綺羅星を求める私、太陽が好きな貴女 (白金星)
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プロローグ
始まりは唐突で


はじめまして。白金星です。

他の二次創作の作品を読んでいるうちに自分も書きたくなってしまいこのような形にさせていただきました。

稚拙な文だとは思いますが読んでいただけたら幸いです。

(初めての投稿で焦ってしまい原作タグを付け間違えてしまったため再投稿しています。)


聞き慣れない目覚まし時計のアラーム音で私は目を覚ました。

私は二度寝したいという誘惑を跳ね除けようと寝ぼけ眼を擦りながら目覚まし時計のアラームを止める。

 

 

「……あれ?」

 

 

そう思わず声が出てしまったけどそれは仕方ないと思う。なぜなら私はそこにある目覚まし時計を見た覚えがないからだ。

それどころか、周りをよく見渡すと、そこは見知った私の部屋じゃなかった。

部屋の様子からして女の子の部屋なのは間違いないけど。

突然のことに呆然としていると枕から聞きなれないスマホの着信音が鳴り始める。

枕をどけて画面を見ると、私の知らない名前が表示されていた。

知らない人の代わり通話に出ることはあまりいいとは言えないけど、あまり放っておくのも良くないと思い私は応答をタップした。

 

 

「もしも……」

飛鳥(あすか)!! 今日!! ちゃんと覚えてるよね!?」

 

 

突然の大声に思わずスマホを耳元から遠ざける。

 

 

「ええと……何が?」

「何がじゃないって!! Afterglowのライブ!! 今日見に行くって私、飛鳥と約束したでしょ!!」

「……え?」

 

 

飛鳥、が誰のことかわからないものの"Afterglowのライブ"という言葉に私は疑問を隠しきれなかった。

 

 

Afterglow——本来であれば夕焼けを意味する英単語だが、Afterglowのライブとなると話が変わってくる。

ライブをするということはバンド、つまりガルパという作品に出てくる幼なじみ5人で結成されたバンド名になる。でも……。

 

 

「Afterglowってリアルライブやってないでしょ?」

 

 

ガルパはリアルライブと銘打って声優が実際にライブをしているバイトがある。しかしそれは、Poppin’Party、Roselia、RAISE A SUILENの3バンドだけだ。Afterglowはその中に入ってない。

 

 

「Afterglowはリアルに決まってるでしょ!! というかリアルじゃないってどういうこと!?」

「いやもう私が聞きたいんだけど……」

「とにかく! 13時半にライブハウスに駅前のライブハウスに集合ね! それじゃあ!」

 

 

有無も言わさない勢いでそれだけ告げると通話は切れてしまった。

状況を受け入れられずスマホを見つめながら呆然とする。

そのままロック画面が明るくなるとあまり余裕がないというかのように時間が映し出された。

焦りたくなる気持ちを抑えて頭の中によぎった予想を確かめるためにカメラを起動し、内カメラに変える。

 

 

「やっぱりそういうことなんだ……」

 

 

予想通り、画面には私の知らない姿——恐らく飛鳥という子の姿が映っていた。

確認のために左の指で頬をつつくと画面の向こうの少女も同じように頬をつつく。

つまり私は、この飛鳥という子になってしまったと考えて間違いないだろう。

 

パニックになりそうな気持ちを抑え身支度を整えると急いでそのライブハウスへと向かった。

幸いなことに家族は出かけているのか家には誰もいなかったので玄関の鍵以外困ることはほとんどなかった。

 

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

 

飛鳥の友達は集合時間にギリギリに着いた私を責める間も惜しいと言うかのように謝罪する私を無視して席の手続きを済ませそのままステージの観客席の方まで連れていった。

辺りを見渡すと人はそれなりに居るようで、観客席の半分以上は埋まっているように見える。席とは言っても立ち見席なのだが。

 

 

「あーもう! ほんと楽しみ!!」

 

 

飛鳥の友達は興奮気味にそう言いながらライトのついてないサイリウムをブンブンと振る。

余程ライブが待ちきれないらしく、さっきの電話のことも聞いてこない。

 

