東方暗殺鐵〜リゾット・ネエロが幻想入り〜 (ガリュウ432)
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Episodio.1 幻想郷ーGensokyo
時系列としては、本編リゾット死亡後です。私が更新している承太郎の話とは別の世界線の話です。(承太郎編:EoH終了後 リゾット編:本編5部途中)
それでは本編をどうぞ
ふと私は、突然長い眠りから目が覚めたように目を開く。
開けた目に飛び込んでくる青空。
私は、自分の手を見る。いつもの手、《リゾット・ネエロ》の手だ。・・・そして、
だが、ここはなんだ。死後の世界なのか。・・・何も、わからない。
・・・死後・・・。そうだ。私はボスの手がかりをつかみ、正体まで暴ける筈だった。《私が勝っていた》戦いに・・・、わたしは・・・何故か敗北した。そこに、ボスや私、ましてやナランチャのエアロスミスも関係ないのかもしれない。
・・・運命に振り回された。だから負けた。それだけなのかもしれない。
倒れていた私は、体を起こす。かなりの重傷を負って死亡したはずなのだが、体に傷一つついていない。倦怠感すらない。
私は周りを見渡す。人が踏みしめたことで、草が禿げ、できた道の上に倒れていたようだ。・・・身ぐるみを剥がされてないということは、無事だったということか。・・・しかし、ここはどこなのだろうか。死後の世界・・・にしてはのどかだ。他に人がいればいいが・・・。
引き続き周りを見渡していたら、建物が並んでいるのが見えた。
私は、その建物が並んでいる方向へと歩き出す。
・・・だが、近づくにつれ、私は、建物の形状が変だということに気づく。
(イタリアにある建物の形状ではないな・・・。全て木造・・・。それに、電気も通っている様子もない。何かの文献で読んだことがある・・・。日本の古典的な住居に近いようだ。それに、町のような形状で並んでいる。村のようだ。人も沢山いる。ひとまず、何か知っていそうな奴に話を聞くとするか。)
村へと入り、何か知っていそうな奴を探す。
すると、一人の女が目に入る。
あまり豪勢とはいえない門の前で、多数の子供たちを笑顔で送り出している女だ。
「みんなさようなら!また明日も元気に来るんだぞ!!宿題忘れないようにな!」
・・・先生のようだ・・・。何か知っているだろう。
話を聞くとしようか。・・・子供たちが消えたタイミングでにするか。
「・・・よし、全員だな。さて、書類の整理でも・・・」
「ちょっといいか?」
「・・・ん、どうしまあああああぁああ!?」
女がこちらを振り向くとわかりやすく叫ぶ。
「どうした。何をそんなに怯えている・・・。」
「おびえるも何もッ、何でお前は人んちの門の上に座りながらポージングしてるんだ!?」
「む・・・、済まない。癖でな・・・。」
「どういうことなんだ・・・。(この男・・・、見慣れないな。服装と言い、顔といい・・・。何者だ・・・?)」
「まあ・・・、それはどうでもいい。ひとつ、聞きたいことがあるんだ。構わないか?」
向かいに居る女は私のことを怪しく睨みながらも頷く。
「・・・ここがどこなのかを教えて欲しい。」
「ここが・・・どこだ・・・だと?まさか君は・・・。そうだな・・・。私に着いてくるといい。詳しいことを話そう。」
女は目を見開き、驚く。
そして、私を見つめた後、家の中へと手招きした。
ー女の家ー
家の中に入ったあと、リビングのようなところに通される。
ふわふわした布のようなものが敷かれていて、そこに腰かける。
「さて、自己紹介からしておこうか。私は
上白沢慧音と名乗る女は自己紹介をする。やはり教師だったようだ・・・。上白沢慧音・・・か。
(彼女の名前からしてここは日本と見て間違いないだろう・・・。そして、私の素性を知る者もいないと見ていい。名前を伏せる必要も無いか。)
「私はリゾット・ネエロだ。これといって話すことも無い・・・。気がついたら、この村の近くの道に寝転がっていた。ここがどこなのかを教えて欲しい。」
「・・・やはり、君は外来人のようだな。」
・・・外来人?どういう意味なのだろうか・・・。
「ここは幻想郷だ。忘れ去られたものが訪れる世界・・・と言われている。」
「忘れ去られたもの・・・。死亡したものということか・・・?」
「そういう訳では無い。時代の流れによって、存在が淘汰されてしまったものが流れ着く。人間は人々に認知された状態で消滅すると、天国や地獄に行く。そうでなければ、幻想郷に行くと言われているみたいだ。」
「・・・そうなのか。」
「だが、たまにその法則に外れて、例外的に幻想郷に迷い込む者がいてな。それが外来人の言うわけだ。」
「・・・なるほど・・・。となれば私は外来人ではないのかもな。」
「・・・まさか君は・・・。」
「ああ。・・・既に死亡している。ここに来る前の世界でな。」
「・・・つまり、幻想郷の住人になるということなのか?しかし、・・・こんな突然のこと、あの賢者が許すだろうか・・・。」
なにか悩んでいるようだな・・・。・・・だが、一応聞いておくか・・・。
「・・・元の世界に帰れる方法はあるのか?」
「あるにはある。・・・が、元の世界の君の肉体は既に死亡しているだろう。そこがどうなるか、だな。・・・翌日、君を『幻想郷の住人として受け入れられるのか』この世界の賢者に聞きに行く。・・・今日は泊まっていくといい。」
「そうか。・・・突然の事ですまないな。恩に着る・・・。私の事はリゾットと読んでくれ。」
「気にするな。乗りかかった船だ。気にすることは無いさ、リゾット。そうだな、気軽に慧音とでも呼んでくれ。」
・・・幻想郷、か。どうやら、なるべくして流れ着いた世界のようだな。しかし、元の世界に帰れるかもしれない・・・だと?死亡した世界に・・・?そんなことが可能なのだろうか。
・・・ここで考えていても仕方の無いことか。
「そうだリゾット。ああ言ってなんだが、明日は寺子屋が午前授業なんだ。それだけ手伝ってはくれないか?」
「私に、教師をしてくれ、ということか?」
「ま、端的に言ったらそうだな。」
・・・ふむ、慧音には匿ってくれる恩もある。断る理由もない・・・か。
「いいだろう。・・・先に釘をさしておくと、私は教師などしたことは無いぞ・・・。」
「構わないさ。人手が足りないのでな。」
・・・あの子供の数で彼女1人でやりくりしているというわけか・・・。
負担が大きいな。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
窓の外を見ると日が暮れ出していた。慧音は晩飯の準備をしているようだ。
「そういえばリゾットは、日本人ではないんだよな?」
「・・・まあそうだが。イタリア人と言って、通じるか?」
「どんな国かは知らないが、まあ多少はな。料理が美味しいとの情報は知っている。日本食が君の口に合うかどうかが心配でな・・・。」
「なんだそんなことか・・・。気にしなくて構わない。出されたものは美味しくいただくつもりだ・・・。そう重く考えなくていいぞ。」
「そうか、ありがとうリゾット。そうだ、夕餉を作っている間、風呂に入ってきたらどうだ?湯船も溜めているから浸かるといい。」
風呂・・・か。しばらく入っていなかった気もするな・・・。
ありがたく入らせてもらうとするか。
「・・・ああ、感謝する。」
慧音に案内された風呂場へと向かう。
(・・・そういえば今日は妹紅が来る日だったな。)
「おーっす!慧音!来たぜ!」
玄関が開き、扉の奥から白髪の少女が現れる。
慧音の友人、
「いらっしゃい。妹紅。」
「慧音ー。わりぃが先に風呂入るぜー。」
「・・・。あっ!ちょっまっ・・・!!」
慧音は妹紅を止めたが、もう彼女には聞こえなかった。
「・・・まあアイツなら気にしないか・・・。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
慧音の言っていたとおり、風呂も湧いていたのでバスタブに入る。
「・・・ふう・・・。」
一応帰れる・・・のか。
・・・だが、帰ったところで何があるというのだ・・・?
ひょっとしたらブチャラティ達がボスを倒しているのかもしれない。いや・・・、『倒しているのだろうな』・・・。そこにもどったところで、あるのだろうか。俺の居場所というのは・・・。暗殺チームは壊滅。厳密に言えば私以外死んでいる。
・・・なってもいいのかもしれないな・・・。『幻想郷の住人』、とやらに。そして、それになるからには組織の一員になる・・・ということだろうか。・・・己の役割を見出す必要がありそうだ・・・。
「・・・さて、上がるか・・・。」
風呂場から上がろうとすると、ふと脱衣所に誰かいることに気づく。
慧音は・・・、夕餉を作っているはずだよな。・・・じゃあ、誰だ?
・・・まあ、誰でも構わないか。
扉を開けよう。
「ッ!?うえっちょっ!?」
目の前にいたのは慧音ではなく、白髪の少女。
全裸だ。・・・風呂に入るだろうからな。
「・・・どうした、何を固まっている。風邪を引くぞ。」
「け・・・。」
「『け』?」
「慧音が彼氏を連れてきてるぅぅうううう!?!?」
「・・・いやどういう勘違いだ・・・?」
to be continued…
リゾットは元の世界で1度死亡しているがゆえ、元の世界に戻ったとしてもあまりメリットがない。だから本人は戻るのではなく、幻想郷の住人として受け入れられるのか、そして、受け入れられた暁には自分には何が出来るのかということが重要なようです。
次回予告
Episodio.2 メタリカ〜metallica
リゾット・ネエロ/RISOTTO NERO
genere/uomo
スタンド/メタリカ
能力/相手の鉄分を体外に排出させたり、磁力で操ることが出来る
【破壊力 - C / スピード - C / 射程距離 - C(5~10M)/ 持続力 - A / 精密動作性 - C / 成長性 - C】
外の世界から流れ着いたと見られる外来人。イタリア最大のギャング、パッショーネの暗殺チームリーダー。常に冷静沈着で、感情をあまり表に出さないが、礼儀や義理には厚く、仲間思いな一面もあるなど、熱い男でもある。
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Episodio.2 メタリカーMetallica
物語はまだまだ序盤なので、特にストーリーの進展もございません。次回あたりからですかねぇ。
(リゾットの一人称を私から俺に修正致しました。ご指摘ありがとうございました。)
それでは本編をどうぞ
全裸の銀髪の少女に風呂場で遭遇した後、俺は風呂上がりで湯冷めするといけないのでひとまず服を着て風呂場から出た。
「慧音、今上がったぞ。」
「そうか。湯加減は悪くなかったか?」
「ああ・・・。とてもいい湯加減だった。」
「それは良かった。・・・リゾット・・・、ひょっとしてだが・・・。風呂場で『何かに出会ってはいないか』?」
何かに出会う・・・。
・・・多分あれのことを言っているのだろう。
「・・・脱衣所で全裸の銀髪の少女と遭遇した。」
「・・・やっぱり・・・。アイツの叫び声が聞こえたからな・・・。なんと言っていたかはわからなかったが・・・。すまなかったな、アイツは元々今日来る私の客人なんだ。悪いやつじゃあない。そろそろ上がってくると思うから、仲良くしてやってくれ。」
「ああ。もちろんそのつもりだ・・・。」
そんなことを話しているうちに、先程の少女が風呂から上がってきたようだ。
「うぃー慧音。上がったぞー。・・・お、彼氏さんもいるみたいだね。」
「お、妹紅。上がったか・・・ん?『彼氏』・・・?」
慧音が一体何を言っているんだというふうに首をかしげる。妹紅も目を見合わせて首を傾げる。
「え?彼は慧音の彼氏さんじゃないのか?」
「・・・・・・!?!?!?!?!?ななななななななな、何を言い出すんだお前は!?そそそそそそそんなわけないだろう!!」
「焦りすぎだぞ・・・。尚更怪しいな・・・!」
「いやだから!!!」
「・・・おい。」
リゾットはたまらず2人に声をかける。
「「はいっ!?」」
「・・・自己紹介をして欲しい。俺の自己紹介もちゃんとするから、お前のことをなんて呼べばいいのかわからない。」
誤解を解こうにも、彼女の素性もわからないので下手に話す訳には行かない。
「あ・・・悪い。あんたは?」
「俺はリゾット・ネエロ。一応外来人だ・・・。」
「私は
「だからそうだと言ってるだろ!!」
「落ち着け慧音・・・。俺はもちろん慧音の彼女じゃあない。なんなら今日が初対面だ。」
しかももし仮に彼氏だとすれば、友人が来る日に彼氏を連れてくるわけないだろう・・・。
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「よし、夕餉が出来たぞ。たんと食べてくれ。」
「お、珍しく肉もあるじゃん。どうかしたのか?」
「生徒の親が猟師でな。今日その方からいっぱい猪肉を頂いてしまって、どうしようかと思ってたんだ。」
猪肉・・・。猪。久しく食べるな。特にお気に入りのリストランテがあった訳では無いが・・・。そもそも稼ぎも少ない。待遇も悪かったのが暗殺チームであったからな・・・。
「よし、食べるか!」
慧音がそういうと、妹紅が
「いただきます!」
と、声を上げた。
・・・そうか。日本にはそういう文化もあるのか。
「・・・いただきます。」
「・・・驚いたな。君はイタリア人と聞いていたのだが。」
「・・・まあ。異国ではそこのやり方に従うのが一番いいからな・・・。」
・・・・・・・・・。
食事が終わり、一服している頃、妹紅が真面目な顔になり俺に尋ねてきた。
「ずっと気になってたんだけどさ、リゾットさっき、『一応外来人』って不思議な言い方してたけど、ありゃどういう意味だ?」
「・・・俺は死んでここに来た、という事だ。外来人は生存した物が来ることが普通らしいからな。」
「・・・そういうことか。ならリゾットって、
・・・やはり聞いてくるか。一応、釘をさしておこう。
「そうだな・・・。話しても構わないが・・・、慧音。もし、俺の過去を聞いて、気が変わったのなら、この家からたたきだしてくれて構わない。」
「・・・少なくとも一般人に認められるようなことをしていない・・・ということか?」
