いずれ夜は明ける (ポポビッチ磯野)
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夜明け前の目覚め
1


お久しぶりですポポビッチ磯野です、こちらにも手を出してしまいました。
ワンピ完結させてからやれとは酷なことを言わないで...!
モチベは大事、生きるためのモチベ下がったらやってられないもの。
筆者は兄弟にするの好きです、はい。

誤字報告ありがとうございます!


 

 

“俺”がハッキリとこの世界で意識を持ったのは目の前の小さな命と手を繋いで、名前を聞いた時だった。

 

「この子はシスイ———“うちはシスイ”よ」

 

ガツン!と頭を殴られたような衝撃と聞き間違いだと思ったその後すぐにこれは夢だと逃避した。

おかげで色々と声をかけてきた女性、うちはシスイの母親に返事をすることが出来た。

 

「ちいさい」

「そうよ、でもすぐ大きくなるわ、守ってあげてねお兄ちゃん」

 

舌足らずな言葉遣いと“お兄ちゃん”と呼ばれた事で再び衝撃を受け、顔が忙しなく色を変えているだろう。

 

少しだけ俯けばシスイに集中してる風に見えるだろうか、身長差で顔は見えないからバレてないと思いたい。

 

まさか原作が始まる前に死んでしまう、うちはシスイに兄がいるなんて当然聞いたこともない。

夢に見るにしてもNARUTOの世界なんてしんどいと内心で悪態をつき続けた。

 

それでもその小さな手とは繋がれたままで、赤ん坊はなかなか力が強かった。

 

 

 

 

 

 

シスイと母親は検査をして何も無ければなんと明日には退院するという。

 

現実で身内の出産に付き合ったことはあるが、どれも翌日には退院はしてなかったと頭痛がした。

まあこの世界の住人はそもそも造りが違うのだろうけど。

 

そのため入院で使っていた大まかなものは一緒に来た男性(恐らく父親)がまとめて持ち帰る事になった。

両手が塞がった父親がいつも通りなのか、さっとオレを抱き肩車をしてくれた。

身体の方もこの座り心地がしっくりきて、違和感はなかったから間違いではないんだろうな。

 

里の大通りを抜け一定のリズムを感じながら俺は緊張していた。

背後には大きな、登ればこの里を一望できる岩山、火影岩と言われるものがある。

 

なぜそれを気にしているかと言えば、もしうちはが復興してずっと先の未来の話だったら?と思ったからだ。

 

“うちはシスイ”という名前も、昔の偉人からあやかって付けることは珍しくない。

今が何時なのか把握するなら、火影岩を見るのが一番だと考えた。

 

四つある状態で“うちは”となればクーデターの前で神無毘橋事件(カカシ外伝)の後、四代目が生きているかもしれない時期。

三つならば、多くの国を巻き込んだ第三次忍界大戦が勃発した時期。

曖昧だけど三代目は大戦の責任をとって一線を退き、火影は四代目になったはずだ。

 

先ほどまで握っていた小さなぬくもりを思い出し、夢だと思いたい自分を現状を把握するだけだからと言い聞かせ、首だけ振り返った。

 

 

果たして映ったのは——————三つの顔、三代目火影猿飛ヒルゼンの顔だった。

 

 

 

 

いやだぁ!!!しにたくない!!!

 

 

 

そんな心からの叫びを声に出さなかっただけでも俺はオスカー賞受賞していいハズだ。

 

「ん?どうした、緊張したり驚いたり今日のお前は忙しいな」

 

朗らかに笑う暫定父親の言葉を聞き流しながら

夢であっても嫌だと、この時点で絶望した俺は目の前の髪に顔を突っ込んだのは仕方のないことだった。

 

 

 

 

身長の高い父親に揺られてあっという間にうちは区画と呼ばれる場所に着く。

 

区画にある自宅は大きくも小さくもない普通の家だった。(強いて言うなら庭がなかなかの広さで裏に菜園があったことか)

 

家に着くと荷物を整理して、作り置きしてあったおかずで二人だけの夕食をすませた。

お風呂はお兄ちゃんになるからという理由で一緒に入る事を回避した。

 

行き場の失った右手が寂しそうにしていたが、上の子の見栄っ張りか微笑ましいと受け取られて、若干俺は恥ずかしかった。

 

どうやら俺こと“うちはアケル”はこの歳でひとり部屋を与えられているらしく、もちろん俺はそこで寝る。

暫定父親は昨日まで一緒に寝てたのに…!!と肩を落とし大きな背中は寂しそうにしていたが、ここは逃げの一手。

 

「ア〜ケ〜ル〜」

「おやすみなさい!」

 

未練がましく伸びてきた腕を障子で阻んで逃げる、たぶん追っては来ないだろう。

許せ、親父(暫定)俺にも状況整理する時間が必要なんだ。

 

 

小さな子供用の机に持ち寄ったのは、鉛筆と巻物。

これから俺が書き記すのは未来(原作)だ。

 

この際これが夢なのか現実なのか、転生だとか憑依だとかは一旦置いておく。

俺は座学は得意じゃなかったから、覚えている事を今のうちに形にしておかないと忘れてしまうだろう。

 

よしっと気合いを入れて、書き進めるのは名前などをぼかしてキャラクターを動物に置き換え、昔話風にしたもの。

読み込まないとこれが木の葉の里でいつか起こる出来事だとはわからないだろう。

 

 

10年以上の長期連載の作品、俺が子供の頃アニメがやっていて高校に上がった頃には修行から帰って新しい章になってた。

 

その頃にはNARUTOから離れていて、しかし連載が終わったと聞いてもう一度見直そうかなと思っていた矢先だった。

運が良かったのはその前にとりあえずとWikiを見て振り返っていたことだ。

つまり細かいところは抜きにして真相は知っているという事。

 

黒幕にバレてしまえば即排除で、タイミングを誤れば里から異端児扱いだってありえるこの知識を上手く利用していかなければならないのだ。

 

こちらに主導権があるならまだいい、こちらのカードを切らざるをえない状況が最悪だろうな。

 

 

もちろん(うちはアケル)という不確定要素がいる時点で未来(原作)と変わっているし、どう影響するのかもわからない。

 

 

もしかしたらうちはとは言えどモブなら何をしても影響なんて与えられないかもしれないが、

俺がうちはシスイの兄である以上、まず間違いなくうちはの死亡フラグ(イタチ兄さん)と顔を合わせる事になる。

 

ついでにシスイの写輪眼を欲しがるダンゾウとも関わることになるだろう。

例えば写輪眼欲しさに俺を人質に、とか。

 

当然のようにやりそうで背筋が冷えるのを振り切るために手を動かす作業に戻った。

 

 

「こんなものか...」

 

すっかり短くなってしまった鉛筆を置いてひと息つく。

 

むかしむかしから始まる物語をさっと目を通し、大まかな流れを間違ってないか確認した。

 

そして綺麗に巻きとると用意していたダミーを鍵のかかる引き出しにひとつ、タンスの奥にひとつ、布団の枕にひとつ仕込む。

本物は厚い辞書を頑張って切り抜いてそこにピタリと入れて固定すると本棚に紛れ込ませる。

他の本を動かし辞書だけを使った痕跡を残さないように細心の注意を払った。

 

うちは区画自体監視されていることを知っている以上、油断ならないが完全に手の届かない所に置いとくのも不安が残る。

その為手元に届く自室に置いておく事にした。

 

ふと外を見れば白み始めた空。

時間切れかと思い布団に潜ると眠気がありながらこれからの事を考え始めていた。

 

 

 

 

目下の問題はうちはのクーデターが起きる状況になれば間違いなくあの事件は起きるということ。

そうなれば(凡人)うちはイタチ(一族きっての天才)に勝つ事も逃げ切る事も出来ないだろう。

 

(まあそれ以前に俺がこの世界(NARUTO)で生き残れるのかって問題もあるんだが)

 

 

不安はある、恐怖もある。

 

今の俺がいる世界が現実なのか、それとも夢なのか。

 

今までいた記憶のないうちはアケルはどうなったのか。

 

うちはアケルとしての記憶はしっかり覚えている。

やはりと言うか忍びとして素質があるらしいがやんちゃでうちはであることそれ以外は普通の子供だった。

 

 

それがいなくなったと言うことは俺が殺してしまったのか?

俺が、この子(うちはアケル)に成り代わってしまったから、それしか考えつかない。

 

だとしたら俺は最低で最悪なクソ野郎だ。

 

 

 

 

そうだ、原作が終わって、その時まで生きていられたら(うちはアケル)は―――、

 

 

 

 

 

 

――――――●● ●● ()を終わらせるとしよう。

 

 

 

 

 

 

不安で泣きそうになったのか、目頭が熱くなったが俺はやってくる眠気に身を任せて、眠りについた。

明日の午前中は家を掃除するらしい、思い出して早く寝なかったことをちょっとだけ後悔した。

 

 

 




うちはアケル(3)

黒髪くせっ毛、情緒不安定真っ最中←New!
うちはシスイのお兄ちゃんになりました←New!





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2

実は4話まで書き溜めてる

誤字報告いつもありがとうございます...!