そんな彼女を横目に周りを見ているとうさぎのアクセサリーを付けたバックが目に入る。

なんとなく見上げてみると黒髪ロングのクールそうな高校生くらいの子だった。

その見た目でうさぎが好きだというとまるでおたえ——Poppin'Partyのギタリスト、花園たえみたいだな、と私は思った。

その子はちょうど私の前に歩いて来ると、私の目線には気付かずステージの方を向いてしまった。

 

もしAfterglowがいるのならPoppin'Partyもいるのだろうかと、私はそんなことをふと考える。

もしいるとするならやっぱりライブを見に行きたい。

そしてもし仮に話せるとするなら、私は戸山香澄と話したいと夢見心地に思った。彼女の明るさが、強さが、優しさが、私は好きだから。

 

でも結局それは夢であって現実には起こりえない。

空に煌めく星のように見えるものではあっても交われるものでは無いとそう思った。

 

そう思い込んでいた。

 

 

 

周りから聞こえる歓声ではっと現実に戻るといつの間にか観客席は暗くなっていた。

 

私がステージを見ると、そこには——。

 

 

「Afterglowです」

 

 

赤いギターを携えた赤メッシュが目立つボーカルらしき女の子がステージの中央、マイクの前にいた。

美竹蘭の声だった。

 

私は驚きながらステージ全体を見ると、上原ひまりが、羽沢つぐみが、宇田川巴が、青葉モカが、それぞれの持ち場について美竹蘭と一緒にステージに立っていた。

 

 

「早速だけど1曲目、聞いて。"Scarlet Sky"」

 

 

蘭がそれだけ言うと観客席は歓声に包まれた。

その歓声が止むのを待つことなく青葉モカがギターの音を走らせると自然と声は聞こえなくなる。

それに続くようにベースが、そして他の楽器も曲に入りそのまま曲が始まる。間違いなくScarlet skyだ。

そう分かるとステージと観客の熱気に当てられるように私のテンションが上がる。

私はガルパの世界に来たんだと確信に変わった。

 

戸山香澄に会えるかもしれない、話せるかもしれない。

そう思うと私の興奮はどんどん増すばかりだった。



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その星の輝きは何処へ

私がガルパの世界で生活を始めて1週間が経った。最初は手探りだったものの最近では飛鳥としての生活に随分と慣れた気がする。飛鳥の元の人格と私は似通ってるのか行動が不穏だなどというように怪しまれないのも幸いだった。

そんなことよりも、と思いながら私は川沿いの桜並木の道を駆け抜ける。周りには私と同じように茶色の学生服を着ている子がいた。

そのまま橋を渡って学校に辿り着くと、立ち止まって校舎を見上げる。

ここは花咲川女子学園高校。私、富久(とみひさ)飛鳥は今日からここで学校生活を送ることになる。

 

 

花咲川女子学園高校。それはガルパの主要人物の半分が通う高校だ。Poppin' Party、略してポピパはこの学校で出会った同学年の5人で結成されたバンドで、そういう意味でも重要な場所になる。

そんな場所に自分も通うことになるのはどうしても嬉しくてクラス分けが発表される掲示板の方へと向かって行った。

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

掲示板へ着くと既にクラス分けの紙が張り出されていて、その前には新入生が大勢集まっていた。おかげで近くで見ることが出来ず、私は人集りの出来ていない後ろの方で名前を探すことにした。

まずは自分の名前……ではなく、確認のためにある名前を探す。A組から見て行ったのもあってか、すぐに見つけることができた。その名前は、戸山香澄。ポピパのギターボーカルであり、私が1番好きなキャラだ。そして偶然にもその上に私の名前も見つけた。

 

 

同じクラスだ!!

 

 

そう思うだけで私の興奮は収まらなくなる。確かにこの前のAfterglowのライブのセトリからポピパ結成前なのはわかった。その後自分が花咲川に通うことになったのも内心驚いた。だけど、同じクラスになるというのはとてつもなく嬉しかった。

 

 

そんなことを考えていたからだろうか。隣の人が私のすぐ近くにいた事に気づかずぶつかってしまった。

 

 

「わっ!」

「あ、ごめん……。掲示板見てて、隣見てなかった」

「私こそぶつかってごめん! って、あ……」

 

 

