俺は魔王の女王で魔王の妹は俺の女王で婚約者 (黒幻)
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プロローグ ~少年の過去~
二人との出会い


これが初めての執筆なので拙い部分も有ると思いますが、よろしくお願いしますm(_ _)m



俺は産まれてすぐに捨てられた……。

そんな俺を拾ったのは【黒王(くろおう)孤児院】の教員だったらしいのだが、拾われた時俺には何も無かったらしい。服も着せられずに段ボールに入れられて、まるでゴミの様に捨てられていたと…、勿論俺にそんな記憶は無いから真相は解らない。

ただ一つ分かるのは、俺は生きている、死んではいない、それが…、いや『それだけが』確かな事だった。

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

俺が拾われてから五年がたった。

俺には物心がついた頃から頭の中に映像が浮かび誰かに喋りかけられる様な事が多々有った。

最初は良く解らないままに答えていた、その為に周りからは気味悪がられ気付けば孤立し一人になっていた。

それから俺はずっと一人孤独の中で生きている。

そして今日もまた一人で公園にいた、他の皆が何をしているのかは知らないし、興味もない…

 

「ねぇ君、少し良いかな?」

 

そんな時いきなり知らない女の人に話し掛けられた。

 

「なんですか?」

 

「ちょっと道を聞きたいんだけど教えて貰えるかな?」

 

俺は少し警戒しながらもそう返すとその女の人は笑顔でそう言った、どうやら道を聞きたいだけの様でとりあえず怪しい人では無さそうだ。

 

「良いですよ、俺が知ってる場所ならどこでも教えますよ」

 

「本当!!ありがとう!!」

 

「それで…何処に行きたいんですか?」

 

俺は警戒を解いてそう返すと、その人はまたも良い笑顔でお礼を言ってきた。

そして改めて俺がそう聞くと、彼女はこう言った。

 

「えっとね~、【黒王(くろおう)孤児院】って場所に行きたいんだけど、知ってるかな?」

 

「………」

 

「あれ?どうかした?もしかして知らなかったかな?」

 

その時俺は彼女の言葉につい黙ってしまった、そんな俺を心配してか目線を合わせて聞いてきた。

 

「いえ…すみません、知ってますよ……。と言うより俺はそこの人間ですから、院まで案内しますよ」

 

「そうなんだ!!それじゃあ案内お願いしても良いかな?」

 

「良いですよ」

 

俺がそう言うとその人は満面の笑みでそう言ってきたので、俺はそう返した。

 

「ありがとう、そう言えば自己紹介がまだだったね私は"セラフォルー"って言うの『セラ』って呼んでね」

 

「セラ…さん?」

 

セラ「う~ん、セラお姉ちゃんの方が良いけど…まあ良いや、それで君の名前は?何て言うの?」

 

彼女、セラさんはお礼を言った後に名乗ってくれた、それに対し迷いながらも返すと、セラさんは自分の唇に人差し指を置きそう言い、その後俺の名前を聞いてきた。

 

「俺は…レイです」

 

セラ「レイ…君?」

 

レイ「はい」

 

セラ「かっこいい名前だね」

 

レイ「そんな事無いですよ」

 

セラ「そうなの?どうして?」

 

俺が名乗るとセラさんは一度その名を呟いた、俺がそれに答えると、セラさんはそう言ってくれたが俺はそれを否定した。

するとセラさんに何故かと聞かれたので俺はこう答えた。

 

レイ「俺の名前は拾われた時に命以外は『0』何も無かったって事でつけられた名前ですから」

 

セラ「そうだったんだ…、ごめんね…」

 

俺はまるで何でも無いかの様にそう言ったのだが、セラさんは顔を曇らせながら謝ってきた。

 

レイ「別に、良いですよ今更気にしてませんから」

 

セラ「そっか…ありがとう」

 

レイ「はい、それじゃあ行きましょうか」

 

セラ「うん、お願いね」

 

俺がそう言うとセラさんは笑顔に戻った、そして俺がそう聞くと、満面の笑みでそう言った。

 

セラ「それにしても…レイ君、君はまだ子供なのに礼儀正しいね?」

 

レイ「敬語とかは余り好きじゃ無いけど…先生がうるさいから」

 

セラ「あははっ!!そうなんだ、大変だね」

 

レイ「うん」

 

歩き出してからセラさんがそう聞いてきた、その指摘が少し恥ずかしかった俺はふてくされながらも素直にそう返した。そんな俺の言葉にセラさんは笑いながらそう言った、俺はそれに短く頷き返した。

 

セラ「そうだ!私には普通に話して良いよ?」

 

レイ「本当に?怒らない?」

 

セラ「だいじょ~ぶ、怒らないから安心して、ね?」

 

レイ「うん!」

 

すると、セラさんがいきなりそんな提案をしてきた。

俺は驚きつつも良いのかと聞いてみた、するとセラさんは変わらず笑顔でそう言ってくれた、俺はその言葉に今度は笑顔で頷いた。

そして同時にこう思った…

 

レイ(笑ったのなんて…何時ぶりだろう……)

 

―――――――――――――――――――

 

セラside

 

今日私は半分は魔王の一人としてのお仕事で、もう半分はセラフォルー個人として人間界に来ていた。

 

セラ「さぁ~て、外交のお仕事以外で人間界に来たのは久しぶりだなぁ~」

 

目的は【黒王(くろおう)孤児院】そこは四大魔王が共同で作った悪魔が経営してる孤児院だ。

表向きは普通の孤児院だがもう一つ別の目的が有る、それは神器を所有してる子供達の保護だ。

ただ、勘違いしないでほしいのは、けして無理矢理転生悪魔にしたり、売ったりする為では無い。

天使や堕天使そして悪魔でさえも"神器持ちだから"と言う理由で罪の無い子供達を平然と拐ったり、中には殺す様な輩が存在する、私達魔王は皆で話し合い少しでもその被害を減らす為に、共同でその孤児院を作った。

そして、皆の持ち回りでたまに様子を見に来る事になっていて、それが今回は私の番、ただ普段は他の信頼出来る人に来て貰っていた。

今回自分で来たのは息抜きも兼ねてだ、だから私自身が行くのは6年ぶりくらいかな。

 

セラ「まあ、これも立派なお仕事では有るんだけどね…」

 

それから孤児院に向かおうとして、私は大事な事に気付いた。

 

セラ「そう言えば…孤児院って何処だったけ……」

 

そう、私は来るのが久しぶり過ぎて、孤児院の場所を忘れていたのだ。

だって仕方ないでしょ?6年ぶりだよ?6年ぶり!

 

セラ「ちゃんと場所を確認してから来るんだったよぉ~」

 

そう思ってももう遅い、誰かに聞こうと思い辺りを見渡すが…人が居ない…

 

セラ「この辺りだと思うんだけどなぁ、仕方ないまずは知ってる人を探そう!」

 

私は気持ちを切り替えて、人を探し始めた。

 

セラ「うーん…誰か居ないか…居た!けど一人で何してるんだろう?」

 

少し歩いて見つけた公園のベンチに一人で座っている子供を見つけた、見た感じはソーナちゃんと同じくらいの子かな?

 

セラ「とりあえずあの子に聞いてみよう!」

 

私はその子に孤児院の場所を聞こうと話し掛けた

 

セラ「ねぇ君、少し良いかな?」

 

「なんですか?」

 

私が話し掛けるとその子はそう返してくれた、あれ…もしかして私…警戒されてる?

 

「ちょっと道を聞きたいんだけど教えて貰えるかな?」

 

「良いですよ、俺が知ってる場所ならどこでも教えますよ」

 

「本当!!ありがとう!!」

 

私がそう言うと、その子はそう返してくれたのでお礼を言うと、その子から警戒してる感じが消えた、私何で警戒されたんだろう…まさか変質者に間違われたのかな……だったら嫌だなぁ…

その後場所を聞かれたから【黒王(くろおう)孤児院】だと言ったらその子は黙り込んじゃった。だからてっきり知らないのかな?って思って聞いてみたら、なんと孤児院の子だった。

確かに少し集中してみると、この子からは微かに神器の気配が感じれる。

あれ?じゃあ何で黙っちゃったんだろう?

それから案内してくれると言うので連れてって貰う事にした。

 

セラ「ありがとう、そう言えば自己紹介がまだだったね私は"セラフォルー"って言うの『セラ』って呼んでね」私はお礼を言って、自己紹介をしてからその子の名前を聞いた。

 

「俺は…レイです」

 

どうやらこの子はレイ君と言うらしい、私が彼の名前を復唱するとそうだと返してくれた。その後レイ君にかっこいい名前だと言ってみたら否定され、理由を説明してくれた。

 

レイ「俺の名前は拾われた時に命以外は『0』何も無かったって事でつけられた名前ですから」

 

まさかそんな理由だったなんて…。私無神経な事言っちゃったなぁ、そう思い謝ると。

 

レイ「別に、良いですよ今更気にしてませんから」

 

セラ「そっか…ありがとう」

 

レイ君はそう言ってくれた、無神経な事を言った上に気まで使わせちゃった…私はこれ以上何もしないように、気を付けようと思いながら笑顔でお礼を言った。

歩きながらレイ君が敬語で話しているので、気になって聞いてみたら。

 

レイ「敬語とかは余り好きじゃ無いけど…先生がうるさいから」

 

セラ「あははっ!!そうなんだ、大変だね」

 

レイ「うん」

 

レイ君は少し恥ずかしがりながらそう言った、私はその子供らしい返しに笑いながら聞いたら、少しふてくされながらも答えてくれた。

そこで私は一つの提案をしてみる事にした。

 

セラ「そうだ!私には普通に話して良いよ?」

 

レイ「本当に?怒らない?」

 

セラ「だいじょ~ぶ、怒らないから安心して、ね?」

 

レイ「うん!」

 

そう提案してみたら驚きながらそう聞いてきたので笑顔でそう返すと、今度はレイ君も笑顔で頷いてくれた。

会話をしながら、私は初めて笑ってくれた事が少し嬉しくて、孤児院に着くまでレイ君と色々なお話しをしながら歩いて行った。

 

セラsideout

 

―――――――――――――――――――

 

セラさんと出逢ってから暫く経ったある日。

 

セラ「レイく~ん」

 

レイ「セラさん、こんにちは」

 

セラ「はい、こんにちは!でもそろそろセラお姉ちゃんって呼んで欲しいなぁ~」

 

今日もセラさんはやって来た。

俺は相変わらず元気だなぁと思いながらも挨拶をした、するとセラさんも挨拶を返してその後にそう言ってきた。

 

レイ「まだ会ってそんなに経って無いですよ」

 

セラ「別にい~の、私がそう呼んで欲しいんだもん」

 

「あのっ!お姉様…」

 

俺がそう返すと、セラさんは子供の様な口調でそう言ってきた。

そんな風に二人で喋っていると、セラさんの後ろから恥ずかしそうに顔を出した小さな女の子が見えた。

 

レイ「それよりも、後ろの子は誰ですか?」

 

セラ「それよりって…レイ君最近私に冷たくない?」

 

俺はその子が気になりセラさんに聞いてみたが、どうやら俺の自分に対する扱いに不満があったようで、まるで子供の様に頬を膨らませてそう言ってきた。

 

レイ「そんな事無いですよ、それで?その子は?」

 

セラ「もぉ~仕方無いなぁ、この子はソーナちゃんだよ、私の可愛い妹なの」

 

そんなセラさんの言葉を否定し、改めて女の子について聞いてみた。すると、ため息をつきながらも笑顔で妹だと紹介してくれた。

 

セラ「ほら、ソーナちゃん挨拶してごらん」

 

ソーナ「あっ…えっと…」

 

レイ「…えっと…初めまして俺はレイって言うんだけど…」

 

ソーナ「は…初めまして、私は…ソー…支取…蒼那です…」

 

セラさんがそう言うと人見知りなのか戸惑っていたので、俺から自己紹介をする事にした、するとその子も自己紹介をしてくれた、どうやら女の子の名前は蒼那と言うらしい。

 

レイ「えっと…蒼那ちゃん?」

 

ソーナ「………うん」

 

俺がそう聞くと、少し間を置いた後に頷いてくれた。

 

レイ「そっか、よろしくね蒼那ちゃん」

 

ソーナ「うん……よろしくね…レイ君」

 

俺がそう言うと、彼女も笑顔でそう言ってくれた。

 

セラ「二人共良く出来ました」

 

レイ「………///」

 

ソーナ「あっ……///」

 

二人『ふふっ///』

 

するとセラさんはそう言いながら、俺達の頭を撫でてくれた、撫でられた俺達は揃って顔を真っ赤にしながらも笑った。

 

それが俺と彼女との出逢いだった。

 

―――――――――――――――――――

 

ソーナside

 

その日私はお姉様に連れられて人間界にやって来た。

 

セラ「ソーナちゃん、今日はお姉ちゃんとお出かけしない?」

 

ソーナ「お出かけですか?今日はお仕事じゃないんですか」

 

セラ「大丈夫だよ、お仕事って言っても様子を見たり、安全確認するだけだから」

 

ソーナ「そうなんですか?」

 

お姉様はいきなりそう聞いてきた、今日は人間界でお仕事だと言ってた気がしたので聞いてみたら、そう言われたので少し安心した。

 

セラ「うん!この前人間界に行った時にソーナちゃんと同い年くらいの子と仲良くなってね、ソーナちゃんも一緒に行かない?」

 

ソーナ「でも…私……初めて会う人とは…」

 

セラ「大丈夫!その子はと~っても優しい子だから!!ね?」

 

ソーナ「分かりました…行きます…」

 

どうやら人間界で知り合った子がいて、お姉様はその子と私を友達にしたいみたい…

私は人見知りだから初めて会う人とは緊張して上手く話せないのだが

お姉様がそう言うなら、きっと大丈夫だろうと思い行く事にした。

 

セラ「レイく~ん」

 

レイ「セラさん、こんにちは」

 

セラ「はい、こんにちは!でもそろそろセラお姉ちゃんって呼んで欲しいなぁ~」

 

お姉様と手を繋いで歩いていた、公園に着くといきなりお姉様は誰かを見つけた様で名前を呼んだ。

すると一人の男の子がお姉様の元にやって来て挨拶をしてきた、お姉様も挨拶を返し、そんな事を言っていた。

それからお姉様はその子と仲良く話していたので。

 

ソーナ「あのっ!お姉様…」

 

たまらず私がそう言うと、お姉様より先に男の子が気付いてくれた、男の子は私の事をお姉様に聞いたが、お姉様は自分の扱いに文句を言っていた。

 

レイ「そんな事無いですよ、それで?その子は?」

 

セラ「もぉ~仕方無いなぁ、この子はソーナちゃんだよ、私の可愛い妹なの」

 

男の子はそれを否定して、もう一度聞いてくれた、するとお姉様は私を抱き寄せながらそう言った。

 

セラ「ほら、ソーナちゃん挨拶してごらん」

 

ソーナ「あっ…えっと…」

 

そしてお姉様は私にそう言ったが、私はいきなりで上手く話せなかった、すると男の子は自分から自己紹介をしてくれた。

 

ソーナ「は…初めまして、私は…ソー…支取…蒼那です…」

 

私は一度深呼吸してから自己紹介をした、最初本当の名前を言いそうになったが何とかできた。

何故かは分からないけどお母様に人間界ではそう名乗る事と言われていたのを思い出した。

そして、男の子…レイ君に一度名前で呼ばれ頷いたら。

 

レイ「そっか、よろしくね蒼那ちゃん」

 

ソーナ「うん……よろしくね…レイ君」

 

レイ君にそう言われ、私も同様に名前を呼んで返した。

 

セラ「二人共良く出来ました」

 

そうしたら、お姉様がそう言いながら私達二人の頭を撫でてくれた、少し恥ずかしかったけど嬉しかった。

 

二人『ふふっ///』

 

ふとレイ君の方を見てみたらレイ君も恥ずかしがりながら私の方を見ていた、私達はお互いに顔を赤くしながら笑った。

 

それが私と彼の出会いだった。

 

ソーナsideout



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壊れゆく日常

セラさんが蒼那を連れてきてから暫く時が経った。

今日セラさんは仕事が有るらしく、公園に蒼那を連れてきてから直ぐに帰ってしまった、まあ帰る前に私も一緒に遊びたいとごねていたが……

 

レイ「蒼那、何して遊ぼうか?」

 

ソーナ「あのね…今日はこれをレイ君とやりたいなって思って持ってきたの…」

 

俺がそう言うと、蒼那は鞄から何かを取りだし見せてきた。

ちなみに最初は蒼那ちゃんと呼んでいたが、遊び始めてから何回かした時に、蒼那から呼び捨てで良いよと言われて以来俺は蒼那を呼び捨てで呼んでいる。

蒼那の方が歳が一つ上だったのには正直驚いたけど…

 

レイ「それなに?」

 

ソーナ「これはね…チェスって言うの」

 

何か解らなかったが蒼那に聞いたら教えてくれた、チェスと言うらしく良く分からないけど面白そうだ。

 

レイ「そうなんだ…でも俺、やり方知らないよ?」

 

ソーナ「大丈夫!やり方は私が教えるから!」

 

俺は正直にそう言った、すると蒼那は可愛らしい笑みを浮かべながら答えてくれた。

 

レイ「そっか、じゃあ今日はそれで遊ぼうか」

 

ソーナ「うん!」

 

それから、俺は蒼那に遊び方を教わり夕方までチェスで遊んでいた。

 

レイ「楽しかったね!でも蒼那強いね、余り勝てなかったよ」

 

ソーナ「そんなこと…無いよ、お姉様の方が私より強いし」

 

俺は最後の対局の後にそう言うと、蒼那からはセラさんの方が強いと言われた…マジか…

そして俺達はチェスで時間を忘れて遊び続けて気付いたら夕方になっていた。

 

レイ「そろそろ帰らないと…」

 

ソーナ「そうだね…でも…」

 

俺がそう呟くと蒼那は少し悲しそうに言った…でも問題はそこじゃない…

 

レイ「うん…セラさん遅いね」

 

ソーナ「うん…」

 

そう、いつもならセラさんが迎えに来ている時間なのにまだ来ていない。

 

レイ「とりあえず、蒼那も一緒に院に行かないか?」

 

ソーナ「私が行っても良いの?」

 

俺がそう聞くと蒼那は不安そうに言ってきた。

 

レイ「大丈夫だろ、セラさん先生と仲良さげに話してたし」

 

ソーナ「そっか…うん、じゃあ行く」

 

俺は前にセラさんと先生が笑顔で喋っていたのを見ていたのでそれを伝えると、蒼那は安心したようにそう言った。

 

レイ「よし、じゃあ帰るか」

 

ソーナ「うん!」

 

俺達はそう言い手を繋ぎながら院に帰って行った。

 

―――――――――――――――――――

 

俺達が帰って来ると門が閉まっていた。

 

レイ「あれ?おかしいな…」

 

ソーナ「帰って来るのが遅かったからかな…」

 

そう、確かに今日はいつもより遅かった…しかし。

 

レイ「確かに、いつもよりは遅いけど…門限ギリギリの筈だ」

 

そうなのだ、まだ門限にはなっていない、なのに門が閉められてる。

 

ソーナ「そうなの?」

 

レイ「ああ…門限は六時で六時になったら近くの小学校の鐘がなるはずだから…」

 

俺はそう聞かれいつもの日常について答えた。

 

ソーナ「そうなんだ…じゃあ今日は早く閉めちゃったのかな?」

 

レイ「いや…先生はいつも鐘がなってから閉めに向かってるんだけど…やっぱりそうなのかな…」

 

蒼那がそう言うと、俺はいつもの光景を思い出し言ってみるが分からない…蒼那の言う通りなのかな…。

 

レイ「とりあえず、入って見よう…」

 

ソーナ「でも…」

 

俺の提案に不安なったのか、戸惑う蒼那…。

 

レイ「怒られるのは俺だけだから大丈夫だよ、もし蒼那が怒られそうになったら、その時は絶対に守ってやるから、な!」

 

ソーナ「うん…ありがとう…でも怒られる時は一緒だよ」

 

俺がそう言うと蒼那に笑顔が戻った、そしてお礼と共に蒼那はそう言った。

 

レイ「よい…しょっと…ほら蒼那、手伸ばして」

 

ソーナ「うん…よい…しょっ…と」

 

俺が最初に門に登り蒼那を引き上げる、蒼那も手を伸ばして門に登った。門は2メートル程度の高さだが、俺達には凄く大きいな…

 

レイ「じゃあ、俺が先に降りて蒼那を受け止めるから、少し待ってて?」

 

ソーナ「うん…分かった」

 

俺はそう言い下に降りて行った。

 

レイ「よし、良いぞ蒼那、俺に向かって飛び降りてきな」

 

ソーナ「でも…」

 

レイ「大丈夫!必ず受け止めるから、言ったろ?絶対に守ってやるって!!」

 

ソーナ「レイ君…うん、分かった行くよ?えいっ!」

 

最初俺が声をかけると怖かったのか戸惑っていたが、俺がさっきの約束の言葉を言ったら覚悟を決めて、飛んで来た。

 

レイ「よっ…と、ほらな?大丈夫だっただろ?」

 

ソーナ「うん!ありがとう、レイ君」

 

飛んで来た蒼那をしっかり受け止め、俺がそう聞くと、いつもの笑顔で蒼那は答えた。

 

レイ「よし!じゃあ中に入ろうか?」

 

ソーナ「そうだね…」

 

俺が言うと、やはり不安になってきたのか蒼那は俯きながら、そう言った…

 

俺達は中に入り誰か居ないか探していた。

だが中は電気もついておらず誰も居ない…

 

レイ「おかしいな…何で誰も居ないんだ?」

 

ソーナ「皆どこかにお出掛けしてるのかな?」

 

レイ「うーん、だとしても先生が一人は必ず残る筈なんだけど…」

 

俺のその言葉に蒼那が答える、それに俺はそう返しながら先に進む、もちろん蒼那と手を繋ぎながら…だって正直ちょっと怖いし。

まだ日が出てるお陰で電気をつけなくても大丈夫だ、と言うより小さい子達がつけたり消したりして遊ばない様に先生が管理してるからつけられない。

すると"ガタガタッ"と音がしたのに続いて何かが割れる音がした。

 

二人『うわっ!?』

 

レイ「ビックリした…今のは…食堂の方だ…行ってみよう…」

 

ソーナ「うん…手…離さないでね…?」

 

レイ「もちろん!」

 

いきなり響いた音に二人は驚いた、俺も少し怖いが確認の為に食堂に向かう事にした、蒼那も怖いらしくそう言った。

 

レイ「ここが食堂だ…」

 

ソーナ「そうなんだ…でも…ここも電気ついてないね…」

 

レイ「うん、停電にでもなったのかな…?」

 

そして俺達は普段この時間は皆が集まってる筈の食堂の前に来ていた。

だがやはり電気はついておらず、暗くて静かだった。

 

レイ「よし…開けるぞ?」

 

ソーナ「うん…」

 

俺がそう言うと、蒼那も頷いた、そして…俺はそっと扉を開いた。

 

レイ「なっ…!…なん…なんだよ…これ…」

 

ソーナ「ひっ…!なに…これ…」

 

扉を開いて俺達が見た光景…それは―――辺り一面全てが真っ赤に染まり、その中で死んでいる先生や子供達……そして―――それを食べてる…怪物の姿だった。

 

レイ「なんだ…あいつは…」

 

ソーナ「分からない…」

 

俺がそう呟くと、蒼那も震えながらそう答える、そんな中でも変わらず不愉快な音が響く、その正体は目の前の怪物が死体の肉や骨を食べてる音だ。

 

レイ「うっ……」

 

ソーナ「やだ……怖いよ…レイ君…」

 

俺は吐きそうになりながらも何とか耐えていた、今吐こう物なら絶対に気付かれる、蒼那も小さな声で俺にしがみついている…

 

レイ「来い、蒼那」

 

ソーナ「えっ!?…レイ君!?」

 

レイ「静かに…こっちだ…」

 

「アアッ…ナンダ…マダイタノカッ」

 

俺は何とか気力を振り絞って、蒼那の手を引いて逃げた―――怪物が…こちらを気付いてる事に気付かずに。

 

レイ「ハッ…ハア…ハアッ…見えたっ…出口だ」

 

ソーナ「ハア…ハア…あっ!…痛っ…」

 

俺は蒼那の手を引きながら、出口に向かって走っていた…なんとか外に出たのだが、俺が急ぎ過ぎたせいで蒼那が転んでしまった。

 

レイ「蒼那!ごめん、大丈夫か…?」

 

ソーナ「うん…大丈夫…ごめんね…」

 

レイ「本当にごめんな…」

 

俺は謝りそう聞くと、蒼那は少し涙目になりながらもそう言った、それに俺はもう一度謝った。

 

ソーナ「レイ君…それよりも…」

 

レイ「うん…早く逃げよう、待ってて…こっちからなら鍵が開けられる筈だ」

 

ソーナ「うん…」

 

蒼那の言葉に俺も動き出した、門の鍵は外からは開けられ無いが、中からは当然開けられる。

 

レイ「えっと…確か…こうして…良し、開いた!来い、そう…な…」

 

俺は門の鍵を開けてそう言いながら、蒼那の方を向いた、その瞬間俺は目を見開いて止まってしまった。

 

ソーナ「レイ…君?」

 

レイ「危ないっ!!グッ…ウゥッ」

 

そんな俺を不思議に思ったのか、蒼那が声を掛けて来た瞬間―――俺は考えるよりも早く体が動いて蒼那を庇った。

 

ソーナ「レイ君!?」

 

レイ「大丈夫…少し…掠った…だけだから…」

 

蒼那はなんとか無傷で済んだ様だ、心配されたが俺は掠っただけと言ったが、

実際は―――背中に激痛が走ってる、どうやらまともに喰らってしまったらしい。

 

レイ「ハアッ…ハッ…にげ…ろ…そう…な…」

 

ソーナ「レイ君…!?、何で…嫌だよ…」

 

レイ「はや…く…行けぇ!」

 

俺はもう自分が動けないと分かり、蒼那に逃げる様言った。

その言葉に蒼那は泣きながらそう言ってきた。

そんな蒼那に俺は最後の力を振り絞って叫んだ…しかし。

 

「ニガストオモッテイルノカ?」

 

ソーナ「きゃあ!?い…や……くっ……くる…し…い…」

 

怪物はそう言いながら、蒼那の首を掴み上げた、蒼那は悲鳴をあげ苦しみながらも暴れていた…

 

レイ「そ……う…な…」

 

ソーナ「あ…っ…カッ…は…っ…」

 

俺は薄れゆく意識の中で…蒼那の名を呼んだ、ソーナもまた抵抗が弱くなっていく。

 

レイ(やめろ…やめてくれ…)

 

ソーナ「………ウゥ…ッ……」

 

レイ(頼むから…その子を殺さないでくれ…)

 

俺は指先一つ動かせないまま、蒼那が殺されそうになってるのを涙を流しながら見ていた…

 

その時―――頭の中に声が聞こえた。

 

――――あの娘を、助けたいか?――――

 



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もう一つの出会い

――――あの娘を、助けたいか?――――

 

頭の中に声が響いた…すると突然―――世界が止まった。

 

レイ「なん…だ…なにが起こった…」

 

「ようやく繋がったか…何度も呼び掛けていたのだがな」

 

俺は何が起きたのか解らなかった、しかし先程まで薄れていた意識が今ははっきりしている。

すると、後ろから誰かが話し掛けて来た。

 

レイ「お前は…誰だ…味方…なのか?」

 

(おれ)はお前だ、嫌…違うな、正確にはお前の中に存在する力だ」

 

レイ「俺の…力…?中に…存在する?」

 

俺は振り向いた、すると目の前には白くモヤモヤした人の様な形をした何かが現れた。

そして、俺がそう問うと目の前の存在はそう答えた。

 

「そうだ、まさかこの我がお前の様な小僧に宿るとはな」

 

目の前の存在は、俺を見ながら少し自嘲気味に呟いた。

すると白く靄がかかった様な姿が、徐々に鮮明になり、現れたのは金髪の若い男だった。

 

レイ「もしかして…たまに聞こえた声って…」

 

(おれ)だ、どうだ?驚いたか?」

 

昔から時々頭の中で声が聞こえたり、映像で見えたりしたのはこの人だったのか。

 

レイ「驚いたけど……でも、今はそんな事、どうでも良い!!」

 

確かに驚きはした…だが、今の俺にとってそんな事はどうでも良かった、だから俺はつい叫んでしまった。

 

「どうでも良い…だと」

 

すると、それが気に入らなかったのか目の前の男は眉を潜め低い声で聞いてきた。

 

レイ「っ…そうだ!!お前の力を使えば、蒼那を助けられるのか、答えろ!!」

 

それに俺は一瞬怯んだ物の、男に対しそう叫び続けた。

 

「ああ、助けられるだろうな」

 

レイ「だったら早「ただし」……ただし…?」

 

「貴様はほぼ間違いなく死ぬだろうがな」

 

レイ「っ…!?」

 

男がそう言ったのを聞き、すぐに助けに行こうとしたが男の先程よりも低く冷たい声に止められた、その声色に少し恐怖しながらも聞いてみた。

 

すると男はまるで宣告する様にそう言った、その言葉に俺は息を呑んだ。

 

「当然だろう、我が戦うのならまだしも、お前の様な小僧ではまともな戦いにすらならんだろう」

 

レイ「でも…今、助けられるって!」

 

男は淡々と口にする、確かにそれは正しい、だがこの男は確かに言った筈だ。

 

「ああ、娘は助けられるだろう」

 

レイ「なら…」

 

「だが…分かっているのか?"()()()"事と"()()"事、この二つは別物だ…奴を倒せない以上、娘が逃げる時間をお前が稼ぐ事になるのだぞ」

 

男はもう一度そう言った、だったら何で…そう思い口にすると、男は更に続けて言う。

 

レイ(確かにそうだ…そんな事…考えても無かった…)

 

「どうやら、気付いていなかった様だな」

 

俺がそう思って俯いたら、男がそう言ってきた…

 

「だが逆に言えば、娘を見捨てればお前は助かるぞ」

 

レイ「っ……!?そんな事…!」

 

「ならばお前が死ぬか?」

 

すると、男は続けてそんな事を言ってきた。俺はそれに反論しようとしたが、その前に男は反論を許さないように言葉を続けた。

 

レイ「………」

 

「死ぬのが怖いなら逃げろ、誰もお前を責めは「それでも…」…それでも…何だ?」

 

俺が黙っていると男は更に続ける…でも、俺が言葉を遮ると男は少し不愉快そうに、俺に聞いてきた。

 

レイ「それでも!俺は蒼那を助けたい!!」

 

「………」

 

レイ「俺はずっと孤独だった…誰も俺を必要とはしてくれなかった…。

でも…でも!!二人は…蒼那とセラさんは俺と居てくれた…必要としてくれた!!

だから…俺は…蒼那を助けられるなら死んでも良い!!」

 

「………」

 

俺はそう叫んだ、男は俺の言葉を遮る事なく黙って聞いている、俺は男に対して更に続ける。

そんな俺の慟哭(どうこく)を男はなおも黙って聞いていた。

 

レイ「だから…頼む…力を貸してくれ……いや…貸してください…お願いします」

 

そうして全てを言い終えた俺は、膝を折って男にそう懇願した。

 

「言いたい事はそれだけか?」

 

レイ「っ……はい…」

 

「そうか……解った、良いだろう…(おれ)の力を貸してやろう」

 

男は口を開き低い声でそう言った、俺はそれに少し怯えながらも返事を返した。

すると、男は口角を少しだけ上げながらそう言った。

 

レイ「本当に…?」

 

「ああ」

 

レイ「ありがとう!」

 

「…それに…お前が孤独になったのは、我のせいでもあるからな…」

 

俺がそう聞くと男は強く返してくれた、俺はそれにお礼を言った。

すると、男は少しだけ不愉快そうにそう言った…しかし、そう言う男の声には先程までの様な冷たさは感じられ無かった。

 

レイ「それで!俺は何をすれば良い?」

 

「焦るな、時はまだ少しの間なら止まっている」

 

レイ「分かった…」

 

俺は何時動き出すかわからないこの状況でそう聞いた、すると男はまるでお見通しとばかりに言ってきた、だから俺はそれ以外何も言えなかった。

 

「まずはお前の神器について説明しよう」

 

レイ「神器?」

 

「そうだ、我の力でありお前の中に存在する力の事だ、今の世界では神器と呼ばれてるらしい」

 

男はそう言ったのだが…神器って?そう聞くと説明してくれた。

 

レイ「何でそんな事知ってるの?」

 

「まあ、色々と有ってな…お前は気にしなくて良い」

 

レイ「そうなんだ…分かった…」

 

気になったので、聞いてみたらそう言われた。

 

「とにかくだ、神器の名は《王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)》だ」

 

レイ「《王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)》…?」

 

「そうだ」

 

男は神器の名を教えてくれた、それを俺が呟くと満足そうに頷いた。

 

レイ「どんな力が有るの?」

 

「一言で言えば馬鹿デカイ倉庫だな」

 

俺が聞くと、男はそう答えた。

 

レイ「倉庫って…使えるの?」

 

俺は少し不安になり、そう聞いた。

 

「それは本来なら宝物庫に空間をつなげ、そこにある道具を自由に取り出せる力だ。

だが神器となり、宝物庫自体はどうやら別空間にお前専用の物が存在している様なのだが…お前はまだ武器など持っていないだろう?だからハッキリ言って、まだ使えんのだ」

 

俺の質問に男は神器の能力を丁寧説明してくれた、しかし結果使えないらしい。

 

レイ「じゃあ、意味ないじゃん!?」

 

俺はつい取り乱し、叫んでしまった。

 

「慌てるな、確かに今はまだ使えんが、安心しろ我が昔所有していた武器を幾つかお前にくれてやる」

 

すると、男は取り乱してる俺に対してそう言った。

 

レイ「本当に?」

 

「ああ、だからよく覚えておけ、それは所有者に"財があればある程"に強力な物になると言う事をな」

 

俺がそう聞くと男は頷き、そして最後にこの神器がどれだけ強力なのかを語った。

 

レイ「分かった、覚えておくよ」

 

「まあ…お前が生き残れればの話しなのだがな…」

 

それに俺がそう返すと、男がそう呟いた。

 

レイ「うん…分かってるよ…」

 

当たり前だ俺は必ず蒼那を助けるんだ。

 

「ならば良い…っと、悠長にしてる場合では無いな」

 

そう言うと共に、男の前に三つの光が現れた。

 

レイ「それは?」

 

「さっき、言っただろう?お前にくれてやる武器だ」

 

レイ「どんな武器なの?」

 

俺が男に聞くと、そう答えてくれたので、どんな物なのかを聞いた。

 

「今から説明してやるから良く聞け…左から

《長刀・正宗》

天の鎖(エルキドゥ)

原罪(メロダック)》だ、これらの物をお前にくれてやろう。

本当なら他にもあったのだがな…我が所有していたのは昔の事、今ではその殆どが別の者の手に渡ってしまっている」

 

レイ「そうなんだ…」

 

男は武器の名前を言った後に不愉快そうに説明してくれた。

良く分からなかったが、俺は男に対してそれしか言え無かった…

 

「それじゃあ、これらの使い方を説明するぞ」

 

レイ「うん」

 

俺は、男の言葉に頷いた。

 

「まず、こいつは《長刀・正宗》」

 

それは、男の身の丈以上に長い刀だったのだが。

 

「ただの刀だな」

 

レイ「それだけ?」

 

男の説明に、俺はついそんな事を聞いてしまった。

 

「それだけだ、まあ名刀と呼ばれてるくらいだからな、普通の物より切れ味はあるぞ」

 

レイ「そう…」

 

名刀と言うだけで、どうやら本当にただの刀の様だ。

 

「次に…これは《天の鎖(エルキドゥ)》だ」

 

次に見せて来たのは金色に光る鎖だった。

 

「数少ない対神兵装だ、神性を持つ相手には強力な拘束力を発揮する。

目の前の敵には神性など無さそうだが、まあ…問題く使えるだろう」

 

レイ「………神様を拘束出来るなんて…凄いね…」

 

俺は驚きの余り最初何も言えなかったが、少し落ち着いた後にそう言った

 

「そうだろう、これで神共とだって戦えるぞ?」

 

レイ「うん…」

 

男は自慢気に言うが、俺はそれに頷く事しか出来なかった。

 

「そして最後にこいつは、《原罪(メロダック)》」

 

最後に出したのは一本の剣だった、しかしまるで封印されてるかの様に、それには鎖が幾重にも巻かれていた。

 

「"伝説の剣カリバーン"や"最強の魔剣グラム"の原典だ。ついでに言えば担い手を選ぶ"聖剣"の原点でもある、故にこいつに所有者と認めさせなければ抜く事すら不可能だ。ちなみにビームも出せるぞ」

 

レイ「………」

 

「んっ…?どうかしたか?」

 

先程以上に自慢気に話す男に、俺はもはや何も言えなかった。

 

レイ「……それで…俺はどう戦えば良いの?」

 

「ああ…それはな…」

 

それから、俺は男に戦い方を教わった。

 

「良し、これである程度やれるだろう、ただし決して無茶はするなよ?

特に、最初の流れは必ず教えた通りにやるんだ、しくじればお前も娘も死ぬぞ…良いな?

それと、体の方は多少は治してやったが、完全とはいえない状態だ…気を付けることだな」

 

レイ「うん!」

 

俺は最後にそう言われた、それに俺は力強く頷いた。

 

「そろそろ時が動きだすぞ」

 

そして、いよいよ時が動き出す、その直前に俺は大事な事を思い出した。

 

レイ「そうだ…俺はレイって言うんだけど、貴方の名前は?聞いてなかった」

 

俺は自己紹介をしてから、男に名前を聞いた。

 

「ん?ああ、そう言えばそうだったな…(おれ)の名前は―――ギルガメッシュだ、お前には特別に"ギル"と呼ぶ事を許してやる」

 

男…ギルは笑いながら、上から目線でそう言った。




なんかギルが親戚のお兄ちゃんっぽくなってしまった…


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動き始めた運命【前】

レイ(…んっ……戻った…のか?ッ…痛ぇ…でも…確かに…動ける!)

 

時間が戻り、俺はさっきまで感じなかった痛みを感じ始め、全く動かせなかった身体も少しは動かせる様になっていた。

 

ソーナ「……ぁ……っ………」

 

レイ(くっ……蒼那…待ってろ…今…助ける…)

 

苦しそうな声が聞こえた、蒼那の方を見ると、今にも意識を失いそうだった。

 

レイ(確か…念じる様に…すれば……良し…来たっ…!)

 

俺は痛みを堪えながらゆっくりと身体を起こし、ギルに教わった通り《王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)》から《正宗》を取り出した。

 

ギル『良いか?まずは武器の出し方だが、解りやすく言えば…念の様なものだ』

 

レイ『念?』

 

ギル『そうだ、出したい武器と位置を頭に浮かべる、それだけだ』

 

ギルはまるで簡単な事の様に、そう言っていた。

 

レイ『えっと…こう?、…出た!出たよ!』

 

ギル『ほう…なかなかやるじゃないか、では次だ』

 

ギルに言われた通りに頭の中で《正宗》を思い浮かべ念じる…すると何も無い所から《正宗》が出てきた。

するとギルは口角を上げながら、そう言った。

 

レイ『次?』

 

ギル『そうだ、まずは確実に娘を掴んでるあいつの腕を切り落とす』

 

ギルは止まってる怪物を見ながら、そう言った。

 

レイ『どうやって?』

 

ギル『幸いな事に、お前はあいつの死角に倒れている、だから不意討ちで斬る』

 

俺がそう聞くとギルは目線を逸らす事なくそう言った。

 

レイ『後ろから突き刺せば殺せない?』

 

ギル『可能だろうが、娘が死ぬかもしれん、言っただろう?"助ける"と"勝つ"は違うと、お前はあの娘を助けたいのだろう?』

 

レイ『うん!』

 

俺はふと思った事を聞いてみた、すると予想してたのかすぐに答えてくれた。

 

ギル『良いか?早まるなよ?ゆっくりだ、音を立てずに立ち上がれ。

戻った時に身体も痛むだろうが決して声に出すな、気付かれたなら…二人共確実に死ぬぞ』

 

レイ『うん…分かった…』

 

ギルは俺に、蒼那を助けられる方法を丁寧に教えてくれた。

 

レイ(よし…気付かれて無いな…後は…)

 

俺はギルの教えを思い出す。

 

レイ『それで、どう斬れば良いの?』

 

ギル『ただ奴の腕に向かって振り下ろせば良い』

 

レイ『それだけ?』

 

ギル『言っただろう?それは何の力も持たないただの刀だが…名刀だとな、あいつの腕くらいならそれで簡単に切り落とせる』

 

ギルは俺の質問に淡々と答え続ける。

 

レイ『こう?』

 

ギル『そうだ…』

 

レイ&ギル(『しっかりと上段に構え…降り下ろす!!)』

 

俺はギルの教え通りに怪物の腕に向かって《正宗》を降り下ろした。

 

「ガァァァ、ウデガッ…オレサマノウデガァァ」

 

腕は紙の様に簡単に切れ、怪物は腕を抑えながら呻き声をあげた。

 

レイ「蒼那、大丈夫か!?」

 

ソーナ「がはっ…ケホッ…ケホッ…」

 

俺はすぐに蒼那の元に行った、蒼那は咳き込んでいるが何とか大丈夫そうだ。

 

レイ「蒼那!良かった…無事で…」

 

ソーナ「レイ…君?」

 

レイ「ああ、もう大丈夫だ…お前は俺が絶対守って見せる!」

 

蒼那の無事を確認した俺は、怪物の方に構え直し、ギルの教えてくれた次の手を思い出す。

 

ギル『あいつの腕を落としたら、次は《天の鎖(エルキドゥ)》を使って奴を拘束しろ』

 

俺は先程の様に《天の鎖(エルキドゥ)》とそれを出す場所を頭に想い浮かべた。

 

「グゥッ…ナンダ…コノクサリハッ…」

 

レイ「良し…上手く出来た」

 

空に幾つもの空間が出現し、そこから《天の鎖(エルキドゥ)》が現れ怪物に巻き付き動きを止める。

 

「キサマッ…ナゼウゴケルッ」

 

怪物は俺に向かって叫ぶ。

 

ソーナ「レイ君!今の内に逃げよう?」

 

レイ「大丈夫だ!蒼那…良いか?絶対俺の後ろに居るんだぞ?」

 

ソーナ「レイ…君?どうしたの…?」

 

逃げようと言って来る蒼那、俺だって逃げたい…でも…ここで逃げたら、ギルに笑われちゃう。

 

ギル『良いか?レイ、いくら《天の鎖(エルキドゥ)》が強力でも、今のお前の力量じゃ持って二~三十秒程度が限界だ、逃げるにしても時間が足りなさすぎる』

 

レイ『じゃあ…どうするの』

 

ギルの言葉に俺は、答えを理解しながらも、そう聞いた。

 

ギル『あいつを殺す、拘束出来たと言う事は、お前は娘を"助ける"事は出来たと言う事だ、なら次は"勝つ"ための選択を出来る訳だ』

 

ギルは迷わずそう言い、俺の一つ目の目的の達成と、それにより新たな選択肢を選べる事を教えてくれた。

 

レイ「良し…!ここまではギルの作戦通りに上手く行った、でも…ここからが本番だ…」

 

俺はそう呟き、自分を落ち着かせる様に一度深呼吸をして、気合いを入れる。

 

ギル『良いか?一撃で確実に殺せ、一撃で殺れなければ…お前の負けだ』

 

レイ「一撃で…確実に…」

 

ギルのその言葉に緊張しながらも、やるべき事を声に出しながら怪物の方へとに近づいて行く。

 

ギル『これで最後だ確実に…』

 

俺は怪物対し《正宗》を横薙ぎに構え―――そして。

 

レイ&ギル「『確実に…首を落とす!!』」

 

俺は力一杯に刀を振り抜いた―――怪物の首が音を立て落ちていく。

 

レイ「はぁ…はぁ…、終わっ…た?はぁ~…」

 

俺は怪物が動かなくなったを見て、その場にへたり込んでしまった、同時に《天の鎖(エルキドゥ)》も解除された。

 

「良くやったな…レイ」

 

レイ「ギル?」

 

聞き覚えの有る声が響き、俺はその名を呼んだ。

 

ギル「ああ、お前が我を認識し神器が覚醒したおかげで、話す事くらいは出来る様になったようだ、流石に姿は出せない様だがな」

 

声の主はやはりギルで、そう説明してくれた。

 

レイ「そっか…ギル…俺…出来たよ…蒼那を…助けられた…」

 

ギル「そうだな、初めてにしては大したものだ」

 

俺が泣きそうになりながらそう言うと、ギルもまた優しい声でそう言った。

 

レイ「これからも…よろしくね」

 

ギル「ふっ…そうだな」

 

俺のそんな言葉に、ギルは口角を少し上げ、そう言った。

 

ソーナ「レイ君!!」

 

レイ「蒼那…良かった…本当に…無事で良かった…」

 

蒼那が泣きながら俺に抱き付いて来る、俺はそんな蒼那の頭を優しく撫でる。

 

これで終わったそう思いながら―――しかし…。

 

「マ…ダ…ダッ…」

 

レイ「なっ…嘘…だろ…!?まだ…生きてるのか…?」

 

俺は怪物の声に振り向き絶句した、確かに首を落とした筈なのにまだ死んでいなかったのだ、そして。

 

「オマ…エ…タチ…モ…ミチ…ヅレ…ニ…シテ…ヤ…ル…」

 

そう言い終えたと同時に怪物の身体が膨らみ始めた。

 

ギル「不味い!?奴は自爆する気だ」

 

レイ「自爆…!?くっ…蒼那!!」

 

ソーナ「レイ君!?」

 

俺は蒼那を庇う様に覆い被さる。

瞬間―――悪魔の身体が弾け飛び爆音が響いた。

 

レイ「……あ………うっ……く……は…」

 

全身が痛む、身体を動かそうにも指一本動かせない。

 

「―い―ん―――か――て―れ――ん―」

 

微かに声が聞こえる…、俺は僅かに目を開いた、そこには泣き叫んでいる蒼那が居た。

 

レイ「―そ――な―――よ――た――」

 

声を出そうとするが、声が出ない。

でも、蒼那は無事の様だ。

 

ソーナ「―い――や――――ん―――だ――れ―く―」

 

蒼那が何か叫んでいるが殆ど聞き取れない、どうやら耳がおかしくなったらしい。

 

レイ(良かった…蒼那は無事…みたいだな…本当に…良かった…)

 

意識がはっきりしないなか、俺は蒼那の無事を確認し安堵した。

 

「――な――ん」

 

「―い――う―か――な―ん」

 

ソーナ「―ね――ま――い――が―れ――が―ん――う―」

 

ここ数ヵ月で聞き慣れた声が微かにだが聞こえた、でも…。

 

レイ「……………」

 

もう声をだす力も、目を開く力も無い。

 

レイ(俺は…死ぬ…のか…やっと…大切と…思える人に…そう…思ってくれる人に……出会えた…の…に…)

 

俺は何も見えない、聞こえない、徐々に意識も消えていくなか、そんな事を思っていた。

 

レイ(………………)

 

そこで俺の意識は完全に途切れた…その寸前。

 

レイ(ああ…死にたく…無い…なぁ…)

 

俺は生まれて初めて、そう思った。

 



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動き始めた運命【後】

気付いたらお気に入りが200越えてました…びっくりです。
気に入ってくれた方ありがとうございます!
これからも宜しくお願いします!!

11/11 本文改定


ソーナside

 

今日も私はお姉様に連れられてレイ君の所に来ていた。

一緒に遊ぼうと持ってきたチェスをして気付いたら夕方になっていた。

でもまだお姉様が迎えに来てなくて、とりあえずレイ君の家に一緒に行く事になった。

 

レイ「あれ?おかしいな…」

 

門が閉まっていてレイ君はそう言った。

なんとか中に入れた、でも中は暗くて少し怖かった、その時…奥から大きな音がした。

 

二人『うわっ!?』

 

私はびっくりしてレイ君にしがみついてしまったが、レイ君に言われ一緒に奥の食堂に向かった。

そして、レイ君が扉を開くと…

 

レイ「なっ…!…なん…なんだよ…これ…」

 

レイ君がそう言い私も中を見ると…

 

ソーナ「ひっ…!なに…これ…」

 

そこには怪物がいた…、私は怖くて身体が動かなくなった。

 

レイ「来い、蒼那」

 

気付いたらレイ君に手を引かれていた。私はびっくりしたが一緒に出口に向かって走った。だけど、外に出た所で転んでしまった。

 

レイ「蒼那!ごめん、大丈夫か…?」

 

レイ君に申し訳無さそうな顔で謝られた…私がドジなのがいけないのに…

その後、レイ君が鍵を開けに行った。

 

レイ「えっと…確か…こうして…良し、開いた!来い、そう…な…」

 

鍵が開けたレイ君が私の方を振り向いた。でも何かを怖がってる…私は気になり、名前を呼んだ…

そして、いきなり叫びながらこっちに走ってきたと思ったら。

 

レイ「危ないっ!!グッ…ウゥッ」

 

そのまま突き飛ばされてしまった。私は何が起きたのか分からなかったが、目の前を見るとレイ君が苦しそうな声を上げて倒れていた。

私はレイ君の側に行くと。

 

レイ「大丈夫…少し…掠った…だけだから…」

 

そう言われたが絶対に嘘だ…凄い血が出てた。

 

レイ君の後ろにはさっきの怪物がいて血が付いた手を舐めていた…

 

レイ「ハアッ…ハッ…にげ…ろ…そう…な…」

 

そう言われたが、私は泣きながらそれを拒んだ。

 

レイ「はや…く…行けぇ!」

 

レイ君がそう叫んだ瞬間。

 

「ニガストオモッテイルノカ?」

 

怪物がそう言って私の方に近付いてくる、離れようとしても足が震えて立てない。私は座り込みながら後退りするも怪物は私の首を掴んできた、私は苦しくて抵抗したけど離してくれない。

 

レイ「そ……う…な…」

 

息が出来なくて、苦しい中、レイ君の声が聞こえた。

 

ソーナ「……ぁ……っ………」

 

意識が無くなりそうになった、その時…

 

レイ「大丈夫か!?ソーナ」

 

ソーナ「がはっ…ケホッ…ケホッ…」

 

気付いたら怪物の腕が斬られ、私は地面に落ちた。

 

レイ「蒼那!良かった…無事で…」

 

ソーナ「レイ…君?」

 

レイ君が私の元に来てそう言った、私は驚いていた、レイ君はさっきまで大怪我を負っていた筈なのに。

 

レイ「ああ、もう大丈夫だ…お前は俺が絶対守って見せる!」

 

レイ君はそう言って、怪物の方に向かって剣を構えた。

 

「グゥッ…ナンダ…コノクサリハッ…」

 

声が聞こえ、怪物の方を見ると。

空中に幾つもの空間が出現して、そこから鎖みたいな物が出てきて怪物に巻き付いていた。

 

レイ「良し…上手く出来た」

 

すると、レイ君はそう呟いた。

 

「キサマッ…ナゼウゴケルッ」

 

怪物がレイ君に向かって叫ぶ。

 

ソーナ「レイ君!今の内に逃げよう?」

 

レイ「大丈夫だ!蒼那…良いか?絶対俺の後ろに居るんだぞ?」

 

逃げようと言う私に、レイ君はそう返す。

 

ソーナ「レイ…君?どうしたの…?」

 

私はどうして?と思いそう聞いた。

 

レイ「良し…!ここまではギルの作戦通りに上手く行った、でも…ここからが本番だ…」

 

レイ君はそんなことを呟き、刀を構え深呼吸をした。

 

レイ「一撃で…確実に…」

 

レイ君はそう呟きながら、怪物に近付いていく―――そして。

 

レイ「確実に…首を落とす!!」

 

レイ君はそう叫びながら思いっ切り刀を振り抜いた。

すると、怪物の首が音を立てながら落ちていった。

 

レイ「はぁ…はぁ…終わっ…た?はぁ~…」

 

怪物が動かなくなったと同時に、レイ君がその場にへたり込んでしまった、それと同時に鎖も消えた。

 

ソーナ「レイ君!!」

 

私はレイ君の元に行き、抱きついた。

 

レイ「蒼那…良かった…本当に…無事で良かった…」

 

レイ君はそう良いながら、私の頭を優しく撫でてくる。

私は、泣きながらレイ君に抱きつき続けた―――その時。

 

「マ…ダ…ダッ…」

 

レイ「なっ…嘘…だろ…!?まだ…生きてるのか…?」

 

怪物の声がした…レイ君は怪物の方を向きそう言った、首を切られたのにまだ死んで無いなんて…すると。

 

「オマ…エ…タチ…モ…ミチ…ヅレ…ニ…シテ…ヤ…ル…」

 

怪物がそう言い終えると同時に怪物の身体が膨らみ始めた。

 

ギル「不味い!?奴は自爆する気だ」

 

いきなり、そんな声が聞こえた。

 

レイ「自爆…!?くっ…蒼那!!」

 

レイ君はそう言って、いきなり私に覆い被さった。

 

ソーナ「レイ君!?」

 

私は驚いて声を上げた。

すると、その瞬間―――爆発の様な凄い音がした。

 

レイ「……あ………うっ……く……は…」

 

私が顔を上げると、そこにはレイ君が苦しそうに倒れていた。

 

ソーナ「レイ君!しっかりして!レイ君!」

 

私は直ぐにレイ君に声を掛けた。

 

レイ「…そ……な………よ……た……」

 

すると、レイ君は苦しそうに私を見ながら、何か言ったが私には聞き取れなかった。

 

ソーナ「レイ君!やだ…死んじゃやだよ…レイ君!」

 

私は泣きながら叫ぶ―――すると、後ろからいきなり声がした。

 

セラ「ソーナちゃん!レイ君!」

 

サーゼクス「大丈夫かソーナ君!」

 

リーシア「これは…」

 

グレイフィア「なんてこと⋯」

 

振り向いて見ると転移してきたのだろう、お姉様とサーゼクスさんとリーシアさん、そしてグレイフィアさんがいた。

 

セラ「なに…これ…」

 

サーゼクス「酷いな…」

 

お姉様とサーゼクスさんは周りを見ながらそう言っていたが。

 

ソーナ「お姉様、レイ君が…レイ君が死んじゃう!」

 

私はすぐにお姉様の元に行き、助けを求めた。

 

セラ「レイ君!?ッ…ソーナちゃん!、何があったの!?」

 

ソーナ「お姉様、レイ君が…私…私…」

 

お姉様にそう聞かれ、私は起きた事を全て話した。

 

セラ「そんな…」

 

お姉様は口元押さえて、涙を流しながらそう言った。

 

ソーナsideout

 

―――――――――――――――――――

 

セラside

 

今日も私はレイ君の元にソーナちゃんと一緒に来ていた。

しかし、私には魔王としての大事な会議があったので、ソーナちゃんをレイ君に預けてから、一人で冥界に戻って来た。

 

セラ「あ~あ…私も二人と一緒に遊びたかったなぁ~」

 

私はまだ、だれも来ていない会議室で一人拗ねていた。

 

「ああ、もう来ていたんだね、セラフォルー」

 

「失礼致します」

 

「…どうしたんだい?」

 

そこに一人の男性と、二人の銀髪のメイドがやって来た。

 

セラ「あっ!サーゼクスちゃん!リーシアちゃん、それにグレイフィアちゃんも、聞いてよ~」

 

私は拗ねてる理由を三人に説明した。

 

サーゼクス「あはは…成る程ね、だからそんななのか」

 

リーシア「それは残念でしたね」

 

私の説明を聞いて、サーゼクスちゃんは苦笑しながら、リーシアちゃんはいつも通りにそう言った。

 

セラ「折角二人と一緒に遊べる筈だったのに~」

 

サーゼクス「まあ、別に今日だけなんだから良いじゃないか」

 

セラ「それは、そうだけどさ~」

 

私の言葉にそう返してくる、私だってそんな事くらい解ってるよ?でも、嫌な物は嫌なんだもん。

 

サーゼクス「所で、その友達になったと言う人間の子、どんな子なんだい?」

 

セラ「レイ君?と~っても良い子だよ!、可愛いくて、かっこ良くて、それで優しいんだ~それに…」

 

サーゼクスちゃんの質問に私はこれでもかと言うくらい説明した。

 

サーゼクス「あはは…随分と気に入ってる様だね」

 

セラ「もちろん☆もうソーナちゃんと同じくらい大切な子だよ!」

 

サーゼクス「それほどにか…」

 

私の説明にまたも苦笑しながらそう言うサーゼクスちゃんに、私がそう言うと凄い驚いた。

まあ、私がソーナちゃんをどれだけ大切にしてるかサーゼクスちゃんは知ってるからね。

 

セラ「それでね…「セラフォルー」どうしたの?」

 

サーゼクス「すまないが続きは後にしよう、他の二人も来たようだ」

 

私が更に話そうとすると、サーゼクスちゃんがそう言った。

直後、扉が開いて残りの二人が入って来た。

 

サーゼクス「さて、それじゃあ始めようか」

 

そして、皆が席に着きサーゼクスちゃんのその一言で会議が始まった。

 

―――――――――――――――――――

 

セラ「あ~やっと終わった~」

 

夕方頃になり、ようやく会議が終わった。

 

サーゼクス「そうだね、お疲れ様、セラフォルー」

 

セラ「サーゼクスちゃんもね☆リーシアちゃんとグレイフィアちゃんもお疲れ様☆」

 

リーシア「いえ、ありがとうございます」

 

グレイフィア「お気遣い痛み入ります」

 

サーゼクスちゃんにそう言われ私も同じ様に三人に返す、相変わらずリーシアちゃんとグレイフィアちゃんは固いなぁ~

 

セラ「それでね、さっきの続きなんだけどね…」

 

私が二人に会議前にした会話の続きを話そうとした時。

 

「セ…セラフォルー様、大変です!!あっ…サーゼクス様も御一緒でしたか」

 

一人の女性悪魔が血相を変えて、やって来た。

 

セラ「どうしたの?そんなに慌てて」

 

「実は人間界ではぐれ悪魔が一匹捕捉され、追っ手を向かわしたのですが…追っ手は一人残らず殺され、尚も逃亡中との連絡が」

 

私がそう聞くと、彼女はその内容を話し始めた。

 

セラ「それは確かに大変だね…でも何でその連絡を私に?」

 

私は彼女に、何故はぐれ悪魔の連絡を私に伝えるのかと不思議に思ってそう聞くと。

 

「それが…セラフォルー様の妹君が、今人間界に居るとお聞きしまして」

 

どうやらソーナちゃんの事を心配してくれてた見たい。

 

セラ「そっか、でも大丈夫だよ☆ソーナちゃんなら孤児院のお友達と一緒に居る筈だから」

 

「そうですか…なら良かったです…ん?」

 

セラ「どうしたの?」

 

「すいません、どうやら念話の様です、少し失礼致します」

 

彼女も安心した様にそう言い、念話が入ったと私達に一礼してから少し離れて会話を始めた。

 

セラ「それにしても、ここ最近はぐれになる悪魔が多いよね?」

 

サーゼクス「そうだね…主人だった者からの報告が一応は来るが…何が原因で、その報告が本当かどうかも解らない、調べ様にもそれは主従間での話しだからね…」

 

セラ「そっか…」

 

私の質問に、顔を曇らせながらそう答える、私も何も言えずにいると。

 

「なんだって!?それは本当か!?」

 

サーゼクス「どうしたんだい?」

 

女性悪魔がいきなり大声を上げた、それにいち早く反応したサーゼクスちゃんがそう聞くと。

 

「サーゼクス様、セラフォルー様、たった今…先程お話ししたはぐれ悪魔が【黒王(くろおう)孤児院】に向かっている様だとの報告が入りまして」

 

セラ「なんですって!?」

 

サーゼクス「それは本当かい!?」

 

私達はその報告に、つい大声を上げてしまった。

 

 

セラ「っ…ソーナちゃん!レイ君!」

 

サーゼクス「待つんだセラフォルー、僕達も…」

 

私はサーゼクスちゃんの言葉を最後まで聞かずに、その場で転移をしようとしたが出来ない。

 

セラ「なっ…何で!?」

 

私が焦って何度も繰り返していると。

 

サーゼクス「セラフォルー!この建物内では魔法が使えない様に特殊な結界が張られているだろう」

 

セラ「そうだった…ならっ!――サーゼクスちゃん!?」

 

サーゼクスちゃんにそう言われて思い出した、私は直ぐに外に出ようと駆け出すが、いきなりサーゼクスちゃんに腕を捕まれた。

 

サーゼクス「全く…焦る気持ちは解るが…少し落ち着いて、僕達も行くから」

 

セラ「うん…」

 

私はそう言われ、少しだけ冷静になれた。

 

サーゼクス「良し、じゃあ直ぐに外に出て孤児院に転移しよう、セラフォルー、リーシア、グレイフィア行くよ」

 

セラ「うん」

 

リーシア&グレイフィア『はい』

 

サーゼクスちゃんの言葉に頷いて私達はすぐに駆け出して外に出て転移した。

ソーナちゃん…レイ君…すぐに行くから…無事でいて…

 

―――――――――――――――――――

 

セラ「ソーナちゃん!レイ君!」

 

サーゼクス「大丈夫かソーナ君!」

 

リーシア「これは…」

 

グレイフィア「なんてこと⋯」

 

私達が転移すると目の前には凄惨な光景が広がっていた。

 

セラ「なに…これ…」

 

サーゼクス「酷いな…」

 

周囲は酷い有り様だった…建物は崩れ落ち、木々は根元から折れていた。私達がその光景に絶句していると。

 

ソーナ「お姉様、レイ君が…レイ君が死んじゃう!」

 

私達に気付いたソーナちゃんが、大声で泣き叫びながらこちらに来た、私はソーナちゃんの来た方を見ると。

 

そこには―――傷だらけで倒れているレイ君が居た。

 

セラ「レイ君!?ッ…ソーナちゃん!何があったの!?」

 

ソーナ「お姉様、レイ君が…私…私…」

 

私がそう聞くとソーナちゃんは泣きながらも答えてくれた。

 

セラ「そんな…」

 

私は口元を押さえて、涙を流しながらそう言った。

 

セラ「全部…私のせいだ…私が…もっと早く…迎えに…行っていれば…私が…ソーナちゃん…レイ君…ごめんね…」

 

私はそう言いながら、レイ君の側に膝を着いた。

 

サーゼクス「セラフォルー…」

 

グレイフィア&リーシア『セラフォルー様…』

 

二人はそれ以上何も言えずにいた…。

 

ソーナ「お姉様…レイ君を助けて下さい!お願いします!!」

 

ソーナちゃんにそう言われるも、レイ君は既に息をしていない…。

 

セラ「ソーナちゃん…でも…もう…」

 

死んでる…そう言おうとした時。

 

サーゼクス「セラフォルー、君は確か…悪魔の駒をまだ一つも使っていないんじゃ無かったか?」

 

サーゼクスちゃんがそう言った。

 

セラ「そうだった!まだその手があったよ!!」

 

私は焦る余り忘れていた悪魔の駒の存在を思い出した。

ゲームにも眷属集めにも興味が無かった為、貰ったまま一つも使って無かった事を。

 

ソーナ「本当ですか!?じゃあ…」

 

セラ「うん、確か…駒は私の部屋に置いてあるはずだよ」

 

ソーナちゃんの問いに私はそう答える。

 

サーゼクス「良し、ではすぐに行こう!セラフォルーとリーシアはすぐに転移の準備を、この子は僕が運ぶから、グレイフィアは念の為この子に治癒を」

 

セラ「分かった!」

 

ソーナ「はい!」

 

グレイフィア「かしこまりました」

 

サーゼクスちゃんの指示に私達は一斉に答える。

 

セラ「行くよ!!」

 

四人『ああ(はい)』

 

私は、三人が魔法陣の中に入って頷いたのを確認し―――自分の家に転移した。

 

―――――――――――――――――――

 

セラ「こっちだよ!!」

 

転移で家に帰ってきてから私はすぐに三人を連れて急いで自分の部屋に向かった。

 

セラ「ここだよ!入って!!」

 

サーゼクス「とりあえずこの子はベッドに寝かせるよ?」

 

セラ「うん、ありがとう」

 

部屋に着き、中に入ったらそう言われたので頷いてお礼を言った。

 

サーゼクス「それで?駒は何処にあるんだい?」

 

セラ「確か…ここに…」

 

サーゼクスちゃんにそう聞かれ、私は駒が閉まってある引き出しを開け探す。

 

セラ「…えっと…あった!」

 

引き出しの中を手当たり次第に放り投げ、ようやく目的の物を見つけた。

 

サーゼクス「良し、それじゃあ…」

 

セラ「うん!早速…あれ?」

 

サーゼクスちゃんに言われ、兵士の駒を使おうとしたが…。

 

サーゼクス「どうしたんだい?」

 

セラ「駒が反応しない!?」

 

駒は全く反応しなかった。

 

サーゼクス「別の駒はどうだ?」

 

そう言われ、他の駒も試すが、騎士の駒も戦車の駒も僧侶の駒も全く反応しない。

 

セラ「そんな…どうして…」

 

私が泣きながらそう言うと。

 

サーゼクス「セラフォルー、女王は…どうだい?」

 

セラ「女王…」

 

そう言われ、最後の駒である女王をレイ君に使うと。

 

セラ「反応した!」

 

女王の駒が光だし、レイ君の中に消えていく。

 

サーゼクス「やはりか…女王の駒以外では転生出来ない…この子は一体…」

 

サーゼクスちゃんが何か思案顔で言っているけど…。

 

セラ「何でも良いよ!これでレイ君は助かるんだから!」

 

ソーナ「本当ですか?」

 

私の言葉にソーナちゃんが聞いてくる。

 

セラ「本当だよ!もう大丈夫…だよね?サーゼクスちゃん」

 

サーゼクス「ん…?ああ、大丈夫だよ」

 

私はソーナちゃんにそう返しつつも、サーゼクスちゃんに聞くと、考え事をやめて笑顔で答えてくれた。

 

ソーナ「よかった…本当に…よかった」

 

ソーナちゃんは安心したのか泣きながらレイ君に抱き付いた。

 

サーゼクス「だが一応念の為…グレイフィア、この子を観てあげて」

 

グレイフィア「はい、失礼致します」

 

サーゼクスちゃんがグレイフィアちゃんにそう指示を出してくれた。

 

セラ「どう…?大丈夫だよね?」

 

私は改めて不安になり、そう聞いた。

 

グレイフィア「はい、呼吸も正常に戻っています、後は目覚めるのを待つだけです」

 

セラ「分かった」

 

グレイフィアちゃんの診断に私は安心した。

 

グレイフィア「ですが、神器の覚醒や戦闘の疲労などが有りますので、3~4日は目覚め無いかと」

 

セラ「そっか…でも大丈夫、ちゃんと私がお世話するから」

 

ソーナ「私も手伝います」

 

グレイフィアちゃんの言葉に、私は張り切ってそう答える、するとソーナちゃんも同じ様に言ってくれた。

 

サーゼクス「分かった、この子が目覚めたら…」

 

セラ「この子じゃ無くてレイ君だよ!」

 

さっきからこの子って呼んでるサーゼクスちゃんに私がそう言うと。

 

サーゼクス「済まない…そうだね、それじゃあ…レイ君が目覚めたら僕達にも連絡をくれ、頼むよ」

 

セラ「うん!分かった、ちゃんと連絡するね」

 

サーゼクスちゃんからの言葉に私は笑顔で答えた。

 

サーゼクス「じゃあ、僕達は一度孤児院の方に戻るよ…」

 

セラ「うん…そうだね…お願い出来る?」

 

レイ君が助かって、安心していた私にサーゼクスちゃんが言ったので、私は俯きながら答えた。

 

サーゼクス「もちろん、任せておいてくれ。

また明日お見舞いに来させて貰うとするよ、行こうかリーシア、グレイフィア」

 

リーシア「はい、サーゼクス様」

 

グレイフィア「はい、それでは失礼します」

 

サーゼクスちゃんはそう言って、リーシアちゃんとグレイフィアちゃんも最後に一礼して部屋を出た。

 

ソーナ「お姉様…」

 

セラ「大丈夫!グレイフィアちゃんもそう言ってたでしょ?レイ君が目覚めるまで一緒に待ってようね、ソーナちゃん」

 

ソーナ「はい!」

 

ソーナちゃんが私に抱き付いて、心配そうに言って来たので私は笑顔で答えた、するとソーナちゃんも笑顔で頷いてくれた。

 

レイ君…早く起きてね?君が目覚めるのを、私もソーナちゃんも君の側で待ってるからね?

