ヨロイの勇者は理不尽を許さない (橆諳髃)
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プロローグ前半

「な、なぁ作者。お前何個投稿するんだよ?」

何個でも! 自分がやりたいと思った数だけ‼︎

「もぅこいつは手に負えないな……」


ひょんな事で目の前で車に轢かれそうな子供を助けた仙谷夜光(せんごくやこう)。自ら飛び込み子供を助け、代わりに自身のその世の生を失う。

 

神はそれを見て、彼に惹かれるものを見出し、複数の能力を持たせて転生……させる前に違う世界で武者修行を言い渡す。そこで彼は様々な人達と出会い、今までに無かった感覚を体験する。

 

それから時は経ち、今度はガン×ソードの世界へ。しかしそれをよしとしたく無かったのか他の神が妨害……夜光は子供の姿でとある町へ流れ着く。その際からの体は負傷、意識も定まらない。そんな中で1人の女性と出会う。

 

彼女はどうにか夜光を自分が住んでいる館に運び手当てをする。数日後に夜光は目を覚まし、助けてくれた女性に命を救ってくれたお礼として彼女と行動を共にした。

 

夜光が飛ばされた町……そこは淫らな行為が普通に行われる娼婦街。彼女も幼少ですぐに売り飛ばされ、まだ小さい頃からその様な行為をしていたと知った夜光。この世界がおかしいと気づき始める。

 

そんな中で夜光と女性は行動していくうちに、互いが互いで何かに惹かれる所を感じ、やがて恋仲に発展。夜光と彼女は、どんなに辛くても一緒に生きて行こうと誓う。

 

だが神がそれを面白くないと感じたのか……娼婦街は突然の炎に包まれる。夜光はその女性を救おうと命懸けで、彼女にも言ってなかった能力で助ける。

 

「夜光くん‼︎」

 

「心配いらないですよファサリナさん‼︎ 後で必ず‼︎」

 

助けたものの、自身は館の炎に包まれた。

 

摩訶不思議な能力で助かった女性、ファサリナは娼婦街の炎がおさまったのを確認すると、すぐに夜光を探す。

 

だが見つからず、心の中は絶望により支配されて、生きる意味を無くしたと思っていた矢先……

 

「おや、こんなところでどうかしたのですか? あなたを見るに、どうやら絶望している様だ。でも安心してください。私はこの世界を良くしようと旅をしているものです。一緒に……この世界を救いませんか?」

 

右手がカギ爪の男が、ファサリナに手を差し出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その数時間後……

 

 

 

 

 

 

ガッシャーッン‼︎

 

 

 

 

 

 

「はぁぁぁ……やっと出れた。ファサリナさんは……」

 

夜光は娼婦館の焼け跡から脱出した。それからファサリナを探し始める。だが……

 

「そんな……嘘だろ……嘘だと言ってくれ……なぁ、ファサリナさん……ファサリナさぁぁぁん‼︎」

 

それから数時間探しに探したが……ファサリナを見つける事は出来なかった。そこで立ち尽くす夜光……そこに旅のものだろうか。通りがかった人が夜光に話しかける。そして夜光も何があったのかを話した。すると……

 

「あぁ……その人なら見かけたよ?」

 

「うんうん、確か誰かと一緒にいたよ」

 

「っ⁉︎ ど、どこでですか⁉︎ どこにいましたか⁉︎ 誰と⁉︎」

 

「確かここから北西に行ってたよ。どこにいくかは、見かけただけだから分からないけど……確か」

 

「右手がカギ爪の様な男と一緒にいたのは見たかな」

 

「カギ爪……」

 

「うん。なんか女性がその男について行ってたよ?」

 

……はっ? 何だよその理不尽は……そいつは何の理由で連れて行ったんだよ……

 

(何で……何で何で……何の理由があって引き離すんだよ……許さない……)

 

「ありがとう……ございました」

 

そうして旅人と離れた夜光……それから数十分後

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カギ爪……か。ともかくソイツに会う理由ができたな。救ってくれたのなら礼を言うか。だが意図的に攫ったとしたなら……その時は鉄拳制裁、だな」

 

夜光は旅に出る。最愛の人、ファサリナを救うために……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここからはアニメに沿う形で物語が進行する……

 

 

 

 

 

 

 

 

ガン×ソード1話

 

とある町でガン×ソードの主人公であるヴァンと、その町に住む少女ウェンディに会う。そこでたまたま盗賊団ワイルドバンチに町を襲撃される。目の前で起こる理不尽……それを過去に起きた娼婦街の火事と重ねた結果……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

制・裁・決・定!

 

 

 

正直娼婦街の火事は事故、若しくは自然災害みたいなもので理不尽とまではいかないかもしれない。しかし夜光にとっては、自分の幸せな時間を引き裂いた理不尽(もの)としか考えれなかった。

 

後日、ヴァンと協力して盗賊団を倒す。そこでカギ爪の新たな情報を入手。利害が一致してヴァンと行動を共にする。殴るのは夜光、殺すのはヴァンである。そしてそのカギ爪に兄を拐われたウェンディも同行を決意し、新たな旅立ちを迎えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガン×ソード2話〜8話

 

様々な者達と出会いと別れを繰り返す。その中でも理不尽だと思ったものには介入していく。その様子を見た同行者のヴァン、途中で知り合ったカルメンからは鬼畜と言われた。解せぬ……

 

ガン×ソード9話

 

カルメンの故郷に赴く。そこでとある事件が起こり、カルメンがその事件の主犯であろうファサリナという女性に会った事を知る。

 

(漸く……漸く貴女の近くに行けそうだ)

 

だが同時にこうも思う……

 

(しかし……何故貴女がそんな事を……)

 

ガン×ソード10話

 

ここで一旦ヴァンとカルメンは別行動をとる。夜光はカルメンの護衛としてヴァンと離れる。その際だが……

 

「前々から目の錯覚だと思ったけど違ったから言うわ……何であなたは何の装備もなしに空とか飛び回れるのよ⁉︎」byカルメン

 

その答えには……神様からもらった転生特典と答えるわけにもいかず、あえて出した答えは……

 

「空気中に舞う微細な塵などを即興の足場として蹴ってるから」

 

その答えにカルメンは溜息を吐いた。

 

ガン×ソード11話〜12話

 

ヴァンと合流……したかと思ったらウェンディがいなかった為に夜光が探す事に。そして探していたらウェンディと、その兄であるミハエルに遭遇。取り敢えずバレない様に聞き耳を立てたところ、ミハエルの話はウェンディにとって理不尽であり、自分でも腹が立ったため……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっゴッメーン‼︎ なんか間違えて脚が出ちゃった〜‼︎」

 

と反省の色なくミハエルの頭目掛けて飛び蹴り、それは正確にミハエルの頭を捉えて吹き飛ばした。

 

「な、何なんですかあなたはいきなり! 初対面の僕が一体何をしたって言うんだ‼︎」

 

「ここにいるウェンディを悲しませた。理由はそれだけで十分だ」

 

「だ、だからといっt「それでも理由が足りないというのなら……」なっ⁉︎ ガハッ⁉︎」

 

夜光はミハエルに馬乗りになって殴りまくる。

 

「お前が2004年放送の(〜ここからは自主規制〜)」

 

「ちょっ⁉︎ それは僕j「言い訳なんて聞くか!」ガハッ⁉︎ 「そもそもお前が!」ぐぅっ⁉︎ 「こんなところで!」うっ⁉︎ 「油売って!」だっ⁉︎ 「妹さんを!」ガッ⁉︎ 「悲しませてなかったら!」ナバナッ⁉︎ 「俺はこんな事!」ドゥッ⁉︎ 「ハナっからやってねぇって話だろうが‼︎」ナバナァッ⁉︎」

 

「ふぅーーーーっ……あぁそれと、お前の近くにファサリナさん、いるよな?」

 

「なっ⁉︎ 何故あなたがそれw「へぇ〜、いるんだ? それも今この町に」くっ」

 

「一応言っておくが……ファサリナさんに手ェ出したら、その時はこの比じゃないほどぶん殴るからな? それと今ファサリナさんがどこにいるのか言えば、今回はここまでにしておいてやるよ」

 

「た、確かにファサリナさんはこの町に来ているが……だが僕もどこにいるのかは……」

 

「……なら最終的に落ち合う場所を言え。後カギ爪もだ」

 

「ぐっ……黙秘する……」

 

「そうか……分かった。もう良い。どこへでも好きなところに行くんだな。行こうかウェンディちゃん?」

 

「あっ……ハイ」

 

そしてヴァン達と合流する。ヴァンはウェンディに対して何故カギ爪の場所を聞かなかったのかを怒ったが、そこを夜光がすかさずフォロー。それによってアニメの様な険悪なムードにならずに済んだ。そこで一旦別行動に入る。

 

夜光はファサリナさんを探しに出来るだけ高い場所を目指す。そこでたまたまこの旅の最中に会ったレイと出会う。この者もカギ爪を復習対象として狙っている。一緒に同行しようとしたら断られ、無理について行こうとしたら、何故か脇侍という……ガン×ソードとは全く関係ない何かに遭遇。レイには目もくれず夜光を狙う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(邪魔だな……)

 

そう思いながら脇侍を一体ずつ丁寧に潰していった。

 

ガンソード13話

 

脇侍を屠っていると結構時間が経ち、いつのまにかヴァンが町の外でヨロイで戦っていた。因みにヨロイとはこの世界の戦闘などロボットの事を言う。しかしながらただの車をヨロイと言い張る者もいる。

 

(ヴァンと戦っているヨロイ……ダンと同じタイプか?)

 

ダンとは、ヴァンが使用するヨロイの事であり、呼ぶと宇宙(そら)から来る。

 

脇侍を屠っていながらヴァンの戦いを見ていると、町から何かが飛び出してきた。それはヨロイであり、ダンと同じタイプなためか目が向いたのだろう。そこで夜光の目に移ったのは……

 

(右手が……カギ爪の……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「漸くか……漸くファサリナさんに近付けた! こうしちゃいられねぇ‼︎」

 

邪魔だっ‼︎

 

自らの手に紅色の大剣を持ち周りの脇侍を全て一気に屠り、カギ爪の元へ。

 

「待ちやがれぇっ‼︎」

 

宙に飛び出してヨロイの背後数十メートルの位置についた。そして位置が変わった事で、そのヨロイの手に乗っているのがカギ爪の男だけではない事が分かった。カギ爪の隣にいた人物……それは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(あの艶やかな黒い長髪、あの髪の結び方、背丈、後ろ姿……服装は違うが……間違いない。あれは……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっと……やっと見つけた……ファサリナさん……」

 

(こうしてはいられない……追いかけなければ!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこのヨロイ止まれやゴラァッ‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒィッ⁉︎

 

そのヨロイに載っている少年ミハエルは、先程夜光に殴られた事(トラウマ)もあり数十メートル背後にいる夜光に気がつく。本来なら聞き取れないが、彼の第六感が夜光の叫びを捉えたのだろう。一気に速度を上げて夜光から離れる(逃げる)その思いがヨロイに伝わったのか、夜光の姿は砂つぶくらいの大きさになってやがて見えなくなった。

 

(な、なんとかなった……)

 

これが今のミハエルの心情である……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「逃してしまったか……」

 

後もう少しのところでファサリナに追いつけなかった夜光は、宙に浮かびながら気を落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(さっき……何かが聞こえた様な。それも……懐かしい声。まるであの人の声……)

 

「ファサリナさん、どうかしましたか?」

 

「同志……いえ、何でも。ただ空耳で懐かしいあの人の声が聞こえた気がしただけです」

 

「そうでしたか……それでしたら、その方のためにも計画を成功させねばなりませんね」

 

「そうですね」

 

「しかしながら疑問です。先程からサウターデの飛行速度が速くなった様な気がするのですが……」

 

「確かに……ミハエルくん何かありましたか?」

 

「えっ⁉︎ い、いいいいえ何でも⁉︎」

 

「? そう。それなら良いわ。この調子で頼むわね?」

 

「は、はい!」

 

彼女は知らない……最愛の人が自分の後方数十メートルの位置にさっきまでいた事を……




プロローグ前半はここまで! 後半に乞うご期待‼︎




因みに自主規制の内容は……

「お前がガンダム SEED DESTINY の主人公であるシンから主役の座を奪ったからだろうが‼︎ 1期のSEEDで最初から最後まで主役を張っていたにも関わらずに2期のDESTINYでも主人公に成りかわるとか! 最近のスパロボで確かにシンには補正が色々ついたが、そんな事で過去が無かった訳にされる訳じゃあねぇんだ! 取り敢えずその責任としてぶん殴られろ‼︎」

まぁ大まかにはこんな内容でした。


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プロローグ 後半

結構早く投稿出来ました!

プロローグ前半部分でも既に9件お気に入り登録……お気に入りに登録してくれた皆様には感謝しかございません‼︎

それではお待たせしました! 後半部分でございます! どうぞご覧下さいませ‼︎


 

 

 

 

 

 

 

ガン×ソード14話

 

ファサリナに会った夜光だったが、後一歩のところで届かなかった。悲嘆に暮れるが、それでも前に進み始める。

 

次に赴いたのはヨロイ同士の大会が開かれる町。ヴァンがその大会を主催している会社のヨロイ使いとして、決勝戦だけ戦う事になった。まぁそれはカルメンからの仲介でそうなったわけだが……そこでヨロイ乗りのプリシラという少女に出会う。彼女も大会の出場者であり、準決勝も彼女が勝ち進み決勝ではヴァンと戦うことになった。

 

彼女のヨロイ乗りとしてのセンスが気になったのかプリシラのあとを付けるヴァン。夜光も気になって一緒に同行した。そして彼女の事を知った。何故大会に出ているのかを……。彼女の事を知った夜光は、どうにか少しでも手助けがしたいと考えた。

 

(う〜む……あるっちゃあるが……まぁやってみるか)

 

そこで夜光は行動を開始した。

 

決勝当日だが、途中で大会主催者の本来の決勝進出者が現れ、途中までヴァンとプリシラが戦っていたがヴァンが進出者にバトンタッチ……結果はプリシラの勝ちとなった。因みに夜光はプリシラとその家族のために結構広い農園と家畜を育てるための設備、後牛、豚、馬をこっそり送っていた。

 

この結果だが……プリシラの家族が経営する農場並びに牧場はその星1番の規模を誇ったと言う。

 

ガン×ソード15話〜16話

 

ヴァン達と飛行船に乗って旅路を行くが、その行く手をカギ爪の理念に賛同したヨロイ使い……ネオ・オリジナル7の1人、ウーが立ちはだかる。

 

その者はあろう事か一般人も乗る飛行船に、同乗するヨロイ使いを下ろさなければ攻撃を仕掛ける。と言ってきたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

貴様は無関係の一般人さえも巻き込むと言うのか……雑種如きが

 

相手のヨロイからビームが発射される。それは飛行船の直撃コースだ。

 

夜光は窓を開け放ち、いつも持ち歩いている石を遠くに投げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ルーム……シャンブルズ‼︎」

 

夜光を中心として薄青色で巨大な円ができた。そして直撃コースだったビームは一瞬消え、飛行船の真横を通り過ぎた。

 

『なっ⁉︎ 馬鹿な! 飛行船が避けたというのか⁉︎』

 

ヨロイ乗りがもう1回ビームを放つ。が……

 

「シャンブルズ‼︎」

 

夜光の能力はまだ健在であり、ビームは夜光が投げた石と位置が入れ替わった。

 

『ま、まただと⁉︎ あ、ありえん⁉︎』

 

敵がそうなっている間に夜光はヴァンにあのヨロイ乗りと戦うように言う。ヴァンもこの間の戦闘の感覚が何なのかを確かめるために承諾するが、能力を使いこなしている敵に負けてしまった。

 

「まぁ今負けるのは仕方がないよな」

 

『なっ……貴様は何者だ⁉︎』

 

「俺か? 俺は……」

 

「カギ爪に最愛の人を連れ去られた。理由は違うが、俺もカギ爪に用がある」

 

『……ほぅ、貴様も同志に会いたいというか。ならば我々と共に来るがいい。すぐに同志にも会えるし、その想い人とやらも見つかるかもしれんぞ?』

 

「確かに……それは魅力的な話だ。俺にとってはメリットしかないのかもしれない。だが何故だろうな……ここにいるヴァンと行動して、そんな中で何でヴァンが復讐しようとしているのかを聞くとさ……お前の言う提案がメリットであれ付いて行きたくないって思っちまうんだよな」

 

『そうか……ならば貴様は同志の敵となるか?』

 

「別にそう言いたい訳ではないんだが……俺としては何故最愛の人がカギ爪について行ったのか、それを見極める必要がある。その同志とやらの敵対はそれをしてからでも遅くはないと思っているがな」

 

『ここでの敵対の意思は無いというのに我々と共にあろうとしない……か。いささか矛盾しているのでは無いか?』

 

「そうだろうな。だがそれを差し引いたとしてもだ。お前はさっきあの飛行船を、一般人が乗っているのにも関わらずに攻撃をした。だからお前と共にあろうとは思わない」

 

『そうか……それは残念だ。少しだけ話した程度ではあるが、貴様とは良き友人関係になれると思ったのだがな』

 

「俺はお前が一般人を巻き添え覚悟で攻撃してきた時点で、そんな事は思わなかったがな」

 

 

 

 

取り敢えずその一幕は終わった。

 

夜光はウーにその言葉を吐いてヴァンと合流。そこで死ぬ事に恐れを抱くヴァンと体調不良のウェンディを見た。

 

(見捨ててはおけん……だがこれはヴァンの問題だな。ウェンディには……取り敢えず処置を施しておくか)

 

とりあえずそのままその町の廃墟にお世話になる。

 

ウェンディの症状は発熱だった。

 

「ルーム……スキャン……38.6℃か。とりあえず最低でも3日間は絶対安静だ」

 

「は、はい……でもその前に……さっきのは何ですか?」

 

「……生まれ持った俺の能力だ」

 

「そ、そうなんですか? ならさっきの相手の攻撃をどうにかしたのも……」

 

「あぁ、勿論俺がやった。乗客は無関係だからな。ところでさっきから俯いて黙り込んでいるヴァン、お前はこれからどうするつもりだ?」

 

「……分からない」

 

「……そうか。まぁ良い。ともかく今回の事は取り分け根深い事になっていそうだからな。俺は対して力になれそうに無い。アイツが指定してきた日は3日だったか?」

 

「あぁ……」

 

「そうか。取り敢えず……気休めにしかならないが、俺が言える事は……これまでの事をゆっくりと振り返ってから決断しても遅くはないんじゃないか? ここからアイツの目を誤魔化して目的地に行くのいい。復讐を諦めるのもいい。だが後悔だけはするな。まぁ誰でもいいそうなありふれた言葉だがな。俺は俺で先を急ぐ。まぁ……俺個人としてはお前の悩みが、今の苦悩が拭い去れた状態でまた会いたいと思ってるよ。じゃあな」

 

そしてそこで夜光はヴァン達と別行動をとる事にした。

 

 

 

 

 

 

その後のことではあるが、……ヴァンは完全に吹っ切れた。死んだエレナへの愛を夜空に連呼しながら……そしてヴァンは、1度負けた相手に完勝したのである。

 

 

 

ガン×ソード17話〜24話

 

その後、ヴァンとウェンディは夜光と合流。目標地点を目指して進む。そして途中カルメンと合流した。しかしそこにいたのはカルメンだけではなく、旅の中で出会ったヨロイ乗りのおじさん達とその娘、ヨロイ乗りの大会が開かれた町で出会ったプリシラも今回の旅に同行する事となった。ヴァンは乗り気ではないものの、賛成多数で同行が決定した。

 

目標地点に行く中、男子禁制の町があった。そこへはとある依頼主からの頼みで潜入する事となったが、勿論女性チームだけで行く事に。その準備をしていると……

 

「カルメンさん、少し頼みがあります」

 

「あら、どうしたの改まって?」

 

「カルメンさん達が潜入するところが男子禁制という事で、俺が行く事が叶いません。そこに俺の探している人……ファサリナさんがいるかもしれない事を考えると一緒に同行したい。だがそれでは依頼主にも迷惑がかかるかもしれない。だからこれを持って行って欲しいんです」

 

「これは……小型カメラ? ……アンタまさか‼︎」

 

「誤解はしないで欲しいんです。ただ俺は……数年前にファサリナさんを連れ去られて、この前その人らしい後ろ姿を見ただけで終わって届かなかった。彼女が……カギ爪に何か暴力とか晒されていないか。元気な姿でいるのか確かめて欲しいんです」

 

「……そこまでその女にゾッコンなのね。私が見るに好きでカギ爪の理念に賛同していたみたいだけど……まぁ良いわ。それで報酬は?」

 

「前払いで」

 

何もない空間から報酬を出す夜光。

 

「……もうアンタの能力とやらには何も言わないでおくわ。取り敢えず契約成立ね」

 

「ではこちらの契約者にもサインを」

 

「アンタちゃんとしているわね……」

 

「ファサリナさんの為なら」

 

「……」

 

その後無事に女性に占領された町へと潜入を果たす。そこで若干の勝負事に巻き込まれるが、それも辛くも勝利した。その勝負事の最中にカルメンはファサリナを目撃。跡をつけて対面した。その時夜光から頼まれた事もしっかりこなした。

 

「あの……何故それで私の写真を?」

 

「アタシだって本当はこんな事したくないんだけどね……アンタにゾッコンな奴からの依頼で仕方なくよ」

 

「私の事を好きな人から……ふふ、まだそんな人がいたのですね。でも私には関係無い話です。そう……数年前に失ってしまった彼以外は……」

 

「彼……ね。それって……夜光って奴の事でしょう?」

 

「っ⁉︎ どうしてあなたがあの人の名前を⁉︎」

 

「どうしてって……今一緒に行動しているから」

 

「そ……それは本当ですか⁉︎」

 

「嘘は言わないわよ? それにアイツもアンタに会いたいがために数年間旅をしてきたって言ってたしね。まずその夜光で間違いないだろうし。私としてはアンタはいけ好かない女だし、私の友達に手を出した時点で許しはしないけど……でもアイツと一緒にいたいって言う事なら、今からでもこっちに来て遅くはないと思うわ」

 

「……私は」

 

そんな会話がなされた中、突如町を地震が襲った。そのせいもあったか、ファサリナの説得は中断となってしまう。そもそもカルメンとしては、ファサリナの写真を夜光に届ければ良かっただけの依頼ではあった。しかし、そこは仲間と認識している夜光の為だろうかその行動に出たのかもしれない。それも地震でオジャンになったが……

 

まぁそれはたまたま町の下を掘削兼用のヨロイを持つレイが通ったからなのだが……

 

その後カルメンは夜光にファサリナの写真を渡した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ファサリナさん……元気そうで……良かった……」

 

涙を流しながらその写真を大事そうに抱きしめる夜光。それを見てカルメンももらい泣きしそうになったと言う……

 

 

 

 

 

 

何はともあれそこでの依頼を終えたヴァン一行。目的地に進むべく進行した。その途中で無人機のヨロイや双子のヨロイ乗りに進行を阻まれ、ヴァン達は分断される。そこでカギ爪に復讐を誓うもう1人のヨロイ乗りレイがヴァンに合流。しかしヴァンとよ連携など考えずに双子のヨロイ乗りと戦う。

 

そこでレイはビームランチャーを取り出してヨロイ乗りを2人とも撃破した。しかしもう1人のヨロイ乗りに攻撃を許して目にダメージを負う。その中夜光は……

 

(敵とはいえ子供……命を失わせる訳にはいかない)

 

「ルーム……シャンブルズ‼︎」

 

能力で双子の命を自分の近くに移動させた。

 

「これよりオペを開始する……スキャン」

 

そこで双子の状態を理解して手早く治療を開始。双子は命を取り留めた。その後双子は意識を取り戻すが、双子の兄の方が自分達を助けた夜光に怒りをぶつけた。しかしそれに対して夜光は……

 

馬鹿野郎‼︎

 

「っ⁉︎」

 

「子供がそう簡単に自分の命を捨てようとするな‼︎ お前達の命は……未来はこれからだろうが‼︎ 世間を満足に回ってみていない奴らがそんな事を簡単に口にするな‼︎」

 

「でも……だったら! 俺、どうすればいい‼︎ 俺達勝手な事した! 同志に迷惑かけた! 帰る場所……今更……」

 

「なら今は俺達と一緒に来い! 後の事はそれから考えろ‼︎ 俺も……出来るだけ一緒に考えてやるから」

 

「っ⁉︎ うぅ……うぇぇぇぇっ」

 

「そうだ。まだ子供なんだ。泣きたい時は泣いておけ。大人になったら泣く事なんて難しくなるんだから」

 

泣き噦る双子の兄を優しく抱き締めながら頭を撫でる夜光。その一面を見た一同は、同時に夜光の父性と包容力を知った。

 

 

 

 

 

違う場所でミハエルは双子がやられた事に心配する。そこにファサリナがミハエルを宥めようとした。宥めてはいるものの、いつも以上になる上の空だとミハエルは感じていた。

 

(夜光くん……夜光くんが生きていてくれた)

 

あれからファサリナは迷っていた。あの時すぐ、カルメンと一緒に行っていればここまで悩まなくても良かったのかもしれない。だがそれとは別に同志の……カギ爪の夢の後の事も考えると、どうしたらいいかが分からなくなっていた。

 

そして場面はヴァン一行に戻る。ファサリナが、形はどうあれミハエルを宥めた数時間後、ヴァン達の元にミハエルとファサリナがやってくる。そこでファサリナはこれ以上の争いはやめにして同志の考えに賛同するように説得した。

 

しかしヴァンはそれを拒否。完全に平行線になった。その場に夜光はいないのでこのやり取りを後で聞かされた。その時夜光は……何故かまた湧いて出ていた脇侍の対処をヴァン達よりも後ろの道すがらで行なっていたからである。もうどこから湧いて来るのやら……

 

因みにだが……

 

「ここに……夜光くんはいますか?」

 

「あぁっ? あぁ、アイツなら後ろにいるぜ?」

 

「後ろ……」

 

「確か変な小型のロボットがウジャウジャ出ていたから、それを自分に引きつけるから先に行けって言ってたな」

 

「そんな……」

 

「ファサリナさん……」

 

とまぁこんな一幕があった様だ。

 

そして逆にそれを聞かされた夜光は……

 

「何で誰も連絡してくれなかったんですか……」

 

「夜光、元気、出せ……」

 

「夜光お兄ちゃん……大丈夫だよ」

 

夜光を双子のヨロイ乗りであるカロッサとメリッサに慰められていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数分後、カギ爪の無人量産型ヨロイとファサリナがヴァン達の前に立ちはだかる。

 

