宇宙戦艦ヤマト2203 暗黒星団帝国の脅威 (Brahma)
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第1話 外惑星基地の異変

小マゼラン雲ルビー戦線、サファイア戦線などの生き残りの駆逐形デストロイヤー艦25隻、巡洋艦10隻、三段空母7隻を率いてデスラーの旗艦である真紅の戦闘空母デスラー・ガミラシアが宇宙空間を航行していた。

「偉大なる大ガミラスの戦士諸君。われわれがガミラス大帝星を離れてすでに2年になる。
しかし、戦士諸君もよく知っているようにわれわれはただいたずらに宇宙を放浪していたわけではない。ガミラス民族のガミラス民族によるガミラス民族のための国家の再建、大ガミラス帝国の復興、この宿願を果たさんがためであった。
諸君、宇宙は広大である。われわれの新国家建設を可能とする惑星は必ず発見されるであろう。あらたな首都星となる惑星に新国家を建設し、十分に戦力を増強し、周辺の惑星系をことごとく討ち従えて偉大なるガミラス帝国を再び宇宙の盟主とするのだ。諸君のいままでの労苦に感謝し、なお一層の忠誠を期待するや節である。」
「うおおおお~」
集まった兵士たちのどよめき、歓声、雄たけびか艦内にこだました。
デスラーは「移住可能惑星が多いと思われるのは天の川銀河中心部のバルジだ。全艦、
天の川銀河中心方向に進路をとれ。」と命じ、艦隊は右35度に進路を変えた。



ガトランティス戦役が終わって10か月...

古代進は地球防衛軍に戻り、第一外周警備部隊の指揮官として、冥王星宙域を航行していた。

古代の乗る旗艦の船体に「やはぎ」「矢矧」の文字が見える。

「エリス基地より入電。」

「つなげ。」

「よう。古代、来週は補給物資補充と点検にくるんだろう。」

「ああ。」

「いい酒があるんだ、ひさしぶりに一杯…。」

「ん、遊びに行くんじゃないんだぞ。」

「だってその翌日は休暇だろ。地球に戻れないんだからそれくらいいいだろう。」

「ふっ、まあな。」

「じゃあ、まって…。」

そのとき宇宙空間を一瞬赤みが勝った光が、強くフラッシュのように照らす。

「どうした?」

「通信途絶しました、再度つなぎます。」

しかし、画面はガーガーと砂嵐でつながらない。

「何が起こったんだ??」

「!!」

「どうした?」

「15000宇宙キロに未確認飛行物体確認。高速で太陽系内惑星方面へ向かっています。」

「高速?もっと正確に報告してくれ。」

「500宇宙ノットで内惑星軌道方面へ向かっています。」

「冥王星基地から通信!」

「つなげ!」

「未確認飛行物体発見!うわあ、なにか強い光が….。」

プツン…

「冥王星基地、応答せよ!応答せよ!」

ガガガガガ…..

「応答ありません。」

「非常通信回路を使え」

「….やはり応答ありません。」

 

「古代」

天井のメインスクリーンに細面の初老の老人の姿が映る。

「藤堂長官」

「そちらでも異常を確認したか?」

「はい。」

「外惑星基地がつぎつぎと通信途絶を起こしている。何か気になったことはないか。」

「冥王星基地で、高速で内惑星軌道へ向かって移動する未確認飛行物体を確認。その際強い光が発せられたという報告があり、それからすぐに通信が途絶されました。」

「そうか…それは、こちらでも受けている。」

「海王星トリトン基地が沈黙しました。」

「天王星チタニア基地、土星タイタン基地に連絡。未確認飛行物体の推定軌道を送信するので、偵察衛星を打ち上げて監視せよ。」

「….こちらもてんてこ舞いだ。何か分かったら教えてくれ。」

「了解しました。」

 

「我々の確認した軌道と大体同じですね。」

「うむ。われわれのほうが敵、もう敵と言っていいだろう、に近い分だけ測定値は正しいはずだ。地球の防衛軍司令部にデータを送ってやってくれ。」

「了解。」

 

そのころ防衛軍司令部では…

「タイタン基地、通信途絶。」

「強い中性子線を偵察衛星と基地双方で確認。天体に接近したときに一時的に発せられるもののようです。」

「木星ガニメデ基地と火星基地に連絡。高速で内惑星軌道に向かっている怪物体は敵性の人工天体と認識。予想軌道データを送る。ミサイルで迎撃せよ。」

「み、ミサイルが…。」

ミサイルは次々に怪物体に軌道を外される。

「ガニメデ基地沈黙」

「火星基地沈黙」

「未確認物体の予想軌道を確認。」

「ど、どこだ。」

オペレーターは蒼白になって答える。

「怪物体は地球に向かって猛接近中。あと10万宇宙キロ。予想着弾位置、ここから50キロ、ポイントA-89です。」

「怪物体、上空25000メートルで停止。」

「相原、冥王星基地に本当に生存者がいないのか着陸して確認しよう。」

「了解。」

「アナライザーも連れていく。」

「リョウカイ」

古代たちは冥王星に着陸し、冥王星基地に入っていた。電力は稼働しているように思われたが、計器類は作動していない様子だった。

「おかしいな。電源は稼働しているようだが…。」

「あっ…。」

「どうした。」

機器に突っ伏している遺体をさわり脈をとってみる。

「死んでいます。なぐった跡などの外傷はまったくありません。」

「基地内ニ生命反応アリマセン。強イ中性子線ヲ浴ビイテイルモヨウ。」

「ほかを確認しろ。」

しばらくして報告があがる。

「やはり生存者ありません。この測定器によるとやはり中性子線を浴びている模様。」

「一体、何が起こったんだ?」

お手上げといった感じで相原は、両腕を曲げて手のひらを外へ向けるしぐさをする。

「とにかく防衛軍司令部に連絡だ。」

 

「ということで、冥王星基地の生存者は皆無で、すべて中性子線をあびて死亡した模様です。」

「そうか…火星基地のようすも探らせている。じき報告があるはずだ。」

「長官。」

「どうした?」

「火星基地の報告です。生存者0、全員強い中性子線を浴びて死亡した模様。」

「そうか。実は、冥王星基地を調査した古代からも連絡があり、おなじように中性子線をあびて死亡したとのことだ。」

火星捜索隊の隊長は得心したようにうなづいた。

 

「地球全域に第一級警戒態勢。科学調査隊は、中性子線防護服を着用し、敵怪物体の調査にあたれ。防護に連邦首都防衛第一師団を向かわせろ。」

「了解。」

黒い卵型の怪物体は、三脚の脚を出して地上に着陸していた。

ウーウーウー

兵員輸送車と探査車両は怪物体の手前10mで停車した。野次馬たちが怪物体をとりまいていた。

「この物体は、外惑星基地の近傍を通過した際に致死量の中性子線を発して死者がでています。危険ですので近づかないでください。」

「さあさあ、危ないから下がって下がって。」

兵士たちは、野次馬の群衆を少々乱暴に押し下げた。

探査車両は、怪物体に3mまで近づいた。その刹那、怪物体からヴォーンヴォーンと怪音が発せられ、磁石の反発のように探査車両が跳ね飛ばされた。探査車両はころがってその衝撃で乗員はかなりのけがを負った。

他の探査車両は、3m50cmのところで停車した。

「スキャン開始。」

「結果が出ました。外殻1mは金属、その内部は非金属ですが、双方とも地球上では確認し得ない未知の物質です。」

「内部との交信を行います。」

「応答ありません。」

「内部に生命反応なし。」

 

「….」

藤堂司令長官は、口をむすんで、腕組みをしている。

森雪は、管制室で探査車両から送られてくるであろうデータを画像化するためにデイスプレイを睨むように見つめていたが、いつまでもデータは送られてこない。

「少し休憩してきます。」

他の職員に声をかけ、数人が承諾のうなづきをしているのを確認すると雪は屋上に昇り、古代のことを考えながら星空をみつめていた。

すると遠くに光るものがひとつ…ふたつ…と見えた。

 

 

 

 



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第2話 地球からの脱出

「??何かしら。ホタル?…」

かすかな光が人影のようなものを浮かび上がらせる。雪はあわてて管制室に戻る。

「皆さん、留守の方を残して双眼鏡をもって至急屋上にきていただけますか?」

雪の表情がただごとでないのをみてとって管制室の職員たちは屋上に昇ってくる。

そして雪が示す数十個の光点の方向を双眼鏡でながめるや、顔色がみるみる蒼白に変わり、おもわず叫び声をあげる。

「なんだ、あれは…人間??ま、まさか降下猟兵か?」

「たいへんだ、緊急事態だぞ!」

「皆さん、落ち着いてください。」

ほどなくヴィーヴィーという警戒音が管制室になりとどろく。

「AB地区に正体不明の降下猟兵による銃撃。死者50名以上。」

「CD地区のチューブレールを走る●○線が敵の攻撃をうけ、乗客死者多数!」

「高速道路管状50号線が攻撃を受け、死者多数。至急道路システムを停止し、通行止め」

 

「首都防衛システム稼働!砲撃せよ」

首都防衛システムからミサイルや光線銃が降下兵に向けられるが、すべて手前からはねかえされ、降下兵の銃が火を吹くと紙をもやすようにあっさりと破壊され炎上する。

「11号対空砲台沈黙」

「13号対空砲台大破」

「17号対空砲台沈黙」

「19号対空砲台、敵の攻撃で炎上中」

「23号対空砲台沈黙」

「29号対空砲台沈黙」

次々と悲痛な声の報告が入る。そしてついに

「首都防衛システム完全破壊されました。全滅です。」

 

「BD地区ミサイル基地占拠されました。」

「第二宇宙港占拠されました。」

「第四宇宙港占拠されました。」

「連邦議会議事堂、包囲されつつあり。第二、第三、第五、第七首都防衛師団と交戦中。形勢不利。」

 

「あ、あれは….何だ??」

とおくから黒光りする円盤状の物体が多数接近してくる。

「拡大投影しろ…。」

「カメ…じゃないな」

黒光りする円盤状の両わき腹には、牙のようなとげが多数生え、いかめしいごつごつした額、顔をもつ頭、そして頭の反対側の位置にゾウの鼻のように長い「尾」の先端には黒々とした巨大な「鉄球」がついている。あたかも黒光りするアルマジロのようなアンキロサウルスのような兵器が多数都市の上空に接近してくる。

黒い頭部の目が赤く光って、口からたけり狂ったような炎を吐きだされ、街が焼き払われる。

街の上空は、炎であかあかと空が照らされ、煙がもうもうと立ち込める。

首を左右に動かして街を火の海にして焼き払い、焼かれていない街は尾の黒光りした「鉄球」がくさり状のもので振り回され、ぶつけられた建物は砕け散ってがれきを四散させる。黒い「アンキロサウルス」から脚が生えてくる。やがてそれは六本になり、のしのしと歩き、ズーンズーンと振動がして街の地盤がぐらぐらと激しく揺れる。

海からも六本の細長い脚をもった黒い「アンキロサウルス」が迫ってくる。それは全体では、黒いタカアシガニかクモのように見える。

六脚のカニの脚をもった黒い「アンキロサウルス」の化け物は、口から火を吹き、尾の黒光りした金属球を縦横無尽に振り回す。わき腹に並んだ牙のようなトゲがミサイルとなってさらに街を焼き払う。

「機甲部隊出撃。敵を迎撃せよ。」

戦車と高射砲が黒い「アンキロサウルス」の化け物に向かって発射されるがすべてはねかえされる。逆に化け物の火によって次々に炎上させられる。「鉄球」の尾が戦車をおもちゃのように横転させ爆発させる。

「長官」

芹沢が語りかける。

「うむ…。」

「次元断層なし、兵員はさきほどのガトランティス戦役で多数の死者を出したとはいえ、置き土産の無人艦隊は健在です。ヤマトの元航海長島一尉に操縦させ迎撃させましょう。」

「わかった。それしかあるまい。」

「島一尉」

「はい。」

「無人艦隊を、衛星軌道上に集結させよ。」

「了解。無人艦隊出撃します。」

10分後

「無人艦隊衛星軌道上に集結、艦砲射撃で地上の鎧竜型六脚戦車を攻撃します。」

無人艦隊の砲撃で次々にタカアシガニとアンキロサウルスのあいのこの六脚戦車は次々に撃破され、炎上していく。

(よし、いける…)と地球側が考えたとき

「後方に時空歪曲場多数、何かワープアウトしてきます。10,20,100,500…敵艦隊です!敵艦隊多数!!」

地球防衛軍の通信回路は悲鳴に満たされる。

それは円盤状の胴部に樹木のようなオベリスクのような艦橋がそびえたつ黒色の船体をもつ大艦隊だった。

「黒色艦隊多数出現。無人艦隊の後方150宇宙キロ!」

 

黒色艦隊の旗艦の司令官席には、禿頭で、ヘタのないナスのような、具体的には明の洪武帝の醜い方の肖像画のような細面であるが、顔はグレーの皮膚でしみがなく、あごがつきだしたような人物が座っている。黒色艦隊地球討伐艦隊の司令官ガザンであった。ガザンは、ほくえむんだ表情で、つぶやくように命じる。

「ふふ、撃て!」

光線が豪雨のように無人艦隊を襲う。

「大きく旋回し、敵艦隊の後ろにつけ!」

島は炎上して次々に爆発四散する無人艦隊の被害を最小限にとどめ、隊列をととのえて、必死に操縦し敵艦隊の後ろにまわりこませようとする。

 

ガザンが再びほくそ笑む。

「敵の無人艦隊のコントロールタワーを攻撃せよ」

多数の光条が島たちのいるコントロールタワー付近にふりそそいだ。

コントロールタワーでは悲鳴が上がり、建物はがれきになって崩れ、死者が続出した。

島はけがをおいつつもなんとか脱出に成功する。

(あの艦隊に自分自身がいれば…こんなところで死んでたまるか。ヤマトに乗って敵を倒す!)

長官は画面から管制室の雪に話しかける。

「森君、司令部は包囲されつつある。至急こちらに来てほしい。」

外へは降下猟兵がその数を次々に増やし司令部を包囲せんとしていた。

長官はうなづいて

「敵の包囲は完全ではない。この命令書を古代に届けてほしい。」

「はい。」

雪は返事をする。

「雪さん。」

そこには、相原と初老の背の低い禿頭の医師が笑みを浮かべている。

「相原君、佐渡先生、いつのまに…。」

「わたしたちも同じ命令を受けているんですよ、さあ急ぎましょう。」

雪、相原、佐渡は司令部秘密地下通路を通り、緊急用脱出シャトルにとびのる。

 

「司令、なにか上昇してきます。」

「なんだ?画面に映せ」

そこに映ったのは大気圏を墜ちていく隕石だった。

「隕石のようです。」

巧妙なステルス機能で、進路を欺瞞し、レーダーには隕石があたかも落ちていくように黒色艦隊のスクリーンに映す。

「そうか…問題あるまい…。」

(仮に地球人の愚か者であってもいつか捕捉されるだろう。)

黒色艦隊の指揮官は放っておくことにした。

 



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第3話 総員イカルス基地に集結せよ!

シャトルは火星軌道まで帰還してきた古代へ通信する。

「古代艦長」

「なんだ?」

「地球側のシャトルが急速接近中。」

「あ、通信入りました。」

 

「古代君」

スクリーンに雪の顔が大写しになる。

「雪!無事だったのか!」

雪はうなづき

「長官からの命令書を届けに来ました。ドッキングします。」

スクリーンが切り替わり、雪のシャトルが近づいてきて、画面上にだんだん大きく映し出される。

「ドッキング成功、ハッチ開きます。」

雪が乗り込んでくる。

スーツのような白い制服がまぶしく、直立した雪の美貌をひきたてる。

「命令。古代進、ヤマト艦長代理を命ず。旧ヤマト乗組員を集め、小惑星イカルス基地へ向かえ」

「しかし、どうやってみんなを集めたら…。」

「古代さん。」

「相原、お前もいたのか。」

「はい。皆には、ヤマト乗組員専用の暗号回線をつかって連絡済みですよ。じゃあイカルス基地につなぎます。」

スクリーンに真田の顔が映し出される。」

「真田さん。」

「古代か。」

「長官から命令を受け取り、そちらへ向かっています。皆は…。」

「ああ、それぞれの勤務地から集まってきてるよ。ただ、敵の策敵網はなめないほうがいい。お前たちが最後だから佐渡先生にきてもらっている。自動操縦プログラムを通信しておくから佐渡先生の指示に従ってくれ。」

「さあさあ、お前たちは一時的に死ぬのじゃ。仮死状態にする薬を打つ。敵に生命反応を悟られてはいけないからな。」

「せ、先生、注射は嫌いなんですよ。」

「相原、いい大人がききわけのないことをいうんじゃない。」

相原が15秒後にこてんと倒れる。

「わかりました。自動操縦にします。」

自動操縦に切り替える。

「うむ。」

古代、雪が仮死状態になると佐渡も自分の腕に注射して眠りにはいった。

 

その10分後だった。黒色艦隊の5~6隻ほどの策敵部隊がパトロール艇を発見する。

そのレーダーは高性能で500宇宙キロから先からでも敵の姿を捕捉できた。

「レーダーに感あり。500宇宙キロ」

「敵艦だな。」

「スクリーンに拡大投影しろ。」

「破損して漂っているように見えます。」

遠距離で高性能がゆえにレーダーに破損した船体の画像を返したのだった。

「生命反応をスキャンしろ。」

「生命反応なし。」

「逃げようとして途中で撃沈されてただよっているんだろう。ひきかえせ。」

「了解。」

 

「イカルスマデ5宇宙キロ」

「う、う~ん。」

「みんな起きたか。」

「なんかよく眠りましたね。」

「あれがイカルスのようだな。」

画面正面のサツマイモ状の小惑星がだんだん大きく映し出される。

「雪、パッシブレーダーを作動してくれ。」

「はい。周囲に敵影なし。」

「よし相原、イカルス基地と連絡を取ってくれ。」

「はい。」

通信機がガガガ…と音を立てる。相原がチャンネルを回す。

「こちら、相原、イカルス基地応答願います。」

「….。」

「こちら元ヤマト乗組員、相原、古代、森、佐渡、島。イカルス基地上空に到着。誘導願います。」

「….。」

「イカルス基地、応答せよ。イカルス基地…。」

「….。」

「なにかあったのかな。」

「レーダーに反応あり。」

そのときコスモタイガー隊が接近してくる。

「コスモタイガーです。通信つなぎます。」

「こちらはイカルスコスモタイガー隊坂本。坂本以下25機、ヤマト配属を命ぜられました。今回目立つわけにいかないのでわたしのみがお迎えにあがりました。」

坂本機は、艦橋の前の空間で8の字ダンスを踊ってみせる。

「なに下手なショーをやってるんだ。」

「坂本らしいと言えばらしいが...。」

島が苦笑したようにぼやく。

「わたしが基地まで先導します。」

イカルス基地のドームが開いていく。

「うむ。島、あそこに着陸しよう。」

「わかった。」

島が巧みに操作をする。

イカルスの表面が近づいてくる。

「地表まで100m」

「地表まで20m」

「5,4,3,2,1m」

「着陸」

すこし振動がして着陸する。

「….。」

「アチラノ方向ニ金属反応アリ。」

「よし。」

「!!ここにドアがあります。」

岩盤がドアになって開く。宇宙空間なので音がしない。ドアが閉じる。壁に気圧計があって目盛があがっていく。2m先に二枚目のドアがあって今度はブーンという低い音をたてて開いた。

「よし、入るか。」

一同はうなずき、四角柱を横倒しにしたような薄暗い銀色の通路をすすんでいく。

二回ほど通路は直角におれまがって、突き当たりに扉がある。エレベーターの扉のようだ。

一同は顔を見合わせる。

「どうする?」

「乗るしかないだろう。引き返しても仕方ないからな。」

「そうだな。」

ボタンを押して乗りこむ。エレベーターは下がっていく。

何10m下がったであろうか。エレベーターは停止すると扉が開いた。

そこはいわゆる丸い「松本メーター」がぎっしり上下左右にあるような通路だった。

ウィンウィンという独特な機械音がする。

10m先に扉があってひらくと、薄暗いが見慣れた光景になる。

宇宙戦艦の艦橋フロア、それもヤマトの第三艦橋のように思われる。

「第三艦橋みたいだな。」

一同はうなづく。

島が奥のほうに何やら見つけて叫ぶ。

「エレベーターがあるぞ。」

「そうだな。ヤマトなら第一艦橋へつながるはずだが…。」

エレベーターが開くと、目の前に広がる空間に一同は息をのむ。

中央にコスモレーダー、一段高い位置に艦長席、窓側にならぶ戦闘班長、航海長、通信班長の席が並ぶ。まさしくヤマト第一艦橋だった。

「ヤマトだ、間違いなくヤマトだ。」

「俺たちはもどってきたんだ。」

「やあ、みんなよく来たな。無事についてなによりだ。」

「真田さん!」

真田と山崎が若者を2名連れて入ってくる。

「どうして出迎えてくださらなかったのですか。通信がつながらないし、まさか敵に占拠されたのかと不安になりましたよ。」

「はは、申し訳ない。山崎さんとメカの最終チェックをしていてね。」

「君たちのことだ。間違いなく到着すると思っていたよ。」

「しかし、どうしてこんなところに…。」

「ガミラス、ガトランティスと立て続けに侵略を受けただろう。地球が万一陥落しても立て直せるようにわたしが預かっていたんだ。ああ、そうそう紹介しておこう。」

「加藤四朗です。兄の遺志をついで宇宙船し訓練学校航宙科で訓練を受けていました。」

「誰かに似ているなと思ったが、そうか加藤の弟か。」

「加藤が生き返ったみたいだ。よろしくな。」

「わたしは坂本です。よろしくお願いします。」

「坂本、艦載機はおもちゃじゃないんだぞ。今回は先導役を務めてくれたから大目に見るが以後気をつけるように。」

「へーい。」

「なんだ、その生返事は!」

真田、山崎、加藤四郎は苦笑する。

「ところで新艦長は...以前私を艦長代理に推しましたが、年長ですし、わたしは今度こそ真田さんご自身が艦長になられるのに異論はないのですが…。」

と古代は言いかける。

「いや、わたしの気持ちは変わらない。知っているだろう。この写真を見てくれ。」

真田は一枚の写真を見せた。



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第4話 ヤマト、イカルスからの発進

沖田、土方といった面々の前に笑顔で頭をかく見慣れた顔が写っている。

「!!」

「元アンドロメダ艦長の…。」

「山南さんか!」

艦長席がせりあがっていく。

「まさか諸君と真っ向から意見の対立したわたしがこの艦長席にすわることになろうとはな。」

「何をおっしゃいます!ヤマトをゼムリヤの崩壊から救ってくださったではないですか。」

「そうか。今度はわたしが沖田さん、土方さんの遺志をついでこの船で敵を破るために艦長になった。以前のわたしは諸君に見えていたことが見えていなかったかもしれないが、ガトランティスとの戦いで身を以て知った。諸君もあの戦いで大きく成長しただろう。その戦訓を活かして諸君の力を貸してほしい。」

「皆ボサっとしている余裕はないぞ。地球を包囲している黒色艦隊を撃滅しなければならない。艦長!」

「うむ。ヤマトはこれより地球へ向けての出撃態勢にはいる。総員ただちに部署につけ。」

「副唱します。ヤマト乗組員、ただちに総員部署につけ。」

「!?」

「どうした?相原?」

「地球より入電です。スクリーンに出します。」

そこに映し出されたのは細面で禿頭、カイゼル髭にまでは至らない白いくちひげの人物、防衛軍司令長官藤堂平九郎だった。

「山南君」

「長官。」

山南がうなづくと藤堂もうなづき返す。

「ヤマトの乗組員諸君」

「長官!ご無事でしたか。」

藤堂は再びうなづき、

「わたしは、かってガミラス戦争の際に造られた旧地下都市にいる。ガトランティスとの戦いのときにさえ使用しなかったこの場所を、再び使うことになろうとは思いもよらなかったが。同士を集め戦い続けていくつもりだ。」

「山南君、沖田君、土方君亡き今、君だけが頼りだ。頼んだぞ。」

「わかりました長官。二人に笑われないようこの大役を務める所存です。」

藤堂はうなづいた。

「あまり長く話すと敵に傍受される。しかし、離れてもわれわれの心は一つだ。胸に刻んでおいてほしい。」

藤堂が敬礼すると山南はじめヤマト乗組員は答礼し、スクリーンは再び漆黒にもどった。

「真田さん、ただちに黒色艦隊撃滅に向かいましょう。」

真田と山南は顔をみあわせ、

「古代、それはだめだ。」

「なぜです?」

「これを見ろ。」

「これは例の敵の爆弾ですか?」

「そうだ。敵の重核子爆弾だ。やつらはこれを使って人類を滅亡させることができると言っている。実際、中性子線を放って冥王星基地をはじめ外惑星基地を遺体に損傷なく死亡させている。」

「…。」

「これは別名ハイペロン爆弾ともいう。古代、覚えているか?ガトランティス、ズオーダーの玉座にあったゴレムを。」

「はい。」

「あのときはゼムリヤ人が人造細胞を破壊する装置として設計したが、逆に他の星の人類を一瞬にして滅ぼす兵器なり装置が発明されていても不思議ではない。具体的には地球上の中間子質量を破壊することによって大脳に分子的損傷を与え脳死させるということだ。しかも大脳だけなので他の身体の機能はしばらくは正常にはたらく。」

「なぜそんなものを…。」

「わからないが人間の体をのっとろうとするならきわめて有効だ。さらに外惑星基地を飛来しながら攻撃したパターンを解析すると、プログラム化して生命反応を検知して攻撃するというだけでは説明できない動きをしていることが判明した。」

「ということは…。」

「遠隔操作が可能だということだ。」

「つまり地球周囲の黒色艦隊をいくら攻撃しても」

「そうだ。いくら敵に損害を与えたとしても一瞬のうちに人類を滅亡させられる連中にとっては痛くもかゆくもないということだ。」

「あの..真田さん。」

「何だ雪?」

「のっとるといっても魂なのでしょうか。大脳を損傷させたら意味がないのでは?」

「雪、医学に堪能な君ならわかるだろう。母親の中の胎児が母親の免疫機能をおさえること、ある種のウイルスやがん細胞が自己の免疫機能を抑えること、われわれも臓器移植の際の免疫機能を抑える技術をもっているが、あれほどの兵器を開発した敵だ。ガトランティスは蘇生技術を持っていたように、そういった技術や薬品の開発に成功していたとしていても不思議ではない。」

「敵はどこからやってきたのでしょうか。」

「敵のワープトレースは巧妙にもかき乱されてわからないが、だいたいではあるが、敵がやってきた方向はわかっている。」

「それは、どこですか?」

「敵がやってきた方向の40万光年先には、ダークマターが濃密に分布している場所がある。そこからやってきたとは限らないが可能性は高いだろう。というのは、黒色艦隊や敵の兵器を破壊した破片にはダークマターを合成したと思われる塗料が塗られ、レーダーの反応を阻害して重核子爆弾以外の敵の接近が把握できなかったくらいだ。」

「そうだったのですか…。」

「手掛かりは少ない。しかも敵が重核子爆弾を起爆させる前にそれを阻止しなければならない。苦しい戦いになる。」

「でも、それをやらなければ人類は滅亡するしかないんでしょう。」

「そのとおりだ。」

「しかし、敵はすぐにでも起爆させればいいのにどうしてすぐに起爆させないのでしょう。」

「敵はヤマトを探していることがわかっている。それ以外にも40万光年という距離だ。起爆するためにもさすがに時間がかかるのだろう。かって相原をまどわしたガミラスのリレー衛星のようなものがあるのかもしれない。」

「もしリレー衛星ならそれを破壊できれば起爆を遅らせられますね。」

「それはそうだが推測にすぎない。」

「やはり敵本星に行くしかない…のですね。」

「うむ…。」

真田はうめくように同意する。

「??長官から暗号秘匿回線です。」

「諸君。」

「長官、一刻も早く敵本星へ向かおうということになりました。」

「そうか…真田君から聞いてうすうす考えてはいたが…やはりそれしかないということか…。」

「はい。」

「わかった…厳しい旅になるが…君たちの無事とともに君たちな

らなら必ず成し遂げてくれると信じている。」

「はい!」

ヤマトクルーは胸の前で腕を曲げて敬礼する。

「ヤマトはこれより敵本星へ向けての出撃態勢にはいる。総員に告ぐ、総員に告ぐ。総員配置につけ。」

「波動エンジン始動!」

「波動エンジン、シリンダーへの閉鎖弁オープン!」

「閉鎖弁オープン!」

「波動エンジン内圧力上昇!フライホィール始動!」

「フライホィール始動!」

「波動エンジン点火5秒前4,3,2,1、フライホイール接続、点火!」

「ヤマト発進します!」

イカルス基地が引き裂かれてヤマトが飛び立っていった。



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第5話 密かな追跡者

スクリーンに美しく青い球体が映し出される。青い球体には白いまだらがかかっている。地球であった。一同は地球の方向へ向かって敬礼した。

「これよりまもなくワープにはいるが、その前に第一艦橋のメンバーは中央作戦室に集まってくれ。」

 

中央作戦室の床面に棒渦巻き状の天の川銀河が映し出され、地球の位置が某ブラウザのような逆さ涙状の赤いマークで示される。

「これが我々の太陽系。天の川銀河のオリオン腕の一角にある。」

40万光年先に敵本星の推定位置が示される。

「これが40万光年先のダークマターの濃密区域だ。詳細な電波望遠鏡の観測の結果、直径10万光年ほどの渦巻き状になっていると考えられている。敵本星の正確な位置はわからないがこの中にあると考えられる。」