慧音が真剣な顔で聞いてくる。
俺はその質問に素直に頷く。
「ああ。・・・俺は、ここに来る前、とあるギャングの
「!?」
「!!・・・じゃあ、隠密のプロである君が、なぜ死んでここに来たんだ・・・?」
慧音からの指摘。これにも素直に答える。
「・・・俺は、いや俺達は・・・、絶対の王である、ボスを裏切った。我々の仕事と待遇の釣り合わなさから反逆を企てたのだ。」
「・・・だから殺されたというわけか?」
「・・・いや、俺以外のほかのメンバーは、俺たちとは違う、別のチームの人間に殺された。・・・皮肉な事に、そのメンバーを殺した奴らも、ボスを裏切っていたみたいだがな・・・。」
「じゃあ、お前は・・・。」
妹紅が眉を下げておずおずと聞く。
「・・・俺は、そのメンバーを殺した奴らを追っていたら、幸運にもボスに出逢えた。・・・そして、ボスをあと少しで殺せる・・・というところで、相手の術にかかり、殺されてしまった。・・・そして、気がついたらここにいた。」
「・・・そう・・・か。」
慧音は顔を俯かせる。
妹紅は何も言わずにこちらを見ている。そして、しばらくして、口を開く。
「つまり・・・、仕事以外じゃあ殺しはしたことないってことか?」
「・・・?まあそうだな・・・。あまり仕事以外では実力を見せることはしない・・・。いつ、足がついてしまうか分からないからな。」
「・・・なら、いいんじゃねえか?」
「まあそうだな。・・・君がどこでも人を殺していたような大悪人なら追い出すだけじゃなくてここで始末していたかもしれないが、君はいい人間のようだ。・・・信用していい。」
信用・・・。信用か。ある意味、我々暗殺チームが1番欲しかった言葉なのかもしれない・・・。まさか、こんな所でかけられるとは・・・。
「・・・そうか、恩に着る・・・。」
「ああ。もとより、君を歓迎する気でいるんだ。そう気負いしないでくれ。」
「私も突然聞いて悪かったね。リゾットが極悪人だったらどうしよかと思っていたんだ。」
「・・・一応、悪人ではあるんだが・・・。」
「根はってことさ。リーダーになれるってことは、それなりに人格者ってことだからね。それに、チームメンバーを殺した相手を追っていたということは『少なくともチームメンバーに思い入れがあった』んだろ?復讐の意志はあるないに関わらずだけどね。」
そこまでよく言ってくれるとは・・・。
・・・だが、その通りなのかもしれない。メンバーが日に日に減っていく日々。この世界に入った発端も元は復讐からだ。もしかしたら少なからずあったのかもしれないな。しかし、暗殺者が復讐者になったからこそ・・・、敗北したのだろうか。・・・まあ、今となってはどうでもいいことか。2人は俺を受け入れてくれるらしい。有難い話しじゃあないか・・・。
慧音が思い出したように立ち上がり、押し入れから服のようなものを取り出す。
「・・・そうだった。リゾット、部屋着を渡しておくよ。いつでもその服じゃあ窮屈だろう。」
「・・・この服は?」
「浴衣といってな。日本の固有の衣服だ。イタリア人にとっては馴染みがないかもしれないが・・・。まあ、落ち着けると思うぞ。」
慧音は笑顔で渡してくる。
しかし開くとその服は、薄いコートのようだった。
これを下着の上から着るというのか?・・・もろ見えじゃあないのか?
「慧音ー。渡してもリゾットは着方が分からないと思うぞ?もろ見えじゃあないかって顔してるぞ。」
「・・・ああ。情けない話だが、着方がわからない。」
「・・・仕方ないな。ほら、袖を通して両腕を上げてくれ。」
袖を通して両腕をあげると、慧音が襟を正し、紐を結び出す。
ガタイのいい女とは思っていたが、こう近くで見ると、背は低いんだな。
「・・・君が高いんだろ。」
「・・・なぜ心がよめた・・・。」
「ある程度わかるさ。」
ふと気づくと、妹紅がニヤニヤとしている。
「おい妹紅。何をニヤニヤしている・・・。」
「いやーやっぱり2人はさ、デキてんじゃないの?彼氏彼女超えて夫婦みたいだよ?」
ゴッ!!!!!!!!!!!!!!!
とんでもない音が家に響く。
さっきまで紐を結んでいたはずの慧音が、高速で妹紅の目の前に移動していた。そして、さっきまで笑顔だったはずの妹紅が倒れている・・・。
「・・・今、頭突きしたか・・・?いや、頭突きの音だったか・・・?」
「・・・口は災いの元という事だ。」
慧音は「お前もなんか言ったら同じ目に遭わせる」と言わんばかりの目線を送ってきたので俺は口を
・・・慧音の前ではあまり下手なことを言うのはよそう・・・。
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着付けが終わり、着心地を確認する。
・・・落ち着けていい服だ。かなりスースーするが・・・。
「今日はもう遅い。明日もあるし、2人とももう寝るといいだろう。」
「・・・そういえば、明日妹紅は何をするんだ?」
「私も寺子屋の手伝いかな。まあ私は学があるわけじゃないから子供たちと遊んでやってるだけだけどね。」
「まあ子供たちのいい息抜き相手に放ってるさ。」
教師ではないんだな・・・。
イメージ通りに近いが・・・。
「・・・リゾット、失礼なこと考えてないか?」
「考えてない。というかなぜお前達2人は心を読めるんだ。」
談笑を交わし、もういい時間になったので、寝床に入る。
慧音が用意してくれた寝室に入る。日本ではベッドではなく、床に直に引く布団というものが敷かれていた。床も畳という植物でできた床で柔らかく、過ごしやすい。
特に動いていた訳では無いが、今日はよく眠れそうだ・・・。
ー翌日ー
慧音が朝食を用意している音、そして朝日の光が差し込み、起きる。
薄暗い光じゃなく、明るい朝の陽射しを浴びて起きるのはかなり久しぶりかもしれない。
身体を起こし、襖を開ける。
「お、おはよう、リゾット。朝餉ならできているぞ。顔を洗って、食べるといい。」
「ああ、ありがとう。」
あっさりとした朝食のメニューを全て平らげ、いつもの服に着替える。まだ時間に余裕があるのか、慧音も寛いでいる。
「いつ頃出発するんだ?」
「30分後くらいだな。とはいっても、寺子屋まではすぐさ。妹紅ももう起きるはずだろうし。」
そういうと、慧音の後ろの襖が開く。
「ふぁ〜・・・おはよう二人とも・・・。」
「おはよう妹紅。すぐに顔を洗ってこい。飯はできてるぞ。」
「ああ、ありがとう。」
「・・・いつもこんなふうなのか?」
「まあな。しょっちゅう妹紅も家には来るが、あんな感じだ。悪い気はせんがな。いつもは1人だから、人が増えるのは楽しいものだ。」
慧音が微笑みながら喋る。
その後、顔を洗って帰ってきた妹紅が物凄い勢いで朝食を食べ終えた。・・・見ているこっち側が苦しそうになるくらい早かった。
3人の出発準備が終わり、玄関を開ける。
朝早いが、人が沢山歩いていた。・・・朝市で賑わっているのか・・・。
「さて、向かうか。」
「はいよー。」
寺子屋の方面に歩き出す。場所は慧音の家の裏手、いわゆる村の大通りにあるみたいだが。慧音の言う通り、そこまで遠くはなかった。というよりかはかなり近い。
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「さて、もうそろそろ授業が始まる。私は教材の準備がまだあるから、2人は教室の前で待っていてくれ。」
言われた通りに、妹紅と俺で教室の前で待つ。
教室の前に立つと、中から賑やかな声が聞こえる。
「・・・そういえばリゾットは、教師の経験はあるのか?」
「・・・全くないな。まあ、教えるくらいならなんとかなるだろう・・・。」
かと言って緊張してないわけじゃないし、不安もある。・・・何せ、今までしたことがないからな、教師というものを。
「すまない待たせたな。じゃあ、入ろうか。」
そう慧音がいい、心の準備が済まないうちに障子を開ける。まあ、なるようにはなる・・・か。
「みんな!おはよう!」
「おーっすお前ら!!」
慧音と妹紅が挨拶を言いながら入る。・・・俺も、軽い会釈をしつつ入る。
「「「「「おはようございます!!」」」」」
「えーみんな、今日は私と妹紅先生ともう1人、お手伝いで来て頂いている人がいる。自己紹介してもらうから、よく聞くようにな!」
そのように促され、教壇に立つ。
「・・・今日、教師として入るリゾット・ネエロだ。よろしく頼む。」
「「「「よろしくお願いしまーす!!!」」」」
子供たちが大きな笑顔で返事をする。
これが・・・触れることのなかった世界・・・か。
よく見るとちらほらと羽根の生えた少女がいるな。
昨晩慧音が言っていた『妖精』というやつか。
『この幻想郷には、人間だけでなく多種多様な種族がいる。妖怪や妖精など・・・。ただ、意思疎通はしやすいと思うから気にしなくていい。』
たしかに、こう見る分には健気な子供と変わりはない・・・。
妖怪や妖精と聞いてどんなものかと少しばかり不安だったが、これも解消されたな。
ー理科の時間ー
「この世には『磁石』というものが存在する。これは同じ磁石をくっつけたり、
「せんせ!なんでその石、赤と青に塗られてるの?」
1人の生徒が聞く。
「そうだなー。理由としては極をわかりやすくするためだな。」
「・・・きょく?」
「じゃあよーく見とくんだぞ。」
磁石・・・か。もしかしたら、この世界ではスタンドは不必要なのかもな。戦う必要などサラサラないのだろう・・・。
「赤と青を近づけると・・・。」
カチンッ
「すごい・・・!落ちない!!」
女子生徒が驚く。
「でも、同じ色どうしだと・・・。」
「あれ・・・くっつかない?」
「何かを挟んでいるみたいだ・・・。」
生徒がざわつく。
「こんなふうに、磁石は不思議な物体なんだ。赤をN極、青をS極というぞ。磁石を水に浮かせると、赤の方は必ず北をむく。方角を調べるのにも使われているぞ。」
「リゾット先生、ちょっといいですか?」
授業を見ていると、名前を呼ばれ周囲を見渡す。
「・・・お前は・・・。」
気づいた方向には、緑髪をサイドテールでまとめた、羽根の生えた少女だった。俺は先程慧音から渡された座席表を見る。名前がわからないからだ。
「大妖精だな。・・・どうかしたか?」
「ちょっと気になるところがあって・・・。なんで、磁石ってくっつく時と離れる時があるんですか・・・?」
おどおどとした様子で聞いてくる。
俺は、大妖精の横に座り、解説を始める。
「・・・なるほど。こういう時は、図を書いてみるとわかりやすいぞ・・・。」
俺は、大妖精に1本の棒磁石を描かせた。
そして、そこに線を付け足していく。磁力線だ。
「・・・この矢印を向いている方向に、力が働いているという訳だ。着いてこれているか?」
「は、はい!分かります!」
「そして、これを同じ方向に二本並べると、S極が受ける磁力線は相手の磁石のN極からの磁力線と同じ方向に向いているだろ?だから、自分の方向に、相手の磁石を引きつける・・・という訳だ。・・・分かったか?」
「・・・はい!分かりました!ありがとうございます、リゾット先生!!」
大妖精が笑顔で礼を言ってきた。
・・・どうやら、上手くいったようだな。
どうなることかと思ったが、教師として上手くやれているのではないだろうか。
その時、何者かが廊下をドタドタと大きな音で歩いてくる音がした。そして、教室の障子が勢いよく開く。
「ガキドモォッ!うるせぇんだよっ!!!」
出てきたのは小太りの青年。
・・・どの世界でもあんな落ちに落ちた人間というものはいるようだな。ギャングの俺が言うのもなんだが。
「なんだ貴様は!」
「センコーは黙っとけ!おいガキども!!テメーらギャーギャーやかましいんだよ!!迷惑なんだよ!」
「ひぃっ・・・!」
子供たちが全員後ずさる。
先程まで教えていた大妖精を自分の後ろに隠れさせる。
「・・・おい、止まりな。お前なにもんだ。」
妹紅が子供たちの前に立ち、男に聞く。
「へへ、ただの人間さ。人間様さ!テメーらガキどもがうるせぇから数を減らしに来たんだよ!いるのは僕みたいに未来を見据えた偉いやつが必要なんだよ!」
「・・・お前・・・!」
「手ぇ出すの?僕はこの里の幹部の息子だよ?センコーに手ぇ出されたって父さんに言って、こんな寺子屋潰してやることも出来るんだぞ!!」
「・・・そんなくだらねぇ事のために・・・!」
「妹紅!・・・やめろ。」
「だけどー」
「・・・妖怪の私が出ると、面倒なことになる・・・。妹紅も人間だが・・・、蓬莱人のお前が手を出すと同じことになる・・・。ッ・・・。」
「ひゃあーははははは!!!これで心置き無くガキどもを減らせるね!さぁ・・・1人ずつ刺し殺してやるっ!!」
「・・・お前には手を出せないかもしれんが・・・。・・・だが、生徒達には手出しさせん!!!」
男がナイフを近くの子供に突き刺そうとしたその時、慧音が目の前に飛び出す。
「ッやべ・・・!!」
「ッ!『メタリカ』ッ!」
俺は咄嗟に叫ぶ。男の手にあるナイフは慧音の胸を突き刺す寸前で止まる。・・・間に合ったか。
「・・・?(今・・・、僕、ナイフ止めたっけ?まあ、いいか。)センコー。危ねぇじゃん。僕はあんたには興味ないの。ガキを殺すことしか目的じゃないの。いいから黙ってどけっ!!!」
もう一度男はナイフを振りかざそうとしているな。・・・だが、もう・・・。『遅い』。
「っ!?あれ!?なんで!!ナイフがっ!?持ち上がらないんだ!?どうして『空中で静止してんだ』ッ!?」
男はついナイフから手を離す。
・・・しかし、ナイフは『地面に落ちなかった。』
「・・・何が起きてるんだ・・・?」
慧音も、目の前で起こっている事態を受け止めきれない。
妹紅も同じ状態だ。
男が焦っている。今がチャンスだろうな。
俺は男の方へと歩き出す。
「リゾット・・・先生?」
後ろにいる大妖精が、びっくりした目でこちらを見つめる。
「・・・大丈夫だ。慧音も、俺に任せてくれ。」
「・・・リゾット・・・。」
「慧音と妹紅が『人間でない』ということが今のでわかってしまったが・・・。そんなことは関係ない。私も似たような状況だったのだからな。優しさに、『そいつが何者か』なんて無粋な言葉は要らない・・・。そうだろう。2人とも。」
「・・・。」
「なんか新しー奴出てきたじゃん・・・。まさかッ!こいつがこのナイフを!?」
(ッ・・・!まさか、これがリゾットの・・・!?)
