」」」

 

 

こうして僕たちはBクラスへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「綺羅星さんから現状はだいたい伝わってるんだろうけど、実際に見ないとわからないから気を付けようねアキ、夏海」

 

Bクラスの前にして僕たちは改めて互いに確認し合っていた。対処法をわかっているとはいえ、緊張するものである。

 

「「うん(ええ)」」

 

「じゃあ、行こうか」

 

“ガラッ”

 

「失礼します、Fクラスの真境名晴陽と」

 

「同じく吉井明久と」

 

「岸田夏海よ」

 

呼吸を整えて扉を開けると、待っていたのは……。

 

「おお! 久しいな、我が友よ!」

 

「待ってたっすよ、“双龍”」

 

それぞれ女子生徒と男子生徒が声を掛ける。

右目に眼帯を着けた少女の名は風槍(かぜやり)ミナ。

天文部部長であり、『疾風の魔法使い:ミナ・シルビィアンド・ウィンドスピア』を自称する、謂わば中二病の女の子だ。

長身でバンダナを巻いている少年は御剣綾斗(みつるぎあやと)

文月学園屈指の腕前を持つゲーマーの1人で、『アヤトン』というオンラインネームで活動しているとアユから聞いた。

 

「相変わらずだね、ミナ。 綾斗も元気そうで何よりだよ」

 

「そりゃそうっす。君たち2人は振り分け試験で一悶着あったと噂になっているからね。……ま、様子を見る限りじゃ大丈夫そうで安心っす」

 

「ふふ……、我には全てお見通しよ!」

 

「「あ、ありがとう……」」

 

「まさかあんたがBクラス(ここ)にいるなんてね。ちょっと意外だったわ、虹遥香(ななか)

 

「わたしもだよ夏ちゃん。御剣くんも言ってたけど、振り分け試験は災難だったね明久くん、晴陽くん」

 

「心配してくれてありがとう、虹遥香ちゃん。僕たちは大丈夫だからさ」

 

僕たちが会話に華を咲かせる隣で、夏海も新莊虹遥香(しんじょうななか)ちゃんと再会を果たしていた。

夏海とは幼馴染であるらしく、中学生の頃に彼女を通して出会ってからの友人だ。また、竜弥の彼女でもある。

更に周囲を見渡すと、綺羅星日和さんが僕たちに気付いて微笑み返すのが見える。実はもう1人、誰かの視線を感じるのだが心当たりがないのと、周囲に溶け込んでいるのとで見つけることができない。

 

 

「なるほど、Bクラス(こっち)にも友人がいるとは。やはり顔が広いな、お前たちは」

 

「「「恭二(根本)!」」」

 

そんな僕たちの様子を見て、Bクラス代表根本恭二(ねもときょうじ)が感心するように話し掛ける。

 

「ようこそBクラスへ。……と言いたいところだが、お前たちの目的は友人に会いに来ただけじゃないだろ? 話は後でならやっても良いから、まずは要件を聞こう」

 

「やっぱりわかってたの?」

 

「当たり前だ。初日にDクラスに挑んだ時点で、俺たちのところに来るのは想定済みだからな」

 

それ程までにFクラス(僕たち)の勝利は衝撃的だったんだ……。

 

「なら遠慮なく言うよ。良いよね、2人とも?」

 

((コクッ))

 

ハルがこっちに目を向けると、僕と夏海はそれに応えた。

 

「「「僕(あたし)たちFクラスは、Bクラスに試召戦争を申し込むよ(わ)!」」」

 

それを聞いたBクラスの生徒たちは様々な反応を見せる。

ミナや綾斗のように嬉しそうにする生徒もいれば、驚いたり、呆れたりする生徒もいた。

更には話で聞いていた反根本派の集団が見下すような目で見つめており、その中心に大文字代門がいる。側に神山くんと風花くんと崎山くん。そして……、蒼祐もいた。

 

「んー? オイオイオイオイ、今試召戦争を挑むって言ったかぁ? ザコの分際で俺様たちとやり合おうだなんてよぉ。身の程を弁えろカスどもが!!」

 

(わかっているけどやっぱムカつくわね、コイツ)

 

(落ち着いて夏海。アイツは僕たちの実力を知らないんだから)

 

(とりあえず今は堪えよう)

 

大文字代門が僕たちを見るなり下品な物言いで挑発して来る。まあ、去年から悪い噂や言動は知れ渡っているのでこれは想定内だ。一々反応するのもアレだし。

だがそれでもヤツは罵詈雑言をやめようとしない。

 

「あ。そう言えば吉井、真境名、岸田。聞くところによると、お前らは南智花を助ける為に退室したそうじゃないかぁ? もったいねぇことするよなぁ、あんな馬鹿女なんぞ無視して試験受けてりゃ良いとこ行けたかも知れねぇのによぉ」

 

「「「なに(なんですって)……?!」」」

 

「そのチャンスを捨ててお友達を優先するなんてよぉ……、やっぱカスはカス同士お似合いってヤツか! キーキキキキキキッ!!」

 

野郎。僕たちだけならまだ我慢もできたけど、智花のことまで悪く言いやがった。 流石に僕もハルも夏海も限界に来て言い返そうとすると……、

 

「いい加減にしろ、貴様ら! さっきから黙って聞いていれば勝手なことを! 私の友達を悪く言うな!」

 

「そうだぞ大文字、アンタごときが夏ちゃんたちを悪く言う資格はねぇ! 早く土下座しやがれ、(タマ)ブチ抜くぞゴラァ!」

 

先にミナと虹遥香ちゃんが激怒してこう言う。なんか虹遥香ちゃんの言葉は荒くなっているし、ミナは途中で素に戻っているしで少し戸惑ったが心強かった。

 

「ななっちの言い方は兎も角、大文字くんのさっきの発言は自分もあり得ないと思うッス。訂正を求めるッスよ?」

 

「なんだぁ服部。お前もあのカスどもに絆されたかぁ?」

 

「どんな理由があろうとも、最下層に落ちたヤツはクズでしかないんだよ」

 

「そうだね風花くん。俺からしたら彼らを庇う君たちの方がおかしいのさ」

 

「認めてください服部さん、風槍さん、新莊さん。残酷な言葉ではありますが事実なのですから」

 

梓と風花くんと崎山くん、そして神山くんも加わってヒートアップしていく。蒼祐は沈黙を守っているみたいだけど……。

 

「蒼祐! お前も私の友のハズだ! 聞こえているなら、なんとか言え!」

 

「くっ、俺は……!」

 

「残念だなぁ風槍。青空は俺らの味方だとよぉ!」

 

「卑怯だぞ、大文字!」

 

「卑怯で結構! これこそ俺のポリシーだぁ!」

 

見た感じ、言いなりを強いられてるみたいだ。余裕があるとは思えないけど、何とかできたらなぁ……。

その間にも喧騒は増して行き、Bクラスの内部抗争勃発寸前になっていた。

 

「力不足を晒すようで申し訳ないが、これが今のBクラスの現状さ。俺を慕って着いて来てくれる生徒、反発する生徒、傍観する生徒。3つに分かれちまってるから統制もままならないんだ……」

 

「「「恭二(根本)……」」」

 

力なく言う恭二を見て、僕たちは彼に同情した。

 

「おやめなさい!!」

 

「きゅぅ!!」

 

綺羅星さんの声が聞こえたかと思うと同時に、彼女の頭上で眠っていた召喚獣が教室の真ん中に立ち上がって反根本派と擁立派の両方を制している。

すると、さっきまでの喧騒が嘘のように静まり返っていた。

 

「皆さんお静かに。下位クラスだからという理由で無下に扱ってはBクラスの印象が悪くなりますよ。ここはわたくしに免じて収めてくださいな?」

 

「「「「「「わ、わかったよ。綺羅星さん……」」」」」」

 

「ちっ……」

 

殆どのBクラス生徒たちはもちろん、あの大文字代門でさえ渋々ながら彼女に従っていた。

康太の言ったことは間違いないようだね。

 

「では代表、続けて大丈夫です」

 

「ありがとう綺羅星。……待たせてすまなかったな明久、晴陽、岸田。お前たちの申し出、受けよう」

 

「開戦は午後1時で良いよね?」

 

「構わない」

 

「じゃあよろしくね、恭二!」

 

「ああ。タダでは負けんぞ?」

 

僕は恭二と握り拳を合わせ、健闘を誓い合った。

 

「戦場で出会ったら力の限り戦おう、我が友よ!」

 

「夏ちゃん! わたし、絶対負けないよ!」

 

「あなた方2人の内、誰かと手合わせするかもしれません。期待しています吉井明久くん、真境名晴陽くん」

 

「きゅぅ!」

 

最後にミナと虹遥香ちゃん、綺羅星さんから挑戦を申し込まれ、僕たちは指で合図してBクラスを後にした。

 

 

 

 

「ねぇアキ」

 

「どうしたの、ハル」

 

戻る道中、ハルに声を掛けられる。

 

「宣戦布告するとき……、って言うかBクラスに入ったときから誰かの視線感じなかった?」

 

「あ、そう言えばそうだ。確かオールバックの子がいたような……。でも見たことないんだよね……」

 

「夏海。そいつのこと、何かわからない?」

 

「そうね……。あまり見たことないなら、転入生ね。 一応去年の2学期後半辺りからいるみたいよ」

 

「どちらにせよ、情報が少な過ぎる。一度康太にも確認してもらう必要がありそうだよ」

 

「うん。じゃあ、早いとこ行こうかアキ、夏海」

 

「「わかった(よ)(わ)!」」

 

こんなことを話しながら、Fクラスへ戻った。

 

 

See you next stage……




「第16話でした♪ 楽しんでくれたかな?かっこ

「次回からBクラス戦な訳だけど……、最初で言うね。噛ませになる子が多数出ます」

「……マジで?」

「うん。A対Cのときもそうだったけど、どうしても割りを食っちゃうキャラが出るのは避けられないらしいよ……」

「その場合、ストーリー展開の都合によるものだからご了承ください……と」

「もちろん、後のエピソードではちゃんと見せ場を作るから気長に待ってくれるといいなぁ」


「今日はここまで! また次回に会おう!」

「シーユー!」



明久「今度のBクラス戦は、前の戦争と違って首脳陣以外の生徒たちの実力もFクラスの倍以上だ。
それでもDクラスに勝った僕たちにはそこまで苦にはならないハズ! そして、Bクラスの最大戦力たる綺羅星さんに姫路さんが挑もうとしていたけど、どうなっちゃうの〜?!」


明久「次回ッ!『バカとテストと召喚獣withグリモア!』、『対Bクラス戦、開始(スタート)!』。 Let's go……fight!!」


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第17話 対Bクラス戦、開始(スタート)

「前回のあらすじッ!」

Bクラスの教室に入ると、ミナや綾斗を始めとした友人たちとの再会に顔を綻ばせる。本来の目的である宣戦布告を行うと大文字代門の罵詈雑言で一触即発の空気に。
本当ならあの時点で落とし前を付けたかったけど、恭二のお陰で場が収まった。
「決着はあくまで召喚獣バトルで」。その決意を胸にBクラスを後にするけど……、視線を感じたあの男子生徒は一体……?


恭二side

 

 

明久たちが宣戦布告を終えた後、俺は首脳陣も含めたクラスメイトたちを集合させる。

 

「良いかお前たち。最下級クラスとは言え、Dクラスを破ったFクラスの実力は本物だ。舐めてかかると返り討ちに遭うから絶対に油断するなよ!」

 

『『『『『『おぉーっ!!!』』』』』

 

「だが、勝利に固執し過ぎて手段を選ばないという事態だけは避けてくれ。 一度ついた悪評を覆すのは簡単じゃないし、何よりお前たちに肩身が狭い思いをさせたくないからな」

 

『『『『『代表(根本)……』』』』』

 

「そういう訳だから、変な行動を起こさないように頼むな? 午後1時には開戦する。きっちり準備しておくんだ」

 

『『『『『わかった(わ)!!』』』』』

 

俺の言葉にみんなが応える。一部の連中以外はこう言っておけば大丈夫だろう。

仮に非難されることになっても、自分が責任を取ればそれで済む。そう、これで良い。卑怯者の汚名は俺1人で充分だ。

 

「……と、お主は考えておるじゃろうな。根本よ」

 

南条(なんじょう)か……」

 

爺言葉で話し掛けて来た小柄な少女は南条恋(なんじょうれん)

天文部の副部長で美術部も掛け持ちし、卑怯者を脱却する以前から俺のことを見てくれた数少ない人物であり、アドバイザーの1人だ。

今でこそ慕ってくれる生徒もいるが、偏に南条の働き掛けもあった為、彼女には感謝しかない。

 

「代表として皆を預かる手前、意気込むのも結構じゃが、わっちらもいることを忘れんでおくれ。お主だけが戦う訳ではないからのう」

 

「わかっているさ。……南条。対Fクラス戦の作戦会議をするから、風槍たちを呼んで来てくれ」

 

「了解じゃ、しばし待っておれ」

 

南条にBクラス首脳陣を連れてくるよう頼むと同時に、神山へ目で合図を送る。

 

(おい、神山)

 

(なんでしょうか、根本くん)

 

(今からミーティングを行うから、大文字たちを見張ってて欲しいが……、良いか?)