「こんなところまでどうやっていくんですか。」

「連続ワープだ。」

「連続ワープ?」

「そのためのヤマトの改造だ。第一艦橋の操作を最低限にしてスーパーチャージャーで1回5000光年のワープを連続で行うことが可能になった。ボタンを押して一瞬でワープができるような感覚だ。」

機関室の一部が映し出される。

「新しい装備を紹介しておこう。全天球レーダーだ。これまでの5倍の距離までリアルタイムで観測できるようになった。」

「それから波動カートリッジ弾、対消滅カートリッジ弾だ。前者は波動エネルギー、後者は反物質を封入している。後者は君たちも知っているようにガトランティスの対消滅ミサイルにヒントを得たものだ。このカートリッジ弾で波動カートリッジ弾を防ぐ敵であっても正物質であればいかに堅牢なものでも破壊できる。」

一同はうなった。

「小惑星帯を抜けたらためし運転で木製型惑星の影響がすくない、天王星軌道まで小ワープする。各員部署に戻れ。」

 

「ガザン司令、敵の暗号秘匿回線を確認しました。」

「通信の方向は?」

「それが地球上空にリレー衛生が数十基、外惑星方向に同様に数十基あって確定が困難です。」

「つぶして行け。それが手っ取り早い。残ったもので方向がしぼられるはずだ。」

リレー衛星がつぎつぎに破壊される。

 

「ガイウス大佐、判明しました。小惑星イカルス近傍に向けられている模様。」

「よし、行け。」

「ガザン司令に伝えなくてよろしいので…。」

「ガイウスが敵を発見したので向かったと伝えておけ。」

「了解。」

 

「小惑星帯抜けました。」

「よし、ワープ1分前、各自ベルト着用!」

「波動エンジン異常なし、ワープ10秒前,9,8,...2,1,0,ワープ!」

ヤマトは迅速にワープし、その姿は宇宙空間から消えた。

 

「ガイウス大佐、ただいま小惑星イカルス付近に到達。敵はおりません。」

「わずかながら空間歪曲場を確認。外惑星方向へ向かった模様。」

「解析しろ。」

「了解。」

「外惑星方向に17.5ウレム(=17.5au,天文単位)ほど移動した模様。」

「アヌ(天王星)軌道付近だな。よし向かえ!」

 

「ワープ終了!」

「波動エンジン異常なし。」

「雪、現在位置は?」

「天王星軌道付近へ到達。銀緯1度0分0秒、銀経1度0分0秒」

「!!」

「どうした?相原?」

「後方、300宇宙キロに敵艦隊!」

「くっ...もう追っ手が来たのか。」

「総員戦闘はい...。」

「古代!」

「はい。」

「こんなところで戦っているひまはない。地球へ敵発見座標の秘匿暗号メールを送れ。それだけでいい。」

「相原!」

「了解。暗号メールのみ送ります。」

「島!ワープだ。」

「了解。ワープ!」

ヤマトは、ふたたびワープした。

 

ヤマトの小ワープ地点付近には暗黒星団帝国第3遊撃艦隊がいた。

旗艦ガリアデスの艦橋ではオペレーターが中央に座る小柄な司令官に伝える。

「ガイウス大佐、ヤマトを捕捉しました。」

「で、ヤマトはどこへ向かっている?」

「右20°方向、距離1500宇宙デザリオン(=300宇宙キロ)を航行中です。方向から考えるに我が暗黒星雲へ向かっているものと思われます。」

「地球人はつくづく愚かだな。たった一艦で我が母星デザリアムへ向かおうとしている。われわれはガトランティスの艦隊のようにやわではないのだ。」

「どうした?」

「ヤマトが消えました。ワープした模様。」

「うぬ。なんて早いワープだ。ヤマトのワープアウト地点を再度計算しろ。」

「それが...早いワープだったもので、ワープトレースのベクトルが確認不能です。」

「司令、いかがいたしましょうか。」

「追撃しろ!我が母星にむかわせるわけにはいかん。こちらもただちにワープだ。やつらの行く方向はわかっている。我が母星に向かっているならかならず通る場所があるはずだ。先回りしてわなをはるのだ。」

「ははっ。」

 

「ワープ終了。」島がワープ終了を告げると、

「波動エンジン異常なし。」山崎がエンジンの状況を伝える。

「現在位置、大犬座α星シリウスの近傍、4億5000万キロ。約3天文単位です。」

「コスモタイガー、周囲の偵察を行ってくれ。」

「了解。発進します」山本が応える。

 

「コスモレーダー、エネルギースキャナともに異常なし。」

「どうやら周囲に敵はいないようだな。」島がつぶやく。

「このまま長距離ワープも可能だ。ただ、コスモタイガー隊の帰還までは安心できんな。」山崎がつぶやく。

 

「シリウス近傍で方向を変えた後は、大マゼラン雲サレザー太陽系よりはるかかなたの旅になるだろう。太陽系まで敵が来ているわけですから用心にこしたことはない。」

 

「艦長、偵察隊より入電!」

「艦長!、敵艦隊を発見!」

「どのくらいの規模だ?山本?」

「結構な規模の部隊です。戦艦10、空母2、駆逐艦、巡洋艦など30隻。」

「いっちょやったりましょうか。」

「坂本くん。あわてなくてもいいから、敵艦隊の映像と座標を送って。」

「は、はい。」

「雪!」

古代はおもわず咎めるような口調になって、なんとかいってやってくださいよと言わんばかりに渋面をつくって後ろを振り返って山南をみる。

山南は苦笑して軽くうなづく。

雪はてへぺろする。

 

「敵艦隊の座標と画像が送られてきました。」

「かなりの規模だな。敵までの距離は40000宇宙キロか...」

島が画像を見てつぶやく。

「いまのところ敵は気づいていないようです。」

「コスモタイガー隊を発見したり通信が傍受された様子も感じられない。

さすが真田さんだ。」

「これからの方針をきめる。第一艦橋の諸君は第二艦橋の中央作戦室にあつまってくれ。」

山南が告げ、第一艦橋のクルーは半数退出した。




1ウレム=約1億5000万キロ。1ウラリアマイルは、1.495978kmで、1ウレムは、地球と太陽の平均距離=1天文単位とほぼ同じで、そのほか(ウラリ)パッスス=約1.496m、1デザキュビトは、1/3(ウラリ)パッスス、1デザリオン=約200mなどがあるという設定。ちなみに1ローママイルは、1.48km、地球の1スタディオンは、185m


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第6話 吠えよ波動砲!激闘シリウス会戦

目の前に味方と敵、そして地球の危機をどうするか会議は長引かざるを得ない。

「われわれは、敵の本星に行って二度とハイペロン爆弾を他の星に送り込めないように討伐するという任務がある。ここで交戦するのはあまり得策とはいえないと思うが。」

「敵は気がついていないようだから、敵が通過するまで様子を見て、背後をすり抜けたほうがいいのでは?」

 

「!!....艦長!至急戻ってください。敵の前方に反応があります。」

レーダー手から第二艦橋のインタホンに連絡がはいる。

「地球防衛軍の船じゃないか。どうしてこんなところに。」南部が驚く。

南部重工の御曹司でもある南部康雄は、南部重工の造船ドッグでつくられる新鋭艦をなんどか見かけていたので、レーダーの反応から艦種が地球防衛軍のものであることがわかる。

「南部二尉、急いで識別番号を確認しろ。森一尉は、敵の予想進路をもう一度計算してくれ。」

「出ました。識別番号は、BA1090062、アンドロメダ級『しゅんらん』です。」

「『しゅんらん』?」

「地球防衛軍の旗艦クラスがなぜこんなところに?」

「『しゅんらん』は、新型波動エンジンの調整のためと、白色彗星艦隊迎撃のために出航して、いったん地球へ帰ってから再び第7艦隊の旗艦として出航、その後第7艦隊ともども行方不明になっていた。」

「真田さん、向こうは新型の通信機ではないから、敵に察知される恐れがあります。」

「艦長、敵は第7艦隊を狙っています。このまま放ってはおけないと思いますが。」

「艦長…。」

「わかった。相原三尉、第7艦隊に通信してくれ。」

「了解。」

「第7艦隊からの通信をキャッチしました。微弱なため確認が困難でしたがSOSを発信しています。」

「もしかしてメインの通信機が使えない状態なのかもしれんな。」

真田がつぶやく。

「SOSしてくるってことは、艦隊がまだなんとかもちこたえてる証拠だ。救出するなら急ぐ必要がある。」

「!!ジャミングです。敵がこちらに気がついたようです。」

「総員、戦闘配備。第7艦隊救出へ向かう。」

 

第7艦隊は、多数の敵と少しでも有利に敵に応戦するために小惑星帯の中にいる。ヤマトは敵とは逆の方向にいるが迅速に救援にむかうには小惑星帯がどうしてもじゃまである。このままではコスモタイガー隊がつくまでに第7艦隊が致命傷を負う可能性があった。

 

「波動砲発射準備!」山南は命じる。

「ここで波動砲ですか。」

「ほかに有効な方法はあるまい。」

反論は出なかった。承諾する旨の沈黙が艦内をつつむ。

「波動砲への回路開きます。波動砲安全装置解除。」

山崎機関長が波動砲への回路開放を機関部に指示する。

「島航海長、古代戦術長に操舵をゆずれ。」

「了解。」

「古代、受け取りました。」

「電影クロスゲージ明度20、エネルギー充填80%」

「ターゲットスコープオープン。電影クロスゲージ明度20!」

「エネルギー充填120%、発射準備完了。」

「発射10秒前、対ショック対閃光防御!」

第一艦橋では皆がゴーグルをつける。

 

「...4,3,2,1,0、波動砲、発射。」

古代の手からカチッっと波動砲の引き金の軽い音がするやいなやヤマトの艦首からまばゆいばかりの光の束が怒濤のごとく放出される。

波動砲の光の束は小惑星帯をのみこんで一瞬にして消滅させる。

「コスモタイガー隊、発進!」

「了解!」

 

「第7艦隊に接近!古代戦術長!第7艦隊はもう敵の攻撃を受けているもよう。」

「了解。加藤、山本、坂本、そのまま敵を迎撃し、第7艦隊を守れ。」

「了解!」

 

「古代戦術長は島航海長に操舵を戻せ。」

「了解。戻します。」

「島、受け取りました。」

 

「戦闘宙域へ500宇宙キロ!」

「総員戦闘配備!」

 

接近するにつれ、被害報告も入ってくる。

「駆逐艦シキナミ戦線離脱!」

「駆逐艦レイピアⅡ、通信途絶!」

駆逐艦が炎上している様子がパネルに映される。

 

「島、右に転進だ!」

「了解。面舵いっぱい、コースターン!」

 

「防衛軍の力を思い知れ!」

一点集中砲火をあびせて敵の被害を増やすものの、6隻もの空母から発進されるイモムシ型戦闘機と、白色円盤型戦闘機の数は数千機にものぼり、コスモタイガー隊も苦戦している。

 

「加藤、山本、敵機を主砲の軸線に誘導しろ。」

「了解!」

「南部、主砲最大射程だ!」

「了解!」

「誤差修正0.2、主砲、発射!」

イモムシ形戦闘機と白色円盤型戦闘機のパイロットたちは

「回避!!」と叫ぶが次の瞬間には悲鳴を発して気化していく。

ショックカノンの光条の槍が暗黒星団帝国艦隊の円盤状の船体を貫らぬき、次々と爆発光がきらめき、爆発煙と金属片を撒き散らしていく。暗黒星団帝国艦隊の注意はヤマトに向けられ、艦隊の隊列が方向を変えようとする。その隙を尾崎宙将は見逃さなかった。

「全艦、拡散波動砲発射用意!」

「波動砲へのエネルギーパイパス接続。」

「エネルギー充填120%」

「対ショック対閃光防御」

秒読みがはじまり、いっせいに発射されたエネルギーの奔流は、宇宙をてらし、一点で拡散する。

暗黒星団帝国の空母、円盤型の戦艦、巡洋艦、駆逐艦はつぎつぎとエネルギーの槍につらぬかれ、閃光と爆煙を噴出してつぎつぎと四散する。

 

「敵艦隊、エネルギー反応消失。全滅のもようです。」第七艦隊のオペレーターは安堵したように尾崎へ告げる。ヤマト艦内でもレーダー手が

「敵艦隊全滅のもようです。」と伝える。

 

「なんとか勝ったな。」島がつぶやく。

「ああ。」古代が返事をする。

「見たところ、炎上もおさまっているようだし、あの拡散波動砲の斉射がきまったから助かったようだな。」

「島一尉、『しゅんらん』に接舷してくれ。」

「了解。」

「相原三尉、有線通信回路をつないでくれ。」

「了解。」

回線をつなぐとさっそく通信があったらしく、相原の表情があかるくなる。

「古代さん、さっそく通信がはいっています。」

「ヤマトの諸君。よくわれわれを見つけ出してくれた。ありがとう。」

「尾崎司令!」

「山南、古代に島、ひさしぶりだな。」

「連続ワープのテストを行ったが、通信機器が不調になって地球と連絡がとれなくなっていた。そのうち、微弱な通信波をかぎつけたらしく、敵艦隊がやってきた。艦形を照合したところ、地球を攻撃している暗黒星団帝国の艦隊だということがわかった。なんとか戦ってきたが損害もバカにならず、この小惑星帯に追い詰められたというか、逃げ込んだんだ。そこへ君たちがきてくれたというわけだ。しかし、どうして君たちはここに来ているんだ?ヤマトには、シリウス方面への航海予定はなかったはずだが。」

尾崎は話している間に落ち着きを取り戻してヤマトが予定にないシリウスに現れたことについて問うてきた。



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第7話 狂わされたワープ!敵将の罠を探れ

「あ、そういえば司令は何もご存じないんですね。実は...。」

暗黒星団帝国の円盤型三脚戦車、降下猟兵、黒色艦隊の侵略があって、地球側がパルチザンで抵抗していること、地球に降下したハイペロン爆弾は遠隔操作が行われているので敵本星に向かう途中のワープ実験中であったことを説明した。

「そうか。ところで、敵本星の位置はわかっているのか?」

「重核子爆弾の侵入ルートから逆算しおおよその方角はわかっているんですが正確にはわからない。イスカンダルをみつけたときのように手探りで進まなければならない状況だ。」

「実は、われわれが暗黒星団帝国の艦隊に遭遇したとき、ちょうど彼らの真正面からワープアウトを確認できたんだ。」

「そうですか!」

しかめつらしい真田の表情がゆるむ。

「ということは、敵のワープによる空間歪曲エコーを把握できたってことですか。」

「そうだ。そうか!そちらへもそのデータを送ろう。」

「真田さん、それって敵の来た距離と方向がわかるってことですか。」

「うむ。ただし、直近の敵のワープだけなんだ。それにそのエコーをどうどうと残したということは敵本星を把握しずらい状況だからあえて消さなかったとも考えられる。それとわたしたちのように連続ワープしているなら、あえて消す必要がなかったとも考えられる。

ただ何もないよりは確かにましなのだが。」

しばらくして計算結果が真田のディスプレイに表示される。

「結果が出たな。銀河系外周から約20万光年か…。」

「に、20万光年って?そこになにがあるんですか?」

「小マゼラン雲だ。そのさらに20万光年先にダークマターを濃密にした暗黒星雲がある。」

真田がなにやら保留して答える。

「やはり敵は暗黒星雲から来たということか。」

いままで無言で話を聞いていた島がつぶやく。

「さっき今のところ何もないと言ったが、天体が確認されていないだけで、敵の中間基地があるのかもしれんな。」

「敵が来た方向と距離がわかったわけだからそこへ行ってみる必要がありますね。」

「あの…。」

「どうした相原。」

「古代さん、真田さん、そこに敵の中間基地があるとしてヤマト一隻で行くんですか?敵は堅牢な要塞で、強力な戦艦が多数いるかもしれないんですよ。波動防壁の持続時間内に倒すか、よほどうまく波動砲を撃たないとやられてしまいます。」

「山南司令。」

「尾崎司令。」

「地球が敵占領軍にパルチザン的な抵抗をしているのをすこしでも助けるためには我々も敵本星へ向かったほうがいいように思うが。」

「尾崎司令、地球防衛艦隊の波動エンジンは、あくまでも地球防衛のためで、拡散波動砲などの兵装は充実している代わりに太陽系内とその近傍への航海しか前提としていないのに40万光年のかなたなどに行けるのか?地球を守るんでなければ緊急性はうすいから、一番近い恒星であるアルファ・ケンタウリまでワープを繰り返して一週間かかるはずだが。」

「山南、忘れたのか?わが第七艦隊は、ヤマト以外に唯一遠洋宇宙航海可能な波動エンジンを積んでいる艦隊だ。しかしあまり地球から離れていては意味がないからシリウス近傍に駐屯しているんだ。こういう状況でシリウス近傍で敵をたたいた以上はこれ以上ここにいる必要はない。遠洋宇宙航海が可能で敵本星をたたける戦力は多いほうがいい。われわれ第七艦隊は、動ける艦だけでも貴方がたに合流し、敵本星まで同行しようと思うのだが。」

「なるほど..そうか…。」

「幸い無人艦のいくつかは主要機関の修理のみで動けるし、この『じゅんらん』もそれほど損傷は重くない。損傷が著しい有人艦が何隻かここに残り、修理を行うが、出発後はシリウス第5惑星基地から補給を行うことが可能だろう。」

「尾崎司令。」

「真田一佐、どうした?」

「技術班第一係をそちらの修理に向かわせます。工作機器はたくさんありますのでご安心ください。」

しかめつらしい真田の表情がいつになく明るい。やはり味方は多いほうがいい。

「修理は万全だ。『しゅんらん』の 準備完了の知らせがとどいている。」

「ヤマトと第7艦隊はこれより銀河系を脱出して敵本星のあると思われる方向へ長距離連続ワープを行います。ワープ準備。」

「了解。ワープ準備。」

 

そのころ、ガイウス艦隊では...

「時空歪曲場発生装置、すべて設置完了いたしました。」

ヒトデのような機動戦艦ナデシコのチューリップのような機器がガイウス艦隊の背後に設置される。

「エネルギーパネル動作正常!時空歪曲場発生装置へのエネルギー注入開始!」

ガイウスは満足そうに報告をきいてうなずくと

「よく聞け。ヤマトは間違いなくわれわれの本星をめざしてくる。銀河系オリオン腕からワープするルートなら間違いなくこの宙域を通過するはずだ。」

と作戦の狙いを語る。

「空間歪曲装置αからλまで、エネルギー注入70%突破。」

(さあ、ワープして来い。ヤマト。貴様らは目的地にたどり着くことはできん。歪曲場にまきこまれ、このガイウスの餌食となるのだ。)

「空間歪曲装置αからλまで、エネルギー注入100%に到達!」

「空間歪曲装置起動!干渉波照射開始!」

 

そのころヤマトは予定の連続ワープを順調に終えた...はずだった。

「このワープでちょうど20万光年到達になります。通常空間確認。ワープアウトします。」

「機関正常。エネルギー出力100%を維持。」

「!!」

「島、どうしたんだ?」

「おかしいな。俺たちは、都合5回の連続ワープで20万光年を一気に跳躍する予定だったはずだ。なのに航路記録を見る限りまだ10万光年しかきていない.」

「しかし…異常があることを示す報告なり、警報はなかったな。」

真田が不審そうにつぶやきながら計器を確認する。

「前方200宇宙キロにガス雲につつまれた中性子星カレル663です。」

「…。縁起が悪いな。何か罠にはまったのでは…。」

 

「!!この宙域付近に空間歪曲反応がひろがっています。それと敵影発見。」

西条が報告する。

「なんだって!」

山崎が叫んでしまう。

「西条一曹、パネルに投影してくれ。」

「はい。映します。」

古代が命じると西条は機器を操作して画像を天井のパネルに投影した。

 



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第8話 地球よ、敵将の罠を食い破れ

古代が命じると西条は機器を操作して画像を天井のパネルに投影する。

黒々とした円盤状の旗艦にオべリスクのようにそびえたつ艦橋、その周囲には似た形のオレンジ色のおびただしい数の艦艇がとりまいいている。

「すごい数だ...よりによってこんなときに...。」

南部は軽く叫んでしまう。

「敵からすれば、我々が敵の本星に向かっているのは知っているはずだから、待ち伏せをして、わなを仕掛けるのは、考えてみれば当然といえば当然だがあまりいい気はしないな。」島が意見を述べる。

「もしかしてヤマトのワープ停止も敵のしわざなのか?」

南部が皆に確認するように話しかける。

「真田さん、どうなんでしょうか?。」

古代は真田に意見を求める。

「空間を広範囲に歪曲する機器があれば、干渉効果でワープ位置を狂わすことができるかもしれない。敵の背後にエネルギー放射点が複数確認できる。西条一曹、拡大してくれ。」

「はい。」

レーダー手がそのうちひとつを拡大してみせる。

「花というかヒトデというか変な形の装置ですね、真田さん。」古代がつぶやく。

「たぶんそれが敵の空間歪曲装置だな。この付近の空間をゆがめているに違いない。」

「敵がレーダー妨害を開始したようです。長距離レーダー、ホワイトアウト。近距離レーダーに切り替えます。」

「困ったことになったな。」

「古代、もし敵がワープに干渉してきたら今度はワープで逃げることはできないぞ。それに敵は我々を完全に包み込むよう布陣している。このままだと集中攻撃をあびてしまう。」

島は冷静な口調で客観的に危惧を述べる。

「それにもうひとつ気がかりなことがあります。波動エンジンもショックカノンも波動砲も空間歪曲の原理を一部利用しています。今のところ計器類に表立った異常はみられないが、今後はどこかに悪影響が出る可能性もあります。」

山崎も落ち着いたバリトンながらも機関長として危惧していることを話す。

「戦力をまとめ一点突破を図るか、分散して敵の布陣を潜り抜けるかか…いずれにしても敵艦隊と戦いつつ、あの干渉装置を破壊するということだな。」

「古代、総員戦闘配置だ。」

「はい、総員戦闘配置。コスモタイガー隊発進。」

「『しゅんらん』の尾崎司令に連絡。全艦紡錘陣形で突入開始。」

地球艦隊は紡錘陣形で暗黒星団帝国艦隊へ向かって突入していった。

 

「敵、包囲網に急速接近。15宇宙デザリオン!」

「覚悟をきめて一点突破をはかろうというわけか。全艦ねらいをしぼれ!やつらを蜂の巣にしてやるのだ。」

「全機左へ旋回。」

「メインノズルに損傷。航行速度30宇宙ノットに低下。」

「メインレーダー損傷。」

「右舷パルスレーザー砲塔、3番、5番、9番、11番損傷、左舷パルスレーザー砲塔、2番、7番、3番、8番損傷!このままでは火力が維持できません。」

「右舷10箇所、左舷12箇所装甲板剥離。」

「波動防壁展開!」

「主砲、副砲発射!」

「うっ。」

「南部どうした。」

「弾道が曲がってしまいます。」

「敵の攻撃は曲がらずにくるな。干渉波の影響というわけか」

山崎がつぶやく。

「そういえば、敵は曲がらないということは、波動エネルギーと異なる動力で動いているっていうことだな。」

「ということは、この状況で不利になるのはこっちだけってことですか?真田さん」

「うむ…。」

「波動砲はどうですか。」

古代が聞き返す。

「だめですな。敵の干渉装置が波動エンジンに影響を与えています。航行させるだけでせいいっぱいの状態です。波動砲のチャージをはじめたらエンジンが止まるでしょうな。」

山崎は、一見冷静だがその声にはくやしさがにじみでている。波動エンジンが止まってしまったら元も子もないのだ。

「しかも、この干渉波のなかで一度停止したエンジンを再起動できるかどうかも問題だな。ただ...。」

「ただ、何ですか真田さん。」

「『しゅんらん』は、新型の波動エンジンを二基搭載している。もしかしたら...。」

「『しゅんらん』の周囲から高エネルギー反応感知。拡散波動砲のチャージをしている模様です。」

「山南艦長、『しゅんらん』から通信です。」

「山南、『しゅんらん』が拡散波動砲で敵艦隊に穴をうがつ。そこから一気に突破して敵の背後に回り干渉装置を破壊してくれ。」

「土星会戦の意表がえしか。」

山南が苦笑交じりに返す。

「そういうことだ。あのときは助かったからな。」

尾崎の脳裏には土星の輪の上の空間からカラクルム級が無数にワープアウトしてくるあの時の悪夢がよみがえる。もはやここまでと思ったときに地球艦隊主力を率いた山南の艦隊が放つ拡散波動砲が無数のカラクルムという悪夢をはらってくれたのだった。

「尾崎司令、波動砲のチャージは大丈夫なんですか。」

「敵の干渉波でだいぶ出力は低下しているがこちらは新型のエンジンを二基つんでいる。

なんとかなるはずだ。」

「了解しました。」

「全艦隊に通達。拡散波動砲チャージの間『しゅんらん』は無防備になる。『しゅんらん』を敵の攻撃から守る。拡散波動砲発射後一気に敵艦隊を突破する。」

敵の高速艦からズールー、フレッチャー、きぬがさ、ゆきかぜ改、ハルバートとヤマトは直援機を発進させ、敵駆逐艦と艦載機を次々に撃墜していく。

宇宙空間をきりさくように光条が幾重にもとびかう。閃光と爆煙が幾重にも発生する。

「対艦ミサイルポッドハッチ開放。」

「敵をロック。追跡開始。」

主砲が当たらない敵機をコスモタイガーが次々に撃墜していき、敵機は次々に煙をはいては火球に変わる。その間にようやく『しゅんらん』艦内で

「拡散波動砲チャージ完了。」と報告され、発射シークエンスが進められる。

「対ショック対閃光防御。」

「10,9,....3,2,1,発射!」

『しゅんらん』の三つの波動砲口から放出されたエネルギーの奔流は宇宙の闇を照らして、花火か樹木のように枝分かれをして広範囲に広がり、敵艦隊の包囲網の半分を包むようにひろがっていく。拡散波動砲の網目のように広がった光と熱の支流はガイウス艦隊の千数百隻の艦艇を貫く。

「!!なんだこの高エネルギー反応は!!」

「かいひいいい~~~~」

「この閃光は…。」

「間に合わない」

「うわああああ。」

「ぎゃああああああ。」

そして次の瞬間には、その艦艇の内部は悲鳴に包まれ、閃光と爆煙に変わって、四散するのだった。

「なんだ…あの兵器は…。」

「うろたえるな。敵の兵器は確かに驚愕に値するがこちらにも戦力は残っいる。」

「あの艦…ヤマトともにあの艦もたたきつぶせ。」

ガイウスは語気を強めて命じた。

 



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第9話 盗掘船団、大マゼランに現る!