 

セラsideout

 



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再開、そして…

新元号おめでとうございます。
令和もよろしくお願いします!!

11/11 本文改定

2/9 本文編集


レイ「…んっ……あれ……ここは?…」

 

俺は目が覚めると知らない場所に居た。

 

レイ「えっと…確か…怪物に…ッ…蒼那!えっ…」

 

俺は目覚める前の事を思いだし、ベッドから飛び出そうとしたのだが…

 

レイ「セラ…さん?」

 

椅子に座ってるセラさんが、俺の足にもたれる様にして眠っていた。

 

セラ「……んっ…んん…んふふ~…ソーナちゃん…レイくん…」

 

レイ「えっと…これは…何で…?」

 

気持ち良さそうに寝ているセラさんに、俺が戸惑っていると、扉が開き誰かが入って来た。

 

ソーナ「お姉様、そろそろお仕事の時間で……レイ…君…?」

 

レイ「蒼…那…」

 

入って来たのは蒼那だった、どうやらセラさんを起こしに来たらしいが、俺を見ると目を見開いて固まった。

 

ソーナ「レイ君!レイ君!!」

 

レイ「おっと…蒼那…」

 

蒼那はそう言いながら俺に抱き着いて来た、俺はそんな蒼那を優しく抱きとめた。

 

ソーナ「良かった…本当に…良かった…」

 

蒼那は泣きながらそう言った。

 

セラ「んんっ…ソーナちゃん…?」

 

するとセラさんが起きてしまった。

 

レイ「あっ…おはようございます。すみません…起こしてしまって」

 

セラ「うん、おはようレイ…君……レイ君!?」

 

俺は挨拶をして、起こした事を謝った。

セラさんも最初は普通に挨拶をしたが、俺を見た瞬間大声で叫んだ。

 

レイ「あっ…はい、そうです」

 

俺はついそんな事を言った。

 

セラ「レイ君…良かった…目が覚めたんだね…」

 

すると、いきなり目尻に涙を浮かべながらそう言った。

 

レイ「はい…えっと…それで…これはどういう…」

 

セラ「良かった…良かったよ~」

 

ソーナ「レイ君…レイ君…」

 

俺は良く分からずにそう聞くが、二人は共に俺に抱き着いて泣き止まない。

 

―――――――――――――――――――

 

レイ「もう大丈夫ですか?」

 

ソーナ「うん…ごめんね…」

 

セラ「うん…ありがとう…」

 

それから二十分程が立ち、俺がそう問い掛けると、二人はようやく泣き止みそれぞれそう言った。

 

レイ「良かった…それで…ここは一体…それに…」

 

セラ「うん、レイ君の言いたい事は解ってるよ、でも説明はちょっとだけ待ってね?今回の件で呼ばなきゃいけない人がいるから」

 

俺は言葉が上手く纏まらずにいると、セラさんがそう言った。

 

レイ「……分かりました…」

 

本当は今すぐにでも知りたかったがセラさんがそう言うなら、待った方が良いのだろうと思い、そう返した。

 

セラ「うん!じゃあ今から呼ぶから、ソーナちゃんと一緒に少しだけ待っててね♪」

 

レイ「はい」

 

セラさんの言葉に俺がそう返すと、セラさんは部屋を出ていった。

 

ソーナ「レイ君…」

 

レイ「蒼那…良かった…怪我は無さそうだね」

 

蒼那の声に俺は改めて蒼那を見て、そう言った。

 

ソーナ「うん…レイ君が…守ってくれたから…」

 

レイ「そっか…それなら良かったよ…本当に…」

 

蒼那の言葉に俺は心から安堵した。

 

ソーナ「レイ君…ごめんね…私…私…」

 

すると蒼那はいきなり泣き出し、俺に謝って来た。

 

レイ「蒼那…?どうした?何で泣くんだ?」

 

俺は訳が分からず、戸惑ってしまった。

 

ソーナ「だって…私のせいで…レイ君が…」

 

蒼那は泣きながらもそう答える。

 

レイ「蒼那、それは違うよ…あれは俺が勝手にやった事だから、俺の方こそ…恐い思いさせてごめんね?」

 

俺は蒼那の頭を撫でながらそう言った。

 

ソーナ「そんな事無い!!レイ君は私を守ってくれた…でも…私は何も出来なかった…」

 

蒼那は大きな声でそう言うと、また俯いてしまった。

 

レイ「蒼那…」

 

そんな蒼那に俺は何を言えば良いのか分からなかったので蒼那を思い切り抱きしめた。

 

ソーナ「っ…レイ君…!?」

 

すると蒼那は顔を赤くしながら、こちらを見た。

 

レイ「………」

 

しばらく俺が何も言わずにいると、蒼那も俺の背中に腕を回して来た、俺は更に強く抱きしめ返した。

 

レイ「蒼那…本当に無事で良かった…」

 

ソーナ「うん…レイ君も…無事で良かった…」

 

少ししてから俺は蒼那を見てそう言うと、蒼那もこちらを見てそう言った。

 

二人「ふっ…あははっ」

 

目が合って少しすると、俺たちは二人して笑った。

 

―――――――――――――――――――

 

セラさんが部屋を出ていってから一時間程が経ち、俺と蒼那が仲良く話をしていると。

 

セラ「ごめんね~二人共、少し遅くなっちゃった」

 

セラさんがそう言いながら部屋に入ってくる、その後ろには知らない人が二人居た。

 

ソーナ「お姉様、お帰りなさい」

 

レイ「お帰りなさいセラさん…後ろの人達は…?」

 

俺達はそう返し、その後に俺がセラさんにそう聞くと。

 

セラ「うん、紹介するね、男性の方がサーゼクスちゃんで、二人の女性の方がリーシアちゃんとグレイフィアちゃん」

 

セラさんの言葉の後に三人が前に出た。

 

サーゼクス「やあ、初めましてだねレイ君、僕がサーゼクスだ、よろしくね」

 

リーシア「初めまして、私がリーシアです、よろしくお願いします、レイ様」

 

グレイフィア「初めまして、私がグレイフィアです、よろしくお願い致します、レイ様」

 

レイ「あっ、はい…えっと…レイです、よろしくお願いします…」

 

二人の挨拶に戸惑いながらも、俺はそう言った。

 

サーゼクス「さて…そう言えばセラフォルー、彼にはもう話したのかい?」

 

セラ「ううん、二人を呼んでからって言ったから、まだ何も」

 

サーゼクス「そうか、では…レイ君」

 

レイ「はい、何か?」

 

二人で何かを話していたと思ったら、サーゼクスさんが真剣な表情で俺に話し掛けて来た。

 

サーゼクス「君は…目を覚ます前の事をどの位覚えているかな?」

 

レイ「えっと…蒼那と一緒に院に帰ったら、そこに怪物がいて…」

 

サーゼクスさんの質問に、俺は最初の事から気を失う寸前の事までを話した。

 

サーゼクス「そうか…うん、ソーナ君の報告と同じだね」

 

グレイフィア「はい、しっかり覚えてる事から見ても、記憶障害なども無さそうです」

 

サーゼクスさんがそう言うと、グレイフィアさんはそう言った。

 

サーゼクス「それで、君はその怪物をどうやって倒したんだい?」

 

レイ「えっと…神器?とか言うのを使って…あっ、後ギルが戦いかたを教えてくれて」

 

サーゼクスさんの質問に、俺はありの儘に答えた。

 

セラ「ギル…って言うのは?」

 

レイ「俺の神器の中?にいた人です」

 

セラさんが聞いて来たので俺は素直に答えた。

 

サーゼクス「そうか…ありがとう、君の神器についてはまた今度聞くとしよう、それより今日は…」

 

セラ「うん…そうだね…」

 

サーゼクスさんが再び真剣な顔でそう言うと、セラさんは元気が無くなり、俯いてしまった。

 

レイ「セラさん?どうしたの?」

 

俺がそう聞くと、セラさんがいきなり抱き着いて来てこう言った。

 

セラ「レイ君…よく聞いてね?」

 

レイ「はい」

 

セラさんの言葉に俺は頷いた。

 

セラ「あのね…レイ君は…一度死んでるの…」

 

レイ「えっ…でも…生きてますよ?」

 

セラさんの言葉に驚きながらもそう返すと。

 

サーゼクス「まずは僕達の事から話そうか」

 

セラ「うん…実はねレイ君、私達は人間じゃ無いの」

 

レイ「えっ…」

 

セラさんがそう言うと五人の背中から翼が出てきた、それを見て俺は驚く事しか出来なかった。

 

セラ「私達は悪魔なの、それでね…私達の技術に悪魔の駒って言う物が有るの」

 

レイ「悪魔の駒?」

 

セラ「うん、それを使うと人を悪魔に転生させる事が出来るの…それでね私は一度死んじゃったレイ君をそれを使って生き返らせたの…転生悪魔として…」

 

セラさんは顔を俯かせ申し訳なさそうに説明してくれた。

 

レイ「そうなんだ…だから俺は…生きてるんだ…」

 

セラ「うん…今まで黙っててごめんね…」

 

俺の呟きにセラさんはそう言った。

 

レイ「どうして謝るんですか?」

 

セラ「えっ…」

 

俺がそう言うとセラさんは驚きの声を上げた。

 

レイ「だってセラさんは俺を生き返らせてくれたんですよね?」

 

セラ「うん⋯」

 

更に続けた俺の言葉にセラさんは頷く。

 

レイ「だったら!セラさんには感謝しかないですよ」

 

セラ「レイ君…」

 

俺がそう言うと、セラさんの目に涙を浮かばせる。

 

レイ「俺は…今までずっと一人で…生きてても何も思わなかったんです。

でも…意識を失う寸前に思ったんです。死にたく無いって、生きたいって、初めて…そう思ったんです」

 

ソーナ「っ…レイ君!レイ君は一人じゃないよ!私もお姉様もいるよ!!」

 

セラ「そうだよ!レイ君はもう一人じゃないよ?」

 

俺がそう言うと、蒼那が俺に抱きつき、そう言ってくれた。

 

レイ「うん、俺がそう思えたのは二人のお陰だよ、二人が居てくれたから…俺はそう思える様になったんだ…」

 

ソーナ「本当に…?」

 

レイ「うん」

 

俺が思いを伝えると、蒼那に聞かれたので俺は笑顔で頷いた。

 

セラ「レイ君…ありがとう」

 

レイ「俺の方こそ、ありがとうセラさん」

 

セラ「うん」

 

俺はセラさんの言葉にそう返すと、セラさんも笑顔で頷いてくれた。

 

ソーナ「じゃあ…私の事…怖くない?」

 

レイ「なんで蒼那を怖がるの?」

 

蒼那が俺から離れ、いきなりそんな事を聞いてきたのでそう言うと。

 

ソーナ「だって…悪魔だから…」

 

レイ「そんなの…蒼那は蒼那だろ?怖くないよ、それどころか俺は蒼那もセラさんも大好きだよ?それに話を聞く限り、俺ももう悪魔なんだろ?一緒だな!だから泣くなよ、蒼那」

 

ソーナ「うん…うん…!」

 

蒼那の言葉に俺がそう言うと、蒼那は泣きながらも嬉しそうにしながらまた抱き着いて来た、他の三人も笑っていた。

あれ…俺なんか変な事言ったかな…

 

―――――――――――――――――――

 

それからも話は続いた、俺は四人から色々な事を教えてもらった。

転生悪魔とは何か、眷属とは何か、そして孤児院を経営していたのが悪魔だと言う事、そしてそれは保護を目的としていた事。

 

サーゼクス「と、言う事なんだが、何か質問は有るかな?」

 

レイ「えっと…じゃあ…孤児院の人達で生きてたのは俺だけですか?」

 

サーゼクスさんの言葉に俺は気になっていた事を聞いた。

 

サーゼクス「うん…他は皆…」

 

レイ「そうですか…」

 

セラ「………」

 

俺はサーゼクスさんにそう言った、セラさんもまた俯いてしまった。

俺には別に仲の良い子がいたわけじゃ無い、だから…悲しいかと聞かれても正直解らない。それでも…知ってる人が死んだと言うのは、何か…嫌だった。

 

レイ「それで…あの怪物は何ですか?」

 

サーゼクス「あれは…悪魔だよ」

 

レイ「えっ!?」

 

俺はサーゼクスさんの言葉に驚いた。

 

サーゼクス「ただ、あれは…はぐれ悪魔と言ってね、人間で言うところの犯罪者って感じかな。何より…あのはぐれ悪魔は力に溺れてしまった…」

 

レイ「力に…?」

 

サーゼクス「うん、でも安心して良い。主との関係がちゃんとしていればそんな事にはまずならないからね」

 

サーゼクスさんの言葉に俺はそんな事が有るのかと驚いていると、サーゼクスはそう言ってくれた。

 

レイ「分かりました、もう一つだけ良いですか?」

 

サーゼクス「構わないよ、何かな?」

 

レイ「セラさんとサーゼクスさん、二人は一体…何者なんですか?」

 

俺は最後に一番聞きたかった事を聞いた。

だってさっきから飲み物を持って来たりした人達は敬語で話してるし、凄く偉そうなお爺さんも頭を下げてたし…

 

サーゼクス「ああ、僕らは…」

 

セラ「よくぞ聞いてくれたね☆レイ君!」

 

レイ「セラさん?どうしたの?」

 

サーゼクスさんを遮って何故かテンションの上がったセラさんが話し出した。

 

セラ「レイ君…私達はね、魔王なんだよ☆」

 

レイ「魔…王?」

 

セラ「そう魔王、つまり一番偉いのよ☆」

 

セラさんは自慢気にそう言った。

 

レイ「そうなんだ…あれ?じゃあ俺は…」

 

セラ「そう!魔王の眷属それも女王になったんだよ☆」

 

レイ「セラさん…今更だけど良かったの…?俺なんかにそんな大事な物を使って」

 

セラさんが自慢気に続ける中、俺が申し訳なさそうにそう言うと。

 

セラ「当たり前だよ、レイ君はソーナちゃんを命懸けで守ってくれたんだから、女王の駒なんて安い物だよ」

 

レイ「セラさん…」

 

セラさんは急に真面目な顔になる。

 

セラ「でもね…一つだけ約束して」

 

レイ「約束?」

 

セラ「そう、もう二度とあんな無茶はしないって。私にとってソーナちゃんは凄い大事だけど…今はそこにレイ君も入ってるんだよ?」

 

レイ「俺も?」

 

セラさんの言葉に疑問で返すと、俺の両肩に手を置いて言った―――そして。

 

セラ「レイ君はもう、私の大事な女王であると同時に、ソーナちゃんと同じくらい大切な弟でも有るんだからね!」

 

レイ「そっか…ありがとう、セラさん」

 

ソーナ「レイ君…泣いてるの?」

 

レイ「えっ?あれ…何でかな、止まらないや…」

 

俺はセラさんの言葉を聞いて、気付いたら泣いていた。

 

セラ「レイ君、私は君の主でお姉ちゃんなんだよ?だから好きなだけ甘えて良いんだよ」

 

それを見たセラさんがそう言いながら抱きしめてくれた。

 

ソーナ「私も…レイ君のお姉さんです、私にだって甘えても良いんですよ?」

 

蒼那も少しだけお姉さん感を出して、同じ様に抱きしめてくれた。

 

レイ「ははっ…蒼那はお姉ちゃんって感じしないかな」

 

ソーナ「なっ…レイ君酷いです!」

 

俺がそう言うと、蒼那は少し拗ねた様に言った。

 

レイ「でも…これからもよろしくね?蒼那」

 

ソーナ「うん」

 

そんな蒼那の頭を撫でながら俺がそう言うと、いつもの蒼那に戻った。

 

ソーナ「そうだ、あのね?レイ君…私は本当はソーナ・シトリーって言うの、支取蒼那って言うのは人間界での名前なの、今まで言えなくてごめんね?」

 

レイ「そうなんだ、それじゃあ改めてよろしくね、ソーナ」

 

ソーナ「うん」

 

そして俺とソーナは改めて挨拶を交わした。

 

セラ「それじゃあ私も、私はセラフォルー・シトリー、今は魔王の名前を継いでセラフォルー・レヴィアタンだよ、よろしくね☆」

 

レイ「よろしくお願いします、えっと…セラフォルー様」

 

セラさんの自己紹介に俺がそう言うと。

 

セラ「うん!でも…公式の場じゃ無い時は、セラお姉ちゃんって呼んで欲しいなぁ~後敬語も使わなくて良いよ」

 

レイ「分かったよ、よろしくねセラお姉ちゃん」

 

セラ「レイ君が…レイ君が遂にお姉ちゃんって呼んでくれたぁ~」

 

セラさんに言われ、そう呼んでみたら、凄く嬉しそうに抱きしめてきた。

 

サーゼクス「では僕達も改めて、僕はサーゼクス・グレモリー、今はセラフォルーと同じく魔王の名を継いでサーゼクス・ルシファーと言うんだ、よろしくねレイ君」

 

リーシア「私はリーシア・ルキフグスです、よろしくお願いします」

 

グレイフィア「私はグレイフィア・ルキフグスです、よろしくお願いします、レイ様」

 

レイ「俺はレイです、よろしくお願いします、サーゼクスさん、リーシアさん、グレイフィアさん。

ところで…リーシアさんとグレイフィアさんはサーゼクスさんのメイドなんですか?」

 

二人とも改めて自己紹介をし、俺は気になって聞いてみた。

 

サーゼクス「いや、リーシアは僕の女王で、同時に妻でもあるんだよ。

グレイフィアはグレモリー家のメイドで、今は僕の補佐と妹の教育係をしてくれているんだ」

 

レイ「妻ってことは…夫婦なんですか?」

 

サーゼクス「うん、その通りだよ」

 

リーシア「はい」

 

レイ「そうなんだ⋯」

 

サーゼクスさんとリーシアさんの関係には素直に驚いた。

 

セラ「ちなみに、見て解ると思うけど、リーシアちゃんとグレイフィアちゃんは双子なのよ。

たまにどっちか分からなくなっちゃうくらい似てるんだよね☆」

 

グレイフィア「はい、私達を見分けられる方は余り居ません」

 

リーシア「グレモリー家でも、サーゼクス様くらいでしょうか?」

 

それは一目で分かったけど、仕えてる家でも間違えられるんだ⋯

 

セラ「そりゃあ、サーゼクスちゃんとリーシアちゃんは夫婦なんだから見分けられて当たり前でしょ☆」

 

グレイフィア「そうですね、私と姉を間違えられる様なら、少なくとも私はサーゼクス様の元には居ないでしょう」

 

セラお姉ちゃんの言葉にグレイフィアさんはそう言った。

まるで、間違えたら許さないとでも言う様に、まあ⋯夫婦なら間違わないよね。

 

レイ「そうですよね、でも⋯」

 

セラ「でも?」

 

レイ「リーシアさんとグレイフィアさんて、全然違いますよ?」

 

グレイフィア「えっ⋯」

 

リーシア「それは⋯本当ですか?」

 

俺がそう言うと、グレイフィアさんは目を見開いて、リーシアさんも驚きながらそう言った。

 

レイ「はい、言葉では上手く言えないですけど⋯なんとなく分かりますよ」

 

セラ「そうなの?う~ん、!じゃあレイ君、目を瞑ってくれる?」

 

レイ「?こうですか?」

 

セラお姉ちゃんに言われ、俺は目を瞑った。

 

セラ「うん☆少しそのままにしててね?リーシアちゃん、グレイフィアちゃん、こっちに来て☆

 

 

良し、目を開けて良いよレイ君☆」

 

レイ「はい」

 

少しして、セラお姉ちゃんに言われて目を開けると。

 

セラ「それじゃあレイ君に問題です、どっちがグレイフィアちゃんでしょうか☆」

 

「あの⋯これは⋯」

 

「流石に⋯」

 

そこには、服装はもちろん、髪型、立ち方、表情、全てが同一人物と言っても過言では無い二人の女性が立っていた。

 

サーゼクス「これは⋯正直に言って、知っていなければ僕でも解らないかも知れないな⋯」

 

セラ「さあレイ君?ど~っちだ?」

 

レイ「右です」

 

『えっ⋯』

 

セラ「嘘⋯」

 

サーゼクス「凄いな⋯」

 

ギル(!こいつ⋯そうか、なるほどな⋯()()にも目覚めていたか。

まだ自覚が無いからか、力が弱いからか、どちらにせよ今はこの程度。

だが⋯使いこなせれば⋯)

 

俺が即答すると全員が固まった。

 

レイ「あれ⋯違いました?」

 

グレイフィア「いいえ⋯正解です、私がグレイフィアです」

 

間違えたのかと思いそう言うと、右に立っていた女性がそう言った。

 

セラ「も、もう一回!レイ君、目を瞑って?」

 

レイ「はい」

 

セラお姉ちゃんは少し興奮気味に言った。

 

セラ「じゃあ⋯今度は⋯

 

「良し⋯レイ君良いよ☆二人とも、喋るのも駄目だからね?」

 

レイ「はい」

 

目を開けると、さっきと同じ光景が目に入る、違う所があるとすれば、今度は髪を下ろしてる事くらいだ。

 

セラ「さあレイ君?今度は見た目でしか判断出来ないよ?ど~っちだ☆」

 

レイ「また右ですよね」

 

全員『⋯⋯⋯』

 

俺はさっきと同じ様に即答すると、今度は全員が言葉を失った。

 

レイ「えっ⋯と」

 

ソーナ「すっ~ご~~い」

 

レイ「ソーナ?」

 

誰も何も言ってくれない中で、ソーナが大声でそう言った。

 

ソーナ「凄い!正解だよ、レイ君!」

 

レイ「良かった、合ってたんだ」

 

ソーナはハイテンションて俺の手を掴んで、振り回しそう言った。

 

リーシア「あの⋯」

 

レイ「はい?」

 

リーシア「何故⋯その⋯⋯なぜ⋯解るのですか?先程は口では説明出来ないと言っていましたが⋯」

 

レイ「そう言われても⋯なんと無く、としか⋯」

 

リーシア「そう⋯ですか⋯」

 

リーシアさんにそう聞かれるも、正直俺もよく分からない、本当になんと無く分かるくらいだ。

 

グレイフィア「⋯⋯⋯///」

 

レイ「どうしました⋯?グレイフィアさん⋯」

 

俺は黙ってしまったグレイフィアに声を掛けた。

もしかして、こんな実験みたいにされて怒っちゃったのかな⋯顔も少し赤いし⋯

 

グレイフィア「い、いえ⋯驚いているだけです⋯先程サーゼクス様も仰っていましたが、私達が服装や髪型や表情を同じにした場合、サーゼクス様すら見分けられない時があります。

なのに⋯貴方にとっては今日初めて会った私達を見分けられるとは思わなかった物でして⋯」

 

リーシア「そうね⋯」

 

グレイフィアさんがそう言うと、リーシアさんも同意する様に言った。

 

サーゼクス「本当に驚いたね⋯」

 

セラ「うん、私も解るとは思わなかったよ⋯」

 

ソーナ「凄い凄い!!」

 

そして、セラお姉ちゃんとサーゼクスさんがそう言う中、ソーナだけは俺の手を取ってはしゃいでいた。

 

 

 

サーゼクス「おっと、もうこんな時間か…セラフォルー、僕達はそろそろ失礼するよ」

 

セラ「そうなの?」

 

サーゼクス「ああ、まだ仕事も残ってるからね」

 

セラ「分かった、今日はありがとうね☆三人共」

 

サーゼクス「構わないよ、それじゃあねセラフォルー、ソーナ君、レイ君、行こうかリーシア、グレイフィア」

 

グレイフィア「はい、サーゼクス様」

 

リーシア「では⋯失礼致します」

 

セラ「うん、またね☆」

 

ソーナ「はい」

 

レイ「はい、ありがとうございました」

 

そう言ってサーゼクスさんとリーシアさんとグレイフィアさんは帰っていった⋯と思ったら、グレイフィアさんが入り口で立ち止まり。

 

グレイフィア「⋯レイ様」

 

レイ「はい?」

 

俺に声を掛けた来た、何かと思い首を傾げると。

グレイフィアさんは俺の元に近寄って来て。

 

グレイフィア「姉と私、見分けて頂き⋯とても嬉しかったです、ありがとうございました」

 

俺の耳元で、小声でそう言った。

 

レイ「い、いえいえ!こちらこそ、実験みたいにしちゃってすいませんでした」

 

グレイフィア「いいえ⋯そんな事ありません、殆どの方が私を姉と間違えるのに⋯貴方は間違う事なく私を選んでくれました。

本当に⋯本当に、嬉しかったです」

 

俺がそう言うと、グレイフィアさんは小さく首を振り笑顔でそう言った。

 

レイ「そ、そうですか、なら⋯良かったです」

 

グレイフィア「はい///では⋯失礼しますね」

 

そして、グレイフィアさんも部屋を出ていった。

 

 

 

レイ「あれ…」

 

ソーナ「レイ君!?どうしたの」

 

セラ「疲れちゃったんだね…病み上がりだったのにごめんね?レイ君」

 

俺は三人が出ていってすぐにベッドの上に倒れてしまった。

 

レイ「いえ…大丈夫です」

 

セラ「今日はゆっくり休んでね、私達も行こう?ソーナちゃん」

 

ソーナ「はい…レイ君…また明日ね?」

 

二人が俺を気遣い出ていこうとするが。

 

レイ「待って…二人共…」

 

そんな二人を引き止め、辛いのを我慢して身体を起こす。

 

ソーナ「レイ君!?」

 

セラ「無理しちゃ駄目だよ!」

 

二人は心配してくれるけど、俺はどうしても二人に伝えたい事があった。

 

レイ「セラフォルー様そしてソーナ、俺を孤独から救ってくれてありがとうございました。

俺はこれから魔王セラフォルー・レヴィアタン様の女王としてセラフォルー様の為に命を懸けて働き、忠誠を尽くします。

そして、どんなことがあってもセラフォルー様とソーナを必ず守っていきます、だから…これからも…よろしくお願いします」

 

俺は二人に頭を下げた、正しい作法なんて知らないからただ頭を下げただけだ。

 

セラ「レイ君…ありがとう、こちらこそよろしくね、私の女王」

 

ソーナ「そうです…私の方こそよろしくお願いします、でも…次からは守られるばかりじゃ無いからね…?レイ君」

 

二人はそう言って、もう一度俺は抱きしめて、ベッドに戻してくれた。

そして二人が出ていくと同時に、俺の意識は無くなった。

 

―――――――――――――――――――

 

レイ「んっ…ここは?」

 

「ここはお前の精神世界だ」

 

俺は眠ったはずなのに気付いたら真っ白な空間に居て、後ろから聞き覚えのある声がしたので振り向くと。

 

レイ「ギル」

 

ギル「生きてて何よりだ、我の宿主よ」

 

そこに居たのはやはりギルだった。

 

レイ「ギル…改めてお礼を言わせて…ありがとう、ギルのお陰でソーナも俺も生きてるよ」

 

ギル「お前は一度死んだがな」

 

レイ「そうだけど…」

 

俺はギルにそう言うと、ギルは笑いながらそう返してきた。

 

レイ「ところで、何で俺はここに?」

 

ギル「我が呼んだからだが?」

 

レイ「何でわざわざ?確か話しだけならあっちでも出来るんじゃ無いの?」

 

確かその筈だギルが死ぬ前にそう言ってた記憶があるし。

 

ギル「ああ、そうなんだがな…理由は二つだ、一つ目はお前を鍛える為で、二つ目は俺はお前以外と話すつもりは無い」

 

俺の質問にギルは淡々と答える

 

レイ「鍛えてくれるの?」

 

ギル「ああ、但し此処で出来るのはあくまで知識を鍛える事だ、戦術に武器や神器を使っての戦い方、それだけだ、それを実戦で使いこなせるかは現実でのお前次第だ、だからお前はそれらの勉強は此処でして現実では身体を鍛えろ」

 

レイ「身体を鍛えるだけで良いの?」

 

ギルの言葉にそれだけ?と思いそう聞くと。

 

ギル「そうだ、簡単に言えば感覚や知識はこっちで覚えた物を持ち帰れるが、肉体の方はいくら此処で鍛えたとて向こうには反映されないからな、それに…守るのだろう?あの二人を」

 

レイ「うん…守るよ、絶対に!」

 

どうやらギルは俺の目的に力を貸してくれるらしい。

 

ギル「ならばやれ」

 

レイ「分かった、ところでもう一つの理由は何で?」

 

ギル「奴等は立場を弁えぬ不届きな輩だからだ」

 

俺がそう聞くと、ギルは忌々しそうに答えた。

 

レイ「輩?」

 

ギル「お前には前に三つの武器をやった時に言っただろ?他にもあったと」

 

レイ「そう言えば…今では他の人の手に有るとか言ってたね」

 

俺はあの時の会話を思い出した。

 

ギル「この世のありとあらゆる物は全て元は我の物だった、聖剣も魔剣もこの世界では神滅具(ロンギヌス)と呼ばれる物まで全てだ、それを我の死後人間も悪魔も天使も堕天使も、そしてそれ以外の全ての種族も我の宝物庫を勝手に開き漁り、強奪して行った、その様な輩と会話などする気は無い」

 

レイ「そうなんだ…確かにそれは怒って当然だね」

 

ギルは相当に不愉快なのだろう、凄い剣幕で怒鳴っていた。

 

ギル「そうだろう?だがお前は別だ、我を宿らせたんだ…ちゃんと面倒を見てやるさ」

 

レイ「ありがとう…ギル」

 

ギル「ふんっ」

 

ギルの有難い言葉に俺はお礼を言った。

 

レイ「ところで…もしかして俺を鍛えて、財宝を取り戻させようとしてる?」

 

ギル「いや、心底忌々しいが…今の(おれ)では使えんからな…お前の好きにすれば良いさ、それに全て無くなった訳では無い、特に()()()は決して見付からない様にしてあったしな」

 

レイ「()()()って?」

 

ギルは俺に取り戻せとは言わなかった、だが最後の言葉が気になり聞いてみると。

 

ギル「さあな、お前がもっと力を付ければその内解るさ」

 

レイ「…そっか」

 

ギルは"あれら"と言った物については答える気が無い様なので、俺もそれ以上の追及は止めた。

 

ギル「とにかく、お前はお前の目的を果たす事だけを考えていれば良い、分かったな」

 

レイ「うん、じゃあ改めて…これからよろしくね、ギル」

 

ギル「ああ、とりあえず今日は休め、ただし明日からは覚悟しておけよ?」

 

レイ「うん」

 

そうして視界が暗くなり始め、俺は完全に眠りについた。

 

 

ギル「強くなれ、そしていずれ…」

 



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それぞれの思い

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ソーナside

 

ソーナ「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

私は今日も勉強と特訓に勤しんでいた、あの日…レイ君に助けられた日からずっと…

あれから三日が経ったが、未だにレイ君は目覚めない。

あの後、お姉様から私達を襲ったのが悪魔だと聞いて驚いた、私は今まではぐれ悪魔と言う者の存在を知らなかったからだ。

お姉様からはまだ知らなくて良い事だったから教えていなかったと言われた。

確かに、あの時の私が知っていたからと言って…何かが出来た訳じゃ無い。

それでも…あの時の私は、レイ君にただ守られていただけだった、悔しかった…情けなかった…私のせいで…レイ君は傷付き一度は死んでしまった。

だから私は決めた、もう二度とあの時の様な思いはしないと…次に同じ事があっても、その時は私から助けて、守れるだけの存在にはならないと。

 

ソーナ「はぁ…はぁ…もう一回…」

 

「今日はここまでにしましょう、ソーナお嬢様」

 

私の特訓をしてくれてるのはお父様の元眷属で今はシトリー家の執事長をしている人だ。

 

ソーナ「お願い…もう一回…だけ…」

 

「これ以上は身体に悪うございます、それにそろそろセラフォルー様と交代の時間では?」

 

ソーナ「えっ…そうだった、すぐに行かないと…」

 

私は執事長の言葉で思い出し、すぐにお風呂に入り、着替えて、レイ君の寝ている部屋に向かった。

 

ソーナ「お姉様、そろそろお仕事の時間で……レイ…君…?」

 

レイ「蒼…那…」

 

私がそう言いながら、扉を開け、入っていくと、私を呼ぶ声が聞こえた、そちらを向いた私は、つい呆けてしまった、

 

ソーナ「レイ君!レイ君!!」

 

レイ「おっと…蒼那…」

 

私はすぐに走りだしていた、そして―――レイ君に抱きついた、レイ君はそんな私を優しく抱きとめてくれた。

 

ソーナ「良かった…本当に…良かった…」

 

私がそんな風に泣いていると。

 

セラ「んんっ…ソーナちゃん…?」

 

お姉様が起きてしまった。

 

レイ「あっ…おはようございます、すみません…起こしてしまって」

 

セラ「うん、おはようレイ…君……レイ君!?」

 

レイ君のまるでいつもの事の様な挨拶に、お姉様も始めは普通に返事を返した物の、とても驚いていた。

 

―――――――――――――――――――

 

その後、私達は二人一緒にレイ君に抱きついて、かなり長い時間泣いてしまった。

でも、その間レイ君は何も言わずに、私達の頭を撫でてくれていた。

泣き止んで、冷静になってから少し恥ずかしくなったけど。

 

レイ「良かった…それで…ここは一体…それに…」

 

その後、レイ君がここの場所を聞いてくると、お姉様はレイ君に説明は少し待ってと言って部屋から出ていった。そしてお姉様が部屋を出ていった後。

 

ソーナ「レイ君…」

 

レイ「蒼那…良かった…、怪我は無さそうだね」

 

私の声に、こちらを向いたレイ君は優しい声で言ってくれた。

 

ソーナ「うん…レイ君が…守ってくれたから…」

 

レイ「そっか…それなら良かったよ…本当に…」

 

私がそう答えるとレイ君は安堵したのか、笑顔になった。

 

ソーナ「レイ君…ごめんね…私…私…」

 

私は、レイ君が起きたら言わなくちゃと思ってた事を言おうとしたのだが、言葉が出て来なくて、泣いてしまった。

 

レイ「蒼那…?どうした?何で泣くんだ?」

 

レイ君は心配そうに、私に聞いてくる。

私は、意を決して答える。

 

ソーナ「だって…私のせいで…レイ君が…」

 

泣きながらも、私は答えた。

 

レイ「蒼那、それは違うよ…あれは俺が勝手にやった事だから、俺の方こそ…恐い思いさせてごめんね?」

 

すると、レイ君は優しく慰めてくれながら、私の頭を撫でてくれる。

 

ソーナ「そんな事無い!!レイ君は私を守ってくれた…でも…私は何も出来なかった…」

 

それに対し、私は大きな声で返した。

あの時、本当なら私がレイ君を守らなきゃいけなかったのに…怖くて何も出来なかった―――そんな、事を思いながらも言えずにいた。

 

レイ「蒼那…」

 

すると、レイ君が私を呼んだので、顔を上げると―――私は抱きしめられた。

 

ソーナ「っ…レイ君…!?」

 

突然の事で私はびっくりして、戸惑っているのに。

 

レイ「………」

 

レイ君は何も言わずに、抱きしめたままだ。

私も徐々に心地が良くなり、自然とレイ君を抱きしめ返していた。

すると、レイ君は更に強く抱きしめ返し。

 

レイ「蒼那…本当に無事で良かった…」

 

ソーナ「うん…レイ君も…無事で良かった…」

 

少しして私を離して私の顔を見て、そう言ってくれた。

私はレイ君から離れたく無かったが、おとなしく離れて、私もレイ君の顔を見ながら返事を返すと、レイ君と目があった。

 

二人「ふっ…あははっ」

 

目が合って少しすると、私達は笑いあった。

 

―――――――――――――――――――

 

それから、私達が話していると、お姉様がサーゼクスさんとリーシアさん、グレイフィアさんを連れて帰ってきた。

その後、お姉様とサーゼクスさんがレイ君にはぐれ悪魔の事や転生悪魔の事など、あの時のそして後の事、そしてレイ君の神器の事を話していた。

 

ソーナ「じゃあ…私の事…怖くない?」

 

話が終わった後、私はレイ君に恐る恐る聞いた。

正直怖かった…私が人間じゃ無いと知ったレイ君が私を嫌いになるんじゃないかと。

 

レイ「なんで蒼那を怖がるの?」

 

でも、レイ君は不思議そうに聞いてきた。

 

ソーナ「だって…悪魔だから…」

 

私が、聞いた理由を言うと。

 

レイ「そんなの…蒼那は蒼那だろ?怖くないよ、それどころか俺は蒼那もセラさんも大好きだよ?それに話を聞く限り、俺ももう悪魔なんだろ?一緒だな!だから泣くなよ、蒼那」

 

レイ君は、笑顔で言ってくれた。

 

ソーナ「うん…うん…!」

 

私は嬉しくなり、またレイ君に抱きついた。

 

―――――――――――――――――――

 

それからは、サーゼクスさんとリーシアさんが夫婦だという事や、サーゼクスさんとお姉様が魔王だと言う事など、皆で色んな話しをした。

途中、レイ君が泣いていたので心配になったが、すぐに笑顔に戻って安心した。

 

ソーナ「私も…レイ君のお姉さんです、私にだって甘えても良いんですよ?」

 

お姉様がレイ君を弟と言ったので、私もちょっとだけ姉の様に言うと。

 

レイ「ははっ…蒼那はお姉ちゃんって感じしないかな」

 

ソーナ「なっ…レイ君酷いです!」

 

レイ君からは、そんな風に言われて、私が少し拗ねると。

 

レイ「でも…これからもよろしくね?蒼那」

 

ソーナ「うん」

 

私の頭を撫でながらそう言ってくれて、私は少し恥ずかしくなりながらも頷いた。

 

―――――――――――――――――――

 

サーゼクスさん達が帰って行った後。

 

レイ「あれ…」

 

レイ君はいきなり後ろに倒れてしまった。

 

ソーナ「レイ君!?どうしたの」

 

私は慌てて、レイ君の元に行くと。

 

セラ「疲れちゃったんだね…病み上がりだったのにごめんね?レイ君」

 

お姉様がとても優しい声で謝罪する。

お姉様と私が、レイ君にしっかり休む様に言い、部屋を出ようとすると。

 

レイ「待って…二人共…」

 

レイ君はそう言い、明らかに無理をしてるのがわかるように立ち上がった。

 

ソーナ「レイ君!?」

 

セラ「無理しちゃ駄目だよ!」

 

私達がそれに驚き、レイ君の傍に行くと。

 

レイ「セラフォルー様そしてソーナ、俺を孤独から救ってくれてありがとうございました。

俺はこれから魔王セラフォルー・レヴィアタン様の女王としてセラフォルー様の為に命を懸けて働き、忠誠を尽くします。

そして、どんなことがあってもセラフォルー様とソーナを必ず守っていきます、だから…これからも…よろしくお願いします」

 

レイ君はそう言って、私達に頭を下げた。

 

セラ「レイ君…ありがとう、こちらこそよろしくね、私の女王」

 

ソーナ「そうです…私の方こそよろしくお願いします、でも…次からは守られるばかりじゃ無いからね…?レイ君」

 

お姉様がそう言って、私はさっき言えなかった事を全てでは無いけどレイ君に伝えた。

私達はもう一度レイ君を抱きしめ、少ししてからベッドに寝かせた。

 

ソーナ「ありがとうレイ君、早く元気になってね……私も…強くなるから…」

 

私は小さな声で呟き、部屋を出て行った。

 

ソーナsideout

 

―――――――――――――――――――

 

セラside

 

私は驚いていた、起きたらレイ君が目を覚ましていたからだ。

それから少しだけ話して、私は三人を呼びに部屋を出た。

 

―――――――――――――――――――

 

部屋を出てすぐに転移して、三人の元に向かった。

 

セラ「サーゼクスちゃん!!」

 

サーゼクス「そんなに慌ててどうしたんだい?セラフォルー」

 

急いでる私に対しても、変わらず冷静に聞いてくる。

 

セラ「レイ君が…レイ君が目を覚ましたの」

 

サーゼクス「本当かい?それは良かった」

 

私がそう言うと、サーゼクスちゃんも笑顔で返してくれた。

 

セラ「それでね?悪いんだけど…レイ君に説明する為に、今から一緒に来てもらえるかな?」

 

サーゼクス「もちろんだよセラフォルー。それじゃあ早速行こうか、リーシア、グレイフィア」

 

リーシア&グレイフィア『かしこまりました』

 

まだ仕事が残ってるのを見て、私は少し申し訳なく思いながらも聞くと、二人はすぐに快諾してくれた。

 

セラ「良かった~じゃあ行くよ!」

 

三人『ああ(はい)』

 

私は、すぐに転移を開始して、二人を連れて家に戻った。

 

―――――――――――――――――――

 

 

家に戻ると、扉越しにレイ君とソーナちゃんが楽しそうに会話しているのが聞こえた。

 

セラ(良かった…ソーナちゃんにやっと笑顔が戻った)

 

あの日から笑わなくなり、鍛練に明け暮れていたソーナちゃんに私は何も言えなかった。

 

セラ「ごめんね~二人共、少し遅くなっちゃった」

 

私は扉を開けてから、二人に声をかけた。

 

お帰りなさい。二人からのそんな言葉だけで、私は凄く嬉しくなった。

その後、レイ君に二人を紹介した。それからまず私達はレイ君にあの日の事を聞いた、その途中レイ君は神器の事も口にした。

でも、サーゼクスちゃんは一度私の方を見てから「説明が先だよ」と言わんばかりに話を戻した。

 

後で詳しく教えて貰おうっと。

 

その後、色々な事をレイ君に説明した。

私は正直レイ君に嫌われるんじゃ無いかと不安だった…

でもレイ君は感謝していると言ってくれた…、その後に―――

 

レイ「俺は…今までずっと一人で…生きてても何も思わなかったんです。

でも…意識を失う寸前に思ったんです、死にたく無いって、生きたいって、初めて…そう思ったんです」

 

レイ君は泣きそうな声で、そう言った。

 

ソーナ「っ…レイ君!レイ君は一人じゃないよ!私もお姉様もいるよ!!」

 

でも、そんなレイ君にソーナちゃんが、抱きつきながらそう言ってくれた。

 

セラ「そうだよ!レイ君はもう一人じゃないよ?」

 

もちろん私だってレイ君が大切、だから私もソーナちゃんの後に続いて言った。

すると、レイ君は笑顔に戻った。

ソーナちゃんがレイ君に怖く無いのかと聞いた時は私も少し緊張したけど、レイ君が「俺は蒼那もセラさんも大好きだよ」と言ってくれた時は本当に嬉しかった。

それからは転生悪魔の事、私達が魔王だと言う事とか、色々な話をした。

中でも孤児院の話の時は、少し暗くなっちゃった…

だから、私が魔王だって話の時は、ちょっとだけテンションを上げて話しちゃった…

レイ君には少し不思議そうな顔をされたけど、多分サーゼクスちゃん辺りには意図も含めて全部気付かれてるだろうなぁ。

 

でも、その後レイ君が「俺なんかにそんな大事な物を使って」って聞いてきた事には思わず真剣になっちゃった…

無茶をしないでって言ったら不思議そうな顔をされた。

その時私は少し悲しかった、ああ…この子は自分の命を大事にしてないって感じちゃったから…

だから私は今の思いを素直にレイ君に伝えた、でもまさか泣いちゃうとは思わなかったよ。

私がレイ君に「甘えて良いんだよ」って言って抱きしめたら、ソーナちゃんも同じ様にしてたね。

 

それからソーナちゃんが思い出した様に本当の名前での自己紹介をしたから、私達もレイ君に改めて自己紹介をした。

その時レイ君は気になってたらしいサーゼクスちゃんとリーシアちゃん二人の事を聞いて、二人が夫婦だと言う事知って驚いてた。

それに、レイ君は二人と付き合いの長い私達でも見分けられない時があるリーシアちゃんとグレイフィアちゃん、そんな二人が解るって言うから二人を全く同じ姿にしてグレイフィアちゃんを選んで貰ったら、本当に当たっちゃった⋯しかも二回も。

私とサーゼクスちゃんはもちろん、リーシアちゃんとグレイフィアちゃんまでもが、目を見開いて絶句してたし⋯

ソーナちゃんだけは凄いって目をキラキラさせてた。

 

その後も話しは続いた、暫くしてからサーゼクスちゃんが仕事が残ってるからとリーシアちゃんと帰って行った。

グレイフィアちゃんが何かレイ君に話してたんだけど⋯

 

グレイフィアちゃんが出てすぐにレイ君が倒れちゃって、すぐにベッドに横にした。

目覚めたのが嬉しくて、つい病み上がりなのを忘れちゃってたみたい。

ソーナちゃんを連れて部屋を出ようとしたら、レイ君が辛そうに起き上がるからびっくりしたよ。

その後、レイ君からあんな事言われちゃった時は正直泣きそうになっちゃった。

余りに嬉しくて、レイ君にお礼を言ってからもう一度だけ抱きしめちゃった。

私達はその後、レイ君をまたベッドに戻してから―――

 

セラ「お休みレイ君…早く元気になって、また三人で遊ぼうね…」

 

私は、そんな事を呟き部屋を出た。

 

セラ(そういえば、私もまだ仕事が有るんだったよ…)

 

私は部屋を出てから、今日一日仕事をしてない事を思い出してしまった…

 

セラsideout

 

―――――――――――――――――――

 

サーゼクスside

 

僕は今日も仕事をしていた、するといきなりセラフォルーがレイ君の目が覚めたと飛び込んで来た。

すぐにリーシア、グレイフィアと共に、レイ君の元に向かった。

 

セラフォルーの家に着き、レイ君の所に行くと、とても元気そうにソーナ君と話していた。

それから僕はレイ君と色々な話をたくさんした。

その中でも、レイ君がリーシアとグレイフィアを見極められた事には本当に驚いた。

 

そして、気付いたら夕方になっていたので、リーシア、グレイフィアと共に帰る事にしたのだが。

 

グレイフィア「サーゼクス様」

 

サーゼクス「ん?なんだい?グレイフィア」

 

扉を出る直前、グレイフィアがそう言った。

 

グレイフィア「すみませんが、少々時間を貰ってもよろしいでしょうか⋯」

 

サーゼクス「うん、それは構わないけど⋯!ああ、なるほど。

それじゃあグレイフィア、君は用事が済み次第家に戻ってくれ、では僕達は先に行こうかリーシア」

 

リーシア「はい、サーゼクス様」

 

グレイフィア「ありがとうございます」

 

僕はグレイフィアの表情から大体の事を悟りそう言うと、グレイフィアは綺麗なお辞儀と共にそう言った。

 

 

 

サーゼクス「グレイフィアのあんな顔、初めて見たね」

 

リーシア「そうですね、私も長い事あの子の姉をしていますが、あんな顔は初めて見ました。

ですが、それも仕方無いかと⋯今日会ったばかりにも関わらず私達を見分けるなど⋯」

 

サーゼクス「そうだね⋯それは僕にも出来なかった事だ」

 

リーシア「はい」

 

僕はリーシアにそう言うと、リーシアも表情は変えずにそれでも嬉しそうにそう言った。

そう、僕もリーシアと結婚してすぐの頃は二人を間違える事が有った。

 

サーゼクス「⋯もしかしたらだけど」

 

リーシア「はい、恐らくはそうなるかと」

 

未来の可能性の事を思いそう口にすると、リーシアも同じ事を考えていたのか、すぐにそう答えた。

 

サーゼクス「そうか、なら⋯いつそうなっても良い様、準備しておかないとね?」

 

リーシア「そうですね⋯ご迷惑をお掛けします」

 

サーゼクス「なに、義妹のためならば構わないさ」

 

リーシア「ありがとうございます」

 

僕がそう言うと、リーシアは頭を下げそう言った。

 

サーゼクス「それにしても、セラフォルー程の実力を持ってしても女王の駒以外では転生出来なかった、そんな彼は一体何者なんだろうね」

 

リーシア「そうですね…相当な潜在能力を秘めているのでしょう」

 

部屋を出てから、僕は気になった事をリーシアと話していた。

 

サーゼクス「そうだね…あんな状況で無ければ、喜ばしい事だったんだけどね…」

 

リーシア「はい…」

 

僕はあの時の惨状を思い出していた。

 

―――――――――――――――――――

 

レイ君をセラフォルーに任せて、僕は孤児院に一度戻って来た。

 

サーゼクス「これは…本当に酷いな…」

 

僕は建物の中に入り、その光景に眉を潜め、そう呟いた。

 

リーシア「サーゼクス様」

 

二手に別れていたリーシアが戻って来た。

 

サーゼクス「リーシア、そっちはどうだった?」

 

リーシア「いいえ…」

 

僕が聞くと、リーシアは小さくそう言い、首を横に振った。

 

サーゼクス「そうか…レイ君以外は…」

 

リーシア「はい…」

 

皆…殺された…僕は改めてその事実を突き付けられた。

 

サーゼクス「くそっ…何故…よりにもよって…ここを…」

 

リーシア「サーゼクス様」

 

サーゼクス「ああ…済まない、リーシア」

 

リーシア「いえ…お気持ちは痛い程に伝わります」

 

僕はつい感情的になってしまったが、リーシアに窘められて、冷静になれた。

 

サーゼクス「冥界に戻ろうか…リーシア、すぐに人を集めてくれ、彼等をちゃんと…供養してあげないと…」

 

リーシア「かしこまりました」

 

リーシアにそう命令を下し、僕はもう一度振り返り彼等に手を合わせた。

 

サーゼクス「レイ君だけは、魔王の名に懸けて…必ず助けなければ…」

 

僕はそう呟きながら、冥界に戻った。

 

サーゼクスsideout




プロローグは取りあえず完結です。

次の章からは女王になってから原作迄の話を出来るだけ簡潔に書きたいと思います。
内容はレイと一部原作キャラ達の出会いです。
ちなみにレイの眷属の話しは、これから先の本編の中で少しずつ触れる予定なので、次の章では説明無しに、眷属が一通り揃います(一部原作キャラの眷属は書く予定です)。

ようやく、四人以外の原作キャラが出せる…

最後に―――次の章の時点で色々なキャラの配置や関係性を弄りますが、これからも宜しくお願いします。


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第0.5章 ~成長と出会い~
【6歳】もう一人の幼馴染みと親子


新章開始です。

この章はご都合主義ここに極まれりな展開になると思います。

5/9 サブタイ変更

9/6 本文編集

10/4 サブタイ変更&本文編集

10/11 本文編集

11/11 本文改定

11/24 本文編集

2/1 本文編集


数ヶ月前、俺の世界は一変した。

産まれてからの5年間、俺はずっと一人だった…親も知らない、友達もいない、正真正銘の孤独だった。そして…それはいつしか…当たり前になっていた。

でも…そんな俺を救ってくれた人が二人いた。

それが、セラフォルー・レヴィアタン様とソーナ・シトリーの姉妹。

二人は、俺が知らなかった事を色々と教えてくれた。

誰かといる事の楽しさ。

誰かと遊ぶ事の楽しさ。

誰かと食べるご飯の美味しさ。

そして何よりも…二人と居る時だけは、俺も笑顔になれた。

気付けば…二人は俺の中で、何よりも大切な存在になっていた。

 

だから…俺は決めたんだ。

例え何があろうと、二人の為なら…俺はどんな手を使ってでも、必ず守ると。

その結果、俺が死ぬことになったとしても…構わないと。

俺はあの日、そう決めて…誓ったのだから。

 

―――――――――――――――――――

 

あれから一年が立った。

 

あの日の翌日から、俺の一日は凄い勢いで変わっていった。

学も力も何も無い、唯一あるのは神器のみ。

はっきり言って"無価値"それが周りからの俺に対する評価だった。

中には、そんなのがセラフォルー様の…魔王様の女王と言う立場に居る事を不快に思ったのだろう、正面から罵詈雑言を浴びせて来る奴も居た。

でも…それはもう遅い。

その時にはもう既に…俺は自分の道を決めていたのだから。

例えそれが、どれだけ困難で厳しくても…成し遂げて見せると。

そして必ず、セラフォルー様の役に立ってみせると、その為に必要な事なら何でもやると。

だから、俺が折れる事は決して無い。

そして、翌日より始まったのが…勉強と修業の日々。

ギルからは身体を鍛えろと言われたのを思い出し、ランニングや筋トレ等々思い付く物は全てやった。

勉強の方はソーナと共に、シトリー家の教育係りから教えられた。

そして、夜になり眠りにつけば、ギルに呼ばれ目覚めるまで武器や神器の扱いと共に戦術を徹底的に叩き込まれる。

 

それが、俺の一日。

当然、最初はどれもまともに出来る訳がなかった。

それでも、俺は決して諦める事も弱音も吐く事はなかった。

当然だ。そんな事をすれば俺だけでなく、セラフォルー様はもちろんソーナやそんな俺を何も言わずに受け入れてくれたシトリー夫妻が矢面に立たされるからだ。

セラフォルー様を魔王と言う立場から引き摺り下ろしたい奴やシトリー家に不満がある奴からしたら、俺は必ず汚点として映る筈だから。

ただ、シトリー夫妻についてはびっくりした…なにせ挨拶をと部屋に呼ばれたので向かうと、何故かいきなり俺に頭を下げ「ソーナを助けてくれて本当にありがとう」と、お礼を言われたからだ。

それに対して俺がどうすれば良いのか分からずにいると、二人が俺を抱きしめてくれた。

そしてその時に私達二人を親だと思ってくれて良いと、ここを自分の家だと思ってくれて良いと、そう言ってくれたから。

だから俺は俺に出来る事は何だってするし、周りの声なんか関係無い。

それから日を追う毎にセラフォルー様、ソーナ、シトリー夫妻の四人が俺の中で大切で、大きな存在になっていくと同時に、俺はこの人達の役に立てる様になるのだと、そんな思いがどんどん強くなった。

夫妻からは「レイ君の立場は色々と面倒で大変だろうけど決して君は一人じゃない、いつでも私達やセラフォルーに甘えなさい」と言ってくれた。

その言葉に俺が思わず泣いてしまうと、二人はまた抱きしめてくれた。

だから、どんなに馬鹿にされようと見下されようと俺は諦めたりしない。

全てはセラフォルー様、ソーナ、夫妻、四人の為に。

俺はそれだけを原動力にして、毎日毎日そんな日々を繰り返していた。

次第に自分でも分かる成果が出てくる、ランニングは時間内で距離が伸び、勉強で解らない所を質問する回数は減り、ギルからも「良い感じだ、だが此方でも彼方でも、手など決して抜くなよ?」等と、注意混じりに褒められたりと。

少しずつだが、確かに成長していった。

 

―――――――――――――――――――

 

そして今、俺はセラフォルー様に呼ばれ執務室に来ていた。

 

レイ「失礼します、セラフォルー様」

 

セラ「来たね☆レイ君」

 

ソーナ「レイ君!」

 

中に入るとセラフォルー様は笑顔で手を振り、ソーナが抱き付いて来た。

 

レイ「おっと…ソーナも呼ばれたのか?」

 

ソーナ「うん、リーアちゃんの所に行くんだって」

 

ソーナを抱き留めそう聞くと、嬉しそうに笑いながら頷きそう言った。

 

レイ「リーアちゃん?」

 

セラ「リーアちゃんって言うのはリアスちゃんの愛称でね、サーゼクスちゃんの妹なのよ」

 

レイ「サーゼクスさんの」

 

俺がそう聞くと、セラフォルー様が答えてくれた。サーゼクスさんにも妹が居たんだ。

 

レイ「でも何で俺まで?」

 

セラ「ソーナちゃんにはリアスちゃんに会いに行くって言ってあるんだけど、実際は人間界でのお仕事なの」

 

レイ「そうですか」

 

友達の家に遊びに行くのになぜ俺も?と思ったが、どうやら仕事らしい。

 

セラ「それでね?レイ君には私達が仕事してる間、二人の護衛兼遊び相手を頼みたいの、良いかな?」

 

レイ「もちろんです、任せて下さいセラフォルー様」

 

セラフォルー様の頼みに、俺は迷わずそう言った。

 

セラ「うん☆それじゃあ行こうか」

 

レイ&ソーナ「はい」

 

セラフォルー様の言葉に、二人揃って返事した。

 

―――――――――――――――――――

 

人間界に転移してから、少し歩くと目的地に着いた。

 

サーゼクス「やあセラフォルー、それにレイ君も久し振りだね、良く来てくれた」

 

中に入ると、俺達に気付いたサーゼクスさんに話し掛けられた。

 

レイ「お久し振りです、サーゼクスさん」

 

サーゼクス「ああ、それにしても君は相変わらずだね、僕を"さん"と呼んでくれる」

 

俺がそう返すと、サーゼクスさんは笑顔でそう言った。

 

レイ「はい、俺が"様"と言う敬称で呼ぶのはセラフォルー様だけと決めてますから。たとえ相手が誰だろうと」

 

俺はセラフォルー様以外を"様"と言う敬称で呼んだ事は一度もない、それがサーゼクスさんや他の魔王だろうと。

 

サーゼクス「そうか、出来ればこれからもそう呼んでくれると嬉しいよ、当たり前では有るんだけどね…周りは誰もが僕を魔王様として接して来るから、レイ君の様な存在はありがたいよ」

 

レイ「そうですか、なら良かったです」

 

俺の言葉に、サーゼクスさんは本当に嬉しそうにそう言った。

 

セラ「私だってプライベートではお姉ちゃんって呼ばれてるもん」

 

レイ「いきなりどうしたんですか?」

 

何故か頬を膨らませ、対抗するかの様にセラフォルー様は、いきなりそう言った。

それに、俺がそう聞くと、サーゼクスさんが俺の耳元に来て―――

 

サーゼクス「そうなのかい?」

 

レイ「ええ…まあ…一応、そう呼ばないと返事してくれないので…」

 

サーゼクス「レイ君も大変だね…」

 

小声でそう聞いてきたので、俺も小声で言うと、サーゼクスさんは苦笑いしながら返事してくれた。

 

セラ「もう!何を二人だけで話してるのさ!レイ君は私のなんだからね!!」

 

サーゼクス「分かってるよセラフォルー」

 

すると、更に頬を膨らませたセラフォルー様は俺の腕に抱き付いてきた。

三人でそんなやり取りをしていると。

 

ソーナ「サーゼクスさん、リーアちゃんは?」

 

ソーナがサーゼクスさんに友達の居場所を聞いた。

 

サーゼクス「リアスなら、もう部屋に居る筈だよ?二人で行って来ると良い」

 

ソーナ「分かった!レイ君、一緒に行こ?」

 

サーゼクスさんから妹さんの居る場所を聞いたソーナは俺の腕を取り、可愛らしく首を傾げ言った。

 

レイ「うん、では失礼します」

 

俺は、それに頷くと二人にそう言って歩き出した。

 

サーゼクス「ああ、二人の事を頼んだよ」

 

セラ「よろしくね☆レイ君☆」

 

レイ「はい」

 

二人に言われて俺はソーナに手を引かれて歩きながら二人に顔だけを向けて頷き、返事をした。

 

ソーナ「ここかな?リーアちゃん居る~?」

 

ここかな?と言いながらもソーナは躊躇なく扉を開け、そう言った。

 

リアス「ソーちゃん!!」

 

ソーナ「リーアちゃん!!」

 

部屋はどうやら合ってた様で、二人は出会うなり抱き合った。

 

リアス「後ろの子はだぁれ?」

 

ソーナ「この子はレイ君だよ、お姉様の女王なの」

 

暫く抱き合った後、彼女は俺に気付いてソーナに聞くと、ソーナは俺の元に来て、少し自慢気に言った。

 

リアス「女王!?凄いのね」

 

ソーナ「そうなの、レイ君は凄いの」

 

二人からそう言われ、俺は少し恥ずかしかった。

何せ皮肉や嫌味が一切籠ってない純粋な褒め言葉に、俺は慣れてないからだ。

 

レイ「えっ…と…初めましてリアスちゃん、俺はレイ、セラフォルー様の女王です。よろしくね」

 

リアス「初めましてレイ、私はリアスよ、よろしくね。それと私の事はリアスで良いわ、それに敬語も要らない」

 

レイ「良いの?」

 

リアス「ソーちゃんの友達なら良いの」

 

レイ「分かった、じゃあ…リアス、よろしくね」

 

リアス「うん」

 

リアスの言葉に少し驚いたが、俺はそう言ってくれたリアスと互いに挨拶をした。

 

グレイフィア「レイ様」

 

レイ「グレイフィアさん」

 

グレイフィア「はい、グレイフィアです」

 

レイ「?知ってますよ?」

 

後ろから話し掛けられ、俺はその人の名前を呼ぶと、何故かグレイフィアさんは繰り返し言った。

 