(あれが……ファサリナさんの……)

 

「夜光……アイツと戦うか?」

 

珍しくもヴァンが夜光にそう提案する。

 

「……戦いはしない。ただ……話をさせて欲しい」

 

「……分かった」

 

ヴァンとそのやり取りをした夜光は、ファサリナの駆るダリアに近づいて行く。

 

そしてファサリナも、ゆっくりとだが近付いてくる夜光に気付いた。

 

(っ⁉︎ あの子は……間違いない……)

 

『夜光……くん?』

 

「ファサリナさん……漸く、漸く会えた」

 

『その声……その容姿……確かに数年前より成長しているけど、見間違えるはずない。夜光くん……』

 

「俺も、声を聞いただけでそれに貴女が乗っているのにも事が分かる。ファサリナさん……一緒に帰ろう? 確かに帰る場所は失ってしまったけれども……でも俺は」

 

『……ごめんなさい。夜光くん。私には……やらなくては行けない事があるの。心配しないで……これが、同志の計画が終わればきっと……また会えるから』

 

「それは……どういう……」

 

そう聞こうとしたところで無人のヨロイが夜光に攻撃を仕掛ける。咄嗟のことで躱すものの、ファサリナから離れてしまいそれ以上を聞くことはできなかった。

 

『大丈夫か?』

 

「……あぁ」

 

『全く、あの女も頑固なもんだな。仕方がない。ここは俺に任せろ。あの女をひっ捕らえてお前のところに連れて行くから。お前は後ろのプリシラとおっさん達を手伝ってくれ』

 

「……分かった。頼む」

 

そこから夜光はヴァンとバトンタッチ。ヴァンはファサリナと戦い、夜光の元へと連れていくために、夜光はヴァン達が無事に目的地へと行けるようにそれぞれ行動した。

 

 

 

 

 

 

 

 

結果はと言うと、ヴァン達はカギ爪達の攻撃を退けるもののファサリナを取り逃がす。その戦いでヴァンの駆るダンは損傷。すぐに宇宙(そら)へと返さなければならないのだが、何故かダンは宇宙へと帰れなかった。

 

その理由は……同時刻にミハエルの駆るサウダーデが同志の計画のために宇宙へ登り、その軌道上にあったダンが射出される衛星を壊してしまったからである。

 

サウダーデが宇宙へ登る前、別行動をとるレイがビームランチャーでサウダーデを破壊しようとするが、そこへヴァン達から退却したファサリナが颯爽と現れて、レイの駆るヨロイヴォルケインを行動不能にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それぞれの戦いが一旦終わる。自分の計画が着々と進むカギ爪。傷を負ってそのままの状態であるヴァン一行。そこにヴォルケインを行動不能にされたレイも合流した。

 

ヴァン一行は廃棄されたシャトル打ち上げ施設に辿り着く。そこに行き着く頃には、ヴァンはボロボロになっていた。タイムリミットが迫る。そこで何とかダンとヴァンを打ち上げる準備が整った。その前に記念写真を撮る一行。それが終わってからいよいよヴァンとダンを宇宙へと打ち上げた。

 

翌日……ヴァンを除いた一行は目的地へと急ぐ。その道を再びファサリナと無人のヨロイが立ちはだかる。それを迎え撃つ夜光達。正面を修理の終えたヴォルケインを駆るレイと夜光。後ろをヨロイ乗りのおじさん達とプリシラ。

 

「目の調子はどうだ?」

 

『あぁ……お前が施してくれたおかげで回復した。前よりもよく見えそうだ』

 

「それは良かった。それじゃあ……いくか!」

 

『ふん! 良かろう』

 

夜光はルームを展開。迫り来る敵を大太刀を引き抜いてその場で横一閃した。するとその場にいた敵のヨロイは全て一瞬のうちに体が真っ二つに分かれていた。

 

『貴様のその能力……本当に末恐ろしいな‼︎』

 

そう言いながらも迫り来るヨロイを一斉発射で粉々にするレイ。

 

「そっちこそ、乱れ撃ちには憧れを持つ」

 

『何の話だ。さて……俺はあの女をどうにかするとしよう。アイツからも言われているし、従う義理は無いが……最後はお前がやれ』

 

「ありがとう。恩にきる」

 

『フンッ……やるぞ』

 

レイはそう言ってファサリナに接近して戦いを挑む。

 

そしてレイはファサリナを岩肌の崖下まで誘導。ファサリナはそれに対して焦るものの、ビーム砲でヴォルケイン破壊を行おうとする。ヴォルケインの銃口からの一斉発射とファサリナの駆るダリアのビーム砲が放たれたまさにその瞬間……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ルーム……シャンブルズ‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこに夜光が現れ、能力により2人の位置を入れ替える。

 

「すまない……ファサリナさん……切断(アンピュテート)‼︎」

 

ダリアの手足だけを斬って行動不能にした。

 

「レイ……お前はカギ爪の元へと急げ」

 

『恩にきる』

 

レイは先を急ぐ。

 

『い、一体何が……っ⁉︎』

 

手足を切り離されたダリアに近づく夜光。それにファサリナも気付く。そしてダリアからファサリナが出てきた。

 

「やっと……手の届く位置に来た」

 

「夜光くん……どうして……私は……」

 

「そんなの……決まってるじゃないか」

 

夜光はファサリナを抱きしめる。

 

「や、夜光くんっ⁉︎///」

 

「俺が……貴女のことが好きだから」

 

「そんな……そんなの……私だって、夜光くんの事が好き。でも……私は……大きな傷があるし、夜光くんに会うまでは淫らな事もやって……私の身体は純潔でもないし……だから私、同志の夢に賛同したの。それが叶ったら世界はリセットされて……そうしたら、綺麗な私で貴方に会って……またやり直そうって、そう考えていたのに……」

 

「全く……馬鹿だなぁ。ホント馬鹿だよ」

 

「えっ?」

 

「そんな貴女の心情に気付かなかった。俺がそれに気付いていれば……こんな事にはならなかったのに。貴女を心配させた。ごめんね」

 

「どうして貴方が謝るの……謝るのは私の方……ごめんなさい。貴方を最後まで信じきれなかった。ごめんなさい」

 

「そんな事……良いさ。俺は……貴女と幸せな時間が過ごせれば良いんだから」

 

「夜光くん……」

 

漸く夜光は届いた。最愛の人ファサリナに……数年かけて漸く届いた。そして自らが秘めていた想いも……本当の意味で届いた瞬間だった。

 

そして2人は暫く互いを見つめ合い……そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チュッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガン×ソード 25話〜26話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、レイはカギ爪に特攻した。機体は壊されてしまったものの、漸くレイの目の前にカギ爪が……手の届く範囲まで来たのである。

 

結果としてレイはカギ爪を後一歩で殺さなかったものの、計画を数十分遅らせることができた。その際のカギ爪の歪んだ顔も見ることが出来た。そこでレイは背後から守備隊に撃ち殺される……その未来だったが……

 

「ルーム……シャンブルズ‼︎」

 

レイの位置と後ろから打ち出される銃弾の最後尾の位置を入れ替えて、最終的にはレイは死なずに済んだ。そしてルームによって位置が変わってしまった銃弾は全て……カギ爪の乗ろうとしたヨロイに着弾していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして宇宙に登っていたダンが漸く合流、サウダーデと戦う。そこで簡単にサウダーデを行動不能にした。

 

サウダーデを失ったミハエルは、自信を無くしたものの同志の元へと行く。そこでウェンディが待ち構えていた。一応ウェンディの護衛としてカロッサとメリッサもいる。そこで行われる内容は省くが……ウェンディはミハエルを取り戻したのである。

 

レイはこれまでヴァンと行動を共にしていたジョシュア、カルメンと合流、そこにはヨロイ乗りのおじさん達の娘も一緒におり、基地内を撹乱することにした。

 

因みにあの後夜光と共に行動する事になったファサリナも今この時はレイたちと共に行動。レイ、ジョシュア、ヨロイ乗りのおじさん達の娘であるユキコは基地内の設備を弄り撹乱させる。

 

カルメンとファサリナは、カルメンの故郷で育てられていた花を処分する為に行動を共にしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カギ爪のところへは既にサウダーデを倒したヴァンがカギ爪と戦っていた。しかし空から降り注ぐ流体がカギ爪を守らんとしているのか……ダンに当たっていた。

 

そんな中夜光は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「月は綺麗であるものだが……今空に浮かぶ月は禍々しい」

 

そう言いながらも夜光はどこから取り出したかも分からない長銃を取り出すと、それを空に向けて1発放った。するとどうだろう……地を水平にして近付く大きな物体があった。

 

夜光はそれに向かって跳躍……その物体に取り付き中へと入る。よく見るとそれは、何か白い翼が何かを守っているように見える。

 

「wake up……ウイングゼロ!」

 

途端、その物体が動きがあった何かを覆っていた翼が徐々に剥がれていき、翼が守っていたものが徐々に露わになる。それは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「同志が乗るヨロイ上空に巨大反応検出⁉︎」

 

「解析は⁉︎」

 

「ダメです! 解析欄に全く合いません‼︎」

 

「同志! 聞こえますか同志⁉︎」

 

カギ爪の本部では、新たな反応が検出されて慌ただしくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あれは……誰だ?』

 

『おおっ……まさか……まさか天使まで私の夢を祝福してくれるなんて……ありがとう……ありがとう』

 

ヴァンは突然現れたヨロイに動きを止め、カギ爪はそのヨロイが現れたことによって歓喜に震えていた。

 

何故かというと……そのヨロイの姿が本当に天使に見えたからだ。頭部はWを象ったアンテナらしきものがある。その下から覗く緑色のツインアイ、体の中心たる胸には翡翠色の丸い玉のような物が埋め込まれている。ボディは基本的に青と白で纏まり極め付けは背中から生えている、まるで本物の様なじゅんぱくの羽だ。

 

その姿はまさに天使……カギ爪から見ればそのヨロイは急に現れて自らを祝福しているかの様に見えただろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが現実はそう簡単にはいかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『目標……眼前に迫る巨大な月』

 

天使のヨロイ……もといウィングゼロカスタムを駆る夜光がそう呟くと月に向かって飛んでいく。それさえもカギ爪は自分の夢を後押ししてくれる存在だと思い込んでいるのだろうが……

 

『ツインバスターライフル……出力75%。リミッター解除……』

 

カギ爪は天使のヨロイの行動に疑問が生じた。どこからともなく取り出した長銃を月に向け、丸で月に向かって銃弾を放とうとしている様に見えたからだ。このままでは何か……途轍もない事になるのではと……

 

まぁ実際にその通りな訳だが……

 

『ターゲット……ロックオン』

 

『破壊する』

 

引き金が引かれた。長銃……ツインバスターライフルから莫大なエネルギーが放出される。そのエネルギーは成層圏を抜け月へと着弾……その感覚を夜光は捉え、さらに引き金を引いた。するとさらにエネルギーが放出……月をどんどん遠ざけていき、遂には月と繋がっていたカギ爪の乗るヨロイと繋がっていたエネルギー体の糸が切れた。

 

そしてウィングゼロカスタムは何処かへと飛び去る。夜光は飛び去る前に外へと飛び出していたが……

 

『おお……おお……何ですかあれは……何なんですかあれは⁉︎ 凄い! 凄いですよ‼︎ まさかやったのは君ですか⁉︎』

 

ちょうど夜光がヴァンとカギ爪の中間点に降り立つ。それを見たカギ爪が夜光に尋ねたのだ。

 

「あぁ……確かにさっきのは俺がやった事だが?」

 

『なんと……なんと素晴らしい‼︎ もし君が良かったら私とお友達になりませんか⁉︎』

 

カギ爪は歓喜に震えながら夜光に提案した。

 

「はぁ? 貴様はいったい何を言っている? 確かにあの火事からファサリナさんを結果的に助けた事は感謝はすれど……こんな事のためにファサリナさんをたぶらかしたテメェの友人になど誰がなるものか! 貴様の勧誘などお断りだ‼︎」

 

『そうですか……それは残念です。では……ヴァンくん、君ならどうですか? 私ならあなたの失ってしまった大切な人を蘇らせる事が出来ますよ! あなたは私に殺されてしまった最愛の方の復讐なために私を追っていたと言っていましたね? どうですか? 私はどうせ夢を叶えたら死に、それと同時にこの星の人達は争いをやめ、さらに死んだ人達までも生き返る……どうですか⁉︎ あなたにとっては良いことばかりではありませんか⁉︎』

 

それに対してヴァンは怒る。自分から最愛の人の死までも奪っていくのかと……

 

「どこまで行っても貴様の願いは自分本位で周りの奴らの事を考えてねぇだろうが‼︎ 俺はそんな歪んだ願いを……そんなものを抱く貴様を! 俺が気がすむまでぶん殴ってやる‼︎」

 

『うぉぉぉぉっ! エレナァァァァァッ‼︎』

 

「ハァァァァァァッ‼︎」

 

ダンからは白い柱が生成……それが赤色になりやがて剣見たく震える様になる。それをカギ爪のヨロイに振りかぶった。

 

夜光は自らの両手に自らの「オペオペの実」のエネルギーを溜め込み、それを巨大な剣の形に変える。それを両手で持ち、カギ爪のヨロイに向かって走り出す。

 

『チィェェェェェストォォォォォォッ‼︎』

 

「ガンマナイフゥッ‼︎」

 

ヴァンの赤い剣がヨロイの中央を捉え、夜光のガンマナイフはヨロイの中心に突き刺さる。

 

その後のことは……アニメと同じような道筋をたどる。ヨロイの内部にヴァンが侵入……カギ爪はヴァンに対して好意を示すが、 それを最後まで聞くことなく自らが持つ剣で真っ二つにした。結果、カギ爪の計画は水泡に帰すのである。

 

基地を撹乱させていたレイ達も基地から脱出する。こちらとしてはあまりに目立っていなかったものの、カギ爪達の邪魔を十分にしてくれた。

 

カルメンとファサリナも、ヴァン達の戦いが終わる頃には花の処分が終わっており基地から脱出していた。

 

その後はヴァン達と合流……元々目的地が人工的に浮かぶ島でもあり、月との引力関係で海水などの水位も上昇していたこともあって、月が急に離れた事でその島は海に沈むところだった。ヴァン達もそれに巻き込まれるのではと思ったが、そこは夜光の能力で一瞬に近くまで来ている過去に出会ったヨロイの潜水艦に瞬間移動。事なきを得た。

 

その後は皆で祝勝会を開催した。なんやかんやあったものの、事件は無事に収束した。

 

 

 

 

それからと言うもの、夜光は神様に呼び戻される。そこにはファサリナもいた。再会した後夜光はファサリナに対して自分がどういう存在であるかを話したのだ。今まで秘密にしてきたものも。それに対してファサリナは簡単に許した。しかしそれには条件があり……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「許す代わりに……私に貴方の純潔を下さい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

元より夜光はそのつもりだったこともあって普通にOKした。そこで神様から呼び出された。近くにいたファサリナはついで扱いだろうが、ファサリナにとっては夜光が自分にとっての全て……夜光が違う世界に行くと決まった時も自分も付いていくことを決断した。

 

それからは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ〜てと、神様に頼まれた通りこの世界の魔王っぽいものも倒したし、ここでの勇者としての仕事はお役御免かな?」

 

「ウフフ……それでも私の伴侶である事は……変わらないですわ」

 

「あぁ、そうだな。これからも一緒だ。ファサリナさん」

 

「えぇ、夜光くん」

 

そんなやり取りをしているとまた神様から呼び出された。そして次に行く場所……それは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

盾の勇者の成り上がりの世界である。




一応ここでオリ主の設定をチョコっとご案内

名前:仙谷夜光

容姿はfateシリーズのアキレウスの髪を黒くした感じ。そのまま垂らす事も可。声もそのままアキレウスの声を採用。(作者のイメージとして)

能力

・ガンダムシリーズに出てきたモビルスーツ、能力を扱える事。自由に掛け合わせる事もできる。(ただし超大型モビルスーツの能力は使えない。例:サイコガンダム、デビルガンダム、デストロイガンダム……etc. 火力は強いが無差別的な物、並びに人類に対して非常に危険な能力を持つものと考えられるものについては使用出来ない。)

・オペオペの実の能力

・???

・???

今回はこんな所……また随時新話のあとがきで加えるかも……

と言う事で次回、盾の勇者の成り上がり本編に入っていこうと思います。宜しくお願い致します。

因みに感想に書かれていた疑問点を少しここで……

一応プロローグはどちらとも読者の方からの感想で、少し書き直した方が良いと考えたので編集しました。

それでとある感想で、「何故ミハエルが夜光の存在をカギ爪やファサリナに言っていないのか?」についてですが……極端に夜光はミハエルに自分の名前を言っていません。そしてミハエルがプロローグ前半で夜光に殴られていましたよね。一応夜光はミハエルに対して、カギ爪とファサリナの居場所を聞き出そうとしてはいますが、ミハエルとしては夜光に殴られたトラウマが酷く、実際に彼の名前を言おうとしたら恐怖で何も言えなかったという裏話(後付けの設定ですが……)という事で……

満足な回答ではないかもしれませんが、どうかこれで宜しくお願い致します。

それでは次回も楽しみに待って頂けたらと思っています。


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本編開幕 メルロマルク召喚編
1話 ヨロイの勇者は召喚される


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に仙谷夜光が飛ばされた世界は、「盾の勇者の成り上がり」の世界だ。

 

それを神様に言われた時は、確かに知ってはいるもののアニメの知識しか知らなかった。スピンオフ作品がある事は知っているが、それもどのような物か分からない。それに死んでからは何十年単位と時間が過ぎている。記憶も朧げだ。その世界に行ったら……徐々に思い出していくかもしれないが。

 

そしてそこへと転移する時は、どうやら自分はその世界の勇者として呼び出されるらしく、ファサリナとは一緒に転移されないとの事で……一瞬シュンとなる。

 

しかしそこも神様から、転移と同時にファサリナもその世界へと送る事。すぐに会う事は出来ないが、転移されて1日後……と言う事は、勇者がその世界に召喚された次の日、召喚した国……まぁこの場合国王が勇者の同行者となる冒険者を集め、冒険者自身が付いていきたい勇者を決める旅立ちの日みたいなものである。

 

そこにファサリナが冒険者として転移、夜光に付いていけば問題ないと言う事で……一応納得はした夜光。

 

「一緒に転移されないのは悲しいが……」

 

「そんなに悲しまないでください夜光くん。すぐに会えますから……ね?」

 

夜光はファサリナに抱擁される。そして背中もポンポンと叩かれる様子は……まるで赤子をあやす様に見える。

 

その様子が十数分見られて、少し呆れた感じになっている神様に促されて、夜光は漸く「盾の勇者の成り上がり」の世界に転移された。勿論……その世界の国が召喚した程を装って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

盾の勇者の成り上がり 本編

 

ヨロイの勇者は理不尽を許さない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神様の間から一瞬で違う風景に変わる。どうやら無事に転移されたようだ。目の前には召喚者であろう術者達。足元には魔法陣。そして隣を見ると……自分と同じように召喚されたであろう若者が4人……手元に剣、弓、槍、盾を備えている。

 

(あぁ……この4人と一緒に召喚されたという事か。だったら俺は何の勇者だ?)

 

確か前は……普通に勇者という肩書きだけだった。だがこの世界は、装備品に関連した勇者の名が肩書きとして周囲に伝わる。

 

(剣、弓、槍、盾……ここは前世のアニメで見たところと一緒か。なら俺は?)

 

視界の隅っこに何かアイコンがあったためそれを見ようとすると、急に視界いっぱいにステータスみたいなものが映し出される。

 

(ほぅ……これが今の俺の能力値か。勇者という事だけあってレベル1でも高いな。で俺は……ヨロイの勇者か。……何故カタカナだ?)

 

ヨロイの勇者とカタカナで書かれてある。しかし夜光は疑問に思う。本来漢字で表記されるのでは……と。そう考え込んでいると……

 

「おい、さっきから黙っているけど大丈夫か?」

 

「ん? あぁ、少しこの状況について考えていたんだ」

 

「そ、そうか……邪魔してしまったか?」

 

「いや、丁度纏まっていたところだ。確か自己紹介してないよな。仙谷夜光だ。君は何と呼べばいい?」

 

「俺は岩谷尚文。尚文って呼んでくれ」

 

「分かった尚文。なら俺も夜光で良い。宜しくな」

 

「あぁ、宜しく」

 

互いに自己紹介をして握手をした。

 

そこからは召喚者達の案内で国王の間に案内される。その際建物の窓から外を見てそれぞれ感想を述べていた。尚文は景色を見て感嘆の声を上げていたが、他の3名は海外と同じ景色だろとドライな感想だった。

 

夜光はというと、この世界に転移される前も同じような世界だったこともありあえて何も言わなかった。

 

そして国王の間に案内された5人。まずは国王が召喚した勇者達に定型文の様な形で台詞を言った。

 

まぁ簡単にまとめると……波と呼ばれる災害からこの国、世界を守って欲しいというものだった。

 

波……空が赤く染まり、それに伴って魔物達が跋扈し、人々を襲う。1回目の波は何とか凌いだものの、2回目はどうなるか分からない。だからこそ異世界から勇者を召喚する必要があり、いまこの状況であると……

 

しかし召喚された5人のうち3人はそれに否定的だった。

 

まぁ、支援がなければ満足に動く事は出来ないだろうとか、これが終われば無事に元の世界に帰れるのかやらと……

 

(全く……この3人は図々しいにも程がないか? 勇者として召喚されたからといって最強というわけではないだろうに)

 

夜光はそのやり取りを呆れて眺めていた。自分達の状況が分かっていないのではと。まぁ目の前の王も王で威厳を振り撒くようにしか見えない。

 

「ぬぅ……分かった。勇者の皆にはそれ相応の支援をしよう」

 

「それだけでなく、波が終わった後の報酬もしっかりとお支払いさせて頂きます」

 

「へぇ〜、そういう話なら、まぁ納得してやらんでも無いな」

 

「だが俺達を飼い慣らせるとは思わない事だ。お前達が俺達に対して不当な扱いをしない限りは協力してやる」

 

「そう……だな」

 

「ですね」

 

(尚文はともかく……この3人は報酬の事しか目がないのか? さっきまで主張していた元の世界へのウンタラカンタラはどこいった?)

 

俺? 俺は別にこいつらに呼ばれたわけではないし、神様に転移してもらってこの世界だからな。役目を終えるまではこの世界にいるさ……それに

 

(俺にとっては、ファサリナさんのいる所が俺の居場所だからな)

 

この場にはファサリナさんはいないが、明日になれば会える。カギ爪に連れていかれたあの数年を考えればまだ安いものだ。

 

「うむ、それでは此度において召喚された勇者の名前を聞こうではないか」

 

「順番的に俺からだな。天木練だ。年齢は16、高校生だ」

 

夜光から見て1番左にいた人物がそう名乗る。髪色は群青色、瞳は青、線は細いクールな男。剣の勇者。

 

「じゃあ次は俺だな。俺の名前は北村元康、年齢21歳の大学生だ」

 

練の右隣、金髪で髪が長い為か結ってある。赤い瞳で身長は高い。線もしっかりしている。槍の勇者。

 

「次は僕ですね。僕は川澄樹、年齢は17歳、高校生です」

 

元康と同じく金髪ではあるが、ショートで癖っ毛がある。緑の瞳をもち、この中では1番小柄だ。弓の勇者。

 

「次は俺か。俺は岩谷尚文、年齢は20歳で大学生だ」

 

黒髪ショート、冷静沈着そうに見える顔つきで、練、元康、樹と比べるとまぁ一般的な顔つきであろう。しかしながら線はしっかりしている。盾の勇者。

 

「最後は俺か……仙谷夜光。確か年齢は……16だ。高校生だったな」

 

最後に夜光が名乗る。しかしながら最後という事もあり他の4人と比べると、どこか安定感の無い自己紹介になってしまっていた。まぁ本人自体その肩書きを持っていたのも、感覚的には数十年前の話。神様に興味を持たれてから歳と老いを外見的に取らなくなった事も関係している。

 

「ふむ、レンにモトヤス、イツキにヤコウだな」

 

「王様とやら、尚文の事を忘れちゃあいないか?」

 

「おぉ、そうであったな。いやはやすまなかった、ナオフミ殿」

 

夜光は王に尚文の名前を言い忘れている事を言い、それに対して王もとぼけたような感じで尚文の名前を謝罪しながら口にする。

 

(王が召喚された勇者の名前を言い忘れる……しかも尚文の事を飛ばして俺の名前を言った。さっき自己紹介したばかりだというのにだ……やはり俺がここにいるからと言ってこの流れは変わらないか)

 

数十年前とはいえ、この場面は印象的でもあった夜光。

 

(これは……尚文が理不尽に見舞われてしまいそうな感じだな。俺の嫌いなパターンになりそうだ。どこかで少しでも変えれたらいいが……)

 

と、夜光はそんな事を考えていた。自己紹介が済んだ後は、ステータスを開いて客観的に云々、レベル1だから不安だ云々、武器を育て上げる必要があるとかだったり、勇者同士ではパーティーを組めないから国側で冒険者を集い冒険に出向いてもらってそれぞれが強くなり、波に対抗してもらう……などなどこれからの話をしていた。そんな中……

 

「ところでヤコウ殿。そなたは何の勇者なのであろうか? レン殿、モトヤス殿、イツキ殿、ナオフミ殿は見て分かるとして……ヤコウ殿は何も装備されていないように見えるが……」

 

「あぁ……俺はどうやらヨロイの勇者って事になってるな」

 

「よ、鎧の勇者?」

 

「ぶ、武器ですらねぇ……」

 

「どうやって戦うか想像もつきませんね……」

 

「俺の盾よりも酷いんじゃ……」

 

順に練、元康、樹、尚文が言う。まぁ一般的には普通に身につける防具だよな〜。

 

「よ、鎧の勇者とは……いささか聞いたことが無いな……」

 

王も反応に困っている。

 

(まぁ……鎧じゃなくて()()()だけどな。そうやって勘違いしているのはありがたいことか……)

 

確かに防具の勇者……盾でも武器としては微妙であるにも関わらずに鎧ときたものだ。武器ですら無い。戦力にならないのではと……

 

だがそこは、夜光と周りの認識が違うだけだ。周りは身につける防具の鎧と連想しているが、夜光からしてみればそれでは治らない。何故なら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ステータス

名前:仙谷夜光

職業:ヨロイの勇者

装備:ヨロイの腕輪(エクストラ武器)

スキル:オペオペの実の能力者

魔法:テイルズ初級呪文

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(まぁレベル1だから今まで覚えてきた呪文を再度覚える必要はあるが……この腕輪の大体の使い方は分かる。それにオペオペの実も使えるようだからな)

 

周りに気付かれないように掌の上でルームを展開していた。

 

「ま、まぁともかく今日は既に日も傾いている。城の来賓室に案内するが故、今日はゆっくりと休むが良い」

 

そして今日はお開きとなった。




何やかんや深夜投稿になりました。少しハイです。

いきなりですが少し解説を……

・ヨロイの腕輪
夜光が思い浮かべた武器が腕輪の宝玉から出てくる。大体はこれを用いて戦う。勿論全身をガンダムの装甲で覆うことも出来る。装備の掛け合わせ可能。ほぼほぼガンダムビルドファイターズ(作者は見たことが無い)みたいに自由な設定で装備できる。

こんな感じです。ちょっとここはとっさに作った設定なので少し煮詰めていないところがありますが……まぁチート装備ですね。

と言うところで今回はここまでにしたいと思います。次回もよろしくお願いします!