 

(承知しました、お任せください)

 

神山の方も合図を返した。これでヤツ(大文字)に内容を聞かれることはないだろう。だからといって警戒は解かないが。

 

「待たせたのう根本、連れて来たぞい」

 

「ありがとう」

 

程なくして、南条が風槍を中心とした擁立派の首脳陣、中立の綺羅星、樋上、神楽らを伴って再び俺の周りに集まって来た。

それから部隊編成について説明する。

 

「……と言う訳だが、本陣の守りを固めつつ連中(Fクラス)の進軍を“可能な限り”阻止するんだ」

 

「可能な限り? ボクたちの戦力ならアイツらを一掃することもできるのではないかい?」

 

「……それも一理あるわ。でも樋上くん、代表も言ってたように彼らは多少の損失も覚悟の上で挑んで来る。地の利があるとは言え、保険は掛けておくべきだと思うわ」

 

「ふぅん……。ま、良いや。最終的に根本くんが生き残れたら問題ないだろうから、ボクはデータ取りを優先するかな。……もちろん、向かって来るヤツらは排除させてもらうけどね」

 

樋上の疑問に対して立華が俺の私見を代弁する。それを聞いた主力メンバーたちも一先ず納得してくれたようだ。

 

「では、もう一度確認しよう。あちら(Fクラス)の進軍先の中間地点に防衛部隊を展開、向かって来る敵を順次迎撃して行く。首脳陣以外は大したことないだろうが、実戦経験で言えばBクラス(こっち)は遅れを取っているから充分に警戒して臨んでくれ。お前たちの健闘に期待するぞ」

 

『『『『『『『了解(じゃ)(です)(ッス)(だ)(でございます)(だよ)!!』』』』』』』

 

良し、みんなやるべきことを理解してる。やはり、不安があるとすれば反代表派(大文字たち)か。

神山もいるから下手に動くことはない……と思いたいが、それでも実行に移すだろうな。

……何にせよ、精一杯戦い抜く。それだけだ。

 

 

恭二side out

 

 

 

 

 

 

明久side

 

 

「ただいま、みんな」

 

「おう、ご苦労だったなお前たち。ダチに会ったのは良いとして、Bクラスの連中はどうだ?」

 

「予想通り……と言いたいところだけど、1つだけ不安要素があるんだ」

 

「ほう……」

 

Fクラスに戻った僕たちは、早速宣戦布告時のことを伝えると雄二が興味深げに食い付いた。

 

「それを今から言うよ。康太、今年度の2年生で去年の2学期から文月学園(こっち)に転入して来た生徒は把握してるよね?」

 

「……(コクリ)。Aクラスの工藤愛子に俺たちと同じクラスの歩夢。そして……、神楽誠也(かぐらせいや)だ。これを聞いてくるということは……」

 

「そう。その神楽誠也がBクラスにいるんだよ。実際に見るまでは確信が持てなかったけど……」

 

ハルの言葉にFクラス首脳陣は驚きの表情を見せる。それもそのはず、彼は転入して3ヵ月程度なので、詳細が未知数なのだ。あの康太ですら名前以外の情報を把握してないし。

 

「唯一の救いは、Bクラス側もアユと篠原さんのデータがないということだね」

 

「確かにな。けどよ歩夢、お前Dクラス戦は不参加だったろ。いきなり実戦になるが、大丈夫か?」

 

「平気……と言えば嘘になるけど、召喚獣の操作なら翼たちの“実験”に協力してたからそこは問題ないさ。何せ俺は『天才ゲーマーAYU』だからな」

 

「わぁ〜……、カッコ良いねアユム!」

 

「その自信がどっから来るのか知らねぇけど、期待させてもらうぜ歩夢?」

 

「ふ……。任せなって、龍季」

 

雄二の問いにアユがこう返すとクルトが目を輝かせ、龍季もFクラスNo.2として激励を送る。

それを受け取ったアユは、不敵な笑みを見せてこれに応えた。

 

「データがないのは厄介だが……、まあいい。どの道戦力に差がある以上、やるべきことは変わらねぇさ。今回も頼むぞ、お前たち」

 

『『『『『『OK(だ)(だよ)(です)(よ)!!』』』』』

 

「篠原もやってくれるな?」

 

「はい、頑張りますぅ♪」

 

雄二が頭を下げるとみんなが意気込む。大門寺代門が碌でもないことやるだろうけど……、そのときは目に物見せてやる。

こんな風に考えながら、Bクラス戦へ向けて気持ちを奮い立たせた。

 

 

 

 

PM1:00

 

 

〜キーンコーンカーンコーン♪〜

 

 

「行くぞお前たち! 全軍、進撃開始!!」

 

『『『『『『おおーッ!!!!』』』』』』

 

昼休み終了のベルが鳴り響くと共にBクラス戦が始まる。Dクラス戦の時と同じかそれ以上に、クラスメイトたちはやる気十分である。

 

「アキ。Bクラス(アイツら)、高橋先生を連れているぞ。おそらく文系科目メインで攻めるハズだが……、どうする?」

 

「そうだね。ここは僕とハルが出ても良いんだけど……」

 

進軍先にBクラスの先発部隊の姿が見え始めた為、晴明が尋ねてくる。

高橋先生以外にも英語の遠藤先生、古典の竹中先生の姿を確認した僕はこう告げた。

 

「予定通り正面から行くよ! 総合科目は晴明で、英語はノエルで、古典は秀吉を中心に攻撃を仕掛けて! 他のみんなはアシストをお願い!」

 

「「了解だ(じゃ)!」」

 

「任せて!」

 

 

『『『『『『試獣召喚(サモン)ッ!!!』』』』』』

 

 

 

総合科目

 

 

Fクラス

 

蔵馬 晴明:4467点

 

 

Bクラス

 

黒木 貴洋:3239点

 

 

 

英語

 

 

Fクラス

 

冬樹 ノエル:426点

 

 

Bクラス

 

里崎 理佳:322点

 

 

 

古典

 

 

Fクラス

 

木下 秀吉:401点

 

 

Bクラス

 

落合 宏伸:289点

 

 

 

FクラスとBクラスの双方が召喚獣を呼び寄せて戦闘開始となる。確かにあちらはDクラス戦の時よりも点数は上だ。でも……、

 

 

「な、何だありゃあ?!」

 

「Fクラスなのにどうして?」

 

それ以上に高い点数を見た黒木くんと里崎さんが「信じられない」と言わんばかりの表情になっている。他の生徒たちも同じだ。

 

「これがあたしたちの実力だよ♪」

 

「じゃが、これでも手加減しておるし、得意科目以外ではここまではいかん。……尤も、わしとノエルに限った話ではないがの」

 

「秀吉、ノエル。おしゃべりはその辺で行くぞ。良いな?」

 

「「OK!(うむ)」」

 

「という訳だから、ここは任せてくれ2人とも(アキ、ハル)

 

「「わかったよ(ああ)」」

 

そう言って晴明たちは目の前の相手へ攻めて行く。とりあえず、晴明たちが戦線を張るのなら大丈夫かな。

まずは戦況を見守ることにしよう。

 

 

明久side out

 

 

 

 

 

瑞希side

 

 

「そ〜ば〜レインッ!」

 

「行きますッ、ここで倒れてくださいッ!」

 

 

『『『『『『うわあああ(きゃあああ)ッ!!!』』』』』

 

 

私とチーちゃんが率いる別働隊は、岩下さんと菊入さんを中心とした部隊と交戦しています。

今回は主導権を握る為に、最初から全力です。

 

 

 

地理

 

Fクラス

 

姫路 瑞希:457点

 

宵宮 蝶影:439点

 

Fクラスモブ×6:平均97点

 

 

 

Bクラス

 

岩下 律子:271点

 

菊入 真由美:263点

 

Bクラスモブ×6:0点

 

 

 

「戦死者は補習ッ!!」

 

『『『『『『やめてぇッ、許してぇぇぇッ!!!!』』』』』』

 

 

どこからともなく現れた西村先生が戦死した生徒たちを連行して行きました。纏めて担いでいけるなんて……、最早人間なのか疑わしくなって来ます。

 

「どうしよう、もう私たちだけになっちゃったよ!」

 

「多勢に無勢な上に、姫路さんと宵宮さんは健在だなんて……。これって詰みよね……?」

 

「でもここで諦めたらみんなに申し訳ないわ。どこまでやれるかわからないけど、行きましょう真由美!」

 

「わかったよ、律子!」

 

不利な状況でも互いを鼓舞して私たちの方に視線を向ける岩下さんと菊入さん。この切り替えの早さは見習いたいと思いました。

 

「瑞希ちゃん。ここはちかげに任せて欲しいの〜」

 

「構いませんが……。大丈夫ですか、チーちゃん?」

 

「のーぷろぶれむ〜」

 

チーちゃんの申し出が少し心配でしたが、いつもの間延びした返事の中に自信を感じたので任せてみることにします。

 

「それじゃあ……、腕輪発動〜」

 

「来るわ。構えて!」

 

「ええ!」

 

腕輪を発動させるのを見て、一層警戒する2人。

そう言えばチーちゃんの能力ってどんなものでしょうか? 私も初めて見るかもしれないです。

 

「行くよ〜、スゥ……」

 

深呼吸をした次の瞬間私は……。いえ、私たちの目に飛び込んで来たのは、

 

 

「いただきますなの〜。……あーむっ」

 

『『『『『『ええぇぇぇッ??!!』』』』』』

 

 

口を大きく開けたチーちゃんの召喚獣が、岩下さんと菊入さんの召喚獣を吸い込む光景でした。

 

「ッ! 逃げるのよ、真由美!」

 

「ダメ! 間に合わないよ!」

 

態勢を立て直そうとしましたが、逃れる術はありません。吸引力を維持したまま丸呑みされていきます。

 

 

 

……ごくんっ。

 

 

「ふぅ……、ごちそうさま〜♪」

 

「た、食べちゃった……」

 

「ウソでしょう……?」

 

 

 

 

地理

 

Fクラス

 

宵宮 蝶影:379点

 

 

 

 

Bクラス

 

岩下 律子:0点

 

菊入 真由美:0点

 

 

 

岩下さんと菊入さんは目の前の光景が信じられず、只々呆然するばかりですがその間に、

 

「戦死者は補習よ!」

 

「「そんなぁ〜!!」」

 

今度は我妻先生が2人を担いで補習室へ行ってしまいました。西村先生の教え子の1人だと聞いてなかったら、驚いたままだったでしょう。

 

 

「よっしゃああッ!」

 

「ヘンテコな能力だったけどすげぇぞ!」

 

「蝶影ちゃん最高だー!」

 

「頑張りましたね、チーちゃん」

 

「うん♪ 瑞希ちゃん、みんな、ありがとうなの〜」

 

クラスメイトたちから歓声が上がり、私も労いの言葉を掛けるとチーちゃんは笑顔で応えました。

とりあえず、最初の目的は達成です。

 

 

「流石ですね」

 

「きゅぅ!」

 

 

すると、まるでタイミングを計ったかのように向こう側からBクラスの女子生徒が彼女の召喚獣と共にこちらへ近付いて来ました。

再び緊迫した空気が広がりますが、ここを凌げるでしょうか……。

 

 

瑞希side out

 

 

 

 

日和side

 

 

本陣で護衛を務めていた私は根本くんの指令を受け、召喚獣と共に岩下さんと菊入さんが率いる部隊の救援へ向かっていた。

 

『戦死者は補習よ!』

 

「「そんなぁ〜!!」」

 

その道中で我妻先生に連行されてしまったようだ。

 

 

「間に合いませんでしたか……」

 

 

私がもっと早く着くことができれば、助けられたのだろうか。たらればで考えても結果は覆らないことを苦々しく思いながらも、もうひとつの目的である戦力半減を遂行するべく気持ちを切り替える。

 

 

(岩下さん、菊入さん。あなたたちの仇……、取りますよ)

 

 

こんなことを考えている内に、姫路瑞希さんと宵宮蝶影さんが率いる部隊の下へ辿り着いた。

 

 

「流石ですね」

 

「きゅぅ!」

 

実際に見ることは不可能だが、あちら側が私の姿を確認し身構えているのが想像できる。

 

「あ、あなたは……」

 

「ご機嫌よう、みなさん。綺羅星日和と申します。気配から察するに、8人くらいでしょうか? 今度はわたくしがお相手いたしますわ」

 

「きゅぅ……」

 

私の言葉に合わせて召喚獣(相棒)も左側の日本刀を1本抜き、戦闘準備は万端だ。

 

「ちっ、新手が出やがったぜ」

 

「怯むなよ、たかが1人だ。さっき戦った岩下や菊入も点数が高い方だったけど多人数で仕掛けりゃ大丈夫だ」

 

「おう、そうだな。姫路さんや蝶影ちゃんが頑張ってたんだ。俺たちだって!」

 

『『『『行くぜぇぇぇッ!!!!』』』』

 

 

誰かの掛け声と共に、私へ向かって特攻して行く。足音から察すると数は4人か。

……なるほど、良い判断だと思う。だが……。

 

 

「ッ! 待ってください、みなさん!」

 

「もう遅いですよ」

 

私の実力に気付いていた姫路さんが呼び止めたが、それよりも先に召喚獣を高速移動させ、すれ違いざまに斬って行った。

そして……。

 

 

「み、見えなかっ……」

 

 

言い終わるよりも先に日本刀を納刀すると、4体の召喚獣が全身から血を吹き出しながら倒れた後、消滅する。

 

 

 

地理

 

Fクラス

 

Fクラスモブ×4:0点

 

 

 

Bクラス

 

綺羅星 日和:472点

 

 

 

「戦死者は補習ッ!!」

 

『『『『勘弁してぇぇぇッ!!!!』』』』

 

 

 

戦死者を嗅ぎ付けた西村先生の手によって、私と戦った男子たちが補習室へ連行されて行った。

……ところで、西村先生はどうやって戦死者を感知しているのだろうか? もしや私のように、聴力を使って? あるいは第六感を? 謎である……。

 

 

「さあ……、次はどなたが来ますか?」

 

「きゅぅ!」

 

西村先生を見送った後、直ぐに姫路さんたちの方へ向き直ってこう告げた。

先程の戦闘を目の当たりにした彼女たちは、各々が動揺しているのが感じられる。

 

「私が行きます……」

 

「瑞希ちゃん?」

 

姫路さんが前へ出て来た。召喚獣も武器を構えているのを音で確認したから……、次の相手は彼女か。

 

 

「どう考えても戦いは避けられそうにないです……。チーちゃんはみなさんを連れて後退してください」

 

「綺羅星さんに勝てるの?」

 