「・・・恩人を助ける為ならば、俺は実力を出すのは厭わない。・・・覚悟するといい。お前に勝ち目はない。」
「舐めやがって・・・!別にナイフなんかなくてもッ・・・!」
「・・・みんな、授業の続きだ。」
俺の一言に全員が目を丸くする。
・・・ま、無理もないだろう・・・、
「リゾットお前、なにを・・・!!」
「磁石というものは、別に磁石とだけくっつくものじゃあない。・・・実は磁石はあるひとつの金属を引きつける。・・・それは鉄だ。」
俺は、男から目を離さずに男に近づきながら話す。
その間に、アイコンタクトで妹紅と慧音に子供たちを後ろに避難させる。
「・・・鉄・・・。」
「あの鍋とかに使われてるやつのことー?」
「こんな時にも質問するのかよ!」
子供たちの変なまじめさに妹紅は呆れる。
「そう、その鉄だ。そして、磁石にひきつけられているものは、『必ず磁石の方を向く』。」
そう言いながら、男の目の前にあるナイフを指さす
そのナイフはしっかりと空中で固定され、慧音がいた方向に刃先は向いておらず、『俺に向かって刃先が向かっていた』。
「なっ!?(まさか・・・、リゾットに向かって磁力が働いているというのか!?)」
「そして鉄は、磁力を受けると・・・。」
メタリカをさらに発動させ、ナイフをこちらに飛んでこさせる。
「なっ僕のナイフがっ!!」
しっかりと柄を掴み、能力を解除する。
「・・・このように磁石に向かってくる。・・・俺のは簡単に言えば、磁力を操る能力を持っている。何の罪もない子供を狙うお前に使うには少しばかりもったいない能力だが・・・。」
「てめェ!どーいう仕掛けなんだよォーッ!!意味わかんねーことぬかしてんじゃあねーぞ!!」
「・・・これが、『スタンド』というものだ。」
「・・・スタ・・・ンド?」
妹紅が聞いたことないというふうに首を傾げる。
「スタンドは精神力が具現化したものだ。攻撃力を持ち、・・・特殊能力も持つ。その特殊能力がこれということだ。」
「・・・ハン!要は磁力を発生させてるだけだろ!?じゃあ近づけば問題ないってことだなっ!!」
「・・・自ら射程距離に入ってくるか・・・。無知は・・・罪だな。」
俺はメタリカを発動させる。
今回は磁力じゃあない。・・・男に対してだ。
「・・・!?ぐぇっ!?」
男は腕に激痛が走り、腕を見る。
右腕の内部にくっきりとナイフの形が浮かび上がっているのだ。
「ぎゃああああああああっ!?ぼ、僕の腕の中にッ!?なんでナイフが入ってんだよォーーー!?」
男は焦り、右腕を振り回す。
右腕を振り回した影響で、内部からナイフが突き出る。
「イッデェエエエエッ!?!?」
「・・・どうした。俺を殴るんじゃあなかったのか。腕にナイフを入れ、突き出させるなんて器用なマジックをするじゃあないか。」
慧音は目の前で起きている状況を受け入れられなかった。
さっきまでナイフは『1本』だった。男が持ってきていたナイフしか無かったはずだった。そのナイフはいま、リゾットが握っている。筈なのに、今は『2本ある』。男の腕から突出しているのだ。
(どこから・・・、出現したと言うんだ・・・?)
「リゾット先生つよーい!!」
「カッコイイー!!」
「あたいの方が強いけどね!!」
「リゾット先生・・・!」
「・・・子供には見せられねぇ惨状のはずなのになんで子供はこんなに盛りあがってんだ・・・。さすが幻想郷。」
妹紅も再び呆れる。
だが、リゾットにこんな能力があるとは、つくづく不思議な男だと思わされた。
「・・・3秒だ。」
「あ・・・?」
「3秒以内に今までの非礼を子供たちと2人に謝れば能力を解除し、治療してやろう。・・・だが、言葉がなかった場合はもう少しきつい罰を受けてもらおうか。」
「はっ・・・!そんな情け、僕にはいらないんだy」
「3」
「・・・ちょ、嘘だよね?」
「2」
「嘘だといえ・・・よ・・・!」
「1」
「ヒイイ・・・ッ!」
「ゼ」
「ひいいいいいい!!ゴメンなさい!!皆さん、本当に申し訳ありませんでした!!!仕事が上手くいかず、むしゃくしゃしてやったんです!!本当に申し訳ありませんでした!!」
悪足掻きなどせずにそうそうに謝ればいいものを。
ギリギリまで持ちこたえようとしても意味は無いだろう。
「・・・まったく。生徒であれば頭突きをしていたが・・・。どれ、腕を見せてみろ。」
「うぅ・・・、ごめんなさい・・・。」
男は腕を見せる。・・・だが、ナイフは消えていた。
「・・・あれ?ナイフ・・・は?」
「もう消しておいた。能力で出現させたものだからな。俺が操っているものだから、消せるのは容易い。」
「・・・リゾット、お前の能力、・・・一体なんなんだ・・・?」
「・・・後で詳しく話す。今は手当をしてやれ。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
男は手当が終わるとしおらしくなり、妹紅に連れられ寺子屋を去っていった。
そして、教室では・・・
「リゾット先生!あれどういう能力なんだ!?」
「せんせー!もっかいやってー!!」
「・・・お、おい、お前ら・・・。」
「ふふ、懐かれたみたいだな。」
「あんなおぞましいもの見せられて、どうして懐けるんだ・・・。」
子供たちに囲まれていた。・・・しかし、どうやらこの世界ではスタンドこそないようだが、スタンドの『能力』に通ずるものはあるようだな・・・。
「リゾット・・・。そろそろ聞かせてもらおうか。」
「・・・そうだな。子供たちも聞いておいた方がいいかもな。少しばかり、俺の能力は危険なところがある。聞いておいてくれ。」
そう忠告を受け、全員息を呑む。
そこまで身構えなくてもいいが・・・。
「さっきも言ったが、俺はスタンドというものを持っている。」
「まった、そのスタンドというのは・・・。」
「・・・一応俺のスタンドはこんなものだ。」
全員に手のひらを見せ、そこから『メタリカ』を出現させる。
『ロォォォォォォォォド・・・。』
「・・・なんだ・・・これは?」
「なにこれー!」
・・・スタンドはスタンド使いにしか見えないはず。
幻想郷では見えるようになっているのか?
「ちょっと可愛いかも!」
・・・そうか。メタリカは可愛いのか。
「これがスタンドというものなのか?」
「ああ。俺のは群体型といって、複数体居るが、本来は1人1体がスタンドのルールだ。俺のは所謂特殊型だ。」
「・・・そしてそいつの能力だが、『磁力』と言っていたな。」
「・・・ああ。磁力を発生させる。だが、こいつはそれだけじゃあない。鉄を作り出せる。」
「・・・鉄を?」
「そうだ。人間の血液には『鉄分』が含まれている。それを使って鉄を作り出しているんだ。・・・あのナイフはあの男の鉄分から作り出したものだ。勿論、作り出したものなら鉄分に戻すことも出来る。」
「・・・なるほどなー。つまり、まさに暗殺向けの能力ってことだな。」
妹紅が呟く。
子供たちには聞こえてなかったみたいだが、俺は静かに頷く。
「リゾット先生ってすげーんだな!!最初は怖そうだなって思ったけど、俺たちを守ってくれて、ありがとう!!」
男子生徒が笑顔で礼を言ってくれる。
それに続き、生徒のほとんどが次々と感謝を述べる。
ふと、大妖精と目があい、大妖精も照れくさそうに頭を下げる。
俺自身、こういうことに慣れてないせいか、俺も微笑み返すことしか出来なかった。
「・・・あれ。ふぇえっ!?リゾット先生!メタリカちゃんが!!」
大妖精が叫び声を挙げる。
「なんだ!?どうした!!」
「私のハサミの形を変えちゃってますー!」
「・・・メタリカ、生徒を困らせるんじゃあない・・・。」
まったく・・・、未だ動揺がスタンドに現れやすいな・・・。
to be continued…
バトルといえばバトル、リゾットのスタンド初出現編でした。2人目のヒロイン、大妖精の登場回でもあります。
一応、リゾットさんは動揺は表情に現れにくいが、スタンドに現れやすいという設定にしています。
ー次回予告ー
Episodio.3 幻想郷の賢者ーSaggio di Gensokyo
Introduzione del personaggio
上白沢慧音/KAMISHIRASAWA KEINE
ー知識と歴史の半獣
性別/女性
種族/ワーハクタク
能力/歴史を食べる程度の能力、歴史を創る程度の能力(獣時)
危険度/低 人間友好度/高
リゾットを匿ってくれた人間と妖怪のハーフの女性。
面倒見がよく、初対面のリゾットにも分け隔てなく接する。
寺子屋で教師をしており、説教時にあびせられる頭突きの威力は相当。1番くらっているのは妹紅。
藤原妹紅/FUJIWARANO MOKOU
ー不老不死の竹林案内人
性別/女性
種族/人間(蓬莱人)
能力/老いることも死ぬこともない程度の能力
慧音の親友。妹紅自身も慧音の事を自分の理解者だととても好意を持っている。初対面のリゾットにもとても良く接してくれる。普段は、『迷いの竹林』の案内をしている。
大妖精/DAIYOUSEI
ー名無しの大妖精
性別/女性
種族/妖精
能力/不明
寺子屋の生徒。授業中、リゾットにもわからない箇所を尋ね、その直後に起きた事件から、自分のことを守ってくれたリゾットのことを意識するように。穏やかな性格で、妖精の中では知識もある。寺子屋では優等生のようだ。
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Episodio.3 幻想郷の賢者ーSaggio di Gensokyo
序盤の中盤といった辺りですね。幻想郷の賢者との邂逅です。果たして、リゾットという男は、『幻想郷の住人』として認められるのでしょうか。
それでは本編をどうぞ。
その日の授業を終え、再び慧音の家に戻ってくる。
「リゾット、今日は本当にありがとう。」
「・・・なに、気にすることは無い。ただお前に恩返しをしたかっただけだ。」
「そう・・・か。なんというか、お前らしいな。」
「・・・その俺らしさというのがわからないが、感謝として受け取っておく。」
「ふふ、そういうことにしておいてくれ。」
慧音がにこりとしながら話す。
ふと気づくと、やはり妹紅がにやにやしていt
「おおおおおおっっ!?落ち着け慧音ッ!!私はまだなにも言っちゃあいない!!頼むから頭突きはやめてくれっ!!」
またとんでもない速さで慧音が妹紅の前に移動していた。
だが、妹紅も素早く反応し、慧音の頭突きをすんでのところで止めていた。
「お、おい・・・、2発目はさすがに・・・。」
ゴンッッッ
「アァアアアアァアアァアア⤴︎ ⤴︎⤴︎」
・・・遅かったか。
と言うよりなんだ今の断末魔は。女子が出していい声じゃあなかったぞ。
「・・・大丈夫か、妹紅。」
「で、デジャブが酷い・・・。」
「・・・まあ自業自得だろうな。俺には擁護のしようがない。俺はまだあの頭突きは喰らいたくない。お前と違って中身が出そうだ。」
「お前なぁ・・・。私のことを不死身みたいにいうなよ・・・。」
「実際不死身だろう。」
・・・!?慧音は今なんと言ったんだ?『実際不死身』・・・?妹紅は不死身だと言っているのか!?