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2話 ヨロイの勇者は信頼を示す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

城の来賓室に案内された夜光達5人。5人は5人で情報共有を行なっていた。まぁそんなところでも、この世界は自分が住んでいた世界で流行っていたゲームの世界に似ている、若しくはその世界の中であると、未だに自分達は夢の中にいるような感覚で話す尚文以外の3人。

 

しかしながら3人とも全員バラバラのゲーム名を言い、あぁでも無いこうでも無いと……その会話に呆れながら見ていた夜光。

 

「そこまで話が噛み合わないって事は、それぞれが違う世界から来たって事だろう? 試しに日本にある身近なもの……それを同時に言ってみたらどうだ」

 

そこでまずは日本の総理大臣の名前を同時に言い合う事に……結果

 

「加賀元彰」

「濱田光一」

「野々村竜太郎」

「「安倍晋三」」

 

「まっ、これではっきりしたな。俺と尚文はともかく、他の3人は違う世界……簡単に表現するなら並行世界の日本から来たってところだな」

 

「そう言う事らしいな。本来はあまり雑談の類は趣味では無いが、情報共有は必要みたいだな」

 

「だな」

 

「ですね……」

 

「俺もさっきから言ってるオンライン〜とかって言うのも疎いし……正直助かる」

 

概ね情報共有に肯定的な4人。

 

「じゃあまずは俺だな。俺は下校途中に巷を騒がせている殺人事件に遭遇してな……幼馴染が連れていかれたところを目撃して助けた。そこまでは覚えているが……」

 

脇腹をさすりながらそう言う練。十中八九刺されてこの世界に来たようだ。

 

「そうか……友人守って死んだんだな。誰でも真似できねぇすごい事だ」

 

「フンッ……当然の事をしたまでだ」

 

クールに当然だと笑う練。

 

「それじゃあ次に俺の番な? 俺ってさ……ガールフレンドが多いんだよね〜」

 

「どうせオチは何又してて女の子に刺されたってところだろう?」

 

始めの部分を得意げに語る元康。しかし夜光はすぐにオチを言う。それに対して元康は数回目をパチクリさせた。

 

「ハハハ……女って怖いよね……」

 

「それはお前の自業自得だ。その性格直したら少しはマシになるだろう?」

 

少し意気消沈した様子の元康に夜光はさらに塩を擦り込むような発言をする。

 

「じゃあ次は僕ですね。僕は塾帰りに横断歩道を渡っていたら、カーブしてきたダンプカーに轢かれてしまって……」

 

「……今までで1番痛いな」

 

「あ、あぁ……」

 

「次は俺か……俺は暇だったから図書館に行って、面白そうな本を探していたら四聖武器書って書いてある本に目が止まって、それで読んでて盾のページをめくったらこの状況だったな」

 

「平和にここに来たと……」

 

「痛み感じずにここにいるとか何だよそれ⁉︎ 羨ましすぎんだろ‼︎」

 

「練と樹はともかくとして……元康は完全な自業自得だからな?」

 

「……」

 

文句を言った元康に夜光が反論……この元康という人物は本当に年長者なのだろうか?

 

「で、最後は俺か。言っておくが、聞いていても何も面白いことでは無いぞ? 要所要所まとめるならな……車に轢かれそうになった子供を助けて、代わりに俺が轢かれて死んだ。以上」

 

非常にあっけらかんとしていた。

 

「いや……何の関係もない人を助けて代わりに死ぬって……何が面白くない話だよ⁉︎ お前ヒーローだろ⁉︎」

 

「それを言うなら練だってヒーローだろ?」

 

「いや、俺は幼馴染だからな……無関係の人を助けるのにそこまで勇気は無いな」

 

「そうですね。僕でも現実だったら躊躇うでしょう……」

 

「夜光って凄いやつだったんだな……」

 

「偶々だ。俺も何でその時助けたかなんて忘れちまったさ」

 

(忘れた? 確か自己紹介の時も違和感があったような……)

 

夜光のその台詞に尚文だけ反応していた。

 

そこからはそれぞれの武器の話になるが、オンラインゲームに疎い尚文は盾のことについて聞いた。それについては元康が大体を掻い摘んで説明していた。しかし最終的に元康が盾の職業について言ったことは……盾は負け組の職業であると……

 

尚文はその言葉に意気消沈。練と樹も同じなのか、尚文の事を気の毒そうに見ていた。

 

「だがそれはあくまでゲームでの話だろう? この世界で盾がどう化けるかわからんだろ? それに……守りに特化していると言う事は、逆に誰かも護れる力って事だ。確かに剣とか槍とかってのは攻撃の面でいうと華役みたいなものだが、逆に盾は皆を守る、サポートするなどの縁の下の力持ちってところじゃないか?」

 

「た、確かにそう言われてみれば……」

 

「あぁ、しっくりくるところはあるな」

 

「なんか自信が湧いてきた。ありがとう、夜光」

 

「何、俺はただ可能性の話をしたに過ぎない」

 

「それでもだよ。ありがとう!」

 

「っ⁉︎ 正面からそう言われると恥ずかしいな……ちょ、ちょっと体が熱くなってきたから夜風にでも当たってくるわ」

 

そう言って夜光はテラスへと出た。その後はこの城のメイドが夕食の準備ができたと言って騎士団の食堂へ……練は、自分達が勇者であるにも関わらず騎士達と同じ食べ物を食べるのか、と少し邪険に言う。そこを夜光が、「食材に罪はないし、出された物を邪険に扱うものではない」と大人な発言……それには練も思うところがあり、先程の発言を詫びて夕食にありついた。

 

それから部屋へと戻り、風呂とかは無いのかとかの話を練、元康、樹、尚文が話していた。夜光はと言うと、またテラスに出ていて夜風に吹かれていた。

 

「夜風を浴びるのが好きなのか?」

 

後ろから尚文がテラスに出ながらそう問うてくる。

 

「ん? まぁ……な。大体こういった中世ヨーロッパあたりの空気は、現代よりも澄んでいて良いからな」

 

「……ところで気にはなっていたんだが、国王の前で自己紹介した時やさっきの情報共有の時に、何っていたらいいんだろう……こう、夜光の発言に違和感を覚えてさ」

 

「……ふぅ。まぁ誰かそう言ってくるとは思っていたが……まぁ尚文なら良いだろう」

 

「ど、どう言う事だ?」

 

「俺の本当の話だよ。まぁ全ては言えないが……」

 

「ま、まさか今まで嘘を言っていたのか?」

 

「いや? 本当の事だ。まぁそれを話す前に……ルーム」

 

夜光はこの城全体にルームをかける。

 

(盗み聞きしようとしてるのはこの5人か……)

 

「シャンブルス」

 

盗み聞きをしようとしていたもの達を城の外……はたまた城下町を抜けた町の外の石ころと位置を一瞬にして変えた。突然城の外に位置を変えられたものは突然何が起こったか分からずにアタフタしていた。

 

「い、今のは……」

 

「企業秘密だ。それで俺について本当の事を言おうか。国王の前で語った事、情報共有の時に言ったことは、全て事実だ。だがそれには続きがある……尚文は神様転生ってのを信じるか?」

 

「神様転生って……まさかっ!」

 

「声がでかい。少し抑えろ」

 

「あっ……ごめん」

 

「まぁそれでだ。それされてから既に何十年単位で生きてるって話でな。だからこそ俺が子供を助けた時なんで助けたか分からねぇって……まぁそんなところだな。正直記憶力はあまりいいとは言えない。そんな中でその時の総理の名前を言えたのは奇跡に近い」

 

「違和感はそう言う事だったのか。そ、それでその何十年の間は何してたんだ?」

 

「あぁ……そこは企業秘密だ。いくらなんでも出会ってすぐの奴にそこは言えねぇ。ただ大まかに言うなら……旅かな」

 

「旅……」

 

「あぁ。自分自身にないものを感じ取れた……良いものだったな」

 

そこまで言った夜光は、途中何か気づき少し大きめに、しかし目立たないように手を振った。

 

「な、なんだったんだ今のは?」

 

「何、あっちで手を振ってる人がいたから、それに振り返しただけだよ」

 

「えっ⁉︎ ど、どこに?」

 

「城と城下町を結ぶ直線上の道があるだろう? それで外門まで繋がってるわけだが、城と外門の中間点辺りかな。今はもういないが」

 

「あ、相手も相手だがよく見えたな……視力はどのくらいあるんだ?」

 

「前世はどっちとも2、2だったが……今は分からん。もしかしたら旅の途中で目でも良くなったのかもな」

 

「そ、そういうものか?」

 

「あぁ、そういうもんさ。さて、風に当たりすぎて明日風邪を引いても縁起が悪いからな。俺たちもそろそろ休もうぜ」

 

「そうだな。それじゃあ「それと尚文」ん? どうしたんだ?」

 

「今回の事は、他の奴らには他言無用にして欲しい。勿論他の3人にもな。そして俺が少なからず俺の過去を語ったという事は……俺は尚文の事を信用し、信じている証でもある。だから……」

 

「お前がこれからどんな酷い状況に見舞われたとしても、お前の言を信じる。勿論疑いがかかった時は俺独自で調べるがな? それで黒だった場合は……少なからず1発はぶん殴るからな」

 

「いや、お前の1発凄く痛そうなんだが……でも何だろうな。この世界に来て右左も分からなくて不安だったのに……1人でも自分を信じてくれる人がいるってのは、凄く心強いよ。なんか会ってから夜光に対してお礼しか言ってないような気がするけど……ありがとう」

 

「ハハ、まぁそれは素直に受け取っておくさ。そんじゃあ話はここで切り上げて明日に備えて寝るか」

 

「あぁ、明日からも宜しくな! おやすみ‼︎」

 

「あぁ、おやすみ」

 

そして夜光達はテラスから部屋に戻り、就寝した。勿論その時には盗み聞きをしようとしていた者達を元に戻していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして月が天高く登った時間帯……

 

「さて、そろそろ行くか」

 

夜光は、誰も起きていない事、この部屋などを術式などで監視されていない事等を確認すると、再びテラスから城外へと出た。その目的は……勿論……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




夜光から他の勇者4人に対する評価

尚文:4人の中で1番信頼できる。また、作中でも周りから酷い扱いを受けているのを知っているため、出来るだけ力になりたいと思っている。

練:根は優しいのだろうが、クールさとなんか上から目線だから色々台無しだと思っている。

樹:その場の流れに同調するきらいがありそうな気がする。

元康:優しいお兄さん気取りだが、中身は女性の事しか目が無いと思っている。ふしだらな人間。

四聖勇者4人から夜光に対する評価

尚文:一緒にいて何かこう凄く心強い‼︎

練:あいつ俺と同じ16か?

樹:結構的確に物を言いますね。

元康:なんか俺の台詞を途中で遮って言ってきやがる。どことなくソリが合わないと思うが……でもあいつの言ってる事ほぼほぼ正論に聞こえるからグゥの音も出ねぇのはなんでだろ?

以上、簡単な評価付けでした……


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3話 R-15 ヨロイの勇者は弄ばれるが、最後には安心する

一途なファサリナさんのターン……

夜光の心に10000のダメージ……

結果……ファサリナさんに好きなように弄ばれる夜光……


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜光が城から抜け出して向かった場所……それは、先程テラスに出て手を振っていた場所だった。城と城下町、外門を繋ぐ大通りの道の中間地点……人通りがほぼほぼ無い時間に夜光はそこへと赴いた。

 

(さて……あの人が態々あそこに立って俺に手を振ってきたという事は……つまりそういう事だよな?)

 

神様が言うには最低でも明日と言っていたが……

 

(だが俺としても……会えるのなら今会いたいな……っ⁉︎)

 

そう考えていたところで夜光は何者かに視界を覆われて、すぐ近くにあった路地に連れていかれた。

 

普通に捉えるなら敵からの攻撃……しかしながら国としては、勇者を召喚したとまでは国中に伝えてはいるがどんな人物なのかはまだ伏せている。だとしたら城の物だろうか……いや、これも違うだろう。何故なら夜光は細心の注意を払いつつ城からここまで来たのだ。追っ手があったとしても撒いているか、夜光の速さについて行けず見失っているだろう……

 

と言う事は……

 

「ふふっ……だぁ〜れだ?」

 

「……まさか貴女がこんなイタズラをするなんて思ってなかったですよ。ファサリナさん」

 

「うふふ……正解。会いたかったわ……夜光くん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side ファサリナ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜光と一緒にその世界に転移したファサリナ。夜光が城に召喚されたのは夕方ごろではあるのだが、ファサリナは朝方にその世界へと転移していた。そして場所は城の外、それも町の外だった。

 

まぁそこは神からの配慮でもある。朝方とはいえ、突然町の中に転移してしまうと怪しまれる可能性がある。そんな理由があるからこその町の外に転移された訳だ。

 

それに外から入った方が何かと都合が良いと言うのもある。

 

(確かこの世界に来たらまず冒険者ギルドに行って冒険者登録する必要があるのね)

 

そこからのファサリナの行動は早かった。まずは外門の守衛に冒険者ギルドがどこにあるのかを尋ねた。聞かれた守衛は丁寧に優しく教えた。まぁその時に守衛の鼻の下が伸びていたのは気のせいではないだろう。

 

まぁその理由としては、ファサリナの衣装がガン×ソードと同じだったからこそで……言うなれば露出が半端なかったのもある。

 

そして早々にギルドについて冒険者登録をした。そこでもステータスが初期値でどれくらいかを測定する水晶玉があるのだが、その初期値が思いの外高く受付の人はかなり驚いていた。

 

それに聞き耳を立てていた冒険者達が一緒にチームになろうと誘ってはいたのだが、ファサリナはソロでやりたいと言ってやんわりと断っていた。中には諦めきれずに強引に引き入れるもの達もいたが……そこはファサリナから発せられる威圧で、そのもの達も撃沈した。その冒険者達が言うには、笑顔を浮かべているはずなのにまるで蛇に睨まれた蛙のように、それを受けて何も言えなかったという……

 

まぁどれほどステータスが高くても初級の依頼をこなすもの……そこはファサリナも郷に入っては郷に従えで最初は簡単な依頼から始めるのだが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あらあら……手応えがまるでありませんわ」

 

何ということだろうか……初級のクエストを僅か10分足らずで終える始末……それを繰り返していくうちに上がる階級とレベル……昼頃にはレベルも20まで上がっていた。

 

これにはギルドにも震撼が走る。冒険者登録初日の数時間でレベル20まて到達……突如現れた女性冒険者とその偉業は既に城下町にまで知れ渡り、やがて勇者を召喚した国王の元にまで届くのだった。

 

それを知らないファサリナは、出来るだけ夜光と同じ位置にいたいという思いが強く、結局その日は夕方までクエストを受注しまくり、レベルは30に……受注していたクエストも中の上あたりまでになっていた。

 

それを終えたら近くの宿屋へと行き、宿泊の手続きを済ませた。その宿泊1回には、受付と併用して食堂も設けられてあった。そこでファサリナは、今日1日クエストばかりをして何も食べていない事に気付き、その時は大量に注文して食べていた。しかしながら所作は優雅に丁寧に……それを見ていた他の宿泊客もファサリナの虜になっていたが、本人はそんな事を知る由もなかった。

 

夕食を終えたら1回外出をして、城の外まで赴く。近くを流れる川に着くと、レベルを上げる事に覚えていった魔法を使用……まずは川の1部を少し大きめの岩石で囲う。そして火の魔法で囲った川の温度を上げ、丁度いい所まで上げる。言うなれば即席のお風呂である。風呂が出来上がったら次は植物に魔法をかけ、即席ではあるが高めの塀を作る。そして持ってきた荷物からタオルやら何やら用意をし、身に纏っていた衣服を脱いで即席の風呂に入る。

 

まぁ何故即席のお風呂を作って入浴しているかというと……

 

(夜光くんと会う時は清潔でいないと……)

 

簡単にいったら乙女の嗜みである……

 

そして簡単な入浴を終えて町に戻った時……

 

(あら? これは夜光くんのルームの効果ね。何かあったのかしら?)

 

もう召喚されているであろう夜光のいる城に視線を向けると、城のテラスから夜空を眺めて誰かと話している夜光を見つけた。隣にいる人は夜光と一緒に召喚された勇者の1人だろう。夜光ともう1人は親しげに話している。

 

(この世界で私以外にも信頼に足る人ができたのね……少し安心だわ)

 

あの隣が自分でない事は惜しい気がするが……それでも夜光が1日足らずで信用できる人を見つけた事に嬉しさを覚えていた。

 

そして夜光がこちらの方に視線を向けた時、伝わるかどうかは分からないが手を振った。そしたら直ぐに夜光の方からも手を振り返してくれた。

 

「うふふ……神様からは最低でも明日に会えるって言われていたけど……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我慢……できなくなっちゃった♡」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてファサリナは一度宿に戻って荷物を置き、その部屋に施錠の魔法をかけるとさっきの道まで戻り、路地裏に来ていた。

 

ここで待っていたら夜光に会える気がする……最早賭けでも何でもないのだが、それから数時間くらいで夜光はそこに現れたのだっだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜光を路地裏に引き込んだのは、夜光とは別の所に転移していたファサリナだった。夜光に言い当てられてからも夜光から離れようとはせず、目を覆っていた手は、今は夜光を背後から抱きしめていた。

 

「はぁ……半日離れただけなのに……貴方に触れるとこんなにも愛おしい♡」

 

ファサリナは自分の頰を夜光の頰に優しく擦り付けていた。

 

「い、いくら人通りのない時間とはいえ……恥ずかしい」

 

「あら? どうして? 私は嬉しいわ。えぇ、とても嬉しい」

 

「い、いや……確かに嬉しいけどさ……まさか出会って初っ端あんなイタズラされると思ってなかったし///」

 

「照れているのね……ふふっ♡ そんなところも可愛いわ♡」

 

「も、もうそれ以上からかわないで……欲しい……です」

 

「からかってなんていないわ。愛情表現よ」

 

「っ⁉︎/// ほ、本当に貴女と言う人は……」

 

勇者達と会話していた時の態度は何処へやら……完全にファサリナにペースを握られていた。

 

「も、もぅそろそろ本題に入りたいんだが……」

 

「そうね。じゃあ後でとっておきましょう」

 

ようやっと夜光から離れるファサリナ。その頃には夜光の顔は茹で蛸のようになっていた。その夜光の様子にもファサリナは可愛いと追い討ちをかける。それを受けて夜光は更に顔を赤めた。初心である……一応ファサリナとは長い付き合いの筈なのに……未だに初心である……

 

「ご、ゴホンッ……そ、それでだが、本来ファサリナさんに会うのは明日の予定だった。ただ今日は……偶々見かけたからもしかしたらと思ってここに来たのもある。だけど今回は……」

 

「えぇ、大体は察します。今の貴方がどの程度戦えるのか……それを試したいのよね? 貴方の身に付けている左腕の腕輪から途轍もない力を感じるわ。だからその力をどの程度振るえるか……ね?」

 

「その通り、この使い方は大体頭の中に流れ込んできたから分かる。まぁそれはそれで……肩慣らしくらいはしておきたいからな」

 

「分かったわ。じゃあ、早速行きましょうか」

 

そして夜光はファサリナと共に外門の外へと出た。

 

真夜中になると、昼間行動している魔物は眠りについたりなどしているが、逆に夜中活発に動く魔物も存在する。そして夜光達の周りには、既に夜間活動する魔物の群れがかこっていた。

 

「確か……グリーンウルフという名前だったはず。夜間群れで行動して獲物を狩る。主に草原や森林地帯で生活し、昼間は森の奥に帰る習性。火に弱いはずだから、旅の行商人が野宿などする際は焚き火とか松明で近づかせないようにして安全を確保する……って、冒険者ギルドからもらったガイドブックに載ってあったわ」

 

「へぇ〜、初心者には優しい内容解説だな。まっ……」

 

「ここから行うのはただの肩慣らし……初心者狩りだと思い込んで囲っているのなら残念だったな。獣相手に俺の言葉が通じるかどうかは知らないが……逃げるのなら今の内だぞ?

 

夜光は周囲のグリーンウルフを威圧……それに負けたのか数匹は森の奥へと引き返した。

 

「さてと……じゃあ残った奴らは悪いが……俺の糧となれ! バスターソード‼︎」

 

[GNバスターソード〈アルケー〉を展開します]

 

夜光が武器を思い浮かべながら唱えると、視界にその表示が現れると、腕輪の宝珠が光り、その光は夜光の右手に移る。形を形成すると、そこにはアルケーガンダムが装備するGNバスターソードが握られていた。

 

「へぇ〜、重さまで前の世界で使ってたのと変わらねぇのか。斬れ味は……」

 

試しに迫って来た1匹のグリーンウルフを一刀両断……両断されたグリーンウルフはピクリとも動かなかった。

 

「ほぉ〜……変わっちゃいない。こいつは良いな。で、お前達はかかってこないのか?」

 

目の前で仲間の1匹が一瞬で倒された事で動揺が走る……

 

「まっ、そっちから来ないのなら良いや。逆に……」

 

「こっちから行ってやらぁ‼︎」

 

2人の人間を獲物として狩るつもりが、逆に人間1人にグリーンウルフは滅多打ちに倒されていった。

 

それから僅か数分後……

 

「お見事ですね、夜光くん」

 

「いや、これは流石に肩慣らしにはならなかったな」

 

敵の血を一滴も浴びずに斬り伏せていった夜光。しかしどこか物足りない様子だった。そう思っていた時、遠くで狼の咆哮があげられていた。しかも途轍もなく強大な個体から……やがて森の奥深くから現れたのは、普通のグリーンウルフよりも比べ物にならないくらいの大きな個体だった。

 

「あれは……グリーンウルフを束ねる長、ハイ・グリーンウルフね。さっきの個体達がランクでEならあれはCランク相当ね」

 

「漸く肩慣らしに丁度いい相手が来たってところか」

 

「油断は禁物よ、夜光くん」

 

「分かっていますよ、ファサリナさん」

 

ハイ・グリーンウルフは唸りながら夜光を睨む。よくも我が同胞達を散々殺したな、とでも言わんばかりに。それに対して夜光は好戦的な瞳を隠そうとせずバスターソードを構えていた。

 

一瞬強い風が吹き、どこかの枝から葉っぱが離れて風に舞う。そしてその葉が地面に落ちたと同時に……

 

「ガァゥッ‼︎」

 

ハイ・グリーンウルフが夜光に素早く近付き爪を振るう。

 

「さっきの奴らよりは速いな」

 

それを簡単にバスターソードでいなす夜光。

 

ハイ・グリーンウルフも相手が相当なやり手と判断。そこでとあるスキルを用いた。

 

「あれは……残像スキルね」

 

「へぇ〜、強い個体はそういうことも出来るのか」

 

このスキルを見せても相手は驚くどころか、逆に好戦的な目を強めていく。一体どこにそんな自身があるというのか……

 

そんな事は考えずにハイ・グリーンウルフは残像を駆使しながら夜光に攻撃した。威力は少し下がるものの、2体で攻撃を繰り出すのと同等だ。徐々に相手の体力は削れて自分の有利になるだろう……そう簡単に結論付けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかしながらそんな事は少しも起こらなかった。何分攻撃し続けても相手の体力は減らない。それどころか攻撃の獰猛さが増すばかりだ。極め付けは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ〜どれくらいやるかと思ったらこの程度か。飽きて来たし、次で終わりにするか」

 

目の前の人間がそういうと、突如いきなり人間の左腕につけている腕輪が光って、腰辺りにその光が移った。そして形を変えていく。形を変えたそれは、どこかスカートの様な鎧に見えた。

 

だが……話はそんな簡単に収まらない。

 

「行けよ! ファング‼︎」

 

人間がそう唱えると、スカートの様な鎧から小さい何かが綺麗な線を描いて飛び出していき、やがて……自分を攻撃し始めた。それも残像もろとも……

 

明確に痛みが生じる。片目が潰された。振るおうとした爪が簡単に割れた。腹に何本かそれが刺さり血が体外に出て行く。既に意識は朦朧だ。

 

「それじゃあな、狼どもの親玉よ」

 

ハイ・グリーンウルフが聞いた言葉はそれが最後だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れ様、夜光くん」

 

「ありがとう、ファサリナさん。にしても最後の奴は丁度いい肩慣らしになったな。レベルが1上がったし」

 

「えっ? 私は3つ程上がったけど……」

 

「えっ?」

 

既に夜光とファサリナはパーティーを組んでいて経験値も共有されている。そして2人のレベルも共有している。そして今はファサリナが泊まる宿の部屋にいた。

 

「夜光くん……貴方のステータスを見ても良いかしら?」

 

「あ、あぁ、構わないが……」

 

「ありがとう。それじゃあ早速……っ⁉︎ こ、これは⁉︎」

 

「ど、どうかしたのか⁉︎」

 

「まさか……レベル2でこのステータスなの⁉︎ それに次のレベルになる経験値まで970000なんて⁉︎」

 

「いや、勇者ならそんなものじゃあ?」

 

「そんな事ないのよ⁉︎ 他の勇者は多分貴方よりも経験値を少なく得てレベルアップできるわ。それに私のステータスを見て」

 

「あ、あぁ……見たな」

 

「比べても変でしょう⁉︎ それに次のレベルまで私は2万ほど。貴方は単純計算ではその50倍はあるのよ⁉︎」

 

「ほぉ〜……なら結構強い個体を相手取らないとレベルアップが難しいって事だよな。まぁ〜なんとかなるだろう」

 

「……そうね。それに貴方の装備は最早ゲームで言うところのチートレベル……イレギュラーが起こらない限りは相手には負ける事はないでしょうし」

 

「だな。にしてもなぁ〜んか眠気が来ないな。まぁさっき動いたのが原因だけど」

 