「あー」

「どしたシスイ」

「あう〜!」

「なんだ呼んだだけか?」

 

コロコロと転がってそばにいた俺に手を伸ばすシスイ、それをあやす俺。

うちに来てから早いもので一年が過ぎた。

 

まず“うちはアケル”の記憶が引き継がれていたのが幸いだった。

日常生活では支障はなく過ごせているし、俺という意識が割り込んで大人しくなったのも、シスイという弟が生まれたからだと両親は考えているらしく怪しまれてもいない。

 

まあ実際は中身の年齢が成人済みだからなんだが。

 

 

一年で裏庭や区画でひたすら筋トレとか走り込みをし、この世界にある“チャクラ”を意識して過ごした。

 

身体を動かすのはここに来る前の俺の感覚をこの身体に慣らす必要があった。

そしてチャクラという俺からすれば謎の力がどんなものか、実際に体験した方が早いと思ったからだ。

 

おかげで身体は時々うっかりミスもあるが馴染んで、チャクラも感じ取れるようになったし、練るということもできるようになった。

 

 

 

ここにやって来た1年前は自殺したいと思ったが、それでは俺がここに呼ばれた意味を考え諦めた。

と言うのも俺は少年漫画もライトノベルも見ていたし、実際俺が体験しているこの現象のことも理解している。

二次創作にも手を出していた俺はふと自殺した話があったと思い出したからだ。

 

 

結論を言えば自殺したあとずっとループし続けるものだった。

 

 

つまりその世界に呼んだ奴は自殺(そんな結末)を認めないからやり直せと言うことなのだろう。

 

奴らの娯楽に使われていると思うと怒りがふつふつとわき上がる、反面で俺もその一人であったんだと心が冷えていく。

結局紙一枚の向こうにいる彼らの悲しみも痛みも喜びも、“理解した気になっていた”だけだったのだと。

 

3歳のうちはアケルを殺してその上、彼らの気持ちを分かってたフリをするなんてつくづく救いようがない。

 

何故俺だったのだろう、別に俺じゃなくても―――、

 

 

「あうぅ」

 

「…!」

 

 

ふわふわの黒髪と澄んだ瞳がこちらを捉えていた。

 

ぺたぺたと俺に触れる小さな手が俺がちゃんと“この世界”に生きているのだと教えてくれる。

 

一生懸命に伸ばされた腕で俺が必要なんだと訴えてくる。

 

俺の弟、あの子(うちはアケル)の忘れ形見といってもいい、大切な存在。

そして来るべき日にイタチに意思を託して死に行く人物。

 

 

「ありがとう、シスイ」

 

 

他でもないお前が●● ●● ()を求めてくれるなら、うちはアケル()として応えよう。

イタチという天才()も、忍びの闇と呼ばれるダンゾウ(野心)もお前のために退けよう。

 

俺をここに呼んだ奴がいるなら望み通りこの世界で生きてやる、“うちは”を舐めるなよ。

そして死後の世界で俺を誉め称えるといい、名男優ってな。

 

 

 

この時俺はこの世界に来て初めて心から泣いて、笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら」

 

洗濯物を干している間上の息子であるアケルにシスイの面倒を頼んだのだが、静かすぎると様子を見にきてみれば二人は寝転んでお昼寝をしていた。

すよすよと寝息を立てながら、アケルに至っては微笑みを浮かべている。

 

下の子のシスイが生まれる前はやんちゃ坊主で手を焼いていた子だったけど、シスイと初めて会った時ひどく困惑してたのを覚えている。

あの人から聞けばその日帰ってから、俺お兄ちゃんだから!とお風呂も一緒に寝る事も嫌がったというのだから、シスイ様々って所かしら。

 

お願いすれば家の手伝いもするようになったし、合間を縫ってはシスイの様子を見ているからよほど弟がうれしいのだろう。

それ以外では走り込みをしているらしく、きっとそのうちあの人に修行つけて!と言い寄るに違いない。

 

 

「ずっと気を張ってたものね」

 

そうなぜか自室にいるときでさえアケルは何かに怯えるように気を張っており、ここ最近では顔にも疲労感が現れていた。

けれどこの寝顔を見て安心した、どうやらこの子は何かが振り切れたみたい。

 

(もしかしたらシスイが切っ掛けを作ったのかも?)

 

まさかとは思いつつ、私たちの子供であるから有り得なくもないと親バカを発揮させる。

幸せそうな寝顔をみていると、なんだかこちはも眠気が襲ってきて、まあいいかと起こさないように抱きしめるとすぐに眠りに落ちた。

 

 

目を覚ますと夫も帰ってきており4人で眠っていたようだ。

その様子に幸せを噛み締めたあとこっそり起きると夕飯の支度にとりかかるのであった。

 

 

 

 




うちはアケル(4)
黒髪くせっ毛、やっと精神安定してきた
うちはシスイ兄
弟の死亡フラグは立たせない←New!



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3

鉄は熱いうちに打てと、お告げを頂いた。
捏造やら独自解釈のオンパレード

誤字報告いつもありがとうございますー!


木々を飛び移りながら狙いを定めて放つ。

 

カカカンッと手裏剣が的に突き刺さる、四つ放ったが標的に当たったのは三つだけだった。

木の上から降りると的に近付き、呟く。

 

 

「一つ外したか」

 

 

少し肩を落とす。

 

あの日シスイに救われてから俺は父親に修行を付けてもらうように頼んだ。

この世界は力がなければ守ることも出来ないからだ。

 

母親はわかってたとも言いたげな顔をし、父親は慌てて食べていた肉じゃがで噎せてたけど、

しかし俺の引く気がない空気を感じとったのか色々条件を付けて修行を見てもらえることになった。

 

初日はチャクラが何たるかを教えてくれたのだがそれはここ一年やり続けたことなのでできる、というと父親はひっくり返って驚いていた。

この人実は忍ではなく芸人なのでは?と疑うほどオーバーリアクションだったと言っておこう。

(見事なリアクションだったともいう)

 

気を取り直した父親がまず体が出来上がっていない状態で忍術は使わせられないと言うと、チャクラコントロールから学ぶこととなった。

 

波の国でやってた修行だ!と思わず心が弾んだが、俺はイタチ(天才)の存在を思い出しすぐ集中する。

幸いな事に父親は写輪眼を開眼しているので、任務の合間に見に来ては細かく指導してくれたのが良かったのだろう。

 

しかし、それでもわかってはいたが難しかった。

多すぎても少なすぎてもダメというのがネックでイメージが上手く掴めず、

木登りは良かったが水の上になると連日びしょ濡れで家に帰った、よく風邪をひかなかったものだ。

 

そしてその日もどうしたものかといつもの小川に向かっていた。

あーだこーだと考えつつ歩いてふと視界が暗くなる、意識を向けると目の前には林。

 

「はい?」

 

ばっと勢いよく振り返ると先には小川と笑っている父親の姿。

 

「もう渡れたのか、早いな」

まさか考え事に夢中で気が付かないまま、無意識にチャクラコントロールをして川を渡ったのか?

 

いや確かにあまりにも上手くいかなくて、力みすぎていたかもしれない。

帰ってこいという父親に頷いて力まないように小川に立った。

 

そう立てたのだ!

思わずガッツポーズしそうになる気持ちを抑え、チャクラは維持しつつゆっくり渡りきった。

 

そのまま俺はコロンビア!!と勝鬨を上げる。

横目で父親がポカンと驚いていたがすぐに俺の頭を撫でてくれた。

 

その日は俺の好物を夕食に、嬉しくてムズムズする夜を過ごしたものだ。

 

 

 

―――それが一年前

 

 

今は忍術を教えて貰いながら、チャクラコントロールを繰り返し行い、俺は弟の二つ名でもある瞬身の術を学んでいる。

実は父親もこの術が得意で一度見せてもらった時はいきなり現れたのかと思ったほどだ。

なるほど親譲りの才能だったかと初めて知った、この先生き残るため得意かもしれないなら伸ばすしかないだろう。

 

 

やり方とコツを教えて貰い、今日も今日とて瞬身の術を使いながら武器を的に当てる修行、つまり今は応用だ。

これがまた難しい、まだこの速さに慣れ始めたばかりと言うのもあるが、正確に当てるとなると反復練習しかないのだろう。

 

一応筋はいいと両親に言われたのだから、全部外さない限り落ち込むこともないと言い訳しておく。

決して同じ歳で同じ事を完璧にやれるイタチ(天才)のことを考えたわけじゃないぞ!