グレイフィア「サーゼクス様達のお仕事が終わるまで私もここに居ますので、何かあれば仰ってください」

 

レイ「はい、ありがとうございます」

 

 

 

 

レイ「それで?何して遊ぶの?」

 

ソーナ「何しよっか?リーアちゃん」

 

リアス「そうね…じゃあ…トランプでもしましょ?」

 

何をするのか聞くと、ソーナはリアスに聞き、聞かれたリアスは少し考えてからそう提案した。

 

レイ&ソーナ「良いね(よ)」

 

リアス「じゃあ、始めましょう」

 

そう言って俺達はトランプで遊んだ。

 

―――――――――――――――――――

 

あれからトランプやおままごと等三人で遊び続け、気付けば夕方になっていた。

 

セラ「ソーた~ん、レイく~ん」

 

そう言いながらセラフォルー様が部屋に入って来た。

 

ソーナ「お姉様!」

 

レイ「セラフォルー様、お仕事は終わったんですか?」

 

セラ「うん☆やっと終わったよ~」

 

ソーナはセラフォルー様に抱き付き、俺が仕事が終わったのか聞くと、セラフォルー様は凄い疲れた顔で言った。

 

レイ「お疲れ様でした」

 

ソーナ「お疲れ様です」

 

セラ「ありがとう、レイ君☆ソーナちゃん☆あぁ~癒されるよぉ~」

 

セラフォルー様はそう言いながら、俺達二人を抱きしめてくれた。

 

サーゼクス「相変わらずだね、セラフォルーは」

 

リアス「お兄様!」

 

苦笑しながらサーゼクスさんが入って来ると、リアスも透かさずサーゼクスさんに抱き付いた。

 

サーゼクス「リーアたん!」

 

レイ「た…たん……?えっ…」

 

リーシア「ご苦労様です、レイ様」

 

サーゼクスさんの変わり様に驚いていると、サーゼクスさんと共に入って来たリーシアさんが何でも無いように言って来た。

 

レイ「お、お疲れ様です。ところで…あれは一体…もしかして…サーゼクスさん"も"ですか?」

 

リーシア「はい、その通りです」

 

まさかと思い聞くと、やはりそうだった…

 

レイ「そうですか…リーシアさんも大変な様で…お疲れ様です」

 

リーシア「ありがとうございます、レイ様もいつもご苦労様です」

 

俺とリーシアさんは互いに互いを労う

 

レイ「何かあれば、話しくらいなら俺でも聞けますから…いつでも」

 

リーシア「そうですね…その時はお願いします」

 

レイ「はい、それと今更ですけど俺にそんな敬称は必要ありませんよ?」

 

リーシア「いえ、私はメイドですので」

 

レイ「あれの話をするのにメイドも何も無いでしょう?」

 

リーシア「そうですね…では、その時はよろしくお願いしますね、レイ君」

 

レイ「はい」

 

二人が同じ環境と言う事が分かって、俺達は少し仲良くなった。

その後もお互いに兄と姉が妹を可愛がってる姿を見ながら、俺達は二人揃って溜め息をついた。

 

セラ「さて、それじゃあ帰ろうか?二人共」

 

ソーナ「はい」

 

暫くして満足したセラフォルー様がそう言って、ソーナも笑顔で頷く。

 

レイ「あっ!」

 

セラ「どうしたの?」

 

いきなり声を上げた俺に、セラフォルー様がそう聞いてきた。

 

レイ「すみませんセラフォルー様、母上から買い物を頼まれてたのを忘れてました」

 

ここに来る前に、俺は母上からの頼まれ事を思い出した。

 

セラ「そうなの?じゃあ私達も一緒に…」

 

レイ「大丈夫です、すぐに買って帰りますので先に帰ってて下さい、行ってきます」

 

セラ「あっ、レイ君…」

 

セラフォルー様はそう言ってくれたが、これは俺の仕事だと思い二人にそう言って返事を聞かずに走り出す。

 

サーゼクス「おや?どうしたのかな?」

 

リーシア「レイ様?」

 

グレイフィア「どこかに行かれるのですか?」

 

部屋を出たところで、セラフォルー様より早く正気に戻ったサーゼクスさん、リーシアさん、グレイフィアさんに声を掛けられた。

 

レイ「少し用事を思い出しまして。すみませんが失礼しますね、サーゼクスさん、リーシアさん、グレイフィアさん、リアスもまたね」

 

サーゼクス「そうか、気を付けてね」

 

リーシア「お気をつけて」

 

リアス「またね、レイ」

 

グレイフィア「お供致しましょうか?」

 

レイ「ありがとうございますグレイフィアさん、でも大丈夫です、いつもの買い物なので」

 

グレイフィア「そうですか⋯」

 

レイ「はい、では」

 

俺は急いでる事を伝えると、グレイフィアさんがそう言ってくれたがいつもの事なので問題は無いと伝え、四人に挨拶を交わしてまた走り出した。

 

―――――――――――――――――――

 

レイ「ふぅ、買えて良かった…」

 

あれから俺は母上から頼まれた物を買う為に走り回った。

母上は人間界にお気に入りの物がある様で、俺は定期的にお使いを頼まれて人間界まで買いに来ている。

 

レイ「結構時間掛かったからすっかり暗くなったな…早く帰らないと、んっ…何だ…この気配は…?」

 

俺は買い物を終え帰ろうとすると、妙な気配を感じた。

 

レイ「行ってみるか…」

 

急いで帰らないといけないのだが、気になって行ってみることにした。

気配を辿って、たどり着いたのは―――

 

レイ「ここか?でも、ここって…」

 

神社だった。

 

レイ「確か悪魔は入れないんだったけ?なんか結界も貼ってあるし…でもなぁ…」

 

ギル「レイ」

 

レイ「ギル?どうしたの?」

 

俺が一人で唸っていると、ギルが話し掛けて来た。

 

ギル「確かに悪魔は入れないが、《原罪(メロダック)》を手に持てば入れる筈だ、結界もお前なら簡単に壊せる程度の物だ」

 

レイ「そうなの?じゃあ…」

 

ギルに言われ、宝物庫から《原罪(メロダック)》を取り出し帯刀して、結界に向かって力を込めた蹴りを放った。

 

レイ「本当に簡単に壊れたな…」

 

ギル「所詮は人間が作った物だ、今のお前なら何とも無いさ」

 

俺の呟きにギルがそう言った。

 

レイ「まあ良いや、とりあえず…おお、本当に大丈夫だ」

 

ギル「当然だ、前にも言ったがそれは聖剣の原点でもある剣なのだからな、それより良いのか?」

 

俺は迷いながらも踏み入り、なにも起きない事に少し燥いでいると、ギルがそう言った。

 

レイ「そうだった、えっと…あっちだな」

 

ギル「一応は敵地だ、関わるなら顔を隠せよ?」

 

レイ「あっ、そうだね…そうだ!さっき商店街で貰ったのがあった筈…これでよしっと」

 

俺はギルに言われ先程貰った変な仮面をつける。

そして、中に入り気配を辿って行くと。

 

レイ「この辺りから…」

 

「この子は私の大切な娘、そしてあの人の大切な娘です」

 

レイ「今のは?」

 

女性の叫び声が聞こえ、俺はそこに向かって駆け出した。

 

「朱璃よ、そなたも忌々しき邪悪な黒き天使に心を汚されてしまった様だ…仕方あるまい」

 

すると、一人の男が子供を庇う女性に向かって刀を構えていた。

 

「母様!」

 

レイ「チッ、《天の鎖(エルキドゥ)》」

 

男が刀を降り下ろし少女が叫ぶと同時に、俺は男に向かって《天の鎖(エルキドゥ)》を使った。

 

「ぐっ、何だこれは」

 

レイ「良し!大丈夫ですか?」

 

男を拘束したのを確認して、俺は二人に声を掛けた。

 

「貴方は…?」

 

レイ「話しは後で、とりあえずこいつをどうにかしないと」

 

俺は女性にそう言い、男の方に向かう。

 

「なっ…何だ貴様は!」

 

レイ「少なくとも、お前の味方じゃあ無いよ」

 

驚きながらも叫ぶ男に、俺はそう答えた。

 

「この気配…貴様ッ、あく「黙れ」…くっ」

 

俺の正体に気付き、口にしようとしたのを強制的に黙らせた。

 

レイ「じゃあな」

 

俺は男に向かってそう言い、結界を壊した時と同じ位の力を足に込め、男の頭に向けて足を振り抜いた。

 

レイ「…あれ…?…えっ!?」

 

気絶させようとしただけだったのだが、蹴りが当たった瞬間―――男の頭が弾けとんだ。

蹴りの威力に自分でも驚いていると。

 

ギル『ハハハハハハッ』

 

頭の中にギルの笑い声が響いた。

 

レイ『ギル!?なんで!?さっきと同じ様に軽い力でやったのに…』

 

ギル『当然だ、いくら脆いとは言え…あれは人間が作れる中では上位の結界だ、それを壊せる力で蹴ればそうなるさ。結界と人間じゃあ固さが違うし、何よりお前の一撃はお前の想像よりも遥かに重いからな、ハハハッ』

 

レイ『マジかよ…』

 

俺の言葉に当たり前の様に答えるギル、俺は絶句した…

 

ギル『何だ?人を殺しちゃった…なんて、ふざけた事を言うつもりか?』

 

レイ『まさか、人間でもそれ以外でも必要なら殺すよ、ただ…今回は意図してなかったからちょっと驚いただけだよ』

 

ギル『ならば良いさ』

 

ギルは急に低い声で聞いてきたので俺はそう言った、するとギルはいつも通りに戻り、満足そうにそう言った。

 

「あの…」

 

レイ「えっ…ああ」

 

頭の中でギルと会話していたら、女性に話し掛けられた。

 

「助けて頂き、ありがとうございました」

 

「ありがとう…ございました」

 

女性と少女にお礼と共に頭を下げられた。

 

レイ「ああ…いや…無事で何よりです」

 

それに対し、俺がそう言うと。

 

「本当にありがとうございます、御蔭様で助かりました」

 

レイ「それなら良かったです」

 

女性の言葉に、俺は安心してそう言った

 

「お名前を伺ってもよろしいですか?」

 

レイ「えっ…えーと…名乗る程の者じゃありません」(言える訳無い⋯だってこの人達、正確には母親の方は人間だけど⋯それでも普通の人間じゃ無い、かなり力が強いし。

なにより⋯子供の方は人間の気配とは別にもう一つ気配があるし⋯)

 

名前を聞かれるも俺は二人が一般人じゃ無い事を悟った、だから当然素直に言える訳がなくそう答えた。

 

「そんな事ありません、私達の命の恩人です」

 

女性は強くそう言った。

 

レイ「えっと…すみません、これで失礼します」

 

俺がそう言い、駆け出そうとすると。

 

ギル『待てレイ』

 

レイ『ギル?早くしないとボロが出かねないよ!』

 

ギルに止められ、俺はそう言った。

 

ギル『落ち着け、お前が殺した男の腰にある武器だが』

 

レイ『んっ?ああ、あれが?』

 

ギル『かなりの業物だぞ』

 

レイ『マジで?』

 

ギルに言われ、俺は男の腰にある武器を手に取った。

 

レイ「確かに…」

 

「それは《斬刀・(なまくら)》です」

 

レイ「(なまくら)…?」

 

俺が刀を手に持ち見ていると、女性が教えてくれた。

 

「はい、我が一族に伝わる、完成形変体刀十二本の内の一本で、この世に斬れぬ物は無いと、そして人を斬れば斬るほど、血を吸えば吸う程速くなると言われています」

 

レイ「そうなんですか…」

 

女性の説明を聞き、この人達の持ち物なら返さなきゃなぁ…と思っていると。

 

「お名前を教えて頂け無いのは残念ですが…助けて頂いたお礼に、よろしければお持ち下さい」

 

レイ「良いんですか!」

 

「はい、もちろんです」

 

俺は女性のその言葉に、食いぎみに言うと、女性は笑顔でそう言った。

 

レイ「それじゃあ…ありがたく頂きます、ありがとうございます!では…すみませんが、失礼しま…んっ?」

 

俺はそう言い、今度こそ帰ろうとすると、少女に袖を掴まれ。

 

「また…会えますか…?」

 

そう言われた。

 

レイ「そうだね、きっとまた会えるよ」

 

「本当に…?」

 

レイ「うん、その時を楽しみにしてるよ」

 

「うん…私も楽しみにしてる、助けてくれて…本当にありがとうございました」

 

俺がそう言うと、少女は最後に笑ってくれた。

 

レイ「じゃあね」

 

俺は二人に手を振り、今度こそ駆け出した。

 

レイ「母親か…」

 

ギル「………」

 

少し離れてから、俺はさっきの二人を思い出し、そう呟いた。

 

レイ「まっ、あの二人が無事で良かったよ」

 

ギル「…そうだな、でも良いのか?」

 

レイ「何が?」

 

俺がそう言いながら走ってると、ギルがそんな事を言って来たので聞くと。

 

ギル「時間だ、もう9時を過ぎたぞ?」

 

ギルは無情にもそう言った。

 

レイ「えっ…嘘だろ」

 

ギル「本当だ」

 

レイ「やばい、全然大丈夫じゃねぇよ、怒られる」

 

俺は全速力で人の居ない所に向かい、家に転移した。

 

―――――――――――――――――――

 

少女side

 

「母様…」

 

「どうしたの?朱乃」

 

朱乃「私、絶対にもう一度あの人に会います」

 

私は母様にそう言った。

 

「そうね…もし会えたら、ちゃんとお母さんにも紹介してね?」

 

朱乃「はい、もちろんです」

 

母様の言葉に、私は笑顔で頷いた。

 

「朱乃!朱漓!」

 

母様と話していると、父様が帰ってきた。

 

朱漓「あなた!」

 

朱乃「父様!」

 

私は泣きながら父様に抱き付いた。

 

「無事で良かった、本当に…良かった」

 

父様も泣きながら私達を抱きしめてくれた。

 

ありがとう…必ずまた会って…その時は…。

 

少女sideout

 

父「それにしてもこの気配は⋯悪魔か⋯ならばいずれ会う事があるかもしれんな⋯その時は⋯」

 

男はもし会う事があれば、例え敵として会ったとしても、必ず礼を言おうと決めた。

 

―――――――――――――――――――

 

レイ「はぁ…はぁ…」

 

ガチャ

 

セラ「レイ君?」

 

ソーナ「レイ…君」

 

俺は急いで家に帰り玄関を開けると、セラフォルー様が仁王立ちでソーナは涙目で待っていた。

 

レイ「あっ…えっと…ただいま…帰りました」

 

俺はとりあえず帰ってきた挨拶をするが…

 

セラ「ただいま帰りましたじゃないでしょ!こんな遅くまで何やってたの!!何かあったんじゃないかって心配したんだからね!!!」

 

ソーナ「レイく~ん、無事で良かった~」

 

セラフォルー様には怒られ、ソーナには泣きながら抱き付かれた。

 

レイ「すいませんでした」

 

その後、セラフォルー様にたっぷり一時間程かけて説教された、ようやく終わったと思いきや遅くなった理由は?と聞かれ、全てありのまま話した所、更に一時間程追加で説教された。

ちなみにソーナには、今夜一緒に寝ると言う事で許された。

 



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【7歳】似て非なる二人の邂逅

今の所は一話で一年と考えています。
これ以上に一話が短くなった場合には、一話に二年分の話しを纏める事もあるかもです…。

10/11 本文編集


この日俺は、セラフォルー様から「レイ君は少し働き過ぎだから、今日はお休みね☆後、修行もしちゃ駄目だからね☆」と言われ、町に来ていた。

 

レイ「って言われても…休日って何すれば良いんだ?」

 

休みに一人で、それも何もしないと言うのは初めての事だった、いつもなら休みの時はソーナやリアスと共にいるか、修行をするかだからだ。

 

レイ「とりあえず、適当に見て回るか…」

 

俺はそう呟きながら、歩き出した。

 

レイ「暇だなぁ…別に欲しい物や行きたい所がある訳じゃないしな…」

 

「このクソガキ!いい加減にしやがれ!」

 

宛もなく歩いていると、突然怒声が聞こえた。

 

レイ「なんだ?」

 

俺は気になり、声の聞こえた方に向かった。

 

「がはっ…ぐっ…」

 

「いつもいつも店の商品を盗みやがって!」

 

路地に入ると、一人の少年が男に殴る蹴るの暴行を受けていた。

 

レイ「何をしている?」

 

「ああッ!?誰だッ…!!あ…貴方は…、セラフォルー様の…」

 

俺が声をかけると、男は苛立ちながらこちらを向くが、俺を見ると驚いた。

 

レイ「何故そんな子供を痛め付けている?」

 

「は…はい、こいつはいつも家の店の商品を盗んでいくんです」

 

「そうなのか?」

 

「………」

 

男の言葉を聞いて、俺は少年にそう聞くが、少年は何も答えない。

 

「お前、この方はセラフォルー・レヴィアタン様の女王レイ様だぞ、ちゃんと答えろ!」

 

レイ「そう言うな、とりあえず…」

 

そんな少年に怒鳴る男、それを窘めて少年に対し、俺は治癒魔法をかける。

 

「………」

 

レイ「…店主、この少年は俺が預かる、ここは任せてくれないか?」

 

「わ…分かりました、貴方にお任せします」

 

俺がそう言うと、男はそう言って店に戻って行った。

 

レイ「さて…大丈夫か?」

 

「……ありがとう…」

 

俺がそう聞くと、少年は小さな声でそう言った。

 

レイ「それで?さっきのは本当なのか?」

 

「………」

 

俺の言葉に少年は小さく頷いた。

 

レイ(捨て子か…)

 

俺は少年に自分を重ねた。

 

「俺を…殺すの…?」

 

レイ「そんな事しないよ」

 

俺が昔を思いだし黙っていると、少年はそう言った、それに俺は首を横に振りながらそう言う。

 

「じゃあ…どうするの?」

 

レイ「とりあえず…お前は誰なんだ?教えてくれないか?」

 

「俺は…」

 

俺が少年にそう聞くと、少年は少しずつ話しだした。

 

レイ「なんだよ…それは!」

 

俺は少年の話しを聞いて、激しい怒りが込み上げてきた。

その内容は。

自分は悪魔と人間のハーフだと言う事。

父親と祖父に虐待を受けていたと言う事。

唯一、母親が守ってくれていたが、先日死んだ事。

そして、母親が死んで数日後に更なる虐待の末に捨てられた事。

そんな、余りにも酷い内容だったからだ。

 

「お金なんて無いから…だから…」

 

レイ「盗んだ…か」

 

「………」

 

少年の呟きに俺が続けると、少年はまた、小さく頷いた。

 

レイ(さて…どうしたら良いんだ…セラフォルー様の女王として、このままにしておく訳にはいかないけど…だからって、罰するなんて余りにも酷だ、なにより俺は…こいつを放っておけない)

 

ギル『レイ』

 

俺が、どうするかと考えていると、突然ギルが話し掛けてきた。

 

レイ『ギル?どうしたの?』

 

ギル『この子供だが、神器を宿している様だ』

 

レイ『本当に?』

 

ギル『ああ、それもかなり強力な物だ』

 

ギルにそう言われ、集中すると、確かに少年からは神器の気配がした。

 

レイ『本当だ…あっ、だったら』

 

気配を確かめた俺は、ある事を閃いた。

 

ギル『何か思い付いたのか?』

 

レイ『俺の将来の眷属にするって事にすれば大丈夫かも』

 

そう聞いてきたギルに、俺はそう言った。

 

ギル『…確かに、それなら問題は無いだろうが…』

 

レイ『だろ?』

 

ギルは少し考えた後にそう言った。

 

ギル『しかし…あの女…セラフォルーは許してくれるのか?』

 

レイ『分からない…でも、セラフォルー様なら許してくれる筈だ』

 

ギルのもっともな言葉に、俺はそう言った。

 

ギル『まあ、お前が良いなら構わないさ』

 

レイ『うん』

 

ギルは少し笑いながら、そう言って納得してくれた。

 

レイ「さて…お前、俺の元に来ないか?」

 

「えっ…」

 

俺が少年にそう言うと、少年は驚いた様に顔を上げた。

 

レイ「まあ、簡単に言えば、俺の将来の眷属にならないか?」

 

「けん…ぞく…?」

 

俺がそう言うと、少年は首を傾げそう言った。

 

レイ「ああ、お前には神器が宿ってる、それもかなり強力な物がな、本来なら悪魔には宿らないらしいんだが、お前は人間とのハーフ、だから宿ってる」

 

「神器…」

 

俺の言葉に少年は呟きながら、自分の身体を触り、確認しはじめた。

 

レイ「どうする?」

 

俺がそう聞くと―――。

 

「お兄ちゃんは…俺を虐めない?」

 

少年は怯えた目で、こっちを見ながらそう言った。

 

レイ「当たり前だ、自分の眷属に意味もなく暴力なんて振るわないさ」

 

「本当に…?」

 

レイ「本当だ、俺の主…セラフォルー様に誓って」

 

俺がそう言うと、少年は涙目でそう言った、俺は俺の中で絶対な主の名を出しそう言った。

 

「行く…行きたい…、連れて行って!俺を…助けて!!」

 

少年は泣きながらそう叫んだ。

 

レイ「よし、決まりだ!そうと決まったら早速行くぞ!まずは…セラフォルー様に報告しないとな」

 

「うん!」

 

俺がそう言うと、少年は笑顔で頷いた。

 

レイ「そう言えば…お前の名前は何て言うんだ?」

 

俺はまだ名前を聞いてない事を思いだし、少年に聞くと。

 

「俺の名前はヴァーリ、ヴァーリ・ルシファー」

 

少年はそう答えた。

 

レイ「ルシ…ファー…、ルシファーって旧魔王の?」

 

俺はその名を聞いて驚いた、旧魔王についてはこの間勉強で教わったからだ。

 

ヴァーリ「うん、俺は魔王とか興味無いから良く知らないけど」

 

レイ「そうか…お前、今まで誰か…家族以外に会った事はあるか?」

 

ヴァーリの言葉に、未だ驚きながらもそう聞くと。

 

ヴァーリ「ううん、ずっと家の地下室に閉じ込められてたから…」

 

ヴァーリは俯きそう言った。

 

レイ(マジかよ…いくらセラフォルー様でも、流石に旧魔王の…しかもルシファーの血族なんて言ったら…許してくれないだろうな…はぁ)

 

「お兄ちゃん…?どうしたの?」

 

俺が一人考えてると、ヴァーリが心配そうに聞いて来た。

 

レイ(迷ってても仕方無いか…)「ヴァーリ」

 

ヴァーリ「なに…?」

 

俺はそう思いヴァーリに声を掛けると、ヴァーリは怯えた目で俺を見てそう言った。

 

レイ「正直に言おう、いまのお前はかなり危険な立場に居る。

お前が旧魔王ルシファーの血筋ってだけで、お前を殺そうとする奴が出てくる筈だ」

 

俺はこの間教わった事を話した。

 

ヴァーリ「そんな…俺は何もしてないのに…」

 

俺の話を聞いて、ヴァーリはそう言った。

 

レイ「そうだ、お前は何もしてない、悪いのは先代だ、だから…一つ提案なんだが、お前…ルシファーを捨てる気は無いか?」

 

俺は今の状況で、もっとも最善だと思う提案をした。

 

ヴァーリ「ルシファーを…捨てる?」

 

レイ「ああ、お前は今日から、ただのヴァーリになるんだ、ルシファーも旧魔王も関係無い…ただのヴァーリに」

 

首を傾げるヴァーリに対し、俺はそう言った。

 

ヴァーリ「そうすれば…大丈夫なの…?」

 

俺の説明に、ヴァーリがそう聞いて来た。

 

レイ「ああ、俺もお前がルシファーだと言うことは、誰にも…セラフォルー様にも話さない」

 

俺は覚悟を決めてそう言った。

 

ヴァーリ「良いの…?」

 

レイ「言ったろ?お前を眷属にするって、俺には血筋なんてどうでも良いさ、だからお前が良いなら、俺はそれで良い」

 

心配そうに聞くヴァーリに、俺はそう言った。

 

ヴァーリ「うん…分かった…俺は今日からただのヴァーリになるよ」

 

ヴァーリは泣きながらも笑って、そう言った。

 

レイ「よし、決まりだ!それじゃあ改めて、俺はレイって言うんだ、好きに呼んでくれ」

 

俺がそう言うと。

 

ヴァーリ「じゃあ…兄さんって呼んで良い?」

 

ヴァーリはそう言った。

 

レイ「ああ…良いよ、じゃあ、お前は今日から俺の弟だな」

 

ヴァーリの言葉に俺は少し嬉しくなり、そう言うと。

 

ヴァーリ「弟…うん、よろしくね!兄さん」

 

ヴァーリは呟いてから、笑顔でそう言った。

 

ギル『大丈夫なのか?』

 

レイ『多分ね、それに…いざとなれば奥の手がある』

 

ギルの心配に俺はそう言った。

 

ギル『奥の手?』

 

レイ『今はまだ秘密』

 

ギルが聞いてくるが、出来れば余りやりたくない事なので、そう言った。

 

ギル『まあ、いいさ好きにしろ』

 

レイ『うん』

 

ギルの言葉に頷き、俺はヴァーリに意識を戻し。

 

 

レイ「それと…最後にもう一度だけ言っておくが、お前が旧魔王の血筋でルシファーだと言う事は、誰にも言うなよ?」

 

ヴァーリ「うん、分かった」

 

ヴァーリに念を押す様に言うと、ヴァーリは真っ直ぐに俺を見て、そう言った。

 

レイ「よし、それじゃあ行くか」

 

ヴァーリ「うん」

 

俺がヴァーリに手を差し出しそう言うと、ヴァーリは手を取り笑顔で頷いた。

 

これが、親に捨てられた二人の少年の出会い。

一人は産まれてすぐに捨てられ、親を知らずに育つも、その後に家族と愛を知った。

一人は親の下で育つも、その親から虐待を受けその末に捨てられ、唯一愛してくれた母もいなくなり、家族と愛を失った。

同じく捨て子というその境遇は、似ている様で似ていない。

それでも…二人は出会い、兄弟となり、これから先も今以上の確かな絆を結ぶ事になるのだが。

そのことを、今の二人は―――まだ知らない。

 

―――――――――――――――――――

 

レイ「ただいま帰りました」

 

俺は屋敷の扉を開け、そう言うと。

 

セラ「あっ、お帰りレイ君☆」

 

セラフォルー様が居た、先に帰って来てたらしい。

 

レイ「ただいま、セラフォルー様」

 

セラ「うん☆ところで…その子は?」

 

挨拶をすると、当然セラフォルー様は聞いて来た。

 

レイ「こいつは…俺の将来の眷属です」

 

それに俺は、セラフォルー様にそう答えた。

 

セラ「眷属!?レイ君の?」

 

レイ「はい、駄目ですか?」

 

驚くセラフォルー様に、俺がそう聞くと。

 

セラ「駄目では無いけど…でも…」

 

セラフォルー様は唸りながらそう言った。

でも…それは想定済み、だから俺は、いきなりだが奥の手を使う。

 

レイ「良いでしょ?セラお姉ちゃん」

 

そう言って、セラフォルー様に抱き付いた。

 

セラ「れ…レイ君…!?」

 

レイ「駄目…?」

 

いきなりの事に驚いてるセラフォルー様に俺は涙目でそう言い、追い打ちを掛ける、すると…。

 

セラ「ッ~~~、もちろん良いに決まってるじゃない!」

 

セラフォルー様は悶えながら、グッと親指を立てそう言った。

 

レイ(よし!流石セラフォルー様、ちょろい)「ありがとうセラフォルー様、ほら、挨拶してヴァーリ」

 

俺はそんな思いをおくびにも出さずにヴァーリにそう言うと。

 

ヴァーリ「うん…ヴァーリです、よろしく…お願いします」

 

ヴァーリは戸惑いながらも挨拶をした。

 

ギル『お前なぁ…』

 

ギルが何か言いたそうにしてるが、とりあえず無視だ。

 

セラ「ヴァーリ君かぁ~レイ君をよろしくね☆」

 

ヴァーリ「うん、強くなって必ず兄さんの役に立つ」

 

セラフォルー様の言葉に、ヴァーリそう返した。

 

レイ「ヴァーリ…」

 

そんな事を言われ俺は凄く嬉しくなった。

 

セラ「兄さん…?」

 

やはりセラフォルー様はそこに食い付いた。

 

ヴァーリ「うん、そう呼んで良いって兄さんが、それに…お前は弟だって」

 

セラ「なになに、レイ君お姉ちゃんに内緒で弟作ったの?」

 

レイ「うん」

 

ヴァーリの言葉を聞いて、ハイテンションで聞いてくるセラフォルー様に、俺は頷いた。

 

セラ「そっかぁ~、じゃあレイ君はこれから王としても、お兄ちゃんとしても、もっともっと頑張らないとだね☆」

 

レイ「はい!」

 

セラフォルー様の言葉に俺は元気に返事した。

 

その後、母上と父上にも眷属にすると言うと、二人は笑顔で良いよと言ってくれて、ヴァーリは俺の部屋に住む事になった。

ちなみに、ソーナは俺がヴァーリに取られると言って泣きそうになったが、明日は一日一緒に過ごすと約束したら、なんとか泣かれずにすんだ。

 




ヴァーリはアザゼルじゃなくレイに拾われたという事にしました。

これを書き始めてから、そういえばヴァーリも捨てられたんだったな…と思い、よし!眷属にしようと考えて、書いてたらこうなりました…。


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【閑話】ソーナとの約束

【7歳】 似て非なる二人の邂逅の翌日の話しです。
本当は次の話しを書いていたのですが、書こうかな…?って思ってしまったので書きました。
ただ走り書きなので、余り期待はしないでくれると助かります。


「……く…お…て……い…ん…き…」

 

寝ていると誰かの声が聞こえた。

 

レイ「んっ…んん…何…?」

 

俺は目を開けると―――

 

「あっ!起きた?」

 

レイ「……ソーナ…?」

 

目の前にソーナの顔があった。

 

ソーナ「おはよう!レイ君」

 

レイ「おはよう…何してるの?」

 

ソーナの挨拶に俺も挨拶を返し、とりあえずそう聞いた。

何故なら―――

 

ソーナ「うん?レイ君を起こしに来たんだよ?」

 

レイ「いや…そうじゃなくて…何で上に乗ってるの」

 

ソーナは俺の上に馬乗りになっていたからだ。

 

ソーナ「だってレイ君、全然起きないんだもん…もう10時だよ?今日は一日一緒に遊ぶって約束したのに…」

 

ソーナは頬を膨らませ拗ねた様にそう言った。

 

レイ「あー…そうだった…ごめんソーナすぐに起きるよ、ソーナは出掛ける準備しておいで?」

 

俺は昨日ヴァーリを連れ帰った時の約束を思い出しソーナにそう言って、重い身体を起こした。

 

ソーナ「うん!じゃあ準備して玄関で待ってるね」

 

レイ「分かった、俺も準備したらすぐに行くよ」

 

ソーナが出ていったのを確認して、俺は着替え始める。

 

レイ(あれ?そういえば…ヴァーリは何処行った)

 

部屋を見回すがヴァーリの姿が無い。

 

レイ「まあいいか…」

 

俺はそう呟き、洗面所に向かい顔を洗って歯を磨いてから、玄関に向かっていた。

 

「おや…レイ君、随分とお早いですね?」

 

玄関に向かう途中、俺は教育係りの人に話し掛けられた。

 

レイ「おはようございます、ついさっき昨日の約束の件でソーナに起こされまして…」

 

「なるほど、それは大変ですね…昨日は帰ってきてから夜遅くまでお仕事をしていたというのに…」

 

その人は俺の説明を聞き、笑いながらそう言った。

 

そう、俺は昨日ヴァーリを連れ帰った後、先に帰っていたセラフォルー様が、実はまだ仕事を終わらせていなかった事が分かり、「仕事したくないよぉ~」と駄々を捏ねるセラフォルー様の腕を引っ張ってすぐに仕事場に戻った。

仕事が終わったのは夜中で、眠りに就く頃には4時を回っていたのだった。

 

レイ「すいませんがソーナを待たせてるので…あっ、そうだヴァーリ知りませんか?起きたら部屋に居なくて…」

 

俺は玄関に向かおうとして、起きた時に思った事を思い出し聞いてみた。

 

「レイ君が連れて来た子ならば、奥様が先程連れて行かれましたよ?何でも将来の事とはいえ、レイ君の…魔王セラフォルー様の女王の眷属になるのなら教えなければいけない事があるとかで」

 

レイ「ああ…あれ…ですか…」

 

「ええ、あれ…ですね」

 

その言葉に俺はシトリー家に来た日の事を思い出しそう言った。

 

レイ「ヴァーリ…頑張れよ…」

 

俺は何処に居るかも分からないヴァーリに向かってそう言った。

何故そんな事を言うのかと言うと俺も同じ事をやらされたからだ。

正式にシトリー家にお世話になる事が決まった日、俺は母上が呼んでいるとの事でセラフォルー様に連れられて母上の所に行った。

挨拶もそこそこに母上はいきなり「まずはセラフォルーの眷属として何処に出しても恥ずかしくないように、礼節と正しい振る舞いを覚えさせます」と言われ、一日掛けて礼儀作法などをみっちり仕込まれたのだ。

おそらくヴァーリにも同じ様にしているのだろう…。

 

「そういえばソーナ様を待たせているのでは?」

 

レイ「そうだった、失礼します」

 

俺はそう言って玄関に向かって走り出した。

 

ソーナ「もう!遅いよレイ君!!」

 

遅れたせいで部屋を出る時には笑顔だったソーナはまたも頬を膨らませてそう言った。

 

レイ「ごめん少し準備に手間取っちゃって」

 

ソーナ「もう…仕方無いんだから」

 

素直に謝ると機嫌を直してくれたのか、笑いながらそう言った。

 

レイ「ソーナ、今日は随分と可愛い格好だね?」

 

俺は真っ白なワンピースを着て、頭には青いリボンを着けているソーナを見て、そう言った。

 

ソーナ「本当に?良かった…レイ君と二人で遊ぶのは久しぶりだったから…///」

 

ソーナは顔を赤くしながらそう言った。

 

レイ「俺の為に?」

 

ソーナ「…うん//////」

 

俺がそう聞くとソーナは顔を更に真っ赤にしながら頷いた。

 

レイ「そっか…嬉しいよ…ありがとうソーナ」

 

ソーナ「うん」

 

俺がそう言うとソーナは満面の笑顔で頷いた。

 

レイ「そろそろ行こうか?ソーナ」

 

ソーナ「そうだった!今日はい~っぱい遊ぼうね、レイ君」

 

俺が言うとソーナは目的を思い出したのか、そう言った。

 

レイ「そうだな、じゃあ行こう」

 

俺はそう言ってソーナの手を握ると。

 

ソーナ「あっ…」

 

レイ「ん?ああごめん…嫌だった?」

 

ソーナの反応にそう言い手を離そうとすると―――

 

ソーナ「そんなこと無い!むしろ…嬉しい…///」

 

ソーナは大きな声でそう言い、またも顔を赤くしながら手を握り返してきた。

 

レイ「そ…そっか…///…とりあえず行こう」

 

ソーナ「う…うん///」

 

今度は二人して顔を赤くしながらも、しっかりと手を繋いで外に出ていった。

 

セラ「二人共…顔真っ赤にしちゃって…可愛いなぁ~」

 

ずっと陰で俺達のやり取りを最初から最後までセラフォルー様が見ていた事にも気付かずに…。

 

―――――――――――――――――――

 

レイ「久しぶりにいっぱい遊んだな」

 

ソーナ「そうだね!今日はすっごく楽しかった」

 

あれから―――俺達は二人っきりで色々な所に行って遊んだ。

そして夕方になり家に帰って来た。

 

レイ「晩御飯の前にちゃんと着替えないとね」

 

ソーナ「うん、じゃあまた後でね?レイ君」

 

レイ「うん、また後で」

 

俺達は帰って来ると「お帰りなさいませお二人共、もうすぐお食事の時間です」とシトリー家のメイドに言われたので、とりあえず自室に向かう事にした。

 

ヴァーリ「兄さ~ん」

 

レイ「あ…ヴァーリ…」

 

部屋に向かって歩いていると、俺を見つけたヴァーリが涙目でこちらに向かって走ってきた。

 

ヴァーリ「ううっ…兄さん…」

 

レイ「よしよし、辛かったなヴァーリ」

 

俺は、俺に抱きついて泣くヴァーリの頭を撫でながらそう言った。

 

ヴァーリ「恐かった~」

 

レイ「だろうな…俺もそうだったよ…」

 

そう言うヴァーリに俺は昔の事を思い出しそう言った。

ちなみに、当時の俺はセラフォルー様に泣きついた。

 

その後ヴァーリを慰めてから、二人で大広間に行き皆で晩御飯を食べ、ヴァーリと一緒にお風呂に入り寝ようとすると―――

 

ソーナ「レイ君!一緒に寝よ?」

 

ソーナが枕を持って部屋に入ってきた。

 

レイ「…別に良いけど…どうした?」

 

少し驚きながらも俺がそう聞くと。

 

ソーナ「今日はずっと一緒って言ったでしょ」

 

そう言いながらソーナはベッドの中に入ってきた。

結果、俺を真ん中にして右にヴァーリ、左にソーナの順に並んで三人で寝ようとした時…。

 

セラ「皆だけずる~い!私も一緒に寝る~☆」

 

ソーナ「お姉様!」

 

レイ「セラフォルー様まで…」

 

ヴァーリ「zzz.....」

 

そう言ってセラフォルー様はソーナの隣に潜り込んだ。

ソーナは嬉しそうに、俺はまたも少し驚きながらセラフォルー様を迎えた、ヴァーリは余程疲れたのだろう、ソーナが来た時には既にぐっすり眠っていた。

 

レイ「おやすみソーナ、セラフォルー様」

 

ソーナ「おやすみなさい…レイ君」

 

セラ「おやすみ~☆」

 

そうして俺達は四人で仲良く寝たのだった。

 



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【8歳】一人の私として

11/11 本文改定


リアスside

 

いつだって私を私として見てくれる人はいなかった。

誰もが私を魔王の妹として見る、私はそれが嫌で仕方なかった。

だからと言って、お兄様の事が嫌いな訳じゃない、兄としても魔王としても、もちろん尊敬している。

それでも…将来私の夫になる人にだけは、私を魔王の妹としてではなく、リアス・グレモリーとして、一人の女の子として見て欲しい。

そう思うのは…我が儘なんだろうか…。

 

リアス「これで終わりっと」

 

グレイフィア「お疲れ様でした、お嬢様」

 

今日私は、朝からグレイフィアと勉強をしていた。

 

リアス「そう言えば、今日のパーティーにはソーちゃんとレイも来るのよね?」

 

グレイフィア「はい、お昼過ぎにはいらっしゃるかと」

 

私がそう聞くと、グレイフィアはいつもの様にそう返す。

 

リアス「そう、楽しみね♪」

 

グレイフィア「その前に、もう一つ勉強があります」

 

リアス「分かってるわよ…」

 

私が楽しみにしてそう言うと、それにグレイフィアが水を差す、私は不貞腐れながらもそう返事した。

 

―――――――――――――――――――

 

レイ「家もでかいけど、ここもでかいなぁ~」

 

ソーナ「そうだね」

 

今日はソーナと共に、グレモリーが主催のパーティーに来ていた。

ちなみにヴァーリは―――。

 

レイ(流石に連れて来れないよな…)

 

ヴァーリの事を知らない人がいないとは限らないので、勉強と言う名目で留守番だ。

 

リアス「ソーちゃん、レイ、いらっしゃい」

 

ソーナ「リーアちゃん」

 

レイ「リアス」

 

中に入ると、リアスが出迎えてくれた。

ちなみにセラフォルー様は着いてすぐに、グレイフィアさんに連れられて行った為、今はいない。

 

リアス「良く来てくれたわね、二人共」

 

ソーナ「うん」

 

レイ「俺まで良かったのか?」

 

ソーナは笑顔で頷き、俺はそう聞くと。

 

リアス「当たり前でしょ?レイはセラフォルーさんの女王なんだから」

 

ソーナ「そうだよ!」

 

レイ「なら良いんだけど」

 

リアスは何いってるの?とでも言いたげな顔でそう言い、ソーナにも一緒になって言われた。

 

リアス「それに…レイがいないと私とソーちゃんに色んな人が近寄って来るもの、嫌なのよ…あれ」

 

レイ「貴族のパーティーってそんな物じゃ無いの?」

 

リアスの言葉に俺がそう聞くと。

 

ソーナ「私達はお姉様達…魔王様の妹だから」

 

レイ「ああ、成る程ね…仕事以外でパーティーなんて呼ばれたのは初めてだから、よく分からなかったよ」

 

リアスの代わりにソーナが答え、それを聞き納得した。

 

リアス「とりあえず、会場に行きましょう」

 

ソーナ「そうだね」

 

レイ「ああ」

 

俺達はリアスに案内され、会場に入った。

 

「リアス様だ」

 

「ソーナ様も居るわ」

 

会場に入った途端、二人に視線が集まった。

 

リアス「はぁ…ほんと嫌になるわ」

 

ソーナ「うん…」

 

レイ「大変だな…二人共」

 

二人は明らかにテンションが下がった。

 

リアス「とりあえず、何か食べましょう?」

 

ソーナ「そうだね」

 

リアスがそう言うと、ソーナが頷いた。

 

リアス「レイは私達の護衛だからね」

 

レイ「分かったよ」

 

ソーナ「ありがとう、レイ君」

 

俺にはそう言って来たので、そう言うと、ソーナはお礼を言いながら何故か手を繋いできた。

 

レイ「どうしたの?ソーナ」

 

ソーナ「こうしてれば誰も近寄って来ないかなって思って…駄目…?」

 

俺がそう聞くと、ソーナは上目遣いでそう言った。

 

リアス「ずるいわ、私も」

 

すると、リアスも反対の手を繋いできた。

 

レイ「両手を繋がれたら何も出来ないんだが…」

 

俺はそう言うが、二人はもう食べ始めており聞いてない。

それでも、不愉快な視線は向けられるが、誰も近寄っては来ないので。

 

レイ(まあ…これで役に立ってるなら、別にいいか)

 

俺はそう思い、二人の好きにさせた。

 

―――――――――――――――――――

 

時間が立ち、パーティーもようやく終わった。

 

セラ「ごめんね…?レイ君、いきなり呼び出しちゃって、それもあんな役目で」

 

レイ「構いませんよ、それがセラフォルー様の女王しての役目ですから」

 

セラ「うん…ありがとう、レイ君」

 

俺は途中からセラフォルー様に呼ばれ、挨拶回りに付き添った。

その理由は、女王としてと言うのもあるが、それ以上に相手が余計な話しをし始めた時に、会話を切る為だった。

当然、俺に対して嫌な顔をする奴もいたが、少し殺気を放ち威圧すれば簡単に引き下がった。

 

レイ「それよりも…ソーナとリアスは大丈夫かな」

 

セラ「ああ…確かに、絶対に声掛けられちゃってるよね…」

 

俺達が二人の心配をしていると…。

 

ソーナ「お姉様!レイ君!」

 

ソーナが走って俺達の元にやって来た。

 

レイ「どうしたの?そんなに焦って」

 

セラ「ソーナちゃん、何か有ったの?」

 

俺達は揃ってソーナに聞くと。

 

ソーナ「リーアちゃんがいなくなっちゃったの!」

 

セラ「えぇっ!?」

 

レイ「もしかして、俺が居なくなってから何かあった?」

 

ソーナの言葉にセラフォルー様は驚く、俺はまさかと思いそう聞くと。

 

ソーナ「うん…レイ君が居なくなった途端に色んな人に話し掛けられて…」

 

ソーナの説明を聞いて、俺は二人に申し訳なくなった。

ダンスを一緒にどうだとか。

今度、食事にいかないかとか。

そんな様な事が続くも、二人は綺麗に流していたらしいのだが…。

その中に一人、余りにもしつこい奴が居て、リアスは嫌になり会場を飛び出したらしい。

 

レイ「それは…悪かったな…側に居てやれなくて、でも…何で俺が居る時は来ないんだ?」

 

セラ「それはね、皆レイ君の事を怖がってるからだよ?」

 

俺は不思議に思いそう言うと、セラフォルー様は少し笑いながらそう言った。

 

レイ「えっ…何でですか?」

 

俺は本当に意味が分からずそう聞くと。

 

セラ「この数年間、自分が何したかを考えてみてごらん?それも特にこの数ヶ月間の事を」

 

レイ「数ヶ月…?何もしてませんよ?変わらず普通に勉強と修行して、セラフォルー様の仕事に付き添って、ソーナやリアスとも一緒に居るだけで…」

 

俺はセラフォルー様に言われ、色々と思い出すも、全く心当たりが浮かばない。

 

セラ「はぁ~…確かにその通りだけど…それだけじゃないでしょ?」

 

レイ「………?」

 

そう言われても分からない物は分からない。

 

セラ「レイ君は確かに、私の仕事に付き添ったり、二人と遊んでるけど…私や二人に危害が及んだり及びそうな時、レイ君は何をした?」

 

レイ「何って…セラフォルー様や二人に対して無礼な奴ら相手に、手を出さない奴には軽く殺気を浴びせて、手を出してくる奴は半殺しにして…それくらいですよ?まあ…何人かは殺しかけもしましたが…」

 

セラフォルー様にそう言われて、俺は自分がしてきた事を口にする。

だがそれは、あくまでも礼儀に欠けた相手に対してのみだから、問題はない筈だ―――。

 

セラ「いやいや、それが原因だよ!?皆それを知ってるから、レイ君が居る時は二人に…特にソーナちゃんや私には近寄らないんだよ?」

 

セラフォルー様はそう言うが。

 

レイ「そうなんだ…でも、そうしろって言ったのはサーゼクスさんですよ?」

 

―――だって、何せ俺にソーナやリアスに手を出す奴にはそうしろと教えたのは、サーゼクスさんなのだから。

 

セラ「サーゼクスちゃんが!?」

 

セラフォルー様の説明に、俺がそう言うと、セラフォルー様は驚いていた。

 

レイ「はい、前にサーゼクスさんから」

 

サーゼクス『良いかい?レイ君、リアスやソーナ君にちょっかいを出す奴等は痛い目に会わせても問題無いからね?但し…手は相手が出すまでは、レイ君から出しちゃ駄目だよ?』

 

レイ「って、言われましたから」

 

俺はサーゼクスさんとの会話を思いだし、セラフォルー様に言うと。

 

セラ「なんて事を教えちゃったの、サーゼクスちゃんは!?

リアスちゃんが心配な気持ちは分かるよ?

私もソーナちゃんが心配だから分かるけどさ…だからって、何もレイ君に教えなくても…」

 

セラフォルー様は一部同意しながらも、そう言った。

ちなみにその時のサーゼクスさんは、顔は笑顔だったが全身から殺気混じりのオーラを放っていた。

当時の俺は、少し前にリアスから「パーティーがあるの」と言われていたので、おそらくそこで何かあったのだろうと理解した。

 

ソーナ「レイ君はずっと私達を守ってくれてたんだね、ありがとう」

 

レイ「そんな、お礼を言われる様な事じゃ無いよ」

 

ソーナは俺の袖を掴み笑顔でそう言った、俺はソーナにそう返すと。

 

ソーナ「そんな事ないよ?レイ君が傍に居てくれると、安心出来るもん」

 

ソーナはそう言ってくれた。

 

レイ「そう?ありがとう」

 

ソーナ「うん」

 

俺がソーナの言葉にお礼を言うと、ソーナは笑顔で頷いた。

 

セラ「まあ、そのお蔭でソーナちゃんもリアスちゃんも普段は危険が無い訳だけど…」

 

レイ「何か有ってからじゃ遅いですし」

 

セラ「そう…だね、なら別にいっか☆」

 

最終的にはセラフォルー様も納得してくれた。

相変わらずソーナの事になるとサーゼクスさんの様になる。

 

レイ「でも、リアスは何処に行ったんだろう?」

 

ソーナ「分からない…探したんだけど、見つからなかったから」

 

レイ「そっか…」

 

ソーナとそんな話しをしていると。

 

サーゼクス「セラフォルー、それにソーナ君とレイ君も」

 

レイ「サーゼクスさん?それにリーシアさんとグレイフィアさんも…どうしたんですか?」

 

サーゼクスさんが慌てた様子で話し掛けて来た。

 

サーゼクス「それが…リーアたんが…」

 

レイ「少し落ち着いて下さい」

 

とても慌ててるサーゼクスさんに俺がそう言うと。

 

グレイフィア「申し訳ありませんレイ様、実はリアスお嬢様が何処にも居ないのですが…何か知りませんか?」

 

グレイフィアさんが代わりにそう聞いた。

 

レイ「リアスなら…」

 

俺はさっきソーナから聞いた事を話すと。

 

サーゼクス「なんだって!?一体何処に…」

 

リーシア「落ち着いて下さいサーゼクス様、とりあえず私達はもう一度、屋敷の中を探しましょう」

 

俺の話しを聞いて、また慌て出したサーゼクスさんをリーシアさんが窘め、そう言った。

 

ソーナ「私も捜します」

 

セラ「そうだね、手伝うよ」

 

リーシア「ありがとうございます」

 

二人がそう言うと、リーシアさんは二人にお礼を言った。

 

レイ「じゃあ俺は、念の為に外を見てきます、皆は屋敷の中を」

 

グレイフィア「分かりました、お願いしますレイ様」

 

レイ「はい」

 

俺がそう言うと、グレイフィアさんは頭を下げそう言った、俺は強く頷き外に出ていった。

 

―――――――――――――――――――

 

リアスside

 

リアス「何なのよ!皆して…」

 

私はそう言いながら走っていた。

会場を飛び出したのは一人の男が原因だ。

レイがセラフォルーさんに呼ばれ、居なくなった途端に周りの人達が話し掛けて来て、ダンスや食事に誘われた。

けれど、別にそれはいつもの事だから私もソーナもいつも通りに対応した。

でも…あの男には我慢出来なかった、私を食事に誘ってる様で、必ず最後には「よろしければ魔王様もご一緒に…」と、露骨に言ってきた。

 

つまりそれは、お前と食事に行きたい訳じゃなく、魔王様との繋がりが欲しいだけ。

私はそう言われている様で、我慢出来ずに飛び出して来たのだ。

 

リアス「私を私として見てくれる人なんていないんだわ…」

 

私はそう呟きながら、溢れてくる涙を手の甲で拭う。

 

リアス「そういえば、ここ…どこかしら…」

 

私は逃げる事に精一杯で、気付けば暗い森の中に居た。

 

リアス「どうしよう…空から確認しようにも…まだそんなに長くは飛べないし…」

 

ずっと走っていたから足も痛み、私はその場に座り込んだ。

 

リアス「恐いよ…誰か…」

 

私はそう呟くと。

 

ガサガサッ

 

草むらから音がした。

 

リアス「なに…」

 

私は音がした方を向くと―――。

 

「グアァァァ」

 

そこには、私の三倍位の大きさの魔獣がいた。

 

リアス「ひっ…いやっ…やだよ…来ないで…」

 

「グルゥゥ」

 

魔獣は唸りながら私に近付いてくる、私は恐くて全く動けずにいた。

 

リアス「いや…助けて…誰か…お兄様…レイ…」

 

「グワァァァ」

 

私がそう言うと同時に、魔獣が襲い掛かってきた。

 

リアス(助けて…レイ!)

 

私は殺される…そう思い、目を瞑り心の中でそう叫んだ。

 

リアス「あ…れ…」

 

いつまで経っても何も起きない事に、私は怯えながらも目を開けると―――。

 

「全く…こんな所でなにやってるんだ、リアス」

 

そこには…私が心の中で助けてと願った人…レイが居た。

 

リアスsideout

 

―――――――――――――――――――

 

レイ「本当にどこに行ったんだ?リアスの奴」

 

あれから30分程捜しているが、リアスは見つからない、それは屋敷の中を捜している皆も同じの様で、どんどん捜索の人数が増えていっている。

 

レイ「う~ん、流石にこんな遠くまでは来てないだろうし…」

 

俺は気付けば屋敷から大分離れた場所まで来ていた。

 

レイ「とりあえず…一旦戻るか」

 

俺はそう呟き屋敷に戻ろうとした、その時―――

 

「グアァァァ」

 

森の方から獣の唸り声が聞こえた。

 

レイ「まさか…」

 

俺はそう思いつつも、声の方に向かうと。

 

レイ「いた!リアス!」

 

「グワァァァ」

 

俺はリアスを見つけるも、今にも魔獣に襲われる所だった。

 

レイ「ヤベェ、《天の鎖(エルキドゥ)》…セーフ…」

 

俺はすぐに魔獣を鎖で縛り、そう呟き―――。

 

レイ「全く…こんな所でなにやってるんだ、リアス」

 

リアスにそう声を掛けた。

 

リアス「あっ…レイ…レイ!!」

 

レイ「おっと…大丈夫か?」

 

涙を流し抱き付いてくるリアスを優しく受け止め、そう聞いた。

 

リアス「うん…恐かったけど…大丈夫」

 

レイ「そっか、なら良かったよ」

 

リアスの言葉に安心して、俺はそう言ってリアスの頭を撫でた。

 

リアス「レイ…レイ…」

 

レイ「リアス…」

 

リアスはそれでも泣き止まないでいる、俺は何も言わずにいるが…しかし―――。

 

「グゥルルル」

 

レイ(こいつを早くどうにかしないといけないんだけどな…)

 

俺は鎖で縛った魔獣を見ながらそう思った。

 

―――――――――――――――――――

 

あれから10分程経って、ようやく泣き止んだリアスを少しだけ離して、魔獣はなんとか仕留めた。

 

レイ「はい、無事です、すぐに連れて帰ります」

 

そして今、俺は念話でセラフォルー様にリアスを見つけたので、今から連れて帰ると連絡をしていた。

 

レイ「さて…リアス?」

 

リアス「うん…ごめん…なさい…」

 

リアスは俺が怒っていると勘違いした様で、いきなり謝って来た。

正直に言えば、確かに怒ってはいる、しかし…今はそれ以上に。

 

レイ「心配したんだぞ?全く…」

 

リアス「レイ…」

 

俺がそう言うと、リアスは俯いてた顔を上げた。

 

レイ「皆も心配してるから、早く帰るぞ」

 

俺はそう言ってリアスの手を引くが…。

 

リアス「………」

 

レイ「リアス?」

 

リアスはその場から動こうとしない。

 

リアス「…どうして?」

 

レイ「なにが?」

 

リアスの言葉に訳が解らずそう聞くと。

 

リアス「どうして…危険を侵してまで…助けてくれたの?」

 

レイ「そんなの決まってるだろ…」

 

リアスにそう聞かれ、答えようすると。

 

リアス「貴族の娘だから?魔王の妹だから?それともソーナの友達だから?」

 

俺の言葉を遮り、リアスは食いぎみにそう言った。

 

レイ「リアス」

 

リアス「私は…そんな関係…望んでない!!」

 

俺は呼び掛けるも、聞こえてないのかリアスはそう叫ぶ。

 

レイ「リアス!」

 

リアス「私は…私は…」

 

完全に負の思考に支配されているリアス。

 

レイ「リアス!!!」

 

リアス「ッ…!?」

 

そんなリアスに俺はこれまで以上に大声で呼ぶと、リアスはようやく反応し、恐る恐ると言った様に震えながら俺の方を向いた。

 

レイ「リアス…俺が君を守るのは、リアス…君が女の子だからだよ、貴族とかソーナの友達とかサーゼクスさんの妹とか関係無く、君が女の子だから守るんだよ」

 

俺はそんなリアスに対して、出来るだけ優しい声でそう言うと。

 

リアス「ホン…ドニ…?」

 

レイ「うん、本当に」

 

リアスは涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにしながらそう言ったので、俺もそう言ってリアスを優しく抱きしめた。

 

リアス「うわぁぁぁ~~ん」

 

レイ「おいおい…」

 

今までは恐らく泣いてはいても我慢していたのだろう、今まで以上に泣き出し思い切り抱き付いて来た、そんなリアスに俺は驚きはしたが、離すことはしない。

 

リアス「ぐす…ありがとう…レイ…そんな風に言ってくれたのは、レイが初めてよ」

 

レイ「そうか…なら、これから先も助けが必要なら何時でも言え、必ず助けるから」

 

リアス「うん」

 

リアスのそんな言葉に俺がそう言うと、リアスは小さく頷いた。

 

レイ「とりあえず帰ろう、皆待ってるから、な?」

 

リアス「うん」

 

俺はそう言ってリアスを立たせた。

 

その後、屋敷までリアスの手を引き、屋敷に着くとすぐにサーゼクスさん達が飛んできて、リアスを抱きしめたり、お説教が始まったりした。

俺はセラフォルー様になにが有ったのかを説明すると「良く頑張ったね☆」と頭を撫でられた。

その後、リアスとサーゼクスさんとリーシアさんとグレイフィアさん、そしてグレモリー夫妻に使用人など、グレモリー家総出でお礼を言われてから家に帰ったのだが…その時にセラフォルー様とソーナに「リアス(リーア)ちゃんとは繋いでたでしょ?」と言われ、家に着くまでずっと二人と手を繋いでいたのだった。

 

―――――――――――――――――――

 

リアスside

 

あれから、レイに手を引かれ屋敷に帰ると、お兄様には「無事で良かった…」と抱きしめられて、リーシアには「全く、心配をかけて…」と怒られ、グレイフィアにも「教育をしなおさなければなりませんね」と笑顔で言われ、ソーナには「守ってあげられなくてごめんね」と泣かれてしまった。

その後、皆に「心配を掛けてごめんなさい」と謝罪をしてから、私は部屋に戻ってきた。

 

リアス「疲れた…」

 

私は部屋に戻りすぐにベッドに倒れこんで、あの時の事を思い出していた。

 

レイ『君が女の子だから守るんだよ』

 

レイは貴族とか魔王の妹とか関係ないと言った、そんな風に言われたのは初めてだった…それに…。

 

レイ『これから先も助けが必要なら何時でも言え、必ず助けるから』

 

こんな事も言ってくれたのだ。

 

リアス(私が好きになる人は…私を私として見てくれる人は…絶対に自分で見つけるつもりだったのに…)

 

私は幼いながらにそう決めていた、絶対に政略結婚や家の為の結婚はしないと、そう決めていたのに…。

自分で見つける前に…現れてしまった…私を一人のリアスとして見てくれる人が、守ってくれると…言ってくれた人が。

 

リアス「…レイ」

 

私はその人の名を呟きながら…眠りに付いた。

 

リアスsideout

 



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【9歳】討伐任務

今更ですが、レイとギルの会話で「」は周りにも聞こえてる会話で『』は周りに聞こえない頭の中での会話です。

9/6 本文編集


あれからも俺には色々な事が有り、俺はついこの間、中級悪魔に昇格した。

今日、俺はセラフォルー様とサーゼクスさんの二人に呼ばれ執務室に来ていた。

 

レイ「失礼します」

 

セラ「いらっしゃい☆レイ君☆」

 

サーゼクス「やあ、良く来てくれたね」

 

中に入ると二人はこちらを見てそう言った。

 

レイ「はい、それで用とは何ですか?」

 

セラ「うん、レイ君にやってもらいたい事があるんだけど⋯」

 

俺がそう聞くと、セラフォルー様は真剣になり話し出すも、最後の方は何故か不安そうになった。

 

レイ「セラフォルー様?どうしたんですか?」

 

俺は少し心配になりセラフォルー様に声を掛けると。

 

サーゼクス「実はね⋯君に一つ任務を任せたいんだ」

 

セラフォルー様の代わりにサーゼクスさんが話し出した。

 

レイ「任務ですか?」

 

サーゼクス「ああ、君に⋯はぐれ悪魔の討伐を頼みたいんだ」

 

レイ「俺に?確かにこの間中級悪魔に昇格しましたけど⋯」

 

サーゼクスさんの言葉にそう言うと。

 

サーゼクス「いや⋯それは関係無いんだ、本来なら中級悪魔だろうと、はぐれ悪魔討伐なんて危険な仕事は任せない」

 

レイ「余計に何故か分からないんですけど⋯」

 

サーゼクスさんの言っている事が余りに矛盾していたので、俺はそう言った。

 

サーゼクス「正直に言うとね、君の力量はもう既に中級悪魔は疎か上級悪魔よりも上だろうと、私達は思っているんだ」

 

レイ「買い被りですよ」

 

サーゼクスさんの言葉に驚きつつも、表には出さずにそう返す。

 

セラ「それがね⋯そうでもないんだよ?」

 

レイ「セラフォルー様?」

 

今度はセラフォルー様がそう言った。

 

セラ「レイ君、一年前にリアスちゃんを助けた時の事、覚えてるでしょ?」

 

レイ「はい」

 

俺は当然覚えてるのでそう答えた。

 

セラ「レイ君は興味無いだろうけど、あの魔獣は本来上級悪魔クラスの人に討伐を任せる様な魔獣だったんだよ」

 

レイ「そうなんですか?そんなに強くなかったんですけど⋯」

 

俺は1年前のことを思い出しそう言った。

 

セラ「⋯あのね?そう言えちゃう時点で、もうレイ君は十分に強いって評価を肯定してるのと同じなのよ?

それに今じゃ「シトリー家には息女を守る最強の守護者(ガーディアン)が居る」なんて事を言い出す人だっているんだから」

 

レイ「そんなこと言われましても⋯」

 

セラフォルー様の言葉に俺は困る事しか出来なかった。

てか⋯そんな呼ばれ方してたのか?俺は

 

セラ「ああ、勘違いしないでね?それが駄目ってわけじゃないのよ?」

 

レイ「そうなんですか?」

 

サーゼクス「当然だ、むしろ喜ばしいことだよ」

 

セラ「うんうん☆ 私も鼻が高いし☆」

 

レイ「なら良かったです⋯」

 

怒られるのかと思っていたが、二人はそう言ってくれたので俺は安堵して答えた。

 

セラ「それに、あれからも色々とレイ君に任せてきたでしょ?」

 

レイ「そうですね⋯全部簡単な事ばかりでしたけど」

 

俺がセラフォルー様にそう言うと。

 

セラ「それもなのよ」

 

レイ「⋯はい?それも⋯とは⋯?」

 

俺はそう言われて、訳が分からずに聞くと。

 

サーゼクス「はっきりと言ってしまうとね⋯君に任せた仕事の殆どは、中級悪魔はもちろん⋯上級悪魔でさえも簡単にとはいかない仕事ばかりだったんだよ」

 

レイ「⋯⋯はあっ!?なんですかそれは!?」

 

俺はサーゼクスさんの言葉に驚愕した。

 

セラ「ごめんね?最初は私達の口喧嘩から始まった事なんだけど⋯」

 

サーゼクス「もちろん、危険の無い物を選んではいたが⋯今は反省しているよ⋯」

 

二人はいきなりそんな事を言い出した。

 

レイ「二人して⋯いきなりなんですか⋯?」

 

二人「実は⋯」

 

俺はその内容を聞いて絶句した。

 

―――――――――――――――――――

 

セラ『おっはよ~☆サーゼクスちゃん☆』

 

サーゼクス『やあ、おはようセラフォルー』

 

セラ『それで?今日は何で私を呼んだの?』

 

サーゼクス『実はレイ君の事なんだが⋯』

 

セラ『レイ君の?』

 

サーゼクス『ああ、この間のリアスを助けた時に倒した魔獣は中級悪魔でも手こずる程の奴だっただろ?』

 

セラ『そうだね、あの後に魔獣の死体を見て凄いびっくりしたよ⋯レイ君は「弱い魔獣でしたので問題ありません」なんて言ってたけどね⋯』

 

サーゼクス『それで思ったんだが⋯レイ君はかなり強いみたいだ、だからレイ君にもそろそろ何か仕事を任せたいと思うんだが⋯セラフォルーはどう思う?』

 

セラ『そうだね⋯レイ君なら大丈夫だと思うよ?』

 

サーゼクス『そうかい?セラフォルーの事だから、嫌だと言うと思ったが』

 

セラ『本当は嫌だよ?レイ君に危ない目に遭って欲しくないし、でも⋯』

 

サーゼクス『でも?』

 

セラ『⋯実はね?レイ君⋯この前、教育係りの上級悪魔を倒しちゃったの⋯』

 

サーゼクス『なんだって!?確かレイ君の教育係りって⋯』

 

セラ『うん⋯お父さんの騎士をしてる人だよ』

 

サーゼクス『それを子供のレイ君が倒したのか⋯?』

 

セラ『うん⋯ちなみに後からその人に聞いたら、手は抜いてなかった⋯というか⋯抜けなかった、って言ってたよ⋯』

 

サーゼクス『それ程なのか⋯』

 

セラ『うん、だから大抵の任務なら任せても大丈夫だと思うよ?』

 

サーゼクス『そうか⋯なら後はどの任務を任せるかだが⋯』

 

セラ『何でも大丈夫だと思うよ?』

 

サーゼクス『そうはいかないさ、いくら教育係りを倒したからって、適当には出来ないさ』

 

セラ『むっ⋯そんな事ないもん、レイ君ならどんな任務だって完璧にこなせるよ!!』

 

サーゼクス『そうかい?なら⋯少しづつ難度を上げていって、何処まで出来るか予想してみるかい?』

 

セラ『良いよ!私は全部こなすに一票』

 

サーゼクス『なら僕は途中で、そうだな⋯上級悪魔に任せる様な任務で断るに一票だ』

 

セラ『じゃあ勝負はレイ君が中級悪魔に昇格するまでね』

 

サーゼクス『そうだね、来年には昇格してるだろうからね、それで行こう』

 

―――――――――――――――――――

 

と言う内容だったからだ。

 

レイ「⋯⋯⋯⋯⋯」

 

セラ「本当にごめんね⋯レイ君」

 

サーゼクス「本当に済まない⋯レイ君」

 

俺が何も言えずにいると、二人は謝罪してきた。

 

レイ「⋯それは別に良いんですけど⋯本当にそんな下らない理由で⋯?」

 

セラ「下らなくないよ!!実際にレイ君は全ての任務を完璧にこなしてたし!!私が正しかったでしょ?サーゼクスちゃん」

 

サーゼクス「そうだね⋯正直に言うと途中からは僕も意地になってしまってね⋯本気で無理だと思う様な任務も渡してしまったんだが⋯君は完璧に片付けてしまった⋯」

 

セラフォルー様が勝ち誇った様に言うと、サーゼクスさんは苦笑しながらそう言った。

俺はそれを見て二人が本当に反省してるのかどうか分からなかった。

 

レイ「あっ⋯て事は今回の昇格は⋯」

 

セラ「うん、元々昇格の予定ではあったんだけどね⋯」

 

サーゼクス「それらの任務の結果、少し早まったって感じだね」

 

俺の疑問に二人は当たり前の様に答えた。

 

レイ「⋯そうですか⋯それで?話を戻しますけど今回の任務は、はぐれ悪魔討伐って事で良いんですか?」

 

サーゼクス「そうだったね⋯ああ、その通りだ」

 

これ以上脱線しては困るので、俺は少し強引に話しを戻した。

 

レイ「あれ?だったら何でさっきセラフォルー様は心配そうな顔をしたんですか?俺が全部こなす方に賭けてたんですよね?」

 

セラ「そうだけど⋯それでも心配はするよ!ただでさえレイ君は無茶ばかりするんだから!!」

 

セラフォルー様の口調は少し怒っているものの、表情は悲しそうに見えた。

 

レイ「そう⋯ですか、心配掛けてすいません」

 

俺は少し申し訳なく思い、素直に謝った。

 

セラ「いきなり大きな声出してごめんね⋯そのお陰で私やサーゼクスちゃん、それにソーナちゃんやお母さん達も助けられてるよ?

