ワンパン世界にほむほむ(憑依体)がIN (政田正彦)
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隕石編
ヒーロー名:時魔女


もうすでにこういうのあったらごめんね。







 この世界には、漫画やアニメ、映画の中に存在するような怪人や、それらから一般人を守るヒーローという存在が仕事として実在し、ヒーロー協会という名の、ヒーローを束ねる組織が存在する。

 

 ヒーローには階級が存在し、認定を受けたばかりの駆け出しであるC級を始めとし、名が売れ始めたB級、そして一級のプロヒーローとして一人前になったA級。

 

 ……そして人外染みた圧倒的な力を持つ変態級のS級が居る。

 

 S級3位のヒーロー、【時魔女(ときまじょ)】もまた、S級ヒーローとして目覚しい活躍で世間から絶大な支持を得ているS級ヒーローの一人だ。

 

 学校の女子制服のような服で鋭角的なデザインの紫と黒を基調とした衣装に身を包み、身長は155~158cm、さらりとした黒髪を三つ編みにし、頭に赤いリボンを着け、”生まれ持った”能力で誰よりも早く現場に駆けつける。

 

 年齢は中学生程だろうか?S級ヒーローの中では童帝がS級ヒーローになるまでは最年少の美少女S級ヒーローとして一躍有名になり、その可愛らしく凛とした風貌にメディアも彼女を放って置かず、すぐに彼女に関するグッズが販売され、飛ぶように売れていった等といった逸話が存在する。

 

 

 さて、そんな彼女だが……その正体は、全く別作品、「魔法少女まどか☆マギカ」に登場する最重要キャラクターの一人、「暁美ほむら」その人……ではなく、彼女の外見と能力を転生特典として手に入れた転生(憑依)者であり、戸籍上の名前も暁美ほむらという。

 

 その上ワンパンマンという漫画の、原作の存在を知っているというおまけつき。

 ついでにジェノス推しである。

 

 

 

「(あ~~~~!!どうしよどうしよ~~~!緊張してきた~~~!)」

 

 その日、時魔女こと暁美ほむらはとても緊張していた。

 普段から、”魔法少女”に変身していないと不安感から自信が無く、おどおどしがちなのだが、それに輪をかけて緊張しっぱなしであった。

 

 前述の通り彼女はジェノス推しである。

 

 そして今、彼女はワンパンマンの漫画版第23話で登場する巨大隕石の件でヒーロー協会Z市支部に訪れているのだ。

 

 原作通りならば……というかほぼ確実に、ジェノスはここへ訪れる。

 

 ……まぁ実を言えばこの世界のジェノス自体は、映像で見ているから初見ではないのだが……実際に会うのはこれが初。そして顔を合わせるという意味でも。

 

 

「(よし……まず挨拶から……)」

 

 そう意気込んでいると、不意にドアが開く。

 来たか!?と振り向き、そして意中の人ではない事に若干がっくりとしながら、それをおくびにも出さずにその者に話しかける。

 

 

「おお、時魔女ちゃんか、よっすよっす」

 

「バングさんも来たんですね」

 

 バング。S級ヒーロー第4位の、ほむらとはまた別の、正当かつ純粋な武の強さを極めた、本物の実力者である。その老体からは考えられない程に流麗な流水岩砕拳という武術と重い一撃は怪人を圧倒し、弟子入りを志願する者は後を絶たない。

 

「……一応聞くんじゃが……他のS級ヒーローは?」

 

「……来ないみたいです。あと、支部の人達は全員避難しちゃいました」

 

「避難じゃと?おいおい、一体何があったと言うんじゃ」

 

 

 S級ヒーローは基本招集をかけられても来ないことがそう珍しくない。場所が遠かったり、ほかの事で忙しかったり、単純にめんどくさくて来ないという薄情者も居る。

 しかもS級ヒーローが召集されるのは大抵、面倒事、無理難題を押し付けられる、厄介事の処理であったりするのも原因の一つである。

 だがいつもの事なのでバングもそこには突っ込まなかったが、流石に支部に人が居ないというのはどうなんだ。

 

 

「巨大隕石、だそうです。S級ヒーロー達にどうにかしてほしい、と」

 

「なんじゃあそりゃあ……」

 

「これがその巨大隕石だそうです」

 

 

 ポリポリと頭を掻きながら呆れたと言わんばかりにそう呟くバングの表情は明るくない。一瞬で、隕石をヒーローの手で解決することで、ヒーロー協会の名を売ろうという意味も兼ねているのだろうという意図まで透けて見え、そしてほむらから渡されたデータを見て「あ、これ無理」と諦めた。

 

 今回の隕石の災害レベルは竜。”いくつもの街が壊滅する危機”を意味するその災害レベルは5段階ある災害レベルの内の上から二番目だ。

 

 

「こりゃ無理じゃのう。お前さんにはどうにか出来そうか?」

 

「流石に無理ですね……」

 

 

 S級第3位と4位が集まってもなおその結論が覆ることはない。

 ちょうどそんな話をしていると現れた者が居ても、それは変わらないだろう。

 

 

「ほう、もうひとり来たようじゃな」

 

「(えっ!?)」

 

 バングに気を取られてすっかり気付かなかったが、その者の背後の自動ドアが丁度閉まる瞬間だったことを鑑みるに、まだ来たばかりだったようだ。

 

 

「君は……新しくS級ヒーローになった期待の新人ジェノス君か。わしはバングというものじゃ。よろしこ」

 

「(バング……S級4位のヒーロー……本物の実力者だ)」

 

 

 と、非常事態なのもあって自己紹介をさっさと済ませ、んで、と隣に居るほむらに紹介を促すバングだったが、何故かほむらが一向に口を開こうとしないので、ん?とほむらの方に顔を向ける。

 

「(あ……あわわわ……かかかか、カァ~~~ッコイイ~~~!!リアルジェノスマジでかっこいいよお……………)」

 

「……時魔女ちゃん?」

 

「(ハッ!)あ、ええ、ええと、暁美ほむ、じゃなかった、時魔女です。よ、よろしくお願いします、ジェノスさん」

 

「時魔女?S級3位の時魔女か……!?(こんな少女が……!?)」

 

 

 バングはまだ分かる。老人とはいえその男が身に纏う武に慣れ親しんだ雰囲気は、武術に関しては素人に近いジェノスでも空気で分かる。

 

 だがその隣に居る少女がそのバングよりも上だというのはどういうことだ?それに、サイトに載っていた時魔女とは雰囲気がまるで違う。

 

 

 S級第三位の時魔女はその人気とは裏腹に、S級の中でも謎の多い人物である。

 

 彼女に関する話では、「怪人の下に誰より早く訪れ、そして一瞬で相手を殲滅してしまう」とか、「向こうの市で活動していたかと思ったら、いつの間にかここの市に居た」という話が数多く見られた為、ジェノスは「時魔女とは超スピードでの戦闘で敵を一瞬の内に殲滅してしまうヒーロー」だと思っていた。

 

 

 ……だが実際に会ってみるととてもそうは思えない。

 

 いたって普通の生体反応、緊張気味で浅い呼吸、肉体という面で見ても……足のつま先から頭のてっぺんまで、どこからどう見てもただの少女にしか……。

 

 

 いや、先生と同じで見た目では分からない強さというのもある……少女だからと言って侮れないだろう、とジェノスは考えを改め、ひとまずは彼女を味方と受け入れることにした。

 

 

「そうか……俺はジェノス、よろしく頼む……それで、ヒーロー協会に招集で呼ばれたんだが……」

 

 

 かくかくしかじか。バングとほむらはジェノスに35分後に隕石がここに落ちてくること、30分前までには落下地点を予測して報道することを伝えた。

 

「というわけで、君も誰か大切な人と共にここから避難したほうがいい」

 

「お前たちはどうするんだ?」

 

「わ、私はその……避難のお手伝いをしようかと思います」

 

「わしは代々受け継いできた道場を離れるわけにはいかんから、残るしかないのう……ところでジェノス君」

 

 

 バングはそう言うとシュバッと流水岩砕拳の構えを見せながらこう尋ねる。

 

 

「流水岩砕拳……知ってる?」

 

「あの、バングさん。ジェノスさん、もう行っちゃってます」

 

「……そっか」

 

 

 ついでにほむらも、じゃあ私も行きますね、とその場から立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ジェノスはバング達と分かれるやいなや、Z市の上空で隕石の落下予測地点へと向かっていた。その手には、試作品の新兵器が装着されており、これを使用した上での焼却砲のフルパワーでどうにか迎撃出来ないかと考えている。

 

 隕石はZ市だけでなく周囲の街へも壊滅的な被害を及ぼすであろうサイズのものであり、今から避難したところで、間に合わない。

 

 なによりZ市には彼の師も住んでいる。自分だけ逃げ出すわけには行かなかった。

 

 

 ……そして、そんな彼の横を通り過ぎていく大きな鉄の塊があった。

 

「(あれは!?)」

 

 それはブースターの逆噴射で勢いを殺してビルの屋上に着地すると、隕石を眺めて何やら計算をしているようだ。

 

 

「……お前は、ボフォイだな!?」

 

 ジェノスも遅れてその場に到着すると、それがなんだったのかが分かる。それは、S級ヒーロー第7位、高火力の兵器で敵を周囲ごと粉砕するヒーローだ。

 

「オマエハ、新人ノジェノスカ」

 

「ああ。ボフォイ、お前の力を貸してくれ」

 

「……断ル」

 

「なぜだ」

 

 ジェノスは、ボフォイもZ市に住んでいたのか、命を張ってやってきたのだろうかと考え、彼に協力を求めたが……それは間違いであると本人の口、いや、本人の操作するロボットの口から明言された。

 

 彼はただ隕石を相手に新兵器の実験がしたいが為に訪れただけであり、さらに言えば今ジェノスと話しているのはボフォイ本人ではなく遠隔操作で動くロボットだ。

 

「残念ダガ、俺ハ命ヲカケテル訳ジャナイ。隕石デ死ヌノハゴメンダ……アト、俺ノ事ハボフォイデハナクメタルナイトト呼ベ。ヒーローハ本名ジャナク、ヒーロー名デ呼べ、常識ダ」

 

 

 ……と、話している場合じゃなくなってきたようだな、とメタルナイトは言いながら空を見上げる。そこには隕石がもう姿まで見えるほど近づいてきていた。

 

 ジェノスは無駄に時間を使ったと言わんばかりにその場を離れ、隕石の落下地点の真下にあるビルまで跳躍した。

 

「あら、遅かったわねジェノス…………さん」

 