「明日は早めに起きて城に戻らないといけないんでしょう? でも眠気が来ないのなら……そうね。分かったわ。私が耳かきしてあげる。そしたら……夜光くんも自然に眠気が来て眠れるでしょう?」

 

「み、耳かき……」

 

「そう、耳かき……適度に耳をマッサージする様にすればすぐ眠りにつけるらしいから」

 

「そ、そう言うなら……それで俺はどこにの転がれば良い?」

 

「勿論……こ・こ♡」

 

「……逆に眠気が来なさそうなんだが」

 

「良いから……ね?」

 

「し、仕方がない……」

 

そして夜光は寝転がった。その寝転がった場所は……ファサリナの太ももの上だ。俗に言う膝枕である。ファサリナはベットの上で女の子座りをして、壁を背もたれの様に少し体重をかけて座る。

 

それに対して夜光は、右耳を上にし、顔をファサリナとは逆の方向に向けて寝そべる。

 

最初の方に記載したが……ファサリナの身に纏う服はガン×ソードの時と同じだ。なので余裕で夜光の肌がファサリナの肌に触れる。その時点で夜光の顔は真っ赤だ。

 

(だが……なんだかんだ恥ずかしがってもこの人の側は凄く落ち着くんだよな……)

 

「ふふ……それじゃあ耳かき、するわね。まずは耳のマッサージから……んっ」

 

ファサリナの親指が夜光の耳を適度に刺激する。それだけで物凄く気持ちがいいのだが……

 

「次は耳かき棒で耳の縁をなぞる様にしていくわね」

 

そこにさらに追い討ちをかけるかの様に耳かき棒で耳の縁をなぞられる。それらと言うもの、耳穴の入り口、耳穴の奥へと刺激していく。もうその頃には夜光はウトウトしていた。

 

「これで右耳は終わったわ。仕上げに……」

 

「ふぅ〜〜〜〜……」

 

最後には耳吹きをする。夜光にとってはもう至福である……

 

「それじゃあ次は左耳やるわね。さぁ、ごろ〜ん」

 

ファサリナによって夜光の顔はファサリナの方に向き、左耳が上に来る様になった。そして右耳と同じ様にやって最後に耳吹きをする頃には、既に夜光は夢の中である。

 

「ふふっ……おやすみ、夜光くん♡」

 

夜光のおでこにキスをして、ファサリナは夜光と添い寝をする形で眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




夜光の簡単なステータス

レベル1の時

耐久:8000

力:9800

防御:9500

素早さ:10000

魔力:7700

魔防:7000

マジックポイント:5200

これまで出た兵装の能力値

GNバスターライフル(アルケー)熟練度1
・攻撃力+500
・素早さ+2000
・??? レベル未達成のため未開放
・??? レベル未達成のため未開放

GNファング(アルケー)熟練度1
・攻撃力+200
・素早さ+3500
・??? レベル未達成のため未開放




ファサリナさんの簡単なステータス

レベル30の時

・耐久6000

・力3500

・防御5400

・素早さ6700

・魔力2400

・魔防3000

・マジックポイント1700





他の勇者の平均

・耐久140

・力90

・防御85

・魔力55

・魔防32

・マジックポイント18


以上、既に格差が出ている簡単なステータス。


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4話 ヨロイの勇者はキレる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チュン……チュン……

 

朝6時30分ごろ……先に目を覚ましたのはファサリナだった。

 

まず視界に映ったのは、安らかな寝息を立てて寝ている夜光だった。

 

「ウフフ……可愛い♡」

 

いまだ寝ている夜光の頭を抱き締めながら撫でる。それを無意識で気持ちいいと感じているのか、夜光の閉じている目が更に細くなる。

 

それを更に可愛いと感じたサファリナは、夜光に対する抱き締めを強くしたのだった。

 

それから数十分後……夜光が目を覚ました。

 

「おはよう、夜光くん」

 

「あ、あぁ……おはよう〜……サファリナさん……」

 

優しい声音で言うサファリナ、それに対してまだ眠たそうに返事をする夜光……いや、寝ぼけている。

 

「うぅ〜……後5分……」

 

夜光はファサリナを抱き枕のように抱き締める。自分からはなかなかしない行動を今は簡単に行なっている……本当にまだ寝ぼけているようだ。

 

「フフッ、夜光くんは甘えん坊なんだから♡」

 

しかしそこは夜光よりもお姉さんなファサリナ……寝ぼけている彼を優しく抱きしめてそれに応えた。

 

因みにその後完全に覚醒した夜光は顔を真っ赤にし、言葉にならない言葉を喚きながらファサリナの部屋を後にしたと言う……

 

「もう……本当に可愛い♡」

 

ファサリナの中で夜光の好感度が更に上がる一幕だった。まぁ既に昔から夜光に対する好感度など天元突破しているが……というか下がる事はないだろう。

 

それから数時間後……ファサリナの下を国王からの勅使と名乗る者が訪れ、是非とも今回召喚された勇者に力添えして欲しいと依頼を受ける。

 

それをファサリナは受諾し、神様が転移させる前に言ったような形におさまったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ファサリナの泊まっていた宿屋から城で充てがわれていた来賓室へと戻った夜光。部屋の扉を静かに開けた時、丁度尚文がベットの上で上半身だけを起こして伸びをしていた。

 

「あっ、おはよう夜光」

 

「あ、あぁ……おはよう尚文」

 

「にしても朝早いんだな夜光は……って、どうした? そんなに顔を赤くして……」

 

「い、いや……何でもない」

 

それから約1時間後に他の面々も起き出す。そこから昨日の夕食と同じく朝食を案内され、それぞれで準備をした後に再び王の間へと案内された。

 

そこには既に我こそはと腕に覚えのある冒険者達が集っていた。人数は13名……

 

騎士風の者や一目で魔術師と分かる者、格闘家の者までいた。その極め付けはというと……

 

(1番左端の女……あれは……)

 

(た、只者ではないですね……)

 

(し、素人の俺でも分かる……今目の前にいる冒険者達の中で群を抜いて上の実力者だ……)

 

練、樹、尚文の3人はその者を只者ではないと評価していた。冒険者の中では、その軽装で大丈夫か? と言われるくらい露出度が高く、確かに服としては機能しているのだろうが、その服を着ている者の体型が凄くムッチリしているせいか……動いただけでこちらがムラムラしてきそうな……そんな感想を抱く。しかし顔は薄紫色のフードを真深く被っているせいで見えない……

 

しかしそんなスレンダーな体型の持ち主なのだ。顔もさぞ美しく美人の部類に入るだろう……

 

現に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(な、何だあのお姉さんはっ⁉︎ 俺が生きてた頃にはいなかった女性だ! 凄いお姉さん力を感じる‼︎ ぜ、是非俺の所に来て欲しいなぁ〜)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コイツ……元康のレーダーは物凄いほどに反応していた。それもあってか元康の顔も凄く緩んでいる。鼻の下が伸びまくっている……

 

(こ、コイツ絶対あの左端の女の人を見て変な事を考えてやがる……っ⁉︎)

 

元康の左側に立っていた尚文は、その様子をジト目で見ていた。しかし、それも何者かの殺気で恐れの表情に変わった。

 

「……」

 

無言で元康を睨んだ目つきで見る夜光……これには練も樹も気付き、尚文と同じく恐れの表情に変わっていた。それは目の前にいる冒険者達も同じで、夜光が元康に送る殺気を見ているだけで顔を青ざめていた。

 

しかしこの人だけは……

 

(まぁ……まぁ……嫉妬している夜光くん、可愛い)

 

勿論冒険者の1番左端にいるのはファサリナなわけだが……彼女だけは場違いな事を思っていた。

 

そして練、樹、尚文の3人が同時に思った事は……

 

 

 

(((早くその変な考えと面を仕舞え(しまって下さい)元康‼︎)))

 

「う、ウォッホン! そ、それでは未来の英雄達よ! 仕えたい勇者達の元に旅立つのだ‼︎」

 

そして動き始める冒険者達……結果

 

 

 

 

練……5人

樹……3人

尚文……0人

元康……4人

夜光……0人

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

という結果となり、尚文と夜光は0人となった。これに対して尚文は嘆く……俺は一体どうすれば良いのかと。樹よりも人数が多い練や元康にどうか誰か俺につけて欲しいと頼んだが、それについては練からは軽くあしらわれ、元康からは人望が無かったんじゃないか? と言われる始末。

 

「王様! これはどういう事ですか⁉︎」

 

「ぬ、ぬぅ〜……これは流石にワシも予想外だ」

 

「人望が無いですな」

 

と、隣の大臣

 

「そいつはかなりおかしな話だな。昨日召喚したばかりの人間に対して初対面のくせにどうやって人望を図る? あなた達と満足に会話をした訳でもない。雑な立ち居振る舞いをした訳でもない。俺から言わせれば、召喚当初から文句言ってた尚文以外の3人の方が余程失礼に見えたが?」

 

急に自分の事を言われた3人はムッとしたが……事実も事実なので反論できなかった。

 

「ま、まぁ確かに昨日の状況を鑑みるとその通りなのだが……」

 

「陛下、少しお話が……」

 

そこにロープを見に纏った男が現れ、王に何か告げ口をしていた。

 

「なんと、その様な噂話が出回っているのか?」

 

「何があったんですか⁉︎」

 

尚文が王に聞く。

 

「うむ、伝承によれば異世界から来る勇者は、この世界と同じ様な状況を熟知している者が召喚されるとあるのだが……どうやらナオフミ殿はその様な世界には疎いと城の中で噂になっている様でな……」

 

「そ、そんなぁ〜」

 

「昨日の会話が聞かれていたんじゃないか?」

 

そう左肘で突きながら尚文に言う元康。王の言ったことに意気消沈な尚文……

 

しかしこの者だけは……

 

「はぁ〜……下らん」

 

「なに?」

 

「いささかもって下らないなと、そう思ったに過ぎない。あなた方の勝手な都合で赤の他人を召喚し、そしてこの世界の人類を託す勇者として勝手に祭り上げておきながら、今度は勇者の人望が無いやら、この世界のシステムに疎いから一緒に行きたくないやら……」

 

「満足にその人物と語り合ったり行動を共にしたことが無いくせに、そんな判断で軽々しく人を評価する国とは……しかも城の中でそんな事が簡単に起こる始末。いやはや全くもって下らぬ国だな、ここは。人を見る目がない」

 

「貴様! 勇者だからと言って好き勝手言うでない‼︎ 王の御前であるぞ‼︎」

 

「その状況にしたのはどこの誰だ? 上の者がしっかり管理していたのならばこんな下らないことにはなっていないはずだ。こんなに時間もかかっていなかったはずだ。仮にここにいる俺が勇者であろうとそうでなかろうと……俺は全く同じ事を言ったであろうよ」

 

「き、貴様ぁっ‼︎」

 

「もう良い、大臣」

 

「しかし……」

 

「確かにヤコウ殿が言う事も最もである。これはワシの管理不足でもあるとな。今回の事を機に、その体制を強化しようと思う。ナオフミ殿には済まないとは思うが……ヤコウ殿もそれでどうであろうか?」

 

「陛下がそう仰るのであれば……私からはそれ以上何もありません」

 

「うむ、では今回の事はこれまでとして……しかしナオフミ殿よ、まだそう悲嘆にくれるものではないぞ?」

 

「えっ? それは……」

 

「いま一度冒険者の人数を確かめてみるがよい。冒険者の人数が足りないであろう。レン殿が5人、イツキ殿が3人、モトヤス殿が4人、ヤコウ殿は……ナオフミ殿と同じで0人ではあるが、これで12人であろう。先に紹介した冒険者の人数は13人……1人まだそちらに行っていない者がいるであろう?」

 

そこで夜光以外の勇者が気づく。そうだ、もう1人いたではないかと……何故今まであれ程までに印象的な人物が忘れ去られていたかの様に話が進んでいたのかと……

 

「して、最後の冒険者よ……同行する勇者は決まったであろうか?」

 

「えぇ、私は既に決めております。私以外の冒険者の方々がどの勇者に着くのか……それが興味深かったものですからこの場に留まっておりました」

 

「そうか。ではもう1人の冒険者よ……未来の英雄となるべく勇者の元へと旅立つのだ!」

 

「お言葉ですが国王様……それは少し違いますわ」

 

「なに?」

 

「私は英雄になるために勇者の元へと赴くのではありません。未来の……勇者様の未来の伴侶となる為に赴くのですわ」

 

最後の冒険者の一言に周りは騒然となった。まさか……未来永劫その勇者の妻になりたい、と言う様な発言が飛び出るとは思いもよらなかったから……

 

これには夜光以外の勇者達も驚く。まさか仲間としてではなく、将来の妻になる為に自分達に付いて行こうとするとは……

 

(お、重い……)

 

(まさかそんな心づもりで同行すると言うなんて……)

 

(……いや⁉︎ 無理無理‼︎ 何だよその理由⁉︎ 普通に仲間としてならあれだけど……でもそれは無理だろ⁉︎)

 

と勇者3人はこう思った。しかしコイツだけは……

 

(ま、マジか……もし俺にあのお姉さんが付いたとするなら……それはつまり……あのお姉さんと結婚出来るって事だよな‼︎ そうだよな‼︎ よっしゃあーっ! 頼みます! 俺の所に来て下さい‼︎)

 

相変わらず分かりやすい思考である……

 

元康以外の勇者3人は先程と同じくそのふしだらな顔と思考を止めろと訴える。そして勇者の後ろに付いた他の冒険者達も……夜光から発する殺気で皆ブルブルと震えていた。

 

そして最後の冒険者が勇者達に歩み寄る。まずは練のところに行こうとする冒険者……しかし練は汗を流しながら顔を背ける。それを確認した冒険者は次に樹の元へ……しかしこれも同じ反応。次に尚文だが……

 

(本当は1人でも居た方が頼もしいけど……ごめんなさい‼︎)

 

その思いが行動で正直に出てしまい、冒険者に両手を合わせて謝る体制を取ってしまった。それを見た冒険者は……

 

「クスクスッ……誠実で良い子ね。そんなに緊張しなくても大丈夫よ」

 

冒険者は頭を下げて謝っている尚文に対してそう言ってから2往復くらい頭を撫でた。

 

それが尚文には予想外だったのか思わず顔を上げた。尚文が見た冒険者の顔は……確かに美人の女性だった。

 

その次に元康だが……もう最初から鼻伸ばしまくりな顔になってだらしがなくなっていた。それを冒険者は……

 

「クスッ……」

 

「っ‼︎」

 

ただ笑う。それを元康が好印象だと感じて勝ち誇った笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし……

 

 

 

スタッスタッ……

 

「えっ?」

 

自分の前を通り過ぎた冒険者に元康はポカンとしていた。

 

そして……冒険者の歩みが止まった。止まった勇者の先……それは……

 

「貴方の……生涯の伴侶として私を連れて行って下さい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヨロイの勇者、仙谷夜光の下だった。

 

そしてその冒険者の告白とも取れる宣言に夜光は……

 

「私の方こそ……どうか宜しくお願い致します」

 

最後の冒険者は夜光の下に付くこととなった。

 

「ほっ……」

 

「は、ハラハラしました……」

 

「結局最初は俺1人だけか……でも、おめでとう夜光!」

 

「あぁ、ありがとうな尚文」

 

少しお祝いムードが流れる。しかしながらコイツだけは……

 

「な、納得いかねぇぞ‼︎」

 

元康である。

 

「か、彼女は俺に微笑んでくれたはずだ! って事は俺に同行しても良いって事じゃないか⁉︎ 違うか⁉︎」

 

「だが元康、その人は夜光を選んだんだ。その人の考えが変わらない限り無理があるだろう?」

 

「そうですよ。それは元康さんの勘違いだと思います」

 

「というかお前ん所に沢山同行者はいるし、それに女の人だっているじゃないか⁉︎ 何が不服なんだよ⁉︎」

 

「こんな正論ハッキリ野郎に付いたのが気にくわねぇんだよぉぉぉっ‼︎」

 

「いや、それは関係ないだろう⁉︎」

 

「ともかくだ! 俺は認めねぇ‼︎ 夜光! 俺と戦え‼︎ 彼女を賭けて‼︎」

 

隣の夜行に伝説武器の槍を突き付けながら戦いを挑む元康。

 

「断る」

 

それをキッパリと断る夜行。

 

「なんでだよ⁉︎」

 

「そもそも理由がない。それでも足りないと言うのなら……その状況を自分に置き換えてみろ。理不尽とは思わないか?」

 

「……そ、それでもだ‼︎ 俺と戦え‼︎」

 

「少し考えてみて嫌だったが……それでもやるというのか? それでもお前はこの中でも年長者か?」

 

「今年長者かどうかは関係ねぇだろ⁉︎ 彼女を賭けて戦うかどうかの話をしているだろう‼︎」

 

勢いが衰える事なく元康は言う。それに対して夜光は……段々腹が立ってきた。

 

「お前……さっきから不愉快だな?」

 

「えっ?」

 

ここで漸く伝わった。夜光の殺気を……

 

「さっきから聞いていれば何だ? 彼女を賭けて戦え……だ? 貴様……彼女の事を賭けの道具として使うのか?」

 

「い、いや……そんなつもりは……」

 

「そうだろうが! 何も間違っちゃいない! 貴様は! 彼女の事を! 自分の欲望のためだけの! 道具として扱ったんだ‼︎ 俺の事を……生涯の伴侶として認めてくれた、こんなにも素晴らしい女性を……貴様は賭けの道具に使ったんだ‼︎ この落とし前……どう付ける‼︎」

 

夜光の殺気が国王の間を支配した。これには……誰も口を挟めなかった。この場で1番の権力を持つ国王でさえも……ただ冷や汗をかいてただその行く末を眺める事しか出来なかった。

 

その殺気を直にも受けている元康は……今にも泣きそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな空気を……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「夜光くん……もう良いのよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは誰の声だろうか。凛として……そして静かな声音がそう呼びかけた。

 

「私のために怒ってくれたのよね? 私は大丈夫だから……ね」

 

それは夜行についた冒険者からだった。目深く被っていたフードを外し素顔を露わにした。背中よりも長い艶やかな黒髪、おっとりとした瞳、整った唇……まさに美人だった。

 

そんな女性がだ。まだ名乗ってもいない勇者の名前を言い、そして宥めた。

 

「ファサリナ……さん?」

 

「もう良いのよ? 怒らなくても良いの。私は誰に何を言われても……貴方の側だけは絶対に離れはしないから……」

 

「……分かった」

 

そして夜光は殺気をおさめた。国王の間が張り詰めた空気から解放されたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかしながら……貴様はファサリナさんに謝れ」

 

「本当に申し訳ありませんでした‼︎」

 

「あの……こんな所で言うのも何ですが……私盾の勇者に付いて行こうと思います。良いでしょうか? 元康様」

 

「へっ? あ、あぁ……」

 

元康の下から尚文の下へ1人冒険者が移動した。何はともあれ最終的にはアニメに沿う形となる……




キレた夜行を目の当たりにしての評価

練:アイツは……出来るだけ怒らせないようにしよう。

樹:同じ人とは思えない程の怖さでした……

尚文:アイツマジで怒ったら怖い……でも頼りになる奴には変わらないんだよなぁ〜。

元康:ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ……

メルロマルク32世:何という殺気……本当に平和な世界から来た者なのだろうか?

以上……キレた夜光を目の当たりにしての評価でした。

また、今回は元康ファンの方々に対しては非常に申し訳ない話となってしまいました。誠に申し訳ございませんでした。

という事で……次回も見ていただけたらと思います。


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5話 鎧の勇者は忠告するも後悔する

投票評価者

☆2 MinorNovice 様
☆9 春夏なる 様

ご評価頂きましてありがとうございます‼︎

これを励みにこれからも、私なりにではありますが物語を書いて行こうと思いますので、何卒宜しくお願い致します‼︎

それでは、ご覧下さい!


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

尚文のところに冒険者が1人、元康のところから移動した。そこで漸くそれぞれが旅立ちを迎える。

 

最初の資金として国王から各勇者に手渡される。練、樹、元康の所には銀貨600枚。練達よりも同行者が少ない尚文と夜光の所には多めの800枚が渡された。

 

(荷物の中に入れておくのもかさばるからな……宝物庫に収納するとしようか)

 

これも夜光の所持する能力の1つである。まぁ某AUOと同じ様なものではあるが、黄金の波紋ではなく、真っ白な波紋である。

 

いきなり貰ったばかりの物を収納するのも怪しまれるので、それぞれで別れてから入れる事にした。

 

そして王の間を出て、夜光達は別々に別れた。まぁ城の門を出るまでは流石に一緒ではある。その際……

 

「尚文、少し良いか?」

 

「どうしたんだ夜光?」

 

「なに、少し話しておきたいことがあるだけだ。2人きりでな」

 

「あ、あぁ……分かった。えぇっとぉ……悪いんだけど名前を教えて貰えると助かる」

 

「あっ、そう言えば自己紹介がまだでしたね。私はマイン、マイン・スフィアと言います。気軽にマインとお呼びください。それでどうかされましたか勇者様?」

 

「マインさんね。こちらこそよろしく。少し夜光と話をしてくるから少しここで待っていて欲しいんだ」

 

「鎧の勇者様とですか? 分かりました。ではこちらでお待ちしていますね」

 

「助かるよ」

 

「ファサリナさんも少しここで待っていてもらいたい」

 

「えぇ、分かったわ夜光くん」

 

「うし、じゃあ行くか尚文」

 

「あぁ」

 

(それとそこの女が何かしないか見張っておいてほしい)

 

(そうね。この女からは邪な感じがするから)

 

それをアイコンタクトだけで済ませる夜光とファサリナ。この2人はどれだけ通じ合っているというのか……

 

そして夜光と尚文は2人が見えないところまで来る。

 

「他は……チッ、何人か聞き耳立ててやがるな。王の間での事で俺がマークされた感じだな」

 

「えっ? でも周りには誰もいないぞ?」

 

「隠密スキルってやっだろうよ。後は水晶で投影してこの様子を見ているかだな。流石に声までは聞き取れないだろうが……はぁ〜……面倒くさいが少し使うか」

 

「ルーム……オペ開始(オペレーションスタート)

 

夜光のルームが夜光と尚文だけをすっぽりと覆った。

 

「さて……これで誰かに盗み聞きもされないし、覗き見をされていても静止画の様にしか見えないだろう」

 

「その能力って……昨日のやつだよな?」

 

「あぁ。まぁそんな事よりもあのいけすかねぇ女の事だ」

 

「いけすかねぇって……マインさんの事か⁉︎ ど、どういう事だよ⁉︎」

 

「そのままの意味だ。何故急にあの女たらしから尚文のところに行ったと思う?」

 

「えっ? それは……同行者がいなかった俺が可哀想だったから……とか?」

 

「あの女はそんな可愛らしい理由で動くわけがない。打算ありまくりで尚文のところに付いている」

 

「な、なんでそんな事が分かるんだよ⁉︎ さっき国王の間で言っていたじゃないか‼︎ 一緒に過ごしていない奴の事をどうしてそんなに悪い形で見れるんだって! その言葉で俺救われたんだ‼︎ それなのに……どうして夜光がマインさんの事を悪く言うんだよ⁉︎」

 

「……確かに尚文がそう言うのも分かる。その人の事をあまり知りもしないで悪く言うなという自分自身の発言も……曲げるつもりはない。それに今提示できる証拠という奴も無いしな」

 

「だったら‼︎ 「だがな」っ⁉︎」

 

「分かる。自然と分かっちまうんだよ……悪意溢れる奴を見ちまうと……外面がどうあれ分かっちまうんだ。言ったよな? 俺には秘密があると」

 

「あ、あぁ……」

 

「俺が死んでからの事だ。細かい事は省くが……そこで俺は、死ぬ前の人生で得られなかったものを見つけたんだ。本来……全員か分からないが、真っ当に生きている人たちならば持っているものを……俺は持ってなかったんだ。いや、持ちたかったけど持てなかった……ってところだな。それを……俺は死んでからの始めてそれを持つことができた」

 

「だがその過程で……知りたく無いことも知ったんだ。だから分かる。一目見たら分かるんだ……そいつが善なのか悪なのかが」

 

「だが……俺は……」

 

「そうだな……尚文の事を嫌な気持ちにさせてしまったのは俺のせいだ。悪いと思っている。理解して欲しいなんて思わない。だが俺は……お前の事が心配だった。だからこそ……忠告として、言っておきたかった。頭の片隅にでも置いておいてくれたらと」

 

「……分かった。まだあって日が浅いが……夜光が真面目で、信頼における奴だって思ってる。正直俺には……会って間もないマインさんの事を悪い人には見えないが、でも気を付けてみるよ」

 

「あぁ。急にこんな事を言ってすまなかった」

 

「いや良いよ。じゃあそろそろ待たせたまんまっていうのも悪いし……」

 

「あぁ、行くか。オペ終了(オペエンド)

 

夜光が能力を解除し、夜光と尚文はファサリナとマインの元へと戻る。戻った後はそれぞれ別れて行動をした。尚文とマインが見えなくなったころ、夜光はため息を吐いた。

 

疲れてはいない……ただ、昨日会ったばかりだが友だと思っている者でもさっきの話はしない方が良かったのではないかと……すこしばかりの後悔を抱いていた。

 

「夜光くん……大丈夫よ」

 

ファサリナが直ぐに側へと寄って夜光を宥める。

 

「ファサリナさん……」

 

「相手に……友達に傷ついて欲しくなかったからでしょう?」

 

「あぁ……でもそれは結局は、俺の自己満足かもしれない。偽善かもしれない……」

 

「それでも、そうだとしても……私が貴方を肯定してあげる。貴方は正しい事をしているって。あの時……過ちを犯そうとした私を許してくれた様に」

 

自ら夜光を抱き寄せる。自然と密着する体、両者の息遣いが余裕で聞き取れる位置。一瞬でファサリナに抱きしめられた夜光は……すこし俯いていたのもあって反応が遅れた。

 

「ファ、ファサリナさん……」

 

「大丈夫……大丈夫だから……ね?」

 

抱きしめながら夜光の頭を撫で、幼子をあやすかの様に振る舞う……絶対的なお姉さん力‼︎

 

ファサリナの綺麗な、淀みのない瞳は……見ただけで先程の悩みが小さく見えてしまうほど……夜光の事を思う慈愛がそこにはある。

 

「うん。ここでくよくよしててもらしくないよな……ごめん。弱気になってた」

 

「うぅん、良いのよ。私は貴方が元気になってくれたらそれで……それとこれはもう一押し」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チュッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ⁉︎」

 

「ん……はっ……うふふ♡」

 

すこしの時間……2秒、3秒くらいの時間だ。

 

ファサリナは夜光を抱きしめながらキスをした。これもいきなりで夜光は反応できず、後で自分に何をされたか認識すると、顔をいつかの様にまた茹蛸の様に赤くした。

 

「ふふっ……そんな顔されると……我慢できなくなっちゃう♡」

 

夜光の表情にファサリナも顔を赤らめる。

 

「ふぁ、ファサリナさんっ⁉︎」

 

「うふふ、冗談よ。冗談……でも……」

 

「今夜はゆっくりと……過ごしましょうね♡」

 

今日もファサリナのペースに飲み込まれる夜光であった……

 

 

 

 

 

因みにこの様子を隠密スキルや水晶投影で見ていた者たち……先程の夜光が国王の間でした事を警戒して、一言一句とはいかずとも何か鎧の勇者についての情報、弱点を探ろうとしての行動だったが……

 

あまりにもファサリナの行動が見ていた者たちの原因不明の胸焼けなどの症状を引き起こして退散させたのは……また別の話でもある。




解説

オペ開始(オペレーションスタート)オペ終了(オペエンド)

ルームの範囲内を密室空間と同じ様な状態にする。その間外からはオペ開始をかけた時の静止画になり、無断で中に入る事はできない。無理やり入ろうとすると電撃が走る。その状態を解除するにはオペ終了を能力を使っている者が宣言しなければならず、中から勝手に出ることもできない。







また今回もファサリナにペースを握られっぱなしの夜光……ファサリナからの意味深な発言……今夜の夜光はどうなる事か……

次回もお楽しみに


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6話 ヨロイの勇者は武器屋にて

投票評価者様報告

☆9 コレクトマン 様

ご評価いただきまして誠にありがとうございます‼︎

今年のGW、皆様いかがお過ごしでしたでしょうか? 10連休楽しく過ごせましたでしょうか?

