もしもドキドキ文芸部の主人公が「キョン」だったら (Pazz bet)
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プロローグ

 桜の花が咲き乱れる4月。

 

 早いことで、俺ももう高校一年生だ。

 

 まあ、これまでなんとなーく学生生活を送ってきたはいいものの、やっぱり高校生となればちょっとは面白いことをやってみてもいいと思う。

 

 となると、部活とか...。

 

 ...っておいおい、なに勝手に自分語りしてんだ俺。

 

 遅くなったが、自己紹介だ。

 

 といっても、俺の名前がどうだとか、そんなかたっくるしいことは無しでだな。好きな食べ物は苺とカレー、好きな色は...これもどうでもいい。

 

 皆さんに覚えていただくことは、俺がどこにでもいる平凡な少年、ということだ。これは結構重要なこと。なにしろ、影が薄すぎて今まで何度本名を忘れられたか数えきれないくらいだからな。なになに、なんて呼べばいいのか、それくらいは言えって?

 

 別に、好きなように呼んでもらえればいいんだが。.,.強いてあげるなら、キョン、かな。

 

 

 

 

 

 玄関で上履きにはきかえ、新しいクラスのドアの前に立つ。

 

 新しい学校で、どんなものに出会って、どんなことを経験するのか、っていうのは、誰しもが入学の時、思うことだと思う。

 

 さしもの俺も例外ではなく、みんなと同じくらいには、あー、いや、そこまで行かなくとも、多少は楽しみにしてた。

 

 さあて、希望のドアをあけますかー。

 

 

 

 「よお、キョン!久しぶりだな!」

 

 「おはよう、キョン君!」

 

 ...なんだ、お前ら、同じ学校だったのかよ。

 

 こいつらは、国木田と谷口だ。

 

 国木田は、片方の優男で、まあそこそこに勉強ができる。

 

 谷口は、もう一方のキザを匂わせる癖毛の男で、まあ...女好きのただのアホだ。

 

 それで、別に勘違いしてもらいたくはないのだが、俺はこいつらのことを嫌いだとかそういうわけじゃあない。むしろ、同じ馬鹿やって小突いて突っ込んでできるくらいの仲ではある。

 

 ただ、来て早々に見た顔がこれって...。

 

 「いやー、ビックリだぜ!お前も北高に来てたとはな。」

 

 それは俺もだ。

 

 「僕もだよ。まあ、これからもよろしくといったところだね。」

 

 おう。で、なんでおまえ達は俺がここに来ることをわかってたんだ?

 

 「前見りゃわかる。名簿があるからな。」

 

 ああ、なるほど。

 

 確かに黒板には、クラス40人分の名前が書かれた紙が貼ってあった。

 

 何はともあれ、これで、高校生活初期によく見られるボッチの仲間入りをせずにすんだわけだ。その点についてはよかったんじゃないかね。

 

 ま、いずれはこの二人だけでなく、目立たない程度に同類を見つけて過ごすことにしよう。

 

 そういや、うちの学校から来たのは俺達だけか?

 

 「いやそれが、あと一人居るんだ。」

 

 へえ、あと一人?ほほう、それは誰だ?

 

 「あれだよ。」

 

 谷口が親指の指す方向を見る。

 

 ...えっ

 

 「どうだ、ビックリしたろ?」

 

 いやいや、待て待て。なんであいつが?

 

 「俺だって分からん。居るとしても、あいつなら英数クラスのはずだよな...。」

 

 「クラス分けテストの出来が悪かったのかな?」

 

 うん。きっと、そうだろう。

 

 あいつはクラスのリーダー格だったし...。何より勉強も運動も良くできた。いっちゃあ悪いが、こんなクラスにいるような奴じゃない。

 

 スタイル抜群、顔もずば抜けて綺麗だし、絵も歌もうまいしと、正直非の打ち所がない。ところで俺がこう言っているということは、皆さんも相手が女子だということは推測できるはずだ。

 

 あんな高嶺の花に俺が関わることなんぞないと思うが、一応紹介しておくか。

 

 彼女の名前は相澤美嘉。あだ名はモニカ。ハーモニカが趣味なのと、下の名前から文字って生まれたものだ。

もちろん、中学時代での俺との関わりはゼロ。谷口の評価は文句なしのA+。告白された回数は俺の身長ではきっとたりないだろう。クラスでは委員長をやっていて、かなりしっかりした奴だった。

 

 ...この二人よりも印象が強いから、ちょっとばかし長々と話しちまったぜ。

 

 ところで谷口。また猛アタックをかます気じゃあないだろうな。

 

 「ああ、さすがにもうやらねえよ。ありゃ無理だろ。」

 

 「アハハハ!」

 

 国木田が笑う。

 

 最初に気づけ。まああの谷口が引いただけでも珍しいとでも思っておくか。

 

 

 それから特筆することもなく、たわいもない話をしているうちに、俺達はチャイムで各々の席に座った。

 

 

 

 で、まさかこれがフラグだったなんてこの時の俺は流石に考えもしなかったわけだが。

 

 



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