「時魔女!?」

 

 そこには、何故かジェノスよりも先にさっきまで支部で話していたはずの、そして避難勧告に行くと言っていた時魔女の姿があった。

 

「(こいつ、少なくとも俺より遅れて支部から出たハズ……!どうしてここに!?というかいつの間に着替えた!?)」

 

「どうしてここに、と聞きたげだけど……それを話している暇は無さそうよ」

 

 

 自分より早く到着している事、着ている服が全く異なる事、そしてなにより彼女が身に纏っている雰囲気や口調がまるで違う事から、やはりこいつも只者じゃないとジェノスは思った。

 

 そしてそんな彼女もまた、隕石を止めに来たようだ。避難のお手伝いをします、と言っていたはずだが、避難も無駄だと市民達も悟ったのだろう。

 

 ともかく、メタルナイトよりかはまだ好感が持てそうだ。

 

 

「そろそろね」

 

「ッ!!」

 

 

 そう彼女が口を開いた瞬間、隕石に向かって無数のミサイルが発射される。

 

「メタルナイト……!?」

 

 

 弾道からその発射地点を見るとそこにはメタルナイトが居た。

 焼却砲を発射しようとしていたが、タイミング的に今からでは逆に邪魔になってしまう。

 

 そして、ミサイルが着弾する。

 

 

 瞬間、空で爆発したというのに衝撃波で地面が揺れる程の爆発が巻き起こる。

 

「こ、この威力……!?あいつ……こんな兵器を……(これがもし隕石にではなく街だったら……!あいつは危険だ。警戒しなければ……!!)」

 

 爆発が止み、爆煙が空に漂っている……そして程なくしてその煙からまるで勢いが死んだ様子もない隕石が顔を出す。

 

「!?……ダメか!!」

 

 流石にあの爆発の直撃なら、と、どこか期待してしまったが、そう上手く事は運んでくれないらしい。

 

 

「(どうする、もうあまり時間がない……チャージまで5秒、隕石はあと30秒で地面と衝突する……いや攻撃が命中したとしてその後はどうする。というかそもそも俺のパワーでアレを破壊できるのか?)」「まあ落ち着け」

 

 

 声をかけられ振り返るとそこにはいつの間に居たのだろう、バングがそこに立っていた。

 

 

「心に乱れが見える。お主はまだ失敗を考えるには若すぎるのう。適当でええんじゃ適当で。土壇場こそな。結果は変わらん。それがベストなんじゃ」

 

「(……適当がベスト?)」

 

 

 そこでジェノスの脳裏には、自分の師の姿が浮かんだ。

 

 不意にジェノスの胸部装甲が開き、中からコアらしきものが取り出される。青白く光り輝くそれを、椀部に装着し、手を隕石へ掲げた。

 

 

「時魔女、バング、伏せていろ」

 

「ほ?」

 

「分かったわ」

 

 

 適当がベスト。後先のことはどうでもいい。失敗等考えない。

 ジェノスは隕石に今ある全力を捧げる事にした。

 

 

 

 そして、ジェノスの腕から隕石へ向かって、フルパワーの焼却砲が放たれ、地面から空に、一筋の光の柱が立った。

 

 

 

「うおおおおおおおおおおおお!!!!!」

 

 

 全身全霊を捧げた、今のジェノスに出来るうる限り最高の一撃……だが。

 

 

「ダメだ!!とても破壊できるような物じゃない!!」

 

「いや!気のせいか隕石が勢いを落としているように見えるぞ!」

 

「本当か!?」

 

「あ、気のせいじゃった」

 

「くそじじいめ!!」

 

 

 やがてフルパワーの焼却砲も虚しく、エネルギー切れで膝をつくジェノス。

 もう起き上がるエネルギーも残っていない。

 

 

「残り9秒……逃げろ、二人共」

 

 

 

 

「そこの二人、そいつのこと、任せるぞ」

 

 

 諦感が心を支配しようとしたその時、背後から見知った声がした。

 まさかと思いジェノスが振り返ると、そこには今まさに飛び立とうとしている自分の師匠……サイタマの姿があった。

 

 

「だ、誰じゃね君は?」

 

「よくわからないけど任されたわ」

 

 

 瞬間、ドムッという重い音が鳴ったかと思うと、遅れて彼が居た場所に蜘蛛の巣状のヒビが入る。

 

「先生!?」

 

「(あれがサイタマさんかあ……いや、実際に見るとやっぱ凄いな)」

 

 

 そしてサイタマは隕石を睨みつけ……

 

 

「俺の街に」

 

 

 拳を硬く握り

 

 

「落ちてんじゃ」

 

 

 その勢いのまま

 

 

「ねえ!!!」

 

 

 拳を振り抜いた瞬間、今日一番の轟音と共に、その一撃は隕石を貫通し、隕石は爆発四散した。

 

 

 

「嘘でしょ……!?」

 

「砕きおった!?」

 

 

 

 初めてその力を見るバングも、原作を知り、彼のマジ殴りの威力も知っている彼女でさえ、その光景には「冗談だろ」と叫びたくなった。

 ただの人間の一撃が隕石を砕いたのだからそうも言いたくもなる。

 

 

「……だが……!」

 

 

 だが、これで万々歳では終わらなかった。隕石は砕けたが、砕けて小規模な大きさになっただけで、隕石そのものはまだそこに存在する。

 

 大いに威力は低減したとは言えこのままだとZ市は……。

 

 

「ジェノス君、そのままそこを動くでない。わしが守っちゃる」

 

 

 

「その必要はないわ」

 

 

 

「なぬ?」

 

 

 

 今まさに降り注ごうとする小隕石を前にして、反動で動けずにいるジェノスと、そんな彼を守ろうとするバングに、いつの間にか前に立っていたほむらは、守る必要はないと断言する。

 

 

「それはどういう……」

 

 

 

 

 いつの間にか、ほむらの手には一つの黒く輝く弓が握られていた。一体どこから取り出した、と疑問に思ったのも束の間……ほむらがその弓を引く動作を見せたかと思うと、弓からキラキラと炎が吹き出し、弓にはいつの間にか光で構成されたかのような矢がかけられていた。

 

 

「……教えてあげるわ」

 

 

 ―――奇跡が存在するように……魔法だって、あるんだよってことを。

 

 

 

 

そして、空に向かって一本の矢が放たれる。

 

 そう、少なくともジェノスがそれを見たときには一本の矢でしかなかったはず。

 だがそれは、どういう原理か、まるで枝分かれするように分裂し、吸い込まれるように次々と小隕石に着弾する。

 

 分裂した隕石の対を成すかのように展開された弾幕は次々と小隕石を打ち抜いていき……殆どの隕石はパラパラと殆ど無害な砂利サイズまで粉砕され、余熱で空中で消えるか、地面に落ちても、勢いが死んでいるのもあって、殆ど被害を出さなかった。

 

撃ち逃しを時間停止で確認しつつ執拗に撃ったのだから当たり前とも言える。

 

 

 結果として、今回の隕石騒動で出た被害者は0。

 

 被害は、窓ガラス数枚と交通標識が一つ折れたこと、そして衝撃波によって道路やビルが損壊した程度の、まさに奇跡、まるで魔法と言える程に軽微な被害に抑えられたのだった。

 

 

 

 ……いや、一人だけ、甚大な被害を被った者がいる。

 

 

 それは……。

 

 

「先生!無事でしたか!」

 

 

「あら?あなたさっきの……」

 

 

 さて、帰るか、と踵を返した時、スタッ、と彼女達の前に着地した者が居た。

 先ほど、隕石を砕いた一撃を放った張本人である。

 

 

「さっきの光のパァーってやつ、お前か?」

 

 

「そうだけど……それが何?」

 

 

 ほむらは原作とは違う彼の行動に首をかしげながらそう聞いた。

 そしてサイタマは何故かぷるぷる震えながら、くるっ、と()()()()()()()()後ろを向き、そしてこう言った。

 

 

「……お前の技で服が破れちまったから、弁償してくれ」

 

 

 サイタマのヒーロースーツの、よりにもよって臀部が、おそらくは隕石を打ち抜いて貫通した矢に当たりかけた、あるいは当たりはしたのだろう。その結果、服が……破れていた。

 

 しかも、マントごとである。

 

 綺麗にそこにだけ大きな穴が空いており、”そういうアホっぽいデザイン”だと勘違いされかねない程に、そして隠しようもなくなっている程に。

 

 

「…………」

 

「……いや……違うんだよ?俺だって、悪意があったわけじゃない事は分かってんだよ。だからなんだ……こんな事言いたくも無いんだけど、その、なんだ、アレだよ……なんつうか……」

 

「あの、先生……とりあえず俺の服……はさっき破いてしまったんだった……ッ!!」

 

「今はその破れたやつでもいいからくれ」

 

 

 

 なんとも締まらない……そしてアホらしい幕引きになってしまった上に、これが時魔女、暁美ほむらとサイタマのファーストコンタクトだと言うのだから始末に負えない。

 

 ほむらとしても、まぁこれくらいじゃサイタマは死なないでしょとタカをくくっていたのもあり、この事態は想定外だった。

 

 ほむらは数秒放心したあと、「分かったわ」と後に連絡と弁償するために、彼の住所を教えてもらった。

 

 

 結果的に次に会う予定が出来たのはよかったと言えるかも……しれない。




時魔女 暁美ほむら憑依体のスペック

性格:
変身前=原作初期の、臆病で自信の無いほむらみたいな性格。
変身後=凛としたクールなイメージの性格だが、ツンデレ枠、クーデレ枠が既に居ると言う理由で素直にデレ、いや、優しい。
オリ主タグがある通り、もはやまがい物どころか完全に別もの。


戦闘スタイル:
魔法少女として変身する事で、
時間を停止させ、停止した世界の中で自由に活動出来る能力を持ち、
停止した世界の中で敵を重火器や武器で滅多撃ちにして片をつけるという
反則級の能力を持つ。

能力発動前に自身の体に触れられていると、その者も一緒に停止した世界で活動できて
しまうという欠点が存在し、その欠点を利用して他の絶対的な火力を持つヒーローの支援を得て敵を倒すこともある。

その上、本来別の人物が手に入れるはずだった力である光の矢を放つ黒い弓も所持しているが、殺傷能力が高すぎる上に制御が難しく人に被害が出る恐れがある為、今回の隕石のような時以外には使わない秘密兵器。


QBとの契約は行っていないし、多分存在もしない。
だがソウルジェムは存在する。
これが壊れると彼女は死に至る。






そして、力を使えば穢れるが、穢れは重曹で落とせる。


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時を止める少女

続かないと思った?俺も続かないと思った。



「お?」

 