「……わかりません。ですが、このままだと全滅してしまいます。なので行ってください、私は大丈夫です」

 

「瑞希ちゃん……、わかったよ。ちかげ、みんなと一緒に明久くんのところに行くの〜」

 

「ここは任せてくださいね」

 

「ぐっどらっく〜♪」

 

宵宮さんはそう答えると、残った男子たちと共に撤退した。この場にいるのは私と姫路さんの2人だけ。

 

「ひとつ聞かせてください」

 

「あら?」

 

「なぜチーちゃんたちを行かせたんですか?」

 

戦闘の前に姫路さんが質問して来た。彼女としては私が部隊を殲滅できるのは容易いと思うが故に聞いたのだろう。

 

「個人的な目的になりますが……。指令とは別であなたと戦ってみたいと思ったのです、姫路瑞希さん」

 

「私と……?」

 

「はい。……実のところ、吉井くんか真境名くんのどちらかと戦ってみたかったのですが、あなたも注目生徒の1人ですから……」

 

「そうですか……」

 

一言呟くと、彼女の召喚獣が武器を構えるのがわかる。恐らくは大型の剣だろうか。私の方も再び日本刀を抜刀する。

 

「これ程の力を見せた以上、見過ごすことはできません。ここであなたを倒します、綺羅星日和さん!」

 

「望むところです……!」

 

こうして姫路さんとの一騎討ちが幕を開ける。

 

 

 

地理

 

Fクラス

 

姫路 瑞希:434点

 

 

 

Bクラス

 

綺羅星 日和:456点

 

 

 

それぞれ日本刀と大剣で斬り結んでいるが、姫路さんの方がやや優勢なようだ。

調整や訓練等で召喚獣を動かす機会があるとはいえ、一度実戦を経験しているかそうでないかでは随分違って来る。

 

「わたくしが思っていた以上にやりますね。流石、今年の成績優秀者トップ10以内にいるだけのことはあります」

 

「あ、ありがとうございます。だからと言って容赦する訳ではありませんよ!」

 

「はい。ですから、わたくしも少々本気を出させて頂きましょうか。……腕輪発動」

 

「きゅぅ!」

 

「花、ですか……!?」

 

私は自身の能力“命短シ乙女ヨ咲キ誇レ”を発動し、攻めの勢いを更に増して行く。今回は三分咲きだ。

 

「受けなさい!」

 

「くぅッ!」

 

スペック向上の副次効果による斬撃を飛ばし、翻弄する。一般的な生徒なら回避にも苦労する程の攻撃なのだがそこは成績優秀者、簡単にことは運ばない。

 

「これくらい……、“紅の光弾・扇撃(スカーレットフラッシュ・ピーコック)”!」

 

姫路さんの腕輪(ちから)だろうか。拡散ビームと思わしき光線を放って、こちらの斬撃を全て撃ち落として行く。

そのような状態を繰り返し、いつの間にか互いの点数は残り僅かになっていた。

 

「「はぁ、はぁ……」」

 

 

 

地理

 

Fクラス

 

姫路 瑞希:24点

 

 

 

Bクラス

 

綺羅星 日和:38点

 

 

 

「すごいですね、姫路さん。まさかこれ程のものとは思いませんでしたよ……」

 

「私もです、綺羅星さん……」

 

「では……、これで終わりにしましょう……!」

 

「はい……!」

 

互いに得物を構え直し、トドメの一撃を加えようとする正にそのときだった。

 

 

 

“バァンッ!!”

 

 

 

「な……ッ!」

 

「きゅぅ……?!」

 

一瞬何が起きたのかわからなかったが、姫路さんの召喚獣が風穴を開けられたこと、私の後ろから聴こえてきた声が教えてくれた。

 

 

「え……、嘘……」

 

「ありがとよ綺羅星。お前が点数削ってくれたお陰で、楽に姫路を倒すことができたぜぇッ!!」

 

 

 

地理

 

Fクラス

 

姫路 瑞希:0点

 

 

 

Bクラス

 

綺羅星 日和:38点

 

大門寺 代門:399点

 

 

 

どうやら私が攻撃を行うより先に予め召喚し、姫路さんを銃撃したようだ。

……こちらをダシに使って。

 

 

「戦死者は補習!!」

 

「悔しいです……」

 

再び現れた西村先生が、涙目になっているであろう姫路さんを担いで連行して行く。

が、その途中で大門寺くんの姿を確認し、

 

 

「大門寺。貴様、どのような手を使った? 俺が知る限りではそこまで点数を取れるとは思えんが……」

 

「人聞きの悪いことを言わないでください、西村センセ。俺だってこれくらいはできますよ。それに、あの点数で人体急所を狙えば仕留めることは造作もないですって」

 

「……そうか、とりあえずそういうことにしておいてやろう。だがもし敗北したら……、そのときは覚悟しておけ」

 

 

西村先生は何となく勘付いていたけれど、とりあえずその場は収まった。

私は大門寺くんに問い詰める。

 

「大門寺くん、どういうつもりです。なぜわたくしの邪魔をしたのですか」

 

「おいおい、そう言うなって。俺は助けに来てやったんだ、寧ろ感謝して欲しいくらいじゃねーか」

 

「姫路さんは確かに強かったです。ですが、わたくし自身の手で倒すつもりでした。そもそもあなたは、代表の指示以外で動いてはいけなかったハズでしょう?」

 

「ケッ、偶々持ち場を離れていたらお前が苦戦してるっぽかったから、助けてやったと言えば納得するだろ? 理由は後からどうとでもなるぜぇ」

 

「あなたという人は……!!」

 

憤りを感じると共に、彼には私の……いえ、私や根本くんを含めた他人の言葉は届かないのだろう。

 

「おっと、俺はもう行くからな? 後から戦死しないよう精々点数を補給しておくことだ、キーキキキキキキッ!!」

 

大門寺くんはそう言ってまた何処かへ去って行く。私は一緒に残された召喚獣(相棒)としばらく立ち尽くしたままだった。

 

「きゅぅ……」

 

「大丈夫、私は気にしてないから。……そろそろ動くときが来ているわ……」

 

あくまでも中立の立場を貫いていたが、今後の為に私は……。とりあえずはこの戦争を戦い抜くことが先決。

そう考えた私は回復試験を受けに行くのだった。

 

 

See you next stage……




「第17話でした♪ 楽しんでくれたかな?」

「実は今回と次回でBクラス戦を終わらせる予定だったんだけど、3話〜4話くらい消費するらしいよ」

「え、マジ?」

「うん。試しに2話分下書きしたら1話分が相当長くて読みづらいと思ってまた書き直したってさ」

「それでもまだ長いと言うね……」

「とは言え着地点は決まっているから、気長に待っててね」

「それじゃあ、18話もお楽しみに!」

「「グッバイッ☆」」



歩夢「姫路さんが倒されてBクラス優勢に傾きかけたそのとき、俺は篠原さんと共に満を持して参戦! 戦局は膠着状態のまま翌日に持ち越すことに。勝利に向けて作戦を遂行する中、大文字代門が卑劣な罠を仕掛ける! ……上等だ。不利な状況でも戦い抜いてやるぜ!」


歩夢「次回ッ!『バカとテストと召喚獣withグリモア!』、『忍び寄る魔の手』。 Let's go……fight!!」


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第18話 忍び寄る魔の手

「前回のあらすじッ!」

Bクラスとの試召戦争が始まる。
各所で激しく交戦する中、Bクラス最強戦力筆頭の綺羅星日和さんと姫路さんが火花を散らす!
圧倒されると思いきや互角に渡り合い、「いざ決着!」というタイミングで大文字代門の不意撃ちで姫路さんが戦死してしまうのだった……。


梓side

 

 

「戦死者は補習ッ!!」

 

『『『『チクショーッ!!!!』』』』

 

「お仕事完了ッス。いやぁ、ななっちが側に居てくれると大助かりッスよ〜☆」

 

「どういたしまして、アズちゃん♪」

 

自分とななっちは逸れたFクラス男子たちに奇襲を掛けて、順当に数を減らしているッス。

隠密担当の自分たちに相応しい配置だとは思うッスけど……、

 

「でも、いいのかなぁ……」

 

「どうしたッスか?」

 

「役目はわかってるつもりだけど、弱ってるところを闇討ちみたいな真似だなんて……。アズちゃん、わたしたちズルいって思われないかな……?」

 

「気持ちはわからなくはないッス。だけど、根本くんは自分たちを勝たせる為に手を尽くしているッスよ。たとえそれが卑怯だと言われるようなことだとしても……ね」

 

「アズちゃん……」

 

ななっちがちょっと不安そうに聞いて来たからこう返したッス。自分は奇襲が得意だから根本くんのことを否定しないし、何よりクラスの為にやっているって理解してるから。

 

「あ! もちろん召喚獣同士の戦いでの話ッス。現実に脅迫や恫喝をやろうとしたら、自分が全力で辞めさせるッスよ!」

 

「ん……、そうだよね」

 

 

〜♪♪♪〜

 

 

こんな話をしている中、通信機が鳴ったので対応することにしたッス。

 

 

「もしもしこちら服部ッス。はい、……はい。……了解、引き続き任務を続行するッス。……ええ、伝えておくッスよ」

 

「根本くんから?」

 

「(コクッ) どうやら大文字くんが姫路さんを討ち取ったらしいッス。彼のことだから、何か手品でも使ったんじゃないッスかね。……まあ、奇襲がメインの自分たちが強くは言えないッスけど……」

 

「瑞希ちゃんが? 大文字くん相手に負けるハズはないのに……」

 

「とりあえず大文字くんのことは後回しッス。自分たちは出来ることをやりましょう♪ 良いッスか、ななっち?」

 

「うん、どこかで夏ちゃんと土屋くんの2人と鉢合わせするかもしれないよね。気合い入れるよアズちゃん!」

 

「その意気ッス♪」

 

ななっちも奮い立ったようで安心ッスね。

思うところはあれど、一応姫路さんを倒したのは良しとしておくッス。

さて。今度は君たちと戦うんでしょうか……、心待ちにしてるッスよ。つっちー、なつみん。

 

 

梓side out

 

 

 

 

 

 

 

綾斗side

 

 

「もう終わり? 手応えがないなあ……」

 

「でもまあ、連中にしては頑張った方じゃないっすか? 俺っちらを相手したことは……ね」

 

俺っちはFクラスの戦死者たちが補習教室へ連行されて行くのを見送りながら、不満を言う望んを宥めていた。

実戦経験の方はあっちが有利とは言え、素の実力だと間違いなくこっちが上だから結果は見えていたっす。

 

「綾斗。これ以上ボクを満足させるヤツが来ないなら、中堅部隊の所に応援に行った方が良いんじゃないか?」

 

「それも良いっすけど……、もうしばらく留まっていくっすよ。今すぐに俺っちらが出張る必要はなさそうだし♪」

 

「オイオイ……。だけど綾斗がそこまで言うなら、ボクは文句言わないぞ」

 

「サンキューっす、望ん」

 

望んの提言にちょっとワガママ言っちゃったけど、何とか受け入れてもらったっす。

当たるも八卦、当たらぬも八卦。さて……、次はどいつが挑んで来るっすかね?

まあ、誰か相手になろうとも俺っちと望んが一緒なら……、

 

 

 

 

「誰にも負けるつもりはないっすよ」

 

 

 

 

コイントスで表が上になった百円玉に目を向けて、そう言い聞かせたっす。

 

 

綾斗side out

 

 

 

 

 

 

明久side

 

 

最前線で戦う僕たち主力部隊は順当にBクラス部隊の戦力を削っていたけど、それ以上にこちらのアシスト要員の大半が補習室送りにされていた。

晴明、秀吉、ノエルが健在とはいえ結構消耗していたので、交代するタイミングは慎重に見極めなきゃいけない。

 

 

「よう、待たせたな!」

 

「遅れてごめんね〜、もう大丈夫だよ〜♪」

 

「「「「「アユ(歩夢) (くん)!!」」」」」

 

『『『『『『直美ちゃーーん!!』』』』』』

 

 

そう考えていた最中、アユと篠原さんが駆けつけて来る。

僕たち以外で生き延びている連中の声援は無視するとして、タイミング良く来てくれたのはありがたい限りだ。

 

 

「戦況はあまり良くないらしいな?」

 

「ああ。晴明たちは大丈夫でも、他の連中がな……。多少は粘ってたけど、地力の差は大きかったんだよ……」

 

「なるほど……。状況はだいたいわかった、ここからは俺と篠原さんが引き受けるぜ!」

 

「サンキュー、助かるよ。……と言う訳だ篠原さん。ここはアユと一緒に任せて欲しいけど……、良いかな?」

 

「はぁい、頑張りまぁ〜す♪」

 

ハルの呼び掛けに対して、篠原さんはちょっと気が抜けそうな返事をしたけど、本人がやる気になっているなら良いよね?