「島、右に旋回だ。」

「右に旋回。ようそろー。」

 

「波動防壁消失。」

「こちらヤマト、こちらヤマト。緊急事態、援護を願います。」

「右舷パルスレーザー砲塔、1番、4番も損傷、左舷パルスレーザー砲塔、5番、6番、9番も損傷!第一副砲損傷。各兵装に深刻なダメージです。右側揚弾機が機能しません。」

 

「こちら山本新たな敵を発見。アステロイド帯に進入。スロットル閉鎖。速度落します。」

中性子星はかっては太陽の10倍以上もある恒星でかっては明るく輝いていたが爆発を起こし、周囲にあった地球型惑星は粉々になって小惑星帯となってカレル663を公転している。

コスモタイガー隊はその小惑星帯を巧みに飛行して敵編隊の攻撃を試みる。

 

「ガイウス様、敵が包囲網を突破し、干渉装置に接近してきます。」

「空母艦隊に通達。艦載機発進。迎撃隊として展開させろ。干渉装置を死守するのだ。それから敵の艦列のポイントになる座標を全艦に送る。そこを集中砲火し、敵の艦列をつきくずせ!」

 

「全艦主砲、発射!」

ヤマト主砲は敵艦載機隊をのみこんで引き裂いていく。

「回避~」

「間に合わない;。」

その光条はさらに干渉装置を貫いて火球に変えた。

「干渉装置β破壊されました。」

「まだだ、まだ干渉装置は残っている。」

 

「アステロイド帯に進入。艦速をおとすぞ。」

地球艦隊がさらに小惑星帯に侵入し、『しゅんらん』は拡散波動砲をチャージする。

ふたたび『しゅんらん』から放たれたエネルギーの奔流が暗黒星団帝国艦隊に襲いかかる。

ガイウス艦隊はこの一撃で干渉装置をすべて失い、全艦隊の9割近い損害を出していた。

「干渉装置すべて破壊されました。どういたしますか」

「全艦退却だ。われわれの目的はやつらの母星への接近を阻止することだ。干渉装置が破壊された今、これ以上ここで戦うのは無意味だ。戦力をととのえて地球艦隊の進路に待ち受けるのだ。」

「はつ…。ところで司令。」

「なんだ?」

「この先にはわれらの中間補給基地があります。地球艦隊の包囲網突破を連絡しておくべきでは?」

「中間補給基地の司令官はスラ・バツゾークだったな。」

「はつ。」

「連絡は不要だ。」

「し、しかし...それでは…」

「いいか、よく聞け。ヤマトはわたしの獲物なのだ。」

 

「空間歪曲干渉波消失しました。レーダー妨害も解除されました。」

「敵艦隊退却していきます。」

「なんかえらく引き際のいい敵だな。」

「あの干渉装置にすべて頼った作戦だったからな。ここで引き上げなけれは敵の損害はもっと大きいものになったはずだ。作戦の内容といい、戦況の把握振りといい敵の指揮官はかなりやり手だ。」

「うん…。」

「艦長、今回の戦闘ではかなりの損害を受けました。すぐには敵の攻撃もないだろうから修理したいと思いますが。」

「それがよいだろう。ただし監視衛星を打ち上げ、警戒網の構築に怠りがないように。」

「了解。」

 

修理時間は数日を要した。尾崎が今後の打ち合わせのきためにヤマトに『しゅんらん』を接舷させて乗り込む。

 

「我々は、敵本星と地球の中間にあたる小マゼラン雲へ向かう。」

「艦長、艦長」

「どうした?」

「防衛軍司令部からの緊急通信です。」

それは驚くべき内容だった。

 

ガミラス本星は惑星の寿命が迫り、表面の空洞化によってマントルが露出しているが、表面は固形化している。

その橙色を呈する表面に見慣れない船団が降下していたのをガミラスの警備隊が発見した。

「南緯70度、西経30度付近に正体不明の船団を発見」

「なんだ、あれは…。」

「なにやら掘削しているようだな。」

「!!」

「正体不明の船団から攻撃」

「うわああああ…」

 

「南緯70度、西経30度付近に謎の船団だと?」

「はい。ヒス内務長官、これです。」

「見たことのない船団だな。」

「どうやらかって我々が宇宙航行用に使用していたガミラシウムを採掘していたもようです。」

「それはゆゆしきことだな。ガミラシウムの採掘は星の寿命を著しく縮めることが判明して、プレ・ゲシュタム機関が開発された200年前から採掘をやめている。どうにかしてやめさせなければ。」

「話が通じる相手ならよいのですが…それにこの船団の護衛艦の画像と最近地球が戦ったという謎の敵の艦隊の画像をごらんください。」

「そっくりだな。」

 

「警告、警告、こちらはガミラス共和国第一上空巡視隊。そちらの船団の所属を名乗れ。

ガミラシウムの採掘はガミラス共和国資源採掘法によって禁じられている。ただちに所属を名乗るとともに採掘を中止されたし。」

「!!」

円盤型巡洋艦からかすかに緑色がかった光条が放たれる。

「こ、攻撃してきます。」

「仕方ない、応戦だ。」

 

一方天の川銀河オリオン腕太陽系である。

月の大使館がガトランティスの滅びの方舟の主砲によって破壊されたため、ガミラス大使館はサハラ砂漠に置かれている。

「バレル大使」

「ヒス内務長官?」

「現在ガミラス本星は、地球を攻撃しているのと同じ敵暗黒星団帝国から攻撃をうけている。敵のガミラシウム採掘船団に警告したら反撃してきたのだ。」

「天の川銀河オリオン腕周辺でも同じ状況です。ただ…。」

「ただ、どうしたのだ?」

「ヤマトと地球防衛軍第7艦隊が小マゼラン方面に向かっているそうです。敵の中間補給基地があるようで…。」

「そうか…こちらの戦況は苦しい。援軍がほしいところだが…。」

「地球連邦に相談してみましょう。天の川銀河の植民星も厳しい状況ですが、遠方の艦隊を呼び戻すような非効率なことはしないでしょう。場合によっては駆けつけてくれるかもしれません。」

「よろしくたのむ。」

画面からヒスが消えるとバレルはため息をつく。

次にローレン・バレルは地球連邦との間に回線を開いた。

「これは、バレル大使。」

「大統領。」

「貴方の本星も同じ敵の攻撃を受けているようだが…。」

「我々の本星も苦しい状況です。敵はどうやら星間戦争用のエネルギー源になる鉱石のある惑星をみつけると、無人ならばそのまましゃぶりつくし、有人である場合はそれを排除してまで、惑星を掘りつくしては捨てをくりかえすとんでもない連中であることが判明しました。わたしたちのガミラスのガミラシウムのほか、イスカンダルにもイスカンダリウムという鉱石があります。敵はおそらくイスカンダルも狙うでしょう。」

「同盟国と地球の恩人が危機と言うことか。」

「そういうことです。」バレルは、大統領の指摘に同意を示しつつ話を続けた。

 



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第10話 盗賊船団のガミラシウム採掘を阻止せよ

「ちょうどヤマトと第7艦隊が敵中間基地のある小マゼラン雲へ向かっているとのことです。敵中間基地をたたくことのほうが戦略的に重要で優先すべきかもしれません。わたしも我が本星に援軍に送っていただきたいとは思いつつも、わたしの私情で判断するわけにはいきませんし、恐縮ですが軍事力はともかく総合的に見て科学力は我がガミラスのほうが上かと存じていますから、ガミラス人の矜持としてもそのようなお願いをするのは甚だ不本意なのです。ただ大統領もイスカンダルの危機については座視するわけにはいかないとお思いではないでしょうか。」

「うむ…わかった。バレル大使。防衛会議に検討させよう。」

 

「!!」

コンソールが点滅し、相原がすこし驚いたように通信機をとる。

「防衛軍司令部より入電です。」

ヤマトのスクリーンに藤堂平九郎の顔が映し出される。

「長官」

「山南君。実はガミラス本星とイスカンダルが地球をおそった同じ敵暗黒星団帝国の攻撃を受けている。敵は、星間戦争に有用なエネルギー鉱石のある惑星を採掘しつくしては放棄することを繰り返して勢力を維持してきたらしい。ガミラスとイスカンダルがその標的になったというわけだ。中間基地攻撃かガミラス・イスカンダル防衛か防衛会議では情報が少なすぎて結論が出ず、現場指揮官にゆだねようということになった。第7艦隊の尾崎君と君とで判断してほしい。」

「わかりました。話し合ってみます。」

 

一方ガミラス本星共和国政府閣議室である。

「なんでしょうか。ヒス内務長官。お呼び出しとは?」

実直そうな軍人が入ってくる。

「リッヒ・レーダー、君を大マゼラン外周警備司令官から首都上空防衛司令官への転任を命じる。南半球の旧ガミラシウム採掘坑のことは知っているだろう。」

「地球連邦と交戦中の暗黒星団帝国の艦隊が現れて盗掘を繰り返し、こちらの警告を無視していると聞いていますが。」

「そうだ。このたび地球連邦第7艦隊とヤマトがこちらへ向かっている。」

「なるほど。ガトランティスと同じ共通の敵ということですか。」

レーダーは理解したというように笑みをつくる。

「そうだ。第8機甲師団のルントには、引き続き小マゼラン戦線を担当してもらうとともに暗黒星団帝国の中間基地の探索を行わせているところだ。」

「わかりました。」

「首都上空に地球艦隊が来たら合流して敵をたたくのだ。頼んだぞ。」

「ザー・ベルク」

 

一方地球艦隊では、藤堂長官の命令をうけて、二人の現場指揮官が協議をはじめた。

「尾崎。」

「おお、山南か。」

「長官から連絡があったがどう思う。」

「考えたが、ガミラスとイスカンダルは同盟国に恩人だということもあるが、敵の補給にダメージを与える意味でも採掘を阻止する意味はあると思う。中間基地はそれからでも叩ける。まずはサレザー太陽系に向かうべきだと考える。」

「そうか。実はおれもなやんでいたが、どちらかといえばそうすべきなのではないかと考えた。まあかっての欧米列強が発展途上国を植民地化して食いつくした400年前の歴史を思い起こすような不愉快な話だ。」

「そうだな。そういう意味でも許せない話だ。」

「古代。」

「はい。」

「皆も聞いてくれ。これから我々は、サレザー太陽系へ向かうことにした。地球を攻撃したのと同じ敵暗黒星団帝国が現れ、星間戦争用のエネルギー源になる鉱石であるガミラスのガミラシウムの採掘に現れたのだ。敵は武装工作船団で現れ、ガミラス政府の制止を無視して採掘を行い、抗議したら問答無用で攻撃してきた。また敵はイスカンダルのイスカンダリウムを狙うだろう。これは地球の恩人と同盟国を救う戦いであるとともに、悪辣な侵略者による星間戦争を阻止する戦いだ。敵は星間戦争用のエネルギー源になる鉱石のある惑星をみつけると、無人ならばそのまま食いつくして不要になったと判断したら捨て、有人である場合はその星の住民を排除するか奴隷化して、惑星を掘りつくしては捨てをくりかえすとんでもない連中だ。400年前の欧米列強が行ったような植民地の搾取のようなものだ。そのような連中を許すわけにはいかない。したがって敵の補給に痛打を与える意味でも敵工作船団を排除するのが優先と考えた。何か質問は?」

「中間基地はどうするのですか。」

「敵の補給にダメージを与えることができれば弱体化させられるかもしれない。敵が工作船団を護るために戦力の逐次投入をしてくればやはり敵基地の弱体化の誘因とすることができる。よってサレザー太陽系のガミラス・イスカンダルの防衛を最優先事項とする。」

「わかりました。みんな行こう。4年前の恩返しをするんだ。」

「島、ワープだ。」

「了解。」

ヤマトが銀河系外の宇宙空間、地球から10万光年の宇宙空間から消えた。

 

「ワープ終了。」20万光年のかなたの空間にワープアウトする。

「大マゼラン雲サレザー太陽系惑星イスカンダルまで1万宇宙キロ。」

「またここに来ることになろうとは…。」

「9時の方向、距離5千宇宙キロに反応あり。」

 

「3時の方向、距離25000デザリオンに反応あり。」

「「投影しろ」」

 

「敵だ、暗黒星団帝国の艦隊です。」

 

橙色の円盤状の中央に艦橋が樹木のようにそびえたつなかに、ひときわ大きく350mに達する黒々とした円盤状の船体にこれまた320mに達するあたかもアクスムのオベリスクを黒々と塗ったかのような巨大な艦橋がそびえたつ。

暗黒星団帝国マゼラン方面軍第一遊撃艦隊旗艦プレアデスである。

その艦橋の中央には堂々とした体躯の禿頭の人物が立っている。

「デーダー司令、あれは地球の艦隊と思われます。」

「ここまで出張ってきたか。艦載機隊発進!ハチの巣にしてやれ!」

 

「敵艦載機発進した模様。」

「こちらもコスモタイガー発進!」

 

「誤差修正0.2、主砲発射!」

「次、-2、発射!」

「誤差修正0.5、発射!」

地球艦隊のショックカノンの光の槍が暗黒星団帝国艦隊に横なぐりの豪雨のように注いで次々に爆発光と爆煙を生じさせる。

 

「わが巡洋艦隊損耗率半数が撃沈!」

しかしデーダーはほくそえむ。

「やつらの船体は鉄などでできている。ということは、磁力線を照射し、ガミラシウム採掘後の濃硫酸の海にたたき落とせば飛んで火にいる夏の虫ということだ。敵をガミラスの地殻にひきつけろ」

 

「敵艦隊後退していきます。」

「また採掘を続ける気か」

「!!」

「どうした?」

「なにか磁石にひきつけられたような感覚です。」

「後方1000宇宙キロにガミラス艦隊。」

尾崎の表情は晴れない。

「せっかくの味方なのに…。送信しろ。」

(下手にガミラス艦隊を巻き込むようならかえって敵を有利にする、慎重を期するべき場面だ)

尾崎は自分に言い聞かせた。

 

 

 



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第11話 ヤマト、反撃の糸口をつかめ!

「レーダー司令、地球艦隊とともに暗黒星団帝国の艦隊を前方1000宇宙キロに発見。」

「並行追撃状態のため、艦砲による支援は困難です。」

「地球艦隊より通信。」

「つなげ。」

「「支援感謝スル。コチラハ敵ノ磁力線照射装置ニ捕エラレタ。接近ハ危険。」以上です。」

レーダーは苦虫をかみつぶす表情をしたが気を取り直して命じる。

わざわざ本星まで来てくれた友邦の艦隊に何も支援できないとあってはガミラス軍人の估券にかかわる。

「仕方ない。艦載機発進せよ。地球艦隊を支援する。」

「了解。」

 

「前方5000宇宙デザリオンにガミラス艦隊発見。」

「ふん。何もできまい。オルビス(白色円盤戦闘機)、ブルシウス(イモムシ形戦闘機)発進。やつらに火矢をみまってやれ。」

上空で両軍の空中戦がはじまり、爆発光と爆煙の狂宴がはじまる。

 

「技師長。」

「艦長?」

「ここの海は濃硫酸だ。しかしすぐにヤマトが溶けてなくなるわけではない。」

「はい。」

「火山脈を探すのだ。」

「しかし、主砲では弱すぎますし、波動砲ではガミラス星に深刻な地殻変動を与えてしまいます。波動掘削弾では効果が限られます。」

「波動砲の出力を絞るのだ。アナライザーに計算させろ。」

「はい。」

「出マシタ。4割ニ絞レバ火山脈ヲ活発ニ活動サセ、ナオ地殻変動ハ限ラレルモヨウ。」

「火山脈を探索するのだ。」

「了解。」

「10時ノ方向」

「10時の方向、よーそろー。」

「3時の方向、1000宇宙キロ。敵艦隊!」

「敵、砲撃してきます。」

「右舷、3番、7番パルスレーザー砲塔損傷!」

「しかたない。潜航しろ」

「了解。」

 

「ヤマト、潜航しました。地球艦隊、3時の方向から攻撃してきます。」

「敵は艦首波動砲をもっている。地球艦隊の最後尾につくのだ。」

「了解。」

 

「敵艦隊、8時から6時方向へ転針してきます。」

「敵はどういうつもりだ。」

「我々の後方へつこうとしているのではないでしょうか。」

「敵、砲撃してきます。3番装甲被弾、11番装甲被弾!」

「司令、ガミラス艦隊より通信です。」

「レーダー司令」

「尾崎司令、ちょうど敵が前進してきた。こちらがひきつけている間に拡散波動砲を充填できないか?」

「うむ。申し訳ないがその提案に甘えさせていただく。それから司令、受けた通信で悪いが敵の磁力線投射装置を発見できないか?」

「わかった。地殻表面をスキャンしてみよう。」

「感謝する。」

 

「ガミラス艦隊攻撃してきます。射程距離ぎりぎりなようです。」

「応戦だ。」

「ガミラス艦隊、ゆっくりと後退しつつ展開。」

「追うな。また砲撃を仕掛けてきたときに一機に反撃するのだ。この暗黒星団帝国の力をみせてやる。」

 

「司令、ヤマトから暗号通信です。」

「何?ガミラスの火山脈を爆発させるからすみやかに引き返してくれ?」

「予想される被害範囲です。」

「南半球の地殻まで1/3が吹き飛ぶな…。レーダー司令にも伝えてくれ。」

 

「しゅんらんから暗号通信です。ヤマトの作戦とのことです。」

「…。」

「司令、どうなされましたか…。」

「これを見てくれ…。」

「火山脈を発見次第爆発。南半球の1/3の地殻は吹き飛ぶ。ガミラス星に地殻変動を与えるもののそれほど大きな被害が出ない様計算しているのか…。」

「私どもで再度同じ結果がでるか計算してみましょうか。」

「そうだな。作戦としてはわるくないが、わが母星に与える影響を考えないと納得しがたい作戦だ。大丈夫だと思うが分析しなおすか。

それからもっと効果があってガミラスに影響の少ない火山脈がないか探ってくれ。」

「レーダー司令。ヤマトからです。」

「つないでくれ。」

「司令、このような作戦を考えてすまない。ガミラス星に極力影響を与えずに敵をたたく作戦として考えた。本当にあなた方の星に与える影響が少なくて済むのか納得がいくよう確かめていただきたい。もしご納得いただけるならこの作戦でいきたい。」

「山南司令。概算では大丈夫に思う。急いでいるだろうがすこし時間をいただきたい。また我々も火山脈をさがそう。」

「御協力感謝する。」

 

「11時ノ方向、11時ノ方向。」

「11時の方向、よーそろー。」

「2時ノ方向、2時ノ方向。」

「2時の方向、よーそろー。」

「表面装甲の溶解率33%」

 

「ヤマトのいる付近に爆雷を落とせ。装甲が溶けかかっているはずだ。」

「はつ。」

 

「敵爆雷来ます。」

「左舷展望台損傷!、左舷パルスレーザー砲、3番、5番、12番損傷!」

「表面装甲の溶解率37%」

「まだなのか?アナライザー」

「マダデス。」

「溶解率が45%を超えると危険だ。55%を超えると船体がもたない可能性がある。至急、第3艦橋の乗員には避難するよう伝えろ。このままだと10分前後で落下する。」

「了解。」

「レーダー司令、1時の方向、4時の方向、7時の方向に爆発力が大きな火山脈を発見。」

「分析しろ。ガミラスの寿命に影響が少なく破壊力の大きいものがどれなのか?」

「了解。」

「分析結果出ました。」

「どうだ?

「南緯20度、西経17度付近がよいように思われます。内部に与える影響は2.5%。ただし、地殻はやはり1/4が吹き跳びます。」

 

「0時半ノ方向、0時半ノ方向」

「0時半の方向、よーそろー」

 

「敵の爆雷が降り注いできます。」

「第一副砲損傷、第二艦橋損傷」

「右舷展望室損傷。」

「右舷パルスレーザー砲、1番、7番、10、14番砲塔損傷」

「左舷パルスレーザー砲、2番、9番、13番砲塔損傷」

「負傷者多数。」

悲鳴のような報告が続く。

 

「溶解率43%」

「アナライザー、まだなのか。」

「マダデス。」

山南と古代の額に汗がにじむ。

 

「デーダー司令、この付近はガミラシウムの採掘過多のため地盤が緩み、火山が噴火しやすくなっております。」

「敵が火山脈を攻撃する可能性があるというのか?」

「ありえます。」

「ふむ。有利に戦いは進んでいる。わかった。敵の包囲網を突き破る。」

デーダーはほくそえんで命令を下す。

 

「敵の砲撃が激しくなってきています。!!突っ込んできます。」

「中央突破を図る気か...。」

尾崎は苦虫を潰したように『しゅんらん』の艦橋でつぶやく。

「駆逐艦10隻撃沈、巡洋艦7隻撃沈...」

爆発光が尾崎の顔を照らす。

「まだなのか...ヤマト...。」

 

「アナライザー、まだか?」

「マダデス」

「溶解率44%」

そのときヤマトが下へ引っ張られるような振動が襲う。

「だ、第3艦橋溶け落ちました。」

悲鳴のような報告がなされた。



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第12話 ヤマト、あの火山脈を撃て!

皆さま、お待ちかね。あの方が登場です。


「レーダー司令から通信」

「つなげ。」

「ヤマトの諸君、ガミラスの防衛の尽力に感謝する。威力の大きい火山脈を発見した。南緯20度、西経17度付近だ。

しかもそれで吹き飛ぶ地殻付近に磁力線照射装置らしき反応がある。」

 

「了解。感謝します。アナライザーみつけられるか?」

「そちらへ地図データを送ろう。」

「感謝します。」

 

「ハッケン、ハッケン、10時半ノ方向、1500km」

「波動砲、エネルギー充填。」

「ターゲットスコープオープン、電影クロスゲージ明度9」

「出力40%,発射準備OK」

「10,9,8,7….3,2,1,0!発射!」

轟音が響く。次々と火山が噴火し、噴煙をあげ、硫黄を含んだ溶岩が流れる。

気がつくと20近い火山が芋蔓式のように噴火し始めている。

「いまだ。敵艦隊に砲撃しつつ、急速離脱!」

 

黒色艦隊は船体を揺らす

「何が起こったのだ?」

「火山が噴火しています。地殻の岩板が….10時、2時、5時、7時方向落下します。」

「だ、脱出だ…。」

 

「拡散波動砲用意!」

「10,9,8,7….3,2,1,0!発射!」

しゅんらんから放たれた拡散波動砲の光の奔流は幾重にも分かれて暗黒星団帝国の艦隊に襲いかかる。

「うわあああああ…。」

デーダーの艦隊の船内は悲鳴にあふれたが一瞬のことだった。

火山のあいつぐ噴火と拡散波動砲を受けて、暗黒星団帝国の巡洋艦隊はちぎれて次々に四散していく。

旗艦プレアデスも引き裂かれて、爆発光と爆煙を噴き出して、金属片をまきちらしていった。

 

「終わったか…。」

「終わったな…。」

 

サレザー太陽系外縁。漆黒の宇宙空間に黒々とした巨大なこけし状の物体が浮かんでいる。

内部には禿頭で細面、灰色の肌を持つ人物が、八角形のスクリーンに対して頭をたれている。

「グレートエンペラー…。まことに残念な報告をしなければなりません。デーダー率いる第一遊撃艦隊がガミラス星にて採掘中、敵の攻撃をうけ全滅いたしました。」

「全滅だと?」

「現在重核子爆弾とわが降下猟兵で制圧中の地球に属する遊撃艦隊とガミラス艦隊に挟撃され全滅したとのことです。」

「メルダーズ。ガミラシウムとイスカンダリウムは我が帝国が現在遂行中の星間戦争に必要なエネルギー源だ。採掘を行わないで帰還することは許されぬ。わかっておろうな。」

「はつ。ここはわたしが小癪な敵どもをこのゴルバをもって撃滅し、ガミラシウム及びイスカンダリウム採掘を成し遂げる所存です。」

「うむ。吉報を待っているぞ。」

 

銀河系外縁部

「デスラー総統。」

「どうした?」

「ガミラス星がガミラシウム採掘船団を伴う敵に攻撃を受けているそうです。地球艦隊とガミラス艦隊が交戦中とのことです。」

「なんだと?ガミラシウム採掘はガミラスの寿命を縮めるから許されないということではなかったのか。」

「そのとおりです。敵は強力でゼルグート級のようなショックカノンを受け付けない戦艦とおびただしい艦載機隊を伴っており、ガミラス地球の艦隊は苦戦中とのことです。」

「わかった。ガミラス星へ向かう。」

「あらたな居住惑星の探査はどうなさるのですか。」

「民が移住する前にガミラス星がなくなっては元も子もない。ガミラスに第二バレラスを落下させようとしたわたしのせめてもの罪滅ぼしだよ。謎の敵を撃滅する。」

「了解。」

「ガミラス星へ進路をとれ。緊急連続ワープだ。」

「了解。」

 

「ヒス内務長官、おひさしぶりです。」

スクリーンにヒスの顔と上半身が映る。

「地球の山南司令と尾崎司令か。大使より話はうかがっている。感謝している。」

「われわれは、恩人と同盟国を救援に来ただけです。敵が強力でやむをえなかったとはいえ貴方がたの星を多少傷つけることになってしまった。お許し願いたい。」

「いえ。仕方のないことです。レーダーより完成度の高い作戦だったと聞いております。わたしが現場指揮官であれば同じ手段を取らざるを得なかったでしょう。」

「ご理解感謝します。」

「しばらく休暇をとられてはどうか。」

「ご提案感謝します。こちらはこれから敵の中間基地をたたかねばなりません。しかし一方で長旅で補給物資が不足しているのも事実です。それから敵の攻撃も予想されますから、半数を衛星軌道上に残し、補給のために半数づつ交替で停泊することを許可されたい。」

「どうぞ。十分な休養と補給をなさってください。」

「感謝いたします。」

 

「総統。」

「うむ。」

「ガミラス星より1500宇宙キロ」

 

 

「….。ヒス内務長官!。」

「どうかしたのか?」

「船籍抹消の艦隊が出現しました。」

「….。何者か?」

「前総統アベルト・デスラーの艦隊と思われます。」

 

「ヒス君、お久しぶりだねえ。」

「おま、あなたは…。」

「覚えていてくれたかね。前総統のアベルト・デスラーだよ。」

「….。」

「心配しなくていい。わたしは、ガミラシウムを採掘しに来た盗賊どもを退治しに来たのだ。」

「そのことであれば、地球艦隊と我々で敵の前衛艦隊をなんとか撃退したところだ。」

「そうか、それはよかった。実は、わたしが強固な独裁体制と拡張政策をとったのは理由がある。ガミラス星の寿命は、50年持たないから新たな移住先を探す必要があったのだ。」

「….。」

「信じられないだろうが、ここに君の部下のバレル君の部下元情報局員クラウス・キーマンの遺書があるからそれを送る。彼はヤマトに乗り組みガトランティスとの戦いで死んだが、彼は私の甥で、実の名をランハルト・デスラーという。私の独裁体制の償いとして、民主化体制に協力したというわけだ。移住先については真剣に考えてくれたまえ。」

キーマンの遺書にはガミラス星の寿命は長くないこと、叔父のアベルト・デスラーが単なる冷酷な独裁者ではなく、ガミラスの行く末を案じてでの拡張政策であったこと、あらたな移住先を見つけるべきこと、現政府と協力してガミラス人を新たな移住地へ移住させてほしいとデスラーへ願う記述が書かれていた。

「わかりました。」

「わたしは行く。銀河系内に、我が先祖のガルマン人がいたとの情報を得たのだ。遥かなる太古、大マゼラン接近時に銀河系内からガミラスへ移住したそうだ。銀河系内に第二のガミラスとなる星を探そ…。」

「どうした?」

「「1万宇宙キロの空間に、なにか巨大なものがワープアウトしてきます。」」

それは地球、ガミラス両艦隊でほぼ同時に把握された。

 

「し、質量…きわめて大!」

オペレーターは悲鳴のように報告した。

 

 

 

 



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第13話 恐るべき浮遊要塞ゴルバ

「正確に報告せんか!」

尾崎はオペレーターに怒鳴る。

「質量2億トン!戦艦などではありません!」

「座標X2500、Y8200、Z5500付近に時空震!至急待避してください!」

「うあわああああ…。」

「当方の駆逐艦9隻、巡洋艦4隻撃沈!」

「地球側の損害報告駆逐艦9、巡洋艦4隻、我が方の損害駆逐艦7、巡洋艦5隻撃沈!」

「…。」

 

「デスラー総統、ヒス内務長官!」

「山南司令、尾崎司令…。」

「こちら…ほうが….つうし….ふの…。」

 

そこに現れたのは高さ1kmに達すると思われる巨大な黒光りするこけし状の金属製構築物であった。

「な、なんだ…あれは….。」

「浮遊要塞…というわけか…。」

 

「地球の戦艦よ。おみごとな戦いぶりだった。」

スクリーンに禿頭で青灰色の肌を持つ細面の人物が映しだされる。

「貴方は誰なのか。」

山南が問う。

「ふん、わたしか。わたしは、暗黒星団帝国ウラリア、マゼラン方面軍司令官のメルダーズだ。偉大なるグレートエンペラーの命によりガミラシウム採掘を行う。即刻立ち去れ。」

「いやだと言ったら?」

「いうでもないことだ。お前たちの艦隊、ガミラスのすべての都市を排除する。地球時間で10分猶予を与える。立ち去らない場合は排除する。そちらが攻撃してきた場合もそうだ。選択の余地はない。」

「あれがガミラシウム盗掘船団の母艦か…タラン!全艦隊突撃!艦載機発進!」

「り、了解!」

 

デスラー艦隊から艦載機が出撃し、突撃を開始する。

「デスラー総統!」

「地球の山南司令か。」

「私のような者が申し上げるのも僭越だがここは冷静になっていただけないか。」

「ふむ。ご忠告はありがたいが、あなたがたの母星に対し、この連中が何をしたか、またガミラスに何をしてきたか明らかではないか。ガミラスにも大貴族どもがやってきたことだが、地球の歴史書にも400年前、発展途上の国家に対し当時の強国が行ってきたことが非難されていることを私が知らないとでも?同じことをガミラスに行ってきたこの連中を許すわけにはいかない。」

 

「敵、突入してきます。」

「ふん、身の程知らずのおろか者め。上部ビーム砲発射!」

こけしの頭部が一部開き、ゴルバの内部であっという間、0.5秒でエネルギーが充填され、おびただしい光の弾丸が降り注ぎガミラス艦載機を火球に変えていく。一方でガミラス艦載機の攻撃はことごとく効かなかった。

「オルビス(白色円盤戦闘機)、ブルシウス(イモムシ形戦闘機)発進。戦闘艇テンタクルス発進!」

そこへ暗黒星団帝国の艦載機が襲いかかる。しかたなく艦載機戦に専念するが、ビーム砲の雨の中ではきわめて不利な戦いであり、デスラー艦隊もケカルピア級、デストリア級、メルトリア級、三段空母が次々に撃ち抜かれ、炎上し、爆発煙をあげ、火球に変わっていく。

 

「支援しないわけにいくまい。」

「山南」

「尾崎、わかった。」

「波動砲充填!」

 

「総統。」

「なんだ。」

「地球艦隊より暗号通信。」

「解析しろ。」

「我々ガ波動砲デ敵ヲ叩ク。艦載機ヲ待避サレタシ。」

「了解したと伝えろ。」

「了解。」

「敵を波動砲と敵の主砲の射線内におびきよせろ。」

「了解。」

 

「メルダーズ司令、α砲の射線上に味方が集められています。これでは撃てません。」

「あわてるな。上部ビーム砲だけで十分だ。」

 

「よし。波動砲エネルギー充填120%」

「古代さん。」

「なんだ?」

「なぜ敵は逃げないのでしょう。」

「波動砲のことを知らないのでは?」

「そんなことはないと思います。現に空間歪曲装置を使った敵は波動エネルギーのことを知っていたから使ったわけです。」

「しかし..敵は、とくに誘爆の可能性がある機雷などを使用していない。」

「ターゲットスコープオープン!電影クロスゲージ明度20」

「発射準備完了。対ショック対閃光防御。発射10秒前。」

「9,8,….3,2,1,0!発射!」

ヤマトの艦首から膨大なエネルギーの奔流が宇宙空間を昼間のように照らして輝きながらゴルバに向かっていく。

「うわあああああああ」 

艦載機隊をのみこんでゴルバに怒涛のように覆いかぶさっていく。

しかし、波動砲の輝きが消えた後に、まるで何もなかったように黒光りをした金属製のこけし状構造物が無傷の状態で現れた。

はっはははははははは…はっはははははははは…はっはははははははは…

無線通信上にわざと聞こえるようメルダーズの高笑いが聞こえる。

「そんな石ころのような砲弾がこのゴルバに通用するとでも思っているのか。今度はこちらの番だ」

「て、敵が主砲を撃とうとしています。」

「敵の射線を回避しろ」

「α砲、発射!」

「島!」

「うむ。」

島が舵を握ってヤマトが敵の砲撃を射線ギリギリのところでよける。

α砲の光と熱の奔流がわきを通りすぎていく。

「た、助かったのか。」

「しかし、これからどうする?」

 

「敵は…滅びの方舟本体並みの防御フィールドを張っているか、装甲がそういった性質を有しているかどちらかだろう。」

「波動砲が効かないとなれば、トランジット波動砲しかないということになりますが…。」

「いや、エネルギー複射から護ってくれるものがない。」

「それでは…。」

「そういうときのための対消滅カートリッジ弾だ。正物質であればどんなものでも破壊できる。

ガトランティスとの戦いの結果生み出された武器だ。まさかこんなに早く使う時がこようとは思わなかったが…。」

「しかし途中で爆破されたら意味がないのでは?」

「その通りだ。おとりのミサイルを撃ちつつ、優秀なパイロットに運んでもらう。」

「艦長、加藤、山本、坂本を呼んでください。」

「わかった。」

 

「加藤、山本、坂本参りました。どのような命令でしょうか?」

「加藤、山本、坂本、重要な任務だ。ヤマトと地球艦隊はゴルバにおとりのミサイルを撃ち続ける。敵がかわしている間に近づいてこの対消滅ミサイルをくらわしてやるのだ。もし危険だと思ったらミサイルを放出してもよい。そのほうが敵に真の目的から目をそらさせることができる。」

「どれかが命中すれば良いと?」

「そうだ。身を護るために放出したとなれば、敵も油断するだろう。」

「ミサイルデコイを艦載機に摘んで出撃だ。」

「了解。」

 

「尾崎司令、ヤマトから暗号通信です。」

「総統、ヤマトから暗号通信です。」

「レーダー司令、ヤマトから暗号通信です。」

「「「デコイのミサイルを撃ってくれと。わかった、了解した旨つたえてくれ。」」」

 

「敵ミサイル撃ってきます。」

「ふん。いくら撃っても無駄なことだ。」

「敵艦載機、上、下から接近してきます。」

「叩き落せ。主砲発射準備」

「山本、ミサイル放出しました。危険で近づけません。」

「加藤、ミサイル放出しました。危険で近づけません。」

α砲の砲口がじわじわひらいていく。地球艦隊は「敵の波動砲」をくらう側になるピンチに追い込まれていた。

 



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第14話 敵中間基地現る!