でもねレイ君、私はもちろん皆もレイ君が本当に大事なんだよ?それだけは分かってね?」

 

レイ「はい⋯気を付けます⋯」

 

セラフォルー様は俺の元に来ていつになく真剣な表情でそう言って俺を抱きしめた、俺は自分が思う以上に心配を掛けていたのだと言う事を初めて知った。

 

セラ「解ってくれればいいの⋯それに、レイ君は自分の命を軽く見すぎる時があるよね?

お願いだからそれだけは絶対に止めて欲しい、これはレイ君の王としてでも魔王としてでも無い、お姉ちゃんとしてのお願い⋯聞いてくれる?」

 

そう言うセラフォルー様は、もう泣きそうな顔をしていた。

 

レイ「うん⋯俺がお姉ちゃんからのお願いを聞かないわけ無いでしょ」

 

セラ「ありがとう⋯レイ君」

 

俺は弟として答え、先程とは逆に今度は俺がセラフォルー様を抱きしめると、セラフォルー様は俺の胸の中で小さくそう言った。

 

 

サーゼクス「それで、この任務を受けてくれるかな?」

 

レイ「ええ、やりますよ」

 

暫くしてサーゼクスさんにそう聞かれて、俺はそう答えた。

 

セラ「気をつけてね?さっきの約束もちゃんと守ってね?」

 

レイ「はい、もちろんです」

 

相変わらず心配そうな顔で言うセラフォルー様に俺は笑顔でそう言った。

 

サーゼクス「討伐対象はここに書いてある」

 

サーゼクスさんはそう言って一枚の書類を取り出した。

 

レイ「はぐれ悪魔ゴブ⋯レートはA⋯罪状は主の殺害未遂⋯場所は人間界⋯ですか」

 

俺は書類を受け取り内容を確認した。

 

サーゼクス「ああ、ちなみに主だった者の詳細についてはちゃんと確認してある、待遇や扱いに問題は一切無かったし周囲からも悪い話しは出なかった」

 

サーゼクスさんは補足する様にそう言った。

 

レイ「主だった者はどれくらいの傷を?」

 

サーゼクス「重体らしいが命に別状は無いとの事だよ」

 

レイ「そうですか⋯分かりました、行ってきます」

 

俺は必要な事を全て聞き終え、俺は扉に向かった。

 

サーゼクス「頼んだよ」

 

セラ「気をつけてね?危なくなったら逃げても良いんだからね?」

 

レイ「はい、分かってますよセラフォルー様」

 

サーゼクスさんとセラフォルー様の二人に一礼してから、俺は扉を開け外に出ていった。

 

―――――――――――――――――――

 

レイ「さて⋯この辺りの筈なんだが⋯」

 

あれからすぐに人間界に転移して敵を捕捉した場所に向かっていた。

 

レイ(ん?⋯そこか)

 

俺は変な気配を感じ、辺りを探ると山の中から禍々しい気配がした。

 

レイ(とりあえず⋯居るのは確かなんだが姿が見えない⋯どこだ⋯)

 

俺は山の中に降り立ち辺りを見渡すが標的の姿が無い。

 

レイ(奥に進んでみるか)

 

そう思い俺は森の中を歩き始めた。

 

レイ(当然ではあるが⋯景色が変わらないな⋯一体どこに⋯あっ⋯)

 

10分程歩きそんなそんな事を思い始めた頃、俺は廃屋を見つけた。

 

レイ(ここだな⋯間違いない)

 

標的のはぐれ悪魔が居る、俺はそう確信した、廃屋からは血の匂いが漂っていたからだ。

 

レイ「よし⋯行くか」

 

俺は神器を開き《(なまくら)》取り出し、帯刀して中に進んで行った。

 

レイ「酷い匂いだ⋯」

 

中に入ると外以上の悪臭がして、床には大量の血が水溜まりを作っていた。

 

「⋯⋯け⋯」

 

レイ「なんだ⋯?」

 

「た⋯けて」

 

レイ「女の声⋯?まさか!?」

 

俺は声の聞こえた方に向かって走り出した。

 

「たすけて!誰か!?」

 

レイ「ここかぁ!!」

 

俺は扉を蹴破って中に入ると―――

 

「イヤァァァ―――」

 

標的であるはぐれ悪魔ゴブと思わしき化け物が、先程の声の主であろう女を食っていた。

 

レイ「チッ⋯間に合わなかったか⋯」

 

それを見て俺はそう呟いた。

 

「アアッ!ナンダ⋯オマエハ」

 

化け物は女性を食いながらこちらを見てそう言った。

 

レイ「はぐれ悪魔ゴブだな?お前を始末しに来たんだよ」

 

ゴブ「シマツ⋯?オマエノヨウナガキガカ?オレサマモナメラレタモノダ」

 

俺の宣言にゴブは笑いながらそう言った。

 

レイ「主を殺しかけた挙げ句⋯一般人まで殺した、お前は⋯ここで死ね!」

 

俺はそう言って教育係りの人とは別に、少し前に個人的に出会った人から教わった抜刀術の構えを取る。

 

ゴブ「グハハハ!オマエモクッテヤロウ!」

 

ゴブはそう叫び俺に向かって一直線に襲い掛かって来た。

 

レイ「ふぅ⋯ハアッ!」

 

俺は一つ呼吸をして地面を強く蹴り敵に迫る。

 

ゴブ「シネェェェェ」

 

叫びながら放たれた魔力を躱し、俺はすれ違い様に《(なまくら)》を抜き放った。

 

レイ「残念だったな」

 

俺は《(なまくら)》を鞘に戻し振り返ると。

 

ゴブ「ク⋯ソ⋯オマ⋯エ⋯ゴ⋯トキ⋯ガ⋯キ⋯ニ⋯」

 

上半身と下半身に別れたゴブはそう言い―――死んだ。

 

レイ「⋯帰るか」

 

俺はそう呟き、ゴブの持ち物と思われる物を証拠として持ち部屋を出た。

 

レイ「はぁ⋯思いの外、疲れたな」

 

外に出て俺はそう呟きながら羽を広げ飛んだ。

 

「お前、誰?」

 

レイ「ッ!だれ⋯だ⋯女の子⋯?」(気配が一切感じられ無かった⋯)

 

すると背後からいきなり声が聞こえ振り向くと、そこにはソーナと対して変わらない年頃の女の子が浮いていた。

 

「?」

 

俺を見ながらその子は首を傾げた。

 

ギル『レイ⋯』

 

レイ『うん⋯分かってるよ⋯』

 

ギル『なら良いが、決して戦おうなどと思うなよ?こいつは強いなんて次元じゃない』

 

レイ『ああ⋯勝てる勝てないじゃない⋯勝負にすらならないだろうね』

 

目の前に現れた女の子に俺はもちろんギルでも勝てないと直感で理解した。

 

レイ「えっと⋯君は⋯?どうしてこんな所に⋯」

 

「我、強い気配、感じた、だから来た」

 

俺は女の子の機嫌を損ねない様に気を付けて、とりあえずそう聞くと女の子はそう言った。

 

レイ「気配を⋯?さっきの奴の事か」

 

俺はゴブの事かと思ったのだが。

 

「違う、気配感じたの、お前」

 

しかし、それはすぐに否定された上、女の子は俺を指差しそう言った。

 

レイ「⋯俺?」

 

「ん⋯」

 

そう聞くと、女の子は小さく頷いた。

 

レイ『どういう事なの?ギル、そんなに強力な武器や技は使ってなかった筈だけど⋯』

 

ギル『おそらくだが⋯さっき《王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)》を開いた時に何かを感じ取ったんじゃないか?』

 

レイ『それだけでこのクラスの奴が来るほどなのか?この神器は⋯』

 

ギル『当然だろ、誰の力だと思っている』

 

レイ『マジかよ⋯』

 

自慢気に言うギルに俺はそれしか言葉が出てこなかった。

 

レイ「えっと⋯じゃあ⋯俺に何か用か?」

 

「何もない、ただ、見に来ただけ」

 

気を取り直して俺がそう聞くと女の子は首を横に振り、そう言った。

 

レイ「そう⋯なんだ⋯」

 

「そう⋯」

 

レイ「⋯⋯⋯」

 

「⋯⋯⋯」

 

レイ「えっと⋯それで⋯君は⋯」

 

沈黙が続き俺は耐えきれなくなり、さっきの続きを聞いた。

 

「我、オーフィス」

 

レイ「オーフィス?どっかで聞いたような気が⋯」

 

名前を聞き俺が考えていると。

 

オーフィス「我、お前、知らない」

 

レイ「そう⋯だよな⋯ああ、すまない俺はレイって言うんだ」

 

オーフィスと名乗る少女の言葉に俺は自己紹介をした。

 

オーフィス「レイ⋯、分かった」

 

レイ「よろしくな」

 

オーフィス「⋯ん、でも我、もう行く、また来る」

 

とりあえず挨拶をするも、オーフィスはそう言って何処かに飛んで行った。

 

レイ「⋯⋯なんだったんだ?でも⋯あのオーフィスって娘⋯確実にやばいな⋯」

 

俺がオーフィスと名乗った女の子の事は何も解らなかったが、それだけは確信していた。

 

ギル『⋯レイ、この事⋯あの女には黙っていることだな』

 

レイ『何で⋯?』

 

ギル『あんなのがお前の神器に反応したと知ったらどうなるか、分からない訳じゃないだろう?』

 

ギルに言われて考えてみると。

 

レイ『ああ⋯確かに、良くても外出禁止とか24時間の監視とか言われそう⋯』

 

セラフォルー様が騒ぐ姿が頭に浮かんだ。

 

ギル『だろう?別に戦った訳でもないし奴に敵意があった訳でもないんだ、大丈夫だろうよ』

 

レイ『⋯うん、そうだね』

 

俺は報告した後に起こるであろう面倒を避ける為に黙っている事にした。

 

レイ「とりあえず⋯帰ろう」

 

俺はそう呟き、周囲を最大限に警戒しながら人気の無い所に行き転移して冥界に帰った。

 

――――――――――――――――――

 

セラside

 

レイ君が部屋を出てから3時間が立った。

 

セラフォルー「う~ん、大丈夫かなぁ⋯」

 

あれからずっと私は落ち着かなかった。

 

サーゼクス「少し落ち着いたらどうだい?セラフォルー」

 

そんな私を見てサーゼクスちゃんは苦笑しながらそう言った。

 

セラ「でも⋯」

 

サーゼクス「レイ君なら、きっと大丈夫だよ、もう少しすればちゃんと帰ってくるさ」

 

セラ「うん⋯」

 

サーゼクスちゃんにそう言われ、私は椅子に座ると―――

 

コンコン

 

セラ「!どうぞ!」

 

扉がノックされ、私は立ち上がりそう言った。

 

レイ「失礼しま「レイ君」うわぁ、セラフォルー様!?」

 

扉が開き入って来たのはレイ君だった、私はすぐに飛び付いた。

 

セラ「大丈夫?何処も怪我してない?」

 

レイ「大丈夫ですよ、ただいまセラフォルー様」

 

セラ「うん☆お帰りなさい☆」

 

私がそう聞くと、レイ君は笑顔でそう言った。

 

サーゼクス「やあお帰りレイ君、早速で悪いが報告を聞いても良いかな?」

 

レイ「はい」

 

サーゼクスちゃんの言葉にレイ君は頷き報告を始めた。

 

サーゼクス「そうか⋯人間を殺していたか⋯」

 

レイ君の報告を聞き終えて、サーゼクスちゃんは表情を曇らせた

 

レイ「はい、すみません」

 

セラ「レイ君の所為じゃ無いよ」

 

サーゼクス「ああ、君は最善を尽くしたと僕も思っているよ」

 

レイ「セラフォルー様⋯サーゼクスさんも⋯ありがとうございます」

 

少し俯いてそう言うレイ君に私達がそう言うと、レイ君は安心したのか顔を上げてそう言った。

 

サーゼクス「とりあえず今日はもう帰って休むと良い」

 

セラ「そうだね、家に帰ってゆっくりして☆」

 

レイ「はい、失礼します」

 

私達の言葉にレイ君は一礼して部屋を出ていった。

 

セラ「サーゼクスちゃん⋯」

 

サーゼクス「ああ、分かってるさセラフォルー」

 

レイ君が部屋を出てから、私は子供のレイ君には少し酷だった⋯そう言おうしたが、どうやらサーゼクスちゃんも同じだった様だ。

 

サーゼクス「全く⋯酷い世の中だね⋯」

 

セラ「うん⋯」

 

私達はそう呟いてから、互いの仕事に戻った。

 

――――――――――――――――――

 

俺は二人への報告を終え帰路に着いていた。

 

レイ「はぁ⋯」

 

ギル「どうした?」

 

ため息をつくとギルが話し掛けてきた。

 

レイ「どうしたも何も⋯あの件だよ⋯」

 

ギル「ああ、報告しなかった事か、だがそうしたって事はお前もあの女が騒ぐのが面倒だったと言う事だろう?」

 

レイ「まあ⋯そうなんだけど⋯心配される度に隠し事をしてるからなのか分からないけど⋯セラフォルー様の顔見れなくて俯いちゃったし⋯」

 

俺はセラフォルー様の笑顔に少しだけ罪悪感を覚えていた事を話した。

 

ギル「どちらにしろ最終的に決めたのはお前なんだ、諦めろ」

 

レイ「はぁ⋯しばらく憂鬱だ⋯」

 

俺はそう呟きながら、二人の会話も勘違いも知らずに家に帰ったのだった。

 




一応オーフィスもヒロインの候補なのでここで接触です。
実際にヒロインにするかどうかは、これからの話し次第かな…


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【10歳】レイという少年

今回は少しだけレイの考えと言うか思想と言うか行動理念なんかが分かって貰えると幸いです。

9/24 本文編集

10/11 本文編集

11/11 本文改定


今日は、四年に一度開かれる貴族会議の日、この会議は言うなればそれぞれの領地で起きた事などの報告⋯という名の自慢をする場で、結局は名目を変えただけでただのパーティーと変わらない。

当然シトリー家は自慢やらなんやらそんな事には興味など無いのだが、参加しなければ周りの貴族達に睨まれる為、毎年仕方なく参加している。

俺はセラフォルー様に頼まれてシトリーの護衛として来ていた。

 

レイ「全く⋯どうして貴族って言うのは一部を除いて、こうも派手なパーティーが好きなんだか⋯にしても相変わらず人が多いな⋯」

 

ソーナ「そうだね、でも仕方ないよ…お姉様から聞いたんだけど、みんな自分が一番だって見せびらかしたいらしいよ?

それに自慢するのが大好きなんだってさ」

 

俺がつい文句を口にすると、ソーナがセラフォルー様から聞いたと言う事を教えてくれた。

 

レイ「そうなんだ⋯本当に貴族の考える事は分からないな⋯」

 

ソーナ「大丈夫だよ?私も分からないから」

 

俺の言葉にソーナが不安そうに俺の袖を掴みそう言った。

ちなみにソーナは昔から俺の袖を良く掴むのだが、ソーナに何故かと聞いてみたら「レイ君が傍に居るんだなって安心出来るの」と可愛らしい笑顔で言われた。

 

リアス「ソーちゃん、レイ、やっぱり二人も来てたのね」

 

ソーナ「リーアちゃん、うんお父様が私もそろそろこういう場も知った方が良いって」

 

リアス「私も⋯お父様はまだ早いって言ってたけど、お母様がね」

 

今回のこの集まりにソーナ(おそらくリアスも)が連れてこられたのは初めてだ。

基本的には、大まかに分けて二種類の貴族がいる、一つはソーナの説明に有った様な派手好きで自慢好きな上に常識すら危うい貴族、そしてもう一つはシトリー家の様に前者とは真逆の貴族だ。

ちなみにグレモリー家は派手好きでは有るが自慢好きでは無いし全うな常識も持っている。

本来この集まりには当主と妻の二人だけが来れば良いのだが、その大半は自分の子供を連れてきている、だがその目的はさっきの話しの前者と後者で大分違う、前者は当然の事ながら子供自慢やその子供に自分達がしている様な謂わば駄目な振る舞いを教える為で、後者は貴族の中にはこの様な愚か者も多いから気を付けろ、こうはなるな、と言う事を分からせる為で、当然ソーナ(多分リアスも)は後者の意味で連れて来られていた。

だが、それでも唯一二つの中で共通しているのは将来の婿や嫁を探すと言う事だ、この会議には何も問題が起こらない限りほぼ全ての貴族が出席するからだ。

故に今回俺がセラフォルー様に与えられた任務は前者の貴族達からソーナを守る事だった。

 

レイ「二人共大変だな」

 

ソーナ「もう、他人事だと思って⋯レイ君も連れて来られたって事は私の護衛をお姉様に言われてるんでしょ?ちゃんと守ってね?」

 

俺が笑いながらそう言うと、ソーナは頬を膨らませそう言った。

 

レイ「その辺は安心して良いよ、ソーナの事は死んでも守るから」

 

ソーナ「あっ⋯//うん⋯ありがとう⋯⋯///」

 

ソーナの目を見て俺がそう言うと、ソーナは顔を真っ赤にしながらお礼を言った。

 

リアス「むぅ⋯レイ、私は?私の事も守ってくれる?」

 

レイ「うん?まあ⋯ソーナや俺の近くに居るならお前守ってやるよ?」

 

何故か今度はリアスが頬を膨らませそう言って来たので、俺は何を今更と思いながらもそう言った。

 

リアス「本当ね?約束よ?」

 

レイ「?⋯ああ」

 

すると、リアスは何故か詰め寄ってそう言ったので、俺は不思議に思いつつも頷いた。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

自慢だけの会議がようやく終わり、今度はパーティーが始まった 。

 

レイ「ようやく無駄な時間が終わったな⋯」

 

ソーナ「そうだね⋯」

 

リアス「相変わらずストレートに言うわね⋯レイは⋯」

 

俺がそう呟くと、ソーナは疲れた顔をしながら、リアスは苦笑いをしながらそう言った。

 

グレイフィア「お疲れ様です皆様」

 

レイ「ああ、グレイフィアさんもお疲れ様です」

 

三人で話しているとグレイフィアさんが俺達の元に来た。

 

グレイフィア「はい、グレイフィアです。

レイ様、お嬢様の相手までしていただきありがとうございます、サーゼクス様に代わりお礼申し上げます」

 

レイ「構いませんよ、別に何かした訳じゃ無いですし」

 

グレイフィア「いいえ、そんな事はありませんよ?サーゼクス様も「レイ君の元に居るなら心配は無いね」っと仰っていましたから」

 

レイ「そうですか⋯それなら良かったです」

 

グレイフィア「はい」

 

グレイフィアさんにそんな風に言われた、どうやら俺は随分と信頼されているらしい。

 

レイ「それにしても、また言うんですね」

 

グレイフィア「はい⋯私がグレイフィアだと一目で分かって頂けるのは、やはり嬉しいですから」

 

レイ「そうですか」

 

グレイフィア「⋯はい///」

 

俺の言う「また」とはグレイフィアさんが言った、「はい、グレイフィアです」の事だ。

俺がグレイフィアさんの事を呼ぶと、グレイフィアさんは必ずと言って良い程、笑顔でそう言うのだ。

 

レイ「グレイフィアさん⋯すいませんが少し二人をお願い出来ますか?」

 

グレイフィア「構いませんが、どうしたのですか?」

 

レイ「セラフォルー様の所に行こうかと思って」

 

グレイフィア「そうですか、分かりましたお二人は私が見ていますよ」

 

レイ「ありがとうございます、では行ってきますね」

 

俺はそう言ってセラフォルー様の元に向かった。

 

「そう言えばご存知ですかな?最近とある貴族が没落したそうですぞ?」

 

「そうなのですか?それは愉快な話しですな」

 

セラフォルー様の所に向かう途中そんな声が聞こえてきた。

 

レイ(全く不愉快な話しで盛り上がっているな)

 

そう思いながらも俺はセラフォルー様の元へ急いだ

 

コンコン

 

俺がノックすると中から「は~い」と声が聞こえたので、俺は扉を開け中に入った。

 

レイ「失礼します」

 

セラフォルー「あっ!レイく~ん☆」

 

レイ「セラフォルー様⋯お疲れ様です、サーゼクスさんも」

 

中に入ると机に突っ伏しているセラフォルー様と明らかに疲れた顔をしているサーゼクスさんが居たので、俺はそう言って二人を労った。

 

セラフォルー「本当だよ~もうやだ~この会議⋯」

 

サーゼクス「そうだね⋯今回ばかりはセラフォルーと同じ意見だよ⋯」

 

普段なら俺もリーシアさんも嗜めるのだが、今はそんな事はしない、何故なら二人を含めた四人の魔王達には、どうにかして魔王と繋がりを作りたいと言う者達が、四人に対してこの会議では全く必要の無い事まで話しているのを知っていたからだ。

 

レイ「あれ?リーシアさんも居ないんですね?」

 

サーゼクス「ああ、リーシアなら父上と母上の様子を見に行くと言って、グレイフィアと共に出て行ったよ」

 

レイ「そうですか」

 

おそらくリーシアとグレイフィアさんも自分達が居てはサーゼクスさんが気を抜けないと思い、リーシアさんは義親の所に、グレイフィアさんは俺達の所に来たのだろう。

 

レイ「紅茶いれますね」

 

セラフォルー「ありがと~レイ君☆」

 

サーゼクス「ありがとう」

 

そう言って俺は紅茶を淹れて二人に出した。

 

セラフォルー「ふぅ~やっと落ち着いたぁ~」

 

サーゼクス「そうだね、それにしても⋯レイ君はなんでも出来るんだね、とても美味しいよ」

 

レイ「そんな事はありませんよ?紅茶は母上が好きなので自然とですよ」

 

三人で紅茶を飲みながら話していると、俺はふとさっき聞いた話しを二人に聞いてみた。

 

レイ「そう言えばさっきどっかの貴族が没落したって話しを聞いたんですけど⋯」

 

セラフォルー「そうなの?サーゼクスちゃん」

 

俺が聞くとセラフォルー様はサーゼクスさんの方を向きそう言った。

セラフォルー様は外交担当なのでその辺の話しは余り詳しくないからだ。

 

サーゼクス「いや⋯そんな話しは聞いていないが⋯」

 

レイ「そうなんですか?」

 

サーゼクス「ああ」

 

レイ(サーゼクスさんに伝わってないって事は⋯嘘って事か?)

 

サーゼクスさんの話しを聞いて俺はそう思った、何故ならその手の話しがサーゼクスさんの元に入らない訳が無い筈だからだ。

 

セラフォルー「そう言えばレイ君」

 

レイ「どうしました?セラフォルー様」

 

セラフォルー「ソーナちゃんの様子はどう?」

 

レイ「疲れてましたね⋯今はリアスとグレイフィアさんと一緒に居ますよ」

 

セラフォルー「あ~やっぱりね~」

 

セラフォルー様に先程までのソーナの様子を話すと。

 

サーゼクス「そうだった、リアスの面倒まで見てくれてありがとうレイ君、君と一緒なら僕も両親も安心出来るからね」

 

レイ「ありがとうございます、でもお礼ならさっきグレイフィアさんにも言われましたから気にしないで下さい」

 

サーゼクス「そうかい?それでもやっぱりね⋯リアスに関してはだいぶ君にはお世話になっているからね」

 

レイ「そんな事は無いと思いますけど⋯」

 

サーゼクス「まあ、そう言ってくれるならこれ以上は止めておこうか」

 

レイ「そうしてくれると助かります」(これ以上の厄介事は正直言って俺も面倒臭いし⋯)

 

いくら妹の為だろうと魔王の名を冠してるサーゼクスさんに頭を下げられるのは俺も困る、何故なら裏で一部の馬鹿共が「魔王に対する点数稼ぎだ」と噂しているのを俺は知っていたからだ。

 

サーゼクス「出来ればこれからもリアスの事をよろしくたのむよ」

 

レイ「まあ⋯俺に出来る事であれば⋯」

 

サーゼクス「ありがとう」

 

サーゼクスさんにそう言われて俺はそう返した。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

あれからも色々な話しをして暫くが経った頃。

 

レイ「それじゃあ俺はそろそろ戻りますね?」

 

俺がそう言って立ち上がると

 

セラフォルー「そう言えば結構ここでゆっくりしちゃってたね」

 

サーゼクス「そうだね、僕達もまだやらなきゃいけないことがあるからね⋯」

 

セラフォルー「だね⋯面倒だなぁ⋯」

 

二人は先程までと違ってまた俺が入って来た時の様な顔になった。

 

レイ「二人共大変でしょうけど、残りも頑張って下さいね」

 

セラフォルー「うん、ありがとうレイ君」

 

サーゼクス「ああ、レイ君も周りがうるさいだろうけど頑張って」

 

レイ「はい、では失礼します」

 

俺はそう言って部屋を出てソーナの元に向かった。

 

レイ(二人共いつも大変そうだけど今日はいつにもまして疲れてたな⋯)

 

そんな事を思いながら三人が居る会場までの長い廊下を歩いていると。

 

レイ(ん⋯?なんだあれは)

 

ふと窓の外を見ると。

 

レイ(本当になんだ⋯?誰かが何かを運んでるのか?)

 

そこには何かを肩に抱えている男が居た。

 

レイ(暗くて見えないな⋯ちょっと行ってみるか⋯)

 

そこは建物の裏で明かりが無いので、俺は確認する為に窓から飛び降りた。

 

レイ(何処だ?荷物運びにしては随分と動きが早いな)

 

どうやら飛び下りてる一瞬で何処かに行った様で見失った。

 

レイ(明らかにおかしい⋯セラフォルー様に報告に戻るか?でも⋯俺の見間違いかも知れないしな⋯もう少し探してみるか⋯)

 

俺はそう思い森の中に入っていった。

 

レイ(何処に行った⋯ん?いた⋯)

 

先程の荷物を抱えた大男を見つけた、側には別の男も居た。

 

「これで全部か?」

 

「はい⋯本当ならシトリーとグレモリーも欲しかったですがあの二人には厄介なのがついてまして」

 

「そうか⋯なら仕方ないな、気付かれたら台無しだ」

 

「そうですね」

 

「よし⋯さっさと行くぞ」

 

「はい」

 

「これが上手く行けば俺は再起出来るんだ⋯」

 

レイ(シトリーとグレモリーも⋯?何の話しだ?)

 

覗き見ながら二人の男の会話を聞き不思議に思って居ると、二人の男は馬車に乗った。

その際に大男が馬車に荷物を置く際に中身が見えた。

 

レイ(おい、ちょっと待て⋯あれは⋯人か?)

 

見えたのは足だった。

 

レイ(まさか⋯あの荷物全部がそうなのか?って⋯不味い)

 

俺がそう思っていると馬車が走り出してしまったので、俺は直ぐに後を追った。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

レイ「はぁ⋯はぁ⋯やっと⋯止まった⋯ふぅ⋯何とか見失わずにすんだな⋯」

 

あれから俺は走り続ける馬車を追って随分と会場から遠くに来た。

 

レイ「さて⋯それで⋯あいつらは何者⋯っ!マジかよ⋯」

 

一度息を整え相手の様子を確認しようと見ると。

 

レイ「あれって確か⋯フェニックス家の⋯それにあっちはアガレス⋯だったけ?他にも会場で見た顔ばっかじゃねぇか」

 

そこに居たのはあの会議の場に連れて来られていた貴族の少女達だった。

 

レイ「まさか⋯誘拐か?あんなでかい会議なのに?警備がザルすぎんだろ⋯」

 

俺は頭を抱えながらそう呟いた。

すると、先程の大男と一緒に居た男が出て来た。

 

「これで⋯後はあの娘達を売り払えば⋯私はもう一度貴族に戻れるんだ」

 

レイ(まさか⋯あいつは⋯あの時の話しの⋯没落したって言う貴族か!?⋯成程な⋯そう言う事か)

 

俺は会場で聞きセラフォルー様達に話した事を思い出し、そして気付いた、魔王ですら知らない話しを何故たかが一貴族が知っていたのかを。

 

レイ(つまり、自慢気に話してた奴がこいつを嵌めたって所か⋯)

 

「もう少しで準備が整います」

 

そう考えている所に大男がやって来てそう言った。

 

「そうか!!」

 

「はい、終わり次第いつでも出発出来ます」

 

レイ(不味いな⋯)

 

二人の会話を聞き、俺は少し焦った。

 

レイ(どうするか⋯セラフォルー様の女王として見逃すわけにはいかない、セラフォルー様やグレイフィアさんに連絡を入れたとしても⋯間に合わないよな⋯)

 

正直に言えば俺には彼女達を助ける理由は無いしメリットも殆んど無い、はっきり言ってしまえば彼女達の事などどうでも良い。

だがそれを見付けてしまった以上見捨てる事は出来ない、見捨てた事が知られればそれはセラフォルー様やシトリー家の評価が下がる事になるからだ。

 

レイ(となると⋯だ、一人でやるしか無いか⋯)

 

俺はそう決断して立ち上がり奴等に見付からない様に動き出した。

 

レイ(良し⋯ここなら全てを見渡せるな、まず敵の数は⋯2.3.5.8人⋯だな、これなら余裕だな、それに⋯幸い人質は輸送の為に馬車に一纏めにされてるし⋯)

 

「準備が完了しました」

 

「良し、では行くぞお前達!さっさと持ち場に付け!!」

 

「はっ!!」

 

貴族の男の声に部下達が動き出そうとした時⋯。

 

レイ「それは無理だな」

 

俺はそう言いながら貴族の男に斬りかかった。

 

「なっ!なんだ貴様⋯ぐわっ」

 

レイ「ちっ⋯浅いか⋯」

 

「お、お前達こいつを殺せ!」

 

『はっ!!』

 

貴族の男の叫び声と共に周りの連中が一斉に襲い掛かって来た。

 

レイ「遅ぇよ、雑魚が!!」

 

俺はそう叫びながら周りの敵を薙ぎ払った。

 

「ぐっ⋯っ貴様は!」

 

「なんだ!こいつを知っているのか!?」

 

貴族の男と大男以外は既に全員殺した、大男も斬られ膝を付くとそう言った、どうやら俺の正体に気付いたらしい、貴族の男は俺を知らないのか大男にそう聞いた。

 

「はい、こいつは魔王レヴィアタンの女王です」

 

「なんだと!?ではこいつが⋯シトリー家の守護者(ガーディアン)か!」

 

大男の言葉に貴族の男は顔色を変えそう言った。

 

レイ「そう言えばそんな風に言われてるんだっけ⋯本当だったんだ⋯まあ良いや、とりあえず全員ここで死ね!!」

 

俺は一年前にセラフォルー様に言われた事を思い出して呆れた、しかし今はそんな事に構ってられる訳も無い為すぐに気を取り直しそう叫んだ。

 

「ま、待て、取引をしないか?」

 

すると貴族の男がそう言った。

 

レイ「あっ?なんだいきなり⋯取引だと?」

 

「そうだ、ここで見逃せば私が貴族に戻った時に全面的にお前の後ろ楯になってやろう、シトリーと私の二つの家がお前に付けばお前はもっと上に行けるぞ」

 

俺の言葉に貴族の男はそう言った。

 

レイ「確かにそうかもな」

 

「だろう?ならば「けど」な、なんだ⋯」

 

俺が話しに乗ったと思ったのか立ち上がり俺に話しながら近寄って来る貴族の男の言葉を遮り。

 

レイ「聞いてたぜ?お前⋯ソーナも標的に入れてただろ」

 

「そ、それは⋯」

 

俺は自分でも分かるくらいに声のトーンが自然と下がっていた、その言葉を聞き貴族の男は明らかに動揺し始めた。

 

レイ「誰を標的にしようとお前達の自由だ、だがな⋯ソーナを標的にしたのは間違いだったな、あいつを狙う奴は誰だろうと⋯」

 

俺はそう言い殺気を最大に纏いながらゆっくりと二人に近付き―――

 

「お逃げ下さ―――」

 

貴族の男を庇い前に出た大男の首を跳ね。

 

レイ「確実に⋯殺す」

 

「ひっ⋯た、助け―――」

 

自分でも驚く位の酷く冷たい声でそう言い、今ので腰が抜けたのか動けない貴族の男の首を容赦なく跳ね飛ばした。

 

レイ「馬鹿が⋯ソーナを標的にして俺がただで済ませる訳無いだろうが」

 

俺は周りから色々な噂をされている、「魔王様に取り入ってる」だの「危険に陥った者や可哀想な者は守ってくれる」だの、しかしそれらは全て間違いだ。

そもそもそんな噂が立ったのは2年前にリアスを助けてからだ、それ以来そんなありもしない噂が広まった、俺がリアスを助けたのは[知り合い以上の仲の良い]そして[女の子]だったからだ。

俺は昔、教育係りの上級悪魔から「君は何の為に戦うのですか?」と聞かれ、俺は「セラフォルー様やソーナ、そしてシトリーの為、それ以外はどうでも良い」とそう答えた、その時に「そうですか⋯その気持ちは大変結構、ですがそれだけでは足りません、それ以外にも⋯そうですね⋯ヴァーリ君などの⋯自分の手の中にいる仲の良い者達、そして例え自分の手の中には無くともせめてグレモリー家のリアス殿の様な仲の良い女の子くらいは守って見せなさい、その程度も出来ない様ではセラフォルー様はおろかソーナ様すら守れませんよ?」と言われた。

だからあの日俺はリアスを守った、仲が良く無ければあの時もわざわざあんな遠くまで探しになど行かなかっただろう、それを勘違いした連中が噂を立てた、それが沢山の噂の正体だった。

そして今回助けたのもあくまでもセラフォルー様やシトリーの為に他ならない。

 

また、レイが普段から周囲に対して(セラフォルーやソーナに何かしない限り)丁寧に接しているのもその為である。

 

レイ「ふぅ、とりあえず終わったな⋯ん?」

 

そう呟くと同時に念話が来た。

 

レイ「はい、どうしました?グレイフィアさん」

 

グレイフィア「レイ様!今何処に居ますか?」

 

念話越しのグレイフィアさんは珍しく焦っていた。

 

レイ「今ですか?外に居ますが⋯」

 

グレイフィア「直ぐに戻って来て下さい!こちらは大変な事になってるんです!!」

 

グレイフィアさんの余りの焦りように俺は今更?と思いつつも、捕らえられた少女達を見ながら聞いてみた。

 

レイ「もしかして貴族の娘の何人かが見当たらないとかですかね?」

 

グレイフィア「どうしてそれを!?」

 

どうやらその通りだったらしい。

 

レイ「あー実はですね⋯⋯⋯」

 

俺はグレイフィアさんに怪しい奴を見付けて追った事から少女達が誘拐されていた事、それは没落した貴族の犯行だった事、そして誘拐犯はもう殺し少女達は助けた事、全てを話した。

 

グレイフィア「⋯そうでしたか、相変わらず凄いですね貴方は⋯」

 

レイ「そうでも無いですよ?とりあえず全員を馬車に乗せてそちらに戻りますね?死体の処理やらなんやらはお任せしますので後でどうにかして下さい」

 

グレイフィア「分かりました、私は直ぐに皆様にそうお伝えします」

 

レイ「よろしくお願いします、では⋯」

 

俺はそう言って念話を切ろうとしたら。

 

グレイフィア「レイ君」

 

レイ「なんですか?」

 

グレイフィアさんに声を掛けられた、しかも君呼びで、一体何かと思ったら。

 

グレイフィア「お疲れ様でした、そして⋯ありがとうございました、もしも手遅れだったならば⋯サーゼクス様⋯ひいては姉が責められていたでしょう」

 

レイ「あーそうですね⋯確か警備は人間界で言う所の警察みたいな物がやってた訳ですからね、非難は魔王の⋯それもそういう事を取り仕切ってるサーゼクスさんとその女王であるリーシアさんに行きますね⋯」

 

セラフォルー様が外交担当の様に四人の魔王は各々担当を持っている、セラフォルー様以外の事は良く知らないがサーゼクスさんがこういう物を担当していると言う事は微かに覚えていた。

 

グレイフィア「はい、ですので本当にありがとうございました」

 

レイ「構いませんよ、ただ警備がザルだった事に関しては庇えませんが」

 

グレイフィア「それについては私から二人にお説教しておきますのでお気になさらずに」

 

レイ「そうですか⋯まあ程々にしてあげて下さいね?今回の会議の準備何かで大変だったんでしょうし⋯」

 

俺はセラフォルー様の手伝いで準備に関わった為大変だった事は知っていたので、最低限のフォローだけでもと思いそう言った。

 

グレイフィア「だとしてもですよ?レイ君が気付かなければこの程度では済まなかったでしょうから」

 

レイ「あはは⋯そう⋯ですか⋯」

 

グレイフィア「はい、当然です」

 

グレイフィアさんの言葉に俺はそれ以上何も言えなかった。

 

レイ「ま、まあ⋯とりあえず俺は皆を連れて急いで戻りますね」

 

グレイフィア「そうでしたね⋯改めてよろしくお願いします」

 

レイ「はい、では⋯」

 

そう言って今度は念話を切り馬車に向かった。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

俺は馬車で会場に戻って来た、貴族の娘達は起きなかったのでグレイフィアさんに見てもらうと、どうやら薬で眠らされていたらしい。

そしてその後、一部の貴族(馬鹿)からのある言葉に軽くキレて、その内の一人を黙らせるも、不機嫌になった俺はと言うと⋯。

 

セラフォルー「レイ君!!」

 

レイ「セラフォルー様⋯うわぁ!?」

 

いきなりセラフォルー様に抱き締められた。

 

セラフォルー「もう!また危ない事して!!自分を大切にしてって言ったでしょ!!!約束したよね?」

 

レイ「はい⋯すみません⋯」

 

セラフォルー様の言葉に確かにそうだと思い素直に謝った。

 

セラフォルー「でも⋯良くやったね☆偉いよレイ君☆」

 

レイ「⋯はい!」

 

セラフォルー様はそう言って更に強く抱きしめてくれた。

 

「失礼しますセラフォルー様、少しよろしいですか?」

 

そこに誰かが話し掛けてきた。

 

セラフォルー「ん~?ああ、うん良いよ☆レイ君」

 

レイ「はい?」

 

「君がレイ君だね?」

 

レイ「えっと⋯はい」

 

そこには何人かの貴族と思われる人が立っていた。

 

「突然失礼する、少し良いかな?」

 

レイ「はい⋯えっと⋯」

 

セラフォルー「この人はフェニックス家の現当主とその奥さんだよ☆で、隣にいるのが同じく大公アガレス家の現当主とその奥さんだよ☆」

 

俺が戸惑っているとセラフォルー様が説明してくれた。

 

レイ「そうですか、それで⋯何か?」

 

フェニックス卿「ああ、君にどうしてもお礼が言いたくてね⋯娘を助けてくれて本当にありがとう」

 

アガレス卿「私も同じです、本当にありがとうございます。

そして、先程は申し訳ありませんでした、同じ貴族として謝罪させて下さい」

 

レイ「⋯えっと⋯はい」

 

二人の当主にそう言われ俺は更に戸惑った、さっきの事もあり、まさかお礼や謝罪を言いに来る貴族が居るとは思わなかったから。

 

フェニックス卿「どうかしたか?」

 

レイ「ああ⋯いえ⋯その⋯お礼を、ましてや謝罪なんてされるとは思っていなかったので⋯」

 

アガレス卿「そうですか⋯確かに貴方の立場からしてみればそう思われるのも仕方無いでしょう」

 

レイ「ええ⋯だから正直驚いてますよ?てっきり皆さん、自分の一族の⋯娘の命よりも、くだらないプライドの方が大事なのかと思ってましたから」

 

俺は思ってた事を素直に言うと。

 

フェニックス卿「はははっ、まあ⋯そう思われても仕方無いか⋯現に私達以外は誰も来てない様だしな」

 

アガレス卿「そうですね、ですが私達にとっては何よりも大切な物ですから、私の頭一つで助かるのならいくらでも下げますよ」

 

フェニックス卿「同感だ、レイヴェルは私の宝だからな、何せ上のは男ばかりでようやく産まれた女の子だ」

 

二人は笑いながらそう言って見せた。

 

レイ「まあ、別にお礼を言われたくてやった訳でも無いですから⋯とにかくご無事で何よりでした」

 

フェニックス卿「ああ、本当にありがとう、ちゃんとしたお礼は後日させて頂く」

 

アガレス卿「はい、私もそうさせて頂きます、本当にありがとうございました」

 

レイ「お気になさらずに⋯」

 

二人からそう言われて俺はまた面倒の種が増えた⋯と思った。

 

ソーナ「レイ君!」

 

リアス「レイ!」

 

レイ「二人共、ごめんな⋯一緒に居て守るって言ったのに⋯」

 

ソーナ「そんな事はどうでも良いの!レイ君⋯怪我とかしてない?」

 

レイ「大丈夫だよそれほど強い奴じゃ無かったし」

 

リアス「それでもよ!!何か有ったらどうするのよ!!!」

 

ソーナもリアスも涙目でそう言った。

 

レイ「二人共⋯ごめん⋯心配してくれてありがとう」

 

そんな二人に俺は笑顔でお礼を言った。

 

そして、誘拐騒動が有った物のその後は何事も無く終わった。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

フェニックスside

 

「んんっ⋯ここは⋯?」

 

フェニックス卿「おお!起きたかレイヴェル!!」

 

レイヴェル「おとう⋯さま⋯?」

 

目が覚めるとお父様が私の手を握っていた。

 

フェニックス卿「そうだ、大丈夫か?」

 

レイヴェル「はい⋯少しぼーっとしますが」

 

フェニックス卿「そうか、良かった⋯本当に」

 

お父様は本当に安心したようにそう言った。

 

「グレイフィア様が見てくれたのですから、そんなに心配する事ありませんよ」

 

フェニックス卿「しかし!」

 

レイヴェル「お母様まで⋯何か有ったのですか?」

 

反対側にはお母様までいた。

 

フェニックス卿夫人「ええ、実はね⋯」

 

お母様は何があったのかを説明してくれた。

 

レイヴェル「そんな事が!?」

 

フェニックス卿「ああ⋯気付いてやれずに本当にすまなかったレイヴェル」

 

フェニックス卿夫人「本当にごめんなさいね、レイヴェル」

 

レイヴェル「お父様とお母様が謝る必要などありませんわ、それよりも⋯」

 

二人に謝られた事に驚いて、私はすぐにそう言った、それに聞きたい事もある。

 

フェニックス卿夫人「どうしたの?レイヴェル」

 

レイヴェル「私を助けてくれてのは⋯セラフォルー様の女王の方と言うのは本当ですか?」

 

魔王様の⋯それもセラフォルー様の女王の事を私は知らなかった。

 

フェニックス卿「確かだ、私もお礼を言いに行ったからな」

 

レイヴェル「その方のお名前は⋯?」

 

フェニックス卿夫人「そう言えば貴女は知らないわよね、セラフォルー様の女王の名前はレイ君よ」

 

レイヴェル「レイ⋯様⋯//」

 

彼の名前を口にした瞬間、顔が熱くなったのが自分でも分かった。

 

フェニックス卿「ああ、歳は確かレイヴェルの一つ上だったな」

 

レイヴェル「一つ!?そんな⋯私と変わらないのに⋯」

 

お父様からそう言われ、私は驚いた当たり前だが私に同じ事など決して出来ないだろう。

 

フェニックス卿夫人「それだけ優れた方と言う事よ、そう言えば貴方?」

 

フェニックス卿「どうした?」

 

フェニックス卿夫人「そのレイ君へのお礼はどうするおつもりですか?」

 

フェニックス卿「ああそれなら⋯」

 

お父様とお母様は何か二人で話しを始めてしまった。

 

レイヴェル「レイ様⋯」

 

私はそんな二人を横目にベッドに戻り、その方の名前を呟いた。

 

フェニックスsideout

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

アガレスside

 

「んっ⋯あれ⋯?」

 

「目覚めましたか?おはよう、シーグヴァイラ」

 

シーグヴァイラ「お父様⋯一体何が⋯?会議は⋯?」

 

目覚めると私はベッドの中にいた、確か会議に出席していた筈だけど⋯。

 

アガレス卿「そうですね、話しておきましょうか⋯」

 

するとお父様が話してくれた。

 

シーグヴァイラ「そんな⋯ことが⋯」

 

アガレス卿「ええ、彼が⋯レイ君がいなければ今頃大変な事になっていたでしょう」

 

シーグヴァイラ「あの⋯」

 

アガレス卿「どうしましたか?」

 

お父様の話しを聞いて、私は驚くと共に気になる事が有った。

 

シーグヴァイラ「私を助けてくれたと言う、レイ⋯君と言うのは⋯本当に私より一つ年下なのですか⋯?」

 

アガレス卿「そうですよ、お礼を言った際に会いましたから」

 

シーグヴァイラ「そうですか⋯」

 

アガレス卿「どうしました?」

 

私はそれが信じられなかった、そんな私にお父様が心配そうに聞いてくる。

 

シーグヴァイラ「いえ⋯ただ⋯私は何も出来ませんでした⋯」

 

私は悔しくてそう言うと。

 

アガレス卿「シーグヴァイラ⋯自分と彼を同じにしてはいけませんよ?」

 

シーグヴァイラ「お父様⋯?」

 

お父様は真剣な顔でそう言った。

 

アガレス卿「レイ君はセラフォルー様の為に常人には到底無理な程の鍛練をこなしていると聞いてます、最初は私も大袈裟に言っているのかと思っていましたが⋯そんな事はありませんでした。

一目見れば大抵は底が見える物なのですが⋯残念ながら私には彼の実力は測りきれませんでした」

 

シーグヴァイラ「お父様でもですか!?そんなにも⋯」

 

お父様の言葉に私はさっき以上に驚いた。

 

アガレス卿「ですから、良いですか?シーグヴァイラ、彼に追い付きたいと思うのは構いませんが決して同じ様になれるなどと思ってはいけません、おそらくですが彼はきっと⋯」

 

シーグヴァイラ「お父様?」

 

何かを言い掛けたお父様に呼び掛けるが。

 

アガレス卿「いいえ、何でもありませんよ、今日はもうこのままお眠りなさい」

 

シーグヴァイラ「はい⋯お休みなさい⋯お父様」

 

お父様はそう言って立ち上がった、私はお父様にそう言ってベッドの中に戻った。

 

アガレス卿「お休みなさいシーグヴァイラ」

 

お父様は最後にそう言って部屋を出ていった。

 

アガレス卿「そう言えば⋯レイ君へのお礼はどうしましょうかね、レイ君⋯ですか⋯シーグヴァイラには言いませんでしたが、彼はきっと近い未来《超越者》と呼ばれるかも知れませんね⋯」

 

お父様がそう考えていた事を私には知る由もなかった。

 

アガレスsideout

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

後日。

 

俺はセラフォルー様を含めた四人の魔王達に呼ばれていた。

 

コンコン

 

レイ「失礼します」

 

セラフォルー「いらっしゃ~いレイ君☆」

 

サーゼクス「やあ、待ってたよ」

 

レイ「あれ?二人しか居ないんですか?」

 

四人の魔王からの呼び出しと聞いてたのに、中に居たのはセラフォルー様とサーゼクスさんの二人だけだった。

 

サーゼクス「ああ、今回の呼び出しは理由が理由なだけにあくまでも名目上そうしただけだ」

 

セラフォルー「そ~なのよ☆今回は少し特殊な話しなのよ☆」

 

レイ「特殊?」

 

二人の言葉に俺は首を傾げた。

 

サーゼクス「ああ、早速だが本題に入ろう」

 

セラフォルー「そうだね」

 

サーゼクス「レイ君」

 

レイ「はい」

 

二人が真面目な顔になり俺は何か任務かと思い、気を引き締めて返事をした。

 

サーゼクス「今日を持って君は上級悪魔に昇格だ、おめでとう」

 

セラフォルー「おめでとう☆レイ君☆」

 

レイ「⋯はい?昇格?何でですか?」

 

俺は一瞬何を言われたのか解らなかった。

 

サーゼクス「ははっ、そうだね驚くよね」

 

サーゼクスさんは笑いながらそう言った。

 

レイ「本当に何でなんですか!?俺は1年前に中級悪魔に昇格したばかりですよ!?」

 

サーゼクス「実はね⋯君を昇格させるべきだって手紙が送られて来たんだ、それも2通ね」

 

レイ「そんなの⋯一体誰が?自慢じゃ無いですけど、そんな事が出来る人達には嫌われてしかいませんよ?」

 

サーゼクスさんの言葉に俺はそう言った。

 

セラフォルー「それを送って来たのはね⋯フェニックスとアガレスなの☆」

 

レイ「えっ⋯」

 

セラフォルー「多分だけど、お礼に来た時に二人共ちゃんとしたお礼は後日って言ってたでしょ?これがそうなんじゃ無いかな?」

 

レイ「マジですか⋯」

 

セラフォルー様の言葉を聞いて、俺はそれしか言えなかった。

 

サーゼクス「おそらくそうだろう、それもだが⋯特に今回の君の功績を無視する事は出来ないからね、それとフェニックス家からはもう一つ贈り物が届いているよ、「お礼と昇格祝いを兼ねて渡して欲しい」と手紙に書いて有ったよ」

 

サーゼクスさんはそう言って小包を出して渡してくれた。

俺はそれを受け取り中を開けると。

 

レイ「これって⋯」

 

サーゼクス「ほう⋯フェニックス家も随分と奮発したね」

 

セラフォルー「そうだね~」

 

中に入っていたのは。

 

レイ「フェニックスの涙じゃないですか!?それもこんなに!?いくらなんでも⋯」

 

本来一個手に入れるのも大変らしいフェニックス家の特産品で収入源でも有るフェニックス涙が入っていた、それも結構な数。

 

セラフォルー「ちなみにアガレス家からも有るんだよ?」

 

レイ「これは⋯鍵ですか?」

 

今度はセラフォルー様から鍵を渡された。

 

セラフォルー「うん、屋敷だってさ☆」

 

レイ「⋯⋯⋯はあっ!?!?!?」

 

今度こそ俺は絶句した。

 

セラフォルー「いや~この間アガレスがシトリー領の大きな屋敷を一軒買ったって言うから何でかなって思ってたけど、そう言う事だったんだねぇ~」

 

サーゼクス「はははっ、アガレスも負けじと随分な物をくれたね」

 

レイ「いやいや⋯流石にこれは⋯」

 

俺はそう言って断ろうとしたが。

 

サーゼクス「まあ、良いんじゃないかな?折角の好意だ」

 

セラフォルー「そうだね☆ありがたく貰っておくと良いよ☆」

 

二人は笑顔でそう言った。

 

レイ「いや⋯でも⋯」

 

セラフォルー「レイ君」

 

レイ「は⋯はい」

 

セラフォルー「大丈夫だよ☆フェニックスもアガレスも何か企む様な一族じゃ無いから」

 

サーゼクス「そうだね、あの二家からなら問題は無いだろう」

 

二人は随分とフェニックスとアガレスを信頼している様だった。

 

レイ「⋯本当に良いんですか?」

 

二人「構わないよ☆(構わないさ)」

 

レイ「お二人がそう言うなら⋯」

 

信頼する二人に言われ俺は素直に貰う事にした。

 

サーゼクス「とにかくだ、今日から君は上級悪魔だ、改めておめでとう、これからも頑張ってくれ」

 

セラフォルー「おめでとうレイ君☆これからもよろしくね☆」

 

レイ「はい、セラフォルー様、サーゼクスさん」

 

二人から祝いの言葉を言われた俺は気を取り直してそう返事をした。

 

サーゼクス「そうだ、忘れる所だったよ」

 

レイ「えっと⋯まだ何か⋯?」

 

俺は流石に疲れて来ていた。

 

サーゼクス「安心してくれ、これで最後だ、悪魔の駒の事なんだけどね⋯」

 

レイ「そう言えば、確か⋯上級悪魔になれば貰えるんでしたっけ?」

 

サーゼクス「うん、ただ⋯」

 

レイ「解ってますよ、まだ渡せないんですよね?俺に渡したり何かしたら、また馬鹿な奴等が騒ぎますからね」

 

サーゼクスさんの言いたい事は解っていた、いくらセラフォルー様の女王とは言え、本来まだ貴族の子供にすら渡さない年齢の、それも転生悪魔の俺に渡したりすれば⋯どうなるかなんて簡単に想像出来る。

 

サーゼクス「ああ⋯すまないね⋯」

 

レイ「構いませんよ」

 

サーゼクス「そう言ってくれると助かるよ⋯本当に⋯」

 

サーゼクスさんは本当に申し訳無さそうにそう言った。

 

レイ(そう⋯今はまだ⋯ね)

 

サーゼクス「?どうかしたかい?」

 

レイ「いいえ、何も」

 

サーゼクスさんは何かに気付いたらしいが、俺はいつも通りに返した。

 

セラフォルー「でもでも~リアスちゃんやソーナちゃんが貰った後なら大丈夫だよね☆」

 

サーゼクス「そうだね、二人が貰った後ならそんな問題も無くなるだろう、すまないがそれまで待ってて欲しい」

 

レイ「はい」

 

セラフォルー様の言葉にサーゼクスさんが頷きそう言った。

 

その後、いつもの様に仕事をこなした後、何故かサーゼクスさんも一緒に家に来ることになり三人で帰ると、シトリーとグレモリーの両家が揃っており昇格記念のパーティーが開かれたのだった。

 

レイ(正直パーティーはもう良いんだけどな⋯)

 

パーティーの時には高確率で何かが起こっている為、若干パーティーが嫌いになっていたレイだった。




今回は一応レイヴェルとシーグヴァイラ二人とのフラグって事で。
レイヴェルはヒロインですが、シーグヴァイラはこれから先次第です。
フェニックス卿とアガレス卿の口調は想像です、レイヴェルの母親の名前が知りたい。


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【11歳・前編】真実と嘘

途中から思い付いた事も入れてたら、なんか考えてたのとはだいぶ違った感じになった⋯勢いって恐い⋯

最近忙しく、なかなか書く時間が取れなくて前回から少し開きました、すいません(>_<)




俺は母上にいつもの買い物を頼まれて人間界に来ていた、今は買い物を終えた頃。

 

レイ「用事も終わったし、さっさと帰るか⋯ん?はい」

 

帰ろうとした時に念話が来た。

 

「あっ、レイ君」

 

レイ「セラフォルー様、どうしました?」

 

念話の相手はセラフォルー様だった。

 

セラフォルー「今どこかな?まだ人間界に居るかな?」

 

レイ「はい、まだ人間界に居ますよ、今から帰る所です」

 

セラフォルー「そっかぁ⋯まだ居るんだね⋯」

 

何故かセラフォルー様は言葉を詰まらせそう言った。

 

レイ「セラフォルー様?どうしたんですか?何か用事でも?」

 

セラフォルー「うん⋯実はね⋯今、人間界にはぐれ悪魔が逃げたらしくてね⋯」

 

俺がそう言うと、セラフォルーは余り言いたく無さそうに話し始めた。

 

レイ「そうなんですか、でも何でそれを俺に?今日はそんな任務入ってなかったと思うんですけど」

 

セラフォルー「うん⋯そうなんだけどね⋯逃げたはぐれ悪魔はかなりの手練れみたいでね、上級を含めた結構な数の悪魔が返り討ちにあったらしくて、サーゼクスちゃんが「まだレイ君が人間界に居るなら頼めないかな?」って言われちゃって」

 

レイ「はぁ⋯まあ、良いですけど⋯でも何でセラフォルー様、最初言いたく無さそうに話してたんですか?」

 

はぐれ悪魔討伐ならいつもの任務の一つなのでいつも通りの事だ、なのにセラフォルー様の様子が少しおかしいと感じたので聞いてみると。

 

セラフォルー「あのね?そのはぐれ悪魔が逃げた場所が少し問題でね⋯」

 

レイ「逃げた場所⋯?どこですか?」

 

セラフォルー「それがね⋯五大宗家の一つでもある真羅の縄張りなんだよね⋯」

 

レイ「ああ⋯成程⋯確かに行きたく無いですね⋯」

 

セラフォルー「でしょ?」

 

セラフォルー様の言葉を聞いてようやく理解出来た、そしてそれと同時に俺も行きたく無くなった。

何故かと言えば真羅は五大宗家の中でもかなりの過激派で悪魔や堕天使に対しては見つけ次第即座に攻撃をしてくる程だったらしい。

今は日本の神々や妖怪などの協力もあり、その様な事は無い物の、それでも決して好意的には見られていない。

現に数年前にセラフォルー様の外交の仕事の付き添いで顔を合わせた時は、攻撃こそされない物の凄い睨まれた。

そんな訳で俺を含め殆どの悪魔は真羅とは出来る限り関わりたく無いのだ。

 

レイ「まあ⋯気は進みませんけど、分かりました」

 

セラフォルー「良い?レイ君、今回ばかりは本当に無茶は駄目だからね?もしも真羅の人達に見付かったら不法侵入だの何だの理由を付けて必ず襲って来るからね」

 

レイ「まあ⋯そうですよね⋯当然許可なんて物は取れて無いんですよね?」

 

セラフォルー「うん⋯ごめんね⋯」

 

俺は念の為に解りきってはいたが聞いてみると、案の定許可なんて物は無かった。

当然だ、どの様な理由だろうと、悪魔嫌いの真羅が自分達の縄張りに悪魔を入れるなど絶対にあり得ない。

 

レイ「セラフォルー様のせいじゃ無いですよ」

 

申し訳無さそうな声で謝るセラフォルー様に俺はそう言った。

 

セラフォルー「レイ君⋯」

 

レイ「悪いのは全て、今まで取り逃がして来た無能共(純血悪魔)ですから」

 

セラフォルー「あはは⋯相変わらずズバッと言うね⋯まあ、その通りなんだけど⋯」

 

そして、俺はセラフォルー様に笑顔でそう言うと、セラフォルー様は苦笑しながらそう言った。

 

レイ「それじゃあ、詳しい情報を教えてくれますか?」

 

俺がそう言うとセラフォルー様は一つずつ話してくれた。

 

セラフォルー「うん、まず⋯はぐれ悪魔の名前は黒歌、種族は猫又で彼女はその中でもより強い力を持つ猫魈(ねこしょう)らしいね、レートは⋯最初はSだったらしいんだけど⋯さっきも言った通り追っての悪魔がことごとく返り討ちにあってるからSSに上がったらしいの、罪状は⋯主の殺害だね、原因は力に溺れたって書いてあるね、それと⋯今まで討伐に向かった悪魔達は返り討ちにあった物の手傷を負わせてはいるみたいだね」

 

レイ「了解です、でも⋯主の殺害ですか」

 

セラフォルー「うん⋯」

 

セラフォルー様の説明を聞き、原因が主従関係だと分かり、俺ははぐれ悪魔討伐の任務で原因が主従間の場合は必ず聞く事を聞いた。

 

レイ「ちなみに、その殺された主の詳細とかはありますか?」

 

セラフォルー「それがね⋯余り詳しくは解らないみたいなの⋯」

 

レイ「そうですか⋯」(てことは⋯悪い話しが出ない程の善人だったのか、もしくはその逆で⋯それらの悪事を隠すのが上手いのか、まあ⋯どっちにしても俺には関係無い事だな、それに⋯今回はセラフォルー様も困ってるみたいだし、まあ良いか)

 

俺が必ず聞く事⋯それは主の情報、そいつが悪人だった場合は俺が任務を受ける事はまず無い。

理由は言うまでもなく自業自得だからだ、よく「どうか敵討ちを!」なんて言ってくる馬鹿も居るが、俺が受ける事は決して無い。

 

セラフォルー「ごめんね?こんな曖昧な任務⋯普段なら私も絶対にレイ君に頼んだりしないんだけど⋯」

 

レイ「分かってますから、大丈夫ですよ、セラフォルー様」

 

当然セラフォルー様もそれは知っているのだが、今回ばかりはそうも言ってられない、何故なら倒せないからと言ってそのまま放置した場合、下手をすれば悪魔以外の種族にも被害が出るかもしれないからだ、そうなれば最悪⋯他種族と争いになりかねないからだ。

 

セラフォルー「ありがとう⋯レイ君」

 

レイ「この程度の事で感謝なんて必要ありませんよ」

 

セラフォルー「ううん⋯、今回の事だけじゃ無くてね、レイ君はいつだって私やソーナちゃんの為に頑張ってくれるでしょ?」

 

レイ「それは当たり前の事ですよ」

 

セラフォルー「それは違うよレイ君、確かに私達の関係は他の人達から見れば主と下僕だけど、私は一度だってレイ君をそんな風に扱った事も思った事も無いよ?私にとってレイ君は大事な弟なんだから」

 

セラフォルー様の言葉に俺がそう返すと、セラフォルー様は悲しそうにそう言った。

もしかして俺が恩や使命感からセラフォルー様に仕えてると言う風に聞こえてしまったのか⋯。

 

レイ「はい、もちろん分かってますよ?ただ⋯そう、俺がセラフォルー様やソーナ、そしてシトリーの為なら何でも出来るし、何だってやる、ただ⋯それだけの事ですよ」

 

セラフォルー「レイ君⋯うん⋯ありがとう」

 

当然そんな事は無い為、俺はそう言うと、セラフォルー様がようやくいつもの笑顔に戻った事が声で分かった。

 

レイ「じゃあ、行って来ますね」

 

セラフォルー「あっ!ちょっと待ってレイ君」

 

レイ「何ですか?」

 

俺はそれを聞き、念話を切ろうとしたらセラフォルー様に呼び止められた。

 