 

今日はもう切り上げようと使った道具を集めて確認してからポーチに入れると、普通に走って訓練場を後にした。

修行帰りに母親から醤油を買ってくるように頼まれていた為である。

 

 

 

 

里の商店街に入るちょっと前の小道から俺の足元にリンゴが転がってくる。

転がってきた先を見るとどうやら買い物カゴを落としてしまったらしいおばあさんがおり、俺はさっと荷物を集め始めた。

 

「「ばあちゃん気を付けろ(て)よ」」

 

もう一人手伝っている気配はしていたから良い奴だなと思ってたがまさか言う言葉まで被るとは思わなかった。

 

「あらぁありがとうね“オビトちゃん”それからボクも」

 

その人物に思わず俺は息をのんだ。

オレンジ色に輝くゴーグルと背中に入った馴染みある家紋、うちはの少年は太陽のような笑顔で答える。

 

「おう良いってことよ、それよりもばーちゃん家まで運んでいくか?オレ暇だし」

「お、俺もてつだいます!」

 

あまりの衝撃にありがとうと言われて反応できなかった俺だが、ここまで来たのなら乗りかかった船だ。

俺だけ手伝わないとか不親切な奴と思われたくはない。

 

「平気よお、もう家の前だったの。それに娘もいるから運んでもらわなくても大丈夫」

 

ちらりと向けられるのは一軒家で確かに中から数人気配があるのも確認できた。

 

「まあそこまで言うんだったいいけど、荷物持ちくらい付き合うからさ、困ったら声掛けてくれよな」

「ええわかったわ、あ、そうそうこのお饅頭あげるわ。助けてくれたお礼よ」

そういって買い物カゴから饅頭を二つ取り出して、俺は別に見返りが欲しいから助けた訳では無いし、大したことでもないと断ろうとするも遮られる。

 

「いえそんな、」「おう!ありがとなばーちゃんほらお前もお礼いえよ」

 

受け取れ!!という無言の圧力で見つめてくる黒い瞳に負けて、饅頭を受け取ってお礼を言うと、おばあさんは言った通り家に帰っていった。

 

 

「お前いい奴だな、オレはうちはオビト!よろしく!」

「えっとはじめまして、俺はうちはアケル」

 

 

ここで初恋こじらせおじさん(うちはオビト)に出会うとは厄介な運をしているようだ。

 

 

 




うちはアケル(5)
黒髪くせっ毛、精神八割安定
シスイの兄
弟の死亡フラグをへし折りたい
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4

黄金週間にちまちま投稿すればよかったァ〜〜!!!

今夜はゼロの執行人です、皆さん風見裕也をよろしくお願いします。




前回までのあらすじ

 

俺はうちはアケル、5才

忍術が使える世界で弟の死亡フラグを爆散させるため

修行に明け暮れる、どこにでもいる転生者(現代人)だ。

 

いつも通り修行の帰り道、今日は母親におつかいを頼まれたこともあり商店街を目指していた。

そこで困っていたご老人を手伝うと一緒に手伝ってくれた親切な奴、まさかそいつが―――

 

「お前いい奴だな、オレはうちはオビト!よろしくな!」

「えっとはじめまして、俺はうちはアケル、です」

 

わかってんだよおじさん(うちはオビト)とはな―――。

 

 

 

 

 

 

「なんだ同じうちはか、じゃあどっかですれ違ってたかもなー」

「かもしれませんね、うちは区画も広いですし。オビト先輩も商店街に買い物ですか?」

急に隣を歩いていた気配が止まる。

一体どうしたのかと首を傾げると、ずいぶんと呆けた顔をしたオビトがぷるぷると震えながらこちらを指差してきた。

 

「おま、いま、いまなんて…?」

「えーっと商店街に買い物ですか?」

「いやその前!」

「うちは区画も広いですし?」

「お前わかっててからかってるだろ!?なんだよ”先輩”って!!」

 

目ざといなと感心する、確かにからかっていたのはそうだが先輩はほとんど素で出た言葉だ。

 

ここに来る前は曲がりなりにも社会人であったし、学生時代は運動部に所属していた俺にとって年齢の近い年上はほぼ反射的に”先輩”呼びをしてしまう、最早癖だった。

 

「父が年上の人をそう呼んでたんですけど、嫌ですよね初対面なのに馴れ馴れしく、すみません…」

しょんぼりと落ち込む振りをする、別に前の癖が出たのを誤魔化す為じゃない。

「う、ぐ別に嫌とはいってねーだろ!驚いただけだよ!」

 

その瞬間、言質はとったとばかりに俺はぱっとオビト先輩に笑顔を向けた。

「ではオビト先輩で!」

「お、おう」

無理やり会話を切り上げて俺は先を行く、お使いだってあるのだ未だにブツブツ言っているオビト先輩は置いていくに限る。

耳をすませれば、こいつ本当にオレより年下かよとか腑に落ちない様子だったが、頬は緩く上がっていて“先輩”呼びが嬉しかったのだろう。

 

素直、単純、調子がいい―――そして底抜けのお人好し。

 

画面の向こうでしか見たことの無い人物だと言うのにこの短時間で人となりが分かってしまった。

この人(うちはオビト)とは関わるか否か悩み、結局極力関わらないと結論をだしたからこそ余計に驚いたのだ。

 

 

 

恨み絶望しても”その選択をさせた世界”を憎んだ愛情深い、不器用な(ひと)

俺ではこの人(うちはオビト)を救う事は出来ない

 

主人公の役目だとかそういうのではない。俺ではこの人を憐れんでしまう、それではダメだ。

この人のすべてを許し、心を揺さぶれる人じゃなければならない、俺にそれは出来ない。

 

だって俺は其方側なのだ。

もしもシスイを殺されたら聞くまでもなく全身全霊をもって仇を討とうとする。

難しくともこの人(うちはオビト)と同じように何十年かかっても復讐するはずだ。

 

関わってしまったのは仕方ない。

それにオビト先輩の担当上忍は未来の火影、うちはの問題について今関わりをもっておけば後々役に立つかもしれない。

 

心のどこかで下らない言い訳だなと笑う声が聞こえたが聞こえないふりをし復活したオビト先輩に問いかける。

 

「オビト先輩は買い物ですか?」

「まあなってことはそっちもか」

「はい、あとついでに手芸屋さんに寄っていくつもりです」

「ふうん、ま行くとこは一緒ってわけだし最後までつきあってやるよ近頃物騒だし、」

それにな!と続けてぽふんとうちはでは珍しい癖の強い髪を撫でる。

 

 

「俺はアケルの”先輩”らしいからな!!」

 

 

眩しいくらいの笑顔、そんな風に笑いかけて欲しくない、俺はあなたを見捨てる。

先輩だってただ口に出ただけなのに真に受けて、―――このウスラトンカチが

 

 

ぽろりと溢れそうになった涙を隠して走り出す

 

「っ先に行きます!!」

「は、お前!?え、ちょぉ」

 

 

この時普段の修行の成果がでて、俺が出せる最速の瞬身の術が発動したと明記しておく。

ちなみに醤油を買ってきたはずだったが醤油ではなくめんつゆだった事が発覚。

母親に叱られ、シスイに慰められたことも追記しておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「オビト先輩何してるんですか?」

「うぉうお!?!」

背後からかけられた声に思わず叫ぶとおどかすな!と文句を言う。

 

俺よりもひと回り小さい背丈に見慣れた家紋と深い青の服、一族では珍しいくせっ毛に涼し気な顏がこちらを覗き込んだ。

 

「えっと、すみませんでした」

 

最近気配を消す修行をしてたのでついと謝ったチビはうちはアケル。

一ヶ月前出会った時から俺の事をオビト先輩と呼び、時々遭遇しては何かと突っかかってくる奴だ。

 

「お前なぁ俺のこと先輩っていうならもう少し敬えよな」

「オビト先輩はオビト先輩です、それ以下でも以上でもないので」

何言ってるんですかとも言いたげな顔をして首を傾げる姿にぴきりと頬がひきつる。

 

「このぉやろお!!!」

「へ、...ふふっあっははっ!」

ガバッと抱き込むと脇腹をくすぐるこいつ脇腹が弱いからな、仕返しだぜ!

 

「あれオビト?」

 

騒いでいたこちらに気が付いたのか、やって来たのは俺の好きな子であるのはらリンだ。

さらさらのショートヘアが揺れて、体の動きがぎこちなくなる。

 

「おっおおおおうリン!偶然だな!」

「うん偶然だねぇそっちの子は?」

 

するとアケルは何事もなかったようにさっと俺の腕から抜け出し、リンに挨拶する。

 

「はじめまして俺はうちはアケルです、オビト先輩がいつもお世話になってます」

 

そうだなちゃんと自己紹介をってん??

 

「ちょっと待てどういう意味だ!」

「え?言ったままですけれど、」

「おかしいだろ!?普通は逆だろうが!」

「オビト先輩がアカデミーで大人しくできる訳ないじゃないですか、のはらさんにも迷惑かけてるんだろうなって後輩の心遣いですよ」

「お前の中のオレはどうなってんだよ?!」

 

むにぃとアケルの頬をつまんで伸ばした辺りでクスクスと笑い声が耳に入る。

「ふふっ仲がいいね、私はのはらリン、オビトとアカデミーで一緒なの。よろしくねぇ」

それから優しい笑顔で「のはらさんじゃなくてもいいからねリンって呼んで」と言うとアケルの頭を撫でる、俺も撫でられたい。

 

「はい、じゃあリンさんですね」

「よろしくねアケルくん!」

 

その後用事があるらしいリンと別れ、二人で並んで歩きながらちょっと気になったことを聞いた。

 

「なんでリンの事は先輩じゃないんだ?」

横目でちらりと相手の表情を窺う、アケルは特に気負う様子もなく答えた。

「リンさんがどんな人なのか分からないのでまだ先輩とは呼べません」

それにと二、三歩先を行きながらくるりとこちらに振り返った。

 

「尊敬してる人しか”先輩”って呼びたくないので」

ニッと笑うとそれじゃあまた、と言いお得意の瞬身の術であっという間に目の前からいなくなった。

同時に照れ隠しに逃げたのだとすぐに分かった。

 

 

「なんだよあいつ、恥ずかしい奴———」

 

次会う時覚悟しとけよ、お前の事も褒めちぎってやるからな!!