「あっ、ど、どうも」

 

 

 隕石の件から三日、ほむらは伝えられたサイタマ宅へ、修繕費とお詫びのしるしとして、上級お肉セットとお茶菓子を手にサイタマの家に訪れたが、丁度出かける所だったらしい。

 

「お前は……えーと……」

 

「あっ、私は暁美ほむ、じゃなかった、時魔女というヒーローです。その、3日前に隕石の件であなたのヒーロースーツの、その……おしりの部分に穴を開けてしまった、ので、その修繕費と、お詫びの品を……」

 

 

 サイタマは今からパトロールに行くつもりだったのもあって、流石にそのことを忘れてしまったわけではなかったが、肝心の時魔女がこんないたいけな中学生だったという記憶は無かった。

 

 これは普段忘れっぽい彼だから、という訳ではなく、純粋に魔法少女じゃない姿での対面は、これが初めてだからである。

 

「お、おー……悪いな、なんか。ってこれひょっとして肉?肉じゃん!よっしゃあ!」

 

 ……そして、彼女がお詫びにと持ってきた肉セットでそれすら忘れたらしい。

 

「じゃあ、なんだ、せっかくだし上がってく?」

 

「いいんですか?」

 

「いいよ。どうせ三日前のでノルマは達成してるしな。あと、今日の飯が鍋に決まったから、お前も食ってけ」

 

 

 そう言うサイタマはどこかご機嫌な様子だった。確かこのタイミングだと、C級五位にまで上がっていたはず。そして「アレくらいでランク上がるなら、パトロールでもしてみるか~」という流れで外出する。

 

そして本来なら、砕いた隕石の破片によってZ市が崩壊し、その責任を擦り付けられたりといったすったもんだがあるのだが、この世界ではほむらの助力により、Z市の被害は最小限に抑えられている為、Z市は今も健在だ。

 

…………とは言え、怪人の出没率が段々上がっているのが原因で、若干の過疎化の気配が漂っているのだが。

 

 

そしてこれは単なる補足だが、この世界での現時点でのサイタマはC級五位ではなくC級二位まで上がっている。

 

些細な差異だが、これは、協会への隕石事件の詳細について報告する際、ほむらがサイタマの実力に関して正しく協会に伝えた為、協会が彼がインチキなのではというデマ情報に踊らされる事が無くなった為だ。

 

ほむら本人には彼のデマを払拭するというような意図は無かったのだが、そもそも、事態は誰の目から見ても明らかに解決している為、自由奔放なS級ヒーローは基本済んだことの報告等しない。

 

変な所で生真面目だったほむらは、今回の一番の功労者であるサイタマの名前を報告し、その結果協会は「わざわざ報告する程サイタマというヒーローの活躍が凄かったのか」と、S級ヒーローの中でも、中学生ということ以外至って常識人なほむらの勝ち取った信頼が、素直に協会に功績を認めさせるに至った。

 

 だが、それでも、やはり現場に三人もS級ヒーローが居た事もあって、サイタマよりその三名に上層部の目が向いてしまった。

 

 

 彼にデマや悪評が流れることは無くなった。

 

 だが上層部がそんな彼とほむらの齎した情報を大して気にも止めず「やっぱりS級に任せておけばなんとかなるもんだな、え?C級も現場に居たの?しかも結構活躍した?ふーん、でもS級が居たからでしょ?」という評価を下してしまったが為に、サイタマはまだC級止まりでいる。

 

 

 さて、話を戻そう。

 

 

 いつになくご機嫌なサイタマによって夕食の鍋に誘われたほむらは勧められるがままにサイタマ宅へ入っていく。今更だが成人男性二人が住む家に女子中学生が一人で訪れるというのは犯罪臭が凄いが、原作のほむらはこの比ではない事(軍事施設から重火器を奪ったり住居に不法侵入したり)をここで追記しておく。

 

 

「ん?お前は……」

 

「あれ?ジェノスさん、どうしてここに?」

 

「俺は先生の弟子だからな。こうして先生からあの強さの秘密を学ぼうとしている」

 

 

 無論、ほむらもそんな事は百も承知ではあるが、いちいちこうして「自分の知るはずのない情報は聞かなければならない」というのが、原作知識を持った者のめんどくさい点でもある。

 

 ……が、ほむらは「今!私!ジェノスさんと会話してるう!!」と嬉々として「隕石を割った力は凄かったですもんね」とか「ジェノスさんはどうしてヒーローになったんですか?」などと聞いている。

 

 サイタマは、ほむらからもらった茶菓子を頬張りつつ、あのジェノスのマイペースな長話を嬉々として聞く奴が居るとはなあ、と若干驚いていた。

  

 「それよりお前あんときと雰囲気違いすぎねーか」

 

 ……と、同時に、当たり前とも言える、むしろ何で今まで聞かずにいたのか不思議なほどごもっともな疑問を抱いていた。

 

「それはその……」

 

「俺も気になっていた……何故わざわざあの格好に着替える必要がある?」

 

「き、着替え?あれは着替えてるんじゃなくて、その……私の持つとある能力に関係するんです」

 

 

 能力ぅ?と首を傾げるサイタマ。こういってはなんだが……全く信じていないようだ。一応その力の一端である光の矢のせいでこうなっているのだが。

 

「サイタマさんとジェノスさんさえよければお話ししますよ」

 

 別に確認を取るまでもなく、魔法少女に変身できる事や、その他の魔法についてのことも、この二人になら話してしまっても構わないだろうと思う暁美ほむらだったが、原作知識で、サイタマは長い話を嫌う傾向にあることを知っていた為、念の為に聞いておく。

 

「……その話長い?」

 

 聞いておいて良かったようだ。

 

 サイタマとしては、一応はこうなっている原因でもあるし、何より知らないままだとすっきりしない。どうしても知りたいというわけじゃないが、聞いておいたほうがいい気もする。

 

「頼む」

 

 一方でジェノスは意外な事にほむらの持つ能力というものに興味津々だった。なにせ自分のフルパワーをもってしても砕けなかった隕石を、砕けたあとの小隕石であるとはいえ、粉々に粉砕し、本来出るかもしれなかった小隕石による余波の被害を食い止めたのは彼女の能力の物であると理解していたためだ。

 

二人がほむらに目を向ける中、ほむらはコホンと咳払いした後、二人にこう告げる。

 

「私は魔法で色んな事が出来ます」

 

 

 

 

 

「…………えっ、説明終わり?」

 

 説明終了である。それに対して不満が出ると思っていなかったのか、ほむらは首を傾げていた。てっきり、「ふーん」とか「へー、そうなんだ」程度の反応だと思っていたのだが。折角二十文字以内に収めたというのに。

 

「もっとこう、具体的に教えてくれないか?特にあの光の矢の事とか」

 

「(や、やだ、近い……)えっと……じゃあ変身見ます?」

 

「おう、あとその魔法?とか言うのも見せてくれ」

 

「わ、分かりました」

 

 

 ジェノスの意外な食いつきように、顔を赤らめながらほむらは変身を見せることにした。とはいえ、特殊な準備は必要ない。変身には彼女が常日頃肌身離さずもっているソウルジェムが必要だが、逆にそれ以外は何も必要ない。

 

「あ、着替えるならそっちで」

 

「ああいえ、大丈夫ですここで」

 

 ほむらはそう言うと、メガネを外し、懐からソウルジェムを取り出す。

 それは透き通った青紫色の宝石を、卵のような形にして、それを守護するかのように装飾が施されている。普段から肌身離さず持っており、変身する際と、穢れを浄化する際にしか取り出さない。

 

 彼女がそれを手に掲げると、ソウルジェムは彼女の意思に反応したかのようにキラリと光る。そう思ったのも束の間で、光は部屋の中を覆うほど大きく輝きを増していく。

 

 

「うおっ、眩し」

 

「っ!?(高エネルギー反応……!?)」

 

 

 そして、光は帯となり、彼女の体に収束していき、ほむらの身を光がすっぽりと包んだかと思うと、パシュンッと光が弾け、一瞬で彼女の身に纏っている服や雰囲気が変わっていた。

 魔法少女の姿とはいえ同一人物であるはずなのに、オドオドした小動物を思わせる少女から、凛としたクールな美少女の雰囲気が一変し、他人かと見紛う程の変身を遂げたほむらに二人は目を白黒させた。

 

 

「これが変身後の状態よ。私はこの状態のことを、”魔法少女”と呼んでいるわ」

 

「すっげーな、アニメみてえ」

 

「こんな事が……」

 

 

 流石のジェノスとサイタマも、目の前で人が変身すればそれなりに驚くらしい。いくら非現実的な事が起こっても、ここまでファンタジーじみたものはそうそう無い。

 S級第二位、エスパーであるタツマキですらここまであからさまにファンタジーな力を行使したりしない。

……約一名変身する変態も居るがここでは触れないでおこう。というか永遠に触れたくない。

 

 

「その盾とか服とか、どっから出てきてんだ?」

 

「変身すると身につけた状態で出てくるわね。私にもこれが何なのかは厳密には分かってないわ。何ができるかは分かるけど。……そうね、例えばこういう事も出来るわ」

 

 

 そう言いながら、盾の中から昨日使った弓を取り出す。

 

 

「それは今盾から取り出したのか!?それはつまり盾の中は別の空間に繋がっているとか……あるいはその弓が特殊なのか?いや、そもそもその弓と盾は……」

 

「ええと、お、落ち着いてくれるかしら……(ち、近いよお、あのジェノスさんがこんなに近くに……)ええと、あの、ジェノスさんの予想通り、この盾は別の空間へと繋がっていて、自由にものを仕舞ったり取り出したり出来るわ」

 

 

 そう言いながら、ほむらは飲み終わったお茶の湯呑を盾に仕舞ったり、取り出したり、昨日使った弓を取り出したりしてみせた。至近距離のジェノスという緊張のせいか、若干、変身前の雰囲気が顔を出している。

 

 ジェノスはそんな事は毛ほども気にとめず、未知の技術に興味を示しており、サイタマは純粋にマジックでも見ているかのように目を見開いていた。

 

 ちなみに盾の中には弓だけじゃなく重火器や爆弾なんかも入っているのだが、ここでそれを取り出したらジェノスに誤解されそうなので控えておく。

 

 

「そして私の能力の真骨頂なんだけど……ジェノスさんは、昨日私より早く出たのに現場にジェノスさんよりも早く私が着いていた事に驚いていたわよね?」

 