セラフォルー「一つ言い忘れてた事があったの」

 

レイ「はぐれ悪魔についてですか?」

 

セラフォルー「うん⋯実はその黒歌って娘なんだけどね、どうやら妹を連れて逃げてるらしいの、それで黒歌が殺した上級悪魔の他の眷属や一族はその子も殺そうとしてるらしいんだけど、私もサーゼクスちゃんもその子に危害を加える気なんて当然無いからその子は保護してね?」

 

レイ「妹⋯?」

 

セラフォルー「うん、サーゼクスちゃんの話しだと大事に守ってるらしいの」

 

レイ「大事に⋯守ってる?」

 

俺はそれを聞いて不思議に思った。

 

セラフォルー「レイ君?どうかしたの?」

 

レイ「黒歌は力に溺れたんでしたよね?」

 

セラフォルー「うん、報告書にはそう書いてあるよ、それがどうしたの?」

 

レイ「いえ⋯何でもありません、分かりました」(ますます怪しいな⋯)

 

セラフォルー「そう?それじゃあ、気を付けて行って来てね、本当に気を付けて」

 

レイ「はい」

 

セラフォルー様の言葉に俺はそう言って念話を切った。

 

レイ「⋯今まで力に溺れたはぐれ悪魔は何人も見てきたが⋯誰一人として誰かを守るなんて理性的な行動をした奴はいなかった筈だ、そうなると⋯だ、間違いないな⋯」

 

俺はそう呟くと共に結論を出した。

 

レイ「報告書に書いてある事は全てデタラメ、そして⋯黒歌の主には何かしらの問題があったって事だな」

 

全てが―――嘘だと。

 

レイ「まあ⋯とにかく、まずは黒歌を見付けない事にはな⋯話しを聞く事すら出来ないな」

 

俺はそう呟いて目的地に向かった。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

レイ「取り敢えず目的の場所には着いた訳なんだが⋯」

 

あれから俺は目的地の近くまで転移して、そこから徒歩で向かいようやく真羅の縄張りの中に入った。

 

レイ「まずは⋯黒歌の居場所を探さないといけないんだけど⋯はぁ⋯地道に探すしか無いよな⋯」

 

この時点で俺は正直に言って嫌になってきた、地道に探さなければいけない理由。

それは―――真羅の縄張りの全体には常に魔法感知の結界が張られている為、魔法を使って探せば直ぐにバレて真羅の者達が飛んでくるからだ。

それこそ、最初の頃は魔避けの結界が張られていた為に入る事すら出来なかったのだが、今はその程度に押さえられているらしい、本来ならそれすら無くすべきだとの話しも出たらしいのだが

最低限の安全管理と言う名目で真羅が押し切ったとの事だ。

 

レイ「えっと⋯まずは情報を纏めるか⋯黒歌は手負い、それに妹を連れて逃げてる⋯と、その状況で真羅の縄張りに逃げ込んだって事は魔法による自分の傷の手当てよりも大事な物⋯この場合は妹だろうな、妹の安全を優先したって所かな」

 

俺はセラフォルー様から聞いた話し、そして今の状況から考えうる選択肢を幾つか出した。

 

レイ「となると⋯まず真羅の警備の巡回ルートは外して⋯っと、隠れるならルートから外れていて、使われてない⋯寂れた建物の中が妥当だろうな」

 

俺はそう考え、街の中心とは真逆の方へ向かった。

 

レイ「ちっ⋯ここもハズレか⋯」

 

あれから三時間程歩き回り片っ端から探している物の手掛かりの一つも見当たらなかった。

 

レイ「本当にこの辺りに居るのかよ⋯俺に対しての上からの嫌がらせな気がしてきたぞ、もしそうだったら⋯関わった奴ら皆殺しにしてやる」

 

俺はそんな愚痴を吐きながらも歩き、探し続けた。

 

そして、更に三十分後⋯。

 

レイ「はぁ~ようやく見つけた!!が⋯何で気配が三つもあるんだ⋯?」

 

あれから更に中心街から離れた場所まで探しに行って、ようやく見つけたと思ったら、俺はそこからもう一つの気配を感じ取った。

 

レイ「それに何だ⋯?この気配⋯小さいのが一つとでかいのが二つ⋯でかい方の一つは黒歌で小さい方が黒歌の妹、なら⋯もう一つは何だ?気配的には普通の人間の物だと思うんだが⋯人間にしてはかなり妙だな⋯神器なんだろうが⋯大きすぎる、真羅の人間か?」

 

感じた気配は確かに人間の物に間違いはない、しかしそれは余りに大きな物だった、最初は黒歌の協力者かと思ったのだが⋯その考えは直ぐに捨てた、何故ならここは真羅の縄張りなのだから。

 

レイ「にしても⋯いくらもう使われずに放置されてるからって、よりにもよってこんな所に逃げ込まなくてもいいだろ⋯」

 

黒歌を見つけた場所、それは神力を失い結界も張られていない完全に放置された廃神社だった。

 

レイ「まあ、何にしても行かない事には始まらないな」

 

俺はその神社の階段を登って行った。

 

レイ「さてと⋯どうやら向こうも俺に気付いたらしいな⋯」

 

階段を登った所で強い殺気が放たれた。

しかし、俺は何事も無いかの様に殺意が放たれている場所に向かって歩き出した。

 

レイ「この中だな⋯良し」

 

部屋の前に着き、俺はその部屋の襖を開け中に入った。

 

レイ(⋯誰も居ない⋯でも殺気に満ちてる、不意討ちを狙ってるんだろうが⋯俺には無意味だ)

 

俺はそう思いながら更に奥へと進んで行き、部屋の中心で止まった。

 

レイ「さて⋯素直に出て来てくれないか?⋯黒歌」

 

「⋯⋯⋯!?」

 

レイ「これだけの殺気を出してるんだ、気付かない訳が無いだろう?」

 

「⋯⋯⋯」

 

俺はそう言って出て来る様に言うが、当然出てなど来ない。

 

レイ「出てこないならそれでも良いが、その場合は⋯お前の妹ごと殺る事になるぞ?」

 

「⋯っ⋯⋯くっ⋯⋯ここよ⋯」

 

強い歯軋りの音と共に傷だらけの黒歌が姿を現した。

俺は黒歌に対してあんな風に言ったが、セラフォルー様から妹は保護する様にと言われてる以上、妹ごと⋯なんて選択肢は俺には無い、あくまでも黒歌に姿を現させる為の口実に過ぎない。

 

レイ「初めまして黒歌、ずっと俺の後ろに居たのか?」

 

黒歌「白々しいわね、どうせ何処に居るのかも⋯最初から解ってたんでしょ?」

 

レイ「ははっ、まあな」

 

俺がそんな風に惚けて見せると、黒歌は俺を睨みつけながらそう言った、そんな黒歌に俺は笑いながらそう言った。

 

黒歌「最悪にゃ⋯こんな奴が来るなんて⋯」

 

黒歌は泣きそうな声でそう言った。

 

レイ「?それはどういう意味だ?」

 

黒歌「私だって馬鹿じゃない、お前が今までの連中とは格が違う事くらい分かるにゃ」

 

黒歌の言葉の意味が解らず俺が聞くと、黒歌は悔しそうにそう言った。

 

レイ「そうか、なら俺も⋯問題なく目的を果たせそうだ」

 

黒歌「ッ⋯私達を⋯殺すのかにゃ⋯?」

 

俺のその言葉に黒歌は戦闘体勢に入るも覇気は一切感じられない、恐らく本能で理解してしまったのだろう―――勝てないと。

そして、その中でどうやって妹を逃がすのかを考えている筈だ。

だが、そんな黒歌に俺は予想してないであろう言葉を投げ掛けた。

 

レイ「いや?別にそんなつもりは全く無い」

 

黒歌「⋯⋯⋯はっ?」

 

俺がそう言うと黒歌は間抜けな声でそう言った。

 

レイ「だから、俺はお前にも、お前の妹にも何もしないよ⋯って言うより⋯する気が無い、全然、これっぽっちも」

 

黒歌「どう⋯して⋯?だったら⋯何でここに⋯?」

 

呆然としてる黒歌に対して更にそう言うと、黒歌は狼狽え始めた。

 

レイ「はははっ、まあ、その反応も当然だな」

 

黒歌「その気が無いって⋯私を討伐しに来たんじゃ無いのかにゃ⋯?」

 

笑いながらそう言うと、黒歌は警戒したままそう聞いて来た。

 

レイ「そうだな、一応その名目でここに来てはいるな」

 

黒歌「だったら⋯」

 

レイ「何だ?そんなに殺されたいのか?」

 

黒歌「ッ⋯そんな訳あるはず無いにゃ!!」

 

黒歌の言葉に少しトーンを下げてそう言うと、黒歌は怯みながらもそう叫んだ。

 

レイ「まあ、そうだな⋯任務内容に幾つもの矛盾を感じたからだ」

 

黒歌「矛盾⋯?」

 

俺は黒歌に自分の考えを話す事にした。

 

レイ「ああ、任務内容はこうだ、対象は黒歌⋯お前で間違いない、種族は猫又でお前はその中でも強い力を持つ猫魈(ねこしょう)、レートは⋯それはどうでも良いか、そして罪状は主の殺害、ここまでは間違って無いな?」

 

黒歌「⋯その通りにゃ⋯」

 

俺の話しに俯きそう言う黒歌、そんな黒歌に俺は話しを続ける。

 

レイ「だが、問題はここからだ」

 

黒歌「何なのにゃ⋯?」

 

レイ「お前が主を殺した原因だよ」

 

黒歌「⋯⋯⋯ッ⋯⋯」

 

俺がそう言った瞬間、黒歌は歯を強く噛み、拳を握った。

 

レイ「報告書には力に溺れた⋯と書いてあったと言われた」

 

黒歌「っ⋯違う!!私は⋯私は力に溺れてなんかいない!!!」

 

叫ぶ黒歌、それと共に更に強く握った拳からは血が滴っている。

 

レイ「だろうな、例え相手が妹だろうと⋯力に溺れた奴が誰かを守るなんてあり得ない、今まで何度もそう言うはぐれ悪魔を見て来たが⋯どいつも理性を失い無差別に人を殺す事はあっても、助けたり守ったりする事など決して無かった」

 

黒歌「⋯それで⋯?」

 

ここでようやく警戒を解き、俺に続きを促す黒歌。

 

レイ「そこで、俺は一つの結論に至った、殺された側の言い分は⋯全て嘘だと言う事に」

 

黒歌「⋯⋯⋯」

 

レイ「何故そんな嘘を付くのか⋯そんなのは考えれば誰でも分かる事だ、何か隠したい事が、疚しい何かが⋯あるって事だ」

 

今に思えば、恐らくサーゼクスさんは気付いていたのだろう、だからこそ今回の任務を俺に回してきた、セラフォルー様はサーゼクスさんから俺に伝言を伝える為だけで詳しくは知らない、だからあの時点では気付かなかったのだろうが⋯今頃は気付いている筈だろう。

 

黒歌「私は⋯」

 

レイ「他の⋯命令が絶対なんて考えの馬鹿共はともかく、少なくとも俺は⋯お前から話しを聞いてからじゃなきゃ⋯この任務をこなす気は無い」

 

黒歌「⋯うっ⋯グスッ⋯⋯」

 

俺が話し終えると同時に泣き出した黒歌。

今までの追っては皆、問答無用で殺しに来ていた筈だ、その事を考えれば当たり前なのかもしれない。

 

レイ「という訳で、お前の言葉を信じる信じないはともかく⋯取り敢えず俺の質問に答えてくれないか?正直に⋯」

 

黒歌「そう⋯すれば⋯助けて⋯くれるのかにゃ?」

 

俺がそう聞くと、黒歌は泣きじゃくりながらそう言った。

 

レイ「それはあくまでもお前次第だ、お前が俺に連中と同じ様に嘘を付くのなら⋯ここで殺す」

 

黒歌「⋯分かったにゃ⋯信じて貰えるかどうかは解らないけど⋯ちゃんと答えるにゃ」

 

そんな俺の言葉に、黒歌は泣き止むも未だ目尻に涙を浮かべながらそう言った。

 

レイ「ちなみにお前の妹は何処に居るんだ?」

 

黒歌「それは⋯」

 

レイ「⋯?ああ⋯そうだったな、安心しろ、妹の方は保護しろと言われてるから危害を加えたりはしないよ」

 

俺がそう聞くと、言葉を詰まらせた黒歌、一瞬何故か解らなかったが、俺は最初に黒歌に言った言葉を思い出しそう言った。

 

黒歌「はぁ!?だったら何で最初あんなこと言ったにゃ!!」

 

レイ「ああでも言わなきゃ、お前は問答無用で襲い掛かって来ただろう?」

 

黒歌「うっ⋯それは⋯」

 

黒歌は声を荒げそう言うも、俺がそう言うと何も言えなくなった様だ。

 

レイ「だろう?任務を頼まれた時にお前が妹を大切にしてるって聞いてたからな、妹も殺すと言えば、お前の行動は二つに絞られるからな」

 

黒歌「二つ⋯?」

 

レイ「そうだ、一つは今みたいに大人しく話しを聞く、もう一つは怒りに任せて襲って来るか、そのどちらかだ」

 

俺の言葉に疑問を浮かべる黒歌に俺はそう言った。

 

黒歌「もし襲い掛かってたら⋯?」

 

レイ「何も変わらないよ、取り押さえてから話しを始めたさ、冷静なお前が相手だったなら無傷で取り押さえるのは苦労するが⋯怒りで頭に血が登って、冷静さを失って襲い掛かって来るお前なら余裕だ」

 

そんな事を言う黒歌に俺はそう言った。

 

黒歌「成程ね⋯確かにその通りだにゃ、それにしても⋯自分が負けるなんて考えて無いのね?」

 

レイ「そんな事は無い、ただ⋯立場上そう簡単に負けるわけにはいかないだけだ」

 

納得した様に頷く黒歌だったが、その後呆れた様にそう言った。

そんな黒歌の言葉を俺はそう否定した。

 

黒歌「立場上⋯?」

 

レイ「ああ、これでも一応セラフォルー様の女王なんでな」

 

黒歌「セラフォルーって、まさか⋯魔王セラフォルー・レヴィアタン!?」

 

レイ「ああ、そうだ」

 

黒歌「嘘でしょ⋯まさかそんなのが相手だったなんて⋯」

 

俺の立場を聞き絶望した様な顔をする黒歌。

 

レイ「そう恐がるなよ、言ったろ?俺は最初からお前に話を聞くつもりだったって」

 

黒歌「そう⋯だったにゃ⋯」

 

そんな黒歌に俺がそう言うと、黒歌は安心した様に言った。

 

レイ「それで?話しを戻すが、妹は何処に居るんだ?」

 

黒歌「白音なら⋯あっ、白音って言うのは妹の名前にゃ、白音ならあそこに隠してるにゃ」

 

改めて聞くと、黒歌はそう言って押し入れらしき場所を指差した。

 

レイ「なら連れて来ると良い、もう隠れる必要は無いんだから」

 

黒歌「私が行って良いのかにゃ?そのまま白音を連れて逃げるかもよ?」

 

俺がそう言うと、黒歌がそんな事を言い出した。

 

レイ「俺が行ったら、白音⋯だっけ?が恐がるだろ?それに、逃げるなら別にそれで構わない、その時は容赦無く殺すだけだからな」

 

黒歌「⋯分かった、連れてくるにゃ⋯」

 

そんな黒歌に俺は少しだけ圧を出してそう言った、すると黒歌は大人しく押し入れに向かって歩き出した。

 

黒歌「白音」

 

白音「姉⋯様?追っての人は⋯?」

 

黒歌「大丈夫よ、少なくとも⋯今までの奴らみたいに殺しに来た訳じゃ無いみたいだから」

 

白音「本当ですか⋯?」

 

黒歌「うん、いざという時はお姉ちゃんが守ってあげるから、ほら⋯出ておいで」

 

白音「はい⋯」

 

そんな会話が聞こえて来た。

 

黒歌「お待たせにゃ」

 

黒歌はそう言って、白髪の少女の手を引きながら戻ってきた。

 

レイ「ああ、その子が白音なのか?」

 

黒歌「そうにゃ」

 

一応確認の為にそう聞いた俺に、黒歌は頷きそう言った。

 

レイ「初めまして、白音」

 

白音「っ⋯はい⋯初め⋯まして」

 

俺は白音に挨拶をすると、白音は怯えて黒歌の背に隠れながらも挨拶を返してくれた。

 

レイ「恐がらなくても大丈夫だ、少なくともお前に危害を加える気は無いから」

 

白音「本当⋯ですか?」

 

レイ「本当だ」

 

怯える白音に俺は笑顔でそう言った。

 

黒歌「大丈夫よ⋯白音、大丈夫⋯」

 

白音「姉様⋯はい⋯」

 

黒歌がそう言って白音を抱き締めると、白音は安心した様にそう返事をした。

 

レイ「さて⋯それじゃあ本題に入ろうか?黒歌」

 

黒歌「ええ⋯」

 

俺はそう言って、ようやく本来の目的に取り掛かった。

 

レイ「それじゃあ⋯と言っても、俺がお前に聞きたい事は一つだけだ、何故⋯主を殺した?理由と原因を教えてくれ」

 

黒歌「ええ、そうね⋯それは⋯」

 

俺がそう聞くと、黒歌は話し始めた。

 

 

 

レイ「成程な⋯はぁ⋯まさかそれ程までとは⋯流石に予想外だった⋯」

 

黒歌の話しを聞いて俺は心底呆れていた。

その内容と言うのは―――主だった男は眷属をコレクションか何かだと勘違いしている純血至上主義者で、その上自分の為ならば眷属も従者もまるで使い捨ての道具の様に扱っていたとの事だった。

そして最近はレーティングゲームにハマったらしく眷属はもちろん、従者や眷属の家族に至るまで純血悪魔以外の全ての物を強制的に鍛えようとしたらしい、そして黒歌はその眷属の中でも強い力を持っていた。

その結果、男は黒歌の妹である白音に目を付け眷属にしようとした挙げ句、殆ど虐待の様な訓練を課そうとした。

本来なら白音の扱いは丁重でなければいけなかった、それは黒歌が男の眷属になるにあたって白音を保護し丁重に扱い、決して戦いや夜伽の様な事はさせないと言うのを契約の条件としたからだ。

しかし、男は悪魔にとって⋯最も尊ぶべき物の一つであるはずの契約を破った。

それを聞いた黒歌は当然の如く怒り、男に詰め寄った、すると男は黒歌に対して「下等な存在との契約など守る必要がどこにある?」っと、こう言い放ったとの事だった。

そして黒歌はその場で取り押さえられ、男とその従者の純血悪魔達に犯されそうになったその瞬間、黒歌は自身が持てる全ての力を使い、主と共に自分を囲んでいた数人の純血悪魔を殺し、すぐに白音を連れ出して逃げた。

それが、今回起きてる事の真実だった。

 

黒歌「信じて⋯くれるのかにゃ⋯?」

 

レイ「ん⋯?ああ、言ってなかったか?こうやって向かい合ってる状態でなら、俺は相手の嘘を全て見破れるんだよ」

 

黒歌「なにそれ!?聞いてないにゃ!?」

 

不安そうに聞いてくる黒歌に俺がそう言うと、黒歌は叫びながらそう言った。

 

そりゃそうだ、言ってないし解る訳もないし、でも⋯そう見せる事は出来る。

騙す方が悪いと良く言われているが、それは違う。

確かに詐欺の様な相手を一方的に騙す物ならば、それは騙す方が悪い、100%絶対に。

でも、敵対してる者に対して、戦闘中、そして今回の様な状況等では、騙される方が悪い。

当然だろう?だって、その状況になってるって事は俺達が殺しあってる、もしくはそれに準ずる何かをやってるって事なんだから。

卑怯だろうがなんだろうが、勝つ為なら反則にならない方法は何だってやる、当然だろ?

「正々堂々と」なんて言うのは本当の戦いを知らない、お遊びしか知らない馬鹿だけだ。

でも、実は直感?か何かかは解らないけど、これは嘘だって事が解る事もあるんだよな。

 

レイ「俺の立場については話しただろう?大抵の奴は力を持たない癖に悪知恵だけは働く様な輩が多いからな⋯そういう部分もしっかり勉強して鍛えないと、務まらないんだよ」

 

黒歌「そう⋯なのにゃ⋯君も大変なんだにゃ⋯」

 

レイ「全くだ」

 

そんな黒歌に俺はそう言った、すると黒歌は静かになりそう言った。

 

黒歌「⋯それで?結局⋯どうなの?」

 

レイ「信じるよ、何よりお前の覚悟が気に入った」

 

黒歌「覚悟⋯?」

 

不安そうに聞いてくる黒歌に俺はそう言うと、黒歌は首を傾げた。

 

レイ「ああ、妹の⋯自分が守りたい者の為なら、何だってする⋯その覚悟が気に入った、なんせそれは⋯俺が持ってるのと同じ覚悟だ」

 

黒歌「君と⋯同じ?」

 

俺の言葉に黒歌は不思議そうに聞いて来た。

 

レイ「ああ、俺もセラフォルー様やソーナ、そしてシトリーの為なら、何だってやるし⋯出来る、例え⋯お前はもういらないと言われようと、俺は死ぬまで守り、尽くしていく、お前からは⋯妹に対してのそんな覚悟を感じた」

 

黒歌「君は少し行き過ぎな気がしないでも無いけど⋯大体は同じだにゃ」

 

俺はだいぶ前に既に決めた覚悟を黒歌に話すと、黒歌は苦笑いをしながらそう言った。

 

レイ「だろう?だからお前は傷だらけになりながらも妹を守り続けた、お前程の奴なら妹を切り捨てれば逃げ切れた筈だ、違うか?」

 

黒歌「そうね⋯」

 

白音「姉様⋯」

 

俺の言葉に黒歌は俯きそう言い、白音も俯いてしまった。

しかし―――

 

黒歌「だとしても⋯私は白音を守るにゃ、たった一人の⋯大切な妹だからにゃ」

 

黒歌は笑顔でそう言った。

 

レイ「だよな、じゃなきゃ態々こんな⋯悪魔にとって最悪とも言える、真羅の縄張りに逃げ込んだりはしないからな」

 

それを見て、俺も笑顔でそう言った。

 

黒歌「そうね⋯悪魔からの追っての心配は余りしなくても良くなったけど⋯別の恐さがあったにゃ⋯」

 

レイ「当然だな、見付かれば問答無用で殺しに来るような連中だからな」

 

遠い目で言う黒歌に、俺は苦笑いをしながらそう言った。

 

黒歌「それで⋯えっと⋯見逃してくれるんだよね?」

 

レイ「それも良いんだが⋯そうだな、お前に二つの選択肢をやるよ」

 

黒歌「選択肢?」

 

改めて言う黒歌に俺がそう言うと、黒歌は首を傾げた。

 

レイ「ああ、一つはここで二人共に殺した事にしてやるから、お前達は出来るだけ遠くに逃げる、多分お前も考えてた事だな、ただ⋯その場合誰の保護下には入れないから、いずれ限界が来るだろう」

 

黒歌「そうね⋯もう一つは?」

 

レイ「二つ目は俺と共に来る、そして⋯俺と新たな契約を交わす⋯だな」

 

俺は黒歌に自分が出せる二つの可能性を提示した。

 

黒歌「君と⋯?」

 

レイ「ああ、ただし暫くは死んだ事にして姿を隠して貰う事になるから、白音とも会うのは難しくなるだろが⋯」

 

予想もしてなかったであろう俺の言葉に、目を見開き言う黒歌、そんな黒歌に俺はそう言った。

 

黒歌「契約って事は君の眷属になるって事だよね?でも⋯討伐対象になってる私をどうやって⋯」

 

レイ「まあ、俺もまだ悪魔の駒は貰っては無いんだが、来年には貰えるって言われたからな、それまでの間にお前に掛けられた容疑を晴らす」

 

当然の質問をしてくる黒歌に俺はそう言った。

 

黒歌「そんな事⋯出来るの⋯?」

 

レイ「俺の立場ならな、ある程度の証拠さえ掴んじまえば、後は何もしなくても勝手に出てくるだろうよ、それに⋯いざとなればお前達と言う証人が居るしな」

 

黒歌「そっか、でも⋯白音は⋯白音はどうなるの?」

 

黒歌の疑問に俺はそう断言した、それに納得した様に頷く黒歌だが、やはり白音がどうなるのかが一番心配な様で、そう聞いた。

 

レイ「白音に関しては悪魔の方で保護する事になるな、でも安心して良い⋯保護を約束したのは、そして実際に保護するのは魔王だからな」

 

黒歌「魔王が⋯」

 

レイ「ああ、ただ⋯白音も悪魔に転生する事になっちまうがな」

 

黒歌「それは⋯」

 

恐らく黒歌は白音を悪魔にしたくは無いのだろう、白音の方を見ながら言葉を詰まらせた。

 

レイ「魔王の妹が二人居てな、二人共つい最近悪魔の駒を貰ったばっかりなんだ、その内の一人、サーゼクス・ルシファーの妹のリアスが眷属を探してるらしいんだ、多分だが⋯保護の名目でリアスの元に紹介され、リアスも引き取るだろう」

 

黒歌「でも⋯」

 

レイ「お前が悪魔を信用出来ないのは解る、ただ、リアスなら心配はいらない、グレモリーの家は慈愛のグレモリーって呼ばれる位に身内を大切にする家だ、それにリアスの事なら俺が保証するし、もしも白音が何かされて眷属を止めたいって言うなら、何時でも俺の所に逃げて来れば良いし、来年に俺が駒を貰ってからトレードで俺の元に来たって良い」

 

黒歌は悪魔を信用出来ない、それは今回の話しを聞けば誰でも分かる事だ、だから俺はいざと言う時の対策も同時に話した。

 

黒歌「確かに⋯君の言う通り、私は悪魔を信用出来ない⋯例え相手が魔王であろうと、でも⋯君なら信用出来る、それだけは私にも解るにゃ」

 

レイ「そうか⋯ありがとう」

 

黒歌は俺の目を見てそう言った、俺は少し驚きながらも笑顔でそう言った。

 

黒歌「分かったにゃ⋯私は君を信じるにゃ!ただ⋯どうするかは白音に決め手貰うにゃ」

 

レイ「そうだな、白音⋯君はどうしたい?嫌なら断っても構わない」

 

黒歌の言葉を聞き、俺は白音に聞いた。

 

白音「私は⋯姉様と一緒に居たいです、でも⋯これ以上⋯姉様に傷付いて欲しくないです、だから⋯姉様が信じるなら⋯私もあなたを信じます、それに⋯私が酷い事をされたら、あなたが守ってくれるんですよね⋯?」

 

レイ「ああ、必ず守ってやる、約束するよ」

 

白音も決断したのか、俺の側まで来て俺の袖を掴み聞く白音に、俺は白音の頭を撫でながら笑顔でそう言った。

 

白音「にゃあ⋯///なら⋯大丈夫です、あなたと一緒に行きます」

 

レイ(そういえば⋯ソーナも撫でると顔を赤くしながら気持ち良さそうに目を瞑るんだよな)

 

白音は気持ち良さそうに猫なで声を出しながらそう言った、そんな白音を見ながら俺はそんな事を思った。

 

レイ「だとさ⋯黒歌もそれで良いか?」

 

黒歌「うん、それで良いけど⋯ただ⋯」

 

レイ「ただ?」

 

歯切れ悪く言う黒歌に俺は不思議に思い聞くと。

 

黒歌「いつの間に白音は君に懐いたのにゃ!?ずっと私と話してたよね!?」

 

黒歌はそう叫んだ、確かに俺は黒歌と話していたが。

 

レイ「ん⋯?そういえばそうだな⋯なんでだ?」

 

白音「さっき⋯お菓子くれました⋯」

 

レイ「ああ、そうだったな⋯でも⋯それだけだろ?」

 

俺も疑問に思っていると、白音はそう言った、確かに黒歌の話しを聞いてる時に白音にお菓子をあげたが⋯それだけだ。

 

白音「姉様以外で私に優しくしてくれたのはあなたが初めてです⋯前に居た場所では⋯皆怖かったです⋯」

 

レイ「そうか⋯」

 

黒歌「白音⋯ごめんね⋯辛い思いさせちゃってたんだね⋯」

 

白音の話しを聞いた黒歌は白音を抱き締めてそう言った。

 

白音「いいえ⋯姉様は私の為に⋯もっと怖くて辛い思いをしてたのを⋯私は知ってました、でも⋯私は何も出来なかった⋯私の方こそ⋯ごめんなさい⋯」

 

黒歌「白音⋯良いのよ⋯私は白音が幸せならそれで良いんだから」

 

白音も黒歌を抱き締め泣きながらそう言った、そんな白音を見た黒歌もまた泣きだし、より強く白音抱き締めた。

 

レイ「そういえば⋯俺の名前をまだ言って無かったな」

 

黒歌「そういえば⋯そうだにゃ」

 

五分程経ち、二人が泣き止んだ頃、俺はまだ自分が名乗ってなかった事を思い出した。

 

レイ「今更だが俺はレイだ⋯よろしくな、黒歌、白音」

 

黒歌「よろしくにゃ!レイ」

 

白音「よろしくお願いします、レイ君」

 

俺はそう言って、二人と握手を交わしたのだった。




最初は黒歌と小猫だけの予定がどうしても黒髪ロングで眼鏡の副会長との関係も作りたくなってしまった為に話しが色々と面倒になった⋯。
次回は二人のこれからと未来の副会長との話しです。
元々一つにする筈だったのですが、もう少し時間が掛かりそうだったので分けました。

少しずつですが続きもちゃんと書いてるので、これからもよろしくお願いしますm(_ _)m


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【11歳・後編】囚われの少女と守りたい者

色々とおかしな部分があるかも知れませんが、書き直す気力が無いのでこのまま投稿します。



最初はもっと短く済ます予定だったのに⋯。

9/14 本文編集


レイ「さて⋯」

 

黒歌「行くのかにゃ?白音は君と⋯私はどうすれば良いのにゃ?」

 

傷だらけの黒歌に俺は持っていたフェニックスの涙での治療をしてから立ち上がると黒歌がそう言った。

 

レイ「ん?ああ、お前も俺と来て問題無いよ、幸い俺の家はもうあるしな」

 

黒歌「家まで持ってるのね⋯」

 

俺がそう言うと、黒歌は呆れた様にそう言った。

俺は今、一年前にアガレスから貰った家にヴァーリと他の眷属候補達と一緒に暮らしている、と言ってもセラフォルー様が「やだ!」と駄々を捏ねたので基本的に俺は今もシトリーの屋敷で寝泊まりをしている、どちらかと言えば、家はヴァーリと眷属候補達、そして俺個人が雇った執事とメイドが住んでる以外には、荷物置き場と化している。

でも、だからこそ黒歌を匿うには丁度良いだろう。

 

レイ「一応な⋯お前を殺したって証拠は⋯そうだな⋯何か持ってるか?」

 

黒歌「それなら⋯これでどうかにゃ?契約時にあの男から貰ったやつにゃ、売ればお金になると思って持ってたのにゃ」

 

俺がそう聞くと、黒歌はそう言いながら頭に付いてた簪を差し出した。

 

レイ「それなら、お前を追ってるあいつの従者達も知ってる筈だろうから⋯丁度良いかもな」

 

黒歌「うん⋯あいつは自分の所有物って証に最初だけは優しい振りをして渡すんだって⋯眷属になって少し経った頃に従者だった純血悪魔が言ってたにゃ⋯だから追っての連中は知ってる筈にゃ」

 

俺は黒歌から簪を受け取りそう言うと、黒歌は不愉快そうに言った。

 

レイ「全く⋯何処までもふざけた奴だな⋯だが、これで暫くは騙せるだろうからな、今回はその愚かさに感謝だな」

 

黒歌「⋯うん、そうだにゃ」

 

俺が笑いながら言うと、黒歌も頷いた。

 

白音「レイ君は凄いですね⋯」

 

レイ「ん?何がだ?」

 

白音「他の人達と違って色々考えてて、私達だけでは考えも付かない事を思い付いたりです、きっと私達だけだったら⋯何も出来ませんでした」

 

レイ「そうかな⋯?色々考えるのは立場上しなきゃならない事だったからな⋯俺にとっては当たり前なんだがな⋯」

 

白音「私にとっては凄い事です」

 

レイ「そうか⋯ありがとう、白音」

 

白音にそう言われ、俺は少し照れながらお礼を言った。

 

黒歌「じゃあ、もう行くのかにゃ?」

 

レイ「いや⋯一つ気になる事があるんだ」

 

黒歌「気になる事って?」

 

レイ「実はな⋯」

 

黒歌の言葉に俺はそう言って、ここに来る前に感じた、もう一つの気配について話した。

 

黒歌「もう一つの気配⋯?」

 

レイ「ああ、最初はお前達の協力者かと思ったんだが⋯」

 

黒歌「私達に協力してくれる人なんていないにゃ、それに私は感じないにゃ」

 

俺がそう言うと、黒歌はそれを否定した。

 

レイ「ああ⋯それは分かった、それに⋯感じた時は階段の下に居たから同じ場所の様に感じたんだが⋯ここに来て分かった事はその気配は⋯下にある、お前が気付かなかったのは、悪魔の気配に集中してたのもあるだろうし、神器の気配を知らないからだろう、それに⋯でかいと言っても集中して感じなきゃ分からないだろうし」

 

俺は床を見ながらそう言った。

 

黒歌「下?」

 

レイ「ああ⋯おそらくだが⋯誰か閉じ込められてるのかも知れないな⋯」

 

黒歌「でも⋯どうやって探すのにゃ?ここに来てからだいぶ経つけど、地下への道なんてなかったにゃよ?」

 

レイ「何処かに⋯隠し通路が有ると思うんだが⋯」

 

俺はそう言って床を足で叩いていく。

 

白音「あの⋯」

 

レイ「うん?どうかしたのか?」

 

床を調べていると、突然白音に袖を引っ張られた。

 

白音「あそこに⋯」

 

レイ「ん⋯あそこって⋯」

 

そう言って白音がさっきまで自分が隠れてた場所を指した。

 

白音「はい、鍵が掛かってましたけど⋯床に小さな扉がありました」

 

レイ「本当か?⋯あった⋯ありがとう白音」

 

白音「ふにゃあ~///」

 

白音に言われ中を確認すると確かに床扉があった、俺は白音にお礼を言って頭を撫でると、白音は気持ち良さそうにしていた。

 

レイ「鍵は⋯壊しても問題無いだろ、廃墟同然なんだし」

 

黒歌「本当に大丈夫なのかにゃ⋯」

 

レイ「もしやばくなったら、転移で逃げれば良いだろ、魔力を使えば真羅の連中にバレるけど、逃げる時なら問題無いだろ?⋯んじゃ、やるか⋯」

 

心配そうに言う黒歌に俺はそう言い、鍵を壊しに掛かった。

 

ガキンッ

 

レイ「良し、これで⋯やっぱりな」

 

黒歌「何かあったにゃ?」

 

レイ「ああ、予想通りと言うか⋯下への階段だ」

 

壊れた場所からはかなり深くまで続いている階段があった。

 

白音「降りるんですか⋯?」

 

レイ「そうだな、何があるのか気になるし」

 

白音「怖いです⋯」

 

レイ「大丈夫だ、いつでも逃げられる様に準備は出来てるから」

 

白音「⋯分かりました」

 

不安そうに言う白音に俺はそう言った。

 

レイ「そういえば⋯二人は猫又なんだったよな?」

 

黒歌「そうだにゃ」

 

白音「はい」

 

レイ「なら⋯猫の姿になれるか?」

 

黒歌&白音「もちろんにゃ(です)」

 

俺がそう聞くと、二人共に頷きそう言った。

 

レイ「じゃあ、二人共猫になって俺の肩にでも乗ってれば良いよ、それならいざって時に転移しても一緒に転移されるだろ?」

 

黒歌「分かったにゃ」

 

白音「分かりました」

 

俺がそう言うと、二人は猫の姿に変わった。

 

黒歌「これで良いかにゃ?」

 

レイ「ああ、黒歌が黒猫で白音は白猫か、どっちも可愛いな」

 

白音「ありがとうございます⋯///」

 

黒歌「当たり前にゃ」

 

二人にそう言うと、白音は恥ずかしそうに、黒歌は自信満々にそう言った。

 

レイ「それじゃ行くか」

 

黒歌&白音『にゃ!?』

 

そう言って二人を抱き上げると、二人は驚いた様な声を上げた。

 

レイ「どうした?」

 

黒歌「いきなり抱き上げるじゃ無いにゃ!」

 

白音「びっくりしました⋯」

 

レイ「何でだよ⋯」

 

二人の抗議の理由が俺には解らなかったが。

 

黒歌「私達だって女の子にゃ」

 

白音「ひとこと言ってからにして欲しいです」

 

黒歌と白音に言われてようやく理解出来た。

 

レイ「ああ⋯悪かったよ、それじゃあ⋯良いか?」

 

黒歌「良いにゃよ」

 

白音「はい」

 

レイ(女の子って面倒だな⋯)

 

そんな二人を見ながら俺はそう思った。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

レイ「ようやく下まで降りてきたが⋯」

 

一番下まで降りると、そこには上と同様の部屋が一つあった。

 

黒歌「中に誰か居るにゃ」

 

レイ「ああ、上で感じたのと同じ気配だ、だが⋯」

 

白音「これは⋯?」

 

黒歌の言葉にそう返すと、白音が何かに気付いた。

 

レイ「結界⋯だな⋯それもかなり上位のやつみたいだな、でも⋯なんでこんな所に張ってるんだ?このレベルの結界なら普通は外に張るだろ」

 

黒歌「何かお宝でも隠してるんじゃ無いかにゃ?中の人間はそれを守ってるんじゃ無い?」

 

俺がそう言うと、黒歌は身を乗り出しそう言った。

 

レイ「まあ、その可能性もあるかもな」

 

黒歌「お宝だったら持って帰るにゃ!」

 

レイ「無茶言うな⋯もし宝が置いてあるなら、中に居るのは絶対に真羅の人間って事だろ⋯」

 

興奮気味に言う黒歌に俺はそう言った。

 

黒歌「君なら大丈夫でしょ?」

 

レイ「だと良いけど⋯なッ!!」

 

バキンッ

 

白音「きゃあっ!?」

 

黒歌「にゃあっ!?」

 

黒歌の言葉に返しながら、俺は足に力を込めて結界に蹴りを撃ち込んだ。

 

レイ「っと⋯ん?どうしたんだ?二人共」

 

黒歌「どうした?じゃ無いにゃ!!」

 

白音「何も言わずにいきなりやらないで下さい!!私も姉様も凄くびっくりしました⋯」

 

何故か驚いた二人にそう聞くと、二人は肩からずり落ちそうになりながらそう言った。

 

黒歌「そうにゃ!力技で壊すなんて予想外にゃ!?普通はもっと時間を掛けて解除するものでしょ?」

 

レイ「そうなのか?今までこのやり方以外で結界を破った事が無いからな⋯分からん」

 

黒歌「ええ⋯マジかにゃ⋯」

 

レイ「うん」

 

白音「ダイナミックですね⋯」

 

黒歌の言葉に俺がそう言った、事実俺は今までこの方法以外で結界を壊した事は無い。

 

レイ「普通だろ、何にせよ⋯さっさと中を暴いて帰るぞ、どっちにしろ今ので気付いた奴も居るだろうしな⋯」

 

黒歌「そりゃあ⋯こんな事すれば、どんな馬鹿でも気付くにゃよ⋯」

 

白音「ですね⋯」

 

俺がそう言うと、二人は若干顔を引き攣らせながらそう言った。

 

レイ「開けるぞ?」

 

黒歌「うん」

 

白音「はい⋯」

 

レイ「それじゃ⋯鬼が出るか蛇が出るか」

 

俺はそう言って、二人の返事を聞き扉を開け放った―――

 

「だ⋯だれ⋯ですか⋯?」

 

レイ「えっと⋯子供⋯か?」

 

黒歌「そう⋯」

 

白音「ですね⋯」

 

中を見て俺達は驚いた、中には少女が一人居ただけだったからだ、それ以外は普通の部屋だった。

 

「あなた方はいったい⋯どうやってここに⋯?」

 

レイ「えっと⋯仕事でここに来たら、偶々強い気配を見付けたから?」

 

「そう⋯ですか⋯」

 

レイ「うん」

 

黒歌「絶対に解ってないと思うにゃよ⋯」

 

俺と少女のやり取りを見た黒歌はそう言った。

 

レイ「それより、君は⋯?何でこんな所に居るんだ?」

 

「あっ⋯えっと⋯私は真羅⋯椿姫です⋯」

 

レイ「真羅⋯だと?」

 

黒歌「にゃにゃ!?!?」

 

白音「レイ君、逃げましょう!?」

 

レイ「⋯⋯⋯」

 

少女の名前を聞いて二人は一気に警戒を強めた。

しかし⋯俺は違和感を感じていた、ここが宝やら何やらを隠して有る場所ならば、真羅の人間が居るのは理解できる。

だが⋯これはどうだ?最低限生活に必要な物しか無い程に殺風景な部屋の中に少女⋯真羅椿姫は一人だ、一応周りの気配を探って見たが、それらしい反応は感じられない、これではまるで⋯監禁でもされてる見たいだ⋯。

 

黒歌「レイ!!聞いてるのかにゃ!!!」

 

白音「レイ君⋯?」

 

何も言わない俺に黒歌は叫び、白音は怯えている。

当然だ⋯例え相手が子供とは言え、相手は真羅の人間、それ程に

真羅の一族とは異種族にとって恐怖の対象でしかない。

 

レイ「聞こえてるよ、て言うかお前ら一応は日本の妖怪だろ?」

 

黒歌「それとこれとは話しが別にゃ!聞いた話しだけど⋯昔は例え日本の妖怪だろうと容赦無かったって⋯」

 

白音「らしいです⋯私もここに来る時に姉様から聞きました⋯」

 

レイ「それ程なのかよ⋯真羅ってのは⋯」

 

俺は黒歌の話しに驚いた、今でこそ見た感じは良好な日本の勢力として協力している妖怪と真羅が戦争していたなんて、どうやら真羅の異種族、異形、異能嫌いは昔からの様だ。

 

黒歌「だから、早く逃げるにゃ!」

 

レイ「お前さっき俺なら大丈夫とか言って無かったっけ?」

 

黒歌「言って無いにゃ!?」

 

レイ「いや⋯言ってた、なぁ?白音」

 

白音「はい、言ってました」

 

黒歌「だとしても!真羅は駄目にゃ⋯何でかは分からないけど⋯とにかく駄目なのにゃ!!」

 

軽くパニックになってる黒歌を見て俺と白音は逆に冷静なれた。

 

レイ「なあ⋯えっと、椿姫⋯で良いか?」

 

椿姫「はい⋯」

 

レイ「お前⋯何でこんな所に居るんだ?」

 

椿姫「それは⋯」

 

レイ「お前の神器に関係してるのか?」

 

椿姫「っ⋯!何故それを!?」

 

椿姫は何も言わずに俯いたが、俺が神器の話しをすると同時に椿姫は勢いよく顔を上げそう言った。

 

レイ「やっぱりか⋯」

 

白音「どういう事ですか?」

 

一人納得していると、白音が俺の裾を引っ張ってそう聞いてきた。

 

レイ「真羅が悪魔やら何やらの人間以外を嫌ってるのはさっきの話しでも解るよな?」

 

白音「はい」

 

レイ「他にも真羅は強力すぎる異能を持った人間を嫌ってる⋯人間の害になるって理由でな、つまり⋯だ」

 

黒歌「この子はそれに当てはまってるって事かにゃ?」

 

レイ「多分な⋯お帰り黒歌」

 

白音に説明していると、落ち着いたのか黒歌が入って来た。

 

椿姫「その通りです⋯私は神器を持ってます、大人の人達はそれを《追憶の鏡(ミラー・アリス)》と呼んでました、でも⋯私はそれを制御できなかった⋯」

 

俺達をただの人では無いと理解したのか、椿姫は少しずつ話し始めた。

 

レイ「その結果、お前はここで監禁されてるって訳か⋯」

 

椿姫「⋯はい、私の意思とは関係無く鏡を通じて異形の化け物を呼び寄せてしまって⋯それから、周りの人達は私を化け物と呼びました、そしてここに無理矢理連れて来られて⋯それ以来、私はここから出る事を許されてません⋯ここに誰かが来たのも久しぶりの事です」

 

椿姫は着ていた巫女装束の裾を強く握り、声を徐々にかすらせながらそう言って。

 

レイ「お前の⋯親は⋯?」

 

椿姫「⋯母様と父様も⋯私を見る目は⋯周りの人達と同じでした⋯それでも⋯私は助けて欲しいと、私は化け物じゃ無いと言いました、でも⋯二人共⋯私を助けてはくれませんでした⋯」

 

レイ「⋯⋯⋯そうか」(またか⋯また⋯どうして⋯何で⋯)

 

ヴァーリの時と同じだった、椿姫の話しを聞いて、彼奴と出会った時と同じ事を、俺は感じていた。

 

捨てるくらいなら⋯殺そうとするくらいなら⋯見捨てるくらいなら―――最初から⋯産まなきゃ良いのに⋯と。

 

椿姫「あなた方が誰なのかは分かりませんが⋯少なくとも、私に力が有ると知りながらもここに来た、そして⋯私とこうして話しをしてくれた、だから⋯今私は⋯嬉しいです⋯」

 

椿姫は目元に涙を浮かべながらも、笑顔でそう言った。

 

レイ「なあ⋯椿姫⋯」

 

椿姫「はい⋯何でしょう?」

 

周りの大人に、そして親に裏切られ、幽閉され、迫害されて育ったという過去を持つ少女。

そんな少女を親に捨てられたレイが。

親に殺され掛け、逃げ出した少年に自分を重ね助けたレイが。

 

レイ「お前⋯俺と一緒に来ないか?」

 

このまま、見捨てられる筈は無いのだ。

 

椿姫「えっ⋯」

 

黒歌「ちょ⋯本気なのかにゃ!?」

 

レイ「ああ」

 

俺の言葉に、椿姫は唖然とし、黒歌は信じられないと言った様子でそう言った。

 

椿姫「一緒に⋯とは?貴方は一体⋯」

 

レイ「俺は悪魔だ」

 

椿姫「あく⋯ま⋯」

 

レイ「そうだ、お前の一族が大嫌いな」

 

椿姫の当然の質問に、俺は素直に答えた。

 

椿姫「そう⋯でしたか⋯」

 

レイ「ああ、だから⋯俺と来るとすれば、お前は真羅と縁を切る事になるだろうし、真羅からも縁を切られ、最悪⋯裏切り者と呼ばれるだろう」

 

椿姫「それは⋯」

 

俺の言葉に椿姫は俯いた。

 

レイ「だが⋯お前の命と自由は、俺が必ず守ってやる」

 

椿姫「貴方が⋯?」

 

レイ「ああ」

 

そんな椿姫に俺はそう言った。

 

椿姫「どうして⋯ですか」

 

レイ「何がだ?」

 

椿姫「どうして⋯私を助けてくれるのですか?先程貴方が言った通り、真羅は悪魔にとって忌まわしい存在の筈⋯なのに、どうして助けてくれるのですか?」

 

黒歌「そうにゃ!何でレイは助けるのにゃ!?」

 

椿姫や黒歌がそう聞くのも当然の事だ、真羅の家に産まれ、まず教えられるのは自分達の敵についてだろし、悪魔も真羅への敵対は勿論、近付く事すら無いから。

 

レイ「そうだな⋯理由は二つだ、一つは俺とお前が同じだからだ」

 

椿姫「同じ⋯?」

 

レイ「ああ、俺は⋯産まれて直ぐに親に捨てられたんだ⋯」

 

だから俺は、そんな椿姫と黒歌に対し本音で話しをする事にした。

 

椿姫&黒歌「えっ⋯」

 

レイ「経緯は違えど、俺もお前も⋯親に裏切られたんだ、同じだろう?」

 

黒歌「そうだったのね⋯」

 

椿姫「そう⋯でしたか⋯それで⋯二つめは?」

 

黒歌は納得した様に言い、椿姫は驚きながらも、もう一つの方を聞いてきた。

 

レイ「お前の神器だ」

 

椿姫「私の⋯神器⋯ですか?」

 

当然、俺はこっちの理由でも嘘を付く事はしない。

 

レイ「そっ、お前のその力で、支えて欲しい奴が居るんだ」

 

椿姫「私に⋯支えて欲しい⋯?」

 

レイ「そうだ、俺の大切な人だ」

 

椿姫「でも⋯私は⋯」

 

俺がそう言うと、椿姫は言葉を詰まらせた、その理由は分かっている。

 

レイ「力が暴走するのが怖いんだろう?」

 

椿姫「⋯はい」

 

やはりな⋯でも、俺にとってはなんて事の無い話しだ。

 

レイ「大丈夫だ、それなら俺がどうにかしてやれる」

 

椿姫「えっ!?本当⋯ですか⋯?」

 

レイ「本当だ、それに⋯俺の元にはお前よりもヤバい神器を持つ奴が居るからな、それに比べればお前の神器なんて可愛いもんだ」

 

俺は手の掛かる(ヴァーリ)の事を思い出しながらそう言った。

事実、彼奴の神器に比べれば、大抵の神器など玩具に等しい、現に制御の特訓の際は俺が居なければ間違いなく特訓の度に大規模な被害が出ている事だろう。

彼奴には才能や素質は十二分にある、それでもなかなか制御出来てないのは、それ程までに強力な神器だと言う証だ。

それに、今感じてる限りでは、椿姫の神器は確かに強力な部類に入るだろう、でも⋯ヴァーリに比べれば格段にレベルが下がる。

 

椿姫「そうなんですか?」

 

レイ「ああ、だから真羅にとっては脅威となるお前の神器も、俺には脅威どころか暇潰しにもならない」

 

椿姫「そう⋯なんだ⋯」

 

俺がそう断言すると椿姫は絶句した、それも当然だろう、自分の周りの大人達は皆が制御は無理と諦め、挙げ句に監禁された原因を、俺は簡単に解決出来ると言ったのだから。

 

レイ「真羅はそれらの類いを殺し、壊し、滅する事は得意だろうが、逆に制御したりするのは、それらを嫌ってきたが故に不得手なのだろう」

 

黒歌「ねぇ⋯レイ、それってさ⋯」

 

俺が推測でそう言うと、黒歌も感付いた様に言った。

 

レイ「お前の思ってる通りだよ、もしも真羅がさっき言った対処以外の対処方法を学んでいれば⋯未来で椿姫が真羅最強と呼ばれる可能性も有っただろうよ、でも⋯」

 

黒歌「真羅は異物の受け入れを拒んだ⋯かにゃ?」

 

レイ「⋯そう言う事だな」

 

黒歌「そしてその危険が自分の一族に現れても⋯」

 

レイ「容赦無く対処するって事だな」

 

俺の言葉に黒歌は苦虫を噛み潰したかの様に顔を歪めた。

 

黒歌「でも、だったら何でこの子は殺されて無いのにゃ?」

 

レイ「俺の憶測だから定かでは無いけど⋯理由が有るとすれば一つかな」

 

黒歌「それは?」

 

俺は憶測なのを前提として黒歌に話し始めた。

 

レイ「おそらくだが⋯単純に殺した後に神器が暴走する可能性を危惧してるんだろう、制御出来てなければ神器だろうと魔力だろうと死に際に暴走して周りにとてつもない被害を与えるなんて、良くある話しだ」

 

黒歌「成程にゃ⋯」

 

俺の説明に黒歌は納得した様に言った。

 

レイ「だから、最低限の処置として監禁を選んだ、でも⋯これも推測だが⋯それも制御出来るまでだろうな⋯」

 

黒歌「どういう事?制御出来たらどうするの?」

 

レイ「殺すだろうな」

 

真羅なら間違いなくそうするだろう、制御さえ出来てれば暴走の確率は殆んど無くなるからだ。

でも⋯。

 

黒歌「何でにゃ!?折角制御出来たなら⋯」

 

当然黒歌は納得しない。

 

レイ「言ったろ?真羅はそう言うのが嫌いなんだよ⋯何処までもな⋯」

 

黒歌「だからって⋯」

 

レイ「少しでも、自分達に脅威が残るなら徹底的に排除する、例え一族の者であろうと⋯それが⋯真羅って一族らしいな⋯」

 

黒歌「らしいなって⋯レイは詳しいんじゃ無いの?」

 

レイ「いや⋯俺だって知識でしか知らなかった⋯でも、まさかここまでとは思ってなかった⋯

でも、ほぼ確実にそうなんだろうな⋯それに、よく言うだろ?火のない所に煙は立たないって」

 

黒歌「そうね⋯正直、悪魔だからとか関係無く真羅が嫌いになる様な話しね⋯」

 

椿姫が真羅と知った時はあれだけ嫌悪感を出した黒歌も、話しを聞いて流石に同情していた。

黒歌もまた、唯一の家族である妹を守る為に命を掛けていたのだから当然と言えば当然だ。

 

レイ「それで?椿姫⋯お前はどうしたい?」

 

椿姫「⋯⋯⋯」

 

レイ「こればかりはお前が自分自身で決める事だ、どんな理由があろうと、これは俺がお前に強要出来る事じゃ無いからな」

 

椿姫「私は⋯」

 

レイ「⋯無理に来る必要は無い、どれだけ酷い扱いをされようと、お前にとって家族が⋯一族が大切ならば俺にはもう何も出来ない」

 

そう、結局決めるのは自分だ⋯ヴァーリの時だってそうだった、本人が嫌だと言うのなら、俺は連れて帰ったりはしなかっただろう⋯。

 

レイ「どうする?」

 

椿姫「私は⋯このまま⋯こんな所には居たく無い!死にたくありません!!」

 

再度問いかけると、椿姫は目に一杯の涙を浮かべながらそう叫んだ。

 

レイ「良し!じゃあ決まりだ、俺と共に行こう!椿姫」

 

椿姫「はい⋯」

 

椿姫の慟哭を聞いた俺は椿姫に手を差し伸べ、笑いながらそう言った。

椿姫も泣きながら俺の手を取りそう言った。

 

レイ「良し、それじゃあこんな所からはさっさと⋯ん?ちっ、思ったより早かったな⋯」

 

黒歌「どうしたのにゃ?レイ」

 

逃げようとした時、俺は嫌な気配を感じとった、それに黒歌が気付き俺の隣に来て聞いてきた。

 

レイ「どうやら真羅の連中が嗅ぎ付けた様だ」

 

黒歌「にゃ!?この子は⋯別にもう良いけど、やっぱり真羅は嫌だにゃ!さっさと行くにゃよレイ、ほら白音も」

 

白音「はい、姉様」

 

俺がそう言うと、黒歌と白音は猫の姿で、それぞれ俺の肩に飛び乗った。

 

レイ「待て待てお前ら、逃げるのは当然だが、まだやるべき事が残ってる」

 

黒歌「やるべき事?なんにゃそれは!?」

 

そんな二人に俺がそう言うと、黒歌は焦りながらもそう聞いてきた。

 

レイ「ああ、色々言ったが⋯椿姫はここで死んだ事にするのが一番だ」

 

俺は黒歌の時と同様にそう言った。

 

黒歌「確かに⋯どうするのにゃ?」

 

レイ「椿姫の神器が暴走し、怪物が出て来て椿姫を食い殺した、怪物達は椿姫が死んだ事で消えた、シナリオはこんな所か。

必要な物は⋯取り敢えず、髪の毛と服、それと血が少しあれば良いだろう⋯多分」

 

俺の言葉にどうするのか聞く黒歌に俺はそう答えた。

 

黒歌「そう⋯ね⋯少しならそれで誤魔化せるだろうけど⋯でも⋯」

 

レイ「分かってるよ、バレるのは時間の問題だろうが⋯それでも数年は掛かる筈だ、それだけあれば俺の手札も充分に揃う筈だ」

 

黒歌の心配は最もだ、でも⋯手懸かりは無し、もしかしたら死んだのかもしれない、なんて酷く曖昧で稚拙な作戦だ、だが⋯そのかもしれないと言う可能性がある限り真羅が悪魔に手を出す事は無い。

もしも「連れ去った」っと、言った後にそれが事実で無ければ真羅は日本の勢力内で立場が弱まるだろうからだ。

話しによれば現時点でも平和を願う傾向にある勢力が殆んどを締める日本の陣営の中で数少ない好戦派である事から、ただでさえ勢力内での立場は低くなりつつあるらしい。

そんな時に他勢力に言い掛かりを付けた⋯等と言う事になればそれこそ真羅は立ち行かなくなるだろう

でも、だからこそこんな作戦でも今回は実行に移せる。

 

黒歌「レイがそう言うなら信じるにゃよ、だからさっさとやることやるにゃ!」

 

レイ「分かってる、椿姫そう言う事なんだが⋯良いか?」

 

半ば自棄になりながら言う黒歌にそう言い、俺は椿姫に向かってそう言った。

 

椿姫「はい、構いません」

 

レイ「良し!なら早速やるぞ、黒歌、お前は部屋を荒らせ」

 

黒歌「私がかにゃ!?」

 

俺がそう言うと、黒歌は驚いた顔で言った。

 

レイ「一応、怪物が来たって事になるからな、獣が暴れたみたいに派手にやって良いぞ」

 

黒歌「にゃぁぁぁぁ~もう!良いにゃ!!やってやるにゃ!!!白音も手伝って!!!!」

 

白音「は⋯はい」

 

黒歌は叫びながら、白音は戸惑いながらも部屋中で暴れまわり始めた。

 

2分後⋯

 

レイ「こんなもんで良いかな?」

 

俺は椿姫の髪を少し切り、服は黒歌に切り刻んで貰い、椿姫の腕を少し斬り、そこから出た血を適当に飛沫(ひまつ)させた。

 

黒歌「レイ、こっちもこんな感じで良いかにゃ?」

 

レイ「ん⋯?ああ、充分だろ、ありがとう黒歌、白音」

 

部屋を見ると黒歌と白音が良い感じに荒らしてくれていた。

 

白音「良かったです⋯」

 

黒歌「なら、早いとこ帰ろうにゃ!もう、私でも解るくらい近いのにゃ!?」

 

レイ「分かってるよ、ほら⋯椿姫も行くぞ」

 

黒歌に急かされながら、俺は改めて椿姫に手を差し出した。

 

椿姫「はい⋯レイ様⋯///」

 

椿姫は何故か顔を赤くしながら、俺の手を取った。

 

レイ「それじゃ、行くぞ?黒歌、白音、椿姫」

 

三人「分かったにゃ!/はい」

 

俺は三人の返事を確認してから、三人を連れて転移で真羅の縄張りから脱出した。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

セラside

 

セラ「サーゼクスちゃん!!」

 

サーゼクス「やあ、セラフォルー」

 

セラ「やあ、じゃないよ!何なのあの任務は!!」

 

私は今、サーゼクスちゃんの所に来ていた。

理由は勿論、レイ君に来た任務についてだ、私はあの任務をサーゼクスちゃんから緊急だと言われたから、最低限だけ目を通してレイ君にお願いした。

でも、あの後に冷静に目を通せば、明らかにおかしな点が幾つもあったのだ。

 

サーゼクス「と、言う事は君も気付いたんだね?セラフォルー」

 

セラ「むしろ気付かない方がおかしいでしょ!特に黒歌の動きなんか、明らかにはぐれ悪魔の取る行動じゃ無いでしょ!」

 

サーゼクス「そうだね」

 

セラ「だからこそレイ君に任せたってのは分かるけど、何で最初に私に言ってくれなかったの?」

 

これは明らかに面倒な案件だ、そしてレイ君は必ずサーゼクスちゃんの考えに思い至る筈だ、そしてレイ君が取るであろう行動も大体想像がつく、でも⋯それはレイ君がまた面倒を背負う事になると言う事だ。

 

サーゼクス「最初に話したら、君は絶対に断っただろう?」

 

セラ「当然でしょ!ただでさえレイ君は色々な物を背負ってるのに!!これ以上危険な目に合わせるなんて⋯」

 

サーゼクス「セラフォルー⋯黙っていた事は済まないと思っている、だが⋯僕の意を汲んでこの件を片付けてくれるのは、レイ君しか思い付かなかったんだ、本当に済まない⋯」

 

サーゼクスちゃんは本当に申し訳無さそうに私に頭を下げた。

 

セラ「それは⋯私もレイ君以外思い付かないけど⋯でも⋯」

 

サーゼクス「セラフォルー、もしも何か起きた時の全責任は僕が持つ、決してレイ君に背負わせたりはしない、それだけは約束する」

 

サーゼクスちゃんは真っ直ぐに私の目を見てそう言った。

 

セラ「本当だね?約束だよ」

 

サーゼクス「勿論だ」

 

私達がそんな話しをしていると。

 

セラ「!」

 

コンコンッ

 

サーゼクス「どうぞ」

 

ノックされサーゼクスちゃんがそう言うと同時に、私は扉に向かって駆け始めた。

 

レイ「失礼しま⋯「レイ君!」セラフォルー様?」

 

セラ「お帰り~、大丈夫?怪我してない?無茶してないよね?」

 

予想通り部屋に入って来たのはレイ君だった、私はすぐさまレイ君に抱き付いてそう聞いた。

 

レイ「取り敢えず落ち着いて下さい、セラフォルー様」

 

セラ「でもでも!」

 

レイ君にそう言われるも落ち着くなんて無理だよ⋯万が一にもレイ君に何かあったら⋯。

 

レイ「大丈夫だから⋯ね?」

 

そう言って、レイ君は私を優しく抱きしめてくれた。

 

セラ「!うん☆」

 

自分でも単純だとは思う、でも⋯やっぱりレイ君に女王としてじゃない言い方で言われて、その上抱きしめられたら嬉しくなっちゃうから⋯仕方ないよね☆。

 

サーゼクス「お疲れ様レイ君、早速で悪いが任務の報告を聞いても良いかな?」

 

レイ「はい、まずは⋯はぐれ悪魔の黒歌ですが―――」

 

そんな私達を苦笑いしながら見てたサーゼクスちゃんがそう言うと、レイ君は私から離れて報告を始めた。

むぅ~、もう少しあのままが良かったのに~。

 

レイ「取り敢えずは以上です」

 

サーゼクス「ご苦労様、ところで⋯黒歌は殺したって事で良いんだね?」

 

レイ君からの報告を聞いたサーゼクスちゃんはレイ君に改めてそう聞いた。

 

レイ「はい、その簪が証拠になるでしょう?少なくとも⋯連中には⋯」

 

サーゼクス「そうだね⋯分かった、ありがとう」

 

この時点で私は確信した、おそらくサーゼクスちゃんもそうだろう。

レイ君は黒歌を殺してないと、殺した事にしたのだと。

 

レイ「それと⋯白音、入っておいで」

 

白音「は⋯はい⋯」

 

一通り報告を終えると、レイ君は扉に向かってそう言った、すると小さな女の子が一人入って来た。

 

セラ「レイ君、その子が?」

 

レイ「はい、この子が黒歌の妹の白音です」

 

サーゼクス「そうか、ありがとうレイ君」

 

私が聞くと、レイ君はその子を私達に紹介してくれた、白音ちゃんって言うんだね、サーゼクスちゃんも白音ちゃんを見ながらそう言った。

当たり前だけど白音ちゃんは少し怯えていた、入って来て直ぐにレイ君の元に行ったし、今もレイ君の服の裾を掴んでいる、まあついさっきまで命を狙われてた訳だから仕方無いと言えば仕方無いのだけど⋯。

でも⋯でもさ?二人は今日、さっき、始めて会った筈だよね?

なのに⋯何で白音ちゃんはこんなにレイ君に懐いてるのかな!?

おかしくない!?

いくら自分達の命を救って貰ったとは言え、いくら何でも懐きすぎじゃない!?

レイ君もレイ君だよ!そんな笑顔で頭なんか撫でちゃってさ!!