 




うちはアケル(5)
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シスイの兄
弟の死亡フラグを爆散させたい
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5

特に意識してやってないけど、名前悩んじゃうから適当に〜の人とかって呼んじゃう。

※オリジナル万華鏡模様でます!
模様について加筆修正いたしました。
描きました!アップしてませんすみません!!!

あと誤字報告ありがとうごさいました!





少しだけつり上がった目、うちは一族らしい黒髪にちょっとだけ抜けた性格。

 

しかし俺に術を教えるときは妥協はなく、俺が納得するまで付き合ってくれた。

疲労で倒れたときはいつもおぶって帰ってくれて、教えてもらった事が出来ればわかりやすく機嫌が良くなった。

大きくなってきたシスイと俺を比べることなくそれぞれを見てくれた。

風呂に入っていれば巻き込まれたらしいシスイも入れて騒ぎ出す始末。

 

 

(うちはアケル)の良き師であり、ふざけ合える友のような人であり、尊敬できる父親だった。

 

 

 

―――その父親が殉職した。

 

 

 

そう告げたのは同じ部隊だった俺とも面識がある気の良い兄さんで、その隣にいたのはうちは一族をまとめているうちはフガクさん。

 

嘘ではないのだろう、わざわざ一族の長がでてきたのだから。

 

この様子では今回の戦死者の家々を回ってるのかそれとも同じ部隊だったから共に来たのか、そこまではわからなかった。

 

「…にいちゃん」

「シスイ、大丈夫だ」

不安そうに見つめるシスイに笑いかけて、自分の部屋に行くように言うと俺は玄関に向かった。

 

「父の身体は帰って来なかったんですか?」

 

シンとなっていた空間に声が響き、油断していたのだろうばっと三つの視線がこちらに集中する。

この頃には忍び特有の脚運びも気配の消し方も息をするように出来るようになっていたからだ。

 

 

「すまないアケル、俺を庇って君のお父さんが——」「父は、なにか言ってましたか?」

 

その先を言わせる気はない、俺はあなたにだって死んで欲しくないのだから。

その時死ぬのが父親かあなただった、父親はあなたを助けた、今はそれだけいい。

 

今は戦時中で覚悟はいつもしていた、悲しい気持ちはあなたも同じはずだから。

 

―――”いつも見守っている”と…。それから、これ、アケルが作ったんだろう?隊長ずっと、自慢してたよ」

 

握っていた手を広げて渡されたのはこの任務に行く前に渡した新しい組紐だった。

 

それは以前運動部だったこともあり、女子部員から願掛けにミサンガを贈られた事がきっかけ。

調べてみるとこんな手のかかることを人数分…と驚いたのをよく覚えている。

 

俺は女子部員にお礼も含めお菓子と同じように男子部員で作ったミサンガを送った。

それから手先が器用だったこともありはまった俺はミサンガだけでなく組紐にも手を出していたのだ。

 

父親に渡したのは一編み一編み祈りを込めて編んだものだ————皮肉にもその祈りは届かなかったけれど。

綺麗な状態なのは父親が手渡したからだろうか、だとしたら最後まで付けてくれればよかったのに。

 

そうすればどんな姿でも”父さん”だとわかったのに。

 

 

 

「―――ありがとうございました」

 

 

 

目の前の二人が息をのむ、俺は涙をこぼさないように熱くなった両目で必死に耐えた。

 

 

―――心の中で”父さん”におかえりなさいと言いながら。

 

 

 

 

父を亡くした、6歳の梅雨。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『フガクさん見てくれ息子がこれ作ったんだ、よく出来てるだろ〜!』

 

寡黙な者(強面)が多いうちは一族の中でそいつはよく喋る奴だった。

特に嫁の惚気から息子たちの自慢話は同じ部隊の奴らに同情したくなる。

実際に面識のあるヤツらもいるようだが、殆ど会ったこともないというのにどういう人物が知っていると言うのは奇妙なものだ。

 

『アケルだったか、もう忍術も学んでいると聞いているが』

『まあな俺が瞬身が得意だって聞いたら一生懸命覚えてくれてさ、もう可愛いったら!それにもう速さだけなら俺に並んでるんだぜ?』

『ほう、来年はアカデミーだったか、その年でお前の速さに並ぶなら天才か』

いつもの自慢が始まったと思い適当に答えるも返ってきたのは予想外の答えだった。

 

『いやあいつは天才じゃないそれこそ白い牙の倅(はたけカカシ)なんてのが最もさ、アケルはそれをわかってるだが...その分貪欲だ、あいつは諦めることが死ぬ時だと知ってる』

 

驚いたこいつのことだから息子は天才だと手放しに褒めるのかと思ったが、そういえばこいつは昔からちゃんと人を見ていたなと納得する。

『ほうならばかの白い牙(天才)にも追いつけると?』

『う〜ん親心としては是と言いたい!しかし難しいだろう、それにあいつが目標にしてるのは白い牙じゃないしな』

 

その場にいたものが一体誰だろうと首を傾げる、目の前の父か優秀なくの一だったこいつの妻か、かつて二代目の部下であった祖父(うちはカガミ)、はたまた伝説に数えられる三忍か、三代目火影(プロフェッサー)か。

 

『いや俺も知らない、でもあの食らいつき方は誰かを意識してる、あいつが話したくないってなら親父は黙って待っててやるもんさ』

昔から子供みたいなやつだと思っていたが、その時は確かに父親の顔をしていた。

 

 

 

 

 

遺言と預かったものを渡すため、同じ部隊で本当に最後に会話した部下とあいつの家に訪れた。

出迎えたのは妻でこちらの様子から察してしまったらしい、今にも泣きそうな顔だった。

 

そのまま葬儀の予定と集会について話し、集落にいることから気を抜いていたのだろう、

小さい影に声をかけられるまで気がつく事が出来なかった。

 

「―――父の身体は帰って来なかったんですか?」

 

あいつと同じ癖のついた黒髪にすぐに息子だとわかった、すると面識がある部下が目の高さを合わせるために膝を折る。

部下を逃がすために殿を務め死んだ、残された部下からすれば自分を庇って死んだと思ってしまうものだろう。

 

「父は、なにか言ってましたか?」

 

それ以上は言わせないように間を置かず割り込んだ、わかっているのだ、戦死する事も。

あいつの性格からして仲間を見捨てる事はないのを。

 

残された家族に向けた言葉と胸のポーチから取り出されたのは、あいつが自慢していた組紐。

編み目は細かく丁寧に作られていたことから、願いを込めて作ったのだろう。

 

「これ、アケルが作ったんだろ?隊長ずっと、自慢してたよ」

 

それを小さな手で受け取りながら、しばらく視線をそれに向け顔を上げた。

 

 

 

 

 

よく見なれた、馴染みのあるその赤はうちはに伝わる血継限界、一族である証。

 

思わず正面に立っていた俺と部下の男が息をのむ。

 

涙の溜まったその目に宿すのは三つ巴ではない、内に反った六角形に頂点には丸がついた模様。

己の持つ目と全く異なる形、しかしそれはどこか見覚えのある模様だった。

 

「ありがとうございました」

 

そう言うと組紐を大切に握りしめ家の奥へ消える、その後なんとか意識を戻し伝えるべき事は伝えこの場を後にした。

 

 

 

 

雨が降りそうな空の下、

部下の男がわずかに緊張を含みながら呟いた。

 

「フガクさん、アケルの事は黙っておいてください」

 

三つ巴が浮かぶ瞳は一切逸らすことなく向けられている。

先程の光景、あいつの息子のことだろう。

 

うちは一族の集会に参加する者は伝説としてその眼の名前は聞いている。

 

 

《万華鏡写輪眼》、写輪眼の上位にある瞳。

うちはマダラを初めとした忍びの戦国時代を駆け抜けた者がその瞳を目覚めさせたという。

 

俺は一族のまとめ役としてその開眼条件も知っている、だからこそ腑に落ちなかった。

まだアカデミーに通う前の子供が一体誰を手にかけたというのだ。

 

開眼条件を知らない部下の男は《万華鏡写輪眼》がこの戦争で利用されることを危惧しているのだろう。

息子もこいつには懐いていると聞く、父親が亡くなった今。

残された女子供でアケルを守りきるのは不可能だ。

 

「案ずるな、お前が思っていることは起こさせん、機を見て本人に知らせる」

「―――本当ですね?」

 

「うちはフガクと一族の名にかけて、約束しよう」

そう宣言するとようやく肩の力を抜きほっとした表情になった、全く心配し過ぎだ。

 

重たい雲の下一筋の光が照らし始める。

 

 

―――うちはアケル。

 

 

一度割って話さなければならないだろう、強い力(万華鏡写輪眼)を持つ事がどういったことなのか、何を招くのか。

 




うちはアケル(5)
黒髪くせっ毛、ちょっと引きこもりたい
シスイの兄
弟の死亡フラグを爆散させたい
もしかして:幸運E
絆されやすい
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6

今回はオリジナル人物とか物とかでるよ。
視点はアケルのみ後半に続く。

このお話が投稿される頃、平成が終わります。
令和元年、また新たな始まりです、新しい年もよろしくお願いします
誤字報告いつもありがとうございます〜!!!