「そうなの?」

 

「ええ、事実です。だから俺は、時魔女とは、超スピードで時間を感じさせないほど素早く敵を瞬殺するヒーローだと思っていました」

 

「それはある意味では正解よ。……ええと、話すより実際に見せたほうが早いわよね……」

 

 

 言いながら、少しだけほむらは考える素振りを見せた。

 

 能力を見せるには色々と方法はあるが、時間を止めて少し移動しただけでは先程のジェノスのように、目で捉えられないほどの超スピードで動いただけだろう?とどこぞの戦闘民族の王子のような勘違いをされかねない。

 

 一番わかりやすいのは彼らにも止まった時間を体験してもらう事だ。

 

 都合がいいのか悪いのか、彼女の能力には「事前に体のどこかに間接的にでも触れていると、触れている者も止まった時間の中を行動することができる(尚、その状態で身体から離れるとそいつも止まる)」というものがある。

 

 彼らを止まった時間の中に招待し、その中で時計を取り出して「はい、時間を止めました。時計を見てください」と言えばわかりやすいかも知れないが、芸が無い。

 

 そして、少し考えた後、ほむらはたまたま手に届く所にあったペンを手に、顔を上げた。

 

 

「ちょっと、私の肩に手を置いてくれないかしら?」

 

「こうか?」

 

「何をするつもりだ?」

 

 

 サイタマはわくわくした様子で、ジェノスはほむらの能力の真骨頂とやらとどう関係があるのか、訝しむような様子であったが、どちらも素直にほむらの肩に手を置いた。

 

 

「(ふああ、ジェノスさんがめっちゃ近いぃ)じゃあ、行くわよ」

 

 

 

 

 機械仕掛けの盾は回転し、内蔵された砂時計の砂が遮断される。

 

 

 そして、周囲は静寂に包まれる。

 

 その場の空気が固まるといった比喩的な表現ではなく、どんなに静かにしていても聴こえてくるはずの環境音、風の音、それらが全て消え、世界は静寂のまま停止し、動かない。

 その上、部屋や外が先ほどと比べると少し暗くなったように感じる。だがほむらを含む自分達三人だけは明確に見えるという、妙な空間がそこに広がっていた。

 

「……え、なんだこれ?」

 

 サイタマも説明無しに明らかに何かが起こっている、というのは理解できたものの、何がどうなっているのかはこれだけではあまり理解出来ない。

 

 

「はい、ではご注目。種も仕掛けもございません」

 

 

 手品師のような口調でほむらは手にとったペンを、何の取っ掛りもない空中に()()()。置かれたペンはまるでその空間に固定されたかのように、重力を無視してびくともしない。 

 

「おお?どうなってんだこれ?」

 

「……!!ま、まさかお前……!!いや、そんな馬鹿な!こんな事が……!?」

 

「そう、この馬鹿げた能力こそ、私の能力の真骨頂」

 

 

 時間停止。

 

 

 それが時魔女こと暁美ほむらの持つ魔法少女としての能力だった。

 

 そして、ほむらはその後すぐに時間停止を解除して、余りにも早すぎる移動のトリックや、一瞬で怪人との戦闘に片が付いてしまうことへの説明をした。魔法少女になっていると自信が沸いてきて性格が変わることも。

 

 

「うわ~、それいいな。移動も一瞬なんだろ?すっげー便利じゃん」

 

「まぁ、確かに便利だけど、交通機関も停止しているから、自分の足で歩かなきゃいけないのがネックね。免許が取れればバイクか何かを使ってもう少し楽が出来そうなのだけれど」

 

「いや……だがヒーローという面で見てもその能力は破格過ぎないか?どんなに離れていても間に合うんだろう」

 

「……それは少し違うわね。実際に私が動くのは被害が出た後、ヒーロー協会に連絡が入り、そして私の下に連絡が入って、ようやく時間停止で現場に急行する。だから、必ず間に合う訳じゃないのよ」

 

 と言ったところで、そんなシステムなぞ知らんと言う無知な民間人に、ほむらの力が知れ渡りでもしたら「何故あの時に間に合わなかったんだ」と言い出す輩が当然のように現れる事も分かる。

 

「……だからこそ私はこの時を超越した力をヒーロー協会でも極少数の信頼できる人とS級のヒーローにしか教えていないし、これからもそのつもりよ」

 

「えっ、それ俺達に話しちゃってよかったのかよ?」

 

「S級ヒーローであるジェノスさんには元からいつか教えるつもりだったし、サイタマさんも……どうせ近いうちにS級に上がってくるだろうから」

 

「当然だ」

 

「いや当然なの?」

 

 

 まぁ、既に実力という面で見ればS級レベルのヒーローの中でもぶっちぎりだと思うけど、とほむらは心の中で付け足す。

 

 

 

「…………あっ、じゃあさ、今からここのスーパーで白菜買ってきてくんね?今、丁度タイムセールで半額んなってると思うんだよ。お金は渡すから」

 

「え、ええ……もちろん、それくらいお安い御用だわ」

 

 

 

……きっと、時間を止められると知るや否やおつかい(パシリ)をさせるような人物は、後にも先にも彼だけだろう。

 

 

この後、彼らは三人で仲良く鍋をつついた。

 

 

その際、話の流れでほむらがS級三位だと知り「女子中学生にもヒーローランクで負けてる俺って……」「(その理論だと俺も負けてるということに……)」と二人の成人男性が軽くショックを受けていたりしたのはまた別の話だ。

 

 




以降、来ても無いのにさもこういう質問が来たかのように装って質問に答えていくコーナーです。




Q.シリアスじゃねーのかよ
A.タグ見ろ


Q.時間停止中に人に触れたらどうなんの
A.事前に触れていれば止まった時間の中を行動できるが、止まった時間の中、既に時間が止まっている人には触れても時間が動き出すことはない。DIO様状態になる。でも原作だとどうなのか分かんね。ここではそういうことになってる、第二弾。


Q.記憶操作とかできんの?
A.仮に出来たとしてこのほむら(偽)がそれやる意味ある?


Q.ぶっちゃけDIOとかメイド長でも良くね
A.じゃあお前はDIOとかメイド長がワンパンにINするSS書けよ。大丈夫。ここに一人、読者になるであろう人は確実に存在するからよ。(親指で自分の胸をトントンする)


Q.重曹で穢れが落ちるってなんだよふざけてんのか
A.うるせえ!こまけえこたあいいんだよ!
 この件に関しては「この世界ではそういうもんなんだ」と思って下さい。多分穢れについてはこんな扱いなので触れることすら無いです。

ぶっちゃけ触れるのめんどくさい

皆でアラサーマミさんシリーズ読もうね。読めよ(豹変)


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海人族編
深海からの脅威


作者「お気に入り数が3000以上で日間ランキングで二位!?道理で感想がめっちゃ来たと思った……よーし!張り切って返信するやで!」


「重曹www」
「重曹ってなんだよ」
「重曹で落ちるのか」
「重曹は最強だった……?」
「重曹は草」
「クエン酸じゃダメなのか」



作者「……あああああああああああ!!!!!」





 サイタマ達との邂逅と鍋を囲んだ日から更に数日が過ぎた。

 

 「我々は深海からの使者である!人間共よ!我ら海人族に地上を明けわだぼはああああああ!!!」

 

 いつものようにサイタマは怪人や怪獣を倒し、そしていつものようにワンパンで倒していた。

 普段と何も変わらない。だが、()()とは違う点が一つだけあった。

 

 

――――――――――

 

1 名無しのヒーローオタクさん

今C級に凄い強い奴が居るらしいぜ

 

2 名無しのヒーローオタクさん

C級(笑)

 

3 名無しのヒーローオタクさん

俺も聞いたなそれ、名前なんだっけ

 

4 名無しのヒーローオタクさん

忘れたけど超強いらしいよ

 

5 名無しのヒーローオタクさん

どんな敵でも一発で終わるらしい

 

6 名無しのヒーローオタクさん

嘘くさ

 

7 名無しのヒーローオタクさん

A級ヒーローみたことあるけど流石にそこまで強くねーぞ

 

8 名無しのヒーローオタクさん

夢壊すなよ

 

9 名無しのヒーローオタクさん

隕石破壊もそいつらしいぞ

 

10 名無しのヒーローオタクさん

>>9

嘘乙wwwつくにしてももうちょっとマシな嘘つけやwww

 

11 名無しのヒーローオタクさん

>>9

それは流石に嘘だって分かる

 

12 名無しのヒーローオタクさん

>>9

現場にS級ヒーローが4人も居た状態でC級棒立ち、それが現実。はっきりわかんだね

 

33 名無しのヒーローオタクさん

>>10~13

おまえらひょっとして公式HPブログにあるその時の時魔女たんの報告記事読んでないにわかか?URL貼ってやるからちょっと出直してきて、どうぞ。

 

(ttl/hero.association.blog.no2183~~~)

 

 

 

 

34 名無しのヒーローオタクさん

は?

 

35 名無しのヒーローオタクさん

そうやって俺をだまそうったって……は?

 

36 名無しのヒーローオタクさん

そんな餌に俺が釣られクマーwww

……クマァァアアアアア!??

 

 

 

53 名無しのヒーローオタクさん

>>33

これまじ?

 

54 名無しのヒーローオタクさん

うっそだろ

 

55 名無しのヒーローオタクさん

ええ……(困惑)

 

 

 

89 名無しのヒーローオタクさん

いやこれがほんとならなんでこいつC級なんだよ?

 

 

92 名無しのヒーローオタクさん

>>89

いやほんとそれ。さっさとAとかSに上げたれや

 

93 名無しのヒーローオタクさん

流石にこれは我らが時魔女たんでも信じられへん

 

94 名無しのヒーローオタクさん

つまんな

 

102 名無しのヒーローオタクさん

いや……流石にこんなつまらん嘘つく娘じゃないやろ……普段の行い的にも

 

302 名無しのヒーローオタクさん

今来たんだけどその噂のC級ってひょっとしてさっき無免抜いて一位になったハゲっていうオチじゃねえよな?

 

303 名無しのヒーローオタクさん

そうだよ(便乗)

 

304 名無しのヒーローオタクさん

なんでホモが沸いてるんですかねえ……でもどうやらほんとにそいつっぽい

 

309 名無しのヒーローオタクさん

ただのハゲじゃねーか!解散!