「敵ミサイル撃ってきます。」

「いくら撃っても無駄なことだ。」

「敵艦載機、上、下から接近してきます。」

「たたきおとせ。主砲発射準備」

α砲の砲口が再びじわじわとひらききろうとしていた。

 

「坂本は?」

「敵の主砲口に近づいています。」

「よし、もう少しだ。」

坂本はつぶやく。

そのときだった。

「!!」

上部ビーム砲が上から落ちてきた火矢のように坂本機に当たる。炎上始める坂本機。

額からは血が流れる。

「くそ。俺をなめるなよ。トップで卒業した俺をなめるなよ。」

小惑星帯での訓練が頭をかすめた。小惑星は撃ってこない。たしかだ。

しかし俺はこんなものじゃない。

主砲口が眼前に迫る。

「これを食らえ!」

対消滅カートリッジ弾をα砲の砲口に投げ込むように撃つ。

 

坂本機を上方から2弾目のビームが貫く。

そのとき対消滅カートリッジ弾がα砲口にはいっていった。

「坂本!さかもとおおお!」

坂本機は、煙を吹く上げて数秒後に火球に変わった。

 

「!!」

「メルダーズ司令」

「どうした?」

「主砲口に敵弾が…。」

ゴルバ内部に誘爆が起こった。その爆発はたちまち広がっていく。

艦橋の床面が輝いて吹き飛んでゴルバも主砲口とエンジン噴射口から激しい光と熱の濁流を吹きあげる。

メルダーズと敵の乗員たちは次の瞬間高熱のため気化した。

次の瞬間には超新星のような激しい爆発と輝きを放って吹き飛んだ。

 

「勝ったのか…。」

「そのようだな…。」

「坂本君…。」

古代はレーダー管制席の雪をだきしめた。

 

「山南司令、尾崎司令、古代…」

「デスラー総統」

「サカモトといったか、かわいそうなことをしたな。」

「いや、彼は彼で満足して死んでいったと思う。」

「うむ。そうか、そうだな。彼の冥福を心から祈る。」

「感謝する。」

「これからわたしは、銀河系内に、我が先祖のガルマン人がいたとの伝承を聞いた。銀河系内に第二のガミラスとなる星を探す旅に出る。地球の諸君、いつかまた会おう。」

銀河系方向へ向かうデスラー艦隊を敬礼で見送っていく。

 

「ヒス内務長官、お世話になりました。」

「こちらこそ感謝する。ところで山南司令、尾崎司令。」

「ヒス長官?」

「小マゼランへ行ったらルントと会えるはずだ。地球艦隊がそちらへ向かったことを伝えておく。ぜひ合流して戦ってほしい。」

「ご好意に感謝する。必ずルント司令に伝えます。」

「よろしくたのむ。」

 

「さて、われわれは中間基地撃滅の任務がある。小マゼランに向かって発進する。さてその前に」

「この戦いで死んでいった宇宙戦士のために宇宙葬を行う。」

「坂本君…。」

古代は雪を慰めるようにだきよせる。

「宇宙戦士の霊に敬礼!」

乗組員たちはいっせいに腕を上げて指先を頭につける。

数十丁の銃の弔砲がいっせいに撃たれる。あたかも地面からの五月雨が天に向かって降るように光条が断続的に悲し気に漆黒の宇宙空間に流れ星のように光っては消えた。

 

「全員配置に着け。」

「古代進、戦闘班長席に着きました。」

「島大介、航海長席に着きました。」

「全員配置に着きました。」

「了解。ヤマト、小マゼラン雲に向かって発進します。」

「了解。しゅんらん及び第7艦隊も小マゼラン雲に向って発進します。」

「全艦、ワープ準備。」

30秒後には地球艦隊の姿は、サレザー太陽系から消えていった。

 

「ワープ終了。小マゼラン宙域にはいりました。」

「11時の方向、距離3万宇宙キロに反応あり。」

「あと数分で画像が出ます。」

「やはり敵の中間基地でしょうか。」

「敵のワープによる空間歪曲。」

「エコーの方向がさらに20光年先の暗黒星雲の方向と一致している。その線上の中間地点。蓋然性はきわめて高いな。」

「映像が出ます。」

「これは...大きいな。」

「10kmは超える大きさですね。」

「敵の中間補給基地と見て間違いないだろう。」

「古代、どうする?」

島がたずねる。

「山南司令。この中間補給基地は避けては通れないものと考えます。」

「古代戦術長、その理由は?」

「仮に無視して通過して先に進んだとしても背後から狙われる可能性があります。敵が地球を攻撃するための拠点を放置することにもなります。」

「山南司令。」

「技師長?」

「作戦会議の招集を提案します。」

「わかった。中央作戦室にあつめてくれ。」

「了解。」

 

中央作戦室の床に敵の中間基地の画像が大写しになる。

真田が指示棒で画面上に映った中間基地のドームを指す。

「このドーム状の部分が敵の艦艇を修理したり、補給したりするドッグになっているのだろう。こちらで感知した敵艦のエネルギー反応から考えて100隻以上停泊していると推測される。」

「100隻ですか...。」

「外にいる艦隊を含めるとこの中間基地には150隻ちかい敵艦がいる計算になる。さらにこの中間基地も一定の武装はあるだろうし、これだけの基地だから堅牢である可能性もある。正面からまともに戦ったんでは苦戦は免れない。もしかしたら全滅ということも十分に考えられる。」

「『しゅんらん』がいてもですか?」

「イスカンダルで戦ったゴルバは恐ろしい敵だった。おそらく白色彗星本体と戦うようなつもりでいたほうがよい。」

「つまり波動砲が効かない防御フィールドをもっているということですか?」

「断言はできないが、おそらくそうだろう。」

「じゃあ、どうするんですか?」

「ドーム内に100隻いるってことは、基地の外には50隻程度しかいないということだ。補給中の艦もいるだろうから実数はもっと少なくなるはずだ。ドーム内の敵艦を出撃させないようにできれば150隻とまともに戦うのに比較して戦況は全く変わってくる。」

「それで、俺たちの出番ってことですね。」

加藤が発言する。

「そうだ。ドーム内に侵入できそうな穴というか通路になりそうな場所がいくつかある。敵は簡単に通してくれないだろう。しかしドーム内にいる動けない敵を叩き潰すチャンスだ。できるか?」

真田が作戦の内容を説明し、加藤四郎のほうへ向いて可否をたずねる。

加藤は苦笑して発言する。

「技師長、『できるか』、じゃなくて、『やれ』、でしょう。任せてください。」

「加藤、頼むぞ。」

真田は加藤の手を握る。

作戦会議が終わると山南は尾崎に作戦概要を説明する。

「尾崎、作戦が決まった。」

「そうか。」

「基本的には艦載機で内部の敵をたたいてから、外部の敵と艦隊決戦だ。中間基地自体の兵装も気になるが順番としてはそういうことになるだろうな。」

「暗黒船団帝国は装甲の堅牢さなど外面の防御力を誇る敵だ。しかし坂本が身をもって示したようにどこかしらに弱点があるはずだ。だから最初の艦載機による奇襲を行う。」

「わかった。こちらも艦載機を発進させる。加藤君の指揮下に組み込んでくれ。」

「わかった。感謝する。」

この山南の返事で地球艦隊の作戦がはじまる。



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第15話 無敵の敵中間基地を攻略せよ

本作の中間基地は原作のような紙ではありませんw



「加藤、できるだけ多くの敵を沈めてくれ。あと基地の内部もできる限り破壊してくれ。」

「奇襲だけで決定的なダメージを与えるつもりでやりますよ。なにしろ敵の怖さは身にしみてますからね。まともに立ち上がる前に叩きのめして立ち上がれなくしてやります。」

「無理をするなよ。優秀なパイロットは代えがきかないからその意味でも無事に帰ることだ。」

「まあ、見ていてください。コスモタイガー隊発進!」

 

「!! スラ司令!何か編隊が接近してきます。距離5500宇宙デザリオン!」

「どこの機体かわかるか?」

「おそらく地球の機体ではないかと思われます。」

「地球だと?ガイウスのやつが2万光年先で迎撃したはずではないのか?」

「そのはずですが…。何の報告も受けていません。」

「ふん。どうせ孺子は敗北して、艦隊をうしなって戦死でもしたんだろう。気に食わないやつだった。せいせいしたわい。あの程度の戦闘機隊でこの中間基地を落せると思っているのか。迎撃機隊発進!当基地のα砲の範囲におびき寄せるのだ。」

オルビス(白色円盤戦闘機)、ブルシウス(イモムシ形戦闘機)が発進し、コスモタイガー隊を迎え撃つ。

 

「敵機、接近してきます。」

「う、早いな、発見されたか。」

コスモタイガー隊は応戦してドッグファイトの状態になる。

 

「スラ司令。敵航宙隊の1/3がなんとか主砲の射程内にはいりました。」

「ふふ。全部とはいかなかったがまあいい。α砲発射準備。エネルギー充填。」

中間基地の下部に複数個ある半球形のカプセルのうちひとつがコスモタイガー隊に狙いをさだめて開いていく。

 

「!!」

「どうした?」

古代がレーダー手に問うと

「敵要塞下部、高エネルギー反応です。」

と答えが帰ってくる。

「加藤、敵の主砲が発射されようとしている。退避だ!」

「みんな左方向に一点集中攻撃!敵の編隊を突き破って脱出する。」

 

「α砲発射!」

要塞下部から宇宙の闇を照らすエネルギーの奔流が撃ちだされる。

「やつらの逃げる右方向の砲門にエネルギーを充填するのだ。」

「はつ。」

 

「うわああああ。」

エネルギーの奔流がコスモタイガー隊をつつみ、溶解する。コスモタイガーは次々と引き裂かれて1/4が永遠に失われた。

 

「このままだと排気口部分に侵入できないな…。」

白色円盤戦闘機、イモムシ形戦闘機の攻撃は激しくどうしてもコスモタイガー隊は要塞に接近できない。

「艦長、尾崎司令から通信です。」

「つないでくれ。」

尾崎の顔がスクリーンに映し出される。

「山南、基地内部に侵入できないなら、内部にいる艦隊がでてくるぞ。」

「わかった。それしかないか…数が多すぎる。」

「こちらにも艦載機を回してくれ。」

「ああ、向かわせる。」

尾崎の顔が消えると山南はすぐさま指示をする。

「古代、加藤に伝えろ。作戦変更。コスモタイガー隊はヤマト、山本隊は、しゅんらんの上空をまもれと。」

「了解。」

「第一砲塔10時の方向の敵編隊、第二砲塔2時の方向の敵編隊。」

「誤差修正第一砲塔+2度、第二砲塔-3度。」

「発射!」

「右舷、左舷パルスレーザー斉射!」

 

 

「よし、一気に拡散波動砲でかたをつけるぞ。」

「エネルギー充填、120%」

「拡散波動砲、発射!」

しゅんらんの艦首の三つの巨砲から打ち出された熱と光の激流が数十に分かれて無数の光の槍になって敵艦載機隊と暗黒星団帝国の円盤状の艦隊に降りそそぎ、引き裂きいていく。ちぎられ、飛散するもの、あっというまに溶解するもの、無数の爆発光、無数の爆煙…

無数の光の槍は、中間基地に襲いかかる。

「やったか…。」

艦隊が破壊された爆煙が晴れて中から現れたのは無傷の中間基地だった。

わっはっはははははははは…わっはっはははははははは…わっはっはははははははは…

無線通信上にわざと聞こえるようスラ・バツゾークの高笑いが聞こえる。

「そんなことでよくゴルバが倒せたな。ゴルバ一基をまぐれで倒せたようだが、まだ戦力は残っておるかwそんな石ころのような砲弾が切り札のようだが、次はどうする地球の愚か者どもw。」

頭髪のない蒼いスラ・バツゾークの顔がメインパネルに大写しになる。

 

 

「スラ司令、敵左側面に何かワープアウトしてきます。基地外壁から5000宇宙デザリオン!」

「!!」

「地球艦隊のみなさん、遅くなった。わたしは、ガミラス共和国小マゼラン方面司令カール・ゲルト・ルントである。本星上空の戦いでは世話になった。協力させてもらおう。」

「ルント司令感謝する!」

「地球艦隊からの暗号通信解読します。」

「艦載機隊ノ攻撃援護頼ム…」

艦載機隊の進路が示され、誘導の援護を頼む旨画面が映し出される。

「了解したと伝えろ!」

「ザー・ベルク!」

 

「なにか侵入できる穴のようなものは...。」

「発見。座標X-7293、Y-3893、Z-9300です。」

「コスモタイガー隊に連絡。座標X-7293、Y-3893、Z-9300に敵基地への搬入口発見。」

「了解。向かいます。」

「中間基地左側の敵艦隊動き始めました。到着まで700宇宙秒。」

「コスモタイガー隊、侵入口侵入開始まで850宇宙秒。」

 

「遊撃艦隊は新たな敵艦隊を攻撃しろ!」

下半分が円盤状で前方が橙色の50隻の艦艇からいっせいに薄緑色の光条が数十条放たれガミラス艦隊へ向かっていく。ガミラス艦隊は数隻炎上するものの射線を避けて反撃する。

薄紅色の光条が、逆さキノコ状で前方が橙色の船体を引き裂き炎上、火球に変えていく。

「よし、コスモタイガー隊から敵をひきはなすぞ。ガミラス艦隊を支援しろ。」

 

「小癪な敵どもめ。各α砲エネルギー充填!」

「敵主砲、高エネルギー反応!」

ルントはほくそ笑んだ。

「今だ!ガルント重爆機発進!敵に見舞ってやれ!」

「特殊削岩弾発射!」

 

「スラ司令!」

「どうした?」

「敵弾が第一砲門、第二砲門に命中!誘爆が始まっています。」

「あわてるな。第一砲門、第二砲門を切り離せ!」

「了解!」

スラ・バツゾークは、ほくそ笑む。

 

「敵の…主砲が二門切り離されます。」

切り離された主砲は、爆発四散する。しかし切り離された主砲塔の後ろからまた新たな主砲塔がせり出してきたのである。

「な、何だと!」

「サメの歯かよ」

ぼやきが漏れる。

 



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第16話 乾坤一擲!この瞬間を撃て!

「敵艦隊まで800宇宙デザリオン。」

「敵は航宙隊で基地内部への侵入を狙っているように思われる。

その前に敵艦隊をたたきつぶすのだ。主砲発射。」

中間基地の外側にいる護衛艦隊司令アグリオンが命じる。

 

一方地球艦隊である。

「敵艦隊が砲撃を開始しました。」

「波動防壁展開。波動砲発射準備。」

「了解。波動防壁展開。波動砲発射準備。」

「波動防壁が切れた瞬間に波動砲発射なんてこ

んなむちゃできるのもスーパーチャージャーの

おかげですね。」

「真田さん。魔改造ありがとうございます。」

「うむ。ガミラス戦、ガトランティス戦の

経験からなんとかできないかと工夫してきたが、

役に立ってよかったと思っているよ。」

真田は苦笑しながらつぶやいた。

 

「アグリオン司令!敵艦隊、バリアを展開したまま攻撃して

きません。」

「打つ手がなくなったのか...それとも奥の手があるのか...

敵の側面に小ワープできるよう準備しておくのだ。同航戦で

敵を横撃する。」

 

「敵艦隊距離を置いたまま砲撃しています。」

「敵はこちらの手の内が読めないから距離を置いている

んだな。小ワープで背後か同航戦を挑んでくるかもしれない。」

「艦長、意見具申」

「うむ。」

「今のうちに敵に対して探査衛星とばすことを提案します。

ワープしたらその瞬間をワープトレースします。」

「コスモタイガー隊、侵入口侵入開始まであと100宇宙秒。」

 

「あともうちょっとだ...。」

 

「ふふふ。アグリオン、やつらが搬入口から侵入するつもりなのはわかっている。対策はあるからまかせておけ。」

アグリオン旗艦のスクリーンにうつしだされたスラが語る。

「そうか。わかった。まかせる。」

アグリオンは薄笑いをかみ殺して答える。

 

「コスモタイガー隊、基地左側面の搬入口まであと50宇宙秒。」

「敵はそろそろあせる頃です。各艦は敵基地の侵入口付近に標準をあわせ、コスモタイガー隊を攻撃する敵をたたきます。」

「了解。」

地球艦隊と暗黒星団帝国艦隊の砲撃とにらみ合いは続く。

地球艦隊はヤマトをはじめ波動防壁で防御している。暗黒星団帝国の光学兵器も実弾も衝撃波面で無効化されている。

「コスモタイガー隊、進入開始まであと10宇宙秒!。」

「もうすぐ秒読みだな。」

「そうだな。」

「!!」

そのときコスモタイガー隊が見えない壁にぶつかって

数機爆発して四散する。

「ここにもバリアか...。」

苦虫をかみつぶす。

「敵バリア分析しろ。」

「了解。」

「5兆テスラです。波動砲や拡散波動砲でも撃ちぬくのは困難です。」

 

「司令、補給を終えた敵艦がドーム内でつぎつぎ浮上してきます。」

「古代、どうする?あの敵が一気に出てきたら...。」

 

「ふはははは。地球艦隊よ。ドーム内の艦隊は補給を終えたぞ。挟み撃ちでいよいよお前たちは最後だ。」

 

「尾崎」

「なんだ山南」

「ふとおもったのだが、敵艦隊はドームから出てくるときバリアを通過するはずだな。」

「そうだが、どうかしたか。」

「5兆テスラを浴びたら即死だ。だから少なくとも敵の船が出てくる間だけはバリアが解除されているはずだ。敵艦がバリアから出てくる瞬間ならあの基地に隙ができるはずだ。だから拡散波動砲が拡散する射線を基地から出る瞬間の敵艦にあわせればうちぬけるのではないか?」

「なるほど仮に解除されなくても敵艦が通過する場所については一時的に解除される可能性があるわけか。」

「そうだ。全部いったん解除されるかわからないが確実に敵艦が通過する場所については解除されるはずだ。」

「そうか、拡散モードの座標を敵艦がバリアから出てくる瞬間を狙うのか!」

「尾崎!たのむ!」

「わかった。」

 

「ふはははは。地球艦隊よ。ドーム内の艦隊は補給を終えたぞ。挟み撃ちでいよいよお前たちは最後だ。」

 

「至急敵艦がバリアから抜ける座標を計算しろ!!」

「了解!」

「拡散波動砲、拡散ポイント及び拡散射線の設定座標計算します。」

「拡散波動砲のエネルギー充填だ。間に合わなくなるぞ。」

 

「きぬがさ、ハルバートⅠは、敵護衛艦隊に照準合わせ波動砲発射準備!ゆきかぜ改、ズールー、フレッチャー、敵艦バリア出現宙点に座標合わせると同時にエネルギー充填だ。」

「了解。」

 

「右舷艦尾方向、第993装甲板、第933装甲板被弾!」

「左舷艦首方向、第7装甲板、第2装甲板被弾!

「右舷艦尾方向、第972装甲板、第729装甲板被弾!」

「左舷艦首方向、第9装甲板、第3装甲板被弾!

「第三番砲塔損傷。左側揚弾機作動しません。」

「くっ...。」

「みんな、もう少しの辛抱だ。」

ヤマトは追撃してくるアグリオン艦隊の砲撃から逃げながら中間基地の正面に出る。

アグリオン艦隊は、ヤマトを追撃しつつ砲撃していたが、その動きは、きぬがさとハルバートⅠによって逐一把握されていた。

「あと0.5宇宙キロ、35秒でヤマトが射程から外れます。」

「よし、波動砲発射準備。対ショック対閃光防御だ。」

両艦の乗組員はゴーグルをつける。

 

 

20秒後...

「アグリオン司令。地球艦隊から高エネルギー反応です。」

「何いいいい。」

きぬがさとハルバートⅠは、アグリオン艦隊へ向かって光と熱の奔流を撃ち出していた。

口径はちいさいもののくさっても波動砲である。アグリオン艦隊を向かって流れる二つの高エネルギーの奔流は、輝きながら宇宙空間を照らして、40隻の艦艇をつつんであっという間に引き裂いた。

「ぎゃああああああああ。」「回避~回避~。」

アグリオンと部下たちは悲鳴を上げたが一瞬のことだった。

かろうじて生き延びることができたアグリオン艦隊の残存艦は逃げるのが精一杯であった。

その次の瞬間今度はヤマトの波動砲口から中間基地のドーム正面とその前にいて砲撃を繰り返す敵巡洋艦や駆逐艦へ向かって光と熱の激流が吐き出された。

その激流は、光り輝きながら、砲撃してくる数十隻の巡洋艦や駆逐艦をつつんで、やすやすと貫くと、その後方にあって全開している半球形のドームから飛び立とうとする数十隻の艦艇をも貫き、引き裂き、誘爆させ、さらに中間基地本体をも貫いた。

「スラ司令!ドーム内に停泊および浮上する巡洋艦50隻、駆逐艦35隻すべて大破し、誘爆がひろがっています。基地も敵の高エネルギー波に内部から貫かれて爆発も時間の問題です。脱出してください。」

「うぬううう。艦隊が飛び立つ瞬間を狙ってくるとは...。」

誘爆は中間基地内部から広がっていく。いくら堅牢な装甲をもっていても内部の爆発には耐えられない。

中間基地は新たに星が出現したかのように輝きを増して次の瞬間には巨大な火球と化して煙や衝撃波とともにおびただしい金属片を撒き散らした。

その衝撃波はヤマトをはじめ地球艦隊艦内の空気をふるわせ轟音となって響いた。

 



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第17話 暗黒星雲へ

「危機一髪でしたな。」山崎が息をはきだすようにつぶやき、山南がうなづく。

「もう、ドーム内から今にも敵艦がごっそり出てくると思ったら心臓が飛び出しちゃうんじゃないかという気分でしたよ。」

そうはいいつつも相原の声は明るい。

「敵基地の堅牢さがかえってこっちの作戦を立てやすくするとは皮肉なものだな。」

島が古代に話しかけ

「でも、一歩間違えれば全滅かもしれなかった。」

「そうだな。」

 

「尾崎。」

「山南か。」

「よくやってくれた。」

「しゅんらんと第7艦隊の指揮官として当然のことをしたまでだ。いいところをお前にとられっぱなしだったからな。」

「ああ、しかしこんどの敵もガトランティス以上に恐ろしい敵だからな。あの化け物のような防御力は、なんどもガトランティスの本体と戦っているような感覚だ。」

「艦隊戦のはずなのに城攻め、しかも落とせないじゃないかというような城攻めを強いられている気分だ。」

「ようやく終わったな...。」

「ああ...」

 

「戦闘班は、レーダー要員の交代を残して敵襲がない限り二日間の休暇だ。」

「機関室は、二日後のワープに備えて一日の休暇。」山崎機関長が話す。

「われわれは、二日後のワープに備えて航路設定、作戦会議ってことですね。」

島が真田に話す。

「考えるのが仕事だからな。」真田が苦笑しながら答えた。

 

一週間後ヤマトと地球艦隊は,暗黒星雲から4万光年の空間にあった。

ヤマトの第二艦橋には第一艦橋のクルーが集まっている。

「全員そろったな。では映すぞ。」

真田が第二艦橋のオペレーターに指示する。

床面に暗黒星雲が映し出される。

「これは...。」

「真っ黒だな。」

「これが目的地近くの暗黒星雲だ。観測の結果直径10万光年あることがわかっている。まったく発光しない星雲なので今まで地球からは観測できなかったのだ。」

「直径10万光年ってわれわれの銀河系と同じ大きさだな。」

「ああ。われわれの天の川銀河と匹敵する大きさで、暗黒ガスだけでなく黒色矮星や暗黒物質でできた星や岩塊が含まれていて、バルジを中心に公転しているんだろう。

そう考えると暗黒星雲というより暗黒銀河といったほうがいいかもしれない。」

「中心部には、暗黒物質が渦を巻いて充満している。この星雲全体が向こう側の光を全く通さないのでその先に何があるのかまったくわからない状態になっている。」

島があごにてをあてて発言する。

「星雲を突き抜けることは何があるかわからない。連続ワープで迂回する航路を設定したほうがいいのか...。」

「島、それはやめたほうがいいだろう。これまで旅してきたように何にもない空間であれば10万光年はワープであっという間だけどこういう暗黒星雲を迂回するとなると話は別だ。」

「なにか、危険があるんですか??」古代がたずねる。

「この星雲の回転速度は理由はわからないが外縁に行けば行くほど速く激しくなっているんだ。それは、星雲自体の降着円盤からはずれても推定2万光年近くは広がっていることを示しているんだろう。なにぶん見えない物質だから正確な広がりは把握しきれないが、もし、ワープ中にその流れに巻き込まれることがあれば一巻の終わりだ。」

「するとできるだけ外部に向かわず内側をそのまま突き抜けたほうがいいってことですか?真田さん」

「暗黒星雲の中心部は比較的流れがゆるやかで、ある意味よどんだ状態といっていい。

何があるかわからない不安はあるが外縁部を迂回して遭難するよりはリスクの発見と回避が可能な分比較的安全といえるだろう。ただ、暗黒ガスや暗黒物質が高密度に充満していて長距離ワープは不可能だ。暗闇を手探りで進むことになる。」

「島、そうすると航路はどう設定することになる?。」

「われわれの現在位置はここだ。」島が画面の一点を指さしながら説明する。

「暗黒星雲の降着円盤外縁から4万光年。正面には暗黒星雲のハローの一部が濃密になったガス帯と技師長が説明した激しい外縁の流れがあると推定されることから、ある程度星雲から距離をとりつつ降着円盤の表面付近にワープして、それから中心付近、つまりバルジに近づいたときにバルジに入っていく航路が考えられるだろうな。」

「そうだな。くれぐれも外縁の流れにつかまらないように慎重に進むしかないだろう。」

「はい。」島の説明に、真田が賛意を示すと、島は短く返事をした。

「それでは各自持ち場にもどれ。これからがいよいよ山場になる。よろしく頼むぞ。」

 

「「山場って...古代さん、これまでも強力な敵でたいへんだったじゃん。」」

古代は苦笑せざるをえない。

「ワープ準備。目標暗黒星雲降着円盤表面。」

ヤマトは降着円盤表面へ向かって連続ワープを開始した。

ヤマトの船体は通常空間から消えた。

 

「ワープ終了。」

「波動エンジン異常なし。」

「船体に破損等の異常認めず。」

「ふう...。」

安堵の息が漏れる。

「なんだか周囲が薄暗くなってきたな。」南部がつぶやく。

「なんか煙のなかにはいっていくみたいだ。」

「暗黒物質が表層までひろがってきてるんだな。」

「島、操縦のほうは大丈夫か?」

「多少船体がゆれるが、この程度ならほとんど問題ない。」

「レーダーのほうも今のところ大丈夫です。この先はわかりませんが。」

そのときズゴーーーンという爆音が船内に響き、おおきく船体がぶるぶるとゆれた。

 

「どうした!」

「艦首右舷で爆発。ロケットアンカー損傷!」

「現状報告!」

「不明。障害物反応はなし。」

レーダー手がとまどいをかくせずに返事をする。

「島。艦を止めるんだ。」

「了解。緊急停止。」

「メインバイパス閉鎖。機関停止。」山崎もエンジンを停止させる。

「山崎さん、なんかあったんですか?」

「すごい音がして激しいゆれがあったな、」

「艦首右舷で爆発があった。太助心あたりないか?」

「こちらは異常なし。」

「ふう...なんかあらっぽいやりかただな!!真田さん!」

南部がなにかに気がついたように軽く叫び、思わず真田の名前を呼ぶ。

「どうした?」

南部の指差す方向に敵艦と思われる光点が見えていた。

レーダー手がぼやくようにつぶやく。

「星雲が濃くなってレーダーの反応がにぶりがちでしたが、まさか目視のほうが敵艦の発見がはやいとは...。」



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第18話 謎の爆発の正体

真田さんがさえわたります。「新兵器」登場!