そう言い聞かせつつ、2人が召喚獣を呼び寄せようとしたそのときだった。

 

 

「あっ、見つけたの! おーい、明久くーん!」

 

「「吉井!」」

 

 

姫路さんと一緒にいたのであろう蝶影ちゃんと武藤くん、原田くんがこちらへ駆け寄って来る。

 

「はぁ、はぁ……。つ、疲れたの〜……」

 

「どうしたの蝶影ちゃん、武藤くん、原田くん! 君たちは姫路さんといたハズでしょう?」

 

「それがな吉井、別の部隊と交戦中に綺羅星さんと遭遇したんだ。俺たちと姫路さんを除いた連中はみんな倒されちまった!」

 

「姫路さんは大丈夫なの?」

 

「俺たちを逃す代わりに綺羅星さんと戦ってる。だけど向こうはBクラスのエース、それも2年生の四英傑(グレート・フォー)候補だ。もしかしたら今頃……」

 

「オイオイ、嘘だろ……」

 

「姫路さんは勝てるのか……?」

 

「やっぱ俺たちでは無謀だったんじゃあ……」

 

マズイ。みんなの士気が下がりそうになってるのを感じ取った僕が彼らに声を掛けようとすると、

 

 

 

「落ち着けお前らぁッ!!!」

 

 

『『『『『『はいいッ!!!』』』』』』

 

 

 

それよりも先にアユが周囲を一喝した。いきなりのことだったので、思わず僕たちも返事する。

 

 

「まだ戦争中なのにお通夜状態でどうすんだよ? 敵はこっちの事情なんて知ったこっちゃないぞ」

 

「そ、それは……」

 

「それにだ。Fクラス(俺たち)から戦争仕掛けてる以上、遅かれ早かれいつかはこうなることはわかっていたんだろ? 戦死が怖いならとっとと下がれ、勝ちたいと思うヤツだけ着いて来い……!」

 

「アユ……」

 

弱音を吐くクラスメイトに対してアユは厳しくも気遣い、そして前向きな言葉を彼らに送った。

 

 

「まあ、さっきも言った通りここからは俺と篠原さんで蹴散らす。アキたちは後退して補給試験を受けろ。残った連中はそうだな……、篠原さんも大事な戦力だってわかってるな? お前たちは篠原さんを戦死させないよう、壁になれ(守り抜け)!!」

 

「イエッサーッ!!」

 

「直美ちゃんの為にー!!」

 

「俺たち、頑張りまーす!!!」

 

 

えっと……。本音と建前が逆だよ、アユ。しかもこれ、遠回しに捨て駒扱いしてるしなぁ……。

ま、良いや。さっきまでと違ってやる気を取り戻したし、皮肉になっちゃうけど、しぶとさなら上位クラスに負けてないもんね♪

 

 

「……うん。初陣から大変な役目を押し付けちゃうけど、アユと篠原さんならできると信じてる。ここは任せたよ!」

 

「「ああ(はぁい♪)」」

 

『『『『『おおーッ!!!』』』』』

 

「そうと決まれば先ずは補給だ。行こう、みんな!!」

 

「「「「「OK(なの)ッ!!!」」」」」

 

前線の主軸を2人に託し、僕たちは一時後退する。

振り向き様に呼んでサムズアップを送ると、それに気付いたアユはVサインで返した。

 

 

 

アユたちの姿が見えなくなったタイミングでハルと目を合わせ、互いに合図をしながら立ち止まった。

それを不思議に思ったノエルと蝶影ちゃんがこう尋ねる。

 

「明久くん、晴陽くん?」

 

「どうしたの2人とも?」

 

「……4人は先に補給試験を受けてくれ。俺はアキと一緒に教室へ戻る」

 

「なぜじゃ?」

 

「大文字代門がいるのはわかるだろ? ソイツ、或いはソイツの息が掛かった連中が襲撃して来るかもしれねぇ。雄二と龍季のことも気になるしな……」

 

ハルの言葉に秀吉が疑問を投げ掛けると、このように返事する。

大文字くん(アイツ)の黒い噂を考慮するなら、何も起きないのはあり得ない。

 

「……良いぜ。そう言うことなら、雄二と龍季はお前たちに任せよう。秀吉、ノエル、蝶影、行くぞ」

 

「「「うん!(うむ)」」」

 

「ありがとう。補給が終わり次第、アユたちの援護に向かってあげてね」

 

「(コクッ) お前たちも気を付けろよ?」

 

「「わかってるって!」」

 

互いに頷き合うと、僕とハルは教室へ向かって行った。

 

 

明久side out

 

 

 

 

 

 

歩夢side

 

 

「さて……とッ。俺と篠原さんのデビュー戦だ、落とされたいヤツから先に来いよ……!」

 

アキたちが離れた後、俺はウォーミングアップしながらBクラスの生徒たちを一瞥し、クイクイと手招きする。

それを見た篠原さんも何となくマネしていた。

 

「い、言ってくれたな叢雲ォ! 行くぞみんな!!」

 

『『『『『『了解、試獣召喚(サモン)ッ!!!』』』』』』

 

 

最初の1人を皮切りに、7人くらいが一斉に魔法陣を展開して召喚獣を呼び出す。

……正直、ちょっと刺激しただけでこんなに乗って来るとは思わなかったから、案外楽勝かもな。

篠原さんのことをスルーしてたのは何て言えば良いんだろう……、「女の子って得だな」って思ったのは内緒だ。

 

 

「叢雲歩夢。お前はタダでは済まさん、じっくり甚振って補習室送りにしてやる!!!」

 

「ふん……。 獲物を前に舌舐めずりする三下ごときに、俺たちが負けるとでも思っているのか?」

 

「何言ってんだ、アイツ……」

 

「これからやられるってのにおかしくなったかwww」

 

 

へぇ……、未だに強気だな。そこまで言うなら見せてやろうじゃないの。その前に、連中の使用科目と点数を確認するか……。

 

 

 

 

英語

 

 

Bクラス

 

 

Bクラス一般生徒×7:平均350点

 

 

 

科目は英語、平均点が300点を軽く超えているな。流石Aクラスの次点だけはある。……でもこれは予想通り。400点以上がいないなら、篠原さんと壁役(数合わせ)要員だけでも何とか行けそうだ。

 

 

「ここまで強気に出たことは褒めてやる、だけど実力差を思い知っても後悔するなよ? 行くぜ篠原さん、騎兵隊諸君!」

 

「任せてくださぁい♪」

 

『『『『『サーイェッサーッ!!!』』』』』

 

「「試獣召喚(サモン)ッ!」」

 

『『『『『試獣召喚(サモン)ッ!!!』』』』』

 

 

俺と篠原さんが魔法陣を展開して召喚獣を呼んだその直後に、武藤と原田を含めた壁……じゃなかった、騎兵隊の連中も続いて召喚獣を呼び出した。

 

 

 

英語

 

 

Fクラス

 

叢雲 歩夢:432点

 

篠原 直美:456点

 

Fクラス騎兵隊×5:平均98点

 

 

 

出て来た俺の召喚獣はパワードスーツを纏ったヒーローと言った感じで、例えるならフ○○ター○アみたいな姿をしてる。色はマゼンタがベースで髪の色も一緒だ。

篠原さんは「不思議の国のアリス」にありそうな青と白のワンピースを纏い、それとは不釣り合いなクレイモアを両手に持っていた。

もちろん、2人とも腕輪持ちだ。

点数が表示されるまでは笑顔さえ見せていたBクラスの連中は、当然ながら驚くことになる。

 

 

「ちょっと待て……。なんなんだよこれは!!」

 

「冗談だと思ってけど、まさか本当に……」

 

「そんなの聞いてない!!」

 

 

さっきまで見せていた余裕はどこへやら、連中にとっては想定外の事態に狼狽えるばかりだ。

 

 

「慌てるなよ。見たところ、点数が高いのは叢雲と篠原さんだけ。残りのヤツらは雑魚同然、ソイツらを倒せば数で押せるハズだ!」

 

「そうだな今江、それなら俺たちの方が有利だ。みんな、あの2人は無視して雑魚から倒すぞ!」

 

『『『『『わかった(わ)!!!』』』』』

 

 

そのような状況でも比較的冷静に対応していた生徒……確かこの2人は小坂と今江って言ったか。

多分だけど、もう少し鍛えたら強くなれるかもしれないな……。他の連中にも言えるけどさ。

小坂の号令で密集陣形を形成し、篠原さんを守るように構える武藤たちを攻め立てる。

 

「陣形を保ちつつ、騎兵隊を一気に叩く方向に来たか。悪くない判断だ」

 

『『『『『まだ死にたくないよー!!!』』』』』

 

「みなさん、大丈夫ですかぁ〜……?」

 

あ。いけねっ、冷静に解説してる場合じゃない。

流石に騎兵隊にはまだ倒れてもらう訳にはいかないからな。……仕方ねぇ、助けてやるか。

 

 

「雑魚は退場だ!!」

 

「違うな、先に退場するのはお前の方だぜ!」

 

「……え?」

 

 

 

英語

 

 

Fクラス

 

叢雲 歩夢:432点

 

 

Bクラス

 

初芝 清仁:0点

 

 

 

騎兵隊への攻撃に集中して、俺に対する警戒が薄かった生徒の1人にハンマーで急所をぶっ叩いた。

 

「初芝くんが倒されちゃったよぉ!」

 

「しかもたった一撃でだぞ?!」

 

「こんなことがッ!」

 

「仕方ない、予定変更で叢雲から先にやろう!」

 

倒した生徒はこの中でも腕の立つヤツだったらしく、小坂が率いる部隊は陣形が乱れて混乱状態になっていたが、俺に標的変更することで体勢を立て直した。

そこは良い。けどそれだけじゃあ、ダメなんだよな。

 

 

「喰らえ! ……ってアレ?」

 

「ど、どうしたの諸積くん! らしくないよ!」

 

「違うんだ、俺の意志と関係なく一瞬だけ召喚獣が勝手に!」

 

「そんなバカな! 代わりに俺がやる、てやッ! ……俺もかッ!?」

 

 

こうなることを見越して仕掛けた次なる一手。

それは篠原さんの腕輪……同調(シンクロ)によるものだ。内容を聞くに、消費点数に応じて相手召喚獣の操作権を奪うと言うシンプル且つ強力な能力(ちから)だ。

反面、超人的な集中力と膨大な点数消費を要求する上に、その性質上一対一には不向きで集団戦での連携がベストらしい。

仮にそうでないにしても、篠原さんの召喚獣は武器の派手さに対して攻撃能力は高くないので、攻撃向きのパートナーがほぼ必須なんだと。

 

 

「その分俺が仕留めれば良いだけさ!」

 

 

 

英語

 

 

Fクラス

 

叢雲 歩夢:432点

 

篠原 直美:406点

 

 

Bクラス

 

西岡 恵理子:0点

 

諸積 健太:0点

 

小林 匡孝:0点

 

 

「これで4丁上がりっと!」

 

「戦死者は補習ッ!!」

 

『『『『助けてぇぇぇッ!!!』』』』

 

 

続けて3人も撃破するとどこからともなく現れた西村先生が、先に戦死した初芝も含めて4人とも連行して行った。

つーか神出鬼没って聞いてたけど、生で見るのは初めてだ。いくら身体能力が高くて鍛えてるからとは言えこれは一体……。考えたら負けか。

 

 

「す、すげぇぞ叢雲!」

 

「直美ちゃんにだけ目が行ってたけど、なんだかんだで強かったんだな!」

 

「叢雲歩夢……、まさかこれ程だなんてな……」

 

「安田さん、代表に現状を伝えてくれ。お前が戻って来るまでの間、俺たちはここを抑える……!」

 

「わかったわ。何とか切り抜けてね小坂くん、今江くん! できるだけ早く援軍を連れて来るから!」

 

後ろにいる武藤たちの歓声を背に、安田さんが後退したのを見送ってすぐに残存部隊と対峙する。

 

「篠原さん、引き続きサポートを頼む。武藤たちは……、とりあえず死なないように立ち回れ。まだ戦闘は続くからな」

 

「わかりました〜♪」

 

『『『『『了解です、旦那!!!』』』』』

 

 

今の俺の役目は戦力削りと補給組の時間稼ぎ。ここからが本番だッ……!

 

 

歩夢side out

 

 

 

 

 

明久side

 

 

大文字くん一派の奇襲を危惧した僕とハルは、一度Fクラスへと戻っていた。

近づくにつれて人の気配を感じた為、気付かれないように教室に入って行く。

 

 

「やぁ君たち、何をしてるのかな?」

 

「下手な言い訳は通用しねぇぞ……」

 

「げっ、吉井と真境名だ!」

 

「このタイミングで来たのかよッ!」

 

 

そこにはBクラス生徒が卓袱台含めた設備を弄る光景が広がっていた。数は4人。

さっきまでもう1人いた気がするけどそいつは後回し、今いる連中は現行犯だから退場してもらおう。

 

「もう一度言うぞ。……何をしていた?」

 

「あ、あの……これはその、えっと……、代表の指示でやれって言われて……」

 

「そうだ、俺たちは寧ろ被害者だ。見逃してくれよ、なっ?」

 

ハルの問いかけにしどろもどろになる小物連中。

終いには助かりたいが為に恭二に責任転嫁して来た。形はどうであれ、やったことの落とし前は付けてもらおう。

 

「違うでしょ、君たちに指示したのは大文字くんだよね? ご愁傷様とは思うけど、設備をめちゃくちゃにしようとするのは見過ごせないな。……ハル」

 

「OKアキ、……我妻先生ー! 真境名晴陽、吉井明久の両名がコソ泥生徒に総合科目で勝負を申し込みますッ!」

 

「承認するわッ!!」

 

 

ハルの一言で我妻先生が速攻で駆け付けて来た。西村先生の愛弟子だけあって初動が早い。

 

 

「う、梅先生だ!」

 

「いつの間に!?」

 

「落ち着けお前ら。これは先生の前で俺たちの実力をアピールするチャンスだ!」

 

「そ、そうだった。あの観察処分者コンビよりもこっちが優れているってこと証明しようぜ!」

 

「俺たちをコソ泥たぁ言ってくれたな。憂さ晴らしさせてもらうぞ吉井、真境名!」

 

『『『『試獣召喚(サモン)ッ!!』』』』

 

 

 

総合科目

 

 

Bクラス

 

Bクラスコソ泥×4:平均2892点

 

 

 

コソ泥たちが召喚獣を呼び寄せた。確かに全体的に見れる点数だけど、コイツらはおそらくクラス内では下位ランクだろう。

 

 

「ほら、お前らも早く召喚しろよ」

 

「ボッコボコにしてやるぜー!」

 

「へー、まぁまぁやるよね。でも、この程度で満足したらダメなんじゃない?」

 

「今から現実ってヤツを見せてやる……」

 

 

「「試獣召喚(サモン)ッ!!」」

 

 

 

 

総合科目

 

 

Fクラス

 

真境名 晴陽:3672点

 

吉井 明久:3594点

 

 

 

 

 