「・・・そういえば、私たちの能力は説明していなかったな。幻想郷では、ある程度の実力を持つ者には、能力を持つとされている。そして、能力を持つ者は、この世界の記録者によって書物に記される。」
・・・だから子供たちはひっきりなしに俺の『能力はなんだ?』と聞いていた訳か。
「・・・ならば、お前達2人の能力はどういうものなんだ?」
「じゃあ先にわかりやすい私から。さっきもちらって聞いたと思うけど、私は『老いることも死ぬこともない程度の能力』だ。まあ、まとめれば不老不死だな。あと、この能力とは別に、炎を扱えるよ。」
「不老不死・・・か。やすやすと信じることは出来ないが、おそらくマジなんだろうな・・・。」
「ああ、大マジだ。たとえ体がバラバラになっても、爆発四散しても、気が付いたら全部復旧している。」
にわかには信じ難いが、ここは信じるしかない・・・か。
「慧音の能力はどのようなものなんだ?」
「私は、いわゆる人間と妖怪のハーフでな。人間状態と妖怪の姿であるハクタク状態で能力が変わるんだ。今の人間状態では『歴史を食べる程度の能力』というものだな。」
歴史を・・・食べる?
消し去ってしまう、ということか?あまりピンと来ないので、そのように質問を投げかけると、
「ああ、いや、本当に消し去ってしまう訳じゃあない。実質的には『歴史を隠す』という感じだな。例えば、この里があったという歴史を『隠せば』ここの里は一時的に消え去る。私が能力を解除した瞬間に、再び歴史が元に戻るという訳だ。」
「なるほど。歴史を隠すことで、存在を一時的に消し去ることが出来るというわけか。・・・じゃあ、妖怪のときではどうなるんだ?」
「逆になるな。『歴史を創る程度の能力』になる。その名の通り、新たな歴史を作り出すというわけだ。とはいえ、改竄などをしているという訳ではなく、歴史というものは誰かが纏めなくては歴史とはならない。その任務を私が請け負っているという訳だ。ハクタク化するのも満月の時、ひと月に1回だから、自分で言うのもなんだが、かなりの激務だな。ちなみに、未来の歴史もある程度知ることが出来る。」
「・・・なるほど。かなり突飛した能力であまりちゃんと理解出来ていないかもしれないが・・・。一先ずは歴史を一時的に消し去る能力と、新たに歴史を作る、『出来事を纏める』という能力のふたつを持っているという訳だな?」
「まあそこまで理解出来ていたら十分だな。」
なるほど・・・。つまり、ここから先、実力者と戦うことになってしまうことになれば、相手の能力を見極めることが重要になってきそうだ。メタリカが通用するのかどうか、ということも確認しながら立ち回る必要が出てくるな・・・。
「君も十分実力がある。能力名を付けてもいいかもしれないな。」
「ならば俺は『鉄を操る程度の能力』とでも言っておくか。」
「それ、いいじゃん。だけど、戦うってなったらそのスタンドが種だってことをバレないようにして立ち回らないとな。」
妹紅からの助言。
そうだ。そのことも重要だ。
それについて聞こうとしたが、昼飯も済ませ、賢者の元へ向かうとのことなので、行き道で聞くことにした。
ー野道ー
「この時間なら、昼過ぎくらいには着けるだろうな。」
「ん、それくらいならいい時間だな。」
妹紅と慧音が到着時間について話している。
俺は、2人に
「慧音、妹紅。聞きたいことがあるんだが、いいか?」
「ん?私は構わないが・・・。」
「私もいいよ。」
了承を得たところで、道を進みながら聞く。
「・・・2人は俺の『メタリカ』が見える・・・んだな?」
「・・・?ああ。たしかにリゾットが手のひらからあの不気味とも可愛いとも言える謎の生物の大軍を出していたのは確認したぞ。」
・・・そうか。やはり、慧音から見てもメタリカは可愛いのか。
いやそうじゃない。問題はそこじゃあない。
「ひとつだけ、俺が混乱していることがある。・・・元の世界では、『スタンドはスタンドを持っている者にしか見えない』のだ。しかし、2人はスタンドを持っていない。・・・なぜ、見えるんだ?」
「・・・スタンドはスタンドを持っている者にしか見えない・・・か。それは、例外はないんだよな?」
慧音から質問される。
私が知っている範囲では、たしかに知らないな。イルーゾォの『マン・イン・ザ・ミラー』は鏡こそ本物だが、スタンドの能力を発動するのに必要なものであって、スタンド自体が一般人に見える訳じゃあない。
「ああ。・・・私が知る限りでは、スタンドを持たない者に見えるスタンドは聞いたことはない。ただ、能力が見えることは珍しくない。」
「能力が見えるってことは、さっきのリゾットがやったみたいに、ナイフを出現させるのはスタンドを持たない人間でも見える、ということか?」
「ああ、その通りだ。スタンドの能力で相手を始末するからこそ、足がつかない。凶器は出ても、それを使用した犯人は一切見つからないという事だ。」
「・・・だとしたら尚更不思議だな。能力だけ見えていたものが、そのスタンド自身まで見えるようになっていた。もしかしたら、賢者が何か知っているかもしれない。話を聞くついでに、それも聞いておくか。」
・・・この時点ではわからなかったか。
しかし、『スタンド使い以外にスタンドが見える』というのは実際問題、おかしいことだ。把握しておくべきことではある。
「・・・ところで、その賢者というのはどういう奴なんだ?」
「そうだな・・・。一言で言えば掴みどころのないやつだ。そうとしかいいようがない。」
「まあ、幻想郷についてはそいつに聞けば間違いはないが、信用しない方がいいだろうね。いやまあ悪人ではないんだけど。」
妹紅と慧音からひどい言われようだな。
「悪人とかそういうのではなく、胡散臭いということか?」
「ま、そういうことだn」
「胡散臭いだなんて、失礼ね。」
なっ!?この女・・・!?何者だ?
いや、それもそうだが、今こいつは『どこから現れた』のだ・・・?何も無い空間から出現している・・・。
「出たなスキマ妖怪。私たちが向かっていることを知っているのだったら、出てくる必要も無いだろうに。」
慧音が少し呆れながら出現した女と話す。
「冷たいことを言うわねぇ。外来人を連れているのだから、そりゃあ私だって監視するわよ。それに、私がいなかったら私の家も見えないでしょ?」
女も慧音に返答する。
誰なんだろうか・・・。
「おい妹紅。この女は何者なんだ。」
「ん?ああ、
・・・こいつなのか・・・。あまり実感は湧かないが。
「私が賢者だって信じられないって顔をしているわね。」
「・・・なんなんだ。何故お前らは俺の心が読めるんだ。」
「まあそんなことはどうでもいいじゃない!私は
「・・・俺はリゾット・ネエロだ。」
八雲紫・・・か。確かに、初対面ではあるが胡散臭さは感じる。だが、賢者であることには嘘は読み取れない。嘘をついたところで双方にメリットがないからな。・・・この女にさっきのことを聞くか。
「・・・八雲。ひとつ聞きたいんだが・・・。」
「八雲じゃなくて紫でいいわ。苗字で呼ばれるのはどうもなれてないの。」
「・・・そうか。じゃあ紫。」
「あっ、聞きたいことがあるなら私の家でね。もう少しで着くから!」
・・・なんなんだコイツは。まあ、俺も落ち着いて話したいところではあったが・・・。
「まあ、あなたが聞いてくることに関しては、私は嘘をつくつもりは無いから、安心してちょうだい。・・・ほら、見えてきたわよ。」
紫が指さした先には、何の変哲もない長屋だ。
賢者と言っても、住宅は普通のようだな。
ー紫の家ー
「藍ー、戻ったわよ。」
「お帰りなさいませ・・・。おや?後ろの御三方は?」
紫が扉を開けると、腰から沢山の尻尾を生やした女性が出てきた。・・・こんな妖怪もいるのか、幻想郷には。
「私の客人よ。」
「・・・1人、見受けられない方がいますが・・・。」
「それも詳しく聞くわ。・・・そうね、藍。あなたも知っておきなさい。お茶の準備を。」
「か、かしこまりました。」
「さあ、客間に通すわ。入って。」
紫に通され、客間に入る。
そして、机の前に座り、茶が置かれる。
「して、ご用件は何かしら?」
「・・・あの時点で出現していた以上知っている筈だが・・・。まあ、こういうのは野暮だな。用というのは彼のことだ。」
慧音が『彼』といった瞬間に俺の方を見る。
「紫は、こいつのこと知ってるのか?」
妹紅が紫に訪ねる。
「ええもちろん。元の世界で死亡して、幻想郷にやってきた、外来人の中でもかなりイレギュラー。」
「そういえばさっき、俺の事を監視していたと言っていたな?まさか、俺がこの世界に来て、目覚めた時からずっとか?」
「そうよ。だから把握しているわ。あなたがこの世界の住人になりたがっていることを。」
「!?紫様・・・!」
「大丈夫よ、藍。・・・リゾット、理由を聞かせてもらえるかしら?」
「・・・元の世界に戻ったところで、俺に存在価値はないんでな。それだったら、訪れたこの世界で存在価値を見つけたい。」
「・・・そう?何故そんなに存在価値に固執するのかしら?」
紫から聞かれる。
ここは正直に答えるのが吉だろう。
「そういう性分だから・・・としかいいようがないな。俺は元の世界ではギャングだった。ギャングでは無価値なやつは不必要。何もしなくても勝手に死ぬ。俺は、そうなりたくはなかった。新しく来た幻想郷でも、無価値のままのうのうと暮らしたくはない。役に立ちたいだとかそういう訳じゃあない。ただ、俺に無価値というレッテルを貼られたくないと言うだけだ・・・。」
「・・・ふふ。面白いわね。・・・幻想郷には、明確な意思を持って生きる者は少ないわ。能力者といえどもね。貴方みたいな人間ならば、直ぐに幻想郷は受け入れてくれると思うわ。」
「・・・ということは、彼を認めるということか?」
「ええ。まあはなからそのつもりではあったのだけれど。余程のことがない限り追い出すことはしなかったわ。」
紫が顔を微笑ませながら言う。・・・もとより歓迎するつもりだったということか・・・。
「・・・そうね。新しい住人になるのだから、改めて自己紹介をしておくわ。私は八雲紫よ。これからよろしくね。リゾット。」
妖艶とも、美麗とも言える笑顔を浮かばせながら紫は俺に自己紹介をする。笑顔ですら掴みどころがないとはすごい女だ・・・。
次は、藍と呼ばれていた尻尾の生えている女だ。
「私は
「ああ。ありがとう。俺はリゾット・ネエロだ。・・・これから仲間に加わらせてもらう。よろしく頼む。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「・・・ふう。一先ずの使命は済ませられたか・・・。」
慧音が肩の荷がおりたと言わんばかりに胸を撫で下ろす。
「・・・まあ、確かに断られたらどうしようかと思ってはいたが・・・。」
「まあこちら側には断る理由もないし。さっきも言ったように、余程のデメリットがない限り、新しい住人を断ることは無いわ。」
紫が補足する。・・・余程のデメリットか・・・。住人入りを断られるということは、かなりの理由だということか・・・。
・・・そうだ。あのことについても聞かなければ。
「・・・紫、もうひとついいか?」
「さっき聞こうとしていた事ね。いいわよ。言ってみなさい。」
「俺の能力についてだ。」
「あら。」
「な!?」
紫と藍が驚きの声を上げる。
・・・まあそうか。外来人には能力は本来ないらしいからな。
「俺の能力は鉄を操るんだが・・・。それのタネにはこいつらが関わっているんだ。そのこいつらについてなんだが・・・。」
そう言いながら、俺は2人に掌に出現させたメタリカを見せる。
「あら、可愛い。」
「・・・ほんとだ・・・。すごい・・・かわいい・・・!」
また可愛いと言われた。というか藍の食いつきようが半端じゃあないぞ・・・。いやそこじゃなくて、本題はここからだ。
「・・・こいつらは『スタンド』と呼ばれるものだ。元の世界には様々な形をしたスタンドを持つ人間が沢山いた。・・・そして、スタンドはスタンドを持っている者にしか見えなかった。・・・何故スタンドを持たないはずのお前たちが見えるのか、それだけ教えて欲しい。」
「・・・触ってみてもいいかしら?」
「ああ、構わない。」
紫はメタリカに手を伸ばす。・・・が、紫の指はメタリカを通り抜けた。
「・・・あら、触れない。」
「スタンドにはいくつかルールがある・・・。そのひとつがさっき言ったスタンドはスタンドを持っている者にしか見えないだ。そして2つ目に、スタンドは通常の物質を通り抜ける。その為に、スタンドはスタンドでしか攻撃できない。・・・だが、そのルールのうちの一つが消えてしまったという訳だ。」
俺の先程の質問を聞き、紫は指を顎に当てて、しばらく考える。
「・・・おそらく境界によるものかしらね。」
「境界・・・だと?」
「ええ。この世界はほかの場所とは分断されていることは、慧音から聞いているわね?」
俺はその問いに頷く。最初はにわかには信じられなかったがな。
「あなたがその境界を通る際にどうやらそのスタンドが境界によって、実体化されてしまったのかもしれないわね。スタンドのルールは保持したままで、そのうちの『スタンドを持つものにしか見えない』というルールだけは消失したのかもしれないわね。・・・彼らも
・・・なるほど。メタリカ達も住人と認められたからこそ、実体化したということか・・・。未だ曖昧な点はあるが、全くわからなくなったわけじゃない。それに俺のメタリカは戦う際にはそうやすやすとは見せない。・・・いつも通りで構わないということか。
そんなことを考えていると、紫が話し出す。
「・・・あす、博麗神社に向かいましょうか。」
「博麗神社・・・?」
神社・・・。言葉だけは聞いたことはあるが・・・。神を祀っている場所だったか・・・。
「そこに博麗の巫女と呼ばれる、この世界の守護者みたいな人間がいるわ。あなたの存在を伝えておきましょう。」
「確かに、その方がいいかもな。リゾットの存在を異変扱いされちゃあたまったもんじゃないからな。」
妹紅がサラッと俺を異変扱いしようとする。
確かに厄介者ではあったがその言い方はやめてくれ。
「リゾット、明日の朝、人里の入口で待ってなさい。藍が向かうわ。」
「そうか。恩に着る。」
「・・・今日はありがとう。リゾットのこと、感謝する。」
慧音が、紫に頭を下げる。
・・・慧音は俺のことを常に気にかけて行動してくれていた。本当にありがたい限りだ。
「・・・ふふ。私は幻想郷の意志に従ったまで。私に礼を言うことじゃあないわ。」
紫が謙遜でもなく、本当のことを話すかのように意味深な事を喋る。幻想郷の意志・・・だと?この世界は生きているというのか?