私ですか? 私は……

接客業なのでほぼ仕事漬けでしたね……ハイ……

GW中の休みはというと……2日間しか無かったですね……

多分私と同じ方々もいらっしゃると思いますし、私よりも休みが無かった人もいるかとは思いますが、昨日はようやっと身体を休める事が出来ました‼︎

という事で今日からも仕事なので行ってこようかと思います‼︎

「まぁ作者は昨日(5月7日)の休日までは5連勤して……今日(5月8日)からも5連勤の様だが……」

……うぅ

「あらあら、作者さんが泣きそうですわ……さぁこちらにいらして。私に全て委ねてしまっても良いのですよ?」

ふぁ、ふぁさりなさぁぁぁんっ‼︎

「作者ァァァッ‼︎ ファサリナさんの所には行かせんっ‼︎」

ファサリナさんからの宥める攻撃……

作者の心に1万のダメージ……作者はファサリナさんにメロメロになった。

夜光から作者への攻撃……

作者の身体に会心の一撃……15000のダメージ

作者は作品を書く前に力尽きた……(ドラクエの敗北BGM)

「そんな茶番は良いから作品を始めろ‼︎」

は、始まります……

以上……どうでもいい茶番劇


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ファサリナに宥められた後の夜光、気を取り直して城下町を歩いていた。

 

「そう言えば武器屋に一応寄ってみたいな」

 

夜光には自前の武器があるが、人目の付きやすいところでそれを出してしまうと何かにつけて怪しまれるかもしれないと思った夜光。

 

「だったら……そうね。昨日冒険者ギルドでこの街で1番評判のある武器屋の話を聞いたからそこに行ってみましょうか」

 

それに承諾した夜光は早速評判の武器屋へ赴き、その扉を開けた。

 

「おぉいらっしゃい! お客さ……」

 

中を覗くと武器、防具から日用品まで置かれてある。品揃えも良さそうだ。そしてカウンターから店主であろう元気な声がこちらに声をかけてくる。

 

褐色の肌でスキンヘッド、まだ年は若く見えるがそこらの冒険者よりかは冒険者をしていそうな風貌な店主だった。そして定型文で言いながらこちらを振り向いたが……何故か途中で止まってしまう。それに目を大きく見開き、口もワナワナと開いたり閉じたりを繰り返していた。

 

それに対して夜光は疑問に思い、この店主は大丈夫かと思ったところで……

 

「い、いらっしゃいませー! お客様ー‼︎ もしや嬢ちゃんが昨日から話題になっている冒険者さんかい⁉︎ 昨日冒険者になったばかりなのに既にレベル20越えをした超新星の冒険者は⁉︎」

 

興奮気味でそう聞いてくる店主。

 

「噂……かどうかは存じませんが、確かに私は昨日冒険者になったばかりですわ。それにレベルは今33……です」

 

「き、昨日の今日でもうそこまで……スゲェ……凄すぎるぜ嬢ちゃん! それに容姿も噂とも合致するし……にしても一見武器になりそうな物は見えないが……」

 

「あぁ、それならこれのことですね」

 

ファサリナは太ももに巻きつけていた武器……ガン×ソードの世界から愛用していた三節棍を展開した。

 

「えっ……はっ……さ、さっきのは……」

 

「さっき……というのは?」

 

「いやいやそれ本気で言ってるかい嬢ちゃん⁉︎ 俺武器屋してて結構長いけどそんな武器見た事ねぇぞ⁉︎ ちょ、ちょっと見せてくれねぇか⁉︎」

 

「えぇ、良いですよ」

 

ファサリナは三節棍を店主に渡して鑑定してもらった。結果……

 

「み、見たことねぇよこれ……熟練度が既に上限まで引き出されてある。それに使用者はこの武器が選ぶって……さっき4人の勇者の武器にもそれが書いてあった。ならこれも伝説武器の類かと思って見たが……これにはそれがねぇ。それにステータスも、どれも一級品の武器を最大限にしたほどに高い。後この「召喚」のスキルは何だ? 一見魔物とかそういうのを召喚するのかと思って見ても、それ以上は見れねぇ……なぁ嬢ちゃん、これを一体どこで?」

 

「うふふ……それは言えません。秘密というもので」

 

ファサリナは妖艶にクスクスと笑いながらそう言った。

 

「そう来たかぁ〜……でも確かにこれ以上聞いても何も出ない様だし……ありがとな嬢ちゃん! 久々に良いものを見せてもらったぜ‼︎」

 

「いえ、喜んでくれたのでしたら何よりです」

 

「で隣の坊主は……この嬢ちゃんが凄いって事は相当凄いんだろう?」

 

「さぁ……俺がどれほど凄い奴なのかは分からんが、昨日勇者として召喚されたばかりなのは確かだ」

 

「つぅ〜事は……剣、槍、弓、盾ともう1つ珍しい職業が召喚されたっていう……」

 

「あぁ、その認識で合ってる。俺はヨロイの勇者で召喚された仙谷夜光だ。宜しくな店主」

 

「鎧の勇者⁉︎ 武器じゃなくて防具の勇者とくるのか⁉︎ いやこれは珍しいにも程があるだろう⁉︎」

 

「あぁ、俺もそうは思っているさ」

 

「という事はあれか? 他の勇者達も試していたが、武器も持てず終いには防具も買って装着できねぇって事か⁉︎ いくら勇者様とは言え酷だろう⁉︎」

 

「まぁ試してはいないが……少し取って見て回っても良いか?」

 

「あぁ……普通に構わんが……」

 

「ありがとう、それじゃあ手始めにこれを……」

 

近くにかけてあった剣を手に取る。何の飾り気のない剣だ。

 

「ふ〜ん……軽いなこれ」

 

試しに振ってみるが、何事もなく簡単に振るえた。

 

「えっ……アンちゃん大丈夫なのか? 他の勇者はこう……持っただけでも電撃魔法が走ったかの様に落としていたが」

 

「それは他の勇者達の鍛え方が足りないからじゃないのか?」

 

「そ、そうなの……か?」

 

現に夜光には電流らしきものは走っていない様だ。

 

「じゃあ次に防具だな。良いか店主?」

 

「おう、別に構わねぇよ」

 

そして試しに簡単なマントと籠手を装着した。しかしこれも電流の様なものは流れなかった。

 

(まぁそりゃそうだろう? こちとらヘルプ全部見てもそんな書き出し一切無かったし、それにあの大臣が言ってたあれ、「勇者同士がパーティーを組むと育ちが阻害される」って奴も無かったしな。多分他の勇者のヘルプには書かれていたんだろうが、俺のは別口ってところだろうな)

 

「まぁ参考になった」

 

「鎧のアンちゃんは他の勇者とは違って別の武器とかも使えるって事か?」

 

「まぁそういうこった。それでな店主……店主がさっき使った鑑定スキルを見込んで見て欲しい奴があるんだが」

 

「よ、鎧のアンちゃんもなんかあるのか?」

 

「あぁ、とりあえず聞くよりも見てもらった方が良いよな」

 

そして夜光がヨロイの腕輪から取り出したのは、まるで血よりも濃い紅色をした大剣……アルケーのバスターソードだった。

 

「な、なんじゃこりゃーっ⁉︎ 何だよこの禍々しい大剣は⁉︎ っていうかそれどっから出した⁉︎」

 

「俺の保有する武器の1つだ。まぁ鎧に付いている武器って説明の方が分かりやすいな。それとどこで出したかは……これは秘密だ。それと俺がこの武器を持っているのも他の奴らには口外しないでくれ。良いな? その代わりにこっちもそれなりに店主には良い思いをさせるから」

 

「そ、それってうちのお得意様になるって事か?」

 

「まぁそう捉えてもらっても良い」

 

「そう言ってくれるんだったら……まぁいっか! それにウチとしては客の個人情報はそう安安と他人には言いふらしはしねぇしな!」

 

「だがさっき俺が武器とか防具に触れようとしたら他の勇者の事を言っていた様だが……」

 

「そ、それは……か、勘弁してくれ」

 

「なに、別に俺はそれについてはもう良いと思ってる。だがこの件については……どうか誰にも言わないでくれ。もし言ったら……」

 

「言ったら?」

 

「こちらで何か買うときは定価の5割引から値引きして取引するからそのつもりで」

 

「もしかして召喚された勇者の中で1番鎧のアンちゃんがタチ悪いんじゃ……」

 

「約束を破った方が悪い」

 

「まぁそうとも言えるんだよなぁ〜……正論だから何とも言い返せねぇ」

 

項垂れる店主に、それに少し勝ち誇った様な笑みで店主を見る夜光。その様子を後方でクスクスとおっとりとした顔で笑うファサリナ。まぁファサリナが笑みを浮かばせている理由としては夜光がたまに子供っぽい事をするからなのだが……

 

「じゃあ早速で悪いけど鑑定してほしい」

 

店主は夜光に促されて鑑定のスキルを使う……そして見れば見るほど店主の顔はまた興奮していった。

 

「お、おいおいなんだよコレ⁉︎ マジでそこの嬢ちゃんといい鎧のアンちゃんといい! こんな武器どこで手に入れてくんだよ⁉︎」

 

「元からヨロイの腕輪に入っていたのだから、どこで手に入れたとかってのは知らないな」

 

嘘である……元々アルケーのバスターソードは神様からの転生特典で手に入れた物。転生後夜光はそれをよく使っていたがために、ヨロイの腕輪の中でロックもかからずに最初から使えたのである。確かに熟練度は最初から鍛え直しにはなるが、それでも攻撃力と素早さは下手な武器よりも付与される。そこからレベルと熟練度をあげたのならば……それはもう凄まじいほどになる。

 

また、転生後夜光が使っていた武器は他にもあるが、それらについてはとある条件下でロックが解除される様だが……その日は近い……

 

「本当かそれ?」

 

「俺が嘘を付くとでも? 俺は昨日ヨロイの勇者になったばかりだ」

 

「な、ならその腕輪を鑑定しても?」

「あぁ、勿論いいぞ?」

 

そして店主はヨロイの腕輪を鑑定した。そしたら当然だが……

 

「な、なぁアンちゃん? 俺の見間違いかもしれないが……おれの鑑定スキルが間違っていなければ確かに「ヨロイの腕輪」と書いてある。だがこれは……普段防具で見に纏う鎧の字じゃねぇ。違う字でのヨロイだ……アンちゃん一体何モンなんだよ?」

 

「だからさっきから言ってるだろう? ヨロイの勇者だと。まぁ厳密に言ってしまえば、まず俺の()()()の認識と一般的に思い浮かべる()の認識でズレが生じるだろうが」

 

「あ、アンタやっぱり勇者の中で1番タチ悪りぃよ……」

 

「褒め言葉として受け取っておくか」

 

「褒めてねぇよ‼︎」

 

「クスクスッ……夜光くんと店主さんはもう仲良しになったのね」

 

「じょ、嬢ちゃん……それ本気で言っているのか?」

 

「えぇ、本気、ですよ」

 

「……もぅこれ以上何も言わねぇ」

 

店主は夜光達とのやり取りでうなだれた。

 

「まぁまぁ、それで何だが……さっき見せた武器と同じくらいのものはあるか? 俺とファサリナさんはそれを探し求めてここに来た」

 

「はぁ? なんで態々そんな事を……」

 

「よくよく考えて欲しいんだが……何もないところから武器が現れたら皆から怪しまれる。だからこそ最初からそれっぽい物を身に付けて戦えば普通に見えるだろう? だからさっき見せたのと同じくらいの奴はあるかって聞いたんだよ」

 

「そ、そう言う事なら……大体この辺りか。少し値は張るが……」

 

「少しぐらいなら別に大したことは無い。少し多めでも払える。そういえば予めに聞いておきたかったが、この世界の通貨について教えてほしい。今ここに銀貨が800ほどあるが、これは金貨でいうと何枚にあたる? 大体銀貨100枚で金貨1枚に相当すると思っているんだが……」

 

「ヨロイのアンちゃんの言う通りだぜ。まぁ察しているとは思うが、銀貨の下には銅貨があってそれ100枚で銀貨1枚だぜ」

 

「成る程な……ファサリナさんは昨日止まった宿屋一泊の価格は?」

 

「銅貨25枚だったかしら。でも凄く綺麗な部屋ではあったし、食事をする所も綺麗なところだったわ」

 

「ありがとう。それで店主、こちらの品は一品どれほどの価値だ?」

 

「そうだなぁ……これらは元々仕入先も良いところからだし性能も申し分ない。壊れにくい事も鑑定で把握済みだから一品銀貨300枚ってところか」

 

「分かった。ならその値で買うとしよう」

 

「は、はぁっ⁉︎ ほ、本気かそれ⁉︎」

 

「あぁ本気だ」

 

「いや、これは店主の俺が言うのもなんだが、そこから値引きしたりしてだな……」

 

「良い品なのだろう? それに鑑定眼にも自信を持ち、客からの信頼を失わないようにとの真剣さも感じる。なら客で来ているこちらもその誠意には応えるべき……そう考えてはいるが?」

 

「アンちゃん……へっ! 嬉しいこと言ってくれるねぇ! でもそこは俺が譲らねぇ! 品物を選んだら俺に言いな‼︎ 値引きがどんなものかって言うのを教えてやるぜ‼︎」

 

そんな台詞を嘘偽りの感情なく堂々としたように言った店主、それを見た夜光は、こちらの世界に転移されて2日目ではあるものの信頼を置いても良い人物だと思った。

 

そして夜光は品を選んで値引き……最終的には二品で合計銀貨370枚に収まった。

 

「良いのか店主?」

 

「あぁ良いさ! これからうちのお得意様になるんだからな‼︎」

 

「ありがとう。だが今回の事は……」

 

「あぁ、もちろん言わなねぇさ!」

 

「それともう1つあるんだが……盾の勇者の事を気遣って欲しい」

 

「それって……どう言う事だ?」

 

「今日の様子からして大体確信した。この国は……特に剣、槍、弓の勇者については古くから信頼してはいるようだが、それ以外は特にと言った様子で。特に盾は邪険に扱われているような気がしてならない」

 

「それに尚文は……昨日会ったばかりだが俺の信頼に足る人物だ。だからこそ……アイツの傷付く姿はできるだけ見たくないとは思っている。だが……俺1人ではどうしても限界がある。だからこそ……店主を見込んで頼みたい。尚文の事をどうか贔屓にして欲しい」

 

「ヨロイのアンちゃん……分かった。出来るだけ贔屓にしてやるよ。だが盾のアンちゃんがその時からだった場合は……」

 

「あぁ、その時は任せるさ。さて……じゃあそろそろ行くかファサリナさん」

 

「えぇ、行きましょう夜光くん」

 

「じゃあな店主。また近いうちに寄らせてもらうから」

 

「あぁ! 待ってるぜ‼︎」

 

そこには少し晴れ晴れしい顔つきで武器屋を去る夜光がいた。




今回夜光が武器屋から買った武器


武器名:地を割る大剣(ディバイグラウンジソード)

種類:大剣

攻撃力:300

スキル
・刃こぼれ無し
・手入れしなくても斬れ味最大

その名の通り地を割る程の威力を持った大剣……しかしそれを活かすためには相当な筋力、体力が必要であり並みの冒険者は容易に扱えない。今回店主はとあるところからこれを仕入れた。本来なら銀貨300枚では足りないが、仕入先でこちらの剣の所有など売れ筋があるかどうか困っていたようで、そこに目を付けた店主が買い取り仕入れたと言う。武器名は英語にした単語を省略した物を使用。省略しなければディバイド・ザ・グラウンド・ラージソード。


武器名:妖花

種類:三節棍

攻撃力:180

スキル

・一定確率で相手魅了
・急所に当たった際威力3×3

ファサリナに対して夜光が買った武器。ファサリナが普段身に付けている三節棍と同じくらいの軽さではあるが壊れにくい。武器の名前の通りスキルもそれに見合った物で、相手を魅了し急所を付けば一瞬で敵を葬り去る威力を持つ。正に妖しい雰囲気を持った花……。店主によるといつの間にか仕入れた武器の中に入っていたようだ。

以上、今回夜光が店主から買った武器の詳細……


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7話 R-15ヨロイの勇者は……愛を捧げる

夜光は……ファサリナに捧げる。その物語


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武器屋を後にした夜光達……メルロマルクの町から門を抜ける。

 

そこでは、既に他の勇者達がレベリングに励んでいた。その中には尚文の姿もあったが、やはり他の武器は装着できず素手でモンスターと戦っていた。それを値踏みするかの様に尚文の下に同行したマインの姿も……

 

(あの様子から見ると、あの同行者は信用に値せんな)

 

最初から分かってはいたが……実際にその者の行動を見て完全にその認識となる。自分の様なイレギュラーが物語に入ったのならば、原作主人公にも何らかの……メリットの様なものがあるのではと考えてはいたが、実際にはそういう訳ではない様だ。逆にそこは物語と同じ道筋という事だろう。

 

そう考えていると、初級の冒険者には丁度いい魔物であるオレンジバルーンスライムが何体か現れた。攻防特に何かが突出している訳ではなく、まさに初級には丁度いい相手……

 

「つってもなぁ〜……」

 

しかしながら当然というべきか……夜光はそれをデコピンした。それだけでスライムは破裂する。経験値1獲得……

 

「経験値1って……いや、まぁ……当然なのか」

 

夜光の場合後96万9999体倒さないと次のレベルにはならない。取り敢えず残骸はヨロイの腕輪に吸わせておいた。新しい鎧スキルが解放……しかしながらまぁ……微妙であるのは当然の事か。

 

「やっぱ森の奥とかに行った方が良いよな?」

 

「そうね。場合によっては山の麓あたりまで行った方がよっぽどマシかもしれないわ」

 

という事で夜光達は他の勇者達一行は特に見向きもせずに森の奥へ……その方が経験値を稼ぐ、スキルを増やす、素材を得るという3点でも非常に効率が良いと感じたからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その筈なのだが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁファサリナさん……」

 

「なぁに? 夜光くん」

 

「これって明らかに魔物じゃあなくて人工物だよな?」

 

「確かにそうね」

 

「この国ってメルロマルクだと思うんだけど……そんなに工業とか発達していた様には見えないんだが……」

 

「えぇ、メルロマルクは工業はそこまで発達してなかったと思うけど……確かこの世界だとフォーブレイが盛んだったかしら」

 

「(あぁ……確かグズったれな転生者がいるところか)まぁでもこれフォーブレイとは全く無関係なロボットだな」

 

「あら、どうして?」

 

「ファサリナさんに助けてもらった世界でよく邪魔されたからなぁ〜……縁を結んだつもりは無いんだが。(とはいっても俺の事を良く思わん神からの差し金だとは思うが……)って、ふぁ、ファサリナさん? ど、どうした?」

 

夜光が自分が幾度もこのロボットに邪魔をされた事を言ったあたりからファサリナの様子がおかしい……。顔はうつむき、身体はぷるぷる震え、右手には先ほど武器屋から買った三節棍が力強く握られ……

 

「なら私もお礼した方が良さそうね……夜光くんが大変お世話になりましたって」

 

(えっ? ファサリナさんあれ怒ってない?)

 

いつもの笑みを浮かべるファサリナ……ではあるのだろう。しかし目が笑っていない。

 

そして次の瞬間にはそのロボットは粉々に……

 

「あら? 結構脆いのね」

 

「ま、まぁ確かに脆くはあるんだが……」

 

一瞬の事だったので夜光も唖然とした。しかしながらそれも少しの事で……

 

ガショ……ガショ……ガショ……ガショ……

 

「あの1体だけではなかったのね。でも丁度良いわ。夜光くんにプレゼントしてもらったこの子を試してみたいと思っていたところだったから」

 

「それを言うなら俺もコイツがどれほどの物か試したかったところだしな」

 

夜光達はそれぞれの武器を構えて戦闘態勢に入った。それに伴い増えていくロボットの数……

 

まぁロボットの数は多いが、戦いになると大概結論はつく。ロボットは脆い……

 

「なんか遠距離型出てきたが……普通に弾は斬れるし爆発も大した事ないな……」〈あなたの身体がめちゃくちゃに頑丈なだけです……〉

 

「えぇ。術者の様な物も出てきたけど……最初のと比べるとそこまで変わらないわ」〈あなたが速過ぎてロボットが反応できないだけです……〉

 

「あっ、なんか大きいの出てきたけど……う〜ん、期待外れだな。この武器の肩慣らしにはなるけど……ワンパンで壊れるなんて……」〈あなたはどこのハ◯マントですか……〉

 

「そうねぇ……でも簡単にこの武器の熟練度もあげれることですから丁度良い機会だも思うわ」〈正論でぐぅの音も出ません……〉

 

「あれっ? なんかちょくちょくツッコミ的なものが聞こえるけど……気のせいかな?」

 

「もしかしたら夜光くんはこの世界に来てまだ疲れが取りきれていないんじゃあないかしら? ふふっ♡ 今日も……貴方の事を優しく癒してあげるわ♡」

 

「お……お手柔らかに……」

 

戦いの場でもタジタジになる夜光だった。そしてロボット達を壊していくというもはや作業ゲーは日が暮れそうになる頃まで続いた。結果……

 

「へぇ〜……レベルが5になった」

 

「私も40になったわ。でもこれ以上上げるには特別な事をしないといけないみたいね」

 

「えっ? もう40になったの? 早過ぎじゃあ……」

 

「ウフフッ……これも夜光くんの隣にいるためだもの」

 

「ま、まぁ……そういう事にしておこうか。それじゃあこっから宿を探して明日に向けて休むとするか」

 

「その前に……お風呂、にしましょう?」

 

「えっ? でもこの世界じゃお風呂なんて……」

 

「無かったら作れば良いの。昨日私もそうしたし、夜光くんも今日の戦闘で呪文もある程度覚えれたでしょ? それを活用するの」

 

「成る程……じゃあどれくらいの威力かも兼ねてお風呂にしようか」

 

「えぇ……勿論2人で

 

「えっ? 何か言った?」

 

「いえ、何でもないわ」

 

そして昨日ファサリナがお風呂を作った近くに来た。

 

「じゃあ実験も兼ねて作ってみるか……ロックブレイク」

 

夜光は川に円を作る様に術を使う。

 

「これくらい壁が高かったら覗き見とか早々起きないだろうな……ストーンブラスト」

 

今度は底にある角ばった石を除いて術によって丸い石を敷き詰め、川の淵の方も丸い石で整えた。

 

「後は水の温度を高くして……バーンストライク」

 

直接火球を水の中に叩き込んで温度を上げた。

 

「うん……これぐらいで大丈夫だろう」

 

「それと着替えを覗かれない様に脱衣所も作っておいたわ」

 

「おぉ、流石ファサリナさん。やっぱファサリナさんってこういうのを作るのも丁寧だし器用だよね」

 

「ふふっ、乙女の嗜みだもの。夜光くん先に入ったらどうかしら?」

 

「えっ? それだったらレディーファーストでファサリナさんからだろ」

 

「それは貴方が生きていた世界での風習でしょう? ここはその世界とは違うし、あまり気にしなくても良いわ」

 

「で、でもなぁ……」

 

「良いから。ねっ?」

 

「じゃ、じゃあ早めに終わらせてくるか」

 

「それはダメよ? ゆっくり温まってちょうだい」

 

「は、はい……」

 

そのように誘導するファサリナ……夜光を誘導するそれは最早オカン並みである。

 

そして夜光は衣服を脱いで湯船に浸かる。

 

「ふぅ〜……天然ではないにしろこれもまた良いな」

 

「そうでしょう? 私も気に入っちゃったわ」

 

「確かに……露天風呂とは程遠いかもしれないがこれはこれで……ん?」

 

そうやってのんびりと寛いでいるといつのまにかそんな会話になる。そしてふと隣を見れば……

 

「はっ……えっ? っ⁉︎ な、なななななんでファサリナさんが一緒に入って⁉︎」

 

「私が夜光くんと一緒に入りたいから♡ 後バスタオルは巻いてあるから安心して」

 

「い、いや……安心しろと言われても……」

 

「……不安なの?」

 

「ふ、不安?」

 

「えぇ……貴方と初めて会ったあの日から……貴方は自分を助けてくれたお礼という形で私と一緒にいてくれたわよね?」

 

「……あぁ」

 

「私は最初、あぁこの人も他の人と同じように私を扱うんだろうな……って、そう思ったの。でも一緒に生活してみてそうでないと分かったの。そこから……私は貴方に恋をした。一度離れ離れになってしまったけど……それでも今またこうして夜光くんと一緒にいれる。私は……それで幸せなの」

 

「ファサリナさん……」

 

「私は……貴方の過去も知っている。そんな中で……初めて私を愛してくれた事も……凄く嬉しかった。それも貴方が歩んだ人生の中で……子供の頃から汚れてしまっていた私の事を、貴方の人生の中で初めて誰かを愛してくれたのが私で……物凄く嬉しかったの。そんな貴方になら……私は全てを捧げるわ。この身体も……私の想いも……」

 

「……正直俺は、どうしたら良いかが分からない」

 

「夜光くん……」

 