梅雨が明け夏の気配がし始めた頃、俺は区画にある立派な家の前に立っている。

 

気配を感じたのか戸を開けて出てきたのは綺麗な顔をした女性。

 

「いらっしゃいアケルくん、ごめんなさいね忙しいのに」

「いえフガクさんにはいつもお世話になってますから、これくらい気にしないでください、ミコトさん」

 

そう俺は今うちは一族をまとめる族長のうちはフガクさんの家に来ている。

 

 

 

始まりはここに来る数日前に遡る。

 

 

 

 

 

 

ある日俺の兄貴分で父さんの部下だった、うちはタナヤが訪ねてきた。

 

 

父さんが亡くなってから何かと気にかけてくれて、非番の日は疲れてるのにも関わらず俺の修行を見てくれたり、シスイと遊んでくれたりしてくれる。

 

でもあまりにも献身的過ぎて俺が怒った。

罪悪感で俺たちに構うなら今ここで縁を切る二度と関わるなと。

 

そのせいで俺は無抵抗の相手を殴ったり、あなたにも死んで欲しくなかったと泣きながら怒るという器用なことをする羽目になった。

 

恥ずかしいし、二度とやりたくない、新たに黒歴史が刻まれた瞬間だった。

 

しかしそのかいあって、俺たちを悲しそうな目で見ることはなくなったし遠慮もなくなって家族のような近いものになれた。

 

 

蛇足であるがタナヤさんのご実家が家具屋で手先が器用であるからか、家具の装飾に使われる技術にインスピレーションを受けそっちの修行も頼んでいる。

これを組紐に付けてお守りにする予定だ。

 

 

 

その日はちょうどシスイが近所の子と遊びに出ていっていて、母さんは夕飯の買い物に出ていた為、家には俺一人だった。

 

『突然悪いなアケル』

『いえ、タナヤさんは俺だけに用があったんですよね?』

 

冷えた麦茶を出しながら、なんとなく俺以外がいない日を狙ったのではないかと思う。

 

『流石俺の弟分だな、その通りだ』

 

麦茶に口をつけ一息つくタナヤさんは少し緊張してるようだ、その空気に引っ張られ過ぎないようにこちらも気を引き締める。

 

『アケル“写輪眼”は知っているな?』

『はい、父も俺の修行でアドバイスするために使ってましたから、うちはの血継限界ですよね?』

 

うちは一族の証で誇りでもある、三大瞳術に数えられるのが写輪眼だ。

 

 

『じゃあ、アケルはいつ頃開眼したか覚えてるか?』

『へ?』

 

俺は聞き間違いかと思った。

かつてこの世界に来た時のように現実逃避しそうになったがなんとか正気を保つ。

 

 

 

―――俺が“写輪眼”を開眼している?

 

 

 

そんな馬鹿な、いきなりそんな変わった事なんてなかった筈。

 

 

しかし目の前のタナヤさんは忍術やそれに関係していることには冗談すら言わない真面目な人だ。

だとすれば俺が写輪眼を開眼していることは事実で、タナヤさんはそれを知っている。

 

もしかして修行の最中に無意識に使っていてそれを見たのだろうか?

―――ハッキリしない上にこれ以上待たせるのも悪い、知らなかったと素直に言った方が良さそうだ。

 

『いえ、写輪眼を開眼してるなんて知りませんでした』

『っそうか、いやそれは良いんだが、アケルくらいの年齢で開眼させることは珍しいからな、写輪眼は強い力だ、扱い方を覚える必要がある』

 

同時に、とひとつ区切って俺の頭を撫でた。

傷だらけで無骨な闘う人の手だ、父さんよりも手が小さいけど、同じくらいやさしい手。

 

『写輪眼の歴史についても知っておくべきだ、ここ数年は戦で忍びは人手不足だからな...今のうちにコントロール出来るようになった方がいい、お前の為でもあるし家族の為にもだ』

『わかりました』

 

真剣な顔からぱっといつもの人好きのする笑顔に戻って、懐から紙を出すとそこには住所が書いてあるようだ。

 

『おしっじゃあその話はフガクさんがするらしいからな、ここが住所で日時は次の休みだってよ、俺も遅れて同席する予定だから緊張し過ぎるなよ?』

 

おっとそれは聞いてないぞ。

 

『は、い......』

 

そもそもこの時この話が出た時点で俺に拒否権などなかっただろう。

俺の心情を察したのか肩をぽんと叩くとそのまま家から出ていった。

 

 

 

それが数日前の出来事。

 

 

 

「主人はこちらに、今お茶を出すから待っていて」

「いえお構いなく」

 

廊下を歩きながらその部屋に着くともう既に目的の人物は静かに佇んでいた。

とりあえず礼儀として廊下で一度礼をして入る。

 

座布団に座ったあとミコトさんがお茶を出してくれて、一口飲んだあと俺から切り出した。

 

「お久しぶりです、父の葬儀では参列して頂きありがとうございました。今回は写輪眼について教えて頂けると聞きました、未熟者ですがよろしくお願いします」

 

頭を下げつつ俺は緊張していた、父さんはフガクさんのことを不器用だが長として頼りがいのある寡黙な男と言っていたが…。

 

「タナヤからは聞いているな」

「はい、ですが自分がいつ開眼したのか、全く心当たりがなくて...」

 

この人に嘘をつくのもおかしな話だろう、なんとなくタナヤさんが俺の事を心配してフガクさんに話を持ちかけた筈だ。

 

 

(あれ...?)

 

 

なんでフガクさんなんだ?

 

わざわざ一族のまとめ役に頼むことでもない。

タナヤさんもそうだが、戦時中と相まって写輪眼を開眼している人は少なくない。

三つ巴じゃなくとも写輪眼自体を開眼している人はいるはずだ。

 

 

 

では何故?

 

 

 

 

「アケル、お前は誰かを手にかけたことはあるか?」

 

「え、っと...質問の意味がよくわかりませんが」

「では誰か親しい者を殺したことはあるか?」

 

 

なんだ、なんの質問だ、殺した?誰を誰が?

俺が、親しい誰かを殺したのかと聞いてるのか?

 

あの日戦地に向かう父さんに渡したのはあの組紐だけで、あれはただ無事にあれと願ったものだ、それ以上でも以下でもない純粋な気持ちだ。

ただのおまじないで悪意あるものでは無い。

 

まさかこの人は俺が父さんを殺したとでも言うのか?

そんなバカな、父さんから聞いた話でもこの人が優秀であることはわかる。

 

 

 

——————なら何故、俺は殺しを疑われている?

 

 

ブワリと熱くなり身体中に血液が巡る。

 

 

「ありません。父を殺したのは俺だとお考えでしたら証拠はあるんですか?タナヤさんや他の部下を守った父の死を貶める気なら―――たとえ父の友人でも俺は怒りますよ」

 

俺とて実力差が分からないほど子供じゃない、そこはしっかり父さんにも仕込まれてる。

フガクさんは間違いなく一族をまとめあげるに相応しい実力者。

タナヤさんよりも父さんよりも強いかもしれない。

 

腕に仕込んでいる棒手裏剣を確認する、一撃までなら受け止められるだろう。

 

今日の装備はいつもよりは少ない、それでもこの戦時中何かあってはと他の子と遊びに行くシスイにすら最低限の装備はさせている。

 

母さんも最初は渋っていたが父さんがいない今、すぐ頼れる男手がタナヤさんくらいしかいないので、なんとか納得してもらえた。

 

「そうではない聞けアケル。俺はあいつのことは今でも友だと思っているしその死についても奴らしい事だと思っている、だが俺が死んだ時あの世で文句くらいは言ってやるつもりだ」

 

僅かな動きにすら反応が出来るように視線は逸らさない、それによく“見える”。

恐らくこれが写輪眼なのだろう。

 

「お前のソレはただの写輪眼ではない、写輪眼のさらに高みにある“万華鏡写輪眼”という」

 

フガクさんが取り出したのは鏡、映るのは俺

その目は赤く、浮かぶのは三つ巴ではない不思議な模様。

 

 

 

 

「―――そしてその開眼条件とは、開眼者にとって親しい者を自らの手で殺すことだ」

 

 

 

 

その答えはこうも言っていた“お前は誰を殺した?”と

 

 

 

 




うちはアケル(6)
黒髪くせっ毛、また不安定
シスイの兄
弟の死亡フラグを爆散させたい
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木彫り技術習得中←New!


うちはタナヤ
実家は家具屋の兄貴分、名前が決まったよやったね!






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7

お待たせしました後半です。
後ろの話はいつものモブキャラでます。
次の話のちょっとだけ未来のお話です、次回はそのシーンをアケル視点で進めていくと思います!(たぶん)

そしてついに次回でブラザーと絡みますわ!(今さら感)
誤字報告ありがとうございます!
誤字がない日がない。




 

 

 

 

頭が真っ白で、動揺が隠せない。

 

 

 

グルグルと考える頭の中で俺は一つだけ心当たりがあるのを思い出していた。

 

 

 

●● ●● ()が殺した、当時三才だった(うちはアケル)のこと

 

 

 

つまりそういう事なのだろう。

 

あの子の記憶を追体験したあと成り代わった●● ●● ()は必然的に“殺した”と思った。

そして親しいと言うならこの体に宿った最初の人格はあの子だ、ある意味で条件は揃っている。

 

しかしそんな事をフガクさんに話していいのか?