・・・この世界、受け入れてもらえたのはいいが、謎が多そうだ・・・。警戒はしておいた方がいいかもしれないな・・・。
「な、なあリゾット・・・。」
突然、藍がうずうずしながら小声で囁きかけてきた。
「どうした・・・?」
「・・・メタリカを、1匹だけ譲ることは出来ないか・・・?」
「・・・それは・・・。無理だ。」
そこまでメタリカにどハマりしたのか・・・。
「・・・私の式ながらツボがわからないわ。」
「それ、主人が言っちゃうのかよ。」
紫の呆れに、妹紅が突っ込んだ。
「・・・ダメなのか。」
そんなやり取りを見ていた慧音はダメだったのかというふうに1人、肩を落としていた。
(お前もか・・・、慧音・・・。、)
to be continued…
幻想郷の住人として認められたリゾット。
その事実を『幻想郷の守護者』博麗の巫女に伝えるべく、リゾットは八雲紫の式神、八雲藍と共に博麗神社を目指すのだった。
というわけで、序盤の佳境が終わりました次で序章が終わるという所でしょうか。ちなみに、実は3人目のヒロイン、八雲藍の初登場でもあります。
ー次回予告ー
Episodio.4 楽園の素敵な巫女ーBella fanciulla del paradiso
Introduzione del personaggio
八雲紫/YAKUMO YUKARI
ー境目に潜む妖怪
性別/女性
種族/不明
能力/境界を操る程度の能力
危険度/不明 人間友好度/普通
幻想郷の賢者という異名を持つ妖怪。その異名の通り、高い知能と戦闘力を持つ。幻想郷を守る境界を操っている。外来人のリゾットを新たな幻想郷の住人として認めた。性格は掴みどころがなく、ほかの妖怪や人間からも、胡散臭いと言われている。が、意外と話したがり屋。しかし、真偽はわからないので結局胡散臭い。
八雲藍/YAKUMO RAN
ー策士の九尾
性別/女性
種族/九尾
能力/式神を使う程度の能力
危険度/高 人間友好度/普通
八雲紫の式神で、普段は八雲家の家事全般をこなしている。彼女も九尾なので高い知能と戦闘力を持つ。藍も、『橙』とよばれる猫又の少女の妖怪を式神として従えている。性格も穏やかでこちらから嫌がらせをしない限り襲われることは無い。リゾットを歓迎しており、メタリカを可愛いととても気に入っている。
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Episodio.4 楽園の素敵な巫女ーBella fanciulla del paradiso
幻想郷の重鎮、博麗の巫女との邂逅です。
果たしてリゾットは、博麗の巫女にも気に入られるのでしょうか?
・・・と、その前に何か面倒事が起きたようで。
それでは本編をどうぞ。
翌日、藍の案内で博麗神社に向かうことを約束した。
その後、俺は1度慧音の家に戻るべく、再び、慧音と妹紅とともに行き道を戻っていた。
「・・・博麗神社・・・。」
「詳細が気になるか?」
「・・・まあな。そこが幻想郷でどのような役目を担っているのかよりも、日本の神社という建造物は話でしか聞いたことがない。純粋に神社という建物がどういうものなのかが気になっている。」
「・・・ふむ。まあ博麗神社は見た目は普通のオーソドックスな神社だ。作法とかはその時に藍が教えてくれるだろうから、心配しなくていい。」
「・・・ん?明日は、慧音と妹紅は来ないのか?」
そう聞くと、慧音と妹紅は申し訳なさそうな顔で頷く。
「ああ。悪いんだが、明日は寺子屋の授業があってな。私が抜けると授業にならん。」
「私も別件で行けないんだ。済まないが、明日は藍と2人で博麗神社に行ってきな。あいつは悪いやつじゃあないから安心しろ。どちらかというと紫よりもわかりやすい性格をしてるさ。」
慧音と妹紅が事情を説明し、妹紅が、藍の性格も補足してくれる。まあ、メタリカを見てあれだけ可愛いと連呼しているのを見れば、性格がわかりやすいのがわかりやすい。
そんなことを考えていたらあっという間に慧音の家に着いた。
・・・幻想郷は距離感が狂うな・・・。
「・・・今日はもう休もうか。直ぐに夕餉の準備をするよ。」
慧音が夕餉を作り、3人でまた食卓を囲む。
夕餉を終え、再び風呂へ入り、今日はそのまま寝ることにした。
ー翌日ー
「お、おはよう、リゾット。」
「ああ、おはよう。」
居間へと続く襖を開け、朝飯を準備して座っていた慧音がこちらに顔を向ける。どうやら、妹紅は早いうちに帰ったみたいだ。
・・・俺も、ずっと慧音に匿われているわけにはいかないな。
「藍が来る時間帯はわかっているのか?」
朝飯を食べながら、慧音が聞いてくる。
今は7時半か・・・。
「人里の入り口前に8時半に向かえばいいからな。それより前にはここを出ようと思う。」
「・・・そうか。博麗神社に住む巫女は、齢こそただの少女だが、紫より少し下くらいの力を持っている。つまるところ強大な力を持っているという事だな。とは言っても普通の巫女だから、お前がなにか粗相をしない限り何もしてこないとは思うがな。」
「それはそうだ。別に一般教養がないほど俺は非常識じゃあない。弁えて行動するつもりさ。」
「ああ。それがいいだろう。」
朝食を食べ終え、浴衣からいつもの服装へと着替える。
「そういえば、リゾットはいつもその頭巾を被っているな。なにか理由でもあるのか?」
「特に理由はないが・・・、まあ仕事上で顔が割れにくくするため・・・だろうか。スタンド能力だから基本バレることは無いが・・・。これがどうかしたか?」
「いや、その頭巾がとてもリゾットに似合っていたのでな。気になったんだ。」
「ああ、ありがとう。」
突然の褒め言葉に驚きつつも、感謝を伝える。
さて、そろそろ出発するとしよう。そう思い玄関に経つと、慧音から呼び止められる。
「ああ。あ、あとこれを持っていくといい。神社は神を祀っているところだ。そこでは御参りという行動をすると良いと言われているんだ。」
「ふむ・・・、どういうものなんだ?」
慧音から神社でのサホウというものを教わった。
サイセンバコ・・・に、金を入れて行うらしい。
(なるほど・・・。二礼二拍手一礼・・・か。)
「ありがとう。行ってくる。」
「ああ。気をつけていくんだぞ。」
家の扉を開け、里の大通りの方向へと歩き出す。
「おい、待ちな兄ちゃん。」
誰かに話しかけられたが、無視を決め込む。
時間が惜しい。早めに向かいたい。
「待てって言ってんだろうがよ!!てめぇ上白沢さんの何なんだよ!!」
そういう系の男というわけか。
家の前で鉢合わせしたものだから、ロクな男では無いとは思っていたが・・・。
「別になんでもないが・・・。」
「なんでもねぇ男がなんで何日も寝泊まりしてんだよ!?」
「・・・お前、何故そのことが分かる。まるで家の中を見透かしていたかのような言い草だな。」
「当たり前だろ!?お前みたいな悪い虫がつかねえように上白沢さんの身の回りを監視してるんだよ!!」
「つまりストーカーか。そうか、わざわざ自己紹介まですまない。慧音に気をつけるよう言っておくとしよう。」
そろそろ察しろ。集合時間に遅れる。
頼むから向かわせてくれ。
「てめぇ分かってねえみてえだな!?お前が上白沢さんを言いくるめてんだろ!?許さねぇ!俺が守ってやる!!」
背を向けたリゾットを男は殴りかかろうとする。だが、体はそれ以上動かなかった。いや、動けなかった。左足に激痛が走ったからだ。
「ッデェエエエッ!?な、なんだこれぇぇぇぇっ!?」
男の左足から突出している鋏。メタリカで鉄分を使用して作りだしたものだ。
「・・・この世界は手品が上手なものが多いな。」
「どうしたリゾット!何かあったのか!?」
む。家主に見られた。・・・まあ、状況説明をしっかりとしておけば何とかなるだろう・・・。説明しようとした時、慧音が男を見下ろし、呆れた顔に変わる。
「・・・またお前か。」
「・・・なんだ、お前、前科があるのか。」
「前科なんて人聞きの悪い!!俺は上白沢さんを守ってるだけで!!」
「ならばその私の友人に手を出したことはどう言い逃れするつもりだ?」
「・・・友人・・・?え?」
「慧音の友人だ。自己紹介が遅れたな。」
「し、しつれいしま・・・」
男は謝りながら逃げようとする。
だが慧音は逃がさなかった。
ゴンッッッッ!!!!!!!
最近、頭突きのスパンが短いな。
慧音の頭蓋骨が心配だ。・・・いや、この男の頭の方が砕け散るんじゃないか?死んだりしていないよな?
