URO 〜宇宙記録機関〜 (外道男)
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青山
何にでも使えるクロスオーバーが書きたかった(願望)
………来たか。
私の声は聞こえるか?
聞こえるなら返事を。……良し。
私の姿は見えているか?
私は指を何本立てている?
意識ははっきりとしているか。良し。
突然の事で君も混乱しているだろう。
矢継ぎ早に質問したい気持ちも分かる。
だが、少し黙りたまえ。……良し。
君の聞きたいことを質問すると良い。
ただし、私にも予定があるからな。
質問の数を絞って貰いたい。
3つだ。
3つ質問に答えたら本題に入らせて貰う。
……そこからか。
ふむ、どうやら処理の途中で記憶の継承に不備があったようだな。転生課の奴らめ、後で抗議のメールを送っておこう。
まあいい、質問は質問だ。答えよう。
君の生前の名前は〜〜〜。年は〇〇歳。出身は〜〜〜で育ちも同じ。家族構成は6人。父母と4人兄弟だ。
思い出してきたか。それは良かった。
ああ、言ったな、生前と。
それを第2の質問と受け取って構わんか。
そうだ。君は死んだ。死んでここに来たのだ。
詳しい説明が必要か。
君は交差点を左折して来た大型トラックに轢かれたのだ。運転手の安全確認不足により生じた事故だった。
左前輪に巻き込まれ即死。
事故当時の瞬間を確認するかね。……不要か。
……私の素性、それが最後の質問か。
本題と一緒に話すつもりだったが、手間が省けたな、効率が良くて助かる。
私は青山。
記録部観察課の課長を任されている。
……名前?ああ、ファーストネームと言う奴か。そんな物は無い。ここでは不要な物だ。名前とは、組織人として最低限の識別記号であれば良い。
この職場で働くのなら、名前は捨てていけ。
さて。我々の組織の事を説明しよう。
我々は宇宙記録機関。
簡潔に言うと、ここでは世界を管理している。…分からないか。今は理解しなくても良い、その在り方を覚えていてくれ。
世界とは、宇宙とは
見届けるものが居ないデータは腐敗しいずれ塵になる。
君の理解し易い物に例えるならば、生鮮食品のような物だ。適切に保存しなければ駄目になる。つまり、観測者が居なければ宇宙は滅びるのだ。
我々の仕事は、宇宙に存在するあらゆる
君には、我々の業務に従事して貰いたい。
我々は人材不足に悩まされている。
仕事量に対して人材が足りないのだ。
こうやって死亡直後の
これは決して命令では無い。
君が嫌だと言えばそれまで。
輪廻転生の輪に戻されるだけさ。
君の選択を尊重しよう。
……良いんだな。
分かった。協力に感謝する。
今、手が空いている者を呼ぶ。
一先ず、そこの部署で面倒を見て貰え。
暫くここで待っていてくれ。
私は仕事が有るので戻らなければならない。
なんだ。まだ何か用か?
この手は?
……ああ、握手か。これから宜しく頼む。〜〜〜。君の活躍に期待している。
宇宙的公務員物語。
壮大に始まらない。
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飯島
失礼しまーす!
うん?君ひとりかい?
と言うことは君が噂の新人くんだね!
へえ〜、随分と若いねー。
ウチの職場で見た目が若い子は若くして亡くなってる事が殆どだから、うん、御愁傷さま?
私も若いだろって?
あははー、そうなんだよねー。
私も君と同じで転生採用組なんだよ。
人生何が起こるか分からないよねー。
まあ、こんなでも君よりは先輩なんだから、敬いたまえよ!ニュービーくん!あっはっは。
おや、妙に気疲れしたような顔だね。
私喋りすぎ?テンションに付いてけない系かな?
あー分かる分かる。
死後の世界に来て早々に働け〜とか言われたら困るよね!私も初めはそんな変な顔してたよ。……いや、よく見たら君の方が変な顔してるね!あははー、ジョークだよジョーク。
君に説明をしてくれた人、誰だった?