 

 

“あなた達が娯楽として描かれている世界から来ました、中身はうちはアケルではありません”

 

 

なんてバカげた話だ

 

良くてふざけるなと言われ、最悪正気を疑われる。

 

しかしどう答えればいい、どれが正解なんだ?

 

 

仕方がない嘘はつきたくなかったが、これ以上黙り続けることも無理だろう。

 

「本当に、俺は殺したんですか?...その、誰かを」

「覚えていないのか?」

「わかりません...なにが、なんだか」

 

記憶喪失、あるいは強すぎるショックによる記憶の改ざん。

俺が子供ならばこうなることも有り得るはずだ。

 

正直に話せればよかったが今はまだ信頼しきれない。

 

(いや違うか)

 

俺は俺が“うちはアケルじゃない”ことがバレるのが怖いだけだなと心の中で自嘲した。

 

「そうか、ではその記憶が戻りお前が話せるようになるまで待とう」

 

表情は険しいままだが、雰囲気は先程よりも和らいだフガクさんの答えに下手な反応をしなかった俺を褒めて欲しい。

 

「お前の目については今俺とタナヤ、お前しか知らない。この三人の他には秘密だ、幼く未熟なお前がもつ強い力を悪用するものが出るだろうからな、それではアイツにグチグチとつつかれてしまう」

 

ふうとため息をこぼす姿を見て父がすみませんと心の中で謝った。

 

その後は万華鏡写輪眼についての説明だった。

 

開眼者はひとつとして同じ模様はなく効果も様々であること、他に文献がいくつかあると聞きその場で見させてもらう。

巻物にはやはり写輪眼を持つ者しか見れないように仕掛けが施されていた。

原作で言うところのうちはの石碑だ。

 

俺は“万華鏡写輪眼”について知識として覚えている、後半になるほど写輪眼は重要な役目を持っていったからだ。

 

しかしここにある文献を読まなければいつその知識を手に入れたのかという話になる。

 

地味ではあるがこういった小さな矛盾を潰していくのが後々役に立つのは経験済みだ。

 

「写輪眼の使い方については暇を見てタナヤに頼む、構わないな?」

「はい」

 

必要な知識を写輪眼で記憶したためこれ以上長居する必要もない。

俺は貴重な資料を見せてもらったことにお礼を言って、屋敷を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の最近の楽しみ、それはアカデミーの王子様うちはアケルくんを見つめること!

 

爽やかで物知りで落ち着いてる雰囲気は女子の目を釘付けなんだから。

 

アケルくんは入学試験から成績は上位で忍術に関しては同年代の私たちを圧倒するレベル!

体術が得意みたいでもう他の女の子たちもアケルくんがでるとつい声援を送っちゃうの!

 

でもアケルくんはそんな私たちを邪険にしなくて、気がつくといつも軽く手を振ってくれる。

何より普段は男子と集まってても落ち着いてるからか何かあればアケルくんに泣きついてるみたい。

 

でもアケルくんも仕方ないなあって笑ってすぐ話を聞いてくれる、頼れるお兄ちゃんって感じよ。

 

男子とふざけあってる時はいつもの優しい笑い方じゃなくて男の子らしい笑い方で、ギャップに何人女子が落ちてるか...うちはアケル恐ろしい子...!!

 

 

「あれまだ残ってたのか?」

「!う、うううちはくっくん!」

 

そう今日私は日直の仕事をしていた。みんなの宿題を運ぶ前に日誌を書き終えてもう教室を出ようとしていた時だ。すっかり夕方で空はオレンジ色に染まっている。

 

「日直か、じゃあノートは俺が持つから早く帰ろう」

「へっいやそんな悪いよ!!私が日直なのに!」

「父さんに女の子には優しくって教わったんだ、これは俺のわがままだから」

ね?と首を傾げる姿はなんというかもうずるいとしか言い様がなく運んでもらうことになった。

 

「うちはくんって、すごいよね成績もいいしみんなから好かれてるし...」

「そうか?これくらい普通だと思うよ」

でも好かれてるかちょっと驚いたと照れつつ微笑む。

 

(はぁ〜〜尊い〜〜〜〜!!!)

この場にファンクラブがいなくてよかった、羨ましがる視線で溺死するところだった。

なんでちょっと照れるんだろう、そこが可愛すぎるんだよね!

いや本当に普段表情筋鍛えておいてよかった!

ニヤけるのを抑えて変な顔になる所だったよ。

 

「ね、ねぇうちはくんってどうして忍びになりたいの?」

 

ほんの軽い世間話のつもりだった。

でもその場の空気がすうっと下がった気がした。

 

 

「―――家族を、一族を護るため、かな」

 

 

夕日に照らされ隣を歩く横顔の、その目が赤く燃えているようだった。

 

「なんてね、まだアカデミーを無事卒業出来るかも分からないけどさ、お互いがんばろう」

 

ニッと向けられた笑顔に思わず固まってしまう。

するとアケルくんはいつの間にか着いていた職員室にノックをして入っていく。

私は先生から声をかけられて気がついてやっと日直の仕事を終えたのだった。

 

 

 

そして週末担任の先生から伝えられたことは衝撃を与える。

 

 

その優秀さからアケルくんは飛び級で卒業試験を受けることになったのだ。

 

 

 



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8

遅くなりました!
今回この部分は書き終えてたんですが、短くない?とおもって付け足してたらなかなか進められませんでした。
前回の続きはちょっと先になりそうです、もう一話くらい日常の話を入れたいと思います。
それではどうぞ!★0505加筆修正しました
誤字報告ありがとうございますっ!!


いつも通り、オレと先生とリンで遅れているオビトを待っていた、今日は演習をすると前から連絡していたのにも関わらずだ。

 

くんと風に乗ってきたオビトの匂いと誰か知らないやつの匂い。

気配からものすごい速さでこちらに向かっているようだ。

 

「っわっと!」

「おおぉあだあ!!」

「あっ」

 

少し危なげに着地したくせっ毛が目立つうちはの少年と、盛大に転んだミナト班の一人オビト。

 

「あ、アケルくんだ久しぶりね」

「リンさん!お久しぶりですお元気でした?」

 

どうやら俺と先生以外はこの少年と既に知り合いだったらしい。

 

「今日は早かったねオビト、もしかしてあの子のおかげかな?」

 

もはや順応してる先生はいつもの遅刻よりも早かったと笑顔で言うものだから、オレは呆れてため息がもれた。

 

「そうなんですよ先生!アケルの奴遅刻しそうだからって瞬身で連れ回したんですよ!死ぬかと思った!!」

「でもそのおかげで演習も早く始められそうだ、よかったらオレたちにも紹介してくれるかな?」

 

先生のことだ彼へのお礼もあるのだろうけど、単純にその速さにも興味がありそうだ。

少年は見たところアカデミーに通っている年齢だろう。

 

オビトは快く返事をすると少年を呼び、リンと手を繋いでやって来る。

それを見たオビトが唇を切って血を滲ませていたのには見ないフリしておいた。

 

 

「俺はうちはアケルです、いつもオビト先輩がお世話になってます!」

 

 

にっこりと笑う姿はどことなくオビトに似てる、同じ“うちは”というだけではないのだろう。

 

あとこんな子に先輩って呼ばせてるのかとじっとオビトを見た。

 

「いやだからぁその紹介おかしいだろ!?」

「圧倒的事実です!」

「あってめぇドヤ顔すんなよ!今のどこにそんな要素があった!!」

「えーっと、全部?」

「おいコラ」

 

目の前で始まるじゃれ合いにリンは肩を震わせて笑っているし、相手のからかい方もテンポがよく気心を知っている関係なのだとわかる。

 

「ん!仲がいいみたいだね。俺は波風ミナト、この班の担当上忍だよろしくね」

「...オレははたけカカシ」

 

「はい、よろしくお願いします!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうね、オビトちゃん」

「おう!良いってことよ今度は気を付けてな!」

 

いつも通り困っている老人を助けて日の高さをみて焦る。

今から走っても遅刻であるが急がない訳にも行かない。

 

曲がり角で気配を感じやばいと思ったが向こうが先に避けたことに安心する。

 

「えっオビト先輩!今日演習ですよねなんでまだここにいるんですか!」

「ちょっとな!ぶつかりそうになって悪い急いでるからまた!」

手を振りこの場を去ろうとするとガシッと腕を掴まれ引かれる。

 

「先輩!こっちからの方が早いです!!」

俺より小さい体にそんな力どこにあったと言うくらいの力で引っ張ると壁をつたい、屋根に登る。

 

「ほら行きますよ!瞬身使えますよね!?」

「っ当たり前だろ!!」

「じゃあ見失わないようにして下さい!」

 

そのまま風を受けて隣の気配が遠くにあるのを感じる、相変わらずの速さに感心しつつ気配を追って走る。

 

「ちょっと、まてっ飛ばしすぎだろ!!」

「こんなの普通です!それより足を動かしてください!!」

「ンなこと言ったってなァ、ッ!?」

 

あと少しで集合場所だという所で、うっかり着地するための距離感を間違え身体が硬直する、咄嗟にクナイをロープに付けたものを手に取ろうとするが

 

「オビト先輩!」

 

その前に伸ばされた手を強く握り返すとまた引き上げられて、そのまま風を切るように走る。

 

視界にメンバーがうつる、やっぱり俺以外は揃っているようだ。

 

 

ん?ああ?!まて着地は!!!?