白音ちゃんもさっきまで怯えてたとは思えない位、気持ち良さそうにしてるし⋯。

 

白音「にゃぁ///」

 

ううぅ⋯ずるいよぉ~私の事は最近全然撫でてくれないのに~私も撫でられたいよぉ~。

私は顔だけは笑顔のまま二人を見ながらそんな事を思っていると

 

レイ「ところで⋯サーゼクスさん」

 

サーゼクス「何かな?」

 

レイ「白音の処遇なんですが、リアスの眷属にするつもりですよね?」

 

レイ君は撫でるのを止めて、サーゼクスちゃんにそう聞くと。

 

サーゼクス「うん、彼女の保護の観点からしてもそれが最良だと思っているよ」

 

サーゼクスちゃんはそう言った、私もそれが一番良い方法だと思う。

 

レイ「そうですね、俺もそれには賛成です、ただ⋯」

 

サーゼクス「ただ?」

 

レイ「勝手で申し訳ありませんが、その場合いくつかの条件を守って頂きたいのです」

 

レイ君がいきなりそんな事を言った。

 

サーゼクス「条件かい?その言い方から察するに、君からと言う訳では無さそうだね」

 

レイ「はい、これは黒歌からの、そして白音本人からの条件です」

 

成程ね☆条件付きって事で二人との取引をした訳なのね。

 

サーゼクス「内容は?」

 

レイ「はい。

1.白音の扱いは丁重に、決して物の様に扱ったりはしないこと。

2.戦いなどの白音が嫌がる事を強要しないこと。

3.これは白音からの要望ですが⋯暫くの間、白音は俺の元で暮らします。

以上が守られなかったり、白音が眷属を辞めたいと言った場合は俺が白音を引き取ります。

これが二人からの条件です」

 

サーゼクスちゃんが聞くと、レイ君は台詞を用意していたかの様に淡々と話し初めた、まあ⋯実際用意はしてたんだろうけどね。

 

サーゼクス「ふむ⋯分かった、それで構わないよ、リアスには僕から話しておくよ」

 

レイ「ありがとうございます、俺もリアスならこれ等の条件については心配はしてません、だからこそこの条件で白音を連れてきました」

 

サーゼクス「そうかい?ありがとう」

 

サーゼクスちゃんは少し思案した後に笑顔で快諾すると、レイ君も笑顔でそう言った。

 

レイ「それと、お二人にもう一つお話しがあります」

 

セラ「ん?私にも?」

 

レイ「はい」

 

サーゼクス「何かな?」

 

任務を任せたサーゼクスちゃんはともかく⋯私にも話しって何だろう?

 

レイ「実はもう一人、黒歌や白音とは無関係の人間を保護しまして」

 

セラ「人間を?」

 

レイ「はい、かなり強力な神器を持って居たので、連れて来たんです」

 

レイ君が眷属候補を連れて来るのは今に始まった事じゃないし、今ではレイ君自身も個人で家を持ってるから何も問題は無いんだけど⋯。

なんだろう⋯すっごく嫌な予感がするのは私の気のせいかな⋯?。

 

サーゼクス「そうなのかい?でも、君の眷属候補だろう?セラフォルーはともかく、そこに私の許可は必要無いと思うのだが⋯」

 

レイ「はい、本来なら必要無いんですけどね⋯今回は連れて来た奴がちょっとばかり特殊と言うか何と言うか⋯」

 

セラ&サーゼクス「特殊?」

 

いつもと違い、少し緊張しながら言うレイ君を不思議に思っていると。

 

レイ「はい、何て言うか⋯見て貰った方が早いですね、椿姫、入って良いぞ」

 

椿姫「失礼します」

 

レイ君がそう言うと、椿姫ちゃんと呼ばれた女の子が入って来て、礼儀正しく頭を下げそう言った。

 

セラ「ん⋯?この子が特殊な子?普通の女の子に見えるけど⋯」

 

サーゼクス「そうだね⋯確かに力は強いけどレイ君程じゃ無いし⋯」

 

レイ君が特殊と言うから、少し身構えてたけど⋯至って普通の子に見える、強いて言えば普通の子よりちょっと可愛いってくらいかな?

 

レイ「⋯取り敢えず⋯椿姫、自己紹介してくれるか?」

 

椿姫「はい、初めまして魔王様、私は真羅椿姫と申します」

 

セラ&サーゼクス『⋯⋯⋯え⋯?』

 

レイ君に促された椿姫ちゃんの自己紹介を聞いて、私達は絶句した。

 

レイ「椿姫が特殊ってのは、理解してくれましたか?」

 

セラ「えっと⋯特殊って言うか⋯ええぇぇぇ!?!?」

 

サーゼクス「しん⋯ら⋯?真羅って言ったかい?今!」

 

レイ「はい、椿姫は真羅一族の人間です」

 

混乱してる私達にレイ君は冷静にそう告げた。

 

セラ「レ⋯レイ君?どうして真羅の一族の子なんて連れて来ちゃったの!?真羅との関係性はレイ君も解ってるよね?」

 

レイ「はい、でも⋯それでも⋯」

 

私はレイ君にそう言うと、レイ君はなぜ椿姫ちゃんを連れて来たのかを話し始めた。

 

セラ「そう⋯真羅が⋯」

 

レイ「すいませんセラフォルー様、勝手な事をしたのは謝罪します、責任も取ります、でも⋯俺は椿姫を助けます、誰が何と言おうと、そう約束しましたから」

 

レイ君から真羅の話しを聞いて、真羅の相変わらずの行動に少しだけ嫌な気持ちになった。

そんな私に、レイ君は頭を下げ謝り出し、その後頭を上げたレイ君は真っ直ぐに私の目を見てそう言った。

そうだよね⋯ヴァーリ君の時もそうだったね、あの時は勢いでOKしちゃったけど⋯後から聞いた話しは酷い物だった。

ヴァーリ君や椿姫ちゃんの様な子、それは⋯普段どんな状況だろうと他人に対して興味を示さないレイ君が、唯一手を差し出す存在。

自分の立場を解っていてもなお⋯救ってしまうレイ君の優しさ⋯。

だったら―――

 

セラ「レイ君⋯そっか⋯分かった、良いよ☆」

 

レイ「本当ですか?」

 

セラ「うん☆お姉ちゃんに任せて☆」

 

レイ君がその子達を守るなら、レイ君の事は私が守るしか無いよね☆

それに⋯

 

レイ「ありがとうございます、セラフォルー様」

 

ああ⋯レイ君が⋯私に向かって笑ってるよぉ~。

これだよこれぇ!!最近のレイ君は頼もしくなりすぎちゃったから、全然私を頼ってくれなくなっちゃったし⋯こんなに無邪気で満面の笑みを向けられたのは久しぶりだよぉ~。

勿論、頼りになるに越した事は無いんだけど⋯頼りになりすぎちゃうのも主として、何よりもお姉ちゃんとしては寂しい物だからね☆

 

セラ「良いのよ?私はレイ君の主でお姉ちゃんなんだから、どんどん頼ってくれて良いんだから☆」

 

レイ「うん⋯ありがとう、セラお姉ちゃん」

 

レイ君が⋯レイ君が久しぶりに私をお姉ちゃんって!!やっぱり嬉しいなぁ~☆

 

セラsideout

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

セラ「それに、今回は当てが有るからね☆」

 

レイ「当て⋯ですか?」

 

俺は何だろうと思っていると。

 

セラ「うん☆サーゼクスちゃん?」

 

サーゼクス「何かな⋯セラフォルー」

 

セラフォルー様はそう言って、サーゼクスさんに話し掛ると、サーゼクスさんは何かに気付いた様に、少し顔を引きつらせながら言った。

 

セラ「全責任はサーゼクスちゃんがとってくれるんだよね?」

 

サーゼクス「ああ⋯確かにそう言ったが⋯」

 

セラフォルー様が笑顔でそう言うと、「やっぱりか」とでも言いたそうな顔で答えた。

 

セラ「サーゼクスちゃん?」

 

歯切れの悪いサーゼクスさんにセラフォルー様が圧を掛けて言うと。

 

サーゼクス「はい⋯」(まさか真羅の人間を連れて来るとは⋯流石に予想してなかったな⋯)

 

サーゼクスさんは観念したかの様に、一言だけそう言った。

 

レイ「良いんですか?これは俺の独断ですよ⋯?」

 

セラ「良いのよ?そもそも詳しい事を話さずにレイ君に任務を与えたのはサーゼクスちゃんなんだから☆

いくらレイ君が優秀でも、詳しい説明が無きゃイレギュラーが起こるのは仕方の無い事なんだから☆

ねぇ?サーゼクスちゃん?」

 

俺は流石に申し訳ないと思いセラフォルー様にそう言うと、セラフォルー様はサーゼクスさんに満面の笑顔でそう言った。

 

サーゼクス「あ⋯ああ⋯そうだね⋯イレギュラーが起こっても⋯仕方無いね⋯うん⋯レイ君⋯僕に任せて貰って良いよ⋯」

 

レイ「そう⋯ですか⋯ありがとうございます⋯」

 

俺が帰って来る前にどんな話しをしてたのかは知らないが、ここまでセラフォルー様に押されてるサーゼクスさんは久しぶりに見たな⋯。

 

そんな訳で、椿姫を連れてきた事の後始末はサーゼクスさんがしてくれる事になった。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

任務の報告と白音、椿姫の報告を終えた俺は白音と椿姫を連れて、セラフォルー様と共に帰路についていた。

 

椿姫「あの⋯レイ様?」

 

レイ「ん?どうした?椿姫」

 

椿姫「あの時言ってた、私に支えて欲しい人って⋯誰なのですか?」

 

椿姫は俺にそう聞いてきた。

 

レイ「ああ、それはな俺の幼馴染みで、セラフォルー様の妹でもある、ソーナ・シトリーだ」

 

椿姫「ソーナ・シトリー⋯レイ様にとって⋯その方はそんなにも大切なのですか?」

 

ソーナの事を教えると、椿姫は俺の正面に来てそう言った。

 

レイ「うん?そうだな、少なくとも命掛けで守りたいと思う位にはな」

 

椿姫「そうですか⋯」

 

俺がそう言うと、椿姫は少し拗ねた様にそう言った。

 

レイ「まあ、それでも椿姫を眷属にするかはソーナ次第だけどな、もしソーナが断ったら⋯その時は俺の眷属になってくれると嬉しいよ」

 

椿姫「レイ様の⋯ですか?」

 

勿論ソーナが受けるとも限らないので、俺はもしもの時の話しも椿姫にしておいた。

 

レイ「そう、正直言うと普通に欲しいよ?でも⋯今はソーナが先だ、来年からソーナとリアスは人間界の学校に行くらしいからな、椿姫には将来のゲーム以外にも、人間界の害虫からソーナを守って貰いたいし」

 

椿姫「害虫⋯ああ、男性の事ですか?」

 

人間界に居るのは当然、普通の人間で貴族の様な連中など殆んど居ないだろうが、準備をしておくに越した事は無いだろう。

 

レイ「まあ⋯な、それに⋯ソーナと椿姫、美人が常に二人で行動してれば近付こうなんて奴は、重度のナルシストかそれ以上の馬鹿かのどちらかだ」

 

椿姫「そうですか」(美人⋯まだ私にも可能性はあるのでしょうか⋯)

 

俺がそう言うと、椿姫は少し顔を赤くしながら言った。

 

レイ「?その時は頼めるか⋯?」

 

椿姫「はい⋯貴方がそれを望むのならば」

 

レイ「ありがとう、椿姫」

 

俺がそう聞くと、椿姫は頭を下げてそう言った。

 

セラ「なぁに?何の話し?」

 

すると、セラフォルー様が後ろから俺に抱き付いて来た。

 

レイ「おっ⋯と⋯実は、椿姫をソーナの眷属にどうかと思ってまして」

 

セラ「ソーナちゃんの?」

 

俺がそう言うと不思議そうに首を傾げるセラフォルー様。

 

レイ「はい、暫定とは言えリアスの眷属も増える訳ですし。

ソーナは頭が良いから、知略を重点を置く戦いが向いているでしょうから、それを存分にこなせる力の強い眷属が居れば戦略は幾重にも広がるかと思って。

それに戦略の組み立ても現時点で充分に出来てますし、後はそれに見合う人材だけですから。

後は来年からは人間界の学校に行くことですし、ソーナと椿姫、互いの虫除けも兼ねて」

 

そんなセラフォルー様に俺は素直にそう言った。

 

セラ「そうだね☆でも⋯そっかぁ~☆ありがとうね、レイ君は何時でもソーナちゃんの事を考えてくれてるんだね☆」

 

レイ「まあ⋯大切な人の一人ですからね⋯」

 

セラフォルー様にそう言われ、俺は少し恥ずかしくなりながらもそう返した。

 

セラ「うんうん☆でもぉ~私の事も忘れちゃ嫌だからね?

 

レイ「!!もちろんですよ⋯」

 

俺はセラフォルー様に耳元でそう囁かれ、少しドキッとしたが。

 

セラ「ふふっ、ありがとうレイ君☆」

 

レイ「当然の事ですよ⋯」

 

セラフォルー様には何とか気付かれずに済んだようだ。

 

それから、一度シトリー家に行き、ソーナと椿姫を引き合わせたのだが、その際、俺は母上に頼まれて買ってきた物を渡しに行き、戻って来た時にはソーナから椿姫を眷属にする事にしたと言われた。

何でそんなに早く話しが纏まったのかと聞いたら、二人からは何故か『内緒です!』と言われて、セラフォルー様からも、「レイ君は知らなくても良いの☆」と言われた。

そしてその後、俺は白音と椿姫、そしてずっと俺の服の中に隠れていた黒歌の三人を連れて家に戻り、皆と互いに紹介を済ませた後、俺はシトリー家に戻ってセラフォルー様とソーナの相手をして。

俺の長い1日はようやく終わったのだった。




アンケートを初めて使います。
良かったらお答え下さい。


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【12歳】家族

なんか書いてると、どんどん新しい設定やらを思い付いて、足していったら長くなる(^_^;)

文才や語彙力がある人ならもっと的確に短く出来るんだろうけど⋯

そういうのがある人は本当に羨ましいです。
 

アンケートは次の話しが書き終わり次第終わりと決めていて、それまで殆んど途中経過を見てなかったのですが。
ようやく書き終わって見てみたら同率だった為、次の1票が入った時点で終了と決めて、ちょくちょく見てたら最後の1票はレイナーレに入りました。
という事で一誠のヒロインは天野夕麻ことレイナーレに、アーシアは主人公のヒロインになります。

そして、アンケートに書いた通り、原作入りは旧校舎のディアボロスからとなります。


もう少し先の話しなんですけどね⋯(すいません)

まさかここまで接戦?になるとは思いませんでした。

ご協力ありがとうございました。

9/20 本文編集

11/11 本文改定

11/28 本文編集


シトリー家、現レヴィアタンを輩出した名門であり。

元72柱12位にして、水の魔力の扱いに長ける一族。

その領地は上級悪魔の中でも有数の自然保護区の数を誇り、多くの美しい景観に恵まれている。

医療機関が充実していることでも有名で、冥界でも名だたる病院がある事で知られている。

俺は今、そんなシトリー領の森の中深くに来ていた。

 

レイ「それで、どうだった?」

 

俺は木にもたれ掛かりながらそう言うと。

 

「完璧に黒ね⋯今すぐにでも殺したくなる位に不愉快な内容だったわ」

 

すると反対側から少女の声が不愉快そうに返して来た。

この声の持ち主は半年程前に出会った眷属候補の一人、そして今はある仕事を任せている少女。

 

レイ「そうか⋯それは良かった、これで漸く黒歌を無罪に出来るだけの材料が揃った訳だな」

 

少女の報告を聞き、俺は反対に口角を上げそう言った。

何故ならその仕事とは黒歌に関する事だったからだ。

 

「そうね、けど⋯調べて解ったけど、その男⋯はっきり言ってただの馬鹿よ?調べれば調べる程に馬鹿さが顕になっていったもの」

 

レイ「だろうな、俺も最初はお前の報告を聞いた時には驚いたよ、本人はああ言う行いを全く恥ずかしいとも思っていない、周りはあんなにも火消しに躍起になってると言うのにな」

 

そんな俺の言葉に、少女は同意してから今度は心底呆れた様に言った。

だが、それも当然の事だろう、黒歌の元主は余りにも愚かで、また馬鹿だったのだから。

 

「ええ、でも⋯だからこそ、本来ならもう捕まってなきゃおかしいんだけどね⋯」

 

そう、そんな愚か者なのに今までそれらの行いが一切露見していないと言う事、それがどういう事なのか⋯そんなのは少し考えれば馬鹿でも解る事だ。

つまり⋯。

 

レイ「本来ならな、だがそのお陰で確定しただろ?確実に後ろに誰かが居た⋯」

 

「そうね、それも⋯かなりの権力者、あれだけ恥ずかしげもなく行われていた非道な行いを揉み消せる程の⋯」

 

その馬鹿を飼っていた奴が居たと言う事、そしてその誰かが、馬鹿の行った悪行の全てを揉み消したと言う事だ。

 

レイ「ああ、取り敢えず黒歌の無実を証明は出来るとして⋯」

 

「今度はそっちね?」

 

だから、次の目標はその飼い主なのだが⋯。

 

レイ「ああ、一体何処の馬鹿なのか知らんが、だが⋯恐らくはかなり警戒されてる筈だ、本当ならまだ転生前のただの人間のお前にこれ以上は「レイ君」⋯何だ?」

 

正直に言ってやらせたくは無い⋯そう言おうとして、少女に遮られた。

 

「私なら大丈夫よ、元々そういう裏の物を専門に調べたりする、暗部の家に産まれたのだもの。

それに、なによりも貴方には恩がある、妹を連れて逃げていた私を助けてくれた。

そして、あの家と違って私にもあの子にもこう言う仕事を強要しなかった。

今回の件だってそう、貴方はまず私に知識を聞いて来た、それはつまり⋯自分自身でやるつもりだったのでしょう?」

 

レイ「⋯⋯⋯」

 

そんな少女の言葉に俺は何も言えずにいた。

そう、全て彼女の言う通りだった、俺は黒歌の件を一人で片付けようとしていた。

だが、俺は派手にやる事には慣れているが、秘密裏に何かをやるには明らかに経験不足だった。

その時にこの少女の家が所謂暗部の家系だった事もあり、色々と教えて貰おうとした所、理由を聞かれ全てを話した所、自分がやると言って来た。

当然、最初は駄目だと言ったが、その時に「貴方がしくじれば黒歌ちゃんとその妹は更に窮地に立たされる事になる、それに貴方は私を眷属にするのでしょ?王様ならどっしりと座ってれば良いのよ、そして私自身も、神器以外にも使える所があるって貴方に見せておかないとね」とウインクしながら言った。

黒歌の事に対してのそれは正論だった、当然しくじるつもりは無いが、それも100%では無い、俺も流石に慣れてない事までは完璧に出来ないと、そう思ったからだ。

 

「沈黙は肯定と取るわ、私達はまだ貴方に助けられて半年と少し位だけど⋯貴方は敵対する者にはどこまでも冷酷で残酷だけど、逆に身内には何処までも甘いのを知ってるわ。

私達姉妹にだってそう、私を眷属にするのだって強制しなかった、私を⋯ううん、あの子を助ける代わりにって言えば、私は従わざるを得なかった。

でも貴方は決してそんな事を言わなかった、しかも「望むのならば別人として暮らせる様にして、人間界に戻してやる」なんて言うのだから。

あの時、助けられる代わりに一体何を要求されるのだろうか?なんて悩んでた自分が心底馬鹿らしくなったもの」

 

そんな俺に少女は続けて助けた時の事を持ち出しそう言った。

()()】それは他の人達にも最近特に良く言われる事だった、俺はそんなつもりは無いのだが、どうやら俺は身内には滅法甘いらしい。

セラフォルー様からも「レイ君は他人には一切の容赦が無いのに、私やソーナちゃんにはもちろんだけど、ヴァーリ君や眷属候補の子達にもとことん甘いよね~☆あ、後リアスちゃんとかにも☆」と言われた。

甘いと言われるならばそれは。

父上の騎士で戦いの基本や眷属としてのあり方を教えてくれた、教育係りの上級悪魔。

修行中に出会い、俺に剣と刀、抜刀術を教えてくれた二人の剣術の師匠。

素手での戦い方を教えてくれた武の師匠。

俺が3つの属性を持っていると知り、その内の一つの魔力の使い方、そしてそれでの戦い方を教えてくれた魔の師匠。

そして、ギル⋯は無いか。

とにかく、この中の誰かが原因だろう。

だが⋯

 

レイ「当然だ、俺は何のメリットも無いのに人助けをするようなお人好しじゃ無い、お前の神器に眼を付けたのも事実だ、だが⋯助けるからとか恩を返せだとかそんな下らない理由で、なにかを強制するつもりは端から無い。

それは、俺が悪魔になってから見てきた中で一番、二番に嫌ってる糞共と同じだからな」

 

例えそう言われようとも、俺は決して自分に、そしてセラフォルー様やシトリーにメリットがなければ、例え目の前で関係無い誰かがどうなろうと決して動く事は無い。

そしてそれは、この少女も例外ではなかった。

だが、だからと言って嫌がる奴に強要なんて決してしない、それをすれば俺は黒歌の元主となんら変わらないのだから、そんな奴と同じなど⋯考えただけで吐き気がする。

 

「でも、それじゃあ私達を助けるメリットは何だったの?無理矢理眷属にする訳でも無い、それどころか新しい人生をくれるなんて⋯貴方にはメリットなんて無いどころかデメリットしか無い様にしか聞こえないのだけれど?それに、本当に悪い人なら自らそんな事は言わないわよ?そういう連中は皆自分を良く見せようとする物なんだから」

 

俺の言葉に少女は納得出来ないとでも言いたげにそんな事を言う。

だが、なんと言われようと、どう思われようとも俺の考えは変わらない。

これまでも、そしてこれからも興味が無ければ、メリットが無ければ助けない。

俺が守りたいと思う者達を除いてはだが⋯。

 

レイ「買い被りすぎだよ、俺がお前達姉妹を助けるメリットならちゃんとあったさ」

 

「それは?」

 

俺がそういうと少女は本当に分からないと言う様な口調だった。

 

レイ「強力な神器を持っているお前との眷属交渉が出来ただろ?そして、結果的にお前は俺の眷属になってくれるんだろ?」

 

「それだけ?そんなのは私が断ったらその時点で終わりじゃないのよ」

 

レイ「それで良いんだよ、お前にはその程度の事でも、俺にとってそれは⋯セラフォルー様を、そしてソーナやシトリーを守る為に力を求めてる俺にとっては喉から手が出る程に重要な物だ」

 

俺の言葉に驚きを隠せずにいる少女に、俺は正直に答えた。

 

「そう⋯でも、だったら余計に私を使うべきよ、貴方は私の力を求めて私はそれを受け入れた、なら⋯何も迷う必要なんて無いじゃない。

私は貴方の為ならば何だってすると決めた、だから貴方は私を信じて命令してくれれば良いの。

さっきも言ったけれど、私は元々それらの類いの物を専門に調べて粛正する為の家に産まれたのだから、仕える相手が国から貴方に変わっただけで、私のやる事は変わらない。

貴方が私の力を求めてくれるのならば、私は全身全霊で貴方の期待に応えて見せるわ!必ずね」

 

それを聞いた少女は姿を表して俺の正面にまわり、さっき以上に力強くそう言った。

 

レイ「そうか⋯分かった、ならこの件もお前に調査を任せる」

 

「ええ、任せておいて」

 

本当なら未だやらせたくはない、だがここまで言われてやらせなければ、それは俺がこの少女を信頼しないと言ってるのも同義だ。

俺は出会った者の9割以上は信頼していない、むしろ信頼出来る者の名を上げた方が早く済むだろう。

だからこそ、本当に信頼出来る者には誠実で無ければいけないと思っている。

だから、俺はこの仕事をこの少女に任せる事にした。

俺の答えを聞いて、満足したように笑顔で頷いた後、少女は真剣な顔で力強く言った。

 

レイ「その件が終わり次第、黒歌の無罪をサーゼクスさんに訴えに行く」

 

「分かったわ、出来るだけ早く終わらせるわ」

 

レイ「ああ、だが⋯」

 

「決して無理はするな、慢心するな、ヤバくなったら逃げろ、でしょ?大丈夫よ、ちゃんと分かってるから」

 

そう言うと、少女は当たり前の様にそう言った。

そんな少女に俺はいつも言ってる事を言おうとするが、少女はもう聞き飽きたとでも言いたげに先に言った。

俺が何時も危険な仕事を任せる奴に言う言葉、この間はヴァーリにも同じ様に言われたっけな。

 

レイ「分かってるなら良い、この仕事は任せたぞ?」

 

「ええ、必ず貴方の期待に応えて見せる!―――あっ!」

 

そう言って少女は立ち去ろうとして、何かを思い出したのかの様に声を上げた。

 

レイ「どうした?」

 

「そう言えばレイ君、もうすぐ駒を貰えるのよね?」

 

何かと思えば駒の話しだった。

まあ、気になるのも当然か、大して変わらないとは言え人間を辞める訳だからな。

 

レイ「ああ、準備が整い次第渡すってセラフォルー様伝にサーゼクスさんから言われたよ」

 

「そう、じゃあいよいよなのね!」

 

レイ「そうなるな」

 

セラフォルー様から言われた事を伝えると、少女は嬉しそうに言った。

そんな少女の姿に、俺も笑みを浮かべながら返した。

 

「だったら、余計にこの仕事は完璧に、そして早く終わらせ無いとね」

 

レイ「そうだな、急かすつもりは無いが出来れば駒を貰う前に終えてくれると助かる」

 

更にやる気を出した少女に、俺はいつも通りの口調で言うと。

 

「黒歌ちゃんの為にも、よね?」

 

レイ「ああ、だが⋯何度も言うが絶対に無理だけはするなよ?」

 

からかう様な感じで言う少女に、俺は表情を変えずにそう言うと。

 

「もちろん、貴方を失望させる様な事も、顔に泥を塗る様なヘマもしないわ、じゃあねレイ君」

 

少女は笑顔で、だけども真剣な顔でそう言って、手を振りながら今度こそ俺の前から去って行った。

 

レイ「はぁ⋯そういうことじゃないんだがな⋯成功すればそれで良し、失敗しても俺がどうにかするから、その辺は良いんだがな⋯頼むから無事に帰って来てくれよ―――刀奈」

 

俺はその背を見送りながら一人そう呟いた。

 

――――――――――――――――――――――――

 

一ヶ月後

 

俺は刀奈から例の件の報告を聞き、自分の家に戻って来た。

 

レイ「黒歌居るか?」

 

黒歌「どうしたにゃ?レイ」

 

俺はリビングの扉を開けてそう言うと、ソファに寝そべっていた黒歌が顔を上げた。

 

レイ「喜べ!全て解決したぞ」

 

黒歌「解決って⋯まさか!」

 

俺がそう言うと、最初こそ何が?とでも言う様に不思議そうな表情を浮かべるが、すぐに言葉の意味を理解したのか、徐々に驚きの表情に変わった。

 

レイ「ああ、お前の元主だった奴とそれに荷担してた奴等の罪の証拠、そして⋯それらの罪を握り潰してた奴の事も全て調べがついた」

 

黒歌「本当⋯にゃ?」

 

俺はその報告と共に、刀奈から受け取った資料に書かれてた事を説明すると、黒歌は言葉を詰まらせながら言った。

 

レイ「ああ、これでお前は自由だ」

 

黒歌「レイ⋯本当に⋯本当にありがとうにゃ」

 

そんな黒歌に俺は笑顔で言うと、黒歌は目に涙を浮かべながらそう言い、俺に抱き付いて来た。

今日の黒歌は随分と表情が豊かだな。

 

レイ「気にするな、そういう約束だったからな。

それに、礼なら俺じゃ無くて刀奈に言ってやれ」

 

黒歌「刀奈に?」

 

俺がそう言うと、黒歌は首を傾げた。

 

レイ「俺は大っぴらに動けないからな、あいつに頼んだんだ、だから実際に調べたのはあいつで俺じゃない」

 

そう、俺は今回何もしてないに等しい、だからそのお礼も称賛も言われるべきは刀奈だ、俺はあくまでも万が一に失敗した時の為の準備をしていただけなのだから。

 

黒歌「そうなんだ⋯分かったにゃ、刀奈にもちゃんとお礼を言っとくにゃ。

でも⋯それでもレイが動いてくれなきゃこうはならなかったにゃ、だから⋯ね?本当にありがとう⋯レイ」

 

レイ「⋯ああ、取り敢えずこれからセラフォルー様とサーゼクスさんに駒の件で呼ばれてるからお前も来い、そこでお前の無罪も証明する」

 

黒歌「分かったにゃ⋯」

 

レイ「安心しろよ、何かあったら必ず俺が守ってやるから」

 

黒歌「うん!」

 

レイ「そう言えばヴァーリの奴は何処に行った?彼奴も一緒に連れて行こうと思ったんだが⋯」

 

黒歌「ヴァーリ?ヴァーリなら確か⋯」

 

ヴァーリ「俺ならここに居るよ兄さん、話しも聞いてた、やっと貰えるんだな」

 

後ろからヴァーリがそう言いながら出て来た。

 

レイ「なんだ、居たのか、それに話しを聞いてたならちょうど良い、一番最初に俺の駒を渡すのはお前って決めてたからな」

 

ヴァーリ「!そっか⋯嬉しいよ、ありがとう兄さん」

 

レイ「それじゃあ行くぞ、二人共」

 

ヴァーリ&黒歌『ああ/分かったにゃ』

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

コンコンッ

 

サーゼクス「どうぞ」

 

レイ「失礼します」

 

サーゼクス「やあ、待っていたよレイ君」

 

ノックをしてから中に入ると、サーゼクスさんが座っていた。

 

レイ「すみません、待たせてしまったみたいで」

 

サーゼクス「なに、構わないさ、それにセラフォルーがまだ来ていないからね」

 

俺が謝るとサーゼクスさんは笑顔でそう言った、確かにいつもなら入ると同時に抱き付いてくる筈のセラフォルー様の姿が見当たらない。

だが今はそれよりも大切な事がある。

 

レイ「そうですか、なら⋯俺の用件を聞いてもらっても良いですかね?」

 

俺はサーゼクスさんの目を真っ直ぐに見ながらそう言った。

 

サーゼクス「ん?ああ、構わないよ?何だい?」

 

レイ「ありがとうございます、じゃあまず⋯これを読んで下さい」

 

俺はそう言って刀奈から受け取った資料を手渡した。

 

サーゼクス「これは?」

 

レイ「俺の眷属候補に調べて貰った、不愉快な者達の資料です、取り敢えず読んで貰えれば解って貰えるかと」

 

サーゼクスさんの質問に、俺は敢えて中身を言わずにそう言った。

 

サーゼクス「分かった、では読ませて貰うよ」

 

サーゼクスさんは俺の言葉に頷いて資料を読み始めた。

 

数分後⋯

 

サーゼクス「これは⋯酷いな⋯」

 

資料を読み終えたサーゼクスさんは顔をしかめながらそう言った。

 

レイ「そこに書いてある事は全て事実です、それ以外にも証拠足り得る物は数多くあります」

 

サーゼクス「⋯そうか、ちなみに⋯これを僕に見せた、一番の理由を教えてくれるかな?

こう言っては何だが、いくら相手が悪事を行ってるからって、君は正義感だけで動く事は無いだろう?」

 

俺は資料を読み終わったサーゼクスさんにそう言うと、サーゼクスさんは真剣な顔でそう言った。

 

レイ「そうですね」

 

俺は苦笑しながら言った。

流石サーゼクスさん、付き合いが長いだけあって、俺の事を良く知っている。

 

サーゼクス「そんな君がこの様な危険を犯してまで行った理由⋯それは?」

 

レイ「貴方なら解っているでしょう?」

 

サーゼクス「ああ⋯もちろん解っているよ、でも⋯立場上直接君の口から聞く必要があってね」

 

レイ「そうですか、じゃあ改めて⋯それらは全て、黒歌を無罪にする為に調べ、集めました。

あいつは⋯黒歌は決して力に溺れてなんかいませんでした、全ての非は黒歌の元主とそこに書いてある連中にあります」

 

まあそうだろう、魔王である以上自分の憶測で何かを決め、進める事は出来ない、当然と言えば当然だ。

サーゼクスさんの言葉に、俺はそう答え、そして断言した。

 

サーゼクス「そうか、やはり僕の想像通りに動いてくれていたんだね。

彼女の件、君に任せて本当に良かった」

 

俺の言葉を聞き、サーゼクスさんは笑顔でそう言った。

 

レイ「それはどうも⋯やっぱり知ってて黙ってたんですね⋯。

でも⋯それなら、もう一つの事も⋯理解して頂けてますよね?」

 

俺は皮肉を込めて言った、知られている事は知っていたしな。

そして、もう一つの事⋯それはさっき言った『()()()()()()()()()()()』と言う言葉。

それが意味する事、それは⋯

 

サーゼクス「ああ、もちろんだ⋯どんな理由にせよ、彼らの処分に手心を加えれば⋯」

 

レイ「はい、どんな手を使ってでも、その結果俺はどんな罰を受けようと⋯」

 

サーゼクスさんの言葉を引き継ぐ様に俺は言った、それでも最後の言葉は口には出さず呑み込んだ。

圧力、金銭、その他にも色々な手を使ってでも、連中は自分達の罪を無かった事にしようとするだろう。

だから、もしもそんな事を許すのならば『()()()()』その言葉を⋯。

 

サーゼクス「もちろんだ、決して一切の譲歩はしないと約束するよ、魔王の⋯いや、リアスに誓ってね」

 

レイ「そうですか、それなら安心ですね」

 

サーゼクスさんの宣言に、俺はそう返した。

前にグレイフィアさんから聞いた事がある、サーゼクスさんはリーシアさんやセラフォルー様などの身近な人に何かを約束する時、希に魔王では無くリアスに誓うとの事だった。

だが、それは決してふざけてる訳では無い、サーゼクスさんはリアスを溺愛している為、リアスに誓ってした約束だけは例え何があろうと【必ず】守るらしい。

その理由としては、もしも出来なければ、それはリアスの耳に入り⋯嫌われるからだとか。

 

サーゼクス「ああ、任せておいてくれ、それと⋯少し早いが⋯現時点を持って、黒歌君のはぐれ認定を取り消す」

 

レイ「そうですか、ありがとうございます」

 

サーゼクスさんは笑顔でそう言った、俺は少し驚きながらもお礼を言った。

 

サーゼクス「なに、当たり前の事だよ、それと⋯そろそろ外の子達を呼んであげたらどうだい?」

 

レイ「⋯まあ、気付きますよね⋯」

 

サーゼクス「まあね、これでも一応魔王だからね」

 

サーゼクスさんは扉を見ながら言った、俺は二人にそこで気配を消して待ってろと言っておいた、万が一どころか億が一程にもしもの事だったが、サーゼクスさんが報告した連中の肩を持った場合、最悪戦闘になってでも黒歌を逃がす必要があった為だ。

 

レイ「ですよね⋯気配もだだ漏れですし、はぁ⋯入って良いぞ二人共」

 

俺はため息をつきながら、扉に向かってそう言うと。

 

ヴァーリ「ああ⋯悪い兄さん⋯でも、俺じゃないぞ!黒歌が気配を消さないからだ」

 

黒歌「私のせいにするのかにゃ!?ヴァーリだっていざとなったらって殺気出しまくりだったにゃ!!」

 

ヴァーリ「何だと!!」

 

黒歌「やるかにゃ!!」

 

二人共に入ってくるなり言い合いを始めた。

 

レイ「お前ら⋯その辺にしとけよ?」

 

ヴァーリ&黒歌『ッ⋯ごめん⋯/ごめんにゃ⋯』

 

そんな二人に俺は少し殺気を出しながら言うと、二人は素直に謝り静かになった。

 

黒歌「でも⋯正直関係無いと思うにゃよ?」

 

レイ「?どういう意味だ?」

 

ヴァーリ「だって⋯」

 

黒歌の言葉に俺がそう言うと、ヴァーリが入って来た方を見ながら何かを言おうとした時―――

 

セラ「レイく~ん☆」

 

レイ「セラフォルー様!?」

 

セラフォルー様が俺に向かって飛び付いて来た。

 

セラ「そうだよ☆遅れちゃってごめんね~」

 

レイ「えっと⋯一体いつから⋯」

 

俺に抱き付き、頬擦りをするセラフォルー様にそう聞くと。

 

セラ「ん?レイ君が黒歌ちゃんの名前を出した辺りからかな?」

 

レイ「ほぼ最初からじゃ無いですか⋯」

 

それを聞き俺は唖然とした、何故なら―――

 

セラ「うん、それにしても私の気配に気付かないなんて、レイ君落ち着いてた様に見えて、意外にも気を張ってたんだね~☆

でも、そんな風に黒歌ちゃんの為に頑張るレイ君も格好良かったよ☆」

 

そう、普段の俺がセラフォルー様の気配に気付かないなんて事はあり得ない。

でも今回は全く気付いていなかった、セラフォルー様の言う通り、自分でも知らない内に緊張してた様だ⋯。

 

レイ「すみません⋯」

 

セラ「気にしなくて良いのよ☆それだけ大変な事をしたって事なんだから☆

それに、これで全部解決でしょ☆ね?サーゼクスちゃん?」

 

俺は気付けなかった事が地味にショックだった、いくら緊張してたとは言え、俺にとって最も大切で敬愛してる人に気付けなかったのだから。

落ち込みながら謝ると、セラフォルー様は笑顔でそう言い、サーゼクスさんにもそう言った。

 

サーゼクス「もちろん、後は僕達の仕事だ、前にも言った通り⋯僕が責任をもって、必ず相応の罰を与える」

 

セラ「なら、この話しはこれで終わり☆早く本題に入ろう?」

 

サーゼクスさんがそう断言すると、セラフォルー様はそう言った。

 

レイ「セラフォルー様⋯少し軽すぎませんか⋯?仮にも自分の女王がはぐれ悪魔を匿ってたんですよ?」

 

俺はセラフォルー様もこの件を知ってる事は知っていたが、それでもそう言わずにいられなかった。

 

セラ「だって~、漸くレイ君に駒を渡せるんだよ?本当ならもっと早くあげても良かったのに~、皆煩いんだもん。

それに、例えその子がどんな事情を持ってる子でも、レイ君は絶対に私を裏切らないし、迷惑を掛けようとはしないでしょ?」

 

レイ「それは、もちろんです!」

 

すると、セラフォルー様はそれを意にも介さずにそう言った。

俺はセラフォルー様のそんな言葉に、当然っと力強く返した。

 

セラ「だったら、何も問題無いでしょ?私はレイ君を信じてるもん☆

あっ、もちろん迷惑を掛けても良いんだけどね?」

 

レイ「セラフォルー様⋯」

 

セラフォルー様は続けてそう言ってくれた、その言葉は正直今までで一番嬉しかった、俺にとって何よりも大切な人の一人であり、主でもあるセラフォルー様からそんな風に言われたのだ、嬉しくない訳がない。

 

セラ「だ・か・ら、な~んにも問題無し☆ね?」

 

レイ「はい⋯ありがとうございます⋯セラフォルー様」

 

満面の笑みのそう言うセラフォルー様に、少しドキドキしたが、俺は出来る限り平常心を保ちながら笑顔でそう言った。

 

グレイフィア「お疲れ様でした、レイ様」

 

レイ「グレイフィアさんまで⋯」

 

グレイフィアさんもまた、セラフォルー様と共に入って来ていたのだが。

 

グレイフィア「はい、申し訳ありません、セラフォルー様が「レイ君の格好良い所見たいから静かにね☆」と仰った物ですから」

 

レイ「そうでしたか⋯なんかすみません」

 

だから、二人して一緒だったんだ⋯。

 

グレイフィア「いいえ、確かにレイ様は格好良かったですよ?

例え知り合いとは言え、魔王様を相手に対等に言い合える者を私は知りませんから」

 

レイ「⋯ありがとうございます」

 

グレイフィア「いえ」

 

グレイフィアさんまで笑顔でそんな事を言ってくれた。

 

レイ「あれ?そう言えば⋯なんでグレイフィアさんが?」

 

グレイフィア「今日はレイ様が駒を貰うと言う事でしたので、サーゼクス様に言って、同行させて貰う事にして頂きました」

 

レイ「⋯?なんでグレイフィアさんが?」

 

俺は素直に疑問を口にすると。

 

グレイフィア「何故でしょうね?申し訳ありませんが、ここから先はレイ様自身に気付いて頂きたいので、私の口からは言えません」

 

レイ「?そうですか⋯」

 

グレイフィアさんは俺の耳元でそう言った、気付いてって何をだろう⋯。

そうして話していると。

 

セラ「それじゃあ、さっそくだけど⋯サーゼクスちゃん?」

 

サーゼクス「ああ、行くとしようか」

 

セラフォルー様の言葉にサーゼクスさんはそう言って立ち上がった。

 

ヴァーリ「行くって何処に?二人のどっちかが駒を持ってるんじゃ無いのか?」

 

黒歌「私に聞かれても知らないにゃ、私だって駒を貰う所何て初めて見るんだから」

 

ヴァーリが黒歌に小声でそう聞くと、黒歌も同じく小声でそう言った。

 

サーゼクス「そう言えば説明がまだだったね、駒はただ渡すだけじゃ駄目なんだ」

 

ヴァーリ「そうなのか?」

 

二人の会話はサーゼクスさんに聞こえてた様で、そんな二人にサーゼクスさんは歩きながら説明してくれた。

 

サーゼクス「ああ、何の制限も掛けずに渡してしまえば悪用する者が出かねないからね。

そうなれば、身勝手な者達が権力を振りかざしたり、お金を積んだりして、幾つもの駒を所有しかねないからね。

それに最悪⋯駒を巡って争いが起こるかも知れない⋯そうなれば本末転倒だからね。

だから渡す時は皆、例え貴族や魔王だろうと例外無く登録が必要なんだ。

そうする事で、登録した本人以外には決して使えない様になるんだ。

だから、例え相手を殺して駒を奪ったとしても、奪い取った者はその駒をどうすることも出来ない」

 

黒歌「成程ね⋯だからこんな便利な物なのに裏に出回ったりしないのね」

 

ヴァーリ「確かに、そうでもしておかなきゃ、いつも兄さんを不愉快にさせてる馬鹿共がとっくに占有してるだろうな」

 

レイ「そうだな」

 

黒歌「最近、私関連の資料を見る度に純血悪魔は馬鹿ばかりだと思ってたけど、魔王達はまともで本当に良かったにゃ。

これで魔王まで同類だったら、もう本当に救いようが無かったにゃ」

 

サーゼクス「ははは⋯流石はレイ君の眷属になる子達だね⋯レイ君同様にズバッと言うね、言葉に迷いが無い。

だが⋯残念な事にその通りだね⋯わざわざこんな手間を掛けてまで、ここまでしなければならなかったのが事実だ」

 

セラ「そうだね⋯」

 

レイ「ヴァーリ、黒歌」

 

ヴァーリ「うっ⋯ごめん」

 

黒歌「つい⋯」

 

二人の名前を呼ぶと、二人は気まずそうに謝るが⋯。

 

レイ「例え事実だとしても、もう少しオブラートに包め」

 

ヴァーリ「⋯そうだな、例え事実だったとしても、もっと言葉を選ばなきゃな」

 

黒歌「そうね、例え事実でも、ね」

 

俺も全く同じ気持ちだった為、怒ることなどしない。

 

サーゼクス「⋯⋯⋯三人共⋯その辺にしてもらえないかな?流石に傷付きそうだ⋯」

 

セラ「うん、私にも地味に来るから⋯そうしてくれると助かるかな⋯」

 

レイ「すいません⋯最近は連中のやってた事が毎日の様に出て来たせいでストレスが溜まってまして、つい⋯」

 

三人の口撃に流石のサーゼクスさんも止めに入って来た。

何時もなら俺が止めるのだけれど、今回ばかりは俺も一緒になって言ってしまった。

 

ヴァーリ「全くだ!そのせいで日に日に兄さんの機嫌が悪くなっていったんだ、これ位は言わないと気が済まない」

 

黒歌「その通りにゃ!私の事で怒ってくれてるのは嬉しいけど⋯物凄く怖かったんだからにゃ?」

 

サーゼクス「そうだったのか⋯それは⋯災難だったね⋯」

 

二人のそんな言葉にサーゼクスさんは苦笑いしながらそう言った。

 

レイ「お前ら?それは俺に対しての苦情って事で良いんだな?」

 

ヴァーリ「だ、断じて違う!兄さんは何も悪く無い!」(兄さんに苦情なんてあるものか!そんな事を言えば1日の扱き量が増える)

 

黒歌「そ、そうにゃ!悪いのは全部あの馬鹿共だにゃ!」(レイに苦情なんて言ったら⋯ご飯抜きにされるにゃ)

 

俺が軽く睨みながらそう聞くと、二人は焦った様に直ぐに否定した。

 

レイ「そうか」

 

そんな二人に俺は苦笑しながらそう言った。

 

ヴァーリ&黒歌(はぁ~良かった⋯)

 

自分達の失言に気付いた二人は慌てて否定した。

だが、それにレイが笑っているのを見て、心から安心していたのは二人の秘密だ。

 

セラ「そんなに機嫌悪かったの?私やソーナちゃん前ではいつもと変わらず優しかったよ?」

 

ヴァーリ「そりゃあな⋯」

 

黒歌「二人に対してだけはどんな時でも優しいレイにゃ⋯むしろ機嫌が悪くなってる所を見たこと無いにゃよ」

 

セラフォルー様の言葉に、二人は俺の方を振り向いて少し羨ましそうに言った。

 

セラ「そうだねぇ⋯そう言えばレイ君が私やソーナちゃんに対して、怒ったり機嫌悪くなったりした事は一度も無いよね?」

 

それを聞いたセラフォルー様も俺の方を向いて首を傾げそう言った。

 

レイ「まあ⋯セラフォルー様やソーナに対して怒りの感情を持った事なんて一度もありませんからね。

それに、二人は俺にとって何よりも大切な存在ですし持つ事も、必要もないですよ」

 

当然だ、セラフォルー様やソーナ相手にそんな感情になることなんてあり得ないだろう。

俺としても何があれば二人に対してそんな感情になるのか知りたい位だ。

 

セラ「レイ君⋯」

 

レイ「はい?」

 

足を止めたセラフォルー様に呼ばれ、同じく足を止めると。

 

セラ「やっぱり大好き~!!」

 

セラフォルー様はいつも以上に思いっきり抱き付いてきた。

 

レイ「どうしたんですか⋯?いきなり」

 

セラ「だって~今のレイ君の言葉⋯すっごく嬉かったんだもん☆」

 

レイ「そう⋯ですか⋯」

 

俺がそう聞くと、セラフォルー様は満面の笑みで俺を抱き締めた。

 

サーゼクス「さて⋯いつの間にか着いたようだね」

 

セラ「あっ!本当だ☆」

 

そんなこんなでいつの間にか目的の場所に着いた様だ。

 

サーゼクス「さて、ヴァーリ君、黒歌君、済まないが二人はここで待っていてくれるかな?」

 

ヴァーリ「まあ、そうだろうな」

 

黒歌「分かったにゃ、待ってるからさっさと済ませて来るにゃ」

 

サーゼクスさんが二人にそう言うと、二人は仕方無いとでも言う様な感じで階段に座り、そう言った。

 

アジュカ「待っていたぞ」

 

中に入ると、もう一人の魔王であるアジュカさんが居た。

 

サーゼクス「すまない、アジュカ」

 

セラ「ごめんね?アジュカちゃん」

 

アジュカ「構わない、早速だが始めよう、良いか?レイ」

 

レイ「はい、お願いします」

 

アジュカさんの言葉にセラフォルー様とサーゼクスさんは軽い感じでそう言った。

現魔王であるこの三人と、ここには居ないもう一人の四人は、かなり長い付き合いがあるらしく、公の場で無い限りはこんな感じで魔王というよりも友達と言った様な感じで接している。

 

 

 

 

 

アジュカ「これで必要な手続きは⋯次で最後だ」

 

サーゼクス「後は登録だけだね、だが⋯それには家名⋯つまり、名字が必要になるね、どうする?レイ君」

 

レイ「そうですね⋯」

 

駒の登録に必要な手順も9割方終わり、後は登録名前の入力だけとなった所で、二人にそう聞かれ、俺はどうしようかと考えていると。

 

セラ「シトリーじゃ駄目かな?」

 

セラフォルー様がそう言ってくれたが⋯。

 

アジュカ「それは止めておいた方が良い、俺達は何の異論も無いし、二人が良いなら構わないが。

まず間違いなく、煩く言ってくる物が出て来るだろうからな」

 

サーゼクス「そうだね、それはレイ君がシトリーの一族に名を連ねると言う事だ。

もちろんセラフォルーやシトリー家にとって、レイ君は息子や姉弟の様な存在なのは分かってる。

だが、周りの⋯特にレイ君を嫌ってる者達はここぞとばかりに何か言ってくるだろうね」

 

二人は俺の周囲の環境を良く知っている為、そう言った。

正直俺もそう思う、現時点で父上と母上は俺を息子の様に扱ってる事に対し、周りの貴族に嫌味を言われているのを俺は知っている。

だからこそ、俺を息子として扱ってくれてる二人に対して、これ以上の面倒は掛けたくない。

 

セラ「そっか⋯」

 

セラフォルー様は残念そうに呟いた。

 

レイ「あっ⋯そうだ、サーゼクスさん」

 

サーゼクス「なんだい?」

 

レイ「文字を貰うだけなら、問題無いですよね?」

 

サーゼクス「それはもしかして、シトリー家が人間界で使ってる、支取の事かな」

 

レイ「はい、俺には⋯感謝すべき場所が2つあります。

一つ目は当然シトリー家です、セラフォルー様に助けられて女王となって。

こんな⋯何も無かった俺を、セラフォルー様とソーナ、そして父上と母上は俺を家族と言って、愛してくれました。

そして、二つ目は⋯俺を拾って生かしてくれた、【黒王(くろおう)孤児院】です」

 

正直に言って、孤児院に居た頃は辛かったし苦しかった、何で自分が嫌われてるのかも分からず、隠れて泣いていた事もあった。

それでも⋯孤児院が無ければ、俺はとっくに死に、セラフォルー様やソーナには会えなかったのだから。

感謝こそあれど、恨みや怒りなど、そんなものは決して無い。

 

三人「⋯⋯⋯」

 

黒王(くろおう)孤児院】その名に、セラフォルー様もサーゼクスさんもアジュカさんも悔しそうに俯いた。

 

レイ「正直⋯孤児院に居た時は、周りからは気味悪がられて、いつも一人でした。

けど⋯それでも、俺の命を救ってくれた⋯決して見捨てたりしないでくれた。

だから⋯名乗るのなら、俺にとって大切な2つの名を⋯名乗りたい」

 

そんな三人に俺は自分の思いを伝えた。

 

サーゼクス「そうか」

 

サーゼクスは俺の言葉に嬉しそうに言った。

 

アジュカ「良いんじゃ無いか?シトリーの文字が入ってるだけと言うだけで何かを言うなど、相当の馬鹿者だけだろう」

 

サーゼクス「でも、そういう者達が出てくるのも事実だ」

 

アジュカ「ならば、俺達がその名を与えれば良い、これまでの活躍に対する褒美として我々がレイをシトリー家の守護者(ガーディアン)として、そして孤児院の生き残りとして名を与えた、と」

 

サーゼクス「そうだな⋯確かにそれならば誰も文句は言えない。

事実、レイ君にはそれだけの実力と功績がある。

褒美と言う事にすれば、確かに文句は言えないね」

 

サーゼクスさんとアジュカさんは俺の言葉を真剣に考えてくれた。

最終的には魔王からの褒美などと言う、周りが何か言いたくても言えない状況を作る事まで考えてくれた。

この人達は本当に⋯。

 

セラ「じゃあ!」

 

サーゼクス「ああ、問題ないだろう、これで行こう」

 

セラフォルー様が顔を上げ言うと、サーゼクスさんは笑顔でそう言った。

 

アジュカ「そうだな、それで?その二つの名を、お前はどう使う」

 

レイ「もう決めてます、今日から俺は―――」

 

俺の方を向いて言うアジュカさんに、俺はそう言って名を告げた。

 

 

 

 

 

セラ「これでレイ君も王様だね☆」

 

グレイフィア「おめでとうございます」

 

サーゼクス「ああ、ようやく渡せて良かったよ、レイ君の実力と今までの実績からすれば、本来ならもっと早く渡しても良かった⋯と言うより、渡すべきだったんだけどね」

 

セラ「本当そうだよね、おじいちゃん達が煩いから」

 

アジュカ「全くだ、戦争が終わってからもうだいぶ経つと言うのに⋯いつまでも純血至上主義などと言う、時代遅れな言い分を通して来るからな」

 

ようやく登録を終えて、アジュカさんから駒を受け取り、俺達は出口にまでの道を歩いていた。

 

レイ「仕方無いですよ、人間だって同じです⋯立場は違っても、自分よりも下の存在が、それも見下してた相手が圧倒的優位に立っていた自分達と同じ土俵に立つ事を好まない、人間にだってそういう奴は数多くいる。

そういう意味では、人間も悪魔も⋯違いはあれど、どちらも根っこの部分は同じなんでしょう」

 

俺はセラフォルー様の外交について行き、人間や他の種族を数多く見て来た。

どの種族にも、そういう奴は例外無くいた、何かしら違いはあれど、結局はどの種族も大した変わりなど無いのだと。

色々な人達を見るほどに俺はそう思った。

 

サーゼクス「そうだね、だからこそ⋯我々は人間と言う種を転生させる者の筆頭に出した」

 

セラ「悪魔の中にはそんな人間よりも身勝手で傲慢な人が多く居るのも事実だけどね⋯」

 

サーゼクスさんの言葉にセラフォルー様はため息混じりに言った

 

サーゼクス「そうだね⋯ここに来る前に、レイ君から報告された、黒歌君の元主とそれに連なる者達が良い例だ」

 

アジュカ「他にも裏ではオークションや人身売買をしているとの噂もあるし。

一部の者はまるでコレクションの様に使っている。」

 

サーゼクス「それらをどうにかしようにも、なかなか尻尾が捕まらないからね⋯」

 

セラ「そうだね⋯」

 

俺のそんな言葉から、なぜかその様な話しになった。

そんな話しをしてると⋯。

 

アジュカ「そもそも、悪魔の駒とは悪魔の総数を増やすと共に個人の戦力を整える為の物であってだな⋯」

 

やっぱり⋯アジュカさんが愚痴り始めた⋯。

 

サーゼクス「分かってるよアジュカ、その愚痴はまた今度聞くから、今は押さえて」

 

アジュカさんがいつもの愚痴モードに入る前にサーゼクスさんが止めてくれた。

良かった、そうなったアジュカさんは正直面倒臭い。

 

セラ「そうそう、サーゼクスちゃんが聞いてくれるから☆」

 

サーゼクス「えっ⋯?僕だけでかい?セラフォルーは?」

 

セラ「えっ?嫌だよ☆長くなるし☆」

 

サーゼクス「グ、グレイフィア⋯」

 

グレイフィア「私はお嬢様の教育がありますので」

 

サーゼクス「ああ⋯そう」

 

セラフォルー様の何を当然な事を言ってるの?とでも言う様な言葉に、肩を落としてそう言った。

だが、セラフォルー様もサーゼクスさんも、そんなアジュカさんの怒りを理解している、当然俺だってそうだ。

悪魔の駒を使う理由は幾つかある、例え戦力にならない者を転生させようと、アジュカさんも大半の使い方には何も言わないし思わないのだが。

先の話の様な使い方に対してだけは、怒りを示す。

アジュカさんのこの話しも、もう何度も聞いた覚えがある。

 

ヴァーリ「兄さん!」

 

黒歌「レイ!」

 

いつの間にか外に出ていた、俺はその事に二人に声を掛けられて気付いた。

 

レイ「待たせたな、二人共」

 

黒歌「全くだにゃ!」

 

ヴァーリ「退屈過ぎて黒歌と一戦やろうかと話してた所だよ」

 

二人はそうは言いながらも笑っていた。

 

レイ「止めてくれ、お前らがやり合ったら軽い組手でもかなりの被害がでる」

 

ヴァーリ「俺達をそんな風に鍛えたのは兄さんだけどな」

 

黒歌「そうにゃ、前に居た場所じゃあ、トレーニングなんて太らない為の運動位しかしなかったのに、レイはスパルタだにゃ」

 

俺の言葉に二人してそんな事を言って来た。

 

レイ「ほう?二人共⋯鍛練に対して随分と軽口を叩ける様になったんだな?」

 

ヴァーリ&黒歌「えっ⋯」

 

俺が嗤いながらそう言うと、一瞬でさっきまでの威勢が消えた。

 

レイ「そうかそうか、なら⋯明日からの鍛練量は2倍⋯は流石に無理だろうから、1.5倍に増やしてやろう」

 

ヴァーリ「嘘⋯だろ⋯」

 

黒歌「地獄にゃ⋯」

 

そう宣言すると共に、二人は絶望した様な表情を浮かべた。

 

――――――――――――――――――――――

 

セラside

 

レイ「ヴァーリ⋯」

 

ヴァーリ「ああ⋯」

 

レイ「これが、お前の駒だ」

 

レイ君がそう言って戦車の駒を取り出したのだが。

 

ヴァーリ「兄さん⋯これ⋯」

 

レイ「⋯なんで光ってるんだ?」

 

ヴァーリ君に言われ、レイ君がそう呟いた。

 

セラ「えっ!!?」

 

レイ「セラフォルー様?」

 

その言葉に私はビックリして思わず声を上げたると、レイ君は不思議そうにこっちを向いた。

 

セラ「レイ君の駒⋯光ってるの⋯?」

 

レイ「はい、それも()()()光ってますね」

 

セラ「嘘⋯サーゼクスちゃん!アジュカちゃん!」

 

私がそう聞くと、レイ君は良く分からない様な感じで言った。

「幾つか」その言葉に更に驚いて、私は二人の方を向いた。

 

サーゼクス「これは⋯間違いないね⋯」

 

アジュカ「ああ⋯《変異の駒(ミューテーション・ピース)》だ、それも⋯複数の駒が変異している」

 

二人は確認すると、驚きながらそう言った。

 

セラ「《変異の駒(ミューテーション・ピース)》に⋯それって、レイ君がそれだけ強くて凄いって事だよね?」

 

私がアジュカちゃんにそう聞くと。

 

アジュカ「そうだな、そもそも駒の価値は固定では無い、同じ駒でも持ち主の力量によって、その価値は変わる。

弱い者が持った場合、その価値は1となるとするだろう?

だが、強い者が持てば、その価値は50にも100にもなる。

つまり、レイの駒の価値は⋯少なく見積もっても、俺達よりも高いだろうな⋯下手したら、兵士が我々の戦車⋯最悪女王に匹敵するだろう」

 

セラ「そんなに!?」

 

サーゼクス「それはまた⋯」

 

アジュカちゃんの言葉に私はもちろん、サーゼクスちゃんも珍しく驚いていた。

 

アジュカ「悪魔の駒は俺が作ったものだが、まだ未知の部分が多い。

とりあえず、今回分かった事は、さっきも言った様に、持ち主の力量に応じて駒の価値は変わる。

だが⋯駒にも価値のいわゆる限界値があると言う事。

そして、その限界を越えた場合、駒は自ら成長し《変異の駒(ミューテーション・ピース)》へと変わると言う事だ。

それなら、レイの駒が幾つも変異した事にも説明が付く」

 

サーゼクス「アジュカ?」

 

セラ「アジュカちゃん?」

 

アジュカちゃんはそう呟いている、そんなアジュカちゃんに私達は完全に置いてかれている。

というより⋯アジュカちゃんに私達の声が届いて無いし、完全に技術者の顔になってるよ⋯。

 

アジュカ「ついでだレイ、少し良いか?お前の中の⋯セラフォルーの女王の駒を調べたい」

 

レイ「良いですよ」

 

すると、アジュカちゃんはレイ君にそう言って、許可を取ると、レイ君の体を魔方陣が包み込み⋯。

 

アジュカ「⋯これは、やはりな⋯」

 

セラ「どうしたの?」

 

調べ始めて少しすると、アジュカちゃんがそう呟いた。

私はなにがあったのか聞くと。

 

アジュカ「セラフォルー、お前の女王の駒もまた《変異の駒(ミューテーション・ピース)》になっている」

 

セラ「えっ!?」

 

アジュカちゃんにそう言われ、私はまた驚いた。

 

アジュカ「セラフォルー、はっきり言おう⋯もしも今のレイを転生させるとしたら⋯例え女王の駒だろうとお前でも眷属にする事は⋯無理だろう」

 

セラ「嘘!?本当に?!」

 

アジュカ「ああ、だがそれはお前だけじゃない、俺やサーゼクスでも無理かもしれない。

それ程までに、レイは強くなっている、しかも⋯これから先、もっと強くなるだろう。

レイがお前の眷属になった経緯は知っているが、敢えて言わせてもらう、お前は凄く運が良い」

 

セラ「そうなんだ⋯」

 

それを聞いた私は、あまりの衝撃に絶句した。

 

アジュカ「そしてそれは⋯レイ、お前もだ」

 

レイ「俺も?」

 

アジュカちゃんはレイ君の方を向き、そう言った。

 

アジュカ「ああ、お前に秘められた潜在能力、そして、俺は全てを知りはしないが、お前のその神器の力。

確実に普通の人生は送れなかっただろう⋯」

 

レイ「そうですか」

 

普通ならそんなのは理不尽だと怒っても良い事なのに、レイ君は全く興味無さそうだった。

 

アジュカ「随分と興味無さそうな反応だな⋯」

 

レイ「まあ⋯もしもの話しに興味なんて無いですからね。

今の俺がセラフォルー様に助けられて、セラフォルー様の為に生きてる、それだけで充分じゃ無いですか?

例え⋯もしもの世界で普通に暮らして幸せになれるって言われても、俺は今の、この人生を選びます」

 

セラ「レイ君⋯」(ああ⋯折角今日は嬉しい一日なのに⋯そんな事言われたら⋯泣いちゃうよ)

 

レイ君の言葉に、私は泣きそうになるもなんとか堪えた。

 

サーゼクス「セラフォルー」

 

セラ「サーゼクスちゃん?」

 

泣くのを我慢していると、サーゼクスちゃんに声を掛けられた。

 

サーゼクス「君は誇るべきだ、レイ君がここまでになったのは、()()()()()なのだから」

 

サーゼクスちゃんは私の肩に手を置いてそう言った。

 

セラ「うん⋯そうだよね」

 

私はあの日、レイ君が言った「俺はこれから魔王セラフォルー・レヴィアタン様の女王としてセラフォルー様の為に命を懸けて働き、忠誠を尽くします。

そして、どんなことがあってもセラフォルー様とソーナを必ず守っていきます⋯」という言葉を改めて思い出した。

全部私の⋯そしてソーナちゃんの為に⋯ありがとう、レイ君。

 

アジュカ「そうだな、これまでのレイの成長が女王の駒の価値を上回ったと言う事だからな。

つまり、駒がレイに合わせて変異したと言う事だからな。」

 

セラ「そっかぁ⋯そうだよね!」

 

二人の言葉に、私は今まで無い程に嬉しかった。

だって⋯それはつまり、レイ君の今までの努力が報われたって事だもんね☆

 

セラsideout

 

――――――――――――――――――――――

 

駒やらなんやらについて色々と話した後、俺はヴァーリには戦車、黒歌には僧侶の駒をそれぞれ渡した。

その後、セラフォルー様達は仕事があるからと戻って行った。

俺達は転移で家に帰った。

 

その夜

 

レイ「そうだ、ヴァーリ」

 

ヴァーリ「なに?兄さん」

 

俺はヴァーリと二人になった時、駒と同じ位大事な事を言おうと話しかけた。

 

レイ「あの場所で言っても良かったんだが、どうしても二人の時に伝えたくてな。

駒を貰った時、俺の家名と言うか名字か、まあとにかく姓が決まった」

 

ヴァーリ「!それって!!」

 

俺がそう言うと、ヴァーリは勢い良く立ち上がった。

 

レイ「⋯ああ、俺とお前の⋯名前だな」

 

ヴァーリ「そっか⋯これでやっと⋯俺は本当の意味で兄さんの弟になれるんだな」

 

そんなヴァーリに、俺はさっき淹れたばかりの紅茶を一口飲み、そう言うと。

ヴァーリは笑顔でそう言った。

 

レイ「ああ、家名は【支黒(シクロ)】だ、今日から俺は⋯レイ・シクロだ、人間界では支黒レイと名乗るけどな」

 

ヴァーリ「支黒(シクロ)⋯」

 

俺はヴァーリに名を告げた。

ヴァーリは何度もその名を復唱していた。

 

レイ「ヴァーリ、貰ってくれるか?」

 

ヴァーリ「なに言ってんだよ兄さん、そんなの当然だろ?あの日から俺は兄さんの弟で家族なんだから。

そしてそれは俺だけじゃない、皆だってそう思ってる筈だ!