「安心しろ。手加減はしている。だがお前が悪いんだぞ。次、私の家の周辺をうろついていたら1発・・・と言ったはずだが・・・。」
「うぅ・・・、ごべん゙な゙ざい゙・・・。」
「・・・これ死ぬ寸前に発する声じゃあないのか。」
「自業自得だ。これで懲りるといいんだがな。」
「・・・慧音も苦労しているんだな。」
「何、もう慣れっこさ。ところで、リゾット。もう向かった方がいいんじゃないか?」
「・・・そうだな。遅れると面倒だ。俺は行くとしよう。」
「ああ。」
・・・全く、思わぬ足止めをくらってしまった。
寺子屋の唯一の教師で美人ときたものだから、ああいうやつの標的にされやすいんだろうか・・・。そんな役回りだが、慧音は気にしてはいなさそうだし、手痛い反撃も食らわせているようだな。自己防衛が激しすぎる。過剰防衛で相手が死ぬんじゃないのか。
そんなことを考えていたら、あっという間に人里の出口前まで到着する。そこには既に藍が待っていた。
「済まない藍。待ったか?」
「いいや、今来たところさ。それじゃあ、向かうとしよう。」
ーーーーーーーーーーーーーーーー
藍に連れられ、博麗神社への道を歩き出す。
「そういえば、リゾットは日本人ではないんだったな。」
「ああ。だから神社というものがなんかのか全く把握出来ていなくてな・・・。どういう所なのかも見当がつかない。」
「まあ、神社は簡単にいえば、神様を祀っているところだな。博麗神社は担当はそれだけじゃあないが・・・。」
神様を祀っているところ・・・か。慧音も言っていたな。
神殿とかと似たようなものだということなのだろう。
「そういえば、博麗の巫女はどういう奴なんだ?」
「どういうやつかと聞かれれば答えにくいな・・・。まあ、気難しい奴ではあるが、話の通じないやつではないとは思うぞ。」
気難しいやつなのに話はまだ通じるのか。
よくわからん奴だな。・・・まあ、警戒はされるということか。
「着いたぞ。ここが博麗神社だ。」
ここが博麗神社・・・。ここだけ空気が違う。
それだけ重要な場所だという事だ。
「じゃあ、巫女の元へ行くとしよう。」
藍に連れられ、神社の中へと足を一歩踏み出す。
「止まりなさい!!」
響く聞き覚えのない声。
「藍じゃないわ。その隣にいるあんたよ。そこで止まりなさい。」
「な・・・、霊夢!何を言うんだ!彼は新しい幻想郷の住人だ!決して敵なんかじゃあない!!」
藍が博麗の巫女らしき女に言う。
「新しい住人が来ることに関してはわたしと紫を通せば文句は無いわ。今日もそれを伝えに来たのでしょう?だが問題はそこじゃあないの。彼、『悪霊』を連れているわ。」
「なっ!?悪霊だと・・・!?」
・・・まさかスタンドのことを言っているのか?
「霊夢!ひとまず話だけ聞いてくれ!!その悪霊についても話したいことがある!」
「・・・そうね、分かったわ。外から来た奴なら何を持っているかわからないわ。・・・その男からも話を聞きましょう。」
巫女に連れられ、神社の中の屋敷のような家に通される。
そこに入ろうとした瞬間、とある箱が見えた。
(・・・あれは確か・・・、サイセンバコ・・・というやつだったか。情けない話だが、慧音にあの箱の中に入れる金を貰っている。・・・働き口を探さなくては。)
そんなことを考えつつ、慧音に教わったように手順を踏む。
まず、金を投げ入れる。
賽銭箱の中で金がはねる音がする。
「ッ!!!アリガトウゴザイマァァァァッス!!!!!!!」
!?な、なんだコイツは・・・!?さっきとは人が変わったように・・・!?
「リゾット・・・、いつの間に参拝を・・・。というより、また霊夢の悪い所が出てしまったな・・・。」
「あなた!直ぐに福が来るわよォ!!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「取り乱したわ。ごめんなさい。三日ぶりだったもので。」
あ、あまり崇められていないのか?ここの神は。
「崇められてないわけじゃないのよ。根本的に立地が悪いのよね。まあ、不自由な生活している訳じゃあないからいいのだけれど。」
「ま、たくましく生きているということさ。」
藍の一言でわかったような気もする。
「・・・まずは自己紹介からでもしましょうか。私は博麗霊夢よ。博麗神社の巫女をしているわ。よろしくね。」
「俺はリゾット・ネエロだ。これから、新しく幻想郷の一員として仲間に入らせてもらう。よろしく頼む。」
「ええ。・・・さて、本題だけど、紫からも聞いたと思うけど、幻想郷に新しい住人が入ることは私は拒まないわ。面倒事を起こさないんならね。・・・けど、あんたを最初に止めた理由は『悪霊』の気配を感じたからなの。それも力を持った・・・ね。」
霊夢がそう言ったあと、俺は直ぐにそれがスタンドであることを伝える。
「ああ。その悪霊だが、俺はおそらくそいつを把握している。お前が言っているのは、これの事か?」
そういい、手のひらからメタリカを出す。
「・・・ええ。これね。さっきあなたから感じた瘴気は。・・・とはいえ、正体が割れればどす黒い瘴気という訳でもないわね。・・・これは、いわゆるあんたの使い魔ってことかしら?」
「・・・まあ、簡潔にいえばそうだな。」
霊夢に、スタンドというものがどういうものなのかを説明する。スタンドの形や能力、ルールについてまで。
「・・・なるほどね。じゃあ、見えないはずのスタンドが私に見えてるのは、多分紫の言っていることで間違いないわね。・・・ところで、あんた、この能力は
セーブ・・・?抑えれるかどうかということか?
「まあ、出来なくはないが・・・。俺が前の世界でやっていた仕事上、俺の能力は一撃必殺に近い。それが何か問題でもあるのか?」
「そうね・・・。あると言えばあるわ。この世界には争いごとを決める際に、能力者は『弾幕ごっこ』と呼ばれるルールを使用するの。」
「弾幕ごっこ・・・?それはどういうものなんだ。」
すると、霊夢は手のひらからバレーボールくらいの赤く光る珠を出す。
「これが弾幕と呼ばれるものよ。これを沢山撃ち合いながら、戦うの。そして、双方には『スペルカード』と言われるいわば必殺技みたいなのがあるのよ。それを突破されて、先にスペルカードがなくなるか、体力が尽きた方が負けっていうルールなの。・・・と、ここまで解説しておいてなんだけど、あんた、飛翔できないわよね・・・。」
「飛翔・・・?空を飛ぶ?出来るわけないだろう?」
何を当たり前のことを言っているんだ。
すると藍から肩を叩かれる。
後ろを振り向くと、藍が浮遊していた。
「な・・・。」
「この世界の能力者はまず飛べないやつはいないんだ。悪いけど、これがこの世界の常識なんだ。」
前を見ると霊夢も飛んでいた。
なるほど、これがこの世界の常識というわけか。
「とはいえ、地上戦の弾幕ごっこがない訳では無いわ。あなたが飛べないと分かればそっちで挑まれるでしょうね。」
すると、藍が霊夢に対し、疑問をなげかける。
「だが霊夢。リゾットは男だぞ?男に弾幕ごっこは・・・。」
「そうね。弾幕ごっこは少女の遊び。だけど、今でこそ弾幕ごっこは決闘のひとつになっているわ。リゾットが戦闘型の能力を持っていると分かれば、挑んでこないやつは幻想郷には少ないでしょ?だから、教えておくのよ。下手をすれば、
「な、なるほど。だったら、弾幕ごっこのルールを教えた方がいいかもしれないな。」
「そうね。リゾット。弾幕ごっこは決闘だけど、競技面が強くて、いくつかのルールがあるのよ。」
霊夢から弾幕ごっこのルールを教えてもらう。
相手を死亡させてはならない、避けることの出来ない技や弾幕を打たないなど。たしかに、決闘と言うよりかは競技だな。
だが、俺がこれをやるとなっても困る点が幾つかある。
「さっきも言ったように、俺の子のスタンドは暗殺用だ。能力を発動すれば、相手は死にかねない。それに、俺は弾幕とやらは出せないぞ?」
「そうなのよね。それが悩みどころなのよ。」
3人で頭を抱える。
やはり、戦いを挑まれたら、本当の血統をする羽目になるのだろうか。
「そこで私の登場ってわけね。」
突然紫が現れる。
「これがスキマというものか。いざ、こうしてじっくり見ると不気味なものだな。」
「あら、私のアイデンティティよ。そんな言い方しないで。」
「・・・紫、何しに来たの?」
「なにしにって・・・、伝えに来たのよ。」
「ゆ、紫様・・・?一体何を伝えに来たんですか?」
「境界をいじって
「・・・何を付け足したんだ?」
「メタリカを
「なっ!?」
「!!」
霊力・・・だと?
to be continued…
博麗の巫女にも幻想郷の新しき住人として認められたリゾット。だが、戦闘能力と、スタンドという特殊能力を持っているリゾットは絶対と言っていいほど戦いを挑まれると伝えられる。しかし、幻想郷の決闘法、『弾幕ごっこ』はリゾットとは相性が極端に悪い。そして、そこに現れた紫が言ったこととは・・・。
というわけで、第4話はここまでです。少し補足しておきますと、リゾットさんはこの世界では弾幕ごっこと普通の決闘の間くらいのルールで戦うことになる感じです。
ー次回予告ー
Episodio.5 決闘演習ーEsercizi di duello
Introduzione del personaggio
博麗霊夢/HAKUREI REIMU
ー楽園の素敵な巫女
性別/女性
種族/人間
能力/空を飛ぶ程度の能力
裏表がなく、喜怒哀楽がハッキリとした人間らしい性格をした少女。博麗神社で巫女を普段はしており、幻想郷の異変を幾度となく解決している。人間と妖怪、どちらも分け隔てなく平等に接するが、それがかえって冷たい人間だと評されることも。紫ねことは信用してるのかしてないのか。リゾットのことはひとまずは悪い人間ではないため、歓迎はしている。
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Episodio.5 決闘演習ーEsercizi di duello
リゾットの幻想郷での戦い方を紫から伝授されます。
お気に入り登録100人突破ありがとうございます。
キャラ崩壊等あるかもしれませんが、行きすぎず、リゾットの幻想郷冒険記を描いていきたいと思いますので、何卒よろしくお願いします。・・・あと関係ないですけどスマブラに勇者とバンカズ参戦ですね。テンション爆上げです。ようこそ勇者、おかえりバンカズ!!
それでは本編をどうぞ。
霊力・・・。
それは一体なんだ?精神力とはまた違ったものなのだろうか。
「・・・その霊力というものは、俺も持っているものなのか?」
「ええ。あなただけじゃなく、この幻想郷だけじゃなく全世界の人間は持っているわ。量に差はあるけどね。それを、弾幕に変えて戦っているというわけ。」
「・・・だが、俺は弾幕を出せないぞ?それは霊力がないということじゃあないのか?」
そう俺が聞くと、紫は首を横に振った。
「いいえ、確実に全ての人間が持っているものよ。弾幕に変換する方法を知らないだけ。・・・とはいえ、弾幕に変換出来る者と出来ない者がいるわ。幻想郷の実力者はそれができると言うだけのこと。」
・・・そうなのか。
だが、そうだと言ってもスタンド使いだからという理由だけで扱えるようになるものなのだろうか。
紫に聞くと彼女はそうではないというふうに答え出す。
「貴方自身が霊力を扱えるようになれという訳じゃなくて、あなたの霊力を、あなたの半身であるスタンドを介して扱えるようになるということよ。」
「その霊力を扱えるようになることを俺のメタリカの新しい能力にすると言っていたな?」
「ええ。あなたの、鉄分から鉄を生み出す能力を、
「・・・なるほど、霊力ならば人体には影響は少ないということか。」
確かに、俺のメタリカは相手の鉄分を使用するため、相手に何度もメタリカの能力を使えば血液がおぞましい黄色になって酸素が全身に行き渡らず絶命する。だが、霊力だとしてもそれは心配ないのか・・・?