ヤマト艦首右舷の爆発の情報は暗黒星団帝国艦隊にリアルタイムでとどいていた。

「ガイウス司令、ヤマトと思しき反応をとらえました。」

「そうか。どこでだ?」

「暗黒星雲の表層近く、バルジから約1万光年、座標X=9393、Y=0765、Z=0720です。本国の部隊が散布した機雷源にひっかかったもようです。」

「ガイウス司令。ボンベイウス中将からの入電です。」

「よし。つなげ。」

ボンベイウスの顔がスクリーンに映し出される。

「ガイウスよ。いまだにヤマト討伐の任ならずとはお前らしくないぞ。」

「ヤマトと地球艦隊は予想外の強敵。ボンベイウス司令もわたしの強敵に対する執念をご存知のはず。いましばらくお待ちを。」

「ふっふっふ。お前のことはよくわかっているつもりだ。わたしとしても絶対に敵に回したくない男のひとりだからな。だが、中間基地が破壊され、グレートエンペラー閣下はご心配召されている。そのため、わたし自らが出撃することになったのだ。」

「貴殿の艦隊はわが指揮下に入ってもらう。ともにヤマトと地球艦隊の沈む姿をながめようではないか。幸いにもヤマトと地球艦隊は、わが機雷網に接触するというミスを犯して位置を把握させてくれた。いまわたしの揮下の殲滅艦隊が機雷源に向かっているところだ。」

「お言葉ですが、閣下。機雷ごときで封じられる敵とは思えませんが...。」

「うむ。では殲滅艦隊の援護へ向かえ。機雷源を突破するところをたたくのだ。もし、ヤマトと地球艦隊が無事に機雷源を抜けてくる場合の手も考えてはあるが、その場合は、貴殿の知恵に負うところが大になるだろう。」

「かしこまりました。」

「ガイウス司令、どうなされますか。」

「ヤマトは必ず機雷源を突破してくるに違いない。殲滅艦隊の援護に向かうのだ。」

 

「さっきの爆発の原因が判明した。これを見てくれ。」

「なんだこれは??。」

「この周辺の空間を調べたらこんな機雷が無数にある。14.96cm、7.48cmの二つの規格があるようだな。」

「なんか中途半端な大きさだな。」南部がつぶやく。

「いや大きいものがちょうど2倍になっているから何か規格があるのだろう。」

「この超小型機雷は小さいだけでなくこの星雲の暗黒物質を巧妙に使用している。そのため、レーダーには暗黒星雲の粒子として扱われ、全く反応しなかったんだと考えられる。もちろん真っ黒だから視認も不可能だ。このような機雷が無数に仕掛けられているとすれば、むやみに動けないな。」

「敵と思われるエネルギー反応感知。11時の方向、上下角プラス7度、距離1000宇宙キロ。」

「やはり来たか。」

「遠巻きにしながら、じわじわと攻撃してきてこちらを追い詰めるつもりか。」

「前方小惑星帯。」

そのときまたズゴーーーーンという音が艦内にひびき、船体がゆれる。

「真田さん。艦の損傷は?」

「小型の機雷だから、今のところ損害はそれほどではないが...ただ、こんなふうに機雷が一面に無数ある可能性がある。波動防壁をつかって進むタイミングを見極めたほうがいいな。アナライザー、とりあえず遭遇した機雷群を記録してくれ。」

真田がアナライザーに指示する。

「了解。シカシコレハ大変ナ仕事デス。トホホ。」

「アナライザー!お前だからこそできる仕事じゃないか。」

「見えない機雷を見つけるたびにいちいち記録するのは機械であるお前しかいないんだ。」

「アナライザーさん。たよりにしてますよ。」

西条があざとい目でアナライザーを見つめる。

「美人ニ頼ラレタライヤトハイエマセン。ボクモ男デス。死ヌ気デガンバリマス。」

「お前は死ぬことなんてないんだから、心配しなくてもいいぞ。」

南部が笑いながらまぜっかえす。

「アナライザー、これまで採集した機雷をもとに艦内自動工作機で作れるものを考えてみる。しばらく辛抱してくれ。」

「オ願イシマス...。」

 

「ふうむ。命知らずなのか、あるいは気が狂ってるのか機雷にひるまずつっこんでくるとは。仕方ない、加速してヤマトとの距離をとれ。」

 

ズゴーンと艦内に爆音ひびき、船体が揺れる。

「機雷に接触しました。敵が加速しています。」

「こっちをひきはなすつもりだな。」

「追いつけないスピードじゃないが...。」

島が悔しそうにつぶやく。

 

そのとき真田が第一艦橋にもどってくる。

「完成した。」

「もうできましたか?」

「海にある機雷で音に反応するものは船で避けようがなくても、ヘリなんかで空中から除去できる。なかなか船の発する音は消えないからな。あの小型機雷は、触れるものがあれば当然反応するし、宇宙空間にうかんでいてエネルギー反応や熱、空間にあたえるわずかなゆがみで艦載機にも反応する。それからガミラス戦では、人力で動かしたけど、これまで採取しようとして非磁性のもので触れた場合も爆発したから人間でも危ない。だから無人のスペースROV、つまり無人の小型掃海艇を作ったんだ。機雷のデータを入力してあるから勝手に探してデコイを放出して船体が存在するかのような反応を機雷に感知させる。まあ、空間照明弾があれば感度が上がるから南部、それから山本、空間照明弾を射出してくれ。」

「了解!」

「「照明弾射出!」」

暗い空間が明るく照らされ、ぎっしりと機雷が浮かんでいる様子が映し出される。

「ROVから通信。8時から4時の方向まで濃度の差はあるけどぎっしりだ。あきれるような量だ。3000万個はあるか...。」

 

その数をきいて第一艦橋は一瞬げんなりした空気になる。

 

ROVがデコイを射出して機雷に艦載機か船があるかのような熱やエネルギー反応を読み込ませる。機雷は次々爆発する。

「とりあえず進路になる11時から1時の方向は除去した。」

 

「ガイウス司令。ヤマト、小型艇を射出。照明弾を打ち上げました。」

「何する気だ?」

「機雷を次々に爆発。」

「あれは、ROVです。一種の小型掃海艇です。」

「機雷から生命反応は読み取れるか?」

「生命反応はないようです。」

「ええい、遠隔操作の無人艇か。ジャミングしろ。」

「了解。」

数分間経った。しかしジャミングが効いている様子はない。

「ジャミングが効いている様子はないな?遠隔操作の信号はあったのか?」

「いえ、そのような信号はないようです。」

「あらかじめプログラミングされているということか。」

「そのようです。」

「今後は地球艦隊を破壊もしくは虜獲したときにシステム部分を徹底的に探っておくべきだな。まあ、それならそれで方法はある。」

ガイウスの口元がゆがんだ。

 



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第19話 暗黒の陥穽

「機雷にはホーミング機能があったな。」

ガイウスは確認するようにつぶやく。

「はい。」

「やつらの驚く顔が見られるわ。ヤマトのデータを機雷に送って攻撃させるのだ。」

「了解。」

 

「相原、どうしたんだ?」

「なにか機雷が動いているような気がする。」

「まさかデスラー機雷のように動く機雷なのか?」

南部が驚いたように叫んでしまう。

「機雷が...機雷が....動き出しました。10,20いえ500、600...ヤマトに向かってきます。」

今度はレーダー手が叫んでしまう。

「全艦波動防壁展開。南部、主砲発射だ!」

地球艦隊は次々に波動防壁を展開する。

ヤマトでは「波動防壁展開。」山崎が復唱する。

「主砲発射~!」

波動防壁の衝撃波面で動いてくる機雷は次々に爆発し。主砲で残りの機雷も破壊されていく。

「ROV二号機射出!」

 

「ヤマト、また無人の小型掃海艇射出。」

「何とか砲撃できないか?」

「いえ。的が小さすぎて、周りの機雷を巻き込みますからかえって敵の機雷突破を助けることになります。」

「こちらの艦載機はどうか?」

「艦載機隊に反応してしまう可能性が...。」

「機雷へこちらの艦載機のスペックについて通信波を送った場合は敵に筒抜けになる可能性があるな。」

「量子コンピューターがあれば解析可能です。」

「これまでの地球艦隊との戦闘を分析してその可能性はあるか?」

「十分考えられます。彼らの対応は思いのほか迅速です。」

「そうか...。」

 

「敵は通信波で機雷を動かしはじめたな...波動防壁がきれても進めるように技術班、ジャミングだ。」真田が技術班に指示する。

「了解。」

「それから敵艦は、ROVを撃破するために艦載機を発進させる可能性があるな。レーダー、索敵担当は敵艦の様子をしっかり観察しろ。」

古代が命じる。

「その前に艦載機に反応しないよう通信波を送る可能性があるな。」

真田がにやりとつぶやく。

「送ったら敵艦載機のスペックはバレバレになる。どんなに巧みな暗号化したって量子コンピューターがあるからな。」

 

「敵のジャミングです。機雷が暴走始めました。」

「...。撤退だ。」

「司令?」

「この機雷網突破は時間の問題だ。優秀な小型無人掃海艇とホーミング機雷の無効化。艦載機でROVを攻撃するためには機雷へデータを送らなければならない。敵に艦載機のデータを丸裸で送ることになる。ジャミングされても読み取られてもどっちもだめだ。敵ながらあっぱれというほかない。」

「司令。司令ご本人宛にボンベイウス中将からデータです。封印及び画像入りです。」

「転送しろ。」

「了解。」

「....。」

「司令?どうなさいましたか?」

「目的地を変更する。暗黒星雲バルジ中央部へ進路変更だ。」

「は、ははっ。」

「ボンベイウス中将はわたしを敵に回したくないといっておられたがそれはこっちのセリフだ。あの方を敵に回したくないものだな。まさかこんなわなを考え付かれるとは...。」

ガイウスはボンベイウスの作戦が敵を葬るにも巧緻であり、同時にその裏の意図も悟ってうめくように独語した。

「と?いいますと?」

何も知らない部下が上官に質問する。ガイウスはときどき使えん部下だと心の中でつぶやくことは日常茶飯事だが、一方では、部下が優れた意見を提案する場合もありうると常々考えており、意見具申については聞くようにしている。

「現地に行けばわかる。それよりも聞こえなかったのか?暗黒星雲バルジ中央部へ進路を変えるのだ。」

「は、はっ。」

 

「進路変更点を突破。まだレーダー索敵可能範囲内です。危険度は高いですが充分ワープが可能な状態と思われます。」

「ワープ準備。これより本艦は、暗黒星雲の中心領域に突入する。」

「機関室。ワープ準備だ。」山崎が古代の指示を伝える。

 

「太助、エンジンは、丁寧にあつかえよ。」

「わかってますよ、もう。(非番なんだからすぐ行けばいいのに...監視するみたいに...。)」

「何か言ったか?」

「いえ。何も。」

「太助!手がお留守になっているぞ。」

「はいはい。」

「太助。返事は一度でいい。」

「はい。」

「波動エンジン内圧力上昇。ワープ可能領域へ移行。」

ヴィーッツ、ヴィーッツ

そのとき警報がけたたましく艦内で鳴る。

「どうした?」

「イレギュラー発生。巨大な障害物、左舷方向に確認!」

島の言葉を聞き、真田も異常を認識する。

「そちらへひきつけられてワープ航路が歪曲しているようだな。」

「強制ワープアウトします。衝撃に備えてください。」

「通常空間を確認。なんとかワープアウト成功です。」

「後続の地球艦隊も無事ワープアウトしたようです。」

「でもおかしいな...こっちの計器には障害物も何も映っていないぞ。」

「レーダーに反応ありません。」

「反応がない?そんなことがあるのか?こっちの反応もなくなっている?なぜだ???。」

「いったいどういうことなんだ。」

「わからない。」

「確かにイレギュラーが出たんだが...。」

「古代!あれは何なのかわかるか!」

「!!」

「あれは....。」

「真っ黒だ。何もない空間のようだ...。」

「もしかしたら暗黒星雲の出口まで来たのか??」

「それなら外宇宙の星が見えてもいいはずだ。しかし星が全く見えない。」

「高密度の暗黒物質が充満しているだけならいいんだが...いやな予感がするな...レーダーがブラックアウトするなり、なんらかの形でそれとわかるはずだが...。いったい...」

真田が何かに気がついたようつぶやく。

「もしかして超巨大ブラックホールなのか…。20世紀の頃から天の川銀河の中心には太陽の数百万倍、数千万倍ともいう巨大質量のブラックホールがあるといわれていた。」

その声は話しているうちに確信に満ちてきたのかじょじょに大きな声になっていく。

「そうだな....考えてみればこの暗黒星雲も銀河系と同じ規模...中心に超巨大ブラックホールがあってもおかしくない。」

「でも、もしブラックホールならその巨大な質量から引き起こされるすさまじい潮汐力がヤマトの重力場感知装置に反応するはずでは...。」

「潮汐力の反応は全く感知されていません。」

相原が半信半疑で答える。

「潮汐力というものは、距離の三乗に反比例する。だから直径が数光年にも及ぶ超巨大ブラックホールの場合、潮汐力を感じることはおろか計器にすら反応しない微弱なものになるんだ。」

「じゃあこの暗黒の空間のひろがりは...。」

「何もないわけではなくて光すら脱出不可能なブラックホールの境界、事象の地平線だ。そう考えるとかなりやっかいだな。潮汐力を感じなくてもブラックホールがそばにあることには変わりがない。だから事象の地平線の内側に入ってしまったとしたら....。」

「脱出は不可能....。」

 



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第20話 暗黒星雲の罠

「来たか。ヤマトめ...。」

「ガイウス司令。ボンベイウス中将より通信です。」

「つなげ。」

「準備はととのっているか?ガイウスよ。」

「はっ。とどこおりなく。」

「それにしても中将閣下。全くもって感心いたします。このような作戦を考えつかれるとは。」

「何。簡単なことだ。機雷源を突破したヤマトは、その航路から星雲中心を通過しようとしていることがわかる。そしてこの星雲のバルジ付近を通ろうとするときに巨大ブラックホールの影響を受けてワープアウトするのも必然ということになる。

あとは貴殿の艦隊が空間歪曲干渉装置でヤマトを事象の地平面の内側へ誘い込めばよい。」

「はっ。承知いたしております。」

「では、グレートエンペラー閣下ともども吉報を待っているぞ。」

「ははっ。」

 

「ふん...。まったく感服せざるを得ないとはこのことだ。ヤマトや地球艦隊を誘い込めればいいが一歩間違えれば我が艦隊が事象の地平線の内側に入ってしまうかもしれない。その危険性を黙っているとはな...。ここが正念場か...。」

 

「レーダーに反応。1時の方向。5000宇宙キロ。敵影です。」

「やはりこれはわなだな。我々をブラックホールに追い込むつもりだろう。」

「古代。敵の艦種データの照合が終わった。これは....前回空間歪曲干渉装置を使ってきた艦隊と同じだな...。」

「あたらしいわなで先日の戦いの負けを帳消しにしたいってことか。そうはさせない!総員戦闘配置につけ!」

「操舵には気をつけないといけないな。事象の地平線を越えたら一巻の終わりだ。」

しばらくして航路の異常に気がつく。

「島!航路がブラックホールの方向へ向かっているんじゃないか??」

「そんなかんじだな。なんでブラックホールの方向へ引きずられているんだ?ブラックホールを避けてまっすぐ進んでいるはずなのに?」

「レーダーに空間歪曲装置と思われるものが確認されました。敵が航路に干渉している可能性があります。」

 

「ふははは。ヤマト及び地球艦隊よ。よく戦った。しかし、ここが貴様たちの墓場だ。このまま進んでも蜂の巣になってブラックホールに落ちるだけだ。素直にあきらめて降伏するか、地球へ引き返すかどちらかだ。まあ、退却するなら追撃して全滅させるだけだが。」

ガイウスはスクリーンの向こう側に対して嘲笑をなげかける。一方で部下に対して命じる。

「敵はこの艦隊配置を分析し、波動砲での攻撃を試みるだろう。ブラックホールの近くだとわれわれも自分の艦隊を守るために空間歪曲干渉装置の出力を絞らなければならないからやつらの影響は少なくなるはずだ。オルビス(白色円盤戦闘機)、ブルシウス(イモムシ形戦闘機)発進せよ!やつらに時間を与えるな。」

「了解。」

暗黒星団帝国艦隊の前面の艦載機発進口からイモムシ型戦闘機と白色円盤状戦闘機が発進される。

 

「敵は9時半から2時半の範囲に6部隊で展開してスイングバイで突入しようとすると空間歪曲干渉装置でブラックホールにはまるように配置しているな。しかも突入進路に横から砲撃できるよう艦隊を配置している。」

「9時半の方向へ進んでも2時半の方向へ進んでもハチの巣にされるな。しかもブラックホールへ叩き落されるってことか。」

「敵の空間歪曲干渉装置を破壊する必要がある。」

「そのためにはとにかく敵の包囲陣を突き崩すしかない。敵はこちらの進路を包囲して危険なブラックホールへは近づかないから8時の方向か3時の方向へさそいだすか、長距離攻撃で干渉装置を破壊するか、波動防壁で9時半か2時半の方向の敵の側面をたたくかしかない。長距離攻撃で勝つ破壊力があるのは波動砲だがブラックホールがあるからその引力でかなりゆがめられる。」

「古代、艦載機で叩くって手もあるが、相手も直援機で対応してくるだろうな。犠牲がどうしてもばかにならない。」南部が歯をかみしめながら話す。

「南部、敵が艦載機を発進させてきたら少なくとも艦隊の上空を守る必要はあるぞ。一番いいのは、デスラーのつかっている瞬間物質移送機があればいいのだが...。」

古代は思わず真田の顔をみてしまう。

「あれは原理的には可能だが、地球の今の技術では難しい。ワープ可能なエンジンを小型艇に載せるほうが簡単のように思えるかもしれないがエンジンの大きさが駆逐艦クラスより小さくできない。すぐ用意できるのはアルファケンタウリまで一週間かかる通常仕様のエンジンだ。申し訳ないが開発には時間がかかる。すまんが今できることを考えてくれ。」

「前回よりも空間歪曲干渉の影響は気持ち小さい感じがするな。小ワープや波動砲発射も可能とおもわれます。」山崎が発言する。

「ブラックホールの近くだからエネルギー出力を絞っているんだな。いたずらに空間歪曲をおこなうと自分たちも飲み込まれてしまうからな。」

「敵が艦載機を発進させてきました。その数650」

「全艦艦載機発進。」

「了解。コスモファルコン隊発進。山本は敵艦隊を牽制、それから坂本は艦隊上空を防衛せよ。」

「「了解。」」

 

「真田さん、ブラックホールと干渉装置の重力場を計算して波動砲の弾道がもっとも効果があって干渉装置を破壊できる発射位置を計算していただけますか。」

「わかった。ただ空間歪曲干渉装置による航路への影響も計算しなければいけないからちょっと時間かかるぞ。」

「お願いします。」

 

「敵艦隊、停止したまま動いてきません。」

「包囲網を縮小しろ。」

「了解。」

「地球艦隊の艦載機180接近。」

「こちらの艦載機を発進させろ。ハエどもを叩き落すのだ。」

「了解。」

 

 

「敵艦隊接近してきます。1000宇宙キロ。」

「絶妙な艦隊運動だな。」

「ブラックホールがあるから敵も必死なんだろう。ただやつらは波動エンジンじゃないから空間歪曲干渉装置の影響を受けない。ヤマトをはじめとする地球艦隊は基本的にイスカンダリウムやガミラシウムの採掘を前提としない超光速航行を行うイスカンダル由来の波動エンジン技術で動いている。その弱点が出たってことだろう。暗黒星団帝国は、一切の光学兵器を無効にする強力な偏光バリアや四次元フィールドコーティングと圧倒的な武力で、宇宙を席巻し、侵略した星から資源を食いつぶして拡大してきたから波動エンジンのような宇宙空間からエネルギーを確保するタイプのエンジンを開発する必要がなかった。」

「とんでもない国家だな。」

「400年前、いや200年前って言ってもいいかもしれないその当時の欧米列強を思わせるような横暴さだな。たださすがにすべての艦艇を「鉄壁の防御力」にするわけにはいかなかったみたいだからプレアデスタイプの旗艦と浮遊要塞さえなんとかできれば戦いようはあるんだがな。」

真田がぼそりとつぶやいた。



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第21話 救出

「山崎さん、小ワープの後、波動砲発射準備お願いします。」

「了解。機関室たのんだぞ。」

 

暗黒星団帝国艦隊とその艦載機の攻撃は激化していく。

他の地球艦隊の艦艇に乗っている艦載機もあわせて330機を坂本隊が率いているが敵はその倍の数なのだ。

坂本隊はヤマト主砲とパルスレーザーの射線にたくみに敵を誘い込み数の不利を補って善戦している。

坂本隊と暗黒星団帝国の艦載機はそれぞれ火球に変わる。

その一方で南部が絶妙なタイミングで発射する主砲は、数百機を吞み込むと熱風と燃料引火にまきこんで粉みじんに打ち砕く。

しかし、ヤマトもただではすまない。敵の砲撃と艦載機の攻撃に被弾する。

間断なく続く攻撃に波動防壁を使うタイミングが測れないのだ。

「右舷艦尾方向、第939装甲板、第722装甲板被弾!」

「左舷艦首方向、第3装甲板、第8装甲板被弾!

「右舷艦尾方向、第972装甲板、第993装甲板被弾!」

「左舷艦首方向、第63装甲板、第83装甲板被弾!

「第一番副砲塔損傷。右側揚弾機作動しません。」

「機関室に被弾の影響で火災。艦内スプリンクラー、非常用消火装置作動!」

 

「位置が出たぞ。座標X-3872,Y-2783,Z-9393。」

「ワープ準備。」

島の目の前のディスプレイには五本の空間曲線と振り子のように上下に光点が動いている。

「10,9,8,....3,2,1,ワープ!」

光点が交点に重なった瞬間にヤマトと地球艦隊は姿を消す。

 

「地球艦隊ワープした模様。」

「地球艦隊出現。当艦から7時の方向。空間歪曲装置の影響が少ない場所になります。」

「!!」

「そうか...やつらは我が艦隊を波動砲で一気になぎ払うつもりだ。ワープは間に合わん。全艦指示通りに散開しろ。地球艦隊をわなに誘い込むのだ。」

「了解。」

暗黒星団帝国ガイウス艦隊は散開しはじめる。

 

「全機、波動砲が発射される。指示された場所に待避しろ。」

山本は自分の指揮下の艦載機隊に命じる。

「了解。」

暗黒星団帝国も地球艦隊の艦載機も波動砲の射線をたくみに避けようと散開する。

 

「あいかわらず見事な艦隊運動だね。」

「あの艦隊運動は我々の波動砲の弾道計算をあらかじめ予想していないとできない艦隊運動だ。強敵だな。」

「とにかく空間歪曲装置が破壊できれば...。」

「しゅんらん、当艦をはじめ波動砲発射準備完了です。」

「対ショック対閃光防御。10,9,8,...3,2,1,波動砲発射。」

激しい光、熱、エネルギーの奔流がいくつもの流れとなってガイウスの艦隊にたたきつけられる。ガイウス艦隊の半数と空間歪曲装置が光と熱の奔流につつまれると一瞬にして破壊されて気化する。波動砲でガイウス艦隊をなぎはらうとブラックホールの周囲は安全な空間になる。

 

ガイウス艦隊は、一発目の波動砲の斉射を見事な艦隊運動で逃れたものの、退却のための態勢になっており、追撃への砲撃は可能なものの、もはや攻勢をかけるような状態ではない。ヤマト以外の艦艇がガイウス艦隊の艦艇へ向かって再び波動砲を斉射する。ガイウス艦隊は、残りの1/3を喪い、今度こそ戦闘宙域を離れざるを得なかった。

 

そのときだった。波動砲の射線をたくみに避けた山本をはじめとするコスモファルコン隊数機に異変が起こる。

「くそつ。事象の地平線に近づきすぎたようだ...。」

「!!山本!、引き返せ。」

「操縦が...。右翼先端が境界面に...だめだ...引きずり込まれる...。」

「山本!山本!」

「返答がありません。古代さん」

「境界を越えてしまったのか...。」

山本機とその周囲にいた数機が同じように吞み込まれる。

 

「なんとか助け出すことはできないのか」南部は叫んでしまう。

「光さえ脱出できない空間だからな...。」島の声は沈んでいる。

「シュワルツシルト半径5光年なんてどかなんてブラックホールだ...どうにかなりませんか?真田さん。」

 

「「あの、考え付いたんだが...。」」

古代と相原が珍しく同時に発言する。おもわず相原が口をつぐむが古代が発言を続ける。

「タキオン粒子って光より早いからブラックホールの中にも届いて、通信できるんじゃないでしょうか。」

「だが何度やっても現に返答がないんだぞ。」

「....。」南部に言われて古代は口をつぐんでしまう。

「例え通信波が届いたとしてもブラックホールの内部は特殊な時空間で時間が止まったような状態になっている。だから受信はできないし、ましてや返信なんかできない。」

「時間がほぼ止まってるんですよね。ということは中に入った人間は生きている可能性もあるんじゃないか?」

「何を言いたいんだ?相原?」南部が相原に問い返す。

「あれだけ規模が大きいブラックホールだ。正確なことはわからないが可能性があるかもしれない。ただコスモファルコンにはワープできるエンジンなんてないから光の脱出速度を超えるなんてできない。外から引きずり出すことも不可能だ。」

「山本機の場所に接近して外側からワープさせられれば...。」

「なるほど、デスラーの瞬間物質移送機か。相原、いいこと思いつくじゃないか。」

南部がほめると相原は苦笑する。

「古代が戦闘前に言った話...結局作ることになったか...。わかった、やってみよう。でもブラックホールの近くで使わなければならないし、実験用の試作機にすぎないから山本機を移動させたらもう使うことはできないぞ。」

真田は一回ため息をつくと、苦笑して工作室へ向かった。

 

山本機をはじめとする吞み込まれたコスモタイガー隊の座標がまもなく確認された。シュワルツシルト境界面ぎりぎりに瞬間物質移送試作装置が放出される。絶妙なタイミングで試作装置が作動されると無事コスモタイガー隊はブラックホールから脱出できたが試作装置がかわりにブラックホールに吞み込まれる。

 

「皆サン、無事回収オワリマシタ。ミンナ、ミンナ無事デス。」

喜ばしい報告をするアナライザーの声は、機械の発声装置にもかかわらずなぜかはずんでいるように聞こえる。

「みんな、行こう。」

第一艦橋の面々は我先にと駆け出していく。

 

「佐渡先生!」

「山本もほかのパイロットも無事じゃ。だけど絶対安静だ。長く話すことはできないぞ。」

「山本、ブラックホールから脱出した人類最初の人間になった気分はどうなんだ?」

南部が山本に話しかける。

「一瞬のことでよくわからなかったが、暗闇に包まれたと思ったら担架の上にいた。まあ、気分は悪くない。」

「その様子だと大丈夫みたいだな。」

山本は苦笑して南部に笑顔を向けた。

 

「さあさあ、どいた、どいた、アナライザー、手伝ってくれ。医務室に運ぶぞ。」

「ヘ~イ。」

ベットにのせられた数人のコスモタイガー隊員がカラカラとベッドのキャスターの音をさせながら医務室にはこばれていく。そのあとからピコピコシャカシャカとアナライザーがついていく。

 

第一艦橋は安堵感に包まれた。



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第22話 さらなる罠

いよいよ地球側の「あの無敵な防御兵器」が登場です。


「総員配置につけ。ブラックホールをつかって全艦スイングバイののち、ワープする。」

「了解。」

地球艦隊は一列になりシュワルツシルト半径の外側をたくみに航行してスピードを上げていく。

ガイウスは戦闘宙域ははなれたものの、地球艦隊の状況を把握できる位置にまで後退すると停止する。

「そうだ。ヤマト。地球艦隊よ。そっちの方角へ行くのだ。そう、そう、そのとおりだ。ふふふ。」

 

「敵艦隊動きません。」

「この状況で追撃してこないのはありがたいな。なにかあるのかもしれないが。」

「まあ、あのまま戦っても敵は損害を増やすだけだからな。すぐに追いかけてこないのが気になるが。」

「ワープに入ります。各自ベルト着用。」

地球艦隊の艦影は暗黒星雲バルジの超巨大ブラックホールからスイングバイして次々に消えていった。

 