ぶつかった相手は茶髪でウェーブのかかったサイドにポニーテールが特徴的な少女だった。見た目からして多分ポピパのドラム担当、山吹沙綾なのだろう。それに気づいて私は思わず声を漏らしてしまった。

 

 

「えっ? 何?」

「い、いや……パンの匂いがするなーって、とても美味しそうな」

「うちパン屋だから」

「パン屋なんだ。今度買いに行こうかな?」

「それは是非とも。商店街にあるから。やまぶきベーカリーをよろしくお願いします。なんて」

 

 

冗談めかすようにそう言う沙綾を見て内心安堵する。流石に次元が違うけど知ってた、とは言えないから上手く誤魔化さざるを得ない。

 

 

「私、富久飛鳥。山吹さんは何組?」

「山吹沙綾、A組だよ」

「あ、やった! 同じクラスだ!」

「偶然だね。これからよろしく、富久さん」

「飛鳥でいいよ! こちらこそよろしく、沙綾」

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

そのまま流れで沙綾と一緒に教室へ向かい、入学式を終えて教室に戻ってきた。

その後ホームルームの時間になり、自己紹介をしていくことになった。

担任に呼ばれて出席番号1番の黒髪でふわふわとしたボブヘアーの子がはいと言って立ち上がる。

 

 

「牛込りみです。えと……うう……」

 

 

りみは緊張しているようで戸惑うように下を向いている。そのまま小さい声で"よろしくお願いします"とだけ言い自己紹介を終えてしまった。牛込りみ、後にポピパのベース担当になる少女だ。だけど、まだこの時は臆病で引っ込み思案なところが大きいらしい。

そのまま自己紹介が進む。ハロー! ハッピーワールド! のベース担当になる北沢はぐみの自己紹介は彼女らしい明るさで目立ったものの、それ以外は特に何も無く私の番も終わった。次は、香澄の番だ。

 

 

「では、戸山さん」

「は、はいっ!」

 

 

担任の声に少し怯えるような声でそう言って立ち上がった。そんな私の知ってる香澄らしくない言動が気になって私は思わず後ろを見た。

 

 

そこにいるのは本当に戸山香澄なのだろうか、と私は思わずそう思ってしまった。確かに星をかたどった特徴的な髪型は彼女のそれだと断言することができる。

だけど、その目線は前を向こうとしているものの、癖なのか下の方を向いてしまっている。ちょうど私と目が合う。すると私と目が合った彼女はさらに下を向いてしまう。

 

 

「と、……と、戸山、かっ……香澄です」

 

 

挙動不審になっていて、その声は辛うじて聞き取れるものでしかなかった。りみよりも小さな、消え入るような声で"よろしくお願いします"とそう言うと座り。そのまま落ち込むように下を向いてしまった。

 

 

確かに私はガルパの世界に来て、ポピパが結成されるであろう花咲川女子学園高校に入学して同じクラスになった。そこまでは良かった。だけど。

 

 

だけど、そこにいる戸山香澄は。私の知っている戸山香澄ではなかった。




ここまでがプロローグです。
読んでいただきありがとうございます。


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ホシノコドウ編
輝き、導いて


中々筆が進まず更新が遅くなってしまってすみません。

今日NO GIRL NO CRYの1日目に合わせてなんとか投稿できて良かったです。

今後も更新が遅くなるかもしれませんが温かく見守っていただけたら幸いです。


「はい! 皆さん、こんにちは! 戸山香澄、15歳です!」

 

 

後ろから聞こえる元気のいい少女の声が私の意識を呼び起こす。私が驚いて周りを見渡すと、そこは花咲川高校の教室だった。

 

 

「私がこの学校に来たのは楽しそうだったからです! 中学は地元の学校だったんですけど、妹がここに通ってて、文化祭に来てみたら、みんな楽しそうでキラキラしてて、ここしかないって決めました!」

 

 

まるで小学生の作文のような、それでも一生懸命さが伝わってくる。

そんな声に惹かれるように私が後ろを振り向く。そこには星を象った髪型にキラキラと輝く目、緊張していてどことなくぎこちなさは感じるものの明るそうな雰囲気の少女、私の知っている戸山香澄がいた。

 

 

「だから今、すごくドキドキしてます!」

 

 

その言葉につられるかのように私の心もドキドキに溢れる。私の知る戸山香澄に釘付けになる。

 