 

 

顔面から突っ込みながら着地する。

リン、アケル、カカシに先生が心配している様子もないので信頼されてるんだなと思うことにした。

 

その後向こうで挨拶でもしたのか、アケルとリンが手を繋いでこちらに来るのが見えて、ついギリィと唇を噛む。

 

別に羨ましいとか思ってない、思ってないからな!!!!

 

アケルが自己紹介していつものからかいが始まって、恥ずかしいがこいつなりのコミュニケーションなんだろうなと最近は思えるようになった。

 

そしてアケルを紹介し、先生とカカシが自己紹介をするとよろしくお願いします!と元気な声が返ってきた。

 

 

 

 



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9

誤字報告いつもありがとうございます。
いや本当に助かります...。


今日の予定は特になかった、あとはいつもやっている修行をこなすことだ。

 

家事も済ませたし買い物も終わっている、強いて言うならばアカデミーで遊びに誘ってくれる友だちがいないことか。

 

友だち自体いないわけではない。

中身が大人であるからか面倒見はいい方だと思う。

決して俺は厳つい顔つきでもないし、身長も高くない。

父さんも母さんも平均的であるので俺もそれくらいは望んでも良さそうだ。

 

では何故かと言われると、やはり同年代で合わせてふざけるのは疲れてしまうものがある。

肉体は若いのだが気持ちまで童心に帰れない。

それを子供たちは敏感に感じとって、きっと俺があまり乗り気ではないのを見抜いているのだろう。

 

そしてシスイは友だちと修行に誘われていたため、お弁当を持たせると駆け足で出ていった。

 

 

 

俺はぼっちではない、おい目をそらすな!!

 

 

 

時間を有効に使うため修行場へ向かっていた俺はオビト先輩に遭遇し、近道を案内しながら向かう。

そしてミナト班と顔を合わせ、修行を見学することとなった。

 

 

改めて思う何故だ。

 

 

「アケルは普段どんな修行をしてるんだい?」

 

 

ミナトさんに問われ普段やっている修行を思い浮かべながら説明する。

 

 

「そうですね、基本はチャクラコントロールから始めてランニングをした後、俺には弟がいるので弟がいいと言ってくれれば組手の修行、その後は手裏剣やクナイの的当てやドロケイをしたりしてます」

 

 

実際はチャクラコントロールをしながら直線ルートのランニング、組手や投擲武器は瞬身を交えたものだし、ドロケイに至っては僅かな痕跡すら残せない緊張感のあるものだが、あえて言うことも無いだろう。

 

 

「へぇもうチャクラコントロールを覚えてるのかい?」

「はい、父が忍術を使うには体ができてないという事で、加減を覚えるためにまずはチャクラコントロールから出来るようにと修行を付けてくれました」

 

そう考えると本当に父さんは出来た人だな、普段はヘタレそうで母さんの尻に敷かれてる感が凄かったのに。

 

いやよく考えれば、この世界(NARUTO)の女性や奥さんはみんな強かで頼りがいのある人ばかりだったな。

 

思わずミナトさんに同情してしまう、あの赤、ハハやめよう言ったら来そうな気がする。

 

 

「なるほど君にとっていい師だったんだね」

「...はい」

 

じわりとその言葉が染み込んだ。

 

何となくだけどこの人は父さんの死を知っているのではないかと思ってしまう、そんなことはないはずなのだが。

 

視界の端でそれを聞いていたオビト先輩が気まずそうな顔をしており、父さんの話が出てきた辺りからミナトさんは先輩の様子を見て察したのかもしれない。

 

 

そこまで気にしなくても、もう乗り越えたことだ。

あの時の消失感も、悲しみもなくなったわけではない。

それでも俺には守るべきもの(シスイ)がいる

 

守りたいもの(一族の幸せ)がある。

 

原作(未来)を知っている俺がただで野垂れ死ぬことは出来ない。

 

 

そして原作が始まる前に、もっと言えばクーデターが起こる前に俺が死ぬのは良くない。

 

父さん亡き後、母さんが戦に出ている今、

俺はシスイにとって“最も親しい人物”で万華鏡写輪眼の開眼条件を満たしているからだ。

 

原作で“うちはシスイ”がどうやって万華鏡写輪眼を開眼したのか、それは描かれていない。

つまりわからないまま、修正力がいらぬ方向に進むかもしれないのだ。

 

 

 

まさかとは思うが(うちはアケル)という異物がシスイを開眼させる為だけに呼ばれたなど、たまったものではない。

 

 

 

「ーいっアケル!」

「!あ、はいっ!すみません呼びましたか....」

「何度も呼んだぞ、大丈夫か」

「体調悪いの?」

 

どうやら深く考え込んでいたようで四人から心配されていたようだ。気を付けなければ。

何でもありませんと言えば渋々と言った感じで引き下がってくれた。

 

しかしオビト先輩だけは納得していないようだったので適当に理由を考えておくことにした、後で聞かれるだろう。

 

―――本当に仲間想いの人だな。

 

 

 

とりあえず話題を変えて逃げつつ歩けば演習場に到着する。

 

なんとそこでミナトさんが俺がやっている“ドロケイ”をしたいといい笑顔で言ってきた。

 

 

何か疑われている?とも思ったが、この人は子供を疑っているより警戒しているのだろう。

カカシ先生がそうであったように。

 

流石は他国に知れ渡った二つ名を持っているだけある。

 

仕方ないここで修行とはいえ“遊び”の内容を隠すのも不自然だ。

 

ドロケイの内容を説明する。

知っている人ならばわかるかもしれないが、このドロケイは上忍シスイがイタチに依頼した任務に近付けたものだ。

泥棒と警察つまり追われる側と追う側に分かれて捕まえる遊び。

 

設定としては、追われる側は”潜伏し重要な情報を入手した敵国の忍び”

追う側は”敵国の忍びを追う追跡任務を受けた忍び”

 

情報が盗まれてから20分後という状況でそれぞれは勝利を目指す。

 

国外つまり一定のラインから逃げ切った上、情報を持って帰れれば敵国の勝利。

国外に逃がす事なく盗まれた情報を取り返せば自国の勝利、というのがそれぞれの勝利条件だ。

 

しかしこれは忍術を交えたものなので出会えば戦闘や陽動、逃走もある。

もちろん逃げる一択もありだ。

 

 

本来のドロケイは泥棒がいなくなるまでやるものだが、牢屋に入れられた泥棒を逃がすことも出来たし終わりのない遊びだったと思う。

 

 

「へぇ結構本格的だ」

「これ弟くんとやってるの?」

「はい、なのでお互いに緊張感をもってやってます、最近は弟も腕を上げてきたので手を抜けないんですよ」

 

そうこれをシスイとやるのだが、回を重ねる毎に成長しているため、こちらはあらゆる戦略と罠とパターンを作って対応しなくてはならなくなった。

 

それはいい、この修行も役に立つはずだから。兄心的には焦るが割り切るしかないだろう。

 

満足が行ったのか腰のポーチから取り出した地図を広げるミナトさん。どうやらここの演習場一帯の地図のようだ。

 

「ん!じゃあはじめよう、みんなは俺を捕まえる側でゴールはここ、ハンデに俺は瞬身までしか使わないことと始まってすぐは半径20メートル以内に潜伏、そして―――」

 

地図を指さしながら説明していたミナトさんが顔を上げてにっこりと笑う、流石顔がいい、が嫌な予感がする。

 

 

「アケルは俺とツーマンセルでいくよ」

 

 

言い出しっぺの法則ですか、実はSっ気つよいですよねミナトさん。

 

俺今日生きて帰れるかな。

 

 

 




うちはアケル(7)
黒髪くせっ毛
シスイの兄
弟の死亡フラグを爆散させたい
もしかして:幸運E
絆されやすい
組紐作りが趣味
木彫り技術習得
ぼっち←New!


この回がすごく長い!!おかしい終わる予定だったのに...!
というわけでまだ続きます...すみません。
ドロケイやらケイドロやら懐かしいですね、今の子ってこういう遊びしてるのかな。

では次のお話で!