「ファサリナさんが俺の事を……愛してくれるのは嬉しいんだ。物凄く嬉しいんだよ! 俺だってファサリナさんの事が好きだ……大好きだ! また会えて一緒になれた時も、俺は貴女に純潔を捧げるとも誓った。それは嘘なんかじゃない‼︎ でも……でも俺は……分からないんだ。どうすれば良いのか? どうすれば正解なのか? どうしたらファサリナさんを喜ばせてあげられるのか……。不安なんだ……いざとなったら立ち止まっちまう。今まで真っ当な愛なんて感じなかったから……自分がその立場になると……急に分からなくなるんだ。求めていたはずのものがすぐそこにあるのに……俺ヘタレだから……だからっ⁉︎」

 

そこで夜光の言葉が途切れた。自分の唇が何かに塞がれている……そして俯いていた顔もいつのまにか暖かい両手に支えられて正面を向いていた。正面にはファサリナの顔が……

 

「んっ……」

 

「っ⁉︎」

 

「んっ……んっ……はむっ……」

 

夜光はなすがままにされる。ファサリナからの愛を……彼女からすればほんの序章を受ける。

 

「んっ……はっ……大丈夫、大丈夫だから」

 

正面から抱きつくファサリナ……夜光の顔を支えていた両手も彼の背中に回す。

 

「ファサリナ……さん……」

 

「夜光くんが今抱いている不安も……私が全部……全部拭い去ってあげる。貴方は何も不安に思わなくて良いの。全部……私に委ねて」

 

ファサリナはそう言ってまた夜光にキスをする。

 

「俺は……幸せになっても……良いのか?」

 

「えぇ。貴方にはその権利が十分にあるわ。いえ……私が必ず貴方を幸せにしてみせるわ」

 

「貴女からの愛を……受け取っても良いのか?」

 

「今更よ……貴方が拒絶したって無理矢理愛してあげるんだから」

 

「……分かった。ははっ……ここまで俺を愛してくれる。こんなに近くにいる。それなのに怖がってばかりだったんだな……俺は。貴女からの愛でさえも……今まで受けた事がなかったから怖くてそれ以上いけないなんて」

 

「誰でも初めての事は怖いと感じるのは普通なのよ? だからその感情は正しい事だから。でも……」

 

「あぁ……もう愛される事に怖がらない。貴女からの愛を……俺は今日、遅いかもしれない。待たせたかもしれない……それでもやっと決心した。俺は……貴女からの真っ当な愛を受け取るよ。だから……初めてだから何も分からないから、教えて欲しい」

 

「っ‼︎ うんっ♡」

 

それから風呂にでた夜光達は宿屋へと赴き食事へ……その後夜光は……サファリナからの純愛を受け取り……ファサリナへ夜光は純潔を捧げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈能力がアンロックされました〉

 

〈鉄血シリーズが解放されました〉

・鉄血メイス

・グシオンハルバート

 

運命(デスティニー)シリーズが解放されました〉

・エクスカリバー

・ケルベロス

・ヴァジュラビームサーベル

 

 

 

 

 

 

 

 




次回……夜光、ブチぎれる……理由は言わずもがな……

では、お楽しみに……


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8話 ヨロイの勇者はブチギレル

最初読者の皆様にちょっとしたネタバレですが……話が右往左往しまくります。

そして感じる人は感じるかもしれませんが……今回オリ主が色々と理不尽を振りまくターンになります。

これは面白くないなぁ〜……と読んだ後で思う人もいるかと思いますが、何卒宜しくお願い致します……

以上、作者からの謝罪でした。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チュンチュン……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勇者にとってこの世界に召喚されて2日目の朝が来た。窓からは朝日の日差しが差し込み、それはその部屋で寝ているもの達を暖かく包む。

 

「んんっ……」

 

先に目覚めたのは、ベットの窓際側で寝転んでいた女性。自分の背中以上に伸びた黒髪は、朝日に照らされて艶やかに輝く。その髪に相反するかのように、その者の身体はどこまでも白い。そして彼女は、寝るとき衣服はほぼ身につけないようで下着姿だ。

 

「もう……朝なのね。くっ……はぁ……」

 

閉じていた瞳が開けば、それはなんとも綺麗な黄色い瞳。唇は淡いピンク色で、眩しい朝日を浴びた為か身体は勝手に伸びをする。その時に彼女から漏れる吐息姿は、なんとも艶めかしい……

 

そんな彼女の名前はファサリナ……隣で未だに普段からは考えられないほど可愛い寝息をたてる(とファサリナは思っている)ヨロイの勇者、夜光の同行者であり、そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生涯の彼の伴侶である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふっ……また可愛らしい寝顔♡ 昨日……あれだけ激しかったのに、また我慢が出来なくなって……」

 

昨日夜光とファサリナの2人の間に何があったかは……自主規制である。その自主規制があったにもかかわらず彼女は……興奮状態であった。

 

(あぁ……でもこの子の寝ているところを同意なくは……乙女の嗜みに反します。だから……)

 

そう思ったファサリナは、夜光を優しく抱き締める。両者の顔は近く、今にもファサリナの吐息が夜光に届きそうだ。

 

背中をポン……ポン……とリズム良く優しく叩き、頭を優しく撫でる……正に優しい尽くしの好待遇いや、これが正しく母性である!

 

「んっ……」

 

それに対して夜光は、昨日に引き続きファサリナから頭をナデナデされるのが余程気持ちが良いのか目を細めてそれを受け入れる。その様子を見たファサリナは微笑みを浮かべて夜光を優しく包んで撫でる。そのループである。それが何回か繰り返され

 

「うぅ……ん……ふぁ、ファサリナさん……おはよう」

 

「おはよう、夜光くん。起こしちゃったかしら?」

 

「いぃや……自然と起きた感じ……」

 

「そうなのね。それにしてもまだ眠そう。まだ寝ていて良いのよ?」

 

「そぅ? だったら……後5分だけ……」

 

「ふふっ♡ もう少し長く眠っても良いわよ?」

 

「なら……ファサリナさん……丁度いい時間になったら起こして……」

 

「えぇ。それまで貴方の寝顔を堪能しておくわ♡」

 

「ま、また貴女はそんな恥ずかしい事を……」

 

「夜光くんだけだもの。さっ、もう少し寝ましょうね♡」

 

「うん……それじゃ……おやすm『早朝に失礼する‼︎ 鎧の勇者はいるか⁉︎』……」

 

「気にしなくても良いのよ? さぁ、耳栓付けて寝ましょう?」

 

「……うん。おやs『〈ドンッドンッドンッドンッ〉鎧の勇者様はいらっしゃるかっ⁉︎』……はぁ、これじゃあ2度寝出来ないな……」

 

夜光、2度寝したかったが外野がうるさく完全に覚醒……

 

「……まさか夜光くんの睡眠を邪魔するなんて」

 

これには普段温厚なファサリナも怒りの表情を浮かべる。

 

「あぁ……でも起きる前に、もう1回抱きしめてもらっても……良い?」

 

「っ‼︎ えぇ♡ 貴方が望むなら何度でも♡ それにしても……昨日の今日でもっと甘えん坊になったわね♡」

 

「……少しでも、少しの時間でも貴女と触れ合って、愛されたいから」

 

「あらあら……うふふっ♡ 分かったわ。なら……お姉さんが貴方のことを甘やかしてあげる。さぁ……全て私に……身を任せて♡」

 

ここでファサリナ……スイッチが入った。まるで過去娼婦館にいた頃のようなスイッチの入り具合。しかしその時と違うのは、相手を溶かしすらする淫らな事ではなく、相手を慈しみ、愛して優しく包み込む……愛情をもって相手を癒す。

 

「あぁ……貴方に俺の全てを……」

 

これに夜光も応える。そこには昨日抱いていた不安などはない。少し恥ずかしくはあるのか顔は赤いが……それでもファサリナの抱擁から逃げないでいた。

 

『鎧の勇者様はここにおられるか⁉︎』

 

しかしながら外野は叫ぶ。愛おしい時間を訳も分からず邪魔されてしまう……この理不尽は……最初無視していた夜光ですら憤怒させる。

 

「ファサリナさん……一旦外を黙らせてくる」

 

「えぇ……分かったわ」

 

夜光はファサリナから離れるのが惜しいと感じる。もっとこの愛おしい空間を享受したいと……

 

しかし外野がうるさければそれも半減……いや、ほぼほぼ無いに等しい。

 

施錠の魔法はあるものの、今覚えている防音魔法では外野からの声を沈めることが出来ず……昨日使ったみたくオペ開始を使うか迷ったが、昨日から扉は施錠魔法をかけておらず、怪しんだ外野が強制的に部屋に入る可能性もある。そうなればますます自分の手の内を晒してしまうかもしれない。

 

昨日尚文も2人きりで話した際に使った時は、まだ少数でもあったし安易に近づいて来なかった事もあって、外から見るとほぼほぼ何の身振りもなく話していたように見えたかもしれないが、今回ばかりはそうとはいかない。

 

なので夜光は……名残惜しいがファサリナから離れて外に出れる格好になる。そしてドアノブに手をかけてゆっくり回し……少しだけドアを開いた。

 

「おぉ、ようやくお目覚めになりましたか鎧のゆうsy「貴様……」っ⁉︎」

 

「こんな朝早くから何の用だ? ドンドンと扉を強く叩くわ、まだ早朝にも関わらず大声で叫ぶわ……この宿で休んでいる他の方々に対して申し訳ないとは思わないのか?」

 

「そ、それは……だがこちらは国王様からの命を受けてここに来ているのだ。これぐらいの事は……」

 

「これぐらいの事……ではない。例え国王からの命を受けたとしても……事を大きくして良い理由にはならない。名声が広まるのも早ければ、悪評が広まるのも早い……貴様1人のせいでそれにもなりかねん事を理解しているか?」

 

これは……明らかに八つ当たりである‼︎ 2度寝しようとしてファサリナとの幸ある時間を邪魔された腹いせが明らかに含まれている‼︎ 文面上、口頭上では正論になりそうな事を言っているが、それでも八つ当たり成分満載である‼︎

 

元康などには通じたが、果たして国王の兵士に通じるかどうかh「た、確かに……」……通じたようだ

 

「……それで、用件は何だ?」

 

「こ、国王様からのご命令d「そんな事は理解している。本題を簡潔に言え」は、はっ。た、盾の勇者が同行者に如何わしい行為を働いたとの事で……他の勇者の方々にもこれを伝えて国王の間へ来るようにと」

 

「盾の勇者が如何わしい行為だと? (はぁ〜……俺が来てたとしてもここは変わらずじまいか……)で、その如何わしい行為の詳細は分かるか?」

 

「そ、それにつきましては国王様自らが勇者の方々の前でと……」

 

「……そうか。分かった。行きはするが、俺はなにぶん朝が弱いたちでな……今の状態で行ってしまうと国王様が話している最中に眠ってしまう可能性がある。国王様の間へと着くのは他の勇者よりも時間がかかるだろうが、他の面々が真面目にやっている前で眠りこけるという失態だけは避けたい。その事を国王様に伝えて欲しいんだが……」

 

「はっ……鎧の勇者様が仰った通りに国王様には言伝させて頂きます」

 

「悪いな。それと……盾の勇者が止まった宿屋と部屋は分かるか?」

 

「は、はぁ……それは分かりますが……一体何故それを?」

 

「なに……それが少し気になっただけだ。準備が済み次第向かわせてもらおう」

 

「お、お待ちしております。わ、私はこれにて……」

 

国王の兵士は去っていった。それを確認し、他に怪しい者などがいないかどうかを確認した後部屋の扉を閉めて施錠の魔法をかけた。

 

「さて……じゃあファサリナさん。さっきの続きをして欲しいんだが」

 

「うふふっ♡ 本当に甘えん坊になっちゃったんだから」

 

皆さんお気付きだろうが……国王の兵士に言った()()()()という発言……強ち間違いではないが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ファサリナさんに甘えたいがための……である‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side 尚文

 

朝目が覚めると昨日とは部屋の様子が違っていた。昨日武器屋から買った楔帷子(くさびかたびら)は椅子にかけていたはずなのに無くなり、窓辺に置いてあったはずの貨幣袋も無くなっていた。俺がその時持っていたのは……実質この世界に来た時に履いていたインナーとズボン、後はこの腕から離れることがない盾といつのまにか握りしめていた硬貨だけだった。

 

(俺が寝ている間に盗人が入ったのか⁉︎)

 

俺の身なりを見た何者かが侵入して高価のあるもの盗んだと思った時、唐突に扉が勢い良くノックされた。それに出てみると兵士がいた。ちょうど良いと思った俺は事情を言おうとしたのだが、何故か俺は兵士に無理やり腕とかを掴まされて城に連行された。

 

連行されたのは昨日も招かれた国王の間で、目の前には俺以外の勇者と同行者も集まっていた。夜光達がいないのが気にはなったが、まずは事情を聞こうと国王に尋ねたらいきなり罵倒された。

 

何故罵倒されなければならないのか……それは、簡単に言えば強引な冤罪だ。俺の同行者であるマインさんが、昨夜俺から淫らな行為をされたと主張した。

 

簡単な経緯をマインさんが言うには、酒に酔った俺がマインさんを強引に部屋に連れ込み、マインさんが来ていた服とかを強引に脱がして行為に及ぼうとした。隙を見てマインさんが抜け出し、近くに泊まっていた元康に助けを求めた。そこから各勇者にも今回の事が知れ渡り今に至る。

 

そして元康達からの罵倒や、それを近くで見ていた貴族や兵士達の侮蔑を含んだ視線……

 

だが俺は何もやっていないし知らない! それに昨日はお酒なんて一滴も飲まなかった‼︎ マインさんと食事した時も、彼女は目の前で見ていたはずだし、彼女に勧められても断った。それを追求しようと元康の背後に隠れながら俺を見るマインさんを見たが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ、アイツゥッ‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は……まんまと嵌められたんだ……あの女に‼︎

 

 

 

 

 

『自然と分かっちまうんだよ……悪意溢れる奴を見ちまうと……外面がどうあれ分かっちまうんだ。』

 

『理解して欲しいなんて思わない。だが俺は……お前の事が心配だった。だからこそ……忠告として、言っておきたかった。頭の片隅にでも置いておいてくれたらと』

 

 

 

 

(昨日……夜光から言われたばかりなのに……)

 

アイツを見たとき、俺に向かってあっかんべー、しやがった‼︎ 全部、全部アイツが仕組んだことだったんだ‼︎ 夜光は……こいつの本性を一目見ただけで分かったんだ。こいつが……こいつが女狐みたいな性格だってことに……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば夜光のやつはいないのか?」

 

「確かに……」

 

元康と樹が言う。

 

「あぁ、ヤコウ殿の事なら兵士から言伝を貰ってある」

 

それに対して国王が答える。

 

「彼曰く、盾の勇者がまさかその様な行為をするとは思わなかった。顔も見たくない……と、簡単に言ったらこう言っていたそうだ。鎧の勇者も哀れな者だ……昨日の一件で庇った盾の勇者がまさかこの様な不埒を行う不届きものだったのだからな」

 

『お前がこれからどんな酷い状況に見舞われたとしても、お前の言を信じる』

 

(夜光は……そう言ってくれた。なのにこの場にいないという事は……あの国王が言うようにそう言う事なのか? 全部……嘘だって言うのかよ……)

 

尚文の中で積もっていくのは……夜光が裏切ったのではないかという憎しみだった。ここに急に呼び出された時の不安を拭い去ってくれた優しい態度も、俺のためを思って忠告してくれた昨日の真剣な表情も……全部が嘘だったのではないかと……

 

その思いと同時に周りからの視線、ヒソヒソ言われる侮蔑の言葉……

 

それらが合わさり尚文の中で怒りの感情が芽生え、同時に膨らんでいく。そして尚文の中で怒りが爆発する……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「国王、遅れてしまい申し訳ない」

 

尚文の怒りが爆発するその瞬間を遮ったのは、尚文のはるか後ろ側から聞こえた声だ。

 

反射で尚文も後ろに振り返ると、そこには……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしたんだ尚文? そんな怖い顔して」

 

「や、夜光?」

 

「あぁ、仙谷夜光……それが俺の名だ。昨日も話したのにもう忘れてしまったのか?」

 

絶望が希望に変わる瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なっ⁉︎ お、お主! 何故ここに⁉︎」

 

「ん? それは変な質問だなぁ国王様よ。国王様が盾の勇者についての話し合いで俺をこの場に呼んだんだろ?」

 

「た、確かにそうだが……な、ならば一体どうやってこの場へ⁉︎」

 

「そいつもおかしな質問だなぁ……何故そんな事を聞く?」

 

「そ、それは……」

 

「……言いたくないならそれでも良いが。で? 盾の勇者が不埒な事をしたと兵士から聞かされたが……一体尚文が何をしたと?」

 

「ちょ、ちょっと待てよ夜光⁉︎ どういう事だ⁉︎」

 

そこで言葉を挟んでくる元康。

 

「お前そもそもこの場に来ないって国王の兵士に言ったんじゃないのか⁉︎」

 

「はっ? 誰がそんな事を言ったんだ?」

 

「こ、国王様が兵士の言伝で夜光がそう言ったって……」

 

「……ほぅ?」

 

ここでガラリと夜光の雰囲気が変わる。さっきまではまだ優しげのある表情をしていたが、元康からのその一言で目を細めて瞳をギラつかせる。

 

「それが本当だと言うのなら……俺を無理やり起こした兵士は万死に値するなぁ〜? 後でしめておくか」

 

その発言と同時に夜光から溢れ出る殺気……それは昨日と同じく国王の間を包み込もうとしていた。

 

「夜光くん? 今はそれよりも尚文さんのこと……ね?」

 

「あぁ……そうだったな。話が脱線しそうだった」

 

(((な、何者だあの同行者⁉︎)))

 

夜光の殺気をいとも簡単に沈める同行者……ファサリナの存在にその場にいた皆が思った事だ。まだ一緒に過ごしてギリギリ1日……それにも関わらずの両者の信頼関係は、誰も見た事が無かったのだろう。呆気にとられた。

 

「待て、なら夜光は兵士になんと言ったんだ?」

 

「何簡単だ。俺はこう見えても朝は弱くてな、だから……大事な話の途中で寝てしまう失態だけはしたくないから遅れて来る。こう言った筈なんだがな?」

 

「そ、そうであったのか……それは……すまない事をした。ヤコウ殿を呼んだ兵士には儂の方から「生憎だが国王、それには及ばない」なに?」

 

「確かに上の者が下の者の失態を詫びる。そして再教育する……それは普通だ。何も問題ない普通の事に見えるな。だが……それは未だ信頼があると見えるからであって、今の俺は……失礼で申し訳ない事は承知しているが、この国の事をそこまで信頼に足るものと見てはいない。厳密に言うのなら、この城に関係ある王族、貴族、領主、兵士だが」

 

「ぬ、ぬぅ……」

 

「何だ? 何か不満か? 昨日の尚文に対する一件、俺と尚文が2人きりで話していた事に対する盗み見と盗み聞き、早朝にも関わらずの兵士の対応……そして今この瞬間の事、これらが揃ってる時点でこの国に対する信頼度はゼロに近い。さて……言いたい事があると言うのならば、是非とも聞かせて欲しいのだが?」

 

「き、貴様⁉︎ 昨日に引き続き国王様に無礼だぞ‼︎」

 

「無礼? 無礼と言うのなら今朝の兵士の様に、他に泊まっているお客がいるにも関わらず大声で叫びドアをドンドン叩く事を言うのではないか? そっちの方がよっぽど無礼に繋がると思うが……そうとも捉えないと言うのならば、この国は根本的にダメだと言う事になるな。そして大臣……あなたもあなただ」

 

「な、なにっ⁉︎」

 

「昨日から思っていた事だから言わせてもらうが……あなたには自分の意思がないのか?」

 

「な、なんだとっ⁉︎」

 

「そうだろう? 昨日から客観的に見ておかしいところはあった。それをその場でみて、止めたら諌めたりしない黙ったまま。それどころか国王の言うがままに進めている様な気がどうもする。いや、肯定すらしている。大臣とは……国のトップである上が間違いを犯しそうになったらそれを未然に防止する。その役割がある筈だ。だがそれすら形として見えないあなたは……俺からすれば大臣失格だな」

 

「す、好き勝手にいいおるか無礼者‼︎」

 

「あぁ好き勝手に言うさ……俺の友が何かによって理不尽な目に合わせられているのなら……俺は相手が何者であれ守とも」

 

「夜光……」

 

「っと、また話が脱線したな。熱くなるといつもこうだ……それについては申し訳ない。それで、尚文が何したって?」

 

「はっ……そ、そうだ! 聞いてくれよ夜光! 尚文のやつがマインちゃんに無理やり夜這いしようとしたんだぜ⁉︎」

 

「そ、そうなのだ鎧の勇者よ。その経緯についてだが……」

 

元康が初めにそう言って国王が経緯を説明する。というかこの時点で既に国王は夜光に対して少し恐怖を抱いていた。まぁそれも態度を改めたら別に何ともないのだが……

 

「それで証拠がここにある」

 

証拠を掲げる兵士……それは女性用の下着だった。これがマインのものであり、昨夜尚文が泊まった部屋にあったという。それを見た夜光は……

 

「ハァァァァァァ〜〜〜〜〜〜〜〜……」

 

長い溜息をつく。

 

「ほれ見ろ尚文! お前を庇う夜行でさえもあんな呆れた様なため息ついたんぞ⁉︎」

 

「これは情状酌量の余地もないと見たな」

 

「ですね」

 

元康、練、樹の順にそう言った。夜光のため息は、元康達が言った様に、その場にいたほとんどのものがその通りに見えた事だろう。

 

「はっ? お前達は馬鹿か?」

 

「「「えっ?」」」

 

「さっきのため息はお前達の馬鹿さ加減に対するため息だ。全くもって……聞いた話と提示された証拠品の矛盾も見抜かないとは……お前達は平和ボケし過ぎにも程がある。よくそれで勇者を勤めようと思ったもんだ」

 

勇者3人に対して呆れ気味にいう。

 

「よくよく考えてみたらわかる事だろう? 聞くと尚文はそこの女に対して無理やり迫り、そして強引に衣服を剥いだと……にしてはそこにある女性用の下着はあからさまに綺麗過ぎないか?」

 

「そ……それだったらこういうのはどうだ⁉︎ 後でバレるのを恐れた尚文は、無理やりだが丁寧に服を脱いだとか「お前は馬鹿か? いや、もう正真正銘の馬鹿だな」えぇっ⁉︎」

 

「なら女たらしの元康に聞くが「誰が女たらしだ⁉︎」……ともかくだが、もしお前が女性に対してその様な行為をしたいと、感情が高ぶっているのにそんな回りくどい事を考えられるのか?」

 

「えっ……えぇっと……それは……しないんじゃないか? 俺だったら」

 

「確かに元康ならそんな回りくどい事なんて考えずにやるだろうな」

 

「そ、想像できますね……」

 

「お、お前らな……」

 

「だろう? なら尚更尚文ももしそうなった場合は、そんな考えにならないはずだ。だから……そこにある証拠品は偽物と言うことになる。なのにそれがあるって事は……偽の証拠だな。尚文を冤罪にする為の」

 

「ま、まさか……」

 

「いや、だが偽の証拠というのにも筋が通るぞ……」

 

「ちょ、ちょっと待ってください‼︎」

 

夜光の指摘で勇者3人は、証拠品である女性の下着が偽物ではと思い始めていた。しかしそこに待ったをかける声があがる。

 

「でしたら被害者の私はどうなるんですか⁉︎ 私はそこの盾の勇者に無理やり襲われたんですよ⁉︎」

 

それは元康の背後にいるマインからの声だ。目に涙を浮かべて盾の勇者を指摘する表情は恐怖に怯えた様な様子だ。だが……

 

「それはあんたが盾の勇者を貶めようとする自作自演だろ?」

 

「ど、どうしてそんな事⁉︎」

 

「はぁ……なら良く良く考えてみろよ? 元康が今着てるその楔帷子……それは誰からもらったやつだ元康?」

 

「えっ? これはマインちゃんからで……」

 

「まぁ結果を辿るとそうなるだろうな。ならそこであんたに問おう。その楔帷子……どこから持って来た?」

 

「そ、それは盾の勇者から逃げる時に、椅子にかけてあったものを……」

 

「はっ、よくもまぁそんなお粗末な証言を吐けるものだ」

 

「お、お粗末ですって⁉︎」

 

「そもそもそんな恐怖を抱いている状態で相手の着ていたものを持ってこれるわけ無いだろう? それに、行為に及ぶ相手が几帳面に楔帷子を椅子なんかにかけれると思うか? そんな発言が出た時点であんたの主張はグダグダなんだよ」

 

これを淡々という夜光に対し、マインは俯いてワナワナと震える。そして夜光が言い終わると……

 

「ウッザイわね‼︎ 悪いのは全部盾の勇者が悪いのよ‼︎ それなのに途中でしゃしゃり出てくんじゃないわよ‼︎」

 

「ま、マインちゃん?」

 

「漸く本性出してきたか」

 

マインの豹変した態度に元康は驚く。

 

「私が悪いって言ったらそいつらは悪いのよ! なんか文句あるかしら⁉︎」

 

「文句ありまくりだ愚か者が。そもそもその口ぶりだとあんたは普通の冒険者じゃねぇだろ?」

 

「その通りよ! 私こそがこの国の第1皇女、マルティ=S=メルロマルク! ここまで来たら分かるでしょう? 盾の次に最弱の鎧の勇者様? アッハッハッハ‼︎」

 

本性を出したマイン……いや、マルティ=S=メルロマルク。高飛車な様子で鎧の勇者である夜光を馬鹿にした。

 

別段その程度で夜光は怒りはしない。ただ馬鹿が馬鹿な事を目の前で大袈裟にほざいていると思うくらいで……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あなた……地獄に落ちる?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「っ⁉︎」」」

 

その声はマルティの真後ろから聞こえた。はっ、と元康、練、樹が後ろを向くと……

 

「ヒィッ⁉︎」

 

「うふふ……力を入れただけであなたの首は、まるで小枝を折る様にポキリと……なってしまいますわ」

 

「い、いつのまに……」

 

マルティの前にいた元康でさえも気付かなかった、いや気付けなかった。マルティの首を三節棍で三角に囲うファサリナ……夜光から目を背けてなかったにも関わらず、気付いたらマルティの背後でその様に構えていた。

 

そしてそれは上から見据えていた国王ですらも勇者達と同じ心情だった。瞬き……したのかどうかすら分かっていないが、それでも片時も目を離さなかった。それがどういう事だろう……いつのまにかマルティの背後にファサリナがいた。

 

それに昨日から国王自身が思っていた事だが……長年生きてきてこの冒険者は他に集った冒険者と何かが違うと思った。その片鱗を……国王は見ていた。

 