「ワープ終了。」

そのころ展望台には佐渡とアナライザーが外を眺めていた。

暗黒ガスが濃密にたちこめている空間にヤマトはワープアウトした。

星の光は全く見えない。地球艦隊の艦橋などからもれるかすかな光がぼんやりとてらしている。

「あたりは真っ暗だな。」

「星モ何モ全ク見エマセン。セッカク星デモ見ガラオ酒ヲ楽シモウト思ッタノニ。」

「アナライザー。星が見えなければ月、月が見えなければ星、両方見えなければ雲。

真っ暗で何も見えないにしても地球からは見られない暗黒物質でもながめるんじゃ。そうすればお酒を楽しめる。」

「サスガハ佐渡先生デス。」

「それにしてもなにか外は荒れ模様のようじゃな。なにもなければいいのだが。」

佐渡の顔はくもる。

 

「しかし、すごい密度のガスだなあ。すすのなかを進んでいるようだ。」

南部がぼやく。

「星雲の中心からはなれたからすこしはましになるかとおもったのに...」

 

「位置的にはあと数光年で暗黒星雲を抜け出せる計算だ。局地的にガスが濃い空間ということだろう。」

「レーダーが断続的なブラックアウト。ほとんど役に立ちません。」

「ガス状物質が濃密になり、液体に近くなった影響だな。これからは有視界航法をとるほかないというわけか。」

「右舷及び左舷パネルを作動させろ。」

グオオオーーーン

そのとき船体が激しく揺れる。

「敵襲?」

「左舷マスト損傷。右舷第193装甲板剥離。艦の機能には影響なし。」

「レーダーは?あ~そうか使用不可能だったな。」

「敵の方向、距離特定できません。」

「くつ...」

「火器管制システムにも影響がでている。レーダーが利かないから火器の使用はほぼ不可能だ。」

「今のままじゃなぶりごろしだな。島、逃げ切れるか?」

「なんとかやってみる。」

「波動エンジン出力上昇。第一戦速へ移行。」

「念のため各員総員戦闘配置。」

「加速開始。」

 

そのころ暗黒星雲内を暗黒ガス用の特殊ソナーで自重自在に動ける暗黒星団帝国艦隊ではガイウスが艦隊運動を指示していた。

「全艦に告ぐ。ヤマトと地球艦隊を追え。駆逐艦隊は両翼へ展開。予定航路を常に確認せよ。決して外れるな。」

暗黒星団帝国艦隊は見事な艦隊運動で地球艦隊を包囲するように展開する。

 

「速度を上げて左右に展開をはじめたな。このまま包囲する気か。」

 

「ヤマトめ。なりふり構わず逃げているな。レーダーが利かないだろうし、戦術的に見て基本的には正しい判断だが...。」

「あと2500宇宙デザリオンで予定宙域に到達します。」

「うむ。そのあたりでいいだろう。全艦戦闘態勢。両翼の艦隊は砲撃開始。

われわれが追い立てるその先に何が待ち受けているか知ったときのやつらの顔が目に浮かぶようだ。ふはははは。」

ガイウスは部下に命じる。

「ボンベイウス中将につなげ。獲物の群れをわなに追い込んだ、とな。」

「了解。伝えます。」

 

「敵艦隊の砲撃がやんだな。」

「乱流がおさまってきました。暗黒ガスの濃度が97%から68%へ。レーダー機能一部回復。」

「!!」

「あれは...。」

 

そこに現れたのはイスカンダルで見たことのある黒光りする巨大なこけし状の物体であった。

 

「ゴルバ...ゴルバ型の浮遊要塞...。」

「う、右舷に...三体...いるぞ。」相原が悲痛な声で叫ぶ。

「左舷にもいるぞ。」南部が押し殺したような声でつぶやく。

 

「あの敵の動きはこういうことだったのか。」

真田がつぶやく。

 

メインパネルに敵将の顔が映し出される。地球人だと50代くらいだろうか。しかし白髪である。

「ふはははは。おどろいたかヤマト、地球の艦隊よ。わたしは暗黒星団帝国暗黒星雲ウラリア式浮遊要塞部隊を率いるボンベイウスだ。お前たちを倒す敵将の名だ。貴様らが死ぬまでの短い時間だが覚えておいてもらおうか。お前たちの兵器は一切効かない。貴様たちの石ころのようなショックカノンもただ光り輝くだけの波動砲も実弾も一切効かない。しかもわれわれは互いに撃ち合っても全く問題はない。ここがお前たちの墓場だ。われわれの本星へいくことはできない。」

「全要塞アルファ砲発射用意。」

八個体あるゴルバの首の部分に並ぶ巨砲が地球艦隊に向けられる。

 

「こんなこともあろうかと備えはしてある。尾崎司令、全艦、銀色の携帯スイッチを用意してください。」

「真田。」

「大丈夫です。こうなることは想定の範囲内です。できれば役に立ってほしくなかったのですが。」

真田は苦笑し、パネルに映る尾崎も苦笑する。

「全艦より返信。準備完了とのことです。」

「敵のエネルギー充填が99%になった瞬間に押してください。」

「了解。」

 

「アルファ砲発射準備完了。5,4...」

そのとき地球艦隊艦内では銀色の携帯スイッチが押され、地球艦隊はじょじょに銀色のかがやきに包まれていく。

「アルファ砲、発射。」

全要塞から波動砲なみの光と熱の奔流がいっせいに吐き出される。

しかも地球艦隊の波動砲発射シークエンスの1/20の短時間だ。

しかし、その光と熱の奔流は銀色に輝く地球艦隊の船体にぶつかるとそのままはじき返されて要塞に命中する。

地球艦隊にとって幸運なことに跳ね返されたアルファ砲が二個体の要塞の砲口にそのままもどっていく。

「何いいい。」

自ら放った兵器が跳ね返されそのまま砲口へ命中し、二個体のゴルバは誘爆を繰り返して大爆発を起こして火球となり四散する。

 

「第3要塞と第7要塞撃破されました。」

「….。」

「司令。あれはすべての光学兵器を反射する空間磁力メッキ防護幕ともいうべきものです。」

「まったくの野蛮人というわけではないというわけか。数百光年を征服してきた我が帝国でもあのような防御兵器は始めてみるな。しかし、やつらもそのままあの状態でいるわけにいくまい。奈落へ落とされる時間が先に伸びただけのことだ。」

ボンベイウスはあくまでも冷静であった。

「要塞の配置を変えよ。それぞれ敵から1°の角度で移動せよ。もし連続して使ってきたとしても砲口にさえ戻ってこなければ何の問題もない。」

残ったゴルバはたくみに配置を微妙に変える。

 

「敵浮遊要塞、配置を変えます。」

「予想される敵主砲の照射範囲表示します。」

「死角はないってことか。」

古代はつぶやいた。



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第23話 秘策炸裂

「空間磁力メッキはスイッチ一個につき1回で7分しかもたない。連続して使用するのは不可能だ。だからその間に対策を考えておかないとやられる。」

「でも真田さん、対案は考えているんでしょう。」

「そうだな。二種類の新兵器は用意している。」

「真田。例のあれを使うんでいいのか?」

「おっしゃるとおりです。」

「敵は空間磁力メッキが切れる瞬間を狙ってくるはずです。砲口を開いてエネルギー充填をしているときがチャンスです。」

「真田さん。」

「何だ?南部?」

「敵の砲口がバリアに守られている可能性はないんでしょうか?」

「ありうるな。」

「砲口が開いたら断続的に魚雷を撃ちこんでバリアを分析してみますか?」

「そうだな。やってみてくれ。」

 

「敵の空間磁力メッキ防護幕の維持時間あと推定1分30秒。」

「アルファ砲、発射準備。」

 

「敵が砲口を開いた。」

「魚雷発射、一番、二番」

 

「司令、敵が魚雷を発射しました。あっ!、砲口へ向かってきます。」

「なんの、バリアがある。」

 

砲口の前で魚雷が四散する。

「やはりか。」

「5兆テスラです。エネルギー充填率10%,バリア敵砲口の表面から300m」

「波動砲でも撃ちぬけないってことだな。」

 

「敵の空間磁力メッキ防護幕、あと推定50秒。」

「また魚雷が発射されました。」

また砲口の前で魚雷が四散する。

「....。」

 

「4兆5千億テスラ。エネルギー充填率25%,バリア敵砲口の表面から600m」

「なるほど、空間磁力メッキの有効時間をかなり正確に測っているようだな。」

「しかも今回は敵のエネルギー充填がゆっくりめです。」

「それからバリアが砲口から離れて弱くなっているな。」

 

ボンベイウスはふと気が付いて部下に命じる。

「やつらは発射タイミングを測っている。急速充填しろ。第1要塞は10秒後、第2要塞は20秒後、第4要塞は30秒後、第5、第6、第8要塞は、40秒後。ふふふ。やつらはこれでおしまいだ。」

 

「敵主砲のエネルギー充填率変化します。右舷方向から80%,60%,40%,左側の三つは30%です。」

 

「かかったな。波動カートリッジ弾、右舷方向の要塞へ向けて発射準備。」

 

「第4要塞、第5要塞、第6要塞、第8要塞主砲発射停止。」

「ボンベイウス司令!」

「敵をみくびりすぎていたようだ。やつらは何か待っている。」

 

「第1要塞、アルファ砲発射10秒前。」

 

「ヤマト、波動カートリッジ弾発射。」

 

「!!」

波動カートリッジ弾は第1要塞と第2要塞のアルファ砲口に命中すると大爆発を起こして四散した。

「これで四つか...。」真田はつぶやく。

 

「地球艦隊よ。よく戦った。しかしもう手も足も出ないぞ。上部ミサイル砲発射。」

こけし状のゴルバの「頭」の部分が回転して上部ミサイル砲が雨あられとそそぐ。

「波動カートリッジ弾であの砲口を狙えるか?」

「まかせてください。波動カートリッジ弾発射!」

南部が命じて地球艦隊はいっせいに波動カートリッジ弾を発射するが雨のように降り注ぐ上部ミサイル砲に破壊されて四散する。

スクリーンに尾崎司令の顔が映る。

「古代、真田、波動カートリッジ弾の残弾がもうないぞ。」

 

「ふははは...どうした。もう終わりか。こっちの攻撃は続くぞ。」

 

「駆逐艦ズールー被弾!」

「ハルバートⅠ被弾!」

「きぬがさ被弾!」

 

「真田、古代...。大丈夫か...。」

やや焦燥した様子の尾崎司令の姿がスクリーンに映る。

「大丈夫です。最後の手段が残っています。」真田が返事をする。

「全艦、波動防壁を展開。」古代が命じて波動防壁を展開する。

しかし、20分しかもたないし、波動砲並の破壊力を誇るアルファ砲に効果があるかは非常に疑問である。

 

「最後の手段って...。」古代と相原が真田を見る。

「反物質カートリッジ弾を使う。敵は正物質のあらゆる兵器を無効にする手段をもっている。しかし正物質である以上反物質には耐性がないはずだ。」

「でも敵に当たる前に対消滅でなくなったり、発射した瞬間に自分たちが飛び散るようなら意味がないじゃないですか。」

相原が心配そうな顔で問い返す。

「大丈夫だ。尾崎司令へ連絡してくれ。」

「真田。例の切り札を使うんだな。」

「はい。しかし数が限られていてヤマトにしかつんでいません。さっきのように上部ミサイル砲には破壊されたら一巻の終わりです。」

「ゴルバの直下エンジン噴射口直下に小ワープするのはどうだ?」

「島、俺もそう思った。真田さん、小ワープしましょう。」

「そうだな。相手の攻撃を受けずに弱点を狙えるな。」

「谷艦長、全艦ゴルバの直下に小ワープさせます。」

「わかった。各艦長へ伝達。ハルバート、きぬがさは、10時の方向、ラングレー、ゆきかぜ改は12時の方向、しゅんらんは2時の方向、フレッチャーとズールーは4時の方向にある浮遊要塞の直下にそれぞれ小ワープだ。」

「「「「「了解」」」」

 

「そんなチンケなバリアをしても無駄だ。アルファ砲発射!」

「「「「「ワープ!」」」」」

 

アルファ砲の光の奔流は宇宙空間を照らし、そのまま空を切りゴルバの間を擦りにぬけていく。

「!!」

「敵艦隊、ゴルバの直下です。」

「やつらは、エンジン噴射口を狙うつもりだ。第4、第6要塞伏角90度!」

ゴルバのうち10時の方向と2時の方向のものが横倒しになろうとする。

しかし、地球艦隊のワープアウトがわずかにはやかった。

「反物質カートリッジ弾、発射。」

ヤマトの「煙突」VLSから発射された反物質カートリッジ弾は、ひとつは第5要塞のエンジン噴射口に命中、もうひとつは横倒しになろうとする第4要塞の装甲に命中した。すさまじい対消滅エネルギーが一瞬にして三つの浮遊要塞も巻き込んであっというまに大爆発を起こして火球となり、爆煙をまきちらして四散する。衝撃波が地球艦隊をゆさぶり、艦内の空気にズゴーンンンと爆音が伝わる。

「なんだ...あれは...」

ボンベイウスははじめて青ざめた。

「あれは...反物質を封じ込めた砲弾です。偏光バリアは効きませんし、本来なら光学兵器も実弾も衝撃波面で無効化する四次元フィールドコーティングが逆に...」

「実弾である敵のカートリッジを破壊して反物質を撒き散らすのを助けるということか...。うぬ、敵のカートリッジ弾の射程はわかっている。わが第8要塞は当該宙域から離脱し、1300宇宙デザリオンからアルファ砲を発射せよ。」

「了解。」

 

第5要塞の激しい誘爆がとなりの第6要塞をもあっというまに巻き込んで炎上、爆発させた様子が記録映像を再生すると確認できる。

「なぜ直接命中していない要塞まで...。」

「やっぱり敵の偏光バリアと四次元フィールドコーティングは、すべての光学兵器と実弾兵器を無効化してるというわけか...しかし、実弾にこめられた反物質は無効化できない。むしろ実弾のカートリッジを逆に破壊するから...。」

「強力な防御兵器が裏目にでているってことですね。」

古代はうなずいた。



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第24話 闇の中に航路を探せ

「そういうことだ。でもよろこんでばかりもいられない。もう反物質カートリッジ弾はない。おいそれと作れるものじゃないから。」

「敵要塞がひとつ離れていきます。」

「敵要塞現在240宇宙キロ。さらに離れていきます。」

「図体がおおきい割になんて速度だ。」

南部がいらついたようにつぶやく。

「カートリッジ弾の射程圏外から主砲を撃つつもりだな。」

真田は叫ぶ。なんという演算能力だろう。カートリッジ弾の射程をあっという間に計算しているとしか思えない動きに舌を巻かずにおれなかった。

 

「!!」

そのとき敵要塞を駆逐艦ズールーが追いかけていく。

「大西司令!」

「反物質カートリッジ弾はもうないのだろう。」

「はい。」

「こうなったら敵をやぶる手段はひとつしかない。」

「なにをするつもりですか。」古代は大西に向かって叫んだ。

ズールーはやや炎上しながらもようやくゴルバに追いつく。

「あの愚か者め、何をするつもりだ。」

轟音がして第8浮遊要塞がゆれる。

アルファ砲口にズールーが突き刺さったのだ。

「乗組員は脱出させた。古代、この艦ごとを撃て。」

 

「敵艦が第3主砲口に突き刺さりました。」

「うぬぬ。」

「幸いなことにアルファ砲のエネルギーは注入されていませんでした。」

「上部ミサイル砲は使えないということか。」

「はい。誘爆する恐れがあります。」

「うぬぬ。敵兵は逃げているんだろう。そいつらを撃ち殺せ。」

「了解。」

上部ミサイル砲が、脱出する乗組員を狙って雨のように撃たれる。

 

「丸腰の兵士を狙うなんて...。」

「全艦、上部ミサイル砲口を狙え!。」

古代が命じると地球艦隊からゴルバ上部のミサイル砲口群へ向かって数十条のショックカノンの光条が放たれる。数十条の光条は上部ミサイル砲口を破壊するものの、ゴルバ本体はこ揺るぎも誘爆もしない。しかしおかげで無事に乗組員を救出でき、救命艇は帰還した。

「ふはははは...むだなことよ。」

ゴルバの主砲口は複数ある。回転して無傷の主砲口が地球艦隊へ向けられる。

 

そのときだった。

「古代。」

ラングレーの艦長がスクリーンに映る。

「はい。」

ラングレー艦長はすさまじい提案をした。

「あの主砲の発射タイミングで波動砲を撃つ。」

「!!。主砲口にバリアがあります。波動砲でバリアを撃ち抜ける2兆テスラは、エネルギー充填率99.99%で発射5秒前です。もし失敗したらもろに命中しますよ。」

「それでもいい。死中に活を見出すのは今しかない。失敗したらヤマトは、ズールーを撃ってくれ。」

「わかりました。」

「大西君。逆噴射の用意をしておいてくれ。」

「わかった。」

 

「アルファ砲、はつ...!」

「敵弾きます。!?」

「うわ....。」

拡散波動砲が発射寸前のアルファ砲口につきささる。ゴルバの内部に誘爆があっというまにひろがった。叫ぶ間もなくボンベイウスをはじめとする暗黒星団帝国の兵士、士官たちは気化した。

次の瞬間大爆発をおこす。絶妙なタイミングで逆噴射したズールーは誘爆をまぬがれた。

大西は苦笑した。

「生き残ってしまったな。皮肉なものだ。脱出させたはずの部下に犠牲がでたとは。」

「ありがとうございます。大西司令が無事でよかったです。」古代が大西に話しかける。

それから地球艦隊に勝利の報告を知らせた。

「苦しい戦いでしたがなんとか勝てました。皆さんのおかげです。」

地球艦隊の艦艇内部では勝利を祝う歓声でみたされた。

 

「ガイウス司令。浮遊要塞部隊の方向から激しい爆発の反応をとらえました。これはふつうの艦艇の爆発とは異なる大規模なものです。」

「何だと!至急ボンベイウス司令に通信をつなげ。」

「先ほどから通信しておりますが、応答ありません。」

「皮肉なものだな。わたしを陥れるはずが自分がヤマトの餌食になったか。」

「司令…。」

「あのゴルバを倒す方法は非常に限られている。撃たれたアルファ砲を正確に砲口へ向かって反射するか、アルファ砲が発射される瞬間に砲口に撃ち込むか、反物質兵器を実弾にこめて撃ち込むか、底部のエンジン噴射口をねらうかしかない。エンジン噴射口については敵弾を感知してバリアが張られるよう改造されているから前の三つの手段しかない。」

「司令…。」

「波動砲だけならばいくらでも防ぎようがある。波動エネルギーを実弾に封入されても砲口に命中さえしなければまったく問題はない。ただ…。」

「ただ?」

「敵は意外な兵器を開発してわれわれをおどろかせてきた。まさかとは思うが反物質を実弾に封入されたら防ぐのは非常に困難だ。無敵要塞が無敵であるが故に反物質を封入された実弾を四次元フィールドコーティング自体が破壊するから鉄壁の防御の裏返しの弱点になる。」

 

「後方に敵艦隊発見。6500宇宙キロ。」

「真田さん、追撃したほうがいいと思いますか?」

「やつはかなりの戦巧者だ。濃密なガス体のなかに逃げ込むだけだ。」

「うむ。古代、真田。『しゅんらん』と主力戦艦のラングレーが後ろ向きに進もう。いざ敵がのこのこ出てきたら拡散波動砲で一掃しよう。もう発射準備はできている。」

「ありがとうございます。」

 

「敵艦隊はそのまま進んでいきます。二艦のみ後ろ向きです。」

「なるほど。こちらがでてきたら例の兵器を使うというわけか。」

「司令。どうしますか。」

「しかたあるまい。本星の近くでガスの濃密な部分がある。そこで待ち構えるのだ。」

「本星には、救援にいかないのですか。」

「いまさら帰っても敗北の責任を取らされて処刑されるだけだ。」

「...。」

「ちなみにお前たちも帰還したら処刑される。」

 

「この先、5000宇宙キロで再び暗黒ガスが濃密になります。」

「なにか光のようなものが見えるな。」

暗黒ガスは濃密になるが、その明るい一点はよりくっくりと見え、わずかずつであるが大きくなっているように思える。」

「出口?」

「尾崎司令、出口のように思えますが。」

「古代。慎重に分析しろ。これからの行く手は暗黒ガスが液体並みに濃密になって渦をまいている。その渦の中に巻き込まれたら一巻の終わりになる。」

「はい。」

「冷静さを失わないで的確に状況を把握できていれば生き残れる。」

「そんなに俺は感情的ですか。」

「自覚がないようだな。冷静になってくれといういうことなんだ。気を悪くしたらすまん。」

第一艦橋の面々は笑いを何とかかみ殺す。

「航行停止!」

島は航行停止をアナウンスした。

「り、了解。」

「古代、島、慎重に航路の検討をしたほうがいい。技術班に航路の状態を分析させる。それから中央作戦室に集合するよう指示してくれ。」

「わかりました。第一艦橋の乗組員は中央作戦室に集合。」

一同が中央作戦室に集まると真田は通路の様子を床スクリーンに映した。



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第25話 出口に待ち受けるもの

「これから先は液体のように濃密な暗黒ガスが渦をまいている状態だ。ただし、光が見えている部分はガスが異常に薄い状態であるのは間違いないだろう。あたかも台風の目と同じ理屈で安全な空間になっていて、しかも外界からの星の光を通している。」

「しかし、よく見てもらうとわかるように時間の経過とともに渦の中心で大きさが変わっている。これに周期性があれば脱出のタイミングがはかれるだろう。」

「今すぐ出口が閉じないうちに進むわけにいかないんですか。一度閉じてしまったら...。」

「あわてるなって尾崎司令も言っていただろう。この通路がすべて閉じてしまうことはまずない。ただ一部が完全に閉じてしまうことはあるから通過できなくなる可能性はある。その場合は停止して開くまでまつしかない。」

「...。」

「時間は貴重だ。だからこそあわてて渦に巻き込まれたら元も子もない。通路の拡大収縮に周期性があるのかどうか、周期性がなければどのように通過するか、もうしばらく分析のための時間がほしいところだ。」

「真田さん、じゃあ、みんなに食事や睡眠をとってもらうのはどうですか。」

「そうだな。そうしてもらおうか。」

「乗組員諸君、これから暗黒星雲の出口をいつ通過できるのか分析する必要があり、それには一定の時間を要する。不定期になってもうしわけないがしばらく休暇を与える。いまのうちに食事や睡眠をとるように。いつ配置につくかは決定しだい追って指示する。」

 

「古代、出口付近の通路の分析がひととおり終わった。中央作戦室に第一艦橋のクルーを集めくれ。方針を話し合う。」

「わかりました。」

第一艦橋のメンバーにインタフォンでその旨伝えられる。

「通路の気流の流れは一定していないし、通路の幅も一定していない。」

「真田さん。航行はどのくらい可能ですか?」

「24時間。ちょうど1日というところだな。現時点では敵は確認されていないが、これから敵についてはどう状況が変化するかは未知数だ。敵は、暗黒ガスの空間や気流には慣れているだろうからな。」

「真田さん。敵が通り抜けてくるんだからそんなに激しくないかもしれないとはおもいませんか。」

「地球を救うために元から絶つんだろう。ここを通り抜けるしかないと思うが。」

「確かに敵の待ち伏せは怖いな。第一種戦闘配備で突入する。いつでも対処できるように。」

古代の一言で方針が決定する。

 

機関室へ行くと小スクリーンに山崎の顔が映し出される。

「これよりヤマトは暗黒星雲の通路を進むことになった。機関部、たのむぞ。」

「太助、エンジンをたのむぞ。」

「アイアイサー」

機関部員は総員敬礼をする。

「微速前進0.5」

「フライホイール接続点火!」

「ヤマト発進!」

ヤマトは暗黒星雲の通路を進んでいく。

 

「ヤマト及び地球艦隊、距離25000宇宙デザリオン!われわれの白色銀河への出口通路を進んでいます。」

「よし、また敵を出口まで追い立てろ。」

 

「敵襲です。またどこから攻撃されているかわかりません。」

「弾道を解析しろ。レーダーが使えないなら弾道を解析して敵の位置を特定するんだ。」

「座標特定しました。送ります」

「よし、座標をセット完了。主砲発射!」

数隻の駆逐艦や巡洋艦が地球艦隊のショックカノンに撃ち抜かれて、火球に変わる。

 

「敵は弾道を解析している。撃ったらすぐ移動するのだ。そうすれば十分に避けられる。」

 

「波動防壁展開!エンジンフルパワー。」

ヤマトは波動防壁を維持しつつ猛スピードで回廊を突進する。

 

「司令。追いつけません。」

「それならそれでいい。やつらは出口であせるだろう。」

 

「出口到達しました。」

「!!」

そこには、巨大な人工惑星が浮かんでいた。

全体は地球ほどのおおきさであったが、中心部がこぶのようにふくらみ、その周囲を網目のように黒光りする金属の管がとりまいているような姿だった。

その周囲をアメーバー状の戦艦とずんぐりした戦艦が守っている。

ずんぐりした戦艦は全長5km、全幅2kmはあるかとおもわれる巨大な戦艦であった。

「中央の巨大戦艦から通信です。」

「オマエタチガヤマトカ」

ロボットのような棒読みの不気味な声がしてスクリーンに敵の姿が映し出される。

黒いフードのようなものをかぶり、両目が赤く光っている。

「ヤマトヨ。シネ。」

艦首から無限ベータ砲が問答無用で発射される。

ヤマトは、島の操舵でたくみに弾道を避けるが、ラングレー、ゆきかせ改、ハルバートが光と熱の奔流に飲み込まれる。

つぎの瞬間には爆煙をあげて四散していた。

「!!」

無限ベータ砲は、あっというまに輝きをます。

すさまじい速さでエネルギー充填される。

きぬがさが無限ベータ砲の砲門へ向かって波動砲を発射する。

しかし、その光の流れは、無限ベータ砲のすさまじいばかりの光と熱の激流に飲み込まれた。無限ベータ砲の激しい奔流は荒れ狂った怒涛のようにきぬがさを襲って飲み込み、次の瞬間には引き裂いていた。

「真田さん、あの艦にはなにが有効なんですか。」

「古代...分析したけど反物質カートリッジ弾しか効かない。」

「すぐつくれる代物じゃないですよね...。」

「ああ...。」真田の表情は、苦虫を噛むようだった。

そのすきをついて左側の無限ベータ砲の砲門につっこむことに成功したのはまたもやズールーだった。

「大西司令!」

「古代。この戦艦にも直接効く武器はないんだろう。わたしごと撃て。乗組員を頼む。」

「...。」

「何をしている!早く撃て!」

「わたしには撃てません。どうか脱出してください。もう4隻も撃沈されました。地球には明日のためにも熟練した指揮官が必要なんです。」

「古代。また敵の砲門に魚雷を二発撃ちこんでバリアとあの擬似波動砲様兵器のエネルギー反応をみよう。」

「そういうことですから、大西司令、どうか後退をお願いします。」

「今は誘爆を恐れて敵は撃ってこないが、後退しようものならあの凄まじいばかりの砲撃を浴びる。それこそ犬死だ。」

「南部。主砲に波動カートリッジ弾を装填。最大射程で敵砲門の前で爆発させ、魚雷発射すると同時に、あのアメーバー状戦艦の砲門に標準をあわせろ。」

「了解。」

「古代。」

「航空隊に通用した手が戦艦に通じるか判らないけどやってみるしかない。」

真田は古代に向かって微笑む。

「艦首魚雷1番発射。2番発射まで5秒前。」

「2番発射。3番発射まで5秒前。」

ヤマトから魚雷が5秒ごとに発射され、無限ベータ砲の方向へ向かう。

「ムダダ。」

ビギギイイイ...

振動波が金切声のような音になって艦内に響く。

無限ベータ砲の前で魚雷が四散し、爆煙が舞った。



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第26話 敵人工惑星デザリアムを攻略せよ!

「エネルギー充填率50%,バリア、砲口から20m。4兆テスラ。」

「エネルギー充填率75%,バリア、砲口から70m。3兆テスラ。」

「エネルギー充填率95%,バリア,砲口から150m。2兆テスラ、発射10秒前。」

発射10秒前なら波動砲でバリアを打ち破れる...

無限ベータ砲が放たれる。さすがに地球艦隊は今度こそその射線を避ける。

『しゅんらん』とヤマトの脇をすさまじいばかりの光と熱とエネルギーの奔流が通過していった。

 

「第一主砲、第二主砲、第一副砲発射用意。目標11時、11時半、12時、12時半、1時の敵戦艦砲塔。距離5宇宙キロ。」

「照準よし!」

「発射!」

デザリアムを守るアメーバー状の戦艦の砲門へ向かっていく主砲は、敵が主砲を発射すると同時に波動カートリッジ弾の爆発により誘爆を起こす。アメーバー状の戦艦は砲門を破壊される。

「効果てきめんだ。敵は砲塔を確実に失って無力化している。」

アメーバー状の戦艦は、主砲が直接当たっていないにもかかわらず、波動カートリッジ弾と主砲のエネルギーの誘爆が艦内内部にも広がって爆発をくりかえした。しかしなかなか爆発四散しない。

「古代。いくら堅牢な戦艦といえどもあれだけ誘爆を繰り返していれば波動砲が効くだろう。拡散波動砲で一挙に粉砕する。波動カートリッジ弾の誘爆で無傷な敵艦を無力化してくれ。」

「わかりました。」

「南部。」

アメーバー状の戦艦は砲塔を爆発させ次々に無力化する。

拡散波動砲が『しゅんらん』から発射される。拡散波動砲の光と熱の激流は、空中の一点で放射状に枝分かれしたと思うと無数の光の槍となって数百隻ものアメーバー状の戦艦に降り注ぐ。その次の瞬間にはアメーバー状戦艦を貫き、黒いアメーバーは、爆炎をあげて四散した。

「ソンナモノハコノグロデーズニハキカナイ。」

しかし拡散波動砲がグロデーズに命中するものの、その装甲にはまったく傷ひとつつけることはできない。またズールーには当たらないように発射したからであった。

「古代。どうする?」

「....。」

ズールーがあの波動砲のような砲門から後退すればバリアをはられたちまちズールー自体も撃沈されるだろう。思案のしどころであった。

 

「古代?、山南?どうするつもりだ。」

「大西司令、もうちょっと時間をください。」

「しかし、この船を波動砲で破壊してその誘爆で敵艦を葬るしかないと思うが...。」

それが一番手っ取り早くしかも確実な方法だった。

いずれにしてもヤマトか『しゅんらん』が敵の波動砲様兵器の発射寸前のバリアが脆弱になった瞬間をねらって至近で波動砲を撃つ方法があるが、その場合波動砲を撃った艦艇はただではすまないだろう...