あ〜、ナルホド。青山課長か〜!
あの人、私の直属の上司だから、こんな事言うのもアレだけどさ、あの人の話……
くっっそつまらないでしょ?
真面目で無駄が嫌いな性格してるからさー、全っ然話が弾まないの。あの人と同じ部屋に居て1時間耐えられたらもう勇者よ勇者。
さてと、そんな勇者見習いくんに自己紹介しとこうか!
私の名前は飯島!
記録部観察課、新世界管理係の係長さ!
こんな
さあさあ、早速私達の仕事場に行くとしようじゃない。
青山課長から聞いてないかい?
暫くの間、君はウチの係の預かりになるから。
研修期間みたいなもんだから、そのうち他所の部署に行くこともあるだろうけどね。
それまではおねーさん君のことビシバシ鍛えて上げるから!覚悟は良いか〜?あはは。
じゃ、行こっか。
はい、手を出して。手だよ手、君の手。
ガシッと。良し繋いだね。
え、なに?何で手を繋いだか分かんない?
ウチの会社さあ、馬鹿みたいに広くて複雑なの。私だって幾つ部署が分かれてるか知らないもん。
万が一迷子にでもなられたら困るしさ、手ぇ繋いで行こうよ。
異論は無いね?有っても聞かないよ!あはは。
ねー?広いでしょう。
こんな長い通路がひたすら伸びてて曲がりくねったり階段が幾つも有ったらそりゃ迷いますよねって話だよ。
まあ、君の研修期間が終わるまでは誰かしら側に居るだろうからそんなに心配は要らないよ。
万が一迷子になって近くに誰も居なかったら、通路に必ず1つは電話が設置してあるから利用するんだよ。
ゼロを2回押すと管理部って所に掛かるから、説明すれば案内ロボを送って貰えるよ。
っと、話してたら着いたね!
ここが私の城、新世界管理係だよ。
業務内容は中で話すよ。さあさあ、入った入った。
まあ、こんな感じだね。
あんまり君の知ってる会社のオフィスのイメージと変わらないでしょ?基本的に事務仕事がメインだからね。報告書を作るだけの簡単なお仕事さ。
うん。今から詳細な説明してあげたいけどさ。
君にも聞こえてるよね?あのイビキ。
入ってきた時からぐーぐー音がしたら気付くよね。
ちょっと待っててね新人くん。
あんにゃろー………!
うらぁ、うっしーこらあ!業務中に堂々と眠るたー良い度胸だなあ!イイジマドロップキイィック!!
「ぐっふッ!?」
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牛飼
はいどうも新人さん。
新世界管理係の牛飼っす。
気軽にうっしーとでも呼んでください。
顔がボコボコなのは心配無用っす。
良くある事っすからね。自分が係長にしばかれるの。
「良くある事じゃ困るんだよー?」
はい、すんません。
ああ係長、例の‘穴埋め’の書類作ってますんで。
「ういうい。……オッケー!確認しました。それじゃ休んで良いよ、って言う所なんだけどさ、フライングしてるからまだ駄目でーす」
うえっ!?マジっすか。
「マジっすよー、あはは。私ちょっと準備するから、新人くんにウチの係の業務内容を説明してあげてよ。うっしー、説明得意そうな顔してるし」
どんな顔っすか……。
まあ、分かりました。
ええっと。じゃあ新人さん。
もうこの組織の仕事は聞いてるっすね?
宇宙全体の事象を観測して、壊れないように保存するのが一番の仕事っす。
そこから様々な業務に細分化するんすけど、自分らみたいな末端まで数えると正直幾つ部署があるか分かんないっす。
係長、ご存知っすか?
「多分、億は超えてるんじゃない?組織の広さイコール宇宙の広さって言われてるし」
うへえ、考えるだけで恐ろしいっすね…。
ああ、それでウチの部署の説明でしたね。
新世界。
この宇宙には、そう呼ばれる世界が在るっす。何の事かと言うと、凄く簡単に言えば“物語の世界”っす。
新人さん、転生採用でしたら何となく想像付くと思うんすけど、小説とか漫画とか、映画・ドラマ・アニメ。
そう言った物語が多くの人間に認知されるとですねえ……なんと、世界が新たに作られるっす!