 

 

 

 

 

 

 

「ではその現場に集まったS級4名の力で隕石を破壊したという事ですね」

 

『いえ、隕石を破壊したのはS級のヒーローじゃないわ』

 

「え?」

 

『隕石を破壊したのは、C級の新人ヒーローよ。……貴方達、ちゃんと審査やってるの?』

 

「え、流石に、冗談ですよね?」

 

『つまらない冗談は嫌いよ。そして、質問を質問で返さないで』

 

「そんな……す、すみません、動揺してしまって。審査結果はプライベート情報として処理されているので詳しくはお伝え出来ませんが、その、極めて厳粛な審査を……」

 

『そう、じゃあそれが間違っていたわけね。もしくは彼があえて実力を隠していたのか……何が理由かは分からないけれど』

 

 このようなやり取りをし、被害状況を報告の後、通信は切れました。これが本当ならC級にとんでもない新人が現れた事になります。

 それもS級レベルの……時魔女さんの見間違いじゃなければ、凄い事ですよね。実際のところ、映像や証拠が無いので何とも言えませんが、個人的には、それが本当なら是非その人の今後の活躍に期待したいところです。

 

(※ヒーロー協会公式サイト、レポートブログから一部抜粋)

 

 

 

 

 世間は、そしてヒーロー協会は、彼の次の行動に注目していた。

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

 鍋を囲んだあの日以降、ジェノスとは(あくまでもヒーローとして)連絡を取り合う仲になり、時々時間を止める盾について解析させてほしい等といったメールが届くようになった。

 

 これに関しては、解析させるのは別に構わないのだがその間ヒーロー業が出来なくなる上に変身が解除出来なくなるという問題が発生してしまうので、どのくらいの期間かと聞いたら1年、いや半年と返ってきたので申し訳ないが断らせてもらった。

 

 だが、そういったジェノスとのやり取りでクセーノ博士とも面識を持てたのは僥倖だった。

 

 

「これは本当に助かるなあ」

 

 

 そう言いながら、ほむらは自分が今()()()()()クセーノ博士からの贈り物を撫でながらニコニコと機嫌が良さそうに笑みを浮かべた。

 

 それは、ほむらの為にクセーノ博士が一晩で仕上げてくれた、箒型の飛行ユニットだ。

 棒状の本体に、跨る為のサドルのような部分、そして両端にドローンのようなプロペラ、後部にブースターまで付いており、ほむら一人程度なら余裕で浮き上げられる浮力を持っている。

 

 最高高度は500~800m(ほむらがあまり高い所まで飛びたがらないので、正確な数字は分からない)最高時速は60km程とそこまで速くはないのだが、ほむらにとって速さはそこまで重要ではない。

 

 なんせ自分の足で歩く必要が無いというだけで非常に助かっている。

 

 サイタマとジェノスの前でも度々「時間を止めると交通機関も止まるから困る」等とこぼしていた事からも察せられるように、移動は時魔女というヒーローにとってある意味一番の敵だった。

 

 悪魔ほむらかアニメ最終話あたりのほむらみたいに背中から羽根でも生えないかと移動の度に考えていた程だ。

 

 これによって、ほむらは移動がとても楽になり大喜び。町では度々彼女が普通道路の上空をふよふよと空中散歩している姿が目撃され、”時魔女ファンクラブ”が大喜びした。

 黒と紫色のストッキングでどんなに頑張ってもパンツは見えないという事が判明してしまい若干嘆いた者が居るらしいが。

 

 こんな素敵な物を開発してくれたクセーノ博士には、なにか困っている事とか無いですかと聞いたところ、最近研究ばかりであまり眠れていないとの事。実際は研究だけではなくちょくちょくぼろぼろになって帰ってくる誰かのせいかもしれない。

 

 これにはジェノスも苦い顔であった。

 

 なので、ほむらはリボンを大量に購入し、全長20m程の長いリボンで博士とほむらの身体を間接的に繋ぎ、時間を停止させ、ほむらと共に久々にたっぷりと休眠をとってもらった。

 

 これにはジェノスもにっこりであった。

 

 そんな理由で、最近はもっぱらコレに跨って街をパトロールするのがほむらのマイブームである。そのうち黒猫とお話ししたりするようになるのだろうか。それより先に箒に新機能がどんどん詰め込まれて「魔法少女とはなんだったのか」状態になるのが先だろうか。

 

 

 「さて、今週の天気予報は、と……」

 

 ほむらはラジオを取り出しながら、そろそろアレが来るはずだ、と考えていた。

 アレとはもちろん次の敵、深海からの侵略者、深海王である。

 

 この敵が来る日は割とあやふやで、とりあえず、隕石事件の近日中で、J市が雨の日、という事くらいしか記憶が無い。

 

 なので、こうしてJ市の天気予報を聞いている訳だが……。

 

 

 『残念ながら今週はずっと雨ですね~!洗濯物は乾燥機に頼ることになるかもしれません!』

 

 

 ……ちくしょうめ!

 

 まぁ、いつ来るのか分からないなら仕方ない。今は自分の仕事に集中しよう。ほむらはラジオを切り、盾の中に仕舞った。すると、丁度その瞬間、ほむらは上空からヒーロー協会から討伐命令が下っていた怪人の存在に気付いた。

 

 

「俺様は爪切りが下手過ぎて深爪し過ぎたストレスから怪人になったツメキリキリ!貴様ら全員深爪に」

 

 

 ほむらはツメキリキリという巨大化したカミキリムシの足の先端に爪切りのようなものがついた怪人を前に「なんだその理由」と思いながら時間を停止し、箒から降りるといつものように銃火器を怪人を中心に四方八方から囲い込むようにぶっぱなし、たまたま口が開いていたので、丁度いいとばかりに手りゅう弾を放り込んだ。

 

 たかだか災害レベル虎の相手に、本家の人も人間を辞めた人も真っ青な徹底ぶりであった。

 

 そして時は動き出す。

 

 

「してやぼごおおおおおおおおおーーーーッ!??!?」

 

「あっ!?」

 

「時魔女だ!S級3位の時魔女が来て……もう終わってる!?」

 

「……た、助かったぞ!」

 

「ファンです!あの、一緒に写真を……!」

 

「おまっ!ずるいぞ!俺だって!」

 

 

 

「写真とかはちょっと……あら?」

 

 そんな時、不意に腰の携帯端末から呼び出し音が鳴る。ほむらは時間停止したあと押し寄せてきた人達から離れ、誰も居ない建物の屋上で時間停止と変身を解除した。

 

 携帯を見れば、電話はヒーロー協会からの連絡のようだ。

 

 おかしい。怪人を倒した報告ならいつもここまで早く催促が来ることは無いのだが……あるいは、海人族の件だろうか?とほむらは首を傾げながらその通信に出た。

 

『時魔女君、聞こえるか?』

 

「はい、どうしました?」

 

『任務の途中で申し訳ないんだが……君にはJ市に現れた海人族と名乗る怪人達の討伐を頼みたいんだ』

 

「えっ!?あの、他のヒーローは!?」

 

『スティンガーやイナズマックスが戦っていたが敵の内の一体に敗れた。座標を送るのですぐに向かってほしい。既にぷりぷりプリズナーが交戦中、そしてジェノスも向かっているため、協力して事に当たってくれ』

 

「そうですか……了解しました。あ、あと、ツメキリキリ?は既に倒しておいたので、他のヒーローを呼ぶ必要は無いですよ」

 

『あ、ああ、そうなのか!流石は時魔女、仕事の速さはS級でもダントツだな』

 

「いえ、そんな、タツマキちゃんとかに比べたらまだまだ……」

 

 

 ほむらはそんなどうでもいい事を返しながら現状について考えていた。

 

 ……スティンガーが既に負けているって? 既にぷりぷりプリズナーが交戦中、ジェノスが向かっているって……? で、出遅れた!

 

 なんと間が悪い……しかもここからだと結構J市から離れている。こんな雑魚相手の為に出遅れるなんて。

 

 その上よりにもよって()()()だなんて!

 

 

 

『……時に、時魔女君。……ひょっとしてそれが素だったりするのか?』

 

「……あっ、しまった! すみません、今の忘れて下さい! では!」

 

 顔を赤らめながら乱暴気味に携帯端末を閉じたほむらは、今更ながら魔法少女の姿に身を包む。

 

 

「(ジェノスさんと電話するときはいっつも変身してなかったから忘れてた……)……さて」

 

 

 そして時間を止め、ほむらはJ市へと向かった。

 

 

 

 

 

 

「へっくち! ……この後J市では雨が降るんだったわね……すっかり忘れてたわ。……天気予報も見てたのに何で忘れたのかしら……」

 

 それとは別に幸運値があったら間違いなくE辺りであろう(あるいはスキルにうっかりEXでもついているのか)ほむらは曇り空の下、時が止まっているとはいえ寒さは感じるらしく、肌を震わせた。

 

 そして、停止した土煙や空に舞う瓦礫などといった戦闘の行われている瞬間の現場が見え始めた。どうやら、ぷりぷりプリズナーと深海王が戦っているらしい。

 

「……間に合わなかった……!」

 

 現場に着いたほむらはそう呟いた。それはぷりぷりプリズナーの敗北を意味して居る……わけではない。彼が、既に変身済みだった為だ。

 

 S級16位、ぷりぷりプリズナー。

 彼を一言でいえば、「A級は一人前、S級は変態」と呼ばれてしまう原因筆頭であり、文字通りの変態である。

 

 無論S級なので恐ろしく強いのだが、まず、ホモである。ホモである(二回目)。

 筋肉モリモリマッチョマンの、ホモである(三回目)。

 

 しかも、普段は何をしているかと言うと「我慢できずに気になった男子を襲ってしまう為、牢獄の中に居る」。その為ヒーローネームにプリズナー、と入っているのだ。

 

 そして、彼には「エンジェルスタイル」という、この姿を見た者に生きて帰ったものは居ないという変身スタイルが存在する。

 

 それは、筋肉を膨張させ服と言う心の枷を外し、文字通りのフルパワーで敵を圧倒する変身である。

 

 つまり全裸である。

 

 

「出来れば……ッ!見たくなんかながっだ……!!」

 

 

 ほむらは、向かってきた方向が悪く()()()と回っているソレを直視して軽くえずいた。SAN値チェック待った無し。ほむらはSAN値を2失った。

 

 ……一応彼をフォローすると、割と良い筋肉をしているという点だろうか……いや、そういえばこの時深海王に「醜いわね」と一蹴されていたような気もする。ダメだ。

 

 これがS級の戦いか……俺が負ける要素は無いな、などと考えながら傍でそれを見ていた音速のソニックもこれには青い顔をしていた。原作ではこの後彼も全裸になることになるのだが(意味深)。

 

 ……まぁ、それはそれとして、だ。

 