「な……、何じゃこりゃあ!?」

 

「3500オーバー……だと!」

 

 

観察処分者だからと高を括っていたヤツらはいざこちらの点数を見ると、あからさまに動揺している。これでも一応手加減はしてるけど。

当然その隙を僕たちが見逃すハズもなく、

 

 

 

総合科目

 

 

Fクラス

 

真境名 晴陽:3672点

 

吉井 明久:3594点

 

 

Bクラス

 

Bクラスコソ泥×4:0点

 

 

 

「あ、あれ……?」

 

「いつの間に……」 

 

「隙を見せたら終わりだぞ」

 

「信じられないのはわかるけどね」

 

 

急所を突いて一瞬で終わらせた。

 

 

「戦死者は補習よ!」

 

「「「そんな〜!」」」

 

「でも、梅先生なら良いや……」

 

 

こうして連行されて行くコソ泥たちを見送る。

最後のは考えようによってはドM発言に聞こえるけど、ヤツらが良さげなら何も言わないでおこう。

我妻先生は高橋先生と並んで人気の美人だし。

 

 

 

 

 

 

「よう明久、晴陽。お疲れだったな」

 

「あ、雄二」

 

「無事だったか」

 

「俺もいるぜ?」

 

「ボクもー!」

 

我妻先生たちと入れ替わりで雄二が龍季とクルトを連れて教室に入って来た。

 

「クルトがいる理由は置いといて……、どこに行ってたんだい?」

 

「実は根本から提案があってな。これ以上やっても午後4時までに決着が付かなそうだから、翌日の午前9時から再開する……という内容の協定を結びに行ってたのさ」

 

「どうしてなの?」

 

「体力に不安があるヤツらに配慮した結果だ。特に姫路姉含めた女子生徒のな……」

 

「俺のことはいいって」

 

「ダメだ、これは決定事項だ。それにな龍季。お前も一応その……、女の子だし……」

 

「一応ってなんだよ、コラ」

 

「うぉッ。待て龍季、締まる締まる!」

 

 

〜♪♪♪〜

 

 

2人の漫才も頃合いを見て止めると、雄二の制服の内ポケットから通信音が鳴っているのに気づく。

 

「へい、こちら坂本雄二。おお岸田か、何があった? おう、……おう。……な、なんだと?」

 

通信機を手に通信主の夏海と会話を始める。しばらくして少し声を荒げていたが、終わるまで見守ることにした。

 

「 ……そうか。わかった、この件は首脳陣で共有する。ん……、もう一方はこっちで対処するから任せろ。協定の内容は康太にも伝えておけよ。……おう、油断なく頼むぜ」

 

通話を終えた雄二にそれとなく聞いてみた。

 

「夏海からの連絡だったよね。何て言ってたの?」

 

「そのことだが心して聞け、姫路姉がやられたそうだ。……大文字代門の手でな」

 

「「「「何(だって)!?」」」」

 

雄二の口から告げられた内容に僕たちは驚愕する。

我らがFクラスの主力の一角を担う彼女が戦死したなんて。しかも、大文字くん(アイツ)が仕留めたというのだから戸惑いを隠せずにいた。

 

「明日の作戦に姫路姉も必要だったが……、早急に作戦(プラン)の練り直しをしないといけねぇ。他のメンバーも明日に備えて欲しいしな」

 

「もう一個は何て言ってたんだよ?」

 

「これは康太が探ってたことだが、Cクラスの連中がおかしな動きをしている……だとよ。漁夫の利を狙ってると踏んでいるが、得があるとも思えんし、どうしたモンか……」

 

「とりあえず行ってみようよ。じゃないと対策のしようがないしね」

 

「そうだな」

 

Cクラスへ向かうべく教室を出ようとすると、クラスメイトの誰かが駆け込んで来る。

 

 

「吉井、真境名! 代表もいるのか、丁度良かった……」

 

「横溝くん!」

 

「どうした? そんなに慌てて」

 

「島田が人質に取られてな、相手は手負いなのに迂闊に攻めることもできないんだ!」

 

これを聞いてまたしても唖然としたが彼女は僕たちの友達だし、クルトにとってはそれ以上に大切な存在だろう。

何より彼がいる手前、無視することはできない。

 

 

「一方はCクラスへ、もう一方は島田の奪還……。さて、どうするか……」

 

「ユージ。ボク、ミナミを助けに行きたい! ダメって言っても聞かないよ? ミナミの為なら1人でだって行くもん!」

 

 

誰かに言われるまでもなく立候補するクルトに、僕たちは暖かいものを感じた。こんな真っ直ぐに自分の想いを口に出せるなんて……。

見習わなくちゃあね。

 

「流石だクルト。けど流石に1人じゃ危ないだろ? 俺も一緒に行くよ」

 

「ハルヒ……」

 

「待ちな晴陽、それなら俺も行かせろよな」

 

「タツキ! ……2人とも、ありがとッ!」

 

 

悩むかと思われたメンバー選びだがクルトに続き、そこにハルと龍季が加わる形になった。

 

「それならCクラスには残ったメンバーで行く。理由はどうであれ、必ず助けてやれよ」

 

「了解。そんじゃ横溝、案内頼むぜ!」

 

「わかった、着いて来てくれ」

 

横溝くんを先頭に立てて教室を出て行くのを見送った残留組は一路Cクラスへ歩を進める。

美波のことも気になるけど、ハルと龍季がいるなら大丈夫だよね。

 

 

明久side out

 

 

 

 

 

晴陽side

 

 

「ここだ」

 

横溝の案内によって、俺たちは美波が捕われている地点の手前付近にたどり着いた。

 

「須川もいるのか……」

 

「美波を人質に取ってる連中は2人だな」

 

見たところどちらも手負いだ。だけど美波を盾にされている以上、あっちが有利か。褒められた手段ではないのは間違いないけどな。

 

「早速行こうよ」

 

「いや、クルトはここで待て」

 

「なんで?」

 

「連中は偽情報で美波を釣った。てことはだ、美波にとって大事なもの……クルトを餌にした可能性が高いって訳よ」

 

「そ、そうなのか?」

 

「ああ。このまま突撃かますのも良いが、それじゃ返って逆効果だ。だから最初はクルト抜きで行く。で、丁度良いタイミングで出て油断したところを奪還……って寸法さ」

 

疑わしげな横溝に俺はこう返す。

助けること自体は難しくはない。が、今全員で行くと美波が戦死してしまうだろう。それを踏まえた上での行動だ。

 

「そーいうことだからよクルト。合図をした後来て良いから、今は我慢するんだ。できるだろ?」

 

「……うん、わかった。それでミナミを助けられるなら、ボクやるよ!」

 

ちょっと不満そうだったクルトも龍季の言葉に納得してくれたので先に龍季と横溝、俺とで美波の下へ向かった。

 

 

「来るな! それ以上近くと、この女を補習室送りにするぞ! 良いのか!」

 

「晴陽、龍季ッ!」

 

「浩二! それに真境名、朝比奈じゃないか! 来てくれて感謝するぞ!」

 

 

俺たちの姿を見るや、救世主を目の当たりにしたかの様に安堵する須川。それとは対照的に、Bクラスの男子2人は忌々しげにこちらを睨んでいる。

召喚獣の方も、美波の召喚獣を踏み付けながら武器を突き立てていたので悪役感は倍増だ。

 

「よう美波。俺と龍季は横溝に呼ばれて来ただけだからわからんが、差し支えがなけりゃなんで捕まったのかは教えてくれ」

 

「それは、その……」

 

もちろん知らないというのはウソだが、これくらいは良いだろう。何せあっちは人質を取っているのだから。

 

「ククク……、知りたいか?」

 

「もったいぶらねーで早く言えよ」

 

「わーったよ。 かわいくねー女だな、朝比奈は……

 

ああん?

 

龍季が続きを促すと、小声とは言え相方が地雷を踏んだようで、鬼の形相で2人組を睨み付けた。

俺は大丈夫だが、美波含めた3人もビビっていたので今後の為に慣れてもらう必要があるな。

 

 

「とにかくだ、コイツは『クルト・アードラーが捕まった』って偽情報流したらまんまと釣れてくれたのさ!」

 

「「へー……、ソーナンダー」」

 

「おい真境名、朝比奈……」

 

事情を理解してる俺と龍季は心底呆れたように棒読みで返事した。須川は心配そうにしてたが安心しろ、すぐに片を付ける。

 

「少しは動揺しろってんだ! マジでムカつくヤツらだな!」

 

「悪い悪い、あまりに見え透いたウソを吐くもんだから呆れちまってよ。……なっ、龍季?」

 

「まったくだぜ。……なぁ、クルト?」

 

「うん? ボクがどうかしたの?」

 

「「「……え?!」」」

 

「クルトッ……!」

 

俺たちの呼び掛けに応えて現れたクルトの姿を見た2人組(と須川)は唖然とし、美波は驚きと喜びが混じった様な声を上げる。

 

 

「今だ龍季、行くぜッ!」

 

「ああ、任せな!」

 

『『試獣召喚(サモン)ッ!!』』

 

 

 

化学

 

 

Fクラス

 

真境名 晴陽:316点

 

朝比奈 龍季:298点

 

島田 美波:41点

 

 

Bクラス

 

 

牛島 和寿:93点

 

加藤 康晃:87点

 

 

「さぁ、美波を返してもらうぜッ!」

 

「し、しまった!?」

 

そこからできた隙を逃さずに召喚獣を呼び寄せ、龍季が美波を奪還する。

 

「ミナミッ! 良かったぁ〜」

 

「クルトッ! 心配掛けてごめんね……」

 

「良し。さてお前ら……」

 

「覚悟しな!」

 

こうなってしまえばこっちのもの、俺と龍季の薙ぎ払いで勝負を決めた。

 

 

「戦死者は補習ぅッ!!」

 

「「勘弁してぇぇぇッ!!!!」」

 

 

「行ったか……」

 

「えっと晴陽、龍季。助けてくれてありがと……」

 

「良いって。オメーは仲間で友達……だからな」

 

「目的は達成した、早いとこ教室に戻ろう。良いな?」

 

「「「「「ああ(わかったよ(わ))!」」」」」

 

 

後10分もすれば戦闘終了になるだろう。

そう思った俺は戦死者を連行する西村先生を見送った後、アキたちの下へ向かった。

 

 

 

 

 

 

「よう雄二。こっちは任務完了だけど、Cクラスの方はどうだった?」

 

「上手いこと小山と不可侵条約を結べたからな、心配無用ってヤツだ」

 

「でもやっぱりというか、大文字くんと取巻き連中はいたよ。まあ、そいつらは恭二が抑えたけどね」

 

「マジ?」

 

「マジだ。去年までとは別人かと思うくらいに凄みがあった。お前らにも見せたかったぞ」

 

再び教室に戻り、互いに目標達成の報告をする。Cクラスとの不可侵条約締結の際には恭二の力添えもあったことを素直に感心した。

最近では自らも強くなるべくユリ先輩やつかさ先輩等、裏Aクラスの先輩たちから武術を習っているのを本人から聞いていたので尚更だ。

 

「えっと坂本……。偽情報とは言え、クルトの名前を出されて正気じゃいられなかったの。その結果持ち場を離れた挙句、人質にされてごめんね……」

 

「……そうだな。偽情報に踊らされて須川たちを危険に晒しただけじゃなく、晴陽と龍季にも迷惑を掛けた。組織として見るなら問題だな」

 

美波からの謝罪に対して淡々とこう告げた雄二。それを見たクルトと龍季が何か言おうとすると、

 

「とは言えクルトを助けようと行動したことだが、俺個人としては嫌いじゃねぇよ」

 

(同じような状況になったら、多分俺だってそうする。……翔子の為にな)

 

このように続けた。雄二が胸中に何を思ったかは知らないけど、余計な詮索はしないでおくか。

 

「だが、このまま無罪放免って訳にも行かねぇ。島田、根本攻略にお前も協力しろ」

 

「えっ?」

 

「俺は明久や晴陽含めた首脳陣には何かしら秀でている部分を買っている。それは島田(お前)も例外じゃない。明日朝一番にはなるが、とりあえず回復試験で補給に専念しろ。……クルトも一緒にな」

 

「……ええ。それで名誉回復になるなら、ウチは全力を以って任務を全うするわ。クルト、明日はお願いね?」

 

「うん!」

 

 

 

そして……

 

 

 

「ここまでか……。みんな、今日のところはゆっくり休め。明日で勝ちを掴み取るぞ、いいな?」

 

『『『『『『『おうッ!!!』』』』』』』

 

 

戦闘行為を終えて戻って来たクラスメイトたちに雄二がこう告げると、元気よく返事する。長丁場でもへばらないタフっぷりは流石だ。

その後は多くが帰り支度をして教室を出て行ったが、僕とアキはまだやるべきことがある。

 

「アキ」

 

「わかってるよ、ハル。これからだよね?」

 

「うん。行こう、蒼祐のところへ」

 

研吾先輩に頼まれていた件だ。大文字代門の手下のような状態でいるのは何故か。何故中武研に来なくなったのか。それを確かめに行く。

 

「一応蒼祐には連絡入れたけど……、なんて言ってたの?」

 

「指定した場所に来いって。友達だから信じるけど、とりあえず警戒はしとこうか」

 

「(コクッ) そうだね」

 

「智花、用事ができた。終わるまでちょっと待ってくれるかな?」

 

「わかったよ、アキくん」

 

大文字くん(アイツ)の影が頭をよぎりながらも、僕たちは蒼祐の待つ空き教室と思われる場所へ向かった。

 

 

 

 

 

 

「やあ。宣戦布告のときはあんな感じだったから、来ないと思ってたんだ。でも、君たちは俺を信じて来てくれた。ありがとう……」

 

穏やかな表情でこう言う彼を見て確信する。まだ堕ちてない、僕たちが知ってる蒼祐のままだ。

 

「どういたしまして♪ それはそうと確認なんだけど、ここって盗聴されたりしない?」

 