だから⋯今日から俺はヴァーリ・シクロだ!改めて宜しくな、兄さん」

 

レイ「ああ、そうだな、ありがとう⋯ヴァーリ」

 

これで俺達は本当の家族になれた。

もちろん、ヴァーリだけじゃない、二人の他にも眷属にした者達も、そして執事やメイドなどの家に居る者達、そしてあいつらも⋯皆、ヴァーリが言った様に俺は家族だと思っている。

【家族】それは俺にとって⋯生まれてから、持たず、そして知らずにいた5年間、そしてセラフォルー様とソーナ、父上と母上からそれを貰い、知った7年間、これからは俺自身も作って、守って行く。

でも⋯それでも、その中でもヴァーリだけは特別だった。

俺達に血の繋がりなんて無い、でも⋯俺達はそんな物よりも余程強い何かで繋がっている。

同じ境遇だから?兄弟になったから?絆があるから?その何かの部分を口にすればきりがないだろう。

だから、今のままで良い、わざわざ口に出して表現する必要なんて無い。

だって、確かに分かってる事が一つだけあるんだから。

 

俺達は家族だって。




原作外の眷属も一人だけ出しました。
これから書いていく原作外の眷属の過去やらは捏造ですので悪しからず。


そして、もう一つアンケートお願いします。

五等分の花嫁のアニメ見てから、五つ子にやばいくらいはまり。
ずっと、どうしようか迷ってたんですが、二次創作だし、弟が居るなら妹が居ても良いよね?的なノリで五つ子を妹にする事にしました。
登場は原作開始してからの何処かで、経緯も含めて書くつもりです。

そのアンケートも良かったら投票お願いします。


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【13歳・①】二人だけでの魔力修行

本文に入る前に⋯
活動報告にも書きましたが。
ソシャゲのグレイフィアさんのエロさと美しさに作者が陥落したので、グレイフィアさんもヒロインにさせていただきました。

サーゼクスさんの嫁はグレイフィアさんから変えて、グレイフィアさんの双子の姉って事で。
名前はリーシア・ルキフグスです。
名前としては、グレイフィアという名前は。
グレイシアのグレイとリーフィアのフィアでグレイフィア、との事なので、その二人の残りを取ってリーシアにしました。
今までの話しの一部をグレイフィア→リーシアに変え。
ついでにグレイフィアさんの立ち位置やらを、ほんの少しですが内容を弄ったりもしたので、時間のある方は読んでみて下さい。

一応グレイフィアさんの立場は既に決めてあります。

1/22 本文編集


セラ「今日は修行をするよ☆レイ君」

 

今日は休日だったのだが、セラフォルー様に呼ばれてシトリー家に来て、中に入るとそこにはセラフォルー様が居た。

わざわざ出迎えてくれたのかと思い、セラフォルー様の方に向かうと。

セラフォルー様はいきなりそんな事を言い出した。

 

レイ「⋯どうしたんですか?いきなり」

 

セラ「えっとね?レイ君は近距離では持ってる武器と雷の魔力で、遠距離は神器、それと水と氷の魔力を使って戦ってるでしょ?」

 

レイ「基本的にはそうですね⋯」

 

そう、俺の戦闘スタイルは簡単に言ってそんな所だ。

俺には通常の魔力とは別に、雷、水、そして氷の3つの魔力がある。

その内の一つ、雷の魔力の方は通常の魔力と共にある時出会った俺の師匠の一人である、魔の師匠にとことん仕込まれた。

 

セラ「でしょ?勿論それだけでもレイ君は十分強いし、負ける事は無いと思うから良いんだけど⋯」

 

レイ「だけど?」

 

セラ「一応ね?万が一の時に備えて必殺技を教えようかなって思ったの☆」

 

レイ「必殺技ですか?」

 

セラ「うん、私と同じ技なんだけど⋯嫌かな⋯?」

 

レイ「そんな事無いです!!」

 

俺は強くそう言った。

 

セラ「レイ君?」

 

レイ「セラフォルー様と同じ技なんて⋯むしろ教えて欲しいです!」

 

セラ「本当に?」

 

俺がそう言うと、セラフォルー様は嬉しそうに詰め寄りそう言った。

 

レイ「もちろんです!って事はセラフォルー様が自ら教えてくれるんですか?」

 

セラ「もっちろん☆お姉ちゃんが完璧に教えちゃう☆」

 

レイ「よろしくお願いします、セラフォルー様」

 

セラ「うん☆でも、まずは場所を変えないとね、ここじゃ最悪死人が出ちゃうから」

 

レイ「はい」

 

そう言うセラフォルー様に返事を返し、俺とセラフォルー様は周囲に誰もいない所に転移した。

 

セラ「この辺なら大丈夫かな?それじゃあ始めよっか☆レイ君」

 

レイ「はい、でも始めるのは良いんですが⋯何を教えてくれるんですか?」

 

セラ「ふっふっふっ⋯それはね?結構前だけど、グレイフィアちゃんを倒した技だよ☆」

 

セラフォルー様は胸を張り自慢そうに言った。

 

レイ「そういえば、グレイフィアさんと最強の女性悪魔の座を争ったんでしたっけ?」

 

セラ「そうだよ☆そしてその時の技が《零と雫の霧雪(セルシウス・クロス・トリガー)》だよ」

 

セラフォルー様は更に胸を張り、自信満々にそう言った。

 

レイ「《零と雫の霧雪(セルシウス・クロス・トリガー)》⋯ですか?」

 

セラ「うん☆」

 

レイ「どういう技なんですか?」

 

セラ「流石のレイ君も聞いたら驚くよ☆この技はね?グレイフィアちゃんとの戦いの時は、用意されたフィールドを全て凍らせたんだから☆」

 

レイ「フィールドを全てですか?」

 

セラ「うん⋯ってあれ?レイ君あんまり驚いてない?」

 

自信満々にそう言うセラフォルー様だったが、俺の反応が思ってたのと違ったのか、今にも「あれぇ~?」とでも言いそうな表情でそう言った。

 

レイ「いえ⋯驚いてますよ?俺も氷の技では同じ様なのを使えますけど、流石にあの広大なフィールドを全てとなると⋯俺は半分が限界でしたから」

 

セラ「そうなん⋯ちょっと待って?同じ様な技を使える?」

 

俺がそう言うと、セラフォルー様はびっくりした様な声でそう言った。

 

レイ「はい、セラフォルー様から水と氷の魔力の使い方を教えて貰ってから幾つか作ったんです。

と言っても⋯通常の魔力や雷の魔力程、まだ制御しきれて無いですけど」

 

俺は魔の師匠から雷の魔力の使い方を教わった様に、水と氷の魔力はセラフォルー様から教わっている、だがセラフォルー様も魔王の仕事で忙しい為、毎日教わる事は出来なかった。

魔力の修行はかなり大変だった、誰もが使える無属性の普通の魔力ならば、やり方さえ教われば一人でどうにか出来る。

だが、属性がある場合は少し違う、一言で言えば属性特有の癖やコツがある。

だから、属性の魔力は時間を掛けて指導者から教わらなくてはならない。

だが、俺がまだ完全に制御しきれてないのには他に理由がある。

それは俺自身が水と氷の魔力の扱いをセラフォルー様以外から教わるのが嫌だった為だ。

当然の事だが、シトリー家は水と氷の魔力の家系である為、セラフォルー様以外にも水と氷の魔力を使える人は居る。

実際、セラフォルー様からも「私は毎日見てあげる事が出来ないから、他の人からも教わると良いよ☆」と言われた。

でも、俺は誰にも頼まなかった。

何故かと言われれば、それは俺の中にある「セラフォルー様からしか教わりたく無い」と言う、端から見れば下らないと言われるであろう気持ちがあるからだ。

でも、それは仕方がないと思う。

その頃の俺は修行が主だった為、セラフォルー様に時間がある時は修行を見て貰えた。

だが、俺にも仕事が振られる様になってからはなかなか時間が合わなくなった。

だからこそ、俺は余計にセラフォルー様から教わりたいと言う気持ちが強くなった。

だから俺は水と氷の魔力の扱いはセラフォルー様以外からは絶対に教わらないと勝手に決めた。

例えその結果、周囲からなんと言われようとも、俺にとってはそれほどまでにセラフォルー様との修行の時間はかけがえのない物だった。

それから、俺がするのはセラフォルー様から教わった事の反復練習と水と氷の魔力を使った技の開発だった。

 

セラ「うん⋯それは私がなかなか時間が取れないからだけど⋯

同じ様な技って事は周囲を凍らせる技だよね?」

 

レイ「はい、見せましょうか?」

 

セラ「うん☆見せて見せて☆」

 

セラフォルー様の疑問に俺がそう言うと、セラフォルー様は子供の様に言った。

 

レイ「じゃあ⋯《氷河時代(アイス・エイジ)》」

 

俺は魔力を高め、地面に手を付き魔力を解放した。

すると、大地がたちまち銀世界に変わっていき、少なくとも飛んでない状態で見える範囲は全て凍っている。

 

セラ「!?!?」

 

レイ「⋯ふぅ⋯こんな感じです」

 

終わった後に一つ息を吐くと、当然周囲の気温も下がっている為、口からは白い息が出た。

 

セラ「⋯⋯⋯」

 

レイ「セ、セラフォルー様?どうしました?何か気に触りましたか⋯?」

 

俺は技を見て黙ってしまったセラフォルー様に何か駄目だったのか⋯と、思っていると。

 

セラ「す⋯」

 

レイ「す?」

 

セラ「すっご~~~い☆凄い凄い凄い!凄いよ!!レイ君!!

私が《零と雫の霧雪(セルシウス・クロス・トリガー)》を使える様になったのは成人した後だったのに、レイ君はもうこれだけの技が使えるんだね☆

しかも⋯魔力の扱いが完璧じゃ無い状態でこれって事は魔力を完全に扱える様になれば、私の技以上になるよ☆」

 

俺の手を取りそう言うセラフォルー様は目を輝かせていた。

 

レイ「そうなんですか?」

 

セラ「うん☆でも、これなら私の技を教える必要は無いかな」

 

レイ「えっ⋯そんな⋯せっかくセラフォルー様に修行付けて貰えると思ったのに⋯」

 

このままじゃ折角のセラフォルー様との修行が無しに⋯。

そんな思いもあり、俺はその言葉をまるで絶望したかの様な声で言っていた。

 

セラ「大丈夫だよ?レイ君☆」

 

レイ「セラフォルー様?」

 

そんな俺に、セラフォルー様は優しい声でそう言った。

 

セラ「今回はレイ君に《零と雫の霧雪(セルシウス・クロス・トリガー)》教える為に仕事はぜ~んぶ終わらせて来て、一週間の休みを貰って来たの。

本当ならその為の時間だったけど⋯プランを変更して、水と氷の魔力の扱いを完璧にしちゃおう☆

あっもちろんレイ君の休みも一緒に取っておいたから安心して大丈夫だよ☆」

 

レイ「⋯って事は⋯」

 

セラ「うん☆これから一週間、二人っきりで教えてあげるよ☆」

 

レイ「本当に!!ありがとう、セラフォルー様」

 

セラ「もっちろん☆でも、厳しくするから覚悟してね☆」

 

レイ「はい!セラフォルー様」

 

それから、セラフォルー様の言葉通り、俺は一週間セラフォルー様と二人っきりで修行した。

俺はその間もてっきり夜には家に帰り、朝になってからまたここに来るのかと思っていたら、セラフォルー様が「キャンプって楽しいよねぇ~」と言った為、俺達は一週間森の中で野宿する事になった。

普段の俺なら帰れる手段があるのに、キャンプに野宿など絶対にやらないが、セラフォルー様と二人っきりだと思うと、俄然やる気が出て来た。

 

 

 

一週間後

 

あれから一週間、文字通り俺はセラフォルー様と一緒に二人っきりで過ごした。

当然の事だが、俺がセラフォルー様の女王になった時には、セラフォルー様はもう魔王だった。

だから、セラフォルー様と一緒に居る時間は、他の王と眷属よりも圧倒的に少なかった、それこそ今回の様に途中で抜ける事無く、ずっと一緒に居ると言う事は初めてだった。

だからこそ、俺はこの一週間は今までに無い程に集中して修行に励んだ、なにせ折角セラフォルー様が教えてくれるんだから、それも二人っきりで。

これで頑張らない様なら、俺は何にも頑張る気など起きないだろう。

 

そうして過ぎた一週間はあっという間だった。

俺としてはもっとこの時間を続けたかったが、当然そうも行かない。

俺は今回セラフォルー様がだいぶ無理をして、この一週間を取ってくれたのを解ってる。

そして、当然と言うべきだろうがその分の負担は全て他の魔王の人達(主にサーゼクスさん)にかかってる事も知っている。

まあ、だとしても⋯今回のこの一週間は徹底して見て見ぬふりをしてきたが⋯。

だって、負担をかけてるのは分かってるが、でも⋯良く考えれば別にセラフォルー様にかかってる訳じゃない、だったら別に俺が何かをする必要は無い。

俺は何かとサーゼクスさんを筆頭に他の魔王の人達の頼み事を聞いてはいるが、あくまでも俺の主はセラフォルー様であって、他の魔王でも、ましてや悪魔と言う種でも無い。

セラフォルー様の負担になるのなら、俺は徹底的にその負担を減らす為に動く、もしも意図して面倒を増やしてセラフォルー様の足を引っ張ろうとする者が居るのならば、俺は真っ先にそいつを殺しに行く―――例え相手が誰であろうとも。

だから、セラフォルー様に何かが無いのならば、俺が気にする事は無い。

 

⋯改めて考えて見ると、俺は何で他の魔王の人達からの頼みを聞いてるんだろうか?

基本的に俺が無償で働くのはセラフォルー様とソーナ、そしてシトリーだけなんだが⋯

まあ⋯サーゼクスさんは恩人の一人でもあるからってのもあるんだけど、それを差し引いても恩はもう返した筈だ。

それに、最近はグレイフィアさんからも「頼みを引き受けてくれるのはありがたいですが⋯最近は少しサーゼクス様やリアス様を甘やかしすぎですよ」って笑顔で言われたし、そろそろ個人的な頼み事の時にはきっちり報酬を要求するべきかな。

俺だってグレイフィアさんに怒られたくないし⋯あの人怒らせるとすげぇ恐いんだよなぁ⋯一度リアスが我が儘言って怒られてる所を見た時は本当に恐かった。

どれくらいかって?涙目で震えながら助けを求めるリアスを見捨てる位には恐かった。

あの後、暫くの間リアスは口を聞いてくれなかったっけな⋯。

まあとにかく、グレイフィアさんはそれ程に恐い、それを見るまで俺の中での怒らせると恐い人No.1は母上だったが、一瞬でひっくり返った。

母上はあれでも優しい方だったのだと心の底から理解した瞬間だった。

 

途中から少し話しがずれてしまったが、とにかくそんな訳で一週間が経ち、修行が終わり最後にセラフォルー様から、初日に見せた技をあの時と同様の力で使って見て欲しいと言われた。

 

レイ「あの時と同じ力で良いんですよね?」

 

セラ「うん☆それが一番比較として解りやすいからね」

 

レイ「分かりました、じゃあ行きますね?

ふぅ⋯《氷河時代(アイス・エイジ)》」

 

俺は初日の時と同じ量に魔力を高め、地面に手を付き魔力を解放した。

すると、大地は初日に見せた時以上に広く、そして早く、辺りが凍り付いた。

 

セラ「わあ⋯やっぱり思った通りだったね☆あの時のも十分に凄かったけど、今はもっともーーーっと凄くなったね☆

これはもう充分に必殺技って呼べるよ☆」

 

そして、セラフォルー様の目も、あの日以上に輝いていた。

 

レイ「⋯⋯⋯」

 

セラ「レイ君?どうしたの?」

 

レイ「いや⋯その⋯何て言うか⋯自分で言うのも何ですけど⋯ここまで変わる物何ですね⋯」

 

俺は自分でも、技の威力の上がりっぷりに驚いていた。

 

セラ「そうだよ☆魔力はその人が持つ魔力量にもよるけど、基本は質を高めさえすれば、魔力が少なくても充分格上相手に戦えるの☆

まあ、レイ君の魔力量は下手したら私以上にあるからね☆だから同じ技でもさらに強力になったのよ☆」

 

レイ「なるほど⋯量よりも質の方が大事何ですね⋯あの人はそんな事教えてくれなかった⋯

 

そう、あの人はそんな事は一言も言わなかった。

唯一言われた事は「お前は魔力量が多い、それだけで十分だ」なんて事以外は魔力の扱い方と技しか教えてくれなかった。

まあ⋯それでも十分過ぎる位だったんだけどね⋯。

 

セラ「ん?どうしたの?」

 

レイ「何でも無いですよ、やっぱりセラフォルー様に教えて貰えるのが一番だなぁて思っただけですよ」

 

セラ「⋯本当に?」

 

俺がそう言うと、セラフォルー様は急に真面目な声で、顔を寄せてそう聞いて来た。

 

レイ「えっ⋯はい、どうしたんですか?いきなり」

 

セラ「⋯⋯⋯」

 

レイ「セラフォルー様?」

 

すると、突然セラフォルー様は顔を俯かせてしまった。

 

セラ「あ⋯あのね?今回私が修行を付けてあげようと思ったのには理由があってね?」

 

レイ「理由⋯ですか?」

 

セラ「うん⋯その⋯少し子供っぽい理由なんだけどね⋯」

 

レイ(今更子供っぽさを気にされてもな⋯)「大丈夫ですよ?セラフォルー様の話しなら、俺は何でも受け入れますから」

 

セラ「本当に?」

 

レイ「はい、もちろんですセラフォルー様」

 

俺がそう言うと、少し話しづらそうにしながらも、セラフォルー様は話し始めた。

それに、セラフォルー様が子供っぽいのは今に始まった事じゃないし。

 

セラ「えっと⋯実はね?⋯レイ君に修行を付けたって人達が羨ましかったの⋯」

 

レイ「えっ!?」

 

セラ「そして⋯それと同時に悔しかったの⋯」

 

レイ「それは⋯」

 

俺はセラフォルー様の羨ましいと言う言葉に驚き、悔しかったと言う言葉には何も言えなかった。

 

セラ「ただの嫉妬だって事は分かってるの⋯それに、帰って来たレイ君が凄く強くなってて嬉しかったのも本当だよ?

でも⋯でもね?同時に、私はレイ君に何もしてあげれてないんだなぁ⋯て思ったの⋯」

 

レイ「セラフォルー様⋯でもそれは」

 

セラフォルー様が魔王と言う立場だから仕方無い⋯そう言おうとすると。

 

セラ「うん、仕方ないって事は分かってるの、私には魔王としての仕事もあるから⋯

それでもね?私とサーゼクスちゃんが勝手に決めた事でレイ君を傷付けて、それでレイ君が悩んじゃって居なくなっちゃって⋯

帰って来た時には更に強くなってて、それも何か吹っ切れた様な笑顔で帰って来て⋯それは本来、私がしなくちゃいけない事だったのに、私は何もしてあげられなかった⋯

結果的に⋯レイ君を傷付けただけ⋯」

 

レイ「セラフォルー様⋯」

 

先にセラフォルー様に言われてしまった。

その上、俺はそれに対してまた何も言えなかった

 

セラ「全部私が悪いって事は分かってる、でも⋯それでも⋯やっぱり悔しい物は悔しいし、羨ましい物は羨ましいの。

だから今回無理をしてでも、レイ君との時間を作ったの⋯

呆れちゃった⋯かな?」

 

レイ「っ⋯セラフォルー様」

 

セラ「レ、レイ君!?」

 

本当に悔しそうに、そして悲しそうに、セラフォルー様をそう言った。

そんなセラフォルー様を、俺は抱き締めると、セラフォルー様は驚いた様な声を出した。

 

レイ「呆れるなんて⋯そんな事無いです、俺の方こそあの時はすみませんでした⋯

でも⋯今回この時間を作って貰えた事を考えれば、俺としては嬉しい事ですけど」

 

あの時⋯俺が今よりもガキで、修行をしてもなかなか上手く行かずに、伸び悩んでた頃⋯セラフォルー様とサーゼクスさんが俺の為にとやった、とある事。

ガキながらに悩んでた俺は、それが引き金となって⋯修行の旅と言う名の家出をした。

結果的に、それは功を奏したが⋯帰って来てからは今までで一番大変だった⋯。

 

セラ「レイ君⋯ありがとう、こんな主だけど⋯これからもよろしくね」

 

レイ「はい!もちろんです、こちらこそよろしくお願いします、セラフォルー様」

 

そう言って俺を抱き締め返して来るセラフォルー様を、俺は更に強く抱き締めた。

 

 

 

それから少しして。

 

セラ「本当に良いの?後片付けとか任せちゃって⋯」

 

レイ「はい、セラフォルー様は一週間休んでる間に貯まった仕事もあるでしょうし、片付けが終わり次第俺もすぐに行きますから」

 

いくら正式に取ってる休みとは言え、その間に仕事が貯まらないと言う訳じゃない。

だから俺は、後片付けは一人でやると言い、セラフォルー様には先に戻って貰う事にした。

 

セラ「そうだね⋯分かった!これ以上は流石にサーゼクスちゃん達が可哀想だし☆先に戻ってるね?」

 

レイ「はい、すぐに終わらせて向かいます」

 

セラ「うん☆じゃあ待ってるね☆」

 

レイ「はい!」

 

セラフォルー様は最初は一緒に⋯と言っていたが、俺の言った事にも一理あった様で、最終的には俺に任せ先に帰っていった。

 

レイ「さて⋯さっさと終わらせ「レイ」!誰だ!?」

 

セラフォルー様を見送り、片付けを始めようとすると、後ろから誰かに声を掛けられ、俺は警戒しながら振り返ると。

 

「レイ、久しい」

 

レイ「お前は確か⋯オーフィス、だったよな?」

 

そこには見覚えのある少女が浮いていた。

少女は俺にそう言いながら近付いて来た、俺はその少女を思いだしそう言うと。

 

オーフィス「そう、我もレイ、覚えてる」

 

レイ「ああ、さっきは済まなかった、ここに誰かが来るとは思わなくてな」

 

通常ならいきなり声を掛けられても警戒などはしないのだが、ここは場所が悪かった。

なぜなら、ここはシトリーが所有する土地の一つであり、許可の無い者が入る事は許されない。

そして、今は俺とセラフォルー様がここを使ってる事はシトリーの者なら誰もが知ってる筈だから、ここに立ち入り許可を出す事は絶対に無い。

そんな場所で突然声を掛けられれば、誰でも警戒するだろう。

 

オーフィス「?、何が?」

 

レイ「いや⋯気にしてないなら良いんだ」

 

オーフィス「そう、なら良い」

 

俺が謝るも、オーフィスは何を謝られたのか本当に解らないようだった。

俺も、それならそれで良いと思い、話しを終わらせた。

 

レイ「それで?いきなり来てどうしたんだ?」

 

オーフィス「レイ、我と共に来て」

 

何か緊急の用でもあるのかと思い聞くと、オーフィスは手を差し出しそう言った。

 

レイ「⋯お前と?なんで?」

 

オーフィス「我、帰りたい、でも、出来ない、だから、手伝って」

 

帰りたい、そう言ったオーフィスの表情は変わらないが、俺には少し⋯悲しそうに見えた。

 

レイ「帰るって⋯何処に?」

 

オーフィス「次元の狭間」

 

レイ「次元の⋯狭間?」

 

オーフィス「そう」

 

聞いた事の無い場所に、俺は首を傾げた。

 

レイ「一人で帰れないのか?」

 

オーフィス「無理、次元の狭間、グレートレッド、居る、我、グレートレッド、追い出された」

 

レイ「こっちで暮らすのは嫌なのか?」

 

オーフィス「解らない、我、求めるのは、真の静寂」

 

レイ「真の⋯静寂⋯?」

 

オーフィス「そう」

 

帰りたい、グレートレッド、追い出された、そして真の静寂が欲しい。

俺はなんとなくだが、オーフィスが来た理由が分かった。

 

レイ「つまり⋯真の静寂が欲しくてその次元の狭間に帰りたい、けど⋯そこにはグレートレッドが居る、と。

だからグレートレッドってのを倒すのを手伝って欲しいって事か?」

 

オーフィス「そう、レイ強い、あの時よりも、強くなってる、だからレイ、我と共に来て」

 

俺が推測を言うと、オーフィスは頷いてそう言った。

 

レイ「そうか⋯でも、悪いなオーフィス⋯それは無理だ」

 

オーフィス「なぜ?」

 

オーフィスは首を傾げた。

 

レイ「俺には俺のやるべき事があるからな、セラフォルー様の女王として、シトリーの家族として」

 

オーフィス「そう、残念⋯」

 

俺がそう言うと、オーフィスは少し俯きそう言った。

 

レイ「けど、そうだな⋯もしも俺が馬鹿やらかして、ここに居られない様な事があったら、また誘ってくれ。

その時は喜んで協力してやるから」

 

オーフィス「分かった、我、帰る」

 

俺はオーフィスにそう言うと、オーフィスはそう言って、俺に背中を向け飛んでいった。

 

レイ「⋯オーフィス!」

 

オーフィス「?」

 

俺が叫ぶと、オーフィスは不思議そうに振り向いた。

 

レイ「セラフォルー様とかが居ない時なら、いつでも遊びに来て良いぞ!」

 

オーフィス「ん、分かった、また来る」

 

レイ「ああ、待ってるよ」

 

俺がそう言うと、オーフィスは頷きそう言い、帰っていった。

 

レイ「はぁ⋯びっくりした、まさかオーフィスが来るとは思ってもみなかったな⋯。

あっ!やばい、早く片付けて帰らないと、またセラフォルー様に心配されちゃうな」

 

俺はすぐに片付けに取り掛かった。

片付けは思ったよりも早く終わり、俺はセラフォルー様の元に向かい、この一週間で貯まった仕事は予想以上にあり、俺はすぐにこちらの片付けに取り掛かった。

 




今回はこの話しに二つの話しを載せる予定でしたが、両方とも思いの外長くなったので二回に分けました。
もう一つも近い内に投稿します。


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【13歳・②】使い魔

アンケートありがとうございました。
五つ子の本格参戦は原作開始後ですが、この章でも少し触れる予定です。


気付いたらお気に入りが1000を越えてました。
書き始めた時は自己満足な作品を書きたかっただけだったので、作者自身凄い驚いてます。
お気に入りにして頂いた方、高評価して頂いた方、本当にありがとうございます。
更新は不定期ですが、少しずつ書いているので、これからもよろしくお願いします(^-^)

7/30 本文編集


ある日の昼過ぎ。

 

セラ「あっ!」

 

仕事が一段落した頃、セラフォルー様が突然声を上げた。

 

レイ「どうしました?セラフォルー様」

 

セラ「そう言えば、レイ君もそろそろ使い魔を取りに行かないとね☆」

 

レイ「使い魔ですか?」

 

そう言えばそんな話しもあったけな⋯と俺も思い出した。

まあ、色々と忙しくてなかなか行けないんだけどね⋯。

 

セラ「うん、それでね?これから丁度ソーナちゃんとリアスちゃんが使い魔の森に行くみたいだからレイ君も一緒に行ってくると良いよ☆

この後のレイ君の予定は休暇って事にしとくから☆」

 

レイ「分かりました、けど⋯確か使い魔の森のあいつは一ヶ月に一つしか受付無いのでは?」

 

セラ「本当はね、でも今回ソーナちゃんとリアスちゃんは互いにまだ眷属が少ないからって、共同でも良いって言われたんだって☆」

 

レイ「成る程、二人の護衛も兼ねてって事ですね?分かりました行ってきます」

 

いくら危険が少なく案内人が居るとはいえ、使い魔になる様な強力な生き物が居る以上絶対安全って訳じゃ無いからな⋯。

にしても、相変わらずセラフォルー様は心配性だな⋯。

まあ、俺も人の事は言えないか⋯。

結局の所、俺もソーナの事は心配だし。

 

セラ「うん☆お願いね☆」

 

レイ「はい」

 

セラ「行ってらっしゃい☆気を付けてねぇ~☆」

 

レイ「行ってきます。

 

 

さて⋯リアスも来るんなら⋯あいつも連れていくか」

 

そうして、俺は部屋を出てすぐに眷属の一人に連絡をして使い魔の森に向かった。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

使い魔の森の入り口に着くと、そこにはソーナとリアス、そして二人の眷属と思わしき集団があった。

 

レイ「ソーナ、リアス」

 

ソーナ「レイ君、お久し振りです」

 

リアス「久し振りね、レイ」

 

俺は地上に降り、二人の元に歩いて行きながら声を掛けると、二人は俺に気付き笑顔でそう言った。

 

レイ「ああ、久し振りだな二人共、今日はよろしくな」

 

ソーナ「はい」

 

リアス「ええ、レイが居てくれるなら頼もしいわ」

 

レイ「そうかい、ありがとよ」

 

ソーナとリアスとそんな話しをしていると。

 

「あの⋯ソーナ様」

 

「リアス、この方は?」

 

二人の眷属らしき女の子二人が話し掛けて来た。

 

ソーナ「そういえば椿姫以外は初めてでしたね」

 

リアス「そうね、私の方も小猫以外は初めてだったわね」

 

ソーナ「彼は支黒レイ君です、お姉様⋯魔王セラフォルー・レヴィアタン様の女王です」

 

リアス「そして、私達が知る限り、()()頼りになる人よ」

 

ソーナ「そうですね」

 

すると、二人は俺を挟むようにソーナが右にリアスが左に移動して、俺を紹介した。

て言うかリアス?最もとか言わないで、またサーゼクスさんが良く解らない嫉妬して来るから。

ソーナも笑顔で肯定しないで。

 

「魔王様の⋯」

 

「女王⋯」

 

ソーナとリアスの紹介に、話し掛けて来た二人だけで無く、後ろにいる椿姫と白音以外の他の眷属達も驚いているのが分かった。

多分、椿姫と白音はそれぞれソーナとリアスの邪魔をしない様にって思って、すぐに話し掛けて来なかったんだろう。

そう言えば、椿姫とはソーナが帰って来た時に会ってたから数ヶ月ぶりだけど、白音とは一年振りだな⋯こないだ帰って来た時に家に来たらしいけど、俺は丁度用事が有って居なかったからな。

 

レイ「ん?ソーナとリアスの眷属か?」

 

「は、はい!私は花戒桃と言います、ソーナ様の僧侶です」

 

「わ、私は仁村留流子って言います、ソーナ様の兵士です」

 

「由良翼紗です、ソーナ様の戦車です」

 

「私は姫島朱乃と申します、リアスの女王です、よろしくお願いしますね」

 

「僕は木場祐斗です、リアス様の騎士です」

 

俺がそう言うと、五人の男女がそれぞれ自己紹介をした。

 

レイ「ああ、俺は支黒レイだ、今二人が言った様にセラフォルー様の女王だ。

別に覚えなくても良いが、とりあえずよろしく、それと⋯」

 

そんな五人に、俺はいつもの様に挨拶をした。

当然の事だが、俺はソーナやリアスの眷属だからと言って、特別な扱いをする訳じゃない。

二人にとっては大切な眷属でも、俺からしたら他人と変わらないから。

まあ、椿姫と白音は俺が連れて来たから別だけど。

 

椿姫&小猫『お久し振りです、レイ様/レイ君』

 

レイ「久し振り、椿姫、白音」

 

椿姫&小猫『はい』

 

他の眷属達との挨拶をして。

俺は二人の方に行きそう言うと、二人は笑顔で返してくれた。

 

レイ「ああ、そう言えば白音は今、塔城小猫だったか?」

 

小猫「はい、でも⋯レイ君には今まで通りに呼んで欲しいです」

 

俺がそう聞くと、白音は俺の袖を掴み上目遣いでそう言った。

 

レイ「そうか?まあ、お前が紛らわしく無いなら俺は良いけど⋯じゃあ、これからもよろしくな、白音」

 

小猫「はい///」

 

白音がそれで良いなら俺としてはむしろ楽で良い、名前が変わるとか面倒でしかないからな。

 

レイ「椿姫も、元気そうで良かったよ」

 

椿姫「ありがとうございます、レイ様も⋯元気そうでなによりです」

 

レイ「そうだな」

 

そんな風に椿姫や白音といつものように話していると。

 

 

 

留流子「うわぁ、椿姫さんのあんな嬉しそうな顔⋯初めて見た」

 

桃「本当だ⋯」

 

翼紗「そうだね、いつもキリッとしてるけど⋯」

 

朱乃「あらあら、小猫ちゃんもいつもより可愛らしいですわ。

そして、あの方がリアスがいつも話してる殿方ですのね」

 

木場「みたいですね、たしか刀剣を良く使ってるってリアス様が言ってましたね、出来れば手合わせをしたい所ですけど」

 

朱乃「頼んでみたらいかがですか?」

 

木場「はい、機会があれば」

 

朱乃(⋯⋯⋯それにしても⋯あの方の気配⋯どこかで⋯?)

 

俺達の会話を聞いていた五人が離れた所でそんな事を言っていた。

それにしても⋯俺の知る限り椿姫と白音は二人共いつもこんな感じで笑ってるけど⋯学校じゃ余り笑わないのか?。

それと、手合わせはしない面倒臭いから、どうしてもやりたいなら俺と殺しあう関係にでもなるんだな。

そんな事を考えていると。

 

ソーナ「それではそろそろ行きましょうか」

 

リアス「そうね、レイも来た事だし」

 

レイ「あっ、ちょっと待った」

 

二人がそう言ったのだが⋯。

 

ソーナ「どうしたんですか?」

 

レイ「俺が呼んだ奴がまだ一人来て⋯「し~ろ~ね~」たった今来た⋯」

 

来てない、そう言おうとした瞬間、大声で妹の名前を呼びながら勢い良く飛んできた。

 

小猫「わぷっ、ね⋯姉様!?」

 

黒歌「白音~会いたかったにゃ~」

 

黒歌は小猫に抱き付いて頬擦りを始めた。

 

レイ「遅かったな黒歌」

 

黒歌「これでも連絡を貰ってから急いで来たにゃ!

いきなり使い魔の森に来いって言うからびっくりしたんだから」

 

レイ「白音も来るって事だったからな、それとも呼ばない方が良かったか?」

 

黒歌「そんな事無いにゃ~、呼んでくれてありがとう、レイ」

 

レイ「そうか、ああ悪いな二人共、もう良いぞ?」

 

俺は白音に頬擦りを続けながらそう言う黒歌に苦笑し、二人にそう言った。

 

ソーナ「そうですか、では今度こそ」

 

リアス「ええ、行きましょうか」

 

レイ「ああ」

 

全員『はい』

 

白音「行きますよ?姉様」

 

黒歌「分かったにゃ~♪」

 

全員の返事と共に俺達は使い魔の森に入っていった。

 

 

 

森に入って歩いていると。

 

「待ってたぜ!!」

 

木場「誰だ!」

 

突然木の上から声が聞こえた。

木場の声と共に、二人の眷属達はそれぞれの主を守る様に前に出て戦闘体勢に入った。

 

「俺は使い魔マスターを目指して修行している、マダラタウンのザトゥージ!よろしくな」

 

レイ「遅い、もっと早く出て来い!」

 

ザトゥージ「そう言うなって、セラフォルー様の女王。

登場の仕方は大切なんだぜぇ?」

 

レイ「あ?」

 

ザトゥージ「すいませんでした」

 

ザトゥージの言葉に、俺が殺気を込めて睨むと、ザトゥージは綺麗に頭を90°下げそう言った。

 

木場「えっ⋯と」

 

リアス「大丈夫よ、皆」

 

ソーナ「彼はこの森に住んでいる使い魔ハンターの方です」

 

木場「そうなんですか⋯」

 

朱乃「なら、安心ですね」

 

桃「でも⋯なんか⋯」

 

留流子「うん⋯そうだね⋯」

 

翼紗「どっかで見た事あるような感じだな⋯」

 

桃&留流子『うん⋯』

 

二人の言葉に全員が警戒を解くも、そこには何とも言えない空気が残った。

 

レイ「はぁ、聞いてると思うが、今日は前の椿姫と小猫の二人と同じ様にソーナとリアスの眷属達の使い魔を取りに来た。

とりあえず⋯俺は後回しで良い、最悪一人でもどうにかなるし。

だから、まずはソーナとリアスの眷属達が最優先だ。

頼むぞ、ザトゥージ」

 

ザトゥージ「なるほどOKだ、俺に任せておけ!俺にかかればどんな使い魔でも即日ゲット、完璧に案内してやろう」

 

この状況に、俺はとりあえず本題を伝えると、ザトゥージは自信満々にそう言った。

 

レイ「全く⋯こいつと言い、どいつもこいつも⋯馬鹿の相手は疲れるんだ。

最近は特にそうだ⋯」

 

俺は呆れながらそう言い、最近増えてきた、俺を人間の転生悪魔と見下してる癖に図々しくも頼み事をしてくる貴族(馬鹿)共の事を思い出していると。

 

椿姫&子猫『大丈夫ですか?レイ様/レイ君』

 

二人が俺の元に来てそう言ってくれた。

 

レイ「ああ、ありがとう二人共⋯大丈夫だ」

 

この二人は、それぞれソーナとリアスの元に行く前は俺の元で過ごしていた為、俺がそういった馬鹿な連中を相手にしてるのを知っている。

だからこうして心配してくれたのだろう。

しかし。

 

黒歌「にゃははは~レイも大変ねぇ」

 

その苦労を二人よりも知ってる筈の黒歌は大笑いしていた。

 

レイ「黒歌は後で覚えとけよ?」

 

黒歌「なんでにゃ!?こんなの完全に八つ当たりにゃあ!?」

 

だから、俺は黒歌の言う様に八つ当たりする事にした。

 

ザトゥージ「さて!皆はどんな使い魔が欲しいんだ?」

 

俺達のやり取りを切る様にザトゥージがそう言うと。

 

桃「そうですね⋯」

 

留流子「は~い可愛い子が良いです!」

 

翼紗「う~ん」

 

木場「どんなのが居るんだろう⋯」

 

朱乃「まずは見てからかしらね?」

 

それぞれがバラバラにそう言った。

 

ザトゥージ「まあ、時間はあるんだろう?だったらそこの嬢ちゃんが言う様に色々見てから決めるのが良いだろう」

 

それを聞いたザトゥージは、こうなるのに慣れているのか木から降りて来て、そう言った。

 

レイ「まあ、それが一番良いだろうよ」

 

ソーナ「そうですね」

 

リアス「それじゃあ、一番近い所から案内を頼めるかしら?」

 

ザトゥージ「おう!任せとけ!!」

 

俺は、もう面倒だしそれで良いかと思いそう言うと、ソーナとリアスが合わせる様にそう言った。

 

 

 

レイ「それで?まずはなにからだ?」

 

ザトゥージ「そうだな⋯一番近いのは⋯」

 

俺達は森の中を歩きながら、ザトゥージにそう聞くと。

 

ドカーン

 

全員『!?!?』

 

レイ「⋯⋯⋯」

 

ソーナ「今のは!?」

 

リアス「何!?」

 

突如少し離れた場所から、大きな音が聞こえた。

 

ザトゥージ「大丈夫だ落ち着け、恐らく何かが喧嘩でもしてるんだろうよ、ここじゃ良くある事だ、こんな事でいちいち驚いてちゃ使い魔探しなんか出来ねぇぜ?」

 

突然の事に、ソーナやリアスまで慌ててると、ザトゥージは当たり前の様にそう言った。

 

レイ「⋯黒歌」

 

黒歌「なんにゃ?レイ」

 

レイ「少し様子を見てくる、ソーナ達の護衛は頼んだぞ」

 

俺は翼を出しながら黒歌にそう言うと。

 

ソーナ&リアス『えっ!』

 

黒歌「分かったにゃ、お姉ちゃんに任せなさ~い」

 

ソーナとリアスは驚いていたが、黒歌は予想してたのかすぐにそう言った。

 

レイ「頼んだ」

 

黒歌の答えに、俺は一言そう言って音の方へ向かって飛んだ。

 

ソーナ「レイ君!?」

 

リアス「ちょっと!レイ!!」

 

黒歌「行ってらっしゃいにゃ~」

 

ソーナとリアスの叫ぶ声と黒歌のお気楽な声が聞こえる中で、俺はその場を離れていった。

 

 

 

ソーナ達と別れて目的の場所にたどり着くと、そこは激しい戦闘の後があった。

地面には穴が開き、木々は薙ぎ倒される物、焼け焦げてる物もあった。

すぐに宝物庫から《(なまくら)》を取り出し、警戒体勢に入った。

 

レイ「随分と酷い有り様だな⋯一体何と何が戦えばこんなになるんだ?」

 

「グ⋯ル⋯」

 

レイ「ん?なんだ?」

 

何があったのか、とりあえず調べてみようと思った時、何処かから獣の呻き声が聞こえたの。

 

「グル⋯グルル⋯」

 

レイ「狐⋯か?随分と弱ってるな⋯」

 

俺は声の方に向かうと、そこには傷だらけの尾が九本の狐がいた。

 

狐「グルゥ!」

 

レイ「おっと⋯」

 

狐「グルルルッ」

 

俺が近付き触れようとすると、狐は引っ掻いて来た、俺はそれを避け距離を取ったが、尚も狐は威嚇を続けている。

 

レイ「ふむ⋯まあ、そうなるわな」

 

狐「グ⋯ルル⋯」

 

俺は攻撃した来た狐に対して敵対するつもりは当然無い。

だが、いきなり見知らぬ者が近付いて来れば警戒する、それは俺達だって同じだ。

傷ついている時に近付いて来る者が自分を助けてくれるとは限らない、その点では怒るどころかむしろ感心してる位だ。

 

レイ「仕方ない⋯」

 

狐「?」

 

俺がそう呟くと、狐は目を細めた。

 

レイ「これならどうだ?」

 

狐「グル!?」

 

俺は狐に聞こえる様にそう言って、腰に下げてた《(なまくら)》をしまい、防御の為に周りに纏っていた魔力を消し、完全に武装を解除した。

 

レイ「俺はお前の傷を見たいだけだ、決してお前を傷付けたりはしない。

だから、近付いても良いか?」

 

狐「⋯⋯⋯」

 

レイ「そうか、それは良かった」

 

俺は距離を取った場所から動かずに、そこから先程と同じ様に狐に対してそう言うと、狐は警戒しながらも首を縦に振った。

どうやらあの狐は人の言葉が解るらしい、正直助かった、言葉の通じない獣が相手では治療もまともに出来やしないからな。

俺はそれを確認し、そう言って狐に近付いて行った。

 

レイ「さて⋯傷が痛むかもしれないが暴れるなよ?」

 

狐「キュッ!」

 

狐の側まで行き狐にそう言うと、狐は先程までと違い愛らしく鳴いた。

どうやら俺に敵意が無いのを分かってくれた様だ。

 

レイ「えっと⋯ふむ、見た目ほど酷い傷じゃ無さそうだな⋯まあそれでも、数は多いし血もかなり流れてる、このままじゃ危ないな、仕方ない⋯ほらこれを飲むと良い」

 

狐の身体を調べてみると、確かに身体中傷だらけで血も少なくない量流していて見た目は酷いが、それでも見た目程の酷く深い傷はなかった。

普通なら血を止めて応急措置でもして、最悪の場合は病院にでも連れて行けば良いのだが、生憎今はそんな時間は無い。

そもそもここに来たのも万が一にでもソーナに、それと一応リアスにも害が及ばない様にと思ったからで、黒歌が居るから大丈夫だとは思うが出来るだけ早く戻らなければならない。

だから俺は手っ取り早く狐を治す為に宝物庫からフェニックスの涙を取り出し、狐の口元に持っていった。

 

狐「キュ?」クンクン

 

レイ「大丈夫だ、これを飲めばお前の傷は治るよ、だから安心して飲みな」ポンッ

 

狐「キュウ!」

 

狐は首を傾げ瓶に鼻を近付け匂いを嗅ぎ始めた、そんな狐に俺はそう言って瓶の蓋を開けると。

大丈夫と判断したのか、狐は一つ鳴いて口を開けた

 

レイ「良い子だ」

 

狐「キュゥ~ン」

 

俺の言葉に元気良く頷いた狐の頭を撫でると、狐は気持ち良さそうに目を細め嬉しそうな声で鳴いた。

 

レイ「そう⋯ゆっくり飲むんだ」

 

狐「キュ⋯キュ⋯」

 

そう言って少しずつ瓶を傾け中身を飲ませていく、狐も俺の言う通りに飲んでくれる。

少しだけ残して飲み終わらせると同時に狐の傷が徐々に治っていき、数秒後には完全に治った。

 

レイ「よし⋯これで良いだろう、もう痛くないな?」

 

狐「キュッ!キュキュッ!!」

 

俺は立ち上がりそう聞くと、狐は元気に跳び跳ね、俺にすり寄ってきた。

 

レイ「それだけ動ければ大丈夫だな」

 

狐「キュキュッキュ!!」

 

レイ「さて、それじゃあ次はこっちだ」

 

狐「キュウ?」

 

元気に鳴く狐に、俺はそう言って倒れてる木に近付いた。

 

レイ「大丈夫か?」

 

狐「キュ!」

 

「ピピィ⋯ピィ」

 

そこには羽が傷付き、鳴いてる子供の燕がいた。

 

レイ「よっと⋯大人しくしてろよ?」

 

子燕「ピィ⋯」

 

レイ「良し、口を開けさせて⋯と」

 

俺は子供の燕を優しく持ち上げ、少し強引ではあるが指で口を開け、狐に飲ませた残りのフェニックスの涙を流し込んだ。

 

子燕「ピ⋯ピィ?ピィ!!」

 

レイ「ははっ、流石にまだ小さいだけあって、あれっぽっちの量でも回復したな」

 

流し込んだ液体で苦しそうに鳴いた子燕だったが、全てを飲み込み少しすると、不思議そうに鳴きながら首を傾げ、そのすぐ後に身体が楽になった事に気付き、羽を広げ俺の周りを飛び始めた。

 

「ピィ~」

 

レイ「ん?」

 

狐「キュウ?」

 

子燕「ピピィ~」

 

飛び回る子燕を俺と狐は見ていると、更に上空から別の鳴き声が聞こえ、何かと思い上を見ると、大人の燕が二匹と子供の燕が三匹の群れが居た。

すると、それを見た子燕が元気に鳴くと、子燕は群れの方に飛んで行く、どうやら親と兄妹の様だった。

 

レイ「良かったな、さて⋯」

 

子燕「ピピィ~」

 

レイ「ん⋯?おっと!?」

 

飛んで行く子燕に背を向け、そろそろ戻ろうとすると、子燕が勢い良く飛んで来て俺の肩に留まり。

 

子燕「ピィ~」

 

まるで「助けてくれてありがとう!」とでも言う様に、俺の首に擦りついて来た。

 

レイ「元気でな、これからは周りに気を付けろよ?」

 

子燕「ピ!」

 

俺はそう言って、人差し指で頭を撫でると「はい」とでも言う様に翼を広げ、群れに戻って行った。

 

レイ「さて⋯それじゃあ俺はもう行くからな、お前も喧嘩は程々にしておけよ」

 

狐「キュ?」

 

子燕と狐が元気になったのを見た俺は安心し、ソーナ達の元に戻った。

 

 

 

レイ「ただいま」

 

ソーナ「レイ君!」

 

リアス「私達を放って何をしていたのよ!!」

 

黒歌「お帰りにゃ、レイ」

 

レイ「ただいま、ちょっと様子見に行ってたんだよ、俺がここに居るのは使い魔探しってのもあるが、護衛も兼ねてるからな」

 

ソーナ「護衛も兼ねてるのならば余計に離れないで下さい!」

 

レイ「だから黒歌も呼んだんだろ?黒歌なら相手が魔王クラスでも無い限り大丈夫だろうし、なんてったって白音を守りながら何十人者上級悪魔から逃げてたくらいだし、なあ?黒歌。」

 

黒歌「まあ、相手にもよるけどね」

 

レイ「それでも最悪、俺が来るまでの時間を稼げるだろ?」

 

黒歌「まあね~」

 

ソーナ「むぅ⋯」

 

レイ「ん?どうしたんだよ、ソーナ」

 

ソーナ「だからって一人で行くなんて⋯怪我でもしたらどうするんですか!」

 

レイ「ちょっと様子を見に行っただけで怪我なんて「⋯⋯⋯」分かった⋯俺が悪かったよ」

 

怪我なんてしない、そう言おうとしたのだが、ソーナが眷属達にはバレない程度に頬を膨らませ俺を睨んできた。

だから俺はすぐに謝ることにした、理由は簡単だ、頬を膨らませ怒るソーナは絶対に引かないから。

これは昔からそうで、普段は思いっきり頬を膨らませて怒っている、そうなると俺が謝らない限りずっとそのままでいるから質が悪い。

そしてこうなったソーナが俺は苦手だ、なんで苦手か?そんなのは分かりきってる事だ、ソーナは最大限怒ってるつもりみたいだが正直言って全然恐くない、それどころか凄い可愛い、だから毎度反応に困る。

俺が怒られてるのに怒る訳にもいかないし、笑ってしまうと更に不機嫌になるし、可愛いなぁ⋯って目で見てそれに気付かれるとそっぽ向かれるし⋯いったいどうすれば正解なんだろうな⋯。

それにソーナが睨んでいるのは誰が見ても解るが、頬を膨らませているのは俺しか解らないだろう、多分自分の眷属に子供っぽい所を見せたくないんだろうけど⋯そんな所がまた可愛いって事には気付いて無いんだろうなぁ⋯。

て言うか恥ずかしいなら睨むだけにしとけば良いのに⋯。

 

ソーナ「レイ君は気付くと怪我が増えているから心配なんです!もっと自分を大切にしてください!!」

 

レイ「分かったよ、出来るだけ気を付けるから 」

 

黒歌「ソーナの気持ちは良く解るけどその辺にしとくにゃ、レイがわざわざ見に行ったのだってソーナの為にゃんだから」

 

ソーナ「⋯えっ!?」

 

黒歌「どうせ万が一にでもソーナに危険が無い様にって思って見に行ったんでしょ?」

 

黒歌は俺の方を見てにやにやしながらそう言った。

 

レイ「そんなの当たり前だろ?つーかなんでお前はそんなにやついてるんだよ」

 

ソーナ「ッ//////」

 

黒歌「にゃ~、ソーナと違ってレイは照れないから面白くないにゃ~。

ソーナなんか顔真っ赤にして俯いてるって言うのに」

 

ソーナ「ちょ⋯黒歌さん!?」

 

黒歌「にゃははは~ソーナ?すっごく可愛いにゃよ?」

 

ソーナ「うるさいですよ!本当に怒りますよ!!」

 

黒歌「白音~助けてにゃ~」

 

リアス「⋯⋯⋯」

 

黒歌がソーナにじゃれてる横で、何故かリアスまでもが頬を膨らませ怒っていた。

ただ違いが一つだけある、リアスの頬はソーナと違って、それはもう見事な迄にパンッパンに膨らんでいた。

 

レイ「えっと⋯なんでお前までそんな顔になってるんだ?リアス」

 

リアス「別に何でもないわよ!どうせソーナが無事ならそれで良いんでしょう⋯

 

レイ「全く⋯そんな訳無いだろ?護衛の対象にはお前も入ってるんだから、お前の事だってちゃんと思ってるよ」

 

リアス「なっ⋯///なんで聞こえてるのよ!?馬鹿!!」

 

レイ「そんな理不尽な、聞こえた物は仕方無いだろう⋯」

 

リアス「⋯本当に私の事も心配してくれてたの?」

 

レイ「ああ、放って置かれた様に感じたなら悪かったよ」

 

俺はそう言ってリアスの頭を撫でた。

 

リアス「!それなら⋯別に良いわ///」

 

レイ「そうかい、それなら良かった」

 

リアスの機嫌も治り、ソーナ達の方を向くと。

 

ソーナ「⋯⋯⋯」

 

黒歌「⋯⋯⋯」

 

小猫「⋯⋯⋯」

 

椿姫「⋯⋯⋯」

 

何故か頬を膨らませてるのが増えていた。

しかも、ソーナはさっきと違って思いっきり膨らませてる⋯。

 

レイ「⋯なんで増えてんだよ⋯」

 

黒歌「リアスだけ撫でられるなんてずるいにゃ!」

 

小猫「そうです、私達もレイ君の事を心配してました、なのにリアス様だけ撫でられるなんて不公平です!」

 

黒歌「私達の事も撫でるのにゃ!!」

 

黒歌と白音はそう言って頭を差し出す様に下げた。

 

レイ「分かったよ⋯ほら、これで良いか?」

 

黒歌「にゃあ~~~、やっぱりレイの撫で撫では気持ち良いにゃ~」

 

小猫「はい、久し振りに撫でて貰うと余計に気持ち良いです」

 

二人は目を細め、黒歌に至っては尻尾をブンブン揺らしながらそう言った。

 

椿姫「あ、あの⋯」

 

レイ「ん?なんだお前もか?ほら、こっち来い」

 

椿姫「!はい!!」

 

俺がそう言うと、椿姫は満面の笑みで俺の元に来て二人と同じ様に頭を下げた。

 

レイ「ほれ、これで良いか?」

 

椿姫「⋯はい///」

 

ソーナ「むぅ⋯」

 

レイ「ソーナも、さっきは悪かったよ⋯心配してくれてありがとうな」

 

俺はずっとこっちを見てるソーナの元に行き、ソーナにそう言ってからソーナの頭を撫でた。

 

ソーナ「あっ⋯///⋯私こそ、怒ったりしてごめんね?

でも、私もリアスも、そしてお姉様や皆がレイ君を心配してるんです⋯レイ君は無茶ばかりするから⋯」

 

レイ「うん⋯ありがとう、ソーナ」

 

ソーナ「はい⋯///」

 

俺はソーナを撫でながらも視線が気になっていた。

 

朱乃「あらあら、うふふ」

 

木場「あはは⋯」

 

桃「うわぁ//」

 

留流子「二人共可愛いです~」

 

翼紗「そうだね」

 

なにせ二人の眷属達に、そんな姿の主と仲間を暖かい目で見られていたのだから。

 

黒歌「ところでレイ⋯」

 

レイ「なんだ?」

 

黒歌「この、背中に張り付いてるのは何なのにゃ?」

 

レイ「は?何言ってん「キュ!」⋯なんだこいつは⋯」

 

黒歌はそう言って背中に着いてた物を引き離して見せた。

すると、そこには30cm程の細長い生き物がいた。

 

「キュウ!キュキュッ!」

 

レイ「なんだ⋯こんな生き物、本当に知らんぞ?」

 

ザトゥージ「なんだそいつは?初めて見たぞ?」

 

黒歌「にゃ?良く見たらこの子⋯管狐じゃない」

 

レイ「管狐?」

 

黒歌「そっ、日本の妖怪よ?何でこんな所にいるのかしら。」

 

管狐「キュ!キュキュッ!!キュキュキュッ!!!」

 

黒歌「なに言ってるか解らないにゃ⋯」

 

管狐「キュゥ~」

 

管狐は一生懸命に何かを伝えようとしているが、当然黒歌が言葉を解るわけもなく、管狐は落ち込んだ様に鳴いた。

 

黒歌「う~ん⋯レイ、本当に知らないにゃ?さっきの場所でこの子と会ったとか」

 

レイ「あの場所に居たのは九本の尻尾が生えてる狐だけだったぞ?」

 

黒歌「九本の尻尾⋯九尾の狐⋯?あっ!」

 

レイ「どうした?」

 

黒歌「それ、この子の事にゃ!!」

 

管狐「キュウ!!」

 

黒歌が言うと、管狐は元気に鳴いた。

 

レイ「はあ?なんの冗談だ?」

 

黒歌「この子、普段はこの姿だけど、身に危険を感じたり戦闘体勢に入ると大きな九尾の狐に変身するんだにゃ、ね?」

 

管狐「キュ!キュキュ~!!」

 

管狐はそうだと言わんばかりに鳴いた。

 

レイ「マジで⋯?」

 

黒歌「マジにゃ、それで?喧嘩してたのはこの子にゃ?だとしたら相手は間違いなく女郎蜘蛛ね、管狐と女郎蜘蛛は仲が悪いのよ、その子が傷付いてたのなら、今回は女郎蜘蛛が勝ったのね」

 

管狐「キュウゥ~」

 

黒歌がそう言うと管狐は見るからに落ち込んだ。

 

レイ「そいつの正体は解ったとして、なんで俺の背中に張り付いてたんだ?」

 

管狐「キュ、キュキュキュッ、キュッキュウ!」

 

黒歌「だから私達には解らないんだって⋯」

 

管狐「キュ~⋯!キュ!!」

 

黒歌が再度そう言うと、また落ち込む管狐だったが、何かを思い付いたのか元気になりその直後。

 

レイ「何やってんだ?お前」

 

管狐「キュウ~」

 

管狐は胴体を俺の首に巻き付いて、顔を俺の頬に擦り付けた。

 

黒歌「!にゃる程!そういう事かにゃ!!」

 

レイ「何か分かったのか?」

 

黒歌「うん、多分だけどこの子、レイの使い魔になりたいんじゃないかにゃ?」

 

管狐「キュウ~!!」

 

黒歌がそう言うと、管狐は顔を俺の正面に持ってきて、俺の鼻に顔を擦り付けながら鳴いた。

 

レイ「そうか、じゃあ⋯契約するか?」

 

管狐「キュッ!!」

 

俺がそう言うと、管狐は嬉しそうに俺の首を回り始めた。

 

レイ「そうか、なら⋯」

 

俺は首の管狐を地面に置き。

 

管狐「キュウ?」

 

レイ「支黒レイの名において命ず。

汝、我が使い魔として契約に応じよ」

 

管狐「キュ!」

 

管狐に手を掲げそう言うと、管狐の下に魔方陣が現れ。

管狐が了承する様に一鳴きすると、魔方陣は消えた。

 

レイ「後は名前を付ければ良いんだっけ?」

 

ザトゥージ「その通りだぜぇ!お前さんがそいつに名前を付けてやれば、それで契約完了だ!」

 

レイ「名前⋯そうだな⋯良し、じゃあお前は今日から無月だ」

 

黒歌「なんで無月にゃ?」

 

レイ「こいつがさっきの九尾の姿だった時は目が細月の様になってたが、今は小さくて何処にあるか分からないからだ。

まるで見えていた月が雲に隠れた様だと思ってな、気に入らないか?」

 

無月「キュキュウ!」

 

黒歌に聞かれ、俺は思った事を言って無月にそう聞いてみると無月はまるで「そんな事ない!」とでも言いたげに体を左右に振りながら鳴いた。

 

レイ「そうか、なら⋯これからよろしくな、無月」

 

無月「キュウ~」

 

俺はそう言って無月に手を出すと、無月は嬉しそうに鳴きながら俺の手に絡み付いて来た、そして気に入ったのか最終的には首に巻き付いて落ち着いた。

こうして俺は無事に使い魔と契約したのだが。

動物、しかも妖怪を使い魔にした事で猫又姉妹の妹が無月に嫉妬するとは、この時の俺には予想出来なかった。

 

黒歌「それにしても」

 

レイ「ん?」

 

黒歌「珍しいわね、レイが無月を助けたなんて」

 

レイ「そうか?」

 

黒歌が突然、そんな事を言い出した。

 

黒歌「だって、個人的な争いで傷付いてる子なんて⋯普段なら助けないでしょ?」

 

レイ「それは人⋯俺の場合は悪魔か、その場合の話しだろ?ましてや、こっちを利用する気なのが透けて見えてる愚か者だ。

だが、動物は違うだろ?結果的に無月は妖怪だったが、俺が最初に近寄った時、一番に取った行動が警戒と攻撃だ」

 

確かに普段の俺は関係の無い奴を助けたりはしない、しないが。

動物にまでそんな冷たい訳じゃ無いんだがな。

 

黒歌「あんた、そんな事したんだ⋯」

 

無月「キュウ~」

 

俺の話しを聞いて、黒歌はびっくりした顔で俺の首を定位置に決めた無月にそう言うと。

無月は思い出したのか、落ち込んでる様な声で鳴いた。

 

レイ「だが、それはつまり、自分に近寄って来る者が自分を助けてくれる、なんて打算じゃ無い証拠だ」

 

黒歌「成る程ね~つまり⋯」

 

俺がそう言うと、黒歌は口角を上げて俺の方を向いた。

 

レイ「なんだよ」

 

黒歌「レイは動物には優しいのねぇ~」

 

にやつく黒歌にそう聞くと、黒歌はからかう気満々の声でそう言った。

 

レイ「⋯⋯⋯」

 

黒歌「あれぇ~?もしかして照れてるにゃ~」

 

俺が黙ると、黒歌は完全に調子に乗り始めた。

良い度胸だ⋯

 

レイ「⋯うるさいぞ?ペット一号」

 

黒歌「ペット!?」

 

レイ「ほら、さっさと行くぞ~ペット一号」

 

俺が笑顔でそう言うと、黒歌は驚いた様に大声を上げた、俺はもう一度そう言いながら歩きだした。

 

黒歌「ま、待つにゃ!まさか、これからそう呼ぶつもりじゃ無いわよね?」

 

レイ「⋯⋯⋯」

 

黒歌「ちょ⋯そこで黙らないで欲しいにゃ!レイ~私が悪かったにゃ~許してにゃ~」

 

焦りながらそう言う黒歌に、俺が黙ると、黒歌は泣きそうな声でそう言って謝ってきた。

 

レイ「くくっ、分かったから、さっさと行くぞ?黒歌」

 

黒歌「はぁ⋯分かったにゃ」

 

俺が笑うと、黒歌はほっとした様にそう言った。

俺達はそんなやり取りをしながらも、ソーナとリアスの眷属達の使い魔探しを再開した。

 

 

 

レイ「さて、全員無事に使い魔も手に入れた事だし、さっさと帰るか」

 

ソーナ「そうですね、明日には向こうに戻らなければいけませんし」

 

リアス「なら、今日は皆で食事しましょう、確かお兄様も今日は仕事が早く終わるって言ってたし。

セラフォルー様や叔父様、叔母様も呼んで」

 

サーゼクスさんの仕事が早く終わる筈はないんだけど⋯あの人、絶対リアスと一緒に食事したいからって、無理したんだろうな。

 

ソーナ「そうですね、レイ君、お姉様のお仕事はどうなんでしょうか?」

 

レイ「ん?ああ、大丈夫だ問題ない」

 

ソーナ「そうですか、それは良かったです」

 

ソーナの質問に俺がそう言うと、ソーナは笑顔でそう言った。

 

レイ(父上と母上にはソーナが言うだろうから⋯俺は一旦仕事場に戻って食事の事をセラフォルー様に伝えないとな、多分まだ仕事終わってないと思うから⋯時間までに片付けないとな⋯

まあでも、ソーナの為なら多少は無理しないとな)

 

 

ちなみに、セラフォルー様の元に戻ると、案の定仕事は片付いてなかったのだが⋯

セラフォルー様に食事の件を伝えると、セラフォルー様はすぐに仕事に取り掛かり、あっという間に全て終わらせてしまった。

普段からその調子でやってくれれば良いのに⋯

 

そして、当然サーゼクスさんも食事には間に合い、シトリー家とグレモリー家のちょっとしたパーティーが始まった。



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【14歳】無価値と無能 ①

かなり遅くなってしまい、本当に申し訳ありませんm(__)m
活動報告に落ち着いたと書いたのに大幅に遅れまして⋯。
今度はコロナの影響で仕事が前倒しになったり、仕事量が増えたりと、悪い事が続きまして⋯。
現在大変な事になってますが、皆様もコロナには十分に気を付けて下さいませ。



この章に入る時に一話で一つの話しを、と考えていたのですが、今回遅くなってしまったので短いですが切りが良い所で出します。

4/30 本文編集



???side

 

俺には生まれつき本来あるはずの魔力と言うものが一切無かった、そのせいで⋯俺は"無能"と呼ばれ、あまつさえ俺にとって何よりも大切で、大好きな母に迷惑を掛けてしまった。

そして、その母は今は病に倒れてしまった、俺はこのままでは父が母を殺しに来ると思った、本来なら父親に対してその様な事は思わないのだろうが、母と俺を自領の僻地へと迫害したあの男ならばやりかねないと直感で理解した。

だから、俺は強くならなければいけない、強くなって俺を認めたくない父も弟もそして周りも⋯全てを黙らせると。

俺はそう決めて、そうする為の努力を続けてきた、幸い母はサーゼクス様の助けもあり今はシトリー領で保護して貰っているから問題ない。

俺も周囲から変わらず"無能"と呼ばれようと、修行している俺を純血悪魔の恥さらしと言われようと、俺は強くなる為に出来ることは何でもやっていたし出来ていた。

だが―――

 

「はぁはぁ、まだ⋯まだだ⋯こんなんじゃ足りない⋯」

 

最近はどれだけ修行を重ねても全くと言っていい程に自分自身で成長を実感出来ないでいた。

少し前まではそれらの実感や感触が有ったのに、ここ数ヶ月はそれらが全く感じられないのだ。

 

「何故だ、一体⋯何が足りないと言うのだ⋯!」

 

俺は自分でも知らないうちに血が出る程に拳を握っていた。

 

「⋯!、そう言えば⋯サーゼクス様からも言われていたな」

 

俺はサーゼクス様が母の事で助けてくれた時に言われた言葉を思い出した。

 

サーゼクス『君は何でも一人でやらなければいけないと思ってるだろうが、そんな事は無いんだ、誰かに頼ったり助けてもらう事は決して恥ずべき事では無い。

だから、これからも何かあればグレモリーや周りを頼っていいんだ、まあ⋯いくら君と私が親戚とはいえ、私個人は立場上直接手を貸すのはなかなか出来ないが、そう言う人物を紹介する事は出来る、今回の様にね。

だから、何かあれば君が信用出来る大人に相談してみると良い、もちろん私の元に来てくれても良い、未来ある若者からの相談を受けると言う事だけに目くじらを立てる者など居ないだろうから』

 

俺は次期当主として、一人の男として、何でも一人で出来なければいけないと思っていた。

そんな時にまるで見透かしているかの様にサーゼクス様はそう言ってくれた。

 

「折角サーゼクス様がああ言ってくれたんだ、行ってみるのも良いかも知れないな。

それに⋯もしかしたら、あの方を紹介してもらえるかも知れないしな」

 

そうして、俺はサーゼクス様の元に向かった。

 

???sideout

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

セラ「レイ君」

 

レイ「セラフォルー様?どうしたんですか?」

 

俺は仕事を終え報告を済ませて、ヴァーリに修行を付けて欲しいと言われていたので、家に帰ろうとしていると、セラフォルー様に呼び止められた。

 

セラ「あのね?実はレイ君にお話しがあるって子が来てるんだけど、会って貰えないかな?」

 

レイ「子⋯ですか?またどっかの貴族の馬鹿息子か娘が下らない話しでも持ってきたんですか?」

 

俺はそれを聞いて、露骨に顔を歪めた。

 

セラ「ん~下らないかどうかはレイ君次第なんだけど⋯私としては力になってあげて欲しいかな⋯」

 

レイ「珍しいですね?セラフォルー様が口添えするなんて」

 

セラ「うん、今回はちょっと私も頭に来てるからね」

 

何かを思い出したのか、セラフォルー様が珍しく少し怒りながらそう言った。

 

レイ「セラフォルー様が⋯」

 

セラ「うん⋯あの子があのまま潰れちゃうのは正直勿体ないかなとも思うし」

 

レイ「⋯分かりました、セラフォルー様がそこまで言うなら、取り敢えず会うだけは会いますよ」

 

セラ「本当?ありがとう、レイ君☆」

 

俺がそう言うとセラフォルー様は俺に抱き付いて来た。

 

レイ「それで?そいつは何処に?」

 

セラ「応接室に居るよ☆それと⋯レイ君のお客様だから対応は彼に任せたって言ってたから、いつも通りの筈だよ」

 

レイ「分かりました、じゃあ⋯とりあえず行ってみますよ」

 

セラ「うん☆よろしくね☆」

 

俺はそう言って歩きだすと、セラフォルー様は手をぶんぶんと振っていた。

 

レイ「はぁ⋯今日は良い日になると思ったんだがな」

 

今日は仕事が終わり次第ヴァーリの修行相手をする予定だっただけに、俺は一気に機嫌が悪くなった。

 

 

 

セラフォルー様と別れ、応接室に向かっていると。

 

「お疲れ様です、レイ様」

 

レイ「ああ、お前もなセバス、1日運転を頼んだうえに⋯面倒な事を任せて悪いな」

 

セバス「お気になさる事はありません、レイ様の⋯支黒家の執事長として当然の事ですので」

 

レイ「だとしてもだ」

 

セバス「はい、ありがとうございます」

 

途中で俺の家、支黒家で執事長をしているセバスと合流した。

普段は送迎など不要と言って居るのだが、今日は色々と出先に行かなければいけなかったので、セバスに運転手を任せていた。

そこに、シトリー家の方にその客が来た為に、セバスはシトリーの使用人達に代わり対応をしたのだろう。

 

レイ「それで?お前の見た感じ、今回のはどうだ?また馬鹿か?」

 

セバス「いえ、今回はまともな様です、いつも通りレイ様に言われている対応をしましたが⋯何も言わず座っておりますので」

 

レイ「へぇ⋯それは珍しいな⋯一切のもてなしが無い事に喚かないか」

 

セバス「はい」

 

セバスの言ういつも通りの対応とは、一切のもてなしをしない事だ。

下らんご機嫌取りもしなければ、粗茶の一つも出さない。

本来こんなことは無いのだが、俺はさっきのセラフォルー様との会話にあった様に貴族が依頼に来る事が増えた。

だが、9割9分上から目線で命令口調な為、最近は適当に流して居る。

もちろん、そんな連中にも最初はもてなしをしていたのだが⋯次第にどうせ依頼は受けないし、最終的に暴言吐いて帰って行くんだから必要無いんじゃね?と思う様になってからは一部(グレモリーやフェニックス等の親しい人)を除いて何もしなくて良いと言ってあった。

 

 

 

セバスから客の事を聞きながら歩いて行き。

 

レイ「ここか?」

 

「支黒レイ様ですか?」

 

部屋の前に着くと、一人の男に話し掛けられた。

 

レイ「ん?ああ、そうだが⋯あんたは?」

 

「失礼しました、私はバアル家の執事でございます」

 

俺がそう聞くと、男は丁寧に頭を下げ言った。

 

レイ「バアル?そこは確かリアスとサーゼクスさんの⋯」

 

「はい、お二人はご親戚にございます」

 

確か母親がバアルの生まれの為、リアスとサーゼクスさんは滅びの力が有ると言ってたのを思い出した。

 

レイ「って事は、またサーゼクスさんからの厄介事か?」

 

俺は、機嫌が悪いのも相まって皮肉混じりに聞くと。

 

「いえ、サーゼクス様にはレイ様を紹介していただいたと、我が主は申しておりました」

 

レイ「紹介⋯ね、で?中に居るのか?」

 

「はい、ございます」

 

レイ「まあいいや、入るぞ?」

 

「はい」

 

ガチャ

 

俺は執事の了承を得て扉を開け中に入ると、中に居たのは純血悪魔には、それも貴族には似つかわしく無い程にごつい体格の男が居た。

 

レイ「待たせたな」

 

「いえ、突然来たのはこちらですので」

 

俺がそう言うと、男は立ち上がり丁寧な口調でそう言った。

 

レイ「⋯そうか⋯それで?お前がバアル家の?」

 

「はい、サイラオーグ・バアルと申します」

 

俺は貴族でしかも純血の悪魔がそんな口調で来るとは思ってなかった為、少し驚きながらそう聞くと、その男は自己紹介をした。

 

レイ「サイラオーグ⋯ね、それで?俺に何の用だ?表に居た執事から聞いたが、サーゼクスさんに言われて来たって?」

 

サイラオーグ「はい、サーゼクス様から貴方を紹介され、ここに来ました」

 

レイ「一体何の用だ?」

 

俺は相も変わらず不機嫌なまま言うが、サイラオーグは気にも止めて居ない。

別に、俺が不機嫌なのはこいつがどうと言う訳では無い、純血のそれも貴族の悪魔が俺に「頼みがある」と言って来る時の用件は二つだからだ。

一つ目は何でも屋の要領で頼み事をしてくる。

二つ目はセラフォルー様やサーゼクスさんと、自分を繋げと言ってくるかのどちらかしか無いからだ。

そして、それを断れば罵詈雑言を浴びせ帰って行くのだ、俺は悪魔になってからそういう手合いが死ぬ程嫌いになった、だから当然機嫌が悪くならない訳がない。

さっきはセラフォルー様の手前、俺も多少不機嫌な程度に抑えたが、内心では貴族の純血悪魔が来たと言う時点でかなり機嫌が悪くなっていた。

そして今回はサーゼクスさんからと言う事もあり、後者では無く前者だと思っていた。

 

サイラオーグ「実は、貴方に⋯レイ殿にお願いがあって来ました」

 

レイ「お願いね⋯」(やっぱりな⋯今度は何だ?くだらない会議の護衛か?それとも親族のお守りか?ふざけんな)

 

俺はもう不機嫌なのを隠す事をやめた、恐らく俺の顔にはデカデカと面倒臭いと描いてあるだろう。

 

サイラオーグ「はい」

 

レイ「言ってみろよ?言うだけならタダだ」(護衛だろうが子守りだろうがやらんがな)

 

サイラオーグ「俺を⋯鍛えて欲しいのです」

 

レイ「⋯⋯⋯はぁ?」

 

予想だにしなかった言葉に、俺は変な声を出していた。

 

サイラオーグ「お願いします」

 

レイ(⋯何を言ってるんだコイツは?鍛えて欲しい?純血のそれも貴族の悪魔が?俺に?