こうした新世界も宇宙の
「そう言うわけで、仕事を覚えてもらうために早速やって貰おうかな?新人くん、はいコレ着けて。おっけーおっけーピッタリみたいだね」
ええと、今着けて貰った腕輪は社員証っす。
仕事をするには必ず必要な貴重品っすね。
「失くさないようにね〜。と言うか一度付けたら絶対外れない呪いのアイテムなんだけどね!あはは。てな訳で仕事をしてもらうんだけど、やっぱり先ずは“穴埋め”だよねー」
そうっすね。
新人さんが今からやるのはウチのメインの仕事と言っても過言じゃないっす。
新世界は宇宙にポコポコ湧き出てくるんでなるべく早く見つけてウチで管理する必要があるっす。
もし発見が遅れると“とある事象”によって世界の構成情報の欠損、‘穴’が空いてしまうっす。とある事象についてはまた別の機会に話すっす。
穴が空いたままだと新世界はいずれ壊れてしまうっす。
だから自分らはその世界に赴いて欠けた情報を修復しないといけないっす。
これが通称“穴埋め”っす。
「そう言う事で!タイミング良く穴埋め案件が舞い込んで来たので、新人くんには穴埋めに行ってもらうよん。……ん?もしかして緊張してるかい?」
いきなり仕事任されたらそりゃあ緊張するっすよ。
まあ、そんなに気負う事じゃないっすよ。
仕事といってもやる事は現地で1週間ほど滞在してもらうだけっすから。
「そうそう。世界の修復自体はねー、君が今着けてくれた
自分らの仕事は最初にも言ったっすけど、事象を観測する事っす。
だから、新人さんは滞在期間中にその世界がどんな物語か、どんな状況かを纏めてくれるだけでいいっす。
「慣れてなくても問題は無し!上手く纏めきれなくても世界の修復さえ出来ちゃえば後から何回でも調査できるしねえ」
そう言う事なので気楽にやって来て下さい。
あ、そうだ、1週間って言うのは世界の修復に掛かる時間なので、少なくとも1週間は現地で暮らす事になるっす。
「君が現地で問題無く暮らせるように腕輪からのサポートも有るから心配しなくても良いよ!準備は良いかー?……よしよし良い返事だ!それじゃあ係長権限で、新人くんの新世界穴埋め業務への着任を承認します!行ってらっしゃ〜い!」
「そわそわ」
………ぐー。ぐー。ぐー。
「そわそわ」
………ぐー。ぐー。んがっ?
「そわそわ」
……あー、係長?
「ふわっ!?んんっ。何かなうっしー?」
そんなに気になるなら新人さんの様子を確認したらどうっすかね。こないだ技術部から任務先を見れるモニター貰ったって自慢してたっすよね。
「うっしーがそう言うなら、ちょっと見てみようかっ!うんうん!君も新人くんの事が気になるよね!ね!」
はあ。そうっすねー。気になるっすー。
「そうだろそうだろ!そんなにうっしーが気になるなら仕方がないね!モニター隣の部屋に置いてあるから持って来てー」
ういーす。(過保護っすねえ…)
はい、電源繋ぎましたよ。
これで向こうの様子が見れるんすね。
「そうともさ。さてさて、新人くんは何してるかなー?ポチッと。………あー、あはは、あれ?」
うーわー……。
新人さんにコレはキツいっすよ係長…。
「いやいやいやいや、知らなかったとも!?着任するまで向こうがどんな世界か分からないのうっしーも知ってるだろ!?」
知ってますけどね。
いやあ、初任務でいきなりゾンビパニック物とは恐れいったっす。
「帰ってきたら新人くんに謝ろっか」
そうっすねー。
あれだけ楽な仕事だってうそぶいてたんすから、ちゃんと謝った方が良いっすよ、係長。
「うっしーも謝るんだよ!」
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