「心配はないわ。霊力は尽きても死ぬことは無い。もちろん、使いすぎれば体は倦怠感に覆われるし、動きも鈍くなる。でも、弾幕ごっこはある程度の霊力が消滅した時点で勝敗はほとんど決する。そこまでやり合うことは滅多にないわ。」
「・・・そうか。それともうひとつ、発動条件と言ったな。何か、もうひとつかせられるのか?」
「もう1つ・・・というと、元からひとつあったような言い方だな。」
藍が横から聞いてくる。
「その通りだ。スタンドには射程距離がある。・・・能力の届く範囲は基本その射程距離内だ。」
「つまり、その射程内に入っていればメタリカは確実に勝てるということ。申し訳ないけど、弾幕ごっこの際はそこを縛らせてもらうわ。」
「射程を縮める・・・ということか?」
「半分正解、半分不正解。縮めるどころじゃない、メタリカの射程をゼロにさせてもらうわ。」
・・・なっ!?ゼロ・・・だと!?それだと戦いにならないじゃあないか。
「もちろん、いつもゼロというわけじゃない。あなた自身がある条件を達成すれば、その際には射程が伸びるわ。」
「・・・それはなんだ。」
「相手に触れればいいの。」
「触れる・・・?」
「ええ。メタリカを発動させた状態で相手に触れる。つまり、
・・・つまり、1度触れれば、1度能力が発動できる・・・ということか。
「まあ、そこは許してちょうだい。1度だけ触って、あとはずっと発動可能になってしまったら、決闘にならないもの。そして、あなたが使用する弾幕はメタリカがあなた自身の霊力を変換して弾幕にする。どう?悪くない条件でしょう?」
「まあ、公平性を大事にする弾幕ごっことやらのルールから考えれば、おかしくはないな。」
「・・・とはいっても紫様、やはり1度やってみないことには何も掴めないのでは・・・。」
「ま、そうでしょうね。」
そう呟くと、紫は霊夢に目配せをした。
「・・・はいはい、分かったわよ。リゾット、弾幕ごっこの演習をしてみるわよ。」
「構わないのか?」
「もちろん。・・・ただ、私もあなたの能力がよくわかっていないから、能力を使う際には手加減をお願いね。」
「ああ、もちろんだ。」
霊夢に連れられ、神社の前に出る。
決闘の演習といったところか。元の世界ではスタンド、この世界ではこの戦い方が主流になる訳だ。慣れておかなくてはならない。
「・・・始める前に、まず弾幕を出す練習をしてみましょうか。まず手本を見せるわ。元々教えるようなものじゃあないから、見様見真似でお願いね。」
霊夢からまあまあな無茶振りを求められる。
・・・とはいえ、紫も言っていたように
霊夢が動き出す。紙が着いた棒を横に振り抜く。
すると、俺に向かって無数の赤い光る珠が向かってきた。
「ぬおっ・・・!?」
間一髪で避けるが少し掠る。・・・見たところダメージはないようだ。
「・・・あら、偶然のグレイズ。」
「センスはあるのでしょうか?」
「まあ、形式は違うとはいえ前の世界で戦っていたもの。ある程度の実力はあるでしょう。」
霊力というものがどのようなものかはわからないが・・・、やってみる他ないな。霊夢と似たような動きを俺も行う。紫はメタリカを介すると言っていたな。・・・つまり、メタリカを出した状態の方がいいということか。俺は、メタリカを掌に出現させておいた状態で腕を振り抜く。すると、一瞬で数十本のナイフが生成され、黒いオーラをまとって霊夢へと飛んで行った。霊夢はそれをやすやすと避ける。
「初めてにしては上出来じゃない。まさか一発目で弾幕を出せるなんて。(・・・しかも咲夜と同じタイプの弾幕。ナイフという物理攻撃を弾幕とするタイプの戦い方ね。)」
「・・・なるほど。弾幕の出し方は掴めた。いつでも演習に入って構わない。」
「分かったわ。・・・じゃあリゾットは私に触れて、能力を発動した時点で勝ち、私はリゾットがリタイアするか紫が止めたら私の勝ちということでいいかしら?」
「ああ、いいぞ。」
「じゃあ行くわよ。構えて。」
さっきは避けることが出来たが、決闘というだけはあるのだろう。被弾した際は多少痛みがあると見て間違いない。当たらないように立ち回るとしよう。
「まずは小手調べ。これを避けてみなさい!もちろん、弾幕を撃ってきてもいいわよ!」
霊夢が紙のついた棒を、先ほどと同じようにふり抜く。
すると、先程とは比べ物にならないほどの弾幕がこちらに向かって発される。
(・・・弾の密度は先ほどよりも大きいが、避けれないほどの隙間は無いわけじゃないようだ。走り抜けるしかなさそうだ。)
避けるルートを頭の中で構築し、弾幕の間を通り抜ける。
多少掠ってはいるが、痛みもないし、ダメージも入ってはいないようだ。カスリは勝敗に関係ないようだ。
(動きも標準的、敏捷性もある訳では無い。本当にスタンドを持っているだけの一般人という感じね。・・・とはいえ、
しかし防戦一方ではおそらくジリ貧で負けるだろう。
先程と同じように見よう見まねで弾幕を出す。
相手への牽制になるから、こちらも自由に行動できるスペースが増えるということか。
「くっ・・・!才能なのかなんなのかわからないけど、意外と面倒なところに投げてくるわね・・・!」
「飛び道具は作るのも扱うのも得意なものなのでな。それに、鉄分を使わなくていい分、かなり気楽に能力を使えるものだ。」
「その言い方だと、いままで能力を使うことを躊躇していたみたいな言い方ね。」
「まさか。暗殺が仕事だった俺に、能力を使うことを躊躇したことなど1度もない。ただ、スタンドが発現した当初はとても驚いた。スタンド自体なんなのか分かっていなかったからな。目の前の人間から突然血飛沫が飛んでくることまであった。」
「・・・それ、絶対制御しなさいよ。」
「当たり前だ。スタンドが発現してからもう慣れている。そんなミスはもうないだろうと思ってもらっていい。」
こんなことを話しつつも、襲い来る弾幕からは一切目を離さず、こちらからも攻撃を出しながら避け続ける。
(紫や他のやつにも言っていないが、・・・姿を消すのはルール上大丈夫なのだろうか。・・・やってみて指摘されたら辞めるとしよう。)
「メタリカッ!!!」
スタンドの名前を叫んだ後、メタリカがそれに呼応するように砂鉄を作り出す。そして、それを全身に纏い周りの景色と同化させる。
「なっ・・・!消えた!?」
「・・・リゾット、姿を隠すのは構わないけどその状態での直接攻撃は禁止よ。さすがにその状態での攻撃はあなたの場合強すぎるわ。」
一応紫から条件付きでこの技の使用許可がでた。
姿を消して近付いて触れることは許されないか。・・・いや、恐らくもとよりそれが通用するほど甘い相手ではない。
位置を撹乱すべく、ナイフを設置しながら霊夢の死角へと回り込む。
「そこね。」
が、霊夢に位置を見抜かれてしまう。
「ぬぐぁっ!?」
飛んできた弾幕を間一髪で避ける。
なぜ見抜けたのだ。音を出さずに歩いていたはず。
「スタンドの霊力がだだ漏れよ。物理的には隠せても精神的に隠せてないわ。」
・・・霊力を読み取って位置を把握するわけか。道理で姿を消すことが禁止にならんわけだ。
だが面倒だ。姿を消しても無意味となればこちらの手が少なくなる。何か手はないものか。
(・・・早く見つけなくてはまずいな。これこそ本当にジリ貧になってしまう。それに相手が本気を出せば俺等直ぐに叩き潰せるだろう。)
「もう何も無いって感じね。じゃあ、さっさと終わらせて反省会にしましょうか!!」
その時、霊夢が懐からカードのようなものを出す。
「あれはスペルカードよ。その者の必殺技を記したもの。強大な攻撃が来るわ。備えなさい。」
紫からのアドバイス。
「備えろと言われてもだな・・・。」
素人目にしても霊夢の霊力が強大化したのがわかる。それなりの激痛を覚悟した時、ひとつの案が頭に浮かぶ。
(・・・今、メタリカは
「ま、痛い目を見るのも演習よ!霊符『夢想封印』ッ!!!!」
霊夢がそう叫ぶと、彼女を中心に多数の巨大で色鮮やかな珠が発射される。1度、円形に広がり、こちらへと向かってくる。
「死ぬことは無いから安心して!耐えきれたら大したものよ!」
「・・・ならば、俺も試してみるとしよう!!『メタリカァッ』!!!!」
俺は引きながら逃げるのではなく、あえて珠へと走り出した!!
「なっ!?一体何をしてるのよあんたは!!」
「
「・・・そこまでわかっているなら十分だけど・・・。光っている分ステルスには気をつけた方がいいわよ。」
・・・!!ここしかない・・・!俺は向かってきたステルス弾を身体を捻らせながら避けつつ、《その珠を掌で撫でた》。
が、さすがに避けきれずにひとつだけヒットしてしまう。
「が・・・っ!」
衝撃は多少減らせたがさすがに来るものがある。夢想封印の殆どは空へと消えていく。
「直撃ね。まだやるかしら?」
「・・・が・・・。ああ。まだ、
(い、一体何を・・・!!スタンドの霊力はこの周辺には感じられない・・・。一体どこだというのよ・・・!!)
空から響く轟音。その音が耳に入り、霊夢ははっと見上げる。
「なんですって・・・ッ!?」
メタリカが憑依した夢想封印の珠は真っ直ぐ霊夢へと向かっていく!!
「夢想封印が・・・、帰ってきている・・・!?紫様これは!?」
「・・・メタリカの能力ね。鉄に変換したり、取り付いて変形させることが可能なら、霊力をパワー源に変えている今なら容易いことでしょう。」
だが、霊夢は驚きつつも確実に夢想封印を避ける。そして、避けながらリゾットの位置を確認する。透明化して回り込んでいるかもしれないからだ。・・・だが、
(・・・探知・・・出来ないっ!?)
メタリカは夢想封印に取り付いている。つまり、この夢想封印はメタリカそのもの。夢想封印の霊力は全てメタリカの霊力と同等になり、霊夢のサーチをジャミングしているのだ。
「それが、仇になって俺に勝利が舞い込んだ・・・という訳だ。」
呆気にとられている霊夢の肩を叩き、メタリカをとりつかせる。
そして、霊夢の肩についているメタリカをコインに変形させ、左手にとる。
「・・・私の負けね。」
霊夢は溜息をつきながら肩を落とす。
・・・勝てたのか。ギリギリだったな。
そんなことを考えつつ、俺はいつの間にか右手にあったスペルカードを見つめた。
to be continued…
初めての弾幕ごっこの演習にも関わらず、リゾットの機転をきかせた策に霊夢は敗北。勝利を掴んだリゾットだった。
そして、弾幕ごっこの最後に得たスペルカードの詳細を聞くことになったリゾット。話の最中、寺子屋で出会った大妖精が大慌てで神社に駆け込んできた。話を聞くと、チルノがここ数日、行方不明になっているのだ。霊夢はどこかを彷徨いているだけだと楽観視していたが、それは大きな事件へと発達する布石であることはまだ誰も知る由もない・・・。
ー次回予告ー
Episodio.6 失踪ーscomparsa
というわけで、リーダー弾幕ごっこ初挑戦、初勝利です。スペルカードの入手の描写がありましたが、それはまた次回。
次回からやっと本番に入れそうです。
(今回は人物紹介はお休み)
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Episodio.6 失踪ーScomparsa
リアルでの体調不良とケータイの不調が積み重なり、執筆が出来ない状況が続いておりました。申し訳ありません。
さて、今回はついに異変が始動します。
と言っても、異変の頭も頭しか出てきませんが。大妖精が慌てた様子で駆けつけてきて、チルノが数日行方不明だと言う。霊夢はひょっこり帰ってくると楽観視していますが、さて、どうなるでしょうか。
それでは本編をどうぞ。
「私がスタンドのことを知らなかっただけとはいえ、まさかレーダーの仕組みを逆手に取られるとはね。」
霊夢がリゾットの作戦を素直に褒める。
「あら珍しい。霊夢が相手の戦法を褒めるなんて。」
「あんたは私をなんだと思ってるのよ。私だって感心するし、褒めたりするわよ。」
・・・霊夢は普段どんな性格をしているんだ。
それも気になるが、今1番聞かなければならないのはやはりコレだ。
「さっきも戦闘中に言っていたが・・・、もう一度これについて詳しく教えてくれないか?」
「スペルカードじゃないか。リゾットも先程の戦いで取得したみたいですね。」
「ええ。やはり、物凄いスピードでスキルを身につけているわ。」
藍が驚いた口調で言う。紫もそれに同意する。
「さっきも言ったように、これはスペルカードよ。その者の必殺技を記しているカードと言ったところかしら。」
「・・・記している・・・?変な言い方をするんだな。」
「変な言い方とは言うけれど、それは間違いじゃないのよ。」
霊夢が補足説明を入れる。
「そのカードはあくまでも『弾幕ごっこ』が競技である為に、不意打ちをなくすために作られた物よ。だから別にそれを作れば必殺技を使えるとかそんなんじゃなくて、元からある自分の必殺技を最初に何を使用するのか見せるために作られたものなの。とはいえ、ごく稀に今のように窮地になって突然カードを手にする場合もあるみたいだけどね。」
「つまりこのカード自体には攻撃力はないということか・・・。」
「そういうこと。ちなみにそのカードはどの技が記されているの?」
霊夢からカードの内容を聞かれる。
そういえば自分でも確認していない。見ておくとしよう。
「・・・どうやら、内容的にはさっき俺が霊夢に対して行ったことがスペルカードに記されているようだ。」
「メタリカを夢想封印に憑依させたあれかしら。・・・また変わったスペルカードになったものねぇ。」
紫が表情を変えず、息をついて喋る。
・・・憑符『行方不明の暗殺者
「その通り、使い所は考えてね。なんせ、スペルカード宣言は一回の戦いで1枚につき1回だけよ。突破さえされなければ何回も使って構わないけど、1度突破されるとそれ以降はその戦いではそのスペルカードは使用不可になるから、気をつけなさい。」
「・・・そういえば、スペルカードが全部なくなったら敗北と言っていたな。」
「ええ、そのルールもあるわね。それが基本ルールよ。まあ、スペルカードをあくまでもただの必殺技にして、先に体力が尽きた方が負けというルールもあるけどね。外来人が来た際には、後者のルールで戦うことが多いわ。せいぜい死なないようにね。」
・・・死ぬことは無いんじゃないなかったのか。
こいつの言うことは二転三転する。あまり信用しない方がいいのか?