しかも⋯いくら俺がセラフォルー様の女王とは言え、頭を下げているだと?)

 

今まで頼みに来た奴等は皆上から目線で「やらせてやる」と言う態度の者ばかりだった。

それなのに⋯サイラオーグは俺に頭を下げて来た。

 

サイラオーグ「⋯?レイ殿⋯?」

 

レイ「⋯⋯⋯ああ⋯聞いている⋯少し待て」

 

俺は少し動揺しているとサイラオーグは不思議そうに言った。

そんなサイラオーグに俺はなんとかそう言い、なんとか考えを纏め始める。

 

レイ(何が目的だ⋯?あっ!思い出した、確かコイツはバアル家の出来損ないとか呼ばれてた奴か!確か純血の悪魔なのに魔力を一切持たないとかで"無能"とかって言われてたっけか⋯。

なるほどね、だから純血のくせにこんなに良い体格をしてるのか⋯だとしても、ただ鍛えて欲しいってだけで俺に頭まで下げてるのか?)

 

当然サイラオーグには他の思惑など一切無く、純粋にレイに鍛えて欲しい⋯ただそれだけの為にここに来て、頭を下げてるのだが⋯。

レイがただ相手の言葉を鵜呑みにする事は無い、どんな言葉だろうと必ず裏があると疑いながら、見て、聞いている。

だが、レイがそうなるのも仕方の無い事だった、レイに話し掛けてくる者、特にレイに対して敬称を着けたりして下手に出てくる者は皆、何かしらの思惑を持って来ていたから。

だから、他に何の思惑も無い真っ直ぐな想いにも、レイはここまで考え、疑い、探ってしまう。

相手が何かしらの企みを持っていれば、何時だって正面から論破し、実力行使に出たものは切り伏せてきた。

そんなレイにとってサイラオーグは完全にイレギュラー。

何の思惑もなければ、裏で何かを企んでる訳でも無い。

更には、付き合いの長いソーナやリアス達グレモリー、グレモリー程ではないが親しいフェニックスやアガレスの感じともどこか違う。

レイにとって⋯そんな相手は始めてだった。

だから―――

 

レイ(ああ!!分からねぇ!?何なんだこれは!?コイツからは嘘をつかれてる感じもしない、本当にそれだけなのか!?)

 

レイがこうなるのも仕方の無い事だった。

 

サイラオーグ「あの⋯大丈夫ですか?先程から、その⋯表情が優れない様ですが⋯」

 

レイ「あ⋯?ああ⋯大丈夫」

 

そうサイラオーグに言われて、俺は自分が動揺し、それが顔に出ている事に初めて気付いた。

俺はなんとかそう言い、軽く深呼吸をして落ち着いた。

 

サイラオーグ「そうですか、なら良かったです」

 

俺の言葉にサイラオーグはホッとした様にそう言って、ソファに座り直した。

 

レイ「それで⋯だ」

 

サイラオーグ「はい」

 

レイ「⋯⋯⋯ああ!もう面倒臭ぇ!!おい、サイラオーグ!!」

 

サイラオーグ「は、はい⋯何でしょうか?」

 

話しを再開しようにも、頭の中に次々と色々な考えが出て来てしまう、どんなに考えても分からない。

気付けば俺は、それを大声で口に出し、サイラオーグに対して⋯

 

レイ「一体、お前は何が目的なんだ!?」

 

直接聞いていた。

 

サイラオーグ「ですから、貴方に俺を鍛えて欲しいのです」

 

レイ「だから!それは表面上の話しだろ?俺が聞いてるのは⋯何を企んでるかって事だよ!!」

 

サイラオーグ「企み⋯ですか?その様な物は何も⋯」

 

変わらず鍛えて欲しいと言うサイラオーグにおれがそう言うと、サイラオーグは何の話しだ?とでも言う様に首を傾げた。

 

レイ「何も⋯無いって?ただ純粋に鍛えて欲しい、本当に⋯ただそれだけなのか?」

 

サイラオーグ「はい、そうです!」

 

改めて俺がそう聞けば、真っ直ぐな眼でそう答えた。

 

レイ「それだけの為に⋯お前は⋯頭まで下げたのか⋯?純血悪魔のお前が⋯人間の転生悪魔風情の俺に?」

 

俺は、頼みに来た連中を断った時に必ず言われる『人間の転生悪魔風情が』と言うその言葉を敢えて使いサイラオーグにそう聞くと。

 

サイラオーグ「フフフッ、ハハハハッ」

 

レイ「⋯何が可笑しい?」

 

突然笑いだしたサイラオーグに、俺は殺気を込めてそう言うと。

 

サイラオーグ「ああ⋯申し訳ない、余りにもサーゼクス様から言われた通りだった物で」

 

レイ「サーゼクスさんから?何を言われたって?」

 

サイラオーグは謝罪と共にそう言った、その言葉に俺は嫌な感じがしたのでそう聞くと。

 

サイラオーグ「先程も言った様にサーゼクス様に相談に行って、貴方を紹介していただいた、その時に言われたのです」

 

サイラオーグはそう言って、ここに来る前の事を話し出した。

 




セバスはオーバーロードのセバス・チャンです。
作者の好きな執事キャラ一位なので、支黒家の執事長はセバスにお任せです。



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【14歳】無価値と無能 ②

サイラオーグside

 

昨日、俺はサーゼクス様のもとを訪れていた。

 

コンコンッ

 

サーゼクス「どうぞ」

 

サイラオーグ「失礼します」

 

サーゼクス「やあ、サイラオーグ、母上の様子はどうだい?」

 

サーゼクスは笑顔で俺を迎えてくれ、母を気にかけてくれた。

 

サイラオーグ「はい、未だに目を覚ましませんが、お陰様で危険は無くなりました」

 

サーゼクス「そうか、それは良くは無いが良かった」

 

母は未だに目覚めてはいないが、確かに母を害そうという気配は消えた。

俺がそう言うとサーゼクス様は複雑そうにそう言った。

 

サイラオーグ「はい、本当にありがとうございました」

 

サーゼクス「ああ、気にしなくて良いよ、僕はただシトリーとの仲介をしたに過ぎない、だから何もしてないのと変わらない」

 

サイラオーグ「それでもです」

 

俺はお礼を言うもサーゼクス様はそう言った。

そんな事はない、あのままであれば母は必ず害されていたのだから。

だから無礼を承知で俺はそう言った。

 

サーゼクス「ありがとう、それで?今日はどうしたのかな?」

 

サイラオーグ「母上の事にお力を貸していただいてから、間もないのに烏滸がましいのですが⋯相談したい事があるのです」

 

サーゼクス「サイラオーグ、前にも言ったと思うが、遠慮などする必要はないんだ、将来有望な者の相談に乗るのは大人の務めみたいな物だからね、構わないよ、言ってみると良い」

 

サイラオーグ「はい、実は⋯」

 

サーゼクス様はお礼を受け取ってくれ、そう聞いてきた。

俺が目的を言い淀んでいると、サーゼクスがそう言ってくれたので、俺はここに来る前に思っていた事をサーゼクス様に全て話した。

 

 

 

サーゼクス「そうか⋯僕に出来るのは君の師匠になり得る人物を紹介する事くらいだね」

 

サイラオーグ「よろしいのですか?」

 

俺の話しを聞いたサーゼクス様は腕を組み、少し考えた後にそう言ってくれた。

 

サーゼクス「もちろん、本当なら母親の為に頑張ってる君には、僕が助けてあげたい気持ちがあるんだけど⋯流石にそれは出来ないからね」

 

それは当然だ、俺の様な者にサーゼクス様が自ら動けば周りが黙ってなどいないだろう。

 

サイラオーグ「無論です、紹介して頂けるだけでも恐れ多いと言うのに⋯」

 

サーゼクス「気にする事は無い、そうだな⋯僕に紹介出来るとすれば⋯セラフォルーの女王のレイ君⋯後は⋯「レイ殿ですか!」おや?知っているのかい?」

 

サーゼクス様がまたも思案に入り出てきた名に、俺は無意識に前のめりになり食い付いていた。

だが、それも当然だろうなんせその方は―――

 

サイラオーグ「もちろんです、セラフォルー様の女王ともなれば、知りたくなくても噂くらいは聞こえて来ます。

最初に聞いたのは⋯失礼ながら"無価値"と言う話しでした。

その時、俺は彼に親近感を覚えたのです、俺もまた⋯"無能"と呼ばれていましたから⋯」

 

サーゼクス「サイラオーグ⋯」

 

サイラオーグ「ですが⋯レイ殿は俺とは違いました⋯

俺は⋯母から「魔力が足りないなら、それ以外の力を身につけて補いなさい」そう言われるまで、何も出来ず、してこなかった。

ですが、レイ殿は違った、周囲からなんと言われようとも、セラフォルー様の為どこまでも強く、気高く生きてきた。

それは、俺には⋯決して一人では出来なかった生き方です。

私は、自分に魔力が無いのが恥ずかしく、それで母に迷惑を掛けた上、何もせずにただ⋯泣いていただけ⋯

なのに、歳が一つ下のレイ殿は歩き続けた、そして⋯今もなお歩き続けている。

俺は、努力をし始めてから、レイ殿の話しを聞くたびに彼への尊敬の念が膨れていきました。

そして、それと同時に恥ずかしくもなった。

だから、俺は彼に憧れました。

そして今、俺は⋯レイ殿を心より、尊敬しています」

 

俺が最も尊敬し目標としている方の一人なのだから!!

 

サーゼクス「そうか⋯彼の友人として言わせて貰うと、僕は嬉しいよ。

彼を見下し、貶める者は数多く見て来たが、君の様な考えの持ち主もいてくれた事がね」

 

サイラオーグ「ありがとうございます、それにしても⋯友⋯ですか」

 

俺の言葉にサーゼクス様は嬉しそうにそう言った。

そして、俺もまたサーゼクス様のその言葉に驚いた。

 

サーゼクス「もちろんだ、彼がどう思ってるかは解らないが、少なくとも僕はそう思っているんだ。

それこそ、リアスを託せると思う位には、ね」

 

俺がそう聞くと、サーゼクス様は笑顔でそう言った。

 

サイラオーグ「なんと!!あれ程にリアスを溺愛してるサーゼクス様が⋯そこまでですか⋯」

 

サーゼクス「ああ、もしもリアスが彼を落とせれば、必ず幸せになれるだろうからね」

 

サイラオーグ「それ程までに⋯」

 

サーゼクス様のその言葉に俺は更に心底驚いた、だがそれも仕方無い事だろう、サーゼクス様のリアスへの溺愛していることは悪魔ならば誰もが知っている周知の事実なのだから。

だからこそ、皆揃ってリアスに気に入られ様とする。

だが、リアスはそれを心底嫌がっている、なのに⋯サーゼクス様の今の口振りからするに、リアスはレイ殿を嫌っていないらしい、それどころか好意を抱いている様だ。

もちろんそれはソーナも同じだ、だがソーナが公の場に出て来る際は、必ずと言って良い程にレイ殿が側に居る。

だから、周囲の者達⋯特に何かしらの下心を持っている者達は決して近寄らない。

その理由はただ一つ、レイ殿を恐れているからだ。

 

あれは数年前の事だった。

一度だけ見た事がある、普段は俺がパーティー等に連れていかれる事など殆ど無かったのだが、それには父上では無くお爺様が呼ばれていた事もあり、お爺様より「お前も来なさい」と言われ共に行ったパーティー。

俺はレイ殿に会えるかも知れないと思い、いつもとは違い勇んで向かった。

そこで、おそらくはセラフォルー様へのパイプを作るだろう、ソーナに執拗に近付き付き纏う者がいた。

その時レイ殿はセラフォルー様の元に居た、ソーナも適当にあしらっていたが、その男は余りにもしつこく、次第にソーナは恐がり、離れようとしたら腕を捕まれ、最終的に泣いてしまった。

俺を含め周りの者達は不憫に思いながらも見ている事しか出来なかった、何せその男は成人していて、レーティングゲームにも参加し勝っている相手だからだ。

それでも、リアスが居れば止めに入ったのだろうが、生憎リアスは居なかった。

そんな状態でも男は構わずにソーナに話し掛け続けていた⋯その時―――俺は背筋が凍る様な殺気を感じた。

俺は⋯いや、男以外のその場に居た者全てがその殺気の方向を見ると―――そこに居たのは、冷たく、間違っても人を見る目では無い、そんな目をしたレイ殿が居た。

相手は貴族、そして成人の純血悪魔、だが、レイ殿は一直線にその男に向かって行き「おい」と恐ろしく低い声で言い、男が振り向くと同時に⋯男の側頭部に向かって蹴りを放った。

男は吹っ飛び壁に激突した、レイ殿はソーナに対して「少し待ってろ」そう言って、吹っ飛んだ男に歩を進めた。

男はよろけながらも何とか立ち上がり「ふざけるな、転生悪魔ごときが!」などと叫び魔力を高め、その魔力を打ち出した。

誰もがヤバいと思った、だが⋯レイ殿は手に持っていた刀でその魔力を真っ二つに切り裂いた。

そして一瞬で相手との間合いを詰め、そのままその男の両腕を斬り落とした、その瞬間を俺は全く見えなかった。

そしてレイ殿は、腕を斬られのたうち回っている男の頭を踏みつけ、こう言った「お前が何者かは知らないし興味も無い、だがな⋯ソーナを泣かせる奴は⋯身分も、立場も、関係無く―――殺す!」恐ろしい程の声色でそう言ったレイ殿はその男を思い切り蹴り上げた、当然男は宙高く上がる。

すると、その男の周りを金色の何かが覆い、そこから無数の剣が現れ、そしてそれは男に向かって放たれ―――男は空中で串刺しになった。

その光景を気に止める事無く、レイ殿はソーナの元に歩き出し、それと同時に男に刺さった無数の剣が消え、男は満身創痍で地面に叩き付けられた。

辛うじて生きてはいた、恐らくだが、レイ殿はギリギリ理性を保ち手加減したのだろう。

その時に周囲の者は大人も子供も、皆が理解した、レイ殿には本当に身分も立場も関係無ければ、そんな物は意に介さないのだと。

ソーナ、セラフォルー様、そしてシトリー家に何かすれば―――容赦無く潰されるのだと。

あの時のレイ殿は終始恐ろしかった、普段はレイ殿を貶めてる者達もその光景に、そしてそれをしたレイ殿に、何も言わない⋯いや、言えなかった。

ここで口を出せば、今度は自分だという事を本能で理解したのだろう。

だが、俺は⋯おそらくその場で俺だけだろうが、俺は恐怖など一切感じてはいなかった。

それどころか俺は⋯自分でも分かる程に憧れの様な目を向けていた。

まあ⋯俺達が何より怖かったのはセラフォルー様だ。

レイ殿がソーナを慰めていると、そこにセラフォルー様を含めた魔王様方が入って来て、その光景見て驚いていた。

だが、誰よりも早く動いたのはセラフォルー様だった、すぐに泣いてるソーナを見つけ、駆け寄りソーナを抱きしめ事情を聞き。

その後、レイ殿を抱きしめ「ソーナちゃんを守ってくれたんだね☆ありがとうレイ君☆」と言った。

そしてその時、セラフォルー様はソーナとレイ殿以外の者達に対し、笑顔のままでとてつもない殺気を出していた、それは俺も、他の魔王様方も例外じゃない。

その殺気には2つの意味があった、怒りと牽制。

俺達に向いていたのは怒りの殺気、なぜもっと早く助けなかった?と言う殺気。

そしてもう一つ、魔王様方に向けられていた牽制の殺気、もしもこの件でレイ殿に何か罰を与えるのなら―――殺す⋯と言う様な殺気だった。

 

 

 

サーゼクス「うん、でも⋯リアスにはもう婚約者が居るからね⋯それを考えると頭が痛いよ⋯」

 

サイラオーグ「それは⋯何と言うか⋯」

 

リアスは幼い頃から「政略結婚はしない、私は私の好きな人と結婚するの!」と言っていた。

そして、先の話しを聞く限り、リアスはレイ殿にご執心の様だ。

こうなれば、リアスは絶対に結婚を嫌がるだろう事が目に見えている、サーゼクス様も、ジオディクス殿も、さぞ大変だろう。

 

サーゼクス「それと、君には言うまでも無いと思うけど、彼に修行を付けて貰いたいなら、それ以外に余計な下心は持たない事だ。

彼はそう言う感情にはとても敏感で、それらを感じ取った時点で君との交流を全て絶ち切るだろう」

 

サイラオーグ「はい、ですが⋯それは当然では?」

 

サーゼクス様の言葉に俺は首を傾げる、相手が年下だろうと身分が下だろうと、こちらが頼むのだからそれはそうだろう。

 

サーゼクス「ハッハッハッ、そうか当然か、だが⋯その当然が出来ない者も居る。

だからこそ、彼は極度の人嫌い、特に貴族嫌いになってしまったんだ」

 

サイラオーグ「そうですか」

 

確かに中には転生悪魔と言うだけで見下す者も居る。

成程、そういう無礼者のせいでレイ殿は公の場ではあんなにも敵意剥き出しだったのか。

 

サーゼクス「君なら心配は無いだろう、でも、レイ君は君が他の者と同じ様に何かを企んでいるのを前提に話すだろう。

だからこそ、僕が君に言える事は一つだ、レイ君に対してはどこまでも真っ直ぐに、誠実に接するんだ。

彼のスタンスは昔から変わらない、礼には礼を、無礼には無礼を、無関心には無関心を、敵対には殲滅を、だからね。

そうすれば、彼は必ず答えてくれるよ」

 

サイラオーグ「はい!」

 

 

 

そして今、俺はその話しをレイ殿にしていた、もちろんリアスの思いの部分や尊敬の部分は除いてだが⋯。

 

サイラオーグsideout

 

――――――――――――――――――――

 

レイ「なるほどね⋯随分と勝手な事を言ってくれるものだ」

 

俺は話しを聞いて若干不機嫌になった、それは別に二人が勝手な事を言ってるからではない。

思わず口に出してそう言ってしまったが、不機嫌の理由は別にある。

その理由、それはサイラオーグの話しの中で出たパーティーの事だ。

あれの事を思い出させられた事が不愉快で仕方がない。

ソーナを泣かした屑を⋯本当は殺したかった、でも⋯それは流石に不味いと串刺しにする直前に気付いた、だから致命傷を避けて串刺しにした。

しかも⋯実はあの後、母上と父上に怒られた⋯それも盛大に、ただ流石は俺を育てた父と母だった。

その内容はもう少し"やり方"が有っただろうと言う事だった、だが勘違いしてはいけない、この場合の"やり方"は穏便に済ませと言う事ではない、やるなら連れ出して人目を避けろ!と言う説教だった。

実の所、グレモリーがリアスを溺愛している様に、シトリーもまた一族あげてソーナを溺愛している、当然だがそれは父と母も例外じゃなかったりする。

とにかく、俺はアイツを殺さなかった事を未だに後悔しているくらいには思い出したくなかった、だからその話しを思い出させたサイラオーグに若干苛ついたのだ。

 

サイラオーグ「申し訳無い」

 

レイ「構わんさ、今更勝手にされる噂話などに興味は無い。

悪口、陰口、そんなもので一喜一憂しているのなら、俺はとうの昔に有象無象に呑み込まれてる」

 

サイラオーグ「はい」

 

だがまあ、それについてサイラオーグに当たっても仕方無いし、今言った通り他人の声なんかに興味は無い。

だからどうでもいい、それよりだ。

 

レイ「ところで、表に居た執事は随分とお前を大切にしてるみたいだな?

大抵は主が主なだけに、俺に対して上から来る馬鹿も多いが、彼はお前の為に頭まで下げたぞ」

 

俺は個人的に気になっていた事を聞いた。

主が主なら使用人も使用人、主が上から目線の馬鹿の場合は使用人までもが自分が偉いと勘違いして高圧的な態度で来るのだが⋯。

サイラオーグの執事は俺相手に下手に出てちゃんとしていた。

 

サイラオーグ「はい、彼は母がまだ結婚する前⋯つまり、ウァプラ家の頃から従者として仕えております、今は眠りの病に罹ってシトリー領の病院で療養している母の世話をしてくれています」

 

レイ「成程ね、ああ⋯そう言えば少し前に病院の警護の仕事があったのはその為か⋯」

 

サイラオーグの言葉に俺は得心がいった、確かに無能と呼ばれたこいつに変わらず使えているならまともなのだろう、と。

 

サイラオーグ「なんと!お手数をおかけして⋯申し訳「やめろ」⋯⋯」

 

レイ「例えお前の母親の警護だろうと、他の者の警護だろうと、それはシトリー家の仕事だし、俺が駆り出されるのも当然の事だ。

そして、俺はシトリーの仕事ならば文句は無いし言うつもりも無い、謝罪なんてもっての他だ」

 

サイラオーグ「はっ⋯では、ありがとうございました」

 

レイ「⋯ああ」

 

サイラオーグは俺の言葉に謝罪しようとしたが、俺はそれを止めた。

俺にとってシトリー家からの仕事はセラフォルー様からの仕事の次に最優先となる仕事だ、だからそれについての謝罪はいらない。

例えどれだけ馬鹿な貴族の頼みだろうとシトリーの仕事ならば文句は言わない、だから謝罪も礼もいらない。

これは俺にとってはあくまでも仕事でしかないのだから。

 

コンコンッ

 

執事「失礼致します」

 

サイラオーグ「どうした?」

 

執事「はい、サーゼクス様より、「レイ君は断るとしたら迷い無く断る子だ、だから少しでも迷っていたら受けてくれるかも知れない、その時はこれを渡して欲しい」と言われ、預かった物がございまして」

 

二人で話しをしていると、サイラオーグの執事が入ってきてそう言った。

 

レイ「預り物?」

 

執事「はい、こちらでございます」

 

そう言って執事は部屋の外にあったカートに乗せて持ってきた物は、大きな箱だった。

 

レイ「⋯なんだこれは?重っ!本当になんだ!?」

 

俺はそれを持ち上げようとするも、凄まじい重さで持てなかった。

 

執事「申し訳ありませんが、私には分かりかねます。

ですが、サーゼクス様曰く、レイ様の神器にピッタリの物だとか」

 

レイ「俺の?まあ⋯取りあえず開けてみるか」

 

その言葉を不思議に思いながらも、俺はその箱を開けた。

 

レイ「!、これは⋯」

 

俺はその中身を見て驚いた。

 

サイラオーグ「レイ殿?いかがなされた?」

 

レイ「ククッ⋯成程な⋯これは確かに俺の神器にピッタリだな」

 

箱の中に入っていた物、それは―――大量の刀だった。

 

執事「こちらを」

 

レイ「手紙か?これもサーゼクスさんから?」

 

執事「はい」

 

俺は手紙を受け取り、中を読むと。

そこには⋯

 

「やあ、レイ君、君がこれを読んでいると言う事は、サイラオーグの件を迷っていると言う事で良いかな?

サイラオーグから聞いたと思うが、彼は僕の従兄弟なんだ。

彼には生まれつき魔力が全く無い、そのせいで⋯たったそれだけの事で、彼とそしてそんな彼を産んだ彼の母親は父親から疎まれ、迫害されてきた。

ああ、勘違いしないで欲しいが、別に彼に同情して欲しい訳じゃない。

ただ、僕は彼の努力を、折れなかった心を、認めているだけだ、魔力が無い、それだけで周りから無能と呼ばれ、その中でも頑張って来た彼を助けたいだけなんだ。

彼は己の肉体のみで強くなった、同世代の駒を待ってる子達の中ではレイ君の次に強いだろう⋯と言っても、レイ君とは比べ物にはならないだろうけどね。

だから、僕は僕が知ってる中で、最も偏見を持たないであろう君を彼に紹介したんだ、まあ⋯相手が無礼でなければ⋯の話しだけどね。

そして、もちろんタダでなんて都合の良い事は言わない、この間君にも言われた事だけど、リーシアからも何でもかんでも君に頼りすぎだ、頼むのならばせめて報酬を用意すべきだって言われたからね。

だから、ささやかながらお礼の品を用意した、もう中身は見ただろうけど、その中に入ってるのは《千刀・鎩(せんとう・つるぎ)》と言って、僕の騎士曰く、千本で一本と言われている名刀らしい。

君は昔「自分の神器は大きな倉庫みたいな物で、中に武器を入れておけばそれを何時でも取り出せる」と言っていただろう?。

そして何より僕達が勝手に決めたあの戦いでも、君は神器から武器を打ち出す様な戦い方していたのを思い出してね。

それは、君にとってはちょうど良いんじゃ無いかと思ってね。

さて、長々と書いたが⋯つまるところ、僕が言いたい事は一つだ、彼を君の弟子として鍛えてくれるのならば、その千本の刀を報酬として支払おう。

全て、君の好きに使って貰って構わない。

君が彼に力を貸してくれる事を願っている。

サーゼクス・グレモリー」

 

そんな事が書いてあった。

 

レイ「⋯成程ね⋯」(確かにこれは名刀と言われる程の物だ、わざわざこいつの為に用意した⋯って訳じゃ無いだろうが、これ程の物を出して来たって事は、サーゼクスさんはそれだけこいつの事を買ってるって事⋯。

それに、ルシファーとしてではなくグレモリーとして頼んできたのは魔王としてではなく一個人として)

 

サイラオーグ「レイ殿?」

 

レイ(確かにこいつは俺の神器と相性が良い、報酬は十分⋯となると後は⋯

こいつ自身に対する俺のメリットとデメリットだが⋯

まずメリットだが、確か⋯バアルは大王の家だったか?だったらこいつがセラフォルー様の味方に付けば、それだけで少なくとも大王以下の貴族どもは黙らせられる。

でも⋯それはあくまでも、こいつが大王家バアルの当主となればの話しだ、こいつの話しとサーゼクスさんの手紙を読む限り、こいつが次期当主になる可能性は低い、少なくともこいつの父親はこいつの弟を当主にするつもりだろう⋯。

次にデメリットは、こいつを弟子にするとなれば、間違いなく周りが煩くなる、ただでさえ純血の、それも大王家の長男のこいつが俺の弟子になれば周りの連中はここぞとばかりに騒ぐだろう。

それに、こいつが次期当主の座を取るまで、バアルを⋯大王家を敵に回す事になる。

別に俺自身がそうなるのは構わない、だが⋯もしもシトリーに、父上と母上に飛び火したら?色々あるが⋯その二つが一番面倒な部分だな⋯)

 

考える、何が最良の選択なのか、どうすればシトリーに迷惑が掛からないかを。

 

サイラオーグ「⋯⋯⋯」

 

レイ(さて⋯どうするか⋯⋯⋯⋯⋯ん?⋯あれ⋯?良く考えれば別に悩む必要なんて無くないか?でも⋯)「サイラオーグ」

 

暫く考えていると一つの考えが頭を過った、これならばシトリーの方は問題ない事に気付いた。

そして思い出した事がある、正直忘れる所だったが⋯大事なのはもう一つだ。

 

サイラオーグ「はい」

 

レイ「お前は⋯何の為に力を求める?」

 

俺はこいつの目的を聞いてない。

 

サイラオーグ「俺は魔王になりたいのです!」

 

レイ「何故?」

 

魔王になりたい、その答えに俺はノータイムでそう言った。

 

サイラオーグ「何故⋯とは?」

 

レイ「魔王を目指す理由だよ、まさか偉いから⋯何て言わないんだろう?」

 

何故魔王になりたい?答えによっては⋯。

 

サイラオーグ「勿論です!俺は魔王になって、悪魔を変えたいのです!」

 

レイ「⋯⋯⋯」

 

サイラオーグ「今の冥界では弱肉強食、それが間違っているとは言いません。

ですが!だからと言って、弱い者を虐げて良い理由にはならない!!。

強き者が弱き者を守る、それは種族など関係無く当然の事です!!」

 

そうか⋯サイラオーグ⋯⋯⋯実に残念だ⋯。

 

レイ「成程ね⋯下らない」

 

サイラオーグ「!?」

 

レイ「サイラオーグ・バアル、お前は実に下らない」

 

本当に残念だ。

俺に対してそんな綺麗事は―――響かない。



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【14歳】無価値と無能 ③

この情勢下で仕事、プライベート共に色々とあり、気付けば一年近く更新出来ませんでした。
待っててくれてる方が居るかは分かりませんが楽しんで頂けたら幸いです。
これからも完全不定期ですが、よろしくお願いします。


レイ「サイラオーグ・バアル、お前は実に下らない」

 

サイラオーグ「⋯何故⋯そう思うのか!」

 

何故だと?そんなの決まってるだろ。

 

レイ「ならば問おうサイラオーグ・バアル。

お前は今の台詞⋯それは今の冥界の、悪魔のあり方を否定しているのと同じだ。

それをお前は、今の冥界で好き勝手してる奴等に対しても正面から言い切れるのか?」

 

サイラオーグ「!、⋯⋯⋯」

 

俺の言葉にサイラオーグは目に見えて動揺した。

当然だな、今の冥界でそんな事を声を大にして言えば、自分勝手な権力者共が必ず裏で動くから、そしてこいつもそれを分かっているからだ。

 

レイ「ああ⋯その想いだけは認めてはやるよ、とても立派だ、今の冥界ではそう在ろうとする者の方が少ないだろう。

けどな⋯"無能"と呼ばれたお前一人で変えられるのならば、とっくに変わってる。

それでも、変わる事無く現状があるのは、誰もがそいつらの前では黙るからだ。

超越者たるサーゼクス・ルシファー、アジュカ・ベルゼブブ、この二人だってそうだ、転生悪魔に理解は示し、下にも目を向けてはいる。

だが、上の老害共に勝手を許し、大々的に調査もせず、決定的な証拠が無ければ罪も問わない、どころか動くことすらない。

結局は、純血同士での戦いはしたくないんだ、だから⋯見て見ぬふりをしている」

 

転生悪魔は元々種の数を増やすのを目的として考えられ、作られた物が悪魔の駒だ。

だから、それが火種になり純血で争い、数を減らす事を純血は良しとしない、だから黙る。

黙って⋯何もしない。

あの老害連中は自分の権力が侵されるならば純血だろうと殺そうとすると言うのに⋯。

 

サイラオーグ「⋯それは⋯」

 

レイ「だからこそ、俺みたいな奴が現れるんだ、俺はお前とは真逆の男だよ。

例えそれが無辜の民であろうと、無関係の連中を助ける気は無いし、どうでも良い。

そして⋯俺は俺の、セラフォルー様の、シトリーの、家族の敵となるのならば⋯誰だろうと殺すこの手で一切の容赦も慈悲もなく殺し尽くす。

純血、転生、人間、神であろうと、種族も性別も年齢も立場も関係無い、俺の大切な者に手を出す奴は皆殺しにする。

そして、こんな俺を作ったのは、今の冥界であり⋯先程言った老害共だ。

俺が気に入らない、ただそれだけで吹っ掛けて来る様な馬鹿共。

俺を利用しようと近付きあしらわれ逆恨みする馬鹿共だ。

分かるか?俺の苦労が⋯魔王と言い貴族と言い、どいつもこいつも甘過ぎるんだよ!!

過去の栄光に縋る事しか出来ねぇ癖に、自分が偉いと勘違いしてふんぞり返るしか脳のねぇ老害。

金と権力と少しの力さえ持っていれば何をしても許されると思ってる糞貴族共。

こんなどうしようもねぇクズ共なんざ一人残らず殺しちまえば良いんだ!!!!」

 

体面もくそも無い、俺は怒鳴り散らしていた。

 

なんなんだ⋯この感覚は⋯。

 

サイラオーグ「ッ!、⋯⋯⋯」

 

俺の言葉に、サイラオーグは歯を食い縛るだけで何も言わない。

 

ああ⋯そうか⋯なんとなく分かってきた⋯この感覚は⋯。

 

レイ「お前もだ⋯お前が俺の知らぬ所で理想を語るのも、魔王を目指すのも勝手だ、けどな⋯。

己が理想を声を大にして言えない様な奴が、圧力や権力を恐れて縮こまる様な奴が!俺の前で理想を語るな!!

 

俺はサイラオーグに対して殺気を出し、声を荒げ言った。

本当に不愉快で堪らない、こいつの様に少しの逆境を味わっただけで理想を語り、それが真理だと信じて止まない様な奴は―――

 

サイラオーグ「⋯⋯⋯」

 

レイ「はぁ⋯はぁ⋯はぁ⋯ああ、そうだな⋯漸く理解したよ⋯サイラオーグ。

俺はお前が―――大嫌いだ」

 

心底嫌いだ。

 

セバス「⋯⋯⋯」

 

見なくても解る、俺の叫びにセバスの目付きが変わった⋯いつでもコイツ等を殺れる様に。

 

レイ「断言してやるよ、今の冥界には上のクソみたいな連中の為の秩序は存在しても、その逆はあり得ない。

決して⋯下の者の為の秩序や正義なんて物は存在しない」

 

サイラオーグ「ッ⋯⋯⋯」

 

サイラオーグは今にも血が出そうな程に手を強く握り締めている。

 

レイ「話しは終わりだ、疾く失せろ」

 

俺は殺気を静め、落ち着いたと同時にそう言った。

これで話しは終わった⋯そう思ったが。

 

サイラオーグ「⋯⋯⋯」

 

サイラオーグは動かなかった。

 

レイ「⋯セバス」

 

セバス「はい」

 

レイ「車を回してこい」

 

セバス「すぐに」

 

「あ、あの⋯」

 

レイ「⋯⋯⋯どけ」

 

「!、⋯失礼致しました⋯」

 

俺が静かに、だが確かに殺気を込め言うと、執事は汗を垂らしながら道を開けた。

そして、俺は部屋を出る直前。

 

レイ「⋯⋯⋯何を思うかは自由だ、俺を殺したければ殺しに来れば良い。

それと⋯さっさと帰れ、シトリーの者達の邪魔になる」

 

俺はそう言って部屋を出た。

すると。

 

「随分と手厳しかったですね⋯」

 

レイ「立ち聞きとは良い趣味してるな。

それに、俺をこんな風に育てた内の一人が良く言うぜ」

 

「ふむ⋯私は君をそう育てた覚えは無いのですがね⋯。

それと、あれだけ大声で叫んでいれば、嫌でも聞こえて来ますよ」

 

レイ「⋯そうかよ、でも⋯もう諦めなよ、他人に感化される時期はとっくに過ぎた。

俺の生き方はもう⋯変わることなんて無い、それは⋯貴方も良く知っているだろう?」

 

「そうですね⋯」

 

レイ「それに、あいつには何もかもが足りてない」

 

「まあ⋯確かに、聞いていた限りでは、彼からは覚悟も決意もその程度と言えるほどにしか感じませんでしたね」

 

レイ「甘いんだよ、上部だけの悲劇を見て、それが全てだと思ってる。

だから、その更に奥深くの部分には気付けてすらいない」

 

「曲がりなりにも大王家の者ですからね、あの正義感の持ち主の耳に入れば面倒でしょうから。

そもそも入らない様に操作されているでしょうしね」

 

レイ「それでもだ、大王家の権限で調べれば直ぐに解ることだろ?

その時点で、あいつが怠ってる証拠だし。

俺が言った言葉も、所詮は上部の⋯自分が見ている"だけ"の部分に怒ってるとでも思ってるんだろうよ」

 

「⋯⋯⋯」

 

レイ「チッ⋯悪いな、セバスを待たせてるんだ」

 

「ええ、お気を付けて下さいね」

 

レイ「⋯うん」

 

「はぁ~⋯全く、相変わらず手の掛かる子ですね。

ですが、確かにその通り⋯彼をあんな風にしたのは冥界の汚さですからね⋯。

セラフォルー様とソーナお嬢様、どちらか片方でもいなければ⋯彼は間違いなく悪魔の敵になっていたんでしょうね⋯。

⋯仕方ありませんね、フォローくらいはしてあげますかね⋯」

 

 

 

次の日・・・時刻は昼過ぎ。

 

レイ「くぁ~⋯」

 

俺は休日と言う事もあり、昼過ぎまで寝ていた。

まあ普段はもっと早く起きているのだが⋯。

 

セバス「おはようございます、レイ様」

 

レイ「⋯ああ⋯ヴァーリは?」

 

セバス「ヴァーリ様はまだ就寝中です、流石に起こすのは酷かと思いまして⋯」

 

レイ「ああ⋯そうだな⋯そのまま寝かせてやってくれ、昨日のあれは100%俺が悪い」

 

セバス「はっ⋯」

 

昨日の俺は機嫌が悪く、家に帰った後⋯

ヴァーリを呼び出して軽く、いや⋯結構本気でやりあった。

そして、気付けばそのまま数時間が立った頃、ヴァーリが死んだ様にぶっ倒れ、俺も冷静になった。

ヴァーリには八つ当たりなんて悪い事をしたと思ったのだが、その戦闘を見ていた者達は口を揃えて「ヴァーリは終始笑ってた」と言っていたので別に良いだろう。

 

「レイ様」

 

レイ「ん?どうした?」

 

「なんかお客様が来てますけど」

 

レイ「誰だ?」

 

「えっと⋯サイラオーグ・バアルって名乗ってますが」

 

レイ「⋯⋯⋯」

 

「レイ様?」

 

レイ「⋯放っとけ」

 

「良いんですか?」

 

レイ「ああ」

 

「分かりました、皆様にもそう言っておきます」

 

レイ「頼む」

 

「はい」

 

――――――――――――――――――――

 

ヴァーリside

 

昼過ぎ

 

ヴァーリ「あ~まだ身体中痛てぇ⋯」

 

昨日は兄さんに鍛えて貰う筈だったんだけど⋯なんでかは知らないけど帰って来た兄さんは物凄く機嫌が悪く、鍛えると言うよりは殺し合いに近い事をした。

 

ヴァーリ「でも⋯久々に兄さんの本気の殺気を感じれたし、なにより楽しかった。

兄さんを怒らせた奴には感謝だな!お陰で倒れるまで兄さんとやりあえた⋯⋯⋯ん?

 

 

誰だ?アイツは⋯」

 

家の前に1人突っ立ってる男が見えた。

ここはシトリー領の中心地だ、だから家の前に誰かが突っ立てるなんて普通はあり得ない、シトリー領の者ならば迷わず門を叩くし、外からの客はまずこんな観光名所も何も無いところには入って来ない。

だからそういう奴は大抵が観光客を装った敵⋯兄さんに害を為す為に少しでも情報を持ち帰ろうとしている害虫だ。

 

セバス「ヴァーリ様」

 

ヴァーリ「ん?あぁ⋯セバスか」

 

セバス「はい」

 

どうするか⋯と考えながら窓からそいつを見ているとセバスが話し掛けてきた。

 

ヴァーリ「なんなのアイツは?」

 

セバス「昨日も申しましたが、彼は昨日レイ様に弟子入りしに来たのですが、レイ様の怒りを買い断られたのです。

名はサイラオーグ・バアルと言っていました。

何故今日もいらしているのかは解りませんが⋯レイ様からは放っとけとのご命令ですので、誰も相手にする事はありません」

 

セバスからそいつの名前がサイラオーグだと聞いて、俺は昨日のセバスからの報告を思い出した。

俺は普段兄さんが何をしていたのかなんて事は殆ど聞かないのだが、昨日は流石に聞いた。

なんせ昨日帰って来た時の兄さんは家の連中達でさえ怯える程の怒気を孕んでいた。

多少の殺気では眉一つ動かさないで笑ってられる家の連中が⋯だ。

だから俺は、聞くべきか聞かないでおくべきかと迷ってる周りを代表してセバスに聞いた「何があったのか」と、そして返って来た答えがコイツが兄さんを怒らせたと言うことだった。

その後に俺はすぐに兄さんに呼ばれて殺し合いとも言える修行が始まって、終わってからはついさっきまで寝てた、だから"アイツが兄さんを怒らせた"それ以上の事は何も知らない。

俺は一瞬、依頼を受けなかった兄さんに報復に来たのかと疑ったが、それにしては余りにも堂々としすぎてる。

 

ヴァーリ「ふぅん⋯良く来る気になったな?兄さんはもうアイツに会う気も、興味も無いんだろ?」

 

セバス「そうですね⋯」

 

俺の言葉に、セバスは頷いた。

 

ヴァーリ「⋯それで?アイツ⋯なにしたんだ?

いくら兄さんでも、平然と門前払いなんて普段なら言わないと思うんだけど」

 

セバス「サイラオーグ殿は⋯」

 

俺の質問に、セバスは昨日あった事の話し始めた。

 

 

 

ヴァーリ「あ~⋯成程な⋯それはキレるな」

 

セバス「はい」

 

ヴァーリ「よりにもよってそんな事をほざくとか⋯馬鹿じゃないのか?あいつ。

兄さんの前でそんな綺麗事を言って、兄さんが笑顔で受け入れ、支持し、手を貸すのなんてセラフォルー義姉さんとソーナ義姉さんだけだ」

 

セバス「そうですね」

 

ヴァーリ「あの二人に関してはどんな理想や夢物語を語ろうとも、兄さんにとっては愛しさしか感じないだろうからな。

現にソーナ義姉さんが掲げた目標も形は違えどサイラオーグと少し似てて、今の冥界では綺麗事って言われるだろうけど⋯」

 

セバス「はい、レイ様は全力でその夢を支えると笑顔で仰っておりました。

既に計画も考えられているとか⋯」

 

ヴァーリ「フッ⋯ハハハハッ!!だろうな、兄さんはあの二人にだけはどこまでも甘いからな」

 

セバス「はい」

 

ヴァーリ「まあ⋯さっきは兄さんの前で、とか言ったけど⋯結局は言葉の内容じゃなくて、誰が言ってるかが重要なんだよなぁ。

なにせ、あの二人がやることなら兄さんは全て、例外なく肯定する。

例えば、二人があいつと同じ内容を言ったなら、兄さんは意見を180°変えて、これまた笑顔で受け入れて全力で応援して支援するだろうな。

兄さんにとって二人の言葉は響く響かないなんて安い物じゃない、二人が望むなら全力を持って叶えるべき"絶対"であり"確定事項"だ」

 

セバス「そうですね」

 

ヴァーリ「そして、ソーナ義姉さんの夢が叶うのは約束されてるからな」

 

セバス「レイ様が支援なさるからですか?」

 

ヴァーリ「そう、そして⋯それを邪魔する奴が居るなら、兄さんは間違いなく戦争を始める。

ま、その戦争も半日足らずで終わるだろうけどな」

 

セバス「レイ様の勝利でですか?」

 

ヴァーリ「当然!!ただ⋯問題も無くはないけどな」

 

セバス「⋯それは?」

 

ヴァーリ「サーゼクス・ルシファーとアジュカ・ベルゼブブの二人だ」

 

セバス「超越者⋯ですね」

 

ヴァーリ「ああ、セラフォルー義姉さんは兄さんの敵には回らないからともかく、もう一人のファルビウム・アスモデウスは論外、他の連中からすれば強者でも、兄さんと比べれば⋯ただの雑魚だ」

 

セバス「では⋯お二人は?」

 

ヴァーリ「今の状態なら二人を相手にしても兄さんが勝つ!!確実に、けど⋯」

 

セバス「今の⋯とは?」

 

ヴァーリ「そのままの意味だ、だが⋯ここから先は俺も分からない。

なんせ⋯俺は三人の全戦力を、見た事すら無いからな」

 

セバス「なるほど⋯圧倒的なまでの滅びの魔力をもつサーゼクス殿と圧倒的な頭脳を持つアジュカ殿。

確かに、噂意外では見た事もありませんね」

 

ヴァーリ「そう⋯三人が全力でぶつかったらどうなるのか⋯正直見てみたいってのはある」

 

セバス「ですが⋯」

 

ヴァーリ「ああ、そうなったら⋯間違いなく、冥界の八~九割は消し飛ぶだろうな」

 

セバス「そうでしょうね」

 

ヴァーリ「まあ⋯でも、結局の所兄さんがキレた一番の理由はそこじゃないんだよなぁ。

その事に兄さん本人も気付いてないみたいだけどな」

 

セバス「と、仰いますと?」

 

ヴァーリ「兄さんがアイツを突き放したのはその甘い戯れ言じゃないって事だよ」

 

セバス「では⋯いったい?」

 

ヴァーリ「兄さんは単純に⋯アイツが嫌いなんだよ」

 

セバス「私の知る限りお二人に接点は無いように記憶してますが⋯」

 

ヴァーリ「ああ、接点は無いよ、ただ⋯兄さんの過去が⋯無意識にアイツを嫌ってるんだ」

 

セバス「無意識に⋯ですか?何故⋯?」

 

ヴァーリ「俺は義姉さん達の次に兄さんの事を良く知ってる。

でも、セバスや他の奴等は知らない⋯兄さんの昔の姿を、思いを。

そもそもだ、綺麗事は響かない?それは全然違う!兄さんにだって綺麗事は響くさ!ただ、その相手が義姉さん達二人に限定されてるってだけでな。

なにせ、兄さんも昔は⋯ほんの欠片程度の想いとは言え、連中に自分の事を認めさせようとしてたんだよ、アイツと同じ様に⋯」

 

セバス「!、そうなのですか?」

 

俺の言葉にセバスは眼を見開いて驚いた。

そう、兄さんは少なからず取り繕っていた。

 

ヴァーリ「ああ、でも⋯連中が認める事は決して無かった⋯。

兄さんがどれだけ努力をしても、それは下等な転生悪魔がする⋯無意味な努力として切り捨てた。

そうして数年が経って⋯ある戦いがあって⋯兄さんが負けて⋯結果⋯連中はほくそ笑んだ⋯。

ほら見た事か⋯転生が純血に勝てる訳が無い⋯と」

 

セバス「⋯⋯⋯それが、サーゼクス様とセラフォルー様が企画したと言う戦いですね?」

 

ヴァーリ「そ、二人は兄さんが負けることを前提でその戦いを仕組んだ、実際はそれで兄さんは凄いんだって事を周りに知らしめる為にやったことだけど⋯連中は戦いの内容じゃなくて、兄さんが負けたって言う結果だけを重視した。

そして、その後すぐに⋯兄さんは姿を消した⋯」

 

セバス「我々が修行に出ていたと聞かされた物ですね?」

 

ヴァーリ「ああ⋯兄さんは修行に行ってたって言ってるけど、俺には分かる⋯兄さんはあのまま帰る気なんて無かった筈だ。

でも⋯ある日突然、兄さんが帰って来た。

俺はその時本当に嬉しかった、帰って来ないんだろうなって⋯思ってたから。

でも⋯帰って来てから数日、兄さんと接してて⋯違和感に気付いた⋯」

 

セバス「違和感ですか?」

 

ヴァーリ「ああ、兄さんは⋯変わってたんだ⋯それまでの兄さんはさっき言ったように上の連中にも自分を認めさせようと、少なからず努力をしてた。

けど⋯帰って来てからの兄さんは認めさせるんじゃなく、潰すことを決めていた。

今まではセラフォルー義姉さんの女王として、どれだけ蔑まれても、罵倒されても、取り繕ってきた笑顔と態度⋯。

それを⋯帰って来てからはやめたんだよ、連中との関わりを最低限に抑えて、どうしても関わらなきゃいけない時も笑顔で対応する事と下手にでる態度をやめた」

 

セバス「それは我々が知っているレイ様ですね」

 

ヴァーリ「そ、今の兄さんだな。

そうやって兄さんと暮らしていく内に気付いた、兄さんは⋯諦めたんだって」

 

セバス「諦め⋯ですか?」

 

ヴァーリ「そう⋯諦めたんだ⋯認めさせる事を、認めて貰う事を⋯連中との良好な仲を⋯兄さんは―――諦めた。

でも、俺はそれで良かったと思ってる。

それ以降の兄さんは今までと違って自由に生きてるからな。

正直⋯それまでの兄さんは見ててキツかった、毎日ボロボロになるまで修行して、セラフォルー義姉さんの付き添いで仕事に行けばほぼ必ず殺意を剥き出しで帰って来てたからな。

今は何て言うか⋯そう、まるでコートでも羽織るように当たり前の様に殺気を纏ってるだけで済んでる。

だからこそ⋯兄さんはアイツ⋯サイラオーグ・バアルの事を、無意識の内に嫌ってるんだ」

 

セバス「⋯⋯⋯」

 

ヴァーリ「ハハハッ!!まあ⋯分からないよな、当然だ分かる訳が無い。

何せ、義姉さん達ですら⋯その事に気付いてないんだから。

かつて"無価値"と呼ばれた兄さんが連中を正そうとして、兄さんはそれが決して出来ない事として⋯諦めた。

それを今、"無能"と呼ばれたアイツが⋯蔑まれ、罵倒され、冷遇されても⋯アイツは口にしたんだ⋯兄さんが⋯自分が諦めた未来を。

だから、兄さんはアイツを認めたくないんだ自分が無理だと、諦めた未来を⋯同じ様に下に見られてる今もなお、それを口にしたサイラオーグ・バアルを兄さんは決して⋯認めたくないんだ。

つまり、アイツはもう一つの未来を歩んだ兄さんなんだよ、だから⋯それを認めるって事は⋯自分が切り捨てたもう一人の⋯"無価値"の自分を認めなきゃならないって事だから」

 

セバス「それはつまり⋯」

 

ヴァーリ「ああ、兄さんは自分が間違っていたって事を認めたくないんだよ、連中を改めさせる事⋯それは決して出来ない事なんだって⋯思ってるんだ。

そして、"無価値"の自分に出来ない事を⋯"無能"のアイツが出来る訳が無いって⋯な。

一言で言えば、子供が駄々を捏ねてる様な物だ、まあ⋯その事に兄さん本人はまだ気付いてないみたいだけどな」

 

セバス「では⋯レイ様がそこに気付いたのなら⋯」

 

ヴァーリ「アイツを弟子に取るだろうな、まず間違いなく。

そして⋯それはもうちょっとしたら⋯必ず来る未来だな、兄さんは自分の弱さを見て見ぬ振りするような弱い人じゃないから」

 

セバス「そうですね⋯レイ様ならば必ずや向き合い、理解し、受け入れる事でしょう」

 

ヴァーリ「当然だ!!俺の兄さんだからな!!」

 

ヴァーリsideout

 

――――――――――――――――――――

 

セバス「そういえば⋯まもなくあれが完成するそうですよ?」

 

ヴァーリ「ん?⋯ああ⋯セラフォルー義姉さんの⋯えっと、確か魔法少女?の⋯だっけ?」

 

セバス「魔法少女ミルキーの衣装ですね、先日「ようやく出来上がるってレイ君が言ってたんだぁ~☆」とセラフォルー様が嬉しそうに仰っていました」

 

ヴァーリ「セラフォルー義姉さんが兄さんに頼み込んで作ってもらってるってやつだよな?

細かい所のデザインや彩飾が大変そうだって服飾師が言ってたっけな⋯

まあ⋯兄さんは嬉しそうにしながら自分で作る気満々だったけど⋯でも、いくら兄さんが自分で作るって言ったって、結構掛かったよな?」

 

セバス「セラフォルー様の採寸、生地選び、裁縫に至るまでレイ様一人で行っておりますので⋯ですが⋯。

実は⋯ソーナ様の分も内緒で作っている様でして⋯」

 

ヴァーリ「⋯は?⋯⋯⋯それ⋯ソーナ義姉さんにバレたら⋯」

 

セバス「間違いなく怒られますね⋯お二人共」

 

ヴァーリ「あ~⋯今のは俺、聞かなかった事にするからな!とばっちりで怒られるのはゴメンだ!!

俺には何も話してない、俺も何も聞いてない、良いな!セバス!!」

 

セバス「畏まりました」

 

ヴァーリ「て言うか兄さんはどうやってソーナ義姉さんの採寸したんだ?

セラフォルー義姉さんなら喜んで測らせるんだろうけど、ソーナ義姉さんは絶対恥ずかしがるだろ」

 

セバス「椿姫殿から学校の健康診断の記録を貰ったとか⋯」

 

ヴァーリ「⋯⋯⋯取り敢えずそれも聞かなかった事にしよう」

 

セバス「畏まりました」

 

 

――――――――――――――――――――

 

サイラオーグside

 

あれから1週間程が経つが、進展は何もない。

それでも、俺は今一度レイ殿と話したくて、毎日通い続けていた。

 

そんなある日⋯

 

ヴァーリ「おい!」

 

サイラオーグ「ッ!なんでしょう」

 

俺は白髪の少年に声を掛けられた。

 

ヴァーリ「いつまでそうしてるつもりだ?」

 

サイラオーグ「せめてもう一度⋯レイ殿に会うまでは⋯」

 

少年の問いに、俺はそう答えた。

 

ヴァーリ「ふ~ん⋯毎日毎日良く飽きないな⋯他の連中はその無駄に高いプライドをちょっと傷付けてやればすぐに帰って行くのに」

 

サイラオーグ「そうですか⋯ですが⋯俺は⋯魔王になり⋯必ず―――「へぇ~」」

 

少年は呆れた様にそう言った。

そんな少年に俺はそうじゃないと、理想を口にしようとすると。

 

ヴァーリ「現時点で何も出来てないのにか?」

 

サイラオーグ「ッ!!⋯⋯⋯」

 

少年は冷めた目でこちらを見て、そう言った。

その言葉は俺の胸に突き刺さった、事実⋯その通りだから⋯。

 

ヴァーリ「ああ⋯うん、俺も兄さんと同意見だ、その思想は立派だし、お前の産まれやら生い立ちやらも聞いた、少なからず同情だってしてやるよ。

でも⋯冥界を変えようって言うお前が、身内すら変えられていないお前が何を言ってるんだ?」

 

サイラオーグ「それは⋯」

 

少年の残酷なまでの正論に、俺は何も言えなかった。

事実、俺は俺を疎む父と、弟相手に何も出来ていない。

 

ヴァーリ「はぁ⋯、サイラオーグ⋯お前は下らないな」

 

サイラオーグ「!、⋯下らない⋯それはレイ殿にも言われました⋯」

 

ヴァーリ「当然だな、俺の言葉の大半は兄さんの受け売りだし、生き方の根幹だって兄さんの影響を受けてるからな。

兄さんにとってセラフォルー義姉さんとソーナ義姉さんが絶対のように、俺達には兄さんが絶対だ。

だからこそ、俺達にとって兄さんの命令は魔王なんかの命令よりも重い」

 

サイラオーグ「⋯⋯⋯」

 

少年のその言葉には、確かなる決意があった。

本気で、魔王様よりも上だと認識しているのが分かる。

 

ヴァーリ「兄さんは失敗を許されなかった、少しでも失敗すれば、それを表に出す馬鹿がいた。

でも、いや⋯だからこそ!兄さんは止まらなかった!!

どんな壁に当たろうとも、止まらなかった!倒れなかった!!

だからこそ!!今の兄さんは最強の女王と呼ばれているんだ!!!

だからこそ、その程度の事を逆境だなんて思って悲劇のヒーローぶってるお前の下らない妄言なんざ兄さんには届かない。

そしてそれは俺達もだ、さっきも言った様に兄さんにとってセラフォルー義姉さんとソーナ義姉さんが絶対のように、俺達には兄さんが絶対だ。

兄さんは二人の為ならば全てを切り捨てる、例え友好を持ってるルシファーやベルゼブブだって例外じゃない。

誰かがお前を殺しに掛かる前にさっさと帰るんだな」

 

彼は最後にそう言って踵を返した。

 

だが、俺の脳裏には未だに少年の眼が映っていた。

あれは、決意を、そして覚悟を、決めた者の眼。

決して揺らぐ事のない、絶対を持っている者の眼だった。

彼に取って、そして⋯この家の者達にとってのそれは、レイ殿なのだろう。

 

そして、俺に足りないのは⋯理想に掛ける覚悟と揺らぐ事の無い絶対の決意なのだと―――そう気付かされた。

 

サイラオーグsideout



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