 現状どうなっているかというと、ぶっちゃけ既にぷりぷりプリズナーが負けそうになっていた。「ラッシュっていうのはね、相手を確実に仕留める為に、一発一発に殺意を込めて打つのよ」とか言いだすあたりだろうか。丁度、顎にクリーンヒットしたタイミングで時間停止したらしい。

 

 

 ……彼は、変態だが基本は善人だ。気になった男子を襲っちゃう事以外は。

 

 このまま大けがをするのを黙って見過ごすのも忍びない。そう思ったほむらは、空中に浮かび上がる程の衝撃を受けたらしい彼の身体を、あまりソレを見ないようにしながら、攻撃が当たらないであろう場所まで運び、そして時間停止を解除した。

 

 

「――んな風、に、アラ?」

 

「――ごはぁっ!」

 

 

 そして時間が動き出し、ぷりぷりプリズナーは仰向けにずさぁ、と地面を転がり、深海王は突然消えた相手に一瞬目を丸くした後、着地すると私と目が合った。

 

 

「……あらぁん?今度は随分小さな兵隊さんねえ?」

 

「なっ!?(いつの間に現れた、このガキ!? この俺が、全く動きが見えなかっただと……!?)」

 

「君、は……時魔女ちゃん、か……気を付けろ、そいつ、かなり強い、ぞ」

 

 既に、かなりダメージを受けているらしいぷりぷりプリズナーは立ち上がろうとして脚に力が入らず膝をついた。

 

 対して深海王は標的を完全にほむらに変えたらしい。獰猛な笑みを浮かべながら口を開く。

 

 

「今のはどうやったのかしら?」

 

「ここで答えたら、むしろ拍子抜けじゃないかしら?」

 

「それもそうねえ!」

 

 

 そして深海王がほむらに向かって飛び出し、拳を振ると同時に、時間停止が発動する。

 

「(はっ……や!?)」

 

 

 ほむらの経験上では最速かもしれない。時間停止をするまでのほんのコンマ何秒かの時間で、それは残り数mという所まで接近してきていた。

 

 これでこの世界では音速のソニックに「遅い」と言われてしまうレベルの速さだというのだからやっていられない。その上、雨が降り始め身体が濡れると巨大化してパワーもスピードも段違いに上がるというおまけつき。こうなると最高速度になったらある程度離れないと時間を止める前に殴られて死ぬかもしれない。

 

「……とりあえず、光の弓矢は効くのかしら?」

 

 ほむらは、最初から出し惜しみ無しで光の弓矢を取り出した。これで効かなければ、後はとにかく相手の攻撃を躱して躱して躱しまくって、ジェノスやサイタマの到着までの時間を稼ぐしかないだろう。

 

 というかぶっちゃけ最初から彼らをここに連れてきた方が早い気もしてきた。

 しかし、そんな事までしていると流石に()()()()()()()可能性がある、か。そう考えたほむらは、覚悟を決めて、深海王に向けて光の矢を打ち込んだ。

 

 

 

 

 

 

 一方、ほむらと連絡をとっていたヒーロー協会の男は切れた通信をそのままに、NO SIGNALと書かれた画面を眺めていた。

 

 

「あんな娘が、S級ヒーロー第三位、か……強い力を持っているからという理由で、あんな子供にまで頼らなくてはいけないとは……情けないな、私達は……」

 

 

 もしほむらがこのセリフを聞いていたなら「違うんです、違うんです」と必死にそれを訂正しようとして更に彼自身の情けなさ、やるせない感情を誘っていただろう。

 

 彼らにとって時魔女とは「見た目はただの子供だが実は凄まじい超能力者」とか「小学生だが一時期メタルナイトの助手をやっていた程の天才少年」ではない。彼女はヒーロー協会にとって「不思議な力を持っているだけの女子中学生」だ。

 

 しかもそれらが全てあながち間違いでもないのがややこしい。

 

 ……これは関係の無いことだが、彼らは彼女の「時魔女」というヒーローネームに何の疑問も持たないのだろうか? ……だが実際何の疑問も抱かれていない所を見るに、何も思われていないのか……あるいは「時魔女の時ってなんだよ?」と思う者くらいは居るのだが、それを直接本人に聞こうとする者が居ない、という事なのかもしれない。

 

 そもそもの話、中学生が銃火器を所持していて「いや彼女はヒーローだから」で何の疑問も抱かないような業界である事からもある程度……あっ(察し)というやつである。

 

 ……それだけ“中学生でS級ヒーローになっている”という彼女は異質で、ヒーロー協会も扱いかねているのだろう。……という事にしておきたい。

 

 それに加えて今はヒーローネームどころではない、時は一刻を争う事態だ。あのスティンガーが、イナズマックスが敗北し、S級のぷりぷりプリズナーが牢獄から出張ってくるだけではなく、期待の新人ジェノスまで駆けつける程の相手。

 

「時魔女……いや時魔女ちゃん! 頑張ってくれ……! 応援してるぞ!」

 

 

 

 




感想、お気に入り登録、そして誤字脱字報告いつもありがとうございます。


あと前回のあとがきで「時間停止した世界では触っても動かしても停止したまま」
みたいなことを書いた気がするんですが、よく考えたら能力で取り出した大量のロケランを地面に置いた後一個一個それを撃つシーンがあった、という事は触ればまた動く可能性がある?ので、無かったことにさせてくだせえ。

……なんか魔力的なアレで動かせるという事で。

(何かワルプルギス戦で車とかを車体の上から運転したり海中のミサイル発射装置的な何かを動かしたりしてたし)






以降、来たような来てないようなあやふやだけどまぁ来てるってことにしたれっていう質問コーナーです。



Q.重曹って(ry
A.そろそろこれに対する返しのレパートリーも無いから勘弁してくれ。してください。


Q.原作のほむほむは心臓の病気を患ってたけど、ここの偽は患っているの?
A.中学生になるまで患ってたけど治った。

Q.この子学校は?
A.転生者だから義務教育は既に受けてる。加えてほむほむぼでーの自スペックが高い。なので飛び級で卒業。卒業後はヒーローに。みたいな。

Q.時魔女っていうヒーローネームが気に食わない
A.まあそれは俺のネーミングセンスがないからってやかましいわ
これに関しては素直に謝るしかない。
……でもDM送ってまで「変えろ」と要求してきたそこのお前は度が過ぎてるのでちょっと廊下に立ってなさい。

○○のほむらみたいな感じなんちゃうかというのもあったけど、JCで本名をヒーローネームにするのはアカンやろ……。

名前という点で見てももっとひどいやつは沢山居るんやで?B級77位の奴なんてヒーローネームか知ってる?【骨】やで?

……何?能力がバレるやろって?あぁ、大丈夫!ヒーロー協会って馬鹿だから!(アンチ・ヘイト要素)


Q.ほむほむの時間停止についてkwsk
A.例のあの子が居ないからそもそも一ヵ月という期間に意味が無いし、逆行する必要性もそんなに無い。ぶっちゃけ逆行する能力は封印してもいい気さえする。なので、時間停止に関してはまた別の制約を設けます。できれば本編中で語りたい所。


Q.ほむほむって身体能力は常人位なんか?
A.一時期魔法少女の中でも身体能力は最弱で常人位っていう説があったけど新編で停止した世界でマミさんと互角にやり合うレベルの身体能力がある事が判明したので常人って事は無いで。


Q.サイタマとの共闘はよ
A.期待してるとこ悪いんやがサイタマ氏は強敵とのギリギリの戦いを望んでいる戦闘民族なので、残念だけど……無いかなぁ……。
ただ、今回は無かったけど、「間に合わなくなるかもしれないから連れてってくれ」とかはあるかもしれない。


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深海の王

めちゃお気に入り数増えたし、感想もめちゃ来た。
うれしいね。ありがとう。








 万物の母にして、全ての生態系の源である海。

 そしてそんな海に棲む種族、海人族の長にして王。

 その名は、深海王。

 

 彼は今、強い憤りと苛立ちを感じ始めていた。

 

「(一体どういうカラクリなのかしら?)」

 

 拳を振るった、と思ったら、相手は既にその場から消えており、ピカッと光る何かで撃たれ、気付いたら皮膚をボコボコと抉られ、鋭い痛みが彼を襲っている。

 

「こっちよ。ノロマなお魚さん。」

 

「ぬうううん!!!」

 

 また、だ。確かに捉えたと思ったのに、まるで殴った感触が無い。

 そして、いつの間にか離れた場所にそいつの気配が移動している。

 

「……幻覚?それとも、超スピードかしら?」

 

「さぁ、どっちかしら?」

 

「ッ!!がああ!!」

 

 だがこうしてピカッと光る何かで攻撃されているのだから、幻覚という事は無いハズだ。だが、超スピードで移動しているにしても、移動する前の動作まで見えないというのは一体どういう事だ?それすら目に捉えられない程のスピードだと言うのか。

 

 それを見ていたぷりぷりプリズナーと音速のソニックも、その戦いに圧倒されていた。

 

「流石は、時魔女ちゃんだ……。」

 

「あのガキは一体……?」

 

「ん? あの子か? あの子はS級第3位のヒーロー、時魔女ちゃんだ。知らないのか?」

 

「(S級3位……!? 馬鹿な! この俺の目でも捉えられない程のスピードで動くガキが居てたまるか! そんな規格外が世の中にそうポンポンと居ていいハズが無いだろう!?)」

 

 音速のソニックは、自分より速く動ける存在が認められなかった。そして、同じ感情を深海王も抱いていた。認められない。この深海の王が、目で捉えられない程のスピードで移動する者が存在するなど。

 

 

「この深海王の身体に、こうもあっさりと傷を負わせた事には褒めてあげるわ……敬意を表して、貴女は四肢を割いて永遠に暗い海の底で飼ってあげる!」

 

「(やだ怖い)できるものならやってごらんなさい。」

 

「んがあああああ!!!」

 

 

 ぽつり。

 

 そして不意に、深海王は振りかぶった拳をピタリと止めた。ほむらと深海王は、同時にある事に気付いた。

 

 

「……雨、降って来たわねぇ。」

 

 

 ポツポツと段々その強さを増していく雨に、深海王はニヤリと獰猛な笑みを浮かべた。

 

「(まずいっ!!)」

 

「ふん!!」

 

 ブオッ、と深海王が拳を振り降ろし、それを間一髪で時間停止が間に合ったほむらが避ける。ここから先は、更に注意して動かなければならないだろう。見れば、既に深海王は先ほどまでとはまるで違うフォルムになっていた。

 