「ファサリナさん、貴女がそんな相手にそんな事をしなくても良い」

 

「確かに夜光くんならそう言うと思ったわ。でも……私は許せないの。夜光くんのことを何も知らないくせに……貴方がこれまでどんな努力をしてきてここに立っているかも知らないで侮辱したこの女を……」

 

殺気を含めたファサリナの目……それを見たその場の者達は、背筋が凍る感覚に見舞われる。

 

「……全く貴女と言う人は」

 

「えっ? きゃっ⁉︎」

 

そしたら今度はいつのまにかサファリナの背後に回り、後ろから手を回して抱き締めている夜光がいた。しかも夜光の位置は変わらない。だから実質的に移動したのはファサリナだけだった。

 

(((い、いつのまに……)))

 

もはやこの場にいた者達皆そう思っていた。

 

「俺は貴女にそんな事なんて望まない……ただ、俺の側にいてくれれば……いてくれたらそれでいいんです。だから……あの女を手にかける必要なんてないんです。あんな女の血に塗れた貴女なんて……俺は見たくないから」

 

「夜光くん……えぇ、分かったわ」

 

「なっ……なんって失礼な人達⁉︎」

 

マルティがヒステリック気味にそう言う。

 

「あ、あのー……」

 

「ん? どうした尚文?」

 

「今って、俺がそこの女に強姦したって疑いがある話し合いをしてたんじゃ……」

 

「おぉ〜、そうだったな。いやぁまた脱線してたかぁ〜……これは参ったな」

 

「そ、そうよ! その話だったのにいつのまに変な方向に走ってるのよ⁉︎」

 

「あんたも忘れていたって事は、尚文からの強姦はそれほどでも無かった、若しくはされなかったと捉えていいか?」

 

「はっ……そ、そんな訳ないじゃない‼︎ この第1皇女を強姦した罪は重いと知りなさい‼︎」

 

「そうか……ならその下着以外に証拠品は提示できるか?」

 

「そ、そんなもの……それで十分よ‼︎」

 

「はぁ〜……マジでこれだけで強姦でっち上げる気とか……確かに尚文だけだったら権力で押し付けれたかもしれないが、俺は権力には屈しない。それに……」

 

「俺は尚文が無実だという証拠を提示できる‼︎」

 

「「「なっ⁉︎」」」

 

「う、嘘でしょう⁉︎ ど、どうやって……」

 

「ほ、本当か⁉︎」

 

「そ、その様な証拠……あるはずなかろう‼︎」

 

そこでようやく国王も言葉を挟んだ。

 

「大体証拠といってもその女物の下着以外何が出るのだ⁉︎ 出せるというのなら出して見せよ‼︎」

 

ここに来て強気の国王……

 

「……国王。そういうと思って証拠品は既に準備済みだ。ファサリナさん、あの女の髪とか武器にくっついたりしてないか?」

 

「えぇ、それなら少し切ってきたからここにあるわ。あと私の三節棍を掴んだ時の指紋も……」

 

「ありがとう。なら今から尚文が無罪だという証拠を提示しよう! ルーム‼︎」

 

夜光がルームを展開する。

 

鑑識室(ジャッジメント)‼︎」

 

夜光の後ろに沢山のモニターが出現する。

 

「この部屋は今回尚文が止まった宿部屋だ。宿主に頼んでそのままの状態を維持してもらっている。そしてこの映像は今の部屋の状態だ。本当は早々に俺の能力を出すつもりは無かったが……我が友が窮地に陥っているのなら遠慮なく出させてもらおう‼︎」

 

「こ、これは……⁉︎」

 

「普通に刑事ドラマで見た事ある風景じゃないか⁉︎」

 

「夜光さん……あなたまさか、元の世界では現職の刑事とかだったんですか⁉︎ 何故高校生だと嘘を⁉︎」

 

練、元康、樹の順で言う。

 

「いや? 嘘などついてない。俺も正真正銘高校生で死んだからな」

 

「なら何でそんな能力を使えるんですか⁉︎」

 

「その話をするとまた話が脱線するし話すつもりもない。それでだ……この部屋は見て分かるように、違う足跡が2人分ある。勿論尚文のものとあんたのものだ」

 

「そんなのは当然でしょ? 私は最初から盾の勇者に強姦されたと言ってるじゃないの! 鎧の勇者の頭の中は既にボケてきてるのかしら?」

 

「今はあんたの悪口はどうでもいいとして、問題はこの2つの足跡の軌跡だ。椅子の近くとベッドの近くの足跡、それに窓際に少し残っているのは尚文のものだろう。几帳面にベットに上がる時は靴を脱いだ時の跡も残っているな。その時点で……尚文があんたに強姦したとは考えない。そもそも強姦する奴は、わざわざ靴を揃えるなんて行為をする事自体考えにくい」

 

「それも説明不十分じゃない!」

 

「あぁ不十分だな。しかもここまでだったらあんたの提示した冤罪と同じような証拠になる。だから次は……あんたの足跡についてだ。尚文にもし仮に襲われたとしたら……足跡は不規則でなければおかしい。しかしこの部屋に残る足跡からは一切その様子が見て取れない。寧ろ余裕ある感じに思える。それも部屋の出入り口から真っ直ぐ椅子へ、そこから窓際へ、そしてそのまま出入り口へ……明らかに意志を持った行動が見て取れる。そしてベッドの近くを通った様子がない。これはどう言う事だろうな?」

 

「そんなの決まっているわ! ベットではなくて椅子と窓際で迫られたからよ‼︎」

 

「それにしたってはあんたの足跡は乱雑に動いていないな?」

 

「その時は靴を脱いでいたからで……」

 

「それだったらあんたの靴以外にも足跡は出る。なのにこの場では出ていない」

 

「それとアンタの頭髪の一部と、さっきファサリナさんの武器を掴んだ時の指紋も既に証拠としてこちらにある。頭髪の部類は……部屋のどこにも落ちてはいなかった。襲われたというのなら、何かの拍子に少しぐらいは残るはずなのにまるでない。そして指紋は椅子の背もたれ部分と窓際の縁部分、それとドアノブにしかない。それもほぼ一箇所にだ。襲われたというのなら、これも複数指紋が出てもおかしくはないな。はぁ……こんなのでよくもまぁ尚文を強姦扱いできるもんだ」

 

「そ、そんなもの! アンタのでっちあげでしょう⁉︎」

 

「その言葉……アンタの方にも言える事じゃあないのか?」

 

「フンッ! そんな事ないわ‼︎ だって私はこの国の王女だもの‼︎ 私が証拠といえばそれは証拠! 盾の勇者が強姦したと言えばそれは立派な罪になるのよ‼︎」

 

マルティは悪びれなくそういう。自分自身の言うことは何でも通り正しいのだと。その空気は全体にまで及ぶ。

まぁそもそもの話、ここにいるもの達はほぼ国王側に逆らうことなどない。そのためにどれだけ夜光が証拠を提示しようが今回の事はおかしい、と誰も言わないのである。

 

「はぁ〜……分かっていたことだが、これほどまでにここにいる殆どのものが愚か者か……。まぁ今回は尚文はやっていないと証拠を出しに来ただけだし、どれだけお前達が尚文を侮蔑を孕んだ目で見たりどれだけの陰口を叩こうが、俺は尚文の味方だが」

 

「夜光……」

 

「んでだ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我が友を侮辱した事についてはどう落とし前をつけるつもりだ? 貴様らは?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「っ⁉︎」」」

 

夜光から放たれる殺気……その場にいた者達全て膝をつく。中には気絶して倒れる者もいた。

元康、練、樹は気絶しないものの、表情はとても苦しそうだ。まぁ尚文には殺気を向けてはいないのだが、この場にいるもの達の表情から昨日と同じ現象だと思っている。

 

「こ、この威圧は……⁉︎」

 

「ぐっ! 盾よりも価値が無さそうな鎧の勇者の分際で‼︎」

 

片膝つきながらもキッと睨みつけるマルティ。

 

「ほぅ……まだそんな減らず口を叩けるとはな」

 

夜光はそこで思いついたのだマルティ(この馬鹿)に絶望を味わってもらうために……

ヨロイの腕輪が光ると、夜光の前に優しい緑色をした丸い歪みを発生させる。そこからゆっくりと黒い鉄の棒が迫り出す。それを夜光が掴んで一気に引き抜く。

その場にいるもの達が目にしたのは……長い持ち手の先に付いた大きな鉄の塊だった。

 

「なっ⁉︎」

 

「な、何なんですかそれは⁉︎」

 

「お、お前! 鎧の勇者のくせして武器持てんのかよ⁉︎」

 

練、樹、元康は驚きの表情を作る。

 

「何を当たり前のことを……鎧に付随する武装も当然鎧扱いに決まっているだろう?」

 

「そ、そんなの……何か卑怯な手を使ってるんじゃないの⁉︎」

 

「それはお前だけには言われたくないが?」

 

「わ、私に対してお前ですって⁉︎ な、なんて無礼な‼︎」

 

この痴れ者が‼︎

 

「がっ⁉︎」

 

「お前に対してはお前で十分なんだよ。そもそも王族の意向やらなんやらで好き勝手する様な奴には特にな。さぁて、今日はもうここに用は無いし……行こうか尚文」

 

「あ、あぁ……分かった」

 

「ど、どこ行くんだよ尚文! 夜光!」

 

「どこって……そりゃあレベリングに決まってるだろう? 尚文はまだレベル1だろうし」

 

「だが伝説の武器を持ってるもの同士がパーティーを組んだら成長が阻害されるって書いてあったはずだろう?」

 

「確かに四聖武器同士ではその様だが……生憎と俺の武器については一切書かれていない。つぅー事でパーティー申請な」

 

「おっ……た、助かる……」

 

「それとお前ら三勇者に忠告だが……いつまでも夢の中だとかゲームの中だとか、この世界での異変をクリアしたら元の世界に帰れるだとか……そんな甘い考えは今すぐ捨てとけ」

 

「そ、それはどういう意味ですか⁉︎」

 

「はっ、そんなのそこの国王にでも聞け。それじゃあ俺らはここで失礼する」

 

尚文を連れた夜光とファサリナは国王の間を出て行った。それと同時にそこでの威圧は解除される。

 

その後三勇者は国王に、最後夜光が言った言葉を国王に問うたが、結果は彼らの表情を歪めるだけに過ぎなかったという……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





解説

鑑識室(ジャッジメント)
夜光が尚文を冤罪から救うためだけに編み出した技。特に攻撃力等は存在しないが、ルームを別の場所に発生させ、離れた場所からその場の様子を見ることができる。また、このルームに隠し扉などの隠れた要素は一切通用せず普通に発見できる。また、その場に残っているものの類も全て検知する。
また、その場の証拠品と夜光がいる場所での物の照合が簡単にできる。夜光の性格が著しく判定されるために嘘の証拠は提示できない。もし夜光がそんなことをした場合は、夜光の身体全体から大量の血が流れ出ることになる。




















夜光がブチギレタ後の各々の評価

尚文:夜光がいて本当に助かった……。夜光には借りを作りっぱなしだ。

練:アイツは……一体何者なんだ……

樹:まさか夜光さんも僕と同じような能力を……

元康:なんか訳がわからねぇよ……マインちゃんの言ってる事は当然信じたいけど……アイツが出した証拠も信憑性あったし……クソッ!

マルティ(バカな第一皇女):何なのよアイツ⁉︎ 後もう少しのところで盾の勇者を貶める事が出来たのに‼︎ というかこの扱い何よ⁉︎ 私は第一皇j……以下省略

国王:ぬぅ……なんという殺気だ。あの者……まさか……

大臣(国王の金魚の糞みたいな人):あの無礼者め! 今度会った時は有る事無い事全て押し付けてやる‼︎ にしても私もここでの扱い酷くないかね?






以上……夜光がブチギレタ後の簡単な評価


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9話 ヨロイの勇者は結局いつもの様に……

いつもの様に……何するんですかね夜光さん?

「さぁな? そこは読まねぇと結局分からんだろう?」

まぁ今回は至って平凡な物語進行なので……その際のサブタイトルは苦労するものなのです……

「まぁなるようになるだけだな。物語の緩急は必要なことではあると思うし……」

という事ですのでどうぞ読み進めて頂けたらと……今回は少なめなので歯応えなく感じるかとは思いますが……宜しくお願い致します。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

尚文の冤罪を無かったものにしようとした夜光だった。しかしどれだけ証拠品を出そうとあちら側が冤罪でしたと認めない限り無理だと悟った夜光は、最後の手段として実力行使で周りを黙らせた。最早どこの暴君だと言わんばかりの殺気で……

 

そこから城を後にした夜光達……朝周りを憚らず迷惑に夜光を起こしに来た兵士については、国王の間では自分が落とし前を付ける様に語ってはいたものの、結局は何もしてはいない。

 

何故かというと、夜光がその兵士は嘘を付いていないと知っているからである。夜光は、相手が嘘をつけばそれなりに分かるからである。これも今まで辿ってきた道を歩んできた経験だからであろう。

 

それにその兵士は、夜光が国王の間へといく途中に会っていた。朝の事はしっかりと伝えたかどうかを問うたところ、その兵士は迷わずに是と答える。その顔は……どこか迷いが吹っ切れた様にも夜光は見えた。

 

この城に何年勤めているかなどは知らないが、新兵からここまで城に勤めてきて、その兵士にとっては何か物足りなかったのだろう。夜光の様に媚びへつらわず、他者を蹴落とそうとする……それを長年見てきて自分がどれだけやっても結果は同じだと……今朝まではその心持ちだったのだろう。

 

しかし夜光からの……理不尽な物言いではあったものの、初めて会った物に真っ直ぐ叱咤されてからというもの……城に戻る道中でその兵士は考えさせられた。

 

今まで自分がしてきた事は何だったのか……と。

 

その結果が、夜光ともう1度会った際にははっきりと答えは出ていた。このままではいけない……と。

 

今朝のひょんな事がキッカケでこれから前向きに少しずつ頑張っていこう……城勤の一兵士であるヒューズは思った。

 

そして城から夜光達が出る時も、ヒューズだけが夜光達をご武運を……と、たったの一言だけだったが無事を祈って送り出していた。

 

それは盾の勇者であっても同じで、今は盾の勇者は何かに巻き込まれたと思っており、城の中で初めて盾の勇者に味方してやらんでもないと、そういった心持ちを持った。

 

城から出た後は、昨日夜光達も寄った武器屋の主人が尚文に殴りかかろうとした。しかしながらそれも夜光が止まる。そして経緯を話した。

 

「そうだったのか……それはすまねぇ事をしたな。盾のあんちゃん」

 

と素直に謝る。そこから一度武器屋に寄り、尚文の装備を最低限でもと武器屋の主人が選ぶ。在庫処分品だからとその主人は料金を負けてくれた。尚文もその料金は、いつのまにか握っていた硬貨で支払い、それを装備した。

 

「さて、それじゃあ経験値稼ぎに行くか!」

 

そして夜光達が向かったのは昨日尚文達が経験値を稼いでいた草原に来ており、来て早々バルーンスライムの群れと出くわす。

 

「数だけは一丁前だな」

 

と、そう呟く夜光に近付いたバルーンスライム。噛み付く攻撃でダメージを負わそうとするも……

 

「欠伸が出るな……」

 

パチッ パンッ!

 

デコピンだけで破裂した。そして素材は捨てるのは勿体無いので袋に詰めておく。

 

「す、すげぇー……昨日のうちにどれだけ強くなったんだ夜光は……よし! 俺も‼︎」

 

そうやって意気込む尚文……近付いてきたバルーンスライムを殴って攻撃する。それを10発ほど与えたところで漸くバルーンスライムは破裂した。

 

「よし! 次だっ……あれ?」

 

次に備えようとした尚文だが、あれだけいた魔物の群れはもういなかった。

 

「おっ、お疲れさん尚文」

 

「お疲れ様ですわ」

 

「あぁ……や、夜光。さっきまでいた群れは?」

 

「全て倒したが?」

 

「えっ? マジか?」

 

「あぁ、その証拠に尚文のレベルを見てみろよ」

 

夜光の言われた通り自分のレベルを見た尚文。

 

「あっ……1つ上がってる」

 

「そういう事だ。さぁ、次行くぞ」

 

そして夜光達は森の入り口まで来ていた。そこで出くわしたのは色違いのバルーンスライムや動物系の魔物達だ。

 

「尚文……さっきの戦いを見ていると殴って攻撃していた様だが、それはいささか勿体無いな」

 

「そ、そうか?」

 

「そうだ。せっかく武器を持ってるんだ。盾でも鈍器の代わりになるだろ?」

 

「っ⁉︎ 確かに! ありがとう! 次はそうしてみる‼︎」

 

そうして魔物達を狩っていく夜光達。尚文も先程の戦いとは打って変わり、夜光にアドバイスされた様に盾を鈍器として使って戦った。

 

するとどうだろう……さっきまで10発食らわせてやっと倒れていたバルーンスライムもたった3発喰らわせたら破裂した。動物系の魔物も、3発までとはいかなかったが10発以内で倒せていた。

 

(これは……やれるぞ‼︎)

 

尚文の動きはみるみる変わっていった。終いにはカウンターまで取得する程に。

 

そして魔物の群れはものの数分で片付いた。

 

「れ、レベルが5まで上がってる⁉︎」

 

「おっ、やったじゃないか尚文! 頑張ったな」

 

「おめでとうございます。尚文さん」

 

「ありがとう! 夜光、ファサリナさん!」

 

「あぁ。だが問題はこれからだな。俺が尚文達と気軽に組める事は今回でも分かったが……尚文が同行者も連れずこのまま進むのは流石にキツイ」

 

「た、確かに……でもさっきの城下で俺を見た人達の反応は……どうしたって同行してくれる様に見えないんだが……」

 

「……でしたら奴隷を連れる、というのはどうでしょうか?」

 

「ど、奴隷ですか?」

 

「えぇ。奴隷でしたら雇い主を裏切る事はありません。例えそんな場面があったとしても奴隷紋で主人の言う事を聞かせる事も出来ます。尚文さんは……できればそんな事はしたくないといった顔をしてますね」

 

「……そう、ですね。第一に俺はそんな所とは無縁な世界から来ましたし……俺には抵抗が」

 

「そうだな。それなら俺だって尚文と同じ日本から来たし……奴隷を連れるのにも、道徳的に抵抗がある事も理解できる。それでもだ……この世界は、日本の道徳が全て通用する程甘い世界でもない。それはさっき嫌という程認識しただろう?」

 

「……あぁ」

 

「まぁそれだからこそなんだが……俺は思う。尚文がもし同行者を奴隷から連れる事になったとしても、尚文がそいつの事を奴隷ではなく1人の人として見てあげたなら、その抵抗も出来る限り無くなるんじゃねぇかなって」

 

「結局は見方の俺自身がそいつの事をどう見るか……か」

 

「そういう事だな」

 

「分かった。考えてみるよ。だけど今は俺のレベル上げをしなきゃな」

 

「だな。だがな尚文、レベル5だったら……今俺と同じレベルだぜ?」

 

「そ、そうなのか……って、えっ?」

 

その後夜光さんは尚文さんに自身のパラメーターを見せましたが、尚文さんにもチートと言われる始末でした……

 

その後尚文と別れた夜光達。それから数時間後に敵と出くわす。それも昨日と同じロボット達だ。

 

「はぁ……またこいつらか」ザシュッ

 

「でも嬉しそうな顔をしてるわね夜光くん」バキッ

 

「まぁ正直な話さっきのモンスターの群れよりも普通に倒し甲斐があるし、得られる経験値も何故か多いし、武器の熟練度も上がりやすいからな」ズシャ

 

「そうね。私も城下を出る前に教会でクラスアップも出来たから、これまで以上に貴方の役に立てるわ」ズゴッ

 

ファサリナの言う様に、彼女は尚文のレベル上げの前にクラスアップを果たしている。協会に入った時は盾の勇者を一緒に連れている事から邪険に扱われそうになるものの、今回は鎧の勇者の同行者がクラスアップするとの事だったので、そこまで大型にはならず無事にレベルの上限を解放できた。

 

先程出くわした敵を既に数百体規模で倒しているため、ファサリナのレベルは40から45になる。夜光は相変わらず経験値が多めに溜まらなければ上がらない仕様な為、5から1レベル上がった6である。

 

それでも本人はファサリナ以上にパラメーターが上なので、誰からどう見ても化け物並に見えてしまうのだが……

 

「役に立つ……ねぇ」

 

「ん? どうしたの?」

 

「別に俺は……前々から言ってる様に、俺の側に居てくれればそれで満足なんだがな」

 

「貴方ならそう言うと思うわ。思うけど、私は私で貴方のそばにずっと寄り添うために……だから貴方のためだと思う事はなんだってしたいの。今の様に力を強固にしていく事も、それだけじゃなくて、貴方を褒める事も叱る事も、可愛がる事も甘えさせる事も……全ての事において貴方のためだと思う事は全部したいの。だってそれが……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私があの時から貴方に捧げる愛だもの」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ⁉︎///」

 

「ウフフ、その顔も……愛しいわ♡」

 

チュッ

 

とまぁ……こんな会話と愛情表現をしているが、未だにまだまだ湧くロボット達との戦闘中である。しかもそんな事をしながら手に持つ武器はしっかりと握り襲いかかってくるロボット達を薙ぎ倒していく。

 

そんな中でファサリナからキスをされる夜光。その後はと言うと「ファサリナさぁぁぁぁんっ‼︎」と叫びながらほぼほぼ1人でロボットを粉砕していき戦闘終了した。戦闘終了した夜光の顔は以前いつもより赤かったが、ファサリナからの優しい抱擁と頭撫で撫でで顔は蕩け顔になる。

 

まぁその行為自身、本人達の自由である。それに時と場合もほぼほぼ守られているからまぁ良いのでは? と感じはするが……一言

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リア充爆発しろ‼︎である……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方尚文か夜光達と別れた後についてだが……アニメと同じく奴隷商と会い、案内されたサーカス小屋の様な場所に連れて行かれる。そしてこれまたアニメと同じように、ラフタリアという亜人種の少女を触れる事になったのである。




結果……ヨロイの勇者はいつもの様にファサリナとイチャイチャする(戦闘中でも)

リア充めぇ‼︎

悲報……作者は自分で書いてて頭の中でそう思う。

以上、何の変哲も無い後書き。


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10話 ヨロイの勇者はヨロイを召喚する

タイトルから盛大なネタバレです。ごめんなさい……

また、後半部分「なぁにこれー?」みたくご都合主義が含みます。

「なぁにこれぇ?」

……作中とは全く関係ないヒトデが出たところでご覧下さい。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

尚文と別れて数日があった。風の噂だと色々と薬草を作ったり小さな装飾品などを作っている様だ。今度俺も作ってみようかな。

 

まぁそういう事で近くの薬草とかを素材になりそうなものをヨロイの腕輪に吸収させている。そうする事で採取した薬草などの効能を良くできる鎧ができた。それを一部纏って薬草を採ると、なんという事か! 普通の薬草が特上級の薬草になったではないか‼︎

 

(これは持っていても損は無いな)

 

あぁ、でも薬屋のおじさんのところ行った事ないし……会ったところで薬を作れる道具を譲ってくれるだろうか? まぁそこは……最低買って何とかなるだろう。

 

という事でファサリナさんと一緒に薬草を採っていた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ、その筈なんだがな……この状況って一体何なんだろうな?」

 

空は赤く、雲の代わりに変な感じの渦が所々で渦巻いていた。そして目の前には日本……特に戦国時代後期に作られた石垣の城があり、その周りを武装した何かが取り囲んでいた。

 

「あれは……先日も対峙した機械では?」

 

「あっ、本当だ。脇侍だな」

 

にしてもこれ……どう見たって城側が危ないよな? 何とか凌いでいるみたいだけど、それも時間の問題に見えるか。あの渦からは延々と脇侍が出ている様だし。どっかにいるボス倒さないと……

 

「夜光くん、どうしますか」

 

「……そんなもの決まっているさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[鉄血メイスを展開します]

 

「目の前で困っている人たちがいるのなら、俺は誰だって助けに行くさ‼︎」

 

鉄血メイスを展開し、矛先を地面に付けながら城に向かっていく。その速度は、例え武器がどれだけ重かろうと関係ない。夜光はあっという間にファサリナの前からいなくなっていた。

 

「ふふっ……この、まだ原理も分からない世界に来ても貴方は目の前の人を助けるのね……さらに貴方の事が好きになったわ♡」

 

ファサリナの夜光に対する好感度がうなぎのぼりに上がった。いや、ずっと前から登り続けている。そしてファサリナも本来の武器を持って夜光の後に続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side ???

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日は突然訪れた。私は大切な友を助ける為に力を得たが、その友も無限迷宮とやらに閉じ込められてどれ程経ったろう。何回も助け出そうとしたが、友の元に辿り着く前に物資が無くなっては退いていく。次に来た時はまた道が違い、また物資が無くなって退くの繰り返し……私はいつになったら助け出せるのか?

 

そんな時に波と呼ばれる厄災が起こった。確か大昔にも起きたとされるもので、その時も私と同じ様に武器に選ばれた勇者が波を退けると……どこかの文献で読んだ事がある。

 

(しかしここまで禍々しいものだとは……)

 

空が赤く染まり、雲ではない奇妙な渦が浮かび、そこから異形なものどもが降り降りてくる。あれが波の魔物なのか……しかし人工物に見える。

 

(いや、考察は後だな。今はここにいるもの達の指揮を取らねば)

 

夜光達がくる1時間前、扇の眷属器に選ばれた和装の女は波に立ち向かう為指揮を取る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「吹き飛べっ‼︎」

 

ガラガッシャーンッ

 

「か、かたじけない!」

 

「礼なら後でいい。ここは俺に任せてアンタは負傷した人達と後退しろ」

 

「だ、だが1人でこの量は!」

 

「負傷者がそこらにいたら最悪の場合巻き込んじまう。そうならない為だ」

 

「わ、分かった。ご武運を!」

 

夜光が助けた武士は、他に動けるもの達をまとめて負傷者達と一緒に城へと後退する。

 

「さて、途中から数えなくなったが、200は倒したか」

 

そう呟きながら近づいてきた脇侍を鉄血メイスで叩き潰した。

 

[鉄血メイスの熟練度が5に上がりました。攻撃力+800防御力+400]

 

[武器をアンロックしました。バルバトスの太刀:攻撃力+200素早さ+600]

 

「へぇ、こいつは良い。それじゃ早速使うか!」

 

[バルバトスの太刀を展開します]

 

夜光は鉄血メイスからバルバトスの太刀に持ち替えた。

 

迫り来る脇侍。それに対して夜光は太刀を構えて……その場から消えた。消えたと思えば既に……

 

「あぁ、遅すぎる……」

 

迫り来ていた数十体の脇侍は全て斬り伏せられていた。

 

「さて次は……あっちだな」

 

敵が多くいるところを目指して突き進む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side ???