「あまり失礼なことを考えちゃダメよ。」
「胡散臭さを拭えないんだから仕方が無いだろう・・・。」
スペルカードについても分かり、そんなことを雑談していると、誰かが神社へと突っ込んでくる。
「れれれれれれ霊夢さんっ!!!いますかっ!?」
「ん・・・?大妖精じゃない。この時間帯に来るには珍しいわね。」
それも、大慌てでこの博麗神社に突っ込んできた。何かあったのだろうか。
「大妖精、そんなに慌ててどうしたんだ。何があったんだ・・・?」
「リゾットさんも・・・!よかった・・・。じ、じつは・・・。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「チルノをここ数日見ていない?」
霊夢がそんな事かというように肩をすくめる。
「あいつのことでしょう、しばらくするとふらっと帰ってくるわよ。」
「それが、この前リゾットさんが先生として来てくれた時よりもチルノちゃんは欠席してて・・・。」
「・・・ということはまる三日以上だが・・・。3,4日くらいなら風邪をこじらせた程度じゃあないのか?俺はそのチルノという少女には会ったことは無いが・・・。」
「それが・・・、1週間とチルノちゃんは来ていないんです・・・!」
「寺子屋をサボってる訳では無いのよね?」
「はい・・・、チルノちゃん、先生を困らせることはあっても寺子屋を休むことは今までありませんでしたから。」
「・・・いや、慧音を困らせるんじゃないわよ。」
「ふぇ・・・、それはそうなんですけど・・・。と、とにかく、チルノちゃんを探して貰えませんか!!勿論、私も手伝います!!」
俺は霊夢の方を見る。
「・・・面倒事を起こすなとは言ったけど、解決側に回るなら私は何も言わないわよ。・・・仕方ないわね。手伝ってあげるとしましょう。」
「あ、ありがとうございます!!!」
「霊夢・・・、済まないな。」
「・・・、別に気が向いただけよ。」
「そんなこと言って、素直じゃないんだからー!」
「ちょっ、紫!!まだ帰ってなかったの!?」
「別にいいじゃないの恥ずかしがらなくてもー!」
「るっさい!!」
・・・孫と祖母だな。
いや、母親と思春期の娘か。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
霊夢は大妖精を居間に上がらせる。
そして、全力できたであろう汗だくの大妖精にタオルと冷えたお茶を出す。
「あ、ありがとうございます!!」
「いいのよ。それにしても1週間ねぇ・・・。馬鹿だから風邪をこじらせるとは思えないし。」
「馬鹿は風邪をひかないと言いたいのか・・・?それは迷信だろう。」
「それがアイツにはそうもならないのよ。あいつはマジで馬鹿だから風邪をひかない。」
「私も、長く一緒にいますけどチルノちゃんが風邪をひいているのは見た事がないですね。」
元気がいっぱいな子だということか・・・。
「・・・ならば、大妖精はどこに向かったのか検討はつくのか?」
「・・・ええと、どこに行きそうかだったら・・・。」
それでも充分だ。
大妖精が言うには、『人里』、『霧の湖』、『迷いの森』辺りに向かったのではと考えているという。
「・・・ふむ。とはいえ、こういうとあれだけど、アイツの考えは魔理沙以上に読めないのよ。どこに向かってようが、そこに行く意味がわからないから、予想しようがないわね。」
霊夢が肩をすくめる。
「・・・ならば仕方ない。近い場所から
「ま、そうなるわね。ここから1番近いのは・・・。やっぱり人里かしら。」
「そうだろうな。」
「じゃあ、ひとまず人里で情報収集でもしましょうか。」
行動することが決まり、3人は同時に立ち上がる。
「紫。私たちちょっと調査に行ってくるわ。・・・ま、調査という程重いものでもないかもしれないけれど。」
「ええ。気をつけて行ってらっしゃいな。」
俺は神社の境内を歩き、階段へと向かう。
すると、後ろから肩を叩かれる。紫かと思ったらその人物は、藍だった。
「・・・藍か。どうしたんだ?」
「・・・霊夢は楽観視しているようだが・・・。今回の氷精の失踪・・・、なにか大きなことになりそうな気がする。お前はまだこの世界のことをよく知らない。あまり大それた事をしないようにな。」
「・・・?ああ。」
つまりは目立つような行動をするなということか。・・・もとよりそのつもりは無い。だが、確かになにか胸騒ぎはする。
なにか、大きな脅威が近づいている気分だ。・・・まるで、あの時の小僧に出会った時のような感覚だ。・・・十二分に警戒しておくとしよう。
To be continued...
藍からの警告を聞いたリゾットは、己の中に響いていた胸騒ぎを自覚する。
その胸騒ぎは、生前、もとい前の世界で死ぬ直前に出会ったあの
次回、
Episodio.7 謎の女ーDonna misteriosa
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Episodio.7 謎の女ーDonna misteriosa
この回でオリキャラが登場します。戦闘シーンとかは今回ございませんが、物語的には若干進みます。
更新に間が空いてしまい申し訳ありません。
このように不定期更新になることが多々ありますのでご了承ください。
ー追記ー
誤字報告ありがとうございます。
俺たちは情報収集すべく、人里に降りてきていた。
「まずは慧音に聞きましょうか。何かしら本人から聞いていてもおかしくはないからね。」
まあそれが最善手だろうな。
「じゃあ俺が聞いてこよう。霊夢たちは里の人達に聞いてくれるか?」
「そうね、分かったわ。」
「は、はい!」
里の人から聞き出すのは2人に任せるとして、俺は寺子屋に向かうとしよう。しかし、行方不明・・・か。何も残さず消えたとなると本当に打つ手が無いな。一つずつ可能性を試していくしかない。
「あら?見慣れない殿方ね。」
ふと、リゾットは後ろから声をかけられ、振り返る。
「・・・なんだ?どうかしたか?」
「いや、久々に人里に来たら、見慣れない人がいると思ったので。」
黒い翼の生えた女性がリゾットの目の前に立っていた。
(・・・黒い翼・・・。たしか、『鴉天狗』だったか。)
「ああ、申し遅れました。わたしは
「・・・俺はリゾットだ。最近ここにきた者だ。わざわざ挨拶に来てもらってありがたいが・・・、何か用か?」
「なんというか、困っているご様子でしたので。」
困っているというのは事実だが・・・。
まあ、聞いてみるだけでも価値はありそうだ。
「ああ、気にかけてもらってすまない・・・。実は今、人探しをしている。チルノという氷の妖精を見ていないか?」
「チルノちゃん・・・ですか?一応知り合いではありますが・・・。そういえば最近見ていませんね。」
「そうか・・・。どうやらココ最近そのチルノとやらが行方不明になっているらしいんだが・・・。話を聞いてもらってすまなかったな。」
「いえいえ。リゾットさんはこれからどちらへ?」
「チルノはもともと寺子屋に通っていたらしいからな。一度、寺子屋に向かおうと思う。」
すると、櫂羅は目を鋭くして話した。
「・・・私も同行して構いませんか?」
「・・・別に構わないが・・・。どうかしたのか?」
「やはり、行方不明と聞いて不安になりましたから。私もその調査に参加しようと思いまして。」
まあ人手が大いに越したことはない。
櫂羅にも手伝ってもらうとしよう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「・・・そういえば、櫂羅は鴉天狗・・・でいいのか?」
慧音から教えられた種族の、鴉天狗の特徴に合致する。
「ええ。私は鴉天狗ですよ?それがなにか?」
「・・・烏天狗はあの妖怪の山の陣営だと慧音から聞いたんだが・・・。」
「ああ、それはよく聞かれるんですけど、私は妖怪の山の陣営には組み込まれていないんです。まあ野良の鴉天狗ってことですね。」
・・・そういうのも居るのか。
同じ種族は沢山いると聞いたからな。その種族の習性と違う動きをする個体がいたとしても、それは別段おかしい話でもないということか。
そうこうしているうちに寺子屋に到着する。・・・今の時間ならまだ慧音しかいないはず。
「慧音、いるか?」
「おじゃましまーす。」
「はいはーい、今出ますよ・・・と、リゾットじゃないか。その様子だと、住人として歓迎されたようだな。」
「ああ、お陰様でな。」
「・・・どうやらお連れ様がいるみたいだが・・・。っと櫂羅じゃあないか。久しぶりだな!どうかしたのか?」
「いやーまあ、先程リゾットさんにあって、話を色々聞きまして。」
む・・・、どうやら2人は顔見知りのようだな。
元教え子といった感じのようだ。
「・・・リゾットから?なにか聞きに来たようだな。」
「慧音に聞きたいことがある。・・・構わないか?」
「ああ。今お茶を入れてくるよ。談話室に来てくれ。」
教室の二つ隣の小さめの部屋に入る。
机と座布団位しかない落ち着いた部屋だ。
「・・・それで、聞きたいことってなんだ?」
俺は、紫と霊夢に幻想郷の住人として認められたこと、その後弾幕ごっこと呼ばれるこの世界での決闘方法のこと、そして、大妖精が息を切らしながら博麗神社にチルノが失踪したことを伝えに来たことを話した。
「・・・確かにチルノはここ数日来ていない。それに、チルノの姿を見てもいない。不安な状況・・・だな。」
「とはいえ、どうしてチルノちゃんは急にいなくなったんですか?先生は心当たりって何かありますか?」
「悪いがそれらしい心当たりはないな・・・。私のところにチルノの情報は入っていないんだ・・・。情けない話だがな。・・・それと、関係あるかは知らないが、里の人間も最近、行方不明者が出ているらしい。数日経てば帰ってきているらしいが、そのいなかった時の記憶が無くなっているらしいんだ。」
「・・・それも異変だな。」
「また奇妙なことに全て霧の湖がある方向から帰ってきているみたいだ。」
氷精の失踪と里の人間の失踪・・・。
どこか繋がっている気がするな。
「恩に着る慧音。多少なりともいい情報が得られた。」
「そうなのか?それならいいんだが・・・。リゾット、・・・異変解決の協力は構わないが、無茶はしないようにな。君はまだ勝手がわからない。あまり大それたことをし過ぎないようにした方がいいと思うぞ。、」
「・・・ああ。心得よう。」
藍だけじゃなく慧音にも警告を受けた。
たしかにこの異変は大きくなりそうな気がする。なにか・・・、嫌な予感がする。里の人間も消えているという事実も、その予感を加速させている要因の一つだろう。
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寺子屋を出て、聞き込みを終えた霊夢たちと合流する。
「あ、リゾット。戻ってきたわね・・・。って櫂羅じゃない。どうかしたの?」
「霊夢さん。私もリゾットさんから話を聞いて、捜索のお手伝いをさせてもらおうと思いまして・・・。」
「本当?とても助かるわ。意外と捜索が難航しててね・・・。」
「その様子だと、あまり聞き込みは良くなかったみたいだな。」
「んーまあ、あらかたリゾットの予想通りよ。氷精は見てないって。」
「俺達も慧音から話を聞いてきたが・・・。チルノ自体の情報は持ってはいなかった。」
「チルノ『自体』?不思議な言い方をするわね。」
「別に気になることを聞いた。ココ最近、『里の人間も行方不明者が出ているらしい。』」
「!!?それは何かしらにおうわね・・・。」
「も、もしかしたらチルノちゃんと同じ事件に関連してるのかも・・・!?」
「落ち着け大妖精。・・・ないとは言いきれんが、里の人間の方は三日程度で帰ってくるらしい。その行方不明だった時期のことは一切覚えていないらしいが。」
「となればさらに怪しくなるわね・・・。」
さらにリゾットはほとんどの人間が霧の湖方面から帰ってきていたことも話す。
「・・・じゃあ霧の湖に向かってみますか。」
「それが一番得策ですね!」
・・・この異変も気になるが・・・。
この『勅使河原 櫂羅』・・・。なにか裏がある気がするな・・・。
いや、裏というよりかは・・・。なにか、心の内に秘めている、信条の読めなさが帰って不気味だ・・・。
こいつのこともある程度は警戒しておくことにしよう。
・・・、次は霧の湖とやらに向かうことになった。そこで氷精が見つかればいいが・・・。
To be continued...
リゾットは寺子屋2情報収集に向かう直前、『勅使河原 櫂羅』と名乗る、『妖怪の山陣営に属していない』特殊な烏天狗に出会った。彼女とチルノの知り合いということで捜索に同行するが、リゾットは警戒を解かずに慧音から話を聞く。すると慧音から聞かされたのは『里の人間も行方不明者が出ているらしい』という情報だった。チルノの失踪と里の人間も行方不明。このふたつの事件がくっつくだろうと考えたリゾットは、霊夢たちと合流し、霧の湖にへと向かうのだった・・・。
ー次回予告ー
狂乱ーfrenesia
Introduzione del personaggio
勅使河原 櫂羅/Teshigahar Kaira
種族:烏天狗
能力:電気を操る程度の能力
人間友好度:高め
妖怪の山の陣営には組み込まれていない、野良の烏天狗。のんびりとした性格で、自由気ままな性格。異変で悩んでいるリゾットをみつけ、知り合いのチルノの問題を聞いて異変解決に参加。謎が多く、彼女がの真意は彼と神のみぞ知る。妖怪の山側も櫂羅の存在を認知してはいるが、脅威になる恐れがないので放っている。強さ的には割と強い方。八手の葉を持っているが、彼女の場合は電気や雷を発生させる。
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