 一応の人型を保っていた先程と違い、今では一回りも二回りも巨大化し、まさに海の怪獣。

 

 無論見た目だけではなく、先程までほむらが立っていた地点にはちょっとしたクレーターが出来ていた。……もし、彼が水を得る事でパワーアップする事を知らなかったら……そう考え、ほむらはゾッとした。

 

 効くかどうかは分からないが、光の弓矢で反撃しつつ、そして、十分に、十分過ぎる程に離れた後、時間停止を解除する。

 

 

「(デカい上に……速い!?)」

 

「……また躱したわねえ? アラ、今度は随分遠くまで逃げたじゃない?」

 

「(速い……しかも、多分、盾で防いでも腕一本は覚悟しないと……)」

 

「妙なカラクリで逃げているみたいだけど、いつまで持つかしらあ?」

 

 

 実際、そう長くはもたないだろう。深海王は既に彼女が幻の類ではなく、どういう訳か自分でも視認できない程のスピードで動いている、という事を見破っていた。

 

 降っている()()()()()()()()()()()()()()()()()という事実に気付いたのだ。それは、ほむらが止まった時の中で移動した、ほんの一瞬の痕跡。更に雨が降れば、足跡で彼女がどこに行ったかを判別出来るようになるだろう。

 

 まさか本当に殆ど一瞬の間でそこまで移動出来るなんて、と深海王は感嘆した。

 

 だがああやって止まっているタイミングもあるし、何より、彼女が放つピカッとする物も、もう痛くない。

 

 なにより、深海王は彼女が何らかの理由でこの戦いから逃げる事は無いと確信していた。ここまでの攻防で彼女はあの妙な能力を使用すれば何度も逃げるチャンスがあったはずだ。なのにそうしないのは、地上の人間を守護する立場の戦士であり、決して逃げる事が許されない立場なのだろうという事が察せられた。

 

 その上、殴る、躱すという戦闘とも呼べないやりとりをしているうちに、先程のちょっとだけ強かった男とはみるみる距離が離れつつあり、彼の増援も望めないだろう。

 

 

 状況は深海王の圧倒的有利にある。

 

 

 

 

 

 対するほむらもその事実に気づいていた。

 

 ……今までも、何度かこんな事があった。

 

 硬過ぎて自分の攻撃がまるで通用せず、いくら時間停止しても勝てないような強敵に、今までに何度か出会った。

 

 ある時はタツマキ等に協力を要請した時もある。

 ある時は体内から爆破する事で事なきを得た事もある。

 ある時はもう諦めて止まった時間の中で重機を使って持ち上げて溶鉱炉にぶち込んだこともある。

 

 油断が原因で身動きが取れなくなり敗北しかけた事もある。

 

 ……危うく死にかけたこともある。

 

 自分じゃなく()()()()だったならと思った事や、他の魔法少女だったなら、彼女達もこの世界に居たならどんなに良かったかと思った事も。

 

 彼女はそもそも常人と比べると”スタート”が遅かった部類になる方の人物だ。

 

 スタートというのは、体を鍛え始めるだとか、ヒーローを志したという意味でのスタートではない。”普通に生活が出来る、一般人としてのスタート”という意味である。

 

 

 暁美ほむらというキャラクターを知っていても、これに関しては知られていない事が多い、彼女を構成する設定の一つに、「元々病弱で心臓病を患っており、学校にも行けず自然と気弱で後ろ向きな性格であった」という物がある。

 

 この世界でもそれは同じで、彼女は転生後から今までの人生の殆どは病院で過ごす事となる。

 

 転生前(もと)から「底抜けに明るく前向きな性格だった」という訳でも無かった彼女は、後に()()()()()()()()()()()ということが()()()()()()とはいえ、その退屈で苦痛ばかりが押し寄せる生活に慣れたころに彼女が『眼鏡の三つ編みで病弱、性格は内気でちょっと残念な少女』という設定通りの人物になってしまうのは自然な流れだった。

 

 そして一般的には中学生と呼べる年齢になる頃、彼女の枕元に極々当たり前のように置いてあった”ソウルジェム”によって、彼女は覚醒した。

 

 この魔法少女まどか☆マギカとは全く異なる別世界で、ただ一人の魔法少女として。

 

 最初はそれこそ身体能力も物語の過去編に登場する過去のほむら、通称メガほむと同程度で、バールのようなものを振り回すだけで息切れする程の身体能力しかなかったし、光の弓矢なんかは、そもそも腕力不足で弓を引けず、命中率も10発3中という、絶望的な数値だった。

 

 自分の思うほむらというキャラクター像から離れていると自覚する度、失敗する度、うっかりEXをやらかす度に「自分の事を暁美ほむらだと思い込んでいるJC(笑)」という文字が脳裏よぎったりするナーバスな時期もあった。

 

 今でこそ”魔力”の扱い方を覚え、そこらのヒーローに毛が生えた程度の身体能力と、自由に時間を停止出来る能力を完全にマスターし、彼女は自他ともに認める魔法少女となった。

 

 

 そこでほむらとして生きてきた彼女はふと思った。

 別に、ヒーローになる必要はないんじゃないかと。

 

 原作の人物に会うだけなら自分ならいくらでも会える。

 ヒーローのおっかけなんて、今時珍しくもないじゃないか。

 

 そもそも原作に暁美ほむらというキャラクターが居ない以上、自分には童帝やメタルナイトのような明確な役割も、ジェノスのような使命も無い。彼らだけでもこの世界が廻る事は確認するまでもなく誰の目から見ても明らかだ。わざわざヒーローになってでしゃばる必要なんて無いんじゃなかろうか。

 

 というか、ヒーローってそもそも必要だろうか?

 

 だが、それでも彼女はヒーローになった。

 他に幾らでも道はあったはずなのに、何故?

 

「(その答えは今も出ていない)」

 

 眼前に迫る深海王の拳。

 時間停止は……間に合わない。

 

 

 

「ハッハァー!! ようやく捉えたわよぉ!」

 

「クッ……!!」

 

 まるで金属同士を勢い良く接触させたかのような甲高い衝突音が響き、次の瞬間、ほむらはコンクリートの道路を30m近く転げまわる。

 

「(い、意識が……!たった一撃でこの威力……!)」

 

「か~るいわねえ~!躱せないと見てわざと飛んだのかしら?」

 

 それだけではない。きちんと盾を構え、ガードをしたうえで、ほむらは自分の腕の骨が、あばらが軋む音をはっきりと聞いた。

 

「……今の私ではこれが限界みたいね。」

 

「あら? 諦めちゃったのかしら? 貴女には手こずらされたから、せめて良~い悲鳴を上げてくれるかしら?」

 

「お断りよ。」

 

「あ、ごめんなさい、説明不足だったわね? あなたに拒否権なんてないのよぉ!」

 

 

 もうあのカラクリを使っても自分の拳が届く事は証明された。なら、次はどう甚振るかだ。彼女はどうやったら気持ちの良い悲鳴を上げ、苦痛に顔を歪め涙を流し、命乞いをするだろうか?

 

 まずは四肢を引きちぎり、臓物を引きずり出すか。いや、それでは呆気なさすぎる。もっと、もっともっともっともっと残虐な方法で……。

 

 

「……あ?」

 

 

 

 

 ……ふと、違和感に気付き、深海王は標的に向けて駆け出した足をぴたりと止めた。

 

 

 雨で潤いが戻ったハズの自分の身体に、今も水を供給出来ているハズの自分の筋肉に、耐え難い渇きを感じた。膨らんだハズの自分の身体はいつの間にか先程までの萎んだ身体に……いやそれ以上に乾いているといっていいだろう。

 

 

「こ……これは……」

 

「……ようやく()()()()()かしら?」

 

「か、身体が……乾く……!力が、抜けて……!一体何をぉ……!」

 

 

 苦しみながら怨嗟の言葉を吐く深海王を前に、ほむらは「ようやく自分の策が効き始めたか」と嘆息していた。化け物だ化け物だとは思っていたが、しかし、ここまで戦闘を引っ張ってようやくとは。

 

 彼女の策、それは簡単な話で、原作でサイタマが言っていた「ここまでヒーローが怪人を弱らせてくれたおかげで楽に倒せた」を実践してみただけの事だ。

 

 まずどうすればかの深海王が弱るだろうかと考えて、そして彼は雨によって水分で膨らむと強くなるんだったなと思い出し「ならば乾燥させるなりして水分を失わせれば弱るのではないか」と考えた。

 

 それからは語るまでもない。彼女は光の弓矢で彼の身体の表面を削った後、そこに超強力な乾燥剤を大量に仕込んだり、口が開いているタイミングを狙って口の中に体内で自然に溶けるカプセル(ガシャポンサイズ)に入った超強力乾燥剤を大量にぶち込んだりとやりたい放題だ。

 

 次案に海の生き物なら電気に弱そうだからと「超強力電撃コース」、その次に一応生物ではあるハズなのだから少しは効果が期待出来るだろうと「持ってる毒物適当にフルコース」を考案。

 

 そのほかにも、「プラズマカッターで切断と同時に傷口を焼きつぶす」とか……流石にそれはほむらの精神衛生的にあまりにもあんまりな案だったので廃案にしたが、もしこの案を採用しなければならなかった場合の為に、屋外で高電圧の電気を使える装置とプラズマカッターは既に用意してある、と言っておこう。

 

 今回の乾燥剤だって、一歩間違えれば臭いや違和感で先に気付かれてもおかしくはないのだが、気付かれたところで、という話でもあるし、戦闘に対する高揚感やほむらへの苛立ちが彼の感覚を鈍らせてしまったようだ。

 

 

「(まぁ今回は自分で倒すのが目的じゃなかったから別に必要無いけど)」

 

「ああああ!!!あんたは!!絶対に許さないぃぃ!!必ずぶち殺してやる!!」

 

 

 深海王にとって誤算だったのは、目の前にいる少女は、いや、人間とは、その気になればどこまでも残虐になれる種族であり、やろうと思えば一つの種族を滅ぼすことに躊躇いを捨てることができ、目的の為ならどんな手段でも用いる類の生物であった事。

 

 そして、時魔女と呼ばれるヒーローが、自身の弱点を事前に知っており、その対策をさも当たり前のように取っていた事。

 

 更にもう一つ。

 

 怨嗟の言葉を叫ぶ深海王を前に、ほむらが不意に盾から取り出した帚型の飛行ユニットに跨り、ふわりと浮き上がる。

 

 

「!?今更逃げるつもりィ!?絶ェッ対に逃がさないわよォォォ!!」

 