「ここを知ってる生徒は限られる。大文字ですら知らないから、盗聴の心配はしなくていい。仮に盗聴器(そんなもの)があっても俺が回収してる」

 

「そうなんだ?」

 

アキの質問に蒼祐がこのように返す。とりあえず、心配だったことが杞憂で済んでよかった。

 

「わかった、じゃあ本題に入るね。僕たちが来たのは……」

 

「知ってる。研吾先輩に頼まれたんだろう? あとは今朝のことも知りたい……と」

 

「気付いてたの?」

 

「もちろんだ。俺個人としてだけど、君たちは文月学園一わかりやすい人だと思っているからね」

 

そんなにわかりやすかったのか……。今度サプライズとかやる機会があるなら気をつけなきゃ。

 

「話が逸れそうだから結論を言うよ。俺が大文字代門の傍にいるのは天文部……、ミナと恋の為だ。中武研に来てないのも大文字(ヤツ)の存在が関わっている」

 

「大文字くんが?」

 

「ああ。あの男が大きな顔をする限り、天文部とBクラスは危険だ。研吾先輩たちの手を煩わせる訳にはいかない」

 

「「蒼祐……」」

 

大文字くんのことを口に出してから締まった表情になるのがわかる。彼に対する怒りがこっちにも伝わって来た。

 

 

「大文字代門は目の上の瘤だけど、Bクラス(俺たち)から見れば君たちも敵であることに変わりない。目の前に来るなら遠慮はしないつもりだから覚悟はしててくれ明久、晴陽」

 

「大丈夫だ。僕らもそのつもりで戦うから、変な気遣いはいらないよ」

 

ある程度話し込んだ後、蒼祐が耳元で何かを囁いた。それを聞いた僕たちは多分悪い笑顔になっていたことだろう。

 

 

「じゃあね蒼祐。明日の戦い、期待してるよ」

 

「どっちが来るかはお楽しみ♪」

 

これに人差し指と中指をくっ付けたVサインで応えた蒼祐と別れ、智花の待つ教室へと戻った。

 

 

晴陽side out

 

 

 

 

 

蒼祐side

 

 

「さて。出てきたらどうだい誠也くん、神山くん。そこにいるのは最初からわかっているよ」

 

明久と晴陽を見送った後、ある一点を見つめて2人を呼ぶ。

実は話をしていたときから気配を感じていたが、聴いてもらった方が都合がよかったのでそのままにしていた。

 

「やはり気付いてましたか。私としては自信があったのですが……、まだまだですね」

 

「言っただろう神山、小嶋研吾直々の弟子であるこの男を侮ってはいけないと。まあ、私程ではないだろうが」

 

「言うじゃないか。だけどその割には、俺と実力は大差ないと草薙先輩と八神先輩から評されてたらしいけど?」

 

「そこはどうでもいい。それよりも私が知りたいのは話していた内容だ。キミは大丈夫代門の手先になっていたのではなかったのか!?」

 

「少々早合点が過ぎたということさ誠也くん。君が双美さんのことを守りたいと想うように、俺もミナが大切なんだ」

 

挑発には動じなかったのに、さっき話していた内容について掴みかかる勢いで俺に迫った誠也くんに努めて冷静に返答する。

 

「本当か?」

 

「(コクッ) 逆に聞くけど、ここで嘘を言って何の得になると言うんだ?」

 

「……わかった。納得できるかは別だが、そこまで言うならキミを信じることにしよう」

 

「助かるよ」

 

少々疑っているみたいだけど、目線を逸らさず真剣に答えた。これには誠也くんも想いを感じ取ったらしく、一応信じてもらえた。

 

 

「あの……。盛り上がっているところ悪いのですが、私もいますよ?」

 

「忘れてた。神山くん、君にも余計な気遣いをさせてすまないね。今まで聴いてた内容が全てさ。ヤツの傍にいても俺は俺だ」

 

「万が一があれば実力行使も考えたのですが、これで懸念事項が1つ減りました。ありがとうございます青空くん」

 

「構わない」

 

なんだかんだで神山くんはちゃんと見ていたんだと感心する。理解の早い人がいるのは助かるな。

 

「いいですか2人とも。明日の後半戦、勝敗はどうなるかわかりませんが、分裂しているBクラスを纏め上げる絶好の機会となるハズです。私も手を尽くしますので頑張りましょう!」

 

「「……いいだろう(わかった)」」

 

神山くんの言葉に誠也くん共々頷き合う。

明久と晴陽(あの2人)がいると正直勝つのは難しいだろう。だがもう1つの目的は意地でも達成してやる。そう思い、俺たちはこの場を離れるのだった。

 

 

蒼祐side out

 

 

 

 

 

明久side

 

 

蒼祐と別れてからFクラスへ戻ると、教室に残っている人数も数える程度になっていた。

 

 

「待たせちゃってごめん、智花。怜たちを迎えに行こう」

 

「あ、アキくん。……わたし、急用思い出したから、それを終わらせて来るね!」

 

「大丈夫? ハルもいるし、必要なら手伝うよ?」

 

「そんなに時間も掛からないし、人手も足りてるから大丈夫だよ。……蝶影ちゃん、直美ちゃん、行こ?」

 

「「わかったの〜……(はぁい)」」

 

そうして2人と一緒にどこかへ行くのを見送ったけど……、どこか引っ掛かる。

 

「正直不安だよ……。なんか無理して明るく振る舞ってるようだったし、蝶影ちゃんと篠原さんもテンションが違って見えるんだよね……」

 

「アキが気になるのはわかるよ。だけど、本人たちから話してくれるのを待つしかないんじゃないかな? 無理に聞き出そうとしても『大丈夫』の一点張りになるからさ」

 

「……うん。それなら、僕たちは明日に向けてできることを真剣に考えようか」

 

「そう言うこと♪」

 

 

どうしても気になってしょうがなかったけど、ハルの言うことも正しいから気にも留めずにAクラスへ向かった。

でも……、この時点で気付くべきだったのかもしれない。大文字代門が智花たちへ脅迫行為をしていたことに……。

 

 

明久side out

 

 

 

 

 

智花side

 

 

わたしは蝶影ちゃんと直美ちゃんと一緒にある男子生徒の元へ向かっていた。行き先はスマホのL○NEに届いている。

 

 

「南、宵宮、篠原ァ。逃げずに来てくれて俺は嬉しいぜぇ」

 

「別に喜ばれる為に来た訳じゃありません、本当にわたしたちが『大事にしてるもの』を持っているのか確認する為に来たんです。あなたが嘘を吐いている可能性もありますから」

 

「そーだそーだ!」

 

指定した場所で待っていた大文字くんに対して毅然とした態度で向き合うわたしたち。直美ちゃんも口には出してないけど同じ気持ちだろう。

 

「おっと、口の利き方には気を付けることだ。お前らの対応次第では『大事なモン』がなくなるかもしれねぇからよォ」

 

「「「ッ!!」」」

 

そう言うと手元からある物を見せた。

確かにそこには小学生の頃にアキくんからもらったわたしの黄色いリボン、蝶影ちゃんが玲泉くんからもらったペアリング、そして直美ちゃんのクローバーの形をしたアクセサリーがある。

 

 

「手駒連中をFクラスへ潜入させてたときにオメーらの棚から失敬させてもらったぞ。まさか、本当にあるとは俺様も思ってなかったがな」

 

「ちかげの指輪……。それ、返して……!」

 

「わたしもアクセサリー返してください……!」

 

「そいつは無理な相談だ。本当ならお前らを拉致したいくらいだが、根本の野郎にどやされるからなァ。謂わばコレは人質代わりってヤツよ」

 

涙目になっている蝶影ちゃんと直美ちゃんの訴えを無情にあしらう大文字くん。

拉致したい発言は論外として、あろうことか他人の所有物を盾に揺さぶりを掛けてくる態度に怒りが込み上げてくる。

 

「卑怯ですよッ!」

 

「ああ? 何言ってんだ南智花。そんなに大事なモンなら持って来なけりゃ済む話だったろ? こんなことになったのは自己責任。つまり、テメーらが悪い」

 

爪が手のひらに食い込む勢いで握り拳を作っているのがわかる。本音を言うと一発殴ってしまいたいくらいに。

でもダメだ。先に手を出したらFクラスのみんなと……、アキくんに迷惑を掛けちゃう。

 

「何を求めるんです?」

 

「簡単だ、明日の試召戦争に参戦しないことよ。そうすりゃ俺の手元にあるモンは返してやってもいいぞ?」

 

「本当に返してくれますかぁ〜……?」

 

「騙されちゃダメなの直美ちゃん! ちかげ、この人が約束守れると思えないの! 昇瑠も『ウソつき野郎』って言ってた!」

 

「信用されてねぇな俺。まあいい、コレがある以上オメーらは実質無力化同然だ。どうするべきかよぉーく考えて決めることだ、じゃあな〜♪」

 

(まっ、簡単に返す訳ないケドな! キーキキキキキキッ!!)

 

大文字くんはそう言い残して去って行く。

 

「智ちゃん……」

 

「どうしましょう〜……」

 

「2人とも……、大丈夫だから。きっと、何とかなる……、ハズだから……!」

 

不安そうに見つめる蝶影ちゃんと直美ちゃんに対して、わたしはこう言うしかないのだった……。

 

 

智花side out

 

 

 

 

 

明久side

 

 

「昨日の続きだが、歩夢と篠原は引き続き戦線を維持してくれ。主力組は補給が終わり次第、随時向かわせる。それで、直近の補給完了予定者が南と宵宮だと聴いてるが……、行ってくれるか?」

 

「「あ……、はい(うん)……」」

 

翌朝。戦闘再開前に首脳陣によるミーティングで雄二が指示を飛ばした際、智花と蝶影ちゃんの返事に違和感を感じた。

昨日の放課後に見せたあの顔だ。一瞬しか見てなかったけど、篠原さんも同じ顔をしてたと思う。

 

「本当どうしたの、智花?」

 

「蝶影ちゃんもだけど、昨日何かあった?」

 

「わたしたちは大丈夫! 本当に何もないの! ねっ、蝶影ちゃん?」

 

「そ、そうなの!」

 

一応聞いてはみるものの『大丈夫』の一点張りだ。コレはおかしい、絶対何かある。そう思った僕はハルと顔を見合わせるのだった。

 

 

 

 

 

 

AM 9:00

 

 

「連中もこっちを突破しようと必死か……! 絶対に抜かれるなよ! 騎兵隊諸君!」

 

『『『『『承知ッス!!!』』』』』

 

「いい返事だ! さて。朝から一体どうしたんだ、篠原さん? 調子悪いのか?」

 

「あ……。い、いえ。大丈夫ですぅ……」

 

始業のチャイムを合図に戦闘再開した。のだが、どうも篠原さんの様子が変だ。アユが言うように体調が悪い訳でもなさそうだけど、只々Bクラスを見つめているだけ。

 

「流石のアユでも多勢に無勢だと危ないね。誰か援護に行ける人はいる?」

 

「吉井、俺と浩二が行く!」

 

「少しは役に立ってやろうぜ、亮!」

 

「お願いね須川くん、横溝くん!」 

 

「「任せとけ!!」」

 

そろそろ援護が欲しいと思っていたタイミングで須川くんと横溝くんが参戦する。それから程なくして智花と蝶影ちゃんも駆け付けて来た。

 

「お待たせアキくん、晴陽くん!」

 

「ちかげたちもやるのー!」

 

「「あ……」」

 

勢いよく来たのも束の間、篠原さんの様子が変だったときと同じでBクラス内に視線を向けたまま動けずにいた。

 

「「智花(蝶影ちゃん)ッ!」」

 

「アキくん……、その……」

 

「ごめんなさいなの……」

 

やっぱり昨日、何かされたな? そう思いつつ2人の視線に目を合わせると……、大文字代門がいた。

どうやらヤツも僕たちに気付いたらしく、醜悪極まる笑みを見せてくる。更に、手元を凝視すると智花にプレゼントしたリボン、蝶影ちゃんのものと思われるペアリング、クローバー状のアクセサリーを持っている。

 

「ふーん……、なるほどな。……アキ」

 

「わかってるよ。やってくれたな、あの野郎……」

 

ハッキリわかった、元凶はアイツだ。『いくら卑劣だからってここまではやらないだろう』と少しでもヤツの良心に期待した僕たちが馬鹿だったと思い知らされた。

 

「アユ、聞こえる!?」

 

「どうしたアキ!」

 

「僕とハルは今からやることがある! 指揮権を君に渡すけど、いいかな?」

 

「それはまた急なお願いだな! ……もしかして篠原さんが戦えないことと関係あるのか!?」

 

「ああ! 戦いながら全体を指揮するのは正直無茶なお願いだと思ってる! でも、今いるメンツでそれができるのはアユだけだよ!」

 

「仕方ないな……。……了解だ、アキ!」

 

「ありがとう、アユ!」

 

そして僕たちは再び智花と蝶影ちゃんと向き合う。

 

「智花、蝶影ちゃん。2人は下がって」

 

「後のことは俺たちに任せろ」

 

「「で、でも……」」

 

「大丈夫、絶対大丈夫だから……。ね?」

 

「「……うん」」

 

それでも不安そうだったから優しく諭すように言うと、少しは落ち着いたようだ。

 

「一度教室に戻ろう。雄二に一言入れなきゃ」

 

「ああ……」

 

昨日考えていた内容を実行に移すべく、雄二から了承を得る為にその場から離れて行った。

覚悟しろよ大文字代門(クズ野郎)。『後の祭り』って言葉の意味、身をもってわからせてやる……!