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ、数が多いな」

 

これまでに習得した技、そして今まで実践などで培ってきた戦闘能力で波が起きてから数百は屠ったであろう目の前に湧き出るカラクリ。脆く崩れるのもすぐではあるが、倒したところから無数に湧き出てくる。

 

(このままではジリ貧ぞ……)

 

この1時間たらずで兵達の指揮も下がっている……早急に大将の首を取らねば……

 

そう考えて僅かに動きを止めてしまった女の隙を……見逃すはずはなかった。残骸に隠れていた1体の脇侍が背後から刀を振り下ろした。

 

(っ⁉︎ 防御も間に合わぬか⁉︎)

 

どうにか扇で防ごうにも完全に間に合わない。やられる……そう思った時だ。

 

ザシュッ‼︎

 

そんな音が聞こえた。しかしいくら待っても痛みはどこにもない。反射的に閉じていた目を開けるとそこには……

 

ガッ……ゴゴゴッ……

 

刀を振りかぶったまま動く事ができない脇侍が、軋んだ音を立てていた。見ると左腕から振りかぶろうとしていた右腕までもが、何かで一直線に串刺しになっていた。

 

なんだこれは? 和装の女が考察に入っていると……

 

「チィェェェストォォォッ‼︎」

 

シュキャリンッ‼︎

 

何かが高速で脇侍を蹴飛ばした……いや、脇侍を串刺しにしていた何かを蹴り押して貫通していったのだ。そのため先程まで刀を振り上げたままの脇侍は原型など留めず崩れ去っていた。

 

「一体何が?」

 

「ふぅ、どうにか間に合ったか」

 

和装の女が声の聞こえた方を振り向く。そこには、戦いの最中だと言うのに戦いには向かない衣服を纏う男が、何の飾り気のない太刀を携えて立っていた。これこそが、ヨロイの勇者である夜光と異世界で扇の勇者を務めるグラスが初めて会った経緯である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(あの和装で戦う女の人……どっかで見たことあるな……)

 

先程攻撃を和装の女に仕掛けようとしていた脇侍を粉砕した夜光。しかし助けた女はどこかで見た事が……

 

(あっ……確かグラスっていう扇の勇者だった様な……という事はここは)

 

「まぁそんな事は後で聞けばわかるな。そこにいる方、怪我はありませんか?」

 

「あ、あぁ。傷は負っていない。助かったぞ」

 

「それなら良かった。にしてもここにいる数はさっきの奴らよりも多いな。1体1体倒していくのは面倒だな」

 

という事で武器を変えようか。

 

[ケルベロスを展開します]

 

そんな音声が流れると、夜光が持っていた太刀は消え、代わりに2つの大筒が夜光の両腰に展開された。色合いは主に緑と黒で彩られ、先端には銃口が付いていた。

 

それを夜光は構え、大筒の側面から伸びていた引き金を引く。すると銃口にエネルギーが溜まる。

 

「1匹残らず目の前の獲物を喰らい付くせ‼︎」

 

引き金をさらに深く引くと、その銃口から赤い凶暴な光が一直線に発せられた。その光はあまりにも凶暴なのか、触れた空気でさえも白く光らせる。

 

そんな光が目の前の脇侍達を襲う。触れたものは即座に分解……鉄であるため幾分か頑丈ではあるものの、それはあまりにも禍々しい赤い光に溶けて霧散していく。

 

「デェェェェヤッ‼︎」

 

そんな禍々しい光を放つ大筒の威力を、ただ夜光は地に足をつけただけで踏ん張り、踏ん張るだけでなく射程外にいた脇侍にも浴びせる。

 

大筒が禍々しい光を放ち終わった時、目の前に数百体といた脇侍は1体もいなかった。

 

「ふぅ、目の前の敵も片付いたようだが、まだこの空は晴れないのか。何かボスみたいなやつを倒さないとって〜いうお約束か?」

 

夜光の言う通り、目の前の敵を倒しても以前空は赤いまま。奇妙な色と形をした渦からは、少ないながらもまだ脇侍が溢れ出る。そんな中1つの動きがあった。それは、夜光に1番近い奇妙な形の渦から、これまでとは比べ物にならない程の大きな足が出てきたのだ。

 

「な、何だあれは⁉︎」

 

「ほぅ、あれが本命というやつか」

 

「ほ、本命? あ、あの様な大きさに太刀打ちなど……」

 

どうやら隣の和装女性……いや、もう名前とか一応知っているしグラスと言おうか。グラスはあの敵の大きさに驚き、勝てるかどうか心配している様だ。正直このケルベロスでも倒せる……が

 

[アンロック武器の熟練度総計が15以上になりました。ヨロイの展開が可能になりました]

 

(ふむ……まぁ貰ったものは有効に活用するとしよう)

 

今展開できるヨロイは……ふむ、普通に問題ないな。

 

そこまでで奇妙な渦からは今回のボスが足先から頭まで姿を現し、地面に大きな音を立てながら着地していた。全体的には脇侍とかわらないが、背中には筒を担ぎ、刀も両手に一刀ずつ持っていた。そして地面に降り立つと直ぐに夜光とグラスを敵と判断。頭部にある1つ目が怪しく光ると、背中に背負う筒から直ぐ様弾が発射された。放物線を描きながら夜光とグラスに迫る。

 

「ここにいては危険だ! 直ぐにここから逃げるぞ‼︎」

 

グラスは隣にいる夜光にそう言うが……

 

「なに、あの程度大したものではないな。それに……」

 

夜光がケルベロスを仕舞い、鉄血メイスを手に持つ。

 

「ここで逃げたらあいつは余裕で背後にある城を攻撃する。あそこに避難している無関係な人達がが傷付いちまう」

 

夜光の握る手から電流の様なものが流れ、それは鉄血メイス全体に流れた。流れた途端、先端のメイス部分の角ばった所から順番に鋭い棘が出た。

 

「そんなのを見過ごして逃げるのは……勇者(ヒーロー)じゃねぇからな。だから俺はここで戦う!」

 

「っ⁉︎」

 

「まぁ、あなたはここにいると完全に巻き込まれるからさ。下がっててほしいな」

 

「わ、分かった」

 

夜光に言われてグラスはそこから離れる。そんなやりとりをしている間にも脇侍から放たれた弾は夜光達に迫ってくる。そんな中でも夜光は落ち着いていた。鉄血メイスを片手で、まるで体操のバトンを回すかの様に軽々回し、その後両手で持ってメイス部分を地面に叩きつけた。叩きつけられた地面は夜光を中心に半径10メートルくらいのヒビ割れを生じさせていた。

 

そんな行動をしている時点で夜光と弾の位置は既に目と鼻の先ほど近い。

 

「危ない! 避けろ‼︎」

 

十分その場から退いたグラスが夜光に叫ぶが、夜光はそこから動く事なく、しかも笑いながら鉄血メイスを片手でまた先程の様に軽快に回していた。

 

いよいよもって弾が当たる……そう思われたと同時に夜光は鉄血メイスを脇侍に向けて掲げた。その瞬間、夜光と弾の間に空から何かが割って入ってきた。それと弾がぶつかると、豪快な音と光がその場を支配する。砂埃が立ち、夜光の姿は一瞬のうちに見えなくなった。

 

だが少しして砂埃の中、地面から岩が砕ける音と白い光が見えた。

 

「な……なんだあれは?」

 

そんな中グラスは見たのだ。この表現は間違いかもしれないが……さっきまで夜光がいた所は砂埃しか見えなかった。しかし今は……あの現象が起きてからは違った。確かに砂埃は依然たっている。たってはいるがその砂埃の中、さっきまで確かになかった大きな影があるのだ。所々角ばっているという事以外、砂埃の影響でわかる事は少ない。

 

だが夜光が立っていた所に突然と現れた。それが意味する事は……

 

少しの駆動音が聞こえた。その後、鉄と鉄がぶつかり合う様な……そんな音が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『wake up バルバトス』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピギュイーン‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side グラス

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、何が起こっている⁉︎」

 

砂埃の中で突然何かが光った。それも綺麗な緑色……そして影がゆっくりと動き出した。その動作はなにか跪いた状態から立ち上がっている様に見えて、緑色の光は1番上で灯っており、よくよく見ればそれは瞳に見えた。

 

『さて、早々に終わらせるか』

 

途端にあの砂埃の中からさっきの男の声が、どこか機械越しではあったが聞こえた。

 

(どうやらさっき私を助けてくれたあの男は生きている様だな)

 

グラスはいつのまにか安堵していた。少なからずも命の恩人……目の前で死なれるのは何故か嫌に思えてそう思っているのだろう。

 

いよいよこの戦いの終わりが近づいてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さぁーってとっ‼︎』

 

夜光の駆るヨロイ……ガンダムバルバトスが砂埃を手に持ったメイスで払いのける。メイスを振られただけで突風が起こり、砂埃は風で前面に押し出される。目の前にいた大型脇侍も無意識のうちに顔を腕でクロスして守っていた。

 

砂埃を晴らすとバルバトスは前傾姿勢になり、背部のブースターを起動。放たれた鉄砲弾の如く脇侍に迫る。そこでようやく脇侍も迎撃に移ろうとするが……

 

『オセェーんだよ‼︎』

 

脇侍の胴体に勢いの入った蹴りが入り後ろに吹き飛ばされる。それを追撃するバルバトス。

 

だが脇侍もタダではやられない。大筒でバルバトスを狙い撃つ。それをする事で避けるなりしてこちらの態勢を整える事が出来ると判断したの事だった。しかし……

 

『ンなもん予想済みなんだよ!』

 

バルバトスは持っていたメイスを脇侍に投げた。狙い撃った弾とメイスがぶつかる。その衝撃は凄まじく、大きな爆音と閃光をあげる。それと同時に爆煙が広がる。

 

脇侍はAIで動いている。その為に先程夜光達を穿とうとした時は丁度良い火力で調整した。しかし今は同じくらいの大きさが相手である。最大火力を咄嗟ながらに放ったが、あの爆煙だ。あのロボットは近くで受けた分ただでは済まないだろう。

 

その証拠に先程相手が投げてきたメイスの持ち手が爆煙からこちらに飛んできた。材質は頑丈そうではある武器ではあったが、弾の直撃でこの有様なのだ。近くで爆煙に巻き込まれたあのロボットは最悪壊れて動かないか、良くても装甲が全て剥がれ落ちて中身のコードとか骨組みが曝け出されているであろう。

 

AIながらにして、突如現れた時は驚いて反応に遅れが出てしまったが、とっさの判断で調整せずに弾を撃てたことはこちらとしては僥倖……目の前のロボットは意気込んでこちらには来たが、あれは一体何だったのか? まぁこれが所謂、どこかの世界で言われる井の中の蛙大海を知らず……という事だろう。

 

AIの身でありながらも、そんな人間と同じような思考に陥っていると……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドヒューーン‼︎ ガッシャーンッ‼︎

 

急に視界が真っ暗になった……否、何かに潰されて見えなくなった……

 

『貫け! バルバトス‼︎』

 

グワッシャーァンッ‼︎

 

そこで脇侍は機能停止した……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『全く……あの程度で油断されるとは片腹痛い』

 

脇侍からの爆風は、確かにバルバトスを包み込んでいた。衝撃は来ていた。確かにメイスを放った時には弾は目と鼻の先ではあったし、比較的脇侍よりは近い位置で爆風を受けた。だからこそ、油断したのだろうなという考えには至る。だが……

 

(これしきでバルバトスが壊れるわけがない)

 

ガンダムバルバトスの熟練度は確かに1だ。それは当然だ。さっき初めて顕現させたのだから。それでもだ……それでも脇侍とバルバトスには大きな違いがある。その証拠にどこにも爆風などによる傷は一切付かず、あろう事に新品同様に装甲が輝いていた。

 

それは乗り手のパラメーターである。脇侍には機体だけのパラメーターしか無かっただろうが、バルバトスは違う。確かにバルバトスにもパラメーターはあるが、脇侍よりもはるかに高い数値ではあるし、そこに乗り手のパラメーターも加算される。

 

即ち……脇侍が生き残るには、夜光に出会った時点で逃げるべきだったのだ。

 

ならば何故パラメーターが反映されているにもかかわらずバルバトスのメイスが壊れたのか? それは、武器にまでは防御のパラメーターが付与されなかったからである。正確にいうならば持ち手部分にはだが……

 

いくらメイス部分が持ち手より頑丈だとしても、あの弾に直接真正面から当たったのだ。壊れなかったとしても原型は留めていない筈だった。しかしそれはどこのご都合主義か……メイス部分にはしっかりとパラメーターが反映されていた。

 

いや……そもそもそんな面倒くさい事をしたのは、相手を油断させるためかもしれない。ロボット相手に通用するのかと考えてしまうが……結果的には油断した。メイスの持ち手が相手側に飛んで行った事と、強烈な爆風……近くで相手側が普通に爆風に巻き込まれていた事……その要素が油断に繋がった。

 

或いはただ単に夜光が持ち手部分には反映させなくても大丈夫だろう、と無意識に思ってしなかっただけなのかもしれないが……

 

(まぁ今回はガンダムバルバトスがどれほど能力を有するか……また搭乗者のパラメーターが反映されるか……それも起動したと同時に頭に流れ込んできたが)

 

[ガンダムバルバトスの熟練度が2になりました]

 

ふむ、やはり脇侍は他の魔物よりも経験値は高いか。取り敢えず空は晴れて妙な渦も消え去った。

 

『さて、それじゃあファサリナさんと合流するか』

 

ひょんな事で異世界に召喚され、ひょんな事にいつのまにか波に巻き込まれたものの、ほぼ無傷でその波を退け、その後はファサリナを探しに行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[レベルが8に上がりました]

 

[ステータスが向上しました]

 

[武器がアンロックされました]

・レンチメイス

・ディファイアントビームジャベリン

・ガーベラストレート

 

[レベルが8に上がったことにより次のスキルが使える様になりました]

・異種混合 レベル1

 

 

 

 

 

 

 

 

 




簡単な解説

・脇侍
いつも夜光を邪魔しようとするも、この世界では経験値稼ぎと武器熟練度アップの格好の的。脇侍を作る創造主はいつも簡単に破壊されるのが腹立たしいと思い強化しているが、いつもの如く簡単に倒されてしまう。また、強くなるによって得られる経験値なども上がっていく事を創造主は気付いていないため、結局は夜光達をパワーアップさせている。

尚、脇侍を作る創造主の正体はデータ不足のため不明。

今回出た兵装の能力値

鉄血メイス 熟練度1→5
・攻撃力+1250→3500
・防御力+700→1550
・熟練度が5に上がったためレンチメイスを開放
・???レベル未達成のため未開放

バルバトス専用太刀 熟練度1→5
・攻撃力+800→2200
・素早さ+1300→3000
・熟練度が5に上がったためガーベラストレートを開放
・???レベル未達成のため未開放

ケルベロス 熟練度1→5
・攻撃力+1300→3200
・射程範囲+400m→1500m
・再チャージ10秒→7秒
・熟練度が5に上がったためディファイアントビームジャベリンを開放
・??? レベル未達成のため未開放


・異種混合レベル1
武器展開時に展開しているものとは系統が違う武器を展開できる。レベルが上がるごとに違う系統の武器を多く展開する事ができる。







今回はグラスを出しました。書籍版、アニメ版などでは3回目の波の時に主人公達と敵対してましたが、夜光は今回1回も波を経験せずにグラスがいる世界に行き、そこで偶々波に遭遇して戦うという物語でした……

以上、簡単な解説と簡単なあとがき……


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11話 ヨロイの勇者はお仕置き宣告と腕試しを受ける

前回の戦闘から緩く進めます!

「にしてもサブタイトルのこれはなんだ? どういった状況?」

それは見れば自ずと見れますよ! それじゃあ早速どうぞ!


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつのまにかどこか違う場所へと飛ばされて、そこで巻き込まれた最悪の波の対処をし終えた夜光はすぐさまファサリナと合流。

 

その際、グラスも同行していた。波も治ったところでバルバトスを解除し、一応彼女も大丈夫だったかを確認した。そこから仲間のところに合流しようとまとまり今に至る。

 

そしてファサリナの側にも2人ほど同行者がいた。1人は赤髪の男で、獲物であろう鎌を肩に担いでおり、どことなく「男の中の漢」というような感じを醸し出す青年だ。もう1人は青緑色の長髪を持ち、それを後ろで三つ編みにしていた。顔付きは絶世の美女といっても過言ではないだろう。過言ではないが……

 

(額に宝石が付いてる……あぁ、なるほど。この2人が……)

 

どうやら夜光はこの2人が何者なのか察した様である。

 

「夜光くん、お疲れ様」

 

「うん、ファサリナさんも怪我がなくて良かったよ」

 

「ふふっ、あの程度は準備運動みたいなものよ」

 

波にあったにも関わらず、何事もなくいつもの調子でいうファサリナ。

 

「へぇ〜、アンタがファサリナの嬢ちゃんが言ってた夜光か。急に波に巻き込まれたって割には全然余裕そうじゃねぇか」

 

赤髪の男がニッと笑いながら言った。

 

「あなたが夜光さんですね。初めまして。私はテリス、テリス=アレキサンドライトと申します。こちらにいるファサリナさんには助けて頂きました」

 

「まぁあれぐらいだったらいくら来ようが負ける気はしねぇが、ファサリナの嬢ちゃんが来てから他の奴の救援にも行けたんだ。被害も予想していたよりは出てねぇ様だから助かったぜ。礼を言っとく。それと俺の名前はラルクベルク=シクールってんだ。気軽にラルクで良いぜ」

 

「私もテリスとお呼びください」

 

夜光はラルクとテリスに習って自分も自己紹介をした。まぁ2人のことは前世で残っていた知識で少なからず知っていたために、本来名前を聞かなくとも分かってはいたが、それでも礼儀は通すべきだと思い自己紹介を仕返した。

 

「それにしても……ヨロイ、出したのね」

 

「あぁ……まぁあれだけ大きな振動だったら流石に分かるよね」

 

「えぇ。でも、あれは無茶な戦い方をしたわね」

 

その発言をしたファサリナさんは笑顔で言っているにも関わらず、目が笑っていなかったと言います……

 

「あっ……え、えぇっとそれは……」

 

「自分でも分かっているのね?」

 

「は、はい……」

 

「じゃあ……」

 

そう言いながらも夜光に近づいて行くファサリナ。それを見て夜光は汗をダラダラとかいていた。今まで温厚な人が急に怖いオーラを出しながら近づいて来たら、誰でも少なからずヒヤッとするだろう。今まさに夜光はそれを体験していた。

 

そしてファサリナが夜光の一歩先まで近づいて、夜光の両肩に手をかけると、夜光の耳元で……

 

「今晩お仕置き……しちゃおうかしら♡」

 

「……へっ?」

 

「ふふっ……可愛い夜光くん♡」

 

ファサリナは口を手で隠してはいるが、イタズラな笑みを浮かべている事はその場にいる誰しもが分かった。急にそう言われた夜光は少しポカンとしたが、次第に状況が飲み込めてきたのか徐々に赤面していた。

 

「なぁテリス……この2人俺達ほっといて惚気てるぜ?」

 

「そうね。でも見ていてとても微笑ましいわ」

 

「そ、そうか?」

 

「そうよ。まるで姉弟みたいだわ」

 

「ま、まぁそう見えんでも……ないか?」

 

「主ら……私の存在を忘れてはおらんか?」

 

「ん? おぉグラスの嬢ちゃんじゃねぇか! いつのまにいたんだ?」

 

「そこの夜光という奴と一緒におったわ!」

 

「そ、そうなの⁉︎ ごめんなさい……今まで気づかなかったわ」

 

「お主らな!」

 

「まぁまぁそうかっかっとすんなよ。それよりあの2人の惚気見て落ち着けって」

 

「……あれを見て誰が落ち着けると言うんじゃ?」

 

「あら、私はなんだか胸がほっこりとするわよ?」

 

「……もう何も言わぬ方がよいな」

 

その時グラスさんは何も言わない方が吉だなと……そう感じたといいます……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから少し時は経ち、夜光達はグラス達の案内で城に案内された。その道中で夜光がどこから来たのかも話して、諸々の情報交換をした。そして漸くとある和室に案内され、一同は腰を下ろした。

 

「ここは私が貰い受けている部屋じゃ。どうか寛いで欲しい。それと改めてにはなるが、今回の波に対する支援、感謝する他ない。礼を言わせてもらうぞ」

 

「あぁ、俺からも礼させてくれ。ありがとな!」

 

「今回の波は私達も初めてでうまく連携が取れていなかったの。あのままだったら消耗戦になって、最悪の場合私達がやられていたわ。そんな時にあなたたちが来てくれて本当に助かったわ! ありがとうございます‼︎」

 

グラス達がそういう中、夜光は「困ったらお互い様だろ?」と笑顔で言った。そこからは少しばかしの談笑に入ったりもした。そんななかラルクが

 

 

「そういえば夜光の坊主がヨロイの勇者っていうのは分かったし、別世界からいきなり飛ばされたっていうのもわかったんだけどよ……そのヨロイっていうのはどういう意味なんだ? 普通に兵士が身に纏う鎧とは訳が違うんだろ?」

 

ラルクの意見に、実際に夜光の戦いを見ていないテリスも同意した。

 

「確かに。ヨロイという言葉だけを聞いたならば、普通に身に纏う方の鎧を思い浮かべると思う。だが俺のは」

 

そう言いながら夜光は鉄血メイスを取り出した。その際に謎の音声が鳴ったことについては、ラルクとテリスは驚いていた。

 

「身に纏うだけじゃなくてこんな風に、ヨロイに付随している武器をも出すことが出来る。まぁほぼほぼ鎧なんて纏ったことはないが」

 

(そもそも今は武器の類しか顕現出来ないはずだし……)

 

多分レベルの問題もあるだろうが、そこは武器の熟練度が上がったら普通に纏えるはずだし、今のところ武器だけでも問題はないはずだ。

 

「へぇ〜、それが夜光の坊主の武器か」

 

「これはあくまでとあるヨロイの武器を顕現しているに過ぎない。他にも色々あるが、レベルの問題とかでそれもまだ少ない」

 

「という事は……他にも武器が出せるのですか?」

 

テリスの問いに夜光は頷いて答えて、バルバトス専用太刀を顕現した。

 

「本当にマジなんだな。なぁ、試しにその鈍器の方を持っても良いか?」

 

「構わないが……重いぞ?」

 

「俺だって力の方は自信あるからな。夜光の坊主でも持てるなら俺にだって持てるだろうよ!」

 

そう言いながらラルクは鉄血メイスを夜光から片手で受け取ろうとした。だがそれが間違いであった……

 

「っ⁉︎」

 

座った状態でメイスを持ったために普段よりも踏ん張れなかったのもあるが、そもそも両手で持ったとしてもそのままの姿勢を維持して持てるかどうかなのだ。片手で持とうとしたら尚更である。

 

「おっと……危ない危ない」

 

とっさの判断で夜光が支えた為、畳が傷付かずに済んだ。

 

「ラルク……ここは私の私室だが?」

 

「い、いやこれは……あまりにも夜光の坊主の武器が重かったから……」

 

「人のせいにするでないわ。全く……」

 

「悪い悪い。それじゃあその刀は……同じくらい重いのか?」

 

「これはメイスよりも重くはないが、両手で持った方が良いな」

 

「分かった。今度は慎重に扱うからよ」

 

「……」

 

グラスはそれ以上言うのはやめたようだ。ラルクは、今度は楽観視しないように両手で持った。

 

「うぉっ⁉︎ メイスほどじゃねぇがそれなりに重いな。返すぜ」

 

ラルクは夜光に武器を返す。それを受け取った夜光は、どちらともヨロイの腕輪に戻した。

 

「にしてもそれって便利だよな? 武器とかが出し入れできるし何よりも盗まれる心配もないし、まぁあんな重い武器を持とうと思う変わり者なんて夜光の坊主ぐらいだが」

 

「そんなに重い?」

 

「えっ?」

 

「えっ?」

 

一瞬夜光とラルクの頭上をハテナが飛び交った。

 

「ま、まさか夜光の坊主は重さを感じていないのか?」

 

「いや? それなりの重さは感じているが?」

 

「なのに軽々しく待てんのか?」

 

「まぁ……鍛え方が違うというか……?」

 

「……ま、まぁいいや。それよりよ、いろんな武器があるって事は、俺の武器と同じ鎌もあるのか?」

 

「いや、まだ鎌の部類は[武器がアンロックされました]……は?」

 

「おいおい……今の何だよ?」

 

「新しい武器が解放されたらしい」

 

「こ、このタイミングでですか⁉︎」

 

「そのようだな。で、何が出たかな?」

 

夜光は自分のステータスを展開してヨロイの腕輪が何を新しく解放したのかを見る。新しいものは大体色が変わって見える。

 

(Wシリーズ……新しい項目だな。武器は……ビームサイズか。デスサイズの武器がなんで今?)

 

武器がアンロックされる時は大体レベルが上がった時や、使っている武器の熟練度が上がった時である。しかしながら稀に、何かの条件を満たした時にもアンロックされるようで、今回はラルクが夜光の武器を持った事で発現したようだ。

 

「新しく鎌の武器が追加されてる」

 

「へぇ〜……なら丁度いいな」

 

「そうか……ん? 何が丁度いいんだ?」

 

「なぁに、ただ夜光の坊主と腕試しがしたくなってな。ファサリナの嬢ちゃんはさっきの波で実際に実力は見て、ハッキリ言ってそこらにいる冒険者とは強さが出鱈目だし、俺がもしファサリナの嬢ちゃんと戦ったとしても良くて数分耐えれるかだと感じてな」

 

「そんなファサリナの嬢ちゃんが、夜光の坊主の方が自分より強いって言うからよ。実際に夜光の坊主がどんな戦い方するのかも気になってたところだし、しかもさっき見せたように違う武器も扱えるって言うじゃねぇか! なら俺の鎌と、夜光の坊主がさっき手に入れた鎌……どっちが強いのかって事でよ。いっちょ受けてくれよ!」

 

「……はぁ」

 

意気揚々に言うラルクに対し、夜光はその勢いで迫られた為か呆気にとられたような返事しか消える事が出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、ラルクと夜光が鎌同士でぶつかり合います。

「それにしても結局お仕置きって……俺何されるの?」

「ふふっ……ヒ・ミ・ツ♡」

「えぇ〜……」

以上、軽い惚気空間を作る2人……


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