「まさか。これは()()よ」

 

 

 合図?と深海王はそれについてロクに考える程の暇も冷静さもなく、体内ウツボを吐き出し上空へと飛び上がった標的を噛み殺そうとし、そして前方で何かが煌めいている事にようやっと気付く。

 

 

「焼却」

 

 

 

 深海王の誤算、その最後の一つは最初からほむらはこの場所……ジェノスがフルパワーの焼却砲を撃っても何の被害も出ない、直線状に何も存在しない道路に誘い込んでいたという事実。

 

 一体いつの間にこの作戦を打合せしていたのかとか、いつからここに誘い込まれていたのか、ジェノスはいつから戦いをみていたのか。様々な疑問が残るが……深海王はそんな些細な疑問を抱く暇もなく、自身の身を覆いつくして余りある巨大な炎に抱かれた。

 

 

 

 

「ご協力感謝するわ、ジェノスさん」

 

「いや、構わない」

 

 

 種明かしをしてしまうとなんてことはない。

 

 ほむらはJ市に向かう前に、ジェノスに連絡を入れ、深海王との現場の場所を送っておいたのだ。次に、現場に着いたジェノスは既にほむらはその現場から離れるように深海王との戦いをしているという事を負傷したぷりぷりプリズナーから聞いた。

 

 そして、戦闘跡を追っていくとほむらと深海王が戦っているのが見えたが、思ったより戦闘が激化しており横やりを入れると彼女の邪魔になってしまうかもしれないと踏んだジェノスは、すぐに飛び出さずに機会を窺う事にした。

 

 そして、一方ほむらは時間停止中に色々と仕込んでいる時、次はどこで時間停止を解除しようかと考え辺りを見回していた所、普通にジェノスを見つけた。

 

 ……これに関してはほむらの転生前の人物がジェノス推しだった事も関係しているかもしれないが、そこは些細な事だ。

 

 

 そうして二人は一度接触し、停止した世界で情報交換した。

 深海王が思ったよりも手強く、光の弓矢では削れはするものの再生力に追い付かず削り切れなくなってきた事、なので、乾燥剤で弱らせることにしたという事。

 

 結果、ほむらは深海王を出来るだけ弱らせ、ジェノスはその弱ったところにフルパワーで焼却砲を叩き込む、という即席の作戦が立案された。

 

 ほむらが準備良く乾燥剤を持っていたことに関しては「銃が効かない液体状の敵に有効なので」という理由で納得した。

 

 雨が降り始めて敵が逆にパワーアップし始めたときは肝が冷えたが、結果としてこうして作戦は成功した。

 

 

「これで、倒せているといいんですが。」

 

「これでダメだったら先生の力を頼ることになるかもしれないな。」

 

「(あれだけやってダメとか考えたくないなあ……)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お?あっちか?」

 

「なっ!?逆方向だったか!?」

 

 同時刻、J市で(現場へはまったくの別方向、あらぬ方向へと)走っていたサイタマ、そして正義の自転車乗り、無免ライダーは、J市の一角で大きな爆発音と巨大な火柱が立ち上っているのを見た。

 

 それがジェノスの焼却砲によるものとまでは分からなかったが、どうもあそこで何かが起こっているという事だけは分かった。

 

 すぐさま方向転換した無免ライダーは、ペダルに力を入れようとしたところで、爆発地点から炎の帯のような物が、丁度彼らの走っていた道路からビル等の建物を挟んで反対側の道路を焼いたのを見た。

 

 

「うおっ!?」

 

「なんだ!?」

 

 

 ひょっとすれば、これは怪人の攻撃か何かかもしれない、そう思った無免ライダーはビルの間を通って、炎が焼いた後のプスプスと音を立てている道路に入る。

 

 遠くの爆発地点から直線状にこんな所まで焼いてしまうとは、今回の怪人は凄まじく強いのかもしれない……と冷や汗を流した無免ライダーは「いや待てよ?今回の怪獣というのは海人族という海に棲む怪獣だったのでは?海に棲む生物が炎を扱うのだろうか?」と首を傾げる。

 

 それはともかくとして、ひとまずはあの爆発地点へ向かった方がいいだろう。

 

「とりあえずこの道は避けた方がいいかな……。」

 

「そうだな……? おい、ちょっと待て、なんかくる。」

 

「え?」

 

 熱でタイヤがダメになる事を恐れて元居た道に戻ろうとする、が、そこでサイタマが空から何かが飛来して来るのを見て、その場に降り立つ。

 

 ガゴンッ、と空から飛来したそれは落下地点に大きなヒビを作った後も勢いが止まる事無く少しの間転がったと思うとベタンッ、と仰向けに静止した。

 

「こ、これは……。」

 

「ひょっとしてこいつが例の海珍族ってやつか?」

 

「そうみたいだね……瀕死みたいだけど。」

 

 

 それが人型であった事にようやく気付いた二人は急いでその場に向かうが、それが人間ではない事に気付いた後、これは既に戦いが佳境に近いのかもしれないと悟る。

 

 飛来してきたそれはジェノスの焼却砲を食らい吹き飛ばされた深海王その人であり、今や()()()と言ったところであった。

 

 

 ここで、ほむらの誤算が二つ。

 

 一つは流石にアレで死なないとは思って居なかったことだ。既に虫の息ではあるが、それでも、あの弱った状態で焼却砲を食らって原形をとどめて居られるほどとは思って居なかった。

 

 ちなみにこれは、「わざと飛び上がる事で衝撃を出来るだけ受け流す」というほむらの技術を真似た事で、直撃はしたものの、こうして吹き飛ばされることで原型は留めるに至った深海王の咄嗟の行動によるものである。

 

 お蔭でガードの為に使った両腕はかろうじて形が残るかどうかという程に損傷し焼け爛れており再生には時間がかかるだろうが、肝心の心臓や脳等の重要器官はあまり損傷せずに済んだらしい。

 

 そして二つ目。

 

 

「……うご、が、ごご、ご……!!」

 

「!?こんなになってもまだ動くのか……!?」

 

 

 それは、焼かれた事で、ほむらが深海王に仕込んだ乾燥剤が燃え尽きたらしい、という事だ。それ即ち、水によるパワーアップを封じていた物がなくなるという事。

 

 さらに言えば再生も可能だという事だ。

 

 深海王はグチャグチャとグロテスクな音を立てながら雨による再生を行い、既に立ち上がり、意識にかかっているもやも段々晴れつつある。

 

「あ、ぐが……!あのアマ……!絶対に、ぶぢごろ、す……!!」

 

 

 かかっていた意識のもやが晴れた先にあったのは純粋な殺意。深海王が先の攻撃よりもまず真っ先に思い浮かべたのは、この深海王を出し抜いてあろうことかここまで追いつめて見せた小さな人間の少女を殺す事だった。

 

 

「おう、お前が海珍族か?」

 

「(……? なんだこの人間は?)」

 

「ちょっ、君!?」

 

 

 そんな純粋な殺意に横やりを入れたのは見た事もない人間の男だった。

 何のオーラも感じない、ただの人間が、何故か深海王の前に立ちふさがっていた。

 

 距離を取り、警戒していた無免ライダーは突然、まるで散歩の途中にすれ違った人物に話しかけるかの如き気軽さで立ちふさがっている(しかも聞いている種族の名称はどこか間違っている)先程出会ったばかりの男の自殺行為とも思える軽挙に驚いていた。

 

 

「(邪魔よ!)」

 

 

 そいつが何なのかは分からない。正直まだなんて言っているのかも良く分からない。ただ邪魔だったので、深海王はそいつに拳を振り上げ、殴り殺そうとした。

 

 

 

 

 それが深海王最後の思考だった。

 

 

 

 

 

「急に殴りかかってきたからつい反射で殴っちまった……まぁ怪人だったっぽいし、別にいいか。」




ほむほむ(偽)「正攻法で勝てない?じゃあ絡め手で勝てばいいよね!」
ジェノス「そうだな(便乗)」

→結局サイタマが倒す

なんだこれは……たまげたなあ……。
そしてここまで邪道を行ってなんでもするという前提があってもまだまだ勝てない奴が滅茶苦茶たくさんいるという理不尽さよ……。

災害レベル龍とかあんなんどうしろっつー話よ……。

……あと今更気付いたけど今回書く予定だったほむほむの能力の制限について触れるの忘れてた。まぁええか!




以降、感想欄への返信もまだなのにさも丁寧に返しているかのように装って返していく質問コーナーです。




Q.まどかとかは出さないんか
A.まどかも出る奴を自分で書け下さいお願いします。ぶっちゃけ作者の心が汚れすぎてまどまどみたいな聖女の行動原理って良く分からないんですよね……。俺も読むからさあ……頼むよ頼むよ


Q.結局深海王に光の矢は効いたんか。
A.効いたけど表面を抉るだけですぐ再生されて決定打にならなかった。


Q.重曹
A.そうだね。重曹だね。


Q.S級全員能力について知ってるんか
A.知ってるハズだけど数名理解できてない奴もおる。


Q.S級との絡みはよ
A.ボロス編でやる


Q.どこまでやるつもりなんや
A.とりあえずボロス編まではやるつもりやでそれ以上続くかどうかは知らん。元々は1話で終わる一発ネタだったからね、仕方ないね。


Q.ほむほむ(偽)のやり方がえげつない
A.今後出てくる敵の強さに比べたらこの程度はまだ可愛い方やと思うで。


Q.ほむほむの家庭について
A.原作でも語られてないことワイが知るわけないやん?


Q.ソニックどうした
A.帰ったで。……どうにかして全裸にひん剥いてやりたかったけど出来なかった作者を恨んでくれ。……あっちなみに実写版ソ〇ックの事言ってんだとしたらこっちが聞きたい。どうしたのアレ。


Q.あのムカつく顔の市民は?
A.知らね。妄想ではアイツにほむらが「いや~せやけどアレやな!守る市民がこんな態度じゃヒーローやるの嫌になってくるな!よっしゃ!ヒーロー辞めたろ!」的な事言わせようかとも思ったけど、シェルターまで到達しない事で出番すら奪ってやった。


Q.無免とサイタマの仲ってどうなるんや
A.アニメだと「ノルマ辛いもんな、俺たちC級は」「面白い人だな君は。俺は無免ライダー。君と同じヒーローだ!」「……!(なんかこういうの、いいな)」みたいなやり取りがあったりした。だからあんまり変わらない。


Q.もっと他キャラと絡め
A.すまん。ボロス編で頑張って出すわ。ところでボロス編って呼び方で合ってる?ダークマター編?


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