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10


ご、誤字報告ありがとうございます…!!(仕事が早すぎるッ)


 

 

 

 

結果から言えば、俺とミナトさんの泥棒チームが勝利した。

 

 

 

まず分身を情報の書かれた巻物に変化させる、ミナトさんは影分身でもう一組俺たちを作ると巻物を一つ渡し別れる

(影分身っていいのか、とツッコミは入れなかった)

 

時間になるまで潜伏したあとゴールを目指す。

直線ルートには影分身のミナトさんと俺が向かい遠回りのルートには本物のミナトさんと影分身が向かう、巻物は俺が本物を持っている。

俺は気にせず前だけを走れと言われたので背後の警戒はミナトさん前方の警戒は俺が担当し進む、これが作戦の内容だ。

 

 

 

正直、途中で死ぬかと思った

オビト先輩とカカシ先生のコンビネーションを舐めていたし、二人の邪魔にならないように支援しようとするリンさん

 

やはり戦時中という背景が三人の戦力が高い理由なのだろうが、それでもしっかり班でのチームワークは優れていた。

 

 

カカシ先生が原作のようにチームワークをしようとせず向かってこなかったのは俺のことをオビト先輩から聞いたのか、

それとも技術も経験も圧倒的に不利な俺を指名しておきながら、余裕の笑顔だったミナトさんをみて警戒したのかもしれない。

 

どちらにせよ連携がとれているのは厄介だ、まあこちらもミナトさんがなんとかするのだろうけど。

ふと後ろを向けばイケメンがニコっとファンサービスをしてくる、これだからイケメンはそんな笑顔(ファンサ)はあなたのお嫁さんにでもあげてください。

 

(この人も、あの事件の後に)

 

心がざわつきチャクラが乱れるのを感じ切り替える、この僅かな動揺も後ろのあの人には見抜かれるそれは避けたい。

 

何だかんだで優しい人のイメージがあるがそれは身内に限定される、だってこの人は他国にこの若さで名が知れ渡る忍なのだ。

そんな人が優しさだけなわけが無い

だから少し苦手だ、俺のことを見透かそうとしている気がしてしまう。

 

考えすぎなものか。

こっちは甘ちゃんの現代人なんだ、いくらここに馴染む努力をしても数十年間共にあった価値観というのは中々抜けきらない。

一瞬が命取りなのは、嫌ってほど知っているのにな。

 

なんとか俺たちが勝利条件を満たし逃げ切ったが普段の何倍も気を使ったし、チャクラもギリギリで意識を保つのがやっとの状態。

なので俺は終わった後ちょっとオビト先輩にお願いして、おぶってもらい楽してうちはの区画まで帰った。

 

 

—————うむ、当時はそんなこと考えなかっただろうが、俺の黒歴史がひとつ増えたんだよなあ!

 

 

 

 

 

 

 

 

やはり彼くらいの年齢でこれほど素早さに特化した子もなかなかいないだろうな、とそばで見ていて思った。

それは所謂天才と言われる者達と比較しなかった場合に限るが。

 

彼は恐らく努力と向上心のみでここまで上って来たのだろう、証拠に小さな手には豆が何度も潰れた跡、腕や足には細い傷がいくつもあってきっと瞬身を使い走り回ったからと予想できる。

 

ふと後ろからの気配に気が付く、前を行くアケルも感じ取ったのかちらりと後ろを振り返った

 

「!、ミナトさん」

「来たね」

 

追いかけてきた気配は三つ

どうやら潜伏範囲に置いておいたダミーの痕跡と揺動に引っかからずこちらを目指してきたようだ

 

「アケルまだ行けるかい?」

「はい!」

 

小さな身体がチャクラコントロールを使いさらに足に力を込め跳ぶ、その量も正確で丁寧だ。

この様子ならば無闇矢鱈にチャクラを消費せず先ほどよりも速く進める

 

しかし向こうもただではいかないだろう、実際スピードを上げた気配が一つ

恐らくカカシで間違いない、そして前を塞ぎ追いついた二人とで挟撃に出る作戦だろうな。

 

演習もよくこなす俺とほとんど情報のないアケル、彼についてはオビトが情報を共有したとなれば、アケルが瞬身を得手とし同年代より優れていることは伝わっているはず。

 

故にまだチームを信頼しきれないカカシも今回ばかりはチームメイトと協力するしかない。

 

相手のツーマンセルがどちらも”速さ”に特化しているのだ、一人で向かった所で隙をつかれ出し抜かれると考えているはず。

 

これが経験のない忍びならともかく、それなりの経験がある俺が相手であるならば僅かな油断が敗因となる。

 

 

まあ流石に下忍でもないアケルでは、上忍であるカカシを引き離すことが出来ないのは想定内だ。

 

(だからこそ自分がそのカバーに回る……!)

 

研ぎ澄まされた神経が風を切る音を拾いクナイで応戦する

視界の端で銀色が揺らめき、再び無数の手裏剣が、背後からは畳み掛けるように手裏剣と火の玉が襲いかかり挟み撃ちとなる。

 

弾きつつ前を見れば、小柄で柔らかい身体をうまくひねり当たりそうな手裏剣はクナイで落としていく姿

実力を見るためにあえて最初の戦闘には手を貸さないつもりだったけどなかなか器用だな、と思う。

 

「!」

 

そしてほんの一瞬、その目が赤く染まっていたのを見逃さなかった——————その歳で開眼しているのか

 

(なるほどソレならばこの回避能力も頷ける)

 

カカシから二波目の攻撃が放たれるが、アケルはこちらを信頼しているのか

前から迫るカカシを無視し、後ろの火球に向かい慣れた動作で印を組み始める

 

「”火遁 業火球の術”」

 

熱量が一気に噴射され火球がぶつかり合い相殺される

相手の術とチャクラを読んだ正確なコントロールと出力に関心しつつも油断なくクナイを防ぐ、任されたのならばしっかり対応しなくちゃね。

 

相殺されたところでその爆風にのりながら、アケルがこちらに飛んでくると同時に走り出す

上がった煙からこちらを逃すまいと手裏剣と向かってきたのはオビトとカカシ

 

(二人で来るか悪くないけど、さてリンは何処かな?)

 

リンはサポートに入るだろうから、ここで上手く足止めしつつ追いつかせる算段だろう、もしかしたらもう潜んでいる可能性もあるかな。

 

「ミナトさん、先に行きます!」

「ああ!」

「っさせるか!」

 

オビトがアケルに掴みかかろうとするが、うまく躱す、俺はカカシと押し合いアケルが走り出す、これは事前に打ち合わせしていたものだ。

 

実力がわかっている分、カカシとオビトは俺に集中せざるをえないが残っているリンをどう対処すべきか、

 

(サポートさせる前にアケルが逃げ切ってしまえばいい)

 

三人の中でリンは走はあまり得意では無いことも織り込み済みだ、ふと笑みが込み上げるが悪い顔だと言われてしまうんだろうね。

 

瞬身を使いどんどん気配が遠くなるアケルと前に行こうとして俺に捕まり足止めを食らっているカカシとオビト

焦った二人からのクナイの陽動、手裏剣や忍術を躱し、いなす。

中々ヒヤリとするものもあるが致命的なものではない、リンも合流するがそれでも同じだ。

 

「クソ!すきがねぇ…!」

「っミナト先生、ちょっと本気じゃないですか?!」

「チッ…はやくしないと、あいつ結構はや、」

 

 

——————パァン!

 

 

「ん!どうやらゴールに着いたみたいだこのゲーム僕らの勝利だね!」

 

ゴール地点に置いておいた花火が打ち上がるのを確認するとずっと追いつくために走っていたリンやオビトはぐったりとして、カカシもなんとか立っているが肩で息をしていた。

いやぁ、この訓練はなかなかハードだよね俺も張り切ってしまったからね。

 

「少し休んだらアケルを迎えに行こう、きっと彼はゴール地点で動けなそうだからね」

三人とも息を整えたあともう少し先にあるゴールに向かう。

少し開けた場所でばったりと倒れている小さなふくらみはこちらに目線だけを寄こす

恨めしそうな苦虫を噛み潰したよう、そんな表情だ。

 

「……ミナトさん、あの」

「アケル、勝利条件達成だね!よくやったよ」

「…………はい」

 

 

(俺まだまだだって凹んでたけど…うっわあの顔で言われたら何も言えねぇ〜)

(かわいそう)

(アハハ…あとで労ってあげようね!)

 

ほぼ本気で三人の相手をしていたとはいえ取り逃した術とか最初の方は飛んできただろうから、避けるのも大変だったはず。

 

チャクラはギリギリなんとかもったという感じだ、チャクラ量はそこまで無いからこうなることは予想出来た。

まあそこは今後少しずつ伸ばせるものもあるだろうし、チャクラコントロールは申し分ないからね。

もう少し休もうかなと思ったら、リンとオビトがしゃがみこんで開けるに声をかける。

 

「アケル起きれるか?」

「大丈夫?」

「オビト先輩……」

「ったくしょうがねぇなあ!!」

 

おや?なるほどアケルはオビトに懐いてるのか、あまり甘いところ見せない質だと思ったけどオビトも満更でもないのがいいね。

しっかり掴まれよなんて声をかけるオビトに荷物をもつよとよく気がつくリン。

カカシも流石にアケルの実力も見れたからか出会った頃よりはよくなったかな。

チームワークについてもオビトとリンの性格もわかっただろうね。

穏やかな雰囲気になりながら談笑している4人に声をかけた。

 

「ん!じゃああまり急ぎすぎないで里に帰ろう」

 

 

ただあの若さで開眼しているのが唯一の気がかりだ、上層部はやはりうちはを信じきれていない。

 

(——————”彼ら”が火種に巻き込まれなければいいけどね)

 

 





数年ぶりの登場、どうもポポビッチ磯野です。

難産すぎて諦めてた最新話です、何だかんだ書いてはいて情報集めようとしたら書けなくなっていましたね。
なので途中から流れが変わってるな?って所が違和感としてあると思いますがご容赦下さい。
昔の見ると本当にコイツ勢いだけでこんだけ書いてるのヤバいってなるので(何で書けたんだコレ…?)

それからコメントもありがとうございました

あなたのおかげで本当にちょっとでも進めて10話投稿に至りました。
このお話はいくつかルートがあって、それまで書くのが本当に苦手マンで……正直そこまで持って行けるとは言えないのが現状です。
……期待はしないで下さい、すみません、なので!期待せずに生きておいてください!(開き直り)

では、また次のお話で。







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