古代はズールーを波動砲によって貫いて誘爆させる方法はどうしても避けたかったが、だからといってほかに有効な方法が思いつかない。真田も妙案が思い浮かばず、歯をかみしめる。また、それは山南も同様だった。

しかし、その逡巡が皮肉にも大西に決心をさせることになった。

「古代、山南さらばだ。」

「!!」

「大西さん!」

「大西、死んでとれる責...」

奇しくも土方に言われたセリフを山南がいいかけたが、とめる間もなくズールーが自爆した。その瞬間、グロデーズの無限ベータ砲口に向かって拡散波動砲が一門発射される。

拡散波動砲は無限ベータ砲口を貫きグロデーズを内部から引き裂いた。

グロデーズは煙をはいて巨大な火球に変わり、四散した。

「馬鹿者が...。」

古代と山南の目からほおにかけて涙がつたっていた。

さっきまでズールーとグロデーズのあった空間へ対しヤマトと『しゅんらん』の乗組員は敬礼をおくっていた。

 

「古代、こうなったのは非常に残念だが大西の遺志を最大限尊重することにした。

できれば生き残ることを考えてほしかった。」

「はい。アメーバー状の戦艦を撃破し、グロデーズが擬似波動砲様兵器を撃てない状態で考える時間は十分にあったとは思うので...。」

「しかし、すぎたことを悔やんでもしかたない。あの人工惑星をどうやって攻略する?」

「内部から破壊するしかありません。優秀な白兵戦部隊がいればいいのですが。」

「そのことだが...1年前の白色彗星の戦いを覚えているか。」

「はい。え...もしかして?」

「古代さん、お久しぶりです。」

「!!永倉さん?」

「あの人工惑星を攻略するんでしょう。」

「はい...。」

永倉の後ろには屈強な男たちが口をゆがめてにやりと不敵な笑みをうかべている。

「わたしたちにやらせてください。ただ機械のことはよくわからないから早い話ボディーガードになってしまいますが。」

「われわれだけで...。」

「古代。」

「真田さん...。」

「あの人工惑星にはどんなしかけがあるかわからない。例の四次元フィールドと偏光バリアで反物質カートリッジ弾以外のすべての兵器は無効になる。前も話したように反物質カートリッジ弾は多量にはつくれない。最悪の状況を想定していたとはいえ、さすがにあれほどの数のゴルバを相手にするとはな。自転軸の北極と南極についてはショックカノンで打ち破れる。何かあったときに脱出できなくなるからわざと脆弱に作ってあるようだ。」

古代はうなずき、第一艦橋のクルーの面々の顔をみつめる。

「南部、俺は、永倉さんたち空間騎兵隊と一緒にこの北極の入り口から突入する。

第一主砲、第二主砲を撃ちこんでくれ。」

「わかった。」

「古代!」

後ろから声がした。

「真田さん。」

「俺がいなくてメカのことはどうするんだ?」

真田はほほえむ。

「しかし、真田さんがいなくなったらヤマトの修理は?」

「ヤマトの修理ならきまりきったことだからほかの技術班員で十分対応できる。未知のメカをみてその性格を見分ける仕事は俺が行ったほうがいいだろう。」

「わかりました。加藤、山本。コスモタイガー隊、第二編隊、発進準備だ。」

「了解。」

加藤、山本をはじめとするコスモタイガー隊の面々が敬礼する。

数百機の白色円盤戦闘機とイモムシ型戦闘機が人工惑星デザリアムを守っている。

 

「パルスレーザー砲及び第一副砲、煙突ミサイル発射!」

「主砲発射準備。座標X-3872、Y-9338、Z-1272。目標敵人工惑星北極点。」

「発射!」

北極側の入り口にショックカノンが命中して大穴が空く。そこに古代のコスモゼロとコスモタイガー隊が蜂の群れのように入っていく。

デザリアムの内部、北極から中心へ向かう管のような通路では空中戦になる。襲いかかるヴ白色円盤戦闘機とイモムシ型戦闘機に対し、加藤と山本は神技の「左ひねりこみ」を併用して背後から次々に敵艦載機を撃墜するが、敵の数は数百機にも及ぶ。

人工惑星の中心に行くに従って光る点でしかなかったものがだんだん大きくなっていく。



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第27話 デザリアムの迷宮を突破せよ(前編)

「あれが敵の都市...。」

それはハリネズミかウニのようにとがった「水晶」をまとっている「水晶都市」だった。だんだんコスモタイガーの窓から大きく見えてくる。

一方、加藤、山本いるコスモタイガー隊と敵機との熾烈な戦いは続く。しかし彼らがいかに優秀とはいえ敵の数は多く、「水晶都市」を目の前にして山本機がついに囲まれ、敵弾が命中する。

「山本、やまもとおおおおお!」

山本機が火と煙を吹き、窓から見える山本は、額から血をしたたらせ笑顔で敬礼し、「水晶都市」ミサイルの発射口につっこんで爆発する。

「ブラックホールから奇跡の生還を果たしたのに...。」

 

加藤が率いるコスモファルコン隊はその穴から次々に内部に侵入する。

「水晶都市」からはとがった「水晶」が次々とミサイルになって襲う。

 

「空間騎兵分隊はあの破壊された場所から侵入してくれ。俺と真田さんと永倉さんの空間騎兵本隊は、艦載機発進口から侵入する。」

「了解!」

加藤率いるコスモタイガー隊は「水晶都市」のミサイルを巧みに避けて、山本機がつっこんで破壊した部分から侵入する。

 

古代は、艦載機発進口をアナライザーと真田に分析させて探索する。

5分後にアナライザーの頭が発光し、点滅する。

「アソコデス。右40度、仰角25度ノ位置デス。」

発進しようとする白色円盤戦闘機とイモムシ型戦闘機が発進口に見える。コスモゼロとコスモタイガーは、発進口にミサイルを撃ちこんで飛び立つ前に撃墜し、敵機は、次々に爆発光と煙を噴出して四散する。

デザリアム内部では警報が鳴り響く。

「敵兵が侵入した。迎撃せよ。」

兵士たちがばらばらとあらわれる。

上空のコスモタイガーは古代や真田が降りるのを援護して機銃でつぎつぎに敵兵を貫いて倒していく。

コスモゼロから降りた古代と真田は翼の下に隠れる。二人はブラスターを撃ち、その射線が敵兵を貫き、敵兵は倒れる。

「奥に通路が見えるな。」

「でもこのまま進むのは至難の業ですね。」

やがて次々と滑走路に下りたコスモタイガーから永倉をはじめとした空間騎兵がコックピットの後部座席から飛び降りていく。

「永倉さん。」

永倉と部下たちは敵の銃の射線をたくみにかわして通路の死角から敵兵を倒して侵入していく。

「戦闘班長、こっちだ。」

騎兵隊員やコスモファルコン隊員は古代と真田を援護しながら通路を右左とすすんでいく。

「技師長、どっちへいったらいいとおもいますか?」

「たぶん、動力源は、やはり水晶都市の中央部だろう。みはりのすくないところを使えればいいのだが...。」

「さっき右奥に、上下を移動するゴンドラがあった。あれをつかえばどのあたりかわかると思う。」

「そうだな。」

ゴンドラは、資材、食料、残飯を運ぶものと分かれている。食料のものと残飯のものは、それぞれ保存のためと臭気をふせぐためにふたがされていた。そのためふたのない、上へ行く資材のゴンドラに飛び乗った。空間騎兵のほかの隊員も下から来るゴンドラに飛び乗っていく。

真田は、技術者のカンで、

「ここじゃないかな。」

と3mほどの上の通路を指差す。みるとその通路には壁に配管が多く走っている。

3人はコスモガンをサイレントモードにし、敵兵を銃声なく撃ち倒していく。

下から上がってくるゴンドラから次々と騎兵隊員が通路へ飛び降りていく。

しかし、通路になにか装置があるのかヴィー、ヴィーと警報装置がなって、壁から機関銃が出現し、バギュン、バギュンと回転しながら攻撃してくる。

永倉がコスモ手榴弾で破壊する。轟音と煙が晴れると、こんどは、ファランクスを思わせるように通路にいっぱいに横一列に並んでザツザツザツと軍靴を鳴らして敵兵がやってくる。

永倉がコスモ手榴弾で倒すが、4列目以降も現れる。

真田がにやりとすると加藤と騎兵隊の分隊に敵兵の制御装置の位置を電子メールで送る。

「技師長からメールが来た。敵兵の制御装置を壊してほしいって。場所は3ブロック先の右側か...。」

「みはりがいるかもしれないな。」

「まあ、それでも倒すしかない。」

加藤たちも指定された場所に向かった。

すると警報が鳴り、壁から機関銃のようなものが現れ回転して撃ってくる。

加藤たちがコスモ手榴弾で破壊するが、今度は分厚い隔壁がおりてくる。

「しかし、技師長も、「こんなこともあろうかと」ってよく考えたものだな。」

「要塞侵入、白兵戦を想定してサイレントモードに高熱光線モードか。」

加藤と騎兵隊員は苦笑してコスモガンを高熱光線モードにする。

30cmはあろう分厚い隔壁があっというまに開く。二人はアンドロイド兵の制御装置へ向かってコスモ手榴弾を投げつける。制御装置が爆発して、それまでいたる通路で整然と行進していたアンドロイド兵は崩れるように倒れていく。それから敵兵との散発的な銃撃戦となる。

敵兵がいなくなったと思ったら隔壁が両脇でとじる。そしてその隔壁から50本もの刃物が生えてくる。そして両脇からおそってくる。

 

真田は高熱光線モードでその隔壁に難なく穴を明けたが、隔壁同士がぶつかると

「ぎゃああ。」騎兵隊員が2名挟まれて串刺しになる。即死だった。

「息がないな…。」

その次は刃物のついたつり天井がおちてくるがタイミングを測りながら通り抜けていく。

「こっちだ。」

ジグザクした通路から敵兵が銃撃してくる。騎兵隊員が二人撃たれる。なんとか巧みに倒して行った先には扉があった。

「いやな予感がするな。」真田がいい、永倉はうなづくと、古代と真田へ後ろへもどれと合図する。ジグザグな通路の角に戻って、永倉が扉にコスモ手榴弾を投げる。

するとロボットのスズメバチが襲ってくるが、部屋から3mまでしか飛んでこれないようだった。ふたたび、永倉がコスモ手榴弾を二発投げ込みでロボット・ホーネットの群れを倒す。

そして20mほど進むといきどまりになりまた扉がある。永倉は離れて、またコスモ手榴弾を投げ込む。扉が破壊されると、こんどはロボットのさそりが大量に現れる。しかし、これも部屋から3mしか出れないようだった。これもコスモ手榴弾で倒す。そしてさらに20m進むとまた扉がある。永倉はコスモ手榴弾を投げるが効かない。仕方ないので真田と騎兵隊員がコスモガンの高熱光線モードで穴を開ける。何もない部屋のようなのではいると、隔壁が現れていきなりしまった。空気が抜けていく音がする。その部屋は右側と左側に扉があった。

手持ちの計器を確認すると酸素の量が減っていくのが判る。

酸欠にしようという敵の意図を真田は察して、すぐに

「酸素マスクをしろ」と伝え、古代と騎兵隊員たちは酸素マスクをし、コスモガンを高熱光線モードで左側の穴を開ける。

そしてその扉に穴が開くやいなや、通路の曲がり角の影から敵兵が銃撃してきた。

 

 



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第28話 デザリアムの迷宮を突破せよ(中編)

ジグザクな通路で陰に隠れながら敵兵を倒すと今度も扉がある。

永倉がコスモ手榴弾を投げるがこれも効かないので古代が今度は高熱光線モードで穴を開ける。

「今度は何がくるんだ。」

真田が使用済みエネルギーパックを投げ込むが反応がない。

「どうやら床から火が出てくるわけじゃないようだな。」

そして部屋に入るとまた隔壁が現れてしまり、シューシューと音がする。

「ごほん、ごほん。」

「硫化水素と排気ガスだ。マスクをしろ。」

古代と騎兵隊員たちはあわててマスクをする。

ふたたび扉を高熱光線モードで穴を開ける。

そのとたん敵兵が銃撃してくる。

兵士が出てくる詰所が通路の左側に発見する。そこにコスモ手榴弾を投げ込み全滅させる。

それを倒し、右側のジグザグな通路をすすむと,また突き当たって扉がある。

永倉がコスモ手榴弾を投げると扉が壊れるが、ガッシャーンという音がする。扉の内側がガラス張りのせいだった。そしてその部屋の壁もガラス張りである。天井にガラス製の銃があり、近づくと反応して液体が放出される。部屋の手前の通路の床面が溶ける。

「おそらく硫酸か塩酸のような強酸性の液体だな。」

真田がつぶやく。床面はその強酸性の液体がプールになっている。

「とても進めませんね。」

「よし。」

真田がその部屋の天井へコスモ手榴弾を投げつけた。

爆音とガシャーンとガラスの割れる音がして液体がどどっと流れる。しかし、幸いにも通路には流れてこない。

強酸性のプールの左側には通路があるようで敵兵が銃撃してくる。

古代と真田と空間騎兵隊員の一部はコスモガンの高熱光線モードで金属とガラスの合板である扉をガラスと金属に分解する。永倉と一部の騎兵隊員たちは敵兵を倒す。

ようやく全ての敵兵を倒し、ガラスと金属を分けるとガラスのいかだで通路までなんとかたどりつく。正面と左側に通路がある。

真田が通路の奥に使用済みのエネルギーパックを投げると刃物がぎっしり生えたつり天井が落ちてくる。

ヴィーッツ、ヴィーッツと警報が鳴り、古代、真田、永倉、騎兵隊員は一気に吊り天井の落ちた場所までいくと敵兵が左右の通路の奥から銃撃してくる。

ここまでくるのに騎兵隊員たちは10数名が死亡していた。

右側の通路の敵兵をたおしてすすんでいく。先頭にいる騎兵隊員が進むと、刃物のついたつり天井がまた落ちてくる。すんでのところで隊員はのがれるものの、左足がつり天井の下敷きになる。

「ぎゃあああ。」

「田中!」

 

つり天井を持ち上げようとする騎兵隊員と古代たちに敵兵の銃撃がおそう。

「えいっ。」

永倉がコスモ手榴弾を奥の敵兵のいる場所に投げ込むと爆発が起こって敵兵が吹き飛ぶ。

前方の扉を破壊すると、その奥には巨大なクマが一頭だけいる。しかしこれがくせものだった。

そのクマがどす黒い笑みを浮かべたように思えたその次の瞬間クマが腕をふるうとナイフのような爪がとぶ。

「ギャアアア」

「大野!」

胸に平行に五本の斬撃をくらったといっていいほどの傷、1mはあるだろうか、その裂傷から多量の出血をしている。

応急の止血スプレーを吹き付けるがこれ以上前進めないのはあきらかだった。

「大野、田中、ここなら安全だから待っていろ。後で助ける。」

「申し訳ない。」

「しかしあのクマをなんとかしないと...。」

「あの刃物のような強力すぎる爪のせいでサソリやハチやヘビがいないということだな。」

「同士討ちになったら意味ないからな。」

「しかし頭で考え、目で敵を狙っていることにはかわりない。」

「おとりがあれば楽なんですが...。」

「ああ、わかった。小惑星帯の訓練で使ったデコイのマイクロ版がある。」

真田がなげるとぽこんと軽い音がしてまるっこい「戦艦」もどきが現れる。

爪熊はそれを狙って腕を振り回し、5本のナイフがデコイにおそいかかるが、それをよける。その間に目と頭を狙うが、なかなか当たらない。そのとき背後からザッザッザッと音がする。敵兵が通路狭しとばかりに並んで迫ってくる。

「チャンスだ。」

古代、真田、騎兵隊員は顔をみわわせる。敵に挟み撃ちにされているように見えるが、敵は横一列に並んで槍を持っているので動きが鈍い。

真田、古代、永倉は、敵兵のあしもとに素早く入り込む。

そして敵兵の背中を想いきり突き飛ばすと爪熊の部屋に放り込まれる形になる。

爪熊は敵兵に向かって爪をふるう。

真田は、その頭に向かってコスモガンを撃った。

その巨体がどうと倒れて敵兵がつぶれる。そのすきにももがいている敵兵や槍を持ち換えてこちらへ向かおうとする敵兵を古代と騎兵隊員は倒していく。

爪熊と敵兵の「遺体」乗り越えていくと左側に扉があり、それをコスモ手榴弾で爆破する。

するとシューシューという音を立てながらサイボーグのガラガラヘビが多数たむろしている。コスモ手榴弾を投げこみ、生き残ったガラガラヘビを慎重に頭を狙って倒していく。すべて倒すとガラガラヘビの遺体を部屋に投げ込む。するとあんのじょう刃物のついた吊り天井が落ちてくる。

「この仕組みにも慣れたな。」

顔を見合わせ苦笑する。しかし落ちたろ吊り天井のうえを進んでいくと再びシューシューという音がして、サイボーグのガラガラヘビが次々と上から落ちてくる。

必死にコスモガンで打ち倒していると今度は前後の隔壁がいきなりしまって催涙ガスと硫化水素と排気ガスが出てくる。

「ごほつ、ごほつ、マスク」

古代、真田と騎兵隊員たちは高熱光線モードで正面の隔壁に穴をあけて脱出する。

しかしまた10mほど先に扉があり、扉を破壊すると全く同じ仕組みでガラガラヘビ→吊り天井→ガラガラヘビ落下+毒ガスの部屋だった。

その次の扉は容易に破壊できた。

その部屋は真っ暗闇だった。

真田は、念のために例の戦艦デコイをその部屋へ入れると次の瞬間には引き裂かれて落下していた。

「なるほど...恐ろしいな」

永倉がコスモ手榴弾を投げ込む。

爆発してなにやら落ちてくる。多量のナイフだった。

「そろそろだいじょうぶか」

ブスリ、ブスリと鈍い音がする。

「ぎゃあ」

「どうした!」

「ぎゃあ」

「....。」

 

照らしてみるとナイフが何か所も刺さって裂傷があり即死している。

古代、真田、騎兵隊員たちは部屋の隅に逃れる。

 

「ん、なにか息ぐるしいな」

「もしや...。」

「酸素濃度が...マスクしろ」

幸いにも飛び回るナイフは飛び回っているだけで壁の近くまでは来ないようだった。

コスモガンを高熱光線モードにして左側の扉をこじあける。

その先には10m先に扉がある。

「どこまで続くんだろう」

「この疲労感も敵の狙いだな」

次の扉はコスモ手榴弾で簡単に破壊できたが、中は火の海だった。

「うわあ...。」

「通れないぞ。」

「仕方ない。正面の扉をあけてみるか。」

扉を開けた通路10m先にやはりとびらがあり、コスモ手榴弾で簡単に破壊できるがその先もやはり火の海で炎が燃えさかっていた。

 

【挿絵表示】

 



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第29話 デザリアムの迷宮を突破せよ(後編)

真田は考え込んだ。

「先ほどの部屋は酸欠だった。もしかして...。」

「なるほど。炎のエネルギーにするために酸素を送っていると」

「そうだ。」

コスモガンの高熱光線モードで通路の壁を縦にIの字状に穴をあける。

すると部屋で飛び回っていたナイフが向かってくる。

「くつ。そういうことか...」

「真田さん!」

「ふんぬ...」

永倉がコスモ手榴弾をナイフの部屋に投げ込み爆発させる。しばらくするとまたナイフが湧き出して飛んでくるのを古代と騎兵隊員たちはコスモガンで撃ち落とす。

高圧熱線モードで、壁をこじ開け酸素供給パイプのコックをさがす。

「真田さん、まだですか。」

「すまん。まだだ。」

ブスリ...

「ぎゃああ」

ついに騎兵隊員がまた一人ナイフに刺され倒れる。

ブスリ...

「ぎゃああ」

「真田さん!」

「そうか、これだ。」

そのコックを発見する。

回すと炎が消えるが

ドッガアアアーーーンン

激しい爆音をたててコックが爆発する。

「ぐつ」

真田の腕が吹き飛ぶ。

「真田さん!」

「大丈夫だ。俺の腕は作りものだからな。古代、その荷物をあけてくれ。」

新しい腕がはいっていて、その腕を取り付ける。

炎が燃えていた部屋は、両脇に扉があるようだったが正面は行き止まりだ。

古代は念のためにひろってきたサイボーグの破片を天井にぶつける。

案の定刃物のついた吊り天井が落ちてくる。

「とりあえず左からいってみますか。」

「ああ」

左側の扉を開け通路の先の扉がコスモ手榴弾で開かないのでコスモガンでロの字に高熱光線モードでこじ開ける。

すると猛烈な冷気が吹雪のようにあふれ出す。しかもその中はナイフが飛び回っていた。

一同は苦笑する。

右側の扉へ行き、コスモ手榴弾で扉を壊すと今度は、爪熊が待ち構えていた。

「幸いにもどちらも部屋から出てこれないようだ。二手に分かれるか...」

「技師長。デコイをください。」

「わかった。」

永倉と騎兵隊員は爪熊の部屋へ向かう。

デコイを使い、おとりの射撃を行い、爪熊の気の散っているところでその眉間に致命的な一撃を打ち込んで倒し、吊り天井を落として奥の部屋へ向かう。しかし、奥はガラガラヘビの部屋で左側に扉があり逆戻りしてしまうようだったので、永倉たちは引き返した。

 

古代、真田と騎兵隊員たちは、寒冷の部屋を前にどう切り抜けるか思案していた。

「真田さん、やはりさっきの部屋のようなパイプがあるのでは?」

「ああ、その可能性がある。」

「壁に穴をあけるとナイフがまた飛んでくる可能性があるな。」

「がってん。」

騎兵隊員がコスモ手榴弾を投げ込む。

ナイフが減った時間に壁に穴をあけてパイプを探す。

ナイフが湧いて(リポップ)増えてきた時を狙って繰り返しコスモ手榴弾を投げ込む。

「こっちにはないな。」

「真田さん。」

「壁は右にも左にもない。床か?」

床にIの字状に穴をあける。

すると左右の壁がだんだん狭くなっていく。

「技師長!」

「みつけた。」

「わたしたちが壁を抑えます。先へいってください。」

「抑えてくれるのはありがたいが、この腕と手先は切り離せる。遠隔操作でコックを回す。おそらく爆発するだろう。なるべく遠くに離れてくれ。こんなこともあろうかと手の先が動くように作っておいた。」

ヒュウと騎兵隊員たちが口笛を吹く。

「さすがですね。」

「わかりました。」

騎兵隊員たちは、壁を抑えつつ離れていく。

真田は、ロボットである手の先を切りなして遠隔操作でコックをまわすと寒冷の部屋の吹雪は止まると同時に...

ドッガアアアーーーンン

「うわっつ」

コックの部分が爆発し、爆炎が広がる。

壁の動きも止まる。

突き当りの扉を爆破させると、その奥の部屋も炎で燃え盛っていた。

床や壁をコスモガンで焼き切るがパイプのようなものはない。

「この奥の部屋がおそらく酸欠か寒冷の部屋でセットなのだろうな。」

しばらく思案していたが、

「今度も壁を焼き切るしかないだろう。壁の裏からいくしかない。」

壁をコスモガンで人が通れるくらいの大きさの穴をあけて焼き切る。

壁の裏は屋根裏ほどの非常に狭い通路になっている。

「ぐつ。」

壁修理用のミニロボットがあらわれ、針のようなものを飛ばしてくる。

「大丈夫ですか。」

古代と真田は、騎兵隊員に守られながら、ミニロボットを倒しつつ、狭い壁裏を身体を横に倒しつつそろそろと、

ミニロボットを倒しながら進む。

壁の裏をカニ歩きで進むと、炎の部屋の角であろう部分がつきだしているのがわかる。

「もう少しだ。」

「行き止まりというか壁だな。」

「なんかパイプ状のものがあります。ドンピシャです。」

「やっぱりそうか。この壁の向こうが通路だ。地獄の炎の犠牲にならなくてすんだぞ。」

全員にやりとする。

壁をコスモガンで焼き切って通路に出る。

すると次の部屋の扉があいて刃物が飛んでくる。

「この壁裏の配管部分にいた方が安全だな。」

「よし、また「手」でコックを回すから離れててくれ。」

「手」でコックをまわすとまた爆発した。

酸欠の部屋の壁裏づたいぎりぎりを通って入り口付近の壁を焼き切る。

通路には刃物が弓矢のように飛び交っている。

壁裏から扉の開いた部屋の中に手榴弾を入れて爆発させる。

「いまだ。刃物が湧かな(リポップ)いうちに部屋を通過する。おそらく酸欠の部屋だからマスクを忘れないように。」

「承知~!」

騎兵隊員は軽口をたたく。酸素マスクをしてほふく前進で部屋の入口へ入っていく。

しばらくするとナイフが湧き出してきて隊員をおそう。

「ぐあ」

「大丈夫か!」

足を引っ張って引きずり出す。刺された隊員は、仲間が止血しようとするが止まらず、まもなく首から力が抜けてがっくりと顔を床につけて白目をむく。

コスモ手榴弾を投げ込む。バラバラとナイフが落ちる。一人か二人が部屋を通り、右側にある扉付近にうつり、高熱光線モードでとびらに穴をあけはじめる。再びおびただしいナイフが湧いて、扉を開けようとする隊員を背中から襲った。

「ぐあ」「ぎゃああ」

「渡れないぞ」

古代と真田はうなづきあい、古代はナイフの刃のほう、真田はナイフの柄の部分を投げつけて天井にあてる。柄の部分がぶつかると案の定吊り天井が落ちてくる。

「よし、壁際に沿って進め。」

ナイフが上から落ちてくる。幸いにも右の扉の場所は部屋の入り口から近く、コスモガンで途中まで熱線であけられた裂け目をひろげてついに扉に穴が開いた。

次の扉は、コスモ手榴弾で穴があく。

中は真っ暗闇でキイキイ何かが鳴いている声が聞こえる。

「入るな、危険だ。」

真田が騎兵隊員を止める。抗議顔の隊員に

「これを見ろ」

真田は戦艦デコイを取り出し、部屋に入れるとたちまち切り裂かれて落下した。

「マヤ神話にでてくるカマソッツか...」

「刃物を持つ蝙蝠が飛び交っているわけですか...。」

「ああ、一匹一匹倒してもきりがない。どうせまた湧くだろうし。」

コスモ手榴弾を投げ込み、念のために拾ってきたナイフを柄から天井に投げつけて吊り天井を落とす。正面奥の扉を破壊し、通路をすすむ。二回連続ガラガラヘビと毒ガスの部屋だった。三部屋目の扉を開けるとそこには

真っ暗闇にグルルルル....不気味なうなり声がした。



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第30話 デザリアム迷宮最深部冥界の番犬あらわる!

暗闇に輝く6っつの赤い目

15mはあるだろうか?巨大なケルベロスがいた。

 

ケルベロスに向かって、コスモガンを高熱熱線モードで撃つが全く効果を示さない。

グルルルル...