 

 

See you next stage……




「第18話でした♪ 楽しんでくれたかな?」

「ちょっといい? 17話投稿したのっていつだよ?」

「2021年1月6日……」

「休止期間長いよ! 一体何があったのさ!?」

「うん。アレだ、『納得いく展開が書けない』かな?」

「『かな?』じゃないよ! そうだとしても待たせ過ぎにも程があるよ!」

「まぁ、そうカリカリしないのアキ。プロの作家さんだって長期休載するんだから大丈夫だよ、……多分」

「確かにそうかもしれないけどさぁ……。今回久々の投稿を機にもうちょっと頑張ってほしいよね」

「そーゆーこと♪ だから作者さん、次回話は本っっっっ当お願いダヨ?」

「ちょっと不安だけど、次回も気長に待ってくれると嬉しいぞー!」

「シーユー!」



昇瑠「FクラスとBクラスの戦争が後半戦に突入! Fクラス(彼ら)と同盟を結んでいる俺たちDクラスに、明久と晴陽から支援要請の依頼が来た! 行くぜ真吾、真理佳! 思う存分暴れるぞ!」


昇瑠「次回ッ!『バカとテストと召喚獣withグリモア!』、『助っ人参上! 〜風と弾丸と昇り龍〜』。 Let's go……fight!!」


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第19話 助っ人参上! 〜風と弾丸と昇り龍〜

「前回のあらすじッ!」

Bクラス戦もいよいよ後半戦!
その最中、智花と蝶影ちゃんと篠原さんが大文字くんの策略で無力化されてしまう。
人の気持ちを踏み躙るヤツを叩き潰す為、勝利とは別に大文字代門討伐も目的に駆けていく!


明久side

 

 

「「雄二ー!」」

 

「おう。どうした明久、晴陽?」

 

「もしかしてトイレか? まあ、デカいヤツだってんなら考えてやるけどよ……」

 

教室に戻ると、作戦内容が書いてあるメモ帳と睨めっこしている雄二と護衛の名目で傍にいる龍季が残っていた。多分緊張ほぐす為の冗談だろう。

この場にいるのが僕たちだから良いんだけど、その言い方はやめなさい。

女の子なんだからさ、……一応。

 

「おい明久。オメーよ、今めちゃくちゃ失礼なこと考えてただろ?」

 

「え? ううん、それはないって」

 

「やめとけ。いつもならそのままイジってるところだが、生憎そんなことしてる場合じゃねぇ。お前らが来るってことは、何かトラブルがあったってことだろ? 違うか?」

 

流石にふざけている余裕はないので雄二が場を収めると、みんな真剣な顔付きに変わった。

こう言うときの理解の早さは本当に助かる。

 

「その通りだ。単刀直入に言うぞ雄二、智花と蝶影ちゃんと篠原さんを今回の戦闘から外してほしい」

 

「マジ? 正気かよ晴陽! 3人も外れるのはかなりの痛手なんだぜ!?」

 

「気持ちはわかるが落ち着け、龍季。お前たちが思い付きでこんなことを言わないのは理解してるつもりだ。だが、理由もなしにその要望を受けられないのはわかるな? 何故外してほしいか教えてくれ」

 

ハルの言葉に動揺を隠せない龍季を宥めつつも、全体の命運を預かる大将としての正論を説いて続きを促す雄二。

そう、これは僕たちのワガママだ。だけど、そうだとしても通したい道理がある。

 

「大文字くんが智花たちを脅迫したんだ。精神状態が乱れたままの彼女たちを戦わせるなんてこと、僕にはできないよ」

 

「……そうか」

 

「正直ムシの良い話だと思う。 でも、智花たちの『代役』も目星が付いてるんだ。頼む雄二!」

 

顔色1つ変えずに僕の言葉を聞いていた雄二だが、『代役』のワードに一瞬表情を変えると、更に考え込んだ。

そして……、

 

「『代役』か。確かに俺たちはDクラスと同盟を結んでるから、前提条件はクリアしてるな。……ふむ、中々良いこと考えるじゃないか」

 

「ていうか、同盟を結んだ時点でこの作戦を実行に移すつもりでいたよ。ねっ、ハル?」

 

「まあな」

 

僕たちの意図を察した雄二の口角が吊り上がる。この手を使えば大分楽になるだろう。

 

「おーい、何オメーらだけで盛り上がってんだ? 俺にも教えてくれよ、寂しいだろォ!」

 

忘れてた、龍季にもちゃんと言わなきゃ。

一応Fクラスのナンバー2だし、友だちを仲間外れにしたくないもんね。

 

「悪い悪い、今から教えるからさ」

 

「……頼むよ」

 

「いいか龍季、俺たちは同盟を結んでるのはわかるな? そこでだ。明久たちがDクラスから助っ人を呼ぶ……、『支援要請』を発動させるって訳だ!」

 

「『支援要請』を?」

 

 

ここで僭越ながら、支援要請について説明しようと思う。

支援要請とは、試召戦争に於いて他クラスから助っ人を連れて来るシステムだ。さっき雄二が言ってたように、前提として要請対象のクラスと同盟を結んでおくことで初めて使用できるのだ。

学園長が言うには、召喚システムを導入当初から取り入れている下位クラス救済措置であり、最大3人まで助っ人を呼べる。

もちろん、上位クラスも使用可能。

 

だが実際には、運良く助っ人を呼んでも実力差があり過ぎると返り討ちに遭う、そもそも下位クラスは同盟締結を上位クラスからはお断りされる等の理由で、効果的に活用できた例が極めて少ないということらしい。

 

 

「けど俺たちの代は違う。今年の2年生はB〜Fクラス内でAクラス級の実力者が、1クラスに低く見積もっても10人以上はいる黄金世代だ。だから上手いこと同盟を結ぶことができれば、強力な助っ人を連れて来れるのさ」

 

「それはわかったけどよ、さっきの説明じゃ上位クラスも使えるんだろ? 万が一、支援要請をAクラスとかに使われたらヤバいんじゃねぇのか?」

 

龍季の指摘は当然だ。Aクラスでも助っ人を呼ぶことができるのでは、せっかくの救済措置も無意味になってしまう……のだが。

 

「そこは学園長(ババァ)も良く考えててな、クラスのランクに応じて助っ人を呼べる人数が変わってくるんだ。例えば、俺たち(Fクラス)の場合は助っ人を最大3人呼べる。これに対して、Aクラスだと呼べるのは1人だけになるって訳だ」

 

「じゃあ点数調整したのは、支援要請(これ)を使うのを視野に入れてたってことかよ!」

 

「正解だ。双龍(明久と晴陽)も来てくれたのは嬉しい誤算だったがな」

 

「そっか……、そういうことなら納得だぜ」

 

ここまで言うと龍季も納得の表情を浮かべる。

ってか最初から支援要請使うこと想定してたなんて、僕たちだってビックリだよ。

 

「おっと、話が長くなったな。早速で悪いが、南たちでやる予定だったBクラス本陣の奇襲を明久か晴陽の誰かにやってもらいたい。頼めるか?」

 

「俺がやる。それでいいだろ、アキ?」

 

「じゃあ、大文字くんは僕だね。智花の顔を曇らせたアイツはタダじゃ済まさないから」

 

「「お、おう……。わかった(ぜ)」」

 

自分では冷静になってたつもりだったけど、怒りを隠し切れてなかったようで、僕の顔を見た雄二と龍季がちょっと引いてた。

まだまだ修行が足りないね。

 

「雄二。確認なんだけどよ、本陣への奇襲の方法に希望はあるのか?」

 

「うーむ。特にないが……、全てお前に任せるぞ晴陽。できる限り派手に頼むよ」

 

「わかった!」

 

「やることは決まったんだ、あとは行動に移すだけだよ!」

 

「おう、早いとこ行かねーとなアキ!」

 

「頼むぜ、 双龍(お前たち)……」

 

顔を見合わせで頷き合った僕たちは、2人に見送られながらDクラスへと向かうのだった。

 

 

明久side out

 

 

 

 

 

 

 

 

晴陽side

 

 

「なあ、アキ」

 

「? どうしたの?」

 

「Dクラスの前に裏Aクラスへ寄らないか?」

 

「そうだね、剣吾先輩に伝えることあるし……。いいよ、行こうか」

 

 

支援要請をする前に昨日の一件を伝えるべく、俺たちは3年裏Aクラスへ向かった。

このことは剣吾先輩はもちろん、アテナ先輩と拳崇先輩も気にしているからな。

 

 

 

 

〜3年裏Aクラス〜

 

 

「やあ。この本によると、君たちは我々『裏Aクラスに来る』と記されていたよ明久くん、晴陽くん」

 

「「は、はあ……」」

 

自動扉が開くと待ってましたとばかりに、魚住圭輔(うおずみけいすけ)先輩が出迎える。

いつも分厚い本を持ち歩いており、そのことについて何度か聞いたことがある。

だけど、毎回「いつか教えてあげるよ」とはぐらかされるので、アキ共々秘密を解き明かそうとしているのはここだけの話だ。

 

「よぉ。お前たちが試召戦争中なのはモニターを通して観てる。わかってるだろうが、俺たちに頼るのはルール違反だぞ?」

 

「やだなぁ。流石の僕たちもそんなズルはしませんよ、京先輩」

 

「冗談はその辺にしておけ、京。それよりもお前たちが来たのは、蒼祐のことで伝言があるのだろう」

 

「せや! そこんとこどうなん? 明久、晴陽?」

 

「あ、そうでした! 剣吾先輩、拳崇先輩。単刀直入に言いますが、蒼祐は多分大丈夫ですよ」

 

「後は本人と話をしてくれたらと思います」

 

 

軽口を言う京先輩を制して、俺たちが来た理由を察した剣吾先輩に昨日のことをざっくりと説明する。

それを聞いた2人は『そうか』と呟くと、安堵の表情を見せた。無理もない、数ヶ月もの間連絡がなかったのだ。

アテナ先輩も含めて内心落ち着かなかっただろう。

 

 

「それから……、加州先輩!」

 

「ん? どうしました、明久くん?」

 

「あなたの加護対象である篠原直美さんに、大文字くんがちょっかいを出して来ました」

 

「そうですか……。(見せしめも兼ねて、彼にヤキを入れるべきか?)」

 

アキがついで……と言うか結構大事なことを加州先輩に伝えると、顎に手を当てて考え込み始めた。

何もしなければ、すぐにでも大文字をぶちのめすだろう。でもこれじゃダメだ。

意図を察したアキが言葉を続ける。

 

「すいません、言葉足らずでしたね。ちょっかいを出したと言いましたが、直接危害は加えていません。彼女のアクセサリーをパクったくらいです」

 

「なので、加州先輩が出張るまでもありません。ここは俺たちに任せてください!」

 

「ですが、情報によると大文字くんは陰険且つ狡猾な男です。君たちで対処できますか?」

 

「「はい、できます!」」

 

問い掛ける際、加州先輩が圧を掛けて来たが、怯むことなく返事をする。それを見て薄く微笑むとこう言った。

 

「……わかりました、そこまで言うなら任せましょう。期待してますよ、2人とも」

 

「「ありがとうございます、やってみせます!」」

 

「よろしい」

 

俺たちの返事に加州先輩は、頼もしさを覚える様な柔らかい表情で応えた。

 

「ところで、村正先輩はどこにいるんですか? いつもなら、アキを見ると飛び付きそうなのに……」

 

「あ、ホントだ。どこなんだろ?」

 

「衣玖ちゃんならあそこですよ〜」

 

「んー! んんー!!」

 

 

ふと村正先輩のことが気になって尋ねると、あやせ先輩が反応する。

彼女の視線の先には、全身を布団に包まれミノムシ状に吊された村正先輩の姿があった。

念には念を入れて鳴子先輩と黒淵御霊(くろぶちみたま)先輩を見張りに配置する徹底ぶりである。

 

「本当は普通に監視するだけでも充分だったけど、衣玖くんの吉井くんに対する執着は尋常ではなくてね……。少々手荒になるけど実力行使させてもらったよ」

 

「驚かせたのならごめんなさいね吉井くん、真境名くん。他のクラスの子だったら即懲罰房行きなんだけど、裏Aクラスの仲間だからこの程度済んでいるの。……ねっ、い・く・ちゃん?」

 

「んー!!」

 

不満げに睨みつける村正先輩を目にしても全く動じる気配のない2人を見て呆気に取られた。文月学園屈指の狂人とされる彼女を無力化しているとは言え、軽くあしらうのはすごいことだ。

まあ、裏Aクラスと一部のAクラスなら造作もないことではあるのだが。

 

「そんなことよりもだ、貴様らはここで油を売っている余裕があるのか。まだ戦争は終わってないだろう? 用が済んだのならさっさと失せろ」

 

「「すいません、庵先輩ッ!」」

 

「謝る必要はない。少しでも申し訳ないと思うのなら、必ず勝て。俺が貴様らに望むのはそれだけだ」

 

「そーだぜ。八神の野郎も言ってんだ、『勝てば官軍』ってよ。しっかりやんな!」

 

庵先輩のぶっきらぼうな言葉に反射的に謝る。が、次の言葉はこれまた不器用ながらもエールを送り、京先輩も続いた。

きっと他の先輩方も同じように思うだろう。

 

「はい! ありがとうございます!」

 

「あ、そうだ! エレン先輩、1ついいですか?」

 

「私にか?」

 

「もうしばらくで、美波とクルトがこっちに来るハズです。そしたら、『立会人として』2人に着いてあげてください」

 

「……わかった。それくらいはいいだろう」

 

最後にエレン先輩に託けをしておく。こうしておけば、美波たちも本領発揮できるハズだ。

 

「では先輩方!」

 

「もう行きますね!」

 

裏Aクラスの面々に見送られながら、俺たちはその場を後にした。

 

 

 

 

〜2年Dクラス〜

 

 

「源二ー、いるかー?」

 

「早速だけど、そっちから3人借りるよ」

 

Dクラスへ向かった俺たちは、源二に支援要請を発動させることを伝えた。選定メンバーにも抜かりはない。

 

「へぇ、あのルールを発動させるって訳か……。それは構わないけど、誰にするんだい?」

 

「ふふっ、まあ見てなよ。……昇瑠ー、真吾ー、真理佳! ちょっと僕らに力を貸して!」

 

「えっ、僕?」

 

「ようやく出番ッスね?」

 

「来たか……」

 

それぞれの反応を見せながら、呼ばれた3人が近くに寄って来る。今回は彼らと共に行くのだ。

 

「明久、晴陽。今、戦争中だから俺たちを選んだだろう。真吾と真理佳は経験させるためだとわかるが、俺が必要な理由は聞かせてもらうぞ」

 

「おう、それだけどよ昇瑠。実は大文字代門が智花と篠原さん、そして……、蝶影ちゃんを泣かせた。お前を呼ぶ理由としては充分だと思うぜ?」

 

「……そうか、あのクソ野郎が蝶影様を……。わかった、力を貸そう。蝶影様を傷付けようとするヤツは誰であろうと……、許さん……!!