 

「私、小さい頃、星見の丘ってところで妹と一緒に星空を見たことがあるんです」

 

 

そんな彼女の声に呼応するように一面の夜空が広がるのを感じる。

 

 

「その星が宝石みたいにキラキラしてて、ドキドキって『星の鼓動』が聞こえてきてそういうのを見つけたいです」

 

 

私にはそういう彼女も宝石のように煌めき、心臓の音が耳の隣に来るような錯覚に陥る。

 

 

「キラキラドキドキしたいです!」

 

 

彼女がそう言うと私の見える景色が、まるで走馬灯でも見ているかのように移り変わる。

それは私の知る戸山香澄が辿る道のり。

ランダムスターと市ヶ谷有咲に出会い、GlitterGreenに惹かれ、牛込りみと花園たえと出会い、山吹沙綾と喧嘩をして、PoppinPartyになる。そしてその先もどんどん流れる。ガールズバンドパーティー、SPACEでのライブを前にしたスランプ、8月の海、今の大切さを知るあの出来事。そして、5人の絆が未来を紡ぐ主催ライブ。

 

 

「ねえ、飛鳥!」

 

 

そんな私を引き戻すように私の知る戸山香澄が話しかけてくる。

 

 

「これからクラスの子とカラオケ行こうと思うんだけど、一緒に行かない?」

 

 

そんな風に誘って来てくれるのは嬉しかった。でも。

 

 

「えっと……ごめん、私……」

 

 

「別に歌いたくなかったら歌わなくてもいいから! 一緒にカラオケではしゃぐだけでいいから! お願い!」

 

 

断ろうと思ったものの手を合わせて必死に頼み込む彼女を断る術を、私は持ち合わせていなかった。

 

 

「じ、じゃあ、行こうかな」

 

 

「やった! ありがとう、飛鳥!」

 

 

私がどういたしましてと言う間もなく彼女は他の子を誘いに行くためか後ろの席の方へ行ってしまう。ため息をつきながら彼女を目で追うと、そこには……。

 

 

「ねえ、戸山さん! この後クラスでカラオケに行こうと思うんだけど一緒に行かない?」

 

 

私が知らない戸山香澄がいた。下を向く香澄に彼女は話しかけている。

 

 

「え……えっ……、わっ、私?」

 

 

「うん! そうだよ!」

 

 

驚く香澄を気にしないと言うように彼女はぐぐいと詰め寄る。そんな光景を、何故か私は見ていることしか出来ない。

 

 

「わっ……わた、私は……、私、は……」

 

 

香澄はそこまで言うと顔を真っ赤にして何も言えなくなってしまう。そんな香澄を放っておけなくて私は。

 

 

ピピピピ、ピピピピ。

 

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

 

ピピピピ、ピピピピ。

 

 

そんな、最近ようやく聞き慣れてきた目覚ましのアラーム音で私は目を覚ました。別に遅刻する心配もない時間だ。

私は大きく背伸びするとベッドから起き上がり、身支度を始めた。

 

 

他の身支度を済ませた後、私は制服を着ながらこれからのことを考える。私と同じクラスの戸山香澄が私の知らない戸山香澄だったこと。それによってこの世界がどうなってしまうかということ。そして——私は戸山香澄に対してどう関わるべきかということ。

 

 

少なくとも、私が好きで憧れのように思っていた戸山香澄なら、夢のように放って置かなず、そして強引にでも関わりに行こうとするような気がする。でもそれが出来る人はそう多くない。

だから……、とそう考えようとして思い出す。どちらの戸山香澄も、星を象ったような髪型をいていることを。そして繋がる。あの下を向いている香澄も、星の鼓動を聞いたことがあるのではないかと。もしその輝きの元があの香澄にもあるのなら、私はどうしたいのかと。

私は制服のリボンを結ぶと決心したように1歩を踏み出し、鞄を持つ。そのまま玄関へと歩いて行きながら決意を胸にする。

 

 

"あの戸山香澄と友達になろう"と。

 

 

行ってきますと母親に聞こえるように言うと扉の前で立ち止まる。不安を抑えるように深呼吸をすると外へ飛び出すように走り出す。その決意に押されるように。



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