騎兵隊員がコスモ手榴弾を投げつける。

グオオオオオオオオーーーン

激しい爆発音と爆煙が晴れると無傷のケルベロスがいた。

ケルベロスが三つの首をふって口を開く。

次の瞬間火炎放射器のように口から炎が吐かれる。

「うわああああ...。」

もろに食らった騎兵隊員が倒れる。

次にケルベロスは腕を振るった。爪熊のような五つの風爪が飛ぶ

「ぐわあ...。」

もう一人別の隊員がくらっている。噴水のような出血。

なんと即死だった。

戦っていくうちにまた一人、また一人と騎兵隊員が倒れていく。

気が付くと20人はいた騎兵隊員は永倉以下5名になっていた。そのうち10人以上は確実に

死亡していてあとは重傷のけが人が数名といったところだった。

「ここで死ぬわけにもひきかえすわけにもいかないが,,,、」

「コスモ手榴弾もコスモガンも効かないとなれば...。」

「試してみるか。」

「何をですか。」

「炎を吐く瞬間に奴の口の中にコスモ手榴弾を投げ込む。この距離からだと4秒くらいで届く。」

おとりになるものを投げつけてケルベロスの反応をみる。風爪をとばさせる。

何度かおとりが引き裂かれる。隊員たちは巧みに避けるが、ついに一人の隊員にあたる。

「ぐあ...。」

ケルベロスが口をひらく。

「いまだ!」

手榴弾が口の中に入る直前でケルベロスが炎を出し、爆発する。

「だめだったか...」

しかし、炎を吐いた頭が口をパクパクさせている。

「!?」

隣の頭が動き、コスモ手榴弾が目の前で爆発した頭に対し回復魔法をかけているようにも見える。

「そうか!」

「あぶない!!」

「グオオオオオオオ」

三つの頭が一斉に炎を吐く。

「だいじょうぶか!!」

「また吐こうとしている!」

コスモ手榴弾を口へ向かって投げつける。

ケルベロスの口に入って爆発する。

頭が吹き飛ぶ。

「やった!!」

回復役の中央の頭がヒールして頭が戻る。

一同の方から力が抜ける。

そのとき真田が

「いったんひきかえす。」と呼びかける。

古代、真田のほか永倉、相馬、林、近藤の騎兵隊員4人は安全な通路にもどる。

「今までケルベロスの攻撃、回復パターンを記録した。火を吐くまで4.5秒、頭がやられ、回復を始めるときに2秒かけて始めている。その間隣の頭の方向へ顔を向ける。片方の頭をやったら、回復されない前に回復役の中央の頭の口にコスモ手榴弾を投げ込むんだ。そうすればいっぺんに二つの頭を倒せる。」

 

風爪をよけ、おとりの「戦艦」、サイボーグの残骸などを投げつけ、風爪をつかわせる。

炎を吐こうと口を開いた瞬間にコスモ手榴弾を投げ込む。

「今度こそやった!」

「そおれ!」

回復役が口を開いた瞬間、その口にコスモ手榴弾が入って爆発

「やったぞ!」

そのとき三つ目の頭が火を吐く。

「うわああああ」

「相馬、だいじょうぶか?」

「少しやけどしましたが...これしき...」

ケルベロスの口に古代がコスモ手榴弾を投げ込んだ。

ボカーーーーン

三つとも頭が吹き飛び、ケルベロスは狂ったように腕を動かし風爪を使う。

真田が天井に何やら投げつけ、例によって剣山のような吊り天井が落ちる。

しかしケルベロスに当たった刃物はすべて割れて吹きとんだ。

「なんていうやつだ。」

「しかし奴はもがいている。今がチャンスだ。」

「持ち上げられたらあの風爪の連発で即死だ。」

「わかった。」

「近藤!なにをするんだ?」

「技師長、古代さん、副隊長行ってください。この吊り天井は俺たちで押さえます。これはチャンスです。これを抑えきれないと死ぬしかない。はやくいってください。」

「わかった。近藤、相馬!死ぬなよ」

永倉が言うと、近藤は親指を立ててにやりと笑う。前隊長の斎藤始を思い出し、涙をふるった。

扉を焼き切って開けると通路になっていた。通路は薄暗く、天井が床から3.5mから4m、天井から1mくらいの壁の位置にともし火が5mくらいの間隔で設けられている。左右交互になるようになっており、都合約2.5mおきにともし火があることになっている。中世風の鎧を着た騎士たち12人が3mごと2mごと4mごとなどランダムな間隔で行ったり来たりしている。

「何かのゲームのように、やつらにぶつからないように通れということか...。」

「おそらくそういうことでしょうね。」

「よし。動画を撮っていっぺんに通過できるタイミングを見計らおう。」

真田は何度かデコイをとばした。

騎士の半径1m以内でデコイが斬撃されくだけることがわかった。

そうして40分後...

「どうやら15分に一回は、この進み方で突破できそうだ。一気に行くぞ」

真田、古代、永倉は一気に通路をジグザク進みながら騎士たちを避ける。

「あの左側の角が出口らしい。」

「あと15mくらいですね。」

「あと3人だ。」

「!?」

「急に速度が変わったぞ」

「後ろから騎士たちが来る。」

コスモ手榴弾を前後の騎士に投げつける。

一時的に倒れたところを一気に通過する。

「ぐあ...。」

「永倉さん!」

胸に剣がささっている。

「は、はやく、先に行ってください。」

「おおーーいい」

近藤、相馬がコスモ手榴弾で騎士を倒しながらすすんでくる。

倒れても数秒で騎士は起き上がる。コスモガンの高熱熱線モードで騎士の頭を焼き切る。

「きりがないな。」

「ぐあ」

背後から襲いかかられて槍に貫かれている。

「相馬、そうまああ~~~~~」

「近藤、援護する。」

古代と真田はコスモ手榴弾を前後に投げつける。

「ようやく突破したか....。」

すると今度は

ヴィーツ、ヴィーツという警報音が鳴り響く。

ザツザツザツ...と軍靴のような大人がなり響き、ダースベーダーのようなメガネと兜をかぶった漆黒の鎧を着た敵兵が幾重にも横一列に並んで剣をもって進んでくる。古代と真田はサイレントモードで敵兵を撃つが効かずに進んでくるので高熱熱線モードにきりかえる。敵兵は鎧が焼かれて切断されながらものしのしと進んでくる。

 

 

 

【挿絵表示】

 




通路を行ったり来たりする中世風の鎧騎士は、リネージュ2セブンサインクエスト司祭たちの秘密儀式に着想を得ました。

https://www.bing.com/videos/search?q=%e3%82%bb%e3%83%96%e3%83%b3%e3%82%b5%e3%82%a4%e3%83%b3%e3%82%af%e3%82%a8%e3%82%b9%e3%83%88+%e5%8f%b8%e7%a5%ad%e3%81%9f%e3%81%a1%e3%81%ae%e7%a7%98%e5%af%86%e5%84%80%e5%bc%8f&qpvt=%e3%82%bb%e3%83%96%e3%83%b3%e3%82%b5%e3%82%a4%e3%83%b3%e3%82%af%e3%82%a8%e3%82%b9%e3%83%88+%e5%8f%b8%e7%a5%ad%e3%81%9f%e3%81%a1%e3%81%ae%e7%a7%98%e5%af%86%e5%84%80%e5%bc%8f&view=detail&mid=19D8BCBFB5825FA7FA6719D8BCBFB5825FA7FA67&&FORM=VRDGAR&ru=%2Fvideos%2Fsearch%3Fq%3D%25e3%2582%25bb%25e3%2583%2596%25e3%2583%25b3%25e3%2582%25b5%25e3%2582%25a4%25e3%2583%25b3%25e3%2582%25af%25e3%2582%25a8%25e3%2582%25b9%25e3%2583%2588%2B%25e5%258f%25b8%25e7%25a5%25ad%25e3%2581%259f%25e3%2581%25a1%25e3%2581%25ae%25e7%25a7%2598%25e5%25af%2586%25e5%2584%2580%25e5%25bc%258f%26qpvt%3D%25e3%2582%25bb%25e3%2583%2596%25e3%2583%25b3%25e3%2582%25b5%25e3%2582%25a4%25e3%2583%25b3%25e3%2582%25af%25e3%2582%25a8%25e3%2582%25b9%25e3%2583%2588%2B%25e5%258f%25b8%25e7%25a5%25ad%25e3%2581%259f%25e3%2581%25a1%25e3%2581%25ae%25e7%25a7%2598%25e5%25af%2586%25e5%2584%2580%25e5%25bc%258f%26FORM%3DVDRE


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第31話 最後の戦い(前編)

近藤と林が敵兵の足元に飛び込んで倒していく。敵兵は剣を振るいながらも後ろの後列は混乱するが、将棋倒しにならないように1.5m程の間隔をあけているので、三列目は無傷で剣を振るってくる。

「近藤、林どいてくれ。」

「おう!」

真田と古代はコスモ手榴弾を投げつける。敵兵が倒れたところを進んでいく。背後の敵兵が10秒ほどで立ち上がったところを近藤と林が白兵戦技で倒す。敵兵の足元を狙って倒しながら進む。足元から安全マージンをとり5列後ろくらいでコスモ手榴弾を爆発させる。

そしてついにドーム球場程もあろうかと思われる広い空間にでた。

「ついについたぞ。」

中央には、インジケーターランプが平行に無数に点滅する縦30m横20mはあろうか卵形の物体があった。配管が四方八方に無数にのびている。「苦しい戦いだった。」古代と真田は顔を見合わせつぶやく。

入り口へ入ろうとすると、上のほうの壁にベランダのようなものが設けられ見張りの兵士が銃撃してくる。

「これじゃあ、とても近づけないな。」

出口通路にも犬走りないし、ベランダのような通路があってそこからダースべーダーのような「兜」をかぶり、目を赤く発光させ、黒光りして武装した兵士が銃剣をもっておしよせてくる。

「古代、技師長はなれてくれ。」近藤が叫ぶ。

林と近藤がコスモ手榴弾を兵士たちの背後に投げ込んで倒す。

しかし、次から次へと兵士が「湧いて」くる。

「きりがないな。」近藤がつぶやき、二度目の手榴弾を投げ込んで、メカが体の随所からのぞく黒い兵士たちの「遺体」を乗り越えて、ようやくのことで入り口から右脇、左脇に続く通路にひしめいている黒光りする兵士たちの後ろにコスモ手榴弾をなげこむ。

爆発が起こって、黒光りする兵士たちの後続部隊は、通路が破壊されたために動力源の空間の数十メートル下のほうへ次々と崩れ落ちるように、しかし叫び声もあげずに落ちていく。しかし近藤と林もただですまなかった。

「ぐわつ。」

押し寄せる黒光りする兵士に串刺しにされる。

「林、はやしいいい」

通常の銃撃が効かないため、コスモガンを高温熱線モードにして至近で打ち込んでようやく倒せることに気がつく。

真田は近藤と古代が戦っている間に、動力源の写真を撮って爆弾に座標データを入力して5~6個の時限爆弾を飛ばした。

爆弾は、ドーム内を飛びながら指定された座標へとんでいく。

古代と近藤は思わずおどろく。

「あれだけの高エネルギー反応があるものだからなんとかできるはずと思ってね。」

「なるほど。これなら近づかなくても済むわけか。」

「じゃあ、引き返そう。」

「近藤、時限爆弾はセットした。7分後に爆発するから引き換えすんだ。もし、速く脱出できたらその時点で爆破させる。」

「了解。」

つり天井のわなを壊しながら、古代と真田はもと来た道を引き返す。

「うえあっつ。」

刃物がついたつり天井の落下をたくみにさけるものの、ついに落ちてくる天井にとじこめられる。

見ると近藤が血まみれになっておさえている。

「古代、技師長。はやくにげてくれ。」

「近藤!。」

「こういった白兵戦のために俺たちはいる。」

「わかった。」

「古代、真田技師長、ヤマトを地球を頼んだぜ。」

巧みに敵の銃撃を避け滑走路のあるところまでたどりつく。

「おお~~い」「古代班長、真田技師長、援護します。」

加藤たちと一緒にきた騎兵隊員たちも生き残りが3割ほどになっていた。

「発進します。」

古代のコスモゼロに続いて次々とコスモタイガーが飛び立っていく。北極からの通路の内部で加藤隊が敵戦闘機隊と交戦中だった。北極の通路を半分ほど進んだところで後方で明るい光が闇を切り裂くように輝く。見ると水晶都市に亀裂が走り、引き裂かれるようにまぶしいほどの光がもれている。

「全機、北極ハッチから脱出!」

水晶都市から北極ハッチまであと2割のところで激しい閃光が水晶都市の位置で輝き、爆発が起こり、すさまじい勢いで爆発の煙と衝撃波がおそってくる。コスモタイガー隊はそれぞれ8割が失われた。

「みんな...。」

古代は後ろを一瞬振りむいた

 

デザリアム星は大爆発を起こしすさまじい爆発煙を噴出していた。

「山本、コスモタイガー...永倉さん、近藤...空間騎兵隊...大きな、本当に大きな犠牲だった...。」

(これほど大きな犠牲をはらったのだ。今度こそ地球の勝利なんだ...)

古代は辛く悲しい思いを振り切るためにことさらに勝利を半ば意識してつぶやく。

しかし、引きちぎられたデザリアムの爆発の煙がじょじょにはれていくと信じられないものが姿を現した。それは黒光りする巨大な要塞であった。

 

その要塞は「滅びの方舟」の天守閣ににた突起のようなものが四方八方に突き出し、それぞれの突起に設けられた12の「目玉」が赤黒く光っていた。見る者を圧倒する重量感と威圧感を誇っていた。そしてその突起物の下には、それぞれ直径にして20mはありそうな巨砲がついている。

グレートエンペラーの姿がスクリーンに映し出された。

それは黒々とした牛か竜のような細長い顔で、一回転する二つの角がついていた。

そして赤い眼光が不気味に光る。

「地球の戦艦よ。よく戦った。われこそは、絶対者エサルハドン・バーン・アプリ、全宇宙を統べ治める者、グレートエンペラーだ。お前たちが「滅びの方舟」とガトランティスなどという作り物の人形どもを抹殺したことは知っている。われわれは、全宇宙を支配するのに邪魔な人形どもを滅ぼすつもりだったがやつらが欲をかいて早まってお前たちに手を出したのでお前たちがゴレムを発動させやつらを一掃し手間が省けた。しかし余計なことをしてくれたな。おとなしく従えばいいものをわが帝国の本星デザリアムを破壊するとは。しかしここがお前たちの墓場になる。ガンマ砲発射。」

 

真田が指をならしヤマトが銀色のかがやきにつつまれる。

しかし、一門の巨砲から発射された光と熱の奔流が空間磁力メッキをつきやぶりヤマトを貫いた。

爆発音がおこった。ズゴーンン...地響きのような音と振動がヤマトを襲い、その振動で船体はゆらぐ。第一艦橋も例外ではなく、激しい振動で乗組員は自席からはじきとばされる。

「うう...。」

「被害報告!」

「機関室!機関室!応答せよ。」

「エンジン出力低下...しかし、航行に支障なし。」

山崎がコンソールにつっぷしてしまう。その額からは出血している。

「山崎さん!、山崎さん!」

 

ふたたびグレートエンペラーの不気味な姿が映し出される。

「ふはははは。そんなうすっぺらなメッキとやらがこのガンマ砲に通用すると思っているのか。さあヤマトよ。次がお前たちの最後だ。」

グレートエンペラーの哄笑が響いた。

 



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第32話 最後の戦い(中編)

「真田さん...。」

「古代。奇跡的に波動エンジンは無事だ。しかし波動砲の発射機構が完全に破壊されている。航行するのがやっとの状態だ。」

ヤマトに爆発音が続いている。巧みなダメコンで敵弾をくらってもまた幸いにも貫通したおかげで誘爆が少なくてすんでいる。しかし次に食らったらもう終わりだろう。

 

「もはやエンジン噴射口を狙う手段も、そしてこの要塞のガンマ砲をそのまま砲門へ向かって反射する手段もこの要塞には通用しない。たよりの戦闘機隊ももうろくに残っていまい。どうする、ヤマトよ。ふはははは...。」

 

「あのガンマ砲は、敵がかなり戦歴を積んでいることを示す恐るべき兵器だ。光学兵器で空間磁力メッキをとにかく無効化し、打ち破ることだけを目的に作られたという性質上、垂直にあたった場合のみ有効で、垂直にあたった部分だけヤマトの船体に穴があいている。しかも偏光バリアや四次元フィールドの技術を逆用して相手にあたった瞬間に逆反射させて高熱で相手を貫通させる兵器のようだから、誘爆が少ない。戦車でいう徹甲弾が正面なら貫通しても斜めだと跳ね返されてしまうのに似ている。だからまともに食らわなければ空間磁力メッキは有効だ。あの砲口と敵のエンジン噴射口が弱点なのには変わりない。あの砲門のひとつだけでも破壊できればぜんぜん状況は変わるのだが...。」

「敵砲門の射線を精密分析。」

ガンマ砲が輝き始める。

「敵ガンマ砲の斜線計算でました。これは...。」

船体と艦長室を貫いて破壊する方向であった。

「船体を貫かれないようにするには、もうすこし天底方向に移動したほうがいいな。」

避けるためにはやや天底方向に移動するしかない。

その場合も第一主砲、第二主砲、第一副砲と第二艦橋付近が貫かれるのはほぼ確実だった。

「....。」

もはや船体は小ワープしたらもたないだろう。古代と真田はくちびるをかみしめる。

「面舵90°上下角-20°」

島が敵から真横になった船体を縦方向へ動かすがガンマ砲の二発目が撃たれる。

激しい振動の後ぐらりと穴の開いた艦橋がかたむく。

「うわああああつ。」

乗組員は床に投げ出され、床面が30°近く傾く。

「第二主砲塔、第一副砲塔、第二福砲塔大破、第二艦橋下部に貫通。被害甚大。」

王手飛車取りの状態で、もし配置を誤っていたら艦橋と船体にガンマ砲を二箇所食らって詰んでいたところだった。これでも技術班の迅速な精密計算と島の操艦で最低限の被害に抑えたのだ。

そのときだった。航空隊の二名が申し出る。

「技師長。われわれが行きます。あの砲門が発射されるタイミングでミサイルなり魚雷なり撃ち込みます。」

「危険だ。かえってこれなくなるぞ。」

「ここであの要塞を破壊できなければ、あの要塞で地球が攻撃されます。波動砲が効かないし、空間磁力メッキも破られるようであれば地球は終わりです。ここで食い止めなければ...。」

「わかった。こんなこともあろうかと思って発射される瞬間のエネルギー反応データをとっておいた。通信で送るとジャミングされる。だからこのメモリーカードを渡すからセットして発射される瞬間の2秒前に敵の砲門に命中させるんだ。」

「了解。」

二人の勇士は、コスモタイガーで飛び立つ。

「真田、古代。」

「尾崎さん、お願いします。」

「あの砲門をねらうんだな。援護しよう。」

「お願いします。」

イモ虫型戦闘機と白色円盤状戦闘機の攻撃を避けながら要塞に接近する。

イモ虫型戦闘機と白色円盤状戦闘機はヤマトにも襲いかかる。

「波動防壁展開。」

「敵ガンマ砲に被弾!」

「被害報告!」

「波動防壁消失!ただし間もなく回復します。」

「右舷パルスレーザー砲塔群に被弾!5番~10番使用不能!」

「やはり垂直に命中した部分のみ破壊されたか...。」

「しかし誘爆も続いています。」

船体が振動で揺れ続けた。

 

「すさまじい威力だな。」

「ああ。波動砲以外は破れないはずの波動防壁の衝撃波面を吹き飛ばすだけでなく、空間磁力メッキも無効化するんだからな...。」

島は無言で操縦桿を握って巧みに操作する。

ガンマ砲は垂直にあたらずに反射される。

島の額には汗がにじんでいた。巧みな操艦でかろうじて直撃をくらわないですんでいる。

「島...。」

「古代。これまであのぎっしり並んだデスラー機雷を避けたり、異次元空洞や宇宙気流で流されたりしたのに比べたら自分の力で操艦できる分楽なほうだ。」

島は微笑んで答えた。

 

『しゅんらん』の援護もあり、ガンマ砲の四発目はなかなかヤマトの船体にはあたらない。おそるべきことにガンマ砲の同時発射があるが、すんでのところで『しゅんらん』は小ワープする。イモ虫型戦闘機と白色円盤状戦闘機の弾幕は波動防壁で避けるとともに煙突ミサイル、波動爆雷、側面ミサイル発射口、艦首魚雷で防戦する。二機のコスモタイガーは苦しみながらもガンマ砲口に近づいていく。

 

「愚か者め。」

その瞬間だった。コスモタイガーから魚雷が発射されると同時に「滅びの方舟」の突起が一回転するやいなや赤黒い目玉がひときわ輝き、竜巻のような衝撃波が発せられ、コスモタイガーをつつみ引き裂いていく。

 

 

「!!」

第一艦橋のクルーは粛然として敬礼する。

魚雷は砲門に命中した。しかし、500兆テスラのバリアが張られる。

 

ガンマ砲のエネルギーが充填される。

光球がヤマトへ向け発射される。

「!!」

光と熱の弾は、激しい光の濁流となってヤマトの艦長室を貫いた。

ズガアアアアアアアンン...バキバキバキ...

第一艦橋の艦長席に落盤する。

「艦長!山南艦長!」

第一艦橋のクルーたちは振り向き、艦長席で額から血を滴らせている山南を振り返って愕然とする。

 

「真田、古代!」

「あのバリアは500兆テスラだ。『しゅんらん』の拡散波動砲三門を至近で撃ても破れないだろう。」

「そうですね。装甲は、実体弾を跳ね返す堅牢さに、4次元フィールドで一切の光学兵器を無効化、砲口のバリアも拡散波動砲収束モードも効かないようです。」

 

『しゅんらん』も波動防壁をヤマトより頻繁に展開できるとはいえ、再展開までのタイムラグがある。『しゅんらん』は、中破であり、ヤマトは、ほぼ大破に近い状態であり、満身創痍だった。

 

「真田、古代に話してくれ。」

瀕死の息で山南は真田に説明するよう伝える。

「真田さん?」

「艦長、まさかと思いましたが、これを使う日が来てしまうとは...」

山南がうなずく。

「なんですか?」

古代は問い返した。



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第33話 最後の戦い(後編)

真田はおもむろに答える。

「波動砲のシリンダーを積み替えるんだよ。」

「しかしあの敵には波動砲は通用しません。」

「そうだ。だから反波動格子をしかけてある。その意味が分かるな?」

「しかし、それには膨大なエネルギー輻射が発生するはず。船体を守るものがないと不可能では?」

「ああ、仕方ないから『しゅんらん』に、尾崎君に手伝ってもらおう。」

「それから古代、君には俺に変わって艦長としてヤマト乗組員を、そして未来の地球をまもってもらう。この戦いが最後ではない。わかったな。」

山南は力尽きて、その首はがくりと横を向いた。

第一艦橋には重苦しい空気とすすり泣きが聞こえる。島だけが肩を震わせながら必死に操縦桿をにぎっている。

 

「尾崎艦長」

古代は暗号文で作戦を送る。

「書かれた通りです。お願いできますか?」

「わかった。乗組員は脱出させる。」

 

『しゅんらん』乗組員に対し尾崎は脱出の指示を下す。

「みんな。これが最後の戦いだ。ヤマトがガトランティス戦役の時に使った例の兵器を使う。それでしか倒せない。『しゅんらん』は、そのエネルギー輻射からヤマトを守る盾になるのだ。もちろん船体はもたないからそのまま船に残ったら全員死んでしまう。だから退艦し、冬月に移乗してもらう。そしてタイミングを計って自動操縦で敵の砲門の前に『しゅんらん』船体を小ワープさせる。皆は、家族のため、これからの地球のために生き残るんだ。」

「提督は?」

「俺も救命艇に乗り移るから安心してくれ。自分も家族がいる。艦とともに死ぬのもひとつの考え方だが同じような強力な敵が現れた場合一人でも熟練した戦士が必要なのだ。誇りを持って帰還しよう。」

「はい。」

みな『しゅんらん』から脱出していく。

敵の砲撃は、距離があるにもかかわらず救命艇を目ざとく発見し、一機また一機と沈めていく。

撃墜から無事に逃れることのできた乗組員は宇宙服で宇宙空間にただよう。3日分の酸素と流動食がつまれている。

 

古代は艦内放送で話始める。

「みんな聞いてくれ。山南前艦長の指示を伝える。ヤマトは波動炉心のシリンダーを積み替える。ただの波動炉心ではない。反波動格子を仕掛けた特殊なものだ。そして敵を倒す。空間磁力メッキで防げず、波動砲も効かない敵を倒すにはこれしかない。」

「で、われわれはどうするんですか?」

 

「皆も知っているようにその炉心は波動砲のエネルギーを何乗倍にも増幅し、使い捨てになる。しかも凄まじいエネルギー輻射がある。『しゅんらん』の尾崎艦長に話し、『しゅんらん』をヤマトの前に自動操縦で小ワープさせるさせるために乗組員に退艦するようお話するよう伝えてある。これで発射時のエネルギー輻射のほとんどは避けられるだろう。しかし一回発射しただけでもヤマトの船体はもたないだろう。したがってヤマト乗組員のみんなにも退艦してもらう。」

「我々も一緒に戦います。」

「『しゅんらん』でも同じ話し合いが行われているだろう。俺もヤマトを降りるのはくやしい。しかし、ここで皆のような優秀な乗組員を喪うのは地球の損失だ。これからも同じような強力な敵が現れるかもしれない。その時はだれが戦うのか?そしてそのような敵と戦う方法と力を後輩たちに伝える役割がわれわれにはあるんだ。わかってほしい。」

古代の気迫に乗組員たちは息をのんだ。

「そうときまったら俺は降りる。我々が率先しないからほかの乗組員はおりないだろう。ただし必要な操縦が終わってからだ。」

島が口を開く。

「島、ありがとう。」

古代は笑顔でうなずいた。

 

「波動砲のシリンダーを積み替えたか。上出来だがそんなものではこの要塞は倒せんぞ。」

ヤマトが敵の砲門の前にワープする。ガンマ砲がエネルギー充填され始める。

「予定宙域に『しゅんらん』ワープアウト!」

エネルギー光球が幾重にも重なり『しゅんらん』を焼いていく。

 

ヤマト救命艇の窓から第一艦橋が見える。

乗組員の一人が声をかける。

「真田一佐、古代一尉がまだいます。」

「心配するな。大丈夫だ。」

 

ヤマトのコックピットで古代は波動砲のスコープを見つめトリガーを構える。

「電影クロスゲージ明度9」

「エネルギー充填120%」

「トランジット波動砲発射準備完了。」

「発射10秒前,9,8,7.,,」

 

「!!なんだ?あの光球は?」

空間磁力メッキすら知っていた暗黒星団帝国技能陣もグレート・エンペラーもトランジット波動砲までは知悉していなかった。

 

「トランジット波動砲発射!」

団子状に連なる光球で『しゅんらん』の船体を焼き尽くしてから生まれた激しく黄色く燃える光の槍がヤマトの波動砲口から突き出されガンマ砲口を貫いた。超巨大要塞は外側は堅牢であっても内部からの誘爆には耐えられない。裂け目が生じて、みるみる広がっていく。

一方で強力なバリアに対し至近でトランジット波動砲を放ったヤマトの船体も無事ですまない。超巨大要塞の裂け目が輝きを増して全体に広がりきらないうちにヤマトの船体も爆発し、火球となる。輝く裂け目が網目のように超巨大要塞をつつむと、やがて火を吹いて、大爆発を起こし、火山の噴煙のような激しい煙と超新星のような猛烈な輝きを放ち、巨大な火球に変わっていった。

 

『しゅんらん』の10機あった救命艇は撃墜されていた。5機のみであった。

「『しゅんらん』救命艇2号、3号、6号、7号、9号ただいま着艦しました。」

「『しゅんらん』乗組員250名無事に収容。」

「尾崎提督は?」「古代一尉は?」

「まだ発見されていません。救命艇が撃墜されたようなので...」

冬月艦橋は重苦しい空気に包まれる。

『しゅんらん』の乗組員がそのとき発言した。

「救命艇が撃墜されたときにうまく脱出した人もいるはずです。3日分の食料と酸素をつんでいるので早めに発見すれば十分にたすかるはずです。」

真田、島は顔を見合わせてうなづく。

冬月から救命艇が発進される。5秒ごとにその位置を宇宙空間に送信する。それを傍受した宇宙空間に浮かぶ『しゅんらん』乗組員は、宇宙服に取り付けられた装置から自分の位置を送信する。救命艇は、宇宙空間にうかぶ尾崎や乗組員45名を発見する。

「尾崎提督以下45名の救出に成功しました。」「古代一尉の脱出カプセル回収成功しました。」

冬月艦橋の空気は明るくなる。

 

「提督。」

「真田、古代。」

「無事でよかったです。」

「あずかった艦隊を全滅させてしまったな...。」

「いえ。提督と乗組員の皆さんは...無事にかえって来たじゃないですか。」

「そうだな....。」

 

回収ができた『しゅんらん』乗組員の遺体が宇宙葬にされ、数百にのぼるカプセルが宇宙空間に流される。

「宇宙戦士の霊に敬礼!」

弔砲が撃たれた。

「みなさん、連続ワープでいよいよ地球へ帰還します。」

「山名艦長、よろしく頼みます。」

山名が冬月の航海長に「ワープ準備。」

と命じる。航海長は微笑んで「ワープ準備します。」

と復唱した。いよいよ地球に帰れるのだ。

航海長は、スクリーンで上下する光点が5本の空間曲線の交点と一致する瞬間に「ワープ」と宣してレバーを大きく倒すと、冬月の船体は、40万光年先の白色銀河からその姿を消した。

 

「重核子爆弾の機能停止。」

「敵円盤形三脚戦車完全にコントロールを失っています。」

円盤型三脚戦車はぶつかり合ったりして倒れていく。

「長官、お喜びください。敵本星と敵巨大要塞をトランジット波動砲で破壊成功との戦闘詳報です。」

「そうか、ヤマトがやってくれたか。」

「はい。しかし帰還は冬月1隻のみだそうです。」

「苦しい戦いのようだったからな...帰ってきたことを歓迎しなければなるまい。」

長官は空へ向かって敬礼した。

 

 

「地球艦隊が本星を破壊したようです。」

「そうか...。」

「司令、仇をとらないのですか。」

「いや、ここでたった一隻の地球艦隊を叩いたところで、戦闘詳報を送られて備えている地球の本隊と戦わなければなるまい。

グレートエンペラーが倒れられ、数百万光年に及ぶ我が帝国の版図に派遣された将軍たちと戦うことになるだろう。今までは圧倒的な戦力をもったグレートエンペラーにつきしたがってきたが、ガミラシウムとイスカンダリウムの収奪に頼りきって無制限な版図の膨張に狂奔してきたことに反対してきた将軍たちも数多い。こうなっては我が帝国も一枚岩ではないだろう。やつらと戦ってきたことで宇宙空間からエネルギーを調達する波動エネルギー技術を得ることができた。われわれはその意味で他の勢力に対して優位に立てるのだ。」

「はい。」

ガイウス艦隊はいずこへとひきかえしていった。

 



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