 

最後の一言にドスを効かせて昇瑠は了承の意思を示す。そんな彼の様子を見た一部を除くクラスメイトたちは、相当怯えてしまっていた。

 

「あちゃー。昇瑠くん、怒ってるッス……」

 

「大文字くんは地雷に触れちゃったみたいだね。……ご愁傷様って感じ」

 

「……と言うわけで行くぜお前ら! 勝つために!」

 

「「「「おう(うん)!!」」」」

 

「ちょっと待ったぁ!!」

 

「「「「「!!?」」」」」

 

「俺を忘れてないか?」

 

「り、リト……?」

 

掛け合うと同時に、誰かの声が聞こえた方角を向くとやや天パ気味の茶髪に眼鏡を掛けた長身の男子……紗倉李斗(さくらりと)が近付いて来た。

見た目こそ眼鏡を外すと不良に見えるがそんなことは一切なく、気の利いたジョークを言える剽軽者で、彼もまた俺たちの友人である。

なのだが……。

 

「聞いたぞ、楽しそうな祭りの真っ最中ってな。元気が有り余ってるから混ぜろ」

 

「こらリト、お前は先日ケガから復帰したばかりの病み上がりだろ? もう先客がいるから、今回は大人しくしてくれ」

 

「ふん、つまらないな……。まあいい、頼むから今度は俺を連れてってくれよ」

 

「そのうち……、ねっ」

 

こんな風に争いごとを『祭り』に例えて楽しむ悪癖がある。

それが仇となり、数週間前に隣町のヤンキーに因縁を付けられて乱闘騒ぎの末、治療のために入院していたらしい。

源二が言った通り、退院したばかりなのに闘争心が健在なのを見ると、相当手を焼いてるみたいだ。

自分と同等以上の強さか、性根の腐ったクズにしかケンカを売らないのは救いだが。

 

「……と言うわけで、Dクラス最強戦力とエース級2人を貸すんだ。必ず勝てよ……!」

 

「うん。朗報、期待しててね」

 

源二のエールに明久が応えると、返事代わりに笑顔で頷いた。さて、急がなきゃあな!

 

 

晴陽side out

 

 

 

 

 

 

 

 

〜同時刻〜

 

 

歩夢side

 

 

「くっ、随分減ったな……。須川、横溝! そっちは大丈夫か?」

 

「ああ、まだ行けるぞ……!」

 

「簡単に戦死してたまるか……!」

 

「そんだけ元気なら安心だ。残りは……、大丈夫じゃなさそうだな……」

 

『『『旦那〜、もう限界です〜……』』』

 

アキとハルから前線を任された俺たちは須川と横溝を除いて壊滅状態、残ったのは福村と武藤と原田だったが、この3人も戦死寸前という酷い有様だ。

 

「みなさん、お待たせしました。ここからは、わたくしたちも戦います!!」

 

「きゅう!!」

 

「綺羅星さんたちが来たぞ!」

 

「良かった……。これなら負ける気がしないわ!」

 

そしてタイミング悪く、あちらの援軍に四英傑(グレート・フォー)候補の綺羅星日和さんが参戦してしまった。他にもBクラス副代表の南条恋、エース級の風花真実、楯野望、御剣綾斗、立華卯衣らが脇を固めている。

 

「皆の者、良く踏み止まったのう。わっちらが来たからにはもう大丈夫じゃ!」

 

「クズはクズらしく、負けを認めなよ」

 

「なんだこれだけか。 ボクが来なくても良かったんじゃない?」

 

「まあそう言うなって望ん。俺っちとしては『あの』AYUと戦えるかもだからウキウキしてるっす。尤も、この圧倒的不利な状況を覆すのは厳しそうっすけどね♪」

 

「だから降伏をお勧めするわ、……叢雲くん」

 

錚々たる顔ぶれに一気に戦意を削がれていく福村たち。須川と横溝も心なしか震えているようだ。

だが……。

 

「ご忠告感謝するぜ、立華。けど俺たちは降参しねぇぞ?」

 

「お、おい叢雲。大丈夫かよ……」

 

「どうした須川? 俺は至って冷静だ」

 

少し笑みを浮かべて返事をすると、須川含めた全員が不安気で見ているのがわかった。しかしそれでも俺は余裕の態度を崩さない。

なぜなら……。

 

「こっちにも救援が来るからな!」

 

「本当か!?」

 

その直後、晴明とノエルと秀吉と和希がこちらの援軍として参戦して来る。地獄に仏と言わんばかりの状況に、須川たちは涙が出る程喜んでいた。

 

「間に合わなかったの……?」

 

「すまぬ歩夢よ。わしらがもっと早く来ていれば、戦死者も抑えられたんじゃが……」

 

「気にすんなってノエル、秀吉。戦力差を考慮すれば、死にかけが多いとはいえ6人も生き残っていれば上出来さ」

 

「そう言うことだアユ。悪かったな、遅れてしまって。その分補給はバッチリ済ませた。回復役で和希も来てくれてるぞ」

 

「う、うん……」

 

「サンキュー晴明、みんな! 正直ダメかもと思ってたけどこれなら何とかなりそうだ。この戦い、絶対勝つぜ!!」

 

「「「「おう((うん))(うむ)!!」」」」

 

みんなの気合が一気に入り、須川たちも何とか奮い立った。さあ……、反撃開始だ……!

 

 

歩夢side out

 

 

 

 

 

明久side

 

 

一旦ハルたちと別れた僕は、昇瑠と一緒に蒼祐に指定された場所に彼が来るのを待っていた。昨日の件は昇瑠も把握済みである。

 

「なぁ明久。蒼祐のヤツ、本当に来るか?」

 

「絶対に来るよ。昇瑠だってわかるでしょ、蒼祐の義理堅さを」

 

「そう言えばそうだったな」

 

こんな何気ない雑談をしていると、ようやく彼が現れた。……横に大文字くんも付いている。

 

「やあ明久、遅くなった。そっちにいるということは、昇瑠も知ってるんだな?」

 

「ああ」

 

蒼祐の問いに昇瑠はそう返事し、僕も軽く頷いた。大文字くんは何のことかわからずに首を捻っていたけど、それもすぐに戻って口を開いた。

 

「オイ青空ァ、おしゃべりしに来た訳じゃねぇだろォ。そこにいる吉井(ザコ)ともう1人をブチのめすんだろうが。冷泉の野郎がいるのは想定外だが関係ねェ、俺様たちが勝つんだからなァ……キーキッキッキッキッ!!」

 

「そう。だから俺と戦ってもらうぞ明久、昇瑠」

 

「やっぱりこうなるよね……」

 

「蒼祐。お前が相手でも容赦はしない……」

 

 

こうして僕たちは互いに睨み合う。時間にしてみれば1分にも満たないが、長い時間に感じていた。

 

 

「だが、その前に片付けるべき相手がいる」

 

「? 一体何を言い出すんだ、青空ァ……?」

 

 

大文字くんがまたしても意味がわからないというリアクションをした直後だった。蒼祐が行動を起こすのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「青空蒼祐! 大文字代門に現代社会で勝負を申し込む!試獣召喚(サモン)!!」

 

 

 

 

現代社会

 

 

Bクラス

 

青空 蒼祐:429点

 

 

 

 

展開された蒼い魔法陣から蒼祐の召喚獣が姿を現す。白をベースに青いラインが入ったパワードスーツを身に纏い、胸部に十字状のプロテクターが装備された、アユとはデザイン違いのヒーローのような出立ちをしている。

 

 

「青空……、テメェ……!」

 

「どうした? 早く召喚獣を出せ。お前に拒否権はない、わかっているハズだ」

 

「……大文字のヤツ、終わったな」

 

「うん。終わりだよ……」

 

今起きている状況に理解が追い付かず狼狽える大文字くんに対して冷淡に言い放つ蒼祐を、僕たちは冷静に見つめる。

その図はまるで、散々やりたい放題した罪人に裁きを与えようとする処刑人のようだった。

 

 

「俺はずっとこのときを待っていたぞ、大文字代門。その命、神に返しなさい……!!」

 

名○○介の決め台詞とともに、大文字くんとの一戦が始まろうとしていた……!

 

 

 

 

明久side out

 

 

 

 

 

 

晴陽side

 

 

アキたちと別れた俺と真吾と真理佳は奇襲を掛けるべく、Bクラス本陣を目前としていた。

で、どこにいるのかというと……。

 

 

(……狭いっス)

 

(真吾くん、もう少し寄って欲しいな。なんて言うかその……、手に当たってるから。……おっぱいが)

 

(!? ご、ごめんっス!)

 

(静かにしろ2人とも。狭いのは申し訳ないと思うけど、もうちょい我慢してくれ)

 

(うん……) (わかったっス……)

 

Bクラスの天井裏で身を潜めていた(……ルートは俺が教えた。by康太)。さっき真理佳が言ってたように3人が固まるのはかなりギリギリだ。

 

(さて、戦況の方は……っと。……マズイな。世界史のフィールドで龍季が孤軍奮闘してるけど、このままじゃ持たないぞ)

 

(それじゃあ、負けるってことっスか?)

 

(嘘、それはないよ晴陽くん! 早く龍季ちゃん助けなきゃいけないのに、なんで天井裏(こんなところ)に……)

 

龍季が不利な状況に陥っているのを目の当たりにした2人が文句を言って来たので、ここで奇襲の内容を教えてあげなきゃな。

 

(なぁ真吾、真理佳。俺はアキと共に観察処分者になった訳だが、観察処分者の召喚獣の特徴は知っているか?)

 

(えっと確か……。物理干渉で物を触れられること、召喚者本人に対するダメージフィードバック……だったよね?)

 

(そうだ。これを踏まえれば俺が何をしようとしてるか……、わかるだろ?)

 

(晴陽くん……、まさか……)

 

(そのまさかだ。天井裏をブチ抜いて、こっから奇襲を掛ける。……俺の召喚獣の一撃でな!)

 

方法を聞いて唖然とした表情になる2人。そりゃそうだ。もしこんなことがバレたら『普通は』良くて停学、最悪は退学なのだから。

 

(今からそれをやる。危ないから少し下がってろよ2人とも。……試獣召喚(サモン))

 

フィールドが展開されていたら、こんな場所でも召喚できるのが観察処分者の強みだ。今ばかりはこの特性に感謝するよ。

 

(いいか? 天井裏をブチ抜くと同時に俺が降りる。そのあとは合図を送るから、それを見たら来るんだ真吾、真理佳!)

 

(りょーかいっス!) (わかったよ、晴陽くん!)

 

(当たり前だけど、絶対マネするなよ?)

 

((いやいや、普通に無理だから……))

 

2人の返事と真っ当なツッコミをもらい、俺は右手に全神経を集中させる。頑丈なものを生身で数発殴るだけでも激痛が走るが、今は一撃でそれをやろうとしている訳で冷や汗をかく。

……でもここでやる以外の道はない。

 

 

(よし。待ってろよ雄二、龍季。今行くぞ……!)

 

「ふぅん!!」

 

 

 

 

ドゴォォォォォォン!!!!

 

 

 

「な、なんだぁ!?」

 

「天井から来たの!?」

 

轟音を響かせて崩れ落ちる天井から召喚獣と共に降りていく。その光景に何人かの生徒が驚いていたが、それはあとだ。まず天井の方は……、殴った箇所だけが崩れているからとりあえずはOKか。

問題は雄二と龍季だ。

 

「雄二、龍季! すまん、遅くなった!」

 

「お前といい明久といい……。俺の予想と斜め上のことをしてくるが……、今回はナイスタイミングだ!」

 

「やっとかよ……。けど、来てくれてサンキューな、晴陽」

 

2人が無事なのを確認し、恭二に視線を移す。

 

「どこかで奇襲するとは思っていたが、まさか天井裏から来るとはな……」

 

「なかなかのサプライズだったろ? つー訳だからよ……。ここで決着(ケリ)着けようぜ、恭二!!」

 

その言葉と同時に召喚獣も武器を構えた。アユたちから託された想い……、形にさせる……!!

 

 

 

See you next stage……




「第19話でした♪ 楽しんでくれたかな?」

「とりあえず言いたいこといっぱいあるけど……」

「みなさま!」

「「ただいま戻って参りました!」」

「今回投稿するまで相当時間掛かったね?」

「うん。なんでも『休止期間が長いからリスタートしようかな?』って悩んでたみたいだよ」

「その間リアルがゴタゴタしてたっても言ってたね」

「そんなこんなで何度目かの投稿再開な訳だけど、新年度開始に合わせる形でやったみたい」

「少し遅れているのは突っ込まないであげて!」

「相変わらず投稿頻度が不安定だけど、今後も応援してくれると嬉しいな♪」

「最後に新年度始まったみなさまへ」

「「進級・進学おめでとうございます! 社会人の方々は今年度も頑張りましょう!」」

「それじゃあ、また会おう!」

「シーユー!」



美波「クライマックスを迎える対Bクラス戦。坂本からの指示で、ウチは補給を受けて参戦の機会を伺っていた。行きましょうクルト! ウチらの真価、見せるわよ!」

クルト「次回ッ!『バカとテストと召喚獣withグリモア!』、『隠された実力』」

美波・クルト「 Let's go……fight!!」


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